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1993-05-14 第126回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年五月十四日(金曜日)     午後一時三十三分開議 出席委員   委員長 伊藤 公介君    理事 狩野  勝君 理事 古賀 一成君    理事 鈴木 宗男君 理事 長勢 甚遠君    理事 上原 康助君 理事 土井たか子君       坂本三十次君    細田 博之君       宮里 松正君    山口 敏夫君       井上 一成君    川島  實君       藤田 高敏君    遠藤 乙彦君       古堅 実吉君    和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 武藤 嘉文君  出席政府委員         国際平和協力本         部事務局次長  萩  次郎君         外務大臣官房長 林  貞行君         外務大臣官房外         務参事官    小池 寛治君         外務省アジア局         長       池田  維君         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省中南米局         長       寺田 輝介君         外務省条約局長 丹波  實君         外務省国際連合         局長      澁谷 治彦君         外務省情報調査         局長      鈴木 勝也君  委員外出席者         警察庁警務局人         事課長     櫻井  勝君         警察庁刑事局捜         査第一課長   南雲 明久君         防衛庁防衛局運         用課長     野津 研二君         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      陶山 高志君         外務委員会調査         室長      黒河内久美君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 伊藤公介

    伊藤委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  児童の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件審査のため、来る十九日水曜日、参考人出席を求め、その意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 伊藤公介

    伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 伊藤公介

    伊藤委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古賀一成君。
  5. 古賀一成

    古賀(一)委員 自由民主党の古賀一成でございます。  一般質疑の貴重なお時間をいただきましたので、わずかながらでありますけれども大臣ほか外務省皆様方に御質問を申し上げたいと思います。  「世界が動く、アジアが変わる、どうする日本」、実はこれは、私が四年前に、当選前でございましたけれども選挙のためにつくったキャッチフレーズでございまして、「世界が動く、アジアが変わる、どうする日本」、こういうふうに訴えたわけでございますけれども、その後の変化というものはくしくもまさにそのとおりになったという感を否めないわけでございます。  東欧の自由化、ベルリンの壁の崩壊あるいはドイツの統合、それからヨーロッパ統合動き、ソ連のペレストロイカ、そしてそれから引き続くソビエトの混乱、崩壊、ロシアの今なお起こっております混迷等でございます。冷戦構造の終えん、よかったなと思った途端の湾岸戦争、あるいはユーゴ、ソマリア問題、こう起こってくる中で、実は今まさに一大関心事でございますカンボジアの和平問題、選挙実施の問題というものが起こっておるわけでございます。  本当にこの数年の世界の激動というものを痛切に感ずるとともに、世界トップランナーである日本、どうするんだということを問われておるのが今の我が日本の置かれた立場ではないかと、ここに立ちまして痛切に感ずるわけであります。恐らく、これほど世界というものが、各国、各地でさまざまに激動した時代はなかったのではないか。それだけに、世界もそうでございますけれども日本も何かが問われておる、こういう認識でございまして、大まかに言いましてそういう基本認識に立ちまして、きょう数点の質問をさせていただきたいと思います。  今、政治の大課題として政治改革、とりわけ選挙制度改革が問題になっております。これはこれで大変重要な問題でございますけれども、こういう問題の前提として、むしろもっと重要な問題として、実は政治改革をやるにしてもどういう国家というものを、とりわけ国際社会での日本というものをどう位置づけるか、どういうふうに進路を持ってくるかというのがもっと私は重要な問題ではないか、かようにかねてより痛感をいたしております。まさにそういう意味で非常に重要な、根底にかかわる問題でございますが、世界過渡期の中で新しい秩序を求めて動く中にあって、日本国際社会における役割進路をどう定めるかということが問われておると思うわけであります。  そこで、以上の基本的認識から数点お伺いしたいわけでございますが、第一点は、全国民さらには世界注目をいたしております、先ほど申し上げましたカンボジアの問題でございます。しかも、本件我が国初のPKOという形を通ずるところの国際貢献の初舞台でございます。先ほど言いましたような、国際社会での日本の位置づけというものが問われておるわけでございまして、そういう中で本件は非常に重要な問題ではなかろうか、かように思います。  四月八日、もう何度も本委員会でも出ましたけれども、UNVの中田厚仁氏の銃撃死亡事件、そして引き続き一カ月後の五月四日の文民警察官一行の襲撃、そして高田警視死亡事件本件に関して、国際社会における平和というものを求めて、あるいは秩序回復というものに身を投じようという、その中で本件が起こり、たっとい御両人の命が断たれたことに関しまして衷心より哀悼の意を表したいと思うわけであります。  それと同時に、本件を通じて、哀悼の意を表するだけではなくて、国際貢献が求められる我が国に何かこの二人の死が投げかけたものはないだろうか、そういう視点に立って、一つ教訓一つ制度というものをこの事件契機に残すべきではないか、私はかように思います。  具体的に申し上げますと、とりわけ中田さんの問題でございますが、法的には国連ボランティアはあくまで個人の問題であるというのも確かにそうでございますけれども国際貢献という理念の面では、まさに日本が行おうとしておるその流れにあるわけでございまして、この事件が起こったことを契機に、国の姿勢、国の意思というものを示すべきではないか。つまり、両名及び負傷された方々に対する顕彰をいかに行うかということが、私は、ささやかな問題のようでございますけれども日本という国家国際貢献にどういう考えを持っているかを示す上でも非常に重要なことだと思うわけでございまして、これを教訓としまして、いろいろその後の措置が行われているやにも聞きます。防弾チョッキをもっと厚くしようとか、衛星電話をもっと多く供給しようとかいう話もございますけれども、それはそれとしてきちっとやるという方向を進めてもらいたいのであります。  まずはこの御両名に対しますところの表彰等につきまして、今後これを契機に、何か国連ボランティアに対するところの国の姿勢を示す手だてにつきまして、所信あるいは方針があると思いますので、ぜひ大臣の、あるいは外務省当局でようございますけれども、お聞かせ願いたいと思います。
  6. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今お話のありました中田さんそれから高田さんの御冥福を私も本当に心からお祈りすると同時に、長い内戦から脱却をして平和な、民主的な国家をつくっていきたいというカンボジア国民の願望、それにこたえて、この際パリ和平協定に基づくいわゆる和平プロセス、その一つとしての制憲議会の総選挙、これが平和なうちに行われるように、また民主的に行われるようにということで努力をされてきた方があのような形で不幸にしてお亡くなりになったこと、本当に残念でたまりません。  相手がだれであったかはまだ最終的に、特に高田警視の場合にわかっておりませんが、とにかくカンボジアの人であったということは間違いないようでございまして、そういう面からいけば、本当にカンボジアの平和な、民主的な国家を目指している、それをお手伝いをする者がそのカンボジアの人によって殺されるということは、本当に私は義憤にたえないわけでございます。  そこで、そのお二人に対しては表彰状を総理また私どもからお渡しをいたしておりますし、また補償の問題につきましては、中田さんの場合は国連ボランティアの規則がございまして、それに基づいて補償がなされておるわけでございます。今御指摘にもございましたように、やはり日本の国の国際貢献、こういう形であのような犠牲になられたわけでございますので、日本政府といたしましても何らかの補償措置をとらなければいけない、こういう考え方で、今どういう形で出すかを検討いたしておりますけれども、なかなか役所関係というのは難しゅうございまして、もう少し早く本当は決めればいいと思うのでございますけれども、まだ検討が続いております。いずれにしても何らかの形の補償をしなければならないと思っております。それがまた当然だと思っております。  それから、高田さんの場合には、これはおかげさまでルールがもうでき上がっておりますので、そのルールに基づいて支給がなされておるわけでございます。
  7. 古賀一成

    古賀(一)委員 高田警視及び中田さんの件につきましては、そういうふうに総理大臣外務大臣表彰等々の検討がなされておる、あるいは実際やられたということでございますけれども、私はぜひこれを今後続く人たちへの措置としてというか、今後、将来への方向として本件を生かすためにはぜひとも制度として本当に総合的な検討と前向きの真剣な検討をお願いしたい、かように思います。  実は、読まれた委員先生、たくさんおられると思いますけれども、文芸春秋に、今月号でございますが、「桜とともに天に召された息子 中田武仁」とお父様の文が載っております。一行一行に息子を思う父の気持ちというものが本当にあふれておるし、そしてまた、普通は逆でございますけれども息子の遺志を継いで自分も何かを、国際貢献に尽くしたいという気持ち、そしてその息子に対する畏敬の念が行間にあらわれておるわけで、これを読んだときに、先ほど申し上げましたように、中田さん、高田さん、両名を表彰するあるいは何らかの補償手だてをするということだけでは済まない、やはり何か制度として後に続く人に残すべきだという感に駆られるわけでございます。  ちょっと長くなりますからるるは申し上げませんけれども一つだけ、さわりの部分をあえて読ませていただきたいと思います。   厚仁は危険な国連ボランティア選挙監視活  動中でも、最も危険なコンポントム州に真っ先  に手を上げて志願し、何にも替えがたい、たっ  たひとつしかない命を捧げました。厚仁は常々、  「世の中には誰かがやらなくてはならないこと  がある。僕はその誰かになりたい」と言い、それ  をこの地で現実としたのです。   厚仁とはいつも、「自分たち安全地帯に置  いていながら、ほかのことについて、饒舌にあ  あだこうだと言うことはみっともないからやめ  よう」と話していました。  というようなくだりもございますし、   信ずるもののためには命を捧げても行動す  る、という崇高さを持った人間を示してくれた  ことが、厚仁の救いであると思います。貴いも  の、崇高なものが人間のなかにはあるというこ  とを信じさせてくれたことが。 こういう文章もございました。  私は、本件のあの中田さん親子といいますか、御両名がテレビ、新聞等を通じまして我々国民に示したことというのは、何か、厚仁という名前日本と置きかえた場合、我々ももっとしっかりしなければならぬ、かように思ったわけでございまして、ぜひともこの事件を生かした制度というものを真剣にとらえていただきたい、これは御要望でございますが、申し上げたいと思います。  第二問でございます。  カンボジア問題もそうでございますし、先ほど冒頭申し上げましたいろいろな世の中流れを考えたときに、私は、これから外交というものが本当に重要である、重要にならざるを得ない、そして内政をも、国の命運をも左右するほどの重要性を持ってくると信じて疑わないわけでございます。先ほどこの四年間の話をしましたけれども、これからもっともっと世界は激動し、とりわけ国内そのもの利害調整というのが大変難しい時代になっております。恐らく日本成熟化社会になり、先進国になったそのあかしたと思うのでありますけれども国内調整が大変難しい。  しかし、その国内問題を決めるときにも、ことごとく、ほとんどと言ってもいい分野で、つまり経済社会、文化、あるいは貿易、環境、いろいろな問題で実は国際問題が絡んでくる。そしてまた、国際問題の相手でございます諸外国もまた日本と同様に国内調整が非常に困難な時代に今来ておる、あるいは来つつあるという感じがするわけでございます。そうしますと、外交というものは大変難しい状態に陥るし、それをしのいでいくための機能といいますか、そういうものが問われてくるのではないか、かように思うわけでありまして、外交機能強化というものが、別に外務省のためとかそういうことではなしに、これからの日本のために欠くべからざる問題だ、私はかように認識をしております。  実は私は、二十年前に出向外務省に二年ばかりお世話になった経験を持つものでございます。私、いろいろな役所出向等で参りましたけれども、その一つとして外務省お世話になった。外に出て見る、外から見ると物事というのはよくわかるわけでありまして、私も一たん外務省お世話になっただけに外務省のこともわかるし、もともと外務省人間ではないがゆえに外務省のよさ、悪さがわかると自分自身は思っております。  そういう中で、ぜひお聞かせ願いたいわけでございますが、非常に総論的でございますけれども、今般あるいは今後の国際情勢を見たときに、果たして外交機能は十分であるのかあるいは外交体制は十分であるのか、そういうことをお伺いしたいわけでございますが、第一点目に、この十年、二十年でも結構でございますけれども世界動きは極めて激しゅうございました。この四年でもそうでございます。しかし、それに対応して外交機能あるいは外交体制の改善と強化というものに外務省は実際どう取り組まれたのか、そういうものを、過去の話になりますけれども、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  8. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 このような激動する国際情勢において、対外関係重要性がますます増加しているということは先生指摘のとおりでございます。  過去十年、二十年の間にどのような観点から外務省機能強化を行ったかという御質問でございますが、組織面それから在外公館の数それから定員情報機能強化等についてごく簡単に申し上げますと、まず組織面でございますが、昭和五十四年に中南米局及び調査企画部というものを設置いたしました。その後、昭和五十九年には情報調査局というものを設置しております。また、過去二十年、同じ期間でございますが、在外公館の数というものは大使館、総領事館合わせまして百四十一から百八十にふやしていただいております。また、定員は二千八百六名から四千五百二十二名というふうに厳しい財政事情の中で着実な増加を見せていただいております。  それから、情報機能強化でございますが、これは五十九年に臨調の答申を受けまして調査企画部を局に昇格するということをやっておりますし、それからことし私どもが予定しておりますのは、この局をさらに発展的に国際情報局というふうにしたいと思っております。それから、総合政策局の設置も今年に考えている次第でございます。  それから、電算機システムでございますが、昭和四十六年に電算機を導入して以来三度にわたりレベルアップを行っておりまして、通信機能強化という観点からも取り組んできている次第でございます。
  9. 古賀一成

    古賀(一)委員 この十年、二十年の大まかな組織定員在外公館等々の動きは教えていただきましたけれども、実はたしか二十年前には、今おっしゃいましたように外務省職員定員が二千名で、四千名になれば、四千名が目標だという話を、古い話でございますけれども、私の脳裏に、一つ目標値として聞いておったような気がします。恐らくそうだと思うのですね。  それで、今お話しのように既に四千五百を超える定数に相なったわけでございますが、しかしながら、それでもまだまだ充足感がないというか、あるいはちまたには、臨調もございましたけれども、もっと外交機能強化すべきではないかという声があるわけでございます。それは恐らく自民党内にも一部あるのではないかと思いますけれども、そういう面から見てもっと別の視点の、各省庁がやるような、あの局をつぶしてこの局にした、政策担当局をこうして名前をつけてつくりましたというにとどまらないで、もっとダイナミックな機能注目をした調査に基づく改革というのがあり得るのではないか、私はかように思うわけであります。  よく言われる言葉に、内政なくして外交なしという言葉もありますけれども、先ほど言いましたように、今や外交なくして内政はないと言っても過言ではないのですね。それは東京だけではないのです。私は福岡県の田舎の出身でございますけれども、一面に広がるあの田園地帯でも、国際化のあらしというか、もう本当にすごいものがございます。米の自由化の問題はもちろんそうでございますけれども、イグサが、中国で生産し始めて、何百年にわたる生産が今危機にさらされるとか、あるいは東南アジアとの友好ということで一般方々がたくさんの人たちと交流をしておる話とか、枚挙にいとまがないわけでございまして、それほど実は外交内政というのは密接不可分でございます。  ところが、今言いましたように、今の外交機能は弱過ぎるのではないかとか、外務省国益実態に疎いではないかというようなことをまだちらちらと言う人が、評論家というのか、いろいろなところにおられるわけでございまして、私は、そういう意味でもう一度、過去の話は過去として結構でございますけれども、これだけ複雑化し、そして重要性を増す外交について今後どうあるべしと、今では足りない足りない、そういう基本的な認識につきまして外務大臣の所見をお伺いしたい、かように思います。
  10. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今、古賀さんのおっしゃるとおりでありまして、国際社会の中における日本立場というのは大変高いものになってきたと思います。政治面においても、とりわけ経済面において世界日本に求めているものが非常に多いわけでございます。しかも、今御指摘のとおり、冷戦構造崩壊をいたしまして、これから新しい世界秩序づくりをしていかなきゃならない、枠組みづくりをしていかなければならないときに、日本役割というのは大変大切なものであると思います。我々はやはり日本の主体性のある外交を確立していく、そして同時に世界から本当に信頼される、国際的な協調をしていける、国際的貢献をしていける日本でなければならない、私、その点全く同感でございます。  その意味合いにおいて、一つ情報を的確につかむということが、しかも迅速につかむということが必要でございましょうし、またそれに対して迅速に行動し得る外交を展開していけるということが大変必要であると思います。  その意味においては機構も、今官房長から一部説明がございましたけれども、できる限りこれからの時代の要請に応じ得るような形の機構を十分整備すると同時に、何といっても人が足りないことは事実でございまして、思い切って行政改革をやっていかなきゃならないのは当然でございますけれども行政改革というのは必要なところの人数まで減らすというのではなくて、やはり効率のよい行政をやっていくというのが行政改革だと思います。必要な人間というものはやはり思い切ってふやすというのが行政改革考え方だと私は思います。ただ数を減らすだけが行政改革ではないと思っておりますので、この際思い切って外務省定員というのはふやすべきだ、こういう考え方に立って努力をしてまいりたいと思っております。
  11. 古賀一成

    古賀(一)委員 大臣の方から外交省定員の話を中心方向を出していただきました。私も、外務省定員につきましてもっとふやすべきだ、そのために私でできることがあるなら、日本のためでありますから、最大の努力をしたいと心の中で実は思っております。  しかし、あえてもう一点、それはそれで認めるわけでございます、しかも積極的に御協力も申し上げたい、こう思うわけでございますが、そこに一点御指摘をし、またお願いしたいことがあるわけであります。  それは、外務省の一人一人の、四千五百を超える方々がおられるわけでありますけれども、一人一人のマンパワーのより強化といいますか、定員を、量をふやすということじゃなしに、一人の外交官として、あるいは一人の国家公務員として、高きモラルで、すごい情報を持って働く、そういう一人一人のマンパワーの問題を私は取り上げざるを得ない、かように思います。  先ほど言いましたように、私は、日本にある各省庁で一番重要な役割を担う役所はどこであるかと聞かれたら、だれにも外務省だと言っております。しかも、その外務省皆様方お一人お一人、外交官試験の難関を通ってこられた方を中心に、皆さん本当に優秀であると思います。しかし、私は、先ほど言いました一人一人のパワーという面から見て、その可能性、ポテンシャルというものを生かしていないのではないかというのを実は痛切に感ずるわけであります。  そこで、私が御提言を申し上げたい、お願い申し上げたいのは、外務省職員外交官の一人一人の資質というか、経験というか、情報力というか、そういうものを飛躍的に高める手っ取り早い方策があると思っております。  それは何かといいますと、できるだけ若い時代に、外務省皆さん方が各省庁中心に、自治体でも公団等々でも結構でございますが、いわゆる内政にかかわる分野、あるいは日本経済社会実態にかかわる分野、担当する分野出向をするという制度をもっときちっと位置づけて大量にやられたらどうだろうか、かように思います。  人というものは情報でございまして、たくさんの人脈を知っているということはまさにその人のパワーであり、またその人たち集合体である組織パワーになるわけであります。聞くところによりますと、外務省四千五百人を超える中で、各省出向者は今トータルで百十名だそうでございます。総理秘書官とか内閣審議室とか外務省の延長にある組織等を除きますと、本当の意味での日本内政を知る、国益を知る、人脈をつくる、そういう役所はかなり少のうございまして、通産省二人、エネ庁一人、文部一人、労働一人、自治一人というようなことで、私は大変少ないと思うのですね。  ちなみに私は、自分のことを言って恐縮でございますけれども、建設省の事務官をやっておりましたが、役人生活の半分が実は出向でございました。ほとんど半分のキャリア、上級職は大体、県、公団自治体あるいは各省庁出向しております。ということは役人生活の半分を、武者修行というか外の分野で飯を食って多様な経験をしてくるということでございます。これはちょっと多いわけでございますが、そういう意味で、十年前に自分農林省出向したな、あのときに働いた友達がいる。ウルグアイ・ラウンド問題でちょっと農林省にこういう資料を調べさせたい。おい、十年前の何とか君、こういうことで国のためだ、ちょっと資料をとってくれぬか。わかった、ちょっと勉強してすぐ集めようじゃないかというような、そういう人脈こそが人のパワーであり、その集合体である外務省なり組織パワーになるわけでありまして、私は本当にそう信じて疑いません。  ちょっと長くなりましたけれども、最後に言いますと、大変優秀にもかかわらず、外交官方々はそういう面でチャンスを与えられていないわけですね。大学を卒業して、一年間は見習いであります。官補でございます。そして、二年間大学に参ります用語学の研修です。そして、在外に一、二年いて本省に戻ってくる。その一番伸び盛りの五年間あるいは四年間に、国内のいわゆる内政というか日本経済社会実態を知る、あるいは法案をつくる、あるいは公務員としての修行を積むという経験を得ないわけでございます。それだからこそ私は、そういうシステマチックな制度というものをぜひ真剣にお考えいただきたい、かように思うわけでございまして、御所見をお伺いしたいと思います。
  12. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今の御指摘のとおり、私も、全く大賛成でございます。  実は、私は、就任いたしまして早速、経済官庁との交流をもっと思い切ってふやすべきだということを官房長にも指示をいたしたわけでございまして、今御指摘のとおり、やはり外交をやっていくには経済がわかっていなければ、相手の国へ行ったときに日本経済実態がしっかりわかっておれば、これまたいろいろと相手との交渉においてもやりやすいのじゃないかと思います。そういう面で、私は、経済官庁との交流は思い切ってふやした方がいい、こういうことで今その方向で進めさせていただいております。  それからまた、ここに北米局長がおりますけれども、彼はたしか宮崎県の県警本部長をやった経験があるわけでございまして、彼の答弁を聞いておりますと、やはり県警本部長をやっただけのことはあるということを私は感じておるわけでございまして、そういうような警察関係についても交流をもっと深めていくということは大変大切なことではないか。その他、本当にいろいろ各般にわたって外務省人間ができるだけの知識を持つということは非常に必要だと思いますので、できるだけのことをこれから努力をさせていただきたいと思っております。御協力をお願い申し上げます。
  13. 古賀一成

    古賀(一)委員 大臣の前向きのお話を聞きまして、本当に心強く思います。  質疑を終わりたいと思います。
  14. 伊藤公介

    伊藤委員長 上原康助君。
  15. 上原康助

    ○上原委員 先般来のカンボジア情勢、特にPKO法とのかかわりで、既に本委員会あるいは昨日の本会議でも各党の代表のお尋ねなどもあっていろいろ議論がなされてきているわけですが、政府の宮澤首相初め関係大臣の御答弁を聞いていると、ますます疑問に思う。そこで、私は、余り深く勉強するゆとりもなかったのですが、我が国の国際協力というのはどうあらねばいかないかということで、これからかなり議論を深めて問題点を精査をしていかなければいかない重要な課題だと思っておりますので、そういう立場カンボジアPKO問題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず最初に、政府として、SNCを構成しているカンボジア四派の武装解除はどのくらいなされたと認識をしておられるのか、端的にお答えください。
  16. 萩次郎

    ○萩政府委員 四派ありますうちのポル・ポト派は拒否をいたしましたので武装解除は全くしておりませんが、そのほかの分野では二、三〇%ほど進んだところでとまっているのではないかと推測されます。
  17. 上原康助

    ○上原委員 大臣もこのことはよく聞いておってくださいね。今ポル・ポト派は全くゼロ、他の三派も三〇%程度、一説には二五ないし二七と言われておる。そこで、今のお答えを見ても、我が党あるいは多くの方々指摘をしているように、パリ和平協定は崩れている、またPKO派遣三原則あるいは五原則、三原則が柱でしょう、PKO参加五原則もなし崩しにされてきておる、だから我が国のPKO要員は業務の中断、そして撤収をやるべきであるという主張を私たちはやっているわけですね。もちろん、その後どうするかということも同時に考えねばならない課題があるという前提でお尋ねしますが、その法律が決まった経緯と法律の条文の解釈というのは私はもう少し厳格でなければいかないと思うのですね。政府の立場でなし崩しにされてはいかない。  これに対して政府答弁は、全面的な戦闘に至っていない、ポル・ポト派もSNCから脱退はしないと言っている、パリ和平協定を守ると言っているのだからパリ和平協定の枠組みは維持されており崩されていない、こういう詭弁ともとれる、あるいは三段論法的解釈できているわけですね。  しからばお尋ねさせていただきたいのですが、パリ和平協定の枠組みとは一体何ですか、枠組みとは。明確に答弁してください。
  18. 萩次郎

    ○萩政府委員 パリ和平協定そのものは外務省の御所管だと思われますが、私ども国際平和協力法の担当といたしましては、現在のカンボジアの情勢は、パリ和平協定で決められた条件といいますかその大枠、これは崩れていないというふうに考えているわけでございます。
  19. 上原康助

    ○上原委員 そんな抽象論ではいかないのだよ、あなた。枠組みは崩れていないと言う、その枠にはまっている中身は何ですか、内容は。もうここまできてそういった抽象論でごまかすことはいかないのですよ。そのことがいかに日本外交あるいは防衛、安全保障の面で無意味なというか、非生産的な論議を重ねてきたかということを我々は反省しなければいかないと思うのです。  外務省はどういう認識なのですか、枠組みとは一体何なの、枠組みとは。枠組みが崩れていないと言うのなら、そのパリ和平協定のエキスともいう枠組み、柱というのはどういうものだというふうに認識しているのか、それを明らかにした上で議論しましょう。
  20. 池田維

    ○池田政府委員 基本的な枠組みはただいま協力本部の方からも、萩次長の方からも説明がございましたように、停戦合意の基本的な枠というものがございます。そして、これは局地的、一部には既に、当初このパリ協定が締結されたような事態と比べますと必ずしも完全ではないという面はございますけれども、それにもかかわらず、基本的な枠は大筋において保たれているということはございます。  それから、選挙を行おう、そういう決意というものは変わっておりませんで、これはカンボジアの多数の国民が望んできたところでございますけれども、現在のところ四百七十万という有権者登録が完了しておりますけれども、これはカンボジアの有権者のうちのほぼ九〇%あるいはそれ以上と言われているわけでございまして、そういったことでカンボジア国民の意思というものがそのような数字にあらわれているというように私どもは考えております。
  21. 上原康助

    ○上原委員 そんな、皆さんに都合のいいことだけ取り上げて枠組みが崩れていないと言っちゃいけないです、池田さん。あなた、人格者の方がそんな答弁じゃ、それはごまかしちゃいかぬ。あなたの権威にかかわる。それは答弁は難しいでしょう、枠組みは崩れているのだから。それを崩れていない、ガラスを白と言っているわけだから。  皆さんパリ和平協定の重要な柱は、私は六つあると思うのです。  一つは、UNTACの設立及びこれによる暫定統治でしょう。二番目は、カンボジアの主権、独立及び国家の統一を具現する唯一の合法機関であり唯一の権威を源泉としてのSNCの存在あるいは設立と言っていいでしょう。だが、今そのSNCの機能はどうなっていますか。これはパリ和平協定の第三条ですか、明確にうたわれている。三番目、停戦の合意、実施。四番目、武装解除。だから私は最初に武装解除の問題を取り上げたんだよ。あの一連の答弁を見ても枠組みの大事なポイントは崩れているのですよ。既に欠落している。  五番目が、憲法制定議会を創設するための自由かつ公正な選挙の実施。あなた方、四百七十万人が登録されてそれは九〇%になっている、数字の上ではそうかもしらないが、実際に自由でかつ公正な選挙がなされると思っているのですか、本当に。これから状況はますます悪化しても好転するとは見えないのですよ。思われない、我々には。だから、そういうごまかし答弁というか、都合のいいようなことではいかないのだ、パリ和平協定ということとかPKO五原則というのは。今日の事態というのは。六番目に、選挙の日から三カ月以内の憲法制定並びに憲法制定議会の立法議会への移行及び新政権の設立ということでしょう。そういう見通しが立つの、本当に。  今私が指摘をした六つはパリ和平協定の重要なそれこそ枠組みであり内容だと私は理解をしているのですが、政府はどういう御認識ですか。これは今後の議論の展開もありますから、はっきりさせておいてください。私はきょうは問題点を厳しく指摘をしておく、若干意見を述べながら。
  22. 池田維

    ○池田政府委員 ただいま上原先生指摘になられましたように、幾つかの点につきまして、パリ和平協定が締結されましたころと比べますと、必ずしも思っていたように順調に進んでいないという点はあるわけでございまして、これは最近の国連事務総長の報告の中にもその点は認めて書かれております。しかしながら、それにもかかわらず、選挙を予定どおり行うということがパリ和平協定が当初目指していた基本的な目的に合致するというのがUNTAC及び国連の決意でもございますし、それから、ポル・ポト派を除きますあとの三派の指導者の考え方も基本的にそうであるというように考えられます。  そして、ただいま御説明のございましたSNCのあり方についてでございますが、これは確かにSNCのプノンペン事務所が閉鎖されてポル・ポト派がプノンペンから出ていったという現状はございますけれども、それにもかかわらず、ポル・ポト派としてはSNCのメンバーにとどまるということは明言をいたしております。そういった意味から、私どもとしましては、地域的あるいは局部的な緊張あるいは暴力事件というものはございます、そしてこれについては憂慮してはおりますけれども、それにもかかわりませず、全体としまして、大筋においてパリ和平協定が当初目指していた基本的な目的というものを達成するための構造というのは変わっていないというように考えているわけでございます。
  23. 上原康助

    ○上原委員 それはそういう答弁であるいはずっと乗り切ろうというお考えなのか。これはそうはいかないですね。  その前に、今私が指摘したこれはパリ和平協定の重要な枠組みあるいは内容と理解するかどうか、認識しているかどうか、答えてくださいよ。その点はっきりさせておいてください。私らはそう思う。その点、イエスかノーかでいい。これは今後の議論の重要な柱になるから。
  24. 池田維

    ○池田政府委員 先生の御指摘になられました点は、重要なパリ和平協定の要素を示しているというようには考えております。
  25. 上原康助

    ○上原委員 その枠組みが崩れていないとおっしゃっている。それなら、この重要な柱はこれから選挙が実施されて実行されると思っていらっしゃるかどうかも聞いておきましょう。
  26. 池田維

    ○池田政府委員 私どもは、大筋におきましては、ただいま上原先生指摘になられました点も含めまして、基本的にパリ和平協定の枠組みを守るような形で選挙が行われるということを期待いたしておりますし、そのようになるものというふうに考えております。
  27. 上原康助

    ○上原委員 どうもきのう、今もそうなんだが、何か選挙さえやればパリ和平協定の枠組みは崩れていない、UNTACや我が国のPKO協力の任務は達成できたというような大変短絡的な御認識のところに僕は問題があると思うのですね。我々はそう見ていないですね。それは指摘をしておきたいと思います。  そこで、これはパリ和平協定を一々持ち出すまでもないのですが、第九条とか、あるいはさっき冒頭に私が指摘をしたこの第五条に「各派の軍隊並びにその武器、弾薬及び装備の最終的な処理」というのがここで明確にうたわれている。「軍隊の少なくとも七十パーセントの動員解除を段階的な、かつ、均衡のとれた過程において実施することを合意する。」その他もいろいろありますよ。和平ということは武装解除が大前提でしょう。武装解除ができないでおって和平が成り立つはずがないじゃないですか。調べてみれば幾らでもある、これは。  その点を我々は、パリ和平協定の枠組みも崩れているし、参加五原則も適用されていない、したがって業務の中断、そして地域も勘案する必要もあるでしょうが、撤収、撤退というものを考える、やるべきだ、こう言っているわけで、論理的には我々の方が理屈は合っているんだ。その点は指摘しておきます。これはまたこれから幾らでも議論しなければいけない問題が出てくるでしょう。  さらに、第二点目に確かめておきたいことは、きのうの宮澤総理の本会議答弁で初めてクメール・ルージュという表現を使ったのですね。これもいろいろお尋ねしたいこともありますが、政府の認識はクメール・ルージュというのとポル・ポト派というものを同一視しておられるのかどうか。この点は今後の議論として確かめておかなければいけない点でありますので、どういうことで総理はああいう発言をしたのか、もしわかれば含めてお答えをしておいていただきたいと思うのです。
  28. 池田維

    ○池田政府委員 ただいまのクメール・ルージュという名称でございますけれども、これは一般に使われている言葉でございまして、通常カンボジア人たちはポル・ポト派という言い方はしませんで、クメール・ルージュという呼び方をしております。例えばシアヌーク殿下などはポル・ポト派のことをクメール・ルージュという呼び方で呼んでおります。そういう意味ではクメール・ルージュとポル・ポト派というのは同一であるというように考えております。  ただ、そのグループはみずからはデモクラティック・カンボジア、民主カンボジアというように呼んでおります。
  29. 上原康助

    ○上原委員 これも非常に苦しい弁解。これはいずれ総理と議論した方がむしろ本人なのでいいと思うのですが、逆手にとられたね。ポル・ポト派も、パリ和平協定は守ると言っている、SNCからも脱退はしないと言っている、だからパリ和平協定は守られている、SNCも機能している、これなども極めて論理的でないですね。根拠の薄いこと、その点だけ指摘をしておきます。  次にお伺いしておきたいのは、さっきの質問、やりとりとも関連するわけですが、パリ和平協定第九条に「すべての軍隊は、直ちに戦闘を停止し、また、すべての敵対行為並びにその支配する領域を拡大し又は新たな戦闘に導くおそれのあるいかなる配備、移動又は行動も慎む。」と確かに書かれておりますね。これがパリ和平協定に言うところの停戦の合意というか、停戦状態だと私たちは見るわけですね。だが、現在のカンボジアの状況あるいはさっき武装解除がポル・ポト派は全くゼロ、その他のグループにしても三〇%そこいら。そうなると、この第九条で言う停戦状態というものは、実態論からしてやはり履行されていない、守られていないと私は思うのです。皆さん、どういうふうな解釈しているの。
  30. 萩次郎

    ○萩政府委員 残念ながら停戦違反の事案が出てきていることは事実でございます。
  31. 上原康助

    ○上原委員 だんだんおかしくなるんじゃないか。さっき言った、枠組みは守られていると。だから、一つ一つ詰めていくと、外務大臣、こういう結果なんですね。PKO法、あれだけ国論を二分し、国会でも私もそれに随分かかわってきましたよ、最近は遠のいているけれどもね。議論の場がない。あの場面を思い浮かべながら、国際平和協力のところから僕はタッチしてきたのです。皆さん、だんだん心情論、感傷論に変わってきているわけでしょう。それではいかぬでしょう。法律というのは、国際協力とか国際条約というのはやはり厳密に、厳格に解釈をした上で政治論をどうするか、政策論をどうするかを議論すべきなんだ。これは今はそういう答弁だけれども外務省はどういう認識を持っているの。聞いておきましょう。
  32. 池田維

    ○池田政府委員 停戦の部分的な違反というものが局地的に起こっているということは事実でございますし、これは大変遺憾な事実でございます。しかしながら、九条にあります軍事行動を慎むということにつきましては、これはポル・ポト派といえども自分たちのパリ協定の解釈上、必ずしも忠実に協定が守られていないからということは言っておりますけれども、パリ協定の大枠は自分たちも遵守するということを言っているわけでございますし、そういった意味では、大きな意味で停戦の合意というものはカンボジア各派によって依然として守られているというように考えるわけでございます。
  33. 上原康助

    ○上原委員 あなた、そんな子供だましな答弁じゃいかぬですよ、お二人とも。「直ちに戦闘を停止し、また、すべての敵対行為並びにその支配する領域を拡大し又は新たな戦闘に導くおそれのあるいかなる配備、移動又は行動も慎む。」ということなんです。やっているわけでしょう、どんどん。もうこれは短時間でできないとさつき土井先生とも話していたのだが、本当に一時間半ぐらいないと、残念ながらこの議論詰められないよ。  それなら逆に聞きますけれども、あなた方、カンボジアの問題というのはもともと部分的な戦闘行為とかゲリラ行動とか、そういうものはあるんだという前提でPKOも派遣をしたの。そういう前提でパリ和平協定も考えたの。当初から部分的な協定違反あるいはゲリラ行為、武装解除はできないという前提でPKOを派遣したの。今になってあたかも部分的なことは当初からあるということを想定しておったかのように、だからああいう悲惨な事件も起きる、事故も起きるというような、そうじゃないんでしょう。その点はどうなんですか、明確にしておいてください。皆さんがどう考えておったのか、本音を言ってください。本音を。
  34. 丹波實

    ○丹波政府委員 先ほどからの先生の御質問でございますけれども、まず、最後に先生が御質問になられた点につきましては、宮澤総理以下政府は、パリ和平協定が一昨年十月に署名されたとき日本のみならず国際社会全体としてパリ和平協定に関与した国々が考えていたような理想的な形では残念ながら進展しなかった、そのことは従来、最近申し上げているとおりでございます。  それから、先ほど来先生が問題提起しておられる、パリ和平協定の第九条の停戦の問題と現実に起こっている戦闘あるいはゲリラ的な活動との関係を、考え方をどう整理するのかという問題提起でございますけれども、御承知のとおり、パリ和平協定の第九条がございまして、ある意味ではそれを受けた形で、先ほども先生引用されましたけれども、「撤退、停戦及び関連する措置」ということで附属書の二ができておるわけでございます。  そこで、私の考えますところ、パリ和平協定で停戦というものの合意が行われ、それに、その停戦を実効あらしめる、より停戦を確固たるものにするための関連措置がいろいろと規定されておる。この関連措置がすべては必ずしも現実には守られていないというところに問題があるわけでございますけれども、この関連措置は、先ほどから申し上げましたとおり、この停戦というものをより確固とするための措置でございまして、その関連措置が必ずしも全部守られていないからといって停戦それ自体の合意というものが存在しなくなっているということではないのではないかというのが、従来からの政府の、基本的な停戦の枠組みというものは依然として存在しておりますということの背後にある考え方でございます。
  35. 上原康助

    ○上原委員 これも聞いている方々がどう判断するかお任せしますが、答弁のうまい丹波さんでさえそういうふうに苦しい答弁をせざるを得ない。協定本体と附属書とは表裏一体のものじゃないですか、あなた。日米安保条約も地位協定も覚書もみんな一緒に皆さんやっているんじゃないですか。だから、皆さんが言っているところは、ごまかしという表現は余り適当でないかもしれないが、本当に不誠実な独善的な解釈が多いですね。より確実なものにするためだ。しからば、あなた、より確実なものにするためには附属協定が確固たるものとして履行されなければ意味がないのじゃないですか、逆に言うと。そういう反論は十分成り立ちますよ。  そこで、もう一点確かめておきます。  今の答弁は私は納得しない、今反論したとおりなんだが、政府は、全面的な戦闘に至っていないから停戦合意は守られているとか、きのうの本会議でも、ポル・ポト派の戦力等から見て全面戦闘する能力はないと宮澤さんは言い切った。そういう言い方もいかがなものかと思うね、そのあれは別として。カンボジアが全面戦闘になることはない、だから協定は守られているんだ。  しからば、逆にお尋ねしますが、局地戦、ゲリラ戦の応酬は一応あるということまでは認めている。それは停戦違反行為であって、全面的な組織的な戦闘行為じゃないからいいんだ、こういう答弁ですね。じゃ、どの程度ゲリラ戦とか停戦違反行為が頻発すれば停戦合意が崩れた、その判断基準というのは何かあるの。我々はもう既に崩れたと見ている。どう皆さんが言いわけをしてもそれは無理があると思う。散発的とおっしゃるけれども、じゃ、ゲリラ戦とか停戦違反行為とか、どれだけの頻度で出れば停戦合意は崩れたんだ、こういう解釈に立つの。何か皆さんの基準があるのですか。枠組みが崩れているとか崩れないとかいう一つの基準があるの。あったら教えてください。
  36. 池田維

    ○池田政府委員 確かに、一部的な停戦違反であるかあるいは全面的な戦闘であるかというところの区別は難しいわけでございますけれども、これは個々のケースに応じて判断する以外にないわけでございまして、そういった意味で、それぞれの個々の事態の状況に応じまして総合的に判断するというのが日本政府のこれまでの立場でございます。
  37. 上原康助

    ○上原委員 それじゃ、警察庁いらっしゃっていると思うのですが、せんだっての我が党の井上一成先生あるいは高沢寅男先生質問とも関連してちょっと確かめておきたいわけですが、文民警察の皆さん大変御苦労なさっている。  そこで、平和協力法で規定されていない任務を向こうで指示されているというか、言いつけられている、これは問題だと思うのですね。例えばある政党の事務所を二十四時間監視をしたとか、VIPのエスコートをさせられたとか。だから、その点は非常に不満がある。マスコミ報道を見ると警察庁長官もそういうことを言っておられるようです。これはPKO法に規定されているどの条文に違反しているかを皆さんの方から言ってください。それで、実態がどうなのか。どこのVIPをエスコートしているのか、どういう政党の事務所を監視しているのか。この点は法律とのかかわりにおいて重大な問題なのではっきりさせておいていただきたい、その改善措置はどうしたのかを含めて。
  38. 萩次郎

    ○萩政府委員 文民警察要員の任務は、法律にございますとおり、現地の警察行政事務についての助言、指導、監視でございます。具体的には、現地警察活動が公正、中立に行われているかどうか監視等を行ったり、現地警察に対し捜査の方法等の指導、助言を行うなど、広範な業務を行うこととなっており、実際それが行われていると考えております。  しかしながら、時としてUNTAC側から、我が国の文民警察の本来業務から見て疑問のある指図等を行っている例も見られますので、本年四月にも今川大使から明石代表に対して申し入れを行ったところであり、また現在も再度の申し入れをしようとしているところでございます。
  39. 上原康助

    ○上原委員 あなた、今何か、広範ななんて言ったね。法律のどこに書いてあるの。文民警察の任務は法律の第何条のどこに規定されているか、それを言ってくださいと言うんだ。
  40. 萩次郎

    ○萩政府委員 国際平和協力法第三条三号のチでございます。
  41. 上原康助

    ○上原委員 あなた、チに書いてあるのは、広範囲とあるのか。  警察庁、今私がお尋ねしたことについてどういう御認識とどういう改善措置をUNTACなりあるいは協力本部に要請したのか、お答えください。
  42. 櫻井勝

    ○櫻井説明員 警察庁としましては、国際平和協力法に定められた文民警察官の業務は、ただいまございましたとおり、警察行政事務に関する助言、指導、監視というふうに承知をしております。  この法律の解釈につきましては、最終的には総理府で判断されることでありますが、現地の一部の地域におきましては、業務の態容によってはそういう業務に含まれないおそれのある実態もあるというふうに理解しております。
  43. 上原康助

    ○上原委員 ですから、これは協力法の第三条の三号のチとりにある、任務は。そこに規定された以外は文民警察の業務、任務でないというふうに理解していいのかどうか、それは確認しておきたい。
  44. 萩次郎

    ○萩政府委員 文民警察官の業務は、この三条三号チの業務でございます。
  45. 上原康助

    ○上原委員 だから、それ以外のことをさせておったわけでしょう。その改善措置はどうなったかということも聞いておきたい。  あなた方、僕が法律も何も読んでこないと、持っていないと思って、その他広範な業務というのは何でもできるというふうに拡大解釈しようとしているんだよ。そこに間違いが起きる可能性があるんだ。僕は何も警察を擁護するとかそういう気持ちはないけれども、しかしそれは、法律はやはり法律として解釈して任務も与えていかないといけない、特にこの協力法の問題では。  そこで、もう一点確かめておきたいことは、業務の実施計画についてはその都度国会に報告をするということになっているのですね。これは出したり出さなかったり、要求したら持ってくるとか、そういうことをやっている。しかし、中身に目を通しても、ぐじゃぐじゃたくさん書いてあるからなかなか容易に理解しにくい。相当専門的に、時間をかけて系統的にやっておかないとあの実施計画などというのはやっている方しかわからない。  だが、確かめておきたいことは、業務を中断すべきときとか、撤収は三原則の中で判断の問題としてあるわけですが、この業務計画を実行、実施していくための実施要領というのは一体どうなっているかということですね。これは法案審議の中でも相当議論になったところです。我々はこの実施要領こそ問題だということで、公開しなさい、国会にその内容を明らかにしなさいということを注文をつけたが、いまだに出さない。カンボジアPKOに対する実施要領というのは一体どのくらいあるの、どうなっているのですか、明らかにしてください。
  46. 萩次郎

    ○萩政府委員 カンボジアにおきます国際平和協力業務に関します実施要領につきましては、それぞれの分野、すなわち文民警察、停戦監視、施設部隊、現在はさらに選挙監視というのが加わっておりますが、それぞれについて実施要領が定められております。実施要領そのものにつきましては提出を控えさせていただいておりますが、その概要については御報告させていただいておるところでございます。
  47. 上原康助

    ○上原委員 それでは、私は改めて実施要領の提出を求める。どうしてもだめと言うなら、これまでの実施要領の概要、要点を資料として提出してください、いいですね。わかりやすく、ごまかしがないように。
  48. 萩次郎

    ○萩政府委員 概要は従来も提出させていただいておりますし、直ちに提出させていただきます。
  49. 上原康助

    ○上原委員 最近はいつ出したのですか。
  50. 萩次郎

    ○萩政府委員 求めに応じて提出させていただいております。
  51. 上原康助

    ○上原委員 そんな、求めに応じて最近はいつ出したかなんて、あなた、何でそれが言えないのだ。  それでは、実施要領があるということだから、その実施要領の中に恐らく業務中断の判断基準など具体的にあると私は思うのです。なければうそだと思うのですが、あるのですか、ないのですか。
  52. 萩次郎

    ○萩政府委員 中断についてございます。
  53. 上原康助

    ○上原委員 ある、業務中断についてある。何と書いてあるの。
  54. 萩次郎

    ○萩政府委員 6といたしまして「中断に関する事項」というのがございます。  まず第一番目に、   本部長が業務を中断するよう指示した場合、  隊員は当該業務を中断する。   次に掲げる場合には、その状況等を本部長に  報告し、指示を受ける。   ア 紛争当事者が停戦合意、平和維持活動及    び我が国による国際平和協力業務の実施に    対する同意を撤回する旨の意思表示を行っ    た場合   イ 大規模な武力紛争の発生等により、もは    や前記の合意又は同意が存在しないと認め    られる場合   ウ ア、イに掲げる場合のほか、前記の合意    又は同意が存在しないと認められる場合   エ 国際連合平和維持活動がもはや中立性を    もって実施されなくなったと認められる場    合  次に「業務の中断の際の報告」ということで、報告、指示というものが記されてございます。
  55. 上原康助

    ○上原委員 だからあなた、その資料を出しなさいよ。後ろの方、あなたが読まなかった方がもっと重要かもしらぬ。時間も、ほかのことであと一、二問聞きたいこともあるので……。  だから外務大臣、今議論をしてきましたように、皆さんがどう弁解がましく、うまくパリ和平協定あるいは参加五原則、三原則が維持されている、守られていると言ったって、一つ一つ詰めていくとぼろぼろ疑問が出てくるわけですね。しかも、最近のあれからすると、ソン・サン派も総選挙不参加という状況もあるというわけでしょう。この点については外務省なり協力本部はどう情報をとっているの。そうすると、あなたがおっしゃったように、中立性はもうなくなっているし、総選挙が公正中立にできないという状況が生まれているんじゃないですか。だから、私たちは、客観的状況からしても法律解釈からしても業務の中断ないしは撤収の時期にある、こう言わざるを得ないんですよね。この今のソン・サン派の動きについてが一つ。  もう一つは、三派に対してUNTACは武器の返納を開始したという報道もなされているんだが、この点は確認しているのかどうか。これなどもまさに業務の中断の、さっき言われたような何項かに該当する。  この二点、明らかにして、先ほど来のやりとりに対する外務大臣の御所見を聞いておきたいと思います。
  56. 池田維

    ○池田政府委員 ソン・サン派の動きにつきましては、私どもその後注意してフォローいたしておりますし、今川大使を通じまして武藤外務大臣からの意向を伝えたりもしております。  ただ、現在のところは特段新しい動きがあるとは聞いておりませんで、予定どおり選挙に参加するというように聞いております。ただ、内部ではいろいろな議論があって、ソン・サン派としての意見を近くまとめるという動きもあるようでございます。  それから、武装解除した武器の返還でございますけれども、この点につきましては、現在のところ、私どもが承知しておりますところでは、ラナリット派だけから正式な文書による要請が出てきておりまして、それについてUNTACとしてまだ最終的な結論を出していないということだと承知しております。
  57. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど来話がありますように、パリ和平協定が一〇〇%守られているということではないというのは認めているわけでございます。しかし、私どもは、基本的な枠組みは守られている。それは、停戦というものも、完全な形ではないけれども、全面的なものではない。武装解除も、全面的ではないけれども相当、ポル・ポト派を除けばある程度行われている。いわゆる枠組みというものは守られているということと、いま一つは、ポル・ポト派が依然として自分たちパリ和平協定は遵守する、こう明言をしているわけでございまして、その意味において私どもは、ポル・ポト派がもっと守ってくれればいいのでありまして、パリ和平協定はその基本的枠組みは崩されていない、こういう考え方に立っているわけでございます。
  58. 上原康助

    ○上原委員 依然として外務大臣初め担当者がそういう答弁で何か切り抜けようと思うかもしれませんが、我々は何も悪化することを期待しているわけじゃないですが、現実はもっと深刻だと受けとめざるを得ませんね。その点だけ強く指摘をし、きょう短い時間でやりとりをしても一あと防衛庁には現在の自衛隊の武器携帯あるいは緊急事態での使用問題についてもお尋ねしたがったのですが、これはいずれ機会があればやるとして、私は私なりの、国際協力はどうあるべきか、今度のカンボジア情勢を含めてある一つ考え方なり提案もしたいわけですが、やはりここは政府も冷静に受けとめてお考えにならないと、だんだん深みにはまる可能性が残念ながらあると思うね。その点だけ申し上げておきます。  あと少ししか時間がありませんが、一、二点。  きのう沖縄県の大田知事がこの十九日から訪米をするということで外務大臣そのほかの大臣にもお会いをして、時間をとっていただけたことにまず敬意を表しますが、そこで、米軍基地の整理縮小問題についてはかねがね何度も本委員会、他の委員会でも取り上げてまいりましたので、知事の米国に携行される、持っていかれる要請書については既にお見通したと思うので、ぜひ知事がワシントンその他米国要路で十分な折衝ができるように政府としても全面的なバックアップをしてもらいたい。重ねてこの点を強く要請しておきたいと思うのですが、大臣の御所見を聞かせていただきたいと存じます。
  59. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  過去におきましても、沖縄の県知事がアメリカに行かれることは、我々も非常に大事だと思っております。今回も御要望がございました。そういう意味で、御要望はアメリカの関係当局に伝えました。また、我々としても、これは正直申しまして沖縄県に限らないわけでありますが、在日米軍の基地のある各県の方々の御関心をアメリカが直接聞き取るということも大事だと思っておりますので、御要望に応じてできる限りの、かたい言葉になりますけれども、我々としては側面的援助ということにならざるを得ません。  政府としては、従来から申し上げていますように、大臣の御指示もあって、政府の立場から沖縄の、あるいは在日米軍の施設、区域の整理統合ということを進めておりますので、我々は我々の立場でやっているという点はございますが、県の御要望についてはできる限りの側面的援助をしたいと思っておりまして、今後ともその方針でやってまいりたいと思っております。
  60. 上原康助

    ○上原委員 大臣の決意もひとつ聞かせてください。
  61. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 たまたまあの後にアメリカの国防副長官が私のところへ表敬訪問されましたので、そのときに私の方から、日米安保条約は、これは私どもは守っていかなければならないと思っているけれども、基地に関する限りにおいては必要最小限のものにしてもらいたい。いろいろ日本国民の中にも、非常に不満というか不平を持っているところもある。そういう問題が起きないようにしてもらうことが必要であるので、基地についてはできる限り整理統合といいますか、そういうことをやってもらいたいという要望を強く私からきのうも実は相手に申し上げておいたわけでございます。
  62. 上原康助

    ○上原委員 ぜひひとつ実りある結果がもたらされるように御努力をさらにお願いしたい。  もう一点は、この間の、四月十一日の金武町で起きた米兵の日本人殺人事件について、まだ起訴されていないと聞いているが、どうしてそうなっているかということが一つ。  もう一点は、性格は違うのだが、最近密航問題が沖縄、石垣、那覇を拠点にして大変出ているわけで、これはいろいろな面で懸念される事件なので、その内容と今後の対策についてひとつお答えをいただきたいと思います。  以上で終わります。
  63. 佐藤行雄

    ○佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  最初の金武町の件だけでございますが、私の承知しておりますところでは、五月六日に沖縄県警の方から那覇の地検の方に事件送致がされて、現在地検当局の方で捜査中であるというふうに承知しております。そういう意味で手順を踏んで進めているということでございます。
  64. 上原康助

    ○上原委員 それがおくれている。警察庁来ていると思うが、今後の見通しと、それは速やかにやってもらいたい。
  65. 南雲明久

    ○南雲説明員 お答えいたします。  ただいまの御答弁にもありましたとおり、この件につきましては、沖縄県警察におきまして被疑者の米軍人の捜査を遂げまして、本年五月六日殺人罪で那覇地方検察庁沖縄支部へ送致しまして、現在検察庁の方で捜査をしているところでございます。
  66. 陶山高志

    ○陶山説明員 お答えいたします。  平成五年四月二十九日の午後、石垣市野原崎の海岸に女性の遺体一体と転覆したボート一隻、同市星野の海岸で女性の遺体が漂着しているのを発見しました。さらに五月四日に、男性の遺体一体が漂着しているのを発見しました。その後の調査により、四月二十九日の那覇行きの航空機に中国人らしい団体三十名が搭乗しているのが確認されました。  これらのことから、夜間に密航船からボートで密航者を上陸させている途中ボートが転覆し、乗っていた密航者のうち女性二名と男性一名が死亡したものと推定されましたので、石垣海上保安部において中国人密航事件として鋭意調査中であります。  また、平成五年五月十一日午後に那覇港に入港しましたフィリピン船籍のサンタ・ベルナルディータ号、総トン数九百八十一トン、乗組員はフィリピン人二十名、中国人一名でございますが、この船を第十一管区海上保安本部が立入検査した結果、同船内に有効な旅券を有しない中国人五十七名が乗船しているのを発見しております。調査の結果、我が国への就労を目的とした密航事件であることが判明しましたので、中国人五十七名を出入国管理及び難民認定法の違反で、また同船乗組員二名を同幇助犯として現行犯逮捕しました。  この船は、香港を出港し、東シナ海広東沖合で密航者を小型船から積みかえて那覇に入港したことが判明しており、現在密航の背景等について鋭意捜査を継続しているところございます。  海上保安庁では、密航事件に対応するため、従来から、中国を出港して本邦に寄港する船舶への立入検査の徹底、虞犯海域におきます警戒の強化情報収集体制の強化及び情報入手時における巡視船艇、航空機の集中的な投入により監視、取り締まりを行っております。さらに、最近の密航事件におきましては、国際的な犯罪組織が介入して悪質化、巧妙化していることから、捜査を徹底しまして、密航事件実態把握に努めるとともに、関係機関と緊密な連絡を保持することによりまして、密航事犯の取り締まり体制の一層の強化を図っていく所存でございます。
  67. 上原康助

    ○上原委員 一言つけ加えますが、これは沖縄の観光あるいはその他いろいろな面で、県民は非常に深刻に受けとめていることですので、ぜひしっかりした捜査をして、また外務省も、これは中国あるいは台湾との関係もいろいろあるやに思いますので、その面の外交折衝も、公式にするか、いろいろなルートを通してやる手があると思いますので、予防措置を積極的に講ずることを強く要望して、終わりたいと思います。
  68. 伊藤公介

    伊藤委員長 遠藤乙彦君。
  69. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私は、緊迫するカンボジア情勢及びPKO問題に絞って質問をいたします。  宮澤総理は、十二日の記者会見で述べられた中で、UNTACの輸送手段充実へ向けて百万ドルの緊急資金援助をする方針を明らかにされました。これは安全対策強化の一環としてのものだと思いますけれども、この点に関しまして、具体的にはどのような使途を想定しているのか。どのように使うのか、あるいはまたそれが安全対策にどのように効果があるのか、こういった点につきましてお伺いをしたいと思います。
  70. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 使用目的は選挙を有効に行うこと、特に参加している要員の安全を確保するためということで、国連の要請によるものでございます。  具体的な輸送手段に関しましては、一義的にはもちろん国連の判断によるところでございますけれども、例えばヘリコプターのリースなどが考えられるかと思います。
  71. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 百万ドルということですが、ヘリコプターだけじゃないと思いますけれども、そのほかにどんな具体的な輸送手段を考えておられますか。例えば兵員輸送車等の導入等は考えておられるわけでしょうか。
  72. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 先ほど申し上げましたように、これは一義的には国連が決定する問題でございますけれども、私どもが考えておりましたのは具体的にはヘリコプターでございます。一応そういう希望は出しております。
  73. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて選挙の問題ですけれども、先ほどソン・サン派が不参加かどうかということはお答えがありましたので、さらにUNTACのスポークスマンによりますと、総選挙での投票所を千八百カ所から千五百六十一カ所に削減するという発表が行われたと承知しております。さらに、治安情勢の変化によりまして新たな削減が行われる可能性があると思いますけれども、この点はどうなのかという点。  他方、こういった投票所の削減という場合、日本のように交通手段が整備されているところではそれほど大きな影響はないかもしれませんが、カンボジアのような状況では選挙に極めて大きな影響がある。特に投票に参加できない人が極めて多く出てくるのではないかと思われますし、そういった場合の選挙の有効性等につきましてお聞きしたいと思います。
  74. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 まず、投票所の削減についてでございますけれども、これにつきましてUNTACのスポークスマンは、まず状況に応じて今後とも場所が変わり得るということと、それから数につきましても若干異動があり得るということを言っております。  それから、選挙に対する影響及びその有効性の判断でございますけれども、確かに先生指摘のように、カンボジアのようなところでは例えば投票率が若干低下せざるを得ないという結果になるかと思います。ただ、そういった状況のもとで行われた選挙が有効であるかどうかという点については、選挙の結果を見て私どもも評価いたしますけれども、パリ協定によれば、最終的には国連がそれを判断するということになっております。
  75. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、安全対策が今最大の課題となっておりますけれども、要員の安全を図る上からも、その前提として大変大事なのは現地の情勢判断だと思います。特にポル・ポト派の動向、軍事的な情勢をどう判断するかということは安全対策の一番大事な前提条件だと思います。  報道によりますと、カンボジアの総選挙阻止を図るポル・ポト派最強硬派のタ・モク軍参謀総長が、今後の最重要戦略目標を首都プノンペン西方のコンポンスプー州に変更して、みずからの司令部を西部のバタンバン州からプルサット州トルクルオに移したと報じられております。  我が国のPKO要員の安全の確保の観点から、政府はポル・ポト派の動向につきまして常に当然のことながら把握をしておるものと思いますけれども、ポル・ポト派の軍の動向につきましてできるだけ詳しく御説明をいただきたいと思います。
  76. 池田維

    ○池田政府委員 ポル・ポト派軍の動向につきましては、私どもも全力を挙げて情報収集に努めております。ただ、最近の同派の動きについては必ずしも確実なことはわかっておりません。いろいろな情報はございます。ただいま御指摘になられました報道についても特に私どもとして確認しているわけではございませんが、ただそういった報道も含めまして、私どもとしてはできる限り詳細に、注意深くあらゆる情報をフォローしていきたいというように考えているわけでございます。  現在のところ、ポル・ポト派軍の勢力の強い地域というのは、カンボジア西部のタイ国境地域を中心とする部分とカンボジア北部のタイ国境地域の二つでございまして、これが拠点になっているわけでございますが、この拠点の部分からそれぞれ内陸部に幾つかの山岳地帯等を中心としまして勢力が浸透してきているというように理解しております。  この三月以降、総選挙を控えまして、ポル・ポト派の動きというものがやや活発化しているというように私ども見ておりますけれども、その結果としまして、プノンペン政権軍との小さな規模の銃撃戦であるとか、あるいはポル・ポト派と見られる勢力がベトナム系のカンボジア人を虐殺するというような事件がありました。それから、もちろんUNTACの施設、要員に対する襲撃事件というものも増加しているということでございまして、私どもとしてはこういう動きを大変懸念しつつフォローしているわけでございます。  同時に、私どもとしましては、ポル・ポト派に対しても、各派と並んで自制を求めていくということで一貫してやってきておりました。選挙に参加しないということが決まった後も、いろいろな機会を通じてやっております。私自身も、五月八日に北京でポル・ポト派の代表でありますチャン・ユラン大使と会いましたときにも自制を求めましたし、そのとき我が方のUNTAC文民警官が殺害されたことにつきましては、これはポル・ポト派が行ったかどうかということは確定されておりませんので、一般的な意味で私たちは非常に激しい憤りを感じていて、そういうことを非難しているということも伝えてございます。
  77. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 中山防衛庁長官は、昨日でしたか、衆議院内閣委員会での質問の答えとして、私がポル・ポト派の指導者であったら、妨害工作の最も効果的なやり方は日本の部隊を攻撃することじゃないかと思うと述べられております。これはテレビでも広く放映をされました。長官の発言はある意味では的を射た発言であると思いますけれども、ポル・ポト派がカンボジアのジャングルの中にいるからといって、マスメディアの発達した今日、長官の発言がポル・ポト派に伝わらないとは限らないわけでございまして、中身の当否はともかく、こういったことを公式の場で発言されるということにつきましては、これは不適当だったのではないかという気がいたしますけれども、これは大臣にお伺いをしたいのですが、どのようにお考えになりますでしょうか。
  78. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは私も後から聞いたのでございますが、この発言は、私の推測するところでは、安全対策についてあらゆる事態を想定して万全を期すべきだということ、UNTACの活動には種々の困難が予想されるが、これらに遭遇して過度に敏感に反応することは、UNTACの活動を阻害せんとする勢力を利するだけであって、毅然たる態度で臨むべきであるとの趣旨であると承知をいたしております。  UNTACの要員について万全の安全対策をとるべきであるということは、UNTAC要員に対する攻撃については毅然たる態度で臨み、これを強く非難すべきである等の点については私も全く同感でございまして、いずれにしても、今後も安全対策については、我々は一体となって鋭意努力をしていかなければならないと思っております。
  79. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今の大臣のお答えは私の伺った問いには答えてないと思うのですが、私がポル・ポト派の指導者であったら、妨害工作の最も効果的なやり方は日本の部隊を攻撃することじゃないかと思うと明言をされているわけですね。これは非常に的を射た発言だと私も思っているわけですけれども、こういった発言を行うことが不適切じゃないかという質問でございますので、それに対してお答えをいただきたいと思います。
  80. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 同じ政府の一員でございまして、私どもは一体となってやっていきたいという、私はそのようなコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  81. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 これは本来は防衛庁長官に伺うべき話ですから、これぐらいにさせていただきます。  続いて、文民警察の話なんですが、昨日の報道によりますと、UNTACの文民警察部門の責任者であるクラス・ルース准将が、日本文民警察官について名指しで、任地からプノンペンに行かせてはならないということで、各州本部の指揮官に文書で指令をした。その指令は現在も撤回されていないというふうに報道されております。  他方、けさの報道によりますと、政府は十三日、現在分散して配置されている警察官を各州都に集めることでUNTACの同意を得たというふうに報じられております。この点につきまして、まず事実関係はどうなのか、またこのことが日本文民警察官の活動に影響を与えることはあるのかということにつきましてお伺いしたいと思います。
  82. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 まず、ルース准将の指示の件でございますけれども、確かに報道ではそういう記事が見られますけれども、UNTACとしては公式にはそういう指示を出したということは言っておりません。内部でどうであったか、私どもは目下把握に努めております。  それから第二点の、州都に我が方の文民警察官を集めるという点でございますけれども、現在のところUNTACはこれについて決定は下していないというぐあいに承知いたしております。
  83. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 これは大変大事な問題でございますので、ぜひ確認をしていただきたいと思います。UNTACの公式の態度、それから現にルース准将がこういった指令を出しているのかどうか、現状どうなっているのか、明確に調査の上回答をお願いをしたいと思います。  それから、情勢が非常に緊迫化しておりますので、今後我が国が特に文民警察とか文民関係を含めて中断を決定することがあり得るかと思います、これは当然法律にも書いてあるわけですから。UNTACが逆に今のような行動をとった場合、文民警察は動いてはならない、そういった指示を出した場合にはどう対応されるのか、お伺いをしたいと思います。
  84. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 仮定の御質問ですのでお答えしにくいのでございますけれども、中断の場合には、もちろん我が方の判断が最終的にはなりますけれども、その過程におきましては、国連と十分協議を行うことになっておりますので、そういった過程を経て、必要であれば業務の中断という結果に至るのではないかと思っております。
  85. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 もう一つの問題点として、日本文民警察官を現在の分散配置から各州都へ移すことが決定されたとすれば、多国籍の文民警察内部に大変深い亀裂をつくりかねない危険性をはらんでいると思います。日本のエゴだということで、そういった批判があり得るわけで、他国の文民警察官立場からすれば、国籍で命の重みに違いがあってはいけないという批判があるというふうに聞いておりまして、今後の対応いかんではPKO参加各国からの批判にさらされる可能性もあると考えられるわけでして、こういった点につきましてはどのようにお考えでございましょうか。
  86. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 これは、村田大臣が明石代表と会談されました際に、我が方の要員をプノンペンに集めて情報交換、安全措置についての打ち合わせ等を行いたいという申し入れをされました。これに対して明石代表は、それは難しい、ただ、山崎隊長が関係の地域を巡回することはあり得るという回答でございました。その際に、確かに一つ一つの警察官の滞在地を訪問するということもあり得ましょうし、場合によっては州都に要員を集めてそこで会合を開くということもあり得るかと思いますけれども、いずれにしましても、こういう会合が開かれたとしても非常な短期間にならざるを得ないというぐあいに考えております。したがって、短期間であれば各国との関係においてはさほど問題はなかろうというぐあいに考えております。
  87. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 宮澤総理は、昨日、本会議で、日本からの選挙監視要員四十一人全員が自衛隊施設部隊が宿営するタケオ州に配置されることに関連をしまして、自衛隊部隊は選挙要員に緊急の場合と否とを問わず可能な限りの支援を行うよう指示していると述べておりますけれども、ここで言う可能な限りの支援とは具体的にどのような支援を想定しているのか、御説明をいただきたいと思います。
  88. 野津研二

    ○野津説明員 御説明いたします。  自衛隊の施設大隊は、UNTACの方から選挙関連業務の支援をするように言われておりまして、これにつきましては、国際平和協力法あるいは実施計画の枠組みのもとで実施していくこととしております。去る四月末の実施計画の改正におきましても、選挙要員に対する給食あるいは宿泊等の施設の提供ということができるように措置をいたしております。今後、タケオ州に配置される選挙監視要員が到着いたしましたら具体的にどういう支援をするかということにつきましては、今言われました総理の御指示も体しつつ、またUNTACからの指図を受けて実施していくということになるというふうに考えております。
  89. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 時間が終わりました。最後に一点だけお伺いします。  総選挙の結果いかんを問わず、総選挙後もカンボジア、非常に混乱が続くものと予想されるわけですけれども我が国としてはどういうビジョンのもとに今後のカンボジア支援、民生安定を進めていくのか。また、特に難民問題ですね。一応難民は帰還しましたけれども、極めて定着が難しい状況にあると聞いておりまして、再難民化のおそれが非常に大きいと思いますけれども、こういった問題も含め、どういうビジョンのもとに選挙後のカンボジアに対応していくのか、支援をしていくのか、最後にお伺いをしたいと思います。
  90. 池田維

    ○池田政府委員 選挙がまだ実施されておりません現在、選挙後の見通しを予測することは必ずしも容易ではございませんけれども、総選挙の後、制憲議会ができまして、これでカンボジア国民の総意が反映される形の新しい政権ができるということになりますと、そのカンボジア国民の総意に基づいて、国際社会として何をするのがいいかということを考える必要があると思います。もしその段階でカンボジア人が自分たちだけで国づくりをやっていくことができるというのであればそれはそれで結構ですし、そのときにカンボジア人が国際的な協力を必要としているということであれば、そういう状況を踏まえて検討する必要があるだろうというように感じております。  それから、難民の帰還でございますけれども、三十七、八万人の難民はすべて帰ったわけでございまして、確かに一部の難民につきましては定着が必ずしも容易ではないということも報道されております。しかしながら、かなり多くの難民がそれぞれの出身部落等に帰りましてそこで生活を始めているということでございまして、私ども必ずしも悲観的に考えているわけではございません。
  91. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 終わります。
  92. 伊藤公介

    伊藤委員長 古堅実吉君。
  93. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣にお伺いします。  政府は、ポル・ポト派の無法な激しい軍事行動の展開にかかわらず、全面戦争となっていないからパリ和平協定の枠組みが維持されている云々を続けています。政府が言う全面戦争とはどういうことを言うのか、その定義について伺いたい。
  94. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 全面戦争というのは、カンボジア国内において全面的に戦争が行われる状態を全面戦争、こういうことだと思います。
  95. 古堅実吉

    ○古堅委員 カンボジアにおいて全面的に戦争が展開されるという意味はどういうことですか。もっと具体的に説明してください。
  96. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 戦闘が地理的にもカンボジア全土にわたりかつその規模も拡大していくというような状況であると考えます。
  97. 古堅実吉

    ○古堅委員 カンボジア全域にわたってですか、各省、すべての省にわたって軍事行動がさらに規模を拡大していくということですか。これまで使い続けている言葉ですから、もう少ししっかりと定義をした説明をしてください。
  98. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 カンボジア全土にわたってという意味は、もちろん各州すべてにおいてということではなくて、カンボジアの大部分の領域において戦闘が行われるという状況でございます。
  99. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣カンボジア全土、各州ということではないんだが、大部分の州において戦闘行動が展開された場合というふうに今言っている。このようなことがカンボジアで起こり得ますか。ポル・ポト軍の無法な戦闘行為とのかかわりでそういうことが言われていますが、ポル・ポト派はそのような形で全面戦争を展開してくるということがあると考えますか、ないと考えますか。
  100. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、ポル・ポト派の軍隊の数からいけばなかなかそのようなことは難しいというふうに判断をいたしております。
  101. 古堅実吉

    ○古堅委員 全面戦争がないから停戦合意は守られている、パリ協定の大枠は守られていると言ってきた。がしかし、ポル・ポト派が持っている軍隊の規模からして全面戦争を展開することは難しいということなんですね。  カンボジアにあって全面戦争が展開されるということはあり得ないだろうということであれば、その先をお尋ねしたいんですが、これからも、全面戦争が展開されていないという状況のもとでも、なお日本から派遣された自衛隊員などの犠牲者が出る危険性は続くというふうに思いますか、犠牲者が出るような危険はないというふうに考えますか。
  102. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもといたしましては、これ以上の犠牲者が出ないように極力安全対策を強化していく、あるいは場合によれば、選挙監視要員などは今度大体タケオへ行くという予定のようでございますが、そのような形の配置を考えるとか、いろいろのことで私どもはこれ以上の犠牲が出ないように努力をしておるわけでございます。
  103. 古堅実吉

    ○古堅委員 犠牲者が出ない一〇〇%の可能性というのは、送らなければよかったんです。引き揚げればなくなるんです。ただ、犠牲者が出ないように手を打ちますというふうなことと、私が質問しているそういうこととはまた別の問題なんです。  あえて言えば、そういう犠牲者が出ないようにいろいろと安全の手を打つということは、これからも犠牲者が出る危険性があるからこういうことをやるんですという内容を別の言葉で言っているようにも受け取れるんですが、犠牲者が出る危険性というものは続くと思いますか。
  104. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 犠牲者が出ないように努力をしているわけでございますから、犠牲者が出る危険性があるかどうかということを考える前に、犠牲者が出ないように努力をしておるということでございます。
  105. 古堅実吉

    ○古堅委員 犠牲者が出ないように努力をする、その展開によって犠牲者は出ないで済むというふうに考えますか。
  106. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 犠牲者が出ないように努力をし、それを望んでいるわけでございます。
  107. 古堅実吉

    ○古堅委員 質問に答えてください。これは、全国民がそういうことについて重大な関心を持っている中での政府と国会におけるやりとりです。この危険性はあるんだが、その手は打つ、対策をとる、それによって犠牲者が出ないようになりますということがあるんですか。そういうことができると言うのであれば、何を根拠にそういうことをおっしゃるか、そこの説明までしてください。
  108. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 我々はとにかく犠牲者が出ないようにいろいろの手段をとっておるわけでございまして、たまたま私は今タケオヘの選挙監視要員の配置ということを一つの例で申し上げましたが、私は私なりに外交ルートといいますかいろいろの外交的な面でも、なるべくそういう犠牲者が出ないような方向努力をしておるわけでございまして、ですから、全く危険がなければそういうことはやる必要はないということはそれは当然でございます。しかし、私は、危険があってもその危険を最小限にとどめる、そしてそういう犠牲者が出ないようにするということをしたいということを申し上げているわけでございます。
  109. 古堅実吉

    ○古堅委員 どんな手を打ったんですか。
  110. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ポル・ポト派を含めて各派に自制を要請いたしております。
  111. 古堅実吉

    ○古堅委員  一体これまでやってきたことと今の自制を促したということとのこの違いはどこにあるんですか。それによって犠牲が出ないような、ポル・ポト派が無法行為をやめるということについての見通しはあるんですか。
  112. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、とにかく出ないように懸命の努力をしているわけでございます。見通しとか見通していないというのは、私どもはとにかく努力をしているということでございますから、努力をしておるということ以外には申し上げることはございません。
  113. 古堅実吉

    ○古堅委員 そんないいかげんな答弁じゃ許されぬですよ。ポル・ポト派というのは、パリ和平協定を遵守しますと、先ほども御答弁があったとおり。しかし、そういうことを言いながら、パリ協定において与えられたみずからの地位を利用しながら、パリ協定の具体的な内容をことごとく踏みにじるということに戦術を置いてゲリラ戦を展開しておるんじゃないですか。それによって犠牲も出ておるんじゃないですか。そのポル・ポト派にあなたが書簡をやったとか、そういうふうなことをやったことによって安全が守られますと、何らかの保障につながる兆しでもあるんですか。ありますか。
  114. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いずれにしても努力をいたしております。
  115. 古堅実吉

    ○古堅委員 無責任なことをおっしゃるな。人々の命が奪われるかどうか。派遣された方々は、日夜、朝起きれば、新聞はどうだろう、テレビのニュースはどうだろう、みずからの関係者の生命にかかわることを考えて重大な関心を持ち続ける毎日なんですよ。この問題は我が国政治の最大の焦点にもなっておるじゃないですか。それをただ単に努力しますというふうなことだけで事を済まそうとするんですか。余りにも無責任じゃありませんか。何をもって、その危険性が最小限にとめられるようにしますということをおっしゃるけれども、その根拠は何ですか。
  116. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 UNTACに対しましても、安全確保に対して特段の措置をとるように要請をいたしましたし、ポル・ポト派自体に対しても自制を求めましたし、また昨日も、日本の駐タイ大使を通じてポル・ポト派の方にもいろいろのルートを通じて自制を要請いたしておるわけでございます。
  117. 古堅実吉

    ○古堅委員 そういうことをもって、送られた自衛隊員などがポル・ポト派などからのゲリラ展開によって起こる危険は防げるというふうに思いますか。期待していますか。
  118. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは最大限の努力をいたしておるわけでございます。
  119. 古堅実吉

    ○古堅委員 努力をしているかどうかを聞いておるんじゃない。そのことによって危険を防げるというふうに考えているかどうかを尋ねておるんです。
  120. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 少しでも危険が少なくなるように努力をいたしておるわけであります。
  121. 古堅実吉

    ○古堅委員 あなたは危険を完全に防ぐことはできないんだというふうな理解に立っていますか。
  122. 伊藤公介

    伊藤委員長 時間が来ましたのでまとめてください。  武藤外務大臣
  123. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは、ポル・ポト派に、とにかく自制をしてくれということを相手に言っているわけでございますから、私どもは私どもとしての最大限の努力をしておる。それは、犠牲者が出ないために努力をしておるわけであります。
  124. 古堅実吉

    ○古堅委員 全面戦争がないから停戦合意は破られておるんではない、しかし全面戦争があるかといえば、あり得ないだろうということになる。このようなありもしない全面戦争の問題を自衛隊をカンボジアに引き続き駐留させるその新たな根拠にして、今引き揚げなくちゃいかぬという国民の声にもこたえられないなんということは、まことに許しがたい。憲法にも反し、つくられたPKO協力法にも反する今の自衛隊派遣問題、改めて根本的な検討をして、一日も早くその撤収の結論を出すように厳しく要求して、終わります。
  125. 伊藤公介

    伊藤委員長 和田一仁君。
  126. 和田一仁

    ○和田(一)委員 きょうは私に十分も時間がいただけましたので、いろいろなことをお伺いしたいと思います。  初めに、東京サミットが近づいてまいりましたけれども、これに関連して大臣の御見解を伺いたいと思います。  先般、連休中に、大臣は、メキシコ、ベネズエラに、二つの国だけだったと思いますが、お行きになられました。これは東京サミットをにらんで、このサミットの主要議題になるであろういわゆる発展途上国問題、こういうことを念頭に置いて行かれたと思うのですが、両国との話の中でどういうお話があったのか。特にサミットに向かっての何かのお約束かあるいは要請、こういうものをお受けになったかどうか、これをお伺いしたいのと、それから十七、十八両日にアルゼンチン、ブラジル、チリの三国外相が東京でお会いになる、こういう予定を聞いておりますが、これはどういう目的をお持ちなのか。あわせて、いわゆる東京サミットのホスト国としてこのサミットをどういう成果あるものにしていこうとお考えなのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  127. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ベネズエラ、メキシコともに、たまたま一致して御要望のございましたのは、ウルグアイ・ラウンドを一日も早くまとめるようにできるだけ東京サミットでも努力をしてほしい、こういうことでございました。  それから、来週の月曜日でございますけれども、十七日でございますか、ブラジルの外務大臣とはきょう会いますけれども、月曜日にまたブラジルとアルゼンチンとチリの外務大臣と、御一緒にお目にかかることになっております。  これは今回のベネズエラ、メキシコ訪問とも関連をいたしますけれども、私ども、今開発途上国の問題を議論していく上には、やはりどうしても中南米の御意見を承りたいということと、それからいま一つは、やはり日米の経済関係からいたしまして、中南米では、今日本経済の投資と申しますか、こういう面に非常に大きな期待を持っておられるわけでございます。そういう面において、今後の中南米と日本との経済関係というものを強化していく必要があるんではないか、今まで以上に日本としては幅広い外交を展開していく必要があるんではないか、こんな考え方で、今度のリオ・トロイカ会議と申しておりますが、三国外相とも懇談をしたいと思っております。
  128. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ウルグアイ・ラウンドを上手にまとめてほしいという御要望に対して、こういったことの見通しはいかがでしょうか。
  129. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 かねがねウルグアイ・ラウンドについてはダンケルがいろいろの案を出しておりますけれども、一〇〇%全部あのとおりにやろうとすると、これはいろいろの国々の意見がありまして、なかなかまとまりが、今日まで難しいわけでございます。そこはやはりある程度譲り合うということがお互いに必要ではないかなという感じが私はいたしております。百点満点でなくても、七十点でも六十点でもこれからの世界の自由貿易体制を堅持していく。  いわんや今のガットには物の貿易は入っておりますけれども、サービス部門は全く入っておりません。しかし、世界的に今サービス部門というのは非常に大きなウエートを占めてきておりますので、そういう面ではウルグアイ・ラウンドを、私は一〇〇%でなくても、七十点か六十点かわかりませんが、まとめるような努力をしていくべきではないかというふうに考えておりますし、見通しとしては、努力をいたしてまいりますということしか言えないと思うのでございます、相手のあることでございますから。できるだけよく話し合って、成功に向けて努力をしてまいりたいと思っております。
  130. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ぜひ御努力をいただきたいと思います。  ひとつカンボジア関係で伺いたいのですけれども、四日に高田さんのああいった痛ましい事件が起きてしまいまして、急速に政府としてもその対応に追われたのはよくわかります。その結果、政府は、総理大臣の命令で村田自治大臣カンボジアに急遽派遣されました。十日に自治大臣は明石代表と会談をされました。日本文民警察官の危険地域からの配置がえを申し入れたと伺っております。ここにはもちろん今川大使も同席をされているように私は理解いたしておりますが、この村田自治大臣と明石代表との会談の内容、もうそのとき既に大臣は中身がおわかりであったかどうかお伺いしたい。こういうお話をしに行くということを御存じだったのかどうか。十日に明石さんに村田さんがお会いして、こういうことを申し入れたという、その内容を御存じだったかどうか。
  131. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 緊急な事態で、あれは夕方から夜にかけて急に決まったわけでございまして、正直、外務省の事務当局は承知をいたしておったと思います。ただ、私は残念ながら連絡が少しおくれて入ったわけでございまして、最初にいろいろと事務当局で詰めた、これは対策本部の方で詰めたと承知をいたしておりますが、私の方への連絡というのはその後でありまして、しかし村田大臣が向こうへ参りますころには——とにかくいろいろのことで、私と官房長官だけでございましたので、官房長官と私との間では、実は余り細かいことは話をしなかったという事情でございます。  それがあったものでございますから、私から、あれは、新聞は抗議と書いてありますが、抗議をしたわけではございません。私と官房長官との間では、政府が一体となってこういうことはやっていかなければならないんだから、これからはできるだけ、私も事務当局との連絡を密にするけれども、お互いに閣僚同士も連絡を密にしてやっていこうじゃないかという話し合いをその後したわけでございます。
  132. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私は抗議を申し込んでもしかるべきだったと思うのですね。というのは、私はやはり中身が中身だっただけに、これは外務当局として、会うという、その会う関係は知っていたけれども、中身を知っていたとすれば大変なことだと思う。こういうことを申し入れに行くんだという中身も事務当局は承知していたというのであれば、私はいささかお聞きしたいことがあるわけなんです。会うということだけは知っていたが、中は何を言うのかわからなかったというのなら、私は、これは外務当局と政府との連絡は極めてまずい、特にUNTACとの間のパイプというのは一体どうなっているんだろう、こういうふうに考えざるを得ないのですが、大臣、そういう思いで官房長官とお話しになったのと違いますか。いかがでしょう。
  133. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 緊急でございましたので、その辺の事務の連絡の手違いといいますか、不十分であったことは私は率直に認めておりまして、今後事務当局にも、どんなに、幾ら夜でも緊急な問題は遠慮なく私に報告をするようにということを指示し、また官房長官の方には、これからはできるだけ細かいところまでひとつお互いに連絡をし合おう、こういうことを話し合ったということでございます。
  134. 和田一仁

    ○和田(一)委員 わかるんですけれども、私は、外務省として、ああいう内容をUNTAC代表に申し入れるということであったということがわかっていたとすれば、これはまずい、こう申し上げているんです。私は率直に言って、行かないでほしかったと思うぐらいですね。対応として、行って、それなら言うことが違ったと思うのです。ああいう限定したことを、日本の閣僚が行って、あそこで申し入れをするというのは、これは日本外交からいってまことにまずい。そういう点がわかっていたということになると、日本外交そのものが何を考えているのかと言わざるを得ないと思うのですね。  私はその点について、どうも官邸と外務省当局、一番基本の大事なところで意思疎通が足らない、こういうふうに思うのですよ。ちょっとした時間が足らなかったからといって済むことじゃないですね。結果はだあっと出てしまう。一体、日本は共通の価値観を持ってPKOに協力しているんだろうか、それはもう違うんだという証明をしに行ったようなことにならぬように、私はぜひお願いしたい、こう思います。  それから一つ、時間が余りありませんけれども、とにかく無事に選挙が終わってほしい、私どもとしてはこれは願うしかございません、もう政府として万全の安全措置を講じて、これを成功裏にやってもらうようにUNTACともども努力をいただきたいのですが、PKOのその後の形を大臣はどんなふうにお考えになっているか。  というのは、予定どおり終わって、制憲議会ができる、そして憲法ができる、どういう憲法ができるかはわかりません、時には大統領制をしくとシアヌーク議長は言っているので、そういうものになるのか、選挙の結果がそういうことを認めるようなものになるかわかりませんけれども制憲議会の後新政権ができる、これは国際社会として正統な政府であるという認知を当然する正統政権ができる、私はこう思うのですね。しかし、その政権そのものができたらカンボジアは安定していけるというものでもないなという感じを私は持っているのです。大臣はそうお考えかどうか。  したがって、新しい政権ができるのが、選挙後そういった議会を経て九月ごろ政権ができたとして、そのころまでの、UNTACをいつごろ引き揚げるか、これは時期の問題が大変大事になってくると私は思う。でき上がった政権次第によっては、これはどういう事態になるか、これまた新しい展開だと思いますけれども一つは、先ほども申し上げたように、大統領制になるのかどうか、あるいは国民的な政権をつくろう、ポル・ポトも入れるんだ、こういうような提案も出たり引っ込んだりいたしております。それからもう一つは、最近のニュースでは、新政権ができたときには、ポル・ポト派の軍事攻勢に対抗するために何らかの形での外国への協力支援を求める、二国間協定というものも含めてそういうようなことをやろうじゃないかという合意ができたというようなニュースもある。  私は、どういう格好になるかわからないけれども、いずれにしてもこれはそのまま九月以降手を放して見ているだけで大丈夫かどうか、まだ手を差し伸べないとしっかりひとり歩きができないというような状態ではないかと思うのですね。そこで、二国間協定か何かわかりません、だれを相手に考えているかもわかりません、そんなものベトナムやアメリカが手をかすわけはないと私も思うし、いずれにしてもアジアの大事な、日本立場としてそのまま後はお任せよというわけにいかない、必ず何かの形で関与していかざるを得ない。どういう形をお考えになっておられますか。
  135. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 UNTACが今一生懸命やっておりますのは、やはりカンボジアが平和で民主的で、しかも安定した国家があそこで再生をする、そのための努力をUNTACはしており、日本もそれに協力をしておるわけでございまして、どの段階でというとなかなかこれは難しいかと思いますが、少なくとも選挙が行われ、制憲議会が発足し、憲法が制定され、新しい政治形態が、今お話しのとおりどういう形態になるかわかりませんけれども、いずれにしても新しい政治形態になって、そこでまあこれで大丈夫だというようなところまでは、やはりUNTACがある程度、今の形と多少形は違うかもしれませんけれども、UNTACが全く引き揚げてしまって、おまえの勝手にやれよというわけには、なかなかこれは国連としてもいかないのじゃないかなというふうに私は思っております。
  136. 和田一仁

    ○和田(一)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、私は、当面する大変な問題は、ここまで犠牲を払ってまで努力してカンボジア再建のために世界が力を合わせている、その成果をきちっとしていくにはこれからが非常に大事な時期だ、こう考えております。今までの努力を通してアジアの平和のためにひとつ万全の体制をおとりいただきますようお願いして、終わらせていただきます。
  137. 伊藤公介

    伊藤委員長 次回は、来る十九日水曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十六分散会