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1991-09-05 第121回国会 参議院 証券及び金融問題に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年九月五日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  九月四日     辞任         補欠選任      谷川 寛三君     鹿熊 安正君      安恒 良一君     堀  利和君      諫山  博君     高崎 裕子君      古川太三郎君     高井 和伸君  九月五日     辞任         補欠選任      高崎 裕子君     諫山  博君      寺崎 昭久君     三治 重信君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         平井 卓志君     理 事                 大浜 方栄君                 斎藤栄三郎君                 山岡 賢次君                 北村 哲男君                 白浜 一良君                 近藤 忠孝君                 池田  治君                 三治 重信君     委 員                 井上 章平君                 石井 道子君                 石川  弘君                 石原健太郎君                 合馬  敬君                 狩野 明男君                 鹿熊 安正君                 陣内 孝雄君                 須藤良太郎君                 高橋 清孝君                 西田 吉宏君                 野末 陳平君                 岩本 久人君                 種田  誠君                 野別 隆俊君                 堀  利和君                 前畑 幸子君                 村田 誠醇君                 本岡 昭次君                 吉田 達男君                 木庭健太郎君                 和田 教美君                 諫山  博君                 高崎 裕子君                 高井 和伸君                 喜屋武眞榮君    事務局側        常任委員会専門        員        下村 純典君    参考人        株式会社富士銀        行頭取      橋本  徹君        株式会社住友銀        行頭取      巽  外夫君        株式会社日本興        業銀行頭取    黒澤  洋君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○証券及び金融問題に関する調査     ―――――――――――――
  2. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ただいまから証券及び金融問題に関する特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、寺崎昭久君が委員辞任され、その補欠として三治重信君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事三治重信君を指名いたします。
  5. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 証券及び金融問題に関する調査を議題とし、参考人富士銀行頭取橋本徹君から意見を求めることといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席いただきましてありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。  質疑に入るに先立ち、委員各位に申し上げます。  本日は、申し合わせの時間内で参考人に対し質疑を行うのでありますから、不規則発言等議事進行を妨げるような言動のないよう特に御協力をお願い申し上げます。  また、参考人には、委員質疑時間が限られておりますので、答弁は要点を的確に簡潔にお願いいたします。  それでは、まず委員長から参考人に対し質問いたします。  架空預金による不正融資事件は、どのような内部管理体制欠陥から生じたのか、明らかにしてください。
  6. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 富士銀行橋本でございます。  ただいまの委員長の御質問お答えいたします前に、一言おわびをさせていただきたいと思います。  このたびの当行にかかわる一連不祥事によりまして、世間をお騒がせし、皆様に多大な御迷惑と御心配をおかけいたしまして、信用存立基盤とし、重要な社会的使命を帯びております銀行といたしまして大変申しわけなく、この場をおかりいたしまして国民皆様、それから立法府の皆様方に慎んでおわび申し上げたいと存じます。  今後は、このような不祥事を再び起こさないよう万全の措置を講じますとともに、経営管理の諸制度仕組み運営など、あらゆる面にメスを入れまして経営体質の改善を図ってまいる所存でございます。その概要につきましては八月二十六日に大蔵省の方に書面で御報告を申し上げております。今回の一連不祥事に関します社会からの厳しい御批判につきましては、これを私ども謙虚に受けとめまして誠実に対応していく以外に信頼回復の道はないというように存じております。役職員一同銀行社会的責任を改めて自覚し、社会に支持され、お客様に信頼される富士銀行を懸命に築いてまいりたいというように存じております。  何とぞ一層の御理解、御指導、御鞭撻をお願いいたしたいと思います。  それでは、ただいまの委員長の御質問お答えしたいと思います。  委員長の御質問は、今回の架空定期による不正融資事件はどのような内部管理体制欠陥から生じたのかという御質問でございました。  お答えを申し上げたいと思いますが、今回の不正融資事件は、いずれも私どもが信頼し、権限を与えている役席者がみずから不正に走り、与えられた立場を利用して不正行為を行ったという事件でございます。特に赤坂支店におきましては、二人の役席者が共謀してこれを行いましたために、大変異例な長きにわたり大きな金額になったということでございます。  当行内部事務管理について申し上げますと、基本的には手続によってダブルチェック、すなわち相互牽制ができるような仕組みになっております。さらに、重要な事項につきましては、万一不正が行われたとしても、その日の業後あるいはその翌日に、監査資料等によりまして早期に支店長など第三者の目でチェックができる、発見できる仕組みになっております。このように二重三重のチェック仕組みがございます。にもかかわらず、これが有効に作動しなかったということが大きな問題であったというように反省いたしております。  このような事件を引き起こした行員を私ども銀行の中から出したということ、先ほど申し上げたような手続とか第三者による監査システム営業店段階で有効に働かなかったことにつきましては、やはり背景収益偏重収益至上主義営業方針が強く出過ぎまして、現場の支店長業績推進に傾斜し過ぎましたために、支店長ほか営業店責任者がこれらの管理システムを有効かつ適切に作動させ得なかったというように銀行事務管理運営に欠けるところがあったと思います。また、店内のコミュニケーションなど、人事管理につきましても欠けるところがあったと思いますし、倫理観を失った人間を見抜く判断力が曇ってしまっていたのではないか、このように考えております。  今回の事件を契機といたしまして、今後こうしたことが再び絶対に起こらないように、手続システムを見直しまして改善する必要があると改めて痛感している次第であります。同時に、我々の営業姿勢経営管理運営、そして人心にもすきや甘さがあったことを謙虚に反省しなければならない、このように考えております。  以上でございます。
  7. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ありがとうございました。  委員長からの質問は以上でございます。  それでは、橋本参考人に対し質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 山岡賢次

    山岡賢次君 自由民主党の山岡賢次でございます。  橋本頭取におかれましては御多忙のところ参考人として御出席をいただきましてありがとうございました。  普通ですとそういうことなのでございますが、しかし、きょうの参考人というお立場は、どういうことでおいでいただいたかはもう十分おわかりいただけると思うわけでございまして、最初お尋ねを申し上げるわけでございますが、頭取頭取に御就任になりましたのは平成三年の六月と心得ておりますが、間違いありませんですね。事件当初、もちろん責任ある役員の一人であったとは思うのでございますが、その最高責任者であった方は別な方であったと思うのでございますが、その方はだれであり、今どうしていらっしゃるか、ちなみにお答えをいただきたいと思います。
  9. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答え申し上げます。  事件当時、私ども頭取をいたしておりましたのは端田泰三でございまして、現在私ども会長職にございます。
  10. 山岡賢次

    山岡賢次君 偽造預金事件の際には、御行最高責任者立場にはなかったわけでございますが、きょうは全責任を持ってお答えいただく、そういうふうに心得てよろしゅうございますね。
  11. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 当行におきましては頭取経営最高責任者でございますので、私、経営最高責任者として全責任を持って誠実にお答えいたしたいというように考えております。
  12. 山岡賢次

    山岡賢次君 ところで、質問の前にお伺いしたいのでございますが、御行の現在の資金量業界で何位でございますか。私がお伺いしたいのは、御行業界においてどのような地位を占めている銀行であるのか、こういうことをお伺いしたいわけでございます。
  13. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  私どもは、現在日本業界で第五位というように心得ております。
  14. 山岡賢次

    山岡賢次君 現在は第五位でございますが、昭和四十六年だったと思いますが、第一銀行勧業銀行か合併をしたわけでございます。それ以前においては資金量では業界第何位であったのでございましょうか。
  15. 橋本徹

    参考人橋本徹君) その前は第一位でございました。
  16. 山岡賢次

    山岡賢次君 私どもは、富士銀行といいますと業界の第一位とずっと思っていたわけでございますが、現実には業界の一位という期間はどのくらい続いていたわけでございましょうか。
  17. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  戦後の混乱期につきましては資料がございませんので、確認できております範囲内では、昭和二十三年度から昭和四十五年度まで二十三年間、一貫して資金量で第一位でございました。  以上でございます。
  18. 山岡賢次

    山岡賢次君 ちなみにもう一つお伺いしておきますが、世界では何位でございますか。
  19. 橋本徹

    参考人橋本徹君) フォーチュン誌で調べた限りでございますが、これによりますと第二位がピークであったというように思います。これは昭和五十九年度から昭和六十一年度まで二位をキープいたしておりました。
  20. 山岡賢次

    山岡賢次君 ちょっとまくら言葉が長くなったんですが、私が申し上げたいのは、そういう世界第二位、こういう銀行か一体何をしておられたのか、こういうことを申し上げたくてお伺いしたわけでございまして、我々は銀行というものは絶対に信用できるもの、こういうふうにずっと思っていたわけでございまして、そういう点では銀行はまた日本経済発展の中核を今日までなしてきた、このことも私どもは率直に言って認めるところであるのでございます。  そういう銀行の中でもまたリーダー的な銀行富士銀行さん、このような巨額な不正事件というものを起こしたというか起こされたわけでございますが、きょうここに参考人でおいでをいただいているわけでございますが、率直に申し上げますと、野党の皆さんからは証人でおいでいただくべきだと、こういう声が非常に強かったのでございます。証人というのは法律上のまた厳正な問題がございますから、証券会社のようにある意味ではみずからが通達を無視した、犯罪に限りなく近い、こういう疑いがある。こういうことで証人喚問ということになったわけでございまして、銀行さんの場合には、まあ法的にいけば銀行内の一部の人が、あるいは行員犯罪を犯した。そして、銀行は法的に言えば一応被害者ということになるわけでございまして、そういう点から証人にはなじまない、参考人としておいでいただく、こういうことになったわけでございます。  しかし、私から見ますと証券は、言うなれば投機的なものでございます。上がるか下がるか、最初からそういうもので劣るわけでございまして、上がってもうけた人、これはねたましいわけでございます。下がればおもしろくない。こういう性格の中で行われているわけでございまして、大口投資家がもうけた、おもしろくない、そういう面もないではないと、こう言えるわけなのでございます。  しかし、銀行さんの場合にはそういうこととは根本的に違うわけでございまして、先ほど御自身のお言葉にもございました信用をその存立基盤としている。こう御自身合言っておられたわけでございまして、その信用をここで著しく傷つけた、しかもリーダーカンパニー御行さんが傷つけた、こういうことは私はある意味では、これはもう証券業界よりも銀行社会やあるいは国民に与えたインパクト、不信感、また今後の経済発展に与える大きなダメージ、こういうのがむしろ大きかったと思うわけでございまして、このことについていま一度どのように認識をされているのか、国民皆様の前でお答えをいただきたいと思います。
  21. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えをいたします。  赤坂支店などのいわゆる不正融資事件は、当行業務管理システムにつきましては、先ほども申し上げましたように二重三重のチェック体制をしいているところでございますが、その運営に当たる上級管理者に大きな管理疎漏があったことが直接の原因であると考えております。しかし、一連事件背景には、金利自由化の流れの中で収益重点傾斜をいたしまして、かつバブル経済の浸透がそれを助長したというようなことであったろうかと思います。そんな中で、経営として収益偏重収益至上主義に陥ったことがあろうかと思います。こうした中で、行員育成指導教育管理に万全を欠いたと言わざるを得ないと思います。これらにつきましては反省をしているところでございます。  平成二年度から、すなわち昨年度から当行収益偏重収益至上主義の弊を改めまして、先進ベストバンクという新しい企業理念を打ち出しまして、広く社会に支持される銀行を目指してスタートしたところでございます。そういった状況の中でこういった不正事件が続いだということは、まことに残念かつ遺憾に存じているわけでございまして、世間をお騒がせした点につきましては深くおわび申し上げます。  現在、一連事件反省を踏まえまして体質改善委員会なるものを設置いたしまして、経営管理の諸制度仕組み、そしてその運営などあらゆる面にメスを入れまして、再発防止に万全を期すとともに、新しい経営理念、すなわち先ほど申し上げました先進ベストバンクの実現に向けて最大限の経営努力を傾注し、失われた信用回復に取り組んでいる次第でございます。もとより微力ではございますが、渾身の力を振り絞って事に当たろうというように考えております。どうぞ御理解を賜りたいと思います。
  22. 山岡賢次

    山岡賢次君 なぜそうなったか、どうすべきかということは、また後ほど触れさせていただきたいと思うわけでございますが、ただ、今申し上げましたように事件そのものは既に司直の手にゆだねられているわけでございまして、本来は事件そのものをここで証人のように問うのはなじまないことは私もよく心得ているわけでございます。  赤坂支店のみならず、神田東支店日比谷支店等々、個々についてはこの後野党さんの御質問もあるのではないかと思うので、全員が同じことを聞いていてもこれは時間の浪費でございますから、私からお伺いを申し上げたいのは、巷間いろいろ言われておりますが、事件にはなっていない、したがってそういう事件としては司直の手では取り上げられないとは思いますが、しかしいまだ国民の目や耳にはどうもはっきりしない、こういうことが二、三ございますので、その点についてここでお伺いを申し上げたいと思います。  すなわち、富士銀行さんと政界とのつながり、こういった問題が云々されているわけでございますが、特に橋本大蔵大臣小林秘書御行さんとの問題、これほどのようなことになっているのかということについてお尋ねを申し上げたいと思います。どういうことになっているのか御説明いただきたいと思います。
  23. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答え申し上げます。  橋本大蔵大臣小林秘書赤坂支店中村課長接触を持つに至った経緯について申し上げますと、当行取引先のある社長を介して接触したというように聞いております。この社長小林秘書と面識がございまして、取引関係で知っておりました中村渉外課長を同秘書紹介したことがきっかけで二人の接点ができたものと聞いております。  小林秘書借り入れ案件などを中村に御紹介いただいたようですが、これに対しまして中村が所定の手続をとるべきところをそうせずに、自分で不正に調達した資金を融通したと思われまして、この点で小林秘書に大変御迷惑をおかけし申しわけなく思っているところでございます。  以上でございます。
  24. 山岡賢次

    山岡賢次君 そのある社長と言いましたですか、それはどういう人でございますか。
  25. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  全日販という会社の花田という社長さんでいらっしゃいます。  以上でございます。
  26. 山岡賢次

    山岡賢次君 その小林秘書さんは、富士銀行と正当な取引だ、こういうふうに御本人は思って接触をされていた、こういうふうにお考えなんですか。
  27. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 小林秘書は、中村渉外課長銀行責任ある地位にある者だということで、そういう認識でおつき合いいただいておったと思います。
  28. 山岡賢次

    山岡賢次君 大蔵大臣秘書でございますから、特別に便宜を図れとか、あるいは御行さんに直接言わなくても中村課長さんにそういうことをいろいろ言ったんではないんですか。
  29. 橋本徹

    参考人橋本徹君) そういうことはなかったように聞いております。
  30. 山岡賢次

    山岡賢次君 抽象的なことを伺っていてもそういう御返事だと思いますから、具体論でお伺いをしたいと思います。  尾花万里子さん、御存じでございますね。
  31. 橋本徹

    参考人橋本徹君) はい。
  32. 山岡賢次

    山岡賢次君 この尾花万里子さんへの融資について、このことについて極めて具体的に、どういうことかといえば、その融資するに至った経緯とか、融資元、時期、金額、条件、担保の有無、あるいは資金使途返済状況等々、この際真実を国民の前に詳しく明らかにしていただきたいと思うわけでございます。  また、尾花万里子さん御存じですねと言ったら、はいと言いましたが、この際どういう人であり、富士銀行とはどういう取引関係にある人なのかもあわせて御説明をいただきたいと思います。
  33. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答え申し上げます。  尾花さんとは、平成二年四月に小林秘書の御紹介がありまして、平成二年五月からお取引が始まりました。最初普通預金取引だったというように思います。  この尾花さんは赤坂てんぷら屋経営されておられる人でございます。  以上でございます。
  34. 山岡賢次

    山岡賢次君 具体的にと、こう申し上げましたんですが、余り具体的じゃないんですが、私の調べましたところ総額で十三億円、こういう融資をされているわけでございます。もちろん中村課長の二千五、六百億円、この目ん玉が飛び出すような額から比べたらこれは小さな額で、最近金額が何か麻痺してきましたが、しかし一般的に考えて、今おっしゃるように御立派なお店の方でいらっしゃると思いますが、しかし一お店として十三億円というのは巨額な額でございます。それはきちっとした契約書を取り交わし、また借入利息はちゃんと払われているか、つまり正規のものであるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  35. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えします。  小林氏の紹介によりまして当行赤坂支店尾花さんとの取引が始まったことは、先ほど申し上げましたとおりでございます。  平成二年六月から三年五月にかけまして、尾花さんから中村課長借り入れ申し出がございまして、数回にわたって融資の実行かございました。総額は、先生がおっしゃいましたとおり十三億四百五十万円でございます。この融資は、尾花さんは御存じでなかったと思いますが、富士銀行資金ではなくて中村自分で調達した資金を融通されたものでございました。  この間、尾花さんは所有する不動産明細を提出されまして、必要の都度担保設定することを申し出ておられました。また、不動産の買いかえのためのつなぎ融資、それから既往借り入れの借りかえ、新規不動産の購入など、その使途を明確にしておられました。つまり、尾花さんは一連借り入れ当行からの正規融資であるというように確信しておられたと考えられます。  事実、平成三年七月、尾花さんから不動産売却代金の一部でお借り入れ返済をしたいという申し出がございまして、そのときに私ども赤坂支店担当者が、実はお貸し出しは一切ございませんよというように申し上げましたところ、尾花さんがびっくりされたというように聞いております。その後、今般の中村課長不正行為が発覚いたしまして正規手続がとられていなかったことが判明いたしました。  すなわち、契約も結ばれておらなかったし、どうもその間は金利の支払いもなかったようでございますが、この中村課長不正融資が発覚した後、いろいろ調査を求められましていろいろ事実関係を調べましたところ、このたび私ども尾花さんとの間で正規貸付契約を締結いたしまして、担保登記手続等も完了し、現在はすべて本来の正常な取引になっております。  以上でございます。
  36. 山岡賢次

    山岡賢次君 中村の不正を正常に変えた、こう言っておりますが、尾花さんは仮に中村課長からの不正な融資だということに気がつかないでいた、そうだとしても、今必要な都度担保の提供を申し出たとか、ある意味では借り入れ専門知識をお持ちでいらっしゃるわけでございまして、一年間も何の契約も結ばずに借入利息も支払っていない。こんなことは常識的におかしい、こういうことはお気づきになるはずだと思いますが、その点はどうなんですか。
  37. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  尾花さんに対しましては、昨年の七月に富士銀行から三億円の貸し出しを行い、翌月に回収したという経緯がございます。この昨年七月の三億円の貸し出しというものは富士銀行正規貸し出しであり、手続もきちんと行われております。これを取り扱ったのも中村課長でございます。  その他のものにつきましては、これまで契約が結ばれなかったことは御指摘のとおりでございますが、この間、尾花さんは当初から、再三再四彼女が所有する不動産明細を提出されまして、必要な都度担保提供することを申し出ておられたというように聞いております。これに対しまして中村からは、その都度不動産の処分とか買いかえが一段落した後でまとめてやりましょうというように申し上げて、結果的には一年間延び延びになってしまった、こういう次第でございます。
  38. 山岡賢次

    山岡賢次君 中村という人はこういうことをやるぐらいですからなかなか巧妙だったんだと思いますが、頭取のお話を聞いていますと、正規のものと自分で勝手にやったものをチャンポンにやっているんで、尾花さんもおかしいとは思いつつ気がつかなかった、こういうことだと思うのでございます。  それにしても、今、正常な取引に切りかえた、こういうふうに頭取は御説明でございますが、しかしそれじゃ、この中村がやっていた間、金は尾花さんのところに行ったわけですから、一年間の借り入れ利息というのはお支払いになっていないはずなんですが、それはどうなっているんでしょうか。御行かいただいたんですか。
  39. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  この貸し付けを当行からの正規貸し出しにことしの八月中旬に切りかえております。そして、七月に既に御返済申し出があったわけですけれども、御本人所有の不動産を売却された資金でこの借り入れの一部、約三億円を返済されておりまして、現在私どもへの借り入れが約十億円となっております。  御質問の、この一年間の貸し出しの利息はどうなっているのかということでございますが、これは払われていないようでございまして、また中村資金を融通した時点から当行貸し出しに切りかえたまでの約一年間の利息は支払われてないようでございますが、これを当行か請求するという立場にはないというように考えております。
  40. 山岡賢次

    山岡賢次君 そうしますと、結論的にはこの尾花さんと富士銀行さんの間では何ら問題はない、途中で、平たく言うと中村が間に入って悪さをした、これが問題である。そして尾花さん自身も何ら問題はない、プロじゃありませんから、途中で正しいのと中村が勝手にやったのと入り乱れていてわからなかった、こういうことだと、こうおっしゃっているのでございましょうか。
  41. 橋本徹

    参考人橋本徹君) そのとおりでございます。
  42. 山岡賢次

    山岡賢次君 そのとおりだといたしますと、巷間言われていることとは大分違うような感じがするわけでございまして、国民が思っているのと実際と、こういう乖離がどうして生じるのか、私はここでそういう問題も感ずるわけでございます。  それでは、もう一つお伺いいたしますが、この赤坂支店には例の中村の問題が絡みまして、二年前ですか、重大な事件とわかっていながらこれをもみ消そう、こういう事件があった、こういうことも伺っておりますが、新聞でも報ぜられておりますが、その点はいかがですか。
  43. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  二年前に赤坂事件が発覚しかけてもみ消しをされたというような新聞報道が確かにございましたけれども、事実はそうではございませんで、経緯をやや詳しく申し述べさせていただきたいと思いますが、事実は、平成元年の二月十三日に、ノンバンクから三十億円の預金について、預金はあるかないか、それから質権設定がされているかどうか、こういった照会がございました。支店で照会を受けた課長が即刻調査をいたしました結果、ノンバンクに担保として差し入れられた預金が平成元年の一月二十日に中途で解約されていることが同日中に判明したわけでございます。  当時、支店長中村課長は出張中でございましたので、副支店長から出張先の支店長へ即座に電話連絡がとられたわけであります。出張先で支店長中村に説明を求めましたところ、その件については不動産担保に切りかえるか、あるいは不動産を売却するなどして全額返済することになっているのだ、そのことについてはお取引先とも、またノンバンクの了解も得ているのだと。したがって、この照会は何かの間違いではないでしょうかという返答でございました。支店長は、了解を得て決着している話であれば、じゃ出張から帰って改めて調べてみようということにして、出張から二月十五日に帰ってきたわけでございますが、その前に、二月十四日にノンバンクから、預金担保不動産担保に変更することになっていた、それを失念しておったので、どうもこの間の預金の照会というのは当方の勘違いであった、大変申しわけない、こういう連絡がございました。副支店長は、これにつきましても出張先の支店長に連絡をしております。  その後、平成元年の二月二十日ごろ、すなわち支店長が出張から戻ってきましてから、土、日を挟みますので、営業日で言いますと二、三営業日目ということになりますが、二月二十日ごろに、中村が説明したとおりに、預金証書と質権設定承諾書が回収されましたために、当時の支店長としては本件は解決したものというように判断いたしました。その背後に今回発覚したような大きな不正が行われたというようなことは全く認識しておりませんでした。したがって、本部にも報告がなかったわけであります。  てんまつは以上のとおりでございますけれども、私から見ますと、いかにもこれは軽率なことであったと言わざるを得ないと思います。
  44. 山岡賢次

    山岡賢次君 時間がありませんから、もう銀行さんらしく懇切丁寧に説明していただくのですが、時間が迫っていますので、まだ聞きたいことはたくさんあるのでございますが、私が申し上げたいのは、この尾花さんの件と違って、こちらはよく調べてみるとおかしいことがたくさんあるわけでございます。  預金作成、解約証書の回収、こうやっているさなかで中途解約を無断でした、こういうことを支店長がちゃんと報告しないで、ルール違反で勝手に処理をしたとか、ちょっと専門的になるからこれ以上聞きませんが、証書を喪失して、払い戻し請求して、中途解約をしている。正当な証書がないにもかかわらずそういうことをしていて、なおかつノンバンクから了承した、こういうことだからやったのだと。了承したら解約する必要がないわけで、了承しないから解約をしたわけでございまして、そういうことをやっているのも専門のプロが見抜けなかった。あるいは中途解約から回収まで一カ月間もあったわけでございまして、これはもういろいろと国民立場からしてみれば、お金を借りている方からしてみればよくわかっているこどでございますが、担保が一カ月もなく平気で貸してくれている銀行なんというのはそうそうないわけでございます。大口投資家なら、大口の預金者なら別ですが、もう一カ月だって足りなきゃ差し入れろ差し入れろと、これが常識です。国民はそう思っています。何で一カ月もほっておかれて平然としていたのか、こういうことが私は管理者として全くよく理解できない。そういう点において、御行の内部の体制というのは一体どうなっているのだろうか、こういうことを申し上げたいわけでございました。  しかし、先ほど伺いましたが、管理体制が悪かった、そういうふうに言いますけれども銀行の人が急に悪者ばかりになったとか、あるいは銀行内の管理体制が急に悪くなったとか、頭取さんになったらおかしくなったとか、そんなことはあり得ないわけでございまして、先ほど申し上げたように、伝統ある銀行でございます。日本経済をしょって立ってきた、これも認めているのでございまして、そういう銀行かここに来て急に中身が悪くなった、こういう原因では私はないと思うわけでございまして、何に原因があるのか。それはやはりこういう事件を生んだ背景、こういったものがあると思うわけでございます。  このようなことが起こったのは、要するにバブル経済以前にはこんなことは起こり得なかったと、このバブル経済以降に協力預金あるいはノンバンクを通じた迂回融資、先ほどお話が出てきましたが、銀行の中ならチェックできるのです。それが外に出ていってノンバンクであるとか、あるいは協力預金をやらせる、こういう本来の銀行じゃなくて、銀行の外で、まあアウトローとは言いませんが、何か銀行じゃないようなことを平然とやっている。もちろん、バブル経済になってきたからそうやらなきゃ間に合わない、頭取は多分こう言うのです、お客様の多様化のニーズにおこたえしなきゃいけないと。そうかもしれません。しかし、本来の銀行業務のやることを失った、そういうことに原因があると思うのですが、いかがでございますか。
  45. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  先生のおっしゃるようなことが背景にあるというように私も存じます。赤坂支店事件など一連不祥事世間を大変お騒がせしているわけでありますが、この一連事件背景には、先生おっしゃるように、金利自由化の流れの中で私ども収益重点傾斜をいたしまして、かつバブル経済の拡大がそれを助長しました結果、経営の軸が収益偏重となりまして種々のひずみが生じていたというように思います。世間から経営上の重大な欠陥があるというように指弾されてもやむを得ないものでございまして、深く反省している次第でございます。  今後、その反省の上に立ちまして、不祥事再発防止に万全を期しまして、失われた信用回復すべく、もとより甚だ微力でございますが、一生懸命やっていくつもりでございます。
  46. 山岡賢次

    山岡賢次君 それじゃ最後に、今後一生懸命やると、このようなノンバンクを介した協力預金をやっていくというようなことはやらない、本来の銀行の姿に戻して、みずからの目の届く範囲で銀行業務をきちっとやっていくと国民の前でお約束をしていただきたいと思います。
  47. 橋本徹

    参考人橋本徹君) そのようにすることを皆様の前でお約束いたしたいと思います。
  48. 山岡賢次

    山岡賢次君 よくわかりました。それじゃ、そのようにお願いいたします。  終わります。
  49. 岩本久人

    ○岩本久人君 日本社会党・護憲共同の岩本久人でございます。  本日の参考人である橋本頭取にはもちろん今初めてお会いするわけでありますが、どうかよろしくお願いいたします。  私は、今回のこの委員会でもいまだなお明快にされていない大阪府民信組問題について、まず最初にお伺いしたいと思います。  去る八月三十日の衆議院の特別委員会におきまして、参考人は、富士の紹介で集められた千三百五十億円に上るあの大口預金、こういったものがいわゆるイトマン事件の関連企業に流れたということについて知らなかったと言っておられますが、私はどう考えてみてもこれはおかしい。そうしたことが報道された翌日、地元大阪を初め全国の関係者から、そのことについての大変ごうごうたる批判あるいは憤りの電話が殺到いたしました。  また、私自身考えてみましても、富士からはこの府民信用組合に対して常務理事を初め十一人もの役員を派遣しておられる。そして、その取引先については、その都度富士銀行の大阪支店等と相談をしながら実行されたという確証を持っているわけでありますが、その点について改めて見解をお願いしたいと思うんです。    〔委員長退席、理事斎藤栄三郎君着席〕
  50. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  本来、各金融機関の運用戦略はそれぞれの経営責任において行われるものでございまして、当信用組合の融資先につきましても当行チェックする立場にはございませんでした。確かに、当行からOBを含めまして、常務、営業担当理事など十一名を派遣しておりました。現在は九名になっております。当時十一名を派遣いたしておりましたけれども、ほとんどが支店長などの現場におりまして、府民信組の経営にかかわる情報を知り得る立場にございませんでした。中で、本来経営全般を見るべき立場にありました網島前常務理事からも、運用先についてはほとんど知らされていなかったというように報告を受けております。したがいまして、イトマンと当信用組合の関係も知らなかったようでございます。御指摘のような新聞報道につきましても、その事実関係調査いたしましたが、そのような相談を受けた事実はないと私ども聞いております。  ただし、実態が明らかになりました昨年十二月ごろには、府民信用組合の貸出資産全般について健全化を図るようにアドバイスした事実はございます。その前はございませんでした。  いずれにいたしましても、本来金融機関の運用戦略はそれぞれの経営責任において行われるものでございまして、当行チェックする立場にないとはいえ、全体の計数管理、すなわち一体、全体でどれぐらい大口預金を紹介したのかとか、そういった実態把握に問題があったわけでございまして、この点は極めて遺憾に存じております。
  51. 岩本久人

    ○岩本久人君 参考人にお願いしておきますが、もう少し簡単にお願いします。あなたの答弁の時間は私に皆カウントされるわけで、困ります。よろしくお願いします。  ただいま新聞報道のことを言われましたけれども、複数の新聞に一面トップでそのことが書いてあるわけですね。それなら、それに抗議をされましたか。  同時に、私がここで取り上げるということは、その関係者、つまり府民信組、それから富士銀行、それから監督官庁たる大阪府、取引先、そういったいろんな関係者からの直接間接の事実を聞いたその上で私は言っておるんですが、改めてその問題についてお願いいたします。
  52. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 新聞報道に対して抗議をしたかどうかということでございますが、確かにある新聞が、我々が府民信用組合の貸し出しの内容を承知した上で預金を紹介したと、すなわちそれは迂回融資に当たる、あるいはトンネル融資ではないか、こういうような記事がございました。私どもは、それは事実に反するということで、その新聞には抗議をいたしました。  先生がいろいろな方からお聞きになったということでございますが、私の知る限りにおいてそういうことはなかったというように私は聞いております。
  53. 岩本久人

    ○岩本久人君 金融界も御多分に漏れず、今や過当競争、無秩序化している。そういう中で預金獲得合戦というのは大変熾烈をきわめていおんですね。  そうした中で、富士銀行は大阪府民信用組合に対して、あなたのところが中心になって千三百五十億という多額な預金を集められた。そのこと自体どういうことなんですか。本来なら、そんなお金があるんなら自分のところへ貯金をしてくださいというのが筋ではないんですか。  そういったことを考えた場合、いろんな方が言われたように、やはり富士銀行として何が何でも名実ともに一番になるんだという一番病をかけて富士の拠点を関西の中心地大阪に置きたい、その関西戦略が作用したというふうに思うんですが、改めてお伺いいたします。
  54. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 御質問は二つに分けられるかと思いますが、まず、なぜ預金競争をやっているのにわざわざ自分のお客をほかの金融機関に紹介するのかというのが第一、第二点は、関西戦略の一環として大阪府民信用組合に近づいたんではないか、こういう御質問でございます。  まず第一の、なぜ預金を、預金をといいますか私どものお取引先を他の金融機関である府民信用組合に御紹介申し上げたかということでございますが、これは、先生も御存じのように、最近金利自由化が大変進んでまいりまして、特に大口定期につきましては各金融機関が自由に金利をクォートする、金利を提示する、こういうようになっております。したがいまして、金融機関によりまして金利がえらい違うわけでございます。私ども取引先の方は、富士銀行の出したレートは利回りが低過ぎる、もっと有利な利回りで運用できる預金先、金融機関があれば紹介してほしい、そういう御要請がございました。一方、大阪府民信用組合の方からも預金をしてくれるところを紹介してほしい、その両者のニーズを結びつけたわけでございまして、要するに、私どもの大口定期の預金レートではお客様のニーズに合わなかったということで私どもがその預金を取り込めなかったわけでございます。それが一つでございます。  それから、第二問の方でございますけれども、確かに関西地域というものは私どもも重要なマーケットだというように認識しておりまして、大阪地域での営業には大変熱心でございます。そのことは事実でございますけれども当行として、それが目的で大阪府民信用組合を利用しようとか、そのために預金を御紹介したということはございません。
  55. 岩本久人

    ○岩本久人君 あなたがどのように言われようとも、恐らく国民の大多数は納得しないことだろうと思います。後から、今のことを含めてもう一度詰めさせてもらいます。  私が調べました資料によりますと、富士銀行はいわゆる府民信組の不良債権のうち九百五十億円、約一千億円近い負債を肩がわりされるということになりますが、この中身はどういうことになっておりますか。
  56. 橋本徹

    参考人橋本徹君) これは個々の取引の内容でございますので、ちょっと御回答しかねるわけでございます。
  57. 岩本久人

    ○岩本久人君 事前にそれなりのことを言っておいたので資料をお持ちかと思ったんですが、そこにあったら後から相談して言ってください。  私の方から、時間がたちますから言いますが、あなたのところが負担をすることに合意をされたその中身は協和開運、つまり協和綜合開発研究所関連、例の伊藤寿永光氏代表の会社、これが八百二十九億円、さつま観光、例の許永中がオーナーをやっているここが百七億円、それから小倉南ゴルフカントリー三十億円、こういうことのようですが、この点について否定をされますか。
  58. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 個別のことでございますので、否定も肯定も申し上げられないと思います。
  59. 岩本久人

    ○岩本久人君 ということは、肯定をされたというふうにとるのが常識だろうと思っておりますが、もしそれを近いうちにやられるということになると私はこれは大変なことになると思うんですね。  あなたがそこに持っておられる資料にもあると思うんですが、私の調査では、この例えば八百二十九億の協和綜合関係で、ドリーム観光の株が六百七十万株、時価九十七億円ということになっておりますが、きのうの株のレートでいくとこれは八十二億円にしかならない。それから、雅叙園観光の関係のウイングゴルフカントリー、これが千百二十五枚で六百七十五億円相当の会員権があるというぐあいに言われておりますが、これはマスコミで報道されたように、既にイトマンにも同じものが出してある、つまり無価値です、これは。あるいはまた、さつま観光に至っては、その担保というのが二番、三番ということになっています。小倉南のゴルフカントリーでは、これも第一次に三十億でありながら、イトマンが七十億円で仮登記してあるということからいえばほとんど取れない。そういうことになってくると、トータルとして約九百数十億に対してあなたのところが確実に得ることのできる担保価値というのは百億、せいぜい百五、六十億、こういうことになるんです。そのことについてどういう御見解をお持ちか伺いたいと思います。
  60. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 個々の担保の内容につきましては私の方から申し上げるわけにまいりませんが、私ども、この大阪府民信用組合の再建計画につきましては、現在のところまだ最終的にどれくらいの資産を移管するとか、そのあたり確定いたしておりませんが、いずれにしても、そういった資産を分離して、それを私ども責任で回収していくということになるわけでございますけれども、私どもはそれをやる場合には個々の債権、個々の貸し出しの内容をそれぞれチェックいたしまして、担保のあるものは担保をとる。それから、担保がないものでも回収の引き当て、すなわちプロジェクトの中身だとかそういったことを十分検討して、プロジェクトから出てくる返済原資あるいは担保、そういったいろいろな面の保全を固めながらやってまいるつもりでございます。
  61. 岩本久人

    ○岩本久人君 大阪府民信組の再建計画についてはまだ定かでない、こういうようなことを言っておられますが、私が今ここに持っている資料、あなたのところも持っているということを私はきのう確認しました、監督官庁の大阪府、それからあなたのところと大阪府民信組との間における。  だから、時間があれはこれ読んでもいいんですが、ちゃんと「再建対策について」と。目標期間、九月末。総額、一千二百億。分担、富士銀行八百億、他行二百億、自力、南野理事長二百億、こう書いてある。それから、最終的にはいずれの資金援助分の再建後返済をするかと、他行を優先して富士を一番最後に回せ、こう書いてある。それから四ページには、当組合のボリュームの限界、平成三年九月仮決算のごとく、当組合のボリュームの下限は、預金が二千億だ、貸し金が二千億と考えられると。その次、当然富士銀行からの支援される資金約一千億は、一千億ですよ、ボリュームの下限を保ちながら、一般店ベースの年間預金増約二百億を五年間で解消することになると。あなたのところが合意しなくてこのようなものが確定するわけないんではないですか。そのことについて。  それと、大筋この大阪開運で、あなたのところは結果としてどの程度の焦げつきを覚悟しておられるのかお伺いしたいと思います。
  62. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  先生のお持ちになっている資料を私もまだ見ておりませんが、そういった再建案のたたき台のようなものがあることは事実であろうと思います。ただ、この内容については全関係者のまだ合意を見ていない段階でございまして、確定していないわけでございます。  では、我々がこの分離債権を担当いたします場合にどれぐらいロスが出るかということでございますが、これはまだその内容を確定しておりませんのではっきり言えませんし、個々に内容を詰めて、そして全額回収の方向でいこうということでございますが、最終的にどれくらいのロスが出るかということは今の段階ではわかりません。
  63. 岩本久人

    ○岩本久人君 私が考える限り、事はせっぱ詰まっているんですよ。この時期において日本一を豪語される富士銀行のトップのあなたがそのようなスタンスだということが後から申し上げる赤坂を初めとする二千六百億の預金証書の偽造を生んだ、こういうことにも私はなるんだと思うんです。今回のこの点については、監督官庁の大阪府の試算でも、最低見積もっても四百億から五百億はロスが出ると言われております。十分心してやっていただきたい。そのツケは最終的には、後から申し上げますが、どこへ来るのかということを考えた場合、やはりもっともっと真剣に、リスクが待っているなら予防するということにもっと力を入れるべきだ、このように思っております。  なお、これに関連して八月三十日の衆議院の委員会における鈴木委員質問したCP、つまりコマーシャルペーパー、これを活用して調達した資金を府民信組へ預金した実績は幾らか。何件、幾らということについて、約束でございましたので、お答えをお願いします。
  64. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  CPの件にお答えいたします前に、この大阪府民信用組合の再建計画につきましては、大分大詰めに来ていることは確かでございまして、これを最終的に合意する段階で私どももきちんとその辺やりたいというように思っています。  御質問のCPの件でございますが、大口定期の紹介残高がピークでありました昨年平成二年の十月末で申し上げますと、そのときのCPで調達した大口定期預金作成先数及び大口定期預金残高は、先数が二社、残高が三百五十億であります。
  65. 岩本久人

    ○岩本久人君 この問題の最後に意見を聞きたいんですが、この大阪府民信組の問題というのは、発生をした経緯からしてやはり大阪府当局の責任というものも私はあると思うんですね。この点についで一方の大きな当事者である富士銀のトップとしてはどのような御見解をお持ちかお伺いいたします。
  66. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  大阪府民信組の再建につきましては、監督官庁であります大阪府の主導のもとに、ことしの五月に発表されました再建計画の骨子に基づいて現在詰めが行われているところでございます。    〔理事斎藤栄三郎君退席、委員長着席〕  大阪府は、支援団の組成、それから再建計画の作成など、地域の金融、経済の混乱や信用不安を回避すべく、行政監督官庁の立場から積極的に取り組んでおられます。そういうことで、大阪府としても十分この責任を感じて対処しておられるというように存じます。
  67. 岩本久人

    ○岩本久人君 次の問題に移ります。  例の二千六百億円の架空預金証書詐欺事件であります。文字どおり、私たちから考えればまさに天文学的数字とも言える二千六百億円、今から数年前なら、地方の一つの県の一年間の総予算に匹敵をするお金ですよ、これは。そういったものが預金証書を偽造するというような形で詐取された。とても信じられないことです。なぜこのようなことが事前にチェックできなかったのか、とても残念でなりません。  簡単にこの内容を言いますと、赤坂支店で四十六枚の二千五百七十億円、神田東と日比谷で六枚の四十四億円、二千六百十四億円を、銀行員が五十二枚の証書を偽造して、質権設定承諾書と証書をノンバンクに持ち込んで、そこから銀行員が金を受け出して、それを取引先に与えた、こういうことなんですね。事実かどうか、それでなぜこれが阻止できなかったかについてお伺いいたします。
  68. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  おっしゃるとおり、総額二千六百十四億円、証書は全部で五十二枚ということで、特にこのうち赤坂支店の場合は四年近くにわたってそれが続けられたということで、なぜこのようなことが起きるかということで、御不審の点はもうごもっともだと存じます。  先ほど申し上げましたように、今回の不正はいずれも私どもが信頼して権限を与えている役席者がみずから不正に走り、そして与えられた立場を利用して不正行為を行ったという事件で、特に赤坂支店におきましては二人の役席者が共謀してこれをやったという極めて異例なケースでございます。そのために、赤坂のケースでは結果的に極めて長期にわたってこの不正が見抜けなかったということでございます。  そういうことなのでありますけれども、私どものところでは二重、三重にチェックする手続がございます。つまり、もし二人で共謀してやったとしても、支店長が日々の管理資料等を子細に見ておればある程度異常に気づくような仕組みになっておりますけれども、これがどうも有効に作動しなかったということでございまして、この点、私ども大変大きな問題意識を持っております。  さらに、今回の事件背景に、先ほども申し上げましたが、収益偏重収益至上主義営業方針が強く出過ぎまして、現場の支店長業績推進に傾斜をし過ぎたために銀行事務管理運営に欠け、そして経営者としての能力を疑わざるを得ないというように私ども思っております。  本件を機に、現場の支店長の意識改革を図りまして、業績と管理のバランスのとれた経営の徹底を強く痛感しているところでございます。決意を新たにいたしまして、このような事故が再発しないようにしたいと思いますし、健全経営のための体質改善強化を図りまして、新しい企業理念先進ベストバンクの実現に向けて全行を挙げて最大限の努力をしたい、このように思っております。  以上でございます。
  69. 岩本久人

    ○岩本久人君 なぜ起きたか。信頼をしていた役席の行為、不心得なことをやったからだ、こういうことではやっぱり国民は納得しないですね。  私のような素人が考えてみてもなぜかと、余りにも不思議でならないために、私は先日、地元の銀行でちょっと勉強してきました。また、きのうは参議院の大和銀行に行ってちょっと勉強してまいりました。重大な欠陥に一つ気づいたんですよ。それは何かといいますと、新聞の報道を見ますと、廃棄すべき証書をその日のうちにシュレッダーにかけると、こう書いてあったんです。それでそのことを聞いてみたら、私のところの地元の銀行にしろここの大和銀行にしろ、廃棄すべき証書は一月まとめてとっておいてその間に一回行内検査をする、そして他の係の者が点検をした後シュレッダーにかけるいわゆるちりにしてしまうと、こういうことなんです。それがなっていないじゃないですか。  例えばそういうような極めて初歩的なミスがあっておるんだということを指摘したいんですが、そういう問題はどうなっていますか。
  70. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  当行におきましては、書き損じた証書につきましては、これを保管しておくことによる事後の悪用ということも考えられるんだろうということで、これを防止する観点から、従来は、御指摘のとおり、その書き損じをした証書に相済み印を押しまして、その後、用後に二人の役席が立ち会ってこれをシュレッダーにかけて廃棄する、こういう仕組みをとっておったわけでございます。他の銀行では別のやり方をしておられると思いますが、私どもの方はそういう仕組みをとっておりました。重要帳票でございますこの証書が間違いなく廃棄されることをチェックするために、先ほども申し上げましたが、廃棄に当たりましては二人の役席者が立ち会って相互にチェックする、そういう相互チェックシステムをとっておったわけであります。  ところが、今回の不正融資事件におきましては、この二人の役席者が共謀いたしまして、記録の上では廃棄ということにして実際にはそれを廃棄せずに不正に着服して持ち出した、こういうことでございます。従来の手続では、こういった二人の役席者が共謀すれば事後的に本部検査等をやってもなかなか盲点が、何というか、わからないというようなそういう盲点を突かれたということは事実でございまして、したがいまして、今回の事件を契機に私どもこの点大いに反省いたしまして、書き損じをした証書につきましては、本部検査など第三者による事後監査を可能にするために即日廃棄をやめまして、相済み印を押して、そして使用不可能にした上で次回の本部検査が来るまでそれを保管して、そしてその検査の際に検査員立ち会いのもとにこれをシュレッダーにかける、こういうように手続を変更させていただきました。  以上でございます。
  71. 岩本久人

    ○岩本久人君 既に明らかになった数字でいきますと、今回の事故金額の二千六百十四億円のうち、最終的に被害額として明確にされたのが二百七十一億円、こういうことですね。先ほど私が言った大阪でどの程度のものが出るかということは別にして考えてみても、この二百七十一億円という額はとても大きいんです。何千億の話をするからいかにもそう大したことないようですが、私たちの庶民感覚からいえば百万円二百万円が死活問題なんです。それで命を落とす者もおるんですね。そういったことを考えた場合、一〇〇%あなたのところのミスでこれだけの欠損を出された。とてもそれは私たちとしては勘弁ならぬ話です。  最終的なツケは、これはどこへ行くんですか。お伺いいたします。
  72. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 確かに御指摘のように、二百七十一億円というのはとてつもない大きな金額でございます。ただ、この二百七十一億円がすべて損になるというようには考えておりませんで、現時点での回収見込み額は、はっきりはいたしませんけれども、私どもの腹づもりでは二百億円を超えることはないというように考えております。それにしても大きな金額であるということは十分認識いたしております。今後ともこのロスを極力縮小させるべく全力を尽くして取り組む考えでございます。  今後、お引取先に御迷惑がかからないように経営体質の強化に努め、広く社会に支持され、お客様に信頼され、役に立つ銀行、そういった銀行を目指して全力を傾注してまいりたい、このように考えております。
  73. 岩本久人

    ○岩本久人君 そうは言っても、結果としては利用者にかかることは事実ですから心しでやってもらいたい。  時間がありませんから次に行きますが、銀行系列のノンバンクだけで今十兆円程度の不良債権を抱えているというのがこの業界の定説になっているんですね、定説に。それで、では系列のノンバンクというものが果たして富士には幾らあるか、どういったものがあるか、これをまずお伺いいたします。
  74. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 私どもの系列ノンバンクとみなされるものには三つございまして、富士銀ファクター株式会社日本抵当証券株式会社それから芙蓉総合リース株式会社でございます。この三社がございまして、銀行業務の付随業務あるいは周辺業務とされておりますファクタリングですね、売り掛け債権の買い取り回収をやる、それから抵当証券業務、リース業務……
  75. 岩本久人

    ○岩本久人君 もういいです、時間がないから。聞いたことだけお願いいたします。
  76. 橋本徹

    参考人橋本徹君) そういったことです。
  77. 岩本久人

    ○岩本久人君 今回の二千六百十四億円を持ち込んだところのノンバンクの名前が十五社ということですが、その名前を明らかにしてほしいと思います。
  78. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 同様の御質問、御要請が去る八月三十日の衆議院の特別委員会におきましてもございました。私、その際、ノンバンクの御了解を得た上で名前を提出させていただきたいと申し上げました。その後、直ちに御了解をいただくべく先様と交渉をいたしておりましたが、全部で十五社ございます。そのうちの七社についていまだに御了解が得られておりません。御了解をいただきました八社につきましても、全部の名前を公表するということでなければ公表してもらっちゃ困ると、こういうことでございますので、本日もちょっとその公表を差し控えさせていただきます。
  79. 岩本久人

    ○岩本久人君 そういうところが、そういう締めつけ、締め、詰めをきっちりやらないことでまたずるずるいくわけですわね。なぜ名前が出せないのか。かたくなに彼らの言い分の方を優先されるということになると、富士銀行にはもっともっと大きな何かがあるんだと、こういう不信をもっと生むことになるんです。  では、了解を得た八社だけでもいいですからちょっと言ってください。時間がないので簡単に。
  80. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 先ほど申し上げましたように、この了解を得た八社も十五社全部の名前が公表されるのでなければ自分たちだけの名前を出してもらっては困ると、こういうことでございますのでこの場では差し控えさせていただきますが、先日も申し上げましたように、全部の御了解をとりまして近日中に書面でお出しするつもりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  81. 岩本久人

    ○岩本久人君 いずれにしても、強力なリーダーシップでやっぱりそれは早く出された方があなたたちも気が楽になるでしょう。なぜそういう姿勢をいつまでも続けるかと残念でなりません。  時間がありませんので次に行きますが、今回の事件ではあなたのところはノンバンクの求めに応じて結果として全部融資の肩がわりをされましたね。なぜそんなに簡単に応じられたかということと、肩がわりをされたということは、今度は第三者でなくて富士銀行か直接お金を貸したということになるわけでありますから、直接の当事者であります。融資されたという二十三社の名前を明らかにしてください。
  82. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  二十三社の名前を言えという御要請でございますが、私ども取引先のお名前はここで開示することは差し控えさせていただきたいと思います。おっしゃるように、私どもの直接の融資先にはなったわけでございますが、その名前につきましては、取引先に御迷惑がかかるといけませんので、ちょっとここで開示することは差し控えさせていただきます。
  83. 岩本久人

    ○岩本久人君 先ほど山岡委員質問に答えて、橋本蔵相の秘書富士銀行紹介した人の名前はと、こう聞かれましたら、ちゅうちょなく全日販の花田という人だと、こう答えておって、そこには迷惑がからぬのですかということも含めて、ちょっともう時間がない、ぜひとも明らかにしてほしい。社会正義に反することです、これは。  そして、私が思うのに、ノンバンクよりか私はこの取引先の方が、融資先の方が罪が重いと思うんです。なぜならば、架空預金証書であるということを知りながらそれをもとに金を借りておるわけだから、私はこちらの方がよほど罪が重いと思うんです。そういう意味からもぜひとも明らかにしてほしいと思います。簡単にお願いします。
  84. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 先ほども申し上げましたように、私ども取引先の名前はお取引先の了承を得ないままで開示することはできませんので御了承いただきたいと思います。  この尾花さん関連のこと……
  85. 岩本久人

    ○岩本久人君 いいです、時間がないので。
  86. 橋本徹

    参考人橋本徹君) そういうことでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  87. 岩本久人

    ○岩本久人君 とても理解できることではありません。要するに、富士銀行とすれば融資先ほどこでもいい、利益になればいいんだと、こういうこととしか受けとれないということを十分心しておいてほしい。  次に、損失補てんの問題ですが、三十六億三千万円、どのような信託で幾ら委託し幾ら損失があったのかなかったのか、それは穴埋めか上乗せか、さらに九〇年度はどうなっているかについて、時間がありませんので簡単にお願いいたします。
  88. 橋本徹

    参考人橋本徹君) それでは、簡単に答えさせていただきます。  私ども自体の損失補てん額は三千万円、それから私どもの関連会社、これ五社でございますが、これはそれぞれ申し上げますと、富士銀ファクターが一億二百万円、日本橋興業が五億四千四百万円、千秋商事、これが四億二千九百万円、芙蓉オートリースが十七億八百万円、エフジーエルインベストメントという会社が九億八百万円でございます。
  89. 岩本久人

    ○岩本久人君 簡単にお願いします、時間がないので。  では、最後にお伺いいたしますが、その前に一つほど、例の橋本蔵相秘書がらみの十二億とも十四億とも言われる迂回融資ですね。額的には私たちが見てはどう考えてみてもこれはべらぼうなんですね。そういった大変なお金を、どんなに大物であっても秘書が、その日ききでなるのか、本当になるものだろうかどうだろうかということについての大変大きな疑問がありますので、この点についての見解を一つ。  それから、今回の一連のことについての経営責任をどのように考えられるか。きのうの野村証券とかそれから日興のときにここでも話がありました。最大の責任のとり方はトップの頭取級が退職することだということを言っておられましたが、そのことも含めて経営責任をどのように考えておられるか、あなたのお考えをお伺いして、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  90. 平井卓志

    委員長平井卓志君) お答えは簡潔に願います。
  91. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 最初の、政治家の秘書の方が御依頼になれば簡単に十何億円も融資するのかという御質問でございますが、これはもうケース・バイ・ケースでございまして、御要請があったから融資をするということはございません。御要請があったから融資をするということはないんで、御紹介があった案件について十分審査をし、当行の審査基準に合うものは取り上げるということで、尾花さんの件は私どもの審査基準に合うから取り上げたわけでございまして、御要請があったから取り上げたということではございません。  経営責任につきましては、私どもも本件が背景経営姿勢とかそういった面にいろいろ問題があったというように承知しておりまして、経営責任につきましては、この事件の全容解明が終わったところでしかるべき処置をとるということでございます。  以上でございます。
  92. 岩本久人

    ○岩本久人君 終わります。
  93. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 公明党の木庭健太郎でございます。  先ほどから大阪府民信用組合のことが論議になっておりました。頭取からいろいろお話を聞いておるんですけれども、それではもやはりわからない。なぜこれほど巨額な金を自分銀行でもない一つの信用組合に貸し得るのか全く理解できない、そう思いました。  そこで聞きたいんですけれども富士銀行はこの府民信用組合だけじゃなくていろんなほかの信用組合にもこういった大口預金の紹介をいつもやっていらっしゃるんですか。
  94. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 大阪府民信用組合だけではなくて、ほかの組合あるいは金融機関に対して預金の紹介を行うこともございます。ただ、このような大阪府民信用組合のような大口、大きな金額のものはほかにはないというように理解しております。
  95. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 こんな大きな金額はと言われましたけれども、例えばほかのケースの場合、一番大きくてもどれくらいなんですか、どれほど今回の府民信用組合と差があるんですか。
  96. 橋本徹

    参考人橋本徹君) ちょっと手元にデータがございませんが、通常十億円単位のものだと思います。  なお、預金を他の金融機関に紹介するということにつきましては、今回こういった問題が非常に出てきておりますので、私ども最近これを禁止しております。
  97. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 禁止されることは結構なんですけれども、わからないのは、普通の場合は十億円単位、今回は千三百五十億ですか、なぜこんなに違うのか、なぜ府民信用組合だけが優遇されるのか、どうしてもわからない。なぜここだけ優遇しなくちゃいけないんですか。
  98. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 大阪府民信用組合を特に優遇したということではございませんで、大阪府民信用組合からそれだけ大きな要請があった。それから、私どものお客さんの中で高利回りの定期預金をしたいというニーズがございました。これがたまたまそういうニーズがミートした。その結果大きな金額になった。ただ、私どもこれを振り返ってみますと、やはりこんなに大きな金額になるということは当然問題でございまして、そこまで積み上がる前に残高を管理しチェックすべきであったと、こういうように反省いたしております。
  99. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今おっしゃったように、これだけ大きくなれば富士銀行としては責任があるはずですね、大口預金を紹介した側に。それは先ほどからおっしゃっている。何とおっしゃっているか。府民信用組合がイトマンにお金を貸し出したことを知らなかった。全くこれまた矛盾した言い方をされている。わからない。しかも富士銀行さんは、このイトマンの融資については昨年の夏の時点で額として二百億でしたかね、イトマンに直接融資されている。この分については昨年の夏に自分の方でストップされている。ストップすれば当然どうするか、その後。イトマンに対するほかの融資状況はどうなっているのか、イトマンの経営状態はどうなのかチェックされるのが当然だ。そうすれば昨年夏の段階で、それから推移を見守っていけばすぐわかるはず。それもされてないんですか。
  100. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 御指摘のように、イトマンの問題が出てまいりましたので、私ども融資を極力小さくするように努めました。当然のことながら、私どもの関連会社につきましてもそういうようにしてまいりました。ただ、大阪府民信用組合は私どもの関連会社ではございませんで、全く独立の金融機関でございまして、この大阪府民信用組合のバランスシートあるいは損益計算書、そういったものはほかの金融機関と同様に毎期、つまり六カ月ごとに御報告は受けておりましたが、その貸し出しの内容にまで深くタッチする立場にございませんでした。  以上であります。
  101. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 銀行業界のトップにいらっしゃる富士銀行さんですよね。そこが一応二百億融資しているわけです、イトマンに対して。それならば、いろんな意味で情報を収集し、イトマンに対する状況はどうなっているか、自分銀行責任でそういうことをチェックしているはずだと一般国民は思いますよ。本当にされてなかったんですか。
  102. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 大口預金を紹介していた時期にはそういった問題意識が全くございませんでしたので、しておりませんでした。ただ、昨年の十二月ごろにこの問題が表面化してきました段階で、一体この運用サイドはどうなっているんだろうかということで調べまして、その段階でこの運用先がそういったところだということを承知したわけでございます。
  103. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうおっしゃるんですけれども、この問題が起きたときにやはり私が思ったことは何かといいますと、昨年の夏に富士銀行さんがイトマンヘの融資を中止された。その時点で府民信用組合の大口預金の額はたしか約八百億円でした。ところが、その後大口預金を富士銀行さんはどんどん紹介する。そして千三百五十億円という額になる。結局、やっぱり富士銀行かストップした途端に大口預金をどんどん紹介する。外形的に見れば、一般の人が見れば、みんな知っているわけですよ、府民信用組合はどういうところか。役員も送り込んでいる。大口預金は紹介している。富士銀行さんの機関だと思うわけですよ、だれでも。ですから、やはり迂回融資をしていると外形的には見ざるを得ないわけです。周りの人たちはそう見るわけですよ。そのことに対する責任はどうとるんですか。
  104. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 私どもが常務理事以下十一人の人間を出向ないしはあっせんということで派遣しておりますから、非常に関係が深いというように外見上映るということはよくわかりますし、責任ということにつきましては、私どものお取引先を金融機関に御紹介したわけでございますから、その預金が払い出せなくなるということは絶対に私ども責任として避けなければならぬ。そこで、この大口預金が引き揚げられる段階で、私ども直接預け金等で府民信用組合に支援をし、その結果預金者にはお金は確実に返済されているということでございます。
  105. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一方の赤坂支店の問題、神田駅東支店、それから日比谷支店の問題ですけれども、この問題にしてもわからないことがある。  富士銀行さんは、神田駅東支店の不正が発覚した、それがわかった時点で総点検をなされたと言われた。総点検をした途端どうなるかというと、赤坂支店日比谷支店と急に見つかる。社内監査をやっているわけでしょう。大蔵省の検査もあるわけでしょう。そのとき発見できなかったとおっしゃる。なぜ総点検をしたらすぐにこうやって見つかるんですか。これもわけがわからない。説明していただきたいと思います。
  106. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 確かに、その総点検をするまで見つからなかったということは大変残念なことでございます。この間、私ども銀行の内部の検査も入っておりますし、大蔵省の検査も入っておりました。しかし、発見できませんでした。  今回発生いたしました事故はいずれも、先ほどから申しましたように、銀行か信頼し権限を与えている役席者がみずから不正をした、特に赤坂支店では二人の役席者が共謀してこれをやったという極めて異例なケースであったわけであります。しかも、その架空定期を使った、架空預金証書あるいは架空預金通帳を使った手口というものは、全く銀行の帳簿に痕跡を残しておりません。いわゆる全くのオフバランスでございますので、今までの検査手法では見つからないわけでございます。そういうこともありまして、先ほども申しましたように、これからは書き損じた定期は相済み印を押して次回検査までこれをとっておいて検査員立ち会いの上で廃棄する、こういう手続に変えたわけでございます。
  107. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そして頭取の方から、二年前の見つかりかかった件ですねとおっしゃっています。私たちは、もうその時点で不正融資が発覚していると思っていますけども、その件もお話しになっておりました。ただ、ある報道機関に対して、この中村課長ですか、こんな証言をいたしております。支店幹部は将来役員を約束されていたエリートだから、不祥事を表に出したくなかったのだろう。ここから言葉なんですが、要は返せばいいんじゃないか、心配するなど言ってもみ消してくれた。ただ、この段階できちんと発覚していれば自分は内部処分だけで済んだかもしれないという証言をしているんです。私たちは、幾ら頭取から説明を受けても、やはり支店ぐるみじゃなかったかと思わざるを得ないし、その点どうなのか。証言しているわけですよ。その点についてきちんとした答弁を求めたい。  もう一点お聞きしたいのは、富士銀行の場合は三店なんです、三店。そうすれば、なぜ同じようなことを各支店ができるんだろうか。お互いに悪いやつが連絡し合ってやるわけですか。ある意味では本社のどこかで見逃した分があるんじゃないかとも思います。その点についても回答を求めて、私の質問を終わりたいと思います。
  108. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 先ほどの御質問は、発覚しそうになったのになぜ追及しなかったのかという御質問だろうと思いますが、この二年半前のことをおっしゃっているんでございます。私の方では、発覚したんではなくて発覚しそうになったと、あくまでも。しかし発覚しなかったということで、発覚したというのは事実ではないわけであります。  平成元年の二月十三日にノンバンクから、三十億円の預金があるかないか、それから質権設定の有無、そういったことで照会がありまして、先ほども申し上げましたが、この照会を受けた課長がいろいろ調査したところ、担保に入っているはずの預金がないということで、これが……
  109. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それはいいんです。
  110. 橋本徹

    参考人橋本徹君) いいですか。
  111. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 はい。
  112. 橋本徹

    参考人橋本徹君) そうしますと……
  113. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 元課長が言っていることに対してどう思っていらっしゃるか。違うというふうに。
  114. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 元課長はそういうように言っておりますが、私どもの方は、その当時の支店長に直接聞きましたところ、彼の方はそうではないというように言っております。
  115. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ただいま入ったニュースによりますと、東京地検特捜部は本日午前中、旧埼玉銀行の東京営業部次長、これは外山といいますが、を逮捕いたしました。これは、預金の質権設定承諾書偽造でノンバンクから四十億円融資させたという意味では、今問題になっている富士銀行と同様の事件で初めての逮捕であります。  そこで、富士銀行頭取としての感想をお聞きしたい。
  116. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 他行の事件でございますので、不用意なコメントは避けさせていただきたいと思います。  私ども事件につきましては、ただいま捜査当局が捜査中でございまして、早晩その辺のところが明らかになるんだろうというように思っております。
  117. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最新の週刊文春によりますと、これは中村課長から聞いたことが出ています。「私は富士銀行に「汚れ役」を押しつけられた」ということであります。その冒頭の部分で、五月二十三日に発覚し、六月九日から七月二十八日まで何と五十日間にわたって富士銀行で缶詰にされたと述べております。どこに缶詰にしたのか、その間何をしておったのか、お答えいただきたい。当然、頭取に報告が来ているはずです。
  118. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 缶詰というように御本人が言っておられるようですが、私ども、缶詰にしたつもりはございませんで、御本人の了解のもとに御本人からいろいろ事情を聞いておったということでございます。
  119. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 監禁とは申しておりません、これは犯罪でありますが。五十日間も缶詰にしたわけでありますから、要するに事実を聞き出した、富士銀行は全貌をつかんでいると理解しております。この本人から聞き出したことは全部頭取のもとに報告されておりますね。
  120. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 私のところにそのてんまつの報告が参っております。
  121. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 では、何でも御存じだということです。  次に、先ほど二千六百十四億円の不正融資の件で、融資をしたノンバンクについてのお話がありました。八社は公表してもよいと承諾したということであります。この公表してもいいと言ったノンバンクが、これから申し上げますから、その中に含まれているかどうか。向こうが公表していいと言うんだから。  三井不動産ファイナンス、日本信販、オリックスアルファ、住商リース、オリックス、コスモ信組、夏目商事、ナショナルウエスト、M・B・M銀行昭和リース、シャープ・ファイナンス、YSファイナンス、総合ファイナンス、日貿信。以上、どうですか。
  122. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 確かにこの十五社中の八社は名前をディスクローズしてもいいと。ただ、条件がありまして、十五社全社がディスクローズをする場合にはディスクローズしていいということでありまして、まだあとの七社の承諾がどれておりませんので申し上げるわけにまいりません。御了承賜りたいと思います。
  123. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 残りの七社も今申し上げた中に含まれておりますか。
  124. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 大変恐縮でございますが、その点も確認することはできませんので、御了承賜りたいと思います。
  125. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 委員長、それは参考人だからしなくてもよいということなんでしょうか。これは国民の要求によって、国会として公共性を持つ金融の不正を今ただしているんです。こういう再発防止のためにこの委員会を開いて、そのためにあなたに来ていただいておるわけです。あなた方が動かした金あるいは不正融資になった金、これは国民の金なんですよ。これは経済の血液です。今の態度、許せないと思うんですね。  どうですか、委員長委員長からもお勧めになりませんか、今のこのことについてのお答えをいただくことを。
  126. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 委員長から申し上げます。  本日は参考人質疑でございますので、今のやりとりの中身については質疑者本人と詰めていただきます。
  127. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 では、これは理事会で問題になったけれども、答弁いかんによっては証人ということもあり得るということだと思います。  次に、このノンバンクからの金は、結局富士銀行く還流していますよ。その中から中村課長に渡った金はあるのかどうか。中村課長には一億八千万のリベートが行っている、これはもう明らかになっている事実です。行っていることは確かですね。どこから行っているのか。そして、そこから政治家へ渡っている可能性もあるんじゃないか。何しろ中村から全貌を聞いたんだから、わかっているはずです。
  128. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  本人からもちろんいろんな報告は受けておりますけれども、本人が不正に調達した金をその後どのように使ったか、そのあたりについてはつまびらかでございません。聞いておりません。
  129. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは五十日間も聞いたんだから。何を聞いているんですか。やっぱり行方がわからなきゃ悪質さもわかりませんよ、また銀行責任も果たせませんね。その答弁は私は成り立たぬと思うんですよ。
  130. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 確かに五十日にわたっていろいろ事情聴取はいたしましたけれども、私どもに対する回答にはやはり限界がございます。そのために私どもは、二百五十億の被害を受けたということで捜査当局に告訴いたしました。司直の手で今解明が進んでいるところでございます。その辺のところにつきましては、私どもの方では承知しておりませんで、これから司直の手で明らかにされていくということだろうと存じます。
  131. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 五十日間何をしておったのかと言いたい。  最後に、中村課長の転勤の件で大蔵大臣秘書からの電話があった、確かに衛藤秘書室長に電話があったと答弁されております。この小林秘書は、別の用事で秘書室長に電話を入れたついでに、残ってほしいという声がある、こう言ったと言うんです。ところが、衛藤元秘書室長にこちらから確認しましたら、名を名のって話があった、全く別の話じゃなくて、初めから人事の件で依頼したいと、そういう電話で、しかも残ってほしいというのじゃなくて、自分がアドバイスをいただいており、配慮できないかと述べたと言うのです。どちらが本当ですか、お答えいただきたいと思います。
  132. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 私どもが衛藤から聞いたところによりましても、ほかの話ではなく、中村の転勤を延ばしてくれないかというお話であったというように聞いております。そして、それにつきましては、それは私どもではそういうことで人事を動かすということはございませんので応じかねますというようにお答えしたはずでございます。
  133. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間が来てしまったので、残念ですが。
  134. 高井和伸

    高井和伸君 連合参議院の高井和伸でございます。  私の方は三問ばかり予定しております。簡潔に御答弁をお願いいたします。  まず第一に、一連事件架空定期預金証書をつくって云々、こういう事件の原因は、先ほどのお話ですと、金利自由化という環境があった、そしてそれを助長したバブル経済があった、こう申されました。そういった観点から収益偏重主義に陥った。陥ったというか、収益第一主義になった。この収益第一主義をとったその功罪。よかった点、悪かった点、この事件になったわけですから悪かったという面もあるんでしょうけれども。  そこで、私ども国民がよくわからないのは、なぜ収益偏重に行ったのか。金利自由化であるというようなことをおっしゃられました。その金利自由化になるとなぜ収益第一主義になるのか、そこらを具体的に答弁していただきたい。銀行頭取として、そういった経営戦略をとらざるを得ないその環境をもう少し具体的に、国民の皆さんにわかりやすくやっていただきたいということでございます。
  135. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  金利自由化でなぜ収益偏重に陥ったかということでございますが、御承知のように、ここ二、三年金利自由化が大変進んでまいりました。大口定期を初めMMCだとか、そういった形で私どもの調達資金のコストがどんどん上がってまいりました。  そうなりますと、これをカバーするためにやはり収益を上げなきゃいかぬという要請がございます。そういうことで、収益に力こぶを入れようというドライブがかかった。もちろん私どもとしても、それじゃ管理はどうでもいいんだというようなことは申しておりません。申しておりませんが、収益に非常に力を入れたために、結果的に収益偏重になってしまった。こういうことでございます。
  136. 高井和伸

    高井和伸君 その収益偏重主義のもとに、収益を上げるための銀行内の仕組み、そういったものが例えば営業成績を上げることによって出世が速い、あるいはボーナスがたくさんいただける、そういう仕組みがある意味では行員を独走させたということにつながっているんだろうと私思うわけです。  そこで、具体的に行内のことで、成績がいいと出世がどんなふうになっていくのか、あるいはボーナスはどのように査定されていくのか、そういった仕組みがやっぱり背景にあったんだろうと思うんです。そういった面で中村課長がこういった事件を起こした、そういった背景としての行内の営業至上主義、成績第一主義のバックを支える人事問題あるいは給与の問題、ボーナスの問題、それはどのように連動していたのか、御答弁願いたいと思います。
  137. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 御指摘のように、人事評価、教育、それから業績表彰、目標制度、いろんなそういった経営管理手法、仕組み、そういったものにやはり行員を営業偏重に走らせる一つのベースがあったということは私どもも事実だというように思います。したがいまして、今までは業績を上げれば支店長の覚えもめでたく、したがって昇給昇格で優位である、こういうところがございました。もちろん、それで管理はどうでもいいということでは今までもございませんでした。しかし、結果的にはやはり業績本位の人事評価が行われたという事実はあったと思います。  そういうことで、私どももこのたびこういった不祥事反省に立ちまして、事務管理面からのチェック体制を強化することはもちろんでございますけれども、そのベースとなった収益偏重収益至上主義、そしてそれを助長した経営管理仕組み運営その他に徹底的にメスを入れようということで、先ほども申しましたが、体質改善委員会なるものをつくりましてそこでやっております。したがいまして、御指摘になった人事評価の仕組み、業績表彰、そういったことにも管理というものを入れて、あるいは職業倫理とかルールを守ろうといったような側面からも十分に評価をしていこうというように改めていくつもりでございます。
  138. 高井和伸

    高井和伸君 今、行員の倫理の問題をおっしゃられましたけれども、先ほどの府民信用組合の問題を初めとしまして、銀行内におけるそういった経営方針を打ち出す機能が十分果たされていたのかどうかという面で、私の興味は常務会が十分に機能していたかどうかというようなことを考えるわけでございます。  そこで、具体的な質問をひとつ踏んまえながら、例えば大口預金を府民信用組合に紹介する、そういった決定はこれほどの機関でだれがしたのか、どういったことで行われたのか、行内の意思決定プロセスを御説明願いたいと思います。
  139. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  常務会におきましては、経営の重要事項について、経営方針でありますとかいろんな制度を変えるとか、そういったことについて審議をして決定いたしております。  お尋ねの大阪府民信用組合への預金の紹介をどういう機関で決定したかということでございますが、これは常務会でありますとか稟議だとかそういう仕組みを全く通っておりませんで、この大阪地域における営業並びに経営責任を持っておる関西駐在常務、この人の一つの営業方針としてこの大阪府民信用組合の期待にはこたえようではないか、またお客様でそういう高利回りの運用を求めているところには大いにこたえようではないかと、その結果ああいうことになったわけです。  ただ、先ほども申しましたように、それが千三百億というような大きな金額に積み上がるまでこれに問題意識を持っていなかった、あるいはその計数を集計して管理してチェックするという仕組みがなかったところに大きな問題があったというように存じます。
  140. 高井和伸

    高井和伸君 最後の質問、一問でございます。  経営偏重という立場もございますけれども信用維持を第一とする銀行としては武士は食わねど高ようじ、こういった経営方針がとれなかった理由は何だったんでしょうか、それ一点で私の質問を終わります。
  141. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  武士は食わねど高ようじということでございますが、御質問の趣旨は、銀行はもうかりさえすれば何でもやるのかという御批判であろうと思います。いわば銀行の存在意義そのものにかかわる大変難しい御質問でございますが、一つには、銀行はお客様の資金需要に安定的におこたえしていかなければならないという重要な使命を持っております。この資金供給を安定的にやるためには、やはり資産の増加を支えるための自己資本が必要でございます。御存じのようなBISというようなルールもございますし、自己資本を充実していく必要があるわけでございます。そのためにはやはり安定した収益力を保つことが必須でございます。一方、今まさに問題となっておりますのは、銀行経営の軸が収益に偏り過ぎておる、そのために種々のきしみを生じている、この点でございます。  私どもは、先ほど来申しておりますように、収益ナンバーワンを一時期経営目標といたしました。その結果、収益偏重収益至上主義に陥ったことを深く反省している次第でございまして、銀行はもうかりさえすれば何をやってもいいのかという社会的な御批判の声をこの際謙虚に受けとめまして、今後はより一層お客様の役に立つ金融サービスを提供し、経済社会の健全な発展に寄与していきたいと思っております。また、社会の常識から逸脱したようなことは絶対やらないというように私ども考えております。  以上でございます。
  142. 高井和伸

    高井和伸君 ありがとうございました。
  143. 三治重信

    三治重信君 民社党ですが、質問時間が本当に少ないので、一つだけ御質問します。  ずっと各質問者から問題になっております大阪府民信用組合の問題なんですけれども、この大政府民信用組合というのはその前に豊国信用を合併して、問題のあったものを合併している。府としては大変困っている府民信用組合だろうと思うんですが、なぜこういうふうな府でも困っている大阪府民信用組合というものをおたくが全面的に力を入れて助けたのか。これはやはり大阪府と何か特別な関係をつくろうとしてやったのかということが一つ。  質問を一緒にやりますから聞いていてください。  それから、大口定期預金はおっしゃるとおり高利回りというお客さんのニーズで紹介したということですが、それならこんな信用のない府民信用組合でなくてもっと信用のある信用金庫や信用組合をたくさん富士銀行は持っていたはずなんですが、どうしてここへだけこんなに大きくやるのか。今までの答弁ではほかのところはほんの十億程度の紹介しかやらなかったと。では、なぜここだけこういうぐあいにやったのかということが二つ。s  それから、今までもこういうことを銀行として、こういうあやふやな金融機関を戦略的に応援して立て直すようなことを、自分の系列下にするためかどうか知りませんけれども、そういう戦略をおとりになっているのか。これによって大阪府民信用組合で損失は出ない見込みなのか、若干でも出る見込みなのか、その点ひとつ一括してお願いします。
  144. 橋本徹

    参考人橋本徹君) 三つ御質問がございましたので、質問を忘れちゃいけませんのでちょっと書いていただきました。  まず第一の御質問は、大阪府から頼まれてこの再建をするのかということでございますが、これは頼まれてするわけでございます。大阪府が、大阪府民信用組合というのは大阪府の監督下にある金融機関でございまして、これが困難に陥りますといろいろ信用不安が起きる、そういったことを回避するためにぜひこの再建に協力してほしい、こういうことで、大口定期がだんだんはげ落ちていく段階で、私どもは大阪府の要請を受けて当座のつなぎの資金を預け金とかそういった形で支援してまいりました。これはまあ応急手当てということでございますが、本格的な再建計画は、先ほど来お話に出ておりますように、大阪府と私どもと、それから大和銀行を初めとする金融支援団になるべきところといろいろ今詰めているところでございまして、確かに大阪府の要請によってやっているわけでございます。  ただ、私どもがそれにこたえております理由は、先ほど来申しておりますように、相当多額の大口預金を御紹介した、しかもその運用サイドがどうなっているのかよくわからないうちにそういうことをやった結果、こういった再建が必要になっているということで、そこで私どもはこの要請におこたえすべきであるというように考えてやっているわけでございます。  二番目は、府民になぜこんなに多く大口定期を紹介したのか、つまりほかの信用組合とか機関があるではないか、こういう御指摘でございますが、確かにほかにもございます。ございますが、この府民信用組合とは従来から大変親しいおつき合いをしておりまして、先生方の御指摘にもございますように、常務理事を初め十一人もの人間が行っておるとか、そういったことで特に親しくしておった信用組合でございました。これはもう確かでございます。そこで、そこからの強い要請があったということ、それと今の運用サイドのことをほとんど知らなかったということ、それからお客様から有利な運用のできるところを紹介してほしいといういろいろなもろもろの理由から、この府民信用組合に大口定期を多額にあっせんをした。  ただ、その千三百億になったということは幾ら考えてもこれは大き過ぎます。これを途中でどこかが、司令塔が集計をしてこの辺で抑えようというようなことをしておらなかったのが、私ども大変残念でありまして、その点は深く反省をいたしております。  それから三番目に、この大阪府民にこれだけ力を入れたのは、私どもが関西地域戦略を進めていくためにこの信用組合を合併するとか、あるいはその信用組合を核にして大阪、関西戦略を進めようという意図ではなかったのかという御質問でございますが、確かに私ども首都圏の次に大阪地域、関西地域というのは大変重要なマーケットであるという認識でございまして、これはやっていかなきゃいかぬということでございましたけれども、そのためにこの大阪府民信用組合を軸にして、そこの店舗網を活用しようとかなんとかというような、そういう戦略的な意味合いからこの預金を紹介したということでは特にございません。  以上でございます。
  145. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 参院クラブの喜屋武眞榮でございます。  橋本頭取にお伺いいたしますが、赤坂支店の巨額不正融資事件を初め、今回の富士銀行一連不祥事がなぜ事前にチェックできなかったのか不思議でなりません。その要因はどこにあると認識しておられるのかということについて、まず第一点としてお伺いします。  特に、貴行の内部監査体制はどのようになっておるのでありましょうか。会計監査はもちろんのこと、業務監査についても常任監査役に対する取締役の報告義務は十分に果たされているのかどうか、お伺いいたします。
  146. 橋本徹

    参考人橋本徹君) お答えいたします。  今回のこの不正が事前にチェックできなかったのかという御質問でございますが、残念ながら事前にチェックできなかったわけでございます。今回の不正はいずれも、これも前々から申し上げておるとおりなんでございますが、私どもが信頼して権限を与えている役席者がみずから不正を働いたと。そして、その自分の与えられた地位を利用しまして不正行為に及んだということでございますし、また特に赤坂支店の場合にはこの役席者が二人、お互いにチェックすべき役席者が二人共謀してこれをやった、こういう大変異例な事件で、これが長期間見抜けなかった原因でございます。  当行の事務チェックシステムを申し上げますと、基本的にはそういった二人の役席者あるいは役席者と主任とか、あるいは課長役席者とか、こういっただれかがチェックするというような相互牽制システムになっております。それから、仮に不正がなされたとしてもその日の業後あるいは翌日に還元される監査資料等によりまして異常な動きはある程度トレースできるという仕組みになっておりまして、その意味におきまして二重、三重にチェックする仕組みにはなっておるわけでございますけれども、先ほど来申し上げておりますような業績偏重、収益偏重といった営業姿勢の中で支店長の目がそこまで行き届かなかった。つまり、そういった監査資料に目を通す場合にもそういう問題意識を持たなかったという点、その辺が非常に残念なところでございます。  こういった今回のような事件を起こした行員が出ましたこと、また手続第三者による監査システム営業店段階で有効に働かなかったことにつきましては、先ほども申し述べておりますように、収益偏重営業姿勢があったということでございまして、ぜひこういった点を今後改めてまいりたいというように思っております。  それから第二問といたしまして、監査役あるいは公認会計士は一体ちゃんと見ていたのかということでございますが、公認会計士は私どものこの財務諸表を全部監査いたしておりまして、何もそこには問題はなかったという意見をいただいております。  特に、今期になりましてからいろいろ貸し付けの肩がわり等が行われておりますが、これはこの四月以来のことでございまして、平成三年三月期の財務諸表につきましては何らこれを反映する必要はないわけでございまして、公認会計士の報告では平成三年三月期の財務諸表は適正なものであるという御意見をいただいております。  また、平成三年六月二十八日の有価証券報告書の提出時点におきましては、本件にかかわる肩がわり債権について大部分回収可能というように判断しておりましたことから……○委員長平井卓志君) 参考人に申し上げますが、簡潔にお願いいたします。
  147. 橋本徹

    参考人橋本徹君) はい。  最終的にどういうことになるかということにつきましては、そういった最終的に回収がどうなるかということが未確定の段階で公表することは世間に無用の混乱を生ずる懸念があるというように判断いたしましたことから、重要な後発事象としても記載されなかったということでございます。
  148. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 以上で橋本参考人に対する質疑は終了いたしました。  橋本参考人には御出席いただきまことにありがとうございました。  。それでは、御退席いただいて結構でございます。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時十分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  149. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ただいまから証券及び金融問題に関する特別委員会を再開いたします。  証券及び金融問題に関する調査を議題とし、参考人住友銀行頭取巽外夫君から意見を求めることといたします。  この際、一言あいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席いただきましてありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。  質疑に入るに先立ち、委員各位に申し上げます。  本日は、申し合わせの時間内で参考人に対し質疑を行うのでありますから、不規則発言等議事進行を妨げるような言動のないよう特に御協力をお願い申し上げます。  また、参考人には、委員質疑時間が限られておりますので、答弁は要点を的確に簡潔にお願いいたします。  それでは、まず委員長から参考人に対し質問をいたします。  イトマンに対して巨額の融資を行うに至った経緯と、イトマン旧経営陣の乱脈経営にメーンバンクとして歯どめがかけられなかった実情について説明してください。
  150. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げますに先立ちまして、一言おわびを申し上げます。  私ども銀行におきまして、昨年の秋以降、元支店長にかかわります出資法違反事件並びにイトマン問題が発生をいたしまして、世間を大変お騒がせいたしますとともに、我が国銀行界の信用に傷をつけるというようなことになった次第でございます。まことに申しわけなく、ここに国民皆様並びに立法府の皆様に対しまして、重ねて心よりおわびを申し上げます。  それでは、お答えをさせていただきます。  イトマンの経営につきましては、昨年の初めごろから、不動産を取り巻きます環境が大変厳しくなってまいっております折から、不動産関連投融資が膨張をしまして、借入債務が急増してきたということもございまして、担当部では警戒感を持っておったようでございますが、私は、三月の十六日に信頼の置けます外部の法曹関係の方から、伊藤氏は問題がありますよ、イトマンの社内に置くと大変ですよという御注意を受けたわけでございます。私どもが早速調べましたところでも、伊藤氏は、雅叙園観光の仕手戦に深く関与する等方しからざる世評、経歴を有していることが判明いたしましたので、三月二十日、磯田前会長とも協議の上、河村前社長に伊藤氏退社を要請することといたしました。  そこで私は、三月二十二日に河村前社長を本店に呼びまして、伊藤氏をイトマンから退社させるよう強く要請をいたしました。河村前社長は、伊藤氏は不動産のプロであって、イトマンの不動産部門にどうしても必要であるとして当行の要請に応じようとはしなかったわけでございます。そこで私は、やはり伊藤氏は退社させるべきであって、それができないのであれば当行は新規の貸し出しには応じられませんよ、あなたの経営責任も問われる事態となりますよということを強く申し渡したわけでございます。河村前社長がそれでも応じませんでしたので、それではあなたはだまされているかあるいは脅迫をされているのではないですか、そう考えざるを得ないと言ったわけでございますが、本人はそんなことは絶対にないと承知をいたさなかったわけでございます。当時はわからなかったわけでございますが、最近の新聞報道で、立川株式会社の株式に関しまして河村前社長が伊藤氏と金融会社から十億円を受領していたという記事を見まして、これが本人が動きがとれなくなった大きな原因ではなかろうかなと感じたわけであります。  その後、四月以降、当行はイトマンヘの新規融資は一切ストップいたしますとともに、私及び担当役員等から河村前社長に対しまして、電話を含めまして何回となく、伊藤氏を退社させること並びに不動産、ゴルフ場を中心とした投融資の圧縮と債務圧縮を申し入れてまいったわけであります。その一方で、聞き取り調査を中心に不透明な不動産関係融資の実態調査を進めましたが、会社側の説明では納得がいかず、改めて河村前社長に強く申し入れを行いまして、八月末から一カ月にわたって当行調査部をイトマンに派遣いたしまして実地調査をいたしました。この調査は伊藤氏の妨害に遭いまして難航をきわめましたが、この結果、このままいくとイトマンの経営に重大な危機が到来するという認識を持つに至りましたので、河村前社長に改めて経営刷新を一層強く申し入れるに至った次第でございます。  このように当行といたしましても、昨年春以降、メーンバンクとしてイトマンに対し伊藤氏の退社と不動産融資の圧縮を強く申し入れます等、精いっぱいの努力をしてきたつもりではございますが、先方も独立した一部上場企業でございまして、これ以上となりますと、例えば常務会や取締役会の多数派工作などということになるわけでございますが、このような過度の経営介入にもなるような対応は難しかったということ、当行との関係を見ながら融資を行ってまいりました銀行か多い中で、当行とイトマンの対立が表面化するということは信用不安を一挙に引き起こしかねず、表立った対応が難しかったこと等からおのずから介入には限界がございました。  イトマンに対する当行融資でございますが、当行はイトマングループのメーンバンクではありましたが、そのシェアは昭和六十一年三月末の一五・四%から平成元年三月末の八・七%と、昭和六十年代を通しまして一貫して低下してきておりました。また、イトマングループの中核ノンバンクでございますイトマンファイナンスのメーンバンクは当行以外の銀行である等、当行とイトマンの関係は必ずしも外部からごらんになっているようなものではございませんでした。  これに対しまして、現段階での当行のイトマンあての貸出金は、平成三年七月末で千三百六十七億円、全体の借入額に占めますシェアは二七・七%、またイトマングループ全体では当行の貸出金は計五千五百四十九億円、全体に占めるシェアは五三・二%でございます。これにつきましては、昨年十月以降、イトマンの信用不安が表面化いたしましたため殺到いたしました他行からの肩がわり要請を受けまして緊急融資を行ったものでございます。  当行は昨年九月、イトマンに対し実地調査を行ったわけでございますが、その結果は、厳しいながらも再建は可能であると判断をいたしました。さらに、年商七千億の一部上場企業の中堅商社に不測の事態が起きますことは、一般の株主、従業員、取引先、金融機関等に多大の影響が出ることになりますので、当行はイトマンのメーンバンクとしまして、経済及び金融秩序の維持のために、先ほど申し上げた判断のもと、必要な担保を確保の上、緊急融資に応じたものでございます。
  151. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ありがとうございました。  委員長からの質問は以上でございます。  それでは、巽参考人に対し質疑のある方は順次御発言願います。
  152. 野末陳平

    ○野末陳平君 自由民主党の野末です。  相次ぐ銀行不祥事国民の間には不信の声が高まっておるわけですが、これは信じられないような不正融資、これはもう論外だと思うんですが、事実相当あった。これについてもまだまだ解明しなきゃならぬことが多いと思いますが、少なくもこれらの原因は数年前のバブル時代の銀行融資をめぐるはしゃぎ過ぎの営業姿勢にあったと私は思わざるを得ないんですね。  今となって反省を求めても遅いんですけれども、数年前、どこの銀行も土地やそれから株式などバブルの投資資金をどんどん貸しまして、事実上バブルを演出したわけですね。そしてバブルでもうけた銀行は、さてこれがはじけてツケが回る、このツケは自分でかぶらないで、こっちはよそへ回すというような、いつも銀行はうまくずるく立ち回っている、しかも無反省だというようなそんな感じを国民に、まじめな預金者にもうみんな与えてしまっている。  そこで、率直に言って私は、土地騰貴とか株のスキャンダル、いろいろ招いた諸悪の根源は、かなりの原因が銀行にあると言わざるを得ないんですね。少なくもそういう認識はおありですか。
  153. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  昭和六十年後半以降を振り返ってみますと、金融の証券化の進展、金融超緩和のもとで、借り手優位と言われる状況が一段と進みましたこと。一方、金利自由化の進展、BIS規制の導入等から、銀行経営面における収益の重要性が高まりましたことなどから、収益追求を焦り、折からの不動産、株式価格の高騰に乗る形で融資を伸ばしていった面が確かにございました。これが先生おっしゃいますように、いわゆるバブルを大きくする結果にもなったというふうに思います。  また、その過程で、業務運営体制の一部、特にチェック管理面において緩みが生じていたということを深く反省いたしております。
  154. 野末陳平

    ○野末陳平君 原因を当時の経済環境に求めたり、建て前のそういう反省よりも、やはり銀行そのものの体質というか、皆さん方のモラルの問題とか、そこら辺が一番大きかったと思うんですね。  このイトマン疑惑の河村元社長、住友から送り込まれましてイトマンを再建する過程において、これ私聞いたところによりますと、住銀がイトマンに多額の融資をプライムレートで貸し付けて、そしてイトマンはその金をかなり高い利息でもってサラリーローンの会社融資して利ざや稼ぎをやっていた時期がある。この真偽も含めて、こうした面でイトマンがそもそも当時から虚業にのめり込んでバブルにどっぷりつかっていくというその前兆がもう既にあった、わかっていたんじゃないか。  ですから、いわばイトマン疑惑は、これは住銀も同根で疑惑の共犯者だ、こういうふうに言えると思うんですが、その辺の認識は。
  155. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) その辺につきましては、私、残念ながらよく承知をしておりませんでした、イトマンの過去の問題。
  156. 野末陳平

    ○野末陳平君 委員長質問に対するお答えで、イトマンはこの伊藤寿永光にかき回されたんだと、彼が一番の元凶だというようなことでありまして、確かにそうですが、しかし伊藤寿永光を紹介したのはそちらの支店長だということもわかってまいりましたね。  そこで私、イトマン疑惑の不動産融資についてはいろいろと報道されていますが、後で絵画疑惑などを中心にお聞きしていこうかと思うんですが、その疑惑に入る前に、バブルではしゃぎ過ぎた銀行営業姿勢とその実態ですね、これをここで総括しておきたいんですよ。というのは、大口不正融資などは論外というけれども、しかし、そういうことを幾らでも惹起するようなそういう雰囲気がそもそも当時銀行にあったんじゃないかと。  ですから、例えば株式を買う資金まで、いいですか、巽さん、住友もそれをやっていたと思いますが、ほかの銀行も株式を買う資金まで貸したんですね。だれにもというわけじゃないんですよ、上場会社の役員とか部長クラス、そういう人は信用がありますからね。ですから、株を買うお金を貸して、株買いなさい買いなさいと勧めたわけですね。それから、土地を持っている法人とか個人に対しては、担保貸しというのは本来であれば銀行は低目低目に抑えて、六割ぐらいに抑えて渋い融資をしていた。ところが、当時どうでした、土地さえあれば時価の一〇〇%、一二〇%の融資をして、過剰融資ですね、そして土地を買わせたんですね。結果的に土地は高騰しましたね。今ではもう異常に思いますが、そのころは当たり前のようにやっていたようなんですね。というあたりに対してどういう反省を合していますか。経済環境がどうだった、そんなことで済みますか。
  157. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 御指摘の融資の面につきまして反省をいたしております点について申し上げさせていただきたいと思います。  私ども住友銀行は、昨年十月までは支店営業部門、大企業取引部門、国際部門、それぞれの本部の中に営業推進部門と審査部門を有する体制をとってまいったわけであります。本部制自体は、マーケット別にお客様との各種取引を行うに当たりまして、迅速な対応を可能とする面で少なからぬ貢献を果たしたものでございます。  しかしながら、反面、この体制が長く続いたこともございまして、ややもすれば営業推進面に対する審査部門の独立性を弱めることになったことは否定できないかと思います。これが先ほど申し上げましたような状況のもとで、先生もおっしゃいましたように、営業面におきまして行き過ぎた面が出てきた際に、審査部門が十分な抑制機能を果たせ得なかったことにつながったということで反省をいたしております。さらに、組織面での問題に加えまして、人事評価、支店評価におきまして業績面を重視し過ぎましたことも、これらの問題の背景としてあったと厳しく受けとめております。  私どもといたしましては、以上の反省のもとに、昨年十一月に審査部門を営業推進部門から独立せしめるなど組織面を含めた一連の処置をとってまいりましたが、信用によって立つ銀行といたしまして、二度とこのような事態を招くことのないように、信用と公共性という金融の原点に立ち返りまして、バランスのとれた経営を確立することによって信頼の回復に全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
  158. 野末陳平

    ○野末陳平君 昔は、銀行といえばまあとにかくうるさくてなかなかお金を貸さない、貸しても歩積み両建てとか拘束預金とかいろいろあって、しかし、それは結局は小口のまじめな預金者に対してはそうやって厳しかったんだと。大口とかあるいはうさん臭いところになると、どうしていいかげんな大口の不正融資などをしちゃうのか、もうそのあたりが全くわからない。収益優先だといっても、それだけで解決できる問題であるのか。  そこで、そのバブル時代に銀行かどんなことをやっていたか、また例を挙げてこちらで説明しますよ、巽さん言いにくいでしょうから。  ここに一つの土地がある。すると、A社にお金を貸してその土地を買わせる。今度はB社にまたお金を貸してその土地を買わせる。仲介に銀行か入ったりする。もちろん信託銀行とかいろいろ入れるでしょうが、少なくも土地転がしを始める。Cの会社にまたお金を貸して今度はBからCに買わせる。要するに、土地転がしと言っているけれども、地上げ屋がいるとか言いますけれども、そこに裏で絡んでいるのは銀行だ。つまり、銀行かお金をどんどん貸しながら土地転がしをやって土地の値段をつり上げる、その過程でももうけていたというようなことは住友でもありましたね。ほかの銀行でもありましたね。当時だれもそれを銀行内部でチェックしなかった、今になってチェック体制を厳しくした、こういうふうに先ほどのお答えは聞こえるんですよ。  ですから、銀行かもうかっても、土地の値段を上げて国民を困らせた、預金者を困らせた、こういうことはもう間違いだった。銀行の営業の原点というものを当時全くないがしろにしていたということを、今度内部を変えたということの裏返し。で、今皆さん本当に反省なさっているわけですか、こういうことを。
  159. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 深く反省をいたしております。二度とこういう事態にならないよう、我々としては厳正な業務運営を行っていきたいという覚悟をいたしております。
  160. 野末陳平

    ○野末陳平君 しかし、経済事情が厳しくなったりあるいは競争が激しくなるとまた何をやるかわからないという、基本的なモラルの問題が解決しなければ何ともならぬと思うんですが、その言葉信用して次の質問へ行きます。  少なくとも私は、ただあなたを責めているわけじゃおりませんで、土地の高騰などの社会悪というものの再発防止、それから銀行全体に反省を求めるということが二度とバブルを起こさないことへつながるんで、それでお聞きしているんですね。  当時、まともな仕事、まともな事業に対してはやはりなかなか没かった。一時ほどじゃありません。住宅ローンも昔ほどうるさくはない。しかし、土地を持っていれば無理やり融資をしようとしたのもあるんですね。要らないと言ったって貸すんだ、借りてくれと無理にも貸すというようなこともあったりして、そうなるとやはりまともな仕事にも貸すべきなのに、土地だけにあるいは株だけにお金を貸すことでもうける。これがもう銀行の本業だと錯覚していたかのごときそういうことがありまして、私は、やはり低金利の面とか金余り現象とかいろいろありますけれども、いろいろな不祥事が起きたというのは、これは変な個人がいて倫理観を失った特別の人物が起こした事件だとおっしゃりたいでしょうが、そうじゃなくて、そういうことの起きる体質を銀行自体がつくってそれを許してしまったんだ、余りにもそういうことに鈍感だった、ここを言いたいわけなんです。  ですから、行き過ぎた融資反省しているんじゃなくて、不祥事が起きたのは個人の問題じゃないよ、そういう個人をつくったのは銀行じゃないか、銀行にやはりすべての不祥事の基本の責任があり、経営責任がある、こういうふうに思っているんです。どうですか。
  161. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 先生、全くおっしゃるとおりでございまして、我々の銀行にここ数年そういう土壌が知らず知らずのうちに醸成されておったということかと思いまして、深く反省を申し上げております。
  162. 野末陳平

    ○野末陳平君 しかし、すべてが起きてしまって、私が質問してまたそのとおりだとおっしゃられても、これからそれはもう起きないんだという保証、それが国民にわからなければ銀行責任はまだ果たせないわけです。  強調したいことは、一般の預金者をやはりもっと大事にしなきゃいけないんだ、そしてまともな仕事に対して融資をして育ててほしいというその基本をおろそかにしたから、こういうことが窓口の末端まで改めて浸透するようなそういう教育もしなければ、ただシステムを変えてもだめだと思うんですけれどもね。  そこで、イトマン疑惑にも触れていきますが、このイトマン疑惑の中で絵画についての問題が、不動産融資よりも典型的なあのときのゆるふんの銀行営業姿勢で一番象徴的だと思うんですよ。絵画疑惑というのは、住友をおやめになった磯田氏とイトマンとが家族ぐるみのつき合いの中で始まったと思うんですね、あの疑惑そのものが。これは周知のとおりかもしれませんが、聞くところによると、全部で二百点余りの絵を六百八十億円で買い込んで今もてあましているらしいんですが、知りませんよ事実は、しかしどうやらそうだと。  そこで、まずピサという磯田氏の娘さん夫婦がやっているところなんですが、そこから百二十三億円余りでイトマンが絵を購入し、五千万円の手数料を払ったといいますが、このビジネスは、住友の磯田という後ろ盾があれはこそできたことであって、イトマンの河村社長と磯田さんとの魚心あれば水心のビジネス、つまりこれは通常のまともなビジネスじゃないわけですね。ですから、ここを押さえておけば傷は拡大しなかっただろうと、絵画に関しては。そういうふうに思うんで、メーンバンクの立場でこの磯田氏の動きをあなたは見ていらしたわけだから、そういう端緒についての不安、心配、そういうものはあなた自身はなかったわけですか。
  163. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 絵画の問題につきまして、私、正確な日時は記憶はございませんが、平成二年の秋になりまして、黒川園子氏がイトマンに対しまして、平成元年秋にロートレックのコレクションの買い手がいないかという打診を行った事実があるということを聞いたようなことでございます。なお、当然のことながら、当行は絵画取引には一切関係はございません。  それから、先ほど五千万円の謝礼云々というお話もございましたが、磯田前会長も新聞報道を見まして本人らに聞きただして初めて知ったようでございます。  ただ、いずれにいたしましても、当行会長の家族の会社が、後日それをたとえ返却したとは申しましても、そのような不当な利益を受けることは極めて芳しからざる事態だというふうに考えております。
  164. 野末陳平

    ○野末陳平君 これは磯田氏個人の問題にかかるところが大きいのであなたを余り責めてもいけませんが、問題は、ここをきっかけとして残り約五百六十億円という絵画を許永中なる問題の人物の手を経て西武と三越から購入した、イトマンが。窓口はイトマンの名古屋支店ですからね、購入したわけですね。とすれば、この絵画はイトマンの帳簿では当然購入資金として計上されていると思うんで、それをメーンバンクとして調べてほしいとお願いしましたが、実はどうなっていましたか。
  165. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  イトマンから聞きましたところでは、イトマンと許永中氏グループとの取引は絵画の売買であったということでございます。  それから、平成二年三月決算の商品勘定というのを我々もチェックしているわけでございますけれども、これはいろいろな商品がありまして、絵の問題ということにつきましては、先ほども申し上げましたように、私も昨年の秋になって初めて知ったというようなことでございます。
  166. 野末陳平

    ○野末陳平君 この許永中から入った絵が、売買というんですから購入資金で処理しているわけでしょうが、この絵がまたインチキで、五百何十億の絵ですから、その中に文字どおりにせものもあれば、あるいはにせの鑑定書つきの法外なめちゃくちゃな値段のぼろ絵もあったり、早い話が、イトマンは絵の素人なのにもかかわらず不動産、株をいじる、あるいはそれ以上のばくちみたいなつもりで何か三倍、四倍のばか高い絵画を買わされているわけですね。  そこで、こういう異常に全然今気がつかないというお話だと、これは歯どめをかけようがない。全くメーンバンクとしては野放しにしていたとしか、あるいは全く監視機能を発揮されてなかったということになるんですね。こんなのが普通なんでしょうかね。
  167. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  絵の問題につきましては、イトマンの中でもほんの数人でこっそりやっておったというふうに伺っております。したがって、我々は秋までは知らなかったということでございます。
  168. 野末陳平

    ○野末陳平君 こっそり数人でやっていてもその中に、イトマン直接ではありませんが、取引の相手に磯田氏の家族が入っているわけですから、磯田氏はこういうことは知っていたんじゃないかと思われますが、それはどうですか。
  169. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えします。  先ほど申し上げましたように、磯田氏自身も新聞報道で初めて知ったというふうに伺っております。
  170. 野末陳平

    ○野末陳平君 しかし、新聞で知るなら我々だって知るわけだから、そうするとメーンバンクが何のためにいるか。磯田さんは名経営者とか言われていたけれども、家族のためには全く何か目がくらんだとしか思えないが、まあそれはいいでしょう。きょうは磯田さんに来てもらいたかったわけなんですけれども、あなたですからもっと銀行全体の問題を聞きますが。  ともあれ、にせの絵を何百億つかまされたとイトマンもわかって、これはやられた、えらいことだと、こういうふうになったんだろうと思うんですよ。そこで、問題の許永中なる人物と交渉して絵を引き取ってもらう、そしてお金を返してもらうという話になったらしいんですね。ところが、それは話だけで、許永中なる人物は返済の約束はしたけれども実行はしていない。そうなるとイトマンは、売買ですから購入したんですけれども、帳簿をどういうふうに処理していくか。購入資金で載っているだろうと思うんですけれども、どうやらいつの間にかそれが貸付金となって、今度は絵を買ったんでなくて金を貸したと、こういう形になっているらしき節があって、ここらの事情がわからないんですよ。  不動産融資に関してもまだいろいろわからないことがあるんですが、この絵画については全くわからないんですが、帳簿を調べた結果、今はどうなっていますか。貸付金で処理されているんですか。その辺のことを正確に。
  171. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えいたします。  現在は未収入金で処理をされているというふうに伺っています。
  172. 野末陳平

    ○野末陳平君 未収入金ということは売買ということじゃありませんからね。となると、そこで一つ疑問なんですね。つまり、ここらに住友はやはりもうかかわって、ある程度磯田さんが何かその辺で、改善措置とは言いませんが、何か知恵を出していたか助力をしていたのか、かかわりがあるんじゃないかと思う。  というのは、さっきの名古屋支店の責任者である加藤さん、自殺なさいましたけれども、この人は住友出身ですから、この絵画の問題で困りに困っていた、どう処置していいかわからなかった、住友に泣きついたんじゃないか、相談に行ったんじゃないかと、そんな気もするんで、その辺が未収金に、売買がいつの間にか未収金にすりかわっているというあたりのからくりかもしれない。事実わからないんですから、住友がかかわっていたかどうか、その辺なんです。個人的にかあるいはメーンバンクとしてか。どうなんでしょう。
  173. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えをいたします。  売買代金を解約したものが未収金という勘定になっているわけでございます。  それから、念のために申し上げますが、磯田さんのお嬢さんのかかわったものは西武ピサ・ルートの百二十数億の絵のみでございまして、許永中関係の絵は一切関係はございません。その処理につきまして、先ほどおっしゃいました許永中関連の絵の処理につきましては、もちろん我々はそういうこと自体を知らなかったわけでございますから、一切がかわってはおりません。
  174. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですから、許永中の絵画取引に磯田氏の娘さんがかかわっているとは言っていませんが、しかし帳簿処理が途中で変わったりいろいろ事情がありそうなので、自殺した加藤さんが住友に行って住友がある程度手を差し伸べたのかもしれないなと、そう思ってお聞きしたんですが、知らないとおっしゃるようですからね。  そうすると、どうやら一連のイトマンの絵画疑惑は、この発端をつくった磯田氏が紹介してピサとの取引が始まったんですから、磯田氏はやはりある程度知っていたんじゃないか。何かそういう過程であなたに漏らしたとかそういうことがあったのか、全くそれはなかったのか、そこだけは確かめておきましょう。
  175. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えいたします。  全くそういうことは磯田元会長からも当時間いておりません。
  176. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうすると、不動産融資に関してのみ先ほど答弁にありましたようないろんなやりとりがあったということで、ここが金額も大きいし、また伊藤寿永光の絡みが一番大きいので、ここを一番メーンとしては問題にした、こういうことなんですか。
  177. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  昨年の秋、絵の問題を把握するまでは、おっしゃいますように、不動産開運でございます。
  178. 野末陳平

    ○野末陳平君 そういうところが非常に残念だと思うんですね。ただの二、三万の絵じゃないわけですね。しかもこの絵は、イトマンとしては商社ではあっても絵というものに対する全くの素人ですね。突然絵がブームだからといって、これはもうバブルですね。不動産以上におかしいわけですね、絵というものは。そこに何百億というようなお金をつぎ込むという、ここでもうけよう、余りにもこれは非常識ですから、そういう非常識なことが全然把握できていなかった、気もついていなかったというところにこれはやはり住友さんとしても非常なる大きな責任があると思うんですよ。金額の問題を言っているんじゃありませんから、バブルでこういうことになったというこの事実についてですから。  そこで、イトマンの連中はもうバブルで頭がおかしくなっていたとしても、メーンの住友というものは、銀行というものは常に冷静でなくちゃいけないわけですね。これが預金者のお金を預かるという立場に通じるわけですから、責任ある態度でもっと内部に干渉しなければいけなかった、そういうふうに今だからこそですが言いたいわけです。  それで、結論としては、この問題はどうも磯田さんの私情に絡んだような、ビジネスを私情でゆがめた、そういう点がそもそものスタートであったのではないか。だからこそ、そこにメスを入れられずにそのままずっと傷口が大きくなっていった。住友も知らないで過ぎてしまったんじゃないか。少なくも何かそういう私情におぼれた罪ではないか、こう思いますが、これは巽さん個人的でいいんですが、どういうふうにお感じですか。
  179. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  磯田前会長の家族とイトマンの関係につきましては、まことに遺憾ではございますが、そのことによって当行のイトマンに対する方針が左右されたということはございませんでした。ただ、磯田前会長も一時は河村、伊藤両氏の情報操作、撹乱によりまして疑心暗鬼となった時期もあったように感じておりますが、昨年夏ごろには河村氏に不動産融資の圧縮を求めたり、伊藤氏本人にも退社を強く迫られる等の行動をとっておりました。  さらに、念のために申し添えさせていただきますが、絵画につきましては黒川園子氏ピサルートと許永中のルートの二つがございますが、イトマンの絵画ビジネスの発端はピサのルートであることは確かのように感じますが、このルートは十分値打ちのある正常な商取引でありまして、許永中のルートとは、先ほども申し上げましたように、全然違うということだけ御理解を賜りたいと思います。
  180. 野末陳平

    ○野末陳平君 私は、こういう不祥事再発防止と、それからまじめなる小口の預金者たちの信頼を回復してもらわなきゃいけない。それが第一で、そのための疑惑解明なんですけれども、しかし肩がわりの五千億とおっしゃいましたか、以上のこの肩がわりの分ですね、かなりのこういう不良債権を抱えて、むしろ住友がこれからどういうふうに健全な経営姿勢に立ち直っていくのか、非常にその点も憂慮しているんです。その点についての見通し、これはもう磯田さんじゃありません、巽さんですからね、ですからこの見通しなどについて少し説明しておいてください。
  181. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  先ほども申し上げましたが、昨年の八月末からイトマンを実地調査いたしまして、非常に問題が大きいことはもう事実でございますが、やりようによってはやはり何とか再建できるんじゃないかと。万一これを倒産させた場合の影響というものは非常に大きいんじゃなかろうかということもございまして、問題となっておりますいわゆる不動産関連の固定したもの、これを分離して商社本来の事業、これはぜい肉を落としてやっていけば十分に再建が可能であるという判断をしたわけでございます。  ただ、この点御理解いただきたいんですが、固定的なものを分離したと申しましても別に不良資産を分離したということではございませんで、分離に際しましては、税法基準あるいは会計基準にのっとってイトマンサイドで引き当てを立てるとか損を計上するということにして、そういう固定的なものは別に分離したということでございます。
  182. 野末陳平

    ○野末陳平君 ひとつ小口の預金者に対しては厳しくという、軽んずるというようなことはやめて、一方また大口に甘くいいかげんだというこれまでの姿勢を改めて、ひとつ本来の姿勢に戻って銀行業務をしていただきたいとお願いしておきます。  終わります。
  183. 吉田達男

    ○吉田達男君 私、社会党の吉田達男でございます。  住友銀行は関西のしにせでありますし、収益力は斯界第一と言われ、まさにキング・オブ・バンク・オブ・ザ・イヤーということで、その名も冠たるものがありますが、今バブルがはじけた経済の中で次々と不祥事が起こってまいりまして、参考人としてこの席に頭取が立たれるようなことになってしまった。この住友銀行を愛し、期待してきた私も関西の者でありますが、ユーザー等々に対してまた国民に対してどのような所感をお持ちなのか、伺いたいと思います。
  184. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおりでございまして、私としても大変断腸の思いでおります。
  185. 吉田達男

    ○吉田達男君 断腸の思いにしてはまことに淡々でありまして、思い入れるほどのことでないかわからぬという印象でありますが、今銀行か置かれておる世間に対する責任というものはどうお考えなのか、この点について特にもう一度お伺いいたしたい。
  186. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  信用によって立ちます銀行にとりましては、十分な自己資本を保有いたしますとともに、各期の収益を重視してまいることが経営の基本と考えております。さらに、近年では金利自由化の進展、国際的な自己資本比率規制の導入等から、銀行経営上、収益というものの重要性が一層高まってきたわけでございます。しかし、当然のことではございますが、収益を重視するとは申しましても、そのために銀行の公共性、社会性、社会的な責任に反することまでをしてよいと、言いかえますと、収益を上げるためには何をしてもよいといった方針をとったことは決してなかったつもりでおります。しかし、ここ幾年かの間にいっしか私どもの組織並びに内部管理体制に一部緩みが生じまして、現実に一部収益追求の行き過ぎというものがありましたことは厳然たる事実として受けとめております。この点は経営に携わる者といたしまして責任を痛感いたしている次第でございます。私どもといたしましては、信用によって立つ銀行といたしまして、二度とこのような不本意な事態を招くことのないように、信用と公共性という金融の原点に立ち返りまして、人事、教育、組織、体制等、業務運営の全般にわたる見直しを行いまして、バランスのとれた経営を確立することによりまして信頼の回復に全力を挙げて取り組んでまいる決意をいたしております。
  187. 吉田達男

    ○吉田達男君 銀行の方針というか、頭取のリーダーシップというか、そのことがまた銀行の組織を通して業務を推進なさるわけです。  先ほど委員長質問に対して、特に業務遂行の中で審査部の強化について御答弁がありました。私も若干の資料を求めて見てみますと、本来、業務が仕事をなさるけれども、その業務が適切かどうかということを審査部機能で対等の立場チェックをしていく、誤りないような運営をなさる、これがオリジナルな姿であった。磯田頭取になってから本部制をしいて、営業本部の下に審査部を持ってきた。そういう機構の中でまた権限が営業本部長の方に移行する、そういう形がとられてきたんじゃありませんか。その機構そのものが利益第一主義の機構にあえて変えられた結果、このたびの不祥事が発生したということになりはしませんか。
  188. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  私ども住友銀行では、先生がおっしゃいましたように、昭和五十四年に総本部制を採用いたしまして、同一本部内に業務の推進部門と審査部門を有する体制をとりまして、お客様への迅速なサービスの提供等に注力をしてまいったわけでございますが、長らく同体制が続きました結果といたしまして、先生御指摘のとおり、ともすれば業務推進面に対する審査部門の独立性が弱まることとなったことは否めない事実でございます。また、内部管理面におきましても、ややもすれば計数、収益面を重視した嫌いがありまして、これらが相まちましてそこに不祥事件発生の土壌ができたものということで、深く反省をいたしております。  そこで、私どもといたしましては、昨年十一月に各本部から審査部門を分離独立させまして、業務推進部門とは異なります担当役員を任命しました上で、大口の貸出案件につきましては複数の審査担当役員がダブルチェックを行う体制に改めるなど、審査体制の抜本的見直しを実施したわけでございます。  さらに、その後も本部制廃止を含む大幅な組織改定を実施いたしまして、さまざまな業務に対しますチェック・アンド・バランスの強化を図りますとともに、人事評価、支店評価を初めといたします内部管理面につきまして所要の見直しをあわせて行いまして、万全の体制整備を図っておるところでございます。
  189. 吉田達男

    ○吉田達男君 この問題について進めたいと思いますが、銀行には経験がある。銀行は決して今まで事故がなかったわけじゃない。幾つかの事故を重ねながら、それをいかに克服するかということで機構をつくりつくりして、営業に対して審査機能を充実して来った経験が今日のオリジナルな姿をつくっている。総本部制という最近までの住友さんのやり方そのものが、むしろ伝統の機構の中では突出して営利追求主義であったと私は思います。頭取は、見解は余り変わりませんで今の機構改革になったと思いますが、やはりそういう経験を今後に生かして、内部機構に問題があった、こういう観点に立って推進を願いたいと思います。  次に、具体的な課題についてでありますが、先般衆議院で仙谷代議士が取り上げられまして、昭和六十年の十二月に神戸の南インターという会社が持っておられた土地を住友銀行の方が光進小谷社長紹介をして、この物件を小谷に譲渡されようという、中に入られた関係であります。その間、話がまだ決まらないうちに預かった登記書類一式をもってして登記の方を先行されたと。このことについては両者が現在争いの中にありますけれども、私も裁判記録を取り寄せてみると、銀行の業務としてはおせっかい過ぎる、これはやり過ぎであるというところが見られる。  そこで、この点についてお尋ねをいたしたいが、時間の関係もありますからこちらから尋ねますが、住友銀行か小谷氏と南氏とをどのような形で紹介されたのか伺いたいと思う。
  190. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  私の伺っているところによりますと、神戸支店で、南インターが非常に行き詰まってまいりまして不動産をどうしても処分せにゃならないと、それでそういう要請を南インターから受けまして支店で奔走したようでございますが、なかなか売り先が見つからない。たまたまそれが光進の小谷さんにお願いした際に、それじゃ考えてやろうということでお二人を御紹介したんだというふうに伺っております。
  191. 吉田達男

    ○吉田達男君 それは神戸支店の方ですか、または新宿新都心支店の方ですか。
  192. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 神戸支店から本店に話をつなぎましてできた話のようでございます。
  193. 吉田達男

    ○吉田達男君 それでは、いつ会って、その二人の合意がいつ成ったんですか。
  194. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) その辺の日付その他の詳細については私伺ってもおりませんし、よくわかりません。
  195. 吉田達男

    ○吉田達男君 私は、この点については銀行に照会いたしました。また、裁判記録もあります。正確を期したいと思って頭取に聞いたのでありますが、知らないと言われれば、私が言うことが間違っているかどうかについてお答えになられたい。  十二月の六日にお二人は会ったけれどもその合意がならなかったと、これは本当か。
  196. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) その辺の日あるいは今の内容についてはよくわかっておりません。私は存じておりません。
  197. 吉田達男

    ○吉田達男君 そこに知っておる人がいるわけですから、確かめられてもいいですよ。  それじゃ、この売買が成立していないので、宮崎支店長に求められて、その登記書類一件を、預かり証を宮崎支店長からとって南インターの方で預けたという事実はいつですか。聞いてくださいよ。
  198. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 現在今時点ではわかりませんので、後から調べまして御報告を申し上げます。
  199. 吉田達男

    ○吉田達男君 それではだめなんですよ。それは住友さんが業務の中でいかに、どういう仕事のしっぷりの中で、まあ逃げの住友と言われるときもあるし、天気の日に傘貸して雨の日には取り上げる住友とも悪口を言われたこともある住友の本当のところを頭取から聞いて、あなたはその誤解があるとすれば解かれなければならぬし、国民はまたそれが本当かどうか注視しておられるわけですから、それであえて聞いておるわけです。  この裁判記録の中では、この預かった登記書類を南さんの承認、確約を得ないままに登記をした、こういうふうに裁判記録でなっていますよ。それはいつですか。
  200. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 今伺いましたところ、十二月十三日だそうでございます。
  201. 吉田達男

    ○吉田達男君 ここに手元にある契約書では十二月の十六日になっているんですよ。契約書が十二月十六日で、契約していない前に登記が済んでおるというのは、これはまさに預かった書類で登記を先行したと、南さんに断らずに先行してしまったと、こういうことじゃありませんか。
  202. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 十二月十三日に一件書類を持ち出して、十六日に登記をしたということで、両者の合意ができているということを確認してやったというふうに伺っております。
  203. 吉田達男

    ○吉田達男君 それじゃ、登記の書類が、所有権移転の登記が甲表ですから十四日ですよ。だから私が指摘したとおりですよ。ということは、私は、銀行業務のあり方として問題が極めて多い。それは、そういう流れの中に話があったとしても、現に所有者である者の承諾を得ずに登記をするということは全くあり得ない。と同時に、銀行そのものが登記をしたと宮崎支店長が言っておる。登記をするのは、これは本職がされればいいが、銀行かなぜ登記をしなければならないか。どうですか。
  204. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えします。  銀行自身がやったんではございませんで、当然司法書士の手を経て登記が行われているということだと存じます。
  205. 吉田達男

    ○吉田達男君 この裁判記録の証言によると、つまり小谷被告とはこれまで大きな取引があったので、小谷被告から連絡があったので信用して南インターの連絡をとらないまま光進の土地に移転登記をしてしまいましたと、こう言っておるんですね、裁判で。これについては、そういうような業務をしてもいいのかどうか。
  206. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) その日付その他についてはっきりお答え今できなかった、これは私存じませんでしたのでございますが、この詳細につきましては現在裁判中でございまして、申し上げることを控えさせていただきたいというふうに存じます。
  207. 吉田達男

    ○吉田達男君 裁判中だから裁判の書類を、あなたの方の支店長が証言をされたことに基づいて私が言っておるのでありまして、反論があれば、また内部のことですからそれは調整されればいいかわかりませんが、裁判に出たものをうそだとは言えないでしょう。  そこで、続いてお尋ねしたいのは、これに抵当権を設定しております。しかし、それまでに融資を小谷氏に実行しています。これはいつですか、幾らですか、その使途は何だったですか。
  208. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  十二月十六日、二十億、土地の買い入れ資金ということで融資をいたしておるようでございます。
  209. 吉田達男

    ○吉田達男君 ちょっとお尋ねいたしますが、この土地の代金を本来は南さんに払わなければなりませんね。南さんに払って土地の所有権が移転するはずでありますね。だけど、南さんにまだ売っていないんですから、代金は入っていないわけですね。それを担保にとってあなたは小谷さんに融資をしたわけですね。その融資の額がもとの土地の所有者に行くならば理屈はまあ流れとして理解できますが、それがほかの方に行くというのはどういうわけですか。そういうような人さんの土地を担保にして、そしてそれでもって、その担保の上にのっとって融資をして、それをほかの金に使ったというのは、住友銀行はどこまで知っておられてやられたんですか。
  210. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  売買契約の内容につきましては、当時立ち入っておりませんが、南氏と小谷氏との間で、当該物件の売買について合意がなされたので登記持ち出しをしたというふうに聞いております。小谷氏とぐるになって勝手に当行か登記持ち出しをしたという事実はないというふうに聞いております。  なお、本件につきましては、南インターから所有権移転無効の訴えが提起されまして、現在大阪地裁で審理中でございまして、私どもの対応も最終的には裁判の結果に従うということになろうかと存じております。
  211. 吉田達男

    ○吉田達男君 訴訟中で裁判にゆだねなければならぬという分野はあります。それは、本質的にはいわば小谷さんと南さん、光進と南インター会社の間のことになると思うんですよ。しかし、銀行さんは金貸すときに使途を確かめずに貸すということはまずない。  ここに今、小谷光浩恐喝の冒頭陳述書がありますよ。これは六十年の十二月の終わりごろに、飛島建設側で蛇の目ミシン工業の株を買うならば、コーリンつまり光進ですね、引き受けますよと言ってやっておる事件のさなかですよ。あなたの融資された二十億円はこっちに行っておるんじゃありませんか。この株の買いあさりに行っているんじゃありませんか。
  212. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  これは、我々の方の神戸支店の借入金の返済に充当されております。
  213. 吉田達男

    ○吉田達男君 それは紛れるから言わなかったけれども、京都の方の物件の始末として入ったものですよ。そんなことはわかっているんですよ。それは能弁ですよ。今のは間違っています。金額も違います。二十億じゃありません、十五億です。
  214. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  先生おっしゃいますように、二十億のうちの二億は熱海の方の返済ということで入っているわけでございまして、あと十五億の返済並びにもろもろの費用ということで、全部合わせて二十億ということでございます。
  215. 吉田達男

    ○吉田達男君 熱海の方のは返済されていないんですよ。それはわかっておるでしょう。京都の方のが返済されておるのと混同させてもいけません。間違っています。詳しいことがわからなければ、またの機会もありましょうから再喚問でもいたしますが、この間仙谷代議士があなたに質問いたしまして、小谷氏、まあ今は被告ですね、恐喝であり、また証券取引法の違反の疑いもあって。この方に取引はどうしているんですかと言ったら、ピークは二百億だったけれども今はゼロだと、こういう御答弁がありましたな。ならば、取引をしないならば抵当権は抹消すべきでありますな。善良な市民の財産を取引のない者が押さえておくというはずはありませんね。
  216. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  先日、衆議院での席で光進あての貸し金の残高はゼロになっていると聞いた記憶があるというふうに申し上げましたんですがへまことに申しわけございませんが、これは私の聞き間違いでございまして、現在の貸し金残高は十二億円のようでございました。したがって、もちろん根抵当権は抹消はされておりません。
  217. 吉田達男

    ○吉田達男君 これは委員長、私は残高ゼロと議会で証言をしたことを信じていろいろ調査しながら質問をしておるんですよ。あなたは参考人ですからうそを言っても偽証罪になりません、証言法に基づいたものではありませんから。証言法に基づいていればあなたはガチャンですよ。それはなぜかというと、国民の前に出て国民に対して答弁をしておる。それについてうそを言わないということを前提でやっているんです。参考人だからといって国会で言った答弁が五日や六日で間違えましたといって済むようなものだと思っているんですか。それは議会軽視というものになりませんか。
  218. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  決してうそを申し上げたわけじゃございませんで、その節も私申し上げましたが、そういう記憶があると申し上げましたんですが、これは私の全く聞き違い、記憶違いでございました。その点申しわけございません。
  219. 吉田達男

    ○吉田達男君 記憶違いや言い逃れのようなことで議会の証言といいますか、参考人の発言がぐらぐら変えられるというようなことでは国会の権威において許されぬと思いますが、委員長で注意をしていただけませんか。それでなければ、今のようにのらりくらりしながらまた記憶違いでしたといって変えるようならば私もう質問できませんよ。
  220. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 参考人に申し上げます。  今の質疑、やりとりの中で、衆議院におけるあなたの御発言とただいまの御発言には相当差があるようでございますので、十二分に吟味し、間違いないように御答弁を願います。
  221. 吉田達男

    ○吉田達男君 残高があるということで精査をされた結果かと思いますが、それは全体的に光進との取引の中で残っている、こういうことであろうと思いますが、この南インターとのかかわりにおけるものか、つまりその物件を抵当権として押さえる論理的な流れの根拠があるのか。ついでだから押さえておけと、こういうことなのか。その辺の資金貸し出し、使用ルートについて御説明願いたい。
  222. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  根抵当権でございまして、すべての債権を担保するという意味合いでございます。
  223. 吉田達男

    ○吉田達男君 根抵当でありますから、あえて言えばそのようなこともできる。しかし、そのようなことをやることが倫理として許されるか、商売のルールとしてそれが適切かということになると、私は資金の流れの中で、これはこの物件にかかわるものだからといっていくならば論理もある程度届く場合もあるけれども、たまたま押さえているものが二百億ピークだった抵当物件があったはずなんですよ、裏づけが。その中でこの三十二億円相当のものを今なお押さえなければ十二億円が保証できないというような、そんな住友銀行さんの抵当の押さえ方なのかということを疑わざるを得ません。これは私は、経過からいってもやり過ぎのいわばミスもあるわけですから、これは解消をされたいと思いますが、いかがですか。
  224. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 御回答申し上げます。  先順位がございます。
  225. 吉田達男

    ○吉田達男君 その辺がクールなところかもわかりませんが、この間違いを犯したのは実は宮崎支店長だけではないんですよ。  読んでみますと、小谷を南に紹介されたとき等々を含めて住友の上層部と相談をしたということになっておるんですね。そのときのやりとりは相当長くあります。要するに、住友のトップと相談をしたと言っておるんですよ。トップと相談ということは、だれなんですか。磯田頭取ですか。西副頭取ですか。あなたですか。
  226. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  当時の業務の総括担当をいたしておりました西専務であったと思います。
  227. 吉田達男

    ○吉田達男君 ということは、今、一支店長ということでなくて、住友銀行そのものの経営判断の中で、あるいは経営方針を背景とする判断の中でこのようなことが行われた、このようなことをする銀行かと思われてしまうんですよ。しかし私は、いまだ時間も十分ではありませんし、すべて童言っておるわけではありませんが、善良な市民がたまたま話はあったけれども決めていない一件書類の権利書等々を預けたために、三十二億押さえられて、三年になるけれども、さっき言われた初めの二億円だけが入ってそれが無為になっておる。そういうような状態をあなたの銀行かされた、これについては誠意を持って正されなければならぬ。  たくさん不祥事はありました。ありましたけれども、私はこれに質問の時間を割いたのは、せめてこういう小さいことです、あなたの銀行にとっては、金額的に大きいことじゃないんです、今は。しかし、それでもこれを誠意を持って解決しようと。その中で関西の我々が期待しているようにクリーンな住友銀行、キング・オブ・バンク、まさにそうよみがえってもらいたい、その誠意をあなたに問うておるんです。答えてください。
  228. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) いずれにいたしましても、私どもとしては誠意を持って対応してまいるつもりでおります。
  229. 吉田達男

    ○吉田達男君 今の答弁が誠意がどうかは国民が見ていると思いますよ。  私は、さっき断ったように、関西の人間ですから期待はしておるんですよ、本当は。あなたがトップですから、責任者ですから、このような不祥事を、おれは銀行マンの仕事としてつらいけれどもやり抜いて、住友をまた斯界のトップにするんだというあの決意の中でいろいろ証言されたのを私は衆議院の記録の中で読み、期待をして問うたんですよ。まあこれ以上は無理かもわかりませんから問いませんが、誠意を期待するものです。  あの中で自民党の村井代議士にお答えになったと思いますが、本当はイトマンを早く正常な形にするために、河村社長に迫って伊藤常務を退職させるべしと先ほども御答弁がありました。おどされているんじゃないかとそこまで迫ってやったけれども、時間がかかった、こういうことでありました。この時間がかかったために、せめて半年早ければあのようにならなかったんです。  しかし、今問題にするのは、あの大会社社長に対して、その常務がおどしているんじゃないかということを住友銀行頭取のあなたがいみじくも言うような構図があったのか、そのおどされていると感じられた背景は何か、そこをお答えいただきたい。
  230. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  先ほども申し上げましたように、さる法曹界の方からお話をいろいろお聞きしたわけでございますし、さらに我々独自といたしましても調査をいたしまして、雅叙園観光その他仕手関係にも随分・関係が深い、あるいは不明朗、不透明な点が甚だたくさんあるんじゃないかということを我々の調査の結果でも確認ができましたから、そういうことを申したわけでございます。
  231. 吉田達男

    ○吉田達男君 一般的に言われればそうかもわかりませんが、私のそのときに受けた印象は、これは伊藤常務に格別にかかわって、格別な関係にある山口組の宅見若頭等々の暴力団の影に対して社長がおびえているんじゃないか、そういうところをすくわれてしまったんじゃないかという危惧をあなたが持たれたんではないかということで聞いたんです。簡単にお答えいただきたい。
  232. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 先ほどもお答え申し上げましたように、さまざまな点で不明朗、不透明な点があるということで申し上げたわけでございます。
  233. 吉田達男

    ○吉田達男君 あえて私がずばり問うたことについては間接的なお答えしかありません。  今、この証券金融特別委員会に課せられていることは何かと初めに聞いたように、国民の大事な財産を銀行か預かる、NTTの株以来大衆化した証券に対する大衆の期待を損なってはならぬのに、今国民の中で不信が起こっておる。その不信の中身は何か。黒い影がその一番国民の財産を預かるところに忍び寄っている、それを解明しろ、これが私どもの使命なんですよ。あなたもプレッシャーがかかるかわからぬが、我々議員にもプレッシャーはかかっておるんですよ。しかし、それをしなければお互いの務めが済まぬじゃないですか。今まで暴力団は、銀行被害者のように、総会をやるとまあ帰ってくださいということでつき合いをする程度、消極的なつき合いだったと私は思っていました。しかし、今日までの審議を見ると、あの暴力団を使って銀行自身が地上げをしたり、株で、バブルでもうかったり、そのようなもうけの中の銀行の機構に黒い影が入ってきておる、それでもうけようとしておる銀行の姿が出たんで、あえて私はずばり聞いたんです。あなたは勇気を持って衆議院で答弁をされました。今度もはっきり答えてください、私のさっきの質問に対して。
  234. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  私どもは暴力団と一切関係もございませんし、今後ともそういう関係は一切排除を申し上げます。
  235. 吉田達男

    ○吉田達男君 頭取の決意を伺いましたので、信頼をしたい、期待をいたしたいと思います。  もう時間がなくなりましたので、初めの点に返れば、住友銀行の本当にクリーンな、銀行の雄として、あの小谷被告、恐喝の被告、証券取引法の容疑者、これと一緒に並んで住友銀行か被告席に立って口頭弁論をやるというようなことは私はやらぬでいただきたい、これが住友銀行の誠意に対する期待であります。  以上、終わります。
  236. 和田教美

    ○和田教美君 公明党・国民会議の和田教美でございます。  イトマン事件をメーンバンクの社会的責任という観点から見ますと、住友銀行の首脳が不動産投資などで暴走する当時の河村社長や企業舎弟と言われる伊藤寿永光前常務の素性などについてかなりの危機感を持ちながらも、結局断固たる対応をしなかった、対応が甚だしくおくれたということが傷を一層深くすることにした原因だと私は思います。  あなたは先ほどの発言で、昨年三月の二十二日に河村社長にすぐ伊藤を切れということを言われたということですけれども、客観的に見ますと、結局伊藤がやめたのは昨年の十一月であります。その間に半年以上もたっておるわけです。なぜこういうふうになったのか、その原因について御説明願いたいと思います。
  237. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  先ほども申し上げましたが、私ども平成二年の三月二十二日に河村に伊藤氏の退社と不動産融資の圧縮を申し出たわけです。その後も電話を含めまして何回も同様の要請を続けたわけでございます。しかし、これは後になってわかったことでもございますが、この間、河村氏は伊藤氏と共同で磯田前会長に働きかけまして、イトマンの経営には何の問題もない、あるいは今回のことは当行内部の人事抗争にイトマンが巻き込まれたものである等々を強弁いたしまして、いわば聞く耳を持たないような状態に一時なったわけでございます。さらに、マスコミが……
  238. 和田教美

    ○和田教美君 経過説明は簡単にお願いします。
  239. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) イトマン問題を報道し始めました五月下旬以降は、これらのマスコミヘの情報リークあるいは大蔵省への内部告発もすべて当行のしわざと強く反発しまして、当行からの面会申し入れにも応じないような挙に出てまいりまして、接触すらなかなかできないという状態にあったわけでございます。    〔委員長退席、理事斎藤栄三郎君着席〕  このような一種の情報撹乱もございまして、伊藤氏の退社問題に対しまして、河村前社長とのやりとりが難航いたします中で、私どもとしては精いっぱい努力をしたつもりではございますが、たびたび申し上げていますように、一部上場企業でもございまして、特に個人の入社ないし取締役選任ということでございますだけに、メーンバンクといえどもこれ以上の方策をとることが非常に難しい。例えば株主総会で多数派工作などということにもなるかと思いますけれども、このような経営介入と言える対応は現実問題としておのずから難しく限界があったものだというふうに私は理解をいたしております。
  240. 和田教美

    ○和田教美君 イトマン事件が数多いバブル経済破裂による株や土地投機の失敗例、これと決定的に違いますことは、中堅商社の中枢に地下人脈につながる人物が役員として堂々と入り込み、企業ががたがたになってしまったということであります。いいかげんな不動産プロジェクトや絵画取引などを通じてイトマンから一年足らずの間に伊藤や許永中に流れた資金は二千数百億と言われております。その多くの部分がブラックホールに消えたということですけれども、一体地下に消えたと言われる資金の量はどれぐらいなのか、おっしゃっていただきたい。
  241. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  現在、大阪地検で捜査中でございまして、その経過によって漸次解明されてくるということを期待しております。その辺の問題につきましては、現状のところ明確な把握はいたしておりません。
  242. 和田教美

    ○和田教美君 最近の新聞に、銀行の対応がこういうふうにおくれた背景にイトマンをめぐる銀行内部の内紛があったという報道がございました。要するに、磯田前会長が西前副頭取をイトマンの社長にして、河村前社長を会長に棚上げするという人事計画をつくったけれども、伊藤前常務らが磯田に急接近して計画を覆そうとした、それであなた方が反発をした、こういう趣旨でございますけれども、これに近いようなことがあったのでございますか。
  243. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  そのような人事の内紛だとかなんとかいう話は一切ございません。そういう事実は一切ございません。
  244. 和田教美

    ○和田教美君 イトマンの絵画ビジネスは、磯田前会長の家族が嘱託社員になっていたセゾン・グループのピサとの間でスタートしたということは先ほど御説明がございました。磯田氏や磯田氏の家族と河村元社長との親しい関係、これについて、結局このようなウエットな関係が住友銀行かイトマンの過剰投融資に歯どめをかけられなかった一因ではないかというふうに思いますけれども、その点はお認めになりますか。
  245. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  繰り返すようでございますけれども、磯田前会長の家族とイトマンの関係につきましてはまことに遺憾ではございますが、そのことによって当行のイトマンに対する方針が左右されたということはもちろんございません。  先ほども申し上げましたが、磯田前会長も一時は河村、伊藤両氏の情報操作、撹乱によりまして疑心暗鬼になった時期もあったようにも感じましたけれども、昨年夏ごろには河村氏に不動産融資の圧縮を求めたり、伊藤本人の退社を強く迫られるというような行動をとっております。    〔理事斎藤栄三郎君退席、委員長着席〕  絵画につきましては、先ほども申しましたように、西武ピサ・ルートは許永中のルートとは全然関係がないわけでございまして、絵そのものも妥当な価格であったというふうに伺っております。
  246. 和田教美

    ○和田教美君 そうすると、磯田前会長が一体いつの段階で河村前社長に見切りをつけてこれを切るということを決意されたのか。その点は、あなたが磯田さんと相談した三月二十日のころですか、今おっしゃったような時期ですか、いつですか。
  247. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  三月二十日の段階におきましては、そこまでの乱脈経営をやっておるということはよくわからなかったわけでございまして、伊藤氏に問題が非常にあるということでございまして、したがって、河村社長が当然ながらそういう人は社外へ出すという処置を期待したわけでございます。ところが、なかなかそれが先ほど来申し上げておりますように実現をいたしませんで、磯田前会長がどの時期にはっきり決意されたかということは私、必ずしもよくわかりませんが、少なくとも九月ごろからそういう感じを磯田前会長も持ったというふうに私は感じておりました。
  248. 和田教美

    ○和田教美君 伊藤をイトマンに紹介したのは当時の住友銀行栄町支店長だったということですけれども、伊藤は既にこのとき暴力団とのつながりがあったものと私は思います。  そこで、栄町支店長と伊藤との関係はどのようなものだったのか、この支店長は伊藤の属性について知りながらイトマンに紹介したのか、お答え願いたい。
  249. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) どういう関係紹介をしたかということはよくわかりませんが、当時の栄町支店長と伊藤との関係は、もちろん貸し金取引はないわけでございますけれども、若干の預金取引があって知り合ったということのようでございます。
  250. 和田教美

    ○和田教美君 先ほどあなたは、イトマン・グループに対する現在の融資は五千五百億円、そういうふうにおっしゃいましたけれども、この中で特に問題なのは、分離した不動産開運の融資三千百億円というものではないかというふうに私は思うんです。  なお、不動産部門は多数の不稼働資産が発生していると思います。それだけに銀行収益にも相当な圧迫要因になっていると思うんですけれども、イトマンの問題はともかくとして、住友銀行かこういう痛手から完全に立ち直れるのはどれくらいかかるかというふうにお考えなのか、率直なところをお聞かせ願いたい。
  251. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 先生御指摘の不稼働資産というお話がございましたが、先ほども御説明を申し上げたのでございますが、イトマンからそういう固定的負担になっております資産を別会社に移します際に、当然ながら、税法基準、会計基準に基づきまして評価損を出すものは出す、損失を出すものは出すということで移しているわけでございます。したがって、移しました資産が必ず即大きなマイナスを出すというものでは決してないわけでございます。  ただ、おっしゃいましたように、こういう情勢でもございますし、大きな不稼働資産でございます。すぐに右左に片づくものじゃございません。ただ現状では、金利負担についてはイトマン・グループで何とか負担をいたしているわけでございます。  当行に対します影響がどうなるかというのは、今の段階ではまだよくわかりません。わかりませんが、私どもといたしましては、当行に負担がかかることのないように今全行で全力を挙げて努力いたしておるというところでございます。
  252. 高崎裕子

    高崎裕子君 日本共産党の高崎裕子です。  イトマン事件は、イトマンの経営者がバブル経済のもとで、地下人脈と言われる許永中、伊藤寿永光らとともに、巨額の株、土地、絵画取引、ゴルフ場開発などへの乱脈投融資に走り、巨額のお金がやみに消えた事件ですが、この中で、イトマンの経営危機の引き金にもなった絵画取引についてお聞きします。  イトマンの六百八十億円に上る巨額の絵画取引の発端は、住友銀行磯田前会長の長女がイトマン河村前社長に電話で要請をしたことから始まった、そのとおりですね。
  253. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 電話であったか直接会って話をされたか、その辺は定かにはわかりませんが、磯田前会長のお嬢さんが河村前社長に何らかの依頼をしたということはあったのではないかというふうに思っております。
  254. 高崎裕子

    高崎裕子君 ここに河村前社長から芳村現社長に提出した「社長引継主要事項の通知の件」という文書がございます。この中で、西武ピサ分百二十三億円、平成一年十一月三十日から平成二年九月十七日の期間仕入れ、それから許永中氏よりの仕入れ分が平成二年一月三十日から八月三十一日の期間仕入れ、こうなっております。したがって、時の流れから見ましても、この巨額な絵画取引の発端というのは、この長女の要請、そこから始まったということは明らかだと思うんですね。  そこで、九〇年の八月末に住友銀行としては実地調査をされた。その後、十河住銀常務らの再建チームを派遣された、調査もされている。そのもろもろの調査の結果からですけれども、九〇年の三月から八月までイトマンから絵画取引で支払われた金額というのは幾らになっていますでしょうか。
  255. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) 九〇年の三月から八月の間に幾ら払われたということは、ただいま正確にわかりませんが、西武ピサ・ルートでは百二十三億円でございます。それから、許永中関連では五百六十三億円でございます。ただし、三-八で幾らになるかということはちょっと今わかりかねます。
  256. 高崎裕子

    高崎裕子君 私ども調査によれば、平成一年十一月三十日にピサ・ルートから始まった絵画取引、許永中のルートも合わせて総額六百八十億円中、実に八五%の五百七十八億円がこの三月から八月に集中してイトマンから支払われているのです。三月七十九億円、四月三十七億円、五月百十八億円、六月二十六億円、七月六十三億円、そして八月、実地調査が末に入りますが、駆け込み的にこの時期百四十九億円と、許永中の分でこうなっているわけです。  そこでお尋ねしますけれども参考人は繰り返し、昨年三月十六日、外部の法曹関係者の方から伊藤は社内に置くと危ない、大変だと。イトマンの異常に気がつき、住銀として警戒をした、そして三月二十二日には河村に伊藤の退社を要請した、しかし結局八月の末になって実地調査を住銀としては行った、こう言われました。この間、この三月から八月の間に絵画取引では実に六百八十億中五百七十八億円、八五%。そして、ゴルフ場案件への巨額な投資が湯水のようにイトマンから引き出されてやみに消えた。  三月、せめて四月に実地調査ができていれはこれは防ぐことができたんです。人事抗争はなかった、こう繰り返しおっしゃってもおられます。そうであればなおさら、八月まで放置した住友銀行責任というのは非常に大きいと思うんです。庶民は本当に苦しい中でやりくりをして、一方、二万と預金をしているんです。銀行か不正をするということはあってはならない、信じてもきました。その信頼を庶民は裏切られたわけですね。その責任をどう考えておられますか。  そして、この事情について磯田氏から住銀として、会社として事情を当然聞かなければならないと思いますが、これ聞いておられますでしょうか。
  257. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  実地調査はなるほど八月末でございますが、四月から鋭意各面からの調査は進めたわけでございますが、先ほどもお答え申し上げましたように、この絵の取引につきましては、許永中ルートにつきましては極秘でどうもやっておったようでございまして、内部の人たちもほとんど知らないというような状況で、残念ながらつかめなかったということでございます。  それから、私の責任といたしまして、やはり今このイトマン問題をきっちり処理する、始末をつけるということが私に課せられた現在の最大の責務だというふうに思っております。
  258. 高崎裕子

    高崎裕子君 いまだに事情を聞かれないということ自体に私は責任の大きさを感じているわけですけれども、さらにこの絵画取引の発端には、磯田氏本人が娘をよろしくと河村に直接依頼もしているんです。また、イトマンは、絵画の仲介料を磯田氏の長女の夫の会社ジャパンスコープに五千万、謝礼として払っています。イトマンは買い主なんです。買い主がいわば売った側に売ってくださってありがとうと謝礼を払うというのは、これ異例の取引、常識とは道なんですね。だからこそ、事件発覚後これを返しているという事情もあります。  それは、河村さんとしては、磯田側の依頼というのは個人的な私情ではなく、あくまでも住友銀行として受けとめたからこそだというふうに思うんですけれども、この点、住友銀行として磯田氏から事情を聞かれましたでしょうか。
  259. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えいたします。  事情はよく伺っております。先ほども御説明申し上げましたが、磯田前会長自身がその西武ピサ・ルートの絵の問題につきましても後で知ったということで、磯田前会長が非常に家族の方に激怒したということも伺っております。
  260. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 時間です。
  261. 高崎裕子

    高崎裕子君 はい。  これは決して個人的なことでもなく、通常の問題ではなくて特別の問題だということで、絵画取引をめぐっては政治家の関与も取りざたされているということで、ここで委員長にぜひお願いしたいんですが、真相解明のためにはどうしてもこの絵画取引の発端となった磯田前会長の証人喚問が必要と思われます。それをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  262. 高井和伸

    高井和伸君 連合参議院の高井和伸でございます。  まず、イトマン事件はそもそも平和相互銀行との合併に端を発しているんじゃないか、そのときに住友がイトマンに借りをっくり過ぎたんじゃないか、このようなことが言われております。  そこでまず、抽象的な質問でございますけれども、住友銀行か平和相互銀行との合併で得られたものは何か、失ったものは何か。今日の時点から振り返って住友銀行頭取としての御所見を伺いたいと思います。
  263. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えいたします。  平和相互との合併は、我が国の金融秩序の維持という意味と、当行の中小企業、個人取引基盤強化のためということでございます。その点につきましては、合併で得るところは極めて大きかったというふうに感じております。
  264. 高井和伸

    高井和伸君 ちまたでは、不動産を中心とした回収困難な債権をこの合併によって二千億ほど抱え込んだ、このようなことも言われております。今はそのメリットの面を御回答なさいましたけれども、デメリットの方はいかがでございましたでしょうか。
  265. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  二千億云々という今お尋ねがございましたのでございますが、昭和六十一年十月一日に平和相互銀行当行か救済合併したわけでございますが、その最後の決算、六十一年の九月末に平和相互銀行サイドで不良資産二千百億円を償却いたしております。したがって、住友銀行か不良資産を引き継いだということはございません。
  266. 高井和伸

    高井和伸君 私の質問にまだ的確に答えていただいていないようなことでございますけれども、次の質問に参ります。  それから、イトマンに借りをつくったもう一つの原因として、旧杉山商事の債務をいろんな面でイトマンに世話になったというか、押しつけたというか、整理していただいたということになって借りをつくったというふうに言われています。  ところで、去年の十月ごろに杉山商事の債務を住友銀行で引き取るというような報道がなされておりますが、旧杉山商事の債務の住友銀行としての責任のとり方で何らかの決定がなされているんでしょうか。
  267. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  杉山商事につきましてはいろいろ誤解もあるわけでございますが、これは住友銀行かイトマンに決して押しつけたわけじゃございません。ただし、昨年の秋以降のあの状況から、到底、これは負担が大き過ぎるということでうちが引き取ったのではございませんで、うちと親密な先が、共同して出資をされております会社が引き取ったということでございまして、その株式の引き取り価格は、純資産を厳正に査定しました価格でその会社が引き取ったということでございます。
  268. 高井和伸

    高井和伸君 先ほどのお話の中で、イトマンの信用不安が昨年の十月に広がってきて、よその銀行から肩がわりをしてくれ、こういうことでかなり肩がわりをしたと。この金額は具体的にはどのぐらいになるんでしょうか。
  269. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  約三千九百億円でございます。
  270. 高井和伸

    高井和伸君 今までの私の質問の中で的確に御回答がなかったんですが、基本的には、三千九百億円という数字、よその債務を引き受けるということは、先ほど来おっしゃる中では、非常に全体的に秩序を維持するというか、信用不安を広げないようにする社会的な責任を感じての引き受けたということをおっしゃいました。しかし、私にすれば、銀行というのは一つ一つの取引を積み上げて、そしてそれで責任をとっていくという体制であります。非常に高度な判断が今の三千九百億円の引き受けには入っていると思うんですよ。それにつきまして、イトマンに何も借りはなかった、あるいは旧杉山商事に借りはなかったというようなことは、常識的に言って非常な高度な判断がなかったらできないことだろうと私は思うわけです。  この高度な判断、先ほどは日本の金融秩序を維持するだとか、社会的、公共的な立場を意識してというような抽象的な言葉はありましたけれども、その遠因は平和相互銀行との合併にあるんじゃないんでしょうか。
  271. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  どうしてイトマンを他行の肩がわりを引き受けて救済したかということでございますが、御高承のように、イトマンは中堅商社として年商七千億の商いをやっております。さらに、仮にイトマンが最悪の状態になりました場合には、職員あるいは株主、先ほど申し上げました七千億の商売をやっているだけに多数の一般債権者それから金融機関、金融機関の債権も当行以外の金融機関が約一兆円あったわけでございます。そういうものを総合的に考えまして、しかも、十六年前とはいえ社長がもと当行の役員をしておったということもありますし、やはり金融秩序あるいは経済秩序、もろもろのことを考えまして非常にこれは苦しい決断だったわけでございますが、やはり救済するということの方がいろいろな面から見ていいんじゃないかという決断を、これは私自身がしたわけでございます。
  272. 高井和伸

    高井和伸君 ただいまのお話、非常に住友銀行としての立場を意識された決断であったということについては敬意を表します。しかしながら、今までの経済法則で成り立っている銀行かある意味では公共的な地位を前面に出されたその背景を我々は知りたく質問申し上げたわけでございます。  これで質問を終わります。
  273. 三治重信

    三治重信君 民社党の三治でございます。  質問時間が非常に短いので初めにまとめて御質問いたしますから、簡にして要領よく御返事を。  一つは、今もおっしゃいました、七千億のイトマンを見限るわけにはいかぬ、こういう御回答でしたが、しかし、河村社長初め伊藤氏なんかが不動産にどんどんつぎ込んでいって非常に危険を感じられた、そういうような状況の中で融資を断るというふうな態度にどうして出られなかったのか。どんどん非常に危険な方向へ、繊維商社だったものが不動産バブル経済の中で河村社長以下、伊藤氏が入っていっちゃった。それに対して融資を打ち切るというようなことがどうして……。  それから二番目に、私は、その悪の中心の伊藤氏が切られだということを聞いて非常に高く評価をしているわけですが、その伊藤氏を切るのに、「イトマン・住銀事件」という本を見ると、おたくの有名な磯田会長が、こういうようなやくざと切るには千億円ぐらい出せば切れるんだといとも簡単に言った、こういうことが書いてあるわけですが、いわゆる昔の総会屋というような悪のやつはそんなに億なんという金かからぬで大体始末がついたのに、こういうふうな表へ出てきた伊藤氏みたいなやつだと千億ぐらいもかけぬと切れぬというふうに銀行の幹部は思っておるのか、こういうことでございます。  三番目に、これは今捜査中であって答えられぬかもしれませんけれども、一千億以上の金がイトマンの中でやみに消えてしまっているということについてどういうふうな感想を持っておられるか。
  274. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  融資の打ち切りというお話でございますが、当行との親密関係を見ながら融資を行ってまいりました銀行か多かったということもございまして、当行融資を打ち切ってしまうということは非常に難しかった。ただし、先ほども申し上げましたが、六十年代に入りましてうちのシェアはどんどん下がってまいりまして、一〇%をもちろん割っておったわけでございますし、それから先ほど申し上げましたように、伊藤を出さないということで昨年の四月以降九月までは新規融資は完全にストップしたということでございます。  それから、磯田前会長が一千億円云々という話、これは私は、そういうことを磯田前会長が言ったとは思えないのでございますが、仮にそういうことを言ったということであれば、これはもう暴言以外の何物でもないというふうには思っております。  それから、現在捜査中でございまして、どのくらいの金がどのように流れたかということは、現時点では正確には我々ももちろんわかりませんし、大阪地検の方で鋭意調査中ということでもございますので、私からとかくのコメントは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  275. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 参院クラブの喜屋武眞榮でございます。  私は、巽頭取伺いますが、イトマンとその主要子会社に対して銀行法で定められた大口融資規制に抵触するような巨額融資を初め、暴力団の影もちらほらする住友銀行一連不祥事がなぜ事前にチェックできなかったのか不思議でなりません。その要因はどこにあると認識していらっしゃるのか。特に貴行の内部監査体制はどのようになっているのか、会計監査はもちろんのこと、業務監査についても常任監査役に対する取締役の報告義務は十分に果たされているのかどうか、監査役の職務に対する巽頭取の御認識はどのようなものでありましょうか。また、それが住友銀行運営にどのように生かされておるのであるか、お示しいただきたい。  以上、明確にお答え願います。
  276. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答えを申し上げます。  大口融資規制に触れるのではないかというお話がございましたが、大口融資規制には触れておりません。その範囲内におさめております。  それから、あのイトマン問題がどうしてもっと早くわからなかったかという御指摘でございますが、これは完全に独立した上場の会社でございまして、我々の方がそれを早期につかむのがもちろん一番ベターではございますけれども、なかなかっかみ切れなかったということでございます。  それで、銀行内部においての監査役でございますけれども、現在当行の監査役四名おりまして、取締役の業務、職務の執行を監査しております。監査役からの報告を承っておりますが、取締役の義務違反は一切認められないという監査報告を受けております。  それから、会計監査につきましては、これは公認会計士制度が導入されました昭和五十一年以来一貫して朝日親和会計社に会計監査人をお願いしておりまして、毎年同社の厳正な監査を受けております。
  277. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 事前にチェックされなかったということに対して私は非常に驚きを感じておるわけですが、銀行には頭取、取締役、監査役がいらっしゃる。ところが、内部体制の確立が規約どおりに執行されておるならばこのようなことはあり得なかったと思うわけですが、どうしてこのようなことが幅広く奥深く広がってきたのか、その根本は、監査役に対する頭取との関係において一体今どのように反省していらっしゃるか、その反省を率直に述べていただきたい。
  278. 巽外夫

    参考人(巽外夫君) お答え申し上げます。  実態的に監査役の独立監査権というものをより強力にする必要があるんじゃないか、した方がべターじゃないかというふうに考えております。
  279. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 以上で巽参考人に対する質疑は終了いたしました。  巽参考人には御出席いただきまことにありがとうございました。  それでは、御退席いただいて結構であります。     ―――――――――――――
  280. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 次に、参考人日本業銀行頭取黒澤洋君から意見を求めることといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席いただきましてありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。  質疑に入るに先立ち、委員各位に申し上げます。  本日は、申し合わせの時間内で参考人に対し質疑を行うのでありますから、不規則発言等議事進行を妨げるような言動の青いよう特に御協力をお願い申し上げます。  また、参考人には、委員質疑時間が限られておりますので、答弁は要点を的確に簡潔にお願いいたします。  それでは、まず委員長から参考人に対し質問いたします。  日本興業銀行は、長期信用銀行として我が国の企業に長期資金を供給することを本務とする銀行でありますが、今回の事件において、個人に対し財テク資金として巨額の資金融資しました。これについて日本興業銀行責任者としての所見を伺います。
  281. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの平井委員長の御質問に対してお答え申し上げます。  今回の事件で長期信用銀行としての当行に対する皆様の御期待を裏切ることになりまして、まさに痛恨の思いでございます。  当行は、明治三十五年に特殊銀行として設立され、その後一時普通銀行に転換の後、昭和二十七年に長期信用銀行となり今日に至っております。当行の最も重要な使命は、事業金融の円滑な推進でございまして、設立以来一貫して事業金融を中心として業務を行って皆様の期待におこたえすべく努力を払ってまいりました。事業金融と申しましても、日本経済、産業構造の変化に伴いまして社会のニーズは時代によって大きく変化しておりまして、当行の業務内容もそれに対応して多面的に広がっております。また、中堅中小企業の育成にも力を注いでおりまして、現在では貸出額の四七%が中堅中小企業向けとなっております。  本件について申し上げれば、こうした当行の企業風土とは相入れない出来事でございまして、大口顧客に対する債券担保貸し出しとはいいながら、一個人に対する貸し出し金額が大変多額になり、しかもその本人が架空預金事件を起こすような人物であったことが明らかになったわけでございまして、金融機関としてこれを見通せなかった私どもの不明を痛切に反省するとともに、心からおわび申し上げます。  今後二度とこのようなことがないよう、長期信用銀行の役割を改めて確認し、私どもに課せられた社会的使命を果たすよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。
  282. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ありがとうございました。  委員長からの質問は以上でございます。  それでは、黒澤参考人に対し質疑のある方は順次御発言願います。
  283. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 自由民主党の斎藤栄三郎でございます。  四点お伺いいたします。  一つは、今頭取がお触れになられた尾上縫容疑者との取引の実情をお伺いいたします。第二は、にせ預金証書を出した東洋信金の再建策をお伺いいたします。第三点は、国際的に問題になっておりますBCCIによる被害はどうか、その対策はどうなっているか。最後に、長期信用銀行の行く道は何か。この四点についてお伺いをいたそうと思います。  まず第一の尾上縫容疑者との取引、大体のことは新聞、テレビ、雑誌などで承知しておりますけれども、今頭取自身がおっしゃったように、なぜああいうような取引が起きたのか、全く私たちには理解ができません。その辺を率直にお話しいただきたいと思います。
  284. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの斎藤先生の御質問の第一についてお答え申し上げます。  私どもと尾上容疑者との取引の開始の経緯でございますが、最初に一九八七年、昭和六十二年でございますが、その三月に、当行の難波支店におきまして同人が割引債十億円を購入したことに始まったわけでございます。その後、同年五月に割引債販売累計高が六十八億円に達した段階で、当行大阪支店より割引債担保で二十五億円の貸し出しを初めて行っております。その後もまず債券の取引を中心に取引が拡大し、同人の割引債保有額の拡大に伴いまして、時期によって金額は変動しておりますが、同人向けの貸し出しの規模も拡大しております。  なぜこのような巨額を個人に貸し出したのかという斎藤先生の御指摘でございますが、何分債券担保という貸し出してございますので、率直に申しまして私ども使途の確認が甘くなりましたことは認めざるを得ません。この点は申しわけなく存じております。こういったことについては、内部管理体制を引き締めまして今後このようなことがないようにしております。  それから、実は昨年の十月以降、この取引を縮小しようという方針を立てまして、十月からこの七月、事件の直前まででございますが、九百億から七百億と、二百億貸し出しを減少させております。それから、ことしの三月以降割引債も実質ほとんどふえておりません。  そういったようなことで、一応抑制態勢はとりましたのですが、多少手おくれぎみ、慎重さに欠けていたということは認めざるを得ませんので、今回の出来事を反省材料といたしまして、今後二度とこのようなことが起こらないよう十分に注意していきたいと考えております。
  285. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 大変御無礼な言い分ですけれども、興業銀行の体質が非常に甘いんじゃないだろうかという気がするんです。大体普通の銀行だったら靴を減らして預金集めをやる。ところが、割引興業債を出せばいい、利付興業債を出せば幾らでも金は集まる。どうも資金集めの苦労が足りないということが第一に指摘される。  第二点は、模範的というか典型的な詐歎に引っかかっちゃったんですね。大抵一回目はまじめに担保を入れかえる。二回目を入れかえる。それで信頼させておいて、三回目にごそっとにせの預金証書でやられる。私はどうも興業銀行全体が少し甘いんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  286. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの斎藤先生のお言葉ではございますが、本件に関しましては甘いという御批判は私は甘んじて受けざるを得ません。反省しております。ただし、本行全体の体質が甘くなっているのではないかという提言葉でございますが、これは本当に例外的なことでございまして、私ども本行全体の仕事がそういうようなことになっていることはないというふうに確信しておりますので、ぜひ御理解をお願いしたいと思います。  二度三度ということで詐欺の事件に遭いましたんですが、先生の甘いというお言葉もありますのですけれども、実はこのような詐欺事件に遭いましたのは私ども創立九十年で初めてでございまして、非常に反省しております。もう今後二度とこういう詐欺事件には、もちろんでございますけれども、遭わないようにきちんと行内体制をしていきたいと思っております。
  287. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 こんなことが二度とあってはそれは大変な話でありますけれども、私は、もしも甘いというのが不適当であれば取り消しますけれども、我々第三者立場から見ていますと、普通ではあり得ないことが起きたということを申し上げているのであります。  そこで、この後始末をどうなさるつもりかをお漏らしいただきたいと思うんです。
  288. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの斎藤先生の後始末をどうするかというお言葉でございますが、後始末と申しますと、まず私どもの持っております債権でございますが、現在二百億円の債権残高がございます。この二百億円の債権残高に対しまして不動産担保をとっておりまして、この不動産を処分いたしましてある程度の回収が図れる見込みでございます。しかしながら、これによって二百億円全部が回収されない可能性がございます。そうしますと、この架空預金がその相手側とならざるを得ないのでございますが、ある程度そこで回収が問題になってくるものが出てこざるを得ません。これにつきましては、私どもは債権者の立場からいろいろ考えていかなければならない面があるわけでございます。  もう一つの先生の御質問は、多分東洋信金というものについて私どもがどういうふうに考えていくのかという御質問であろうと思うのでございますが、東洋信金の問題につきましては、原則的なことを申し上げますと、東洋信金自体の御判断が第一と考えております。現在、架空預金事件自体が司法当局の調査の過程にございまして、尾上容疑者の資産状態も明らかでございません。事実そのものの全体像がいまだ判明しておりませんので、今後の調査状況をもう少し見守るべき段階ではないかと思います。しかしながら、当行としても金融機関の一員として信用秩序の維持は重大な問題と考えております。  いずれにしましても、ただいまの時点で私からこの席で東洋信用金庫がどうなるというようなことについてお答えすることはなかなか難しいことでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  289. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 ワリコーを買いに来てくれたから大変感謝し、いいお得意様だと思ったんだろうと思います。恐らくそれは常識だと思いますけれども、その金はどこから来たんでしょうね。お調べになったりもしくはよくこんなに金があるなとお考えになったことがありますか。普通だったら一介の料亭のおかみが何十億というワリコーを買っていくなんということは考えられないと思うんですけれども、その辺いかがなものでしょうか。
  290. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの斎藤先生の御質問でございますが、巨額なワリコーを購入された原資がどこから来たのかということでございます。私ども大蔵省の通達でまずマネーロンダリングに気をつけろということがございまして、これは一件三千万円以上の現金を持ってきた人、それから口座を開こうとしている人、これについては住所、氏名を確認してきっちりやれということになっておりまして、それはしております。  本件につきましては、相手方の住所、氏名が非常にはっきりしておりまして、二十何年か飲食店を経営しておる人間でございました。それから、私どもに入ってまいりましたワリコー購入のお金は一流銀行、都市銀行の上位行からの入金、あるいは都市銀行上位行の小切手を持ってこられての入金でございました。私どもといたしましては、その都市銀行に尾上縫がどのような金をどういうふうに入れたのかなというところまでは、ちょっと私ども民間としては調べかねるわけでございます。  そんなことでございまして、結果的には手抜かりになりましたわけでございますけれども、この原資につきましては、私どもも随分たくさん買うな、どうしてこんなにお金を持っているのかなということは考えましたけれども、お金の入り方については疑う余地がございませんでしたので、かつ住所、氏名がはっきりしておりましたので、まことに手抜かりではございましたけれども、こういうことになったわけでございます。
  291. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 御社から買ったワリコーを担保に入れて金を借りる。これは逆ざやになっちゃうわけで、ワリコーの利息よりも御行から融資していただく金利の方が高いわけです。そういうようなお客様に対して、ああそうですかと応ずるんですか。それとも、普通ならこれじゃ逆ざやになりますよ、大体一%ぐらいあなた損するからお考え直しになってはいかがですかというのが、私は親切な銀行の態度じゃないかと思いますが、いかがですか。
  292. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの斎藤先生の御質問でございますが、一般論として申し上げますと、当行の債券を保有するお客様が債券をお売りになるかあるいは債券を担保としてお借りになるか、それぞれのお客様の御事情によるわけでございまして、私どもとしましてはできるだけお客様の御事情に沿うように対応しているわけでございます。  したがって、貸し出しを行う場合に、その部分のみをとらえてみますれば逆ざやということになるわけでございますが、それだけで特に不自然な取引ということは必ずしも言えないのではないかと思います。債券とか預金を保有するお客様がそれらを担保として借り入れを行うことはごく一般的に行われている金融取引であるということをまず御理解いただきたいと思います。  しかしながら、今回の同人との取引につきましては、当初は債券取引のみから始まったわけでございますが、その後同人の要請に基づきまして貸し出し取引が始まりました。結果的に両建てになる部分がかなりあったのは事実でございます。しかしながら、同人は必要に応じて借り入れあるいは返済を繰り返しておりまして、貸出額は常時変動しておりました。常に一定額が両建てで存在していたというわけでもございませんでした。今にして思えば、巨額の両建ての取引が一定期間以上継続するということはどうかということで注意を払うべきであったというふうに反省しております。  そういう意味で、先ほどもちょっと申しましたのですが、業務改善委員会ということでこういうことが起こらないような措置を既にとっております。
  293. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 料亭の周辺には暴力団の事務所があると承りました。私は現地へ行ってみませんからそれは新聞情報でありますが、どうでしょうか、尾上縫容疑者と暴力団との関係はあるんでしょうか。あるということがわかっていれば興銀はもちろん取引相手にしないでしょうけれども、どうも金をあれほど湯水のごとく使うというような、本当に湯水のごとく使っているのを見て、どこから入ってきてどこへ行ったのか全く我々常識人にはわからない。興業銀行として知り得た範囲内で結構ですから、その情報を教えていただきたいと思います。
  294. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの斎藤先生の御質問でございますが、取引開始当初には特に暴力団云々といううわさは全然ございませんでした。私も当人の経営しております飲食店に立ち寄ったことがございますが、周りに暴力団のようなものがあったのかなかったのか、ちょっとよくわからないような普通のお店なりビルが並んでいるような場所であったというふうに私は記憶しております。  しかしながら、昨年暮れあたりから、これは暴力団と関係があるのではないか、暴力団の資金運用者ではないかといううわさが出てまいりました。私どもも非常に心配になりまして八方手を尽くして調べました。関係方面に問い合わせもいたしました。しかしながら、現在まで私どもはこれは暴力団と関係ありという情報はつかめておりませんということでございます。
  295. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 私は、興業銀行か簡単にひっかかっちゃった一つの理由は、従来興業銀行か一番力を注いでおったのは産業の設備資金であった。ところが、企業の方がエクイティーファイナンスなどで金がどんどん入ってくる、したがって銀行さんに来なくなる傾向がある。したがって新しい分野の必要があって御努力なさっておったんだろうと思います。現に興業銀行の貸出分野別比率を申しますと、製造業が一七%、それから金融・保険が二三%、不動産業が八%、サービス業一六%。この数字を見ると製造業の一七、サービス業十六であります。私は、こういう状態から、この容疑者のやっているサービス業、こちらの方にまだ拡大の余地があるし、合いいお客様が来たからというのでついひっかかっちゃったんじゃないだろうかと思うんです。  しかし、興業銀行さんは、内部からいうとやはり本店と大阪の競争があって、できるだけ大阪の業績を上げたいと恐らく大阪支店長がお考えになって、簡単にひっかかったんじゃないだろうかというように拝察、邪推をいたしますけれども、いかがでしょうか。私の邪推でしょうか。
  296. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 斎藤先生のただいま私どもが簡単にひっかかった一つの理由として、エクイティーファイナンスなどで設備資金需要が減退したからであろうという御指摘でございますが、そのために簡単にひっかかったというわけではないと私は思っております。設備資金需要が減退してきたのは事実でございまして、そのため、私どもは貸出資金あるいは貸出先の多様化ということをいろいろ努力いたしました。先ほど中堅中小企業が四七%というふうに申しましたのも、昔はこれは二〇%とかあるいはそれ以下であったわけでございますので、これが四七%になりましたのもその一環でございます。  それから、サービス業十六%という御指摘がございましたが、尾上縫は、これはサービス業の分類ではございましたが、私どもは個人の分類でやりました。それで、私ども個人に対するプライベートバンキング推進部というのがございますのですが、この残高は二%でございます。最近の状況で、いるいろプロジェクトファイナンスというのが日本の中でたくさん行われておりまして、私どもで申しますと、例えば幕張テクノガーデンであるとか、ウオーターフロントであるとか、長崎オランダ村であるとか、あるいは東京ディズニーランドですとか、こういうものについても私ども力を入れてやっておりまして、決して資金需要がなくなってこの尾上縫につき込んだというようなことではないというふうにぜひ先生の御理解をいただきたいと思います。
  297. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 よくわかりました。  バンク・オブ・クレジット・アンド・コマース・インターナショナル、そこに興業銀行さんが円を払い込んでドルをいただこうと思ったら、この銀行の活動停止で取れなかったという事実がありますが、この内容をお教えいただきたいと思います。
  298. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいま斎藤先生のBCCIの事件につきまして御説明申し上げます。  本件は、先生が今おっしゃいましたように、当行とBCCI東京支店との間で行われた当行の円売りドル買い、つまり円ドル交換の仕事を内容とする契約にかかわるものでございます。この取引は、時差の関係から私ども銀行か七月五日の午後三時までに東京のBCCIの口座に振り込みを実行せざるを得ないということになっておりまして、振り込みを実行いたしたわけでございますが、残念ながら、東京市場が閉まってニューヨーク市場が開くまでの七時間の間に、例えばただいまは午後三時半でございますが、ニューヨークは午前二時半でございます。この七時間の、つまり二時半から、九時には開くわけなんでございますけれども、こういった七時間の間に英国でBCCIの問題が発表されまして、それでBCCIから当行くのこの三千万ドルを対価とするドルの支払いをアメリカの当局が差しとめたというようなことで、七時間の時差でこれにひっかかったわけでございます。  BCCIにつきましては以前よりとかくのうわさがございまして、私どもも承知しておりました。したがって、こちらから資金を預け入れる、BCCIに預金をするというようなことは一切しておりませんでした。単なる通貨の円とドルの交換という為替取引に限定しておりました。しかし、時差の関係でこういうことが起こって不測の債権を持つことになってしまいました。こういったことは、銀行としては単なる円ドル交換上いえども時差のリスクがあるということでございまして、やるべきではなかったというふうに反省しております。  当行といたしましては、この債権回収に努めております。それとともに、今後このような問題が再発しないようにリスクの管理を一層徹底していきたいと思っております。
  299. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 見通しはいかがですか。回収できますか。
  300. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいま斎藤先生の大変難しい御質問がございまして、ちょっとお答えを差し控えさせていただきたい。ちょっとデリケートな問題がございますので、ちょっと差し控えることをお許しいただきたいと思います。申しわけございません。
  301. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 それではそれで結構、私は一応お待ちいたしますけれども。  外国銀行かこちらに来て、御社だけじゃない、迷惑をこうむっているのは随分あるわけですから、それらをどうするかということは私は大きな財政金融問題だと思うんですね。ですから、あなたがおっしゃらなくても大蔵委員会などでまたお伺いして当局の腹を聞きますけれども、全く野放しになっているというような状態では私はいけないと考えるんです。さもないと、外国といえば何でも安全だと思ってしまう習性がありますから。実はこれは尾上縫に匹敵するぐらいの犯罪を構成するんだろうと私自身は考えております。したがって、今の頭取の御意見でこの場は一応了承をいたします。  今までのお話を拝聴していますと、黒澤さん、マネジメントリスクの色彩が非常に濃いと思うんですね。御社の方のマネジメントにちょっと手抜かりがあったんじゃないだろうかという気がするんですけれども、そういう反省はありませんか。
  302. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) BCCIの件につきましては、問題のある銀行であるので預金取引はしない、預金を受けることはしておりました。しかし本当は、こういう円ドル取引といえども、まさに瞬時に交換できる円ドル取引はよろしいんですが、七時間の時差のある場合は問題があるわけで、あるいは逆に向こうが先に払い込んでこちらが後から払い込む場合であったならばよかったわけなんですけれども、こういった時差のリスクについてはちょっと私どものそういった担当の注意が足りなかったわけでございますが、これは全体のマネジメントの問題というふうには私は考えておりません。  それから、尾上縫の問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、私ども銀行としては非常に痛恨、ざんきにたえない事件でございまして、一支店の一局所で一個人に対して行われたことでございます。私ども銀行全体のマネジメントが甘くなっているということでは私はないというふうに確信しております。  それから、先ほど斎藤先生がおっしゃいました大阪と東京の収益の競争といったようなことのお言葉がございまして、それに対するお答えを忘れましたのを今思い出しましたのですが、私ども銀行は、これはもちろん長期信用銀行として社会的使命がございますのですけれども、株式会社でございますので相応の利益は上げなければなりません。したがって、一定のリーズナブルな利益を上げようという気持ちはございますが、今どき珍しい銀行であると思うんですけれども、各支店のノルマはございません。したがって、大阪のノルマもありません。名古屋のノルマもございません。したがって、そのノルマを達成するためにどうこうというようなことはございませんし、ましてや大阪が東京と競争するというようなことはないというふうに私は考えておりますので、ぜひ斎藤先生の御理解をいただきたいと思います。
  303. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 御社の場合、経常利益が一千三百二十九億円もある。自己資本比率が八・一四%もある。私は立派だと思うんですね、これだけの成績があれば。ところが、参考人としてお出ましいただいたほかの銀行頭取さんの御意見などを拝聴しておりますると、収益第一主義に走ったことを反省しているとかおっしゃっている。私は、銀行は利益が多いのをもってとうとしとするのではないので、銀行創業の精神に忠実であるかどうかということが根本だと思うんです、利益をいっぱい出すということはお客様に高い金利をかけているということにもとれますから。したがって、銀行収益第一主義であってはならぬのであって、やはり創業の精神に忠実であるかどうかということが根本だろうと思うんですね。  したがって、今頭取がおっしゃったように、東京と大阪との間の競争はないんだと、ノルマは課していないとおっしゃることは私は大いに結構だと思いまするし、どうぞ今後もそういう方針でやっていただきたいと思いますけれども、どうも残念ながら、今言った銀行かワリコー、利付債券などで余り苦労が足りないという点はどうお考えになりますか。
  304. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの斎藤先生のお言葉、非常に身にしみて、ある意味で言うとありがたく受けとめました。  私ども決して収益第一主義に走ったことはございませんし、今後も収益第一主義であろうということは考えません。創業の精神に立ち返るということが非常に大事でございまして、ただ今回の事件につきましては、じゃどうなんだと言われますと、まことに手抜かりで慎重さを欠いておりました、申しわけございませんということになります。長期信用銀行の原点に立ち返りまして、私ども社会的な使命を果たしていくべく全力を尽くしてやっていきたいと思っておりますので、ぜひ先生の引き続きの御指導、御鞭撻をお願いいたしたいと思います。
  305. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 頭取さん、今お伺いしたのは、資金調達をワリコー、利付債で賄っていて、ほかの銀行の苦労よりははるかに私は軽いと思うんですね。御社でこれだけ出すといって証券会社へ頼めばいいんですから。その手数料も比較的証券会社から見ると安い手数料でやっている。そういう苦労が足りないところに興業銀行の体質がややもすれば緩みがちだということを私は申し上げたんです。
  306. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの斎藤先生の御質問、ワリコー、リッキーなどの資金調達に苦労が足りないんじゃないかというお言葉お答え申し上げるのを忘れまして、大変失礼いたしました。申しわけございません。  苦労が足りないから忘れたわけではございませんで、非常に苦労しております。非常に苦労しておりまして、利付興業債券につきましては、これはまず金融機関、法人向けが主でございますので、これは私どもが直接相対で全国の金融機関、機関投資家に電話し、出向き、お願いして買っていただいております。ほとんど証券会社経由はございません。それから、利付の中にもワイドというのがございまして、これは利回りがよろしいものですから、割合にお客様が来てくださいます。  ワリコーにつきましてはなかなか問題がございまして、競合商品が多うございます。ただいま斎藤先生から証券会社に売らせればいいんだからというお言葉がございましたんですけれども証券会社もやはり自分の商品がございまして、株とか投信とか中国とかいろんなファンドがございます。どうもそちらを売る方がお忙しいようでございまして、最近は私どものワリコーを売るのに熱が入っておりません。  ただいまのを大ざっぱな数字で申しますと、昔は大半を証券会社に売っていただいておりましたんですが、現在は証券会社で売っていただいているのは三分の一以下であると思います。したがって、三分の二以上は私どもの店で債券の担当の者が汗水垂らして売っているわけでございまして、決して苦労が足りずのんびりやっているからこういうことになったんではないと、大変言葉が過ぎまして失礼でございますけれども、そういうことではございませんと私は思っておりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。お願いいたします。
  307. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 証券会社がそれぞれ自分は商工債券をやるとか興業債券をやるとか、それぞれ持ち分がありますから、それは全部の証券会社がやっているとは思いませんが、私自身もワリコーをほんのちょっぴり持っています。それは、かの四社から比べればもう太平洋の真ん中に落とした一滴の水ぐらいの少量買ったことがありますけれども証券会社によって皆取り扱う商品が違いますからね。しかし、今頭取のお話で約三分の一だとおっしゃった。しかし、それにしても楽ですよ。ほかの金融機関の苦労から見たらまだまだ楽だと思う。  そこで、結論の部分に入ってまいりますが、金融制度改革で一九九三年には長期信用銀行は普通銀行に転換する方針と承っております。もしもそうなれば、今申した債券、ワリコーや利付金融債などの発行をやめるということになる。私は、今長期信用銀行は大きな転換期に立っているんじゃ。ないかと考えます。非常に重大なときです。したがって私は、やはり今度の尾上容疑者のような事件を起こすことは長期信用銀行にとっては非常に残念なことであったし、特に黒澤頭取はその点非常に御苦労であろうと思います。心から同情しますし、この難局をうまく乗り切るようにお祈りをする次第であります。今申し上げた一九九三年の金融制度の改革、まだそのほかいろいろの変化があると思いますけれども、仮に今申し上げたようなことになったら、これは私は大変な御苦労になるんじゃないかと思います。  今、御社の設備資金が三五%で運転資金が六五%、これは御社の統計であります。この設備資金三五というのが私に言わせれば不満なんで、これを逆に設備資金が六五で運転資金が三五ぐらいであるのが私は望ましい長期信用銀行の姿ではないかと考えますが、この二点をお答えいただきたいと思います。
  308. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいま斎藤先生が私どものワリコーをお持ちいただいているということを初めて知りました。まことにありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。  転換期にあるというな言葉はまさにそのとおりでございまして、金融制度改革論議がございまして、一九九三年と思いますが、二年後ぐらいからいろいろ金融、証券あるいは銀行証券、信託の垣根がかなり取れてくるというようなことが予想されております。しかしながら、私どもが普通銀行に転換するということではございませんで、私どもは長期信用銀行として引き続き従来の性格を保ちながら、新しい環境の中で新しい運営をしていきたいと思っておりますので、私どもが債券を出さなくなるとか、そういうことではないというふうに考えております。  それから、設備資金三五%、運転資金六五%、まことにそのとおりの数字でございますが、これはやはりこの数年間のバブル経済の時代に転換債とか増資とかワラントとか、極端に言うと利率〇%の資金調達が可能であったような時代に設備資金需要が著しく落ちたわけでございまして、そういった時代が私は長続きするとは思っておりません。現にそういったものの償還期が来ておりまして、各社ともそういったものの償還資金をどうするかということを考えておられるわけでございます。私は、この三五と六五が遠からず逆転するとは思いませんけれども、設備資金三五%の割合はまた徐々にふえてくるのではないかというふうに考えております。  どうぞよろしくお願いいたします。
  309. 斎藤栄三郎

    斎藤栄三郎君 どうもありがとうございました。
  310. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 私は社会党の前畑幸子でございます。きょうは御苦労さまでございます。  私が大学を卒業したころにはなかなか就職が難しく、女性では就職ができなかったわけでございますけれども、私の友人も日本興業銀行に就職が決まって、私はそのときのことを思い起こしますと、本当にいい銀行く入られたなと、日本を背負って立つ大変優秀な銀行に入られたわけで、うらやましく思ったときのことを今思い返しております。  今お話がありましたように、創立九十年ということで、明治三十五年以来日本経済の中心を背負って立ってきていただいた、導いてきていただいた銀行であられる日本興業銀行におかれまして、今回のこの不祥事という問題、本当に日本国民としても大変残念な気がいたします。  今さっき斎藤先生がおっしゃられましたように、金融債の発行できる銀行として資金を集める面でも大変優遇されているわけでございます。私どもがつき合っている地元の地場銀行それから都市銀行などでは、行員が八時までも九時までも、どうかしますと十一時までも、魚屋さんに出かけ、そしてまた美容院の先生に泣きついて二十万三十万の預金を獲得して歩いているのが現実の銀行員の姿でございます。そうした面から見ますと、今回のこの不祥事という問題は銀行に働く多くの若い人たちをも大変気の毒な立場に追い込んだのではないかなという気がいたします。私どもの間では、興銀とのおつき合いというものは企業のステータスシンボルであり、本当に就職をしたい第一番の銀行という感覚できょうまでまいりました。  そこで、今回起きました日本興業銀行とそれから尾上縫さんとの関係について先回衆議院でお答えになった中で、私なりに不審を持つ点をもう少しお聞きしてまいりたいと思います。  まず、日本興業銀行と尾上縫との最初のかかわりは御説明がありましたけれども、そのお貸しになった八七年の三月から五月にかけての割引債の金利、そしてこの時点で融資されたときの金利をお聞かせ願いたいと思います。
  311. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの前畑先生の御質問お答え申し上げます。  最初に私ども銀行経済の中心というお言葉、身に余るお言葉をいただいたわけでございますけれども、一翼を担ってやってまいりました。そのことについてお言葉をいただいたことを非常に痛切に身に受けとめております。たしか先生は南山大学の御出身であると思いますが、南山大学からも毎年二名ぐらいずつ私ども入行していただいております。優秀な方に入ってきていただいております。そういった若い方々の期待を裏切らないようにしていくのが私ども経営陣の努めであるというふうに考えております。  尾上縫とのかかわりでございますが、八七年三月に難波支店で初めて十億円債券を購入したわけでございますが、その後四月に三回に分けて合計十六億円、それから五月に六回に分けて四十二億円購入しまして、それで合わせて六十八億円ということになりまして、そこで最初貸し出しの二十五億円が行われたわけでございます。  そのときの利率でございますが、六十二年五月に同人に対して割引債を担保とした貸し出しを行ったわけでございますが、割引債の当時のレートは三・六五九%、貸し出しのレートは三・九五%でございました。
  312. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 それから、最初十億円を買われたときにはどこの銀行の小切手であったか。もし振り込みでしたら送金先、そして河口に入ってきたか。十億一本であったということはあり得ないと思うんですが、幾らずつであったかということをお聞きしたいと思います。
  313. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの前畑先生の御質問でございますが、何本に分かれていたのか、あるいは十億一本であったのかということは、ちょっと私聞いておりませんし、私についてきた者に聞きましたんですけれども、ちょっとわからないということでございます。  銀行の名前ということでございますが、大手の都市銀行でございます。名前はひとつ御勘弁をお願いしたいと思います。
  314. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 それがお聞きしたいんですが、言えないとおっしゃるんでしたら、先ほども御説明があったように、逆ざやで安い金利のワリコーを買っていただいて、そして高い金利で借りていただく、大変大口の優等な顧客であったということは思われるんですけれども、この原資、最初十億、そして二カ月の間に六十八億にまでなっていったいきさつから、原資について少しも不思議を持たれないほどの金額ではないと私は思いますけれども、そのあたりをお聞きしたいと思います。
  315. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの、十億からわずか二カ月の間に、三月、四月、五月でございますから三カ月でございますけれども、六十八億ということで非常に多いふえ方ではございますが、何しろ私ども最後までこの尾上縫の資金運用の全貌を把握できませんでした。最盛期には八千億とか一兆とかいうようなうわさもございまして、私どもは株式のことについては全く、把握しようとはいたしましたんですが、存じませんでしたし、どういうところからお金が出てきているのか、どういうものを持っているのかということについて、いろいろ手を尽くしましたのでございますけれども、わかりませんでした。  それで、先ほどの繰り返しになりまして恐縮でございますが、大手都市銀行からの入金でもございますし、いろんなものを持っている人なのではないかということで、十億から六十八億ということに三カ月でふえたということを受けとめていたわけでございます。
  316. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 黒澤さんと私の経済レベルというものほかなり隔たりがありますので、私のレベルで申し上げますと、それだけの金額が入ってきた、私の学歴までもお調べになっているのに、その女性の今までの生活、そしてそこでお店を開かれたいきさつ、そして御近所のおつき合いのある方たちにその女性のことを聞いていただいたらすぐわかったんではないかなと。そういうことに対しての調査、興信所をかければすぐわかるわけでございますが、そういうことを全然されていないということでございましょうか。
  317. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの前畑先生の厳しいお言葉でございますが、私どもといたしましては、いろいろ手を尽くしまして本人の信用状態は調べました。例えば納税申告書のコピーをとりました。これは八八年、八九年両年度の納税申告書のコピーをとりました。今から考えるとそれがにせものであったという、まあ情けないことでございますのですが。それから、当人のこの店には優良納税義務者というんでしょうか、料飲税をきちんと納めている人は当該税務署から表彰されるんだそうでございますが、その表彰の紙が麗々しく張ってあったようでございます。  そんなようなことでございまして、それから暴力団というようなことは去年の暮れぐらいからうわさが出てまいりまして、私ども一生懸命調べました。各方面に問い合わせを行いました。関係方面に問い合わせを行いました。その結果、そういうようなものと関係があるという事実は出てこなかったのが実情でございます。
  318. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 今おっしゃった優良納税者だということは、税務署ではなくてちょっとこれは県税の管轄でございますので、遊興飲食税の関係だと思います。  それから、納税証明を見て多額納税者であるということを判断したとおっしゃいました。それには、税務署の受領印が押してあった申告書だということを前回衆議院でもおっしゃいました。私は、税務署の味方をするつもりはございませんけれども、税務署に申告する際に控えた鉛筆書きでしてある場合は決して受領印は押しません。ですから、その受領印が押されていた申告書を改ざんするということは私は不可能ではないかと思うんですね。そして、もしそれが申告書の控えをとったのが間違っていたとおっしゃるならば、その後に所得証明その一、その二というのがありまして、税務署へ行かれますと所得の証明書、納税の証明書というものを必ずお金を借りた場合にはつけなきゃなりません。それをしてないということは、この興業銀行さんの体質を私は本当にあきれかえるわけでございます。  私どものつき合っている銀行で百万円のお金を借りましても、納税証明、所得証明というものを出さなければなりません。そうしますと、その申告書が改ざんされていることは税務署がぐるになったということになってしまいますので、その辺を御説明いただきたい。  そしてまた、その申告書を見られて多額納税者と判断されたというならば、一千万以上は毎年多額納税者名簿というものが出ます。私どもですら持っておりますわけでございますので、日本興業銀行さんともあろうところがそんなもの一冊ぐらいないわけはないわけでございますので、それを明くる日にでもちょっとどのぐらいの方か見られたらよかったんではないかと思います。その辺の不審な点についてお聞きしたいと思います。
  319. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 納税申告書のコピーでございますが、これは税務署の受領印ではなくて受付印というのが押してございました。  納税の受領証というものをとればよかったではないかという前畑先生の御指摘でございますが、まことにそのとおりでございます。今後そのようにいたします。  この同人に対する貸し出しか、同人が買いましたあるいは私どもから売りました債権の範囲内でございましたので、これについてのそういった背景調査といいますか、審査が多少甘くなったということは認めざるを得ないわけでございます。この点につきましては今回の反省に立ちまして、御指摘のように納付証をとるというようなことをいたしまして、個人の信用調査のあり方を再検討するように指示いたしております。
  320. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 といいますことは、おたくの銀行ではお金を借りたときに、この尾上さん以外が借りても所得証明、納税証明というものは必要ないんでしょうか。  それともう一つ、債券を担保に貸したとおっしゃいますが、私の銀行では自分の定期を担保にしても出さなきゃいけないと思います。
  321. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの前畑先生の御質問でございますが、一般の貸し出しの審査に当たりましては、私ども極めてきちんとやっておりますわけでございますけれども、繰り返しになりまして恐縮でございますが、本人が買いました債券の範囲内の、しかもそれを担保にとっての貸し出してございましたので、そういった審査が甘くなったことは認めざるを得ないわけでございます。一般には確定申告書のコピーとかいろいろなことをやっておりますんですけれども、いわゆる債券担保融資でございますので、その辺のところが手抜かりがございました。御指摘のとおりでございまして、私ども痛切に反省しております。まことに手抜かりがあったと思っております。今後気をつけていきたいと思っておりますので、ぜひ先生の御指導をお願いしたいと思います。
  322. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 天下の日本の一番の銀行を私が指導するなんてことは思ってもいませんでした。私は先日、ある友人に自分の定期を担保にお金を借りて少し融資がしたかったんですけれども、その資金使途を執拗に銀行から問われたわけですね。それですから、それは自分のものを持っていたからといっても、何に使われるんですかということぐらいは聞いていらっしゃるんではないかと私は思います。  それはまたとしまして、それでは尾上さんという方は、ある時期筆頭株主になっていらっしゃるぐらい株を持っていらっしゃったことがあるようでございます。その時期と、どのくらいのパーセントを持っていらっしゃったかということをお聞きしたいと思います。
  323. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの前畑先生の御質問でございますが、尾上容疑者が一時期私どもの個人の筆頭株主であったということは事実でございます。同人の保有株式数が最も多かったのが九〇年九月末でございまして、そのときの同人の保有株式数は二百七十万株でございます。ただし、これらの株式はすべて証券会社を経由して、私どもには全く通告もなく買われたものでございまして、私どもは、同人の保有株式が二百七十万株になったということは名義書きかえが行われた後、事後的に知っただけでございまして、個人の筆頭ではございますが、全体の株主で申しますと約二百番目でございます。パーセンテージで申しますと〇・一%でございまして、大株主であるという意識は私ども全くございませんでした。
  324. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 そうしますと、私の心配することには当たらないかもしれません。といいますのは、そのときの融資額の残高をお聞きして、そういう場合に巨額の融資というものは株主に対する不法な経済的な便宜供与ではないかという心配をしたわけですが、そういうことはなかったわけですね。
  325. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 前畑先生のおっしゃるとおりでございまして、全くそういう意識はございませんでした。
  326. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 意識ではなくて、要するに供与には当てはまらないということですね、この時期では。
  327. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 言葉が足りませんで失礼いたしました。  当てはまらないということでございます。
  328. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 それからもう一つ、私ども庶民の感覚では大変不思議なことがあるのでございます。天下の日本興業銀行信用金庫の証券を、他行の証書を持っていって、それを担保にしてお金が借りられるということができるんでしょうか。
  329. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 私どもがほかの銀行の定期預金の証書を担保にとるというケースは、多くはございませんが、まことに異例ということではございません。この尾上容疑者に対する貸し出しの当初の二年間ぐらいでございますが、一流都市銀行の定期預金が担保に入っていた時期がございました。  それから、信用金庫の定期預金、こういう定期預金を担保にとるのかというお話でございますが、私ども尾上縫に対する貸し出しは、これを担保として貸し出しをしたわけではございませんで、担保の差しかえについ応じてしまったということでございますが、ちょっと詳しく申し上げさせていただきたいと思います。  まず最初に、尾上容疑者に対する貸し出し担保といたしましては割引金融債、不動産などがございまして、ある程度担保余力があったわけでございます。つまり貸出金よりも上回る担保があったわけでございますが、この信用金庫の定期預金証書はその一部を差しかえたものでございまして、結果的には私ども業界言葉でございますが、添え担保というような格好になっているものでございます。  この信用金庫の定期預金証書への差しかえは、ことしになって初めて行われたものでございまして、四回ございます。第一回が四月、次が五月、六月と七月でございます。このうち四月、五月、六月の三回につきましては、いずれも税理士事務所にワリコーを見せなくてはならないのでちょっとの間貸してもらいたいということの要請がございまして、それをそのまま信じて差しかえに応じたと聞いております。そして、それらはすべて極めて短期間でまたもとの割引債に戻されたというふうなことでございますので、最後の四回目のときも担保差しかえにうっかりとつい応じてしまったというふうな報告を受けております。
  330. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 ちょっとわからないんですが、何と何を差しかえられたんですか、担保は。
  331. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ワリコーとこの東洋信用金庫の定期預金証書でございます。
  332. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 これを認められたのはどなたですか。
  333. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 先ほど前畑先生に御説明いたしましたように、四月、五月、六月は部長決裁ということでございまして、大阪支店の部長が決裁していたしました。  しかしながら、七月の最後のときには、大阪支店もちょっとおかしいなということを考えたようでございまして、また本店から気をつけろというような指示もございまして、本店のプライベートバンキング推進部というところと協議して三百億円の差しかえに応じたというふうな報告を受けております。
  334. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 今、大阪支店の部長とおっしゃいましたけれども、こういう担保の差しかえとか他行の証書を入れる場合は最も異例なことでありまして、普通では考えられないことです。規定外担保ということも絡みますので、本店の許可が要るんではないんでしょうか、私はそう聞いているんですが。
  335. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 私どもの内規では、軽微な担保の変更は部長権限でできるということになっております。したがって、最初の三回は軽微と判断して行ったものでありますが、四回目にこれは軽微でないという判断をしたというふうに報告を受けております。
  336. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 先ほど、そのワリコーを会計事務所に見せなければならないのでということなんですが、会計事務所は、私も十何年やっているんですけれども、そんな人の定期とかそういうのは調査の段階以外に見たことはないわけでして、ましてや銀行担保に入っているものを持ってきて見せろなんということはあり得ないことです。前回の衆議院のときには税務署に現物を見せるというようなことをおっしゃったような気がするんですけれども、まして税務署がそんな現物を持ってこいなんということはあり得ません。もしそういうものがあるということを税務署に証明しなければならない場合には、その写しを持ってこいということはあると思いますけれども、現物を持ってこいなんということは会計事務所はもちろん、税務署も絶対にそんなことはあり得ないと私は思います。
  337. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 尾上縫から大阪支店に要請、要求がございましたときは、税理士事務所にワリコーを見せなくてはならない、つまり税金の申告上それが必要であるということでございまして、会計事務所ではございませんで、税理士事務所にワリコーを見せるというような説明であったというふうに聞いております。  先生のおっしゃるように、コピーを見せれば済むではないかと、まことにお言葉のとおりでございまして、この辺で私どもが慎重さを欠いておった、うっかりしていた、手抜かりがあったということはもう疑いもない事実でございまして、これにつきましては私ども痛切に反省しております。
  338. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 税理士事務所もそういうものを持ってこいということは絶対にあり得ませんので、国民の皆さんが、これはそういうことがあり得るのかなと今後思われますと税理士の職業についている者として大変困りますので、きちっとしていただきたいと思います。  そして先ほどから、暴力団とのかかわりというものは決してにおわなかった、思わなかったと、そして頭取自身もその辺を歩いていらっしゃるし、尾上とも会っていらっしゃるわけですので、そういうことが感じられなかったということですけれども、変なうわさも流れているということで長銀とか日債銀では九〇年の五、六月、夏ごろからほとんど引き揚げているということですが、おたくの銀行ではそういうことに対する対処が遅くなったわけですけれども、疑問はなかったわけではないわけでしょうが、どうして対処の仕方がおくれたんでしょうか。
  339. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 暴力団の疑いと申しますのは、うわさが出始めましたのは九〇年の十二月からでございます。そのときから私どもは一生懸命調べました。関係方面にも問い合わせをいたしました。その結果、暴力団との関係はないという情報でございました。あるいは、あるという情報はございません。うわさはたくさん出ました。いろんな雑誌などにも書かれましたけれども、そういうことはないということでございました。  それから、ほかの銀行か九〇年五月、六月ごろから引いたのに私どもはおくれたと、こういうお話でございますが、私どもも、先ほどちょっと御説明申し上げましたんですが、九〇年の十月から貸し出しはできるだけ回収しようということで動きを始めまして、九〇年十月は九百億でございましたが、事件直前の七月末は七百億ということで、二百億円回収いたしました。これがなかなかうまく進まなかったのは、時あたかも三業種規制というものが出まして、いろんな銀行、ノンバンクの方々が非常な勢いで回収に走りましたものですから、なかなかこの回収が思うように進みませんで七百億残ったわけでございます。対応がちょっとおくれたためにこういうことになったわけでございますが、もう一つ、先ほどの繰り返しで恐縮でございますけれども、債券を売る方もことしの三月から実質的には極めて抑制的に、ほとんどふえないというような格好で対応しております。
  340. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 尾上さんからそういう雰囲気を感じられて引きつつある、そして自粛しつつあるということはわかりました。  もう一つ、おたくの関連会社日本ハウジングローン株式会社というのがあると思います。ここと大阪でかの有名なる末野興産とのかかわりは、興銀さんがかかわっていらっしゃると思いますけれども、御説明いただきたいと思います。
  341. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 私どもの関連会社日本ハウジングローンでございますが、この会社昭和五十一年に設立されました住宅ローンの専門会社でございます。これは、ほかの多くの住宅ローン専門会社と同様に、多数の銀行証券会社、保険会社による共同出資会社でございます。この日本ハウジングローンの母体となりましたのは、私どもを含む銀行二行、大手証券三社でございまして、合わせて五社が均等出資でつくりましたものでございます。ほかに地方銀行三十七行、信託銀行六行、証券会社十七社、生命保険会社十七社、損害保険会社十九社など、そのほかにも事業会社が出資してつくっております共同出資会社でございます。  当社は、昭和五十年の銀行局長の通達に従って当行の関連会社として当局にお届けしておりますが、このことは他の母体銀行、他の証券三社などにつきましても同様、各社各行から関連会社としてのお届けが銀行局ないし御当局に対してされているわけでございまして、決して当行だけの関連会社ということではございません。したがって、会社運営、個別融資などは独自の御判断でやっておられるわけでございます。  有名な末野興産というお言葉がございました。末野興産と当社の関係につきましては、個別のことになりますので具体的な数字につきましては申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  342. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 大阪市西区立売堀というんですかね、ちょっと地名でよくわかりませんが、そこに末野興産が買われた南本町天神ビル二号というのがあります。そこを買われたときのいきさつというか、貸し付けの件でお聞きしたいと思います。  そのときの借入先は、日本興業銀行か十億、日本ハウジングローンが八億、十八億融資をされていると思いますが、間違いありませんか。
  343. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 私ども自身が末野興産に対しまして貸し出し取引を持っているのは事実でございます。かつ、その土地、建物を担保にしているのは事実でございますが、何億という数字につきましては個別会社のことでございますので、お許しをいただきたいと思います。
  344. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 お貸しをしていることの確認をさせていただけばいいんです。  それと同じように、東京のエイズ、大阪のフォーカスというのだそうでございまして、その中の一つが末野興産、そしてもう一つ富士住建、朝日住建というのがあるわけです。この日本ハウジングローンの役員、代表者がおたくの銀行からほとんど行っていらっしゃる、元取締役、常務という方が行って代表者をしていらっしゃるわけです。  そしてもう一つ、日本ハウジングローンの子会社の中に日本エステートというのも九〇年に設立されているわけです。そういうところの貸出先に、この末野興産を初めフォーカスという富士住建、朝日住建のメーンバンクになろているわけなんですね、日本ハウジングローンというところが。ですから、この二社に対しまして大体一千億ぐらいの貸し出しかあるということです。そして、ちまたではバックは天下国家の興銀であるからということのようでございますが、その辺のいきさつを、時間がないので簡単でいいですからお聞きしたいと思います。
  345. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) まず、ジャパンハウジングローンの役員、代表者がほとんど興業銀行の出身者というのは、私の知っております限りとはちょっと違いまして、ただいま社長はたまたま私どもの出身者でございますけれども、役員は全部で二十一名中六名でございます。そのほかにも六名出していらっしゃる母体もございます。  それから、エイズ、フォーカスというようなお言葉がございまして、そういうことは私も雑誌で承知してはおります。この朝日住建でございますが、この朝日住建という会社昭和四十二年に設立されましたマンション分譲業者でございまして、全国でも第二位の業界地位を占めていると聞いております。当行は、同社に対して私ども自身貸し出し取引はございますが、数字につきましては、個別のことでございますので御勘弁いただきたいと思います。富士住建でございますが、これは昭和四十六年に設立されました、大阪南部、奈良地区で一次取得者をターゲットとした実需中心に営業を行う戸建分譲を主業とする不動産業者でございます。  ということでございまして、大阪地区、先生御指摘のように、いろいろ地価の変動が厳しゅうございまして、とかくのうわさはございますが、しかしながら、ただいまおっしゃった末野興産を含めまして、朝日住建、富士住建につきまして私ども取引ございますけれども、現状、特に取引関係に異常が認められないという報告を受けております。
  346. 前畑幸子

    ○前畑幸子君 私は、異常があるないはまた次の問題でして、この末野興産というのは代表者が不法建築で逮捕され、そして後ろには黒いうわさも大変多い企業と聞いております。そういうところに日本興業銀行を中心にした関連会社が多額の融資をされているということは、先ほどから尾上さんに対する貸し付けはそういうものが感じられないとおっしゃっていたわけですけれども、尾上さんとのつき合いはまだ四年ぐらいのおつき合いだと思います。ところが、この末野興産の方はもう六、七年来のおつき合いということでございますので、そうなりますと、黒いうわさがあるから早急に引き揚げているということの理由が成り立たないんではないかという心配をするわけです。そうしますと、先ほど来言われております、要するに収益を目的として稼げばいいんだと、だれからでもいいんだという体質があったんではないかということを最後に申し上げたかったわけです。  私どもの最も信頼している銀行か本当にそうした稼げばいいんだと、それはわかりますけれども、もう少し日本国民の気持ちも、多くの銀行に預けている一般のお客さんの気持ちも考え、日本経済をきょうまでリードしてきていただいたわけですから、ここで汚点を残すことのないように乗り切っていただきたい。これは今、日本経済への本当に厳しい警鐘ではないかなという気がいたします。癒着を通り越しまして、これは共犯と言わざるを得ないんではないかと私は思います。  私も子供を育ててきました一人の母親として、子供の将来にいいものを残してやりたいと思いますが、日本の一番リーダーとして、今回の黒澤さんの不祥事という問題は大変大きな傷ではないか。ほかの銀行と違いまして、頭取みずからがその中心人物として動かれているということを私は大変残念に思います。最高の教育を受けられ、最高の地位になられた黒澤さんとして今後この不祥事をどう乗り切られるか、決意のほどをお聞きしたいと思います。  これで終わります。
  347. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいま前畑先生のお言葉、深刻に受けとめております。  私ども長期信用銀行として与えられた使命を果たすべく、役職員一同心を新たにして頑張ってまいりたいと思いますので、ぜひ先生の御指導をお願いいたしたいと思います。
  348. 白浜一良

    ○白浜一良君 公明党の白浜一良でございます。  時間がございませんので、端的に御質問しますのでお答えをいただきたいと思います。  まず初めに私伺いたいのは、要するにこの尾上縫容疑者と御社との関係が非常に不可解である、わかりにくいということなんです。先ほども答弁されておりましたが、興銀さんにおきましてはいわゆる二百番目の株主である、〇・一%だと。大したつながりじゃない、それほどの相手でもないのだと。    〔委員長退席、理事斎藤栄三郎君着席〕 私は頭取の発言にこういう印象を受けるわけでございますが、しかし、それにしては一方で非常に密接な事実関係があるということを私理解ができない。  具体的なことを申し上げましたら、一つは、昨年の八月に御社の大阪支店の部長さんが非常に個人的なインド旅行についていっていらっしゃるんですけれども、これは休暇をとっていらっしゃったんですか、どうなんですか。
  349. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの白浜先生の御質問でございますが……
  350. 白浜一良

    ○白浜一良君 その先生言うのやめてください。
  351. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) はい。  白浜委員の御質問でございますが、インド旅行についての御質問がございました。このインド旅行は……
  352. 白浜一良

    ○白浜一良君 休暇をとって行ったかどうかだけでいいです。
  353. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) インド旅行は出張扱いで行っております。
  354. 白浜一良

    ○白浜一良君 わざわざ個人のプライベートな旅行に出張で会社の仕事として行っていらっしゃるというこれ自身が非常に、単なる顧客であれはこういう関係はないと思うんですけれども、これは頭取、どうなんですか。
  355. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 大口の割引債を買ってもらったということで、大口客に対するサービスの域を大きく超えるものではないと理解して行ったというような報告を受けております。  それから、個人的な旅行という白浜委員のお言葉がございましたが、これは、インドのカルナタカという難民キャンプ地にある篤志家の寄附で建造したお寺の落慶法要に列席することを目的に企画されました約七十人の九日間にわたる団体旅行でございます。尾上容疑者もその一人として参加したわけでございますが、私ども行員が尾上容疑者に懇請されて参加したものでございます。  しかし、こういったことを含めまして、個人の取引に私ども未熟な面が正直に言ってございまして、通常のサービスの限界がどの程度であるのかという判断の基準が甘くなりまして、必要以上に親密であったという誤解を招くような行き過ぎがあったことは否定できないと思っております。この点については強く戒めております。
  356. 白浜一良

    ○白浜一良君 簡単明瞭にお願いします。  次に、また違う具体的な例を申しますが、この容疑者の資産管理会社オー・エヌ・インターナショナルという会社ですね、ここのかぎを御社の副支店長さんが持っていらっしゃったと。これは衆議院で出ました。不注意でしたと、こういうふうに頭取はおっしゃいましたけれどもね。もっと不思議なことは、この会社が入っているビルはオーエヌ第一ビルというのですが、これは興銀さんがある地上げ屋を紹介して尾上に買わしたものなんです。これは御存じですか。
  357. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ビルの買い取りにつきましては、一般に、ビルを買いたいという人と売りたいという人がお客様の中にたくさんございまして、そのインフォメーションを私どもの親しい不動産会社紹介しますと、不動産会社が間に入りまして行いますのですが、このオーエヌ第一ビルというものが地上げ屋さんのビルであるというふうには私は報告を受けておりません。
  358. 白浜一良

    ○白浜一良君 そうなんです。非常に密接しているという事実を私は申し上げたわけでございます。  もう一つ言います。その副支店長さんが、尾上容疑者が融資が必要だということで、ことしの四月に外国銀行の大阪支店に融資してくれと一緒に回っておりますね。これは御存じですか。
  359. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの白浜委員の御質問でございますが、新聞報道がございましたので調査させました。させましたところ、外国の銀行の方にお会いして、外国銀行における融資の一般的な考え方を聞いたことはあるが、具体的な案件として融資依頼をしたことはないと本人が申したという報告を受けております。  しかしながら、いたずらに誤解を招く行動につきましては厳重に注意いたしまして、今後二度とこのようなことのないよう指導していきたいと存じております。
  360. 白浜一良

    ○白浜一良君 これもおかしいんですよね。そうおっしゃいますけれども、聞かれた方の銀行の方がおっしゃっているんですよ。そういう尾上に対して何百億でも、少しでもたくさん融資してほしいという、そういう話があるから私は言っているわけでございまして、非常に不明快な、不可解な点が多い、このことを申し上げておきたいと思います。  それから、彼女との関係と同時に、この取引そのものが非常に不可解である、不明確である。先ほど同僚委員がさまざまな質問をされました。私、重複を避けます。納税リストも確認されていない、これは証明書を見たらすぐわかることなんですから。それから逆ざやの問題も、一回や二回だったらいいんですけれども、たび重なってやられている。こういうことも非常に信じがたい。それから、いわゆる長銀、日債銀等は昨年からずっと引き揚げているのに、頭取は、暴力団の関係を調べたけれどもなかったという事実と、何か昨年の十月ぐらいからちょっと引き揚げているんだという非常に不可解な答弁をされておりますが、またなぜこれだけ巨額の融資をされたか。容疑者の使途が非常に不明確である。これは全部まだ明確になっていないわけです。  もう時間もないし、ダブりますので私割愛しますが、一点だけ、先ほどの質疑でございました架空預金証書の問題で、先ほど頭取は軽微なものは支店の部長決裁だとおっしゃいました。この軽微というのは幾らぐらいまでが軽微なんですか。
  361. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 軽微な条件変更は部店長決裁でできるというのが私どもの内部の規定でございまして、これは部店長が自分で判断して軽微であるというふうに判断することになっております。
  362. 白浜一良

    ○白浜一良君 額は決まってないわけですか。
  363. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 決まっておりません。
  364. 白浜一良

    ○白浜一良君 それでは、先ほどおっしゃいました四回に分けて、七月末が三百億円、これは実際証拠となっている三百億円の証書です。そうしたら、四月、五月、六月はそれぞれ幾らの証書を受け取ったのですか。
  365. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 四月、五月、六月とも同じ定期預金証書でございました。
  366. 白浜一良

    ○白浜一良君 幾らですか。
  367. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 三百億でございます。三百億でございますが、そのときは軽微というふうに考えたわけでございますが、軽微というふうに考えましたのは、一つは担保余力がある程度ございましたものですから、この三百に丸々依存しないというようなことでございます。ただいま私ども二百億貸出残がありますが、不動産抵当をとっておりましてこれを処分いたしますとかなり回収できます。したがって、この三百億に丸々依存しないで済むといったようなことが軽微であるというふうに判断された原因であると思います。
  368. 白浜一良

    ○白浜一良君 はい、結構でございます。  それからもう一点、この東洋信金というのは三千五百億余りの預金しかないわけです。その一割近い三百億円の預金証書、これ何の疑問もなかったわけですか。
  369. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ちょっと一回ただいまの答弁、言い間違いましたので訂正申し上げます、済みません。  三回、部店長決裁でやりましたのが全部三百と申しましたが、それは間違いでございます。三百、三百、百五十五でございました。  それから、三千五百の資金量で三百の定期預金証書を不思議と思わなかったのかということは、まことにそのとおりでございまして、私ども何をやっておったのかということなんでございますが、当時の事情を聞きますと、東洋信金の担当をしております私どもの方に受け取った者が、東洋信金というのはどういう信用金庫ですかと聞きますと、これは非常にかたい信用金庫ですよ、堅実にやっておられますと。それで、私ども自身も利付興業債券を販売させていただいておりまして、長年の取引があるきっちりした信用金庫でございますので、その担当の部長はこれが三千五百と三百というような点に思いが至らなかったことと、それから担保余力がある程度ありましたものですから軽微ということで考えた。今にして思えばこれはもう非常なうっかりでございますけれども、そういうことでございます。
  370. 白浜一良

    ○白浜一良君 最後に二点だけ伺います。  一つは、ことしに入りまして非常に危ないと。いろいろ聞きたいことあるんですけれども、結論的なことだけ言います。それで、大阪の支店長、常務さんですね、あるマスコミからインタビューを受けております。そのときに、うちは大丈夫だ、大蔵省にも日銀にも報告している、個人の融資には限度はないんだ、尾上容疑者への融資限度額で興銀はびくともしない、このように答えたと。五月九日の支店長のインタビュー、これ承知かどうか。  もう一点は、今後の問題といたしまして、背後に組織的な指南役がいるのならそこに支払いを求めることもあり得る、このように日銀の大阪支店長が言っているわけでございますが、今後の問題として興銀さんがこの問題全体に対してどう取り組まれるか、お考えを聞いて終わりたいと思います。
  371. 斎藤栄三郎

    理事斎藤栄三郎君) 黒澤参考人、簡単にお願いいたします。
  372. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 大阪支店長にインタビューを受けたことがあるかどうか聞きましたが、インタビューを受けたことはあるようでございます。ただし、今白浜委員のおっしゃったようなことを言った覚えは全くおいそうでございます。  それからもう一つ、日本銀行の大板の方が背後に云々というようなことを言われたそうでございますが、私ども日本銀行からそのようなことは伺っておりません。
  373. 白浜一良

    ○白浜一良君 以上で終わります。
  374. 諫山博

    諫山博君 日本共産党の諫山博です。  偽造の預金証書をもとに一個人に多額の融資をする、あるいはにせの確定申告の写しにだまされて一個人を無条件に信用する、こんな幼稚な誤りが大銀行でどうしてまかり通ったのか、どこに欠陥があったのか、これが興銀疑惑の中心です。同時に、その裏で暴力団が糸を引いていたのではないか、この疑いがますます濃厚になってまいりました。  そこで私は、興銀疑惑の一つである末野興産及びワールドエステートに対する多額の融資について質問します。  私の調査によりますと、興銀及び興銀系列ノンバンクの末野興産に対する融資、これが五百三十八億四千五百万円、ワールドエステートに対する融資額は三百一億二千万円、合計すると約八百三十九億円になると思いますけれども、この金額に間違いはないでしょうか、この点だけについてお答えください。
  375. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) まず、この多額の融資をしてしまったということは、お買いになったワリコーが担保であったものですから、ついそこのところは手抜かりがございまして、非常に反省しております。にせの申告書をとったということも、これは反省しております。  それから、暴力団におどされたのではないかという諫山先生の御質問でございますが、そういうことはただの一度もございませんし、絶対にございません。  それから、末野興産及びワールドエステートに対して関係会社から八百三十九億の融資があると聞いているが、その数字を確認したいという御質問であったというふうに理解しておりますが、先ほどちょっと申しましたように、これは日本ハウジングローンという会社のことであると思いますが、これは先ほど申しましたように、私どもだけの関連会社ではございませんで、五社の関連会社で、主な出資者だけで百一ございます。
  376. 諫山博

    諫山博君 金額はどうでしょう。
  377. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 金額については私どもの直接、直接であってもなんですけれども、個別の取引について金額を申し上げることは、申しわけございませんけれども御遠慮させていただきたいと思います。
  378. 諫山博

    諫山博君 個別の金額について、衆議院で我が党の菅野委員質問したのに対しても、個別企業の問題だからといって答弁を断られました。きょうもこの場で社会委員質問に対して答弁をされませんでした。しかし、この委員会で私たちが問題にしているのは、暴力団の関係している企業に不当な融資がなされたのではないか、その実態を知りたい、これが私たちが今審議している目的です。  末野興産と暴力団の関係については後で質問します。  この二つの企業、これは世間では暴力団系と言われていますけれども、どれだけの金を融資したのか、個別企業の問題ではありますけれども、やはり実態を明らかにしてください。
  379. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの諫山先生の御質問でございますが、私ども数字を一切言わないということではございませんで、例えば尾上縫容疑者につきましてはワリコーから何から全部……
  380. 諫山博

    諫山博君 一般的なことは結構ですから。
  381. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただし、この末野興産などにつきましては、この会社犯罪を犯しているわけではございません。  それから、私ども日本ハウジングローンから報告を受けております限りは、この会社は暴力団と関係がないということでございます。
  382. 諫山博

    諫山博君 わかりました。
  383. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) したがって、個別の数字を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  384. 諫山博

    諫山博君 個別企業個別企業と言われますけれども、私は興銀及び興銀系の企業というのは何なのかということをあなたたちの内部の資料で計算しました。「IBJ一九九〇」、これはあなたたちの資料なんです。もう一つは、末野興産の系列にどれだけの融資がされているのか。その根拠は、御存じでしょう、「金融セレクト」の一番新しい号に「末野興産とワールドエステートの借金」という一覧表があります。興銀だけではなくて、たくさんの金融機関の融資額が書いてあります。これを質問したんです。あなたは個別企業と言われるけれども、これは天下周知の事実じゃないですか。なぜこの場で説明できませんか。この点だけ答えてください。説明してください。
  385. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 先生お持ちの資料でございますが、関連会社として私どもは載せております。ただし、私どもだけでなくてほかのもう一行、それから証券大手三社の関連会社でもありまして、私ども……
  386. 諫山博

    諫山博君 限られた時間だから、金額について、個別企業について説明してください。
  387. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 個別企業の金額でございますが、その先生がお持ちの「金融セレクト」というのは私は承知しておりませんし、雑誌に数字が載っているというのと私どもが数字を申し上げるということの間には根本的に大きな差があると思います。
  388. 諫山博

    諫山博君 わかりました。これが無条件に信頼できるものならわざわざ聞きません。これが正確なものかどうかということをあなたに確認してもらいたかったんです。  この「金融セレクト」の中には、暴力団との関係がさまざま記載されております。どういうことが出ているかといいますと、福岡で建築基準法違反で逮捕された。四人に逮捕状が出ている。一人は逮捕された。この逮捕された一人は、衆議院であなたが証言された日に罰金の言い渡しを受けました。そしてこの金というのは暴力団に渡ったと見られる、警察は福岡県の暴力団担当が担当している、こういうことまで言っている。そして、このことは大阪ではだれ知らぬ人もないぐらい広く知られていることでしょう。  この問題を我が党の菅野議員が衆議院で質問しましたけれども、改めて暴力団との関係を調べられたかどうか。  それから、今私が指摘した個別企業の問題、これは、あなたはきょうは参考人だから証言の義務はありませんけれども証人だとすれば証言を拒否できないわけですよ。私は、どうしてもこの点を明らかにしていただくために、あなたが参考人としては言わないというのであれば証人としてお願いするほかはないということを申し上げて、お答えください。
  389. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 先生のおっしゃいました末野興産につきましては、私どもの関連会社日本ハウジングローンからの報告では、暴力団とは関係がないというようなことになっております。
  390. 諫山博

    諫山博君 委員長……
  391. 斎藤栄三郎

    理事斎藤栄三郎君) 時間が参りました。
  392. 諫山博

    諫山博君 証人として呼ばざるを得ない人だということを申し上げまして、質問を終わります。
  393. 高井和伸

    高井和伸君 まず、細かいことでございますけれども、二、三不思議なことをお尋ねしたいと思います。  まず、当初尾上縫に融資する際の資金使途、これは先ほどの答弁では甘かったというような答弁でございましたけれども、借入融資申込書の中の資金使途はどのように書いてあったんでしょうか。株式投資に回すというようなことが書いてあったんでしょうか。お尋ねします。
  394. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) この本人の尾上縫に対する貸し出してございますが、ピーク九百億円に達したわけでございますけれども、この資金使途につきましては御説明を今までも申し上げましたが、必ずしも十分に把握はできておりませんでした。
  395. 高井和伸

    高井和伸君 要するに、書いてなかったけれどもパスしたというふうに理解します。  それでは、先ほどから暴力団との関係は尾上縫とはないということで繰り返し御答弁なさっております。ちょっと視点を変えまして質問申し上げますが、この尾上縫に対する融資に対しまして口添えをした人はおありだったでしょうか。第三者的な立場から、何とか融資してやってくれよというような申し入れはあったでしょうか。
  396. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 尾上縫に対する融資につきまして、第三者から口添えがあったということは一度もございません。
  397. 高井和伸

    高井和伸君 それからもう一点伺います。  取引が始まりました一九八七年の三月から今日まで、暴力団などとの間で興銀がトラブルがあったというようなことはありませんでしたか。    〔理事斎藤栄三郎君退席、委員長着席〕
  398. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 今、高井先生がおっしゃいました期間を問わず、私ども、暴力団とトラブルがあったことは一度もございません。
  399. 高井和伸

    高井和伸君 それでは、東洋信用金庫の架空預金証書の問題についてお尋ねします。  尾上縫に対する現在の融資残高は二百億円である、これについては第一抵当権の不動産担保権がついておる、こういうことでございますが、それは根抵当ですか、それとも抵当権でやるんですか。どっちなんですか。
  400. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 根抵当でございます。
  401. 高井和伸

    高井和伸君 その不動産の物件の価格はおよそ幾らと見込んでおられるんでしょうか。半分ぐらいだとか三分の二だとか全部だとか、そのぐらいで結構なんです。
  402. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの御質問でございますが、半分以上でございます。
  403. 高井和伸

    高井和伸君 それで、先ほどの質疑の中で黒澤参考人の御回答に原則論のお話がございました。東洋信用金庫の態度がまず第一であると。第二に、二次的には尾上縫の資産状況がどうなっているかという問題があると。三つ目は、信用秩序の維持を重大に考えていると、こう申されました。新聞報道などによりますと、かなりの面で興銀が背負い込むというような報道もございます。  大蔵省の方からもあるいは日銀の方からもいろいろ指導があるんじゃなかろうかと思っておりますけれども、今のお話の最後の部分、信用秩序維持のために重大に考えておられると。これは具体的にどのようなことをお考えなんでしょうか。
  404. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) この架空預金事件につきましては、司法当局で事実関係が解明されることになると思いますが、現段階ではまだ全容が明らかでございません。また、尾上容疑者の資産状態も明らかでございません。したがって、今後の状況などをもう少し見守るべき段階ではないかと思います。  原則的なことを申し上げれば、第一には、東洋信金の問題につきましては東洋信金御自身が判断されることでございますが、当行としても金融機関の一員として信用秩序の維持ということは重大な問題であるという認識をしております。いずれにいたしましても、ただいまの時点で私からこの席でこの問題に関しましてお答えすることはなかなか難しいということを御理解いただきたいと思います。
  405. 高井和伸

    高井和伸君 私の質問したい趣旨は、先ほど住友銀行頭取の巽参考人のお話ですと、他行かイトマンに融資した三千九百億円余りを自分の方で肩がわりしたと、こういうような御発言がございました。それも今おっしゃられた信用維持というような公共的な立場社会的な立場からの御判断だったということでございました。  そこで、新聞報道を見ますと、おたくの日本でも非常にビッグな銀行か東洋信用金庫の預金証書、そういったものを使った担保あるいは尾上縫に融資していたという事実に基づいて、他行か同じように連鎖反応を起こして融資に応じて、結果的に穴をあけられているという事実がある。それについて、日本銀行は、それは尾上縫の方も半分過失があるかもしれないけれども半分は興銀に過失がある、過失相殺的な面も考えなきゃならぬというような報道にも接しております。  私の質問の趣旨は、興業銀行としましてこの一連事件責任というんですか、今までの話ではほとんど、うかつな面があった、これから引き締めるけれども社会的な責任については余り言及なさいませんでした。社会的な責任をとるとすれば、この東洋信用金庫発行のにせの定期預金証書の責任のとり方について、何らかの責任をとるということに帰着する面が多いと思うんです。  そこで私の聞きたいのは、そういった場合とんな基準で対応されるのか。企業として、興業銀行として、株主の利益も守らなきゃいかぬわけでございます。政府がやる仕事を興業銀行かどこまで踏み込んでやるのか、あるいは日銀のやることを興業銀行か一私企業としてどこまで踏み込んで責任を負うのかという論理の仕組みをどのようにお考えなのか。興業銀行頭取としての現在の立場から、一般論で結構でございますのでお聞かせ願いたいと思います。
  406. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ノンバンク各社が架空預金担保として融資をして損害をこうむる可能性があるわけでございますけれども、ノンバンク各社の中には私ども取引を始めるより前から取引をされた会社がかなりあります。それから、私ども紹介いたしました会社は一社もございません。各社御自身の御判断でおやりになったと思います。したがって、今回の責任が非常に興銀にあるという御意見に対しては、私はそのように思っておりませんので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。  ただし、私どもの同人に対する貸し出し姿勢が金融機関として慎重さに欠けていたことは、これはただいまの御叱正を肝に銘じまして、二度とこのようなことが起こらないように全力を尽くしてまいる所存でございますので、ぜひ高井先生の御指導をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  407. 高井和伸

    高井和伸君 終わります。
  408. 三治重信

    三治重信君 興業銀行さんに対する我々が思っていた疑惑は、今まででほとんど解明されておると思っております。したがって、尾上さんや東洋信金の架空預金についての御質問はいたしませんが、私は、こういうふうな問題で頭取みずから陳謝というんですか、謝罪的な遺憾の意を表されておりますが、この結末をどうつけようと現在考えておられるのか。それから、架空預金なんかが完全に司直の手である程度結論が出てきた場合に、そういうふうな架空預金を扱って証書の取りかえや何かをやった者の責任、上司の責任というものをある程度考えてもらわないと、これは結末がつかぬじゃないか、こう思うわけです。いろいろの状況で甘かったということは十分わかったわけですが、こういうものに対して頭取として、最高首脳として今後どう結末をつけようか、こういうことについて姿勢をお聞きしたいと思うわけでございます。  それからいま一つは、ノンバンクや新しい不動産に対する融資というものは、今までの産業に対する融資とはどうも姿勢が違っているようでございますが、こういうような不動産融資というものに対する興銀の今後の取り扱いの態度、また、このノンバンクなり直接の不動産融資について、興業銀行として今まで産業に融資していたんだけれどもそれらを変えたということについて、非常に反省点があるかどうか。
  409. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) ただいまの三治先生の御質問でございますが、私ども融資方針が変わったということはございません。  個人融資はプライベートバンキング推進部というのをつくりましてやっておりますが、個人に対する融資の残高は全体の二%でございまして、産業金融、事業金融を本体でやっていくという私どもの根本方針にはいささかの変更もございません。  この結末をどうつけていくかという三治先生のお言葉でございますが、本件のような私どもの慎重さに欠けた手抜かりのあるようなことが二度と起こらないようにすることが私の責任であるというふうに考えておりますので、ぜひ御指導、御鞭撻をお願いいたしたいと思います。
  410. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 参院クラブの喜屋武眞榮であります。  私、黒澤頭取伺いますが、東洋信用金庫の架空預金証書を担保とした巨額の不正融資が超一流銀行と言われる日本興業銀行でなぜ事前にチェックできなかったのか、その要因はどこにあると認識しておられるのか、率直に述べてもらいたい。  特に、貴行の内部監査体制はどのようになっておるのであるか。会計監査はもちろんのこと、業務監査についても監査役に対する取締役の報告義務は十分に果たされておるのかどうか。監査役の職務に対する黒澤頭取の御認識はどのようなものでありますか。また、それが興銀の運営にどのように生かされておると思っておられるのか、示していただきたい。お答え願います。
  411. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) まず、喜屋武先生の架空預金担保としてこのような巨額な融資がなぜ事前にチェックできなかったかということでございますが、巨額な融資が積み上がる過程では架空預金ではございませんで、私どもの割引債を担保とする貸し出してございまして、架空預金が入ってまいりましたのはことしの四月からでございます。これを担保貸し出しをしたわけではございません。  それから、私どもの内部監査の問題について御指摘がございました。私どもの内部監査は、監査役による監査と検査部による検査と二つございます。監査役は、取締役の業務執行状況を商法にのっとり適正厳格に監査しておりますとともに、会計に関する部分については公認会計士と、業務運営につきましては検査部門と、それぞれ連携してチェックしております。  また、検査体制につきましては、検査部門が本支店業務を定期かつまた不定期に厳重な厳正な検査を行っております。  監査役の方々の監査につきましては、私ども定期的に報告を受けております。厳しく報告を受けております。しかしながら、この事件を契機にいたしましてこの分野での貸し出し事務、貸し出し管理体制につきましても改善が必要と考えておりましてい既に改善を実施しております。今後はより厳格な基準のもとに、引き続き厳正な検査を実描いたしまして、二度とかかる事態が起こらないよう努めてまいりたいと思っております。
  412. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 あなたは、ただいまもそして冒頭にも、二度と再びこのようなことが起こらないようにということを強調しておられましたね。その反省はいろいろございますということでありましょうが、全部をおっしゃる時間はないと思いますが、それでは、特に今二度と再び起こさないという反省をしておられるその決意を述べていただきたい。
  413. 黒澤洋

    参考人(黒澤洋君) 私ども今回の事件を深刻に受けとめておりまして、これについての業務改善委員会を既に発足させましていろいろな手を打っております。二度とこのような事件が起こらないと思っておりますし、起こらないというふうに私は確信しております。
  414. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 以上で黒澤参考人に対する質疑は終了いたしました。  黒澤参考人には御出席いただきまことにありがとうございました。  それでは、御退席いただいて結構でございます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会