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参考人(巽外夫君)
お答えを申し上げますに先立ちまして、
一言おわびを申し上げます。
私
どもの
銀行におきまして、昨年の秋以降、元
支店長にかかわります出資法違反
事件並びにイトマン問題が発生をいたしまして、
世間を大変お騒がせいたしますとともに、我が国
銀行界の
信用に傷をつけるというようなことになった次第でございます。まことに申しわけなく、ここに
国民の
皆様並びに立法府の
皆様に対しまして、重ねて心よりおわびを申し上げます。
それでは、
お答えをさせていただきます。
イトマンの
経営につきましては、昨年の初めごろから、
不動産を取り巻きます環境が大変厳しくなってまいっております折から、
不動産関連投
融資が膨張をしまして、借入債務が急増してきたということもございまして、担当部では警戒感を持っておったようでございますが、私は、三月の十六日に信頼の置けます外部の法曹
関係の方から、伊藤氏は問題がありますよ、イトマンの社内に置くと大変ですよという御注意を受けたわけでございます。私
どもが早速調べましたところでも、伊藤氏は、雅叙園観光の仕手戦に深く関与する等方しからざる世評、経歴を有していることが判明いたしましたので、三月二十日、磯田前会長とも協議の上、河村前
社長に伊藤氏退社を要請することといたしました。
そこで私は、三月二十二日に河村前
社長を本店に呼びまして、伊藤氏をイトマンから退社させるよう強く要請をいたしました。河村前
社長は、伊藤氏は
不動産のプロであって、イトマンの
不動産部門にどうしても必要であるとして
当行の要請に応じようとはしなかったわけでございます。そこで私は、やはり伊藤氏は退社させるべきであって、それができないのであれば
当行は新規の
貸し出しには応じられませんよ、あなたの
経営責任も問われる事態となりますよということを強く申し渡したわけでございます。河村前
社長がそれでも応じませんでしたので、それではあなたはだまされているかあるいは脅迫をされているのではないですか、そう考えざるを得ないと言ったわけでございますが、本人はそんなことは絶対にないと承知をいたさなかったわけでございます。当時はわからなかったわけでございますが、最近の新聞報道で、立川株式
会社の株式に関しまして河村前
社長が伊藤氏と金融
会社から十億円を受領していたという記事を見まして、これが本人が動きがとれなくなった大きな原因ではなかろうかなと感じたわけであります。
その後、四月以降、
当行はイトマンヘの新規
融資は一切ストップいたしますとともに、私及び担当役員等から河村前
社長に対しまして、電話を含めまして何回となく、伊藤氏を退社させること並びに
不動産、ゴルフ場を中心とした投
融資の圧縮と債務圧縮を申し入れてまいったわけであります。その一方で、聞き取り
調査を中心に不透明な
不動産関係投
融資の実態
調査を進めましたが、
会社側の説明では納得がいかず、改めて河村前
社長に強く申し入れを行いまして、八月末から一カ月にわたって
当行調査部をイトマンに派遣いたしまして実地
調査をいたしました。この
調査は伊藤氏の妨害に遭いまして難航をきわめましたが、この結果、このままいくとイトマンの
経営に重大な危機が到来するという
認識を持つに至りましたので、河村前
社長に改めて
経営刷新を一層強く申し入れるに至った次第でございます。
このように
当行といたしましても、昨年春以降、メーンバンクとしてイトマンに対し伊藤氏の退社と
不動産投
融資の圧縮を強く申し入れます等、精いっぱいの努力をしてきたつもりではございますが、先方も独立した一部上場企業でございまして、これ以上となりますと、例えば常務会や取締役会の多数派工作などということになるわけでございますが、このような過度の
経営介入にもなるような対応は難しかったということ、
当行との
関係を見ながら
融資を行ってまいりました
銀行か多い中で、
当行とイトマンの対立が表面化するということは
信用不安を一挙に引き起こしかねず、表立った対応が難しかったこと等からおのずから介入には限界がございました。
イトマンに対する
当行の
融資でございますが、
当行はイトマングループのメーンバンクではありましたが、そのシェアは
昭和六十一年三月末の一五・四%から
平成元年三月末の八・七%と、
昭和六十年代を通しまして一貫して低下してきておりました。また、イトマングループの中核ノンバンクでございますイトマンファイナンスのメーンバンクは
当行以外の
銀行である等、
当行とイトマンの
関係は必ずしも外部からごらんになっているようなものではございませんでした。
これに対しまして、現段階での
当行のイトマンあての貸出金は、
平成三年七月末で千三百六十七億円、全体の借入額に占めますシェアは二七・七%、またイトマングループ全体では
当行の貸出金は計五千五百四十九億円、全体に占めるシェアは五三・二%でございます。これにつきましては、昨年十月以降、イトマンの
信用不安が表面化いたしましたため殺到いたしました他行からの肩がわり要請を受けまして緊急
融資を行ったものでございます。
当行は昨年九月、イトマンに対し実地
調査を行ったわけでございますが、その結果は、厳しいながらも再建は可能であると判断をいたしました。さらに、年商七千億の一部上場企業の中堅商社に不測の事態が起きますことは、一般の株主、従業員、
取引先、金融機関等に多大の影響が出ることになりますので、
当行はイトマンのメーンバンクとしまして、
経済及び金融秩序の維持のために、先ほど申し上げた判断のもと、必要な
担保を確保の上、緊急
融資に応じたものでございます。