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上原康助君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表し、総理並びに
関係大臣に当面する
重要課題について、社会党の見解を明らかにしつつお尋ねいたします。
総理、あなたの
土井委員長に対する昨日の御答弁は、中身に乏しい極めて残念なものでした。(拍手)そこで、事の重要性から、
土井委員長の質問と重複する面もあることを承知で、総理の所信をただすものであります。
戦後四十五年、今世界は明らかによりよい方向に動きつつあります。ソ連において
ゴルバチョフ氏の登場以後なされてきた新
思考外交による数々の
平和攻勢、
ブッシュ米大統領によってとられた
対ソ封じ込め政策の転換、三十年ぶりに行われた中
ソ首脳会談、電撃的な韓国とソ連の
国交樹立、冷戦のシンボルと言われたベルリンの壁の崩壊、それに引き続く東西ドイツの
統一実現、このように
国際政治の基軸であった
冷戦構造が音を立てて崩れ去り、新しい
国際秩序が構築されつつあります。
このような冷戦の終結と人類が待望した
緊張緩和と軍縮の新時代を迎えつつある
国際情勢の
歴史過程で、確かに我が国は世界の
経済大国として発展してきました。しかし、冷戦の終結と
緊張緩和の推進のために
我が国外交が果たした役割と実績には見るべきものがありません。今度の
中東湾岸危機に当たっても、日本の主体的な
和平工作はほとんど見られない状況であります。(拍手)その主な原因は、戦後この方、
我が国外交が
アメリカ一辺倒の外交に終始してきたからであります。米国との
友好関係を維持発展させることはもとより重要でございますが、そのことと主体性のない対
米追随外交とは根本から異なるものであります。米国が常に賢明に行動するとは限らないし、
対外政策において
ベトナム戦争を初め多くの面で汚点を残しております。
長い冷戦の時代の責任がソ連とともに米国にもあったことは否定できません。超大国だけにすべてを任せるのでなく、日本みずからが新しい
国際情勢に立脚した
外交哲学と
平和外交の
基本方針を確立すべきではないでしょうか。(拍手)
私は、
日本外交の
基本姿勢として忘れてならないことは、日本のかつての
侵略戦争によって三百万人余の我が国民のとうとい生命と、二千万人余に及ぶ
アジア民衆に多大の犠牲と苦痛を与えたという厳然たる歴史的事実があることであります。豊かな国日本として
国際的脚光を浴びている今日こそ、
アジア近隣諸国や第三世界の国々の国民の心を温かく受けとめ、その冷徹なまなざしにこたえていくことこそ、ODAを含む
日本外交の原点でなければならないと思います。(拍手)激変している新しい
国際情勢のもと、今や日本の
外交姿勢と援助のあり方を根本的に転換すべきだと考えます。その視点で
中東湾岸危機の
平和的解決に対処していくべきであります。総理並びに
外務大臣の御見解を求めます。
次に、
日ソ関係についてお尋ねいたします。
ノーベル平和賞を受賞した
ゴルバチョフ大統領が来年四月に訪日することが確定したこともあって、
日ソ関係は今重大な段階を迎えようとしております。この好機を最大限に活用して、北方領土問題を初めとする日ソの
懸案事項を解決促進するため、衆知を結果すべきであります。総理も
所信表明で、明年四月に予定されている
ゴルバチョフ大統領の訪日に大きな期待を持って歓迎したいと述べておられます。
ところが、最近の
海部内閣の外交に珍妙な現象が次々と露呈し、
総理官邸抜きの
多元外交が展開されております。在京のある
西側外交官の指摘によると、どうして日本の外交には「元」ばかりつくのかと首をかしげているようであります。現実は全くそのとおりです。中国へは竹下元首相、東南アジアへは渡辺元
政調会長、去る
自民党訪ソ議員団の団長に予定されていたのも安倍元幹事長、
政治生命をかけて朝鮮
民主主義人民共和国と韓国へ乗り込んでいかれたのも金丸元副総理でありました。
私は、
与党首脳の
議員外交を頭から否定しようとは思いませんが、内閣と与党とが一元的であるべき外交が、二元どころか多元的になっていることに懸念を抱くものであります。ましてや、重要な
外交案件が、政府・与党の
派閥次元での思惑が先行するとすれば、国益上ゆゆしき問題と言わねばなりません。
とりわけ、国民の前に明らかにしていただきたいことがあります。安倍元幹事長が去る七日、
同派研修会で明らかにした日
ソ平和条約締結に向けての
基本原則に関する協定の骨子案なるものは存在するのかしないのか。
日ソ間最大の懸案であり、
国民的課題である領土にかかわる
重要外交案件が、一派閥の研修会で手柄話的に公表されてよい道理はないのであります。
さらに重大なのは、ソ連側が安倍氏発言を全く理解できないと全面的に否定していることであります。慎重の上にも慎重を期さねばならない日ソ間の最
重要外交案件が
政府抜きで表ざたとなり、
せっかく芽生えつつある日ソの
信頼関係や今後の北方領土の
返還交渉に日本側が不利になるようなことがあれば、その責任は重大であります。総理の決意のほどを伺っておきたいと存じます。(拍手)
次に、
国連平和協力法案についてお尋ねいたします。
政府の
法案提出がおくれた一事をもってしても、
国連平和協力法案なるものがいかに急ごしらえで泥縄式に策定されたかがわかるのであります。今後の
審議過程でこの法案の本質、政府・与党の意図がより明らかになっていくと思うが、結論を先に言うと、これは
国連協力に名をかりた自衛隊の
海外派兵への道を切り開こうとする、
戦争協力を目的とした
有事立法の何物でもないということであります。(拍手)
土井委員長も厳しく指摘されたように、憲法上も
自衛隊法上も断じて容認できるものではありません。
法案策定作業の経緯も二転三転、いや、七転八倒の
醜態ぶりを演じ、首相の当初のアイデアとは似ても似つかぬ巨大な
お化け法案に変質してしまっております。
海部総理、
ブッシュ米大統領の要請にこたえるポーズをとったとはいえ、首相の
国連平和協力構想は、憲法の枠内で非武装の民間人を非軍事的な
後方支援活動に充てる、小火器が必要となるような場所には行ってもらわないというのが基本的な考えだと述べ、八月二十九日、第一回目の
中東貢献策を発表した
記者会見でも、自衛隊を海外に派遣することは考えていないと明言されたではありませんか。(拍手)それが首相の国連、中東五カ国歴訪の留守中に、先ほど指摘いたしましたとおり大きく変わってしまいました。聞き捨てならないことは、自衛隊の補給艦や輸送機などが出動途中または派遣地で攻撃された場合は応戦することができるとか、多国籍軍への自衛隊の参加が可能であるなどと、政府筋の物騒な発言にまでエスカレートしてきていることであります。
総理、あなたはこのような
法案策定経過をどう見ておられるのか、なぜ総理の当初
構想どおりの
法案仕上げができなかったのか、明確にしていただきたいのであります。(拍手)
最近の国連の
平和維持活動は、イラン・
イラク戦争、
アフガニスタン紛争などの解決に見られるように、その役割と
調停能力は国際的に高く評価されており、今回のイラクの不当な
クウェート侵攻に対しても、いち早く
国連安保理が行動を起こしたことも周知のとおりであります。このように、国連は、冷戦の終えんという
国際政治の変化に伴い、
平和維持活動に関する議論は極めて活発化いたしております。既に、国連に
平和維持活動に関する
特別委員会が設置され、同委員会は、昨年六月及び本年七月に報告書をまとめております。
それによると、国連の
平和維持活動とは、
紛争当事国の合意に基づき、その行動は安保理の決定に基づいて
国連事務総長が総括し、非武装または国連が武装を求める場合でも小火器に限られ、
政治的中立を保つために、
紛争当事国や超大国を除いた中立国により編成されることが原則となっております。提出された法案の第一条にも、
国連平和維持活動について言及してありますが、
国連決定の四つの原則には合致せず、国連の
平和維持活動への参加を装い、多国籍軍すなわち
米国支援のための
協力法案であることは明らかであります。(拍手)
さらに、次の諸点についてもただしたいと存じます。
その一つは、自衛隊の
海外派遣は、
集団的自衛権の行使を禁じた憲法第九条に違反しないのかということであります。しかも、総理は、
所信表明で「自分の国土への現実の脅威がないからといって座視すること」はできないと述べ、日本以外の脅威に対しても積極的にかかわっていくために
平和協力法が必要だと強調しておられます。
総理、事の重大さを御認識の上でのことだとは思うが、この論旨は、日本と関係のある外国に対する有事に際しても、自衛隊を組織ごと派遣したいということにほかなりません。そのような事態を想定したものであれば、憲法の枠内で武力の行使及び威嚇を伴わない派遣だと言ってみたところで、
集団的自衛権の
行使そのものであることは火を見るより明らかであります。(拍手)このことは、専守防衛を基軸にしたこれまでの我が国の
安全保障、防衛の
基本政策から大きく踏み出すことになります。政府は、従来の
憲法解釈や長年積み上げてきた安保、自衛隊にかかわる
統一見解などを変更する考えなのか、明確な答弁を求めます。
また、総理がこの
協力法案の
検討過程で、国連の
集団的安全保障措置という新概念を持ち出して、
武力行使を伴う場合でも自衛隊を国連軍に派兵することが可能であるとの
憲法解釈をしようとしていることは事実かどうか、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)本気でそんな
憲法解釈ができるとお考えですか、はっきりとお答え願います。
その二つは、
自衛隊法との関係についてであります。これまでの
政府見解は、自衛隊の
海外派遣は憲法上許されないわけではないがと詭弁を弄し、だが法律上、すなわち
自衛隊法上、任務、権限が規定されていないので派遣はできないと繰り返し答弁してきました。政府は従来のこの見解を変えるのか。この法律が制定されると、
自衛隊本法を無視して隊員の
海外派遣を可能にしようというのか。余りにもこそくな手段と断ぜざるを得ません。
その三つは、指揮権を本部長・総理に一元化したとされるが、自衛官の身分を残した併任のままの派遣となれば、
自衛隊法第八条との関係はどうなるのか。さらに、自衛隊が実際に海外に派遣された場合に、国際法上、併任で通用するのかどうか。自衛官は国際的には軍人であり、自衛隊は
武装集団としての軍隊となり、
平和協力隊ということでは通用しないと思われるが、どうか。
その四つは、
自衛隊派遣の場合の武器の携帯及びその使用についてであります。武装した補給艦や輸送機などの
搭載武器の扱い及び
武器使用はどうなるのか。小火器の範囲をどう限定するのか。使用できるのはどのような事態においてか。
その五つは、この法案と
国連憲章とのかかわりについてであります。政府が派遣しようとする協力隊は、国連においてどのような
位置づけがなされるのか不明確であります。
以上五点について、総理並びに
関係大臣の明確な御答弁を求めるものであります。(拍手)
総理、日本の
平和主義国家としての理念は、単に憲法上の問題にとどまらず、
歴史的戦争体験に基づく国是であり、国家としての不動の
基本方針でなければなりません。日本が
国連平和協力隊を設け、派遣するにしても、国連を窓口にして、あくまで非軍事的な分野に限定すべきであり、協力隊の組織は、総理の当初
構想どおり、
国土防衛を任務とする自衛隊とは明確に区分すべきであります。この理念をベースにすれば、
国民合意が得られるであろうし、与野党の共通の土俵もつくられると考えます。(拍手)
我が党も、
国連平和協力機構設置大綱を策定し、
中東湾岸危機を含む
地域紛争に対する日本の支援策の
対案づくりに着手しているところであります。総理、国の進路の根幹にかかわり、国論を二分し、多くの疑問や反発を受けているこの重たい法案を、
対外公約を優先する余り、拙速かつ短期間でごり押しするようなことがあれば、悔いを千載に残すことになります。総理の率直な御見解をお聞かせ願いたいと存じます。(拍手)
次に、軍縮、防衛問題についてお尋ねいたします。
総理も
所信表明で述べておられるように、欧州を中心とする劇的な変化を受けて、アジア・
太平洋地域にも好ましい動きが及び始めております。ところが、政府は、アジアには
地域紛争の要因があるとか、十年ぶりに防白からソ連の
潜在的脅威を表現上は削除したが、
対ソ脅威の基調は変えずに、
防衛力整備は継続して必要とか、相変わらず
木を見て森を見ない態度に終始しております。要するに、世界の
緊張緩和、平和の配当を、我が国を含むアジアにおいて創造していこうとする姿勢が見られないということであります。
総理、なぜ我が国が率先してアジアにおける
緊張緩和の
積極的推進、徹底した軍縮のための行動を起こそうとしないのですか。例えば、現在の
軍事状況を前提としても、直ちに着手できることの一つとして、
信頼醸成措置が考えられます。ソ連の脅威を声高に宣伝するのでなしに、ソ連軍との
信頼醸成措置を速やかに講ずる対話を軍事面でも開始すべきであります。
去る九月、
極東最大の
軍港ウラジオストクを訪問した
米海軍司令官は、現地において、
ソビエト海軍はもはや我々の敵ではない、今後、
リムパックは縮小されると明言しております。これほど米ソの関係は軍事面でも急激に接近しているのです。しかるに、日本の自衛隊はソ連からの
交流招待さえ拒否し、蚊帳の外に置かれているではありませんか。
艦船の
相互訪問を初め、ソ連軍と自衛隊のハイレベルの交流、演習の
事前通告や
相互視察など、お互いの不信感を取り払う
信頼醸成措置を早急に実現すべきであります。
信頼醸成措置に向けての地道な努力を積み重ねながら、アジア・
太平洋平和保障機構の創設を日本のイニシアチブで提唱すべきであります。ヨーロッパにおける
全欧安保協力会議が着実に成果を上げつつあるとき、アジアにおいても、この種の
機構創設は必要不可欠であり、
信頼醸成の推進、核兵器及び
通常戦力の
大幅削減、
非核地帯の設置、
地域紛争の
平和的解決などなど、日本がやり得る課題は幾らでもあるじゃありませんか。(拍手)
総理、なぜ日本はアジアの一員として、もっとアジアにおける平和の創造を実現するために積極的な対話と行動を起こそうとしないのですか。御見解を賜りたいと存じます。(拍手)
次に、防衛問題についてお尋ねいたします。
今や、軍縮、国防費の削減が世界の常識となっております。米ソ欧の具体例を挙げてみましょう。
今年六月に、米国の
チェイニー国防長官は、今後五年間で軍隊を八十万人、
研究開発費も二〇%以上削減していく新しい
戦略枠組みを明らかにいたしました。米議会は、九一年度の
国防予算を二百八十億ドル削減する法案を可決しております。内容的には、新
戦略爆撃機B2の
新規調達の中止、新
戦略ミサイルの
近代化計画の凍結、
SDI研究開発費の
大幅削減、
海外基地の撤収、
整理縮小等が含まれております。今後も米国の国防費は削減の一途をたどるでありましょう。また、欧州各国も、ドイツや英国を筆頭に、国防費の
大幅削減に着手しつつあることは周知のとおりであります。一方、日本の
潜在的脅威とされるソ連も例外ではありません。既に兵力の五十万
削減計画に着手し、九〇年以降の国防費を年率八%以上削減していくとのことであります。
極東地域におけるソ連の軍事力も、
質量ともに減少していくことはだれの目にも明らかであります。
総理、これがマルタ後の
米ソ両国を初めとする世界の主要国の軍縮への努力であり、
国防費削減の現実の姿なのです。しかも、この傾向は、加速はしても逆戻りすることはあり得ないのです。日本の
防衛構想も、常識的に考えて、この世界の大きな潮流に呼応させた徹底した見直しか再検討がなされてしかるべきであります。(拍手)
残念なことに、政府・自民党の
防衛政策は、旧態依然として防衛を聖域扱いにし、
軍備増強路線を堅持していこうとしております。次
年度概算要求で若干の抑制をしたとはいえ、なぜ、最も突出した五・八%、二千四百三十億円も上積みをしなければならないのか、納得しがたいのであります。増額どころか、むしろ減額か、せめて今年度の額で凍結すべきというのが
国際並みであり、国民の常識でありましょう。(拍手)
特に、指摘しておかねばならないことは、
中期防衛力整備計画は
最終年度となっており、この計画の達成によって、
防衛計画大綱に見積もられている
防衛力整備の水準に
質量ともに到達できるというのがこれまでの政府の説明であったはずであります。だとすれば、
冷戦終結後の新しい
国際秩序、枠組みをどう認識し、その上で、確かな
防衛哲学に基づくビジョンを示した上で、次期防の可否を検討していくのが筋道であります。しかるに、政府は、防衛費だけ
概算要求の形で先取りし、次期防の
初年度的位置づけをしようとしております。
一体、次期防は何を
基本理念にして策定しようとしているのか。計画の全貌はおろか、その理念も骨格さえ明らかにされないまま、またもや二十三兆五千億円近い巨額の
防衛費支出を長期にわたって固定化していこうとすることは、国際的な軍縮の潮流に全く逆行する
軍拡路線だと断ぜざるを得ません。(拍手)
総理、自民党内にさえ、来年度
防衛予算の今年度
並み凍結と
次期防策定を先送りすべきだとの有力な提言があったことを忘れてはなりません。我が党は、一九九〇年代を軍縮十年と
位置づけ、防衛費の凍結、削減を着実に実施していくべぎだと考えます。政府は、次期防の策定を思いとどまり、各種の新規重
装備取得計画を取りやめ、FSX、SDIなどの
共同開発を再検討すべきであります。総理並びに
関係大臣の所見を伺うものであります。
次に、沖縄問題はついて若干の質問をいたします。
一九七二年の五月に沖縄の施政権が返還されてから満十八年が経過いたしました。戦前、戦中、戦後と言語に絶する多くの苦痛と困難を乗り越えて、今日の沖縄は、
社会資本の
整備拡充を中心に本土との格差も是正されつつ一定の発展を遂げ、落ちつきを取り戻しつつあります。この間の政府の御配慮にも深い敬意を表するものであります。
しかしながら、太平洋戦争の惨禍と、戦後二十七年間の長さにわたって本土と分断され、
米軍支配下にあったことから、今なお未収集の遺骨、大量の不発弾の埋没、厚生年金などの格差是正を初めとする戦後処理や、解決していかねばならない諸問題は山積いたしております。特に、
在日米軍専用基地の七五%が狭い沖縄に集中し、県民は、基地の重圧に耐えながらの日常生活を余儀なくされている実情にあります。当然のことながら、広大な
米軍基地の存在は、沖縄の
土地利用、経済の振興発展に大きな障害となっております。
海部総理は、本年六月二十三日、
現職総理大臣として初めて沖縄県の慰霊の日に参列され、戦没者のみたまを慰められ、戦中戦後の苦難の歴史を歩んできた沖縄県民に、申しわけありませんでしたと肉声で述べてくださいました。私は、総理のこの真摯な態度に対し、心からの敬意を表するものであります。
そこで、次の諸点をお尋ねいたします。
その一つは、沖縄の現状からして、第二次振計に引き続き第三次振計は必要不可欠だと考えますが、政府の決意のほどをお聞かせ願いたいと存じます。
その二つは、米国も沖縄の基地の
整理縮小を進めることを明らかにしており、去る六月十九日に、日米間でも相当規模の基地の返還、
縮小計画が決定されました。これらの具体化がどうなっているのか。
那覇軍港、
嘉手納マリーナ、
読谷飛行場など、今後の沖縄の
米軍基地の抜本的な返還、縮小をどのように進めていかれるのか。
その三つは、返還後の
跡地利用の促進、返還に伴う労働者の雇用の保障、対策等についても政府の責任ある施策が伴わねばならないと考えます。
その四つは、沖縄全戦没者の慰霊の日を県民の期待にこたえて
従前どおり休日とするため、
地方自治法を速やかに改正していただきたいことであります。
総理並びに
関係大臣の御見解を求めるものであります。(拍手)
以上、総理の
所信表明とも関連させて、外交、防衛、
国連平和協力法案を中心に質問を行ってまいりました。
終わりに当たって、政府並びに自民党内には、
中東湾岸の
紛争地域に金だけでなく人を、つまり自衛隊を送らなければ
国際世論が納得しないとの声も強いようだが、そもそも
国際世論とは何を指すのか。世界のどれだけの国々の人々が日本に
軍事的貢献を本当に求めているのだろうか。どの国のだれが、いつ、どこで、我が国に中東の
湾岸地域へ日本の自衛隊を派遣してくれと要請してきたのか、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
イラクで人質になって苦しんでおられる邦人の皆さんも、
自衛隊派遣法ができると帰国はますます難しくなると悲痛な叫びで訴えておられることを、政府は御存じないのですか。
総理、内外の
マスコミ論調を見てもわかるとおり、世論の動向は国際的にも国内的にも、
平和国家日本の果たすべき
国際貢献は、自衛隊の
組織的派遣などではなく、あくまで
経済援助を中心とする非
軍事的分野に限定すべきというのが圧倒的であります。(拍手)そして、心すべきことは、中国、韓国、シンガポールなどアジアの諸国から出始めている自衛隊の
海外派遣に対する強い不快感と懸念に、どうこたえていこうとするのかということであります。
政府及び自民党内にも
協力法案への慎重論が強いことを御存じでしょう。特に注目に値するのは、与党の閣僚経験のある有力な方々が、自衛隊の
海外派兵に道を開こうとしていることに強い懸念を示し、警鐘を乱打していることであります。(拍手)
総理、あなたは
所信表明で、日本は今戦後最大の試練に立たされていると強調されましたが、最大の試練に追い込まれているのは、
海部総理御自身ではありませんか。(拍手)かつて
中曽根内閣時代に、
文字どおりみずからの名誉と職を賭して、ペルシャ湾への自衛隊の
掃海艇出動を阻止した元
官房長官の政治家としての気迫と勇気ある信念を見習うべきであります。(拍手)
海部総理、国の命運を左右する重大な
政策決定とみずからの政権保持をてんびんにかけることは、国民を不幸に追い込む政治の邪道と言わねばなりません。(拍手)ましていわんや、
海部総理が師と仰ぎ、議会の父として日本の進路を誤らしめないために政治家として燃焼し切った三木元総理のまな弟子を任ずるならば、
文字どおりおのれを無にして不退転のリーダーシップを発揮すべきであります。その勇気と決断を強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔
内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕