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1990-10-31 第119回国会 衆議院 国際連合平和協力に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年十月三十一日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 加藤 紘一君    理事 高村 正彦君 理事 西田  司君    理事 浜田卓二郎君 理事 官下 創平君    理事 山崎  拓君 理事 池端 清一君    理事 上原 康助君 理事 高沢 寅男君    理事 日笠 勝之君       愛知 和男君    井出 正一君       石井  一君    植竹 繁雄君       奥田 幹生君    古賀  誠君       坂本 剛二君    自見庄三郎君       鈴木 宗男君    園田 博之君       近岡理一郎君    中川 昭一君       中村正三郎君    中山 正暉君       鳩山 邦夫君    浜田 幸一君       林  大幹君    原田 義昭君       牧野 隆守君    町村 信孝君       松浦  昭君    三原 朝彦君       渡辺 省一君    石橋 大吉君      宇都宮真由美君    上田 利正君       小澤 克介君    大木 正吾君       岡田 利春君    川崎 寛治君       左近 正男君    水田  稔君       和田 静夫君    井上 義久君       遠藤 乙彦君    草川 昭三君       冬柴 鐵三君    山口那律男君       木島日出夫君    児玉 健次君       辻  第一君    東中 光雄君       中野 寛成君    和田 一仁君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         運 輸 大 臣 大野  明君         郵 政 大 臣 深谷 隆司君         労 働 大 臣 塚原 俊平君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君  出席政府委員         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         内閣法制局第三         部長      津野  修君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      坪井 龍文君         防衛庁人事局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済協力         局長      木幡 昭七君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵省主計局次         長       田波 耕治君         大蔵省銀行局保         険部長     竹内 克伸君         運輸省国際運輸         ・観光局長   寺嶋  潔君         運輸省航空局長 宮本 春樹君         海上保安庁長官 丹羽  晟君         海上保安庁警備         救難監     赤澤 壽男君         郵政大臣官房長 木下 昌浩君         郵政省通信政策         局長      白井  太君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省労政局長 清水 傳雄君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君  委員外出席者         国際連合平和協         力に関する特別         委員会調査室長 石田 俊昭君     ───────────── 委員の異動 十月三十一日  辞任         補欠選任   杉浦 正健君     坂本 剛二君   野中 広務君     松浦  昭君   牧野 隆守君     原田 義昭君   遠藤 乙彦君     草川 昭三君   東中 光雄君     辻  第一君   和田 一仁君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   坂本 剛二君     杉浦 正健君   原田 義昭君     牧野 隆守君   松浦  昭君     野中 広務君   草川 昭三君     遠藤 乙彦君   辻  第一君     木島日出夫君   中野 寛成君     和田 一仁君 同日  辞任         補欠選任   木島日出夫君     佐藤 祐弘君     ───────────── 十月三十一日  国際連合平和協力法案の廃案に関する請願佐藤祐弘紹介)(第二二五号)  国際連合平和協力法案の撤回に関する請願金子満広紹介)(第二二六号)  同(寺前巖紹介)(第二二七号)  同(不破哲三紹介)(第二二八号)  同(山原建二郎紹介)(第二二九号)  同(小沢和秋紹介)(第二三九号)  同(岡崎トミ子紹介)(第二四〇号)  同(岡崎宏美紹介)(第二四一号)  同(木島日出夫紹介)(第二四二号)  同(長谷百合子紹介)(第二四三号)  同(三浦久紹介)(第二四四号)  同(菅直人紹介)(第二八七号)  同(鈴木喜久子紹介)(第二八八号)  同(小沢和秋紹介)(第三五七号)  同(金子満広紹介)(第三五八号)  同(木島日出夫紹介)(第三五九号)  同(児玉健次紹介)(第三六〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三六一号)  同(菅野悦子紹介)(第三六二号)  同(鈴木喜久子紹介)(第三六三号)  同(辻第一君紹介)(第三六四号)  同(寺前巖紹介)(第三六五号)  同(東中光雄紹介)(第三六六号)  同(不破哲三紹介)(第三六七号)  同(藤田スミ紹介)(第三六八号)  同(古堅実吉紹介)(第三六九号)  同(正森成二君紹介)(第三七〇号)  同(三浦久紹介)(第三七一号)  同(山原健二郎紹介)(第三七二号)  同(吉井英勝紹介)(第三七三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国際連合平和協力法案内閣提出第一号)      ────◇─────
  2. 加藤紘一

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国際連合平和協力法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。町村信孝君。
  3. 町村信孝

    町村委員 あしたから公聴会でございますが、一応ずっと審議が続いております。大変長時間にわたる審議で、総理初め大変な御苦労をいただいておりまして、御健康には十分御注意をいただきたい。お祈りを申し上げます。  私は、昔通産省におりましたときに、ちょうど十年ほど前でございますが、原油担当石油企画官というのをやっておりまして、中東地域にも訪問したことがございます。ちょうどこの十月の末ごろの時期だったと記憶をしておりますが、とにかく暑いところだなという記憶が今でも残っておりますし、また夜になると結構寒いのですね。そういう厳しい自然環境のもとでとらわれておられる人質の皆さん方、また、聞くところによると、これから冬場に向かうとイラクは大変寒くなる、そういう意味で健康問題を含めて大変心配もしておりますし、また私は先般留守家族方々ともお目にかかりましたが、大変な御心労の様子でございまして、心から同情を申し上げているわけでございます。  もちろん困っているのは日本人ばかりではなくて、祖国を追われたクウェート人たち苦しみ、あるいはそういう劣悪な自然環境のもとで頑張っている多国籍軍皆さん方だって大変だろうと思うし、またさらには世界じゅうの国々がそれぞれの立場で大きな悩みを持ち、苦しみを抱いているという昨今の状況だろうと思います。  でありますから、本当に私は、そういう意味で、イラクサダムフセインという人はどういう人だか個人的には全く知りませんが、全く許すことができない。怒りを覚えるわけであります。しかるに、最近国会の周辺をいろいろデモ隊皆さん方が通ると、自民党を糾弾をするとか海部内閣けしからぬ、そういうスローガンがいっぱい出ているのですが、サダムフセイン悪いとは全く出てこないので、一体この人たちも、正直言って何か怒りの矛の向け先が全然違うんじゃないかな、こんなことを痛感するわけであります。  それで、きょうおさらいの意味も込めまして、私も週末地元に帰ったりして、国民皆さん方からいろいろな、率直なというか素朴な疑問が随分出されております。細かい法律論ということではなくて、もっと素朴な疑問に対して必ずしも政府あるいは我々も含めてですけれども、十分な説明ができていない部分もあるのかなと思いますので、きょうは余り微に入り細をうがった質問というよりは、そういう国民の素朴な気持ちなり疑問なりを代弁するような形で幾つか御質問をさせていただきたい、こう思っております。  その前に、私は、最近こういう政治状況のもとですから理解はいたしますけれども、この法案修正論というのが盛んにマスコミをにぎわしているわけであります。自民党幹事長発言でありますとかあるいは各派閥の領袖の発言なり、あるいは総理自身愛知県で修正論を言われたというような一部新聞報道にも接しました。私は、自民党の大幹部の中には大胆な修正というようなけさ新聞報道にも接して大変あきれるといいましょうかびっくりしたわけでございまして、マイナーな部分での修正なり妥協なりというのは、私はこれは国会のことですから常にあり得るとは思いますけれども、しかしこの法案についての根幹にかかわる部分修正といいましょうか、これは私は全くおかしいのではないかな、こう思うのであります。  例えば、派遣をされるであろう自衛隊皆さん方が、その活動について何か非常に後ろめたいような気持ちでもしこれが派遣をされるというようなことであれば、かえってこれはマイナスだろう、そういう意味で、その根幹にかかわるような修正は絶対に避けるべきである、こう私は考えているわけでございますが、この最近の動き、いろいろな方の御発言について、総理自身発言も含めて、どういうお考えであるのか承りたいと存じます。
  4. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回お願いしております平和協力法案というのは、政府部内でいろいろな場面を想定しながら、そうして、今国連が機能し始めているときに、それに協力する方法は一体どこまで、何かできるだろうかということを中心にまとめ上げた法律案でございますので、政府としては、この法律案の御理解国会で深めていただいて成立させていただきたい、こういう気持ちで当初から一貫してお願いをし続けてまいったわけであります。そうして、修正問題についてのいろいろな御意見があることはよく知っておりますし、また、この委員会を通じても、その言葉は使われないにしても、そのような角度からの御議論があったこともいろいろ踏まえておりますけれども、政府がお願いしておりますのは最善だと思って提出をしておるわけでございます。根幹に触れるとか触れないとかということよりも、このままで通していただきたいというのが率直な願いでございます。  私が過日お話ししましたことも、どうも国会議論が、直接質疑応答させていただいて、何か私が想定もしていないような、想像していないような物すごい幅の広いところで、極端な幅の広い議論に何かなってしまっているんじゃないだろうか。要するに、戦争か平和かというようなことじゃなくて、お互いに平和を守るためにはどうしたらいいかということを議論をしておるはずでありますけれども、何かすぐ戦争に巻き込まれる、攻撃用兵器を持って出ていくんじゃないか、それは憲法に違反する、それはいつのあれに違反するということになると、ちょっとお願いしておる平和を守っていきたいという平和政策真意と外れてくるわけであります。  同時に、戦後四十五年で初めて冷戦状態が終わりを告げて、一つの自由と民主主義という価値を求めて世界の歴史が大きく流れ始めておるときに、弱肉強食のような武力侵略はもう二度と許してはならないから、それを阻止して、追い返して、そしてきちっとした国際社会の大義を守っていこうという平和協力法案でありますから、そういった真意を何とか御理解もいただきたいし、また、その点については質疑の中で各党とも反対はないように私は思いますので、それなれば一遍具体的な代案を出していただければ、重ねてみると、これとこれはきちっと合っている、ここのところで心配や不満や批判や御指摘があるなれば、そこのところのさらに議論を深めて政府案理解をいただくように審議を続けていきたいんだ、こういう気持ちを精いっぱい述べたつもりでおりますので、その点もあわせてここで申し上げさせていただきたいと思います。
  5. 町村信孝

    町村委員 けさの朝刊を見ますと「政府筋」、これはだれだかわかりませんが、大胆な修正を示唆した、「自衛官国連平和協力隊への参加取りやめを含む大胆な法案修正に応じざるを得ないとの見方を示した」、こういう発言はそれでは事実無根である、こういう理解をしてよろしいのでしょうか。
  6. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな記事が出ますときに政府筋と書かれますが、海部俊樹がとお書きになったなら私はここで明確に、そういうことは申し上げておりません、言った方ここへ来てもらってと言いたいのですけれども、筋と書いて逃げられますとどうにもなりません、正直言って。私の身辺にはそういう者は、そういう筋はありません。
  7. 町村信孝

    町村委員 今総理からも、積極的に野党皆さん方代案を示すべきである、私もそのとおりだと思います。というのは、昨年の参議院あるいはことしの春の衆議院、税制につきましては野党共同提案という形で消費税廃止法案及び関連法案というのが出され、そこで国会の中で議員同士議論が行われた。私は、一つ国会のあるべき姿だったのかな、こう思うわけであります。  しかるに、今回せっかく十月十五日付で、日本社会党「「国連平和協力機構設置大綱」、この中を見ると「「国連平和協力機構法(仮称)」を制定する。」こういうところまでせっかく御意見をまとめておられるにもかかわらず、これをなぜか法案という形でお出しにならない。随分社会党の中にも、それは党の内部事情ですから私は知りませんが、若手の皆さん方からは、八月三十日の中央執行委員会で、社会党も積極的な提言をすべきだ、法案提出すべきだ、こういう御意見があったやの報道もありましたが、結果的には、そういう言い方をしては失礼かもしれませんが、社会党的非常に古い体質で具体的な法案提出がなされていないというのは、私はやはり国会の運営に責任を持つ野党のあり方として非常に遺憾な事態ではないだろうか、こういうふうに思います。  また、同時にそれは他の野党皆さん方も同様でありまして、それぞれの法案提出して、その是非というものを議論するということが国会のあるべき姿だろうと私は思うわけでありまして、この点を私は野党皆さん方に、注意をするというよりは、そんな失礼なことは言いませんが、ぜひ前向きの御提言を今後法案という形で出していただきたいということを申し上げるわけであります。  そして、この社会党なり公明党なりの案を私なりに拝見をすると、もちろん自衛隊としての参加の仕方でありますとか、武器を持つの持たないの、どういう身分で行くのという違いがあるのですが、ではどういう仕事をするのか、どういう業務をするのかというと非常に共通点がさっき総理おっしゃったようにあるわけですね。輸送通信、資機材の維持・補修、医療あるいは、これはもちろん別の分野として停戦監視とか難民の援助とか、こういう意味で、これは社会党公明党も似たような業務というものが必要であるということを言っておられる。  だから私は、さっき総理が言われたように、幾つか重ねてみればおのずと一つの絵ができてくるんじゃないのかな、そんな感じもいたしますし、また野党皆さん方が言っている中でも、民社党の非武装の歯どめをするとか、派遣について国会が何らかの形で関与すべきではないかとか、あるいは公明党が言っておられますように、当面の湾岸危機対応ということで一応区切って考える、より根本的な問題についてはさらにじっくり審議を深め、より根本的な対応策を講ずるというような点については、これは私の全く個人の考えでありますが、一つの傾聴に値する、検討に値する考えではないのかな、こう思っておりますので、政府の方として、こういう野党考え方なり対応の仕方なりについてもしお考えがあれば御所見を承りたいと存じます。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政府として野党考え方についての御所見と言われますが、ですから法案を出していただいて、法案をよく見せていただかないと、大綱のままで物を申し上げるのはいささか軽率ではないかという、そんな思いがございますので細かくは申しませんが、ただ、原則非武装平和協力だからやろうという考え方は我が方も全く同じでありますけれども、しかし、派遣先によっては治安の状況とかいろいろよくないグループが出没する地域というのが現実にある場合に、護身用ということぐらいは考えなければならぬだろう。  隊員の基本的人権はどうするんだということになってきますと、ここのところは野党皆さんとも十分、基本的人権の問題ですから、お話し合いをしなきゃならぬことになるし、あるいは接点が出てくるのではないかという考え方がしたり、例えば協力業務でもいろいろ輸送通信、その他機械器具の備えつけ、修理、こういったことはみんな同じですけれども、私の記憶に誤りなければ、停戦監視までは我が方の第三条に書いてありますが、いわゆる武力行使が伴うことが想定されるような平和維持軍については慎重を期して除いてあります。これは、現に戦っておる兵力引き離しの中に部隊を展開して、割って入っていく任務が公然と出てくるわけでありますから、そのときには護身用武器だけではこれはいけないだろう。  きょうまでも現によく野党の御質問にもありました、スウェーデンの国連待機軍なんかも検討せいということで十分検討しましたが、あそこもやはり火器とか武装して、それなりの物を持っていかなければならない職務のようですから、我が方では平和維持軍というのは協力業務からのいてありますけれども、それも含めてあるお考えもある。これを初めから武力行使の目的でないからいいではないかと言われれば、そうかもしれませんから、そこらも一遍よく話をしてみて、PKOならば全部いいのかどうなのか。我が方でもちょっとちゅうちょしたのは、武力行使を初めから伴わないようにというところで厳重な線を引いたわけでありましたから、そんなようなことを、法案をお出し願えれば、それによって意見も言える。重ねてみて、ここはよろしいがここは違う。これはどうですか。例えば今言ったような問題について、これは十分お話しの場になるのではないか。ただ全体で戦争か、反対か、すぐに平和協力隊は戦車と武装部隊と爆弾だというようなことになると、これは想定と全然違うわけでありますから、我々の真意理解をしていただきたいなというのが私の率直な気持ちでございます。
  9. 町村信孝

    町村委員 非常にわかりやすい御答弁でありますし、私は極めて十二分に理解をできる御発言だったと思います。  それから、この後少し町の声といいましょうか、幾つか出ている考え方の中に、何で今回こんなに大騒ぎをするんだろうか、今まで戦後の過去そう長い時間をとらなくても、ベトナム戦争もあったり、あるいはソ連のアフガン侵攻もあったり、いろいろなそういう事件が起きているわけですね。しかるに今回だけなぜこんなに世界じゅうが、また日本の国内も新しいこういう法律をつくってまでも対応しなければならないほど、そんなに深刻な、また重大な事態なんだろうか、そんな関係ないんだからほっておきなさいよと、いわばそういうようなニュアンスで受けとめている方も実は少なからず国民の中にはいらっしゃるわけですね。  さっき冒頭総理からお話がありましたように、武力で他の国を併合するということの不当性、もうこれは言うまでもありませんし、弱肉強食国際社会をつくってはいけないという、これは世界じゅうの国が一致し、したがって圧倒的多数で国連でも決議をされた。この世界の秩序を守るという観点で毅然とした態度をとろう、米ソも一致したということでわかるのですが、日本にとってどういう意味があるんだろうか。何となく油はかなり関係があるなということぐらいは皆さん理解があるんだろうと思いますが、実際日本にとっての湾岸地域重要性というものについてどういうふうに国民皆さんに御説明をされるのか、外務大臣の方から御答弁いただきたいと思います。
  10. 中山正暉

    中山国務大臣 この湾岸地域日本にとってどんな関係を持っているのかということを率直に申し上げれば、我々の国が貿易国として経済機能活動をする中で、我々の輸入する原油の約七割近いものがこの地域からに依存しているということが一番大きな問題であろうと思います。この湾岸地域から輸出される原油の中で一番高いシェアを占めているのが日本である。だから世界から見れば、ここの地域の平和の破壊で一番大きく影響を受ける国はどこかと言えば、それは即日本であるというのが世界の常識であります。  そういう中で我々の国は過去の石油ショック、ちょうど町村委員通産省におられたころに御苦労いただいた石油備蓄のシステムを確立したために、前回のように直撃をされなかっただけに、国民皆様方にはトイレットペーパーを買いに走るとか、そういうふうな不安がまだ起こっていない。ここは政府の立てた政策が非常に効果を発揮した点だろうと思います。しかし、長期の観点から見ますと、恐らくこのクウェートからの撤退が行われないということになってまいりますと、これからの石油備蓄の取り崩しをどのような形でやるのか。  きのうも朝、エネルギー関係閣僚会議がございまして、今の全エネルギー石油依存度は五七%、第一次石油ショックのときは七七%でございましたから、二〇%下げたわけです。さらにこれを四五%まで二〇一〇年には下げるというのがきのうのエネルギー関係閣僚会議の合意でございましたけれども、そのような国の考え方の中で、我我の国家と中東というものは不可分の関係にある、しかも一番密接な関係経済に持っているということであろうと私は考えております。
  11. 町村信孝

    町村委員 一生懸命あの一次石油ショック以降官民を挙げて努力をしてきた、備蓄もできた、さらに原発も、さまざまな反対意見などあっても住民の理解を得ながら進めてきた、その成果が今大臣の御発言の結果を生んだんだろうと思いまして、私はこういう観点からも、一部野党の中には原発反対だという方々がいる、本当に日本の国益を考えての発言なんだろうかと私は常日ごろ疑問に思っていたものでございます。  これは政府委員で結構ですけれども、一つ想定です。多分起きないだろうという期待を持ちながらですが、一つ想定として、仮に輸入原油の価格がバレル三十ドルとか四十ドルとか、あるいは量的にこれこれ一定割合が入らなくなったとした場合に、日本経済なりあるいはアメリカの経済、あるいは油の出ない発展途上国、あるいは、最近新聞を見ると東欧などが非常に困っている、こういうような報道もあります。世界経済全体及び日本経済に、一つのモデル計算でもいいんですけれども、どんな影響が出ると想定をしておられるのか、御説明をいただきたいと思います。
  12. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 これ以上大きな石油の供給について問題が起きることは決して楽しい想定ではございませんけれども、御質問でございますのでお答えいたします。  とりあえず私の方で、経済企画庁で数量的な計算をいたしましたのは、石油の供給について、いろいろの問題はあろうけれども、とりあえずいろいろな方法で量的には何とかやりくりをしているけれども、たまたま現在のような状況でございますね、しかし、やはり心理的な不安、ショックも含めまして価格は上がるというのが現実の姿でございまして、その価格の上昇によりましてどのような影響が及ぶかということを一応計算をしてみました。  三十ドルないし四十ドルという御指摘でございますけれども、今日まで、状況を踏まえて、三十ドルに上がってこれが継続した場合のおよその姿をいろいろな仮定を置いて計算をいたしましたのですが、日本経済につきましては、当然のことながら、石油関連製品から順次波及いたしまして物価が上がってまいります。タイムラグはございますけれども、ほかの条件が異ならなければ、結局その効果が出尽くしたところで消費者物価は〇・九%程度上がるであろうということでございます。  それから国際収支、これは原油それから石油製品等計算によって多少の動きがございますけれども、十八ドル程度であったものが三十ドル程度に上昇をしてこれがずうっと続いた場合、年間の影響としては、これは十二ドルの上昇でございますが、一年間で二百二十億ドル程度の支払いの増になろうかと思います。  それからGNPにつきましては、これはまたそれ以外のいろいろな要素を考えていきませんと正確な計算ができませんが、一応ほかの条件は変わらない、主としてこの石油の価格ということで計算を、モデルによる計算でございますから当然いろいろな前提があります、ここでは時間の関係で一々御説明申し上げませんが、計算いたしますと、向こう一年の間でGNPが〇・三%くらい下方に引っ張られるというような日本経済への影響でございます。  それから世界経済でございますけれども、今日本について申し上げましたのは、一次、二次石油危機の経験に照らしていろいろの石油節約をやってきて、世界で最も優等生の日本で、かつ、今回の事件が起きる直前に、絶好調とは申しませんが、比較的いい状況で迎えた日本がこれだけ影響を受けるわけでありまして、御承知のようにアメリカは今そもそも経済は悪うございます。たまたま昨日発表のGNP七―九はちょっと持ち直しておりますけれども、それでもここ二、三年の趨勢を見ますと、GNPは落ちておりますし、物価の上昇圧力は強うございますし、いわゆる双子の赤字の問題も片づいておりませんし、それから日本ほど省石油が進んでいない等々の理由から、アメリカの方がより影響がむしろ大きいのではないかと懸念されます。具体的な数字の計算までには至っておりませんけれども、アメリカ自身も大きな影響がございます。  それから、まさに御指摘のとおり油を産出しない発展途上国は、そうでなくても物価問題それから経済不振、全般に悩んでおりますけれども、石油で今回既に影響を受け始めておる、御承知のとおりですが、さらにこれが続いてまた拡大していけば、インフレ圧力が高まり、それから輸出が当然鈍化をするということになりまして、大変大きな影響を受けますし、それから、ソ連原油の供給削減を既に受けてもう既に困っている東欧諸国はまた一段と大きな影響を受けて、せっかく始まりかけた市場経済への道のりは大変厳しいものになりますし、また、ラテンアメリカ等の累積債務を持っている国は、石油状況が悪化すれば世界的に金利が上がりますので金利負担もふえる、こういったことで、日本を初めアメリカ、LDC、その他ラ米の国、東南アジアの国、世界じゅうが大きな影響を受けざるを得ないということでございます。
  13. 町村信孝

    町村委員 大変日本はもとより世界じゅうの国国が悪影響を受けるおそれがある。今、仮定がバレル十八ドルから三十ドルという、やや穏やかな想定かもしれません。前回の石油危機のときには、スポットで四十ドルを超えるという事態にまでなったことなどを考え合わせますと、この湾岸危機がずっと続いて、かつ油の値段が高騰する、場合によっては量的な削減、これは計算が難しいから今お話がありませんでしたが、量的な削減まで出てきたというようなことを考えると、世界経済が大変な大きな影響を受ける。それだけ実は今回のこの湾岸危機というのが、日本及び世界に大変悪いインパクトを与える、そういう性格であるということだろうと思います。  したがいまして、国際政治の面からも国際正義の面からも、また国際経済の面からも、同列には論じられませんが、しかし、いずれにしてもこのサダムフセインの暴挙というものをやはり声を大にしてとがめ、さらにその撤退を求めていくという国連の姿勢に私どももしっかりと同調していかなければいけない、かように考えるわけであります。  次に、それだけ重要な影響があるのはそれではわかったと、しかし国民の中には、日本はお金持ちになっちゃったんだからお金の面だけ協力すれば十分じゃないの、こういう見方もあるわけですね。お金さえ出せばいい。今、国内では三Kという言葉で、汚い、きつい、危険という言葉がありますけれども、いわば国際的な三Kなんかは日本は引き受けぬでもいいよ、そういうのはアメリカに任しておけば、日本はお金だけ出して、後はのうのうと暮らしていこうよ、こういうような発想が今、国民の中には少なからずあると思います。土井委員長も、当初海部総理と党首会談のときにお金、お金と数回発言をされたそうでありますけれども、やはりそういう考えで本当にいいんだろうか、きっとそういう反省に立って人的な協力が必要だ、こう判断をされたと思うのですが、なぜ資金協力だけでは不十分であって人的協力を必要だと判断をされたのか、一度わかりやすくお話をいただきたいと思います。
  14. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今、日本の国が非常に豊かな国になったという前提がございましたけれども、私は戦後四十五年を顧みて、我が国は人に迷惑をかけなければいい、逆に言うと迷惑をかけちゃいけない。その迷惑というのは、歴史の反省に立って、侵略戦争をやってはいけない、軍事大国になってはいけない、他国に脅威を与えてはいけない、これが我々が教えられてきた人に迷惑をかけちゃいけない、それを国家と国家のつき合いで言えばそこに限定しておったような感じがするんです。  したがいまして、安全保障の問題はアメリカに依存をして、日米安全保障条約のもとで我が国の安全は確保できるという安心感と、同時に世界が自由経済、自由貿易でしたからあらゆるところと貿易をどんどんふやしていった。約七億トンのものを輸入をして八千万トンのものにつくりかえて輸出をして、その差額が大体六百五十億ドルというような、粗っぽい計算ですが、今日の日本の実情なんです。六百五十億ドルというものが年間世界の国からずっと日本へ来るからこそ、日本経済が強くなり国民生活が豊かになってきた。しかも、安全のことは日米安保条約に依存しておけばいいからこちらに全力を挙げよう、世界の環境もそれでよかったわけです。ですから、そういうときでありますから、世界の人々に言わせると、ちょっと待った、お金出す、お金出すと言うけれども、あなたが出すお金はおれのところからもうけていったお金ではないか、こういう説も成り立つわけです。また事実、貿易の帳じりを見ておるとそれが言えると思うのです。  そういった角度から物を申し上げると、今いろいろ行われております途上国の累積債務を、ブレイディ構想に従って先進国がいろいろ還元、面倒見ておりますのも、金利その他の流れを見ておると、貧しい南から豊かな北へ金が逆流しておるんではないか、それなれば、それはある程度スケジュールのやり直しとか債務の免除とか、自助努力をすることを前提に協調していこうというような動きすら国際的な社会の中にあるわけですから、ある意味では世界の平和な仕組み、自由貿易の仕組みの中で貿易を通じて日本の富はできたものだということからいいますと、そういった世界の危機に対してお金を出すというのは、これはある意味では当然の国際協力の一つであって、それさえしなかったら、これはもう何とかいう形容詞をつけられて村八分になることは容易に想像できることだと思うのです。それが大前提で一つ。  それからもう一つは、お金のことを抜きにしましても、国際社会でこれだけみんなが希望に満ちて、東西の対決が終わって、さあ仲よくしようというときに、とんでもない型破りが一人出てきて悪が暴れておる、これはみんなで抑えなきゃならぬ。  これは委員も文教委員会に長らくおいでいただいて、私も質疑さしてもらったことを思い出しますが、あのころ校内暴力の議論をしましたときに、見て見ぬふりをするのは校内暴力をはびこらせる、皆が言うべきことは言わなきゃならぬ、特に、言うべき立場の大人がもっと物を言って、いいこと、悪いことはやっぱり教えるべきことは教えていかなきゃならぬ、それが校内暴力をはびこらせておる原因で、見て見ぬふりというのはよくないんだということが、大方の議論の中で私は一致した結論だったと覚えておりますが、そうであれば、国際連合のような場所で、ここに平和の破壊者がおる、今の場合に、暴力でもって、武力でもって一国をとにかく侵略してつぶすことは許されないことだとわかったならば、皆で物を言おう、国際社会の敵として糾弾しよう、そしてそれは武力で片つけるんじゃなくて、平和的解決で何とかできないかというので、経済制裁措置というものが今厳しく行われておるわけであります。  先ほど来の御質疑を聞いておりますと、日本にとっても、自分の国に油がないんですから、これはかつての御職業柄よくおわかりだというお話でした。くどくど申しませんが、一日二十二万バレルというものをイラクからもクウェートからも輸入しておった日本としてみれば、全輸入量の約一二%がそこでとまるわけですから、日本にとってもそれは非常に厳しいことではありましたが、平和のためですから御協力ください、言うべきことを言うという立場に日本も立って、国際社会の大義を守るという立場、そういう政治的な意思表示を明確にするのです、それが国際社会の一員として果たすべき責任であると感じております、こういうことで経済制裁にも踏み切り、厳しいことはありますけれども努力をしておるさなかでありますから、こういった国際社会の努力というものが目に見えて実っていくように、そのためにはお金だけではなくて、なし得ることは何であろうかということを今の新しい時代の中で探し出して、できるだけしたいというのが平和協力法案の中にいろいろと書いてあることでございますから、どうぞ、率直な意見を申し上げましたけれども、御理解の一助にしていただければ幸いだと思います。
  15. 町村信孝

    町村委員 そういう形で、お金のみならず人も物も知恵もいろいろな面で協力をするということの必要性というのは、良識ある方々であれば皆さん理解がきっと今やあるんだろう、こう思っております。  ただ、そこまではわかった、しかしなぜ自衛隊なのという議論が次にやはり出てくるわけですね。なぜ自衛隊まで出さなきゃいけないんだろうか、行きたい人がボランティアでどんどん行けばいいじゃない、そういうような言い方、あるいは説得をしてボランティア的に行ってもらってはどうなんだ、こういう議論もあるわけでございます。  この事件が起きてから民間の方々にボランティアで協力してくれ、いろいろな方々にお願いをしたその実情、しかしそれがどうもうまく実っていないという実情、あるいは医療先遣団がサウジアラビアの方に行って、もう帰ってこられたんでしょうか、よく知りませんが、しかし行ってみて、それこそ何しに来たのと言わんばかりの対応で、非常にある意味では平和ぼけした日本人から見るとショックを受けて帰ってきた、帰ってきたというか、そういう対応を受けたという報道を見聞きしておりますけれども、これまで民間のボランティアでどこまで対応できていてどこまで全然対応できていないのか、その実情を少しつまびらかにしていただきたいと思います。
  16. 中山正暉

    中山国務大臣 民間のボランティアの方々にもいろいろ御苦労をいただいていることは事実でございます。今回も政府は民間の方々にお願いをいたしました。しかし、なかなか期待されるほどの方々のお申し出がなかったわけでございまして、第一弾の医療先遣隊も約十名を超えるばかしの数でございましたが、そのような経験の中に私どもはやはり、国連が決める決議を受けて行う国連の平和維持活動に適切かつ迅速に対応するとこの法律に書いておりますけれども、迅速に対応するとすれば、組織的にチームワークがとれるような経験を持った方々はどこにおられるのかな、こういう実は発想が出てきたわけであります。  しかし、国が民間にお願いする以上は、国の中にそのような組織はないのかな、こういうことから考えられて出てきたのが自衛隊あるいは海上保安庁、警察、地方自治体の消防、こういったような組織は訓練がされた方々がいらっしゃる。そういう中で通信とかあるいは防疫活動をやる医療隊あるいは治療をやる人たち、こういうものの一つのチームというものが、実は自衛隊が専守防衛の中にあるわけでございまして、こういう方々に御協力を願うとすれば、それは武力の威嚇あるいは武力の行使につながらないという原則の上に立って国連の決議に従って平和維持活動をやる、こういうことからこのような考え方が浮上をしてきた。ただし、その場合には、武器を持つという不安が当然国民の中にも外国からも起こってまいりますから、携行する武器に一定の護身用の歯どめをかける、こういう考えで今回対応した、こういう経過がございます。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  17. 町村信孝

    町村委員 今まで四WDを運んだとかあるいは若干の難民を飛行機で運んだとか、そういう民間ベースで協力してくれた実態というものが過去二カ月余の間にあるかなと思うのですが、どんなことが現実に行われたのですか、民間ベースの協力ということで。その実態をちょっと教えてほしいのですが。
  18. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 民間ベースで御協力をいただいて行いましたことは、具体的に申し上げますと、一つには日本の船舶を政府としてチャーターをいたしまして、それで輸送を行っている、これは船舶二隻でございます。それから医療チームの先遣隊のサウジアラビアに対する派遣がございました。さらに難民救済につきましては、御指摘のように民間の航空会社の協力でヨルダンからフィリピンまで、これはたしか三便に全部でなると思いますけれども、これを行っております。
  19. 町村信孝

    町村委員 非常にごくわずかである。若干言い漏らした分がそれはあるのかもしれませんが、二隻とか飛行機が三便とか、非常にささいな協力しか現実にはできていない。それとても貴重な協力ではありますが、日本全体として見ると非常にごくわずかだなという印象はこれは免れないわけですね。したがって、今外務大臣御答弁のような、やはり組織として、チームワークをとりながらきちんとした形で民間も国も協力をするということになれば、そこで自衛隊というものが登場してくるのは私は理の必然だろう、こう思うわけでありまして、その点がなぜ自衛隊なのか。  どうも自衛隊というと、いつも総理が言っておられるように、ニュースを見ると、すぐ戦車ががあっと走ってみたいなイメージで国民にとられておりますが、決してそうではない部分自衛隊活動というものがあれば、もっともっとこの二カ月間、日本として協力する部分があったんだろうと思いまして、そういう意味からこの法案が必要だということだろうと私は理解をいたします。  累次の質問の中でちょっとわからないところがあったのですが、一般職の国家公務員が協力隊員となる場合に本人の同意が要るのか要らないのか、ちょっと必ずしも明確でない点があったので、小さい問題ですがちょっとそこだけお答えいただけますか。
  20. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 きのう地方公務員あるいは自衛隊員等の参加の場合の本人の同意の要否につきましては御説明がありましたと思いますけれども、一般職の国家公務員が平和協力隊参加する場合の本人の同意等の問題につきましては、これは法律の第二十条に書いてございますけれども、派遣された場合に、派遣元との官職を兼ねるということになっておりまして、これはいわゆる国家公務員法体系のもとでのいわゆる併任という言葉でございます。このような場合には、国と当該職員との間の一定の雇用関係を前提として任命権者の合理的な裁量にゆだねられているということで、制度的には本人の同意は必要ないというふうに考えられます。  なお、何でも無理やりに行けということではなくて、当然各省の人事当局におきましては、本人の身上調書を日ごろやっているとか、あるいは勤務評定等をやりまして、本人の適性、能力あるいは家庭の事情等を常時把握しておりまして、そういう点も考えながら命令を出すということでございます。  なお先生、さっきの自衛隊関係一つだけ追加してよろしいでしょうか。――例えば、これまで国連から要請がございましたけれども、今の制度のもとでは応じられなかったということがございます。  例えば具体的に二つの例を申し上げますと、昭和三十三年に、これは正式にハマーショルド事務総長から松平国連大使に対しまして、レバノン国連監視団、これはUNO GILと言いますけれども、レバノン監視団に対して自衛官を出してほしい、十名の士官を出してほしいという要請がございました。  次いで昭和四十七年に、これは正式要請ではなく非公式ベースで、パレスチナ国連休戦監察機構、UNTSOと言っておりますけれども、これは今でもまだ存在しておりますが、このUNT SOに対しても将校クラスの自衛隊員を出してほしいという要請がございました。これは五、六名軍事オブザーバーとして派遣してほしいという要請がございましたけれども、こういう派遣の要請にこたえることは憲法上の問題ではありませんが、当時日本政府といたしましては、今の自衛隊法上できないということでお断りした経緯がございますので、あわせて御報告させていただきます。
  21. 町村信孝

    町村委員 次の問題に進みたいと思いますが、この委員会議論を見聞きしていた方々の中で、やはりどうも不思議だな、どうしてそういうことになるんだろうかなというような幾つかの御指摘をたまたま私は受けたものですからそれを申し上げるのですが、それはこの多国籍軍というものの評価ですね。  大変恐縮ですが、野党皆さん方質問を聞いていると、多国籍軍イラクという何か戦争があって、イラクもけしからぬけれども多国籍軍もけしからぬ、こう言わんばかりの発言が実はあって、その多国籍軍に協力しようとするこの平和協力隊を出そうとする政府もけしからぬ、こういう非常に奇妙きてれつな議論が行われているわけですね。多国籍軍がこれはたまたまアメリカだったから、どうも余りアメリカが好きでない方々野党には多いもので、したがって、だからよくない、こう言っておられるのか、しかし、もしこの多国籍軍がソ連中心だったら、果たして野党皆さんどういう対応をするのかなと私は思うわけであります。あるいは、多国籍軍だからいけない、協力してはいけないんだ、国連軍ならばじゃいいのかなとか、どうも論ずべき対応関係が全然違うのに多国籍軍イラクという感じで議論をされるのは、私は全くおかしいと思うのです。  一方は侵略者であり、一方は平和を守るために出ていっている。しかも、国連軍をつくるというようなことで時間もかかり、手続がかかっていたのでは、あのイラクの勢いでは、クウェートの併合はおろかサウジの一部に入っていったかもしれない。さらにその延長線上にあるバーレーンとかカタール、もっと行けばアラブ首長国連邦まで出ていって、そしてあのペルシャ湾一体を、もし多国籍軍が出ていかなければ、あのペルシャ湾というものをイラクが制圧をしていたおそれが実はあったわけですね。それを未然に食いとめたというのはまさに多国籍軍の抑止力、成果でありまして、私はこれは積極的に評価をし、非常に日本にとってもむしろありがたい、よくやってくれた、こういう評価をすべき存在だ、こう思いますし、これに対して、この多国籍軍活動に対して日本が協力をするのは当然の責務であろう、私はこのように考えるわけでありますが、この点について、総理なり外務大臣なり、もしお考えがあれば承らしていただきます。
  22. 中山正暉

    中山国務大臣 委員御指摘のとおりでございまして、多国籍軍というのは国連の決議を受けて、イラククウェート侵攻がさらに拡大していくということを抑止するために各国が展開をしている軍隊であろう、それによって我々は、クウェートからさらに南下した場合に受ける国際経済に与える影響あるいは日本経済に与える影響というものを双方から考えますと、私は、この抑止力となっている多国籍軍のいわゆる効果というものは大変高く評価されるもの、このように考えております。
  23. 町村信孝

    町村委員 この点はどうも日本の国の中で誤解なりあるいは意図的な悪宣伝が行き届いておりまして、とにかくアメリカが中心だからいけないんだ、こういうような非常に誤った悪宣伝、意図的な悪宣伝が行われている、このように私は考えておりまして、日本の憲法がいかなるものであろうとも、多国籍軍の評価について、これをどのように評価をするのかということをまず私どもは認めなければならない。  政府から出された資料の中でも、多国籍軍、非常に数多くの国々が出ております。この春に総理に同行いたしましたあの非常に貧しいパキスタンとかあるいはバングラデシュとか、非常に日々の生活にも苦しんでいるような国々までが地上軍二千人、三千人という兵力を出している。やはり私は、これらの国々は、それはもちろん国内の事情、憲法の違い、法律の違いはあるにせよ、自分らの国々でも苦しんでいるような、そんな人たちも今一生懸命多国籍軍の一員として努力をしている、これに対して我々日本があらゆる方法をもって支援をするというのは、これは当然のことだろうということを再三強調をしたい、こう思います。  それから次に、国連中心主義という言葉が最近非常に使われております。日本政府は、かねがね外交青書などを見ると、国連中心主義というのが日本のいわば外交の一つの基軸であり柱であった、こう思います。しかし、現実には私は、国連というものは米ソが対立をしているという状況の中で非常に機能していなかった、このように私の個人的な体験でも思うのですが、ようやく機能しようとしている。  しかし国連憲章を見るまでもなく、国連の重要な機能の中には、国際の平和及び安全を維持するため軍事行動をとることができるという一項目が数条にわたって事細かに書いてあるわけでありまして、軍事行動をとることによって最終的には世界の平和と安全を維持するんだということがこの国連憲章には書いてある。ところが、非常に不思議なんですが、その部分はどうも、どちらかというと無視しようというか、もちろん平和的な手段で解決するのがいいのはもう論をまたないのですが、あえてその国連の持つ軍事的な機能というものを消そうとしている。  例えば、これは十月二十八日日経新聞の一面の「緊急インタビュー 社会党委員長土井たか子氏」、質問は新聞社の質問ですが「土井さんは代表質問で二度と青年を戦場に送るなと訴えましたが、半面、米国もそういうことを言っていたら今回のイラク侵攻を止め得ただろうか、という声もあります。」という問いに対して土井委員長は「国連の任務は本来、調停機能にあるので、国連自身が兵員を動員し、武力で対決する当事者になってはいけない、というところが非常に大事な国連の役割であり、国連の機能そのものだと考えます。」これは立派な学者である土井委員長が、よもや国連憲章を読んでいないということはあり得ないのであって、もしかしたらばこれは国連に対する理解不足であるのか、あるいは私の考えで言えば、非常に空想的な観念的な平和論の所産でこういう議論が出てくるのかな、こう思わざるを得ないわけであります。個人的にそういう印象を受けます。  でありますから、私は国連というものは、もちろん平和的な活動、平和維持活動経済制裁、そして最終的には軍事的な行動までも伴って初めて世界の平和が維持できるんですよというのが国連の姿であるというこのことについて、やはり国民理解を得る、私どもも努力をしなければならぬし政府ももっと努力をしていただきたい、こう思うのであります。  そして私は、さっき言ったように、国連が十分機能していないということを考え、あるいは最近ソ連が国連の軍事機能に着目して、もう少し機動的に迅速に行動できるようにすべきではないかという提案を出されたというような報道もありますが、日本として国連の機能、軍事行動も含めて、日本としてこの国連の機能をより強化するため、活性化するためにこの際何か具体的な提言をまとめ、その実現に向けて努力をすべきときが今まさに来ているのではないだろうか、このように思うのですが、いかがお考えでしょうか。
  24. 中山正暉

    中山国務大臣 国連中心の外交をやるという日本考え方が、我々の国の一つの大きな外交の基本原則の一つになっております。委員御指摘のとおり、国連憲章、この中には、いわゆる世界が侵略者とみなしたものに対してみんなが寄ってこの侵略を認定しそれを排除するということは、一つの大きな哲学として存在していることは御指摘のとおりでありまして、国連中心ということになって、その中で安全保障問題をやるのが安全保障理事会、そこに我が国は六回理事として席を連ねた。明後年も、これになりたいということで今立候補のいわゆる準備をしているわけでありますけれども、この中に軍事参謀委員会というのが実はあることも御承知のとおりであります。  今後日本国連中心の外交をやっていくということについては、我々政治家だけではなしに、一般の義務教育の課程において、国連憲章というものは日本国の憲法と同機に、これから新しい二十一世紀を迎えようとするときに国際社会が持っている憲法なんだ、憲章は憲法のようなものだということを我々の義務教育の課程で国民の若い世代に教育することが、これから議会で国連中心の外交を展開する議論を与野党でやっていただく場合にも、この国民の認識がなければ政治家同士だけの議論のやりとりに終わってしまうのではないか。私はそれを今回のいわゆる体験にかんがみまして、義務教育の課程で国連憲章の教育をする必要がこの国にはあるということを強く認識をいたしたようなことでございます。  先般の国連総会におきましても、事務総長を中心に、戦闘が発生しそう、あるいは紛争が起こりそうな事態に対しては事務総長が積極的に、予防的に各国と連絡をしながら努力をするようないわゆる警戒警報措置ですね、そういうことをやるべきだということを、日本政府の意思として主張してまいったということをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  25. 町村信孝

    町村委員 今大臣がお触れになった点も含めて、さらに具体的にやはり国連が中心でこれから機能していく、ようやくその兆しが今できてきたわけですから、積極的な御検討、御提言、その実現に向けての努力をお願いしたいと思います。  だんだん時間がなくなってまいりましたから、最後に一、二伺いますが、きのうあたりの新聞を見ると、ソ連の大統領とフランスの大統領が会談をし、十分な結論を得たのかどうかよくわかりませんが、継続して努力をしようというような動きがありますし、また他方、米軍の多国籍軍に向けての派遣の増強というような面からすると軍事的緊張が高まっているのかな、そんなような感じもいたすわけでありますが、やはり我が国としてこの中東各国と、いわば日本はあの地域に植民地もない、そして経済協力も実はかなりやってきたということからすると、日本は他の国々とは違った立場に立ち得るわけです。  そんなこともあるものですから、イラン・イラク戦争のときに必ずしも結果として十分な成果が上がったと判断できるかどうかわかりませんが、当時の安倍外務大臣が大変な努力をされたということは、日本の私は外交史上特筆すべきことであった、こう思いますし、さらに今回、中曽根元総理、こういう自民党の代表団が行かれる、これも一つのやはり我が国の試みとして、平和回復のための努力として期待もできるわけでありますが、私は外務省、国を挙げてこれから和平努力というものをどのようにしていくのか、もっともっと積極的にやっていただきたいと思うのですが、これから我が国として具体的に何をなすべきだと考えておられるのか、その点を伺いたいと思います。
  26. 中山正暉

    中山国務大臣 これからの日本の外交の問題点の一つとして、私は一つ国連決議の経済制裁を遵守していく、国連の決議を守ってその効果をあらしめるように努力することが一つであると同時に、一方では和平への努力というものについて日本は積極的に貢献をしていかなければならない、こういうことで外務省といたしましてもいろいろと現在やっております。  また表には出ておりませんけれども、日本政府としては、日本政府は今までこの地域に手を汚していないということから、この地域に対して我々の国がなし得ることは何か、中東のこれからの和平構想あるいはイラク紛争の終えん後のこの中東全域の、いわゆる経済の再建構想と申しますか、そのようなことについても、日本政府としては独自にこれから各国と協力しながら努力をしなければならないと考えております。
  27. 町村信孝

    町村委員 日本としてなすべきことは、本当にたくさんあるのだろうと思います。そういう意味で、外務省を初め政府を挙げてのさまざまな御努力というものに私ども心から期待をすると同時に、議員外交というものも含めて、日本国挙げて平和解決のために努力をすべきときが今まさに来ている、このように思うわけであります。  もう時間もありませんからあれですが、今回の事件、いろいろ考えさせられました。今回はたまたま中東という、ある意味では日本にとっても世界にとっても、幸か不幸か石油がたくさんある地域だからこれだけの関心を集めましたが、仮に日本にとって、あるいは世界にとってさほど、極めて重要でないと言ったら言い過ぎかもしれませんが、かかわり合いの少ない地域でこういう問題が起きる可能性もあります。あるいは、今回は多数の国の人質がとられているからですが、日本は人質をとられても、平和的な努力はするけれども実力行使には絶対出ない国だ、お金を要求すれば出す国だ。かつてダッカ事件という反省を私ども持っているわけでありますが、現実に日本の商社員がゲリラに捕らえられて身の代金を取られたという経験も幾つかあります。  国を挙げて、例えば日本から旅行団が行って、その飛行機丸ごと一機どんと人質にとられちゃった、さあ一兆円よこせと言われたら日本は一体どうするのだろうかなと、これは極端な想定かもしれないけれども、そういうことまでも考えながら、私どもこれは政治の立場にある者としては、これからの日本の生きていく道というものを考えなければならない、今回の協力法案はいわばその第一歩なのかな、こんなふうに考えているところでございます。ぜひともこの法案を私どもも成立をさせたい、こういう思いでおりますことを最後に申し上げまして、質疑を終えさせていただきます。  ありがとうございました。
  28. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員長代理 これにて町村信孝君の質疑は終了いたしました。  次に、上田利正君。
  29. 上田利正

    ○上田(利)委員 私の質問要旨を一応提出しておりますけれども、緊急問題が二つございまして、それを総理からまず最初にお伺いをしたい、こう思います。  先ほど町村委員からもちょっと触れられました。けさのマスコミ、新聞報道全部含めまして、町村委員はお名前を申しませんでしたけれども、もう新聞には全部金丸信元副総理ということで、この法案にかかわる自衛隊派遣するかどうかということできのう発言された内容が出ております。  金丸信元副総理、私と選挙区が同じでございまして、それから隣村でございまして、先輩議員として私は非常に敬服をいたしております。ただ、党派が違いますから、一部的には敬服できない点もあるわけでございますけれども、その金丸元副総理が、報道によりますと――本院で総理が十二日に所信表明をなされました。そして代表質問、さらに、衆議院と参議院におきまして予算委員会、そして、この本国連特別委員会ということで、もう連日この国連法案についての審議が行われているわけでございますけれども、それは何といっても大きな中心問題は、自衛隊を併任という形で派遣をするのがいいのかどうなのか、ここに論議はほとんど集中をしているわけですね。  我が国が国際社会に貢献しなければならぬということは、もう社会党はもちろん、公明党さんももちろん、民社党さんも共産党も含めて、これは貢献をしなければならぬという点は、総理もたびたびあるいは外務大臣もたびたび言っておりますように、これは本当に一致しているわけでございます。ただ一つだめなところは、憲法との問題も含めまして、自衛隊をなぜ今このような状態の中で併任、併任というのはなかなか難しいことでございますけれども、併任さしてまでこの中東湾岸地域へ出動させるのか、ここら辺が大きな問題でずっと審議が続けられておる、こう理解をしておるのです。  それで、金丸信元副総理は、自衛隊は専守防衛に徹するべきで、海外に派遣するのは難しいのではないか。中国や韓国など近隣諸国に心配をかけるようなことはしてはならないというようなことを含めて、まあここら辺で考えていかなければならないということでございまして、朝鮮民主主義人民共和国に我が田邊副委員長と両団長ということで行かれました。いろいろマスコミは言っておりますけれども、同じ自民党の中でもこういう考えを持っておられる。我が社会党から申しますと、本当に良識を持って、そして常に金丸信元副総理は、政治は国家国民のためにあるのだ、国民のことを忘れてはいけないと言っていますけれども、本当にこれは、この法案を私ども審議している中で、きのうこういう見解を出されました。これにつきまして海部総理大臣の御所見をまず最初にお伺いしたい、こう思うのでございます。
  30. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御意見けさ報道を通じて私も拝見をしてまいりました。自衛隊について慎重であらねばならぬということ、その御趣旨は私もよく理解をしておるつもりであります。したがいまして、過去の歴史の反省に立って、アジアの国々に対して、日本は二度と侵略戦争はしません、軍事大国にはなりませんという誓いを立てて、平和の理念を守って行動してきたことがアジア・太平洋地域の平和と安定に役立っておったということも私は十分認識もいたしております。  したがいまして、今度の平和協力法案議論に当たりましても、それらのことを十分配慮しながら、日本の国が日本の国だけの判断で恣意にいろいろなところへ出ていくというような戦前型の発想では全くなくて、国連がせっかく機能するようになって、国連の機能の中でいろいろな決議が行われて、平和を守るための平和協力活動であるなれば、それはやはり武力行使を伴うものであってはならぬという大前提を歯どめとしてきちっと置いて、そしてなし得ること、許されることはどこまでであろうかということを政府部内でも検討をして、そのような懸念を近隣諸国に招かないように、また、これは戦争目的じゃなくて平和目的でありますから、その目的もしっかりと踏まえた形でこの法案作成の作業に当たり、審議をお願いをしておるつもりでございます。
  31. 上田利正

    ○上田(利)委員 総理、いつものような御答弁だ、こう受けとめておるのです。もういつも総理がおっしゃることをまた私にもおっしゃられた、こう理解をしておるわけです。  どうでしょうか、総理国民の動向を見ましても、総理は、所信表明を行った以降、国民理解を得てこの法案は通すのだ、また国民理解してくれる、こうおっしゃいましたけれども、もう本院でもたびたび各委員が御指摘しておりますように、世論調査を見ますると、本当に立派な海部総理、五〇%、六〇%を上回る支持率をお持ちになっていた総理が、この問題のこの法案が出た途端にだんだんだんだん、甲州でいいますと日柄がたつというのでございますけれども、日が過ぎていきますと、だんだんどうも支持率の方も低下をしていくということは、自衛隊を今出動させるべきじゃない、派遣すべきではない、こういう国民の意思だと思うのでございます。それ以外の中では一致できるのであります。  言葉を返してはいけませんけれども、町村委員がちょっと社会党の問題に触れました。社会党は、御案内のように国連平和協力機構設置大綱というものを十月十五日に出しました。これを出したら、対案として法案を出せということを言っておりますけれども、そうじゃないのです。こういう大綱、もし町村さんの意見を私ども受けとめるとするならば、町村さん自身が、あるいは自民党さんが、おお、社会党でもいいものを出したな、よし、これもひとつ含めて、言うなればこの法案審議をやっていこうじゃないか、こういうことに本来ならなければならぬですけれども、どうしてもかみ合わないのは、自衛隊が併任という形で入っているか入っていないかということになるわけです。  ですから、我が社会党としてはこの大綱に、文字どおり大綱ですから基本的なものは全部入っているのです、だれが見てもわかるような形で。これならば国民も賛同してくれるであろう、そして我が国が国際社会に貢献することができる。金だけじゃないか、金だけじゃないかと言われている中で、人も出して、そして貢献をしていく、こういうことになる非常にすばらしい我が党の国連平和協力機構設置大綱なんです。ですから町村委員、そういうふうにぜひ御理解をしておいていただいて、どうか総理、ここで、わかりましたということになりませんけれども、上田利正委員の言っていることもよくわかった、ひとつ検討させてほしい、このくらいのお考えはないんでしょうか。
  32. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 町村委員にもお答えしましたように、社会党国連に協力するというお立場でいろいろな御研究、御議論を続けていただいておることを私も十分理解をいたしております。先日のこの委員会議論になりましたように、いろいろな角度の議論社会党さんの中にあるわけでありますから、どうかそれをまとめて法案の形でお示しいただいたならば、どことどこが合うのかな。何か今非常に幅が広過ぎて、イメージしておることを率直にぶつけ合うものですから、もうすぐに戦争だ、撃ち合いだ。何でしたか、きのうも明治二十七年の日清戦争の砲撃の問題まで出てきましたが、時代が変わり、国連が機能し、平和を守るための努力をしよう。国連が行う普遍的な武力行使というものは戦争の概念とは違うんじゃないかということも、これは社会党の若手の議員の皆さんの研究の結果として中央委員会に上げられた中にまとまっておる。  私は、いろいろなそういう意見があること、そういう議論が闘わされておることに率直に敬意を表したいと思っておるほどでありますから、そういった議論の中で今の事態にふさわしいもの、先ほど議論のあった国連の役割というものは何であろうか。国連がそういう役割を持つときは、では加盟国はどうであろうかとかいろいろ幅広い議論もあろうかと思いますが、私は、今戦後四十五年をたって、初めて国連がここに平和の破壊者があるんだと決めたときは、見て見ぬふりをしておらないで、この世の中にああいったことは仕方がないことだといって認められてしまうような、余りにも物わかりのよ過ぎるといいますか、大人の態度に世界じゅうがなってしまったら、これから先の秩序はどうなるんだろうかという深刻な懸念も皆が持っておるわけでありますので、そのときにおのおの何ができるか、どこまではできるかということを考えて、そして総合的な判断でまとめ上げましたのがこの平和協力法であります。  そのためには、最初の繰り返しになりますが、過去の歴史に対する反省や武力行使をしてはならないということを踏まえますから、平和協力隊というものに、日本すべての皆さんに呼びかけて参加を願って、必要なときにはそれに対して対応できるような制度、仕組みをつくっていこう、こういう願いでありますので、どうか御理解をいただきますようにお願いしたいと思います。
  33. 上田利正

    ○上田(利)委員 この問題で時間をとるわけにまいりません。私としましては、国民の世論あるいは自民党の中におきましても、この法案に対しまして、自衛隊派遣をするということについてどうか、こういうような意見もあるわけでございます。したがいまして、私、総理に対しましては、一たんこの法案は撤回をして白紙に戻して、そしてどういう形でこの貢献策ができるのか、こうすべきだということを重ねて申し上げておきたいと存じます。  それから、次の問題でございますが、このたびANC、いわゆるアフリカ民族解放会議のマンデラ副議長が日本に来日されました。この来日に当たりましては、海部総理大臣を初め日本政府といたしまして招待という形をとられました。本当に心から、お世辞でなくて総理に対しまして、政府に対して敬意を表する次第でございます。また昨日は、本院の本会議場におきまして、マンデラ氏を迎えて、そして演説を聞く機会を得ました。この点につきましても、国会、櫻内議長に対しまして心から敬意を表する次第でございます。  そういう中で、マンデラ氏の演説の中にも若干触れられておりましたけれども、今人種差別の問題で、獄中に約二十八年間もおりまして、さらに身を挺してこの反アパルトヘイトの運動、活動をマンデラさんが続けられております。この反アパルトヘイト問題につきましては、去る八九年の十二月の反アパルトヘイト国連特別総会におきまして、国連の総意をもってこれを支援をすることを決議いたしました。我が日本政府におかれましても賛成をされたわけでございます。そういう中でこの決議、国連の決議を我が国が実行をしていく、そういう立場の中ではやはり積極的な支援をしていくべきであろう、こう思うわけでございます。  しかも、この国連法案審議の中でも出ましたけれども、我が国は国連決議を得たということで、言うならばアメリカを中心とする多国籍軍への支援ということで湾岸平和基金というものを設けまして、十億ドルをこの多国籍軍に、さらに十億ドルを含めて二十億ドルを周辺国への支援、そして、それらを入れますとすべてで四十億ドルというものをこの湾岸平和基金ということで決めました。マンデラ氏は、日本政府に対しまして二千五百万ドルほど御支援がいただけないかと言って総理と会談なされたときに要請をされたようでございますけれども、総理といたしましては、他の支援は行っていくけれども、あるいは今までも多少支援はしてきたけれども、これについては、このアフリカ民族解放会議というものが政治団体に所属しているというふうな形からすると我が国からは支援をしたくても支援ができないですというような形の中で、これを受け入れることができないというようなことで、新聞を見まする限りそういう報道がされております。  これは政治的なということでなくて、総理国連決議を受けて、そしてそれを実行していく。国連法案の中でも、国連決議を受けて実効を確保するという言葉、もう外務大臣を含めて総理からもたびたび言われました。これは政治団体であるとかではなくて、言うならばあの人種差別という中で本当に今頑張っておられるマンデラ氏、それに対しまして国連が決議をして、支援をしていこう、国連の意思としてやっていこうということでございますから、二千五百万ドルと申しますと、そう言ってはいけませんけれども四十億ドルに比べますと百六十分の一、額にしまして日本円で約三十億円でございます。経済大国と言われる我が国の中で支援ができないはずはないわけでございまして、どうか総理、この点につきまして御配慮をいただいて、そして国連決議に基づいて我が国もこれを行っていく、こういうことにさしていただくように御要請を申し上げる次第でございますけれども、総理の見解を賜りたいと存じます。
  34. 中山正暉

    中山国務大臣 今委員御指摘のマンデラ副議長の御要請、私も承っております。  私も実は昨日、本委員会審議を終えてから、七時半から二時間ばかりマンデラ氏と会談をいたしました。いろいろと南アの抱える問題、これから新しい憲章をつくっていく一つのプロセスの中で、これからの教育の問題とか社会の保障制度の問題とか、いろいろな問題できのう遅くまでお話を承る機会がございました。  今委員お話しのように、特定の政治団体に日本法律上お金が出せないという一つの問題点があることは事実でございます。しかし、一方政府におきましては、この南ア問題の平和的解決に協力するという考え方から、国連基金や日本・EC共同計画に対する協力を今日まで行ってきておりまして、今回も国際協力事業団の研修員として十名ほど受け入れることも既に内定をいたしておりますが、マンデラ氏との話し合いの中で、マンデラ副議長は私に対して、ひとつ長期的にこの協力をしていただくようにぜひ検討していただきたい、こういうお話がございましたので、私も日本政府としてこれからどのようなことができるか真剣に検討させていただく、こう申し上げてきのう別れたところでございます。
  35. 上田利正

    ○上田(利)委員 外務大臣から御答弁いただきました。  新聞を見ましても、日本は何もやっていないということじゃないわけでございます。外務大臣が申されましたようにそれなりのことはなされておられますけれども、日本政府は、今外務大臣が申されたことと同時に、全体的には百八十万ドルを南ア黒人のために支出をされております。この新聞を見ましてもそういう形で出ておりますが、しかしアメリカはどうかと申しますと三千百万ドル、イギリスの三千九百万ポンド、約七千二百万ドルということになりましょうか。そして、さらに貧しいアフリカ国家であるナイジェリアでも五百万ドルということですが、日本が百八十万ドルということなんでございますね。  ですから、ぜひこれは、国連決議を受けてですから、ちょっと外務大臣の答弁の中で気になりますのは、政治団体というものには出せないんだということをちょっとまた触れられましたけれども、そうでなくて、そこは横に置きまして、ずっと奥の横の方へ置いて、そしてこれは国連決議、これをいかに日本政府として実行するか、こういうことでぜひこの問題――マンデラ副議長がきのう参りました。どうかマンデラ氏のこの努力、そして国連の意思というものを大切にしていただいて二千五百万ドル支出されますように、外務大臣総理を中心にしながら閣議の中で検討していただくことを強く要望して、私のこの問題は終わらせてもらいたいと思います。  総理大臣、何か一言ございますか、国連決議の問題で。どうですか。
  36. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連の問題についてはよく承知しておりますから、きょうまでも国連を通じての基金の拠出や、あるいは南アにあります民間団体に対して南アの黒人救援のための資金の提出ということを既にしてきておるわけでありますから、国連考え方や決議を無視しておるわけでもございませんし、また私も率直に申し上げましたが、国づくりのために、黒人の地位向上のために、本当の南アの社会における名誉ある地位を得てもらうために研修員を受け入れ、技術的なものを身につけて帰ってもらう制度はどうかと言いましたら、マンデラさん自身が、それは非常にいいことでありがたいことだからぜひ頼むというようなお話もあって、そういった今後なし得ることについての協力の姿勢を示し、十分我々としてはお話し合いに応じておるつもりでございます。  今後とも、国連の決議を受けてとおっしゃいますが、国連機関やあるいは民間団体等を通じてどのような形で御協力ができるのか。研修員の受け入れという制度は新たに今度スタートすることにしましたけれども、その他の方法についても外務省を窓口に十分検討をさせていくつもりでございます。
  37. 上田利正

    ○上田(利)委員 繰り返しになりますけれども、政府としてもそれなりの努力をされ、研修員の問題も私も承知をいたしております。しかし、南アの問題は非常に悲惨な状況にあるわけでございますから、やはり何といっても資金ということが一番手っ取り早く支援できることだろうと思いますから、どうか総理外務大臣に重ねて、このマンデラさんの意思が達成できますように格段の、特段の要望を行いまして、この問題を終わりたいと存じます。  それでは本論に入りますけれども、総理、我が国は立憲主義の法治国家だ、こういうことになっておりますけれども、そのことは異論はございませんね。
  38. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 異論はございません。
  39. 上田利正

    ○上田(利)委員 そこで、総理は衆議院手帖というのをお持ちでございますか。今持っておられますか。ちょっと出していただけますか。  この衆議院手帖、開いたところに「日本国憲法」がございまして、昭和二十一年の十一月の三日にこの新しい平和憲法と言われる日本国憲法は公布されまして、五月の三日に施行されたわけでございますけれども、その公布に当たりましての記念式典におきまして、当時の昭和天皇が、今は天皇はお言葉ということになりますけれども、当時は天皇が言われるときには勅語ということになりますが、これにも「勅語」ということで出ております。最後の勅語だったろうと思いますけれども、これを見ますると、   本日、日本国憲法を公布せしめた。   この憲法は、帝国憲法を全面的に改正したものであって、国家再建の基礎を人類普遍の原理に求め、自由に表明された国民の総意によって確定されたのである。 ここが重要であります。天皇がおっしゃっておりますことは、  自由に表明された国民の総意によって確定されたのである。即ち、日本国民は、みづから進んで戦争を放棄し、全世界に、正義と秩序とを基調とする永遠の平和が実現することを念願し、常に基本的人権を尊重し、民主主義に基いて国政を運営することを、ここに、明らかに定めたのである。 云々と、こういうことになっておるわけでございますが、昨日、中山太郎外務大臣の御兄弟でございます、弟さんでございます中山正暉委員が――本当にあの人を私、敬愛をいたしておりまして、実は郵政大臣のときにも、私はずっと下の方の逓信委員ということでおったわけでございます。非常に敬愛をいたしております中山正暉委員。  ただ、委員が申された中では、実はこの日本国憲法は、マッカーサーの例も出ましたし、日中戦争の問題も出ましたし、あるいはさっき総理が言いましたように大正時代も問題も出ました。そういう中で、言うならば当時のGHQを中心にマッカーサー、アメリカの意思によってこの憲法はつくられたんだ、こうおっしゃいました。声を大にしたといいますか、あの人は余り声は大にしませんけれども、非常に落語もお上手でございまして、べらべらべらっとこういうようにきのう中山正暉委員がおっしゃいましたけれども、ここの「勅語」を見ますると、これは天皇様の勅語でございますよ、昭和天皇の。「自由に表明された国民の総意によって確定されたのである。」マッカーサーがやったとかアメリカがやったとか押しつけたとか、そんなことは一言もないのです。天皇のこのお言葉、当時の勅語は正しいと思うのか、自民党の正暉委員が言ったのが正しいのか、まず総理にそれを最初にお尋ねをしたいのであります。
  40. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 我が国の憲法の制定経緯につきましては、確かにただいまの昭和天皇のお言葉等もございます。  それで、従来政府といたしまして、この憲法につきましては、「我が国の憲法は、連合国軍の占領下という極めて異常な環境の中で、占領軍当局の強い影響のもとに制定されたという経緯があり、その成立過程の点では必ずしも理想的なものではなかったと言えよう。」というふうなことはお答え申し上げたことがございます。そういうふうな、いわば成立過程でさまざまな議論がなされていることは私どもの方も承知しておりますし、また、そういう意味で、従来今のようなお答えの仕方をしているところでございます。
  41. 上田利正

    ○上田(利)委員 法制局長官がお答えになりましたけれども、これは法制局でお答えしていただく問題じゃないんです。あの天皇陛下、昭和天皇がおっしゃった言葉が、これがいいのかどうなのか、あるいは自民党の正暉委員が言ったのが正しいのか、どっちだということを聞いているんです。占領下に置かれたなんということは、当然私も存じておる。しかし、天皇様が言ったのはうそという、これはみんなうそだということになったら大変なことだと思うのでございますから、総理総理外務大臣、はっきりしてください、これは基本でございますから。
  42. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本国憲法がここにある勅語によってあらわされておるそういったあり方によって生まれたものである、私はそのように受けとめます。
  43. 上田利正

    ○上田(利)委員 わかりました。きのうの意見は間違っておったということになるわけでございまして……。  それで、次に入りますけれども、昭和二十一年の十一月三日に、さっき申しましたように日本国憲法が公布されました。それで、その公布される前の昭和二十一年の九月十三日、九月十三日というのは非常にいい日でございまして、私が生まれた日でもあるわけでございますけれども、貴族院の帝国憲法改正案特別委員会における国会議事録というのがここにございます。非常に厚いものでございまして、これを見ますると、政府委員も出席しておりますけれども、ほとんど政府委員発言しておりませんね。  こんな厚い議事録を、昭和二十一年の国会、まあ片仮名と難しい字が、昔の字でございまして、読むのに実は大変でございますけれども、大臣がみんな答弁しております。本当に帝国議会のころは、大臣が答弁するという点はすばらしかったなと思っておるわけですね。これはもう政府委員はほとんど一人も答弁していないのです。最近を見ますると、大臣よりも政府委員の方がずっと、二倍も三倍も多いという状況で、嘆かわしいと思っておるのでございますけれども。  この中で、当時の国務大臣幣原喜重郎、後に総理大臣にもなられました方でございますが、国会答弁を行われておりまして、短いからちょっと読んでみますと、この中にこうあります。二十一年の九月十三日の帝国議会の憲法改正案特別委員会というこの議事録がここにございます。この中に、  日本ハ如何ニモ武力ハ持ツテ居リマセヌ、 「セヌ」であります。  ソレ故ニ若シ現實ノ問題トシテ、日本ガ國際聯合ニ加入スルト云フ問題ガ起ツテ參リマシタ時ハ、我々ハドウシテモ憲法ト云フモノノ適用、第九條ノ適用ト云フコトヲ申シテ、之ヲ留保シナケレバナラヌト思ヒマス、是デモ宜シイカト云フコトデアリマスレバ、 ということが続きまして、次に、  我々ハ協力スルケレドモ、併シ我々ノ憲法ノ第九條ガアル以上ハ、此ノ適用ニ付テハ我々ハ留保シナケレバナラナイ、 「留保」という言葉がこう出てまいります。  即チ我々ノ中立ヲ破ツテ、サウシテ何處カノ國ニ制裁ヲ加ヘルト云フノニ、協力ヲシナケレバナラヌト云フヤウナ命令ト云フカ、サウ云フ註文ヲ日本ニシテ來ル場合ガアリマスレバ、ソレハ到底出來ヌ、留保ニ依ツテソレハ出來ナイト云フヤウナ方針ヲ執ツテ行クノガ一番宜カラウ、我々ハ其ノ方針ヲ以テ進ンデ行キマスナラバ、世界ノ輿論ハ翕然 何と言うのですかね。字がちょっと私には読めない、大学を出ていないから読めないのでございますけれども、  翕然トシテ日本ニ集ツテ來ルダラウト思ヒマス、兵隊ノナイ、武力ノナイ、交戰權ノナイト云フコトハ、別ニ意トスルニ足リナイ、ソレガ一番日本ノ權利、自由ヲ守ルノニ良イ方法デアル、 こういうふうに幣原喜重郎国務大臣は申しているのであります。  これは非常に、天皇の勅語といい、幣原喜重郎大臣のこの答弁といい、これがすべて日本国憲法の下敷きになって、そして今日四十数年間、これがずっと流れてきておるのだと思うわけでございます。私はこれを見まして、憲法を制定するに当たって、必ずこの国連憲章、国連へ加入をしていくならば、国連憲章もう出ておりましたから、国連憲章七章を盾にとって、言うならば軍事同盟の危険というようなものも引き起こすだろうということを、もう四十五年前に幣原喜重郎国務大臣、当時の国務大臣は見抜いておりました。非常に先見性があったと思うのであります。したがって、この九条はもう将来にわたって変えられないのだ、変えては困るのだ、この解釈はもうこのわしが言った解釈以外にはないのだということを明確にしておると思うのであります。したがいまして、憲法を変えない限りこの九条は不変であると思うのであります。  これは変えられない。憲法を変えない以上は、だれが何と言おうと、憲法制定の精神がそういうことになっておるわけですから変えられない。いわゆる憲法改正議会として後世に残した唯一のこれは憲法解釈だ、我々はこう信じておりまして、この崇高なる不変解釈は、御案内のように我が党の山口書記長が予算委員会で明らかにしましたように、一九五二年、日本国連に加盟を申請した当時の岡崎外相の国連事務総長あてのあの声明となってまいりましたし、そして、それから八年過ぎた後に、これも本院の中でいろいろと論議が今日されてきております。  一九六〇年、昭和三十五年の八月の十日でございますけれども、その当時の外務省の西村条約局長の憲法調査会でのいわゆる証言というもの、これは九条に基づく留保という、こういう憲法調査会での証言ということになっておりまして、そしてまたそれが参議院におけるところのいわゆる決議という形になって今日に至っておるわけでございまして、これは憲法制定のときにもうわかっておったことでございます。時代がたっていくと、国連憲章に基づいて日本は言うならば派兵はできるのだ、派遣ができるのだということが必ず出てくる、そのためにも今この憲法解釈を明らかにしておかなければならぬというのが幣原喜重郎、当時の男爵国務大臣のこの議事録であると思うわけです。  総理大臣はこれを正直に、人間正直でなければならぬということが鉄則であるようでございます。総理は正直にこれは確認をなされますか。なされると思うのでございます。それをまず最初にお尋ねしたいと思うのです。
  44. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいまのお尋ね、法律的な問題を含みますので、私の方から先に御答弁申し上げたいと思います。  今委員御指摘の昭和二十一年の九月十三日、貴族院の帝国憲法改正案特別委員会におきまして幣原国務大臣が述べられた点、委員お読み上げになりましたけれども、それはそのとおりでございます。  それで、先日からこの点につきましていろいろ御議論がございます。私の方としまして、まず今のような昭和二十一年に議論がありましたということ、それから今の御議論がありましたことは必ずしも憲法調査会の報告書には載っておりませんが、その後、昭和二十五年以降のことにつきましては憲法調査会の報告書に載っておりまして、そこはただいま委員御指摘になり、あるいは過去にいろいろ問題になりましたことでございますので簡単にかいつまんで申し上げますと、「二五年頃に」国連に加盟するということで「作成した申請書の原案においては、」ちょっと飛ばしますと、「憲法第九条に対し注意を喚起するという一項を附加していた。」それからさらに時間がたちまして、「しかし、ここまで明文を書く必要はなく、むしろ間接的にその趣旨を明らかにする方がよいという意見もあり、確定した申請書においては、」いわゆるディスポーザルという問題でございますが、こういうことであったということで、当時の西村熊雄条約局長が参考人として述べられたことは、「この文言により、直接に第九条を引用することなく、しかも日本のディスポーザルにない手段を必要とする義務は負わないこと、」というふうなことを「明確にしたものである、」こう述べて、「すなわち、軍事的協力の義務は留保するということを明確にしたものである、と述べている。」というくだりがございます。  そのすぐ後に、「ただし、同じくその後において条約局長となった下田武三参考人は、その後、」云々、ちょっと飛ばしまして、こういうことなので、「この問題はアカデミックな問題として論議されたが、現実問題としては第九条のために国連加入が妨げられ、国連憲章上の義務を履行し得なくなるというような危ぐを政府が抱いたことはない、と述べており、」それからさらに、先ほどの西村参考人が「当時は憲法施行後間もない時期であり、また、占領中でもあつたために、第九条についてきわめて神経過敏的に考えていたと述べている。」こういうふうな問題がございます。その後、また運用につきましても、「国連加入が直ちに加盟国の軍隊提供を義務づけるものではなく、」「いかなる協力義務を負うかは、」「特別協定によつて具体的に定まるもの」だ、これは申し上げたところでございますが、そういうふうなことがございます。  以上御報告申し上げます。
  45. 上田利正

    ○上田(利)委員 この問題は本院でもいろいろ論議されてきておりますけれども、法制局長官、私が申し上げておりますのは、この中に、いわゆる帝国議会の憲法制定特別委員会の中で、今占領下の問題も長官はおっしゃいましたけれども、そういう問題の質問もこの中に全部出ております。占領下であっても日本としてはこの憲法は守っていくんだ、アメリカ軍によって壊されるかもしれぬけれども、日本の意思としてはこれは守っていくんだ、こういうことを金森徳次郎国務大臣であるとか、あるいは幣原喜重郎国務大臣がずっと言っているんですよ、この記録をごらんになっておられると思いますけれども。  ですから、私が申し上げておりますのは、やはりこの衆議院手帖にもありまするように、こういう形で勅語が出されて憲法が発布された。それで、それを発布するまでに至る経過としては、何といってもこの憲法特別委員会の中では九条ばっかりなんですよ、やってきたのはほとんどこの問題。ですから、それが憲法制定の時点から明確になって今日に至ってきておる。ですから、その後に条約局長がどう言ったとか憲法調査会でどう言ったとか、それも私は承知をいたしておりますけれども、私の言わんとするところは、総理にお伺いしておるところは、こういう経過、これがずっと今も続いているんですよということについて総理の見解を求めているのです。総理、どうでしょうか。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 るるお述べになった経過があったことは、私もよく承知しております。そうして、その九条の精神というものについては、先ほど来ここでも申し上げておりますように、歴史の反省に立って二度と侵略戦争はしてはならない、軍事大国にはならないという我々国民の共通の理念として掲げた平和主義である、私もこう受けとめております。したがいまして、今度の法案の中にも、「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」ということを大前提としてきちっと置いておるわけでありまして、そういう流れがあるということは重々承知をし、大切にしていかなければならぬ、こう受けとめております。
  47. 上田利正

    ○上田(利)委員 そうしますと、総理、二度と戦争はしてはいけない、総理は、この国連協力法案の中では、これは憲法に抵触しないんだ、こう言っておられるのですけれども、たびたびそれを繰り返されておるわけでございますけれども、しかし、私は、何といっても今度の国連協力法案というものは、海外へ自衛隊派遣するということは、憲法制定の精神、それに反しているんじゃないか、こう申し上げておるのでございます。この点は、総理と私の間は本当に全く違うのです。これは認めますよ、憲法制定の当時のことも認めますよということになれば、やはり今度のような政府が出した国連協力法案というものの中の自衛隊の併任などということは、これはあってはならないことだと思うのでございます。絶対にあってはならないと思うのでございますけれども、その点についてどうでしょうか。もう一度総理の見解を聞きたいのです。
  48. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連平和協力で、日本平和政策をどうしたらいいかということを考えておるわけでありますが、今度も戦争をしようというのじゃない。戦争をしかけたのはイラクであって、あってはならないことを現実に世界の目の前で行ったのはイラクであって、それは国際社会の正義に反するからいけない、やめなさい、元へ戻りなさいというのが私は国連の決議だと思うのです。そして、今経済制裁で、武力を使わないで平和的に解決しようということを皆が考えておることも、これは共通の認識だと思います。  私は、日本はそういうときに、何があっても、何もできないから見て見ないふりをする、あるいは逆に言うと、クウェートの侵略というようなことが既成事実になってしまうというような国際規範がもし認められるとしたら、これは大変なことになると思いますので、国際社会が、皆が力を合わせて、これらの問題が二度と起こらないようにしていこうというので努力をしておるさなかでございますから、日本としてはそういう中で何ができるのだろうか、もちろん憲法の枠内で何ができるだろうか、これは私たちが恣意に感じてやったのではなくて、法制局とも十分相談をしながら、意見を聞きながら、しかも、そういうきょうまでの経緯、憲法九条のことなどを十分念頭に置いて考えてまいります等、恣意にやるのではなくて、国連の決議というものを受けて、国際社会の正義を守るための問題にでき得る限りの協力をする、その協力の大前提として、「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」というきちっとした一線を引いて、それから具体的な要請があった場合には、それには何ができるかということをもう一回ふるいにかけて、そこで業務をきちっとどこまで協力できるのかということを決めて、そのときには慎重に対応していくということも申し上げております。  ですから九条のこの武力の問題については、二重三重に慎重に考えてやってまいりますし、自衛隊自衛隊として武装集団のまま派遣しようなんということは毛頭考えておりませんので、それはどうぞ御理解をいただきたいと思います。
  49. 上田利正

    ○上田(利)委員 総理はそう常におっしゃってきております、武装集団ではないんだと。結局、国連の決議を受けて国連に協力しなければならない、国際社会に我が国が貢献しなければならない、これはさっきも私言ったように一致しておるのでございます。したがって、そういう中では我が社会党もこの国連平和協力機構設置大綱というものを出しているのです。問題は、海外へ派遣できない。派遣はイコール、派遣した者がいわゆる外国へ行きますと軍人扱いになる、これは集団であれば部隊になる、いわゆる部隊派遣すれば、これは派兵ということになる、こういうことがもう明確に、広辞苑を引いても何でも出ておるわけでございます。  そういう中で憲法に抵触するような、もし自衛隊を出せば抵触するじゃないか、だから我々社会党は、もっとそれにかわった形の中で、言うならばこの中東問題危機にも対処していく方法があるではないか。自衛隊の身分をなぜ併任ということにするんだ。併任だから問題になるんじゃないか。併任をさせなくて、そして本当に平和協力隊というものを、自衛隊の身分をいわゆるなくして、あるいは警察官であるとか消防署員であるとか一般の官公庁あるいは民間、そういうものから含めて、そういう平和協力隊というものを組めないわけじゃないのでございます。組めないわけじゃないのですから、それですぐ戦力にもなるわけでございます。なぜ自衛隊を併任をするか。併任をするから、言うならば、このサウジアラビアへ行けば、多国籍軍の中の後方支援と言っても、これはいわゆる軍隊とみなされる、あるいは軍人として扱われるということになってくるわけですから、これは憲法に抵触してくるわけでございます。  ですから、そこの部分がいわゆる憲法制定の精神に返っていけば、当時の幣原喜重郎国務大臣は、十年、二十年、三十年たてば必ずそういう論議が国会の中に出てくる、あるいは権力者というものは必ずそういうふうに憲法の精神を歪曲してやっていく、その可能性があるだけに、歯どめとして、もう四十五年前に国会の中でこういう明確な答弁をしておるのだと思うのであります。ですから、総理が言っていること、いかに総理が戦力は行使しないんだ、憲法の九条に抵触しないんだと言っても、これは明らかに抵触をする、こう言わざるを得ないと思うのですが、もう一度どうでしょうか。
  50. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 上田委員のお話、途中までは私もよくわかりますし、全く同じですが、例えば警察とか消防とか一般の皆さんとか全部集めれば直ちに戦力になる、こうおっしゃいましたけれども、私も、すべての日本国民皆さんにお願いをして、そして来ていただいて、業務内容に書いたことをきちっとやっていただこうという気持ち、発想を持っておることは間違いございませんし、この法律にもそれができるようになっておるのです。  それからもう一つは、貢献策その他のときにも、我々ができることは何であろうか。平和協力ですから、初めから戦闘部隊を出そうという発想は毛頭ないわけです。戦闘用の武器を携行させようということも初めから毛頭ないわけですから、そういった意味では、今抑止力としてサウジに展開しておる部隊のところへ、多国籍軍のところへそのまま行こうとか、そのまま応援しようとか、そんなことは能力的にもできるわけがありませんし、この平和主義の理想からいってもできる相談ではございません。そのことは十分踏まえておりますから、平和協力業務というものは実に限られたものになっておって、そして医療協力とか輸送協力といったようなものが限度かなということを念頭に置きながら、しかし、法律でありますから、これもこれもこれもということは、ちょうど社会党がお示しになっておる大綱とほとんど変わらない同じものが、こちらの法案にもなし得る業務としては書いてあるわけであります。  だから、その一点だけ見ますと、同じ日本の、日本じゅうの人に頼んで日本じゅうで出てやってもらうのですから、自衛隊も、自衛隊として武器を持ったまま戦闘集団として出すのではありませんので、平和協力隊の指揮下に入ってもらって原則非武装、ただ、基本的人権もありましょうから、護身用のものが必要と思われるときに限って、特別に現地へ行ってから貸与することもあるということが書いてあるのでありますから、それまでだめだと言うと、今度は護身用基本的人権の問題はどうなるんだろうかという議論になってきますので、そういったこと等もお話を申し上げたいと、こう思っておるところでございまして、憲法の大精神、武力を伴う行為、武力による威嚇に参加しようとか、それがいいというような発想は絶対に持っておりませんから、それは御理解をいただきたいと思います。
  51. 上田利正

    ○上田(利)委員 総理は常に同じようなことをおっしゃっておるのですね。私、冒頭に金丸元副総理の問題も申しました。国民の世論もそうですし、いかに総理が平和だ平和だ、こうおっしゃいましても、国民は、やはり自衛隊が出ていくんだ、これは軍隊として出ていくんだ、こういう形に、現地へ行けば事実軍人として扱われ、軍隊ということに国際法によってなるわけでございますから、なぜ併任にするんだ。しかも、韓国や中国を含めて、東南アジア含めまして、やはりまた日本は軍事大国になるんだな、こういう懸念がある、金丸元副総理もそういうことをきのう言われておる。総理が、もうそういうものではありません、これは戦争するんじゃないんですよ、武力じゃないんですよ、こうおっしゃっても、いわゆる現地に行けばこれは武力になっていく、こういう懸念がすべてにあると思うのです。  だから総理、なぜ併任にしなければならぬのか。併任などということは、例えば、例はおかしくなってしまいますけれども、相撲と柔道を併任して試合をしろなんといったっても、これは全部違うんだ、ルールが違うんだから。(発言する者あり)いやいや、相撲と柔道は国技でもって、これは国技であるからちょうどそれを今思い出したんだけれども、そういうことと同じで、これは併任などということができるはずがないのであります。  もしやるとするならば、総理、先ほど私が申しましたように、やはりすっきりと、いわゆる併任でなくて平和協力隊というものをさっき申したような形で編成をするか、それともそうでなければ、どうしても自衛隊を海外へ派遣をするということに、そうしようとするならば、やはりうちの土井委員長が申しましたように、代表質問でもちょっと触れましたように、憲法九条、これを変えて、そして自衛隊も平和維持のためには、国連に協力するためには海外に出動できる、こういうふうに憲法九条の二項を変えればいいんじゃないですか。二項を変えて正々堂々と国民の審判を仰ぐ、これが民主主義の原則じゃないですか。二つしかないと思うのです。この併任などという形の中で、言うならば自衛隊を海外に派遣するなどということは絶対できない。憲法を改正してやるか、それとも併任でない形の平和協力隊というものを明確に設置をして構成をして出すか、この二つだと思うのです。どうですか、この点について。
  52. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 冒頭に申し上げておきますが、憲法を改正してまでこれを、平和協力法案を出そうとしておるのじゃありませんから、私どもは憲法の平和主義の枠内でやろうと、こうしておるわけであります。  それから、今おっしゃったいろいろな御議論があります。これは先日も議論になりましたけれども、すべての国が共同で行う普遍的な武力行使は憲法で禁止しているものではないというお考え方が、社会党の若手の議員の皆さんの署名された文書の中にも出ておる考え方として……(発言する者あり)いや、事実あるんですよ。けれども、そういういろいろな意見がありますけれども、我々は憲法を改正してまでそういうことをしようとは今思っておりませんので、平和協力隊法の中にも武力の行使を伴わないものという一線をきちっと引いて、そして、それにふさわしい業務計画を立てて、慎重の上にも慎重に対処をして、平和主義の理念は守っていく、こう申しておるわけでありますので、どうぞその考え方は御理解をいただきたいと思うのです。
  53. 上田利正

    ○上田(利)委員 午前中の時間が来たようでございますから、私は、明らかに憲法九条にこれは違反をしている、もし自衛隊を海外へ派遣、派兵するならば、憲法を改正してやらなければできないというこの考え方はずっと持っておりますから、また午後の段階で具体的な法案の内容の中でこの私の態度を明らかにしていくということにしまして、午前中の質問は、これで終わりたいと存じます。  御協力ありがとうございました。
  54. 加藤紘一

    加藤委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ────◇─────     午後一時三分開議
  55. 加藤紘一

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  上田利正君。
  56. 上田利正

    ○上田(利)委員 イラク等の在留拘束邦人の釈放の問題につきまして二、三質問したいと思います。  まず最初に、現地、イラクに拘束されている在留邦人の数はどんな状況になっているのか、企業別にもわかれば。それから他国の状況はどうなのか、これをまずお聞きをしたいと思います。
  57. 中山正暉

    中山国務大臣 現在イラクに拘留、拘束をされております日本人は百三十九名でございますが、このほかにイラク在留邦人は百六十六人、及びクウェートに残留している邦人八名のうち男性二人が出国ができない状況に相なっております。  なお、外国の方々状況につきましては、政府委員から詳しくお話を申し上げることができるかと思っております。
  58. 久米邦貞

    ○久米政府委員 各国の拘束されている方々の人数をお答えいたします。  日本のほかのあれとして、アメリカはクウェートに在留者が三百名おります。それからイラクには三百二十名、それからそのほかに、いわゆる人質として拘束されている者が百六名でございます。英国は、クウェートが六百名、イラク在留者が四百ないし五百名、それから拘束されている者が三百六十名。フランスは、昨日大量に出国いたしまして、現在四十名がまだ残っているという状況でございます。ドイツは、クウェートに二十人、イラクに三百七十人、そのほかに拘束されている者が七十六名でございます。  なお、以上の数字は、これは必ずしも日本の場合のように各国とも正確に把握しているわけではなくて、把握しているものを公表しているということで、実際には各国政府が把握してない分がかなりこのほかにもあり得るのではないかと見ております。
  59. 上田利正

    ○上田(利)委員 イラクに拘束されている邦人、今外務大臣からもお聞きをしまして、大変な状況で今おられる。家族のことを考えますと一刻も早く、これは人命にかかわる問題でございますから、もし多国籍軍との戦闘に入るというようなことになりますと、これは大変な状況になってくるわけであります。生命の保証もできないということになるわけでございますから。  そういう中で総理は、イラクのラマダン副首相と話し合った状況なども、会談した状況を常に口にされておりますけれども、一向に人質あるいは拘束されている邦人の釈放がされない、こういう状況にあるわけでございまして、何としても一刻も早く釈放をさせなければならぬ、こう思うわけでございます。しかも、総理は常に言っておりますように、今までイラクとの関係の中では非常に国交の中で、あるいは金にいたしましても七千億近い金を考慮しているという状況の中で、本来ならば我が国のこの邦人の拘束、これを解放するということが今までのイラク日本関係ではなされなければならぬと思うのでございますけれども、その後、どのように政府としては、あるいは総理としては釈放問題に取り組んでいるのか。  例えば、郵政大臣にかかわる問題になりますけれども、後で御質問いたす予定になっておりますが、電話によって常にイラクへ要請をするとか対応するとか――どうもアメリカに対してはブッシュ大統領と何回も電話でもやったとか、マスコミの話によりますとブッシュホンじゃないかなという、そんなことを言うようなマスコミ報道もございましたけれども、イラクに対して総理として、あるいは政府側としてどういうように対応しているのか。何とかしてこの人質問題、邦人の拘束についてはこれをいっときも早く解放、釈放することが第一の任務じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  60. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 イラクで自由を拘束された邦人の人質の皆さんや第三国の方々の一刻も早い釈放を願わなければならぬというのは、これはおっしゃるとおり当然のことで、これは国際法上の問題のみならず人道上の問題でもあります。そして、こういった行動をやったのは、これはイラク政府でありますから、イラク政府に対して反省を求める。同時に、イラク政府のみがこの問題の解決のかぎを握っておるのでありますから、ラマダン副首相に私が二時間会談しましたときも、その点については強く要請をいたしました。  同時に、それのみならず、いろいろなレベルで政治的な対話も重ねていきたいし、この問題の根本を片づけるということは、ただ単にある日突然人質だけをとっちゃったというのじゃなくて、その前にクウェートという国に侵略をして、侵攻をして併合をしてしまったという、そういった行為があって、それを国際社会が許せないと言って決議までして対応しておるわけでありますから、私は、問題の根本的な解決、局面打開のかぎを握っておるイラクが決断をすれば、人質の問題も含めて全部当面の局面は根本的に片づくわけであります。  それをまずやって、今度はイラクとその周辺の問題、例えばイラククウェートの紛争とか、あるいはアラブとイスラエルの問題とかパレスチナ問題とか、中東の恒久和平の問題は、上田委員御承知のようにムバラク提案とかベーカー提案とかエジプトやアメリカやいろいろな国が中心になって、何度も何度も努力をしてきた歴史のあるものでありますし、日本としてもそのたびに、イスラエルに対しては占領地からの撤退、この間招請したPLOのアラファト議長には私からも直接、イスラエルという国の存在を認めるという前提、それからテロはもうしないということ、これを決めてもらうことが、日本が二四二号の決議に従って恒久和平に参加できる大きな前提ですということを言ったら、皆さんそれぞれ平和解決を求めていらっしゃるわけですから、そういったことについて持っていこう、その方向も歴史の上でもう出始めておると私は思っております。  また、二国間関係についても、御指摘のようにきょうまで技術協力や経済協力、いろいろやってまいりました。その結果、七千億にも上る債務をイラクは持ち、日本は債権を持つほど非常に相互依存関係というものがあったわけですから、今それをぶち壊してしまったのは、日本がぶち壊したんじゃなくて、イラクの方の意思でぶち壊しが行われたわけですから、もとへ戻して、クウェートから撤退をして人質を返して、そうしてもらえれば、日本イラクとの経済の再構築をする用意がありますということを私は率直に申し上げてあるわけであります。  そういう流れの中で一日も早く人質の方々が全員釈放されて帰っていらっしゃるように、ごく最近もイラクは四名という釈放をしましたけれども、それはそのこととして評価はしますが、しかし全員を返してもらわないとこの問題の根本解決にはならない。あらゆるレベルの政治対話やあるいは外交的な努力を今日も行い続けておるわけでございますので、どうぞ御理解と御協力を賜りたいと考えます。
  61. 上田利正

    ○上田(利)委員 この在留邦人の拘束の問題、イラクがやったことは間違いないのです。そこで、そこが今度は政治的な解決、外交の手腕ということになると思うのですね。やっているものについて、例えばフランスの場合については、評価はいろいろあるでしょうけれども、フランスはこの間、さっきも状況報告がありましたように、三百人を超える大量の拘束をしておる人たちをやはり解放しているわけですね。だから、イラクがやったのだからしょうがないということにはならないのですよ。何と言ってもイラクがやったことは間違いないのです。しかし、フランスはそういう外交努力を重ねる中でああいう大量な釈放をしている。日本はなぜできないんだ。余り結びつけたくはございませんけれども、やはりこの平和協力法に対しましても、イラク政府がどう思っているかというようなこともあると思うのですよ。  だから外交手段として、総理、そういういろいろなものがあれば障害は取り除いて、それで一刻も早く在留邦人の拘束を解かなければいけない。そのためにはあらゆる努力をする。例えば釈放をするということに、この法案がこういう形で自衛隊を海外に派遣をしないということならば釈放しますよということになったら、じゃ、どうしますか、総理。そういう提案をイラクがやってきたらどういたしますか。そこだけ最後にちょっと聞きます。
  62. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 原則は従って人道上、国際法上の立場に立ってイラクに強く反省を求めるとともに、人質が釈放されるときには日本としてはできるだけの経済協力、技術協力を再構築していく用意がある、あるいはイラクが望むように、中東恒久和平に対して日本も積極的に参加をしていく用意があるということを繰り返し表明して、努力をしていく決意でございます。
  63. 上田利正

    ○上田(利)委員 とにもかくにも、一刻も早くこの在留邦人の拘束からの解放、これに全力を挙げていただきたいと思います。
  64. 加藤紘一

    加藤委員長 この際、高沢寅男君より、議事進行に関し発言を求められておりますので、これを許します。高沢寅男君。
  65. 高沢寅男

    ○高沢委員 せっかくの上田委員質問の途中に議事進行の発言ということで中断をしていただくことは大変申しわけありませんが、委員長初め委員各位のひとつお許しをいただきたいと思います。  私が議事進行の発言をいたしたいと思うのは、この平和協力法案の大前提である国連決議といわゆる多国籍軍との関係、この関係について重大な疑義が出てきたということで、この議事進行の発言を求めたわけであります。  御承知のとおり、十月十九日のこの衆議院予算委員会社会党の山口書記長は、デクエヤル国連事務総長は、サウジアラビアに展開している多国籍軍というのは国連決議とは関係ないと言っておられる、こういう立場から、多国籍軍日本が協力するということはやるべきではない、こういう主張をされたわけであります。この山口書記長の主張に対しまして赤尾国連局長は、多国籍軍の展開は国連決議とは関係ないという一部報道は、デクエヤル事務総長自身が後に否定されておりますということでもって、この両者の関係は密接にあるんだという立場の答弁をされたわけであります。  このやりとりは、テレビの中継を通じて全国民の前に実は流されたわけであります。さらに、この特別委員会が始まりまして、我が党の川崎委員、同じようにこの山口書記長の質問を受けて、この問題で政府の立場をただして、赤尾国連局長はまた同じ立場で答弁をされて、そして今日まで来ました。川崎委員の次には、今度は小澤委員が同じ問題をまた出しまして質問をいたしましたが、同じ答弁が繰り返されて今日に至った、こういう次第であります。  そして、このことについて我が党の和田委員が、どうしても納得できない、どうしても腑に落ちないということで、和田委員からこの問題を自分もまた改めて質問したいということで、外務省当局、特に国連局長との間でいろいろのやりとりをいたしましたが、そのやりとりの結果、本日に至って国連局長から、従来まで自分が答えてきたことは実は誤りであった、こういう見解が和田委員に伝えられたということでございます。  したがいまして、私としてはここでもう一度和田委員和田委員の立場に立っての質問をしていただき、そして、それに対して国連局長から責任ある答弁をしていただくということをした上でまた委員会審議の前進を図るということをやっていただきたい、これを私は委員長に対する要望として申し上げたいと思います。そういうお取り計らいをひとつお願いいたします。
  66. 加藤紘一

    加藤委員長 それでは委員長より申し上げます。  高沢君の御要請のように取り計らいます。和田静夫君。
  67. 和田静夫

    和田(静)委員 若干の経過はもう申し上げるまでもないのでありますが、まず、予算委員会で我が党の山口書記長がデクエヤル事務総長の見解について触れました。それで、一連の御答弁がありました。それを受けて、その答弁の中における不正確な部分、誤りの部分について、我が党の川崎委員が二十四日、さらに続いて二十六日小澤委員質問を展開いたしました。ところが、その答弁は結果的には同じ答弁が国連局長によってなされるという状態になりました。  私たちが問題にしましたのは、八月十三日にデクエヤル国連事務総長が記者会見を通じて、国連の決議の文脈の中で行われたものではない、何が、アメリカ合衆国、フランス、イギリス、その他の国及びアラブ諸国によって多国籍軍というのはなされたものであって、国連の決議の文脈の中で行われたものではない、こういうことが基本にある、ここの部分を全的に実は今誤りを認められようとしておるのでありますが、赤尾国連局長は、新聞記者会見を通じてデクエヤル事務総長担当の報道官がすべてを否定をしたという観点の上に立って答弁が繰り返されてきたわけであり、ここには重要な国連局長の認識の違いがあります。  よって、私は質問通告の過程で、ここの問題というのはやはりあなたの方が間違いだ、私は善意で忠告を申し上げるけれども、改めるところは率直に改めたらどうだというようなやりとりがございまして、本日もたらされたのは、今までの答弁を踏まえた上で、しかるところ先般の山口書記長に対する私の答弁はかかる趣旨をかいつまんで申し上げようとした結果、事務総長がそれは国連決議の文脈の中のものではないと述べた点については、報道官も事後の会見において否定していないにもかかわらずこの点も否定したととられるような答弁をしたことは不正確である、よって、ここでおわびをし、訂正をするというような意向がもたらされました。私は、ここに至った結論までの過程を追いながら、本委員会国連局長が正確に答弁を修正をされるのかどうか、その点について答弁を求めたいと思います。
  68. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 ただいま和田先生から御指摘のございました点について、数点申し上げたいと思います。  最初に、十九日の予算委員会におきまして山口先生が言われました点、すなわち、二、三回言われたと思いますけれども、「デクエヤル事務総長は、このサウジアラビアに展開している米軍というのは国連決議六百六十一号とは関係がないんだ、別だということをおっしゃったでしょう。」という点が第一の点……(発言する者あり)「別だということをおっしゃったでしょう。」と言っておられます。もう一度、二回目に「デクエヤル事務総長は八月十三日、サウジアラビアに展開しているこの米軍は国連決議とは別の問題だ、こう明確に言ったわけです。」もう一度言っておられますけれども、この点につきましての私の解釈、あるいは私たちの解釈をまず最初に申し上げておきたいと思います。  この八月十三日、ニューヨークにおける記者会見において国連事務総長が申しました点は、海上封鎖あるいは封鎖とか、英語の資料を見てみますと、海上封鎖、両方使ってありますけれども、アメリカ軍が封鎖を行うという報道があったのを受けて、事務総長は十三日の記者会見におきまして、「国連観点からは、「封鎖」という言葉は正しいものではない。我々が目にしている事態は、サウディ・アラビア政府及びクウェイト政府との合意により、米、仏、英、アラブ諸国を含むその他の諸国により決定が行われているが、それは国連決議の文脈の中のものではないということである。」この点をとらえて山口先生は二回か三回言われたと思います。これは今、和田先生が言われたとおりだと思います。  引き続いて、安保理の決議を通じ、国連のみが封鎖につき現実に決定することができる。それゆえ事務総長は、我々が封鎖という言葉を使うのは避けるべきだと考える。これは初め十三日の記者会見の内容でありまして、この点につきましては、社会党質問に立たれました何人かの委員の方と私たちと認識の違いは全くありませんが、この中で事務総長が言っております、第二文で言っております、我々が目にしている事態は、サウジアラビア政府クウェート政府の合意により、米、仏、英等により決定が行われているが、これは国連決議の文脈の中のものではないということである、この点につきましての解釈の違いはあり得ると思います。  これは、この前後から見まして、事務総長が言っておりますのは、あくまで封鎖について、海上封鎖については国連決議の文脈のものではないと言っているということだと思います。それは、後の八月十六日にニューヨークで行われました事務総長報道官談話におきましても、「封鎖は憲章四十二条の下で規定されており、安保理の承認を要するというものである。」という点、まずこの一点だけ先に述べさせていただきたいと思います。  その次に、山口委員の、今申しましたような御指摘を受けて私が十九日の予算委員会の際申し上げましたことは、一部の新聞報道等におきまして、事務総長は、多国籍軍の展開は国連とは関係のないような発言をしたかのごとく報ぜられましたが、これは、簡潔に申しますと、その後のニューヨークの事務総長自身――これはその後は川崎先生との質疑応答を通じまして、私は、事務総長自身はリマにおりましたので、ニューヨークで事務総長にかわって談話を出しましたのは事務総長報道官であるというふうに申し上げまして、この点は御理解いただいたと思いますけれども、事務総長自身が記者会見において、このような報道は自分、すなわち事務総長の真意を伝えていないと述べて新聞報道を否定していますというふうに山口先生の質問にはお答えしまして、その後は川崎先生と小澤先生から、これは間違っているじゃないかという御指摘がございまして、私がお答えしましたことは、この十三日の事務総長の記者会見、それと十六日などに行われました一部新聞報道、これは後で確認しましたところ、ロイター電とロイター電を受けて報じましたニューヨーク・タイムズの報道だと思いますが、それを受けて、八月十六日になりまして国連報道官がニューヨークにおきまして述べたことでございますが、それは、前はこの封鎖はどういうものかということを、繰り返しになりますので申しませんが、(発言する者あり)事実関係だけ最後に述べます。  「事務総長は、「憲章に違反する」との言葉を用いたことは一度もない。」これは、ロイター電とニューヨーク・タイムズが事務総長が憲章違反だと述べたことを受けて、報道官は、憲章に違反するという言葉を用いたことは一度もないというふうに言ったものでございます。それで、川崎先生と小澤先生から御指摘受けましたときには、私は十九日の私の申し述べました点は、この点を、このような新聞報道、すなわち米軍等の行動は国連憲章違反であるというふうに事務総長が述べたという点について、報道官はそうではないと言ったという点を私は川崎先生と小澤先生に説明したつもりでございます。(発言する者あり)
  69. 加藤紘一

    加藤委員長 御静粛にお願いいたします。
  70. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 それを受けて、私は十九日に御説明、山口先生の御質問に答えて、記者会見、これは報道官でございますが、ニューヨークにおける記者会見において、このような報道は事務総長の真意を伝えていないと述べて新聞報道を否定したと言いましたことは、私はこの一連のやりとり、特に新聞報道の米軍の行動は憲章違反であるという報道があってそれを否定した。そのことを受けて私は、事務総長の真意を伝えていないと述べて新聞報道を否定したというふうに御説明申し上げたつもりでございます。  しかしながら、ただいま和田先生が言われましたように、私が言いましたところが議論のやりとりから、特に山口先生との質疑応答を通じまして、山口先生が言われましたサウジに展開している多国籍軍国連決議とは関係ないんだという点も含めて私が否定したというふうにとらえたのではないかと思います。その点は、私のもし言葉の足らないところであれば、この際、今申し述べましたようにはっきり述べさせていただきたいというふうに、御説明させていただきたいというふうに存じますので、よろしくお願いいたします。(発言する者あり)
  71. 和田静夫

    和田(静)委員 「このような報道は自分の、すなわち国連事務総長の真意を伝えていないというふうに述べて、新聞報道を否定しております。」これはあなたの答弁ですよ。これが間違っているんでしょう、ここのところが。これはいわゆる多国籍軍との関係において、国連との関係において最も基本の問題なんですよ。そこのところをあなたは否定をされたわけだ。ここのところを今改められるというわけでしょう。
  72. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 私が申しましたのは、十六日の報道を受けて――報道といいますのは、国連憲章違反であるという報道を受けて、同じ十六日に事務総長報道官が、そういうことは事務総長は述べていないということを、そういうことを今和田先生が言われました表現で御説明したつもりでございます。ただ、そのときに今和田先生が言われましたように事務総長が述べました「それは国連決議の文脈の中のものではない」という点も事務総長が否定したというふうに私が言ったというふうに受け取られれば、私の言葉遣いの不足によるものでありますので、そのあたりはこの際そういうことではないということを申し述べさせていただきまして、したがいまして、ニューヨークの報道官が否定しましたのは、国連憲章違反かどうかという点についての報道を否定したのでありまして、「国連決議の文脈の中のものではない」という点については、報道官は一切言及しておりません。十六日の記者会見において言及しておりません。そういうことでございます。
  73. 和田静夫

    和田(静)委員 今明らかになったとおりでして、今最終的に局長が言われましたように、「国連決議の文脈の中のものではない」と述べた点については、これは報道官も事後の会見において否定していない、こういうことなんですよ。したがって、一連の今までの答弁、これは大変食い違っていまして、ここは我々にとっては、国連と、言ってみれば、行っているところの多国籍軍との関係の基本にかかわるところ、そこのところを修正を、訂正をされる、こういうことなんですよ。これは私たちはいわゆる国連局長の答弁をも踏まえながら論戦を展開をしてきたのですから、したがってここでは理事会でしっかりこれをどう受けとめるかという判断をしてくださいよ。
  74. 加藤紘一

    加藤委員長 国連局長ないし外務大臣から御答弁をお願いいたします。
  75. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 「国連決議の文脈の中のものではない」という意味につきましては、私は今回の和田先生の質問に対して冒頭申し上げましたように、山口先生はこの点を踏まえて、デクエヤル事務総長は、このサウジに展開している米軍というのは国連決議六六一号とは関係がないんだ、別だとおっしゃったでしょうというふうに言っておられますし、私の解釈は、これは必ずしも事務総長に真意を聞いたわけではありませんから推測ですが、ただ前後関係から申しますと、事務総長は封鎖のことをあくまで言っているわけです。封鎖は国連憲章第四十二条に基づくべきだと言っておりますし、十六日の事務総長報道官の記者会見においても封鎖のことだけを言っているわけで、果たしてこの国連決議六六〇だとか六六一、六六五はまだ出ておりませんが、六六〇、六六一に言及しているかについては疑問でありまして、私はそれを念頭に置いたものではないだろうというふうに判断いたしております。(発言する者あり)
  76. 和田静夫

    和田(静)委員 どうも報道官が否定していないところまでもあなたは否定をしていたわけですよ、答弁としては。というのは、その答弁の仕方というのは、繰り返しになりますが、「このような報道は自分の、すなわち国連事務総長の真意を伝えていないというふうに述べて、新聞報道を否定しております。」ということでもって、全的否定をあなたはされた。よって、何遍もあなたに言いましたがね、ここのところはあなたの方が間違っていらっしゃるのだから、したがって、改められた方がいいでしょうということを私は外務省の皆さんに善意で申し上げておったわけですね。  ところで一番具体的なことでいきますが、「しかるところ、先般の山口書記長に対する私の答弁は、」ここは山口書記長ばかりじゃないのでありまして、我が党の川崎委員、小澤委員に対する答弁は、「かかる趣旨をかいつまんで申し上げようとした結果、事務総長が「それは国連決議の文脈の中のものではない」とのべた点については報道官も事後の会見において否定していないにも拘らずこの点も否定したと取られる」答弁をいたしたことは「不正確であり」、私に言わせれば誤りであり、「ここでお詫びし訂正致します。」これでいいわけでしょう、私のところへ来た答弁で。
  77. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 ただいま和田先生が言われましたうち、事務総長報道官が否定しましたのは国連憲章違反かどうかという点でございまして、それ以外の点については一切言及しておりません。否定声明では言及しておりません。  それで、私の山口先生に対する回答がもしも全部を否定したというふうにとられれば、私はそういうつもりはなかったのですけれども、もしもそういうふうにとられたのであれば、私の至らないところで、この際そのように訂正させていただきたいと思います。
  78. 加藤紘一

    加藤委員長 午後三時再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時四十四分休憩      ────◇─────     午後三時三分開議
  79. 加藤紘一

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。和田静夫君。
  80. 和田静夫

    和田(静)委員 デクエヤル国連事務総長の記者会見等の問題をめぐる一連のいきさつについての外務省国連局長の答弁をめぐる理事会のいきさつについて、この機会に承っておきます。
  81. 加藤紘一

    加藤委員長 委員長から申し上げます。  デクエヤル国連事務総長の発言及びその後の質疑の問題等につきましては、理事会で協議の結果、問題点を整理の上、また理事会に諮り、またこの委員会に報告することにいたしたいと存じます。
  82. 和田静夫

    和田(静)委員 総理、去る二十九日の本委員会で、自由民主党の愛知委員が━━━━━━━━━━━━━━━━━という趣旨の発言をされた。そして昨日、私がこの愛知さんの発言について指摘をし、総理の御所見をお尋ねをしました。総理は、愛知委員の見解をただしてみますと答弁をされました。そこで総理愛知委員の見解をただされた結果について、この機会に承っておきたいと思います。
  83. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨日、愛知委員に私は直接真意を問うたのでありますが、愛知委員は率直に、自分の質問発言の中で大変御迷惑をかけました、不穏当な部分は取り消させていただきたいという申し出がございましたので、そのことを御報告させていただきます。
  84. 和田静夫

    和田(静)委員 今の総理答弁を受けまして、委員長並びに理事会のもとで処理をされることを望んでおきます。
  85. 加藤紘一

    加藤委員長 この問題につきましては、その政り扱いを後刻理事会で協議申し上げ、措置したいと思います。  次に、井上義久君。
  86. 井上義久

    ○井上(義)委員 総理、初めに私は、自衛隊の海外派遣ということについて何点かお尋ねをしたい、こう思います。  一九四五年以降、世界地域紛争あるいは国内紛争と言われるものは百五十以上ありまして、二千万以上のとうとい生命が失われているわけでありますけれども、これらの紛争に対して日本は一度も武器を送ったことはありませんし、また、それらの紛争にも参加をしなかった。このことは、二度と戦争を起こしてはならないという国民の強い意思、それから平和憲法があったからだ、このように思うわけでございます。その意味で、今回の湾岸危機というものは、この平和憲法の精神に立脚した貢献策を実行し、この平和憲法を世界に宣揚する最大のチャンスであった、このように思ったわけでございます。  ところが、それに対して我が国の貢献の仕方にどういうオプションがあるかということを考えますと、一つは軍事面まで含めた貢献、それからもう一つは、非軍事分野の貢献ということがあるわけでありますけれども、多くの国民理解というものは、この非軍事分野での貢献ということがコンセンサスではなかったかと思うわけでございまして、やはりその方向に沿って貢献策を考えるべきであった。  ところが政府は、この国連平和協力法の名のもとに自衛隊の海外派遣を可能にして、さらに協力という新たな概念を持ち出して、限りなく軍事的分野に近い貢献をなされようとしている。この自衛隊参加は、憲法に基づいて国民が営々と築いてきた平和政策の重大な転換である、その憲法の精神を空洞化させるようなこの国連平和協力法案には断固反対である、このことをまず申し上げておきたいと思います。  そこで、総理は八月二十九日の会見の折にも自衛隊の海外派遣考えていない、このように明確におっしゃいましたし、それから、外務省の当初伝えられております原案にも自衛隊参加は含まれてなかったはずである。ところが、自衛隊の組織参加ということが明示されたわけでございまして、この法案を詰める段階で自衛隊抜きではどうしても協力隊ができない特別な事情が出てきたのか、それとも実は自衛隊派遣そのものが目的であったのか、このことをまず最初に、総理、明確にお答えいただきたい、このように思うわけでございます。
  87. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連平和協力法を国会提出するまでの間に政府部内でいろいろ慎重な検討をいたしましたが、今委員おっしゃいますように、これは決して憲法の理念を乗り越えていこうというものでもございませんし、大前提として国連の決議を受けてという大きな目標があって、日本が戦前のように、日本だけの意思で勝手に出かけて行って迷惑をかけるというようなことは決してしてはならない。これは、歴史の反省に立って、二度と侵略戦争はしない、軍事大国にはならないという誓いは、これは平和の理念としてきちっと守り続けてきたつもりであります。  また、今回の法案を作成するときにもそのことは絶えず念頭に置いて考えましたから、この法案の第二条にも、たびたび申し上げておりますが、武力による威嚇とか武力行使に当たるものであってはならない、非軍事的な面の協力で何ができるであろうかということをいろいろ考えた結果、第三条にその行う協力活動というものをずっと列挙したわけでありますけれども、そういった意味で、また武装自衛隊武装のままで出ていってというような発想では絶対にありませんので、そのところは最初に強く申し上げさせていただきたいと思っております。  それから、そういった意味で、自衛隊自衛隊のままで出すのではなくて、平和協力隊参加してもらってその指揮下に入ってもらって、そこで慎重に定める業務計画に従って、極めて限定的な期間、限定的な業務目的に従って行動してもらう、終わったらまたそれは解散になって原隊へ戻ってもらうわけでありますから、そういった意味平和政策の一環である、戦争目的のものでは決してないというふうに私はお答えをさせていただきたいと思います。
  88. 井上義久

    ○井上(義)委員 総理のお答え、私の質問に答えていただいてないわけでございまして、当初自衛隊派遣する考えはない、こうおっしゃっておった、伝えられてくるいろいろな法案の中身も、当初は自衛隊派遣ということは含まれていなかったように私ども思うわけでございます。この法案作成の過程で、どうしても自衛隊抜きではこの協力隊はできなかったのか、あるいは逆に自衛隊派遣することが実はこの法案の目的であったのか、その辺を明確に答えていただきたいということをお話ししているわけでございまして、帰ってからいろいろまた選挙民にも伝えなければいけませんので、できれば一つ何々、二つ何々というので明確に答えていただければ大変ありがたいのですけれども。
  89. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 まず第一に、自衛隊派遣するためにつくった法律ではございません。自衛隊自衛隊のままで、戦闘集団として派遣しようというような考えは全くございません。  それから二つ目に、最初に貢献策を発表しました八月二十九日のことにお触れになりましたが、あのときは八月二日に突然あのような侵略行為が起こって、せっかく冷戦後の世界の秩序の中で、またあの十八世紀的な弱肉強食、力の強い国は弱い国を勝手に侵略して併合してもいいんだというような既成事実をつくっていいのかどうかということが、国際社会で厳しく問われたわけでありますから、国連がいち早く対応をして決議をして、あれは平和の破壊である、国際社会の正義に反するものがここにあると決めたわけでありますから、世界の国々がそれぞれに対応して協力をしよう、日本も見て見ぬふりをしておってはいけないから、あのような既成事実を許してはならぬという気持ち政府は貢献策をいろいろ検討いたしました。  そのときには、委員も御理解になっておると思いますが、まだ法律は何もありませんし、制度、仕組みは何もありません。したがいまして、自衛隊というのは、いかに武力行使の目的を持たずとも今まで海外に派遣されるときには、自衛隊法の中に一項目ずつこれはいい、これはいいと書いてあることに限って海外に派遣ができるようになっておるわけでありますから、あの最初の貢献策をつくった段階では、それは考えがありますといったって法律がそうなっていないわけですからできませんので、当然それは除いて、民間の方々にとにかくお願いをする、何の体制も仕組みもないけれどもお願いをするということで始めましたのが、第一回の八月の発表しました貢献策でございました。一つ輸送協力、二つ、物資協力、三つ、医療の協力、四つ、資金の協力、五つ、周辺国の支援、六つ、難民の援助、このように大きく分けると六項目に分けて最初の貢献策は発表をいたしましたけれども、これはその六項目でございました。  しかし、それを実際にやろうと思って始めますと、医療先遣隊とも私はサウジアラビアでもジョルダンでも現場を一緒に歩きましたし見てまいりましたし、あるいは物資協力とか輸送協力の問題については、いろいろなことがあってなかなか第一歩が踏み出しにくいという状況がありました。船員組合の皆さんの御協力もいただき、第一船が出かけていったということはこの委員会でもたびたび御議論願ったところであります。  しかし同時に、同じころの世論とかいろいろな御意見の中には、民間ばかりにそうやって政府は頼んで、政府自身、公務員は何をしているんだ、政府自身、公務員自身考えることもどうなんだといういろいろな御意見や論調等もあり、また、政府としても、自衛隊の持っておる長年の組織された行動力とか、あるいは自衛隊の技能とか、あるいは海上保安庁の能力とか消防とか警察とかいろいろあるな、こういったところにもやはり広く国民皆さんすべてに呼びかけて、だれは参加してください、だれは来てくれるなと言わずに、すべての皆さんにお願いをして参加をしてもらって、そして、平和協力隊というものを法律でもってつくったらどうだということを判断をして、この法律作成の作業に入っていったわけでございます。  そのときに、大前提として、今委員御指摘になったように、憲法の精神があるということもこれは重大な問題として前提に持っておりますから、武力行使を伴わない、武力の威嚇はしないという大きな歯どめをまず法律にきちっと書いて、原則非武装で、人権その他もありますから、護身用の小火器は携行を必要と認めるときは認めなければ基本的人権にも関するんだなというような議論等もあわせて行いまして、非戦闘的な部面での協力義務というものをきちっと列挙する法律をつくった、こういう経緯であります。
  90. 井上義久

    ○井上(義)委員 繰り返すようですけれども、要するに自衛隊を海外に派遣するために自衛隊法の改正を考えているか、こういう質問に対して、考えていない、こういうふうにおっしゃったわけでありまして、それが自衛隊を含める形になった、やむを得なかったんだというようなお答えだというふうに受けとめますけれども、それはさておいて、それではやはり自衛隊、昭和二十九年にできましてから三十六年になるわけでありますけれども、この間いろいろな議論がありました。  それに対して、自衛隊には自衛隊の任務がある、いわゆる専守防衛という任務に非常に自己限定してきた。それがやはり今日のある意味での国民的な自衛隊に対するコンセンサスをつくってきたんじゃないかな、こう思うわけでございまして、今回の問題を通して海外派兵ということについて、あるいは海外派遣というふうに言ったらいいんでしょうけれども、国民反対が非常に強いわけでございまして、せっかくこれまで積み上げてきたそういう車守防衛、非常に自己限定して積み上げてきた自衛隊の今日のコンセンサスが逆戻りしてしまうのじゃないか。そのことによる代償というのはこれ以上に大きいんじゃないかというふうに私は考えるのですけれども、その点、総理いかがでしょうか。
  91. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、自衛隊がそもそも最初に昭和二十九年に出発しますときに、専守防衛、みずからの国土と国民の生命財産を守る、そのために武力を行使して、日常の訓練をして日本を守る、そういうスタートであったことは御指摘のとおりでございます。そして、率直に言うと、あのころの世界を取り巻く情勢の中ではそういった紛争、そういった危険というものが非常にございましたから、それは認めるべきだということでスタートしましたし、私は、今日も自衛隊に課されておる責務の基本的なものはやはりそれだと思っております。  その後、自衛隊のそういう国土防衛という大きな任務は依然として変わりませんけれども、しかし、組織化された日ごろのそういった活動とか能力とか技能というものは、たび重なる国内の災害救助活動自衛隊が出ていってもらうことによって、国民皆さんの支持や理解も随分深まったことも事実だと思います。私は、あの伊勢湾台風のときに、自分の郷里に来て自衛隊が寝食を忘れてやってくれたあの災害救助活動というものは非常に感謝の気持ちで評価されたと思うのです。あれは直接の外敵の侵略に対する行為ではありませんでしたが、自衛隊は非常によくやってもらった。  それから、その後だんだんいろいろなことが起こってきまして、例えば南極観測が国際的な地球的な規模の観測の大事な業務だというので自衛隊がそれに協力をする、これも行ってもらうようになってから毎年非常に高い評価をしております。私も、南極観測本部長として南極まで一回行ったことがありますけれども、それはそれなりに非常にお役に立ってもらっておるいい姿だ、こう理解もしております。  そういったことから考えますと、直接日本の国が攻撃されたとき守るというだけじゃなくて、いろいろ多方面に、自衛隊皆さんが組織されたその能力を活用してお役に立って、国民の評価も受け、理解も得ておられるなれば、世界の歴史というものが自衛隊のできたときとは大きく変わりまして、とにかく冷戦時代というのはなくなったわけですし、アメリカとソ連を頂点とする二大大国のイデオロギーを背景にした対立もなくなったわけでありますし、それからアジアの最近の緊張緩和の状況というものを見ておりますと、もう国と国との武力闘争、侵略というものは、まあ不幸にしてイラクにあったからいけませんけれども、あのイラクのむちゃくちゃ行為さえなければ、今ごろはもう冷戦後の世界の新しい秩序を目指してもっと世界は希望に満ちた前進ができたろうと思うのです。  けれども、そういうことになってきますと、そういう国際社会の正義、国際の秩序というものは世界が初めて体験する舞台ですから、それに対してみんなが見て見ぬふりしてないで、お互いに許される範囲で、それはいけないよ、やめると言う。大人ならばそこで出ていって注意もする、いろいろな係、役割があるでしょうけれども、それにふさわしいことをみんなで力を合わせて、あのようなことが仕方がないといって黙認してしまったら、これからの世界の秩序ほどうなるんだろうかという、私は私なりに深刻な心配もしております。  したがって、武力行使をしないで、武力の威嚇をしないで、平和的に問題を解決しようと思って国際社会が力を合わせておるという、まさに今日の世界で初めて起こった状況でありますから、それに対して日本日本としての分に応じた、分け前に応じた協力をしていかなければならないという思いに立ってできておるものでありますから、決して自衛隊発足のときの問題に逆戻りして、武力を持って出ていこうというようなことでは全くございませんので、この点は重ねて申し上げさせていただいておきます。
  92. 井上義久

    ○井上(義)委員 総理、大変御雄弁で、私も見習わなければいけないと思ったのですけれども、できるだけ簡潔によろしくお願いしたいと思います。  それでは、各種の世論調査で自衛隊に対する海外派遣、いわゆるこれまで、今おっしゃったように災害出動とかそういったことと今回の問題は質的に違うわけでございまして、それを一緒にされても困るのですけれども、要するに国民反対をしている、実際に要するに行くなと言っている、こういう状況の中で、雰囲気の中で、果たして協力隊員が喜んで出ていけるのかという問題が一つございます。  もう一つは、アジア、何回もこの委員会でも出ていますけれども、韓国、中国、シンガポール、多くの国でこの自衛隊の海外派遣ということについては非常に不安を感じている、あからさまに警告を発していらっしゃるわけでございます。  その中で特に気になった新聞記事がございまして、これは朝鮮日報の十月十一日付の社説でございますけれども、ちょっと披露させていただきます。   隣国日本においては、国民的総意の下で、重大な対外政策の変化が行われている。自衛隊、つまり日本軍の派兵がそれである。表むきには”国連平和協力隊参加”となっているが、その内容は、日本海軍の補給艦と空軍の輸送機を派遣することとされている。   日本軍は、第二次大戦の戦勝国によって武装解除されて以来ちょうど四十五年ぶりに、堂々と海外派兵を行うこととなった。そればかりでなく、彼らが攻撃を受けた場合応戦することもできると、日本政府はその立場を明らかにしたという。   応戦するとすれば当然に護衛艦や潜水艦が動員されねばならないだろうし、F15J戦闘機の参戦も不可避になる。今日本は、表面上は地上軍十八万名、海軍三十一万余トン、空軍八百四十余機を保有しているが、有事の場合の兵力や装備の増員・増加は、世界のどの国よりも迅速・大量に補給できる防衛産業体制を備えている。 云々とありまして、これは当然杞憂にすぎないとおっしゃるだろうと思いますけれども、私は、戦後四十五年たって、いわゆる日本平和協力をうたう法案がそういうアジア諸国から疑念を持たれている、この事実は非常に重大だと思うのです。それが正しいかどうかということは別にして、このことはやはり、さきの大戦に対する日本政府の反省・謝罪、それがいかに表面的であったかということを各国がそのように受けとめているということじゃなかろうかと思うわけです。  私は、このことの深刻な反省なしに、幾ら平和貢献、こう言っても日本が本当に、本当の意味世界に貢献できることはないんじゃないかというふうに思うわけでございまして、この国民の行くなと言っておる状況、またアジアの懸念、このことについて、それを押してでも自衛隊派遣をしなければならないのかということについて総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  93. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 その御引用になった文章を私は正確には読んでおりませんので、今の委員の御指摘の範囲内で申し上げましても、ちょっとそれは過剰な表現がございまして、軍隊として海外派兵するわけでもありませんし、それから戦争に対する反省と、二度と侵略戦争はしない、軍事大国にならないという誓いは、私自身ここで何回も申し上げたとおり、それは日本のコンセンサスであるはずでありますし、その態度や理念がアジア・太平洋地域の平和と安定に役立ってきたことも間違いなかったと私は確信をいたしております。  そういった意味で、日本の軍隊が応戦するようなそんな武器を積んでおるものじゃありませんし、それは特別に許可した場合だけ護身用の小火器を持たせるということはきちっといたしました。身を守るための一定の小火器だけで、今の近代戦争に応戦できるような能力も、また応戦させるような目的も全然持っておりませんので、そういうところはちょっとお考えを正していただけないだろうかということを私は常々申したいと思うし、それよりも何よりも、国際社会における協力を要請された大前提の、強い国が弱い国を今もなお侵略して併合してしまっても、あれをやるな、これをやるなと言って世界が何もしなかったならば、要するに皆が見て見ぬふりをしたら、あのような行為が二十世紀後半の今日もまた行われるようになるんだということは、アジアのみならず世界全体にとって大変不幸なことであって、弱肉強食を肯定する、容認するということは、新しい国際社会の規範を考える上で私は、間違いである。そういうことを許してはいけないというのが国連の精神であり、平和主義の大原則であり、日本憲法や国連憲章に書いてある精神だと私は思います。  ですから、原則非武装で、できるだけそういった武力の威嚇や武力行使参加しない、そして十分慎重に配慮して平和的な協力をいたしましょうという発想でありますから、その御引用なさった社説の中には、いささか私どもの発想や考え方や、この平和協力法案の中にきちっと歯どめとして書いてあること等がちょっと欠落をしておるんではないだろうかと、大変残念な気がしますので、そういったこと等もさらに詳しく説明をして、理解をしていただくように努力をしてまいります。
  94. 井上義久

    ○井上(義)委員 私はこの記事の内容について伺っておるわけじゃなくて、こういう戦後四十五年たって疑念を持たれているということについてこれは大変重大な問題で、要するに国際社会に貢献する、平和に寄与するんだ、そう言っても周辺諸国が懸念を持つような状況の中で、これは国際社会に貢献するなんと言っても何の意味もないわけでございまして、そのことに対する反省というものが前提にならなければいけないということを申し上げておるわけでございます。これは議論してもしようがないので……。  本当に自衛隊派遣する道以外に貢献の方法はないのかということでいろいろこの議論をずっと聞いておりますと、一つは、国連が中心となって推進する国際的な行動に対して、金、物だけじゃなくて人の貢献もしなければいけない。これは一つのコンセンサスだと思います。それからもう一つは、やはりそのためには平和協力集団を創設する必要があって、そのための法整備をする。このこともコンセンサスの一つだと思うのですね。この二つが私はこの委員会を通して得られたコンセンサスじゃなかろうかと思うわけでございます。  そういう意味で、ここまで一致しておるわけでございますから、その国民のコンセンサス、あるいは近隣諸国の理解が得られるような貢献策、これはやはり私は、拙速であってはいけない。日本の将来にわたる問題でありますから、いわゆる貢献しようと思うと人がいない、だから自衛隊に頼らざるを得ないんだ、こういうようなことではなくて、もう少し時間をかけてそういうコンセンサスをつくるためにこの法案を撤回をして、そして新たに出直す考えは、総理、今のこの時点でもございませんか、どうでしょうか。
  95. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、日本のすべての立場の皆さんに、そして率先して公務員がまずやれ、国家は何しておろかという御批判にもこたえながら、民間の方にも皆さんにお願いして、すべての方が参加してこういった行動をしてもらう、そのために平和協力隊法というものをお願いして、ここの中に入って、ここの限定する行動に参加してもらいたいということでありますから、もう少し議論をして深めていただいて、武装集団じゃないわけですから、原則非武装で、それに協力をするすべての人々にもお願いしてやっていく、そしてきょうまでの組織された訓練とか技能とか経験というものが、こういった問題を現実的に運用していくためには、これは非常に協力してもらうのがふさわしいという角度の視点もございまして、慎重に検討した結果の内容でありますから、どうか、今の段階でもどうかとおっしゃいますけれども、これは十分そういった真意をさらに御理解をいただいて、これは平和政策一つである、これはぜひお認めをいただきたいという今の気持ちに変わりございません。
  96. 井上義久

    ○井上(義)委員 それでは次に、今回の湾岸危機に対する貢献策について何点かお聞きしたいと思います。  まず、八月二十九日、十億ドルの貢献策というものを発表なさいました。その後、二週間たってさらに多国籍軍に対して十億ドルの追加、それから経済援助として二十億ドル、合計四十億ドル。四十億ドルといいますと、国民一人当たり五千円ぐらいになるわけでございまして、一家四人ですと大体二万円ぐらいの負担になる。こういうことが、どうもその額といいますか、それがどういう根拠から出てきたのかよくわからないというのが国民の率直な今の気持ちじゃないかな、こう思うのですね。  そういう意味で、まず最初に四十億ドルの根拠、特にこの十億ドル追加されたその根拠ということについてお話しいただけますか。
  97. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 二段に分けてお答えをさせていただきたいと思います。  まず、当初八月三十日に発表いたしました十億ドルの協力についてでありますが、外交当局の判断及び厳しい財政事情というものを踏まえながら、緊急に必要となる輸送協力、医療協力、物資協力及び資金協力に係る経費についての検討を行い、その若干部分を既定予算から支出すると同時に、去る九月二十一日の閣議において予備費の使用の決定を行ったところでありまして、その内訳は、輸送協力として政府が民間の航空機、船舶を借り上げ、輸送協力を行うための経費として百十八億円、医療協力、百名を目途に医療団を緊急に派遣する体制を整備するための経費として九億円、また、物資協力及び資金協力として湾岸平和基金への拠出金を一千二百二十九億円、なお、既定予算から支出をいたしましたものが医療団の人件費等で十四億円、合計が一千三百七十億円であります。  また、その後におきまして、その後の中東情勢にもかんがみ、湾岸における平和と安定の回復のため、各国の国際努力に対して我が国としてもさらに積極的な貢献の必要があるという見地から、九月の十四日にさきの十億ドルに加えて、今後の中東情勢等の推移を見守りながら新たに十億ドルを上限として追加的に協力を行う旨、用意のある旨を表明したところでありますけれども、これは政府としての意思を表明したというものでありまして、今後予算措置が必要となる性格のものであります。  ただし、実はその財源につきまして、直ちに追加の協力を行うことがなかなか容易ではありませんので、今後の中東情勢の推移を見守りながら、財源事情を見きわめた上で適切に対応したいと今も考えております。  また、中東関係国に対する支援として、今次事態によりまして深刻な経済的損失をこうむりましたエジプト、トルコ、ジョルダンといった周辺諸国に対しまして、総額二十億ドル程度の額の協力を円借款、無償資金協力、技術協力などを組み合わせて実施することにいたしました。そのうちの大半を占めます円借款につきましては、本年度及び来年度以降の海外経済協力基金の事業予算に、その他の無償資金協力などにつきましては、既に国会の議決をいただいております一般会計の既定の予算により対応していくことといたしております。
  98. 井上義久

    ○井上(義)委員 この貢献策が発表されました後、衆議院の外務委員会では渡辺中近東アフリカ局長、我が国の財政事情、国際的立場からぎりぎりのところを出した、こういうふうにおっしゃっているわけでございますし、大蔵省の大蔵次官も、十億ドルは考えられる最大限の額だ、これ以上の追加はもう不可能だ、こういうふうにもおっしゃっておりますし、それから坂本官房長官なんかも、中東支援への我が国の意欲を示す政治決断だと。これを聞いておりますと、これが最後だなというのが我々のそのとき感じた率直な感想でございまして、二週間でそれがこうも簡単に変わるのかな、どうも日ごろの大蔵省らしくないな、大蔵大臣らしくないなということを率直に感じたわけでございまして、どうも今の説明を聞いておりましても、先ほど言いましたように、国民一人当たりでいいますと今まで千円程度だったものが急にはね上がる、二週間ではね上がっちゃう、やはりこれは今の御説明ではなかなか納得できないというふうに私は思うわけですけれども、大蔵大臣、どうでしょうか、どうも今までの大蔵省の姿勢と違うと思うのですけれども。
  99. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ふだんの姿勢と違うと言われますと大変お答えがしにくいのでありますけれども、確かに当初の十億ドルを決断いたしましたとき、私どもとしては外交当局の判断として所要と思われる金額をお示しをいただきつつ、一方では平成二年度の予算の範囲内において行動できるぎりぎりの範囲というものを模索したことは間違いがありません。そして、その結論の中から、今お答えを申し上げましたように、一部既定予算を使い、大半を予備費の使用に係らしめるということでこの対応をいたしました。これは、平成二年度予算の中におけるぎりぎりの決断であったということは御指摘のとおりであります。  しかし、その後、依然として湾岸の情勢が変化をせず、むしろ緊張状態が高まる中においてより一層の貢献が求められてきた経緯も委員御承知のとおりでありまして、その中から我々としては、追加的にぎりぎり対応のできるものとしての今後における多国籍軍への資金協力十億ドルというものを含めて貢献策というものを発表いたしました。しかし、今申し上げましたように、これは平成二年度の既定予算の中で対応できる情勢ではありませんし、財源等の見積もりのこともあります。また、今後の推移によって、これが本当に平和が直ちに回復をし、追加措置が必要にならなければ一番望ましい姿でありまして、こうしたことをも考えながら意思の表明にとどめているというのが現在の姿であります。
  100. 井上義久

    ○井上(義)委員 ぎりぎりにまたぎりぎりが重なったということなんですけれども、今大臣おっしゃったように、この追加の十億ドルがこれは来年度にまたがるというようなことがあるとすれば、これはもちろん債務負担行為とはちょっと違うと思いまずけれども、これは国際公約でございますから、そうしますと、憲法八十五条、八十何条でしたかね、八十六条になるのかな、の精神からいって、これはやはり国会の決議というものは必要になってくるのじゃないか、財政民主主義の原則に反するのじゃないかな、こう思うわけでございます。  と同時に、まあそういう意味で私は、もし本気でこの支出というものを考えていらっしゃるのであれば、今国会にやはり補正予算を提出すべきである、そして国会審議を仰ぐべきであるというふうに思うわけでございますけれども、いかがでしょうか。
  101. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 御承知のように、国際社会イラククウェートへの侵攻及びその併合という行為に対して、これを極めて厳しい姿勢で糾弾し、また対処しております。我が国としても、湾岸地域の平和と安定の回復のための国際的努力に積極的な貢献を行うという必要はあったわけでありまして、国連安保理決議というものを踏まえ速やかに対応する必要がありましたので、当初十億ドルを決定いたしましたものは予備費の使用に係らしめたわけであります。  また、先ほど申し上げましたように、さきの十億ドルに加えて新たに十億ドルを上限として追加的に協力を行う旨を表明したところでありますが、この財源につきましては、直ちに追加の協力を行うことがなかなか容易ではありませんので、今後の中東情勢を見きわめながら、財源事情を見きわめた上で適切に対応したいということで考えてまいりました。  今後におきまして、今御指摘を受けました点は補正予算に関連する事項でもありまして、現時点で具体的なことを申し上げる段階ではありませんけれども、追加の十億ドルの問題をどう処理していくかということは、今後人事院勧告の取り扱い、あるいは義務的経費、さらには災害復旧事業など追加的な財政需要の動向、さらには歳入面で税収の動向などをぎりぎり見きわめた上で判断すべきもの、そのように考えております。
  102. 井上義久

    ○井上(義)委員 こういうことのために、私は何か事が起きたら予備費から出す、これは予備費の性格も、私は今回の出し方は非常に問題になると思いますけれども、そういう意味で、やはり日本として世界にこの範囲で貢献するのだということを明確にするために、こういう平和基金のようなものをきちっと創設をして、国民理解を得てその範囲でやはり世界の平和に貢献をしていくということを今考えるべきじゃないか、このように思いますけれども、総理、どうでしょうか。
  103. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、委員から平和基金というお言葉があったわけでありますけれども、まさに予備費というものが憲法及び財政法によりまして、予見しがたい予算の不足に充てるため使用することを認められている制度というものでありまして、不測の事態という点では、まさに私は今回の湾岸情勢の激変というものは不測の事態であったと申し上げなければならないと思います。  また、私は一つのお考えであるということは、平和基金と言われるようなものについて認めます。しかし、それはこうした特殊な事態がいつ発生するかわからない状態を想定しつつ、非常に大きな財源を固定するという問題をも生じます。しかも事柄の性格上、他へ流用することも非常に困難なものになるでありましょう。我々は、やはりそうした不測の事態が常に起こることを想定し、財源を固定するということよりも、そのときそのときの突発事態には予備費あるいはそのときによりまして補正予算等で対応をしながら、現在非常に厳しい財政事情にあります我が国の情勢を考えますときに、むしろ財政再建の道を着実に歩ませていただきたい、これは率直に私はそう思っております。
  104. 井上義久

    ○井上(義)委員 総理、ここに元駐サウジアラビア米大使エイキンズ氏、新聞にインタビューが出ておりまして、この四十億ドルの貢献策について「日本はこれだけの負担をする以上、米国は中東での軍事行動で日本に事前の協議があって当然で、事前協議がないとしたら日本に資金負担義務があるかどうかわからない。」「日本の負担額は膨大で、カネを払う以上それなりの発言権があってしかるべきで、戦争回避、外交的解決に向け米国に注文をつけるのは日本の義務だと思う」、こういうインタビュー記事が出ているのですね。  これだけの貢献策、先ほど言いましたように、国民一人当たり五千円近い貢献をしておるわけでございまして、武力衝突といいますか、武力行使ということが可能性としてはないわけではないわけでございまして、その場合事前に相談があるのか、またそのときに総理として何とおっしゃるのか、こういう考えもあるということを踏まえて、総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  105. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 でき得る限りの貢献をなしたつもりでおりましたが、それでも世の中の御意見というのはいろいろございまして、そういう記事もあれば、また遅過ぎる、少な過ぎるという批判もあれば、それは海外のみならず国内でもたくさんございますので、精いっぱい自主的にできるだけの判断をして協力しておるんだというふうに、私はいつも自分に言い聞かせておるところでございます。  それから、アメリカの大統領とのお話し合いのときには、私は平和的解決を強く望む、同時にまた、この間の中東五カ国訪問のときも、湾岸諸国の首脳にも平和的な解決を粘り強く行うべきであるということを強く要請しておりますし、ラマダン副首相に対しても私のこの考えは強く述べてあるところでございます。
  106. 井上義久

    ○井上(義)委員 事前協議があってしかるべきだ、事前に相談があってしかるべきだというのがこの記事の論点でございまして、その点について総理どうお考えになるかということをお聞きしているのですけれども。
  107. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、軍事行動はとってはならないという考え方で平和的な解決を強く望むと言っておりますから、そういったようなことにはならないと思いますし、また、事前協議というのは日米安保条約の運用上の問題としてよく出てくる言葉でございますけれども、そのようなことには、私はそういう特定の方の意見にどう答えるかということは、どうなんでしょう、いろんな意見がありますから、そういうことになってはいけないということをいつも申し上げておるのでありますから、そういう場面を想定してどうのこうの意見を述べるような場面をつくってはいけない、その前で食いとめなければならぬ、これが私の今話をしておる根本でございます。
  108. 井上義久

    ○井上(義)委員 これはまあ例として出したわけでございまして、それでは私自身として、武力衝突の前に、もし武力行使がある前にそういうアメリカ側から事前の報告なり連絡なり相談なりあってしかるべきだ、こう思うわけですけれども、それについて総理、もう一度お伺いしたいと思います。
  109. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 武力行使を前提としての御質問のようですが、私は武力行使はいけないという立場に立って、何とかそれを回避したいという願いで動いておりますし、それから最近の世界の動き、歴史の流れ、湾岸危機に対する対処の仕方も、武力衝突が前提で、しかも日本にそういったような相談などが来るとか来ないとかいうようなことは、ちょっと予断と憶測でもってお答えするには極めて適当でないテーマであると思いますし、私はあくまで武力行使は避けるべきである、平和的な解決をとことん探ってもらいたいということをいつも言い続けておりますから、今後ともこれを言い続けるものと思います。
  110. 井上義久

    ○井上(義)委員 どうもお答えになってないようですので……。  済みません、もう時間がございませんので、きょうちょっと労働大臣にお越しいただいておりますので、ひとついわゆる避難民の支援について。  日本がこの国際貢献ということを考えますときに、初めに自衛隊ありきということじゃなくていろいろな貢献の仕方があるんじゃないか。今回の避難民のいろいろな状況を聞きますと、要するに、皆さんそれぞれ大変な借金をしょって中東に出稼ぎに行っていらっしゃる。自分の国へ戻されても、その借金を返せないということでまたサウジアラビアなんかにUターンしている。これは、国際化時代を迎えて物、金だけじゃなくて人もいわゆるボーダーレスになってきている、そういうことの一つの象徴だろうと思うのですね。  そういう意味で、日本がこの避難民の救済ということを考えますときに、自国に連れて帰るだけでは根本的な解決にならないわけでございまして、そういう観点から私は、いろいろな問題はあろうかと思いますけれども、日本に特別枠を設けてこの避難民、いわゆる労働者を受け入れるということをやれば、私は世界的には大変なアピールになる。いろいろな困難はあると思いますけれども、象徴的な数でもいいわけですけれども、受け入れるということをこの際真剣に検討すべきじゃないか。これがやはり国際化時代、人、物、金、この三つが国境を越えて動くという時代に即応した日本対応、国際貢献のあり方の一つとして真剣に考えるべきじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  111. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 まず、恐縮でございますが、外国人労働者問題全体につきまして政府の基本方針というのがございまして、専門技術的な能力や外国人ならではの能力を有する外国人については可能な限り受け入れる方向で対処するが、いわゆる単純労働者については従来どおり十分慎重に対応するという方針がございます。  それで、この方針が出ました後も大変な、ここにまいりまして人手不足感等が広がっております。ただ、労働省としては、国内のミスマッチを解消するように今努力中でございますが、当然そういう状況の中で、外国人のいわゆる単純労働者についての議論というものもかなり出てまいりまして、ずっと以前からの検討事項がここにきて、この二年ぐらいまたさらに十分慎重な検討をいたしておるところでございますが、そういう状況の中にありましても、なかなか今の場合、この政府方針に従わざるを得ないというような情勢にございます。  もし必要でございましたら、細かな検討内容等ございますので、政府委員からただいま答弁させてもよろしいし、後ほどお届けしてもよろしいのでございますが、なかなかこういう事態であっても、この件に関しては満足な、先生の御期待に対しておこたえをすることができないという状況でございますので、どうか御理解をいただきたいと思います。
  112. 井上義久

    ○井上(義)委員 では終わります。
  113. 加藤紘一

    加藤委員長 次に、草川昭三君。
  114. 草川昭三

    草川委員 草川昭三です。  大蔵大臣に最初に御質問します。  今も井上委員質問にもありましたが、いわゆる我が国の中東貢献策、十億プラス上限十億として対応する、こういう御説明がございましたが、もう一度私の方から念を押す意味での質問をしたいと思うのですが、もし米側、多国籍軍隊から日本に対してこれ以上の要求があった場合に、我が国大蔵大臣対応はどうされるのかお答えを願いたい、こう思います。
  115. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 繰り返しになる部分は避けてお答えを申し上げたいと思いますけれども、既に委員も御承知のように、本委員会で何回か政府側から答弁を申し上げております実態、すなわち各国のこの問題についての協力、支援の実態を見ますとき、我が国の中東貢献策の内容というものはずば抜けて厚い、手厚いものになっております。そしてこの追加的な十億ドルについて、今後の財政事情等を考え、今その取り扱いに私自身苦慮しておるところでありまして、今、既に発表した貢献策のうち可能なものから速やかに実施に移しており、現在、これ以上の追加措置というものは全く考えておりません。
  116. 草川昭三

    草川委員 では大臣、もう結構です。  内閣法制局長官にお伺いをしたいと思います。  一昨日の公明党の山口那津男議員の質問で、我が国の行為が武力行使と一体化するかどうかの基準として物、場所、時間が示されたと思いますけれども、これは一般論としてお伺いするわけでありますが、我が国の船舶が米国等の軍港からサウジアラビアの軍港に物資を輸送した場合、一体化の判断基準になるのかどうか、この一点をまず最初にお伺いをしたい、こう思います。
  117. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  先日もお答え申し上げましたけれども、輸送協力などみずから武力行使を行わない活動につきまして、いわゆる憲法九条との関係で問題がある行為に該当するかどうか、こういう点につきましては、各国による武力の行使と一体となるような行動をしてこれを行うか否か、そこで判断すべきものだ、このように申し上げました。それは、これまでも国会でしばしば御答弁申し上げてきているところでございます。  ところで、各国による武力の行使と一体をなすような行動、これに該当するかどうかは、先日もまたお答えしたところでございますが、戦闘活動が行われている、あるいは行われようとしている地点と当該行動がされる場所との地理的関係、こういう意味で今先生は場所と言われたんだと思いますし、あるいは当該行動、要するに我が方の行動の具体的内容、あるいは各国のその武力行使のものとの関係の密接性とか、あるいは協力しようとする相手側の活動がどの程度であるかというふうな、そういう諸般の事情を総合的に勘案して個個に判断されるべきである、かように申し上げたところだと思います。  ところで、今先生の御質問にございます、米国等の軍港からサウジアラビアの軍港に物資を輸送する、こういう場合でございますが、輸送のために利用する施設が軍の施設であるということは、今申し述べましたような総合的に勘案されるべき諸事情、こういうものの一つであるというふうには考えております。
  118. 草川昭三

    草川委員 総合的に勘案すべき事柄の一つである、こういうようなお話がございましたので、非常に我々としても今後の議論の中で参考にさしていただきたい、こう思います。  そこで、実は私は今から問題提起をしたい一つの流れの前提を申し上げたいのですが、これまでの本委員会審議を聞いていると、あたかも武器、弾薬、兵員等あらゆるものの輸送協力が可能であるかのような政府答弁というのが、特に局長クラスの答弁で続いております。しかし、この国連平和協力法が成立を今はしていないわけですから、していない現在、現実は一体どうなっているのかというと、そういうようなことを背景にしながら、法律を先取りした形で相当今、これから私が問題提起をしたいような形で進んでいるのではないか。国会で積み上げてきた、今まで我々が積み上げてきたところの重要な平和原則というものを逸脱して、事実上軍事物資の輸送が既に政府中東貢献策の中で行われていると私は思うわけでございますので、今から具体的な問題を提起をし、また政府の見解をお伺いをしたい、こう思います。  それで、中東貢献策の中には空、海、こういうのがありますね。もちろん、将来陸というのがあるかもわかりませんけれども、まず空からいきます。  米国の貨物チャーター専門会社でエバグリーンという会社がありますが、ここは米国の本土からサウジアラビアに既に十三便飛ばしております。米国の本土といいましても東海岸、しかも飛んだところはアメリカ軍の軍港ですね。軍用空港、そこから既に十三便の飛行機が飛んでいるわけでありますが、どこの空港からサウジのどこへ飛んでいるのか、明らかにしていただきたい。積み荷の内容もあわせて答弁をしていただきたい。
  119. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 現在、我が国が行っております中東貢献策のうちのいわゆる輸送協力についての御質問でございますけれども、ただいま申されました空の部分につきましては、米国の東部からサウジの間で既に米国のエバグリーン社によるチャーターを行っております。  それで、これは米国東部からサウジアラビアに飛んでおりますけれども、私ども、これは後にお話が出るかと思いますが、船舶の場合も含めまして、万一の場合を考えた安全ということから、これ以上に詳しく運航計画等は申し上げないようにさせていただきたいと思います。  それから、積み荷につきましては、このエバグリーン社の積み荷につきましては、これは食糧あるいは医薬品といったものであるということでございます。
  120. 草川昭三

    草川委員 すべて点検、立ち会っておみえになりますか、十三便すべて。
  121. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 この積み荷の中身の確認につきましては、まず最初に、私ども、今回の中東貢献策のもとでの輸送協力においては、食糧、水、医薬品等の物資を輸送する、兵員、武器、弾薬は輸送しないという方針を、諸般の情勢を考えまして決定をいたしまして、それは公にもいたしておりますし、また、今回の場合、米国でございますが、輸送協力の要請があった国との間ではその点について十分に話をいたしまして、先方がそれを前提に協力を要請することを確認した上でまずいたしております。  それから、これらの輸送協力は、いずれにいたしましても民間の航空機ないし船舶をチャーターしてやることでございますから、その民間の航空機、船舶の安全の問題等がございますので、そういうものとの関係でどういう積み荷を積んでいるかということは、私どもも承知をいたしております。  それから、今御質問のございました立ち会いにつきましては、これは実は立ち会いは、その積み荷の揚げおろしが円滑にいくようにということを目的に立ち会いを必要に応じていたしております。
  122. 草川昭三

    草川委員 十三便すべて立ち会ったかどうか、中身を検討したかどうか。荷物を積むのが安全上スムーズにいくとかいかぬとかという管理の問題じゃないのですね。これは後で、後ほど過去の八月三十一日に行われました内閣委員会の内容を申し上げますが、点検をするということを我々に約束しているのです。  ですから私が言いたいのは、中身の点検をしておるのか、十三便全部。しているならいる、いないならいない、どちらかはっきりしてください。
  123. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 積み荷の確認につきましては、ただいま申し上げましたように、まず最初に相手国との間で十分の確認をいたしまして、それからその後、私どもは今回の場合、航空機であれば航空機に積み込むものについて承知を十分するようにいたしております。  立ち会いについては、先ほど申し上げましたように、その積み荷の円滑化という観点から必要に応じて立ち会いをいたしておるわけでございます。
  124. 草川昭三

    草川委員 だから、やっていないということですね。それからもう一回、東海岸の軍用空港から出たということだけ確認してください。
  125. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 出発地点につきましては御指摘のとおりでございます。
  126. 草川昭三

    草川委員 軍用空港から出たすべての荷物の点検、立ち会いはしていない、必要に応じて、これだけ明らかになったと思うのです。  今度は海へいきます。  中東貢献策の輸送協力として日本がチャーターをした「きいすぷれんだあ」一万一千三百六十八総トン、こういう船があります。外務省の説明によると、この船は十月十二日に横浜を出、十月の十四日釜山に行き、十月の十八日釜山を出港した。商業港である釜山港からサウジに向けて航行中と言っておりますが、釜山港のどこの埠頭でどういう荷物を積んだのか、積み荷の内容について明らかにしていただきたい、こう思います。
  127. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ただいまの「きいすぷれんだあ」につきましては、これは釜山の港を出ております。それから、それ以上の詳細は、先ほど申し上げましたのと同じような理由で控えさせていただきたいと思います。それから、この船の積み荷は建設用資材でございます。
  128. 草川昭三

    草川委員 釜山港から出たことは事実ですけれども、釜山港のどの埠頭から出たかということを明らかにしていただきたい。
  129. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 これは釜山港の米国の物資集積地からでございます。
  130. 草川昭三

    草川委員 第八埠頭でしょう。釜山港の、商港という説明をしておりますけれども、商港の反対側のナンバー八埠頭です。このナンバー八埠頭というのは、今お話がありましたように米軍専用埠頭、現在韓国軍に移管されたものではないでしょうか。で、米軍の監督官、スーパーバイザーと言っておるのですが、その方の監督のもとに積み荷が行われております。  積み荷の中身は、今建設用資材だと言っておりますが、具体的に建設用資材だという中身を御報告願いたい。
  131. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ただいまの「きいすぷれんだあ」の釜山からの出港に当たりましては、先ほどもちょっと申し上げましたようなその積み荷の揚げおろしとの関係で、我が国の在外公館の館員が立ち会っておりますことを一つまず申し上げておきたいと思います。  それから、積み荷は通常のいわゆる建設資材でございまして、金属の加工されたようなものというふうに承知をいたしております。
  132. 草川昭三

    草川委員 まず、この「きいすぷれんだあ」が釜山港から出るときの状況でありますけれども、外務省は当初商港だと言って私どもに説明をしたわけでありますが、いわゆる商港としての手続は一切いたしておりません。全部米軍専用埠頭から出、そして一般人の立ち入りは全部禁止、もちろん税関上のいろいろな手続なし、フリーで出ていったわけであります。しかも、その積み荷の中身は一般用建設資材と言っておりますが、それは事実に反します。  私の調査によりますと、いわゆる砂漠におけるヘリコプター基地用のヘリポートデッキを三千トン運んでおります。これは非常に私は重要な問題だと思うのですが、その点をお認めになるかならぬか、まずお答えを願いたい、こう思います。
  133. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 積み荷の性質は、私が先ほど申し上げたような建設用資材ということでございまして、その最終目的については、これは相手国のことでございます。
  134. 草川昭三

    草川委員 ヘリポートデッキというのはどういう材料か、私が今さら言うまでもありませんけれども、この資材は米国で開発をされたものでありまして、現地で組み立てができるいわゆるデッキ、ヘリコプターの発着の舞台になるわけであります。平均的には二十メーター四方のブロックになっておりまして、アルミの場合もありますけれども、大体ワンセット十トンということになります。  私は先ほど三千トンだということを言いましたから皆様方も御判断願うと思うのでありますけれども、かつて米軍はイランの人質作戦のときに人質救出に失敗をしたのは、ヘリコプターが砂漠に弱かった、ダウンウオッシュだということが言われているわけであります。どうしてもこのヘリデッキがないと、米軍のヘリ師団は具体的な展開行動ができないわけであります。これがなければヘリが何機いても作戦は実施できないということになるわけでありますから、サウジアラビアのダーランに多数のヘリが集結したままになっているのではないかと思うわけであります。  そこで、ちょっと途中になりますけれども、この船が一体どこへ行くかということですが、言うまでもございませんけれどもサウジアラビアへ行くわけであります。そこで、サウジアラビアのどこの港へ着くかということでございますけれども、今外務省は行き先については言わない、こう言っておりますので、ひとつダンマムという港がありますが、この港はどういうところか、あるいはそのダンマムから約三十キロ離れたところにダーランという町があります。ここは空軍基地があるところでありますけれども、米軍のヘリコプター部隊がたくさんいるところであります。この点について客観的な評価というものが必要だと思うので、防衛庁にダンマムというのはどういう港か、あるいはダーランという町がどのような状況になっておるのかお伺いをしたいと思います。
  135. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 お答え申し上げます。  私どもも、ただいま御指摘のダンマム、ダーランというのがどういう港であり、あるいは空軍基地であるかということの詳細は承知しておりません。ただし、ダンマムにつきましては、これは海軍基地として使われておりますが、あわせて商港の施設もあるというように理解をしております。ダーランにつきましては、これは空軍基地でありまして、米軍の空軍の一つの集積地と申しますか基地になっているというように伝えられているということも承知しております。  以上でございます。
  136. 草川昭三

    草川委員 そこで、もう一回今度は「きいすぷれんだあ」に戻りますけれども、これは十一月の五日にサウジのダンマムに着く予定だと言われておりますが、このダンマムに行くか行かぬかについても、外務省、もう一回申し上げますけれども発表できませんか。
  137. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、万一の場合を考えました安全という観点から、具体的なその航路その他については差し控えさせていただきたいと思います。
  138. 草川昭三

    草川委員 要するに、危険なところへ行かせないというのは、これは総理、口癖ですよ。だから我々も信用し、あるいは過去この問題について協力すべき点は協力してきたわけです。今でも非常に不安定だということを言っているでしょう。そういうところへ現実に行くわけですよ。だからあえて発表したくないという言い方です。危険なところへ現実に行っているのですよ。平和協力隊法の以前の話ですよ、我々が申し上げているのは。しかも私の調査では、このダーランにはアメリカのケンタッキー州のフォートキャンベル基地から第一〇一強襲ヘリコプター集団というのが配置をされている。それに八二空挺師団もいる。九月中旬には約三百機のヘリコプターが展開したと聞いております。  今日では、ヘリコプター集団というのは非常にいわゆる戦闘作戦の中心になっているわけですよ。特に砂漠のようなところで戦車が来るときにそれを急襲する、こういう形でヘリコプターというのは非常に重要な位置になるわけでありますが、この釜山で積み込まれたこれらの建設資材と称するのは、実は軍事物資じゃないかということを私は言いたいわけであります。先ほど来から私が聞いておりますように、少なくとも軍港というところから出ていく。今防衛庁は商港の面も一部あるという言い方をしておりますが、明らかに相手も軍港だ。軍港から軍港ということは、一応我我も相当な物の見方をしなければいけない、こう思うのですね。しかも、その私が申し上げた内容が事実だとするならば、まさしく軍事物資を運んだということになる。  そこで、この内閣委員会の議事録を紹介をさしていただきたいわけでございますけれども、八月三十一日内閣委員会、ここにもお見えになりますけれども、上原委員が今のようなことを聞いておみえになるわけです。いわゆる輸送物資の中で「等」ということがあるけれども、軍事物資というものは含まれない、これは確約できるか、こう聞いておるわけです。外務省の内田参事官、先生の御理解のとおりだ、だから軍事物資は入らぬということでしょう。しかし、まさしく二カ月おくれたところに、私の指摘で言えば、そのような建設資材ではないという名目だけれども、まさしく戦闘行動と一体のようなものを輸送されてみえる。  しかも上原さんが、その点検はどうやったのや、確認は、だれがどこでやるか、こういう質問をしてみえると、内田説明員は、運ばれる物資がどのようなものであるかについて点検することを確保する、こう言っているのです。「今何と言った。点検することは確保するつもり。だからだれがやるのかと聞いているんだ。日本国がやるのですか」と、こう聞いておみえになる。そうしたら内田説明員は、日本側、日本政府が当然いたすべきものだと考えておる、こういうことを言っておるわけです。  だから、少なくとも領事館の館員が釜山で中身を見ればわかるはずですよ。これはちょっとおかしいな、建設用資材じゃないじゃないの、ヘリのプラットホームじゃないの、ちょっと待てと言うべきなのに、それをサボったのか、それはいいというのか。まず積み荷の内容を明らかにしてくださいよ、積み荷の内容を。総理大臣、どう思われますか、この議論を聞いていて。――ちょっと待ってください、ちょっと待って。あなたの話じゃなくて、総括的な、総理自身が危ないところへはやらぬということを、このいわゆる中東貢献策の中でも繰り返し言ってみえるわけですよ、記者会見だって。現実には危ないところへ危ない物を運んでいっておるじゃないですか。この点どうですか。
  139. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私が八月の記者会見なんかで想定して申し上げたのは、現に戦闘が行われているような危険なところへ輸送をしていくというようなことは、業務計画のときに慎重に対応してそういうところには行かせない方針でありますということを申し上げましたが、私は現実に戦闘の行われている地域へ行かせるということはこれは考えない、この方針には変わりございません。
  140. 草川昭三

    草川委員 大体総理中東情勢というのはどの程度本当に御理解なすってみえるんでしょうね。現に火花が出る、大砲がぼんぼん撃ち合いをする、ドンパチをやっておるところへ行くばかはいないじゃないですか。そんな総理大臣だったらやめてくださいよ。問題は、ヘリというのが現実にいるわけですよ、アメリカのヘリというのが。そうでしょう。多国籍軍というのがいるわけ。そこへどういう攻撃が加わるかもわからない。現にヘリコプター部隊というのがいるわけですから。ところが、飛ぶことについて、砂漠だからプラットホームが欲しい、デッキが欲しい、だから、そこへデッキを持ってくるでしょう。その瞬間にドンパチが始まるかもわからぬでしょう。結果としてそれは知らなんだ、そのときには予見できなかった。そんなことで民間の商船をよくもチャーターしたものですね。  運輸大臣は民間のこの船をチャーターするときに、危険なことはさせませんよ、こういうことを言って船会社を説得しているんですよ。そうでしょう、運輸大臣。そういう危ないところへ行かせるというつもりでやったんじゃないでしょう。その点ちょっと確認してください。
  141. 大野明

    ○大野国務大臣 民間の船をチャーターするわけでございますから、組合等もございますので十分安全を確認した上でということでもって始めるということにいたしました。
  142. 草川昭三

    草川委員 だから、まあ今運輸大臣はそういうことを言っておみえになるわけですよ。事実、そういう経過なんです。我々も中東貢献策の輸送というものについては、まさかそのようなものを運ぶと思ってないんですよ。本当に、いわゆる国際連合の一つの決議、それを効果あらしめるための諸活動、しかも後方支援だ、こう思っておりますけれども、今私が指摘したヘリポートデッキというのは攻撃用ヘリと一体不可分のものなんです。武器の一部なんですよ、これは。到底一般建設資材ではないと思うのですね。だから中身を一回明らかにしてくださいよ。そうでないと協力隊の説明なんかできやせぬでしょう。今やっていることを私は聞いているんですから。二カ月前に内閣委員会でもきちっと約束されたことを私は申し上げているんだから。はっきりしてくださいよ、中身を。  外務大臣、もう局長の話はいいですから、外務大臣として、そういう中身を外務大臣は知っておみえになったのかどうか、私の今の指摘を大臣は知っておみえになったのかどうか、まずお聞きしたいと思います。知らなきゃ知らぬで結構です。一般建設用資材だと思っていたとおっしゃるなら、それでいいです。
  143. 中山正暉

    中山国務大臣 私どもとして、中身を詳細に全部確認を私自身がやっているわけではありませんから、建設用資材の搬送ということで報告を受けております。
  144. 草川昭三

    草川委員 だから多分大臣が、外務大臣がおっしゃったんだから、そのとおりだと思うのです、大臣は。しかし、現場ではそういう話があるでしょう。どうですか局長局長も知らないんです
  145. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 まず、その積み荷の問題でございますけれども、私最初にも申し上げたことでございますが、私どもの今回のその輸送協力につきましては、武器、弾薬、兵員を運ばないということは非常に明確にいたしております。それで、今回この「きいすぷれんだあ」で運ばれておりますものはそういう金属板でございまして、これは武器に当たるようなものではございません。  それからもう一つ、先ほど安全性のことで御指摘がございましたけれども、私は現在これが危ないところへ行っているということを申したわけではございませんので、万一の場合を考えてそういうことにさせていただいているということでございまして、この輸送協力にかかわります船舶、乗組員の方々の安全には十分な配慮をいたしておりますし、その観点から関係企業や海員組合の方々等とも御連絡をとりながら、安全対策には万全を期しておるわけでございます。
  146. 草川昭三

    草川委員 じゃ総理、こういう議論を私は提案したんだから、物資の中身について明らかにしろという指示をしてくださいよ。現在積んだ物資の中身を明らかにすればわかることだから、そういう指示をしてください。――いや、これはもう総理の決断ですよ。局長の問題じゃないですよ。簡単なんだから、知っているんだから。――これはロスタイムにしておってくださいよ、ちゃんと。
  147. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 積み荷の中身につきましては、これは私の方から先生に申し上げるまでもないと思いますけれども、その船舶の安全等の関係がございますので、これは船長それから乗組員の方々とも御了解の上で積み込んでおるものでございます。  それで、その根底にございます了解は、先ほど申し上げましたように武器弾薬を運ばないということでございます。
  148. 草川昭三

    草川委員 だから、武器弾薬ということを言ってないでしょうが。いわゆる新しい今日の軍事戦力の中での一体のそういうヘリデッキというのを運んでおるんだから、それはおかしいじゃないか、危ないじゃないかということを言っているわけですよ。だからそんなものを運ぶというのは安全性では危険なんでしょう、実際、それを知ったら。だから隠してやればいいというのですか、隠してやれば。今の話は、裏をとれば、隠してやればいいということ、安全じゃないということになる。  だから私どもは、第一次の中東貢献策のときに愛知県から八百台の四輪駆動が出た。そのときに、半分半分、二社のメーカーがあった。二社のメーカー出せと言ったときに、私自身は、人質の問題があるからあえてA社、B社でいこうと言ったんです。名前を聞くことはないと言ったんです、私は運輸委員会理事懇でも。  だから、その点では我々は了解するけれども、中身がヘリコプター用の、しかも三千トン、一つのプラットホームに約十トン、そういうものを大量に運ぶということが実際許されるのかどうか。水と薬と違うんですよ、これは、食糧とは。全然違うものを今のような答弁で済まされようと思ったら、私はこの委員会審議できぬですよ、これは。どうですか、具体的に明らかにしてくださいよ、内容を。内容を明らかにしてくださいよ、内容を。これは上原さんの質問だから……(発言する者あり)
  149. 加藤紘一

    加藤委員長 答弁をお願いします。
  150. 草川昭三

    草川委員 いや、中身を言えば済むことだよ、中身を言えば。
  151. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ただいま先生が御指摘になっております積み荷は、先ほども申し上げましたように、これは金属板でございます。  それで、私どもは武器弾薬は運ばないということでございまして、その場合の武器というのは一般的に申します武器でございます。すなわち、人を殺傷し、あるいは物を破壊するような意味での武器は運ばないということで今回の輸送協力をやっておるわけでございます。
  152. 草川昭三

    草川委員 単なる鉄板じゃないんです。私が言ったように組み立て式のプラットホームなんですよ。ヘリコプター用の一つの台なんです。それがないと砂を巻き込んでだめなんです。だからそれは軍事物資だ。ところが、上原先生の質問は、軍事物資については運ばぬという答弁を八月三十一日に外務省はやっているんですよ。証人がお見えになるんですよ。それはだめですよ。総理、答弁してくださいよ。こういう議論というのは全然だめですよ。――これはロスタイムにしておってくださいよ、ロスタイムに。時間がないんだから。――国会形骸化ですよ、これは。先生があれだけ確認しているんだから。上原先生がこうとっているんだから。――いや、だから、積み荷の内容を明らかにすれば解決するんですよ。
  153. 加藤紘一

    加藤委員長 草川君に申し上げます。  この積み荷の問題等につきましては、後刻また理事会で協議いたすことにいたします。  質疑を続行してください。草川君。
  154. 草川昭三

    草川委員 もう一つ。船がもう一隻あるのですね。  これは平戸丸という船が、これはロサンゼルスの方へ行って同じように運んでいるわけでありますが、これはロサンゼルスの北西部六十マイル、ヒュェネメ港というところから生活関連物資、建設資材を運んで出荷をしたという。  ところが、この港も当初外務省からの資料によると、商港だ、こういう答弁が出ておるわけですが、この港も、私どもが調べましたら、これは海軍の管理をする非常に厳しい港であるということがわかりました。そこで、この港は入り口も非常に狭い、海軍の許可なく入港できない。平戸丸はこの港へ入ったわけでありますけれども、これは九月の二十五日に横浜港を出まして、十月の十三日にこのヒュェネメ港、HUENEMEという名前の港へ入ったわけでありますけれども、入って、狭い港ですが、左側のいわゆる商港バース、ここへ船を着けて燃料だけ積み、反対側のいわゆる海軍の専用埠頭にシフトする、移動して、そこで膨大な資材というのを運んだ。  ところが、この資材の中身というのを我々がいろいろと調べてまいりますと、この資材というものの中身が、何と、生活関連ではなくて野戦用キャンプの材料だ、あるいはまたこのコンテナの中には、酸素アセチレンボンベ、溶接機あるいは野戦用テントのスタンチョン、これも現地の方々からいうと軍事物資だと言っているのです。  私は、現地の方に照会状を書きました。そうしたら現地のステベ、こう言うのですけれども、荷役業者は、当社は軍の船舶の明細についていかなる情報も提供するわけにいかぬというんです、私に。せっかく手紙をくれたけれども、当社は軍の船舶の明細に――軍の船舶という位置づけなんですよ、現地では。中東貢献策というのが相手にはそう受けとめられているんです。そこへ日本の船が行くんです。危ないところへやらせませんよと言って説得をする。しかし、相手側にしてみれば軍だという位置づけで、我々の同胞、仲間というのは今中東貢職やっておみえになるんですよ。大変御苦労な話なんです。我々はそういう方々に安心させる義務があるわけでしょう。そして本当に中東の和平を一日も早くするという立場があるわけです。だから正直な情報を出せということを私は言いたいわけです。正直な内容を明らかにして、私が一番最初に申し上げたように、協力すべきは協力する、だめなものはだめだ、こういうことをはっきりするということが総理のポリシーだと私は思うんですよ。  総理がこの中東貢献策の最初に御提案なすった態度というのは、私はそれなりに立派だと思うのです。その信念を通さぬからこういうことになってくるんですよ、こういうことに。しかも局長あたりが、米側の相当強い要望があると思う、だからなるべく幅広く幅広く解釈しようとしておるでしょう、外務省の局長というのは。だから大臣との答弁も食い違うじゃないですか、現実に、この委員会で。だから、正しい情報を我々が理解をするならば、少なくとも事前に、そういうことがないことが私はできると思うのです。だから、協力すべき点とできない点、明確にするということが真の国際協力であり、国連協力であり、中東和平に対する日本の私は信念だと思うのです。総理がぐらついているから、基本的な哲学がないからこういうことになるんですよ。どうですか、総理総理、はっきりしてくださいよ。総理が立派だと言う皆さんがたくさんいるんだから、答弁しなさいよ、しっかりと。
  155. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 基本的な考え方はこの法案の第一にきちっと書いてあるわけでありまして、許されない行為に対してやらないということでありますし、法案の前の態度は、貢献策をつくるときに何の仕組みも法律もありませんでしたから、いろいろ確認書を交わして、お願いをして、厳しい中で御協力を願う民間の皆さんにお願いをしてやっていただいたということでありまして、きちっとした考え方に基づいてやっておるつもりであります。
  156. 草川昭三

    草川委員 総理は非常にいいことを言われました。取り決めをしていると。細目が決められる予定になっておるということをこの内閣委員会でも言っているんです。だから、細目を出してください。どういう取り決めをしたのか。最初の仕事ですから、これは。今総理がまさしく言われたように、最初は何もなかったのです。だから平和憲法の枠内で細目を取り決めて運営をする予定になっておるということを大森説明員、法制局の部長も言っているのです、この内閣委員会、八月三十一日に。そのとおり細目を出してください。細目を出せばいいでしょう。我々も納得して、総理、協力しましょうということを言いますから、細目を出してくださいよ、言われたとおりに。取り決めの細目を出すことになっているんだから。
  157. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 中東貢献策の実施のその後の細目につきましては、この委員会の御審議等を通じましてできるだけの御説明をいたしておりますし、また今後もそうしていきたいと思っております。  いずれにいたしましても、今回の中東貢献策は、先生御指摘の輸送協力でございますれば、その関係船舶の関係者の方々の御協力を得なければならないことでございますので、私どももその点には十分に留意をしながらこれまでもやってきておりますし、今後もそうしていきたいというふうに考えております。
  158. 草川昭三

    草川委員 抽象的なことを言ってもらっては困るのですよ、時間がないですから。何回か言いますが、委員長もよく聞いておってください。八月三十一日のときに大森説明員は、「先般閣議了解の上発表されました貢献策が予定しているものは、もちろん憲法九条が禁止している武力の行使ないしはそれと一体となる行為には当たらない、逆に言いますと、そういう憲法の枠内で具体的な細目が決められる予定になっているというふうに私どもは理解している」、こう言っているのですよ。だからその取り決めの内容があるわけです。それで日本政府の代表は、外務省が現地の方々といろいろな取り決めをやってみえるから、その内容を明らかにしてください、取り決めの方法も明らかにしてください。それで話がうまくいくと思うのです。それで我々が納得するか、皆さん方の方がいいのか。  そういうものが何にもなくて、情報だけ外務省持っているのでしょう。我々は何にも情報がないのでしょう。そういう中で、向こうだけの判断で、憲法の解釈をここまでの範囲内ならいいとか悪いとかというような話を出されちゃかなわぬですよ。我々の参加する場所がない、情報がないんだから。そういう少なくとも基本的な取り決めは、こういう取り決めで中東貢献策の輸送をやっておるということを言ってくださいよ、あるんだから。そして物資の内容については、ここまでは言えますが、ここまでは言えません。私どもも協力をしましょう、反対なら反対と申し上げます、そのときに。それが必要じゃないでしょうか。総理、どうですか。
  159. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 現在の中東貢献策の中で特に輸送協力について申し上げますれば、これは八月二十九日の閣議了解にもございますけれども、我が国政府が借り上げた民間の航空機、船舶による輸送協力を行って、この湾岸の平和と安定の回復のために活動している各国に協力をするということを内容にしてやっておるわけでございます。その際各国からこの輸送協力について要請がありました場合には、先ほど申し上げましたように武器、弾薬、兵員についての輸送を行わないという点を含めまして十分確認をいたしました上で、さらに今度はその民間の航空機会社あるいは船舶会社との借り上げ契約において、それを行うに当たって、その安全の問題その他についても十分な確認をしておるわけでございます。
  160. 草川昭三

    草川委員 私は、その前段の方はいいんです、それはわかっているから。  問題は、米側とどういう荷物を運ぶかという細目の取り決めを明らかにしていただきたい。そしてこの船は内容をどういうものを運んでおるのか、外務省はペーパーを持っているんですから言えばいいじゃないですか。この鉄板はどうかということを皆さんが御判断になれば、単なる鉄板なのかあるいはヘリポート用のデッキなのか、ヘリポート用のデッキならば、私は一体のものになる、そういうおそれがあるということを言っておる。そんなことは関係ございませんよと言うなら言ったらどうですか。そういう一体の問題があるから私はここで問題提起をしているんですよ。外務大臣どうですか。もう局長は結構ですから、外務大臣に答弁をお願いします。
  161. 中山正暉

    中山国務大臣 今委員御指摘の輸送物質については、武器、弾薬、兵員、このようなものは一切輸送しないというふうに、私は自分でもそういうふうに外務省としての考え方を持っております。
  162. 草川昭三

    草川委員 だからもう一回申し上げますが、それは結構なんですよ、それは何回か聞いてますから。  しかし、私が例えば今問題提起しましたね。それは今日の中東情勢というところへ置きかえてみた場合、それは今はドンパチやってませんよ、しかし、いつあるかわからない、そこへもっていって、その行動によって一つの行動が行われたとするならば、それは一体行動ではないか、そういう判断を事前に我々この議会に示しながら、今こういうことをやっておりますよと、特に私は問題提起をしているわけですから、心配するななら心配するな、そんなことをやっておらないならやっておらないということをおっしゃるべきではないでしょうか。その細目を明らかにしてもらいたい。そういう取り決めがあるんだ。これは私が言うのでなくて、政府が内閣委員会で言ってみえるのですから。だから私は、内閣委員会の議事録を見てフォローアップしておるだけの話なんです。どうですか。
  163. 中山正暉

    中山国務大臣 この中身の問題というよりも、このような協力をなぜやってやるかといえば、今委員からも御指摘のございましたように、一切戦闘は行われていない、政府がやっていることはこの安保理の決議の六百六十あるいは六百六十一、こういうものを踏まえてこの地域に展開している多国籍軍というものに対する国連の決議の実効性を確保するために日本がやっている行動の一つである、私はそのようにこの委員会でも申し上げておりますが、その中の内容というものにつきましては、例えばセメントであるとか水であるとかいろいろなものが、これが軍用に使われていれば、それは軍需物資という範囲に入ると思います、医薬品も含めて。それが実際戦闘に使う弾丸とか兵器とかあるいは兵員というものであれば、それは直接武力の行使と一体となる、こういう認識ができるんではなかろうか、私はそのように判断をいたしておるわけでございます。
  164. 草川昭三

    草川委員 もう時間が来ましたので非常に残念ですが、だから私は最初に法制局長官に、軍港から軍港という一つの一般論だけれどもというその説明を求めたわけですよ。今の大臣の御意見は全然私の意見とはすれ違っておるわけなんで、しかし何といっても内閣委員会でせっかく政府がこういうようにしたい、心配するなと言って現実に中東貢献策が行われている。そして、我々の知らないところでいろいろな取り決めも行われている。そして、積み荷の内容も外務省は知っておみえになる。しかし、それをここで発表しない。私はこういうことが繰り返されるならば、これはいつか来た道を踏むのではないだろうかということになっちゃうんですよ。そういうことのないために我我は歯どめをかけるこういう議論をしているんですよ。大臣、何か答弁してください。
  165. 中山正暉

    中山国務大臣 今お尋ねの点につきましては、この内容等について国会というものに対して関係者の立場を十分配慮しながらも、できる限りの報告をいたすべきものである、私はそのように認識をしております。
  166. 草川昭三

    草川委員 それを要望して終わります。
  167. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて井上君、草川君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  168. 中野寛成

    中野委員 ただいまの質問の中でも政府、とりわけ総理の毅然たる姿勢が望まれておりました。若干方向は、地点は違いますけれども、まさにその原点に返って私は総理初め関係大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  憲法の精神が今大きく問われているわけであります。なすべきこととなしてはならないことにけじめをつけることが肝心であります。なすべきことをしないことも、なすべきでないことをすることも憲法違反であります。なすべきではないことにつきましては、先般来、各同僚議員からの質問が重ねられておりますから、私は、むしろきょうはなさなければならないことを中心にお尋ねをしたい、こう思うのであります。  まず、この法案の第一条に日本国憲法の精神、とりわけ憲法前文の精神にのっとってこの法案がつくられるものであることを私は明確にされる、そのことを提案したいと思います。  すなわち、たびたび当委員会等でも触れられておりますが、日本国憲法前文によれば、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」単に決意したということではなくて、諸国民の信頼に足る公正と信義を確立していかなければならないことは言うまでもないと思うのであります。  また、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、」――ところが、「専制と隷従、圧迫と偏狭」をまさに自国民や他国民に押しつけている現象が今起こっているわけであります。これを除去する努力によって、日本は「名誉ある地位」を国際社会において占めなければなりません。また、その後、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、」と前文は述べております。「自国のことのみに専念して」、ややもすると我が国はその自国のことのみに専念して、他国を無視している、軽視しているという批判があることを、我々は逆に憲法の精神に照らして反省しなければならないと思うのであります。  これらの決意だけではなくて、具体的な行動を通じて「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」「達成することを誓ふ。」のでありますから、達成する行動を起こさなければならない。達成するための貢献、役割分担を積極的に担い、行動しなければならない、こういうふうに思うのであります。  同じように憲法九条には「日本国民は、」その次の言葉が意外に飛ばされて解釈をしていると思うのでありますが、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、」「誠実に希求」する、すなわち「正義と秩序を基調とする国際平和を」、国際社会をつくる努力をしなければならないわけでありまして、単に日本戦争を放棄すればいいというものではないわけであります。言うまでもなく九十八条には諸外国との約束を誠実に遵守することもまた重ねて記載をされているわけであります。  言うならば、平和を語り、国際貢献をしようとする法律であるならば、これらまさに憲法の精神を踏まえてこの法律がつくられることを明確に述べるということが私は大切だろうと思います。憲法の精神に沿わない法律などというのは最初からあり得ないとおっしゃるかもしれませんが、しかしそういう形式論ではなくて、これら日本国民気持ちを明確にあらわすためにはそれらのこともまたあわせて必要であると思いますが、いかがでしょうか。
  169. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘をいただいた憲法の考え方は、私もかねてそのとおりだと考えておりますし、そのことは繰り返し本会議の答弁を初めこの委員会でも申し上げ続けてきたつもりでございますが、日本国憲法の前文に書いてありますことは、やはり、わかりやすく言うと、ここに正義に反するものがあるというときには、これが平和の破壊者であるというときには、国際社会と一緒になってできるだけのことをしていかなきゃならぬ、見て見ぬふりをしておってはいけないということが簡単に言うと書いてある、私もそのように受けとめております。  そうして、日本国憲法が掲げておる平和の理念の大前提になる信義と公正をきちっと確保している世界をつくっていくための努力というものも、また当然なさなければならぬことでありまして、自国のことのみに専念してはいけない、他国のことを顧みないのはいけないという、まさに御指摘になったとおりのことも憲法の前文には明らかにうたってあるわけでありますから、日本だけが小ぢんまりとつじつまを合わせて、経済的に豊かになりさえすればそれでいいというところにこもっておることにいろいろな問題があり批判があると私は考えております。  このような豊かな日本の国の生活ができるようになったことも、世界の国々との間の相互依存関係、それで世界が平和な環境に包まれておったということ、それに帰するわけでありますから、そういったことに対してなし得る限りの努力をいろいろ考えながら積極的に努力をしていくということが大切だという点は、委員の御指摘の方向と全く同じ考えを持っております。
  170. 中野寛成

    中野委員 この法案の第一条にその精神を明確にうたうことを提言しましたが、いかがでしょうか。
  171. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 第一条、そして第三条に「この法律は、国際の平和及び安全の維持のために」云々、以下こう書いてありますけれども、まさにそういうことでございまして、国際の平和をきちっと守ろうという国連の決議を受けた行動でございます。国連憲章というものは、先ほどいろいろお示しになった日本国憲法の前文と同じように、戦勝国が戦争、二度にわたったのを反省をして、「善良な隣人として互に平和に生活し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、」て、こう書いてあるわけでありまして、目指す方向、大きな方向は同じでありますから、今度出しました法律の目的に書いてあるのは、こういった趣旨に従った方向性の平和政策をやっていく基盤の法律の整備である、こう私どもは受けとめております。
  172. 中野寛成

    中野委員 私は、この日本国憲法の規定にのっとりということをもちろん明確にお書きになった方が、国民皆さんもわかりやすい、諸外国の皆さんもわかりやすい。またあわせまして、憲法九条には一つの、例えば自衛隊等が行動する場合の歯どめがあるわけであります。「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」これがまさに歯どめであります。やらなければいけないことと、やってはならないことに対する歯どめと、それらのことをこの憲法の精神にのっとってこの法律は制定され運用されるのであるということを明確にしたらいかがであるか、こう申し上げているわけであります。
  173. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私の判断を申し上げますが、第二条に書いてあります「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」というのは、日本国憲法の今まさにおっしゃった一番大切な平和主義の理念のところ、憲法九条に書いてある文言をそのままここに持ってきて、それであってはならないということを全体にかかる大枠として設置しておるものだと思いますが、専門家じゃありませんので、もし法律的な解釈等必要でしたら法制局長官に答えさせますが。
  174. 中野寛成

    中野委員 時間もありませんからこれ以上申し上げませんが、日本国憲法にのっとりこれこれという文言を、むしろもうはっきりと明確にお入れになったらいかがですかと申し上げてきたわけであります。  重ねて申し上げることもいかがかと思いますから、次の質問に移らせていただきます。  国連中心主義という言葉がよく使われます。これはどの党も否定をいたしません。そこで、先般来この国連加盟の際に日本が留保条件をつけたかどうかという議論がありました。私は、実はこの議論は余り意味がある議論だとは思わないのであります。  ちなみにお尋ねいたしますが、現在の国連加盟国で留保条件をつけて加盟した国はありますか。
  175. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  我が国が留保したかどうかという点につきましては、既にいろいろ議論がございまして、この点につきましては重複を避けまして、ただ私どもとしては、我が国としては何らかの留保を付したというふうには考えておりませんということをこれまでも御答弁申し上げているところでございます。  そこで、ただいまお尋ねの、ほかの国が留保しているかどうかという点につきましては、国連事務局の方にかつて照会したことがございます。その答えによりますと、いかなる国も関連憲章につきまして留保を行うことはできない、また留保を行った国もないというのが国連事務局の確立した考えであるというお返事に接しております。
  176. 中野寛成

    中野委員 もともと国連そのものが留保条件をつける国があるなどとは想定をしていないわけでありまして、我が国が留保条件をつけたかつけなかったかの議論は本来意味のない議論であろうと思います。ゆえに、我々は当然のことながら、国連中心主義という限りは国連の決定に従って我が国の最大限のことをしなければなりません。もちろんそれぞれの国は国力、経済力、法制度、歴史、宗教等々いろいろな事情を持っているわけでありますから、それらに基づいて、例えば国連憲章四十三条に基づく特別協定を結ぶなど、一つの限界を示す機会もまた一方で与えられているというふうに解釈すべきであろう、こう思うわけであります。  しかしその際も、日本の場合に、現在日本国際社会における地位と役割というものは極めて大きいわけでありますから、その留保条件的なものや特別協定を結ぶ際に、これはできませんというようなことはまさに最小限度にとどめなければいけない、やむを得ないものに限定しなければならない。言うならば、我々は、憲法の精神とそして国連中心主義ということを考えますときに、ここで何ができないかを論ずることも大切でありますが、むしろ何をしなければならないか、何ができるかを最大限に判断をして論議をし、国際社会に貢献するという姿勢が必要だと思うのであります。そのことについて総理の御所見をお聞きいたします。
  177. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 できないことばかりを考えずにできることを考えろという御指摘には、全く私はそのとおりであろうと考えますし、また今回法律を用意しまして、どの程度のことができるだろうかということを第三条にいろいろ考慮して列挙しました問題も、またこういったことをやるための法律や制度、体制の仕組みが全然できていなかったということを反省をして、協力をし、国連中心主義の国らしい協力は何ができるだろうか、これを決めようと思って法律提出もしたわけでございます。
  178. 中野寛成

    中野委員 そこで、国連における我が国の役割はもう既に大きいわけでありますが、日本は将来国連安保理の常任理事国になることの努力をする、その意思をお持ちでありますか。また、そのときにつけられる条件は何でありますか。
  179. 中山正暉

    中山国務大臣 政府といたしましては、ただいままで六回、安保理の理事国として務めてまいりました。最近、この新しい国際情勢の中で幾つかの国の外務大臣からは、日本は常任理事国になるべきだ、そしてもっと大きな、国際社会に政治的パワーとして協力する責任があるのじゃないかという御意見を聞いておりまして、政府といたしましては、いわゆる一日も早い機会に常任理事国になるような可能性を求めて努力をしなければならないと考えておりますが、一方、常任理事国になりますと理事国としての責任、こういうものが当然ついてくることは論をまたない、私はそのように考えております。
  180. 中野寛成

    中野委員 その際に、当然、常任理事国をふやすとか入れかえるとかというときには、国連憲章がもちろん改正されなければなりません。その際に、例えば四十三条の改正等、場合によっては求めなければならないかもしれません。日本が常任理事国となる場合に国際社会から、国連加盟国から求められる日本に対する条件、そして日本が求められるであろう条件、これはいろいろと言われていると思いますね。ある意味では、極端な国は、軍事的な役割も果たしてもらわなければならぬという国もあるでしょう。しかし、日本国憲法からいってそれはできないという論がありましょう。また、理解をしてもらえない国からは、憲法は変えればいいじゃないかという論もあるかもしれません。仮定の話のように一見見えますけれども、これは決して仮定の話ではなくて、むしろ既に日本国として、今外務大臣おっしゃられたように、その意思を折に触れて出しておられると思うのでありますから、そういう意味では、これから想定されるそれら課題についてどういうふうな姿勢を持って政府としては臨まれますか。
  181. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 私の方からまず最初に申し上げます。  国連安全保障理事会の任務と申しますのは、特に国際の平和及び安全の維持に関して主要な責任を持つということでございます。したがいまして、安全保障理事会の常任理事国になりますならば、特にこの国際の平和及び安全の維持の面につきまして、常任理事国として積極的な貢献をしていかなければいけないということかと思います。  私たちが今鋭意検討いたしておりますのは、これまでの経済分野あるいは資金的な面での協力に限らず、人の派遣を通じてあるいは物資協力等を通じまして、国際の平和及び安全の維持のために日本としてもできるだけ貢献する、そのための実績をつくっていくということがまず大事であるということで対応しているところでございます。
  182. 中野寛成

    中野委員 国際の平和と安全に貢献をしなければならない。しかし、平和と安全に貢献するためには、ある意味では、日本国憲法の持つ歯どめが諸外国の期待とは残念ながら裏腹の関係になるということがあり得ると思います。そのことを解消するためにはよほどの努力が必要であろうと思います。これはまさに政治家の決断、決して憲法を改正しろという決断じゃないですよ、政治家としてのよほどの努力というものが望まれるであろうと思うのでありますが、そのことについてはいかがお考えですか。総理でも外務大臣でも結構です。
  183. 中山正暉

    中山国務大臣 当然、常任理事国になるということになりますと軍事参謀委員会、この問題が憲章の中にはうたわれております。そういう立場に立つときに、我々が今、現憲法下で、この憲法を遵守するという姿勢のもとで、例えば、例えばのことでございますけれども、特別協定などというような問題が出てくるといった場合には、日本国の憲法九十八条の規定によって、国際的な条約の遵守並びに確立された国際法規の規約を遵守するという規定が憲法に決められておりますが、一方では、憲法九十九条では、国務大臣国会議員は憲法を遵守する義務がある、そういうことで、九条がございますから、そこで現憲法ではきちっとした歯どめがかかっておる、こういう認識の中に立って、私どもはこれからどういうふうな考え方国連における日本のあり方を求めていくかということについて真剣に検討しなければならないことであろうと考えております。
  184. 中野寛成

    中野委員 憲法でどういうことが決められているという形式論をお尋ねしたのではありません。どういうことを、例えば、国際の平和と安全のために日本が貢献する。普通ですと、この四十三条なども余計な条件つけないでそのまま日本はやってくれよという要求が、常任理事国ということになれば出てくるでしょう。これらのことをクリアする、クリアといいますか国際社会の中で理解してもらう、日本ができることとできないことを理解してもらうためにどういう努力が必要かということをお尋ねをしたのであります。
  185. 中山正暉

    中山国務大臣 特別協定の問題に具体的に入ってまいったときに、援助あるいは便益の提供というようなことが別にございます。今委員御指摘のように、憲法の中で何ができるか、何ができないかということについては、政府としては積極的に日本の基本的な、国の憲法の問題、これを説明する必要があろう、このように考えております。
  186. 中野寛成

    中野委員 これ以上ちょっと深くお尋ねするのは避けて、次の質問に行きます。また別の質問で関連したことをお尋ねをいたします。  ある意味では、現在提案をされておりますこの国連平和協力法もその一つの布石であるというとらまえ方があるだろうと思うのであります。しかし、それらも含めまして、我々はやはりもっと国際社会日本が具体的に目に見える形で平和を構築するために努力をしなければなりません。その方法についてもっと日本は工夫をした方がいいのではないだろうかという感じがいたしておるのであります。  ちなみに、九月五日から七日まで社会主義インター軍縮特別大会が開かれました。社会党の土井委員長はこれに御出席になりまして、演説をなさったわけであります。その運営委員会的な会合の席で、これはフィンランドで行われましたが、私ども日本社会党イラクのバース党とは長年友党関係にありました、ゆえに人脈もあります、社会主義インター加盟の各国の首脳の皆さんと、日本社会党お世話いたしますが、一緒にイラクへ行ってそして平和について話し合ったらいかがでしょうかと提案をされたそうであります。我が党の同席をいたしました代表からそういうことを聞きました。  私は、そこまでおっしゃるのですからもっと大いにやっていただきたいとは思いますが、そのときには、少々他の国々の皆さんは鼻白んでしまったということで、同意する方がいらっしゃらなかった、こういうことでありますが、しかし、私どもはあらゆる機会にあらゆる発想がこの場合必要だろうというふうに思うのであります。  すなわち、例えば紛争が発生をいたしますと、拡大防止のためにまず抑止力を働かさなければなりません。これにつきましては、米軍を初めとする多国籍軍の抑止力のおかげで今平和が保たれて、平和といいますか小康状態が保たれているわけであります。これを非難する資格は我が国にはないと思います。むしろ、そのおかげで平和的解決を望むためのいろいろな努力がなし得るわけであります。言うまでもなく、この紛争が解決した後も便乗的に米軍が居座るなどということは許されませんけれども、しかしながら、少なくとも必要なことは、やはりそれを評価する、そして協力をするということが必要であると思うのです。ややもするとここが混同されてしまっているという部分があると思うのでありまして、やはり国民皆さんに正しくそれは理解していただく必要があると思います。  それから、国連決議が行われましょう。調停、仲裁が行われましょう。停戦監視がありましょう。また、現在行われております経済制裁、そして経済制裁を補うために、それによって被害を受ける国々に少しでも豊かな国が経済協力をすることも必要でありましょう。これらのことにつきまして、私は、主要国首脳または外務大臣による役割分担のための国際会議を提唱されたらいかがであろうか。例えば、国連の決議がありました。もちろん国連を舞台にしていろいろな協議がなされていると思います。そしてまた、米ソの首脳会談も開かれました。  私は、日本はこういう国情であります、そして日本はこういう役割を果たさせていただきます、米軍は抑止力を働かせる、場合によってはフランスやソビエトがこの仲裁の役割を担うかもしれません、場合によってはその仲裁や調停の役割を果たした国が、後で、いや、あの国は一番平和的な解決に努力したとノーベル賞をもらったりということにもなるのかもしれませんが、しかし、そこに至るまでに抑止力を働かせた国の役割も決して忘れてはなりませんし、経済制裁に参加し、またそれをサポートするための経済協力をやったことも、決しておろそかであってはなりません。その総合力が平和をつくるということを忘れてはならぬと思うのであります。  そういう意味で私は、しかしその場合に日本がいろいろな役割を果たしてもそれが正しく評価されないのは、お互いの国々の間の協議と、そしてそれが明らかにされた結果役割分担、そういうものがもっとトータルの姿として明らかにされることによって世界人たちが納得をしてくださるということになるのではないかと思うのであります。何か最近は日本がアメリカの言うことばかり聞いている、アメリカに従って、そしてその言葉を信じている人までいるということでは、私は我が国民の血税を使っているときに哀れであると思います。これらのことについていかがお考えでしょう。
  187. 中山正暉

    中山国務大臣 当然、現在のイラク国連社会における一つの問題解決を求めて、フランスにしてもソ連にしても、いろいろと関係諸国の外交関係が活発に動いていることは御指摘のとおりであります。実は日本も独自に、先日松永前駐米大使をイランに私のかわりに出しておりまして、イランとのいろいろな情報の交換も行っておりますし、けさ和田外務審議官をモスクワに派遣をし、ソ連政府とも協議をさせる手はずを整えておりますし、さらにその後ヨーロッパの諸国を訪問させて、日本としてどのようなことをこれからこの和平の構築のためにやれるかということに現在努力をしておるということをこの機会に明らかにさせていただきたいと思います。
  188. 中野寛成

    中野委員 私は、今当然日本政府としてもいろいろな努力をされていることは評価をいたしますが、しかしその結果として、例えばアメリカ政府は、ホワイトハウスは評価をしてもアメリカ議会はなかなか理解してもらえないなど、やはり全世界国民的レベルにおいての努力というものが必要であろうと思うのであります。そのためにはマスコミの皆さんの御協力も必要でありましょう。そういうことのためにやはりマスコミの皆さん報道してくださる、また世界の議会また国民皆さんが広く理解していただけるための手法をいろいろ工夫するということも一つの外交戦略として必要ではありませんかと申し上げたいわけでありますが、いかがでしょうか。
  189. 中山正暉

    中山国務大臣 委員のお説のとおりであると私は考えております。
  190. 中野寛成

    中野委員 ひとつ具体的な行動を外務大臣なお一層、やはり日本が果たしている役割が正しく評価される、また逆に言えば、何か起こったときにはしかるべき主要国の人たちが集まって、我が国はこれをしましょう、それでそれを果たせば評価をされるというけじめというものが必要だろうと思うのです。  何か国際社会でうやむやになるというのは一番困るわけでございまして、例えばこの方は先般医療班の先遣隊で行かれた田村さんですか、新聞の「論壇」に投書をされておりますが、この方は自衛隊派遣反対の方ですけれども、しかしそれにもかかわらず、このヨルダンの難民委員会に各国から寄せられた百六十万ドル、これでバスや飛行機のチャーター料金としたわけですね。そのうち百万ドルは日本政府国連機関を介して寄附したのだが、この事実も余り知られていない。これではもうお金を出した国民は何とも歯がゆいばかりなわけであります。具体的な日本の貢献がやはり明確に知られるということが必要なのでありまして、それらのことについての具体的な行動について、外務大臣何かお考えありませんか。
  191. 中山正暉

    中山国務大臣 今、先日サウジに出ていただいた先生の投書の御紹介がございました。私もそれは拝見をいたしておりまして、やはりこれから目に見えた平和への努力というものを国際社会日本がやっていかなければ、日本は一体何をしているのかという批判は、国民よりもむしろ外国から日本に対して厳しくやってくる、こういうことで、今回のこの法案をお願いした気持ちというものは、国際社会に我々の国が憲法の許す範囲で平和の構築のために努力をしていくための一つの大きないしぶみにするべきである、こういうことで今回法案の御審議をお願いしているようなことでございます。
  192. 中野寛成

    中野委員 法案審議は結構なんですが、もう少し外交舞台において、国際舞台においての具体的な努力の方法についてお聞きをしたわけであります。しかし、これもなお一層の御努力を要請をして、次の質問に移りたいと思います。  さて、いよいよこの法案についてお尋ねをするのですが、この国連平和協力法案、この前提となるものは、現在の中東問題に対する派遣のこともありますけれども、今後予想される国際紛争を、いろいろあるであろう、すなわち米ソによる二極冷戦構造の終結、それに伴う局地紛争の多発ということも想定をしておられるだろう、こう思うのでありますが、ならばその今後予想される、危惧される国際紛争とはいかなるところで今危惧されているか、またどういうものが今後想定をされるかということについてお尋ねをいたします。
  193. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  今回の紛争では御承知のとおり米ソの協調関係が見られるわけでありますが、米ソ関係の変化いかんにかかわらず、各地で御指摘のとおり今後とも紛争があり得ると我々は考えております。  時間の関係もありますので具体的な例を一々申し上げるのは差し控えさせていただきますけれども、先般公表いたしました平成二年版の外交青書におきましても、十カ所ほど指摘をさせていただいております。これはもちろん紛争と申しましても、我が国との関係の度合いとかあるいは紛争の状況のぐあいとかさまざまでございますが、名称だけ申し上げますと、近くから言えば、紛争とは今やもう言えない状況でありますが、朝鮮半島の安定の問題もございます。カンボジアの問題もございます。さらにカシミール紛争の問題もございます。さらに、イラクの問題もございますし、レバノンの問題もございます。中東和平の問題もございます。さらに、南部アフリカ問題もございますし、あるいは中米においてもまだエルサルバドルの問題等が残っております。  それ以外にも、これからいろいろ指摘されております点は、東欧あるいはソ連の周辺部分の問題あるいはエチオピアの問題、多々紛争がございます。状況は、今申し上げましたようにそれぞれによって緊張の度合いあるいは政治解決の見通し等、差はございます。ただ、東西関係の変化にもかかわらずこうした紛争の種が残っているという点が、残念ながらこれからの国際情勢だと思っております。
  194. 中野寛成

    中野委員 実に多くのいわゆる危惧される問題があるわけであります。もちろんその中で、よく言われますように、日本にとって一番その貢献が期待されるであろうことがカンボジアの問題であると思います。これらについて深く論ずるということはできませんけれども、一応その仲介の場を日本が提供したこともございました。和平交渉の場を提供したこともございました。  今出されておりますこの法案とカンボジア問題との関係、これは我々の間でも、今回の法案中東和平には役に立たぬだろう、間に合わぬだろう、政府想定して考えるとすれば、むしろカンボジアではないかという話は我々の間で私語としてよくあるわけであります。これらのことにつきまして政府はどういう想定をされますか。
  195. 中山正暉

    中山国務大臣 六月の初旬に東京におきましてカンボジア和平会議、四派の会合をいたしましたが、両派の代表であるシアヌーク殿下とフン・セン氏の間で署名が行われて、SNCを早急に設置するということで、その員数も六名、六名ということで合意に達した。しかしその後ジャカルタでの会談等がございましたが、いろいろな各国の努力によりまして、国連のP5の話し合いもあり、このカンボジア和平会議は、ただいま年末に向けて和平が実現するように関係各国が大変な努力をやっている最中でございまして、私どもも十二月の後半にこのような会議が持たれれば、大変カンボジアのために、またアジアのためにも好ましいと考えております。  これのいわゆる和平成立後には、相当大規模なカンボジアのいわゆる復興のために日本も協力をしなければならない、各国とも協力しながらやっていかなければならないと考えておりますが、その点につきましても、このような法案が成立後は大きな効果を上げるものと考えております。
  196. 中野寛成

    中野委員 一連の御答弁をお聞きしながら、この種法案の必要性というのは、これは例えば我々もそうですが、各野党もそれぞれニュアンスの差はありますが、提案をいたしておるところでありまして、これはだれしもが認めるところであろうというふうに思うのであります。  ただ国民皆さんから見て、今にわかになぜ自衛隊かということが一番大きな争点になっていると思うのであります。きょう、他の委員皆さん、それぞれ各論について深い御見識の中で御質問されております。私は各論についてまでお尋ねをそれほどしようとは思いませんが、例えばなぜ自衛隊かというときに、ボランティアを募ってみたけれども協力してくださる方が少なかった、いろいろなところに、会社や労働組合にも協力をお願いしたがなかなか手間暇がかかる、そして結局待機部隊的即戦力、しかも命令をして即座に出動させることができるのは自衛隊であるというところでここへ来たのではないか。むしろ私は、長期的なことを考えてやるならば、もっと腰を落ちつけていろいろな法案の内容とか分析も整理をしてお出しになるべきであったろうと思うのでありますが、何ともにわか仕立てという印象が、これはだれしもが指摘するところであります。  しかも、例えばお医者さん、きょうですか、またお二人派遣をされるようでありますが、本当にどこの方々とお話しになったのか、具体的に例えば医師会の皆さんとかいろいろな方々と本当にひざ詰め談判で協議をなさった上で今日に至っているのかどうか、私は十分に努力したというふうには恐縮ですが思えない。  そうすると、努力不足で、余り努力をしていないので、これは失礼な言い方ですが、結果として集まらなかった、集まらなかったことを理由にして自衛隊派遣を含むこの法律になったとすると、これは政府が意図的に仕組んだという疑いを持たれるということもあるわけであります。そういうことにつきまして、本当に今なぜ自衛隊なのか。そして、今日まで自衛隊でなくてもできることがあるはずですね。この法案が成立しなければ中東貢献策は四十億出しておしまいかい、ということではないはずでございまして、できることがあるはずでありますね。それらのことについて本当にどこまで真剣に考えて、どこまで努力をされたのかということについて政府の明快な御答弁をお願いしたいと思います。
  197. 中山正暉

    中山国務大臣 中東のいわゆるイラククウェート侵攻が起こったのは八月の二日でございまして、この事件発生後、国連の決議を受けるというようなこともございましたが、政府は、総理を中心に関係閣僚が連日寄りまして、この対策をどうするか協議をいたしてまいりました。  そういう中で、医療の問題を先ほど委員からも御指摘ございましたけれども、医療関係につきましては、外務省と厚生省との間でいろいろと協議をいたしまして、実際に医療に直接責任を持っておられる厚生省にお願いをして、この医療チームを派遣するための努力をしていただいたという経過がございます。  今、政府が仕組んだのではないかという厳しいお言葉がございましたけれども、決して仕組んだのではございませんで、私どもは誠心誠意できるだけのことをやったわけでございます。問題は、難民センターに行くというケースとそうじゃないケースと二つあるのではないか。そのような意味で、私どもは、この想像もしなかった新しい事態政府としては全身全霊努力をいたしました。結果としては御批判のある点もございますけれども、私どもは別に仕組んだわけでもございませんし、このイラクの突如たる侵攻によって引き起こされた国際的な紛争に対して、世界各国との共同でこれに対応していくということに努めてまいったというふうに御理解をいただきたいと思います。
  198. 中野寛成

    中野委員 この派遣につきましては、募集でも大変努力をしなければなりませんが、派遣に至るまでの過程でも随分といろいろな努力が必要だと思うのです。募集をし、選考をし、採用をし、集合をし、訓練をし、派遣する。側分と手間暇がかかると思いますし、また、それをしなければ御本人たちの、例えば武器でやられるだけではなくて、あの砂漠の中での健康状態等も考え合わせますだけでも、これは大変な御苦労が要るのであります。  しかも、先ほどの投書をもう一カ所引用をいたしますが、例えば医療団を派遣するときに、「医療団だけではなく、経済力と技術力を駆使して難民の立場に立ってキャンプの運営を行えるだけの人員・物資・情報伝達システム・輸送手段を整えておかなければならない。」と、先ほどの投書の主はおっしゃっておられるわけであります。  これと同じことをことしの六月にイラン地震災害派遣国際緊急援助隊、自治省から行かれた小林さんがこういう文章を書いておられますが、これでも本当に役に立つ部隊にしようと思えばかなりの大きな部隊が必要である。例えば、もちろん今回のイラン地震の場合は死者五万人、負傷者二十万人という数字ですから、他の国々と合わせましても日本チームの二十三人の編成というのは到底及びもつかない。フランスは日本よりももっとたくさん出した、いろいろ事前に行って準備もしていた、こういうことでありますが、しかしいずれにいたしましても、   十分な活動を行うためには、最低でも数十人単位、できれば数百人単位の編成が必要かもしれない。 これは国連平和協力隊じゃないですよ。災害の方ですね。災害の方でさえ、です。   人数が増えるとその分の水や食糧等を確保しなければならず、生活物資やガソリンの補給、通訳の確保、車の確保など、兵たんの苦労が幾何級数的に増大する。海外でそのような兵たん活動を行うノウハウの蓄積が十分ではないので、一遍に大人数の部隊派遣するのはなかなか難しいのではないかと思うが、今後の派遣の際には、徐々に人数を増やして大部隊派遣のノウハウの蓄積に努め、東アジアで大災害が発生した時にはせめて今回のフランス並みの部隊派遣できるように準備しておくべきであろう。 こういうふうに述べておられるわけであります。  まして、例えば今の中東問題を考えますときに、あの地域へ、ましてや砂漠等の多い地域派遣をいたしますにはそれ相当の規模の部隊が必要でありましょう。今は先遣隊、医療班が行っておられますけれども、しかし、本格的に活動日本が貢献をするためにしようとすれば、医療班ではなくてもっとほかの部隊も必要でありましょう。相当の部隊が必要であると思うわけであります。それらのことを十分踏まえた上での法案であるのか、お聞きをしたいと思います。
  199. 中山正暉

    中山国務大臣 この法案の中に盛られております業務内容の中で、災害の復旧とかあるいは医療の問題、いろいろなことがございますが、やはり委員御指摘のように、とにかく言語の問題が一つ大きく問題として出てくるのではないか。それから宗教の問題が一つ出てくるのではないか。それから文化、生活態度の違いがあるのではないか。そういうことを考えますと、構成されるこのチームというものは、いわゆるいろいろな人たちによって構成されないと有機的な機能を発揮できない。そういう意味から申しますと、この診療に当たる医師あるいは看護士一人一人の言語力の問題ももちろんございますけれども、全体的にどのように相手国政府と協議をしながらやっていくかという問題も一つ出てくるだろうと思います。  そういう意味からいいますと、一つのチームが、まあ私は百名ぐらいには膨れ上がる可能性は十分あるのではないか、このように考えておりまして、そういう場合も想定しながら、この法案のこれから審議の過程で、ただいまいろいろと事態想定して研究をしている最中であるということを申し上げさせていただきたいと思います。
  200. 中野寛成

    中野委員 今研究をしておるわけであります。もし法案が通りましても、その手順をいろいろと踏んでまいりますと、とてもことしじゅうに派遣できるなどという状況にはならぬであろうというふうに思うのでありまして、私はむしろこの法案につきましては、我が党で決定したわけではありませんが、それらのことを踏まえて考えますと、また国民のコンセンサスということを大事に考えますと、この法案については極めて慎重に審議をして、そして拙速ではなくて本当に国民から期待をされ、そして望まれて生まれる隊にしなければならぬ、こう思うわけであります。  そこで、もう一つお聞きいたしますが、法案十九条から二十二条にかけて書かれておりますことは、十九条に国民からの志望、志望というのは望む方ですね、志望する方の規定を設け、二十条で関係行政機関の協力隊への派遣、二十一条で海上保安庁の参加、二十二条で自衛隊参加の規定を設けているわけであります。この法案を見る限り、国民からのボランティアを中心に考えておられるように見えますが、果たしてそうでいいのだろうか。それは単にきれいごとでそこへ並べて、だんだん命令で強制できる、その強制の可能性の弱いところから一番強制しやすいところへ順番に並べていって、言うならば自衛隊を最後に、何となくカムフラージュぎみの感じもいたしますが、これなんかは恐らくこれができれば一番中心部隊とされるであろう自衛隊皆さんにとっても本当はお気の毒なことじゃないかという気がするのであります。  本来は、今大臣お答えになられましたようなことが必要でありますから、メーンは専門の待機部隊というのが本来の筋ではないか、こう思うのであります。待機部隊を中心にして、あと専門家の御参加をいただいて、そして役割を果たすということが必要なのではないか。そういたしますと、これはにわか仕込みというわけにはまいらないのでございまして、まして効果を上げるために相当規模の部隊が必要であるということ等を考え合わせますと、この平和協力隊の組織のあり方については現実に合わない、この法案の規定のままでは、というふうに思いますが、いかがでしょうか。
  201. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 ただいまのこの法案検討する過程におきまして、私たちはいろいろな制度のあり方につきまして検討いたしました。  その過程におきましては、例えば中長期的に考えて、ことしの春には国連のやっておりますPKOの現場にも調査団を派遣いたしましたし、五月には北欧諸国、北欧諸国はPKO先進国と言われておりますけれども、北欧四カ国に派遣いたしまして、どういう待機軍制度を設けているか、あるいは訓練制度を設けているかというようなこともいろいろと調べてやったわけでございまして、確かに先生が今言われますように、そういう待機制度というものは北欧諸国では非常にうまく機能しているという印象を持ちました。カナダはカナダでまた別の制度を持っておりますが、そのような点も考えながら、同時に、日本の実態に合ったものは何かということで考えたのが今のこの制度でございます。  例えば先生今ある程度の規模の常設隊を持ったらどうかという御指摘でございますが、その場合の訓練にはやはり非常に時間がかかる。あるいは行財政的に見て、その定員の問題でありますとか財政上の問題等もあります。そのようなことを考えまして、今言われましたように、十九条によってまず民間等を中心に広く選考により来ていただく、さらには二十条に基づきまして各行政機関から来ていただく、あるいは二十一条、二十二条によりまして海上保安庁、自衛隊等から組織に参加していただくという制度を考えたわけでございます。
  202. 中野寛成

    中野委員 考えたわけでございますと、ずらずらと十九条から二十二条までお並べになったのですが、局長、申しわけないが、それは先に私、質問の中で全部申し上げたことでございまして、そういうむだな時間は省略をしていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、私は、待機部隊的性格を持たせるという前提で考えなければこの案は成功しないというふうに思います。そうなりますとおのずから自衛隊の問題につきましても整理ができていく、こうも思います。大臣、いかがですか。
  203. 中山正暉

    中山国務大臣 いわゆる特別な業務に携わる専門職ということになりますと、委員御指摘のように、国際的な紛争が起こる、あるいはそのような紛争後のいわゆる平和維持活動に協力するためには、一つのチームというものが、例えば自衛隊の中に医療隊があるといったような形で、その中でもどのような形で対応できるかということについては、この法案が成立後に早急に検討されなければならない重大な問題であろうと私は認識をいたしております。
  204. 中野寛成

    中野委員 法案ができてから検討すると言われましたが、どういう姿になるのか、それを国民皆さんに示さないで法案審議というところにこの法案の、言うならにわか仕立てという批判がある原因だと思うのです。やはりそれらのことは、もうこの審議が始まってから答弁だけで忙しいのかもしれませんけれども、それだけでも何日間かたっているわけです。やはりそれらのことについてはしっかりとした姿勢をお持ちになりませんと国民理解は得られない、こういうことだと思うのであります。  大臣の今の御答弁は私は非常に残念でございます。時間がありませんのでとめておきますが、一言お答えいただければと思います。
  205. 中山正暉

    中山国務大臣 言葉足らずであった点があるかと思いますが、この法案というよりも、むしろ今委員御指摘のように待機するグループ、これが制度的にどのような形であるべきか、この問題については実際研究をいたしております。  そして、例えば言葉の問題、こういうものがありますと、これについては外務省の職員あるいは民間から出てこられる語学に堪能な方々、こういう方々をどのようにそれに参加してもらうのか、こういうことは議論を現在やっております。
  206. 中野寛成

    中野委員 研究をしておられるということであります。これは国民皆さん理解を得るためにも、そして決して安易に自衛隊を引っ張り出せばいいという意味ではないのであれば、それを証明するためにも私はお出しいただいた方がいいと思います。委員長の方で、この委員会に御提出いただけるようお諮りをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  207. 加藤紘一

    加藤委員長 中野委員の御提起の問題は、理事会を経て、なるべく早い機会に委員会に報告できるように取り計らいたいと思います。  中野委員
  208. 中野寛成

    中野委員 時間がありませんので、最後に自衛隊のことにつきましてお尋ねをいたします。自衛隊の存在意義と国際的役割につきましてお尋ねをいたします。  私は、自衛隊の存在意義というのは、国内において、そして日本の国土を防衛するという存在としてはおよそ国民皆さん理解とコンセンサスが得られていると思います。しかしながら、今回のように国際的役割を果たすということになりますと、まだまだ抵抗も、そして危惧の念も多いということが既に証明をされていると思います。  ここで必要なことは、政府の姿勢を明確にすることであります。すなわち、専守防衛に徹するということと、あくまでも平和目的であるということを常にきちっとけじめをつけることが必要であります。それから、憲法九条に言う「国際紛争を解決する手段としては、」という歯どめを明確にし、その範囲を規定づけることであろうと思います。また、これらを通じて国民理解とコンセンサスを得なければなりません。具体的には、例えば災害出動であるとか、それからいろいろなスポーツの祭典であるとか、また札幌の雪祭り等の出動などは国民皆さん自衛隊理解していただく一つのよすがとなっていることは御存じのとおりであります。国際的な理解と評価を得るためにも、それらのことは私はやはり必要であろうというふうに思います。  これらの一連のことがなくて、突然この法案に一足飛びになったところに、やはり国際社会においても、日本国内の国民皆さんからもいろいろと危惧の念が呈せられるであろう、こう思うのでありまして、まず一つ提案をいたしますことは、国際緊急援助隊への参加、すなわち国際緊急援助隊派遣法及び自衛隊法を改正をして、国際緊急援助隊、国際的な災害出動参加について法改正をされるという意思はございませんか。  それからもう一つ、スポーツ交流、文化交流等、防衛大学の学生や自衛隊員の皆さんが例えばスポーツのチームをつくって交流をするとか、いろいろな、とりわけ東南アジア諸国との自衛隊員の交流等々も含めて、これからやはり考え、そして本当に平和的な部隊であると、旧日本軍とは違うと、端的に言えば、そういうことも理解を積み重ねていく努力が、そのプロセスが必要だと思うのであります。これは歯どめをきちっとかけておくことによって、なし崩し的に何とかという批判も私は当たらなくなると思うのでありますが、いかがでしょうか。
  209. 石川要三

    ○石川国務大臣 まず、中野委員質問の御趣旨につきまして、私は全面的に共鳴をするものでございます。  現在、先生も御承知のとおり、我が国の防衛というものは専守防衛ということで、憲法第九条の枠をはめられて、その中でしっかりと国の防衛をやっておるということにつきましては、これは国民の中におきましても広範囲にこれがかなり私は理解をされている、かように思います。したがって、大体八〇%ぐらいは自衛隊の存在というものを肯定しているところではないかな、かように思うわけでございます。しかし、そうはいっても、私はこのアンケートを見ますると、そういう八〇%の国民が支持しながら、しかも反面、自衛隊に対する親しみというものは非常に少ない。これは非常に奇異に感ずるわけでございます。それは何かというと、国内的にPRというものがまだまだ不足している、このような認識に立っているわけでございます。  そういう前提のもとに、先生の御指摘の点につきましては同感するわけでございますが、具体的に二点ばかり質問されましたので、お答えをさせていただきたいと思います。  まず第一点の自衛隊の国際的な災害派遣についてでございますが、海外における自然災害等の発生に際しましては、国際的な援助活動を行うために自衛隊派遣することにつきましては憲法上許されないわけではございません。ただ現行法上、自衛隊の任務とされていないという実態でございます。この点につきましては、国際協力の推進といった観点から、今後広く国民の世論や、あるいは国会における議論等を踏まえて、政府全体として検討さるべきものだ、かように認識をするものでございます。  さらにもう一点でございますが、現在のこの自衛隊が、特にスポーツあるいは文化等を通じまして国際的な何かやっておるかというようなことでございますが、まず最初に実態について御報告申し上げます。  従来までの経緯でございますが、防大におけるスポーツ交流の実施でございますが、これは実例がございません。それから、スポーツ交流を目的とした防大生の派遣でございますが、国費による派遣は例がございません。ただし、経費の学生個人負担による実施例として以下のものがございます。例えば昭和五十二年に柔道部が米国へ行きました。あるいはシンガポールには昭和五十七年に剣道部等がございます。  こういうようなことでございますが、いずれにしましても、先生の御指摘のような、これからももう少し国際的な場においてのそういうスポーツ、文化を通じての大いに交流等を盛んに行いまして、それを通じて、戦前の帝国軍人というものと現在のこの我が憲法下における自衛隊というものの大いな差をPRをし、理解をしてもらうように今後ともできるだけの努力をしていきたい、かように考えております。
  210. 中野寛成

    中野委員 いつか来た道という非難が当たらない努力を、当然歯どめをしなければなりませんし、あわせまして、しかし大変重要な任務についておられます自衛隊員の皆さんのまさにプライドを大事にするということもあわせて考えなければなりません。その任務を政府は担っていると思うのであります。この法案提出によって、私はむしろ、あの政府の答弁のもたつきぐあい等々を見ながら、恐らく多くの自衛隊員の皆さんは情けない思いをしているのではないか、一番傷ついているのは自衛隊員の皆さんではないかとさえ思うのでありまして、我々といたしましては、政府皆さんがもっと確固たる信念を持って、必要なことはやる、やってはならぬことは断じてやらない、そのけじめを明確につけながら今後対応をしていただきたい、こう思う次第でございます。  以上、終わります。
  211. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて中野寛成君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  212. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今まで質疑応答を聞いておりまして、どうも海部さんの本心かどうかは別として、客観的に見るならば、何とか現行憲法、特に憲法九条を中心とする非戦あるいは反戦、ここに風穴をあげようとしておるやに見えるんですよね、客観的に。例えば、せんだっても言いましたが、国連決議の実効性確保なんという言葉はないんですよ、どこにも。国連決議にも国連憲章にもない。それから、集団的自衛権行使と集団的安全保障行動とを使い分けようとしておる。それから、もう海外派兵と派遣を使い分けようとする。あるいは、つい最近は、参加と協力を無理に分けようとしておる。こういうことで武力行使と一体化といって、ずっと範囲を広げてされておる姿を見まして、私はちょっと注意を喚起したい。  昨年の一月の九日に、即位後朝見の儀のときの天皇のお言葉があります。「いかなるときも国民とともにあることを念願された」、これはそのときは大行天皇ですが、「御心を心としつつ、皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、」こういうお言葉を賜っている。そして来月の十二日には、つまりこの国会が終わる十二日には即位の礼がある。そのときのお言葉も原案が発表されている。その原案によると「昭和天皇の御心を心とし、日本国憲法の精神に則って、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓い、」こういう言葉を用意されている、十二日の日に。  それなのに今この国会は、十一日ぎりぎりまでこの憲法の問題について国論を二分するような形になっておる。こういう状態で総理大臣として十二日の日に、この即位の礼で天皇のお言葉を素直に受けられますか。私は、良心に照らしてあなたの本心を聞きたい。
  213. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 即位の礼に参りましても、今ここで御答弁申し上げておるときでも、私は憲法に風穴をあけようなんとは決して考えておりませんので、これは良心に照らして申し上げますが、今回の法案をつくりますときも、その憲法九条の枠組みの中できちっとこれは守っていかなきゃならぬ、歴史の反省に立って二度と侵略戦争はしない、軍事大国にならないという大きな誓いと線をきちっと守りながらこの法案は用意をしておるわけでありまして、武力による威嚇または武力の行使に当たるものはしないということは、これは憲法に書いてある文言そのとおりでありますし、また、その精神を守ってやっていこうとしておることは変わりはございません。
  214. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、みっともない話だと思っているのです。十二日にこういうお言葉を賜る直前に、国会はこういうことで憲法問題で揺れている。これは、政治的にこの問題を取り上げてはいけぬことはわかっていますよ。しかし、天皇も新聞を読まれておると思うし、私は、案じられておるのではなかろうか、このように拝察します。  そこで私はきのう、これは新聞でございますが、金丸さんが福島市で何か物を言われておる。これは私は本人から直接聞いたわけじゃありません。新聞で見たところですけれども、三点挙げられておる。一つ自衛隊というものは専守防衛なんだ。二番目に、この法案は近隣諸国に不安を与えている。三番目に、戦争体験を通じた国民の反省を大切にすべきだということで、自衛隊参加するこの法案について、この辺を抜いたらどうかということを思わせるような発言をされておる。私はこれは大体の公約数ではなかろうかと思うのです。  それで、金丸さんが言われている戦争体験を通じた国民の反省を大切にする、戦争体験を通じた国民の声が私のところに届いております。きょうは代表的なものを持ってきた。ちょっと読みましょうか。(発言する者あり)いや、私は、法案のことは時間のある方にやってもらっていいんですよ。最も基本的な問題を提起したいのですよ。  この方は、中国の戦線に参加された方です。そして、あなたの答弁の派兵と派遣を分けるようなことはナンセンスだ。我々も知っていますけれども、当時は支郡派遣軍といっていた、中支派遣軍、南支派遣軍。国際的に見れば軍隊と答弁したでしょう。だから国際的に見れば軍隊を派遣することを派兵というのですよ。もう最もわかりやすいことでしょう。  それから、こういうことも書いてありますよ、後方支援のことで。いいですか。自分が参謀なら輸送通信を徹底的に一番にやる、後方支援に対して。当たり前、常識なんだ、これは、戦争を知っておる者の。まだたくさんありますが、こういうこともありますよ。「出動しない者は命令不服従でクビだと今は言いますが、それほどなら、命令する長官、首相は命令だけ出して自分は生き残ると言うようでは」納得できません。「一名でも戦死するようなことがあったなら、ご自分もそれと同じ決意がありましょうか」とはがきに書いてある。これが国民の率直な、一般的な庶民次元の、あるいは若い人たちの、あるいは戦争を体験した人たちの声ですよ。ここを金丸さんが言っておるんじゃありませんか。(発言する者あり)  それで、何かいろいろ後ろの方から不規則発言がありますが、法制局長官、ちょっと聞いておきます。  憲法に風穴をあげようとしておることについて異議がありましたけれども、じゃ、それに付随して聞きますが、自衛隊は指揮権をほかの国に委譲したりあるいは継承させたりする法的な根拠はありますか。
  215. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 委員御承知のとおり、自衛隊は憲法九条のもとにおきまして、我が国の防衛のために必要最小限度の実力組織、こういうことでございます。したがいまして、まず外国におきましていろいろの軍事行動をするということは想定されていないわけでございます。それが一つでございます。  それから国内におきましても、昨日正森委員でございましたか、安保条約の話が出ましたが、ここにおきましても格別指揮を共同にするというようなことはございません。したがいまして、国内、国外を通じまして格別外国の指揮を受けるとか、そういう体制にはなっていないわけでございます。専ら我が国の防衛のために必要最小限度の実力組織として任務を受け持っている、こういうことでございます。
  216. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁長官、おわかりですね。いいですか、命令権、指揮権、これはほかの国には委譲できない、現行法では。根拠はないでしょう。昭和四十年、岡田春夫元副議長が三矢作戦をやった。このときに、その交戦規則が問題になった。交戦規則はあるのです。ある。フライングドラゴンという作戦計画が問題になった。これも文書としてある。しかし、これは機密だから出せない、こうなった。じゃ、いいですか、自衛隊が有事のときに指揮権を発動する、それは今は何によっているのですか。何の訓令によっていますか。名前を挙げてください。
  217. 日吉章

    ○日吉政府委員 自衛隊法の七条、八条、九条でございます。
  218. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それに基づく訓令があるでしょうが。何ですか、その名前は。――私の方から言いましょうか、時間がないから。年度の防衛、警備等に関する計画、普通年防と言っておる、それを出してください。そうしたら自衛隊の指揮命令系統がどうなっているかがはっきりする。  ついでに言っておきますが、幕僚勤務要領、これも訓令。恐らくマル秘でしょう。それがあるかないか言ってください。
  219. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいま委員の方からお話がございました年防でございますが、これは年度の防衛及び警備に関する計画というものを指しているのだと思いますが、これは、ただいま委員が御指摘になられましたような指揮命令系統を明らかにしているというようなものではございません。
  220. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それなら出してみてください。  では、指揮命令はどんなふうにして行うかはどういう訓令でやるのですか。自衛隊法の条文を聞きましたけれども、その条文から訓令が出るのですよ。そしてそれが、マル秘度が高くなればなるほど内訓になっていく、そういう仕掛けでしょう  あんな答えだったら、時間がどんどんたちますものね。だから、これは私は要求したい。年防、それから今申しました幕僚勤務要領、これを理事会に出してください。約束してください。  ついでに、その幕僚勤務要領があるかないか、ここではっきりしておいてください。
  221. 日吉章

    ○日吉政府委員 委員ただいま提出の御要請がございました年防でございますが、これは我が国に対する武力攻撃に際し自衛隊が対処する場合の要領といったようなものを定めているようなものでございますが、これはただいま私が申し上げましたようなことからもおわかりのように、この内容は公表に適するものではございません。この点はこれまでも累次同様の御要望がございまして、その性格上お出しすることはできないということで御了承を賜っていることでございます。
  222. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 幕僚勤務要領があるかないか答えなさい、もう一つ
  223. 日吉章

    ○日吉政府委員 委員ただいまお話しの内容は定かに理解でき得ないわけでございますけれども、それに類するものはございません。
  224. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、まだずっと質疑が続くと思いますから、この問題は保留しておきましょう。  十月二十六日ですか、参加と協力の区別について統一見解を出されましたね。そして、この二に、「昭和五十五年十月二十八日付政府答弁書にいう「参加」とは、当該「国連軍」の司令官の指揮下に入り、」云々となっています。それから四、「右の「参加」に至らない「協力」については、」となっておるが、きのうも正森委員質問していましたけれども、先ほどから明らかにしたとおり、指揮権は委譲できないのですよ、長官。委譲できないことがわかりながら、どうして参加と協力の区別をするのに指揮というものを入れたのですか、もともとないのに。つまり、昭和五十五年十月の段階の政府答弁の「参加」という言葉は、指揮の委譲はないことが前提になっているんだ。それを今ごろになって「指揮下に入り、」なんて、指揮下に入れるわけないでしょうが、指揮権の委譲がないんだから。そんなでたらめな統一見解がどこにありますか。冗談じゃないですよ。長官、はっきりしてください。
  225. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げますが、昭和五十五年の稲葉委員に対する答弁書におきまして今の文言が出てまいります。「いわゆる「国連軍」は、個々の事例によりその目的・任務が異なるので、それへの参加の可否を一律に論ずることはできないが、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないと考えている。これに対し、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴わないものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないわけではないが、」云々、こういうことでございます。  それで、これはいわゆる憲法の方の、憲法九条の目から見ました自衛隊のかかわり方、関与の仕方を述べておりまして、いわゆる憲法上我が国はこれまで述べておりますように武力の行使をすること、いわゆる我が国が防衛上必要最小限度の実力組織を持つ、こういうことから、そこまでは許されないわけではないが、それを超えるものは憲法上許されない、こういうことになっておりまして、いわゆる憲法上許されない範囲を、そういう意味で憲法九条の目から見てそういうふうな武力の行使と見られる、こういう観点から見れば、当然そういう意味で一体性といいますか、そういうふうなものを問題にしているわけでございまして、我が国の立場からしてそういう形で参加し、いわゆる我が国が武力の行使をしていると見られるようなことは許されない、こういう意味で申し上げているわけでございます。
  226. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が言っているのは、どうしてここに、指揮下にあるかどうか、それで参加と協力の区別をするのですかと聞いているのですよ。この答弁書が出たときは、指揮の問題は参加の中にないのです、もともと。それを今ごろになって何で指揮下にあるかどうかで参加と協力の区別をするのですか。ないのですよ。だから、きのうも正森委員が言ったでしょう。日米の間では、命令はおのおの特っておって、そしてそこに調整機関ができる、そういうことにたっているのですから、今ごろになって便宜的に指揮下にあるかどうかで参加と協力を分けるなんというようなことは、私どもは受け付けるわけにいかぬのですよ、他国に指揮権は委譲できないんだから。あなた、そういうことをわかりながら何でこういう仕分けをするのですか。詭弁ですよ、これは。これを引っ込めなさいよ、この統一見解は。
  227. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 決して詭弁とは私思っておりません。実は、この問題につきましては、ただいま昭和五十五年の答弁書をお読みいたしましたけれども、そういう意味で、我が国憲法のもとで何が許され何が許されないか、こういうものを考えたときの区別を申し上げているわけでございまして、「当該「国連軍」」、あるいはこれは多国籍軍と読みかえても同じ、こういうふうに申し上げましたが、そういう意味で、我が国が武力行使をしていると見られるか見られないか、その判断基準をここで申し上げたわけでございまして、そういう意味で、決して矛盾しているとかいうことではないと思います。
  228. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうしてですかね。指揮の委譲はないのですよ、指揮権の委譲は。それははっきりしているんです。ないのですよ、もともとこういうことは。この五十五年の段階でもないのですよ。(発言する者あり)それならこれ引っ込めなさいよ、なければいいじゃないかと言うんなら。引っ込めなさいよ。長官、これはとてもこの統一見解は無理ですよ。指揮によって参加と協力を分けるなんということは、それは無理ですよ。  それから、私はかつて高辻法制局長官を三百代言と言ってしかられましたが、あなたは五百代言ぐらいしているんじゃないですか、今度は。  外務大臣にお伺いします。  これは、昭和四十一年六月一日、外務委員会で与党の鯨岡さんが質問をした。当時はベトナム戦争があっておって、そして時の外務大臣は神に祈るような気持ちでと言って海部総理大臣の恩師である三木武夫さん、椎名裁定といって有名ですが、椎名さんが外務大臣のときです。こういう質問を鯨岡さんがしています。「アメリカと日本との間に」安保条約、「そういう条約を結んだことによって、アメリカがベトナム戦争参加している、したがって、直接的ではないが、間接的な基地のような形になっている。だから、しいて言えば、アメリカの相手国である北ベトナム等から見れば、日本は直接の敵ではないけれども、敵性国のような形になっている。」  これに対して椎名大臣はどう答えられたか。ベトナム戦争がもう少し近いところで行われるということになるとはっきりすることですが、つまり、近いならば危険がないとは言えないと思います。それで、安保条約体制にあるがゆえに一種の敵性を持ったと認められて、そして攻撃を受ける、あるいはその他の脅威を受けるというようなことはあり得ると思う。しかし、それは今非常に距離の遠ざかっているベトナム戦争に関してはない。距離が遠いからないんだ。敵性国家と見られるということは肯定されている、基地をアメリカに提供しているから。基地を提供するぐらいでも敵性国家として国際的に見られるならば、今度の場合、この協力隊がこの法案のとおりでいくならば、相手国から敵性国家と見られてもしようがないんじゃないですか。  ところが、今度はどうですか。距離は遠くありません、近いです。いいですか。バーレーンでも、きょう問題になったダンマムでも、ダーランでも、たかだか五百キロ以内でしょう。ミサイルの射程内ですよ。だから心配しているんです、起こり得るから。  それで、時間がなくなりましたから、もう一つ言っておきますが、この前の続き、ちょっとはっきりしておきますけれども、私は服装の問題をやった。たかが服装じゃないんです、されど服装なんですよ。つまり今度の協力隊では恐らく自衛隊員がほとんどになるんじゃないですか、僕の想像では。まあ結果を見させてもらいますけれども。そのときに服装が問題になった。あなたはこの前、作業服を着て、ワッペンをつけるとおっしゃいましたね。これは制服じゃないんですか。
  229. 中山正暉

    中山国務大臣 平和協力隊の制服を一般に協力隊員は着ることになりますが、艦船、航空機等を操縦する場合には作業服を着用することがあり、その際に平和協力隊員のワッペンをつけることがある。それは自衛隊のいわゆる制服の一種でございます。
  230. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 階級章はどうなんですか。
  231. 日吉章

    ○日吉政府委員 制服の一種でございますから、階級章もついてございます。
  232. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはあれですか、武装ですか、武装服ですか。
  233. 日吉章

    ○日吉政府委員 ちょっと御質問の趣旨を正確に理解しているかどうか自信がございませんけれども、服装そのものでもって相手を殺傷するというわけにはいきませんので、そういう意味武器等には当たらないのではないかと思います。
  234. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いいでしょう、いいでしょう。これは武装でしょう、この作業服は。いいですか。じゃ、はっきりしましょうか。いいですか。わかりやすくしましょう、アマの人ばかりだから。  自衛官の服装規則。十二種類ある。第五条、この中に「作業服装」というのがある。「甲武装」というのがある。「乙武装」というのがある。乙武装する場合を言いましょうか。これは作業服と同じということになっている、この服装規則では。だから乙武装でしょう。単なる作業服なんて言ったのはだれですか。冗談じゃない。  重ねて、この十二条には「自衛官は、出動、災害派遣若しくは地震防災派遣の場合」は乙武装をするということになっている。余りでたらめな答弁をしちゃいけませんよ。
  235. 村田直昭

    ○村田政府委員 お答えします。  甲武装という服装は、略帽及び短靴を除く常装冬服の着用品でございまして、けん銃帯または弾薬帯及び白色の手袋、これは儀式の場合に限りますが、必要に応じ、必要に応じでございますが、鉄帽または鉄帽用中帽を着用するというような格好でございまして、武装といいますが、服装の格好が今みたいな格好をしているわけでございまして、特に武器に関しての武装ということではございません。
  236. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた、どこ読んでいるんですか。いいですか。乙武装は作業服と同じと書いてあるでしょうが。だから私、言っているんですよ。だからこれは武装でしょうと言っているのですよ、その辺をはっきりしておかぬといかぬと思うて。これは戦闘服ですか。
  237. 村田直昭

    ○村田政府委員 私もちょっと今定かにその服装は思い出せないのでございますが、よく調べた上で、図をもって先生に御提示できるかと思いますので、しばらく、次回まで御猶予いただきたい、こう思います。
  238. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから、それはしかと次回にはっきりしてください。おたくの規則なんだから、私どもの規則ではないんですよ。  それから、私はもう一つ問題にしておきますけれども、先ほど言いましたとおり、敵性国家ということをもう一遍はっきりしておってもらいたい。先ほどベトナムの例を引いて、鯨岡さんが外務委員会質問をして椎名外相が答えた。日本の基地をアメリカに使わしておるから日本は敵性国家だ。そうすると今度の場合は、この協力隊は、その論理でいけば、基地を貸しただけでも敵性国家になるんだから、いよいよ向こうへ行って多国籍軍の後方支援をすれば完全に敵性国家になりますね、国際法的には。そうすると攻撃されてもやむを得ない、これが椎名答弁でしょうが。距離が近かったらそうなります。私はその二年後、同じ質問をして佐藤総理大臣に聞いた。そうならないことを望みます、大変危険ですと言われた、距離の近いところで起こったら。この椎名答弁をどう思われますか、外務大臣
  239. 中山正暉

    中山国務大臣 椎名外相の答弁の当時とこの国連平和協力法の、今御審議を願っている国際社会の情勢は全然私は次元が違うと思います。(発言する者あり)
  240. 加藤紘一

    加藤委員長 答弁中、御静粛に願います。
  241. 中山正暉

    中山国務大臣 今、国際社会国連が、国連の安全保障理事会の決議ということになりますと、国際社会全体がイラク武力によるクウェートの侵略を、これは国際社会の平和を乱すものだということを決定しているわけでありますから、イラクから見れば国際社会全体が敵性国家になるわけであります。日本だけではありません。
  242. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかりました。じゃ、日本のほか全部敵性国家ですね、日本も含めて。だから攻撃されても国際法的には文句を言えない、それだけ確認しておきますよ。日本も入っておると言うから。
  243. 加藤紘一

    加藤委員長 条約局長
  244. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もうあなたいいよ。終わりましたって来ているんだから。
  245. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 今御指名を受けましたので……。  ただいま外務大臣が仰せられたとおりでございまして、敵性か中立かというような観念は、戦前の国際法では非常に確立した観念がございました。しかしながら、戦後におきましては、特に国連憲章のもとにおきましては、平和の破壊者とそれに対する国際社会の制裁という関係になるわけでございますから、中立とか敵性とか、実態としてはそれに似たようなことがあるかもしれませんけれども、国際法の問題といたしましては、先ほど外務大臣が答弁されたとおりでございます。
  246. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 承服できません。終わります。
  247. 加藤紘一

    加藤委員長 これにて楢崎弥之助君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十一月一日午前九時より公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十二分散会