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1992-05-15 第123回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年五月十五日(金曜日)     午前九時四十分開議 出席委員   委員長 浜田卓二郎君    理事 鈴木 俊一君 理事 田辺 広雄君    理事 津島 雄二君 理事 星野 行男君    理事 小森 龍邦君 理事 鈴木喜久子君    理事 冬柴 鐵三君       愛知 和男君    石川 要三君       奥野 誠亮君    武部  勤君       長谷川 峻君    前田  正君       小澤 克介君    沢田  広君       高沢 寅男君    谷村 啓介君       松原 脩雄君    倉田 栄喜君       木島日出夫君    中野 寛成君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田原  隆君  出席政府委員         法務大臣官房長 則定  衛君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省刑事局長 濱  邦久君         法務省保護局長 古畑 恒雄君         法務省入国管理         局長      高橋 雅二君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    坂本 幸一君         警察庁警務局給         与厚生課長   黒澤 正和君         警察庁刑事局捜         査第一課長   深山 健男君         警察庁刑事局保         安部少年課長  益原 義和君         外務省国際連合         局社会協力課長 隈丸 優次君         外務省国際連合         局人権難民課長 吉澤  裕君         厚生省児童家庭         局育成課長   弓掛 正倫君         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         最高裁判所事務         総局家庭局長  山田  博君         法務委員会調査         室長      小柳 泰治君     ————————————— 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   松原 脩雄君     吉岡 賢治君 同日  辞任         補欠選任   吉岡 賢治君     松原 脩雄君 同月十五日  辞任         補欠選任   坂本三十次君     前田  正君 同日  辞任         補欠選任   前田  正君     坂本三十次君     ————————————— 五月十四日  夫婦別氏・別戸籍選択を可能にする民法・戸  籍法改正に関する請願外三件(川崎寛治承紹  介)(第一九三三号)  同(渋沢利久紹介)(第一九三四号)  同(佐藤観樹紹介)(第一九六五号)  同(田並胤明君紹介)(第一九六六号)  同(春田重昭紹介)(第一九六七号)  同(薮仲義彦紹介)(第一九六八号)  同(石井智紹介)(第一九九二号)  同(菅原喜重郎紹介)(第一九九三号)  同(東祥三紹介)(第二〇一五号)  同(菅原喜重郎紹介)(第二〇一六号)  同(田川誠一紹介)(第二〇一七号)  同外二件(武藤山治紹介)(第二〇一八号)  同(佐藤敬治紹介)(第二〇六三号)  同(菅原喜重郎紹介)(第二〇六四号)  同(藤田スミ紹介)(第二〇六五号)  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する  請願常松裕志紹介)(第一九三五号)  同(山花貞夫紹介)(第一九三六号)  同(常松裕志紹介)(第一九六九号)  同(関山信之紹介)(第一九九四号)  同(常松裕志紹介)(第一九九五号)  同(遠藤登紹介)(第二〇一九号)  同(貴志八郎紹介)(第二〇二〇号)  同(新村勝雄紹介)(第二〇二一号)  同(鈴木喜久子紹介)(第二〇二二号)  同(関山信之紹介)(第二〇二三号)  同(常松裕志紹介)(第二〇二四号)  同(不破哲三紹介)(第二〇二五号)  同(小川国彦紹介)(第二〇六六号)  同(貴志八郎紹介)(第二〇六七号)  同(佐藤敬治紹介)(第二〇六八号)  同(常松裕志紹介)(第二〇六九号)  同(岡崎トミ子紹介)(第二〇九一号)  同(貴志八郎紹介)(第二〇九二号)  同(児玉健次紹介)(第二〇九三号)  同(関山信之紹介)(第二〇九四号)  同(常松裕志紹介)(第二〇九五号)  夫婦別氏・別戸籍選択を可能にする民法・戸  籍法改正に関する請願山原健二郎紹介)  (第一九三七号)  同(藤田スミ紹介)(第二〇七〇号)  夫婦同氏別氏の選択を可能にする民法等改正  に関する請願石井智紹介)(第一九六四  号)  同(伊藤忠治紹介)(第二〇一四号)  同(高木義明紹介)(第二〇九〇号)  法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員  に関する請願中村巖紹介)(第一九七〇号  )  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法  制定に関する請願小沢和秋紹介)(第二〇  四七号)  同(金子満広紹介)(第二〇四八号)  同(木島日出夫紹介)(第二〇四九号)  同(児玉健次紹介)(第二〇五〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二〇五一号)  同(菅野悦子紹介)(第二〇五二号)  同(辻第一君紹介)(第二〇五三号)  同(寺前巖紹介)(第二〇五四号)  同(東中光雄紹介)(第二〇五五号)  同(不破哲三紹介)(第二〇五六号)  同(藤田スミ紹介)(第二〇五七号)  同(古堅実吉紹介)(第二〇五八号)  同(正森成二君紹介)(第二〇五九号)  同(三浦久紹介)(第二〇六〇号)  同(山原健二郎紹介)(第二〇六一号)  同(吉井英勝紹介)(第二〇六二号)  同(児玉健次紹介)(第二〇九六号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二〇九七号)  同(東中光雄紹介)(第二〇九八号)  同(三浦久紹介)(第二〇九九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出  第五〇号)  少年保護事件に係る補償に関する法律案(内  閣提出第五一号)      ————◇—————
  2. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所島田刑事局長山田家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 浜田卓二郎

    浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。      ————◇—————
  4. 浜田卓二郎

    浜田委員長 内閣提出刑事補償法の一部を改正する法律案及び少年保護事件に係る補償に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小澤克介君。
  5. 小澤克介

    小澤(克)委員 本日は、刑事補償法の一部を改正する法律案それから少年保護事件に係る補償に関する法律案の両法案審議でございますが、法案の性質上刑事局長から御答弁いただく機会が多いのではないだろうかなと推察するわけでございます。  そういたしますとへ実は、せんだっての三月二十六日の当委員会の私の質問におきまして、その前の本年二月十三日に証人喚問問題で「共和事件に関連するわけでございますけれども阿部文男北海道開発庁長官、それからまた、その他民間人でございますが、共和の元副社長の森口五郎さんの証人喚問問題で、法務省国会に対していわゆるいうところの陳情を行った件に関していろいろ御質問をしまして、そして最後のところで時間切れになりまして、私の方が濱刑事局長に対して、あなたは国会うそをついた、こんな言い方をしたまま、十分御答弁を願う時間がないままに時間切れになって終わっております。このままでは恐らく刑事局長も不本意でありましょうし、私も刑事局長国会答弁について疑義を残したままで、この法案に関してとはいえ主として局長お尋ねをするということはやや不本意でもありますので、法案審議ではありますけれども、恐縮ではありますが、その前に前回続きを少し質問させていただきたい、こう思うわけでございます。  そこで、まず少し整理してお尋ねしたいのですけれども新聞報道されているところによりますと、先ほど申し上げた二月十三日の件で法務省メモを作成した、このことが報道されております。  まずこのメモの中身、これは議事録に残す意味で読み上げさせていただきますが、こういうメモが本当に報道されているとおり存在したのかどうか、そして法務省が作成したのか、その点について確認をさせていただきたいと思います。内容は、報道されているところでは次のとおりとなっております。   刑事被告人証人喚問について   国会における証人喚問について、法務省、検  察庁は、国会の良識を信頼して、従来特に意見  を申し述べないこととしている。しかしなが  ら、一般刑事被告人証人として喚問すると  なれば、被告事件内容についても質問が及ぶ  ことが予想されるが、その結果として公訴事実  の存否について論じたのと同様の結果を生じせ  しめることとなる場合には、国会が、本来これ  を使命とする司法に先立って公訴事実について  の判断をしたとの印象を、当該被告人のみなら  ずマスコミや国民一般にも与えてしまい、刑事  裁判の公正と司法に対する信頼を確保する上で  問題があるし、また、偽証罪の制裁の下で刑事  被告人に証言を求めた場合、当該被告人法廷  で供述すべき内容を固めてしまうことになり、  黙秘権保障観点のみならず、法廷における被  告人防御一般観点からも、人権保障上の問  題を生じるおそれがある。このように報道されておりますが、このとおり間違いないでしょうか。
  6. 濱邦久

    濱政府委員 メモ内容はそのとおりでございます。
  7. 小澤克介

    小澤(克)委員 これは法務省が作成した文書ということでよろしいのでしょうか。
  8. 濱邦久

    濱政府委員 そのとおりでございます。
  9. 小澤克介

    小澤(克)委員 これまでの御説明では、この文書はいわゆる陳情をするために法務省見解を統一した、このように伺っているのですが、私はそれはちょっとそういう説明には無理があるんじゃないか、理由はまた追ってお尋ねしますが、そのとおり間違いございませんか。
  10. 濱邦久

    濱政府委員 刑事被告人証人喚問の問題について法務省考え方メモにしたためたわけでございます。陳情という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、私どもの方で刑事被告人証人喚問問題点について御説明申し上げて、陳情申し上げるについて作成したということでございます。
  11. 小澤克介

    小澤(克)委員 その説明は私には到底信じられない、納得できないわけです。この新聞報道自体が、やや違った二つ側面の事柄、これが同時並行的に時間的に接続して行われたために、やや混同といいますか、混然一体報道されているのではないかなというふうに、これは推測でございますが私はしているのです。  というのは、今読み上げたこのメモは専ら国会裁判所機関関係について述べているわけでございます。訴追機関である検察庁を所管しております法務省としての陳情という次元とややずれがあるように思うわけでございます。したがって、私が推測するところ、法務省法務省でいろいろ陳情して回ったというのは、まあ訴追機関検察庁、特に第一線検事さんのお立場を踏まえて、罪状認否も済んでない段階で、率直に言って素人が下手な質問をしてぐちゃぐちゃにされてしまったのでは訴訟遂行公判維持が非常にやりにくくなみ、そういうことからしばらく見合わせていただけないかという趣旨陳情をしたのではないか。  一方、このメモは、国会内の各党各会派がいろいろ証人喚問問題について意見を述べ合う際に、裁判所国会との関係についてこういう問題がありますよということを述べるために作成されたメモなのではないか。その際に、ある政党法律専門家である法務省さんの方に御意見を伺った、それに応じて法務省さんの方でも一種サービスとしてこういう見解を作成された、これが実態ではないかな、この二つがやや混然一体報道されたのではないかなと推測するのですが、そうではないのですか。  先ほどおっしゃったように、まさにいわゆるいうところの陳情をするためにこのような法務省考えとしてこういう見解をまとめられた、こうなんでしょうか。
  12. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘の後者の考え方であることは、先ほど説明したとおりでございます。
  13. 小澤克介

    小澤(克)委員 報道されているところによりますと、「法務省はこの件に関する見解をまとめた「メモ」を自民党提出したが、同党国対関係者によると「わざわざつくってもらったもの」という。」このように報道されているのですよ。この報道は間違いですか。
  14. 濱邦久

    濱政府委員 この問題点説明陳情に参りましたのは、法務省の、私を含めて四名おるわけでございます。したがいまして、四名の間でこの問題点について意見を統一するというか、そういうことでこのメモを作成したわけでございますが、そのメモ陳情する相手の方に渡すかどうかということは、これは陳情に回った音あるいは問題点説明に回った者のその場その場の判断で行ったと思うわけでございまして、私について申し上げますれば、このメモはもちろん持っておりましたけれども口頭で御説明したということでございます。
  15. 小澤克介

    小澤(克)委員 私がお尋ねしたのは、「わざわざつくってもらったもの」と、自民党要請でつくったというふうに新聞報道されているので、それが事実かどうかを聞いたのです。
  16. 濱邦久

    濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたよろに、私どもの方で見解を明確にするというか、統一したものを明確にしたいということで作成したものでございまして、自民党云々というようなことではございません。したがって、その部分については、もしそういう報道がなされているとしますと、それは誤りでございます。
  17. 小澤克介

    小澤(克)委員 ある党派からの要請ではなかった、こういうことでございますね。では、そうお聞きします。  このメモはどちらかの党派提出したということもこの報道では書かれておりますが、これについてはいかがですか。
  18. 濱邦久

    濱政府委員 その新聞報道にこのメモ公判提出したと書いてあるという御趣旨ですか。
  19. 小澤克介

    小澤(克)委員 公判て何ですか。
  20. 濱邦久

    濱政府委員 委員、今公判とおっしゃったんじゃないのでしょうか。
  21. 小澤克介

    小澤(克)委員 公判と言いましたか。特定政党提出したかどうかと聞いたのです。
  22. 濱邦久

    濱政府委員 特定政党提出したということではございません。
  23. 小澤克介

    小澤(克)委員 提出でなければどうされたのですか。
  24. 濱邦久

    濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、問題点説明陳情に回った者、これは四名おるわけでございますが、その場で口頭説明した者もございますし、今申しましたメモ陳情の相手方の委員の方にお渡しした者もあるということだと思います。
  25. 小澤克介

    小澤(克)委員 では、渡したということで、そうおっしゃるのだからそれに合わせますが、どなたがどの党にお渡ししたのですか。
  26. 濱邦久

    濱政府委員 ちょっとそこは、私直接渡しておりませんので正確でございませんが、自民党委員の方の一部にこの法務省の四名で回ったうちの者が渡したということであろうと思います。
  27. 小澤克介

    小澤(克)委員 他の党に渡した事実はないのですか。
  28. 濱邦久

    濱政府委員 私が聞いておりますところでは、渡したのは自民党の一部の委員の方にお渡ししたということだけ聞いております。
  29. 小澤克介

    小澤(克)委員 陳情趣旨見解をまとめた、法務省の内部で意思統一をした、そしてわざわざ文書までつくった。そうなれば、普通陳情するときは陳情書をつくって渡しますね。どうして一部の政党にだけ渡して他の政党には渡さなかったのか、私には理解できません。合理的な説明をしてください。
  30. 濱邦久

    濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、問題点説明陳情を申し上げる際に、その場の雰囲気でというか、口頭説明で済んだ場合にはそれでいいと思いますけれども、なお詳しくというようなことでお求めがあればそういうものもお渡ししたということであると考えております。     〔委員長退席星野委員長代理着席
  31. 小澤克介

    小澤(克)委員 私は先ほどからの説明は全く信用性に欠けると思いますね。わざわざメモというか陳情趣旨をつくれば、極めて文書として明確なものを渡すのが普通です、だれに対しても。一部の者に対して渡したということは、私の経験則からしましても、まさにそこから依頼されてつくって渡したという方が自然なんですよ。  新聞報道されているところによると、自民党国対関係者によると「わざわざつくってもらったもの」でジャーナリストが何の根拠もなしに、そのソースなしにこういうことを書くともなかなか思いがたい。ということから私としては、先ほど申し上げたような私の推測、すなわち一方は頼まれて専門家として知恵をかした、だから内容は専ら法務省とは無関係裁判所国会との関係についての内容になっている、一方法務省法務省として、訴追事務を扱う検察庁を所管する官署として特に第一線検事さんの不安などを外しながら、いわゆる本来の意味での陳情でしょうけれども陳情に回った、この二つのやや違った側面がごちゃまぜに報道されたのではないかなという推測、私はその方がどうも事の真相に近いのではないかという感じを、今の御説明にもかかわらず持ちます。持ちますが、しかし、あなたの方でこれはまさに陳情のために法務省見解をまとめたんだ、こうおっしゃるからには、それを前提に質問を続けたいと思います。  それで、前回私が刑事局長うそつきだと決めのけたままになっていて、お互いに大変不本意だと思うのですけれども、その続きについて伺います。  このメモの作成及びいわゆる陳情行動についてあなたが、あなたというのは刑事局長ですが、平成四年二月二十六日の当委員会審議の中で、沢田委員質問に対して「裁判所当局からも御意見が出ているわけでございまして、そういうものも私どもは踏まえたつもりでございます。」このように答弁された。一方、三月二十六日に私の質問の中で、裁判所に対して、刑事被告人証人喚問に関して法務省に対して一般的にあるいは本件特定してでも何らかの意見を申し述べたり要請をしたりしたことがあるかと聞きましたら、全くそういうことはございません、こうおっしゃった。そこで私は、あなた、うそついたのじゃないか、こう指摘したわけでございます。この点について御答弁が不十分なままになっておりますので、ぜひこの点についての御答弁を願いたいと思います。
  32. 濱邦久

    濱政府委員 委員の御指摘になられました二月二十六日の当法務委員会におきまして、私は沢田委員の御質疑に対しまして、「検察当局考え方を踏まえたということも事実でございます。」それから「裁判所のお考え、これは今回に限らず、従来から刑事被告人を初めとする裁判係属中の事件関係者証人喚問につきましてはたびたび御議論がございまして、裁判所当局からも御意見が出ているわけでございまして、そういうものも私どもは踏まえたつもりでございます。」こういう御答弁を申し上げたわけでございます。  三月二十六日の当委員会の御質疑におきまして小澤委員は、私の記憶に間違いかなければ、最高裁当局に、法務省にこの問題について意見を言ったことがあるかどうかということをお尋ねになられまして、最高裁当局の方から、そういうことはないというお答えがあったかと思うわけでございます。そういうことから、多分小澤委員の方から私に対して今御指摘のような御質疑があったのであろうというふうに思うわけでございます。それに対して私がお答えを申し上げようと思って、途中で制止されましで、答弁が中断しております。そのところについてお尋ねでございますので申し上げますと、最高裁当局のお考えを踏まえたというふうに申し上げましたのは、従来の国会での御議論の中で最高裁の御当局からこの刑事被告人証人喚問の問題について御意見が表明されている、そのことを踏まえて申し上げたということをお答えするつもりで、たしか、「例えば第百二回国会参議院法務委員会におきまして社会党寺田熊雄議員の方から……」ということを言いかけたところで制止されて、お答えがその後できなかったというのが事実でございます。
  33. 小澤克介

    小澤(克)委員 その点についてはわかりました。私も時間がもう迫っていたので制止をしてしまったというところがございますのも、御指摘のとおりでございます。  そういたしますと、改めて伺いますが、あのとき私はまず一般論として、最高裁に対して「国政調査との関係で、刑事被告人に対する国政調査手続としての証人喚問について、裁判所が一定のお考え検察あるいは法務省に対してお示しになったというようなことがありますでしょうか、明示、黙示を問わず、あるいは何らかの要請等をしたというようなことがございますでしょうか。」というふうにまず一般論で聞いて、その次に本件について、この際の件について特定して「事前に裁判所として法務省の方にお願いをしたり打ち合わせをしたりといったことはあったのでしょうか。」と、二つに分けてお尋ねしているわけです。  確かに私は、この際、検察あるいは法務省に対してお示しになったかというふうに限定して聞いておりますから、そうではない、国会に対して裁判所がかつて何らかの審議等でそういう見解示したということであれば、そのことを踏まえて刑事局長さんがおっしゃったんだとすれば、うそをついたという決めつけ方は、私、妥当でなかった、今率直にここで認めたいと思います。  そこで、ただ、なお私疑問がある。あなたがおっしゃった百二回参議院法務委員会ですか、これはどういう事例だか、せっかくですから続きを教えてください。
  34. 濱邦久

    濱政府委員 委員この速記録をごらんになっておられると思いますのでくどくどとは申し上げませんが、昭和五十九年十二月二十日の第百二回国会参議院法務委員会におきまして、社会党寺田熊雄議員から最高裁判所長官代理者に対する質疑が行われたわけでございます。一つ自民党政調会への主として当時刑事被告人となっている者の証人喚問の問題、それからもう一つ国会法務委員会への刑事被告人を含めた関係者証人喚問という問題について寺田熊雄議員から御質疑がございまして、最高裁判所長官代理者の方からお答えがあったわけでございます。  そのお答え要旨は、これは要旨だけ申し上げますので、足らないところがあれば委員から御指摘いただきたいと思いますが、「具体的な刑事事件というようなものをお取り上げになります場合、特にそれが係属中の事件でありますとか、あるいは近く係属することが予想される事件でありますとか、そういうものにつきましてはこ途中飛ばしますけれども、「一般国民の目から見ますと、これが何らかの司法に対する影響を与えるのではないか、裁判所もそれによって何らかの影響を受けるのではないかという危惧を抱くということが、まあその取り上げ方あるいはその方法にもよりましょうし、場合によってはそういうおそれもないわけではないというふうに考えるわけでございます。」というようなことがございまして、その後でさらに寺田熊雄委員の方から、「一般論としてこ「これを委員会に呼ぶとか、あるいは法務委員会証人として喚問するというようなことがあってはならないことは申すまでもないのであります。」「結論としては最高裁刑事局長も一緒でしょうな。どうでしょうか。」という確認を迫っておられまして、「一般論として申しますと先ほども申し上げたところでございまして、国民の疑惑を招かないというような御配慮を賜りたいと思います。」「国会にお呼びになるというような点、これ全く仮定のことで恐縮でございますけれども先ほどちょっとお話に出ました例の浦和充子事件に関する経緯というようなものもございまして、これは国政調査権の行使と司法権の独立、あるいは三権分立との関係で難しい議論もあるところでございます。ひとつ今後ともその点についての御理解と御配慮を賜りたいというふうに考えております。」  要旨あらかたそういう趣旨質疑答弁があったものを指摘したつもりでございます。
  35. 小澤克介

    小澤(克)委員 ちょっと質問が飛んで恐縮ですが、ことしの二月の段階で阿部それから森口刑事被告人証人喚問が問題となっていたとき、国会ではどういう観点からこの証人喚問を要求していたか、国会で何が政治課題となっていたか。  私の認識では、まさに国会改革、このことが問題となっており、政治腐敗をいかに防止するか、追放するか、国会自身が自浄能力をいかに発揮していくべきか、こういう観点からまさに政治改革論議の中でこの証人喚問が問題になっていたと私は理解しているのですが、刑事局長はどのように理解しておられましたか。
  36. 濱邦久

    濱政府委員 国会がどういうお考えで当時あられたかということは、私どもの方からお答え申し上げることはいたしかねるわけでございます。  ただ、私どもで頭にありましたことは、刑事被告人証人喚問という問題につきましては、しばしば申し上げておりますように、司法の公正あるいは刑事被告人に対する憲法上の権利保障の観点から問題が生じるおそれがあるということを問題点として考えていたわけでございますから、そういう問題点を御説明申し上げて、そのことを御考慮いただいた上で国会において対処していただきたいという趣旨で御説明に上がり、陳情にも上がったということでございます。
  37. 小澤克介

    小澤(克)委員 陳情したと言うからには、国会で何が問題になるんだろう、証人喚問が行われたらどんなことをどういう観点から聞かれるんだろうということは一定の予測、理解のもとに陳情されたんでしょう。それは当然ですね。そうでしょう。そういうことを一切関係なしに、全く一般論として、刑事被告人証人喚問については裁判所の訴訟手続との関係で問題あり、こういう観点からわざわざ陳情されたわけじゃないでしょう。この特定の、現に係属している刑事裁判に関連して陳情されたわけですね。だから、国会がどういう観点から証人喚問をしようとしていたのかということについては、あなた当然認識があったと思いますよ。立場上言えないという、言えるか言えないかの問題は別として、認識があっなかなかったか、これは別問題ですね。当然認識があったでしょう。
  38. 濱邦久

    濱政府委員 先ほど申し上げましたように、一般刑事被告人証人として喚問するとなりますと、被告事件内容についても質問が及ぶことが予想される、その結果として公訴事実の存否について論じたのと同様の結果を生ぜしめることとなる、そういう場合には、国会側が、本来これを使命とする司法に先立って公訴事実についての判断をしたとの印象を、当該被告人のみならずマスコミや国民一般にも与えてしまい、刑事裁判の公正と司法に対する信頼を確保する上で問題があるという一つ問題点先ほどメモの中で申し上げておりますけれども、もちろんそういう刑事被告人証人喚問ということでありますれば、今のような問題があるということでございます。それは私ども念頭にあったわけでございます。
  39. 小澤克介

    小澤(克)委員 私が聞いたのは、国会がいかなる意図で、立法課題も含めていかなる政治課題を持ち、そのためにいかなる理由で国政調査権を行使しようとしたのか、そのことについてあなた方当然、これは新聞に毎日報道されていたことですから、認識があったのではないかと聞いているのです。あったのか、なかったのか。当時国会がこの両名を証人喚問しようとしていた意図、目的、これについて認識があっなかなかったかと聞いているのです。
  40. 濱邦久

    濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、国会がどういうことをお考えになっていたかということは私どもの方で申し上げることはいたしかねるかと思いますが、要するに、片方で刑事被告人となっている身分を持っている者を証人として喚問するということにつきましてはこういう問題がありますということを申し上げたかったということでございます。
  41. 小澤克介

    小澤(克)委員 依然として質問に答えていないのですね。国会がどういう意図であったかについてあなたは認識していたか、認識していなかったかと聞いているのです。言う立場にないから言えないというのは、それはわかるというか、それは一つ考え方だろうと思いますが、言うか言わないかとは別に、あなたに認識があっなかなかったか、このことについて聞いているのです。
  42. 濱邦久

    濱政府委員 国会証人喚問されるということは、これは国政調査権の行使として行われるものであるということはもちろん認識しております。
  43. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうではなくて、何のために国政調査権を行使しようとしていたか、何が当時の政治課題だったか、それについてはあなたは認識しているのじゃないかと聞いているのです。
  44. 濱邦久

    濱政府委員 ですから、先ほどお答え申し上げておりますように、国会がどういうことをお考えになって証人喚問をしようとしておられるのかあるいはどういう意図を持っておられるのかということは、私どもの方からはお答えいたしかねるわけでございます。
  45. 小澤克介

    小澤(克)委員 言えないから言わないというのならいいのですよ。無理に言えとは言ってない。 あなたの頭の中に認識があっなかなかったかと聞いているのです。(発言する者あり皆ちょっと規制してくれませんか、委員長。——認識があっなかなかったか聞いているのですよ。あったと言ったら、その内容を言えとは言ってないのですよ。認識があっなかなかったか聞いているのですよ。あっなかなかったか、どっちかでしょう。
  46. 濱邦久

    濱政府委員 ですから、先ほどお答え申し上げておりますように、国会証人喚問をするしないという御議論をなさるにつきましては、それはどういう意図でなさるかということは私どもの方ではわかりかねるわけでございます。ただ、一般的に申しますと、国政調査権の行使ということでございますから、国政調査権の行使をされる場合に、いろいろな目的でおやりになられると思いますけれども、その点は国会が御判断になられることではなかろうかと思うわけでございます。
  47. 小澤克介

    小澤(克)委員 国会判断するのは当然です。  あなた、この当時何が国民的な政治課題だったか、そのことについては新聞で連日報道されていたんだから認識があったでしょう。——では、まあいいです。  というのは、なぜそんなことを聞くかといいますと、あなたが援用された最高裁の参議院の法務委員会に対する見解の表明というのは事柄が全然違うのですよ。そのことを指摘しようと思ってまずあなたの認識をお尋ねしたかったのですけれども、やむを得ません。  それではもう一つお尋ねしますが、あなたはこの第百二国会の参議院における最高裁側の答弁指摘されましたが、それ以外に、裁判所から刑事被告人証人喚問について何らかの見解の表明があったのでしょうか。そういうことを踏まえておられたのでしょうか。
  48. 濱邦久

    濱政府委員 刑事被告人を初めとする係属中の事件関係者証人尋問等につきましては、今御指摘申し上げた参議院法務委員会の場以外でも、内閣委員会、予算委員会各所でたびたび御議論が行われておることは、もう委員御案内のとおりだと思います。  ただ、今御指摘になられましたように、最高裁判所長官代理者に対して質問をされて、その答えとして今申し上げたようなお答えがあったということにつきましては、私の知る限りでは、よく調べてないのかもしれませんが、今御指摘になられた百二回の参議院法務委員会の御議論だけを承知いたしております。
  49. 小澤克介

    小澤(克)委員 ということは、沢田委員に対する答弁も、このケースのみを念頭に置いて裁判所当局から御意見が出ているということをおっしゃったわけですね。
  50. 濱邦久

    濱政府委員 そういう趣旨でございます。
  51. 小澤克介

    小澤(克)委員 それでは、それを前提に伺います。  先ほどあなたみずからも言ったとおり、この百二国会における、もう少し具体的に言いますと昭和五十九年十二月二十日参議院法務委員会での質疑でございますが、ここで問題になっているのは、まず自民党政調会内に司法の公正に関する特別委員会なるものがあった、ここでいろいろな調査の手続をされた、このことが問題になっているのですよ。  先ほどあなたが最初に引用された最高裁長官代理の小野幹夫さんの答弁は、専らそのことについて答弁しているのです。国会国政調査権とは全く別の事柄について答弁しているのです。それが第一点。  それから、ここで問題となっているのは、終始この特別委員会なるもので裁判の具体的手続についてあれこれ批判をし、議論をしているわけです。  具体的に言いますと、このロッキード事件で政治が司法に介入したという観点から、鬼頭史郎元裁判官の、これは弾劾裁判所でも問題になりましたが、軽犯罪ということで刑事事件にもなっておりますが、この点について、にせ電話をかけたのはほかの人であった、鬼頭史郎氏ではなかったという観点からこの弾劾裁判、まあ弾劾裁判は別といたしまして、刑事訴訟手続等についてその不当性を問題にする。それから第二番目は、大久保利春という方、これは丸紅でしたか、ちょっと記憶は正確ではありませんけれども、この方を議院証言法における偽証ということで逮捕した際に、まだ議院側から、衆議院の予算委員会から告発がなされていなかった。告発がなされていないのに先んじて逮捕したことがおかしい、けしからぬ。それから三番目に、ロッキード事件で行われましたいわゆる嘱託尋問、この手続が違法である、こういう観点から訴訟の手続そのものを批判したのです。そして、これを批判しいろいろと追及する、そのために当時の関係者をいろいろ呼びつけようとした、こういうことに関して答弁されておられるんですよ。  まず、国政調査権の問題です。本件では確かに、最後にあなたの触れられたところでは国政調査権についても、このときにも、このときというのは百二国会でも触れておられますけれども、これはちょっと後回しにしますが、それについて専ら答えたことが最初に引用された部分です。全く事案、事象が違いますね。  先ほどあなたは、認識すらなかったというふうに言いましたけれども、そんなことはないでしょう。さきの予算委員会で問題となったのは、裁判の手続がおかしいとか、そんなことを問題にしようとしたわけではないことは明らか、公知の事実でしょう。まさに議会が自浄機能を発揮するためにはどうしたらいいのだろうか、こういう観点から、巨額の金のやりとりがあったらしいという報道がされている以上、そのことについて議会として、裁判刑事手続とは全く別の観点、別の機能、役割からお尋ねしようとしたわけですよ。そのことをあなたが認識がなかったと言うのは通りませんよ。だから、私が言っているのは、全然別の事柄ではないか、あなたが引用したのは全く不適切なものを引用したのではないか、こう聞いているのです。いかがでしょうか。
  52. 濱邦久

    濱政府委員 今御指摘になっておられます百二回国会参議院法務委員会におけるこの質疑答弁の前段部分は、委員今御指摘になられましたように、政党の特別委員会の調査の問題について寺田熊雄議員が聞いておられますけれども、それに対しても、最高裁判所長官代理者の方からは、一般論として、国政調査権の行使と司法権の独立との関係に触れてお答えになっておられるわけでございます。  また、寺田議員の後段の御質疑は、国会委員会証人として喚問するというようなことがあってはならないという立場からの御質疑で、それに対して最高裁判所長官代理者の方から、先ほど私がお答え申し上げましたように、やはり国政調査権の行使と司法権の独立との関係について御理解と御配慮を賜りたいということをお答えになっておられるわけでございますから、そこは、先ほど私がお答え申し上げたことはそのとおりではないかというふうに思っております。
  53. 小澤克介

    小澤(克)委員 全く違いますね。前半について、小野さん、今最高裁裁判官になっておられますが、これは私事ですが、私が司法修習したときの刑事裁判の教官だった方ですけれども、この方が、「政党におきましてもいろいろ立法を御検討になるとか、あるいはいろいろ施策をお考えになるというようなことで事実関係を御調査になるということは必要でもございましょうし、当然でもあろうかというふうに考えるわけでございまして、また司法制度についてもいろいろ御検討になるということも当然あろうかと思います。」政党一般的に立法のためにいろいろ調査するのは当然だ、その調査する中には司法制度について御検討になることも当然だろう、それを前提に、ただ、具体的な刑事事件というものを取り上げると問題あり、こう言っておるのですよ。これは委員会の、国会国政調査権とは何の関係もない発言、答弁ですよ。よく文章を、文脈を読んでください。
  54. 星野行男

    星野委員長代理 小澤君に申し上げますが、実質的には質疑はかみ合っていると思うのですが、しかし、それ以上やってもどうですかね。——もう一度刑事局長お答えをさせますが、そのくらいにしていただきたいと思います。  濱刑事局長
  55. 濱邦久

    濱政府委員 先ほど私がお答え申し上げましたけれども寺田熊雄議員質疑は、この後段の部分は「一般論としてこ「法務委員会証人として喚問するというようなことがあってはならないことは申すまでもないのであります。」「結論としては最高裁刑事局長も一緒でしょうな。どうでしょうか。」という質疑になっているのですね。それに対して、前段ちょっとございますが、最高裁判所長官代理者の方のお答えは「一般論として申しますと」「国民の疑惑を招かないというような御配慮を賜りたいと思います。  また、国会にお呼びになるというような点こ「これは国政調査権の行使と司法権の独立、あるいは三権分立との関係で難しい議論もあるところでございます。ひとつ今後ともその点についての御理解と御配慮を賜りたい」、こういうふうに御答弁しておられると理解しております。
  56. 小澤克介

    小澤(克)委員 先ほど私が指摘したのはそこじゃなくて、その前の方のことをあなたは引用されたから、六ページの方を引用されたから、これは国会国政調査権とは全然無関係答弁ではないかと指摘したんです。いかがですか。     〔星野委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘になっておられます前段部分、この点につきましての最高裁長官代理者のお答えは、具体論についての「意見は差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。」ということで、   ただ、一般論と申しますと、政党におきまし  てもいろいろ立法を御検討になるとか、あるい  はいろいろ施策をお考えになるというようなこ  とで事実関係を御調査になるということは必要  でもございましょうし、当然でもあろうかとい  うふうに考えるわけでございまして、また司法  制度についてもいろいろ御検討になるというこ  とも当然あろうかと思います。ただ、具体的な  刑事事件というようなものをお取り上げになり  ます場合、特にそれが係属中の事件であります  とか、あるいは近く係属することが予想される  事件でありますとか、そういうものにつきまし  ては、先ほど委員からも仰せになりましたよう  に、裁判官は憲法で裁判の独立を保障されてい  ますと同時に、それはまさに裁判官の使命であ  りまた職員でもございますので、そのようなこ  とに裁判影響されるということはあってはな  らないことでありますし、私どもとしてはそう  いうことはないというふうに確信はしていると  ころでございますけれども一般国民の目から  見ますと、これが何らかの司法に対する影響を  与えるのではないか、裁判所もそれによって何  らかの影響を受けるのではないかという危惧を  抱くということが、まあその取り上げ方あるい  はその方法にもよりましょうし、場合によって  はそういうおそれもないわけではないというふ  うに考えるわけでございます。  これは国会を初めといたしまして各方面から裁  判の独立あるいは裁判の公正については十分な  御理解をいただき、また御配慮をいただいてい  るところで、非常にありがたく存じておるとこ  ろでございますが、ただいま申し上げましたよ  うなところから今後ともよろしくお願い申し上  げたい、このように考えておるわけでございま  す。こういうお答えになっているわけでございます。
  58. 小澤克介

    小澤(克)委員 だから、あなたが今読んだとおりですよ。政党の調査について答えているのでしょう。そうじゃないのですか。
  59. 濱邦久

    濱政府委員 この前段部分についてのお尋ねはそういうお尋ねで、ただ、そういう具体論を捨象して一般論として答えておられるわけでありますけれども、同じく司法の公正との関係司法権の独立との関係についてお答えになっておられるというふうに私どもは理解しているわけでございます。
  60. 小澤克介

    小澤(克)委員 政党におきましてもいろいろ御検討になるとかという文脈で言っているのじゃないですか。これが国会のあるいは院の国政調査権についての答弁と言うのは、幾ら何でも無理ですよ。そんなむちゃな答弁しないでくださいよ。ちゃんと読んでくださいよ。質問ももちろん政党の特別委員会の調査のことを聞いているし、答弁もこの段階では政党の調査のことを答えているのですよ。国会国政調査権について出てきたのは、質問の最後のところでほんのちょっとですよ。前半のところでそんなこと一切聞いていないじゃないですか。これは国政調査権についての答弁だとあなたはおっしゃるのですか。無理ですよ。もう一遍よく読んで答えてください。
  61. 濱邦久

    濱政府委員 国会、議院の国政調査権の行使と司法権の独立についてお答えになっておられるというふうに私は理解しております。
  62. 小澤克介

    小澤(克)委員 どうしてそういうふうに読めるのですか。小野幹雄さんは「政党におきまして」と答えているのですよ。国政調査権のことはどこにも出ていませんよ、この段階で質問にも答弁にも。国政調査手続のことは一切出ておりません。この自民党の特別委員会に出てこい、出てこないなら法務委員会証人として喚問するぞと言っている、そうなったらどうなんだということで、最後に国会証人喚問の問題がちょっと出ているのです。それ以前の問答というのは、全部自民党の特別委員会での調査についての問答ですよ。これを国政調査権の問題と混同されてはたまりませんね。これは国政調査権について小野幹雄さんが答弁された、こういうふうにあなたはおっしゃるのですか。
  63. 濱邦久

    濱政府委員 六ページに記載してございます最高裁判所長官代理者の御答弁の中で、「これは国会を初めといたしまして各方面から裁判の独立あるいは裁判の公正については十分な御理解をいただき、また御配慮をいただいているところでこ云々、「ただいま申し上げましたようなところから今後ともよろしくお願い申し上げたい、このように考えておるわけでございます。」ということでございまして、これは国政調査権の行使と司法権の独立との関係についてお答えになっておられるというふうに理解できるのではないかと私は考えております。
  64. 小澤克介

    小澤(克)委員 それは無理ですよ。確かに「国会を初めといたしまして」と書いてありますけれども、これは国会関係者という意味ですよ。これはそう読むのが当然でしょう。国会国政調査権の問題なんというのは、これまで質問にも答弁にも一切出てないのですから、それは無理ですよ。それが第一点。  それから、先ほど申し上げたとおり、ここで問題になっているのは専ら裁判手続を問題としていたのです。このような観点から、政党でももちろんでしょうが、国政調査権の発露として国会に呼んで当事者にあれこれ聞くということは私も不相当だと思います。寺田さんもそういうふうに思っておられるし、答弁の方も、当時の大臣も含めて皆さんそうおっしゃっている。これは私もそのとおりだと思いますよ。具体的なある訴訟についてその手続を洗い直す。寺田さんは「委員会に当時の関係者事件を洗い直すという見地から喚問することの是非についてどうお考えになるか。」こう聞いているのです。今回、この阿部、森口両名の証人喚問が問題になっていたとき、具外的な訴訟についてその手続を洗い直すなどということが国会で問題になっていたわけじゃないでしょう。あなた、そんなことは先刻御承知でしょう。これは全く事案が違うのですよ。こんなことを引用になるのは無理ですよ。そう思いませんか。
  65. 濱邦久

    濱政府委員 お言葉をお返しするようでございますけれども、この最高裁判所長官代理者お答えというのは、今申しましたように、国会国政調査権司法権の独立との関係について御質疑があってお答えになっておられるというふうに私は理解いたしております。
  66. 小澤克介

    小澤(克)委員 だから、この当時この問答で問題になっていたのは裁判の手続について、まさに事件を洗い直すという観点から、裁判の訴訟の手続が妥当だったのか妥当でなかったのか、違法だったのか違法でなかったのかという観点から、政党においてあるいは最後のところでは国会国政調査権として証人喚問をすることが妥当かどうか、こういう観点からの質問でこういう観点からの答弁であったと私は理解しますが、あなたはそう理解しないのですか。いかがでしょう。
  67. 濱邦久

    濱政府委員 先ほどからお答え申し上げておりますとおり、刑事被告人を例えば法務委員会証人として喚問するようなことがあってはならないという立場から御質疑になっておられて、それに対して同じ趣旨の御答弁最高裁当局からなさっておられるというふうに私は理解いたしております。
  68. 小澤克介

    小澤(克)委員 一度うそをつくとだんだんうその上塗りをしなければならない。あなたは今その典型ですよ。あなた、わかっているでしょう。  繰り返して言いますように、この問答はある事件の具体的な裁判の手続が違法だったとか違法でなかったとかそういうことを専ら問題にし、まさに裁判批判そのものとして国政調査権を行使しようとしているのですよ。これは私も相当でないと思います。これはまさに国会としての機能を越えるものだからです。事実認定あるいは法令の適用、具体的な事件の、紛争の解決であるとか権利義務関係を確定すること、あるいは国家の刑罰権を確定すること、これは裁判所の専権です。このことについて国会が踏み込むということは、まさに国会自身の越権です。これは国政調査権に内在する制約です。それを越えようとしている、これは妥当でない。私はこれはよくわかります。質問者も答弁者も同じ認識に立って問答しておられます。私もこの考え方に賛成です。  ここで、ことし問題になったのは、そういう裁判批判という観点とは全く違うのですよ。まさに国会が自浄機能を発揮するにはどうしたらいいのだろうか、政治腐敗を断ち切るにはどうしたらいいのだろうか、どういう法律が必要か、そのことを解明するために、まさに立法のために証人喚問を要求していた。そうでしょう。全く次元が違うでしょう。そのことをあなたはお認めになりませんか。百二国会のケースと今回のケースと全く事案が違うということをお認めになりませんか。どうですか、答弁してください。
  69. 濱邦久

    濱政府委員 先ほどお答え申し上げておりますように、法務委員会への証人としての喚問の問題については、同じようなことを後段の部分でおっしゃっておられるわけですね。議事録の字面でなしに、今の、実体の中身に踏み込んでのお尋ねでございますのであえて申し上げるわけでございますけれども刑事事件内容について証言を求めるということになりますと、司法の公正あみいは刑事被告人に対する憲法上の権利保障の観点から問題を生じるおそれがあるということは前から申し上げておるとおりでございまして、そのことは、刑事被告人証人喚問という問題についてはいつも問題になる事柄でございます。したがって、同じようなことであると私どもは理解しておるわけでございます。
  70. 小澤克介

    小澤(克)委員 残念ながら、この法案について質問する前に時間が来てしまいました。私にとっても大変残念です。お聞きしたいことはいっぱいあったのですけれども、しかし、どうしても刑事局長を中心にお答えいただかざるを得ないわけですから、こういういいかげんな答弁をされたままで次の問題に移ることはできなかった。私も法案審議という趣旨からやや外れたかなということは率直に反省いたしますけれども、やむを得なかったということを御理解いただきたいと思います。  時間が来ましたが、大臣に一言も御質問しなかったのは大変失礼なので一つだけ質問させていただきたいのですが、前回質問の際、最後に、当時、事務次官が秘書官のバッジをつけて国会内を濶歩しておられるというのはおかしいじゃないかということを御指摘しておいたのですが、この件についてどう処置されましたでしょうか。
  71. 田原隆

    ○田原国務大臣 事務次官になりますと慣例としてたしか政府委員から外れますので、ただ、国会側から、その後調べてみると、事務次官に秘書官バッジではなくて通常のバッジを持っていって出入りをしやすくするという慣例がどうもあるようでありまして、その点において、秘書官バッジと似ておりますけれども、秘書官バッジとして、秘書官として差し上げたんではないというふうに私は存じております。
  72. 小澤克介

    小澤(克)委員 時間をオーバーして大変恐縮ですが、今のはわからなかったのですが、結果として秘書官バッジをつけておられるのですか、おられないのですか。政府委員でないことはよくわかっています。こうなっているんですよ、政府委員は政府委員として名前を特定した通行証を持っているのです。それとは別に、各省庁に三十五個ずつ、名前を特定しない、だれでも融通し合えるバッジがあるのですよ。それをお使いいただく分には、私、何の問題もないと思うのです。秘書官バッジを事務次官がつけておられるというから、これはおかしいのじゃないかということを指摘したのです。些事にこだわるというふうに思われるかもしれませんが、こういうことはやはりルーズであってはいかぬと思ったから指摘したんですけれども、どっちなんですか。今よくわからなかった。
  73. 田原隆

    ○田原国務大臣 秘書官は、秘書官事務取扱と秘書官と二人おりまして、それ以外におりませんので、秘書官バッジではないと思いますけれども、ただ秘書官バッジとよく似たバッジではないかと思います。その細かい手続は国会の庶務関係の方がおやりになることでありますので私はよく存じませんけれども、政府委員でないけれども出入りがしやすいように、各事務次官には大体国会の方から名前を書いてお届けしておるように承っております。
  74. 小澤克介

    小澤(克)委員 終わりますが、大臣にお尋ねすることかどうかということもちょっと疑問があります。だけれども、これは私の方では、国会の警務部の方でちゃんと聞いたんですよ。事務次官が秘書官バッジをつけている、貸与しているというから、それはおかしいじゃないかということを指摘したのです。もうちょっと事実関係を調べて、何らかの機会にきちんと御答弁願いたいと思います。  終わります。
  75. 田原隆

    ○田原国務大臣 そのように、調べて御報告します。
  76. 浜田卓二郎

    浜田委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十時四十五分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  77. 浜田卓二郎

    浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。高沢寅男君。
  78. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣以下皆さん、御苦労さまでございます。私、刑事補償法少年補償法に関連して若干お尋ねをいたしたいと思います。  一番初めに、刑事補償法は昭和二十五年以来施行されてきているわけでありますが、少年補償法が今回制定されるということで、これだけの時間の差があった、おくれたということはどういう事情なのか、初めにそれをお尋ねしたいと思います。
  79. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘のとおり、現行の刑事補償法は昭和二十五年に立法されたわけでございますが、その刑事補償法が立法された当時、家庭裁判所における少年保護事件手続において犯罪等の非行事実が認められないということを理由に不処分等の決定を受けた少年に対しましても同様の補償を行うべきであるとの御議論は見られなかったように思うわけでございます。  それは、現行の少年法が刑事司法的アプローチをとらずに、国親思想と申しましょうか、保護を要する少年に対して、国、さらに申しますと家庭裁判所が、後見的立場で、専ら少年を保護あるいは後見・福祉的アプローチをとるということによったものというふうに考えられるわけでございます。ただしかし、このような後見的あるいは福祉的アプローチに対しましては、少年の権利保障と事実認定あるいは処分の適正の両面から問題が提起されたわけでございまして、現行少年法のもとにおきましても、少年の権利保障ないし適正手続の保障を重視した解釈運用がなされるに至っておるわけでございます。  このような状況のもとにおきまして、昨年の三月二十九日の最高裁決定におきましても、立法論として少年補償制度の創設が望ましいという意見が付せられたところでもございまして、現行少年法のもとにおいてでき得る範囲で早急に少年補償制度を創設して、少年等の保護に十分を期することとしたいというのが趣旨でございます。
  80. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は法理論とか法哲学なんていうことはまるっきり素人でありますが、ただ、今の局長の御説明で、刑事補償法ができたときに少年関係はむしろ国親思想で保護的な、そういう観点だから補償という扱いをしなかったという御説明があります。今回、しかし最高裁の決定等もあっていよいよこれができるということになったというその前提で、一種の法哲学的な、法理論的な、国親思想の何か転換というか見直しというようなことがあったのかどうか、その辺はいかがですか。
  81. 濱邦久

    濱政府委員 現行の少年法がよって立ちます国親思想と申しますか、あるいは家庭裁判所の後見的、福祉荊な立場を強調する立場という点は必ずしも基本的には変わってないと思うわけでございます。ただ、一方におきまして、一般刑事裁判手続において無罪の裁判がありました場合の補償につきましては今申しました刑事補償法が制定された、また捜査段階で不起訴処分に付された者につきましては被疑者補償という制度ができました。そういうようなこともございまして、それとのバランスから申しましても、少年補償というものを設けないままでおくのはいかがであるかという意見が強くなってきたということは一つ言えるのではないかと思うわけでございます。
  82. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうすると、法哲学の根本的な転換ではない、やはり少年法の関係はそういう保護的な、福祉的なということであるが、ただその関係少年といえどもある期間拘束される、自由を抑えられるということで受ける被害的側面に着目してそれは補償するというふうになった、こう理解してよろしいわけですか。
  83. 濱邦久

    濱政府委員 委員仰せのとおりだと理解しております。
  84. 高沢寅男

    ○高沢委員 今局長の御答弁の中に、刑事補償法関係で、無罪の裁判を受けた者に対する補償とそれから不起訴処分となった者に対する被疑者補償、この両面の言及がありましたが、この被疑者補償規程というものは性格上法律であるのかあるいは政令であるのか、どういうふうな性格のものか、お尋ねしたいと思います。
  85. 濱邦久

    濱政府委員 この被疑者補償規程と申しますのは大臣訓令の形式をとっているわけでございます。  大臣訓令は、これはもう詳しく御説明するまでもないかと思いますが、大臣が、その監督のもとにある行政機関または職員に命令または示達をするために発する行政機関内部の命令でございます。これを受けたものを拘束するわけでありますけれども一般国民に対しては直接の効力を及ぼさないというのがそもそもの大臣訓令の性格だろうと思うわけでございます。したがいまして、検察官に対して発せられた被疑者補償規程というものも、検察官に補償する権限と義務とを与えるものではございますけれども、不起訴処分を受けた者としては、その反射的効果によって補償金の受領または補償裁定の公示という利益を受けるものであるというふうに理解すべきものだと思うわけでございます。
  86. 高沢寅男

    ○高沢委員 ちょっとこだわるようですが、その大臣訓令は検察官に対してそういう権限を与えているということであるわけですが、検察官の判断次第によって、不起訴処分になった人が、ある場合は自由を拘束されたことに対する補償を受ける、ある場合は補償を受けない、そういうふうな何かばらつきが一体あり得るのか、そういうことはあってはならぬ、ばらつきはないというふうなことなのか、どちらでしょう。
  87. 濱邦久

    濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、検察官に対して補償する権限と義務とを与えるものでございます。したがいまして、被疑者補償規程の法文の形式から申しましても、所定の定められた要件のある場合には検察官として補償すべき義務があるという規定の仕方をしているわけでございます。
  88. 高沢寅男

    ○高沢委員 ばらつきはあり得ないということはわかりましたが、それならば、こちらは大臣訓令だ、こちらは法律だということではなくて、事柄の性格上、もう一本の法律にした方がわかりやすいのじゃないか、その方がいいのじゃないかという感じがしますが、どうですか。
  89. 濱邦久

    濱政府委員 この被疑者補償規程を法律にすべきではないかという御議論は前からあるわけでございます。ただ、被疑者補償規程を立法化するについてはいろいろ困難な面があるということを御説明申し上げて、御理解を得たいというわけでございます。  その理由を申し上げますと、一つには、被疑者補償規程を立法化する場合には、例えば起訴猶予の場合、要するに嫌疑は認められるけれども諸般の事情から起訴を猶予するという場合でございますが、そのような場合に補償請求権を認めるべきでないということはどなたも御異論はないと思うわけでございますが、そういう理由で、不起訴処分が行われた場合におきましても、本人からは、本当は無実であるんだということを主張して出訴することを、これは認めざるを得なくなるわけでございます。その結果、すべての不起訴処分について被疑者補償請求の審査ということで、裁判所がその嫌疑の有無を判断するということにならざるを得ないわけでございます。しかしながら、刑事訴訟法は、公務員職権乱用罪についての準起訴手続の場合を唯一の例外として、検察官が公訴権を独占する建前をとっているわけでございまして、不起訴処分の当否が裁判所の審査の対象になるということは、現行の刑事訴訟法の基本的性格から見て問題があるであろうというのが一つの理由でございます。  もう一つの理由は、検察官の不起訴処分には無罪の裁判のように確定力がないわけでございますが、もし検察官の、例えば「罪とならず」あるいは「嫌疑なし」というような不起訴処分に対しまして補償請求を認めることといたしますと、無罪の裁判と同じように確定力を与えることになるかと思うわけでございまして、法制的にその点でも疑義があるのではないかということでございます。  今申し上げましたような観点から、今日に至るまで被疑者補償の立法化は行われておりませんし、また当面、立法化する必要性は認められないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  90. 高沢寅男

    ○高沢委員 不起訴の場合と起訴猶予で今若干御説明があって、不起訴の場合にはもう容疑がない、起訴猶予の場合には、若干認められるがある程度情状によって起訴しないというようなことかもしれませんが、その場合も被疑者補償規程では補償の対象になるのですか、検察官の判断によって補償の対象になるのですか。
  91. 濱邦久

    濱政府委員 被疑者補償規程の第二条に補償の要件が定められているわけでございますが、そこには「被疑者として抑留又は拘禁を受けた者につき、公訴を提起しない処分があった場合において、その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるときは抑留又は拘禁による補償をするものとする。」ということになっているわけでございます。
  92. 高沢寅男

    ○高沢委員 次へ進みます。  少年法の関係であります。これは二十歳未満の少年ということであるわけですが、一方でこの今の国会に、これは外務の関係になりますが、児童の権利条約、私たちは子どもの権利条約と呼んでおりますけれども、提案されておりまして、こちらの条約では児童あるいは子供というものは十八歳未満となっているわけであります。この条約を批准する、当然そうなると思いますが、そうなったときの少年法の運用の二十歳と十八歳、この関係はどういうふうなことになるのか、お尋ねをしたいと思います。
  93. 吉澤裕

    ○吉澤説明員 児童の権利に関する条約につきましては、その締結につきまして政府部内で鋭意検討を重ねてまいりました結果、本件条約上の権利につきましては、その内容の多くは我が国も締結しております国際人権規約に規定されておりまして、基本的に、少年法を含みます我が国の現行法体制との関係において問題がないというふうに結論を出しているところでございます。  ただ、この条約の三十七条(c)というところに「自由を奪われたすべての児童」すなわち十八歳未満の者が、成人、十八歳以上の者から分離されなければならないという旨の規定があるわけでございますけれども、我が国におきましては、少年法等によりまして自由を奪われた者は基本的に二十歳で分離されていること等にかんがみまして、この規定に拘束されない権利を留保するという形で国会の承認をお願いしているところでございます。
  94. 高沢寅男

    ○高沢委員 今三十七条(c)の留保のお話がありましたが、これはまた当然外務委員会でもこの留保のところはいろいろ審議されることになると思います。  ここで私もちょっとお聞きしておきたいことは、留保するのは、三十七条(c)の全文を留保するのか、あるいは三十七条(c)の中のある部分を留保するのか、その点はどうかということが一つ。それから、ある部分を留保するとすれば、この条文の中のどの部分を留保するのか、これをひとつ聞かせてもらいたい、こんなふうに思います。
  95. 吉澤裕

    ○吉澤説明員 先ほど申し上げましたとおり、児童の権利に関する条約の三十七条(c)というのは「自由を奪われたすべての児童は、人道的に、人間の固有の尊厳を尊重して、かつ、その年齢の者の必要を考慮した方法で取り扱われること。」また「自由を奪われたすべての児童」、すなわち十八歳未満の者が、成人、十八歳以上の者から分離されなければならないことなどを規定しております。  我が国においては、少年法等におきまして、自由を奪われた者は基本的に二十歳で分離されていること等にかんがみまして、この三十七条(c)の一部、すなわち「自由を奪われたすべての児童は、例外的な事情がある場合を除くほか、成人とは分離されないことがその最善の利益であると認められない限り成人とは分離される」、その部分につきまして拘束されない権利を留保する、そういうふうにお願いしているところでございます。
  96. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういう留保のよしあしの判断はまた外務委員会でなされると思いますが、留保をするとすれば、日本はこの部分は留保しますよということはどこに対して通告するのか、どういう文言でその留保を通告するのか、参考のために聞いておきたいと思います。
  97. 吉澤裕

    ○吉澤説明員 この児童の権利条約の五十一条には「国際連合事務総長は、批准又は加入の際に行われた留保の書面を受領し、かつ、すべての国に送付する。」というふうに定められておりまして、我が国としてこの条約について留保を付して締結することについて国会の承認を得ました上で、この条約の批准書を国連の事務総長に寄託する際あわせて留保の内容を通告する、こういうこととなろうかと思います。  この条約に付すこととしております我が国の留保の文言は次のようなことを考えております。ちょっと長くなるかもしれませんけれども、「日本国は、児童の権利に関する条約第三十七条(c)の適用に当たり、日本国においては、自由を奪われた者に関しては、国内法上原則として二十歳未満の者と二十歳以上の者とを分離することとされていることにかんがみ、この規定の第二文にいう「自由を奪われたすべての児童は、例外的な事情がある場合を除くほか、成人とは分離されないことがその最善の利益であると認められない限り成人とは分離される」に拘束されない権利を留保する。」このような留保の文言を考えているところでございます。
  98. 高沢寅男

    ○高沢委員 今度は少年法の問題にいきますが、これの第二十条では「家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮にあたる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照して刑事処分を相当と認めるときは、決定をもって、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁検察官に送致しなければならない。但し、送致のとき十六歳に満たない少年事件については、これを検察官に送致することはできない。」こういうふうなことが書いてありますが、十六歳のことは後でまたお尋ねするとして、十六歳から二十歳までの少年が送致されるというふうになった場合、例えば死刑とか終身刑とかいうものに該当する非常に重い罪を犯したというふうな場合、裁判の結果そういう少年が死刑の判決、終身刑の判決というようなことを受ける可能性はどうなのかということです。  それに関連して、少年法の五十一条では、十八歳未満の者は今度はそういう判決の、要するに緩和を受けるというようなことが書いてあります。それをまた除外すれば、十八歳から二十歳の間という人たちは、現実に死刑や終身刑の判決を受ける可能性ということにもなってくるのです。そういうことは現実にあり得るということかどうか、それをお尋ねします。
  99. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘少年法五十一条には「罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもって処断すべきときは、無期刑を科し、無期刑をもって処断すべきときは、十年以上十五年以下において、懲役又は禁錮を科する。」というふうに規定しているわけでございます。したがいまして、犯行時十八歳以上の少年につきましては、死刑、無期刑を言い渡すことが可能であるわけでございます。また、十八歳未満の者にも無期刑を言い渡すことは可能な場合があるということでございます。
  100. 高沢寅男

    ○高沢委員 今までに、そういう十八歳から二十歳というふうな関係の人で現実に死刑の判決を受けたというふうなケースがあったのかどうか、あるいは十八歳未満の人が死刑相当、それが緩和されて終身刑ということを受けたケースがあったのかどうか、これはどうでしょう。
  101. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 現実にそういうような判決があったかどうかということでございますので、裁判所の方からお答えをさせていただきます。  最近の十年間を調べてみましたところ、少年事件で家裁から検察庁に逆送をされまして、起訴時少年であった者が死刑や無期懲役刑の判決を受けた人員の数は十四人ございます。その内訳としまして、無期懲役刑が言い渡された者が十三人、それから死刑を言い渡された者が一人という結果でございます。
  102. 高沢寅男

    ○高沢委員 それに関連するわけですが、もう一度先ほどの児童の権利条約、子どもの権利条約に戻りますが、それの三十七条の同はこんなふうになっているのです。「いかなる児童も、拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないこと。死刑又は釈放の可能性がない終身刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科さないこと。」こういうふうな(a)の条文になっておりますが、要するにこの考え方は、死刑とかあるいはまた釈放の可能性のない終身刑というのは残虐な刑であるという認識が前提にあって、そして十八歳未満の者にはそういうものは科さないこと、こういうふうなことになっているのじゃないかと思うのですが、この件の認識はいかがですか。
  103. 吉澤裕

    ○吉澤説明員 先生御指摘のとおり、三十七条の(a)の後段におきまして「死刑又は釈放の可能性がない終身刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科さないこと。」という規定がございますので、十八歳未満の者は死刑または釈放の可能性がない終身刑というものを科されないというような趣旨の規定であるというふうに理解しておりま す。     〔委員長退席鈴木(俊)委員長代理着席〕
  104. 高沢寅男

    ○高沢委員 残虐性の問題は、その認識はどうなんですか。
  105. 吉澤裕

    ○吉澤説明員 (a)の規定は、前段で「拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないこと。」ということで、後段として「死刑又は釈放の可能性がない終身刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科さないこと。」というふうな規定になっておりまして、この規定を全体として残虐な刑、品位を傷つける刑ということの規定というふうに考えることもできるかと思いますけれども、ただいずれにせよその規定ぶりとしては、(a)の前段ではそういうような残虐な刑罰というふうに規定されて、後段では死刑または終身刑のことが規定されている、そういうふうになっている次第でございます。
  106. 高沢寅男

    ○高沢委員 この前段にある「拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い」はしてはいかぬ、そして続いて今度は十八歳未満の者には死刑とか釈放の可能性のない終身刑はしてはいかぬ、これはつながっていると私は思います。そうなりますと、これは少年に対して残虐であるというだけではなくて、死刑とか釈放の可能性のない終身刑というのは成人に対しても、やはり少なくとも人間に対する残虐な刑であるというふうに考えるべきじゃないのか、私はそう思います。そういう意味で、最近我が国でも死刑は廃止すべきだというふうな運動がかなりずっと出てきていることは御承知かと思います。  そこで、外務省にお尋ねしたいのですが、国連で死刑廃止国際条約を制定しておりますね。それが国連でできた経過というものをまずお尋ねしたいと思います。
  107. 吉澤裕

    ○吉澤説明員 先生の御質問にございました死刑に関する国連の議定書は、国連の人権規約のB規約の第二選択議定書というふうに言われているものでございまして、この議定書はその第一条において、締約国は、その管轄内において死刑廃止のために必要なあらゆる措置を講ずるというような規定を置く等、締約国に死刑廃止などを義務づけるものでございます。この議定書は、国連の差別防止・少数者保護小委員会というものがございますけれども、この小委員会が一九八九年の三月に国連の人権委員会提出したものでございまして、その後その同じ年の第四十四回の国連総会に上程されて採択されたものでございます。その際の採択は、賛成五十九、反対二十六、棄権十八、欠席二十四、そういうような形で採択されたものでございまして、この議定書は一九九一年の七月十一日に発効いたしております。現在の締約国は、ことしの一月現在で十一カ国、こういうふうになっております。
  108. 高沢寅男

    ○高沢委員 この採択されるときの賛否の態度は、我が国はどういう態度をとったのか、ちょっとそれを教えてください。
  109. 吉澤裕

    ○吉澤説明員 我が国は、死刑廃止の問題というのは、一我的には各国によってその国民感情、犯罪態様等を考慮しつつ慎重に検討されるべきものであって、また死刑廃止についての国際世論の一致があるとは必ずしも言えないというふうに考えられますし、さらに、先ほどちょっと触れましたけれども、差別小委員会から人権委員会に上がってきて、そこで余り議論もされない中で投票に付されたということで、十分な審議を尽くすべきではないかという立場から反対投票をしたということでございます。
  110. 高沢寅男

    ○高沢委員 私としては、これに基づいて既にフランスなども死刑廃止の方向で進んでいるということも聞きますが、国連で採択されたということはこれはこれで非常な重みがあることであるし、また我が国は何かあれば必ず国連、国連ということで今やっているわけでありますから、そういたしますと死刑を廃止するという問題についても本当に真剣に検討する、取り組むということが必要ではないかと思いますが、これは外務省がいいのかあるいは法務省がいいのか、法務省の御見解があったら教えてもらいたいと思います。
  111. 濱邦久

    濱政府委員 まず、死刑制度の存廃につきましては、国際的にも国内的にもさまざまな意見があることは承知しておるわけでございますが、この問題は、国家、社会における正義の維持あるいは法秩序の維持を基本といたしまして、国際世論の動向等、国民世論の動向等種々の要素を総合的に考え合わせまして慎重に判断しなければならない問題であるというふうに考えているわけでございます。  ところで、現在我が国の国民の多くは凶悪な犯罪を犯した者に死刑を科することは正当であるというふうに考え、死刑制度の存続を支持していると認められることなどからいたしまして、仮に条約が発効するといたしましても直ちに我が国の従来の政策の変更につながるものではないというふうに考えているわけでございます。  それから、先ほど児童の権利に関する条約三十七条(a)の関係で、死刑または釈放の可能性のない終身刑が残虐な刑罰であるのかどうかということについてお尋ねございまして、私は外務省御当局からお答えになられたとおりだと思うわけでございますが、前段と後段の文脈から申しましても、死刑または釈放の可能性のない終身刑を十八歳未満の者が行った犯罪について禁止しているという規定でございまして、それぞれの刑罰自体が残虐な刑罰であるということを言っているのではないと理解しているわけでございます。
  112. 高沢寅男

    ○高沢委員 死刑を廃止するかどうかというのは大変重要な判断ですから、直ちに結論を出せというような考えは私もありません。ただしかし、この問題は、国際的な潮流とか、また日本の国内で今国民は残虐な行為には死刑を支持しておる、こう言われましたが、その国民の中にもまたいろいろな意見があるわけであります。したがいまして、この点は、法務省当局としても、例えば日弁連であるとかいうところとの間でかなり真剣な検討を進めていただきたいということを私としては要望いたしたいと思います。  次へ進みますが、少年補償法の中で、補償しないことができるという項があって、その中に、本人が辞退をしている場合というケースがあるのです。これは私、素人考えではちょっとよく理解できないのです。補償してくれるというのに要らないというのは、一体その本人がどういうふうなケースでそういうことになるのか、それをちょっと、こういうケースが考えられるというようなことを説明してもらいたいと思います。
  113. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘のとおり、少年補償法案第三条三号に「本人が補償を辞退しているとき」という規定がございます。少年補償を辞退すると想定できる場合といたしましては、例えば一つの例として、友人と一緒に暴行の共同正犯として逮捕された少年が審判の結果共謀事実がないということで不処分となった場合におきまして、自分も犯行現場に居合わせておって、友人が被害者に暴行を負わせていたにもかかわらずそれをとめなかったというような場合を仮に想定いたしますと、刑事責任はないといたしましても道義的責任を感じて補償を辞退する場合等が考えられるのではなかろうかと思うわけでございます。  ただし、補償の辞退があったからといって直ちにその補償の全部または一部をしないということになるわけではございません。少年法における、先ほど来申し上げております家庭裁判所の後見的な機能と申しますか、家庭裁判所が十分な後見的機能を発揮すべきことが予定されているというふうに考えるわけでございまして、一たん少年補償を辞退する意思を表示したからといって直ちに補償しない旨の決定をするということではない。家庭裁判所の後見的な判断と申しますか、そういうものが期待されているというふうに思うわけでございます。
  114. 高沢寅男

    ○高沢委員 次に、民法の八百二十二条、ここで懲戒権ということが定められております。「親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。」これは、懲戒する権限 といいますか、それが親権者にはあるんだというようなことだと思うのですが、この場合「必要な範囲内で」とあるわけですが、どういう範囲、どういう限界というようなことを考えておられるのかをお尋ねしたいと思います。
  115. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 お答えいたします。  未成年の子に対しまして親権を行う者は、その子を監護し教育する権利を有し、義務を負うということになっておるわけでございまして、そのために、御指摘のように民法八百二十二条は親権者に子に対する懲戒権を与えているわけでございます。  ここで言う懲戒というのは、結局、子の監護、教育上の見地から、子の非行とか過誤を矯正善導するということのためにその子供の身体あるいは精神に苦痛を加える行為である、一種の私的な制裁であるというふうに言われているわけでございます。こういう私的な制裁権というものが特に親権者に認められましたのは、子供の健全な成長発展というものについて責任を持つ親の立場からそのような権限が適切に行使されるということを期待して特に民法が与えたというふうに言われているわけでございます。  ただしかし、その具体的な限界ということになりますと、これは、子供の年齢とか子供の非行とか過ちとかいうものの内容あるいは親子間の日常のもろもろの関係というような具体的な事実に即して判断せざるを得ないということでございまして、判例等におきましても、そのときどきにおける健全な社会常識というものに従って判断をしなければならないということにされているわけでございます。この限界を越えますと、親権の乱用になって親権の喪失という事態にもなりますし、あるいは暴行罪とか傷害罪とか刑法上のいろいろな犯罪にも当てはまるわけでございます。ただ、この具体的な限界を抽象的に申しますと、やはりそのときどきにおける健全な社会常識によって判断をするということに帰するのではないかと考えている次第でございます。
  116. 高沢寅男

    ○高沢委員 私がこのことをお尋ねしたのは、これは御承知のとおり、つい最近あった事件でありますが、千葉県の市川市のある家庭のお父さんがその家庭の子供さん、非行の少年を改めさせようという意図を持って、昨年の年末ごろから最近まで、その家のベッドにその少年の足を鎖で縛って外ヘ出られないようにしていた、こういうことの結果、その少年は結局死んでしまったという事件がありました。こうなりますと、お父様は我が子の非行を直そうということを思ってされたのでしょうが、結果としては殺人というようなことになってしまう。この辺のところは清水局長が今言われた、それぞれの具体的な家庭の事情、親子の関係、いろいろなことの中で判断されなければならぬと私は思います。しかし、一番極端な場合、ここまで行ってしまうということにかんがみますと、親の懲戒権というのも、実際の該当者になれば非常に難しいということになろうと思うわけです。こういう場合に、いずれお父さんは司法のあれを受けるということになるのではないかと思いますけれども、そこら辺の情状の判断というものも非常に大事じゃないかと思いますが、この点、局長あるいはまた最高裁のお考えを聞きたいと思います。
  117. 濱邦久

    濱政府委員 まず、今委員が御指摘の千葉の事件関係について、私の方からお答えいたします。  具体的事件関係でございますので立ち入ったお答えは差し控えさせていただきますけれども、現在、千葉地方検察庁におきまして、監禁致死という罪名で警察から送致を受けまして捜査中であるというふうに聞いております。
  118. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 御指摘事件につきましては、私ども詳細な事実関係を承知し得る立場にはございませんので、具体的にそれについての私ども意見なり考え方を申し述べることは差し控えさせていただきたいと思います。  刑事局長から答えられましたとおり、現在、父親が監禁致死の容疑で逮捕されて捜査の対象になっているということでございますので、いずれそちらの方で何らかの結論が出されるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  119. 高沢寅男

    ○高沢委員 これ以上のお答えはなかなかということですが、最高裁、こういう事件裁判のあれになってきたときに、今度は当然それは担当される裁判官の判断というようなことにもなろうかと思います。一方に親権があり、しかし一方に結果として罪を犯してしまったということになると、しかも親子の関係というふうな状況の中で、それは情状というものが非常に大事な要素になるのではないか、私はそんなふうに思いますが、これについて何か御見解がありますか。
  120. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 確かに、いろいろ情状を考える場合には、諸般の事情を考えて総合判断することになると思いますけれども、今御指摘のような事例につきましては、法務省からもお話がありましたように、現実に捜査段階に入っているようなケースのようでございますので御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  121. 高沢寅男

    ○高沢委員 少年法の第三条で「審判に付すべき少年」とあって、一には「罪を犯した少年」、二には「十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」、こうなっています。私は素人で、お尋ねをしたいのですが、罪を犯すということと刑罰法令に触れる行為をするということとは、どこが同じでどこが違うのか、その辺の関係はどうなんですか。
  122. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘の三条一項一号は「罪を犯した少年」というふうに規定してございます。これは文字どおり犯罪を犯した少年になるわけですけれども、二号との違いは、二号は「十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」ということになっておりまして、十四歳未満の者につきましては、犯罪構成要件に該当する行為に及んだといたしましても犯罪は成立しないものというふうに刑法四十一条でされているわけでございます。したがいまして、十四歳未満の者については「罪を犯した少年」と言うことができないことになりますので、十四歳未満の者については「刑罰法令に触れる行為をした少年」というふうに規定しているわけでございます。
  123. 高沢寅男

    ○高沢委員 罪を犯した少年」、次は「十四歳に満たないで罪を犯した少年」、こういうふうに書いてはぐあいが悪いのですか。次の方は「刑罰法令に触れる行為をした」というふうに「罪を犯した」と違う表現をしている、ここがどう違うかということを私は聞いているのです。
  124. 濱邦久

    濱政府委員 現行の刑法の上では、十四歳未満の者が犯罪構成要件に該当する行為を行ったといたしましても犯罪は成立しないものというふうにされているわけでございます。したがって、「罪を犯した少年」ということは言えないわけでございます。「刑罰法令に触れる行為をした」というふうに言わざるを得ないということで、二号で別に規定しているわけでございます。
  125. 高沢寅男

    ○高沢委員 余りよくわからぬけれども、次へ行きましょう。  私が聞きたいのはその次の三です。今度はいわゆる虞犯少年ということになってくるので、ここが一番聞きたかったわけです。  ここでは、イ、ロ、ハ、ニと要件が書いてありますが、いずれにせよ虞犯ということは非常に抽象的な概念じゃないのかという感じがするわけです。これでもって「審判に付する。」というふうに現実に扱いを決めていく場合、どういう状況判断でするかということは担当官の主観の問題もかなり絡んでくるのじゃないのかという感じが私はするのですが、その辺、主観によるいろいろなばらつきはないのだと言うことが一体できるのかどうか、それをお聞きしたいと思います。
  126. 濱邦久

    濱政府委員 これはあるいは最高裁当局の方からお答えしていただいた方が正確かもしれませんが、私が理解している範囲でお答え申し上げたいと思います。  少年法三条一項三号のいわゆる虞犯少年に該当すると言えるためには、当該少年に虞犯事由と虞犯性が認められる必要があるということになっているわけでございます。虞犯事由と申しますのは、ここに規定がございますように、第三号のイからニまでに列挙されている事由を言うわけでございまして、虞犯性と申しますのは、当該少年の「性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある」ことをいうわけでございます。  ところで、虞犯事由の「保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。」と申しますのは、当該少年自身に保護者の監督を必要とする行状があるにもかかわらず、保護者の法律上または社会通念上正当な監督に服さないことを意味しているということでございます。  また、「正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。」と申しますのは、正当な理由があればこの要件にはもちろん該当しないわけで、したがって少年が虐待されているため家庭に寄りつかないような場合は含まれませんし、また、例えば向学心に燃えて家庭を飛び出したというような場合も直ちにこの要件を満たすとはいえないと理解しているわけでございます。  それから「犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。」と申しますのは、例えばいわゆる暴力団に加入したり、不良のたまり場あるいは不健全な遊興施設等に出入りすることをいうものと考えられるわけでございます。  「自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖」と申しますのは、例えば売春その他不純異性交遊等をみずから行い、またこれを他人に強いることをいうのではないかと思うわけでございます。  虞犯性と申しますのは、当該少年の性格または環境に照らして将来罪を犯しまたは刑罰法規に触れる行為をする蓋然性が必要でありまして、単なる可能性では足りないというふうにされているわけでございます。
  127. 高沢寅男

    ○高沢委員 今いろいろ虞犯の御説明がありましたが、そういうことによって審判に付せられるというようなことが結果として一種の予防拘禁のようなことになりはしないのか、こんなようなことも考えられるわけですね。予防拘禁というようなことになってくると、これは逆に今度は人権侵害というようなことにもなるわけであって、その辺の実際のころ合いはどうなのか、お考えを聞きたいと思います。
  128. 濱邦久

    濱政府委員 今虞犯少年の要件等について具体的にちょっと御説明申し上げましたけれども、虞犯の要件が具体的に定められているわけでございますし、また実務でも厳格に解釈、運用されているというふうに承知しているわけでございまして、予防拘禁のおそれが生じるというようなことは考えられないというふうに思うわけでございます。
  129. 高沢寅男

    ○高沢委員 この虞犯の概念は、少年法の枠内でだけある概念である。そうすると、今度は成人を対象とする刑法というふうな体系の中には虞犯という概念はあるのかないのか、これはいかがでしょうか。
  130. 濱邦久

    濱政府委員 今委員仰せのとおり虞犯という概念は少年法の概念でございまして、刑法の中には虞犯という概念はございません。
  131. 高沢寅男

    ○高沢委員 次に、また若干問題は変わりますけれども、犯罪被害者等給付金支給法という法律が昭和五十五年に制定されております。この法律が制定された経過を御説明願いたいと思います。
  132. 黒澤正和

    ○黒澤説明員 経過について御説明申し上げます。  昭和四十二年の六月でございますが、通り魔殺人被害者の御遺族の方々が殺人犯罪の撲滅を推進する遺族会を結成されまして、殺人犯罪の防止に関する請願を衆議院に提出するなどの運動を展開されたわけでございます。その後、昭和四十九年の八月でございますけれども、極左暴力集団による三菱重工ビル爆破事件が発生して、通り魔事件の被害者に対する救済制度の法制化を望む世論が大変高まりまして、犯罪被害者に対する補償問題は、御案内のとおり国会においても大きな議論を呼ぶところとなったわけでございます。  政府部内におきましても法務省と警察庁が協力しながら、諸外国の実施状況等も踏まえて、我が国の実情に適した制度のあり方などについて検討が進められまして、昭和五十五年、第九十一国会において法律が可決成立し、法律第三十六号として公布されまして、五十六年の一月一日から施行されているという経過でございます。
  133. 高沢寅男

    ○高沢委員 これが制定されてから今日まで、犯罪被害者給付金が支給された年度ごとの件数、それから金額というふうな資料も、この際、お聞きしたいと思います。
  134. 黒澤正和

    ○黒澤説明員 昭和五十六年一月一日の施行以来平成三年末まででございますが、総計で、事件数にいたしまして千五百五件、金額にいたしまして約五十五億一千九百万円支給をいたしております。  内訳でございますが、若干細かくなりますが、五十六年四十七件約二億一千万円、五十七年百二件約四億円、五十八年百八十六件約六億八千万円、五十九年百三十四件約五億円、六十年百六十八件約五億四千万円、六十一年百六十二件約五億四千三百万円、六十二年百四十四件約五億四千万円、六十三年百四十七件約五億九千万円、平成元年百四十五件約五億一千万円、二年百二十九件約四億三千万円、平成三年百四十一件約五億八千五百万円でございます。
  135. 高沢寅男

    ○高沢委員 今の御説明わかりましたが、その支給された約五十五億のお金、これはつまり国民の税金をもととする一般財源から出されているわけですね。そういう犯罪を犯して、そのために被害者が出て、犯した人が被害者に対して賠償する、こういう関係では有効に行われているのかどうか、この辺はどうでしょうか。
  136. 黒澤正和

    ○黒澤説明員 お答えいたします。  この犯罪被害給付制度でございますけれども、これが必要となる最も重要な点は、まさに損害賠償制度が犯罪被害の回復において十分機能しないことでございまして、賠償が加害者から取れない、死亡あるいは重障害を負った被害者に対して放置しておいていいのか、これがまさに出発点であったわけでございますけれども、諸外国の立法の例におきましては一般財源のほかに、例えば罰金でありますとか反則金でありますとか、そういったものをも財源としまして被害者救援活動、これは金銭的給付に限らずもう少し幅広い被害者救援活動でございますけれども、そういった例もございますので、今後の検討課題として勉強してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  137. 高沢寅男

    ○高沢委員 今の御答弁に関連しますけれども、一九八五年、第七回の国連犯罪防止会議が開かれて、そこで犯罪被害者に関する司法の基本原則というものが採択された、こういうふうに聞いているわけであります。この基本原則の簡単な中身、それからこれは条約というふうなものに該当するものであるのかないのか、その辺の原則の性格とかいうふうなことをちょっとお聞きしたいと思います。
  138. 隈丸優次

    隈丸説明員 委員の御提起の宣言でございますが、御案内のとおり八五年にミラノで開催されました犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する第七回国連会議の勧奨に基づきまして、同じ年の第四十回国連総会の決議において宣言として採択されております。  内容でございますが、犯罪の被害者ということで、まずは犯罪者の定義、それから司法及び公正な処遇へのアクセス、賠償、補償、それから社会的援助についての各宣言文がございます。そのほか、権力の乱用の被害者ということで、それにつきましても定義等宣言がされているということでございます。  後半の御質問のその性格でございますが、これは国連総会の決議として作成されました勧告的な性格を有するということでございます。したがいまして、国内法の見直しとその実施について加盟国に対し国際法上の法的義務を課すものではないと考えております。  一般に条約と申しますのは、国際法主体の、国の間におきまして文書の形式によって締結されて、国際法によって規律された国際的な合意をいうものでありますので、こういうような合意でありますれば、その締結主体に国際法上の権利義務が帰属されるということでございますが、この御提起の宣言と条約とはそういった意味におきまして法的性格において異なるということでございます。
  139. 高沢寅男

    ○高沢委員 これでもう終わります。  ここに、五月七日の朝日新聞の夕刊で、諸澤さんという、この人は常磐大学の学長ですが、今言いました犯罪被害者の救済問題に非常に熱心に取り組んでおられて、そして日本の被害者学会というものをつくって、その責任者もやっておられるという方がこの問題をいろいろ述べられて、諸外国でいろいろこういうこともやっておるあるいは国連ではこうなっているというお話をされて、我が国もこういう対策をさらに進める必要があるというふうなことを書いておられるのです。  大臣、ずっとお聞きであったと思いますが、こういう犯罪の被害者の救済という面は、お金の面、賠償とか補償という面が非常に大事ですが、そのほかにいろいろな社会的なあり方として救済していくということについて我が国は前向きに進むべきだ、私はこう思いますが、最後に大臣の御所見をお聞きして、終わりたいと思います。
  140. 田原隆

    ○田原国務大臣 お答えします。  犯罪被害についてのお話ですが、被害を受けた人は大変気の毒でありますが、単純に割り切って考えると、国が面倒を見なくても、被害を与えた人が払うべきじゃないかという論も成り立つだろうし、しかしその人に支払い能力がない場合に、ちょうど交通事故等においても似たような問題がいろいろ起こったりしますが、国が面倒を見なければいかぬということもあるだろうし、それから今言ったように、お金の面を超える非常に複雑な問題もあるようでございますが、そういう問題になると法務省だけで解決できる問題がどうかはわからない点もございますけれども、先生の今までの御議論をずっとお聞きしてその精神はよくわかったつもりでございますので、法務省当局におきましても勉強してまいりたい、こういうふうに考えております。
  141. 高沢寅男

    ○高沢委員 終わります。
  142. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員長代理 小森龍邦君。
  143. 小森龍邦

    ○小森委員 簡単な答弁をしていただいて、時間を効率的にお願いをしたいと思います。  まず、刑事補償少年法はこのたび初めてですから刑事補償の方のことになると思いますが、今回の値上げ幅を合理的とする理由、これは資料を見ると、物価と賃金の上昇率だけで見ておりますが、外国へ行ってみるとわかりますが、その国の生活水準との関係で苦痛率というものもありますね。今の時代に自動車がないというのは非常に苦痛なことですね。というようなことを考えると、あの表は余り参考にならぬのじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  144. 濱邦久

    濱政府委員 今委員が御指摘の点は、拘禁補償に関する日額上限の引き上げの算定の根拠はわかったけれども、それだけでは考え方として不十分ではないか、要するに、拘禁補償の損害というのはそれだけでは全部補償されないではないかという御趣旨お尋ねではなかろうかと思うわけでございます。  それで、今回引き上げをお願いしております一万二千五百円とした積算根拠については、もうここで申し上げさせていただくことは省略いたしますけれども、そもそもの基本的な考え方といたしましては、刑事補償は、一般国家賠償とは異なりまして、公権力行使の違法性あるいは国家機関の故意過失というものを要件としないで、簡易迅速に、言うなれば定型化された標準的な金額の補償を行おうとする制度であるわけでございます。  したがいまして、もとより無罪の裁判を受けた者がこうむった全損害を補てんしようとするものでないことは申すまでもないわけでございます。したがいまして、法定の補償日額の範囲では償われない損害が残り得ることは考えられるわけでございますが、そのような場合には、国家賠償請求という別の方法で損害を補てんすることを考えざるを得ないのではないかと考えているわけでございます。
  145. 小森龍邦

    ○小森委員 それでは本当に人権が守れるのかということで、そういう答弁を聞くたびごとに、我が国社会の人権感覚、あるいはこれは我が国だけでなくて地球全土にかかわる、先進国を含めての人権感覚の問題に関係してくるのではないかと実は私は思っていますが、これ以上のことは、これに関しては申し上げません。  次に移ります。  死刑囚に対して、今回二千五百万から三千万と改正が出されておるわけでありますが、死刑囚という立場の者が今日我が国全体では何名いるのか。これはこの前もちょっとあったようでありますが、私は六十名近いと承知しておりましたけれども、五十名というような数字が出たように思いますので、改めてお尋ねをします。そして、その死刑囚の中で、私が受けた判決は冤罪なんだと言って再審を求めている音あるいは再審は求めていないが罪を認めていない者、それからもう一つは罪を認めている者、ここらぐらいのところで分けて、おおよそわかる範囲でよろしいですからお答えをいただきたいと思います。
  146. 濱邦久

    濱政府委員 まず、死刑の裁判が確定した旨の報告があった者につきましては、平成三年十二月末日現在で死刑未執行の者は五十一名でございます。再審請求をした旨の報告があったものは十名でございます。また、過去に再審請求をしたことのある者は六名でございます。その余の者については再審請求はなされていないということになろうかと思います。
  147. 小森龍邦

    ○小森委員 その余の再審請求をしてない者のうち、再審請求はしないけれども最後まで罪を否認しておる、認めていない者というのは何名いるのでしょうか。
  148. 濱邦久

    濱政府委員 ちょっとその点については私ども把握してないわけでございます。
  149. 小森龍邦

    ○小森委員 法務大臣にこの辺でちょっとお尋ねをしてみたいと思いますが、死刑囚に三千万出すという制度があるということは、今まで二千五百万、今度三千万、それから再審請求の制度があるということは、わかり決まったことのようでありますけれども、今日のかなり整備された我が国裁判制度の中でも誤判があり、判決を受けた者は冤罪で泣く者がいるという意味ではないかと思いますが、法務大臣、いかがお考えでしょうか。
  150. 田原隆

    ○田原国務大臣 お答えします。  死刑の執行ということが誤って行われるようなことがあってはならないということは申すまでもないことでありますが、刑事補償法という補償という概念から出発するこの法律を制定する以上は、これは万全の、すべてのものを含む場合を想定して規定を設ける必要がありますので、こういう制度ができたわけでありますけれども、もちろん死刑の執行後に無罪となって補償された事例は今のところございません。
  151. 小森龍邦

    ○小森委員 私が尋ねておるのは、やはり人間のなせる技だから、これは万全には万全を期そうという傾向の措置ではないのか。そうすると、万全には万全を期そうという措置であるということになれば、果たしてこれは本当の意味で万全かということの反省が常に伴っていかなければならぬ、こんなことを私は頭の中で想定して尋ねておるわけでありますので、その趣旨お答えいただきたいと思います。
  152. 田原隆

    ○田原国務大臣 補償という概念は別にありまして、これを一〇〇という概念で見ますと、死刑というものが一〇〇%死刑という概念を除いて補償という概念を入れるとこの一〇〇%が少し理論的に満たなくなるということで、死刑という概念も入った一〇〇%になっておるわけですから、これは死刑が間違って行われてはならぬわけでありますが、理論的に補償というものは、考え補償の面から詰めていくと、そういう一〇〇に満たないということがあり得るという仮定でこういう法律体系にせざるを得ないということでありますけれども、現在の刑の捜査その他の段階から行われていくのは慎重に慎重をきわめてやっておりますから、今までこれをアプライして、適用して補償を実施したという例はないということで、先生のおっしゃるのも私の言っていることも同じことを別の面から言っているのだろうと思いますが、そのように御理解願いたいと思います。
  153. 小森龍邦

    ○小森委員 わかりました。  死刑に対してまだ補償したことはないという事実の面から、もう一つ再審というコースの方で救われておるというふうに思えるのと、もう一つは死刑の判決を受けて何らの権利主張ができずにそのまま死んでいった可能性をも含めて、つまりなかった、私はそういうふうに理解をいたします。そこで、予定をしておる質問をもう少し論理的に段階を追うていけば、さらに私の言わんとすることをわかっていただけると思います。  ちょっとこの辺で、少し余談になるかと思いますが、今回お出しいただいております刑事補償法の資料も、少年保護事件に係る補償法の問題につきましても資料の表が載っておりまして、昭和六十一年、六十二年、六十三年、平成元年、平成二年とあるのです。これは、この前も私は指摘をいたしましたが、我が国には昭和六十四年という年はなかったのでしょうか。
  154. 濱邦久

    濱政府委員 私からお答え申し上げるまでもなく、昭和六十四年というのも存在したわけでございまして、そういう意味では、お手元に資料として差し上げた中の記載の表示として平成元年とまとめて記載したのは必ずしも正確でなかった、不正確であった、むしろ昭和六十四年、平成元年と両方を記載すべきであったというふうに思うわけでございます。
  155. 小森龍邦

    ○小森委員 もしあえて元号で表記するならば、平成元年のところは「(昭和六十四年を含む)」となるのが一番正確だと思います。しかし、やはり一面では元号というものを政府は非常に大事にしておるというより国民に押しつけつつあると私は思いますが、この程度の四、五年の問題ならよろしいですけれども、少し長くなるとやはり習慣として西暦を併記してもらう方が便利なのではないか。つまり、ここへ表記しておるものがたとえ四、五年であっても、それが資料のいかんによっては十五年前とか二十年前のものが四、五年ずらっと並んでいる場合には、さて何年前かな、こういうふうになりますから、便利ということを考えてそういう習慣をつけてもらったらどうか。これは必ずしも政府はやっていない例ではない。きょうは時間がありませんから申し上げておきますが、その点、いかがですか。
  156. 濱邦久

    濱政府委員 確かに、一般的に西暦の併記を必要とするかどうかという御議論は別にあると思いますけれども、そうなりますと法務省だけではなくて政府全体の問題になるかと思うわけでございますが、個々の場合に、例えば今の参考資料が見やすいように、西暦の併記をした方が見やすいという場合には併記することもあっていいという御意見でございますれば、それはそのとおりだと思います。
  157. 小森龍邦

    ○小森委員 よく調べてください。ほかの政府関係から出てくる文書の中でも便宜上西暦併記をやっておるものもありますし、また私が過般国会質問書を提出いたしましたときに、国会側が元号を使ってもらわなければ困るということがありまして、私との間に押し問答がありまして、とうとう私は西暦でやりました。そして、そのてんまつについてしかるべき時期に公表しようと思いますけれども、事務総長から一札取っておりますというようなこともありまして、余りここらのところは国民に強制するものではないのではないか。特に、高度な自由なる精神活動と頭脳活動をしようとする国会等において、いわばこれしか視点が向かないような資料の出し方は間違いではないかということを付言いたしておきたいと思います。  せっかく元号の問題が出ましたので、宮内庁の方から明治、大正、昭和、平成の出典及びその出典のあたりの簡単な部分的な文章をごく簡単にお知らせいただきたいと思います。
  158. 坂本幸一

    坂本説明員 お答えいたします。  平成でございますが、これは「史記」の「五帝本紀」及び「書経」の「大禹謨」というところから、「内平かに外成る」「地平かに天成る」という文言の中から引用したものでございます。  また、明治、大正、昭和につきましては、それぞれ「易経」の中の「聖人南面して天下を聴き、明に嚮ひて治む」という文言、「易経」中の「大いに掌り以て正は天の道なり」という文言、それから「書経」中の「百姓昭明にして萬邦を協和す」という文言の中から引用されたものと承知しております。
  159. 小森龍邦

    ○小森委員 元号の本質というのは、時の支配者が時間的な単位まで支配しようという古代中国の考え方を日本が取り入れて、封建社会というよりもむしろ奴隷制社会のころからの歴史的経緯を持つものであります。そういう意味で、私は非常に気にとめておるわけでありますが、このことについての価値観は場所が違いますから、きょうはこの辺で、一応資料を聞かせてもらったという程度にとどめておきたいと思います。  続きまして、疑わしきは被告に有利にという有名な白鳥決定が何年に出て、そしてその出てから後に再審請求をして冤罪を晴らしたという人は何名いらっしゃるのでしょうか。
  160. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 白鳥決定が出ましたのは昭和五十年五月二十日でございます。  その決定が出た後、死刑判決を受けて再審で無罪になった件数は四件、四名でございます。また、無期懲役の判決を受けて再審で無罪になった件数は二件、二名でございます。
  161. 小森龍邦

    ○小森委員 今がち私が例示をいたします事件は、一九二八年、昭和三年でございます、今から六十四年前、私の郷里の人であり寸すので、私は特に深い関心を持ちます。この事件に対して裁判所に価値判断を求めたりはいたしません。なぜならば、これから再審請求をやるということでありますので、そういうことは国会でやるべきでなかろう、かように私も承知をいたしております。ただ、問題は、この人が六十四年の長きにわたって無実を言い続けておりまして、つい先日満九十三歳となりました。やっていないならば生きておる間に汚名をそそぎたいというのがこれは人間の人情でありまして、また周囲の者もそのことに対しては深く心を打たれるのであります。  再審の請求をいたしまして、順序とすればどういった手順でもって、私は法律の専門家でないから素人にわかるように、どういう手順をもって再審に至るのかあるいは再審棄却に至るのか、ごく簡単に御説明いただきたいと思います。
  162. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 御承知のように、再審を請求するにつきましては、確定判決を覆すに足りるだけの明白にしてかつ新規な証拠が必要でございますので、その証拠が裁判所提出されるわけでございます。その証拠と、今現在残っております。その確定判決が出るに至った記録、証拠関係等とあわせて裁判所の方で十分慎重な検討をして、再審請求の理由の有無をまず判断いたしまして、再審を開始するかどうかというところをまず判断することになります。
  163. 小森龍邦

    ○小森委員 それがもし公平ならば、国民が納得のいく公平な措置とすれば、素人判断といたしまして、私なら日常の行動でそういうことをやりますが、再審が必要か必要でないかを自分らだけで決めるのではなくて、画分らだけで判断するのではなくて、人にわかるような形で判断をするということが必要だと思います。人にわかるような形というのは、そのこと自体が公判に持ち込めるのかどうか、こういう意味です。
  164. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 再審の開始決定があった後は公開の法廷でなされますが、その開始するかどうかの判断に当たりましては公開の法廷で、公判でなされるわけではございませんけれども、しかしその再審開始を決定するか否かについては十分理由をつけて判断を示すことになります。もちろん、再審開始するかどうかについても、裁判所としてその方がよろしいという判断に立ては公開の法廷で開くことも十分ございますが、必要的でないということでございます。
  165. 小森龍邦

    ○小森委員 そういう法律的な余地があるということを私は小説風のものでは読んだことがあるのですけれども、条文を調べていないのでここで便宜的に聞かせてもらったわけであります。それならば、もつれてもつれてもつれ込んでおるようなものはやるべきだ、公開の法廷でやるべきだ、これは私の考えを申し上げておきたいと思います。  そこで、委員長、写真に類似したものなんですが、ちょっとこちら側に見せたいと思います。ここから見せますので、お許しいただきたいと思います。主として法務省最高裁に見ていただきたいのですが、こちら側の人にも見ていただきたいから、便宜上同じようなものを裏表指し示します。これは、六十四年間冤罪を主張しております山本老人なんです。九十三歳であります。見ていただくとわかりますように足が湾曲いたしております。この湾曲をずっと以前から、これは拷問によって関節を痛めてこうなったんだと言い続けておるのであります。しかしながら、島田刑事局長、この点は考えていただきたいと私は思うのですが、これがもし拷問によるものであるとするならば大変なことなんであります。当然そこから出てきた自白ということになりますから、これは大問題なんであります。そうなると、これくらいの問題があったら、やはり国民にわかるように公判でやるべきだ、私はこう思っています。そういう意味で、先ほどの私の意見を補強するために写真をお見せいたしました。  そして、もう一つ委員長に許可をいただきたいと思いますが、この拷問を受けるときに、私もこの間自分の体で実験をしてみましたが、ソバの実はとげが立ったようになっておるのです。このソバの実を警察署の柔道場か剣道場みたいなところへまいて座らせて、竹刀を足に挟んで、手を後ろへ結んで、わきの下へ竹刀を挟んで、そして最終的には、竹刀を挟んでおる手をくくっておりますから、体全体を浮かそうと思えば天井へつれば浮きますが、天井へつるされてぶら下げられてたたかれた、こういうことをこの老人は言っているのです。  そういえば、足の湾曲したところにその言葉に符合するものが残っておる。御承知のようにソバの実は物すごく先がとがっているのですよ。また後ほど大臣にお見せしたいと思いますが、私は、一分間腕をこれをまいたところへ置いておってこっちの手でちょっと押さえただけで、写真に撮ったら十分にここに傷がついておる、傷が写真に残るのです。そして、二時間痛さがとれませんでした。一分間であります。だから、どれくらい苦痛であるかということがわかると思いますが、今までの日本の裁判はこんなことから出てきた自白をもとにして裁判をしていたのではないか。これは疑いなのです。しかし、疑いにしても、それならば、そういう疑いを持つ者がおるとするならば、なおさら私は再審というのは、いや、書類審査でやってみたが関係なかったよというような返答でなくて、きちっとやるべきことをやっておるということを、公開の法廷という趣旨国民に知らせるという意味なんでありますから、そのことを私はやってもらいたいと思うのです。大臣、ごく常識的に、権力にそういう疑いがかかっておるときには、権力はやはり可能な限りその疑いを晴らすという手段も同時に講ずるということは大事ではないでしょうか。ちょっと大臣の意見を聞かしていただきたいと思います。
  166. 田原隆

    ○田原国務大臣 私は捜査に関して関心を深く持ち始めたのは最近でございますが、最近の捜査官は厳正公平に客観的にやっておると信じておりますが、過去においてそういうことを言っている方がおられるということは、今お聞きして知ったわけであります。しかし、それについて今直ちにここで論評を加えるのは、ちょっと私自信がございませんので、しばらく考えさせてください。
  167. 小森龍邦

    ○小森委員 深追いをするわけではありませんが、国家権力対その権力によって庇護される者、あるいは誤って罪を着た者、あるいは途中でその罪が晴らされた者、さまざまなケースがあるということは事実なんでありますから、したがってそういうことで自白を強要されて、後から幾らそれを否定しても取り上げてもらえなかったということを言う者がおって、しかも外見上、先ほど申し上げましたような、新聞が大きく取り上げましたが、これがその証拠なんですと本人が言っておる場合には、書類でさらさらっといくわけにはいかぬのじゃないか、重ねて私はそういうことを強く主張するわけであります。大臣は後からもっとじっくり考えると言われますから、大臣が言ったことが裁判所を拘束するということになるとまたこれは困ったものですけれども、私はもっとフランクに人道上の立場から大臣が何かお考えを述べられはしないかと思ってお尋ねしたわけです。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、田辺(広)委     員長代理着席〕
  168. 田原隆

    ○田原国務大臣 捜査の段階で現在いろいろあるとかいう話と違って、そういう既に裁判で結審が出て、裁判の結果を批判する結果になるようなことは私の立場としてはなかなか申しにくいわけでありますから、その点は御理解を願いたい、こう申し上げておるわけです。
  169. 小森龍邦

    ○小森委員 深追いはいたしません。結局は常識を持って、裁判所国民の納得のいくことをしなければならぬわけでありますから、少なくとも国会でこういうふうなパネルを見せながらというような場合は、やはりこのことは国民に広く知られるわけでありますから、既に広島県ではこれはみんな知り尽くしておることなんであります。  したがって、そういう趣旨に基づいてもう一つだけパネルを提示しますので、お許しいただきたいと思います。  この写真を見ていただきますと、これは私の機能の非常に粗雑なファックスの機械に拡大するために写真をかけたのですが、この人は頭のここがしらがなのです。これは養母でありますが、この人がつまり山本老によって殺されたということになっているのです。しかしながら、死体を写真を撮ったのを見ると、このおばあさんの髪はここからこう垂れておるのでありますが、ここは全然しらがじゃないのであります。死体が本物かどうかということも本人は疑っているのです。ということになるとなおさら慎重には慎重を期すことが必要であろう、こう思いますが、慎重には慎重を期すことが必要であろうということについては、大臣、どうですか。
  170. 田原隆

    ○田原国務大臣 一般論といたしまして、捜査については厳正公平であり、慎重に慎重を期して、そしてあらゆる可能性を考えてやるのは当然であろうと思いますが、先生のおっしゃった具体的な件に関しては、これは今私は論評を差し控えさせていただきたいと思います。
  171. 小森龍邦

    ○小森委員 私は石川一雄の再審に長くかかわっておりますので、あれだけの詳細なことをこちら側が出しても俗に言う書類審査でやられるということについては大変な不満を持っておるのであります。けれども、それはまた後ほど話をするといたしまして、ごく一般論として裁判は慎重の上にも慎重を期すべきであるというお考えについてはいかがでしょうか。
  172. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 一般論として申しまして、慎重には慎重を期すべきであるという点は、まことに同感でございます。
  173. 小森龍邦

    ○小森委員 さて、先ほど法務大臣の方から過去の拷問の事実という、そういうことを本人は訴えておるということを私の方からここで紹介をしたわけなんでありますが、必ずしも現実は過去のことばかりではない、私はそう思っております。したがって、しからばどういう問題があるかということになりますと幾らでもあるのですけれども、きょうはもう時間があと十何分しかございませんので後にまた譲るといたしまして、勢い理論の問題に入らざるを得ないと思います。  その理論の問題というのは、先般島田刑事局長と私とのやりと力で、刑事訴訟法の三百二十一条一項の二号のことにつきまして、アメリカにはこんなものはないでしょうという意味のことを尋ねまして、私の尋ね方も少しあいまいであったかもしれませんが、結局刑事局長答弁は、いや日本はアメリカ法の影響を受けておるのであって、アメリカ法の思想でできておるのだという意味のことがございましたが、この具体、つまり三百二十一条一項の二号のようなものはアメリカの法にはないでしょう。
  174. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 今御指摘の三百二十一条の一項二号には、御承知のように前段、後段と二つございまして、前段の方は、証人として呼ぼうとしてもその者が死亡なりあるいは病気のため公判廷へ出てこれない場合を規定しております。それから、後段のくだりは、公判には出てこれるが、公判で述べる証言と、それから公判外で述べた以前の供述とが内容が違う場合、それが後段でございます。  そのうちの前段の証人として喚問不能の場合、そのような場合にその者の以前になした供述調書の証拠能力を認めるという制度をとっておるところ、これはアメリカの多くの州がそのようなことをしておるというふうに聞いております。それから後段の方、これは我が国の法律はその後段の部分につきましても、その以前の供述と公判廷における供述とを比べて、いわゆる特信情況、前の供述の方を信頼すべき特別の情況が存するときには証拠とできるというふうに御承知のように規定をしております。そのような規定をしているところはアメリカにおいては少ないというふうに聞いております。ただ、アメリカにおいても、例えば公判廷における反対尋問を条件としてそのようなものについても証拠能力を認めておる州もあるやに聞いております。
  175. 小森龍邦

    ○小森委員 実は、島田刑事局長がお話しになりました後段の部分が大変な問題を含んでおると私は思うのです。もしここの条項がなかったら日本の冤罪というのはほとんどなくなるのじゃないでしょうか。今刑事補償議論をしておるときですが、金目が多くなって、やられたときに少し補償をしてもらえるんだというようなことでは物は根本的に解決しないのでありまして、冤罪がないにこしたことはないし、間違った捜査とか犯罪がないにこしたことはないのでありますから。  つまり、またもとへ戻りますけれども、特段の理由ということについては以前から議論をしております、要するに裁判官の自由心証の問題でしょう。そうすると、今度はこれは裁判官の常識という問題になってくるのです。しかし、裁判官も人間なんであります。そういうことならば、一度何かの圧力を感じて証言したものを、一般的にはちょっと警察へ来いと言われたらみんな圧力を感じますよ、帰してもらおうと思ったら、こうじゃないのかと言われたらそうですと言いますよ。しかし、相手に対して迷惑がかかることですし、公判廷で晴らそうと思って公判廷でそれとは違うことを言ったら事実が食い違った。それでこの条項によって裁判官の常識、で、うそを言ったのが本当だといって採用されたら、これはもうやりようがないでしょう。これは事実でないものを事実であるかのごとくに翻訳する一つのパイプみたいなものになっているというふうに私は思います。だから、私はどういう意味でこれを尋ねるかというと、事実可能性としてはそういうことはあり得るでしょうということを尋ねておるのです、全知全能の神ならぬ人間の判断でありますから。刑事局長、その点はどうですか。
  176. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 御指摘のように、この一項二号後段の特信情況というものの要件について仮に裁判官の方が判断を過ては委員指摘のような冤罪につながるおそれがあるということは確かでございます。ですから、私どもとしては、この要件についていかにしても厳格に、この条文に忠実に解釈、運用を行うようにという立場で裁判の実務を行っておるつもりでございます。     〔田辺(広)委員長代理退席、委員長着席〕
  177. 小森龍邦

    ○小森委員 先般、刑事局長の方からの答弁で、アメリカ法の影響を受けておると。私はよく知りませんけれども、ローマ法に端を発する大陸法と英米法とを大別してそういうことになっておって、日常よく私が使う言葉を使わせてもらえれば、どちらかというと英米法の方が近代的で合理的である、こういうふうに私としては思っておるのでありますが、アメリカ法の影響を受けておるという考え方で、ここのところを前回は少しごまかして逃げられたのじゃないか。きょうは議事録も持ってきておるのですが、ごまかしたと断定はできないけれども、私がその筋の専門でないから、あのとき島田局長はうまく逃げられたのではないかと思います。  問題は、きょう私が確認をしたのは、あの条項がアメリカの多くの州にあるかないかということを尋ねならないと言われたから、ここのところはアメリカ法、英米法とは違うところだ、こういうふうに理解ができるのでありますが、くれぐれも申し上げておきますけれども、要するにこの条文がある限りは、そしてまた一方、裁判官が神さんでない限りにおいては、神さんというと何か神道を信じておるようだからちょっと言いかえますが、無碍光如来の阿弥陀如来でない限り。どちらでもいいですが全知全能という意味です、それでない限りここは過ちを犯す危険性が強い、私はここで再度そのことを強調させておいていただきます。  そして、何も私は裁判の一々に干渉するわけじゃないけれども国会が毅然たる態度でおるということは裁判所もぴりっとするということですからね。三権分立というものはそもそもそれなんです。お互いに不可侵ではあるけれどもお互いに緊張関係を持つというのが三権分立ですからね。そういう意味で、最高裁に位置しておられて、最高裁判所長官代理という立場できよう出席をされておるのですから、そこを十分に考えていただきたい、かように思います。
  178. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 委員も言われましたように、長官代理としてお答えしている身といたしまして、ごまかしたというふうに言われますとちょっと心外でございますので釈明させていただきますが、前回申し上げましたのは、刑事訴訟法の、伝聞証拠を原則としては排除する、そして一定の例外のあるときにそれの証拠能力を認める、これはまさしく英米法の考え方を取り入れたものでございまして、大陸法にはそもそもそういう思想はございません。大陸法では、すべてを一応証拠としてとった上で、その証明力の判断信用性判断で解決しておるようでございます。そこで、その原則を取り入れたのはまさしく英米法の思想であると申し上げましたが、その原則に対する例外のつくり方、これにおいて、先ほど申し上げましたように、英米と我が国ではその広がりが違うということを申し上げたのでございます。
  179. 小森龍邦

    ○小森委員 原則はアメリカ法で、そこに例外を設けた、その例外の持ち方あるいは運用の仕方というところに刑事局長は焦点を絞っておられるのだろうと思いますが、受ける方にとってはオール・オア・ナッシングなんです。ここが考え方が少し違うのですね。つまり、罪を受ける方はこの条規のゆえに、例えば死刑だったらもうオール・オア・ナッシングなのであります。また、無期にしても十年の刑にしても青春を失うのであります。そういう意味で、厳密の上にも厳密、こういうことを言っておるのであります。  また、確かにそれは、GHQが戦後の日本の刑事訴訟法の問題についていろいろな示唆を与えたことがあって、影響を受けておるといえば影響を受けておるわけでありますが、しかし影響を受けでないものの方がかなり大きいと私は思います。権威ある島田刑事局長の言われたことだから私もちょっと信用しかけたのですけれども、私はこういうふうに負けず嫌いでありますから、その後調べたのですよ。調べたら、かなの影響を受けていない、つまり日本の旧来の考え方を踏襲しているものがあるということに気づいておりますので、これはまた後ほど、島田刑事局長がその位置におられることがしばらく続けば議論する機会もあろうかと思います。  そこで、先ほどの拷問と今の自白の関係でありますが、拷問が現代もう行われていないのではないかというふうに善意に法務大臣は考えておられるようでありますが、どの程度のことを拷問というかということについては、これも非常に大きな問題ですね。しかし、夜の八時ころから入れかわり立ちかわり取り調べが始まって、一睡もさせないで朝まで、明くる日の夕刻までというような形でするのは、これは拷問だと私は思います。人間眠ることは何物にもかえがたいですからね。ところが、それを眠らさないでやられるというのは大変な問題だと思う。しかし、そんなことについて裁判所がどういうふうな判断をしておるかというと、これは現代のことですよ。「たとい取り調べが所論のように夜中にわたり且つ二、三人掛りでしたとしても直ちにそれを強制脅迫その他任意の供述を不能ならしめるような無理な取り調べをしたものと断じ得ない」、仙台高裁秋田支部一九五〇年十月三十日、こういういいかげんなことを言って裁判所が逃げよるのは、調べればまだ何ぼでもあると思いますよ。これだったら、調べる方はかわるがわる寝ればいいが、調べられる方は夜中じゅう調べられて、そしてもうどうにもならぬ、せめて公判廷で晴らそうか、こういう気持ちになったときにはバッターアウト、終わりです。だから、アメリカ法の影響を受けておるというところに刑事局長のアクセントがあのときには非常にかかっておったと思うのでありますけれども、個々の事実を指摘すれば、それとはかなり違うものが日本の今日の法律にはあるし、また裁判所もそういう運用をしておると思うのですけれども、時間が参りましたから、そこのところをちょっとだけ答弁してください。それで終わります。こういう秋田の裁判所の例があるのです。
  180. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 先ほども触れましたように、裁判官としては個々の事件において三百二十一条一項二号の要件の存否を慎重に判断しておるわけで、その要件の存否に当たり、かりそめにもそういう強制、拷問の疑いがあるようなケースがあった場合にはその証拠能力を認めないという厳格な姿勢を貫いて運用しております。そういう立場に立って判断した場合に、今までに幾つかの判例で、そのような理由で供述調書の証拠能力が認められなかったケースはございます。おっしゃるとおりでございます。
  181. 小森龍邦

    ○小森委員 確かに、そういう立派な裁判をなさった方もおるわけでありますが、先ほど私が仙台高裁秋田支部の例を出しましたけれども、夜中じゅう取り調べて後に供述したものであっても、それは一向に、つまり強制力によって供述させたものではないというようなものを出す者もいるわけでありますから、ひとつ慎重には慎重にお願いをしたい。  これで終わらせていただきます。
  182. 浜田卓二郎

    浜田委員長 倉田栄喜君。
  183. 倉田栄喜

    ○倉田委員 公明党・国民会議の倉田でございます。私は、少年保護事件に係る補償に関する法律案につきまして、並びに少年法全般にわたってお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一に、少年保護事件に係る補償に関する法律案についてでございますが、本法案の提案理由、その趣旨について簡潔に御説明をいただきたいと思います。
  184. 濱邦久

    濱政府委員 少年が犯罪の嫌疑によりましてその身体の自由を拘束された場合におきましては、刑事手続により無罪となった場合、または罪を犯さなかったものとして不起訴処分に付された場合などでありますれば、刑事補償または被疑者補償の対象となるわけでございます。これに対しまして、家庭裁判所における少年保護事件手続において、犯罪事実が認められないということで不処分等の決定を受けましても、これに対して補償を行う制度はこれまでなかったわけでございます。  これは、少年保護事件手続が専ら少年の保護を目的としてなされるものでございまして、基本的に利益処分としての性質を有していることなどによるものでございますが、犯罪事実が認められない場合には、その目的のいかんにかかわらず、身体の自由の拘束が少年にとりましては結果的に理由のない不利益を与えたことは否定しがたいところでございますので、このような場合にも、刑事補償及び被疑者補償と同じように、身体の自由の拘束を受けた少年に対し補償を行う必要があるというふうに考えるわけでございます。また、犯罪以外の非行の嫌疑による身体の自由の拘束や保護処分と同時に言い渡される没取につきましても、後に非行が認められなかった場合にも同じように補償を行う必要がある、このようなことから、これらの補償措置を講ずるために今回の少年保護事件に係る補償に関する法律案提出した次第でございます。
  185. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ただいま少年保護事件に関する手続が専ら、専らということはほとんど全部という意味だと思うのですが、専ら少年の保護を目的として行われる利益処分である、そういう意味で従来少年に対しては補償がなされなかった、しかし今般、結果的に身体の自由の拘束等が少年にとって不利益になることがあり得る、否定しがたい、こういうふうな今のお答えでございました。少年手続が少年の保護を目的として行われる利益処分である、これを、結果であるとしても不利益であるということを少なくとも本法案において認めたことは非常に大きく評価できるというふうに私は考えております。  そこで、それではこれ以外に結果的に不利益を与える場合があり得るのではないのか、この点も少年手続全般にわたって考えていかなければいけないのではないのか、このように私は考えているわけですけれども、本法案について結果的に少年に不利益であることを認める、これは、少年手続ほかのところにおいてもそういうことがあり得ると考えてよろしいということでございましょうか。
  186. 濱邦久

    濱政府委員 今委員お尋ねの御趣旨は、非行事実が認められないことによりまして、最終的に審判不開始、不処分または保護処分取り消しの各決定がなされた場合以外にも、例えば少年鑑別所送致の観護措置が必要ないのにこれがとられたり、真実は非行がないのに誤って保護処分に付されて当該保護処分が終了してしまったような場合をあるいはお考えになっておられるのではないかと思うわけでございますが、現行少年審判手続上、この点については不服申し立ての道はもちろんないわけでございまして、これを整備することをも含めて御指摘いただいているのかと思うわけでございます。  これらの問題につきましては、いずれも少年審判手続全体のあり方とともに、それぞれの問題について個別にその必要性を検討していくべき事柄ではないかというふうに考えるわけでございまして、一概にはお答えいたしかねるわけでございますが、今後も少年改正作業の中で十分検討してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  187. 倉田栄喜

    ○倉田委員 補償の場合以外にも結果的に少年に不利益を与えている場合が少年法手続の中にあるのではないか、このような視点からお尋ねさせていただいたわけでございます。  そこで、その視点から以下幾つかの場合を考えながらお尋ねさせていただきたいと思うわけでございますが、その前に、本法案で「身体の自由の拘束等による補償を行う措置を定めるものとする。」ということで「身体の自由の拘束等」と、「等」とあるわけですけれども、この「等」というのはどのようなことを規定しているわけでしょうか。
  188. 濱邦久

    濱政府委員 委員指摘になっておられますのは、この法案の一一条の「その身体の自由の拘束等」とある「等」のことをお尋ねだと思うわけでございます。これは、法の二条二項に規定する没取による補償を指しているわけでございます。
  189. 倉田栄喜

    ○倉田委員 少年法の基本的立場が少年の健全育成、非行防止、こういう立場から立法されておられるわけでおって、それゆえに手続自体が少年の利益のためである、こういうふうな解釈がなされているのだろうと思うのです。  少年保護事件に関する手続が少年法の基本的立場で運用されることは当然だと思いますけれども、運用の実態として、先ほど申し上げましたように結果的に少年の健全育成あるいは非行防止の目的に反し、その手続が利益処分ではなくて少年にとって不利益処分になってしまっていること、これが実はほかにもあるのじゃないのか、私はこういうふうに思うのですね。例えば本法案においては、先ほどちょっと御答弁の中にもありましたけれども少年側の補償請求権それから不服申し立て権は認められていないと考えられるわけですけれど、も、それはどうして認められていないのか、この理由をお尋ねしたいと思います。
  190. 濱邦久

    濱政府委員 まず、補償請求権として認めない理由についてお答えをいたしたいと思います。  憲法上その請求権が保障されている刑事補償の場合とは異なりまして、少年補償におきましてはいかなる構成をとるかということは、もちろん専ら立法政策の問題であるわけでございます。少年補償の目的、さらにはそのよって立つ少年審判手続の目的、性格等を考慮して決定しなければならない事柄であるというふうに考えているわけでございます。  そういたしますと、現行少年法を前提にして考えまするならば、家庭裁判所の職権による制度とするのが相当であるというふうに考えたわけでございます。  その一つの理由は、現行少年審判手続はもともと専ら少年の保護を目的としておりまして、国家を保護を要する少年の親というふうにしてとらえております国親思想の考え方のもとに家庭裁判所の専権的職権主義構造を採用していることは、もう委員御案内のとおりでございます。その手続において非行なしと判断された者に対する補償につきましても家庭裁判所の職権によることとするのが制度として一貫するということが一つでございます。  それから二つ目の理由として、これを逆の面から申しますと、請求権というふうに構成するためには、その発生要件である非行なしの判断がより客観化される必要があると考えるわけでございます。例えば非行認定の手続を整備した上で非行なしの場合になすべき決定を創設する、非行ありの認定自体に対して不服申し立ての道を設ける、さらには非行の存在を前提とする保護処分決定に対しても処分終了後の再審を設けることなどの検討が不可欠であると考えられるわけでございます。  これらはいずれも少年改正の中で議論されるべき事柄であると思うわけでございまして、今回の立法は現行の少年法の枠組みを前提といたしまして現行の少年審判手続を前提としたものであるということで、補償請求権を認めないという考え方に立ったものでございます。  それから、委員の後段のお尋ねは、不服申し立て権を認めないのはどういう理由であるかというお尋ねではなかろうかと思うわけでございます。  現行の少年審判手続におきましては、先ほど申しましたように家庭裁判所が専権的な判断機関として位置づけられておるわけでございまして、保護処分決定を除きまして、一定程度少年に不利益を及ぼす処分に対しても現行少年法の上では抗告が認められないわけでございますが、これと一貫しないということ。それから、非行ありの認定に対する抗告を認めないまま非行なしの判断がなされた場合の補償の要否、程度についてだけ抗告を認めることといたしますことは一貫しないというような問題がございまして、抗告等による不服申し立てを認めることは相当でないという考え方に立ったわけでございます。一般的に判断能力が成熟している成人とは異なりまして、少年審判の対象となる少年一般的に判断能力が未熟である、それを補う保護的環境の整備されていない者も少なくないというふうに考えられるわけでございますから、請求権として構成するよりも少年の後見的機関として位置づけられております家庭裁判所補償の要否あるいは程度の判断をゆだねる、少年の申し出による再度の考案の余地を認める、こういう制度をとる方がかえって少年の保護にかなうものではないかというふうに考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、刑事補償及び被疑者補償両制度のギャップを埋めて、身柄拘束を受けた後で非行なしの判断を受けた少年を保護するという立場から設ける少年補償の目的は、この職権的構成によって十分達成できるものというふうに考えたからでございます。
  191. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今お答えをいただいたわけですが、そのお答えが現行少年法の立場で、つまり少年は保護の対象であって国は少年の親であるという国親思想というふうに御答弁いただきましたが、その立場から、結局補償請求権や不服申し立て権は認められてないのではないのか、認められないのではないのか、こういうふうな御答弁であったと思います。  私は、現行法の解釈がその枠を出られないとすれば、やはりこの点は問題なのではないのかな。少年は一個の保護の対象ではなくて、一個の人権の主体者として手続的にも保障されていくべきではないのか。国が少年の国親である、仮にこういう思想を認めるとしても、それは少年を人権の主体者として手続の上でそうした上で、その運用においてまさに親として慈愛あふれる立場で接しなければいけないのではないのか、こういうことを言っているのではないのかな、こういうふうに思うわけであります。そうだとすれば、少年を一個の人権の主体者として考えることができるのであれば、少年側の請求権やその不服申し立て権も認められてしかるべきであろう、このように私は考えるわけでありますけれども、これは立法論の問題でありますので、ぜひ御検討をいただきたい、このように思います。  それから、今、後見的立場で、いわゆる補償を認めるかどうかについても裁判所の裁量でした方がよろしい、こういう御意見でございましたが、その裁判所の裁量権、その実質をどのようにお考えになっておるのか。いわば覊束的裁量権なのか。覊束的裁量というふうにした場合には、その裁量を逸脱した場合違法な裁量として争うことができるのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  192. 濱邦久

    濱政府委員 まず、この法案の二条の積極要件を満たしますならば、この法案三条の消極要件がない限りは必ず補償を行わなければならないものとしているわけでございます。したがいまして、基本的に、補償を行うか否かということは家庭裁判所の裁量ではないというふうに言えると思うわけでございます。もっとも、法案三条の消極要件がある場合に補償の全部または一部をしないこととするかどうかということは、家庭裁判所の健全な裁量にゆだねられているわけでございます。  この法案三条三号後段の消極要件の解釈につきましては、ある程度の幅があり得るとは考えますけれども、いずれも自由裁量ではなくして、合理的な裁量または解釈であることを必要としているということがこの法案趣旨でございます。
  193. 倉田栄喜

    ○倉田委員 そうだといたしますと、合理的な裁量を逸脱したと認められる場合は違法な裁量として争うことができる、このように考えてよろしいわけでしょうか。
  194. 濱邦久

    濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、今回の少年補償法案につきましては、少年補償請求権を認めるという立場ではございませんで、あくまでも家庭裁判所の健全な裁量に基づく職権によって決定するという考え方をとっておりますし、この法案で、少年からの申し出がある場合の再度の考案の制度は認めておりますけれども少年からの不服申し立ての権利というものは認めない立場をとっているわけでございまして、その理由は、先ほどお答え申し上げたような理由でございます。
  195. 倉田栄喜

    ○倉田委員 合理的な裁量ということであれば、それを逸脱することが違法であれば争えるのではないのかな、このように私は思うわけですけれども、次に移ります。  五条三項、変更の申し出、このような規定がありますけれども、変更の申し出というのはどのような場合を想定しておられますか。
  196. 濱邦久

    濱政府委員 職権による少年補償制度のもとにおきましても、補償の要否あるいはその内容判断に当たりまして、非行なし決定を受けた少年意見を一定程度反映させることが望ましいわけでございます。特に教育的観点からは、補償決定に対して不満のある少年に決定変更の申し出の機会を与える、その意見を聞いた上で少年に納得のいく最終判断をする必要があるという観点から、法案の五条三項に規定する補償決定の変更の制度を設けたものでございます。当初の補償決定が補償の要件に関する判断を誤って補償しないこととした場合はもとよりのことでございますが、補償の全部または一部をしないこととすることに関する裁量あるいは補償内容に関する裁量が相当でなかったかというような場合には、これを是正する機会となると考えているわけでございます。
  197. 倉田栄喜

    ○倉田委員 補償ができるようになったということについては非常に評価できると私は思いますし、この点については従来からも法の不備ではないのか、こういうふうに言われておったと思います。  同時に、この少年法の手続において補償の部分が法の不備、理由のない身体の拘束が結果的に少年に不利益な処分となっている、こういうふうな指摘がなされておったわけですけれども、もう一つ少年の再審、処分取り消しの申し立てについても同じような、これも少年にとって結果的に不利益を与えているのではないのか、こういうふうな指摘がなされております。  埼玉県の草加市で起きた女子中学生殺人事件において、これは既にマスコミ等で盛んに報道されておりますので御承知かと思いますけれども、犯人とされて少年院送致の保護処分を受けた少年五人、この中で既に四人は成人となっておりましたが、刑事裁判の再審請求に当たる処分取り消しを求めた申し立てに対し、最高裁は、少年法が定める処分取り消しは、名誉回復を目的とするものではなく、保護処分が継続中の場合に限って認められるとして、二十歳に達して保護処分の執行は終了したから、不服申し立ての利益を欠き抗告は不適法とした、このような判断がなされております。  現行少年法の解釈がこのとおりだとすれば、これはこの点も法の不備なのではないか。つまり、事実誤認によって汚名を着せられた者の緊急救済を、少年であるあるいはもう既に取り消しを求める利益がない、それを理由に否定することになるわけですから、真犯人が現実にあらわれても、成人に達した後は救済方法がなくなる。これは成人と比較しても少年にとって大きな不利益ではないのか、このように思うわけです。この点はいろいろな新聞が、成人に達した者についてもはや不服申し立ての利益を欠くとする決定理由というのは果たして社会常識に合っているのかどうか、これは場合によったら著しくかけ離れているのではないのか、現に少年院にいるあるいは保護観察下にある状態から解放されることだけが利益なのではなくて、処分を受けるような非行がなかった場合にはその無実を明らかにすることも大きな利益なのではないのか、このように指摘をしておるわけでございます。私も、これはそのとおりだな、こういうふうに思うわけでございます。これも補償の場合と同じく立法的対策が必要であろう、私はこのように思うわけでございますけれども、この点について、当局及び大臣にも御所見をお伺いいたしたいと思います。
  198. 濱邦久

    濱政府委員 先ほど委員が御指摘になられました最高裁の決定にもかかわることでございますので、まず私からお答え申し上げたいと思います。  少年法二十七条の二は保護処分の取り消しを保護処分継続中に限っておること、したがって保護処分終了後はその取り消しかできないこととなっておりますことは、委員指摘のとおりでございます。  刑事訴訟法の再審に相当する非常救済手続につきましては、昭和五十二年六月の法制審議会の少年改正についてのいわゆる中間答申の中に盛り込まれているところでございますが、この中間答申自体につきましては反対意見もございまして関係機関との調整に努めてきたところでございますが、その間に少年非行の情勢にも相当な変化が見られるなどの事情もございまして、いまだその実現を見ていないところでございます。  少年審判手続におけるいわゆる再審につきましては、少年法の全体構造にかかわる問題でございますし、今後とも少年改正作業の中で検討していきたいというふうに思っておるわけでございます。
  199. 田原隆

    ○田原国務大臣 ただいま政府委員からお答えしたことでほとんど尽きておりますが、中間答申は既に出ておりますのに反対意見があるために調整がついていないという状況ておりますが、ただ、先ほどから出ておりますように、国親的な感覚を持ったものと刑事事件としてやられたものの補償とかいうようなものには法律の構造上の差異が相当ありますから、少年法全体の問題としてこれは考え直さなければいかぬ問題になってくるのじゃないかと私は思っておりますが、それらについてはさらに一層の勉強をするように進めてまいりたいと思います。
  200. 倉田栄喜

    ○倉田委員 国親思想が果たして現在のままで維持できるのかどうか、後で御質問させていただこうと思うのですけれども、児童の権利に関する条約という問題もございますので、この点からも検討を要することであろうと思うわけですね。  それで、従来の論議の中で反対意見もあったのでそのままになっているということでございますけれども、果たしてその反対意見が再審を認めないということで、その理由が現在も維持できる理由なのかどうか、これももう一度検討されなければいけないことであろうと思うわけです。私は、これは認めなければ少年を一個の人権の主体者として認めてないということになるのであろう、やはり人権の主体者としてきちっと手続的保障をすべきである、そういう意味で再審事由も明確にして再審手続関係を整備する必要があるのではないのか、それが審判を公明正大ならしめ、少年にとってまた教育的効果、少年人権保障を実質的にするものであると考えておりますので、要望をしておきたいと思います。  それから、これも立法論的にかかわることでございますけれども、保護処分において受ける不処分決定に対していわゆる一事不再理の効力も現行少年法では認められていない。私はこれも認めるべきではないのかと思います。非行事実なしを理由とする不処分決定には刑事裁判におけるいわゆる無罪判決と同様に一事不再理の効力を認めるのが自然であろうと思っておりますが、この点については御見解をいただけたらお答えを願いたいと思います。
  201. 濱邦久

    濱政府委員 現行少年法上一事不再理の効力が認められますのは、委員御案内のとおり、罪を犯した少年について少年法二十四条一項の保護処分が行われた場合だけでございまして、不処分決定につきましては、その理由が非行なしの場合でありましても一事不再理の効力は認められていないわけでございます。しかしながら、実務の運用面では家庭裁判所判断は十分尊重されておりまして、家庭裁判所が非行事実が認められないとして審判不開始または不処分決定をした少年事件につきましては、検察官が当該少年が二十歳に達した後にその事実認定を覆して起訴したというような事例は見当たらないわけでございます。  一事不再理の効力をどこまで認めるかということになりますと、これは少年法の根本的な考え方、全体的な構造と切り離して考えることはできない問題であろうと思うわけでございまして、この点につきましても、先ほど来申し上げておりますように、少年法全体の改正作業の中で検討していきたいと考えております。
  202. 倉田栄喜

    ○倉田委員 実務上そういうことがないように運用されておるとしたとしても、二十を過ぎたらさらに起訴される可能性が残るということ、残るという理由は、一般刑事事件手続といわゆる保護処分を目的とする少年法手続とは違うんだという、いわば国が親であるという立場から少年説明をして果たしてそれが教育的効果を与えるのだろうか、私は非常に疑問に思いますし、決して説得的な説明にはならないのではなかろうかと思います。ぜひ御検討いただきたいと思います。  そこで次に、きょうは警察庁の方にもお見えいただいておりますけれども、最近の少年非行の傾向と実態についてお伺いしたいと思います。
  203. 益原義和

    ○益原説明員 少年非行につきましては、刑法犯少年の数が戦後最高を記録しました昭和五十八年以降増減を繰り返しながら高水準で推移しておりまして、依然として深刻な状況にございます。  平成三年の刑法犯少年は十四万九千六百六十三人でございまして、前年に比べまして四千五百五入減少しておりますが、成人を含めた刑法犯総検挙人員に占める少年の割合は五〇・五%でございまして、三年連続して半数を超えておるところでございます。  平成三年中の少年非行に見られる特徴といたしましては、一つは、単純な動機から安易に行われることが多いと考えられます万引き、自転車盗などのいわゆる初発型非行で補導しました少年の数が全体の七割以上を占めているということ。それから、二つ目といたしましては、十四歳から十六歳までの低年齢層の少年が全体の六七・九%を占めて非行の中心となっているということ。それから、三つ目といたしましては、人口構成比で見ますと、全体の二・九%にすぎない無職少年が刑法犯少年全体の一〇・一%を占めておりまして、特に凶悪あるいは悪質な非行になるほど高い割合を占めておるということが挙げられます。  そういったことが最近の少年非行の傾向となっております。
  204. 倉田栄喜

    ○倉田委員 刑法犯全体の中における割合においても少年非行の割合が非常に高くなってきていると聞いておるわけでございますけれども、その少年非行の最近の傾向と実態に対して、警察庁としては、その対応といいますか、どのような対策を講じておられるわけでしょうか。それから、これだけ少年の非行が、あるいは低年齢化ということで問題になった場合にいわゆる少年警察活動が非常に大切になってくると思うわけですけれども、全体の警察活動の中で少年警察活動をどのように位置づけておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  205. 益原義和

    ○益原説明員 警察といたしましては、ただいま申し上げましたとおり、少年が刑法犯検挙人員の五〇%以上を占めているということ、それからまた、その大半が万引き、自転車盗などのいわゆる初発型非行であるということを踏まえまして、その非行対策といたしましては、街頭歩道の強化による非行少年等の早期発見と補導、少年相談の充実強化を図っておりますほか、関係機関、団体と連携をいたしまして、非行防止のための広報活動あるいは万引き、自転車盗などの非行を誘発させない環境整備に努めているところでございます。  それから、そうした非行対策を推進するための組織体制といたしましては、各都道府県警察本部のうち三十一都道府県において少年課を設置しております。その他の県におきましても少年対策室を設置するなど、少年部門を取り扱う専門の部門を設けまして対策に当たっているというところでございます。  また、担当する職員につきましても、警察官のほか、街頭で少年の補導活動に従事する婦人補導員あるいは少年相談を専門に扱う少年相談専門職員等を置きまして活動を行っておるところでございます。
  206. 倉田栄喜

    ○倉田委員 少年ということにかんがみまして、例えば身柄の拘束等々については少年法四十三条三項ですか、やむを得ない場合に限るとか、いろいろな少年の特性に配慮をしていろいろな規定があるわけでございますけれども、一方その捜査においても少年警察活動要綱というのがあります。この少年警察活動要綱はきちっと徹底をされておるのかどうか、この点についてはいかがですか。
  207. 益原義和

    ○益原説明員 少年警察活動要綱は、少年の非行の防止を図り、その健全な育成資するとともに、少年の福祉を図るため、少年の補導の方法、少年事案を処理するに当たっての手続及び留意事項、その他警察活動に関する必要な事項を定めたものでございますが、これの職員に対する徹底につきましては、警察学校における教養を初めといたしまして、各種研修会議等あらゆる機会をとらえて指示、指導、教養などいたしておりまして、適切な少年の取り扱いをされるように指導を推進しておるところでございます。警察庁といたしましても、各都道府県警察の現場におきまして、少年事件が適正に処理されますように全国の担当部長会議等において繰り返し指示をしておるところでございまして、今後ともそうした指導を継続してまいりたいと考えております。
  208. 倉田栄喜

    ○倉田委員 現行少年法の中では、いわゆる少年保護の対象、それから国家は少年の親、こういう立場でいわば少年を一個の人権の主体者としてきちっとした手続的保障がなされてない部分はあると思うのですね。そういう意味からすればいわゆる犯罪少年あるいは虞犯少年、いろいろなものに対しても一般刑事事件というか成人と同じような形で捜査をされ、取り調べを受け、身柄を拘束されるようなことがあっては当然ならないのだというふうに思うのです。  そこで、これはまず警察庁の方からお伺いいたしたいと思いますけれども、いわゆる少年刑事事件において、犯罪少年に関して身柄を拘束されて捜査を受ける場合というのは件数としてどのぐらいございますか。
  209. 益原義和

    ○益原説明員 ちょっと細かくなりますが、過去三年について申し上げたいと思います。  平成元年におきましては、刑法犯少年の送致人員十六万五千五十三人でございまして、うち逮捕人員が一万千九百二十五人、これは送致人員に占める割合が七・二%となっております。平成二年におきましては、送致人員が十五万四千百六十八人、逮捕人員が一万一千三百三十八人、割合が七・四%でございます。それから平成三年におきましては、送致人員が十四万九千六百六十三人、逮捕人員が一万一千七百五人でございまして、割合は七・八%となっております。したがいまして、ここ三年、逮捕人員につきましては一万一千人台、それから送致人員に占める割合はいずれも七%台というふうになっております。ちなみに成人について申し上げますと、その割合は、平成三年におきましては三五・一%というふうになっております。
  210. 倉田栄喜

    ○倉田委員 少年法四十三条三項は、身柄を逮捕、勾留される場合、これはやむを得ない場合に限る、こういうふうに規定をされているわけですね。今の実数というのが果たしてそのやむを得ない場合に限ったのかどうか、これは少年の付添人としていわゆる一般刑事事件における弁護活動をやられる弁護士の声でもあるのだろうと思うのですが、現実にはどうも警察の方でこれは逮捕、勾留していろいろ事情を聞かなければいかぬという判断のもとで逮捕、勾留状を請求された場合に例外なく一〇〇%認められているのではないのかな、こういうふうな声も実はあるわけです。  そこで、きょうは裁判所の方にもおいでいただいておりますけれども、逮捕、勾留の請求がされた場合、裁判所としてはその実数をどの程度、どういうふうに把握しておられるのか、またその逮捕、勾留請求に関して、これは必要ないでしょうというふうに認めてない場合がどの程度あるのか、お聞きしたいと思います。
  211. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 逮捕、勾留につきましてどの程度却下し、どの程度認容しているかというのは、司法統計上というよりも検察統計の方から出てくる数字ではないかというふうに考えておりますが、いずれにしましても、裁判所少年の勾留請求が参りましたときには、当然裁判官としては少年法の精神を尊重しながら勾留要件を慎重に判断するということは申すまでもないわけであります。特に、先ほどのお話にございましたように、少年の勾留というのはやむを得ない場合に限るということにされておりますので、この点に関する判断を中心にしまして慎重に判断をする、そしてやむを得ない要件がない場合には勾留にかわる観護措置に切りかえるというような措置もとりますし、あるいはまた勾留請求を却下するというような判断も現実にしているわけでございまして、裁判所自体として正確な統計は持ち合わせておりませんけれども、決して検察官の請求をそのまま認容してはいない、やむを得ない場合に限って勾留をしておる、こういう判断でございます。
  212. 倉田栄喜

    ○倉田委員 これもぜひ厳格に法の建前のとおりこの辺のとこうは運用していかなければいけない。  と同時に、勾留場所についてもお伺いをしたいと思うのですけれども、現実に少年を逮捕、勾留する場合、その勾留場所、いわゆる代用監獄に勾留されている場合が通常なのではないのかというふうに思うわけですが、この点についてはいかがですか。
  213. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 勾留場所の判断につきましても、当然、やむを得ない場合ということとあわせて少年の身柄を確保する場所としてふさわしい場所ということを頭に置くわけでございます。そういたしますと、当然少年鑑別所をまず考えるということになろうかと思います。ただ、勾留をするかどうかは、勾留場所をどうするかということにつきましては、少年側の個別の事情も十分尊重する必要がございますが、反面で捜査遂行上の必要性ということとの総合判断になろうかと思いますので、そちらの面からどうしても代用監獄にせざるを得ないというような事情がある場合に初めて勾留場所を指定するということになろうかと思います。ほとんど代用監獄に指定しているというような実情ではございません。
  214. 倉田栄喜

    ○倉田委員 少年法十七条一項ですか、原則としては、その勾留にかわる観護措置が原則である、十号措置、先ほどの調査官の観護に付すという、それが原則なんだろうと私は思うんですが、現実にはこういう観護措置、十号措置というか、やられているのは余りないのではないのか、こういうふうに聞いているわけです。その点からも、観護措置がない、そして少年鑑別所、私は少年鑑別所よりも代用監獄の方が多いんじゃないのかな、こういうふうな実感があるわけですけれども、それはお答えのとおりだといたしましょう。  そこで、少年鑑別所だとして、仮に少年鑑別所に送られた場合、その身柄の拘束の期間ですけれども、成人の刑事事件の場合は、起訴前の身柄拘束は特別な犯罪でない限り原則として二十三日、ところが少年の場合は、逮捕、勾留に続いてさらに鑑別所に送致をされて、そしてこの鑑別所での期間が二週間から四週間、こういうふうになる。とすれば、先ほど補償に係る法律案が、結果的に少年に不利益を与えていることを認めた上で補償がなされたわけですけれども、私は、ここの部分も、身柄拘束期間という部分においても少年にとって結果的に不利益を与えているというふうに言えるんではないのか、これを、この身柄拘束も少年の利益のためなんだ、保護処分なんだ、国は少年の親なんだ、こういう立場からは、その実態を考えるならば決して説明できないのではないのか、こういうふうに思うわけです。そうだとすれば、少年の利益のためにということを言い、また保護という視点を徹底するならば、保護という視点からの拘束であるということを言うのであれば、少なくとも代用監獄というのはもう皆無にすべきではないのかというふうに考えるわけですが、先ほど捜査調べの必要上という御答弁がございましたけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  215. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたけれども裁判所がその勾留場所の指定の判断をする場合におきましては、まず第一義的には、少年にふさわしい場所として少年鑑別所を考えるということを原則にして考えているということでございます。
  216. 倉田栄喜

    ○倉田委員 次に移ります。  いわゆる児童の権利に関する条約、これが今閣議決定をされて、批准をされようとする運びになっているとお伺いをしておるわけですけれども、きょう外務省の方にもお見えいただいておりますが、この児童の権利保護に関する条約、これは今どのような手続になっておりますでしょうか。
  217. 吉澤裕

    ○吉澤説明員 児童の権利に関する条約につきましては、三月十三日に政府として国会の承認を求むる趣旨の決定をいたしまして、現在国会に承認のために提出させでいただいているところでございまして、国会の承認がありました上はできる限り早く批准したい、このように考えている次第でございます。
  218. 倉田栄喜

    ○倉田委員 できるだけ早く批准をしたいということでございますが、外務省としては、児童の権利に関する条約とそれから現行少年法、児童の権利に関する条約に盛られている個々の内容の部分と現行少年法の規定、これで十分なのかどうか、この点については外務省としてはどのようにお考えでしょうか。
  219. 吉澤裕

    ○吉澤説明員 児童の権利に関する条約につきましては、その締結につきまして政府部内で鋭意検討を行いまして、その結果、この条約に規定されております権利につきましては、その多くは国際人権規約であるとかいうものに含まれているものでございまして、この少年法を含みます我が国の現行国内法との関係において問題がないということを、政府部内での検討の結果そういう結論に達した次第でございます。  ただ、一カ所、この条約の三十七条の(c)におきます自由を奪われたすべての児童の成人からの分離という規定につきましては、我が国の少年法等におきまして自由を奪われた者は基本的に二十歳で分離されているということ等にかんがみまして、この規定に拘束されない権利を留保する、そういうことで国会の承認をお願いしている次第でございます。
  220. 倉田栄喜

    ○倉田委員 一点留保することがあるという御答弁ですけれども、児童の権利条約のうち少年手続に関する例えば三十七条とか四十条とか、いわゆる少年手続における適正手続の保障を子供の権利に関する条約は要請していると私は考えるのですね。  そうすると、この児童の権利に関する条約をずっと読んでみますと、果たして現行少年法がこの児童の権利に関する条約を満たしているのだろうかと疑問に思うところが多々あるわけです。それで、その疑問に思うところが、我が国が、少年処遇が刑罰とは異なって治療、教育あるいは福祉である、そのようなことを根拠として、また先ほどからも申し上げておりますけれども、国家は国親であって少年とは対立関係には立たない、そういう理由での児童の権利条約には反しないとは言えないのではないのかな。そして同時に、国家が少年の国親であるからいわゆる適正手続というようなものは必要ないんだ、あるいは適正手続そのものは非教育的なものなんだというふうに排斥をする議論がありましたし、今もあるのだと思うのですけれども、そういう議論を子どもの権利条約を批准しようとするせいであるとすればそれは否定されるのではないのか、こう実は私は考えるわけです。  そこで、ちょっと細かく見てみますと、条約三十七条(b)というのは、いかなる子供もその自由を不法にまたは恣意的に奪われない、子供の逮捕、抑留または拘禁は法律に従うものとし、最後の手段として最も短い適当な期間に限り用いられる、こう言っているわけです。そうしますと、いわゆる自由を拘束された子供に対して、例えば人道的な取り扱いを受ける権利、あるいはきちんと家族と接触を保つ権利、あるいは弁護権、あるいは自由剥奪の合法性というものを争う権利などがきちんと保障されなければ、この児童の権利に関する条約三十七条(b)の要請を満たしたものと言えないのではないのか。先ほど質問いたしましたけれども少年の自由の拘束がいわゆるやむを得ない場合に限るというふうになっておるわけですけれども、これが条約に言う最後の手段として最も短い適当な期間に限って運用されていると考えることができないのではないのかな、こういうふうに私は思うわけでありますが、この点については法務省当局はどのようにお考えでしょうか。
  221. 濱邦久

    濱政府委員 まず、委員指摘になられましたように、児童の権利に関する条約三十七条同(b)項は、もう繰り返しませんが、今委員お読み上げになられたような規定を置いていることはそのとおりでございます。  我が国の憲法三十一条は、申すまでもなく、法律の定める手続によらない自由の拘束等を禁止しておりますし、また三十三条は、現行犯逮捕以外は令状によらなければ逮捕されない旨を規定しているわけでございます。また、三十四条は、正当な理由のない抑留、拘禁を禁止しているわけでございまして、これらの憲法の規定を受けて刑事訴訟法は、逮捕、勾留について詳細な規定を置いているわけでございます。  捜査段階の少年の身柄の拘束につきましては、先ほど委員指摘になっておられますようにこれらの規定の適用があるわけでございますが、少年の場合、やむを得ない場合でなければ勾留することはできない、勾留する場合には少年鑑別所を勾留場所とすることができる、勾留にかえて少年法十七条一項の観護措置をとることができるなどの規定を置いているわけでございます。少年の特質がそういう意味では考慮されているというふうに理解するわけでございます。また、少年法特有の制度としての観護措置のうち、少年鑑別所に送致される場合には家庭裁判所の決定によることとされておるわけでございまして、その収容期間は通じて四週間を超えることはできない、またその間の変更、取り消しか可能となっているというようなことを考えますと、条約の要請は満たされているものというふうに考えているわけでございます。
  222. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今お答えいただきましたけれども少年の身柄の拘束はやむを得ない場合に限る、あるいは少年の被疑者の身柄の拘束はなるべく避けなければならない、これは犯罪捜査規範の二百五条だと思いますけれども、そういう規定は確かにあるわけです。しかし、それが法の精神どおりきちっと運用されているのかどうかということも実は問題だと思うのですね。例えば調査官による在宅観護の制度というのも法は規定しているわけですけれども、これはどの程度利用されておりましょうか。
  223. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 観護措置の対応としての家庭裁判所調査官による観護の数でございますが、これは件数、毎年非常に少のうございまして、少ないときには一、二件、多くて五、六件、こんな程度で推移してきているというふうに理解しております。
  224. 倉田栄喜

    ○倉田委員 本来からいけば、身柄の拘束はできるだけ避ける、やむを得ない場合に限るというこの法の趣旨からいけば、やはり在宅観護の制度はもっと利用されていいのではないのか、また利用されるように、利用できるような体制に整えていくべきではなかろうか、このように思うわけですね。ぜひこの点も、運用の実態として強く要望しておきたいと思います。  それから、例えば鑑別所送致の保護観察の期間は二週間ですけれども、特に継続の必要があるときに限り更新することができるようになっております。実際にはこの更新規定は、どうなんでしょうか、更新の請求があったら大体更新されているというのが実態ではないのですか。
  225. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 観護措置の更新の運用の実情について若干申し上げますが、平成二年の統計で見てみますと、少年鑑別所収容で一般保護事件、数としては一万六千七百件でございますけれども、収容期間を分類してみますと、七日以内の収容というのがおよそ一三・七%でございます。七日を超えて十四日以内というのが三・六%、それから十四日を超えて二十一日以内という類型が一九・一%、二十一日を超えるものは六三・六%というのが実情でございまして、これによりますと、更新されたものは全体の中の八二・七%という実情でございます。  更新されることが多いのは、少年鑑別所に収容されている少年の中で、非行性が進んでおり、性格等に問題を抱えている者が多いということから、心神鑑別等に日時を要するということでございますけれども事件内容とか前歴あるいは保護環境等から見まして、二週間以内程度で心神鑑別等の調査が終えられるものにつきましてはもちろん更新しない、こういう運用も行っております。
  226. 倉田栄喜

    ○倉田委員 条約が言う最後の手段であり、最も短い適当な期間であるためには、単に運用ということではなくて、身柄拘束のための基準、具体的かつ厳格な基準がやはりきちっと定められるべきではないのだろうか。  私は、きょうの質問は、子どもの権利条約から見た日本の少年手続ということで、これは埼玉県の高野弁護士が書かれた資料を参考にさせていただきながら質問をさせていただいているわけですけれども、例えば今の身柄拘束のための基準、具体的、厳格な基準ということでアメリカのモデルアクト、こういう基準を言っているそうです。一つ少年を引き取るべき親がいない。それから、少年が他人の身体や財産に深刻な危害を与える明白な危険がある。三番目に、少年自身に重大な危害が及ぶおそれがある。四番目に、以前裁判所に出頭しなかった前歴がある。  そういうふうな少年手続において、いわば権利保障という観点から少なくとも現行少年法は改正されて、人権の主体者として保障手続がきちっとされれば別ですけれども、現行少年法はやはりきちっとしていないと思うんですね。そうだとすれば、運用ということでそれを賄うんだとすれば、今申し上げましたようなモデルアクトみたいな具体的な基準が必要なのではないか。あるいは、今申し上げたような事由が明白で、説得的な証拠に基づいて証明されない限り少年は釈放されなければいけないというふうな考え方をとるべきではないのか、こういうふうに思うわけですが、その考え方については当局はいかがお考えでしょうか。
  227. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘になられました米国のモデルアクトでございますか、につきましては必ずしもその詳細あるいはその運用の実態というものを把握しておらないものですから、直接のお答えはいたしかねるわけでございます。  ただ、我が国におきましては、少年でありましても被疑者として逮捕する場合には、別事訴訟法百九十九条によりまして、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由を必要としておるわけでございますし、また一定の軽微な事件につきましては、住居不定、あるいは正当な理由がなく出頭の求めに応じない場合に限り逮捕できるということとしていること。あるいは勾留につきましても、刑事訴訟法六十条によりまして、被疑者等が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由のほか、住居不定、証拠隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかの事由が認められることが要件とされていることは申すまでもないことでございます。  また、少年法によります観護措置としての少年鑑別所送致の場合におきましても、審判を行うための必要性のほか、少年が非行を犯したことを認めるに足りる相当な理由の存在というものが要求されているわけでございまして、いずれも身柄拘束の必要性と相当性が認められる場合に限ってこれを行うことができるということになっているわけでございます。  このように、現行法におきましても、身柄拘束の具体的基準が今申し上げたような形で設けられているということは一応考えられるのではないかというふうに思うわけでございます。
  228. 倉田栄喜

    ○倉田委員 現在あるその条文を具体的な基準と考えることができるのかどうか、私はそれは問題なのではないのか、やっぱりどうしても運用の実 態の中でなされてしまっている部分、運用の実態の中に埋没してしまっている部分があるのではないのか、このようにも思うわけです。  そこでまた、続いてお尋ねをいたします。  例えば審判前あるいは審判中の少年の身柄釈放制度ですね。これも今ないわけですけれども、確立されなければならないのではないのか。例えば、一般刑事事件の場合は金銭、保証金、釈放制度があるわけです。その少年の身柄を親の資力によって左右することがあってはならないのかもしれませんけれども、ただその一事をもっていわゆる保釈制度を少年事件に持ってこないというのはどうなのか。大人が保釈制度によって受けている利益を実は少年に対しては保障してない、これも結果的に少年に不利益を与えているのではないのか、こう思うわけですが、この点についてはいかがでしょうか。
  229. 濱邦久

    濱政府委員 刑事訴訟法における勾留中の被告人についての保釈制度、これは委員に御説明申し上げるまでもなく、逃亡のおそれを保釈保証金によって担保するとともに、種々の条件を付して公判への出頭を確保する手段を講じて被告人の身柄の拘束を解くものであるというふうに理解しているわけでございますが、現行の少年審判手続における観護措置としての少年鑑別所送致について仮に保釈制度というものを考える場合、少年鑑別所送致は単に少年の審判廷への出頭の確保という観点からのみ行われるものではないわけでございまして、少年の性格の矯正及び環境調整に関する保護処分を行う前提としての少年の資質の鑑別等を目的として行われるものでございます。そういう意味で、保釈制度にはなじまない側面を有している、また一般的に資力に乏しい少年について保釈保証金を担保とする保釈制度のようなものを採用することにも若干問題はあるのではないかというふうに考えるわけでございます。  加えて、現行法のもとにおきましても職権による鑑別所送致の取り消しをすることができる場合のほかに、家庭裁判所調査官の観護に変更することもできることとなっているわけでございます。現行の少年審判手続構造のもとでは、この家庭裁判所の観護措置を取り消さない決定について不服申し立てを認めることも、これはちょっと困難というふうに考えるわけでございます。  大体以上のように考えております。     〔委員長退席星野委員長代理着席
  230. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今最後の方でお答えいただいたわけですけれども、事実上の審判前の釈放制度として機能している観護措置の取り消しあるいは処分の変更の問題。今これを取り消すかどうかは裁判所の裁量と考えられております。これについて、今お答えの中では、これに対する不服申し立てを認めることはどんなものか、こういうふうなお答えでございますけれども、私はやっぱりこの点も、裁判所の裁量ではなくて、少年側に取り消しの申し立てが認められてしかるべきではないか、同時に、この申し立てが認められなかった場合に不服申し立ての手段も考えるべきなのではないのか、このように考えております。御検討をいただきたいと思います。  それから、児童の権利に関する条約の三十七条(d)ですけれども、これにはこのように書いてあります。自由を奪われた子供に自由剥奪の合法性を争う権利を保障する。今、この条約と我が国の少年法、大丈夫だ、こういうふうな見解に立っておられるわけですけれども、自由を奪われた子供にその自由剥奪の合法性を争う権利が果たしてきちんと保障されているのかなと思うわけです。  我が国の勾留質問制度あるいは保護観察措置の決定手続は、少年が身柄拘束の合法性を争う手続としては不十分なのではないのか、勾留質問制度は合法性の審査と呼ぶに値する手続に実態としてなっていないのではないのか、こう思うところが実はあるわけです。  そこで、質問の前提として裁判所お尋ねしたいと思いますけれども、この勾留質問制度、相手が少年であった場合、これはどんなふうに注意をされておられるというのか運用をされておられるというのか、この点についてもしお答えいただけるところがあればお答えをいただきたいと山小います。
  231. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 少年に対する勾留質問の運用の実際から申し上げますと、少年に対して検察官から勾留請求がありました場合、裁判官は当然少年の陳述を聞き意見を聞くというようなことも行うわけでございますけれども、特に成人と異なるところは、先ほど申し上げましたように、勾留することができるのはやむを得ない場合に限る、こういうことでございますので、その陳述を聞くあるいは調べる、判断の参考にすべき事情を質問するということも、やむを得ない場合に当たるかどうかというあたりを中心にして聞き出すということになろうと思います。  また、その少年にとりましては、逮捕によって身柄拘束を受けたということだとかあるいは今後の処遇等につきまして当然不安を抱いているということで、成人の場合に比べて精神的にも当然不安定な状況にあることは容易に推測がつきますので、委員御存じのとおり、少年審判手続そのものは少年法の二十二条で、審判は懇切を旨とし和やかに行うという規定がございますけれども、この場合にも同様に、少年法のその趣旨を生かしまして、言い分を丁寧に聞き出す、できるだけ和やかな雰囲気をつくるというような心構えをしまして、少年が心開いて陳述できるように努力をしているというようなことは行っているわけでございます。
  232. 倉田栄喜

    ○倉田委員 多分、今のお答えも国は少年の親なのであるという立場からの運用、それが実態なのではないのかなと思うわけです。少年が保護の対象である、いわば人権の主体者として扱われてない側面があらわれているんではないのか。この条約の三十七条(d)は、少年は一個の人権の主体者として扱いましょう、こういうふうに言っているんだと思うのです。しかし、やはり少年は未熟である、未発達である、精神的な動揺もいっぱい受けるであろうし、またいろいろ話を聞かれたり調べを受けたりする人は大人である、圧迫も相当受けるだろう。こういう状況の中で、少年に対して、自分が身柄を拘束をされている、自由を剥奪されている、その合法性を争う権利を保障するということは、いわばその国が親の立場から懇切丁寧に優しく聞く、心を開くような聞き方をするということだけでは決してだめなのではないか、いわば少年に争う権利を与えなさいと言っているわけですから、それに見合うだけの権利を保障しなければいけないのではないのか。実際の勾留質問制度が一言二言弁解を聞くだけということに終わっていないだろうと私は思いますけれども、手続的にもきちっと保障されなければいけない。  例えばここの部分でも、結果的に少年にとって不利益になっている部分があるのではないのか。刑事事件については、勾留決定に対しては準抗告ができるようになっております。しかし、観護措置決定に対しては不服申し立てができないことになっている。これも、条約が自由を奪われた子供に自由剥奪の合法性を争う権利を保障するというのであれば、やはり不服申し立ての権利を認めるべきではないのか、このように思うわけですが、いかがでしょうか。
  233. 濱邦久

    濱政府委員 今委員指摘になられました児童の権利に関する条約の三十七条(d)項に言う自由の剥奪の合法性を争う権利との関係でございますが、少年の勾留について申しますと、勾留については、今委員指摘になっておられましたように、準抗告あるいは勾留理由の開示の制度が一応制度としてはあるわけでございます。観護措置につきましては、これは今委員指摘になられましたとおり、直接の抗告の規定はもちろんないわけでございます。  これは一つには、先ほどから御説明申し上げておりますとおり、観護措置が単に逃亡、証拠隠滅の防止等を目的とするものではなくして、家庭裁判所少年の非行事件について調査、審判を行い、少年の性格矯正あるいは環境調整に関する保護処分を行う前提としての少年の資質の鑑別の必要性に基づくものであるというふうに考えられるからであるわけでございまして、その目的において逃亡、証拠の隠滅の防止等犯罪捜査を目的とする起訴前の勾留とは性格を異にする中間処分であるというところにもその理由があるのであろうというふうに思うわけでございます。  ただ観護措置につきましては、抗告の規定はないわけでございますが、職権による取り消し、変更によることとしておるわけでございまして、これは実務の運用上、少年及びその付添人からいっても観護措置決定を取り消す旨の職権発動を求める申し立ては行うことができる。実質的に観護措置の当否を争う方途は開かれていると思うわけでございます。もちろん、委員の仰せになっておられるのは運用面だけでは足りないという御趣旨のお話だと思いますけれども、その点は今後いろいろな角度から検討していかなければならぬことだと思いますが、少なくとも今のような点を考えますれば、児童の権利に関する条約三十七条(d)とは直接には反することにはならないであろうというふうに一応は理解しているわけでございます。     〔星野委員長代理退席、委員長着席〕
  234. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私、これは考え方だし評価だと思いますけれども、条約三十七条(d)、自由を奪われた子供にその自由剥奪の合法性を争う権利を保障する、これを実質的に保障するというふうに言うのであれば、やはり現行少年法は問題があるのではないのかな、またその運用においても多々問題があるのではないのかな。  例えば今御答弁の中に、まさにその中間処分である、これは通常の刑事事件とは同じ身体の拘束であったとしても実は違う質の、ある意味ではこういうことを言外に含まれた御答弁なのかもしれませんけれども、多分条約はそういうことも考慮に入れながら、自由を奪われた子供に対して自由剥奪の合法性を争う権利を保障しなければならない、こういうふうに言っているのだと思うのです。そうすると、自由剥奪の合法性を争う権利を保障したと言えるためには、そしてさらにそれは未成熟なというか本当に自分の権利主張を十分にすることができないかもしれない少年なんだから、一般刑事事件、成人の場合以上にそこの部分は手続的にも権利保障的にもかえって厚くすべきではなかろうか、そういうふうに思うわけです。  例えば、そうだと言い得るためには、これは私は資料に基づいて申し上げさせていただいておるわけですけれども、捜査官が提出した資料や意見少年あるいは少年側が閲覧できるようにすること、資料に対する反証を提出する機会が十分に与えられること、さらにすべての勾留の決定に対して不服申し立ての権利が与えられなければいけない。そして、今申し上げました、提出した資料を閲覧する、そして反証する、これを十分に保障するためには、現行少年法制度は付添人という形では認められているわけですけれども、いわゆる弁護権として、弁護人が立ち会いをする、そういう権利が認められないと、この条約三十七条(d)の自由剥奪の合法性を争う権利を保障するというふうには言えないのではないのか。この条約の立場と現行少年法とでは矛盾しないというふうには、今外務省あるいは法務省当局のお立場とは思いますけれども、どうもそうは言えないのではないのかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  235. 濱邦久

    濱政府委員 この児童の権利に関する条約三十七条(d)に言う自由の剥奪の合法性を争う権利と現行の我が国の少年法あるいは少年に適用される刑事訴訟法の建前との関係につきましては、先ほど私がお答えしたとおりの考え方でございます。  それはそれといたしまして、今委員がいろいろ御指摘になられましたこの権利保障の問題につきましては、これは例えば観護措置に対する不服申し立てあるいは国選付添人制度等々の問題につきましては、昭和五十二年六月のいわゆる少年改正に関する中間答申の中にも盛り込まれているところでございます。これらの諸制度につきましては、少年法の全体構造にかかわる問題であることは申すまでもないことでございますので、今後とも少年改正作業の中で検討していきたいというふうに考えているわけでございます。
  236. 倉田栄喜

    ○倉田委員 もう少し条約の関係で続けさせていただきますと、例えば条約四十条、問責を告知される権利、それから黙秘権、こういうのを規定してあります。  その問責の方ですけれども、刑法に違反したと申し立てられまたは罪を問われた子供は自己に対する被疑事実を迅速かつ直接に、さらに適当な場合には、親または法定保護者に通じて告知される権利を有する。これは「適当な場合」という解釈が問題になるんだと思うのですけれども、現行法上は親や保護者に対する告知を定めた規定はないわけですね。逮捕、勾留段階で親や保護者に被疑事実が告知されるべきこと、及び家裁送致後審判期日の相当期間前に、少年が防御の準備をするのに相当な期間前に少年と親や保護者に非行事実を告知すべきなのではないのか。しかも、これは運用上、例えば口頭あるいは電話なんかでやられることがあるのかもしれませんけれども、書面できちっとやるべきではないのか、こういうふうに思うわけです。  黙秘権について見ますと、これも四十条で規定されているわけですけれども、証言を強制されまた自白を強要されない、こういうふうに保障しているわけです。この黙秘権につきましても、いわゆる捜査の段階ではある程度きちっとやられているかもしれないけれども、例えば審判とか調査、いわゆる調査官による調査、こういうときにきちっと黙秘権の保障がされておるのかどうか、この点も実は問題だと思うのです。  問責を告知される権利については法務当局に、それから黙秘権について、その調査、審判の場合の黙秘権の扱いはどのようになっているのか、これについては裁判所の方にそれぞれお答えをいただきたいと思います。
  237. 濱邦久

    濱政府委員 まず条約四十条の2の(b)の(ii)が保障しております被疑事実の告知を受ける権利、それから、審判前に余裕を持って少年及び保護者に書面で審判事由を告知すべきではないかというようなお尋ねの御趣旨だと思うわけでございます。  審判開始前の家庭裁判所調査官による調査の段階でも、罪の告知を行う、あるいはまた少年審判開始決定があった場合には、第一回審判期日に家庭裁判所裁判官から告知するという運用が定着しているというふうに承知しているわけでございまして、この点の条約の要請は満たされているものというふうに考えているわけでございます。  なお、ちなみに先ほど来申し上げております昭和五十二年六月の法制審議会の中間答申の中には「審判手続及び少年の権利保護に関する必要事項の教示に関する規定を設けること。」という項目も盛り込まれているわけでございまして、当然今後の改正作業の中で検討していかなければならない事項であるというふうに思っております。
  238. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 先ほど来のお話のように、少年保護手続の場合の少年の扱いでございますので、その手続の中で刑事裁判と同じような意味での黙秘権というものが果たしてあるのかないのかということは、従来も争いがあるところではございます。  しかし、家庭裁判所の実際の運用におきましては、少年保護を重要な柱にはしておりましても、犯罪事実に関することをきっかけにして、それを審判の対象として取り扱っていくという意味では、人権保障的な面を配慮しなければいけないことは当然でございますので、特に犯罪事実についての審判を行う場合には、裁判官が観護措置決定をする場合あるいは審判期日においては裁判官がまず黙秘権を告知して非行事実を説明し、それについての弁解を聞くというようなことは例外なしに行っていると申し上げてよろしいと思いますし、それも形式的に行うのではなくて、少年の理解力に応じでわかりやすく説明する、こういう方式をとっていると言えると思います。  お尋ねの家裁調査官による面接調査等の場合に黙秘権がどうなるかということでございますが、これにはもう一つ問題が実はございまして、調査官の調査の眼目というのは犯罪事実そのものを探知するということではございませんで、非行性の程度あるいは原因、資質、環境上の問題点、いわば要保護性の調査を中心にした社会調査でございます。  そういう意味で、刑事と同じような黙秘権がなじむかどうかという問題はございますが、いずれにしましても、調査官の調査においても、まず社会調査の前提として非行事実の有無を聞くというようなことはございますので、実際の調査場面では調査の目的や意義を理解させると同時に、言いたくないことを無理に言う必要はないんだという説明を十分わかりやすくやっておるというのが一般の運用でございます。
  239. 倉田栄喜

    ○倉田委員 実は、児童の権利に関する条約との関係でいいますと、今の黙秘権も、本当に黙秘権を実質的なものにするためには今のままで十分なのかどうかということについても私は疑問を持っております。さらに言えば、弁護権が果たして十分に保障されているのかどうか。これも国選弁護人制度あるいは国選付添人制度、そういうものも検討しなければいけない。あるいは反対尋問権の保障の点についても多々問題はありますし、この点、当局は十分御承知と思いますので、ぜひ御検討をいただきたいと思います。  そろそろ時間がなくなってまいりましたので、あと二点ほどお伺いをしたいと思います。  まず、今の少年手続の流れに関しては最後に大臣にお伺いをしておきたいと思いますが、保護司さんの身分、待遇について現行のままで、いわゆるボランティア的なものでいいのかどうか、この点と、保護観察制度は果たして十分少年の立場に立って機能できるような体制になっているのかどうか。もっと予算も必要なんだと思いますけれども、予算、人数の面で改善をする必要があるのであろう、こう思うわけですけれども、この二点についてまず大臣に御答弁をいただきたいと思います。
  240. 田原隆

    ○田原国務大臣 お答えします。  保護司は保護司法に基づいて法務大臣が委嘱をし、それぞれの地域社会において、社会奉仕の精神を持って保護観察の対象となっている犯罪者や非行少年の立ち直りを助け、犯罪や非行のない明るい地域社会づくりのために貢献していただいているのでありまして、私としてはまことに頭の下がる思いがするわけでありますけれども、その身分は非常勤の国家公務員でありますが、報酬は受けてないというような、言うならばまさにボランティアであります。しかし、活動に要した費用の全部または一部を国費から実費弁償金として支給しているのが現状でございます。  しかしながら、近年の社会犯罪情勢の変化に伴って保護司が行う保護観察、犯罪予防活動は、ますます困難の度を増しておることも事実であります。保護司の方々に物心両面にわたる負担をおかけしているのが実情と言わざるを得ないと思います。そのような負担をできるだけ軽くいたしますために、これまで保護司実費弁償金の増額に努めてきたところでありますが、今後とも財政当局の理解を得ながらさらに増額のために努力をし、もって保護司の方々の待遇改善を図っていきたいと思うのであります。  ちなみに、ことしの四年度予算の総額は一億五千万を切っておる状況でございますが、私はこれでも去年赴任いたしましてから予算要求で随分頑張ったつもりでございますが、これからも一層頑張ってまいりたい、こう思っております。  また、保護観察制度の改善について意見を求められましたけれども、我が国の保護観察制度は、専門知識を有する保護観察官と民間の先ほど申しました保護司としてのボランティアの方々の緊密な協働態勢のもとで、それぞれの特質を十分生かして、発揮して保護観察を実施するなどして、保護観察を受けている人々の更生、再犯、再非行の防止及び地域社会における犯罪予防活動などに効果を上げており、私は高く評価しておりますし、また世間からも高く評価されておると思います。しかしながら、先ほど申しましたように、複雑多様化する社会情勢を反映し、保護観察を実施する上で特段の配慮を要する事案が増加しておるのも事実であります。効果的な実施方策の開発など創意工夫を凝らして、さらに保護観察の効果を上げるよう鋭意努力をしてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  241. 倉田栄喜

    ○倉田委員 大臣には御決意のとおりぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。  実はもう時間が参ってしまって大変恐縮なんでございますが、あと一点だけ質問をお許し願いたいと思います。  実は、いわゆる坂本弁護士事件でございますけれども、この問題が起きてからもう既に二年半を過ぎて今なお解決をいたしておりません。坂本弁護士一家三人が失踪してしまって、どうなっているのかいまだ何ら具体的な手がかりがない。実は私は、坂本弁護士を個人的によく知る者の一人として、この問題が解決されないことに対して大変いら立ちを感じております。  そこで、捜査当局にお伺いをいたしたいわけですけれども、もう二年半も経過しているのになぜこの問題が、しかも一家三人が忽然としていなくなってしまう、こういう非常に特殊な事件であるにもかかわらずいまだ、解決のめどは立っているのかもしれませんけれども、少なくとも解決に至っていないのか、この点と現在の捜査の状況あるいは捜査の進展がどのようになっているのかお伺いをしたいと思います。さらにもう一点つけ加えさせていただきますと、坂本弁護士のお母さんを初めとして、ともかく解決をしてほしい、早く生きて帰ってほしい、こういう願いで必死に救援活動をされておられるわけですけれども、二年半も経過いたしますと捜査体制の問題で縮小されてしまう面もあるのではなかろうか、こういう点も実は御心配になっておられます。  そこで、私は、これだけの特異な事件、しかも弁護士活動を妨害するような形で行われている事件でございますので、捜査体制については充実強化する方向でぜひやっていただきたい、このように強く要望申し上げたいわけですけれども、捜査体制についてもお答えを願いたいと思います。
  242. 深山健男

    ○深山説明員 お尋ね坂本弁護士一家の失踪事件につきましては、平成元年の十一月十五日に公開捜査に付すとともに、同十七日に神奈川県磯子警察署に百二十名による捜査本部を設置し、現在も同様の体制のもとに、引き続き現場付近の不審人物、不審行動者等に関する徹底した聞き込み、あるいは失踪者坂本弁護士が取り扱いました事件をめぐる紛議の内容等の検討とこれに関連する関係者の事情聴取、公開捜査により入手しました情報の分析とその裏づけ等の所要の捜査を強力に推進しているところでありますが、残念ながら、これまでのところ事件解決に直接結びつくような情報は得られておりません。  警察庁といたしましても、事案の重大性にかんがみ、神奈川県警察に対しまして徹底した捜査を指示してきたところでありますが、今後とも所要の捜査体制を維持し、一層強力な捜査を推進するよう指導するとともに、他の都道府県警察に対しても関連する情報の収集など必要な捜査を推進するよう引き続き指導してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
  243. 倉田栄喜

    ○倉田委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  244. 浜田卓二郎

  245. 木島日出夫

    ○木島委員 今回の少年保護事件に新たに補償制度を策定するということ、大賛成であります。今まで立法の不備が各界から指摘されていたところであり、むしろ遅きに失したのではないかとさえ思っておるわけであります。刑事補償法の一部改正法案も、補償金額の上限の引き上げでありますから、無論大賛成であります。  最初に、法案についてお聞きする前に、現行の刑事補償法の運用の実態、どのくらい実効性があるのかについてお伺いをしたいと思うわけであります。  確定した裁判の数でありますから最高裁にお聞きしたいのですが、この十年間の、刑事補償を受けることができる要件を持った人数、そしてそれに対して実際に刑事補償を請求している者の人数、それに対して補償決定を受けられた人数、何%くらいの者が刑事補償を実際受けられているのか、その数字をまずお示しいただきたいと思います。
  246. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 御質問に対する正確な統計はございませんが、例えば昭和五十六年から平成二年までの十年間ということで、通常第一審で無罪の裁判が確定した人員について見ますと、地方裁判所で千二十七人、簡易裁判所で五百人でございます。そのうち、起訴された時点で身柄が拘束されていた人員が、地方裁判所で六百九十四人、簡易裁判所で六十二人となっております。  これら起訴時に身柄が拘束されていた方々を請求可能な人員というふうに一応考えまして、次に、通常第一審の無罪の裁判が確定した事件についてこの十年間に現実に刑事補償を請求した人員でございますが、地方裁判所においては二百九十四人、簡易裁判所においては二十人でございます。そうしますと、請求可能人員に対する割合ということでは、地方裁判所で四二・四%、簡易裁判所では三二・三%の方が請求をしておるということになります。また、請求がどれだけ認められているかということになりますと、この十年間で九五・八%の方が補償決定されておるわけでございます。     〔星野委員長代理退席、委員長着席〕
  247. 木島日出夫

    ○木島委員 ただいまの答弁によりましても、この十年間をとってみても、本来刑事補償法補償を受けられるはずの人間に対して約四二・四%しか現実には請求がなくて、補償決定もされていない。要するに半分以下だということ、これは重大な数字じゃないかと思うわけであります。しかも、今裁判所から示された数字のうち、補償を受けることができる人数として十年間で六百九十四人であったというその数字は、公判請求がされたときに勾留されていた人数ですね。ですから、公判請求したときには在宅であった、しかし実際にはその前に十日なり二十日なり勾留されていたという人数もほかにある可能性があるわけですね。ですから、刑事補償を受けることができるはずの人数というのは、六百九十四人というのが最低限の数字であって、実際はプラスアルファがあるはずだ。無罪人員が千二十七人でありますからその落差が三百人以上あるわけですから、その三百人以上の中には、公判請求のときにはたまたま在宅だけれども、身柄が五日拘束されていた場合も含まれているとお聞きしたわけですが、そういう理解でいいのでしょうか。しかし、そういう統計はとっていないという理解でいいのでしょうか。
  248. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  249. 木島日出夫

    ○木島委員 もちろん、刑事裁判でありますから、弁護人がついているはずであります。日本の刑事裁判制度の中で無罪を得られるというのは非常に希有な事例であるということも御案内のとおりであります。大変な苦労をして、被告人、弁護人の努力の結果無罪が、言葉が適当かどうかわかりませんがかち取られた。それにもかかわらず、せっかく憲法上の権利である補償請求権が、半分以下の人間にしか実際に支給されない。請求されていないからでありますが、なぜ半分以下になっているのか。その理由は、裁判所、これは法務省に聞いた方がいいのでしょうか、どうお考えなのでしょうか。
  250. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 その理由についてつまびらかではございませんけれども、心神喪失を理由とする無罪ということもございますし、また拘束期間が非常に短い方の場合もあると思います。また、先ほど統計上申し上げました数字は、全部無罪のみならず一部無罪の方も含んでおりますので、たくさんの事実のうち一部の事実のみ無罪になったというような場合にはあえて補償を受けるまでもないと考える方もあるのではないか。そういった方々が入っておるためにこの請求率が全体として低くなっておるのではないかというふうに推察されるわけでございます。
  251. 木島日出夫

    ○木島委員 今、答弁の中に心神喪失を理由とする無罪もあるのではないかというお話がありましたが、刑事補償法上は、心神喪失を理由とする無罪であっても刑事補償請求権はありますね。ないわけじゃないでしょう。
  252. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 御指摘のように、請求権がございますので請求可能な人員の中に加えたわけでございますが、実際の問題としてはそういうことを理由として補償請求をするかということになりますと、そのような場合には実際に請求しない方も結構おるのではないかという意味で申し上げたわけでございます。
  253. 木島日出夫

    ○木島委員 法務省はどんなふうに考えていますか、四二・四%という数字について。
  254. 濱邦久

    濱政府委員 刑事補償法に基づく刑事補償自体につきましては、私どもも今最高裁当局からお答えになったと同じような考えでございます。  それは、一つには、私どもの方は、被疑者補償との関係で、同じような状況が認められるのかどうかというようなことも、もちろん法律的には制度自体は違うわけでございますけれども、実際に補償する人員が少ないという事情について同じようなことがあるのではないかというふうに考えているということでございます。
  255. 木島日出夫

    ○木島委員 恐らく法務省最高裁も、せっかく無罪が得られたにもかかわらず、憲法上の権利であり、刑事補償法という立派な法律があるにもかかわらず、なぜ補償請求しないのか、ここの理由について追跡調査されたことはまだないのじゃないかと思うのですね。ですから、今の最高裁法務省の御答弁もある面では推測にすぎないのではなかろうかと思うわけであります。  私もいろいろな推測はしているのですが、一つは、別途補償請求をするというのは、別裁判を起こさなきゃいかぬわけですから非常に手間暇がかかる。もう裁判所へ来るなんて嫌だ。無罪を受けて、苦労した人物でありますから、また裁判所の門をくぐるというのは非常に精神的に大変だというようなこともあるのではなかろうか。手間暇も大変だ。請求するにしても、新しくまた弁護士をつけないと、刑事補償請求などというのは無罪をから得た刑事被告人がなかなか簡単にできるものじゃない、そういう制度上の問題もあるのではなかろうかなと思うわけであります。こういう大事な権利が半分以上使われないということは、法治国家として、民主主義国家として大変ゆゆしいことだと思うので、法務大臣、ぜひともこれは追跡調査していただいて、法務省がやるのか裁判所がやるのか、どっちがいいのかわかりませんが、これだけ大勢の方々がどういう理由で補償請求しないのか、しっかり調査をしていただいて、そして制度上の見直すべき点などがあるのであれば、ひとつ立法化のための御努力をしていただきたいなと思うわけであります。これから後で質問する今回の少年保護事件に係る補償制度は、新たな請求を待たずに裁判所補償決定できるわけですから、そういう漏れは一〇〇%なくなるのですね。ですから、そんなことをお願いしたいのですが、どうでしょうか。
  256. 田原隆

    ○田原国務大臣 今の理由についてはできるだけ御趣旨に沿えるよう打ち合わしてみたいと思いますが、補償するお金は結局国民の税金から出ているわけですから、やはりきちんとした制度でやられるのは当然だと思うのですね。  それで、刑事補償法が憲法の精神を酌んで具体化しているわけですけれども、請求権としての構成がどうしても必要であるということになるわけですが、職権による補償制度はしたがってとりがたいと、補償請求を行うに当たって、国選を含む弁護人の助言をも期待できる状況にあるわけですから、刑事補償法の場合。一般的に判断力が未熟であって、必ずしも十分な保護的環境が整っているとは言いがたい少年審判の対象となる少年に対し、補償の面においても家庭裁判所が後見的機能を発揮しなければならないのとは異なって、刑事補償の要件がありながらその要求をしない人たちに対して格別な保護措置をとることが果たして正しいかどうかということは疑問がある、その必要がないのではないかというふうに私自身は考えております。
  257. 木島日出夫

    ○木島委員 まことに冷たい答弁だと思いますね。  国家の責任、訴追機関の責任で訴追をされ、しかし、現行刑事裁判制度のもとで無罪になった、それが無罪が確定した事案でしょう。本来償うのは当然の国の責務なんですね、これは。それを定型化したのが刑事補償法だ。そうであるならば、むしろ請求を待たずして刑事補償制度が発動しても当然のものではないかなとすら私は思うわけですね。それはもちろん国民の税金でありますが、国民が委任をした政府の行為によって罪のない人物が起訴され、自由を拘束され、そして晴れて無罪になった事案でありますから、国民の税金によって償うのは当然のことではないかと思うわけですね。ぜひともそれはフォローしていただきたいと思うわけです。  少なくとも無罪即補償請求というわけにはいきません。それは二週間の確定ということが必要ですからね。新たな別の補償請求裁判をしなければいけないのは少年保護事件と違うことはわかります。しかし、少なくとも無罪が確定した場合には、まあ法務省検察庁からか、裁判所からか、その無罪と狂った被告人に対して書類を送って、あなたにはこういう権利があります、補償請求はこういう手続でできます、そんなに難しいことではありませんと書式などを送って、弁護人をつけずしてもすぐに補償請求に裁判所の門をくぐることができるような、そのくらいの温かい配慮は必要じゃないかと思いますけれども、そういうことは今おやりになっておりますでしょうか、裁判所あるいは法務省は今そういうことをやっておりますか。
  258. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 実際には、無罪の裁判を言い渡す際に、裁判官がこれが確定すれば刑事補償の請求ができますよという旨の説明をいたしておるのが運用でございまして、また私ども刑事局といたしましても、通達及び会同協議会等における係官の説明などによりまして、そのような運用をするようにということで、各裁判官に対しては周知徹底を図ってまいっておるところではございます。
  259. 木島日出夫

    ○木島委員 そういうことをやっても、実際の補償請求率が最大四二・四%にすぎないということであります。法務大臣から、弁護人がついているではないかというお話ですが、無罪が確定しますと、国選弁護の場合、弁護人と被告人関係は切れます。その国選弁護人が被告人から新たな依頼を受けて補償請求するというのは考えられない、私選弁護人ならともかく。そういうこともありますので、ぜひともその点については一層の御努力をお願いしたいと思うわけであります。  少年保護事件に係る補償に関する法律案について、幾つかお聞きしたいと思います。  最初に、法案第二条「補償の要件」第一項第一号、あるいは第二項も準用されておりますが、補償ができる要件として、少年法第二十四条第一項第三号、これは少年院送致であります。この保護処分を受けた場合には要件があるという法律でありますが、少年法第二十四条第一項第二号の教護院送致あるいは養護施設送致、これらの保護処分を受けた場合には補償の対象になっていない、はなからそれらの送致については外されているということは問題じゃないかと私は思うのですが、法案の解釈としてそう解釈していいですね。そして、なぜそれを外してしまったのでしょうか。
  260. 濱邦久

    濱政府委員 まず、少年院がいわば刑事政策的な保護施設であるのに対しまして、委員お尋ねになっておられます教護院及び養護施設は児童福祉法上の福祉施設でございます。強制力を行使することなく児童の教護または養護を行うことをその本質とするものであるというふうに考えているわけでございます。したがいまして、教護院または養護施設への収容は基本的に「身体の自由の拘束」には当たらないというふうに考えておりますために補償の対象とはしていないものでございます。
  261. 木島日出夫

    ○木島委員 教護院及び養護施設は基本的に身体の自由を拘束するものではないという答弁であります。  厚生省をお呼びしておりますので、お聞きをいたします。  教護院並びに養護施設に入所措置決定を受けた児童、子供は、外部交通は自由でしょうか。
  262. 弓掛正倫

    ○弓掛説明員 お答えいたします。  外部との出入りがどうかということについてお答えいたしますが、入所している児童についての外出とか規制につきましては、それは、処遇の必要性により慎重な取り扱いはなされておりますけれども、これについては児童本人ともよく話し合いをした上で実施されているものでございまして、例えば高等学校に通学しているというようなケースもありますことから、入所の自由の拘束にはなっていないというように解しているところでございます。
  263. 木島日出夫

    ○木島委員 私が外部交通が自由がどうかと言うのは、入所措置を受けた児童が長の承諾なしに、許可なく自由勝手に外へ出られるかということです。
  264. 弓掛正倫

    ○弓掛説明員 それは、施設に入っております限りは、やはり施設長、寮長といった指導者の了解を得て出るということになります。
  265. 木島日出夫

    ○木島委員 やはり自由に外に出られないわけですね。外に出るときは一々寮長の許可がないと出られない。  許可の要件というのはあるのでしょうか。どういう場合に許可すべきで、どういう場合には許可できないのだという要綱はあるでしょうか。
  266. 弓掛正倫

    ○弓掛説明員 特にこういったときには許可されて、こういうときにされないということではございませんで、そのケース、ケースといいますか、その事態に立ち至った状況を施設長なり寮長が、指導員が判断いたしまして許可するということになろうかと思います。
  267. 木島日出夫

    ○木島委員 夕方五時になって、友達と遊びたいというので遊びに行きたいというような場合は許可されますか。
  268. 弓掛正倫

    ○弓掛説明員 それは、交遊関係、友人との関係も大切でございますので、その友達にもよる場合があるのではないかというように考えます。
  269. 木島日出夫

    ○木島委員 余り深くは追及しませんが、確かにこれは厚生省所管の施設なんです。それで、法律上は家庭裁判所から児童相談所に委託するという形になるのですね。委託を受けた児童相談所が入所させるということになると思うのです。  それじゃ、どのくらいの長さ、一カ月なのか、一年なのか、二年なのかあるいは三年なのか。教護院の場合は入院というのですか、養護施設の場合は入所というのですか、その期間決定はだれが決めるのですか。家庭裁判所が処分で決めるのですか、それとも児童相談所が決めるのですか、あるいはこれらの院所が決めるのですか。
  270. 弓掛正倫

    ○弓掛説明員 お答えいたします。  期間につきましては、入所措置は児童相談所が行いますけれども、児童相談所でその入所の際に期間を定めるということはいたしておりませんで、実際の処遇に当たりまして処遇方針を定め、一つの目標を設定するわけでございますが、その目標を定めて、それに向かって、それに沿って児童の処遇をいたして、ある期間が来れば、もういいということで判定の会議を開きまして、そこで決定を、児童相談所と施設側とで相談しながら決めていくというようなことになっております。
  271. 木島日出夫

    ○木島委員 退院措置決定あるいは退所措置決定については、家庭裁判所は関与しないという仕組みなんですね。
  272. 弓掛正倫

    ○弓掛説明員 児童相談所と施設側の方に移っておりますので、そのとおりでございます。
  273. 木島日出夫

    ○木島委員 現在、日本全国で、教護院に入所している人数あるいは養護施設に入所している人数はどのくらいなんでしょうか、それから、平均的な入所期間は大体どのくらいになるのか、教えてください。
  274. 弓掛正倫

    ○弓掛説明員 お答えいたします。  平成二年度現在でございますけれども、教護院に入っている数は二千二十九名でございまして、在所の期間といいますのは平均いたしますと大体一年五カ月くらいでございます。それから、養護施設に入っております子供は二万七千四百二十三人でございまして、養護施設の在所期間は大体四年半くらいでございます。
  275. 木島日出夫

    ○木島委員 そのうち家庭裁判所の保護処分を受けて入っていっている人数はどのくらいなんでしょうか。これは家庭裁判所の方に聞いた方がいいのでしょうか。
  276. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 申し上げます数字は平成三年度でございますけれども、教護院または養護施設に送致された少年の人員は三百三十二名でございます。三年度は三百三十二でございますけれども、近年のところ、大ざっぱに言いまして三百名から三百七十人程度の間を増減しておるというのが最近の傾向でございます。
  277. 木島日出夫

    ○木島委員 内訳はわかりますか。
  278. 山田博

    山田最高裁判所長官代理者 統計上は内訳まではわかっておりません。ただ、経験に徴しますと、養護施設送致というのは極めて少ないというふうに認識をしております。
  279. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、毎年三百から三百七十名が入っているが、ほとんどが教護院であろうということですね。私は教護院と養護施設の実情の違いも大体理解しているのです。教護院の方が自由の拘束はきついと理解しているのですが、それはそういう理解でいいでしょうか。
  280. 弓掛正倫

    ○弓掛説明員 おっしゃいますとおり、児童の状況が若干違いますのでそのとおりかと思います。
  281. 木島日出夫

    ○木島委員 家庭裁判所少年保護事件として事件が立件される、そして保護処分として教護院に送致されるということになりますと、一般社会の評価はやはり少年院に送られるのとそう違わない大変重大な、本人にとってはマイナス要因を受けることは事実なんです。幾ら少年院は法務省の所管であり、教護院は厚生省の所管で児童福祉施設なんだと言ってみても、家庭裁判所の保護処分を受けて送られてくる子供、そしてその親またその取り巻きにとってはそう違わない大変大きな社会的なダメージを受けるわけであります。しかも、その教護院に送られた児童、子供が平均一年五カ月くらい入所を余儀なくされる、勝手に外には出られないという状況は、社会的、法的評価としてはこの少年保護事件補償法の第二条の「身体の自由の拘束」そのものではないかと思うのですね。これが誤っていた場合、この保護処分が誤っていた場合には、少年院送致と同じように補償できるというのは常識じゃないでしょうか。  法務大臣、どうでしょうか。なぜ教護院は補償しないでいいんだ、少年院は補償するんだ、その違いを、この措置決定が誤っていた場合ですからね、無罪だった場合と同じようなことで誤った場合の考え方ですから、どうですかね、入れるべきじゃないですか。
  282. 田原隆

    ○田原国務大臣 実際の実務については余り存じておりませんので、政府委員答弁させます。
  283. 濱邦久

    濱政府委員 今、養護施設の点はしばらくおくとして、主として教護院について委員お尋ねになっておられるのだろうと思いますけれども少年補償制度をつくります場合に、その補償の対象と申しますか、その「身体の自由の拘束」というものをどこまでというか、どういうものと考えるべきなのかということは、いろいろな御意見があると思うのでございますけれども、今回の法案考えておりますのは、刑事補償あるいは被疑者補償との並びでというと言葉がちょっと適切かどうかわかりませんけれども、抑留、拘禁に当たるような身体の自由の拘束というものを主として補償の対象としようというところから出発しているのではないかというふうに思うわけでございます。したがいまして、先ほどお答え申し上げましたように、教護院あるいは養護施設は児童福祉法上の福祉施設であって児童の教護あるいは養護を行うことを本質とするものなんだ、そこへの収容というのは基本的にはその身体の自由の拘束には当たらないんだという考え方も私は一つ考え方ではないか。委員はその拘束の度合いにもいろいろ程度があるという御趣旨の御意見かもしれませんが、私どもこの法案を提案した立場としてはそういうふうに考えているわけでございます。
  284. 木島日出夫

    ○木島委員 刑事補償法にせよ今回つくられようとしている少年保護事件補償法にせよ、結局、本来刑事訴追を受けるべきでなかった被告人あるいは本来少年保護事件の保護処分の対象になるべきではなかった少年、これが訴追機関あるいは関係機関の、語弊があるかもしれませんが誤った措置によって送られる。それで、程度の差はあるでしょうけれども、身柄が一定期間拘束されてしまった。しかし、いろいろ事実調べをした結果、それが誤りであった。誤りの中には、罪となるべき犯罪を犯していなかったという基本的なものもあるでしょう、正当防衛やその他違法性がなかった、それで無罪、あるいは違法性がないことによって保護処分が取り消されるということもあるでしょう。  責任の問題、時間があればちょっと論じたいのですが、責任のところは大きな問題がありますからそれは棚に上げるとしても、本来そういう家庭裁判所なんかに行くはずでなかった子供が誤って家庭裁判所に送られる、そして誤った保護処分によって教護院に送られていく、そして一年なり何年何カ月なり、程度の差はあるでしょうけれども、自由な行動ができない、親元に帰れない。この法律の根本精神は、そういう国家の責任で誤った処遇によって身体の自由を拘束してしまった場合には慰謝をしよう、償いをしよう、そういう法律だと思うのですね、基本的には。そうすると、身体の自由の拘束が少年院や刑務所と違ってやや少なくても、やはり法の趣旨としては、私はこういう場合は希有な例だとは思うのですけれども、そういう場合には少なくとも法律の中には補償の対象として書き込んでおくべきではないかなと思うのですよ。再考願えないでしょうか、法務大臣。
  285. 田原隆

    ○田原国務大臣 先ほど刑事局長から答弁のあったとおりだと思います。
  286. 木島日出夫

    ○木島委員 もう時間が来ましたから、私は次回にも質問時間を残していますので、これで終わらせていただきます。
  287. 浜田卓二郎

    浜田委員長 次回は、来る二十日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会