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1991-11-22 第122回国会 衆議院 労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十一月二十二日(金曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 川崎 寛治君    理事 愛野興一郎君 理事 大野 功統君    理事 住  博司君 理事 長勢 甚遠君    理事 三原 朝彦君 理事 岩田 順介君    理事 永井 孝信君 理事 河上 覃雄君       赤城 徳彦君    池田 行彦君       齋藤 邦吉君    田澤 吉郎君       平田辰一郎君    平沼 赳夫君       伊東 秀子君    池端 清一君       沖田 正人君    中村  巖君       金子 満広君    伊藤 英成君       徳田 虎雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 近藤 鉄雄君  出席政府委員         外務省経済協力 川上 隆朗君         局長         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省労働基準 佐藤 勝美君         局長         労働省婦人局長 松原 亘子君         労働省職業安定 若林 之矩君         局長         労働省職業能力 松本 邦宏君         開発局長  委員外出席者         警察庁刑事局国 小田村初男君         際刑事課長         法務省入国管理 大澤  久君         局政策課長         法務省入国管理 小山  潔君         局入国在留課長         法務省入国管理 大久保慶一君         局警備課長         外務大臣官房外 内藤 昌平君         務参事官         外務省経済協力 小島 誠二君         局調査計画課長         建設大臣官房技 青山 俊樹君         術調査室長         建設省建設経済         局建設振興課労 尾見 博武君         働資材対策室長         建設省住宅局住 中澤 守正君         宅建設課長         労働委員会調査 下野 一則君         室長     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 川崎寛治

    川崎委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平田辰一郎君。
  3. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 新内閣労働大臣になられた近藤大臣に心からお喜びを申し上げますとともに、初質問させていただきます光栄を大変喜んでおります。  大臣は、御就任のごあいさつの中で、生活大国を目指して豊かな勤労者生活実現に向けて労働政策の展開を図っていかれるとおっしゃっておられますけれども、その具体的な対策はどう考えておられるのか、まず第一にそれをお伺いしたいと思います。
  4. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 宮澤内閣総理大臣の内政の最大の課題一つが、日本の働く人たち国民一般が、今やもう国際的にもいわゆる超経済大国と言われているわけでありますが、その超経済大国国民としてのふさわしい生活をしているという実感がない、そうした実感がすべての国民皆さんに持っていただけるようなそういう政治をしたい、生活大国への前進である、こういうことをおっしゃっておるわけであります。私は、その内閣の閣僚として、しかも、労働行政といえばまさに勤労者国民――勤労者国民というのはもう私たち政治家を含めて全国民だと思うのでありますが、その生活の向上にまさに担当大臣としてこれから全力を尽くしてまいりたい、こう考えておりますので、まず冒頭でございますが、委員先生方によろしく御指導、御鞭撻のほどお願い申し上げたいと思う次第であります。  そこで、具体的問題でございますが、やはり私たちに豊かな生活実感がないというのは、いろいろな要素がございますが、例えば、いわゆる欧米においては勤労時間が年間千八百時間であるにもかかわらず、我が国は依然として二千時間を超えておる。いろいろなことがありますから、そういった労働時間の短縮だとか休業日数をふやしていくとか、それから、実際前から言われておりますけれども勤労者持ち家政策といいますか、やはりいつまでも働けど働けど我が暮らし楽にならざるじゃないけれども、自分でうちが持てないとか、うちを持っても遠いところにしか持てないとか、そういった問題等々ございますし、また、働いて定年退職になったらもう使い捨てでということじゃなしに、働く意欲のある方が働き続けられるということも私は生活ゆとりであると思いますが、そういう総合的なことについて実はこれまで労働省挙げて取り組んできた課題でございますが、そういったいろいろな具体的政策についてこれから私も勉強をさせていただいて、そして皆さんの御期待にこたえていきたい、こういう思いでございます。
  5. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 ただいま大臣から御指摘のあった労働時間の短縮、いわゆる時短ということですが、私もこれは大変重要なことだと思うわけです。  平成四年度末までに年間総実労働時間を千八百時間にするという政府計画があるというふうにお聞きしているわけですが、これの実現に向けて労働省としてはこれをどう考えているか、お伺いいたします。
  6. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 労働時間短縮重要性はもう既に御指摘があったところでございますので、これは繰り返しませんけれども経済運営五カ年計画では、平成四年度末までに、千八百時間に向けてできるだけ短縮をするという目標が掲げられておるわけでございます。また、労働省では労働時間短縮推進計画をつくりまして、これに沿いまして週四十時間労働制実現、それから、それによります年間の総労働時間千八百時間に向けての時間短縮をこれまで推進をしてきているわけでございます。  内容といたしましては、完全週休二日制の普及促進ということが基本でございますけれども、そのほかに、年次有給休暇完全取得促進、それから連続休暇普及拡大ということもございます。さらには、今や恒常的に非常に長くなっております所定外労働時間、これを短縮することが大変重要な課題であるというふうに認識をしておりますので、こういった点を重点といたしまして改正労働基準法の円滑な施行、それから労使の自主的な努力に対します指導援助に努めているところでございます。また、昨年度末で改正労働基準法実施をされましてから三年たちましたので、この附則の規定に基づきまして、それまでの実施状況について再検討するということで、現在、中央労働基準審議会お願いをいたしまして、基準法労働時間に関します規定、非常に広い範囲にわたりまして御検討お願いしておりまして、その結果によりまして法律改正等の適切な措置をとりたいというふうに考えておるわけでございます。  いずれにしましても、現在、平成二年度で二千四十四時間という実労働時間と千八百時間との間には大変な開きがまだあるわけでございます。私どもとしては一層時間短縮についての努力促進をしなければいけない、かように認識をしております。  それから、それとの関係で現在特に他業者との横並びあるいは地域内での横並びの意識から労働時間短縮を単独では非常に進めにくい立場にあります中小企業、これにつきましては、事業主等が共同で一定ガイドラインをそれぞれの発意でつくって、これを守ることによって労働時間の短縮促進しようとすることを助ける一つ法律的なシステムが必要であるという認識で、現在これも中央労働基準審議会お願いをいたしまして、その法的整備のあり方につきまして御検討をいただいているところでございます。  そういったものの実現を通じまして、労働時間短縮をさらに進めたいというふうに考えているところでございます。
  7. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 しかし、歩合制の給料の労働者なんかの場合には労働時間が即賃金に影響してくるわけで、例えばタクシー運転手さんなんかの場合とか、あるいは指示されていろいろな仕事をしている人じゃない人、大まかには指示されているけれどもあとは自由に中を企画してやっているような人、例えば研究所の研究開発に従事している労働者というか研究者、あるいは創造的な、いわゆるクリエイティブな仕事をしているような勤労者労働者については、労働時間の管理というのは大変難しい、時短推進が特に困難と考えられるわけですけれども、こうした方々は一体どうするのかなというふうに考えるわけです。  例えば研究者の場合、研究に没頭してしまうと、寝食を忘れて研究成果が出るまで不眠不休で頑張るというような場合もあります。こういう場合にはまとめて休めるようにする必要があるのじゃないかとか、あるいは、のんべんだらりとやっているわけじゃないのだから、そもそも時間で拘束して考えることがおかしいので、フレックスタイムとかあるいはアメリカでやっているような年俸制にするとか、こういうようなことを考える必要もあると思いますが、労働省いかがお考えになっていますでしょうか。
  8. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 ただいま御質問にございました研究開発、特に高度の研究開発業務に従事されている方、あるいは歩合制、とりわけタクシー運転者等でございますが、そういった方につきまして労働時間短縮が特に難しい事情があるというのは御指摘のとおりであろうかと思います。  まず、研究開発職に当たる方々でございますが、こういった仕事は、使用者によって時間が規制されるというよりは本人の裁量によって仕事を行うという部分が大変大きいわけでございます。その意味で労働時間管理が困難な場合も間々あるということでございます。したがって、こういう職種につきましては、所定外労働を削減していくためには仕事の遂行について労働者自主性を尊重する、その裁量に大幅にゆだねる部分をつくるということが適当な面があることは御指摘のとおりでございます。  そういうことがありますので、六十三年から実施をされております改正労働基準法では、フレックスタイム制といいますか、一カ月以内の一定期間の総労働時間を決めておきまして、その範囲内で労働者が自主的に始業、終業の時刻を定めるといったフレックスタイム制、それから一定業務に必要な時間を労使協定によってあらかじめ定めておきまして、その業務に従事した労働者は当該時間労働したものとみなす裁量労働制、こういった制度を新たに設けたところでございます。これらの制度導入状況を、フレックスタイム制については調査をした結果もございますけれども、まだまだ十分ではございませんが、その導入検討している事業所の割合もかなり高くなっております。私どもとしては、こういった制度普及促進にさらに努めたいというふうに思っております。  それからもう一つ歩合給対象者でございますが、これは第一には、やはりある程度収入を上げるということと生活の安定という両面を考えますと、やはり固定的給与歩合給を合わせて、余り固定給部分が高いことは適当ではないということで、その両方を合わせて通常の賃金の六割以上の賃金が、つまり、固定給部分歩合給を合わせて六割以上の賃金が保障されるような報酬、給与を定めるとか、あるいは長時間労働を極端に刺激するという面のあります累進歩合給制度につきましてはこれを廃止させるというような指導をいたしております。  特に、例に挙げられましたタクシー運転手でございますけれども、これは御承知のように例えば駅待ちの時間が長いというようなことで非常に拘束時間が長くなるあるいは運転時間が長いということで、実際の労働時間は大変長くなる傾向があるわけでございます。したがいまして、自動車運転者につきましては、特別に自動車運転者労働時間等の改善のための基準というものを設けまして、拘束時間、運転時間の上限を定め、これによって関係団体等に対しまして指導、啓発を行っておりまして、また監督、指導もこれによりまして行っているという状況でございます。私どもとしましては、このような方法でさらに一層努力をいたしたい、かように考えているところでございます。
  9. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 次に、職場における労働者の健康を守り快適な職場づくりを進めることが極めて重要なことだと考えているわけですが、この点について労働省としてのお考えを伺いたい。
  10. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 最近の職場環境の変化あるいは生産方法といいますか技術革新が進んでくるというような中で、職場における疲労なりストレスが蓄積をするという労働者が非常にふえてきておるということは、私ども調査によっても出てきているわけでございます。  そういうことを背景にいたしまして、労働者の健康を確保するということは、労働行政一つの、特に労働基準行政におきます大きな重点であろうというふうに思っております。これは安全衛生法によりまして健康診断を義務づけるというようなことから始まりまして健康管理対策が行われておるわけでございますが、さらに六十三年度からは、事業所におきます健康維持対策として、労働者健康増進対策というものを新たに始めるというようなこと、あるいは平成元年からは健康診断に成人病に関連をいたします診察項目を追加をするというような措置をとっております。こういった医学的な面にとどまらず、今後は職場そのものを働きやすい快適なものにすることが必要であるという認識に立ちまして、現在、快適な職場とはどういうものであるかというようなガイドラインを作成をし、そのガイドラインに沿って職場環境改善を図る事業主に対して支援策を講ずるというようなことを考えまして、現在関係審議会でその内容について鋭意御検討をいただいておるところでございます。私どもといたしましては、そういうことを実現することによりまして、労働者の健康の維持増進に一層貢献をしたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  11. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 次に、労働力供給の伸びが鈍化することが見込まれている今後の姿を見て、一般的には人手不足、そういう時代が来るというように懸念されているわけでございますが、また一方、今後の景気の動向とか新規学卒者の一時的な増大等によって、一時的には労働力供給が過剰になるのではないかという意見もあるわけです。  例えば、今まで労働力不足だったのは、昭和四十一年生まれのひのえうまの人たちが非常に人口が少なかった、その影響が相当出てきている、あるいはこれからは今十八歳、十九歳の人口の、いわゆる団塊ジュニアというのが職場にどっと入ってくるというようなことで、近い将来には景気も悪くなる上に供給過剰になってくるので、一遍に労働需給が緩和してくるという意見もあるわけですが、このような点を踏まえて、今後の労働需給についてどういう見通しを持っておられるか、定性的でいいですからひとつお答えをいただきたいと思います。
  12. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 労働力不足の問題は今非常に深刻な問題だと言われておりますけれども、私は大臣就任以来、労働省の幹部に問題提起をしているわけです。それは、日本で何でもかんでも物をつくっちゃって、国内で消費できなくて輸出にもどんどんプレッシャーをかけていく、そして、さあしまった、人が足りないということで、それで外国人労働者を呼んできてまた物をつくる、こういうようなことでは、まさにこのような生産第一主義では、国内的に問題があるだけでなしに国際的にも問題を生じて、まさに対米経済摩擦だとか、それからその他の国との日本経済の摩擦問題、こういうことも一つ原因になってくるわけでありますから、したがって、労働力不足を言う前に、まず、国民経済全体として一体何を我が国でつくって何を国際分業にゆだねるかということについて、私も実はかつて経済企画庁長官として、いわゆる前川リポートをもとにした国際経済調整のための産業構造転換計画推進をしてきたわけでありますけれども、そういう観点から、日本産業構造が国際的にどういうような調和をするかというような視点を踏まえて、何を日本でつくるかということ、これはなかなか理屈も難しいし実際的にも難しいことでございますけれども、そういう発想を労働行政の中に取り入れることが労働力不足対策一つの大きなポイントじゃないか、まず前提としてこういうふうに思うわけでございます。  しかし同時に、そうはいってもミクロの問題として人手が足りないという問題もありますから、これに対しては、労働省がかねてから進めておりますけれども、大いに省力化投資をしていく。特に中小企業については、そのために必要な資金があればそれについて税制また融資の面からもいろいろ考えていこう。既に中小企業人材確保法という法律もございますので、こういった法律の適正な活用をしていきたい、こういうことであります。  同時に、今先生の御指摘にあった、今はそうかもしれない、しかし景気が悪くなったらどうなるんだ、人が余るじゃないか、こういう御意見もございますが、確かにそういう問題がありますけれども、問題は労働力の質の問題ですよね。若手はどんどん足りなくなってきて、そして中高年労働力がそういう景気のときに最初にいわば労働市場からはみ出してくる、こういうこともございますが、それは全体のマクロの一つ考え方だ。ミクロのいろいろなきめの細かいことについては、我が省がいろいろなことをこれから考えて、そしてスムーズな雇用状況維持できるように努力をしてまいりたいと考えております。
  13. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 次に、首都圏一極集中の是正が必要だと考えているわけでございますけれども地域では若年層を初め労働力の流出が進んで大変深刻な問題になっております。さき国会労働省も新しい法律をつくって地域雇用対策を強力に展開するということでおやりになっているわけでございますけれども、私は、この地域雇用対策の一環といたしまして、地域雇用環境整備していく上で大変重要なものとして、地域勤労者のために良質な住宅確保することが極めて重要だろうというふうに考えているわけであります。例えば雇用促進事業団が建設する雇用促進住宅についても、Uターン者等移転就職者だけでなくて所得制限により公営住宅に入れない勤労者にも、そういう勤労者が真に住宅を必要とするような場合には入居門戸を広く開くことも必要じゃないかなというふうに考えているわけですが、労働省いかがお考えでございますか。
  14. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 雇用住宅等の施設問題についてはまだ局長から答弁させますが、先生大事な問題をいろいろ御指摘でございましたので、ひとつ私の考え方を御理解いただきたいのであります。  ちょうど二十年前に私の岳父が労働大臣になりました。野原正勝岩手一区であったわけでありますが、労働大臣になって、それについて専従秘書官をいたしました。そのときに、労働行政が従来は都市型だったんですね、大都市を中心とした労働行政農村まで進めていこう。それは、お話がございましたように、農村過剰労働力、いわゆる農業を近代化していけば人が余ってくるだろう、それを今度は工場へ持っていって工場でも働いていただこう、フルタイムもしくはパートとして。そういうことを踏まえて積極的に労働行政を、私は山形の代議士であります、野原岩手ですが、やっておったんだけれども、今農山村は過疎地帯になっちゃっでいますね。過疎ということは人がいないということです。工場を持っていったって人がいない。だから、おっしゃるようなUターンをやろうということで、そのための施設、こういうことだと思うのであります。  同時に、私がこの委員会先生方といろいろ御指導を得ながらやっていきたいと思うのは、これからは、工場が行ってそこで農村から人を集めるのではなしに、むしろ工場従業員ぐるみ地方に行って、そこで新しい住宅生活環境の中で豊かでゆとりのある生活をしていただく、そういう時代になる。企業ぐるみで、住民ぐるみ地方に積極的に工場が行って、まさにこれまでの一極集中から多極分散時代政治ということをいろいろ各省やっておりますけれども労働行政も積極的に担ってまいりたいし、しかも、それは単に経営者方々のお考えだけじゃできないのであって、働く皆さんが、まさに組合の皆さんがそれでいこうというふうになっていただかなければ従業員ぐるみ工場分散はできないわけでありますので、そういう点についてもひとつこれからいろいろ私の立場努力をさせていただきたい。  基本的な考え方を申し述べさせていただいて、あと局長から答弁いたさせます。
  15. 若林之矩

    若林政府委員 移転就職者用宿舎の件でございますけれども移転就職者以外の労働者の方でございましても、住居の移転を余儀なくされることに伴いまして職業の安定を図るために宿舎確保を図ることが必要であると公共職業安定所長が認めた者につきましては、これは私どもはいわゆる住宅困窮者と言っておりますけれども、こういった方々につきましても、その方が移転就職者でございませんでも、移転就職者利用支障がない限りにおきましてこの貸与を認めております。今後におきましても、この移転就職者利用支障がない限りでこういった措置を引き続きとってまいりたいというふうに考えております。
  16. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 今お答えがありましたけれども、なかなかそういう例外規定を適用するというのは難しいんじゃないかなと思うのです。  建設省からおいでになっているというふうに伺っておりますが、このような入居をもっと広く門戸を開くように、要するに、地域に住んでいる若い人が良質な家に住めるようにということで、地域に住んでいてしかもやる気のある若い人たち対象に、これらの人々が入居できるような家をつくるということで、建設省は来年からの制度ということで地域活性化住宅制度というのを創設するように準備中だと伺っていますけれども、今までのところ実際この準備状況はどうなっているか、その辺を伺いたいと思います。
  17. 中澤守正

    中澤説明員 お答えいたします。  建設省平成四年度概算要求において要求しております地域活性化住宅制度は、地域開発とあわせまして、良質な住宅供給による魅力ある住環境の整備を図りまして人口地方定住化促進しようとするものであります。この趣旨を踏まえまして本制度では、大都市から移ってこられますいわゆるJターンUターン等の住まいになることはもちろんでございますが、地域の魅力ある居住環境を形成し、地元の方の定住促進にも役立つような住宅になるように今検討を進めております。  いずれにせよ予算要求でございますので頑張らせていただきたいと思います。
  18. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 さき国会で可決されました育児休業法施行か来年の四月からということでございますけれども、これはぜひ円滑な導入普及を括願いしたいわけでございますが、この問題に関連いたしまして官民格差の問題を伺いたいと思います。  聞くところによりますと、官庁関係につきましてはこの育児休業普及するための法律が用意されているやに聞きますが、民間企業となりますと、法律に定められた事項を実行するにしても、お役所並みというか官庁並みにはなかなかできない部分がある。こういう部分について、やはり官民格差ということでかなり問題になってくると思うのです。これまでは、公務員賃金というのは大体民間賃金をベースに人事院勧告で定めているわけで、看護婦さんと学校の教員は違います、看護婦さんだけは逆に公務員の方が決まったら民間が決まる、こういう仕掛けになっていますが、実際問題として、今度は役所が先に決まって大部分民間が後から追随するという形にこれはなってくるだろうと思うので、相当の問題がやはり出てくるのではないか。特に民間企業に対する負担が非常に大きいんじゃないかと思いますが、これの軽減策その他についてどういうふうに考えておられるか、伺いたいと思います。
  19. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 育児休業法につきましては、既に前国会法律が通りまして来年四月一日からこれが施行される、こういうことでございます。  この点につきましては、お話もございましたように、むしろ官庁の方がおくれておって、この間も総務庁長官と話をしておりましたら、総務庁としても早急に法律準備して早く国会にこれを提出して通したい、こういうことでありますから、形としてはこの場合は民間が先に行ってその後で国が従う、こういうことでありますが、やはり国と民間と相ともに育児の休業制度というものが実現できるように政府としても努力をしてまいりたい、こういうことでございます。
  20. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 私は、まさにその点を問題にしているわけでありまして、今国会に官庁の方は制度が整えられるように今準備中だというように伺っておりますが、もし整えられますと、今度は民間の方が制度的にいろいろおくれてくる部分があるのじゃないかな、おくれるというか格差がついてくる部分があるのじゃないかというふうに考えたわけです。その点についてどう手当てしようというように考えておられるのか、そこを伺いたいのです。
  21. 松原亘子

    ○松原政府委員 お答え申し上げます。  先生が御指摘になっておられますのは、私どもが聞いておりますところによりますと、公務員関係育児休業法案、今関係省庁間で検討中、調整中でございますが、その中に育児休業中の取り扱いにつきまして、休業した期間を、昇給ですとか期末手当、退職手当の算定などに当たって、二分の一勤続年数というか勤続したものとみなすという規定が入るという方向で検討がなされているというふうに伺っている、その点を指しておられるのかと存じます。  民間企業育児休業法に関連いたしましては、そういった点については法律上は決めておりませんで、まさにそういった労働条件は労使が自主的に決めていただくという建前になっております。その場合には、当然企業の経営の実態ですとか地域の産業、企業の実態、そういったことも十分配慮されながら、その企業で適当と思われるところで決められるというふうに考えているわけでございます。公務員民間とでそういうことで法律が違ってまいりますのは、公務員の場合には、そういう労働条件を法定するということが建前でございますことから、その法律規定の仕方が違ってきたというふうに考えているわけでございます。  なお、民間企業、特に中小企業につきましては、直ちにこの制度を適用するということになりますと、先生も御指摘されたかと思いますけれども、いろいろ難しい面もあるということから、この法律の中に、労働者三十人以下の事業所につきましては三年間適用を猶予するというふうにいたしておりまして、三十人を超える企業については来年の四月一日から適用になるわけでございますが、中小企業につきましては平成七年の四月一日から施行になるということで配慮いたしているわけでございます。なお、その間、育児休業がスムーズに導入されるように、そういったところに対しては育児休業導入の奨励措置を私どももとりたいというふうに今予算要求をいたしているところでございます。
  22. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 今のお答え、現状では仕方がないことだと思いますけれども、今お答えのように今後まだまだ問題点があるわけで、その点を踏まえてぜひ今後とも検討していただきたい。また、この育児休業に絡んでといいますか、これからさらに派生じて介護休業の問題点も議論されていますから、今後とも労働省がぜひこの二点について御検討、具体的な対策を立てていただくようにお願いを申し上げまして、私の本日の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  23. 川崎寛治

    川崎委員長 岩田順介君。
  24. 岩田順介

    ○岩田委員 日本社会党・護憲共同の岩田であります。  大臣におかれましては、このたび御就任されましたことを心からお喜びを申し上げます。  ただいま大臣の御答弁をお聞きいたしておりまして、労働の国際化の問題、それから日本における労働事情の厳しくしかも山積している問題について所見を伺いました。いろいろ言われておりますけれども、しかし、それにしても勤労者生活や暮らしか一体どうであるのか、この点はさまざまな形で批判があるところでありまして、政府といたしましても、そのことを前提に何とかゆとりある生活を送るように行政の施策を講じていきたい、こういうことだろうと思うのですね。ぜひとも勤労者の福祉、暮らしか豊かになるように一層の御努力を冒頭お願いを申し上げておきたい、このように思う次第であります。  きょうは同和問題、部落差別、それから、時間のあります限りILO問題について基本的な姿勢をお尋ねをしたい、こういうふうに思っているわけであります。  昭和三十六年、時の内閣が諮問をいたしまして、同対審の議を経まして昭和四十年にこの答申が出ておりますが、さらにその四年後に、政府としては具体的な同和対策、こういったものの施策をとられました。実に二十年を経過いたしているわけであります。確かに、この間の政府のいわゆる各般の施策というものが成果を上げてきたということは私も重々承知をしているわけであります。しかしながら、全国各地でいろいろな形で関係者が実態調査をされております。それから、政府の実態調査もお聞きをしております。いろいろな形で各般にわたって調査をされておりますけれども、さらには、私は筑豊炭田の旧産炭地に住んでおりますが、比較的同和地区の多い地区でございまして、いろいろ見聞きをしてきておるわけでありますけれども、そういうようなことも総合的に考えますと、教育、環境問題、健康問題等々についてはやはり国民平均に比べてかなりの落差というか、格差があることはもう既に御承知のとおりであろうと思うわけですね。  その中で、労働行政にかかわる分野においてもこれは決して例外ではない、むしろ厳しい状況が現存しているということではないかというふうに思います。例えば不安定就労の問題だとか就労差別というのは後を絶っておりません。さらに、いろいろな事件の事象の内容というのはむしろ悪質化しているというゆゆしき現象もあるわけですね。これはまさに一大問題ではないかというふうに思うわけです。  それからもう一つ、部落差別問題、同和問題を考える場合に、表現としては今大臣もおっしゃったように国際化の問題、それから国際間の摩擦の問題、こういったことにも深くかかわってくる問題でもあろうと思います。したがって、そういった意味からは、やはり国際的見地からも国内における部落差別の問題をどうとらえ返して、この時期にもう一歩大きな前進のための行政施策というのが必要だろうというふうに思っている次第であります。  そういった立場で私は大臣にお尋ねをするわけでありますが、この間、基本法を求めた関係者の運動は国民的な世論を喚起している、こういうふうにも思います。各種集会や会議にも出席をしてみますと、これはごく一部の野党を除いて関係団体の要求には賛同している。しかし、どうしてもこれを一歩越えられない、こういう状況に今来ているのではないかというふうに思うのですが、大臣認識の所見をまずお伺いいたしたい。
  25. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 お答えいたします。  同和問題は憲法に保障されました基本的人権にかかわる重大な問題でございますし、労働省は、同和関係住民の就職の機会均等を図ることが同和問題解決の中心的課題であるとの認識のもとに、企業に対する啓発等諸施策を講じてきておるところでございますが、今先生指摘もございましたが、就職差別事象や不安定就労の実態がなお見られることは残念なことである、かように考えております。
  26. 岩田順介

    ○岩田委員 いずれにいたしましても、同和問題の解決に向けて各省庁は同対審の答申に基づいて二十数年間やられてきた、こういう実績があるわけであります。問題は、その同対審の答申の精神に沿っていかにやられてきたのか、また、どの程度の改善がなされたのか、これが今問われているわけですね。大臣もおっしゃいましたように、確かに企業については所期の目的にまあまあ達するぐらいの啓発運動や指導が行われているというふうに私も思いますけれども、しかし、なおかつ後を絶たないというのは一体なぜかという問題だと思いますね。未実施とは言いませんけれども指導の強弱というものがやはり部署によってはまだまだあるのではないかということを痛感するわけであります。  いずれにしましても、政府としては、今大臣も憲法に保障されている重大問題であるという認識の披瀝がございましたが、これは宮澤総理もそういうふうにおっしゃっております。しかし、残存事業量がどういうふうになっていて、この部落の問題が政府の作業といいますか考えによってどの程度改善をされているのか、こういったことは余りお示しになっていないんですよ。示されていない。ただ、今の地対財特法が出発する以前の残存事業量に比べて減ったであろう、減ったであろうから、いわゆる一般施策に移行してもいいのではないかということを本会議で答弁なさったんですよ。これは重大な問題だというふうに僕は受けとめておるわけであります。  確かに、先ほども申し上げましたように、ハードの面においては対策は進んでおります。これは見事に進んでいる部分もありますけれども、全面的ではないんですよ。しかし、一万ソフトの面に目を向けますと、実態はまだまだやはりそうでないというのは政府の方も否定できない状況にあることは事実なんですね。私はやはりそのことを重視すべきではないかというふうに思うのです。  労働省関係で申し上げますと、同対審の答申の中で、いわゆる同和問題の根本的な解決は、同和地区の産業、職業問題を解決をして地区住民の経済的、文化的水準の向上を保障する経済的基礎を確立することが必要である、こういうふうに明確になっているわけですね。これは逆に言いますと、このことが長い間問題となってきた我が国の差別問題、部落問題の解決の根本だというふうにとらえ返していい問題ではないか、こういう意味では、労働省の役割というのは極めて大きいというふうに言わざるを得ないと思うのですね。  ところで、労働省が分担というかエリアとします分野での同和問題に関しての現状について、一体どのようになっているのかお聞かせをいただきたいと思います。
  27. 若林之矩

    若林政府委員 ただいま先生指摘ございましたように、同和関係住民の方々の雇用、職業の安定というものは大変大きな課題であるというふうに考えておるわけでございまして、そういった方々職業の安定のために、差別事象をなくすということのために、私どもこれまで行政指導を進めてまいっておるところでございます。また、不安定就労の解消のために地域方々の講習等を積極的に推進してまいっておるところでございます。こういう中で、家族従業者の比率等は減少いたしまして常用雇用が増加をいたしております。  一つ数字を申し上げますと、六十二年、六十年ごろでございますけれども、常用雇用の比率が六十二年では六二・一でございます。ちょっと厳格に比較は難しいのでございますけれども、六十年が常用雇用が五三・三、六十二年が六二・一でございます。臨時・日雇いが六十年が一五二、全国平均が九・一でございますので、徐々にそういった比率が、一般常用の比率が高まっているということでございますけれども、依然としてなお割合が低いということでございます。また、三十人未満の規模に働いておられる方の比率を見ましても、これも徐々に少なくなっておりますけれども、六十二年に全国では三三・五でございましたのに対しまして、同和関係地域におきましてはなお四二・四というような数字でございます。また、差別事象につきましても依然として年間八百件くらいの件数がございます。  こういったことで私どもこの問題の一日も早い解決のために努力を進めておるわけでございまして、さらに、前国会におきまして御議論がございまして、その御議論を踏まえましてこの七月一日に局長通達を出しまして、この一年全力を挙げてこの問題に取り組むように指示をしたところでございます。
  28. 岩田順介

    ○岩田委員 今局長の方からお知らせをいただきましたが、先般、労働省関係者の間で同和問題に関して交渉が持たれました。たまたま私も出席をさせていただきまして、全般的ではありませんけれども、不安定就労だとか差別事象の問題について生の声を聞かしていただくことができましたが、かなり大変な問題ですね。私もいろいろ知っておったつもりでありますが、まだまだ問題は残っておるというのが率直な実感であります。  今局長も全力を挙げて取り組んできたというふうにおっしゃるけれども、まあ確かに常用雇用の率は上がる、それから日雇い労働の率は下がるといういい傾向は示しておりますが、しかし、一般と比べてみますと、同和地区とその他の地区と比べますとこれまた大変な格差があるので、これからどうするかという大きな課題が残っておるというふうに思いますね。  差別事象も確かに減ってますけれども、八百がずっと横ばいになっている。しかも、労働省認識も出されておりますが、八百件の中身が、率の上では確かに下がって、横ばいになって傾向としては悪くありませんが、しかし、いわゆる率だけを、発生件数の率だけを見てどうこう言えるという問題ではないですね。問題は、中身をあわせて考えていく必要があるだろう。具体的には申し上げませんけれども、中身をお聞きしますとこれはまた大変大きな問題をはらんでいるケースもございますね。  それから、そのときに私は御報告を受けたのでありますが、例えば採用試験につきましても、大臣もおっしゃった、局長も企業への指導をおっしゃいましたけれども、いわゆる啓発がどこかでとまっておるのか、あえてそれを無視しているのかということはわかりませんけれども、かなり陰湿な事件が起こっていますね。それからその中で、これは陰湿ということではありませんが、東京都かの自治体の採用応募用紙ですね、細かくは申し上げませんけれども、これについても労働省は把握されておったかどうか知りませんけれども関係者の方のこの具体的な実例を提起された中身を見ますと自治体関係にもまだまだ浸透してないという事実を私は知って、これは重大な問題ではないかということを再認識せざるを得ないということであったわけであります。  そこで、この問題に関して十一月二十九日に地対協が意見具申を出すという予定になっているやに聞いておりますが、それがどうなるかということは、大臣答えられれば答えていただきたいと思うのでございますけれども、全然違う組織でございますからね。我々は団体が要求しているようないわゆる基本法というものが出てくるようなことを望んでおりますけれども、ここでお尋ねしたいのは、地対協に対して、労働省の今おっしゃいましたようなことを含めた実態がどれくらい認識として伝わっているのか、この辺についてお伺いをしたいと思います。
  29. 若林之矩

    若林政府委員 まず、前段の方でございますけれども、差別のない選考の確保ということにつきましては、私どももかねてから行政機関の採用選考につきましても同様であるというふうに考えておりまして、関係省庁には機会あるごとに必要な要請を行ってきているところでございます。御指摘のケースにつきましても、現在、関係の方にその調査をしてくれるように申し入れでございます。  ただいまの地域改善対策協議会への対応につきましては、労働省としてこれまで、先ほど私申し上げましたような同和関係住民の就労の現状等を御説明申し上げますとともに、企業に対します啓発活動を粘り強く進めることが重要であるということなど、必要な意見を申し上げてまいっております。
  30. 岩田順介

    ○岩田委員 今の若林局長の御答弁を聞きますと私も一致するわけでありますが、現状はまだまだ改善の余地を大きく残している。したがいまして、何らかの方法でもって行政施策の必要性を私は痛感したわけであります。  したがって、今後の問題としてでありますが、局長、いわゆる同和関係の団体にはたくさんありますね。それから、各県の同和対策室や関係機関、動いておりますね。それから、このたびはいわゆる基本法の制定を求めて一部の団体が特徴ある行動をとっているわけではなくて、幅広く共闘を組みまして、目的は同じであるという行動を積み上げてきていたわけですね。これらの行動は何波にか及ぶ全国行動もありましたし、大集会もあったでしょうけれども、やはり実態が問題ですから、実態をどう政府に理解していただくか、こういうことでかなり精力的な調査が行われていますね。これは多少の食い違いはありますけれども、各県が置いている同和対策関係部局と団体のいわゆる調査が一致している問題はたくさんありますよ。かなりありますね。おおよそと言ってもいいほどある。多少の強弱はあっても、違いはあっても大体一致している。ところが、政府の資料とはなかなか一致しないのですよ。こういう問題を私は感じたのですが、そこで、先ほどの東京都かの自治体の問題もそうでありますけれども、もう少しきめ細かに全国の実態調査労働省もやるということが極めて大事な時期になってきているのではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  31. 若林之矩

    若林政府委員 自治体を初め各方面、いろいろの御調査を踏まえての要請もいただいておりまして、そういった内容を私どもも十分承知いたしております。  あわせて、私どもいろいろな機会に、一線の機関とのヒアリングを通じまして、そういった実態についての把握を進めておるわけでございますけれども、今後ともそういう努力は続けてまいりたいというふうに考えております。
  32. 岩田順介

    ○岩田委員 やはり実態をきちんと把握しないで論争しても、これは不毛じゃないかと思いますね。したがって、解放同盟やその他の団体の要求はたくさんあるでしょう。それに対して、これくらいの実績をもっておれたちはやったんだ、ここはこういうふうにやれば改善できる、これはこうだということを、もう少し積極的ないわゆる協議、ができるようにするためにも、ぜひ実態調査については御努力お願いしておきたいと思います。  それから、これはなかなか質問が難しい――質問は簡単でありますが、御答弁をどういうふうにしていただくかというのは難しいのでありますが、来年三月をもって現在の特別措置法が切れますね。まさにそのことが今問題になっているわけでありますが、しかも、今月の末には意見具申が出される。これが左右するであろうということは私が言うまでもないわけであります。今大臣局長の方からも、労働省としては、やはり重大な問題であるし、万全を期してやってきているというお話でありますから、いわゆるこの地対協の見解というか意見具申がどういうふうになってほしいというのはある程度は一致しているのじゃないかと思います。いわゆる関係者の方々がこれまで努力されてきておりますけれども、そういう差別と闘っておられる方々の声が地対協の二十九日に予定されている意見具申の中に反映されるように、ぜひ前向きの御努力をもう一歩進めていただきたいと思うのでありますけれども局長いかがでしょうか。
  33. 若林之矩

    若林政府委員 先ほど申し上げましたように、この残された一年の啓発、指導等につきましては現在全力を挙げて取り組んでいるとこうでございますけれども、現在地対協で御審議を進められておるわけでございますが、先ほど来申し上げましたように、私どもといたしましては、就職差別の現状、不安定就労の実態等につきましてこれまで十分状況説明を進めてまいったつもりでございます。私どもはそういったような御意見を申し上げてまいりました。  今先生指摘のように意見具申が予定されているわけでございまして、この意見具申を尊重して今後の対策を講ずべきだと考えております。
  34. 岩田順介

    ○岩田委員 地対協といういわゆる機関があるわけですから、労働省としてはとやかく言えないと思いますが、ただ、先ほども若干触れましたが、総理が、いわゆる憲法に保障された重大な問題である、これは差別をなくすために頑張っていきますというふうにおっしゃっているのですね。しかしその後、一般法への対策に切りかえますなんということ宣言われますと、地対協に対する一定の示唆を与えることになりはしないか、これを私どもは心配をしたわけです、参議院ではそのことはちょっと外された答弁になっているらしいのですけれども。したがって、今局長がおっしゃいましたように、頻繁であるか何回かは知りませんけれども、地対協に労働省認識と実態について詳しく申し上げている、ということは努力を積み上げておられますけれども、ああいうことを総理が言われますと、我々としては心配せざるを得ないのですね、示唆を与えていることになりはしないかという。  そこで、大臣に同じことを御質問して申しわけないと思いますけれども、「同和行政は、基本的には国の責任において当然行なうべき行政であって、過渡的な特殊行政でもなければ、行政外の行政でもない。部落差別が現存するかぎりこの行政は積極的に推進されなければならない。」こういうふうに同対審は言っているわけです。まさにそのと括りだろうと思いますね。政府と関係者の交渉の中でいろいろ言われておりますけれども、残存事業がまだまだ三千八百億とも四千億とも言われている。これは政府も認めざるを得ない、こういう事態に来ていると思いますね。その中身についても、申し上げましたように陰湿になっているということは事実であります。したがって、地対協の行方こそ今非常に重大な関心を集めているわけでありますが、この問題について、いわゆる地対協の具申も前向きに出るように、これは事務次官が出られていますね、大臣としても閣議を初めいろいろ意見を申される機会もたくさんあると思いますが、今御答弁になったようなことを前提とするならば、今のまま切るというのはとんでもない、もっとやはり積極的な行政を促進をするべきであるというようなことについて僕は期待をするわけであります。したがって、地対協に対して我々の期待が届いてそういう結論が出ますように、ひとつ大臣の御努力と決意をお願いしたいと思うのです。
  35. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、同和問題の解決は、行政の責務であると同時に国民課題であることを十分承知しております。労働省といたしましては、同和関係住民に就職の機会均等を確保することが重要である、こういう認識のもとに就職差別及び不安定就業の解消のために最大限の努力を傾注してまいったところでございます。  平成四年度以降の対応につきましては、現在、地対協の場で審議されているところでございますし、同協議会の意見を尊重し、具体的な対応を検討してまいりたいと考えております。
  36. 岩田順介

    ○岩田委員 これで同和問題に対して質問を終わりますけれども、あえて最後に誤解がないように申し上げておきたいのは、残存事業について予算をつければいいということを私は望んで発言をしているわけじゃないんですね。あと年間、今の地対財特法みたいな法律を名前を変えて新しく発足させて事業を延長させればそれで事足りるということを私は言っているわけじゃないんです。まさに人権が国際問題になっている時期に、もう少し政府としては積極的に前向きになっていいのではないかということが一つです。  それから、恐らく関係者の方々も、もちろん予算をつけることは大事でありますけれども、それにも増して、日本における人権確立の基本である基本法をつくってほしい、そうでなければ、部落問題を中心とする日本の差別というのはいかがなものか。諸外国からいろいろ人権問題で批判されるようなことは、もう国民だれだって嫌なんですよ。これは政府が一番克服しなければならぬ問題ですね。そういう立場皆さん方は要求されているし、私もそういうことでこの地対協の意見具申をいいものが出るように要請をしているということを御確認をいただきたいと思う。よろしくお願いを申し上げたいと思います。  それから、ILO問題について幾つかお尋ねをしたいと思います。  第七十八回のILOの総会が行われておりますけれども、これには小里前労働大臣が御出席になっておりまして、高い次元で演説をされております。私も一読をさせていただきましたし、好評を博したということも出席者からも聞いておるところであります。  この七十八回の総会の報告書を読ませていただきまして、私、幾つか印象に残ることがございました。  その一つは、やはり東西対立が終わったという歴然とした事実がこのILOの場にもあらわれていますね。これまでいわゆる東ヨーロッパの政府というのは、ILOの主張にはほとんどと言っていいほどノーであった、こういう状況であったのですね。ILOの結社の自由条約の適用等についてはかなり激しいやりとりがあったというふうに聞いておりますが、今回は東ヨーロッパの諸国もILOの主張を全面的に受け入れるというのが一つの特徴ではなかったかというふうに感じたわけであります。  それから二つ目の問題は、IMFの事務局長が出席をされておりますね。しょっちゅう見えるのかどうか知りませんけれども、演説をされております。この趣旨というのは、かなり多くの発展途上国がIMFの監督下で経済再建をやっているという実情があるようでありますけれども、したがって、今後のこれらの発展途上国への技術援助を初めいわゆる復興計画についてILOとIMFは共同してやろう、恐らく国連も今まで以上に共同作業が進むと思いますけれども、こういうことの要請ではなかったか、こういうふうに思います。  三つ目は、アパルトヘイトの問題について、この廃止についての重要な段階を迎えておりますが、ILO総会の反アパルトヘイト委員会は、南アフリカに対する制裁を今回の総会でも呼びかけておりますけれども日本はこれは採択を保留していますね。アメリカもこれには賛成いたしておりませんけれども、残念なことだと思います。  しかし、二、三申し上げました私の印象の特徴からしましても、ここのところの国際化の時代というのが特徴になっていくのではないか、こういうふうに思っているわけであります。その中における小里前労働大臣の演説というのは、時宜を得たものであろうという評価をされておりますが、私も全くそのとおりに思うわけであります。  大臣は、ILOの活動、責務、これらについて日本が積極的に貢献したいというふうにおっしゃっていますが、大臣の決意をお伺いしておきたいと思います。
  37. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生御案内のとおり、ILOは、条約及び勧告の採択により国際労働基準を設定するほか、開発途上国に対する技術協力等広範な活動を行っておるわけでございます。  我が国は、ILOの趣旨に賛同し、大正八年のILO創設とともにその加盟国となり、昭和二十九年以降は常任理事国の一員としてILOの運営に参加をしてきているところでございます。今後とも、国際社会における我が国の果たす役割を考慮し、技術協力を初めとするILOの諸活動に引き続き積極的に参加をしてまいりたいと考えております。
  38. 岩田順介

    ○岩田委員 今大臣お答えいただきましたように、ILOの役割というのはますます大きくなってくるし、我が国の責任も大きくなっていくであろうということが言えると思うのでありますが、今日、ILOの役割については、大きくは二つの側面から言うことができるのじゃないかと思います。  一つは、言うまでもありませんけれども、採択された百七十二本の条約に代表されるように、普遍的な国際労働基準の確立をどうしていくか、これが一つだろうと思います。二つ目は、今質問にお答えいただきましたけれども、発展途上国の失業と貧困の克服のために、これらの国の国際労働基準をどう上げていくか、それを先進国を中心とした国々がどう協力していくかというこの重要なセンターといいますかそういった場にもILOはなっていくのではないかというふうに思うのであります。  これらの基本的な役割の達成のために、地域的なまたは世界的な協力の枠組みをつくっていく。ILOの独自の機能である政労使の三者協議の原則にのっとって推進していくことは当然のことでありますが、この点についての御見解をお伺いをしたい。
  39. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 我が国は、ILOの理事会において投票権を有する理事に政労使それぞれ選任されている数少ない加盟国の一つでございますし、政労使ともILOの活動に積極的に参加をしてまいったところでございます。今後とも労使の協力のもとに国際労働基準の設定、技術協力の推進等のILOの諸活動に対して積極的に参加をしてまいりたいと思います。  実は私、政治家になる前に大蔵省の役人をしておりまして、その当時IMFの日本代表理事の秘書役を三年ワシントンでいたしまして、そういう点からも国際的な経済協力、特に途上国の経済発展については多少個人的な経験も有しておりますので、そういう中で、お話しございましたように、途上国の労働状況改善といいますかボトムアップということは私はこれが大きな国際的な課題だと思いますので、今申しましたように日本立場、政労使それぞれの代表を出しておるという大変重要な立場でございますので、ひとついろんな面で協力をしてまいりたい、参加をしてまいりたいと考えております。
  40. 岩田順介

    ○岩田委員 一面というか基本的には、ILOを通じた日本の国際貢献というのは、まさに真の貢献になっていくと思いますね。派手でないわけですから、したがっていそういう意味では大変努力も要ると思います。今大臣もおっしゃったわけでありますが、日本のILOにおける役割もおのずから決まってくるわけですね。一つは、国内のいわゆるILO条約の批准をどう促進をしていくかということであります。ここでは特に国際問題についてお尋ねをしているわけでありますが、二つ目には、技術協力を中心とする国際貢献といいますか協力、そうなりますと、金や人を出すということになっていくわけですね。具体的にはここになっていくわけですね、後ほどお伺いしますけれども。その点では、最近まあ負担率や任意拠出金も伸びてはおりますけれども、まだまだという感じがするんですが、基本的にはやはり貢献の中身が具体的でなきゃならぬと思いますが、一体それはどういう御決意でしょうか。
  41. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 資金的な面につきましては、日本はアメリカに次いで第二番目の資金供与額の大きな国ではないかと思います。だから十分ということではないと思うわけでありますけれども、私は労働大臣になりましてからいろいろ労働省の幹部と話をしておりますが、日本が世界に対する経済的な貢献の一つに、資金的な援助ももちろんあるでしょう、資金的協力もあるでしょう。だけれどもいかにお金を出してもそのお金を有効に使えるのは、やはり末端の労働の現場ですぐれた技術者、技能者がいなければお金も使えないわけでございますし、また、そういった技能者、技術者をまとめて、必ずしも大規模経営じゃなくていいと思うのでありますが、我が国中小企業のようなそういう能率のいい生産活動をする、そのために必要なのは、いわゆるマネジェリアルなスキル、経営能力だと思うのです。そういうことを積極的に世界に対して協力をしていく、技術の移転をするということが非常に大事なことではないか、こう思います。同時に、先ほど申しましたように、労働階級の最低の生活環境といいますか、労働基準、いわばボトムアップということも大事で、ただ働けばいいものじゃない、こういうことでありますから、そういった点でILOを通じて国際的な労働者生活の向上、そして技術の向上にこれまで以上に我が国がやれることがあるんではないか、こう思っておりますので、ひとつこの問題についてはこれから省を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
  42. 岩田順介

    ○岩田委員 確かに分担金の方はアメリカに次いで二位になっていますね。ILOの予算は先ほども若干申し上げましたが、分担金による通常予算と、それから、いわゆる国連開発計画等の資金と拠出国の任意拠出金によって行う予算、概略二つ分かれておると聞いておりますけれども、最近では国連開発計画から出される資金が加盟国の財政難でかなり落ち込んできているんではないか、落ち込むんではないかということ等も考え合わせますと、需要は多くなっていくけれども資金が非常に心配になってくる、平たく言うとこういう情勢になっていくんではないかと思いますね。そうしますと、我が国への期待というのはますます大きくなっていくだろうというふうに考えざるを得ないのですね。  そこで、いわゆる任意というのは一体どれぐらいになっておりましょうか、任意に出した金額というのは。
  43. 齋藤邦彦

    齋藤(邦)政府委員 今先生指摘のようにILOに対しまして我が国が拠出いたします金額、お金は、分担金としましては、日本円にしますと大体三十三億ばかり拠出をいたしております。そのほかに任意の意思による拠出金がございますが、一九九〇年におきまして約百五十万ドル、日本円に直しますと約二億二千万を拠出しておりまして、拠出国の中では第九番目というような形になっております。  確かに、先生指摘のように、今後いろいろと我が国に対します期待も高まってくるだろうというふうに思いますし、我が国としましても、積極的にILOの活動に貢献をするというような趣旨からいたしまして、さらに積極的に今後も予算の許す範囲内で協力をしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  44. 岩田順介

    ○岩田委員 今お答えいただきましたが、大体二億一千百万ぐらいですね。  これは、つまり分担金の方というのは、ILOの経常経費といいますかそういう運営費に当たる、任意分担の方はいわゆるマルチ・バイ協力というふうに言われておりますけれども、そういうふうに理解していいですね。
  45. 齋藤邦彦

    齋藤(邦)政府委員 お答えいたします。  分担金の方は通常のILO活動に要する経費でございますし、また、拠出金の方は、使途を定めまして各国がILOに拠出をする金額、例えばでございますけれども平成三年度の例をとりますと、我が国が拠出いたしましたのは二億三千万ばかりでございますが、アジア地域の機械災害防止の推進に関する協力ですとか、東欧における労働問題に関する調査研究とか、このように使途を定めてILOに拠出をしている経費でございます。
  46. 岩田順介

    ○岩田委員 いずれにいたしましても、積極的な協力をすることは、相手国の復興計画に寄与するということだけではなくて、いわゆる海外からの日本認識も変わっていくだろうという意味においても積極的に行っていくべきであろうというふうに思います。しかし、この協力は、北欧諸国というのがかなり目立ちますね。これは地域性もあるのでありましょうけれども、例えば日本の場合はノルウェーの一五%程度なんですね。こういうふうになっておるわけですね。これではやはりILOに派遣されている職員も、理事方々も余り肩身の広い思いじゃないのじゃないか。これは別にしましても、大臣おっしゃるように積極的な対策お願いをしておきたいと思います。  それからもう一つ、具体的な問題としてアソシエートエキスパート制度というのがございますね。これは今、日本からどういうふうに派遣をされているのか、お聞きをしたいと思います。
  47. 齋藤邦彦

    齋藤(邦)政府委員 現在ILO事務局職員は約二千九百人ばかりおります。そのうち日本人職員は、ILO本部あるいは支部に正規職員としまして十二名、そのほかにアソシエートエキスパートとして十人がそれぞれILOの活動に従事しておる、こういうような現状でございます。
  48. 岩田順介

    ○岩田委員 私がいただきました資料によりましても、確かにふえてはおりますけれども、大したふえ方じゃないですね。派遣している職員は八人、ドナー国の中では日本は八位というふうになっていますが、オランダは四十名も出していますね。それからベルギーは二十一名。イタリアさえもと言ったら悪いのですけれども十二名、こういうことになっているわけであります。  小里前労働大臣の演説の中には、フィラデルフィア宣言を引用されておりまして、「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である。」こういうことが言われておるわけでありますが、マルチ・バイ協力というのはアジア・太平洋の地域の技能開発計画に大きな貢献を期待されておりますし、そうなっていくだろうと思いますが、積極的な日本のILOへの参加協力を強く要請をしておきたいと思います。  時間がございませんから、はしょって国内問題について一、二をお尋ねをしたいと思いますが、大臣、今、加盟国百四十八カ国ありますけれどもさきの総会で一本追加されておりますから条約数は百七十二本、勧告数は百七十八本というふうに聞いております。日本は批准数が三十九なんですね。時間がございませんから次回の機会にお尋ねしたいと思いますが、とにかく今、日本労働情勢や国際的に置かれている日本立場からいきまして、早急に批准しなければならぬ条約というのはメジロ押しに並んでいるのですよ。今までは、環境が整備されてないとか、国内における受け皿がない、こういうふうにずっとおっしゃってきたのですけれども、その言い分はもう通らなくなっていますね。一々は申し上げませんが、かなり環境はよくなっているわけですよ。  そこで、加盟国の平均条約批准数というのは三十七、OECDだけをとってみますと平均六十四あるのしですね。日本は三十九、これについてどう思われますか。
  49. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生指摘のとおり、平均よりは多少上回っておるがOECD加盟国からは依然として差があるということは、これは私たち改善をしなければならぬことだと思っております。  ただ、やはり、ILO条約を批准するためにはいろいろ国内体制の準備もございますので、そういう体制づくりにはこれまでも努力してまいったわけでございますが、これからなお一層努力をいたしまして、できるだけILO条約批准の数をこれからもふやしていくことが、やはり日本に対していろいろなことを依然として欧米から言われるわけでありますが、そういうことに対しても我々は努力をしていくべきだ、かように考えております。
  50. 岩田順介

    ○岩田委員 積極的に進めていくという前向きの御答弁でありますが、もう少し申し上げますと、例えば強制労働廃止に関する百五号条約などは、OECDでは一国だけが批准していないのです。あと全部済んでおるのですよ。それから十四号条約、これは七つを残して全部批准をしている。それから百十一号条約、これは先ほど御質問申し上げました部落差別、日本の差別問題等と無関係でありませんね。これでも日本はしておりませんが、OECDでは四カ国だけが未批准、こうなっていますね。単純に見ることはできぬと思いますよ、単純に見ることはできないけれども、これだけ落差がつきますと、日本に対する批判は一つの条件になることは確かですね。こういう点で申し上げているわけでありますが、先ほど申し上げましたように、対応するに当たっての受け皿だとか環境の整備というのは随分変わっているわけですから、具体的にどういう点で進めるということは、きょうは無理ならばやはり近々明確にしていくというぐらいの方針は必要ではないかと思いますね。  きのうの新聞ですか、新ラウンドの対象に単純労働者問題が上がってくるというこども新聞報道されていますね。当然そうなっていくと思いますが、そういった点でも、いわゆる日本政府としては積極的に対策を講じていただかなければならぬと思いますけれども、その意味では、日本の国内事情もさることながら、国際的な視野に立った対応策というのが必要だというふうに思いますが、いかがでしょう。
  51. 齋藤邦彦

    齋藤(邦)政府委員 従来から私どもILO条約の批准はできるだけ多くしたいという基本方針でまいったところでございます。ただ、我が国は、国際条約を一たん批准いたしますとそれを必ず厳格に遵守をしなければならないというふうな基本的な考え方をまた逆に持っておりまして、そういう意味で国内法制との整合性を十分確保した上でILO秦統を批准するという方針になってきておるわけでございます。今後はこういうような方針でいきたいというふうに思いますが、いずれにいたしましても、労使関係者の御意見を十分伺いながら、条約個々につきまして問題点を検討した上で批准の促進に努めてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  52. 岩田順介

    ○岩田委員 今の御答弁と関連をするわけですが、労働省はこのために国際労働問題連絡会議の中にILO条約批准促進のための小委員会を設置されましたね。これはもとより積極的な姿勢だというふうに思われるわけでありますが、この小委員会が今どういうことになっているのか、どういう議論をされているのか、今お答えになったことの延長になると思いますが、もう少し具体的にお答えいただけませんか。
  53. 齋藤邦彦

    齋藤(邦)政府委員 ILO小委員会は、先生指摘のように国際労働問題連絡会議の下部委員会というような形で設置をいたしております。これは政労使の自由な意見交換をもとにしまして、ILO条約の批准についての意見交換あるいは研究をする場というような形で設けたものでございます。最近採択されました条約を中心にいたしまして、批准の可能性についていろいろ御検討お願いしたところでございまして、特に最近ではILO百五十九号条約の批准の可能性を検討するように御提言をいただいております。委員方々、これは労使の方を中心としてお願いをしておる委員会でございますが、今後さらにここで具体的な条約の批准の可否等も含めていろいろ意見交換をした上で検討をしていただく、こういうことになると思っております。
  54. 岩田順介

    ○岩田委員 百五十九号条約というのは、障害者職業リハビリテーションに関する条約ですね。ぜひとも早急にこれを批准するように努力お願いをしておきたいと思うのですが、いずれにしましても、日本は、六十一年の百二十二号、雇用政策ですね、それから百四十二号、人的資源開発に関する条約ですが、この二本を最後にずっとしていないのですね。六十一年というのは円高不況のピークの時代ですよね。それからずっと経済もよくなった、最近はちょっといろいろ言われておりますけれども。六十一年というのは不況業種だとか不況地域がずっとたくさん指定された大変な時期だったのですよ。その後何も扱っていないのですよ。高齢者社会というけれども、それからノーマライゼーションとはいいますけれども、ようやく百五十九号条約の可能性を今模索している。やはり小委員会ではもっと、当面というか中長期に、エリアーごとにでも優先順位を決めてきちんと議論をしていくという系統的な作業が必要じゃないかというふうに私は思います。  例えば、優先順位は別にしましても、百十一号条約を一体どうするのか、これは喫緊な問題だと思います。それから週四十時間制等々の問題については、四十七号、十四号、百六号等々ありますが、ぜひとも今政府、労働省が一生懸命やろうとしておられる労働政策基本と余りずれないようにやっていくことが必要な時期に来ているのではないかというふうに感じますので、そのことを強く要請申し上げ、最後に大臣に、いわゆる部落差別の完全解消のために当面重要な時期に差しかかっておりますので、一層の御尽力、御努力を要請申し上げまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  55. 川崎寛治

    川崎委員長 伊東秀子君。
  56. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 社会党の伊東秀子でございます。  きょうは、さきの九月にフィリピンのダーンサーが福島県のナイトクラブで働いていて死亡したという事件、これが昨日の新聞報道では、フィリピンが事実上フィリピン女性のこういった仕事への出稼ぎを禁止する正式決定をしたという報道にまでつながっている、この問題についていろいろ政府の見解等を伺いたいと思います。  まず、本事件の死亡原因をめぐって、日本側は病死である、それで、フィリピン側の方はこれは事故死ないしは殺人的な部分もあるのではないかという疑惑を持って、トーレス労働大臣が来日し調査をしたようでございます。その死因をめぐっては、日本の病院側の見解は病死であるということを貫き、フィリピン側は十分納得しないまま帰国したということを報道を通じて伺っているわけでございますけれども、この福島県のナイトクラブでは、ことしの三月にも九人のダンサーが集団脱走し、フィリピンの大使館に逃げ込んだ。その件については、賃金の不払いの解消とかさまざまな大使館側の説得で雇い主が引き取りに来て、七人はもとに戻ったけれども、二人の女性はHELPという民間のこういったフィリピン女性の救助組織に残り、HELPを通して交渉してさまざまな問題の解消に努力したと伝えられております。  警察庁にお伺いしたいのですが、この死亡原因の中身ではございません、なぜこういった死亡するに至ったかの背景に対する疑問がフィリピン政府に強いと思いますので、ことし三月の集団脱走事件、これがどういう背景で起こったかということもあわせて調査なさいましたでしょうか、それで、その調査した結果はいかがであったか、この二点についてお答えお願いいたします。
  57. 小田村初男

    ○小田村説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘の件でございますが、警察庁では、本年十月初めに福島県下の病院で死亡したフィリピン人ダンサーが、虐待等の暴行を受けたことにより死亡したとしてフィリピンで問題となっているとの情報を外務省等から入手をいたしまして、福島県警等を通じて調査を行ったところであります。その結果、死亡したフィリピン人ダンサーはマリクレス・シオゾンさん、二十二歳で、有効期間六カ月の興行ビザを取得し、本年四月二十七日に来日し、以後福島県東白川郡に所在するクラブにダンサーとして稼働していたこと、本年九月七日、稼働先で倒れ、雇用主及び同僚等により近くの病院に収容され、即日入院しましたが、治療中の九月十四日死亡したこと、遺体は空輸することになり、死亡当日に都内の病院に搬送され、防腐処置を講じた後の九月二十六日に家族のもとに送り届けられたことなどとともに、病院関係者の調査から、その死因は劇症肝炎による多臓器不全であることが判明したのであります。  しかしながら、当該女性につきましては、冒頭に申し上げましたように、虐待等の暴行を受けたとの風評がフィリピンにおいてありましたことから、このような事実の調査を徹底して行ったのでありますが、このような事実はありませんでした。また、外務省を通じて、フィリピン側から解剖結果報告書を入手するとともに、来日した検視担当官からも事情聴取を行う一方、病院の詳細な診療記録等、あわせて法医専門家や医学専門家の意見を求め、総合的に判断した結果、事件性はなく、劇症肝炎による病死と認められ北ところであります。  また、この事案につきまして、先生指摘のように、ことし三月にフェイセスで稼働していましたフィリピン人女性九名が東京の方に行ったという事案、これがありまして、これにつきましても話がありましたので、関係者の事情聴取を行ったわけであります。当事者である女性自体は既にフィリピンに帰国した後でございますので、その他の関係者から事情を聴取をしたということでありますが、九名の女性がアパートを出て、五日後にそのうちの七名の女性が戻ってきたということでありますが、そうしたところで、経営者等の話を総合いたしますと、東京のプロモーションから東京にもっとよい店があるとの誘いがあって東京に行ったが、話が全然違い、フィリピン大使館に駆け込み、大使館員からフェイセスの経営者佐藤に迎えに来てもらいたいという連絡があり、迎えに行ったということでありました。また、この七名の女性につきましては、滞在有効期間の六月十日まで稼働して帰国しており、その他の同僚等の話によりましても虐待等により逃げ出したという事実については確認されておりません。
  58. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 その脱走事件に関してなんですが、HELPに救護を申し入れた二名の女性の話によりますと、なぜ脱走したかという理由については、非常に練習がきつかったということが第一点と、それから客が少ないと、ダンサーでありかつホステスをさせられていたわけですけれども、その当該ホステスの責任だということでペナルティーと称して給料を差し引かれたり監禁をされた、暴行は確かに受けてないが監禁をされたということ、それから体重が来日時よりもふえた、太ったということで食事制限をちゃんとやってないとかいうようないろいろな理由で監禁された、こういうようなことで非常に怖いというような趣旨で、暴行、虐待は受けてないけれども、精神的に非常に恐怖状態がありHELPにそのままとどまったということを、私はHELPの側からのお話を聞いているわけでございますが、その点は調査なさいましたでしょうか。
  59. 小田村初男

    ○小田村説明員 監禁されていたということでありますが、その当時警察には届けがなく、また、今回このフェイセスにつきまして調査をいたしましたが、フェイセスに稼働しておりますフィリピン人女性十四名はニカ所のアパートに居住しておりまして、シオゾンさんはフェイセスから約四キロ離れたアパートに同僚女性二名と共回生活をしておりまして、日常の生活は自由に買い物に出かけるなど、監禁されていたとの事実は確認されておりません。
  60. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 私が伺ったのは、その集団脱走のときの脱走の理由に監禁等があった、それから客が少ないといってペナルティーを科して監禁、それから給料差し引きがあった、この点について調査したかということなんですが、時間もありませんので、多分してないから今のようなお答えになったものと推測いたします。  さらには、今回トーレス労働大臣が訪日されたときに当時の小里労働大臣とお会いになった。そのときに小里労働大臣が、労働基準法上の雇用労働者については日本労働法の適用を受け昏が芸能人には適用されないんだ、だから、今回のような事件の場合には日本の労基法の適用もない、ホステスなどに従事していれば労働法の適用も認められる、しかし、この場合には不法就労となり退去強制の対象になるというような趣旨をお話しになったという報道に接しているわけでございますが、この事実関係いかがでございましょうか。どういう発言をなさいましたのでしょうか。
  61. 齋藤邦彦

    齋藤(邦)政府委員 昨十月の二十二日にフィリピンのトーレス労働雇用庁長官が小里労働大臣のところに表敬訪問をされました。会談におきましては、日本におけるフィリピン労働者一般の福祉問題についての意見の交換が行われたわけでございます。席上前大臣が申し上げましたことは、日本で働きます外国人労働者については日本人と同様に労働基準関係法令が適用される、また我が国としてはその保護に努めているということが第一点でございます。また、第二点としまして、芸能人、一般的にエンターテイナーと言っていいのかもしれませんが、そういうような方については裁量範囲が大きく芸術性があるので、これは日本人の場合と全く同様でございますが、一般には労働基準関係法令の労働者には該当しない、したがって、労働基準関係法令の適用もないというような事情を一般論として御説明をされた、こういうことでございます。
  62. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 一般論として御説明されたということでございますが、労働省は本件に際して、このマリクレスさんがどのような労働実態にあったか、それは実態調査なさっておられますか。
  63. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 ただいま問題になっておりますダンサーの基準法上の問題でございますけれども、御承知のように、労働基準法労働者と申しますのは、事業に使用されて賃金を支払われる者ということになるわけでございます。一方、興行の在留資格により入国する人が活動できる範囲は、法令上「演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動」に限られておるわけでございます。  そういう観点から、この事件といいますか問題になりました直後に、所管の白河の労働基準監督署が当該クラブに参りまして関係者からの話も聞いております。その結果、これはショーに二回出ておったわけでございますが、その合間に客席にはべるということもあったわけですけれども、全体を総合してやはり興行という仕事であって、労働基準法で言うところの労働者には該当しないという判断を下したところでございます。
  64. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 フィリピンから来ているこの女性ダンサーたち労働の実態は、マリクレスさんの場合もそうですけれども、ショーに出て、そのショー以外の決められた拘束時間にはホステスとして接客業務をやっている、接客業務をやらなければ、これがやはりまたペナルティーということで給料の差し引きに当たるような労働実態にあるというふうに言われておりますが、これは明らかに労働者性を認めるべき事案ではなかろうか。  それは法務省がお出しになっておりますマニュアルを見ましても、これは法務省の入管局が出している「外国の芸能人を招くには」というガイドラインというのですかマニュアルなんですけれども、そこに「査証事前協議による「ビザ申請」の際の提出書類」という項目がございまして、どういうものを提出しなければいけないかというところには、まずビザの申請書、次に写真を二枚、さらに芸能人本人に関する書類としては、芸歴書とか芸能人としての資格証明書とかそういったもの、さらに四番目には「招聴者に関する書類」という部分がございまして、そこの一番目に雇用契約書の写しというものがございます。つまり、ここで考えられていることは、当然のこととして芸能人本人と招聘者との間に雇用契約が結ばれて、その雇用契約に基づいてダンサーが来日することを政府として認めているということで、雇用契約に基づいて労働する以上、労働者性を否定する根拠は全くないではないかということでございます。さらには「在留資格認定証明書の交付による方法」という部分におきましても、「在留資格認定証明書交付申請の際の提出書類」の中に、やはり招聴者に関する書類としては雇用契約書の写しを出しなさい、「招聴者が芸能人を雇用する条件を明示し夫もので、出演内容、契約機関、労働時間、休日等の労働条件及び報酬を定めたもの」と、政府発行の文書にはっきりこういうふうに書いてあるわけですよね。  とすれば、日本政府として、外国から来るこういったダンサー等は招聴者との雇用契約に基づいて来て労働していると言いながら、こういったショーとホステスとの業務をさせられているダンサーたちに対してなぜ労働者性を否定するのか、どこの要件が当たらないということで今の労働省の答弁になったのか、具体的にお答えいただきたいのです。
  65. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 ただいまビザ申請の際の書類に雇用契約書があるではないかということのほかにいろいろ御質問がございましたけれども、雇用契約、一定の興行上の労務を提供するといいますかそれに対して報酬を払うという契約であろうかと思いますけれども、そういった仕事内容基準法で言うところの事業に雇用されて賃金を受ける関係がどうかという実質の方から私どもは判断をいたすわけでございます。  そういうことからいたしますと、どういう場合に使用されて賃金を払われる労働者であるかということを判断いたします場合に、やはりその業務の遂行に当たってどのくらい具体的な指示を受けるか、あるいはそういう具体的な指示に対してどういうふうに従うかという従属性が非常に大きな要素になるわけでございます。  そうした点から見ますと、このダンサーは、いろいろなものがあると思いますけれども、要するにショーをやっているわけで、そのショーの内容といいますのは、一般の労働と違いまして言ってみれば芸術性のあるものである。そういった芸術性の発現を業務として行うということで、本人の芸術性の発揮ということが非常に大きな要素になるという点からすると、基準法上に言うところの労働者に当たらないのではないかという判断を一般的にはいたしておるところでございます。  ただ、具体的にいろいろなケースがあって、実際の問題としてこれはやはり労働者に当たるという場合があり得ることは否定はできないわけでございまして、そういう場合につきましては、労働関係法の違反があれば、それに応じまして我々としては厳正に対応するということにいたしております。  このただいま具体的に問題になっておりますシオゾンさんの場合につきましては、私どもの監督署の調査の結一果では、労働者と見ることはできないのではないか、こういう判断に達したわけでございます。
  66. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今大変きれいごとをおっしゃいましたけれども、芸術性の高いそういったショーを見せているというようなことではなくて、実際にフィリピンから入っているダンサーは、本当にストリップまがいのようなことをやっているというかやらされている。それで、なぜ集団脱走が起きたかということについても、売春やストリップまがいのことを強要された、それが本当に嫌だということも彼女たちの理由の一つに挙げているのですよね。そんな高級な、バレリーナとかあるいはそういう芸術性の高い、本当におよそ労働者とは言えないような実態にないということは労働省も十分おわかりじゃないかと私は思うわけです。そして、芸術家であればショーだけで後は全く拘束のない時間であるはずなのに、ショー以外の時間に接客業務をやらされている。しかも、彼女たちがどういう実態におるかといいますと、札幌はすすきのという大歓楽街がありまして、フィリピンのダンサーもたくさん入っておりまして、彼女たちのそういう問題、私も弁護士をやっているときによく話を聞いていたのですけれども、そこから出てきた話でも、ホステス業務を拒否すればペナルティーとして給料から天引きされるというようなこととか、週に一回とかあるいは月に二回とか客を同伴という形で連れてこないとそれがまたペナルティーになる、男性の客をですね、別にそれは売春というわけではないりですけれども。それから、欠勤とか遅刻はこれがまたペナルティーの理由になる。しかも、一応この法務省のマニュアルによると二十万以上の報酬となっているけれども、二十万といいますと今の換算レートでは千五百ドルから千六百ドルぐらいになるはずですが、実際には五百ドルから六百ドルぐらいのものしか受けていない。それだけ中間のピンはねがあるということとか、日中の行動もいわゆる監視されている状況にあるとか、さらには、五百ドルとか六百ドルも毎月支給されるのではなくて、最初に日本に入るときには確かに支度金が要るので一カ月分はもらうけれどもあとの残った五カ月分は帰国のときにしかもらえない、毎月もらえるのは一日五百円ぐらいの食費、それを十日分とか一週間まとめて渡されるだけで、それでインスタントラーメンを食べたり、あるいは米だけは与えてくれるので、六畳のアパートに三人とかあるいは四人とか暮らさせられているのですけれども、そういうその五百円の範囲内で米以外の主食を食べなければいけない。しかも、夜の御飯は全部お客の接客業務の中に出てくる。何と言えばいいのでしょうか、オードブルで済ませてしまうとかあるいはお客のおごりで済ます。そして、そのお客の接客業務のときに売春の約束とかそういったものが取りづけられるような仕組みになっているということを私は何人ものホステスの方から伺うております。私みたいなそういう職業の人間と会うことすらも怖がって、本当に私がそういう人が集まっているところに一友達のような格好で出ていって話を聞くというようなことしかできない状況なんですね。このことはHELPの方にも私、お会いをしまして、全く同じ状況だということを伺っております。  そういう労働実態に置かれている彼女たちが芸術性の高いショーをやっていて、だから労働者性はないんだ、こういったことを、しかも、そういう立場から労働省が彼女たち労働実態に対する、雇用主やプロモーターに対する監視を十分になさってないからこそこういった国際問題に発展するようなことになったのではないか考えるわけでございます。この問題については、ぜひとも今回のことを契機にフィリピン女性の置かれている実態を労働省が責任を持って実態調査をしてもらいたいし、さらにはプロモーターに対する、あるいは実際に出演させているナイトクラブやキャバレー、あるいはスナックとかホテル、こういったところへの指導強化を強めていただきたいと思うわけですが、労働大臣、この点についてはいかがでございましょうか。
  67. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生指摘のフィリピン女性ダンサーの雇用関係については、今事務局の方で御説明したようなことで、いわゆる労働基準法対象外でおる、こういうことのようでございますが、ただ、先生指摘のいろいろな諸点につきましては私も十分理解ができますし、そういった外国から我が国に来られる労働者方々がどういうような労働環境、生活環境で過ごされるかということは、これからそういった方々がまた本国に帰っていらっしゃって日本にどういうイメージを持つかということとも関係してまいります。そういうわけですから、私たちとしては十分慎重にまた真剣に取り組まなければならない問題だと思いますので、勉強してみたいと思っております。
  68. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 大変前向きな御答弁をいただきまして心強く感じる次第でございますが、そうしますと、もう一回確認的に伺わせていただきますれば、こういった実態について労働省としては今後調査検討していくというふうに承ってよろしゅうございますでしょうか。
  69. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 これはいろいろな問題が絡んでおりますので、労働省単独ででき令こと交いろいろ関係役所もございますので、私はそういうところといろいろ調整をしながら研究をしてみたい、こういうことでございます。
  70. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 同じようなことは、これは国際問題、フィリピンと日本国との問題になっておるわけでございますが、なぜフィリピンがこういうような態度に出たかということも含めまして、今後のこと、外務省のお考えいかがでございましょうか。
  71. 内藤昌平

    ○内藤説明員 お答え申し上げます。  先ほど来先生指摘のように、外国人であるがゆえにこうむるハンディキャップ、法律制度上は内外平等ということになっておりますが、いろいろな実態があろうかと思います。なかんずく興行というビザを持ちながら、職業活動が許された資格もありながら、しかしその資格外活動ということからくる不法就労的な身分、そういういわば日陰的な身分を自覚しているために、法律の救済をみずから求めにくくなっている心理、こういうことがいろいろ複雑に絡んでいる実態については私どももいろいろ心配しておりまして、問題の都度関係各省の方に配慮をお願いしておりますし、これからもこの点については関係省庁の方々の御協力を得たいと思っております。
  72. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 あわせて内藤さんにお尋ねしたいのですが、今フィリピン政府としてこういうかなり思い切った措置を決定したというふうに私は考えられるわけですけれども、フィリピンと日本の信義の問題になるのではなかろうか。つまり、こういう興行者として招いていながら実態はホステスをさせているということに大変フィリピンの側は怒っているわけでございますが、今後こういったというか、この問題に対して外務省としてはどう対処していくおつもりでいらっしゃいますでしょうか。
  73. 内藤昌平

    ○内藤説明員 お答えします。  基本的に、先ほど来の労働省からの御説明もありますように、雇用関係という契約ベースで雇用主とその雇われる側という相互の契約関係にあるものですから、法制度がそのまま個別のケースにどこまで適用できるかということは、現実問題として、これは日本人の場合であっても同じような問題がいろいろあろうかとは思うのです。しかし、その中で政府としてはできるだけそういう問題が起きないようにかねてから、特にフィリピンの場合は何度も首脳レベルでも協議をしております。そういうそごが生じないように、特に興行関係方々につきましては、フィリピン政府は芸能者証明書というものを出すまでに至っておるわけでございますが、今般さらにその要件を厳格にする、こういうこともフィリピン政府側からの一種の改善策ということと私どもは受けておりますし、また私どもも、先ほど来申し上げているような姿勢でできるだけ問題が少なくなるように努めてまいりたいと思います。
  74. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 次に、ミャンマーの問題について政府の姿勢をただしたいのです。  政府はミャンマーの現政権を承認するに当たって、政府の刊行物によりますと、「客観的に現政権が既に国際法上の政府承認の要件である実効的支配及び国際法遵守の意志、能力を満たしていると判断し政府承認を行った。」というふうに書かれております。そして、ミャンマーの受けているODAの七九・四%ですか、約八〇%近いものを日本がODAとして経済技術援助を行っているという実態があるわけでございますが、このミャンマーの現政権が何を行っているかといえば、もうみんな国際的な非難を浴びているように、九〇年五月の総選挙でアウン・サン・スー・チン女史の率いる全国国民民主連盟が八割以上の議席を確保して圧勝したにもかかわらず、政権移譲をしていない。当初は、八八年にこのミャンマー政府が政権を掌握したときには、自分たちは暫定政権で、複数政党制による総選挙を実施した後には民主主義的手続で政権を移譲すると約束しながら移譲せず、しかも、そのサン・スー・チーさんの行動の自由、言論の自由を奪い、ノーベル平和賞をもらった以降はますますその監禁を強めているというような状況が発生していて大変国際的な非難を浴びている、そういう状況があるわけでございますけれども、政府はこのような状況に対して、ミャンマー政府に対して何らかの働きかけを行っているのかどうか。その点はいかがでしょうか。
  75. 小島誠二

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  私どもといたしましても、ミャンマーにおきまして総選挙実施後、政権移譲について現在に至りましても不透明な状態が続いておる、こういう事態については非常に憂慮しているわけでございます。私どもといたしましても、これまでも種々の機会をとらえまして、九〇年五月の総選挙の結果を踏まえて、政党との対話実施等を含めまして、早期政権移譲に向けて前向きに努力することを希望する、こういうことを伝えてきております。また、今後とも粘り強く働きかけを行っていく所存でございます。  ちなみに、最近行いました働きかけの例といたしまして一つつけ加えさせていただきたいと思いますけれども、十月の十七日から十九日まで、国連総会に出席しましたミャンマー政府のオン・ジョー外務大臣が帰国の途次我が国に立ち寄ったわけでございますが、この機会に、十八日でございますけれども、当時の中山外務大臣と会談を行ったわけでございます。この席上、中山大臣より、ミャンマーの情勢について国際社会の関心が強まってきており、特に最近のアウン・サン・スー・チー女史のノーベル平和賞受賞はミャンマーの民主化、人権に対する関心の高さを示すものである、こういう発言をされたわけでございます。
  76. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 日本がその政府をいち早く承認したこと自体もやはり大変問題でなかったかというふうに思いますし、その承認のときの要件になった、現政府が国際法遵守の意志、能力を満たしているという判断そのものが、今前提がもうはっきり崩れてしまっている。ああいうような本当に人権弾圧、しかも、民主的な選挙で国民から支持されている人に対してああいう行動の自由、言論の自由、人身侵害を行うようなことをやっていることは、日本政府としても非常に非難されるべきではなかろうかと思うわけでございますが、ODAを彼女のああいった状況改善されない限りストップするとかいうそういったきちっとした明確な措置をとる意思があるのかないのか、いかがでございましょうか。
  77. 小島誠二

    ○小島説明員 私どものミャンマー政府に対するODA政策でございますけれども我が国のミャンマー経済協力につきましては、現下のミャンマーにおきます政情等を踏まえまして、原則としてはとめておる、こういうことでございます。ただし、政変前から実施中の案件でございますとか、あるいは緊急的、人道的性格の強い援助につきましてはケース・バイ・ケースで検討していく、こういう方針をとっておるわけでございます。
  78. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 そうしますと、今のような状況、現政権の現状のような状況改善されない限り、既存のというか、現に行っているもの以外は今後も行わない、そういう方針を貫くということでございますか。
  79. 小島誠二

    ○小島説明員 お答えいたします。  現在行っております既存のものは別でございますけれども、新規の援助、こういったもののコミットメントあるいは供与につきましては、当面は緊急的、人道的性格のもの、こういうものを除きまして検討していく考えはございません。
  80. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 具体的に、サン・スー・チーさんの例えばノーベル平和賞受賞、で自由に行動に出られるとか、そういった言論、行動の自由を保障するために、今後ミャンマー政府に何らか具体的な行動を起こすつもりがあるかどうか、その点についてはいかがでしょうか。
  81. 小島誠二

    ○小島説明員 お答えいたします。  私どもといたしましても、ミャンマー政府が、アウン・サン・スー・チー女史の今度のノーベル賞受賞の背景にございます国際社会のミャンマー民主化への関心、こういうものに十分配慮を払っていくことを期待しておるわけでございまして、今後ともいろいろなチャネル、レベルを通じましで粘り強く働きかけを行っていきたいと考えております。
  82. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 もう少し具体的にお答えいただきたいのですけれども、どういう形でやっていく、そういった計画があるのか。その点、ノーベル平和賞の授賞式というのは十二月十日ですか、目前にありますし、国民のあるいは国際的な関心も非常に高いと思うわけでございますが、具体的な計画とかそういったものがあるかどうか、短期間の問題としてお答えいただきたいのです。
  83. 川崎寛治

    川崎委員長 ちょっと外務省、これは委員長から言っていいことなのかどうかわからぬけれども、大体こういう問題について発言できる人が来ていないんではないかという感じがするのです。経済協力局が来てこういうことを答弁するというのは質疑に対してよくないと思うのですよ。だからその点ひとつ……。
  84. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 私は局長さんを要求したのです、こういう問題が絡まっておりますので。そうしたらPKOの特別委員会に出席しなければいけないのでというふうにお答えになったのですが、私もPKO特別委員会につい先ほどまで出ておりまして、局長さんのお姿はお見えにならなかったのですよね。だから、それは全く理由にならない。これはどういうことなのか。こういう重大な問題、もう期間も十二月十日というふうに限られているにもかかわらず、どうなっているのか。ちょっとその辺、局長さんの状況についてお話を伺いたいのですけれども
  85. 小島誠二

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  先ほど私はいろいろなチャネルを通じてというふうに申し上げましたけれども、一般的に申し上げれば、在京大使、大使館を通し、また、ヤンゴンにございます我が方大使館を通じ、私どもの懸念というものを繰り返し伝えていきたいと思っており、ます。
  86. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 そういう抽象的な逃げの答弁しかできないというのぱ、責任者が来てないからなわけですよね。PKO特別委員会に必ず出ますというようなことだったので、私もそれならということで、緊急の法案だということで局長さんじゃなくてもというようなことを言いましたけれども、いらしてない。これは大変国会に対する、こういう重要な問題に対する私は侮辱になるのじゃおいかと思うのですが、その点についていかがですか、
  87. 川崎寛治

    川崎委員長 ちょっと委員長から発言させてもらいます。  今答弁は、しかるべき責任のある答弁ができない者が来ておると思います。今社会党と与党の理事さんの間で打ち合わせをしてもらいました。このことについては、質問者から、PKOの特別委員会に出るから出れない、こう言いながらPKOの委員会に出ていない、で、ここにも来ていない、こういうことですから、その点は当委員会に対する外務省の姿勢に私は大変不満を持ちます。ですから、この点は委員長から外務省の方に強く申し入れをいたします。
  88. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 時間になりましたのでこれで終わりますが、今のような外務省の態度が非常にミャンマーに対する国民日本政府の批判につながっているということを最後に申し添えて、質問を終わります。
  89. 川崎寛治

    川崎委員長 午後零時五十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ――――◇―――――     午後零時五十二分開議
  90. 川崎寛治

    川崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沖田正人君。
  91. 沖田正人

    ○沖田委員 政府は人事院勧告の完全実施を閣議決定したと言いますけれども、週休二日制については一体どう進められておられるのか、所見を伺いたいと思います。
  92. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 週休二日制の普及促進は、労働時間短縮一つの柱でございます。現状を見ますと、大企業では週休二日制、完全週休二日制も含めまして相当の普及率を見ておりますけれども、中小規模の事業所においてはこれがおくれておるということでございます。  この週休二日制が進むかどうかは法定労働時間の短縮ということと関係をいたすわけでございまして、ことしの四月の一日から従来の法定労働時間四十六時間を四十四時間に短縮をしたという措置をとったわけでございます。そのことによりまして四週六休制が進むわけでございますが、さらにそれに加えまして、できるだけ早く週四十時間、言い直せば完全週休二日制が普及いたしますように、特に中小企業の団体を対象にいたしまして指導、助成を行っているという段階でございます。
  93. 沖田正人

    ○沖田委員 この週休二日制の完全実施に向けて特段の努力を払っていただくように強く要望しておきたいと思います。  続きまして、労働省にお伺いするわけでありますが、タコ部屋とか、土方の飯場とか、ピンはねとか、そういう暗いイメージを持つ用語、言葉というものは、建設産業において既に死語となっているとお考えでしょうか、所見を伺いたいと思います。
  94. 若林之矩

    若林政府委員 建設労働をめぐります雇用環境と申しますか雇用実態と申しますものにつきましては、関係者の努力によりまして相当の改善が見られているということは申し上げることができると思うのでございますけれども、いまだ改善を要する点が多いわけでございます。依然としてなお三K職場といったようなイメージも持たれておるわけでございまして、やはりこの問題は私ども、不断の努力を重ねまして、ただいま先生からお話ございましたような暗い用語というものを完全に死語たらしめる努力を重ねなければならないというふうに考えております。  最近中小企業では、私どもは、リフレッシュガーというので現場で着がえなどをする、あるいはシャワーを浴びる、こういったような休憩をする、そういったリフレッシュカーというものを開発をいたしておりますけれども、これに対する申請の件数も大変に上がっております。そういう意味で、事業主の皆様方もこういう雇用情勢の中でこの問題に大変に真剣に取り組んでいただいておりますし、私どもも大いにそういった面での指導を進めていかなければならないというふうに考えております。
  95. 沖田正人

    ○沖田委員 けがと弁当は手前持ちとか、大工や土方を殺すには刃物は要らぬ、雨の十日も降ればよいという自嘲的な言葉がささやかれていた時代はもう既に過ぎ去ったとお考えでしょうか、所見を伺いたいと思います。
  96. 若林之矩

    若林政府委員 先ほど来申し上げましたように、まだまだ改善すべき点が多いと存じます。  労働保険等の社会保険への加入も随分進んでまいりました。また、建設の退職金共済等への加入も進んでまいっておるわけでございますけれども、なお労災保険への未加入の事業所もございますし、日給制による降雨時の所得保障の問題など、まだまだ改善すべき点があるというふうに考えております。
  97. 沖田正人

    ○沖田委員 中央建設業審議会の人材専門委員会に提出された資料を拝見いたしますと、賃金が低くて労働時間も長い職業として建設業が挙げられているわけであります。新規学卒者の入職者は五%以下、五十歳以上の就業者数は一割以上に達している。既に老齢化現象がこの建設産業でも非常に進んできておるわけであります。御案内のとおりだと思います。さらに、労働災害における死亡者総数に占めるウエートは四割前後、業務上の疾病者総数に占めるウエートは二割前後と高水準で推移してきていると思います。  労働省建設省においては、このように劣悪な労働実態や労働条件の改善のために、そして新規学卒者皆さんにとって魅力ある産業や職場にしていくためにどのような努力と施策を講じておられるか、所見を伺いたいと思います。
  98. 若林之矩

    若林政府委員 私、ここに数字を持っておりませんけれども、建設産業に従事している労働者の割合というのは大体一割程度でございますが、新規学校卒業者の建設産業への入職の比率というのは、全産業の比率で申しますと五%を上回る程度であるというふうに存じます。つまり、全体の労働市場における建設労働者の割合に対しまして新規の学卒の参入が非常に少ないということ、したがいまして、そのことに伴って平均年齢が引き上がってきているということは、先生の御指摘のとおりでございます。そういう意味で、今後この大変大切な産業を支えていきますために、この職場が若い人にとって魅力あるものであるということは大変に重要なことでございます。私どももそういった観点からいろいろ努力を重ねておるわけでございますけれども、やはり何と申しましてもその職場が魅力あるものでなければならない。ただいま御指摘ございましたけれども労働時間を短縮いたしますとか、あるいは福利厚生施設が充実されるとか、あるいは能力開発のためのシステムが充実する、こういったことが重要でございます。  そこで、私どもは、やはり建設産業は下請構造を持っておりますので、元請、大手企業が、その協力企業と申しますかそういったところのいわば雇用管理というものに真剣に取り組むということが必要でございますし、そういった取り組みをする大手企業に対して助成をするといったような制度を今年度から始めさせていただくことにいたしました。また、能力開発につきましても、中小企業の団体等がこういった若い方の養成をするということにつきましては相当思い切った補助率で助成をするといったような制度を、これも今年度から始めさせていただいております。  こういったことで、総合的に建設職場というものを若い方々にとって魅力のあるものにするように努力をしたいと思っておりまして、私ども、三Kではない、トリプルCだ、コンブォダブルでクリーンで、こういうことをPRいたしまして、そういった努力を進めているところでございます。
  99. 沖田正人

    ○沖田委員 建設省はどうでしょうか。
  100. 尾見博武

    ○尾見説明員 それではお答え申し上げます。  先生御案内のように、真に豊かな国民生活実現させるということ、そのために住宅、社会資本を整備をする、極めて重要な課題になっておるわけでございます。その担い手としての建設業はますます重要になっている、こういうふうに考えているわけでございます。こういう環境の中で建設業が意欲ある若年労働者の人材を確保していくためには、何よりも雇用労働条件の改善生産性の向上、さらに人材の育成、安全確保、こういった課題を的確に解決していく必要がある、こういうふうに考えております。  このため、建設省といたしましては、平成元年三月に構造改善推進プログラムというものを作成いたしました。これは、生産性の向上を図るための諸方策、こういうものとあわせまして、例えば、若年建設従事者の入職促進を図るという観点から、若年建設従事者入職促進協議会なるものを設置いたしまして、建設業界と工業専門学校等を中心にした教育関係者でございますが、その間の意思疎通を図るための組織を設けるとか、あるいは労働時間の短縮等につきまして総合工事業者と専門工事業者の間の役割分担を明確にしていくとか、そういう方向について指導を行ってきたところでございます。それから、先生から先ほど資料で引用していただきましたように、現在中央建設業審議会の中で人材専門委員会というものを設けまして、今後とも人材の確保のための諸方策について検討していきたい、かように考えておる次第でございます。
  101. 沖田正人

    ○沖田委員 公契約における労働条項に関する条約、すなわち第九十四号条約は、既に四十二年前に制定されているということでありますが、我が国ではなぜこの九十四号条約が批准されていないのか、その理由と現況についてお答えをいただきたいと思います。
  102. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 ただいまのILO第九十四号条約でございますが、これは一九四九年、昭和二十四年という大変古い時期に制定といいますかILOで採択されたものでございます。これは御承知のように、第二次世界大戦後の間もない時期の各国の経済社会情勢のもとにおきまして、公共事業等に従事いたします労働者労働条件を確保することが国内の労働条件全体を向上させる上で重要な役割を果たすという認識から採択をされたというふうに承知をいたしております。言ってみれば、戦後の各国とも経済的にインフレの問題あるいは失業の問題に非常に苦しんだ時期の所産でございました。  内容でございますけれども、公契約におきまして、同じ地方、同じ職業、同じ産業の労働条件に劣らない労働条件を確保することを目的とするということで、これを遵守しない者について契約手控え等の制裁を科するというような規定がございます。  我が国におきましては、御承知のように労働基準法なり最賃法等で最低労働基準確保を図っておりますけれども、ほかの産業と同じような労働条件を保障するという意味での法律制度がとられていないわけでございまして、個々の労働条件につきましては関係労使の間で決定されるという全体的な枠組みになっているわけでございます。  そういう意味で、現在これを批准することは困難な状況でございますし、また、この条約が採択をされました当時の状況と現在の社会経済情勢が非常に異なってきているということで、現在はその批准の可能性についての検討も行っていない状況にございます。
  103. 沖田正人

    ○沖田委員 これはやはり非常に問題があると思うわけであります。ILOすなわち国際労働機関の問い合わせに対して、日本政府として報告書を提出して久しいところであろうと思います。ところが、政府、労働省などの検討時間が余りにもなさ過ぎる。今お伺いしますと、検討されていないということに及んでは、これはもう本当にびっくりするわけでありますが、このことについては怠慢のそしりを免れない、こう思いますが、所見を伺いたいと思。います。
  104. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 ただいま御指摘のありました日本政府の報告は、これは未批准条約についての報告を求められまして、各国求められるわけでございますが、それに対する報告を、この条約に関しましては昭和二十八年に行っているところでございます。その中で、この条約の寒地を図るという観点から検討中であるということを報告をしていることは先生指摘のとおりでございますが、この時期と申しますのは、戦後のインフレ対策のために政府支払いにおきます労務費単価等の最高限を規制をしておりました法律が廃止をされ、しかし、公共事業労働者への一般職種別賃金、職賃でございますが、その運用が暫定的に残っていたという過渡的な状況で報告が行われているという経緯がございます。  その後、職種別賃金は廃止をされております。それから、公共事業労働者につきましても民間労働者と全く同一の労働条件、最低賃金の保護が与えられる一般的な法制のもとにございますので、そういう意味におきまして、この条約をこれから批准をするということはその必要性について非常に疑問があるということで、当時検討しておりましたけれども、その後の社会経済情勢の変化に伴いましてその検討を中断をいたした、こういう経緯がございます。
  105. 沖田正人

    ○沖田委員 例えば諸外国との経済摩擦、さらには建設摩擦の原因の一つに、この九十四号条約を批准していないこと、さらにはまた、低賃金や長時間労働の三K現場をより多く抱えている建設産業の重層下請構造などがいわゆる外国の批判の対象になっているのじゃないかと思うのです。  やはりこの日本の建設産業のありようというものについて、また契約のありようについていろいろ問題があるわけでありますから、いわゆる外国との関係について所見を伺いたいと思います。
  106. 若林之矩

    若林政府委員 いわゆる経済摩擦との関係につきましては、必ずしもお答えする材料を持ち合わせておりませんけれども、いずれにいたしましても、この建設業の重層下請構造というものにつきましては、雇用面におきまして不明確な雇用関係等の問題をもたらしている重要な要因であるわけでございまして、雇用という観点からは、この重層下請構造は大変重要な問題でございます。  これにつきましてはいろいろな背景があるといたしましても、私ども、やはり元請が下請企業の雇用管理をしっかり支援をするという体制をつくることによりまして、下請企業に働く労働者方々の雇用の安定や雇用条件の改善、福利厚生の充実が図られる、そういった体制をつくっていくことが重要であるというふうに考えております。  今年度からは、五年間の建設労働改善計画をつくらせていただいたところでございますが、私どももそこのところを、この計画の中でこの点も一つ重要な柱となっておるわけでございまして、この計画に沿いまして、こういった下請企業で働く労働者方々雇用環境改善のために努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  107. 沖田正人

    ○沖田委員 アメリカには御承知のように法律がありますね、非常にしっかりしたものが。さらにはイギリスも、下院で決議をいたしまして、これまたきちっとした施策が行われている。同時にまた、今五十六カ国ですか批准が済んでいるわけでありますけれども、この多くの国々を見ましても、やはり発展途上国といいましょうか、そういうところの国が非常に多いわけであります。  そういう点で、日本がなぜこの九十四号条約を批准しないのかという疑問は、どんなに言われてもよくわからぬのです。したがって、この点については速やかに国内法を整備しながら九十四号条約の批准を急ぐべきではないか。このことについてもう一度ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  108. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 ただいま九十四号条約の各国の批准状況にも触れながらの御質問でございますが、いわゆる先進国の中で批准をしている国として、フランス、デンマーク、イタリア等がございますが、一方において、アメリカ、ソ連、ドイツというようなところは批准をしておりませんし、イギリスは一たん批准をしてその後廃棄をいたしておるといういろいろな事情がございます。  我が国においてこれを批准するための準備をせよという御質問がと思いますけれども、先ほど来申し上げておりますように、この条約を採択されました昭和二十四年のころ、それから、その後日本政府がILOにこの条約の検討状況について報告をいたしました昭和二十八年のころと社会経済情勢が大きく変化していることが一つと、それから、労働条件の確保につきましては労働基準法その他の一般的な労働法規によりまして最低基準確保されている中で労使の決定によって労働条件が決定をされる、こういう経済システムの中で今後新たにこの条約を批准をするということについて、それが必要なのかどうか、適当なのかどうかについては多くの問題があるというふうに申し上げた次第でございます。
  109. 沖田正人

    ○沖田委員 アメリカでは批准していない、イギリスは撤回したとおっしゃるけれども、アメリカは、先ほども申し上げたように、デービス法なんかは非常にきついものですね。厳しいものですね。とりわけ州法などもそうですけれども、そういう法律があるから批准しなくてもいいという考え方一つ他方にあるわけです。イギリスの場合は、国会決議が、下院決議がありますから批准しなくてもいいという考え方があるわけです。  日本の場合は、今いみじくも言われたように、労働条件等の問題については労使の問題だというふうに言われておる。今、建設産業の非常に矛盾に満ちた、問題がある職場について、三K現場ある場合には八K現場とさえ言われる状況の中で、やはり大胆な施策を講じない限り魅力ある職場とはなりにくい、このように思うわけであります。その点についてやはり、とりわけ九十四号条約の批准という問題は、国内法の整備と相まって極めて重要な問題だということを強くひとつ指摘しておきたいと思うのです。  建設省は、週休二日制そして週休二日制のモデル現場についていろいろ努力をしておられることはわかりますけれども、積算上措置をした労務費が労働者に渡るように指導し誘導していると言われますが、その具体的な努力の模様というものをひとつ聞かせていただきたい。どうなんですか、労働条件や支払われる賃金について工事現場等に掲示する、そこまで踏み込んだ努力というものをおやりになる考えはありませんか。
  110. 青山俊樹

    ○青山説明員 積算関係の話につきまして御説明させていただきたいと思います。  私どもは、週休二日制モデル事業を平成二年度から実施いたしまして、平成三年度はこれを全国的に展開しておるところでございますが、さらに、適正な積算をすることが、よいものをつくるということに対しても非常に大切なことであるという認識のもとで、直轄はもちろんのことでございますが、各都道府県、市町村含めて、ことしは事務次官通達も出しておりますし、また、私どもは発注者の立場として、同じ発注者である市町村、県等に対しても指導をしているところでございます。
  111. 沖田正人

    ○沖田委員 まだまだ非常に努力が乏しいと言わざるを得ないわけでありますが、労働省としても、特に公共事業における週休二日制完全実施などの労働条件を確保するためにも、建設省関係省庁と、さらには地方公共団体などとの連携を含めて、発注のところまで踏み込んだ対策を講ずるべきじゃないか、こう思いますが、見解を伺いたいと思います。
  112. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 建設業における労働時間につきましては、工期や発注時期などの発注条件に大きく左右されるという面が大変強いわけでございます。  そういうことで、労働省では、ことしになりまして業界団体の方、それから建設関係の学識者の方にお集まりをいただきまして、建設業の労働時間短縮指針というものを作成をいたしまして、これは業界団体の方に参加をしていただくことによって、みずからこれを守るという積極的な姿勢が出ることを期待をいたしたものでございますが、その中で、労働時間短縮関係業界、それから建設業を営むすべての事業者が取り組むべき課題であるというふうに位置づけまして、発注者の理解の促進、発注時期の平準化等、ただいま先生が御指摘になられました発注条件の改善ということを非常に重視をして、そのような内容を盛り込んでいるところでございます。  これをどういうふうに進めるべきかというところが問題でございますけれども労働省としましても、地方労働基準局におきまして、発注者を含めまして事業者にお集まりをいただいた機会にこういった問題につきまして啓発をする、それから、地方建設局で開催をいたしております労働時間短縮対策会議、これは都道府県、それから当の発注主体も参加をするというふうに承知をいたしておりますけれども、そこに地方労働基準局も参加をいたしまして、こういう問題についての、つまり、発注条件の改善等についての理解を求めるということを積極的にやってきたわけでございますが、このような努力を今後とも一層積極的に続けていきたい、こういうふうに思っております。
  113. 沖田正人

    ○沖田委員 いわゆる入札金額について、歩切りという悪い慣習があることは、御案内のとおりです。  このことについては、ことしの六月に通達を出されて、それぞれ自粛方を求めておられるようでありますけれども、まだまだやはりこの歩切りという契約金額の頭を切ってしまう、そういう悪い仕組みというものが存在をいたしますから、そのことがいわゆる労働賃金に具体的、直接的にやはり悪い影響を与える、低賃金、長時間労働の結果につながっていく、このように考えるわけでありますが、この歩切りという制度についてどのような対応をしておられるか、実態を含めてお答えをいただきたい。
  114. 青山俊樹

    ○青山説明員 公共工事者発注するに当たりましては、取引の実例価格等を考慮して積算を行い予定価格を作成するということになっております。今先生指摘のいわゆる歩切りにつきましては、工事を施工するために通常必要となる価格を不当に下回る価格を設定するものでありまして、厳に慎むべきことであると考えております、  予定価格の作成に当次りまして、歩切りを行わず、積算結果を尊重して適正に決定することにつきましては、中央建設業審議会の建議、これは昭和五十八年三月十六日でございますが、「建設工事の入札制度の合理化対策等について」という建議の中で明らかにされておりますし、また、各発注機関に対しましても「平成三年度建設省所管事業の執行について」、これは事務次官通達でございます。それから「建設工事の入札制度の合理化対策推進について」、これは六十年六月、建設経済局長名でございます。また、「公共工事における入札制度の合理化対策等について」及び「事業執行における積算等の留意事項について」、これは平成三年五月に地方厚生課長と技術調査室長の通達でございます。こういった通達により徹底を図っているところでございますが、実際、市町村等の地方公共団体においてさらにどういうふうな実態になっているのか、現在積算の突っ込んだ実態調査実施いたしておりますので、この実態調査にあわせて行っていきたい、かように考えておるところでございます。  これは、いわゆる歩切りは厳に慎むべきことであるというのは、先生おっしゃるとおり私どももそう思っております。
  115. 沖田正人

    ○沖田委員 だから、申し上げておりますように、いわゆる積算単価の中に人件費が当然あるわけでありますけれども、どうなんです、モデル現場で賃金の掲示だとか、いわゆる労働条件などを一遍掲示してみたらどうですか。そうすれば、やはり少しずつ希望も持てるし、さっき申し上げたように、いわゆるピンはねだとか何だとかいうようなことがだんだんなくなっていくだろう、こういうふうに思うんですが、そういうことを検討していただけないですか。
  116. 青山俊樹

    ○青山説明員 工事の発注に当たって作成いたします予定価格でございますが、これは法令により工事を構成する費用の総額について定めることとされておりまして、人件費のみを明示する方式は用いていないということでございます。ただ、予定価格の作成のための積算に用います労務単価は、毎年行います労務賃金の実態調査に基づき定めておるわけでございまして、この積算に用いる労務単価については、積算基準が公表されていることから、労務単価を公表した場合には予定価格の類推が可能になるということの理由から公表は行っておりませんが、毎年行っております労務賃金の実態調査結果については公表しているところでございます。  工事の発注に当たりましては、総枠について予定価格を定める現行方式のもとで、人件費も含めた適正な予定価格を作成することが一番重要なことであると考えております。したがいまして積算に当たりましては、労務単価を初めとして施工の実態に即した適正な価格を計上するとともに、工事の実施中に施工条件が変更となった場合に設計変更を適切に実施することなど工事に必要な額が確保されるように努力していきたい、かように考えております。
  117. 沖田正人

    ○沖田委員 やはり何か画期的なことを大胆におやりにならなければ魅力ある職場とはなりにくい、このように思いますので、その辺についてはひとつさらに検討を続けていただきたいと思います。  公共事業における週休二日制、この労働条件を確保するためにも建設省関係省庁、地方公共団体などの努力が言うまでもなく重要になるわけでありますけれども、社会資本整備などの面から考えましても、建設労働者確保ということが不可欠であるということはもう言うまでもありません。  そこで、建設労働者賃金労働時間、福祉等を向上させる、こういう立場から努力をしていきながら、若い労働者にとって魅力のある産業、職業として建設産業を健全に発展さしていくことが我が国にとっても極めて重要であると考えるわけでございますが、既存の制度の枠を超えて労働省としても総合的な対策制度というものを検討すべきではなかろうか、このように考えるわけであります。既存の制度や仕組みだけではなくて、やはり建設労働における大胆な施策なり制度なり、ある場合には基金制度なり、ある場合には保護立法なり、こういうものが検討されなければ今の重層下請構造の中ではやはりまだまだ建設労働の悪循環が続いていくのではないかというように私は考えるわけであります。その点について大臣検討についての決意をひとつお聞かせいただきたい。  同時にまたもう一つ、先ほど申し上げましたように、九十四号条約について国内法の整備と相まってどうぞ再検討お願いいたしたい、批准方についての努力お願いいたしたい、所見をお伺いいたしたいと思います。
  118. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生指摘のように、建設業界に立派な労働力供給されるような環境づくりをやることは、私たち労働行政に携わる者として非常に大事なことだと考えております。特に週休二日制の問題については建設業がおくれておるようでございますが、ことしの四月に建設省とも連絡会議を設置いたしまして、発注条件や工期等について情報交換や協議を行っているところでございます。また、地方におきましても、ブロックごとに建設省、都道府県等から成る労働時間短縮推進会議等に参加をいたしまして意見交換を行っておるところであります。今後とも、こういうような機会を十分活用しながら建設業における労働時間の一層の短縮に努めてまいりたいと思っているわけでございます。  建設省の方からも答弁がございましたが、私は、日本のいろいろな作業現場の中で建設作業の現場の合理化、近代化がおくれている面もあるのじゃないかと思うのですね。いわゆる筋肉労働に比較的依存した分野が多かったわけでございます。したがって、建設作業の機械化、合理化、省力化というものはまだまだ余地があるのじゃないかな、こういうふうに考えておりますので、そういう分野についての研究をし、成果を踏まえていけば、建設作業が若い人たちから見ていわゆる三K職場であるということではなくなって、むしろ機械化労働で、ある意味では格好のいい職場にもなり得るのではないか、こういうふうに考えております。  御指摘がございましたILO九十四号の条約の批准の問題につきましては、事務当局から御説明申し上げたとおりでございますが、なお今申しましたように、建設作業の現場に労働力確保するための一つ考え方の中でいろいろ検討もさせていただきたい、かように考えております。
  119. 沖田正人

    ○沖田委員 終わります。
  120. 川崎寛治

    川崎委員長 中村巖君。
  121. 中村巖

    ○中村(巖)委員 私は、外国人労働者の問題についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  日本の国際化に伴いまして外国人が日本で働くという事例が大変にふえてまいったわけでございまして、そういうことに照応して、日本の出入国管理法制もだんだん外国人が働きやすいような形になってきた。そういうことで、一昨年でしたか入管法が改正をされて、日本における滞在資格が整備をされた、あるいは拡充をされた、こういうことになっているわけであります。しかしながら、単純労働者の問題については、これは日本に入国をさせないんだ、単純労働はさせないんだ、こういうことで一貫して規制をされているわけであります。  ところが、現実の方はどうなっているかというと、やはり我々が町で見るとおりに、建設業におきましてもあるいはまた鋳物や鉄鋼業におきましても、単純労働に外国人が従事をしておる。あるいはまたサービス業においても、例えば食堂、飲食店のウエーターだとかウエートレスというものも外国人がやっている。果ては酒場においてホステスも外国人がやっている。こういうような実態がある。これはまさに単純労働です。  こういうことはどうして起こるかというと、何といってもやはり日本において労働力が不足をしている、単純労働分野における労働力が不足をしているということがあって、一方においてはアジアからの供給力というものが物すごいものがある。だから、法制はどうであれ、現実にそういうことが起こってしまう。これは大変な矛盾であるというふうに思うわけでございます。  例えば酒場におけるホステスなんというものは、これは単純労働の最たるもの。ところが、フィリピン人がそれに従事をしているということは、これは本当はホステスとして入国が認められたわけでも何でもなくて、エンターテイナーとして入国が認められて、それが実は歌手あるいはダンサーということであるけれども、歌も歌わなければ踊りも踊らない、ただ酒席にはべっているだけだ、こういうことになっているわけです。それは現実に我々がみんな見てきていることであるわけでございまして、そういうことがいろいろ矛盾の一つであるというふうに思っております。  ところで先ごろ、昨日でしたか、新聞報道によりますれば、フィリピン政府が日本への出稼ぎを事実上禁止した。エンターテイナーということで大幅にフィリピンから人間が日本に入っておった、それを今度はフィリピン側が余り出さないようにする、こういう措置を講ずるんだということであります。そのエンターテイナーということで日本に入ってきたフィリピンの女性は、新聞報道によれば年間に九万人ぐらいいるんじゃないか、それを制限をする、こういうことであります。今日までその分野でいうならば、エンターテイナーということで余りにもルーズにフィリピンの女性を入国をさせ過ぎたんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。エンターテイナーといったって、ダンサーだとか歌手の需要なんというものはそんなにあるわけのものじゃないわけですから、初めからこれはホステスをやるんだろうということをわかりながらも入れてきたんじゃないか、こういうふうに思われていたし方がないわけです。  その点でまず第一に、どのくらいの人間がエンターテイナーということでフィリピンから入ってきているのか、そして法務省がビザを発給するに当たって、そのホステス業に従事をするということを承知をしながらルーズにビザを発行してきたんじゃないか、このことをお尋ねを申し上げたいと思います。
  122. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 また事務局から説明をさせますが、私どもの調べによりますと、平成二年に我が国に就労を目的として入国してきたフィリピン人は約四万三千であり、そのほとんどが興行の在留資格を有するダンサーなどのいわゆるエンターテイナーでございまして、これらのエンターテイナーの中にはホステス等として不法就労し、入管当局に摘発され炊事案もあると承知しております。  なお、平成二年において入管法違反で摘発されたフィリピン人の不法就労者が四千四十二人に上り、このうち六割が女性で、主として短期滞在の在留資格でホステスなどとして就労したものと聞いております。  労働省といたしましては、フィリピン政府に対し、我が国に入国するフィリピン人が不法就労することのないよう協力を求めたところでございます。また、関係省庁とも連絡を図りつつ、不法就労あっせん等により不当な利益を上げている仲介業者及び雇用主に対して厳正に対処してまいりたいと考えております。
  123. 小山潔

    ○小山説明員 御説明申し上げます。  最初の数字でございますけれども、ただいま平成二年度の数字はございましたけれども、昭和六十三年の数字を申し上げますと、四万一千三百五十七人でございました。それから、平成元年は三万二千六百三十六人でございました。これは興行という形での数字でございます。  それからもう一つ、ルーズに入れ過ぎたのではないかというその点でございますけれども、昨年入管法が改正されまして、それを機会にいわゆる興行という在留資格につきましては基準省令というものができました。ですから、入管法に書いてある。在留資格の該当性と、それから基準省令に書いてございます。その基準にしっかり照らし合わせまして、入国の申請がございましたときには私どもの方は厳正に審査をしておるつもりでございます。
  124. 中村巖

    ○中村(巖)委員 ところが、実際に現在日本に来ているフィリピンの女性というものは、本国で簡単なオーディションというかそういうものを受けて、本当に大した踊りもできない、歌も歌えないのにかかわらず、日本のプロダクションと称するものに招聘をされて来て、実はホステスをやっている、こういう現実。それを何で法務省がチェックができないのかということが私は大変おかしな話ではないかなというふうに思っているわけです。  それのみならず、現実にそういう人たち日本に来て、やはりプロダクション等々に大変な搾取を受けている。現実にはもらう金額というものが大変に少ない。中間にそういうプロダクションというものが入ってピンはねをしているというようなことで、例えばパスポートをそういう人間が預かってしまって、そして労働を強制して安い賃金しか払わない。あるいはまた、陰に陽に売春を強要するとか、そういうようなことが起こっているわけです。  労働省にお伺いしたいわけですけれども、そういうような実態というものをもう少し直視をして、日本に働いているわけですから、ただこれはエンターテイナーで興行であるから労働者ではないのだ、だから労働省の管轄から外れるんだ、こういうことじゃなくて、現実にはもうやはり労働者として働いているということを直視して、よく調査をし、かつ、これに対して監督をしていくということがなければいかぬと思うのですけれども労働省考え方いかがでしょう。
  125. 若林之矩

    若林政府委員 ただいま御指摘になりましたようなケースも含めまして、不法就労の問題にどう対処していくかというのは大変重要な問題でございます。これは法務省、警察庁、労働省関係行政機関が力を合わせて対応していかなきゃならない問題でございまして、大変に難しい問題でございますが、基本は、やはり何と申しましてもブローカーの排除、ブローカーを通して雇用している事業主の取り締まりでございます。この点につきましては、関係省庁協力して今後対応してまいりたいと考えております。
  126. 中村巖

    ○中村(巖)委員 まあ不法就労といいましても、これも確かに不法であることは事実であるけれども、やはりそこには就労関係という関係があって労働をしているという事実には変わりがないわけですから、それはやはり不法就労なんだから、あるいは例えばもともとが興行という名目で来ているのだから労働省関係ないというような立場でなくて、その辺のところを、監督行政というものをきちっとしてもらわなきゃいかぬのじゃないかなというふうに思います。  今回のフィリピン政府が日本への出稼ぎを事実上禁止するという措置の原因となったのは、九月に福島でフィリピン人のダンサーというかホステスというか、そういう人が亡くなった、こういうことに端を発するわけでございまして、それについて日本側の考え方は、これは病死なんだ、こういうことでございます。ところが、フィリピン側はこれに対して疑惑を持っているのだ、こういうことで、今回フィリピンの労働大臣ですか訪日をされるというようなことがあったわけでございますけれども日本側としてはそれは病死であるというふうに恐らく今なっているわけでございまして、労働省は果たしてこれを調査をされたのかどうかわかりませんが、調査をされても恐らく労働省の結論はそういうことだろうというふうに思います。その調査結果と、それから、問題は、それがたとえ病死であったとしても、フィリピンの側で日本ではそういう労働者に対する虐待が行われているんだというふうに思い込むところに国際的な問題があるわけですから、これに対してはやはり病死なら病死ということできちっと説明をして、日本労働環境というものが決してそんなでたらめなものじゃないんだということをよく理解をしてもらうということが必要だというふうに思いますけれども、その点について労働省にお伺いを申し上げます。
  127. 齋藤邦彦

    齋藤(邦)政府委員 本件につきまして、昨十月にフィリピンの労働雇用庁長官も日本に来られまして、私ども大臣とお話し合いをされたわけでございますが、そのときにおきまして、日本におきますフィリピン労働者一般の福祉の問題ということを中心にして話が行われたわけでございます。そのときにうちの大臣から申し上げましたが、日本で働く外国人労働者につきましては、日本人と同様に労働基準関係法令は適用されるわけでございますし、そういう意味での保護には十分に努力をしていくにやぶさかでないし、また、そうしなければならないであろう。ただ、芸能人、いわゆるエンターテイナーという問題につきましては、一般的には労働基準関係法令は適用にならないというようなことを申し上げたわけでございます。  いずれにいたしましても、正規に我が国に入ってこられ、働いておられる外国人労働者についての保護をやらなければならないということは当然のことだろうというふうに思っておる次第でございます。
  128. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今度フィリピン政府が日本への出稼ぎについて一定の規制をする、こういうことになりますれば、従来よりも日本に入国するその種の方々は少なくなるだろうというふうには思われますけれども、向こうからの労働供給圧力というかそういうものが非常にあるわけですから、どうしてもやはり日本で働きたいということになってくると、従来の興行という滞在資格では入国が認められないとしても別の、例えば観光とかそういうような滞在資格を持ってまた日本へ来て働く、そういう現実的な圧力というか姿というものはどうしてもまた出てくるのだろう、こういうふうに思われるわけでございまして、その辺のことについてこれからどう対処するのか、この点について法務省並びに労働省のお考え方を伺いたいと思います。
  129. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生指摘ございますように、日本とアジア周辺諸国との経済的な格差といいますか。所得格差が大きなものがございますから、したがって、周辺の諸国の方々日本に来て職を得たい、こういう気持ちになられることもよくわかりますし、それが一つの圧力になってきておるということで、外国人労働者の入国の圧力が強まってくることも十分わかるわけであります。  ただ私は、前にも、午前中にもお話を申し上げましたけれども日本で何でも物をつくってしまって、そしてそれを国外へ輸出するという形のものから、一つ国際分業というものを考えて、日本でつくるものと諸外国でつくっていただいてそれを輸入するという形の国内の産業構造の調整、そして国際的な分業、特に周辺地域との国際的分業について、私は実は経済企画庁長官をかつてやりまして、構造調整政策を企画してそれの実行の責任者であったわけでございますが、そういう政策をもっともっと進めていく必要があるのじゃないか、こう思っておるわけでございます。先般も閣議後に、総理にお会いしたときもその話を申し上げておいたわけであります。  しかし同時に、日本でいろいろな技術、技能の習得をしたいというまじめな若い労働者方々もいらっしゃるわけでありますから、そういう方々については積極的に門戸を開いて、そして日本のすぐれた技術、技能を習得していただいて、場合によっては多少国内で実習もしていただいて身につけた上でそれぞれ母国にお帰りいただいて、その母国の産業発展のいわば中核になっていただく、こういうこともやったらどうかなということで、実は先般来省内で官房長を中心に、若手外国人の研修制度というものを時代に即応した開かれたものにしよう、こういうことでいろいろ省内で知恵を絞り、また外務省や法務省やその他関係各省とも調整をしてみたい、かように考えております。
  130. 大澤久

    ○大澤説明員 外国人労働者の受け入れにつきましては、ただいまも御説明がございましたように、専門的な技術、技能を有する方々に対しては幅広く受け入れる、しかし、そういった専門的なものを持たない方々に対しては、国内社会あるいは国民生活に及ぼす影響が大きいというところから、その取り扱いについては慎重に対応しているというのが現状でございます。
  131. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今私が質問したこととちょっとピントのずれたことをおっしゃっているけれども、今フィリピンの女性の話をしておったので、そういう者が今後とも日本に入国をして不法就労をするんじゃないか、そういうことに対してどういうふうな対処方針をもって臨むか、こういうことを聞いているわけです。
  132. 大澤久

    ○大澤説明員 先生指摘のとおり、興行ということで入りづらくなるということになりますと、短期滞在、観光とか親族訪問ということで入国する例がふえてくるかと思います。  これに対する対処の方策といたしましては、まず第一に、査証の段階で厳重なチェックを行う。親族訪問と言っているけれども虚偽の目的ではないかというような点を中心に、査証の発給を厳重にチェックしていただく。これは外務省当局の所管する仕事になるわけでございますが、この点につきましては、外務省に対しても十分資料等を提供いたしまして厳重にチェックしていただくという体制をまずとっていくことが必要かと思います。  次に、査証を入手いたしまして成田その他の空港に入ってまいります。ここにおきましては私どももさらに入国目的、計画等につきましてかなり厳しいチェックを行っておりまして、昨年一年間でこうした虚偽を中心として上陸を拒否したという例が一万件を超えております。今後も上陸の段階におきましても引き続き厳重なチェックを行う。  さらに、入国をいたしました場合におきましては、先ほど来御説明ございますように、警察当局あるいは労働省関係の官署等と私ども地方入国管理局と協力いたしまして、そういった不法就労という事実があれば厳正に対処していくよう協力のネットワークをつくっていかなければならない、現在検討中でございます。  以上のような、査証の段階、空港での審査の段階、それから入国後の段階、この三つの段階を組み合わせまして厳正に対処していく、かように考えております。
  133. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そのようなことを十分にやっていただかなければしょうがないと思うのです。  今フィリピンの女性の話をしておりましたけれども、現在、全般的に言って不法就労というものがかなりふえてきているということは言えるのではないか。例えばの話が、目につくところでは、上野の山へ行けばイラン人が物すごくいる、あるいはまた代々木公園とか原宿へ行けばイラン人が物すごく目に立つ。こういうようなことの中でああいう人たちは何しているのだろうかといえば、やはりどこかで働いていて、日曜日にはそういうところへ集まってきている、あるいは夜には集まってきている、こういう状況だろうと思うのです。  そういう意味で、確かにこの制度全般について問題がいろいろあろうかと思いますけれども、不法就労というのはこれはよろしくないので、やはり日本の国法上そうなっていれば、その滞在資格なら滞在資格で日本にいてもらわなくてはならぬのであって、あるいはまたその滞在期間なら滞在期間というものを遵守してもらわなければいかぬ、こういうことになるのだろうと思います。  先般、法務省におきましては、不法就労で摘発した者の数等について発表されたということで新聞に載っておりましたけれども、その状況というものはどういうふうになっておりましょうか。そして、ことしならことし上半期で顕著なことというのはどういうことなのかお伺いをしたいと思います。
  134. 大久保慶一

    ○大久保説明員 お答えいたします。  先般新聞に発表しましたが、平成三年上半期の概要では、摘発人員は合計で一万二千二百六十五名でございました。  それをまず国籍、出身地別に見ますと、韓国が一番負多くて四千二百二十一名、そしてその次がイランでございまして、二千二百二十五名ございました。その次はフィリピンが千四百二十六名、そしてマレーシア、タイなどという順番でございました。このときの特徴を見ますと、イランの急増ぶりがやはり顕著でございまして、前年の同期に比較しますと五・七倍に至っております。  これをまたさらに性別で見ますと、男性が九千百七十八名で、検挙した者の全体の七四・八%。女性が三千八十七名、これも検挙した者の二五・二%ということで、昇性が多くなっております。  それをまた職種別で見ますと、男性が、建設作業員が四千三百三十九名で男性全体の四六・七%を占めており、製造業などの工員が三千二百二十八名、これも男性の三五・二%でございます。これを合わせますと、男性全体の八一・九%が建設作業員と工員でございます。そして女性を見ますと、ホステスが一千六百三十四名で女性全体の五二・九%、過半数を占めている、このような特徴が顕著でございました。  以上でございます。
  135. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今不法就労をしている人間がどのくらい日本にいるのかということになると、余り定かでない。一説によれば十万人だろう、こういうふうに言われている。また、十万人じゃとてもきかないのだ、少なくとも十五万人はいるのじゃないか、こういう説もあるわけでございます。法務省もどうやってそれを調べるかということになると、これは難しい話でありますから、コンピューター化はしているのだろうけれども、入国した者と出国した者を全部チェックして、そして期間が経過した者はどのくらい、あるいはまた、正規に入国していても資格外労働をしている者はどのくらい、こういうことを計算するということはなかなか不可能だから確たる数字がないわけで、したがって、場合によっては十五万人ぐらいいるのじゃないか、こういうことになっているわけでございます。  しかしながら、それを摘発するということになるとなかなか難しい、法務省自体に人員がいないということになって、労働省だってそれに従事するということはできない。こういうことになると、言ってみれば不法就労は野放し状態ではないのか、こういうことになってくるわけでございます。警察もありますけれども、警察だって何か事件がなければ不法就労を探して歩くというようなことはやらないわけでありますから、したがって、不法就労は後を絶たない、こういうことになってくるわけです。  例えば、そういった中でイラン人というものが今非常にふえた。摘発された方もふえたわけでありますけれども、イランの人はどうやって入国してくるかといえば、恐らくこれは全部観光目的で入国をしてくる。イランの場合、私が承知している限りでは、査免協定というのがあってビザが要らないということで、観光で幾らでもビザなしに入国ができる、こういう状況になっているわけです。今までバングラデシュなんかがそうでありましたけれども、これは査免協定を撤廃してしまったからビザが要るということになって、バングラデシュの人が非常に減少した。それに引きかえ、イランの人はどんどん増大をしている、こういうような状況になっている。  そこで、こういうものをこれからどうやって排除をしていくのかということについて法務省のお考え方を伺いたい。と同時に、査免協定問題について、これを何とか考え直さなければならないのではないか、この点についても御意見を承りたいと思います。
  136. 大久保慶一

    ○大久保説明員 まず、私の担当しております摘発の方からお答えいたします。  先生指摘のように、単純労働者の事件がふえておりまして、これに対しても当局は厳正に対処するという方向で臨んでおります。  それで、当局は、これら不法就労外国人の摘発に当たっては、当局のみではなく労働基準監督署や警察など関係機関との連帯を強めて、一体となって対処するということを目指してやっております。特に人権侵害の発生しているような事件だとか、それから、先生も御指摘のありました売春絡みのような悪質な事件、それから、たむろして周辺住民に迷惑を及ぼしているような事件など、悪質と言われる事件を重点的に常時摘発するような体制で臨んでおります。さらに、年数回にわたって、不法就労外国人が集中し潜在しております地域であります東京、大阪、名古屋を中心にいたしまして、各地方管理局が中心となって全国から職員の応援をとりまして、そして集中的に摘発する努力期間を設けて、その摘発に努めている、こういう状況にございます。  以上です。
  137. 小山潔

    ○小山説明員 査先取り決めの点につきましてお答えいたします。  御承知のように、査免取り決めてございますが、これは外交上の重要な問題でございまして、そもそも締結するときに相当な要素、要因から二カ国間でもって慎重に検討の結果結ばれたものでございます。したがいまして、これを途中で見直すというようなことにつきましても非常に慎重を要する事柄だろうと思っておるわけでございます。  しかし、現在イラン人のいわゆる不法就労者が多いという現状はございますので、本省といたしましても、そういった現状を踏まえまして目下慎重に検討しておりまして、査先取り決めの所管の役所であります外務省の方と現に協議をしておるところでございます。
  138. 中村巖

    ○中村(巖)委員 ちょっと話題を変えますけれども、昨日の新聞報道によると、第三次行革審の中の世界の中の日本部会というところが近々第二次部会報告を出す、こういうことになっておりまして、その内容というものが新聞紙上に報道をされているわけでございます。この内容について労働省は、どういう内容であるか、どう承知しているのか、お答えをいただきたいと思います。
  139. 若林之矩

    若林政府委員 第三次行革審の世界の中の日本部会におきましては、現在「外国人労働者問題及び外国人に対する行政の在り方」をテーマの一つといたしまして審議を進めておられます。この十月には、労働省からも伺いましてヒアリングが行われたところでございます。  この議論の動向につきましては私ども大きな関心を持って見守っているところでございますが、現在まだ部会の議論が引き続き行われている状況でございまして、現時点で私どもこの問題についてとやかく申し上げることは差し控えなければならないというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、私どもとしてヒアリングで労働省考え方を申し述べさせていただいております。
  140. 中村巖

    ○中村(巖)委員 現時点で発言ができないというような言われ方ですけれども、昨日の新聞の中に既にこういう内容だ、こういう方向性なんだということが外国人労働者の問題についても出ておるわけです。  基本的にどういうことなのかというと、その部会の報告が近々出る、今議論が行われていると言うけれども、新聞報道によれば、近々報告書が出るんだということの中で、単純労働者についても受け入れざるを得ないという考え方が基調になっている、こういうことでございます。  それに対して、労働省としてはどうお考えになるのか。
  141. 若林之矩

    若林政府委員 先ほど申し上げたようなことでございますけれども、私ども基本的な考え方といたしまして、我が国の政府は、いわゆる単純労働者の受け入れにつきましては十分慎重に対応するということになっておるわけでございまして、労働省は従来から、労働力不足を理由として単純労働分野に外国人労働者を受け入れるということは慎重でなければならないということを、そういう方針を堅持してまいっております。  この背景と申しますものは、一つは、国内で雇用機会が不足しております高齢者等の雇用に対する競合の問題でございます。今後ますます高齢労働者が増加してくるわけでございまして、そういった高齢労働者との競合等の問題がございます。  第二点は、我が国労働者が就労したがらない分野に外国人労働者が集中して就労する、労働市場の二重構造化とよく言われているものでございますが、こういった問題が生ずる。あるいは、今後労働力供給は制約のもとに推移するということではございますけれども、そのときどきやはり景気の変化というものはあるわけでございまして、そういった際に、景気後退になりますと外国人労働者に深刻な失業問題が生じる、こういうことが懸念されるわけでございます。  こういった観点から、私ども、ただいま申しましたように、労働力不足を理由として単純労働分野に外国人労働者を受け入れるべきではない、こういう方針を堅持し、また、いろいろな機会に申し上げているところでございます。
  142. 中村巖

    ○中村(巖)委員 行革審のその報告書の中で出されるという内容というものは、滞在期間を二、三年に制限をするとか、あるいは家族の呼び寄せをさせないとか、あるいはその他のいろいろな条件をつけて、この範囲ではやっていいのではないか、つまり、一定の条件のもとに所得と技術移転を満たし得る技術実習制度として単純労働者の受け入れをしたらどうなんだということでありまして、確かに、今は一時的な労働力不足だから云々という一元的な考え方ではそれはおかしいかもわからないけれども、やはり国際的圧力というものがあるわけで、アジアとの経済格差があるから国際的圧力が当然あるわけでありまして、日本がその分野で極めて閉鎖的であるということは果たしていかがなものかという部分もあるわけでありますし、日本もやはり技術先進国として技術移転というものもやはりやっていかなければならないんじゃないか。  その意味で、先ほど大臣が言われたことは、単純労働者を、どういった条件のもとでかは別として受け入れの道を開く、先ほど大臣はそういう方向性の発言をされておったと思いますけれども、その御答弁と今の局長の答弁とはちょっと矛盾をしているように思う。絶対的に単純労働者を受け入れないような方針だ、従来のそういう方針を堅持をしていきたい、そういう局長の答弁と大臣考え方とは矛盾するように思うのですが、いかがですか。
  143. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 まず第一に、きのう、おとといぐらいから、いわゆる行革審の世界の中の日本委員会ですかの答申というものの内容が出ておりますけれども、実は、たまたま私院内で担当者と会って話をいたしましたら、必ずしも新聞の報ずるところではない、正確に伝わっていないということでございました。  いずれにいたしましても、これは行革審、独立の機関が検討していることでございますから、我が方は我が方としての意見を述べているわけでございますが、最終的には向こうで決めていただくことであります。  第一点として、さはさりながら、私が先ほど申しましたことは単純労働者の受け入れに通ずるではないか、こういうお話でございますが、私は、やはりこれから日本が国際国家をうたっていく場合に、従来のような単一民族国家でとどまり得ない方向に少しずつ進むのだということはそういう方向ではないかと思いますが、しかしこれは一たんそういった道に安易に入ってしまいますと、御案内のようにいろいろな問題が出てきますから極めて慎重でなければならない、こういうことでありますし、そのためには、まず若い外人が日本に来て研修をする。ただ、教室で研修する、研修所で研修するだけではなしに、実地に習ったことをやって、さらに技能、技術を進めて、そして本国に帰る、こういうことが望ましいのではないか、こういうことでございますが、じゃ、それをどこでやってどういうお金でやってどうするか、いろいろな問題ございますので、先ほど来申しておりますように、省内で官房長を中心としたプロジェクトチームをつくっていろいろな角度から慎重にこれを検討してまいりたい、検討させたい、こういうことでございます。
  144. 中村巖

    ○中村(巖)委員 法務省も一昨年に入管法整備をされたわけで、在留資格というか滞在資格というものをいろいろ設けたわけです。しかも、最近になっては、今大臣の言われる研修というものについても、この研修の枠を拡大をしてできるだけ多数受け入れたいというような方向で物事を進めておられるようでございますけれども、まだまだやはり不十分だというか、滞在資格を幾つもつくられておりますけれども、その基本にはやはり単純労働者は受け入れないんだ、こういう形での資格の設定ということになっていると思います。それをいつまでも墨守をしていくということはできないというふうに思うわけで、改正をされたばかりでありますけれども、例えばこの行革審の中に言われていると伝えられておりますけれども、技能の部分について技能の範囲を拡大をしていくということですね。さらに、研修でも、今大分広げられでいるようでありますけれども、土木作業だってこれは研修が必要なんですから、単純労働といったってあるいは工場労働だって、これは研修が必要なんですから、そういうものをどんどん広げていくこと。さらには、今これから高齢化社会等々に向かって介護、看護などのこういう人手が非常に足りないという状況を迎えて、こういう部類についても新たに滞在資格として設定をしていく、こういうことが必要ではないかというふうに思っております。  そこで、単純労働者を受け入れないという考え方についてと、さらに、私が今申し上げた点について法務省の御見解を伺いたいと思います。
  145. 大澤久

    ○大澤説明員 外国人労働者のうちの単純労働者についてどうかという御指摘でございますが、この問題につきましては、入管法の改正の際にかなりの議論をいたしまして、そして政府としての基本政策を策定いたしまして、その基本政策に従いましてこの入管法を改正したという経緯がございます。ただ、改正後一年、実施されましてから一年ちょっと経過しておるわけでございますので、この時点でその後の変化があったかどうかという点につきましては、まだ、私ども立場といたしましては、改正法が改正の趣旨どおりに運営されているかどうかということを見詰めているという段階にございます。  どういうふうに影響が出ているかという点につきましては、今先生指摘の技能の範囲についてはどうか、あるいは研修についてももっといろいろ見直すべき部分もあるんじゃなかろうかという御指摘でございますが、それにつきましては、私どもも、改正後の経過を見ながら見直すべき点についてはどうかということにつきましては柔軟な姿勢をもって検討してまいりたいというふうに考えております。
  146. 中村巖

    ○中村(巖)委員 時間ですので、終わります。
  147. 川崎寛治

    川崎委員長 金子満広君。     〔委員長退席、永井委員長代理着席〕
  148. 金子満広

    ○金子(満)委員 過労死の問題について幾つかの点をただしたいと思います。  けさもテレビで放映されましたが、きょう初めて、全国過労死を考える家族の会というのが結成されます。そういう呼びかけの中にもあるのですが、過労で倒れた被災者、その家族たちが、働き過ぎ社会の改革を目指し、地域の家族の会の力を一本に絞り、全国家族の会を結成することになりました。  言うまでもないことでありますが、過労死というのは、もう大きな社会問題であり政治問題だ。過労死はもう国際語にまでなっておる。私どもがヨーロッパ各国へ行ってもカローシと言えばもうその言葉で通ずるわけです。そういう中で、今月十五日に発売された広辞苑も初めて「過労死」というのを入れたんですね。そこには、「過労死 仕事のしすぎによる勤労者の急死。一九八〇年代後半から一般化した語。」こうなっているわけですよ。それから、これは「完全週休二日制に関する報告・勧告の説明」というのでことし八月七日人事院が出したものの中にも、ここでは「特に近年問題化している過労死を防止する」ためと「過労死」というのがあるのです。  私が見落としたならあれですが、労働省の文書の中には過労死というのはないんですね。よくいわゆるというのが頭について過労死になるんだが、もう問題意識として、社会的にもここまで来ているんだから大臣、あなたが大臣になったこの機会に過労死ということをいわゆるなんてつけないで、これは病名じゃないけれども、社会的に存在しているものを的確に表現して、国際化しているんですから、そういう用語にしたらと思いますが、どうですか。
  149. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 この過労死、我々いわゆるをつけているとおっしゃいますが、まさに日本は世界的にも働きバチだ、こう言われていますね。過労死はもう国際語だとおっしゃっていますけれども、そういう働きバチ日本というものをいわばシンポライズするようなそういう名前になっちゃっているわけでありますが、ただ、なぜ労働省としていわゆるをつけるかと申しますと、これは内容がいろいろ複雑でございますので、簡単にこれは過労死だ、これほどうだということを率直に言って医学的にも決めがたい問題もございますので、通常働き過ぎで、過労でということもあって、私たちとしては言葉の正確を期す意味でいわゆるという言葉をつけておるわけでございます。  問題は、やはり人間生き身でございますから、働いて働いてそして倒れるということは当然あり得るわけでございますが、ただ、原因がなくてそういうことはないわけでありますので、私ども労働行政立場からは労働時間だとか勤務状況、こういったことについて、これは当委員会でかねていろいろな御指摘がございますが、そういうことについての改善を図っていくということと同時に、もう一つ、やはりそういう事態になる前のまさに身体的チェック、ドックだとかそういったことについても十分できるような余裕を労働管理の面で与えるように指導していきたい、こう思っておるわけでございます。
  150. 金子満広

    ○金子(満)委員 事態が急速に進みますから、いわゆるが間もなくなくなるだろうと私は思います。もうそんなことを言っている暇がなくなって本体になると思いますが、いずれにしても仕事のし過ぎによる勤労者の急死であるという事実は変わらないわけですね。しかも、それがふえてくる。  そういう中で三年前に、八八年六月に関係者の苦痛、困難を何とか打開しようというので全国に過労死弁護団全国連絡会議というのができました。これが現在四十七都道府県全部できましてやっているのですが、過労死の相談というのは今日まで二千四百七十四件、こういうように膨らんできているんですね。しかも、年ごとに拡大してくる、こういう状態だ。特に、最近では過労死そして労働災害の認定をめぐって、いろいろの立場で行政訴訟がふえているのは御存じのとおりだと思いますね。  そういう中で、企業の責任は当然だけれども行政上も考えいかなければならぬという点で、逆転判決というのが幾つか連続して出ているのですね。その一つが本年の五月二十七日、大日本印刷の宮崎貞三氏における東京高裁の判決ですね。脳出血死亡の問題についてやっているわけですが、これは一審判決を覆して行政上の責任という問題も出てきているわけですから、それで逆転判決。その内容は大きく分ければ三つあると思うのですね。蓄積疲労を発病の原因と評価したことが一つ、それからもう一つは、深夜勤務が健康に悪影響を及ぼすことが高い、それから三番目が、企業側の健康保持義務違反を業務上判断の要素に加えるなどということ、大きく分けれはこの三つになると思うのですね。この判決に対して労働省は、御承知のように法務省と協議して上告を断念したということですね。これは経過です。  したがって、上告を断念した以上、判決の趣旨に沿って行政的にも取り組んでいくということに当然なると思いますが、当たり前のことですが、大臣、どうですか。
  151. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 ただいま御指摘の大日本印刷の裁判例につきましては、私どもとしてもいろいろ考えるべき問題はあろうかと思います。しかしながら、判決の内容は、業務と倒れられたことの間に相当因果関係があることが必要であるということを前提にした上でいろいろな事実認定をいたしておりまして、その事実認定については、私どもとしてもそのまま受け取りかねる点がございました。ございましたけれども、これは法律上の最高裁に対します上告理由として見るには、ちょっとそういう問題にはならないのではないかという判断をいたしまして、最終的に上告をいたさなかったわけでございます。  私どもどしましては、現在、認定基準のことは先生まだ詳しくお触れになっておりませんけれども、今の認定基準は決して不合理なものではないので、十分専門的な検討を経た上であるものでございます。ただ、その認定基準を当てはめます場合に、第一線の職員もなかなか忙しいわけで、その中で適正な判断を行ったかどうかということは当然常に反省を加えるべき問題であろうかと思いますし、また、ああいう判決がありましたときに、その事実の評価あるいは調査のあり方につきまして、これからも謙虚に、できるだけ適正な判断ができるように心がけるという点を努力をいたしたい、かように思っている次第でございます。
  152. 金子満広

    ○金子(満)委員 そういう点で、何となく気分はすんなりいかないが従う以外にない、上告はやめた、何となく後味が悪くて夕暮れみたいな話になるのですよ。これは、そうなると判決が生きているのだから、これに沿って労働行政はやるというのが法治国家としては筋道だと思う。  そういう中で、大臣が着任される前のことですけれども、これは「連合通信」に出ていますが、ことしの六月六日、七日の両日、日経連の経営法曹全国大会、法曹関係の全国大会というのが東京であった。ここで日経連の増田常務理事が次のように言っているのですね。この判決を頭に置いて、「マスコミや労組の中には働き過ぎ社会をなくせなどという主張もあるが、われわれはそれに同調しない」、これは経営者立場です。これはしゃべることは自由。そこに労働省の明石さん、職業病認定対策室長も出席をして、過労死の労災認定上の取り扱いについて講演をしているのですね。その内容が紹介されていますが、そこでは東京高裁で逆転した大日本印刷の判決を取り上げて、「問題ある判決だとして現在検討中。われわれは業務が過重だったかどうかを、一般的・客観的にみており、(判決のように)「本人にとって過重だったかどうか」ではみていない」。そうしますと、経営者の発言と共通しているんですよ。私は、こういうように見ていないとまで断言するのは、労働省としてはここまでやらない方がいいと思うのです。こんなこと言ったら、労働省はだれの味方だ、もう一発ですよ、これは。こういうのを、判決があったばかりのときに平気で伸び伸びと経営者のところへ行ってやっているんだから。しかも、法律関係のところへ行ってやっておるわけですよ。これはかえって経営者を激励することになっておると思うのですね。  私は、今後のこともありますから、こういうようなことが行えないように、これは大臣のところで指示しないと末端まで通らないです。途中は、言ったことを合理化するに決まっているんだから。ここだけは、大臣、ちょっと答えてください。
  153. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 日経連でも使用者立場からいろいろ検討されておるわけで、そこに今お話がありました私ども室長が出て話をしているわけですが、そのときはちょうど上告するかどうかという検討の最中でありまして、そういうことを話したものと思われます。  全体のことがちょっとここでわかりませんけれども、先ほど申しましたように、いろいろ認定基準の問題とは別に、事実認定の問題で我々にとってはすっきりしない問題があることも事実でございます。とりわけあの方は非常に血圧が高い方でございまして、その中で起きたことでございますので、そういう非常に個人的なものを基準にして、つまり、一般の業務水準との関連でなく判断をしたということが一つ問題ではないかという見方がございますので、そのことを申し上げたと思います。そういうことでございます。     〔永井委員長代理退席、委員長着席〕
  154. 金子満広

    ○金子(満)委員 余り個人的と言わない方がいいんですよ。その上にまた通達を出しているんだから、課長名で。ちゃんと個人の、この大日本印刷で。そういうようにやっていたら、どんどんどんどんやってることが経営者の方に経営者の方に傾斜していくということになると思うのですね。  これは事務連絡第二十号、六月二十一日で、課長の名前で各都道府県の労働基準局に出しているわけですけれども、私は、この通達を欲しいんですがと言ったら、なかなか出てこなかったが、あえて督促はしなかった。その文書はもうみんな出てしまっているんです。全国の基準局に行っているんだから、秘密でも何でもないし、皆さんの方も秘密にしているわけではないんですから。その中には「相当因果関係の判断の前提となる業務による過重負荷の事実認定において、深夜・交替制勤務」ずっと書いてあって、こういう点で「脳出血発症の原因となったと評価している点がこ判決ですよ、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準に照らして問題のあるところである」という通達を出しているんです。そして「この判決を前提とした認定基準の見直しは必要がないと考えている」から、そのようにしろと、ちゃんと指示しておるんです。これは、個人の問題というのは、ここまで立ち入って詳しく――こんな長い通達ですよ。相当のものであります。こういうことは、私はやるべきでない、上告を断念した以上、それを行政に生かしていくというのが私は労働省として本当に大事なことだと思うのです。しかも、法務省と打ち合わせをしてやっておるんだから。  脱線しちゃならぬと思いますが、時間がありませんから、最後に三つの提起をしたいと思うのです。今過労死をなくすということは労働行政の中の中心問題の一つだと思うのです。これは間違いなく、国際的にもそうだ。  そこで、一つは、倒れてまだ半身不随、いるわりですから、遺族、被災者に対する血の通った救済を実現することだと思うのです。そして、認定基準の問題もありますが、私はその見直しも実情に即してやるという腹構えぐらいなくて、一たん決めたらかじりついて離さないみたいな、こういう硬直性は行政はとるべきでない、これが一つ。  もう一つは、労働条件の改善については、先ほどからも出ていますが週休二日制、これは促進するのは当たり前ですが、同時に超過勤務、つまり、残業時間は上限を決めて規制する。ヨーロッパ並みに言えば大体百二十時間前後ぐらいじゃないですか、それを規制するということ。  それから三番目が、減らし、合理化が結局長時間過密労働を強いているのですから、業務量に見合った人員を確保する、そういう点を企業の責任を明確にしてやるという、このことが非常に大事だと思うのですね。  先ほど言った人事院の勧告の中でも、「超過勤務の縮減」というところで「特に近年問題化している過労死を防止するうえでも、過重な長時間の超過勤務の縮減を図ることが緊要」と言っているのですから、この点、最後に大臣の見解を伺って質問を終わります。
  155. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 たびたび事務局から申し上げておりますように、突然訪れる死が、それが過労によるものかどうかということはなかなか医学的に難しい問題がございます。そこで、いろいろな議論が出ているわけでございますが、それが明らかであった場合には、私どもはまさにちゅうちょなくこれは労災法の適用にする、こういうことだと思いますね。(金子(満)委員「見直しもね」と呼ぶ)はい。  そういうことでございますので、そこはもう明快なのでありますが、ただ、繰り返し申しますように、そこに至らないための労働条件の改善、今先生からいろいろサゼスチョンがございましたけれども、それを含めながら豊かでゆとりのある労働環境をつくっていくということについては、これは政府も努力いたしますが、この際、経営者もまた労働者側もそこは十分に話し合って善処をしていただきたい、こういうことでございます。
  156. 川崎寛治

    川崎委員長 伊藤英成君。
  157. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 まず、労働時間の短縮の問題につきましてお伺いをしたいと思います。  もう申し上げるまでもありませんけれども日本は、戦後の経済成長によりまして今や世界一、二の経済大国というふうになっているわけでありますけれども、しかし、そういう数字的な豊かさと裏腹に、私たち国民生活はなかなか豊かさを実感することができないという状況であります。  民社党は、昭和六十三年に、各一人一人が本当に豊かさを味わえるようにということで、生活先進国をつくろう、こういう言い方をいたしまして運動もしてきているわけであります。最近は宮澤総理も生活大国ということを言っているわけでありますけれども、いずれにいたしましても、なかなかゆとりあるいは豊かさというものを実感できないわけですね。そして、その最大の理由というものは、何といっても労働時間の長さが挙げられるわけであります。  例えば、八九年の各国の労働時間を見てみましても、日本年間二千百五十九時間、アメリカですと千九百五十七時間、フランスは千六百四十六時間、旧西ドイツですと千六百三十八時間、こういうふうに出ている。わけてあります。したがいまして、今この労働時間の短縮はまさに国家的な急務だ、このように思うわけであります。そして、この労働時間に関しまして、昭和六十三年五月に閣議決定された経済運営五カ年計画では平成四年末に年千八百時間という政府目標を掲げておりますけれども、しかし、この目標達成というのはなかなか大変なことだ、こういうふうに思います。  そこで、大臣にお伺いするわけでありますが、この政府目標千八百時間をどのように達成しようとするのか、その辺の決意をまずお伺いをしたいと思います。
  158. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生おっしゃるように、幾ら所得がふえても勤労時間が長ければそれは豊かなゆとりのある生活ではないということでございますから、労働時間がどうしたら短縮できるかということが最大の課題でございますけれども、おっしゃるように、平成四年というともう来年ですから、来年までに千八百時間というのは、率直に申しまして、現在が二千四、五十時間ですかということを考えますと、どうかなという感じもいたします。ただ、我々としては何とかそういう方向に近づけたいと努力しておりますが、端的に言って、御案内だと思いますけれども、いわゆる実労働時間、総労働時間は確かに二千を超えておりますが、この近年所定内労働時間が急速に減ってまいりまして、そして所定内労働時間ですと千八百数十時間になっているわけですが、問題は所定外労働時間が依然として百八十時間、九十時間あって、これが問題になる。  そこで、所定外労働時間をどうしたら短縮できるかということでございますけれども、大企業の場合にはこれが大体時間外、いわば残業なんですね。だから大企業は、私はあえて経営者方々にもお願いしたいんだけれども、いわば従来の極端な生産第一主義から、ゆとりを持っていただいて、物をつくるかわりにむしろその分は労働時間を短縮して労働者ゆとりを与えていただきたいということですし、同時に、中小企業の場合は休日が足りない、こういうことですね。ですから、中小企業に例えば週休二日制を普及していくということがどうしたらできるかというと、これはまだその地域のいろんな状況、今度は下請、系列の関係やそういった問題もございますので、そういう地域地域でそうした休日をとるような労働環境をつくるように、これは労働省関係の出先その他が話し合いをしていくことも大事ですし、また、下請にお出しになる大企業の方では、そこはこの余裕を自分の労働者労働時間短縮に向けるだけでなしに下請に対しても多少お与えいただく、ずばり言っており買いたたいたりなんかしない形で余裕を下請の方にも分からいただくというような形で、やはり労使または大企業、中小企業、下請、系列、何としてもこの目標の千八百時間に早く到達するような総合的な努力、協力をお願いいたしたい、こういうことでございます。
  159. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今の大臣のいろいろ言われたそれぞれについて私の意見も申し上げたい感じはいたしましたけれども、きょうは時間がありませんのでまたの機会にいたしますが、これはなかなか大変なことでありますので、全力で取り組んでいただきたい、このように思います。  今お話のあったうちで、時間外が実際には非常に多いですね。それを短縮をしようとしたときに、今日本労働基準法の第三十七条ではこれは二五%以上という規制になっておりますね。これは例えば欧米等と比べますと、今の日本の水準というのはやはり考え直さなければならぬと私は思うのですよ。この点、この労基法三十七条の見直しについて労働省としてはどのように考えられますか。
  160. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 所定外時間の削減を進めるための具体的方策として御提案になったわけでございますけれども、確かに諸外国でも二五%より高い割り増し率を定めている例も多うございます。この部分につきましては、六十三年度から改正労働基準法実施をされまして三年たったということで、その附則の規定に基づきまして、現在既に中央労働基準審議会労働基準法におきます労働時間関係の法制全般にわたって検討お願いしている段階でございます。当然、これから割り増し賃金率についてもいろいろ議論が交わされることになると思います。  先生の御質問は、恐らく率を上げることによって使用者側のコスト意識からの所定外時間の削減を促すという御発想だろうと思いますが、一方においては、なかなか個々の労働者立場になりますと、なおかつ時間よりも収入が欲しいというような方も大勢おられます。最近の総理府の調査では、その比率は減ってきておりますけれども、そういうこともございますし、また、そういうことになりますと、残業手当が高くなると一体どっちに作用するのかという御議論もございます。だから、休日労働なんかの場合には、割り増し賃金よりもむしろ代休を与えるというようなことを制度化したらいいというような御議論もございますし、そういった御議論がこれからいろいろ交わされて、妥当な結論に達するものというふうに期待をいたしておりまして、そういうことを踏まえまして、私どもとして適切な措置をとりたいというふうに考えております。
  161. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今の話は、労働省としてどういうふうにしたいのかなという意味で、今の局長のお話は私にはわかりにくいな、こう思っているのですよ。  現在はもちろんコスト意識もある、あるいは時間というものに対してどういう価値観を持つのだろうかという話だと私は思っている。そして、現に今のようにいわばボーダーレスな格好で企業も海外に出たりいたします。御承知のとおりに、例えば日本の企業がアメリカに行ったといたしますね、一〇〇%出資の現地法人ができたといたしますよ、そこの割り増し賃率等は日本より非常に高いという状況がある。このこと一つとってみても、では日本はどうした方がいいんだろうかということは、私は当然考えなきゃならぬ話だと思うのです。もちろん今審議会等で議論はされる話だと思いますが、局長としてはどういうふうにした方がいいのだろうというふうに思われるのですか。
  162. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 率直に申しまして、所定外時間を減らすために割り増し率を変えることがどのくらい有効に作用するかということを今ここではっきりお答えする用意がないのですが、今の御指摘は大変重要な点でございます。  そういうふうに思いますし、それからもう一つは、現実の問題として、夫たいま事業所の九二%が二五%の割り増し率で支払っておる。その他の部分労使協定等によりましてさらに高い割り増し賃金を払っているという例もあるわけですが、そういったような現実、あるいは割り増し率を上りることによってどのくらい削減に有効に作用するかという点は、ただいまの先生の話も踏まえまして、我々としても考えてまいりたいというふうに思っております。
  163. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 次に、労働時間の問題を考えたときに、何といいましょうか、産業別に見ても幾つかの業種がいろいろ問題だと思っているのですが、そのうちの一つで運輸交通業の場合に、これは大変な労働時間ですね。最近の実績を見てみても、例えば平成二年でタクシー産業二千四百二十四時間、トラック産業二千五百三十九時間というような状況でありまして、他産業に比べても大変な長時間だと思います。もちろん、自動車の運転者の労働時間につきましては、今までも、例えば二七通達もある、あるいはその後も大臣の告示等もあったりいたします。あるいは先月も同じようにこの告示の改正も行われたりしておりますけれども、この間もちょっと聞きましたら、いわゆる運輸業界の中にも、例えば大臣告示といっても罰則のない行政指導では遵守の徹底は不可能だというような意見も多いというふうに伺っております。したがって、そういうふうに考えれば、例えば法制化ということも必要ではないかという話になったりするわけでありますが、時間がありませんのでまとめて三点についてお伺いしたい、このように思います。  この運輸交通業の労働時間あるいは労働態様について、第一は、どういうふうに今認識をされているのか、そしてこれからどういう対策をとろうとするのか、そして、その法制化という問題について、その必要性についてどのように考えられるのか、伺います。
  164. 佐藤勝美

    佐藤(勝)政府委員 特に自動車運転者の長い労働時間ということでございますが、これは御指摘のとおりでございまして、非常に長うございます。そういうことで、特に自動車運転者の場合には通常の労働と違いまして、拘束時間であるとかあるいは手持ち時間も含めた拘束時間のために労働時間が非常に長くなるという面がありまして、運転時間、拘束時間あるいは労働時間全体というふうに他といろいろ違う面がありますので、そういう拘束時間等の最高限度枠を定めた告示を特別につくりまして、これは先生が今お触れになった問題だと思いますが、そういうことによって指導監督をいたしております。  これにつきましては、従来もあったわけですが、ことしの四月から法定労働時間が従来の四十六時間から四十四時間に短縮をされたことに伴いまして、この告示の基準改善をいたしております。そのことによりまして告示の改正をやって、来年の一月一日から新しい告示を実施をするということにいたしております。  これは一般の労働時間短縮対策の中で自動車運転者についてその特殊性にかんがみてこういった告示をつくり、それに基づいて監督指導いたしておるわけでございますので、数ある産業の中でこの自動車運転者について罰財つきの制度を今直ちに設けるということは適当であるというふうには考えておらないところでございます。
  165. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 最後に一問お伺いしたいのです。  今労働力ということを考えたときに、最近は女性労働力の活用といいましょうか、女性労働者の参入というのは非常に大きな、重要な問題になっているわけでありますが、先ほど私は運輸交通業の話をいたしましたけれども、こういうところにも最近は大変女性も多くなってきておりますし、私は非常にいい現象だと思いますし、それがまた、女性が進出してくることによって職場環境とかいろいろな人間関係も含めてよくなっている、こう思うのです。ただ、今まで余り女性が進出していなかったところにこれから女性がさらに急に増加しようと考えたときに、例えば福利厚生施設とかそういうような問題について、その不足ということがなかなか大変になっているというふうに思います。  そこで、この女性の職場進出にかかわって、助成措置というようなことも考えられるのではないか、このように思うわけでありますけれども、こうしたことについてどのように考えられるかお伺いして、質問を終わります。
  166. 松原亘子

    ○松原政府委員 お答え申し上げます。  男女雇用機会均等法、五年半前に施行された法律でございますが、この法律施行を契機といたしまして、先生がおっしゃいましたように、これまでは余り女性が進出していなかったような業種、職種にも女性が就労するようになってきました。私どもとしても非常に喜ばしいことだというふうに思っているわけでございます。  ただ、おっしゃいましたように、これまでは男性主体であったような職場に女性が進出するとなりますと、おっしゃったような点で十分就労環境が整備されていないというようなことも確かにあろうかと思います。これに関連いたしまして、さき国会で成立いたしました中小企業労働力確保法の中で各種の助成措置を講ずるというようなことが規定されております。これに基づきます施策の中で、今先生が御指摘になりました福利厚生施設、更衣室とかシャワーとか、それから託児施設、そういったようなものにつきましては助成措置を行うということにいたしております。私どもとしては、こういった助成措置を大いに活用して、さらに一層女性にとって働きやすい職場がつくられるように支援をしてまいりたいというふうに思う次第でございます。
  167. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 終わります。
  168. 川崎寛治

    川崎委員長 この際、外務省経済協力局長から発言を求められておりますので、これを許します。川上経済協力局長
  169. 川上隆朗

    ○川上政府委員 けさほどの伊東先生からの御質問に際しまして昨日お呼び出しをいただいた由でございます。私、種々の公務のため本院に出席できないということをお伝えしたということでございますが、それが非常に不確かな形で伊東先生のお耳に伝わって誤解をいただいたといったような経緯があったようでございます。この点につきまして、私深くおわび申し上げたいと思います。  以上でございます。
  170. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 私は、何も誤解はいたしておりませんで、最初から局長さんをお願いしますと質問を取りにいらした方に申し上げましたところ、その後電話がかかってまいりまして、PKO特別委員会に出席しなければならないので局長の出席はできないという御答弁でございましたが、誤解ではないんじゃないのでしょうか。
  171. 川上隆朗

    ○川上政府委員 正直な話、実は先生からそういうお呼び出しを受けていたということはつい先ほど伺った次第でございまして、実は私の同僚は、そこのところは種々の公務で残念ながらあしたは出席できないと、PKO委員会ということを申し上げたかどうかちょっと私承知いたしておりませんけれども、そういうことで何かお伝え申し上げたら、担当課長の出席で差し支えないと御了解いただいたというふうに当人は理解したようでございます。  そういうことで、いずれにいたしましても、結局、結論といたしましては、私どもの内部的な手違い、不行き届きがございましてこういうことになったという結果については、深くおわび申し上げたいと思います。
  172. 川崎寛治

    川崎委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十二分散会