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1993-04-02 第126回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二日(金曜日)     午前十時開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月一日     辞任         補欠選任      木庭健太郎君     荒木 清寛君      和田 教美君     広中和歌子君      長谷川 清君     吉田 之久君      下村  泰君     西川  潔君      寺澤 芳男君     武田邦太郎君  四月二日     辞任         補欠選任      大脇 雅子君     堂本 暁子君      北村哲男君      翫  正敏君      吉川 春子君     林  紀子君      池田  治君     磯村  修君      笹野 貞子君     乾  晴美君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         遠藤  要君     理 事                 井上  裕君                 石川  弘君                 上杉 光弘君                 柳川 覺治君                 角田 義一君                 村沢  牧君                 山本 正和君                 白浜 一良君                 寺崎 昭久君     委 員                 井上 章平君                 石井 道子君                 岩崎 純三君                大河原太一郎君                 大島 慶久君                 沓掛 哲男君                 下稲葉耕吉君                 成瀬 守重君                 野間  赳君                 野村 五男君                 服部三男雄君                 林田悠紀夫君                 星野 朋市君                 松浦 孝治君                 穐山  篤君                 翫  正敏君                 及川 一夫君                 喜岡  淳君                 久保田真苗君                 櫻井 規順君                 清水 澄子君                 種田  誠君                 堂本 暁子君                 肥田美代子君                 山口 哲夫君                 荒木 清寛君                 猪熊 重二君                 広中和歌子君                 吉田 之久君                 林  紀子君                 吉岡 吉典君                 磯村  修君                 乾  晴美君                 西川  潔君                 武田邦太郎君    国務大臣        法 務 大 臣  後藤田正晴君    政府委員        法務省刑事局長  濱  邦久君    事務局側        常任委員会専門  宮下 忠安君        員    参考人        弁  護  士  堀田  力君        関東学園大学法  浅野 一郎君        学部教授        北海道大学法学  山口 二郎君        部教授     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○予算執行状況に関する調査  (政治不祥事解明国政調査機能あり方に  関する件)     ―――――――――――――
  2. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  予算執行状況に関する調査のうち、政治不祥事解明国政調査機能あり方に関する件を議題といたします。  本日は、本件について参考人方々から御意見を賜ることにいたしております。  まず、午前中は弁護士堀田力君にお願いいたします。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  まず、委員長の私から、本日、参考人に御出席をいただくことになった経緯について御案内をいたしたいと存じます。  最近の一連の不詳事件の発生で国民政治不信がかつてなく高まっている昨今、その究明国会が果たさなければならない重要な役割の一つと認識いたしております。  昨年から数回にわたって行われた証人喚問等は、国民の期待が大き過ぎるという一面もございましょうけれども、制度上の制約もあり、十分な成果が上がらなかったことも率直に私たちは反省をいたしております。  なお、これまで国会証人喚問がややもすると犯人ないしは犯罪捜し的と国民の目に映る一方、国会の審議の場で法務当局は、捜査中や公判維持、さらには人権擁護等を理由に、当然とはいえ答弁は慎重をきわめる場合が多いのであります。  裁判中の事件捜査段階の問題を国政調査対象とすることの是非や限界をめぐっては三権分立の建前から難しい問題があることは承知しております。古くて新しい問題と言えるかもしれません。このように証人喚問をめぐって幾多の問題がございます。  そして、御存じのとおり、国会には強制捜査権はもちろん、議院証言法による場合を除くと、書類提出一つにしても相手方任意提出しかないという状況で、世間でいう真相究明には隔靴掻痒の感がないでもありません。  そこできょうは、憲法第六十二条に規定する議院調査権国会法第百三条、第百四条に規定する議会国民及び官庁の関係、さらには議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律等法律制度を初め、幅広い見地から、国政調査権機能を充実する場合、どこに問題点があるのか、改善策はどうすればいいのか等、参考人から御意見をちょうだいいたしたいと存じます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、参考人から三十分程度で御意見をお述べいただき、その後委員からの質疑にお答え願いた いと存じます。  これより、参考人から御意見を賜ります。堀田参考人
  3. 堀田力

    参考人堀田力君) 堀田でございます。  きのうのきょうでございますので、一般市民方々が私の立場を誤解されないように、その点を一番望んでおります。その一般市民立場に徹しまして、与えられました時間内に私の意見を申し述べさせていただきます。  まず第一に、この国政調査権に基づきます不祥事解明目的でありますけれども、これをまずはっきり認識し、どの目的不祥事解明をやっておるのか、その点を明確にしてやるということが必要ではなかろうかというふうに思います。  その目的でありますけれども、いろいろありましょうが、大きく言えば、一つはそういう不祥事が二度と起こらないようにどうすれば再発を防止できるのか、そういう防止策考える、そのために不祥事解明するという点が一つあろうかと思います。そして、これがやはり国会国政調査権に基づいて調査されます以上は、そういうシステム、防止策考えるということが一番重要な目的ではなかろうか。  二番目には、そういう不祥事議員によって起こされました場合に、そういう議員倫理確立、するというそういう目的不祥事解明に当たるということも、これは当然あっていいことであろうと思います。  大きく言えば、その二つ目的があるんではなかろうか。その目的いかんによりまして、どういう解明をするのか、どの程度調査をするのか等がいろいろ変わってくるんじゃなかろうかと思います。  ところで、実態一般市民の目で見ておりますと、この再発防止策考えるのにやっておられるとも思えない。議員倫理確立というためにやっておられるようではあるけれども、むしろそこのやり方その他を見ておりますと、結局、競争する相手方政党の人気を落としてやろうという、言ってみれば政争道具として喚問しておられるという、そっちの面の方が強いような印象を受けるわけであります。  そうなってきますと、実態がそうでありますために、だれを呼ぶかとかどう呼ぶかとか、どのような制度でやるかとかについていろいろ議論が混同してくるんではなかろうか。もちろん、建前からいいますれば、政争道具として証人喚問するということは認められないわけでありまして、先ほど申しました、防止策を立てるために調査するのか、あるいは倫理を、各個人の議員の、疑惑議員倫理をはっきりさせるためにやるのか、そのどちらかをはっきりさせてやるということが一つ必要じゃなかろうか。それが第一点であります。  第二点でありますが、まず言ってみれば、重要性からいえば従であると言ってもいい議員倫理確立のための調査について申し上げます。  やはり、これはある議員について疑惑がかかっておりますために、それを、その前提となる事実関係当該議員に係る疑惑の事実関係を明らかにするということがこの場合には必要になってくると思います。ただ、その調査をする場合に、二点ほど考えなきゃいけないんではなかろうか。  まず一つは、その疑惑刑事事件捜査対象になっているという場合であります。  大体こういう場合に、世論が沸騰しそれに押されて調査をするということが実態として多いように思います。しかしながら、これは当該議員についての疑惑解明のためにやるということになりますと、専門捜査機関が徹底的、集中的に捜査をするわけでありますから、その間はそちらの解明に任せる方がずっと効率的であり、事実解明も深く進むのではなかろうか。  ですから、捜査が終わってしまい、そしてこれ以上進まないということになればその後調査をするということも考えられますけれども、一方でどんどん調査が進んでおるときにその途中で一部の方を呼んで聞いたところで、なかなかそれは、捜査との関連で本当のことも言わないでありましょうし、持っておる聞くための調査資料も全然捜査機関とは違うので効率的でもない。ですから、刑事事件と競合している場合にはそれを待って、いずれその結果がいろんな形で出てくるわけでありますから、これを利用して、そしてさらにその上に乗っけて必要な調査があればするという方がよほど効率的であり合理的ではなかろうかと私は思います。  それから第二点に、刑事事件として捜査対象になっておらない場合、また刑事事件対象になるようなつまり犯罪としての疑惑はない、しかしながら議員として甚だ好ましくない倫理違反疑いがある、国民もそういうことでいろいろ非難しておる、そういう事実関係、そういう疑惑についての調査であります。  これは、その疑惑調査する機関は公式なものとしてはほかにありません。マスコミがいろいろ事実を調査することはあると思いますけれども、公式機関としては捜査機関犯罪疑いがない以上は捜査いたしませんので、これは国政調査権を徹底的に行使して徹底的に事実を解明することが必要になる分野であろうと思います。  そこで、そういう刑事事件にはならない、しかし倫理違反であるというような事実関係解明についての国政調査権の行使について、どういう点が問題であろうか。  いろいろありますけれども、二つ申し上げさせていただきます。  一つは、何が倫理違反であるかということの基準確立しておらないということが大問題だろうと思います。今の倫理違反につきましては、御承知の行為規範を昭和六十年に議決しておられまして、その第一条に倫理違反を定めておられるわけでありますが、念のために読ませていただきますと、第一条「議員は、職務に関して廉潔を保持し、いやしくも公正を疑わせるような行為をしてはならない。」、こういうふうにお定めになっておられます。しかし、これは実は何も定めておられないのと同じであろうと思います。廉潔を保持し疑惑を招いちゃいけないというわけでありますから、そこの実態は何もないわけでありまして、刑事法の概念で言えばこれは白地規定である。中身が真っ白である、何も定めておられないのと同じであるということになるんじゃなかろうかと。  でありますから、たまたま刑事事件の方でリクルートでありますとか佐川でありますとかどこかの会社刑事事件を起こしまして、その金の動きの一部が刑事事件捜査として対象になると、その後その刑事事件としては罪にならないあらゆるお金、その会社が支払った、リクルートが支払ったあらゆるお金パーティー券であろうと何であろうとあらゆるお金が、これが全部悪いということになってしまう。佐川も同じであります。佐川が一部の件で刑事事件に引っかかったとなると、もう佐川から出たお金は何であろうと全部悪い。同じような、佐川でありましょうとリクルートでありましょうと、お金の配り方はいろいろあるわけでありまして、その中にはほかの会社もそういう配り方をしている部分がいっぱいあります。しかしながら、同じような配り方であってもほかの会社セーフ、たまたま刑事事件で引っかかった佐川リクルートはだめ、あるいは佐川は全部だめというようなことで、これは全くそのときの偶然でそれがいけないということにされたりセーフになったりする。  それでは、なぜそういうことになるかというと、中身が定められておらないからそういうことになってしまうわけだろうと思います。しかし、そういう定め方では恐らく議員先生方は、どういうものをもらっていいのか、どういうものをもらって悪いのか、これはわからないのじゃなかろうか。もらった後で、同じようなもらい方をして同じようにパーティー券を買ってもらっておる、そのうちあるものがたまたま何かほかの刑事事件で引っかかったらそれでアウトになってしまう、引っかからなきゃずっとセーフだと。これでは倫理違反行為を抑止する効果は全くない。白地規 定というのは抑止効果がないと思います。  ですから、この第一条の規定をもう少し具体的に実質的に、こういうものは刑事事件にはならないけれども倫理違反である、こういうものはもらっていいというその基準を、これを具体化されることが必要ではなかろうか。  その内容はいろいろ御議論の結果出てくるものであろうと思いますけれども、私はその御議論のたたき台として二つ基準についてつたない考えを申し上げさせていただきます。  一つは、あるお金を、ある政治献金があったあるいは寄附金があった、それが何らかの行為見返りであった、その頼まれた行為が社会的に見て不当な行為であれば、その関係で来たお金は、いかに少額であろうと、たとえ五万であろうと十万円であろうと、これは倫理違反であると、こういうふうに一つ基準が定められるんじゃなかろうか。  頼まれた行為が社会的に見て不当であるというのは、例えば私立大学裏口入学を頼まれてそのお礼としてお金が来た、私立大学裏口入学を依頼するのは刑事法上何の罪にもなりません、何の罪にもなりませんけれども、社会的に見ればやはりこれは議員が、特に例えば文教関係先生方が頼まれて裏口で本来なら入れるはずのない人を入れるようにするということは、これはやはり社会的には不当な行為というふうに判断されるんじゃなかろうか。そういうふうに頼まれた行為が社会的に違法でなくても不当であると判断されるような行為見返りお金は、これは少額であってもすべて倫理違反であると、一つそういう基準があり得るんじゃなかろうか。  それからもう一つは、寄附されたお金が非常に多額である場合であります。世間の常識からして不当に多額である場合。これはたとえ政治資金規正法にはかからない違法でない額であり、そのお金を渡して何か特別のことを頼んだわけじゃない、あるいは頼んだことは一般的にもっと立派に選挙区の、選挙民の声を吸い上げて政治をやってくださいよというような、中身としては極めて正当な政治活動を依頼する趣旨でお金を渡す。これは、頼んだ事項はたとえ正当であったといたしましても、その額が、そして違法でないといたしましても、異例に多額である場合はこれはやはり特別の関係が生じ、その後の時点で何か私的なことを、その際にはお金は払わないんですが、先に払ったお金効果で不当なことを頼むという基盤になりがちであると思われますので、頼んだ行為中身いかんにかかわらず渡した額が不当に多額である場合にはこれは倫理違反であるという、そういうもう一つ基準があっていいんじゃなかろうか。  大体この二つ基準で、違法ではないけれども不当だという場合がカバーできるんじゃないかと私は思います。  ただ、その辺がどの辺の限度が不当であるのかどうか、これはもう良識で判断していただくしかありませんので、それを刑事法のような形にすることは困難であります。ですから、倫理違反として抽象的にそういう基準を定めていただいて、あとは個々の事案でそういう不当と言えるのかどうか、その辺の御判断を調査していただいて、しかるべき措置を決めていただくというような形にするのがこの刑事事件にならない倫理違反についての調査を合理的に進める方法ではなかろうかと思います。  それからもう一点、刑事事件にならない倫理違反につきましての問題は、その調査に当たって、これは特定の議員についての調査になることが多いと思いますので、この手続を適正にするということが大変大切であると思います。手続を適正にするということは、人権擁護真実発見とを調和して両方の要請を満たすような手続にするということであろうと思います。  で、現在の調査方法一般市民立場で見ておりますと、疑わしいと言われた方、マスコミで問題になった方を呼んでその手持ちの資料で、言ってみれば非常に弾劾的に、少し大げさな言い方で言いますとサディスティックやり方で、ともかく相手を傷つけてやろうあるいは相手の方の属される政党の名誉を傷つけてやろう、そういう意図がありありと質問からうかがわれるような、そういう質問をされるという場合がかなり多いように見受けます。  それは、人権擁護観点からも真実発見観点からも、どちらにも合っておらないと思います。相手方人権を、どんな疑いをかけられた人であろうとこれは尊重しなければいけない。十分な資料もないのに、ただ傷つけるような言い方をするというのは人権を不当に侵害していることになろうと思いますし、またそういうやり方真実の答えが出てくるはずもないと思います。  ですから、この二つを調和するためには、私はやはり調査委員会なら調査委員会調査を担当するところでまず担当者を決め、秘密会の中で徹底的に調査を行われて事実関係を相当確定されるということが必要であろうと思います。秘密会でありますので、国民の見ております目の前でやられるわけではありませんので、その点では人権を守るという点は相当に変わってくる。本当に衆目、人の見ておるところでさらしものにして聞くというのは、これは言ってみれば大変古い感覚の調査方法だと私は思います。  ですから、やはりだれも見ておらないところで、証拠を示し、理を説きながら、時間の制約もなしに納得いくまでとことんお尋ねするということがまず必要じゃなかろうか。そのためには専門調査員を置かれまして、これはいろんな措置が要ると思いますが、そして書類提出命令権があります。これは不当に書類提出拒否をしますと罰則がかかるようになっております。この規定をもっともっと活用される必要があるんじゃなかろうか。  アメリカ議会がサピーナでいろんな書類をどんどん入手して、これを徹底的に調査して、まずそれをもとに徹底的に事実関係を聞いて、そしてこれは秘密会専門員が、人権擁護の点でも事実調査の点でもたけた専門員に資格を与えて、そしてこれはもうみんなの見ておるところで聞いても相手方に対して失礼にならないというか、もうほぼ間違いない事実であるというそういう事実を確定した上で、国民の見ておる前できちんと相手を侮辱しないで丁寧な聞き方で、しかし、たとえ相手に非常に不利な事実関係であっても、きちんと証拠関係を明示し、書類を示し、自分たち調査した結果を示し、それによって聞いていく、そういうふうにすれば、これは人権擁護という点でも真実発見という点でも適正な調査結果が国民の目の前に明らかにされるということになるんじゃなかろうか。その前段階をすべて飛ばしていきなりやるということは本当に、繰り返して大変恐縮ですが、人権擁護の点でも真実発見の点でも大変問題であると私は思います。  以上が刑事事件として捜査対象にならない倫理違反についての調査を行う場合について、私が感じます問題と提案でございます。  もう一つ、今のは倫理確立のための調査でありますが、不祥事再発防止するためにどういう立法をすればいいのか、あるいは行政をしてどういう措置をとらしめればいいのか、そのあたりを審議する、このことが実は倫理確立のための調査よりもずっとずっと大切な機能であろうと思います。  そのための国政調査でありますけれども、これは個々人についてどういうことがあるのか、そんなことは具体策防止策を立てるときには余り関係がないと思います。今まで何度も何度もいろんな疑惑国政調査権のもとに調査されておりますし、議員にかかわるいろんな刑事事件も既に刑事事件として起訴され公判で事実が明らかになっております。もうそれだけの事実があれば、それを踏まえて防止策としてこういうものがあればいいということは直ちに議論ができるわけでありまして、再発防止のための国政調査というのはもう何もしなくてもいいほどに十分今まで行われたんではなかろうか。  例えば、皇民党問題というのが昨秋ありました。その皇民党にだれがどれだけどうしたのかという事実関係解明されなくとも、暴力団がある政権成立の過程で介入したという事実がわかれば、これは暴力団がそういうことで介入しないような策を講じることは、それだけの事実、調査結果で十分できるわけでありまして、そのことをお考えになることが必要ではなかろうか。いかにして暴力団のあの不当な街宣活動そして不当な要求活動その他を防止するのか、そのためにはどういう権限を捜査官に与えればいいのか、どういう防止策があるのか、そこを考えることが議会として一番重要な防止策としての機能だと思います。  もう十分その点が議論し得る状態になっておりますにもかかわらず、ある点についての解明が不十分とか、専ら国政調査の方ばっかり重点がいっておるというのは、やはり議会の形としては私は一般市民として納得できないような気がいたします。もっと早く真剣に防止策考えてほしいなというふうに思います。  そういう観点で、この再発防止のための国政調査というのは、個々人にかかる調査をしなくても、大体の概要がこんなことだとわかれば、すぐその後防止策を真剣に議論される、このことを一般市民国会に期待しておると思います。ですから、そちらに進むことが一番重要ではなかろうか。例えば今回のいわゆる金丸事件につきましても、もうこれだけの事実関係十分対策がとられる行けであり、現に今度の場合は証人喚問とは別に、この方はまだ不十分だとはおっしゃりながらも、いろんな対策、法案が与野党の方から出ております。これが私は本当にあるべき姿であろうと思います。  その対策につきましては、今度の事件を契機に、あるいは今までの疑惑の結果も考えまして、一つは徹底的に政治資金寄附金透明化を図っていただきたいというふうに思います。これが行われないと、この国政調査を幾らやりましても意味がないわけでありまして、国民は本当にあきれておりまして、政治から離れかけようとしておるといいますか、もう既に離れておるといいますか、信頼を完全に失っておると思います。これを取り戻すには国民に非常にわかりやすい形で今後絶対にこういう不祥事が起こらないという案を示す、起こってもすぐわかるようにするという案を示すことが大事であろう。  そのためには、すべての寄附金、献金等は個人が受けることを一切禁止して、受ける政治団体は一つにする。一つというのは国民には一番わかりやすうございます。それから額はもう一万円以上全部公開する、これが一番国民にわかりやすいんじゃなかろうか。そして寄附の仕方、贈与の仕方はすべてこれは銀行口座を通して、調べようと思ったらすぐ調べられる、そして、これをすべて届け出て、国民がコピー代を払えばいつでも自治省からコピーできる、マスコミも常にコピーがとれるということ、こういう非常に単純で明快な案を出さないことには国民の信頼は返らないんじゃなかろうかと私は思っております。  今国会中にそういう非常に明快でわかりやすい案をぜひお通しいただきまして国民政治の信頼を回復していただくということが、これは大げさに言いますれば、日本国のこれからを決めますために一番重要なことではなかろうか。このままでは政治後進国になってしまうだろうと私は憂えております。  ただ、政治献金を規制するだけではしかし政治というのは進みませんので、二番目として、私はもっと国民が広く薄く政治献金をするように、そういうシステムをいろいろ考えなきゃいけないということをこれはあちこちで申しております。例えば所得税の一%をチェック方式でチェックした政党に入るようなシステムにするとか、そういったいろんなシステムで国民が広く薄く政治献金を出す、その政治献金を正当な政治活動にきちんと使っていただく、そしてその内容をすべて公開していただくということが、これはもう極めて単純で明快なそして国民にもわかりやすい、そして政治の信頼を回復する道ではなかろうかと思うわけであります。  ただ、国民に広く薄く出せと言いましても、今のような状況では国民は大変に白けておりまして、とてもそういう気分にならないだろう、そういうことを言い出しても政治改革が先だ、すっきりすることが先だという声がどこでも返ってまいります。そちらの方は、だからあわせて強力に政治改革をやっていただきますこと、それと同時にもう一つ大切なのは国民意見を本当に吸い上げた政治をやっていただくということ、これがやはり国民が広く薄く政治献金を出しそれによって政治腐敗をなくしていくという、そういう一番基礎であろうと思います。  そういう観点で言いますと、今の日本の一般国民を見ますと、特定の職業のグループ、あるいは中小企業のグループでありますとか農業のグループでありますとか、そういうグループは、これは大変に政治活動選挙運動も熱心でありますしお金も出しますけれども、全国五千万のサラリーマン層、これが大変に白けておりまして、お金も出さない選挙運動もしない、大方が棄権する、そういう状況になっております。  それは、やはりこれらの層が従来の政治の中で意見をくみ上げられてきておらない。これらの層、サラリーマンが例えば建設業界とか特別の業界に属しておりますとそっちの系列で政治参加をしておるのでありますが、そういう特定のグループでない一般サラリーマンというのが政治の中でずっと忘れられてきておる。ここが大変に問題なんではなかろうか。  ですから、例えば今一番大きな問題であります所得税減税をするのかしないのか、するとしてどの程度するのか、その財源をどうするのか、特に赤字国債を発行するのかどうか、このあたりは将来の国民に負担を強いるわけでありまして、二十代、三十代の国民たち、サラリーマンたち、これは大変に重大な問題でありますけれども、そういう問題、彼らの身に降りかかる問題を彼らが認識もせず政治に対して白けておる。この大変な重大な時代に、彼らの意見、希望が吸い上げられておらない。これは大変に問題なんではなかろうか。  きちんと彼らの中に入り、彼らの意見を吸い上げ、将来の国民たちに負担を強いるんであればそのことを十分覚悟させた上で、なおかつこれだけの減税しなきゃいけないとか、いや、そこまでの負担をさせるのはこれからより若い層が少なくなっているときに大変だということでさせない、ここは我慢することにするのか、ここは国民レベルで意見を吸い上げてやる必要がどうしても必要なことじゃなかろうか。そういうふうに意見が吸い上げられるようにすれば、国民たちも白けておる一般無党派層たち政治に返ってき、選挙運動にも参加し、広く薄くではあるがお金を出すようになるんではなかろうか。  ですから、そういうふうな国民の中に入った政治が行われる、政策を中心に行われる、ですから国民にそういう政策の点で政策を提示するような政党の姿になり政界の再編も進む、選挙制度もその関連で国民意見を一番吸い上げやすいそしてそれを政治に反映させやすいような制度にするにはどういう選挙制度がいいのかと、そういう観点から議論をしていただく。そういうことが、この白けており従来ずっと意見を吸い上げられておらない無党派層、この層が政治にもう一度返ってくることにする方策ではなかろうか、それによって彼らが広く薄くお金を出すようになれば政治腐敗の根源の部分がかなり是正されるんではなかろうか、それが政治腐敗をなくする一番抜本的な対策ではなかろうかと私は考えております。  つたない意見でございますけれども、よろしく御参酌いただければありがたいと思います。  どうもありがとうございました。
  4. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ありがとうございました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。石川君。
  5. 石川弘

    ○石川弘君 大変示唆に富むお話をいただきましてありがとうございます。  先ほど委員長のごあいさつにありましたように、私も幾つかの国政調査証人喚問等に立ち会っておりますけれども、やはり事柄が、なかなか事実の追求ということよりも、参考人側自身おっしゃいましたように、どちらかというと政治的要素の非常に強いものになっておりまして、そのことがせっかくの努力にもかかわらずこの国政調査、特に証人喚問ないし参考人意見聴取がこれに大きな期待をかけていらっしゃる国民の皆さん方になかなかこたえていないというのが私自身の実感でございます。  そこで、きょうは限られた時間でございますので、数点に限って参考人の御意見を伺わせていただきたいと思います。  先ほど委員長のごあいさつの中にありましたけれども、実はこれは参考人の御意見の中で、現に進行中の刑事事件についてやること自身の問題をお話しになりましたので大半はそのことで尽きるんですけれども、ここ数年起こっております事案、特に今回の事案等を考えてみますと、朝、新聞を見ますと、大変大きな見出しでいろんな事実あるいは事実と思われることが出るわけでございます。  そういうことがその日のこの場の国会でいろいろ委員の方からの御質問になるわけでございますが、司法の担当責任者のお答えは、そういう新聞に事実が出ていることは知っている、しかしそのこと自身は評論する立場にないというようなお答えが返ってまいります。これはテレビで全国に中継されますから、一生懸命この事案を追求なさっている司法当局自身が何かその追求に熱心ではないんではないかというような非常におかしな誤解を招く場合が多いわけでございます。私はそういう意味で一つ別の角度からの心配も実はするんですが、一つはそういう事実。  特に今回の脱税事犯等につきましては、これは検察、もう一つは国税の両当局でかなり極秘裏に事が進められて、あの逮捕という時点から急にマスコミにも大きく取り上げられたということもありますが、私ども幾つかの新聞を読んでおりますと、新聞に出ておりますこと自身が大変食い違いも多い。そういうもので、そのこと自身が直ちに事実じゃないということはわかりますけれども、一般に新聞を見あるいはテレビを見ていらっしゃる方は、その時点で既にそういう事案が非常にはっきりしているんだという認識を持ちます。  それに対して法務当局のお答えというのは、現に捜査中の事案でございますから当然のこととして、非常に限られたといいますか、聞きようによっては余の国会における審議そのものには積極的に協力していただいていないというような印象を持たれるということ、今回もまさしくその面においては私同様だと思っております。  参考人法務当局の中枢にいらっしゃった方でございますので、現にそういう場合に当時の立場と現在の立場じゃニュアンスが遣われるのかもしれませんけれども、そういうマスコミを通じて一般大衆が感じているこういう刑事事案に対するいろんな疑惑に対する国民疑惑というものをこのような政治の場で、いわば政府対国会という形で追及していくときのそういうギャップ、これをどうやったら埋めていかれるのか。  先ほどおっしゃったように、もう進行中の事案は一切関与しないということですとそれは非常に割り切りが早いんですが、それはやはり政治の場でも一つの重要な問題であるということも事実でございますし、さっきもう一つちょっと心配だと言いましたのは、一種の世に言うそういう情報をリークしてそういう世論をつくり出していく中で事柄が進められるということに対する懸念という意味もございますので、甚だ抽象的な御質問で申しわけないですが、こういう問題について参考人はいかにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
  6. 堀田力

    参考人堀田力君) 刑事事件捜査中でありますので、それについては法務当局は一般論としてほとんど答えられないであろうというふうに私は思います。  それはいろんな理由がありますけれども、まず事実が確定しておらない。これはもう捜査中は事実は、午前中でわかった事実と昼わかった事実と夜わかった事実とどんどん変わっていきます。いろんな人から聞くことによりいろんな書類を集め分析することによって事実の解明が転々と進んでいくわけでありまして、その転々たる事実の途中経過を一々明らかにすれば、これは誤った事実を明らかにするおそれもあり、不当な人権侵害を起こすおそれもあります。  そういう観点からも、捜査中の事実関係というのはなかなか明らかにしにくいと思いますし、また仮にそれが真実である、はっきりした事実で証拠を入手しておる事実でありましても、それを捜査途中で明らかにすることによりまして、当然証拠隠滅が行われたり、その後の捜査の進展に非常に妨害になるということもあろうと思います。  したがいまして、いろんな理由から一般的に刑事局長は捜査中の事件につきましては大体決まったような返答をするんであろうと思いますし、それは私はやむを得ないといいますか、それは正当なことであろうと思います。しかし、その間も刻々と事実の解明は大変なスピードで進んでおります。ですから、あるいは捜査が終了するまで少しお待ちいただければ、これはかなりの部分をやはり明らかにできるんではなかろうかと。  ただ、その途中でそれじや一切問題にしちゃいけないかというと、それはまた一方で捜査の利益だけを考えたことになろうと思いますので、再発防止策をお考えになるそのために必要であるという限度では、あるいはある程度のことは言えるんじゃなかろうか。それは、具体的な事実関係を言わなくても、大体こういうような事件の流れであろうというようなことがわかれば、もうそれで再発防止策考えられるわけでありますから、そんな突っ込んだ中身は要らないわけでありまして、その限度では捜査中であっても御協力できるという場合もあるのではなかろうかというふうに思います。  それからもう一点、間違った事実等が報道されて人権侵害をこうむっておる者が生じておる、それについて国会で聞いても刑事局長が答えないという問題でありますけれども、これは誤った報道によって仮に人権侵害を受けた者がおるとして、その人権を救済することを国会国政調査権質問でやられるというのが国政調査の任務であろうかどうか。その点については私はちょっと首をかしげます。これはやはり別途、行政機関であれば法務局の人権擁護担当者もおりますし、まず何といっても人権侵害を受けた者が、私が弁護士であるから言うわけではありませんが、弁護士を雇い、直ちにその誤った報道をしたところを告訴するとか名誉棄損の訴訟を起こすとか差しとめ請求を求めるとか、いろんな法的手段もありますので、そちらで是正することが必要ではなかろうか。  どの程度誤った報道がなされておるのか知りませんが、今回のいわゆる金丸事件の報道につきましても、この間の朝日新聞の記者の座談会を読みますと、報道経過でいろいろ違っていた事実も出ておったというようなことが出ております。これはとんでもない話でありまして、それは今までマスコミに対していろんな法的措置をとられる方は少ないんですけれども、これはもっともっと法治国としてとられるべきじゃなかろうか。それによって是正するのが筋でありまして、刑事局長がここで答弁するというのはちょっと筋が違うんじゃないかと、そういうふうに思います。
  7. 石川弘

    ○石川弘君 百四条の資料を請求する機能で、実は委員会でもたびたび論議になるわけでございます。  これも参考人のおっしゃるように、進行中の刑事事件について、特にまだ起訴にまで至っていないような段階で、あるいは起訴されてもまだ裁判係属中に、いろいろ関係資料等については極力それを避けるという手法で避けられれば一番いいわ けでございますが、現実の委員会資料要求の中には実はそういうものも非常に多いわけでございます。  そこで、世に言う公務員の守秘義務と国政調査権のバランスというようなことで、かつての三木内閣の時代の例の政府見解とかいろいろあるわけでございますけれども、現実の問題としまして、担当します者としますれば、一つ資料要求に対して、これを開披することを求めること、開披して国会の場に出すことの利益と守秘義務で守ることとの利益を均衡させてということは抽象論としては非常によくわかるんですが、現実はなかなか難しい。その結果として、与野党でそういうことを折衝します際に、いかにも政府側が隠しているんではないかというような意味でのやりとりが多いわけでございます。  私はそういう面で、今、参考人がおっしゃったような、現に刑事事件として進行しているようなものについては極力検察の手にゆだねるというような解決でありますと実は問題点は非常に少なくなってくるわけでございますが、どうも現実の今までのやりとりの中では主として問題になるのはそういう案件というようなこともございますので、それについて参考人はどうお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
  8. 堀田力

    参考人堀田力君) 大変難しい問題であると思いますが、行政官庁というところはやはり自分の手持ちの資料を大切にいたしますし、それが流れるということになりますと、その後資料の入手ができなくなる、相手方の信頼を失ってしまうということで、提出したがらないということはそれは業務を適正に彼らが行うための観点からいえば当然理解できるところでありますけれども、しかし、彼らだけに判断させておりますれば国政調査が進まないこともおっしゃるとおりであると思います。  したがいまして、それは提出要求をするその理由がどれだけ説得力があるのか、そこに実際問題としてはかかってくるんじゃなかろうか。ですから、ただ一般的にこれこれについて調査したいので関連する資料を全部出せとか、一般的にこういう関係のものを全部出せ、これではとても相手はいろんなことを言いまして応じないんじゃないかと思います。  ですから、官庁がどんな資料をつくり、どんな資料を持っておるのか、ここは当然その官庁の規則その他内部の書類に関するいろんな規定をつくっております。これは公にされておりますのでこれを見ればわかるわけでありまして、これこれこれこれのこれであるということをまずきちっと特定することが前提じゃなかろうか。それを特定した上で、なぜそれを要求するのか、この中からこういう事実が明らかになるはずである、こういう事実を明らかにすることが国政調査のこの今の段階でこういう理由で必要であるということをきちんとおっしゃれば、そういう理由がついておれば、これは行政官庁としても非常に拒みにくくなってくる場合が多いんじゃなかろうか。  もちろん、その守秘義務の内容の濃淡がありますので、それでも守秘義務で拒むところも出てくると思いますが、そういうふうにきちんと出て国民の前でそういう理由が示されれば、私は実際の解決策としてかなり進むんじゃないかという気はいたします。
  9. 石川弘

    ○石川弘君 国政調査、特に証人喚問ないし参考人意見聴取そのもののことでお伺いをしたいわけでございますが、今、参考人がおっしゃいましたように、進行中の刑事事案については能率その他の面からもむしろ司法当局に任せた方がより効率的であるし、そのことが国政調査権がむしろ期待をしております再発防止の問題だとかそういうことに役立つのではないかというのは、非常に私自身もよくわかるわけでございます。  例えば今回の金丸事件そのものの事案を考えましても、この問題が摘発されましてから起訴に至るまでの二十日間の間でも、国税当局だけでも多分一日百人前後、延べで言いますと二千数百人ぐらいの人員を費やしているように思いますし、検察当局もいろんな応援を得ながら、これも頭数で一日百人規模というようなお話もございます。  そうなりますと、二百人を超える、しかも専門のスタッフを使って背後の資料を整えながら事件解明する検事の方は、たとえ一日六時間という事情聴取としても、二十日間あれば百二十時間、あるいはもっと時間をかけて事件究明しているわけでございますから、国政調査、これはもっと時間があればいいというお話もありますけれども、非常に限られた時間でしかも背後に強力な資料を持っていないという状態で全く同じ調査をすることには、私も大変疑義があるわけでございます。  他の国の例でも、例えば諸外国におけるこの種の調査がやはり数百人という規模であったり、日数も数十日間という規模であったり、あるいは膨大な資料あるいは膨大な報告書を伴いながらその結論を得ていることを考えますと、私自身、現在の手法をもってしてはなかなか国民の皆さん方に御納得を得るようないわば証人喚問ないし参考人意見聴取がなかなか難しいんではないか、そういう気がするわけでございます。  先ほど参考人の御意見の中では、刑事的な事案ということよりも、むしろそういうことの起こったそういう個人個人の一人一人の犯罪あるいはそういうことをつくり出すような背景ということの事実の究明をいろんな形で、これは他の行政部局も使いながら、その中で集約されるその種の犯罪再発防止、それも特に犯罪という角度で言えば、これは司法当局でやるべきことはどんどんやれるわけでございますから、さらに犯罪行為とはならなくても政治家として、あるいはそういうことが政治として再び起こらないようにという倫理その他広範な問題でこの種の証人喚問が行われることが非常に長期的に見れば私は日本の国政のために大変進むのではないかと思っております。  ただ残念ながら、現在の状態からいいますと、例えば昨日の証人喚問が終わりまして、そのこと自身が、新聞の見出しを気にするわけじゃありませんけれども、例えば野党の追及不発というようなああいう表現でこの問題がとらえられている限りにおきましては、こういうことの繰り返しはかえって国民の目から見て国会の活動について批判が高まるんではないかというおそれさえ抱くわけでございます。  先ほどおっしゃいました道義の問題、道義といいますか倫理の問題。要するに、法の規範をもう少し超えた話として、しかし政治家としては当然努めるべき分野、しかもそのことが各種の政治活動に及びますので、結果的にいいますと、それは単なるいわば国会における一つの分野での調査ということではなくてもっと広範な、一つ政治改革の問題になりましょうし、一つはやはりいろんな面での何と申しますか、事実究明といいましても、そのことが刑事的に問題であるということよりも、むしろそういうことの再発を防ぐための土壌をつくるということになりますと、私どもとすれば、例えば予算委員会とかあるいは今度その他各種委員会でもこの問題の追及をやるというような御意見もあるようでございますけれども、そういうものでないような、やはり別の角度、それがすぐできるかできぬかは別でございますが、そういう方向の方がより適切な方向ではないかと思いますが、これについて参考人の御意見を伺いたいと思います。
  10. 堀田力

    参考人堀田力君) 一般国民といっても具体的にはいろんな方がおられますので、テレビの朝のいろんなスキャンダルを報道しておるようなああいう番組を見るような興味で、一体どんなスキャンダルがあるんだということを知りたがるというそういう気持ちが国民の間にもちろんあることは当然であろうと思いますが、それじゃ、そういう気持ちが強いからといって、それを国会に対して国民が果たして期待しておるのか。それはどこかがやってくれればいい、何だろうというそれだけのことであって、国会がそれをやれというそこまでそれが本当の国民の正しいというか、そういう気持ちであるとは私は思えないわけであります。  良識ある国民というそういうレベルでとらえますと、国民の意思というのは、国会はそんなことにならないように一体どうするんだ、どういう案を立てるんだと、そこの答えを痛切に求めておるんではなかろうかと思います。したがいまして、そういう案が出れば国民は喝采いたしますし、それが出なければ絶望していく、そういうことになるんだろうと思います。
  11. 石川弘

    ○石川弘君 ただいま参考人からの御意見がありましたように、やはり国会においてただすべきことの非常に大きな部分は、立法府としてその立法、再発防止も立法に重要なかかわりのあることでございますから、立法府としてその立法をいわばみずからの力でつくり出していくためのそういう機能として与えられたのが私は国政調査権だと思っております。そういうことを肝に銘じてこれから努力をしたいと思っております。  ありがとうございました。
  12. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 石川君の質疑は終了させていただきます。  次に、角田義一君。
  13. 角田義一

    ○角田義一君 社会党の角田でございます。きょうは大変先生からいろいろ御高説を賜りましてありがとうございます。  時間の関係もありますので端的にお尋ねしていきたいと思いますが、刑事事件にかかわるような、刑事捜査やっておるような事案については、その専門家である検察庁にお任せをしておいていいのじゃないかというお話がございました。そのとおりだろうと私も思います。  その前提といたしますと、やはり例えば、例を挙げて申しわけございませんけれども、今回の金丸さんの政治資金規正法違反、罰金二十万の処理の仕方、それは今の法律ですからやむを得ない面はありますが、しかしやっぱり任意で調査をしないと申しましょうか、調べをしない。じかにやっぱり金丸さんをお呼びにならなかったというようなことが、普通の市民なら当然呼ばれるんじゃないか、金丸さんのような人だからああいうことで済んだんじゃないかというような、そういう批判というのは率直に申し上げまして私は非常に強かったというふうに思います。  検察庁に何しろペンキまで投げられるというようなことも起きたわけでありますから、私どもはああいう事件を見ますると検事総長さんに来ていただいて国会でいろいろ事情をお聞きしたいなというような衝動にすら駆られるわけでございます。その専門の検察庁に任せるのは結構でございますけれども、これは当然のことだと思いますが、やはりそれには検察の威信といいましょうか、検察への国民の信頼といいましょうか、それが確固としたものがなければ当然いけないのじゃないかというふうに思うわけでございます。  検察庁で大変高い地位におられました先生にこういうことをお聞きするのはいかがかと思いますけれども、まずその点ちょっと承っておきたいと思います。
  14. 堀田力

    参考人堀田力君) 私は刑事局長にかわって答弁する権限は全く持ち合わせておりませんので一般市民としての立場での意見ということに相なりますけれども。  昨年、大変検察に対して五億で二十万とは何だと、それから呼び出さないのは何だと、主としてこの二点を中心として大変な非難が起こったことは事実でありまして、私もかつてそこに籍を置いた者として胸を痛めておりました。  その前段の五億で二十万とは何だと。これは本当に検察にすればかわいそうなとばっちりでありまして、二十万の法定刑しかくれずに一体何をやれと言うんだと。それはもらった刀が出刃包丁、さびたような出刃包丁だからもうそれ以上のことはやれないじゃないか。罰金二十万のやつを検察が勝手に法定刑をつくってこれを懲役刑にしたらこれは大変な専制国家になるわけでありまして、この点は私は大変気の毒であったと、この誤解がなかなか解けなかった点も気の毒であったと思っております。  後段の呼び出さなかったという非難につきましては、これは考え方は二つ、両方あり得ると思います。一つは、特別扱いはけしからぬじゃないかと。もう一つは、やっぱり罰金二十万で、これは御承知のとおり、刑事訴訟法は三十万円以下は逮捕しないことに今はなっております。ただ、経過措置であれば二十万でも逮捕できることにはなっていますけれども、その刑事訴訟法の精神からすれば、やっぱりなかなか逮捕できないだろう。裁判所が逮捕状を果たして出すのかどうか。まあ普通に考えれば出さないであろう。そういうときに、逮捕ができないときに相手が出てこないといったときに一体どうすればいいのか、こういう大変難しい問題に当たったんだと思います。それで、出てこないけれども最高利をとれるならばそれでやってしまおうということになったんだと思います。  それはけしからぬという議論もありますが、けしからぬということであれば、一つは裁判所に逮捕令状を請求してみるかと。そしてその場合に、裁判所が逮捕令状を却下したらこれまた大変今度は裁判所について国民からのいわれのない非難がいって、いわばとばっちりで裁判所が信用を失うという問題も起こるおそれがあります。  それから、それじゃ逮捕令状を請求せずに、しかし呼び出さない、出てこない、逮捕もできないということであきらめてしまうのか、二十万取らずに全くあきらめてしまうのか、そういう選択肢も一つあったと思います。それがいいのかどうか、これも大変難しい議論だと思います。  ですから、後の方の非難もやっぱり一方的な非難じゃなしに、いろいろな状況があり、事情があったんだと。あれが現在の改正した改正法で禁錮一年というのがあの当時からついておりますれば検察はもう文句なしに逮捕したと思います。これは運用上それで全然問題がないわけでありまして、そこのところをやはりきちんと検察のためには説明してあげてほしいなと。そこが少し飛んでおってちょっと非難が、ある程度受けるのはもちろんやむを得ないとは思いますが、これもちょっと受け過ぎかなと、私はもとおりましたせいもあるかもしれませんが、その点はかなり同情的であります。
  15. 角田義一

    ○角田義一君 私は社会党の佐川等のプロジェクトの事務局長を仰せつかってずっとやってまいりまして、金丸さん、竹下さんの証人喚問をどうするかというようなことを検討してきたスタッフの一人でございます。  私は個人的には、同僚の議員とも話をしているんですが、金丸さん、竹下さんというような政治家については、国会に来ていただくのは一番最後でよろしいのではないか。事実関係をきちっと押さえた上で、俗に言う外堀をきちっと埋め切った上で、そして最後にその事実を踏まえて政治的、道義的責任をきちっとただしていくのが筋ではなかろうかというような議論をしておりました。しかし、現実になりますとやはりそうもいかない。先ほど言った呼ぶか呼ばぬかという議論にどうしても収れんされていってしまう。  そこで、先生は外国の法制についても私はお詳しいと思うのでございますけれども、先ほど例えばアメリカ等でこういう場合に事実関係について専門のスタッフ等を抱えた特別委員会がありまして、そこで徹底的な事実究明をやった上でまたしかるべき措置をとる、日本でもそういうことが私は非常に望ましいというふうに思うのでございます。一朝一夕にしてそれができるわけではないんですけれども、アメリカ等での特別委員会の審議のあり方等についてひとつ御説明を願えればありがたいというふうに思っております。
  16. 堀田力

    参考人堀田力君) 専門ではございませんので詳しい知識持ち合わせませんけれども、これはまず調査をする特別の委員会があり、そしてそこのスタッフが予備調査をいたします。それから、非常に有効なのがサピーナと言われております書類提出命令権でありまして、これ、提出拒否いたしますと議会侮辱罪ということで刑事罰が科せられます。  まずその書類を特定してきちんと入手し、それ を分析し、その上で専門調査官がいろんな方から事情聴取して事実関係を固める、そして固めた上で公開の場でいろいろ質問していくという形になりますので、これはその固まった事実関係であれば公開の場で聞かれてもやむを得ませんし、否定もできません。そういうことで、人権擁護の点と事実解明の点とがまあうまく調和されておるんじゃなかろうかというふうに思います。  ですから、きちんと調査するということは大変大切なことだと思いますが、ただ、あわせて非常に大事なことは、それが人権侵害にわならないように、不当な憶測にならないように、そこのところをきちっと、絶対に秘密が漏れないようにとか、そういった手続規定をきちんとしておくことがまず前提として必要だろうと思います。
  17. 角田義一

    ○角田義一君 アメリカの連邦議会等ではそのスタッフというのはどの程度の規模なんでございましょうか。それが一つ。  それから、公開で議員質問するのでございましょうけれども、日本の国会は、御案内のとおり、私ども社会党は三十七分、これは往復でございますね、一番の小会派は四分という、往復でございますからごあいさつするともう終わり、こういうことでとてもその真実究明するなんてわけに私はいかない。もう少し、仮に事実を踏まえた上でその証人に対して公開の席上で聞くにいたしましても、もっと時間的な落ちついたやり方でやらなければいけないんじゃないかというふうに思うんですけれども、その二点についてお教えいただければありがたいと思います。
  18. 堀田力

    参考人堀田力君) アメリカのスタッフの数は一々私調べておりませんので承知しませんが、もともとが各議員が大変にたくさんのスタッフを抱えておられまして、しかも政策立案担当あるいは事実調査担当の能力が非常に高こうございます。だからそういう方々も協力され、議会の方も協力してやっていかれるということであろうと思います。それ以上は専門家の方に聞いていただきたいと思います。  それかも、後の事実解明の点、時間の割り当ての件につきましては、もう私は全く何も申し上げるような立場じゃないんですけれども、ただ、事実解明がきちんとしておりまして、聞くことがきちんとしておりまして、そして聞く方の立場の方の連携がきちんとできておれば、これはたとえ四分でありましても私は相当突っ込んだことがきちっと明らかにできるんじゃなかろうか。だから、時間が空費されておるのは、ほとんど確たる事実が手元になくて憶測で聞かれ、それを否定される、また憶測で何か聞く、そこのやりとりで全くむだな時間が使われておる。そのために時間が有効に使われてないんじゃなかろうかと。ですから、むしろ前提のどれだけ確たる事実を持ってやるかという方に問題があるように私は思います。
  19. 角田義一

    ○角田義一君 アメリカのようなシステムにのっとっておれば、先生がおっしゃるように、まあ今回の場合は何とか五分になりましたけれども、五分でもそれは有効にできると思いますが、現状のままでこれは五分とかいうのではもう何にもならぬと私は思うんです。  それはそれといたしまして、もう一つ、今回の例えば佐川をめぐる事案で、要するに刑事被告人、勾留されている刑事被告人を証人喚問するという新たな事案に直面をいたしました。私もそれをかなり強く主張した一人でありますが、例えば佐川の社長さんの場合、これは特別背任ということになっております。しかし、私どもの立場からしますと、むしろ皇民党の関係の方が非常に政治的な意味が多いわけでございます。暴力団政治家との関係、この辺を非常に究明をしたいと。で、裁判所とのいろいろ折衝の中で、公訴事実に関することについては聞くのを差し控えてもらいたいと。当然だと私は思っております。  何が直接か何が間接かという非常に難しい問題はございますんですが、私どもはこれは甘かったといえば甘かったと思うんですけれども、例えば皇民党に関するような事件については、公訴事実とそれほど関係があるわけじゃないから何とか来ていただいてその辺のことを証言していただけるんじゃないか、こう思っておったところが、すべて優秀な弁護士さんが後ろへついておられまして証言拒否、これは公訴請求されるかもしれないと、こういうことでほとんど実効が上がらなかった。ただ、唯一の実効というのは、皇民党に関係することでございますので申し上げられないという程度のことでございますので、これはある意味では語るに落ちたというふうに思うのでございますけれども。  いずれにいたしましても、そういった非常に政治的な観点から言うと大事な問題についての証言まで拒否されてしまう。非常にむなしい気持ちもいたしますし、また国民といたしましても非常に残念だと思うんですね。  そこで、例えばあのロッキードのときにコーチャンさんが何かアメリカでいろいろお調べを受けたときに免責特権を与えられてというようなことも聞いております。真実を述べるならば刑事免責をするというような特権を与えられて本当のことをしゃべられた、その調書が日本の裁判でもいろいろ問題になった。これは当時の責任者でございますからよく御案内だと思うんですけれども。  私はそのことを思い浮かべまして、例えば日本の場合におきましても、非常に政治的に重要な問題、政治家の道義あるいは倫理に関するような問題について、今言ったようなことで証言拒否されるよりは、むしろそういう免責特権を与えた上で真実を語ってもらう、それをやはり私どもは使わしていただくということの方が非常に有益ではないかというふうに思うのでございます。その場合に日本の現行の刑事訴訟法の法制のもとでそういうことが可能なのかどうかというような問題も含めまして、先生の御見解を承れればありがたいというふうに思っております。
  20. 堀田力

    参考人堀田力君) それは、現行の刑事訴訟法の解釈論として絶対に不可能であるとは思いません。検事総長が起訴しないという宣明をすることによって法解釈論としては可能であると思いますけれども、しかしそういう道は王道ではないと思います。ですから、もし刑事免責をしてしゃべらせるということであればきちんとした立法対応をやってやられるのが、特に国会でありますので立法は足元でできるわけでありますから、それが王道であろうと思います。  ですから、そういう御発案が出ることは十分問題を詰める上で有意義なことだと思いますが、ただこれは刑事免責を与えますと、その後、国会ではその事実関係について明らかになり国民の目の前に明らかになるわけですが、その事実について本人を起訴できないという当然のことですけれども結果をもたらします。ですから、その起訴できないという結果が国民全体にとってどれだけのマイナスになるのか、そこの比較考量が非常に難しい問題であろうと思います。  ですから、もし立法を御検討になるのでありますれば、その起訴しないということの国民に及ぼすマイナスと、それによって証言を、供述を得るというそのプラスとの比較考量をどういう機関が入ってどういうふうに判断するのか、ここの手続をきちんと詰めていただいて法律をつくっていただくことが必要かなと思います。
  21. 角田義一

    ○角田義一君 それから、これはちょっと実務的なことで大変申しわけがないんですけれども、例えば渡邊さんの場合、拘置所へ行きまして狭いところで我々議員が行って話を聞いてくると、証言を聞いてくると、仮にああいう証言拒否をいろいろされるにいたしましても、私は国会という場で、来ていただいてむしろお話をいただいた方がよろしかったんではないかというふうに今思っておるんです。いろいろ制約があるにしても、またいろいろ証言拒否を受けるかもしれませんけれども、国会に来ていただいてお話を聞いた方がやっぱりよろしかったんじゃないかというふうに思っております。  私のこれは個人的な見解になろうかと思いますけれども、例えば勾留の執行停止というような手続をとれば、国会に来ていただいてお話を承るこ とができたんじゃないか、証言を承ることができたんじゃないかというふうに思うのでございますけれども、先生の御専門立場でその辺はどうでございましょうか。
  22. 堀田力

    参考人堀田力君) それは、法的にはそういう措置は十分可能であろうと思いますが、結局裁判所の方の審理を進めるための利益と、国会でこういう場でやることの利益とのやっぱり比較考量の問題になろうと思いますので、これは具体的に両方の話し合いで、まあ最終的には身柄を勾留している方の判断でやるしかないということになります。  ですから、そういうことを求める利益をどれだけ具体的に挙げられ、それがどれだけ裁判所に対して説得力を持つかと、そこにかかってくるんじゃないかと思いますけれども。
  23. 角田義一

    ○角田義一君 法律的には可能だというふうに理解してよろしいでしょうか。
  24. 堀田力

    参考人堀田力君) はい。きちんと詰めなきゃいけませんけれども、直観だけで申しわけないんですが、それはここに出てきてもらういろんな方策はあり得ると思います。
  25. 角田義一

    ○角田義一君 もう時間もありませんので、あと若干。  先生から先ほどお話を賜った再発防止のための政治資金の問題をちょっとお聞きしておきたいんですけれども、今のような制度でこのままもし推移して改革がされないということになりますと、私は政治には金がかかると思うんです。そして立派な政治家を育てるためにはもちろんそれだけのお金を、税金をつぎ込まなければならない。そうでないとやっぱり有能な人材というのが今後政界に来ないんじゃないかという気がいたします。  もちろん、こういった腐敗をなくすようなシステムをつくることは前提でございますけれども、しかし私は政治にはやっぱり金がかかる。政治家をつくり上げるにはそれ相当の金がかかる。そうでないと、今後二十一世紀を担っていく日本にとって、政界に有能な人材が来ないということは大変ゆゆしいことだというふうに思うわけでございまして、先生の書いたもの等も拝見いたしますと、やっぱり政治お金がかかるので、それについて相当なものをつぎ込まなきゃならないんだというようなお話も承っておりますが、最後にそれについて先生の御見解なり御所信を承れればありがたいというふうに思います。
  26. 堀田力

    参考人堀田力君) 全く委員のおっしゃるとおりであると思います。今は立派な政治家の方々ばかりでありますけれども、これからの政治家についておっしゃっているんだと思いますが、非常に政界に出にくいような、いろんな面で事実上の制約があって出られないというようなことになっておることは大変大問題であると思います。  ですから、政治家になる人はもうお金の心配をしなくて、非常に極端に言えば、お金のことは一切心配する必要がなくて、ただ立派な政策を言い、その政策がどれだけ説得力があり国民を引きつけるか、その人がどれだけそういう政策を考え、訴える力を持っておるか。専らその観点だけから人物を判定してもらって、そういう人たちが、その点ですぐれた人が出られるというそういうシステムになり、そしてその人が出るということになれば、政党が出るためのいろんな準備、もろもろの準備はやるという形になれば、どんどんそういう方も入ってこられますし、現に今政治をやっておられる立派な政治家の方々が一層雑事から解放されて政策の研究をさらに深められて、それを国政に生かされ国民政治に対する信頼もさらに高まってくる、そういう循環の関係になるんだろうと期待いたしております。
  27. 角田義一

    ○角田義一君 最後になりますけれども、いろいろ今証人喚問国会やり方について国民の皆さんからの御批判もあるんですが、しかし我々とすれば、今の制度のもとでぎりぎりいっぱい努力をしなきゃならぬ、それで国民の期待にこたえなきゃならぬというふうに私どもは考えておるわけです。そして、そのために今非常に苦労も現場では実際しておるわけであります。  ただ、国民の皆さんになかなか御理解をいただけない。何か国会で水戸黄門の葵の御紋が出てきて一発で解決するように思われても私どもも困るわけでございますが、今の現行のシステムの中で、先生が考えられてぎりぎり、別に新しい法律をつくらなくてもここをこうやったらできるんじゃないかというような御提言がありますれば最後に承れればありがたいと思います。
  28. 堀田力

    参考人堀田力君) 一分ですので、私は広く薄く国民お金を出すことが改革の基本だと言っております。  ですから、法律もなしにそれをやれというのであれば、それはもう民間の臨調等できちっとしたシステムをつくる。例えば、源泉徴収の還付金から一万円を限度にして指定する政党にその分を回すとか、あるいは貯金の利子から一万円なり指定した額を指定した政党に渡すとか、いろんな制度考えられると思います。そういう制度を、なかなかこれは政治家の側からおっしゃるのも難しいところもあろうと思いますので、これは民間の有識者も入ってそういうシステムをつくっていくことが一番基本だと思っておるんですが。
  29. 角田義一

    ○角田義一君 質問とあれがちょっと合わないんだと思うんですけれども、私は、今のいろいろ現行の国政調査権の中でぎりぎりやれる改革というようなものを運用の面でもし御提言があればというふうに申し上げたんですけれども、恐れ入ります。
  30. 堀田力

    参考人堀田力君) 失礼いたしました。  それは最初の意見で申しましたように、やはりともかく質問の前に徹底的に調査するようなシステムは現行法の中でもかなり可能だと思います、規則の改正で可能だと思いますので、そこがポイントかなと思います。
  31. 角田義一

    ○角田義一君 ありがとうございました。
  32. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 角田君の質疑は終了させていただきます。  続いて、白浜一良君。
  33. 白浜一良

    ○白浜一良君 公明党の白浜でございます。きょうはお忙しいところありがとうございます。  参考人は大変有能な検察官として活躍してこられたわけでございますが、一つ素朴に私素人でございますのでお伺いしたいんですが、前に環境庁長官をされた稲村さんがこれも所得税法違反で逮捕されたわけですが、在宅起訴されたらしいですね。金丸さんの場合も同じ罪名でございますが、逮捕された。この辺は何か扱い上の違いがあるんですか。現職の議員だとか現職の議員でないとか、そういう違いがあるわけですか。
  34. 堀田力

    参考人堀田力君) これも全く私は今一私人の立場で答えるわけですけれども、それは釈迦に説法のようで申しわけないんですが、現職の議員でおられるうちは国会開会中は議院の同意がないと逮捕できませんので、国会開会中に捜査が熟して本人を調べるというような時点に至れば、捜査当局としては逮捕の同意を求めるかあるいは在宅で調べを進めるか、どっちかしか選択肢がないわけであります。ですから、そういう意味で現職と現職でない人とは違いが生じることになります。  実際上、議院に同意を求めたりいたしますと、いろんな資料秘密会とはいえ提出しなければいけませんし、時間も御承認を得るのにかかるということになりますので、むしろそれを避けてやった方が捜査としては手っ取り早く進むということも一般論としてあり得るのじゃないかと思います。ですから、国会の開会中についてはお立場は違いますが、それ以外についてはお立場は同じだと思います。
  35. 白浜一良

    ○白浜一良君 先ほどいろいろお話伺っておりまして、いわゆる刑事事件捜査中のものは検察に任せた方が効果的だと先ほどもお話ございました。私もそのとおり思うんですが、非常に素朴に二つの問題を感ずるわけです。  一つは、何というか、委員会で審議なんかしていましても、一般紙、新聞にはっと出ているようなことでも、相当あれは内部のと思われるような資料でも出ますね、マスコミに。そういうことでもやはり、こういう公の委員会でやると何らコメントされないというか、それは捜査中ですからできないこともあるんでしょうけれども、何か割り切れないものを率直に感じるわけです。先ほどの五億で二十万という話がございましたが、確かに現行法ではそうだということがあっても、私もう少しそういう検察当局として、これ国民向けにきちっと説明された方がいいんじゃないかと思うんです。  例えば、私のことで申し上げましたら、金丸さんの上申書が朝日新聞にはっとリークされたんですね。それで、当委員会でもこれは事実かどうか、内容はどうか、何ら是も非も含めてこれは答えられないわけです。それはお立場上そうなんでしょう。だけれども、そういうことが検察は何だと。それは言える範囲、言えない話あると思いますが、精いっぱいやはり国民に向けて説明する努力は、これは検察というのは私、経験ございませんからわかりませんが、もう少し説明された方がいいんじゃないかなんという疑問が一つはするわけです。この点はどのように思われますか。
  36. 堀田力

    参考人堀田力君) これはもう、全く私が応対すべき権限も何もないことでありまして……
  37. 白浜一良

    ○白浜一良君 感想でいいです。
  38. 堀田力

    参考人堀田力君) 一般論として、国民向けに説明した方がいいというその一般論は賛成であります。しかし、最初に申し上げましたように、捜査中というのはなかなか説明できないいろんな事情がありますので、それとのバランスで、責任者がそのバランスを判断して答弁しておるんじゃないかと思います。  ただ、御質問の前提でリークがあるとかいうお話ありましたけれども、これは私の経験上、リークというのはないと信じております。これもまた朝日新聞の担当記者の座談会の中で出ておりましたが、去年の佐川の終結のころですけれども、リークがあるというような説があるけれどもマスコミに現に従事している者で一体リークを受けた記者がおるのか、そんな者はおらないとはっきり担当者が言っておりまして、リークなんというようなものはそんなに行われているとは思いません。  ただ、途中経過の説明で、逮捕した事実の説明でありますとか、その後の状況の説明を捜査担当者が、これはリークじゃなしに、全員に向かってするということはありますけれども、あと、それに基づかないいろんなことを憶測で、関係者から聞いたのをいかにも当局者がしゃべっているような感じで書くということも経験上たくさんありまして、現にこれも朝日の記者がいろんな間違った記事が出たと言っておりましたので、ああして出ておるのがこれ内部からしか出ないということで、それが全部リークだといきなり結びつけられるのは私は大分違うような感じがいたします。
  39. 白浜一良

    ○白浜一良君 そのリークの話は別にして、先ほどの二十万の話なんかでも、もう少し検察当局として国民向けに説明できないものなんでしょうかね。私、そういう検察の世界知りませんからお伺いしているんですが、もう少し現行法ではこうなんでこれが精いっぱいなんですともっとアピールされた方が私はいいように、わかりやすくなると思うんですけれどもね。
  40. 堀田力

    参考人堀田力君) その五億円に二十万という点につきましては全く同意見であります。やった検察としては十分やったと思っているのかもしれませんけれども、私としては、一般市民立場からすればもっともっと説明していいなと。全く同意見でございます。
  41. 白浜一良

    ○白浜一良君 もう一点、素朴な疑問点、第二点目でございますが、怒らんといてくださいね、これは。  検察はちゃんとやってくれているんやろかという、そういう素朴な、まあ不信までいかないんですが国民の声というんですか、思いというのか、こういうことがあると思うんですね。それは確かに厳正にされているとは思いますが、どうしてもそういう声が起こっているというか、私、そのように思うわけです。  それで、ちょっと堀田さんのそういういわゆる経験を踏まえてお伺いしたいんですが、例えばロッキード事件、大変活躍されましたけれども、コーチャン発言というんですか、要するにアメリカ側から資料が出なければ、日本ではあれは公判にならなかった事件なんでしょうか。
  42. 堀田力

    参考人堀田力君) 仮定の問題ですので全くわかりません。あの時期にああいう形ではやれなかったと思いますけれども、大体あった事実というのはいろんな状況からにおってまいりますので、もっともっと時間はかかり手間もかかったかもしれませんが、やり得たという可能性もこれは仮定論としては十分考えられます。
  43. 白浜一良

    ○白浜一良君 ですから、先ほども話が出ておりましたが、検察庁にペンキを投げかけられた、行為の是非は当然あるわけでございますが、そういう思いを持った方がいらっしゃるという。  ですから、確かに捜査中の案件に関して国会で短時間で証人喚問で何ができるかと言われても、私どもはそういう国民から負託を受けた議員でございますから精いっぱいそういう国民の声を受けとめて、解明のためにやはり努力をする義務が私どもはあるわけです。ですから証人喚問の要求というのは常にしているわけでございますが、そういった観点から、要するにそういう検察に対する何ともいえないこういう国民の不信感とまではいかないですよ、私それは言い過ぎだと思います、不信感というのは。それちゃんとやってくれるかなという思いと、それを受けなければならない私どもの立場、それがいわゆる証人喚問という形態であるという、参考人堀田さんのそういう話はよくわかるんですが、そういう構図の中から証人喚問という一つの形態を私どもは考えているわけでございますが、そのことに関してどのように思われますか。
  44. 堀田力

    参考人堀田力君) 特捜部は人的な能力として、あるいは時間的にいってやれる限りもう責任を一一〇%果たしておると私は思います。  ただ、それが国民の目から見て御満足いただけるかどうか、いろいろ問題ありますが、やっぱり捜査が始まりますと非常に疑惑がたくさん出まして、その疑惑の中にはそれが真実である疑惑もあれば、真実でない疑惑もあれば、あるいはその疑惑真実だけれども刑事事件にはならない不当な行為であるという疑惑もあれば、いろいろあります。  ですから、真実でない疑惑は、これはもう幾らそれやらないのがおかしいと言われてもそれは出てくるはずがないんですが、その刑事事件にはならないけれども不当だというそういう国民の感覚での疑惑、これは検察はやれませんので、そのためにきちんとこちらでやっていただくことが必要だと私は思っております。
  45. 白浜一良

    ○白浜一良君 ちょっとその関係聞きたかったんですが、もう時間ないのでやめます。  ありがとうございました。
  46. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 白浜君の質疑は終了させていただきます。  次は、吉田之久君。
  47. 吉田之久

    吉田之久君 堀田参考人におかれましては大変意義ある御所見を述べていただきました。また、お述べになりました御趣旨、私ども全くそのとおりだと思う次第でございまして、改めて敬意を表します。  さて、限られた時間でございますが、私は参考人にも申し上げたいのでございますが、今もって政治家はその性本来善だと私は確信いたしております。志を政治に抱いてたすきをかけて名のり出た日から、あくまでも正義を求め国家社会のために尽くそうと、その気持ちで有権者の信任を得て当選した、それで議員になった、国会議員も地方議員も一緒でありますが。  ところが、この政治活動というのは無限な広がりを持っているんですね。できれば丹念に有権者各位にはがきを出したい、報告書を送りたい、あるいは懇談会、会合も持ちたい、あるいは感謝の気持ちを込めて冠婚葬祭にも参りたい、また、自分はもとより後輩の指導育成にも当たりたい。もらう歳費は余りにも少ない状況であります。だか ら、友人やいろんな関係者に協力を求めて清浄な献金を仰ぎながら頑張っておる。しかし、そういう活動をしているんですから時にはちょっともらい過ぎた金が、しかも友情において、おれとおまえの間だから領収書も何も要らないんだといって持ってこられると、やっぱり非常に当惑しながらも悩むわけなんでございますね。  要するに、そういう行為政治家に金が与えられた以上は、我々はその使う金は社会的に善なる政治活動をしているんだと。そういう連続の中でだんだんやっぱり人間であると金銭感覚が少し麻痺してくるというか、多々ますます非ずで、より政治資金を集めようと。しかし、それでも私腹を肥やし私財を蓄えようとする人間はいないはずだと思っておったんでございますが、今度の事件を見て、さにあらず、まことに公私混同ここにきわまれりという感じがするわけでございます。  それならば、好ましい方法だとは必ずしも思いませんけれども、厳しい厳しい政治腐敗防止法のようなものをみずからつくってがんじがらめにみずからを練る。どんなに好意あるお金であっても、その金は不当な金であります、いただけません、いただいては私が今後公職選挙法に基づく立候補の機能を失いますとお断り申し上げる、そういうやっぱり手だてがないと、このことはどこまでいったって際限なく、終わる日を迎えないと思うわけなんでございます。  そういう決意に燃えて私どももこれから頑張ってまいりたいと思うんでございますけれども、やっぱり立法府がみずからを厳しく規定する、そういう立法措置をする以外に問題の終局はないんじゃないかと思うわけでございますが、参考人はいかがですか。
  48. 堀田力

    参考人堀田力君) 大変人間の気持ちに沿う御意見でありまして、全く同意見であります。  なかなかにこれは選挙違反の事件あるいは贈収賄事件を見ておりましても、特に選挙違反はそうですが、お金を渡す方も難しいし、もらう方が断るのもなかなか難しい。村八分にならないように断るという、そこは大変難しいのが実態であります。それをどうすれば断れるようにするのか。それはおっしゃるとおり、きちんとした制度をつくって、もらえば罪になるという、もうそれが一番明快な断り方ではなかろうか。  ですから、個人献金は一切、個人の受領は一切罪になるという明快な法律をつくり、罰則をつくり、それで資格が奪われるんだということになれば、これはもうそのことをはっきり言えば断れるわけでありまして、その分をこの政治団体に入れて応援してくれということが言えるんじゃなかろうか。だから、やっぱり制度ができてしまえば、そしてそれが国民の間に周知徹底されれば、おのずからきちんと正されていくんじゃなかろうか。  現に、選挙区内での寄附禁止をされました。これは大変すばらしい立法で、その効果が随分出ておるだろうと思います。電車なんかのビラやチラシにも、自治省が選挙区内に配ることは罪になると掲げております。あれは大変いいことだと思います。ああいう方法がいいと思います。
  49. 吉田之久

    吉田之久君 先生は、国民がそれぞれ所得税の中からたとえ一%でも政党に寄附してはと、広く薄くという説を述べていらっしゃいますが、私は、今の状況の中で個人が政党に献金するという、そういう風土はまだないと思うんです。やっぱり活動している議員と個人の関係でありまして、だから個人からは個人に、納税したときにその数%の額を決めて、これはAの議員とBの議員に献金しますと。その口座に振り込まれると。団体は団体、政党にすると。その方が現実的ではないかと思うんでございますが、いかがでございますか。
  50. 堀田力

    参考人堀田力君) 余り外から立ち入った議論をするのもいかがかと思いますが、私は、個人が出す場合、団体が出す場合も、要するにもう受け口は一つというのが一般国民立場としては一番わかりやすいというふうに思っております。
  51. 吉田之久

    吉田之久君 ありがとうございました。
  52. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 吉田君の質疑は終了させていただきます。  次に、林紀子君。
  53. 林紀子

    ○林紀子君 日本共産党の林紀子と申します。きょうはありがとうございます。  まず、刑事被告人に関する問題ですけれども、捜査中は捜査機関に任せるのが効率的であるというふうにおっしゃいましたけれども、捜査国政調査権目的調査の範囲も異なるところがあると思いますし、また、よく御存じのことだと思いますが、参議院のロッキード特別委員会におきまして当時の稲葉法務大臣は、刑事被告人を「理論的には証人として喚問することも十分可能だと私は思っております」というふうにお答えになっております。  本来、この二つのことは車の両輪のごとく両立して機能するのが正しいのではないかと思うわけです。具体的にも、ロッキード事件では田中元総理の逮捕、取り調べが進む一方、小佐野賢治などを偽証で告発するなど、国会の喚問と検察の捜査が両輪となって真相解明に大きな成果を上げたと思います。  今回の佐川事件では、金丸氏は五億円以外は佐川急便からは受け取っていないと、これは明らかに偽証になるわけですけれども、国会ではこの偽証の告発もしておりません。こういうことをきちんとやることが必要なのではないかと思いますが、どのようにお考えになりますでしょうか。
  54. 堀田力

    参考人堀田力君) 一般論としては車の両輪であり、また法理論として両方できるということ、それはもうそのとおりであろうと思います。  ただ、実際問題として何が一番効率的であり、有効であろうかという観点から私は意見を申し上げたんですが、ロッキードの際の証人喚問をおっしゃいましたので申し上げますけれども、ロッキードの際の証人喚問国政調査で必要な事実が一体どれだけ出たんであろうか、偽証で告発したということは事実が出ておらないということであります。偽証をするような事実の関係をもとにして国政調査を判断されたら困るわけであります。  ですから、結局それが機能したのは、偽証罪で告発して捜査にそういう意味で役立ったといいますか、逮捕に至ったというそういう面で捜査の方に役立った。国政調査目的とする事実の解明あるいは防止策を立てるという面で役立ったというよりは、捜査の方で役立ったという大変皮肉なといいますか、妙な形で役立っておるということになるんじゃなかろうか。偽証罪で告発するということは国政調査目的では決してないわけでありまして、国政調査で正しい事実をどうしても得られなかったときの制裁の手段にすぎないわけであります。  ですから、正しい事実をどういうふうに必要な範囲で効率的に得られるか、そういう観点からお考えいただいて、車の両輪としてうまく機能するためにはどうすればいいのか、何が有効かということを考えるのが必要かなと私は思います。
  55. 林紀子

    ○林紀子君 時間がありませんので、次に再発防止のことにつきましてお伺いいたします。  再発防止というのは、もうこれはまさに必要、当然であるわけですけれども、参考人は先ほどサラリーマン層の例を引き合いに出しまして、政治に声がくみ上げられていないのではないか、国民意見を吸い上げた政治をこそ本当にしてほしいというお話をなさっていらっしゃいました。私もまさにそのとおりだと思うわけです。  それでは、今、政治にその声が吸い上げられているのはどこかということになるわけですが、これは新聞の座談会で日経連の諸井虔さんが、「企業の立場で言えば、本来、企業にとってプラスにならないことに金を出すことは株主に対する背信行為であり、何かプラスのことをやろうとすると本質的に汚職ということになる。」と、このように述べていらっしゃるわけですね。ですから、企業の献金というのは、先ほど額の多い少ないというお話もありましたけれども、額のいかんを問わずにそれ自体わいろ性を持っておりまして、反社会的、反倫理的なものではないかと思うわけです。  この企業献金を全面的に禁止をする、受け入れるところを一本にするんじゃなくて出す企業献金のところをきちんと禁止をしていく、それが先ほど参考人がおっしゃいました広く薄くというところにも通じていくものではないかと思いますし、この企業献金禁止こそが再発防止の一番の決め手ではないかと思いますが、その辺はどのようにお考えになりますでしょうか。
  56. 堀田力

    参考人堀田力君) 企業が自分の営業に直接役立つだけのための費用しか出していけないのかどうか。ここは、社会が今動いているところでありまして、従来の企業の存在意義という考え方からいきますとそういう議論が成り立つわけでありますが、現在は、企業は単に利潤を追求するだけの存在ではない、もっと社会と共生し、社会貢献を行い、社会に役立つ、地域との共生の中で企業が存立していかなきゃいけない、大体そういう考え方が世界的兆候として流れております。  ですから、そういう社会の認める範囲で献金するということはやはり適正というふうにいくのが社会の流れじゃなかろうか。ただ、それを企業献金という形から見ますと、これは別途、政治についてどういうところから献金をどういう形で集めるのがいいかという議論になると思います。将来像としましては、企業献金の禁止というのは、私はそういう方向がいい方向だと思います。  ただ、現実問題として、先ほどの御質問にもありましたが、なかなか個人が出さない。これを何とか出すようにすることが必要でありまして、この個人献金で相当部分正当な活動が賄えるというところまでいかないと、全く出すところがなくなってしまうんじゃなかろうか。一般国民の感じとしても、自分たちも出すけれどもやっぱり企業はあれだけもうけているんだから企業の方も出してほしいというのが一般国民の素朴な感情、今、残念ながらその程度のレベルだろうと思います。ですから、経過措置としてはいろいろとまだ現実的な案を考えることが必要だなと思っております。
  57. 林紀子

    ○林紀子君 ありがとうございました。
  58. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 林君の質疑は終了させていただきます。  次に、磯村修君。
  59. 磯村修

    磯村修君 私、民主改革連合の磯村と申します。よろしくお願いいたします。  議院証言法というのは、やはり議員不祥事解明してそしてこれからどういうふうに制度化したらそういう問題が起きないようになるのか、こういうことであると思うんですね。先ほど先生、刑事事件対象となるようなものはその専門機関に任せておけばいいんだというふうなことをおっしゃられましたけれども、いわゆる今の議院証言法のようなことではなくて、やはりこの国会というところはそれ以外の議員倫理問題に関することを専門にやって、そういう制度を置くことはいいことなんだというふうな趣旨に私ちょっと理解したんですけれども、それでよろしゅうございますか。
  60. 堀田力

    参考人堀田力君) おっしゃるとおりでございます。
  61. 磯村修

    磯村修君 それで、例えば一つ専門調査機関というものを設置して、そして秘密の中でもって調査することによって真相は解明しやすいんだと、こういうふうなことのようなんでございますけれども、調査機関というのはやはりそれなりの強い権限がなければなかなかできない問題であろうと思うんですね。それは法律でもってそういう権限を付与させるような形をとってやれということなんでしょうか。
  62. 堀田力

    参考人堀田力君) それはまた国会での御議論を得ての結果ですが、少なくとも現行法のままでもかなりの権限、書類提出要求権があります、それから証人を呼ぶ権限もあります。それを行使するについて国会内のいろんなしきたりはありますけれども、ただ法律的にそういうしきたりを外しまして現行法でやれるのかという観点からいけば、相当私は法律的にはやれるんだろうと思います。それができないのは、スタッフがいない、そしてそういうことをやる慣習ができ上がっておらない、むしろなかなかやりにくいような慣習ができ上がっておるということだろうと思います。ですから、そういうものを外していけばかなりできるんではなかろうか。  ただ、それをやるにつきましては、やはり前提として国会でやるべき事項がこういうことであり、倫理違反というのはこういうような考え方で判断するのであり、しかも手続上絶対の秘密を守って人権侵害にならないようにやるという、この前提の方をつくっていくことがこの現行のもとでやるシステムを進展させる大事な要素であろうと私は思っております。
  63. 磯村修

    磯村修君 よくアメリカでは特別検察官制度というのがございますが、私もよくわかりませんけれども、そういう形のものは日本の国にはなじむものでございましょうか。
  64. 堀田力

    参考人堀田力君) アメリカの特別検察官制度は、あれは捜査官でありまして、国政調査官ではないわけであります。  アメリカの検察庁は、日本の検察庁と違いまして完全に司法省に従属いたしております。したがって日本の検察庁より法制度としてもずっと行政権、大統領府の支配を受けやすい制度になっております。そういう欠点を是正する方策として特別検察官、つまり司法省からかなり独立した制度をつくったという、それが特別検察官制度でございます。
  65. 磯村修

    磯村修君 それから、私ちょっと気にかかることがあるんですけれども、例えば国会のそうした真相解明の場というものはできるだけ閉ざしてそしてやった方が真相が解明できるんだというふうなお考えのようなんでございますけれども、私は国会というのはやはり国民に開かれた場であるということが大前提にあると思うんですね。そうした中で一つの問題を解明していく、そして新たなる改善策考えていくという意味合いからも、やはり国民ができるだけ知ることのできる場でもって大いに論議したり解明したりということの方がむしろ開かれた国会という意味を生かしていく。  それにはそれなりのやはり大きな責任を背負ってやるわけですね。ですから、そういう意味合いにおいては、責任を果たしていくという意味においては、何も秘密にすることはないんじゃないかというふうな考えを私も持つわけなんです。  例えば、議院証言法という法律でもってテレビの映像が今できない、いわゆる紙芝居的なものしか国民の側は受け取ることができないという一つの問題ございます。これはマスコミという側から考えたり、あるいは国民の側から考えたり、市民の立場から考えた場合、先生、市民の立場から今いろいろ御発言しているということなんですけれども、市民の立場から考えた場合、やはりこれはできるだけそういう秘密の場というものはなくした方がよいと。そしてまた、その事実を国民に伝えるべきであるというふうな立場で私は物を考えた方がいいんではないかと、こういうように思うんです。その点ひとつ。
  66. 堀田力

    参考人堀田力君) 開かれた場でなきゃいけないというのは、もうこれは当然の要請でありまして、そのこと自体には私は何ら反対するものではありませんし、私が申しておりますのも、事実が相当程度固まって国民の前で明らかにしていい段階に至れば、それを効率よく公開の場でやることが必要だと。  問題は、その事実を相当程度固めるまでの過程の中では、これは相手方人権侵害とか、あるいはいろんなうそを、Aという人はシロだといい、Bという人はクロだという、そんな過程を一々明らかにして国民を混乱さす必要はないわけでありまして、これは議論の過程、政策立案の議論の過程は絶対に公開していただかなきゃいけませんが、事実解明の前段階のような過程、これを全部公開してやるということは非常に人権上問題である。しかも、事実関係もうそをつく人が出たりいろんな人が出て、そんなもので混乱させるのはこれはとても国民にとってプラスにならないと、そういうことを私は申し上げておるつもりでござい ます。
  67. 磯村修

    磯村修君 時間でありますので、ありがとうございました。
  68. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 磯村君の質疑は終了させていただきます。  次に、西川潔君。
  69. 西川潔

    西川潔君 西川でございます。よろしくお願いいたします。  先生におかれましては、日ごろ福祉のお仕事もなさっているということを報道等でも承っております。私もずっと高齢者福祉のことを勉強させていただいておりますが、きょうはそういうこともお伺いしたいなというふうに思っておりましたんですが、時間が四分で、先ほど来出ております四分でございますので、しっかりと御質問をしたいと思うんですけれども。  私は、政治あるいは選挙におけるマスメディアのあり方、何かもっと別の活用の方法がないものか、そういうお考えが先生にございましたらぜひお伺いをしたいなと思います。  そして、初登院以来、法務省にはビデオ遺言というものを新しい遺言の方法としてこういう時代でもありますしお願いできませんかと、いまだにずっとお願いをいたしております。  地元大阪ではラジオで福祉のコーナーを設けさせていただいておりますが、大変な反響がございまして、お手紙、おはがきをたくさんいただきまして、こちらの方で皆さん方からいただいたお便りをもとに質問をさせていただいて、新しい制度をおつくりいただいたりいたしております。  そういう意味で、政見放送や国会中継のあり方なども含めましてもう少し改善すべき点があると思うんですけれども、なかなか微力でございまして思うようには、この中では大変数の力というのがございまして難しい部分も多々あるんですけれども、政治をテーマにマスメディアで何か新しいとらえ方、そういうものがございましたらぜひ本日お伺いしたいなと思います。
  70. 堀田力

    参考人堀田力君) マスメディアがこれからますます重要になることはもう当然のことでありまして、これは民主主義のもたらす必然の帰結であります。ですから、それがなかなかどういう部分をマスメディアに乗っけることがいいのか、これはやはり国会は政策の立案そして法律案の策定の場でありますので、国民に密着する政策についてこういう議論とこういう議論があり、そしてそういう点について国会が審議しておられるという、そこがマスメディアにやっぱり乗るということが一番大事じゃなかろうか。  ところが、今の形から見ますと、若干スキャンダル的なものには非常にマスメディアも興味を示すんですが、肝心の政策でAかBか、ここのところが余り報道されておらない。これは政治にとって大変不幸なことだと思います。ですから、これはマスメディアの方にもいろいろお願いしなきゃいけませんけれども、もっと政策論争が報道されることが必要じゃなかろうか。  それを国会立場でいえば、もっと国民が興味を持つような政策が提示され、それが争点になり、争点を明確にした非常に激しい議論が行われる。国民自分たちの切実な問題、例えば減税問題でありますとか地価問題でありますとか、あるいは米の問題でありますとか、そういう切実な問題についてAの考えとBの考えがあり、どちらにするかについて両方がいろんな論拠を示していろいろ議論しておる。そういう形に国会審議がなれば、国民はその部分に興味を持ってありましょうし視聴率も上がるでありましょう。そうすれば、それは大いにマスメディアも報道するようになるんじゃなかろうか。  ですから、やはりマスメディアの方にはいろいろお願いすることが大事ですし、西川議員が利用されることは大変いいことですが、国会の中でいえば、国民が聞きたいと思うようなそういう政策論争が行われるようになるということが前提ではないかというふうに思います。
  71. 西川潔

    西川潔君 間もなくもうゼロになると思います。今質問をさせていただきますとまた御迷惑をおかけいたしますので、有意義に四分を使わせていただきました。  ありがとうございました。
  72. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 西川君の質疑は終了させていただきます。  次に、武田邦太郎君。
  73. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 日本新党の武田邦太郎でございます。  先ほど来、先生が意見陳述をなさった問題は、基本的に新党の考え方と全く一致しておると思いますし、個人としてはことごとく賛成であります。政治家の一人として身を厳しく持しまして問題の実現に微力をささげたい、こう思います。  そこで、ただ一つお伺いしたいのは、何人かの方からも似たような発言があったと思いますが、検察のやり方なり司法の考え方に承服しがたいことがあった場合、当然政治の側から率直かつ建設的な意見を出すべきだと思いますが、そういう場合に心得ておくべきことできるだけ具体的に先生のお考えを伺っておきたい、こう思います。
  74. 堀田力

    参考人堀田力君) 難しい御質問ですけれども、それは当然国会機能として国政調査権、行政の実態について調査するという大切な機能としてどんどん質問していただくことが大事であり、注文をつけていただくことが大事であり、そして現にそのように、むしろ十分過ぎるぐらいに刑事局長に対して行っておられるんではないかと私は理解しております。  その注文については、御注文いただくについて私の方から何の注文もありません。それはもう国民を代表される選良とされまして、おかしいと思われることはもうどんどんやっぱり言っていただくのが民主主義の基礎だろうと思います。
  75. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 終わります。
  76. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 武田君の質疑は終了させていただきます。  以上で堀田力参考人に対する質疑は終了いたしました。  堀田参考人には、長時間にわたり当委員会のために貴重な御意見をお聞かせくださいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して御礼申し上げ、感謝いたします。御退席くださって結構でございます。(拍手)  午後一時まで休憩いたします。   午前十一時五十六分休憩      ――――◇―――――    午後一時開会
  77. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  予算執行状況に関する調査のうち、政治不祥事解明国政調査機能あり方に関する件を議題とし、休憩前に引き続き、参考人方々から御意見を賜ることにいたします。  まず、関東学園大学法学部教授浅野一郎君にお願いいたします。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  まず、委員長の私の方から、本日、参考人として御出席いただくことになった経緯について御案内をいたしたいと存じます。  最近の一連の不祥事件の発生で国民政治不信がかつてなく高まっている昨今、その究明国会が果たさなければならない重要な役割の一つと認識しております。  昨年から数回にわたって行われた証人喚問等は、国民の期待が大き過ぎるという一面はございましょうが、制度上の制約もあり、十分な成果が上がらなかったことも率直に私たちは反省いたしております。  なお、これまでの国会証人喚問がややもすると犯人ないしは犯罪捜し的と国民の目に映る一方、国会の審議の場で法務当局は、捜査中や公判維持、さらには人権擁護等を理由に、当然とはいえ答弁は慎重をきわめる場合が多いのであります。  裁判中の事件捜査段階の問題を国政調査対象とすることの是非や限界をめぐっては三権分立の建前から難しい問題があることは承知しております。古くて新しい問題と言えるかもしれません。このように証人喚問をめぐって幾多の問題がございます。  そして、御存じのとおり、国会には強制捜査権はもちろん、議院証言法による場合を除くと、書類提出一つにしても相手方任意提出しかないという状況で、世間でいう真相究明には隔靴掻痒の感がないではありません。  そこできょうは、憲法第六十二条に規定する議院調査権国会法第百三条、第百四条に規定する議会国民及び官庁の関係、さらには議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律等法律制度を初め、幅広い見地から、国政調査権機能を充実する場合、どこに問題点があるのか、改善策はどうすればいいか等、参考人から御意見をちょうだいいたしたいと存じます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、参考人の方から三十分程度で御意見をお述べいただき、その後委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  これより、参考人から御意見を賜ります。浅野参考人
  78. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) ただいま御紹介いただきました浅野でございます。  ちょうど今から五年前までは、遠藤委員長を初めここにおられます諸先生方の御指導を得ましてこの参議院の場で仕事をさせていただいておりました。きょうはまた違った形で、こういう形で参上をさせていただくことになりましたわけでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  さて、本題に入らせていただこうと思いますけれども、この問題を考えます前に、まず国政調査権とはどのような機能であるのかということを考えなければならないと、こう思うわけでございます。  国政調査権がどのような性質のものであるかにつきましては、二つの説に分かれております。  一つは独立機能説であります。これは、国会または議院の他の機能と並ぶ独立の機能であって、特に議院機能に関連することなく、国政全般にわたって調査できるという説であります。この説は、かつて昭和二十四年ごろだと思いますけれども、浦和充子事件に際しまして参議院法務委員会がとられた考え方であります。  もう一つは補助機能説であります。これは、議院調査活動は議院の持つそれぞれの機能を行使するために必要な事実を明らかにする補助手段として与えられたものであり、あくまでも国会または議院機能と関連がある範囲で認められるものであるという説であります。今では補助機能説が通説であると考えてよろしいと思います。  そもそも調査権といいますものは、資料、情報を収集し、事実を発見し収集すること、またそれとともに、これに基づいて自己の判断を形成する作用であると考えられますが、そうであるといたしますと、それは何らかの目的のために行われるものと考えざるを得ないと思います。調査のための調査ということは考えられません。もっとも、調査権に査問的作用が含まれるといたしますとまた別の考え方があるかもしれませんけれども、調査に査問的作用が含まれないということは、憲法制定審議の際に佐々木惣一博士と金森徳次郎国務大臣の質疑応答によって明らかになっております。  そう考えてみますと、国政調査権議院の権限行使のための手段的機能考えざるを得ません。しかし、国会または議院機能を行使し得る範囲というものは広範であります。そうでありますから、原則として国政全般に及ぶと考えていいと思います。  例を挙げていきますと、立法に関する事項、財政に関する事項、行政に関する事項、司法に関する事項、もっともこの司法に関する事項といいますのは司法権の独立との関係で限界があるわけでございますが、その司法に関する事項その他議院に関する事項などが挙げられると思います。そういう事項を挙げましたように、公共の利益に関係のない純粋に私的な事項を除いて、実質的に国政全般に及ぶと考えていいだろう、こういうふうに思います。  このほかに、国民による政治の実質化すなわち国民政治への参加が現実に行われ、その結果として政治国民多数の意向に合っている、またそれによって左右されるようになっていなくてはならない、こういうことを求める観点に立ちまして、国政調査権国民の知る権利にこたえるものとして国民への国政上の情報を提供する機能を認めようという考え方もあります。  国政調査権は国政に関する情報、事実を収集し、これを分析、評価する機能であると言えますから、その収集された情報、事実及び分析、評価された結果が議会の公開を通じて国民に提供されることは当然であります。そしてそれを前提として国政調査権が行使されるものであると言うことはできるだろうと、こう思います。しかし、あくまで調査は何かの目的のための手段であると考えるべきでありましょうから、国民への情報提供のみを目的とする調査は、結局調査のための調査ということになりますので、これを認めることは調査の性格に反するのではなかろうかと、こう思います。  そう述べてまいりましたけれども、議院には立法機能、行政監督機能とはまた別個に、国政の監視といいますか、国政を見守るというような機能が認められるのではないかと、こう思います。そうして、この国政を見守る機能により、政治過程を議院が監視するという目的のために国政調査権を行使し、政治過程に関する情報、事実を収集、分析し、評価がなされ、その結果を明らかにすること、そしてこれを国民政治的判断にゆだねることが、国会が国権の最高機関であることから導き出される議院の国政監視機能であると考えるべきであろうかと思います。  そう考えることによりまして、議院国民に対する情報提供機能が意味を持ち、国政調査権国民の知る権利にこたえるものとなるものと考えるわけでございます。このように考えることによりまして国政調査権の新しい位置づけが考えられるのではないか、国民による政治ということを実質化するための国会の新しい機能というものが考えられるのではないかと思うわけでございます。  こんなふうに国政調査権考えた上で、今問題であります政治不祥事解明国政調査機能あり方という問題について考えてみたい、こう思います。  まず、政治不祥事解明と申しますけれども、それがどのような目的でなされるのか。すなわち、議院のどのような機能行使のために政治不祥事解明がなされようとするのかが明らかにされなければならない、こう思うわけであります。  国政監視機能の行使のために事実の解明がなされるとしたら、その目的に応じた解明方法があり、解明程度がおのずから明らかになるのではないか、こう思うわけであります。国会の立法機能の行使のためであれば、どのような立法をするかによりその解明方法程度が明らかになってくるのでありましょう。議院の行政監督、財政統制機能の行使のためであれば、それぞれの目的に応じたものでなければならない、こう思うわけであります。  ところで、政治不祥事ということになりますと、その調査は何らかの意味で刑事事件とかかわりを持つものでありますが、その目的犯罪事実を明らかにするのでなく、政治過程に関する情報、事実を収集、分析し、評価し、その結果を明らかにして、その結果を国民に知らせることにあるとすれば、犯罪事実の解明とは全く違った方法による調査が可能でありましょうし、刑事事件のように実体的真実を明らかにするという必要はないわけであろうと思います。  政治不祥事国政調査は、政治不祥事が何らかの意味で刑事事件とかかわりを持つものであるた めに、国政調査権と検察権との関係についてはもろもろの法律問題が生じます。検察事務も行政権の作用の一部であり、その行使の責任は行政権の主体たる内閣にあると考えられますから、検察事務であるところの犯罪捜査、公訴の提起、不起訴処分、公訴の維持などすべて国政調査権対象になると考えてよろしいと思われます。  しかし、司法権の独立の反射的効果というようなことから、裁判所に係属中の事件、または係属することが確実な事件と同一な、または密接な関係のある事実について調査をする場合には、裁判に不当な影響を与える可能性のあるときには国政調査権が制限されるということとか検察事務の性格から司法権の独立に類似する原理が要請され、起訴、不起訴の決定の適正のみならず、捜査の適正を含めて、検察権行使の適正ということが国政調査権の行使に当たって考慮されなければならない、こういうことになろうと思います。  しかしながら、国政調査権の行使の目的政治過程を議院が監視することにあるとすれば、その事実の解明の手段において検察権との関係で無用の法律問題を生ずることはなかろうと、こう思うわけであります。問題は、多くは不起訴事件についてであろうと思いますが、国政調査権重要性ということから考えますと、検察の協力が得られることが多いのではなかろうかと、こう思うわけでございます。例を挙げていきますと、ロッキード事件の際に灰色高官の公表というようなことが行われました。これは検察の協力を得られた大きな例だろうと、こう思います。  また、政治不祥事解明目的政治責任の追及のためであったとしても、そこで必要な事実というものは犯罪事実と異なって、実体的真実ではなく政治的責任を問うことがもっともだと考えられることを基礎づける事実でいいと考えられると思います。  こんなことを申し上げておりますのは、大体証人というものは多くは政治不祥事の当事者であることが多いようでございます。そのためにまさに被告人として取り扱われ、一方的な糾弾やつるし上げによる人民裁判的なものになる傾向があるからであります。  本来、政治責任を追及さるべき本人を証人として証言を求めても、自分に不利益な証言が得られないということは当然だろうと思います。そうすると、結局、一方的な糾弾やつるし上げになるか、または証人を偽証罪で告発することによって糾弾の目的を達することになってしまうことになります。これでは国政調査権が本来事実を解明することにあることと異なった結果となってしまうのではなかろうかと、こう思います。  本来、証人制度というものは必要な情報を獲得するための制度であるわけでありますから、証人人権の保護に留意しつつ、いかにして多くの情報を獲得するかという立場から証人制度の運用がなされなければならないと、こう思うわけでございます。  国政調査権行使の目的が明らかになってまいりますれば、証人に対する尋問事項についてもその目的に応じて効果的事項が選択されなければならないと思います。そのためには国政調査権が行使されるその委員会におきまして、事前に尋問をする委員の間においてその尋問事項が調整されなければならないと、こう思われます。  しかし、実際の運用では尋問事項はその委員にゆだねられ、尋問のための発言の時間は各党ごとに割り当てられ、発言の順序も各党ごとに各派の勢力の大小によって定められております。したがって、それぞれの党の内部において尋問事項の調整はなされているようですが、全体として調整がなされていないように思われるようでございます。本来は、発言する委員の間で調整がなされ、尋問事項の性格に応じた発言順序でなければ効果的な尋問は期待し得ません。また発言時間の割り当ても、これはおおよその目安と考えるべきでありましょうが、それが厳格な制限となっております。これでは尋問の結果、どのように発言が展開するかわかりませんのに発言の時間切れとなってしまうわけでございます。要するに、証言を求める尋問についての議事は一般的な質疑の議事と同様にされているわけですが、これでは効果のある尋問はできないのではないか、こう思うわけでございます。  このように申し上げましても、現在、国会の運営が政党を中心に行われておりますからこれは非常に難しいことかと存じます。しかし、国政調査権の行使を効果的ならしめるためにはぜひ御検討いただきたいと思うのであります。これも国会国民から信頼されるものとなるための国会改革の一つではなかろうか、こう思うわけでございます。  国政調査権、特に証人喚問を伴うような国政調査権の行使が国民が国政に対して批判的な立場に立って国政に関心を抱くときに活発に行われることを考えますと、議会と政府とが強い対抗関係にあるときに活発に行使されるものであり、現在の議院内閣制のもとでは政府と議会との対抗関係と申しますものは政府・与党と野党の対抗関係であることを考えますと、国政調査権行使における野党の役割というものは大きいものがあると考えられます。このように考えますと、ここで述べております尋問発言の効果的調整というものはまず野党の側で行われたらという思いもいたします。  このように尋問事項の調整について述べましたが、この尋問事項の調整との関連で重要な事項としては、その委員会における調整に当たっては秘密会の活用がなされなければならない、こう思います。この尋問事項の調整は公開の議事としてなされてはならないからであります。政治責任の究明目的とする調査の場合に、証人についての尋問事項に関して協議する委員会の会議を公開といたしますれば、相手方証人は対抗手段について方策を講ずることが認められる結果となり、必要な証言が得られなくなってしまうわけであります。要するに尋問事項の調整については手のうちを明らかにしないような手続が必要であろうということであります。  さらに必要なことは議員の守秘義務であります。  現在、国会議員について守秘義務を定めた法律の規定はありません。尋問事項の調整が秘密会で行われても、委員に対してその内容を知ろうとして種々の接触が行われるであろうと思われます。この場合に、守秘義務の定めがない場合、委員が秘密を守ろうとしてもそれを貫くことが困難となるだろうと思います。特に政治責任の究明のための調査においては、政治的な配慮から委員については外部から相当な圧力が加わると考えなければならないと思います。国会政党中心の運営がなされ、政党の統制力が強い現状においては、どうしても各派の政治的考慮が調査に加わると考えなければなりません。このような政治的配慮は排除されるべきであろうと思われます。委員国民代表の立場に立って独自の判断がなされなければならない、こう思うわけであります。そのためにも、ぜひこの守秘義務の規定は必要でないかと思われるわけてあります。  さらに、尋問のための発言を効果的あらしめるためには、その発言は、一般的な質疑の場合の発言と異なり、事実を引き出すためのものとして、ある技術が必要でないかと思われます。そのある技術とはいわば尋問の技術というものでございましょう。こういうものが必要でないかと思うわけでございます。  この技術の問題と同時に尋問を効果的あらしめるためには、予備的な情報が収集されていなければならない、こう思います。そのためには国政調査権行使を補佐する専門スタッフが整備されなければならないと、こう思います。また、国政調査権の行使を有効ならしめるために必要な情報を収集し、いつでも利用できるように、国会の審議、調査のために必要な情報を収集している国会の情報センターのようなものが設けられる必要があるのではないかと、こう思われます。そして、この国会の情報センターの情報を収集するためには国会法百四条の規定が活用されるべきではないか と、こう思うわけでございます。  また、国政調査は国政に関する特定の事案の解明または情報の収集を行うことであり、その目的は各議院機能を有効適切に行うためでありますから、調査の成果は議院に報告して広く議員への周知を図るべきでありましょう。それのみでなく、国政調査権国民に情報を提供する機能が期待されるとすれば、委員会調査の経過及び結果を取りまとめ、報告という形で公にすべき義務を負うのではないかと、こう思われます。  国政調査は一定の目的のために行われるものでございますので、調査のための調査はあり得ません。したがって、その調査目的との関連において、いかなる経過をもっていかなる結果が得られたかは委員会として明らかにすべきことであり、報告の作成によってこれが行われなければならないのだと思います。特に証人喚問という形で強制力をもって調査に協力せしめてなされた調査であれば、その成果を議院国民に知らせる義務があると一言えましょう。  ところが、国政調査の報告は全くなされていないのが現状であります。なされていても極めて簡略なものにすぎません。これでは何のために調査が行われ、それがどのようにして行われ、その結果がどうであったかが常に明らかにされないまま、たまたま明らかにされるのはマスコミ報道を通じてのみで終わってしまうことになります。それでは国政調査について国民の信頼と協力は得られないことになるのではないかと思いますし、国民国政調査について何も期待しなくなってしまうのであろうと思います。国会に対する国民の信頼を失う結果となってしまいます。  国政調査が世論の広い支持のもとに高い権威を持つためには、調査目的、経過、結果について詳細な報告が作成されるということを期待してやみません。そうすれば、証人尋問の結果新しい事実が得られなくともいいのだろうと思います。どのような尋問に対し、どんな証言がなされたのか、証言から受けた全体的な感じはどうであったかなど詳しい報告がなされれば、それはそれで国民に対する情報提供機能として十分な意味があると思います。それによって国民は必要な判断をすることになり、政治的批判の材料とするだろうと思います。そういうわけですから、国政調査政治不祥事解明につき効果があったかどうかは、どれだけ議院や町民に対して政治過程を批判できる情報を提供し得たかどうかにあるのではないか、こういうふうに思っております。  私は、政治不祥事解明のための国政調査権の行使というものは、国民政治に対する批判の高まる中において、政治批判のために必要な判断材料を獲得するためになされるものではないかと思います。いわば、国会または議院の国政監視機能、国政見守り機能というものを完全ならしめるためのものでなかろうか、こういうふうに思います。そうであるといたしますれば、国民にかわって国民の知りたいことを獲得することが必要でなかろうか、こう思います。  政治不祥事の当事者を証人として喚問する場合に、果たして国民証人真実を述べることを期待しておるでしょうか。恐らく真実を述べるということは期待していないと思います。むしろ証人がどのような尋問に対してどのように、どのような態度で答えているかということが知りたいのだろう、こう思います。そして証言の全過程の中から国民は批判の材料を獲得することになるだろう、こう思います。証言の役割というものがこのようなものだとすれば、尋問がある程度批判的なものとなることはやむを得ないことでなかろうかと思うのであります。もっともつるし上げになっては困りますけれども、そんなふうに思います。  政治不祥事解明といっても、以上述べましたような目的でなされるとすれば、真実究明されなくとも政治批判のための材料が獲得されればそれで効果があったと考えなければならない、そんなふうに思っております。ただ、問題はその獲得された材料の内容でないか、こう思うわけでございます。  以上、まとまりのないことを述べさせていただきましたけれども、何かこれでお役に立つことができれば幸いだと思っております。簡単ですが、これくらいにさせていただきます。
  79. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ありがとうございました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。大島慶久君。
  80. 大島慶久

    ○大島慶久君 自由民主党の大島慶久でございます。  本日は、参考人として御出席をいただきまして、大変ありがとうございます。  政治不祥事解明を図り、国民政治不信を回復するために国政調査権というものがどうかかわっていくのか、きょうも午前中からいろんな審議が重ねられております。お聞きしているときはなるほどなと思うのでありますけれども、法律に疎い私にとりましては、その反面、聞けば聞くほどますますわかりにくくなってしまうなと、これが率直な私の気持ちでございます。そんなことで、憲法に規定されている国政調査権ではありますけれども、強制権がない。強制権のないという状況でありますし、そういった機能というものが必ずしも十分に発揮をされていないのではないか、昨日の証人喚問のいろんな質疑を聞いておりましてもそんな感じもいたします。  そこで、きょうの参考人国会の実務にも極めて明るい方でありますし、また学識も深い方と私も認識をいたしております。私が疑問に感じていることは恐らく一般国民の皆様方も素朴な気持ちでお聞きをしたい、また理解をしたいなと思っていることが多分ほとんどだと思います。そこで今の先生のお話とはいろんなところで重複があるかと思いますけれども、さらに理解を深めるために数点にわたって質問をさせていただきたいと思うわけでございます。  まず、政治不祥事、このような事件がこの十数年にたくさんございました。このような事件がなぜ発生するのか、そして日本特有の国民がたきといいましょうか、また政治文化の問題でもあるんだといろんな論評が加えられます。そして、政治機構の問題もあるんだ、いろんなことが言われておりますけれども、やはりこういう事件がたびたび発生するのはなぜなんだろう。参考人としてその根本的な原因がどこにあるのか、まずお伺いをしたいと思います。
  81. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 今のお尋ねは政治学の問題でございますので、私は専ら憲法を専門にしておりますのでうまくお答えできるかどうかわかりませんけれども、やはりこういう問題が出てまいりますのは、政治に金がかかるという問題が基本ではなかろうかと思います。ただ、政治に金かかかる、じゃそのかかる金をどういうふうにして獲得していくかというか、このかかる金を得る方法というのはどういうふうにしたらいいか、そういう問題がはっきりしないからじゃないかとこういうふうに思うわけでございます。
  82. 大島慶久

    ○大島慶久君 そこで、このような政治不祥事といいますか、事件が起きるたびに証人喚問を中心とする国政調査権の行使が問題になってまいります。もちろん、その事実関係解明して国民の前にこれを明らかにしていくということはこれは国会の責務であるということも十分承知をいたしております。残念ながら、強制権限がないということが実際に政治不祥事解明国政調査権に期待するのは無理ではないのかなと、こういう気もいたすわけでございます。けれども、どのような事実解明が要請されているのか、これまでの国政調査権の行使はその期待に機能を果たしてきたと言えるのかどうか、先生の御見解を伺いたいと思います。
  83. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) お答えいたします。  今の国政調査権に強制権がないということでございますけれども、その強制権というのはどういうものかということになると思いますが、証人を喚問するというのは一つの強制権でございます。それから資料の提出を求めるというのも、議院証 言法に基づいて行うものはこれは一つの強制権を持つものだと思います。  恐らく、先生が強制権がないとおっしゃいますのは、犯罪捜査のような強制権がないという意味だろうと思います。それはもともと国政調査というのは犯罪事実を解明するようなものでございませんので、そのような強制権はないだろうと思います。ですから、先ほど申し上げましたように、国政調査においてその事実を解明していきますのに、それはどういう目的のために事実を解明しようとするのかということを明らかにしていきますれば、それに応じた方法というのが当然見つかってくるんだろう。それが犯罪捜査に必要なような強制権まで恐らく国政調査の場合は必要がないんじゃなかろうかと、こう思うわけです。  恐らく、先生はあくまでも国政調査というのはその事案を徹底的に解明しなきゃいけないというお考えだろうと思いますけれども、私は国政調査というのはそんなに事案というものを徹底的に解明しなきゃならぬものかどうかということについては非常に疑問を持っておる、こう申し上げていいと思います。と申しますのは、先ほどから述べましたように、国政調査権というのは国会の国政監視機能というものを中心にしまして国民に対して情報を提供する機能、それを果たしていくのが一つ国政調査権機能だろうと思っておりますから、そういうものだとすれば、そんなに犯罪捜査のような強制権がなくともその目的は達成できるのではないか、こんなふうに思っておるわけであります。
  84. 大島慶久

    ○大島慶久君 少し観点を変えまして、諸外国の例がどういう状況にあるのか、若干伺いたいと思います。  例えば、アメリカでは国政調査権が極めて広範な権限が与えられているといいますか、刑事制裁などでその実効性が担保されているというふうにお聞きをしているわけでございますけれども、イギリス、フランス、ドイツにおいて国政調査権がどんなふうに活用されているのか。特に、これらの国の調査権の内容というのはどんなものなのか、また運用方法はどうであるのか。  また、先ほど参考人のお話の中にも、いきなりこういう証人喚問的なことが国会の場で扱われる前に秘密会というようなのが開かれて、人権尊重する意味でも、十分討議をされた上で国民の前に披瀝をしていく方が好ましいんじゃないか、こんなお話も伺ったわけでございますけれども、そういったことを含めて諸外国の実例はどうなっているのか、わかっておられましたらちょっとお伺いをしたいと思います。
  85. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 諸外国の実例と申しましても、それほどすべての国の実例を知っているわけでございませんが、大体どの程度の強制権を持つかということになりますと、ほぼこれは我が国の場合も諸外国の場合も同じであると考えていいだろうと思います。  ただ、今例が出てまいりましたけれども、アメリカでは国政調査権が非常に活発に行われておるとこういうことを申し述べられましたが、アメリカの場合、国政調査権が活発に行われておるといいますのは、アメリカの場合には先ほども私が述べましたけれども国政調査権の行使というものを補佐してまいりますスタッフが非常に整備されておるわけでございます。特にそのスタッフというのはほとんどアメリカの場合は弁護士さんが多いように聞いております。ですから、そういうスタッフがそろっておりますから尋問事項を決めるときにも当然有効な尋問事項というのを選択できることになるだろうと思いますし、それから、そういうスタッフが予備的に必要な事実というものを調査しておられますから、有効に活発にその今の国政調査権が行使されるのではないか、こう思っております。  それから、そのほかドイツなんかでは、そういう問題の事案を解明するときは調査の特別委員会で行われておるようでございますから、時間をかけて、さらにそういうスタッフもそろえて事案の解明というのをやっておりますから非常に効果が上がる調査がなされるんだと、こんなふうに思っております。
  86. 大島慶久

    ○大島慶久君 国政調査権は事実の解明を第一義的な目的としていると思います。政治不祥事では最終的には政治責任が問題にならざるを得ないと私も考えております。つまり、政治不祥事に対しては、結局は政治責任を負うこととその再発防止策を講じることが国会に課せられた私は課題であろうと思うわけでございまして、きょうも午前中の審議、また午後からも、そういったことでこの再発防止という観点からいろいろ質疑がなされておりました。  午前中の参考人からは参考人の御意見を承りましたが、浅野参考人のこの再発防止策ということに関する何かお考えがございましたら伺っておきたいと思います。
  87. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 再発防止策ということになりますと、結局はこの政治不祥事の根本というのは政治資金の問題だということでございますから、これは国政調査の手段ということよりは、その政治資金の規制をどうするかという問題になるんではなかろうか、こう思うわけでございます。  私は、政治資金の規制というのはむやみやたらに規制をするのではなくて、今の政治資金というのはすべて公開にすべきでないか、こういうふうに思います。すべて公開にして国民の判断を仰ぐことにしたらいいだろうと。そして、すべて政治資金を公開にしておきますと、そういう私的財産と政治資金との境界ということもおのずから明らかになってくるのではないか、そんなふうに思います。  それで、すべて政治資金を公開するのにはどういう方法考えられるだろうかということでございますけれども、国に会計検査院みたいなものがありますから、ひとつ政治資金の検査院みたいなものをつくって、そこへ全部政治資金のデータを集めて、そこで公開を図ったらどうか。それで、公開するに当たって当然検査する必要が、どう言いますか、報告を検査する必要があれば政治資金検査院で検査をするというような方法一つ考えられるのではないか、こんなふうに思っておりますが、きょうは国政調査権の問題でございますから政治資金の問題は余り考えてきておりませんでしたので、その程度でお許し願いたいと思います。
  88. 大島慶久

    ○大島慶久君 参議院の独自性ということがいろんな政治の中でよく使われる言葉でございますけれども、この国政調査権と参議院あり方、今までは政治全般ということでお尋ねをしてまいりましたけれども、特に参議院の独自性という観点に立って、参議院におきましては独自性を発揮することについて参議院改革協議会を設けて検討を続け改革も実行しているところでありますけれども、参議院が衆議院と異なる調査方法を持つことは考えられるのかどうか。国政調査権ということにかかわって浅野参考人の御意見を賜りたいと思います。
  89. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 国政調査権方法で独自のということよりは、これも一つ方法ということになるかもしれませんけれども、問題の政治不祥事解明で、それが政治責任の追及なり、それから政治構造に対するどうあるべきかという防止策の問題を目的として調査がなされるにしても、いずれにしてもこういう問題というのは政治的な影響が非常に多いと思います。  それはどういうことかといいますと、党のそれぞれの影響力が非常に多い調査の問題だろうと思います。そのときに参議院の独自性はということを考えていきますと、やはり参議院政党という立場を離れて全く今の国民立場に立って、それこそ参議院は理の府だと言われますから国民立場に立って調査権を行使していくというような方法考えられますことが参議院の独自性を発揮した調査あり方でなかろうか、こう思うわけでございます。  現実は、今の国会というのは政党中心の運営がなされておりますから非常に難しいことだと思いますけれども、国政調査権の行使に当たっては参 議院だけは政党中心の運営を脱却するということが参議院独自のあり方ではなかろうか、そんな感じがいたしております。
  90. 大島慶久

    ○大島慶久君 大変貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。  時間を少し残しておりますけれども、今まで既にいろんな皆様方からいろいろと御質疑がされております。私の質問はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  91. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 大島君の質疑は終了させていただきます。  次に、角田義一君。
  92. 角田義一

    ○角田義一君 社会党の角田義一と申します。  先生からきょうは大変御高説をいただきまして、ありがとうございます。  先ほど先生のお話の中で、例えば委員会における質問者の質問事項の整理といいましょうか、調整というようなことを真剣に考えられてはいかがかというようなお話もございまして、私どもも、まあいろいろ野党が次から次へと同じようなことを聞くじゃないか、もう少し何とか連係プレーはできないものかとかいうような御批判も受けておりますものですから、昨日の証人喚問なり参考人招致につきましては社公民連という四会派で、これは初めてのことではございますけれども、大ざっぱではございますけれどもある程度質問事項の整理をいたしまして、そしてリレー式にお尋ねをするというようなことを初めてやったわけでございます。必ずしも十分な成果ではなかったかもしれませんけれども、私は大変よかった、いいことだというふうに思っておりまして、そういうことは今後も続けていきたい。  できれば自民党さんまで入っていただいて、参議院の良識の府ということで尋問事項というものが整理をされるというようなことになれば、これまた一層先生の御指摘に沿うんじゃないかと思いますが、そこまではなかなか行かないにしても、我々としてもいろいろ苦労しておるんだということはまず御認識をいただきまして、いろいろお尋ねをしてまいりたいというふうに思います。  先生の御本等を拝見いたしまして、いろいろ歴史的な経過も書いてございますのですが、この議院証言法というものができて、あれは昭和二十二年でございますか相当な年月がたっておるわけでありますけれども、敗戦直後のあの混乱期では相当この議院証言法が活発に運用された、いろいろ弊害もあったようでございますけれども。しかしその後、昭和三十年代に大分廃れまして、最近ではロッキード、リクルートというような事件をめぐってかなりまた脚光を浴びた、こういう経過もございます。  そこで、佐川さらには今回の金丸さんの脱税問題と大きな政治不祥事が生まれまして、国会における国政調査機能機能、これが本来ならもっと私は十分に発揮をされて国民の期待に沿わなきゃならぬというふうに思っておるんですが、我々当事者は大変な努力をしておるんですけれども、なかなか国民の皆さんに御理解いただけない点もございます。先生の先ほどのお話ですと、どうもそれは政党政治にあるのではないか、党派性にあるのではないかというような御指摘でございますけれども、そういうことというふうに承ってよろしいんでしょうか。なかなか機能が十分でない、できないという現状の原因でございますね、その辺はどういうふうにお考えになっておられますか、まずお尋ねを申し上げたいと思います。
  93. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 国政調査目的といいますものが政治責任の追及だというような問題になりますと、どうしても政治的な影響力というのが出てくるのではなかろうか、こう思うわけです。そうなんですけれども、本来それは党派的な立場に立ってやっちゃいけないことで、できるだけ党派的な影響力は切断しなきゃならぬのだろう、そう思います。  ですから、できるだけ国政調査権行使の尋問事項の調整を含めまして、いろんな議事に当たっては秘密会で、秘密会といいますのは、証人喚問秘密会じゃありませんけれども、その準備手続はできるだけ秘密会でやられたらいいだろう。秘密会でやることによってそういう、さらに秘密会のほかにもう一つ議員の守秘義務ということをはっきり規定いたしておきますれば、各党派の委員に対する働きかけというものはそれで切断できるんじゃないか、そういうふうに思う、こういうようなことを申し上げたわけでございます。
  94. 角田義一

    ○角田義一君 先ほど先生が一番最初に、国政調査権の本質といいましょうか議論についていろいろ説があるというふうにおっしゃいまして、独立機能説と補助機能説というのが大きな流れで、今日補助機能説というのが通説であるというようなこともおっしゃいました。  ただ、私の理解する限りでは、この独立機能説というのは京都の佐々木先生が創始者というふうに思いますけれども、私はどちらかといいますと、やはり国権の最高機能といいましょうか最高機関というそういう立場からしますと、どうも独立機能説の方に自分としては心情的には傾くんですけれども、ただ実務的に、実際我々が運用をする上で必ずしも学説といいましょうか通説といいましょうか、そういうものが決定的な私は影響力があるわけじゃない、やはり国会における一つの運用というものが非常に重大だというふうに思っておるんですけれども、いかがでございましょうか。
  95. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) これは、独立機能説、補助機能説をとりましても、先ほども申し上げましたけれども、国政調査権の及ぶ範囲というのは極めて広範でございますから、どちらをとってもその実際の運用には影響はないだろうと思います。  ただ、私が申し上げましたのは、国政調査権に今の国民の知る権利にこたえる、国民に対する情報提供機能があるんじゃないか、こう言われております。その情報提供機能というものを考えますときに、極めて独立機能説的な考え方に近い考え方でそのものを説明しておられる方がありますけれども、それは補助機能説の通説的な立場に立っても、国会にそういう国政の監視機能というものがあるというふうに考えれば補助機能説でもこれは十分説明ができることではないか、こういうふうに思う、こういうことを申し上げたわけであります。
  96. 角田義一

    ○角田義一君 私は実際に証人喚問等をやってみまして非常に痛切に感じますことは、先ほど先生からもお話がございましたとおり、基礎的な事実といいましょうか、私は政治家を呼ぶ場合にはこれはもう最後の最後でよろしいのではないか。一つの事実をきちっと押さえた上で、それを踏まえた上で政治家に対しては政治的、道義的責任をいろいろただすといいましょうか、お尋ねするということが大事なことだというふうに思っているんです。  ただ、現状はなかなかそういうわけにはまいらない。どうしても政治的ないろいろ思惑というようなものが現実政治ではぶつかり合いまして、そしてどうしても政治家を呼んで、こう言ってはちょっとどうかと思いますけれども、政治ショー的な要素もなくはない。これは私はちょっとまずいんじゃないか。もっと事実関係をきちっと踏まえた上で最後に政治家に来ていただいていろいろお尋ねをするのがよろしい。そのためには、やっぱりどうしても基礎的な事実関係というものをきちっと踏まえる必要がある。  それはしかし、今の現状の国会の中で専門的なスタッフというものがおらぬ。そういったメンバーもおるわけではありませんし機構も確立をしていない。そういう状態の中で基礎的な事実一つ一つについて証人喚問を我々がやっていくということも、これは大変な実はやりたいんだけれども苦労がある。現実的には非常に難しいというふうに私は痛切に感じざるを得ないのでございます。  そういった将来的にはどうしても私は専門的なスタッフを日本もそろそろそろえなきゃならぬというふうには思いますけれども、先生の参議院における御経験等も踏まえながら、一体現状で今私が申し上げたようなもう少し効率のよいといいましょうか、あるいは国民にとっても理解のできる ようなそういうシステムをどう改善したらいいか、今のままでどうできるかという点についてお気づきの点があればお教えをいただきたいと思うんです。
  97. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) そういう国政調査権行使を補佐するスタッフを現状のままでどうするかということは非常に難しいんではなかろうかと思います。  そういうやはり事実の解明ということに対するある程度専門的な方をそろえなきゃいけないと思います。それから、今の体制のままで何かいい方法はないかということになりますと、ちょっとこれは難しいのではなかろうかと思います。  それで、私の経験からお話をすることになりますけれども、仮に証人尋問をやりまして、どうもこれ偽証らしいということになりましても、どこが偽証なのかというのを特定することが非常に難しいわけです。それで、私が在職しておりましたときには、それは法制局が得意だろうということで、そのどこが偽証であるか調べろというようなことがございましたけれども、法制局は法律の条文を作成することは得意ですけれども、どこが偽証かということになりますと非常にこれは難しい問題がございまして、その偽証の告発するときの今の告発状を書くのに非常に苦労したということがございます。  というのは、今の刑事の事件では不告不理の原則というようなことがございまして、その告発状で記載した事実がもし漏れていたら大変なことになるわけでございますから、非常にそういうことで苦労したということがございます。そういう経験からいたしましても、やはりこれはそういう国政調査権の行使を補助するスタッフというのはもっと特殊な方でなければいけないんじゃないか。ですから、現状では法制局、まあ調査室ございますけれども、やはりあるところで限界が出てくるんじゃないだろうかなという気がいたします。  それと、もう一つはそういうスタッフに一体強制権というようなものが認められるかどうかというのは法律的に難しい問題がございまして、これは詰めなきゃいかぬ問題があるんじゃないかなという気もいたします。
  98. 角田義一

    ○角田義一君 先生お考えになっておられますのは、あれでございますか、国会の中における常設の調査委員会のスタッフ、それにある程度検察官に準ずるような機能といいましょうか、権限を与えるべきだというふうにお考えでございますか。そこまでのことをお考えになっておられるわけでございますか。
  99. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 私は、今の国政調査権にそこまでの強制権というのはあり得ませんから、スタッフに今の検察官に相当するような強制調査権が与えられるかどうかはこれは法律的にも難しいだろうと思います。そこまではこれは無理だと思います。ですから、そこまで至らないところで何かいい方法がないだろうかということだと思います。
  100. 角田義一

    ○角田義一君 今、私がいろいろ申し上げてきたことに尽きるんでございますけれども、証人が出てまいりまして今問題になっておりますのは、公開の原則と関連をしてテレビの撮影の問題があるわけでございます。過般、参議院では議院証言法改正案が通りまして、禁止をしている条項を削除いたしまして衆議院の方に送っておるわけですが、衆議院は御案内のとおり自民党さんが多数でございますので、この法案の行方がどうなるかちょっとわかりませんが、大変厳しい状況ではなかろうかと私は思うんです。  テレビの撮影についてはいろいろ議論があるところだと思いますけれども、やはり私はみずからの経験で、きのうは参考人の方に来ていただいて、参考人はテレビが入っております。もちろん証人は偽証罪という制裁のもとでいろいろお話をしますから大変慎重なお答えをしておった方が多いですけれども、やはり先ほど先生がおっしゃったその政治過程を国民が監視すると、どれだけ真実がわかるかもわからぬかもしれぬけれども、その証言をやっている証人の態度なり証言の仕方なりそういうものは微妙にやはり国民の皆さんが判断する上で大事なことではなかろうかと思うわけでございまして、私ども野党とすればこのテレビの禁止というものはやっぱり排除すべきだという形で法案を出したわけであります。  その辺のテレビの撮影等について、これは国民等の知る権利の中で先生の御経験を踏まえてどういうお考えを持っておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  101. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) テレビ撮影の問題といいますのは、あれはたしかロッキード事件のときだと思います。ロッキード事件証人尋問というものが非常につるし上げ的なところになったという反省から議院証言法を改正しようという問題が出てまいりましたが、最初はそのテレビ撮影を禁止するというような問題は取り上げられなかったように思います。最初はもっとほかの方法でその証人の証言を得やすくするために基本的人権を尊重しなきゃならぬいうことでほかの問題が取り上げられておったと思うわけですが、これが途中から追加になって検討事項としてテレビ撮影禁止いう問題が出てきたように記憶しております。そのときには野党の方ではそれを禁止するということに反対だったというふうに記憶しております。それで、そこで与野党が意見がまとまりませんで、結局、議院証言法の改正がなされなくて終わったと思います。  その後たしかリクルート事件のときだと思いますが、リクルート事件証人喚問のときに、その証人喚問の前提として、議院証言法の改正が前提であるというような議論がなされまして、急速、議院証言法が改正になったように記憶しております。そのときに後から追加されたテレビ撮影の禁止の問題がそこで問題になりまして、結局、証人喚問を急ぐいうことで与野党が意見が一致になって現在のテレビ撮影禁止いう状態になったんだと、こう思います。  さあそこで、テレビ撮影禁止の問題についてどう考えるかいうことでございますが、私は先ほどから申し述べましたように、国政調査権については国民に対する情報提供機能いうものがあるだろう、そういうことを考えますと、証言というのが必ずしもそこで真実を述べてもらうということに意味があるよりは、どういう証言過程であったかいうことが大事だろうと思います。  そして、それをさらに国民の批判の材料にするいうことに意味があるというふうに考えます。  そういうことから考えていきますと、やはりテレビによる撮影というのは認めてもいいんではなかろうか。ただ、それを認めてもいいと申しますけれども、その尋問の発言というものがつるし上げ的な糾弾的な発言であってはいけないと思います。そこを十分注意して尋問をなされるものであるとすれば、テレビの公開というのは別にこれは禁止すべきものではなかろうかな、こういうふうに思います。  それで、証人の方はいずれ公開の場で証言するいうことを覚悟して来ておられるわけでございますから、テレビで放映してもさあどれだけその証人の方の人権の妨げになるのか、ここは国政調査権のためにひとつ御協力願うのが当然ではなかろうかというような感じがいたしておりますが、さあこれも非常に難しい問題だと思います。
  102. 角田義一

    ○角田義一君 あと二つばかりちょっとお尋ねしたいと思うんです。  予算委員会証人喚問をやるというのもいろいろ、予算予算委員会の本来の任務もあります。しかし、国政全般にわたりまして非常に大事なことについては証人喚問をやらなきゃならぬというふうに思いますが、やっぱりどうしても時間的な制約もあるということで、私どもは、例えば今度の佐川の問題あるいは金丸さんの脱税の問題等、そういった政治不祥事、今回の政治不祥事解明するための特別委員会というものをつくったらいかがかということを御提起しておるわけでございますけれども、いい悪いとかいう議論はありますが、やはりこれ与野党一致いたしませんとなかな か特別委員会というのは設置できないというのが現状ではございます。  しかし、先生の御本の中にもちょっと書いてあったというような気がいたしますけれども、西ドイツの連邦議会の条文の中に、少数意見といいましょうか、少数党の立場を尊重する意味で議員の四分の一でございましたかな、の要求があればそういった特別委員会というものを設置しなければならない義務があると。したがって、少数会派がそういう特別委員会を要求すれば連邦議会としては設置しなければならぬ。必ずしも満場一致制ではない。日本のようにいろいろな政治の思惑があって満場一致でなければできないというものではないわけでありまして、これは私、大変参考になったわけであります。  その辺、私は日本の場合もそういう制度といいましょうか仕組みも、明文規定で置いた方がよろしいんじゃないかと。もちろんそれは政治ですから全部でまとまってできれば一番いいでしょうけれども、必ずしもできないときがある。そういう場合に少数党の権利を確保する意味でそういうことが非常に大事であるというふうに思うのでございますけれども、先生の御所見はいかがなものでございましょうか。
  103. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 先ほども申し上げたと思いますけれども、国政調査権というものが活発に行われます場合というのは大体政府と議会とが対抗関係にある場合だと、こう申し上げたと思います。  現在の議院内閣制のもとでは、政府と議会との対抗関係というのは政府・与党と野党との対抗関係だと、こういうふうに考えます。そういうときに国政調査権いうものは活発に行われるということを考えていきますと、やはり少数によって調査委員会が設定できるような方法というのは大いに考えていかなければならぬのじゃないかと、こういうふうに思っております。これは法的にどうするかということですけれども、憲法の上ではそういう少数者による調査権設置を認めてもこれは憲法では問題なかろうと思いますが、あとの問題は国会法の問題、国会の中でそういう制度をとることが与野党合意が得られるかどうかという問題ではなかろうかと思います。  それからさらに、本来、国政調査権を行使する場合といいますのは、まず、ある特定の目的のために特定の事案を取り扱っていくわけでございますから、本来これは特別の調査委員会を設けてそこで事案を取り扱っていかれるというのがいいだろうと思います。それで、その委員会を設置するときに、それは多数で設置する場合、それからさらに少数で設置ができる場合、こんなふうに考えていったらどんなものかなと、こういう気がいたします。
  104. 角田義一

    ○角田義一君 最後に一つだけ――いいです、時間ですからやめましょう。時間守ります。終わります。
  105. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 角田君の質疑は終了させていただきます。  荒木清寛君。
  106. 荒木清寛

    荒木清寛君 公明党の荒木清寛でございます。  きょうは大変にお忙しいところをお出かけいただきまして、ありがとうございます。  私の方から何点がお聞きしたいと思いますけれども、先ほどの先生のお話ですと、国政調査権と検察権あるいは司法権との関係という話で、裁判所に係属中の事件の場合には裁判に不当な影響を及ぼすと認められる場合には調査権の行使が制限をされると、そういうお話であったように思います。さきの国会の場合にも、東京佐川急便の渡邉元社長を東京拘置所で調べるということがあったわけですけれども、そのときには裁判所の方からの指示といいますか、によりまして、公訴事実にかかわる問題については質問をしないでくれ、そういうことで証人喚問が実施されたと記憶をしております。  私が思いますには、公訴事実について聞くことが直ちに裁判に不当な影響を及ぼすというふうには直結しないように思いますけれども、その点、先生の御意見はいかがでしょうか。
  107. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 私も公訴事実について聞くから直ちに影響があるとは思いません。ただ、どういう聞き方をするかということになってくるんじゃないかと思います。公訴事実だからという形式的な割り切りでだめだということはないだろうと思いますね。
  108. 荒木清寛

    荒木清寛君 午前中の参考人の先生がお話しになっておりましたけれども、刑事事件対象となっているような疑惑国政調査対象にする場合には、検察がそういう意味では専門機関ですから、そういった専門機関の集中的な捜査にとりあえず任せる方が合理的というか、効率的ではないか、それが終結した段階でその結果を利用して国政調査に及ぶというのが効率的というか筋ではないかというようなことをおっしゃっておったんですけれども、先生はこの点どのようにお考えでしょうか。
  109. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) ですから、目的があくまでもその事案の解明ということにあるとすれば、やはりそれはまず検察側でそういうのを捜査しておられますとすれば検察にお任せする方がいいんじゃなかろうか、こう思いますけれども、国政調査目的というものが事案を解明することが直接の目的でないんだとすれば、それは別にそこは検察にお任せするという問題でもなかろうと思いますけれども。
  110. 荒木清寛

    荒木清寛君 先ほど先生から専門スタッフ制という御提言があったように思いますけれども、国政調査の重要な場面というのは、国会が行政に対する監督権を行使するための国政調査という場面がかなり重要ではないかというふうに思うわけなんです。その場合に、専門スタッフということになりますと国会職員ですから公務員ということになると思いますけれども、そういった公務員の立場専門スタッフの方が、行政の調査といいますか、ある意味では行政のミスを探すような調査を効率的にといいますか十分になし得るかどうかという点につきましては、ちょっと私疑問に思う点があるんですけれども、この点いかがでしょう。
  111. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) それは、例えば会計検査院のことを考えましたら、今の会計検査という目的では十分機能しておるわけでございますから、国会でそういうスタッフを設けてそのスタッフに人が得られたとすれば不可能なことではなかろうかと思いますけれども、非常に相手の方の組織が強いものですから、そこの力関係といいますか、そこでは非常に難しい問題があろうと思いますけれども、今申し上げましたように、会計検査院はあれだけのスタッフで行政機関のみならず国の機関の全部の会計検査ということをやっておられますから、それは一概にできないとも言えないんじゃなかろうかと、こう思いますけれども。
  112. 荒木清寛

    荒木清寛君 先ほどの角田委員の御質問に対しまして、このスタッフに検察権に相当するような権限を与えることは憲法上難しいんではないか、そういうお話があったんですけれども、やはり専門スタッフが実効的に機能するためにはそのぐらいの強い権限を与えないと難しいんではないかというふうに私は思うんですが、憲法上の関係でどういう点からそういう権限を与えることに障害があるんでしょうか。
  113. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 憲法の規定そのものがどう読めるか知りませんけれども、今の解釈的な通説としては、それは認められないというのが通説だと考えますけれども。
  114. 荒木清寛

    荒木清寛君 現行の国政調査権考えますと、証人喚問をする権利というのが非常に有力な武器であるというふうに私思うわけですけれども、その反面、この証人喚問については全会一致があるいは全会一致に近い形で議決をするという慣習があるわけなんです。それはそれで人権を尊重するという意味で非常にすぐれた知恵であると思いますけれども、その反面、その制約があるためになかなか証人喚問が機動的に実行できない、一人の証人を決めるのにも時間がかかるというような実態があるわけなんですが、こういう慣行については先生はどのようにお考えですか。
  115. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 証人喚問効果あらしめるためには、それは全会一致というのはさあどうかなという気がいたします。ですから、それも多数決でよろしいんじゃないかなという気はいたします。
  116. 荒木清寛

    荒木清寛君 あと、先国会でも若干問題になったんですけれども、参議院国政調査の場に衆議院議員、代議士を喚問できるかということが若干議論になったような気がするんですね。先回は竹下元総理にお越しいただいたんですけれども、その場合には、元行政の長であったということで余り議論にならなかったように思うんですが、そういう議院、ハウスの自律権との関係で、参議院が衆議院あるいは衆議院が参議院議員証人喚問することができるかということについては、先生はどのようにお考えですか。
  117. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 証人喚問といいますのは、別にその人を被告人として呼ぶわけでもありませんから、結局、あくまでも証人といいますのは国政調査権による事実の解明に協力するというのが本来の証人だろうと思いますから、まさにハウスのメンバーであれば、それからさらにそのメンバーでなくても国会議員であれば国政調査権の事実の解明に協力するのは当然であろうと思いますから、別に議員だから証人として呼べないとかそういうものではなかろう、こう思いますけれども。
  118. 荒木清寛

    荒木清寛君 先生の書物を読ませていただきますと、立法府の衰退ということが指摘をされておったように思います。そこに指摘をされていたことは、例えば成立法案の件数を見ましても八三%が内閣の提出に保っている、実際にその委員会の審議の前にもう各政党の賛否が決まっておって委員会ではその法案の内容とは離れたそういった議論がなされているということも間々ある、そういう点から立法府の機能が非常に衰退しているというそういう御指摘があったと記憶をしております。  そういう意味で、憲法の建前からいいますと、国会が国権の最高機関ですから立法府の優位というのが建前であると思うんですけれども、そういう本来あるべき姿に近づけるために国政調査権というものを有効に活用できるのではないかというふうに私は考えるのですが、その点を最後にお伺いしたいと思います。
  119. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 国政調査権を有効に活用できるかどうかというのは、確かに国会が立法府であり立法機能というものを活発にするために国政調査権を活発に行使すべきであるということも言えますけれども、国会が立法府であるということのほかにもう一つ、これは先ほどから申し述べておりますけれども、国会というものはやはり国権の最高機関ということに基づきまして国政全般にわたって見守っていく機能というものも持っておるのじゃないか。  それで、国政が国民立場から見てどうもおかしいことが行われたときにこういうおかしいことがあるんだということを国民に示して国民の判断を仰いでいくというのも一つ国会機能ではなかろうか、こう思いますから、そういうところに国政調査権というものを結びつけたらどんなものであろうか。そうすると、もっと国政調査権というものは活発に行使されていくのではないだろうかというようなことをちょっと最初に申し上げたということでございます。
  120. 荒木清寛

    荒木清寛君 ありがとうございました。
  121. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 荒木清寛君の質疑は終了させていただきます。  次は、吉田之久君。
  122. 吉田之久

    吉田之久君 浅野参考人におかれましては先ほどから大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。  民社党・スポーツ・国民連合の吉田之久でございます。浅野先生は、一九二六年生まれとお聞きいたしました。私と同じ年でございまして、大変親近感を感じているところでございます。  さて、先ほどからいろいろ国会の持つ調査権機能等についてお話を承りましたが、その中でも特に先生がおっしゃいました国政の監視機能を果たしているという点で、今現在この証人喚問はそれなりの役割を果たしていると私も思うわけでございます。それと、国民の知る権利をも代行している。これはかなり深くかかわっていると思うんでございます。  実は、先日、竹下元総理が証人喚問に立たれました。我々は不満の限りでございましたが、その後マスコミが町の声を聞いておりました。いろんな人がいろいろ答えておりましたが、その中で一人、関西のかなり年配の男性が、竹下はんぬけぬけとまあうまいことうそついてはりますわというのがありまして、私にとりましてはかなり強烈な批判、皮肉だと受け取ったわけでございます。  そういう意味で、まさに国会は問題の焦点を浮き彫りにして、そこに頂門の一針を加えているという役割はかなり果たしていると思うのでございます。  また、先ほど先生はいろいろ事前に秘密会を開いてというような御意見もありましたが、秘密会と申しても、守秘義務はなかなか容易じゃございませんし、またマスコミの知る権利は完璧でございまして、だから私はむしろ、事前の準備は必要でありますが、できるだけテレビでも中継してありのままその表情を国民に知ってもらうということが一番大事だと思うんですね。  最近のようにテレビの中継が禁止されますと、音声は伝わってまいりますけれども、ほとんどきのうあたりでも国民はもうチャンネルを変えていると思いますね。あれじゃとても興味を引くわけにはまいりません。これは結局その効果を失っていると思います。だから、大いにそういうことを公開すべきではないか。  それから、時間が限られておりまして証人はともかく時間がたてば終わるわけでありまして、だからかなり沈黙の時間を置いたり、あるいはゆっくりしゃべったり、あるいはきのうあたりでも特にかかわりのないことを饒舌の限りお話しになっている、それでもう時間が来れば終わりでございます。  だから、私どもは、証言法を改正すべき点は改正をいたしまして、ともかく時間内の証言は証言として、しかし事前に通告して、聞きたい問題点、それに答えていない場合には責任を持って将来文書で回答する、それも証言法の中身なんだというふうにすればかなり状況は変わってくると思うんですね。  まとめて御質問いたしますが、事前の準備、それから各党のチームワークが大変大事だと思います。ここにきて各党の功名争いをしている時代ではない。もう国会の権威において、政治の信頼をかける意味で議会が一体になって衆知の限りこの問題に迫るべきだと。  この例では、かつて中曽根内閣のときにあの売上税が出てまいりまして、衆議院では社公民が大結束をいたしまして、みんな衆知を集めて勉強いたしました。そして質問も、社会党は総論をやる、公明党は各論に入る、民社党が最後の押さえ、締めくくりをやると、かなり効果を発揮したことがございます。そういった点は我々の仕事でございますけれども、そういうことも一層努力をすべきではないか。  それから、免責特権を与えないと、政治家は別として、経済界の人たちはとても本当にありのままをしゃべったんじゃもう完全に社会から排除される、会社へも戻れない、路頭に迷う、だから黙ってなるべく急所に触れないで帰ったら祝福される、そうなっておりますから、だから何かでやっぱり保護をしてやらないとならぬと思うのでございます。  それらの点につきまして、わずか二分しか残っておりませんが、お話を承れれば幸せでございます。
  123. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) まず最初のテレビの放映の問題でございますけれども、これは、国政調査権いうものが国民に対する情報提供機能いうものも持つと考えますと、やはり放映をした方がいいだろう、そして今おっしゃいましたように、テレ ビで国民に知らせた結果国民がどういう声を出してくるかということが重要なものでございますから、やはりそれは放映をした方がいいではなかろうかと、こう思います。  ただ問題は、テレビで放映されますというのは、私もこういう立場じゃございません、かつては答弁の立場に立ったことありますけれども、答弁するときにテレビで放映されますと何となく感じがよくないものでございますので、そういう証人人権ということも考えながら適当な方法考えられたらいいだろういうような気がいたします。ですから、テレビの放映自身はそれは別に反対はいたしません。  それから、各党チームワークをよくとられる、これも結構なことでございますけれども、大事なことは、要するにその手のうちというのを証人に知らしめたら証人尋問の効果はありませんから、各党チームワークをとられるのは結構ですけれども、できるだけ手のうちを明らかにしないような方法でチームワークをとられたらいいんじゃなかろうかと思います。  それから、免責特権の問題でございますけれども、証人というのは大体その問題の当事者が証人で出てきます。だから、刑事事件で言うと被告人を証人で呼ぶようなことで、これは本当のことを証人が述べられるはずはないだろうと思います。  そこで、これ、どうしたらいいかという問題ですけれども、一つ方法は、そういう問題の当事者を証人として呼ぶような場合には少なくとも宣誓を免除しまして偽証罪にかからない形で証言をしてもらうというのも一つ方法がなという気がしますけれども、それでも御本人がどれだけ真実をそこでお話しになるかはこれは非常に難しい問題だろうと思います。だから、いわば刑事事件の被告人を証人に呼ぶようなものですから、これは非常に難しいなという気がいたします。
  124. 吉田之久

    吉田之久君 ありがとうございました。
  125. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 吉田君の質疑は終了させていただきます。  次に、林紀子君。
  126. 林紀子

    ○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。  本日はありがとうございます。  まず、国会の権限としての国政監視機能の強化は、今回の政治不祥事件を見ましてもいよいよ重要となっていると思います。ですから、国政調査権の行使としての証人喚問の持つ役割と意義は大変大きいものがありますが、その効果を上げるためにも、資料、情報の事前の収集のために国会に情報センターをというお話、先ほど伺わせていただきました。  なるほどと思ったわけですが、我が党も今まで国政調査権の行使と議員の立法活動を補佐するための諸機構、具体的には常任委員会調査室、法制局、国会図書館、特に調査立法考査局を拡充強化する、またこれら諸機構が行政官庁に対して資料、情報などの提供を求めることができるようにするなどという国会の補佐機関の拡充強化策というのを提案してまいりましたけれども、参考人が先ほどお話しになりましたこの情報センターのもうちょっと具体的なものがありましたらお示しいただきたいと思うのですけれども。
  127. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 情報センターの具体的な案というのは別に持っておるわけではございません。そういうのができたらいいなということでございます。  それから、私のまたこれは経験から申し上げるわけでございますけれども、かつて法制局にずっと在職しておりましたけれども、国会のスタッフの整備補強ということはなかなか、私は在職中からお願いしておったわけでございますけれども、非常に難しい問題がいっぱいあるようでございます。それから、今の情報センターの問題もいろいろお願いしておるわけでございますけれども。  それで具体的な案ということでちょっと今思い出しましたけれども、情報センターの具体的な案というわけではございませんけれども、少なくとも各行政庁では今それぞれいろんな情報をコンピューターへ入れておられます。それを国会のどこかとつないで集中するというようなことが考えられないかなというのが一つの、具体的といえばそんなものだろうと思います。
  128. 林紀子

    ○林紀子君 どうもありがとうございます。私たちも、行政官庁の情報を国会図書館とコンピューターによってオンライン化する、こういうこともやったらどうかということを考えておりましたので、どうもありがとうございました。  次に人権問題ということにかかわってちょっとお伺いしたいと思うわけですが、残念ながら、この参議院予算委員会の審議というのは自民党が証人喚問を拒否したということで一週間も空転してしまったわけです。この証人喚問を避ける理由として人権侵害論というものを持ち出すわけですけれども、このような議論が成り立つ余地はないのではないかというふうに思うわけですね。  現行の議院証言法では、証人のための補佐人制度も設けられていますし、証人は正当な理由があれば出頭拒否、証言拒否もできる、こういうことになっておりまして、人権上十分な配慮がなされていると思うわけです。また、疑惑の渦中の政治家の人権といいますけれども、これは倫理綱領に照らしましても、みずから進んで疑惑解明する責任があるということだと思うわけですね。  参考人も「「政府高官」「公権力の受託者」は、「その地位を得た時点で、国民の監視や責任追求に服すること」一般国民と異なった特別の人権制約に服すること――に同意したものと考えられるから」、国政調査権との関係では、ほとんどプライバシーの保護はみとめられ得ないと思われる。」というふうにお書きになっていらっしゃいます。  人権を口実に政治的、道義的責任の究明を避ける、回避する、こういうことは許されないことではないかと思いますが、その点一点お聞きしたいのと、それに関連いたしまして、偽証につきましては告発というのが当然だと思うわけですが、今三分の二の賛成ということになっておりますが、この告発要件、二分の一に戻す必要があるのではないかと思いますが、この点はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  129. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) まず、告発要件の方からお答えさせていただきますけれども、かつて過半数だったわけでございますから、それは別に三分の二でなくちゃいかぬということはないだろうと思います。なぜ三分の二にしなきゃいけないかという理由はちょっと見当たらないんだろうと思います。  ただ、非常にこれは偽証であるということの認定が物すごく難しいということは言えると思います。こちらに今のは偽証であるということを認定するだけの資料がほとんどないと思いますから、恐らくそういうことで非常に偽証認定が難しいから、単純に多数でなくて三分の二にしようというお考えで三分の二にされたと思います。ですから、それは過半数でもいいと思いますけれども、その認定の難しさというのを十分理解しておいていただきたいなと、こう思います。  それから、もう一つは何でございましたですか。
  130. 林紀子

    ○林紀子君 人権の問題です。
  131. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 人権の問題は、確かに私の本にそう書いてありまして、理論的にそのとおりだと思います。ただ問題は、証人喚問人権的な問題だと、こう申し述べられますのは、やはり今の証人尋問がややともするとどうしても糾弾的な尋問になってしまう。そうすると、ある範囲を逸脱してくるということになるのじゃないか。そういうことから人権の問題があるというふうにお考えになっておるのじゃないかと思います。  その問題というのは、やはり証人尋問に当たって、尋問する立場からある程度そういう糾弾的な尋問にならないように注意してなされる必要があるのではなかろうか、こう思うわけでありますけれども、本来証人というのは何もつるし上げるために呼ぶわけじゃございませんですから、事実を知りたい、そのために協力してほしいということですから、そういう立場で尋問されていかれると すればそんな人権問題というのは別に出てこないのじゃないだろうかなという気がいたします。
  132. 林紀子

    ○林紀子君 どうもありがとうございました。
  133. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 林君の質疑は終了させていただきます。  次に、磯村修君。
  134. 磯村修

    磯村修君 私は民主改革連合の磯村と申します。よろしくお願いいたします。  国会議員不祥事についての真実解明という問題が、大変国会の仕事の中でも大きな任務であろうと思うんです。そうした中で、議院証言法によって国民の知る権利にこたえていく一つの任務もある。そういう意味合いにおいて、先ほど先生がおっしゃられましたように、常にその場の状況というものを国民に知らせるという意味において、そしてまたそれが正当な判断材料になるようなそういうことにおいて、テレビ中継あるいは撮影ということは原則として公開にすべきであると。大変私も大賛成であって、そうあるべきだと思っております。  また、調査特別委員会の設置ということも御発言ございましたけれども、いわゆるこれのいろんな場面場面でもってなかなか制約があるということもあるわけですから、大変強い機能といいましょうか、そういうものも必要ではなかろうかという御意見もございます。そこで、先生にお伺いしたいことは、法律によってそういう問題を解明していくために一つの強い権限を与える、それが必要なのかどうかということについて御見解を何一いたいと思うんです。
  135. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) そういう調査特別委員会を設けまして強い権限を与えるべきかどうかということにつきましては、それは効果を上げるためには強い権限を与えていいだろうと思いますけれども、それがどこまで権限が与えられるかという問題は法律的にいろいろ問題があると思います。ですから、その法律上の問題を詰めて法律上できる限りの権限は与えるべきだと思いますけれども、そういう法律の問題というのはあると思います。いいと思いますけれども。  それから、その調査特別委員会についてのそういう権限の先例といいますか、これは衆議院で行われたことがありますけれども、不当財産取引調査特別委員会とか、行政監察特別委員会といいますか、そんなある程度の権限が認められた特別委員会というものが設置された例はあります。これもう大分昔の話です。今から四十年ぐらい前になりますか、そんな例もあります。  ですから、そんな衆議院で設けられました調査特別委員会の例など参考にして、今のそういう特別委員会を設けたときにどこまで強い権限が認められるかということはひとつ検討してみるということはあると思いますのできる限りそれは強い権限を認めるのにこしたことはありませんけれども、これは法律上いろいろ難しい問題がありますから、それは詰めなきゃいけないだろう、こう思います。
  136. 磯村修

    磯村修君 それから、不祥事が起きる要因というものがいろいろあるわけなんですけれども、先生のお立場でもってこれが適当かどうかお伺いしたいんですけれども、私、今、中央集権ということが大変大きな問題を生じさせているんじゃないかというふうに思っているんです。一万を超える許認可権というものを中央省庁が握っているわけです。そういう意味合いにおいて大変利権が絡んでくるわけです。ですから、ある実力政治家のところにばんと」お金が来て、そしてそれが中央省庁を動かし、そして仕事を与えていくというふうな、そういう非常に利権の絡みがこういう大きな権限を持っている中央省庁、中央集権にあると思うんです。  そういう意味合いにおいて、例えば私、先日の予算委員会でもお伺いした問題なんですけれども、地方分権ということ、これはやっぱり憲法にも地方自治ということがうたわれているわけですから、こういう地方分権ということをもっとそういう視点から、政治の腐敗あるいは利権をなくしていくという視点から、もう少し積極的に考えてもいいんじゃないかと思うんです。  やはり地方というのは、直接住民が住民請求、監査請求もできます、リコールもできます、そうしたいわゆる直接政治責任を問える状態にあるわけですね。そういう意味合いにおいて、地方分権をしていくことによってそういう政治腐敗あるいは利権に絡む問題を防止できる大きな意味合いが持てると思うんです。  そういう意味においても、私は常日ごろ中央集権というものを、とにかく一極集中を多極分散にしていく必要があるんだと、そういう主張をしているんですけれども、先生のお考えはその辺はいかがでしょうか。
  137. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 私は、政治不祥事の原因が中央集権にあるかどうかは、直ちにそう言えるかどうかは非常に疑問だと思います。ただ、地方分権を実施していくことは、今の国民といいますか住民に非常に密着した政治ができることは間違いないと思いますし、それからそういう政治というものを直接国民が監視できるということを考えれば、それは地方分権の方が監視しやすいということも言えると思いますけれども、果たして今度の政治不祥事の根本原因が中央集権にあるかどうかは、さあどんなものかなという気がします。  ただし、今の国が許認可権を非常に持つということと何か結びついているのではなかろうかとおっしゃられれば、それはそうかもしれませんという気がします。けれども、許認可権の問題というのは、そういう政治不祥事の原因という問題はさておいて、できるだけ今の許認可というようなことは減少していくのがいいというか、国民にできるだけ自由に活動してもらうということを考えていきますと許認可というのはできるだけ減少していった方がいいだろう、それが一つの行政のこれからのあり方でなかろうかという気がしますけれども、また一つ、逆に社会生活における国家の役割というのがどんどんどんどんふえていきますと、さあそれもそう簡単に言えるかなどいう感じがしないわけではありません。  これはお答えになったかどうかわかりませんけれども、そんなことです。
  138. 磯村修

    磯村修君 ありがとうございました。
  139. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 磯村君の質疑は終了させていただきます。  次に、西川潔君。
  140. 西川潔

    西川潔君 浅野先生、本日は御苦労さまでございます。西川でございます。  私は、六十一年初当選のときには大変先生にお世話になりまして、社会労働委員会にお世話になりたかったんですけれども、法務委員しかあいていないんだということでこちらへ参りまして、そのときには大変御指導をいただいてありがとうございました。そのときの法務大臣が遠藤委員長でございます。初心に返って本日は質問をさせていただきます。  お年寄りのことでちょっとお伺いしたいんですけれども、お年寄りに対してはその受け取る年金にまで日本の税制というのは税金がかかるということでございますが、今回の金丸さんのようなあれだけたくさんの収入があってもそれが政治資金であるということで税金を免れるということなんですけれども、そこで、政治資金には税金がかからないというのは我々庶民的な感覚からするとこれはおかしい、どうも納得できないというふうに僕自身思うんですけれども、先生はどういうふうにお感じになっておられるのかというのをきょうはぜひお伺いしてみたいなと思います。
  141. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) きょうは国政調査権ということでいろいろ考えてきましたので政治資金の問題が出てきますとちょっとお答えは難しいと思いますけれども、私は、政治資金というのはこれで政治活動をやれというお金だろうと思います。ですから、それが所得だといって税金がかかるというのはおかしいと思います。これは当然、政治活動のために使えというお金ですから、使っちゃうお金ですから、それが所得だと言われるのはちょっと理論的にはおかしいのじゃないかという気がいたしますが、今回の政治不祥事の問題は恐 らくそこにあるのではなくて、そういう本来政治活動に使うべき金を自分の私的ないろんなところに使われたというところが大きな問題でなかろうかと思います。ですから、本来は政治活動に使えと言って渡されたお金でございますから、それを政治活動でないところに使えばやっぱりそれは普通の所得だと考えざるを得ないだろうと思います。  ところが、今の政治活動お金というのは一体何だろうかというような、政治活動というのはまた、私が申し上げるよりは先生よく御存じだと思いますが、政治活動というのは非常に範囲が広くでどこまでが政治活動でどこからが政治活動でないのか非常にこれ難しいところがあると思います。ですから、政治活動政治資金としてもらったけれども何となく今の自分の個人的な目的のために使っちゃういうこともあるのかもしれません。  それは、そういうところが問題になって、そのお年寄りの方は、おれはこのわずかな年金もらっている、それなのに税金かけるのに何かあれは政治活動だからといって税金が丸々かからぬ、おかしいじゃないかいう感じを抱かれると思いますけれども、本来、政治活動政治資金というのは税金がかからぬものだろうと、こう思いますけれども、その限界がはっきりしませんから、私的なところにお金が使われるという問題が出てくるおそれは非常に多いと思います。  ですから、これをどうしたらいいか。結局、先生がお尋ねになっているのは、そういう感じを抱かせないために政治資金というのはどうしたらいいかということが後ろにあるだろうと思いますけれども、政治資金の問題というのは、これ、私も先ほどちょっと述べたと思いますけれども、できるだけすべて政治資金は公開にするということにしたらどうであろうか。公開されない政治資金というのはこれはまさに私的に使ったものだと考えたらどうだろうかという気がいたします。だから、そこをそうしますとはっきりいたしますですね。  政治資金として届け出ない金は全部私的なものだと考えりゃいいということになりますから、その限界がはっきりします。そういうふうにはっきりさせておきますならば、今回のような不祥事は起きないだろうと思います。政治資金としてもらったんだけれども、今の所得税違反、脱税という問題は、それをはっきりさせておけばできないんじゃないかと思いますけれども、というような感じがいたします。それがはっきりすれば、政治資金だから税金がかからないんじゃないかというその今のお年寄りの方の御意見というのは防げるんじゃないんだろうかなという気がいたします。  それで、それと今の国政調査権との兼ね合いで少し述べさせていただきますと、そういうお年寄りの声というものを今の国政調査権を通じて、本来なら金丸さんに証人で来ていただいて、結局、本来そういう国民の声を本当は証人尋問の形で聞いていただくといいのだろう。それも一つ国政調査権証人尋問の役割ではなかろうか。ですから、そんな難しい偽証罪だとかなんとか言わぬで、国民の声をひとつ聞いてくださいという証人喚問というのもあってもよさそうじゃないかという気がします。  恐らく西川先生もそういう考え方が後ろにあってお尋ねになっているんじゃないかと思いますけれども、ちょっと先までお答えしたようなことになりますけれども、どんなものでございましょう。
  142. 西川潔

    西川潔君 ありがとうございました。
  143. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 西川君の質疑は終了しました。  次に、武田邦太郎君。
  144. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 日本新党の武田と申します。  私の短い経験でございますけれども、国政調査権の及ぶ範囲あるいは程度を大きく制限するものに、証人喚問のどういう人を証人として喚問できるかというところに非常に大きな制限があるような感じがいたします。  事態を解明するに必要な証人は、こういう言葉は適当じゃないと思いますが、いい言葉がないのであえて使いますけれども、大物の方ほど証人として来てほしいわけですね。ところが、現実は大物の方はなかなかお呼びできない。でも、大物でないというわけでありませんけれども、そうそう決定的に大事でない人が呼ばれるということがこの国政調査権の及ぶ範囲ないし程度を甚だしく制限しているんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  145. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) 別に法律的には大物だからどうというあれはございませんですね。法律的に証人を呼ぶというのは平等でございまして、だれでも証人に呼べる。法律的にはそうでございますけれども、それは実際問題としてそういうことが起きてくるだろうと思います。というのは、やはりこれは証人喚問あり方の問題だろうと思います。  証人喚問というのはどうしてもそういう刑事事件でいいますと被告人のような人を呼んでくるわけでございますから、そこではどうしても糾弾的なつるし上げ的な尋問になってしまうわけです。そうすると、やはりその大物を今の糾弾、つるし上げの場に持ってきちゃ悪いじゃないかなということで、大物が証人に出てこられるということが非常に、どういいますか、制限されていくことになると思います。証人尋問というものがそういう糾弾的なつるし上げであれば、これはやむを得ないと思います。ですから、これは証人尋問のあり方というのを少し考えていけば、大物だからというようなことはなくなるんじゃないかと思います。  むしろそういう場合の証人尋問というのは、世間でいろいろ疑惑はありますけれども、ひとつここで何か言いたいことがあったら、弁明といいますか、言いたいことがあったらおっしゃったらどうですかというような形の証人尋問をやられれば、別に大物だからといって遠慮されることはない。言いたいことはいっぱいあろうと思います。今のマスコミで言っていることがそのまま正しいかどうかわかりませんから、それは大物だって言いたいことはあろうと思います。ですから、言いたいことを言っていただく場が証人尋問の一つ制度だというふうにお考えになればそこの問題は片づくんじゃないだろうかなという気がいたしますけれども、さあどんなものでございましょう。
  146. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 ただいまのお話で大体わかったような感じがしますが、関連してお尋ねしたいと思っておりましたのは、証人というものは事実の解明に協力するものだ、こういうお話が先ほどもございましたけれども、私の見るところでは、証人というのは事態の解明に極力協力しないで逃げ回るものというのが現実の姿じゃないかと思います。今のお答えを応用しますれば大体わかるような気がしますが、なかなか改善は前途遼遠の感じがしますので、何かいいお考えがありましたらまた改めてお教えを願いたいと思います。  それから、そういう国政調査権を徹底させる場合、検察権の協力が非常に欲しい場合が少なからずあると思うんですね。ところが、これも現実は、刑事局長がお見えになりましても、ほとんど証人と同じように極力返事をぼやかして明確な返事は延期したい、それは見え見えなんですね。こういうこともやはり今のお答えの応用問題でしょうかね。
  147. 浅野一郎

    参考人(浅野一郎君) ですから、検察権といろいろ問題が出てきますのは、国政調査権で検察官の方で捜査されておるような事実と同じ事実をこっちもそれを究明しようということでやれば、向こうの妨げになるわけですから、うちの方でやっているのに要らぬことを聞いてくださるなということになると思います。  ですから、あくまでもこちら側の国政調査権目的というのはその事実の究明じゃないんだという考え方で今のをやっていかれればそんなに、要するに検察の協力は得られぬわけじゃないでしょうというようなことをちょっと最初に申し上げたわけでございますけれども、今の検察の協力が得 られるような解明といいますか、そういう方法をお考えになればその方がいいんじゃないだろうかなという気がするということでございます。
  148. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 終わります。ありがとうございました。
  149. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 武田君の質疑は終了させていただきます。  以上で浅野一郎参考人に対する質疑は終了いたしました。  浅野参考人には、長時間にわたり当委員会のために貴重な御意見をお聞かせくださいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して感謝いたします。御退席くださって結構でございます。(拍手)  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  150. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 速記を起こしてください。     ―――――――――――――
  151. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 引き続いて、予算執行状況に関する調査のうち、政治不祥事解明国政調査機能あり方に関する件について、参考人として、北海道大学法学部助教授山口二郎君から御意見を賜ります。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  まず、委員長の私の方から、本日、参考人に御出席いただくことになった経緯について御案内をいたしたいと存じます。  最近の一連の不祥事の発生で国民政治不信がかつてなく高まっている昨今、その究明国会が果たさなければならない重要な役割の一つと認識しております。  昨年から数回にわたって行われた証人喚問等は、国民の期待が大き過ぎるという一面もございましょうが、制度制約もあり、十分な成果が上がらなかったことも率直に私たちは反省をいたしております。  なお、これまでの国会証人喚問がややもすると犯人ないしは犯罪捜し的と国民の目に映る一方、国会の審議の場で法務当局は、捜査中や公判維持、さらには人権擁護等を理由に、当然とはいえ答弁は慎重をきわめる場合が多いのであります。  裁判中の事件捜査段階の問題を国政調査対象とすることの是非や限界をめぐっては三権分立の建前から難しい問題があることは承知しております。古くて新しい問題と言えるかもしれません。このように証人喚問をめぐって幾多の問題がございます。  そして、御存じのとおり、国会には強制捜査権はもちろん、議院証言法による場合を除くと、書類提出一つにしても相手方任意提出しかないという状況で、世間でいう真相究明には隔靴掻痒の感がないではありません。  そこできょうは、憲法第六十二条に規定する議院調査権国会法第百三条、第百四条に規定する議会国民及び官庁の関係、さらには議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律等法律制度を初め、幅広い見地から、国政調査権機能を充実する場合、どこに問題点があるのか、改善策はどうすればいいか等、参考人から御意見をちょうだいいたしたいと存じます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、参考人の方から三十分程度で御意見をお述べいただき、その後委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  これより、参考人から御意見を賜ります。山口参考人
  152. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 山口でございます。  きょうはこういう機会を与えられまして大変光栄に思っております。心からお礼申し上げたいと思います。  私は、政治学を専門にしております関係上、今の国会法や憲法の解釈の問題ではなくて、これから制度を改革する場合にどういう観点から考えるべきかということについて私見を申し上げたいと思います。  まず、国政調査権のあるべき姿を考える際に、議会政治というものが一体いかなるものかということについて考えることから始めたいと思います。  一般的に申しまして、議会政治には二つのタイプがありまして、一つはイギリスのようないわば議院内閣制における議会政治であります。イギリス型の議院内閣制におきましては、与党が議会において過半数を占める、そして内閣を構成し、行政部を監督するということでありまして、与党において立法権と行政権が融合するという大きな特色があります。統治の最高責任者であります内閣総理大臣は議会の信任に基礎を置くわけでありますから、当然、議会においていわば多数を支えるための政党の結束というものが必然的に必要になってまいります。したがって、政党を単位とする議会運営というものが議院内閣制においては必然的な帰結となるわけであります。  こういう権力の融合及び政党を単位とする議会運営という二つの特色から導かれる帰結といたしまして、いわば議会が独立した主体として行政権がかかわるさまざまな腐敗やスキャンダルを追及するということは非常に難しい。何と申しましても、多数を占める与党というものがみずからの指揮監督する行政権において発生した腐敗や不祥事というものを積極的に追及するということは、いわば与党にとっての自殺行為になるからであります。こういう場合、議院内閣制の政治におきましては、いわば政権交代によって、いわば腐敗した与党が次の選挙で政権の座から滑り落ちるということによって腐敗のチェックが行われてきたわけであります。したがって、議会が主体となってさまざまな不祥事を追及するという仕組みが議院内閣制のもとで必ずしもうまく機能するかどうかというのは難しい問題を含んでおります。  もう一つ議会政治のイメージはアメリカ型の立法府でありまして、これは完全な三権分立を前提としております。アメリカの議会をごらんになればわかりますように、議員は個人個人で独立して行動しております。アメリカの政党は極めて緩やかな構造を持っておりまして、党議拘束というものはありません。したがって、法案の採決などにおきましてもいわゆるクロスボーティングというものが日常茶飯であります。こういう場合、議員は立法府の構成員という自覚を持って行政府に対するさまざまな追及やチェック活動を行うということになるわけであります。  アメリカ型の立法府においては、まさに立法府が行政府のさまざまな問題を国民立場に立って究明するということで国政調査権というものが意味を持ってきた、あるいは立法府が法律をつくるという作業を行う上で必要な資料や素材を収集するという観点から国政調査というものが蓄積されてきたと言うことができるだろうと思います。したがって、国政調査権というものがフルに発動されるというのは、やはり政党の強い規律とかあるいは政党単位の議会運営というものを前提としないアメリカ型の立法府において有効に作用してきたものというふうに私は考えます。  日本の国会における国政調査権問題点なんでありますけれども、日本の国会は、骨格としては御承知のとおりイギリス型の議院内閣制を前提としております。しかしながら、憲法や国会法においてはアメリカの思想というものがある程度反映されております。それは、例えば議員立法に関する比較的緩やかな規定でありますとか、あるいは議会に与えられました強い調査機能というものがあります。しかし、最近の日本の議会政治を見てまいりまして、憲法や国会法規定されました国政調査権というものは絵にかいたもちという印象を国民に与えております。  なぜかということを考えてみたいのですが、一つは、国会の仕組みそのものにおいて、まさに先ほど申しました議院内閣制の帰結として党議拘束というものがあるという問題であります。  戦後、新しい憲法のもとで国会が発足した当時、これは国会がいわば国権の最高機関として、立法やあるいは行政部に対するチェック活動を行う主体として積極的に活動することが期待されておりました。そして、例えば議員立法一つをとってみましても、個人が議案を提出できるとかあるいは国政に関する自由討論の場を設けるといったような活発な立法府のイメージが想定されていたわけでありますが、一九五五年の国会法改正によりまして個人個人の議員の活動の余地というものが大きく狭められたわけであります。そして政党単位の議会運営という色彩が非常に明確になってまいりました。  つまり、議員個人個人が議員立法を行うとかあるいはさまざまな国政に関するチェック活動や議論を行うということばかりやっておれば、これは内閣が提出をする大事な法案や予算というものの審議が滞ってしまうという問題ももちろん他方にあるわけであります。つまり、統治の能率、法案を要領よくどんどんさばいていく、予算を速やかに成立させるという意味での統治の能率と、それから立法府における議員の自律的な活発なチェック活動というものは、ある意味でトレードオフの関係といいましょうか、簡単に両立することは難しいということがあるわけであります。  そして一九五五年以降、日本の国会においては、国会が自立した主体として行政府をチェックするというよりは、むしろ統治の能率を高めるために内閣の提出をした法案や予算というものを通すというところに主たる機能を発揮してきたというふうに私は考えております。  それから、もう一つ問題点といたしまして、日本の国会においては、やや立法府という自覚といいましょうか、意識が議員の間に弱いのではないかという印象を私は持っております。  一九五五年以来まさに政権交代というものを日本においては経験していないわけでありまして、まさに与党と野党というものが固定化してしまっております。そういたしますと、与党の議員というものはまさに行政部と一体になってさまざまな政策の立案を行う、野党の側はといえばこれは少数でありまして、ありていに申せば政府・与党のさまざまな法案や予算に批判を加える、揚げ足をとるということに終始してきたわけでありまして、国民の代表として国権の最高機関を構成するという、いわば与党野党を超えた意識の一体性というものが果たしてどこまであったのかということも疑問であります。  特に与党の側の事情ということについてここで申し上げれば、与党というのは、先ほど申しましたように、何と申しましても議院内閣制のもとにおいては行政部と一体となって統治に責任を負うという原理になっております。したがいまして、行政部におけるさまざまな不祥事や腐敗というものが発生した場合、与党が率先してこれに追及のメスを入れるということは極めて難しいわけであります。したがって、与党が自己批判を行うということを私たちは余り楽観的に期待することはできない。よしんば野党が国政調査権の発動を主張いたしまして証人喚問とか資料の提出などといったことを要求いたしましても、議会で多数を占めてきた与党がこれに反対をすれば、せっかく憲法や国会法の条文の中で国会に立派な機能が与えられていても、それは具体的には発動されないという問題があるわけであります。  ここで私は、だから自民党がけしからぬということだけを言いたいわけではありませんで、およそ与党というものはそういうものであります。    〔委員長退席、理事井上裕君着席〕  つまり、将来において政界再編が起こってほかの政党が与党に座ったとしても恐らく同じことがその与党のもとにおいて起こるわけでありまして、つまり、その立法府における多数を占めかつ行政権を握るという与党がいわば自己の権力を保存しようとする本能に従って動く限り、国会一つの主体として国政調査権を行使し、政治、行政にまつわるスキャンダルを追及するということは極めて難しいと言わなければいけません。  それから、野党の側の問題点なんでありますけれども、野党はもちろん、与党が指揮する内閣、行政府において予算のむだ遣いとか許認可にまつわるトラブルというものが起これはこれを国民立場にかわって追及するという責務を負っているわけであります。しかし、いかんせん野党は、八九年以降の参議院を除きますと議会における少数派であります。国政調査権の発動などを主張してそういった不祥事の追及や解明をしようとしても、野党の力だけでは調査権を発動できないという数の力の限界がございます。  八九年の選挙以降、参議院においては野党が過半数を占めるという状況が生まれてきたわけでありますが、依然として証人喚問等重要な国政調査権の発動については全会一致で行うという慣習が守られております。もちろんそのことは、後で申します喚問される側の人権の保護ということから見て理由がないことではありませんけれども、しかし、全政党が一致しなければ証人喚問ができないとか国政調査権の発動ができないということであれば、これは本当に国政調査権というものを現実に行使することは極めてまれなケースになってしまうということも当然であります。  それから、野党の側の限界のもう一つ問題点は、いわば野党は徒手空拳で疑惑やスキャンダルの解明に取り組まなければいけないという問題点であります。つまり、与党は行政部を監督する立場にありますから、当然行政部の情報の入手とかさまざまな知識や技術の吸収というものも簡単であります。しかしながら、野党というものは、考えてみますと、本当に疑惑を追及する上で資料の収集であるとか情報の入手という点で大きなハンディキャップを負っていると言うことができるわけであります。  いきなり証人を呼び出して本当のことをしゃべれと言っても、それはその証人の方がごまかすというのもこれはやむを得ないわけでありまして、真相を究明しようと思えば、当然その裏づけとなるような物的な証拠とか素材というものがなければらちが明くものではありません。その意味で、現在の野党の議員の活動を支援するための仕組み、すなわち法制局であるとか国会図書館といったようなものの貧弱さというものも野党の側の追及活動の質を下げている一つの原因ではないかというふうに思います。  それから、もう一つの問題として、国政調査権というのは一体何を明らかにするのかという点でいささか誤解があるのではないかということであります。  先ほど委員長のお話にありましたように、ややもするとロッキード事件のときの華々しい成果などの記憶もありまして、議会証人喚問を行って悪者を退治するという単純な勧善懲悪のイメージが国政調査権の発動につきまとっているわけであります。しかしながら、ロッキード事件のときの教訓というものは、まさに疑惑や腐敗の当事者も十分学習しているわけでありまして、国会の喚問でしっぽをつかまれないようにするための技術というものもまたこの十数年の間に向上してきたということはもう率直に認めざるを得ないわけであります。  そこで、考えてみますと、要するに国会というものは検察や警察とは違うわけでありまして、悪者を探し出してそれを糾弾するということを国会がやるべきなのかということは一つ問題点であります。やはり国会において追及すべきは、政治的な責任あるいは道義的な責任というものであろうと思われます。  その場合、特に問題となりますのは、国会議員や高級公務員などいわゆる公人の道義的、政治的な責任というものを特に追及するのが恐らく国政調査権の本旨であろうというふうに私は考えております。  昨日も証人喚問がございましたけれども、例えば一民間の証券会社政治家の不正蓄財に協力をした。それ自体は余りよいことではありません。しかし、それが犯罪を構成しないということであれば、これはいわば国家権力を持った機関が要す るに悪者捜しをするということはいささか問題がある。むしろ、そういった一私人とか民間企業が行った道義的に問題のある行為というものは、例えば一般消費者とか株主とかそういったものが企業の責任を追及する。例えば日債銀には絶対預金をしないとか岡三証券では絶対株を買わないという格好で、いわば市民的な制裁を加えるということ以外に恐らく手はないわけであります。  むしろ国会においてやってほしいことは、例えばワリシンを脱税の温床としていわば当たり前のように使ってきたことを大蔵省は一体どう考えてきたのか。それを知っていて放置したとすればこれはやっぱり大蔵省の責任になるわけでありまして、そういう疑惑不祥事というものを十分解明しない行政官庁、あるいはそういった不祥事を放置する監督官庁の責任がどうなのかということを国民にかわって追及することが恐らく国会に与えられた最大の使命ではないかというふうに私は考えております。  次に、具体的な改革の方向について私見を申し上げたいと思います。  最初に私がここで提案したいのは、国政調査権というものを、議院ないし議院委員会という国会法第百四条の規定にありますいわば一つ機関ではなくて、具体的な国会議員個人個人の手に移すということであります。  つまり、国会法第百四条にありますように、議院とか議院委員会調査機能を持つという規定があれば、これは議院ないし委員会として議決をする、慣習においては全会一致で決めるという手続を経なければ国政調査権は発動できないということになります。しかし、先ほど申し上げたように、行政部と一体となっている与党が疑惑解明に往々にして後ろ向きであるという現状からすれば、これは具体的な個々の議員機能を与えなければ本来の国政調査権のねらいというものは達成できないというふうに私は考えます。  そういうことをすれば、野党に対してのみ特別な有利を与えるのではないかという批判も当然与党の側から出てくると思います。しかし、そもそも議院内閣制という制度のもとにおいて立法府が行政府をチェックするという権力分立の理想を実現するためには、まさに野党こそが立法府として行政府にチェックの手を加えなければほかに追及の主体がいないという現実的な問題があります。  つまり、三権分立における立法対行政という関係議院内閣制の中で考えれば、これは野党対政府・与党連合軍という図式になるわけであります。したがって、立法府が責任を持って行政府にかかわる不祥事やトラブルを追及するという場合、野党に対して何がしかのアドバンテージといいましょうか優位を与えなければ、これは幾ら国会法や憲法で調査権規定を置いても空文になってしまうというふうに私は考えます。  個人個人が調査権を発動するということがもし無理であれば、議員立法の提案と同じように、一定数以上の議員の要求によって証人を喚問するとか資料の提出を命ずるという形の規定を将来置くということを御検討いただきたいというふうに思います。  そういうことをやった場合、当然、弊害というものも予想されます。つまり、スタンドプレーをやって調査権を乱用するという政治家があらわれてきた場合これをどうするか、あるいは調査権を行使して証人喚問をする、その喚問される側の権利を保護するというのはどうするかという問題があります。  これについては、例えばアメリカの有名なマッカーシズムであるとか、あるいは日本でも、終戦直後、シベリア抑留中のソ連への協力問題をめぐって議会で喚問が行われて菅孝治氏が自殺に追い込まれたといったような悲劇的な事件もあったわけであります。そういった事柄をいかにして防ぐかということが当然あわせて検討されるべきであります。  それについては、やはり先ほど申しましたように、まず国政調査権の発動のねらい、ターゲットというものを主として他の国家機関、つまり権力を持って統治、行政を行っている他の機関というものに一義的には据えるということ、それから国政調査権の発動、行使に関するいわば第三者的な監視機関というものをつくるといったようなことである程度対応することもできるのではないかというふうに思います。  いずれにしましても、乱用の危険があるから調査権を拡充しないということであれば、これはいつまでたっても本来憲法や国会法で理想とされていた国政調査権の有効な活用というものはできないわけであります。多少の試行錯誤というものもこれは不可避であります。後で申しますように、調査権というものを日常的に使う、経験を蓄積する中から、人権に配慮した調査権の発動の慣習というものができてくるのではないかというふうに考えますし、また、売名行為や党派的な利益のために調査権を乱用した政治家に対しては後日国民の側から政治的な制裁というものも下るのではないかというふうに私は考えております。したがって、調査権を拡充していくという場合、いわば調査権を持つ主体というものを変えるということが第一の論点であります。  それから第二の論点なんですけれども、先ほど来たびたび申しておりますように、いわば国政調査権というものを日常的に行使をし活性化するという場合に、やはりそのねらいを私は行政府におけるさまざまな利益配分や利害調整の過程というものに向けていただきたいというふうに思います。  国会法第百四条に「各議院又は各議院委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めた」場合というような条文がございまして、つまり、内閣、官公署という行政府がまずこの第百四条の調査権のいわば名あて人になっているということを私は重視したいわけであります。  日本の政治腐敗の歴史を振り返ってみれば、これは佐川急便における運輸省の許認可行政とか、あるいは建設、公共事業をめぐる不透明な献金事件でありますとか、およそ必ずといってよいほど行政機関の利益配分ないし利害調整というものが腐敗事件の舞台となっておるわけであります。そして、御承知のとおり、国会でさまざまな法律をつくりましても、それを実際に運用するのは行政府の官僚制であります。官僚機構がさまざまな通達をつくり行政指導を行うということで日常的な行政活動を行っております。その通達をつくる、行政指導を行うという過程について、一般の国民はこれをチェックする、統制するという手段を持っておりません。  日本では情報公開法もまだありません。また行政手続法もようやくこの国会に提出されようとしているところであります。その意味で、腐敗の温床になりやすい行政府におけるさまざまな利益配分や利害調整の過程というものを国民に成りかわって立法府がチェック、統制をするということが腐敗の根絶のためにどうしても必要なことではないかというふうに思います。  もちろん、通常の法案や予算審議の中でも野党の議員質問やなんかの形でそういった腐敗の温床になりやすい行政府の政策執行過程についてチェックを加えておりますが、いかんせん法案や予算に対する質問という形でチェックを行うことには限界がございます。何と申しましても、行政府、大臣とか政府委員の答弁が出てきた場合、それをさらに追及する、二の矢三の矢を浴びせるということが、例えば時間的な制約があるとかそういった問題で難しいわけであります。したがって、そういったいわば歯がゆさというものを克服する上で、国政調査権の強い規定というものをそういった行政府における政策の執行過程のチェックに使うということを、ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。  そういった調査権を実際に使っていく場合、幾つかの条件がございます。  一つは、これは国会議員の持っている調査スタッフの問題であります。やはり野党の議員が個人個人で動いて、あるいは秘書や政党の職員を 使って情報収集を行うということについては大きな限界がございます。これについては、国会として議員のそういった活動を支援するための調査スタッフというものを充実していくということが必要だろうと思います。  それから、国会議員の特に情報に対するアクセスの問題も重要であります。つまり、例えばイギリスの国会におきましては、野党の議員が一定の書式に従いまして行政官庁に対してこれこれの情報を提出してほしいということを要求した場合、行政官庁はこれを拒むことができないというような仕組みがございますが、日本の場合には野党の議員のそういった情報収集というものもいわば事実上の協力というものによって行われているのが現状だろうと思います。これについてもっと強い法的な根拠を与えるということも必要ではないかというふうに思います。  それからもう一つは、時間の問題です。つまり、今の国会の審議時間というのは非常に短いというふうに思います。したがって、政府の提出した大事な予算や法案というものを審議することがまず優先される。そうなりますと、国会調査権を発動してさまざまな問題をチェックするということがどうしても時間的に不足しやすい。逆に申しますと、野党は会期の短さみたいなものを逆手にとりまして、予算や重要法案を人質にとって政府・自民党から例えば証人喚問等について譲歩を引き出すといういささか不健全な取引をやっているわけであります。  この際、国会の活性化を図る上で大幅に国会の活動時間というものを拡張する。例えば国会を通年開催する。もちろん休暇はありますけれども、通年開催にして政府提出の重要な予算や法案が上がった後はいわば立法府としてさまざまな腐敗や問題についての追及活動を行うといったような、いわば国会としての活動の量的拡大ということを図ることがどうしても必要ではないかというふうに私は考えております。  いずれにいたしましても、現在の国政調査権規定というものは、そのねらいや精神においてもちろん正しいし、また国民もこれに期待するところは大でありますが、それを支えるさまざまな仕組みという点で十分国民の期待にこたえていないという問題がございます。したがって、今後、国会法を全面的に拡充するという方向で、国政調査権の行使をいわば実質的に可能にするための条件の整備ということをぜひ行ってほしいと思います。  将来的にもし二院制との関連で参議院の個性を引き出すということを考えるのであれば、いわば行政府、内閣を支えるための多数派の形成ということは衆議院に任せる、そのかわり、参議院というものはいわば三権分立の本旨にのっとって、要するに内閣を支えるということではなくて、むしろ行政府のさまざまな問題というものをチェックするというところにその個性を見出すといったような形の二院制の改革も長期的には必要となってくるのではないかというふうに考えております。  以上で私の報告は終わらせていただきます。
  153. 井上裕

    ○理事(井上裕君) ありがとうございました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。沓掛君。
  154. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 山口先生には本当に御苦労さまです。ただいまは大変立派なレジュメに従って、私も四十年ぶりに学生に戻ったような気持ちで今講義を聞かさせていただきました。ただ、四十年の間にいろんなことを体験してきておりますので、学生さんのようにそうかなと思うだけではございませんで、幾つか私これについても質問したいんですが、先に私なりに、先生の今まで書かれた本寺を読んでこういうことをお聞きしたいなということがありますので、先にそちらの方をやらせていただいてから、今このレジュメで最後の方に、特に私、「国民主権を脅かす官僚政治」とか、「国会が「国権の最高機関」として活動するための国政調査権」、補充的な調査機能といわゆる独立的な機能といろいろあるんで、これもなかなか重要なことなんで、時間があればお聞きしたいと思います。  最初にまずお聞きしたいのは、政治不祥事発生の原因については先生どうお考えか、政治学の立場からお聞きしたいと思います。  ロッキード事件とかリクルート事件、共和事件佐川急便事件、大型脱税事件と立て続けに政治不祥事が発生してきておりますが、その原因はどのようなところに求められると考えるのか。日本特有の社会体質、政治体質、政治構造、法制度上の問題などいろいろあると思いますが、一番基本的なところはどういうところだというふうにお考えでしょうか。
  155. 山口二郎

    参考人山口二郎君) さまざまな原因が複合していると思いますけれども、その第一は、日本の場合、中央の行政官庁が余りにも大きな予算や権限を持っている、そのことが要するに私企業やさまざまな地域に対して極めて重大な影響を持っているという点が挙げられると思います。つまり、有利な許認可とか補助金をもらいたいという人が要するに中央官庁のそういった政策形成にアクセスを求めて来るわけでありまして、そのことが結局不正な政治献金とかあるいはわいろに近い政治献金を生むということの一番根源ではないか。その意味で、私は恐らく、中央官庁というものはもっと分権化していって、住民に近いレベルで予算の配分とか許認可を行うようにすれば、多少はこういった腐敗も少なくなるのではないかというふうに考えております。
  156. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 そこで、先生の書かれたものをちょっと引用しながら質問させていただきたいと思います。  一九九二年三月号の雑誌「世界」に、先生は「「共和」にみる政治の腐食」という題で寄稿されておりますが、その終わりの「改革論の視点」で、「政治とは権力を追求する営みであり、政治家は権力の獲得と保持を最大の動機として行動する。政治というビジネスを継続するためにはきわめて多額の資金が必要とされる。また、政治権力の獲得に付随する戦利品はきわめて大きい。この二つの否定しがたい現実がある限り、資金の調達と戦利品の獲得との間に悪循環が生まれることは不可避である。」というふうに書いておられます。これ、大変なかなか鋭い観察だなというふうにも思いますが、私自身は三十年ほど中央官庁におりまして、政治家は今七年目というところで、両生動物なので両方から言わせていただきたいと思います。  その対策として先生は、一つは、資金調達を国民全体で広く薄く負担することというふうに挙げておられます。  政治家は確かにお金が要ります。私なんか最もお金を使わない方だと思っておりますが、それでも選挙となればこれは要るんです。手弁当で選挙をやれなんて今ごろそんなことを言えるわけもないので、私はミニマムですけれども、幾分は要るんです。そういう場合に、資金調達がどうしても必要だと、その隠そういうものを国民が広く薄く負担すると、ここで挙げておられるのは、公費助成を挙げておられるのかどうか。いろいろあると思いますが、自民党の政治改革では、今回政治資金としては公費助成をいろいろ考えておりますので、その辺について先生の御意見を。  そして二番目に、先生は、中央レベルの政治において政治権力の獲得に付随する戦利品を予算や許認可といった経済的価値、そういうものに求めるからこういうことが起きるんだと今もおっしゃられましたけれども、したがってそういう経済価値をなくしてしまえと。そして何が残るかというと、名誉や威信といった非経済的な価値に変えたらどうかと。中央官庁からはそういう実施機能を持ったところをなくして、環境庁とか科学技術庁とかそういうふうな、将来名誉や威信がそこで働けば残る、しかし実質的な経済価値のないところにしたらよいというふうにおっしゃられているんですが、私はこの二番目はなかなか実施、実現は難しいんじゃないか。まあ非常に超長期的に見ればとは思いますけれども、資源配分とか国の目標 とするナショナルミニマムを達成するとかそういういろんな財源その他のことで私なかなか大変だと思いますが。  私はここは、先生はほかの本でもちょっと書いておられたんですけれども、いわゆる政権交代ができる仕組みをつくっていくこと、そういうことがこのいわゆる政治不祥事をある程度なくしていく一番大きな基本ではないかなというふうにも思いますので、政権交代をできる仕組みにするには、一つ選挙制度を見直すことだというふうにも思います。  これについては、我が党の今党議決定されたのでは単純小選挙区制を挙げておるわけでございますが、それから、それだけではだめなので二番目には、やっぱり野党さんの方に政権交代が可能な政策を打ち出してもらい、それを実現するのに必要な人材を養成することも大切だというふうに思います。安全保障、外交、原発等に現実を踏まえた政策が必要だと思います。  私、実は五日前、三月二十八日の日曜日、フジテレビの「報道二〇〇二で大変劇的な場面を見て、えっと思ったんです。それは社会党の山花委員長がPKOに関連して自衛隊の合憲違憲を論じたところ、ちょうど小針暦二を遣ってロサンゼルスに赴いておられました社会党の伊東秀子代議士がロサンゼルスから即時に割って入って、独立国家には自衛権があるんです、自衛隊があることは認められるべきである、ただ規模が大きければそれを削ってそれを何々に使いなさいと言うべきであると極めて現実的な見解を示されました。  まあ原発もそう思います。現在、私たちが使っている電気量の二七%はもう原発なんですね。で、二〇〇〇年代へ入れば四〇%がもう原発の電気を使わざるを得ない。それは石油をたいて発電するようなものはもうこれから増設しないということをIEAで決めるなどいろいろございますので、そういうようなことをもうこれからいろいろやっていくことが大切だなというふうにも思います。そういう立地安全対策等について与野党で話し合うことが現実の政治であり、また政権交代を可能にするものとも思いますが、その辺の、政治不祥事をなくしていく、そういう点についての資金の面はいいんですが、二番目のこの政権交代、そういうことについて先生の御意見を伺いたいと思います。
  157. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 御質問の中でいろんな論点があったんですが、まず公費助成の問題でありますが、私も公費助成には賛成であります。つまり、やっぱり政党がまじめに政策を宣伝しようと思えば当然お金がかかるのはやむを得ません。その意味で私は政治家に対して清貧であれということを言うつもりはありませんで、むしろ本当に必要なお金国民が分かち合うのが民主主義にとって必要なコストではないかというふうに考えております。あわせて、公費助成は国民の税金でやるわけですから、いわば党の財政、経理の透明化ということも必要になってくるのではないかというふうに思いますし、また、公費助成を行うのならばなるべく企業や団体からの献金というものを小さくしていくという方向の是正も必要ではないかというふうに考えております。  それから、先生の御質問の二番目の点で、要するに、腐敗のもとにあります中央官庁のさまざまな大きな予算なりその権限の問題なんですけれども、もちろん実現性が薄いではないかという御指摘はあるんですけれども、しかし今、せっかく与野党こぞって分権論というものが大きなブームになっておりますし、例えば佐川で問題になったトラックの許認可とか、あるいは建設、公共投資にかかわるいろんな箇所づけなんというようなことは、これはもう都道府県レベルで行ってもよいのではないかというふうに私は考えております。そうすると、汚職や腐敗が地方に拡散するだけだという悲観論もありますけれども、しかし、地方においては例えば住民監査請求とかリコールとかそういった住民が直接その責任を追及する手段があるわけでありまして、その意味では国レベルで腐敗が起こるよりもまだしも是正の手段があるというふうに私は思います。  それから、三つ目の政権交代と基本政策の話でありますが、私は自民党の議員方々が政権交代は必要だというふうにおっしゃることを聞いて大変心強くするわけでありまして、つい最近までは、日本の政治学の中でも、政権交代なくたってデモクラシーはあり得るなんということを言う人もいたぐらいでありまして、その意味では政権交代が必要だということが一つのコンセンサスになることは大変いいことだと思います。  その場合、必要な条件として基本政策の問題を挙げられました。私もその点は同感でありまして、何というんでしょうか、私たちはもちろん、ここで余り自衛隊論争に踏み込むことは会議の趣旨ではないと思いますが、単に反対とか抵抗という姿勢で万年少数党のその地位に安住することはもはや許されないという観点から、いわば要するに野党の側が政権をとった場合に今ある自衛隊をどうするかということについて、それなりに突っ込んだ現実的な政策提言をやっておるつもりでありますので、その点では今後いわば同じ土俵に立って政府・与党と論争を展開していくことが可能になるのではないかというふうに考えております。
  158. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 次の質問をさせていただきたいと思います。  同じ雑誌「世界」で一九九〇年三月号ですか、先生が「政権交代で何を変えるのか」との題で寄稿されておりますが、その中に「議院内閣制の裏切り」という章があるので、そこをちょっと簡単に読みながら私の質問をしたいと思います。  議院内閣制のもとでの与党は、「具体的な利益配分に関わる政策の実施過程において、」「公式の行政機構に代わって大きな力をふるう」、「しかし、党組織が私的結社として行動する限り、公的制度を前提とする責任追及の手段は適用されない。」、「法的責任は生じない。」と指摘をされておられます。  政治不祥事の場合、個々の議員にとりましてその不祥事にかかわる職務権限があるかないかがいろいろ問題になりますが、今までの判例では不祥事関係のある省庁の委員会委員をやっておる、そしてまた、そこで質問すれば職務権限は十分ありということになっております。委員会の単なる委員を一年生でやっていても、まあ二年生でもいいんですが、やっていても、私らの川の向こう側にいたときの体験からいっても、所管省庁はもう名前も記憶してくれない程度だというふうに思います。  それに比べて、各党のトップクラスの人の各省庁への影響というものは大変大きなものがあるんですが、この人たちは職務権限なしとされるのですから、実態面では何となく大きな矛盾を感じ、そういうことを地元へ帰るといろいろ言われます。また、そのことが不祥事を起こしやすくしているとも思いますが、政党が現在のように私的結社でよいのかについてまた御意見を伺いたいと思います。  もちろん、政党助成をやれば何らかの公的性格的なものは必要だと思いますが、しかし、余り公的な性格を強くして公務員のようにしてしまうと、これはまたソ連邦のような暗いやり方になってもらっても困るので、生き生きと活動してもらわなきゃいかぬけれども、またそういう大きな矛盾もあるという点で、先生のアドバイスなり御意見をいただきたいと思います。
  159. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 御指摘の点は大変重要な点でありまして、まさに憲法の結社の自由と実質的な政治責任との関係をどうするかという難問だろうと思います。  私は、もちろんお金を助成するという場合に、いわば会計報告とか経理の透明性という点で政党に対して何らかの公的な縛りをかけるということは必要だろうと思いますが、それ以上の党内の自治にかかわる問題について公権力がこれに関与をするということはやはり問題ではないか。腐敗と恐怖政治はどっちがいいかと言われれば、それは腐敗の方がいいに決まっているわけであります。 したがって、これはまさに政治家の良心といいましょうか自己規律というものにゆだねるほかはないわけであります。  したがって、本来、国会に置かれております政治倫理審査会とかそういったいわば政治家の職業集団としての自己規律というところに解決策を求めていく以外にないんではないか。弁護士の場合は、弁護士会という一つの職能集団が弁護士の質について一定の管理をするという仕組みがございます。政治家というのはまさに法をつくる、そういう面では弁護士よりもっともっと大事な重要な権力を持った職業集団でありますから、そこにやはり何がしかの自己規律の仕組みというものをつくっていただく以外に手はないのではないか。余り政党法で縛りをかけて検察があるいは警察権力が政治議員個々人の行動に介入をしてくるということは、これはやはり民主主義にとっては余り好ましくないのではないかというふうに思います。  その意味で、与党が入れかわる政権交代というのは時々起こって、与党の特定の地位の、政調会長でも副総裁でもいいんですけれども、そういう地位が実質的に公職に準ずるような重みを持ってしまうということを避けること自体がやはり最も根本的な対策ではないかというふうに思います。
  160. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 では、国政調査権について質問をさせていただきたいと思います。  きのう、参考人一人、証人二人にここに来ていただきましてワリシンや金屏風等に関連した質疑、証言が行われましたが、残念ながら充実感を得られない、疲労のみが残ったというのは私一人ではなかったのではないかなというふうに思います。国政調査権の限界を強く感じました。国政調査権は権力分立制の面と人権保障の面から制約がありますが、検察との関係では司法権の独立により強い制約を受け、行政との関係でも職務上の秘密が大きな壁となっています。人権保障でも不利益な供述は拒否可能ですから、思うようには証言が得られないのではないでしょうか。  きょう、今までに二人の参考人の方からいろいろ御意見を伺いましたが、まとめれば、国政調査権とは、議会が立法、予算の審議、行政監督などその有する機能を有効適切に行使するためにみずから必要とする事実、情報、資料等を収集し、これに基づいて自己の判断を形成する作用である、こう言っておられます。  先生、こちらで先ほどいわゆる独立的な機能もあるという意見もございましたが、確かにこれはいわゆる補充的な機能か独立的な機能かといういろいろ意見があり、今までの二人の方はどちらかといえば補充的な機能ということを言っておられましたが、いずれにしろ余り実益的でないのでそのまま進めますと、いわゆるそういう補充的な機能ですから、何が何でも全部自分で行う必要もないのではないかというふうに思います。特に刑事事件にかかわるものは司法権の独立により強い制約を受けますので、その事案の調査は検察にゆだねて、その調査終了後検察に報告を求め、それを資料として国政に反映させる方が私は効率的だし意味があるんじゃないかというふうに思いました。  きのうの今ごろ、田代証人にここでいろいろ皆さん質問されておられましたが、田代さんは途中で、もうちょっと広いところでと、「広い」という意味をつぶやかれました。あの方の「広い」という意味は決して空間が広いというんじゃなくて、いわゆる証人という狭い範囲のところで来てこういうことをするんじゃなくて、またこんないわゆる衆人環視の場でないそういうところでもう少し言わせてほしいというようなことを言外に言われているんじゃないかというふうにも思いました。  そういうことで、いわゆる検察、司法権と競合するようなそういうものについてはそちらでやっていただき、そしてそれがある程度一段落したならば、こちらの方の理事さんだけが集まるとか秘密会でそういう調査の報告を受けて、そしてそれを今度は国政にどういうふうに反映させていくかということを決めながらそれを公表していくという、そういう何かいわゆる司法権と競合するようなものについては私はもう一工夫要るんじゃないかなということをきのうの証人喚問等を通じて強く感じましたので、その点について最後に先生の御意見をいただければと思います。
  161. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 御指摘のとおり、要するに、法律には触れないけれども疑わしいことをした私人を喚問してその道義的な責任を追及するということは、やはり国政調査権の発動の形としては余り意味がないのではないかというふうに私も思います。  それよりむしろ、例えば日本の検察というのは非常に広い起訴裁量権を持っておりまして、そういう裁量行使が本当に適切かどうかといったような観点から、専ら腐敗や不祥事に対応した行政機関の取り組み方について国民立場でチェックをするという形でその役割を果たしていただきたいというふうに思います。
  162. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  163. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 次に、清水澄子君。
  164. 清水澄子

    ○清水澄子君 山口先生の大変知的な刺激をいつも与えていただいて、参考にさせていただいております。  私は社会党の清水澄子と申します。  私も、いろいろお話を伺っておりましたが、特に現在の国会を目の前にしているそういう議員として、具体的なことをお聞きしたいと思うんです。  今、山口参考人調査権の日常化の必要性をおっしゃいました。今参議院の方は野党が多いと言われますけれども、実は一九八九年の消費税の導入後、ここで政府・自民党が敗北して参議院は多数を占めたわけでございます。そこで、私たちは野党共同で消費税廃止法案を立案して参議院を通過させたわけですけれども、実は消費税廃止法案の立案の際に、行政府の持っている膨大な税に関する情報の提供を求めましたけれども、ほとんどそれらが拒否される状況であったわけです。  そういう状態の中で、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」と憲法はそれを規定しているわけですけれども、行政府にこの情報の提供を拒否されるというふうな状況の中で、国権の最高機関はなかなか実現しにくい、そしてそういう担保もされないと思うわけですけれども、そういう場合に、行政府の情報の提供ということといわゆる「国の唯一の立法機関」というこの四十一条の規定との関係、関連についてどのようにお考えになるか、お聞かせください。
  165. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 先ほど私が申し上げたように、実際に国会の中で調査権を行使したり立法活動を行うのはこれは具体的な議員でありまして、その議員が立法活動なり調査活動について必要な情報を獲得できるのでなければ、抽象的な国会なり委員会にその機能が与えられていても、それは絵にかいたもちになるというふうに私は思うわけです。  国会法第百四条の規定に、要するに議院なり委員会として役所に情報を出せといった場合これは拒むことができないということになっていますけれども、御指摘のとおり、これは委員会が抽象的な権限を持っていたのではそのねらいが達成できないわけでありますから、恐らくこの条文を改めて、要するに、議員が要求した場合に行政官庁はこれを拒めないという形の新しいルールをつくることが、やはり国会が最高機関として、また立法機関として実際に活動するためには不可欠の前提ではないかというふうに思います。
  166. 清水澄子

    ○清水澄子君 その前に、実は個人の議員としてもやはり調査活動とかそういうこともやっているわけです。例えば、私は現在日本の戦後補償問題に取り組んでいるわけです。その中の一つとして従軍慰安婦の問題など追及しているわけですけれども、その場合でも政府に資料提供を要求するというときに大変な大きな壁がありまして、最近ようやく資料が出てきた状態があるんですけれど も、これも民間の学者の研究によって初めてそれらが明らかになり政府がそれを追認するという、そういう状況になっているわけです。  ですから、今、山口先生がおっしゃっているような議院とか委員会とか、そういうところだけの問題じゃなくて、個人の議員としてもその調査権というのは持てるはずであるし、また活動できる権限があるんですが、それについてもなかなかそういう国政調査権というのは機能できないわけです。その場合、先ほど先生は議員活動に対しての情報のアクセス権を確保しなきゃいけないというふうにおっしゃったわけですが、それを強い法的な措置でとおっしゃいましたけれども、それは私も、それがぜひ必要じゃないか、行政府の国会への情報提供についてその情報提供のための特別の法制化というものが必要だと思いますが、まずそれについて具体的な考え方をお聞かせいただきたいのが一つ。  それともう一つ、今おっしゃったように、議院とか委員会調査権があるんじゃなくて個々人議員、そういうところに調査権を与えた方がいいとおっしゃっているわけですけれども、これらについてはどのようなイメージ、いわゆる議員がもう少し何人かで集団になってとかおっしゃっているんですけれども、どういうイメージをおっしゃっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  167. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 前者の情報へのアクセスということでありますけれども、これはやはり明文の規定で、例えば国会議員が法案の審議や国政調査のために行政官庁の保有している情報を必要とする場合、その官庁はこれを全部出さなければいけないといった趣旨の新しいルールを国会法第百四条などに補足する形で追加するということがどうしても必要なのではないかというふうに思います。  それから、その調査権の発動を個人ないし議員のグループでやるということなんですけれども、これは議員立法と同じでありまして、つまり、例えば今、参議院では十人以上の議員が法案を提出できるということになっておりますけれども、同じような形で、例えば十人の国会議員が連名で証人を喚問できるとか、あるいは資料の提出を命令できるとか、そういうことを本来やらなければ恐らくその国政調査権の実質化というのはできないだろうというふうに思います。  それから、ここで一つだけ補足しておきたいんですけれども、こういうことを幾ら言っても実際に国会の中は多数決ですから通らないんですけれども、私は、与党の議員方々がやはり自分たちが野党の側に回ったらどうなるかということをぜひ考えていただいた上でこの種の議論というのを進めてほしいと思うわけです。  つまり、今までずっと四十年近く自民党というのは与党の座にいたわけですから調査権の発動も議員立法も全く必要なかったわけですけれども、将来もし例えば政界再編が起こって、今その与党の側にいる議員方々がもしも野党の側に回ったときにどういう形で与党を攻めるのかということを考えていただきたいわけですね。そのときに、要するに与党を攻めるための道具というものがなければ、ただ犬の遠ぼえみたいに質問をしたり揚げ足取りをするだけでは、やはり国会議員としてむなしいのではないかという感じがするわけであります。そこのところで何か与野党共通した基盤というものをつくってほしいというふうに思います。
  168. 清水澄子

    ○清水澄子君 それから、先ほど政治家の自己規律の仕組みというのをおっしゃったわけですけれども、ロッキードとかリクルート、共和、佐川と、非常に政権政党である自民党議員による汚職事件が絶えないわけです。そのたびに政治家の政治倫理が問題になるわけですけれども、実はこういうことをお尋ねしていること自体に私もちょっと矛盾を感じながら、非常に恥ずかしい思いをしているんです。  私たち国会議員はみんな議員手帳というのを持っております。その議員手帳の中に政治倫理綱領とか議員行為規範というのがはっきり書いてあるんですね。それらはいわゆる道徳的な規範であって、だからこういうものを政治家自身が、自分が自覚しなきゃならないことなんですけれども、これが一向に効果が上がらない、それが現実だと思うんです。ですから、いろんな制度的な変革以前の問題があるわけですけれども、その場合にもやはり政治家の私的利益の実現のために公の権利を悪用する、そういうことをしないための政治倫理法を、やっぱりそういうものを法律でつくっていく。そして、政治家のこの私的な利益の実現の道を規制するための法律を制定する必要があるんじゃないか。  だから、こういう綱領とか規範じゃなくて、こういうものをそのまま本来法律にして、そしてこの法律に違反した場合に、いわゆる憲法には五十八条で内部の規律に関する規則を定めるべきだというのもありますし、それから国会法には懲罰というのもあるんですけれども、しかし懲罰の乱用ということがあってはいけないということでほとんどこれが機能できない状況があるんですけれども、そういうふうな法制化が必要だと思いますが、どのようにお考えになりますか。
  169. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 議員の身分をどうするかというのは大変重要な問題でありまして、これはやはり乱用されると少数党に対する迫害ということに発展する危険性もあるわけで、何というんでしょうか、道義的な警告を発するという以上のことを国会としてやるべきなのかと言えば、これはやっぱり少し疑問があるのではないかという感じもいたします。  結局、腐敗や汚職に対する政治的な責任というものは選挙の場で問われるということが筋だというふうに私は考えております。
  170. 清水澄子

    ○清水澄子君 次に、これは随分皆さんもお尋ねになったわけですけれども、国会国政調査権と検察権の問題なんですね。  しばしば政治家の贈収賄事件で政府側をただしますと、政府側はいつも地検が捜査中だという理由でほとんど質問に答えないわけです。そして、政治家の摘発は常に検察によって行われるわけですけれども、やはりもう少し国会自身がみずからをも浄化するという、そういうやっぱり権限、権威というものを持つべきだと思うんですけれども、その場合に、国政調査権と刑事行政の役割分担というのをどのようにお考えになりますでしょうか。
  171. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 私は法律の専門家ではありませんのでそういう難しい問題は十分答えることはできないと思うんですけれども、一般論として検察の側が犯罪捜査の理由でなかなか手のうちを明かしたくないというのは理解できると思うわけです。つまり、それはやっぱり法的責任と政治的責任というものは違うわけでありまして、国会の場で国政調査権を発動するというのはあくまで政治的、道義的な責任を問うということで議論をすべきではないかというふうに思います。  ですからその意味で、検察と国政調査権との間の役割分担が具体的な制度としてどういう形があり得るのかということは私はよくわかりませんけれども、やはり事実関係究明して、そしてそれに基づいてしかるべく責任をとらせるということはこれは国会としてやることは無理なんじゃないかという感じが私はいたします。それよりも、そういった疑惑を招いたこと自体についての政治的、道義的な責任はどうなんだという形の議論をひとつやるということですね。  それから、私が思いますのは、検察そのものに対する国民にかわるチェックをだれがするのかという問題で、先ほど私申しましたように、日本の検察というのは非常に広い起訴裁量権を持っておりまして、その裁量の行使が本当に妥当かどうかというのは非常に疑問が残るわけです。きのうの金屏風問題にしましても、雑誌等を見ますと検察がちゃんとやってないというような記事がたくさんあるわけでありまして、これは疑惑の当事者を呼んで真相をしゃべれということよりは、むしろ検察庁がいわば一件落着として処理をしたそのこ と自体についての責任を問うという形の議論をする方がむしろ生産的ではないかというふうに思います。
  172. 清水澄子

    ○清水澄子君 先ほども地方自治体と国政との違いの中で、国民の知る権利にこたえる方法、いわゆる国民主権を実質化していくための国政調査権の活用ということは非常に重要だということがあったわけですけれども、今その地方自治制度の中にあるリコール制とか住民監査請求、そういうふうなものを何か国政レベルにまで拡大して、そして公金支出によるこの不明朗な問題、それから国会議員や国家公務員に対する監査請求制度、そういうものを何か工夫して国民がそういう問題に参加できるそういう制度というのは考えられないかどうか、その点どのようにお考えになりますか。
  173. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 手始めは恐らく情報公開制度というものを国政レベルできちんとつくるということであろうと思います。  今、総務庁などでも原案の検討はしておりますが、どうも政府が及び腰であるかのような印象があるわけでありまして、これはやはり議員立法で強力に推進して、いわば国民の求めに応じて行政機関が持っているさまざまな政策の決定、執行上の情報を開示するという仕組みをやはりきちんとつくっていく必要があるだろうと思います。  それから、行政手続法についてはこれから恐らく国会で審議が始まると思いますので、これも早急に具体化していくということが必要ではないかというふうに思います。  それからあとは、ほかの国の例で申しますと、例えばオンブズマン制度というものを国のレベルで導入して、随時、そういった不祥事が発生した場合に、行政機関予算執行状況等についてチェックをする強い権限を持った新しいタイプの公務員をつくるということも一つのアイデアではないかというふうに思います。
  174. 清水澄子

    ○清水澄子君 それから、先ほど二院制との関連で参議院の審議のあり方、衆議院とは異なったそういう独自性というものを考えるべきではないかということをおっしゃったわけですが、それらについてどんな具体的なイメージを持って話してくださっているのか、ちょっと具体的なことをお聞かせください。
  175. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 国会が余り強い国政調査権を持って年がら年じゅう政府のやることをせんさくするということがあれば、これは内閣の方にとっては行政の執行にとって桎梏になるという問題もあるわけでありまして、一方においてやはり国会は内閣の提出したさまざまな政策を決定していくということも必要な機能であります。  そこで、その二つの院で役割分担を考えて、衆議院では従来どおり内閣を支える、要するに、与党が多数を握って政権を構成し政策をどんどん決定していくという形の役割を当然担うことが必要になってくるわけであります。しかし参議院は、せっかく二院制があるわけでありますから、二つの院の役割分担というのは当然あってしかるべきであろうと思います。  例えば国会議員全体に対してさっき申し上げたような強い調査機能を与えることが難しければ、とりあえず参議院についてだけでもそういった衆議院よりもやや強い形の、例えば参議院議員は個人個人で調査権を行使できるとか、あるいは参議院については通常の会期以外に会議を随時開いてそういった調査活動を行うとか、そういった形の個性化ということを考えてもよいのではないかというふうに思っております。
  176. 清水澄子

    ○清水澄子君 さっき国会法第百四条の問題点の御説明のところで、野党にはもう少し行政府チェックの活動に優位性を与えるようなそういうものがあっていいんじゃないかとおっしゃったんですが、それも具体的にはどういうことでしょうか。
  177. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 国会議員が個人として調査権を使えるということは、要するに野党の議員が従来よりもはるかに強い立場で行政部に対してチェックができるということであります。  つまり、与党というのは基本的に行政部と一体で、これを支える立場にあるわけで、主体的に不祥事や腐敗のチェックということを行う動機づけもないわけでありますから、その意味で野党こそは、要するに行政部に対する監督やチェックというか、腐敗の追求ということをやる本来の使命を持っているというふうに私は考えるわけで、その意味で、それを個人に与えるということはすなわち行政府とはいわば対立する立場にある野党の議員がより活動しやすくなるということで、野党の側にある種のアドバンテージといいますか有利が与えられるということになるわけです。
  178. 清水澄子

    ○清水澄子君 私はいつも国会は国権の最高機関というその文言と実態との乖離を感じているわけですけれども、特にこの国会予算審議等についても言えるわけですけれども、予算の編成権というのは大蔵省主計局が握っているわけですね。そして、国会というのはその予算を審議し承認を与えるだけ。アメリカの連邦議会予算局を議会に附属させて、そして予算の編成権を議会は持っておりますね。ですから、そういう国会という機能が非常に、機能というんですか、とても弱いという感じがするんですけれども、そういう意味でも予算の編成権を国会機能一つにすれば、もっとそこに対して議員同士がその予算あり方について、すべて行政にゆだねるんじゃなくて、それを編成していく力または政策、そういうものを争わせることができるんじゃないかと思うんですけれども、そういう点についてお聞かせください。
  179. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 日本とアメリカは基本的な政治制度が違うので単純な比較はできないと思います。その意味で、予算は内閣が作成し、これを国会に出すということは、議院内閣制をとる以上しょうがないと思うんですね。  問題は、そういった予算についての実質的な吟味やチェックをするための体制が国会にあるかどうかということで、その意味で、財政や税制についてのエキスパートを国会できちんと持ち、大蔵省の主計や主税に対抗するようなマンパワーを持った上できちんとした財政政策の吟味をしていくという仕組みをやはりこれからつくるべきではないかというふうに思います。
  180. 清水澄子

    ○清水澄子君 終わります。
  181. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 次に、広中和歌子君。
  182. 広中和歌子

    広中和歌子君 公明党・国民会議の広中和歌子でございます。  山口参考人は、もう野党の置かれている立場、そして感じているフラストレーションをまことに見事に説明していただきまして、感謝していいのか、本当に情けなく思っているところでございます。  例えば野党の得る情報量のことでございますけれども、これはかつて野党だった方が与党になられましたときに、政府から得られる情報量が格段に違う、十倍も二十倍も違うのだということを得意げに話していらしたのを今思い出すわけでございますけれども、野党の得る情報量がいかに少ないかということ。それからまた、審議時間の短さというのもまさに御指摘のとおりでございまして、例えば私どもはアメリカの議員の十分の一ぐらいしか審議していないんじゃないかと思います。要するに、どうしてそうなるかというと、政府の提出する法案審議に必要かつ最低限のそういう時間が決められている。これは、私は国対にも議院運営委員会にも属したことがないので、どうしてそういうふうになるのか、これは全部与党が悪いのかどうかわかりませんけれども、そういうのが現実でございます。  日本の国会というのは、もう御説明いただきましたように、明治にイギリス型の議院内閣制をとりそこから出発したわけでございますけれども、戦後アメリカの影響を受けた。しかし、両方のいい部分をとればいいのに、何か悪い部分を受けとっているような気がするわけでございます。  例えばイギリスでは官僚の中立性が守られている。これは不文律なのかそれとも法律で決まっているのかわかりませんけれども、官僚は原則として政界に入らないということは事実なんでしょう か。  それから、イギリスの場合は、政権交代があるということも相まちまして官僚の中立性というのは確実に守られているということを聞いているんですけれども、それは果たして事実なのかどうかということを伺いたいし、アメリカであれば立法府からは大臣が出ない、出たとしたら立法府の議員であるという立場をやめて行政府に入るということでございますけれども、こうした仕組みが立法府の独立性と、それから与野党の共通意識というんでしょうか、立法府の議員としての共通意識みたいなのを持つその原因になるんじゃないかと思いますけれども、コメントをお願いいたします。
  183. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 行政の中立ということですけれども、イギリスにおいては、もちろん法律で公務員の政治的中立というのはあるわけですけれども、伝統として公務員は政治家にならないということがずっと続いてきたわけであります。  イギリスの場合は、政治家のリクルートといいましょうか、養成の仕組みがやはり全然違うわけでありまして、これは要するにいろんな地方の政治家とか労働組合とかそういうところから政治家を地方レベルでリクルートするという仕組みになっておりまして、政界と官界というのははっきり分かれている。サッチャー政権が十年続いたわけで、中立が少し危うくなっているのではないかという議論も最近はあるようですけれども、日本に比べますとやはり依然として公務員の世界と政治の世界というのは切れているというふうに私は思っております。  行政の中立ということには大きく申しまして二つ意味がありまして、一つは、要するに行政部というのは政治的な指導者つまり内閣の指揮監督に服するというのが一つの内容、もう一つは、行政部の持っている例えば公務員のポストとか予算とか許認可とかそういった資源を党派的に運用しちゃいけないという原則であります。  日本のように一つ政党が四十年も政権の座にあれば、中立ということを守るがゆえに党派化してしまうという逆説があるわけですね。そして、その中で行政の持っている資源を党派的に運用しちゃいけないという二番目の原則が危うくなってきているということだろうと思います。  それから、アメリカの場合は、やはり何と申しましても厳格な権力分立制があるわけで、議会人はやっぱり議会人という非常に強いアイデンティティーを持って行政に対するきちんとしたチェック活動を行っている。それから、法律をつくるのは自分たちだけだという非常にプライドを持っているわけですね、アメリカは議員立法しかない国ですから。その辺がやっぱり全然日本と違うと思います。
  184. 広中和歌子

    広中和歌子君 野党の調査活動の限界を御指摘になっているわけですけれども、そして調査スタッフの充実を指摘なさいました。しかし、私たち、現在、参議院調査室もあれば国会図書館にもスタッフがいる。そういうことなんですけれども、こんなことを言うと大変問題があるかもしれませんけれども、その政策スタッフの人たちがどういうところから情報を得るかという問題でございますけれども、やはりトップの情報というのは官僚が握っていてなかなか外に出さないということで、ぜひもうこれは情報公開が必要だろうと思うのでございます。  これは単に国会とそれから行政府とのかかわりだけではなくて、市民といわゆる政府とのかかわりにおきましても情報公開が非常に必要だと思いますけれども、それはもう皆さん言っていることですけれども、どういうふうにしたらそれが得られるか、もし具体的な方途があれば教えていただきたいと思います。
  185. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 極端なことを申しますと、自民党の先生方が野党の悲哀を一回味わうということ以外に手はないわけであります。  我が北海道におきましては、いわゆる革新系の人物が知事になっておりまして自民党は野党になっておるんですけれども、やはり自民党の議員とて野党の側に回りますとなかなか行政の側を攻めるというのは簡単ではないんですね。道議会においても、しょっちゅう審議空転とかいって国会における保守革新の対立をひっくり返したような格好の非常にある意味で無意味な議会の運営が行われているということを我々日ごろ見ております。  その意味で、やはり要するに野党の側に回ったときにどうやって政府・与党を攻めるかということをしっかり想像していただいて、そして野党の議員でも有意義な国会活動ができるような仕組みをどうやってつくるかということを国会議員全体の問題として考えていただく以外に私は手はないだろうというふうに思います。
  186. 広中和歌子

    広中和歌子君 相手立場に立つというのがまさに公正の原則だろうと思いますので、もう本当に政権交代が必要だろうと思っているところでございますけれども、現在、自民党が提案していらっしゃる小選挙区制でございますけれども、小選挙区制と政権交代の相関関係についてはどういうふうな御意見をお持ちでしょうか。
  187. 山口二郎

    参考人山口二郎君) イギリスで小選挙区制をしいてかつ周期的に政権交代が起こるというのは、これは全くの偶然だと私は思っております。  つまり、イギリスは保守党、労働党ともに非常に強い地域基盤というのを持っていて、ここは絶対牙城だというところがそれぞれある程度あって、その上で中間的な草刈り場で戦いをやってどっちが勝つかという選挙を毎回やっているわけですね。だから、選挙のたびに結構伯仲した戦いになって政権交代があるわけですけれども、日本のような土壌でもし小選挙区制をしけば、これはもう一つの党が圧倒的に勝つということになるわけでして、これはある意味で、何というんでしょうか、非常に民主主義の原則からして問題がある。  それから、小選挙区制というのは、ある意味では要するに一等賞をとった者が全部とっちゃうという勝者皆どりの思想に基づくわけでありますから、一等にならなかった人たち意見というのが全く無視されてしまうという問題点がある。その意味でも私は小選挙区制には反対であります。
  188. 広中和歌子

    広中和歌子君 日本の与党の方々は、行政府が準備する予算とか法律、政府提案の法律がほとんどなわけでございますけれども、それを部会で審議なさいますよね。その部会で審議なさるときにさまざまな影響力を行使できるんじゃないかということで、与党に関しましてはその部会を公開にすべきではないかという意見があるのでございますけれども、それについてどうお考えになるんでしょうか。  そして、もうこれは、例えばそういうことはないと思いますけれども、万が一、何というんでしょうか、ある種の腐敗が起こりましたときに、癒着による腐敗が起こりましたときに、やはり検察庁が審査しやすい、そういうことになるんではないか。野党の場合は国会質問をいたしますから、それが記録に残り、非常に逮捕されやすいというのか、もし問題があったときですけれども。自民党の場合はありにくいわけですね。その点についてコメントをお願いいたします。
  189. 山口二郎

    参考人山口二郎君) そういうフラストレーションは私も共感するんですけれども、ただ、政党のそういった会合について公的な縛りをかけるということは、やっぱり憲法の原則からいって問題があると思います。やっぱりそこは政権交代を起こして、与党、野党入れかわるということ以外に根本的な手はないんじゃないかというふうに私は思います。  万一、野党が政権党になった場合、そういう同じルールを適用された場合、検察が今の野党の内部に介入してくるというおそれもあるわけですから、やっぱりそういうルールをつくることについては慎重であった方がいいと思います。
  190. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。野党として頑張らせていただきます。
  191. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 次は、吉田之久君。
  192. 吉田之久

    吉田之久君 山口参考人、御苦労さまでござい ます。いろいろお話を承りまして、大変ありがたく拝聴いたしました。  私は、今日の目を覆うような政治腐敗あるいはごうごうたる国民政治不信、そのすべての原因は政権交代が行われていないところにある、政治そのものに競争の原理がなくなっておると思うわけでございます。しかも、四十年近く自民党が政権を握っておられる。四十年といったら、ほとんどもう二世代に当たるわけでございますね。  だから、今や国民、有権者の大半は日本の国の政治というものはこういうものなんだと、半ば固定化してそう考え始めているのではないか。いわば十重二十重に重武装した軍団と徒手空拳の集団とがぶつかっておる。このハンディは非常にきついわけでございます。だから、だんだんに野党ももう抵抗政党になり切ろうという動き、それではいよいよ政権から遠ざかると、今大いにお互いに悩んでいるところでございます。  一方、与党・自民党の方も、一昔前はかなり激しい総裁公選なんかが行われましたが、最近は見事な派閥の支配が上手にでき上がりまして、派閥のバランスでそういうこともだんだん少なくなりつつある。これも競争の原理を失っている。それがすべての今日の日本の政治問題点ではないかと思うわけなのでございますが、先生はどうお考えになりますか。
  193. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 全く同感でございまして、政権交代がないということが要するに許認可や予算の分配をめぐっていわば特定の窓口をつくってしまう。つまり、自民党の偉い人に話を通じればもう自動的に便宜が得られるという仕組みができてしまうわけでありますから、その意味で、金丸前副総裁のような問題が起こってくるのも長期政権ゆえの問題だというふうに思います。
  194. 吉田之久

    吉田之久君 次に、先ほども小選挙区制の問題が出ましたが、今、自民党は単純小選挙区、日本を五百の選挙区に細切れに分断して、そしてその代表を選ぼうと。いろいろ一長一短あると思うのでございますけれども、いかにすぐれた政治家集団でありましても、その局地部分的なローカルの代表になり切ろうとするならば、その地域の問題については万能でありましても、本当に天下国家、世界のことを考える、そういう政治家がだんだん少なくなりはしないだろうか。にもかかわらず、その中から総理が選ばれる、あるいは多くの閣僚が選出されるということになるのは将来の日本にとっていいんだろうか。  アメリカのように上院がかなりの機能を持っておればよろしゅうございますが、そいう点では日本の参議院ももっともっと権威あるハウスにならなければならないと我々も思い始めているところでございますが、この辺の問題につきまして先生はどうお考えでございますか。
  195. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 先生の御指摘になった点は大変重要でして、要するに代表する議員と地元選挙区との距離というのがどの程度あればいいのかというのが今の選挙制度の最大の問題点だと思います。現状の中選挙区制というのではやっぱり代表と地元との距離が近過ぎる。だから、国会議員方々がみんな橋がどうした道がどうしたという話をする。もう少し距離を遠ざける必要があると私は思っております。そして、その国会議員方々が広い見地で国全体の問題を考える、その中で地域の利害というものをある程度犠牲にしても国全体として一つの方向を選択するというのがあるべき国会の姿だと思います。  その意味で、小選挙区制をしけば、まさに御指摘のとおり、二十五万程度の人口の区域から国会議員が出るということでありますから、今よりも一層地元と議員との距離が縮まってしまう、その中で地元の非常に細々とした利害に国会議員が縛られてしまうという危険性があると思います。
  196. 吉田之久

    吉田之久君 いま一つ先生の御指摘の中で、国会議員の活動、意思決定の中で余り党議拘束が強過ぎることはいかがなものかというような御意見もございましたが、まさにそう思うわけでございます。  例えば、脳死を認めるかどうか、臓器移植について積極的な姿勢をとるかとらないか、これは政党会派の問題ではないと思うのでございますね。あくまでも個人が宗教とか哲学とか人生観とかいろんな体験によって判断する問題の最たるものだと思います。米の問題にいたしましても、やっぱり農村出身あるいは都市出身の議員それぞれによりまして判断が違います。こういうことを余り政党で完全に縛り過ぎるのはいかがなことか、せめて参議院ではもっと党議拘束というものを緩やかにしようではないかと、今、野党の議員同士でもそろそろ話し合っているところでございますが、その点先生はどうお考えでございますか。
  197. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 予算だとか本当に重要な法案について党議で縛るのはやむを得ないと思いますが、やはりもっと活発な国会論議をするためには、御指摘のとおり、議員個人個人の良心にかかわる問題については自由な討論をすべきだというふうに思います。
  198. 吉田之久

    吉田之久君 ありがとうございました。終わります。
  199. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 次に、吉岡吉典君。
  200. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日本共産党の吉岡です。  先生のお話に沿ってお聞きしたいことがたくさんございますけれども、きょうは短い時間の中で、国会の現場ではどういうことが議論になっているかということについての先生の御意見をお伺いしたいと思います。  まず、去年の通常国会証人喚問がずっと論議になったときに、これに反対する論拠として持ち出されたのは憲法違反だということでした。憲法六十二条を見ますれば憲法違反だという論議が出てくる余地は全くないはずですけれども、しかしこれがもう繰り返し繰り返し論議になって、去年の通常国会ではとうとう証人喚問は実現できませんでした。そういう議論が成り立ては、戦後ずっと日本の国会でやってきた証人喚問国会が憲法違反をやっていたということにもなりかねない議論ですけれども、こういう議論というのは成り立つ余地というのが幾らかでもあるのかどうなのか、先生はどのようにお考えになりますか。
  201. 山口二郎

    参考人山口二郎君) その憲法違反という議論が何を根拠にしたものか私は……
  202. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 人権じゅうりん。人権問題。
  203. 山口二郎

    参考人山口二郎君) そうですか。  もちろん、証人喚問等を行う場合にその証人人権を確保するということは必要ですけれども、それは証人喚問を行った上である程度配慮すればよい話でありまして、人権を侵すから憲法違反だというような理屈は成り立たないと思います。
  204. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 現場ではそういう議論が去年は問題になりました、去年の予算委員会の構成はことしと非常に大きく違っておりますけれども。ことしの予算委員会証人喚問に応じないということで出てきました議論は、やっても意味がないという、端的に言えばそういう議論でありました。そして、きのうですか、政治家抜きの証人喚問参考人ということになりました。  そこで、私は先生にも意見を求めたいと思いますけれども、テレビ放映を含めて証人喚問あり方について、これをより効果的なものにするために研究すべき余地はいろいろあると思います。しかし、それはすぐできることでもありません。当面は現在の議院証言法に基づいてやっていく以外にないわけで、この現在の議院証言法に基づいてもより効果的な方法を我々が研究もし、努力もしていかなくちゃならない。  例えば、時間をうんとかけて繰り返しやるというふうなこともその一つだと思います。アメリカのウォーターゲート事件証人喚問というのは、三カ月もかけて三十五人の喚問を行って非常に大きい仕事をやり遂げた。日本でもロッキード事件のときには時間をかけてたくさんの証人喚問を行って一定の成果を上げたと思います。そういうことが必要ですけれども、ところが、現実の喚問に十分な成果が上がっていないということを論拠にして証人喚問をやらないという論議が続いて、審議中断という事態にもなったわけです。  私は、今の証言法での証人喚問というのは全く 無意味だという前提で先生もいろいろなきょうの提案をなさっているとは思いませんけれども、その点に関連して、やはり改善しなくちゃいかぬ問題と、現在の証言法のもとでもどういう点を努力しながらやることが必要かという点についての先生の御意見をお聞かせ願います。
  205. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 一つの問題は、予算委員会証人喚問をすることの適否ということです。つまり、予算委員会というのはやっぱり予算を審議するのが一番の仕事でありまして、現状では野党がいわば予算を人質にとって与党から妥協を引き出すということで証人喚問をやっているわけですけれども、腐敗の問題とか倫理の問題とか、そういうものはやはり専門の特別委員会でもつくって、そこでじっくり時間をかけてやる、予算のスケジュールとかそういうものは関係なしに専門的にやるということが必要ではないかというふうに思います。
  206. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その特別委員会をつくっての証人喚問ということにはなお強い反対がありまして、特別委員会を設置することも不可能です。特別委員会をつくってであれどうであれ、現行の議院証言法の中でも我々が大いに努力しなくちゃならない、当面はそれで行くしかないわけで、その点については先生どうお考えになりますか。
  207. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 例えば不正蓄財とか脱税の問題であれば、これは大蔵委員会でやるとか、建設省の公共投資の不正の問題についていえば建設委員会でやるとか、佐川の問題は運輸委員会でやるとか、それぞれ専門委員会でもってやろうと思えばできないことはないと思うんですけれども。
  208. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私もそういうふうに思います。そういう点で私は、証人喚問あり方についてより効果的な研究が必要であると同時に、現在の法律のもとで我々が証人喚問をやる場合に、そのことを理由に証人喚問をやらないという議論ではやはり国民の期待にこたえられないという意見を持っておりますので、その点はもう一度、先生どうお考えになるか、お伺いします。
  209. 山口二郎

    参考人山口二郎君) もちろん証人喚問は場合によっては必要だと思います。ですから、今の参議院状況を前提とすれば、さっき私が申し上げた、全会一致でやるという慣行をやはり見直して、議院としてその必要があれば決をとってでも証人の要請なり参考人の招致をするという議会運営をやる必要があるのではないか、ぎりぎりになったら。やっぱり国民もそれを望んでいるというふうに思います。
  210. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 終わります。
  211. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 次に、乾晴美君。
  212. 乾晴美

    ○乾晴美君 民主改革連合の乾でございます。  三時から大変お疲れでございます。  私、久しぶりに胸のすくような御高説を拝聴いたしまして、非常に胸の高鳴る思いをいたしております。私たち民主改革連合は、もと連合参議院と申しておりましたけれども、先生の御指摘のように、八九年のあの消費税のときに上がってまいりまして、消費税の廃止に力を入れることはもちろんでございましたけれども、何としても情報公開法をまずつくらなきゃだめだということと、それと行政手続法もやらなければということで、今でも燃えておるわけなんです。  なかなかそれが実現されませんので、先生のそういった情報公開法だとか行政手続法についてのこともいろいろお聞かせいただきたいんですけれども、何としても時間が六分という限られた時間でございますので、それは後日先生から別の機会にお伺いするということにいたしまして、先生は大学で教鞭をとられているということでございますので、今の若者についてちょっと聞かせていただきたいと思っておるんです。  実は、私も私的なことで非常に恐縮ですけれども、高校で教鞭をとっておりまして、こちらに三年参っておりまして、先刻PKOの問題だとかカンボジアの問題がやかましくなりましたときに郷里の徳島の方へ帰りましたら、久々にその若者たちに会いました。それで、今PKOで大変なのよと言うと、えっ、PKOって何と言うわけです。この間二月の八日から十六日までカンボジアの方に参りましたけれども、カンボジアヘ行っててねと言うと、あっ、そうですか、何の用事で行ってたのというような感じで、カンボジアが今どんな状況に置かれているかということも全然わかってないわけなんです。じゃ国会議員の先生で知っている議員さんの名前言ってごらんと言っても、ほとんど言えないというわけで、私は今の若者が政治離れをしているのではないかと非常に寂しい思いをしているわけなんです。  先生は若者が政治離れをしているようにごらんになっているのか。もし、そういうふうになっているなとお考えになれば、どうすればその若者たち政治に関心を持てるようなことができるのかということでお伺いしたいと思います。
  213. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 私は、若い人に余り悲観的ではありませんで、特に八〇年代の末、まさに消費税とかあるいは東欧のいろんな変動とかでやはり政治に対すみ関心は非常に高まってきたと思います。  学生と話をしておりましても、現状に対する不満は非常に強い。ただ、昔であればそれが社会党なり共産党なりの支持につながっていたのが、今はそうではない。既成の政党は全部だめだということで彼らの不満が行き場を失っているのが今の状況だろうと思います。
  214. 乾晴美

    ○乾晴美君 私もきっとそうだろうなというように思うわけなんです。この九二年の七月の選挙でございますけれども、私たちにあれだけたくさんいただいた票が、民主改革連合はゼロだったという非常に悲しい思いをしたわけなんですが、でも全般的に選挙の投票率が五〇・七〇というようなことでございまして、若者も離れているな、そして一般の方々も離れているなというように思うんですけれども、そこら辺は先生はどのようにお考えでしょうか。
  215. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 投票率が低いから関心がないというわけではないんで、おもしろくないから行かないだけの話であります。つまり、もっと魅力的な候補者が出ればみんな投票に行くわけで、その意味で活発な論戦と候補者の魅力がやはり求められると思います。
  216. 乾晴美

    ○乾晴美君 私、クリントンさんの選挙の前に、十月三日から九日、アメリカの方へ行かせていただきました。そのときに、選挙方法が随分日本と違うなというふうに思いました。  それは、日本は投票所の入場券を家の方に一枚ずつ送ってくるわけなんですけれども、どうもアメリカはそうじゃなくて、有権者登録制というような形をとっていらっしゃるんだなというように思いまして、自分にも一票を入れる権利があるんだということを非常に強く感じて帰ってきたんですけれども、こういった方法を日本に導入するというようなことに関しては、先生はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  217. 山口二郎

    参考人山口二郎君) やはり主権者としての自覚を持つことが何といっても腐敗防止の根本的な対策だろうと思います。その意味で、要するに単に黙っていては一票を行使できない、みずから有権者として登録をするということで政治に対する自覚を呼び覚ますということでは、私はその制度の導入というのはある意味で意味があるかなと思います。  それからもう一つ大事なことは、アメリカなどにおいては例えば戸別訪問というのは全く自由であるし、日常の市民生活の中で政治について語り合う、またお互いに意見を出し合うという文化があるわけでありまして、そこがやはり腐敗した議員を落とすパワーを生む原動力だと思います。
  218. 乾晴美

    ○乾晴美君 今、これだけ金権腐敗の政治が行われているというようなことで、企業、団体の献金というのをもう廃止しようじゃないかというその一方で、今度、選挙費用の公営化といいましょうか、そういうのはどうだろうかというような話も出てきているんですが、きょうの朝日新聞の「声」というところを見ておりましたら、東京都の方なんですけれども、東京滞在費の二十五万、 けしからぬというようなこともありまして、これは公営化というのはなかなか難しいのかなというように思いますけれども、先生はどのようにお考えでしょうか。
  219. 山口二郎

    参考人山口二郎君) やはり民主政治を支えるためにはそれ相応のコストが必要だと思います。その意味で、余りやっかみ感情で国会議員の得ているいろんな便益について批判するのは好ましくないんじゃないか、必要なものは国民全体で負担していくという議論をする方がよいのではないかと思います。
  220. 乾晴美

    ○乾晴美君 どうもありがとうございました。
  221. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 次に、西川潔君。
  222. 西川潔

    西川潔君 西川でございます。よろしくお願いいたします。  朝からお二人の先生にもいろいろと参考になるお話をお伺いいたしまして、おさらいの意味も含めまして二、三お伺いしたいと思います。  いろいろと新聞をにぎわしております不祥事なんですけれども、先生がお考えになるいわゆる新たな不祥事を防ぐための手だてというのは何かございませんでしょうか。
  223. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 要するに、いかなる法律をつくってもそれをくぐり抜けて悪いことをする人は出てくるわけでありまして、問題はそれに対する制裁をどうするかということだろうと思います。したがって、政治資金の規制にしてもあるいは公務員の涜職にしても、現状よりももっと罰則を強化する、そしていわゆる一罰百戒ということで、要するに政治生命を絶つというような厳しい罰則をつくることがさしあたり一番有効ではない保かというふうに思います。
  224. 西川潔

    西川潔君 次に、大阪なんかへ帰りますと地元の言葉で、国政調査権あるのにどないなってんねん、ちゃんとやってんのかいな、あんたら、というようなことをよくお伺いするんですけれども、現在の国会と行政の関係といいますか、今の姿で果たしていいのかな、そして情報の流れ方なんかにも、ここで約七年お世話になりまして、僕らは小会派ですから本当に少ない情報の中でいろいろ勉強させていただくわけですけれども、議員と行政のあるべき姿というのを先生のお考えがございましたらお伺いしたいなと思います。
  225. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 議員というのは、法律をつくる、そして行政部の活動を国民にかわって監督をするというのが役目でありまして、許認可や補助金の配分の過程に影響力を行使するのは国会議員の仕事ではないというふうに思います。    〔理事井上裕君退席、委員長着席〕
  226. 西川潔

    西川潔君 次に、政治資金というものの集め方というのを午前中にもお伺いしたんですけれども、先生はどのようにされたらいいというような御意見をお持ちでしたらお伺いしたいと思います。
  227. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 基本的には公費助成とあとはもう個人の浄財ということで賄っていくのが理想ではないかというふうに思います。ただ、現実的にいわゆる企業・団体献金を一切禁止するというと、すぐには実現できないでしょうから、そういうものについては収支をなるべく透明化する、お金の流れをわかるようにした上でそういった献金をするという仕組みをつくっていくべきだと思います。
  228. 西川潔

    西川潔君 ありがとうございます。  僕は、同じ目の高さでこちらで頑張らせていただければと思いまして、約七年間議員パスも使わない、政治献金も一円もいただかないということでやらせていただいておるんですけれども、この中へ来てわかりましたけれども、政治活動というのは本当にお金が要ります。僕はおかげさまで週末、役所のお休みのときに仕事をさせていただいておるんですけれども、そうでないと実は本当に食っていけないわけですね。何か低い話になりまして申しわけございませんのですけれども。  そういう意味で、最後に先生にお伺いしたいのは、いわゆる証人喚問のときのテレビの撮影で静止画になっておるんですが、あれについて一言ございましたらお伺いしたいと思います。
  229. 山口二郎

    参考人山口二郎君) やはり昔のように普通の中継をしてほしいというのが大方の国民の希望だろうと思いますし、私自身もそういうふうに思います。
  230. 西川潔

    西川潔君 終わります。ありがとうございました。
  231. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で西川君の質疑は終了させていただきます。  次に、武田邦太郎君。
  232. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 日本新党の武田と申します。  もう問題は出尽くしましたけれども、先生がかわられたことですので、大いに気になるわけでありますけれども同じ問題を繰り返して違う先生にお尋ねします。  先生のお話では、野党の仕事は行政のあり方を正すということの問題が大きいと、こういうお話でしたが、現状では同時に与党のあり方を正すことも野党の仕事で、これは時代が、政権がひっくり返っても同じことだと思うんですね。  今、国政調査権が大きな限界を感じておりますのは、喚問したい証人はなかなか呼べないという問題があるわけです。それは証人喚問が悪者退治の手段の感じであるからというようなお話もありましたけれども、もちろんそれもありましょうが、どうもそれが直ってもこの問題は解決しそうもないという実感がいたします。  そこで、政権交代すればいいとか、あるいは参議院が政権から離れた良識の府になればいいとか、これはもうよくわかるんでありますけれども、これはちょっとやそっとでできる問題ではありません。先ほど、聞き違いかもわかりませんが、先生はたしか新しいルールがつくれないかというようなことをおっしゃったというふうな気がしたんですが、もしその新しいルールなるものがつくれるものならばどういうものか、お伺いしたいと思います。
  233. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 例えば議員立法で国会法の改正案をつくって、証人の喚問なり資料の提出等について、先ほど私が申しましたように、例えば議員十名の発議によってこれをできるというようなルールをとりあえず案としてつくって、一応みんなの国民的な関心を呼ぶということがとりあえず第一歩だろうと思います。
  234. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 それで、もう一つの話は国政調査権国民参加の問題ですね。調査権行使に関して審議機関の必要性、この審議機関中身といいますか、御説明いただければ。
  235. 山口二郎

    参考人山口二郎君) そこで私が考えておりますのは、国政調査権が乱用されて個人の人権が侵害されることがないようにするということで、例えばマスコミなんかに今、要するに読者や視聴者の代表でつくる審議会みたいなものがあって一応中身もチェックするというようなことをやっておりますけれども、同じような形で有識者による国政調査権実態についての審査機関をつくって、行き過ぎがあればそれを指摘するというようなことを考えております。
  236. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 先ほど広中委員からもお話がありましたが、こういう事態を打開する一つの手段として情報公開法の制定があるわけですね。私どもその運動をやっておりますが、この情報公開法の制定がどの程度そういう役割を持ち得るのか。相当大きい期待をしてよろしいものでしょうか。
  237. 山口二郎

    参考人山口二郎君) 万能ではないと思いますが、例えば通達行政とか行政指導とか、そういった問題について行政部の側に一定の緊張感を与えるということで効果は期待できるだろうというふうに思います。
  238. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 終わります。
  239. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 武田君の質疑は終了いたしました。  以上で山口二郎参考人に対する質疑は終了いたしました。  山口参考人には、長時間にわたり当委員会のために貴重な御意見をお聞かせくださいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して感謝いたします。ありがとうございました。(拍手)  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  240. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 速記を起こしてください。      ――――◇―――――
  241. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 予算執行状況に関する調査を議題といたします。  政府から発言を求められておりますので、これを許します。後藤田法務大臣。
  242. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) このたび、本委員会より、前衆議院議員金丸信、以下金丸前議員と申し上げます、及び金丸前議員の秘書であった生原正久、以下生原元秘書と申します、の所得税法違反事件捜査処理等について報告をされたい旨の御要請を受けましたので、法令の許す範囲内でその経緯等を御報告いたします。  東京地方検察庁においては、金丸前議員及び生原元秘書の所得税法違反事件につき、三月六日、両名を逮捕し、東京国税局とも連携をとりつつ捜査を進め、同月十三日、公訴時効の完成が切迫していた昭和六十二年分の所得税法違反の事実により、両名を東京地方裁判所に公判請求し、さらに同月二十七日、その後の年分の所得税法違反の事実についても同様に公判請求し、脱税関係捜査処理をおおむね終了しました。  検察当局においては、厳正公平、不偏不党の立場を堅持しつつ、法の定めるところにのっとって真相解明に必要な捜査を行い、法と証拠に照らして適正な事件処理を行ったものでありまして、捜査処理の具体的内容等は引き続き政府委員から御報告いたします。  以上でございます。
  243. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 次に、法務省濱刑事局長。
  244. 濱邦久

    政府委員(濱邦久君) 引き続きまして、金丸前議員及び生原元秘書の所得税法違反事件につき、その捜査処理の具体的内容等を御説明いたします。  東京地方検察庁、以下東京地検と申し上げますが、東京地方検察庁は、東京佐川急便事件捜査の過程において、金丸前議員が巨額の無記名割引金融債券を保有し、また、生原元秘書も同様に相当額の無記名割引金融債券を蓄財しているとの事実を把握し、内偵捜査を進めた結果、金丸前議員の昭和六十二年分及び平成元年分並びに生原元秘書の昭和六十二年分ないし平成三年分の所得について所得税逋脱の嫌疑が濃厚になりました。  そこで、東京地検は、三月六日、金丸前議員及び生原元秘書を所得税法違反の嫌疑により通常逮捕するとともに、東京国税局と共同で金丸前議員の事務所等の捜索を行い、隠匿資産として、金丸前議員に帰属すると認められる株式会社日本債券信用銀行発行のワリシン及び株式会社日本興業銀行発行のワリコー等の割引金融債券約三十五億円分並びに生原元秘書に帰属すると認められるワリシン約六億円分を押収しました。  以後、東京地検では、特別捜査部所属の検察官や検察事務官のほか、順次他部や他地検からの応援を求めて捜査体制を充実するとともに、数回にわたり、岡三証券株式会社本社、山梨県内の建設業者、東京等に本社を置く大手の総合建設会社の各事務所等合計九十四カ所の捜索を行い、合計約七千点の証拠物を押収したほか、東京国税局と協力しつつ、押収証拠物の検討、金丸前議員及び生原元秘書並びにワリシン、ワリコー等の販売者である日本債券信用銀行及び岡三証券の担当者その他の関係者の取り調べ等を実施し、昭和六十二年以降における各年分の所得の確定とその帰属関係を中心に、本件の全容解明に向けた捜査を鋭意進めました。  これらの捜査の結果を踏まえ、東京地検では、まず三月十三日、東京国税局からの告発を受けた上、公訴時効の完成が切迫していた昭和六十二年分の所得税法違反の事実により、金丸前議員及び生原元秘書を東京地方裁判所に公判請求しました。さらに、同月二十七日、前同様に東京国税局からの告発を受けた上、金丸前議員については昭和六十三年分及び平成元年分の所得税法違反の事実により、生原元秘書については昭和六十二年から平成三年までの四年分の所得税法違反の事実により、両名を東京地方裁判所に公判請求しました。  これらの公訴事実の要旨は、一、金丸前議員については、生原元秘書と共謀の上、自己の所得税を免れようと企て、雑所得となるべき収入を除外して割引金融債券を購入するなどの方法により所得を秘匿した上、昭和六十二年には逋脱所得二億円に係る所得税一億一千八百八十五万円、平成元年には適脱所得六億五千万円に係る所得税三億二千四百七十九万円を、また、みずから、同様の方法により、昭和六十三年の逋脱所得九億九千八百四十二万円に係る所得税五億九千七百九十万円を不正に免れ、三年分合計十億四千百五十四万円の所得税を脱税した。  二、生原元秘書については、金丸前議員との共謀に係るもののほか、自己の所得税を免れようと企て、雑所得となるべき収入を除外して割引金融債券を購入するなどの方法により、所得を秘匿した上、昭和六十二年には逋脱所得八千四百万円に係る所得税四千七百四万円、昭和六十三年には逋脱所得六千五百七十万円に係る所得税三千四百四十四万円、平成元年には逋脱所得二億一千七百五十万円に係る所得税一億七百七十六万円、平成二年には逋脱所得一億八千五百万円に係る所得税九千百五十万円、平成三年には逋脱所得一億円に係る所得税四千九百九万円を不正に免れ、五年分合計三億二千九百八十六万円の所得税を脱税したというものであります。  金丸前議員においては、将来に備え自由に使用できる個人資産を確保しておくため、大手の総合建設会社や山梨県内の建設業者等から供与される資金の一部を原資として、日本債券信用銀行や岡三証券からワリシン、ワリコー等の割引金融債券を購入してこれを隠匿する方法により蓄財し、所得税を不正に免れていたものであり、一方、生原元秘書においては、金丸前議員の支援者からの陳情等の際に供与された資金等を原資として、同様に割引金融債券等による蓄財を進め、所得税を不正に免れていたものであります。  なお、東京佐川急便事件につきましては、金丸前議員が東京佐川急便株式会社元代表取締役渡邊廣康から供与を受けた現金五億円の使途に関連して、種々の告発を受けましたので、東京地検においては、所要の捜査を行い、昨年十二月二十二日、公訴時効の完成が切迫していた政治資金規正法上の量的制限違反事件等について、嫌疑不十分等として、金丸前議員及び本件五億円の分配を受けたとされる約六十名の者を不起訴とする処分を行いました。その後、この不起訴処分について、第一東京検察審査会の不起訴不当の議決がなされましたので、東京地検において、直ちに事件を再起し、さらに必要な捜査を行いましたが、依然として証拠上その嫌疑が不十分であるとして、本年一月二十九日、再度不起訴処分を行いました。その余の告発事件については、現在も捜査を継続しているところであります。  以上をもって報告を終わらせていただきます。
  245. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会