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1991-11-19 第122回国会 衆議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十一月十九日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 林  義郎君    理事 大島 理森君 理事 金子原二郎君    理事 中川 昭一君 理事 船田  元君    理事 与謝野 馨君 理事 石橋 大吉君    理事 上原 康助君 理事 串原 義直君    理事 山田 英介君       逢沢 一郎君    井出 正一君       伊吹 文明君    石川 要三君       上草 義輝君    衛藤 晟一君       小澤  潔君    岡田 克也君       北川 正恭君   小宮山重四郎君       斉藤斗志二君    塩谷  立君       鈴木 宗男君    武部  勤君       中谷  元君    二階 俊博君       西田  司君    福田 康夫君       増子 輝彦君    町村 信孝君       松浦  昭君    三原 朝彦君       光武  顕君    山口 俊一君       山本 有二君    秋葉 忠利君       伊東 秀子君   宇都宮真由美君       小澤 克介君    緒方 克陽君       岡田 利春君    五島 正規君       沢藤礼次郎君    細川 律夫君       松原 脩雄君    元信  尭君       山中 邦紀君    東  祥三君       遠藤 乙彦君    山口那津男君       渡部 一郎君    東中 光雄君       古堅 実吉君    和田 一仁君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         法 務 大 臣 田原  隆君         大 蔵 大 臣 羽田  孜君         自 治 大 臣         国家公安委員会 塩川正十郎君         委員長         国 務 大 臣 加藤 紘一君         (内閣官房長官)         国 務 大 臣 岩崎 純三君         (総務庁長官)         国 務 大 臣 宮下 創平君         (防衛庁長官)  出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣 野村 一成君         官房参事官         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一 大森 政輔君         部長         内閣法制局第二 秋山  收君         部長         警察庁長官官房 井上 幸彦君         長         総務庁行政管理 増島 俊之君         局長         防衛庁参事官  金森 仁作君         防衛庁長官官房 村田 直昭君         長         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練 小池 清彦君         局長         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         法務大臣官房司 濱崎 恭生君         法法制調査部長         法務省刑事局長 井嶋 一友君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局 谷野作太郎君         長         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省経済協力 川上 隆朗君         局長         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合 丹波  實君         局長         外務省情報調査 佐藤 行雄君         局長         大蔵大臣官房総 日高 壮平君         務審議官         大蔵省主計局長 斎藤 次郎君         大蔵省主計局次 涌井 洋治君         長         海上保安庁長官 宮本 春樹君         海上保安庁次長 小和田 統君         郵政省貯金局長 松野 春樹君         自治省行政局公 秋本 敏文君         務員部長         自治省税務局長 杉原 正純君         消防庁長官   浅野大三郎君  委員外出席者         国際平和協力等         に関する特別委 石田 俊昭君         員会調査室長     ————————————— 委員の異動 十一月十九日  辞任         補欠選任   井出 正一君     山本 有二君   増子 輝彦君     塩谷  立君   光武  顕君     山口 俊一君   沢藤礼次郎君     宇都宮真由美君   元信  堯君     細川 律夫君   高木 義明君     和田 一仁君 同日  辞任         補欠選任   塩谷  立君     増子 輝彦君   山口 俊一君     光武  顕君   山本 有二君     井出 正一君   宇都宮真由美君    沢藤礼次郎君   細川 律夫君     元信  堯君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際連合平和維持活動等に対ずみ協力に関する  法律案内閣提出、第百二十一回国会閣法第五  号)  国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出、第百二十一回国会閣  法第六号)      ————◇—————
  2. 林義郎

    ○林委員長 これより会議を開きます。  第百二十一回国会内閣提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。秋葉忠利君。
  3. 秋葉忠利

    秋葉委員 社会党の秋葉でございます。  私は、昨年二月の選挙で初めて議員になりまして、総理大臣に直接質問、また外務大臣防衛庁長官に直接こういった場で質問をできるということは初めてでございますので、大変光栄に思っておりますし、しかも、この問題が日本の行く末に非常に大きなかかわりを持っている問題だということで、同時に緊張もいたしております。そして、その総理大臣が私の故郷であります広島出身宮澤総理大臣、しかも、平和ということに関しては広島世界平和の象徴でもありますし、その平和という観点から戦後一貫して活動を続けてこられた宮澤総理大臣ということで、非常に大きな期待を私たち宮澤総理並びに内閣に持っております。そういった観点から、ぜひ今後とも積極的な日本平和貢献策という観点から、大きな期待を私たちが抱いているという観点から質問をさせていただきたいと思います。  まず最初の点ですけれども、このいわゆるPKO法案国連中心主義という非常に大きな枠組みの中で提案されております。ところが、国連中心主義といいますと、一見どういうことが内容になっているのかわかったような気もするのでありますけれども、具体的にどういった内容を持っているのか、少し具体的にその実態を明らかにしていく必要があるのではないかというふうに思います。  最初にお伺いしたいのですが、これは非常に大事な点だと思いますので総理大臣にお願いしたいと思いますが、具体的には、国連中心主義というのはどのような原則をいうのか。例えば国連総会であるとか、あるいは各種の委員会あるいは安保理事会、そういった会合の決議を尊重するという立場なのか。確かに、昨年来の湾岸危機湾岸戦争等審議においては、六百六十号以下の安保理事会決議ということが何回も引用されましたし、こういった安保理事会決定を尊重しなくてはいけないということが言われましたので、確かにこういった点があると思いますが、そのほかにも、例えば、国連中心主義ということを考えた場合に、国連活動には財政的に積極的に援助を行うということも国連中心主義かもしれませんし、あるいは国連を通して日本世界平和の実現のために、あるいは南北問題の解消であるとか人権とか環境、そういった重要な問題のために日本の施策を推進する、そういった行き方も国連中心主義と呼べるかもしれません。また、こうした総会あるいは安保理事会決定を受けた事務総長の仕事を積極的に助けていくということも国連中心主義というふうに言えるかもしれません。恐らくそういったことすべてになるのではないかと思いますけれども、総理は、国連中心主義とはどういうことなのか、具体的な内容としてどういったことを考えておられるのか、まずその点をお伺いしたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 我々が憲法をつくりましたときに、我が国としては軍事大国になることを放棄したわけでございますが、その反面で、平和を愛する諸国民の信義に信頼をかける、そういう基本的な立場をとったわけでございます。このことは、当初、いわゆる米ソの対立等々から、なかなか国連というものがその期待を満たすような役割を担うには至りませんでしたけれども、基本的には、我々はそういうものとしての国連に大きな期待をかけて、この憲法のもとに生きてまいったというふうに考えております。最近になりまして国連役割が非常に大きくなったことはまことに慶賀すべきことでございますが、大切なことは、国連がそのような世界期待に沿うようなものに育つということであろうと思います。長い間そうあってほしいと思う姿になかなか育ってくれませんでしたけれども、ここでこれだけの大きな責任を担うに至ったことから、やはり国連世界のすべての国の利益を公平に代表するものに成長してくれることが、今私は一番大事なことではないかと思っております。  それで、そのために我が国としてまずいろいろな努力をいたさなければならない。御指摘のような財政もその一つでございますけれども、ともすれば、ごく最近まで国連というものを我が国のようにすべての国が大事に考えていたとは必ずしも言えないのでありまして、財政的な貢献などについてもそのことはごくごく最近までともすれば見られたことでございますから、国連というものを大事にして、みんなの公正な利益代表になる、そういうことが私は国連中心主義の今の段階での一番大切な課題ではないか、そう考えております。
  5. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。その点に関して、今のお答えですと、国連が育つこと、すべての国の公正な利益代表になること、そして国連を大事に考えていくことというような内容でしたけれども、実は国連における我が国行動を見てみますと、今おっしゃったような、例えば国連を本当に育てる方向日本政府行動をしてきたのか、あるいは本当に各国利益を公正に国連で代表してきたのか、あるいはもっと狭く考えて、広島といえばやはり原爆、核兵器ということになるわけですけれども、その広島悲願である核兵器全面禁止を本当に公正に国連において代表してきたのか、必ずしも一〇〇%そのとおりだというふうにすべての人が考えられるような行動をとっていないのではないか、そういった問題提起をさせていただきたいと思います。  まず最初に、核兵器、それから非核化という点から問題提起をさせていただきたいと思いますが、例えば国連では核兵器実験全面禁止、この決議が何度も提案され、その採択が行われてまいりました。これは、もちろん核兵器全面禁止全廃ということは、広島だけではなく日本国民悲願だというふうに私は考えておりますし、日本政府も当然そのように考えて行動しているというふうに長い間信じ込んでおりました。しかしながら、これまでの国連における日本核実験禁止決議に対する態度をとってみますと、どうもそうではないように思われます。例えば、これはメキシコ提案核実験禁止決議ですけれども、これについては過去十年間すべて棄権をしている。そして公平のために申し上げますと、西側決議に対しては賛成をしていますけれども、メキシコ提案に対しては棄権をしている。唯一被爆国という言葉国連の場で何度も使われましたけれども、その唯一被爆国としての態度核実験禁止決議棄権をしている。これが本当に日本国民悲願国連において代表してきた態度なのかという疑問をどうしても持たざるを得ないというふうに思います。  それから、それにつけ加えて申し上げますと、例えばインド洋平和地帯決議というのがございます。これはインド洋非核化、非軍事化しようという決議ですけれども、これについても、一九八九年の最終的な採決においては百三十七対四対十四。その中で百三十七賛成、四が反対ですけれども、日本はその反対の中に入っている。それから南大西洋平和地帯決議についても、八九年、百四十六対一対二。一が反対で、これはアメリカ、二が棄権、これがカナダと日本。それから九〇年におきましては、百五十対一対一。反対アメリカ棄権日本です。世界のほとんどの国がこの平和地帯決議賛成をしている。それに対して反対をしている国がアメリカだけである。そのアメリカに追随して日本棄権をしているとしか思えないような投票態度国連においてとっている。  さらには、ことしの一月にニューヨークで開かれました部分核停改定会議というのがありましたけれども、それを再度開こうではないか、ことしの結果がよかったからもう一度開こうという決議が出ておりますけれども、これに対しても日本棄権をいたしております。この改定会議というのは、すべての核実験禁止しよう、そのための部分核停条約を改定しようじゃないか、そういう趣旨で会議を開こうというものでありまして、この程度の提案にさえなぜ棄権をしなくてはいけないのか。  こういうふうに見てまいりますと、本当に日本世界国々とともに国連を育てようとしているのか、日本国民悲願である核実験禁止、そして核の廃絶といった点、全世界国々はおろか、日本国民悲願さえ国連で公正に代表してないんじゃないか、そういうふうにも言えると思いますけれども、それについて総理、そして外務大臣の所見を伺いたいと思います。
  6. 丹波實

    丹波政府委員 総理または外務大臣から御答弁ございます前に事実関係につきまして、先生たくさんの問題挙げられましたので、全部お答えできるかどうか自信ございませんけれども。  例えば、先生がお触れになられた核実験禁止に関するメキシコ決議案というものと西側決議案というものが、一九八一年以来およそ十年間にわたって、この二本の決議案が対立して国連の中で議論されていることは御承知のとおりでございまして、メキシコ決議案に対しましては、先生がおっしゃいましたように日本は一貫して棄権を続けてきました。他方、西側決議案につきましては、日本側は一貫して賛成してきておるわけでございますが、それではメキシコ決議案西側決議案主要点は何か、時間の関係がございますので省略いたしますけれども、一、二点申し上げますと、メキシコ決議案即時核実験禁止ということを要請しておるわけですが、西側案は、即時というのは、それは確かに言葉としてはそうですが、しかし検証技術ということを考えると、即時というのも結構だけれども、しかし、やはり検証面の進展ということに合わせながら一歩一歩核実験全面禁止に近づいていくということが現実的ではないかというような考え方が背後にありまして、相対立してきたということでございます。しかし、先生も御承知のとおり、ことしになりまして、初めてこのメキシコ決議案西側決議案がそれぞれ妥協いたしまして一本化されたということで、現在、国際社会でそういう一本化ということで、私たちは一本化につきましてもそれなり日本としての努力はしたつもりでございますが、そういう状況が好ましい状況として出てきておる。  それから、核実験の問題につきまして、もう一つはジュネーブで行われております軍縮会議におきまして、昨年でございましたか、アドホック委員会というものができましたけれども、この委員会をつくるに当たりまして、堂ノ脇大使アメリカを説得するのに非常に努力されたということは先生も御承知かと思います。そういう意味で、十分ではないかもしれませんけれども、それなり努力はしてきているつもりでございます。  それから、インド洋非核化地帯につきましては、確かに百三十七対十四の十四の中に日本は入っているということでございますけれども、これは一定地域非核化地帯というものをつくるに当たっては、その地域のバランスの問題ですとか、それからその地域関係国の全部の同意がやはり必要ではないかとか、いろいろな考慮でそういう態度をとってきておるわけでございます。  それなり考え方があっての行動でございますけれども、いずれにいたしましても、日本唯一被爆国でございますので、日本としては、この核実験の問題についてそれなり努力はしてきておるつもりでございます。今後とももっともっとやらなければいけないと考えておりますので、ひとつよろしく御理解方をお願い申し上げたいと思います。
  7. 秋葉忠利

    秋葉委員 今国連局長お答えになった数字の中で誤りがあると思いますので、私の方が誤りだったら訂正していただきたいのですが、インド洋平和地帯決議、百三十七対四対十四、反対が四で、今日本が十四の棄権の中に入っているとおっしゃいましたが、私の理解では日本は、アメリカ、イギリス、フランス、これは全部核保有国ですけれども、その三カ国と同じ、唯一非核保有国として日本はこの決議反対をしております。それで正しいんじゃないでしょうか。
  8. 丹波實

    丹波政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。数字の読み違いでして、賛成が百二、反対が四、棄権が二十八でございます。失礼いたしました。
  9. 秋葉忠利

    秋葉委員 それはちょっと、何年のです。ことしですね。私のは八九年の数字ですが……。
  10. 丹波實

    丹波政府委員 これはことしの数字でございます。
  11. 秋葉忠利

    秋葉委員 今の問題について広島出身宮澤総理に、ぜひこの核兵器実験全面禁止あるいは非核地帯についてお考えをお聞かせいただければと思います。
  12. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 一言で申しますと、我々の考えている理想というものと現実というものが必ずしも一致しないというところに問題があるのであろうと思います。すなわち、国連というものが非常に力を持ち、立派なものになって、それに頼ってさえいれば平和、安全が全うできるという世の中にはまだ残念ながらなっておりません。おのおのの国が自分の安全を図らなければならないというのが現実である。しかも、世界の平和が力の均衡のもとに成り立っている。それには核兵器関係をしておるわけでございますけれども、そういう現実がございますから、我が国の場合には、したがって日米安保体制というもので国の安全が図られている。そういう現実がございます以上、すべてもう国連に頼ればいいということにはなかなかやはりなりにくい。おのおのの国が自分の安全を図らなければならない。そういう見地から、今の核に関する決議についても、我が国がその立場をいろいろな形で自分の安全のという見地から考えなければならないということは、残念ながら現実であります。  秋葉委員の言われますように、広島の体験をした者はいつの日にかという悲願を持っておりますし、また、世界がその方向に動き始めているということに非常な期待と希望を持っておりますし、それを促進いたしたいと存じますけれども、現実の国の安全というものはなかなかその理想の状態になっていないということであろうと私は思います。
  13. 秋葉忠利

    秋葉委員 そういった考え方があることも十分わかりますが、少なくとも、日本唯一被爆国であるということを国連総会の演説で歴代の総理大臣が述べ、外務大臣が述べ、そして、日本国民悲願として核兵器全廃という目標を少なくとも暗黙裏のうちに掲げている日本政府が、それが即時であろうとあるいは段階的であろうと、核兵器全廃という決議に対して、私は棄権をする必要はさらさらないと思います。賛成をしておいて、しかしながら、日本としては現実的なことも考えなくてはいけないから、その現実理想に近づけるために労を惜しまないと言って、一体世界のどの国が日本態度に対して疑念を持ちましょう。日本の本当に誠実さがその点において確認されこそすれ、棄権ではなくて賛成をすることによって、日本のそういった理想に対して、あるいは広島悲願日本国民悲願というものが国際社会において公正に反映されると私は信じております。そういった点で、これからの日本政府がこういった日本国民願いを、安保条約も大切かもしれません、あるいはアメリカの思惑も大切かもしれませんけれども、それ以上に日本国民願いをまず国際社会においてきちんと提示していただく、明言し、さらには説得までしていただくことをお願いしたいと思います。  この点について私は一言だけつけ加えさしていただきますけれども、この第一委員会における核実験全面禁止決議に関して、投票理由あるいは各国発言がございます。日本発言、例えば、これは一九八一年だと思いました。この第一委員会において日本発言は、検証問題が問題だからメキシコ提案には賛成できない、それからアメリカは、時期尚早であり、検証可能でなければならないということを言っております。そして、それから約十年後の一九九〇年、日本投票理由説明検証が保証できなくてはならない、それから国家安全保障期待せしめるようなものであってはならない、ほとんどその意見が変わっておりません。それで、アメリカ日本とのこの投票理由についての説明がほとんど同一であるということも指摘さしていただきたいと思います。  核実験についてはそういったことをお願いいたしまして、次に、財政の面、それから国連事務総長の力についてということで申し上げたいと思いますが、まず、日本国連分担金、これが分担率でいいますと世界第二位になったということは私たちよく承知しているところでありますけれども、したがって、日本国連に対して多額の金を出しているんだ、金を出しているんだからそれだけの発言もさせろ、あるいは金を出しているにもかかわらず評価されない、それは人を出していないからだという議論がされていますけれども、必ずしもそう言えないのではないか。例えば、金の出し方にもいろいろな出し方があって、同じ金を出しても全く評価されない出し方もあれば、貧者の一灯のように高く評価され、そして感謝される出し方もあるというふうに思います。  まず分担金ですけれども、確かに率では第二位ですけれども、例えば、国民所得平均額に対する分担金という考え方をいたしますと、日本世界で六十四位です。世界的な経済大国であると言われながら、しかも国民所得が非常に高くなっていながら、国民所得の中で一体どのくらいの分を出しているのかという点から考えると、二位どころか六十四位になってしまう。これで本当に日本国連に応分の財政的な貢献をしているのか、こういう疑問が生じます。  さらに、この分担金支払いについても、私は先ほど国連に行ってまいりました。国連のスタッフだけではなくてさまざまな人に、ジャーナリスト、それから国連関係者、そして国連のことをよく知っている識者、そういった人たち意見を聞いてまいりましたけれども、この支払いがおくれているという点に対して、やはり日本支払いをおくらせているのではないか、そして国連に対する支払いがおくれていることによって、せっかく分担率は第二位でありながらそれだけの評価がされていない、それは金額の問題ではなくて支払いが滞るというところに問題がある、こういう指摘を受けてまいりました。この点について、どうせ出すんであればやはりきちんと出した方がいいんじゃないか、文句を言わずにきちんと出す。あるいは分担金、これが国民所得平均額に比べて低いということであれば、それ以外の分野でもっともっと多額貢献をしていってもいいんじゃないか、そういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  14. 丹波實

    丹波政府委員 ただいまの先生の御指摘、ごもっともな点でございますけれども、一つ、この支払いの時期なんでございますけれども、円ドルレートの換算率を見ながら、日本が支払うときに最も多いドルになるような時期を見定めるということで、その支払いの時期がいろいろ年によってずれている。したがって、遅いときには国連からもっと早くしてくれないかということが言われることは御承知のとおりで、最近の三年間の例で申しますと、一九八九年は九月の二十日に完済いたしました。それから昨年の場合には八月の二日、ことしは九月の二十四日でございます。ちなみに、早い年もございまして、四年前、一九八八年には四月の末に払っていますけれども、そういう意味で、為替レートの変動によりまして若干様子を見ているという点があることは事実でございます。
  15. 秋葉忠利

    秋葉委員 例えば為替レートと支払い期日の関係について、外務省の方から資料をいただきたいというふうに申し上げたのですが、きょうのところまでその資料をいただいておりませんので、後でその資料をいただいた上で、為替の変動と本当に支払い期日との間に有意な相関関係があるのかどうかということをきちんと検証したいと思います。  意図はそうかもしれませんが、例えばこういうことが言われている。昨年でしたか一昨年でしたか、ともかく日本分担金を滞納している、しかしながら、外務大臣が来る前日になってようやっと分担金を払ったんだというようなことが信じられております。それが本当かどうかはともかくとして、外務大臣国連を訪れる前日に為替レートが一番有利なように偶然なったということでしょうか。
  16. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げた三年間につきましては、たまたま時期的には九月ということであるいはそういう憶測を呼ばれる結果になっているのかもしれませんけれども、一九八八年の場合には四月に払っていますし、大臣が行かれるからということでは直接的な関係として私たちは考えておらないのですけれども、よろしく……。
  17. 秋葉忠利

    秋葉委員 それから、金融界での金づくりにおいて、為替相場を張るということはかなりリスクが高いことだということになっております。現にアメリカに対して払った九十億ドル、そういった考慮をなさらないままに払ったために、為替変動による差額を出さなくてはいけないようなことになった。  それではお伺いいたしますが、九十億ドルとそれから国連分担金との額は非常に大きな差がございます。九十億ドルの方がはるかに大きな額である。その九十億ドルを出資するに当たって同じような差額レートについての考慮は全くなされなかったのか、それを伺いたいと思います。
  18. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生言及されましたいわゆる九十億ドルでございますが、これに関しましては、最初から円建てで湾岸平和基金に払い込むということでお話をしてまいりまして、そして現にそういたしております。先生が言及されましたのは、恐らくその後で、湾岸での新たな事態に対応いたしまして七百億円をさらに湾岸平和基金に払ったことを指しておられるかと思いますが、これはあくまでも新たな事態への対応ということでございます。
  19. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。ということは、例えばマスコミの報道では、その新たな拠出ということが為替の差損に原因しているというふうに言われておりますけれども、そのことについて外務省は正式に抗議を申し込み、例えば訂正記事を出すように各マスコミに求められるということでしょうか。
  20. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 今申し上げました七百億円に関しましては、これは七月の中旬に、私ども湾岸平和基金と交換公文を結びまして支払いをいたしましたが、その時点できちんとそういう趣旨を説明しておりますし、それから、その後国会の場でも御質問がございましたので、そういう趣旨を御説明して、政府としての考えは逐次明らかにしてきているつもりでございます。
  21. 秋葉忠利

    秋葉委員 その点については、時間がありませんので別の機会に再び取り上げたいと思いますが、分担金以外に日本国連に対してかなりの額を拠出しているということ、これもまた事実であります。こういった点について、応分の貢献をするという態度、それからそれなり貢献をしているという点は認めたいと思いますけれども、例えば、この中に国連平和維持活動支持強化信託基金といったようなものがあります。この基金について、日本はこの基金を事務総長が使うに当たって条件をつけている。いわばひもつきの信託基金ですけれども、なぜひもをつけなくてはいけないのか、そして具体的にどのような条件がついているのか、それを説明していただきたいと思います。
  22. 丹波實

    丹波政府委員 この平和維持活動支援強化基金でございますけれども、本年度で三年目になります。本年度の支払い額は一千万ドル、昨年は二百五十万ドル、一昨年は二百五十万ドルということでございまして、これは、国連が平和維持活動をするに当たって、特に立ち上がりのときに緊急に資金が必要だ、それを支援するということが基本的な目的で設置した基金でございますけれども、条件と申しますか、私としては、国連がどのようなPKOをどのような規模でどのようなスピードでやらなければならないかということをやはり知った上で、それじゃ、まあそういうものであればこれだけの額をという話し合いを国連の事務当局とするわけでございますので、そういう話し合いということ、そういう内容を我々が知りたいということをあるいは条件と受け取られているのかもしれませんけれども、私たちとしては、やはりこういうお金を信託基金に預け、それを利用していただくにはそれなりの中身を知りたいということで国連当局と話し合いを持つというのが私たちのこの処理の仕方ということでやっておりますので、そういう御理解をしていただきたいというふうに考えます。
  23. 秋葉忠利

    秋葉委員 昨日、外務省の方に伺ったところでは、三つ条件があるというお話でした。第一番目にはPKO活動に使うということ、二番目に、これは信託基金ですから、基金から一度借りてそれを使った後には、例えば分担金が入ってきた際に基金に返却を行う、三年以内で返却ができないときには事務総長日本とで話し合うということを伺いました。三番目に、これを使うに当たっては日本政府の承認が必要だということでありました。しかしながら、昨日のお話でも、実は日本政府の承認が必要ということは私の方で申し上げるまで言っていただけませんでしたし、今の話でも話し合いをすると言っていらっしゃいますけれども、実質的には、これは日本政府がオーケーを出さないと使えないということですね。
  24. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  これは、ですから、今のようなPKOの活動の中身、何年ぐらいでどのぐらいの資金が集まるかといういろんな情報を集め、そういったことをめぐって意見の交換、話し合いを行い、日本政府としてこれならということで、それじゃこの場合には幾ら幾らという意味で日本政府意見を申し上げる、それが了承、了解ということであればそういうことでございます。
  25. 秋葉忠利

    秋葉委員 奥歯に物の挟まったようなあれで大変申しわけないのですが、要するに、最終的には日本が例えば金額を提示して、その額でいいということになればそれだけの金を使うことができる、そういうことがなければ事務総長は金を使うことができない、そういうことですね。そうであればそれは承認以外の何物でもないじゃないですか。はっきりと言葉を使ってください。
  26. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  国連には、そういう加盟国が国連の中に信託基金を設けるときの規則というのがございまして、その規則によりますと、そういう信託基金をつくり、払い込んだ加盟国の同意を必要とするということになっておりますので、日本政府といたしましては、話し合いをしてこういうことであれば幾らという、そういう話し合いの結果、日本政府意見を申し上げるという……(秋葉委員「同意ですね」と呼ぶ)同意でございます。(秋葉委員「承認ですね、要するに」と呼ぶ)そうでございます。
  27. 秋葉忠利

    秋葉委員 国連の規則の中にちゃんとそういうことがあって、同意という言葉が使われているにもかかわらず、ここでなぜそういう言葉がはっきり出てこないわけですか。それが承認であれば、それが許可であれば、同意であればそういうことですということは、あたかもそういった言葉が存在しない、こちらの解釈の問題であるというふうにおっしゃっているように聞こえますけれども、そんな話ではないじゃないですか、今の話では。しかも、私の得ました情報においてもはっきりとこれは承認事項ということになっている。それをきちんと認めてください。日本語じゃだめだったら英語でやってもいいですから。
  28. 丹波實

    丹波政府委員 拠出国と協議の上使用されるというふうになっておりますので、その意味では同意ということになろうかと思います。
  29. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。拠出国の同意が必要だ、そういう規則があるかもしれません。しかしながら、その規則は、拠出国が必ずしもそういった条件をつけなくてはいけないという規則ではありません。つけてもいいということであります。  その際に、日本としては本当に国連の機能というものを重んじ、事務総長役割を強化してPKO活動についてサポートしていこうという気があるのであれば、事務総長に全くひもをつけずに、事務総長の判断で、しかもこれは、ただ単に事務総長が本当にPKOの活動について金がなくて困ったときに一時借りるというお金です。日本がそれを使ってください、差し上げますと言っているお金ではない。ただ単に急場しのぎにお貸ししますと言っている金なんです。だから返ってくることもわかっている。それに対して日本政府の同意がなぜ必要なのか。  また申し上げますけれども、これと昨年の湾岸の九十億ドルを比べてください。これはたかだか一千五百万ドルです。二千万ドルにしてもオーダーにして十の三乗、約千倍の違い、千倍近い違いがあります。その九十億ドルに関して日本政府は全く何のひももつけなかった。積算根拠さえ明らかでなかった九十億ドルは出しておいて、国連のPKO活動、しかもこのPKO法案が出てくるということは、日本政府はPKO活動全般に関して非常に高い評価をしている。それははっきりとしている。使途がはっきりしている。しかも、これは使われてしまう金ではなくて、一時的に急場しのぎに、本当に事務総長が困っているときに一時的に借りる金ではないですか。それを事務総長日本政府にやってきて頭を下げて、私はこういうところで困っておりますから、こういう本当に取るに足らない金を使うに当たって頭を下げなくちゃいけない。こんなばかなことをやっていて、事務総長にこういう卑屈なことをさせておいて、なぜ平和維持活動日本政府は支持しているんだ、あるいは世界の平和貢献国連中心主義を標榜することができるんですか。総理大臣、答えてください。これは局長レベルの話じゃないでしょう。
  30. 丹波實

    丹波政府委員 事実関係だけ。御承知のとおり、設けてまだ三年しかたっておりませんけれども、今後さらに積み上げを行う過程、今後これの運用の過程を見ながら、先生が現在おっしゃったことも念頭に置いて、もっといかに国連に益するような使い方があり得るかということを検討させていただきたいというふうに考えます。
  31. 秋葉忠利

    秋葉委員 国連中心主義ということ、それから事務総長の権限強化、こういったことは、私は、日本がこれから国際社会において平和的な貢献をする上で非常に重要な点だと思います。その点で、実は金だけではだめだから人を出すんだということが今回のPKO法案の提出における非常に大きな、いわば世論形成の上で大きな役割を果たしている。その金の出し方について、私は、日本政府が必ずしも宣伝どおりのことをやっていないのではないかということを例を挙げて申し上げているわけです。  つまり、金を出していないのではなくて金は出している。しかしながら、その金の出し方が必ずしも多くはない。政府が宣伝しているとおりたくさんの金を出しているわけでもないし、それから日本の金の出し方が非常に、はっきり言ってみみっちいといいますか、汚いと言った方がいいのかもしれません。そういった事務総長に卑屈な思いをさせるような金の出し方をしておいて、なぜ日本が国際的に金を出したということで評価されるのか。そんな評価がされないのは当たり前じゃないですか。ですから、そこのところの問題をすりかえて、金を出してもだめだから人を出すということではなくて、金を出すのであれば、その金が生きるように出し方を考えてもらいたい。その点について私は、これはやはり国の、一国の基本的な方針にかかわることですから、ぜひ総理にお答えいただきたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 国連の加盟国の中で我が国は、国連に対する財政的な貢献では、私は加盟国の中では成績のいい国だというふうに言われておると思いますが、ただ、今伺っておりますと、それは納税者の金でございますからきちんとやるのはよろしゅうございますが、やっぱり金を上手に出す出し方というものもあるわけでありまして、その辺のところは、相手方がそのようないわば卑屈になると申しますか、そんなような印象を与えないような工夫は私はしなきゃいかぬと思います。
  33. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございます。積極的な御答弁をいただきましたので、この点についてはまだ別の機会に、もっと具体的なレベルでいろいろと問題提起をしていきたいと思います。  ただ、一つだけあえて言わせていただきますが、私は、これは金の出し方というふうにおっしゃいましたけれども、最終的にはそういうことになると思いますが、やはりこれは日本の政府としての、あるいは日本国民としての誠意の問題だというふうに思います。本当に国連のすべての国々と、世界のすべての人たちと一緒に平和な世界をつくっていく、それだけの決意と、それからそれに対する情熱とがあるのかどうか。やはりそういったところが最終的にこういうお金の出し方といったところにも出てきているのではないかという気がいたしますので、あえてそのことを言わせていただきます。  実は、この点に関連して九十億ドルのことを申し上げました。九十億ドルにはひももつかなかった、そして積算根拠も全くなかった、にもかかわらず九十億ドルが出ている。それはアメリカに対してだからではないのか。国連に対しては、たった一千五百万ドルでも細かい注文をつけるということが行われているわけですが、昨年以来、例えば前内閣の場合にはブッシュ大統領のブッシュホンという言葉が生まれましたし、日本の外交政策は対米追随だという批判も行われました。それに関連して、今回ブッシュ大統領は一応訪日の予定があったわけですけれども、アメリカ側の勝手な理由で、ということは日本に対する配慮は一切なく、日本政府に対する配慮ということはというふうに言った方がいいと思いますけれども、訪日を中止いたしました。それに対して宮澤総理は一応の理解を示された。  こういうふうに見てまいりますと、湾岸危機に関しても、それからその九十億ドルという金についても、ブッシュホンという言葉についても、今回の訪日についても、日米間のコミュニケーションが本当に双方向のコミュニケーションになっているのかどうか、国民は非常に大きな危惧を抱いております。それについて、まずこのような日米関係を今後どのように発展させていくおつもりなのか、基本的なところを伺いたいと思います。
  34. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 日米間のコミュニケーションということでございますけれども、それは両国とも極めて自由な価値観を同じくしており、しかも報道、言論の自由が一〇〇%保障されておりますから、そういう意味で、仮に政府にとって少し都合の悪いこととかなんとかいうようなことでもちゃんときちんと報道されておりまして、私は、そういう意味でコミュニケーションは完全である、十分であるというふうに考えております。  今後、日米関係をどうするかということは、そのように価値観を同じくしているというその信頼感の上に立って、ちょうど今年は真珠湾以来五十年でございますので、今後にわたって末永く、両国間の関係並びに両国が世界に対して負っております共通な責任を遂行するために緊密な関係を続けてまいりたいと考えております。
  35. 秋葉忠利

    秋葉委員 先日、ベーカー国務長官が来日されたわけですけれども、新聞報道によりますと、宮澤総理は英語に堪能でキッシンジャーさんとは英語で対談をしたということが大きく報じられましたけれども、ベーカー長官との会議では片方だけ通訳を使われたという報道がされておりますけれども、それは本当なのかどうか、それはどういう理由なのか伺いたいと思います。
  36. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは本当でございます。よその国の言葉を使って間違ったことを万一申しますればこれは大変なことになりますので、そういう注意をいたしておるわけでございます。
  37. 秋葉忠利

    秋葉委員 それに関してはいろいろな可能性がありまして、両方通訳を使うということも可能でありまして、片方だけ通訳を使ったということに関しては、実は日米関係を非常によく象徴しているんだという解釈がございます。  すなわち、通常、通訳を使うメリットの一つというのは、相手が言った言葉、それはわかるんだけれども、その通訳を通してもう一度聞いている間にこちら側の答弁を考えてより説得力ある返答をする、そのために通訳を使うということが、これは外務省の方からお聞きしたことですから外務省の方よく御存じだと思いますが、そういう使い方がされている。しかしながら、そういう使い方もされているということでございますが、そういう使い方を今回はされなかった。つまり、英語の方はそのまま通訳を通さずに聞いて、御自分発言の際に通訳を使われたということなんですが、これは、アメリカ側の言い分というのは別に考えるまでもなく答えがイエスなんだ、ただ、イエスにもいろいろと段階があって、余りにも言質を与え過ぎると困るから、その言質を抑制する意味で外務省と相談の上、通訳間のチェックもあるかもしれませんけれども、ともかく余り大きな約束をしてしまわないために通訳は使うけれども、そもそも答えは考えるまでもなくもう決まっているんだというような解釈があるんだそうです。  実は、多くの日本国民は逆のことを総理期待しているのじゃないか。つまり、もし通訳を使うのであれば、最初アメリカ側の言うことは通訳を通して、十分にアメリカに対して一体どういうことを言ったらいいのかお考えいただく。その上で、非常に説得力のある流麗な宮澤総理の英語でアメリカ側に対して日本人の言い分を、例えば米の問題があります、あるいはそれ以外の日米間のさまざまな問題が山積されていますけれども、そういった問題についてアメリカ側に日本立場を、日本人の心をはっきりと伝えてほしい、そういった説得を宮澤総理にぜひやってほしい、対米追随ではなくて、本当に日本が独立した、アメリカに対して大きな影響力を行使できる国になってほしい、そういう総理であってほしいという期待があるんですけれども、それについて宮澤総理、ぜひ日本の心をアメリカに説得力を持って伝えるというお答えをいただきたいと思います。
  38. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 秋葉委員はMITの大学院を御卒業になられたほどのお方ですから、その間のことはよくおわかりでお尋ねでございますけれども、実はこの間の場合の理由はごく簡単でございまして、片道だけでも通訳を省きますとそれだけ長い時間話ができる、限られた時間を有効に使おうと思いました。これが交渉事でございましたら、あるいは秋葉委員の言われるように考える時間を持った方がいいことがあるかもしれません。この間はそういうことでございませんでしたのでそういたしたという、ごくごく簡単な理由でございます。
  39. 秋葉忠利

    秋葉委員 次の問題に移りたいと思います。  先ほどの日米関係はともかくとして、国連の問題にまた戻りたいと思いますけれども、実は、国連関係者の間でPKOの評価というのは非常に高いということが私の今回の調査で非常によくわかりました。その理由はいろいろありますけれども、その一つは、これは日本憲法が私が話をした国々憲法とかなり違うというところに一つ理由があるんだと思いますけれども、日本憲法への理解がいまいちだったという感じを持ちました。ということは、このPKOに高い評価を与えている例えば国連の職員、その職員たちの出身国というのは、軍隊を持ち、その軍隊が外に出ることが当たり前になっている。そういう国々立場から見ると、PKOの活動というのは、まさに軍隊の非常に平和的な利用である。今までの、従来の意味の軍隊とは違う平和的な利用であるという点で、冷戦の構造が大きく変わって、そして軍隊のあり方というものが模索されている現在にあってそういった平和的な利用ができるんだということに非常に高い評価を与えていたというふうに思います。  ところが、日本の側からPKOを見ますと、日本の自衛隊というのはそういった各国の軍隊とは、きのうの答弁にもありましたように、趣を異にしております。日本の場合には海外に出ないということが自衛隊の制限といいますか、自衛隊の一つの大きな特徴なわけですから、そういたしますと、PKOを見る方向がまるっきり逆だというふうに思います。出すのが当たり前の国からその軍隊の力を制限して使うというところに意義を見出している各国人たち、それに対して日本の場合には、自衛隊の任務、自衛隊の活動範囲を拡張してPKOを見ている。全くベクトルが逆になっているわけですが、そういう逆の流れのベクトルを持っている日本であるにもかかわらず、日本立場、日米間だけではなくて世界各国の間で、我が国の視点からの主張、我が国の視点からの哲学、原則というものをつくらずに、他国の視点からの評価によってPKOというものを出そうとしている、そこに非常に大きな危惧を覚えるんですけれども、実は、日本がこの自衛隊の現在の性格を変えずに、そして国連にもっともっと大きく貢献できる道が私はたくさんあると思います。国連だけではなくて、世界貢献できる道がたくさんあると思います。  例えば、その一つが予防ということだと思います。紛争の予防。PKO活動というのは、まず紛争があり、それが何らかの形で終わり、その後の処理という話ですけれども、病気に例えれば、病気になってその治療を受け、最後にリハビリをするということだと思います。リハビリが大事なことは言うまでもありません。しかしながら、病気、特に伝染病の場合には、一番大事なことは予防であるということも今日の常識だと思います。戦争あるいは紛争についても全く同じことが言えるのではないか、私はそう考えますが、としますと、例えばPKOの活動に参加する、それを考える以前に、国連の持っている例えば早期警報の役割あるいは事実調査の役割といったものを強化する上で日本がイニシアチブをとるべきではないか。  例えば、昨年のイラクとクウェートの間の国境紛争。イラクとクウェート間に国境紛争がある、国境についての意見の違いがあるということはかなり以前からわかっておりました。そして、イラクがクウェートに侵攻するという情報を実は事前に持っていた人あるいは組織というものは一つだけではありません。複数の組織がこういったものを持っております。例えば、イランとイラクとの間の停戦を監視しているUNIIMOGの参加隊は、専門的な軍という立場からイラク軍の動きをつかんでおりました。あるいは、七月二十五日に駐バグダッドのアメリカ大使グラスピーさんはフセイン大統領と会って、フセイン大統領がクウェートに侵攻するという意図を少なくとも暗黙裏に聞かされているわけであります。しかしながら、こういった情報が安全保障理事会に報告された、あるいは国連事務総長に報告されたということはありませんでした。事務総長なり安保理事会がこういった情報に従って早期に例えば事実調査団を派遣する、これは中立な立場から。そして国連事務総長に責任を持つ、十分な知識を持った人がこの調査団に参加して事実調査を行う、それが国際的に非常に広範に例えばPRされるということによってイラクのクウェートヘの侵攻を予防することができたのではないか、そう考える国連関係者もたくさんおります。  こういった外交努力によって紛争を予防すること、そのために国連の機能を強化すること、そういった点で、日本がもっともっとPKOに参加するかどうか以前にこういった建設的な、しかも予防というところで平和的な、自衛隊を使わない外交努力、それこそ今日本の外務省が持つ能力をフルに生かしたような形での国際貢献ということがまず考えられるべきではないかと思いますけれども、外務大臣、それから総理大臣、この点についてお考えをお聞かせください。
  40. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 御説ごもっともでございまして、そういうような考え方には大変同調してもいいようなところが多いと思います。しかし、現実的な対応をしなければなりませんので、委員のおっしゃることを一〇〇%政府が採用するわけにもいかない。しかし考え方としては、そういう考え方は尊重していきたいと思っております。
  41. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 大変大事な問題の御指摘だと思います。現実の問題としては、今ユーゴなどでは、そういう努力国連それから米国の国務長官前歴者というような人たちがやっておるわけでございますけれども、まあ、なかなかしかしきついようでございます。ただ、そういうことは大変に私は必要なことだと思います。
  42. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございます。ぜひ前向きにこういった点について、日本貢献できる分野として積極的にお考えいただきたいと思います。  もう一つ具体的な例で、これは比較的簡単に実現可能だと思いますけれども、提案をさせていただきたいと思います。それは国際司法裁判所の活用です。  例えば、イラクがクウェートに侵攻した後、いわゆる湾岸危機という状態が生まれたわけですけれども、そのイラク側の主張、クウェート側の主張、非常に大きな差がございました。これに関して、最終的には多国籍軍が戦力を使う、戦争を始めるということで決着がついたわけですけれども、実はその間に国連としてもっともっとできることがあったんではないか。その一つの可能性として、例えば、今回の場合には総会も、それから安全保障理事会も国際司法裁判所の意見を聞くということをいたしませんでしたけれども、事務総長事務総長一人の判断で、これはもちろん国連の総意に基づいた意味での事務総長役割ですからいいと思うわけですけれども、事務総長が国際司法裁判所に意見を求めるということができればもっと迅速に、例えば司法裁判所の意見を反映することによって国際世論をつくることが、形づくることができたんではないか、イラクに対するより大きな影響力を、その国際司法裁判所の判断ということで説得力を持ち得たんではないかということも当然考えられます。事によるとだめだったかもしれません。しかしながら、平和的に事を解決するという場合には、最初からこれをやってもだめだろうということで放棄をして武力を使うということではなくて、ともかく平和的な解決すべてを試してみて、それでだめだったらということが実は昨年の安全保障理事会の決議案の精神の中にもございます。  そういたしますと、国際司法裁判所の活用ということ、事務総長がリクエストをして国際司法裁判所のアドバイスを仰ぐということが当然考えられてもいいんですが、現在の国連憲章においては、例えば、総会それから安全保障理事会は九十六条によって国際司法裁判所の意見を聞くということができますけれども、事務総長あるいはその他の専門機関については、総会の委託がないと、委任がないと国際司法裁判所の意見を聞くことができないようになっております。  それで、この際、例えば国連総会決議として、事務総長に対して総会の権限の一部、国際司法裁判所に関する権限の一部を移譲するということは十分可能であります。あるいは委任する、委託するということが可能でありますので、日本がこういった点においてイニシアチブをとって、事務総長が迅速にこういった紛争の際に国際世論に説得力を持つ方向での国際司法裁判所の判断を仰ぐ、そのアドバイスを活用していくといったことも考えていただきたいと思いますが、この点について、総理あるいは外務大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。
  43. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 総理、また外務大臣の御答弁の前に、私の方から国際司法裁判所の技術的な問題について御答弁申し上げたいと思います。  ただいま先生からイラクの件に関しまして、もっと平和的な解決の努力がなされるべきではなかったのか、あるいは国際司法裁判所に関連しましていろいろな御提言がございました。  御承知のとおり、国際司法裁判所の裁判手続は、国内裁判の場合と異なりまして、紛争当事国の一方的な、一国の一方的な要求に基づいて審理が開始されるものではございませんで、相手方も何らかの形でこの国際司法裁判所に事件を提訴するということに合意している必要があるわけでございますが、イラクの場合におきましては、残念ながらイラクは国際司法裁判所の管轄権を受け入れておらないわけでございまして、したがいまして、仮にクウェートが国際司法裁判所に提訴をしても、イラク側としてはこれを受ける義務はなかったという、そういう限界があったわけでございます。  他方、事務総長から国際司法裁判所の意見を徴するということも国際司法裁判所規程上可能でございますけれども、これは現在のところ、国連の例えば内部規則の問題でございますとか、そういう国際機関の基礎をなしている条約の解釈といったような問題について勧告的意見を求めるということができる制度になっております。したがいまして、国と国との紛争についてこれを利用するということは現状ではなかなか難しいのではないかと思いますが、他方、いろいろ国際司法裁判所を活用すべきだという点については仰せのとおりでございまして、現在「国際法の一〇年」という形で、国連でいろいろな法による支配ということについての努力がなされておりますが、その一環としても、国際司法裁判所の活用ということがいろいろ提言されている次第でございます。
  44. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 湾岸戦争の場合を事実に徴して考えますと、イラクが一晩のうちにクウェートを占領したわけでございますから、それに対しての方法は原状回復ということになったのであろうと存じます。ですから、その間に国際司法裁判所が入る余地が、仮にイラクが応諾するかどうかは別といたしまして、占領という事態があっという間に起こりましたので、国際司法裁判所が入れたかどうかということは問題があると思いますが、恐らく秋葉委員の考えておられますのは、国連が紛争を事前に防止をするという役割を果たすときに、そういうときに国際裁判所の注意を促すということは有効ではないか、私はそういう発想をしておられるのだと思います。それは考えられることであって、仮に片方が国際裁判所の調停なりあるいは審理なりを受け付け、受け入れる、他方が受け入れないとしますと、受け入れない側にいろいろ世論の批判が起こる、そういう仕組みを考えておられるとすれば、それは先々、国連の紛争未然防止の機能との関連で一つの考えられる発想であるかもしれないと思います。
  45. 秋葉忠利

    秋葉委員 この問題は余り時間を使いたくなかったのですが、私の説明の仕方が十分でなかったと思いますので、つけ加えさせていただきます。  国際司法裁判所の活用の仕方というのは、八月二日以降翌年の、ことしの一月十七日ですか、具体的に戦争が始まるまでの間に、例えば事務総長に国際司法裁判所の勧告といいますかアドバイス、国際司法裁判所がある程度国際問題に対してさまざまな意見を聞いた上で国際司法裁判所としての一つの判断を示す、あるいは判断が示せないという結論になるかもしれませんが、そういったアドバイスを事務総長に与える。アドバイスそのものには何らの拘束力がありませんし、当事国に対する拘束力という点でもそれほど力はないと思います。しかしながら、国連がこういった平和的な手段によって調停を行う、その上での国際世論の形成を行うということで非常に大きな意義があるのではないかというふうに考えているわけであります。ところが、現在の国連憲章におきましては、総会とそれから安全保障理事会が国際司法裁判所に対してそういった意見を聞くという権限を与えられているのですけれども、事務総長にはその権限がないということですので、事務総長に、ともかく意見を聞く、アドバイスを聞くことができるんだよという権限を与えるということです。最終的には世論形成というところで力があるのではないかという意味でございます。  この問題はこれくらいにして、実はPKO法案、カンボジア問題が非常に大きな焦点になっているというふうに理解しておりますけれども、このカンボジアにおいても、何も日本がPKOに参加する必要はないのではないか。昨日のお答えでは、非常に慎重に考えなくてはいけないという宮澤総理のお答えだったわけですけれども、例えばカンボジアのUNTACのプログラムの中でも、地雷についての、これは英語でもともと書いてあるのですが、マイン・アウエアネス・プログラム、地雷の発見とそれから地雷をいかにして避けたらいいか、あるいはそれをどういうふうに報告するかといったような、これは教育プログラムですけれども、例えばこういった分野において日本がそれこそハイテク技術を使って、さまざまな教育機器を使ってこういったプログラムに貢献するということも可能だと思います。そういった点で、自衛隊を使わないでも、三十万とも言われる避難民の人たちが安全にカンボジアの国の中に帰ってこられる上で非常に大事な教育的な面を一手に引き受けるということが可能じゃないかと思うのですけれども、それについて、実行の可能性、外務大臣いかがでしょうか。
  46. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 一手に引き受けることがいかがかと思いますが、難民問題についてはできるだけ協力してまいりたいと存じます。
  47. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございます。特に難民問題の中でも、こういった今の地雷の探知、あるいは地雷を発見したらその近くに行かない、あるいはそれをきちんとしたところに報告する、あるいは場合によってはカンボジア市民の中で地雷の解体作業が行われる、あるいは処理作業ができるような訓練をできるだけ短期間に行うといったところでの教育的な面での貢献を、ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。  それから、実はカンボジアには、既に日本のボランティアのグループがカンボジアでさまざまな活動をいたしております。一つは、私は、政府としてはもちろん政府の職員、国家公務員をカンボジアに派遣したいというふうに考えられるのが一番身近な人材の活用ということになるかと思いますけれども、しかしながら、これからの国際貢献においてはやはりボランティア、自分たちでともかく問題があるということを認識して、自分のお金とそれから時間を使って何かをしようと積極的に国際的に活動している人たち、そういう人たちに政府がさまざまな形で援助を与えるという仕方での政府のかかわり方というのもあるのじゃないかと思います。  実はそれに関して、私は逓信委員会にいるのですが、国際ボランティア貯金というのができました。このボランティア貯金をもっと大幅に拡張して、こういった形でボランティア貯金というようないわば市民の小さな善意をたくさん集めて、それをこれまたボランティアとして市民が善意を、自分のお金とそれから時間を使って外国で行っている活動に寄附をする、こういったところに政府がもっと力を入れる。あるいは国際ボランティア貯金を、カンボジアが問題になれば、特にカンボジアに関して集中的にNGOに対して援助を行うといったような貢献の仕方も考えられるのじゃないかと思いますけれども、この点について、国際ボランティア貯金の活用法について、郵政大臣がきょうはいらっしゃらないということですので、郵政大臣の代理の方にお答えいただければと思います。
  48. 松野春樹

    ○松野(春)政府委員 国際ボランティア貯金の仕組みは、通常貯金の利子の二〇%を寄附委託という形で御協力いただきまして、NGOを通じまして開発途上地域の人々の福祉の向上に役立てる、ことしの一月にスタートしたばかりの制度でございます。平成二年度分としまして、この六月に約九億一千万円を配分決定いたしました。その援助事業の対象地域は約四十八カ国で、アジア、アフリカが中心であります。お示しのカンボジア関係ですが、平成二年度分の配分におきましては、五団体が実施します六つの事業に配分決定しております。医療保健関係とか、それから職業訓練、技術指導、それから衛生環境関係というものが中心であります。  そこで、この後どうするかという次の問題でありますが、平成三年度分が今大変順調に推移しておりまして、十月末で約五百二十万件の御協力をいただいております。大変感謝しておるところですが、この配分につきましては、来年の三月以降にNGOの公募をいたしまして配分決定をする段取りになります。したがいまして、まだ現段階では、具体的にどこに配分するかということを申し上げるわけにはまいりませんけれども、この国際ボランティア貯金の趣旨に照らしまして、開発途上国の状況であるとか、それからNGOからの援助事業の申請が必要でありますので、申請等の状況等を今後勘案して、よく検討してまいりたいというふうに存じております。
  49. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。一つの可能性としては、例えば特定の地域に焦点を合わせるといったボランティア貯金の使い方もあるのではないか、そういった点についても御検討いただきたいと思います。  それをお願いいたしまして、時間がなくなってまいりましたので、PKO法案そのものについて幾つかの問題提起をさせていただきたいと思います。  まず最初に、昨日の宮澤総理のお答えにありました指揮の問題ですけれども、国際公務員でないから国連事務総長の指揮に従うことはない、指揮に反したときに懲戒する、あるいは制裁するのが指揮という意味だという見解をお示しになりました。そして、主権国家国連事務総長に従うことがあるのか、これは基本的な常識問題だというふうにおっしゃいました。これはこれで、一般的な話としてはこういうことになるのかもしれませんが、実は平和維持活動、PKOに関しては、その中にいわゆるSOPと呼ばれているもの、あるいは地位協定についてのモデルと言われるものが存在しておりますし、このPKOという活動をこれまで長い間つくってきた、その中心となって働いてきた人たちの見解というのもございます。  このスタンダード・オペレーティング・プロシージャー、これは標準活動手順、ガイドライン書といいますか要綱書といいますか、その中には次のようなことが書いてございます。「加盟国政府によって派遣される軍事要員は、」ということは、これは自衛隊員ということですけれども、「実際的活動上」の件については「事務総長の指揮下におかれ、給与及び規律に関する事項について各国の権限下にとどまる。」というふうに非常にはっきりと書かれております。そしてさらに、それだけではなくて、きちんとそのすぐ後の文章でそのことについてもう一度念を押しております。「実際的活動に関する事項に関しては自国政府当局からの命令を受け入れず、事務総長から命令を受ける国連の軍司令官からのみ命令を受けるということが、平和維持活動の基本原則である。」というふうに書かれております。  昨日の岡田議員の質問に対して、国連事務総長に従うことはできない、それが基本的な常識だというふうにおっしゃいましたけれども、基本的な常識ではそうかもしれませんが、平和維持活動の規則、平和維持活動の原則ではそうはなっておりません。国連事務総長の指揮下に入るというのがPKOの活動に参加する上での基本的な原則で、これを曲げてPKO活動に参加することはできないということがはっきりと書かれております。明らかに宮澤総理のお答えとは矛盾するわけですけれども、この矛盾をぜひ解いていただきたいと思います。
  50. 野村一成

    ○野村政府委員 今御指摘国連の文書を引用されましたわけでございますけれども、基本的には国連のいわゆるコマンドというのは、PKO活動に参加しております要員、部隊を有機的に結びつけまして、一体として機能させるためにその配置や移動等のオペレーションを行う権限であるというふうに昨日明確に答弁させていただきました。そして今御指摘の点、つまり国際連合の権限の内容というのが、まさに私どもこの法案で規定しております「指図」というのに該当するわけでございます。  さらに補足させていただきますと、この国際連合の持っております今申しましたオペレーションを行う権限というのは、上下関係あるいは命令服従のそういったいわゆる指揮監督、国内行政組織法上の指揮監督、そういう概念には合致しないということも申し上げました。そういう意味で、混乱を避けるために、この法案では国連の指揮を「指図」と呼んでいるということを申し上げました。したがいまして、今先生指摘になりました点、あるいはモデル協定で書いてございます国連のコマンドと言っておる内容、それにつきましては、この法案八条で言っております「指図」というのと合致するというふうに考えております。そういたしまして、この八条でごらんになっていただきますとわかるのでございますが、この「指図」に適合させるように実施要領を作成するということになっておりますので、国際連合のいわゆるコマンドとの間には何ら問題はない、そういうふうに考えております。
  51. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 これは昨日も午前中にお答えを申し上げたのですけれども、大事なことでございますからもう一度申し上げたいと思いますが、要するに、現実の問題として国連事務総長あるいはその代理者のコマンドというものは、部隊を組織をする、あるいは配備をする、あるいは移動をするというときのそのオペレーションについてコマンドを持つということだと思うのでございますね。一々我が国から行った人に命令をして、その命令に従わないときにはそれが懲戒であるとか、あるいは何かのペナルティーで担保される、そういう意味での指揮関係ではないということは、私は常識的に明らかではないかと思いますが、しかし、そういうコマンドをするわけでありますから、その限りでは、我々もその総長あるいは代理者のそういう立場を認めなければなりません。そこで、事務総長の権限を行使する、事務総長あるいはその権限を行使する者が行うそういう指図に適合するように我々は実施要領をつくります、そういう形でその指図を受け入れます、こう言っている。それがこの法律案の構成でございます。
  52. 秋葉忠利

    秋葉委員 今の外務省の答弁も宮澤総理の答弁も非常に非論理的で、具体的にどういうことが起こっているのか全く御理解なさっていないというふうに判断せざるを得ません。  このPKOの活動がどういうぐあいになっているのか。PKOに関しては、まず安保理事会が権限を事務総長に与える、そして事務総長の責任においてPKOを組織するわけです。それは幾つかのグループから成っております。簡単に言いますと、各国の部隊がそこに参加する、その上に立って事務総長の代理としてすべての監督を行い、指揮を行うのは、いわゆるフィールドコマンダーと言われている人です。フィールドコマンダーは、各国から来た部隊の部隊長に相当する人に対して命令を下します。そのフィールドコマンダーあるいは事務総長各国から参加した兵士に直接命令を下すことはまずあり得ません。これはどこの軍隊でも同じ話だと思います。したがって、指揮命令系統というのは、事務総長それから現場の主任であるフィールドコマンダー、あるいはPKOの種類によってはそこに事務総長の特別代表という人が入る場合がありますけれども、それはまた話を簡単にするためにフィールドコマンダーということにしたいと思います。そのフィールドコマンダー、FCと呼ばれている人がいるわけですが、それがコンティンジェントコマンダー、これは派遣部隊の長ですけれども、その人に指揮を行う。今度は、その各部隊は各国の軍隊の組織をそのまま持って行っているわけですから、その軍隊の中の指揮命令系統に従って指令が行われる。ですから、個々の兵士が例えば事務総長の意に反して何か行動を行わないという場合には、自分の国の指揮者に対する命令に従わないということになるわけです。それは各国の軍隊の中の問題ですから、それに対して事務総長が一々異を唱えることはありません。したがって、仮に事務総長が、あるいはフィールドコマンダーが異を唱えることになるとすれば、それは各国派遣した部隊長がその意に従わないときであります。そのときは、各国政府との協議においてその部隊は撤退する、あるいは参加を、参加についての根本的なところを改めて考え直すという政治的なレベルの問題になります。  したがって、懲戒とおっしゃった問題は、今の指揮系統の流れでは全く当てはまらない問題であります。懲戒が出てくる場合には、具体的にはこれは、現地の例えばボード・オブ・インクワイアリーというものがございまして、調査委員会というのがつくられます。調査委員会が調査をする。何か不祥事があった場合には、またこれは国連のPKOの中にできたMPが逮捕権まで持って具体的な個々のケースに当たるということになっております。しかしながら、調査を行う、そして一時的には身柄を拘束するけれども、最終的に刑事罰であるとかあるいは最終的な懲戒を行うのは、各国の部隊に引き渡され、その国の政府の責任において裁判権を行使するということになっている。これがPKOの活動の原則です。  そこのことを御理解いただいた上で、今のことをもう一度お考えいただきたい。恐らく誤解されていらっしゃると思うので、故意に日本憲法をねじ曲げて自衛隊を出動しようなんという、そういうよこしまな心をまさか総理大臣初め外務省の方々が持っていらっしゃるとは思いません。思いたくありませんからあえて誤解と申し上げますが、そういった指揮系統がある。そうすると、事務総長の命令に従わないPKO活動なんてありません。そういうふうに国連が発行して、そして事務総長がこれを認め、総会で認めた文書に書いてある。指図なんという言葉はどこにも出てきてないじゃないですか。外務省が勝手につくった言葉だ。指図という言葉は、国連のPKO活動に関して、きのうも岡田委員質問の中に出ましたけれども、それに対応する言葉が当然あるはずでしょう。国連の中のPKO活動についての言葉であれば、国連の正式言語である幾つかの言葉によって当然表現されていなくてはならない。しかも、これほど基本的な指揮命令系統に関する言葉ですから、英語で非常にわかりやすくて、しかも世界共通、だれでも疑いを持つ余地もないような簡単明瞭な言葉、そしてこれまでの軍隊組織の中で、兵隊が聞いても、あるいは将校が聞いてもわかるような言葉で当然表現されてなくてはいけないわけですけれども、その指図という言葉が、国連の正式な言語、複数の言語においては、それが何になるかということも外務省は示していない。しかしながら、指図という言葉が、実は今言ったような例えばコマンドということに相当するんだなんということを言っている。全く理解に苦しみます。  もう一度今申し上げたことを整理して申し上げますけれども、PKO活動に自衛隊が参加するのであれば、それは事務総長の指揮下に入る以外PKO活動に参加することはできない、これが国連側の非常に明瞭な立場です。今のお答えでは、PKO活動に自衛隊は参加することはないというふうにおっしゃっているというふうに私は考えますけれども、したがって、PKO法案と呼ばれているのは実はPKOに参加するための法案ではなくてPKOという非常に世界的に認められた概念を使って、それ以外の目的のために自衛隊を海外へ派兵させるための法案だとしか考える以外はない。もしそうでないのなら、指揮系統についていま一度矛盾のない、そして国連立場を十分理解した上でのお答えをお願いしたいと思います。
  53. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生国連の権限といたしまして、事務総長または事務総長の権限を代行する者の実態について、現場に着目して御指摘がございました。国際連合、特にフィールドコマンダーと呼ばれている、これはまさに事務総長の権限を代行する者でございますが、この人が現場でまさに権限を行使するのが、今御指摘になりました国際連合のモデル協定等で呼ばれておりますコマンドという概念でございます。それには、我が国から出ております部隊がまさに実施計画、実施要領に従いまして、その現地のフィールドコマンダーの出しますコマンド、これは法案では「指図」と呼んでおるわけでございますが、それと同じことでございます。それに従うということでございますので、現地におきましても、国際連合の事務総長の、または事務総長の権限を代行する者の有しておりますコマンドの権限というのとは何ら矛盾するものはない、そういうふうに法案の仕組みをつくっておるわけでございます。
  54. 秋葉忠利

    秋葉委員 総理大臣にぜひお答えいただきたいと思いますけれども、今の話では、まさに木に竹を接いでいるだけの話ではありませんか。フィールドコマンダーの権限というのは、事務総長のコマンド、コマンドをこれを指図と呼ばれるんだったらそれでもいいですけれども、これは通常は指揮と訳している言葉です。あえて指図という言葉を選んだその理由をぜひ伺いたいと思いますけれども、そのコマンドは、事務総長がその権限をその下のフィールドコマンダーに出しているわけです。コマンダーというのはコマンドする人という意味ですから、当然指揮をするわけです。その力がどこにあるかというと、ただ単にその人が軍人だからということで得られるわけではありません。事務総長が任命してその権限を与えるからその力が生じるわけです。そして、フィールドコマンダーは事務総長に対して全責任を負わなくてはいけない。すなわち、事務総長の指示のもと彼はすべて動くということです。ですからフィールドコマンダーは、事務総長の力を現場において代行している代理人であるということが言えるわけです。ですから、そのフィールドコマンダーに現地での動きに関してすべての命令に従わなくてはいけないということがはっきり書いてあるわけですから、一たんPKOに参加したといって自衛隊が現地に行けば、それは事務総長の指揮下に入るということです。それ以外の解釈は全然ないじゃありませんか。  それと同時に、それでは我が国の指揮権というものが存在するのであれば、このオペレーションのスタンダードに書いてある「国連の軍司令官からのみ命令を受ける」、「のみ」ということがあえて繰り返して強調して書いてある。これは今おっしゃったようなそういう誤解がこの文書を読む各国において起きないように、特に強調してそのことを書いてある。それを、こういうふうに強調して誤解の余地のない文書をあえてそういうふうに曲解して読む意図が私には全くわかりません。曲解しているというしか考えようがない。これだけはっきり書かれている文書をどうしてそういうふうに曲解しなくちゃいけないのか。総理大臣は責任を持って答えてください。
  55. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 昨日も先ほども同じことを申し上げたわけでございますけれども、そのフィールドコマンダーのそういう意思がそのとおり行われますように、実施要領はそういうふうにつくるということをこの法律で書いておるわけでございます。その範囲におきまして、部隊の組織、配備あるいは移動等についてはフィールドコマンダーの意思がそのとおり行われる、それはこの法律によって担保されているということだと思います。  しかし、私の申したいのは、もっともっともとのところをお考えいただきたいということであって、国連のそういう活動に我々は協力するんでございますから、そういう状況の中で、つまり……(発言する者あり)はあ、PKOの話ですね。協力するんでございますから、そういうことの中で、今の実施要領でフィールドコマンダーの意思がそのとおり行われるように担保いたしますけれども、そのことは、国連事務総長我が国から行った人に対して命令権を持つといったような意味のことではない。それは何となれば、行った人は別に国際公務員になったわけではございませんから……(発言する者あり)国際公務員ではありません。国際公務員ではありません。したがって、国連事務総長がそれに指揮をする立場がないことは、もう一番もとのところで私は明白だと思います。
  56. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のお答えは全然話にならない。実施要領をつくって現場の指揮官の命令に従うということをおっしゃっているわけですね。ところが、その現場の指揮官は事務総長の命令に従うわけです。  数学の言葉で推移律というのがございます。AならばB、BならばCであればAならCということが言えるわけで、これが非常に典型的にあらわれているのが命令系統の話でございます。課長が係長に命令する、その課長は部長からの命令を受ける、そうすると部長は係長の上司だということになるわけでございます。今まさにおっしゃっているのは、そこのところが違うんだ、課長は確かに係長の上司だけれども、部長は係長の上司じゃないんだというようなことをおっしゃっている。それではまるっきり理屈に合わないではありませんか。  しかも、国連の文書にはっきりと書いてあることを宮澤総理は否定していらっしゃる。この指揮権に関しては、いいですか、「軍事要員は、実際的活動上の案件につき、事務総長の指揮下におかれ、」とはっきり書いてあります。しかも、それに加えて、今おっしゃったような誤解がないように、「自国政府当局からの命令を受け入れず、事務総長から命令を受ける国連の軍司令官からのみ命令を受ける」ということがあえて強調されてその文章の後についているわけです。しかも、このスタンダード・オペレーティング・プロシージャーというのは、これはガイドラインというのがあちこちに出回っておりますけれども、各PKO活動においてつくられなくてはいけない。例えばカンボジアでPKO活動が行われれば、そのカンボジアについてのスタンダード・オペレーティング・プロシージャー、具体的な作戦要務命令と言ったらいいんでしょうか、そういうような活動のガイドラインというものができる。そのマニュアルのつくり方の中にも、文書の指揮命令系統の中の一番最初のところに書きなさいということで、このPKOに参加する各国の部隊が事務総長の指揮下に入って活動を行うのであるということを明確に一番最初に書きなさいということまで、マニュアルのつくり方としてそこまで徹底して書いてある。その指揮命令系統を読むに当たっていささかの誤解もないと私は思うのですけれども、あえてなぜいまだにその解釈が間違っているということをおっしゃらないのか、なぜ部長は係長の上司ではないというふうに言い張るのか、その真意がわかりません。
  57. 野村一成

    ○野村政府委員 どうも国際連合の事務総長あるいはその権限を代行する者が有する権限、オペレーションを行う権限ということについて、それの実態につきまして御理解が得られていないという側面があろうかと思います。まさにそれが、いろいろな国連の文書の御引用がございましたけれども、それにございます国連のコマンドでございまして、コマンドというのは、実態として私どもこの法案で「指図」と呼んでおるわけでございますので、したがいまして、特にその間矛盾がないように法案では整理しておるわけでございます。  それから、何よりも私ぜひ御理解いただきたいのは、先ほど総理からも答弁ございました。このPKOそのものでございますが、昨日も御質疑ございましたが、各国が自発的にこれに応じまして、「国際連合の統括」という言葉を法案で使っておりますけれども、「統括」という意味は、私ども、これは国際連合が組織し、オーガナイズし、それにさらにこの国連の文書に書いてございますコマンド、指図でございますが、指図に従って各国の部隊を運用する、そういう活動でございまして、したがいまして、どうしても各国の部隊の活動には各国の主権のもとでの活動という側面があるわけでございまして、だからこそこの法案におきましては、国際連合の事務総長あるいはその権限を有しておる者の有しております権限、私らそれはオペレーショナルな権限と申しました。そのオペレーショナルな権限については、我が国から参加しておる部隊はそれに従って行動する、そういうふうに申し上げておるわけでございます。したがいまして、そういう意味でございますので、指揮権という言葉は若干誤解を生むかもわかりませんけれども、各国の部隊の運用、特にこの実施計画あるいは実施要領に基づきます国際平和協力業務の実施の面に着目いたしますと、その指揮権というのは、これは当然日本側にあるわけでございます。
  58. 秋葉忠利

    秋葉委員 済みません。次の質問をする前に、指図がコマンドだとおっしゃいました。じゃ、指揮というのは何という英語を使っているのですか、国連では。
  59. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  いろいろな表現が使われていますけれども、典型的にはコマンドという言葉が普通日本語で言う指揮という言葉の意味として使われていると思います。
  60. 秋葉忠利

    秋葉委員 これもまた大変申しわけないのですが、数学の言葉でここにも推移律が使えるのですが、AイコールB、BイコールCということになりますとAイコールCというのが、これが数学的真理でございます。今おっしゃいました言葉では、指図はコマンドである、そして指揮はコマンドである、ということは指揮は指図ということではないですか。だから、それだったら最初から指図なんて変を言葉を使わないで、日本語では普通指揮という言葉が使われていると今国連局長がいみじくもおっしゃったように、指揮という言葉を使って表現すれば全然問題はない。そうすれば、今非常に錯綜しているこの議論も非常にわかりやすくなる。  つまり、事務総長の指揮下に自衛隊が入らない限りPKO活動には参加できない。もしその原則を破って日本がその指揮下に入らないということであれば、あるいは日本の指揮権をそのまま保存して出るということであれば、それはPKO活動に参加するのではなくて、国権の発動たる自衛隊の海外派兵になるじゃありませんか。それは憲法違反でしょう。憲法違反を隠すためにそういう言葉でごまかそうとしている。そういうこそくな手段を私は日本国民の名において許すことはできない。
  61. 丹波實

    丹波政府委員 事実関係の問題がございますので、その前に私から……。  要するに、総理のお言葉にもございましたけれども、国際連合とそのPKOに参加する各国との間の関係ですが、あくまでも日本が主権を保持しておるわけでございます。したがいまして、いわゆるこの場合、先生はフィールドコマンダーという言葉を使われましたけれども、フィールドコマンダーと日本の司令官との間には身分関係におきますところのその権限というものはないということは、例えば、フィールドコマンダーが日本の隊長の懲戒処分はできないということは、このモデル協定の八項にも書かれてあるわけでございまして、そういう意味でコマンド、日本語では指揮あるいは指図になるかと思いますが、そのコマンドというのは、そういう配置、組織、行動という側面、あるいは指令という側面における権限を指して言っている。そういう意味では、通常私たちが普通の言葉で使うコマンドとは性格が違う。そういう点に着目して、法令では「指図」という言葉を使ったのだろうと思います。そういう限定的な意味におきましては、この訳を、仮訳を差し上げてございますけれども、この国連関係の書類の指揮というのも、そういう意味では指図という言葉に訳した方があるいは適切であったのではないかというふうに考えております。
  62. 秋葉忠利

    秋葉委員 肝心なところは全然答えていません。指図を選んだか指揮を選んだかという訳語の問題なんかどうでもいいことで、本当は。はっきりとしていることは、指揮イコール指図というところを私は確認いたしました。その点については答えられなかったけれども、当然認められたわけですね。  それから、コマンドという英語が通常使われている意味と違うというふうにおっしゃいましたけれども、これはコマンド・アンド・コントロールという軍事用語として人口に膾炙しています。それからコンピューター界でも、コマンド・アンド・コントロールそれからインフォメーション、CCIという言葉は立派に定着しております。それと全く同じ意味です。それと違う場合には、国連の文書はそういうところは非常に慎重に書いてあります。通常の意味と違う意味で言葉が使われているときには必ず注釈がついている。コマンド・アンド・コントロールに関して、この国連の文書で一体どこにそういう注釈がついているのか。これは通常の意味で使っているという以外には全く理解ができないところ、そう理解せざるを得ないところであります。ですから、指揮イコール指図というのが一致しているということははっきりいたしました。  それから、指揮権に入るということは懲戒の問題だ、だれかが規則違反を起こした際にそれを罰する権利がどこにあるかということだというふうに非常に曲解されていますけれども、国連のPKOの文書では、そういった懲戒の問題については各国が裁判権を行使しなくてはいけないという規定がありますけれども、そのことをはっきりと明記している国連の文書が、しかしながらコマンド・アンド・コントロールは事務総長が持っていると書いてある。私が言っているんじゃありません。国連が、しかも総会がそういうことを決めている。それに対して丹波国連局長は、非常に頭脳明晰な方でいらっしゃると思いますけれども、これは民主主義です。国連総会がそういうふうに決めたことに関して、しかもコマンドは、指揮権は国連総長が持っていることに関して、しかもこれほどはっきり明記してあることに関して異を唱えても事実は曲がりません。  ですから、仮にその指揮下に入らないのであると、自衛隊は事務総長の指揮下には入らない、あくまでも指揮権は日本国が持っているということであれば、これはもはやPKO活動とは言えないということははっきりしています。それが最も基本的なPKO活動参加への条件です。ですから、その条件を満たさない活動であれば、PKO活動とは言わずに、国権の発動たる自衛隊の海外派兵、派遣でも結構ですけれども、ということで、憲法違反の行動をこれからとろうとしているのだという点で憲法の議論を始めようではありませんか、憲法違反かどうかという議論。ですから、PKO議論について言っているのであれば、今のところは事務総長の指揮下に入るということを認めた上でなければこの議論はできません。もしそれを認めていただけないのであれば、これほどだれが読んでも誤解できないようにきちんと明記されている、二重、三重に念を押して国連の文書で書いていることを、それほど理解されないようなレベルでこの法案を私は審議することはできないと思います。日本国民の名においてできない。言葉の意味の上においてできない、論理性という意味においてできません。だから、世界人たちの知性、それから国連総会の知性に反する行動だと言わなくてはいけないと思います。その点について総理大臣、もう一度その指揮権についてはっきりと、誤解をしていた、こういうふうにおっしゃっていただきたい。
  63. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私は法律の専門家ではございませんので、そういう立場から、法律の専門家として申し上げるのではありませんけれども、指揮が指揮であるためには、それが守られるための担保がなければ私はいけないだろうと思いますね。そうじゃないでしょうか。ですから、担保のない指揮、つまり、守られなかったときには懲戒するとか、こういう制裁を加えるとかいうことでありませんと、指揮が指揮に私はならないのだと思いますし、今御議論になっていることは、私はまさしくそういうことなのではないか。
  64. 秋葉忠利

    秋葉委員 そうではありません。国連のPKOに各国が参加をする際には、事務総長の指揮下に入るという条件を喜んで受けます、私たちは何も受ける義務は全くないのだけれども。その指揮下に入るという義務は全くないということも明確に国連の文書では言っています。しかしながら、各国が自発的に、自分たちはそういう指揮下に入る必要は全くないんだけれども、国連活動のために、平和維持活動という崇高な目的のためにあえて事務総長の指揮下に入って、事務総長の指揮下、安全保障理事会あるいは総会決定した活動を行いますと、自発的に自分から進んで手を挙げて指揮下に入るということを言っている。それがPKO活動なんです。だから、自発的に言っている人に対して国連事務総長が、では一体あなたが本当にやらなかったときにはどうしましょうという立場にはありません。自発的に言う側が指揮下に入るということで今までは事務総長の命令を守ってきた。今まで、例えばフィールド・コンティンジエント・コマンダー、派遣部隊の長が事務総長の命令に明示的な形で違反をした例というのは私は寡聞にして知りませんけれども、そういう自発的な態度で指揮下に入りますということを最初に誓って入ってきたから、それで指揮命令系統がうまくいっている。それが通常の、例えば犯罪における指揮権といったようなところとは違うところだというふうに私は理解しております。  ですから、指揮権と懲戒権とは全く別物であります。そして個々の兵隊が、例えば兵士が仮に過って何かを行ったような場合、あるいは現場でそこに参加をしている外国の人、つまり、参加国の人が何か犯罪を犯した場合にはそれなりのきちんとした手順が決まっております。しかし、裁判権は各国にあるというところははっきりしていますけれども、指揮権に関しては一毫の疑いもなく事務総長の指揮下にある。それだけは認めていただかなければPKOの議論、PKOの活動としてこれ以上の議論をすることは私はできないと思います。
  65. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 そのような国連事務総長の意思が行われるために、それを担保いたしますために実施要領をそれに適合するように書くということを八条で言っておるわけであります。
  66. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。それは恐らく自分誤りを認めたくない、認めるについてはメンツもあるということだろうと思いますが、国連事務総長の命令に従うように、それに沿うように実施要領を書くということは、またここで推移律を出して申しわけございませんけれども、最終的には国連事務総長の指揮下に入る、実施計画をもって指揮下に入るということを認めるということと理解してよろしゅうございますね。
  67. 丹波實

    丹波政府委員 総理の御答弁の前に、事実関係につきましてもう一度だけ申しわけありません、御説明させていただきたいと思います。  先生も、その国連の指揮官が派遣国の司令官に対する身分的なところに権限を及ぼし得ないという点を国連がはっきり言っていることはお認めになられると思うのです。私たちは、そういうものを除いた配置、組織、行動、そういったものについての国連軍司令官のその指図あるいは指揮といったものは認めているわけです。しかしながら、通常、指揮といった場合には、そういう行動的な側面、身分的な側面、全部入って指揮と理解される。国連の場合にはこの身分的なところは入っていない。したがって、そこが通常の言葉で言う指揮とは違います。それを誤解のないように「指図」という言葉で国内法で受けております。そういう意味で、私たち総理以下一貫して同じことを申し上げているつもりでございます。
  68. 秋葉忠利

    秋葉委員 あのね、全然おかしい……。
  69. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 同じことのお尋ねでございますので、同じことを申し上げるようになるわけでございますけれども、別の角度からできるだけ申し上げようと思いますが、例えばこの八条の二項でございます。「実施要領の作成及び変更は、」とありまして、「指図に適合するように行うものとする。」この規定は、実施要領を作成あるいは変更する者に対して加えられている拘束である。いかにそれが書かれなければならないかということをこの二項が言っておると思います。これは国連事務総長から言われていることではなくて、我々がこの法律によって実施要領の作成及び変更する者に対して自分から課しているところの拘束でございます。このことは国連事務総長によって指図をされているわけではない。ところで、この平和部隊に従事いたします者は実施要領によって拘束されます。国連事務総長によって拘束されるのではない。
  70. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のお答えですと、全くまた前に戻ってしまいました。それで、実はこの問題についてこれを終わるのではなくて、私は留保をつけたいと思います。留保をつけるに当たって一言外務省にお聞きをしたい。  コマンドとコントロールというのが従前の意味とは違う、だから日本語では指図という言葉を使った、通常の指揮ではない。しかしながら、指揮は英語ではコマンドである、コマンドとコントロールという言葉国連総会ではそのまま使って、いわゆる日本の指揮という言葉をそのまま使って国連の文書をつくっている。その場に外務省の代表の方はいらしたわけでしょう、総会で。総会に対して、総会の場で、このコマンドの使い方は、国権ですよ、一国の主権に対して非常に大きなかかわりを持つ、これは通常のコマンドの意味ではないから、コマンドという言葉を使わずに、あるいはコマンドという言葉を使うのであればきちんとした定義を与えて、通常の指揮ではないんだよということを明記せよ、あるいは国際法上の問題が生じないようにきちんとした用語を使ってコマンド、この文書を書き直せという提案をなぜなさらなかったのですか。  これは国際的な問題です。日本一国だけにかかわる問題ではありません。今まで、PKOに参加する諸国、そしてこれからもPKOに参加する諸国が、自分の国の軍隊が出たときには事務総長のコマンド下に入る、指揮下に入るという理解で参加をしている。その理解をあなたはわかっていながら、明らかに他国に対してはその誤解を許し、日本の国の中では、仮にですよ、あなたの言っていることが正しいという前提で話をしますけれども、もしそうであれば、他国に関してはそういう誤解を許し、日本の国の中に関してはそういうきちんとしたことをやるというのは国際信義にもとることではないですか。国連の議場において、これは間違った解釈である、間違った言葉なんだ、こういう法律用語を使うことは国家の主権を譲ることになるんだ、そういうことではないんだよという発言をなされたのですか。少なくとも、私が国連での外務省の発言を見た限りではそういう発言はされておりません。なぜしなかったのですか。なぜそれを今になって初めて、初めてですよ、これまで何度も何度も国連においてそういった発言をするチャンスがあったにもかかわらず、なぜ今回だけ、初めてそういうことを言い始めたのか。非常に無責任きわまる態度じゃないですか。  外務大臣、そういう外務省の態度についてどういうふうにお思いになりますか。厳しく規律をお願いいたします。懲戒処分でも結構です、指揮権をお持ちなわけですから。
  71. 丹波實

    丹波政府委員 大臣の前に事実関係。  先生は先ほど、国連はコマンドという言葉を使うに当たり、もしそれに若干なりと、もっと正確に先生がおっしゃったことは、非常に注意深くコマンドという言葉を使っておるということを言われ、もし違う意味がある場合には注釈をつけるという趣旨のことをおっしゃいましたが、この注釈に当たるのは、まさにモデル協定第八項の先ほど私が読み上げた懲戒処分に関する項、つまり、そのコマンドというものは身分にまでは及びませんというのがモデル協定の八項に書いてございますが、それがそのものに当たるというふうに考えております。
  72. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 懲戒処分には当たりません。
  73. 秋葉忠利

    秋葉委員 今の非常に技術的な点についてはお答えいただきましたが、注がついているか、ついていないかということは一つの例示として申し上げたので、コマンドという言葉を使っている、それが指揮である、そしてそれが指図であるという、したがって指図は指揮であるということがはっきりしたにもかかわらず、指図と指揮は違うんだと言うのは、二掛ける二は四である、それから八割る二も四である、しかし四は四でないというのと全く同じ論理でございまして、私には全く承服できない論理でございます。  国会は、政治というのは、恐らくこういう数学あるいは論理のように明快に割り切ることはできない世界だということは十分承知していますが、しかしながら、近代国家が成立して、少なくとも、力を持つ、しかも暴力的な手段を持つ人間が他の人間を自分の自由にして、そして政治を動かしていくという時代から現代のような法治社会になったのは、まさに言葉が意味を持って、政治の世界でその言葉がきちんとした機能を果たしているからだと私は思います。現在ここで審議されていることは、その言葉が、自衛隊海外派遣という非常に重要な問題に関して、PKOという問題に関してまさに言葉が意味を持たなくなっている。その言葉の意味を持たなくしているのがまさにここに今答弁をしていらっしゃる方々である。尊敬する宮澤総理もその中に入っておられるということで非常に残念ですけれども、私は、この問題については現在お答えには十分承服ができません。全く承服ができません。留保をしたいと思います。
  74. 林義郎

    ○林委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十四分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  75. 林義郎

    ○林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小澤克介君。
  76. 小澤克介

    小澤(克)委員 午前中の質疑で指揮権について大きな問題となりましたけれども、少し整理をして、まず本法案についての指揮権の帰属を、なかなか複雑な構造のようになっているようでございますので、整理してお尋ねしたいと思います。  まず、この協力隊に対する指揮権は、この法案上はどちらに帰属しておりますでしょうか。
  77. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  協力隊につきましては、本部長が所部の職員を監督するということでございます。本部長が指揮監督いたします。
  78. 小澤克介

    小澤(克)委員 条文上の根拠をお示し願いたいと思います。その上で一緒にお答え願いたいんですが、まず十一条一項の一般から採用された隊員について、これはまあ本部長の指揮監督下に、指揮下に入ることはほとんど問題ないだろうと思います。なお、十二条三項、四項によって個別に各行政機関から任用された職員、これには海上保安庁の職員や自衛隊の職員も含まれますけれども、これについても本部長の指揮監督下に服することもほぼ問題ないだろうと思います。そのとおりでしょうか。条文上の根拠を示してお答えいただきたいと思います。
  79. 野村一成

    ○野村政府委員 失礼いたしました。お答え申し上げます。  第五条の第二項で、「本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。」という案文がございます。その場合の「所部の職員」というのの中には、副本部長、本部員、事務局長及び協力隊員、協力隊員が入ります。  今先生指摘になられました一般の採用の方、それから十二条で言っております関係行政機関の職員を協力隊に派遣していただきまして、それで協力隊員になるという方々につきましては、ただいまの五条の二項で本部長の指揮監督に服する、そういう関係でございます。
  80. 小澤克介

    小澤(克)委員 根拠条文が五条二項だということになりますと、十二条の五項で個別に派遣された行政機関職員、これは海保職員、自衛隊員を含むのですけれども、これについて「本部長の指揮監督の下に国際平和協力業務に従事する。」とわざわざ書いてあるのですが、この趣旨はあれですか、併任になっているので、しかし指揮系統は本部長のもとに一本化するよという、そういう趣旨の規定だと理解してよろしいでしょうか。
  81. 野村一成

    ○野村政府委員 基本的には今先生指摘のとおりでございます。この十二条五項につきましては、自衛隊員についてでございますけれども、身分を併有したまま参加する。自衛隊員、もっと平たく申し上げれば個人参加の自衛隊員につきましては、派遣元の業務は行わないという意味におきまして業務の仕分けをいたしておりまして、本部長の指揮監督のもとに国際平和協力業務に従事する、そういうふうに整理してございます。
  82. 小澤克介

    小澤(克)委員 次に、十三条一項によって隊員に任用された海上保安庁の職員、それから十三条二項によって隊員に任用された自衛隊員、これについてはちょっとこの法律の構造が複雑になっておりまして、これらの乗組員単位でこの協力業務を行う海上保安庁職員は同時に隊員に任用される、それから部隊単位で協力業務を行う自衛隊も同時に隊員に任用される、こういう構造になっておるわけですが、この隊員としての業務は、この第二項第三号に掲げる事務に限定されるという趣旨なのでしょうか。
  83. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のこの隊員と申しますのは、これは協力隊員でございます。身分をあわせ有している場合の協力隊員としての任務といたしましては、ただいま先生指摘の四条第二号、二号及び三号ですね、特に具体的な業務は三号に書いてございます。それを……(小澤(克)委員「二号なんてないでしょう。二項三号の間違いでしょう」と呼ぶ)四条二項の二号で「実施要領の作成又は変更に関すること。」と書いてございまして、その上で、三号で「前号の変更を適正に行うためのこということでございますので、むしろ三号というふうにとらえていただいた方がよろしいかと思います。
  84. 小澤克介

    小澤(克)委員 ちょっとわからなかった。二号は含むのですか、含まないのですか。
  85. 野村一成

    ○野村政府委員 むしろ業務の内容……(小澤(克)委員「いや、むしろじゃなくて、含むのか、含まないのか」と呼ぶ)三号のみというふうに理解していただいて結構です。
  86. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしますと、この隊員としての二項第三号に掲げる事務を行う場合には、これはだれの指揮を受けるんでしょうか。
  87. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  これは協力隊員のステータスでございますので、先ほど指摘いたしました五条の第二項によりまして本部長の指揮監督に服する、そういう格好となります。
  88. 小澤克介

    小澤(克)委員 次に、九条三項によって協力業務を行う海上保安庁職員、九条四項によって協力業務を行う自衛隊員、これに対する指揮監督は、監督権はどちらに帰属するか、条文上の根拠を含めて教えてください。
  89. 野村一成

    ○野村政府委員 九条三項、これは海上保安庁でございますが、これにつきましても、協力隊員としてのステータスでございますので、ただいま申し上げました五条二項に基づきまして本部長の指揮監督に服すということになります。(小澤(克)委員「本当かい。間違いだろう、それ。大丈夫」と呼ぶ)失礼いたしました。九条の三項、これは海上保安庁長官、それから九条四項、防衛庁長官、これらにつきましては、それぞれ海上保安庁長官及び防衛庁長官の指揮監督に服します。
  90. 小澤克介

    小澤(克)委員 何かとんでもない間違いを言っておられましたけれども、そのような法律の構造だろうと思います。  以上で明らかになったことは、海上保安庁の職員、これは乗組員としての単位でこの協力業務を行うわけですけれども、この協力業務を行う面においては、まさに海上保安庁の職員として、隊員ではなくて職員として海上保安庁長官の指揮命令のもとにこの協力業務を行う、これがこの法律の構造である。さらに、部隊単位で協力業務を行う自衛隊の部隊は、協力隊員としてではなくて、まさに自衛隊として防衛庁長官の指揮のもとにこの協力業務を行う。そして、これらの海上保安庁職員それから自衛隊の隊員は、単に四条二項三号に掲げる事務、これはすなわちこの調査、「派遣先国において実施される必要のある国際平和協力業務の具体的内容を把握するための調査、」それから効果の測定、分析、それから国連の職員との連絡に関すること、これのみを行う、それだけにおいて協力隊員たる地位に立つ、こういう構造が明らかになったと思います。  したがって、併任という言葉が、あたかも自衛隊員あるいは海保職員が併任となってこの協力業務を行うというふうに漠然と理解されがちでございますけれども、そうではない。まさに自衛隊が部隊として直接、協力隊員たる地位ではなくて、自衛隊としてこの協力業務を行う、こういう構造が明らかになったと思いますけれども、そのとおりでしょうね。
  91. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  業務の実施の側面に着目いたしますと、先ほど私、誤解して恐縮でございましたですけれども、自衛隊の部隊等が行う国際平和協力業務につきましては、防衛庁長官が本部長からの要請があった場合にそれを行わせることができるというようにされております。海上保安庁の職員についても同じでございます。  他方、一番の私どものポイントは、自衛隊の部隊参加について申し上げますと、防衛庁長官は、自衛隊の部隊等を国際平和協力業務に従事させるに当たりましては、実施計画とともに本部長が定めます実施要領に従うということにされております。第九条第四項でございます。また、個々の自衛隊員も実施要領に従いまして国際平和協力業務に従事するというようにいたしております。これは第九条第五項でございます。したがいまして、自衛隊員の身分としての国際平和協力業務の実施については防衛庁長官が指揮監督するわけでございますが、あわせて、協力隊員の身分としての先ほど先生指摘のございました業務が、これは本部長の指揮のもとで行われるわけでございまして、その両者の間には密接な関連、つまり実施要領に基づいて行われるという点がございまして、その実施要領というのが今回のこの法案における部隊の運用という場合に非常に重要な位置を占めておるということでございます。
  92. 小澤克介

    小澤(克)委員 今注意して聞いていたのですが、隊員として協力業務を行うとおっしゃいましたね。それは間違いでしょう。隊員として行うのは、部隊参加の自衛隊及び乗組員参加の海保職員に関して言っておるのですが、隊員として行うのは四条二項三号の事務に限定されると先ほどおっしゃったばっかりでしょう。本部長の定めた実施要領、マニュアルには確かに従うけれども、その限定のもとにおいて、これは自衛隊として防衛庁長官の指揮のもとに、自衛隊法等の法体系のもとでこの協力業務を行う、これがこの法律の構造ですね。それは間違いないでしょう。隊員としてというのは間違いでしょう。そこを訂正してください。
  93. 野村一成

    ○野村政府委員 前者につきましては自衛隊員として、それから協力隊員として、その二つでございます。(小澤(克)委員協力隊員として」と呼ぶ)はい。これは先ほど申しました防衛庁長官の指揮のもとに行うのが自衛隊員でございまして、それであわせて協力隊員の身分を併有しておりますので、それのこの法案に定めております業務につきましては協力隊員として行う、そういう意味でございます。
  94. 小澤克介

    小澤(克)委員 ですから、その法案に定めておる業務というのは第四条二項三号に掲げる事務だけなんでしょう、協力隊員として行うのは。自衛隊員じゃないですよ、協力隊員として行うのは。
  95. 野村一成

    ○野村政府委員 御指摘のとおりでございます。
  96. 小澤克介

    小澤(克)委員 ということで、この法律の構造が改めて明らかになったと思います。すなわち、自衛隊の部隊は、この協力業務を行う限りにおいては、協力隊員としての地位において行うのじゃなくてまさに自衛隊として行う。隊員としての地位において行うのは調査等々だけ、四条二項三号だけ、こういうこの法律の構造が、まさに自衛隊派遣法であるという構造が明らかになったと思います。ここが昨年の国連平和協力法と大きに違うところなんですね。すべての業務を併任として行うということになっていましたね。そこが明らかになったと思います。  そこで、もう一つだけお尋ねしますけれども、この個別参加の、あるいは一般採用として参加した協力隊の隊員に対する指揮権を部隊参加の自衛隊の現地指揮官の指揮にゆだねる、委任するということはあり得るんでしょうか、ないんでしょうか。
  97. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  一般参加の協力隊員につきましては、あくまで本部長が指揮監督するわけでございますので、委任の問題はございません。
  98. 小澤克介

    小澤(克)委員 いや、ですから、指揮系統が違うことはわかっているんですけれども、それじゃ個別参加の自衛隊員に関してはどうですか。指揮系統が違うけれども、その本部長側の指揮権を自衛隊の部隊の指揮者にゆだねる、委任するということはあるんでしょうか、ないんでしょうか。
  99. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  先ほど説明しました、あくまで五条二項の「所部の職員」の中に個人参加の自衛隊員も協力隊員として入るわけでございますので、したがいまして、個人参加の自衛隊員も含めまして指揮監督の権限の移譲ということはございません。
  100. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうでしょうかね。個別参加の自衛隊員も三条三号のイからへまでに参加できることになっておりますね。むしろイからへまでは個別参加の場合は自衛隊員に限るというふうにこの法律ではなっておりますね。そうすると、イからへは、一般には部隊参加の自衛隊員が行う業務だろうと思います。そこへ個別参加の自衛隊員が加わる場合に、部隊参加の自衛隊の指揮官の指揮のもとに統合するというのが実態ではないでしょうか。そうでなきゃできないでしょう、一人だけ本部長の指揮系統のもとに行動するなどということは。どうですか。
  101. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  個人参加の自衛隊員につきましては、これはあくまで部隊参加のとは違いまして、実態といたしまして、具体的に申し上げれば停戦監視員として参加する場合でございます。したがいまして、この停戦監視員の場合には、個々の自衛官が、これはほかの国の監視員と協同いたしまして停戦監視団を構成するということでございますし、そういう意味におきまして、あくまで他の隊員と同様に第五条二項に基づきまして、本部長の指揮のもとで活動するということでございます。
  102. 小澤克介

    小澤(克)委員 それではヌ以下について伺います。  ヌ以下についても、自衛隊が部隊としてこの協力業務を行えるということになっております。ここに、公務員であれあるいは一般参加の隊員であれ、協同して業務を行うということはあり得る事態であろうと思います。その場合にも、本部長が自衛隊の部隊の指揮官の指揮に指揮権を移譲する、ゆだねるということはないんでしょうか。あくまで別系統の指揮として現場で行動するんでしょうか。
  103. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  確かにヌ以下については、必要に応じまして自衛隊の部隊等が行う場合、それから人道的国際救援活動等、一般隊員、一般の関係行政機関あるいは一般から採用いたしました協力隊員が行うという場合が両方ございます。  指揮監督につきましては、それぞれこの法案にございますように、自衛隊の部隊等の参加につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。自衛隊員といたしましては防衛庁長官協力隊員としては本部長ということでございます。他方、それ以外の関係行政機関の方々からの協力隊員あるいは一般採用の協力隊員につきましては、本部長の指揮に、監督に属する、そういうことでございます。
  104. 小澤克介

    小澤(克)委員 わかりました。あくまで別系統で現地で行うと言うのですね。  例えば「ヌ 医療」業務、これは自衛隊の医療部隊がこういう医療業務を行う、そこへほかのどこか国立の病院のお医者さんか何かが加わるというような事態は十分考えられますね。その場合でもあくまで別の指揮系統でやると言うのか。指揮をゆだねるということはあるんじゃないですか。その方がスムーズにいくんじゃないでしょうかね。あくまで別系統で、現地で別々の指揮系統で個別に行動するんですか。確認しておきます。
  105. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  今医療部隊ということで御質問ございましたですけれども、私どもは実は、具体的な医療のニーズがあったとしましても、医療部隊としての活動というのの中に、あるいはそれに混在いたしまして、例えば一般行政機関からの、国立大学の先生活動するということは実際問題として想定されないのではないか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  106. 小澤克介

    小澤(克)委員 わかりました。要するに、別系統の指揮権のもとに別々にあくまでもこの協力業務を行う、こんなふうに伺いました。  そこで今度は、以上でこの法案についての指揮権の帰属はわかったわけでございますけれども、その指揮権を国連などに一部移譲するということは予定されているんでしょうか、予定されていないんでしょうか。
  107. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  今先生指摘国連のコマンド、指揮というのにつきましては、けさのUNIIMOGの議論でもございました。基本的にはオペレーショナルな権限ということでございます。  他方、それが法案においては「指図」ということでとらえておるわけでございますが、その「指図」に従いまして現実の平和協力業務が行われるわけでございまして、その業務自体につきましては、先ほど申しました本部長ないし、あるいは防衛庁長官海上保安庁長官の指揮のもとで行われるという関係にあるわけでございまして、したがいまして、今説明を申し上げておりますこの法案のもとでの指揮監督関係、そこから生じてきております権限、これを国連に移譲するということはございません。
  108. 小澤克介

    小澤(克)委員 本法案では国内側のといいますか、本来の第一次的な指揮権、これは国の機関でございますから国の側が握るのは当然でございますけれども、それを国連等の国際機関に移譲するということは一切予定されてない、こういうことですね。  そこで、この法案を離れまして一般論として、あるいは論理の問題として若干お尋ねしたいと思います。  これはぜひ総理にお答え願いたいのですが、総理は昨日の審議の中で、協力隊員は国際公務員でない、したがって、国際公務員でない者が何で国連事務総長の指揮に従うことができるか、そんなことはあり得ない、主権国家がどうして国連事務総長に従うことがあるか、これは基本的な常識問題だ、このようにおっしゃっておられます。私は、大変失礼ですが、これは何か大きな勘違いをしておられるんじゃないかなと思いました。  というのは、PKF部隊は、どの国の部隊もその国が設置したその国の機関であります。したがって、当然に国連の指揮下に入るということはあり得ない、これはおっしゃるとおりだと思います。また、国連各国の主権を制限し得るような存在でないこともおっしゃるとおりだと思います。だから、当然に各国の部隊が国連事務総長の指揮下に入るということはあり得ない、これは全くそのとおりだと思うのです。恐らくこのことをおっしゃったんだろうと思います。ただ、我々はそんなレベルで議論しているんではないんですね。すなわち、主権国家がその主権の一部である自国の機関に対する指揮命令権を国際機関に移譲する、こういう事態は当然あり得ることだし、移譲するということ自体主権行使の一態様だ、そういうことじゃありませんか。総理は、こういった移譲ということもあり得ないことだ、論理的にはあり得ないことだ、このようにきのうおっしゃったんでしょうか。そうじゃないと思うのです。英明な総理のことですからそうじゃないと思うのですが、いかがでしょうか。
  109. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御理解のとおりでございます。前段の方を申しました。
  110. 小澤克介

    小澤(克)委員 それでは後段についてはいかがですか。主権国家が、その主権の一部である国家機関に対する指揮権を国際機関に移譲するということはあり得るわけでしょう。なければ、このPKOというのは本当は成立しないんですよね。どうでしょうか。
  111. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 今委員のお尋ねの件でございますが、例えば、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律というふうなのがございまして、そこで、我が国が加盟している国際機関といったところに任命権者が要請に応じまして業務に従事させるために派遣するというふうなことは、法律事項として書かれているところでございます。
  112. 小澤克介

    小澤(克)委員 諸外国のPKFについても、そのような法的構成で国連事務総長の指揮下に置かれているのではないでしょうか。これは外務大臣、いかがでしょうか、御認識を。
  113. 丹波實

    丹波政府委員 国際連合事務総長が任命する国連の司令官は、けさ方からも御説明申し上げておりますけれども、各国から派遣された要員、部隊を有機的に結びつけて一体として機能させるために、その配置や移動等の行動を行う権限を有しております。我が国隊員に対する身分、地位、懲戒等の面での権限は、あくまで派遣国たる日本に属している、こういう関係になっておるわけでございますので、前段の方をコマンドと呼んでおるわけですが、通常、言葉でコマンドといいますと、後者の身分、地位、懲戒、そういった面も入るような言葉と解されますが、あくまでもそういうものはこの場合は入っていない。そういう意味では、誤解を避けるために「指図」という言葉が適当であろうということで国内法にも書きまして、国連局からお出ししております資料の中で指揮とか指図とか実はばらつきがあったのですが、私たちは、今後やはり「指図」という言葉でこれも統一させていただきたいというふうに考えております。
  114. 小澤克介

    小澤(克)委員 指図という言葉については、元信委員の方から関連質問でお願いすることになっております。  私がお尋ねしたのはその指図という指図論ではなくて、論理として、各国がその主権の一部を国際機関に移譲するということはあるのではないか。今のお話でも、展開や組織あるいは行動に関しては事務総長の権限があるとおっしゃいましたね。この権限のゆえんはどこにあるんですか。各国が権限を移譲したからでしょう。そうじゃないんでしょうか。
  115. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  一般論として申し上げますと、国がその主権の一部を、条約等によりまして合意によって国際機関に移譲するということはあり得ることであると考えます。
  116. 小澤克介

    小澤(克)委員 当たり前の話ですよね。で、諸外国のPKF部隊あるいはこれまで歴史的に形成されたPKF部隊はまさに指揮権を移譲しているんですよ。  ここに「新防衛論集」というのがございます。これは防衛学会というところが発行しているものですが、まあ事実上、防衛研究所の刊行物と見て間違いないだろうと思います。これの昨年、九〇年六月号、松浦一夫さん、この方は防衛大学の講師であられます。この方がドイツについての論文を書いておられます。そこではっきりこう言っております。「平和維持軍は安全保障理事会の議決による委託を受け編成され、国連の指揮下に置かれ、その行動には国連が責任を負うのであるから、この軍隊が国連の機関であることは間違いない。」こう言っております。その後に続いて、しかし他方では、刑事裁判権や服務規律などはその国に留保されている。したがって、この側面において派遣元の国の要素もある、こういう二重の性格を持っている、こういうふうにはっきりおっしゃっております。  ですから、総理各国のPKFというのは国際機関なんですよ。国際公務員たる側面を持っているんです。だから、その側面において事務総長の指揮下に入るということはあり得ることなんですね。そこはお認めいただきたいと思います。それをもし認めないということになりますと、防衛大学の講師が間違ったことを防衛大学の生徒さんに教えているということになりますよ。いかがですか。
  117. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私は法律家ではございませんけれども、そうして今お読みになられましたドイツの例をよく存じませんが、一般論といたしまして、主権国家がその一部を人に譲るということはこれはもうあり得ることでございますから、そういう法制をとっている国があるかもしれない、それは考えられることであると存じます。ただ、我が国の場合には、ごらんのように八条の二項におきまして実施要領の作成という形でこの問題を処理しようとしておる、こういうことであると思います。
  118. 小澤克介

    小澤(克)委員 では、本法に戻ります。  何でこの法案では、諸国の例のようにその作戦等についての指揮命令権を、国連、実質的には事務総長に移譲しなかったんでしょうか。諸外国のPKFと極めてコンセプトが違うことになります。どうしてこれが同一の行動ができるんでしょうか。なぜ移譲しなかったのか、非常に特殊な構成をとるのはなぜでしょうか。
  119. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  先ほど先生、国際連合のコマンドということに関連して指揮権の移譲云々を議論されておられるように理解いたしますけれども、この国際連合の指揮監督というのは、具体的には例えば条約上あるいは国連憲章から出てきていることではなくて、基本的には、私、昨日の本委員会での議論でも申し上げましたけれども、長年のPKOの慣行の中から、まさにこういった配置や移動のオペレーションを行う権限といたしまして確立いたしてまいっておる。もっと具体的に申しますと、PKOに参加する国々が、そういった配置や移動のオペレーションを行う権限についてはそれに従うという了解のもとで確立してきておる、そのような性質のものであるというふうに理解しておるわけでございます。  それで、モデル協定というのがございますけれども、それはまさにそういう長年の国連の慣行の中から出てきておるということでございまして、したがいまして、私ども今回この法案をつくるに当たりましては、そういう慣行に合わせまして、やはりこの国連のコマンドにつきましては、法案第八条に基づきましてそれに適合するように実施要領を定める、そういうふうにいたした次第でございます。したがいまして、特にその点につきまして国連のコマンドとの間で問題等が起こるというふうな仕組みにはなっておらないということでございます。
  120. 小澤克介

    小澤(克)委員 なぜ他国の、あるいはこれまで歴史的に形成されてきたPKF部隊のように、作戦面での指揮権を国連に、事務総長にゆだねるということをしなかったのかと聞いたんですよ。諸外国のものは、内部規律の問題については各派遣元の国が留保する、それ以外の指揮命令権は国連にゆだねる、こういう構成をとっているんですよ。そのことは間違いないです。いいですか。先ほど申し上げた防衛大学の講師の方も言っておりますが、防衛研究所所員の高井さんという方も同じ号に載っている論文の中で、「自発的兵力提供国の兵力で地理的配分を考慮して編成された軍事監督団または平和維持軍は、国連事務総長の指揮の下に活動するのである」「もちろん派遣先の要員は現地指揮官の指揮に従う」こう書いております。これが常識ですね。  それから、防衛白書自体がそのように書いておりますね。どうしてそのように明快に、部分的にしろ国連事務総長のもとに権限をゆだねるという構成をとらなかったのか、その理由を教えてください。防衛白書では、「平和維持活動は、平和維持軍と監視団の二つに大別される。いずれも事務総長の指揮下に入り、」こういうふうに書いてあります。これは一般論ですよ、まだ日本にはないわけですから。
  121. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 このいわゆるコマンドの問題につきましては、各国いろいろな考え方があると思いますが、けさほど来御説明申し上げていますように、このいわゆるモデル派遣取り決めにも出ておりますように、やはり各国から派遣される部隊というものは各国の軍隊、日本の場合自衛隊でございますが、という面と、それから国連活動の一部を担う部隊であるという二つの面があると思います。そして、ここのいわゆるモデル協定案にあらわれておりますようなコマンドの考え方は、繰り返しになりますけれども、その人員の配置、組織、行動等についてのコマンドということでございまして、いわゆる懲戒権等を含まない。我が国の国内法で考える指揮権とは違うものであるということでございます。  そこで、この国連のいわゆるコマンドとの関係をどうするかということでございますが、各個の提供する部隊は、何らかの派遣取り決めにおきまして、このような国連の指揮のもとに行動するということに同意をするという関係になると思います。これを指揮権をゆだねると呼ぶかどうかということはあるいは用語の問題かもしれませんが、いわゆる我が国の国内法で言っておりますような完全な懲戒権で担保されたような指揮権を移譲するというものではない。ただ、行動活動についての事務総長の指揮、コマンドに従うことに同意をするという関係であろうと思います。
  122. 小澤克介

    小澤(克)委員 諸外国のPKFと著しく違った行動といいますかコンセプトになっている。どうしてそうしたのかという理由については依然としてお答えがない。実態論を申されました。しかし実態論でいえば、例えば公務員の服務関係のような上司と部下の間でも、仕事を命ずるときに、今度君にこの仕事をやってもらいたいんだけれども、どうだろうか、自信あるか。はい、やります。じゃ、やってくれ。若干の命令を受ける側の意向を事実上聞いて調整するということは、これは行われることですよ。しかし、だからといって上司の部下に対する指揮命令権が否定される理由はありませんわね。だから、実態論で聞いているんじゃないのです。法的な指揮命令権の問題として聞いているのです。そして国連が要請しているのも、まさに指揮命令権の移譲を要請しているわけですね。全くお答えになってないと思います。この点については、元信委員から関連でお尋ねいただくことになっておりますので……。  それでは、この法案では国連に対する指揮権の移譲はないということを前提に伺いますが、これまでの委員会審査でそのように説明してきてないのですよ。むしろ全く逆の説明もしている。今のような説明もしておられますが、すなわち、事務総長あるいはフィールドコマンダーというのは調整に当たる者だ、コーディネーターだ、コマンダーではないんだというような説明をしている部分もあります。が、同時に、例えばさきの国会の九月二十六日の質疑の中で、これは公明党の山田委員質問の中で、このPKO全体について「国連が主宰するんだ。参加したら国連の指揮下に入る。こういう特徴を持っております。」と、質問の中でこういう認識を示しておられます。これは当然なんです。すべてがそうなんですから、諸外国のものも。それに対して当時の海部総理大臣は答弁の中で、お説のとおりであります。そして五原則等についての答弁の後、「その他のことは、おっしゃったことと私の考えは同感でございます。」こう言っているんですよ。指揮権は移譲しないという説明と全く違った答弁をしておられる。  それから、同じく公明党の東委員質問の中で、「派遣時においては日本のあくまでも指図に基づいて派遣する、そして現場に到着する。現場に到着した場合、国連事務総長から派遣された事務総長の代理の司令官の中に日本隊が含まれることになる。」そして、ただし撤収する場合には日本の指図が働く。これはそのとおりなんです。主権に基づいて派遣したわけですから、主権に基づいて撤収することは当然できます。そして、そういう撤収ということがない場合は、業務の終了時まで国連の司令官の指揮のもとで働く。「そして、業務終了と同時に日本の指揮権が働いて帰ってくる、このように理解してよろしいですか。」これはまさにこれまでの諸外国のPKF、あるいは国連が要請するところのPKFと全く同じ認識に立って質問しておられる。これが国際常識だからです。それに対して、「○野村政府委員 ただいま先生指摘のとおりでございます。」こう答えている。全く矛盾した答弁をしていますね。どうなんですか。
  123. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  私、今手持ちの議事録持っておりませんけれども、ただ、海部総理の答弁あるいは私の答弁、今質問の方も伺っておりましてはっきりいたしますことは、国連の指揮に従うということ、そういう意味は、やはり基本的には、モデル協定にもございます国連のコマンドのもとで行動する、そういうことでございます。私、実は国連のコマンド、UNコマンドというときに、英語で言うのもあれなものですから、国連の指揮権というふうに現実の答弁で答えている場合もございます。しかし、それはあくまでモデル協定に言います国連のコマンド、そういう意味でございます。そういうふうに理解いただきたいと思います。
  124. 小澤克介

    小澤(克)委員 いいですか、山田委員は、「国連が主宰するんだ。参加したら国連の指揮下に入る。こういう特徴を持っております。」これが通常のPKFだからまさにそうおっしゃったのです。それはそのとおりだ、お説のとおりだと答えている。全然矛盾した答弁をしているんですね。  この問題は非常に重要な意味を持つのです。国連の指揮下で国連行動として業務をするのか、それとも日本の自衛隊として日本の指揮下で行動するのか、これはまさに国連行動なのか日本行動なのか、したがって、また責任の所在はどちらにあるのか、この基本的な性格を決定するのがここのところです。それからまた、この実施要領がどこまで実効性を持つのか、あるいは業務中断の判断を本部長がやるということになっているんですが、それがどこまで徹底するか、このことに密接にかかわる極めて重要な部分なんですね。この重要な部分についてこんないいかげんな答弁、百八十度違う答弁、聞く人によって、あるいは答える人によって違っている。このまま審議が続けられますか。見解を統一してください。
  125. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  基本的には、私、繰り返しになりますけれども、モデル協定で言っておりますUNコマンドという趣旨で、国連の指揮権というふうに申し述べたつもりでございます。
  126. 丹波實

    丹波政府委員 私からお答えさせていただきたいと思いますけれども、前国会におきますところの海部総理の答弁、その当時の政府委員の答弁、この委員会におきますところの宮澤総理以下私たち政府の答弁、一貫していると思うのです。  これはけさも申し上げましたけれども、国連がPKFを実行する場合に、国連の指揮官が、各国が提供した要員に対しては配置とか組織とか行動及び指令についての権限を有する。この権限というのは英語でコマンドと書かれております。他方、普通私たちの国内法あるいはその他の法律世界の中で指揮といいますと、そういう現実行動に対する支配権と身分に対する支配権の二つを持っている。しかし、この場合には、第八項で明らかになっておりますとおり、身分関係には及びませんということが書かれておるわけです。そういう意味では、国連言葉で使っているコマンドという意味は、普通私たちが使っているコマンドとはちょっと別な意味だ、身分関係は入っていない。そういう意味のことを日本の法案でどう書くかということを政府部内で議論をしたときに、誤解を避けるために「指図」という言葉を使わせていただいた。しかし、普通こういう表現を議論するときには指揮という言葉を使って議論させていただきました。そういう言葉の整理であったわけでございまして、内容につきましては、一貫して私たち同じことを申し上げているつもりでございます。     〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
  127. 小澤克介

    小澤(克)委員 指図概念について聞いているんじゃないんですよ、指図概念について聞いているんじゃない。作戦面について……ちょっと静かにしてください。作戦面について……(発言する者あり)おまえとは何だ。だれに言ったって同じだよ。おまえとは何だ。取り消せよ。
  128. 中川昭一

    ○中川委員長代理 御静粛に願います。
  129. 小澤克介

    小澤(克)委員 私が伺っているのは、指図という言葉について伺っているんじゃないんです。作戦面、展開、組織それから指揮、これについては、このモデルでも事務総長のもとに集中する、こうなっているわけですよ。確かに服務関係については派遣元の国が留保します。しかし、作戦面についての指揮命令は事務総長のもとに集中するんですよ。それが常識だし、モデルでもそうなっている。過去の例もすべてそうです。そのことを前提に、山田委員にしろ東委員にしろ質問されているわけですよ。何も服務規律のことなんか聞いておられません。それに対して、そのとおりですと。「国連が主宰するんだ。参加したら国連の指揮下に入る。」こういうまさに正当な御認識で質問しておられて、お説のとおりでございます、こう答えている。全く矛盾している。百八十度違うじゃないですか。先ほどのあなたの答弁では、すべての面について指揮権を移譲することはないとおっしゃったんですよ、この法案では。全く違った答弁しているじゃないですか。そんな人によって答弁が違うようなことでは審議する意味がないじゃないですか。あなたは私に対する答弁、また後で変えますか。
  130. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  私、今先生指摘の議事録、特に東議員のを今読まさせていただきました。実はその全体の質問の流れの中で出ているわけでございまして、私は次のように答弁いたしております。確かに「御指摘のとおりでございます。」という簡単な答弁もございますけれども、その前に、  御指摘の、この法案八条第二項で国連のいわゆるコマンドを「指図」と呼んでおります。これは日本の国内行政組織上のいわゆる指揮権とは違った位置づけでございまして、その意味でそういうふうに呼ばしていただいておるわけでございます。   基本的には、PKO活動に参加している要員、部隊を有機的に結びつけて一体としまして機能させるために、各国からの部隊を有機的に結びつけて一体として機能させるために配置や移動等のオペレーションを行う権限ということでございまして、したがいまして、具体的には、国連事務総長の指定を受けまして、その委任のもとで現地で国連の司令官がおる。他方、その場合に、私ども現地では部隊の責任者というか隊長がおるわけでございますが、その国連の司令官のもとにと申しますか、その中に各国からの連絡員と申しますかそれも派遣されておるということでございまして、常に国連の指図、それから部隊の行動というのが調整されながらうまいぐあいに運用されていっているのが実態でございます。 そういうふうに答えてございます。  私のこの御質問の点についての認識は、以上のとおりでございます。
  131. 小澤克介

    小澤(克)委員 そういうわからない答弁をしているんですよ。つまり、指揮権ではなくていわばコーディネーターだ、連絡調整だというような答弁をしておられる。これじゃよくわかりませんよね、どっちにどういう指揮権が帰属するのか。  わからないからこそ東委員はさらにこう言っておられるのです。「法案の中身に書かれている派遣のそれぞれの指揮権の指図の違いについて、すぐ言っていただくというのは難しいのかわかりませんが、」つまり、よくわからない、すぐに言っていただくのは難しいだろう。それで「次のように理解してよろしいですか。」として、先ほど紹介したように、派遣まではこちらに指揮権がある、派遣されたら向こうに指揮権が移る、そして撤収するときはまたこちらに指揮権が戻る、こういうごく当たり前の諸外国のPKFあるいはこれまでに歴史的に形成されたPKFの実態を正確に認識されて質問しておられる。それに対して、そのとおりでございますとあなたは答えております。全く違いますね。ところが、この法案ではいかなる意味でも指揮権の移譲はない、こう言っているのですよ、先ほど私には。百八十度矛盾しておりますね。  どうしてくれるのですか、これ。これはやはり外務大臣総理に御答弁願いましょうか。
  132. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  私、その東議員の質問の中で、具体的に手続を触れられた後で「業務の最終的終了時まで再び国連の司令官の指揮のもとで動く。そして、業務終了と同時に日本の指揮権が働いて帰ってくる、このように理解してよろしいですか。」という質問に対しまして、「御指摘のとおりでございます。」という趣旨は、私ここで理解しております「国連の司令官の指揮のもとで」というのは、私がまさにその前に答弁いたしましたそういう意味における国連のコマンド、そういう理解のもとで答弁いたしておるわけでございます。
  133. 小澤克介

    小澤(克)委員 なぜ指揮権の移譲ということができないか。そちらでお答えにならないから私の方で教えてあげましょう。  結局、かぎはここにあるのです。第八条の二項です。実施要領、このマニュアルについて、「前項第六号に掲げる事項に関し本部長が必要と認める場合を除き、」これは業務中断に関する事項ですね。業務中断に関するものを除いて、事務総長の「指図に適合するように行うものとする。」こう書いてある。これをもし指揮というふうに書いちゃうと、業務中断に関しては本部長の方の判断が優先する、事務総長の指揮権を侵すことになる。そう書けなかったんですよ。だから、「指図」などというわけのわからぬ言葉でここをごまかしたのです。なぜ業務中断については本部長の判断を優先させなければならなかったか。それは、まさに組織的な防衛、つまり武力行使に至るような事態を避けたいために、そのような事態になる前に業務中断をさせるという必要があったからなんですよ。そうでしょう。だから指揮と書けなかったのです。「指図」というわけのわからぬ書き方をしたんです。  もう一遍伺いますけれども、本法案によるPKF部隊は、諸外国のものあるいはこれまで歴史的に形成されたものとは違って、指揮権の移譲は一切ない、そして事務総長あるいはそのもとにおけるフィールドコマンダーは単なる連絡調整役にしかすぎない、コーディネーターにすぎない、コマンダーではない、こういう理解になるわけですね。諸外国のPKFとは全くコンセプトの違ったものになる。このことをお認めになりますか。
  134. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  基本的には、先ほど条約局長も御説明申し上げましたけれども、日本がPKFに参加すると決めて要員を派遣する場合に、国連と一定の取り決めが結ばれます。その中に、表現的に全部これが入るかどうかは別といたしまして、この種のこの第七項的な規定が入って、それを受けて、日本としては現地で国連司令官の配置、組織、そういったことについての権限を受けるということになるわけでございます。関係はそういうことで決まるということでございます。
  135. 小澤克介

    小澤(克)委員 全く理解できません。この点についてなお質問することを留保いたしますが、とりあえず元信委員の関連質問にかわります。
  136. 中川昭一

    ○中川委員長代理 この際、元信堯君から関連質疑の申し出があります。小澤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。元信堯君
  137. 元信堯

    元信委員 総理大臣、バベルの塔ということを御存じですか。
  138. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 普通の言葉としては知っております。
  139. 元信堯

    元信委員 どういう意味ですか。
  140. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 通例は、いろいろな言葉が入りまじって理解が困難になる状況をいうかと思います。
  141. 元信堯

    元信委員 理解が困難になると何もできないということを意味しておるんだと思いますね。(「天罰が下るんだ」と呼ぶ者あり)天罰はこれから下る。  今までの議論を拝聴しておりまして、どうも言葉というものが全然整理されてないんじゃないかという気がしてなりません。同僚小澤議員も指摘をされましたけれども、本年十月一日、前国会のこの特別委員会において野村政府委員が公明党の東祥三委員質問に対して、引用はさっきされましたから繰り返しませんけれども、部分的に言うと、日本のあくまで指図に基づいてとか、日本の指図が働くんだとか、国連軍の指揮のもとで動くとか、そういう言葉がぽんぽん出てましたわね。それを、そのとおりで先生指摘のとおりでございますとあなたはおっしゃった。しかし、今の答弁を聞いていると、いや、そう言ったかもしらぬけれども、それはそういうつもりではなくて、これこれこういうつもりだった、こういうことをおっしゃっている。これは赤いですかとだれかが聞いた。あなたはそれを、そのとおりでございますと言った。後から、おまえあのとき赤いと言ったじゃないかと言われて、いや、あれは白かったんだけれども、まあ、ついうっかり赤いと言っちゃった、文脈はそうじゃございません、その前に桃色だとか紫色だとかいろいろ言ったんだというような議論をあなたはしているじゃないですか。国会会議録というものをどう心得ているんです。もしあなたが言ったようなことがあれば、あれは先生指摘のとおりどころじゃない。先生の御指摘、全く違いますと答弁を変更せにゃいかぬわけだけれども、変更しましたか。
  142. 野村一成

    ○野村政府委員 お答えいたします。  先ほども答弁いたしましたが、私、この議論の流れの中で国連の指揮権というのをきちんと、質問がございましてそれに対して答えておるわけでございます。それを受けて東先生がその国連の指揮権ということで質問がございました。そういう理解でございますので、私、あくまで基本的には、国連の指揮権と申す場合にはモデル協定第七項、八項のいわゆるUNコマンドという認識でございます。
  143. 元信堯

    元信委員 それはあなたの主観なんだよ。大事なことは客観性だと思うのですね。バベルの塔だなんて言ったのはそのためですよ。あなたがどういうつもりで言ったかなどというようなことは全く問題じゃない。会議録に何が残っているかということですよ。日本の指図だとか国連指揮官の指揮のもとで動くとか、そんなこと言っていて、あなた、そのとおりでございますなんて言っていて、それはそのつもりでなかったと言うんじゃ、余りにも国会を愚弄していやしませんか。そのときだけ調子のいい答弁をしておいて、後になってあれは意味が百八十度違いましたと。誤りということは間々ありますよ、誤りは。誤りがあったのであれば訂正すべきじゃないですか。私、今言ったのは訂正したかどうかということを聞いたんだから、もう一遍聞きますよ。訂正したかどうかだけ答えなさい。
  144. 野村一成

    ○野村政府委員 この議論の流れ、議事録を読みますと一貫しておりますので、特に訂正する必要がないと思って、訂正いたしておりません。
  145. 元信堯

    元信委員 それじゃ総理大臣に聞きますが、日本の指図などというようなことがあり得ますか。国連事務総長に限って指図という概念を適用したんじゃないですか。どうですか。
  146. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 今のお話を伺っていますと、過去の速記録によりますと、政府委員言葉の定義をした上でいろいろお尋ねにお答えをしておって、そういう中で大きな流れで一問一答がなされておるわけですが、きょうはその部分だけを非常に、数時間にわたって御議論になっておりますから、全体の大きな流れの中で一遍定義をしてお答えしたことと、きょうその問題だけをお話しになる場合とはお話の厳密さが私は違うんだろうと思うので、政府委員が間違ったことを申しておるようには私には思えません。
  147. 元信堯

    元信委員 言葉というものを大事にしましょうや。例えばさっき秋葉委員質問をして、フィールドコマンダーという言葉を使った。あれは違っていたのですね。今すぐ訂正の手続をとりましたよ。間違っていたら正す、それぐらいのことしなければいかぬじゃないですか。間違っているでしょう。日本が指図するということはないんでしょう。流れのことはいいですよ。言葉だけ取り出して、一つ一つ言葉で議論というのは成り立つわけですから、言葉を大事にしてくださいよ。どうなんですか。
  148. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいま申し上げましたように、政府委員が間違ったお答えをしているように私には思えません。
  149. 元信堯

    元信委員 あえて言えば、質問者が言葉のずっと定義してきたのとは違う使い方をしていて、それを先生指摘のとおりですなんて言っているわけですよ。御指摘のとおりですと言うのであれば、それをそのまま受け入れたということになるでしょうが。それは言いにくいかもしらぬよ、準与党的な立場で言ってくれているのに、あなたの言っているのはそれは間違いだなんて。それはちょいと言いにくいということはわからぬじゃないけれども、議論の厳密さということであれば、それは後から気がついたって訂正すべき、あのときはそう言うべきでありませんでしたというぐらいのことは言わなければいかぬじゃないですか。どうですか。
  150. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 同じことでございますけれども、当時は一遍言葉の定義をして、あとは大づかみなこの法案についてのいろいろ御質問に答えているわけでございますから、それはそれでいいのでして、きょうはその部分だけを数時間御議論になっていますから、それは用語はもっと正確でなければならぬということだけの違いであって、私は間違った御答弁をしていないと思うのです。
  151. 元信堯

    元信委員 こんなひどい話は聞いたことがない。言葉が違っていて、赤いと言うところを白いと言って、全体の流れがああとかこうとか言ってごまかしてしまうという、これじゃどうしようもないですよ。国会の中で議論が成り立たない。(発言する者あり)
  152. 中川昭一

    ○中川委員長代理 質問を続けてください。
  153. 元信堯

    元信委員 それでは、改めて政府に伺いますが、昨日の岡田質問において、この指図という言葉を主要五カ国語で何と言うか、こういうお尋ねをしたと思います。直ちにお調べをしてというような答弁をいただいたと思います。どうなりましたか。
  154. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  けさからの議論で私の方から説明申し上げておりますが、法案第八条二項の「指図」は、国連派遣国とのモデル協定に言います国連のコマンドのもと、英語で失礼でございますが、「アンダー ザ コマンド オブ ジ ユナイテッドネーションズ」のコマンドと同じ意味でございますので、英語といたしましてはコマンドが適当と考えております。  それに相当するフランス語、ロシア語、中国語はそれぞれ、フランス語につきましてはコマンドマン、中国語については、私必ずしもちょっと発言、このとおりでいいかどうかわからないのでございますが、ジィホイ、漢字で指揮と多分同じ意味だと思いますけれども、それからロシア語につきましてはコマンダバニエという言葉を使っております。  今の「指図」の訳語といたしましては、今申しましたとおりにいたしたいと思っております。
  155. 元信堯

    元信委員 要するに指揮だということなんですね。文字の本場は中国でありますから、指揮と指図などという間には何の差もないということがこれで明らかになったと思います。  ところで、指図というのは余り見かけぬ言葉でございますけれども、我が国の法体系の中で指図というものが一体どこにどれぐらい使われているか、法制局長官、御存じですか。
  156. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  指図という言葉につきましては、民法あるいは証券取引法あるいは地方税法、こういった法律の中に出てくると承知しております。
  157. 元信堯

    元信委員 全部で幾つあります。法令数と条文数、言ってごらんなさい。きのう通告したでしょう、それを聞くよって。  法制局長官御存じないようだから申し上げますと、十九件、四十五条あるわけですよ。地方自治法、民法、同法施行法、商法施行法、手形法、拒絶証書令、小切手法、国税収納整理資金に関する法令施行令、消費税法施行令、証券投資信託法、金融先物取引法施行令、証券取引法、同法施行令、外国為替及び外国貿易管理法、一々言えば切りがないが、十九あるわけですよ。これをずっと見ていったところ、そんな国連の指揮官云々なんというような法令は一つもないんですよね。  それで長官、伺いますが、一つの国、我が国法律体系の中で、一つの用語を定義もせずにあちこちの法律に別の意義に使ったという例があったら教えてください。
  158. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいまの委員の御指摘については、ちょっと今適例を思い出しませんが、しかし、ただいま問題になっております指揮、指図、こういう関係について申し上げれば、指揮というのは、通常、国内法上、先ほどから申し上げておりますように、身分関係などを含む用語として使われております。
  159. 元信堯

    元信委員 要するに、そういうことはほかにはないと。非常に特殊で、この世界の、総理大臣法律専門家じゃないと言うが、まさか法制局長官、法律専門家でないなどという遁辞は弄されぬと思いますが、それにしても知らぬとおっしゃる。極めて異常な、異例な用語の使い方であると言わなきゃなりません。  各大臣、いろいろお越しを願いました。大蔵大臣、あなたの所管の法律の中でこの「指図」という用語を使っている法律、さっき私言いました中にあると思いますが、大体どういうような意味に使っていますか。
  160. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今も委員の方から御指摘があったわけでありますけれども、私どもの指図には、主に株主の議決権の行使の指図ですとかあるいは投資信託における委託者の運用の指図、それから信用状その他の支払い指図、そういったものがございまして、民間同士の契約に基づくものなど、いずれも私法、私ですね、私法上のものが多いということだろうと思います。
  161. 元信堯

    元信委員 総理大臣、聞かれましたか。要するに、委託をして契約に基づいてあれこれしてくださいというふうにお願いをする、依頼をする、これが主だと思います。  地方税法にも用例があると思います。自治省、どうですか。自治大臣。
  162. 杉原正純

    ○杉原政府委員 地方税法の中に「指図」という言葉が一カ所ございます。地方税法第七百条の二十二の五第四項の規定の中にその言葉がございます。  この条文は軽油引取税に係ります報告義務などを定めた規定でありますけれども、この第四項で言っております「指図」とは、軽油の特約業者が元売業者から引き取りを行った軽油について、当該元売業者に対して契約等に基づき指示あるいは依頼をして当該軽油を第三者に納入させる、こういったことを意味しているわけでございます。商取引上の用語として用いたと理解しております。
  163. 元信堯

    元信委員 法制局長官、指図というのは普通法律用語として、この法律じゃないですよ、一般の法律用語としてどういう意味であるか、私はさっきちょっと大ざっぱな定義を試みましたが、法律専門家として改めて定義し直してください、現行法の中で。
  164. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 私、先ほど民法あるいは証券取引法といったような法令の題名を挙げましたが、そういったところでは、本人が代理人に対してとかあるいは委託者が受託者に対して、そういうことで特定の行為を言いつけてさせる、こういうことを意味していると存じます。  なお、私の方でこれを使います場合に、辞書などを引きましたが、例えば広辞苑では「指示してさせること。」指図でございます。「言い付けてさせること。」あるいは国語大辞典、小学館のものでございますが、「物事の方法、順序、配置などを指示すること。」それ以外に「指揮すること。」こういうふうな表現がございます。この意味では、国語大辞典の中の「物事の方法、順序、配置などを指示すること。」これに極めて近い用例でなかろうかと存じます。
  165. 元信堯

    元信委員 国語辞典じゃなくて、法律用語として法律用語辞典というのもあるんじゃないですか。そういう法律的な観点でどうかとさっき聞いたわけですよ。どうなっています。全部これ通告して質問しているのだから、今辞書見ているようじゃどうしようもないよ。
  166. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 法律用語辞典の中では指図という単純な用語は出てまいりませんで、例えば指図債権であるとか指図証券であるとか、こういうふうなことが私の今持っております法令用語辞典では出てまいります。
  167. 元信堯

    元信委員 要するに、この概念を極めて軍事的な法律に持ってくることにどだい無理があったと言わざるを得ないわけです。  そこで、結局新しい用法ということになるわけですよね、長官。今までの観念では読めないですね、これ。そうするとどういうふうに読むのか、これは定義しなければいけなかったと思うのです、今までの用語じゃないんだから。そうじゃなければ日本法律体系、混乱しますよ。そうじゃないところではこういう例がほかにあるかと言って聞いてみたら、そんな例は知らないと。ないのです、要するにそういうものは。にもかかわらず、別の法律で広く公知になっている概念を全く別の概念で用いるということにどだい無理がある、こう言わざるを得ないのです。  それじゃ、どうですか、新しいこの法案における「指図」の意味、ここで明瞭に定義してください。
  168. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 先ほど申し上げましたように、指図ということ、これはむしろコマンドという用語についてどのように使うべきかということから始まったわけでございます。  それで、コマンドというものを指揮というふうに訳すとした場合には、その指揮の中に上下関係、身分の上下関係、そういうものからくる拘束といったようなものの意味が通常我が国の国内法においては使われておりますので、そういう用語をむしろ避けて、これはしばしば条約などの和訳のときにも問題になるところでございますが、一定の用語をどのように表現するか、こういうことで問題になるわけでございます。  それで、その意味におきましては、指図というのが先ほど申し上げたような例えば辞書に出てくる言葉であるし、それからまた一定の契約関係を前提とした当事者間における要求、注文、指示といいますか、そういったことを意味しておりますので、そういう意味では指揮よりもむしろ適当な用語であろう、かように考えた次第でございます。
  169. 元信堯

    元信委員 適当かどうか聞いているんじゃなくて、その定義をちゃんとすべきじゃないかと。政府の用語も、先ほど少しきついことを言ったけれども、混乱しておるのですよ。あるときには白と言ったり、あるときには赤と言ったり、全く混乱しているんだから。この際、統一見解をつくる、必要じゃないですか。(発言する者あり)混乱しているよ。大混乱じゃないかね。そんな今みたいな一般論で済むものですか。そうでなければ、この法律における「指図」はほかの法律の「指図」と意味が違うということをどこで読みますか、それを。
  170. 野村一成

    ○野村政府委員 この法案の第八条で使っております「指図」の意味でございます。これは私、実は答弁で何回も述べているところでございます。各国からPKO活動に参加している要員、部隊を有機的に結びつけて一体として機能させるためにその移動や配置のオペレーションを行う権限、そういう意味でございます。
  171. 元信堯

    元信委員 それでは、その「指図」がどういう使われ方をしているかということを実際に見てまいりますと、八条の二項に「実施要領の作成及び変更は、国際連合平和維持活動として実施される国際平和協力業務に関しては、前項第六号に掲げる事項に関し本部長が必要と認める場合を除き、事務総長又は派遣先国において事務総長の権限を行使する者が行う指図に適合するように行うものとする。」とありますけれども、この場合、ここで言っている「適合」というのはどういう意味ですか、法制局長官。
  172. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 内容的に矛盾することがないようにする、かような意味だと存じます。
  173. 元信堯

    元信委員 それじゃ、どこの法律でどういうふうに使われているか、ちょっと用例を挙げてみてください。
  174. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 失礼しました。  適合するというのは、例えば一定の検査をする、そういったときに検査基準に適合する、こういうのが一般的な用例であろうと思います。
  175. 元信堯

    元信委員 「指図に適合する」という、こういう用例が我が国の法体系の中にありますか。
  176. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 「指図に適合する」という、その二つの用語を結びつけた例は、私は存じません。
  177. 元信堯

    元信委員 我が国の法体系の中には、指図と適合というのを一つの条文の中で使ったものはないですよ。つまりこれも新概念だ、こういうことになるわけであります。  ところで、ここに言うところの「指図」というのは、相手側がそれに合意をしているということを要件にしますか、同意をしているかどうか。
  178. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 具体的な事例に即しての御答弁は、私はちょっといたしかねますが、そういう権限を行使する者が行う指図、実施要領の作成に当たって、あるいは変更に当たってそれと内容的に矛盾がないように合わせる、こういうことだろうと存じます。
  179. 元信堯

    元信委員 それでは具体的に伺いますが、その事務総長の「指図」というのはどの時点で出されるというふうにこの法案では予定していますか。
  180. 野村一成

    ○野村政府委員 申し上げます。  国連のこの場合の「指図」、コマンドでございますけれども、当然、協力業務に従事するに当たりまして国連といろいろと具体面も含めまして打ち合わせするという段階があろうかと思いますが、具体的にはやはり現地に行ってから、現地のフィールドコマンダー、司令官と個々打ち合わせして決めるということだと思います。
  181. 元信堯

    元信委員 先ほど、この「指図」はコマンドだというふうにおっしゃったですね。そうすると、フィールドにおいてそういうコマンドというのは、どうなんですか、ほぼ日常的に毎日ぐらい出るものじゃないんですか。実態的にどういうふうに予定しています。
  182. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  現地の国連のフィールドコマンダーのもとに、国連のヘッドクォーターと申しますか、それが設けられるわけでございますが、各参加する部隊はそこに連絡要員というのを出しているのが一般的でございます。したがいまして、そのフィールドコマンダーと各国から出ております連絡要員を通じまして部隊、参加国の部隊長との間で常に連絡調整が行われる、その過程におきまして必要があれば、私は、具体的なオペレーションで毎日刻々というような具体的な時間的なことは申し上げられませんが、必要に応じましてまさにモデル協定第七項、八項で言っておりますコマンドがフィールドコマンダーの方から伝達される、そういうことになろうかと思います。
  183. 元信堯

    元信委員 実施要領というのは英語では何と言うのです。
  184. 野村一成

    ○野村政府委員 昨日も答弁いたしましたが、私、この法案は、つくるに当たりまして英訳というのを具体的に念頭に置いてつくったわけではございません。基本的には我が国の法案ということでございまして、にわかにお尋ねでございますが、その実施要領というのが具体的に英語でどうなるかということを権威を持ってお答えしかねます。
  185. 元信堯

    元信委員 国連とマニュアル——マニュアルと言うんだと思うのだけれども、取り決めを交わして、そうして仕事をやろうというのに、我が方が実施要領をつくりますというのを英語で説明できぬじゃどうしようもないじゃないですか。にわかだと言ったって、これぐらいのことはわからにゃ。あなた方さっきから、オペレーションだとかステータスだとか盛んに英語を使って答弁しているんだから、都合の悪いのは、わからぬじゃ通りませんよ。よく考えて。
  186. 野村一成

    ○野村政府委員 この法案を御承認いただきますと、当然国連との間で、それに基づく実施について調整しないといけない段階があるわけでございまして、その段階で具体的に実施要領という言葉は英語にいたしましてどういう言葉がいいかということを決めていきたいと思います。  それから、先ほど私、答弁の中でフィールドコマンダーと申し上げましたが、フォースコマンダーの間違いでございます。訂正いたします。
  187. 元信堯

    元信委員 本当にどうしようもないですね。  それでは次に行きましょう。またこれに関係あるんですよ。この法案の三条において用語の定義をしてございますわね。そしてその一において、国際連合平和維持活動というものは何であるかという定義をされておりますけれども、その中で、読めば長いので大事なところだけ言うと、「国際連合の統括の下に」、こう書いてありますね。「行われる活動で」「実施されるものをいう。」というふうに言うのですが、ここに言う「統括」はどういう意味ですか、法制局長官。
  188. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘の第三条一項一号の「統括」の意味でございますが、国際連合平和維持活動各国の独自の行動として何ら国連の指図を受けずに行われるものではないのでございまして、国際連合が組織し、オーガナイズし、かつその国際連合の指図を受けて実施される、そういう趣旨でこの「統括」という言葉をあらわした次第でございます。
  189. 元信堯

    元信委員 法制局長官、「統括」という言葉は、我が国の法体系の中で使われている例がありましょうや。
  190. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 「統括」という用語につきましては、実はトウカツというカツの字は二つございまして、くるまへんに害と書く統轄、それからてへんに舌という、今回使われております統括と二つございますが、それほど大きな差はないと思います。例えば国家行政組織法でございますとかあるいは内閣法でございますとか、そのほか自衛隊法等にもあったかと存じますし、また訪問販売等に関する法律といったようなところでも使われていると存じます。
  191. 元信堯

    元信委員 要するにこれは、数は今ちょっと急に出てきませんが、少なくとも六十やそこらはある法律なんですね。すごくたくさん使われている。大体確立した概念であると見てよろしいかと思いますが、いいですね、長官。そんないろいろな意味はないでしょう。
  192. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 通常の用例から申し上げれば、包括的に総合調整しながら締めくくるといいますか、そういった意味だろうと思います。  それで、そういう意味におきまして、例えば先ほど私は、訪問販売等に関する法律のいわゆる連鎖販売のようなもので使われている例もちらと申し上げましたが、おおむねそういう意味に使われていると考えております。
  193. 元信堯

    元信委員 新法律学辞典というものがあるのです、有斐閣第三版。「統轄」とは「上級者が下級者の行為を一般的に指揮・総合調整すること。上級の行政機関が下級の行政機関に対する場合にも、機関の長が所部職員に対する場合にも用いられる。」機関と機関の間でもそうだし、長と職員の間でもそういうことになっている。統括はそういうことだ、こういう理解でよろしいかと思いますが、防衛庁長官、自衛隊法ですね、自衛隊法の中に統括という用語があるかと思いますが、その内容とするところは何でしょうか。
  194. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御指摘のように自衛隊法の中に、第二章「指揮監督」というところに「長官は、内閣総理大臣の指揮監督を受け、自衛隊の隊務を統括する。」こういう文言がございます。したがいまして私どもは、この例は、自衛隊の最高の指揮権者は総理大臣でございます。そのことを言っておりますが、同時に防衛庁長官は、今法制局長官の言われた意味に近いと思いますけれども、行政機関の長等がその所掌のもとにある行政事務を総合的に統べまして、これは統合の統ですね、統べまして締めくくることをあらわすのに用いられておる、このように存じております。
  195. 元信堯

    元信委員 今防衛庁長官からお話があったのは、自衛隊法第二章「長官の指揮監督権」というところに書いてあるわけでありまして、今まで法制局長官、防衛庁長官、それから法文、これらによって見ますると、要するに「統括」というのは指揮監督権の内容ではないかというふうに理解できると思うのですが、法制局長官、どうです。
  196. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 「統括」の用語につきまして、今委員指摘のような形で使われている例がかなりございます。それはもう御指摘のとおりでございます。ただ一方、私、先ほど割賦販売等に関する法律という法律の題名を挙げましたが、そこにおきます連鎖販売業、ここでの統括者というのは、言ってみればそういうものではございませんで、「一連の連鎖販売業を実質的に統括する」その中身は、自分の名前を使わせるとかあるいは継続的に指導を行うという意味で、上下関係が明確になっているというようなものではない、そういう意味で「統括」を使っている例もまたあるわけでございます。
  197. 元信堯

    元信委員 そうしますと、この法律における「国際連合の統括の下に」というこの「統括」は、割賦販売法の統括なのか、自衛隊法に言う統括なのか、どっちなんです。割賦販売法なんですか。
  198. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま私、割賦販売法と申し上げたかもしれませんが、訪問販売等に関する法律でございます。そこにございます用例が、そういう指揮命令とかいうふうなことを含まないという意味では、むしろそちらの用例に近い、かように存じます。
  199. 元信堯

    元信委員 質問を続けるのが困難だな、これは。この法律による「統括」というのは、訪問販売法で、いいですか、訪問販売をする人に対する統制あるいは指揮監督、それに近いものである、国連の統括というのは訪問販売の統括と同じだ、こう言うのですか。総理大臣、どうです。
  200. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  基本的には私、この実態、意味するところと申します点につきましては先ほど、国連が組織し、かつその指図を受けて実施される、そういう趣旨であるということを申し述べました。要するに、そういう実態であるということをとらえまして、私ども、法案に書く場合には、それをどういうふうに表現したらいいかということで法令用語探索等を行うわけでございまして、当然その場合に、個々に法律体系はいろいろ違います。違いますから、その法律体系の中で使っている意味というのはそれは違うわけでございますけれども、他方、その言葉だけに着目いたしますと、やはりどの言葉がいいかという接点はあるわけでございまして、そういう意味におきまして、今御指摘がございました訪問販売等に関する法律というのとは、これは全くその意味では無関係でございますけれども、その中で使われている「統括」という言葉が、その意味がやはり基本的には、今申しました国際連合が組織し、かつその指図を受けて実施される、そういう趣旨に一番合致しているということで「統括」という言葉を使った次第でございます。
  201. 元信堯

    元信委員 午前中の議論あるいは先ほどまでの議論でも、宮澤総理大臣、指図の中身は、国家行政組織法に言うところの処分権、懲戒権云々、こういうお話を随分されましたね。つまり行政組織の問題としてこれを議論しているわけですよ。訪問販売の議論をしているわけじゃないんだ。さっきも読みましたけれども、一般的に言って、上級者が下級者の行為を指揮・総合調整すること、上級の行政機関が下級の行政機関に対する場合も、長が職員に対するのも同じというのが、そういう理解がこれは確立した理解じゃありませんかと私は初めに申しました。にもかかわらず、そういう訪問販売法などというとんでもない法律を持ち出してきて、そうして、この我が国の歴史に画期的な転換をもたらすであろうところの法案に無理やり使うというのは無理があるのじゃないか。外務大臣、どう思われます。あなた、昔そういうことをやっていたじゃない。
  202. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 訪問販売はやったことありますが、法律の問題で争ったことはありませんから。
  203. 元信堯

    元信委員 私はこう思うんですよ。国際連合の統括のもとに行われるのは、国際連合が、これは国際的な行政組織ですよ、ですから、その行政組織の原則にのっとって指揮監督をする、こういうふうに理解するのがあくまで素直でないかなというふうに思うのです。それをこういうような牽強付会をせにゃならぬということは、それだけこの法律には無理がある。指図という言葉を持ち出してきたばっかりに、こういうとんでもない無理を言わざるを得ないのです。外務大臣もうなずいている。皆そう思っていると思うのです。  私は、さっきからずっと聞いておりましてこう思うのです。どうしてもここでそう定義をしたいというのであれば、むしろ指揮とおっしゃった方がいいのじゃないか。ここで言う指揮とは、懲戒権とか身分にかかわることは含まない指揮ですよということを定義をして、その上ではっきり指揮とやった方がよっぽどよかったのじゃないでしょうか。そうしないと、コマンドという英語に対して多義を生じてしまう。一つ言葉が二つに解釈される。一意でない。これは一番法律の中でまずいことなんですよ。法律学者は皆そう言っていますね。あれやらこれやらにいろいろ解釈できるというのは法律の解釈に混乱をもたらすもとである、常識ですわな、それこそ。私はそういう意味で、この法律にはもちろん賛成しがたいけれども、理解を進める上では、今言ったように定義をやり直した方がいいんじゃないかと思いますが、総理大臣、どうです。
  204. 野村一成

    ○野村政府委員 今、法案第八条二項の「指図」のかわりに指揮という言葉を用いてはいかがでしょうかという御指摘がございました。私ども、基本的にはどうしてもこの実態がございます。まず国際連合、もう繰り返しになりますので簡単に申し上げますと、配置や移動のオペレーションを行う権限、モデル協定にいいますUNコマンドというそのものの実態というのがあるわけでございまして、そこから出てくる言葉といたしまして、どうしても指揮ということでひっかかりますのは、先ほど法制局長官の答弁にもございましたけれども、やはり法令用語といたしまして、指揮は、上級官庁が下級官庁に、または職務上の上司がその下僚たる所属職員に対して、その所掌事務を遂行する上で有している懲戒権等を有する指揮監督ということになるわけでございまして、そういう意味において、ここで先ほど申しましたUNコマンドの実態を使うということは適当でないというふうに判断いたした次第でございます。  その上で、じゃどういう言葉がいいかということで法令用語探索等を行った結果、先ほどの法律の用例にもございました、やはり指図という言葉を使う方がより実態に合致しておる、そういうふうに判断した次第でございます。
  205. 元信堯

    元信委員 どうも納得できませんが、時間も参りましたので、あと一つだけ聞いておきたいと思います。  法制局長官、先ほどから、どうしても指揮が使えない、指図だ、指図というのは私法上の用語であるけれども、これを無理に引っ張ってきて使うんだ、あるいはまた、指揮と言われるのが嫌なものだから、国連が統括するというのは訪問販売法に言う統括だ、こういう、まあめちゃくちゃですわな、無理難題を並べておるのは、要するに指揮と懲戒権が裏表になっているという、そういう認識があるからだと思うのですが、指揮権というのは懲戒権に裏打ちされているものですか、あるいは制裁権というのですか。
  206. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 指揮と申しますと、通常身分的な上下関係といったようなことで、そのいわゆる指揮されたこと、これを守らないときに何らかの身分関係に影響がある、あるいは懲戒であるかもしれませんし、何らかの制裁事項であるかもしれませんし、そういった何らかのものが及ぶ、こういうものを通常含んでいるものと考えております。
  207. 元信堯

    元信委員 要するに、何らかのものでしょう。それは直ちに懲戒でもなければ制裁でもない。それは含まれているかもしらぬが、そうではない、こういうふうに今の御答弁を承らなければいかぬと思うのです。総理大垣、懲戒権が、あるいは制裁権がないから指揮には当たらないというようなことは言えないんですよ。  指揮権の一番典型的な例は何でありましょうか。指揮権発動というのがありますね。指揮権発動をした場合に、あれは検事総長だけを指揮できる、こういうことになっているわけですが、法務大臣、指揮権発動をして、そんなことはできぬと検事総長が断ったときに、直ちに懲戒の対象になりますか。
  208. 田原隆

    ○田原国務大臣 指揮権については検察庁法に規定されておりますが、非常に微妙な問題であり基本的な問題で、専門的な政府委員に答弁させますので、よくお聞きください。
  209. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お答えいたします。  検察庁法十四条には、いわゆる法務大臣の検察官に対する指揮監督権が規定されております。前段におきましては、行政の一環であります検察権の行使につきましては、法務大臣は、一般的に検察官を指揮監督することができる、こう書いてありますが、後段におきまして、検察権行使について政治的中立性を確保する必要がありますので、個々の事件の捜査及び処理に関しては、法務大臣は、検事総長のみを指揮することができる、こういう規定になっているわけでございます。  この「指揮」の中身は、先ほど来御議論が出ております、要するに懲戒権と裏打ちになった指揮権でございまして、まあ万が一、そんなことはあるはずもございませんけれども、法務大臣の具体的な指揮に検事総長が応じないというようなことがもし起こりますとすれば、それは懲戒、国家公務員法上の懲戒の対象になるという理屈で整理をいたしております。
  210. 元信堯

    元信委員 それじゃ、その懲戒権の根拠法文を示してください。
  211. 井嶋一友

    井嶋政府委員 それは国家公務員法の問題でございますから私の所管ではございませんが、私が承知しております限りお答えいたしますれば、国家公務員法の九十八条だったと思いますが、職員は、上司の職務上の命令に従わなければならないという義務がございます。その義務に違反した場合には、八十二条以下であったかと思いますが、懲戒の規定がございまして、任命権者が懲戒を行うというシステムになっております。
  212. 元信堯

    元信委員 それは究極的にはそういうことかもしらぬが、一般的にはそういうことじゃないです。直ちに懲戒が生ずるというようなものではないし、まして指揮権発動というような場合に、それに応じなかった検事総長を国家公務員法によって懲戒処分に付すなどというようなことは現実的にはあり得ない。つまり、申し上げたいことは、指揮権というのは懲戒権、制裁権に一〇〇%裏打ちされている概念じゃない、こういうことなんです。ですから、国連事務総長が指揮権を持っているといっても、それは、懲戒権を派遣した派遣元の国に移譲している状態であって、全般的に国連軍に対する指揮は持っている、こういう理解をするべきだろうと思うのですね。そうでなければPKOの力を発揮することはできないです、事実上。私はそのことを申し上げて、あとの時間、また同僚、小澤議員に譲りたいと思います。     〔中川委員長代理退席、委員長着席〕
  213. 小澤克介

    小澤(克)委員 「指図」について、なぜ指揮としないで指図としたか。それは実態がそうだからだ。先ほど私、フィールドコマンダーと言いましたが、どうも間違いのようで、フォースコマンダーと言うようですが、訂正させていただきますが、フォースコマンダーの役割というのは実質的にはコーディネーターなんだ、連絡調整役だ、言葉の正確な意味におけるコマンダーではない、こういう御理解のようです。したがって、日本国の指揮権は、国側に属する指揮権は終始一貫国連側に移譲されることはない、こういう御理解でこの法案ができているようでございます。問題は、それがこれまでのつくられたPKFあるいは国際常識あるいはこのモデル協定等に合致しているかどうかなんです。  まず、モデル協定から申し上げましょう。モデル協定ではこうなっております。第五の「権限」のところの第七項、「〔参加国〕によって利用に供される人員は、〔国際連合平和維持活動〕に派遣される間、引き続き本国の役務に服するものであるが、」この訳は、これは仮訳でございますが、感心した訳ではありません。むしろ、引き続き「その国の公務員としての地位を保つが」という、これは国連広報センターの訳でございますが、この方が適訳であろうかと思いますけれども、そのように派遣元の国の公務員たる地位も確かに継続する。しかし、「安全保障理事会の権限の下に事務総長に付与された国際連合の指揮の下に置かれる。」これは外務省の仮訳でも、ここでは指図ではなくて「指揮」と書いてありますね。「指揮の下に置かれる。したがって、国際連合事務総長は、〔参加国〕によって利用に供される人員を含む」、これは「人員」という訳は正確ではありません。「パーソネル」となっていますから総員、全部の人員という意味です。「を含む〔国際連合平和維持活動〕の配置、組織、行動及び指令について完全な権限を有する。」いいですか。「配置、組織、行動及び指令について完全な権限を有する。同権限は、現地においては、事務総長に対して責任を負う派遣団の長によって行使される。」こうなっているわけですね。  なお、この翻訳はちょっとあいまいな点があります。原文を正確に、若干言葉が重複することをいとわずに言いますと、こうなっているんですね。「参加国によって利用に供されたすべての要員の配置、組織、管理と指揮を含めて国際連合平和維持活動の配置、組織、行動及び指令について完全な権限を有する。」つまり、維持活動についての完全な、配置、組織、行動及び指令についての権限を有すると同時に、そこに含まれている参加国によって提供されたすべての要員の配置、組織、管理、指揮をすることができるんだ、こう明確に書いてあるわけです。そして「ただし、懲戒処分については各国政府が責任を負う。」こうなっておるわけですね。懲戒についても、論理的にはこういうことになります。ある国がその主権に属する指揮命令権を国連事務総長にゆだねた。すると、国連事務総長の指揮命令権というのは、本来の、ゆだねた側の指揮命令権を代行していることになりますから、その国連事務総長の指揮命令に従わなかったら、これは当然懲戒の問題が生じます。ただ、その懲戒権は各国がみずから行うことになっている、これだけのことです。だから、懲戒権に裏づけられた指揮命令権なのです。懲戒権がないから指揮命令ではないという論理は成り立たないんですね。これが国連のモデル協定の立場です。  それから、この種のことはもうどれにも全部そう書いてあるわけですけれども、念のために言いましょう。  まず、ハマーショルド事務総長の報告の「研究摘要」、これにまずその辺は明確になっております。第百六十八項、ここでは、「国連の準軍事的活動に使用される部隊の構成員は、当然、国連に対して一定の義務を負うことになるが、その内容は、国連事務局の職員が国連に対して負う公式の義務とは、同じではない。しかしながら、国際公務員に関する国連規則の基本的部分は、この種の隊員にも適用され、」いいですか、総理大臣。国際公務員ではないからとおっしゃいましたけれども、「国際公務員に関する国連規則の基本的部分は、この種の隊員にも適用され、」と書いてあるんですよ。「特に国連の目的に対する忠誠義務を負い、」こう明確に書いてあります。  それからキプロス国連軍についての「規則」及び事務総長の「覚え書」、これによりますと、「「覚え書」では、まず国連軍が常に国連の排他的指揮下に置かれること(第四項)、」「軍の全部隊は軍司令官の指揮下に置かれること(第六項)、」以上は「覚え書」でした。次に「規則」、この第六項では「国連軍が安全保障理事会の決議に基づき設置された「国連の下部機関である」」「国連の下部機関である」というんですよ。そして「軍の構成員は……国連軍に勤務中は国連の権威の下にある国際職員であり、指揮系統を通じて国連軍司令官の命令に服従する。」これがキプロス国連軍における「規則」及び事務総長「覚え書」です。  次にUNEF、国連緊急軍、ここにおける事務総長の「ガイドライン」報告書、ここでは、「〔国連緊急〕軍は、安全保障理事会の権威の下に、事務総長に委ねられた、国際連合の指揮に服する。現地における指揮は、安全保障理事会の同意を得て事務総長が任命する司令官によってとられる。」このように明確になっております。  次にUNIFIL、レバノン国連暫定軍、ここにおける「ガイドライン」報告書では——ちょっと今出できませんので、これは抜かします。  イラン・イラク軍事監視団、ここでは指揮統括について、これは、「UNIIMOGは、国際連合の統括の下に置かれ、安保理事会の権威の下に、事務総長に委ねられた国連の統括指揮に服する。現地における指揮は、安保理事会の同意を得て事務総長が任命する軍事監視団長がとる。」このように明確になっている。そして京都大学の香西教授は、「このように、監視団の指揮系統は安保理事会事務総長→軍事監視団長→監視員という平和維持軍のパターンを踏襲しており、軍司令官に代わって軍事監視団長が現地の指揮をとることになった。」こう記載されております。  そして、この香西教授は、ONUCですが、「ONUCは国連の補助機関であり、その構成員は、本国の国軍に所属するとも、国連に配属中は国際的性格をもち、指揮系統を通じてONUC司令部の命令に服従すること、隊員は国連の目的と利益のみを念頭に置いて行動することが明記された。」  一般論として、「軍隊に対する管轄権については、各国は、自国内にある待機軍とその構成員に対して」、これは北欧の待機軍についての一般的な記述であります。「構成員に対して排他的管轄権をもつが、派遣後は、国連の平和維持活動の遂行につき、各国の部隊は指揮系統を通じて国連の指揮下に置かれるのであって、これはこの種の国連軍や監視団の「国際的性格」からみて当然である。ただ、各国派遣部隊内部における規律の問題については、部隊の指揮官に管轄権があることを法律で規定する国があるが、これも、平和維持活動の先例に従ったものである。」  さらにオーストリア憲法。オーストリア憲法では、「派遣されたオーストリア部隊に対する使用の面での指揮権は、国際機構との協定があればこれに従い、協定のない場合には補充的にオーストリア政府に命令権を与えている。」憲法で明定されております。これが実態なのです。どうして外務省だけが、コーディネーターであってコマンダーではないなどという奇妙なことをおっしゃるんでしょうか。
  214. 丹波實

    丹波政府委員 ただいま先生が読まれた資料、基本的におっしゃるとおりのことだと思います。先ほどから私たちが御説明申し上げておりますこの国連派遣取り決めは、過去の、先生がまさに今引用されたいろんな過去のPKO、PKF活動に共通する、そういう何と申しますか、共通するコマンドの要素というものを持ってきまして書きましたのがこのひな形の協定でございまして、私たちは、先ほど御説明申し上げましたけれども、日本がPKF、PKOに参加する場合には、国連とこの種の協定を、こういうものを念頭に置きながら締結するつもりでございまして、その国連の指図ということもまさにこの取り決めを通じて認めるという、そういう仕組みになっておるわけでございまして、先生が今おっしゃったことは、まさにそのとおり。繰り返しになりますけれども、それを凝縮したのがこのモデル協定ということになっておるわけでございます。
  215. 小澤克介

    小澤(克)委員 先ほどの御答弁では、この法案においては指揮権の移譲ということは行われない、こう断言されたんですよ。明らかに矛盾しております。移譲しないからこそ、指揮という言葉を使わずに指図という言葉を使ったんでしょう。ところが今の答弁では、このモデル協定そのままである。このモデル協定によって国連と取り決めをするつもりである。できないじゃありませんか。国連が要求しているところは、服務規律の問題は派遣国が留保する、それ以外の指揮権は国連に集中する、こうなっているんですよ。オーストリア憲法もそれを前提としてできている。これまで歴史的に形成されたPKFはすべてそのようになっている。先ほどからずらずらと言いました国連事務総長の報告等もすべてそのような構成をとっている。我が国のこの法案だけが、指揮権の移譲はしない、指図だ。その指図というのは、コマンドではなくて、要するに調整だ。フォースコマンダーというのはコマンダーではなくてコーディネーターだと、極めて特殊な理解をしているんです。  さて、このような極めて特殊な理解、そして指図という言葉、全く目新しい言葉。これはこの指図という意味が何を意味するのか、そしてこのモデル協定に要求されているところの指揮権の移譲とは合致するのかしないのか、明確な見解を出していただかないとこの法案の審議ができないのです。先ほども言いましたように、指揮権をゆだねるのかどうか、これが極めてポイントです。日本の自衛隊の活動なのか、それとも国連活動なのかという基本的な性格規定にかかわるところです。しかも実施要領の実効性、特に中断、これは本部長の判断にゆだねられているわけですが、これがどれだけの実効性を持つかどうか、ここにも密接にかかわることです。ここはぜひ明らかにしていただきたい。指図とは何なのか。指揮とは違うのか。そして、国連のモデルが要求しているところの指揮権の移譲、部分的な移譲と合致するのかしないのか。さらに、指図というのは同意を要するのか要しないのか。これを明確にしていただかないと、この法案の基本的な構造が明らかにならない。審議を続けることができないのです。ぜひお願いします。
  216. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど来御説明申し上げておりますとおり、この法案におきまして「指図」と言っているものは、このモデル派遣協定に出ておりますような、すなわち配置、組織、行動等についての国連のコマンドというものを意味しているわけでございます。そしてこれに適合するように、我が国といたしましては、この法案が成立すれば、この法律のもとで実施要領を作成し、これに従って我が国派遣部隊は行動するということでございます。  したがいまして、そのようなことで国連との取り決めができるかという御指摘でございましたが、私は、これは先ほども申し上げましたとおり、このモデル協定の七項で言っているような意味のコマンドのもとに我が国派遣部隊が置かれる、そのようないわゆるオペレーショナルな問題については、このような国連の指図に従って行動するということに同意するということは十分できることだろうと思います。ただ、我が国の国内法で言っておりますような懲戒権というような担保も含んだ意味での指揮権を移譲するというものではございませんけれども、このような配置、組織、行動等につきましての指図に従うようにする、そのことに同意するということを取り決めることは十分可能であるというふうに考えております。
  217. 小澤克介

    小澤(克)委員 結局、服務規律以外については指揮権を移譲するということなんですね。それならそうおっしゃってください。とにかくこの指図という意味を明確にしていただかないと、これ以上審議できないんですよ。明確な見解を出してください。
  218. 野村一成

    ○野村政府委員 先ほど先生の方から、この法案に基づく指揮権、特に本部長あるいは防衛庁長官海上保安庁長官ということに個別に御質問がございました。その法案に書いてございます指揮権につきましては、これは国際連合に移譲するというものではございません。これはまさに、私、何回も御説明申し上げているわけですが、国連のUNコマンド、この指図、それには従う形で実施要領を作成、または変更するということでございますが、それを受けまして、具体的に自衛隊の場合でいうと、部隊の運用という点につきましての、そこにございます防衛庁長官の指揮、あるいは協力隊員の身分併有でございますから、その本部長が行使する指揮権、そういうものについては国際連合に移譲するということではございません。
  219. 小澤克介

    小澤(克)委員 指揮権は移譲しない、しかし指図には従う、これはどういうことですか。ますますわからなくなる。指揮と指図の関係、そして国連のモデルとの関係、明確にしていただきたい。統一見解を出していただきたい。それでなければ質問を続けられません。これは私だけじゃない、どなたも質問できません。基本的な構造です。
  220. 野村一成

    ○野村政府委員 まさに国際連合のコマンドに従う、コマンドがこの指図でございまして、その指図に合致する、適合するように実施要領を作成し変更する。この実施要領というのは、まさに部隊が行動するいわば業務に着目しまして、我が国の参加要員の行動を具体的に定めた指令書のごときものでございまして、まさにそれに基づいて部隊等が運用されるわけでございますので、その間に、私が今申しましたように、指図とそれから指揮命令との間で矛盾等が生じるというふうには考えておりません。
  221. 小澤克介

    小澤(克)委員 いいですか、実施要領は指図に適合するように作成する、主観的にはそうだとしても、客観的に見て、そごする場合というのはあり得ることです。特に、国連のフォースコマンダーから見て、そごしているということはあり得ることです。その場合にどっちが優先するのですか。事実上合わせるなどというのは、これは法律審議じゃないんですよ。違ったときにどうするかということを規定するのが法律なのです。そんな答弁じゃだめです。指図というのは指揮なのか、指揮とは違うのか、同意を要するのか、要しないのか。さらに、このモデル協定とは合致するのか、しないのか。指図というのは何なのか。指揮権の一部移譲を伴うのか、伴わないのか。これを明確にしていただきたい。これを明確にしていただかなければ、私だけじゃない、だれも審議を続けられません。基本的な性格の問題です、これは。
  222. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  私、繰り返し申し上げることでございますけれども、まさに国際連合のコマンドに、実態に合致するように指図をつくるわけでございまして、先ほど先生は中断のことについて御指摘がございました。現実のオペレーションでございまして、常に協議を、調整をいたしながら部隊の運用を行っていくわけでございまして、その間にフォースコマンダーとの間でそごが生じるということは想定いたしておりません。
  223. 小澤克介

    小澤(克)委員 問題点は明らかになったと思います。この法案のすべての矛盾点がこの指図という言葉に集約しているのです。先ほどから私が指摘したとおり、武力行使に至ることを避けるために、早目に業務を中断しなければならない。その中断については本部長の判断を優先させなければならない。そのためには、その限りでは事務総長の指揮とそごする事態が起こる。だから指揮と書けなかった。指図と書いたんです。わかっているのです、そんなことは。ここはひとつ指図という言葉の定義を明確に、法制局長官、明らかにしていただきたい。これまでなかった概念だからです。
  224. 丹波實

    丹波政府委員 国連との関係の問題がございますので、まず私から整理させていただきたいと思いますけれども、小澤先生、この点は私たちけさから本当に何度も御説明申し上げてきたつもりでございます。  まず、その指揮権と、指揮というものと指図との違いは何か、これがまず第一点だと思いますけれども、英語で申し上げるとコマンドと、全くそういう意味では同じ言葉です。しかしながら、この国連のモデル協定を参考に議論をさせていただきますと、その中には、先生も先ほど二つに分けられましたけれども、身分的なものは入っていない。しかし、通常、普通、指揮といえばそういう要素も入ってくることになりますので、法案をつくるに当たりましては、やはり指図という言葉が適当であろう、それは配置、組織、行動等に対する権限である、そういう仕分けを指揮という言葉と指図という言葉でいたしましたということが第一点でございます。  それから第二点は、前提が崩れた場合に日本のPKF活動、PKO活動が中断されるという点につきましては、国連が先ほど申し上げたようなコマンドを持っていても、それは日本はできるということは国連の事務当局もはっきり言っておることでございまして、国連関係におきます中断との絡みでここのところを指図という言葉を使ったということではございませんので、その点はぜひ御理解いただきたいと存じます。
  225. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま国連局長から答えられたとおりであろうと思います。私もそのような意味で指図という言葉を使ったわけでございます。指揮という言葉をむしろここで使いますのは適当でない、そういうことでございます。
  226. 小澤克介

    小澤(克)委員 今のは指図についての積極的な御説明はありませんでした。指図というのは何なのか、指揮とどう違うのか、同意を要するのか要しないのか、これはぜひ明確にしていただきたい。統一見解を出していただきたい。そうでなければ、この法律の一番基本的な構造にかかわるところです。明確にしていただきたいと思います。法制局長官、みずからの言葉で、だれだれが言ったとおりなどというのじゃなくて、みずからの言葉で明確な定義をしてください。
  227. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 国連で従来行われております実態、これをいわゆる国内法上の法令用語としていかにあらわすかというときに、国際的に従来行われております関係を踏まえてそれを表現したということでございまして、そういう意味の表現としてコマンドをいわば指揮と訳すことは、むしろ身分関係等を含んでまいるおそれがある、そういうふうな誤解を受けるおそれがあるということで、配置なり組織なり行動なりということについての配分関係といいますか、そういうことを指示するということでございますので、むしろ指図というふうに考えたわけでございます。
  228. 小澤克介

    小澤(克)委員 依然としてわかりません。指図というのは指揮とどう違うのか、同意は要るのか要らないのか、服務関係のみを留保した部分的な指揮権移譲なのか、指図に従うということは、ここを文書で明確にしていただきたい。文書で統一見解を出していただきたい。それ以外にこれ以上進めようがありません。
  229. 野村一成

    ○野村政府委員 先ほど先生の方から同意の御質問がございましたけれども、これは法案でも書いてございますが、基本的には国連のコマンド、つまりフォースコマンダーが行うその権限の行使に対しまして、日本側がそれに同意するという問題は起こらないということでございます。
  230. 林義郎

    ○林委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  231. 林義郎

    ○林委員長 速記を起こしてください。  小澤克介君。
  232. 小澤克介

    小澤(克)委員 文書で統一見解を出すということをお約束できますね、総理大臣
  233. 林義郎

    ○林委員長 理事会で協議いたしまして、統一見解を出させるようにいたしたいと思っています。
  234. 小澤克介

    小澤(克)委員 これは一番基本のところですから、これが明らかにならなければ、私としては質問を続けることはできません。残りの時間を留保させていただきたいと思います。
  235. 林義郎

    ○林委員長 次に、遠藤乙彦君。
  236. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 前国会に引き続きまして、PKOをめぐって議論が進められているわけでございますけれども、かなり技術的なポイントについて議論が行われているようでございます。若干、もう一度基本的なところに戻して、まず私としては、総理の外交政策の基本的な理念につきましてお聞きをしていきたいと思っております。  総理は、言うまでもなく保守本流のいわば嫡流と言われておりまして、戦後日本の重要な世界とのかかわりにおいていつも中枢の意思決定にかかわってきたということでございまして、その総理の見識とか政治的経験の豊富さについては多くの人が認めるところでございます。そこで、そういった保守本流の嫡流という立場にあって、今の日本を取り巻く世界状況、それからこれからの外交政策の理念、どう考えていくのかということにつきましてお聞きをしたいと思っております。  既に所信表明等におきましては、その幾つかの点が出ておりますけれども、さらに、今世界がポスト冷戦という時代に移行して、数百年に一度というような大激変の中でいかに政策展開を図っていくかということが大きな課題でございます。そういった意味で、保守本流で育った総理としてどのような政治的構想力をお持ちなのか、その点につきまして、ひとつ突っ込んだこの哲学論をお聞きしたいと思っております。
  237. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 所信におきまして申し上げましたとおり、今の世界の激変は、まさに御指摘のように何世紀に一遍というものではないかと思っておりますが、世の中では冷戦後の時代と言われておりますけれども、冷戦後は冷戦後であっても、それならば何が始まろうとするのかということについて、私は、新しい世界平和秩序の構築が始まった、そういうふうにこの時代をとらえるべきであるというふうに考えておるわけでございます。  そこで、近くはベルリンの壁の崩壊があり、ソ連帝国あるいはソ連という大国が、いわばそれとしては崩壊をした、共産主義そのものも正当性を失うというような状況の中で、ソ連を中心とした東欧の国々が、私どもが長いこと信じてまいりました市場経済に向かい、あるいはまた世界平和に対する脅威でなくなるというそういう方向に進みますことは、我々にとっても自由世界全体にとっても極めて歓迎すべきことでございますので、そういう努力に対しては、我々がやはり支援を惜しんではならないというふうに考えておるわけでございます。  他方で、たまたま湾岸危機がその間に起こりまして、その処理をめぐりまして国連、殊に安保理事会がその衝に当たるという大きな役割を果たしました。にわかに国連というものが、それは米ソ関係が改善をしたからではございますけれども、注目を浴びるに至った。また、カンボジアの和平が現実になれば、いわゆるUNTACが果たすべき役割も大きいということから、国連というものの重要性が認識されるに至りました。これは、我が国憲法のもとに長年国連協調を唱えてきた立場から、極めて歓迎すべきことであると存じます。  その他方で、我が国はいわば世界第二の経済大国になりました。湾岸危機をめぐって、我が国としてもこういう世界の大きな危機に対して無関心ではおられないということから、財政援助を行い、あるいはまた、それだけでは不十分であるから、できる限りの人的な貢献もすべきであるという国民の世論がございまして、ただいま御審議中の法案を御提案をしているというような状況でございます。  総じて見まして、憲法のもとに軍事大国にならず、そして核に対して非核三原則を堅持してきました我が国といたしまして、また国連中心主義を実践してまいりました我が国といたしまして、このような世界の新しい潮流はまことに歓迎すべきものでございますので、我が国もこのような状況の中で精いっぱいの国際貢献をいたさなければならない、ほぼそのような外交観を持っております。
  238. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 総理の御見解は理解はできるわけですし、分析的にはそういうことだと思います。  さらに私の伺いたい点は、今後のビジョンとして、哲学としてどうかということでさらに突っ込んでお聞きをしたいのですが、いわゆる保守本流の外交政策の非常に基本的な考え方というのは、安全保障を米国との安保条約によって対応し、さらにその一方、軽武装で経済復興を最優先する、これはそれなりに戦後の日本においては実績を上げた一つの政策パターンであったわけですけれども、こういった世界情勢の大激変、また国内的な大きな変化というものを踏まえて、こういった保守本流の基本的な発想というものが、どの部分が変わらずどの部分が変わるのか、そこら辺について総理一つの見解をお聞きしたい、不変の部分とそれから変えなきゃいけない部分、これの立て分けを総理はどのように整理をしておられるか、この辺を伺いたいと思います。
  239. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 世界がそのような新しい潮流を見るに至りましたことは歓迎すべきことであります。しかし、現実理想はなかなかすぐには一緒になるわけではございませんので、そのような動きを大切にしつつ、我が国としてはそれに貢献をしていくということが大事であろうと思います。  いわゆるその保守本流云々の考え方について申しますならば、今日、我々が核兵器に対して従来考えてまいりましたそういう考え方が、米ソおのおのの動きに見られますように、かなりの程度理解されつつあると私は思っておりますので、そういう意味では、私どもが考え、実践してきたことが理解されつつあるというふうに一方で考えております。  他方で、我が国が過去四十年余りしてまいりましたこの政策の結果、ともすれば我が国だけの安全、我が国だけの繁栄ということに国民が考えがちである。世界で起こっておりますことに我々は特に関与しなくてもいいというような、これは軍事的な関与は何もできないわけでございますけれども、一般的に無関心になるという傾向がなかったとは申せません。そのことは、湾岸危機もありまして、なかなかそういうものではない、我々は我々の立場においてやはり貢献をしなければならない、そういう意識はこれから大切に育てなければならないというふうに思います。
  240. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この近年の出来事によりまして、我が国のいわゆる一国平和主義あるいは一国繁栄主義というものが保守本流も含めて批判を受けたということは、そのとおりだと思います。それは我々もそのように感じておる次第でございまして、そういった中で、国際貢献というものが今一番大きな課題の一つになっております。  総理はその中で、憲法の平和主義ということは強く今まで訴えてきておられたと理解をしておりますし、いろいろな発言の中でも、日本は金を出す、汗も流す、しかし進んで血を流すことはしない、こういった発言、これはまさに宮澤精神であろうと私は理解をしているわけですけれども、こういった憲法擁護の非常に強い姿勢には共感を覚えるところでございます。  ただ、この湾岸危機を境に、国際貢献との関連で米国を中心とした西欧諸国から、日本というのは金を出しても汗もかかない、血も流さない、こういった日本批判が出てきたわけでございまして、まさにこの日本の一国平和主義的なあり方が問われたわけだと思います。  こういった国際環境にあって、総理としては、いかにしてこの憲法の理念を堅持しつつ国際貢献を行っていくつもりなのか、憲法の平和主義を厳護しながらどのように国際貢献というものをこれから展開していくのか、そこら辺の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  241. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 湾岸危機を契機に、ただいま御指摘のような批判がアメリカの一部からあったことは御指摘のとおりと思いますが、それは為政者はともかくとして、アメリカの多くの国民が、我が国はこういう憲法を持っておるということを知らなかった、これはやむを得ないことかもしれませんけれども、我々も、ドイツがああいう憲法を持っていることを正確には存じませんでしたのであえて異とするに足りないかもしれませんが、そういうことからいっとき批判が高まったということであったと思います。今となりまして、日本憲法というものをアメリカ人たちがある程度理解をして、さてそこで、それはそれでいいと考えるか、やっぱりそれは問題だと考えるかは個々の人の判断によることだと思いますけれども、いずれにしても、我が国はわがままで人的な貢献ができないと言ったわけではなくて、そこにはそこに憲法上の制約があるということはアメリカ人から見て、いい悪いは別として、現実の問題としては理解されたであろうと思います。  ただ、先ほども申しましたが、今度は我が国の問題として、だからといってこの憲法のもとでできることはやらなければならない、やっていけないことはやっていけない、できることはやっぱり精いっぱいしようということが、財政貢献の上に、御審議願っておりますような人的貢献もする、それによって我々の誠意を国際的に明らかにすることが大事ではないかというふうに思うわけでございます。
  242. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 もう一点、総理の御見解をお聞きしたいのですが、このポスト冷戦の新しい世界秩序をどうつくるか、これは現下の最大の課題になっているわけですけれども、もちろん具体的にどういう形をとるかということは非常にまだ見えてない部分が多いわけです。国連中心とかいろいろありますけれども、なかなかまだ具体的な姿は見えていないと思うわけですけれども、総理として、これから我が国がこういった世界秩序に貢献をしていくに当たってのキーワードはどのように考えておられますか。何をもって、日本がこの世界秩序の形成に貢献をしていく際のキーワード、キーコンセプトとして考えておられますか。
  243. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ちょっとにわかにこれということを思いつきませんが、せんだって本会議委員長が言われましたようなことは、私は、一つの大切な心構えであろうと思って承りました。
  244. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ちなみに私自身としては、一つは、これは人間主義だと思いますね。世界全体が人間性を抑圧するような体制は長くもたない、やはり人間性を最大限に発揮できるようなそういう体制、環境というものを政治がつくる、これが一つの大きなキーワードじゃないか。それからもう一つは、グローバリズムといいますか、国家というのは非常に大事ではあるけれどもそれだけでは済まない。これだけ相互依存が進んだ世界において、やはり地球全体のシステムをどうするかということを考える、そういうグローバリズムということが大事であろう。私として、これは個人的な見解でございますが、そのようにキーワードというものを考えておりまして、それをどう具体化するかがこれからの政治家の課題じゃないかと思っておるわけでございます。  そこで、今度は国際貢献の問題につきましてさらにお伺いをしたいのですけれども、総理として、なぜ日本として国際貢献をするのか、どういう角度からしていくのか、そこら辺の考え方、これはどのようにお考えですか。
  245. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは、まさに今遠藤委員が言われましたそのグローバリズムというところに関係をするわけでございますけれども、我が国だけが繁栄をし、平和であるということは、ただ許されないのみならず、実は現実的でない。そういうことはやはり地球全体との関係で考えなければならないということから申しますと、当然のことでありますが、我々の持っている力を、殊に経済力を中心に、しかしその他の人的貢献も含めまして、地球上の人々の繁栄、平和のために貢献をしなければならない。それは、その人たちのためでもございますが、我が国が平和で繁栄していくための、実は我々自身の利益でもある。そういう立場に立ちまして、殊に、東西の冷戦が終結をいたしますならば、そのいわゆる平和の配当というものは、南北問題が最大の受益者になるように使われなければならないという物の考え方を、我が国としては先頭に立ってやはり唱道していくべきであろうと思います。
  246. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 なぜ貢献をするかという点、これは、私どもの考え方としては二つの点から考えています。  一つは、ノーブレスオブリージュという考え方であって、より地位の高い者にはより大きな義務が伴う。今までの日本とは違って、これだけ世界からの恩恵を受けて経済超大国になった以上、より汗をかいて責任を負担していくということが一つ理想主義的な角度からの哲学であろうと思う。もう一つは、広義の安全保障という角度であって、日本だけが富んでいくということは、これはやはり非常に周辺からなかなか厳しいまなざしで見られる。特に、今の日本のあり方を見ると、世界が見るまなざしというのは尊敬なき羨望という感じであって、やはりこれを回避して、日本が孤立しないためには広義の安全保障という角度から国際貢献をする。これは非常に現実主義的な角度ではないかと思っていまして、我々はこういった二つの、ノーブレスオブリージュという一つ理想主義的使命感としての角度と、それからもう一つは、広義の安全保障という、これは現実的な角度から国際貢献というものを真剣に考えるべきであるというのが考え方でございまして、こういった考え方総理はどのように思われますか。
  247. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほど、実は申し上げたつもりでございました。せんだって、本会議でそういうお立場から委員長の御質問がありまして、私は、まことにごもっともなことだというふうに承りましたし、また、お答えを申し上げたところでございます。
  248. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、国連協力の問題についてお聞きしたいと思います。  一つ、明年一月から日本が七回目の安保理非常任理事国メンバーとして活躍することになったわけですけれども、具体的にいかなる方針で臨んでいくのか、非常任理事国の立場としてどのように日本として臨んでいくのか、基本方針をお聞かせいただきたいと思います。
  249. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 今回、七回目の非常任理事国を引き受けることになりました。今まで日本は、例えばこの間の兵器の、武器の国際移転の登録制度というようなものを提唱して、国連でそれが圧倒的多数で採決をされる。これは我が国の、私は、大きなイニシアチブである。したがいまして、今後とも日本は、たくさんのことでグローバルなリーダーシップを発揮できるようなことがございます。例えば環境の問題等もそうですし、それから国際協力のいろんな経済協力等も決して他国に劣ってはおりません。したがって、そういうような日本憲法の範囲内でできることについては、多くの国際協力を進めてまいりたいと考えております。
  250. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それからもう一つ、具体的な国連協力の中で、去る十一月十五日、国連総会の第一委員会で、我が国提案になる通常兵器移転の国連登録制度が、決議案が採択されたわけですけれども、この決議案の採択には我が党も強くこれは促進、推進をし、提言をしてきたわけであって、政府側の努力を多とするものでございますけれども、さらにこの決議案内容が実効性を持ったものとしてこれを進めなければならないわけであって、政府はどのような措置を今後とっていかれるのか、実効性を高めていくためにどのような措置をとるのか、この点につきまして御説明をお願いしたいと思います。
  251. 丹波實

    丹波政府委員 まず、この問題につきましては、先般、第一委員会を通りましたときの賛成の数が百六カ国でございまして、非常にこの登録制度で重要なことは、現在、国連加盟国百六十六カ国ございますけれども、できるだけ多くの国に賛成していただく、それで、賛成していただければ、それらの国がまさに通常兵器の、武器の輸出入ということを国連に登録されるわけですから、そうすると、この地球上における武器取引が非常に透明性を高めるということによりまして信頼醸成というものもできるということでございます。そういう意味では、一番重要なことは、多くの国が賛成していただくということだろうと思います。  第二番目には、何しろ新しい制度でございますので、その詳細につきましては、実はパネルを設置して、来年の秋まで検討することになっておりますけれども、このパネルの中で、この登録制度を今後実施していく上において、どういう詳細な手続であれば多くの国が参加していただけるかということを研究することが非常に重要でございまして、日本政府としては、この過程でできることがあったら、財政的あるいはその他の面で協力していきたいというふうに考えております。
  252. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 国連が大変重要になってきたことはもう御承知のとおりでございますけれども、国連中心主義外交を我が国が進める上で一つ注文したいことは、今まで金、物ということはかなり一生懸命やってきたわけですし、やっとさらに最近、人ということがかなり重視をされてきておりまして、まさにこのPKOもそういった意味で人の貢献が大きな一つの焦点になっているわけでございますけれども、さらにこれからのやはり我が国貢献としては、金、物、人に加えて知恵という側面をぜひ重視してもらいたい。やはりポスト冷戦の時代、非常に、比喩的に言えばハードパワーがだんだん衰退をして、むしろソフトパワーの時代と言われてきているわけであって、知恵とか情報とか人材、そこら辺をどうそろえるかということが最大、我が国の影響力、貢献というものがこれから効果あらしめるかどうかのポイントになると思うわけでございまして、確かに国連協力、かなり一生懸命やってきていることは評価をするわけですが、もっともっと日本独自の提案、いろいろなイニシアチブ、あるいは人材を送り出す、こういったことを強力に本格的に進めてもらいたい、これが我々の一つの注文でございまして、総理、大臣、ぜひこの点はひとつ心がけていただきたい、よろしくお願いをしたいと思っております。  何かこの注文に対しまして総理及び大臣から決意のほどを表明していただきたいと思います。
  253. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 全く御意見のとおりだと存じます。したがいまして、今後の経済協力というのはハード面だけでなくてもっとソフト面で、人材の育成とか研修生の受け入れとか、あるいはその他環境、麻薬、そういうような点にまで私はソフト面を広げていった方がいいだろう、同じ考えであります。
  254. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、国連常設軍構想についてお聞きをしたいと思います。  これは、総理がもともとことしの四月ですか、ある月刊誌に発表された論文が発端となっておりまして、「国連常設軍の創設と全面軍縮」というのを提案をされた。宮澤構想と呼ばれておりますけれども、その中で、そういった常設軍への参加は、憲法九条が禁止する国権の発動たる戦争に該当しないという位置づけをされていると思います。この構想につきまして何点かお聞きをしたいと思います。  一つは、まず、総理がこの構想を提唱されたとき、多くの批判として、国連常設軍は現段階では夢物語という批判が非常に強く出たことは御記憶だと思いますけれども、総理御自身として、今の国際情勢のもとでこういった構想が実現可能なものと考えておるのかどうか、この点につきましてまずお聞きをしたいと思います。
  255. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 これは、私が長い間の国際政治あるいは我が国のこの憲法のもとに生きてきた経験から遠い将来を考えて提唱したことでございますけれども、これには少なくとも二つの条件がございまして、一つは、世界各国の軍縮がかなりの程度に進む、そうでございませんと、国連が多少のものを持ちましても、これはとても相手にされないということになりますから、大幅に軍縮が進むということが第一の条件でございます。第二の条件は、国連が本当に、少数のあるいは特定の大国の意思を体するのではなくて、すべての加盟国の公平な代弁者になる、またそれだけの充実した内容を持つ。  その二つの条件がいずれの日にか整いましたらば、国連がいわば超国家的な紛争防止のための、あるいは万一紛争が起こりましたとき、それを鎮圧するための独自の軍事力を持つということは、国連憲章には別にございませんけれども、終局的には考えられることではないのか。そういうときには、世界の人々がみんな国際公務員としてそれに参画をすることができるだろう。まさにきょうあしたできると思って申したのではありませんで、ただ国連というものの終局の理想的な姿を考えますと、やはりそこまで行くと本当に世界の軍縮と平和というものがもたらされる、そういうようなことを思いつつ提言をいたしたわけでございます。
  256. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この宮澤構想と憲法解釈との関係につきましてお聞きをしたいと思います。  総理はこの中で、「国連常設軍の創設とそれへの参加は、日本憲法に抵触しない。むしろ、憲法制定の際の理念に合致しその要請するところである、」と述べられていると思います。この考え方ですね。国連常設軍への参加が憲法に抵触しないとした理由について、総理憲法解釈をお聞きしたいと思います。
  257. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ここは誤解があると非常に大変なことになりますので、比較的詳しくその辺は述べておるのでございますけれども、我が国憲法が、平和を愛する諸国民の信義に信頼をするということを述べましたときに、非常に理想主義的な、先ほど申しましたような姿をいわばイメージに置いて考えておったと思います。それは残念ながら長いこと現実にならなかったわけでございますしいたしますが、今は幾らかそういう曙光が見えてきた。仮に国連が、先ほど申しましたような条件がいずれの日にか実現いたしまして、そしてそのような、仮に小さくてもよろしゅうございますから国連自身の部隊を持つということになりましたときには、日本人としてそれにいわばボランティアする人がいても私は少しもおかしくない。それは何となれば、そうやってできたものは国を超えました国連、すべての国の利益代表である国連のいわば警察力と申しますか軍事力でございますから、そこに働く人は国際公務員である。憲法が国権の発動としての戦争はもとより禁じておるわけでございますけれども、日本人がそういう国際公務員として、文字どおり世界のための国連常設軍というものが仮にできましたときに、それに応募することは、憲法日本人に禁じておるところではないと、こういうふうに考えたわけでございます。
  258. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは法制局長官にお伺いしたいと思います。  今総理から、いわゆる国連常設軍構想の憲法解釈が述べられたわけですけれども、もちろんかなり明確におっしゃっておられると思いますが、他方、法制局長官並びに今までの我が国の政府の解釈としては、例えば昨年十月の衆議院予算委員会で法制局長官が、国連軍への自衛隊の参加は集団自衛権につながるとの観点から憲法上疑義があると、こう答弁をされております。工藤長官の言う国連軍への参加と総理の今の御説明とどう違っているのか、あるいは工藤長官として、今の総理の述べられたこの常設軍構想の憲法解釈、これに対してどういう考えをお持ちなのか、これをお聞きしたいと思います。
  259. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 宮澤総理国連常設軍構想につきましては、今総理みずからお話がございましたところでございまして、私が昨年の秋申しました、いわゆる国連憲章の第七章に基づきます国連軍、これへの関与の仕方あるいは参加の態様ということとは、その時点といいますかその前提といいますか、それが異なっていることだろうと思います。私は、あくまでも現行の国連憲章第七章に基づきますいわゆる正規の国連軍、これにつきまして申し上げたわけでございますし、今委員指摘のようにいろいろの理由を挙げますと、そこのところを詳しくは申し上げませんけれども、私といたしましては、今の現行の部分を前提とする場合には、結果をまだ明確に申し上げるわけにはいかないけれども、なおこれまでの憲法の九条の解釈なりあるいは運用の積み重ね、こういうところから推論していくと、我が国としては、参加することには憲法上の問題が残るのではなかろうか、これが昨年の暮れ私がお答えしたところだと思います。  ただ、そのときも申し上げましたけれども、いわゆるこの国連憲章第七章に基づきます国連軍というものをつくりますには特別協定というものがございますし、特別協定、まずその実体が今まで設けられたことがない、あるいは特別協定の内容がどのようなものになるかわからない、こういう事態におきましては、そこのところを明確に申し上げるよりは、むしろそういう国連軍が現実に編成される、そういうふうなことになった場合にその時点で具体的に申し上げるべきであろう、かようなことが昨年の秋以来、私が申し上げてきているところでございます。
  260. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それはわかりましたが、私がお聞きしたのは、今総理が述べられた宮澤構想、国連常設軍ですね、かなり明確におっしゃったわけであって、現職の総理が考えておられることなわけですから、一私人のあれとは違います。そこで法制局長官としては、今の宮澤構想に対して憲法上どう考えられるか、合憲なのか、そうでないのか、その点につきましてお答え願います。
  261. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  先ほど総理も幾つかの前提を設けておっしゃられました。私としまして、先ほど伺っておりましたときにも、軍縮が大いに進むんだということ、あるいは特定の加盟国ではなくて加盟国すべての代弁者となるような、そういういわば機能を果たすような国連になるんだ、こういうふうなことで、しかもそこで、いわば個々の国家の主権を超えたようなそういう軍事組織といいますか国連常設軍といいますか、そういうふうなことになった場合に我が国国民が国際公務員として参加する、こういうふうな前提が幾つかございますと思います。そういう意味では憲法九条のいわゆる武力の行使、我が国が行う武力の行使、こういうものとの関係は、そういう前提が満たされる——どういう形で満たされるのか、そこのところを私も明確に申し上げるわけにまいりませんけれども、そういう幾つかの前提がございました場合には、当然考えられる範囲内にあろうか、かように思っております。
  262. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 非常に重要な御見解が発表されたと思います。  実は我々もこういった問題は検討している段階でございまして、今すぐに結論を出す段階ではございませんので、今の総理の御説明並びに法制局長官の御答弁は大変重要な素材として今後の検討対象とさせていただきたいと思っております。  それで、もう一つ総理にお聞きしたい点は、PKO法案、ずうっと昨年来といいますか、特にことしに入ってから作業が行われてきているわけですけれども、こういった時点でなぜこの国連常設軍構想を発表したのか、当時の総理の政治的意図はどこにあったのか、そこら辺、ちょっと御説明いただければと思います。
  263. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 これは先ほども、遠藤委員、御自分で外交をやられましたのでお詳しいわけでございますけれども、アメリカの方から、日本は非常に勝手じゃないか、どうして多国籍軍に参加しないのか、まあ政府の責任者が言ったわけではありませんけれども、そういう声はたくさんございました。私は、それはできないじゃないか、日本憲法にはこうこう書いてある、第一、あなた方はあれを国連軍と思っていらっしゃるかもしれないが、あれは国連軍じゃありません、あれは、厳密に言えば多国籍軍である、そこは分けて考えてもらわないといけません、アメリカ人にそれを言ってもちょっと、あれはやはり一種の興奮状態でございましたから、よく言わないとわからなかったのですが、ああそうかと。だから多国籍軍というものに日本があれするわけにはいかぬでしょう、日本憲法はそうなんだという、いろいろなやりとりがありまして、それならどういうふうになったら日本人というのは世界のために働けるのかねと言いますから、それは今急にそういうことにならぬかもしれぬが、本当に国連が先ほど申しましたようなそういうものになって、そこへ日本人が、みんな自分でいわばボランティアとして出かけていって国際公務員で働く、こういうことを我々は拒むものではないんですよ、しかし、それは急にあす、あさってできるとは思わないけれども、我々はそういう意味での国際的貢献ということは決して拒もうとは、避けようとはしていないんだ、ただ、今の多国籍軍にどうして来ないかといえば、それは行けないじゃないか、こう言っておったわけでございます。
  264. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 その政治的意図はよく理解いたしました。  それでは関連してもう一つ。いわゆる自民党の小沢調査会、国際社会における日本役割に関する特別調査会、会長が小沢一郎前幹事長でございます。九月二十八日、日本安全保障に関する答申原案をまとめられたと聞いております。総理は、この調査会が出した答申原案の内容を御存じでしょうか。
  265. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは、厳密に申しますと、私、きちんとは知っておりません。と申しますのは、いろいろなお考えがあって、まだこういうこととしてまとまっていないのだと私は存じております。
  266. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この答申原案によりますと、いろいろ新聞報道等で私も知った次第ですけれども、国際的安全保障という概念に基づいて多国籍軍や国連軍参加への道を開く、そういうことが一つの大きなポイントになっているようでございます。従来の集団的自衛権の考えではなくて、国際的安全保障という概念に基づいて我が国としてもそういったものに参加の可能性を考える、こういった趣旨であると理解をしているわけですけれども、調査会からこういった内容の最終的な答申が出た場合、総理は、この答申をどのように扱うおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  267. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私は、基本的には調査会は、タブーを置かずにいろいろな問題を根本にさかのぼって検討していただくことが大事である、その点では調査会ができたことは好ましいことでありますし、どうぞタブーを置かずに自由に議論をしていただきたいというのが私の基本的な願いでございますけれども、今仰せられましたようなことは、一部報道にございましたけれども、そういうことが調査会としてのお考えになりつつあるというふうには私はまだ承知しておりません。いろいろ慎重に御検討のようでございますので、どういう結論になりますか、まだ私としては存じておりません。
  268. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、PKOに関連した御質問をさせていただきます。  国会承認の問題、これも随分議論がされてきておりますが、実は私どもも、この国会承認問題はかなりじっくりと検討いたしました。ことしの五月ぐらいから合同部会を設置しまして、数カ月にわたりましてみっちり検討して、国会承認も歯どめの一つとして入れるか否か、いろいろな角度から検討をいたしました。  その結果として、我々としては、五原則の法制化と報告制度で足りる、必要十分である、むしろ、それに加えてこの国会承認をつけ加えることは弊害の面が多くなるという結論に達しまして、慎重な十分な検討の結果、こういう結論に達した次第でございます。  確かに、この国会承認問題、これだけを取り出して切り離して言いますと、何となく素人わかりがして、当然あった方がいいと思いがちかもしれませんけれども、やはり総合的に考えて、特にこういうPKOの本質、それが武力行使じゃなくてあくまで平和主義、人道主義に基づき、武力行使をしないで合意された停戦を維持するという本質に着目するならば、やはりそういったものは必要ないだろう、また、その他にもいろいろな歯どめがかかっておりますので、むしろこれ以上つけ加えることは屋上屋ではないかという結論に達しまして、我々としては国会承認不要ということを言っておるわけでございます。そういったことで、五原則の法制化と報告によってシビリアンコントロールは十分機能するものと我々は判断をしておる次第でございまして、総理も答弁を通じて、国会承認には応じない、原案どおりで成立を目指すと述べておられるようでございます。  そこで、こういった国会承認に関して、いろいろ新聞報道によりますと、何かまたいろいろな妥協案が出ているというふうに仄聞をしております。例えば、緊急時や国会閉会中の事後承認とか、あるいは委員会での承認とか、さらには政府と議会指導者の事前協議制、何かこういった案が新聞報道等によれば出ておるようでございますけれども、こういった個々のケースについて政府としてはどう考えられるのか、お考えをお聞きしたいと思います。
  269. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御指摘のように、我が国が過去にいたしました経験からして、シビリアンコントロール、いわゆる文民統制というものは極めて大切であるということは、私どもも決して人後に落ちません。そのように考えておりますが、ただいま御指摘のように、この法案の中にいわゆる五原則を盛り込みました。また、実施計画を立てましたときには国会に御報告をいたします。国会の御審議の中でいろいろ有意義な御指摘があれば、また実施計画をその後に改めるというようなことも当然考えなければならぬことでございますから、そういう意味での万全の注意はいたしておるつもりでございますが、他方で、国連から要請がございましたときに、これに機動的に応じなければならないということは十分考えられることでございますし、また、国連と協定をいたしますときに、この協定は国会の御承認を条件とするというふうに、恐らくそうなりますれば書かざるを得ないかと思いますが、国連として各国協力体制を整えますときに、条件つきという不安定な参加では、国連がやはり非常に不便を感じられるであろう、それは決して歓迎すべき状態ではないであろうというようなことも考えまして、政府が御提案いたしたものでひとつ御承認をいただけないだろうかというふうに今日現在考えております。  いろいろな御意見がございますようでございまして、その中で何か御関係の皆様が御賛成であるということであれば、これはまたともかくもでございますが、政府といたしましては、ただいま御提案いたしましたところをもってひとつ御賛成をいただきたい、こう考えております。
  270. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 また、国際的に見ても、PKO自体、既に歴史の中で八十カ国以上が参加をしてきておりますけれども、承認制度をとっておるのはオーストリアとアイルランドという極めて例外的に二国のみというふうに聞いておりますけれども、これ以外に本当にないのかどうか、十分な調査をしてみたのかどうか、この辺につきまして、大臣、あるいは事務当局で結構でございますが。
  271. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  この問題がこのような問題になったものですから、私たち、事前に調べはいたしましたけれども、実は最近、非常にたくさんの国の、数をふやしまして、PKO参加国に対して、出先の大使館に対して、念のためもう一度調べると訓令を発しております。回答が集まってきておりますけれども、いずれまとまった段階でお知らせ申し上げたいというふうに考えております。
  272. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 PKOに関する要員派遣国と国連とのモデル協定の点につきましてお聞きしたいと思います。この草案の骨子につきまして、まずポイントだけでも御説明いただければと思います。
  273. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘のモデル協定でございますが、いわゆるPKOの派遣協定のモデルというものがまずあるわけでございます。このモデル協定案は、国連とそれからいわゆる派遣国との間で、その要員、装備等の面につきまして取り決めを起草する際の参考とするように作成されたものでございます。このモデル協定案は、昨年十二月の国連総会決議の中で、総会が、この協定の作成につきまして事務総長がとりましたイニシアチブを歓迎したのを受けまして、事務総長がこれまでのいろいろな国との確立した慣行あるいは取り決めを踏まえまして作成したものでございます。  その内容といたしましては、派遣する部隊、要員の種類あるいは人数、あるいはいわゆるけさほど来議論のございました国連の指図の問題あるいは派遣の期間、あるいは要員に求められる資格でございますとか、さらには国連派遣国の費用分担といった事項が盛り込まれているわけでございます。  なお、これとは別途に、国連が受け入れ国との間でPKOの特権・免除に関するいわゆる地位協定を結ぶことがございますが、その方のモデルも用意されております。そして派遣国は、この国連と結ぶ派遣取り決めを通じまして、いわゆる地位協定の特権・免除を享有するという関係になるわけでございます。
  274. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この草案がことしの九月からの国連総会審議されると聞いておりますけれども、この点につきましてはどうなっておるのでしょうか。
  275. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  これは、こういうひな形で国連派遣国とが協定をつくってはどうかという事務総長報告として出ておるものでございまして、これが国連総会にかかって議論されるというふうには聞いておりません。大体こういうものをひな形としてはどうかという形では、もうそういうものとして公表されているということでございます。
  276. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 このモデル草案の中で一番問題になるのは、いわゆる第六章、国際的性格、まあずっと議論がきょうも行われておりますけれども、指揮権を定めたところだと思います。ここで、PKO要員は、その義務を遂行するに当たり国連以外のいかなる権威の指示も受けてはならないとなっております。こういったことがあるわけでして、この点が特に我が国PKO法案との関係で問題になるわけですけれども、政府としては、この五原則を国連説明し、こういった状況協力する、問題は起こらないという点を国連に確認しているという御説明をされてきていると思いますが、この点につきまして、この確認ですね、どういう方法で行ったのか、文書か口頭なのか、そこら辺をまず御説明いただきたいと思います。
  277. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  この五原則につきましては、八月の十四日に国連局の河村審議官がニューヨークに赴きまして、PKOを担当しております国連事務当局のグールディンク事務次長と会談いたしまして、五原則につきまして日本側の基本的な考え方説明したのに対し、グールディンク次長は、国連としては問題はございませんという、そういう会談が行われております。
  278. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 そうすると、それは口頭の会談ということなんでしょうか、文書にはなっていないということなんでしょうか。
  279. 丹波實

    丹波政府委員 五原則そのものにつきましては、英訳をいたしまして、その英訳をした紙は置いてまいりましたけれども、基本的な考え方説明は口頭で行っております。
  280. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この点、大変重要な点だと思いますので、ちょっと口頭だけで済ますというのはいかがかなという感じがするわけです。文書でこれはきちっととっておく必要があるのではないかという気がするのですけれども、いかがでしょうか。
  281. 丹波實

    丹波政府委員 おっしゃるとおり、大変重要な会談だと私たちも思いまして、まさにそういうわけでございますので、一番重要な五原則についてはきちっとした英語にしたつもりで、それを置いてまいったことでございます。  それから、河村審議官の発言ということにつきましては、河村個人の発言ではございませんで、私たち関係者、政府部内で考えた上で、こういう説明だろうという説明を考えて、それにのっとって河村が説明いたしましたけれども、説明自体は口頭で行ったということでございます。
  282. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 こういう非常に重要なポイントを口頭で済ますというのはちょっといかがなものかという気がするわけでして、ちょっと政府の外交姿勢というものを正していただきたいという気がするわけでございますが、ぜひこの点につきましては、文書できちっとやはり今後のためにもとっておくということが大事なポイントでないかと考えておりますので、ぜひその点は今後の問題として努力をしていただきたいと要望だけしておきたいと思っております。まずこの点につきまして、では外務大臣
  283. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 いずれ法案が通りますれば、実施計画とかいろいろ運用の問題とか、それは国連のマニュアルとすり合わせをしなきゃなりませんから、その時点でしっかりさせたいと思います。
  284. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 時間もないので少し先に行きたいと思います。  あと、いわゆるPKO標準運用手続ガイドラインですね、これもきょうずっと問題になってきております。特にこのガイドラインが定める指揮の問題、それから武力行使の問題、すべての点で我が国PKO法案国連のガイドラインは隔たりが大きいということは、これは事実でございまして、こういった中で、今後このPKO法案法律に基づいて我が国が、特にPKFが活動した場合、諸外国のPKFとの間で調和を乱すおそれがあるのではないかということも危惧されるわけでして、今後こういった我が国のPKFの参加と諸外国のPKFとの間でどう調和をしていくか、これは非常に重要な今後の検討課題でないかと考えております。この点に関する総理あるいは大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  285. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 先ほど宮澤総理からもお話があったように、我が国は独自の憲法を持っておりますので、それを逸脱した人的貢献はできないということはかねて言っておるわけであります。したがいまして、それは他の国と全く同じというわけにはいかないところがあるわけです。ですから、先ほども指図と指揮のお話でいろいろ御議論がございましたが、よその国と全く同じわけにいかないところに難しさがあるわけです。しかしながら、その中でも最大限の協力をしようというためにいろいろ工夫をしているというのも事実でございます。
  286. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ぜひこの点は今後も、非常に重要な検討課題でございますので、さらに研究し努力をして、よいものにしていただきたいと要望だけしておくにとどめます。  続いて、研修、訓練の問題なんですが、我が国はPKOに全面的に参加するに当たって、せっかく参加する以上は、ぜひ立派なものにして国際的にも高い評価を得られるものにすべきであると私たちは考えるわけですけれども、特にその点で、研修、訓練をどうするかということが極めて重要なポイントであると我々はかねてから主張をしてきております。特に、風土の異なる外国の地でこのPKO活動を円滑に実施するためには、十分な事前の訓練が不可欠であると思います。  このPKO法案第十五条では、平和協力隊員の研修について規定しておりますが、隊員になってからの派遣前研修だけではやはり十分ではない、このように思います。ぜひもっと包括的な、突っ込んだ研修計画というものを持つべきだと思いますけれども、研修の具体案はどうなっているか、この点につきまして御説明をいただきたいと思います。
  287. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  訓練、研修の重要なこと、まさに先生指摘のとおりでございます。  この法案の立て方といたしまして、今、先生は十五条の研修のことを読まれましたけれども、同時にやはり、この十二条で書いてございますように、関係行政機関、この中にはもちろん防衛庁も含むわけでございますけれども、この平和協力業務を行うために必要な技術、能力等を有する者というのをあらかじめ予定していただくということに基本がございます。したがいまして、この法案の仕組みからいたしますと、国連事務総長等から要請がございまして、それを受けて迅速に対応するという仕組みでございますので、その技術、能力等を養成するための初歩的な段階からの訓練というものについての重要性を特に強く認識している次第でございます。  あわせて、十五条にございます研修といたしまして、国連あるいは国連PKOについての基礎知識とか、おのおのの、自分が何をやるかという活動、任務についての基本的な知識とか、あるいは派遣国の国情、社会、文化、そういったものも非常に短期間の間に教え込む研修を行わないといけないということでございまして、法案成立の暁には私ども、これは関係行政機関の、その研修、訓練の意義におきましても、非常に大きな協力を得る必要があろうと思っております。まだ具体的にどうかという考えはございませんけれども、やはり関係行政機関には持っている研修施設等もございますので、成立の暁には早速協議いたしまして、訓練、研修に遺漏なきを期したい、そういうふうに考えております。
  288. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 まだこの法律ができていないわけですから、いろいろまだ準備段階だと思いますので詳しい説明はできないのだと思いますけれども、ただ我々、問題意識は、この研修、訓練は大変大事だということであって、この点はぜひ今後とも慎重によく見て、強力にこの点は指摘したいと思っておりますので、また、具体的にどのような進展があったかどうか、どういう予算、どういう人員、どういうシステムかということは、ある意味でしつこく追及をしていくつもりですので、ぜひその点は準備をしていただきたいと思っております。  それから、平和協力隊員となる前から、今御説明があったように、防衛庁など関係行政機関が独自に研修計画を組織することは考えられるわけですけれども、この平和協力本部そのものが常時、将来の隊員となることを希望している者に対する研修コースを組織すべきではないかと考えるわけです。あるいは、将来は独自の研修センターをつくってもいいんじゃないかと思います。私も、北欧の合同訓練センターは視察をして、大変印象深く見てきた次第なんですけれども、こういったセンターを将来は近隣のアジア諸国にも開放して、北欧の訓練センターに匹敵するような、まあアジアPKOセンターとでもいいますか、そういったものを設置して、国際協力のもとに国連強化を進めていく、そういうこともぜひ考えるべきであろうと思っております。この点につきまして、政府の考えをお聞きしたいと思います。
  289. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  先生、北欧のセンターのことを御指摘でございました。私自身も、オーストリアにございますセンターを見てまいりまして、非常に立派な研修施設ができておるのに感銘を受けた次第でございます。そのオーストリアは六〇年代からの参加の歴史があるわけでございますが、今の立派な施設ができたのが八〇年代と申しますか、その間には期間があるわけで、それぞれ段階的に研修の重要性に着目しつつ施設の充実を図ってきたというふうに理解しております。  今回御承認いただきますことになります場合に、この法律に基づいて制度全体の具体的な運用ということを進めていくわけでございますけれども、そういった中で、この御指摘の研修、訓練の実態というものをまず十分に見きわめまして、将来検討すべき課題といたしまして考えてまいりたい、そういうふうに思っております。
  290. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、平和協力本部の組織についてお聞きしたいと思います。  このPKOが成立して発足すれば、一番そのかなめになるのは、何といっても平和協力本部がどういった機能、力を持つかということがポイントであるわけでして、ここが弱体ですと非常にやはりいいかげんなものになってしまうだろうという気がするわけです。したがいまして、ぜひ、このPKO法案国会で成立して実際に我が国が実効ある協力をしていくためには、相当の定員と予算をつけていく必要があるものと感じているわけでございます。特にこの協力本部の事務局が一番扇のかなめの役割を果たすわけですから、単なる各省からの定員のやりくりといったようなこそくな手段ではなくて、実体ある事務局機能が十分果たせるように、新規の定員増を図って、プロパーの人を育てて充実した事務局とすべきであると考えるわけです。  この点につきまして、総理、大蔵大臣、総務庁長官の御意見をお聞きしたいと思います。
  291. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 御質問のございました事務局の定員でございますけれども、これは国際平和協力本部が設置されることになっております総理府でその検討が行われているというふうに承知をいたしております。  いずれにしましても、事務局の定員の要求を受けてから、その要求の必要性を、予算編成過程、これを通じまして十分私どもとしても審査してまいりたいというふうに考えております。
  292. 岩崎純三

    ○岩崎国務大臣 お答えいたします。  平和協力本部の事務局につきましては、ただいま総理府におきまして、平和協力業務などの実施に備えるために鋭意検討し、しかも迅速で効率的に対応できまするよう体制のあり方について検討いたしておる、このように承知をいたしております。したがいまして、いずれにいたしましても、予算編成の過程におきまして適切に対処するよう努力をいたしたい、かように考えております。  以上でございます。
  293. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私が申し上げたい点は、このPKOを本当に成功させようと思えば、さっきの一つの研修、訓練の問題と、それからこの本部事務局、これを本当に強化するということが非常に大きなポイントであると思いますので、単なる混成軍の各省のやりくりではなくして、プロパーのしっかりした組織をつくっていくということがかなめであると思いますので、この点もぜひ前向きに検討方お願いをしたいと思っております。  続いて、カンボジアとの関係につきましてお聞きをしたいと思います。  総理は代表質問における答弁の中で、カンボジア問題について、PKO協力とは別に、荒廃したカンボジア国土の復興に我が国として応分の協力を行うと述べられておるとともに、調査団の派遣に触れられておられます。この調査団の派遣時期はいつかということにつきましてお聞きしたいと思います。
  294. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  カンボジアに対する調査団の派遣時期ということでございますが、カンボジアに対する復興協力ということにつきましては、先生御案内のとおり、今SNCの受け入れ態勢というものが整いつつある段階でございます。これが整い次第、調査団を派遣して、協力のあり方を全般的に探ってまいるということで、非常に正確に時期を今申し上げるわけにはいきませんけれども、近々というふうに御理解いただきたいと思います。
  295. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 近々ということらしいのですが、やはり物事はタイミングを失しないというのが非常に大事ですし、カンボジア和平協定も調印をされてシアヌーク殿下も帰国したということで、急速に和平へ向かっての環境ができているわけでありまして、余りもうちゅうちょする理由はないのだろうと思うわけでして、できるだけ早く調査団を送って、我が国も十分な協力をする中で一日も早い復興の手助けをするべきであると考えますので、ぜひ早急に調査団を出すように努力していただきたいと思います。この点ひとつ、これは大臣でしょうか、よろしくお願いします。
  296. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 できるだけ早く調査団を派遣をするようにいたします。
  297. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 大蔵大臣にもひとつお願いします。
  298. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 外務省の方とよく打ち合わせて進めてまいります。
  299. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 このカンボジアの復興に対して、相当ある意味じゃお金のかかる仕事であると思います。政治的にも大変ですけれども、資金的にも大変な額がかかると思います。例えばいわゆるUNTACの経費、これも十億ドルとも二十億ドルとも言われておりますし、また、この復興費用を含めて相当な部分を日本が負担をすべきであろう、国際的にもそういう声が強くなっておるし、我が国としてもそういう気持ちがあるのであろうと思っておるわけでございますが、日本はカンボジアに対して今後どれくらいの資金協力を行っていくつもりなのか。もちろん今はまだ細かい積算はないのでしょうけれども、大体のめどなり決意なり、どうお考えになりますか。
  300. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 これはまだ調査をしてみなければ実際のところわからないということであります。十億ドルとも言ってみたり五十億ドルとか言ってみたり、実際わからないんですよ、船が多過ぎて。その調査がわかった上でできるだけの協力をいたしましょうという程度ですね、きょうの答弁は。
  301. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 きょうの答弁は、じゃそういうところで。次はぜひもっと踏み込んだ答弁を期待をしております。  それから、カンボジアの支援で一つ、直ちにできる人的貢献というのがあると思うんですね。いろいろの医療団とか技術者の派遣とか、PKOとは別個に直ちにできる派遣、人的派遣があり得ると思う。例えばNGOの日本国際ボランティアセンターなどは、輸送車両の修理部門、UNHCRの難民帰還計画に対して輸送車両の修理部門をやる、こういった話も聞いておりますけれども、政府として直ちにできる人的貢献策としてどんなことを考えておられるか、これも御説明いただきたいと思います。
  302. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  既にカンボジアにつきましては、先生御案内のとおり、罹災民に対する援助ということでもう十年この方、タイ国境の被災民に対して援助を行っておりますし、それからJICAを通じます研修員の受け入れというものをとりあえずNGCを対象としまして、カンボジア国民政府でございますが、これを対象として二年前から再開いたしております。それで、ことしからは、先ほどのSNCというものを対象としてこれを実施する、人数も拡充するということを考えております。  それから、今御指摘がございましたNGOを通じての援助でございますが、これは従来より既にNGOに対しまして、一定の事業補助金というものを給付するという形で提携して援助を行うということを行っております。今仰せられましたような方式を今後ともできるだけ工夫しながらやってまいりたい。  それから、ついででございますが、先ほども大臣から御答弁がございましたが、今後の資金協力につきましては、先方のニーズというものを十分検討して、向こうと話し合ってよく協議しながら対処してまいりたい、そう思っております。
  303. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 次に、このカンボジアで一つ大きな問題なのは地雷の問題ですね。地雷処理の問題。特にカンボジア国境付近では何十万発とかいう規模の地雷がまだ埋まっていて、毎月二百人から三百人もの人が地雷の犠牲になっているということを聞いております。  先般、ペルシャ湾に自衛隊の掃海艇が派遣されたわけで、機雷の処理を行ったわけですけれども、政治的ないきさつは別として、この処理に当たった隊員の献身、努力というものは高く評価をするわけでございますけれども、この地雷の問題ですね。先国会の外務委員会条約局長の答弁によりますと、PKO法案が成立すれば、自衛隊による地雷の撤去が可能だという答弁がございました。また、政府としても、日本貢献策として地雷の撤去を考えていると思いますけれども、もし、現地あるいは国連等から要請があった場合、かつ、この法案が成立しているとした場合、地雷撤去のためにこの要員を派遣する気持ちはあるのかどうか、この点につきましてお伺いしたいと思います。
  304. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御指摘のように、カンボジアにおける地雷敷設はかなりなものがあるように私どもも聞いておりますが、もともと自衛隊は、我が国に対する侵略があった場合に対応する措置を講じておるわけで、地雷も所有しております、地雷処理も行っておりますし、訓練も行っております。  ただし、この地雷処理の能力というものは、処理すべき地雷の種類とか、あるいはその敷設された地形、地質でありますとか、植生を含む地雷の設置状況等、具体的な作業内容によって大分異なりますので、情報を収集し、そしてこれに対応していきたいと存じておりますが、ただし、陸上自衛隊は地雷の能力を持っておるわけでございますけれども、今所有しておるのは、主として戦闘行動時の部隊の迅速な機動を支援するための地雷原の処理機材、つまり、地雷が敷設された中へ通路をつくるようなそういう目的のための機材等を持っておりますが、地雷は、御案内のように世界であらゆるいろいろな種類のものが開発されておりまして、必ずしもこれらを全部所有して通暁しているわけではございませんので、ある一定地域の大量の地雷を処理するというようなことになりますと、能力的にはおのずからあるいは限定されたものになるかもわかりませんけれども、このPKOの趣旨にかんがみまして、これは前向きに取り組むべき仕事である、このように存じております。
  305. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 時間もなくなってきましたので、緊急援助隊につきましてお聞きします。  国際緊急援助隊、これへの自衛隊の活用ということが今もう一つのポイントになっておりますけれども、我々も非常に慎重に研究をした結果、これは非常に問題は少ないということで、やる以上はしっかりやってほしいというのが結論でございます。したがって、特に我が国として、こういう人道的援助に緊急に対応して諸外国の評価を得ることは大変重要な国際貢献であろうと考えますので、しっかりやってもらいたいわけですけれども、そのためにはやはり何といっても要員の募集、訓練を含めて実施体制、予算を抜本的に充実することが大事だと考えておりますので、この点につきまして、これは外務大臣と思いますけれども、見解をお聞きしたいと思います。
  306. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 外務省、国際協力事業団の実施体制を充実して予算の獲得に努めます。大蔵大臣から今いい答弁をしてもらいますから。
  307. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 では大蔵大臣、お願いします。
  308. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 これはかねがね総理の方からも、一方で生活大国、またもう一つは、国際的な役割を分担しなければいけないということでございまして、まさに日本として、非常に財政的には厳しい一面もありますけれども、必要に応じて機動的に対応していかなければならないであろう。いずれにしましても、私どもも常に外務省その他とよく連絡をとりながら対応してまいりたいと思っております。
  309. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今非常に外務大臣、大蔵大臣から前向きな答弁がございまして評価をするものであり、また、我々としても強力にこの点は今後支援をしていきたいと思っております。  それで、もう一点ですね。自衛隊が参加すること、これは基本的に結構だと思うのですが、ただ、自衛隊が大規模に参加することによって、今までやってこられたほかの、警察とか消防とかあるいはお医者さんとかそういった民間の方が出る幕がなくなっちゃうんじゃないかという若干危惧があるわけですね。やはりこれは、我が国全体のボランティアスピリットを高めるためにも、自衛隊は参加するとして、そういった民間の方々にもぜひ場をつくって、活躍の場を与えていくということが必要だと思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  310. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 このたびの改正法案によりまして、自衛隊がこの国際緊急援助隊に参加することを任務とする改正ができることになりました。自衛隊の知識経験を利用いたしまして積極的に対応してまいりますが、もちろん先生指摘のように民間あるいはボランティアの派遣等もございますから、これらとよく調整をとって、現地において効率的に行い得るようにしていかなければならないと存じております。
  311. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 時間が終わりましたが、一つだけお聞きします。  緊急援助隊の実際に参加した隊員たちのいろいろな発言、座談会等の資料を読んでみますと、非常に彼らが共通して言っていることは、もっと日本は緊急援助隊のPRをしっかりしろ、相手国に対して、及び国内に対してもっとPRをしっかりしてほしいということが非常に大きな要望としてあります。日本人の場合、余り自己宣伝をしないという非常に奥ゆかしい面もあるわけですけれども、やはり国際的には日本がちゃんとやっているということをPRすることが、隊員の士気の向上にもつながり、また国内的なボランティア精神の助長にもつながるということで、ぜひこれはしっかりやっていただきたいし、それからもう一つは非常に具体的な要望として、緊急援助隊のユニホームをちゃんとつくれ、非常に格好のいい、一目で日本とわかるような、そういうユニホームをつくることが非常に士気の向上にも、また対外的なPRにもいいだろう、こういう要望が非常に強くありますので、これはひとつ要望として述べておきますので、よろしくお願いをしたいと思っております。  以上で質問を終わります。
  312. 林義郎

    ○林委員長 次に、東中光雄君。
  313. 東中光雄

    ○東中委員 私は、きょうは武器の使用、武力の行使について伺いたいと思います。  先日、十五日の日の参議院の予算委員会で、武器の使用に関連して、国連の文書または慣行によりますと、その武器は自衛のためにしか使用ができない、その自衛には次の二つのことが含まれる、一つは要員の生命を防護するとき、二つ目は国連平和維持隊としての任務が実力により阻止されるのに抵抗する場合、しかし日本の場合、このPKFに参加していって、第二番目のケースで武器を使用するという場合には、これは憲法上の問題に触れるおそれがあるであろう、あるいはあるかもしれない、したがって日本は、第二番目のケースについては武器は使用しないということをいわゆる五原則の五番目の原則として掲げておりまして、これも法案化されています、そういう形で日本としてはこのPKFに参加をする、こういう国連局長の答弁に、外務大臣は、つけ加えることはございません、それから総理大臣は、国連はそういう文書を出してきた、しかし我が国はその二つのうちの後段は受けられない、したがって受けられないという立場国連に明らかにした上で我が国は要請があれば協力をする、こうお答えになりました。  それで、これに関連してお聞きしたいのですが、二番目の分、すなわち国連平和維持隊としての任務が実力により阻止されるのに抵抗する場合に武力を行使することは日本憲法上触れるおそれがあるかもしれない、おそれがあるだろう、こういうふうに言われているのですが、要するに憲法禁止されていることになるということだと思うのですが、法制局長官にお伺いしたいのですが、二番目の場合、国連PKFの任務が実力によって阻止されることに抵抗する場合としての武力の使用は憲法違反のおそれがある、憲法のどういう点に違反をするのでしょうか。     〔委員長退席、金子(原)委員長代理着席〕
  314. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 ごく簡単に、東中先生の時間を大事にしますから。  つけ加えることはありません。
  315. 東中光雄

    ○東中委員 法制局長官。
  316. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  平和維持隊につきまして、それが基本的には国連の説得と権威によって強制力を持たないで任務を遂行する、こういう基本、大前提があろうかと思いますが、その中におきまして、たまたま例外的に武器を使わなければならないというときに、先ほど委員指摘のように、概括的に申し上げれば二つのケースがある。一つは要員の生命等の防護のため、もう一つは任務の遂行を実力をもって阻止する企て、これに対抗するため、こういうふうなことが言われているわけでございます。  後の方につきまして、といいますか武器の使用全体でございますが、さまざまな態様がありますので、それを一括して申し上げることは非常に困難かと思いますけれども、そういう後の方の、任務の遂行を実力をもって妨げる、こういう企てに対抗するために武器を使用する、それは、状況によりましては国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為という、この前のときに申し上げましたそういう武器の使用に当たることがないとは言えない、かような意味で、状況によりましてはあり得る、こういうふうなことを申し上げているところでございます。
  317. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、状況によっては、その武器の使用が、国連の任務遂行のための妨害に対する抵抗としての使用というものは、国際紛争を解決するための戦闘行為、憲法に言う武力の行使に当たる場合があり得るので、この自衛隊がPKFに入った場合にもそういうことは憲法上やれない、だから法律もやれないことにした、こういうことですね。
  318. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま申し上げましたように、さまざまなケースがあろうと思いますが、その中で例外的に武器を使用した場合に、状況によってはそういうことがある、したがいまして、そのおそれを排除するために、以前のいわゆる五原則におきましても、そういう意味で、武器の使用は要員の生命等の防護のために必要な最小限度のものに限られるというふうにいたしましたし、今回の法案におきましても第二十四条におきまして「自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員若しくは隊員の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合」、こういうふうに自衛隊の場合だけをちょっと今例を申しましたが、二十四条の一項、二項、三項といったところでそういう規定を置いているところでございます。
  319. 東中光雄

    ○東中委員 PKF、国連平和維持軍が武力を行使する場合は、国連文書によりますと、現場の指揮官の判断によってPKFの部隊として武器を使用することになっています。この今出されております法案は、部隊としての、日本の参加した自衛隊の部隊は部隊として作戦行動を行いますけれども、武器の使用については、部隊としてではなくて自衛官個人個人がその判断で、しかも自己と現場にいる自衛隊員とそして平和協力隊員、日本のということになっていますね、それだけにしか、正当防衛的なときにしか使えないというふうになっているわけですが、それ以上に自衛隊が部隊として使う、あるいは他の国連平和維持軍に参加しておる人たちの部隊の生命、身体を守るための支援活動をやるということは、この法案ではできないことになっているのですが、国連の平和維持軍の武器の使用、武力の行使については、そういう場合もやるというふうになっていますね。そういう違いをこの法案でつくったというのは、個人の正当防衛のとき以外は、正当防衛ないし緊急避難のとき以外は、武器使用は、武装した部隊として出動している状態であるから、やったら憲法違反のおそれがあるということで、こういうふうに非常に窮屈な、平和維持軍としての行動とは明らかに原則として違う体系を入れたというふうに考えざるを得ないのですが、もし平和維持軍全体が攻撃を受けた場合に、自分のところ、日本の部隊については何も来てなくても、攻撃を受けたら、それを国連のマニュアルに従って攻撃をする、武器を使うということになれば、これは憲法が禁じている集団自衛権の行使になるからそういうことはしないんだというふうに規定しているように私は見たのでありますが、その点は法制局長官、非常に厳格に法案の二十四条が規定しているのは、集団自衛権の行使に触れないようにということなんじゃありませんか。
  320. 丹波實

    丹波政府委員 国連のPKOのやり方に関する問題と関連いたしますので、私の方からお答えさせていただきたいと思いますけれども、PKFが武器を携行してそういう活動に参加する場合の国連文書で一貫して言っておりますことは、いかなる場合にそういう武器が使えるかというそういうことでございまして、先生がまさにおっしゃったとおり、自衛のためのみ、しかも自衛には生命を防衛するため、それから任務が実力により妨げられ、それに抵抗するため、そういう場合に武器を使用できるという、そういう書き方になっておることは先生承知のとおり。  それから、先生もお持ちの、公表されておりますウ・タントのサイプラスのエードメモワールによりましても、まさに司令官が判断をいたしますのは、フォース・メイ・ビー・ユーズド、要するに武器が使用できるという状況を判断する。武器を使用しろという判断ではございませんで、こういう状況であれば武器を使用できるという判断でございまして、あとの使用については個々の隊員の判断に任されるというのが基本的な考え方で全体ができておる、私たちはそういうふうに解釈いたしております。
  321. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、そのことについて言えば、この法案の規定も、それから国連の諸文書が書いておる、いわゆる武力の行使というふうに使っている、言葉としてはユース・オブ・アームド・フォースという言葉を使っていますが、そういう場合も同じことなんだ、国連でやっていることと日本の自衛隊が書いてあることとは同じことなんだ、やり方としてはですよ。そして、ただ任務遂行の妨害をすることに対する抵抗という場合だけはこれはだめなんだ、こういう考えだということですか。
  322. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  従来御説明申し上げてきておりますことは、ただいま法制局長官もおっしゃいましたけれども、一と二のケースでございますね、先ほどの。一については、人間が持っている自然権的な権利として、そういう場合に自己防衛のために武器を使うということは、これは日本憲法上問題は当然ない。  二番目のケースにつきましては、場合にふっては憲法上の問題が起こり得るのではあるまいかという、そういう考え方から、二の場合には日本は武器を使用しない。しかしながら国連のプラクティス、国連考え方を子細に調べ、各国にも聞いてみますと、実力により任務が妨げられたから、すぐその瞬間に発砲してよろしいということにはなっておりませんで、まず説得しなさい、それからまず空砲を撃ちなさい、そういう手続を全部尽くした上で、どうしてもこれはというときに発砲は認められるということになっておりますので、そういう手続を全部尽くした上の状況というのは、場合によってはあるいは一のケースに該当するのかもしれない。そういう全体の考え方からいたしますと、Bと申しますか、第二のケースの場合に日本が武器の使用はしないということを言っても、全体としてはPKFに参加してもそう大きな支障はなかろうという私たちの判断で、それを国連に行って、そういうことだけれどもどうだろうかと言ったのに対して、国連の事務当局も、そういう参加の仕方で問題はないということであったわけでございます。  ちなみに私たちは、今までPKFに参加した各国に対しまして、いわゆる第二のケースで発砲したケースというのがあるのかということを詳細に聞いてみましたけれども、なかなか第二のケースについて発砲したという答えは実は余り返ってきていないのです。ですから、そういう全体を考えれば、そう差し支えのある参加ぶりではないというのが私たちの判断でございました。
  323. 東中光雄

    ○東中委員 国連局長の言っていることは全く信用ができない。武力を行使したことのない部隊にばかり聞いているのですからね。それで、行使した部隊については聞いていないという状態が起こっています。国連にPKOの職員として三十二年間勤務してきたという人が、この前の九月のときのテレビの放映された審議の中で、国連が、イタリアもオーストリアも発砲したことは全くないと言っている、そんなものとんでもないことだと言って、わざわざ文書を私のところに送ってきた人もあります。そういうものには接していないというだけです。発砲したというところは接していないというので、それは発砲したところに当たっていないというだけのことにしかならないのじゃないか。私は、そういうむしろ不信を持っています。あらゆる手段を尽くしてというか、空砲を撃つ、説得する、そういうことで最後に実力を行使するんだということは確かに書いていますよ。しかし同時に、そういう手順を踏む暇がないときがあるから、そのときはやるんだということも国連文書に書いてあるんですよ。そのことはもう知っておりながら、あえてそれを言わない。  そして、今国連局長の姿勢でいきますと、国連平和維持軍の各部隊が出るわけですから、各国から参加部隊があるわけですから、日本の自衛隊の隊員、本人及び現場にいるその隊員及び平和隊員の生命、身体に危害が加えられるおそれのあるときだけやれると書いてあるのですね。だから、隣の陣地、駐留地にいるところへ武力攻撃があった場合は、国連文書でははっきりと、そういう場合は支援をすると書いてありますね。サポートする、そして武力の行使をするということが書いてあります。それは日本の場合はそうしないというふうになっていますから、それは、そこで国連文書で書いてあることと違うことを書いているわけですが、それは国連文書のようにやれば、よその国の武力攻撃に対する日本の支援ということになったら、これは個人的なものにしろ、自衛隊の部隊が職務行為として発砲するということになれば、集団的自衛権の行使になるということで、規定を非常に厳格にしたということだと私は思っているわけです。  だから、そういう点で防衛庁長官にお聞きしたいのですが、そういう場面は千差万様ですからね。軍事紛争をやっている中へ兵力を割り込んでいくのですから、武装解除なんていって、はい監視しますなんというようなものじゃないんですよ。ぐっと武器引きつけて解除せいと言って解除さすんですよ。そういうものですから、国連のPKFの、他の国から参加している部隊が近くで攻撃を受ける、そのときは、国連文書ではみんな支援するということになっているのです。それをしないというふうにしたのは、集団自衛権の行使にわたったらいかぬからだということじゃないかと思うのですが、防衛庁長官、どうですか。
  324. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今議論になっておりますのは二十四条の規定でございますけれども、私どもは、武器使用の判断とその行為主体はあくまで自衛官個人であるということで、この法制の建前ができております。したがいまして、今いろいろ想定をされて御質問がございましたけれども、私どもは、直接いろいろ侵害を受けた場合に、それに対応するために個人個人が判断をいたしまして、そして、これに自然権的な自己の生命、身体を守るために武器使用は行うわけですが、結果として部隊が、その部隊といいますか、集団が武力行使に至ることはあるかもしれません。しかし、それはあくまでも個人個人の自衛官の判断と行動に基づくものでございまして、その自分たちのグループのそばにいろいろグループがおるということで、あるいは他国の軍隊もおるということで、それに対する侵害に対しまして私どもが行動を起こすというようなことはございません。
  325. 東中光雄

    ○東中委員 結果として部隊としての武力を行使するような事態が起こるかもしれない、しかし、それはあくまでも個人個人だと、こう今言われました。  私、非常にこれは重要だと思いますよ。個人個人の判断で、例えば機関銃にしましても、迫撃砲にしましても、一人では操作できないんだから、そういうものを部隊としての装備を使って、そして、結果として武力の行使になるようなことがあってもということ、結果として起こることがあり得ると、そういう行為を、それを国際紛争に関しての武力の行使というのです。だって、武力紛争があって、それが対峙をしている中へ入っていっていわゆる引き離しをやるのですから、武器を持っていって。そして自分たちが危ないからといって、そう思って、そういう判断で発砲する。正当防衛でなくてもいいんですよね。発砲する人はあるわけです、この規定によりますと。みんなそろってやるということになれば、相手方から見ればもう当然応戦、抗戦になるのです。そういうのを武力の行使というので、それは国連部隊として一緒に行っておる、そのうちの一つの隊ですから、だから、これは結局集団自衛権の行使を事実上やっちゃう。  規定だけは個人の、部隊じゃない、個人だ、そして自分の生命、身体を守るだけだと言っているけれども、先ほど言われた第二の部分ですね、それに従っていくんだということに、第二の部分にもかかわっていく。それは第二の部分になれば、武器の使用、武力の行使、国際紛争を解決するものとしての戦闘行為ということになっていく。それはもう分けられないという状態にあります。だから、これを踏み切りますと、国外へ日本の自衛隊が出動して、そして武装していって武器を発射する。部隊としての装備を個人個人で使って、部隊全体がそういう結果として行動を起こすことがある。発砲した場合に、発砲された側からこれに当然応戦があるわけですから、もう戦闘行為ですよ。こうして道が開かれていく。私たちは、だから、憲法上できないんだということを言っておりながら、書いてあることと違う結果が起こってきよる、その道を開くものだ、こう思います。  しかも、それが国連の軍司令官の、先ほど言われた指揮に反していくわけですね。フォースコマンダーが、PKFのいわゆる軍司令官ですが、これが指揮権がないとか、調整官だと、こういうことを言っておられますけれども、きょうは時間がありませんのでできませんけれども、PKFが行動を起こすときに最初につくるのは、どのPKFでもそうですけれども、フォースレギュレーション、その国連平和維持軍の軍規則というのを国連事務総長がつくります。  そこにははっきりと、軍司令官を置く、軍司令官の権限というのを書いていますよ。コマンドオーダーという項目で、職務遂行のためにコマンドオーダーを発令できるというふうに書いていますよ。それに従って今度はSOPがつくられるわけですから。SOPの中に武器の使用、武力の行使というのがあるわけですから。その指揮系統に、職務行為についてですよ、だから、作戦行動について、部隊の配置、編成、移動、行動、指令というふうに言われましたが、それについては国連軍司令官が出した指揮というか、指図というふうに言っておりますけれども、指揮に従うということでなければいけないというそういう軍規則があって、その軍規則を含めて参加ということが決まるわけです。だから、それを参加の協定を結ぶわけですが、総理はこの前の、先ほど続みました答弁の中で、武力の行使にわたらないように国連に伝えて、そして参加をするというふうに言われておりますが、我が国は、その二つのうちの後段は受けられない、したがって、受けられないという立場国連に明らかにした上で協力をする。この明らかにした上でと言われておりますが、どういうふうに明らかにされるのか。国連平和維持軍に参加するときに、武力の行使について二つの部分がある、第二の部分はやらないんだということを明らかにした上で受諾する、明らかにして、向こうが了承したら受諾するということなんですか。どういう形で明らかにするのか、答弁に関連してお聞きしたいのです。     〔金子(原)委員長代理退席、委員長着席〕
  326. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 先ほどの私の二十四条の答弁におきまして、ちょっと私、結果としてグループとしての武器使用があった場合に、あるいは武力行使と言ったのかもしれませんが、これは間違いでございまして、二十四条の武器使用はあくまで武器使用でございまして、武力行使ではございません。改めてその点、もしかそうであるならば訂正をさせていただきます。
  327. 丹波實

    丹波政府委員 自衛として武器の使用が認められる場合の第二のケースの問題につきましては、去る八月、外務省といたしまして国連事務当局にきちっと説明いたしております。
  328. 東中光雄

    ○東中委員 武力行使と武器の使用というのは、防衛庁長官が言い間違えるほど内容的には接近しておるということの客観的な一種の自白ですね。  それから、八月に言うたといって、法案もできておらぬのに、八月に言うたらこの受諾の条件がそれでもう整うているなんて、これは国連局長、全くの暴言ですね。国際関係というのはそんなものじゃない。一国の部隊を出すかどうかという問題についての協定を結ぶのに、武力の行使をするかせぬかということが問題になっておるときに、だれやらが行って非公式に話をした、それがこの明確な立場だ。言語道断です。全くのごまかしだということを申し上げて、時間がちょっとおくれましたが、ありがとうございました。
  329. 林義郎

    ○林委員長 次に、和田一仁君。
  330. 和田一仁

    和田(一)委員 私は、こういう認識を持っておるわけなんで、よくお聞きいただきたいと思うのですが、PKOというものは、国連の要請などに基づいて国の大小を問うことなく世界国々から派遣される要員がございます。その要員は、国連の指揮のもとに適所に配置され、統一された意思のもとに国際社会を代表して行う平和維持のための活動を行うものである、こういう認識でおるのですが、この理解はどこか違うぞとおっしゃるところがございますかどうか。総理にお聞きしたいと思います。
  331. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 そのように私も理解しております。
  332. 和田一仁

    和田(一)委員 これは外務省の文章にもそういうようなことがうたってございます。国連の指揮のもとに適所に配置されて、平和維持活動のために活動するものだ、はっきりと指揮のもとにと、こう書いてあるのですね。  私は、今審議されているこの法案というのは、世界国々が既に過去において実施しておりますPKO活動、これに日本も、特に今度はPKFの分野において協力していこう、そしてより効果ある国際貢献を果たしていこう、こういう要請にこたえるための法案である、こういうふうに理解をしておるわけでございますが、それでよろしいですか。
  333. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 我が国としても、でき得る人的貢献国連に対してしなければならない、そういう考え方からこの法案を御審議を願っておるわけでございます。
  334. 和田一仁

    和田(一)委員 ここで、先ほどもさんざ議論されたことなんですけれども、私は重ねて二回ばかり、国連の指揮のもとにと、こう申し上げました。派遣されるその各国の要員は国連の指揮のもとに活動をする、こういうことを二回ばかり申し上げて、そのとおりですという御答弁でしたが、先ほど来、指図という言葉と指揮との違いを随分論議されました。私も前国会の九月三十日のこの委員会でこの点をお尋ねをいたしておるのです。そのときにもきょうの御答弁と同じように政府委員の方からは、このコマンドということは調整的なものである、こういう御答弁がございました。そして、しかし私は、この調整的というものと指揮との関係をもう少し聞きたいと思いまして伺いましたところが、司令官の権限というところに、これはいわゆる当事国が国連と結ぶそういうモデルの中に、司令官というのは「配置、組織、行動及び指令について権限を有するということが記されております。」「配置、組織、行動といった側面については、司令官は一元的な権限を持っている」という御答弁がございました。  これは、先ほどもここのところでいろいろと議論をしておるわけでございますけれども、この指図という言葉のいろいろな御説明は、それなりに私はそういうものかな、こういうふうに理解をしておるのですけれども、ただもう一つ国連局長の御答弁の中にこういったことの裏返しとして、行政面とか兵たん面とかあるいは身分の面とか、そういうところには国連軍の権限は及びませんと。これはそのとおり。これは本国政府の問題であります。しかし、兵員の配置、展開、そういった行動の側面については国連指揮官のもとで行動する、こういう御答弁がございました。ここが、どの辺までのことをこの国連指揮官のもとで行動をするのか、ここが非常にかかわってくるのではないか、こう思うわけでございます。この点についてもう一回確認をしておきたいと思います。
  335. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 政府委員がお答えを申し上げます前に、先ほど私、そのとおりでございますと申し上げましたのは、実はその指揮と指図につきましては、きょう一日御議論がございまして、和田委員もそれはお聞き取り願っておったと考えておりますので、いわゆる実施要領を指図に適合するようにつくるという意味で私どもは考えておりますので、誤解のございませんように、恐れ入りますがお願いをいたします。
  336. 和田一仁

    和田(一)委員 ということは、事務総長のコマンド、指図ですね、に適合するように実施要領をつくる、それに従って平和協力業務は本部長の指揮のもとに行わせる、こういうことでございますね。
  337. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  その実施要領でございますが、に基づいてPKFの場合には自衛隊員が行動するわけでございますが、自衛隊員の身分におきましては、これは防衛庁長官の指揮を受けますし、また協力隊員、あわせて身分併用でございますので、の身分におきましては本部長の指揮を受ける、そういう関係でございます。
  338. 和田一仁

    和田(一)委員 ちょっと法制局長官にお尋ねしたいのですが、こういうふうに自衛隊を現実に国外に派遣をしていくケースなのでぜひ確認しておきたいのですが、こういう場合に、我が国の主権が及ぶ範囲というのはどういうところまでが限度かとお考えでしょうか。
  339. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘の問題、非常に難しい問題でございますので、あるいは私、十分に御趣旨を理解し得たかどうか自信ございませんけれども、国際法的な観点からまず申しますと、まあ当然のことでございますが、我が国の主権は領域的には外国の領域までは及ばない、領域的には及ばないということでございます。ただ、PKOの活動は御承知のとおりその関係地域の国の同意を得て行われますので、その点は同意のもとに行われるということで、国際法上の問題はないというふうに考えます。  他方、人的には、我が国から我が国の公務員が派遣されるわけでございますので、その限りにおきまして、我が国とその我が国の公務員との関係ということで人的な主権が及ぶという面があろうかと思います。まあこれを主権とまで言うかどうかこれは別といたしまして、人的なつながりという点はあろうかと思います。
  340. 和田一仁

    和田(一)委員 派遣先の国の合意があるので普通よりは幅広い範囲で主権が存在する、こういうふうに理解をいたしましたが、さっきも二十四条の武器使用のことが問題になっておりましたけれども、武器を使う場合に、長官、これは個々の判断に任せるんだということですね。そうすると、その判断が間違った場合に、正当防衛にも緊急避難にも当たらないというケースが出たときに、これは主権が及んでいるそういう範囲内での行動として、帰ってきた場合に国内法で処理される、つまり刑法で、おまえのは過剰防衛であったというようなことになるんでしょうか。
  341. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 派遣先における武器使用について、乱用されたりなんかした場合は、私、先日の他の委員質問にもお答え申し上げましたけれども、場合によりまして自衛隊の警務官等も派遣することがございますので、内部的なコントロール、それによってそういうことは防いでいきたいな、こう思っております。
  342. 和田一仁

    和田(一)委員 これは先ほどのもう一つの武器使用のケース、さっきいわゆる個人の生命を守る場合、防護するための武器使用が一のケース、二のケースは、任務遂行の妨害があったときには、状況によっては武器使用があり得る、こういう二つのケースですね。  私は、個人の場合でも、行かれる人に武器は貸与して、持っていけと指示して持たせて、そしてその使用が迫られたときに、今の自衛隊の隊員というのは、これは総理大臣が最高の指揮権、さっきのお話のように指揮監督のもとにやるのですけれども、当然これは現地の指揮官に実施要領である程度の権限を任せる、こういうことになりますね。で、任された直属の上官がそばにおりながら、集団でいる隊員が急迫不正の危険を感じて、そして武器を使うというときに、その上官の命令なしに勝手にやれ、こんな訓練は恐らく全然日本の自衛隊はやってないと思うのですね。それを今度は、少なくも武器を使うときにはそんな使い方は絶対にするなど言ってあるはずの武器を、今度は現地ではそういう使い方をしろ。これから訓練しなければできないですね、これは。私は、そこがこの中で一番、現実に行く隊員にとってどういう理解をしていったらいいのかすごく迷っているのではないか、こう思うのですが、長官はどうお考えですか。
  343. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 和田先生承知のとおりだと思いますが、自衛隊法の九十五条によりまして、武器等の防護の場合の武器使用について規定がございます。これはやはり同じように自衛官がということになっておりまして、建前といたしましてはそのようになっておりますし、また訓練としても、そのような方向で訓練をされておるというように承知しておりますから、これが乱用になることはないと私は信じております。
  344. 和田一仁

    和田(一)委員 この前、私もその九月のときにこの辺を申し上げましたら、当時の池田長官は、要するに「束ねる」というお言葉を使いました。「武器の使用について慎重を期するためにいわば上官がこれを束ねることが適切である場合があるこういうことをおっしゃられました。そしてそのことの御説明をさらに聞きましたら、念を入れて上官の判断もあわせ聞くことだということのようでした。それで「経験も豊富でより的確な判断ができるであろう上官の判断をもあわせて、その武器の使用が必要ならばする。」個々の隊員が必要だと判断したとしても、ちょっと待て、「もう少し念を入れてみよう、こういうケースがあるだろう」、こういう御答弁がありました。そのとおりですか。
  345. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 前長官が、束ねてというような表現で使われましたけれども、これは、申し上げている趣旨は、各自衛隊の隊員が武器使用の条件になっていない、しかし上官が武器使用をせろというような場合を想定しているわけではございませんで、それぞれが武器使用の条件に合致していると思われてもなおかつ抑制的に、いろいろの経験を積んだ上官が判断をして、待てよというようなこともあり得るという意味で、ネガティブな意味で「束ねる」ということを申し上げておるというように私は理解をしておりまして、隊員の二十四条の判断にもかかわらず、そういうものにかかわらず、上官が武器の使用を命ずるということはないというように理解をいたしております。
  346. 和田一仁

    和田(一)委員 自分が攻撃を受けるとか、緊急不正、急迫不正の危機感を持った、そういう極限の状態に入ったときに、その自己の判断で発砲しろ、しろと言っておいて、しようとしたらちょっと待て、そういう場合には少々経験豊かなそういう上官の判断で、待てよ、待つということがあるんだと。そういうことになりますと、これはいよいよのときにやはり全部上官の顔を見ますよ、隊員というものは。そして、上官の顔色を見て、いいのかな、悪いのかなという判断がなけれはこれはやらないということにつながるんですよ。  そうではなくて、私が言いたいのは、そういうマニュアルでなくて、もっと世界国々がとっているようなそういうマニュアルがどうしてとれないのか。そのことを保証してやらないと、危ないところに行って、武器は持っていけよ、しかしそれはおまえの判断でやるんだよ、時と場合によっては待ったをかけるぞ、そういうことになると、一体どういうときに自分は使えるのかという限界がわからない。一回きりの命ですよ、これは。そういうことになるから私は、こういうあいまいなことでは困るのではないかということを申し上げたいんですよ。  どうでしょう、これ。もっと世界並みのことができないんですか。
  347. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 おっしゃられる趣旨はよく理解できないことではございませんけれども、今の自衛隊法の趣旨から申しますと、先ほど私は、九十五条の武器等の防護のための武器使用について言及をいたしましたが、これもあくまで自衛官個人の判断ということを前提にいたしておりまして、そういうもとでこの武器等の防護のための武器使用等も演練を重ねておることと思っておりますから、この建前で貫かれていく、このように存じます。
  348. 和田一仁

    和田(一)委員 PKO活動が行われたことによってその局地における紛争がおさまった。大変結構なことだと世界が評価する。その評価は結局、国際連合がそういう判断をしてPKO活動をやったことである、こういうことだと思うのです。そしてそれに参加した国々もまた、よう貢献してくれたな、こういう評価をもらえるんだと思いますね。  それで、もしこれがうまくいかなかったとき、PKO活動をやれと判断して、そしてPKO活動をやった、特にPKFも行った、そして何かの間違いで、成果ではなくて逆に失敗があって責任を問われなければならないようなケースがもしできた場合、これは一体、主権が及んで指揮権があって出していった国それぞれが負うんですか、それとも国連が負うんでしょうか。
  349. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 いろいろな場合があろうかと存じますけれども、例えば軍事部門に参加する軍事要員、我が国の場合は自衛隊ということになりますが、これが刑事責任に問われるというような事態につきましては、現在私どもが承知しております国連のモデル地位協定の考え方に従いますと、派遣国が専属的な管轄権を持つというふうになっております。その他の場合につきましては、公務であるかどうかというようなことでいわゆる裁判権の振り分けというものが行われる仕組みになっております。  その他、任務の遂行中に現地で違法行為があったという場合にどのように処理をするかということは、これはいろいろなケースに応じまして、現地の裁判権と派遣国の裁判権の間、あるいは国際法上の責任を派遣国がどの程度負うかというような問題がございますが、これはいろいろなケースによって場合が違ってくるだろうというふうに存じます。
  350. 和田一仁

    和田(一)委員 いろいろこれからPKOの様態も変わってくると思うのですね。そういうところにこれから派遣してやるわけなんですけれども、うまくいく場合ばかりとは限らないし、相当の無理もあるのではないかと思うので、そういうケースも考慮に入れながら考えていかなければいけないと思うのです。そういう、画一的でないだけに、私は、全体の計画が要請があってできるときに、やはり、今度の場合はこういう事態のところにPKO活動の要請があったよ、したがってこういう計画を立てたいという、その計画を閣議決定するときに、してから報告するのではなくて、どうだろうかという相談をして、そして国会意見をきちっと入れて、承認したよ、わかったという、そこの話し合いをどうしてできないのかと思うのです。そうでないと、これはやはりいろいろなケースを考えていっても非常に難しいな、こう思うわけなんですね。  私は、そういう意味で、一つ武器の使用をとってみても、先ほども言っていたように、例えば我が国の隊員が危険になった、それで自己防衛のために武器を使った、それはよろしいですね。使ったことによって、隣の地区にいたよその国のPKFの人が、それは、隣の日本の隊員が大変だったからといってサポートしてくれる。これは、受けないよと言ったってサポートしてくれるのですから。逆のケースが起きたときに、あなたの方はサポートしてもらえるけれども、うちの方はできないというようなことがどんどん出てくるんですよね。  ですから、そういうことを考えますと、やはり危険度やら現地の状況やらを国みずからが、国会みずからがきちっと把握して、そして政府は考える、そして要請を受けたそういうPKF活動に対して議論をして、そして、よろしい、行こうと言って国の責任で出せる。国の責任で出せる以上は、さっき申し上げたようなあいまいなことはなしに、きちっとして国際並みにやれる、そういう体制を私はやはりつくっていくべきだ。そうでなくて、何か国会の判断があると条件が変わるとか不安定であるとかいうことのために、無理に無理を重ねて、そして何とか出してからの処理だというようなことでなく、私は、あらかじめ反対意見があれば反対意見を十分聞きながら、国民の合意の上でこういうことは出していくべきだ、そのことが一番大事だ、これが国会承認の、私らが言うシビリアンコントロールだ、こう考えるのですが、重ねて総理、この点いかがでしょうか。
  351. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御指摘のようにシビリアンコントロール、いわゆる文民統制は大切にしなければならないということは、昨日もお話がございまして、そう思っております。そのためにこの法律案にいわゆる五原則でありますとか、あるいは実施計画について国会に御報告する等々、いろいろな要素を法律の中に備えておるわけでございます。  昨日も申し上げましたが、国連に対して、いわば条件つきの協定案というようなものが、国連が総合的な平和維持活動各国と約束いたします場合に非常に支障になるのではないかというようなことも実は考えておりまして、政府の責任で処理させていただきたいということをこの法案としてはお願いを申し上げているところでございます。
  352. 和田一仁

    和田(一)委員 時間になりました。終わります。
  353. 林義郎

    ○林委員長 次回は、明二十日水曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会