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1991-11-21 第122回国会 参議院 文教委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十一月二十一日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  十一月十九日     辞任        補欠選任      笹野 貞子君    池田  治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長        大木  浩君     理 事                木宮 和彦君                田沢 智治君                小林  正君                森  暢子君     委 員                井上  裕君                石井 道子君                世耕 政隆君                真島 一男君                森山 眞弓君                柳川 覺治君                会田 長栄君                肥田美代子君                安永 英雄君                針生 雄吉君                高崎 裕子君                池田  治君   国務大臣       文 部 大 臣  鳩山 邦夫君   政府委員       人事院事務総局  吉川 共治君       任用局長       文部大臣官房長  野崎  弘君       文部大臣官房総  井上 孝美君       務審議官       文部省生涯学習  内田 弘保君       局長       文部省初等中等  坂元 弘直君       教育局長       文部省教育助成  遠山 敦子君       局長       文部省高等教育  前畑 安宏君       局長       文部省高等教育  奥田與志清君       局私学部長       文部省学術国際  長谷川善一君       局長       文部省体育局長  逸見 博昌君       文化庁次長    吉田  茂君   事務局側       常任委員会専門  菊池  守君       員   説明員       厚生省保健医療       局結核感染症  堺  宣道君       対策室長     —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育文化及び学術北関する調査  (文部大臣文教行政に対する基本的姿勢に関  する件)  (学校週五日制に関する件)  (台風十九号による文化財被害状況とその対  策に関する件)  (児童・生徒に対するエックス線間接撮影の是  非に関する件)  (私学助成充実に関する件)  (歴史教科書あり方に関する件)  (教科書無償給与制度の堅持に関する件  (ウルグアイ・ラウンドでの貸しレコード問題  に関する件)  (学校図書館司書教諭に関する件)  (子どもの権利に関する条約に関する件)  (留学生受入対策に関する件)  (学術研究予算の拡充に関する件)     —————————————
  2. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十九日、笹野貞子君が委員を辞任され、その補欠として池田治君が選任されました。     —————————————
  3. 大木浩

    委員長大木浩君) この際、鳩山文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。鳩山文部大臣
  4. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) このたび文部大臣を拝命いたしました鳩山邦夫でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  「人づくりなくして国造りなし」というのは私の基本的な考え方でございます。いかに経済大国と言われても、そこに住んでいる国民に心の豊かさが感じられなければ、立派な国づくりとは言えないと考えます。教育人づくり基本であり、我が国が二十一世紀に向けて発展し、世界に貢献していく基盤を築くものであり、我が国の将来は、究極のところ教育成果に帰すると言っても過言ではありません。  文部省においてはこれまで教育改革の各般の施設を積極的に進めてきたところでありますが、今後ともこれらの施設を推進するとともに、さらに長期的な観点に立って、国際社会の中で信頼と尊敬を得られる心豊かな創造力に富んだ青少年を育成するとともに、創造的で活力ある心豊かな社会の形成を目指して教育行政を推進してまいることが重要であると考えております。  私は、教育学術文化スポーツ担当大臣として、みずからに課せられた役割と責務を十分認識し、国民の期待に的確にこたえる行政の推進に全力を傾注してまいる決意でございます。  大木委員長並びに各委員皆様方の御指導、御協力を心からお願い申し上げて、就任のごあいさつといたします。  ありがとうございました。     —————————————
  5. 大木浩

    委員長大木浩君) 次に、教育文化及び学術に関する調査を議題とし、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言お願いいたします。
  6. 森暢子

    森暢子君 本日は、大臣就任最初文教委員会でございますので、まずは大臣所信表明などをお聞きして、今日の教育の諸問題であるとか、そういうものをこの文教委員会で十分議論し、そして教育の方向を決めていきたい、このように思いまして、新しい所信が聞けるものと期待しておりましたが、ごあいさつということでございますので、したがっては、大臣就任後いろいろなところでインタビューに答えられたり新聞の中にもございます、そういう拝見いたしましたものの中から二、三点お伺いしたいと存じます。  今、ごあいさつにもございましたが、「人づくりなくして国造りなし」ということで、日本教育には優秀な部分と反省すべき部分があるというふうにも述べられておりますが、もう少し詳しく大臣文部行政に取り組む姿勢についてお話し願えたらと思います。
  7. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 私、実は子供が今は高校二年、中学二年、中学一年と三人ですが、今から五、六年前、それほどでもないかもしれませんが、小学生の子供アメリカオレゴン州のポートランドというところに行かせておったことがございます。これは将来国際化時代にたえ得るような子供をという希望もありましたし、私の女房がオーストラリアと日本のハーフでございまして、英語日本語と両方ともネイティブスピーカーなものですから、私は英語は余り得意ではありませんが、将来そういうふうになればという気持ちがあって参りました。  アメリカオレゴン州のポートランドというところは、大きな町ではありますが、田舎都市ではありましょう。しかし、そこに大きなコロンビア川という川がありますが、その川のあたりに縦横無尽に高速道路がかかっておって、公共投資の既に投下された量というのは、アメリカ合衆国というのはすごい国だなということは行くたびに感心をさせられるわけであります。  今、我が国、例えば公共投資十カ年計画四百二十兆円という話があります。日本社会資本が立ちおくれていますからこれをやるのは当然のことだと思います。しかしながら、その公共投資というものが、一般に言われているような公共投資大変充実をしたとしても、そしてまた貿易、経済等が好調であったとしても、その土地の上に、日本という祖国の上に住み、歩いて、考えて、感じている日本人が、人間が心が豊かでなかったとするならば、結局それは幸せな社会ができ上がったとは言えない。それを私は「人づくりなくして国造りなし」というふうに申し上げてまいっておるわけであります。  ですから、もちろん公共投資という中には学校教育施設とか社会教育あるいは生涯学習施設とか、そういうものも入るとは思いますが、本当のことをいえば最大公共投資というのは実は教育なんではないだろうか。幸せな人間をつくることができるかどうかというかぎ、そのかぎのかなりの部分教育が握っているとするならば、教育こそ真の意味での最大公共投資でなければならない、そういうような考え方もいたしております。  さらに、一般に言う公共事業教育の大きな違いというものは、例えばトンネルが振れました、橋がかかりました、これは目に見えていくわけでありまして、物流が変わった、こんな町ができた、どんどん公共事業成果というのは具体的にあらわれていく。しかし、教育というものは人づくりでありますから、正直言って三十年後、今の小学校の一年生の子が三十年たって三十五、六歳になる。つまり、学校も終える、仕事も始める、結婚もする、子育てもやる、そしていわゆる働き盛りの年齢になったときに、この三十数歳の人間はすばらしいなと周りが評価するとすれば、それは六歳、あるいはその前の幼稚園からあるかもしれませんが、その教育の積み重ねというのが三十年後に初めて一般に評価されるということを考えますと、教育というのは時間がかかる、人づくりというのは、今投資をしてもその結果があらわれるまで例えば三十年かかるというような見方だってできるだろう。  そう思いますと、時代に合った人間をつくり上げる、人材を養成するといっても、今のことだけ見ておったんじゃ本当はいけないのかもしれない。三十年後ぐらいの日本の世の中とか世界というものを推定するという作業すら必要になってくる。そういった意味で、少々長くなって恐縮ですが、教育というものは大変重要であるとともに、極めて難しいものであると心得て私なりに全力を尽くしていきたいと思います。
  8. 森暢子

    森暢子君 ありがとうございました。  今、大臣のお言葉の中に「心の豊かさ」というお言葉がございました。今、日本は物の豊さではなくて心の豊かさの方に向かっているという中で、子供たちは今の管理教育、それから効率主義学歴偏重社会の中で大変忙しく、そしていろいろな悩みを持ちながら苦しんでいるのが現状だと思うわけです。  その中で、特に文部大臣就任の一番の課題は、学校週五日制ということに対してどういう方針を打ち出されるのかというのが国民も一番の関心を持っておりますし、大きな課題であろうかと思います。そのことにつきましての御決意と、それから一番の公共投資教育ではないかというふうにおっしゃられた中から、間もなく予算編成を迎えるわけでありますが、財政当局は税収の落ち込みを背景に徹底した歳出の抑制を言っておりますし、文教関係でも教科書有料化であるとか、聞きましたところ、米飯給食補助金をもうやめるとか、学校に対するそういうしわ寄せが来ているわけです。その文教関係にかかわってこられました鳩山文部大臣には、予算編成に向けて、つまり学校五日制の決意予算編成に向けての御決意、この二点をお伺いしたいと存じます。
  9. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 学校五日制についてはまだ決意というものは持っておりません。考え方を持っているだけでございまして、これは現在調査研究協力者会議で検討いたしておりまして、平成三年度末までには結論を出していただこうという形で進んでおりますし、先生承知のように、六十八校の実験校調査研究協力校というんでしょうか、月に一回あるいは二回土曜日を休業として進めてきておるわけでありまして、そういう実験校におけるその親御さんたちPTA方々意識がどう変わってきているかというような調査もやられているやに聞いておるわけであります。そうした会議結論ももらわなければなりませんし、実際週二日間を休みにした場合に、月曜から土曜までの授業をすべて金曜日までに集中をするということになりますと、教育課程あり方、それで教育水準を保つことができるかとか、なかなか難しい問題がございます。  私は、正直申し上げて、確かに時代流れというものは非常に感ずるわけでありまして、私が七年前に文部政務次官になりましたころには、学校五日制というテーマはありましたけれども、なかなか現実的なものとして議論は余りされていなかったように記憶をいたしております。その間、週休二日制の定着とかいろいろな時代流れというものの中で現在五日制が議論をされてきているということについては、私はその七年間の変化というものは十分に感じ取っているわけであります。  ただ、文部大臣として就任をさせていただいてまだ余り勉強を十分しておらないのでありますが、一番最初学校五日制ということでみずからの脳裏に浮かんだことは、子供さんが土、日と二日間休みになるというのはゆとりにもなろうし、あるいは個性化のためにもいいことだろうとは思うけれども、それを受け入れる社会とか家庭というものがなければいかぬなということをつくづく感じたわけです。土、日が休みになったために親子のきずなが深まって親子で一緒にやることがふえるとか、そういう形に進まなければ逆効果になってしまう。土曜専門の塾が大繁栄をしたというようなことになれば、かえって子供の負担がふえるということだってあり得はしまいか、そんなことも考えておるということ。  これは、こういうことを言っていいのかどうかわかりませんが、我が国議院内閣制という議会制民主主義をとっておりますから、自民党から総理が出て、参議院では過半数を制しておりませんけれども、我々も自民党の代議士として入閣をさせていただいておるわけですから、もちろん各党の皆様方の五日制の御意見は十二分に承っておるつもりでありますが、またその議院内閣制のもとで自民党文教関係方々が一定の結論を出されたことは先生承知のとおりだろうと思っております。これらはやはり軽く受け流すことはできない、議院内閣制でございますから、ある程度重く受けとめながら、調査研究協力者会議結論を得て、それらが一致している部分、ずれている部分等先生方の御意見も承りながら十分に精査をして、そして具体的に障害となるような問題点があるならば、これの克服のためには努力をしなければなりません。また、さまざまな世論調査、随分数字が違うわけですけれども、正直言って反対という世論が六割を占めておる、七割を占めておるというような調査もまだ散見すもことがありますので、世論の動向もある程度は見ていかなくちゃならぬだろう、そんなふうに考えておりますので、まだ決意には至っておらないということで御了承いただければありがたい。  それから、予算については、個々のことはまた別にいたすといたしまして、先ほど私が申し上げたことがいわば教育予算に対しての私の基本的な考え方でございます。  ある政界の大先輩が演説を昨年されたときに、自分は公共事業ボスだと言われてきたし、国防関係ボスとも言われてきたけれども、よく考えてみれば、防衛予算を削っても、公共事業を削っても教育には予算をつけなくちゃならぬなと最近思うようになったという演説をされたことがあります。私は、それを聞いておって、正直強く強く胸を打たれた思い出がございます。ですから、これは文教委員教育に熱心な先生方のみならず国会全体が、そしてもちろん政府全体がそのことを十分に理解してもらえるように先生方にもお願いをしたいし、私も政府の中で努力したい、こういうふうに思っております。
  10. 森暢子

    森暢子君 ちょっと簡単に、中間報告がいつごろ出るのかということですね、大臣でなくても結構です。  それと、六十八校を全県に広げて、私も回ってみましたら、前に六十八校になっていた学校が引き続きなれるのかどうか、外されるのか、そういう心配もございましたし、それから今までやっていたのに、これでやめたということになると大変だということで、先生方保護者も、この月一、月二の実験はぜひ続けてもらいたい、そういう願いもあるので、ちょっとその辺のあたりをよろしくお願いします。
  11. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 先ほど大臣からお答えしましたような観点、いろいろな問題点を踏まえまして、現在協力者会議で御議論をいただいているわけです。  中間報告は、今のところ私どもの予想といたしましては、来月の中旬までにはいただけるだろうというふうに考えております。その中間報告をいただいた後に、PTAとか各種社会教育団体あるいは校長会等教育委員会関係団体中間報告に対する御意見も拝聴し、それから後に最終報告をいただきたいというふうに考えているところでございます。そういう意味で、中間報告は大体来月の中旬ぐらいまでにはいただけるものだというふうに期待いたしております。  それから、実験校の話でございますが、今六十八校でお願いしておりますが、来年度は二百三十五校、全部県、学校種別ごとに一校ずつお願いしたいということで予算要求をしております。  今、実験校として指定しているところが来年以降どうなるかという問題ですが、私どもは、今実験校としてやっていただいておる学校が引き続きやる意思がある、やりたいということならば、極力その二百三十五校、あるいは予算の執行上若干はみ出ることもあり得るかと思いますけれどもお願いをしてまいりたいというふうに考えております。
  12. 森暢子

    森暢子君 それじゃ、大臣よろしくお願いいたします。  続いて、委員派遣のことに関連して御質問したいと思います。  先日、この参議院文教委員会岡山、香川に参りました。両県の教育文化について現場から国に対する要請というものが、要望がたくさん出されましたので、その中の二つほど要望がたがた質問をしたいと思います。  まず、養護教諭複数配置の問題なんですが、西養護学校という岡山の大きな養護学校を訪ねましたときに、二百十九人の精神薄弱子供たち、そしてその中で先生たちが熱心に取り組んでおりますが、そこで山本校長から出された切実な要望というのが養護教諭複数配置ということなんです。大規模校でも一名しか配置がないということで、しかも養護学校は、子供たちにけがとかぐあいの悪くなることが多いわけです。そして、ケアが大変で休みもとれないというふうな状況が続いております。  それで、教職員配置の改善については、今年度で第五次の計画が終わったんですけれども文部省は新たにどのような教職員配置を考えておられますかということと、それから、このような障害児教育施設一般の大規模校では養護教諭複数配置をぜひ盛り込むべきだ、このように思いますが、その点についてお答えを願いたいと思います。
  13. 野崎弘

    政府委員野崎弘君) 定数関係につきましては、今先生お話がございましたように、今年度完成をしたということで、今後どういう考え方で臨むかにつきましてはいろいろな調査等も踏まえまして検討していこうということでございます。来年度につきましては、新学習指導要領への対応とかそういうようなことで千九十八人の要求をしておるわけでございますけれども、将来的な定数の今後のあり方というものはこれから検討していこう、このような段階でございます。
  14. 森暢子

    森暢子君 ぜひこの養護教諭複数配置を考えていただきたいと思います。  それでは、文化庁の方にお願いしたいんですが、去る九月二十七日の台風十九号、これは全国晦に大きな被害を与えまして、岡山でも重要文化財であります備中国分寺五重の塔が大きな被害を受けたわけであります。全国的な文化施設被害状況をお知らせ願えたらと思います。
  15. 吉田茂

    政府委員吉田茂君) 今回の台風十九号によりまして国宝、重要文化財等につきましては今までにない広範囲な被害発生をいたしております。広島県の厳島神社能舞台等が全壊をしたり、今先生指摘岡山県の備中国分寺五重の塔、今修理中でございまして、四重部分まで組み上げておったわけでございますが、その四重部分が吹き飛んでしまったというようないろいろな被害が出てまいりまして、現時点の調査によりますと総額三十三億余の被害発生をいたしております。
  16. 森暢子

    森暢子君 私どもは、田沢団長の御理解もございまして、日程になかったんですけれども、急速その五重の塔を見てまいりました。それで、解体修理に入っていたときに台風に襲われたということで、当初の修繕計画では二億三千万円だったんですが、今回の台風被害で一億数千万円の増額を余儀なくされることになった。こういうことは所有者や自治体では大変無理だ、どうしても国の方でその復旧費お願いせざるを得ないというふうな強い要望があったわけでございます。私からも大臣にもお願いを申し上げたいのでありますが、もしその復旧費が認められるならば、今国会に出されます補正予算措置されるのかどうかということをお聞きしたいと思います。
  17. 吉田茂

    政府委員吉田茂君) 文化財修復につきましてはいろいろ課題があるわけでございます。文化庁では、被害発生後直ちに各地へ文化財調査官を派遣いたしまして、あるいは都道府県から被害状況報告を求めるなどの状況把握に努めてきたわけでございます。  今後の復旧につきましては、ただいま申し上げましたような修復資材、これは一般公共事業とは若干資材も異なるし、数の少ないものが多いわけでございます、あるいは修理技術者を確保していかなければならない、そういった問題があります。それから、ただいま御指摘財源の確保の問題、こういったさまざまな課題が山積している状態でございますが、現在、所有者あるいは都道府県等から復旧計画の聴取を鋭意進めておるところでございます。  御指摘財政措置でございますが、御案内のように極めて厳しい財政状況でございますが、非常に貴重な国民的な財産でございます文化財でございます。早急な復旧が必要であるところから、補正予算における措置も含めまして現在財政当局財源につきまして鋭意協議中でございます。
  18. 森暢子

    森暢子君 文化財我が国歴史とか伝統とか、そして文化を理解してそれを将来の子供たちに伝えていくというふうな大変重要なものでありまして、その保存とか保護は私どもの責任であるというふうに思いますが、この文化財保護について大臣のお考えをひとつお願いいたします。
  19. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 森先生おっしゃるとおり、全く同感でございますが、文化庁予算文部省予算に対する割合が〇・九一%だったかというふうに思いますが、そうしますと国家予算に対する割合は推定で〇・〇七%くらいしかないという、これで本当に文化国家文化大国と言えるかというふうに私は残念に思っております。特に、宮澤総理のおっしゃる品格のある国というものは、生活大国であることはもちろんでありますが、生活大国であることに加えて、教育大国と言われて、文化大国と言われたときに初めて品格ある国家ができるのではないか、そういう観点で私は頑張っていきたいと思います。
  20. 森暢子

    森暢子君 ありがとうございます。力強いお言葉をいただきましたんですが、予算も含めて、私どもも後押しいたしますので、ひとつ頑張っていただきたいと思います。この委員会教育文化スポーツ、そういうことについて話し合う委員会なんですが、私はやはり文化というのは大変大事だと思いまして、今おっしゃったように文部省予算の枠の中に文化庁予算もあるということで、私どもといたしましては文化省ぐらいに昇格いたしまして特別の予算をつけて、日本政府もそのようにやっていただけたらというふうに強く要望しておきます。  それじゃ次に、エックス線集団間接撮影というテーマにつきまして質問したいと思うんですが、学校では毎年四月から六月の間に健康診断というのを行っております。そして、結核の発見というのを目的に小学校一年生、中学校一年生、それから高校一年生に胸部のエックス線間接撮影が行われているわけであります。このエックス線撮影によって発見される子供結核患者が大変最近少なくなったということ、その上、成長期にある子供たちに不必要な被曝をさせているのではないか、それから白血病が起こる可能性であるとか、さらに放射線が微量でも発がんとか遺伝子障害、その危険性があるめではないかということで、国民たちも、お母さんたちも、保護者放射線に関する意識が最近特に高まっていて、全国的にそういう声、運動が盛り上がっているわけです。  そういうことで、文部省は一斉に集団撮影を行っているんですけれども、全員の強制的な胸部間接撮影が義務づけられているんですが、そのことにつきまして文部省の見解をお伺いしたいと思います。
  21. 逸見博昌

    政府委員(逸見博昌君) 結核予防法に基づきます学校におきます児童生徒に対する健康診断、これで結核にかかっているかどうか検査いたしますためにエックス線間接撮影を現在行っております。ところで、今先生はとらまえ方として小学校、中学校、高等学校の全員に行っているかのごとくおっしゃったわけでございますが、実は小学校と中学校につきましては全員にツベルクリン反応検査をまずいたしまして、それで陽性が出た者についてのみ小学校、中学校につきましては間接撮影を行っておる、これが実情でございます。ただ、高等学校につきましては第一学年につきまして全員にエックス線照射を行っておる、こういったのが現状でございます。  ただ、先生指摘のようにさまざまな問題があるというふうなことも指摘されており、そういったこと、また近年疾病構造の変化ということもございまして、昭和六十二年度から私ども、財団法人日本学校保健会におきまして専門医あるいは学校関係者によって構成されます健康診断調査研究委員会、これに委託いたしまして見直しを行っているところでございます。  ただ、結核のためのエックス線照射、この問題につきましては基本的に結核予防法に基づいて行われるものでございますので、現在厚生省におきましても御検討が進んでおるというふうに伺っておりますので、その結果を見せていただいた上で協議をさせていただきながら文部省としてのあり方を決めてまいりたいと思っているところでございます。
  22. 森暢子

    森暢子君 それじゃ、厚生省にお願いしたいと思うんですが、厚生省は結核予防法において指導なさっていると思うんです。学校子供たちだけではなくて成人にもですね。厚生省の指導のお考えをお聞きしたいと思います。
  23. 堺宣道

    説明員(堺宣道君) 結核対策全般についての御質問でございます。結核対策につきまして、現在公衆衛生審議会という審議会がございますが、そこで総合的な見直しについて御検討いただいております。というのも、先ほど来御議論が出ております疾病構造の変化とか結核の低蔓延化とか、あるいは結核に対していろいろな問題がほかにもございますが、そういうことを総合して検討していただいているところでございます。  それで、今御議論の中心でございますところの健康診断というところでございますが、それの実施方法などについても、必要があれば所要の改善について御意見がいただけるものと考えておるところでございます。  以上でございます。
  24. 森暢子

    森暢子君 厚生省は、まずツ反応の注射を行って、陽性者のみにエックス線撮影、そしてBCGという線で指導しているわけですね。文部省もそうですね。
  25. 逸見博昌

    政府委員(逸見博昌君) はい。文部省におきましても、現在、小学校、中学校におきましてはいきなり間接撮影をやるのではなくて、まずツベルクリン反応検査をいたしまして、陽性の反応が出た者についてのみ間接撮影を行う、こういったことにしております。
  26. 森暢子

    森暢子君 ところが、現場ではそうなっていないんです。もうすぐ全員間接撮影を行って、その順序がこのとおりになっていないんです。私も学校現場へおりまして、皆様方学校でそういう御経験もあるかと思うんですが、ですからやはりツ反応の陽性者のみにエックス線撮影を行うという指導を徹底していただきたい、ぜひこれをよろしくお願いしたい。というふうに思います。
  27. 逸見博昌

    政府委員(逸見博昌君) ちょっと先生の方に誤解があるのではないかと思う点があるわけで、申し上げてみたいと思います。  現在、エックス線撮影をいたしておりますのは小学校、中学校、高等学校等で、特に小学校でございますが、結核にかかっているかどうかということだけではなくて、例えば小学校一年につきましては心臓の疾病と異常の有無の検査、このために実は全員を対象としてエックス線撮影を行っておるわけでございます。したがって、先生は、そういったことであれば小学校一年に対しては全員に行っておるではないかということだと、それは正しいわけでございまして、それは結核の検査のために行っておるのではなくて、心臓の疾病と異常の有無の検査、このために小学校一年は全員を対象として行っている、これが実情でございます。  ただ、これにつきましても、先ほど申し上げましたように健康診断調査研究委員会、ここにおきましてそのあり方でいいのかどうかというふうなことで検討中でございまして、近く結論が出る予定で、それに基づきまして適切な対応をとってまいりたいと考えております。
  28. 森暢子

    森暢子君 今おっしゃるとおりなんですが、心臓検診を一緒にするから小学校一年生では全員にやるということなんですけれども、心臓に異常があるというその発見率がどのくらいかということのデータがありましたらお示し願いたいと思います。
  29. 逸見博昌

    政府委員(逸見博昌君) 私は今ここの手元には持っておりませんが、一部には大変小さな発見率しかないというふうなデータがあることは承知をいたしております。
  30. 森暢子

    森暢子君 心臓の様子を知るためには、そのほかに例えば心電図であるとか心音図をとるとか、そういう方法もあるわけです。それで、いろんな県で発見率がどのくらいかというのを見ましても、ほとんどないんです、わからないというんです。間接撮影は、御存じのように小さいフィルムヘ大勢の子供をばっと撮っていきますので、そういう小さいフィルムでは心臓にどんな疾病があるかというようなことはわかりにくい、ほとんど機能していないというふうな状況に今あるわけです。それなのに、特に小学校一年生といいますと、まだこれから成長期を迎える子供たちにそういうレントゲン、エックス線撮影を行うのがどうかということを大変保護者が心配しているということです。これはぜひ見直していただきたいというふうに思います。いろいろと検討を行っていらっしゃるそうでございますが、ぜひ見直しを強く要望しておきます。そして、今申しましたように、ツ反応陽性者のみにエックス線撮影を行う、こういう取り組みをお願いしたいと思います。  それから、今ちょっと申しましたが、レントゲン撮影には間接撮影と直接撮影の方法があるわけですが、学校ではどうして間接撮影の方法をとっていらっしゃるのか、またその両方に被曝量の差がどのくらいあるのか、そのことにつきましてお答え願いたいと思います。
  31. 逸見博昌

    政府委員(逸見博昌君) 間接撮影を用いております理由はさまざま実はあるわけでございます。歴史的な経過、これまで集団を対象とした健診に大変適しておるというふうなこと、それから経済的理由、それから保管上の理由。間接撮影の場合には小さなフィルムにずっと連続して撮るわけでございますから、余り保管場所をとらない、現像処理が容易である、読影スピードの速さ、多数を短時間で読める、こういうふうなことがございまして現在間接撮影を用いておるということでございます。  ただ、厚生省の医者の方がいらっしゃるわけでございまして、そちらにお聞きいただいた方がよろしいかと思いますが、間接撮影と直接撮影、いろいろ医学上は間接撮影にマイナス点が大変過去にはあったが、大変研究が進みまして、現在ではやり方いかんによっては直接撮影よりもむしろ間接撮影の方がいいんだというふうなことをおっしゃっておる医者もございます。ということで、私ども間接撮影がいいか直接撮影がいいか、これも含めまして先ほど申し上げました調査研究委員会に研究をお願いしておるところでございまして、例えばツベルクリン反応の陽性の者、この者に対して直接撮影か間接撮影をとるのがいいのか、そういったところも含めまして御検討の結果を踏まえて善処してまいりたいと考えておるところでございます。
  32. 森暢子

    森暢子君 それじゃ、大変専門的になるようでございますので、厚生省の方で被曝量の差、そして子供たちの命と健康を守るためにどちらがいいのかということ、そういうことなどをお答え願いたいと思います。
  33. 堺宣道

    説明員(堺宣道君) お答え申し上げます。  間接撮影と直接撮影などれぐらい被曝線量が違うかということでございますが、これはいろいろ条件によって異なってくるわけでございますが、例えば、最近の傾向としてトータルとして見ないで臓器別にどうかということをまずやるようでございます。それで、例えば百キロボルトという電圧で撮影した場合、フィルターの厚さを変えるとまたいろいろ変わってくるわけでございますが、例えばフィルターの厚さがゼロということで見てみますと、肺でいきますと直接撮影が百五十六・五マイクログレイ、それから間接撮影でいきますと二百十三・八マイクログレイ。一グレイというのが、最近国際単位が変わりまして、前の聞きなれた単位でございますと百レントゲンというのが一グレイという単位でございます。ただ、最近統一されてグレイという単位を使っております。一応そういう被曝線量の差があるということでございます。  さてそこで、それではどちらが日本の将来を担う子供たちにとっていいのかという御質問でございます。確かに被曝線量ということだけ取り上げて見てみますと、これは直接撮影の方がよろしいということにだれが見てもなると思います。それはただいま申し上げた被曝線量の差ということを見ればおのずから明らかということでありましょう。ただしかし、ただいま文部省局長の方からお答えがあったように、いろいろな観点から間接撮影というのもなかなか捨てがたい、利点もあるようでございます。ただ、そこいら辺はまた専門家の先生方にいろいろ御意見を伺いながらということもやらなくてはいけないと思っております。
  34. 森暢子

    森暢子君 今、被曝線量の差においては直接撮影がいいと。御存じのように直接撮影は一人ずつ大きなフィルムで、やっぱりしっかり見えるわけですね。間接撮影は、今お答えにありました歴史的経過があり、経済的負担、それから仕事が早い、簡単にやれると。車の中に子供を全部入れまして、そしてその中でぱあっと撮っていく。学校の中でやるにはもう早くやらないと一人一人直接撮影やっていたら大変だというふうなこともあるということですが、子供の命と経済的なものと、それをてんびんにかけた場合に皆さんどちらをおとりになるんですか。やっぱり幼い子供たち放射線が入っていくということがどういう危険性があるかということを考えたときに、そんな歴史的経過とか、経済的な負担であるとか、早くできるとか、そういうことで学校が簡単に間接撮影をやっているというふうなことではどうかという疑問があるわけです。  それで、どうしてもレントゲンの撮影をやらなきゃいけないのなら、やはり少しでも被曝の少ない方法でやるべきだと思いますし、直接撮影に切りかえることはできないのかということを強く要望したいんですが、文部省、いかがでしょうか。
  35. 逸見博昌

    政府委員(逸見博昌君) 先ほどから申し上げておりますとおり、現在研究中でございます。間もなく結果が出る予定でございますので、その結果を見きわめまして適切な、先生おっしゃいましたように物よりも人が大切だと、当然そういった観点からの配慮になると思いますが、そういった方向で進めてまいりたいと思っております。
  36. 森暢子

    森暢子君 その結果はいつごろ出るんでしょうか。
  37. 逸見博昌

    政府委員(逸見博昌君) 来月中には出るというふうに考えております。
  38. 森暢子

    森暢子君 しかし、単純に集団検診をやめてしまったときに、現在の結核状況というのはどこで発見してどのようになっていくかというのは皆保護者たちも心配があるわけです。  それで、ただエックス線の撮影だけではなくて何かほかに結核を発見する方法はないのか。例えば世界保健機構、WHOでは既に二十年前に、患者発見の手段としてエックス線間接撮影を用いた集団検診は否定するということを提案なさっている。その危険性を認めているわけです。そういう中で、やはりほかの方法はないのかということについて厚生省にお願いします。
  39. 堺宣道

    説明員(堺宣道君) お答え申し上げます。  エックス線検査以外の診断方法ということでございますが、いろいろ最近、いわゆる先端技術というものが発達してまいりまして、例えば遺伝子組みかえであるとかバイオテクノロジーとかというようなことでございますが、そのような先端技術を利用した新たな結核の診断法ということが開発できますように、平成四年度に研究費を確保すべく現在予算要求中でございます。ただ、このようなこともやるようにというのは、公衆衛生審議会の前に出ました中間答申という格好で、こういうこともやるようにというお答えに基づいて予算要求ということになっている次第でございます。  以上でございます。
  40. 森暢子

    森暢子君 何と申しましても最後は予算でございますね。この予算をしっかりつけていただいて、エックス線撮影でない結核を発見する方法を早く考えていただきたいということで、当面私が言いたいことは、学校におけるこういう危険な集団間接撮影を廃止する方向で、子供たちのためによろしくお願いしたいというふうに思います。  それから、最後にですが、レントゲンというものの考え方なんですが、日本の医療被曝というのは平均で世界の四倍と言われておりまして、私ども日本人は本当に安易にすぐレントゲンを撮るわけです。ですから、胸とか胃とか、それから歯医者さんへ行きましてもすぐぱぱぱっと何枚か撮りますね。足を骨折してもすぐレントゲンということで、たくさんの医療被曝を受けているのではないか。そして、集団検診の被曝の大きな部分を胃とか胸が占めているというふうなことなんですね。それで、検診によるそういう結核発見の利益と、それから検査のための放射線被曝の危険性、このバランスですね、どちらをとるかということが大変今微妙なものになっていると思うんですが、その点について厚生省はいかがでしょうか。
  41. 堺宣道

    説明員(堺宣道君) お答え申し上げます。  先ほど来御議論いただいておるわけでございますが、医療被曝に加えての集団検診の放射線被曝といういろいろな問題がございます。それで、エックス線集団検診に伴う放射線被曝ということに関しましても、先生指摘のようにWHOから意見が出ていたり、あるいはICRPの方から意見が出ていたりということもございますし、国内でもいろいろなお立場からいろいろな議論があるということも厚生省として十分承知しております。それで、結核対策ということについて、現在公衆衛生審議会で御検討をいただいているわけでございますが、そこの中には結核専門家も入っておりますし、それから放射線専門家も入っているわけでございます。そのような専門家の御意見で御検討いただいて、その結論をまって厚生省としては適切に対処してまいりたい、このように考えて一おります。よろしくお願いいたします。
  42. 森暢子

    森暢子君 やはりこういうエックス線の知識を十分保護者に説明してわかっていただいて、同意を得てやるということが必要ではないかと思います。今、インフォームド・コンセントといいまして、納得同意といいますか、危険性とか、メリット、デメリットを説明して、そして家族や本人の同意を得て治療や検査をやるべき方向に医学の世界は今向いております。そういう中で、ぜひこういうことを保護者に、国会はやはり正しい情報を出すべきだと思いますし、文部省養護教諭の方とかまたは学校、それから厚生省は国民全体にこういうものの十分な情報を提供すべきだというふうに思いますが、最後にこのことにつきまして文部省と厚生省でお返事をいただきたいと思います。
  43. 逸見博昌

    政府委員(逸見博昌君) 現在学校では、例えば一般的には保健室便りというふうなものをつくりまして、それを御父兄に配るというふうなことで、今先生がおっしゃったようなことに対処しておるというふうに把握しておるところでございます。例えば今回、健康診断調査研究委員会結論が出て、私どもが適切にそれに対する措置をとるという場合にも、なぜ変えたか、どうしてこういったことになったかというふうな趣旨につきましては、御父兄の不安を解消するためにもぜひ進めていくべきことであると考えております。
  44. 堺宣道

    説明員(堺宣道君) お答え申し上げます。  先生おっしゃいました、同意を得てそれからということは非常に大切なことだと思うわけでございます。  特に、私の立場からちょっと違ったことを最初に申し上げますが、まず感染症に対して日本国民がもう過去の病気であるということも風潮としてあるわけでございます。それの典型がこの結核でございまして、結核ももう過去の病気であるということも、そういう風潮があるというのも十分承知しているわけでございます。ただ、しかしながら、この結核というものの怖さ、あるいはまだまだかなりの数の人がいらっしゃるということも十分国民に対して普及啓発していかなくちゃいけないというふうに思っておりますし、またそれと同時に、健康診断の実施方法等というものを正しく、広く、十分に理解を得ていくということは今後も積極的に行っていきたいというふうに思っている次第でございます。  よろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。
  45. 森暢子

    森暢子君 終わります。
  46. 会田長栄

    ○会田長栄君 会田であります。  まず、第百十四代の文部大臣就任されました鳩山文部大臣にお祝い申し上げます。  あわせて、前井上文部大臣には、三百十二日間という期間にわたって文部行政の責任者として御努力されてきたことに敬意を表します。  さて、私は文部大臣並びに関係局長に幾つかの点について御質問したい、こう思っています。  第一は、大臣就任後の記者会見などで大変教育に対する造詣深い抱負を語っていることに実は気を強くしている一人であります。というのは、「人づくりなくして国造りなし」、そして本日の委員会では、教育最大公共投資であるというまで断言するという、こういうあいさつというのはかって聞いたことはない。しかし、私もそうだと思う。教育をおろそかにするものは必ず国は滅ぶ、私はそう思っています。したがって、教育にいかなる金をかけようと、それが将来に明るさと豊かさを取り戻す、こう考えているからでございます。  その意味で、この抱負の中で、実は日本教育には優秀な部分と反省すべき部分があり、それらを整理して直すことが教育改革だと、こうおっしゃっておりますが、私はここで質問する前に振り返るのは、昭和三十年代というのは私も中学校先生でございました。それだけに、教育というものは三十年経過しなければその投資した成果なりあるいは反省なりそういうものが見通せない、長期的な視野にわたって考えなければいけないという、こういう点について共感を得たわけであります。  一体、今日の教育を語るとき、三十年前はどうであったろうかということを考えるとまことに意味深なものがございます。実は三十年前というと教育課程の改訂なりあるいは文部省の全国一斉学力テスト、このものが入ってきた段階であります。今でも覚えておりますが、小学校の六年生に上野動物園のモノレール、これが出題されまして、見たこともなければ聞いたこともない、先生がわからないんだから、こんなものを答えられるわけがない、こう思っていたときのことを思い起こしました。そういうことまでして実は学力テストなどが行われたということを想起したわけでありまして、その意味では幾つかの点について具体的にこれから質問していきたい、こう思っております。  その第一は、何といっても昭和三十年代の教育予算というのは、そうはいっても政府一般会計予算の中に占める比率というのは二一・五%ありました。しかし三十年後、今振り返ってみますと、同じ比率かと思えば、年々下がって実は平成二年度は七・二%でございました。このままいきますと、この委員会でも指摘しましたんですが、間もなく六%台に突入するのではないかという危機感を持って質問したことがあります。そういう意味では、きょう力強いあいさつを受けたわけでありますから期待しているわけでありますが、その中での日本教育を大きく支えてきた公教育と私の教育、いわゆる私学助成の問題について具体的にお尋ねいたします。  私学助成については充実していきますという抱負を語っておりますし、概算要求の中で出されている枠を超えても大蔵省と話し合って増額していく決意であるというところまで語られているようでありますが、その点について、これまた最高の私学助成というのは振興法ができて二九・五%、この辺までいったのかと、こう思っています。しかし、今や一〇%台、それもこのまま推移しますと一〇%に間もなく近づいてしまうんではないか、こう思われるわけでありますから、その点、私学助成充実についての決意のほどをお聞きしたい。
  47. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) すべて会田先生指摘のとおりでございまして、先生が御指摘になられた事柄と私の認識あるいは決意は全く同一のものでございます。  私学にはとりわけ高等教育の八割をお願いするというような形でありながら、また今、多様化、個性化ということが非常に重視されていく中で、それぞれの建学の精神化のっとって多様な教育をやっていただく私学というものに対して国が十分な仕事をできないような予算状況になってきておる。私学振興助成法というのはまさしくそういう趣旨で諸先輩がおつくりになったものであったわけでありますが、今先生指摘のとおり、二九・五%を境にいわゆる経常経費に対する助成率が減少の一途をたどりまして、恐らく平成三年では一三%台ではないだろうか。先生おっしゃるように、このままいきますと一〇%程度に近づくのは間違いがありません。だからこそ私は、やや大言壮語がどば思いますが、「人づくりなくして国造りなし」である、先輩が公共事業や防衛費を削っても教育に対する予算はつけなければならないという、そういう演説に涙するような心境である、こういうふうに申し上げているわけであります。  七年前に文部政務次官として松永文部大臣にお仕えをしたわけですが、あのころはまだ二〇%ぐらいの助成率があったわけで、当時私学の皆様方がお見えになると、約三割まで来たんだけれども、今二割になってしまいましてねというお話だったのが、それから実際私学助成の減額があったのは一回あったかどうかぐらいだと思うんです。あとは減らないとか、ちょっとふえたという状態で、額は微増。しかし、諸物価の高騰がありますから、額が微増ということは年々一%近く助成率が下がってくるということで、七年前の政務次官のときには三割が二割になってしまいましたというのが、今、会田先生指摘のとおり、このままいくとあと三年ぐらいたつと一〇%だということになる。これではもう私学振興助成法の精神に違反する状態が出てきてしまうわけであります。  私は、文部省予算というものについていろいろ思いをいたすことがあります。  先般、給与関係閣僚会議で、ことしの人事院勧告三・七一%、これを完全実施しようということを閣議決定いたして、これから給与法の改正を御審議願うのだろうと思っております。文部省の場合ですと、いわゆる義務教育国庫負担、そしてまた国立の諸学校のいろいろな先生方や職員の方や、あるいは看護婦さんとか病院関係全部含めますと、一%のベースアップが四百二十億か四百三十億ぐらいに計算されるわけでありまして、失礼しました、私自分が計算した数字だと四百十三億となっておりますが、決して正確なものではないと思いますが、したがってこの三・七一%で千五百三十億の支出増になるわけであります。これをシーリングという制度がありますと、実際に生物学的にそういうことがあるのかわかりませんが、まるでタコがえさをあげないと自分の足を食べるのかどうかわかりませんが、そういうような状態を文部省予算は続けてこざるを得なかったということで、もう大変厳しい状態が続いてきているというわけであります。  現に人件費が七八・五%を占めてしまう、そういう予算というもの。こういう中で、私学助成の方は人件費ではない物件費の方に我々は計算をするわけですが、この人件費が七八・五%ですから、残りはもう約二割しかない。その中で私学助成を大幅に増額して、会田先生指摘のように、本来は五割を目指すわけですが、かつての二割、二割五分、三割を目指すとすれば、これはもう当たり前の予算の枠組みではどうしようもないなという私は率直な感想をマスコミに対しても述べたことがございまして、それは私の基本的な考え方でございます。
  48. 会田長栄

    ○会田長栄君 端的にお聞きしますから、今度は端的にお答えください。  参議院における私学振興助成法成立時に当然附帯決議が満場一致で採択されています。それは、今大臣がおっしゃったように、私学助成費二分の一以内の国庫補助率を「できるだけ速やかに」、こういう附帯決議があって、大臣の方からそのように努力をいたしますというあいさつがあって、今日を迎えてこの結果です。この点について端的に、今後総理に向かって、大蔵省に向かってこれに近づけていくように御努力願えるかどうか。
  49. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 実際、この昭和五十年七月一日の附帯決議が、二分の一に近づけるという御決議をいただきながら、これは国家財政状況の問題が一番大きかったろうと思いますし、国全体、政府全体にまだ教育というものに対する考え方が少なくともこの委員会の諸先生方のように深いものが成立をしておらなくて、そのために次第に助成率が減じて現在の状態になってきてしまっているわけでありますから、そうした経過を踏まえて、私としては金額ではなくて、つまり私学助成の金額の絶対値ではなくて助成率が少しでも上向きに、このところがずっと単調減少関数ですから、ここで転向点を迎えてプラスに向けるように制度、予算のつくり方の枠組みまで政府の中で御検討いただけるようにお願いを続けていきたいと考えております。
  50. 会田長栄

    ○会田長栄君 この附帯決議などはどこ吹く風というような情勢でありますから、その点で、今大臣おっしゃったとおり、ひとつ最大限の御努力をお願いしておきます。  これと同時に、政府一般予算の中に占める教育予算割合というのも非常に危ない感じがございます。その意味では私などは最低限でも一〇%というものを確保すべきだろう、こう思っておりますから、どうぞ最大限の御努力をお願いしてこの質問を終わると同時に、大蔵省が私学助成について一割削減という考え方を実は内部で検討しているやに聞きます。ふやしてくださいというのに、一割減らしてくださいという考えもないだろうと思いますから、この点はよろしくお願いしておきます。  そして、第二の質問に入りますが、これは歴史教育充実について関連をしてお伺いいたします。  その一つは、海部前総理がASEAN諸国を訪問した際にシンガポールで行われました政策演説、これと関連をして井上文部大臣に対して海部前総理は指示を出したんです、この演説に基づいて。この演説というのはこれは国際公約でありますから、帰ってきて文部大臣に指示を出すというのは私は当たり前だ、こう思います。その点につきましてどういう所感を持っているかをまずお尋ねいたします。
  51. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 海部前総理のシンガポール演説につきましては、私もその内容は存じておるわけでございまして、前総理が、我が国の次代を担う若者たち学校教育社会教育を通じて我が国の近現代にわたる歴史を正確に理解することを重視して、その面での努力を一段と強化することといたしましたというふうな発言をされておられる。そしてその帰国後、井上文部大臣に対して御指示をされた事柄については、私は恐らく教育課程講習会等を通じても努力を続けていることと思います。  私は、先般の予算委員会のときにも関連するようなお話があってお答えをしたかと思うんですが、昭和五十年代の後半に非常に教科書問題が海外からやかましく言われたときに官房長官談話というものが発表されて、これを教科用図書検定調査審議会の議を経て検定基準を書きかえるというような形にして、そして教科書はその点についての配慮は随分濃くなってきたというふうに思っております。恐らく海部前総理も、そういう改善されてきたいきさつ、そして今回の新学習指導要領先生承知のように平成四、五、六と小中高と新学習指導要領へ移っていくわけでありますが、その新学習指導要領でも書き方が若干変わって、いわば国際協調のようなものを十分配慮しろということが色濃く書かれておるようになっている、ですから当然そこから出てくる教科書というものもまた色彩が徐々に変化していくだろう、そういう一連のプロセスを踏まえて私はシンガポールの演説をされたのではないかというふうに受けとめているわけでございます。
  52. 会田長栄

    ○会田長栄君 これは御承知のとおり、前総理がシンガポールで演説をしました。帰ってきまして、閣議で井上文部大臣に指示を出した。井上文部大臣は、その指示を受けまして、記者会見で大きな二つの項目を言っていますね。「平成元年に改定した学習指導要領で、中国などに多大な影響を与えたことを学校で教えるよう指導してある」。二番目、「指導要領の変更についての指示は受けていないと述べ、指導要領や教科書には問題はないとの考えを示した。」。お尋ねしたいのはその次であります。「新たに対応することはないが、一層、現場で努力してもらいたい」と全く簡潔に語っているんですね。  果たしてこの二つの項目を受けて現場は一体どのように対応するだろうかということを考えますと、今日の学習指導要領の拘束性との関係がありましてそんなに現場の先生は柔軟に対応できるような状況にはなっていないんですね。これはなっていないんですよ。この問題は長時間やっても、恐らくこれから続くでありましょうから、きょうのところはこれで終わりますが、具体的に現場で対応するとすればどのような問題と対応策があるのかということもぜひこれは文部省として検討していってほしい、こう思うのであります。  そこで、最後にお尋ねしたいのは、これは一九八五年五月八日、ドイツ連邦共和国、もとの西ドイツです、ここのワインゼッカー大統領が四十周年の敗戦記念日に当たりまして国会演説しましたね。有名な演説であります。この演説に基づいて、教育関係はどのように具体的に対応していったらいいのかということをそれぞれの州で本気になってやりましたね。そのためにみずからの国の歴史教科書歴史観というものと、お隣の国々同士の歴史観というものの共通性を持たなければいけないといって、当局みずからが教科書研究所をつくって進めてきましたね。  さて、日本ではどうでしょうかということになりますと、なかなかそこまではいっていない。民間の中では韓国あるいは中国とおやりになっている方もいる。しかし、文部省が積極的にこの問題に取り組みましたという話は聞いたことがない。誤っていたら後で訂正いたしますが、その点では、一国の総理世界に向かって公約したことでございますから、当然これに対応して具体的に動かなければいけないんじゃないか、私はこう感じている一人であります。その点についてどういう御所見をお持ちかをお聞きしたい、こう思います。
  53. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) ドイツの事情につきましては、今先生からお話をいただいたわけですが、私もまだ不勉強な部分がございます。  ただ、今いわば子供の一人一人の個性をということが強く叫ばれておりますが、個性というものは個々人の個性もあれば、その地域の個性もあれば、当然国はそれぞれの歴史と伝統、文化を持っている、それぞれの国家というのは強烈な個性の持ち主ではないかと思っております。したがいまして、歴史観というものについても当然それぞれの国によっていろいろな個性あも歴史観というものがあろうと思います。歴史のように高度に帰納的な学問というものはそこのところが非常に難しいと思います。数学のように演繹的な学問は、二次関数の解き方を教えるのに、因数分解を教えるのに、各国が打ち合わせして、どういう数学教育が一番能率的であるかというのは世界じゅう集まればより効果的な学習指導法というものが発見できるかもしれません。しかし、歴史というものはそういった意味では演繹的な学問ではないだけに、正直申し上げてこの間うちへ帰りましたら、娘が歴史の勉強のことでいろいろ聞いてきました。私もつくづくそのときに思ったのでありますが、例えば高句麗の好太王妃とか白村江の戦いなどという読み方を教えながら、あれくらい古い、年代がたった事実でございますと、また史料の非常に乏しい時代のことでございますと、もちろん歴史上いろんな解釈はさまざまあろうとは思いますけれども、まあこれは一定の物の見方というのが定まるのかもしれません。国によってそれほど大きく分かれないのかもしれません。  しかし、アジアの近現代史ということになりますと、これは各国さまざまな見方があって、我が国にも我が国の見方というのがあるわけでございまして、そのいわば調整の問題というのは極めてセンシティブであり、いろいろと配慮して、今日までのいきさつがあって現在のような教科書で、また新しい学習指導要領をつくり上げるという形になっております。  我が国は国定教科書でありません。民間の方々が執筆をされてこれを検定する。検定の仕方は、従来と違って、いわば条件つき合格という制度をなくすなど非常に合理化をしてまいったわけで、そういう我が国の検定制度の趣旨というものから考えて、政府が例えば各国と歴史観を打ち合わせるとか歴史教科書づくりを打ち合わせるというようなことは我が国の検定制度にはなじまないものと思っております。ただ、民間の方々がそうした諸外国と研究を大いになさるのはこれは結構なことだ、こんなふうに考えております。
  54. 会田長栄

    ○会田長栄君 文部大臣、私は、文部大臣が三十年後本当の教育の真価が問われる、こうおっしゃっているから言っているんです。韓国のいわゆる日本に対する歴史教育というものは大変な中身ですよ。それは中国だって同様です。東南アジアだって同様ですよ。だから、そこをどうしても共通観を求めていかないと、これはどんなに国際協調の、アジア連帯のと言ったってなかなかうまく進まないんじゃないかという危惧を私は持っているんです。だから、そういう意味ではできる限り西ドイツの教科書研究に倣って、それは文部省が直接やらなくても、民間に委託するなりなんなりして、いわゆる歴史的な物の見方というものにアジアの中でもう少し統一的な見解を、真実をきちっと子供たちに教えなきゃいけないんじゃないかと私は思っているから尋ねているのでございまして、これはぜひ検討してほしい、こう思います。  時間が来ましたから、これで午前の部は終わりますけれども、半分は十一時二十分で終わりなさい、あと午後一時半からと、こういうふうになっていますから、それには従います。私はそこは大事じゃないかというので、実は前総理あいさつ世界の国に対する公約、これを具体的に日本で実践していくなら、前文部大臣がおっしゃったように、現場にそのように指導している、学習指導要領教科書も何ら変更することはない、こうおっしゃっていますが、現実には学校教育法の施行規則の別表、これが厳然と存在している限りそんなに現場は柔軟に対応できるものではないということだけは申し上げまして、午前の部は私の質問は終わります。
  55. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 先生のおっしゃる御趣旨はよくわかるのですが、したがって近隣アジア諸国の近現代史に対する見方というものに対してそれを十分に我々が知っておくこと、学んでいくことは極めて重要なことだろうと思いますし、またそのような配慮というものの中から新しい学習指導要領ができてきたり、あるいは昭和五十七、八年ごろの検定基準にもそのような配慮が書き加えられるというような変化があったと思っております。  ただ、私が申し上げたいのは、我が国の検定制度というものは、民間の方が教科書を書かれる、それは書かれる方は当然それなりの歴史観もお持ちで、それをできる限り客観的にお書きになっていくんであろう、それを文部省関係の審議会が検定をするという仕組みになっておりますから、そこのところは御理解をいただきたい。歴史観というものは、それぞれの個性ある国家がお互いの歴史観を知り合うことは重要ですが、打ち合わせして共通のものをつくるものではないだろうというふうに考えておるということを申し上げております。
  56. 大木浩

    委員長大木浩君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午前十一時二十一分休憩      —————・—————    午後二時三分開会
  57. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、教育文化及び学術に関する調査を議題とし、質疑を行います。質疑のある方は順次御発言お願いいたします。
  58. 会田長栄

    ○会田長栄君 午前の部に続いてやらせていただきますが、私は午前の部のところで、海部前総理がシンガポールで演説したことというのは非常に私たちにとっても貴重な大事な問題だと受けとめて実は質問してきたわけでありまして、戦争を知らない世代が過半数を超しているという現状であれば、私は結びに申し上げたとおり、ドイツが、すなわちナチスの暗黒時代というものをかけがえのない教訓として後世代の子供たちにきちっと教えなければいけないという視点に立って、実は自国の教科書問題だけでなくて、お隣のポーランドあるいはフランスその他の国々と教科書研究を当局の指導のもとに積極的に行われているということをひとつ日本も参考にすべきではないかという点で申し上げたかったわけであります。  とりわけ、日本は今、国際貢献、国際協調、国際連帯ということがいかなる場でも出てくる時代でございまして、これはアジア諸国の戦争を知らない時代子供たちというのが過半数を超していくわけでありますから、当然将来において、日本教育を受けた者七アジア諸国で教育を受けた者との間に第二次世界大戦における功罪、教訓といったものについて相当意識のずれが出る、これは決して日本の将来にとってもいいことではない、こう思う点があったので、実は民間団体はもとよりのこと、文部省もこの教科書研究というものについて積極的に検討する時期に来たのではないかということを言いたかったわけでありますから、その点はひとつお含みおき願いたい、こう思います。  それでは次に、同和問題と同和教育問題について若干御質問申し上げます。  これは文部大臣も御承知のとおり、昭和四十年八月十一日に同和対策審議会が内閣総理大臣佐藤栄作殿に答申を出されて二十数年たちます。この間、政府は同和対策事業特別措置法あるいは地域改善対策特別措置法あるいは地域改善対策財政特別措置法などをやって、この二十数年間、いわゆる同和問題、同和教育問題などを含めまして、すなわち部落問題に対して積極的に努力してきたところは私も承知しております。  そこで、大臣にお伺いするわけでありますが、歴代大臣も、これはお尋ねをしたときに、当然にしてこの同和問題あるいは同和教育問題を含めまして、この四十年に出された答申の精神を尊重して今後も鋭意努力していきたいという表明があったわけでありますけれども鳩山文部大臣についてもその点に関しての御所見、決意のほどをお聞きしたい、こう思います。
  59. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 私が初めてアメリカヘ参りましたのが今から二十年近く前でございまして、私は、大学でいろいろ勉強した法律論の中で、当時アメリカのいわゆる黒人と白人の問題で、別に、だが等しく、セパレート・バット・イコールとかいろんな理屈があったりして、最初アメリカの地を踏んだときにその辺をいろいろと聞いて回ったりしたことがございます。  私は、いわゆる同和問題というものの存在に関してそのころはまだ非常に疎い人間でありました。そして、たまたまロサンゼルスで日本人の皆様方と夕食をともにしたときに、自分が約一カ月にわたって見てきた黒人に対する不当な差別等の問題の解決状況等についてお話をしたら、その中のある日本人の方が、あなた、同和問題についてはどう考えるのかと言われて、余りに不勉強であったがために十分お話し合いをすることができませんでした。これは、私の青春時代における、当時二十二歳であったかと思いますが、今でも決して忘れることのできない強烈な思い出として残っておりまして、日本に帰って早速「破戒」も読ませていただきましたし、それらの幾つかの文書等も読ませていただく中で、こういうあってはならない、全く理解できない事柄が世の中で平気でまかり通っているとするならば大問題だ、そういうふうに痛感をいたしたわけであります。  先生、先ほど歴史教育のお話をされましたが、大変申しわけないことに私も戦争を知らない子供たちの一人でございまして、戦後、昭和二十三年の生まれであります。私ども戦後生まれの人間からすれば、まして同和問題というものがどういうところに存在しているのかほとんどわからない、理解できないような現代の青少年もいるかもしれない。しかしながら、実際にはまだまだいろいろな問題が残っておるということを考えたときに、昭和四十年八月十一日の同和対策審議会の答申の精神というものはきちんと受け継いで適切に同和教育を推進していかなければならないと考えております。
  60. 会田長栄

    ○会田長栄君 どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、関係局長に次にお尋ねいたしますが、文部省は、昭和四十年に同対審の答申が出て以来二十六年に及ぶ今日までの努力があったものと思います。そこで、この教育分野における成果課題というものをどのように一体把握しているかということをお聞かせ願いたいんです。
  61. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 私どもとしましては、同和対策審議会の答申を受けまして、学校教育及び社会教育を通じまして広く国民基本的人権の尊重を高めるとともに、対象地域における教育上の格差の解消と教育文化水準の向上に努めるということを基本的な方針としまして同和教育の推進に努めてきたところでございます。  具体的には、先生も既に御承知かと思いますが、研究指定校やあるいは地域を指定して教育推進地域の仕組みとか、あるいはすぐれた同和教育に関する研究実践の成果の普及に努めてまいると同時に、全国の教育関係者の参加を得て研究協議会を開催することなどによりまして同和教育の改善充実に努めてきたところでございます。また、高等学校の進学率を高めるということを目標にして高等学校の進学奨励事業や、それから同和地域の学校先生方が大変御苦労するというようなこともございまして、教員の加配の措置を通じまして対象地域の教育水準の向上に努めてきたところでございます。  こういうような施策によりまして、基本的人権尊重の精神の高揚が前よりは図られてきておるというふうに私ども思っておりますし、それから高等学校の進学率につきましても、同事業を始める前に比べると徐々に格差が縮まりつつあるというふうに考えております。ただ、例えば高校の進学率だけで申し上げますと、昭和三十八年当時は全国平均が六七%に対して対象地域は三〇%であったというのが、今日では全国平均九五%、対象地域九〇%というふうには格差は縮まってはおりますが、なお五%強の格差があるというのが実情であります。  さらに、依然としまして心理的差別の解消不十分であるというような指摘も受ける事件がやはり今現在でも起きております。したがって、私ども今申し上げましたような事業を通じて引き続き同和教育の推進を図ってまいりたいというふうに考えております。
  62. 会田長栄

    ○会田長栄君 そこで、端的にお聞きしますけれども成果課題というものは今端的に示されましたけれども、要はこの二十六年間に及ぶ取り組みの中で最も肝心なのは、これは進学の問題と就職の問題でしょう。就職差別というのは把握できるんですか、その点を聞かせてください。
  63. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) いわゆる就職差別の状況につきましては、文部省では把握いたしておりません。
  64. 会田長栄

    ○会田長栄君 この問題と関連をいたしまして、井上文部大臣は、同和教育問題と関連をして、非常に教育的環境は悪いと大臣みずから指摘したんですね。指摘したんです。環境が悪いとみずから前文部大臣指摘せざるを得ない状況というものはどのように把握していますか。
  65. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 同和問題に対する対策というのは、単に文部省だけではなくて、全省庁挙げてこれに取り組んできているわけでございます。住宅の問題、道路の問題、その他いろんな文化施設等の問題等もあるわけでありますが、全体として私ども各省庁通じた同和地域における環境の問題というようなものを、まことに恐縮ですが、つぶさには把握しておりません。
  66. 会田長栄

    ○会田長栄君 これは教育的環境というところに焦点を絞って答えてほしかったんです。もちろん、経済的あるいは就職差別などがあってなかなか職につけない、働いてもその所得というものがより以上に保障されない、こういう状況下でありますから、当然にして教育環境もこの二十六年間努力してきて一定の水準は上がったものの、まだやっぱり解決されない分野が多いというところを指して指摘されたのだ、こう思います。  そこで、これは主管庁は総務庁なんですね。総務庁にもお尋ねしたら、二十何年間やってみて、現状経済的にも、文化的にも、教育的にもあるいは人権的にも、どのような実態になっているのかという調査、把握資料がないので正確には答えられない、こう返ってきたんです。答えられないと。それは一定のハード面で前進したところは相当ある、しかし同和問題というのはソフトな面が非常に重視されて、学校教育社会教育含めて地域の活性化にどのような役割を果たしていったらいいのかというところが重要なんです、こういうわけなんです。  だから、就職差別、あるいは進学にどのような影響が出ているか、その実態、あるいは奨学金貸与だけで一体進学率が向上するのか、あるいは給付制度というものを設けるべきなのか設けないべきなのかなとを含めまして、文部省といたしまして、二十六年目にして再度やっぱり調査してみる必要があるんじゃないですか、そこをお尋ねします。
  67. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 進学率は、先ほど申し上げましたとおりに、私ども毎年調査をしておりますし、それから差別事件等につきましても、その種の事件が起きたら必ず文部省報告するようにということで、事件が起きた場合には文部省の方に上がってきておりますので、調査が一応されてきております。  それから、一部の県で、これは比較的同和地区の多い県でありますが、同和地区とその他の地域における児童生徒の学力差の問題について調査したものが私どものところに上がってきておりますが、それを見ますと、やはり同和地区の方がその他の地域よりも学力に若干の差が見られるというような報告を私ども持っております。
  68. 会田長栄

    ○会田長栄君 「一九九一年版 全国のあいつぐ差別事件」という本を手にしました。この中の一ページを開いたら、こういう見出しで出ているんです。「部活パンフに差別表現 新入生全員に配る」、おもしろ半分でやった、こういう表現まで出て。いて、実はこの人権問題、差別事件問題等はなかなかやっぱり解消されないで今日きているということもこれは提起されているんです。そういう意味からいえば、総理府がもつと積極的に総合調査をやって新たな対策を充実させるようにしなければいかぬと私は思っているんですけれども、これは教育分野で、社会教育学校教育含めまして文部省総理府に申し入れるくらいの気持ちにならないと、この教育的環境というのはいまだにやっぱり悪い面があるということを解消できないのではないか、こう思いますので、その点ひとつ御所見を承りたいと思います。
  69. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 先ほど申し上げましたとおりに、私どもとしましては、同和問題につきまして毎年その差別事象についての調査を行っているほかに、例えば昭和六十二年度では指導者研修の実施状況、同和教育に関する教材の作成状況、識字学級の実施状況について調査を実施し、都道府県、それから指定都市教育委員会における同和教育に関する施策についても把握しているところでございます。これらの調査を参考としながら、私ども同和教育の推進方について各都道府県教育委員会指導を行っているところでございます。  ただ、総理府全体として、所管官庁であります総理府に全体の調査をすべきだと言う前に、今先生が御指摘の、私どもで本来やるべき教育関係調査等については今後とも、今申し上げましたようなことを踏まえまして努力してまいりたいというふうに考えています。
  70. 会田長栄

    ○会田長栄君 それは今後も私はやっぱり総理府がきちっとした調査をして、この事業というものを継続しなければならないんじゃないか、そのためには客観的にもう少し実態調査をして進めるべきであるという意見を持っていますから、今後も続けていきたい、こう思っています。  それでは、その次に文部大臣にお尋ねしますが、例年、この季節になりますと、政府教育予算の概算要求に伴って常に問題になるのは義務教育費国庫負担制度の問題で、事務職員と栄養職員の問題がもう六年も続けて議題になってきております。その意味では大変心配です。今日まで文部大臣初め文部省がかたい決意のもとにこの制度を堅持するために動いてきたことについては敬意を表しますが、本年度についても同様にしていただきたいということを申し上げて、御所見を承ります。
  71. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) これはもう当然のことでございまして、財政当局には財政当局としての使命があろうとは思いますが、法律的な用語では全くありませんが、毎年のように財政当局方面から先にジャブが出されてくるようなところがあって、これは確実に守り切っていかなければならないという行動を、それこそ文教関係与野党共同で今まで守り抜いてきたといういきさつがあると私は思っております。文部省としては、当然事務職員の方々も、学校栄養職員の方々もこれは基幹的な職員であって、皆さんがそろって一つの学校ができ上がるわけでありますので、今後とも国庫負担制度の対象として守り抜いていく決意でございます。
  72. 会田長栄

    ○会田長栄君 あと三十秒あります。最後、三十秒ですけれども、これは学校五日制の問題で従前から私はお尋ねしたり主張したりしてきているんですが、実際は四週五休とか六休という導入をして、ゆとりとかあるいは週休二日制とかという問題について今日まで議論してきました。もちろん、人事院勧告が出ました。より早い時期に学校五日制を含めて週休二日の問題に文部省も決着をつけるとなりましたが、その際に、現場が一番今望んでいることは、どうしても学校行事を中心としたものを整理統合してもらわなきゃ困るという意見が出ていますから、この件についてどのような進捗状況だかを聞かせてください。それで終わります。
  73. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) ちょっと具体的な例はここに手元にございませんが、先ほど他の先生に答弁いたしましたとおりに、今九都道府県六十八校の調査研究協力校で研究をしていただいているわけでありますが、それらの研究校の実際の様子を見ますと、例えば月二回土曜日を休業日とするという実験に取り組んでいる学校では学校行事などを精選をしているというような例がかなり見られます。また、全然精選しないで、例えば小学校の高学年一週間二十九時間、中学校三十一時間というような標準がございますが、それより以上に授業時間を組んでおる学校については、その授業時数を削るというような努力もしているようでございます。努力の仕方はかなりまちまちでございます。  私どもとしましては、そういう調査校の結果につきましては、もう少し分析をしまして、各都道府県を通じまして学校現場に配ってまいりたいというふうに考えております。
  74. 会田長栄

    ○会田長栄君 終わります。
  75. 肥田美代子

    肥田美代子君 肥田と申します。  午前中の大臣のお話を伺っておりまして、私は大変心強い思いがいたしました。と申しますの、は、教育というのは人を幸せにするためにある、そういうふうに大臣はおっしゃったんですけれども、そのお言葉を引用しますと、この文教委員会というのは幸せづくりをする委員会だと。ですから、このテーブルは幸せづくりのためのテーブルだというふうに理解いたしまして、私は本当にほのぼのとした気持ちになりました。どうぞよろしくお願いします。  それで、きょうは、文教委員会で質問させていただくのは初めてでございますので、そしてテーマも三つもございますので、御答弁はなるべく簡潔に、そして内容は少し濃い目にお願いいたします。  現在、ガット・ウルグアイ・ラウンドで十五分野にわたって交渉が行われておりますけれども、その中の知的所有権の分野でレコードレンタルについてのルールづくりが大きな問題になっております。そもそも、アメリカの主張というのはどういうことなんでしょうか。お願いします。
  76. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) アメリカの主張は、アメリカにはレコードレンタルというようなそういう業態がありませんから、日本もそういうものはやめろ、こういうことと承知しております。
  77. 吉田茂

    政府委員吉田茂君) 大臣が答弁申し上げたとおりでございまして、アメリカ側の主張は、これは従来我が国のレコードレンタル制度を容認いたしまして、前提といたしまして内外無差別の観点からの主張であったわけでございますが、今回の場合は、レコード制作者によりますレコードのレンタルの禁止を意図してということも考えられますが、レンタルの禁止も可能な許諾禁止権のみを国際ルールにすべきであるという主張でございまして、この点、一年の許諾権、四十九年の報酬請求権という現在の我が国の法制度とは異なっておるわけでございます。
  78. 肥田美代子

    肥田美代子君 ことしの通常国会で著作権法の改正が行われたわけですけれども、レンタル権をアメリカのレコード会社に認めることになった理由について今おっしゃっていただいたんですけれども、そうしますと、その段階でアメリカ日本にレンタル制度があるということを前提として要求していたわけですね。
  79. 吉田茂

    政府委員吉田茂君) 昨年の春、いわゆるスーパー三〇一条の適用と絡めましてアメリカ政府から強い要望があったのは、御指摘のように、レコードレンタルに関して、我が国のレコードレンタル制度を前提として内外無差別という観点から外国のレコード制作者にもレコードの貸与に関する権利を与えるということを求めたものと理解しております。
  80. 肥田美代子

    肥田美代子君 そうしますと、今回アメリカはそのレンタル制度を禁止しろという主張だと理解していいと思いますけれども、そうしますと、アメリカの主張は前回の主張と違うのじゃないですか。
  81. 吉田茂

    政府委員吉田茂君) この点につきましては、現在のガット・ウルグアイ・ラウンドにおきますアメリカの態度は我が国のレンタル制度を否定するという考え方に変わってきたということもうかがえますので、その限り、そういうことであれば変化があった、違ってきた、こういうことであろうかと思います。
  82. 肥田美代子

    肥田美代子君 レコードレンタルの制度によってレコードの売り上げが落ちるとか、そういうことをアメリカのレコード会社とか作詞家、作曲家は心配しているのでしょうか。例えば今、洋盤の売り上げはどうなっていますか、お願いします。
  83. 吉田茂

    政府委員吉田茂君) レコードの売り上げにつきましては、邦盤、洋盤を含めて全体として増加傾向にあるわけでございます。昭和五十八年、五十九年ごろは、これは洋盤だけじゃなくて全体でございますが、これが指標としてあるわけでございますが、五十九年当時二千七百四十一億というのがいわゆるレコードの総生産金額でございました。この二千七百四十一億が平成二年には三千八百七十八億円、こうなっておりまして、この期間にレンタルの売り上げは約四倍に拡大した時期であるわけでございますが、にもかかわりませずこのような増加があったということで、むしろこれはレンタルによって音楽にアクセスできる、その機会がふえたというような解釈もできるのではないかと思っております。
  84. 肥田美代子

    肥田美代子君 レコードレンタル制度は若者の音楽の普及に大変役立っていると私は思うんです。その若者たちが、最近の新聞報道を見まして、レンタル制度がなくなるのじゃないかと心配し始めております。  ところで、大臣は、若者代表としてレコードレンタルの制度が若者の文化に大いに寄与している、そういう評価をしていただけると思っておりますけれども、どうか若者たちの夢を奪わないためにも頑張っていただきたいと思うんです。そして、せっかく日本の若者の中に少しずつすそ野を広げてきた音楽を聞くという一番人間らしい時間をどうか青少年から奪わないようにということで、ぜひともガット・ウルグアイ・ラウンドでの御健闘をお願いしたいんですけれども、御所見をお願いいたします。
  85. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 世の中の働く人の平均年齢は三十九歳ぐらいだと承っておりまして、私は四十三歳ですから、閣僚としては最年少であっても、腹も出て、髪も父に似て薄くなって、やや中年であることは間違いないのでありますが、しかしそれでも比較的若い政治家として若者の文化を理解できる人間であり続けたい、そのような観点でレコードのレンタル制度を守っていかなければならないと先生同様に考えているところでございます。  ウルグアイ・ラウンドについて、このTRIP、知的所有権の問題というものが、米という余りに巨大な問題があるだけに、例えばいけにえになるということはないとは思いますけれども、米はもちろん重要な問題であることはよくわかっておりますが、TRIPのことは、知的所有権のことは何か大した問題ではないんじゃないかというような甘い考えを持つような人が、ないと思いますけれども、外交交渉をしていく中で、もしそういう誤った考え方がありますと、それこそわけのわからない妥協が行われてしまうという恐れがありますので、この辺についてはきちんとやっていかなければならない。そして、先般、ガット・ウルグアイ・ラウンドに関する閣僚の懇談会というものが十一月の七日、組閣の翌々日に開催をされまして、その閣僚の懇談会でもきちんと御説明はしてまいった次第でございます。
  86. 肥田美代子

    肥田美代子君 大臣の今のお言葉を伺いまして、私は信じておりますので、どうぞ頑張ってくださいませ。  それから、次の質問に参らせていただきます。  子供時代に読んで感動した本といいますのは、その人の人生を何らかの形で決めていくと思うんです。それで、大臣にももちろん子供のときに読んだ忘れられない一冊の本というのがあると思うんですけれども、例えば、挙げるとしたらどんな本なんでしょうか。
  87. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 私が少年のころ読んで感動したものですか。——私は本を読まないので、いつもおふくろから怒られてはかりおりました。というのは、私は生き物が好きで、チョウが好きだったものですから、チョウの図鑑のようなものほかり読んでおったもので、その分、いわゆる世界の名作全集のようなものが比較的縁遠いというような傾向にあったことは率直に打ち明けておかなければならないと思います。正直申し上げて、思春期に差しかかるというか、中学に入ってから武者小路実篤先生のさまざまな著書に触れたときには極めて新鮮な感動があったのを今でも思い出します。
  88. 肥田美代子

    肥田美代子君 チョウの図鑑、とってもすばらしい愛読書だと私は思います。ありがとうございます。  それでは、子供たちの一日の生活をちょっと考えてみたいのですけれども、ほとんどの時間を学校で過ごすのですね。それで、その学校がおもしろくないという子供たちはますますふえている。どうしてふえておるのかと考えますと、私はやっぱり子供たちのとってもやわらかい感性が押しつけだけの知識の詰め込みでもって耐えられないんじゃないかという気がしているんです。本来、学校というのは文化のメッカだと私は思っておりますし、それほどすばらしくなきゃいけないと思うんですけれども大臣学校はどういうふうな位置づけでもってお考えでしょうか、子供にとってということで結構でございます。お願いします。
  89. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 今、いわゆる不適応現象というのでしょうか、いじめとか児童生徒の問題行動の中でも、校内暴力といったものが若干減少傾向にあるのにもかかわらず、登校拒否というようなもの、あるいは高成生の場合は十一万人、十二万人という中退問題とか、そういう学校が嫌な場所になって行きたくないという、そういうような思いを児童生徒が持つということは大変大きな不幸であって、これが今の現代の教育における最大課題ではないだろうか。私が最初の記者会見で、日本教育のいい部分と悪い部分をはっきり分けて、いい部分はより発展させて守っていけばいいじゃないかと、悪い部分は変えていけばいいと、こう申し上げましたが、社会の多様化に教育の方がついでいけなくて、そして子供さんが学校嫌いになるとすれば、これは大変悲しいことだと思います。  なお、簡単にちょっと一言だけ申し添えたいことがありますが、例えば同じ教育をやったとしても、時代によって、社会が違いますとその教育の効果が違ってまいります。これを私どもは、例えば性風俗のはんらんとか、昔は昼間しかお店をやっていなくても今は一晩じゆうどこでも買い物ができるとか、いろんな状況があります。核家族化とか、そういういろいろな条件を、学校教育に対して世の中あるいは環境が与える負、マイナスのインパクト、こういう表現をすることがあみわけです。これは十年前、二十年前、あるいは私が小学校教育を受けたのは三十年前でありましょうが、今の方がはるかに便利にはなっている。しかし、さまざまな意味で負のインパクトがふえてきておる。ですから、社会がいろいろな負のインパクトを与えていく中で学校教育をきちんとやっていくというのば三十年前よりも二十年前よりも難、しいのかもしれない。しかし、その難しい仕事を我々はやらなくちゃならない。そして、お子さんが学校を嫌いで行きたくない、そういうふうに思わないで済むような学校づくりをやらなければならない。これは大課題だと思っております。
  90. 肥田美代子

    肥田美代子君 お話を伺っておりまして、大臣が、とりわけ本の大切さ、それから学校の本当に本来あるべき姿について深い御認識を持っておられることを伺いまして安心いたしました。  その学校の中における図書館のことなんでございますけれども、例えば私の地元の大阪で先生方にいろんなアンケートをとらしていただいたんですけれども、図書館にかぎがかかっているという学校が大変多いんですね。小学校なんかは大体七〇%近くそういうふうになっておりますし、中学校もやはりそのぐらいの数でございます。どうしてそうなのかといいますと、指導者がいないため本年度は一度も開いていない、係は一名いるが、放課後は会議、クラブ、生徒指導のため開館できない、そういう答えも書かれておりました。このアンケートをごらんになって、ごらんになってというか、この数値を大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  91. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 数字を具体的に見せていただいているわけではありませんけれども、従来から学校の図書館をもっと児童生徒が活用できるようにいろいろな仕組みを考えたらどうだという御意見とか御陳情のたぐいは、私も自民党の文教部会長等をいたしておりましたのでいろいろ承っておりまして、これはどういうふうな解決方法があるのかみんなで考えていかなければならない課題だとはとらえております。
  92. 肥田美代子

    肥田美代子君 どうしてこういう結果になったかという一番大きな理由の中に、司書教諭配置がほとんど行われていないという現状があるわけですね。子供たち教育の中で図書館を使うためには、司書教諭というのは本と子供たちの橋渡しをする大切な役目でありまして、片手間でやれる仕事じゃないと私は思うんです。例えば教科書があって教師がいないという学校はないわけですから、本があって司書教諭がいない図書館も私は存在し得ないと思うんです。  それで、学校図書館法の第五条一項で「学校には、学校図書館専門的職務を掌らせるため、司書教諭を置かなければならない。」という司書教諭配置を義務づける項がありながら、附則でもって「学校には、当分の間、第五条第一項の規定にかかわらず、司書教諭を置かないことができる。」という義務づけの免除が書かれておりますけれども、どうしてこういう附則をつけることになったんでしょうか。
  93. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 先生指摘のとおりに、学校図書館法で司書教諭を置くことを原則とし、そしてその司書教諭につきましては、併任発令でございますが、「教諭をもって充てる。」というふうに書いてあるわけでございます。しかも、司書教諭につきましては、大学が文部大臣の委嘱を受けて行う司書教諭講習を修了した教諭の中から充てることとされているわけでございます。このため、学校図書館法が制定されたときには、司書教諭講習が実施され、司書教諭の有資格者が各学校配置されるまでには相当時間がかかるだろうということで、特例として「当分の間こ「司書教諭を置かないことができる。」ということを規定せざるを得なかったんじゃないかというふうに私ども理解をいたしております。
  94. 肥田美代子

    肥田美代子君 この「当分の間こというのはかなり漠然とした表現なんですけれども、そのころには何年ぐらいとお考えになったんでしょうか。
  95. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) ちょっと何年、どのぐらいを考えたのかというのは私はちょっとよく承知していないわけであります。  例えば、よく先生たちからもいろいろおしかりを受けるんですが、各省の法律、私どもの法律の中でも当分の間何々することができるという規定がございまして、それが例えば学校教育法が制定されたのが昭和二十二年だったと思いますが、学校は原則として国、地方公共団体及び別に法律で定める学校法人しか設置できないようになっておりますが、附則の百二条で、当分の間幼稚園とか養護学校についてはその他のものでも置くことができるという規定がございまして、そして現在でも御承知のとおりに個人立幼稚園とか宗教法人立幼稚園などがあるわけでありますが、もう既に四十数年たってもその規定が生きているというようなこともございまして、「当分の間こが立法者がどのくらいの期間を予想したのかということは、ちょっと私は調べておりませんので、お答えできないことをお許しいただきたいと思います。
  96. 肥田美代子

    肥田美代子君 「当分の間こというのが四十年近いと、そういう国語辞典はないような気がいたしますけれども、そうしますと、「当分の間こという間に例えば司書教諭を図書館に配置するように努力はなさっていらっしゃいましたか。さっき、講習会があったとか、そういうことを伺いましたんですけれども、じゃ今の設置率というか、配置率について簡単に小学校と中学校に関して数値を挙げていただけませんか。
  97. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 現在の配置率、ちなみに文部省司書教諭文部省の委嘱を受けた大学の司書教諭の講習会を受けて資格を持っておる方は累積しますと十四万四千人おりますけれども、現実に司書教諭という発令を受けた司書教諭を置いておる学校というのは、公立、私学合わせまして、小学校で五十九、中学校で九十四、高等学校で三百八十九人、そういう数字でございます。平成二年度の学校基本調査でございます。  それから、司書教諭という発令をいたしませんで、学校図書館担当の教員というものを校務分掌で校内で決めております。その人数は、これは昭和六十三年十月一日の全国の小中高の悉皆調査でございますが、それですと一校当たりの学校図書館担当教員の数というのは、小学校で二人、中学校で一・九人、高等学校で四人という状況になっております。
  98. 肥田美代子

    肥田美代子君 今、小学校と中学校について数字をおっしゃっていただいたんですけれども、その小学校五十九、中学校九十四というのは、人が聞いていますとパーセンテージに聞こえますけれども、これは何校という校ですね。
  99. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 人数です。
  100. 肥田美代子

    肥田美代子君 人数ですね。
  101. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) はい。
  102. 肥田美代子

    肥田美代子君 じゃ、五十九人ですね、小学校では。そうですか。これはもう、今、そちらで失笑が起こりましたように、本当にだれが聞いても少ない数だと思います。  それで、指導要領の中には、みずから学ぶ意欲をつける、そういうふうに指導されておりますけれども学校図書館かぎがかかって入れない。そうしたら、子供たちは一体どこでみずから学ぶ力をつけるのかなと私なんか本当に心配になります。いろんな事情はございますでしょうけれども、例えば専門家による研究者会議のようなものをつくって、とにかく目標を定めて第一歩を出発していただくようにはできませんでしょうか。
  103. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 文部省として今何ができるかということについては、初中局長を初めとする皆さんといろいろとまた相談をしていきたいと思っておりますが、私自身は、今先生が御指摘になられた事柄については従来から問題意識は持っておりまして、いろいろな方のお話を承ったこともございます。そして、初中局長名の通知が毎年出されていることも知っておりまして、悉皆調査をやったころの報告自民党文教関係議員として受けたりいたしてまいりましたから、基本的な問題意識は持たせていただいておりますので、文部省に入った現在、今具体的に何から始めることができるか皆で相談をしてまいりたいと思っています。
  104. 肥田美代子

    肥田美代子君 それを一番最初の仕事にしていただけたらとてもありがたいと思います。よろしくお願いいたします。  それで、一九八九年なんですけれどもアメリカの議会で、青少年に読書をもっともっと勧めようじゃないか、そういう決議が行われまして、レーガン大統領の名前で声明文も出ております。その中で、青少年にとって読書は過去、現在、未来を解き明かすかぎであり、無尽蔵の宝にも似た知識と感動の世界へ通ずる道であると書かれております。大臣、いかがでしょう、アメリカで、そして議会でそういう決議がなされ、大統領名でそういうことが発表されているんです。こういうことを考えますと、私たち日本経済大国であり教育大国だというふうに自負しておりますけれども、何だか本当に背筋がすうっと寒くなるような気がいたします。どうぞ文部大臣、このことについては率先して進めてください。そして、さっきおっしゃいましたその四十年の空白、四十年といいますと子供が二回大人になれる年数でございます。ですから、この四十年の間、子供との約束を果たせなかったことについてもう少し深刻にお考えになって、子供との約束を四十年目に果たす大臣として鳩山大臣に頑張っていただきたいと思います。どうでしょうか。
  105. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 私ももっともっと読書をしておけば無尽蔵の宝を持っておりまして、人格ももっとできておったでしょうし、もっとうまい答弁もてきたのではないか。正直、私は先ほどチョウの図鑑ばかり見ておったという話をしましたけれども、読書もそれなりにはしたつもりですが、やはり一般よりは読書量が少なかったんだろう。そのことを今でもしきりに反省するんで、失った青少年時代は戻ってきませんから、ましてその条件が、例えば図書館が閉まっているがために本を読めないというために、先ほど午前中の委員会でも申し上げたように、そういう事柄が何十年後に大きく影響してくる、それが教育というものでございますから、このレーガン大統領の声明も読ませていただきますと、十二分に感動をすべき内容であり、うなずくべきところの多いものでございますので、参考に読ませていただいて、文部省としてできることは何であろうか、何から始めたらいいだろうか、考えていきたいと思います。
  106. 肥田美代子

    肥田美代子君 次に、子供の権利条約について少々お尋ねしたいと思うんです。  それで、恐らく次の通常国会にこれは条約として上がってくるというふうに政府の方でお答えになっているようですが、そのことについては変わりございませんか。
  107. 長谷川善一

    政府委員長谷川善一君) 児童の権利条約の批准の見通しはどうかというお尋ねでございます。  この条約批准の案件をいつ国会に提出するかということにつきましては、これは外務省を中心に関係省庁が現在国内の関係法規との関連性につきまして鋭意検討を進めておる段階でございますし、主管の官庁でもございませんので、文部省として明確にお答えできるという性質のものではないのでございますけれども、現在のところ各省庁の検討を進めておるときに、外務省の方としては次期通常国会には批准案件が提出できるようにという目標を持っております。そういった目標に沿って検討作業を進めており、文部省としてもその作業に現在参加しておるという状況でございます。
  108. 肥田美代子

    肥田美代子君 それでは、この子供の権利条約は、鳩山大臣は本当に熟読玩味していただいておると思いますが、この条約は二十一世紀に向かって全世界子供たちへの約束事というふうに私は受け取っております。大臣はこの条約の意義についてどのようにお考えでしょうか。
  109. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) アメリカは事情があって入らないようですね。そういう点もいろいろ聞いたりいたしておりますが、まあ恐らく日本が批准承認をして条約発効というようなことになれば百カ国に近づく数字だというようなことも承っておりますが、これは外務省ともよく打ち合わせをしていかなければならない事柄だと思います。  次期通常国会へという今御答弁をいたしましたけれども、そのときにこれは相当きちんと審議をしまして、というのは、条約を国会がきちんと審議していないというわけではありませんけれども、条約の数が大変多いと外務委員会等は案外短かい時間で通さないと間に合わないというような、そういう年もあるということは、外交官でもあられた委員長が一番よく御承知のことと思いますけれども、やはりこの条約については国会議論をしていただくときが来年やってまいったときに、私どもも今から勉強はいたしておきますので、いろいろ中身について議論をさせていただきたい、基本的にはそういうふうに思っております。  現実に一日に四万人のお子さんが飢えとかさまざまな事柄で世を去っていかれているというようなデータを見てはびっくりいたしておりますし、じゃ、先進国では何の問題もないのかというと、またそれは虐待だとかいうような話も全然ないわけではありません。したがいまして、こういう条・約の目指している精神はよく理解をいたしておりますけれども、しかしこれも条約でありますから、日本がこれに完全に入る、国会を通すということになって効力が発生したときに、妙に後から問題が起きるようなことがあってはいけませんので、十二分に勉強をし、そして国会で大いに諸先生方にも御議論をいただいて、その推移を見守っていきたいと考えます。
  110. 肥田美代子

    肥田美代子君 それでは、本日はその条約の趣旨を文部省がどのように生かそうとしていらっしゃるかについて質問したいと思います。  まず、学校教育に責任を持つ文部省としては子供の人権ということを基本的にどのように考えておられるか、お聞かせください。文部省は、子供にも大人と同じように権利があり、これを尊重し、保障していかなければならないという自覚をお持ちなんでしょうか。
  111. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 児童の権利条約の批准を待つまでもなく、御承知のとおり日本国憲法ではすべての国民基本的人権を認めているわけでございまして、そういう意味では子供を含めてゼロ歳の子供から百何歳の大人良で含めて基本的人権が保障されているわけでございます。そういう基本的な立場に立って、先ほど申し上げましたような同和教育どもども推進しているつもりでございます。しかも、児童生徒が人格の完成を目指した教育の過程にあるわけでありますので、学校ではその教育目的を達成するために必要な範囲内においての指導を行うということはあるとしても、人格を持った一個の人間として児童の人権については十分留意して、児童一人一人を大切にした教育指導を行っていく必要があるというふうに私ども考えております。
  112. 肥田美代子

    肥田美代子君 子供が権利を持ち、これを保障することが必要であるという意識はお持ちのようですが、実際には子供の権利が侵害されているんな事件が起きています。特に、学校では厳し過ぎる校則、体罰、いじめ等、子供の人権侵害が後を絶っていません。文部省子供の権利を保障するとおっしゃいますが、具体的に教育委員会学校にどのように指導していらっしゃいますか。
  113. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 体罰あるいはその他子供学校における、先ほど大臣からもお話ししました、学校になかなか来ないというような問題等につきましては、私ども従来から何回となく通知を出して指導しているところでございます。さらに、個別にいろんな事件が、つい先ごろも大阪の方で養護学級から普通学級に戻ってきた中学三年生の女の子が男女四人にいじめられて、そして重体に陥っているという事件が報ぜられましたが、こういうような問題が起きますと、私ども必ず個別の事情を十分聴取して、しかるべき会議に、既に昨日この問題については生徒指導担当者会議がありましたので、そこでも十分注意を改めて喚起したところでございます。
  114. 肥田美代子

    肥田美代子君 では、子供の権利条約と文部省の施策の関係に入りたいと思いますが、まず基本的なことを伺います。  文部省は、この条約が批准されても学校教育は何ら変わらない、そういうふうにお考えなんでしょうか。私は、この条約が批准されたら、あるいは批准される前においてもですけれども、この条約の趣旨を生かして日本学校をよくする努力をするべきだと思うんです。お断りしておきますけれども、私は条約上の義務や国内法の改正のことを申し上げているのではありません。これについては検討中だというお答えが返ってくるのは承知しておりますので、私が申し上げたいのは、条約上の義務がどうであれ、子供の権利をもっと保障していこうというこの条約の趣旨を少しでも生かすために前向きの政策を実施すべきじゃないかということです。  先ほど鳩山大臣もおっしゃったように、この条約の趣旨を評価していらっしゃるんですから、そして閣議で決定して日本は署名したんです。それであれば、何もしないというのはおかしくはないかと思うんです。条約上の義務を果たすのは当然のことで、何が条約上の義務かということはまだお答えいただけないと思いますが、この条約の趣旨を生かす観点から文部省は何をなさるつもりか伺いたいと思います。
  115. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 先ほど大臣、それから学際局長からも御説明しましたとおりに、この条約を批准する場合に、我が国の現行制度との整合性等については外務省その他の関係各省と現在細かく詰めを行っている段階でございますので、今の段階でどうなるのかということについては、まことに恐縮ですが、お答えできないというふうに言わざるを得ないんです。  ただ私どもは、先ほど申し上げましたように、我が国の憲法でもこの条約で言おうとしている基本的人権については尊重されておるというふうにお答えいたしましたが、改めてわざわざ子供に着目して児童の権利条約というものができ、そして児童の権利条約を批准するという事態になりましたらば、私どもとしても学校教育の場においてもう一度子供の権利を保護する、権利主体としての子供に着目して改善すべき点を洗いまして、条約の批准に合わせて指導をしてまいりたいというふうに考えております。その中身については現在検計している最中でございます。
  116. 肥田美代子

    肥田美代子君 日本子供の権利が一〇〇%保障されていないということは、今おっしゃっていただいたことでよく認識していただいているということがよくわかりました。先ほども申しましたように、いろいろな事件が続発しているわけです。日本子供の権利も今以上に保障されなければいけないと思いますし、文部省は何もしないでよい。と考えていらっしゃるわけじゃないということも今わかりました。ですから、この趣旨に沿ってどうするかということを本当に前向きに検討していただきたいと思うわけです。  それで、もう少し個別の事項について伺いたいと思いますが、まず条約の十二条には意見表明権についての規定があり、十二条の2では、子供は自己に影響を及ぼすあらゆる司法、行政上の手続において意見を述べる機会を与えられなければならないと規定されていますけれども、この規定について、校則を制定するとき、カリキュラムや教科書を決めるとき、担任の先生を決めるときなどに生徒の意見を聞くべきであるとか、そんな必要はないとかいろんな議論が行われております。これについても政府の公式の解釈を伺っても、恐らく今検討中という返事が返ってまいるかと思いますけれども、本日は解釈について水かけ論をしようというつもりじゃございませんのでして、私が伺いたいのは、学校教育について子供自身の意見をもっと聞いていこうという基本的な考えについて文部省はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。文部省は、学校の中で子供たち意見がもっと聞かれるべきだとお考えですか、それとももう十分に聞いておるとお考えでしょうか。
  117. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 一般的な問題ですが、学校におきまして、児童生徒の発達段階に応じてその自主性、主体性を尊重して教育指導を行うべきであるということは、これはもう私どもも従来から指導しておりますし、現場の先生方もそういう認識のもとに教育を行っているわけであります。したがって、必要に応じて児童生徒の意見などを学校運営の中に反映させていくということは、私どもも重要な大切なことであろうというふうに思っておりますが、例えば校則の制定や見直しを行うというような場合に、学級や生徒会等で生徒にみずからの課題として討議する場を設けて、そして生徒自身がみずから守ろうという意欲を醸成するというような、そういう指導上の工夫を行うことも必要なんじゃないかというふうに考えているところでございます。  ただ、学校におけるいわゆる教育課程の編成というような問題になりますと、もちろん修学旅行やなんか学校行事を行う場合に、その他学級活動を行う場合に、学級の生徒の希望なり、全校的な学校行事であっても生徒の希望などをある程度反映するということは必要でありますが、個々の学校におけるいわゆる教科の教育課程の編成というのは、これは専門的見地から、あるいは教育的な配慮に基づいて学校が判断する問題でございまして、個々の教育課程の問題につきましては、最終的には校長先生を中心とする学校の問題として学一校で判断すべき問題ではなかろうかというふうに思っております。
  118. 肥田美代子

    肥田美代子君 先日、NHKのテレビを見ておりましたら、文部省の研究指定校とかになっている中学校のことなんですけれども、いわゆる習熟度別クラスというのをやっておりまして、そこでじっくりコースとスピードコースというのがあるんですね。それを決めるのは子供なんです。文部省の研究指定校でもそういうことをやり始めていらっしゃる。ですから、小学校の低学年の子供たち意見をどうのこうのというのはまず無理でございましょうけれども中学生くらいになりますと、自分たちのことは自分たちである程度決めて責任を持ってやらせるということはとっても大切なことだと思うんです。ですから、こういう研究指定校のことがもしいい方向に出ていきまして、教育にとってすばらしいことだというふうに文部省方々が理解されますと、私はこういう方向でどんどんいってほしいと思うんですね。子供たちは、そのことでもって失敗もいたしますし、本当に悲しみもいたします、苦しみもいたしますけれども、そのことをやっぱり乗り越えてこそ子供たちが。一人前の大人になれる、もう少し幅の広い大人になれる、そういう気がいたしておりますので、その辺のことはもう少し意識の転換といいますか、していただきたいと私は思っております。  それで、次に、この条約の十三条から十六条までに子供のいろんな権利が規定されておりますけれども、この権利についてまだまだ学校の中では制限されていると思うんです。学校で不当に抑えつけられている子供の権利についでいろんなことを皆さんから御意見を伺うわけですけれども日本学校の現状がこの条約の十三条から十六条に照らして問題ないのか、そのことについて一言だけ伺わせてください。十三条から十六条について本当に学校の現状が今問題ないと思っていらっしゃるかどうか、検討中ということじゃなくて、御感想をお述べいただきたいと思うんです。
  119. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 私は、十三条とか十四条、十五条、十六条を読ませていただいているわけではありませんから、もちろんそういう点は局長の方からお答えを申し上げますが、先ほど申し上げましたように、通常国会でこの条約が国会にかかったときには、これは慎重にいろいろな各方面から大いに議論をしていただきたいと申し上げたのはその趣旨であるということ。  それから、私はこの権利条約の趣旨に賛同するというのは、例えば先ほども申し上げたような不適応現象というのがあって、小学生でも登校拒否の数は決して減っていない、ふえつつあるという登校拒否のやや低年齢化現象もあらわれていますね。それらを救うためには、子供の一人一人の個性とか能力というものを十分認めてやる教育がなされればそういうことが起きないのではないかというふうに考えるわけで、子供の一人ずつの個性をきちんと認めてあげる教育をやるということは、コの条約の第何条とは言わないけれども、趣旨にまことに見合ったものである。いい教育をやることはまさに子供の権利を守ってやることにつながるんだ、私はそう思うわけであります。  先生に逆にお尋ねをいたしますが、チョウの足は何本だとお思いですか。ある学校でチョウの足は何本がという質問をしたら、ある子供が四本ですと、こう言った。そうしたら、みんな笑った。ばかだな、昆虫はみんな足が六本じゃないかと。そうしたら、先生も、おまえそんなことも知らぬのか、昆虫は足が六本というのも。でも、その子供は、いや僕が見たチョウは四本足で歩いていたんだ、だからチョウの足は四本なんだと。ところが、先生はそれを一切認めなかった。昆虫の足は六本と決まっているんだから、おまえはそういうばかなことを言うんじゃない。それでいじめというのか、そこまでいったわけじゃないんでしょうが、その子供が泣き出してしまったという話がある。  チョウというのは確かに六本の足を原則持っています。しかし、国チョウ、オオムラサキは四本しか足がありません。二本の足は退化してもうなくなっているんです。ですから、そうした仲間のチョウを見に行けば、文字どおりチョウは四本で歩くんです。二本は退化して、ないんです。そのお子さんはチョウが好きだったんです。虫が好きだったんです。だから、自分が見たチョウが四本足で目の前を歩くから四本だと言ったけれども先生はそれを認めなかった。それは教育力がなかったんだなと私は思う。そのときに、この子供は何でそんなことを言い張るんだろうとおもんぱかって何か手を差し伸べることができたならば、それはまさに子供の権利を守ったことになると思うし、あるいは表現の自由の問題にもつながったかもしれない。  そんなことを思うと、一人一人の個性、能力に応じた親切な教育というのが私はこの権利条約に見合うものだと考えております。
  120. 肥田美代子

    肥田美代子君 もう残念なことに時間が迫ってまいりましたけれども、今のチョウのお話はとっても暗示に満ちたものだったと私は思います。  それで、私は一番日本で困ったことだなと思うのは、教育的配慮でもっていろんなことが行われているということなんですね。学校教育法施行規則の中に教育という言葉はあるけれども、人権という言葉がない、そういうことを考えますと、私はやっぱりその辺が日本教育の一番基本的な間違いじゃないかと思うんです。  ですから、今おっしゃっていただいたように本当に一人一人の個性を大切にするということは、言葉では簡単ですけれども、私たち大人がこれから本当に大きな大きな目標として掲げていかなきゃならないことだと思います。条約の趣旨を生かして、どうか学校の生活全体を、そして子供たちの暮らしを、条約が批准されてもちっとも学校は変わらないじゃないか、子供たちの暮らしは変わらないじゃないかと来年私に文句を言わせないようにどうぞ大臣頑張ってください。よろしくお願いいたします。  最後にもう一度、権利条約について大臣が心を込めてこの条約を二十一世紀の子供たちにプレゼントするということをおっしゃっていただきたいと思います。
  121. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) まだ就任十何日目で、この権利条約の条文を全部勉強いたしておりませんので、先ほどから、くどいようですが、通常国会までに大いに勉強しなければならないし、省内でも打ち合わせをしなければならないと思っております。  人権が大切であるということはよくわかっております。私の祖父鳩山一郎は、第四十四代文部大臣、昭和六年、ちょうど六十年前であります。祖父が亡くなりましたのは私の十歳のときでありますが、祖父の自慢の話というのがありました。それは人権でした。世の中で一番大切なのは人権なんだぞと我々孫に言っていました。子供にも人権があるのは当たり前だよ、だけど、それだけじゃないんだよ、お母さんのおなかの中にいるまだ生まれてこない子供にも人権があるというのが僕の考えなんだよ、人権というのはそれほど大切なんだ、生まれてくる前から人権は持っているんだよ。そういう話をいつも聞かされておりましたから、人権の大切さはよく理解をいたしております。  しかし、これが校則だとか教科書だとか学習指導要領ということとどう絡むかということになりますと、私どもも大いに検討しなければなりませんし、教育というものはどうしても必要なものがある。校則というものは、厳し過ぎる校則はいけないと思う。個性に見合った校則、つまり一人一人の個性を全部殺してしまうような校則がいいとは思いませんし、校則の見直しというものは常にやっていかなければならないと思う。しかし、でもやはり校則というものは私は必要だと基本的に考えておりますので、その辺の調和、バランスの問題は大いにこれから研究をしていきたいと思っています。
  122. 針生雄吉

    ○針生雄吉君 公明党の針生と申します。よろしくお願いいたします。  まず初めに、我が国における外国人留学生にかかわる問題について種々御教示を賜りたいと存じます。  宮澤総理所信表明演説の中で、「我が国国際社会において名誉ある地位を占め、国民が誇りを感ずることができる品格ある国となるよう、全力を傾けて国政に取り組んでまいります。」と述べておられますけれども、本日の午前中、大臣のごあいさつをお聞きいたしまして、国際的にも名誉ある、品格ある、文化的にも一流な国づくりを目指す宮澤内閣の重要閣僚のお一人としての大臣として、まことに明快なフィロンフィーに裏打ちされた御抱負をお伺いすることができて、大変に心強く感じておるところでございます。  心の豊かな人づくりなくして国づくりはないという信条を述べられました大臣にお伺いをいたします。  国際化時代に対応した二十一世紀初頭に、十万人の外国人留学生を受け入れるという文部省の留学生交流推進目標がございますけれども、その達成というテーマに焦点を絞って大臣の方針あるいは御決意をお示し願いたいと思います。
  123. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 留学生十万人受け入れ二十一世紀初頭というのは、一つの方針でありますけれども、ある意味で言えば一つの公約に近いものではないだろうかと思います。また、そういう条件を整えるように全力を尽くしていかなければならないすばらしい目標値だと考えております。  最近五年間は年平均約二〇%の増加率で、平成二年五月現在、数字がちょっと古いですが、四万一千人という資料を私はいただいているわけでございますが、この目標達成ということは、日本の国がそれこそ、今先生指摘のとおり、品格ある文化大国として諸外国に評価されることのあかしになる。つまり、日本なんかに留学に行ってもつまらない、こういうふうに思われたら、余り人が来てくれなければやっぱり十万人の受け入れというのはできないわけでありましょうし、また、これは留学生に対するさまざまな援助、援護、住宅等を含めてそうしたものも充実をしていきませんとこの十万人の留学生を受け入れることはできない。そのように考えて、これら施策の進捗状況を勘案しながら計画の目標達成に努力をしてまいる決意でございます。
  124. 針生雄吉

    ○針生雄吉君 ありがとうございました。公約に近いものであり、品格ある文化大国としてのあかしという、そういう御所見をお伺いいたしまして、ますます心強く感ずる次第でございます。  二十一世紀を迎える世界の潮流といいますか、流れといたしましては、世界のリーダーたらんとする国は、軍事力で恫喝しようなどという姿勢はもう論外でありまして、また経済力オンリーでも世界の国々を心から納得せしめることはできませんし、世界のリーダーたり得ないという時代に入っていると思います。まさに大臣の言われるような心の時代であり、ソフトパワー重視の時代が展開されつつあると思います。あくまでも国際間の協調、調和を旨としつつ、平和のうちに文化教育の力を基礎としていかなければならないと思います。  また、国づくりという場合の国という言葉世界、地球という言葉で読みかえるべき時代に入っていると思うわけであります。そのような意味におきまして、世界の中の日本として我が国における教育の果たすべき役割はますます重大となってきておりますし、その中における外国人留学生対策の重要性の比重も増大してきていると思うのであります。  蛇足ながら、ある経済雑誌の中にある経済人の考えが述べられておりますので御紹介したいと思いますが、要するに経済というハードパワーを文化教育というソフトパワーでコントロールすべき時代に入ったという、そういう前提、前置きで述べている文章でございますけれども国家予算の中で文部省予算が八二年以来ゼロシーリングであるのに、ODA予算は国防費とともにゼロシーリングを免れている。しかもODAにおいてはむだ遣いが極めて多い。その上、ODAには質の高い人的資源やノーハウの提供が伴っていない。ODA予算の二〇から三〇%を大学振興、特に基礎研究の充実に充て、そのかわり開発途上国にその国が最も必要とする研究者や技術者を派遣する、あるいは逆に若い研究生を受け入れるなど、科学技術、学術の振興に役立てればODAの目的を立派に達成することになるという、そういう趣旨の文がありましたけれども、まさにそういう意味においては我が国が、ある意味においては日本の一時的には目前の犠牲のように見えるかもわからないけれども、そういう外国人留学生を受け入れて育ててあげるということが真の国際貢であるというふうにも私は思うのであります。  巷間、せっかく来巳しても、そして留学しても反日家にしてしまうというようなこともよく耳にいたしますけれども、確かにいろいろな条件を持って外国人留学生はいらっしゃるわけでありますし、また、さっきもちょっと触れられましたけれども、特に発展途上国においては一流の頭脳は欧米へ向かって、日本には二流、三流の人材しか来ていないというような悪口も耳にするわけでありますけれども、もしそうだとしても、来日する留学生というものは日本に御縁があって来たわけでありますし、あるいはまた見方を変えれば、日本から頭脳が海外に流出するのとは逆にそういう頭脳が我が国に来たわけでありますので、そういう頭脳を開発し、その可能性を育ててやろうという、そういうような懐の深い見方も大切ではなかろうかと思うのであります。  日本語という特異な語学の構造といいますか、そういう特異性あるいは生活しにくい生活環境等々、多くの障害があるのも現実でありますけれども、そのような悪条件の中においても、関係者の皆様の御努力によって外国人留学生に対する実績を示しつつあることも事実であると思います。文部省といたしましても、これらの国民的努力を育ててバックアップする立場から、さらなる誘導的施策を強力に推進していただきたいと心から願うものであります。大臣のおっしゃった心豊かな国際的なソフトパワーで予算獲得というハードパワーをクリアしていただきたい、こういうふうに思う次第でございます。  次に、留学生の受け入れ、留学生の日本における生活に関連して、二、三のことについて御教示をお願いしたいと思います。  留学生にとりまして、まず第一に大切なことは、あるいは日本において困難なことは、安心して住める宿舎の確保ということが大切な問題でありますけれども、特に東京などの首都圏あるいは大都市部の留学生にとっては最大の難問題でもあるわけでありまして、賃貸料が高いとか、敷金や権利金といった日本独特の経済慣行があるとか、あるいは特に開発途上国の方々に対する人種的な偏見等があるなどという問題があるわけでございます。  現在、国立大学においては留学生宿舎の建設が行われているわけでありますけれども、私立大学や公益法人等の設置する留学生宿舎の我が国における現状はどうなっておりますでしょうか、お示しをいただきたいと思います。
  125. 長谷川善一

    政府委員長谷川善一君) 先生指摘のとおり、留学生が充実した勉学生活を送るためには安定した生活基盤を確立するということは必要なことでございます。とりわけ、一般的に非常に厳しい住宅事情にあります我が国の特に大都市におきましては、留学生のための宿舎の確保というのが極めて重要な課題であると文部省でも認識しておるわけでございます。  先ほど先生指摘の一とおり、国立大学における宿舎につきましては、各大学に、十分ではございませんけれども、現在までのところ四十五の国立大学に五十二の留学生会館、あるいは名前は国際交流会館というような名前になっておるところもございますけれども、そういうものを措置いたしております。  特に、私立大学の学生等を対象とするものは、いろいろな留学生の援助団体によります留学生宿舎の整備を推進しようということで税制上の優遇措置を講ずる、あるいは公益法人の留学生宿舎の建設の促進、これを図ってまいっておるわけでございます。さらに近年、財団法人の内外学生センターが特に良質な民間の下宿あるいはアパートを確保するための指定宿舎の制度、あるいは財界の方でも留学生支援企業協力推進協会というのができまして、社員寮の提供事業を行っていただいておるわけでございますけれども、こういうものへの助成も行っております。  また、地方の公共団体が推進いたします留学生宿舎の建設に対しましても、財団法人日本国際教育協会、文部省関係の法人でございますけれども、ここを通じまして建設奨励金というような形で地方公共団体と一緒になって宿舎をふやしておるというような状況にございます。
  126. 針生雄吉

    ○針生雄吉君 特に、私学の留学生会館に対する国庫補助の強化を推進していただきたいと思うわけでありますけれども、留学生を擁するすべての私学に留学生会館の設置を義務づけるということはできないのかどうかということと、それから地方自治体などの公益法人が設置、運営する留学生会館についても、お話がありました税制上の優遇措置以外に国庫補助などの援助を加えることができないのか、その点についての見解を伺いたいと思います。    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕
  127. 長谷川善一

    政府委員長谷川善一君) 先生の御指摘の、留学生を受け入れる大学はすべて留学生のための宿舎を自分の大学のものとしてつくらなければならないということを義務づけるということになりますと、これはまた、そういう土地もない、宿舎を建てる財政的なゆとりもないというような大学、しかし留学生は受け入れてぜひ教育、研究の便を与えたいというような大学の意欲をそぐというようなことにもなりますし、そういうようなことを義務づけるということではなくて、国でいろんな形の援助を公益法人あるいは民間の団体等にいたしまして、そういったところの意欲を引き出していくというような形で留学生の宿舎の整備を図っていきたい。もちろん、私立大学に対しましても私どもの方から常にできるだけ宿舎の整備をお願いしたいということは申し上げておるわけでございます。  しかし、先生が御案内のとおり、特に大都市の大学におきましてはそういう学生用の宿舎というのを持つゆとりのないところが極めて多いわけでございまして、いろいろな形で今後とも宿舎の確保ということには全力を尽してまいりたいと思っております。税制上の優遇措置のほかにも、なお種々の助成金を出すとか、先ほど御説明いたしました建設奨励金などにつきましては地方の公共団体にも出したりいたしておりますし、今後ともそういった面での充実は第一の課題と我々考えておりますので、努力する所存でございます。    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕
  128. 針生雄吉

    ○針生雄吉君 宿舎の問題以外に、留学生の学費、生活費に対する支援施策についてお尋ねをいたします。  国費留学生、いわゆる文部省の奨学金留学生に対する学費、生活費の給付というのは、地方在住の留学生等に対しましてはむしろ多過ぎるのではないかという声も一部に聞かれるくらいでありますけれども、留学生の八割以上を占める私費留学生にとっては、まさに各種の支援制度、奨学事業というものが命の鋼となっておるわけであります。まず、私費留学生に対する奨学金制度の現状、特に日本育英会の留学生向けの奨学金はどうなっておりますでしょうか。
  129. 長谷川善一

    政府委員長谷川善一君) 我が国の大学等で学んでおります留学生のうち八五%が私費の留学生でございます。そのほかの留学生は、国費あるいはその国の政府から派遣されてきておる留学生でございますけれども、八五%は私費の留学生であるということにかんがみまして、学習奨励費、これは先生指摘日本育英会ではございませんで、日本国際教育協会というところを通じて私費の留学生に対しまして学習奨励費を出しておりますし、大学において授業料の減免措置がとれるような制度も設けております。また、優秀な私費留学生につきましては、大学の推薦を受けまして国費留学生へ採用がえをする、国費留学生として待遇するというような措置もやっております。  留学生予算の全体につきましては、平成三年度三百五億ということになっておりますけれども、これはODAの対象経費になっておりますので、対前年度二一%の増ということで毎年かなりのスピードで全体の額をふやしてまいっておるわけでございます。現在、そういった学習奨励費をもらっております学生は五千人でございます。  それから、地方公共団体やあるいは民間の奨学金をもらっております学生が合計五千三百でございます。それから、私立大学、国立大学もそうでございますが、大学等が基金を持ってそういった私費留学生に援助をいたしておるわけでございますが、これが二千二百五十、授業料の減免措置を受けております者は一万三千百というような数になっております。  いずれにいたしましても、近年、大変にありがたいことに各方面からこういった留学生の問題について御理解をいただいておりまして、民間の方も地方公共団体の方も、奨学金の問題につきましては、それぞれ毎年相当な勢いでふやしてきていただいておるわけでございます。まだもちろん十分ではございませんけれども、さらに努力をしなければならないだろうと考えております。
  130. 針生雄吉

    ○針生雄吉君 相当な勢いで奨学金の方がふえても、相当な勢いで外国人留学生もふえるわけでございますので、その点もなお誘導政策に力を入れていただきたいと思います。  なお、この際、学費に関連いたしまして、我が公明党が、留学生の入学金、授業料の納付期限を毎年の三月末とするように提案しておりますけれども、そのような推進方もお願いしたいことを申し添えておきます。  次に、留学生のアルバイト問題についてお尋ねをいたします。国費留学生よりも私費留学生の場合の方が深刻化していると思いますけれども、留学生のうち一体何%が、あるいはどんな職種で何時間ぐらいアルバイトに従事しているか、あるいはどれくらい収入を得ているかというような実態調査をおやりになっておりますでしょうか、データはありますでしょうか。
  131. 長谷川善一

    政府委員長谷川善一君) 御指摘の留学生のアルバイトでございますが、アルバイトを希望する場合には、そういったアルバイトをするという申請をして、それを認められるというような措置が必要なわけでございます。  現在そういった学生は、一日に四時間以内アルバイトを認めるというようなことになっておるわけでございますけれども、そういった実態がどうかということでございます。大変に申しわけないのでございますが、実情の把握を現在はいたしておりません。財団法人の日本国際教育協会を通じまして留学生の生活状況の実態調査というのを現在実施中でございます。これは私費の留学生への援助の施策をさらに充実するということを目的といたしまして、どういうような状況かという実態調査を実施いたしておる最中でございます。その中に当然アルバイトに関する調査項目も含めておりまして、これは十月の末で一応の郵送によるアンケート調査を終了しておりますので、結果をただいま分析中でございます。
  132. 針生雄吉

    ○針生雄吉君 また、法務省との関係もあるかと思いますけれども、資格外就労の実態調査どもぜひ進めていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、留学生に対していろいろな施策が実施されているのは、当局の御説明を聞くとよくわかりますけれども、そういったいろいろな留学生に対する施策というものがどういう形でどこが扱っているのかというような問題がよく留学生にも、あるいは留学生を扱っている大学当局にも、あるいは留学生をお世話しているボランティア的な民間の方々にも、どこに行けばどういう情報が得られるかというようなこととか、あるいは現場にはこういった問題がある、特別な例かもわからないけれども、こういう問題で困っているというような、そういう留学生問題に対する不満というものもいろいろあるわけでございますけれども、そういった窓口となるような、いろいろな情報を提供する、あるいは現場の皆さん方の、留学生の皆さん方からの意見を聞くというような、御注文を承るというようなそういう窓口を、文部省が中心となって外務省や労働省なんかとも協力しながらつくっていったらいいんじゃないか。いわば総合的な留学生対策委員会みたいなものを設置したらどうかと思いますけれども、これは素人の思いつきのアイデアでございますけれども、いかがでございましょうか。
  133. 長谷川善一

    政府委員長谷川善一君) 留学生に対しましていろいろな情報を提供するということを目的としておりますセンターは、日本国際教育協会の中に留学情報センターというのを設けておりまして、ここに相談員も置いております。これは入ってくる学生、それから外国からの問い合わせも相当ございまして、年々非常にこれはウナギ登りにふえておるわけでございますが、国内におります留学生がどういうような便宜を受けることができるか、どこ犯行けばどういうような勉学ができるかというような情報も含めて、留学情報センターで主に扱っておるわけでございます。もちうん、各大学の学生部におきましても留学生に対します特別の係員を置いております。そういうようなことで、それぞれの留学生にいろいろおサービスはいたしておるわけでございます。  それから、各省といいますか、文部省だけではこれは到底対応できない問題でもございます。昭和六十三年度に法務大臣、外務大臣、大蔵大臣文部大臣等々、関係の十人の大臣から成ります留学生等の交流推進に関する閣僚懇談会というのを設けておりまして、これで各省庁のトップが集まりまして相談ができる体制になっております。それから、留学生の選考委員会にも、当然のことながら外務省、法務省等々の関係官の参加も得ておりまして、関係省庁との連携、協力という点については十分にやっておると思っております。  各都道府県におきまして、近年、その地域の大学、あるいは公共団体、あるいは経済団体、ボランティア団体などが官民一体となりまして、留学生交流推進会議というのを各県ごとに設置をいたしております。これは地域における留学生の受け入れにつきましていろいろな情報交換が十分にできるようにということで、留学生受け入れに大きい役割を果たしておるものでございまして、文部省としてもこれを奨励いたしておるわけでございます。  今後とも留学生施策の検討あるいは施策の実施に当たりましては、当然のことながら、関係機関あるいは関係者の意見も踏まえながら、連携をうまく図りながら推進してまいりたいと思っております。
  134. 針生雄吉

    ○針生雄吉君 大臣の御所見にもありましたように、品格ある文化大国としての日本国際社会において貢献できる日本として押し上げるためにも、外国人留学生問題というのは大変重大な柱でございますので、なお一層の御努力をお願いしたいと思います。  次に、大臣にお伺いをいたしますけれども、来年度予算編成をめぐって、いわゆる大臣のお言葉であればジャブが飛んでおるわけでありますが、それに関しまして大臣の御決意お願いしたいと思います。  最近の報道によりますと、義務教育教科書の有償化であるとか米飯学校給食補助金の廃止というような報道があるようでございますけれども、まず義務教育教科書無償制についてでありますけれども、これは憲法二十六条を引き合いに出すまでもなく、まさに憲法の規定の具体的実践、具現化でありまして、憲法を守るべき国としては当然の義務、であると思います。我が党といたしましても、絶対に今後ともこの教科書無償制度の存続を主張するものであります。第一は、この点についての大臣の御所見。  次に、大蔵省が米飯学校給食補助金の廃止の方向で農水省と調整に入ったという報道がございますけれども、このことにつきましても、米飯というものは医学的にもあるいは栄養学的にもすぐれた日本型食生活の普及という点で非常に大切なことでありますし、また米の消費拡大という観点からも努力をし、また学校給食にほぼ定着したどころであるわけであります。私も、超党派で形成されている米消費拡大・純水酒推進議員連盟という事務局の一員として普及に努めてきたわけでありますけれども、この補助金のカットということについても承服できないと思います。  この二つの動きに対する大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  135. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 義務教育教科書の無償は今後とも堅持をいたしたいと決意をいたしておりまして、これは先ほどから申し上げましたように一種のジャブでございまして、まだ私どものところに財政当局から、一こういうふうにしたいがどうだというような意見の申し出のようなものは一切なされておらないわけですから、ですからジャブと、こういうふうに申し上げているわけであります。  これは、先生が今御質問の中でおっしゃったとおりで、憲法二十六条の問題でもある。義務教育無償というその憲法の条文に照らしても、教科書はただでなければいけない。ただ、私はそれだけでなしに、今平均で小学生で二千六百円ほど、中学生で三千八百円ほどと言われています。それこそ私が小学生であった今から三十年以上も前は教科書無償は制度としてなかったわけですが、教科書代というものが家計を圧迫するというような話はまだよく聞かれる時代でありました。要するに、教科書を買うことができない、そういう所得の少ない方がおられたわけであります。今でもそれはゼロではないかもしれないけれども、この小学生で二千六百円、中学生で三千八百円、義務教育無償の予算は全部で四百三十億ぐらいではないかと思うわけで、トータルとしては四百三十億。決して少ない額ではありませんが、家計にどう響くかという問題ではない、だから有償化してもいいじゃないかという非常に稚拙な議論をたまに耳にすることがある。  そうじゃない。金額的に幾ら安いものでも、それを国がくれる、国家教育というものは大切だといって教科書を義務教育だからくれるんだ、あるいは憲法にそう書いてあるからくれるんだというのが小学生や中学生にとってはどれほど教育的効果を持っているか、国家というものを理解する、教育の重要性というものを理解する、あるいは場合によっては租税というものだって理解するかもしれない。子供が物を買っても消費税は取られるわけですから、子供も消費税は払っているという意識はある。しかし、税金が戻ってきているという意識子供にはなかなか持ち得る機会がない。つまり、国家というものと子供との出会いというのはなかなかないんですね。だからこそ、私どもは国旗とか国家は大切にしようとも申し上げているわけですけれども、その義務教育教科書をただで国からいただくというのは青少年と国家との貴重な出会いではないだろうか。それが、ちょっと無理な理論かもしれないけれども、租税というものを教える教育的効果すらあるのではないだろうか、そんなふうに思っておりますから、これは堅持でございまして、諸先生方の応援もよろしくお願いをしたいと思っております。  米飯給食のことも、これは私どもは何も承っておりません。すなわち、財政当局からも、あるいは農林水産省からも、食糧庁からも何も承っておりません。ただ、米飯給食というものは非常に日本人に合ったものだと思いますし、しかもこれは回数を多くすれば値引き率を高くしてあげる、二回に一回以上米飯給食をやると六割引きぐらいで売ってくれるというようなそういう補助システムであろうと思っております。そういうシステムをつくって、これを受け入れていく自治体の方では、それでは御飯を炊くおかまをどうしようとか、皆さん相当な苦労をして手配をした、そうしたら米の値引きはやめるというのではこれは話の筋が違う。しかも、保護者の給食費の負担の問題にもはね返ってくる。こういうことで、まだ承知をいたしておりませんから、こちらから申し入れに行くつもりは全くありませんが、このいわゆる補助金というよりも学校給食用米穀の値引き措置を存続してもらえるように努力をしたいと思っております。
  136. 針生雄吉

    ○針生雄吉君 大変ありがとうございました。
  137. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 最初に大学問題についてお尋ねいたします。  大学の危機的な財政状況、劣悪な研究、教育条件を訴える深刻な声が広がる中で、私ども共産党の国会調査団はこの六月から十月まで全国十二の国立大学と二つの私立大学の実態調査を行いました。調査に入ったどこの大学でも研究費不足や建物の老朽化の問題、狭隘な研究室の実態等が出されました。東大の有馬学長とも直接懇談いたしましたが、学長は、私どもは貧しいけれども頑張っています、貸すれば銘するという言葉があるけれども、私たちは貧しても鈍しないと、強い決意も話されて、そのもとで大変な涙ぐましい努力をしている姿に研究、教育にかける情熱を感じ、感銘を受けて帰ってまいりました。この間の調査した実態の中で、私は北海道のすべての国立大学を調査いたしましたけれども、その実例を少し御紹介したいと思います。  北大の農学部では、研究室の温室が老朽化して、空調設備が壊れてしまった。石油ストーブでこの冬を越すけれども、来年の夏は冷房をどうしようかと、全く見通しが持てなくて困っている。北海道教育大学札幌分校では、年間の研究費は二十五万円余りだが、種や肥料代だけで毎年八月にはなくなってしまう。その後、翌年の三月までこれからは冬眠だと。あるいは、小樽商科大学は、文科系にとっては図書が今、四十万円の予算の倍は欲しい。ボーナスのツケ買いで本を買っているけれども、暮れのボーナスで全額払えなくて、大体二十万円ぐらい払って、そして次のボーナスに回して払っている。あるいは、室蘭工業大学では、実験器具が買えないので代用品として重宝しているのがノリやお茶の缶である。実際見てきましたけれども、研究室にたくさんありました。ほかの大学でも、インスタントコーヒーの弧とか缶が本当にうまく使われておりました。帯広畜産大学では、築二十年以上の施設、建物が全体の五八%も占め、老朽化が顕著に見られた。研究に必要な機器の買いかえができずに三十年前のものをいまだに使用している。北見工業大学でも、そういう状態の中で、故障したら機器が古過ぎでその部品がない。部品を探すのに必死で、何とかかんとか間に合わせているなどなど、大学が財政、施設、そして設備、人員など、すべての面で危機的な状況にあるということを痛感してまいりました。  私どもの国会議員団は、この実態調査を受けて、八月二十七日には井上文部大臣に高等教育予算の抜本的増額を要求する申し入れも行ってまいりましたし、井上文部大臣は全国の十大学を回っていただいたという御努力もしていただきました。私の母校である北大にも来ていただきまして、この間、廣重学長とも私は懇談してまいりましたが、大臣が北大に来られたのは三十五年ぶりということで大変喜んでもおられました。  文部省教育白書でも、「特に、大学等における基盤的研究費や施設設備費の不足が指摘されている。」「こうした大学の研究環境の低下は、今後の学術研究水準の低下をもたらすものとして大学の研究者の間で危機感をもって受け止められている。また、学術研究が経済社会発展の基盤であるとの見地から、将来の我が国社会全体の活力の低下、ひいては、我が国の国力の衰退を招くとの懸念が生じている。」と、こう端的に述べているわけで、具体的に研究費不足、研究室の狭隘化、老朽化について触れています。  そこで最初に、大臣自身、大学の置かれているこのような危機の状況についての御認識はお持ちだと思いますけれども、なぜ国立大学がこのような危機的な状況に立ち至ったのか、その原因をどのようにお考えなのかをお伺いしたいと思います。
  138. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 先生基本的な御認識、お話、個々の具体例は、私自身が見たわけではありませんけれども、今、高等教育機関たる大学の置かれている危機的な状況については私も十二分に認識を新たにさせていただいているつもりでございます。まだ視察も行く余裕がありませんけれども、視察も行かなければならないと思っております。  教育の問題については、それは高校生段階でのいわゆる中退の問題とか、また義務教育段階での学習指導要領の改訂とかいろいろありますけれども、高等教育のまさに危機的な状況ということについては国立、私立を問わない問題だろう。国立の方々ももういよいよ立ち上がっていろいろと要望に多かれるようになって、そうした御要望もいただいておりますし、新しい構想等も文部省で考えておるものについては政府委員の方からお答えをいたしたいと思います。  要するに、先ほど留学生問題でも申し上げたように、大学の施設設備が、これはもう原因というのは、教育は金なりではありませんが、しかし金、がなければやっぱり教育の設備はつくることができないという、人件費ばかりで物件費が二一・五%しかないというような予算の枠組みの中で、こういう国立学校特別会計も非常に厳しい運営を余儀なくされて今日の事態に立ち至ったというのが実態だろう。そして、先生が今御報告をしていただいたような状態にあるということも私は十二分に理解をいたしているところでございます。  そして、そういうような状況にありますと、留学生がやってきても、何だこの教育環境は、アメリカヘ行けばよかった、ヨーロッパヘ行けばよかったとその留学生が思ったとしたら、これはまことに情けない状態になってしまう。  そしてまた、大学院レベルのことを考えてみれば、各国立大学の大学院は修士課程は定員を大幅に上回る人が集まっている。しかし、これが博士課程になりますと、とりわけ工学系は定員充足率が六割とか七割というような数字になってしまう。それは恐らく、私の推定ですけれども、工学系ですと、これは応用工学のようなものであるならば、企業がいらっしゃいいらっしゃいと言えば、企業の方がはるかに条件がいいし設備もいい、だから国立大学の博士課程の定員が充足できないで三割も四割も未充足のまま置かれているという、まさに理工系離れみたいな現象さえ起きておる。そういう状況がこれから続けば、ますます日本の基礎科学は一体どうなっているのかという議論にもつながっていく。  日本人はカレーとうどんを結びつけてカレーうどんをつくるという能力はあるけれども、カレーを発明する能力がないうどんをつくってみる能力がないという、これは私がつくった例えですが、カレーうどんを考える人も偉いけれども、やはりカレーやうどんという基礎科学をきちんとやって、世界から尊敬されるようなそういう高等教育にするために我々は全力を尽くしていきたい。長くて済みません。
  139. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 済みません、少数会派で時間がございませんので……。  原因は、臨調・行革とそれによるマイナスシーリングで基準的な教育研究経費である積算校費、教官研究旅費がほとんどふえないという問題、教官当たりの積算校費は十年前と比べてマイナス、学生当たりでもわずか百円しかふえていない。物価上昇を考えればもう大幅削減、施設整備費も七九年では千五百四十六億が、今年度で八百九十八億と、もう大学人は予算の抜本的増額が必要だと切実に要望しています。  来年度の概算要求を見ますと、老朽化解消予算として特別に百五十億円を計上されるということで、これは若干の前進だというふうに思いますけれども、まだまだ不十分。積算校費はわずか一・一%の伸び、研究旅費は前年同額、施設整備費も全体としてわずか百二十四億円の微増ということ、それから私立大学は、後で触れますが、四十四億円の増ということで、これでは大臣は抜本的に改善ということで力を込めておっしゃっていただきましたが、どうしてもシーリング枠を取り払う、そういう努力をしていただかなければ抜本的な改善ということはできないと思うのですが、そのための努力を文部省はすべきですが、局長、いかがでしょうか。
  140. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) ただいま御指摘のシーリングの問題は、これは政府全体の問題でございますし、また御指摘のことは重々ごもっともではございますが、他方では国民一般が小さな政府、そして小さな財政ということを望んでおいでになる。このはざまで私どもも大変苦労しておるし、いろんな御指摘をちょうだいしておるということではないかと思います。御指摘もございましたけれども大臣からもお話を申し上げさせていただきましたが、今後は大学院に重点を置いて、そして重点的な整備を図っていきたい、財源の効率的な活用ということを目指すというのを一つ考えて潜ります。  また、もう一つは、これも臨教審等での指摘もいただいておりますが、国立学校の資産の有効活用、それによって何がしかの資金を得て、そしてそれを大学の教育研究環境等の整備に充てるという方策を検討いたしておるところでございます。
  141. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 それでは、次に具体的な問題について幾つか質問したいと思いますが、去る十月二日に大阪大学の基礎工学部で爆発事故が起こり、人生これからという二人の学生、院生のとうとい命が奪われました。私も党の国会調査団の一人として十月十五日に現地にお邪魔をして、学部長さんや死亡した学生の担当の教官の方からも事情を伺ってまいりました。爆発現場も見せていただきました。現場は、事故から十日以上もたっているのにまた赤茶けて刺激臭が残っている。もうそこに行っただけでのども頭も痛くなった。現実に私も痛くなりました。爆風により原形を残さないほど曲りくねった各種の実験装置や倒壊したロッカーなどが散乱して爆発のすさまじさを物語っておりました。  そこで、時間の関係もございますので、二点についてお尋ねいたします。  一つは、狭く劣悪な研究室の中で、高圧ガスなどの危険物の密集状態で実験を行わざるを得ないという問題です。事故が起こった大阪大学の実験室は、七・二メートル四方の部屋をベニヤで三つに仕切っており、そこにシラン、酸素、窒素など十数本のボンベや薬品などの危険物が所狭しと置かれている、廊下にも窒素やアルゴンなどのボンベが置いてあるという状況だったといいます。こういう状況は阪大だけではなく、全国どこの大学でも共通した問題で、今回のような事故はいつどこの大学で起きても不思議はないということなんです。  そこで、高圧ガスなどの危険物については建物を別にして保管するようにするなどの対策を緊急にとることが求められているのですが、このことについて検討するお考えがあるのか。  それからもう一つは、どこの大学でも危険物の取り扱いに対応して、豊富な経験と技術を持った実験を補佐する技官と呼ばれている大学の技術系職員が足りない、どんどん減らされているという問題です、今回事故が起こった研究室も、八四年に技官が退職したまま補充されていません。この基礎工学部全体でも、一九七一年から九〇年までに講座は七つふえているのに技官は十二名削減されている。その結果、七一年には一講座当たり一・一四人の技官が、九〇年では一講座当たり〇・八二人で、技官が一人もいない研究室がふえています。この問題について、国立八大学工学部長懇談会がこの三月にまとめた「未来を開く工学教育」の中でも、技官の仕事の重要性、学生等の安全管理を挙げて、「人命尊重の時代である以上、職員、学生の安全管理は極めて重要である」「高度な教育・研究を実行するにはますます危険物取り扱い、あるいは危険な実験装置を使う頻度がふえてくる。責任ある行動ができ、かつそれを裏づける職務使命を与えられた大学職員でなければ、この安全管理はほとんど不可能といってよいのではなかろうか」、こう指摘しています。せめて技官が一人もいないというような講座を解消すべきだと思うのですけれども、この二点についていかがでしょうか。
  142. 野崎弘

    政府委員野崎弘君) まず、一番初めの高圧ガスにつきまして私の方からお答えをさせていただきたいと思います。  この高圧ガスを使用します実験につきまして、これを安全かつ機能的に進めるためにどのような施設の整備をするかということにつきましては、専門的なあるいは技術的観点からの検討が必要かと思うわけでございます。現在、今回ございましてシランガスにつきましては特定高圧ガスにまだ指定をされていない。そして、今回の事故を契機にこれを特定高圧ガスに指定しようということも検討されておるわけでございます。  そのような検討の状況、あるいは現在事故原因の調査をしているわけでございますので、そういう事故原因の調査結果等を踏まえまして再発防止対策全体の中で検討を進めてまいりたいと思って」おります。
  143. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 技術系職員のことについてお答えをさせていただきます。  御指摘のように、技術系職員というのが定員削減であったり、あるいはシーリングとも関係をいたしますが、定員要求にもシーリングがございますものですから、大学側としては新しいことをやろうとするときには教官の増員に力が注がれて、どうしても技術系職員までは手が回らないという状況があるわけであります。私どもとしては、学科の新設であるとかそういうときにはきちんと技術系職員まで配置をするように努力いたしておりますけれども、全体的に見ますと教官はふえているけれども行(一)、行(二)というところの技術系職員は減っている、こういう状況がございます。  各大学の気持ちもわかりますが、何分現在の財政状況の中における定員削減あるいは定員要求のシーリング制ということを考えますと、各大学における定員配置の効率化ということを求めながら努力してまいりたい、このように考えております。
  144. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 阪大の事故の原因の徹底究明と安全対策について強力な指導をぜひ求めたいのと、技官の問題については消極的な答弁で大変残念ですけれども、北見工大でも、大学衰退の原因が教官の削減だと、これ以上の削減は本当にもう御免だと、あるいは教育大学でも、もう減らす穴なんかない一人欠けても困るという本当に切実な声が出ておりますので、第八次定員削減に関連しても、文部省としてはこれらの要望を受けて積極的に対応していただきたいという要望を述べて、次の質問に移りたいと思います。  国立大学も大変だけれども、私立大学も大変だと先ほど大臣も言われました。専任教員一人当たりの学生数が国立の二一・八倍、専任教員一人当たりの研究面積が国立の六割、学生一人当たりの教育費が国立の半分以下というのが私学の現状です。札幌大学では、父母の平均収入が六百万円だが、初年度の学生納付金が八十五万五千円、私学助成は経常費の一五・七%で、私学振興財団からの借入残高は二十五億円になっている、私学助成を何としてもふやしてほしいという切実な声もありました。大学もそうですが、高校以下の私学助成についても三月に質問しましたが、同様に大変です。  ところで、一昨日の日経新聞で、大蔵省が、私学助成一〇%削減、そして私立高校などへの補助も段階的に廃止するという報道がありました。大臣にぜひお聞きしたいのですけれども私学助成は経常費の二分の一ところか一五%を割っている現状、私学振興助成法制定以前の状態まで落ち込んでいる中で、削減どころか大幅増が求められているわけで、大蔵省の不当な、不当なとあえて言いたいですが、この言い分をはねのけて予算増額のためにもぜひ頑張っていただきたいと思いますので、大臣決意のほどを頑張るという端的なお言葉お願いいたします。
  145. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 私もこの新聞報道を見て驚きまして、「大蔵省は、私立学校の経常的経費にはまだムダがあるとみておりこと、こういう認識がもしあるとすれば、二九・五%の助成率だったものが、先生は一五%とおっしゃったけれども、午前中申し上げたように今二二%台。あと三年ぐらいたつと一〇%ぐらいに近づくという、こういう私学振興助成法あるいは参議院の決議と全くかけ離れた状態にありながら、まだむだがあるからなどというような認識をされているとしたら、私は大蔵官僚の息子ですけれども、大変残念な思いがいたすわけで、大蔵省の正しい理解を求めていきたいと思います。ですから、私学助成は頑張ります。
  146. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 大変心強いお言葉、期待をしております。  さて、年末の予算編成期を迎えて重要な問題がたくさんあるんですけれども、とりわけ重要な問題として針生委員から出されました教科書有償化の問題ですが、義務教育の無償というのは憲法の大原則ですし、教育の機会均等という点でもこれはもう全く譲れない問題で、これに毅然たる態度をとられる、堅持したいということですので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  それから、これは要望ですが、国立大学の授業料の問題です。大蔵省は、来年度国立大学の授業料を最低でも年間三万六千円引き上げる、また、文科系と理科系など学部の授業料に格差をつける学部別授業料制を導入するとしているわけです。私も既に羽田大蔵大臣に直接お目にかかって申し入れもしてまいりましたけれども文部省としては当然こういう授業料の値上げには反対していただきたい、そう思いますが、いかがでしょうか。
  147. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 御案内のとおり、国立大学の授業料あるいは入学料といったものにつきましては、各方面の御意見をいただきながら、このところいわば隔年に値上げを、改定をいたしてきております。そういうこれまでのいわば慣行的に確立されておる仕組みからいたしますと、この平成四年度の予算編成に当たっては、五年度からの授業料値上げということが当然具体の課題になるわけであります。  私どもとしては、大変大事な問題でございますので慎重に対処をいたしたいと思いますが、一方で国立学校特別会計にいろんな財政上の問題がありまして、歳入を確保しなければならないという課題もあります。また、各方面から指摘をされております私学との均衡という問題もあります。それらを総合的に勘案をいたしまして適切に対処をいたしたい、このように考えております。
  148. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 次に、国立大学の附属病院の問題、とりわけ一刻も猶予できない看護婦不足の問題について伺います。  文部省の来年度の看護婦定員の増員要求は百三十五人と聞いていますが、これは看護婦不足が深刻化して社会問題となっているという中では極めて不十分なわけです。例えば北海道大学医学部の附属の病院では、夜勤の回数が月九回以上が五五%を占めており、中には十四回、十五回というところもあり、患者に点滴していて自分の方が目まいを起こしたこともある、余りの忙しさに自分自身が過労死するのではないかと思ったなどの深刻な状況になっています。  全国国立大学病院長会議は、三年前の昭和六十三年に全国で三千三百七十人の看護婦が不足しているということを明らかにしましたが、これを踏まえて文部省にも要望しています。これから見ても百三十五人というのはいかにも不十分ということで、北大だけとっても百人の増員が必要だと言われているわけで、なぜもっと大幅増員を要求しないのでしょうか。また、文部省としても看護婦不足について実態調査をされて、大学病院における需給計画を立てるべきではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  149. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 御指摘のように、平成四年度の概算要求では国立大学附属病院における看護婦は百三十五人の増員要求をいたしております。これも、昭和六十二年度、六十三年度あたりは、六十二年度が八十七人の要求、六十三年度が百八人の要求、元年度が九十七人の要求、こういう数字から見ますと私どもとしては非常に力を入れて増員要求をしておるつもりであります。先ほども申し上げましたように、定員要求につきましてもシーリングの仕組みがとられておりますので、これが私どもとしては最大の努力であった、このように考えておるところであります。  なお、看護婦の必要数をどのようにして把握するかということも大変難しい問題でありますが、私どもとしては当面週四十時間制の実施ということを目途に置いて増員要求を行っているところでございます。
  150. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 これは大変重要な問題ですので、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。次に、国立大学病院では救急部やICU、集中治療室、それから輸血部などの中央診療施設の多くが院内施設となっています。  私は、八月に旭川医大にお邪魔しましたが、ここのICUも院内施設扱いで、看護婦不足のしわ寄せを受けていて、この四月から七月上旬まで三カ月間、一時閉鎖という大変な状態になりました。救急部やICUが地域住民の医療に果たす重要な役割は言うまでも狂いわけですが、とりわけ救急部については大学自身も強く要望していることですし、全国では未設置の大学がもう三というふうに伺っております。旭川医大というのは、道北地方においてこの病院はそのセンター的な役割を果たしているという重要性からいっても、ぜひ来年救急部を設置していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。  また、看護婦が働き続ける上から、給与とか勤務条件を改善するという問題とあわせて院内保育所の問題も重要なんですが、旭川医大には院内保育所が実はないんですね。旭川医大としても設置したいというふうに検討しているわけですが、院内保育所ができれば、文部省、国としてはきちんと補助をしていただけるわけですね。この点はいかがでしょうか。
  151. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 救急部をつくりますと、私どもの方では予算上は医師、それから医療職、看護婦合わせて十一人の定員措置をするということに原則的にはなっております。したがって、先ほども申し上げましたように、厳しい定員要求のシーリングということを考えますとなかなか設置が進まないで、御指摘のように国の予算措置がないいわば院内措置として行われているという状況があることも承知をしておるところであります。  救急部につきましては、これは医師養成という観点からも、また地域の医療という観点からも大変重要な問題でありますので、御指摘のように既に四十二大学中三十九大学には措置をしてまいっております。今後とも旭川医科大学の問題も含めて検討をさせていただきたいと思います。  また、院内保育所の問題でございますが、これも御指摘のように、看護婦の不足というのは一つには、御案内のことと思いますが、採用する看護婦とやめていく看護婦のいわばそのバランスが欠けておるということも言われております。どんどん養成し採用してもどんどんやめていく、そのためには勤務条件を改善するというのが一つの大きな手だてでありますので、私どもとしてはそれぞれの病院の看護婦等の要請があれば、適切に対応していくという基本的な考え方ております。
  152. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 最後に、文部省と人事院にお尋ねしますが、ことしの四月に取り上げた国家公務員の点字試験についてでございます。  今年度から実施された国家公務員採用試験の点字による試験の応募者が八名、受験者が五名、しかし合格者はゼロでした。点字を読む触読は活字を読むのに比べて時間がかかるというハンディがあるため、司法試験、大学入試センター、大学などではいずれも解答時間を一般の一・五倍にしているのに、国家公務員の採用試験では三分の四、一・三三倍ということを問題にいたしました。今回の点字試験の結果を見て感ずるのは、せっかく門戸を開いたのですから、やっぱり受験しやすい、試験が一般の人と比べてハンディにならないような、障害者の立場に立った一層きめ細かい配慮が必要だということなんです。  そこで、きょうは点字タイプライターと点字ワープロの持ち込みについて伺いますが、入試センター、国立大学の点字試験ては点字タイプライターの持ち込みが認められています。それから、国家公務員試験でも点字タイプライターの持ち込みが認められました。しかし、どちらも点字ワープロの点についてはまだ例がないということで認められていないわけですけれども、持ち込みを受験者が希望した場合に、点字ワープロを使わせるということを検討していただけるかどうか、最初文部省にお尋ねして、次に人事院にお答えいただきます。
  153. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 大変申しわけありませんが、点字ワープロについての持ち込みについてまだ私どもは照会を得ていないというふうに承知をいたしております。  ただ、お考えいただきたいことは、御案内のとおり、ワープロとタイプライターと比較いたしますと、ワープロの場合にはいろんな付加機能がついている。記憶機能であるとか、あるいは計算機能であるとか、そういった付加機能がついている。付加機能がついているものを試験に使った場合にどういうふうな問題が起こるか。仮に、ワープロを使った方がタイプを使うよりも有利になるというような問題が起こった場合に、このワープロというのはかなり高価なものでありますから、やはり問題があるんではなかろうか。  そこで、せっかくの御指摘でございますので、私どもとしては、入試センターにもそういったハンディキャップのある方たちの受験について検討する委員会もございますので、そういった専門家の方々意見を伺いまして、どういうふうな条件を考えればワープロの使用を認めていいことになるだろうかということを検討させていただきまして考えていきたい、このように思っております。
  154. 吉川共治

    政府委員(吉川共治君) 人事院の公務員試験に点字ワープロをどうかということでございますけれども、今、文部省の方からお話ございましたように、ワープロにつきましては付加機能がございます。例えば、編集機能がございます。これは文書の入れかえを簡単にできるということでございます。一般のほかの受験生につきましては、鉛筆と消しゴムを使って消して書き直す、こういうことになりますから、ワープロ使用を認めることになりますと圧倒的に有利になるということで、やはりそれはワープロを使わない他の受験生との間で公平を欠くんではないかということで、私どもといたしましてもその使用はちょっと無理であろうなというふうに思っております。
  155. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 時間がありませんので、これで終わります。技術的なことは、ハンディをなくすという障害者の立場に立って検討すれば解決できる問題かと思いますので、ぜひ前向きに検討されることを強く要望いたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  156. 池田治

    池田治君 最後の一人でございますので、大臣、よろしくお願いいたします。  高崎委員に引き続きまして、大学の研究費についてお尋ねをしたいと思いますが、我が国の大学の研究費というのは総合計で一兆六百億、アメリカでは三兆八千九百億、ドイツが七千二百億となっておっで、世界第二位の地位に置かれておりますが、研究者一人当たりの研究費は一千五百四十万円、アメリカでは三千八十万、ドイツでも一千九百七十万となっており、我が国は先進国の中で極めて下位の部に属しております。また、GNPに対比すると〇・三%、アメリカでは〇・四%、ドイツでも〇・四一%、これも先進国では最低の方でございまして、教育こそ人づくり国づくり基本であると言われる新大臣でございますので、よくおわかりのことと思いますが、この教育の中には学術研究も当然含まれておることと思いますので、ひとつこういった大学の教育費が諸外国と比べて劣っておる、今後どうすべきかということについて大臣の御所見をお伺いいたします。
  157. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 先ほど高等教育の問題についていろいろ長過ぎる答弁をしてしまいましたが、高等教育の問題を考える場合に、多方面ありますが、少なくとも二つの側面があるだろう。それは、いわゆる施設その他の老朽化という部分であります。この問題については先ほどお話ししたとおりでありますが、もう一つは、もちろんこれと表裏一体でございますが、実際に研究費として使えるお金が余りに少ない。科研費は増額を大蔵省にお願いしておりますのもそういう趣旨からであります。  私がこの間見ました資料にこういうのがありました。これは先生がごらんになっている資料とちょっと違うかもしれませんが、いわゆる日本の開発研究費のようなものを公費で負担している部分、国が負担しているものがまだ総額で一兆円にいかないだろう、九千何百億というオーダーではないだろうか。その半分弱が文部省関係ということになるだろうか、あるいはその残りの半分が科学技術庁だろうか、また、その最後に残った半分ぐらいが通産省、あとはその他ということだろうかというような円グラフを見たことがあります。それが結局、恐らくGNP比率でいうと〇・五はいかない、〇・四五%とか、そういう数字ではないか。  そんなことを考えますと、諸外国は大体これは一%ぐらいは国費負担か公費負担部分か、そういうような形になっているということを考えますと、まあ我が国国家予算がどういう状態にあるかということは十二分に御理解いただけるところでございまして、私どももこういう現状を変えて基礎科学をきちんと発展させて、そういう日本の科学技術力あるいは基礎科学の力を信じて外国からお客様が留学生としても研究者としても見える、そういうふうに一日も早くいたしませんと本当の品格ある国家はできない、こういうふうに考えております。
  158. 池田治

    池田治君 大臣も私も認識は同じようなところだと思って安心をしておりますが、ただ、大臣も昔読んだ本を言われましたので、数字が定かでなかったように思いますが、一兆円というのは文部省だけの予算でございまして、科学技術予算文部省分が一兆円、正確には九千三百六十三億円、こうなっております。  そこで、まとめて言いますと、我が国全体の研究費はアメリカに次いで世界二位、これで全体は文部省も科学技術庁も農水省も防衛庁も通産省も入れまして十一兆八千二百億というようになっております。しかし、公的負担、つまり国や地方公共団体が予算づけをしているのはわずか一八%、こういうことでございまして、民間に比べて国家や公共団体がいかに学術研究について疎いかということを証明しております。GNP比にしましても〇・五四ということでございまして、アメリカと比べてこれも劣っております。この公的負担が少ないというのは、結局やはり政治家が今まで何をしていたかということにもつながると思うんです。これは新大臣に言っているわけじゃございませんけれども日本の政治家はやっぱり科学技術について疎い、関心が薄いと言われても仕方がないんじゃないでしょうか。  文部省は、「我が国の文教施策」という平成三年度の文部省発行の本に対して、その表紙に「世界に貢献する学術研究」と大きな字を書いております。ところが、世界の先進国の中では最低の公的負担しかしていないというのが現状でございまして、大臣就任早々でございますので、よくこのことも頭に入れていただきまして、今度の予算折衝にはひとつ臨んでいただきたい。  先ほど高崎委員の質問で、局長は、シーリングがあってどうにもならぬというようなことを言われておりましたが、このシーリングも確かに国家全体の予算の中では必要な杯かもしれませんけれども学術研究というのは、国際貢献は今からますますやっていかなければいけない。特に先端技術の発達によりまして高度な技術化した時代がやってまいりますので、このことは今から研究しておかなければ、将来になって、今は科学水準は高いですけれども、将来途上国に追い抜かれてしまう、こういうことも容易に考えられるわけでございますので、このシーリングを外して、研究開発費は別枠だというようにひとつ御努力をお願いしたいと思います。
  159. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 失礼をいたしました。先ほどの私の数字は間違いでございまして、一兆円にいってないというのは、私は文部省分九千三百六十三億、科学技術庁五千二百二十六億、通産省二千五百五十九億と、こういう数字、総額二兆強という数字のことでございまして訂正をさせていただきます。  私が冒頭というか、きょうの委員会の初めのころに、「人づくりなくして国造りなし」と申し上げながら、ある大先輩が、公共事業を削っても、防衛費を削っても人づくりのお金は削ってはならぬというお話を承って、涙が出るほど感動したということを申し上げました。私の本当に申し上げたい今の気持ちはそれに尽きているわけでございまして、たまたま、例えば私学助成というようなことを考えますと、これが危機的な状況でありますがゆえにきょうも何人もの方から御質問を受け、文部大臣としての決意を披瀝し、これも、ただシーリングという枠をはめたままにおくならば、いずれ三年後には一〇%になってしまうということも申し上げたわけですけれども、実際それは私学助成というものだけではなくて、先ほどの高崎先生から打ち続いている今の先生のお話の中にある高等教育に対するお金の支出の問題、いわゆる科学研究というものに対して、科学技術というものに対してどういうふうに考えていくかということは、これは本当に根本的に見直さなければいけない問題であって、本来「人づくりなくして国造りなし」であるならば、およそ教育関係予算というものがすべてシーリングから外れていくようでなければいけないのだろう。私は希望としてはそのように思いつつ、どのようなことが具体的にできるか、これからの勝負だと思っております。  また、先生指摘のとおり、科学技術予算についてシーリング外しをしようということは、私の出身母体でございます自由民主党の中にもそのような意見が高まってきつつあることを承っております。
  160. 池田治

    池田治君 ぜひシーリングを外すように御努力を重ねてお願いをしておきます。  それから、科学技術関係予算は、先ほど大臣もおっしゃいましたように、かなりの省庁に分かれておりまして、何を研究されているかは我々わかりませんけれども、同じテーマで研究を何カ所でもやっているということも考えられると思うのでありますが、これはちょっとむだなことじゃないかと思います。共同研究で各省庁が、防衛庁と科学技術庁、文部省共同で研究するというビッグサイエンスというようなものは、これは当然必要だと思いますけれども、ばらばらで研究しているのでは、競争原理を働かして成果を上げさせるという意味ではいいかもわかりませんが、これは失礼な言い方ですけれども、しかし成果がばらばらに出てきたのでは、これは予算のむだ遣いではなかろうか、かように考えますが、どこか調整する機関はございませんでしょうか。これは文部省だけに申し上げるのもちょっと失礼なようなんですが、どなたでも結構です。
  161. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 先生の御質問に対する適切な答えになるかどうかわかりませんけれども、例えば文部省では学術審議会の皆様方にいろいろなお願いをしておるところですが、政府としては科学技術会議という組織がございまして、これは内閣総理大臣を議長といたしまして、大蔵大臣文部大臣、経済企画庁長官、科学技術庁長官、日本学術会議会長等が構成メンバーになっておるわけでございます。本来、この科学技術会議というものがあるわけですから、また以前閣議決定された科学技術政策大綱というものもあるわけですから、それらが関係省庁をきちんとリードをしてむだが出ないようにしていくのが私は本来の筋ではないか、このように思っております。  まさに先生指摘の点は、科学技術に限らず日本行政の特徴として妙なダブりが起きておるというようなケースが実際に私もあるだろうと、やや無責任ですが、推定をいたす部分がありますから、これらはすべて科学技術会議に任せていいことかどうかはわかりませんが、研究の価値のある課題だと思います。
  162. 池田治

    池田治君 次に、科学研究費補助金についてお尋ねいたします。  我が国の科学技術の水準は欧米並みの高水準、ある分野ではこれをしのいでいるとも言われておりまして、まことに結構なことでございます。しかし、けさほど大臣もおっしゃいましたように、人のものを盗んできてちょっこり研究して改良を加えて、それで新製品をつくって売り出してもうけるのが日本じゃないか、こういうことも言われておりまして、いわゆる研究ただ乗り論、基礎研究をしたのをとってきては日本はやる、こういう非難も受けているようでございます。  そうしますと、どうしても基礎研究、基礎工学の発達ということを我々は望まなくてはならないと思います。来年度の科学研究費補助金の概算要求は六百五十一億円と出されておりますが、この科学研究費補助金を出すに当たって、これは研究者、つまり教授、助教授、研究員の中から厳選して文部省が決定をなさるということですが、これはだれがどういう申請を受けつけて、何を基準に補助金はやるのやらぬのということを決定されるのか、これをお願いいたします。
  163. 長谷川善一

    政府委員長谷川善一君) 科学研究費補助金の審査のやり方でございますが、この審査は、研究分野とか研究の形態等々を考慮いたしまして、すぐれた研究課題を選定するということを目的に、平成二年度には審査委員会が八つございます。さらに八十九の小委員会、それぞれ分野ごとに委員会が分かれておりまして、合計で千五百人の審査委員、これは大学の教官あるいは民間の研究者も含まれておるわけでございますけれども、それぞれの分野で適切な審査ができるように審査委員を選びまして、この審査委員も余り長年続くというわけではございません。ローテーションを適切に行うというようなこともやっております。したがって、厳正な審査が行われておるというぐあいに信じておるわけでございます。  通常の研究でございます一般研究という種目がございますけれども、こういうところでは二段審査制というのをとっておりまして、書面によって第一段審査等を行いまして、合議によって第二段審査を行う。それから非常に高い経費、一件当たり数千万から数億というようなものにつきまして、これは特別推進研究と申しておるわけでございますが、これは申請者からのヒアリングまで加えてやっておる状況でございます。  まだ現在、申請件数が毎年毎年非常に伸びてまいっておりまして、平成二年度申請件数六万四千件、採択件数が二万件でございます。採択率が三〇%というような状況でございますけれども、これは継続案件がございまして、新規の分だけとりますと、新規の申請案件が五万八千で、採択件数は一万四千、採択率二四%というような状況でございます。これは各大学でそれぞれ研究者間でいろいろな評価がございまして、こういうのはぜひ科研費で申請すべきだと、いろいろな状況の中でいい研究が申請されて出てくるわけでございます。その中でなお、正直なところ二四%しか採用できないというような状況でございます。  申請件数が毎年毎年伸びているというのは非常にいいわけでございますし、科研費は文部省予算の中でも特に重点的に今までも伸ばしてまいったわけでございますけれども、明年度、特に力を入れて伸ばしたい種目でございます。種々の審査方法に関しましていろいろな先生方の御意見もございます。申請件数がふえましたので、それを効率的にいかにうまく審査するかということもございますので、現在、専門家で委員会をつくっていただきまして、改善点について整理願いまして、改善の方向につきましてもあわせて御検討。いただいているというような状況でございます。
  164. 池田治

    池田治君 ありがとうございました。  二万件で六百五十一億円というのがことしの概算要求ですね。仮に申請のあった六万四千件を全部認めた場合は幾らくらいの概算要求をしなければなりませんか。
  165. 長谷川善一

    政府委員長谷川善一君) これは仮にの話でございますが、平成二年度に申請されたものをすべて採択するといたしました場合、申請金額二千二百億が必要となるわけでございまして、これは平成二年度の予算額の四倍に当たります。
  166. 池田治

    池田治君 四倍を一挙にふやせといっても整合性の問題もあってなかなか無理かと思いますけれども、しかし研究はどの研究が成果をおさめるかということは結果を見てみなければわからぬ問題でありまして、二万件のうち物になるのは何もなかった、オミットした四万件の中に画期的な発明品があらわれた、こういう場合も考えられるわけでございますので、そう簡単に申請などを切ってしまって冷たい態度をとられ唐いように、できるだけ多くの申請に補助金を与えるような御努力をお願いしたいと思います。  次に、教育研究環境特別重点整備費、これも百五十億円がことし初めてつきました。高崎委員が大阪大学の工学部の爆発の問題を中心に話されましたときにありましたように、今の大学研究室の理工学部というのは、壁が落ちたり雨が漏ったりして、狭いという以外に老朽化しているのがかなりあるようでございまして、建物が二十年以上たっているのが四三%、研究設備を十年以上そのまま使っているのが二〇%以上とのことでございます。研究施設というのは、日進月歩進む科学でございますので、十年前のものはもうほとんど使い物にならぬものでございますが、これをいまだに国立大学では使用しているのが二〇%ということでございます。これらの研究環境を整備されるのだろうと思いますが、まず重点整備というのはどういうことで重点という言葉をお使いになったんですか。
  167. 野崎弘

    政府委員野崎弘君) 今御指摘ございましたように、国立学校が保有する建物で老朽化、狭隘化が大変進んでいるわけでございます。特に理科系の学部、研究所の建物にその傾向が顕著なわけでございまして、そういうことで重点として考えましたのは、施設の老朽化、狭隘化が特に著しい理科系学部等で教育研究においてすぐれた実績を上げているもの、こういうものを重点的、計画的に整備を進めたい、こういうことで重点的という言葉を使ったわけでございます。
  168. 池田治

    池田治君 じゃ、理科系以外にもこの整備費は回すこともできるわけですね。
  169. 野崎弘

    政府委員野崎弘君) 一応、百五十億ということで、計画としましては五カ年計画で約二十九万平米の整備を図りたい、こう思っておるわけでございます。  ただ、具体的にこれをどういう形でやるかということになりますと、学生とか留学生等を積極的に受け入れているというような教育活動が活発に行われているか、あるいは老朽改築事業等の実施によりまして教育研究の進展が期待できるかというようなことを総合的に判断して決めたいと思うわけでございますが、いずれにしましても、個々の事業につきましては予算成立後、必要性等を勘案しまして実施計画の協議を経て確定をしていきたい、このように考えております。
  170. 池田治

    池田治君 そうしますと、五カ年計画、百五十億円というのは五カ年金部では七百五十億という数字が出て、それを割ったわけじゃございませんね。そしてまた、この計画は理工学の建物の再築、研究施設の改善、こういうものが全部含まれるということですか。
  171. 野崎弘

    政府委員野崎弘君) 先ほどもお答えいたしましたように、教育研究においてすぐれた実績を上げているものということでございまして、確かに先生おっしゃるとおりにあらゆる施設が整備できればいいという考え方もあるわけですが、御存じのようにこの百五十億をことしの概算要求の中に盛り込むのにも大変な苦労をしたわけでございますので、私どもとしてやはりそういう意味でも重点的な整備という方針でこれを実施していきたい、このように思っております。
  172. 池田治

    池田治君 次に、国立学校財務センターを設立する概算要求として五千七百万円が要求されておりますけれども、このセンターはどういう目的で何を主眼に創立されるか、教えていただきます。
  173. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 国立学校の経費は国立学校特別会計という特別会計において措置をされておるわけでありますが、その特別会計の中に何らかの意味で自由に活用できるような資金というのを持つ必要があるではないかというようなことが臨時教育審議会であったりあるいは財政審議会であったり、そういった方面から指摘をされております。  臨時教育審議会の具体の指摘を御紹介申し上げますと、「国立大学に属する国有財産の適切な在り方を不断に見直し、その資産活用を積極的に図る。土地信託の制度の利用も一つの方法である。また、資産活用の結果得られる収入については、国立学校特別会計にこのための基金を設けるなど、適切な運用について検討する必要がある。」、こういう御指摘がございます。  そこで、私どもでは、まず各大学の持っている財産の有効活用を図るということを考えていきたい。土地信託というのも一つの方法でありますが、その場合に、各大学は必ずしも土地のそういった資産としての有効活用には習熟をしていないし、また本来教育研究を行う機関でありますので習熟するすべもないわけでありますので、そういうふうなことを専門に研究するセンターといったものを設立いたしたい、このように考えておるわけであります。そして、その結果生じました収入については、適切な運用が国立学校特別会計の中にできるように事務的に技術的に検討していきたい、このように考えております。
  174. 池田治

    池田治君 そうしますと、この基金は大学等の研究費等に回るということはないわけですか、お尋ねします。
  175. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 国立学校特別会計というのが現にありまして、全体としての国立大学の学校の人件費から施設費から、そして今御指摘の研究の経費からすべてをそれで賄う、こういう仕組みになっております。そこで、仮にそこで上がった収入を何に使うかということを議論をしていきますと、非常に技術的に難しい問題がありますが、いずれにしてもお金に色目はないわけでありますから、それが仮に施設費に投入されれば施設費に今までいっていたお金が研究費に回る、こういう結果にはなろうか、このように考えております。
  176. 池田治

    池田治君 基金をつくることも結構でございますけれども、先ほどのお話のように特別会計の中から財産活用をやる、また資産売却収入も元金にする、こういうようなことではこれはタコの定食いのようなもので、みずからが持っているものをみずからが食うていく、これにすぎないんじゃないか、こう思っておりますが、国に対してもっと予算要求をして予算措置の上でこういう基金をつくるか、もしくは国立劇場法のように財界等にも寄附を仰いで日本の科学技術発展のための基金を創立する、こういうことでなければ、財産を売って、それを基金にして、それでまたいけば大学の資産は何にもなくなってしまいますよ。そう私は考えますが、いかがですか。
  177. 前畑安宏

    政府委員(前畑安宏君) 御指摘の芸術文化振興基金であるとか、あるいはスポーツ振興基金であるとかは確かに一般会計のお金を基金にしてつくられたわけでありますが、国立学校ということで事柄を考えますときには、具体には一般会計繰り入れをいかにふやすかということをやはり最重点に考えるべきことであろうと思っております。  御紹介いたしますと、かつては国立学校特別会計の収入構造の中で一般会計繰り入れが占める比率というのが八割を超えていたころもありました。現在は六割程度でありまして、三年度には六〇・五%、そこまで低下をしてきたわけであります。他方、歳出構造を見ますと、人件費に充てられるのが五六%。国立学校特別会計の構造は、一般会計繰り入れは人件費を払って若干余る、こういう構造になっております。したがって、それをふやすというのがまず努力すべきことではないかということでこの基金をつくりますことを考える、あるいは臨教審の指摘もありますが、例えば大阪大学の医学部が附属病院ともども千里の方へ移転をした、そこに新しい土地を求めて移転したわけであります。そういたしますと、今まで中之島にあった土地というのはいわば余った資産、こういうことになりますので、その有効活用を図っていきたい、これが基本的な考え方でありまして、現に使用している土地を身を縮めて切り売りをしていこう、こういうことではございません。御理解をいただきたいと思います。
  178. 池田治

    池田治君 時間が参りましたので、終わります。
  179. 大木浩

    委員長大木浩君) 本日の調査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十三分散会