○石田祝稔君 私は、公明党・
国民会議を代表して、ただいま
議題となりました
健康保険法等の一部を
改正する
法律案につきまして、
総理並びに関係
大臣に
質問いたします。
趣旨説明にもありましたように、今回の
改正は、
政管健保について
中期的な
財政運営の安定を図るため、
事業運営安定資金を
創設し、これに伴い
保険料率及び
国庫補助率を
引き下げ、あわせて出産関係
給付の
改善と
政令で定める
医療保険審議会を
創設しようとするものであります。
指摘するまでもなく、
医療保険制度は大きな曲がり角に来ており、
保険原理からもう一度全体を見詰め直すという、いわば原点からの
制度改革のときを迎えているのであります。そして、
制度そのものの弱点の克服とともに、少出産・高齢化時代への対応も、改革のための重要な
課題にたってまいりました。
民間の研究機関の推計では、人口の高齢化を反映して、百歳以上の長寿者は今後もふえ続け、二〇二五年には現在の五・四倍の二万人弱になると予想しております。また、日本の将来推計人口によれば、六十五歳以上の高齢者は、西暦二〇二五年には三千百五十万人と現在の二・一倍の数になり、総人口に占める
割合では二五・四%、三・九人に一人は高齢者ということになります。
一方では、日本の家庭の小規模化が進み、家庭内の介護・看護能力は大きく低下してまいりました。自助努力を求めるにも限界があります。こうした日本の家庭の変化は、
医療に対して保健、福祉との連携を求めており、そのことがまた
医療保険制度改革の最も基本の
課題とたっているのであります。
そこで、まず
総理にお伺いいたします。
高齢社会は、単に高齢者が多いというだけのものではありません。社会の
あり方や公共政策の決定に、お年寄りの意見が今以上に強力に反映され
る社会でもあります。四人に一人以上のお年寄りがいる社会が間違いなくやってくるのであれば、今準備しなければならないことは明らかであります。少子化社会と
高齢社会が求めるものは何か、ナショナルミニマムをどの程度に設定するか、そしてだれが
負担するのか、それらの
課題についての社会的合意を早期に形成し、多くのエネルギーを費やしてつくり上げていかなければなりません。
生活大国を掲げる
総理がそれをどう実現されるのか、御所見をお伺いしたいのであります。
また、現在策定にかかっている新経済五カ年計画において、
医療と福祉の連携についてどのように位置づけされようとされているのか、この点についても明快な御答弁を求めるものであります。
このたび、
医療保険審議会を
創設することで、各種
医療保険の
一元化に本格的に着手される
考えを明らかにされました。分立する諸
制度の
保険料徴収、移転、
給付の機構への対応については、専門家の間でも意見が分かれていることであり、
一元化については、それが統合一本化なのか、それとも
制度間の
負担の
公平化と
給付率の
一元化を図る横並び
一元化なのか、論点の整理が必要であります。それらの方向についてどのようにお
考えか、お伺いいたします。
また、
医療保険審議会は、現在の
社会保険審議会を改組し、
社会保険審議会及び社会
保険医療協議会法で定める
審議会から
政令で定める
審議会へと設置根拠を変えております。委員の構成は学識経験者だけであり、三者構成の
社会保険審議会とは大きくさま変わりをしています。私には、
政府がこうした
措置を講じることで
審議会をコントロールしやすいものにしたいのではないかと思えてなりません。これで果たして公正、公平な審議が
確保できるでしょうか。だれのための
一元化なのか、厳しく問われるのであります。明快な御答弁を求めるものであります。
次に、
国庫補助率の
引き下げについてお聞きいたします。
今回、
政管健保の
保険給付費に対する
国庫補助率を、従来の一六・四%から一三・〇%へと約二一%も切り下げる
考えを示されました。これに対し、
社会保険審議会も
社会保障制度審議会も、
暫定措置であり、かつ、
政管健保の
財政の安定が
確保される
範囲内であることを考慮して、当面やむを得ないとの答申を行いました。
私は、
国庫補助率は
社会保障への国の
責任という観点から、安易に
引き下げるべきではないと
考えます。
中期的な
財政運営の
期間をおおむね五年と
考えておられるようですが、将来、
健保の
財政状況が悪化した場合に、
保険料率の
引き上げたけで
均衡を図ることは断じて容認できないことであります。
財政の
改善には、当然
国庫補助率の
引き上げで対処すべきであると主張するものでありますが、この点をどうお
考えか、明確にお答えをいただきたい。
次に、高額療養費の取り扱いについてお伺いいたします。
高額療養費
制度は、被
保険者の
負担が過重にならないように導入されたものであり、現在、自己
負担額のうち六万円を超えた分について支給されております。これには世帯合算もあり、同一世帯・同一月で自己
負担額が三万円以上のものが二つ以上あった場合に、それらを合算し、合計額のうち六万円を超えた分が支給されます。この
制度は、被
保険者とその家族にとって大変ありがたい
制度でありますが、大きな欠点があります。
それは、自己
負担額が三万円未満の場合は、その合計額が十万円、二十万円になっても高額療養費の扱いにはならないということであります。
制度の
趣旨からいって、これは大きな欠陥であると言わねばたりません。OA化によって事務処理の
効率化が図られている今日、これは速やかに
改善すべきだと思いますが、見解を承りたい。
近年、関心が高まっております入れ歯の問題について
質問いたします。
入れ歯に関しては、痛い、かめない、話せないという悩みをよく聞きます。原因として、若い歯科医師の歯形排列の技量が低下していることと、患者に合う入れ歯をつくるには手間暇をかけなければならないが、
診療報酬の関係でそれができないことなどが
指摘されています。
自由診療でつくれば数十万円かかると言われておりますが、材料はほとんど変わらない。違うのは、患者にぴったり合わせていくための
調整の時間であるといいます。
保険の場合、入れ歯ばかりやっていたら経営はやっていけないし、手間暇かけて
調整しても、その技術に対する
診療報酬上の評価が非常に低いため、
赤字がさらに膨らんでしまうのが現状であります。
お年寄りにとってみても、
保険でつくれば安いから、合わたければ三つも四つもつくることになります。思わぬところで
医療費のむだ遣いが行われているわけであります。これは是正すべきであります。どのような方針で臨まれるか、明らかにしていただきたいのであります。
経済大国と言われて久しくなり、最近になってようやく
政府の中にも、
生活大国を目指そうという動きが出てまいりました。数字的には大国であっても、
国民生活、とりわけ老後の
生活が保障されているかというと甚だ疑問であると言わざるを得ません。一生懸命働いて、しかもなお老後が不安というのでは、決して豊かな社会とは言えません。少子化社会への対応も
考えるなら、これまで置き去りにされてきた家庭、家族にもう一度光を当て、家庭と地域社会を結びつけていくことが必要であります。
具体的には、
医療と福祉サービスをどう結んでいくか、また、年金
保険と
医療保険をどう関連づけていくか、
課題は多いのであります。今回の
改正が、そうした
国民の立場からの改革に大いに役立つものとなるよう要望いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣宮澤喜一君
登壇〕