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吉田達男君 島根県、鳥取県における地域経済及び産業活動の実情に関する
調査のため、去る九月八日から十日までの三日間にわたって行われた
委員派遣について御
報告申し上げます。
派遣は、
斎藤委員長、
松尾理事、
合馬理事、
井上理事、
和田委員、
市川委員、古川
委員及び私、
吉田の八名による
派遣委員で行われました。
第一日目、八日には、島根県庁で中国通産局より管内の概況
説明、島根県より県政の概況
説明をそれぞれ聴取した後、中国電力島根原子力発電所を視察いたしました。翌九日には、三菱農機を視察の後、鳥取県に入り、境港市において鳥取県より県政の概況
説明の聴取、水産加工団地サンマリンフーズ工場の視察を行ったほか、淀江町において上淀廃寺跡地と歴史民俗
資料館、和傘伝承館での伝統工芸などを視察いたしました。翌十日には、鳥取市内に入り、第三セクター新産業創造センターを視察した後、最後に鳥取三洋電機の視察を行いました。
以下、ただいま申し上げた日程の順序に従って視察の
概要を御
報告いたします。
まず、中国通産局、島根県による概況
説明に基づき、中国地方、山陰地方及び島根県の経済、商工業の
概要を申し上げます。
中国地方は、山口、広島、岡山、鳥取、島根の五県で総人口、
平成四年三月現在七百七十五万人、総生産、
平成元年度二十四兆円、工業出荷額、
平成二年二十三兆円となっており、全国比でいえば、人口、経済、工業出荷額いずれも七%前後で推移しております。
中国地方の経済、工業の特徴を言うと、化学、石油、鉄鋼等基礎資材中心産業、瀬戸内海中心立地であって、その意味で瀬戸内海沿いと
日本海沿いでは経済力、工業力に差があると言えます。ちなみに、中国地方全体と対山陰を比較してみると、島根、鳥取計百四十万人で、人口比一八%、総生産二十四兆円対三・七兆円で、一五%となり、山陰地方一人当たりの所得が低いこととなります。
また、景気の動向については、鉱工業生産で見ると、全国は昨年から、中国地方は六月からマイナスになるなど、徐々に景気後退の傾向があらわれております。
こうした中、中国地方の今後の長期的課題としては、ハイテク産業の誘致、育成、交通網の
整備、都市基盤の
整備が必要とのことであります。
次に、島根県の商工業でありますが、中小企業が多い
関係で先端的
技術の蓄積、普及がおくれております。また、有効求人倍率は
平成三年度二・〇と、全国平均に比べて高いものとなっておりますが、それは、県の
説明では、人口が少ないことが原因で、特に青年層の定住化、呼び戻しが緊急課題であること、そのため工学系大学の設置、有力企業の誘致が必要であり、今後も工業団地の
整備による誘致に努めたいとのことであります。
また、商業については、零細小売業が多いこと、郊外型大型店舗が進出し出していること等により、
既存商店街は停滞ぎみなため、駐車場の
整備等により
既存商店街の活性化を図りたい。また、以上のような景気対策、中小企業対策のためにも、
政府による公共事業の前倒し発注、総合経済対策に期待しているとのことでありました。
次は、中国電力島根原子力発電所の
概要であります。
同発電所は、島根半島の中部、
日本海を望む景勝地に位置し、敷地面積百六十七万平方メートルの施設で、一号原子炉は昭和四十五年二月建設着工、四十九年三月営業運転開始の国産第一号の原子力発電所であります。現在、
平成元年営業開始の二号炉と合わせで出力百二十八万キロワット、中国五県に電力を供給する中国電力最大の発電所となっております。
原子炉格納施設は、強固な岩盤上に設置するなど耐震設計となっているほか、シミュレーターによる運転訓練、保修訓練などにより安全運転に留意、さらに一年間の稼働ごとに二、三カ月休止、定期検査を行っております。
発電所構内では、温排水利用によるアワビの稚貝試験養殖を行うなど、水産資源の確保にも貢献しております。また、放射性
廃棄物の管理は、構内に一時安全保管した後、青森県下北半島に建設中の低レベル放射性
廃棄物貯蔵施設に最終貯蔵を予定しておるとのことであります。このほか、地域対策として、構内に原子力
関係の知識の啓蒙・普及を
目的とした原子力館、展示施設等を設置、また、住民のための運動公園を建設、地域住民等の利用に供されております。
なお、発電所の
関係者と懇談が行われ、
通産省のシミュレーション通達、燃料格納庫等設備の耐用年数、定期点検期間等について
質疑がなされました。
次に、三菱農機は、昭和五十五年合併設立、農業機械の総合メーカーとして三菱グループの一翼を担っております。主な製品としては、コンバイン、トラクター、田植え機のほか、ターフトラクター、ビーチクリーナー、さらには
技術・ノウハウを生かした温室、植物工場の開発、管理、設計、販売等プラン十分野にも進出、事業多角化を図っております。営業・販売面でも、知名度を活用、全国各地に支店・営業所等販売網を形成し、さらに海外六十カ国に
輸出もしております。
視察した本社工場は、十六万平方メートル以上の敷地、六万平方メートル以上の建屋を有し、コンピューター制御による一貫生産体制をとっており、近くの別工場と合わせ、トラクター等年産七万台以上が生産されております。価格競争、農業経営コストの点から最近は小型トラクターが多くなっているとのことで、年商売上額は
平成三年十一月現在で七百三十億円、従業員は島根地区で千百五十人を有し、地元経済、雇用に貢献しております。
次は、境港で行った鳥取県の
説明を
もとに、鳥取県の経済、工業についで
概要を申し上げます。
鳥取県の工業の状況を工業出荷額で見ると、電気機械三七%、食料品二五%と、電機、食料品の比重が高くなっております。これは、後で触れます境港の水産加工業、鳥取三洋電機など地域集積型産業が大きな位置を占めているからであります。また、最近の景気の動向を鉱工業生産指数で見ると、今年初頭から悪化、六月からはさらに悪化し始めており、全国的な景気低迷の影響が出始めています。
視察した境港水産加工団地は、中海地区新産業都市建設
計画の一環として造成されたものでありますが、景気低迷の影響で、予定していた企業進出が見合わせられたという事例も出ているとのことであります。そのため、県としては、
政府の総合経済対策に大いに期待する一方、県単独でも緊急経済対策を行っているとのことであります。
また、鳥取県全体の重点課題として、姫路-鳥取横断道等高遠交通体系の
整備、日ソ友好親善訪ソ団等、ロシア、中国などとの環
日本海の交流活発化、ハイテク企業の誘致等産業の高度化に努めていきたいとのことであります。
なお、鳥取県からは地方拠点都市地域に関する事業の促進についての陳情が、境港市及び境港商工会議所からは
特定中小企業集積の活性化に関する臨時
措置法に基づく活性化促進地域の指定に関する陳情がありました。また、
関係者との懇談で、境港の漁業の現状、イワシ等水産物加工の現状等につき
質疑が行われました。
次に、株式会社サンマリン・フーズは、本社工場九一年九月竣工、先ほどの水産加工団地竹内工業団地内に位置するシーフード加工会社であります。同社は九〇年二月、旭電化工業、三菱商事、地元水産加工会社等の共同出資によって設立、境港で水揚げされる豊富なイワシ、カニ、エビ等の水産物を利用、酵素発酵等のバイオテクノロジーによりシーフード新素材を開発、食材加工、たんぱく質製品、カニ加工品、水産冷凍食品等を生産、練り製品加工業、冷凍食品加工業、外食産業等に製品提供を行っております。
関係者の話では、これらの製品は無添加、カルシウム栄養食品として用途が広い上、資源の有効利用にもなり、またアレルギーにもならないので給食にも適しており、
平成三年度六十億円、六年度には百億円の売り上げを目標に工場の拡張を
計画しているほか、米国での合弁会社設立など、
国際展開も行っているとのことであります。
次は、淀江町の上淀廃寺であります。
淀江町は、大山のふ
もと、
日本海に面した静かな農業地帯であり、この周辺は弥生時代までは入り江であったようで、丘陵地には古墳、遺跡等数多く残されており、
日本海を通じ大陸等との交流が活発であったことが推定されます。こうした丘陵地の一角にある上淀廃寺跡地は、
平成三年二月から寺域の本格的
確認調査が行われ、さまざまな発掘物のほか、ことし五月には
日本最古級の壁画が発見され、描かれている如来、菩薩像等は法隆寺壁画、高松塚古墳壁画と匹敵するものと言われております。また、八月には金堂等の跡地が発見され、ほかに例を見ないま院の伽藍配置も
確認されました。
この寺は白鳳期七世紀末から八世紀初めに建立されたものと推定され、これは当時の奈良の都以外にも相当の文化が存在していたことを意味し、新聞を初めマスコミを大いににぎわしたのは御承知のとおりであります。現地では、淀江町教育
委員会の
案内、
説明の
もと、発掘地、歴史民俗
資料館等を視察いたしました。五月から始まった第四次発掘
調査により今後も新しい発見が期待されるところであります。
次は、淀江町和傘伝承館であります。
和傘は、奈良時代の布張り長柄傘が起源とされておりますが、庶民に普及したのは江戸時代のことであります。淀江傘は、一八二一年、倉吉から移り住んだ傘職人が始めたと言われ、当地の広い砂浜海岸が傘を干すのに便利なこと、材料となる竹が豊富であることなどから当地の名産品となりました。しかし、全盛期の大正時代、業者七十一軒、年産十七万本であった淀江傘も、洋傘の普及により縮小、昭和五十九年を最後に職人が途絶え、淀江傘伝承者の会の有志により伝統が守られているという現状であります。
現地では、日傘、番傘、蛇の目傘、踊り傘等、種類豊富な淀江傘の製作現場を見せていただくことができました。手づくりのため手間がかかる割には安い価格で頒布されており、全国の愛好者からの注文もふえてきているとのことであります。
なお、当日、宿泊地において、倉吉市及び倉吉商工会議所より、
特定商業集積法に基づくまちづくり基本構想に対する支援の陳情があり、現地を視察いたしました。
次は、最終日、十日の視察
概要であります。鳥取市内に入り、新産業創造センターを視察いたしました。
同センターは、
平成二年四月、地域振興
整備公団、鳥取県、鳥取市、民間企業二十五社の共同出資により設立、資本金十五億円余の、いわゆる第三セクター方式の株式会社であります。頭脳立地法に基づき、地域産業の高度化を図るための中核的拠点として設立され、研究開発、人材育成、交流促進等の機能を有する産業支援基盤施設としてハイテク企業の呼び込み効果及び、地域における産官学及び基礎研究から応用までのつなぎ役が期待されております。
同センターの建物はことし六月竣工、とっとりテクノリサーチパーク内に位置し、バーチャルリアリティー装置、光ファイリング
システム、植物
環境制御装置等を保有、会員企業、自治体研究機関の研究開発部門が入居し、
情報処理サービス、エンジニアリング、理学・工学・農学等の研究開発、
調査業務等を行っております。また、最近は、科学
技術庁委託研究として、鳥取大学等との連携により、植物の乾燥に対する耐性機能の解明と砂漠緑化に関する研究など地域の特性を生かした研究も行っております。
最後は、鳥取三洋電気の視察
概要についてであります。
同社は、昭和四十一年七月設立、資本金四十億円、従業員三千人、
平成三年度生産額一千百億円余の鳥取県内でも有数の企業であります。同社工場は、敷地約三十三万平方メートル、オーディオ機器、電子機器、電気調理器等を生産、最近では
情報通信、電子部品部門の強化に努めており、中でもコードレス電話機は業界でトップのシェアを占めるに至っております。同社は、こうした生産活動を通じ、地元経済、雇用に貢献しているほか、鳥取県、鳥取市との共同で、第三セクター障害者多数雇用事業所を設立するなど、地域社会への積極的な参加にも努めております。
工場内では、設計・生産
技術開発部門と生産ラインが
一体となった効率的な生産作業が行われており、特に若い人が多いのが目立ちました。その意味で、若年層の地元定着に大きく貢献している印象を受けました。
なお、鳥取市内において、鳥取市から産業再配置促進費補助金予算の確保について、鳥取商工会議所からは総合的な景気対策の早期
実施についてそれぞれ陳情がありました。また、
関係者との懇談で、景気の現状、
政府の総合経済対策、地方単独経済対策、地方交付税見通し等について
質疑がなされました。
以上が視察先の
概要でありますが、
関係者から受けた印象で特に
指摘しておきたい点は、昨年までの好景気の
もと企業誘致等によりようやく地域振興の足がかりを見出そうとしていた両県にとって、このたびの景気の低迷が先行きに対する大きな脅威となっていることであります。
最後に、今回の
委員派遣において御協力いただいた澄田島根県知事を初めとする島根、鳥取県及びこれら視察先の
関係者、並びに視察に終始御同行いただいた本田中国通産
局長を初めとする同局
関係者には大変お世話になりました。この機会をおかりいたしまして御協力に感謝する次第であります。
以上、島根、鳥取両県に対する参議院
商工委員会の
委員派遣
報告を終わります。