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1990-10-03 第118回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年十月三日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員長異動  六月二十六日千葉景子委員長辞任につき、そ  の補欠として及川一夫君を議院において委員長  に選任した。     ─────────────    委員異動  六月二十六日     辞任         補欠選任      一井 淳治君     梶原 敬義君      粕谷 照美君     渕上 貞雄君      菅野  壽君     西岡瑠璃子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         及川 一夫君     理 事                 大浜 方栄君                 後藤 正夫君                 守住 有信君                 会田 長栄君                 千葉 景子君                 猪熊 重二君     委 員                 石渡 清元君                 尾辻 秀久君                 岡野  裕君                 鎌田 要人君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 陣内 孝雄君                 野村 五男君                 福田 宏一君                 二木 秀夫君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 喜岡  淳君                 種田  誠君                 西岡瑠璃子君                 渕上 貞雄君                 木庭健太郎君                 諫山  博君                 沓脱タケ子君                 高井 和伸君                 三治 重信君    国務大臣        法 務 大 臣  梶山 静六君        大 蔵 大 臣  橋本龍太郎君        文 部 大 臣  保利 耕輔君        厚 生 大 臣  津島 雄二君        農林水産大臣   山本 富雄君        通商産業大臣   武藤 嘉文君        自 治 大 臣  奥田 敬和君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  塩崎  潤君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  石川 要三君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       相沢 英之君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  北川 石松君         ─────        会計検査院長   中村  清君         ─────    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 堯躬君    説明員        警察庁刑事局長  中門  弘君        総務庁長官官房        審議官      小山 弘彦君        総務庁行政管理        局長       増島 俊之君        防衛庁長官官房        長        日吉  章君        防衛庁防衛局長  藤井 一夫君        法務省人権擁護        局長       篠田 省二君        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合        局審議官     池田 右二君        大蔵大臣官房審        議官       石坂 匡身君        大蔵省主計局次        長        田波 耕治君        大蔵省証券局長  松野 允彦君        大蔵省銀行局長  土田 正顕君        文部省初等中等        教育局長     菱村 幸彦君        厚生省生活衛生        局水道環境部長  小林 康彦君        建設大臣官房長  望月 薫雄君        会計検査院事務        総局次長     疋田 周朗君        会計検査院事務        総局第一局長   安部  彪君        会計検査院事務        総局第二局長   澤井  泰君     ─────────────   本日の会議に付した案件昭和六十二年度一般会計歳入歳出決算昭和六十二年度特別会計歳入歳出決算昭和六十二年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十二年度政府関係機関決算書(第百十四回国会内閣提出) ○昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百十四回国会内閣提出) ○昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書(第百十四回国会内閣提出)     ─────────────
  2. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  議事に先立ちまして一言あいさつを申し上げます。  去る六月二十六日の本会議におきまして決算委員長選任をされました及川一夫でございます。決算委員長に指名をされ、決算委員会運営に当たることになりました。大変光栄に存じております。  御案内のように、当委員会は、六十二年度決算審査はもとより、六十三年度は既に議運委員会にあり、さらに平成年度も十二月には国会に提出される状況であります。このように審査案件は山積いたしております。したがいまして審査の促進は、国民の期待にこたえ、決算委員会の責任という意味からもぜひやらなければならないと思っております。  また、委員会運営は、当然のことながら厳正公正を旨といたしまして進めますが、この際、心より理事並びに委員皆様方の御協力をお願いいたしまして、私のあいさつとさせていただきます。  何とぞ、よろしくお願い申し上げます。(拍手)  この際、前委員長千葉景子君から発言を求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
  3. 千葉景子

    千葉景子君 一言お礼のごあいさつを申し上げます。  昨年八月に委員長選任され、以来約一年間その任に当たってまいりましたが、理事皆様を初め委員各位の御協力によりまして、ふなれな私ではありましたが、無事その職責を果たすことができました。心からお礼を申し上げます。  なお、私も当委員会に残らせていただきますので、今後ともよろしくお願いいたします。(拍手)     ─────────────
  4. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 委員異動について御報告いたします。  去る六月二十六日、一井淳治君、粕谷照美君及び菅野壽君が委員辞任され、その補欠として梶原敬義君、渕上貞雄君及び西岡瑠璃子君が選任されました。     ─────────────
  5. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 昭和六十二年度決算外二件を議題といたします。  まず、昭和六十二年度決算、すなわち一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書につきまして、大蔵大臣から概要説明を聴取いたします。橋本大蔵大臣
  6. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 昭和六十二年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書会計検査院検査報告とともに国会に提出し、また、昭和六十二年度の国の債権の現在額並びに物品増減及び現在額につきましても国会報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計におきまして、歳入決算額は六十一兆三千八百八十七億六千九百五万円余、歳出決算額は五十七兆七千三百十一億四千百五万円余でありまして、差し引き三兆六千五百七十六億二千七百九十九万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計昭和六十三年度歳入繰り入れ済みであります。  なお、昭和六十二年度における財政法第六条の純剰余金は一兆八千九百三十七億千九百三十七万円余となります。  以上の決算額予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額五十八兆二千百四十一億五千五百七十万円余に比べて三兆千七百四十六億千三百三十四万円余の増加となりますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れ予算額に比べて増加した額五千九十三億九千九百五十二万円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、歳入の純増加額は二兆六千六百五十二億千三百八十一万円余となります。その内訳は、租税及び印紙収入等における増加額三兆七千八百六十億八千六百八十六万円余、公債金における減少額一兆千二百八億七千三百四万円余となっております。  一方、歳出につきましては、予算額五十八兆二千百四十一億五千五百七十万円余に、昭和六十一年度からの繰越額五千九十三億三千五百五十四万円余を加えました歳出予算現額五十八兆七千二百三十四億九千百二十四万円余に対しまして、支出済み歳出額は五十七兆七千三百十一億四千百五万円余でありまして、その差額九千九百二十三億五千十九万円余のうち、昭和六十三年度に繰り越しました額は六千二百八十八億千十五万円余となっており、不用となりました額は三千六百三十五億四千四万円余となっております。  次に、予備費でありますが、昭和六十二年度一般会計における予備費予算額は二千億円であり、その使用額は千億八千七百四十九万円余であります。  次に、一般会計国庫債務負担行為につきまして申し上げます。  財政法第十五条第一項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は二兆三千六百六十八億百五十六万円余でありますが、契約等による本年度債務負担額は二兆二千九百四億六千百七十四万円余であります。これに既往年度からの繰越債務額三兆二千七十九億八千八百四十四万円余を加え、昭和六十二年度中の支出等による本年度債務消滅額二兆千六百四十四億二千四百三十八万円余を差し引いた額三兆三千三百四十億二千五百八十一万円余が翌年度以降への繰越債務額となります。  財政法第十五条第二項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は一千億円でありますが、契約等による本年度債務負担額はありません。  また、既往年度からの繰越債務額二億二千四万円は、昭和六十二年度中の支出等によって全額消滅いたしましたので、翌年度以降への繰越債務額はありません。  次に、昭和六十二年度特別会計決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十八でありまして、これらの決算内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  次に、昭和六十二年度における国税収納金整理資金受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は四十七兆四千二百二十四億十七万円余でありまして、この資金からの一般会計等歳入への組み入れ額等は四十七兆四千八十六億三千六百四十三万円余でありますので、差し引き百三十七億六千三百七十三万円余が昭和六十二年度末の資金残額となります。これは、主として国税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。  次に、昭和六十二年度政府関係機関決算内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  次に、国の債権の現在額でありますが、昭和六十二年度末における国の債権総額は百四十二兆二千七百三十億三千八百四十九万円余でありまして、前年度末現在額百三十三兆四千五百十二億二千七百十六万円余に比べて八兆八千二百十八億千百三十二万円余の増加となります。  その内容の詳細につきましては、昭和六十二年度国の債権の現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  次に、物品増減及び現在額でありますが、昭和六十二年度中における純増加額は七千八百三十一億二千二百七十八万円余であります。これに前年度末現在額五兆千二百八十三億三千五百九十一万円余を加えますと、昭和六十二年度末における物品総額は五兆九千百十四億五千八百六十九万円余となります。その内訳の詳細につきましては、昭和六十二年度物品増減及び現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  以上が昭和六十二年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書等概要であります。  なお、昭和六十二年度予算執行につきましては、予算の効率的な使用経理の適正な運営に極力意を用いてまいったところでありますが、なお会計検査院から百七十件の不当事項等について指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。  予算執行につきましては今後一層配慮をいたし、その適正な処理に努めてまいる所存であります。  何とぞ、御審議のほどお願い申し上げます。
  7. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 次に、昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書並び昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書につきまして、大蔵大臣から概要説明を聴取いたします。橋本大蔵大臣
  8. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書並び昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書会計検査院検査報告とともに第百十四回国会報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書概要について御説明いたします。  昭和六十二年度中に増加しました国有財産は、行政財産一兆六千九百四十二億三千九百十三万円余、普通財産二兆四千九百二億千七百八十六万円余、総額四兆千八百四十四億五千六百九十九万円余であり、また、同年度中に減少しました国有財産は、行政財産四千百九十九億四千六百六十八万円余、普通財産一兆三千九百五十八億三千九百四十万円余、総額一兆八千百五十七億八千六百八万円余でありまして、差し引き二兆三千六百八十六億七千九十万円余の純増加となっております。これを昭和六十一年度末現在額四十七兆九千六百十八億五百六十五万円余に加算いたしますと、五十兆三千三百四億七千六百五十五万円余となり、これが昭和六十二年度末現在における国有財産総額であります。  この総額内訳分類別に申し上げますと、行政財産二十七兆九千百七十三億三千十四万円余、普通財産二十二兆四千百三十一億四千六百四十一万円余となっております。  なお、行政財産内訳種類別に申し上げますと、公用財産十八兆三千七十二億六千三百五十七万円余、公共用財産五千四百四十六億三千五百三十三万円余、皇室用財産七千二十二億五千九百十五万円余、企業用財産八兆三千六百三十一億七千二百八万円余となっております。  また、国有財産総額内訳区分別に申し上げますと、土地十三兆六千九百四十三億六千二百二十八万円余、立木竹四兆八千五百四億四千四百三十万円余、建物五兆七千二百七億五千八百十三万円余、工作物四兆六千三十五億八千百九十八万円余、機械器具八億千百七十七万円余、船舶一兆千七百二十九億六千三百六万円余、航空機一兆五千七百八十二億七千八十七万円余、地上権等十六億八千六百二万円余、特許権等四十五億千八百八十六万円余、政府出資等十八兆七千三十億七千九百二十三万円余となっております。  次に、国有財産増減内容について、その概要を申し上げます。  まず、昭和六十二年度中における増加額を申し上げますと、前述のとおりその総額は四兆千八百四十四億五千六百九十九万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって増加しました財産は三兆六千八百八十億八千八百六十万円余、第二に、国の内部における異動によって増加しました財産は四千九百六十三億六千八百三十九万円余であります。  次に、減少額について申し上げますと、その総額は一兆八千百五十七億八千六百八万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって減少しました財産は一兆三千百二億三千百九十万円余、第二に、国の内部における異動によって減少しました財産は五千五十五億五千四百十八万円余であります。  以上が昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書概要であります。  次に、昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書概要について御説明いたします。  昭和六十二年度中に増加しました無償貸付財産総額は千八億四千三百九十一万円余であり、また、同年度中に減少しました無償貸付財産総額は九百八億九千二百二十五万円余でありまして、差し引き九十九億五千百六十六万円余の純増加となっております。これを昭和六十一年度末現在額八千二百三十億六千七百四十二万円余に加算いたしますと八千三百三十億千九百八万円余となり、これが昭和六十二年度末現在において無償貸し付けをしている国有財産総額であります。  以上が昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書概要であります。  なお、これらの国有財産の各総計算書にはそれぞれ説明書が添付してありますので、それによって細部を御了承願いたいと思います。  何とぞ、御審議のほどお願い申し上げます。
  9. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 次に、昭和六十二年度決算検査報告並びに昭和六十二年度国有財産検査報告につきまして会計検査院長から概要説明を聴取いたします。中村会計検査院長
  10. 中村清

    会計検査院長中村清君) 昭和六十二年度決算検査報告につきまして、その概要を御説明いたします。  会計検査院は、昭和六十三年十月十四日内閣から昭和六十二年度歳入歳出決算の送付を受け、その検査を終えて、昭和六十二年度決算検査報告とともに六十三年十二月十六日、内閣に回付いたしました。  昭和六十二年度一般会計決算額は、歳入六十一兆三千八百八十七億六千九百五万余円、歳出五十七兆七千三百十一億四千百五万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において四兆八千九百九十五億七千四百七十九万余円、歳出において四兆九百七億九百二十万余円の増加になっており、各特別会計決算額合計額は、歳入百六十七兆六千六百七十八億六千二百九十一万余円、歳出百四十五兆二千四十七億八千九百二十四万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において十九兆四千五百五十七億二千五百五十一万余円、歳出において十五兆四千百六十二億三千百三十九万余円の増加になっております。  また、国税収納金整理資金は、収納済額四十七兆四千二百三十四億十七万余円、歳入組入額四十六兆二千七百一億三千九十万余円であります。  政府関係機関昭和六十二年度決算額の総計は、収入五兆四百十四億六千四百八十八万余円、支出五兆八十一億七千三百四十二万余円でありまして、前年度に比べますと、収入において八兆七千六百五億七千七百四万余円、支出において八兆五千五百九十六億四千二百九十八万余円の減少になっております。  昭和六十二年度歳入歳出等に関し、会計検査院が、国、政府関係機関、国の出資団体等検査対象機関について検査した実績を申し上げますと、書面検査は、計算書二十三万六千余冊及び証拠書類六千八百五十三万六千余枚について行い、また、実地検査は、検査対象機関の官署、事務所等四万百余カ所のうち、その八・二%に当たる三千二百余カ所について実施いたしました。そして、検査の進行に伴い、関係者に対して八百余事項質問を発しております。  このようにして検査いたしました結果、検査報告に掲記した法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項等について、その概要を御説明いたします。  まず、法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項について申し上げます。  法律政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項として検査報告に掲記いたしましたものは、合計百七十件であります。  このうち、収入に関するものは四件、二十二億四千三百六十三万余円でありまして、その内訳は、租税徴収額過不足があったものが一件、十一億九千六百六十五万余円、保険料徴収額過不足があったものが三件、十億四千六百九十七万余円、また、支出に関するものは百三十一件、十六億八千八百十三万余円でありまして、その内訳は、工事に関するものとして、監督、検査が適切でなかったため設計と相違して施工したものが一件、五百万余円、物件に関するものとして、受領検査が適切でなかったため購入した機器等の一部が購入の目的を達していなかったものが一件、千二百二万円、保険給付に関するものとして、保険給付金支給が適正でなかったものが六件、三億千三百六十七万余円、補助金に関するものとして、補助事業実施及び経理が適切でなかったものが七十七件、四億七千二十七万余円、貸付金に関するものとして、貸付金経理が適切でなかったものが二十件、六億三千九百九万余円、職員不正行為による損害を生じたものが一件、六千四十四万余円、その他、児童扶養手当支給及び医療費支払いが適正でなかったり、固定資産税等納付額が過大になっていたりしていたものが二十五件、一億八千七百六十一万余円であります。  以上の収入支出に関するもののほか、郵便貯金預入金簡易生命保険保険料等について、職員不正行為による損害を生じたものが三十五件、二億八百二十二万余円ありまして、これらの合計は、百七十件、四十一億三千九百九十九万余円となっております。これを前年度の百二十九件、三十九億千九十三万余円と比べますと、件数において四十一件、金額において二億二千九百六万余円の増加となっております。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  昭和六十三年中におきまして、会計検査院法第三十四条の規定により是正改善処置を要求いたしましたものは六件、また、同法第三十六条の規定により意見を表示いたしましたものは一件であります。  このうち、会計検査院法第三十四条の規定により是正改善処置を要求いたしましたものは、総理府海上自衛隊船舶国有財産台帳価格に関するもの、厚生省医学実験用猿飼育管理業務実施に関するもの、老人医療における特例許可外老人病院の把握に関するもの、厚生年金保険老齢厚生年金等に係る加給年金額支給に関するもの、日本電信電話株式会社有線音楽放送線に係る添架料の徴収等に関するもの、日本貨物鉄道株式会社のコンテナの管理運用に関するものであります。  また、会計検査院法第三十六条の規定により意見を表示いたしましたものは、労働省の労働者災害補償保険遺族補償年金等受給資格者の認定に関するものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、検査の過程におきまして、会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求すべく質問を発するなどして検討しておりましたところ、当局において、本院の指摘を契機として直ちに改善処置をとったものでありまして、検査報告に掲記いたしましたものは三十一件であります。  すなわち、総理府F15型要撃戦闘機用エンジン構成品運用に関するもの、法務省契約電力の基礎となる変圧器の容量に関するもの、文部省国立大学医学部附属病院等における患者給食の委託料の算定に関するもの、農林水産省の重要野菜に係る野菜価格安定対策等事業に関するもの、水路トンネル工事における覆工コンクリート打設費積算に関するもの、蚕糸砂糖類価格安定事業団による沖縄県産甘蔗糖の売り戻し価格に関するもの、運輸省のケーソン製作工事積算に関するもの、航空保安施設等警備費積算に関するもの、郵政省のファクシミリの借料に関するもの、建設省の特定賃貸住宅の賃貸条件等に関するもの、沖縄振興開発金融公庫のマンション購入資金の貸し付けを受けて購入したマンションの第三者への賃貸等の防止に関するもの、日本道路公団のトンネル工事で計測作業に使用するリフト車の運転に要する経費の積算に関するもの、可変標示板設備工事における予備品の調達に関するもの、共同受信施設の維持管理費用の公団負担額の積算に関するもの、首都高速道路公団の高架橋等の鋼床版の現場溶接費の積算に関するもの、住宅・都市整備公団の道路工事における街渠工費の積算に関するもの、民営賃貸用特定分譲住宅の賃貸条件に関するもの、雇用促進事業団の契約電力の基礎となる変圧器の容量に関するもの、国際協力事業団の国際航空運賃の支払い方法に関するもの、日本国有鉄道清算事業団の廃棄物処理費に係る諸経費の積算に関するもの、コンクリート舗装の取り壊し費の積算に関するもの、日本私学振興財団の私立大学における臨床研修医に係る支出補助金算定上の取り扱いに関するもの、日本電信電話株式会社の音声符号化多重変換装置の購入に関するもの、二件以上の加入電話を有する加入者に対する事前案内書の郵送に関するもの、事前案内書及び料金明細サービスの意向照会書の郵送に関するもの、北海道旅客鉄道株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社及び九州旅客鉄道株式会社の自動車整理場の使用料金に関するものであります。  最後に、特に掲記を要すると認めた事項について御説明いたします。  これは、検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認めたものでありまして、昭和六十二年度決算検査報告に掲記いたしましたものは一件であります。  すなわち、登録免許税の税率軽減の制度の運用に関するものであります。  以上をもって概要の説明を終わります。  会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係各省庁などに対して、適正な会計経理執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例がありますので、関係各省庁などにおいてもさらに特段の努力を払うよう望んでいる次第であります。  引き続きまして、昭和六十二年度国有財産検査報告につきまして、その概要を御説明いたします。  会計検査院は、昭和六十三年十月二十一日、内閣から昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書の送付を受け、その検査を終えて、昭和六十二年度国有財産検査報告とともに、六十三年十二月十六日内閣に回付いたしました。  六十一年度末の国有財産現在額は、四十七兆九千六百十八億五百六十五万余円でありましたが、六十二年度中の増が四兆千八百四十四億五千六百九十九万余円、同年度中の減が一兆八千百五十七億八千六百八万余円ありましたので、差し引き六十二年度末の現在額は五十兆三千三百四億七千六百五十五万余円になり、前年度に比べますと二兆三千六百八十六億七千九十万余円の増加になっております。  また、国有財産無償貸し付け状況につきましては、六十一年度末には八千二百三十億六千七百四十二万余円でありましたが、六十二年度中の増が千八億四千三百九十一万余円、同年度中の減が九百八億九千二百二十五万余円ありましたので、差し引き九十九億五千百六十六万余円の増加を見まして、六十二年度末の無償貸付財産総額は八千三百三十億千九百八万余円になっております。  検査の結果、昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書に掲記されている国有財産管理及び処分に関しまして、昭和六十二年度決算検査報告に「意見を表示し又は処置を要求した事項」として掲記いたしましたものは、会計検査院法第三十四条の規定により是正改善処置を要求いたしました総理府海上自衛隊船舶国有財産台帳価格に関するものの一件でございます。  以上をもって概要の説明を終わります。
  11. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 以上で昭和六十二年度決算外二件の概要説明の聴取は終了いたしました。  これより質疑に入ります。  本日は全般的質疑第一回を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 千葉景子

    千葉景子君 本日は官房長官にもおいでいただいておりますけれども、定例の記者会見もおありということでございますので、質問の順序を整理をして、できるだけ官房長官の部分をさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。  まず最初に、昭和六十二年度決算審議するに当たりまして、昨年審議をいたしました六十一年度決算を振り返りまして質問をさせていただきたいと思います。  昭和六十一年度決算は、本院において是認しないということで議決をされましたが、その場合の内閣の政治的責任の問題についてはこれまでもたび重ねて論議をされているところでございますけれども、六十一年度決算審査の間におきましては特別具体的な回答はいただくことができませんでした。過去におきまして佐藤元総理が、決算の不承認が発生した場合解散もあり得ると御答弁をされていることはもう御承知のところと思いますけれども、今回は一院のみの不承諾ということでございますけれども、政府の財政運営についての大変重大な意思表示であると私は考えております。  こういう昭和六十一年度決算が是認されなかったことについて、本来ならばまず総理のところかと思いますけれども、代表いたしまして官房長官、政府としてはどうこの事態を認識されているのか、まずお聞きしたいと思います。
  13. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 昭和六十一年度決算につきまして、衆議院では御理解をいただきましたけれども参議院では御理解を得られなかったということはまことに遺憾でございます。政府としては、国会の御審議や御指摘を踏まえまして、今後とも予算の適正かつ効率的な執行に努めて、国会の御理解をいただけるように十分努力をしてまいりたいと思っております。
  14. 千葉景子

    千葉景子君 いつもそういう御回答はいただくのでございますけれども、それでは実際に具体的にどういうことを政府として行われているかということは、大変私も疑問のところでございます。  そういう意味で大蔵大臣にもこの点を少しお聞きしたいというふうに思うんですけれども、昭和六十一年度決算については、自民党の皆さんの方からは、決算を是認しないということはもう大変な内閣に対する最大の責任追及であるから、その上さらに警告を行う必要はないという御意見も出まして、従来の慣例に反して警告決議を行うことはこの委員会としてはできませんでした。そのために警告決議は見送られたわけでございます。  しかし、従来、決算に関して議決が行われますと、大蔵大臣がその議決通知を各省各庁の長に通知するとともに、今後の予算執行等に当たってその議決の内容を十分尊重して遺憾なきを期せられたい旨の通知をなさっているとも伺っておりますが、大蔵大臣は、今回決算が是認されないという、これは最大の責任問題でございますが、各省各庁の長に対してどのような通達なりあるいは指導などを行われたのか。先ほどの警告決議というものは見送られましたけれども、こういうことも含めてお聞きしたいと思います。
  15. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今官房長官からも述べられましたように、昭和六十一年度決算につきまして参議院で御理解を得ることができなかったということは、私どもとして大変遺憾なことであると考えております。この際、官房長官に十三項目の申し入れが行われ、その項目につきまして内閣から私どもの方に連絡を受けました。  国会におきまして警告決議、あるいはその決算審査そのものの中で御指摘を受けました点につきましては、各省に対しまして議決の趣旨を通達すると同時に、会議等を通じてそれを周知徹底させることによりまして、かかる事態が再び発生しないように予算執行上の適正化に努めているところでありまして、今回も六十一年度決算に係る六会派からの申し入れを内閣から連絡を受けました時点におきまして、各省に対しその内容について連絡をいたしております。その申し入れ事項につきましては各省庁において適切に対応されているものと考えております。
  16. 千葉景子

    千葉景子君 ちょっと質問が飛んで大変恐縮ですけれども、現在の中東にかかわる問題、あるいはこれからの国際関係などについて官房長官のいらっしゃる間にさらに少し質問を続けさせていただきたいというふうに思います。  ところで、きょうは十月の三日でございまして、もう既に報道等もされておりますけれども、東西両ドイツが統一をされたという歴史にも残る大変な日になろうかというふうに思います。こういう事態を見てもわかりますように、今世界は冷戦の時代が終わって新しい軍縮、平和の時代へ向かって模索が続けられている、こういう状況だろうと思います。そういう中で、今国連の機能などにも大変注目が集まっている。しかし他方において、今回のイラクのクウェート侵略のような大変残念な事態も起こっている。こういう新しい今の状況について、これからの国連の機能なども踏まえて政府としては現状をどう認識され、これからの国際的な平和確立についてどんなお考えを基本的に持っていらっしゃるか、まずお伺いをしたいと思います。
  17. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) まさに総理大臣の答弁するに値するような大きな問題でございます。しかし、今千葉さんがおっしゃったように、世界は大きく激動をいたしておりまして、そしてあの冷戦の構造ががらがらと音を立てて崩壊をする、ベルリンの壁は崩れる、そしてこんなに早くと世界じゅうのだれも思っていなかったヨーロッパが冷戦から協調の体制に移り、ドイツの統一ができた。まことに私は大きな時代の変化であり、我々が待望しておった時代に遭遇してきたということを痛感いたします。  統一ドイツができて、祝福をされて出発をいたしましたが、やがてヨーロッパの夢はECの統一と申しましょうか一本化に向かってあすは進んでいくのではないかという期待もいたしております。  しかし、そういう時期にありまして、雪解けのころがまた一番危ないというのはやっぱり今までの歴史の示すところでありまして、このイラク問題に端を発しました国際紛争につきましても、我が国といたしましても国連を中心にして全力を挙げてでき得る限りの、我が国の憲法の許す範囲内で協力をしようとしておるわけであります。  アジアの方面におきましても、東西の冷戦構造の変化、対立から協調へという図式がいよいよあらわれ始めてきたような事態が起こってまいっております。韓ソの国交回復は電撃的な回復でありましたし、あるいはまた日朝の今後の国交正常化についての努力というものも行われております。そういうときにおきまして、我が国といたしましてももちろん国連を中心といたしました今までの我が国の外交の進路、安全保障の求め方、これは正しかったと思っておりまして、国連の平和維持活動についてもその他の諸活動についてもできるだけ協力をいたしていきたいと思っております。  ただ、国際的な枠組みは国連を中心にして大きく動き出していってほしいと思いまするが、先ほども申しましたこともございまして、我が国の安全保障ということにつきましても決してなおざりにはできません。もちろん専守防衛、非核三原則、憲法の枠内ということもございますが、日米安保体制というものを堅持していく必要もある、そういうふうに思っております。  大きな時代に遭遇をいたしまして、今までかつてないような事態に対処していかなければなりませんので、政府といたしましても、国連中心、あるいはまたヨーロッパ、アジア、アメリカ、すべての面にバランスよく目を光らせて努力をいたしていきたいと思っておるのが所感でございます。
  18. 千葉景子

    千葉景子君 特にこれから日本の果たす役割というものも大変重要になってこようかというふうに思います。  ただし私はこう思います。今こそ国連中心に、しかし日本の憲法を誇りを持って世界に示し、そしてそれに基づいた活動をする時期が来たのではないか、こういう感じがいたします。  今官房長官からもお話がございましたけれども、確かに、国連を中心にさまざまな活動を展開することはこれから大変重要なことだと思いますけれども、それと日本の個別の武力行使を放棄して世界的な平和を追求していこうという姿勢は、やはりどこまでも基本に置いていただきたいというふうに思うんです。それを基本にしますと、どうも政府の対応というものが本当に明確なものであるかということについて、私は若干疑問でございます。これまでの行動を見ておりますと、どうも目先に左右されているのではないか。これからいろいろな国連中心の活動をするといっても、資金援助もアメリカに資金を援助するわけではない、やっぱりこれからの国際平和に寄与できるような資金援助をしていかなければいけないだろうというふうに思います。そしてその反面、日本の歴史などを振り返って、今取りざたされている自衛隊の問題などは、これは本当に慎重に、そしてその派兵などについては禁じられているということをやはり肝に銘じておいていただきたいというふうに思います。  むしろ、国連の機能も冷戦下で機能できなかったものが今ようやく再生を始めたということですから、日本としてはむしろ今の目先にとらわれるのではなくて、これから先本当に国連の機能を十分に充実させていくとすればどんなことができるのだろうか、そういうことも含めて総合的に考えていく必要があるのではないかというふうに思いますけれども、日本の役割などについて、政府としてのお考えはいかがでしょうか。  国連というのは平和維持ばかりではなくてそのほかにも人権問題等を含めて大変重要な機能を果たしている、そういうことにも目を向けて日本は地道な活動を続けていくこと、これが遠回りかもしれませんけれども、本来の信頼を得る道ではないかというふうに思いますけれども、その点これからの日本の役割についてどうお考えでしょうか。
  19. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) もちろんイラクの問題、クウェート侵攻などのようなこういう世界の平和に直接的に衝撃を与えるような侵略などというものは絶対に阻止していかなければならぬということは、これはもう国連の一致した決議であり、安保理の決議にあらわれたとおりであります。もちろん我が国といたしましては、今までも国連中心外交で進んでまいりました。現に、おとといまで海部総理はニューヨークの国連総会、子供のための国連総会にも出ておりまして、幅広い面で、人道的な面で活躍をいたしておるわけであります。本当に我が国は、安全保障のみならず、経済、文化、外交すべての面で国連中心主義にやっていくという今までの路線は正しかったし、さらに一段と努力を進めていかなければならない、そういうふうに思っております。  また、平和に対する貢献の点につきましては、今国連の平和維持活動についてまだまだ足りないのではないか。日本でできるような範囲内でもっといい案がないかというような意見もございます。目下鋭意法案作成の段階で検討しておるということでありますが、しかし、物事には原則というものがあります。そういう意味で、この国連平和協力法なるものの原則として私が申し上げるとすれば、国連決議に関連した平和維持活動に協力するための態勢の整備ということで国連平和協力法とでも言う名前の法律をつくりたいということでございますが、これはもうそのときには現憲法の枠組みの中で立法をする。つまり、武力による威嚇または武力の行使はこれは伴わない、こういうことでありまして、そして我が国は、資金の面でも物資の面でも、輸送の面はまだ不十分だと言われまするが、いろいろ協力をしておりますけれども、汗を流して、そして協力する姿勢が足りないというのが諸外国の批判でありますから、やっぱり国連平和協力隊という人的要因が入らないと世界の評価を得られないということで、そういうふうに国連平和協力隊を新設するというようなこととか、これにつきましてはもう広く日本の各界各層の皆様方からの御協力をいただきたい。そういうときには、もちろん民間の方が来ていただけるのが一番ありがたいんですけれども、公務員であっても、あるいは非武装の自衛隊の職員であっても参加をしてもらいたい。  ただし、そのときには自衛隊を自衛隊として派遣するのではありません。これは完全な新しい、国連の平和に寄与するという平和協力隊というものでやりまして、平和協力隊をシビリアンコントロールのもとに派遣する。いろいろ考えておりまするが、そういうことを骨子として今作業中でございます。ひとつその点でまた御指導、御鞭撻を願いたいと思っております。
  20. 千葉景子

    千葉景子君 今のお話で平和協力隊の問題が出ましたけれども、おっしゃっている割には非常に中身があいまいで、大変疑問に思う点も多々ございますので、また後ほどお尋ねをしたいというふうに思っております。  ところで、今国連中心に進めるということについてお話が出ましたけれども、確かに国連中心、国連を尊重するということは大切ですし、これからもそれが基本になろうかと思いますけれども、国連中心というのは言葉では簡単ですけれども、では一体国連中心にというのは何をやって、日本の憲法からいえば何ができて、そして逆に言えば、これは幾ら国連が決めたからといっても日本としてはやれないものがあるぞ、こういうことをきちっと整理して、そして明確な形でこれから協力をしていくということがまずもって必要だと思うんです。どうもそこのところがはっきりとしていない。国連中心と言えば何か物事が全部まとめて終わってしまうというような感がしないでもございません。  そういう意味で少し整理をさせていただきたいんですけれども、国連憲章がございます。これに基づく機能というものは、私が考えるところ大きく言って三つあるのではないかというふうに思うんです。一つは、紛争の平和的解決とそのための平和を維持する活動。それから平和の破壊、侵略行為に対する軍事的あるいは非軍事的制裁措置。これは四十一条、四十二条、四十三条などに規定をされております。それともう一つ、個別的、集団的自衛権の行使、これは五十一条に記載がございます。これが大きく分けた基本的な国連加盟国のなし得る行動だというふうに思うんです。  私は、この中でまず五十一条、これについて日本の憲法との関係で、国連憲章にあることであるけれども、本当に国連中心ならここまで行動できるのかどうか、その点についてまずどうお考えなのか。ちょっとその辺の見解の整理をお願いしたいと思います。
  21. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘ございましたように、国連憲章第五十一条におきましては、国連加盟国が国際の平和及び安全の維持に安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間、個別的または集団的自衛の固有の権利を有するというふうに規定してございます。  これも御指摘のとおり、我が国は主権国家といたしまして個別的または集団的の自衛権を国際法上は有しておりますが、我が国の憲法上はこの集団的自衛権の行使は認められないというのが従来からの解釈でございます。
  22. 千葉景子

    千葉景子君 そうすると、今のお答えから言いますと、国連憲章五十一条に基づく行動というのは、これは日本は関与することはできない、今後とも政府としてはこういう何らかの要請なり行動があっても絶対に参加をしないというふうに明確に考えていらっしゃるということでよろしいですね。
  23. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 先ほど官房長官から御答弁ございましたように、例えば、現在検討中の国連平和協力法案等におきまして我が国がとる措置、我が国がどのような形で国連の活動に協力するかという点につきましては、当然我が国としては憲法の範囲内で行うわけでございますので、我が国の憲法上認められない集団的自衛権の行使に当たるような活動は行わないということを基本原則の一つとしております。
  24. 千葉景子

    千葉景子君 それでは、今の五十一条、集団的自衛権の行使は日本国憲法のもとでは認められないということでございますが、それでは他方、国連の活動としていわゆる憲章の四十一条、四十二条に記載されているような非軍事的、軍事的な制裁措置、これについては日本国憲法との関係でどのように解釈をされていますか。
  25. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) ただいま御指摘のございました、非常に重要な点でございますけれども、御案内のとおり、国連憲章は第七章におきまして非軍事あるいは軍事的な措置をとることができるというふうになっているわけでございます。  これも御案内のとおりでございますけれども、集団的自衛権の問題はいわゆる武力の行使にかかわる概念でございます。したがいまして、我が国として経済制裁措置をとるあるいはこれに協力するということにつきましては憲法上も問題がないわけでございますけれども、武力の行使にかかわる問題につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、集団的自衛権という面で憲法上の制約があるということでございます。  ただ、この国連憲章上の制度といたしましては、いわゆる集団的安全保障という制度があるわけでございます。この第七章、特に四十二条、四十三条、その辺のところの制度はいわゆる集団的自衛権ということではございませんで、集団的安全保障という制度であることは御案内のとおりでございます。  これも確認的にお答え申し上げますけれども、この集団的安全保障というのは、ある国が侵略等を行った場合におきまして、当該国も加盟している国連自体の判断のもとに、軍事的その他の強制措置によってこのような侵略行為を鎮圧いたしまして除去する、こういう制度でございます。  ただ、これも御承知のとおり、国連創設以来東西対立等がございまして、このように国連が本来確立しようといたしました集団的安全保障という制度は実際にはこれまで機能しておらないわけでございます。したがいまして、この集団的安全保障に基づきます、例えば本来の意味での国連軍の創設というようなものは、従来行われたことがないというのが現状でございます。
  26. 千葉景子

    千葉景子君 従来行われてこなかったというのが実情だと思いますけれども、例えば国連軍というものが考えられるとすれば、従来から政府はこの国連軍というものについては、武力の行使ということで日本国憲法上はこれに関与しない、することができないという見解をお持ちだったのではなかろうかと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  27. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 私の所管は国際法の方でございますので、憲法解釈につきましては必要に応じまして法制局の方からお願いしたいと思いますけれども、先ほど御説明申し上げました国連憲章の集団的安全保障という点につきまして若干補足させていただきたいと思います。  国連が国連憲章第四十二条に基づきまして軍事的な強制措置を決定し、実施する場合におきまして、加盟国は憲章第四十三条に基づきまして、安全保障理事会と加盟国あるいは加盟国群、複数の加盟国でございますが、との間で締結される特別協定に従って国連に協力する、そういう義務を負うことになるわけでございます。したがいまして、この四十二条に基づきまして軍事的な強制措置が決定されたという場合に、加盟国あるいは加盟国群が国連にどのような協力をするかということは、この四十三条に規定しております特別協定に従うことになるわけでございます。  この特別協定がどのようなものになるか、これは先ほど申し上げましたとおり、いまだかつて本来の意味の国連軍というものが創設されたことがございませんので、したがいまして特別協定というものもこれまで締結されたことがございません。どのような協力をすることになるかというのは、この特別協定に従って行うわけでございますが、具体的な内容あるいは態様というものは必ずしも兵力の提供に限られるものではございませんで、その他の援助及び便益の提供も憲章上想定されているわけでございます。
  28. 千葉景子

    千葉景子君 今いわゆる国連憲章の中での国連加盟国がとり得る措置について説明をいただいたのですが、今回の例えばイラクのクウェート侵略に対する多国籍軍の中東への展開、これは実際には国連憲章で考えると一体どういう行為に当たると考えられますか。
  29. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) ただいま御指摘のいわゆる多国籍軍でございますが、御案内のとおりこれには一連の安保理決議があるわけでございます。  安保理決議六百六十一号は、イラクに対する侵略地域、侵攻地域からの無条件徹退の要求等を内容といたしております安保理決議六百六十号の遵守を確保するため、国連憲章第七章に基づく強制措置としての経済制裁措置を決定したものでございます。安保理決議六百六十五号は、この経済措置を決定いたしました六百六十一号の厳格な実施を確保するため、海上部隊を展開している国連加盟国に対し安保理の権威のもとで必要とされる一定の措置をとることを要請しているわけでございます。  したがいまして、先ほど御説明させていただきました国連憲章四十二条、四十三条で規定しております制度のもとでの国連軍というものとは違うものでございます。
  30. 千葉景子

    千葉景子君 今回の国連の安保理決議から考えて、こういう整理ではなかろうかというふうに思うんです。  いわゆる多国籍軍の中東への展開というのは、安保理が憲章五十一条に基づいてこれをまず確認をしている。そして、それと重なるというか、別に決議の六百六十一号で経済関係の中断、そして六百六十五号でそれを実効あらしめる海上封鎖など必要な措置あるいはそのための援助の提供の要請、まずこういう構成になっているのではないかというふうに思うんですけれども、多国籍軍の展開自体は五十一条の集団的自衛権の行使と考えるべきではないんですか。
  31. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) ただいま大変明快に分析をしていただいたわけでございますが、いわゆる多国籍軍の中東地域への展開はいかなる性格のものであるかという点でございます。この展開自体につきましては一般国際法上認められる行為でございまして、必ずしも国連憲章第五十一条の自衛権を根拠とするというふうに考える必要はないと存じております。  幸いにして、今いわゆる多国籍軍が展開しておりますけれども、現在のところ武力紛争には至っておりません。展開して待機しているという状況にございます。その点につきまして、いわゆる展開自体につきまして考えてみますと、これは二つ側面があると思います。  第一点は、いわゆる海上兵力を洋上に展開する行為でございます。これは御案内のとおり、このような海上兵力を構成する艦船が公海上にとどまる限りにおきましては、一般国際法上認められております公海自由の原則の一部をなす艦船の移動の自由ということで国際法上は認められる行為でございます。  第二点は、それでは陸上兵力の展開というのはどういうふうに考えるべきかという点でございますけれども、これをイラクの近傍の第三国、今回の場合には具体的に言いますとサウジアラビアということになりますけれども、このような第三国の領土に展開する行為、これは、これらの陸上兵力はサウジアラビア政府の要請に基づきまして同国の領土内に展開されているものでございます。一般国際法の問題にまたなりますけれども、国際法上、この領域国の同意を得まして当該領域国の領土に兵力を展開するということは認められる行為でございます。  繰り返しになりますけれども、現在、幸いにいたしまして武力衝突というのが起こっておりません状態での多国籍軍の展開の法的性格、国際法上の性格というものはこのように考えてよろしいかというふうに思っております。  ただ、仮に不幸にいたしましてこのような多国籍軍が現実に武力の行使を行うということがあるとすれば、それはクウェートの正統政府から国連加盟各国に対してなされました要請に基づきまして、国連憲章第五十一条の定める個別的または集団的自衛権の行使というものとして行われるものになると思います。このことは、先ほどもお触れになりました安保理決議六百六十一号の前文におきましても明示的に確認されているところでございます。ただ、繰り返しになりますが、展開自体は先ほど申し上げましたような法的な整理になるかというふうに考えております。
  32. 千葉景子

    千葉景子君 そうしますと、安保理決議でなされた経済関係の中断あるいは海上封鎖に必要な措置、それに対する援助の提供、これについては確かに安保理で決議をされ、憲章に根拠を持つ行動でございます。  そうすると、これについては日本はどのように関与することができるのですか。それともできないのでしょうか。その点についてはいかがですか。
  33. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 安保理決議に基づきましてとられております経済制裁措置についてのお尋ねと思いますけれども、このような措置につきましては、従来から日本といたしましても国連のこのような努力に積極的に協力してきているところでございます。現在もこの経済措置に関する国連決議に従いましていろいろな経済制裁の措置をとっているということでございまして、このような協力は種々の面でできるものというふうに考えております。
  34. 千葉景子

    千葉景子君 六百六十五号で決議をされた内容についてはいかがでしょうか。
  35. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) ただいまの御質問の骨子は、六百六十五号で定められました、あるいは要請をされておりますいわゆる海上封鎖のことかと存じますが、その点につきましては、この国連決議六百六十五号は対イラク経済制裁の実効性確保のために海上部隊を展開している国連加盟国に対しまして安保理の権威のもとで必要とされる一定の措置をとることを要請するとともに、すべての国に対しましてこれらの国連加盟国が必要とする協力を国連憲章に従って提供することを要請しているわけでございます。  我が国は、先般、湾岸の平和と安定の回復のために安保理の関連諸決議に従って活動している各国に対しまして、輸送の協力でございますとかあるいは物資面での協力あるいは医療協力資金協力というような協力を決定いたしまして、現在実施しているところでございます。
  36. 千葉景子

    千葉景子君 私は、非常にここの整理が難しいと思うんですけれども、現在多国籍軍、これについては国連決議に基づいて一定の海上封鎖あるいはそれを実効あらしめる措置ということが認められております。しかし、実際には多国籍軍は、その指揮命令系統というのは国連の指揮命令下にあるわけではなく、それぞれの国の軍隊の指揮命令下にあるということになります。そこが日本が関与する関与の仕方というものは非常に微妙な問題になるのではないかというふうに思うんですね。とりわけ、もし補給活動とか後方支援、こういうことが問題になるとすれば、これは日本の憲法のもとにおいては認められない活動になってくるのではないかと思われるのですが、その点はいかがでしょうか。
  37. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) まさしくただいま先生御指摘のとおり、いわゆる多国籍軍と申しますものは憲章上の国連軍そのものではございませんで、したがいまして、この点も御指摘のごとく国連の統一的な指揮のもとにあるというものではございません。まさにそのようなものとして多国籍軍というふうに呼ばれているわけでございます。  先ほど御提起のありましたいわゆる海上封鎖の問題につきましては、これも確認的な点になると思いますけれども、現在海上部隊を中東地域に展開しております国連加盟国に対する協力と申しますものは、先ほどちょっと触れましたように、輸送協力あるいは医療協力等というような形の協力で我が国としては行っているものでございまして、いわゆる海上封鎖という行為そのものに対して直接に協力を行うものではございません。我が国の協力が憲法の枠内で行われるべきことは、これは当然の前提でございます。
  38. 千葉景子

    千葉景子君 今回の国連決議に基づくさまざまな行動を見ておりましても、国連を中心にというふうに一言で言っても大変複雑であり、あるいはさまざまな問題が重なり合っている、大変難しいことであろうというふうに思うんです。そういう意味では、私はこれからいろいろな事態に対処する場合でも、言葉で国連中心と言うだけではなくて、一つ一つやはり憲章の意味、決議の意味、それから実態、それを踏まえて日本の憲法に照らした行動をとっていく必要があるだろうというふうに思っているところでございます。そういう意味ではきょう一応今回の国連決議にかかわって一定の整理をさせていただいたわけですけれども、これからも一つ一つ検証を深めてやっていただきたいというふうに思うところでございます。  そういうことを考えると、先ほど官房長官から平和協力法案の問題が出てまいりました。これは今検討がなされている最中であるというふうに伺っております。新聞等に報道されておりますが、それによって理解するのではひょっとしたら誤解があってはいけない、私は、中身をぜひ知らせていただきたいというふうに思いましたのですが、これについてはまだ協議をしている途中だからそれはまかりならないということで、これは今問題にしたようにこれから微妙ないろいろ難しい問題があるときに、政府がそういう姿勢で論議を公にしていかないということは私は大変遺憾に思っているのですが、ちょっと確認をさせていただきたいというふうに思います。  新聞報道等を見ますと、今検討されているという国連平和協力法案なるもの、大変中身があいまいだというふうに思います。一つは、国際紛争の解決を目的として国連が行う決議に基づき、またはその実効性を確保するために行われる活動に対して協力をするというようにも伺いますし、あるいは国連決議に関連した平和維持活動に協力するものだというふうにも伺いますし、そこがまず第一点非常に不明確なところでございます。ここは一体今どんなふうに検討が進められているのでしょうか。
  39. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 現在検討中の国連平和協力法の骨格につきましては、先ほど官房長官から御答弁のあったとおりでございます。そのような骨格の国連平和協力法の具体化、法案化というものを急ぐようにという総理からの御指示を得まして、現在関係各省間でいろいろ意見交換をいたしまして鋭意検討中のところでございます。したがいまして、まだ本日の段階で具体的にこの条文がこうなるというところが言えないので、その点御理解を得たいと思います。近く法案が固まりました段階でこれをお示しいたしまして、国会で御審議いただきたいと思っている次第でございます。  したがいまして、ただいま御指摘のあった国連決議との関連でどのような規定ぶりをするかというところも含めまして、現在鋭意詰めているところでございます。
  40. 千葉景子

    千葉景子君 これは鋭意詰めていただいて、それではいこれよと言われても、逆に言えば大変問題のあるところで、どうも詰められている方向を見ますと大変懸念を感じる部分がたくさんあるものですから、むしろぜひそこを指摘させていただいて、憲法下で、しかも国際的にも信頼を得られる、アジアの関係などでも本当に懸念を持たれないような、そういう日本のこれからの行方を考えていかなければいけないというふうに思うんです。  国連が行う決議に基づいてやるか、あるいは決議に関連したものも含むか、そこは大分大きな違いがあるというふうに思うんです。先ほども今回の国連決議の問題で考えたように、国連決議と密着したような行為というのは大変多いし、そしてそれが一面では集団的な個別の自衛権の行使、日本が禁止をしている行為に該当する、それともう隣り合わせだというようなこともたくさんこれからもあろうかというふうに思うんです。そうなりますと、国連決議に基づいたものではない、関連したものを含むというようなことになりますと、これは相当広い範囲に道を開くという危険性も含んでいる。そういうところを考えますと、この法案はどうかは別といたしましても、少なくとも国連決議がない以上日本は関与すべきでない、ここは明確にすべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  41. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 国連決議と一口に申しましても、いろいろな形態のものがあるわけでございます。安保理決議もございますしあるいは総会の決議というものもございます。したがいまして、国連決議というものは非常に内容が千差万別でございまして、これにどう対応していくかということはなかなか難しい点があろうかと思います。  そのような点も踏まえまして、先ほど申し上げましたように、国連決議との関係をどういうふうに法案の中で規定するかというところは、まさに現在詰めているところでございます。答弁する立場から申し上げますと、ここはこうだと、今の案文はこうなっているということをはっきり申し上げることができますれば大変楽なのでございますが、現在の状況はそういうことでございますので、その点は御理解いただきたいと思います。  ただ、これは先ほど官房長官からも御答弁ございましたように、国連による国際の平和及び安全の維持のための活動に対する我が国の協力につきましては我が国の憲法の枠内で行うということは当然の前提でございまして、この点を基本に据えて私ども作業を進めさせていただいております。したがいまして、武力による威嚇または武力の行使に当たるような行為は行わないということを基本に据えている次第でございます。
  42. 千葉景子

    千葉景子君 少なくとも日本の集団的自衛権行使の危険な道が開かれるようなそういうことだけは絶対にやってはならない、この点については確認をさせていただきたいと思います。そういう意味では、日本の憲法の枠組みの中で国連決議を中心にして活動するということが基本的な認識ではなかろうかというふうに思います。  それと、やはりこの協力法の中身で今報道などがされておりますのは、いわゆる自衛官あるいは自衛隊の参加の問題でございます。これも知らされてくる範囲では極めてわかりにくい、非常に不明確である。そしてこういうことから自衛隊の派兵につながるのではないかとアジアの諸国などからも今大変懸念が示されているということは、もう御承知のところというふうに思います。  そこで、これも知る範囲でございますけれども、確認をさせていただきたいというふうに思うんですけれども、一体今回考えられている自衛隊の参加、自衛官の参加というのは、どういう形でどんな身分で行われるんでしょうか。何か併任というような身分だということも報道されておりますけれども、一体どんな内容なのか、御説明をいただきたいと思います。
  43. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 自衛隊の参加につきましては、先週、総理からこの平和協力法の骨格が示されました中にもございましたし、また、先ほど官房長官からも御答弁のあった点でございます。  これは繰り返しになりますけれども、自衛隊につきましても、これが平和協力隊に参加いたしましてその指揮下に入るという原則で現在法案を詰めているところでございます。  しからば、その身分がどうなるかという点でございますが、これにつきましては報道でいろいろな考え方が出ておりますけれども、まさしくこの点は現在関係各省間でこのような身分制度の専門家の意見も聞きながら詰めているところでございまして、現段階では固まった案文がございませんので、近い将来に案文の固まった段階でお示しいたしましてごらんいただきたいと思います。その上で御審議を願いたいと思います。ちょっと奥歯に物の挟まったような答弁で申しわけございませんけれども、現在そういうことでございまして、この身分関係につきましても重要な検討課題の一つでございます。何分我が国として初めて書く種類の法案でございますのでいろいろ難しい点もございますが、遺漏なきよう関係各省間で十分に協議をいたしまして案文を詰めていきたいというふうに考えております。
  44. 千葉景子

    千葉景子君 当然、奥歯に物が挟まっちゃうと思うんですよ。自衛官や自衛隊を何とかして参加させたり派遣しようと思うから、妙ちくりんな身分関係になったり奥歯に物が挟まった言い方しかできないような結果になるのではないかというふうに思うんです。  防衛庁の方にお聞きしますけれども、現在、こういう併任と言われているような身分関係、例えば大使館配属の武官とかあるいは自衛隊法の施行規則などで定められている兼職という制度があるようですけれども、今回のこの自衛官の派遣、そしてその身分については防衛庁としてはどんなお考えを持たれているんでしょうか。
  45. 日吉章

    説明員(日吉章君) 現在検討されております国連平和協力法につきまして、自衛隊がいかなる形で協力することが望ましいかという点、それに伴いまして身分関係等をどうすればよろしいかという点につきましては、ただいままで外務省の条約局長からもお話がございましたように、政府間におきまして各般の方面から慎重に検討が進められているところでございますので、政府部内で調整中の段階でありますゆえをもちまして、防衛庁としていかなる考え方であるかという点をこの場で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、ただいま委員の方から御質問がございました兼職という制度、これに基づきまして現在どのような実例があるかということでございますが、兼職といいますのは、自衛隊法第六十条とその施行規則第六十条の規定に基づきまして、一定の要件のもとに防衛庁以外の国家機関の職を自衛隊員が兼ねる、あるいは地方公共団体の機関の職につくことができるという規定でございます。  現在ございます代表的なものといたしましては、ただいま政府専用機の購入を総理府の方でお進めになっておられますけれども、それが購入されました場合には航空自衛隊のパイロットがそれを運航するというようなことが最も適切ではないかということで現在予定されているわけでございますが、このパイロットとして予定されている者を、現在この政府専用機は総理府管理する航空機といたしまして購入を準備いたしておりますので、航空自衛隊のパイロットを航空自衛隊の身分を持ちながら総理府の方の職を兼ねさせる、こういうような形で兼職をさせている例がございます。これが人数的にも大きな人数になっている、かように理解いたしております。
  46. 千葉景子

    千葉景子君 これはどうもまだ明確な御答弁がいただけなくて非常に心配をするところなんですけれども、この問題については中国などからも大変強い懸念が表明をされているというふうに私も認識しています。そういう意味では、やはり自衛官、自衛隊の参加ということについては、私は基本的にはやるべきではない。しかも併任とか、身分関係も指揮命令系統も大変あいまいであるというような形で行うべきではないというふうに考えます。  そういう意味では、諸外国などではこういう国連の活動などに協力する際、どのような形で行われているのか。例えば北欧諸国などではいわゆる国連待機軍というような言葉で言われておりますけれども、そういう組織で別途態勢を整えているというようなことも伺っていますけれども、こういう諸外国のこれまでの実績等を検討なさる、あるいはなさっているというようなことはございませんか。
  47. 池田右二

    説明員(池田右二君) 国連平和協力法の検討に当たりましては、私どもも諸外国、特に北欧等の制度を勉強してやっておるわけでございます。ただ、諸外国の制度と我が国が今新しく検討する制度というものは、状況が違うわけでございますから、一応参考にはして勉強しておるというところでございますが、我が国は我が国独自の状況を踏まえて対応するという考えでやっているところでございます。
  48. 千葉景子

    千葉景子君 これから国連を中心にした活動あるいは協力を行っていく、そういう際に、憲法の枠組みの中で、しかもアジア諸国などからの懸念なども勘案をするとすれば、やはり安易に自衛隊の派遣などということを頭に置くのではなくて、真に平和維持に貢献できるようなそういう組織形態とかあるいは関与の仕方というものをもっとじっくりと考えていくべきではなかろうかというふうに思います。  特にこれからは国連のいわゆる平和維持の活動、停戦の監視であるとか選挙の監視であるとかあるいは行政の監視というような、そういう平和を維持していく活動、こういうことも大変重要になってくるとすれば、やっぱり任務というものは、いわゆる自衛隊の任務とこういう国連に協力する任務というのはおのずから性格も違う、あるいは行動も違う、こういうことが言えるのではないかというふうに思うんです。そういう意味では、自衛隊の派遣などということではなくて、北欧の国連待機軍とか諸外国のものだけがよろしいというのではなくて、日本がやり得るそういう国連平和維持活動、PKO活動などに本当に貢献できるような独自のこれからの方向性をぜひ探るべきではなかろうかというふうに思いますけれどもいかがでしょうか。
  49. 池田右二

    説明員(池田右二君) まさに先生がおっしゃられたとおり、それからまた私が先ほど御答弁申し上げたとおり、我が国といたしましては国連の平和維持活動、これに対しても十分な協力ができるように、例えば先生がおっしゃったような監視の活動、特に文民による選挙の監視、その他平和維持活動はさまざまな活動がございますけれども、そういったものにも十分我が国として貢献できるような内容を我が国独自の立場から考えてこの法律内容を定めていこうと考えている次第でございます。
  50. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひそういう方向にしてほしい。そのためには本当に自衛隊の派遣などを考えずに、ぜひ違った形での貢献の方向を探っていただきたいというふうに思います。  国連の活動として最初に幾つか整理をさせていただきましたけれども、PKO活動、こういうものはこれから大変重要な中心の課題になってくるのではないかというふうに思うんです。これはノーベル賞なども受賞して、これからの平和維持に大変重要だというふうに言われている問題です。そういう意味では、こういう面に着目をすること、あるいは国連などでも事務総長が大変こういう問題について――まあ国連の財政の確立の問題、あるいは安保理事国の構成の問題、こういうことなども今後重要な課題になってこようかというふうに思うんです。むしろそういう面に日本は力を入れたりあるいは目を向けていくという姿勢がぜひ大切だというふうに思います。単に何とか自衛隊を派遣したい、そのために、自衛隊は行くんだけれども武器は持たないというような、極めて矛盾に満ちた、そしてわかりにくい、批判が出るようなそういうことはぜひやめていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  51. 池田右二

    説明員(池田右二君) 今般の国連平和協力法の策定に当たりましては、先生が今おっしゃいました国連のPKO、平和維持活動に対して我が国が適切かつ十分な貢献ができるようにということも非常に重要な一つの要素としまして念頭に置いて検討しておる次第でございます。人員の派遣、それから先生がおっしゃいました財政面における貢献、この面ではこれまで我が国は相当な貢献をしておるというところでございます。今後もそういう面においても一層十分な貢献ができるということを念頭に置いてやっていくつもりでございます。
  52. 千葉景子

    千葉景子君 この問題については、今後またさらにいろいろな形で審議あるいは論議がされることと思いますけれども、ぜひきょうの議論なども尊重していただいて、これからの日本の平和へ向けた取り組みというものを強化していただくということを要望しておきたいというふうに思います。  それで、ちょっと順序が大変あっちへ行ったりこっちへ行ったりして恐縮ですが、先ほど決算の問題を官房長官がおられるところでお聞きしまして、それから中東の問題に移ってしまいましたけれども、残り時間で決算審査について何点か確認をさせていただきたいというふうに思っております。  六十一年度決算について、野党が共同して十三項目の警告事項といいますか、警告決議にはなりませんでしたけれども、問題点を整理して官房長官に提出させていただいたということは御存じかというふうに思います。先ほど大蔵大臣の方からもそのお話が出てまいりました。これは参議院の議決とはなりませんでしたけれども、内容としては、こういう理由だからやはり決算は是認することができなかったんだぞという大変重要な指摘であろうというふうに思います。  その中身は、ここで一つずつこれはどうしたと言うわけにはいきませんけれども、何点か大変重要な指摘もあろうかというふうに思うんです。  例えば税収見積もりの誤り、これについては従来から言われておりましたけれども、このような誤差が生じないように、例えば税収区分の年度変更の復元問題などを含めて検討すべきではないかというような指摘もされておりました。あるいは政府関係機関資金の貸し付けを業務とする公庫の中に決算処理において貸倒引当金を損益の調整勘定的に運用しているものがあるけれどもこういうことはいかがかというような指摘もされておりました。あるいは最近のリゾート開発問題で農薬使用など環境汚染、こういうことについて適切な施策を講ずるべきではないか、こういう指摘もございましたし、あるいは産業廃棄物の不法投棄の問題、また身体障害者の雇用の促進の問題、こういう点でもっと適切な施策を行うべきだ、こういうことに欠けているというような指摘などもされていたわけでございます。  きょうは各省にお伺いする時間はございませんけれども、大蔵省の方などで、これは官房長官に提出をさせていただいたものでございますので、この指摘などについてどんな改善あるいは検討などが加えられているのか。全く、これは聞きおいておこうということで終わってしまっているのか、そこのところをちょっときちっとお答えをいただきたいというふうに思います。
  53. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先刻もお答え申し上げましたが、十三項目にわたる申し入れは内閣から確かに私の方で受領いたしました。そして各省にそれぞれそれを伝達いたしたわけであります。今個別に御指摘のありました点につきましては、それぞれの事務当局から御答弁をさせたいと思います。
  54. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) ただいま御指摘いただきました税収の点でございます。六十一年度に見積もりの差額があって遺憾であるという御指摘をいただいております。確かに六十一年度にかなりの大きな見積もり誤差を生じたわけでございまして大変残念でございますし、申しわけないと思っております。  ただ、そのときに景気の転換点があったという点でございますとか、三高二安といういろいろな経済状況もあったというふうなこともあわせて御理解を賜りたいと思いますが、その後さまざまな角度からこの税収の見積もりというものにつきまして正確を期すべく努力してまいっております。いろいろな可能なデータを活用するばかりではなくて、大法人についての聞き取り調査でありますとか、あるいは企業収益動向をあらゆる角度から資料収集してみるとか、あるいはヒアリングをするとか、さまざまな努力をさせていただいておるところでございまして、平成年度の実績で申し上げますと、補正後予算額に対しまして六千九百億ぐらいの見積もり誤差というふうなところにまで参っておるところでございます。これからも御指摘を踏まえまして十分努力をさせていただきたいと思います。  年度所属区分の変更の御指摘がございました。  これは確かに御指摘のように、税収見積もりをこの年度所属区分が難しくしているという事実はございますわけでございますけれども、直ちに旧に復するということにつきましては、非常に金額が大きいものでございますから、その財源を再び特例公債の発行によらざるを得ないというふうなこともあり得るわけでございまして、今後の重要な課題と認識しております。直ちにという問題ではございませんけれども、もろもろの可能性を今後検討していきたいと思っておりますが、まずはこの財政体質の改善ということが第一ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  55. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) 政府関係機関のうち、資金の貸し付けを業務とする公庫の貸倒引当金についての御指摘でございます。  この貸倒引当金の繰り入れ限度につきましては、公庫が民間金融機関から金融を受けることが困難な者などに対する融資を行っておるということ、したがいまして、民間に比べてより大きな貸し倒れリスクを負っていることなどを考えまして、民間金融機関の倍の千分の六を限度と定めております。現在これらの公庫は、この限度の中において公庫の経営の状況とか貸倒償却の実績、貸出債権内容などを勘案しながら、可能な範囲で繰り入れを行っているところでございます。  このように貸倒引当金を手厚く積めるように措置してありますことは、金融機関としての公庫の経営基盤の強化に資するものでありますし、公庫が経済状況の変化に適切に対応することを可能にするものと考えて運用しておる次第でございます。
  56. 松野允彦

    説明員(松野允彦君) お申し入れの第七項目目に、大和証券の損失補てん問題に絡みまして、証券検査機能の充実強化ということをすべきではないかという御指摘があるわけでございます。  大和証券の損失補てん問題につきましては、証券取引の公正性あるいは証券市場の透明性を損なう行為だということで非常に好ましくない行為だというふうに受けとめて通達を出しまして、事後的な損失補てんにつきましてもこれを行わないように厳に指導をしているところでございます。  御指摘の証券検査の充実強化でございますが、証券取引が非常に国際化が進んでまいりましてますます複雑になってまいっておるわけでございまして、私どもはそういったものに対応して検査の充実を図るために、検査官に対する研修をさらに充実し、検査官の資質の向上を図るとともに、検査のやり方につきましても、例えば機動班を設けるなどいたしましてできるだけ弾力的あるいは機動的に検査ができるように、単に定例的あるいは定型的な検査に終わらないような工夫を凝らして、できるだけ検査の充実に努めているところでございます。
  57. 土田正顕

    説明員(土田正顕君) ただいまの千葉委員の御発言の中には具体的にはなかったのでございますが、御指摘をいただきました項目にもう一つ、多重債務の発生防止策という項目もございますので、これにつきまして御説明申し上げます。  いわゆる多重債務者の発生、それから過剰貸し付けを防止するためには、やはり原則は、まず消費者の側においていろいろ節度ある合理的な利用を行っていくのが必要であると考えられますけれども、信用を供与する側におきましても、顧客審査の充実、信用情報機関の活用などによって適切な対応を行うことが重要でございますので、私どもといたしましてもそのような観点から機会あるごとに注意喚起を行っております。  殊に、指摘されておりますものの中で若年層に対するカード発行についての御指摘もあるわけでございますが、この辺の問題につきましては、発行会社におきまして審査基準それから信用情報機関の情報の活用、与信限度額を低目に設定するというようなことによって多重債務者を防止する対策を講じてまいっておるところでございます。
  58. 千葉景子

    千葉景子君 今、大蔵省の主たる管轄になる問題についてどういう対応をしたかということをお聞きしましたけれども、審査の中で指摘された、あるいは問題が提起されたことについては、やはりこれからも決算の尊重という意味からもぜひ十分検討課題にしていただきたいというふうに思います。  そして昨年は、十二月一日の参議院本会議予備費関係三件が不承詔になっております。昭和六十二年度一般会計予備費(その2)、昭和六十三年度一般会計予備費(その1)、昭和六十三年度特別会計予備費(その1)、この三件が承諾されないという事態になっているわけです。  これに先立って、大蔵大臣だったと思いますけれども、一院で承諾を得られた場合でも他院で不承語となる理由があるなら、それを政府は真剣に受けとめて、自後における予備費使用については十分配慮しつつ行動したいという御答弁もされているところですけれども、政府としては、今回の不承詰の議決の際指摘されたこと、こういうことを踏まえて具体的に一体どう改善などを図られたのか、その点についてお聞きしたいと思います。  例えば、総理の海外出張の旅費であるとか、あるいは警察庁関係の警備活動に必要な経費、こういうものが予備費から非常に安易に出されているのではないか。あるいは予想された農業者年金の給付補助金などが予備費という形で出されていることはどうかというようなことも指摘されておりました。そして、私は思うのですが、予備費に関しましては、今回この中東問題に関しても予備費という形の中から支出が大変多額になされるということもございます。これはこれまで指摘された問題とは若干違った点でございますけれども、やはり予備費運用を明確に行う、あるいはここから安易に支出をしないで、国民の、国会の論議を踏まえて財政運営をするという意味では大変重要な問題を含んでいるのではないかというふうに思っているのですが、昨年のこの予備費の不承諾ということを踏まえてどういう対応をされているでしょうか。
  59. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 昨年、予備費三件が不承諸となりました際に、私自身、今委員から御指摘になりましたような答弁をいたしたことを記憶いたしております。  そこで、総理の海外出張予備費という点で申し上げますならば、本年七月のヒューストン・サミットへの参加経費というものは、随員あるいはその周辺諸国への訪問につきましても、サミットが元年から三巡目に入ったことでもありまして過去の例をかなり参考にできますことから、二年度の当初予算に一億二千九百万円の予算計上をいたしております。また、警察関係の経費の予備費につきましては、六十三年のソウル五輪の警備経費に車両購入費を含めていたことが不承諾の理由とされたところでありました。かかる経緯も踏まえまして、本年五月に予備費使用いたしました韓国大統領来日の折の警備経費の中には車両購入費は含めておりません。  こうした点を申し上げ、委員会の御審議の中において提起をされました問題について我々としてもできる限りの対応をしてまいったつもりであります。  予備費につきましてその節度ある使用というものに留意し、みだりに流されることのないようにその適切な処理に努めてきたところでありますけれども、これから先もこうした御指摘を受けることのないように一層適正な使用に努力をしてまいりたいと考えております。
  60. 千葉景子

    千葉景子君 それでは時間ですので、本日の最後にさせていただきたいというふうに思いますが、この決算審査につきましてはきょうから六十二年度決算審査が行われるということで、国民の皆さんに対して、このおくれというのはこれは極めて反省をしなければいけないところだというふうに思います。海部総理も決算審査についてはこれから重視をするという発言もなさっていますし、これから決算を次の財政運営に反映させていくというような意味からも、この決算をどうやって早く、そしてわかりやすくしていくかというのは大変重要な問題だというふうに思います。  そういう意味で、いろいろな方策あるいは対処の仕方ということがあろうかと思いますけれども、この決算審査を充実させ重視をしていくという姿勢を具体的にあらわすためにどんなことを考え、あるいはこういう方策を検討しているというようなことがございましたならば、最後に御答弁をいただいて終わりにしたいというふうに思います。
  61. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員の御指摘に対し、具体的な例として、先般の御審議の中における総理の海外出張に関する経費を予備費支出することについての御指摘、あるいは警察庁関係の予備費使用についての御指摘、これは既に本年度予算運営の上にも具体的に生かしてまいりましたし、これからも私どもとしてはそういう姿勢をとってまいりたいと考えております。  また、従来から政府としては決算審査というものの重要性にかんがみ、その審査についてのできる限りの御協力を行うという基本姿勢はとってまいったつもりでありますが、これからも同様の姿勢をもって対応してまいりたいと考えております。
  62. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  63. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十二年度決算外二件を議題とし、全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  64. 会田長栄

    ○会田長栄君 会田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  昭和六十二年度決算外二件の審査に当たりまして、私、この審査というものは大変おくれているのですねと、気にしている者でございます。それは、今平成年度の概算要求が整って、政府の新しい政策が次々と打ち出されてくる状況にあるから、とりわけ気にしている一人でございます。ましてや、今一日報道から目をそらすと、世界の動き、日本の動きが移り変わり、情勢がまことに混沌としているからでございます。とりわけ、これは政府自身も大いに御努力をしていることでありまして感謝と敬意を表するわけでありますが、東西両ドイツの統一、そしてソ連と韓国との国交正常化の樹立、近くて遠い国、この言葉で表現されていた朝鮮民主主義人民共和国と我が国との国交正常化への扉が開かれるという段階、こういう情勢でありますから、まことにこの決算というものは、予算編成に当たって絶えず政府が言明しているとおり、重要な課題として設定をしてやらなければいけない、こう思っている一人でございます。  以下、質問に入らせていただきますが、大蔵大臣初め関係局長にお願いを申し上げます。  まず一つは、昭和六十二年度の財政経済運営についてお尋ね申し上げます。  政府は、「決算の説明」の「経済の概観」の欄において当初の経済見通しを書き、続いて実績の数字を挙げております。その数字だけを見れば確かに似ていて、昭和六十二年度経済は順調に推移したように見られます。しかし、昭和六十二年度の当初予算編成時点を振り返ると、当時円高が大幅に進み外需の大幅な減退が予想されて内需の拡大が必要であったにもかかわらず、財政再建を優先した厳しい歳出抑制の方針を打ち出しています。その結果、社会保障制度の後退が進められ、必要な改善がなおざりにされる等の誤った政策選択が強行されたのではないだろうかというのが一つの問題であります。  その政策選択のために、予算成立後わずか一カ月足らずの間に補正予算の編成を余儀なくされ、しかもその補正予算は公債発行を財源に公共事業費を中心とする内容であったため、景気対策としては効果があったものの、財政の財源配分としては当初予算のひずみをさらに拡大するという状況になったのではないだろうか。さらにその後の第二次補正予算において、第一次で追加計上したとほぼ同額の赤字公債の発行を取り消すという状態を演じているようであります。  このように見てくると、政府経済見通しは、結果的な数字は合っていたとしても具体的には違っていた、誤っていたと言うべきでないでしょうか。少なくとも経済見通しとは違う財政運営を行い、慌てて訂正したとは言い過ぎであろうか、これが事実ではないのだろうかということでございます。  大蔵大臣の本会議の説明及び委員会での説明にはこうした財政対応の反省を欠いているものと私は思っているんですが、その点についての御見解をまずお伺いしたい、こう思います。
  65. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員から大変厳しい御指摘をいただいたところでありますが、私は六十二年度の経済というものを考えましたときに、意見として、必ずしも委員の御見解と同じ考え方には立っておりません。  これは、多少長くなって恐縮でありますけれども、六十二年度の日本経済というものを考えます場合に、やはり私どもが見落としてならないものは、昭和六十年九月のプラザ合意以降の円高による円高不況、これを経て六十一年の十一月に我が国の経済がいわば底を打った状態になったということであります。そして、昭和六十二年に入りまして緩やかな回復基調に入ってまいりましたし、二月に為替相場の安定をうたったルーブル合意が形成をされたわけでありますけれども、なお円高基調が続いておったわけであります。昭和六十二年の四月から六月期におきましては、景気に底がたさはあるものの、円高の進展などから製造業を中心に停滞感が続いて、雇用面でも大変厳しい状況にあった、いわゆる景気の二面性ということが言われたことは御記憶のとおりであります。  国際情勢をそのときに見てみますと、主要国の経済成長というものは力強さを欠いておりましたし、国際収支の不均衡というものは、是正の方向にはありましたけれども、なお大幅なものでありました。こうした経済情勢の中で内需を中心とした景気の積極的な拡大を図ると同時に、対外不均衡の是正、調和ある対外経済関係の形成というものに努めるという観点から緊急経済対策が五月の二十九日に策定をされたわけであります。これによって為替相場の安定に好影響を与え、また建設を中心とした需要増加の期待をもたらし、企業の先行きの見通しを改善させる一因となったということであります。  確かに七月から九月期に入りますと経済環境は大きく好転をいたしましたし、景気は急回復に向かいました。そして、個人消費の堅調さあるいは住宅投資の高い伸びに支えられ、また公的投資も緊急経済対策の効果により伸びを高めたわけでありまして、企業収益も改善され、雇用面でも改善傾向が明らかになってまいりました。今委員のお示しになりました見解の中には、こうした雇用面の改善とか、こうした効果が必ずしも御評価をいただいておらないような気がいたします。  十月から十二月期に入ってまいりますと、我が国の経済というものが拡大局面に向かっているということも明らかになり、国内需要が堅調に推移し、また鉱工業生産も増勢を強めてまいりましたし、企業の業況判断というものも大幅に改善をいたしました。十月中旬には御記憶のブラックマンデーといった事態も発生をしたわけでありますけれども、おかげさまで国内需要への影響というものは軽微にとどまったということも申し上げられると思います。  その後、円高傾向が強まりましたけれども、景気の拡大は今日まで息の長い成長を続けておるわけでありまして、私はこうしたことを振り返ってみますとき、今委員がお述べになりましたように失敗であったという御批判はいかがなものか。むしろ私は、昭和六十二年度の財政経済運営について、当時の経済情勢に適切かつ機動的に対応したものという評価をしてしかるべきものではないかと思います。  委員の御見解とは異なることを申し上げるようでありますが、事実に即して申し上げると今申し上げたような感じを持っております。
  66. 会田長栄

    ○会田長栄君 私は、政府の対応というものについて、決算を説明する際にやはり反省があった方がいいのではないかという意見を申し上げたわけでございまして、その経済見通しの中心になるものは当然円高でございましたでしょう。したがって、予算編成時点では、この円高というものはどの辺に基準を置いていわゆる予算編成をしたのかどうかということをお聞きしたいわけでございます。
  67. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今一体どういう為替水準を念頭に置いてという御質問でありますけれども、私ども為替の水準というものについて具体的な数字をもって考え方を述べることは慎むべきことと先輩たちからも教えられてまいりました。その限りにおきまして、私は今の御質問に対しては的確な御答弁を申し上げることは控えたいと思います。  ただ、もし委員が御指摘のポイントが予算の編成上において一体一ドルを幾らで計算したかという御指摘でありますなら、事務方に、調べて御答弁をさせます。
  68. 会田長栄

    ○会田長栄君 予算編成時点では百六十円前後ではなかったか、こう思います。したがって私がお聞きしたいのは、百六十円前後なら財政の大幅な出動なくしても景気の大きな落ち込みはないと考えて予算編成をしたのではなかったのかというのがお聞きしたい点でございます。
  69. 田波耕治

    説明員(田波耕治君) 今大臣から申し上げました予算積算レートをどう想定するかということは、その年のレートがどういうふうになっていくかということを想定したものではございませんで、予算を編成いたしますときに一定の前提を置くことが当然のことながら必要になっております。そういう意味から、従来からそのときどきの実勢相場の状況等を踏まえまして、一定のレートを設定いたしまして予算積算を行っているということでございます。  ちなみに、六十二年度積算レートといたしましては、六十一年十一月の一カ月の平均ということで、一ドル百六十三円ということで積算をしております。  ただ、繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、これはその年の為替相場の見通しを立てたものではないということを御理解いただきたいと思います。
  70. 会田長栄

    ○会田長栄君 しかし、その後円高が一層進展して百二十円台までに達して、政府の動きが急になってまいったと私は見ています。したがって、当初予算編成時に臨調路線による厳しい予算編成が継続されたことにより、輸出圧力はまだ残ると判断をしていたのではないだろうか、そしてさらに円高へと導いてしまったのではないか、こう思っているわけでございます。言いかえれば、政府が景気判断を正しく行い、当初予算の段階で財政路線を変更して、緊縮から拡大へと転換しておけば円高もいま少し小さかったのではないか、緩やかではなかったのかと思うわけでございます。この点についての御見解をいただきます。
  71. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) また委員の御意見に逆らって恐縮でありますけれども、六十二年当初というものをもう一度振り返っていただきますと、先ほども申し上げましたように、製造業を中心とした業況判断というものは、停滞、雇用情勢も厳しい。国内需要は緩やかに増加はしつつありましたけれども、円高の進展等の影響もありまして、景気の二面性を伴った緩やかな拡大局面というものであったと今考えられております。  そして、当時の財政運営を振り返ってみますと、六十二年度の当初予算におきましては、一般歳出の伸びを五十八年度以降五年連続で対前年同額以下にすると同時に、公債発行額も四千四百五十億円減額という対応をし、公債依存度を一九・四%に切り下げるなどの財政改革というものを強力に推進している中でありました。しかしその一方、公共事業につきましては、国費は抑制しながらも事業費について名目GNPの伸びを上回る伸びを確保する、当時の厳しい経済情勢に適切に対応するための措置をとっておったと思っております。  そして、六十二年五月にはそうした状況の中、内需を中心とした景気の積極的な拡大を図る、また対外不均衡の是正、調和ある対外経済関係を形成する、それが急務だという観点から、総額六兆円を上回る財政措置を伴う緊急経済対策を決定したわけでありまして、この結果として、我が国の経済が、外需は減少しましたものの個人消費は堅調に推移し、民間投資、公共投資ともに増加するなど、内需が引き続き増加したことによって回復から拡大局面に移行することができた。そして六十二年度の経済成長率は、名目で五%、実質五・四%という高い成長率を達成したわけでありまして、逆らって大変恐縮でありますけれども、私は極めて機動的かつ適切に対応してきたもの、そのように考えております。
  72. 会田長栄

    ○会田長栄君 政策そのものを事務的に私は批判しているものではございませんけれども、要するにその当時国民の間から内需拡大の声、世論というものは大きく出ていたんですね。この声をまともに受け取っていれば円高ももう少し緩やかに抑えて予算編成ができたのではなかったのかという見方でございますから、その点は押さえておいてほしい、こう思います。  この当初予算編成のときのこういう考え方が金融への負担というものをその後大きくしていったことは事実でございます。昭和六十二年度当初予算編成の際の金融政策への負担を大きくした、そのことは日銀は二月二十三日に公定歩合を史上最低の二・五%に引き下げています。その後の土地及び株式の狂乱は、この金融の緩和が遠因となっていることは否めないのではないか、こう思うんですが、これについての御所見を伺います。
  73. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) その当時、確かに金融政策におきましても、当時の物価情勢というものを含めた内外経済動向及び国際経済情勢というものを注視しながら、私は適切かつ機動的な運営が行われていたと考えております。  委員の御指摘でありますけれども、地価あるいは株価というものが経済の中における多様な要因によって決まってくるものでありますから、当時確かに御指摘を受けるような地価あるいは株価の上昇というものについて種々の要因が絡み合っていると考えられますけれども、一般的には、例えば地価について言われましたことは、基本的には国際化、情報化などによる都心部などにおける事務所需要の増大等による需給逼迫に投機的な需要が加わった。そしてこれに委員が御指摘になりましたように、金融面につきましても金融緩和政策がとられる中で全般に潤沢な資金供給というものが図られ、結果として土地に対する需要を支えた面があったことは私も否定できないと思います。また、株価につきましても、我が国経済のファンダメンタルズのよさが投資家の評価を受け、また金融緩和の状況の中で一般的に企業業績に対する向上期待というものが株式市場に資金をファンドする結果になったのではなかろうか。そうした点で、一面私は委員の御指摘に理なしとは申しませんけれども、それだけが要因としてとらえられることはいかがなものか、そうした考え方も私は持っております。
  74. 会田長栄

    ○会田長栄君 昭和六十二年度の当初予算審議の際日銀総裁が予算委員会に出席いたしまして、円高の推移からアメリカからの金利政策への期待が大きいことに触れています。触れましたね。これは明らかに財政不出動、いわゆる財政出動不十分ということの別表現だと私は感ずるわけであります。  橋本大蔵大臣は当時は大蔵大臣ではありませんでした。しかし、最近の日銀の公定歩合引き上げでは、財政当局と金融当局との意思がぴったり合っているように私は思います。その点から考えれば、六十二年当時というのは財政の後払い、金融への負担転嫁について当然あったものと思っているんです。その点についてこの説明の中では何ら反省が含まれていないものだからお尋ねしているわけであります。
  75. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は実は日銀との間に不協和音を生じたということで大分しかられた経験を持っておりまして、今大蔵省と日銀が非常に一致しているという言葉は、むしろその汚名を晴らしていただいたとさえ感じます。  しかし同時に、財政政策と金融政策というものは車の両輪のように常に連携しながら検討されていくべきものでありまして、そのときそのときの状況においていずれが出動する方がより経済に対して効果的であるのか、それはその時点時点の私は政策判断であろうと思います。そうして考えてみましたときに、当時日本が国際的に負うておりました役割、すなわち大幅な黒字を縮小しなければならない、同時に内需中心の経済成長に外需、輸出中心の経済を切りかえなければならないという役割の中で金融政策が弾力的に運用されたことは、その当時として私は一つの政策選択として誤っていたものだとは考えておりません。ただ、先ほど御指摘にありましたような、その金融緩和というものが一面好ましからざる部分に影響を与えたことがあることも私はそれを否定するものではございません。しかし、金融政策全体として私は当時適切な運営がなされておったもの、そのように感じております。
  76. 会田長栄

    ○会田長栄君 それでは次に、何回か議論されているわけでありますが、税収見積もりの違い、誤りなどについて御見解をお聞きしたい、こう思っております。  昭和六十二年度決算の数字を当たると、だれでもその税収見積もりが全くずれていたことに気がつきます。補正予算後の税収見込みと比べても三兆七千億円余の大幅な増収になっており、八・六%の乖離となっております。当初予算から見れば一三・六%の見込み違いではなかったのか。さらに、年度途中の減税分や売上税の廃案を含めれば、その誤差率は一五%を超しているものと思われます。税の自然増収は赤字財政脱却という喜ぶべき面もございます。しかし、当初にきちんと予測できれば減税その他の政策選択もあり得たわけであって、財政当局の責任はその意味では私は大きいものと思います。巨額な自然増収の出た経済要因と、この当初見積もりと結果とが大きく隔たった問題について、大蔵大臣の御見解をいただきます。
  77. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本院におきましてもしばしばこの税収見積もりの誤差につきましては御指摘を受け、そのたびに私はおわびの言葉を繰り返してまいりました。一般原則を長々と申し上げるつもりはございませんし、昭和六十二年度税収につきまして大幅な見積もりの誤差が生じましたことは御指摘のとおりでありまして、我々としても非常に残念に思っているところであります。  その原因は、株式、土地などの資産取引の活発化や円高差益の発生といった一時的な要因を背景として、企業収益が各種の経済調査機関や個々の企業自体の予測など大方の見方をはるかに上回る急激な上昇を示したことなどから、法人税を中心に大幅な増収が生じたということでありまして、事務方の諸君としてはその時期においても私は最善を尽くしてくれたと信じておりますけれども、結果としてこのような現象を事前に見通すことができなかった、非常に困難なテーマでありますけれども、そういう状況でありましたということも御理解をいただきたいと思うところであります。  いずれにいたしましても、今後ともに資料の収集あるいは推計方法などにつきまして絶えず工夫を凝らすよう、適切な見積もりを行うべく努力をしてまいりたいと考えておるところであります。
  78. 会田長栄

    ○会田長栄君 税収見積もりの大幅な誤りが連続して出てまいりますと、予算委員会でも見積もり方式の検討を大蔵大臣は約束されたように記憶しております。その後の検討により見積もり方式の改善は行われているんでしょうか、そのことについてお聞きいたします。
  79. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) ただいま大臣から六十二年度の誤差につきまして御答弁申し上げたとおり、それぞれの経済情勢の動きというものがございますので、なかなかどんぴしゃりというふうなところに至りますには非常に難しい問題がもともとある点は御理解を賜りたいと思います。  税収を見積もります場合に、その時点で利用し得る政府経済見通しを初めといたしましてあらゆる資料を使っておるつもりでございますけれども、それにつきましてもさらに一層収集の努力をいたしているところでございます。  法人税が非常に大きく振れる要素でございますけれども、もちろん税収というのは税目別に推計をしておるわけでございますが、法人税につきましては大法人のうち主要なものにつきまして年に何回となく聞き取り調査を行ってその実績というふうなものをフォローしながら推計の予測に役立てていく。あるいは企業の収益の見通しというふうなものにつきましても、大蔵省でやっております景気予測調査あるいは日銀短観、そればかりではなく各種の民間調査機関から広くヒアリングをいたしまして、そうした点につきましてもさらに補完をしながらやっていくというふうな努力もしてまいっております。  それから、昨今は株とか土地とかそういったものの一時的な要因がかなり大きな要素となっておるわけでございますけれども、こうした点につきましても関係業界からヒアリングをするというふうな努力をいたしまして、鋭意努力をしておるところでございまして、ちょっと先の話で恐縮でございますけれども、平成年度におきましては見積もり誤差は約六千九百億円というふうなところにまでなっているということを御報告申し上げたいと存じます。
  80. 会田長栄

    ○会田長栄君 平成年度の補正予算審議の際、若干改善策が報告されていることを承知しております。しかし私は、この方式だけでは税収見積もりが本当にどんぴしゃりとまでいかなくても、国民が了解をする、納得する線までいくとは思えないのでございます。  その予測が困難な理由の根本というのは、実は短い実績の上に長期の推測を重ねるというところにあるのではないだろうか、こう思っているわけであります。冒頭申し上げたとおり、今一日報道を見なければ、それこそもうちんぷんかんぷんになるほど世の中変わってきております。そういう時代でありますから、法人税で言えば六月から十一月の数字で翌年の五月までの実績見込みを予測し、その実績見込みの上にさらに一年間を予測するという無理な体制になっているのではないでしょうか。すなわち、六カ月のデータで十八カ月を予測しているのではないだろうか、こう思うからこの点についてお尋ねしているわけでありまして、この点にメスを入れない限り――前の竹下大蔵大臣が言った、税収見積もりの誤差というのは一%が限度ではないのかという言明があるわけでありますけれども、その点についてどんぴしゃりとはいかないまでも、納得できる方向の予測というのはできるのではないか、こう思うから、この点についてメスを入れる考えがおありなのかどうかお聞きしたいと思います。
  81. 石坂匡身

    説明員(石坂匡身君) 法人税収の見積もりにつきましては、先生御指摘のように大変いろいろ難しい問題があることは事実でございます。ただ、そういう問題はございますのを何とか克服しようというふうなことで、先ほど申し上げましたようにさまざまな努力をしておるところでございます。  ただいま御指摘ございました、年度所属区分の変更というふうなお話だろうと存ずるわけでございますけれども、この点につきましては、確かに年度所属区分が税収見積もりを非常に難しくしているということは否めない事実だというふうに思っておりますが、ただ、直ちに旧に復するといいますことは、現在のような厳しい財政事情のもとでは、その財源を再び特例公債の発行に求めざるを得ないというふうなことにもなりかねません。そういうことでございますだけにこの問題は非常に重要な研究課題であるというふうに認識しており、特に法人税なんかにつきましては、そうした可能性というものを探っていかなければならない問題であるというふうに承知しておりますけれども、ただ一方それだけ大きな財源の要る詣でございますだけに、公債依存度の低下等その財政体質の改善というふうな問題と深く絡む問題でございますので、直ちにということにはいかないというふうな性格をまた持っている問題であるということも御理解を賜りたいと存じます。
  82. 会田長栄

    ○会田長栄君 研究課題である、こういう御見解でございますけれども、研究課題であればあるほど積極的に前向きにひとつ取り組んでほしいということをお願いしておきたい、こう思っております。  次に、税収区分の問題でお尋ねいたします。  税収区分をもとに戻すべきだということは、これは財政制度審議会も必要性を認めたのでございます。あとは実施時期及び財源の確保の問題だろう、こう思います。  ことしの予算委員会で我が党の安恒委員が、補正予算後の増収分を積み立てることを提言いたしました。大蔵大臣は赤字公債の発行を減らすことを優先したいと答えています。平成年度の税収を見ると、補正後にさらに六千九百四十八億円の増収があります。そして四千七百二十四億円赤字公債を減らしています。大蔵大臣の発言に沿った措置をとったわけでありますが、それでもなお三千百二十一億円の財政法第六条の純剰余金が発生しております。半額は国債整理基金へ繰り入れるとしても、残りの半額は積み立てておくべきではないのか、こう思うわけでございます。その場合、特別に積立金をつくるよりも現在資金がゼロになっている決算調整資金へ繰り入れておいてはどうかと考えるわけでありますが、この点についての御所見をお伺いいたします。
  83. 田波耕治

    説明員(田波耕治君) 決算調整資金の問題でございますけれども、先生御指摘のように、この資金は、予見しがたい租税収入減少等により一般会計歳入歳出決算上不足が生ずる場合に備えるということで設けられているものでございます。したがいまして、もし財政上可能であれば、これに対して繰り入れを行いまして決算調整資金自体に財源を積み立てて、いざという場合のその不足に備えるという意味で充実させていくことが望ましいということは御指摘のとおりだろうと思います。しかしながら、これまでのように財政が特例公債に依存せざるを得なかった状況のもとでは、やはり何といいましても金利のかかる特例公債発行額の縮減を図ることが最も重要な課題であるということでございまして、これまでは決算調整資金への繰り入れは実際問題として困難な状況にあったわけでございます。  そこで、決算剰余金の使途でございますけれども、委員指摘のように、財政法六条の規定によりまして、その二分の一を下回らない金額は公債の償還財源に充てなければならないというふうにされておりますが、さらに、先般の財政制度審議会の報告におきましては、「決算剰余金について金額国債整理基金繰入れを行う等当初予算において見込み得なかった財源が生じた場合には、特例公債の償還財源として活用を図ることとすべきである。」という御指摘もいただいておるところでございまして、現在のような特例公債を含みます巨額の国債残高を抱えている財政のもとでは、国債償還財源の充実ということも極めて重要な課題であるわけでございます。  いずれにいたしましても、平成年度予算では特例公債を発行することなく予算編成をすることができたわけでございますけれども、今後再び特例公債の再発行というような事態に立ち至ることを極力避けるためには、そもそも当初予算で見積もった税収と実績との乖離をできるだけ小さくする努力が不可欠でございますけれども、さらに予見しがたい税収の落ち込み等に適切に対処するために、御指摘のように決算調整資金を財政事情等を勘案しつつ充実させていく必要があることについては、今後私どもが財政運営を考える上での一つの課題であるというふうに認識はしております。
  84. 会田長栄

    ○会田長栄君 大蔵大臣がおっしゃっているように、赤字公債の発行を減らすことについては私も同感でございます。しかし、決算調整資金をいつまでもゼロにしておくということについてはどうかということで疑問を持っております。何らかの手当てをすべきだと思いますが、大蔵大臣、その方針は変わりませんか。
  85. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今担当次長からお答えを申しましたように、決算調整資金というものを財政事情などを勘案しながら充実させていくということにつきましては、今後の財政運営を考える上で一つの課題であるという認識は持っております。要は政策の優先順位の選択に係る問題でありますが、当面やはり我々としては、赤字公債脱却ということをまず目標に掲げてまいりましたし、国債残高の累増にいかにして歯どめをかけるかということを優先して考えたいという気持ちは持っております。  私は今の委員の御指摘を否定するつもりはありません。今後の財政運営を考える上での決算調整資金を充実させていくということにつきましては、一つの課題であると認識をいたしております。
  86. 会田長栄

    ○会田長栄君 今後も検討されることをひとつ希望します。  次に、昭和六十二年度当初予算を財政の中期展望六十年版と比べると、赤字公債の発行額が一兆四百十億円増加、国債の定率繰り入れの中止で二兆五千八百六十五億円が一般歳出の経常部門あるいは投資部門で削減されています。税収の見間違い分が結果的にどう配分されたかを見ると、おおむね次のようであります。赤字公債の発行中止一兆一千二百八億円、国債整理基金繰り入れ六十三年補正九千四百六十八億円、地方交付税増加六十二年補正三千二百六十六億円、同じく六十三年補正一兆八百七億円、所得税減税の増加六千九百六十億円、売上税の中止一兆一千三十億円、小計で五兆二千七百三十九億円となっております。公共事業費増加は一兆三千四百五十五億円、剰余金が五千七十七億円、合計にしまして七兆一千二百七十一億円と承知しております。すなわち、二兆円強が公債の減額と償還に、二兆円弱が減税に、一兆三千億円強が地方交付税交付金に、同じく一兆三千億円強が公共事業費に使われたと思われます。  当初予算にこれだけの財源があった場合こうした配分になったかどうか。例えば、シーリングで苦しんだ厚生省は、政管健保特別措置で一千三百五十億円、国民年金平準化措置で千二百五十三億円、厚生年金国庫負担減で三千六百億円を行っている。果たして必要だったのか。この点については、厚生族で最も実力のあった人と言われている大蔵大臣でありますから、ひとつ御所見をお伺いしたいと思います。
  87. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員が述べられましたように、過ぎてしまったことを振り出しに戻して、当初からそれだけの財源が予定されていたならばという仮定をいたすとすれば、いろいろな思いがあることは事実でありましょう。  ただ同時に、最初の御議論に対してお言葉を返して恐縮でありましたけれども、申し上げましたような、六十三年度当初予算編成時の状況というものを考えますとき、なお財政改革を強力に推進する必要性に迫られておった時期であり、同時に公債発行額をできるだけ縮減しなければならない状況の中で、私はぎりぎりの政策選択が行われたと理解をいたしております。また、その意味では、六十二年度におきまして結果的に大幅な税収増が生じたわけでありますけれども、補正予算第一号、第二号などによりまして、義務的経費の追加でありますとか、景気対策、さらには特例公債の縮減など、緊要性の高い施策に有効に活用されたと考えておりまして、今委員が述べられましたように、最終の結果をもって当初に戻して考えたならあるいは別の議論は組み立て得るか、私もそれは、その場合に委員が御指摘になりました項目がどう変わっていたかということは思いますけれども、当初予算編成時における政策選択としては私はぎりぎりの判断であったろうと思います。
  88. 会田長栄

    ○会田長栄君 それだけに、先ほどから私が申し上げているとおり、税収の見積もり、予測というものは本当に厳しくやらなければいけない、こう見ているわけでありまして、その点はひとつ先ほど提起したとおり、何としても税収の見積もりの誤差の出ないように、当面改善されなければならない問題は緊急課題として大蔵省としても認識しているわけでありますから、取り組んでほしいということを申し上げているわけでございます。  それでは次に、昭和六十二年度の経済運営の結果生み出された国民の間の経済格差拡大についてお尋ね申し上げます。  経済企画庁の国民経済計算によると、昭和六十二年中の民間部門の実需を伴わない有形資産及び金融資産の増加額、いわゆる評価額の増加は、土地で三百六十兆円、株式で百二十六兆円と言われております。これは当該年度の国民総生産三百五十一兆円の実に一・四倍に当たる額でございます。平たく言えば、その一年間に日本の企業、労働者、農民、商工業者すべてが稼ぎ出した所得の一・四倍分が土地、株式の持ち主の資産としてふえたということではないでしょうか。しかも、国民総生産額三百五十一兆円はそれぞれコストがかかっております。資産として残るのは多く見てもその二〇%、七十兆円程度でございましょう。しかし、土地及び株式の評価額増はそのままが資産の増になるわけでございます。こうした持つ者と持たざる者との格差の拡大がこの年の経済運営の結果でございます。これにより国民の中流意識は消え去って、労働観もまことに変わってまいりました。その意味で、六十二年度の経済運営は、円高の問題とその反動としての金融の超緩和、こういう事態を招来いたしまして、まことに重要な時期でございました。  何としても今政府が行わなければいけないのは格差是正の問題であります。土地対策の問題であります。その意味では、国民が最も問題にしているこの格差是正の見通しと土地対策の見通しをぜひ聞かせてもらいたいと思います。
  89. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 就任以来、本院におきましても土地についてさまざまな角度からお尋ねがあり、私もそのたびに申し上げてまいりましたことがございます。それは、土地政策の中におきまして、金融あるいは税制というものは非常に大きな役割を果たす武器ではありますが、しょせん地価対策の中の主役たり得ないということでありました。そして、土地というものについての基本理念というものが固定をしない限り、重要な役割を演ずるとはいいながら、そのわき役が対応できることには限界があるということも申し上げたことがございます。  しかし、今委員が御指摘になりましたように、私は昭和六十二年ぐらいから東京圏を中心に一段と上昇いたしました地価について、当時の地価高騰の背景の中に金融的な側面というものが全くなかったなどと申し上げるつもりはありません。しかし、それはさまざまな要因が絡み合っていたものであることも事実であります。そして、金融機関の土地関連融資について、内需拡大の見地から必要とされる都市の再開発あるいは住宅建設等に係る土地取引への円滑な資金の供給というものを一方で抱えておりながら、一方では投機的な土地取引に係る不適正な融資を厳に排除する。そうした観点から六十一年四月以降、当局として通達の発出、また特別ヒアリング等の実施などの措置を行ってまいりました。  しかし、その状況の中で、なお平成二年地価公示による地価動向では、地価上昇の地方への波及というものが一段と強まっている状況が明らかになりましたことから、地価問題の重要性にかんがみ、従来からの措置にさらに一歩踏み込んで土地関連融資の抑制について本年三月通達を出し、いわゆる総量規制を導入したわけであります。  こうした措置を中心にし、私どもはときどきの状況に対応してきたと考えておりますけれども、今後ともに各金融機関に対して本通達を遵守させるよう引き続き厳正な指導に努めてまいりたいと考えております。  また、もう一つの役割を演じてもらうべき重要なわき役の一つの土地税制というものにつきまして、土地基本法をおつくりをいただきましたものを踏まえまして、土地という有限で公共的な性格を有する資産についてその負担の公平、適正化というものを図る。また、あわせて土地政策に資するという視点からその総合的な見直しを決断し、現に税制調査会の土地税制小委員会において精力的な御審議もいただいております。また、税制問題等に関する両院合同協議会の専門者会議土地税制検討小委員会においても精力的な御検討をいただいておるところであります。  私どもとしては、これらの御論議の結果を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。
  90. 会田長栄

    ○会田長栄君 それでは次に、インサイダー取引規制の問題について、四点御質問をいたします。  一つは、日新汽船事件では、八九年九月、大蔵省と東京証券取引所はインサイダー取引に該当するバイカイは特定できなかったと発表しています。にもかかわらずことし四月の警視庁の摘発となったのは、大蔵省と東商の調査体制の不十分さがあったのではないか。大蔵省、東商と捜査当局との連携、協力体制が不十分ではなかったのかという思いがしてなりません。  そこでお聞きしたいわけであります。大蔵省に伺いますが、昨年九月までの調査の具体的内容について御説明願いたいと思います。
  91. 松野允彦

    説明員(松野允彦君) お尋ねの日新汽船の件でございます。日新汽船が第三者割り当て増資を行いまして、それに関連していわゆるインサイダー取引があったかどうかという点でございますが、私ども大蔵省それから東京証券取引所も、この日新汽船の第三者割り当て増資が行われましたその直前の取引につきまして、インサイダー取引の有無について調査を行ったわけでございます。  具体的に申し上げますと、日新汽船の役職員あるいは主要株主、それから第三者割り当て先の役職員などのいわゆる会社関係者による日新汽船株式の売買の有無についてチェックをしたわけでございます。しかしながら、私どもの調査した限りにおきましては、その取引の中にいわゆるインサイダー取引に該当する取引だというふうに認定できる取引が見出せなかったというのが事実でございます。
  92. 会田長栄

    ○会田長栄君 警察庁にお願いいたします。  この事件の具体的な容疑事実と今日までの捜査経過をお聞かせ願いたいと思います。
  93. 中門弘

    説明員(中門弘君) お尋ねの事案につきましては、ファイナンス会社の代表取締役社長が、平成元年の六月上旬日新汽船株式会社から、海外のホテルを買収することとなりその買収資金を第三者割り当て増資によって調達することを決定したので、そのうちの数十万株を引き受けてもらいたい旨を依頼され、日新汽船の業務等に関する重要事実の伝達を受けたところ、その重要事実がいまだ公表前であります平成元年六月中旬、知人の名義を用いまして都内の証券会社を介し東京証券取引所において同社の株七千株の買い付けをなし、もって同会社の業務等に関する重要事実の公表がなされる前に同株券の売買を行ったものであります。  この事案につきましては、警視庁において昨年の夏ごろから内偵捜査を進めまして、本年四月下旬、関係先の捜索、差し押さえの実施を行うとともに、その後関係者からの事情聴取など所要の捜査を遂げまして、本年六月二十一日、被疑者を証券取引法違反で東京地方検察庁へ送致をしたものであります。
  94. 会田長栄

    ○会田長栄君 日新汽船事件の摘発は、わずかに一名が書類送検されて事実上終了したと報じられております。一時は代議士秘書の名前も浮かんだと報じられた、国民が今注目しているこの事件の捜査がここで打ち切りになったのは、実は大蔵省や東証が調査によって得た資料を捜査当局に提出するのを守秘義務を理由に拒否したためだと報じられております。だとすれば、今世界からインサイダー天国日本と汚名を着せられているにもかかわらず、この点について何とも歯がゆい気持ちでいっぱいでございます。仮にこうだとすれば、大蔵省と証券取引所が調査しても何の問題もない、しかし時間が過ぎれば、警察庁が手を出せばそれが容疑事実として浮かぶ、こういう状況では、国民はなかなかこのインサイダー取引問題について納得し得ないだろうと私は思います。  その意味では、六十三年の五月に証券取引法の改正が成立いたしました。参議院では、内部者取引の規制に当たっては、行政当局、証券取引所等関係者において未然防止体制の整備、市場監視、検査体制の充実に万全を期すことにつき配慮すべき旨の附帯決議がこの法案成立の際になされております。こういった経緯を踏まえた上で大蔵省が資料の提出を拒否したとすればこれはゆゆしさ問題になるわけでありまして、ここで国民に納得のいくように説明をお願いしたい、こう思います。
  95. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 専門的に必要な部分は事務方から答弁をしてもらおうと思いますが、私は一点、今の委員の御論議を聞いておりまして、むしろ逆に大変心配を感じる部分がございます。  大蔵省は、証券局は証券業に対し、また銀行局は金融機関に対し、さらに国税庁は国民の個々の収入に対し、さまざまな調査をすることもありますし、またその資料も多分有しておるでありましょう。しかし、それぞれの機関、殊に証券局が例えば強制捜査権を持っておるわけではございません。そして、そうした中でそれぞれが持っております資料というものを任意に司法当局等に手渡すというようなことはあってよいものなのかどうなのか。国民のプライバシーの保護ということを考えるとき、また情報公開制度等について交わされております論議を考えますとき、さらには納税者番号等について国民からさまざまな懸念の示されております中で、果たして大蔵省が持っております資料を、少なくとも大蔵省の調査の中で問題があると立証できなかった、それを警察に渡す、あるいは例えば検察庁に渡すというような行動をとることは果たしていいことでしょうか。私はこれはむしろ非常な問題を含むことではなかろうか、そのように感じます。これは逆に私は委員にお考えをお尋ねしたいことでありまして、我々は大蔵省としての職責の中において知り得ました情報というものを捜査機関に任意に渡す、あるいは捜査当局から要望がありました場合にも合目的な理由のないものをお渡しをする、そういう行為はむしろ避ける責任があるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  96. 会田長栄

    ○会田長栄君 いや、逆に心配しているという気持ちはわかります。私も一面では心配しているんです。ただ、ここで結論で言いたいのは、大蔵省の証券局内部に実は証券取引審査室というのが設置されたとお聞きします。この審査室の中には検事を含む十七人が情報収集に当たるということが言われております。こういうことも含めまして実は聞いているわけでありますが、今国民が考えているのは、そういう言い方をされますと、公務員の守秘義務というのを私も非常に大事にしなきゃいかぬ、こう思っていますよ。思っていますけれども、一面では大蔵省が業界の保護育成に当たっているから肝心なことになるとなかなか結論が出ないのではないかという疑問が出ているから、その点で聞いているわけであります。  したがって、参議院でこの証券取引法の改正がなされたときに附帯決議されたときも、大蔵省と証券取引所が一体になってインサイダー取引ができないように内部体制、監視体制というものを整備したらいいのではないかという御意見がございました。その意味では、ぜひ大蔵省におきましても国民から批判を受けないように、余計な心配をかけないように、大蔵省と証券取引所との内部体制というものを充実してほしいというのが私の真意でありますから、その点をお願いしておきます。
  97. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 言葉の過ぎました点はおわびを申し上げます。警察当局に情報を提供するというお話がありましたので、私はあえて先ほどのような問題を提起いたしました。  しかし、大蔵省自身、証券局の証券取引審査室を初めとした関係の体制の整備に努めて、内部者取引と言われるような問題が起こらないための努力をいたすということについては全力を尽くすつもりであります。
  98. 会田長栄

    ○会田長栄君 よろしくお願い申し上げます。  それでは次に、産業廃棄物問題について厚生大臣初め関係局長にお尋ね申し上げます。  第一は、産業廃棄物の排出及び処理状況の問題であります。さきの百十六回国会において重大な問題となっている産業廃棄物問題についてただしたが、その後の政府の施策について伺いたい。  産業廃棄物の排出量は日に日に増加をしています。同時に不法投棄も深刻な問題となり、地方に拡散している現状であります。全国的に発生している状況にあります。最近における産業廃棄物の排出量並びに不法投棄事犯はどのようになっているか、まずお聞きいたします。
  99. 小林康彦

    説明員(小林康彦君) お尋ねの全国の産業廃棄物の排出量でございますが、昭和六十年度におきまして全国で約三億一千二百万トンでございます。このうち再生利用されましたものが全体の四一%の一億二千九百万トン、焼却あるいは脱水等の中間処理によりまして減量化されましたものが三〇%の九千二百万トン、最後に埋め立て等の最終処分をされました量が排出量に比べまして二九%の九千百万トンでございます。  警察庁の調査によります不法投棄でございますが、産業廃棄物に関しまして、平成元年におきまして不法投棄の検挙件数二百八十二件でございまして、不法投棄または無許可で埋立処分をされました産業廃棄物の総量は八十六万九千トンでございます。
  100. 会田長栄

    ○会田長栄君 ここに昭和六十年度の産業廃棄物の排出及び処理状況という報告書があります。その後の六十年以降の推移を今報告いただきました。  ここでお尋ねしたいのは、聞くところによるとこの産業廃棄物の排出及び処理状況という報告書は二年に一度行われているんだとお聞きしています。これは今日の状態を見れば毎年行うべきではないか、こういう意見でありますが、御所見を伺います。
  101. 小林康彦

    説明員(小林康彦君) 産業廃棄物の排出及び処理の状況につきましては、五年に一回全国的に詳細な調査を実施しておりまして、前回は昭和六十年度を対象にしてその実績につきまして調査をし、最新の数字となっておるところでございます。産業廃棄物の排出量を種類別、業種別に調査をし、処理状況まで把握いたしますために、各都道府県等におきまして相当程度の事務量を要しますことから、現在のところ五年間隔で調査を実施し、その間につきましては毎年度各都道府県等が把握をしております処理業者等から提出されます報告によりまして産業廃棄物の動向を把握をしているという状況でございます。
  102. 会田長栄

    ○会田長栄君 政府の産業廃棄物についての諸施策にもかかわらず、実効は十分ではございません。今全国的にこの問題は多発し広域化し、その処理に地方自治体はどのように苦しんでいるかというのは厚生大臣もおわかりだと思います。国の施策が立ちおくれてくる関係上、現法律では太刀打ちできないという状況から、それぞれ各自治体がみずからその施策をつくろうとしている状況にあります。  ここでお尋ねいたします。既に自治体等からこの産業廃棄物の処理問題についてたくさんの要望や陳情が出ているものと思います。私の知り得る限りでも百件を超していると思われます。その点で、どのような内容のものが要望と陳情になっているか、概略知らせてほしいと思います。
  103. 津島雄二

    国務大臣(津島雄二君) 御指摘のとおり、産業廃案物の問題は大変深刻な状況になってございます。去る通常国会におきましても、本院におきまして、また衆議院におきましても、何回か大変真剣な御指摘を受けまして、私もこの問題に根本的なところから取り組んでまいりたいという答弁をしたところでございます。  そこで、今御指摘平成二年三月以降、地方公共団体、地方議会等から提出されました御要望がどうなっているかということでございますが、総数百六十六件、御指摘のとおり百件をはるかに超えておりますし、また要望団体は全国的な広がりを見せてございます。その内容は、第一に排出事業者及び処理業者に係る法的責任を強化してほしい、これが第一でございます。続いて二番目に、産業廃棄物処理施設の設置に係る手続をきちっと整備をしてもらいたい。それから三つ目に、産業廃棄物処理施設に対する国の財政的援助を考えてもらいたいということでございます。四つ目は、廃棄物の再資源化についての技術開発を真剣にやっていただきたい。大体この四つに分類できるかと思います。  これにもう一つつけ加えさせていただきますと、去る九月十三日の全国知事会におきましてやはりこの問題が取り上げられまして、そして象徴的なことは、この産業廃棄物を多量に排出する側の県知事さんと、それからそれを受け入れることの方が多い地域の県知事さんと、両方から問題の御指摘があったということもつけ加えさせていただきます。
  104. 会田長栄

    ○会田長栄君 産業廃棄物の増加や処分の広域化が進む中で、先ほど申し上げたとおり、自治体は今その防衛策として県境を越える産業廃棄物を規制するため、既に二十六道府県において指導要綱などを作成していると言われております。  こうした動きの中で、行き場のなくなった産業廃棄物の不法投棄の増加が目立っております。この際、国の責任において廃棄物、殊に産業廃棄物対策を法改正を含めて抜本的に改めるべきだと思うが、どうでしょうか。
  105. 津島雄二

    国務大臣(津島雄二君) ただいま委員指摘のような御質問が既に通常国会でもございまして、私はその御答弁で、法改正を含めて検討をいたしますとお答えを申し上げているとおりでございます。そういう中で、ただいまお話がございましたように、排出量の多い県から広域に廃棄物が移動をしていく、そして受け入れ側についてもさまざまな地域社会の問題を起こしているということを私は大変憂慮をしておるところでございます。また、首都圏におきましても、県の間で産業廃棄物を受け入れ受け入れないという動きがございまして、早急に対策が必要であるという認識を持っている点は委員と軌を一にしているところでございます。  厚生省といたしましては、本年の七月十八日に、私の諮問機関でございます生活環境審議会に対しまして今後の廃棄物対策のあり方について諮問を正式にいたしまして、先ほど申し上げましたような各項目の要望事項について、これらの要望、御意見も踏まえて廃棄物処理制度全体の見直しをするので意見を出してまとめてもらいたいと、今真剣な御審議をお願いしておるところでございます。
  106. 会田長栄

    ○会田長栄君 次に、廃棄物処理法の改正問題についてお尋ね申し上げます。  今大臣から御答弁がありましたとおり、産業廃棄物の処理の法律を改正するために今抜本的に検討をしている、こういう話をお聞きしました。そこでまず一つは、厚生省は本年四月、廃棄物の処理及び清掃に関する法律を抜本的ほ改正することにし、検討作業に着手したとお聞きしました。それでその進捗状況も、審議会に諮問しているということもお聞きしました。したがって審議会の審議結果を待たざるを得ないわけでありますけれども、今後検討の結果、改正案は次の通常国会に提出されるのでございましょうか、そこをお伺いいたしたいと思います。
  107. 津島雄二

    国務大臣(津島雄二君) 御指摘の、問題の緊急性にかんがみまして、提出する方針で今御審議を急いでいただいているところでございます。
  108. 会田長栄

    ○会田長栄君 現行法の第三条では、「事業者の責務」として、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」と規定をしています。また、同十条でも、「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。」、こうしています。しかし、同法第十二条四項には、「事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。」という抜け穴条項があります。このことが今日産業廃棄物問題が全国至るところに質的にも量的にも問題になっているところでございます不法投棄の原因ともなっていることは、このことは私から言われなくてもわかる、こう思いますが、産業廃棄物問題は、出たところから最終処理するまで、これは事業者が責任を負うべきものだと私は思いますが、この点についての厚生大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  109. 津島雄二

    国務大臣(津島雄二君) 技術的な点は事務当局から補足をしてもらいますが、ただいま委員の御指摘の点は私も同感でございまして、いわゆる排出者責任という基本的な考え方が明らかにされている中で、これを担保するための法整備が必要ではないであろうかという問題点がございます。  それから、この機会にもう一つ言わせていただきますが、排出者責任、いわゆるPPPの原則と申しておりますけれども、この原則だけではどうも発生から最終処理までうまくこなせないほど実は産廃の量が多くなってしまったということにも私どもは留意をしておるわけでございます。でございますから、排出者あるいは処理業者がしっかりやれよと、これは法を整備して一層進めなければなりませんが、同時に、ある種の公共関与がございませんと、余りに量が大きくなりますと一般の民間事業者だけでは地域社会に迷惑をかけないようにこれを処理することが困難な段階に来ているなと、その部分については今度の法改正等で対応していくわけでありますけれども、公共の関与が必要ではないだろうか、そのもう一方の点についても委員の御理解をお願い申し上げたいと思います。
  110. 会田長栄

    ○会田長栄君 もう一つお聞きしたいわけでありますが、処理業者については現状は届け出制ですね。その意味ではこれは届け出れば処分業者になれる。この処分業者が処分するための単価が安い、どうしても経営が困難になる、だから多く引き受けて何とか採算を合わせよう、そして捨てようという気分になっているわけでありますから、そういう現実に追われているわけでありますね。したがって、この許可要件というのは厳重にしなければいかぬ、こう思っているわけでございます。  それからもう一つ、御承知のように、私の県では、磐城地方にいまだに五万本のドラム缶が廃坑の中に入ったままふたをしております。一体地下水資源にどのような影響を今後与えていくのかまことに心配でありますが、この処理に実は全国的に自治体は参っているんですね。  そこでお尋ねしたいわけであります。やっぱり産業廃棄物処理という問題は環境破壊の問題と関連しておりますから、これは国の行政責任というものをもう少し位置づけて、とりわけ救済制度も完備していかなければいけないんじゃないか、こう思うわけでありますが、この点についての見解があったら聞かせていただきたい。
  111. 小林康彦

    説明員(小林康彦君) まず、産業廃棄物処理業でございますが、これは都道府県知事の許可という制度にしております。産業廃棄物は、排出事業者がみずから物理的に、化学的に処理をするということが望ましいことでございますが、規模の小さな事業もございますので、処理業に委託をして処理をする、あるいは地方公共団体に委託をして処理をするという道も必要であろう。そのために優良な処理業を育成をしていくということも重要な課題というふうに認識をしております。処理業の許可につきましては、一定の要件を満たすものであれば許可をするという制度になっておりますが、御指摘のように、日常的に受ける量等細かな点までの許可要件になっていない点もございまして、地方公共団体からもこの許可の要件についての御要望がございますので、現在、今後のあり方につきまして検討しておるところでございます。  二点目の不法投棄が生じました場合の事後の措置につきまして、現在の法律の中でも緊急的な措置を幾つか定めておりますが、それでは必ずしも十分ではないという御指摘がございまして、それらの措置につきましてどう対応するのが適切であるか、現在審議会におきまして検討していただいておるところでございます。
  112. 会田長栄

    ○会田長栄君 今お答えいただきましたけれども、この不法投棄の処理問題については、各自治体、大変な財政的な負担をこうむっているわけでありまして、これは検討期間が長いようではまことに地方自治にとっては困ったところにいきます。したがって、緊急課題としてこの救済措置制度というものも当然法改正と同時に整備していかなければならないものと私は思っています。その点よろしくお願いしておきます。
  113. 津島雄二

    国務大臣(津島雄二君) ただいま御指摘のございました、不法投棄された場合の原状回復の問題につきまして、その履行を確実にするにはどうしたらいいか、それから不法投棄を行った者が不幸にして不明である場合にどうしたらいいだろうか、こういうような問題点がまさに今後緊急に検討すべき問題に含まれておりますので、ただいま緊急に検討しておる中に含まれ、かつ速やかな結論を得たいというふうに考えておるところでございます。
  114. 会田長栄

    ○会田長栄君 それでは最後にお尋ねいたしますが、廃棄物の処分が広域化している実情から、特に産業廃棄物については都道府県に対する機関委任事務として扱っています。一般ごみについては市町村にやらせています。ここのところを見直して国が責任を持つ、そして環境を守っていくという姿勢にならなければいけない情勢に私は来ていると思うんですけれども、その点について一体どのように内部的にも検討されているか、お聞きしたいと思います。
  115. 津島雄二

    国務大臣(津島雄二君) ただいま御指摘の点がまさに先ほど私が申し上げました公共関与が求められているという点でございまして、まさに御指摘の点を含めて適切な対策を早急に打ち出してまいりたいと考えております。
  116. 会田長栄

    ○会田長栄君 産業廃棄物問題についてはまことに積極的に各自沼体の御意見を踏まえまして、国民の声を踏まえまして今検討されているという声を聞きまして喜んでいる一人であります。この産業廃棄物問題、地球環境、自然環境を守る問題について今おろそかにできないという状況である、こう思いますから、どうぞ積極的に結論を出していただいて、次の通常国会に法改正を含めて提起できるように心からお願いをして私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  117. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 私は、本日から昭和六十二年度決算審査に入りました冒頭の日でありますので、決算審査の意義あるいはあり方、議決の持つ意義、議決後の処理等の問題につきまして質問をいたしたいと思います。なお、決算審査の意義等についてはきょうの質疑の一番最初に千葉委員質問をされております。  まず第一の質問は、昭和六十二年度決算審査、これが時期的に遅いのではないかということでございます。これは会田委員も先ほど質問をされたことと全く同じことでありまして、昭和六十一年秋の予算編成、六十二年の春の予算審議、六十二年中の予算実施の時期、六十三年に入ってからの決算の確定という長期の財政経済運営が対象となっておるものであります。  そこで、予算編成の時期といえば今から四年前になり、内閣もかわっておりますし、その間大蔵大臣経済企画庁長官もかわられております。こうした現状の中で決算審議の意味は一体どこにあるのか。マクロ経済運営、財政運営への批判を受けとめて、例えば平成年度予算編成にこれを生かすことが可能なのであるか、またミクロの各省庁の予算執行に対する批判が今後の予算要求あるいは予算執行に生かされるのであるかどうか。今のように変化の遠い時代でありますから、少しゆっくりしておるともう間に合わなくなってしまう。こういう点について大蔵大臣としてはどのようにお考えになっておるか、御見解を伺いたいと思います。
  118. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 委員が御指摘になりましたように、確かに大蔵大臣また経済企画庁長官ともにかわり、内閣自体もかわった中での決算の御審査をいただくわけであります。しかし同時に私は、決算というものは予算執行の実績でありますから、国会におけるその審査というものは予算執行が所期の政策目的を果たしているかどうか等について審査、検討していただくという意味で極めて重要なものだと考えております。  今委員からマクロの、またミクロのという二つに分けての御指摘がございました。確かに決算審査というものは第一義的にその予算執行についての審査ということでありますけれども、その予算執行の前提となるマクロの経済運営につきましても当然御議論の行われるところでありますし、それについての御論議をいただくことは今後の政策運営の上におきましても当然非常に有効なものである、そのように考えております。  また、従来から予算の適切な執行、効率的な執行に留意してまいったつもりでありますが、予算編成やその執行に当たり、決算の成果というものを私どもなりに十分反映させていくように努めてまいりました。先ほど千葉委員の具体的な御指摘につきましてもお答えを申し上げましたように、例えば警告決議でありますとか、あるいはそうしたお申し入れといった形をとらない御論議の中につきましても我々としては十分意を使ってまいるつもりであります。また、具体的に先ほど総理の外遊の経費等について例示で申し上げましたように、私は決算の御論議というものは我々として十分使わせていただくものである、そのように考えております。
  119. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 次に、昭和六十一年度決算につきまして、参議院において、委員会におきましても本会議におきましてもこれが否決されているということについて御意見を伺いたいと思います。  決算を否認するということは、その年度歳出全部がいけなかったということでは恐らくないだろうと思います。もしそうだとすれば、その年度国会あるいは裁判所あるいは行政府のすべての行動を否定することになってしまうというように考えるのであります。したがって、その年度の財政運営の重点が誤っているという判断をしたのがこの否決という結果に出たものと、そのように思うのであります。ところが一方におきまして、衆議院は六十一年度決算についてこれを異議がないという議決をいたしております。これは、その年度の財政運営の重要点に誤りがなかったという判断を示したことになると思うのであります。衆議院、参議院がこぞって決算を否決すればこれは内閣が総辞職するとかあるいは国会を解散して国民に信を問うとかいうことになる。これは既に二十年前から国会においても論議された問題でございますが、衆議院、参議院がその決定に異なったことを生じた場合に、内閣として一体これにどう対処するのかということについてどのようにお考えになっているか、また、なったかということを伺いたいと思います。これは官房長官にお願いいたします。
  120. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 衆参が異なる議決を行った場合に内閣としてはどうするかという御質問でございました。  昭和六十一年度決算について、衆議院では御理解を得られましたが、参議院では御理解を得られなかったことについてはまことに遺憾でございます。政府としては、国会の御審議、御指摘を踏まえ、今後とも予算の適正かつ効率的な執行に努め、国会の御理解をいただけるよう適切に対処してまいりたいと存じます。
  121. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 次に、決算の採決、審議等についての諸外国の例をいろいろ調べてみますと、例えばイギリスあるいはフランスであるとかいう国々におきましては、決算審議の結果を、これは国会図書館で調べてもらったところによるのでありますけれども、いずれも最近の一、二回の政権交代の際におきましては、否決ができる状態のもとにあったにもかかわらず否決はいたしておりません。もちろん、イギリスとフランスとでは制度が違いますし、また基本的な考え方として、非党派的あるいは継続的であるべきだという考え方に基づいているものであると思います。すなわち、政権が交代しても予算法律に従って支出したものについてはその是非が変わらない、その是非というのは予算の問題であって、決算の問題ではないという解釈をいたしているものと思われます。決算審査についてこのような外国の例について大蔵大臣としてはどのようにお考えになるか。  なお、イギリス、フランスの例を見ましても、否決できる状態のもとでも否決をしないで、つまり決算についてはこれは予算として承認をしたものであるからということで否決をしていない。そういう問題は今後の問題としても検討をしなければならない問題であると思いますので、大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  122. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 委員の示された御判断というものにつきまして、行政府としてコメントは差し控えるべきであると私は思います。  ただ、今海外の例についてお触れになりましたが、御指摘をいただきましたので調べてみましたところ、確かに過去二十年にわたりまして英国及びフランスにおきましては、政権党がかわりました場合においても、決算承認の議決はなされておりました。一九七〇年代以前につきましては資料がなくて調べはできておりません。確かに最近の二十年そういう状況でございます。しかし、これは私は各国の決算制度それぞれの違いもあろうかと思いますし、また考え方の違いもあろうかと思います。  いずれにしても、英国であれフランスであれ、決算の重要性というものにかんがみ、それぞれの国会において十分の御論議が行われた上その判断が示されたもの、そう私は理解をいたしております。
  123. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 ただいまの大蔵大臣の答弁、そういうお考えで政府としてもこの問題についてのあり方をよく御検討いただきたいと思いますし、またこれは国会の問題でもありますので、国会におきましてもこの問題につきまして今後のあり方について十分研究しなければならない問題である、そのように考えております。  次に、昭和六十一年度決算が否認されました際の問題につきまして見てみますと、その際に行われました野党の討論、これは会田委員が討論をされたのでありますけれども、予算に反対だったから決算にも反対するというような理由があったようでございます。しかし、予算が一たん国民の代表によって審議され成立しました以上、内閣はそれに従って執行する以外に道はないわけであります。例えば、予算の防衛費に反対であるから、あるいは減税が少ないとかという理由で反対であったとすれば、決算審議を必要としないと私は思うのであります。なぜならば、それは審議の過程での問題であって、予算執行過程を問題にする決算とは異なる次元の問題であるからであります。  しかし、もちろんそれは原則を申したのでありまして、予算執行の過程で特定の経費が不十分であることがはっきりしたり、あるいは予算積算に誤りがあったというような具体的な内容からの予算に対する批判はあっても、それは当然のことであると思いますが、例えばイデオロギーの問題であるとか、あるいは政治的な意見の違いであるとかいうようなことは予算委員会での論点とすべきことであって、決算委員会での論点とするのに適当な問題であるかどうかという点にこれは疑問を持つのでありますが、この問題についての大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。
  124. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 国会におけるそれぞれの政党会派の御判断というものは、それぞれのお立場において示されるべきものでありますから、これは政府の立場からそれについてコメントをすることは控えるべきであろうと思います。  私どもとして、決算というものは予算執行の実績であります。国会において予算の御審議による事前の監督、また決算審査による事後の監督というものを通じ、その後の予算編成あるいは執行についても十分な監督を行えるようになる、そうした視点から見ましてもまことに重要なものであると考えておりますだけに、私は、各政党各会派の御見解というものについて政府が見解を表明すべきではない、そのように思います。
  125. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 次に、決算の警告決議の重要性の問題について御意見を伺いたいと思います。これは官房長官、大蔵大臣にお伺いいたしたいのであります。  決算は否認すべきではない、修正はもちろんできないとすると、残された方法というのは、その審議の結果は警告という方法があるということになります。国会の財政監査の権限を十分発揮するためには、与党といえどもその審議の成果を警告に生かすように努めなければならない。これは与党議員の一人としてそのように考えるわけであります。しかしながら、行政府におかれましては警告というものを決して好まれているわけではありません。警告は嫌なものだという考えを持たれるのはこれは当然のことであると思いますけれども、しかし、警告すべき事実があるのに与党であるということで自民党が消極的になるということは国民にとってはマイナスであり、ひいては自民党の国民に対する責任をも果たさなかったということになりかねないと思います。  政府は、そういうような場合に、もし勧告を従来どおり、あるいは従来にも増して行うようなことになりました場合に、その事実を率直に認めて警告に協力する姿勢がとれるかどうか、この問題はもちろん今後の委員会の努力の問題とつながる問題でありますけれども、政府としてのお考えを伺いたいと思います。
  126. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 警告決議に関しまして御意見がございましたので、お答えをいたします。  従来から決算委員会における警告決議として指摘された事項につきましては、予算措置を含めてその改善を図ってきております。その措置状況国会報告しているところでございます。政府としては今後とも国会審査の重要性を十分認識し、国政に反映させるよう誠意をもって努力する所存であります。
  127. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今官房長官が内閣全体としてのお立場を述べられました。私どもその審査の結果というものが、警告を受ける受けないにかかわらず、その結果というものは、将来の予算編成や予算執行に当たりまして十分留意し反映させる努力を続けるべきものと考えております。  もちろん、警告決議がなされました場合、それらの省庁はその指摘事項に対しまして速やかに是正、改善等の措置を講じるべきものと考えておりますし、またそう努力をしておるものと信じております。
  128. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 次に、昭和六十二年度の財政経済の運営についてお尋ねいたしますが、これは先ほどの会田委員の御質問とほぼ同じでありますので、その前半等については大蔵大臣の御答弁も既に先ほど承っております。  政府は、昭和六十二年度の経済の見通しに基づいて昭和六十二年度の当初予算を編成いたしたのでありますが、円高が予想以上に進み百二十円台にまでなりました。そこで直ちに自民党が総合経済対策要綱を発表いたしまして、それを踏まえて政府は緊急経済対策を決定され、それに基づいて公共事業の拡大を中心とする第一次補正予算の作成と公共事業の繰り上げ実施を行われたのであります。その結果、経済の実績の数字を見ますと、当初の経済見通しの目標がほぼ達成されているように思われます。  経済政策には三つのタイムラグがあると言われております。すなわち、認識のラグ、反応のラグ及び実施のラグであります。しかし、昭和六十二年に入りまして円高が大幅に進んで内需の拡大が必要になりました段階において、このラグが最小限度に抑えられたという結果が出ております。このことは政府の適切な措置が効果を発砲したことによるものだろうと思います。しかも、それ以降の長期経済の発展のためにむしろそれが端緒になっているということを考えますときに、当時の担当者の御努力に対しましては私はむしろ敬意を表すべきことであろうと思います。したがって、この財政運営の今後のあり方、問題等につきましては、その対応は、常に適切に時代の変化に対応することにおくれないようにやっていただきたいということを強く望みたいと思います。  この点につきまして、経済企画庁長官並びに大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  129. 相沢英之

    国務大臣(相沢英之君) 御案内のように、昭和六十二年の我が国経済はその前年の十一月を底にいたしまして緩やかな回復を示しておりましたが、今お話しございましたように、景気回復の足取りは弱く、また国際収支の不均衡も大変大幅なものがあったわけであります。そういうような状況にございましたので、政府は主要国との政策協調を推進しながら、内需を中心とした景気の積極的な拡大を図るとともに、対外不均衡の是正、調和ある対外経済環境の形成に努めることが急務であるという観点から、六十二年の五月には六兆円を上回る財政措置を伴う内需の拡大策及び所要の財政措置を含むところの対外経済政策等から成る緊急経済対策を決定したのでございます。この対策によりまして、その後内需を中心として急速な景気上昇が見られまして、それに引き続き現在までの持続的な景気拡大に至っているのであります。  当時の指標を見ますと、民間の企業設備が一〇・一%、さらに民間住宅が二五・七%対前年で上昇をいたしましたが、さらに政府の施策としてこの公的な固定資本の形成が九・四%という大変大きな伸びになっております。このことが景気の浮揚に相当大きな効果をあらわしたということは明らかであろうというふうに考えております。  今後のことでございますが、御案内のように、今、日本の経済のファンダメンタルズは大変に堅調でございまして、景気拡大も昭和六十一年の十二月以来、先ほど申し上げました昭和六十二年を含みまして、既に四十六カ月間の持続的な拡大を続けております。イザナギ景気というのは五十七カ月続きましたが、それに次いで戦後二番目の息の長い景気上昇の局面にあるわけであります。今後とも物価の安定を基礎として内需を中心とした景気の持続的な拡大を図るという考え方のもとに経済の運営を考えていかなければならないと思っておりますが、御案内のように、八月初めのイラクによるクウェート侵攻に伴いまして中東情勢が緊迫化する、原油の輸入が一二%程度削減をされる、原油の価格が非常な上昇を示すというようなことによりまして、今後の経済情勢にはなお不透明な点もあるわけでありますが、企画庁といたしましては今後とも内外の景気動向に一層注意して、引き続き適切かつ機動的な経済運営に努めてまいりたいと、このように考えております。
  130. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今経済企画庁長官から経済企画庁としての当面のお考えを述べられました。基本的には私どもも同意でありますが、多少補足をさせていただきますと、先日行われましたIMF・世銀総会の直前のG7におきまして、中東の状況の緊迫化等を踏まえ、石油価格上昇の中で今後の経済運営についての議論が行われました。その結果としてG7におきましてまとめられました声明の中には、インフレへのリスク、同時に成長の鈍化へのリスク、二つのリスクを指摘いたしております。  こうしたことを考えてまいりましても、今後の財政経済運営と申しますものは、内需を中心とした経済の持続的な拡大を図るためにも、今まで以上に内外の諸情勢を注視しながら引き続いて機動的かつ適切な運営のために努力をしていくべきである、そのように考えております。
  131. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 次に、昭和六十二年度決算書を見ますと、多額の不用額を発生いたしております。その内容を見ますと、円高により海外から調達する航空機であるとか武器弾薬であるとか、あるいは石油等の支払いの額が少なくて済んだためであります。  こうした不用額の結果、GNPに対する防衛関係費の比率が当初の一・〇〇四%から決算では〇・九八八%に減少いたしております。一般の省庁におきましては、予算積算の単価よりも購入単価が安くなった場合にはその購入量を増加して不用額を減らすというようなことも可能でありますけれども、防衛庁の場合は防衛力整備計画によって調達を行うのでありますから、そのような措置をとることはできません。したがって、それを転用して他の部分をふやすということもないわけであります。したがって、昭和六十二年度においては予期しなかった円高という事情で防衛力整備計画の持つ予算のコントロール機能、すなわちシビリアンコントロールが実証されたということが言えるのではないかと思います。  逆に円安になった場合は、たまたま一%を超えることがあっても予算措置を講ずべきであって、その意味で昭和六十二年度予算編成の際に一%程度と、程度ということを定められたことには意味があったと私は解釈いたしているのでありますけれども、これにつきまして防衛庁長官大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  132. 藤井一夫

    説明員(藤井一夫君) ただいま先生一%程度というような御表現をお使いいただきましたけれども、既に御承知のとおり、防衛関係費のあり方につきましては昭和六十二年の一月いわゆるGNP一%枠にかわるものといたしまして新たな閣議決定が行われました。その内容は、中期防衛力整備計画の期間中の各年度の防衛関係経費につきましては、同計画に定める所要経費の枠内でこれを決定するといういわゆる総額明示方式を決めたわけでございます。  このいわゆる総額明示方式というものの評価でございますけれども、これは防衛力整備が長期的な視点に立って継続的かつ計画的に進められるべきものであるという観点から見ますると、御指摘のありますように、かつてのGNP一%方式のような具体的な防衛力整備内容と離れて、単に経済的指標のみとリンクして防衛費のあり方を示すような方式に比べますとより適切なものであったと、かように判断しているものでございます。
  133. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今委員からの御指摘、また防衛庁事務当局からの答弁に内容は尽きております。  いずれにしても、防衛関係費というものにつきましては、今後ともに国際情勢及び経済情勢を十分勘案しながら、国の諸施策との調和を図りながら適切に対応していかなければなりません。その際、まさに憲法及び専守防衛等基本的な防衛政策のもとで節度ある防衛力の整備を行うというその精神は引き続き尊重していくべきは当然と考えております。
  134. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 次に、公共事業費の繰越額増加の問題について伺いたいと思います。  実は、建設大臣にお伺いする予定でおりましたが、建設大臣は公務で御出張ということでありますので、これは政府委員としてお答えいただいて結構でございます。  昭和六十二年度一般会計の公共事業費の繰越額は前年度の九百億円を上回って三千億円にも達しております。また、産業投資特別会計の社会資本整備勘定も予算額四千五百八十億円のうち七百三十二億円を次年度に繰り越しております。せっかく公共事業費の前倒しをしながら繰り越しがふえた理由は一体何であったか。昭和六十三年度も公共事業費の繰り越しが増加していることを見ますと、補正予算で公共事業費の追加があったためではないようであります。土地取得のおくれであるとか設計のおくれであるとか、あるいは北海道や東北等に見られる雪や氷による工事のおくれ等いろいろな原因が考えられるのでありますけれども、この問題についてその原因を十分に政府としてフォローされていたかどうかということにつきましてお伺いいたしたいと思います。
  135. 望月薫雄

    説明員(望月薫雄君) 昭和六十二年度一般会計歳出決算額で見ますると、建設省関係費は歳出予算現額で四兆八千億円余りでございます。このうち二千四百二十三億円を六十三年度に繰り越しを行うという事態が起こっております。その割合は四・九%ということで、先生御指摘のとおり、決して軽い問題ではない実態と認識いたしております。  こういった繰越額が出た事由でございますが、このことは何も六十二年度に限らず、六十三年度も御指摘のように同様の傾向があるわけでございますけれども、一つには、やはり工事実施に当たりまして、計画段階での地元調整がいろいろと難航して時間がかかってしまう。あるいはまた環境問題をめぐりまして住民の方々との意見が合わないというようなことによりまして、やむを得ず、不測の日数を要したために工事が完了しなかったというようなものがございます。ちなみに係数で申しますと、六十二年度ではこの部分が全体の繰越額の約五七%を占めております。  それからもう一つは、用地買収にかかわる日時の徒過といいましょうか、大変時間がかかる、こういった問題でございますが、とりわけ最近、用地買収に当たりましては、地権者の方々からの御理解がなかなか得にくい。中でも代替地の要求等が大変強く出ているというようなこと等、用地買収の事務が複雑化いたしております。  また、補償についても同様の傾向がございまして、こういった用地あるいは補償の交渉に非常に時間がかかったために、残念ながらこの部分を執行できなかったというものがございます。これが六十二年度でいいますと四一%を占めております。いずれにしましても、計画面での地元調整の難航、用地の面あるいは補償の面での難航、これによって九十数%が繰越事由として見られるところでございます。  いずれにしましても、私ども公共事業の重要性というものを十分認識している中で、責任を持って執行するために、用地問題あるいは地元調整、協議の問題について、誠意を持って十分の努力をしていきたいと、かように考えております。
  136. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 ただいまの御説明を伺いまして、今後も十分にこういう問題についての結果のフォローをやっていただくように要望をいたしたいと思います。  次に、税収の見積もりの誤りの問題について伺いたいと思いますが、これは先ほど会田委員が御指摘になりました問題とほぼ同じことでございます。  昭和六十二年度の税収の決算の数字を当たってみますと、補正予算後の税の収入見込みと比べまして、三兆七千億円の大幅な増収があり、八・六%の乖離が生じております。当初予算から見れば一三・六%の見込み違いという結果が出ているわけでございます。このことにつきましては、会田委員と同様に喜ぶべきという面もあるでありましょうけれども、しかし当初からきちんと予測ができているならばなおよかったということを与党としても考えるわけであります。  問題は、当初予算あるいは第二次の補正の段階で税収の増加を見込むことができたのかどうかという問題であろうと思います。結果から計算をいたしてみますと、租税弾性値が三・二に達しており、一般に弾性値が一・二ないし一・三と言われておりますが、最高でも一・五という経験からいたしますと、これを予測するということはかなり不可能な問題であり、これは財政学者あるいは銀行の調査機関などといえども、そのモデルで増収を予測するということはできなかったようであります。第二次補正の段階でも、法人税の三月以降の急増を見込むということは、当初の税の月別の収納の実績から見まして恐らく不可能であったというふうに認めざるを得ないのであります。  そういう意味では、財政当局、特に主税局に責任はなかったというように私は思います。しかし今後のことを考えますと、巨額な自然増収が出た経済要因を分析する必要がありますし、税収の見誤りを起こさない制度上の改善を行う必要があるように思いますので、この点について大蔵大臣の御所見を伺いたいと存じます。
  137. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先刻来御答弁を申し上げておりますように、六十二年度税収の見積もりの誤りというものが極めて大きな数字に上ったことにつきましては、本当に遺憾であるという以外の言葉はございません。  そこで、その増差額の内訳を見てみますと、合計三兆七千百九億のうち法人税で二兆八百八十八億、五六・三%、申告所得税で七千三百四十五億、一九・八%、源泉所得税で五千百四十六億、一三・九%、物品税で一千六百四十九億、四・四%、その他で二千八十一億、五・六%となっておりまして、法人税の非常に大きな数字の狂いが生じております。昭和六十二年度の税収につきまして、株式、土地などの資産取引の活発化や円高差益の発生といった一時的な要因を背景にいたしまして、企業収益が各種の経済調査機関や個々の企業それ自体が予測をいたしましたものをはるかに上回る急激な上昇を示した。こうしたことから法人税を中心に大幅な増収が生じたものでございました。  税収の見積もりの必要な資料の収集でありますとか推計方法につき絶えず工夫を凝らすのは当然のことでありまして、これから先もなお税収見積もりの精度向上に全力を尽くさなければなりません。  なお、先ほど来主税局から御答弁を申しましたけれども、元年度補正後につきましては六千九百億円余、相当その差は縮まったということでありますけれども、なお今後ともの努力をいたしてまいりたい、そのように考えております。
  138. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 今後に一層の御努力を望みたいと思います。  次に、赤字公債の発行と巨額な剰余金の発生の問題について伺いたいと思います。  赤字公債を発行しながら巨額の剰余金を発生させるということは決して好ましいことではありません。制度的には赤字公債は最後に発行することができるのでありますから、早目の発行を見送っておけば、その発行を減額して剰余金の発生を減らすことができたのではないかというように思います。結果的には一月から三月に約一兆七千五百億円を発行し、四月以降分約一兆一千億円を減額したのみにとどまり、約一兆九千億円の純剰余金を生じているわけであります。  これは公債市場との関連もあろうかと思いますけれども、制度上の弾力化ということができなかったのかどうか、それと、できないのかどうかというようなことにつきまして御見解を伺いたいと存じます。
  139. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 我が国の財政はおかげさまで平成年度におきまして特例公債を発行せずに予算編成を行うことができるところまで参りました。今後の財政運営に当たりまして、再び特例公債を発行しないで済むような状態を維持することを基本として、公債依存度の引き下げなどによりまして、公債残高の累増をしないような財政体質をつくることに全力を尽くさなければなりません。  そうした状況の中で過去を振り返り、今御指摘に対してお答えを申し上げるとすれば、御指摘は私はそのとおり弾力的に運用していくべきものであろうと、そのままに受けとめております。そして六十二年度におきましても、出納整理期間に一兆一千二百八億円の特例公債の繰り延べを行い、最終的にはその全額の発行を取りやめとしたところでありまして、ただこれは一方におきましてそれを上回る予想外の税収増が生じましたことにより、財政法第六条の剰余金が約一兆九千億円になった、こうした状況もございました。  その折その折に私はそれなりに弾力的な対応をしてまいったと思っておりますが、これから先を考えますとき、何よりも再びその赤字公債を発行しなければならないような状態にならないこと、これを我々としては心がけ、公債依存度を引き下げていく努力を続けていくべき、そのように考えております。
  140. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 どうぞその御努力を続けていただきたいと思います。  最後にお尋ねいたします。  今世界は大きな変化を続けております。その変化はますます速度を速め、また、予測できないような変化も起きる可能性が大きいわけでございます。  きょうは外務大臣は御出張で御出席いただけないようでございますので、これは大蔵大臣の御意見を伺えればと思いますけれども、政府首脳の方方が外交面においても経済の問題の面においても常にフレキシブルに対応できるような各般の態勢を整え、また、予想することのできるあらゆる場合に対応する研究を常日ごろから行っておかれる必要があると思います。もちろん国会の会期中ということになりますと政府首脳の方々の国外出張等については拘束もあるでありましょうけれども、これにつきましても、変化の時代に対応できるように国会もまた国益ということを考えて、これまで以上にこういう問題に協力をする必要があると思います。  現在、精力的に多忙な日程をこなしておられる大蔵大臣の御意見を伺いたいと存じます。
  141. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) たまたま、先ほども触れました、今回ワシントンにおけるG7におきましても、中東の状況の緊迫化とその中から生まれました石油価格の上昇というものが世界経済にどのような影響を与えるのか、また、特にイラクとクウェートの周辺国と言われる国々並びに非産油国であり低中所得国の経済に石油価格の上昇がいかなる影響を与えるか、こうした点は非常に大きな議論になりました。そして、その中において日本に対して協力を求められる部分の非常に大きかったこともまた事実であります。その中には、日本としては従来必ずしも縁の深くなかった東欧の国々に対する、また非常に関係の深いアジアの国々に対する、さらにはラテンアメリカ諸国に対するさまざまな要請が出されております。そして、これから先の状況の変化に対応して一層我々は機動的に対応しなければならない場面がふえると思います。  また、たまたま今回のIMF・世銀総会の中では作業の中間過程ということで論議がほとんどございませんでしたけれども、去る七月のヒューストン・サミットを振り返りますとき、対ソ経済支援というものは非常に大きなテーマでありましたし、その前提としてのソ連の経済分析をどうするか、これはまさにヒューストン・サミットの大きなテーマの一つでありました。今その作業が進行中でありますために今回のG7あるいはIMF・世銀総会の中においては議論はほとんど行われませんでしたけれども、恐らくOECDあるいはEBRD等それぞれの各機関、またIMFの分析等が発表されますと、これに対しての緊急な対応を必要とする場面も生じるであろうと思われます。  こうしたことを考えますと、財政当局として今まで以上に急速な変化あるいは予測できなかった事態に対しての対応というものを常に考慮しなければならないということは御指摘のとおりでありまして、私どもとして心していかなければなりません。そうした中におきまして関係各部局それぞれの立場において研究を行っておりまして、適切な政策運営に努めてまいるつもりであります。  また、今御指摘がありましたように、今後とっさに海外に出張するといった事態は想定できないことではありません。本年になりましてから、振り返ってみましても、私自身で三月末のアメリカへの出張あるいは四月初めのG7、パリへの出張、こうしたことは本当にとっさに出てきた出来事でありました。また、この八月の末から九月の上旬にヨーロッパを回りましたこと等もその意味では予定しておった当初からの行動というものではございません。  こうした必要性というものは恐らくこれから一層ふえてくると思うことでありまして、こうした政府の対外活動につきましても今後とも国会の従来からいただいておりました以上の御理解を賜りたい、そのように願っております。
  142. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 昨日から情報月間が始まっております。日本の情報処理技術あるいは情報産業の発達というのは非常に目覚ましいものがありまして、それに伴っていろいろな予測の技術という問題も長足の進歩を遂げております。もちろん、政府の各機関におかれても、こういう方法あるいはこういう手法をいろいろお使いになって未来予測をされていることと思いますが、これは各行政の分野、あるいはきょうはもう時間の関係でお答えいただく必要ございませんけれども、例えば内閣における危機管理の問題等につきましても、予測するいろいろな新しい手法を使っておくということが必要であると思いますので、そのような御努力をぜひ行っていただきたいということをお願いいたしまして私の質問を終わります。
  143. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私は、昭和六十二年度決算審査に当たり、まず六十二年度の経済運営及び財政運営の全般に関し若干の意見を申し上げ、また、大蔵大臣の御見解もお伺いしたい、こう思っております。ただ、私が今からお伺いしようということは、既に会田委員、後藤委員の方から詳しく質問されておりますので、私の質問も簡単に、また大臣の御答弁も、繰り返しになりますので簡単にしていただいて結構でございます。  まず第一は、昭和六十二年度当初予算決算とを比較した場合のさま変わりについてであります。  昭和六十二年当初予算は、前年七月の衆参同日選挙によって大勝した中曽根内閣によって編成されましたが、これには歳入約一兆一千億円を見込んだ売上税が計上されておりました。しかし、この売上税の導入ということは選挙公約の違反であり、また税における国民主権原理に真っ向から挑戦するものとして国民各界各層から総反撃を受けて、結局中曽根内閣はこの導入を断念せざるを得なかった。売上税が導入されていた当初予算と現在審議中の売上税のない決算とを対比して見るときに、私は、国民主権原理を尊重せずにおのれの考えのみが正しいとする独善的な政治家の敗北の姿を見る思いがする。この第三次中曽根内閣において橋本大蔵大臣は運輸大臣として関係しておられたわけですが、この売上税の撤回というふうな問題に関してどのような御見解をお持ちであるかお伺いしたい。
  144. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 確かに私は第三次中曽根内閣の閣僚の一人でありました。そして、私に課せられておりましたのは、それこそ瀕死の状態に陥っていると皆から言われておりました国鉄という企業体、その持つ鉄路というものの生命をいかによみがえらせるかであり、もう一つは、日航機一二三便の事故の反省の上に立って航空行政の安全を図ることと同時に、また日本航空そのものの完全民営化へ向けての努力でありました。そしてその途中において、全く予期しなかった事態としての伊豆大島三原山の噴火とその住民救助という業務が加わり、さらに年が明けますとペルシャ湾の情勢緊迫化の中における日本船の安全確保という問題が生じてまいりました。私は、日々それらの業務に追われておりまして、残念ながら売上税について十分な関心を持つ間もなく任期を終了したということであります。
  145. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 大変御苦労さまでございました。  第二は、当初予算編成の際の経済見通し、特に円高についての見通しの誤りであります。当初予算において経済運営の基本的態度の一つとして、政府は、「調和ある対外経済関係の形成と世界経済活性化への積極的貢献とを行う」というふうなことを述べておられます。ところが、当初予算の編成当時は、先ほど会田委員からもたしかお話があったと思いますけれども、為替レートは一ドル百六十円台だった。ところが、この百六十円台で策定された政府の施策が、六十二年度予算の編成以後においてもう一ドル百二十円台にまで円高になっている。この結果、輸出に依存する比率の大きい製造業は大打撃を受けた。大企業はそのしわ寄せを下請に送り込んで何とか急場をしのいだ。しかし、その影響をもろに受けた下請中小企業等ですね、まともにかぶった中小企業の経営不振、事業所閉鎖、倒産等は非常に多発したわけです。この問題は、先ほど大蔵大臣もおっしゃったように政府が公共投資を中核とする補正予算を早期に作成し対処したことによって、また、それ以上に中小企業自体の企業努力もあって、大きな社会問題に発展することもなく収束することができました。  私が伺いたいのは、この円高に対する見込み違い、さらには逆に輸入業界における円高差益の消費者還元に対する行政対応の不十分さというふうなことは、今後においても財政運営に有意義に生かされなければならないというふうに考えます。  この円高見通しの誤りあるいは差益の消費者還元に関して、大蔵大臣の今後の所見をお伺いしたいと思います。
  146. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まず一点申し上げておきたいことでありますけれども、例えば六十二年度予算積算レートにつきましては、六十一年十一月一カ月間の平均をもとにして、一ドル百六十三円で計算をいたしたことは事実であります。しかし、これは予算積算レートというものが予算編成上一定のレートを設定する必要があるという、事務的な必要性から実勢相場の状況を踏まえて設けたものでありまして、為替相場の見通しを行っておるものではございません。そして、私ども先輩方から為替水準について言及することだけは避けるべきであると言われ、就任以来その教えを守っております。そして、その為替レートというものについて私は見通しを申し上げることは控えなければならないと考えております。  六十二年というところを振り返ってみましたとき、七月から八月にかけてやや円安になる時期もありましたけれども、十月のニューヨーク株式市場の暴落以降、年末にかけて円高が進んだことは御指摘のとおりであります。そうした中におきまして、さまざまな要因でこれは動いたわけでありますけれども、円高差益の還元という視点から見ますと、累次にわたる対策などによりまして電気・ガス料金の引き下げあるいは輸入消費財価格動向等調査など、情報提供などの施策を講じてまいりました。  そうした施策の効果もありまして、マクロ的には円高などのメリットほかなり還元され、消費者物価上昇率も昭和六十二年度〇・五%、六十三年度〇・八%、二年続けて一%未満にとどまったということであります。ただ、問題は原材料等の低下を通じた円高効果というものが広く薄くあらわれること、また同時に、問題になっておりました内外価格差の問題などもありまして、消費者にとっては必ずしも円高のメリットが実感されにくい面があったことは事実私どもも認識をしておるところであります。  政府として、今後におきましても為替レートの動向などを踏まえながら、円高の局面におきましてはそのメリットの浸透に努めると同時に、それ以前の問題として内外価格差の縮小というものを目指して物価構造の是正を図っていくことが重要である、そのように考えております。
  147. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 第三番目は、昭和六十二年度における減税についてであります。  政府は、同年九月、所得税約一兆五千四百億円の減税を行いました。この減税措置によって景気の落ち込みの防止を図り、また内需も拡大し、結果として景気の好調を見たということは妥当な政策判断と考えられるわけです。しかし、この所得税の減税という側面だけから見た場合に、この際の減税は、言葉の実質的な意味においては減税と呼ぶにふさわしいものではなかったのではなかろうか。なぜなら、所得税の直近の減税は昭和五十九年度に実行されましたが、これは五十二年度以来七年ぶりに行われたもので、物価上昇に伴う名目賃金の上昇による実質増税をも調整するまでに至っていない減税だった。この六十二年度の減税も三年ぶりに行われた。しかし勤労者は、名目賃金の上昇による高い税率の適用を受けて、実質増税となっている。それゆえにこの六十二年度の減税も、名は減税であっても実質は増税分を何がしか調整したものと見る程度のものではなかろうか。この六十二年度の減税のありようを見て、今後とも政府は常に実質的な勤労者階級の減税を図るべきだ、こう考えております。  大蔵省として、この実質的な意味の減税をどういうふうに実施するか、するべきかというふうな基本的な考えをお伺いしたい。
  148. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変難しいお尋ねでありますけれども、委員が御指摘になりましたのといささか私は考えを異にいたしております。  六十二年九月の税制改正では、今委員が御指摘になりましたように、所得税の最低基準の適用対象所得の範囲拡大と累進の緩和、また配偶者特別控除の創設などによりまして一兆五千四百億円の減税を行いました。また、六十三年度実施されました住民税減税を含めますと、これは総額二兆二千億円に上ります。そして、これは六十二年、六十三年の二年にわたりまして一連の抜本的な税制改革の一環として所得課税の負担軽減及び合理化のために実施された恒久税制でありまして、今委員が御指摘になりましたような六十二年度の見積もり誤差の調整のための戻し税的なものということでは私はないと思っております。  税というもの、極めて大切なものでありますし、公平な御負担を願うことと同時に、その制度そのものが国民から信頼を得るものでなければならないことは、私どもしばしば厳しい局面の中で今までも実感をいたしてまいりました。今後とも国民の負担というもの、そして国民の求めに応じて実施しなければならない施策、さらには国際的に我が国が果たさなければならない責任、こうしたものを勘案しながら税というものを考えてまいりたい、そのように考えております。
  149. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 第四番目は、歳入見積もりの誤りの問題であります。これについても、いろいろ金額だとかパーセントだとか数字だとか準備してきたんですけれども、先ほど申し上げましたように、会田先生と後藤先生、それから大蔵大臣自身の方からもいろいろ御答弁がありまして、せっかく準備したんだけれども、数字を読んでいても仕方がありませんので、一点だけお伺いしたいと思います。  先ほどから出ておりますように、この税収見積もりの誤りの中核は、結局法人税の税収見積もりの誤りにある。そして、この法人税の税収見積もりの誤りは、法人の決算期の大半が三月末日である。納期が五月末日までとなっていて、大部分の法人の税収が納期直前に収納される。これは、昭和五十三年の国税収納金整理資金法の改正によって従前の四月までの部分を五月まで、こういうことにしたための結果だ。ですからこれを直したらどうだというふうな御意見が他の先生からいろいろ出たわけです。私としてもそう思います。  それについては先ほどいろいろ答弁がありましたので、もう一つ、この税収見積もりの誤りは、プラスに誤ることもあればマイナスに誤ることもあるわけです。このような税収見積もりの誤り、特に法人税収のマイナスの見積もり誤りというのが五十六年、五十七年度においても二年あったわけです。ですから、これも先ほどから各委員からお話が出ております決算調整資金に関する法律に基づいて現在ゼロになっている決算調整資金を入れておかないと、見積もり誤りがマイナスになったときの処置のしようが非常に困るんじゃありませんかという点で、これについて大蔵大臣の簡単な御意見で結横でございますが、お伺いしたいと思います。
  150. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 決算調整資金は、先ほど来の御論議にもありましたように、決算上の不足に対処することを目的としておりまして、今委員がもう一方で提起をされました税収の年度所得区分の議論と直ちに結びつくものではありません。委員の御指摘のとおりであります。  しかし、年度内の予見しがたい税収の落ち込みなどに対して適切に対応するために決算調整資金というものを財政事情など勘案しながら充実させていくことは、今後の財政運営を考える上で一つの課題である、そのように認識をいたしております。
  151. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 財政運営全般に関する質問として他の先生からいろいろお話ありましたので、簡単ですがこれで終わらせていただきます。  次に、法務大臣にお伺いしたい。  法務省の所管事務のうち、出入国管理事務は近時の国際化社会に対処するためには極めて重要な部分であると思います。現在の国際親善、国祭協調というような世界的傾向の中にあって、入管行政は単に治安維持の観点から出入国を取り締まるというふうな行政から脱却して、広く世界に開かれた日本、こういう観点から取り行われなければならないと思います。  法務大臣は、この入管行政に関して基本的にどのようなお考えでございましょうか。
  152. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) まず、お答えする前に、このたび長谷川大臣の辞任に伴い法務大臣に就任をいたしました梶山でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。  お答えを申し上げます。  外国人の入国及び在留の管理は、御指摘のとおり、国際的視点並びに国内各般の情勢を踏まえて総合的見地から厳正かつ適切に行われるべきものと考えるところでありますが、不法滞在者等法違反者に対しては、法治国家としてその人権に十分留意しつつも厳正かつ的確に対処することが必要であるというふうに考えております。
  153. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 大臣は、この九月二十日夜、警視庁の不法在留外国人取り締まりに同行し、新宿歌舞伎町まで行かれていろいろ実態を調査された、このことは大変就任早々にもかかわらず御苦労なことだと思います。しかし、その後の記者会見における大臣の発言は、人権擁護局というものを内部部局に持つ法務省の所管大臣として、また入管行政の最高責任者としてまことに不適切な発言だったと思います。  大臣の発言内容について簡単に述べてください。
  154. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 本年九月二十一日の私の記者会見において、前夜の東京入国管理局と警視庁の合同摘発の状況報告する際、極めて不適切な発言をいたしましたので、九月二十五日の記者会見においての発言を取り消すとともに、関係者皆様に深くおわびをしたところであります。御了解を願いたいと思います。
  155. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 新聞報道によると、大臣の御発言は、「悪貨が良貨を駆逐する」、アメリカにおいて黒が入って白が追い出される、この歌舞伎町においても東南アジアからの不法在留外国人によって善良な市民が追い出されるというか困っているというか、そういう状況にあるという発言というふうに伝えられておりますが、間違いございませんか。
  156. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 全般を通じまして不適切な発言であったことは深く反省をいたし、取り消しをしているところでございます。この「悪貨が良貨を駆逐する」という、例えが確かに不適切だと思いますけれども、これは東南アジアの方々を指して私は申し上げているのではなくて、やはり売春行為をなす客待ちの方々がたくさんあそこにたむろをしている、そしてその方たちが不法滞留者である。そういう現実はこれは見逃すことができないし、むしろそういう意味で、長い間警察やあるいは入管局にその周辺の住民の方々から苦情やあるいは陳情等が数多く参っておりますので、そういうものを背景に考えながら、やはり不法な売春や、あるいはそれが個人的には同情すべきことによって起きるとしても、私は売春行為は認められるべきものではございませんし、いわんや不法入国者あるいは入管の違反者に対してその処置を求めなければならないという意味で、その例えが大変拙劣であったわけでありますが、例えの真意はそういうところでありますので、どうぞひとつ御了承のほどを願いたいと思います。
  157. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今の大臣の発言は、私は非常に納得できない。私は、東南アジア人であろうが日本人であろうが、売春している方が立派であって一般市民が困ってもいいなんていうことを言っているんじゃないんです。私が言いたいのは、外国人が不法就労しているとすれば、そのような不法就労している外国人の地位を承知の上で、これを利益のために雇っている日本人経営者とこの不法就労する外国人と、一体人種的にどちらが優秀で、どちらが下劣だなんていう判断がなぜ出てくるかということをお伺いしているんです。
  158. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) そういう誤解を受けたとすると大変不徳のいたすところでございますが、私は、不法就労者が悪くてそれを雇う方がいいなどという観点でこの視察を行ったものではございません。確かに不法就労の一種かもしれませんが、売春行為はやはり認めるべき状態ではないし、それから入管法違反はこれまた認めるべきことではございませんので、そういう観点で私は今回の視察を行い、報告を申し上げた点でございますが、残念ながら私の言葉の足りなかった点を反省いたしておりますので、御了解を願いたいと思います。
  159. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 これは非常に重要な問題なんです。今のは不法就労のことをお伺いしましたが、例えば売春の問題でも同じなんです。不法在留外国人女性が売春行為をしているということは、劣悪な立場にいる、東南アジアであれ、外国人女性がいるということを承知の上でこの売春女性を求める日本人男性がいなければ成り立たないことなんです。そうだとしたら、なぜ不法在留外国人売春女性が人種的に悪貨であって、愚劣であって、それに対して、こういうふうな女性を低額な金で性の享楽の対象として求める日本人男性がなぜ良貨であって人種的に立派なんだということを聞きたいんです。要するに、これは人種の問題じゃないはずなんです。  法務大臣の御意見は、全体的に読めば、「悪貨が良貨を駆逐する」、黒が白がという段落から続いてくれば、結局人種差別発言だと思うんです。その辺についてもう一度お伺いしたい。
  160. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 反論をするわけではございませんが、私が視察をした後に検挙があったわけであります。五十一名の方が売春防止法該当事犯として検挙をされております。そのうち四十五名の方が入管法違反で、これまた入管局の収監と申しますか、指導をしているところでございますので、その件に関しましては、東南アジア人であるか、日本人であるかあるいは外人であるかという差別の問題ではございません。少なくともそういう現実があったということについて私は御報告を申し上げているわけでございます。  ですから、確かに需要があるから供給があるんだ、あるいはそれを甘受する社会があるのかどうなのか、これは残念ながらまだ私は承知をいたしておりません。因果律、どっちかが先かという問題はあろうけれども、現実にその周辺で住民が大変困っており、苦情等が来ていることをおもんぱかって、何遍かそういう手入れも今までされているようでございますが、引き続きそういうことを行うことに、ちょうど機会がありましたので視察をし、その報告を申し上げたところに不適切な部分というか極めて遺憾な点があったということをおわびをしているわけでありますので、どうかひとつ御理解のほどをお願いしたいと思います。
  161. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 きょうは時間の関係でこれだけにしておきます。しかし、今の答弁は問題のすりかえであって、決して大臣の人種差別的発言に対して、特に差別を受ける立場の人々を納得させる御答弁ではないと思います。きょうはこの段階でこの問題は終わりにさせていただきます。  次に、自衛隊の海外派遣に関連する問題についてお伺いします。  この問題に関しては、先ほど来千葉委員の方からいろいろお話がありまして、防衛庁等からも御答弁がありました。私は、現在政府で国連平和協力法とかいろいろやっておられる問題に対して、二つの疑問があるんです。一つは、政府は果たして自衛隊員に対し中東地域にいかなる形であれ出動することを命令する権限を持っているんだろうか。二番目は、政府はいろんな政策決定をしていくに際して、生命の危険にさらされる立場に置かれる可能性のある若い自衛隊員の意思や感情をどの程度考えて政策決定しているんだろうか。この二つの点が疑問なんです。ですから、今から私がお伺いするのは、現に政府が制定を企図している国連平和協力法とか、そういう問題について聞くのではありません。私は、派遣される可能性のある立場にいる自衛隊員の一人一人の立場に立ってお伺いしたい。  まず、自衛隊員は特別職の国家公務員として自衛隊法上種々の義務を課されております。しかし、このような法令に基づく義務を負担していることを別にすれば、それ以外に法令に規定なき事項については、円衛藤員は日本国民の一人として基本的人権を享有するというふうにお考えですか、いかがでしょうか。防衛庁長官
  162. 石川要三

    国務大臣(石川要三君) 今二つの点から御質問いただいたと思います。この両方の問題に共通する問題でございますが、自衛隊員として基本的人権が認められているかどうかということでございますけれども、これは私は、自衛官であろうと何であろうと、基本的人権というものは憲法の中で保障されなければならない、こういう前提に立っております。  その中でまず一つには、自衛官を今回の中東地域へ派遣する場合に、派遣されるその当事者、若い隊員でございますが、その当事者の意見を聞く用意があるかという一つの点があったろう、かように思います。この点を先にお答えさせていただ くわけでございますが、我が国の国際社会への貢献策の一環として現在検討している国連平和協力隊、仮称でございますが、この自衛隊のかかわり合いにつきましては、今検討最中でございます。  なお、この中におきまして一般論としてあえて申し上げれば、「自衛官は、命を受け、自衛隊の隊務を行う。」、これは御承知のとおり防衛庁設置法の第五十九条にしたためられているわけでありますが、この五十九条によって自衛隊の隊務を行うということが規定されておる。自衛隊の隊務については自衛隊法その他の法令に規定されているところでありまして、自衛官の職務の内容はこれらの法令によって定められるものでございます。これらの法令の枠内のものであれば一般的に職務内容を変更することも許される、かように理解をしているわけでございます。したがって、自衛隊が任務を遂行するために特定の地域に赴くからといって、隊員の意見を聞く必要は私は要らないのではなかろうか、こういう見解を持っているわけでございます。  二つ目の点でございますが、隊員に対して現在中東地域への勤務命令を出し得ると考えるか、こういう点でございました。  その根拠につきまして申し上げたいと思いますが、一般に武力行使の目的を持たないで自衛隊の部隊を他国に派遣することは、現行法上全く行えないわけではないわけでございます。例えば南極地域の側側に対する協力あるいは遠洋練習航海などは既に実施をしているところであるわけでございます。また、研修等の目的で隊員が外国に行くことも例があるわけでございます。かかる派遣は自衛隊の任務あるいは教育等の必要性に基づいて行うものであり、一般論として申し上げれば、かかる派遣においてどこに行くかについてはそれぞれの任務あるいは教育訓練上の必要性に基づき定まることとなるわけでございますが、中東地区が特に除外されるという必要はない、かような考えに立っているわけでございます。
  163. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今の長官の答弁に対して揚げ足取りするわけじゃありませんが、例えば南極観測に対する協力ということで南極にも派遣されることがあり得る、それはそうなんです。それはなぜそうかといったら、自衛隊法百条の四があるからなんです。自衛隊法百条の四がなくても自由にどこへでも自衛隊員を派遣できるというふうなことであるとすれば、自衛隊員の雇用契約上の地位というものは、極論すれば特別権力関係に基づく全く何らの保障もない。先ほど私が自衛隊員にも基本的人権は保障されるのかと伺ったのは、自衛隊員も雇用契約上一方的に不利益に雇用条件を変更されるような立場にはないということを確認するために質問したんです。  ところが今の長官の御答弁だと、世界じゅうどこへでも自由に派遣できるし、その職務命令に従わなければならぬというふうに聞こえますけれども、もう一度確認しますが、要するに自衛隊員の職務内容やあるいは勤務場所というものはどのように公的に規制されるとお考えですか。
  164. 日吉章

    説明員(日吉章君) 自衛隊員を職務命令によりましてある一定の勤務地に行って勤務させる、あるいはそちらで任務に当たらせるといいます場合には、ただいま委員も御指摘になられましたように、自衛隊法法上その任務が自衛隊に与えられていなければならないことは当然でございます。その与えられている任務を遂行する限りにおきまして、その地域につきましては特に法律上限定されているものではない、かように考えております。  南極観測支援につきまして南極の方に出かけることができるのと同じように、また教育訓練の目的でもって米国等に出かけますことができるのと同じように、例えば同じような状況で教育訓練あるいは情報聴取とかそういうようなことで中東方面に派遣するということは現行法上も任務として与えられておりますので、その限りにおきましては中東地域とかある特定の地域が自衛隊法上除外されている、こういうものではない。こういう意味におきまして防衛庁長官の方から、特に中東地域が排除されているわけではございませんと、こういうふうに申し上げたわけでございます。  重ねて申し上げますけれども、当然それは自衛隊法上認められている任務遂行の範囲内においてということは当然のことでございます。  それから、自衛隊員を採用する場合でございますけれども、その場合に、勤務地につきまして限定をしているのかどうかということでございますけれども、自衛隊員を募集あるいは採用するに当たりましては、これは各官庁とも同じでございますでしょうが、自衛隊の任務一般や職務の内容あるいは勤務の条件、処遇等につきまして適宜説明を行いまして、応募者に対し職業としての自衛官というものが正しく理解されるよう努めているのは当然のところでございます。  ただその際、将来におきます自衛官個々人の具体的な勤務場所についてまで特定するわけにはいきませんし、そのような詳細な説明を行っているわけではございません。任務なり勤務の態様というようなものを説明しているわけでございますので、そもそも「自衛官は命を受け、自衛隊の隊務を行う。」と防衛庁設置法上もされているわけでございますから、自衛隊の隊務につきましては自衛隊法その他の法令に規定されているところで、ある勤務地に行って勤務をすることを命令されれば、それが海外であったといたしましても整々とその職務に従事すべきものと、かように解釈いたしております。
  165. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、要するに自衛隊法もしくはそれに関連する法律によって自衛隊員の職務内容として規定されている、その職務内容を履行するためにどこの場所へ行く、ここの場所へ行く、これはわかりました。  それではお伺いしますが、仮定の問題として、非武装でかつ後方支援活動という意味において自衛隊員が中東地域に行くというふうなことは、現行自衛隊法上規定がありますか、ありませんか。
  166. 日吉章

    説明員(日吉章君) それはどういう任務を帯びて行くかということであろうと思います。教育訓練とかあるいは情報聴取とか、そういうようなことで行くということであるならばそれは可能であると思います。しかしながら、国連平和維持活動に参加するあるいは協力するというような形で行くということでありますればこれは憲法上許されないわけではないと思いますけれども、現在の自衛隊法上はそのような具体的な任務は与えられていないのではないか、かように理解をいたしております。
  167. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 まだいろいろ聞きたいことはありますが、時間が来てしまいましたので……  ともかく、防衛庁長官、私は希望しておきたい。要するに、日本のためだったら死んでもいいといって自衛隊員になったその人方の汗を流させるだけでなくして、中東地域にまで行って血を流させるようなことは、よくよく考えた上で事を決めていただきたい。時間が来ましたので、要望だけしておきます。
  168. 諫山博

    ○諫山博君 法務大臣に質問します。  「悪貨が良貨を駆逐する」と、こういう発言のニュースを聞いて私が真っ先に感じたのは「法務大臣の心のどこかに、黒人は白人よりも劣るものだ、こういう思想があるのではないかということです。そうだとすれば、法務大臣であるだけに事は重大です。  それにしましても、自民党幹部による一連の人種差別発言というのは驚くべきものがあります。中曽根元首相が、アメリカには黒人とかプエルトリコ人、メキシコ人とかがいるから平均的に見たら非常に低い、こういう問題発言をしたのが四年前です。自民党の渡辺元政調会長が軽井沢セミナーの講演で、向こうの連中は黒人だとかがいっぱいいるからと、こういう言い方をしながら、「ケロケロケロ、アッケラカのカーだ」、こういう下劣な人種差別発言をしたのが二年前です。自民党の一部幹部の中に根深い人種差別体質があるのではないかと私は疑わざるを得ません。これらはマスコミで取り上げられ外国で問題になると慌てて弁解をしたり陳謝したり、取り消したりが繰り返されております。  今度の梶山法務大臣の場合も全く同じパターンです。こういうことは絶対にあってはならない。特に、法務大臣の地位にある人がこんな誤りを犯してはならないと私は痛感します。法務大臣は発言を取り消されたようですけれども、現在の感想なり反省の弁を聞かせてください。
  169. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 委員指摘の点につきましては、猪熊委員に先ほどお答えをいたしましたとおりでございます。私の言葉の不十分さから誤解を招いたことに大変私は恐縮をし、その点について深くおわびを申し上げる次第であります。  すべての人間は平等であり、ひとしくその人権が尊重されるべきものであるというふうに感じていることは当然であります。これからもそういう観点に立って法務行政の推進に全力を尽くしてまいりますので、どうぞひとつ御理解のほどをちょうだいしたいと思います。
  170. 諫山博

    ○諫山博君 水俣病裁判に関する東京地裁の和解勧告について質問します。これからの質問は関係各省庁の基本的な政治姿勢を聞ますから、大臣自身で答弁してください。事務当局の説明は必要ありません。  この問題を考える場合に、次の観点が非常に大事です。それは水俣病がチッソの工場排水によるものであるということはもう裁判上確定しているということです。政府の方でもこれが公害であることを否定してはいません。そして、水俣病患者が罪なくして日々悲惨きわまる生活を強いられている、解決が一日おくれればおくれるだけ患者の苦痛は増大する、こういうことを私たちはまずはっきりと認識しなければなりません。東京地裁の和解勧告は、すべての原告に判決を言い渡そうとすればさらに数年に及ぶ年月を要すると言っています。高裁、最高裁となれば、判決確定はいつのことかわからなくなります。毎日新聞の社説が言っていますように、「決着は二十一世紀にまで持ち越される可能性が強い」、これが今常識だと思います。  ところで、原告の平均年齢はもう七十歳近くなりました。既に八十八人の原告が裁判中に亡くなりました。ことしの四月熊本地方裁判所の口頭弁論で、「裁判長さま、せめて納骨堂を作るお金をください、お願いします」と、こう言って涙ながらに訴えた女性の原告がいました。この方は法廷で証言して二週間後に、判決を待つことなく亡くなりました。これが水俣裁判の現実です。生きているうちに救済してもらいたい、こういう血の出るような患者の声に、裁判所も国も県もチッソも当然こたえるべきです。  法務大臣、この問題をどう考えますか。
  171. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 法務省といたしましては、裁判所から和解勧告がなされた場合、従前から、国民の権利、利益と公共の福祉との正しい調和ということを踏まえながら、関係行政庁の意見を徴した上、慎重に法的検討を加え対処をしてきたところであり、今回の和解勧告に際しても、関係行政庁である環境庁、厚生省、通産省、農水省の各意見を徴したところ、関係各行政庁とも法的責任がなく和解には応じられない旨を述べ、私としても、各意見は相当であり和解はできないものと考えて和解勧告を拒否したものであります。
  172. 諫山博

    ○諫山博君 法務大臣は東京地裁の和解勧告を読まれましたか。
  173. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 読ませていただきました。
  174. 諫山博

    ○諫山博君 和解勧告は、「歴史上類例のない規模の公害事件が公式発見後三十四年以上が経過してもなお未解決であることはまことに悲しむべきことであり、その早期解決のためには訴訟関係者がある時点で何らかの決断をするほかはない」、こう言っています。こういう立場から裁判所は和解勧告をしたわけです。  国が交渉のテーブルにも着かない、早期解決の意図を具体的な行動で示されもしない、これは全く不当だと思いますけれども、この血の出るような原告の要求にどうこたえるつもりですか。
  175. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 今回の和解勧告は、国の法的責任に触れない形で何らかの解決を模索しようという趣旨というふうに理解をいたしております。しかし法務省といたしましては、実質的にはいわば各行政官庁の所管であり、平たくいえば右代表者法務大臣という形で和解を拒否したわけでございますが、一方、公害補償の件は着実な別個な体系で進められており、その残りの分野について確たる行政責任を負うべきかどうか、これはそれぞれの各行政官庁の判断に任せるべきものだ、かように考えてその総括的なものを取りまとめたわけであります。
  176. 諫山博

    ○諫山博君 今の答弁は、水俣病の裁判は判決で決着をつけるほかないという立場のように聞こえますけれども、そうだとすれば、これは裁判所の勧告を素直に読んだものではないと思います。  そこで問題を変えますけれども、裁判所の和解勧告が行われた後、原告団がチッソの会社と交渉しました。そのときのチッソの態度は、態度を保留するということです。従来は、和解勧告が出たら真剣に検討すると言っていましたけれども、何となくチッソの態度が後退したのではないかということが憂慮されております。そして、国がチッソに圧力をかけたようなことはないのかというような危惧も述べられております。  そこで法務大臣と環境庁長官に聞きますけれども、そういうことは絶対にあってはならないし、そういうことはしてはいないんだということをここで断言していただけますか、法務大臣と環境庁長官
  177. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 国の責任の立場に立って検討したものであり、行政責任を我々は判断をしたわけでありまして、チッソ側、いわゆる民間の判断を我々はとったわけではございませんし、民間にどうこうしようという意図は全くございません。
  178. 北川石松

    国務大臣(北川石松君) ただいま委員の御指摘のように、チッソに対しましてそのようなことはいたしておりません。
  179. 諫山博

    ○諫山博君 難しい裁判と言われていたスモンあるいはカネミ油症事件、さらに大阪空港の騒音事件、こういう難事件は結局裁判所の和解で決着を見ています。本件でも、裁判所は長い審理の後に、これは判決で結論を出すより和解による解決が望ましい、こういう立場で勧告を出しました。そして、既に新聞でも報道されていますように、東京地裁だけではなくてほかの裁判所も同じような立場から和解勧告をするのではないかと言われています。明日熊本地裁で同じような勧告がなされるだろうという報道もされています。  国が和解勧告を拒否した、こういうニュースを聞いて、原告団は全国から東京に集まってきました。そして環境庁の前ではさまざまな抗議行動が繰り広げられたはずです。熊本県知事は、残念だ、国が話し合いのテーブルに着くよう県としてもできる限りの努力を尽くしたい、こう言っております。多くの新聞が論説なり社説を出しましたけれども、すべて、これは時宜を得た和解勧告だ、この和解勧告で決着をつけるべきだ、こう言っております。  そうすると、かたくなに裁判で争うという政府の態度ではなくて、裁判所の和解勧告によってこれを処理する、これが原告、弁護団の願いであると同時に、まさに国民世論です。  この国民世論に対して環境庁はどうこたえるつもりですか。
  180. 北川石松

    国務大臣(北川石松君) 私といたしましても、水俣病の問題は早期に解決をいたさなければならぬということは前国会でも申してまいりました。また私は、争いの仲裁というものは時の氏神だということも申し上げておりました。ただ現時点においては、このことに直ちに応ずることは困難な状況にありますので、環境庁といたしましてはあのように、七十五名の方についての判決をいただいた後に対応いたしたい、このように思った次第でございます。
  181. 諫山博

    ○諫山博君 判決をいただいたときと言いますけれども、和解というのは白黒の結論を出さずにその前に解決をするというのが裁判上の和解でしょう。これはもうおわかりでしょう。その点どう考えますか。
  182. 北川石松

    国務大臣(北川石松君) 今委員の御指摘のように、裁判所の和解勧告というものは非常に重く見ておりますが、現時点におきましては、私は、この和解の勧告を受けはいたしましても、行政の道といたしまして、七十五名の判決をいただいた後に対応いたしたい、この考えを持っております。
  183. 諫山博

    ○諫山博君 農水大臣、厚生大臣、通産大臣にそれぞれお聞きします。  さっきの法務大臣の説明では、関係省庁と話し合って和解勧告は受けないことにしたということですけれども、今申し上げた各省庁は、私が指摘した点についてどうお考えですか。それぞれ順番に説明してください。
  184. 山本富雄

    国務大臣(山本富雄君) お答えいたします。  水俣病問題の重大きにつきましては十分認識をしておるつもりであります。しかしながら、本件訴訟のうち農林水産省に関係する部分は、漁業法及び水産資源保護法の運用をめぐる法的責任を前提とした賠償請求でありますが、この法的責任を容認することはできないとの立場について裁判所の判断を得たいと考えているところであります。
  185. 武藤嘉文

    国務大臣(武藤嘉文君) 私も、この水俣病の問題についてはできる限り早く解決をすることが望ましいという考え方を持っております。  ただ、今問題になっておる裁判でございますけれども、私どもの通産省に対して原告側が提起をされておりますのは、一つは工場排水規制法の権限の問題、いま一つは行政指導の問題でございます。それに対して従来通産省といたしましては、行政的な責任はないという観点から一応主張をいたしてきておるわけでございます。それで裁判が行われていると思っております。ですから、私どもとしてはそういう立場でございますので、和解勧告の前にでも行政責任について何かはっきりした裁判所の見解を聞かせていただきたいのでございますが、今のところそれはございません。そうなってまいりますと、私どもとしては行政責任はないという立場で従来主張してまいりましたので、それに対する裁判所の見解が示されないうちに和解勧告を受けるというのはこれは困難である、こういう形から各省とも御相談をしてお断りをする、こういうことにいたしたわけであります。
  186. 津島雄二

    国務大臣(津島雄二君) 私どもといたしましても、水俣病事件は、和解の勧告で述べられておりますように歴史上類例のない規模の公害事件であり、被害の深刻さと原告の方々の高齢化等を考えますと、この事件が現在もなお未解決であることは大変遺憾であると思っております。  しかしながら、このたびの和解勧告におきまして、水俣病事件に係る食品保健行政上の法的責任の有無についての判断が示されておりませんので、厚生省として和解の協議に入るという判断をすることは困難でございます。
  187. 諫山博

    ○諫山博君 関係各省庁に共通しているのは、自分の省庁には責任はない、こういう言い方です。しかし、熊本地方裁判所は国の責任を認めたんですよ、判決で。そして、国に責任はない、こういった判決は日本には存在しません。責任がないから話し合いのテーブルに着かない、これは不遜な態度ですよ。話し合いのテーブルに着いて、その中でさまざまな責任論を展開するというのが常識ではないですか。これが早期解決の道ではありませんか。  私は法務大臣に要望いたします。今のような、うちの省庁には責任はない、あるいは関係はない、こういう言い方は全く国民を愚弄した言い方ですよ。そういう言い方があるとすれば、裁判所の和解のテーブルで堂々と議論し合ったらどうですか。それを和解のテーブルにも着かない、これは全くこの問題を早期に解決しようとする意思がない、こう言わざるを得ません。生きているうちに救済してもらいたい、こういう要求にこたえることにならないじゃないですか。法務大臣どう思いますか。
  188. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 今そのぞれの大臣からお話がございましたように、それぞれの行政官庁において行政責任の有無について見解があったわけであります。それに基づく訴訟でございますから、和解はそれを一応乗り越えるとはいうものの、その時点を踏まえないで物事を律することができるかどうかという問題になるとまた別な問題があろうかと思います。  それからもう一つは、現実の被害救済の問題でございますが、被害救済の問題についてはそれぞれ補償法等の措置でやられている分野もありますし、また、そうでないという主張のあることも、私も現実に承知をいたしております。そういうものの調整を図らなければならないわけでありますから、各省庁の意見法務省としては取りまとめて、その意見の代理をすることが法務省の仕事でございます。御案内のとおりであります。そういう時点で、今の和解の拒否についてはひとつ御了承を願いたいと思います。
  189. 諫山博

    ○諫山博君 今の制度で患者が救済されているというような理解をしているとすれば、これはとんでもありませんよ。救済の趣旨にかなっていないというのが東京地裁の和解勧告の内容です。東京地裁は明らかに今の制度の不備を指摘しながら話し合による解決を勧めているわけです。  そこで環境庁長官にもう一回質問します。あなたはことしの六月五日に衆議院で、「水俣病患者の迅速かつ公正な救済」を約束されました。ことしの六月二十日の参議院環境特別委員会で、全会一致で水俣病の早期解決の附帯決議が決められました。そのときに環境庁長官は、「附帯決議につきましては、その御趣旨を体しまして努力いたします。 ありがとうございました。」、こういう発言で締めくくっている。早期解決ということを国会の場で約束された。そうすると、今東京地裁が和解勧告をしている。まさにこの機会こそ早期解決のチャンスじゃないですか。私は改めて、環境庁長官が先頭に立って勧告拒否という不当な態度を改めるように提言いたします。そして関係各省庁を環境庁長官が説得する、こういうぐらいの措置をとってもらいたいと思いますけれども、長官の答弁を要望します。
  190. 北川石松

    国務大臣(北川石松君) 本年六月二十日の附帯決議の中で、私が水俣病患者の早期救済が急務であることは認識をし、そして附帯決議の線に沿って努力することも申し上げました。また、その場で沓脱委員から、話し合いしたらどうだという御指摘も受けました。そういういろいろのことが今委員指摘ではっきりと私自身が今答弁できると思っております。  ただ、この問題につきましては、先ほど来御答弁申し上げましたように、現時点におきまして、このことは受ける形の中で行政の筋というものを通しておきたい、この思いを持ちまして、七十五名の原告の判決を得た後においてはまた対応ということも考えられるじゃないかということを申し上げた次第でございます。
  191. 諫山博

    ○諫山博君 とにかく、国が和解勧告を拒否したということは今非難の的ですよ。国の態度が正しいという意見を述べている人を私は聞いたことがありません。新聞を読んでください。私は、こういう国民の世論には国は従わなければならないと思います。八十八人もの人が裁判中に命をなくした、この厳然たる事実を本気で考えなければなりません。政府が改めてこの問題を再検討することを要望いたしまして次の質問に移ります。  次に、総務庁長官質問します。  同和行政に関する地対協の意見具申が出されたのは一九八六年の十二月です。総務庁地域改善対策室の啓発推進指針が出されたのが一九八七年の三月です。その直後、一九八八年の国会でこの問題が集中的に論議されました。そのときの政府の答弁を振り返りながら総務庁長官質問します。  衆議院の予算委員会で我が党の東中委員が、意見具申、啓発推進指針は竹下内閣の方針として打ち出されたものと聞いてよいか、関係各省庁全部で行うというのが政府の方針であると聞いてよいか、こう質問したのに対して高鳥総務庁長官は、竹下首相が同席している委員会で、そのとおりでございますと答弁しました。衆議院の予算委員会分科会で我が党の経塚議員が、意見具申と啓発推進指針は政府が挙げて尊重、実施すべき性格のものと解釈してよいか、こう質問したのに対して高島総務庁長官と紀総務庁官房審議官が、そのとおりでございますと答えています。総務庁のこの立場は、行政継続の建前から見て現在も受け継がれていると思いますけれども、どうでしょうか。
  192. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 今の諫山委員の御質問でございますが、私は、自民党内閣が継続しておりますし、総務庁長官というものは行政庁である総務庁の長官でございます。当時の総務庁長官が発言したことは依然として私どもの行政の、何と申しますか、継続性の観点から基本となっているものと考えます。
  193. 諫山博

    ○諫山博君 では、具体的な言葉で確認させていただきます。  意見具申と啓発推進指針は内閣の方針として打ち出されたものである、関係各省庁全部で行うというのが政府の方針である。このことを長官もお認めになるわけですね。
  194. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 総務庁長官が、同和対策については総括的な責任があり、各省と連絡をして、また調整をしながら進めていくものであることは御承知のとおりでございます。私はそのような考え方のもとに総務庁長官が発言されたものだと考えております。
  195. 諫山博

    ○諫山博君 あなたもその立場だと聞いていいですか。
  196. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) その啓発指針をつくりましたときには私が総務庁長官でありませんから、その点については、当時の総務庁長官の発言を私はこれからの行政の基本になるものと申しました。私がこれからいかなる政策を御提案申し上げ、また、いかなる行政をしていくかということについていろいろ申し上げることがありとすれば、私は各省と十分連絡をとり、そしてまた政府のと申しますか内閣の方針として十分成り立つものとして御答弁申し上げることになると私は考えます。
  197. 諫山博

    ○諫山博君 では、事務当局に説明を求めます。  今私が読み上げたような立場というのは、現在の総務庁の方針と一致すると聞いていいでしょうか。
  198. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 地域改善対策につきましては、その方針につきましては現在も継続しているという認識でございます。
  199. 諫山博

    ○諫山博君 総務庁は国会の答弁で、啓発推進指針は意見具申の精神に沿って取りまとめたものである、こう説明しています。両者には内容上の相違はないと聞いていいですか。
  200. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 地域改善対策啓発推進指針につきましては、昭和五十九年の地域改善対策協議会からの意見具申に基づきましてその策定が提言されたということでございまして、私どもは、その意を受けて指針を作成いたしております。
  201. 諫山博

    ○諫山博君 内容上の相違がありますかという質問です。
  202. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 内容上は一体であると、こういうふうに思っております。
  203. 諫山博

    ○諫山博君 問題は、意見具申と啓発推進指針が各省庁でどのように具体化されるかということです。  総務庁の瀬田地域改善対策室長は共産党の経塚議員の質問に対して、各省庁の間で定期的に連絡会議を開き関係省庁と連絡しながら施策を進めている、基本的な問題についてはすべて一致して行政を進めている、基本的な方向で各省庁で異なるという事実はございません、こう答弁していますけれども、この状況は現在も変わりありません
  204. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 現在もその方向につきましては変わりがないものと思っております。
  205. 諫山博

    ○諫山博君 意見具申や啓発推進指針を行政の中でどのように生かしていくのか、この問題に対して高鳥総務庁長官は、「地方自治体とも十分連絡をとりながら確固たる信念を持って進めてまいりたい」、こう述べています。そして、長野県豊野中学校で行われた確認・糾弾会に公務員が出席したという問題について総務庁の紀審議官は、望ましくない、推進指針の方向で、やめるように指導したい、こう答弁しました。ところが地方に行くと、意見具申や啓発推進指針について何の説明も受けていないと言いながらこれを黙殺するところがあるんです。この問題をどう思われますか。そして、総務庁としてどう末端に指導を徹底させますか。
  206. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 地域改善対策啓発推進指針につきましては、私ども昭和六十二年の三月に、同和問題に関します啓発活動の指針となるべく、関係する省並びに都道府県、政令指定都市にそれを送付したところでございます。各部道府県、地方公共団体におきまして、十分尊重してその方針のもとに啓発活動を続けていただいている、こういうふうに意識しております。
  207. 諫山博

    ○諫山博君 この方針どおりに行政が行われていないところがたくさんあるんですよ。あなたの方では指導を徹底すると言われますけれども、具体的にどういう方法で指導を徹底されますか。例えば確認・糾弾の問題が典型です。
  208. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 私ども総務庁の立場といたしまして、広く地方公共団体にこの啓発活動についてその指針を尊重してやっていただくというようなことにつきましては、例えば同和対策にかかわっている職員の方々の指導者養成研修会、こういうようなものを開催いたしまして、広く公平に情報が伝達できるという場を設けているところでございます。これももう長年続いていることでございまして、むしろ私どもも、啓発については日ごろ十分意識しているところでございます。
  209. 諫山博

    ○諫山博君 あなたは意見具申とか啓発推進指針の内容について関係各省庁に意見の相違はないと言われましたけれども、これは、民間団体の行っている確認・糾弾についても意見の相違はありませんか。
  210. 小山弘彦

    説明員(小山弘彦君) 確認・糾弾に関しましても、その基本的な認識の仕方においては関係省庁間で意見の相違はないものと思っております。
  211. 諫山博

    ○諫山博君 文部省質問します。  文部省は、啓発推進指針の内容意見具申の内容に異なる点があると思っていますか。あるいは啓発推進指針の内容に、文部省の方針に一致しないところがありますか。総務庁の説明では、そんな不一致はないはずだと言っておられますけれども。
  212. 菱村幸彦

    説明員(菱村幸彦君) 私どもは、意見具申に基づきまして啓発推進指針が総務庁においてまとめられたものと理解しておりまして、先ほど御答弁がありましたように、それについては内容的に一体のものというふうに考えております。
  213. 諫山博

    ○諫山博君 ちょっとよく聞き取れませんけれども、その啓発推進指針と意見具申の間には、内容上の相違はないと聞いていいですか。結論だけ答えてください。
  214. 菱村幸彦

    説明員(菱村幸彦君) もちろん中身は意見具申に基づきまして書かれているものでございますから、それを敷衍したり、いろいろ別な観点から述べたりということであろうと思いますが、その精神においては一致しているものというふうに考えております。
  215. 諫山博

    ○諫山博君 啓発推進指針は文部省の方針とも一致していると聞いていいですか。
  216. 菱村幸彦

    説明員(菱村幸彦君) 私どもにおきましては、従来から、学校教育において基本的人権の尊重が正しく行われることを第一の方針に掲げておりますし、それに第二の方針としまして、地域の実態に配慮した教育を推進すること、そして第三といたしまして、同和教育と政治運動や社会運動との関係を明確に区別する、教育の中立性が守られるように留意するということを基本にしておりまして、これらの基本的な方針につきましては、意見具申ないしはこの啓発推進指針の方向と同じものというふうに考えております。
  217. 諫山博

    ○諫山博君 啓発推進指針には、部落解放同盟、解同などが行っている確認・糾弾に公務員が出席するのは望ましくない、好ましくない、こう言っております。  かつて文部省の西崎局長は、この点について、全く異論ございませんと答弁しています。確認・糾弾の場に県教育委員会の人たちが出席するのは好ましくない、望ましくない、こういう立場は現在の文部省も堅持していますか。
  218. 菱村幸彦

    説明員(菱村幸彦君) かつて国会におきまして西崎局長が答弁したことは、現在もそのとおりでございます。
  219. 諫山博

    ○諫山博君 具体的に言うと、確認・糾弾の場に県教委の人たちが出席することは好ましくないし望ましくない、これが文部省の方針だと聞いていいですか。あなたの答えで説明してください。
  220. 菱村幸彦

    説明員(菱村幸彦君) 一般論としてはそのとおりであろうと思います。  ただ、この確認・糾弾の場に当たるかどうかということは、実際の場の個別具体の状況に応じて各地方公共団体ないしは学校等が主体的に判断すべき問題であると考えております。
  221. 諫山博

    ○諫山博君 法務省質問します。  法務省は、確認・糾弾について見解を発表しています。確認・糾弾会には出席すべきではない、これが法務省の方針のようです。この場合の確認・糾弾会というのはどういう行為を指しているんですか。
  222. 篠田省二

    説明員(篠田省二君) 確認・糾弾会の具体的な定義づけのようなことは行っておりませんけれども、一般的に民間連動団体において確認・糾弾と称しているもの、そういったものを確認・糾弾会というふうに理解しております。
  223. 諫山博

    ○諫山博君 県によっては確認・糾弾という言葉を避けて学習会とか勉強会というような違った言葉を使っているところがあるんですよ。これは、どういう呼び方をしようとも、例えば啓発推進指針なんかで指摘されているような行為は確認・糾弾とみなすべきだというのが法務省の立場です
  224. 篠田省二

    説明員(篠田省二君) 名称ではなく、実態に即して考えるべきだというふうに理解しております。
  225. 諫山博

    ○諫山博君 文部大臣に質問します。  今、確認・糾弾というのはひどいものですよ。全国的に行われております。確認・糾弾を行っている中心は解同です。一九八八年五月から翌年九月までの十六カ月間に福岡県では二十八の高校を対象に確認・糾弾が行われております。この確認・糾弾は、集まった人が百人以下のところはありません。多いところでは四百人、五百人と集まって徹底的に学校当局を糾弾するわけです。民間団体が糾弾するんです。学校の中で差別落書きがあったとか、生徒間に差別発言があったとか、こういうことを口実にしながら、言語道断な糾弾行為が行われている。こういうことはやってはいかぬというのが啓発推進指針の立場です。しかも、公務員がこれに出席するのは好ましくない、望ましくない、こう言っていますけれども、それを確認・糾弾と呼ばずに学習会というような言葉を県教育委員会が使って見逃しているんです。具体的な問題については私は別の機会に質問しますけれども、こういう問題について毅然たる態度をとらないと、部落差別はなくなりませんよ。啓発推進指針が指摘しているように、さまざまな新しい部落差別が出てくるわけですよ。  私は、この問題について文部大臣の所見を聞かせていただきたいと思います。
  226. 保利耕輔

    国務大臣(保利耕輔君) 基本的な人権尊重という教育を全国的にやることは大変重要だと思っております。同時にまた教育の中立性ということは大変重要な概念であろうかと思います。教育の場でいろいろな問題が行われるというようなことについてはいかがなものかと、このように考えておるわけでございます。この問題は、そういった観点から考えていくべきものと私は考えております。
  227. 諫山博

    ○諫山博君 終わります。
  228. 三治重信

    ○三治重信君 まず、会計検査院にお伺いをいたします。  私、今回新しく決算委員会に入ってきたわけですが、この今度の六十二年度決算は、昨年、決算が不承認になった翌年のことでもありますし、今度の決算で、何か今までと違った案件や特徴が、決算上従来と変わった特徴があるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  229. 中村清

    会計検査院長中村清君) 昭和六十二年度決算検査報告で特徴的なものとしましては、住宅土地に関する案件、年金に関する案件、それから医療に関する案件、ODAに関する案件、農産物に関する案件、これらが挙げられると思います。  まず、住宅土地に関する案件としましては、不動産登記の際に負担する登録免許税に関するものでございますが、この案件は、みずから居住するとしまして税率軽減の措置を受けて住宅所有権の移転登記を行っておりますのに実際には第三者に使用させたりしている、こういう事態が数多く見受けられる、そのことを取り上げた案件でございます。このほかに、みずから居住するとして購入のための融資を受けている住宅が第三者に賃貸されているという事態、あるいは財政援助を受けて建設された賃貸用の住宅が財政援助の条件が守られずに賃貸されている、こういう事態についても指摘いたしました。  次に、年金に関する案件としましては、労働者災害補償保険におきまして、死亡した労働者の遺族に年金を支払う際に、死亡した労働者によって生計を維持していたとは考えられないような、そうした祖父母や孫を支給対象としている事態が数多くありましたし、また、厚生年金において、老齢者に対する年金を支払う際に、死亡や離婚によって既に配偶者がいなくなっている、こういう者に対して配偶者加算を行っている、こういう例も数多くございましたので、それを指摘いたしました。  次に、医療費に関する案件としましては、老人の収容比率が高い老人病院では医師や看護婦の配置の基準が緩やかになっておりますけれども、その基準にも満たないような病院でありますのに一般病院であるとして診療報酬を過大に請求した、こういう事例が数多くありましたので、これを指摘いたしました。なお、医療費に関して個別に指摘しましたものも、件数、金額ともに前年度に比べまして大幅に増加しております。  次に、ODAに関する案件としましては、技術協力の一環になっている研修員の受け入れ事業に関するものでございますが、国際航空運賃の支払い方法が円高メリットを生かした経済的なものになっていない、こういう点を指摘いたしました。  最後に、農産物に関する案件としましては、野菜の価格安定対策事業で重要野菜の需給調整の効果が十分上がっていないというもの、あるいは国内の甘蔗糖などの価格支持の方策の中で販売の実態に即していないものがある、こういうことでいずれも指摘いたしました。  以上五項目でございます。
  230. 三治重信

    ○三治重信君 ありがとうございました。そういうふうに、検査のたびごとにその年の主な事例というものについて検査の特徴を出されている、非常に結構なことと思います。  そこで、ODAの問題ですが、今の御報告にもODAが特徴の項目の一つに当たっておりますが、近年、ODAの金額が各予算の中で非常に特徴的に増加しております。しかし、これはほとんど国内ではなくて海外で使われているわけです。    〔委員長退席、理事千葉景子君着席〕 そういうような海外で使われる国家予算について、検査院はどういう検査をやっておみえになるか、その事情を知りたい、こういうわけでございます。
  231. 中村清

    会計検査院長中村清君) 今先生がおっしゃったように予算額がますます増大しているわけでございますが、国民の皆さんの関心も非常に高いという折から、私ども会計検査院としましても、このODAの問題につきましては力を入れて検査実施してきたところでございます。  検査に当たりましては、外務省とか国際協力事業団あるいは海外経済協力基金の各検査対象機関から提出されました計算書とか証拠書類というものを在庁しまして書面検査を行っておりますし、また、これらの機関の官署とか事務所におきまして会計実地検査を行っております。また、それとともにこれらの検査活動の一環といたしまして、現地の実態を正確に把握するために、必要に応じまして相手国へ赴きまして、我が国援助実施機関の職員などの立ち会いのもとに相手国の協力が得られた範囲内におきまして現地の状況を調査しているところでございます。  これらの検査あるいは調査に当たりましては、我が国の援助で建設された資材とかあるいは購入された機材、これが有効に活用されているだろうか、こういう点とか、あるいは技術協力の成果が上がっているかといったような援助効果の側面を重視して検査してまいりました。そうしまして、昭和六十三年度及び平成年度におきましてはそれぞれ五カ国に調査官を派遣いたしまして調査を実施したわけでございます。  会計検査院としましては、相手国に対して検査権限が及ばないという制約はあるのでございますけれども、やはり本院に与えられた条件のもとで毎年毎年実績を積み重ねながら海外調査の一層の充実を図っていきたい、そのための努力をしていきたい、こう考えております。    〔理事千葉景子君退席、委員長着席〕
  232. 三治重信

    ○三治重信君 一般的な御説明ですが、その検査において、実際外国への協力ですから、相手側がその受けた状況について、国内のように勝手に、この資料を出せ、だれかここで説明せいというふうにもいかぬから、事前の、まあ協力が得られる範囲ということはよくわかるわけですが、しかしその中でいろいろのことがマスコミやなんかで言われるわけなんですね。これは同じように予算でもあるわけで、国内の各省庁が使う予算、もちろんこれは外務省を通じての予算の使われ方なわけなんですが、何かそこにちょっと、協力事業団や協力基金からの支出ということで余り変わらぬというふうに御認識かもしらぬけれども、私は、やはり会計検査院としては、海外の在外公館の検査とは非常に違った立場で検査が行われなければならぬ。それにはいわゆる海外援助協力ということの目的に合った使い方が、どの程度現実にそういう使用目的に合っているかどうかというのが会計検査院の努力義務だろうと思うわけなんです。  そういうことについてどうなんですか、国内検査と海外検査と、そのやり方の上における差異といいますか、こういう部面が、もしももっと我々に便宜が与えられるならばODAの検査というものはもっと正確にいけるんだがというふうなこと。それにはただ会計検査院が新しくODAの検査をやるという計画やもくろみを立てるのも必要だけれども、これは単に日本だけやっているわけじゃない。アメリカを初め先進国各国がやっている。だから受け入れる国から見るというと、アメリカはどう、日本はどう、西ドイツはどうと、一つの国がたくさんの国から、言っちゃ悪いかもしれぬけれども後進国は少なくとも複数の国から経済援助を受けているわけだと思うんですよね。そうすると、検査に行ったときに、よその、アメリカはこういうふうなやり方をやっている、ドイツはこういうことをやっている。だけれども日本はこういうところがおかしいじゃないですかと、そういうような国際比較上で少しおかしいじゃないかという部面もひとつぜひ検査をしてもらいたいと思うわけなんですが、そこまでいきませんかどうか。
  233. 中村清

    会計検査院長中村清君) 先生のおっしゃるとおりに、ODAの検査というものはぜひとも私どもとしても充実していかなければならない、こういうふうに考えておりまして、世界各国の会計検査院が果たしてどういうふうにやっているかということにつきましては、これは逐一私どもとしてはいろいろ検討し内容を調査しております。  それで、例えば国際機構といいますか、そういうものがございますけれども、そこにも加盟しておりますし、またアジア地域につきましてはその地域機構にも加盟しておりまして、共通の課題として、会議ではその辺の事態について関心を持って話し合っているということでございまして、現実の問題としまして、各国で公的債務ということにつきましてこれは非常に関心がございまして、既に議題としても上がっているわけでございますが、ただ、ODAの問題に限って申しますと、各国としても問題意識は十分に持っているわけですけれども、これからということで恐らく今後の共通の課題になるだろう、こういうふうに考えているところでございます。
  234. 三治重信

    ○三治重信君 各国の事情も、実際会計検査院がいろいろ勉強されていることをお聞きしようと思っていたんだけれども、時間ございませんので次の機会に、各国がこういうような海外援助についての会計検査なり国の方針が本当に目的に合っていて有効に使われているかどうかという審査の機構というものを詳しく聞きたいと思っておりますが、この点は次の機会に譲らせてもらいます。  どうもありがとうございました。
  235. 高井和伸

    ○高井和伸君 私は、六十二年度決算に係る問題で、行政改革という視点から、総務庁を中心にして行われております行政手続法問題に関する進捗状況について伺いたいと思います。  前回、前回というのは昨年度におきましても、行政手続法研究会という機関から出されました報告書がございました。その後、第二次の中間報告というのが昨年の十月に出されまして、その後の行政手続法への歩みというものがかなり進んでいるというふうに私も理解しておりますが、総務庁におかれまして、前回から一年の間どのような作業を行われ、検討をなされ、どのような結論を持たれているのかという、そういった進捗状況を伺いたいと思います。
  236. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 昨年の十月でございますが、行政手続法研究会の座長をしておられます塩野先生がそれまでの研究成果を行政改革推進審議会の場で御説明になりまして、その後の歩みでございますが、毎年政府では年末に行政改革に関して講ずる措置につきましての閣議決定をしているわけでございますが、その閣議決定で、この行政手続制度につきましてもさらに調査検討をするということと、それからそれを専門的に審議する場を検討するというふうに定めたわけでございます。  その後、第二次行政改革推進審議会の最終答申がございまして、その最終答申で、「行政手続の内外への透明性の向上、公正の確保等を図るため、処分手続等に関し、」「専門的な調査審議機関を設置して検討するとともに、早期に結論を得て実施に移すものとする。」という旨の提言が行われたわけでございます。これを受けまして、直ちに政府としては最大限尊重の閣議決定、これは最終答申全体でございますが、閣議決定をいたしております。  それで、その後総務庁としましては、実はこの行政手続に関係します法令数というのが非常に膨大な数があるわけでございますが、その現状の洗い直しと、それからこういう基本法制をつくります場合に個別の実体法とどういう関係が出てくるかという個別実体法の洗い直しの具体的な作業、これは各所管の各省庁に御検討をお願いしませんとできないことでございますので、そういう各省庁にアンケートの調査、それから実態の洗い直し、それをお願いをしております。  それからもう一つは、都道府県、これは十都道府県選びまして、それから十市選びまして、このアンケート調査とその実態、行政手続制度の実態というものを調査して、現在その取りまとめ中であるということでございます。
  237. 高井和伸

    ○高井和伸君 お伺いしますと、一歩二歩三歩前進中であると。しかしながら、テーマが非常に大きくて、抽象的というか具体化するまでにはかなり時間がかかるようなお話がありました簡単に言えば現在行われている実体法の洗い直し作業自身が大変かかると、このようなお話でございましたし、また、各地方公共団体のサンプル採取の段階である、それを踏まえてどうするかということはこれからの課題だ、このような御説明だろうと思います。  先ほどおっしゃられました臨時行革新の最終答申を受けてそれを最大限尊重すると、このようなことですが、閣議決定の文言を見ますと、専門的中立的な調査審議の場を設置する、このような文言になっているようでございますけれども、この具体的な機関というのは、私の理解しているところこの研究会はある意味ではまだ私的レベルを脱してなく、さらに行政管理局レベルぐらいのところでとどまっておりまして、総務庁全体ないし内閣全体というような雰囲気までには行っていないんじゃないか。例えば臨時行政調査会とか臨時行革審だとか、そういった全体的な中でちょろっと一部としてとらまえられているんだけれども、行政手続法それ自身として主体性のあるものとしての本格的な中立的審議の場というか本格的審議の場というのは、まだ行政法学者だけのレベル、非常に何というんですかアカデミックな雰囲気だけで、その実務面という側面とのアクセスというか検討度合いがやや遅いんじゃないか、このような感想を持つわけですけれども、遅いか速いかの問題についてはさておくとしまして、こういった機関、これからどうやっていくかという場合、この閣議決定における審議の場を設置して検討するという、この機関についてはどう理解したらよろしいんでしょうか。
  238. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 本格的な審議の場が要るという、そういう認識であるわけでございますが、その専門的な調査審議機関、どういうところでそういう審議をするかにつきましては、目下検討中でございます。
  239. 高井和伸

    ○高井和伸君 これからの手続の中で検討中であるという話でございますけれども、私、これまでの報告書などを読んでみますと、言葉はおかしいんですが、やはり現場というか各省庁、実際にいろんな各個別法を運用なさっておられる各省庁におかれましては、かなりいろんな御意見が多々出ているというふうなアンケート調査なども出ております。ある意味ではそういった各省庁の協力を得られないとできないという実際的な問題が非常に大きいんだろうというふうに予想しているわけですね。  そこで、総務庁が主体的にかなり強力にやっていかないと、かけ声は立派だけれども中身がなかなか伴わないということになろうかというふうになりますが、そこら辺の考え方は所管担当局長さんとしてはどのようにお考えでしょうか。
  240. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 検討の態勢といいますか、この問題につきましては総務庁がいわば中心となりまして検討いたしておると申し上げてよろしいんだと思いますが、行政手続につきましては、基本的には所管は各省庁でございますので、本格的な検討につきましては、当然各省庁の御協力を得ませんとなかなかできないというふうに考えております。
  241. 高井和伸

    ○高井和伸君 各省庁の協力の受け方の問題を今後とも鋭意御検討願って、当初目的達成の方向に行くことを期待しております。  続きまして、私、こうやって質問する趣旨は、やはり立法府の一議員といたしまして、何らかの役割分担ができないものか、そういう趣旨が一つございまして質問しているわけでございますが、例えば日本弁護士連合会の中にも司法制度調査会というものがございまして、その中で、第一次の報告書につきまして検討会が始まりました。そうしましたら、せんだって第二次の報告が出たということで、その第二次の中間報告を踏まえた検討会でそれなりの意見具申が間もなくあるようでございます。実際検討しておられますので、そういった声もある程度受け入れていただきたい、こう考えておりますが、そういったしかるべき機関として、こういった行政手続法の制定にかかわる段階で対象となるべき各行政庁、総理府、総務庁などを含めてどのような機関に声をかけて聞く御予定なのか、聞くべきであるというか、そこら辺の御見解を伺いたいと思います。
  242. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 行政手続制度につきましては、これは総務庁が中心になりましていろいろ検討をいたしておりますけれども、基本的には各省庁の所管の実体法の手続ということが中心でございます。この最終答申の中でもございますように、やはりこの専門的な調査審議機関というものを設けて検討すべきであるということでございましたが、そういう場ができました場合には、当然そういう実務といいますかそういう所管の、この背景にした学識経験者の参加、それが必要だというふうに考えております。  いずれにしましても、私どもとしましては、この問題が役所の中だけの問題でなくて、当然国民の皆様の御関心を得ながら検討していくべきものだというふうな理解でおります。
  243. 高井和伸

    ○高井和伸君 各実体法が個別法で各省庁の担当であるのが現実であると、そのようなお話でございますが、特に今までの検討された経緯の中で、学問上も実態上も、諸外国も同じようにテーマとされているのは各国民の利害に関する行政処分、特に不利益処分的なものを中心に侵害処分というような言葉で学問上使われておりますが、例えば一たん認可したものを取り消すだとか資格を取り消すだとか、一応そんなような例が挙げられますが、そういったものの実態というものの把握でございますが、各省庁に任せておけばいいということはそれは一つございますけれども、どこかで求心的にとらえられなきゃいけない。その求心的な真ん中にあるのが総務庁である、これは変わらないしそうだろうと思います。  そこで私が伺いたいのは、特に行政処分のうちに国民の権利義務に関する不利益処分をするときの国民の権利保護という側面から現実的な実体法、個別法は大体幾つぐらいあるのかということに関心があるわけですね。それについての文献などを見ますと、かなりの数が上っておる。そのかなりの数について詳しく聞こうとしますと、それは各省庁がやっていることで、余り総務庁が声を張り上げると各省庁とのかかわり合いにおいてまずい場面が多いと、そんなようなお話を聞きます。  それで、特に私の関心を持っているのは、そういった侵害処分の例をおよそどのぐらい、総務庁と各省庁との関係もありますから厳密に返答は求めませんけれども、どのぐらいの数でどんな困難性があるかという上で、個別法の実際の数というのは大体どのぐらいあるというふうにおつかみですか。
  244. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 先ほど申し上げましたように、ただいま各省庁に、この行政手続の実態の調査をいたしております。それが取りまとめられますと正確なお答えができると思います。  現時点におきましてはそういう意味で全体像といいますものが手元にないわけでございますが、侵害処分の中での典型の、取り消し処分があるわけでございます。例えば営業許可の取り消しとか、ある銀行業の免許の取り消しとか、そういう取り消しの処分、まあこれは侵害処分の典型例だとございますが、この取り消し処分を規定しております法律は約三百三十ございます。三百三十ございますが、一定の事由がありましたときにそれを取り消すということは法律の中に書いてあるわけですけれども、それをどういう事前手続で取り消すに至るのか、そういう事前手続のまさに行政手続の核心部分でございますが、それがあるものとないものというのがございまして、法律で言いますと、事前手続があるものは約二百、ないものが約百八十、実は法律の中で重複があるのでそういう数になっております。  それでもう少し具体的に、取り消し処分といいますものを定めますときに、ある法律の第何条の何項という、その第何条の何頃というところに実際は書いてあるわけでございますが、そういう条項数で申し上げますと、取り消し処分を規定しております条項数は約七百三十ございまして、そのうち手続があるものが約四百五十、それから手続が全然書いていないというものが約二百八十、約四割というような実態でございます。
  245. 高井和伸

    ○高井和伸君 今のような実際の数字を見ての感想を申し上げますと、それぞれの個別法が制定されたときはそれなりに一生懸命つくられたんだろうというふうに予測するわけでございますが、結果的に見ますと、取り消し処分などの手続の具体的な内容が書いていないという法律というのは、これは本来まずい法律、立法技術だろうと現時点からいえば言えるのじゃなかろうかと思いますが、総務庁もそのようなお考えのもとにこういったものをできるだけ権利侵害の薄い方向で、薄いというか侵害がないように手続の適正化という側面からこういった行政手続法というものを制定しなきゃいけない、このようにお考えだと思いますが、確認の意味でお伺いします。
  246. 増島俊之

    説明員(増島俊之君) 行政手続制度につきましては、臨調答申の中でも信頼性の確保という観点から掲げている課題の一つでございます。そういう意味で、これまでもたび重なる行政改革の大綱の中でも言及しておりますし、また先ほど申し上げましたような実態の調査というものを重ねておるわけでございますが、こういう方向に政府の方針のもとで積極的に取り組んでいかなければならない、そういう課題であるというふうに考えております。
  247. 高井和伸

    ○高井和伸君 大臣の答弁を求めたいと思います。  前回も同じようなことを聞いておりましてまた同じようなことを聞くわけでございますが、私もその後いろいろ勉強しておりますと、やはり行政手続法を制定するということは、行政の透明性だとか公平性というような言葉で抽象的に概念的に言われておりまして、日米構造協議でもそれらしいことが出てきておるわけでございまして、国民の権利保護という側面からも非常に諸外国の状況からもかなり強力に今後進めていかなきゃならないのじゃないかというようなことを私は意識しているわけですね。今のところはまだ個別法の実態調査だとかサンプリングのレベルであるというようなことで、将来どういう機関でそれを中心にやるかということもまだ検討中だということでございますが、また来年の決算のとき、一年後にかなり収穫の多い、そういった行政手続制定への道を示していただきたい、そういう側面。  こういうことを言うのは、やっぱり日本の国家が行政手続においても先進国に早くならなければいけない。早くなるという言い方をすると今悪いのかと、それはちょっと断定はできませんけれども、諸外国がいろいろ文句を言いたくなるような行政では、やはり日本との関係で国際性の問題において投資もままならないし、行政の予測可能性ということにおいて、いろんな活動をしようとする国民、企業、そういったところが行政の透明性がないことがやはり一つの危惧にもなるということからすれば、先ほどのような実態が、まあかなりざっとした数字だったようでございますけれども、あるという現実を前提にしましたときに、総務庁長官としての今後の対応の御抱負を伺いたいと思います。それを伺って私の質問を終わります。
  248. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 高井委員の御指摘のように、私どもは、国民の権利保護のために行政手続法はこれからも大きな重点を置いて取り組んでいかなければならない一つの政策だと、こういうふうに考えているところでございます。  私は、私的なことになりますけれども、大蔵省で長らく税法問題でこの問題を扱ってまいりましたが、新憲法後は国民の権利保護は一段と進んでまいりました。戦前の税法などはほとんど政令、勅令で規定され、権利保護も多分に自由裁量的なことが多くて、定かでなかった点が多かったわけでございますが、御承知のように、国税通則法まで今決めまして、これに対する国民の権利保護のための救済処分、あるいは拒否処分に対する救済処分、このようなことを統一的に規定してまいりました。その経験から申しますと、今行政管理局長が申しましたように、私は大変手間のかかる作業だと、こんなふうに思っているわけでございます。  税法の中でも、各省との関係と言われますが、各省の例えば免許とかあるいは登録とかあるいは許可とかいうようなものは、いろいろその事項によって目的が違う。あるいは禁止の解除とかあるいは特権の付与かとか、このような議論をして、そしてその性格に応じて救済処分を決めなければならないであろうとか、こんなことを私どもは随分勉強させられたことがあります。  しかし、法制局の大変な御努力で救済処分等については大変進歩してまいりました。自由裁量行為というものがほとんど、ないことはありませんけれども、裁量行為の幅は非常に少なくなって、行政上の透明性はもたらされていることはもう御案内のとおりでございます。しかし、まだまだ戦前の法律、あるいは目的等から見てこれと違った形をしているものは果たして同じようにならないかという最近の考え方がまた出てくるようなことで、行政手続法は再検討しなければならぬという御要請が出ているのではないか、こんなふうに思っているわけでございます。  私はきょうこの国会のお呼び出しの前に、行政管理局長に、税法で直すところがあるかと聞きましたら、税法はもうないんだと、こんなふうに言われました。しかし、酒税法の免許の問題なんかでも大変悩んだようにいろいろ問題があることは、新しい観点から見ますと考えられる点があるかもしれません。このような点は、やはり各省が真剣にその処分の目的に照らし、性格に照らし考えていただいて、そして総務庁がこれを取りまとめ、調整をしながら国民の権利保護のための行政手続法を統一的に整備を早急に進めていく必要がある、こんなふうに考えております。
  249. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 本日の審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明四日午前十時に開会し、本日に引き続き全般的質疑を行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十分散会