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1993-02-22 第126回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年二月二十二日(月曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 粕谷  茂君     理事 石川 要三君  理事 小杉  隆君     理事 鴻池 祥肇君  理事 佐藤 信二君     理事 中川 昭一君  理事 串原 義直君     理事 中西 績介君  理事 松浦 利尚君     理事 草川 昭三君        相沢 英之君     愛野興一郎君        赤城 徳彦君     浅野 勝人君        粟屋 敏信君     臼井日出男君        内海 英男君     衛藤征士郎君        越智 通雄君     戸井田三郎君        村山 達雄君     谷津 義男君        柳沢 伯夫君     伊藤 忠治君        菅  直人君     関  晴正君        竹内  猛君     富塚 三夫君        堀  昌雄君     松原 脩雄君        松前  仰君     三野 優美君        水田  稔君     目黒吉之助君        元信  堯君     石田 祝稔君        二見 伸明君     宮地 正介君        小沢 和秋君     木島日出夫君        児玉 健次君     正森 成二君        中野 寛成君     柳田  稔君  出席公述人         静岡県立大学国 中西 輝政君         際関係学部教授         主婦連合会副会 和田 正江君         長         日本労働組合総 山田 精吾君         連合会事務局長         立教大学教授  和田 八束君         京都大学経済学 吉田 和男君         部教授         四日市大学教授 長谷田彰彦君  出席政府委員         北海道開発政務 北村 直人君         次官         防衛政務次官  三原 朝彦君         経済企画政務次 二田 孝治君         官         科学技術政務次 渡海紀三朗君         官         沖縄開発政務次 仲村 正治君         官         国土政務次官  杉浦 正健君         外務政務次官  柿澤 弘治君         大蔵政務次官  村上誠一郎君         大蔵省主計局次 武藤 敏郎君         長         文部政務次官  鈴木 恒夫君         厚生政務次官  木村 義雄君         農林水産政務次 石破  茂君         官         運輸政務次官  武部  勤君         郵政政務次官  斉藤斗志二君         建設政務次官  東   力君         自治政務次官  片岡 武司君  委員外出席者         予算委員会調査 堀口 一郎君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     谷津 義男君   松永  光君     赤城 徳彦君   綿貫 民輔君     浅野 勝人君  宇都宮真由美君     松原 脩雄君   楢崎弥之助君     菅  直人君   正森 成二君     小沢 和秋君   中野 寛成君     柳田  稔君 同日  辞任         補欠選任   赤城 徳彦君     松永  光君   浅野 勝人君     綿貫 民輔君   谷津 義男君     石原慎太郎君   松原 脩雄君    宇都宮真由美君   小沢 和秋君     木島日出夫君   柳田  稔君     中野 寛成君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成五年度一般会計予算  平成五年度特別会計予算  平成五年度政府関係機関予算      ―――――◇―――――
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  平成五年度一般会計予算平成五年度特別会計予算平成五年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成五年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず中西公述人、次に和田公述人、続いて山田公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、中西公述人にお願いいたします。
  3. 中西輝政

    中西公述人 中西でございます。  少し風邪を引いておりまして、お聞き苦しいところが途中あるかと思いますが、どうか御容赦いただきたいと思います。  私は、日本外交背景になる条件等について、この九三年度という年を見通してみまして幾つかの問題、それから日本外交上、日本外交選択として重要な問題点あるいは政策的な私の見地というものをお話しさせていただこう、こういうふうに思っております。  時間の方も限られておりますので、かなり大きな形でまず要点をお話しさせていただきまして、後ほど各点について御質問等をいただければというふうに思っております。  まず第一に、現在の国際情勢の全般的な認識というものが大事だろうというふうに思っております。特に、ベルリンの壁が崩壊してかれこれもう三年数カ月になるわけですけれども冷戦後の世界が一体どういう世界になるのかということについて、この期間非常にいろいろな考え方が錯綜いたしまして、現在に至るまでクリアな、明瞭な将来像、世界秩序イメージといいますか、そういうものがまだ生まれていないということであります。これは、やはり非常に大きな世界秩序構造が崩壊した、まさにベルリンの壁が崩壊しましたように、その他もろもろの、さまざまな秩序を支える有形無形の諸条件が崩壊していくという、そういう過程が今現在も続いておる、こういうふうに認識すべきかと思います。  したがいまして、現在、大きな外交上の背景といたしまして、流れ全般には国際情勢、まだこうしたさまざまな崩れといいますか、秩序構造の支柱になっておったようなものが、つまり古い秩序がすべて崩壊してその後に新しい秩序が生まれる、このようなわけではないのですけれども、しかし、やはり古いものが壊れなければ新しいものは生まれない、自明の原理であるかもしれません。しかしその中に、壊れては困るような安定化要因も同時に壊れていくということで、現状を考えてみますと、冷戦後の新秩序形成という、こういう大きな流れが今かなり不透明になっているということが一つの結論として申し上げられると思います。  ただ、私は、この九三年度という年を見通してみまして、恐らくことしの後半あるいは年末等にかけまして、世界情勢の大きな流れは、非常に微妙な形ではあっても、いわゆる引き潮が一つの底を打って満ち潮に転じてくるような、そういう変化の兆しというものを幾つかの点で予見しておるわけであります。  そういう意味で申し上げますと、現状というのは私は、幾つかの点で中くらいの均衡状態中間状態というものが現在生じつつあるというように見ておるわけですが、どれもしかし安定化の大きな条件にはなっていない。  例えて申し上げますと、最近のロシアにおける改革流れというものは非常に大きな不安定、潜在的不安定を伴っております。あるいは国連平和維持活動等もさまざまな点で大きな問題点を抱えております。また、ヨーロッパの統合問題ということも、マーストリヒト条約で予想されたような画期的な統合というものが、今中間的な、中くらいの成果の中で均衡状態、一時的な均衡状態に置かれておるわけであります。あるいはガットウルグアイ・ラウンドといたしましても、やはり妥結の見込みが少し先延ばしになっておる。ほかに、中東和平問題あるいは旧ユーゴスラビアのボスニアにかかわる国連とECのあの和平案、こういったものを見てみますと、国際情勢現状が非常に典型的にあらわれておるように感じております。  したがいまして、こういう中間状態、中くらいの安定というような、安定と言えるかどうかわかりませんが、そういう均衡状態にひとつ向かっている。この中間状態をより大きな安定に至らしめ得るのかどうかというところが、私は日本外交にとってもこの九三年度、非常に重要な方向というふうに見ることができると思います。  幾つかの条件を考えておりますが、特に世界情勢とのかかわりで日本外交上重要な問題点というのは、やはり一つアメリカの新政権が誕生いたしました。この新政権方向対外政策方向日米関係の新しい協力構築がうまく進むかどうかというところが重要かというふうに考えます。  アメリカ政権につきましては、恐らく、いろいろな分析が出ておりますが、私といたしましては、このアメリカ政権の今後というものは非常に、これまでの政権と違って幾つかの点で、よく言えば幅があるといいますか、さまざまな考え方、いろいろな立場の政権関係者政権に入っておるわけであります。それが、ただ、現状におきまして政権の基本的な方向が固まるのにはこれまでのような、つまり冷戦時代のような短期間で一つ方向性が見出せるということはなかなか難しいかもしれません。そういった意味で、やはりことしの後半にかけてアメリカの新政権方向が見えてくる、そういう場合に、日本対応ということが非常に難しくなる可能性は確かにあると思います。  ただ私は、この日米関係、また現在の状況の中で重要な点として二つほど挙げられると思いますが、一つは、日米のこれまでのより狭い意味合いで我々がとらえてきた二国間関係というものから、もっと広い多国間関係の中にこの日米関係を置くという方向性が重要になってこようかと思います。  二つ目の点として、私は、今後の日米関係は、幾つかの点で日本側対応というものが非常に重要になるだろう。それは、恐らく通商貿易問題その他で、日本側対応が、アメリカの新政権政策が固まっていない状況の中で出てくる対日政策等に対して、過剰反応しないということが一つ重要な心得であろうかというように思っております。二つ目は、非常に要約して申し上げて恐縮でございますが、この二つ目の中の注意点ということで、今最初に過剰反応するなということを申し上げましたが、二つ目に、この日米の新しい相互主義、開放された、開かれた前向きの相互主義、お互いの市場をそれぞれの開放度に見合って開放していくという考え方が、どうしてもアメリカから出てくるわけであります。その場合に、これをいかに建設的な方向に向けていくかという努力が重要であろう。  三つ目には、アジアにおける日米関係という次元を考えていく必要があるだろう。通商貿易以外に、外交安全保障その他、より広い意味でこれまでになかった日米関係の重要なタイメンション、次元といいますか、それはやはりアジア太平洋という大きな枠組みの中にこの日米関係を置くということであります。私はその場合にアメリカアジア化というような言葉を使っておりますが、やや端的な表現かもしれませんが、アメリカの利害の中にアジアという視点を一つ大きく築いていく、そういう方向日本日米関係のアプローチを見出すということの大切さであります。  アメリカ以外、日米関係以外に、もちろん日本外交を取り巻く重要な課題というものは、現在の世界、山積しておることは言うまでもありません。その中の大きな問題点はもちろんロシア情勢ということでありますが、先ほども申し上げましたとおり、非常に中間的な改革路線宙ぶらりんの形で今大きな困難に直面しておるということは、皆様御承知のとおりであります。  ただ、このロシアの問題を考えるときに、支援の問題等含めましてさまざまな議論が昨年度から引き続いて行われておるわけでありますが、多分この九三年度、新しい次元として考えていかなければならないのは、ロシア外交が恐らく、従来の八〇年代末から進んできた新思考外交という考え方から、やや独自な路線方向を変えてくる可能性があるということであります。その場合に、恐らく、日本の対日政策といたしましても、そのことをどのように取り込んでいくか、新しい考慮が必要になるかもしれません。  それ以外に、時間の関係がありますので、幾つかの問題、まだ列挙したい問題がありますが、例えばガットの行方、あるいは欧州情勢全般、さらには中東あるいはイスラム圏動向というようなものも、世界情勢全般にますます大きな関心を持たざるを得ない日本外交といたしまして、決して過小評価できない要因であることは論をまたないわけでありますが、ごく簡単に申し上げて、最初の私の見方、つまり、この九三年度という年に世界情勢一つの中間的な意味合いで一時的な安定状態に向かう可能性というものを、その兆しを指摘することはできるかと思うのですが、ただ、より大きく見ますと、幾つかの点で非常に大きな問題をもたらすような諸条件も依然として潜在している。それは、例えばイスラム原理主義中東地域に広がってくる可能性等々でありますが、こういった民族紛争、地域紛争的な問題では、また後ほど御質問等がございましたら敷衍さしていただきたいと思います。  最後に、こういった大きな流れの中で日本外交対応ということになろうかと思いますが、私はこれを三つぐらいの大きな項目に分けて申し上げたいと思います。  まず第一は、やはり新秩序世界の今申し上げたような中間的な状態宙ぶらりんの形になって、きちんとした安定状態に移行するかどうかが非常に重要な踊り場の年としてのこの九三年、そういう中で日本役割といたしまして、この新秩序形成にいかに貢献するかということがとりわけ重要な意味合いを持ってくる、そういう年であろうと思います。したがって、この中間状態をより大きな安定に至らせるという上で、まず第一に、グローバルな秩序安定の枠組みに貢献していかなければならない。その一つは恐らく国連枠組みであります。あるいはガットウルグアイ・ラウンド等中心にした世界経済の新しい秩序をいかにして確立させるかという問題。この次元が、このレベルの問題として重要な課題だろうと思います。  二つ目に私が重視しておりますのは、やはりこのアジア太平洋協力関係を拡充していくこと。これもやはり、経済、政治、安全保障、各問題の分野が考えられるわけでありますが、このアジア太平洋協力というものは、恐らくこの九三年度、アジア情勢全般、中国を含めましてこれまでにない新しい動きが出てくるだろう、あるいは、先ほどアメリカの新政権国内経済改革に一段落つけたときに大きな新しいイニシアチブを発揮してくる可能性がある等々、このアジア太平洋情勢も、これまで我々が見て、これまで経験しなかったような大きな動きが起こってくる可能性があると思います。  三つ目の領域といたしまして、やはり日米関係の再構築という課題がどうしても重要だろうというふうに考えられます。  以上、三つレベルに分けて申し上げたわけですが、もう少しこれを具体的に政策的な分野にブレークダウンして、分類して申し上げますと、多分このグローバルなレベルで、国連ガットという場で日本外交選択というものは、今さまざまに議論がされておりますが、現在中間的な安定が得られるかどうかというぎりぎりのところに来ているこの世界情勢ということを踏まえて考えてみるならば、国連に対する一層の協力、それからガットウルグアイ・ラウンド早期妥結ということ、これは日米関係を含めてアメリカ議会対応を働きかける必要等がございます。それから、アジア太平洋協力にいたしましては、特にAPEC等中心にした新しい協議の枠組みづくりということが非常に大切な選択になろうと思います。三つ目に、恐らく先進国協力関係、いわゆるG7、東京サミットを控えまして、日本外交一つの正念場がここに見出されるという気がいたします。  このように見てまいりますと、恐らく日本外交全体の構図がことし一年大きな分岐点に差しかかるさまざまな問題があるわけで、そのような観点から大きな視野で、恐らく冷戦後になかった初めての重要な選択の年になるのではないだろうか、そういうやや大きな視野日本外交を考えていく、そういう必要性を強調して、私の公述とさせていただきたいと思います。(拍手)
  4. 粕谷茂

    粕谷委員長 ありがとうございました。  次に、和田公述人にお願いいたします。
  5. 和田正江

    和田(正)公述人 主婦連合会和田でございます。  きょうは、消費者として関心の深いガットウルグアイ・ラウンドの特に米の問題と、それから食品などの規格や基準国際平準化について発言させていただきたいと思います。  現在、日本では多種多様の食品があふれておりまして、飽食とまで言われておりますけれども、食べ物の自給率を考えますと、豊かと言われる食生活が非常に底の浅いものに見えてまいります。日本食糧自給率は、申し上げるまでもなく一九九〇年はカロリーベースで約四七%、九一年の速報ではさらに下がって四六%となっております。これは残念ながら先進国中最低の水準であり、一九七〇年ごろ日本と同じように自給率の低かったイギリス、西ドイツがそれぞれ七三%、九四%と自給率を上げているのに対して、日本低下傾向にあるという現状でございます。  私たちはこのような現状を憂い、主婦連合会運動方針に、「食料国内自給率を高め、安全な食料国内生産し消費する運動をすすめよう」と明記して、さまざまな運動に取り組んでおります。その低い自給率の中で唯一一〇〇%自給しております米につきましては、今後も自給でというのが私どもの考えでございます。  主婦連合会では、一九七一年から毎年東京中心主婦千名を対象に米の消費動向調査を行ってまいりました。米の自由化については一九八七年から調査をしておりますが、その結果としては、始めました八七年は、「自由化してもよい」、これは条件をつける人を含めましてですけれども、「自由化してもよい」という人が「自由化すべきでない」という人よりも少し多うございましたけれども、八八年以降を見てみますと、「自由化してもよい」という人が大体三七%前後で同じような数字でございますのに対して、八八年は三八・五%、八九年は四二%、九〇年は四七%と、「自由化すべきでない」という人の数字がずっと多くなってきております。  九一年の調査では自由化についての設問は特に設けませんでしたけれども自由意見のところに自由化について意見が多く書かれておりました。これは、設問に対する回答ではございませんので、単純に数で比較するのはいかがかと思いますけれども参考までに申し上げますと、二百五十四人の人が自由化反対、七十八人が賛成意見を述べております。  そして、この毎年の特徴といたしまして、自由化反対意見としての主な理由が、輸入に頼って天候異変社会状況異変事態のときに困る、自給率をこれ以上下げるのは問題である、日本の米が余って減反までしているのに輸入するのは納得できない、安全性の問題が心配である、水や緑など環境保全に果たしている役割は大きいなどと、非常に積極的な意見が書かれております。  これに対して、「自由化してもよい」という意見理由を見てみますと、やむを得ない、少しくらいなら、あるいは現在の稲作に何らかの揺さぶりをかける意味でというような意見が大半を占めておりまして、外国の米が安いから入れてそれを食べたいという積極的な意見は毎年非常にわずかでございます。これが特徴と言えるだろうと思います。  以上、主婦連合会調査から意見を述べましたけれども、私たちが米は自給でと考えている理由をもう一度整理してみたいと思います。  日本は、農産物の輸入に門戸を閉ざしているというのではなくて、次々と開放し緩和し、世界最大食糧輸入国となっております。その結果として、先ほども申し上げましたように、胃袋の半分以上を外国にゆだねている日本消費者としては、唯一一〇〇%自給できる米、そして私ども供給カロリーの四分の一を占めている米、そういう米をこれ以上、主食の米まで外国にゆだねるのは大変不安がございます。これは日本だけの問題ではなく、将来世界食糧需給は逼迫するとの見通しの中で、各国が基礎的な食糧自給するということを目指すのが本筋ではないかと考えております。  次に、米の貿易量世界生産量の三%にすぎず、小麦の一五%と比べて非常に低うございます。しかも、タイアメリカがその貿易量の六割を占めておりまして、一部の国の米の作柄によって、過去の例を見ましても貿易量国際価格が大きく変動するという事情を踏まえておかなければいけないと思います。  次に、安全性の不安ですが、安全性につきましては、国産も輸入品も同じように安全性を求めるのは当然ですが、輸入の場合には農薬などの規制方法や使い方というのが全く異なっております。そして、保管に関しましては、日本の米は低温管理が徹底しているのでポストハーベストなど必要ないというふうに思われますけれども日本まで運んでくるための処置などを考えますと非常に不安が残ります。  それからさらに、先ほども申し上げましたけれども水田国土自然環境保全に役立っているという点も見逃すことはできないということでございます。  それから、米の値段について、日本の米は高い、外国の安い米をという声も耳にはいたしますが、米は一食分お茶わん二杯分として、精米百グラム、約四十円から五十五円というところでございます。これを高いと見るのかどうかというのはいろいろ見方があると思います。外国と比べますと、一九九一年の米の消費者価格アメリカの二・五倍、タイの六・三倍と言われております。しかし、内外価格差は、申し上げるまでもなく為替相場の変動が大きく影響し、例えば一九八五年の為替レートで一九九一年の内外価格差を試算いたしますと、消費者価格アメリカの一・四倍となりまして、円高による影響が非常に大きいということが明らかでございます。  このようにいろいろと考え合わせまして、今現在内外価格差が大きいとしてもやはり米は自給でと思う人の方が多いということになっております。  外国日本農地の規模の違い、それから農地価格の違いを考えますと、この内外価格差をゼロにすることは困難かとも思われますけれども、今後もできるだけ縮小する努力を望んでいることは言うまでもありません。一九九〇年の家計調査報告によりますと、家計支出総額に対する米の支出は一・七%とわずかな数字にはなっておりますが、米の価格は単に高いとか安いとかという問題だけではなく、消費者として納得のできる価格なのか、それから生産、流通を通じ需給に応じた適正な競争が働いているのかという点にも関心を持っている消費者がふえてきているということを申し添えておきたいと思います。  次に、安全基準国際平準化について申し上げます。  ガット最終案によりますと、食糧食品の検疫・衛生基準について、国際基準はFAO・WHOでのコーデックス・アリメンタリウス委員会が決定し、各国国際基準よりもさらに厳しい基準を採用する場合には、有効な科学的根拠のあるものでなければならないとしております。この方針に沿って現在我が国では、食糧やその他食品添加物あるいは農薬などの基準がどちらかというと緩められる方向での作業が進められております。私たちは、国際基準は最低限の国際基準とし、各国はそれぞれの国の気候、風土、伝統それから食習慣、その国の衛生状態、いろいろなものを加味して自主的に設定することを認めるべきだというふうに考えております。日本では、ガットで決まったのだからこれを認めなければ日本は孤立する、国際化の中でこれを納得できない消費者は認識不足であるというようなことが言われております。しかし、私たちのような考え方は、日本だけではなく世界各国で、それぞれの国の、それから地域の規格なり基準が後退することに問題があると考えて運動に取り組んでいる消費者のグループがあることを申し上げておきたいと思います。  消費者といたしましては、所あるごとに今申し上げましたような意見を申し述べておりますけれども、最近の例で申し上げますと、一九九一年の十一月の十五日に全国四十九の消費者団体が参加して、これは毎年一回開いております消費者大会でございますが、一九九一年は第三十回に当たっております。この三十回の全国消費者大会において、「コメの輸入自由化に反対し食糧自給率向上と食べものの安全を求める特別決議」を決議いたしております。また、一九九二年九月に来日されたガットのドンケル事務局長に対して、それぞれの国が適切と考える基礎的食糧自給率を達成するための措置を認めること、それから今申し上げたような国際平準化の問題などについて、全国消費者団体連絡会、主婦連合会も賛同団体としてこの書面を提出いたしてございます。  さらに本年二月二日に、「コメ輸入の関税化」受入れを求める国民委員会が緊急アピールを発表されましたのに対しまして、全国消費者団体連絡会は次のような声明を発表いたしております。   二月二日、「「コメ輸入の関税化」受入れを求める国民委員会」が「「コメ輸入の関税化」受入れを決断しよう」との緊急アピールを発表しました。   このアピールは、輸出国の論理にたった所謂ドンケル・ぺーパーに基づく農業交渉決着を至上命題とするもので、到底認めることはできません。ガットウルグアイ・ラウンドは、農業分野だけでなく非農業分野においても主要国間の意見の対立があり、日本がコメ輸入の関税化を受け入れないことが交渉全体を壊すものではないはずです。   私たちは、全国消費者大会の決議にあるように、  1 基礎的食糧自給と、歴史と風土に根ざした食生活、自立した食文化を確立することが、各国国民の責務である  2 食料安全性の確保は最優先の課題である  3 農業、特に水田環境保全等に果たしている多面的役割を維持する必要があるなどから、「コメ輸入の関税化」受入れに反対であることを改めて表明するものです。   今日、日本食料、農業、農村をめぐる危機的状況は、深刻さの度合いをますます深めています。また、「自由貿易」の名による食品安全基準国際平準化もすすめられています。私たち消費者は、わが国食糧自給率の長期的な向上をめざし、安全性や環境への十分な配慮がなされた地域農業の健全な育成をはかり、国民共有の財産である地域資源と国土を守る国民的な合意を早急に形成し、何よりも食品の安全と健康を守ることを食料、農業政策の根幹に置くことを強く願うものです。   私たちは、政府がこれまでの国会決議に示された国民の意志を尊重し、毅然たる態度で引き続き交渉に臨むことを求めます。 これが私どもの出しましたアピールでございます。国会におかれましては、昭和五十五年、五十九年、六十三年の三回にわたりまして、食糧自給力強化に関する決議、米の需給安定に関する決議、米の自由化反対に関する決議がございます。この決議に沿いまして今後ともガット交渉に取り組んでいかれますよう強く希望いたしまして、私の公述を終わらせていただきます。(拍手)
  6. 粕谷茂

    粕谷委員長 ありがとうございました。  次に、山田公述人にお願い申し上げます。
  7. 山田精吾

    山田公述人 おはようございます。きょうはせっかくの機会をいただきましたから、何点かに絞りまして見解を申し上げたいと思います。  昨年の臨時国会は、国民の立場からいたしますと、佐川事件の徹底解明の問題と政治改革についてひとつ政治の信頼を取り戻す、そういう課題一つ。もう一つは、当面する景気対策をどう具体化していくのかということで大変私ども期待をしておりました。政治改革については二十一項目、それから九増十減等の一歩改革は進められました。しかし、全体のとらまえ方としては、とてもじゃないが、ああいう解明の状況だとか政治改革の内容で政治の信頼が取り戻せるというような甘いものじゃありません。景気対策にしましても、公共事業を初めにしてかなり踏み込んだ大型の予算をつくられました。それはそれなりに私どもは評価をしてはおりますが、しかし、今日から振り返ってみて、果たしてあの補正予算で効果が具体的に相当あらわれているかどうかになりますと、政府発表の数字から見ても大変私どもとしては物足りないというのが正直言って国民のまた実感だろうというぐあいに思います。  いずれにしましても、努力をしていただきましたが中途半端に終わったということが一言で言えると思います。今度の通常国会に当たりまして、この二点がまだこの国会でも最大の課題になっておるということで、ゆうべも遅くまでいろいろ与野党の接触も私どもは新聞報道等聞いておりますが、ぜひこの国会でひとつそれこそけじめをつけていただきたいなと。政治改革についてもっともっと踏み込んだ、信頼回復のための改革をぜひひとつ与野党の話し合いで実現をしていただきたいという強い希望を申し上げておきたいと思います。  それから、今度の予算につきましては、それぞれ苦心をされたと思いますが、肝心かなめな景気対策の面からいいますと、消費回復が、むしろ回復どころか日に日に落ち込んでいるというところが大変気になります。何をやっても効果がない、何をやってもあれだこれだという、そのお話は結構ですけれども、やれることは思い切って何でもやってみるということが今非常に政治に求められているんではないかというぐあいに私は思っております。  個人消費につきましても、まあ耐久消費財程度かなと思っておったんですが、最近では生活必需品を含む非耐久消費財まで大きく陰りが出てきておるということを我々は大変心配をしております。いろんな考えられる施策は具体的に議論はされていますが、私は、即効的に一番効き目のあるのは、やっぱり当面は減税をどうするのかということが一番最大のものではないかなというぐあいに実は思っております。  私も政府税制調査会のメンバーの一人なんですが、昨年のいいかげんのころから大蔵省の方は、減税やっても効果がない、減税やっても効果がないという資料をいっぱいつくりましてあちらこちら走っておられましたが、ないと思えばありませんわ、こういうものは。商売というのはそんなもんですよ。売れぬから売れぬからと言ったら売れるわけないですわ。売れる売れると言えばそのうちに売れるようになる。景気も気からと言われておりますが、全く私はそのとおり。寄ってたかって経営者も経済界も含めて、減税の問題は別ですが、冷やすことに専念をしておられるということ。やっぱり大蔵省あたりももっと税収増があることを積極的に、営業的な発想も持たないと、ただ財布のひもをしっかりしておるだけが能じゃないと思うんですが、まあ大蔵省ですから余りいいかげんなことでは困ると思いますけれどもね。  そういうことで、とにかく減税については、私どもは、経済企画庁のいろんな試算を見ても、それなりにやっぱり効果があると。私は、労使の賃上げでも、嫌々出す回答なのか、すかっとして出す回答なのか、同じ一万円でも一万円の値打ちが違うと言っているんです。世はまさに今、付加価値の時代と言われておる。そういうことだろうと思うんですよね。そういうことで、一兆円の減税をすれば○・一%程度の成長率が高まるだろう、五兆やれば○・五、まあ○・四、五で個人消費は大体○・八から一・○ぐらいは支えるだろうということが民間の調査機関でもいろんな発表がされていますが、大方そういうような見方をされておりますね。  それからさらに、私どもは無責任にこんなことを言っているわけではないんです。一昨年、実は我々としては二兆円の減税をしてほしいと、昨年の通常国会、予算に向かってもお願いをしたんです。なぜ二兆円なのか。サラリーマンにとって最も不公平が痛感されているのは、物価上昇に対する是正措置が源泉徴収側にはないということなんです。何とか申告納税者と同じようなバランスをとってもらいたい。十五年さかのぼって計算をすると、言うならば、消費者物価上昇が四七%程度ありました、その問いろんな減税がありました、全部差し引いても物価調整分から見るとまだ所得税と住民税で二兆円ほどやはり不足をしている、どうぞその政策というよりも物価調整の面からも二兆円程度の減税を考えてほしいということを繰り返し私どもは言っておった。  それから、去年の賃上げで試算をしてみますと、大体八八年で、年収七百万円の人が今日では、ここ三年間の統計を見ますと、賃上げ一%やりますと所得税だけでも三・五%実は増税になっているんです。税率の刻みが七百万円というのが一つありますけれども、もうそういうことから見ましても大変な増税ですね。社会保障関係も年々我々の負担もふえております。  ですから、何か適正負担がどうだのこうだの言われますけれども、一番わかっているのは払っている人間が一番わかっているんです、そういうことは。ですから、国民の負担率についても行く行くの将来に向けてどうなくちゃならぬということは真剣に本当にみんな考えております。  話がちょっと横に行きましたが、その税率の関係からいいましても何とか見直してもらいたい、この際。もう数年間ほったままですから。ですから我々は、二兆円減税の内容としては、昨年ですか、通常国会が終わりがけにパート減税について与野党で話し合いましょうと聞いて、楽しみにしておったんですが、いまだに答えが出てないで、どうなっちゃったの、もう国会というところはああいうところなのかなというぐあいにまた不信感が高まる一方なんです。だめならだめとか、どうならどうとかやっぱり答えを出してもらわないと、何をここで決めてもらっても信用できないということになってしまうということを大変心配をしております。  そういう点では、パート減税というのは、私は、言葉で言うのはいいんですけれども、税制上からいうと幾分やっぱり問題があるのかなと。正確に言えば課税最低限度額の引き上げをどうするかと。ヨーロッパに比べて高いと言われるのですが、私は、社会制度が違う、例えば生活保護法の給付で生活をしていらっしゃる方がいるんですが、その収入よりも低くても、ほっといたら住民税がかかってくる。今、前回一万円に対して、水面下ぎりぎりですよ、水面上。ほっといたらそういうことになるんですよ。ぎりぎりのところへいっているんですね。ですから、余りよその国と比べて高い低いということじゃなしに、やっぱり社会制度の関係もかなり違う、そういう点も十分ひとつ考えながら税制問題をやらないと何か実態に合わないんじゃないかなと。そういうことで課税最低限度額の引き上げと、もう一つはやっぱり税率なり税額の見直しを急いでやってもらいたい。賃上げやっても何のためにやっているかわからぬです、生活のためか、大蔵省のためか、何のためか。そういうようなことのないように、ある率までいくともう賃上げしてもらうのが迷惑だと言う人も中にはおるんです、極端な言い方をしますと。  そういうことを繰り返し繰り返し言ったんですが、あれこれ理由をつけられて今日まで実現をしませんでした。去年の臨時国会がいよいよだということで同じことを持ち込んだんですが、まあ何か近い将来にというような雰囲気は徐々に出てきておりますけれども、景気対策その他一石何鳥を考えて私どもも急いでやってほしいということを言っているんですが、なかなか腰を上げてもらえなかった。何か言えば財源がない。それはないでしょう、ごみ一つないぐらいかき集めて予算を組んでおられるんですから。ないということはわかっておって、おまえたちは何か要るんだったら財源用意せい、そんなことを言われてもたまらないですよ、国民の立場から言うと。それをやるのが私は国会なり政治の責任だろうと思うし、政策選択の問題だろうと思うのですね、何が大事なのか。  ですから、効果がないなのか財源がないなのか、その辺も非常に、どっちがないからだめなのか、それもあいまいな点がありますからどうも議論がしにくいというのが私どもの正直な気持ち。まあ十二月に宮澤総理にもお会いしてそんな話も実はしたわけなんです。  それから一月になりまして、私どもは二兆円を四、五兆円にひとつ拡大しようということになりました。それはなぜかといいますと、ちょうど今春闘が始まっているさなかですけれども、賃上げの要求、私どもが決めるときにやみくもに決めたんじゃないんです。今七%中心、二万円以上ということを申し上げておりますけれども、これは連合総研というシンクタンクがありまして、そこで詳しいシミュレーションをかけまして、七%の賃上げの場合、それから減税二兆円差し込んでみよう、それから一九九六年には千八百時間ということを政府自身も一つの生活大国の計画として出されたようですから、そういうことも全部織り込んでみてコンピューターではっとやってみると、大体三・七%というのが出てきたんです。ですから、政府は当面三・三、まあ五カ年計画は三・五で組んでおられますから、ほぼ見合うものだなということで実は要求を出したところです。  連合の方は、七%とか二万円以上というのは、これは連合としてのマクロ的な立場ですから、産業別の組合というのは、産業の実態、産業の賃金水準、こういうようなものを的確にとらえて、自分たちが自信の持てる要求を組んでくださいというのが実は労働側の賃上げの仕組みになっておるわけです。ですから、連合が七%と言ったから必ずしもみんなが七%にそろうわけではないし、既に倒産のさなか、合理化の真っただ中にあるところは賃上げ要求もできないところもいろいろあることは私どもは百も承知をしているわけです。  ところが、政府の方が昨年の未経済目標を立てられるときに、一九九二年度の実績見込みはどうなのかということで一・六。当初三・五。我々が去年の十月シミュレーションを出すときには二・八だったのです。それが一・六まですとんと落ち込みましたから、再計算をせにゃいかぬ。三・三ないし五を確保しようと思えば、何で確保するのか。今さら賃上げを一〇%、一五%と本気にしてくるものはない。何で埋め合わせるか。埋め合わせるとなれば、この際二兆円を倍か倍以上に持ち込んで、それから公共事業、これも四兆円ぐらいは少なくとも追加してもらって対応しなければ、とてもじゃないが政府が目標としている三・三%の実質成長率は絵にかいたもちに終わってしまうのじゃないか。今でも経済界ではほとんどが二%台。私はそれも気に入らないのです。宮澤総理にお会いしたときに、三・三は高くありませんと言ったのです。前年度が一・六まで落ち込んだのだから、発射台が落ち込んだのだから、三・三で、二年分見たって高いものじゃありませんよ、これで景気回復になりませんよ、三・三は確実なものにしてさらにそれに上乗せするくらいの積極政策を今とってもらわないと景気は回復しませんよということを言いました。総理はそのとき言われました。そういう視点から今までエコノミストが言ってくれないのです、あなたが言うのを初めてそういうぐあいに聞きました、私も全くそう思っていますということを宮澤総理もその席で言っておられましたが、私はそのとおりだと思っております。  そういう点で今回、五兆円を、私どもは減税として掲げていろいろお願いをしているさなかなのですね。財源はどうするか。その都度我々は我々なりに用意したのですが、もう全部かき集められて補正予算と本予算を組まれたわけですから、もうこの際、今から財源探しをやっておったらこれはもう何年たつかわからぬ。  我々は今日まで、私自身も第二臨調にも参加して嫌というほど赤字国債のことは知っております。辛抱に辛抱しておって絶対反対ときのうまで言ってきたのです。しかし、もうここではそれ以上頑張っておるわけにいかぬ。ある程度赤字国債についても柔軟に対応せざるを得ないだろうということで、泣く泣く実は割り切って、柔軟にやはり財源については赤字国債も充てることはやむを得ないだろうと。そうは言ったものの、しかし、何かまた財源がないかないかということについては、行政改革を初めとして何かできることについては精いっぱい努力をする中の赤字国債について考えてみたらどうかということを言っている。  それから、戻し減税が割と関西方の方から毎回出ることなんですけれどもね、あそこは即効性、現実的なところですから。私どもも本来は税制改正をやってほしいのです。しかし、これも財源によっては恒久的になるのか一過性的になるのか、財源との絡みがありますからね。やはりこれもただ税制改正だけにこだわらずに戻し税についても重要なテーマとして考えて検討してみたらどうか。これも幅を持ってひとつやってみようというような見解を早急にまとめまして、そして今日さらに検討を深めておるということなんです。  私がここでお願いをしたいのは、もうぜひ、言うならば予算をお決めになる際に与野党で減税をやろう、サラリーマン減税をやろうという合意を何とか取りつけていただきたいというのが、きょう最も私の方でお願いをしたい筋なんです。  政策減税の住宅減税を初めとするいろいろな話も出ております。しかし、景気対策になれば、即効的にはやっぱりサラリーマンの減税が一番中心になるでしょう。政策減税とか住宅減税、いろいろなことは否定はいたしませんが、そういうこともある程度は含みながらも、それぞれの主張の政策の立場があるし、時代もこれほど多様化した時代ですから、いろいろなことはひとつ話し合いで決めてもらえばそう難しい問題ではないというぐあいに見ておりますから、先の選挙を余り意識せずに、ざっくばらんにみんなの成果として国民から評価されるようにやってもらったら一番うれしいなと。ここでいろいろ苦労されてきました自民党が、この際考えてみようかとなれば、私は一遍に何か評価も高まるような感じもいたしますから、ぜひひとつお願いを、していただきたいなと思います。  それから景気対策では、さらにポイントだけ申し上げますと、公共事業の問題について相当努力をしていただいてそれなりの効果は出てきておりますが、私ども、産業の組合からどうだということをずっと調査して一カ月に一回くらいずつ実態を集めているのですが、どうもそこまでこないですね。ですから、できれば、通産省も最近いろいろなことで進められておられるようですが、ODAではありませんけれども、ハードだけではなしにソフトの面も十分織り込んで公共事業というのがいろいろな全体にしみわたるような方法も、時代も大きく変わってきているわけですから、ぜひひとつ御研究になって対応してもらいたい。ただ、そのことによって公共事業という性格がめちゃくちゃなものになるというのはこれは絶対困りますが、しかし、ソフトの面を十分にコンピューターを初めにして考える時期に入ってきているということを強調をさせていただきたい。  それからもう一点は、人と暮らしと環境にやさしい時代。これはどなたも否定できない今からの地球的な日本の将来だと思うのですけれども、まだまだ日本の場合は、考えていること、やっていることがブルドーザー的発想ですね。やさしさがないということです。ブルドーザー的なことも非常に大事なことなのですが、一番欠陥としてやさしさがないということ。日本経済、産業の構造をシステムで見直せということがあるのですが、これは皆さんには釈迦に説法ですが、人口構造が根本的に変わるということです、若者中心から中高年、女性中心時代に入っていくということですから。ある作家が言いましたね、二十年ほど前に。今までは軍艦主義時代だけれども、今から客船主義時代に移りますよと。ですから、いや応なしにシステムを見直さなければいかぬ。  ところが日本には、これだけの経済大国でありながら、言うなれば福祉産業というような言葉が当たるか当たらぬかわかりませんが、マーケットすらないということなのですね。何か福祉というと金を捨てるような錯覚がまだある。もっと福祉の面に思い切った技術革新なり積極的な技術開発というのを今求められているのじゃないかと思うのです。  寝たきり老人が多い。外に出れないから寝ておくしか仕方がないので寝ているだけであって、外にいろいろな面で出れるような、車いすを初めにしてそういうような環境があれば、何も希望して寝ているわけでも何でもないと思うのです。  そういう点について、生活大国というのは、まさに経済五カ年計画はそういう方向を出しておられるわけなので、私も経済審議会の一員としてあれには参加したが、基本的には賛成の立場です。そういうことでかなり思い切ったそういう面での開発に、税制の面それから金融の面、いろいろな面で見えるような形でやってもらいたい。  一つの例を挙げますと、電気自動車と言われて本当に長いです。今千三百台ぐらいですか、電気自動車。何でできないのですか。コストの面、リスクの面がある。何で手だてをしないのですか、応援しないのですか。こういう機会に一石何鳥、そういうことでやれることは山ほど、今からの時代を見据えながらございますから、今回の予算を通じて、いろいろな面を通じてひとつお願いをこの際しておきたいなと思います。  それから、その次に労働基準法の問題が非常に重要な課題になります。  これは幾つかに絞られますが、時間がないですから多くは申し上げませんが、一九四七年に施行されて、日本もあと二年で戦後五十年を迎えます。二十一世紀論も大事ですが、私はその前に戦後五十年という節目を日本としてはもっともっと大事にすべきではないかなと思います。  そういうような面で、五年前に皆さんに御協力いただきまして労働基準法もそれなりに改正をされてきました。そして、四十時間ということが明記をされまして段階実施を進めてきております。まだ猶予措置とかそれから特例措置というのがあって、今の状況でいけば来年の四月から四十時間ということが言われておりますけれども、しかし実態から見ますと大変厳しい内容であります。今猶予措置を適用されているのが百六十七万事業所ですか、二千百六十五万人、四九・六%ですよ。約五〇%の人が猶予措置で、言うならば四十六時間のところにおられる。それから、特例措置というのが六百十三万人、百九十七万事業所ですか、一四・一%。合計二千七百七十八万人、六三・七%で、約六五%の人が猶予か特例ですから、来年の四月からといっても三五%です。その大方が、大手企業、中堅企業はもう四十時間になっておりますから、別段余り関係なしにただ形だけが移行するというような形になるわけですね。  それから、どうして働く者の立場からこんなに差別があるのか。法の前には私はすべてが平等だと思うのです。この神聖なる原則というのはやはりきちっと受けとめないと、それは中小企業ということを言われますが、やはり中小企業で働いている人たちの立場も本当にしっかり考えてこの問題は議論しないと、中小零細だから、厳しいから当たり前だ、そんなもので労働とか労働者を物差しではかられたのではたまったものではないというのがそういう職場で働いている人たちの本当の実感だということをよくひとつ知っておいていただきたい。済まぬな、あんたたちはおくれて、そんな気持ちならまたそれなりのことでしょうけれども、本当に、当たり前だということはそれこそ当たり前でないということをこの際強調をさせていただきたい。もう早く撤廃してほしいということが私どもの願いです。  それで、今度、お話を聞きますと、ことしの四月一日からいよいよ待ちに待った四十六時間の人たちが四十四時間になる。もう目の先です。それが何かまた先に延長される。もうゴールの前に倒れ込むような状況で仕事をしてきて、目の前に来たらまたゴールが引き延ばされるというのはこれはもう理不尽もいいところだ。我々としては絶対にこれはもう認めるわけにはいかぬというのが私たちの正直な気持ちですから、みんなの悲痛な声を代表して私がここで申し上げるのだというぐあいにぜひ受けとめていただきたいなということを申し上げたいと思います。  そのほか、時間外の割り増しの問題もありますが、御質問の時間もあると思いますから言い足らない点はひとつその方に回したい。  最後に一言。政治改革については冒頭触れましたが、私どもは特に政治腐敗防止法的なものを早くつくってもらいたいということと、政治資金については、企業献金も我々が関係しておる団体献金も三年をめどにしてやめてもらいたいということを明確にしておりますし、それから選挙制度は小選挙区そして比例併用制というのがベターな選挙制度ではないかというようなことも今日まで主張しておりますから、そういうことも率直に申し上げたいと思います。  時間が来ましたから、この辺で一応打ちどめます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  8. 粕谷茂

    粕谷委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  9. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浅野勝人君。
  10. 浅野勝人

    浅野委員 冷戦時代国連アメリカの影響力が強く、国連協力することはアメリカに肩入れして旧ソビエトと対立することを意味しかねませんでしたので、国連中心の平和主義といっても必ずしも額面どおりに受け取れない側面のあったことは否めませんでした。冷戦の終結によって東西対立が解消して、国連の決定はおおむね世界の総意となってまいりました。日本の国際貢献が現実のものとなり、さらにさまざまな論議の対象となっているのは、背景にこうした国際関係の変化があったからだろうと思います。  そこで、現行憲法の枠内での日本の国際貢献の限界を中西公述人はどうお考えか。それと関連して、PKFの凍結解除についてどんなお考えを持っておられるか、伺いたいと存じます。
  11. 中西輝政

    中西公述人 お答えいたします。  冷戦後の国連のあり方というものは、まさに今おっしゃられたとおりだろうというふうに私も認識しております。その上で先ほどの私の公述の中で申し上げましたとおりさまざまな問題がそういう状況にありますが、今冷戦が終わって数年たった状況の中で宙ぶらりんの形ですべての秩序枠組みが十分な安定をしない、そういう現状でございます。そういった意味で、こういうさまざまな安定化をもたらす枠組みに対して我が国がどのようにその役割を果たしていくか、非常に重要な瀬戸際といいますか分岐点にあるという認識が非常に重要だろうという気がいたします。  そういう上に立って、現状のこの世界各地のさまざまな地域紛争、民族紛争その他の噴出状況というものを見てみますと、やはり各国さまざまな事情はあろうかと思いますけれども、私といたしましては、日本がどういう選択をするかということに非常に大きく世界全体の流れがかかってきている。ましていろいろな国が今よく言われますとおり内向きに志向を強めているという時代に日本対応というものが実は非常に重要でありまして、各国押しなべて深刻な国内問題を抱えている状況の中で日本国内問題というものを比較相対的に見てみますと、これはそれほど深刻なものではない、つまり我々は余裕のある立場に立っているという認識が非常に重要だろうと思います。  こういう認識の上で私なりの考えを申し上げますと、恐らく現行の憲法の中で我が国がどれだけの平和維持活動に参加できるかという問題、憲法解釈、さまざまな解釈の仕方があろうかと思いますが、私は国連という存在に関してはやはり現在の憲法の中で特別な地位を与えられているという認識が非常に重要だろうと思います。  したがいまして、恐らく例えば湾岸戦争の際に行われた多国籍軍という試み、この中で後方支援という日本役割というものを考えますと、私はやはり軍事力あるいは軍隊機能というものは指揮権の問題が非常に重要なメルクマールであろうかというふうに思います。そういった場合に例えば多国籍軍の指揮権の中に入って日本が後方支援を行うということは、これは現行憲法の中ではできないだろうというふうに思っております。したがって、自発的協力としての後方支援というものは可能であったと思います。ここのところが非常に重要だろうというふうに私は考えておりました。  現在、多国籍軍型の日本の平和維持活動の協力というものは恐らく求められているといいますか先ほど浅野先生の質問の中では恐らくもっと国連中心になった平和維持活動の側面だろうと思います。そういった面では私は、国連が指揮権を持つ、恐らく憲章四十三条あるいは事務総長がPKO活動の中で指揮権あるいは指揮権に似た権限を持つ、そういう状況の中では我が国の憲法は、我が国の決定として、選択としてこれに協力するということは、軍事力の使用の態様いかんにかかわらず禁止していないだろうというふうに見ております。  それから、PKFの解除という問題に関しましては、これは法律の中に期限が設けられているわけでありますが、その中で法律上の手続等が論じられるべきだろうとは思いますけれども、私といたしましては、現状の、先ほど申し上げましたような世界秩序状況を考えてみますと、恐らくこの問題は早期に、日本として昨年の立法の過程で論じられた前提が変わったという形の論議が起こってくる、起こってきて当然だろうというように見ております。現在の国連のさまざまな平和維持活動全体が、先日のガリ事務総長の訪日の中でもさまざまに論じられましたとおり、前提そのものが大きく変わっているという認識の中で考えていく必要があろうかと思います。
  12. 浅野勝人

    浅野委員 それでは、地域情勢の問題を一つ。  アメリカの歴代の政権の中でブッシュ・ベーカー・コンビの中東政策は、イスラエルとアラブ諸国を対等に扱う珍しい政権だったと私はずっと見ていたのです。湾岸戦争のような内ゲバは別にいたしまして、中東和平に期待が持てた大きな理由一つだったのですが、クリントンの選挙戦は明らかに、例えばエイパック、アメリカ・イスラエル広報委員会や、通称ジンサと言っておりますけれども安全保障問題ユダヤ研究所の影響が極めて強かったことは、よく知られていることであります。したがって、クリントン新政権中東政策というのは、時とともにイスラエル重視に傾いて新たな中東紛争の火種になりはしないかなというような懸念も持つのですけれども先ほど中西公述人中東動向について安定に向かうだろうという御指摘だったものですから、簡単に感想を伺いたいと思います。
  13. 中西輝政

    中西公述人 中東問題に対しまして私は先ほど三点ほど触れたと思いますが、アラブ、イスラエルのパレスチナ問題等をめぐる中東和平交渉、それから湾岸情勢、つまりイラクのフセイン政権の今後を含めまして湾岸の安全保障あるいはイランの動向というような問題があろうかと思います。それから、先ほど少し繰り返して触れましたが、原理主義運動がエジプトあるいはトルコといった国々に広がっている。  今、時間の関係もございますので簡単に中東和平問題だけについて私なりの見方を……(浅野委員「感想だけで結構です」と呼ぶ)では、感想を申し上げたいと思います。  私は、中東和平問題については中期的な安定、中くらいの安定があり得るというふうに申し上げたのは、やはり今回のパレスチナのハマス、原理主義運動の団体の追放問題が今の交渉を若干障害に乗り上げたような格好にさせておりますけれども、PLOがこの問題に関して、むしろ自分よりさらに左といいますか、過激な原理主義運動が出てきたということに関して、恐らく、ここで妥結に向かって動かなければむしろ自分たち運動そのものが大きく足元を崩される、こういう意識を強めたことは、私はいろいろな意味中東和平交渉にやわらかい対応をしてくるだろうというふうに見ております。
  14. 浅野勝人

    浅野委員 お米の市場開放問題については自民党の和田公述人の主張と同じ立場に立っていますが、消費者団体としては外国から安いお米が輸入されれば家計の上からも歓迎すべきことではないかなというふうに私単純に思いますけれども、そこのところの整合性をどうお考えでございますか。
  15. 和田正江

    和田(正)公述人 お答えいたします。  今お話のありましたように、確かにこれは米に限らず、できることなら安いものを購入したいというのは当然でございますけれども先ほどいろいろ申し上げましたような貿易量が少ないとか安全性の面とかいろいろなことを考え合わせて、今現在内外価格差がこれだけあるということであっても、私どもとしては、今輸入して、安い米をとにかく入れてほしいという人の方が少ないということでございます。  それから、先ほど申し上げました調査の中で、米に対して消費者がどのようなことを期待しているかという調査を例年いたしておりますけれども、やはり味と品質が一位であり、それから二番目が安全性の問題であり、それから価格というのは三番目に来ておりますのがここ数年の変わらない順位でございます。  お答えになりましたかどうかわかりませんけれども、以上でございます。
  16. 浅野勝人

    浅野委員 ありがとうございます。  その安全性の問題ですけれども和田公述人の指摘は、衛生系基準国際基準と合わせるために緩めるのは好ましくないという御指摘で、基本的には理解できます。ポストハーベスト農薬の残留の心配などからだろうと存じますけれども、まあそうはいっても、国際基準というのはガットないしはガットの関連機関が安全性を確認した上で決めていくことでございましょうから、そんなに神経質になることもないのではないかという気もいたしますが、いかがですか。
  17. 和田正江

    和田(正)公述人 確かに、その場におきまして一つの物差しをつくっているわけですから、それが一つの物差しになるというのは妥当なことだと思いますけれども、それ以外に、各国が、先ほど申し上げましたような食習慣とか気候とかそういうもので、それぞれの特徴があるものについてお互いに認め合うということが必要ではないかな。今までどちらかというと日本基準が厳しくて、それが緩められるようなことが多く事例としてございますけれども、それぞれ今まで日本として科学的な根拠があるからということで定められております根拠が、さらに緩められるなり、国際整合化ということで緩和の方向にある。それをすべて国際平準化だからやむを得ないのだ、認めなければだめなんだということには納得しがたい面があるということでございます。  以上でございます。
  18. 浅野勝人

    浅野委員 山田公述人は、総評華やかなりしころから、労使協調を基本とする穏健な路線を貫く先見性に富み、今日の連合の土台を築いた先駆者だと私は理解をさせていただいております。  減税の財源論について、赤字国債やむなしということですけれども、もう一歩踏み込んで、直間比率の見直しによる所得税減税に踏み込んだ税制改正についてはどうお考えでございますか。
  19. 山田精吾

    山田公述人 やはり本格的な税制改正をやって財源をどうするかということになれば、私は直間比率の問題は避けて通れないだろうというぐあいに実は思っております。  たまたま消費税の議論をしました際に、参議院段階で野党としての一つの見解をまとめました。そのときに、直間比率をどう見るのかということについて、あの際、社公民連では七、三くらいでどうなんだというところが一応の確認をされた経過がございますから、今の時点から見ましてどこが一番妥当なのかなかなか難しいですね、この線の引き方というのが。しかし、難しい難しいと言っておってもしようがありませんし、特に税制に対する不満が最も強いのはやはりサラリーマンですし、生活者という言葉がありますが、私はむしろ賃金生活者、そういう立場から、どういう税制が一番妥当なのか、公平なものなのかということで、さらに我々としても踏み込んだ議論をしてみよう。ただ、それが何か即消費税だということに結びたがる人がいるものですから、議論がどうもやりにくいのです。  ですから、あくまでも直間比率は直間比率で見直してみて、検討してみて、それからやはり所得と資産と消費とバランスのとれた税制をどうするかということは、これは与野党どなたも反対はないと思いますから、具体的にはそれはどういうことをすれば全体の合意ができるのかということは、相談すれば私は道は開けるというぐあいに思います。
  20. 浅野勝人

    浅野委員 避けて通れないというお考えで十分でございます。  終わります。
  21. 粕谷茂

    粕谷委員長 次に、水田稔君。
  22. 水田稔

    水田委員 公述人の皆さん、御苦労さまでございます。  まず、山田公述人にお伺いしたいのですが、私は本会議の代表質問でもやったのですが、今の複合不況といいますか、そういう中でやれることは何でもやる、政府は政府、民間は民間、いろいろなことをやらなければ、今まで経験したことのない状況だろう、そういうことで申し上げたのですが、もちろんこれは基本的には賃金問題というのは労使の決めるべきものです。しかし、いわゆるGNPでいえば六〇%を占める個人消費の主力をなしておるわけですから、そこの一%の賃金がどう決まるかというのは、今の景気の動向の中では一兆円の減税とかあるいは公共事業以上の効果があるわけですね。  そういう点で現実に取り組んでおられるわけですが、私ども見ておりまして、どうも経営側はそういう点で、もちろん一つ一つの企業が倒産しそうなところまでやれといったってそれは無理ですけれども、そういう点での取り組みがどうも、今全体で、もちろん政府もやらなきゃならぬ、あるいは労働組合も努力しなきゃならぬこともあるでしょうが、そういう点、ちょっと取り組みが違うんじゃないかという感じがしますが、労働側の立場で、私、今どういうぐあいに状況がなって、そして賃金問題に対する全体的な景気動向の中で、景気回復の中で、労働組合側としてそれを景気対策の一環として、先ほどもちょっと御意見ありましたが、どういうぐあいにごらんになっておるかということも含めて、御意見をまず聞かせていただきたいと思うのです。  それから、もう一つは減税問題で、たくさん言われましたから。ただ、例示されました年収七百万のところで事実上賃金を上げても、いわゆる税金と、一%上げれば三・五%と言われましたが、実際上がっても社会保険料、それから事実上は全体的に残業が減ってきておるとか、あるいはまた一時金とか賞与の段階では横ばいかもしくは下がるというようなそういう状況からいえば、実質的にはそこのところでは実質収入が減ってくる、マイナスになっておるというそういうこともあるだろうと思うのですが、そういうことも今の景気動向に影響があると思うので、減税問題でもうちょっとそこのところをお伺いしたいと思うのです。  それからもう一つは、これはお答えにくいことかもしれませんが、労働組合としては現実に組織されておる人たちのことですが、私ども政党の立場から見ますと、例えば所得税を払わなくてもいい三百十九万八千円以下の標準のところでいえば、所得減税だけやりますと、ここへは全く減税分は返ってこないわけですから、一番問題があるのはこの不況の中でそこですから、そういう問題についても、ちょっとお答えにくければそれはお答えは結構ですが、ただ、組織的にはやはり論議として私ども減税の中ではそこらも政党として考えれば大事な問題だという受けとめ方をしておりますので、ちょっと御意見があればそこも聞かせていただきたいと思います。
  23. 山田精吾

    山田公述人 先週も私ども日本経営者連盟との間で会談を実は持ちまして、今御質問ありましたような内容を中心に大いに意見を闘わしてみたのですがね。一番が、私ども先ほどもちょっと触れましたように、何かつかみで物を言っているのじゃありませんよと。一定の方式に基づいて賃上げとか減税とかそういう絡みと日本経済、広く言えば経済収支にわたる全体が一体どうなるのかということを詳しく実は分析をした上で出したものです。  経営側は、政治は三流とか四流とか、経済は一流だなんということをよく言われますが、せんだっても私申し上げたのですが、この景気対策に当たって経済界は一体みずからは何をやろうとしているのか、これについての答えがないじゃないか。それからもう一つは、一番迷惑しているのは国民なんです、今の景気の問題で。こんな状況にだれがしたのか、こういうこともほとんど議論されないといいますか、明らかにされないまま従来型の、言うならば延長線でこの景気対策をやられたのでは、またぞろ下手するとバブルの再来といいますか、それがやって来るんじゃないかということを大変私どもは一方ではまた気にしているということ。そういうことで、政府の方も従来から、経済、産業優先から生活を重視するという生活重視型の予算を組むということを強調しておられます。その考え方は私ども全く賛成なんですが、どうもまだ具体的に余り見えないものですから、見えるものもありますけれども先ほどいろんな問題を具体的に出したりしました。  そういう視点から、経済界は口を開くと賃金抑制、定期昇給だけでいい。定期昇給だけで仮にやったら、日経連が、二・三%程度、そして七千円ぐらいだろうと、こう言っているのですね。定期昇給だけでいいということを盛んに言っているのです。定期昇給というのは、私流に言えば、初任給で入ってきます、安い賃金。それでとんとんと階段を毎年上りながら定年退職で高い賃金でやめていく。これは言うならばエスカレートで循環しているのですね。縦と底辺の三角形の面積が実は労務費、人件費の総額というのがあるのですから、ベースアップというのはまさに一人一人の階段の高さを高める、全体の面積を広げるというのが実は賃上げ、ベースアップというのですが、それに一切寄与しないのです、定期昇給だけですから。そんなことで、これだけ時間外労働も相当やはり不況のせいで落ち込みました。ある産業界も言っています。連合も計算しました。二〇%ぐらい仮に時間外が落ち込んでおるとすれば、大体三兆二千億円ぐらい落ち込んでいるだろうというぐあいに私ども見ている。これは相当消費に響いていることは間違いがないことなんだと思うのです。そういうことで、口を開くと賃金抑制論、定期昇給だけと言う。  それから一方では、人が余った、人が余った、雇用か賃金がというようなことを言い出す。一遍に言いますと長くなりますからまたお答えしますが、そんなことは、一言で言いますと雇用問題も心配しています、我々は。しかし、今〇・九三です。有効求人倍率が〇・九三。昭和四十九年のときに〇・九七になりまして、翌年から〇・六ぐらいに落ち込みまして、十三年間実は有効求人倍率は〇・六から〇・七の間で私たちは労使関係の中で賃上げをやってきた。そういう長い長い体験を持っていますから、今の程度のところでもう賃上げはできないとか何だかんだという大騒ぎすること自体が私はナンセンスだ、言いがかりだということを言っていますから、私は何が言いたいのかといえば、何か自民党と経済団体との会合でも賃上げをめぐってやりとりがあったとお聞きしていますが、やはり経営側として、経済界として応分の、血を流してでも応分の対応をこの景気対策でやるべきだ。具体的には、やはり厳しくとも賃上げには応じてできるだけのことはするという姿勢がそれこそそれぞれの立場で精いっぱい景気対策に立ち向かうことではないかなというぐあいに実は私は思っております、  それからもう一点は、負担の問題でしたか。
  24. 水田稔

    水田委員 減税の、七百万の標準のところで九二年度、事実上は賃金上がっても下がっておる例があるのですが、そういう……。
  25. 山田精吾

    山田公述人 時間があれば詳しく、実はこれも実態を計算をしたものがございますから。本当に賃上げはこれはもう自分たちのためにもあるのですが、社会保障面の負担とそれから税制負担で相当生活が窮屈になっていることはそのとおりだと思います。また必要であれば、資料はいつでも発表していますから。
  26. 水田稔

    水田委員 もう一つ、所得税を払っていない層に対する……。
  27. 山田精吾

    山田公述人 それは、所得税に関係していないところはそれこそ政策減税でいろいろまた相談をしながら、全体が何か減税に関係をするような、影響を受けるような方法を考えたらいいんじゃないかと思います。
  28. 水田稔

    水田委員 最後の点は、所得税を払っていない、所得三百十九万八千円以下の層のところを、所得減税をやっても全く何も返ってこないわけですから、そういう点我々は我々で政党間の論議もいたしますが、組織された労働者の組織としてそういう問題もあるということを一つとらまえて御検討いただければありがたいと思います。  それでは、時間がありませんから次の問題で、基準法の問題について御意見がありましたが、三月十九日閣議決定、国会に提出、こういうことになりました。ただ、いろいろ聞いていまして、今お話もありましたけれども。中央基準審議会ですか、三者構成で、そういう中で提言とかあるいは意見が出て、そういう中でのやはりある程度の三者の合意というのがあっただろうと思うのです。そういう点からいえば、今度具体的に出てきた案というのは、今ちょっと御意見もありましたけれども、経緯からしてお互い何か信頼関係を損なうという問題もそこにあるんじゃないかと思いますので、この経緯と、それから閣議決定して国会へ出されたものについての御意見をもう一遍お伺いしたい。  それからもう一つは、時間の関係でお話しになりませんでしたが、それと時間外手当の関係とは密接な関係があります。これも、これまでの中央基準審議会の論議とかあるいはこれまでのやりとりの中で、今度の場合はいわゆる政令にゆだねられるわけでございますけれども、やはりヨーロッパの工業先進国あるいはアジアにおける時間外手当の現実、現状がどうなっておるかということもできれば一緒にお伺いしたい。御意見と両方お伺いしたいと思います。
  29. 山田精吾

    山田公述人 労基法の問題については、一つは来年の四月から四十時間の実施に入る、これは私どもはそれなりに評価をさしてもらう。ただ、先ほど言いましたように、猶予措置とそれから特例措置の、六五%の人たちが該当していないわけですから、全労働者の人たちが一日も早く四十時間に移行する、そういうことについてもっともっと私は国会でも議論してほしいなというぐあいに思っております。それからもう一点は、割り増し賃金について今御質問がございました。二五%、日本の場合は。戦後焼け跡の時代から据え置いたままですね。そういうところはありません。アジアでもフィリピンだけです、二五%。そのフィリピンも祭日はまだそれに割り増しする。だから、最低の最低は日本ということはもう皆さんも御承知のとおりなんですね。公益委員側から出されました建議というのがあるのですけれども、あれからいえばやはり五〇%を中心に考えなさいよというのが出たにもかかわらず、極めて残念なことに、当分は時間外は二五で据え置き、休日だけ二五から五〇以内でひとつ政令で検討しましょう、こんなことですから、これじゃ本当に私どもとしては困るというのが基本的な考え方です。  それから、猶予と特例については撤廃してくれというのが私たちの基本だということ。ましてやことしの四月一日からもう予定されている四十四時間移行については、絶対にこれはやはり方針どおりやるべきだ。  それから、年休の問題それから変形労働、ありますが、また別な機会にお願いしたい。
  30. 水田稔

    水田委員 ありがとうございました。  それじゃ、お話がありましたように、中小企業だから――働いておる立場からいえば大企業も中小企業も一緒ですね、企業としてはいろいろ条件は違うかもしれませんが。そこで、下請企業の労働時間について、短縮するために九一年の二月に通産省が下請振興基準を改正して、納期や発注方法、下請単価などの改善の方向を打ち出して、業界団体や企業へPRしてきたわけですね。これは、今度の法改正の中でも、なかなか中小企業が対応しにくいということで意見が相当出たようでありますが、ここらについてです。  これは、やはりそれが成果を上げておれば、法改正といってもそれほどの抵抗もなく進むのだろうと思いますが、労働側から見て、こういう通産省などが今までやってきたことがどういうぐあいに成果として出てきておるのか、現状についておわかりでしたら御意見を聞かしていただきたいと思います。
  31. 山田精吾

    山田公述人 先ほど、労基法の問題で四十六時間から四十四時間と言いまして、間もなく商工会議所と我々も話し合いをすることになっているのですが、こういうことで一生懸命やりたいと思うのですね。なぜ中小企業で時間短縮ができないのか、それは何なのかということははっきりしているわけです。そこでわざわざ通産省も、おととし二月でしたか、下請振興基準の大幅な改正をやられて、あれを実行してもらえればかなり中小企業助かるのです。  ところが、つい最近連合として、中小企業の約千五百社それから労働組合、中小の組合五百組合から返事をいただきました。こういうものがあるというのを知らなかった三〇%、知っていたが内容は知らない四一%。労働組合では、知らなかった五八、知っていたが内容は知らなかった三二ですから、ほとんどの人が知らない。せっかくああいうような制度があるのに知らないということですから、非常に残念に思っている。我々は、壁新聞やらいろいろなものをつくってどんどんどんどんやっているのですが、何せ中小企業の組合の組織率が一・数%ではなかなか届くわけないし、我々自身も組織率の低さについては反省をしておりますが、そういうこと。  それから、問題は、休日前に発注ありが四九%、それで九一%が休日出勤、残業でこれを補っておる。終業後発注ありが一八%、八九%が残業の対象。発注の内容の変更ありが六八、そして七六%が残業、休日でやっています。いろいろな大手企業の都合で振り回されているのです。そのたびに時間外とか休日出勤で何とか補いをつけておる。  これがもう歴然と調査の結果出ていますから、これは本当にそれぞれの経済団体も連合も、それから行政も皆さん方も一緒になって改革すればかなり時間短縮の面なんかは改善されるんじゃないかというぐあいに思っております。
  32. 水田稔

    水田委員 山田公述人に最後の質問になりますが、沖縄の年金格差ですね、本土との。これについて。  本土へ返ってきたのが遅いわけですから、制度の発足もおくれておるわけですね。これについては格差が必然的についておるわけですが、これについて特に何か御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
  33. 山田精吾

    山田公述人 特にではなくて、ぜひこれはお願いしたいことで、本当は最初に申し上げたかったのですが、時間切れで後回しになりまして。  発足は十六年ほど実はこれはおくれておりまして、何回か手直しはされておるのですが、依然として格差は大きくあります。第百二十三国会で、本土復帰二十周年ということで総理も大変気にされて、そして、わざわざ関係省庁の検討会が持たれたということで、何といいますか機会があることに督促しているのですが、いまだにこの結論が出ていない。ぜひ本年の三月までにはこの結論を出してもらうように与野党の皆さん方にぜひお願いを強くしたいと思います。ぜひお願いいたします。
  34. 水田稔

    水田委員 ありがとうございました。  それでは中西公述人にちふっとお伺いしたいのですが、全体的に均衡といいますか、中間的なそういう状況にあると言うのですが、ロシア関係をちょっとお伺いしたいのですが、まさに生産は年々GNPで二〇%、去年は三〇%マイナスなのですね。別に生産設備が壊れたわけじゃないのですが、マイナス。それから、ついこの間も一ドルが四百何十ルーブルと言っておったが、既にすぐに五百四十ルーブルとか、まさに超インフレが進行しておるわけですね。  そういう中で一体どういう関係を持ったらいいかというのは一番日本としても選択の難しいところですが、そういう中で、先生が言われましたゴルバチョフの新思考外交から独自路線を歩み出した。私どもはそういう中で、そういうことよりもむしろ北方領土との絡みで経済協力をあの困難な状態でどういうぐあいにやったらいいのか。政府は、一億ドル、あるいはまた、あれだけエリツィン大統領が来ないという中でも日本でCIS支援のための国際会議を、そういう努力をしてきておるわけですね。  ですから、一つは独自路線をどういう方向にとり出したのかな、私はそれは見えてきませんけれども。それからもう一つは、どういう形の関係を持てばいいとお考えか、お聞かせいただけたらありがたいと思います。
  35. 中西輝政

    中西公述人 結論から申し上げるようですが、今のロシアは、恐らくいろいろな意味で長期的な外交関係を持てるそういう国内事情になっていないということで、端的に言えば、当事者能力がいろいろな意味で、これはもう経済政策あるいは対ロシア支援等を先進国枠組みで行いましても、それが果たして有効に使われるかどうか極めて疑問になっておる、そういう状況であります。外貨に関しましても、ほとんどは輸出その他で外貨を稼いだものもそのまま例えば海外の銀行にそれが送られてしまう、そういう現状であります。  このロシア外交の新しい路線という問題ですけれども、これは昨年の十一月ぐらいにロシア外務省が出したいわゆる「外交概念」という文書がございますが、この中で、やはり国益を中心にした、いわゆる実務的といいますか、より実際的な観点で、かつてのイデオロギー的な共産主義の外交あるいはその後を継いだゴルバチョフ時代のペレストロイカ外交というものも同じく非常に理念の勝ったそういうもので、どちらかといえば国益に害をもたらしてきたんではないだろうか、こういう発想が、ロシア国内では外交指導部あるいは外交評論に携わるような階層がかなりはっきりと主張しておるということは極めて注目すべきことであろうというふうに私は思っております。  また、国連等におけるボスニアの今回のあの解決を見てみましても、ロシア国連におけるいわゆる対西側協力という枠組みが、これまでの自動的な協力というふうに目されたようなそういうロシアの立場が、かなり明確に変わり始めている。ケース・バイ・ケースで、国益によって、外交的取引によってその国連におけるビヘービアを変えていこうという考えがもしかしたらあるのかもしれません。いずれにしても、非常に明確にわかるのは、「外交概念」という文書の中に国益外交への傾斜というものがはっきりあらわれているということは間違いなく読み取れると思います。
  36. 水田稔

    水田委員 ありがとうございました。  最後に和田公述人にお伺いするんですが、御意見、全く私どもが一生懸命いろいろなところで訴えていることと同じこと重言われたものですから、お聞きすることもないかなと思うぐらいなんですが、実は、具体的に安全性という場合、日本の米と例えばアメリカの米のそういう残留農薬がどうあるとか、そういうことをお調べになったことがありますでしょうか。
  37. 和田正江

    和田(正)公述人 私どもの団体でストレートに、今おっしゃいました米について調べたということはございません。
  38. 水田稔

    水田委員 私どもこの間テレビで見て、そしてその資料をもらってきたんですが、アメリカ日本のそういう情報は御存じですか。
  39. 和田正江

    和田(正)公述人 はい、存じております。
  40. 水田稔

    水田委員 そこで、米だけじゃなくて、食べるものはもう肉から何からいろいろなものを食べるわけです。もうほとんどが輸入ですね。米だけじゃなくて、輸入するものが、先ほど話があったように日本基準が違う。複合で食べるわけです、実際には。そして、日本はまた医薬品はたくさん使う国ですから、それらを含めていくと、まさに日本の人間というのはどれだけいろんな合成薬品で汚染されておるかわからぬわけですね。そういう点での御論議は、米だけじゃなくて、ポストハーベストその他含めて、例えば輸入する食品全部、そういうことを含めた御論議はやはり会の方ではやって、そういう運動もなさっておられるわけでしょうか。
  41. 和田正江

    和田(正)公述人 今お話のございましたとおりでございまして、特に安全性につきましては、国内のものは問題なくて輸入品だけが問題があるというとらえ方は決していたしておりません。国内のものも含めて食べ物に由来するもの、これは食品添加物農薬それからいろいろな残留の問題、それから副作用があることは承知の上で摂取しております医薬品もございます。そういうことまで全部含めて、あしたおなかを壊すとかそういうことでしたらまだわかるわけですけれども、私どもの孫子の代になって、昭和の時代に、平成の時代に何をやっていたんだと言われないように、私たちとしては、いろいろな複合の問題、これは事実上すべての複合のテストをやるということは正直なところ不可能なわけですから、いろいろな疑問が出されております化学的な物質につきましては、できるだけ種類もそれから量も規制の方向で少なくして、今以上にはふやしてほしくない。  それから、私ども運動といたしましては、自分たちの食生活の中で表示の面などを十分にするような方向運動をして、私たちが選んで、そのような私たちに望ましいようなものを生産してもらってそれを消費するような運動ということもつなげております。  時間が短いので、おわかりいただけたかどうかわかりませんけれども、おっしゃったような広い意味での運動を当然いたしております。  それからもう一つ、さっきのお話でございますけれども、いろいろな国際基準それから特にガットの検疫の問題につきましては、情報が私どものところになかなか入りにくいというようなこともございますので、その面につきましてもできるだけ早く、私たちに大変身近な情報でございますので、流してほしいというような情報公開の運動も取り組んでおります。  以上でございます。
  42. 水田稔

    水田委員 最後の質問になりますが、実は米の輸入自由化反対だけ言っておっても、なかなかそれは実際は防ぎ切れないわけですね。実際、国内状況を見ると、後継者が全く、農家ではもう本当に微々たるものになってしまった。あるいはまた、コストを下げるために耕作面積を広くしようと思っても、そうできない中山間地がいわゆる農地の四二%を占めておる。そういう状況の中で私たちは何とか、それはお話があったように単に農家の問題だけじゃないわけですから、これは国民の、いわゆる安全な食糧を安定的に供給するということや国土保全とか環境問題、いろいろな問題を含めて、国民全体にプラスになることですから、それができるような条件を少し法律で支えていこうというのを私どもは提起しておるわけですが、そういうことについて何か御意見があれば聞かしていただきたいと思います。
  43. 和田正江

    和田(正)公述人 今お話のございましたように、確かに今の農業の現状、稲作の現状、私ども拝見しておりましても、大変胸が痛くなるような状況でございます。ですから、先ほどもお尋ねございましたが、食べるものをできるだけ安くというのは消費者の立場として当然ではございますけれども、やみくもに安くしてほしいということではなくて、私たちがこれからの将来に向かって本当に農業を支えてもらう、私たちの胃袋をゆだねることのできる農家が将来に展望を持って農業をやっていただけるような構造政策なり価格政策なりというものをとっていただきたいと思います。むやみに今の値段に無関心であるわけではございませんけれども、私ども調査の中でも米は自給でと言っている消費者先ほど申し上げましたように非常に多うございますけれども、一万その自由意見の中に、今の稲作なり農政に対して非常に厳しい注文をつけている消費者が多いということを申し添えさせていただきます。  以上でございます。
  44. 水田稔

    水田委員 ありがとうございました。終わります。
  45. 粕谷茂

    粕谷委員長 水田稔君の質疑は終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  46. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川でございます。三先生には大変お忙しいところありがとうございます。  まず、中西先生にお伺いをいたしたいわけでございますが、先ほど先生は、国際情勢の認識の特徴として世界秩序安定化要因の不安定さを指摘をされました。また、ドイツの動向についても触れられたわけでございますが、現在伝えられるところによりますと、ドイツに流入をしている外国人労働者の排除に端を発しておりますネオナチズムというこの新しい動きの台頭が大変問題になっておるわけでございますが、この動向は今後どのように影響を与えていくのであろうか、大変関心がございますので、お教え願いたいと思います。
  47. 中西輝政

    中西公述人 今おっしゃられたようないわゆるネオナチ的な運動というものはドイツに何も限られたものではございません。恐らくフランスで今実際に、例えば国民戦線というようなそういう団体がありますが、そういうフランスで行われているようないわゆる排外ナショナリズム運動みたいなものがもしドイツで実際にあったとしたら、これはもう世界中がみんなナチズムの復興だと言って腰を抜かすような、そういう性質のものです。つまり、先進国に非常に広く広がっている一つの傾向というふうに見る方が妥当であろう。ドイツをこの点で取り上げて議論するということは、事実上余り有益な議論にならないだろうというふうに私は思っております。  ですから、将来的にこれはドイツ国内で今後ますます広がっていくというようなことは、私は大変考えにくいだろうというふうに見ております。今の統一の経過の中にある経済的な困窮状況、特にまた東ドイツが、民主主義教育を受けていない国民が新たにドイツ人として加わってきたこと、それは言論あるいは社会的な雰囲気を非常に後ろへ引っ張るといいますか、悪い作用をしているのでないだろうか、私はこういうふうに見ております。  いずれにいたしましても、これはドイツだけの現象ではないし、また長期化するような、拡大していくようなものではなくて、一過性のものであろうというふうに見るべきだと思います。ただ、その根底にある今の世界全体に広がっている流れというものは、やはりイデオロギーの時代が終わった後にこういうナショナリズム的な発想とかそういう傾きというものは一つの隠れた潮流としてある。これは多分、先ほどロシアのお話、あるいはアメリカ国内にもいわゆるアメリカ・ファーストというような考え方もあります。あるいは中国あたりでも形の変わったナショナリズム的な感情が広がっております。こういうことは一つ言えると思いますが、ドイツの問題だけに限って議論すべきではないだろうというように思っております。
  48. 草川昭三

    ○草川委員 もう一問お伺いをしますが、アジア太平洋におきます日米関係についても触れられたわけですが、アメリカの中にアジアの視点を見出すことが大切だ、またアメリカの新しいイニシアチブが出る可能性ということがあるのではないか、こうおっしゃいましたが、もう少し具体的な問題点についてお聞かせ願いたいと思います。
  49. 中西輝政

    中西公述人 アメリカアジア太平洋地域に対する政策というものは非常に今星雲状態といいますか、非常に未確定な状況にあることは間違いないと思います。ただ、その中で一つはっきりしているというふうに私が見ておりますのは、アメリカはクリントン政権によって、アジア太平洋のいわゆる地域安全保障問題、これに関しては前政権とは随分違う立場をとるだろう、恐らくことしの後半から来年にかけてという時点になろうかと思いますが、これはいろいろな不確定要因がありますから断言できませんが、いずれ早い時期にクリントン政権アジア太平洋安全保障問題でかなりのイニシアチブといいますか提案をもたらすだろうというように私は見ております。  それで、具体的にこの安全保障問題以外に私がアジアにおける日米関係ということで強調したのはやはり経済、貿易の問題であります。特に、前政権、ブッシュ政権はいわゆる北米自由貿易協定、NAFTAをアジアに拡大するというような多少問題のある提案を過去しておるわけでありますが、今の新しい政権がこの問題にどういうふうに取り組むかということに関して、私は、前政権のそういう方向を踏襲するということは日本にとっては好ましいことではない、したがって、日本としては早い時期に、むしろこちらから別の形の、しかも建設的にアジアにおける日米経済関係が調整できるようなそういう提案をしていくべきだろう、こういうふうに考えております。
  50. 草川昭三

    ○草川委員 ありがとうございました。  では、和田先生にお伺いをいたしますが、米の問題について触れられました。そしてまた、消費者の納得をする価格等についても御発言があったわけでございますが、熱心に米をつくってみえる農家の話を聞きますと、おいしい米を消費者に届けたい、そのために生産者の名前を米の袋に書き込んで責任を持ちたい、そして我々も励みになる、こんなことを言っておられる方が多いわけでございますが、米袋に生産者の名前を書くという運動についてどのようなお考えを持っておみえになるのか、率直なお話をお伺いしたいと思うのです。
  51. 和田正江

    和田(正)公述人 今お尋ねがございましたので、これはあくまでも私個人の、今伺いました範囲での考え方とお考えいただきたいと思います。  今、米に限らず顔の見えるということがよく言われておりますので、米に限らず生産者の名前が入っているというような商品がたくさん出ております。ある意味で、その生産者がはっきりわかる、生産者の方も自分でつくったものに責任を持って、そしてこういうつくり方をしたんだということを積極的に訴えていくということは、一面から見ますと大変望ましいことだと思います。ただ、それがうっかりいたしますと、裏返しにあくまでもセールスポイントだけに使われるということが絶対にないとは言えない。その辺の懸念もございますので、今すぐに、米の袋に顔なり名前が入っているということが消費者にとってデメリットは一切なくて、もろ手を挙げて歓迎するというところまではちょっと申し上げ切れない、いろいろな問題が出てくるのじゃないかなという点がございます。  ただ、今、特別栽培米あるいは特別表示米というようなことで、通常の生産方法ではないつくり方のものが食管法の制度にきちんと乗りまして、確実に生産者の名前もわかり直接消費者の手に渡るような制度が食管法の上で制度化されております。私自身もそういうお米を購入いたしておりますが、そういう制度をもっと拡充させていく、私たちからいえばそういう制度をもっと広めていくということが今のお尋ねの一つのお答えになるのではないかなと考えております。
  52. 草川昭三

    ○草川委員 ありがとうございました。  では、時間がございませんので最後に山田先生にお伺いをいたしますが、ことしの春闘で七%アップ、そしてまた減税、それから時間短縮の完全実施、それでシミュレーションを行いますと三・七というようなことをおっしゃいましたが、時短という問題の実施についてお伺いをしたいわけですが、時短ということは当然雇用の増加ということにつながるわけでありますし、雇用の増加ということになりますとその品物のコストアップということになる、これが価格転嫁というふうにつながっていくわけでありますが、時間短縮と経済の成長との関連をもう少し御説明願いたいと思うのですが。
  53. 山田精吾

    山田公述人 ことしの賃上げをめぐる労使の一つの争点として、昨年の春から表面化してきたのですけれども日本の場合労働分配率が非常に低い、言うならば設備投資率はこれは世界に比べて非常に高い、これが特徴なんですね。その設備投資というのが今景気対策でも非常に注目されておりますけれども、我々から見ますと、過当競争に非常に関連する過剰な投資といいますか、これが非常に大問題だというぐあいに労働側は見ているわけです。  一つのものを見ましても、モデルチェンジを一つとりましても、これほどまでくるくるモデルチェンジをする。我々から言えば、生産性の足を引っ張るむだというのは、代表的には過剰包装だけの問題ではなくてこういう面にも大きく日本の場合にはあらわれている。そのむだが無理につながっておるということで、忙しい割に問題は、そうまた利益もない。そういうことが産業によっては非常に顕著に出ていますから、労働時間短縮の問題と今の産業構造、それから操業のあり方、こういうことを総合的に見ますと、時間短縮によって何かやっていけないということにならない。  それから、政府自身も生活大国の五カ年計画をつくる際に一定のシミュレーションを出しまして、一九九六年には千八百時間達成を目標にしようじゃないかということが出ております。そのほかいろいろな施策を的確に、やはり政策とか制度の面で、特に中小企業の面では打ってもらうことが環境づくりとして非常に大事だ、そのことの方がむしろ私は大事なことだというふうに見ています。
  54. 草川昭三

    ○草川委員 今、連合のアンケート等で、大手企業の休日前発注等で、大変中小零細の残業等で困っている、こういうお話がございました。また、今度賃上げをやられるわけでございますが、我々、率直な物の言い方をさせていただいて恐縮ですが、大手の労働組合が賃上げをするとそのしわ寄せが下請に寄る、こういう悩みをよく聞くわけであります。  そこで、ぜひ連合として、大手の組合たくさん抱えてみえますから、経営協議会とか経営会議で下請の単価アップということを、要求というと言葉が悪いのですが、企業側に申し入れをする、また連合という大きな舞台で、下請にはしわを寄せない、単価を上げる、こういうことにも協力するというような声明をできないものだろうかということを私はかねがね思っておるわけでございますが、これは率直な中小零細の声として連合の大幹部の皆さんに聞いていただきたいというわけで申し上げたわけですが、その点はどのようなお答えになるでしょうか。
  55. 山田精吾

    山田公述人 実は、今までの賃上げの要求というのは率専門だったものですから、やるたびにむしろ格差を拡大する。だから、去年からようやく七%中心、二万円以上という金額をばんと入れました。これはできるだけ格差を縮める、むしろ我々としては金額を前面に出しながら、結果は率は幾ら、こういうぐあいに切りかえようじゃないかということが一つ。  それから、先ほど下請振興基準の話をしましたが、これは言うならば発注、納期、単価、三本ですね、重要なポイントは。これを我々は全面的に支持しておるわけですから、もっと強化せいと言っているわけですから、そういうような総合的な面で、単価ももちろん入れまして、我々、何といいますか、連合としても大手の組合を中心にしながら、さらにわかるような形で積極支援をタイミングを見ながらひとつ打ち上げて対応していきたいと思います。今の御意見については十分私どもとしては受けとめてやっていきます。
  56. 草川昭三

    ○草川委員 最後の一問になると思うのでございますが、今回のこの不況で内定者の取り消しというのが随分出ているわけです。これは大きな話題にもなっておるわけでございますが、一体、そもそも内定者という制度そのものに問題があると思うのですが、労働組合側としてはどのようなお考えか、お伺いをしたいと思います。
  57. 山田精吾

    山田公述人 今幾つかの雇用問題が上がっておりますが、これは必ずしも不況ということだけではないのですね。言うならば、団塊の世代というのは、前もってわかっているわけですから、時間をかけて犠牲者を出さないように手順よくやれば、最近幾つかの問題が発生していますけれども、ああいうことは起こらなくて済むと思うのです。  それと同じように、やはり経済界、企業界というのは安易に人の問題を考えておる。ここは非常に大きなポイントだろうと私は思いますから、もっとその辺はしっかり、人を大事にするということをいわゆる企業倫理といいますか、あれだけ損失補てんそのほかでたたかれたわけですから、人の問題も、金だけではなくて人の問題についてもしっかりやってほしいということを繰り返し繰り返し我々としては経済界に、企業側にそれを求めておるということを申し上げますし、それから採用内定取り消し問題については、極めて私ども遺憾だ。労働省も警告したようでありますが、私どももひとつ強く喚起したいというぐあいに思います。
  58. 草川昭三

    ○草川委員 ありがとうございました。終わります。
  59. 粕谷茂

    粕谷委員長 草川昭三君の質疑は終了いたしました。  次に、小沢和秋君。
  60. 小沢和秋

    小沢(和)委員 日本共産党の小沢でございます。  きょうは、三人の公述人の皆さんには大変貴重な御意見、ありがとうございました。  まず、山田公述人にお尋ねをいたしたいと思います。  私は、今の不況を打開するためには、GNPの約六割を占めるいわゆる国民の消費支出を拡大することが決定的であるし、そのために減税と賃上げが車の両輪ではないかと思うのです。政府にとっては減税が決定的な責任分野でありますからその点でまずお尋ねをしたいんですが、先ほどのお話では、財源としてこれまで赤字国債の発行には反対してきたけれども、もうそう言っておられないというお話だったのです。しかし、私は、これはやはり安易に過ぎるのではないだろうか。もう今既に、御存じのとおり国は百八十二兆円という大変な借金を抱えているわけで、毎年国債費だけで十数兆円という状況ですね。だから、こういうことを考えてみるというと、ここでまた減税の財源のために赤字国債を出すということになれば、さらにこの借金を欠きべして、結局長期的には悔いを残すことになるのではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  61. 山田精吾

    山田公述人 今おっしゃられたことは、本当に考えに考え抜いた末の赤字国債、弾力的に対応せざるを得ないなということを言ったということなんで、何かそれにかわって、いやこうすればできるよということであれば早速私どももそのことでやりたいと思うのですけれども、我々もそのことは、具体的に行革からいろいろな問題、こういうようなむだはやめてこういうことをしたらどうかということになっているんだが、なかなかこれがもうすぐに実行できるということにならないものですから、それは今後の課題として、できれば赤字国債を出すときにお互いに約束を取りつけながら、一日も早くこの赤字国債を返すよと。景気が変われば税収もふえるわけですから、それでやはり返す。今まではそういうことを言いながらもなかなかずるずるべったりになったものですから、お互いに信用がないということになりますから、今回は政治改革の一環ぐらいに思って、きちっとお互いに与野党で約束を取りつけて国民の前に宣言して、これは返しますよということを言いながらやれば、かなり今言われたことは解消するんじゃないかと私は思っております。
  62. 小沢和秋

    小沢(和)委員 一日も早く返すように、景気がよくなったらまず返すということでだったら発行してもいいんじゃないかというふうに言われましたけれども、私は、すぐ返すということならば、早速これは償還の手当てもしなければならない、そのために利子もまた負担をしなければならない。それだけ、少々景気がよくなったからといって、ぱっとそれを償還できるだけの財源が確保できるという保証はなかなかないんじゃないかというふうに思いますが、その点は確信がおありでしょうか。
  63. 山田精吾

    山田公述人 私は、共産党の方が財源のことを言っておられますけれども、あれができるよりも私はやりやすいと思いますわ、こっちの方が。与野党が合意でそういうことを取りつけていけば、その方が私は実現性は強いというぐあいに見ております。  言いますけれども、喜んで赤字国賃言っているわけではありませんから、その点は誤解のないようにしていただきたいと思うんです。
  64. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、公述人と論争しようとは思いませんけれども、今言われたように、私どもは違う考え方を持っているわけですね。例えば、世界の大勢に反してまたことしも軍事費をふやそうとする。特に、あんなAWACSなんというようなのは、だれが考えてみたって、今どき導入する必要もない。だから、こういうようなものを削れば財源は確保できるじゃないかというふうに考えているわけですが、そこまできょう論争しようとは思いませんので、先に参りたいと思います。  もう一つ問題である賃上げですね。この点については、連合の方にもこれは頑張っていただかなければならないと思うんですが、政府に対して、先ほどのお話では、もともとは二兆円ぐらいの減税をと言っていたけれども、これだけ景気が落ち込むという中ではどうしても四、五兆円ぐらいの減税をというふうに減税要求を膨らましたというお話なんですが、政府に対してそれぐらい厳しい要求をするのであれば、賃上げについても、企業に対してやはりもっと厳しい態度で臨む必要があるんじゃないだろうか。私、その点で、連合加盟の組合が全体としてことし賃上げの要求を下げているというのは、今のお話から見るとちょっと腑に落ちないんですが、いかがでしょうか。
  65. 山田精吾

    山田公述人 今の話は激励と思って受けとめますが、しっかり頑張りますから、賃上げは。それに私は今の御質問は尽きるというぐあいに思います。決して政府だけに注文をつけているわけじゃありません。経済界と労働界、違いますから。むしろ私どもが心配していますのは、頭の上でやはり政府の方は、減税は嫌だ、賃上げやれ。今度はこっち、片一方の方は、賃上げは嫌だ、減税だけやれ。片一方は反対のことを言うというようなことで、上で、空中戦で終わったらえらいことだから、連合がしっかりして頑張りますから。
  66. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そういう決意をいただいたし、そのことは結構だと思うんですけれども、私どもが調べてみますというと、日本を代表するような大企業は、四百三十三社で八十八兆円のいわゆる内部留保というのを持っている。だから、そのごく一部を取り崩せば十分に賃上げなどにこたえるだけの力を持っている。このことは、私が言っているだけじゃなくて、第一次宮澤内閣の近藤労働大臣もそういう趣旨のことを言われているわけです。だから私は、そういう意味で、やる気になれば相当な賃上げにこたえる力が今の企業には十分あるんだというふうに考えておりますが、その点、御意見あれば聞かしていただきたい。
  67. 山田精吾

    山田公述人 日銀の発表を見ましても、内部留保、それから自己資本率、これは相当やはり改善されていますからね、あるところにはちゃんとありますから、それは十分我々もわきまえておりますし、何も大臣と共産党だけが言っているわけでなくて、我々も言っておりますから、それは誤解のないようにしておいてください。
  68. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それではもう一つ、労働基準法の改正問題についてお尋ねをしたいと思うんですが、中小に対しても同じように適用しなければおかしいというお話、先ほどありまして、これも私は全く同感なんです。それで、ただ、そのためには中小に対して必要な助成という手段もやらなければならないでしょうし、それから、先ほどちょっと同僚委員も、大企業に対して注文をするようなことを言っておられましたけれども、私も、例えば週末に発注して週明けに出せというような要求を出したり、あるいは単価を買いたたいたりというようなことでは、この労働基準法、どうしても中小の方はやりたくてもできないということになるんじゃないかと思うんですね。この辺の、中小に対して平等にやれるようにするためにどういう政策が必要かという点について、御意見があれば伺いたいんです。
  69. 山田精吾

    山田公述人 基本的には、中小企業対策とか政策ということはよく言われるんですが、中小企業労働者対策、これが割と欠落しているんじゃないかなということをいつも主張し、我々も反省をしながらその面での対策の強化を急いでいます。ですから、今まで中小企業の労働力確保の問題とか、従来二つ三つの省庁が合同しながらやるというようなことで、皆さんたちも大変協力されて、何本か最近上がってきました。さらに足らざるところを私は強化をすべきだ。だから、あの実施状況を今精査しているんです。何が足らぬのか。それで、足らぬところは直ちにまた、何といいますか、法律の補強をするために持ち込んでいきますが、手っ取り早くは、さっきから何度も言っていますように中小企業振興基準というのがあります、せっかく。これがどうもうまく機能してない。できればもうこれを法律化する、罰則化するというところまでいけば相当なこれは効き目が出てくるでしょうけれども、できるだけ手荒なことじゃなくて、話し合いの中でできればということで我々も基準を守るようにということですから、なかなか知らない人が多いというような実態ですから、まずはこの辺のところから全力を挙げて、私どもとしては、やはりまずは知ってもらう、そしてそれを違反するところは企業名も明らかにしてやっていくというぐあいに我々も踏み込んだ対応を積極的にとっていきますから、そういうぐあいに理解をし、見ておいていただきたいと思います。
  70. 小沢和秋

    小沢(和)委員 どうもありがとうございました。  では次に、中西公述人にお尋ねをしたいと思います。  先ほどお話伺っておったら、国連活動への参加なら武力を行使しても憲法上認められるというようなお話があったように思うんです。その点でちょっとお尋ねをしたいんですが、日本は、あの第二次大戦でアジア各国に対して侵略をして大変な被害を与えた、このことに対する反省を込めてあの憲法の第九条に見られるように、戦争を放棄する、戦力を保持しないという規定を持つ憲法をこさえたんだと思うんですね。こういう憲法を持っている以上、いわゆる国連活動に貢献をするといっても、PKO活動などへの参加については、そういう制約を持たない諸外国と違うのが当然ではないかと思うんです。その点いかがお考えでしょうか。
  71. 中西輝政

    中西公述人 憲法の九条の解釈の問題というのは私はここで立ち入るつもりはありませんけれども、我が国の憲法が、あるいは例えば憲法の中の条項でいえば、九条以外にも条約遵守義務というふうな条項がございます。あるいは前文、さまざまな憲法全体の体系を考えてみますと、憲法の中に国連がどのように位置づけられているかということについて考える必要があろうかと思います。  その点が、私自身学者としての立場で考えますと、やはり今の憲法は、一九二〇年代から、あるいは国際連盟の時代から始まってきた、いわゆる戦争の非合法化、あるいは不戦条約等に見られますような精神、こういったものの中に生まれた一つの系譜があろうというふうに考えております。したがって、いわゆる集団安全保障というものが生まれてきた七十年ぐらいの長い系譜の中で見てみますと、現憲法が、この流れの中で積極的にこの流れを推進するという考えを持っている憲法であるというふうに見て差し支えないんではないかというふうに考えております。  したがって、侵略への反省から生まれた九条というお考えで、これは私も同感いたしますが、そうすると、この侵略という問題に対して、国連という組織が恐らく現在の世界で普遍的に判断し得る唯一枠組みであるとしたら、この侵略への反省ということが一層の国連への協力という形につながり得る、そういう論理が私は成り立つのではないだろうか。冷戦が終わってきた時代に、これはもう一度強調される必要のある立場であろうというふうに考えております。
  72. 小沢和秋

    小沢(和)委員 だから、そういう国連の平和維持活動などに協力をするというのが大きな流れだと言われるけれども、だから自衛隊を出して、場合によったら武力を行使をしてもいいのだというふうに今の憲法上は読み取れないのではないかということを私は言っているのですが、いかがですか。
  73. 中西輝政

    中西公述人 その点について先ほど答えていなかったかもしれませんが、私はその前に、軍隊のアイデンティティーといいますか、軍事力の最も重要なメルクマールというのは、これは指揮権であるというふうに申し上げたのですが、この指揮権の問題を考えてみますと、軍事力がどのように使われるか、いわゆる本来的な武力行使に使われるのか、あるいはそれ以外の後方支援的な使用、あるいはさまざまな使用の体系が考えられます。しかし、それは全部指揮権にゆだねられる問題、原理的にはそういう問題だと思います。したがって、それは国連軍に関与することが武力行使になるのか、後方支援になるのか何になるのかということは、ひとえに指揮権をゆだねる先の、向こう側の判断の問題だろうと思うのです。したがって、問題はその指揮権を持つ主体に対する我々の態度をどういうふうにとるか、この一点にかかっているのではないだろうかというふうに私は思うわけです。したがって、現憲法があらゆる武力行使をすべて禁止しているというふうに読めないのは当然で、これはこの個別的自衛権の解釈において既に確立しているところであります。  したがって、そこから進んでさらに武力行使の可能性ということを、国連という主体にかかわったときにそれが全面的に禁止されるのであろうかというふうに考えますと、先ほど申し上げたような私の国連に対する、国連の存在に対する見方からいって、そのようには現憲法は読めない、そういう解釈でございます。そういう考え方でございます。
  74. 小沢和秋

    小沢(和)委員 時間が参りましたので、和田公述人にも質問をする用意をしておったんですが、これはもう断念をさせていただきます。ほとんど先ほど来言われておることは私どもも考えておったことでありますので、ぜひ今後の御健闘をお祈りいたします。  終わります。
  75. 粕谷茂

    粕谷委員長 小沢和秋君の質疑は終了いたしました。  次に、柳田稔君。
  76. 柳田稔

    柳田委員 お三方につきましては、大変御苦労さまでございます。  まず、冒頭山田公述人にお聞かせ願いたいのですが、いろいろと今の景気対策、お話を賜りました。私も選挙区に帰りまして、いろいろな人のお話を聞くのですが、ほとんどの方が今もう定時間労働だ、残業ゼロだ。ところが、うちに帰ってくる子供の教育費が大変かかる、もう物を買う金もないし、できれば同僚と一杯食みたいのだけれども、その金もないんだと。さらにひどいところに行きますと、会社が倒産してしまって路頭に迷っているというふうな大変切実な声を聞くようになってきたわけであります。  ところが、政府の対応といいますか、大変おくれているような、そして足りないような、出し渋っているのでは、そういうふうな感じもするわけで、余り認識をされていないのではないか。要するに、国民の皆さんがどういうふうな実態にあるのか認識されていないのではないかというふうに思うのですが、連合として、働く皆さんの代表者として、どういうふうな声が出ているのかお聞かせ願えればありがたいと思います。
  77. 山田精吾

    山田公述人 今おっしゃられたとおりなんですね。時間外はもう大幅に減っておりますし、それからパート労働もかなり削減をされてきていますし、一つの家庭から見ますと、全体的に収入が落ち込んでいるというのは、今の各種の政府の統計を見ればそれがそっくりそのままあらわれているというぐあいに思うのです。それがひいては、総合的にやはり個人消費にこれが大きな形としてなってきた。だから先ほど冒頭にも申し上げましたように、生活必需品までそれが差しかかってきたということについては、これは私どもは深刻に受けとめた。深刻に受けとめたから、今まで絶対反対をしておりました赤字国債にも、もう場合によってはやはり手をかけざるを得ないだろうというふうに踏み切りました。そこを深刻に受けとめるか受けとめないかの大きな違いだろうと私は思いますね。  恐らく、国会に選ばれている皆さんたちから見ればそのくらいのことは百も二百も承知のことだろうと私は思っておりますから、何かお互いに裸になった気持ちで話し合えば、これは与党とか野党とかいうようなことじゃないのじゃないかということで、先ほども繰り返しサラリーマンの減税のことを訴えておるということです。もちろん賃上げについては我々も精いっぱい頑張るということを前提にして、減税のことを繰り返し繰り返しきょうはお話をしているということです。
  78. 柳田稔

    柳田委員 和田公述人にも主婦の立場でちょっと同じことをお聞きしたいのですが、実は私も、円高構造不況の折にサラリーマンをしておった工場が閉鎖になりまして、半分以上がやめていきました。転職をしたわけなんですが、仲間の数人が実を言いますと自殺もいたしまして、大変厳しい状況がまた来ておるなというふうに思うのです。主婦の立場として、今のこの不況、相当苦しい、家計簿的にもいろんなことにも苦しいと思うのですが、その辺の実感はいかがでしょうか。
  79. 和田正江

    和田(正)公述人 きょうはその辺のところのお答えをする心準備もしてまいりませんでしたけれども、今のお尋ねの範囲で伺っておりますと、確かに私どもの周り、大変狭い範囲でございますけれども、大変生活が苦しいという声は切実に出ております。ですから、今団体としてということまでは申し上げ切れませんけれども、税制の問題なり、それから例えば所得税減税、これは財源の問題がございますと思いますけれども、それが実施されたときに、先ほどもお話ございましたが、特に所得税減税の恩恵が及ばないところにどのような手だてが処置されるのか、その辺まで含めまして、私どもとしては運動に取り組んでいきたいというふうに考えております。  それから、個人的な消費の問題につきましては、買えないというのが現実でありますと同時に、数年前のような何となく買えるものなら買っておくというところから、買わないという気持ちも出てきておりますのが私の全く素人の消費者としての実感でございます。何か無理に買わなくても間に合っていくんだというものを今までは何となく手を出してしまっていたのが、その辺のところは、買えないということと、それからどのくらいの割合で買えないのか、買わないのかということまでは申し上げ切れませんけれども、買えないと、それから無理に買わないわ、浮かれて買わないわというような風潮が大変みんなの間に定着してきているのではないかな。それをどのように判断するかということまでは私の立場でとても申し上げ切れませんけれども、これは実感でございます。
  80. 柳田稔

    柳田委員 どうもありがとうございます。  働く人たち、そしてその家庭を支える皆さん、大変苦しい状況にあるということだけは主婦の立場でも言えるように思うのです。我々としても国会の場でできることはしなければならない。所得税減税を含めて鋭意、まだ時間がありますので、ぜひとも一緒になってやっていただきたい。我々としても公共投資、賛成をしておりますし、今の政策についてもそれなりに評価をしておるわけでありますから、さらなる何かを求めて、早いところこの景気を回復して安心して生活できるようにしたいと思いますので、ぜひとも国会の場でもやっていきたいと思います。  あと、中西公述人にちょっとお尋ねしたいのですが、最近の中国についてちょっとお尋ねしたいのですけれども先ほど公述人が述べられたように、アジア太平洋協力、私もそう思います。ところが中国については、最近海軍力の増強が大分進んでいるような話もありました。なぜ増強するのか、推測はするわけでありますが、この軍事力の増強、それを考え合わせながら、さらにはロシアの今の政情不安定、もしか何かあったらどうなるのかわからないところまで来ているということを考え合わせますと、このアジア太平洋協力、今後どういうふうに進んでいくのか、いかなければならないのか、大変大きな問題になってくるかと思うのですが、その辺について簡潔にできれば教えていただきたいと思います。
  81. 中西輝政

    中西公述人 中国の問題は非常にいろいろな解釈が出ておりますけれども、私は、海軍力の問題については、背景はやはり一つ国内的な要因が非常に大きいだろう。改革開放政策に対する軍の支持をいかに得るかという問題、それから国内の今後の中国の課題というのは、やはり政治改革といいますか、政治的な一定の、今の体制の幅、枠の中での一定の民主化というふうなことを進めていかざるを得ないというふうに考えているのが鄧小平指導部ではないだろうかというふうに見ておりますが、こういった国内要因からして、やはり不安定をいかに防ぐかということで軍部の要因は非常に重要であります。  外的な要因というものを考えてみますと、やはり冷戦が終わった後にいろいろな空白が生じているという意識が中国の指導部にはあると思います。特に現在の海軍力の建設については、航空母艦を購入しようという意向が再三にわたって出ております。これは我々としては憂慮すべきことでありまして、その点については中国に対して不断に意思表示をしていく必要があろうと思います。しかし、それ以外の領域に関しましては、恐らく中国の八〇年代からの軍の近代化という大きな流れ背景としてあるだろうというふうに考えております。  それで、手短にアジア太平洋協力ということで申し上げますと、中国だけではなくて東南アジア諸国にも広がっている軍備の拡散傾向、これを抑えるためにも、やはり早急にアジア太平洋地域に軍備問題を話し合うようなそういう協議の場をつくっていくということが非常に重要で、例えばASEANの拡大外相会議等の場に日本が積極的にそういうアジェンダを打ち出していくということが非常に差し迫って必要になっているのではないだろうかというような、そういう認識を持っております。
  82. 柳田稔

    柳田委員 私は、今のこのアジア動きを考えた場合には、国を守る最新鋭の設備は最低限必要だ、そういうふうにも思っている一人なんですが、それと同時に、共存共栄を求めていかなければならない。大変難しい選択をせざるを得ない時期に来ているなということも認識をさせていただいておる次第であります。  時間があと五分しかないのですけれども、この通常国会の大きなテーマは、先ほど山田公述人がおっしゃったとおり、景気対策、そして佐川急便の徹底究明と政治改革、これが二つの大きなテーマであろうと思っております。この通常国会、ここまで、公聴会まで来たわけでありますが、ついきのうの夕方まではきょうの公聴会も開かれるのか開かれないのか、そういうふうな大詰めまで迎えたのもお聞き及びだろうと思います。  一般的に、常識的にといいますか、考えますと、予算委員会ではここまでやったのだったらば、予算予算委員会でもっとやってほしい。さらに佐川問題については、さらに追及をして政治改革までいくためには舞台が必要だろう。別の舞台をつくって徹底的にやったらどうか。ただし、お呼びする人は罪人ではないですよ、いろいろなことを教えてもらい協力してもらう立場だということも忘れてはならないわけでありますが、この国会を私も中にいて見ておりますと、何かわかりませんが一生懸命佐川にふたをして隠そう、そして景気対策優先というスタイルも見える。  働く代表として今の国会のこの運営について何か御意見があれば、御参考までにお聞かせ願いたいと思います。山田公述人、よろしくお願いします。
  83. 山田精吾

    山田公述人 我々は、政治改革の一環として国会改革ということを挙げております。その冒頭に、単独採決、審議拒否はやめてもらいたい、これを国会運営の原則としてお互いに確認し合っております。  それから、この予算委員会はまさに名前のとおり予算委員会にふさわしい委員会であってほしいなというのが私たちの一番の願いです。しかし、国の重要な問題というのは広義の意味では予算にも関連しておりますから、ちょうちょうはっし大いに議論をしてほしいと思いますが、昨年の臨時国会の山で、まあ終わりを迎えたころに、自民党、社公民の皆さんたちに、ぜひひとつ特別委員会を設置してじっくり腰を据えてとことんやってもらいたいということをお願いをして回ったことがございました。今回も予算委員会では前段大いに議論してもらって、そしてやはりそういうような場とか、今ある、いろいろな委員会がありますから、それを生かされながら、それは証人喚問で二時間ぐらいであれこれ言われましても限界があると思いますよね、だれが見ても。何か強制的に発言してもらうわけにいかぬですから。そういう点では私は、もう何度も何度も似たようなことをやられたのですから、この辺でやはり皆さん自身も少し考えていただいてやれば私は国民の皆さんたちも拍手を送ると思いますから、いろいろなことをやってみられたらどうなんでしょうか。  以上です。
  84. 柳田稔

    柳田委員 いろいろとまだこの佐川問題を含めましてやらなきゃならないこともたくさんあるかと思うのです。かといって予算も早く通さなくちゃならない。ということで、特別委員会を設置してとことんやるべきではないかなという気がいたしておるのですが、もう一回和田公述人先ほどの御意見とはまた違うのですが、主婦の立場で、仲間内ではこのことについていろいろな御意見もまた出ていると思うのですけれども、どういう意見が出ているか、もし差し支えなければお聞かせ願いたいと思います。
  85. 和田正江

    和田(正)公述人 私ども主婦連合会といたしまして、それからまたほかの同じような考えを持っております他の団体と共同で、政治改革の面、それから佐川事件の徹底究明ということは非常に大きな柱として運動の中で取り組んでおります。  ですから、お答えになるかどうかわかりませんけれども、一昨日、昨日この公聴会がどうなるかというような経緯を伺っておりまして、公聴会公述するということは、全部の委員の方がおそろいのところで、全部の党がおそろいのところでお話をすることによって何らかの、それを政治に生かしていただきたいというわけで公述に伺うわけでございますから、きょうは幸いに予定どおりの公聴会が開かれておりますけれども、それがこういう形にならなかったときに私自身がこの場に来て、出席してお話しすることがどういうことなのか、言ってみれば全部がそろって公正な場ではなくて、片肺飛行のようなところで公述をするということについても団体の中でいろいろな意見がございましたということを申し上げておきたいと思います。
  86. 柳田稔

    柳田委員 時間ですので終わります。本当にきょうはどうもありがとうございました。御苦労さまでした。
  87. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ―――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  88. 粕谷茂

    粕谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成五年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず和田公述人、次に吉田公述人、続いて長谷田公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、和田公述人にお願いいたします。
  89. 和田八束

    和田(八)公述人 立教大学の和田でございます。  平成五年度予算でございますが、何かその性格が余りはっきりしないのではないか、あるいはコンセプトといいますかがはっきりしていないというような批評が多かったような感じがいたします。不況対策、景気政策が重点であるということが言われているわけなんですが、所得税減税が盛り込まれていないとか、あるいは公共投資の面につきましてももう少し必要なんじゃないかというようなところがございまして、そういうこともこういう批評の出てくるところではないかと思われるわけですが、それ以上に私は予算の内容といいますかこれがかなりわかりにくくなっているという感じがいたします。それからさらに、予算なり財政なりがどのような方向性を持っているのかというふうなあたりのところがはっきりしないというふうなこともあるのではないかというふうに見ておるわけであります。  そこで、本日は次の三つの点について申し上げたいと思っております。  一つは、予算の実態あるいは内容というものを正確にかつわかりやすく開示するということが必要なことは言うまでもないわけなんですけれども、我が国の予算は非常に複雑になってまいりまして、国民サイドからいいまして理解が容易にできるというふうなところが少なくなってきているように思います。  例えば一般会計予算にいたしましても、これは通常、新聞などに発表される場合には、主要経費別分類という形で発表されることが多いわけなんですが、この分類形式ができましたのは、昭和三十五年ごろから大体今日のような形ができてきたわけなんですけれども、それ以降予算の中身というのはかなり変わってきておりまして、必ずしも現在のこの主要経費別分類というのが適切であるとは言えなくなってきているように思います。  例えば公共事業費、公共事業関係費というふうなものを見てみましても、ごく最近になりますけれども、NTT株の売却益を運用する形で産投会計への算入というふうなものが含まれるとか、あるいは公共事業関係費以外の投資的経費がかなりふえまして、いわゆる国債対象経費とそれから公共事業関係費との間の乖離というものもできてきているというふうなこともあると思います。したがいまして、ことしの予算を見ましても、公共事業関係費の伸び率とかあるいはウエートというふうなものは一応主要経費別分類などで出てくるわけですけれども、必ずしも実態を反映したものではない。  それから、その他事項経費というふうなものがあるのですが、これなども非常に大きくなりまして、予算全体の一割ぐらいを占めるわけなんです。その中には農林漁業関係経費などもあるわけですけれども、その他、分類の中には食糧管理費が別掲されている。そういうふうなものを全部合わせまして農林関係経費というふうにすれば、もっとわかりやすいのではないかというふうなところもあるわけです。  それから、ODA関係の経費などにつきましても、主要経費別分類に出てまいりますのと実際のODAとでは幾分違いがありまして、この辺ももう少しはっきりできないかというふうなこともございます。  それから、予備費なども毎年三千五百億円程度、程度というか三千五百億円計上されているのが通例になっているわけでございますけれども、これなども非常に形式化しているのではないか。こういうふうなことでありまして、もう少し国民にわかりやすい分類ができないのかということであります。  それからまた、特別会計と一般会計との関係というふうなことを見ましても、非常に入り組んでまいりまして、これも予算をわかりにくくしている一つの原因ではなかろうかというふうな感じがいたしまして、もう少しその辺を整理できないのかということであります。  財政投融資も同様なことが言えるわけですが、特に特別会計につきましては、特別会計内での剰余金といいますか、予算ベースでいいますと不用額とかあるいは繰越金とかいうふうなものが出ているところが幾つかあるわけでありまして、もちろん赤字の特別会計もあるのですけれども、非常な黒字を出しているというふうなところがありまして、雇用保険関係などは保険料率を引き下げるというふうなことが行われたようでありますが、その他電源開発特別会計などにいたしましても、特定財源がありまして非常な黒字決算になっているというふうなところもあるわけであります。  こういうところを見ますと、国の予算全体が赤字であるというふうに言われましても、総合してみますと黒字でありまして、国際比較の上からいいましても日本の財政は黒字であるという結果が出ているというのも、このあたりも一つの原因があるのではなかろうかと思うわけです。  それから、一般に隠れ借金とか裏国債とかいうふうを言葉があるわけですけれども、赤字国債を発行しない代替としてそういう隠れ借金なりあるいは裏国債というふうなことが行われているというふうに伝えられるわけですが、これなども、私見ましても、一体それは何を指していて、どれだけのものが隠れ借金に入って、どの範囲のものがそうなのかということがわからないわけでありまして、これなども非常に予算の実態を開示するのに妨げになっているのではないかというふうに考えるわけであります。     〔委員長退席、中川委員長代理着席〕  その次に、第二番目の問題といたしまして、予算のコンセプトという点になるわけですけれども、将来の生活大国へ向けての財政のリストラクチャリングといいますか、今までのなにでいいますと行財政改革といいますか、こういうものがもっと進められなければならないのではないかという、まあいわば中期的、構造的な問題があります。これが第二点として申し上げたいところであります。  それで、こういう観点がうの財政の見直し、方向づけということが今非常に大事でありまして、そういうことがないと、単年度予算だけで何かアピールするということでは、今の日本の財政を国民に開示するという点では十分ではないのではないかと思うわけであります。本年は昨年策定されました「生活大国五か年計画」というものが本格的にスタートすることになるわけでありまして、その点では非常な期待が持たれたはずなんですけれども、どうもこの辺のめり張りというのははっきりしないのではないかというふうに印象づけられるのであります。  それは例えば公共投資などに出ているわけでありまして、公共投資の基本計画四百三十兆円というのは既にあるわけなんですけれども、これでは、生活関連枠をふやしていく、六割ぐらいにしていくというということで目標が立てられて、来年度につきましても予算では二千五百億円の生活関連枠が設けられていったということでありますけれども、これで果たして二十一世紀に向けての生活大国への基盤づくりができるのかどうか。私は、公共投資の総枠そのものがもう少し拡大する必要があるのではないか。四百三十兆円ではやはり現在の内需拡大の要請とかインフラの整備という点からいうと少ないのでありまして、二十世紀中にもう少し上積みする必要があるのではないかという感じがいたします。  特にその点でいいますと、都市関連の施設、それから生活関連の施設というものが重点にならなければならないわけでありまして、現状の社会資本を見ましても、どうも都市関係の生活関連に対する社会資本の割合というもののウエートが小さいということがいろいろな数字で出てくるわけであります。  例えば、給与所得者の納税者は現在三千五百万人近く占めているわけでありますが、その一方で農業所得者の納税者は約二十二万人ぐらいということでありまして、納税者数からいいますとかなり違いがあるわけでありますけれども、一人当たり行政投資というふうなことでいいますと、埼玉県のようなサラリーマンが郊外住宅として住んでいる府県で二十二万円。それに対して、島根県では四十四万円というふうな数字もあります。東京でも一人当たり三十七万円というところにすぎないというふうなことで、行政投資の配分を見ましても、どうも大都市圏よりも地方圏の方が相対的に優遇されているのではないかという感じがいたします。これはもちろん用地費を含んだ金額でありますので、最近の東京の行政投資というのは若干ふえていますけれども、これはバブル的にふえているというふうに見ざるを得ないわけでありまして、生活大国の目標としている住宅とか通勤の問題というふうなのが、果たしてどこまで改善されるのかということについては非常な不安を抱かざるを得ないということであります。  それから、財政のリストラという点からいいますと、もう一つ補助金の整理といいますか、これは古くて新しい課題でありまして、本年度といいますか新年度の予算平成五年度予算でも補助金の整理というものは幾分行われておりまして、特に地方の補助金でありますけれども、地方補助負担金の補助率というふうなものを明確にされるなど少しずつは前進しているわけでありますけれども、特に人件費補助などにつきましてはまだまだという感じがいたします。こういう補助金を整理するというのは、補助金の金額だけということではなくて、その補助金を動かしている組織なり人員というものが整理されるということにつながってくるわけでありまして、行政改革のやはり一つのかなめになるというふうに考えるわけでありまして、地方、中央の行政改革というものを進めるということであれば、やはり補助金をもっと切り込んでいくということが必要ではないかというふうに強く感じたわけであります。  それから、第三番目でありますけれども、もう少し財政というものを将来にわたって中長期的に考えて、計画的な財政運営をするシステムをつくっていく必要があるのではないか。つまり、財政の中長期計画、そして中期均衡予算という考え方を本格的に取り入れていく必要があるのではないかというふうなことを考えるわけであります。  中期、長期というのが何を言うのかというのはいろいろ問題ですけれども、中期としては三、四年というふうな期間でありますし、長期ということで言えば、もはや二十一世紀をねらいといいますか視野に置いた計画をつくっていっていいのではないかというふうに考えるわけであります。中期財政計画につきましてはいろいろな考え方というのが国際的にもあるわけでありますし、我が国でも財政再建については中長期的な目標というものを立てなかったわけではないわけでありますけれども、しかし、これは必ずしも予算なりあるいはそれぞれの事業計画というふうなものとの整合性を持ったものではないのでありまして、もう少し財政全体に対する拘束力を持った計画をつくる必要があるのではないか。  特に国債発行につきましては、建設国債はやむを得ない、しかし、赤字国債はできるだけ避けるというのが、できるだけといいますか厳重に避けるというのが最近の財政運営の特色になっておりまして、平成五年度についてもそれが大前提ということで行われたわけであります。現在の日本予算編成なり財政の秩序のあり方ということからいいますと、赤字国債の発行を行わないということが唯一の歯どめになっているような感じがいたします。これはこれなりの一つ理由があるわけでありますけれども、しかし、赤字国債を発行しないというだけで財政秩序を維持するということについては非常に限界もありますし、財政のあり方からいって常に好ましいことではないわけであります。  建設国債といいましても、かなり内実には赤字国債的部分もありますし、建設国債の累積というものも百八十兆円を超えるということになりますので問題が大きいわけでありますし、また、その建設国債、赤字国債を含めた過去の元利返済というものの負担も大きいわけであります。それで、財政というものは、もう一つ経済動向対応して運営しなければならないという役割といいますか、そういう機能もあるわけでありますので、常に赤字国債を避けるということだけを秩序の歯どめにしておくわけにはいかないのではないかと思います。  そうなりますと、やはり中期的な枠の中で国債の発行、建設国債、赤字国債を含めた国債の発行なりあるいはその償還計画というものをつくっていく必要があるわけであります。赤字国債の発行につきまして、一たん発行すると歯どめがきかない、あるいはこれが償還期を過ぎても、たとえ中期、短期の国債であってもかなり償還期が延びてしまうというふうな見解も聞かれたわけでありますけれども現状ではそういうことなんですけれども、それを避けるためには、やはり中長期的な財政計画というものをつくって、そして現在の累積している国債も一定の目標の中で減額していく。一方では国債の償還あるいは財政再建というものを進めながら、一定の景気変動の中では赤字国債も一つの手段として運用しながら財政運営をする、こういうことが必要になってくるわけであります。そのためには、単年度の予算だけでは対応し切れないわけでありまして、どうしても国債政策と償還計画というものが中長期的な財政計画の中で位置づけられなければならない。財政学で言うような景気変動との対称的なといいますかシンメトリックな運営というものは常にできるというふうな、そういう現実ではないということはそのとおりだと思うのですけれども、それにしてもそれに近づけるということが必要ではないか。  そしてまた、公共事業などでは、事業別計画というのが、五カ年計画なりなんなりあるのですけれども、今後の我が国の役割あるいは財政の機能ということからいいますと、国際化ということがどうしても避けられない、国際的な制約条件というのが非常に大きくなってくるだろう。それからもう一つは、高齢化社会というものの中での財政に対する制約条件も非常に大きくなってくるということで、従来のような財政に対する対応の仕方ではとてもそういう課題に応じ切れないのではないかというふうに思います。この際、思い切った財政のリストラクチャリング、それから中長期的な計画に向けての準備というものを進めていかれるよう希望するものであります。  以上で終わらせていただきます。(拍手)
  90. 中川昭一

    ○中川委員長代理 ありがとうございました。  次に、吉田公述人にお願いいたします。
  91. 吉田和男

    ○吉田公述人 京都大学の吉田でございます。  平成五年度予算につきまして、いわゆる赤字国債、それから景気対策、財政の効率化、この三つの観点から私なりの評価をさしていただきたいと思います。  全体に見まして、常に財政の問題を議論されますときには、いわゆるマクロの論理とそれから財政の論理というのが対立するわけでありますが、今回の予算案につきましては、その三点についてバランスがとれているというところではおおむね評価ができるものではないかと思うわけであります。しかし、やはり根本問題の解決をしていかなきゃいけないというふうな観点からお話しさしていただきたいと思います。  まず第一に、いわゆる赤字国債が発行されないということで予算案がつくられていることを評価したいと思うわけであります。いわゆる赤字国債と申しますのは結局子孫に負担を残すということになるわけでありますが、俗な形でいいますと、子供の所得を当てにして親が借金をしてそれを使ってしまうということであるわけですから、個人の消費生活では考えられないことであるわけであります。しかし、財政となるとそれができてしまうというのは非常に問題ではないかなというふうに思っているわけであります。ただ、経済成長率が非常に高いときには後世代の人の方が負担能力が高いわけですから、それを送ってやるということは十分考えられる一つ考え方でありますが、しかし、現状を考えてみますと、経済成長率はこれからだんだん低くなる方向にある、しかもいわゆる高齢化によって後世代の人の方が負担が大きくなるという現状にあるわけでありますから、その中で後世代に負担を繰り延べていくということは避けるべきであるというのは当然だと思うわけであります。むしろ少しぐらい節約して、貯金して、負担の大きくなる後世代に残すぐらいの感じの方が本来は望ましいわけでありますが、少なくともいわゆる赤字国債の発行が非常に今の現状においてはまずいということは言えるのではないかと思うわけです。  特に民主主義のあり方ということから考えましても、負担だけが残されるというのはやはり民主主義の原理にも反するわけでありまして、いわゆる負担をする子孫には選挙権がないわけでありますから、一種の欠席裁判みたいなものになるかと思うわけです。そこで、そもそも民主主義というのは負担をする者が決めていくという原理であるわけでありますから、後世代の人が負担をして現世代の人がそれを決めていくという、これは非常に矛盾したことになるのではないかなと思うわけであります。  とはいいましても、現実の財政を運営していく際には、財政は歳入と歳出がそれぞれ制度によって運営されているわけでありますから、当然のこととして、景気変動によって歳入が減ったりふえたりするわけですから、これはなかなかぴたっとうまく整合することは難しいわけであります。したがって、国債の発行なり、あるいは時には黒字になって国債を積極的に償還していくということが必要になるわけであります。したがって、景気変動のショックをどこで受けとめるかということを考えますと、やはり建設国債の中で景気変動を受けとめるべきということになるわけであります。したがいまして、平成二年にいわゆる赤字国債の発行がなくなったわけでありますが、このときはちょうど景気のピークでありますから、実はそれだけでは不十分でありまして、さらにいわゆる建設国債の充当率が低い状況になければならなかったわけであります。現在のような不況になったときに、ショックを受けとめられるだけの中期的な、平均的な均衡というのを達成しておくべきなわけでありまして、そういう意味ではまだまだ財政のリストラクチャリングと申しますか、財政の歳入歳出の両面にわたる改革は必要でありまして、これをやめてはいけないというふうに考えるわけであります。  それから二番目の問題といたしまして、景気対策としての公共投資拡大。今回の平成五年度予算特徴一つは、財政の健全性の維持それから景気対策のバランスと申しますか兼ね合いと申しますか、そこが大きなポイントであったかと思うわけであります。その点も苦慮がうかがえますことから、こういう予算というのもバランスと申しますか苦しいものだなというふうに感じるわけであります。ただ、公共投資の効果と申しますか、これにつきましては、それほど大きく期待すべきではないというふうに私は考えるわけであります。  一つには、公共投資を行いまして景気がよくなるというのは二つのルートがあるかと思うわけです。公共投資を行いまして道路をつくりますとセメントが要ります、それから橋をつくりますと鉄が要ります、そういったのはいわゆる産業連関的な波及効果でありまして、これが公共投資がいろんな産業に波及していくルートであるわけです。それからもう一つの波及の仕方は、失業者が出ます、その失業者を雇います、雇いますと所得がふえて、その所得が消費になりという、いわゆるケインズ的波及効果と申しますが、こういった波及があるわけです。  ところが、産業連関的波及というものを考えたとき、公共投資が持っている全産業に対する影響力というのはさほど大きいことは期待できないわけであります。鉄とかセメントが産業のリーディングインダストリーであった時代とは違いまして、今日の不況の中心になっておりますのは自動車とか家電とかあるいは機械産業であるわけですが、ここにはなかなか公共投資というのは、産業連関的な波及というのはなかなか難しい状況にあるわけです。さらに経済全体がいわゆるソフト化、サービス化しているわけでありまして、その中における公共投資というのは、産業連関的な波及というものは余り期待できないというふうに見た方がいいかと思うわけです。  それから、先ほど申しました、失業者が出て、その失業者を国が雇うことによって経済に波及していくという方も、いわゆる日本型経営システムの場合には、不況の影響というのはまず企業の赤字に出てくるわけでありまして、直ちに失業がふえるという状況にはならないわけです。したがいまして、このケインズ的波及効果というのも必ずしも大きなものではないと思われます。そして、よく企業内失業という言葉がございますが、確かに企業内失業が存在するとしても、例えば電気会社の中で企業内失業があっても、その人たちを道路や橋をつくることには使えないわけでありますから、これは波及には非常に限界があるというふうに見るべきではないかなと思うわけです。したがいまして、公共投資というのは景気回復を積極的に推し進めるというほどの効果は余り期待しない方がいいんじゃないか。ただし、これが一種の景気の下支えと申しますか、経済全体に波及はしないものの、あるところで経済の地すべり的な低落を防ぐというふうな効果程度に考えた方がいいんじゃないかなというのが私の考え方でございます。  また、この点に関しまして、最近減税論議というのが盛んになっておりますが、減税による景気回復というのも、私はかなり消極的と申しますか否定的に考えております。今日の不況の一つ特徴は。個人消費が落ちているということがよく言われているわけでありますが、この個人消費の落ちていることの理由は、所得が落ちているということが一つあるかと思います、残業が減ったりボーナスが減ったりということはもちろんあるかもしれませんが。もう一つは、貯蓄率が上がっているということでありまして、所得が減った以上に消費が減るという状況にあるわけです。貯蓄率が上昇しているということは、追加的に入ってくる所得の中で消費に回る率が非常に少ないということを意味しているわけでありますから、これはすなわち次に入ってくる所得のうち消費に回る率が高ければ貯蓄率が下がりますし、消費に回る率が下がれば貯蓄率が上がるわけです。したがって、貯蓄率が上昇しているという現状を考えてみますと、所得が追加的に入ってきても貯蓄に回る割合が高いということを意味しているわけであります。  どうして貯蓄率がこれだけ上昇するかと申しますと、実は期待成長率、将来どれぐらい自分の所得がふえていくかという期待が下がるとき、期待の上昇率が下がるときに貯蓄率が一たん上がるのです。そしてまた下がるのです。これは昭和四十九年のときにも見られましたし、あるいは昭和五十四、五年の第二次オイルショックのときにも見られたことであります。したがいまして、この貯蓄率が上昇している瞬間に減税を行って追加的に手取りの所得をふやすということをしても、効果はそれほど期待できないというふうに考えるわけです。  さらに、昨今の財政事情を考えてみますと、減税をして赤字国債を発行するということになりますと、これは累増しできますと、この累増した赤字国債を何とかしなければいけないということに必ずなるわけでありまして、そうするといずれ増税ということになるわけでありますから、減税して増税する、これをほとんど合理的に予測することができるときに、果たして一時的な減税に対して消費をふやすかどうかということになりますと、非常に疑問が出てくるわけであります。したがいまして、財政の仕組みから考えましても、減税の消費を拡大する効果というのはそれほど期待できない。もちろん公共投資も減税もそうですけれども、やらないよりやった方が何かあるわけでありますが、同時に起こるそのマイナス面というものも十分考える必要があるわけです。先ほども申しましたけれども、赤字国債の発行によって減税をするというのは、後世代との関係においてやはり問題が非常に大きいというふうに理解すべきではないかと考えるわけであります。  したがいまして、この所得税減税というのは景気対策という観点からのものは余り適当ではなく、ただ、所得税というのが持っております特徴は累進課税を行うことができるということでありまして、これはいわゆるお金持ちにたくさん税金を納めていただくということでは非常にすぐれた税制であるわけです。しかし、同時に欠点も持っておりまして、いわゆる累進課税を行うためには、追加的に入ってくる所得の税率を高くしないと累進課税にならないわけです。そうしますと、追加的に入ってくる所得に対する税率が高いということは負担感を非常に強くするわけでありまして、実際に負担している以上に負担感が強くなる。サラリーマンの所得税の重税感というようなものがよく言われるわけであります。そしてまた、所得税というのは計算上は非常に立派な税でありますが、これを実行していくということは非常に難しい税であるわけです。なぜかと申しますと、所得税という課税対象はある意味で主観性を持っているわけでありまして、これをどう判断するかということがあるわけでありまして、これを通じていわゆる脱税、節税などの問題も起こり得ることになってくるわけです。これはもちろん税務当局がしっかりすればいいというのが一つ考え方でありますが、しかし、この所得税の欠点としてはそういうことは避けられないわけであります。したがいまして、所得税の割合が、累進課税ですからほっておきますとだんだん税率が高くなってまいりますから、そして平均税率が高くなってまいりまして、そして税収の中に占める割合が高くなってまいるわけです。ですから、この所得税の割合が高くなってまいりますと、これは所得税の欠点を目立たすことになってまいるわけでございますから、例えば消費税増税などと組み合わせて、そして税負担構造を変えていくということは一つ重要なことではないかと思うわけであります。特に、二十一世紀の高齢化になりますと、これはもうどうしても負担の上昇が避けられないわけでありまして、その際にどういう形で負担構造を考えていくかということは、これから真剣に議論していただければなというふうに考えている次第でございます。  それから、不況からの脱出でございますが、今回の不況は、いわゆるバブル景気時代にいわゆる過剰投資、過剰雇用、そして不要な資産の取得というものがあって、こういったことから固定費が上昇したということが非常に大きな要因ではないかなと考えております。したがいまして、これを解決するのは、企業が減量経営なりあるいはリストラクチャリングをすることによってしか基本的に解決する方法がないというふうに思うわけであります。したがいまして、ここで政府としては、この企業のリストラクチャリングあるいはビジネスチャンスを広げるような規制緩和等のいわゆる制度的な改革の措置によって、こういった措置を支援するというところに御議論を持っていってほしいなと思うわけであります。  また、この時期、いわゆる日本型経営というものをどうしても見直さなければならないという点に来ているわけであります。いわゆる生活大国という視点からの指摘もあったわけでありますが、それ以上に経済構造的な問題から、日本型経営システムというものも変わっていかざるを得ない状況に近づいておるわけでありまして、これもその意味で国民的な議論が必要ではないかなというふうに考えるわけであります。  最後の財政の効率化の観点でございますが、五十五年度予算から歳出削減を中心に財政再建という形で始まったわけでありまして、ピーク時にはGNPに対する一般歳出の比率が一三%強だったわけでありまして、それが今や八%程度になっているわけであります。この下がり方はやはり驚くべきものでありまして、外国人なんかへ話しましても信じてもらえないほどであるわけです。したがって、この間の財政の効率化というのが進んだことは間違いないことだと思うわけです。  しかし問題は、この財政改革を進めるに当たってどういう形で進めていくかということで、いわゆるシーリング方式、一律削減方式というものがとられてきたわけでありますが、日本の社会においては公平に削減するということが一番うまく機能したのではないかなと思うわけであります。しかし問題は、財政がどういうふうな形で運営されるかということをもっと議論するべきではないかなと思うわけです。  財政の非効率化が進む一つ要因は、一つ政策目的があって、その政策目的を終了したにもかかわらず財政支出が出てしまう。これはいわゆる既得権益の問題でありますが、既得権益の問題を解決するということが一つ重要なことではないかと思うわけです。  それからさらにもう一つは、財政が効率的であるということはいわゆる公的分野への支出が大きいということでありまして、私的な分野、個人の生活にかかわる分野というのは、これは財政が関与することによって必ずしも大きくは改善しないわけであります。もちろん公平の観点から、人々の公平を維持するためにいろいろな施策が必要であります。しかしこれは、例えば自分が自分の生活のためにお金を使うというための費用を一たん国に入れて、国が自分の生活のために使うということになりますと、これは自分の生活のための費用以上の費用がかかってしまうわけです。したがって、公的な領域というものに財政の重点が置かれることがやはり財政の効率化の基本ではないか。もちろん私的な領域というものも必要ではありますが、これは非常に効率的な方法で行われるということが大事ではないかなと思うわけです。  時間がございませんので詳しくは述べられませんが、例えば年金制度とかあるいは地方財政、そういった生活あるいは自分の身近にかかわるような問題というのは、どちらかというとこれまで非常に優先されてきたわけでありまして、それ自身が間違いではございませんが、もっとその辺を効率化して、そして公的な領域における支出というのを確保していただきたいというふうに考えるわけでございます。  以上、平成五年度予算案につきまして私の考え方を述べさしていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)
  92. 中川昭一

    ○中川委員長代理 ありがとうございました。  次に、長谷田公述人にお願いいたします。
  93. 長谷田彰彦

    ○長谷田公述人 四日市大学の長谷田と申します。  経常収支の黒字が千二百億ドルという前古未曾有の水準に達している、それから公定歩合が二・五%という過去の最低の水準まで引き下げられている、こういう状況におきまして、本年度予算案は、景気対策という視点から見ますと重大な欠陥を含むものと言わざるを得ないと私は思います。  それで、この千二百億ドル、まず最初にこの経常の黒でございますが、オイルショック以後、日本経済は三たびの不況を経験してまいりました。そのたびに経常の黒は拡大いたしました。そしてこれは、内需の不足で生じた不況を外需の拡大で切り抜けるという、こういうパターンがだんだんに定着している。それで、その経常の黒でございますが、不況のたんびにこれは段階的に大きくなりまして、今度は千二百億ドルと大変な数字になってしまったわけでございます。これは我が国の産業、輸出向けが主でございますが、国内向けの方も対外競争力が極めて高いという、こういう好条件の結果、こういう不況切り抜け策というものが可能になった。こういうふうに見ると、我々といたしましては、これは大変に経済運営上好都合と言ってもいいわけでありますけれども、しかし、向こう様の方はこれは大変な災難でございます。  例えば今度の千二百億ドル、これはアメリカの労働者の賃金で計算いたしますと、千二百億ドルの経常の黒を日本が出すということは、これはアメリカに約二百五十万人の労働者を一年間失業させる、これを押しつけることになるわけで、これは大変な災難。ですから今回も、もう恐らくクリントンさんからきついおとがめが来るだろう、当然のことと思います。ですから、これは何とか、内需の不足を外需でもって補う、これをやめなきゃいけないわけです。  この内需不足、これは見方を変えますと貯蓄の過剰ということでございます。それだけ物が売れなくなっているわけですね。ですから、これは貯蓄の過剰という観点から見ますと、それじゃ一体貯蓄は何に対して過剰になっているのか。そうすると、それは投資の不足という答えが出てくるわけでございます。投資というのは、これは具体的に言えば企業の設備投資でございます。経済理論的に難しく言うと資本の蓄積ということになります。それで、この資本の蓄積というのは、これは国民の貯蓄によって支えられている。それで、現状は、国民がせっせと貯蓄する、この貯蓄が資本の蓄積に役立てられないで海外に流れて、これが経常の黒となって世界じゅうからお金を日本に集めてしまう、それで大変な迷惑をまき散らしている、せっかく国民が貯蓄したのが世界的には迷惑になって、日本の評判を落としている、これが現状と私は理解をしておるわけであります。  それでは、なぜ貯蓄の過剰、投資の不足ということになったかと申しますと、これはオイルショック以降の我が国の経済成長率の低下でございます。御承知のように、オイルショックまでは、日本経済は一〇%の高度成長をエンジョイしてきたわけでありますが、オイルショックと軌を一にいたしまして、成長率は三ないし五%と半分以下に下がったわけでございます。その成長率の低下の原因は何かと申しますと、これは列島改造の昭和四十八、九年ですか、そのときの物すごい労働力不足、これを御記憶の方はすぐおわかりになると思いますが、労働供給の不足ということでございます。この労働供給の不足は、ずっとこれは日本経済の体質になっておりまして、今日でもなおこれがいよいよ厳しくなっているということは、皆様方、外国人労働者の受け入れ問題というようなことでもっていろいろと心を悩まされておられることと思います。  そこで、投資の方は、要するにもう労働力の不足からできなくなっている。投資、つまり貯蓄に対する需要と申しますか、貯蓄が余っているわけであります。貯蓄の方も減ってくれればこれは別に苦労はなかったんでありますが、この一〇%の高度成長を支えてまいりましたのが、これは日本人の大変な貯蓄好き、日本人は大変貯蓄好きでありまして、アメリカ人の三倍の貯蓄をするんでございます。この成長率がこの労働力の不足からがたんと下がりましたが、これは日本人の貯蓄好きとは全然関係のないことで、それで貯蓄の方はしこしこ、さっき吉田さんもおっしゃいましたが、貯蓄率というのは一向に下がっていないということであります。一〇%の高度成長を賄った貯蓄。鉄鋼とか電力とか石油とかセメント、この生産設備が毎年毎年一〇%ずつ拡大していく。それだけの設備投資を支えた貯蓄が量的にはそっくり残っている。ところが、設備の拡大の方はもう三%か五%でよい。しかも、産業構造の変化もございまして、重厚長大から軽薄短小へと、こういう変化がありまして、投資の方ですね、資本蓄積、これは余り用はなくなってしまっているというのが日本経済一つ構造的な性格になってきている。そういうわけで、これは貯蓄過剰、投資不足経済、こういう構造的性格ができてしまっているわけであります。  そうなりますと、貯蓄過剰、内需の不足を投資でもって補って何とかやっていくというのは非常に困難じゃないかと私は思うんであります。その例といたしまして、前回の不況からの脱出でございますが、八七年の二月ですが、日本銀行が二・五という非常に低いところまで公定歩合を下げました。そして、中曽根さんの内閣と思いますが、政府の方もたしか六兆円の財政措置をやった。これがなかなか効果が出なかった。やはり一年ぐらいかかったと思うんですが、この二・五という超低金利政策、これがストック価格、土地とそれから株式ですが、これをじわじわと上げ出して、最後にこれはバブルと言われる暴騰になったんでありますが、ここへ、土地については買いかえ特例なんていうのがございまして、これでまず住宅投資から景気が回復を始めた。我々エコノミストが、どうもこれは不気味な景気だな、こう言ったんですが、そのうちに株式の高騰を利用いたしましてエクイティーファイナンス、こういうことが行われて、ほとんどゼロ%に近い金利でもって資金が企業に提供をされる。その金を使って、飛びついた企業もありまして、そして大変に不健全ないわゆる財テクですか、それからまた緊急性のないむだな設備投資、これに大変な金がつぎ込まれた。それで景気は一応ブームと言われるような状態にまで回復してきたわけでありますけれども、そこでぶつかったのは人手不足。  列島改造のときに一・七までいきました有効求人倍率がずっと一を割って十何年間経過したわけでありますが、おととしの四月ですか、これが一を超えて一・四になりました。それで労働不足というのがここで端的にあらわれたわけでありまして、そして賃金の上昇、そしてインフレのおそれ、これが出ましたので、三重野さんは六%に公定歩合を上げた、これでバブルを壊したわけですね。非常によく効いたんです。見事に効いたのですが、これがこの不健全な投資、それの後始末が後に残って大変深刻な状態になっているということは皆さん御承知のとおりでございます。  さて、前回のこの不況克服の経路を見ますと、金融的には幾ら二・五でも、この二・五は生では効果がないので、これはバブルになって初めて効果が上がった。そうすると、金融はどうも景気を上げるときには余り使えないのじゃないかというのが私の感じ、感想だったのですが、さあ今回は、そうなりますと金融がだめということになると、これからはやはり財政に頼らなければならないだろう。税金とそれから支出で何とか景気回復を、そういう財政が出るのが必要な構造的な体質になってしまったのじゃないか、私はこういうふうに了解していたわけであります。  さて、今回でありますが、昨年の夏、七月に日本銀行は公定歩合を三・二五まで下げた。政府の方も、八月の末に十兆七千億の財政措置をやった。これがやはり効かないのですね。そして、ついに二月の初めに再び二・五%に日銀は公定歩合を下げた。この決断、これは私は大変に不幸な選択であったと思います。つまり、これはバブルよもう一度というような思いがあったのじゃないか。二・五はバブルの元凶だということは、これはもう衆目の一致するところでございます。このこれ以下への引き下げというのはもってのほか。また、この二・五を一年、二年と続けるということも、前回の経験から絶対に許されない。  そういたしますと、公定歩合をまともなレベルである三%以上に何とか早く引き上げることを許すような環境を財政措置でつくっていきたい、これが予算に要求されていることではないかと私は思うのでございます。具体的には速効をねらって所得税の減税、方法といたしましては戻し税方式というものが提案されておりますが、これが結構であろうと私は思う。五兆円ぐらい。私はさらに過激に、もっとより過激に消費税の一年ないし二年のストップ、これも考慮の対象にしてもよいのではないか、それくらいに思っております。  それから、千二百億ドルのこの需要不足というものに対抗するためにはそれだけではまだ不十分で、あともう五兆円ぐらいの財政支出の増加、これをやりたい。この内容は必ずしも公共事業には限らない、投資的経費には限らない、消費的経費でも使えるものは使ったらいいじゃないか、こういうふうに思います。そういたしますと、ここでどうしても五兆円を超える赤字国債の発行ということが必要になってまいります。  こういうふうに申しますと、せっかくここまで財政再建したのにどうするんだ、こういうおしかりを受けるかもしれません。私は、経済理論的に申しまして、財政再建というものは絶対にこれは政策目標として掲げるものではない、こういうふうに確信しております。吉田先生はいろいろと、国債はいけない、赤字国債は特にいけないとおっしゃいましたけれども、私は論より証拠と、時間もありませんから申しますが、まず日本現状、国債のストック、特例国債それから建設国債を合わせまして、それから交付税特別会計ですか、あれの借入金というようないわゆる隠し国債、これも含みますと実質二百兆円を超える国債残高がある。それだけの国債残高を日本経済は抱えているわけでございます。  さてそこで、この二百兆円の国債残高の存在が日本経済あるいは皆様方の生活に何らかの実害を与えているかということでございます。ゼロでございます。世界じゅうの経済先進国状況を見まして、ファンダメンタルズ、経済の基本的な要因日本が今でも一番最高でございます。ということは、日本経済にとって二百兆円の国債ストックの累積は決して間違った政策ではなかった、こういうふうに私は考える。  それから、これは論より証拠で、理論の話じゃないのですが、もう一つ、国債サラ金説というのがございます。国民一人当たり百五十万円の負債をしょっているんだ、これは国民全部でサラ金暮らしをしているんだ、こういうことをおっしゃる方があるのでありますが、意外どこれが受けるのですけれども、その百五十万円の負債は、つまりサラ金会社ですね、これはだれなんだというと、これは国民なんですね。国民が、私も幾らか、わずかですが国債を買って持っている、老後の暮らしの足しにしようと思って持っているわけでございます。これを合わせればチャラになることで、サラ金暮らしというようなことでもって国債はいけない、こういう議論は決して成立しないわけでございます。これは全くまやかしの理論でございます。  それから、これはちょっと理論的な問題になりますが、利払いとか償還のための税金を取られるのがわかるから決して消費を拡張するというようなことはしないだろう。これは、戻してもらったときに一体幾ら後で税金取られるのかだれも知らないわけでありますから、もらっただけは使うだろう。ですからこの理論も、また国民がよほど利口だったらば、先の先まで知って、そしてその国債政策を無効にすることもあるかもしれませんが、それほど個人は利口ではない。ですから、これも理論としては成立しない。  世代間の負担ということをさっきもおっしゃいましたけれども、ここで国債を出して、そして日本経済が完全雇用を維持し、それなりの経済成長を続けていくということが国債の発行によって確保されるならば、これは後の世代にもプラスになるわけでございます。  また、そうしますとどうも僕を納得させるような経済理論はないので、政治的なプロセスの話、これはちょっと耳を傾ける必要があるかもしれません。財政節度を守るために国債というものはなるべく避けたい、こういう意見でございます。それに対しましては、国債を回避したために公定歩合、つまり金融の方、金利を二・五から例えばさらに二まで下げたとする、こうすると恐ろしい前回以上のバブルが生じる、あるいはまたもう一遍景気回復に成功するかもしれない。しかし、このときは政治的なプロセス、つまり財政のけじめを立てるという、そのために国債は避けようという考え方と、バブルになってもいいのか、この考え方とやはりはかりにかけて判断しなければならない、こう思います。  貯蓄過剰、内需不足の日本経済は、国債を含んだ経済運営でもって安定成長路線を歩いていく、これが一番のよい政策選択ではないかと思うのです。特例公債の発行を厳に回避する、こういう哲学を大蔵大臣が予算案の御説明の最初に述べられましたけれども、そういう哲学を貫徹する必要もないし、またできる状況ではないということを私はエコノミストとして申し上げたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  94. 中川昭一

    ○中川委員長代理 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  95. 中川昭一

    ○中川委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤城徳彦君。
  96. 赤城徳彦

    赤城委員 まず公述人の先生方に、きょうは大変お忙しい中おいでをいただき、示唆に富んだ有意義なお話をいただきましたことに改めて御礼申し上げます。ありがとうございます。  さて、今の予算の第一の課題は景気対策であろうと思います。いわゆる景気の循環で不況の底にあるという理由に加えて、資産デフレといいますか資産価格が下がっているという二重の意味で複合的な不況だということが言われておりますが、そうした中で、できることは何でもやった方がいい、財政出動もするし金融政策もやるし、しかしなお足りないところはやはり対策を立てていかなきゃいけないんじゃないかということがあろうかと思います。  そこで、減税、特に所得税減税という話が出てくるわけなんですが、さてそれをやるとしても、確かに効果はある、効果はあるけれども、じゃどこでその財源を賄うのかということ、これはやはり赤字公債ということになるだろうと思います。  しかし、この赤字公債について先生方の見解が大きく分かれるところでございますが、やはりこの赤字公債を出す、今までも大変な問題を含んできたわけでありますし、一つはやはり財政が硬直化する。国債費が二一・三%ですし、一般歳出が予算に占める割合はもう半分を超えているという硬直化の問題。それから財政の節度を失う。将来の増税につながるようなことを、今の借金を安易にやっていいのかどうかというような問題。それから、吉田先生から御指摘がありましたように、後世代の負担になる。確かにアメリカが、レーガン大統領が大減税をやりまして、その直後景気がよくなったわけでありますけれども、その後双子の赤字を抱えて大変な苦労をした、それをしりぬぐいすることになりましたのはクリントン大統領。まさに七十歳代の大統領がやったツケを四十歳代のクリントンがしりぬぐいをするという、まさに後世代の負担になったのではないかと思うわけであります。  ほかにもいろいろな問題点が指摘されるわけでありますけれども、そうした中で、これは和田公述人にお伺いしたいのですが、今の建設国債ですら百八十二兆円という大変な残高を抱えて苦労している。これは和田先生、去年おいでいただいたときにこういうお話をされました。国債費が年々かなりの額になっていて、長期的にはかなり予算の圧迫材料になるという問題を抱えている、一般歳出の割合が五割強ということで、相当いろいろなサービスに使う部分が制約されている、公債の累積が百七十兆円を超えて、国民経済的に見てもかなり不安な状態であるというふうなこと、これは去年の公述のときに言われておりまして、これは建設国債についてでありますけれども、建設国債ですらそういう問題があります。まして将来に何ら資本、財を残さない赤字国債というのを今出すことがいいのかどうかというのはやはり考えなきゃいけない。  財政法の中でも、もともと国債を出さないというのが原則で、四条のただし書きで建設国債が書いてあります。赤字国債というのはそのどこにも予定されてない、まさに特例でありますので、そういった問題からいって、果たして今現在赤字国債ということがいいのかどうか。  また、中長期の償還計画ということもありますけれども、これは経済学者が、ブキャナンですか、政府の失敗というのを論じたときに、大体国会議員というのは有権者のことばかり考えて、いいことしか言わないんだ、だからすぐ減税減税になる、将来の増税のことまで考えて政治家が政策を打ち出すということはまずできないというような、政府の失敗ということを訴えていました。  今日、政治家がこれだけの不信を買っている中で、そういう中長期の償還のことまであわせて出せるのかどうか。今現在の減税論を見ましても、将来のことを余り議論しないまま、とにかく減税だ減税だ、景気対策だということを言われている現状を見ますにつけ、そこら辺の心配も大いに考えなきゃいけないと思いますが、いかがでしょうか。
  97. 和田八束

    和田(八)公述人 去年の資料を読んでいただきまして、どうもありがとうございました。  赤字国債についてのお尋ねなんですが、赤字国債というか特例債ということなんですが、その前に国債ということで考えてみますと、これは国家財政、地方財政問わず、公債というものを否定して今日の財政が成り立つというふうには考えられないわけでありまして、これは一定のルールというものはあるにいたしましても、国債というものを全く否定することはできないと思うのです。  国債に二種類ありまして、建設国債、いわゆる四条国債とそれから特例債という二つの種類に分かれるわけですけれども、この区別というのはかなりあいまいでありまして、この辺が赤字国債論の中で一つもう少し考えるべきところではないか。赤字国債につきましては、普通、歯どめがなくなるとか、それから世代間負担の公平上問題であるとか、あるいは国民負担率の上昇を招くとか、あるいは仮に短期国債でも長期化するではないか、こういうふうな批判があるようでありますけれども、建設国債と赤字国債との差異といいますのは、これは法律上、形式上はあるのですけれども、内容的に見ますと一体どこまでなのかということであります。特例債につきましても、かつては十年で現金償還という一つの歯どめがあったわけでありまして、十年というよりも、私はもう少し経済のサイクルに合わせて四年ないし五年ぐらいじゃないと、十年たちますと、また不況というのは大体十年間隔で来ることが多いわけですから、ちょうど発行して償還時になりますとまた経済状態が悪くなるということになりますので、いいときに償還するということで、四年か五年ぐらいの中期国債で運用した方がいいのではないかというふうに考えるわけです。ところが、現在は特例債でも建設国債でも全部六十年償還というふうなことになってしまっているところに一つの問題があるのではないか。  そしてまた、それでは建設国債ならいいのかということになりますと、これが全部後代の資産として残るかといいますと必ずしもそうではないわけで、現在の公共施設などは六十年というのはちょっと長過ぎるということもあります。それから、三分の一近くは用地補償費に費やされているというふうなこともありますし、それから赤字部分でないものはない、かなり建設国債の中にも含まれているとか、それから建設国債が累積していっても公債費は多くなってくるとかいうような弊害がありますので、建設国債が安心できるというものではないわけです。  そういたしますと、もう少し赤字国債というもののルールというものを、今言いましたように償還期間とか、それから償還に対するきちんとした歯どめがなくなるというのはちょっといささか無責任なというか責任がないといいますか、自信のなさというような感じがいたしますが、もう少しきちんとした計画を立ててやることによって、この赤字国債ももう少し運用できるのではないかというふうに私は考えるわけです。
  98. 赤城徳彦

    赤城委員 次に、吉田先生にお伺いしたいと思いますけれども、確かに所得税減税も効果がないわけではないと思いますけれども、吉田先生のお話では、大体貯蓄性向が高い、消費性向が低いから貯蓄に回ってしまう、効果は薄いだろうということでありました。私もそのように思います。そこで、この不況の対策として、やはり効果的なところへ効果的な注射を打つということが大事だと思います。今まで公共投資もかなりの大規模なものをやりましたけれども、これもやはり十分な効果、過大な効果というのは期待できない、下支えぐらいの効果ということでありましたし、金利も下げたけれどもそれだけで十分かというと、やはり何か足りないなということがあると思います。  そこで、例えば今一番必要なのは、消費をどうやって刺激していくかという、特に個人消費がGNPの過半を占めるわけでありますので、そこへどういうカンフル割を打っていくかということが一つあると思うのです。消費の中でも今割と堅調なのが住宅関係でありますので、これにもう一段の刺激をしてやることによって、関連する家電製品でありますとか内装関係とか、産業連関的にいっても波及効果が大きいのではないか。  それからもう一つは、吉田先生御指摘の、企業の固定費が上昇している、そのリストラのために新たな投資をしていくための規制緩和なり支援なりが必要ではないか。そういうところにもう一段の対策が必要なのじゃないかなと思うわけでありますけれども先ほどの点、もう少し詳しくお話しいただきたいと思います。
  99. 吉田和男

    ○吉田公述人 今御指摘ございましたように、減税をすることによって消費全般を引き上げるということはなかなか難しいわけであります。景気対策なら何でもいいかというと、私はそうはいかないと思うのですね。例えば、ある電機メーカーが不況だということで、政府のお金を使ってテレビを買い上げるということをすれば、これはもう間違いなく効くわけでありますが、これはできないことであるわけですね。すなわち、いずれにしろこれは国民の負担になるわけでありますから、国民の負担に値するような支出しかできないということになってくるかと思うわけですね。ですから、そういうことから申しまして、やはり景気政策というのは非常に限定されてきて、難しいことかと思うわけです。  ただ、おっしゃられましたように、住宅関連などは地価が下がってまいりましたせいが非常に大きいのじゃないかと思います。そういうところで支援していくというのは一つの考えかと思いますし、それから先ほど御指摘ありました固定費を下げるためのリストラの支援ということは十分考えられることかと思います。しかし、マクロ経済政策としての全体に大きく影響を与えるほどの効果は、やはりそこもまた難しい。  それで私は、ちょっとくどくなってしまいますけれども、やはり企業が減量経営をする。ちょうど石油危機以降、政府が物すごく力を入れたわけですね。あの五十二年の公共投資などは大変なものであったわけですし、しかも石油危機が起こった瞬間には大減税もやっているわけですね。それで、ずっと不況だったわけですね。その不況から立ち直ったのは、やはり減量経営をして、新しい技術開発をして、省エネをして生産性を上げて、そういうことを行った結果、五十三年ぐらいからだんだん雰囲気が変わってきて、そしてその後は、いいとも悪いとも言えないような状況ではあったものの、それなりに経済成長を続けていったわけであります。したがって、やはり企業の減量経営というものが、減量なりあるいは新しい技術開発というもの、それをしっかりやっていただけることが一番重要ではないかなというふうに考えているわけです。したがって、それをできる限り支援するということになるかと思います。
  100. 赤城徳彦

    赤城委員 もう一点和田先生にお伺いしたいのですが、四百三十兆ではインフラの整備が不十分で、特に都市や生活関連が不十分だという御指摘でありました。  私、ちょっと資料を持ち合わせていないのでわからないのですけれども、フローとしての投入額としては地方の方に手厚いのかもしれませんけれども、ストックとしての資本がどういう状況かといいますと、例えば下水道対策、排水対策、農村の集落排水が大体三%の整備率で、都会ではもうほとんど下水道というのは全部完備されている。今は中都市ぐらいの、四五%ぐらいの整備に持っていこう、こんなことをやっているわけで、ほかの公園でありますとか教育関係とか、いろいろな整備のストックとして見たときに、まだまだ地方の方がおくれているのじゃないかなと思うのです。  それから、今時に多極分散ということが言われていまして、東京や首都圏を整備しますとどんどん人が集まってくる、もう一時間、二時間の通勤を物ともせずに集まっできますから、相対的にインフラが足りないという点があるので、むしろ地方のインフラが整備されることによってもっと地方へ定住してもらうという、そういう意味では地方に重点的に配分するということがやっぱり必要なのじゃないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。
  101. 和田八束

    和田(八)公述人 そういうことも必要であると思います。地方も必要であると思いますが、内容が若干違いまして、都市と地方というのも、ちょっとどうなのかわかりませんけれども、大都市以外の地域とでは、同じインフラといいましてもかなり中身が違うし、それから生活のあり方というのも、自然環境の中で生活を享受することのできるところと、東京とか大阪のように非常にビジネス中心に生活しているところでは違いますし、それから今後のインフラといいますと、教育、研究とかあるいは医療とか、そういう広い範囲で考えていきたい、こういうふうに考えておりますので、この辺はもう少し実態に即して議論しなきゃならないところだろうと思いますけれども、私らも少し都市向けな生活基盤をという、その個人的な希望も含めて申し上げたわけです。
  102. 赤城徳彦

    赤城委員 終わります。ありがとうございました。
  103. 中川昭一

    ○中川委員長代理 次に、富塚三夫君。
  104. 富塚三夫

    ○富塚委員 三人の先生方には、きょう公述のために御足労いただきまして、ありがとうございました。  まず最初に、吉田先生にお伺いしたいのですが、ずばり言って、この予算で本当にことしじゅうに不況から脱出することができるのかどうか。また、経済成長率も、三・三%を想定する政府に対して、政府内部からもいろいろ意見が出ていますし、また民間の調査機関などは二%台を予測する向きもあります。我々には国民に何を訴え、何を将来約束しようとするのかどうもさっぱり見えない予算のような感じがするし、不況から脱出するとしても、本当にこの予算で大丈夫なのかどうかということについて非常に疑問を感じているのですが、先生、ずばりどうでしょうか。     〔中川委員長代理退席、鴻池委員長代理     着席〕
  105. 吉田和男

    ○吉田公述人 大変難しい御質問ですが、まず不況の脱出というものですけれども、過去の例を見てみますと、不況というものの循環の形は大きな波と小さな波があるわけであります。  例えば、昭和三十四、五年のときのピークに対して、大きな波で見ますと、本当のボトムが来たのが四十一年まで続いているわけですね。その間にオリンピック景気というのがありまして、三十九年に小さな波で回復しているわけです。それから、昭和四十四年から五年にかけての大きなピークがありましたが、その後ずっと、円高とかいろいろなものがありましたけれども、長期的には下がってきて、その間に列島改造のブームがあったりして、小さな回復があったりしているわけです。したがいまして、大きな波として今回の平成、まあ平成よりちょっと前からですが、六十二年からぐらいの大きなピークに関しては、これのピークがまた再びもとへ戻るような大きな波というのは、これは相当かかるというふうに考えた方がいいのじゃないかと思うわけです。ただ、景気というのは、落ち込みのときは、いろいろな調整過程があるために落ち込んでおりますので、調整過程が済めばある程度は戻りますので、私は、それほど悲観する必要はない。特に先ほどから申しています企業の減量経営が成功するまでの時間というのは、これはかなり、減量経営しますと景気に対してはマイナスになるわけですから、減量経営が達成されて初めてそれからプラスに回転するということかと思うわけです。  最も重要なのはこの予算で立て直せるかどうかということでありますが、大きな波を予算で操作することは不可能であります。これは過去いろいろありましたけれども、大きな波を変えるほどの力は国にはないというふうに考えた方がいいと思うわけです。ただし、この小さな波で、ちょうど回復をする過程の中でうまくそれに乗る、あるいは今度逆にオーバーヒートしないように抑えていくということは非常に重要なことでありまして、そして今回の予算措置においてこれができるかどうか、どの程度プラスになるかということに関しましては、先ほども申しましたように、下支えの効果を期待すべきであって、これでてこ入れしてぐっと盛り上がるのだということは私は期待しない方がいいというふうに考えています。  それから、成長率の方ですけれども、私は昔から成長率の数字を言うのは余り得意でもありませんし、またこの数字が、確かに政府なりの立場からすれば、数字を示して明快な経済政策を示すということは一つの重要なポイントでありますが、私どもの立場からすれば、経済成長率がそれほど重要な意味を持っていると思いませんので、数字の方は御勘弁いただきたいと思います。     〔鴻池委員長代理退席、委員長着席〕
  106. 富塚三夫

    ○富塚委員 和田公述人にお願いいたしますが、今本予算審議の中で既にもう補正予算論議がいろいろちまたにささやかれているわけです。つまり、国の今回の編成方針は、人口の高齢化や国際社会における我が国の責任あるいは後世代に多大の負担を残さずに景気を十分配慮したいといったようなことなんですけれども、この補正予算というのは、本予算作成後特に緊急となった支出ということに規定をされているわけですけれども、この予算を編成をして審議をしているときに補正予算が出るくらい、景気の先行きについては政府も我々もなかなか自信が持てないということの問題じゃないかと思うんですが、今も吉田先生に質問いたしましたけれども、やはり不況からの脱出が可能なのか、成長率はどうかということと、それから当面の景気対策だけにウエートがかかって、例えば「生活大国五か年計画」も何となく幻の計画に、あるいは二〇二〇年をピークとする高齢化社会の対応どもどうやっていこうとするのか全く見えないということになると、つまり短期的、中期的、長期的な一つの展望に立つ政策イコール予算というものがこの九三年度予算案審議の中で議論ができないという、私はそういう弱点を持っていると思うんですけれども、そういう点のことについて先生はどうお考えでしょうか。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
  107. 和田八束

    和田(八)公述人 非常に幅の広い御質問だったような感じもいたしますが、補正予算について申しますと、やはり補正予算は財政法二十九条ですかにありますように、今お話しのように、本予算後の緊急的なあるいは予想できなかった事由のために認められているというふうに法律上は理解されますので、これが本予算成立以前にあらかじめ予定されるとか、あるいは補正予算自体が非常に大幅に策定されるということは、やはり現在の財政法の趣旨から言うと好ましいことではないということだろうと思うんです。  最近ですと、やはり補正と本予算とのギャップというのは一割ぐらいになってきておりまして、少し大きいのではないか。それから、歳入見積もりも、当初予算で比較的甘く見積もって、そして補正で、平成四年度の場合ですけれども、減額をする。しかし、平成三年度ではたしか剰余金が出ているわけでありまして、補正で減額しても決算ではまた剰余金が出るというふうに、当初予算と補正とそれから決算との間でもかなりぶれが出てくるというふうなことでありますと、やはり予算に対する信頼性というのは失われてくるわけであります。  かつて我が国でも総合予算主義というふうなことで、補正を組まないという前提で財政運営をしたことが、まあ二、三年ぐらいですか、昭和四十年代の前半ぐらいにあったと思うんですけれども、必ずしもそういうふうなことでできるかどうかは別にいたしましても、やはり補正を前提にするのはもちろんですけれども、できるだけ大幅な補正は避けるというのが現在の財政法上の我が国の建前だろうと思うんですね。補正をいかにも前提にしながら、しかも予備費も組んでいるとかいうふうなのも一つの内容矛盾ではないかと思いますし、それからこの平成五年度の場合でいいますと、既に四年度の補正でかなり公共事業などが増額しておりますので、これが事実上年度内にも食い込んでくるということがありますので、四年度予算とそれから五年度予算とを切り離して考えるのではなくて、四年から五年にかけて連続的に支出されますので、少なくともことしの前半期、上半期については平成四年度予算の効果も入ってくるというふうに思いますので、それ以降につきましてはそれ以降で判断するというのは、これはまた一つの財政の弾力性といいますか、そういうことからいうとやむを得ないことでありまして、その補正予算に対するそういう比較的厳しい形式上の制約と、それからまあこういう時期でありますので、弾力的な財政運営というものもやはりやむを得ないところじゃないかということで、非常に難しいということです。
  108. 富塚三夫

    ○富塚委員 次に、長谷田公述人にお尋ねいたしたいと思うんですが、労働界も財界も所得税減税の大合唱、つまり日経連の永野会長の例ではありませんが、絶対にこれは貯蓄に回らないで、過去の例からいっても六五%は消費に回る、だから大蔵省も五兆円ぐらい本気になってやったらどうだ、三年ぐらい短期的な赤字国債を出してもいいんじゃないか、こう言っておられますし、私たちも消費不況から脱出するには、いかにして個人消費の拡大を図るか、減税であり賃上げであり環境整備であり労働条件、労働時間短縮などである、こう思っているんですが、先生の所見は先ほど伺いました。赤字公債の発行の問題も伺いました。  そこで、実は所得税減税を野党間でこれからまとめて修正案を出すことになると思いますけれども、今給与所得者が四千八百三十五万、農業所得者が百十二万、農業以外の事業所得者が六百八十二万人、合計五千六百二十九万人おられている中で、納税者は給与所得者が四千百五十八万、農業所得者が二十五万、農業以外の事業所得者が三百十七万、四千五百万と、約千百二十九万人の人が税金を納めてないということに大蔵省試算でなるわけであります。つまり、低所得層なんです。所得税減税をする、戻し減税を仮にするということになると、私たちはやはり消費税の食料品の非課税の問題を実現をしないと、これは現実にバランスのとれた減税になっていかないんじゃないか、こう思うんです。  過日、総括質問でも、私は、政権与党が公約して食料品の非課税を図る、こう言っているんだからぜひやってください、それを片づけてから次の展開をと、こう言ったんですけれども、やはりこの低所得者にどうするかということの問題は、勢い消費税の食料品の非課税の実現ということをセットにしてやれば非常に公平感もあるんじゃないかと思いますが、先生のお考えをお聞かせいただきたい。
  109. 長谷田彰彦

    ○長谷田公述人 おっしゃるとおりでございます。ですから、先ほど申しましたように、私は、やや過激に消費税の一年ないし二年のストップ、これをやったらどうか。
  110. 富塚三夫

    ○富塚委員 ありがとうございました。  それから、吉田先生にお尋ねしたいんですけれども、実は防衛費問題について三人の先生方からはお話がなかったように私記憶しているんですが、やはり米ソ中心の東西冷戦構造の崩壊、そしてソ連を仮想敵国としてきた、そうみなして防衛計画を立ててきた時代は終わったと私も見ているんですが、これは紛れもなく新しい安全保障体制の確立や有事のシナリオを抜本的に見直さなければならない。これは国会でも残っている論争の大事なポイントだと思います。宮澤内閣は五千八百億の中期防の削減ということ、しかし今回はやはり防衛費が一・九五%増の四兆六千四百六億円となっているわけです。平和の配当として、世界的な流れとして、クリントン政権も防衛費を大幅に削っている。高齢化社会がやってくる。成熟社会の中では、環境や生涯教育や女性問題も大事だ。やはり防衛費に切り込んでいくという日本の基本的な政治の姿勢がなかったらだめだと思うんですが、非常にあいまいになっている。金丸前副総裁は、議論の中では、戦車を使うときはおしまいだ、防衛費の削減は戦車からやれ、つまり正面装備削減を進めてみる、こうも言われていることも聞いていますけれども、やはり防衛費の削減に具体的に踏み込んでいくべき時期が来た、ソ連を仮想敵国として防衛計画をやっている時代は終わったと基本的に私は認識しているのですが、先生、いかがでしょうか。
  111. 吉田和男

    ○吉田公述人 私の考えといたしましては、防衛費の問題というのは、防衛費の前にやらなければならないことがたくさんあるわけでございます。  一つは、確かに米ソの対立というものは終了いたしましたが、これにかわる新しい国際社会の枠組みというのはまだはっきり見えてきてないというところがまず第一点かと思うわけです。  米ソ間の協調関係というのは、ほぼ、ほぼ大丈夫だろうという見込みは立っているわけでありますが、しかし、例えば日本の周辺で考えますと、中国とどういう関係になっていくか、あるいは朝鮮半島の情勢がどういうふうになるか、あるいはカンボジアのようにもう皆話し合いがついたと思っているようなことですらなかなかいかない。さらに、今東南アジアは非常に経済的に発展しております。そして、この状況というのが将来割合持続的ではないかという楽観的な見通しが立っているわけです。しかし、今までその地域を安定化させていましたアメリカが撤退するということが明らかになってきたかと思うわけです。そうしますと、その力関係がどういうふうに動いていくか。その動いていくものの恐らく重要な役割をするのが中国、インドということは間違いないかと思うわけです。  この関係を、まあどういうふうになっていくかということをまず見きわめる必要がある。その中で日本はどういう役割を果たしていかなければいけないかということになってくるかと思うわけです。そして、それを全体としてどういうふうな枠組みで安定を確保するか。もちろん基本は国連であることは間違いないわけです。そして、国連だけでは私は無理だと思うんです。事実、例えばヨーロッパの安全保障体制というのは国連によって維持されているとはとても思えないわけでありまして、NATOとか非常に複雑な機構によって安定が確保されているわけで、それですらユーゴ問題なんか起こってしまうわけであります。  したがって、まず第一に、新しい国際秩序はどういうふうになるのか、そしてそれに対応して日本がどういう役割を果たしていくのか、そういった議論をまず、それが大前提だと思うわけです。  それから、防衛費の問題と申しますか、軍事の一種のバランスの関係と申しますのは、相手方との共通土俵をまずつくることが大事で、例えばヨーロッパにおいてもCSCEというのは東西両方が同時に削減する、そして同時削減することによって各国は非常に低位な軍事力でやっていこう、しかしその際には、集団安全保障体制としてお互いの軍事力を共通して利用するという認識があるわけでありまして、そういうふうな枠組みをつくった上で私は議論すべきだと思います。  それで、防衛費を、今政策として云々するよりも、まず枠組み議論からぜひ御議論いただきたいなと思っております。その上で考えるべき問題と考えております。
  112. 富塚三夫

    ○富塚委員 和田公述人、長谷田公述人にもちょっと聞かしていただきたいのですけれども、まあ非核三原則をつくって日本はそれなりに歯どめをかけてきた、あるいは防衛費はGNPの一%以内ということが、今回も一%以内になっていますけれども、意外に政治家のあるいは官僚の、国の舞台ではこの一%を切っていることがある意味の歯どめみたいに受けとめている節が非常に強いわけですね。しかし、抜本的に、根本的に世界の情勢は変わった、そして日本もまさに平和の配当として軍事費、まさにそのことを考えていかなければならない時期になったときなんですから、やはり防衛費問題に徹底的に切り込んでいくべきだ。もちろん、中期防衛計画、防衛計画の大綱の見直し、さまざまな課題が出てくると思いますけれども、そういう点でどうでしょうか、和田先生と長谷田先生にちょっと御感想を聞かしていただきたい。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  113. 和田八束

    和田(八)公述人 先ほどはちょっと触れなかったもので御質問があったわけなんですが、私は富塚さんの御意見とほぼ同じでありまして、特に将来の我が国の財政のことを考えますと、やはり防衛費を大幅に切り込んでいくということが非常に重要なポイントであるというふうに考えます。ただ、どの程度までなのかということにつきましては、いろいろ防衛問題としても考えなければいけないことはあるわけなんですけれども、恐らくGNPでいきますと、私はGNPの、現在一%ぐらい弱のレベルなんですけれども、その半分ぐらい、○・五%ぐらいというあたりを目標にその定員なり装備なりというものを考えていいのではないかというふうに考えます。  ただ、それにかわって平和の配当というふうなことをおっしゃったわけですけれども、かわってふえてくるのがODAそれから地球環境保全というふうな、それ以外の国際貢献費というものが非常に高くなってくる。ODAの目標も二十一世紀初頭にはGNPの一%ぐらいということが大体予測されておりますので、そうなりますと、現在の防衛費程度の規模にODAがなっていく。で、防衛費は、できれば現在のODAぐらいの○・三、四%ぐらいというところに落ちつかせることができれば非常にいいのじゃないかと思うのですが、いずれにいたしましても配当ということで考えますと、今度は国際貢献あるいは国際的な支出というものが非常にふえてくるということは一方で覚悟しなければならないわけで、そのためにも平和の配当を拡大していくということが非常に大事なことだろうというふうに考えております。  だから、その目標というものを、大体何年ごろまでにどういうふうな規模にして、どれくらいの自衛隊の定員なり装備なりをしていくかというはっきりした目標を立てるべきではないかというふうに思います。
  114. 長谷田彰彦

    ○長谷田公述人 防衛費は余り考えたことがないのでございますけれども、フセインのあのイラクの侵攻のときに百億ドル近くの負担をした、ああいう形を何か制度的に固めておくということを考えてもいいのじゃないかと私は思います。これは常時、また国債発行、財源になることになりますが、アメリカの軍事予算というものに常時何らかの貢献をするというような形で日本の防衛費というものを考えるということは、私前から考えておりました。つき合いという形でございますね。そういう形でやって、こちらでも正面装備なんというものは、これは金丸さんもおっしゃるように全然やめてしまった方がよいと私は思います。  以上でございます。
  115. 富塚三夫

    ○富塚委員 短期的に景気対策というところにウエートを置く今回の予算、それは一面では当然だと思いますけれども、やはり先ほど和田先生もおっしゃったように私も思うのですが、中期的なこれからの展望を考えると、「生活大国五か年計画」というのは幻に終わらせては困る。これをいかにして生活の質を高めるために我々は考えていくべきか。  また、西暦二〇二〇年に高齢化社会のピークが想定をされている。そこに向けて雇用とか年金とか医療とかさまざまな問題が実はある。これはまた国会で論争しなくちゃいけないと思っておりますけれども。そうすると、そういうものに対する財源をどうするとかという問題は余り議論をしないで、歳入と歳出だけうまく合わせて、そして予算をつくる。つまりイメージとしての政策アップはするけれども、現実にどのように中期的、長期的な政策の展望を国民の生活向上のために立てていくかということが非常に少ないわけですよね。そういう点で、私はこの予算案を審議して決めていく上では、やはりそういう問題を取り上げて議論をするという、そういう国会の場でなければいけないと思っている一人なんですが、なかなか政府とかみ合っていかない問題です。  それで、時間の関係もありますから、吉田先生にちょっとお尋ねしたいのですが、政治改革のことについて先生の感想をひとつ聞かせていただきたい。  私たちはやはり今度の佐川問題の反省から、政権政党、やはり長年の政治を担ってきて金権腐敗政治になってきたのじゃないか、政財界癒着の構造もあるのじゃないか、言いにくいこともさんざん言ってきています。ロッキードのときには田中さんも有罪になって、リクルート、共和では中曽根さん、鈴木さん。竹下さんはもう三回証人喚問をされて、国民にしてみると前代未聞のいわゆる国辱に値するように皆受けとめている。その元凶、根本的な問題は、企業献金を野方図に、野放しにしておくということにある。御案内のように、経団連、この一千余の傘下の企業から、収益から年間百三十億と言われる金を拠出して、ほとんど自民党さん一党に献金をしている。皮肉にもこの経団連の首脳は、勲一等の栄誉をもらうためにそういうことはやるのだなんと言う人もおりますけれども、しかし経団連さんも政権交代や自由主義を主唱しながら、やはりみずから不公平な政治献金で公党間に著しい経済格差を生じさせる、そして政権交代の芽を摘んでいるのじゃないかとも言われているわけです。また、多くの野党支持の顧客に断りなく企業収益から特定の政党にのみ政治献金をするやり方は、これは企業倫理にもとっているのじゃないか。  そこで、今これからの議論になると思うのですけれども、例えば一切の企業、団体の献金を禁止をして、全廃をして、国会議員一人当たりに年間二千万円の政府助成をする、そしてそういう政治の腐敗を防止していくという、政治の改革ということの問題について私はやはり真剣に考えていかなければならない、その問題を避けて通ってはいけない、こう思うのですけれども、先生とうでしょう。政治改革の、あるべき企業献金、団体献金などの問題で、先生の所見をひとつ伺いたい。
  116. 吉田和男

    ○吉田公述人 現在二十一世紀に向かって非常に大きな改革をしていかなければならない最大の眼目が、やはり政治改革ではないかと思うわけです。例えば、佐川事件云々という金権問題がございますが、また企業献金自身もそうでありますが、これはやはり政権交代がないということが一番の問題であるわけです。  政権交代がなぜ起こらないか、これはいろいろな議論の仕方があるかと思いますが、やはり私は根幹は中選挙区制にあるというふうに考えるわけであります。それは特に社会党の場合ですが、新たに立候補者を立てれば通らなくなるという非常に難しい、非常に野党にとって不利な体制にあるということがやはり非常に問題である。そして過半数をとるためには多数の中選挙区の中で立候補者を立てなければならないという、こういう選挙区制はかなり厳しいものではないかなと思うわけです。  そして、企業献金がどうして自民党に偏るか。やはり自民党が政権政党であるわけですが、二大政党でどちらがなるかわからなければ、やはり危険ですから両方に出すんじゃないですか、多分。ですからやはり私は思うのですが、この一番の眼目は小選挙区制に移行するということではないかと思うわけです。  特に近代民主政治というのは政党政治であるべきだというのがヨーロッパのスタイルの考え方であるわけです。事実、政党の形をとっているわけでありますが、中選挙区制の中で選挙運動はほとんど、まあ政党にもよりますが、特に自民党の場合にはほとんど政党は機能してないわけです。そういうのも一つの民主主義の立場としても非常に問題があるわけでありまして、これはいわゆる政権政党をつくるための選挙制度になっているということが問題であって、社会党が小選挙区制に踏み切ることがまず政治改革の出発であると私は考えております。  で、先ほど申しましたように、政権政党が党派によってかわるという事態をいかにつくるかということをお考えいただければいいのと、それから企業献金の問題に関しましては、私は日本の税制が悪いのか何が悪いのかまだよくわかりませんが、何でも企業に頼らなければいけない、すなわちあらゆる労働者はすべて企業に頼る、ともかく会社だけが頼り、そういうふうな社会になってしまったところに非常に大きな問題がありまして、例えば政治資金をだれがバックアップするかといったときに、現実の問題として企業しかないという、これは非常に大きな問題ではないか。その日本社会全体の構造も考えていく、変えていく時期ではないかなというふうな気がしております。
  117. 富塚三夫

    ○富塚委員 政治改革は選挙制度の変革にだけ置きかえてはいけないと私らは今思っているわけです。ですから、政治改革はやはりイギリス型政治腐敗防止法のような厳しいものをつくっていかなければいけないという意味で、先生方にもぜひいろいろな角度からこういう問題について御提起を賜れば幸いだと思います。  ありがとうございました。
  118. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて富塚三夫君の質疑は終わりました。  次に、宮地正介君。
  119. 宮地正介

    ○宮地委員 公明党・国民会議の宮地正介でございます。  きょうは、公述人の皆さんには、大変御多忙の中を予算委員会へお越しいただきまして平成五年度予算についての公述をいただきまして、心から感謝を申し上げます。  最初に私の方から、限られた時間でございますが、本予算によって本当に現在の景気の不況、これが克服できるのかどうか、内需拡大が実際に有効的に働くのかどうか、特に消費不況という面から、私どもは、本予算の中の消費の喚起という面については、予算的な内容を精査してみますと、大変甘いのではないか。また今回の日米会談において、渡辺・クリントン会談あるいは日米外相会談、あるいは林・ベンツェン会談、こういう一連の会談の中で、アメリカ側からまさに一千億ドルを超える日本の黒字問題につきまして、日本の景気の低迷に大変に憂うる発言がありました。そういう中で、市場開放と同時に内需拡大を日本政府は強く要請をされております。  そういう中で、私は大変に特徴的な一つとして、林・ベンツェン蔵相会談の中でベンツェンさんがさらなる日本の財政出動に期待する、こういう要請があったことはもう先生方御存じのとおりでありまして、果たしてこの平成五年度本予算が成立してこうした内外の国民あるいは対外的な期待に対して有効的に働くのかどうか、大変乱はむしろ心配をしております。恐らくさらなる追加的な公共投資、あるいは消費の喚起のためには先ほど来から先生方おっしゃっておりますような所得税減税、やはり大型の減税をやらざるを得ないのではないか、こういうふうに我々は理解をしております。  そこで、まず長谷田公述人にお伺いしますが、先生はバブルの再来を大変心配をされて、バブルの再来よりも、赤字国債を発行してもこの際思い切った所得税減税をやるべきである、あるいは消費をさらに喚起するためには減税と同時に消費税の一年ないし二年凍結もやるべきではないかこうした思い切った御発言がありました。私ども公明党も、先生御存じのとおり、まず大型の所得税減税、四兆円から五兆円程度、これも戻し税方式で、できれば五月の運休前に標準家族四人で十万円ぐらい戻し税を返還すべきである、この際財政的には赤字公債発行やむなし、この赤字公債も、先ほど来お話ありましたが、六十年償還ルールでなくて、この際四年なり五年の中期国債で、このルールを変えてもやるべきである、こういう立場をとっているわけでございますが、まず長谷田公述人に、我が党のこうした主張に対してどういう御見解を持っているか、お伺いしたいと思います。
  120. 長谷田彰彦

    ○長谷田公述人 全面的に賛成でございます。  消費に強いパンチを与えるのであれば、さっきから私申しているように、消費税、食料品なんてけちなこと言わないで全部二年間ストップ、これは財源はもちろん赤字国債。しかも、赤字国債を出したからそれは三、四年でもって中期国債でというようなことは、これは全然意味がないんです。そういうことは必要ないんです。さっきから申しているとおりでございます。
  121. 宮地正介

    ○宮地委員 先生の場合は、赤字公債論は、財政のけじめは必要であるが、国民生活の実態からは大変乖離しているのではないか、こうした主張であろうかと思います。  私は、和田先生にお伺いしておきたいのですが、確かにこれまでの大蔵当局のこの公債発行に対しての対応については大変私なりに疑問を持っております。  御存じのように、昭和四十年、福田大蔵大臣のときにいわゆる建設国債の発行を行いました。そして、この建設国債は十年国債ですから、六十年償還ルールでやりました。ちょうどその建設国債の償還の十年後、昭和五十年になりまして、財政的に厳しいということで今度は特例公債を昭和五十年に政府は踏み切りました。そしてこの特例公債によって建設国債の償還を行うように対応いたしました。さらに、今度は十年後の特例公債の十年後償還、同じ六十年償還ルールで最初の十年目に六分の一が償還で入ってまいる。ちょうど昭和六十年の段階になったら今度は何をやったかといいますと、特例公債の借換債を今度は発行するような特例をまたやった。まさにこれはサラ金地獄に陥るという論理の発生もとであります。そして、バブルの経済によって非常に景気がよくなってきて、平成二年に赤字公債発行ゼロになった。  こういうような経緯で大蔵当局の、やはり景気と財政のいわゆるこの状態というものを見ながら彼らなりの判断で、大蔵当局はこの建設国債と特例公債、そして借換債というこのミックスした財政手法を今日まで、昭和四十年以来とってきたわけです。  今回、私は、この複合的不況というのは大変な非常時のような実態の不況の認識で行くべきではないか。非常事態であれば、赤字国債やむなしというこの決断は財政手法として決してやってもおかしくない、こういうふうに私なりに理解をしているわけです。  そういう点で、和田先生は先ほど来から、決してこの赤字国債善悪論というようなものではなくて、財政手法としては必要なときには大いにやるべきであるというニュアンスで私は受けとめました。今回のこの景気の認識というものを深刻に受けとめるならば、思い切った所得税減税の財源として赤字国債発行やむなし、こういう立場を我が党はとっておりますが、この点についてどのような見解をお持ちか、伺いたいと思います。
  122. 和田八束

    和田(八)公述人 先ほどもちょっと申し上げたわけですけれども、繰り返しませんけれども、現在の議論では余りにも建設国債善玉といいますか、赤字国債悪玉論といいますか、そういうことで割り切っていて、それがためにかえって建設国債の方で歯どめがきかなくなってきて、逆に赤字国債の方に対する手法が不明確になってきているというふうに思いますので、その辺は整理しておく必要があるのではないか。つまり、その国債管理についての、余りにも自信が感じられないといいますか、そういうことがありますし、それからやはり国債と行政改革というのは非常に結びついているわけなんですけれども、その辺の関連というのはよくわからないということなどがあります。そういう点で、私は、建設国債か赤字国債かという前に、国債ということでひとつ議論をしていく必要があるのではないかということを先ほど申し上げたわけです。  それから、もう少し短期的に、じゃ現在の問題で、お話しのように減税の財源としてどうかということになりますと、これはなかなかちょっと難しいわけでありまして、減税ということそのものについての判断といいますか評価ということもあるわけなんで、これは私はちょっとまだ減税の内容についてよく承知しておりませんので、具体的な意見というのはまだ持っていないわけで、きょうの日本経済新聞の朝刊で、何といいますか、一つの案というのが出ていたようでありますけれども、あれで見る限りは特に赤字国債というふうな財源論は出ていなくて、内容的にももう少し詰めてみる必要のあるところはありますけれども、おおむね、目的、手法としては妥当性を持っているのではないか。きょうの日本経済新聞のあの記事を見る限りは内容的に妥当だろうというふうに思いますし、その点では赤字国債論というのは特にないわけでありまして、現在の予算審議の中で、特に赤字国債を前提にしなければ減税論ができないというふうには思わないわけです。  予算修正というふうなお話もあります。これは恐らく支出の見直しということが同時的に行われる必要があるということで、そういうことだろうと思うのですけれども、ただの税制改正あるいは減税ということであれば、予算予算といたしまして、税法改正で可能なわけであります。歳入予算というのは一定の見積もりでありますので、必ずしも予算修正しなければ戻し税減税なりあるいは新年度減税ができないというふうには考えられませんので、その辺も含めてまだちょっと私自身としてはいろいろ考え方について理解のできていないところもありますので、現時点で赤字国債はどうかというふうに聞かれるとすれば、ちょっとまだ判断できないということであります。
  123. 宮地正介

    ○宮地委員 先ほど来からお三人の先生方は、財政のやはりリストラをこの際思い切ってやるべきである、こういう御発言がございましたので、代表して私は吉田先生にちょっとお伺いしておきたいのですが、本年度予算の中で、ひとつ私は、大変に大きな問題点であろうという一つの例として、防衛予算の中に、今回御存じのように、中期防二十二兆七千億円、この中期防の中で約五千八百億円を削減をいたしまして、防衛費も削減をいたしました。大変私はそういう点では防衛庁の切り込みに対しては高い評価をしております。  昨年の臨時国会等で、私どもは一千億円の切り込み、さらに恐らく三千億円ぐらいの切り込みができるであろうということで突っ込んでまいりまして、それを上回る五千八百億円の切り込みをされまして、それも正面装備の段階でやりました。大変苦労があったのではないか。  しかし一方、我々ちょっと心配しておりますのは、本年度予算からAWACSを二機導入するわけです。中期防で四機導入するわけです。ところが、このAWACSが当初見積もりでは一機三百二十五億円で見積もって中期防に予算計上しておりました。この機種を変えるとか、いろいろ御苦労あったようですが、これが何と今回約五百七十億円。その差何と二百四十五億、約二百五十億ですね。二機ですから五百億。この見積もり違いが今回の予算に計上されてきておる。中期防で四機ですから一千億です。これは大変な見込み違いなんですね。片や五千八百億の正面装備を切っておきながら、片や見積もり違いで一千億ですね。今年度予算では約五百億、これが見積もり違いで上乗せになってきている。この点について、私も防衛庁に指摘はしてありますが、こうした予算の見積もり違いというものは国民の目から見てやはり大変問題があるんじゃないか。  こういうことで、今後の改善などについて厳しく防衛庁に私は指摘をしているとこでございますが、こうした問題もリストラの中の一つの大事な問題ではなかろうか、こう思っておりますが、先生のこの点についての御感想を例えればありがたいと思います。
  124. 吉田和男

    ○吉田公述人 AWACS自身については私専門家ではございませんのでわかりませんが、御指摘の点は、要するに中期的な財政システムと短期的な予算システムをどうマッチさせるかという点にあるかと思うわけです。  確かに、中期的な予測というのは非常に難しい面もあります。中期的な見通しというのは、大体ほかの予算もそうですけれども、実物ベースで、当年度価格ベースでやるというのが大体の方法じゃないかと思いますね、下水道なんかもそうですが。ですから、それが特にAWACSなんかの場合には、私の新聞で読む記憶しかありませんが、向こうが生産をやめちゃうということで何か高くなるということらしいですが、それがいわゆる外的要因で中期的な計画が大幅に変わるといったときに、その中期的な計画と短期的な予算というのをどういうふうにバランスさせるかというのは御指摘のように非常に難しい問題かと思うわけです。  しかし私は、中期的な財政計画というのは、この中期的な展望、すなわち計画的な財政運営をするのが特に重要な部分ですね、公共投資とか防衛とか、そういうところに現実に利用されているわけでありますが、先生御指摘されているような、いわば防衛庁のちょんぼなのかもしれないですけれども、そういうことはできるだけないように努力するのは行政側の当然のことでありますが、しかし、かといって中期的財政計画というのはすべて短期的な予算を縛るという形では予算制度上も必ずしも、今の制度を前提としまして、すなわち単年度において国民の意思を反映させていくというメカニズムを前提とする限りにおいては、それほど厳しく言う必要はないんじゃないかなというふうな気も持っております。
  125. 宮地正介

    ○宮地委員 どうもありがとうございました。
  126. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて宮地正介君の質疑は終わりました。  次に、木島日出夫君。
  127. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  財政学、そしてまた経済学を専門とされております三人の公述人のお話を伺っておりました。九三年度の予算がますます深刻化する不況打開を中心的な課題にしなきゃならぬという点ではいずれも共通したお立場だと思うんですが、具体的な不況打開のために財政に何ができるのか、何が有効なのか何をすべきなのかと各論になりますとそれぞれ意見が分かれているようにお聞きをいたしました。特に、公共投資の拡大が現在の不況からの脱出にとって有効なのかどうか、所得税減税が消費拡大につながるのかどうなのか、所得税減税のためには赤字国債を発行してもよいのかどうなのか、全く違ったお立場が三公述人から述べられました。  繰り返し質問することは避けまして、違った角度から、これは三人の公述人に共通する質問を一つしたいと思うんです。  政策論として、財政面から不況対策を考える上で非常に重要なことは、不況の打撃を最も受けている中小零細企業の経営、そしてまた勤労国民の生活が成り立つようにあらゆる手を打つことではないかと私は思っているわけであります。それは、中小企業が我が国経済、全事業所の九九%、全従業者の八割、工業出荷額の五割を占めております。また、国民の消費支出が内需の六割を占めているという現在の日本経済の実態から見ても、これが景気回復の本道ではないかと考えるわけであります。  ところが、政府の予算案を見ますと、中小企業対策費は昨年より減額をされまして千九百五十一億円、一般会計に占める比率が○・二七%、史上最低であります。非常な冷淡さであります。国民の減税要求に対しても政府は無視をしております。我が党は責任ある政党でありますから、財源の裏づけのない減税論にはくみしません。赤字国債の発行には反対であります。しかし、軍事費の半減とか大企業優遇の不公平税制の見直しなどによって赤字国債発行なしに二兆円の減税はできる、これをすべきだと考えているわけであります。  一方で、政府が景気に配慮したとする公共事業費を見ますと、一般会計の公共事業費、財政投融資それから地方単独事業合わせますと全体で三十兆円を超える規模に達して、近年最大の伸びになっておるわけでありますが、問題はその中身だと思うわけであります。産業基盤と生活基盤の割合が依然として三対二のままであることに見られますように、大型プロジェクト中心の公共事業であるわけであります。  ここからお尋ねしたいのですが、こうしてみますと、政府の景気対策はさきのアメリカの大統領選挙でアメリカ国民が拒否したと言われているいわゆるトリクルダウンセオリー、滴り落ちる経済学といいますか政府資金による大企業への投資の波及効果が中小企業へ及ぶという理論、これに相変わらず日本政府はしがみついているのではないかと思われるわけであります。景気と財政との関連についてのこうした従来型の考え方から脱却することこそが、現在の不況対策を中心課題とする予算を組む上で重要だと考えるわけでありますが、この点について、簡潔で結構ですが、三公述人の先生から基本的見解をそれぞれお伺いしたいと思います。
  128. 和田八束

    和田(八)公述人 基本的見解ということなんですけれども、ちょっと不勉強で、中小企業対策費そのものの中身というものを十分に研究というほどでもないにしてもちょっと調べておりませんのでなんなんですが、資料で拝見しますと、確かに中小企業対策費というふうに言われている項目は減っております。主として出資金の減、国民金融公庫出資金とか中小企業信用保険公庫の出資金というふうな項目で減っているように見受けられましたので、この辺は、実際にこの項目が中小企業に対する全部の政策予算の内容なのかどうかということについては私ももう少し、予算費目としてはそういう名目になっていますけれども、これがすべてかどうかということはちょっとわかりかねます。恐らくほかにも中小企業関係政策というのはあると思いますので、全体として見なければならないのではないかというふうに考えます。  中小企業に対する政策の重要性というふうなこと、あるいは社会的、経済的地位の問題につきましては私は御説明のとおりでありまして、重視しなければならない問題であろうというふうに考えておりまして、これは農業などとも関連するわけで、関連というか同じように我が国においては重視されていかなきゃならない問題だろうと思いますけれども、同時に、何といいますか、経済なりあるいは社会的な問題からいいますと、やはりサラリーマンといいますか勤労者といいますか、これの存在というのがより大きなウエートではないかというふうに私などは考えまして、税制などの面につきましては特にサラリーマンの税制とかあるいは都市におけるサラリーマンに対する生活基盤の充実とかいうふうなことに主として、私個人のあれかもしれませんけれども関心がありましたので、先ほどは、どちらかといいますと、そちらの方に重点を置いてお話をしたわけですが、もう少し調べてみたいと思っております。
  129. 吉田和男

    ○吉田公述人 おっしゃられるように、中小企業という項目が財政の中でも非常に重要な位置にあると思うのですが、ただ、私が中小企業の項目に関して持っている考えといたしましては、いわば農業と同等の形の扱いで考える必要はないと思うわけです。この中小企業対策というのがやはり二つ側面がありまして、中小企業といいますか、経済全体におけるマクロ的な意味で、不況から脱出するということで云々するというマクロ的な面と、それから中小企業の近代化のための促進費用ということで計上されているものと私は思っているわけです。したがって、現在の中小企業の問題というものをどういうふうに理解していくかというのは、やはり景気の動向の方が私は重点があるように思います。  ただ、この際、先ほども申しましたが、減量経営あるいは技術開発をしていく上で、これは大企業に限ったごとではないと思うわけです。もちろん固定費が上がって、固定費が上がったことで例えば次の経営戦略がしにくくなっている、そういうふうなのは主として大企業ですが、それの関連として中小企業不況というのがあるかと思うわけです。  先ほども申しましたように、マクロ政策でそれを、全体を引き上げていくことも非常に難しい状況。早く大企業がリストラを進める、同時に中小企業もその近代化、こういう機会に近代化を進める、リストラを進めるという促進を政府が努力するということについては非常に重要なことと私は思います。  したがって、先ほど和田さんからも話がありましたが、それと同じようにこの具体的な内容がどういうふうに効果を持っているかということは、よく中身を見てみないとわかりませんが、重要なことは、中小企業のリストラをどういうふうに進めるかということに政府がどれだけ手を差し伸べることができるかという点から考えるということが重要だと思っています。
  130. 長谷田彰彦

    ○長谷田公述人 先ほどから申しておりますように、消費につきましては、消費税の二年間ストップ、これをやりますれば、勤労者も所得水準に関係なしに効果が出るわけでありますから、これはぜひ考えていきたいと私は思います。  その財源が先ほどから私、消費税ストップしますと五・五兆円ですか、五・五兆円足りなくなる、この五・五兆円は、これは私は赤字国債でやればよい、こういう考えでございまして、なぜ赤字国債ではいけないのかということを私はどうしても理解できない。赤字国債でやらなければ、ここで今回の不況、赤字国債を使わなければ、つまり赤字国債を財源とした財政措置を行わなければ回復は非常に困難であると私は考えております。
  131. 木島日出夫

    ○木島委員 私が最も聞きたかったことは、政府の予算案というのはやはりトリクルダウンセオリーに基づく予算ではないか、大企業を濁せばおのずと下にまで景気の波及効果があると、それはもうアメリカの大統領選挙でアメリカ国民から見離された理論ではないか、そういう理論では今の不況は打開できないのではないか、その問題についての、三公述人の先生から率直な御意見を聞きたかったわけでありますが、時間がもうありませんので、もう一つ質問をしたいと思います。  財政の最も重要な機能は所得再配分機能であろうと思うわけです。この視点に立って、いわゆる臨調行革路線が開始された八二年度から九二年度までの十一年間の政府予算を歳出歳入両面から見ますと、例えば歳出では、軍事費八九・七%増、経済協力賢一一二・八%増、この二つが最優先であります。社会保障費は四四・一%増、文教費は一九・九%増。一方、中小企業対策費は二一・七%減、食糧管理費に至っては六五・六%減です。歳入でも、低所得者ほど負担が重いことが明らかになっております消費税が導入されるなど、歳出歳入両面で財政の所得再配分機能が破壊されてきているのではないかと見ざるを得ません。  この傾向は九三年度、本年度政府予算案でもますます顕著になっております。軍事費二・〇%増ですが、同僚議員から先ほど来その内容として、AWACS二機一千百三十九億円、イージス艦一隻千百七十九億円、大型輸送艦一隻五百三億円、新多連装ロケットシステム九両百九十四億円、これなどが入っているわけであります。  これが内需の六割を占める国民消費の伸びに対する大きな制約になっているのではないか。所得再配分機能が歳入歳出両面において破壊されている。このゆがんだ構造の根本的転換こそが今の不況対策のためにも緊急な課題ではないかと考えるわけですが、時間の制約もありますので、簡潔にこの点での三公述人の見解をお述べいただきたい。
  132. 和田八束

    和田(八)公述人 財政全体ということはちょっと判断しかねますけれども、税制における所得再分配機能が弱体化してきているのではないかという御指摘は、私もそのように思います。  所得税につきましても、一時税率のフラット化ということでかなりそういう潮流がありましたけれども、また最近は、アメリカも含めまして所得税における再分配機能を重視する思想が強くなってきておりまして、我が国においても税制改正を、特に所得税の面で税制改正を行うということについては、所得再分配機能を重視した改正が行われることを私も希望しています。
  133. 吉田和男

    ○吉田公述人 私は、どちらかと申しますと財政の第一の機能は資源再分配にあるという、これは教科書にある考え方ですが、それが第一にあると思います。所得再分配効果を求める政策はやはり従であるべき。したがって、先ほどもちょっと申しましたが、いかに公的領域、まあちょっと古い言葉でいいますと公益を確保するかということに予算は重点が置かれるべきだと私は考えております。その目的に沿う形で資源再分配が行われるということが重要かと思っております。
  134. 長谷田彰彦

    ○長谷田公述人 経費の方で所得再分配効果があって、それが逆進的にきいているということは、私は了解できません。
  135. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  136. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて木島日出夫君の質疑は終了いたしました。  次に、柳田稔君。
  137. 柳田稔

    柳田委員 午前中、公述人三人にいろいろとお話を聞きまして、その中で、景気が悪い悪いと余り言うな、景気も気からだというふうなお話もありました。病も気からかなと思ったりもしているのですけれども、余り悪いことばかり言いたくないのですが、若干ちょっと不安に思っていることが何点がありますので、お聞かせ願えればと思うのです。  先ほど長谷田公述人だったかと思うのですけれども、貿易黒字高が千三百億ドルですか、それで経常が千二百億ドルぐらいになっている、内需が不振だから外需の方に目を向けておると。このことの是非をどうのこうのお聞きしようかというふうに思っているわけじゃないのですけれども、それが現状である。ところが、きょう先ほどニュースを見ておりますと、一ドル百十七円前半までやってきた。これはさらに円高が進むのではないかというふうな状況にあるわけであります。国内の産業、まあ貿易もやっておる産業を見ておりますと、大変苦しいところがまたそれに当たっているような気もするわけなんですけれども、この百十七円がさらに百十五円、百十円と進んでいく可能性も大いにある。この苦しい経済状況の中でこれがどのように影響するのか、長谷田公述人と吉田公述人にちょっと教えていただければと思います。
  138. 長谷田彰彦

    ○長谷田公述人 さしあたっては円高はマイナスの効果がございますが、しかし前回の八五年の極端な円高、これを大体二年で日本経済は吸収いたしました。したがって、ここで今回はこれがどう効いてくるか。さしあたってはともかくマイナスの効果がございます。私がいます四日市の万古焼などというのは前回壊滅したわけでございますから。ですから、この円高に対してはかなり、先ほどから私が申しましたような対策、もう赤字国債でも何でも出してやらなきゃいけないというふうに私は思います。
  139. 吉田和男

    ○吉田公述人 先ほど長谷田さんもおっしゃいましたけれども円高には二つの効果があると思います。一つは需要側の効果でして、これは輸出価格が高くなって輸入価格が下がるわけですから、これは需要面からはマイナスであります。しかし、外国の製品なりあるいは原料等安く買えるわけですから、これはプラスの要因であるわけです。いわば供給側の要因から考えるとプラスなわけです。ちょうど例のプラザ合意以降の大円高があったときに、日本経済もう大変だ、つぶれるという議論があったのは、需要面だけを見た議論だったわけです。しかしこれは、供給面のプラスということを考えていきますと、やがて円高好況になっていったわけであります。  現在の不況の中で、先ほど先生御指摘されていたように、産業別に見ましても一番厳しいようなところがちょうど円高にぶつかる。これは実は当然、当然と言ったら語弊があるかもしれないですけれども、自動的なメカニズムでもあるわけですね。すなわち、現在まで平成景気を支えた産業というのは輸出産業であったわけですから、輸出が好況になればなるほど、そしてこういうふうに一たん不況になって国内マーケットより外国のマーケットをやりたいというふうになってきますと、これは当然黒字になって円高になってくるわけです。ですから、ある意味で資本主義メカニズムの当然の機能であるわけですね。  ですから、私は円高というもののプラスの面が徐々に出てくると思いますし、同時に、円高によって産業全体のリストラクチャリングが行われる必要があるというふうに考えています。事実、円高で一たん不況になった後、非常に柔軟に対応するあるいは積極的に対応するという形で、日本経済円高のプラスを生かして好況をつくったわけであります。私はそういうふうなことを期待しておる次第でございます。
  140. 柳田稔

    柳田委員 病は気からですから、いい方向を考えたいのですけれども、正直言って、今は大変厳しい産業がこれで円高を迎えますと、もう既に合理化をやって、やり過ぎたところに加わりますと、以前のような打撃ではおさまらないのではないかなという気が私はいたしております。  もう一つの不安材料というのは、大体決算期が近づいてきている。企業というのは、どうにかしてでも黒字を出さにゃいかないということに相なりますと、株価がどうなるかという不安の向きもあるわけなのですが、これもこの景気の足を引っ張るような材料になるのではないかという気がしておるのですけれども和田公述人、いかがお考えでしょうか。株価が今後の経済にどう影響するかということについて、何か御意見があれば教えていただきたいと思うのです。
  141. 和田八束

    和田(八)公述人 そちらの方、私余りよく勉強してないし、よくわかりませんので、済みません。
  142. 柳田稔

    柳田委員 だれか専門の方とおっしゃると、いませんか。では、吉田先生、お願いします。
  143. 吉田和男

    ○吉田公述人 私も専門ではございませんが、株価の景気に対する影響というのは、一つには、消費に対しては資産効果というのが指摘されております。また、企業にとりましては資本コストに影響を与える。すなわち、株価が高くなりますとそれによって資本コストが下がることになりますので、要するに時価発行すれば安いコストで入るということになるわけですね。資本コストの面からはプラスになるということであったわけです。ですから、バブル時代にそれがプラスに作用したということはこれは否定できないわけでありまして、株価が下がったということでこれがマイナスに機能するということは間違いのないことなわけであります。  しかし、バブル時代の株価の評価というのが、いわばバブルというのはファンダメンタルズによって決まる要因以外の要因で決まるというこどですから、まさに正当な値づけでなかったわけでありますから、それが下がるということは、これはやむを得ないというよりも正常化のためには望ましいことであるわけです。ただ、これが現在のようにずっと低迷していて景気の足を引っ張るのではないかというふうな議論はあり得るかと思うわけです。  ただ、現状の段階でこれが、たとえ株価が上がったとしても直ちに設備投資にプラスになるかといえば、それもなかなか考えにくい、消費にプラスになるかといえば直ちに考えにくいということになってくるかと思うわけです。したがって、株価が低迷していること自身はそれほど悲観することはないと思いますが、ただ、これが、株価というのはある意味で将来の景気に対する投資家の予想であるわけでありますから、株価を見てそれで景気を引っ張るというよりも、私は逆に、株価を一つのバロメーターとして見ていこう、やはり現段階で悲観論がまだまだ強いのかなという意味の指標として見た方がいいのではないかと考えています。
  144. 柳田稔

    柳田委員 企業というと、黒字を出すためにはすぐ手持ちの株を売りたがる、売ると株価がこれ以上下がる、下がった場合にはさらに景気に対して厳しい状況が来るのではないかなという気がして、一つの危惧があったもので質問させていただいたのですが、もう一ついい材料として、アメリカの景気がことしはよくなるだろう、この景気がよくなることに引っ張られて日本経済もそれなりに上向くのではないかというプラス材料の見方もあるのですが、先日のアメリカ大統領の演説を聞いたり、さらにはあの鉄板のダンピング問題とか車の問題とか、またヨーロッパにおいて車の輸入を禁止したとかいうふうな話題も出てまいりまして、ある面ではいいのかなと思いつつも、ことし一年間のアメリカ政策経済政策、これは逆に日本に対しては厳しい方向に、要するに景気がよくなるから日本も引き連れてよくなるという甘い見方じゃなくて、逆にアメリカが今後日本に対する姿勢が厳しくなればさらに日本の景気の足を引っ張るのではないかなと私は感じるのですけれども、だれかそれについてお教えを願えればと思うのですが、長谷田先生、いかがでしょうか。
  145. 長谷田彰彦

    ○長谷田公述人 アメリカの景気、いいにこしたことはないと思うのでありますけれども、しかし、アメリカの景気に頼って日本の景気を何とか支えようとか、それで一喜一憂する、こういう状況ではもはやなくなっていると私は思います。こちらの方の経済政策の方が大事である。世界的な規模で日本の財政政策も動かしていただきたい。そうすると、まさにさっき申しましたように、本年度予算案はどうも小さい小さいと言わざるを得ないということでございます。
  146. 柳田稔

    柳田委員 私も今ある現状のことを考え、プラスこれから、今三つほど言いましたけれども、その中にもいろいろあるかと思うのですが、いろいろなことを考えていった場合に、果たしてこの予算で大丈夫なんだろうか、その疑念から離れられないのであります。何かもっとすべきではないか。そういう立場から我々は所得税減税を初めとして幾つか提案はしておるわけでありますが、今、国会の中で議論の最中であります。所得税減税については、先ほど来から御意見を賜りましで、各公述人の考えはわかったわけでありますけれども、正直言ってまだほかにないのかなという気が我々もしているのです、私自身は。  経済的に見た立場ということで、先ほど何か規制の緩和という話もあったのですが、何かこれはどうかと、先ほど消費税の話も出ました、参考になる御意見を賜りたいと思うのですけれども和田公述人、いかがでございましょうか。
  147. 和田八束

    和田(八)公述人 いろいろは申し上げられませんけれども、減税の問題が浮上しておりまして、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、新聞で得た知識ぐらいなのですが、もし大型減税をするのであれば非常に早くされるということが大事でありまして、どうもだんだん議論していって夏過ぎて暮れというふうなことになりますと、やはり財政政策というのはタイミングが大事でありまして、本当は減税は去年の暮れがベストだったと思います。今はちょっとタイミングを逸しているのじゃないかという感じが非常に強いわけでありまして、さらに延びるとだんだんタイミングがずれてくる。そしてそういう財政の側からのタイムラグが生じますと、年度途中あるいは年度末あたりからの景気回復が予想されておりますので、景気の上昇局面と財政の刺激とが重なって、今度はまた景気を押し上げる方に力が行ってしまうというふうになりますので、どうもいつも財政の発動というのはずれているということでありますので、どうかそのタイミングということをひとつ重視していただきたいというふうに思います。
  148. 柳田稔

    柳田委員 最後の質問になるかと思うのですが、吉田公述人にお伺いしたいと思うのです。  いろいろな話をしながら、いろいろなことを考えながら、政府の打つ手が遅過ぎる、そして出し惜しみ、我々はそういう感じがしてならないのであります。今和田公述人がおっしゃったとおり、所得税減税も時期としては去年であったのだ、もうことしになってするのだったら時期が遅い。だから我々は、さらに額をふやし、財源がさらに不足するわけですから、もう赤字国債やむなしてはないかというところまで来ておるのですけれども、今回の一運の、昨年からの政府の動きを見ていてどういう感想をお持ちなのか、お聞かせ願って質問を終わらせたいと思います。
  149. 吉田和男

    ○吉田公述人 まず遅過ぎるという、いわゆるこういう不況になったときに一番ケインズ的な政策を支持する人からは、ツーレート、ツースモールというのは、これは今までだけじゃなくて、過去の不況下で毎回言われてきたわけです。ただ、振り返ってみると、ツーレート、ツースモールかというとそうではなくて、ツーレートであったものもありますし、ツースモールであったものもあるかもしれませんが、おおむね景気が反転した時期に、逆に言いますとツーレートだったのかもしれないのですが、反転したころに効果があるようなことになってしまったとか、確かに経済政策を非常にタイミングよくやっていくというのは非常に難しい問題だと思うわけです。  さらに、最近の経済政策を考えてみますと、昔よりもうんと政策効果というものを期待しにくい状況になってきて、あるいは動かしにくい状況になってきました。例えば金利の調整にいたしましても、昔はそれこそ公定歩合を上げるとか下げるとかいうのは言わなくていいんだというふうな話もありましたが、現在は国際的な協調システムの中で運営することがほぼ合意されているわけでありまして、例えばバブルというのが、私は、経済政策の失敗というのはバブルを起こしたことであって、バブル自身が問題だったという認識でありますが、これも当時の政策から考えますと、ドルの安定のために協調しなければならないという側面、これをまた無視することも不可能だったように思うわけです。  したがいまして、財政の問題を考えるときにも、今申しましたように、その政策効果自身の問題もさることながら、財政としてどうあるべきかということの、いわば綱引きのようなものが非常に複雑に、かつてよりは複雑になってきたように感じるわけです。  そもそも経済政策に対する楽観論というのはアメリカで一九七〇年以降非常に消えていって、悲観的な発想が非常に強くなったわけですが、我が国でもやはりそういったジレンマ的な状況がだんだん拡大してきている。このジレンマ的な状況が拡大する中でこれを解決していく方法というのは、私はやはり抜本的な制度改革しかないんじゃないかというふうに考えているわけです。ですから、いわば操縦桿を右に左にするかという議論の以前に、エンジンをどうするかという議論の方が私は重要になってくるのではないかなというふうに考えております。
  150. 柳田稔

    柳田委員 どうもありがとうございました。御苦労さまでした。
  151. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  明二十三日の公聴会は、午前十時より開会することとし、本日の公聴会は、これにて散会いたします。     午後四時六分散会