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1990-04-27 第118回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年四月二十七日(金曜日)     午前九時二分開議  出席分科員    主 査 池田 行彦君       越智 伊平君    鈴木 宗男君       田澤 吉郎君    新村 勝雄君       関  晴正君    野坂 浩賢君       藤田 高敏君    貝沼 次郎君       北側 一雄君    平田 米男君       冬柴 鐵三君    阿部 昭吾君       楢崎弥之助君    兼務 沢田  広君 兼務 鈴木  久君    兼務 辻  第一君 兼務 吉井 英勝君    兼務 伊藤 英成君 兼務 菅原喜重郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   奥田 敬和君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      大島 友治君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  荒田  建君         人事院事務総局         職員局長    大城 二郎君         内閣総理大臣官         房審議官    文田 久雄君         警察庁長官官房         長       浅野信二郎君         警察庁事務局長 仁平 圀雄君         警察庁刑事局長 中門  弘君         警察庁交通局長 関根 謙一君         宮内庁次長   宮尾  盤君         皇室経済主管  永岡 祿朗君         総務庁人事局長 勝又 博明君         総務庁行政管理         局長      百崎  英君         科学技術庁長官         官房長     平野 拓也君         科学技術庁長官         官房審議官   井田 勝久君         科学技術庁長官         官房会計課長  中村 光弘君         科学技術庁研究         開発局長    須田 忠義君         科学技術庁原子         力局長     緒方謙二郎君         科学技術庁原子         力安全局長   村上 健一君         外務大臣官房外         務参事官    茂田  宏君  分科員外出席者         環境庁企画調整         局企画調整課地         球環境保全室長 柳下 正治君         法務大臣官房審         議官      本間 宗遠君         法務省刑事局刑         事課長     松尾 邦弘君         外務大臣官房外         務参事官    内藤 昌平君         外務大臣官房外         務参事官    大塚清一郎君         外務省欧亜局ソ         ヴィエト連邦課         長       東郷 和彦君         大蔵省主計局主         計官      浜中秀一郎君         大蔵省主計局主         計官      福田  誠君         通商産業省立地         公害局公害防止         課長      石海 行雄君         通商産業省機械         情報産業局宇宙         産業課長    小原 道郎君         工業技術院総務         部総括研究開発         官       吉沢  均君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電安全管         理課長     倉重 有幸君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電運転管         理室長     今永  隆君         建設大臣官房文         書課長     三井 康壽君         建設省都市局都         市再開発課長  安達常太郎君         建設省道路局企         画課長     藤川 寛之君         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         科学技術委員会         調査室長    高戸 純夫君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 分科員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     野坂 浩賢君   冬柴 鐵三君     石田 祝稔君   楢崎弥之助君     阿部 昭吾君 同日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     関  晴正君   石田 祝稔君     平田 米男君   阿部 昭吾君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   関  晴正君     藤田 高敏君   平田 米男君     貝沼 次郎君   江田 五月君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   貝沼 次郎君     北側 一雄君 同日  辞任         補欠選任   北側 一雄君     山口那津男君 同日  辞任         補欠選任   山口那津男君     冬柴 鐵三君 同日  第二分科員伊藤英成君、菅原喜重郎君、第三分  科員辻第一君、吉井英勝君、第四分科員鈴木久  君及び第六分科員沢田広君が本分料兼務となっ  た。     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成年度一般会計予算  平成年度特別会計予算  平成年度政府関係機関予算  〔皇室費内閣及び総理府所管総理府本府、警察庁総務庁科学技術庁)〕      ────◇─────
  2. 池田行彦

    池田主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  平成年度一般会計予算平成年度特別会計予算及び平成年度政府関係機関予算内閣及び総理府所管について審査を進めます。  総務庁について昨日に引き続き質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅原喜重郎君。
  3. 菅原喜重郎

    菅原分科員 国家公務員定員管理について総務庁にお伺いいたします。  現在の我が国における公務員数は約五十三万四千人で、ここ数年ほぼ一定の枠内におさまっているわけでありますが、現業を含めますと八十六万六千人の規模を数えるわけであります。国民立場からすれば公務員はできるだけ少ない方がよいわけでありますが、OA機器普及によって国民へのサービス向上はもとより定数省力化の方向にあると考えますが、総務庁として今後の現業を含めたこれらのことについてどのような方針をお持ちなのか、お伺いいたします。
  4. 百崎英

    ○百崎政府委員 公務員定員管理につきましては、いわゆる行政需要変化対応して簡素で効率的な行政を確立する、こういう観点から、国家公務員定員につきましても、一方で計画的な定員削減を行うと同時に、他方業務量増大等対応して必要な増員措置する、こういうことで今日まで至っているわけでございます。今後とも非常に厳しく行財政改革が叫ばれておりますので、私どもといたしましては厳しい態度で定員管理に臨みたいと考えております。
  5. 菅原喜重郎

    菅原分科員 私は、定員はまさに文字どおり適正に、適材適所に配置されることが原則であると考えるわけですが、全体的に総数を抑制することを基本としながらも、必要な部門定数は、業務量増大行政サービスの徹底の見地から定数増を考えなければならないと思います。  例えば法務省所管入国審査部内の実態からいえば、東京入国管理局管内では毎日四、五時間前後に及ぶ待ち時間や対応であるということも聞いております。また、在留審査では結果が出るまで一、二カ月も要するということですから、法的に見ても不法な事態を生んでいるわけではないかと思います。今後、外国人出入国がさらに増大することは必至と予測されます。さらに、関西新空港成田二期工事の完成、国内の国際空港化大型客船入港増加などを考えれば、入国審査官増員は可及的速やかに措置されなければならないと考えますので、ここで順を追って質問をいたしてみたいと思います。  東京入管窓口対応でございますが、現状で受け付けまでに大体一時間はかかる、さらに三、四時間は待たせられるということでありますが、実態はどうなのか、ひとつお聞きいたしたいと思います。
  6. 本間宗遠

    本間説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、近年の我が国社会各般国際化の進展に伴いまして、地方入国管理局における事務量が著しく増加していることは事実でございます。こういうような状況がございますので、まことに遺憾なことでございますけれども、一部の地方局におきまして窓口混雑あるいは事務処理に時間を要するような状況が現にあるということは、認めざるを得ない事実でございます。
  7. 菅原喜重郎

    菅原分科員 さらに、申請してから結果が出るまでに二カ月以上もかかっているとのことでありますが、このことも実態はどうなっておりますか。
  8. 本間宗遠

    本間説明員 御案内のとおりと思いますけれども審査案件につきましては、非常に単純な案件も中にはございますけれども、中には大変複雑な調査を要する案件も数少なくないのでございます。このような質的な面で事務が非常に難しくなっているという現状がございますので、事案によっては相当程度結果が出るまで待っていただくという事案も一部ございます。
  9. 菅原喜重郎

    菅原分科員 そこで、窓口で長時間待たせ、なおかつ審査結果に時間がかかる、このような現状入国管理局としてどのような対策を考えているのか。その前に、窓口件数増大取り扱い件数でございますが、それと定員の推移、増員あるいはそのままの状態であるのか、こういう点もあわせてお聞きして、この対策がどのようになっているのかお答えいただきたいと思います。
  10. 本間宗遠

    本間説明員 件数的なものの変化につきましては、例えば最近とみに審査件数のふえておりますところの成田空港の例を挙げて申し上げますと、昭和六十二年におきまして出入国審査取り扱い件数は約一千百九十八万件ございました。平成年度におきましてはこれが一千六百九十一万件というふうにふえている事実がございます。  それから、職員の点でございますけれども、この成田の例から申しますと、全職員数成田で二百四十六名というのが昭和六十二年でございましたけれども、元年度では二百五十八名と所要増員を得ておりまして、これらの事務に対処しているわけでございます。  これは一例でございますけれども、このように事務量が非常に増加しているということに対しまして、入管当局といたしまして、業務量増加の著しい部署につきまして職員重点的配置応援措置をとる等の内部努力をしているところでございます。特に平成年度におきましては、査定関係当局の格段の御理解を得まして、厳しい定員事情のもとで、地方入国管理局職員につきまして六十六名、計画削減十四名を引きましても純増で五十二名の大幅な増員を行い、あわせて事務処理コンピューター化を推進することなどを内容とする予算案を今国会に提出させていただいたところでございます。  また、このような措置のほかに、従来から、事務量の著しい増加に伴って質的に非常に難しい案件がふえたということも十分考慮いたしまして、入国審査官語学力向上あるいは法的知識修得等資質向上に向けまして、あらゆる機会をとらえて研修を施すなどして体制を強化し、事態に対処している、そして、今後ともそのような対処を続けてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  11. 菅原喜重郎

    菅原分科員 例えば留学生就学生として入国し、日本就労したい場合に、在留資格変更申請をすると聞いておりますが、この期間がもし二カ月あるとするならば、この人たちは、この間、学校は卒業しておりますし、就労はできないという状況に置かれてしまうわけでございます。先ほども申し上げましたように、当然この期間は働かないでこの期間の費用を持っているという留学生就学生も多くないわけでございますので、当然不法労働的な行為が起きてくると思っているわけでございます。さらに、こういう一応学歴を積んだ人たちというのは、本国に帰りますと何らかの意味である上の方の地位につく方々でございますが、どうもこの期間中にこういう不法労働の摘発を受けたりいたしますと、大変な反日感情をあおってしまうという結果にもなるわけでございます。  そこで、こういうことも、結局は質的に難しい案件がふえているといいましても、単純労働者につきましては私たちは一応受け入れに反対の立場をとっているわけでございますが、良質の労働力あるいは教育を受けた方々就労ということについては、むしろ前向きに検討すべきだという意見を持っているわけでございます。こういう点からも、今の対応状況では、国際的な将来を考えて、大変残念な日本への反感を生ませているという事態から見ましても、何としてでもこの対応改善していただきたい。そのためには、これは一省庁だけの問題じゃなくして、やはり政府全体の問題としてこの対応を考えてしかるべきではないかと思っているわけでございますが、入管局はこの状況をどう思い、本当にどのように対応していこうとしているのか、お聞きいたします。
  12. 本間宗遠

    本間説明員 先生案内のとおり、政府といたしましては、現在外国人単純労働者というものを受け入れないという方針でいるわけでございますが、他方、高度の技術、技能あるいは知識を有する者につきまして、必要があればその就労を認め、また就学、就職につきましても、真にその能力があり、かつ、必要があるというふうに認定した場合には、これを許可するというのが現在の体制でございまして、先ほど就学の問題あるいは留学の問題につきまして、非常に長期間待たせるのじゃないかという御指摘もございましたけれども就学目的というものを表に出しながら実は単純労働に従事するという実態も相当見受けられるわけでございますので、その審査には私ども大変慎重に対応しているということから若干時間がかかるということは御理解いただきたいと思っております。  先生から良質な労働者受け入れということにもっと前向きでいいのではないかという御指摘がございまして、その点につきましては、従来からそういう観点先ほど申し上げましたとおりの方策でやってきているわけでございます。さらに、昨年十二月に入管法の改正を行いまして、本年六月一日から施行するわけでございますが、この中で在留資格省令レベルで明確に規定して、一般に知っていただいて、それに合わせた的確な申請をしていただくということで、相当数の良質な労働力というものが我が国受け入れられるという一応の体制はできておるかと思うのでございますが、単純労働者受け入れ問題につきましては、法務省のみで解決し得る問題ではございませんし、やはり社会一般に対する各般にわたる影響というものを慎重に見据えた上で、関係省庁とも十分協議しながら最終的な結論を得るべき問題だというふうに私ども理解しているわけでございますので、そういう検討を今後とも続けてまいりたいと考えているところでございます。
  13. 菅原喜重郎

    菅原分科員 いずれにいたしましても、大手町合同庁舎東京入国管理局に実際に行った方々は、もう大変な待たされ方だ、そういう不満がいっぱいでございます。  さらに、ビザ更新の場合は、当日受け付けた件数は必ずその当日に処理しなければならないようになっているわけでございますか、この点もちょっとお聞きいたします。
  14. 本間宗遠

    本間説明員 申請を受け付けた場合に当日必ずやらなければいけないかという御質問かと思いますが、申請人の便宜、都合というものを考えれば、速やかに審査の結果を出すというのが原則であることは私どもも承知しておりますが、事案によって、先ほど申し上げましたとおり、調査に時間を要する案件、あるいは申請に要する資料が不足しているのでその補完を求める場合等、いろいろございます。窓口混雑ということも若干影響しておりますが、そういうことで直ちに結論を得るというわけにはいかない事案がかなりありますので、当日即決ということは必ずしもそのとおりにはいかないというのが現状でございます。
  15. 菅原喜重郎

    菅原分科員 いずれにいたしましても、窓口で当日受け付けたのはやはり当日に処理したいという強い熱意があるようでございます。この結果が、八時、九時までずっと仕事を続けられて、皆待っていて当日処理していただけるのだからありがたいというので仕事をしていただいているようですが、こういう実態を見ますと、これだって全く労働問題に対して大変な過重を与えていると思っております。  ですから、やはり、外国人増加する要因というのは、今後ふえることはあっても決して減らない、こういう要因でありますので、何としてもこれは審査官増員が速やかに行われることが必要じゃないか。そのためには、やはり省庁間の配置転換ということも真剣に考えてやらないと、これは日本窓口でこのような事務をとっていられたのでは対外的な信用にもかかわってくる問題でございますので、増員を速やかに行うべきだ、また行わせるべきだ、あるいは各省庁間の協議で増員のための配置転換どもなすべきだ、私はこう思っているわけでございます。  しかし、さらにまた、審査官は、急に増員したといたしましても、やはり語学とか諸外国の諸事情に通じているとか法律関係とか、これは全く一つの大切な研修を要するものでございます。ですから、こういう審査官をふやすといいましても急にはふえないという内容を持っていると思うわけでございますから、このことについて早く手を打たなければならないのではないかと思っております。  そこで、この増員問題とこういう研修問題についての入管局の考えを聞きたいと思います。
  16. 本間宗遠

    本間説明員 職員増員ということについての、あるいは職員の質的な向上という面についての当局対応というものをお聞きいただいているかと思いますけれども職員増員につきましては、私どもといたしましてはできるだけ内部的な努力をまずやるということで今対応しているわけでございますが、それでもなお賄い切れない面につきましては、所要調査をいたしました上で査定当局に対しまして増員のお願いをしていく、今後ともそのような対応をしていきまして当局の御理解を得るように努力する所存でございます。  それから、職員につきましては、先生今御指摘のとおりでございまして、語学力の問題がまず基本にありますし、また外国人の人権にかかわる問題でございますので、法的な知識、素養というものを涵養していかなければどうしてもこの仕事は勤まらないわけでございますので、事案が非常に複雑になり、また大量処理を迫られるという事態の中で、私どもはさらに一層職員研修につきまして力を尽くしていきたいという決意でございます。     〔主査退席鈴木(宗)主査代理着席
  17. 菅原喜重郎

    菅原分科員 いずれにいたしましても、この問題は早急に改善対応していくように強く要望いたします。  次に、建設省にお伺いいたします。  昭和六十年に建設省では定員が一応二万六千四百八十七人となっております。予算の方は、国費関係で四兆四千二百二十四億円、事業費関係は十三兆四千七百四十億円。平成二年には、定員が二万四千九百八十八人、国費予算の方が五兆七百八十一億円、事業費の方は二十兆六千五十五億円となっているわけでございます。こういう伸びに対しまして、いろいろな機械化合理化によって対応できていっているとは思うのですが、実は現場職員の不足というのがもう否めない事実になっているのではないかと思っております。といいますのは、このことについてのいろいろな陳情も受けておりますので、要員確保及び職員の適正な配置についての方針を伺いたいと思うわけでございます。
  18. 三井康壽

    三井説明員 御指摘のとおりに、建設省所管事業をいろいろ拡充をさせていただいておりますけれども定員関係につきましては、政府の現在進行中の七次定削によりまして毎年毎年約三百六十名ほど定員削減という状況になっているわけでございます。御承知のとおり、政府全体としてのそういった計画的な削減という中で、私どももそれに従わざるを得ないという立場ではございますけれども、新しい行政需要に応じました仕事をしていくためには、一つには事務簡素化を図る、あるいは補助的な業務等については外部委託を図る、さらに、新しい行政需要に対しては新規増員ということを強く総務当局にお願いする、こういった方針でさせていただいているところでございます。
  19. 菅原喜重郎

    菅原分科員 現場関係についてはどうですか。十分に対応できていると思っておられますか。
  20. 三井康壽

    三井説明員 先ほど事業費ベース国費ベース予算関係をお話しいただいたわけでございますけれども、私ども現場といたしましては、直轄仕事をさせていただいているのが地方建設局でございます。地方建設局直轄関係の、国費で申し上げて恐縮でございますけれども先ほど事業費でおっしゃっておられましたのは地方公共団体補助事業等を含めた数字だと思いますけれども国費で申しますと、六十年が一兆円ちょっとでございます。それから二年度予算、今回お願いしておりますもので一兆三千億ということでございまして、それを職員適正配置でございますとかあるいは業務簡素化、それから新規増員いただいたものを各地建仕事の忙しい現場に重点的に回すということでさせていただいておりまして、また、一人当たりの職員超過勤務を著しく大きくしないとか、あるいは契約件数についてもなるべくならして仕事ができるような発注を考えるとか、そういった工夫を重ねてやっているところでございます。
  21. 菅原喜重郎

    菅原分科員 いずれにいたしましても、今日本人の若い人たちの気風として、現場で肉体を使って働くというそういう仕事を嫌ってきておりますので、このことを本当に考えた配慮をしていかないと将来この部門での人員欠乏は避けられないと思いますので、この点の配慮を十分になすようにお願いいたしまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  22. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて菅原喜重郎君の質疑は終了いたしました。  次に、辻第一君。
  23. 辻第一

    ○辻(第)分科員 私は、国家公務員労働者労働条件改善の問題、また、人員の問題についてお尋ねをいたします。  まず、人事院お尋ねをいたします。  国家公務員労働条件改善に御苦労いただいております。さて、欧米諸国に比べまして我が国労働者の実労働時間が大変長いということであります。長時間過密労働でございます。労働者労働時間を短縮をするということは極めて重要な課題ではないかと思うわけです。  労働省の発表、労働白書でも、一九八七年の労働時間の国際比較、それは製造業生産労働者を中心でありますが、我が国は二千百六十八時間、アメリカが千九百四十九時間、イギリスが千九百四十七時間、西独が千六百四十二時間、フランスが千六百四十五時間。大体米英に比べて二百時間多い。ドイツ、フランスに比べて五百時間多いということであります。そのうち所定外労働時間は、我が国が二百二十四時間、アメリカが百九十二時間、イギリスが百七十七時間、西独が七十八時間、こういうことであります。このような差が生じる理由として、我が国では週休二日制の普及が少ないこと、欧米に比べて年次有給休暇の取得が少ないこと、欧米に比し所定内労働時間が長いこと、こういうふうに労働白書指摘しているわけであります。また、私は、この所定外労働時間というところも労働時間を長くしている問題ではないか、このように考えます。  そこで人事院お尋ねをするのですが、国家公務員の皆さんの年間の実労働時間の実態はどうでしょうか。それから有給休暇の取得状況はいかがか、週休二日制の実施状況はいかがか、お伺いをいたします。
  24. 大城二郎

    ○大城政府委員 国家公務員の勤務時間でございますが、現在のところ、原則として週四十二時間になっております。これは、週休制との関係でいいますと四週六休制ということをベースにしておりまして、週四十二時間ということでございますが、これを平成二年について年間時間数にいたしますと、二千百九十二時間という数字になります。これから祝日法による休日及び年末年始の休日の勤務時間を差し引きますと、二千六十四時間というのが年間の勤務すべき時間数、こういうことになるわけでございます。これに現実問題としては年次休暇が取得されるわけでございますが、その年次休暇の平均使用日数の調査結果として十二日という数字が出ておりますが、これを差し引いた年間の勤務時間数を計算いたしますと、千九百六十八時間ということになっております。  それからなお、いわゆる所定外の勤務時間につきましては、年間を通じての平均的な数字については調査をいたしておりませんので、所定外を含んだ年間勤務時間数というのは出しておりません。しかし、今申し上げましたような数字でございまして、いずれにしても諸外国に比べればまだ日本労働者労働時間が全体的に長い。それと同じように、私ども公務員についても、年間の勤務時間としてはまだかなり長い数字になっていると理解をいたしております。その短縮のために私どもいろいろな対策を進めていくように努力しているつもりでございます。
  25. 辻第一

    ○辻(第)分科員 時間がありませんので次へ行きますが、いわゆる超過勤務、それの実態はどうですか。
  26. 大城二郎

    ○大城政府委員 昭和六十二年の国家公務員給与等実態調査におきまして調査した結果によりますと、昭和六十一年一月から十二月までの期間における超過勤務が最も多い月の超過勤務時間数を出したものでございますが、それによりますと、全職員平均で三十二・二時間というのが最も多い月の月間の平均超過勤務時間数ということになっております。
  27. 辻第一

    ○辻(第)分科員 一番多い月が三十二時間余りでございますね。私はぜひここで御要望しておきたいのですが、一番多い月じゃなしに年間の平均、これをきちっと把握をしていただきたい。そうでないと、一番多い月と一番少ない月というのでは全体的な把握が非常に弱いのではないかと私は思いますので、ぜひひとつお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  28. 大城二郎

    ○大城政府委員 超過勤務の時間数について最も多い月の数字を把握しているということは、いわゆる長時間の超過勤務が常態的に行われる、こういうことがやはり一番問題ではないか、そういう問題意識に立って、それをいかにして解消していくか、それに力を入れたいという趣旨でそういう調査をいたしているわけでございます。年間の数字を出すということにいたしますと、むしろこれより低い数字が出てくる。その結果として、それは許容されるというふうな理解をされることは私どもも本意とするところではありませんので、そういう長時間の超勤をいかに減らすか、そのための対策を講ずるという前提としてこういう調査をしてきているものでございまして、そういう意味で今のところ年間の平均を調査することを考えておりません。
  29. 辻第一

    ○辻(第)分科員 考えておらないということですが、ぜひ考えていただきたい。そういうものを正確に把握をして事を進められることが大事ではないのか、私はそういうふうに考えますので、再度お願いをいたします。  超過勤務というのは約束事があるのですね。緊急云々とかいう約束事があるのですが、実態的には恒常的に相当時間の超過勤務がやられているのが実態だというのが私の認識であります。なぜこのように時間外労働が多いのかということが問題であろうと思いますが、後でまたお尋ねをしたいと思います。  具体的に、建設省地方建設局、ここの関係部局を例にとってお尋ねをいたしますと、六十三年度は一カ月平均一人三十二時間でございます。年間にしますと三百八十四時間になりますね。先ほど申しました日本の民間の二百二十四時間なんかに比べても非常に多うございますし、西独の七十八時間、これは民間でございますが、比べて非常に多いのが実態でございます。中には、一カ月に百時間とか二百時間とか、それは希有な例でありますが、三百時間というのを私は聞いたことがあるのです。どういうことなのかと思うのですが、そういうことがあるのですね。そういう中に婦人の労働者の深夜労働というようなことも含まれております。  こうなりますと、まず健康の問題ですね。非常に疲れておられる。疲れておられる段階ならいいのですが、病気になりやすい。病気になる。極端な例では、いわゆる日本的な特徴といいましょうか、過労死というような状態を引き起こすということであります。これは林野庁でしたか、去年、私どもお願いをして公務災害ということになられた方もあるのですけれども、背景は、非常に残業も多いし、過労という状況だったと思うのですね。こういう状態。  それから、家庭の団らんというものはもう吹っ飛んでしまうということになりますね。私なんかは昔の人間でありますので、家庭は顧みずにというようなことが案外得意であった時代があったのですが、今はそういう時代でなくなってきておると思うのですね。こういう問題。  それから、国家公務員の方は、私の近辺を見てまいりますと、勤務時間が長いですね。職場が自分の家から遠いところへ転々と転勤をされる。中には単身で赴任される。そういう非常な厳しさの上にこういう残業をされるということになりますと、ますます健康も家庭も大変だということであります。建設省さんはいろいろ御努力されてビタミン剤の配付なんかやっておられるようでありますけれども、私から見てまいりますと、二階から目薬みたいなもので気休め、少し効くかもわかりませんけれども。そんな苦労もされているわけであります。そういうことですね。  この残業が多いということはどういうところに原因があるのか、起因するのか、人事院さん、どういうふうにお考えになっているでしょうか。
  30. 大城二郎

    ○大城政府委員 先生指摘のような常態的な超勤がかなり多いという面は非常に問題であると思いますが、その原因となるところはいろいろなものが重なっていると理解しております。これを改善しようという観点から見ますと、やはり基本的には業務の執行体制と申しますか、平たく申しますと、仕事のやり方をどうするか。確かに人の不足の問題もございます。限られた人員で次々と出てまいります仕事をこなさなければならないという意味では、そこに当然業務処理の仕方の工夫はあるわけでございますが、やはり仕事のやり方をどう変えるかということが基本であろうかと思います。そのために、基本的な姿勢としまして、それぞれの職場の職員方々、管理者を含めて個々の職員方々が、いかに仕事をうまくこなすか、効率的に処理していくかという意味で、従来の仕事のやり方を変えていくという取り組みをしなければいけないのではないか。そういう意味では、職場の職員方々の取り組み方、意欲と申しますか、超過勤務をなるべく減らすようにしよう、全体的に時間を減らすようにしようという努力を前提にして、仕事のやり方を改善していく、そういう努力基本的に必要なことではないか。それが時間短縮全体、つまり完全週休二日制の実現のためにも、あるいは年次休暇の取得をふやそうという観点からも、さらには超過勤務を減らすという観点からも、基本的にそういうところが重要なことではないだろうか、その点の御理解を私どもとしては各省にお願いをして積極的に業務執行体制の見直しに取り組んでいただきたい、こういうことを考えてきているわけでございます。
  31. 辻第一

    ○辻(第)分科員 今おっしゃった個々の業務執行体制ということでありますが、私は、それは大分実態から離れた、今の実態からいえば絵そらごとではないのかと思いますね。長年の定員削減という状況の中で、現場は大変少ない人員で一生懸命やっておられるというのが私どもの見ておる実態であります。もうそういう余地はほとんどないわけであります。そこへ機械化もされておりますし、いろいろやっておられるようでありますが、一番大きな理由は人員不足だと私は思うのです。  建設省のなにで見てまいりますと、内需拡大、公共事業をふやす、そういうことで直轄事業が物すごくふえているのです。この間、建設省お尋ねをしましたが、一九八五年で一兆一千九百六十一億円、それが四年後の一九八九年には一兆六千九百二十三億円、事業費で見ますと大体四一%仕事がふえておるわけです。確かに仕事がふえておるわけです。こういう状況の中で、残業ですね。仕事がこんなに、この四年間で四一%ふえているのですよ。  しかも、その中で人員はどうなのか。御存じのとおり、建設省は、四十三年からですか、大体一万人を超える定員削減をされていますね。去年まで一万七百三十四人ですか。八八年が三百六十四人の定員削減ですね。八九年も三百六十四人、九〇年も三百六十四人です。その前もこのくらい定削があったのですが、増員が非常に少なかったようですね。私のきょう持ってきた資料では、八八年が七十五人、八九年が八十一人、九〇年が六十四人。結局、八八年は二百九十一人減り、八九年には二百八十三人減り、九〇年では三百人減る、こういうことになるのですね。いろいろお話を聞きますと、この七十五人、八十一人、六十四人というのは非常に大幅な増員をしたんだとのことであります。それをもってしてもこんなことですね。差し引き平均三百人近い方が毎年毎年削減をされておる。仕事は四年間に四割もふえておりますのに、人員は毎年三百人、四年で見ますと千二百人近く削減されておるのです。これは人手不足になることは当然なんです。  そこのところへこのような大変な超過勤務が恒常的にやられる。健康破壊あるいは家庭の問題ということが起こってくるのですね。私は、人事院さんとしても、先ほど申されましたような業務改善なんということで解決する問題ではないと思うのです。それ以外にもいろいろな要素があると思います。しかし、基本人員が足らぬということだ、私はそのように認識をしておるわけであります。そういう点、全体を含めて、簡潔に人事院さんの対応を聞きたいと思います。
  32. 大城二郎

    ○大城政府委員 ただいま御指摘がありましたように、人員の問題というのはかなり重視されなければならない面があることは私ども十分承知しているつもりでありますが、超勤の削減にしろ、時間の短縮にしても、そのためにまず人員増加からという話にはならないのであろう、基本的には、先ほど申しましたように業務執行体制を見直していく、限られた人員でそれだけの仕事をどうこなすか、基本的にはそういう取り組み方が必要であろうと考えますが、ただ、それぞれの部門において、それでは解決ができない、業務の十分な執行ができない、あるいは行政サービスに問題が生ずるということは当然起こり得ることであろうと思います。そういう意味では、これはやはり政府全体においてそうした問題に対してどう対応するか、そういう政府全体としての取り組み方が必要であるという姿勢を人事院としても明らかにしているわけでございまして、そういうお願いは、政府全体にそれぞれの部門において取り組み方を今後もお願いしていきたいと考えております。
  33. 辻第一

    ○辻(第)分科員 国家公務員の皆さん方というのは争議権がないわけでございます。人事院さんというのは本当に大切な大切な仕事をしていただいているわけでございますので、どうかひとつ労働者労働条件改善、時間の短縮、殊に超過勤務をなくす方向、またそのことについては人員増員増員のことについては人事院さんなかなか難しいようでございますが、ひとつ十分対応していただきたいということを要望して、次に移りたいと思います。  次に、総務庁お尋ねをいたします。  今るる申し上げてまいりましたように、殊に建設省の例を申し上げたんですが、建設省だけではないと思うのですね。私は奈良県出身なんですが、人口急増地帯というようなこともありまして、例えば法務局の登記の事務のところ、それはそれは物すごくもう数倍というほど仕事がふえましたね。毎年少しずつ人員をふやしていただいているようでありますが、しかし仕事のふえている量から見ますとごくわずかだというのが私の認識であります。この問題は七、八年前にもお願いをしたことがあるのですが、そういうことでございます。それからまた、国立病院なんかも、看護婦さんあるいはその他技術員あるいは受付のところなど、大変な人手不足で、十分なサービスができないという状況ではないのかというふうに私も認識しております。あと言えば切りがないのですけれども、陸運支局ですか、ああいうところもそうですね。また、裁判所なんかもそうですね。もう皆人員が足りないという状況の中で、本当に身を粉にして頑張っておられるという実態があるわけですね。社会情勢が国外、国内ともに物すごく変化しておるわけですが、そういう中で、これは何としても実態に応じた人員配置、大幅な増員をしていただきたいというのが私のまず最初の要望でありますが、大臣、いかがでございますか。
  34. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 ただいま委員の御主張の建設省関係におきますところの定員不足、超過勤務増大等について対処する必要があるではないかというお話でございます。私も、建設省あるいは先ほどは入管事務公務員定数増加についてもお話がございましたが、時代の変化に応じて仕事の量あるいは行政需要変化は大変激しいものがあろうかと思うわけでございまして、私どもはそのような動向を十分つかまえて定員の適正なる配置を考えていくべきであろう、こういうふうに思うわけでございます。  しかし一方、何といっても長らく進めてまいりました総定員の縮減計画は、一つ大きな政策であり、またスリムな政府という大きな国民の要望にもこたえる道でありまして、政府全体の定数五%削減の方向は依然として堅持をして各省その実情に応じたところの定数削減は進めていかなければならない。その中で私は必要な部面に再配置をしていくことは当然考えていかなければならないと思うのでございます。  もう一つは、やはり仕事のやり方。日本人というのは、私も公務員で大蔵省におりましたが、本当に超過勤務をしなかった日がないぐらい。しかし、また同時に考えてみますと、さてどのような生産性を上げたかといいますと、いろいろ問題があろうかと思うのです。行政という仕事は、生産性を上げるためにいろいろのやり方があろうかと思うわけでございます。行政改革をやろうとするような今日でございますから、私は、各省において行政のやり方を十分に考えていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。そしてまた、超過勤務も大変重要なことでございますが、週休二日、このようなことが言われております今日でございますから、その場合に超過勤務がこんなにあるようなことは大変不思議な、おかしなことだ、こんなふうにも見られる面があろうかと思います。それらの面もあわせて、やはり仕事のあり方、やり方として考えていただきたい。それから外国人の言われる働き中毒というようなことがあったのでは、これはまた理由が、私は別な観点から考えなければならないかと思っているところでございます。
  35. 辻第一

    ○辻(第)分科員 建設省人員の問題で人が不足しているというお話を私は今申し上げたんですが、このように毎年毎年の定員削減ですね。仕事はふえていますね。そういう状況の中で、総務庁さんのお考え方、いわゆる効率化だとかあるいは民間委託というようなことがあるようですね。そういうことで、いろいろ機械化を含めて効率化も大変努力されております。そういうことも存じております。もう一つ、民間委託ということで現実にどんなことがやられているのかということであります。  例えば現場技術業務とか積算補助業務というのがあるんですね。こういう業務業務委託をされているんですね。この二十年ほどで大体一万人ほど減りました。一年に今三百人ほど減っているのですが、この業務委託の人あるいはアルバイトの人は、一九八九年度で六千九百五十人になっているのです。これも、ちょっともう時間がありませんが、この数年、毎年毎年ふえておりますね。その中の現場技術業務、積算補助業務というのが、大体私が調べたのでは、これは建設省から聞いたと思うのですが、千四百五十六人なんですね。その仕事業務委託の予算が百二十九億です。この人たちは年じゅう通しての仕事じゃないんですね。合わせますと、四月から十二月とかいろいろあるんですね。単純に千四百五十六人で百二十九億を割りますと、八百八十六万になるのですね。この業務というのは、ほとんど人件費だと言ってもいいような仕事内容だそうでございます。大臣はそういうことにお詳しいんではないかと思うのですが、そんなことなんですね。ところが、建設省労働者を一人平均して見てみますと、共済年金も含めて、そういう退職金も含めて平均してみますと、五百六十五万になるのだそうであります。  こういうふうに見てまいりますと、非常にむだですね。スリムな政府だ、スリムな行政だということでどんどん人を減らされて、結局民間委託、外部に委託をされる。そして、その外部に委託される方が、減った分だけくらいふえていて、依然として総計しますと三万人くらいおられるのですね。しかも、業務委託をされると、実際は人件費なんですけれども、うんと高い費用についておるというのが実態なんですね。こんなことで、スリムなとか先ほど大臣おっしゃたのですけれども、名目は小さい政府、スリムな政府、効率化と言っておられて、実際の中身はこんなむだなことがやられておる。殊に大臣は税金だとか財政の専門家、もうエキスパートでございますが、こんな税金の使い方をされていいのかというのが私どもの思いであります。ですから、こういうところはきちっと職員を雇っていただいて、増員していただいてやっていただくこと。それから、こういう監督の仕事なんかは官と民とは違うのです。この間、御徒町の凝固剤を入れる問題で手抜きがありました。ああいうのは何度もある手抜きなんです。それがまたやられている。そういうふうに、いろいろな要素の中で利潤を上げなくてはならない、そうなると必ず手抜きというようなことが起こってくるわけです。そのときに、官がそういう監督を民に委託するのではなしに、官が本当にきちっと指導する。そのことが大事な大事な社会資本、安全で良質な社会資本をつくっていく。建設省でいえばそういうことになるというふうに思うのです。ですから、ここで本当に情勢の変化実態に応じた大増員と言うとなにですが、十分な増員をしていただきたい、重ねて申し上げたいと思うのです。     〔鈴木(宗)主査代理退席、主査着席〕
  36. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 直用形態がいいか、あるいは民間委託形態がいいか、随分論議されて、今このような状態で推移していると思うわけでございます。お互いに長所があり、欠陥があろうかと思います。私は、このような点について、総務庁行政監察ででもどちらが生産性の高い効率的なものかを調査して、今委員のおっしゃるような方向での御要望にどの程度こたえられるか検討していきたい。要は、国民の税金をできる限り効率的に使うということでございます。そういう観点から検討してまいりたいと思います。  それからもう一つ、私も行革という問題を取り扱ってみて思うのですけれども、今、国民全体が人手不足、国民経済が全体として人手不足の状況で、公務員をどのように持っていったらいいかというのは非常に難しい根本的な問題でもございます。それから、私はパーキンソンの法則ということを思い出したのですけれども行政というものは仕事の量に関係なくどんどんと人がふえていくものだ、そして必ず競争者が出ることを喜ばない、やはり独占的な仕事になって、効率性というものがなかなかわからない、こんなようなことを言われておりますことを私は思い出しまして、こういう観点からひとつ検討してまいりたいと思っております。
  37. 辻第一

    ○辻(第)分科員 終わります。
  38. 池田行彦

    池田主査 これにて辻第一君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総務庁についての質疑は終了いたしました。     ─────────────
  39. 池田行彦

    池田主査 次に、内閣所管について質疑の申し出がありますので、これを許します。野坂浩賢君。
  40. 野坂浩賢

    野坂分科員 内閣の大番頭であります坂本官房長官に、在日韓国人の諸問題についてお尋ねしたいと思うのです。  今、ソウルでは高級実務協議が行われており、指紋押捺制度の問題や外国人登録証の常時携帯義務の撤廃と、具体的に詰めが行われておりますが、在日韓国人の三世、二世というのは生活基盤を日本に置いております。韓国に置いておるわけではないわけでありまして、それらの点についての問題を解決しなければならぬ事態に逢着しておるというのが現状だと思います。それについての内閣の考え方を第一点として聞きたい。  第二点は、きのうも外務大臣は、日本の過去の朝鮮半島における侵略行為の問題に関連して、軍国主義的な侵略であったとの認識を持っておる、心から過去の悲しい侵略の問題を謙虚に反省しなければならぬと考えておりますという陳謝の意を表明されておるわけでありますが、このことはひとり韓国だけではなしに、坂本さんと私も御一緒したことがありますけれども、朝鮮民主主義人民共和国に対しても同じ考え方を海部内閣はお持ちなのかどうか伺いたい。  まず、この二点を明らかにしていただきたいと思います。
  41. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 今、日韓間で三世の法的地位の問題その他につきまして鋭意協議を進めております。御承知のとおり、今アジア局長が韓国へ行っております。三十日には外務大臣が韓国に向かって協議を詰めようとしておる最中でございます。  そこで、いろいろ協議中でありますから詳しいことは申し上げられませんけれども、今議員が言われたように、特に三世の方々などは長らく日本に住んでこられた方の子供たちである、日本以外に生活の根拠がないということは考慮に置かなければなりません。それから、日本の法制との整合性ももちろんございましょうけれども、日韓間の、あるいは朝鮮半島全体に住む人々とのかかわりは、日本の過去の歴史の中で深い影を宿しておる問題でもあります。そういうところを十分に配慮して、そして将来ともに日本と、南北を問わず将来は我が国との間の友好親善を深めていかなければならぬという気持ちを持って、基本的にそういう気持ちの上で対処していかなければならぬ問題だと思っております。  議員御質問の後段の件でありますけれども、外務大臣の発言はそのとおりだと思っております。過去に対する厳しい反省のもとで南に対する協定を今進めておりますけれども日本の責任は、南に住む、その後南北に分かれましたが、朝鮮半島全体の人々に対しての責任はあるわけでありますから、法的地位については、三世問題はもう法的には韓国との間の問題でありますけれども、しかし、外務大臣が言われたような、長いこれからの日本と朝鮮民族との間の友好を考えれば、法的な面では南に限られてはおるでありましょうが、北の人々についても実質的には同様な配慮があってしかるべしだというような気持ちでおるわけであります。南と北とはその後不幸にして分かれましたけれども、この両地域に住まわれる人々に対しては、日本は同じような厳しい反省と配慮があってしかるべしだと思っております。
  42. 野坂浩賢

    野坂分科員 東ヨーロッパ、特に東西ドイツは、二十八年ぶりにベルリンの壁が取り壊されて、非常に激しい速度で統一問題が議論されておるわけでありまして、我々はそれを歓迎しております。同じように、今もお話がありましたように、南北の朝鮮は一つであるというのは南の方々もおっしゃっておりますし、北の方々もそういうふうにおっしゃっております。朝鮮は一つだという立場でありますし、朝鮮の統一について従来から政府は、統一ができ得るようにその環境の整備に御協力を申し上げたいというのが一貫した考え方であります。したがって、北との人事往来、あるいはパスポートの一回限りというのじゃなしに数次旅券に切りかえるとか、そういうことが環境の整備になるのではなかろうかと私は思うし、そういうことがあってこそ、第十八富士山丸の船長や機関長の帰還ということにも穴があいてくるのではなかろうか、そういうことを考えるわけでありますが、官房長官はそれらについてどのようにお考えでしょうか。また、政府の態度をお聞きしたいと思うのです。
  43. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 朝鮮半島問題、平和的に当事者間で話し合いで解決してもらいたい。話し合いによる平和的統一、これは我々の基本方針であり、また願望でもあるわけであります。  しかし、今議員がおっしゃったように、我々が予想にもできなかったような東西ドイツの統一ということが進んできておる時代でありますから、やはり対話促進にとって好ましいような環境の促進ということについては我が国としてもできる限り努力をしていかなければならぬ、そのために委員もいろいろアドバイスをしていただきましたが、そういうことについても検討していきたいなと思っています。
  44. 内藤昌平

    ○内藤説明員 先ほどパスポートの発給について御質問がありましたので、御説明申し上げたいと思います。  私どもパスポートを発給する当局といたしましては、やはりこのパスポートを持って海外に渡られる邦人の方々の保護という観点も気になるところでございまして、その観点から、現在の我が国と北朝鮮との関係からかんがみまして、一次で、その都度どちらに行かれるかを我々が事前に把握した上で行っていただく。しかし、現実にはパスポートは一次、その都度御要請があれば出しているのが現状でございます。
  45. 野坂浩賢

    野坂分科員 今のお答えの問題については、後でまた質疑をしたいと思うのです。  そこで、南北が今分断をされておる、政治的な対立がある、そういう中で在日韓国人の政治犯の問題で我々のところにはほとんど毎日のようにおいでになります。今、在日韓国人の政治犯は全体で二十九名いらっしゃいます。逮捕時に日本に生活の基盤があった在日韓国人が十四名で、元在日韓国人または長期滞日者、そういう方々が十五名、合わせて二十九名収監されております。官房長官も御存じかと思いますが、崔哲教さんとか陳斗鉉さんとか、もう十六年になりますね。今五十八歳ですが、八二年から懲役二十年ということでありますから、もう十二年で七十歳にならなければ出られない。四十歳くらいから入っておって、この間もお二人ともの奥さんがおいでになりました。これは観光に行っておって捕まった、あるいは東京の学校、慶応を出て、慶応から向こうの先生になると行ってそこで捕まったという、観光や商売、そういう意味で日本から韓国に渡ってその間に逮捕されるという事態が起きておるわけであります。  そういう事態について外務省には今まで何回も交渉してまいりましたが、その中で言われてまいりましたのは、韓国のことですから、内政干渉になるんじゃないか。しかし、国連やその他キリスト教の団体等が世界的にこれらの方々、政治犯の釈放、言うなればこの人たちは南北対立の犠牲者ですからね。そういう方たちの釈放について、日本政府としては、人権の立場、人権尊重という意味で、しかも生活基盤を日本に置いていたという現実から、ぜひ働きかけてもらいたい、こういうふうに思うのです。坂本さんの所属される河本さんのところは、もとは三木さんのところですね。三木総理の時代に井出一太郎さんという官房長官がいらっしゃいましたが、人道的見地から強力に努力をしてまいりたい、こういうふうにお話しになっております。園田外務大臣も、朴正煕や全斗煥の際にも、そういう痛みを我々は十分わかって、在日韓国人という立場と人権尊重という意味でぜひ協力をしたい、こういうふうなお話があったわけであります。  聞くところによりますと、五月二十四日には盧泰愚大統領も来日をされるというふうに承知をしておりますが、南北は統一をしなければならない、朝鮮は一つである。そして、スパイだと言われておる、本人は無実を訴え続けて十六年にもなっておる。十六年の獄舎生活というものは容易なものではないと思うのであります。十六年前あるいは二十年前と今日の状況というのは、世界情勢も随分違っておるのじゃないかと思いますね。そういう中で、釈放してもいいのではなかろうか。人命、人権に影響ありとして、しかも在日の韓国人である、日本に生活基盤を置いておった人たちである、そういうことから考えて、今の社会情勢と照らし合わせながら釈放問題に取り組んでもらいたい、こういうふうに思うのですが、官房長官はいかにお考えでしょうか。なお選挙問題で御用事があるそうでありますから、お答えをいただいてから退席されてもやむを得ない、こういうふうに思っております。
  46. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 今、野坂議員言われましたように、この二十九人の方々が十六年にもわたって逮捕されておるというこの現実、よく承知をいたしております。  おっしゃるとおり、在日韓国人は日本にすっかり定住をして生活基盤のある方でありまして、我が国としては最も関係の深い人々であります。政府は、今もおっしゃいましたように、ときどきその折々に、適当な機会をとらえて、韓国側に対して待遇の改善だとか特別な好意的な配慮を要請してきたわけであります。しかし、いまだに二十九人もの人が残っておるということについては深い関心を持っております。これは、表向き形式的にいけば韓国の国内法の適用の問題だという答えは向こう側は持っておるかもしれませんけれども、今肝心なことは、今あなたが言われたように、スパイというのは政治犯ですから、ところが大きな意味で政治は大きく転換しつつあるわけでありまして、それはヨーロッパだけの問題ではなかろうと思っております。  現に韓国だって、モンゴルと国交を開いたり、ソ連と友好関係を進めようとしておる。大きな枠組みが変わっておる。朝鮮民主主義人民共和国におかれても、そういう世界の動きに対して連動してくるのが常識的な見通しではなかろうかなと私は思う。そうすると、南北の今までの対決、そういう情勢はやはり変化せざるを得ないであろうというふうにも考えております。ですから、この問題につきましては、盧泰愚大統領が来られたときに、あなたの言われるような人権的な立場、いわゆる人道的な立場から特別に好意的に配慮してもらいたいというようなことを検討してみたいと思っております。
  47. 野坂浩賢

    野坂分科員 それでは、大統領来日の際にも十分話していこう、日本政府としては三木総理以来、三木さんの際にもお話があったように、人権問題として積極的に取り組む、こういうふうに考えてよろしゅうございますね。それだけお聞きして御退席をいただきたいと思います。
  48. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 今も申し上げたとおり、過去におきましてもそういう事例もありますが、しかし、さらに大きく政治情勢が変わろうとしておる。南北の対立、対決というものは永久不変だと今まで思われておったものが崩れようとしておる時代になっておる。そういう背景もありましょうし、しかし、我が国といたしましては、大統領訪日のときに日韓友好の立場からも特別に好意的な配慮をしてもらいたいという要請は、十分検討すべきであると思っております。
  49. 野坂浩賢

    野坂分科員 もう結構ですから。  それでは外務省の皆さんにお尋ねをいたします。  今、官房長官は、在日韓国人の政治犯釈放問題については内閣として積極的に取り組む、こういう御回答をちょうだいして、大統領来日の際にも人権問題として要請することを検討していきたいということであります。この間おいでになりました政治犯の奥さん方のおっしゃるには、この際に大赦があるんじゃないか、出られるんじゃなかろうか、こういうような大きな期待感に包まれておられるわけであります。  ただ、最近、収監されておる皆さんと後援会、支援する会の皆さん方がお会いになるわけですね。お会いになりますと、病気になっておる人が相当おります。金淳一さんとかたくさんありますが、その方たちはこういうことを言っていらっしゃいます。前は、全斗煥さんのころは、医者が来て診察をして診てくれる、しかし今度は話を聞くだけで、薬だけをくれる、座るのも大変だけれどもなかなか診察もしてもらえないということで、前よりも処遇というか、病気等については十分な配慮が払われなくなったと非常に嘆いた手紙が来るわけであります。  そういう点について、外務省としては、今もお話がありましたように、前よりも世界の情勢、社会情勢が変わり、当時北鮮のスパイではないかと言われた政治情勢も大きく変わっておるわけでありますから、大使館を通じて、獄舎の中の処遇問題について積極的にやってもらう。あるいは、外務省も今までは国内問題というふうな格好で処理されてきた嫌いがありますけれども、最近では、今官房長官がお話しになったように、人権問題として取り扱おうという情勢になっておる。空気がそうなっておると私たちは伝え聞いておるわけでありますが、外務省はこれからの在日韓国人の政治犯問題の取り扱いについてどのように考えておるか、この点について明らかにしていただきたいと思うのです。
  50. 大塚清一郎

    ○大塚説明員 お答え申し上げます。  今御指摘の在日韓国人政治犯釈放問題につきましては、先ほど官房長官からもお答えいたしましたとおりでございますが、先生指摘のとおり、日本に生活基盤がございますし、親族がおられます、日本との関係が特に深い外国人であられるという観点から、従来からも適当な機会をとらえまして韓国側に対しまして、待遇の改善、健康上の問題、差し入れ等を含めて特別な配慮を要請してきたわけでございます。例えば最近では、大臣レベルで日韓定期外相会議、八七年五月の定期外相協議、それから九月の国連総会出席の際の外相会談、これはニューヨークで行いましたけれども、そういった場におきましてそれぞれ日本側から要請いたしております。そういったほか、個々のケースにおきましては、その都度外交ルートなどを通じまして、しかるべく韓国側の好意的な配慮を要請してきておる次第でございます。
  51. 野坂浩賢

    野坂分科員 今お話があったわけでありますが、外務省も、国内問題として内政干渉になるというような話は置いておいて、人権問題としてこの問題は取り扱う、人権問題として韓国へ申し入れる。韓国も外務省のそういう姿勢に対して対応しておると私たちは聞いておりますが、調査をしてもらいまして、病気の問題それから劣悪な獄中の処遇の改善について、相当の年配になり、十五年も十六年も収監をされておるということになりますと、体力も相当弱っておるわけでありますから、北と南の対立による犠牲者を救済するために、しかも生活基盤を我が国に置いておるという現実からして、官房長官が先ほどお話しになりましたように、社会情勢の転換、そして朝鮮への統一、そういう意味の犠牲者の救済、そしてスパイ問題としての、政治犯としての問題等は、この際、何といいますか、釈放してもらうということと同時に、獄中の処遇というものの改善を外務省としてはこれから積極的に取り組んでもらうということが約束できますか。それで私の質問を終わろうと思っております。
  52. 大塚清一郎

    ○大塚説明員 先ほど官房長官が申しましたとおり、この問題につきましては、私どもとして大変深い関心を持って従来から待遇の改善策等につきまして申し入れてきている次第でございます。したがいまして、人道的な立場から好意的な配慮を韓国側に引き続き要請するということでございます。
  53. 野坂浩賢

    野坂分科員 獄中の処遇改善等外務省が積極的に取り組むということでありますし、釈放問題についても十分積極的に取り組むということであります。よろしくお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  54. 池田行彦

    池田主査 これにて野坂浩賢君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして内閣所管についての質疑は終了いたしました。  午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十時三十一分休憩      ────◇─────     午後零時三十一分開議
  55. 池田行彦

    池田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  総理本府について質疑の申し出がありますので、これを許します。阿部昭吾君。
  56. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 官房長官、大変お忙しいところ時間をやりくりしていただいて、ありがとうございます。     〔主査退席鈴木(宗)主査代理着席〕  実は、戦後問題と言われる問題として、あの戦争のときにソ連に抑留されて強制労働をさせられた人たちかたくさんいるわけであります。こういう皆さんの問題とかあるいは軍人軍属等の恩給欠格者であるとか、そういう戦後問題というものがございますけれども、私は、あの戦争のときに台湾人元日本兵、この皆さんの問題についても実は深い関心を持って、国会の中では超党派の議員の集まりをつくっていろいろなことをやってまいりました。そういう長い経過の中で、お忙しい官房長官に若干お伺いをしたい、こう思って御無理をお願いをしたのであります。  実は、ソ連抑留の皆さんの問題については、御案内のように、今、国を相手取って裁判が行われております。この裁判は、昨年の四月に東京地裁におきまして第一審判決が出ました。そして、第一審判決を子細に読んでみますと、こういう指摘をしておるのであります。「第二次大戦は、参加当事国の数が多いこと、戦火の及んだ地域が広いこと、兵器の進歩と大量殺りく手段の使用、国を挙げての戦争態勢、国土の戦場化などによつて、多くの国の国民に多大の惨禍をもたらし、我が国においてもあらゆる種類の戦争損害を国民の各層に生ぜしめることとなつたが、原告らソ連長期被抑留者の被った損害も、さきに認定したとおり多大なものがあり、帰国後の社会復帰が意の如くにならなかつたこととあわせて、これを通常の戦争損害とは異なるとする原告らの主張には、理解できる点もないではないが、諸外国の例にみるように、立法のみによつて解決されるべき問題であるといわなければならない。」こういう指摘をしておる。つまり、今申し上げました判決文のある部分ですけれども、その前に、イギリスはこのようにやった、あるいはフランスはこのようにやった、アメリカはこのようにやったといういろいろな、つまり戦時捕虜の問題である、その捕虜をどのように処遇したかということの各国でやった立法例を判決文の前段に長々といろいろ書いてあるのであります。  私は官房長官にお伺いいたしたいのは、さっき申し上げました台湾人元日本兵の皆さんも日本の裁判に、当時台湾人を日本の軍人として戦場に動員をして、多くの人が死んだ、あるいは負傷した、この皆さんに償いをしろ、こういう訴えであります。第一審はこれを棄却いたしました。第二審もまた棄却をしたのであります。ところが、棄却をした第二審の判決を見ますと、主文は棄却でありますけれども日本立場からいえば、台湾人の元日本兵に対する政治的道義的人道的責任というものを非常に強く指摘したのであります。台湾人元日本兵の場合、裁判そのものは今最高裁に訴えられておる。  しかし、日本政府及び国会は、特に国会ですけれども、御案内のように、台湾人元日本兵のために法律をつくって、今台湾とは国交がございませんから、向こうの紅十字会と我が国赤十字との間にいろいろな調査その他をやって、現在この皆さんにお見舞い金という形での償いをして、相当程度進みました。もう一年くらいでこれは大体決着つくのではないかと思いますけれども、同じようにこの問題も、法律上でいえば、この判決で指摘するように、今の日本の法律によって、戦時中の捕虜として、この皆さん何も戦争を放棄して捕虜になったのではないのであります。戦争が負けた後にほとんどの皆さんがあの酷寒のシベリアに引っ張っていかれたのであります。引っ張っていったソ連の側との関係は、御案内の鳩山内閣時代の日ソ共同宣言、日ソ双方間の取り決めの中で、国と国との関係では相互にそのことは問わないということになってしまっている。でありますけれども、この皆さんは相当長期の間あの酷寒のシベリアで強制労働、そしてその皆さんは、この判決でも指摘していますように、戦後の社会復帰という面でも相当の障害を持った。だからこそ、この判決でも言うように、他の一般の戦争被害と同じように見るわけにいかないという主張は理解ができるけれども、今の法律ではどうにもならぬ、こういう判決なんであります。  御案内のように、今政府は、戦後問題はすべて終わりだという態度をとっている、この間の平和何とかというので。しかし、私は、一般常識的にいうと、事はそう簡単ではないと思います。例えば、さっき申し上げました軍人軍属の恩欠連盟と言われる皆さんの問題、私の記憶では、この間の選挙の前の選挙のときに、自民党の大勢の議員の皆さんは、議員立法で、いろいろな中身はあるのでありますけれども、一人頭それ相当のお見舞い金か償いか何かをするというのを議員立法の条文までつくって多くの関係者に配付をして、選挙では自民党大勝利をいたしました。私どももまた、恩欠連盟なり全抑協の問題に対して、この自民党の皆さんの配付された議員立法の案とかなんとかに対して異論を持つ野党ほどこもないのであります。みんな大賛成。みんな集まっておるのでありますから。しかし、それは銀杯一個、書状一枚、今、あと平和事業の財団でいろんなことをやるとおっしゃっていますけれども、その中身は、少なくともこの間の選挙の前の選挙のときの性格と相当違ってきておる。これなども関係者や外から客観的に見ておりますと、やはり政治に対する不信を深くした内容のものだ。私は、この判決の趣旨よくわかるのですよ。言わんとするところはわかるけれども、現在の法律では無理だ、したがって、アメリカイギリスフランスやその他の世界のたくさんの国々はこういう新しい法律をつくって、戦時捕虜の問題、これをちゃんとこのようにやったんだ、だから日本の場合も、そういうことでもない限り現行法では無理だというのが、この判決の指摘しておる一つの側面ですね。  私は、きのう法務大臣に対しても同じようなことを――法務大臣は今その全抑協と呼ばれる皆さんと裁判で争っておるのですからね、その当事者なんですよ。ソ連抑留の皆さんが原告で、法務大臣は被告なんです。そういう立場でありながら、政治家としてどのようなお考えを持つかということをお伺いしたのでありますが、法務大臣は、争いの当事者でありますけれども、確かにこれは政治ですから一筋縄ではまいらぬけれども、何らかのことをやってあげるべきものと個人的には強く痛感しておる、こう申しておられました。  忙しい官房長官においでをいただいたのでありますが、今私が申し上げましたことに対して、官房長官の政治家としてのお気持ちというものをぜひお聞かせ願いたいというふうに思うのです。
  57. 文田久雄

    ○文田政府委員 大変恐縮でございますが、基金法を所管する立場から、まず私から御説明させていただくことをお許し賜りたいと存じます。  先生案内のとおり、長年にわたりまして重要な懸案でございましたいわゆる戦後処理問題につきましては、昭和五十九年の戦後処理問題懇談会の報告を踏まえまして、強制抑留者の方々に対しましては、戦後、酷寒の地で強制労働に従事させられる、あるいは使役に使われる等々大変御苦労された、こういう御労苦に報いるため、昭和六十三年五月、平和祈念事業特別基金等に関する法律を制定いたしまして、また同法に基づきます平和祈念事業特別基金を設立いたしまして、関係者の方々に対して慰藉の念を示す事業を着実に推進しているところでございます。具体的に申し上げますと、同法に基づきまして、慰労品の贈呈、慰労金の支給を行いまして、また特別基金を創設しまして、きめ細かい慰藉事業を実施しているところでございます。  私ども政府といたしましては、今後とも基金法に基づく事業を適正に推進することをもって、これらの方々が払った御苦労に対しまして深甚なる慰藉を行うべく一層努力してまいる所存であります。
  58. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 官房長官、私は事務的なことのやりとりをこのわずかの時間内にやろうとしているんじゃなくて、問題は、やっぱり政治的な立場での、それは政治ですからすぐがたっとうまくいくものじゃない、いろいろな状況があると思うのです。政治は、どこか判断というものが一つなきゃいけない、そういう意味で聞いておるので、事務的な立場から物を言っちゃだめなんです、わずかの時間でやりとりをやっているんだから。  そこで、大臣、今までのいろいろな経過を私もよく承知しておるのです。例えば、私の母は、この間、私の選挙の最中に、九十四歳九カ月で大往生いたしました。この母は、私の長兄があの戦争でフィリピンで戦死をしたために、相当多額の遺族としての報いをずっと受けてまいりました。私が国会に出てしばらくたったころに、自分の子供たちや家庭の生活や何かに何の責任もなくなった者にこんなに手厚いことをやってくださって本当にありがたい、しかしお金も大変なものでしょうということをこの高齢の母は私に言うのですね。しかし、あそこのうちのあの方は一体どうなっているのであろうか、終戦直後シベリアに抑留されて、六年間も向こうに置かれた、あそこのうちは昔相当の地主さんだった、ところが戦後、農地解放というのがありまして、働き手のおらぬ人は全部人に農地をゆだねざるを得なかった、一番のその激動の時代に、働き手が、今のあの御主人がシベリアに何年も置かれたために、昔は相当大きい田んぼづくりだったのが、今やあのとおりの惨たんたる、半農のような小さな農家にならざるを得なかったのは、あそこの今の御当主があの戦争でシベリアに何年もおって帰ってこれなかったからだ、私のような老人に一人の息子が戦死したというのでこれだけの大変な償いをしてもらえるというのは大変にありがたい、しかし、ああいう方にもやはりもっと何かなければいかぬのじゃないだろうか。私は、これはやはり国民の率直なる常識だろうと思うのです。  今度の措置も、やらぬよりはいいのですよ。しかし、これで手厚くきめ細かく全部やった、この認識は、率直に言って、恐らく、与党の皆さんも私どもも同じように現場でみんなそういう皆さんといろいろな議論をし、お話を聞いてきておるのですが、私はその意味でいうと、お役人さんの立場から手厚くきめ細かく全部これでやっておるのですなどという認識は、地域の関係の皆さんもあるいはまた周りの皆さんも、直ちに当事者でない方々もそういう認識をしておらぬだろうと私は思うのです。したがって、私は、今直ちに、この問題はここまで来ておって、そう簡単にいろいろなことがいけるかどうか、甘い見方はしておりません。おりませんが、私は官房長官を長い間よく存じ上げておりますので、政治家としての立場からいうと、やはりそれなりの思いというものがあっていいんじゃないかというのが私の認識なんですよ。そういう意味で、官房長官のお気持ちというものをお聞かせいただきたいということなんです。
  59. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 阿部議員はもうこの問題の表も裏も、経過も皆随分御承知の上でのお話であろうと思うております。私自身も戦後短期間でありましたけれども、一年ぐらいで抑留が済みまして帰ってきましたが、それは南方で抑留されておったから助かったのでありまして、ふんどし一貫で強制労働をやっておりましたが、暖かいところですから何とかしのげたというわけであります。あれがシベリアであったならば生きて帰ってこれなかったであろうなという感慨を今持ってお聞きしておったわけであります。ましてあなたのお母さんがおっしゃるように、自分はありがたいけれどもあそこのうちはシベリアへ行ってという、そういう本当の素朴なお気持ちというものをお聞きをいたしますれば、何とかならないものかなという気持ちをそれは人一倍持っておるわけであります。  まあお互い同年代の間で、私は学徒兵で行きましたし、そういう関係者も多いです。友達でもシベリアで死んだ人もおります。そういう経験を踏まえてお聞きをしておったわけでありますが、これは与党も野党も問わず、今までのところでは知恵を絞って一生懸命やったと思います。小渕官房長官の時代でありましたか、自民党におきましても党三役、それから関係大臣入れまして最終的に知恵を絞ったあげく、あの慰藉事業という基金というかああいうことで結論がついておるわけでありますが、今の私にここではっきりした返事をしろと言われても残念ながら私その用意がございませんが、この問題について一応のピリオドを打ったということは事実でありましょうけれども、この問題についての国民的な感情というものは尾を引いておるようでありましょうから、ひとつ勉強させていただきたいな、こういうお願いを申し上げたいと思っております。
  60. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 今度、日ソシンポジウムというのが持たれるのであります。これは、今のシベリア抑留者の皆さんとソ連の民間団体が共同して開かれる。この中は、単にシベリア抑留者の問題のみならず、北方領土の問題も、その他のいろいろな問題も議題にして話し合おうということでその準備が進んでおるようであります。もちろんこれは民間団体のやることでありますけれども、きのう外務省の方の御意向を伺いましたら、民間団体でやることに外務省が出かけていっていろいろなことをというわけにはならぬけれども、当然傍聴して、そういう民間ベースの中でどんな話し合いが行われるのかということをよく見守りたいと思っておる、こういう意味のことがございました。  来年は御案内のようにゴルバチョフ氏の来日という問題がある。最近、領土問題等々もいろいろなあれがあるようでありますけれども、それのみならず、従来ソ連抑留者の問題なんかになりますと、墓参の問題にしても遺骨の収集等の問題にしても、ソ連は非常にガードがかたかったわけであります。これがここへ来てやはりいろいろな今のソ連の新しい政策というかやり方というか、これが相当反映してきておるんだろうと思うのですが、ソ連抑留者の団体の皆さんも相当頻繁に向こうと話し合って、墓参の問題とか遺骨収集の問題とか、いろいろな問題で向こう側も従来のような閉鎖的な態度から相当大きな変化を遂げてきた、こう私見ておるのであります。これは官房長官でなくて、それこそこの変化をどのように見ていらっしゃるのか。民間ベースのこういう努力に対して、今の平和祈念事業とおっしゃるのでありますけれども、まだ向こうには、遺骨はみんな極寒のシベリアに埋まったままで、しかも墓参や何かがかなっているのはほんのわずかしかないのでありますが、その辺の活動に対して、そのあたりこそ政治は相当しっかりした対応があっていいんじゃないかと思うのですが、お聞かせを願いたい。
  61. 東郷和彦

    ○東郷説明員 お答え申し上げます。  確かに最近のソ連の一連の変化の一環といたしまして、従来何らの誠意ある実質回答に乏しかった墓地調査、遺骨収集、それから墓参、この問題についてソ連側の方で何とかやれるものは前向きにやってやろうという感じが我々事務当局の接触の中でもうかがわれます。ただ、それじゃ私どもが出した希望というものは全部すぐ満たされるという状況になっているかといえば、それは先生案内のように、遺憾ながらそこまではいっておりませんが、私の直属の上司の局長等が二、三カ月に一回はソ連側といろいろな形でこの問題をじわじわと詰めておりまして、先方はまさに誠意をもって対応したいという感触はにじみ出てきております。その中で一つでも具体的な案件を結実させたいと思って、外交当局としては全力を尽くして努力をしている最中でございます。
  62. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 わかりました。時間がございませんので、官房長官、重ねて。  このソ連抑留の皆さんにしてもあるいは恩給欠格者の皆さんにしても、この前の戦争のときには、私は十五歳、十六歳、十七歳の時代の海軍の甲種飛行予科練習生という最後の戦争に参加をさせられた立場であります。したがって、皆年をとってしまって、だんだん数は減っていくのです。きのうも法務大臣は、みんな数が減っていく、その中で、今地域の皆さんや関係者の皆さんや、いろいろな政治や何かとのかかわりの中でのこの経過に対して、思いからいえばもっと踏み込むべきだという印象の意向を、法務大臣は裁判で争っておる当事者でありながら、私は政治家としてはそういう思いを持っておる、こうおっしゃいました。自民党も野党もこれは違わないのであります。  したがって、参議院はねじれ現象と言われますけれども、私ども一遍議員立法をまとめ上げる努力をしてみたいと思う。そういう中で、事務当局、役人というものはどうも非常に型どおりのことになるので、やはり政治の方はちょっと違った、何が公正であり、何が国民的な常識であるのかという角度でのものが必要だろうと思う。そういう意味で、官房長官から、この問題はもう事務的に処理して終わったんだという認識でなしに、なお一層深めた御検討をお願いできれば非常に幸いだと思います。官房長官の政治家としてのお気持ちをもう一言だけお聞かせいただいて、私の質問を終わります。
  63. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 お互いに第二次大戦のあの厳しい戦争体験を経た者としては、あなたのおっしゃるお気持ちはまことに胸に響くものがございます。しかし、今ここで私に名案を申せと言われても無責任なことは申されませんが、しかし、法制的には一応のけりはついたと申しますけれども国民的な感情とか、それからやはり戦後処理の中でバランスの問題もまだ残っておるというお考えの方もございましょうし、これらの問題については、本当に二度と戦争を繰り返してはいけないというその気持ちの上から政治家として考える、今後考えていくというようなことは当然あってしかるべきであろうと私は思います。それを今政府でこうまとめてどうせいというようなことは、ちょっと私の今の場合は申されませんけれども、政治家が皆そういう思いで接して、これが超党派で、どの院であろうと議員立法ということになれば、これはやはり議会の話ですから、国民の代表ですから、国民の気持ちを結集したというような議員立法などが出られれば、それはそのときに、やはり政府としては謹聴に値すべきものだな、そういう気持ちがいたします。
  64. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 お忙しいところありがとうございました。  以上で終わります。
  65. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて阿部昭吾君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総理本府についての質疑は終了いたしました。     ─────────────
  66. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 科学技術庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木久君。
  67. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 私は、東京電力の第二原子力発電所の三号炉の事故と廃炉問題等についてただしてまいりたいと思います。  既に御案内のとおり、東京電力の第二原子力発電所三号機が、再循環ポンプの破損という事故が起きまして、まだその事故の後始末はきちっとできておらないわけでございますけれども資源エネルギー庁からこの事故の調査結果の報告がこのように出されております。  まず、この調査結果の内容についてお尋ねをしたいわけでございますけれども、ここの報告書の中には、原因究明、再発の防止、そういうものをどうするかということについていろいろ検討されたようでございますけれども、この調査報告に至るまでの過程を見ますと、いわゆる関係部局におけるところの専門的検討とあわせて、より専門的、技術的な立場から検討するということで、原子力発電技術顧問会の中にこの調査のための特別委員会を設置して審議をされてきたように思います。七回の現地調査と十四回の会合が持たれた、こういうお話でございます。調査委員会がこれほど作業をしてきたのに、どうして調査委員会の報告でなくて資源エネルギー庁の報告になっているのかということについて、まずお伺いをしたいと思うのです。
  68. 倉重有幸

    ○倉重説明員 お答えいたします。  通産省は、従来から安全行政のために顧問制度を設けまして、顧問の意見を聞きながらやっておるわけでございますが、その一環としまして、その流れに従いまして安全の責任は行政庁が持つということでございます。原子力の分野は非常に専門的でございますので、そういう面で、大学の先生なり研究所の先生なりいろいろ御意見を伺ってやっていくが、最終的な責任は通産省がとるということで、通産省の名前で実は報告書をまとめてございます。
  69. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 原子力行政、こういう事故の問題ですから、公開の原則という立場からいえば、そうした調査委員会の議事録なども我々にお示しいただくと大変ありがたいのですけれども、そういうことはできますか。
  70. 倉重有幸

    ○倉重説明員 先生にいろいろ御意見を聴取する過程におきまして、御説明のためのメモ的なものはございますが、正式な資料というものを特にまとめてございません。
  71. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 後で科学技術庁長官にこの報告書全般についてはお尋ねをしたいと思いますけれども、ここでそのことで議論してもあれですから、先へ進みます。  報告書の中身に入って、少し私なりに意見を申し上げながら質問させていただきたいと思うのです。  まず一つは、この事故の問題そのものですけれども、一月一日に警報が鳴って一月七日までの間、これはとめるまでの時間ですね、この間にかなりいろいろなことがありました。この報告書にも全部載っておりますけれども、この七日間運転し続けたということについては極めて問題ありというふうに、それなりに報告書にも触れてございますけれども、特に警報が鳴って、後四日にも恐らく東京電力の内部で事故調査の委員会を開いて、運転するかどうかという判断もされたように思うのですね。もう一つは、通産省が派遣をしている、いわゆる指導の立場にいる方がおりますね、この人たちの意見というものもこの七日間で一体どういうふうに反映されて、判断されて運転をされたのか、このことについては十分な報告になってございません。特に四日の会議の判断あるいは通産省が派遣している調査官の意見、こういうものについてどんな形で七日まで運転をし続けたという過程の中で判断をされたのか、その点をお伺いしたい。
  72. 倉重有幸

    ○倉重説明員 お答え申し上げます。  ことし一月一日からの運転上の処置につきましては、報告書にも書いてありますように、類似のトラブル等の事情を考慮いたしますと、振動が上昇した後も運転を継続したということは、結果として慎重を欠いたものであると考えております。  お尋ねの運転管理専門官の件でございますけれども、どのような連絡等の状況になっておったかということでございます。私ども、福島発電所のサイトに事務所を設けまして常駐させておるわけでございますが、私どもの専門官に今回の振動の発生の件につきまして連絡を受けたのは、一月五日の午前中でございます。また、それと同時に私どもの本省にも東京電力から同様の振動発生の状況について報告があったわけでございます。それに対しまして、こちらから原因調査を行うようにということで、東電に対しては指示をしたわけでございます。  以上でございます。
  73. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 どうも余りすっきりしないですね。それで、この報告書の中にも、状況の正確な把握と原因追求、迅速な対応措置等には不十分であったという指摘がございますね。その意味では、安全性よりもむしろ経済性を優先してしまって運転をしたのかなというふうに思われても仕方がない。  ですから、今の意見でありますと、どうも、例えば一月四日の東京電力の内部の会議というのはあったのかどうか。皆さん調査報告書をつくる過程でそういうものを全部把握されたと思うのですよ、一連のずっとこの間にどういう判断をしたのかということについては。一月五日までいわゆる運転管理専門官の方には連絡がなかった、これは正月休みでなかったということだそうでありますけれども、それにしてもちょっとそこは問題ありというふうに言わざるを得ないのじゃないかと思うのです。この調査報告書のまとまる過程で、その辺のことをもう少し詳しく皆さん方では事業者の方から意見を聴取しなかったのですか。
  74. 今永隆

    今永説明員 ただいまの一月一日以降の東電の対応等の状況についてでございますけれども、これにつきまして問題があったかどうかという点については、私ども調査特別委員会の中におきましても、行政庁独自の調査におきましても、るる調べてございます。  ただいま管理課長から御説明をいたしましたが、一日の振動の発生について報告がなかったこと、さらに五日に私どもに報告がございましたけれども、そのときも必ずしも十分な情報提供がなされなかったこと、こういったことの背景としては、先ほど先生おっしゃいました一月四日に開かれた東電の事故時トラブル調査委員会、こういう場において基本的には原子炉の圧力、温度その他の主要なパラメーターが必ずしも有意な変化を示していないということから、比較的やすぎにといいますか安心をしてしまって十分調査をしないという、結果的には安易な対応がその背景としてあったと考えてございます。  報告のおくれその他につきましては、これはこれまでも外部に公表してございましたが、私どもから東京電力に対しまして、その点注意をいたしておるところでございます。
  75. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 結局七日に近い運転過程の中で、原因とされているポンプの水中軸受けが破損をして炉内にまで金属粉になって入るという極めて異例な事故になってしまった、こういうふうに思うのですけれども、原因の問題で端的にお伺いいたします。  原因は、一つは水中軸受けリングの隅肉溶接に欠陥があるということがこの報告書でも言われておりますけれども、もう一つこの結果の原因究明の段階で、皆さん方もいろいろ調査をされた、検討されたようでございますけれども、水中軸受けリングのいわゆる固有振動がポンプ内の水流によるリングの上下面の変動差圧の周波数に極めて接近していていわゆる共鳴をする、こういうふうなことについて、特にポンプの回転数が九三%のところで一番共鳴が大きく起きる、ひずみが起きる、九九%のところでもそういうものがある、こういうふうに言われて報告書にも載ってございますけれども、この問題については、原因とのかかわりということではどういうふうに判断をしてございますか。
  76. 倉重有幸

    ○倉重説明員 お答え申し上げます。  今回の事象の原因でございますけれども、直接的には原子炉再循環ポンプの水中軸受けリングの隅肉溶接部に溶け込み不足があったということでございます。その背景といたしましては、水中軸受けリングの溶接が隅肉溶接であるために強度上十分な余裕がないということと、それから溶接不良が検知できないということが背景になっていたのではないかというふうに考えております。  先生お尋ねの共振現象につきましては、大事なことは要するに共鳴現象を考慮しても安全上、強度上十分な余裕があるかどうかということかと思いますが、これは実規模の模擬試験、それからこれに基づく詳細な応力解析等によりまして、完全溶け込み溶接型または一体遠心鋳造型の水中軸受けについて強度評価を行った結果、強度上十分な余裕があるということを確認しております。
  77. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 そういう共鳴をするということを、私どもは専門家じゃないから余りよくわからないのですけれども、共鳴すれば一本の指でも大きなつり鐘を動かすことができるというようなことはあるので、これは今の原子炉の再循環ポンプの構造上の問題として、私は設計レベルのミスなんじゃないかという感じさえするのですね。例えばこの炉の再循環ポンプを安全審査するときに、事前に共鳴の問題というのは検討、研究はされなかったのですか。商業炉としてこれを使うという前段の問題。これは安全委員会でしょうか。そういう検討というのはされませんでしたか。
  78. 今永隆

    今永説明員 御指摘のございました原子炉再循環ポンプの中の水中軸受けにつきましては、例えばポンプの全体のケーシングその他につきましては、これは原子炉の冷却水を保有する重要なバウンダリーとしての機能を有してございまして、こういったものについては通産省としても十分設計内容審査あるいは実際に据えつけられる段階での検査等を実施してございます。それに対しまして、水中軸受け部分というのは内部構造物で特に圧力その他強度上の要求のないところでございまして、そのために、国としてのチェックというのは行ってございません。
  79. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 そうすると、このいわゆる共鳴現象というのはわからなかった、今度の事故が起きて初めて水中軸受けポンプにはこういうものがあるということを知ったということでしょうか。それとも、それは今までずっとほかの炉も運転していますからね、これはわかっておったのか。どちらなんですか。
  80. 今永隆

    今永説明員 原子炉再循環ポンプの中におきまして圧力脈動があること、したがいまして当然その中で多少振動の原因になる要因があることは、従来から承知してございました。しかしながら、実際にポンプの水中軸受けの溶接部に非常に大きな力が加わるということは必ずしもわかっておりませんでした。ただ、報告書にも書いてございますが、実際にポンプの水中軸受けの溶接部に加わります応力といたしましては、仮にあそこに溶け込み不足がなければ、必ずしも軸受けの溶接部が疲労破断を起こすというレベルのものではなかったということがわかってございます。
  81. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 今度の事故を見て、皆さんは初めてそういう共鳴があることを確認したということなんでしょうけれども、そうすると、共鳴がある、もう一方では隅肉溶接の欠陥があった、その二つの要因で今度の事故が起きたというふうに判断をされておる、そこのところはそういうふうに判断をされておるのですか。
  82. 今永隆

    今永説明員 破損いたしました直接の原因は溶接部の溶け込み不足にございましたが、その背景としてはそういった溶接構造、溶け込み不足を起こしやすい、あるいは検査がしにくい、また強度上も必ずしも十分な余裕がない、そういう溶接の構造もございました。
  83. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 そうすると、いわゆる軸受けリングの溶接の部分は改善をした、しかし振動問題は残って、そのままずっとこれからも運転を続けることになっていくわけですね、実質的には。  そこで、ここで再発防止ということについて書かれておる中では、軸受けの改善はやった、あるいは運転マニュアルもポンプの振動が起きたら今度はすぐとめますよという改善もする、ここでもいろいろ問題があるのですけれども、後で質問します。そのほか、安全管理上の問題等々で三、四点にわたっていわゆる再発防止を提起しておりますけれども、肝心の、今私が申し上げております共鳴現象、この問題については改善対策、今後の対策には一切触れてございません。これは私は、構造上の問題である以上しっかりとした対応を、第二原発三号炉という一つのレベルだけじゃなくて、原子力発電所の再循環ポンプの構造上の問題ということで今後の対応策を考えるべきなんじゃないか、こういうふうに思うのです。  長官、ここでお尋ねをしたいのですけれども、この報告書、長官もごらんになったと思います。それは安全委員会という立場で、科技庁がそういう立場にいらっしゃいますから、今度の事故の結果報告書は、今のそういう構造上の問題でどうも問題ありという点をほとんど実際的には改善、再発防止の中で触れてございません。これは原子炉全体の安全性の問題からいって、どんなふうに報告書をごらんになって御認識をし、これから対応すべきか、もし意見があればお聞かせいただきたいと思います。
  84. 村上健一

    ○村上政府委員 安全委員会の事務局としてお答え申し上げます。  本件、東電福島の第二原子力発電所三号炉の循環ポンプの問題につきましては、通商産業省より、当初より十分に安全委員会も調査状況について報告を受けておりまして、先生が今お示しになっております本年二月二十二日の調査結果についても、十分な報告を受けたところでございます。  それで、損傷原因及び損傷経過の推定に加えまして、運転管理面、運転マニュアルの面及び対応状況にも問題があることが指摘されておりまして、安全委員会としては、現在までの通産省の調査と推定原因等については、これで妥当であるというふうに了承しております。  それで、今御指摘の共鳴問題等につきましても、構造上の問題があるわけでありますが、通産省の調査結果に基づきまして、軸受けの改善が図られれば、基本的には今後再発することがないというふうに理解をしているところでございまして、その旨通産省の方にも伝えているところであります。  通産省におきましては、今後さらに原子炉等の健全性の評価も行っていくことにされておりまして、安全委員会としても慎重にその結果も検討の上、必要に応じて今後通産省を指導してまいりたい、こういうふうに認識しております。
  85. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 私は、今の問題は第二原発三号炉だけの問題じゃないから、結局これと同じ型の炉は全部欠陥を抱えてこれから運転を続けるということなので、その意味で、いわゆる通産省レベルの話じゃなくて安全委員会全体の問題としてこれをどう受けとめているか、報告書をどうごらんになったかということを私は長官から率直に聞きたかったわけでございます。どうですか、一言だけでも感想をお示しください。
  86. 大島友治

    ○大島国務大臣 委員の御指摘、まことにごもっともだと私も聞いておるわけでございます。しかし、この問題は単に今回の問題だけでなくて、すべて原子力にまつわるものについては、私としては最大、しかも細心の注意を絶対に怠ってはならぬぞというような気持ちで、私も日ごろ、内部においてもうるさいと言われるくらいにやっておるのです。したがって、この構造上の問題にいたしましても、今回の具体的な現象にいたしましても、若干そういう点について幾らかすき間があったのではないかというふうな感じを持っておりますので、今後は絶対に再びこういうことのないように、私は委員の御指摘内容にも十分関心を持って今後これを指導してまいりたい、こう思っております。
  87. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 私は福島県の浜通りなものですから、原子力発電所十基をいつも枕にして寝ているようなものでございまして、そういう意味からすると、安全問題というのは私ども県民やその地域に住む者にとっては極めていつもいつも潜在的に不安を持っているわけです。安全対策の万全という問題は、これはもうそこに住む者は強く求めているわけでありますから、そういう意味で、今度の事故は私どもどう見ても、長時間にわたるあの運転のあり方等々、いろいろな欠陥があったということは、今いろいろやりとりの中で明らかになってまいりましたけれども、再びあんな事故を起こしてはならないというのは当然のことであります。それで、事故の後始末が今いろいろどんどんやられておって、あといずれ運転再開という問題が来るのだろうと思うのです。  そこで、いわゆる運転再開に向けて何が今問題になっているのか、ネックになっているのかということ、これはもちろん県民の不安を解消することが最も大事なことであろうとは思うのですが、金属粉の全面的な回収あるいは燃料棒を新しくするということなどを含めて、運転再開に向けて事業者側もいろいろおやりになっているようですけれども、慎重の上にも慎重を期して、いわゆる運転再開に当たっては安全がしっかり確認をされたということでなければこれは到底踏み切るべきではないと思うのですが、その辺はどんなふうにお考えですか。
  88. 倉重有幸

    ○倉重説明員 お答え申し上げます。  原因と再発防止対策につきましては、先ほどの報告書に出ているとおりでございます。  その後、東京電力は炉内の洗浄・回収作業をやりまして、四月の十七日に通産省に報告してまいった次第でございます。  私どもとしましては、その回収結果を踏まえまして、残存する金属粉等がプラント全体に及ぼす影響をしっかりと評価いたしまして、今後のプラントの運転に関して問題がないかどうかをきちっと検討してまいりたいと考えております。
  89. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 時間がありませんから、この問題を終わって廃炉の問題を一言だけお伺いをしておきたいのです。  ことしから原子炉の廃炉については租税特別措置関係でも優遇税制をしくということで、新たな方針が打ち立てられました。廃炉についての考え方もお持ちになっているようですけれども、密閉管理をして、その後解体撤去をしてというふうな方針のようでございますけれども、結局、廃炉をして密閉管理をして、ある一定の期間を置いて撤去をする。撤去をした後、またそこに建設をするというふうな、先行きそういう方針を持ってこの廃炉問題というのは考えておられるのかどうか。この点だけ、言ってみれば考え方を聞かせていただきたいと思います。
  90. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 お答え申し上げます。  原子力委員会では、昭和六十二年六月に原子力開発利用長期計画というのを定めてございます。この中に、庭炉について次のような考え方を決めてございまして、これが政府の考え方になっております。  ちょっと読みますと、   原子炉の廃止措置は、原子力発電を円滑に進める上で極めて重要な課題であり、安全の確保を前提に地域社会との協調を図りつつ進めるべきである。さらに敷地を原子力発電所用地として引き続き有効に利用することが重要である。   原子炉の廃止措置の進め方については、原子炉の運転終了後できるだけ早い時期に解体撤去することを原則とし、個別には合理的な密閉管理の期間を経る等諸状況を総合的に判断して定めるものとする。 こう書いてございます。  国の原子力政策の基本がこれでございますので、目下政府としてはここに述べられているような考え方に従って対応していきたいと考えておりますが、現実に商業用の実用の原子力発電所の廃止が問題になってまいりますのは九〇年代の後半以降と考えておりますので、その間に、以上の考え方に従いまして円滑に実施できますように、また経済的に安全に実施できるように技術開発等を鋭意進めているところでございます。
  91. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 時間ですから、廃炉問題は後で議論させていただく機会をいただきたいということで、これで終わります。  ありがとうございました。
  92. 鈴木宗男

    鈴木(宗)主査代理 これにて鈴木久君の質疑は終了いたしました。  次に、平田米男君。
  93. 平田米男

    平田(米)分科員 私は、地球環境問題についてお伺いをしたいと思います。  今月の十七、十八日ワシントンで地球環境ホワイトハウス会議というのが開かれたわけでありますけれども、今まさにCO2をめぐる問題が大変重要な問題になっておるわけでございます。我が国もこの問題につきましてはそれなりに取り組んでおられるようでございまして、環境庁を初め科学技術庁あるいはまた通産省等々、諸官庁も参加をされておられまして、新聞等の発表によりますと、通産省あるいは環境庁からそれぞれの御意見を発表されたというふうに伺っておるわけでございますが、この地球環境問題において中心的に携わる諸官庁が、環境庁はもちろんでございますが、通産、科学技術庁ではないかと私は思うわけでございますが、それぞれのお立場から、現在提起をされておりますこのCO2の地球環境の問題についてどのような考え方で取り組んでおいでになるのか、この辺をまずお伺いをしたいと思います。     〔鈴木(宗)主査代理退席、主査着席〕
  94. 須田忠義

    ○須田政府委員 お説のとおり、地球環境問題は多くの省庁がこれに携わってございます。私ども、主として科学技術的な側面からお答え申し上げたいと思います。  御高承のとおり、去る十七日及び十八日ワシントンで開かれたわけでございますが、我が国を初め十八カ国、二国際機関がこれに、ホワイトハウス会議に出席しております。  なお、今回のホワイトハウス会議、炭酸ガス問題を含めましてブッシュ大統領が提唱した会議でございますが、ここにおいていろいろな側面が集約されてございます。  我が方からは、本会議において、地球環境の科学的理解が非常に重要であるということと、地球環境に関する情報ネットワーク等の国際的パートナーシップとしての構築が非常に重要である、それと調査研究を強力に推進する必要があるということ、それから我が国の経験からして経済成長を損なうようなことがなく環境対策を推進することが可能であるというような意見を主張し、各国からもろもろ活発な、活気に満ちた御議論があったというふうに承知しております。  我が方としては、本会議におけるいろいろな議論を踏まえまして、今後地球環境に関する国際的なネットワークの構築と科学技術の推進方策について鋭意努力していきたい、そういうふうに考えているところであります。  科学的な側面からの御答弁でございます。
  95. 柳下正治

    ○柳下説明員 お答え申し上げます。  地球環境問題につきましては、人類の生存の基盤に深刻な影響を与える重大な問題であるという認識をまず持っております。人類が英知を結集して、東西、南北の違いを超えて将来の利益を目指して行動していくことが、現在何よりも大事だというふうに認識しております。  我が国は世界のGNPの十数%を占めております経済大国であります。その活動のために多くの資源を地球に依存しております。そして、その利用、消費の過程で地球環境にも一定程度影響をもたらしております。こういった意味で、我が国は地球環境の将来に対して大きな責務を負っているとも考えます。しかも、健全な地球環境は、国際社会、国際国家の日本としても非常に重要な基盤ではないかと思っております。我が国は、このような豊かな経済力、技術力、人材、これはもとより、公害対策などの面でも多くの貴重な経験や技術を有しております。これらを生かして世界の環境保全のために積極的に貢献していかなければならないというふうに認識しております。  そこで、具体的に政府では各省庁一体となって政策に取り組むために、昨年五月に地球環境保全に関する関係閣僚会議というものを発足いたしまして申し合わせを行っております。当面、重点施策といたしまして、地球環境保全を目指した国際的な取り組みに対する積極的な貢献、それから科学的知見を蓄積するための調査研究あるいは技術開発の推進、それから途上国に対する援助の環境保全面での充実、それから海外進出等における環境への配慮、そして地球環境の保全に配慮した経済社会構造を我が国自体が目指していく、こういった基本方針を取りまとめたわけであります。  環境庁は、地球環境担当大臣という立場もございますが、政府一体となってこの問題に取り組んでいくべく、その旗振り役という立場も含めて全力を果たしていく、そういう考えでございます。
  96. 石海行雄

    ○石海説明員 通産省といたしましては、地球環境問題、これは今環境庁の柳下室長からもありましたように、全人類の英知を結集して取り組むべき世界的な重要課題というふうに認識しておりまして、従来から本問題には積極的に対応してきているところでございます。  この地球環境問題の解決の方向といたしましては、健全な経済成長と環境保全とを両立させていく、こういう観点が重要だと考えておりまして、アルシュ・サミットの宣言にもございましたように、技術によってブレークスルーを図る、こういうことが大切であるというふうに考えているところでございます。  具体的には、通産省といたしましては、まず地球環境に適応した新しい産業技術体系、こういったものの構築を目指しまして、例えばCO2の固定化・有効利用等の技術開発の推進、それから第二に省エネルギーの推進であるとか、あるいは原子力及び新あるいは再生可能エネルギーの着実な開発利用の促進、さらに加えまして発展途上国等に対する技術移転の推進等を図ってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  97. 平田米男

    平田(米)分科員 お話を伺う限りは積極的に取り組もうとしていることはわかるわけでございますけれども、特に環境庁さんについては自分のところの所管の問題なのでそれなりの問題意識を持っておいでになるということは、御答弁でそれなりに理解をしたわけでございますけれども、このCO2を初めとする地球環境の問題というのは、やはりこれまで私たちの人類の将来の前へ大きく立ちはだかっておりましたのは核の問題でございまして、核戦争が起きたならば我々人類は死滅してしまう、こういう指摘がなされてきたわけでございますけれども、最近の世界情勢の変化によりまして核戦争の危機というのはある程度弱められてきた。これもそれぞれの御努力によるものだと思うわけでありますけれども、そこで、新たに我々の人類の将来を左右する問題として持ち上がってきたのが、この地球環境の問題であります。  人類の前途をふさぐという意味では同じでございますけれども、しかしその問題の本質は根本的に違うのではないかと私は思うのです。核戦争による人類の問題は、核を持ったものにボタンを押させないようにする、そういう努力をすれば回避ができる問題と一応は言えるのではないかと思うわけであります。また、これもそう簡単な問題でないことは十分理解をした上でそう申し上げているわけでございますが、しかし今回の地球環境の問題というのは、我々人類が生存を続けようとしていることによって我々自身の生存を脅かされる。まさに我々が生きていくことが我々の生存を、生きていくことを認めないような結果をもたらしてしまう、極めて皮肉なといいますか、問題解決の難しさという点では比較にならないものではないかと思うわけであります。これまでのような国際問題と同じように一過性のものではありませんし、我々がまさに人類的課題として、我々の世代だけの問題ではなくて、有史以来我々は四千年の歴史、人類は何万年という歴史を刻んできたわけでありますけれども、我々の世代がこの地球を、これから何百年、何千年も続くような世代にこのままの状態で残していけるかどうかという重要な決断を迫られている問題ではないかと思うわけであります。  いち早く国連等はこの問題に関心を持たれて、一九八七年には環境と開発に関する世界委員会で持続的開発という考え方を提案をされました。確かに開発がなければ、北の人たちは今の文明の恩恵を受けておりますけれども、南の方々は大変な貧困の中で生活をしておられる。今の環境を維持しようとして生産活動を現状凍結にすれば、それは南の方々に対して大変な負担をかけることになる。到底それは許されないということから開発をせざるを得ない。しかしながら、それによって、環境破壊することによって結果的に人類が生存できないような大変な温度上昇、こうしたことであってはならない、それを何とか切り抜けたいというところから持続的開発という言葉が出てきたのだろうと思うわけでありますけれども、我々はそういう意味で、この問題に対してまさに国家といいますか人類という視点から真剣に取り組んでいかなければならないと思うわけであります。  特に、日本も経済大国と言われ、経済力は大変なものがあるわけでございますけれども日本の経済力を伸ばすがために環境破壊させるようなことがあってはならないと思うわけでございまして、またこの問題を解決するには非常に長い年月を要するわけであります。それぞれの省庁の今の対応状況をそれなりに伺ってみますと、一九八八年の時点ではCO2の問題に対して一切の予算措置はとられていなかった。昨年になりましてそれなりの動きが出てまいりまして、ことしから若干それぞれの省庁において室等が新たに設置をされる、地球問題に関する部局が設置をされるということになっておるわけでございますけれども、このような人類的課題に対しては、我々日本としましても世界に先駆けて、諸外国に先駆けて積極的な対応をしていかなければならないと思うわけであります。政府は「世界に貢献する日本」ということをおっしゃっておいでになるわけでございまして、今こそまさにチャンスなわけでございまして、それなりの御姿勢を持って努力をしておいでになるかと思いますけれども、もう一層この問題に対する厳しい取り組みといいますか、強力な取り組みを求めたいと思うわけであります。  今回のホワイト・ハウス会議では、国際的な研究機関の設置とかあるいは情報ネットワークの開設などがアメリカから提案をされております。私は、これは積極的に日本が関与をして実現の方向に持っていかなければなりませんし、しかもそれは短期間で実現を見なければならない課題だと思います。確かにCO2の影響に対する不確実性という問題はありますけれども、しかしそれは、科学的に知見がなったときには手おくれであるということになってはならないわけでありまして、そういう意味で早急な取り組みをしていただきたい。  と同時に、一応環境庁というものがありますけれども、環境庁はあくまでも調整機関であるというお話でございまして、しかしこのような問題は国家的プロジェクトとして国を挙げて、政府を挙げて取り組むべき問題だろうと私は思います。今すぐそれを専門にする省庁ができるということを私も考えておりませんが、しかしそのようなものまでつくって日本政府として対応していく、このような姿勢がぜひとも必要ではないかと私は思うわけであります。  八月にはIPCCの第四回の本会合がなされまして、これでCO2の規制に対する科学的な基準というのが出てくるわけでございまして、それを受けて世界気候会議が行われるわけでございます。矢継ぎ早に世界の情勢の進展は進んでいくと思われます。そうしたときに日本が、あそこはやはり経済だけの国なんだ、このような非難を諸外国から受けないように、我々の経済力、今おっしゃいました技術力と人材、あり余っておると言ってもいいわけでございまして、炭酸ガスの排出量が四%にしかすぎないからと、こういうような姿勢ではなくて、この問題の解決の主導権を日本が握っていくんだ、こういう姿勢でぜひとも取り組んでいただきたいと思うわけであります。  科学技術庁に対しましては、持続的開発という視点で一番要請されるのは、技術、科学のブレークスルー、画期的な発展を望まれておるわけでございますが、これはできるかどうかは難しいところかもしれませんけれども、不可能を超えるような闘いかもしれませんが、ぜひとも真剣に取り組んでいただいて、日本があったから人類が救われたんだ、こんなふうに歴史家に言っていただけるような日本政府の行動、これをぜひともとっていただきたいと思うわけでございますが、もう一度御意見をいただきたいと思います。
  98. 須田忠義

    ○須田政府委員 先生お説のとおり、地球環境問題、地球温暖化等、非常にグローバルな長期的な問題と、早急に解決しなければいかぬ対策、手段、いわゆる対策研究の強化という側面がございます。どれも非常に重要なことだというふうに認識してございまして、科学技術庁といたしましても、各省庁の調整官庁という立場並びにみずから実施していく立場と、両面にわたって強化してまいりたいというふうに思っております。  特に先生前段申されました国際的な貢献ということについては、地球温暖化等グローバルな問題については国際協力が不可欠であります。したがって、科学技術庁といたしましても、関係省庁と一緒になりまして国際共同研究にこれまでにも積極的に参加してまいりましたし、今後地球圏―生物圏国際共同研究計画なんというのが新しく国際的に提起されてございます。これについても我が国は新しく積極的に参加してまいりたいというふうに考えておるところであります。
  99. 平田米男

    平田(米)分科員 できましたら、長官にも御意見を伺いたいと思います。
  100. 大島友治

    ○大島国務大臣 委員の地球環境というか、そういう問題に対する極めて意義のある御指摘を聞いておりまして、これは科学技術の問題とそれから経済というものは不可分の関係にあることは事実でございますが、同時に、環境が破壊されていくような状況でただ経済だけを追っても、これは将来の人類にとっては決してプラスにはならないということは明らかで、そういう面から、御指摘についてあえて私も申し上げてみたいと思うのでございますが、まさに地球環境の問題は人類の生存基盤を脅かすおそれのある重大問題でありまして、その解決に向けて積極的に取り組むことは絶対に必要じゃなかろうか、こういうふうに考えております。したがいまして、この地球環境問題の解決につきましては、科学的な知見を踏まえまして適切な対策を立てていくことが絶対に必要じゃなかろうか、しかもそれは重要なことであるというふうに認識しております。  また、このような観点から、科学技術庁は、まず第一に、地球観測衛星の開発と、地球観測、監視の充実ということをまず図っていきたいということを第一に考えております。次に、地球環境に関する諸現象の解明、研究の充実、これらのことを総合的に推進してまいりたい、こう考えております。なおまた、炭酸ガスあるいは窒素酸化物等の発生しない原子力の開発利用も、これまた推進することは必要であるということも考えておるわけでございます。  最後に、このような施策を通じまして、科学技術の先進国として「世界に貢献する日本」という立場から地球環境問題の解決に向けまして積極的に取り組んでまいりたい、こう考えておるものでございます。  以上であります。
  101. 平田米男

    平田(米)分科員 あと環境、通産の方からもお願いします。
  102. 柳下正治

    ○柳下説明員 お答え申し上げます。  今回のホワイトハウス会合に環境庁長官が参りまして、米欧等と論議を深めてまいったわけでありますけれども、現在、地球環境問題の中でもやはり最も急ぐべぎ課題は、地球温暖化対策にいかに的確に取り組んでいくかということであろうかと思います。今回の会議を通じまして、まず一点は、国際的に、現在IPCCというところでこの問題に対して論議が行われております、これに的確に貢献するということがまず第一に今後必要であろうと思われます。  それから第二には、まず国民理解、協力のもとに、省エネルギー、省資源など当面実施可能な対策を講ずること、そしてさらに革新的な技術開発を図ることによって温暖化防止に我が国自体が積極的に貢献していくということが必要かと思います。そしてさらに、アメリカから提案をされておったわけでありますけれども、国際的に地球環境問題に関する科学的知見を高めていくための国際的な研究体制づくりに対しても我が国として貢献していく、こういうことが大事ではないか、こういうふうに考えておるわけでございまして、このような現状の地球環境問題の実情も踏まえながら、私ども先ほど申し上げましたとおり、地球環境担当大臣という側面もございますが、地球環境問題関係閣僚会議などの場を通じて政府一体となった取り組みができるよう努めてまいります。
  103. 石海行雄

    ○石海説明員 先生の御指摘のとおり、地球環境問題は非常に大切な問題でございまして、通産省といたしましてもできる限り積極的に対応してまいりたい、かつ、関係省庁とよく協力をしながら推進してまいりたい、かように考えております。
  104. 平田米男

    平田(米)分科員 これまで軍事力の時代だ、世界を支配するのは軍事力だと言われてまいりました。これが世界の情勢が大きく変わりまして、これからは経済力の時代だと言われておりますが、私はそれは間違っておると思うのです。これからはやはり理念の時代だと思います。どういう考え方でこの地球をリードしていくか。経済だけではもうだめである。まさにホワイトハウス会議の様子を見ておりますと、経済力もはるかに小さなオランダの国が、アメリカに対して堂々と環境問題に対して真っ向からおっしゃってみえる。これは理念があるからだと思うわけであります。日本も経済力の上に安住をしないで、明確な理念を持って対応していただきたいと思うわけでございます。  もう一つ、これに関連しまして、CO2の問題になりますと、当然きれいなエネルギーというのはどういうものかということで注目されておりますのが太陽電池なわけでございますが、時間がありませんので、簡単にこの太陽電池の現在の生産と開発の状況、開発目標、利用目標、これの達成年次、あるいは私はこういう地球環境の状況を見ますと、二〇〇〇年にはそれぞれの家庭で使われる電力は、各家庭の屋根の上に太陽電池を並べれば、もうそれで十分賄える、このくらいまで持っていかなければならないのではないか。しかもそれは現在の電気代のコストでできる、こういうことにしなければならないというふうに思うわけでございますけれども、現在の生産状況、開発の状況、また今後その実現に向けてどのような方策をおとりになるお考えなのか、お答えをいただきたいと思います。
  105. 吉沢均

    ○吉沢説明員 御説明申し上げます。  太陽エネルギーの利用技術開発といたしましては、通産省におきましては、太陽光発電、それから熱として使われますソーラーシステム等の研究開発を実施しております。太陽光発電につきましては、原理的には確立しておる技術ではございますけれども、経済性がどうかということでございますので、既存の発電システムと同等程度の経済性を有するまでコストを下げる、そういうことを主眼として研究開発を実施してきてございます。  具体的には、従来からの太陽電池の電池本体の部分の製造コストを西暦二〇〇〇年におきまして一ワット当たり百ないし二百円とすることを目標にして開発を進めてございます。この太陽光発電のコストでございますが、経済性となりますと一キロワットアワー当たりで幾らか、こういうことが対象になるわけでございますけれども、これには、太陽電池本体の製造コストの引き下げ、それから発電効率の向上あるいは耐久性、信頼性の向上というのが具体的内容になるわけでございます。西暦二〇〇〇年におきまして太陽電池本体部分の製造コストを百ないし二百円といたしますと、大体現在の一般の家庭用電力料金でございます一キロワットアワー当たり二十ないし三十円程度に発電コストがなるのではないか。そういうことを目標にして開発を進めておるところでございます。  また、今後の普及のためにどうするかということでございますけれども、やはり経済性を上げることと、それからやはりそれぞれの場所で使いやすいシステムにこの太陽光発電設備のシステムをつくり上げるということが大切でございますので、今後はそのような方向で研究開発を続けてまいりたい、そのように考えております。
  106. 平田米男

    平田(米)分科員 終わります。
  107. 池田行彦

    池田主査 これにて平田米男君の質疑は終了いたしました。  次に、関晴正君。
  108. 関晴正

    ○関分科員 大島長官にお尋ねをいたします。  まず第一は、昨日青森県の六ケ所村で行われた低レベル廃棄物のいわゆる公開ヒアリングと申しましょうか、この状況というものは一般的に報道されておりますけれども、極めて低調なものであったな、こう実は思っているわけであります。どうしてああいうような賛成者ばかりで行われたのか。反対者の方々からはすべてボイコットされた。あわせまして、また、大変な警備の中で行われた。まるでおりの中で行われるようなヒアリングじゃないかとの批判が地元紙の紙面を実は覆っている状態であります。  そこで私は、もっと民主的な方法で、そうして単に時間が五分だとか十分だとかというヒアリングじゃなくて、十分に意を尽くすような形のもので進めていくことができなかったのかどうかということも含めまして、これは昨日行われたヒアリングに対する長官の所感でも結構ですし、考えでも結構でございますので、お聞きしたいと思います。
  109. 大島友治

    ○大島国務大臣 今、関委員の指摘されました、ボイコットされたりして、しかも短時間であんな大騒動の騒ぎをしながら、そして戸閉めしながらやるなんてもってのほかじゃないかと、私もまともにそれはただいま受けとめて、ただ残念ながら私も過去の経過について若干認識不足でございましたので、今改めてそのことについては十分私も耳に入れたわけでございます。しかし結果としては、昨日やりましたので、その経過というものを私は聞きました範囲内でお答えを申し上げたいということでございます。  御承知のように、原子力安全委員会の公開ヒアリングは青森県及び六ケ所村の協力を得まして、昨日無事に終了したという報告を受けておるわけでございます。  また、地元の方々から、廃棄物の埋設事業の固有の安全性を初めとして広範な事項について質問や貴重な御意見を出していただき、またこれに対し行政庁から説明、回答がなされたものと聞いておりまして、このように十分な対話がなされたことは、非常に私としては報告を受けた範囲内においては有意義に終わったのじゃなかろうか、こう考えておるものでございます。  以上のようなことで、昨日、今先生の方からも御指摘はいただきましたけれども、私の報告を受けた範囲内におきましては、ただいま申し上げましたような状況でございますので、よろしくお含みいただきたいと思います。
  110. 関晴正

    ○関分科員 なぜもっと県民にわかるように、また反対派の皆さん方が御主張されているように、ゆっくりそういうお話をするようにいかないのかという申し入れを断らねばならなかったのか。私は、今度のヒアリングというのは法に基づくものでもないし、言うなれば県の要請があり、また科技庁もこれにこたえてしかるべしとも思われておやりになったのだと思うのです。従来の原発におけるヒアリングと違いまして、大きくここには幅もあったし、ゆとりもあったし、配慮もまたできる内容のものであったと思うのです。まして大島長官は、長官になられたときに六ケ所も知らなかったし幌延も知らなかった、しかし今や二カ所はわかったよ関君、こうおっしゃるように、だんだんわかってきたと思うのです。  私は、わからない人の方がわかっている人の大臣よりもいいというところが場合によってはあるものだとつくづく思っているのです。これは特に青森県の六ケ所の村にいわゆる三点セット、低レベルの廃棄物、ウランの濃縮工場、そうして再処理工場、そのうちのウランの濃縮工場はまあ一応許可になったということで今取り組まれているわけであります。これとてまた決してそんなにいい方法で決められているのかというと問題が幾らもある、こう思っております。  だが、一つ長官に、あれで終わりにして、もうこれでよしとするのだということでいってしまわれてはいけないんじゃないか。今度は、科技庁の行政レベルの審査は終わった、この後は安全委員会の審査に任せます、そちらを待ちます、こういうのでありましょうが、従来の行政庁の審査と安全委員会における審査を見ますと、安全審査の方が行政庁よりも下がっていると言えばなんですけれども、劣っているというふうに批判もまたあるわけであります。ですから、行政庁がとにかくよしとしてしまうと、このままよしとされてしまうのじゃないかという心配もまたあるわけです。  そこで、きのうのようなことは、それはそれとして置いても、反対者の諸君たちの御意見等も十二分に聞く、こういう御方針をとっていただけないだろうかということと、決して昨日の、行政庁の審査を済ませたんだからもう何か何でも年内のうちにでもやってしまうのだ、こういう考えには立たないで、まずじっくりと検討する、そういう気持ちで当たっていただけないだろうかということで、長官のお考えをいただきたいのです。
  111. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 釈迦に説法になって恐縮でございますが、原子力関係の施設の立地に当たりましては、地元住民の方の御理解を得て、御協力を得ながら進めていくというのが基本でございます。その意味で、公開ヒアリングが終わったからもうこれで済んだんだというようなことではなくて、地元の住民の方の間に御理解をさらに深め、疑問にお答えをしていくために、いろいろな方法で御説明をし、対話を行い、疑念を晴らしていくというのが、行政を進めていく上での我々の責務と思っておりますので、今後とも機会を見て適当な方法をいろいろ考えまして、一義的には事業者にやらせますし、国としてもそれについて必要なことがあればいろいろ考えていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
  112. 関晴正

    ○関分科員 答弁としては私は結構だと思います。答弁どおりに取り組むことをまずひとつ要望しておきたいと思います。  それで長官、一つ聞いていただきたいことがあるのですが、実は青森県の市町村、周辺市町村は金が欲しいものですから、とにかく低レベルの廃棄物の貯蔵所にしても再処理工場の建設にしても、まだ許可がおりておらないのにもかかわらず、近く許可がおりるであろうという想定のもとに、二年前の会計年度から金を交付することができるということを建前にして、既に六十三年度から交付をしているわけです。六十三年度平成年度も交付しております。そうして平成年度予算の中に四十五億ぐらいは見ておるようであります。  許可にもならないうちに金だけは差し上げるというこの思想は、私は、一つの懐柔政策と申しましょうか、推進するために心を買うような、選挙で言えば買収に当たるようなことと似ていると思う。同じだとは申しませんよ。そういう意味からいけば、きちんと許可になったならば初めてその周辺の整備法に基づいて周辺地域整備計画というものが成立して認められるものと思うのです。許可にもならないうちから、もうなるものとして取り組んじゃって金を交付しておる。ですから、会計年度からいけば工事をする二年前にやれるというものだから、ことしのうちにいやが応でも、それが理由で、この会計年度のうちにでも工事を進めなければならなくなっている。いや応もなしにならなくなっている。こういうような取り組み方や進め方というのは、私は間違いだと思う。それにこだわらないで、やはり適地であるのか不適地であるのかという論を十二分にした上で、何が何でもこの年度のうちに許可をしてしまいますよということだけは考えない、こういう構えで当たっていただけないだろうかと思うのです。これは長官、長官の考えで決まることですから、長官からお答えいただきたいと思うのです。
  113. 池田行彦

    池田主査 長官の前に緒方原子力局長
  114. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 電源三法の交付金は、先生案内のとおり発電所、原子力発電所等の立地を円滑に進めるために、いわゆる電源三法に基づいて周辺地域の公共施設の整備等、地域への企業導入等の地域振興のために使われているわけでございます。  御質問の電源立地促進対策交付金、これは発電用施設周辺地域整備法に基づきまして交付をされておりますが、発電用の施設に加えまして、工事用の道路であるとか、荷揚げ用の岸壁であるとか、その他発電用施設のいわゆる関連施設とあわせて整備することが必要なものの整備に関しても交付金を交付することができることになってございます。したがいまして、同法七条に基づきまして定めております原子力発電施設等に係る電源立地促進対策交付金交付規則によりまして、発電用施設の関連施設の設置の工事が開始される日が属します会計年度以降、交付金の交付を開始することが可能になっている、こういう仕組みになっているものと私ども承知しているところでございます。
  115. 大島友治

    ○大島国務大臣 今の問題については局長の方から一応説明は申し上げましたが、もちろんこれは我々も前も経験をいたしております。いわゆるギブ・アンド・テークというような気持ちでやっておる事業ではございますけれども、ただタイミングが合わないような、あえて今委員の方から言われるような間違った解釈をされたと言っては語弊がありますけれども、そういう疑いが起こらないような、タイミングにマッチした措置をしてまいりたいと思っておるのです。今局長の方から説明はさせましたけれども、ややもするとそういう嫌いがなきにしもあらずということがあるので、私も十分委員の気持ちを酌み取りまして今後指導してまいりたい、こう思っております。
  116. 関晴正

    ○関分科員 大変ありがたいと思います。というのは、低レベル廃棄物貯蔵所の周辺地域整備計画なんです。あるいは再処理工場の設置に当たったその周辺の整備計画なんです。それをあたかも電源開発で認められているところの特別な関連事業ということで、規定があるからといってそれを適用して、許可にならないものでもできるのだということは行き過ぎだと思うのです。なるほど甘いものはだれでも欲しいです。いただきたいです。それによって今度は反対運動が阻害されていく。  なぜこんな話をするのかといいますと、これまでの六ケ所の村長というのは推進派でありました。やれやれ、やれやれです。どんなことがあっても進め進めです。ところが、今度の新しい村長というのは凍結派の村長になりました。凍結派の村長ですから、しばらくは立ちどまって御検討し、そうして吟味をする時間というものが十分生じてくるわけです。それでも村長になると、いやお金をいただいているぞ、交付金が来ているぞ、賛成しなければならないのだろうかな、こうなっていくわけです。  ところが今の土田村長は、これは国でくれている交付金かもしれぬけれども、迷惑料として受け取るということを明言しているわけです。本当はそんなの断ったらいいんじゃないだろうかという反対派の諸君たちのこともありまして、でも電源開発三法でくれるものを断ってしまったらまた事業がおくれる、事業をやりたいばかりに、いただく方がいいんじゃないだろうか、事業は凍結してもらうけれども、交付金の金はいただいてその事業は進めた方がいいんじゃないかという現実的な考え方。ですから、これを迷惑料と位置づけていただく、こう言っておるわけですね。  そういうように実際に現場における自治体の皆さん方が賛成、反対の別なく、いただけるものはいただいてやろうか、しかし、こうして農業者の皆さん方が反対だという運動が高まってきますと、その金がまた邪魔になるわけです。邪魔になるけれども、みんな欲なものですし仕事はしたいものですから、国がくれてよこしたのだからいいんじゃないかというふうになるわけなんです。この金は非常に事を進めるのに、賛成派の仲間をふやすのに役立てょうと思ってやったに違いない。まあ長官から言わせれば、そういう意図ではなくてフェアに考えてやったことであろうが、そういう現実もまた生じているとなれば、これはやはりある程度考えなければならないな、こういうところに先ほどお答えがありましたので、私はそういう考えはいいんじゃないだろうか、こう思うわけです。  そういう意味で、まあとにかく六ケ所の村長さんは今凍結の立場、それから昨年七月に行われました参議院の選挙、これはもう圧倒的に青森県民は核燃のサイクル基地には賛成できない、こういうことで三上隆雄さんという参議院議員を、総投票の五二%でございます、過半数が三上さんを支持して、そうして国会、参議院の方に送ってくださいました。これは明らかに県民の意思が核燃サイクル基地ノーという意思と見ていいと思うのです。そういう政治的な一つの条件が大きく変わったということを、これまた長官も私は知っていただきたいと思うのです。  この問題が許可された当時というものは、青森県は全部自民党の国会議員でございました。知事もまたしかりでございました。知事はとにかく名立たる自民党公認の数少ない知事でもまたあるわけです。だがしかし、政治情勢が変わってきたということ、民主的な方向が非常に大きく影響を与えるようなときに今来ているわけです。この現実、この実態というものも無視して核燃サイクルの問題についてしゃにむに進めるということは適当ではないのじゃないだろうか。こういう点については、知事の任期というものも来るべき来年の一月で終わります。話によりますと、知事ももう早いうちにやめるのじゃないかということもうわさされております。いずれにしましても、来年の一月までには知事を選ぶ作業が青森県で発生するわけです。そのときに核燃問題が最大の争点になるであろう。そこで、その意思が決まらないうちにやってしまえなどということでじゃんじゃん許可の方針を推進されたのではたまらない、こうも私は思いますので、民意というものも尊重してこの問題については取り組まねばならないものがあるのだ、このくらいはひとつ長官も御承知いただけないだろうかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  117. 大島友治

    ○大島国務大臣 ただいまの委員の御意見も聞いておったわけでございますが、しかし、私ども科学技術庁としての既定方針もございますので、私どもの気持ちもひとつお聞き取りをいただきたい。  六ケ所村のこの核燃料サイクル施設の建設計画というものは、自主的核燃料サイクルの確立を図る上で極めて重要であるというふうに受けとめてやっておるわけでございますし、安全確保を大前提にいたしまして地元の理解、協力を得て計画が円滑に推進できるように、これは最大の努力を払っておるのが現実なんでございます。  そこで、私といたしましては、現在青森県の六ケ所村で進められている核燃料サイクル施設の計画は、ただいま申し上げましたように、我が国における自主的な核燃料サイクルの確立のために必要なものでございまして、エネルギー政策及び原子力政策上の極めて重要な課題だ、こういうふうにまず認識をしておるものでございます。したがって、現在核燃料サイクル施設の計画をめぐり地元においていろいろの議論があることは私も承知はいたしておりますし、政府としては今後とも安全の確保ということを、再度申し上げることですけれども、大前提にいたしまして、地元の一層の理解と協力を得てこの核燃料サイクル施設の計画が円滑に推進できるよう最大の努力を払っていきたいということなんでございますので、ひとつお聞きとめをいただきたい、こう思うのでございます。
  118. 関晴正

    ○関分科員 私は、とにかく再処理工場の問題にしても核燃サイクルの問題にしても、論議しなければならない内容がたくさんあると思っております。それらの内容については、いずれ科学技術委員会で十二分にまた論戦もしたいと思っております。  あと時間も十分かそこらしかありませんので、特に申し上げたいことは、今度科技庁が出されました第一次審査なるものですね。「日本原燃産業株式会社六ケ所事業所における廃棄物埋設の事業の許可申請に係る安全性について」という内容のものでございます。そしてこの内容を読みながら、反面、この会社が出されましたところの許可申請書、大臣、許可申請書というのはこんなに厚いのですよ。これが出たのは昨年の十月二十七日なんです。一番先のものの出たのはちょうど二年前のきょうなんです。二年前のきょうお出しになった。それを一年半たちまして昨年の十月二十七日に出たのがこれなんです。これの方が当初のものよりも何倍も厚いものですよ。こっちの方が前に比べるとよくなったと思ってお出しになったと思うのです。これについての吟味も、これもまた科学技術委員会でやらなければならない問題ですのでやりますが、ただ一つ、この審査に当たるところの行政庁、あの地域におけるところのボーリングの数が相当数あったと思うのです。その相当数あったボーリングの数を全部チェックしたかどうかということを、この際伺っておきます。  それから、あの地域における岩盤というものの持つ強度と申しましょうかクラス、その岩盤の階級と申しましょうか、どの位置にある岩盤なのか。Aクラス、Bクラス、Cクラスとあるでしょう。良好な岩盤だというし、大して悪いものじゃない、こうおっしゃいますけれども、これは位からいけばどの辺に位置する岩盤ですか。
  119. 村上健一

    ○村上政府委員 お答え申し上げます。  まずボーリングの問題でございますが、先生案内のとおり、申請者はあの埋設設備位置及びその付近におきまして約六十三メートルの間隔で二十八孔、そのトータルの深さの計は最大で百メートル程度のボーリングを行っております。それで、この結果をまとめまして申請書に記載しているわけでございます。  その理由は、実はこれ以外にもあと百五十孔ほどボーリングしておりますけれども、いわゆる申請者といたしましては二十八孔のボーリングの結果を整理して提出することによって十分審査にたえ得る、こういうふうに判断して提出してまいったものでございますが、私ども行政庁といたしましては、その結果をその二十八孔で取りまとめられました地質柱状図等を判断しまして、なおかつ、現地に審査官それから技術顧問も派遣いたしまして、必要なものについては現場で確認をいたしまして妥当性を確認している次第でございますので、残りの約百五十孔のものが記載されていないということにつきましては、事情はそういうことでございます。  それから岩盤につきましては、釈迦に説法でございますが、鷹架層というN値五〇の岩盤がございまして、これに埋め込むことにしておる次第でございます。
  120. 関晴正

    ○関分科員 等級は幾らだ。
  121. 村上健一

    ○村上政府委員 私どもの安全審査の地盤についての考え方は、十分な地耐力を有するか否かということで、その岩盤が何級であるかということに着目して審査を行っておりませんで、ただいま申し上げましたように、鷹架層という岩盤は古くて安定したものでございまして、N値が五〇以上であるということから十分な地耐力を有する、こういうふうに判断しているところでございます。
  122. 関晴正

    ○関分科員 これだから困るわけですよ。N値が五〇であれば良好な岩盤だという断定ができるのかというと、そういうものではない。ですから、私は今岩盤の階級はどういうところにあるかと言ったら、Aクラスでございますとなぜ答えないのです。Bクラスでございますとなぜ答えないのです。実はそう答えられないから、答えるとすればCクラスと答えざるを得ないから言わなかっただけでしょう、あなた。こういうようなことでは困るということであります。この論戦はまた次にやります。今これに入っていると時間がかかってしようがありません。長官に申し上げておきますけれども、ここはCクラスなんです。AでもなければBでもないのです。それだけは承知しておいてください。  その次は、これは質問の中にも言っておいたのですが、プルトニウムの問題です。  我が国のプルトニウムの生産状態と申しましょうか、二百十トンの再処理工場でせっせと機械が動けばつくられるのですけれども、年七十トンの処理で精いっぱい、最近はとまったまま、先ほどまた動いたかどうか知りませんよ。いずれにしても今日まで動いて、そしてまた外国から入ってきた量、合わせますと、現在プルトニウムはどれだけ貯蔵されていますかということと、年間の使用量、使用計画というものはどうなっているのかということ、この点を明確にお答えいただき、何か伝えられるところによると、不足するから早く再処理工場でもつくって動かすんだという話もあるけれども、どうしてそんなに不足することになるのか、その実態についてもあわせてお聞きしたいと思います。
  123. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 お答えをいたします。  日本のプルトニウムの在庫量は幾らかというのが最初の御指摘でございますが、日本の国内で東海の再処理工場で使用済み燃料の再処理が行われてプルトニウムが回収されております。これは操業が始まってから今までに回収された量は核分裂性プルトニウムの量でいいまして約一・九トンでございます。たしか昭和五十六年から運転をしておりますので、今日までの累積量でございます。他方、これまでに海外から輸送してまいりました量が累積で一・三トンでございます。これはいずれも平成二年の三月末までの数字で申し上げております。  他方、国内で使いました量が、動燃の新型転換炉の原型炉「ふげん」、それから高速増殖炉の実験炉「常陽」、これらの燃料その他試験研究用等合わせまして使いました量が三月末までで約二・七トンでございます。先ほどのと足して引いていただきますと〇・五という数字が出ます。これがことしの三月末における日本国内における在庫量でございます。  今後の需給でございますが、いろいろな説明の仕方があろうかと思いますけれども、海外からの返還との関係で申し上げますと、今後の、一九八八年以降二〇〇一年までの日本のプルトニウムの需給というものを見通しますと、需要量というのは約四十二トンございます。これは先ほどの「常陽」、「ふげん」のものに加えまして九二年から臨界をいたします高速増殖炉の原型炉の「もんじゅ」の関係がございまして、「常陽」、「ふげん」、「もんじゅ」、合計で二〇〇一年までに約九トン、それから電源開発が大間で計画しております新型転換炉の実証炉で約四トン、それから日本原電が行います高速増殖炉の実証炉で約四トン、それから電気事業者が従来の軽水炉においていわゆるプルサーマルという形で利用いたします量が約二十五トン、以上合計いたしますと、一九八八年から二〇〇一年までの需要量で申し上げましたが、四十二トンになります。
  124. 池田行彦

    池田主査 答弁は簡潔に願います。
  125. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 他方、国内で回収されますプルトニウムの量が約十四トンございまして、海外に委託をし、そこから回収されるプルトニウムの量が三十トンございますので、約四十四トンということで、二〇〇一年ごろまでほぼ需給が見合っている、こういう状態でございます。
  126. 関晴正

    ○関分科員 時間になりましたので終わらなければなりませんが、先ほどの御答弁の中にも、ボーリングの状態について、掘った分が全部何ら徴しておらない、こちらの方に出された資料に基づいて徴している程度である、こういう御回答もあったのですが、私は少なくともボーリングのすべてを把握しておく必要があるだろうと思うのです。それを見もしないで、その結果をまとめた解析だけを眺めておいて科技庁はよしとしている傾向がないかどうか。私は原燃産業の諸君に、百七十本も掘ったすべてのボーリングの生データを持っておいでと申し上げたら、お見せするわけにはいかないと断られました。  その次に、コアの問題であります。コアは我々が見てもなかなか……
  127. 池田行彦

    池田主査 関君に申し上げます。時間が終了しておりますので、簡潔に。
  128. 関晴正

    ○関分科員 はい、ちょっと待ってください、終わりますから。  コアは専門的な目がなければ、見てもわかりません。そういう意味で、我々の必要とする専門家を連れて見にまいりたいと思いますがと言ったら、これも原燃産業は断りました。専門家が見ようとすれば断る。見る力のない者ならば幾らでも見せてあげますということは、態度として正しくないと思うのです。  そういう意味においても、行政が民主的に進められるように、私は民主的な長官に特に期待して、この後また取り組んでいただければと思いますので、これは御要望申し上げて、あと時間がありませんので終わります。
  129. 池田行彦

    池田主査 これにて関晴正君の質疑は終了いたしました。  次に、貝沼次郎君。
  130. 貝沼次郎

    貝沼分科員 宇宙の問題と原子力の方ですが、初めに宇宙の方をさせていただきます。  先般、日本アメリカにおいてスーパー三〇一条につきましていろいろと交渉がございました。その結果、一定の結論が出たと思いますが、この結論はどういうふうになったのでしょうか。
  131. 須田忠義

    ○須田政府委員 基本的な最終合意はまだでございますが、実質的な合意がなされた中身について御説明申し上げます。  基本的には研究開発衛星を定義いたしました。こういうものが研究開発衛星で、これ以外については商用衛星並びに継続的なデータを蓄積する衛星ということでございますが、もう少し詳しく申し上げますと、「日本政府及びNTT等の機関の、研究開発衛星以外の衛星の調達については、オープン、透明かつ内外無差別の手続きによ」って行うということが、第一点でございます。  それから、「日本政府は現行のCS―4計画を変更し、宇宙開発事業団が日本にとって新しい技術の実証を目的とした研究開発衛星を開発する。」  それから、「研究開発衛星についての定義に関しては、 我が方よりは政府の研究開発衛星の開発と調達との関係については本来OECD等の国際場裡にて議論すべきである旨留保しつつも、日米両国間での現実的なアプローチとして、「研究開発衛星とは夫々の国にとって新しい技術の宇宙での実証又は非商業的科学研究のために設計・利用される衛星」との定義に達した。 また、この関連で、商用目的または恒常的サービスを継続して提供するために設計または利用される衛星は研究開発衛星ではないとされた。」  なお、今回、先ほど申しました技術的な点を含めて、詳細については外交ルートを通じて次回において正式合意になる、こういう内容でございます。
  132. 貝沼次郎

    貝沼分科員 この合意を見まして、率直な感想といたしましては、日本の宇宙産業というのはこれで成り立つのかな、日本の宇宙産業の出ばなをくじかれたのではないかという感じがしております。  そこで、そういう点について果たしてどうなのかということを私はお尋ねしてみたいと思うわけでございます。  そうすると、次期通信衛星CS4は、研究開発部分に限って自主開発をし、実験用のデータ中継・追跡衛星と抱き合わせで打ち上げる、こうなったわけですか。
  133. 須田忠義

    ○須田政府委員 CS4としてこれまで考えていた技術問題については、その研究開発課題を引き継ぎ、先生指摘の衛星間通信技術の今までやってきた研究を引き継ぎ、これを合体し、新しい衛星として技術開発をしていく、こういうふうに考えておるところであります。
  134. 貝沼次郎

    貝沼分科員 それで、この実用衛星、商用衛星を全面的に開放すると、衛星の量産体制を確立している米側が日本の衛星市場を支配する可能性が極めて大きい、こういうふうに言われております。そういうところから、日本の宇宙産業の存立が危ぶまれるという意見があるわけでございますけれども、この点については当局はどのように受け取っておられますか。
  135. 須田忠義

    ○須田政府委員 御指摘のとおり、アメリカ等の大衛星メーカーというのと我が方の衛星メーカーが互角に競争して、全部について日本がそれを受注するというのは、技術力の差からいってなかなか難しいだろう、そこは率直な考えでございます。  なお、我が方のメーカーにおいても今技術開発の過程でございますので、今後研究開発、技術開発の課題、いわゆる我が方の宇宙開発政策大綱で述べております自在な宇宙開発の展開のためのキーテクノロジーの確立、ここを今最大の目標にしておりますので、それについては宇宙開発事業団等、鋭意技術開発には力を入れてまいりたい、こういうように考えております。
  136. 貝沼次郎

    貝沼分科員 その文章も後でまたお尋ねしますけれども、とにかく確かにアメリカの宇宙産業の力、それと日本の力を比べてやりますと、やはり日本の宇宙産業は大変危機に瀕しているのではないか、こう思いますね。それで、うんと勘ぐりますと、日本が宇宙開発をやってきて、金になるかならないかという瀬戸際に来てやられているということは、産業に育つ前につぶされるのかな、これほうんとうがった見方ですけれども、そういうふうな危機感を持っておる人もおる。その教訓は、かつての自動車の技術とかそういうところから見て、やはりこれから宇宙技術日本が持つのではないかと言われるときに、日本の産業化というものに目をつけて、これを早くちょっとやっておかなきゃいけないというような動きもあったのではないかというふうに言われております。  したがって、この宇宙開発委員会の中も、いわゆる専門家だけよるのではなくて、もっといろいろなポリシーとかいろいろなところから意見を述べられる国民的な広さの中から人選されて、そして大きな視野から日本の宇宙開発というものを考えていかなければならないのではないか、そうしないと日本の宇宙産業はむしろ成り立たなくなるのではないかというふうに考えるわけでございますが、この点について科学技術庁とそれから通産省と両方からお答えをいただきたいと思います。
  137. 須田忠義

    ○須田政府委員 我が国の今後の宇宙開発の展開、今後のあるべき姿、これについては昨年宇宙開発委員会が宇宙開発政策大綱を改定したところでございます。これは今後十年間を見た我が国の宇宙開発のあるべき姿を答申しているところであります。その作成に当たっては、これは広く産学官、技術屋のみならず法律、経済を含め、経営者も含め各界を結集して一応つくったところでございまして、そういう意味では、技術屋だけではなくて我が国の各界の意見も十分踏まえた形の政策大綱になっているのではないか、そういうふうに思っているところであります。
  138. 小原道郎

    ○小原説明員 今回の人工衛星問題の日米間の合意にかんがみますと、先生指摘のとおり、特に衛星を生産する産業としての宇宙産業というのは、産業としての立場から見れば、例えば今後そういった実用としての、商用としての通信衛星というものの開発にどういうふうに取り組んでいくかなど新しい対応を迫られておるという側面を有しておることは、通産省としても十分認識しておる次第でございます。  通産省といたしましては、従来から宇宙の産業利用の拡大といったような施策を中心に宇宙産業の発展というものに取り組んでまいったわけでございますけれども、こうした新しい状況を踏まえまして、今後の衛星産業の対応あるいはその展開につきましては、関係者のいろいろな意見を聞きながら、産業所管省としての立場から検討を深め、適切な対応ができるように努力してまいる所存でございます。
  139. 貝沼次郎

    貝沼分科員 通産省さん、こういう事態になったからいろいろなところから意見を聞いてそれに対応できるようにやっていく、これは当たり前のことですわ。結局今おっしゃったことは、簡単に言えば、そういうことですね。だから、それはそうですけれども、今の起こっておる、あるいは今一応合意した内容について通産省は、ああよかったということなのか、それとも、いやこういう面でちょっとうまくないということなのか、だから今度はこういう方向で考えていかなければならないとかというような何らかのリアクションがあるわけでしょう。ただ、こういうことになりました、これから皆さんの意見を聞いて何とか対応してまいります、そんなことは当たり前のこと。どう受けとめて、どういう方向性を持ってやろうとしておるのか、そこのところをもう少し詳しく答弁してください。
  140. 小原道郎

    ○小原説明員 先ほど科技庁の局長の方からもございましたように、今回の合意によりまして、特に通信衛星ですとか放送衛星といったような開発あるいは生産というものに日本の衛星産業というものがどういうふうにかかわっていくかという点について非常に厳しい側面があるということは、我々も十分認識しておるわけでございます。我々、もちろん全体的な技術開発力の維持という点が非常に重要な問題でございますし、そういう面では今後とも宇宙開発大綱上のいろいろなプロジェクトの推進等な通じてやっていくと同時に、産業として今後どういう対応があり得るかというような点について、特に国際的な連携等も含めていわゆる産業としてやり得ること、またやっていくべき方向についてさらに検討をしていきたいというふうに考えております。
  141. 貝沼次郎

    貝沼分科員 ゆゆしき事態であるという認識と、それから何とかしなければいけない、これだけわかったんですね。だけれども、もう少し積極的に通産省頑張らないと本当に日本の宇宙産業は育ちませんよ、今の調子では。そうでなくても、宇宙ステーションのところに日本が参画する、このことが一つのポイントになっておりまして、宇宙ステーションに参画するためにはこういうこともああいうことも、こういうふうに言われてくると、常にそれが担保になって、そしていろいろな苦しい立場に立つこともあるわけですから、したがって宇宙産業を本当に日本で育てるなら育てるように、もっと通産省は積極的にひとつ頑張っていただきたいと思いますね。私は宇宙開発推進論者ですから、ただ軍事は違いますけれどもね。  それからもう一つ、これは科技庁にお尋ねしますが、今、実用、商用と研究というふうに分けたということですけれども、今、研究と実用なんというのは言葉で分けて言っていますけれども、実際は同じことやっているわけですから、したがって言葉では分けられるけれども、現在の科学技術においては実際どこが科学でありどこが技術であるかというのがわからないみたいなもので、これは区別は大変難しい。難しいのを分けた。なぜ殊さら分けなければならなかったのか。日本の宇宙開発というものの範疇が、今の交渉によって技術開発というところに逆に押し込められてしまったのじゃないのか。そうなると、これは日本はそうのんきに涼しい顔をしているわけにはいかないのですけれども、この辺はどうなんですか。
  142. 須田忠義

    ○須田政府委員 今回のもともとの発想は、いわゆる貿易障壁から発生しているわけでございます。したがってアメリカ等の言い方は、研究開発ということでその研究開発が成功したら、それを商売として売る、これは結果的にはアメリカの商売用の衛星が売れないんじゃないのかというのがもともとの発想でございます。したがって、我が方は、日米の共同の精神も踏まえ、多方面の判断もいたしまして、技術開発衛星は技術開発衛星に特化するという政策を採用したわけでございまして、したがって、CS4も、先ほど申しましたように、これは技術開発をしないというのではなくて、これについては宇宙開発事業団においてこの課題を引き継ぎ、研究開発衛星として組み込んで衛星を打ち上げるんだ、こういう方向をとった次第でございます。
  143. 貝沼次郎

    貝沼分科員 それで、例えば技術開発をするにしても、早い話が宇宙開発の基本はやはりロケットを上げることですね。ロケットが上がらぬことには、これはまず話にならないですね、衛星の話をするといっても。そうすると、ロケットの技術ですよ。HIIならHII、そのロケットの技術は究極はどこにあるかというと、大ざっぱに言えば何回上げたかですわ。どれだけの経験があるか、どれだけの数上げたか、つまり打ち上げた衛星の数によってかなり違ってきますね。ところが、今回のこういう実用、商用という問題、自由にということですから、入ってくるようになると、もし購入すれば、それは恐らく向こうの方で打ち上げることになるでしょう。そうすると、日本のロケット打ち上げの数というのは少なくなってきますね。少なくなってくるということは、それだけ技術開発というものは滞るわけでございまして、したがって、単なる実用、商用と研究というだけの話ではないわけですね。そこにちゃんと関連性がある、こういうふうに思うわけでございます。  したがって、発注を例えばNASDAならNASDAがやって、そしてその発注先がいろんなアメリカとかあっても、とにかくNASDAのロケットが使えるような方法が何か確保されているとか、そういったものでもあれば、これは日本のロケットの技術というものはどんどん向上するだろうと思いますけれども、その辺のことは何かあったのですか。
  144. 須田忠義

    ○須田政府委員 無差別に海外に門戸を開くといいますか調達に任せるということに関して、その打ち上げ用ロケットを日本で打ち上げるとか、そういう話は一切ありません。一切出てございません。
  145. 貝沼次郎

    貝沼分科員 ですから、そういう話までない、ないから私は実は聞いているわけですけれども、そういうふうにして少しでも日本のロケットの打ち上げをふやすことが日本技術革新になるのではありませんか。したがって、今までHIIロケットの開発ということが大きな柱になって日本の宇宙開発というものは進めてきましたね。そうすると、我が国の宇宙開発計画自体が実は変更を迫られておるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。この点はいかがなんでしょうか。
  146. 須田忠義

    ○須田政府委員 我が国の宇宙開発政策においても、研究開発を終わった衛星、いわゆる技術的にプルーブンになった衛星については、これを民間に任せるというのが基本的な立場でございます。したがって、そういう長い、大きな、長期的な考え方については、今回は特に変更はないというふうに考えております。  ただ、先生指摘のとおり、CS4自体が内外無差別になった場合、日本のメーカーに発注できないのじゃないか、実態的にそのロケットは外国で上げられる可能性もある、そういうことについてはお客さんが少なくなるのじゃないか、それは一面、そういう事実はございます。これについては我々もいろいろな方策を今後講じていかなければいかぬ、そういうふうに考えているところでございます。
  147. 貝沼次郎

    貝沼分科員 私の感じでは、宇宙政策大綱の見直しというのはやっぱりこれは関係してくると思いますね。  時間がもう余りありませんので詳しくはできませんが、この場合日本の宇宙政策全般に大変影響を及ぼしたわけでありますが、これについて宇宙開発委員会、これは要するに特殊な諮問機関ですけれども、私たちはこの宇宙開発委員会が頑張っていただかないといかぬと思っているわけですが、この宇宙開発委員会が、委員会じゃなしに委員会の委員長談話というものが、先ほどの答弁に出てきましたように、ございますね。これを読んでみますと、ごく当たり前のことを書いてあるわけですが、なぜ殊さら今これを出さなければならないのですか。
  148. 須田忠義

    ○須田政府委員 宇宙開発委員会は、我が国の諮問機関でございますが、宇宙にかかわる基本的な方向を審議する機関でございまして、政府もこの意見を踏まえて行政を進めることになってございます。したがって、今回の日米の貿易委員会の折衝においても、我々はその節目節目について宇宙開発委員会に御相談し、宇宙開発委員会の意見も拝聴いたしまして、日米の合意に達したわけでございます。したがって、この結果について宇宙開発委員会としての立場というのを同日付、四月三日に委員長としての見解としてまとめさしていただいたところでございます。
  149. 貝沼次郎

    貝沼分科員 では、宇宙開発委員会というのは開かれたのですか。
  150. 須田忠義

    ○須田政府委員 はい。
  151. 貝沼次郎

    貝沼分科員 何回開かれましたか。
  152. 須田忠義

    ○須田政府委員 宇宙開発委員会は、毎週水曜日定例委員会をやっています。その後、委員会としてのもっとフランクな議論をする場合は、宇宙開発委員会懇談会というふうに同日付で切りかえて開催いたします。したがって、我々日米の話があってから、それを何回と申しますと相当の数、節目節目において懇談会で議論をいたしてございます。
  153. 貝沼次郎

    貝沼分科員 つまり、何回となくやったということはたくさんやったということでございますから、それだけに議論が大変伯仲したということになるわけですね。それで何か発表しなければいけないということになって、この談話、見てみると、これは宇宙政策の中に書いてある文言と何も変わりがない。つまり、極めて当たり前のことを今までどおり進めますという内容のものですね。したがって、私はこれはまだまだ細かい問題がたくさんあると思うし、それから通産省の方も科学技術庁の方も、日本の宇宙産業というのを育てるのならば、もっといろいろな分野から意見を聞いて対応するようにしないといけないし、それからさらに、日本アメリカという外交上の問題は、宇宙開発委員会という諮問機関、これの意見よりもさらに頭越しにいくような感じもないではありません。そうなってくると、この宇宙開発委員会の存在意義が問われてくるわけでございますので、そういうことのないようにくれぐれもお願いしておきたいと思います。  それでは、また何かの機会に宇宙の方はやらしていただきますが、原子力の方を一言だけお尋ねしておきたいと思います。  これは三月七日の報道でございますが、インドネシアが原子力発電を、ジャワ中部における原子力発電所建設の候補地点を対象に発電所の立地選定、経済性、安全性等についてのフィージビリティー調査をお願いしてきたと言われておるわけですが、これはどういうことでしょうか。
  154. 茂田宏

    ○茂田政府委員 お答えいたします。  本年の三月にインドネシア政府の方から、JICAで行っております技術協力活動の一環であります開発調査案件といたしまして、インドネシアにおける原子力発電所の建設にかかわるフィージビリティー調査について要請が来ております。
  155. 貝沼次郎

    貝沼分科員 これは単なる技術協力とかそういう関係では判断できないのではないかと私は思っております。事は原子力であります。地球は一つ、しかも丸く、風が吹いておるということから、一つの行動が地球全体に影響いたします。したがって、この場合、当然日本の原子力委員会等がその意見を述べなければならないでしょうし、あるいはそれなりのプロセスを経て一つ結論が得られなければならないと考えておるわけでありますが、この点、科技庁の方はどうお考えですか。
  156. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 本件につきましては、直接の所管は外務省並びに商業用の発電所でございますので通産省ということになりますが、そちらの省庁における検討が先行されるべきであるというふうに考えております。私ども聞いておりますところでは、関係両省における検討はまだ始まったばかりという段階のようでございまして、原子力委員会としてはまだ詳細承る段階に来ておりません。  先生おっしゃいますように、原子力委員会として本件に今後タッチしていく場合、視点として二つの面があろうかと思います。一つは、核不拡散という観点からの検討視野でございます。もう一つは、安全確保を大前提として国際協力というものをどう考えていくのか、こういう問題になろうかと思います。したがいまして、今後必要に応じまして関係省庁から報告を受けるなどいたしまして、慎重に検討していくことになろうかと思っております。
  157. 貝沼次郎

    貝沼分科員 時間がなくなってまいりましたので最後に外務省にお尋ねいたしますが、こういう原子力発電所建設に関することが例えば資金援助とかいうふうな形にでもなりますれば、これは恐らく日本始まって以来のことになるわけでございます。そういうことで、事は慎重に判断しなければならないと思いますが、外務省はどうお考えですか、その対応方をお尋ねして、終わりたいと思います。
  158. 茂田宏

    ○茂田政府委員 お答えいたします。  本件は、要請があったばかりなものですから、政府部内でも検討を始めたばかりであります。したがいまして、我々の方でただいま現在方向的なものを持っているわけではありませんけれども、非常に慎重に検討しなければならない問題だというふうに考えております。  一つは、インドネシアにおける電力についての政策はどうなのか、それからこのフィージビリティースタディーをやった後の建設資金の手当てはどうなのか等々、原子力発電所自体についての検討項目がたくさんございます。  それに加えまして、インドネシアからは、開発調査に関連しまして、この発電所以外に非常に多くの要望が寄せられております。したがいまして、それを政府開発援助の枠内におきましてどういう優先順位をつけていくかということも非常に慎重に考えなければならないというふうに考えております。したがいまして、極めて慎重に検討していきたいというのがただいまの立場であります。
  159. 貝沼次郎

    貝沼分科員 終わります。
  160. 池田行彦

    池田主査 これにて貝沼次郎君の質疑は終了いたしました。  次に、吉井英勝君。
  161. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 私は、原子力船「むつ」の問題について、幾つかの問題点についてお伺いをしていきたいというふうに思います。  少し日を追って見てみますと、原子力船「むつ」については、相次ぐトラブルが起こっておりますね。そのトラブルというものに対する原研当局のお考えなり姿勢なりについて、私は、いささか心配になる部分があるわけです。  例えば三月二十九日には「反応度計」の接触不良、三月三十日には原子炉が、これは試験用の仮設機器に電気を送るコードに誤って足をひっかけたとかいうことで緊急停止ですね。これは、原研当局はマスコミに追及されて初めてこのトラブルを明らかにしているわけですが、四月一日は中性子検出器の誤動作で制御棒が動かなくなる問題などがありました。それから四月十一日、これは制御棒駆動スイッチの故障、実はそのトラブルについては、発生して、むつ市の担当者に知らされたのは約二時間おくれなんですね。それから四月十三日には蒸気発生器の吐出圧制御器の故障があり、これは、県の方に試験を中断するという報告は十七時間後ですね。それから、具体的に一体どんな内容だったのかという説明は二十一時間後というふうになっているわけでありますが、こうした一連の問題を見てきたときに、特に私、この点で気になっておりますのは原研当局のお考えなんですね。四月二日の東奥日報というのに、原研の石塚理事が語っているところでは、こういうのはよくあることだ、この種の機器不調は珍しくないという発言をしているわけです。  それからまた、私も原研の方からいただいております「スクラムの発生等の可能性について」という文章、これはまたマスコミに対してもおっしゃったことなのですが、アラームとかスクラムが働くというのは危険な状態に至ったことを示すものではないということを言い切っているわけですね。  大臣も理科系の御出身ですから、こういう点はお詳しいかと思うのですが、アラームとかスクラムといういわゆる警報の発信ですね、これは確かに危険な状態に至っていないという場合ももちろんあるわけです。私はそれを否定しているのじゃないのです。同時に、危険な状態になっているときにはもちろんアラームが働くわけですね。ですから、そういうことを一面的に、危険な状態になっていることはないんだというふうに言い切ってしまったりとか、これは対市民的におっしゃるというのはやはり問題があると思うんですね。  また、さっきも言いましたように、県なり市なりへ通報が非常におくれているとか、三月三十日にはマスコミの追及で初めて明らかにされるとか、それから中性子線量などの放射線管理のデータについては、私は「むつ」の方を見せていただきに行ったときには、リアルタイムで公表しましょうと、私もデータをいただくということになっていたのですが、これは、現在リアルタイムでこういうデータは公表できないのだ、こういうことなわけです。特に放射線管理の問題というのは市民の皆さんが一番心配なわけですし、公害分野でも公害のデータというものは即、今市民が知ろうと思えばいつでもわかる体制にあるわけですね。  私はこういう点で、せっかく長官も三月二十九日の試験開始のときに、県やむつ市の協力のたまものと認識をしております、安全面で原研を厳しく指導監督していきたいとコメントを出していただいておりますが、大島長官、私が今紹介したような問題、こうした状況というのは、原子力の研究開発に携わる者の姿勢が問われる問題だというふうに思っています。やはり最高責任者としてこれでよしとはされないと思うのですが、二十九日のコメントのように、安全面とかあるいは法律に基づく自主、民主、公開の原則にのっとって、市民に対しても県や市に対しても、やはり原研を厳しく指導監督をしていただきたいと思うのですが、まずこの点について、冒頭に長官のお考えだけ改めて伺っておきたいと思います。
  162. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 先生、非常に数多くの御指摘をいただいたわけでありますけれども、まず、今回行っております出力上昇試験の性格でありますけれども、これは御案内のとおり、原子炉を出力ゼロから徐々に段階的に出力を上げてまいりまして、その過程で機器等のふぐあいがあれば、それを一つずつ調整をして、原子炉の諸施設の機能と性能を確認していく、そういう一連の試験でございまして、その一連の試験が終わって、最終的に原子力船「むつ」というものが原子炉の使用前検査の合格を得る、あるいは船舶安全法上の合格の検査をいただいて、その上で研究が始まる、こういう段階のいわば舶用炉の研究を始める前の道具立ての試験、検討をしている段階でございまして、一つずつそういうものを調整をしている時期ということを基本的に御理解いただきたいと思うわけでございます。  その過程で幾つかの御指摘があったわけでございますが、機器についてふぐあい、原子炉の安全性に直接影響を及ぼすものではないものであるようでありますけれども、若干の調整を要する点があったことは事実でございます。これらについては、原子力研究所の方で適切な措置を行いながら試験を継続しているところでございまして、おかげさまで第二段階の試験というのもほぼ順調に、明日で一段落するような予定で進んでいるわけでございます。  さて、その姿勢という点でお話がございましたが、これは大臣からも御指示をいただいておりますし、原研の理事長の方も非常に明確に方針を打ち出しておりますけれども、これは今回の、非常に経緯のある歴史を背負った原子力船「むつ」でありますので、一連の実験について極力公開をする、状況を市民の方、住民の方にわかっていただくように公開をするということで、通常のこの種の検査、ほかのプラントであれば余り出さないようなものについてまで逐一発表し、説明をし、御理解を得るための努力をしているというのが実情でございます。そのために、非常にマイナーといいましょうか、そういうものまで全部発表しておりますので、いやにたくさんあるなあという印象をお受けになっているのかもしれませんが、これはある意味で、公開を非常に強調している当事者の姿勢のあらわれというふうに御理解をいただきたいと思います。  なお、通報がおくれた云々ということ、確かに若干のケースで、やむを得ない事情から若干の通報がおくれたようなケースがあったようでございますけれども、これらにつきましても極力そういうことがないように公開をしながら検討をしている、結果を通報し、御理解を得るように進めているというのが実情でございます。
  163. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 事故が起こりましたときにも、こういうことが続くならば即実験中止を求めたいという、これは地元の方からも県や市の方からも厳しい声も出ているわけでありますし、これは通報のおくれとか言いわけじゃなくて、確かにあったという、まあお認めになったところもあるのですが、言いわけとかそういうことじゃなくて、やはり科学技術庁は指導監督される立場において、これは地域の住民の皆さんが安全面で不安をお持ちになっていらっしゃるのは事実ですし、安全面やまた法律に基づく公開の原則を貫く問題とか、やはり厳しく指導監督をするという、三月二十九日に長官がおっしゃったこのコメントの趣旨、精神というものは、これは全体としてこれからもやはり厳しく貫いていただきたい。この点については私はやはりこういう国会の場で長官のお考えというものを改めて伺っておきたいというふうに思っているのです。
  164. 大島友治

    ○大島国務大臣 御指摘のとおりで、私も三日二十九日この実験を開始するに当たっては厳重に注意をしておいたのでございますが、ただいま御指摘になりました幾つかの問題については、これは技術的、専門的立場から今局長の方から説明したようでございますが、それにいたしましても、まあ微々たるものであるからいいというようなことは私は許さないんだという考え方で、常に私も四六時中頭に置いて厳重に注意をし、指導していることは事実でございます。  したがって、原研の方に対しましても私も厳重にこれは注意もいたしておりますし、同時にまた現場職員に対しても、若干ノイローゼになるんじゃないかなんというふうな、私の取り越し苦労かと思うほど私は注意をしてやっておるのでございます。  そういうことですから、今後とも絶対にこれはもう安全ということは頭に置いて、一刻も忘れることなくやるようにということで、委員の指摘されたことに対しても十分私も心得て今後実施してまいりたい、こういうことでございます。
  165. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 それで、私、使用前の検査というものについてやはり問題を残しているんじゃないかと思うわけです。例えば、今局長の方からお話ありましたけれども、大体実験というのは、まず実験施設があり、その施設の個々の事前のチェックがまず必要なわけですね。それからそれに対する計測器があり、計測器については個々のチェックがあり、その施設と計測器とを結ぶ制御系統ですね、それについて必要なチェックというのをもちろんやるわけでありますが、例えばこの四月十一日の制御棒駆動スイッチの故障ですね、こういうものについて、普通はこういうのはまず、あれを納められたのは十八年前ぐらいになると思いますが、その時点でメーカーは、メーカー独自の検査仕様というものがありまして、検査仕様に基づいてちゃんとチェックしているんですね。十八年たっているわけです。そうすると、経年劣化の問題もあれば、逆に使っていないためにいろいろ問題を持っている場合もありますから、まずそのメーカーの当初の検査仕様に基づいて一つ一つチェックをしていく。こういうチェックをしておられたならば、駆動スイッチの故障なんというような文字どおり初歩的なトラブルで、これは結局機器を取りかえられたわけですね。そのこと自体がおかしいわけですが、まず、例えばこういう問題についてどういう検査をされたのか。つまり、十八年前のメーカーの検査証があったから結構というわけにいきませんのでね。その点を伺いたいのです。
  166. 村上健一

    ○村上政府委員 「むつ」の安全をじっとにらんでいるものでございますが、その前に一言、もう少し一般的に、私どもの検査と今度の出力上昇試験及びその時点に発生しているふぐあい等の関係について御説明しておきたいと思います。  まず最初に、非常にクリアに申し上げておきたいのは、現在「むつ」は原子炉等規制法上は使用前検査のオンゴーイングの途上にございます。したがって……(吉井(英)分科員「そういうことはわかっております、わかった上で質問しておりますから」と呼ぶ)それで、それを三つほどに分けて御説明申し上げますと、一つは、去年の九月からことしの三月までにかけて行いました冷態機能試験の間のいろいろな検査、それから温態機能試験の検査、それから三月から始めました出力上昇試験でございます。  それで、この過程においてそれぞれの個々の部品等につきましては、冷態、温態等々の段階に応じまして、系統、それから機器の作動状態の確認を積み上げて、それが当初の申請書及び設工認の状態に適合しているかどうかということは部分的にチェックしてございまして、その全体の仕上がりは出力上昇試験が終了する時点で完成する、こういう実は仕掛けになっているところでございます。  それで、今御指摘ございました四日十一日の制御棒グループ操作レバーのふぐあいにつきましては、確かに十八年前のものが接点不良を起こしたということが原因でございまして、そのこと自体は、取りかえておけばよかったじゃないか、こういうことが結果的にはそうなったわけでございますけれども、私どもとしては、冷態試験、温態機能試験のときに一応個々の状態ではやりましたけれども、グループレバーとしては出力上昇試験の間に使っていくことで最終的に性能がわかればいいという、こういう観点でじっと見ておりますので、この問題についてはそういうことで処理させていただいておるところでございます。
  167. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 ごく普通のちょっとした実験をやっているんじゃないですね。あなたのそのお考え自体がもう非常に安易と申しますか、楽天的と申しますかね、全体としては出力上昇試験の中でいろいろ問題が出てきたら、それでいいじゃないかと。違うんですよね。実験装置そのものについての一つ一つのチェックをまず終え、計測器のチェックを終え、全体としての制御系統が正常に作動するかどうかのチェックをやる、それから初めて本体そのものの実験に入るわけでありまして、こんなことは大学生の、工学部の学生の卒業実験だって、それをちゃんとやってからやらないと卒論は通らないんですよ。どうも発想が、私はお聞きしておって本当にとんでもない話じゃないかと思うのです。例えば機器そのものについても、摂氏百度、それは本当に百度なのか九十九・八九度なのか、百・〇二度なのか、これはまずそういうチェックをやるんですよ。やらないと、そんな実験設備としてはクリアできないですよ。卒論は通らないですよ。どうもあなたのお話を伺っておると、あなたはちょっと卒論は通らないんじゃないかと私は思うぐらいであります。  そこで、使用前検査をやったといって合格を出していらっしゃるのでしょう。合格を出して始めたらすぐトラブルでしょう。最初から機器を取りかえておけばよかったと。私は、機器を取りかえておけばよかったとかどうとかそういう議論をしているんじゃないのです。ちゃんとチェックをしておれば、その時点でわかるはずなんですね。メーカーの場合は、これは「むつ」に納品する前にメーカーとしての検査仕様に基づいてやっているわけでしょう。それを十八年前にやってあったわけですね。十八年たってどうなっているかわからないから、もう一度その仕様に基づいてチェックをすればいいわけでしょう。やっていないで検査済み証、合格証を出したからこういうことになっているんでしょう。そこが問題だということを私はまず指摘をしておきたいと思うのです。  それで、計測機器とか制御機器に問題ありとなりますと、実はこの測定データの信頼性にまず問題が出てきます。それから原子炉の監視や制御の安全性に疑義が出てきます。そういう状態で、出力上昇試験を開始する前に解決しなければいけないのに、そこらの問題を残しながら実験に入ってしまうということは、今、それをひっくるめた実験だから構わないなんというような、そんなのんきな話じゃだめだということを私は申し上げているわけなんです。問題あるんじゃないですか。
  168. 村上健一

    ○村上政府委員 論文が通らないような御返事をしまして非常に恐縮しておりますが、実は、釈迦に説法みたいで恐縮でございますが、まさに「むつ」の現在の出力上昇試験は委員が指摘のような仕掛けで進んでおりまして、非常に複雑な総体的なシステムを、一つ一つを確かめて最後にシステム全体を見ていくという、小さいものから中ぐらいのもの、大きなものという考えで進んでおりまして、したがいまして、若干誤解がおありになるか知りませんが、それぞれのものについて合格証を出しているわけではございません。それから最後に全体を総体的に試験する、すなわちそれが洋上の訓練でございますが、そこの段階で初めて合格証が出る、こういう状態でございます。
  169. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 事前検査を終えたと言っているでしょう。それがクリアした、合格したという意味でしょう。それで制御棒の駆動スイッチが故障しましたという。恥ずかしい話ですよね。そんなことは事前になぜわからないのですか。チェックしないからわかっていないのでしょう。そういうものを使って、私、お聞きいただいておわかりと思いますけれども、普通の実験でやいやい言っているんじゃないのです。原子炉の実験なんですよ。それを、ちょっと動かしたらすぐぱっと壊れましたというようなものを使いながら、そういうのんきな答弁をしてもらっては困るということを申し上げておきたいのです。  それで、使用前の検査についてあわせて伺っておきたいんですが、ちょうど心臓部に当たってきます蒸気発生器とか、あるいは一次冷却水を送り込むポンプとかあるいはバルブとか配管などに対して、何気圧で温度は何度ぐらいで何時間ぐらい、そういう状態を設けて使用前検査をされたのか、これを伺っておきたいのです。
  170. 村上健一

    ○村上政府委員 温度、圧力につきましては、御承知のとおり原子炉の出力である熱を使わないでできる、すなわち温態機能試験、これは定格の温度と圧力で今までやってきたところでございます。
  171. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 実は私、学生のころ三菱原子力の研究所で夏休みずっと実験をやったことがありますが、あそこでも摂氏二百数十度の二百気圧とか破壊試験とかをやっぱりやるわけですね。今おっしゃったお話ですと、せいぜい普通のお湯を通したというだけですから、一気圧ちょっとに温度は百度ぐらいなものでしょう。  石川島播磨重工がもともと「むつ」についての設計した仕様というのはどうなっていますか、その点、温度、圧力は。
  172. 村上健一

    ○村上政府委員 「むつ」の温態状態での性能検査の規格であります温度と圧力は、一次冷却系の温度約二百七十三度、圧力が百十キログラムでございます。
  173. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 そうですね。実際には一次系の設計圧力というのは、石播のデータを見てみますと、一次系百三十五気圧の、温度で三百三十三度Cとなっています。つまりそういう温度や圧力に耐えられるかどうかということが確認されないで、それで本格的に原子炉を動かしてやってしまおうというわけですね。  大臣もお聞きいただいて、これは本当に御心配になると思うのですよ。ほんまにこんなもの大丈夫かいなと。これは十八年前につくったもので、私、十八年前にどういう試験をメーカーがされたかは知りません。ただ私も、石油化学工場なんかのプラントを納入するときのチェックをやりましたけれども、やはり設計圧力プラス安全係数というのを掛けて、かなりの圧力や温度の設定をして、一定の時間をとって大丈夫かどうかということはチェックするのですよ。それを全然やっていなくて、それで使用前検査が完了した、いよいよ出力上昇でございます、これは大変なことを今おやりになろうとしているんじゃないですか。
  174. 村上健一

    ○村上政府委員 繰り返すようで恐縮でございますが、使用前検査は完了しておりませんで、使用前検査の途上にございます。
  175. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 その使用前検査というのは、原子炉の出力上昇の前にやるべきだということを私は申し上げているのですよ。それについては、一応あなた方の方ではいろいろ経緯については原子炉施設の性能に係る検査ということで一応されて、二月三日に発表しておられますね、結果について。それは全部クリアした、合格だということにしているわけですよ。まあ慌てないでゆっくり聞いてくださいよ。しかしそういう状態で検査をクリアしたということにして、今度はいよいよ原子炉を動かしてやっていきましょう。これ、途中で圧力や温度に耐えられなかったらどうするのですか。大変な問題を事前の検査もしないで今始めようとしているというところに大きな問題を持っているんだということを申し上げておきたいと思うのです。  あわせて燃料体ですね。百五十五本に問題ありということで取りかえをされたんですね。それは目視によって、ファイバースコープその他で、目で見て問題があったから取りかえた。それはそれで一つの検査だから、私はそれが悪いと言っているんじゃない。ではそれ以外に、腐食の見られた百五十五本の一本一本についてエックス線を使うなり、あるいは解体して被覆管について全体のチェックをするなり、腐食の深さがそれぞれの箇所で何ミリになっていたか、あるいは〇・何ミリになっていたかということですね、そういう検査をどうされたのか。またその取りかえない燃料体について、一本一本非破壊検査など、ちゃんとチェックをされたのかどうか、一本一本ですよ、全体にわたって。どうですか。
  176. 池田行彦

    池田主査 村上局長、誤解のないよう明確に答弁してください。
  177. 村上健一

    ○村上政府委員 燃料につきましては、御案内のとおり一本一本検査いたしまして、それで取りかえたのではなくて組みかえまして、基準に合格したもので組みかえて現在運転中でございます。
  178. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 目視でしょう。
  179. 村上健一

    ○村上政府委員 目視でございます。
  180. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 それ以外やっていないですね。
  181. 村上健一

    ○村上政府委員 目視は、最高の専門家による一本一本の全数目視でございます。
  182. 池田行彦

    池田主査 第一点についての答弁。
  183. 村上健一

    ○村上政府委員 温度、圧力につきましては、先ほど申し上げましたように、温態機能試験である温度と圧力で実行いたしまして、それで出力上昇試験に入ったわけでございます。
  184. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 ですから、実際の設計圧力、温度についてはまだチェックをしていないという事実が明らかになったということを申し上げておきたいと思うのです。  そして、今あくまでも目視なんですね。私よりは局長の方がきっといい、確かな目なんでしょうが、人の目なんです。それ以外の検査はしていない。百五十五本問題が見つかった。それはあくまでも人間の肉眼で見た範囲なんですね、ファイバースコープを使ったにしても。それ以外、しかもそれが腐食はどれぐらい、〇・何ミリなり〇・〇〇何ミリなり、どこまで進んでいったかの調査もしていないということなんですよ。そういう事実が今明らかになっているんです。  実は、この燃料体については、PCI破損を考慮した負荷変動率の目標値というのは、陸上のいわゆる原発などの原子炉ですね、三時間で出力が五〇%変動するというものについて、三時間で五〇%変動ですね、陸上の場合、それで、燃料体の健全性を考えるとなっているんですね。今度の原子力船「むつ」というのは、出力山一〇〇%から一八%まで急ブレーキで落とすんですね。わずか一秒間で落とさなければいけない。一八%から出力一〇〇%へ上げるのは三十秒間で上げるということなんですね。これが「むつ」なんですよ。だから陸上炉よりもさらに非常に厳しい条件が設定されるわけですね。この場合に燃料体の健全性を保証するための実験なりチェックなりというのは、いきなりぼかんと炉でやるのではなくて、何らかの形でやっておかなければいけないと思うのですが、どういうチェックをされましたか。
  185. 村上健一

    ○村上政府委員 お答えいたします。  先ほどの燃料ピンの検査につきましては、目視のほかに、ヘリウムリークテストを行っておりますので……(吉井(英)分科員「それは知っていますよ」と呼ぶ)  それから今御質問の急激な負荷変動の件につきましては、御案内のとおり船の原子炉といいますのは、運航上の問題、速力を急に上げ下げしなくちやいけないというような問題、それから船体運動の問題等がございますので、陸上炉に比べまして負荷変動が激しいということは、そもそも設計上考えられているところでございまして、安全評価もそういう前提で組み立てられているわけでございます。したがいまして、このような急激な負荷変動が原子炉に大きな影響を及ぼすことがないかどうかということをあわせて確かめることも、今度の出力上昇試験の試験の内容でございますので、これは安全評価の範囲内のことでございます。
  186. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 ヘリウムを使ったリークディテクションというのは要するに漏れを見たもので、それで漏れが見つかった。私はその漏れだけの話じゃないんですね。幾ら腐食の深みが出ているかとか、きっちりチェックしなければいけない、それはやっていないということも明らかになったわけであります。  それで、今あなたおっしゃったのは炉全体のお話なんですね。一本一本の肝心の燃料体の問題が今明らかになってきているときに、その燃料体が十八年前のままですね。十六年前にストップしたままの状態で、普通の陸上炉以上に厳しい条件だということはおっしゃったとおり、それに耐えられるだけの健全性のチェックはやってあるのかと言ったら、それについては結局これからやるんだというのですね。本当に大変なことを今やられようとしておるわけです。なぜこういうふうに使用前の検査が、いわば大学の工学部の学生の卒業実験でやるぐらいのことさえやらないで、いきなり本格的に出力上昇の実験をやっていこうとしておられるのか。  私、やはりここに、廃船してしまう、どうせこの船はもう廃船だ、廃船を前提として、部品の取りかえにしても、事前の検査にしても、余りにも手抜きがひどいということをここで申し上げておきたいと思うわけです。そもそも次期の原子力船開発の計画はありませんね。計画はないものだから、次の原子力船開発を想定した、そのために必要なデータとして何と何と何をとるという具体的な実験の計画というのはないわけですね。あればあるで、これをやりますとおっしゃっていただいたらいいんでありますが。現在、アメリカのサバンナにしても西独のオット・ハーンにしても運航をやめて、次期の建造計画もないわけですね。「むつ」についても、ポスト「むつ」という問題について、計画は私はまだ伺っていないし、そうすると、次のことを想定した実験テーマなりが今のところ明らかになってないわけですね。  大臣、私なぜこう長々とそういう問題も含めて申し上げたかと申しますと、ここからは細かい議論はもういいですから、私は申し上げたいのは、そもそもこの時点で意味があるのかということになったときに、そこに意味がない、そこにまずそもそも問題があるわけですね。そうして、一年半動かせば、今度は使用済み核燃料としてプルトニウムその他の問題も蓄積してまいりますし、フィッションプロダクト、核分裂生成物もどんどん出てきて、処理の問題が出てきます。それから使用前検査も、今言ったように手抜きに等しい。そして庭船となると、廃炉と放射性物質の処理をどうするか。私がお伺いしているときには、一年先までの問題をお聞きしているのです。そこから先はわからないと言っているのですね。そういう状態でやることは大変問題があるのじゃないか。まずこの点について大臣のお考えと、私はやはり試験、実験を中止して今廃船にすることの方が、今の事前検査の実態などからすると、国民の安全にとっても、廃炉コストその他の問題を考えても、これはよりベターな道だというふうに思うわけであります。細かいお話はもういいですから、大臣、政治論といいますか、政治的な観点で、もう時間が参りましたので、最後にお伺いして、終わりたいと思います。
  187. 大島友治

    ○大島国務大臣 どうも大変集約された御質問をいただいて、今回の「むつ」を将来どう位置づけるか、言えばそういう御質問じゃなかろうかと思うのです。  あえて十数年、二十年近くこの「むつ」の研究をやってまいりまして、今ここに至って庭船を即時ということについては、我が国の原子力船の研究の発端、目的ということからしてこれは忍びない事実でございますし、やはりすぐ三年、五年後に原子力船の云々ということよりも、むしろ例えば将来の世界的な観点、あるいはまた日本の二十一世紀における原子力船というものの、そのときに絶対これは必要ないということはあり得ないという前提に立ってこれは進めていると信念を持って私は見ているものでございますから、そのときのせめてもの、長く多額の金額を投じて今日までやってきた苦労の果実というものをここでやはり求めるべきではなかろうかということで、御指摘の点もございますけれども我が国の原子力船の将来性ということについて何らかのデータを私はここでぜひ求めていきたいというのが考え方でございますので、ひとつ御理解、御協力をいただければ幸いじゃないか、こう思います。
  188. 池田行彦

    池田主査 これにて吉井英勝君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして科学技術庁についての質疑は終了いたしました。     ─────────────
  189. 池田行彦

    池田主査 次に、警察庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  190. 沢田広

    沢田分科員 現在の警察官の応募状況はどういう状況ですか。ことしはまだどうかと思いますが、去年と二年間だけひとつ教えてください。
  191. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 お答えいたします。  昭和六十三年度の都道府県警察の警察官採用試験の応募者数でございますが、約六万七千人でございます。昨年、平成年度は約五万七千人となっておりまして、大幅に減少を見たところでございます。
  192. 沢田広

    沢田分科員 じゃ、採用者も……。
  193. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 警察官採用試験の採用者数、これはちょっと持ち合わせませんので、競争倍率でよろしゅうございますか。――競争倍率で申し上げますと、昭和六十三年度におきましては五・七倍でございましたものが、平成年度におきましては五・一倍と減少をいたしております。
  194. 沢田広

    沢田分科員 普通の巡査の場合の初任給は幾らですか。それから五年後の場合は幾らになりますか。一般でいいです。
  195. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 警察官の場合、高卒の警察官と大卒の警察官とございますので、まず高卒の警察官の関係で申し上げますと、採用時、これは十八歳でございますが、十一万九千五百円でございます。ちょっと五年後の数字持ち合わせておりませんが、四年後、つまり二十二歳の時点では十四万五千三百円でございます。それから次に、大卒警察官の初任給でございますが、十三万九千二百円。ちょっとその後の俸給表持ち合わせておりませんので、よろしゅうございますか。  以上でございます。
  196. 沢田広

    沢田分科員 この大卒というのは、上級試験に合格した者という意味ですか、それともそうでない意味ですか。
  197. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 上級職試験ということではございませんで、府県の試験でございまして、大卒としての警察官採用試験ということであります。
  198. 沢田広

    沢田分科員 じゃ、これは警察官の方では初級とか中級とかあるいは上級という名称は使わないのですか、試験の科目には。
  199. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 警察庁で採用いたしております警察官につきましては、国家公務員試験のI種試験に合格した者とII種の試験に合格した者を採用いたしておりますが、各府県警察におきましては大卒警察官ということで採用しているだけでございまして、特にI種とかII種ということにはいたしておらないわけでございます。
  200. 沢田広

    沢田分科員 しつこいようになりますが、そうすると、この大学卒業が必ずしも古くから言われている言葉で言う幹部候補生とは異なるという意味に解していいですか。
  201. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 そういうことになるだろうと思います。  ただ、最近の高学歴社会というような状況を踏まえまして、警察官におきましてもできることならば大学卒業者を採用したいというふうに考えておるわけでありますけれども、大卒者なるがゆえに特別の恩典があるかというと、それはないわけであります。ただ、細かくなりますが、採用後の昇任試験の資格条件といたしまして、何年勤務したら次の階級の昇任試験を受けられるかというようなものがあるわけでございます。その場合に、大卒につきましてはそれなりの優遇措置が講じられているということでございます。
  202. 沢田広

    沢田分科員 ラスパイレスは適用されると解される職場と見ていいですか。これは人事院に聞くのが筋なのかもしれませんが、あなたの方でほどうとらえていますか。
  203. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 一応はその対象だと思います。各府県の県庁の職員のラスパイレス指数などと同じように、府県警察の警察官につきましてもそういった数字は出ているわけでございます。
  204. 沢田広

    沢田分科員 今の民間の給与統計の表からいきますと、大体二十九万八千五百円ぐらいが勤労統計の数字ですが、約三十万、交通費が約五万円に上がりまして若干これは上がっておりますけれども、その表を基準にして、三十五歳か三十三歳かというのが平均でありますが、平均では幾らになりますか。
  205. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 平均給与月額ということになろうかと思いますが、これは階級と年齢とちょっとまちまちになりますけれども、参考までに幾つか申し上げてみたいと思います。  例えば巡査部長でございますと、平均年齢が三十九・八歳でございますが、平均給与月額は、これは本俸でございますが、二十九万五千七百八十二円、大変細かい数字で恐縮でございます。それから巡査、これは初任料生、警察学校入校中の学生は除きますが、平均年齢が三十・三歳でございますが、平均給与月額は、これも本俸でございますが、二十一万一千四百二十二円ということになっております。
  206. 沢田広

    沢田分科員 比較の場合には標準報酬でお答えいただきたいのですけれども、標準報酬ではどうなりますか。
  207. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 まことに申しわけありませんけれども、そういった数字を今持ち合わせておりません。
  208. 沢田広

    沢田分科員 年金の算定基礎は標準報酬になってきておりますから、本俸で言っても通じない世の中になっていますから、その点はひとつ今後標準報酬で……。  これは戦後の二九二〇ベースのときにも、警察官や裁判官、それから税務関係に入っている者については、特別待遇ということで、給与に二割五分ぐらい加算をしていた時代がありました。それは現在のところ、もし一般職にかわった場合に、それは確保されているのかどうか、その点はどういうふうに受けとめておられますか。
  209. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 お答えします。  警察職員の場合、基本的には公安職の俸給表が適用されておるわけであります。一般職の俸給表というのは、例えば本庁で申しますと課長以上、それからそれ以外は一般的な事務職員、それから技術吏員、こういった者は一般職の俸給表が適用になっておるということでございまして、その間身分の切りかえ等がありまして、例えば警察官から一般職員になったような場合には給与の切りかえがございますが、通常はそういうことでそれぞれの俸給表の適用を受けているというものでありますが、おおむね公安職の俸給表の方が一般職の俸給表よりも一、二号俸はいいということになっております。
  210. 沢田広

    沢田分科員 勤務体制によっては手当やその他通勤費もあるでしょうし、標準報酬になりますとこれの二割から三割多くなっていくというのが通常の計算になりますからそれでいくわけですけれども、与えるものは与えていかなくちゃならぬということになります。しかし、下世話では必ずしもいい評判ばかりではないのでありまして、何とかと何とかと何とかは飲み屋に行っても一番たちが悪い、こう言われていることもあるくらいで、具体的にこの三つは挙げませんが、そういうふうなこともあるわけでありますから、皆さんのところの職場がそうだと言うのでありませんから、これも念のためつけ加えておきます。  しかし、そういうこともあるので、給与の面については十分配慮してもらわなければならぬというふうに思います。また、言うなら国民の模範になって動いてもらうという至上命令みたいなものがあるわけですから、それに対応した給与というものは確保してもらうことが必要である。そのかわりまた任務が厳しいということになるんだろうと思うのですね。大蔵省に来てもらっているのは、我々がいろいろ物を申す点について、きちんとやるものはやっておいて、物が申せる条件はつくっておきたい、こういう意味なんですから、ぜひその点は考えてもらいたいと思います。  それから、今話題になっておる車庫証明の保存期間は、あなたの方の内部ではどのくらいになっていますか。
  211. 関根謙一

    ○関根政府委員 車庫証明書を発行いたしまして、これは地方運輸局の方にそのまま持っていかれます。そこで、私どもの方では台帳を保存しておりますが、その台帳の保存は永久だと承知しております。
  212. 沢田広

    沢田分科員 随分御念の入ったことだと思うのですが、建築基準法ですら三年、診療報酬というかカルテでも五年なのに、よくそういうものを持って、仕事がないのかなと言いたくなるくらいなんですが、今までの分はもうすべて時効、こういう前提で私はお話をします。  これから車庫証明はいろいろと議論されていくようでありますが、既往に発行されたものは善悪の区別なしに時効として、これから新しいものについて制度を決めていくべきである、こういう考え方ですか。この点はいかがですか。
  213. 関根謙一

    ○関根政府委員 現在法案を検討中でございますが、そこで一応の経過措置というものは必要であろうと考えております。しかしながら、その場合に、従前の車庫証明を全部無効にして新たに、仮に車庫法を改正することができましたとしたら、その施行の時点から全面的に新たに始めるということは、まだ検討中でございますが、今のところは考えておりません。
  214. 沢田広

    沢田分科員 私はそれが角を矯めて牛を殺すということになると思う。建築基準法でも三年。だから、よく行われておりますが、例えば子供は二人ぐらいいても五人ぐらいいることになって、三年後にはまたせがれの家をというので、これは確実に脱法行為ですね。しかし、三年で時効があるからこそ次の申請が生きるのですね。それは法の盲点でもあるし、ある一つの弾力性の中身なんだろう。けしからぬとは思いますよ。けしからぬとは思いますが、しかしそれは法の弾力性。法治国家の中においては時効がすべてに優先をして、皆さんの商売でも時効によってそれぞれ効力が発生するわけですから。  今ここであなたの方にある台帳なんというものを見ていったら、一つのディーラーなどには、恐らく十階建てのビルにしたって入り切れないぐらいの証明書が出てきてしまっているだろうと思う。それは犯罪人をつくるだけであって、車を売らんかなでやってきて、競争して売っているわけですから、恐らくもう、言葉をここでは慎みますが、正常な状態において確保したという言い方をしますが、したと思われないものが物すごく出てくることになるだろう。そうすると、犯人づくりをするだけであって、決してそのことに効果があるものではないというふうに思いますから、今までの分は、もしあえてそれをやるならば時効としてかからないと、そのこと自身に問題が生じますよということを私は注意しておきたいと思って申し上げているので、とてもじゃないが取り締まりがつかなくなる、都市圏なんかなおさらそういうことになるだろうと思うのです。その点の見解をもう一回ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  215. 関根謙一

    ○関根政府委員 先生の御趣旨は大変よくわかりますので、その御趣旨を踏まえまして検討を進めさせていただきたいと存じます。
  216. 沢田広

    沢田分科員 それから、今車が多くなったからここで車庫証明というものを言い出したのかもわかりませんが、今の埼玉県や千葉県、神奈川県の住宅事情の中で、大体今一軒で三台になってきていますね。お父さん、奥さん、せがれさん、こういうふうに一軒の家で大体三台平均。郊外に行きますと三台にならざるを得ない。そういう状況の中で、じゃ今の建坪の中で三台格納できる家を持っている者がいるかといったら、皆無に近いですね。しかもマンションのような状態の中では、今だって建築基準法の中で、全体の割合の中の、五十軒入ってせいぜい六台ぐらい置ければいいという基準でやっているわけですね。そこへみんなが持ってくれば必ずそうでなくなるわけでありますから、そういう意味においてこれも相当無理のある話になるというふうに思います。これで規制をしていくという方針自身に問題があるのじゃないのかなというふうに思うのですが、その点はいかがですか。
  217. 関根謙一

    ○関根政府委員 確かに一世帯で三台ぐらい自動車をお持ちの世帯もおありかと思いますが、統計的に申し上げますと、軽自勅車を含めまして現在五千五百万台ほどでございます。我が国の世帯数は四千万世帯でございますから、単純に計算をいたしますと一世帯当たり一・五台ということになります。今先生指摘になりましたような車をたくさんお持ちの方々というのは、現在はそれなりにやはり広いお庭をお持ちだったりということで、持つことができる方じゃないかと考えます。今回私どもが考えております、検討中の改正案は、無理のないようにスムーズに秩序あるシステムに移行できるよう検討しているところでございます。
  218. 沢田広

    沢田分科員 そういうのは回答にならないんだな。無理がないようにといったって、中身を言わなければ、無理がないかどうか、自分自身だけで満足しているだけで、ちっとも人を説得する答弁にはなっていないんだね。家がつくれないからせめて車を買おうという人も多いのですから、その辺は裕福だから余裕があるはずだと言ってみたって、皆さん御存じでしょう、近郊を見て、そんな三台も置き場がある家なんというのはほとんど皆無に近いでしょう。  しかし、これは日本の今までとってきた自動車に対する行政、私も交通特にいたからよく知っているのですよ。この状況の中で車は五千万台にもふえてきたけれども、道路は同時に広がっていかないのですから。だから、フランスの笑い話に載っているように、四本の車線が二本になり、二本が一本になり、一本がゼロになるなんというふうに、高速道路すらそういうふうに言われているぐらいです。ですから、それに見合った道路網ができて初めてそこに正義を求めることができるのであって、今日のようにこれだけの経済社会を迎えて、皆が買えるから買った、そういう中で今度は厳しくするというのでは、これは若干問題があると思うので、これは大臣にお伺いしますが、もう時間がなくなってきたのですが、拙速をここは選ぶべきではない。交通状態をもし問題にするならば、やはりよほど慎重にやらないと弱い者いじめにしかならなくなってくる。大企業とか大地主とかそういう人たちは十分に車庫能力も持っているかもしれませんけれども一般的なサラリーマン世帯とかそういうものではこの首都圏では確保することはなかなか困難な状況ですよね。しかし、もし他に借りるとすれば一万円ぐらいの車庫料を取られる、こういうことになって、変なところをもうけさせること以外の何物でもなくなってしまう。だから、さっきから角を矯めて牛を殺すということになりかねないということを言っているわけで、これに対してはよほど慎重に対応してもらわなければならない、こういうふうに思います。  その点、大臣、これは提案するのかしないのかまだわかりませんけれども、提案に当たっては十分慎重に対応してもらいたい。何でも正しいんだと思ってやられたら、それこそ大変に国民に迷惑を及ぼすし、怨嗟の声が物すごく高く上がっていくだけである、それは断言して間違いないと私は思いますので、早目にお答えいただきたいと思います。これは大臣に答えてもらいたい。これは慎重にやってください。
  219. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 しかし、今とてもこのままでは放置できないという現状は大都市圏、特に東京圏です。今日のもう窒息寸前の交通状態を見たときに、これに何らか手を打たないという形においては、私はとても治安を――車社会の新しい方向、何とかしてモラルを喚起してもらいたいという方向の中で今法的措置を検討さしているところでございますけれども、今言われるように弱い者いじめになっちゃいかぬ。やはり現状の軽自動車、生活車を持っておる人たちのこともよく念頭に置かなければいかぬ。しかし、違法が当たり前だ――それはいろいろの今までの取り締まり責任もあったでしょう。しかし、車庫飛ばしなんというのが当たり前になった形の中で、こういった車社会をこのままやっておったらこれはどうなるんだろうということも念頭に置かなければいかぬと思うのです。  ですから、やはり大型車で立派な車に乗って都心へ乗り入れする人には、コストがかかりますと言うことは私は当然だと思うのです。そして、それに対してはある程度ルールづくりのために、モラルも喚起してもらうために負担はいただく、ペナルティーは科す。ただし、それに対してもやはり段階的な経過措置も必要である。今言われる形の中で、既に持っておられる人、そして現に車庫を持たない形で所有――ディーラーも悪い。売れれば売る。買う方も、家が買えないからせめて車でもという形で、一台のところを三台も買うというような実態もあるのでしょう。そういったこともよく踏まえながらやらなければいかぬのですけれども、ともかく今の都心における交通状態はこのままでは放置できない。特に違法駐車の問題、しかも一万一千人近い死亡事故、どんどん上昇カーブを描いている現状、これを見るときに、やはりあるべき車社会の方向を示す必要は私はあると思っております。
  220. 沢田広

    沢田分科員 これは、背伸びした交通問題という形にはならないことが望ましいということだと思うのですね。ですから、警察がすべてそういうものを仕切るんだというふうに考えたら、これはやはり行き過ぎにならざるを得ない。そうなると大体こういう傾向が出てくるでしょうね。  恐らく全部、通勤者も含めて郊外にやはり家を求めなければならなくなってくる、そして来る、こういう格好が出てくるわけでありますから、これはせっかくの提案ですが、今の道路事情が今日ここにおいてなったわけじゃなくて、今まで自動車業界をさんざん育ててきて、売らんかな売らんかなでいって、それこそアメリカにまでさんざん売って売って売り尽くしてきて、そして今日に至って今度は急に、おまえ背が高くなったから小さくなれというような論理を子供に向かって言うような形は、これはとってはならないなというふうに思います。  ですから、地方団体に我々が駐論場を義務づけた法律をつくったと同じように、地方団体に駐車場の確保に関する法律をつくって、自治体が率先してまず確保を図る、そしてその上に立って今度は個人に余裕がある場合は個人でつくる、こういうような段階を経て対応しないと、宅地並み課税が行われるわけですから、これはちょうどそのときがいい時期ですから、そういう状況の中でもし考えるなら、地方自治体がその責任を果たしていくようにまず法律の原則をつくる、そしてその上に、それは幾らか負担がかかるわけですから、それを税金で取るか使用料で取るかは別としまして、後は、今度は個人に託する、こういう二段階でいく。まず違反ありきでは、私は法律のつくり方としてまずいというふうに思いますね。これはまず法律をつくって、自治体に義務づけていくべきである。もし嫌だったら、自治体の方でつくらなければ、そこには自動車を持っている人は住むな、こういうことだと思ってスタートしていくのが筋じゃないかと思いますが、時間がありませんが、結論の方だけお願いをいたします。いかがですか。
  221. 関根謙一

    ○関根政府委員 大変貴重な御意見、ありがとうございます。御意見の趣旨を踏まえましてよく検討してまいりたいと存じます。
  222. 沢田広

    沢田分科員 それから、もう時間ですが、大体私は時間はぴたり守る方ですから。  警察官の素質の問題あるいは向学心の問題、試験の問題、こういうものも、ただ試験ができればいいということではなくて、その人間性を問うという形において対応してもらいたいと思うんですね。国民に背を向けた行政で喜ばれるはずはないんですね。今までの犯罪の中においても、やはり国民からよく思われてない分野においては捜査に支障を来す例が非常に多いのです。やはり国民に愛されるものでなければならぬし、時には片目くらいつぶる場合もあり得る、しゃくし定規がすべてではないと思います。  ですからそういう立場において、私は、奥田大臣のところへ感謝状でも、交通なら交通関係で、来た手紙があったらお聞かせいただきたいのです。私の知る限りにおいては、代々の、名前は省略しましょう、交通課長でも交通部長でもいいですが、そういうところへ交通問題で感謝状が来たなんという例はないんですね。感謝状が来るのがいいという意味じゃないです。そのくらいの幅があっていいんだということを言っている。だから、点数主義を改めることが必要である。何か駐車違反を見つけて歩いていれば成績がよくなるんだという物の発想を転換してもらいたいと思います。  以上で、私の質問はまた次の何かの機会に譲りますが、給与の改善と素質の向上国民に愛される警察官になっていただくことをお願いして、私の質問を終わります。
  223. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 それでは、せっかくそういう激励の御質問をいただきましたので、かいつまんで御答弁申し上げたいと思います。  優秀な警察官を採用するためには、先般、都道府県警察における優秀なる人材確保方策推進検討委員会というものを設置いたしまして、組織を挙げて総合的に積極的に取り組むことにいたしております。  また、国民に愛される警察活動の推進ということでは、昭和六十二年十一月から市民応接向上運動というものを全国警察を挙げて目下推進しているところでございます。  今後ともよろしく御指導のほどお願い申し上げます。
  224. 池田行彦

    池田主査 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤英成君。
  225. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今交通問題の中で交通渋滞というのはますます激しくなっているわけでありますけれども、最近警察庁の方でこの交通渋滞あるいは交通事故への対応策として道路交通法並びにいわゆる車庫法の改正を検討している、このように今報道もされたりしているわけでありますけれども、その改正の方向、それから法案提出のスケジュールがこれからどのようになっているのか、まずお伺いをいたします。
  226. 関根謙一

    ○関根政府委員 運転免許人口六千万人、自動車保有台数、原動機付自転車を含めますと七千五百万台に上り、二年連続して一万人以上の交通事故死者数が出るという厳しい状況のもとで、新たな交通秩序の確立を求めて現行法の仕組みを合理的なものに改めたいということで、現在改正を検討中でございます。  道路交通法の関係でございますが、これは違法駐車車両の取り締まりの今までの考え方を改めまして、従前の運転者に対する責任追及のみという考えを変えまして、車両について管理責任を有する所有者、使用者にもあわせて責任を負ってもらうような仕組みを考えたいということでございます。  それから車庫法の方でございますが、車庫法は現在登録自動車とそれから軽自動車と二種類に分かれておりまして、そのいずれの自動車も車庫を持たなければいけない旨規定されております。登録自動車の方は登録時点で一回限りで車庫証明書を提出して、その時点で車庫があることを確認いたしますが、その後継続的な車庫確保についてチェックする仕組みがございませんので、何かそういう仕組みを設けたいということでございます。それから軽自動車についても同様の仕組みを設けたいということを考えて、現在検討中でございます。
  227. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 法案の提出等の準備の状況並びにこれからのスケジュールはどのように考えられますか。
  228. 関根謙一

    ○関根政府委員 大変失礼いたしました。  提出時期につきましては、できるだけ早い機会に、今国会中に提出させていただきたいということで努力をしております。
  229. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今国会に間に合うくらいにそれぞれの関係省庁と十分に打ち合わせ等をやっているという意味ですか。
  230. 関根謙一

    ○関根政府委員 そのように努力をしてまいる所存でございます。
  231. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今路上駐車、違法駐車も含めてその実態はどういうふうになっておりますか。
  232. 関根謙一

    ○関根政府委員 東京、大阪、名古屋等大都市で数次にわたり実態調査をしております。東京の場合には二十三区内では路上駐車台数は、瞬間路上駐車台数でございますが、約十八万台でございます。大阪市内で約二十二万台、名古屋市内で約八万五千台ほどでございます。そのうち違法駐車に該当しますのは、東京、大阪でそれぞれ八七%、九〇%前後でございます。名古屋は六〇%ほどでございます。
  233. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今お話しのように、違法駐車というのは非常に多いんですよね。取り締まりを今どういうふうにしているんでしょうかね。
  234. 関根謙一

    ○関根政府委員 現在は、交差点でありますとかバスレーンでありますとか、その他交通の渋滞原因となるおそれの高い箇所から順次取り締まりを行っているところでございます。  取り締まりの方法といたしましては、違法駐車標章の取りつけ、これは昭和六十一年の道路交通法の改正によりましてお認めいただきました方法でございますが、これによります方法と、それからレッカー車による移動保管の方法を主として講じているところでございます。
  235. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 レッカー車で移動するときというのは、どういう基準でレッカー車移動を今はしておりますか。
  236. 関根謙一

    ○関根政府委員 交差点等で、そこに違法駐車車両があるために交通事故の原因になるおそれが高い場合、それから交通渋滞の大きな原因となるおそれが高い場合に、その違法駐車車両を排除するためにレッカー移動保管を行っております。
  237. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 それはそうですが、実は、私が見ておりますと、まず、先ほどその優先順位として、例えば交差点だとか、あるいはバスレーンだとか、あるいは私が最近非常に気になるのはバスストップのところ、あるいは消火栓の前とか、そういうところにとめられております。私の今の感じでは、最近はその取り締まりは極めて不十分だという感じがいたします。それは、この間もタクシーの運転手もそんな話をしておりました。タクシーの運転手は何と言っているかといいますと、警察は最近たるんでおって、何にもしない、こう言っておりますよ。  だから、いわゆる駐車禁止のところにとめてあるというだけじゃなくて、通常――通常という言い方はおかしいんですが、最も悪質なというか、先ほど申し上げたような本当に幹線道路の交差点だとかコーナーにとめてあったり、あるいは消火栓の前にとめてあったりとか、そういうのでさえ放置しているというくらいの印象を受けます。  私は最近見ておりますと、いわゆる遵法精神みたいなものはどんどん落ちているんじゃないか。この遵法精神をなくしている、あるいは運転のモラルをどんどん落としているのかもしれませんが、そういうふうにさせている要因は、いわゆる警察当局に大きくあるのではないか、こういうふうに思うんです。もちろん人間性善説をとっていろいろやりたいと思うかもしれませんが、それだけじゃいけませんね、現実には。最近は、ここ数年見ておりますと、その程度はどんどん大きくなっている、こういうふうに思います。いかがですか。
  238. 関根謙一

    ○関根政府委員 現在の取り締まり状況でございますが、駐車違反についての取り締まり件数は、年間約二百二、三十万台でございます。そのうち特に東京の場合には、全取り締まり件数百万件でございますが、その半数ほどが駐車違反の取り締まりでございます。大阪の場合ですと、全取り締まり件数五十万件ほどでございますが、そのうちの六〇%弱が駐車違反の取り締まりでございます。  東京の場合には、その五十万件の取り締まりのうちの約半数がレッカー移動による取り締まりでございまして、私どもとしてはできる限りの努力はしているところでございますが、確かに先生指摘のように、いろいろと私どもに対する御注文が多いということはよく承知しております。なお努力を続けてまいりたいと存じます。
  239. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 くどいようですけれども、最近こういう取り締まりの面で思うのは、諸外国と比べたらどうかなということですね。さっき局長の言われた話は、取り締まりの件数もそれは多いんでしょうけれども、それでも私は実は悪循環をしているのだ、こう思うんですね。それは基本的には駐車禁止、そういうやり方、どこを駐車禁止にするかということもあるかもしれませんが、もしもそういうふうに決めたら、そこのところはちゃんと厳しく守らせるようにしなければいかぬということだと思うんです。  これは私の経験でありますが、例えばニューヨークに行ったとします。あそこは車も本当に多いですよ。多いんですけれども、じゃ駐車違反なるものがそんなに多いかというと、私は本当に少ないと思うんですね。そして、例えば駐車禁止のところに車をとめます。車を駐車違反させて、そしてぽっと車を離れておりますね、そうしますと、あっという間にレッカー車で持っていっちゃうということが非常にしばしばあります。非常にしばしばある。だから、逆に言えばとめられないんですね。  今は日本状況は、とめておいても、多くの場合は多分大丈夫だ、そして万が一ひっかかるかもしれぬ、でも、それはそんなに大きな確率ではないというふうにきっとみんな思うんでしょうね。だから現在の状況というのは、どんどんそうなっていると私は思うんです。  局長も実際に、例えば東京の中でも、あるいは夜でも、六本木あたりでも、いろいろなところも見られていると思うんです。見られていると思いますが、それを見ていたら、ああ、本当に日本はどういう国になってきているんだろうかというぐらいに思うと思うんですね。どうでしょうかね。
  240. 関根謙一

    ○関根政府委員 御指摘のように、アメリカの大都市における違法駐車の取り締まりのあり方と、我が東京、大阪等における取り締まりのあり方では相違があると考えます。そこで、できるだけ現在の無秩序な違法駐車状態を秩序あるものに回復すべく、立法措置を含めていろいろな措置を講じたいということで検討しているところでございます。
  241. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今同じように、いわゆる車庫法の話も最初にされました。例えば車庫の問題でも同じ、あるいは駐車という問題をとってもしかり。私はいつもこれの原点はこう考えるべきだと思っているんです。  道路も、これは走るだけが目的ではない。道路の機能は、走る部分もあれば、とまって用を足すということもあります。だから、例えば車庫でも、車庫云々と言いますが、車庫でも、道路というか、その流れの機能をちゃんと保障するような意味で車庫というようなものを考えるのでしょう。そうですね。どんな田舎でもあるいはどんな山の中でもちゃんと車庫を持たなければいけないかどうかというと、本当は疑問かもしれませんね。あるいは路上でも全然構わないかもしれない。あるいは車の種類等によっては、あるいは物を運ぶ手段、それの種類によっては、どういうふうに位置づけたらいわゆる物流というか交通というのが機能するかという点でいつも考えなければならぬ、こう思いますね。そういうふうに考えなければならぬ。だから、そういう意味で車庫の問題も考えなきゃいかぬ、道路の問題も考えなきゃならぬ。  だから、さっき私は駐車違反の話もいたしましたけれども、どこでもここでも駐車違反にすればいいというわけじゃないですね。どういうところは路上でも駐車できるようにしよう、どういうところは違反にしよう、駐車させないようにしよう。決めたら、それは完全に守ってもらわないと困る。守らなければその目的としている道路の機能を果たせなくなるということだと思うんですね。  だから、その点は十分に考えなきゃならぬ、こう思いますし、そんな意味も含めて考えるんですが、今法改正を検討されているということでありますが、今そうした検討をしているその内容で、じゃ違法駐車というのはなくなりそうだというふうに思っておられますか。これは大臣にお伺いした方がいいかな。
  242. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 今の委員の御指摘の件と私の考え方も基本的には共適しているんです。要するに、今日の特に東京都心部の現状というのは、まさに車を持っている人のマナーではない。我々は好むと好まざるとにかかわらず、いわゆる車と生活が密着した時代に今来ているわけです。車が生活にも、我々の足のかわりにも絶対必要不可欠なものになってきておる。ただし、この車社会が特に東京都心部で見られるような無法、無秩序な社会であって、道路そのものの機能が果たせない窒息する状態に来ているということも委員は御認識していただけると思います。  私は先ほどからのお話を聞いていて特に痛感いたしますことは、悪質な違法駐車ですね、これによってどれだけの人が困るかという点は、まさに御指摘のとおりに厳重に的確に取り締まるべきであろうと思います。そして私は、この法律の持っていくところは、基本的にはやはりモラルを喚起してもらう。そして売る方にも反省もしてもらわなければいかぬと同時に、今後買う方もそれにある程度の責任を持つ。しかし車庫そのものじゃなくても、路上の開放によって管理する場所が一定に確保されるということであればよろしい。  と同時に、大都市、大東京の都心部と一般の普通都市の状況と、それは普通の都市の場合はそれぞれまだ車で十分都市機能は果たされておる。ここが一番問題点であろうと思っておるのです。ただ全国画一的ないわゆる法律という形に持っていくときにはどういう形がいいだろうか。これは今本当に検討して、何とか車社会の新しいモラルをみんなでつくり上げよう。基本はまさに委員の御指摘した方向の中で、駐車場も整備しなければいかぬ、公営の自治体もこれに協力しなければいかぬ、土地税制改革で、いわゆる土地の税制改革で宅地並みかどうかという場合でも、こういったときにこそ、こういう公的施設、建物も大事だけれども、こういったものにやはりいいチャンスであろう。  ですから、ある意味においては、これはいろいろな意味での新しい我々がこれからも続けなければいかぬ車社会、そして車を持てばやはりある程度の責任とコストがかかる、このことで努力しようと思っておるので、またその法案作成の過程においては御論議を踏まえながらやってまいりたいと思っております。
  243. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今大臣のお話のように、こういう問題はモラルの問題もありあるいは規制というような問題もある。同時に駐車場とかそういうものを整備するという問題もありますね。  実は今駐車場の整備の話が出ましたけれども、私は、今日ほど厳しい状況になるとは思ってもいませんでしたけれども、六十二年に建設委員会で、駐車場法を、あれを見直さなければならぬ。あれは昭和三十二年にできて、実質的にはその後改正もされてないという状況ですね。いわば日本がモータリゼーションなるものが言われる前くらいにできた駐車場法。そこで、建物に駐車場の附置義務を課したりしているわけですが、そういうのを改正もされてない状況、おかしいじゃないかということを六十二年のときに建設委員会で申し上げました。そのときに強くその見直しあるいはその強化を要請したわけでありますが、今、今日のこの状況を見れば、ますますその必要性は大きくなっているということですね。そういうことで、この附置義務の強化の問題は今どのように建設省の方は検討をされておりますか。
  244. 安達常太郎

    ○安達説明員 お答えいたします。  駐車場の附置義務条例に関しましては、昭和三十八年に条例のひな形を通達いたしまして、公共団体の条例制定を指導してまいったところでございます。しかしながら、先生指摘のように通達後相当の時間が経過したため、また近年の自動車交通の状況に即して見直しが必要というふうに認識してまいったところでございます。  私どもといたしましては、昭和六十三年度より二カ年間にわたりこの基準の見直しの作業を進めてまいったところでございまして、ついこの三月に最終の報告をいただいたところでございます。この報告における基準の見直しのポイントを申し上げますと、第一に、近年の都市化とモータリゼーションの進展に即した基準づくりの要請に対応して基準の強化の方向を示したこと。第二に、建物用途、都市の規模等の違いによる駐車需要の違いに対応して、よりきめの細かい基準の考え方を示したことでございます。  具体的に申し上げますと、附置義務の適用を受ける建物の床面積の下限の引き下げあるいは一台当たりの床面積の基準の引き下げ、一定規模の台数を免除する足切り制度の廃止、それから都市の人口規模ごとの基準の設定、大規模建築物に対する基準の若干の緩和等の主要な見直しのポイントをいただいているところでございます。  この検討委員会の報告を参考といたしまして、地方公共団体等の意見を聞いた上で新しい標準駐車場条例案を近々取りまとめ、公共団体等を指導してまいりたいというふうに考えております。
  245. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今、それぞれの項目について御説明がありましたけれども、具体的に数値がどのくらいというような話はまだ言える状況ではないということでしょうかね。あるいはそれによって収容能力がどのくらい上がりそうかとか、そういうめどというのはつきそうですか。
  246. 安達常太郎

    ○安達説明員 数字については今申し上げられませんけれども、相当な効果を発揮し得るものというふうに考えております。
  247. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 相当な効果を発揮するような内容のようでありますから、ぜひそれはまたよろしく御推進のほどをお願いを申し上げます。  同じように、路上の駐車、いわゆる路上駐車の、渋滞やら交通事故の原因となっている部分がありますね、路上で。そういう意味で、道路行政という意味でこの問題についてどういうふうに進めようと建設省の方は考えておられますか。
  248. 藤川寛之

    ○藤川説明員 路上駐車の問題でございますけれども、この駐車問題につきましては基本的にはやはり路外に駐車していただくというのが基本になるのではないかなというふうに考えておりますし、また、この受益者というのが割合明確にされるところがございますので、やはり民間が主体になってそういう駐車場の整備をやっていただくというのが中心になろうかというふうに考えているわけでございますが、ただ、路上駐車の中身を見てみますと、路外駐車場を設置してもなかなかその路外駐車場に入っていただけないのじゃないかというような駐車需要がやはり結構あるわけです。それは非常に短時間の駐車でございまして、荷物の積みおろしをやるとかそういう駐車については非常に短時間の駐車でございますので、路外駐車場を設けてもなかなか入っていただけないだろうということで、私どもといたしましては、そういう短時間の駐車に対してどう対応していくかというようなことについて、今いろいろ勉強さしていただいておりまして、路上の駐車施設の整備等を含めまして今後具体的な検討をさしていただきたいというふうに考えております。
  249. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今のお話は、ほとんどどういうふうにしようとしているのかわからないぐらいの状況だと思いますね。考え方は考え方かもしれませんが、その考え方についてもちょっと余りにも思想がまだないというぐらいじゃありませんかね。  私は時間もほとんどありませんので、これはお願いだけしておきますが、このいわゆる交通渋滞なる問題、あるいはそこから事故も起こったりしておりますが、これはいわば一つは、もちろんドライバーのマナーというような問題もある、あるいは規制の仕方の問題もある。もう一つは、何といってもあるいは道路のつくり方あるいは町のつくり方、そういうものが本当に日本は追いついていないということだと思うのですね。このことは本当に私は真剣に考えなければならぬと思うのですよ。  今はいわゆる社会資本が云々、これは道路も含めて社会資本の整備がアメリカから構造協議で言われているというぐらいの状況ですよ。こんなのはと言ったらちょっと語弊がありますが、極めて残念な状況だと思わなければならない。日本の国の社会資本をどうしようかというのをアメリカから言われなければならぬというようなことは、こんなに残念なことはないとみんな私たちは思わなければならない、こう思うのですよ。例えば道路でもただつくればいいというものじゃないよ、交通の機能をいかに果たさせるために、そういうふうに機能する道路づくりをするとか、そのために例えば駐車の仕方だってあるでしょう。あるいは今言われたように路上の駐車の仕方もあるかもしれない。そういう意味で、道路のつくり方等も含めて本当に考えなければならぬということだと思うのですよ。そういう意味で――もし何か御意見ありますか、あればそれだけお伺いして質問を終わります。本当に私は町のつくり方あるいは道路のつくり方、こういうものから本当にやらないと、こういうものの解決にはならないということはみんなが肝に銘じてやらなければいかぬ、こういうふうに思いますね。御意見があれば……。
  250. 池田行彦

    池田主査 これにて伊藤英成君の質疑は終了いたしました。  次に、北側一雄君。
  251. 北側一雄

    北側分科員 私の方からは、外国人被疑者の捜査と通訳の問題を中心にしまして質問をさせていただきます。  御存じのように、国際化の進展に従いまして外国人の入国者が非常にふえております。これに伴って外国人が犯罪の被害者である場合、また事件関係者である事例、そういうものが多くなっておりますが、一方で在日外国人の犯罪も増加しているのではないかと思います。  そこで、お聞きしたい第一点は、来日外国人の刑法犯検挙状況がどのように推移しているのか、第二点目に、その国籍別の検挙人員がどうなっているのかお尋ねしたいと思います。
  252. 中門弘

    ○中門政府委員 お尋ねの点につきましては、昨年一年間におきます来日外国人の刑法犯罪の検挙は三千五百七十二件、二千九百八十九人でございまして、これはその前の年の昭和六十三年に比べますと、件数人員とも若干減少しておりますけれども、ここ十年ぐらいを比較してみますと、ほぼ一貫して増加してきておりまして、ちなみに十年前の昭和五十四年に比べますと、件数で七倍、人員で七・四倍となっております。  また、検挙被疑者の国籍別の内訳についてでございますが、大半がアジア諸国の者で占められておりまして、全体の八八・五%がアジア諸国の者ということになっておりますが、このうち中国が全体の五七・二%と最も多く、続いて韓国、フィリピン、パキスタン等の順となっております。
  253. 北側一雄

    北側分科員 それでは、今のお話ですと、人員として平成年度で二千九百八十九人ですか、そのうち捜査手続の中で、本人が日本語が不自由で――日本語が上手な方もおられると思います。本人が日本語が不自由で通訳が必要な割合は大体どの程度あるのかお答え願いたいと思います。
  254. 中門弘

    ○中門政府委員 お尋ねの点につきましての正確な統計はとっておりませんけれども、大まかな感じで申しますと、来日外国人でございますから、大半の方が日本語が十分わからないという人であろうかと存じます。
  255. 北側一雄

    北側分科員 それでは個々的に通訳の現状、また通訳人の確保についてどのようにされておられるのかお聞きしたいと思いますが、まず中国とか台湾の場合、これは北京語もしくは広東語等の言葉だと思うのですが、この通訳人の確保についてどのようにされておられるのでしょうか。
  256. 中門弘

    ○中門政府委員 中国語につきましては、おおむね警察部内の者を通訳として確保しているところでございます。ただ、中国語と申しますのは北京語を意味しておりまして、広東語につきましては部内に堪能な者がおりませんので、大半は部外の民間の方に通訳をお願いしているという現状でございます。
  257. 北側一雄

    北側分科員 それではまとめてちょっと聞いていきますが、フィリピンの場合ですとタガログ語、パキスタンの場合ならばウルドゥ語、ベトナムはベトナム語、マレーシアはマレー語、タイがタイ語、バングラデシュがベンガル語。この以上六カ国、比較的検挙人員が多い国だと思うのですけれども、この通訳人の確保につきましてどう対応されておられるのかお聞きしたいと思います。
  258. 中門弘

    ○中門政府委員 お尋ねの国の言葉につきましては、警察の内部にその言語に習熟した者がほとんどおりませんので、したがいまして、そのほとんどを民間の方に委嘱して通訳をお願いしているという現状でございます。
  259. 北側一雄

    北側分科員 それでは、具体的な捜査手練の中で、日本語の不自由な外国人被疑者に通訳がどの程度保証されているのか、現在の運用実態を順次お聞きしたいと思っております。  まず最初に、通常逮捕の場合でございますが、刑事訴訟法の二百一条で、逮捕状を被疑者に示す必要がございます。これは令状主義という適正手続をきちんと遵守した逮捕なんだということを被疑者に示す趣旨とともに、被疑者に自分がどういう嫌疑で逮捕されているのか知らせなければならない、そういう趣旨と考えられます。外国人被疑者の逮捕の場合に、この逮捕状を示すという運用においてどのような運用をされておられるのかお聞きしたいと思います。
  260. 中門弘

    ○中門政府委員 外国人被疑者を逮捕いたしました場合にも、当然刑事訴訟法の規定にのっとりまして逮捕状を相手に呈示をするわけでございますが、この逮捕状の呈示とあわせまして、その内容を通訳して被疑者に伝えるということの運用をやっております。また、可能な場合にはその訳文を逮捕状とともに相手方に呈示するという場合も場合によってはあるという運用でございます。
  261. 北側一雄

    北側分科員 そうしますと、逮捕の場合には常に通訳が警察官とともに逮捕する際にその場にいるというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  262. 中門弘

    ○中門政府委員 逮捕の種別によっても異なると思うわけでございますけれども、通常逮捕の場合には可能な限り通訳者を同伴といいますか同席させるという運用をしておりますし、緊急逮捕等の場合で通訳が間に合わないという場合につきましては、自後速やかに連絡をとりまして、緊急の場合には例えば電話でも通訳していただくというふうな運用をやっているところでございます。
  263. 北側一雄

    北側分科員 件数からいいまして、こういう少数言語の場合に、通常逮捕の場合に常に通訳がつかれてその逮捕状の要旨を逮捕する際に告げてやられておるのかという質問なんですけれども、今のお答えでは、大半の場合は通訳がそばにいて、逮捕する際に逮捕状の要旨について伝えているというふうに理解してよろしいわけでしょうか。
  264. 中門弘

    ○中門政府委員 先ほども申し上げましたように、通常逮捕の場合には、逮捕状を請求しましてそれが発付されまして実際にその逮捕状を執行するというまでの間に時間的な余裕があるわけでございます。したがいまして、その間に可能な限り通訳の確保をするということができるわけでございまして、そういうことをしました後に可能な限り通訳を同席させるという運用をしているわけでございます。
  265. 北側一雄

    北側分科員 それでは、通常逮捕後身柄拘束を警察署等で行うわけですが、刑事訴訟法の二百三条では被疑者に対して三点、被疑事実の要旨を告げる、弁護人を選任できる旨告げる、さらに弁解の機会を与えるという三点を留置後直ちに行えというふうに規定しておりますが、現行の運用についてお聞きしたいと思います。
  266. 中門弘

    ○中門政府委員 通訳を介してその旨を被疑者に伝えているところでございます。
  267. 北側一雄

    北側分科員 身柄拘束後四十八時間以内に送検をされるわけですけれども、検察官は刑事訴訟法の二百五条によって送検された被疑者に弁解の機会を与えないといけないというふうに規定されております。どう運用されているのか、ちょっと法務省の方にお答えを願いたいと思います。
  268. 松尾邦弘

    ○松尾説明員 事件を送致を受けますと、その段階では既に被疑者の言語の状況といいましょうか、何語が理解できるのかということが判明しているわけでございますから、事前に警察等と連絡をとりまして、取り調べあるいはそうした必要なことの告知をするのに必要な通訳を用意しておくということを努力しているという実情でございます。
  269. 北側一雄

    北側分科員 そこでの通訳人というのは、警察段階で通訳をしておられる通訳人になることが多いのでしょうか。
  270. 松尾邦弘

    ○松尾説明員 お答えいたします。  通常の場合は通訳人の確保について検察庁と警察で別々にするということがなかなか難しい場合も多うございます。したがいまして、送致事件の場合には警察の調べの段階でお願いした通訳の方にお願いするということのケースが多いということを申し上げておきます。
  271. 北側一雄

    北側分科員 次に、送検後二十四時間以内に検察官の方で勾留請求するわけですが、勾留請求を受けた裁判官は被疑者の勾留質問をする。この勾留質問についてどう運用されているのか、お聞きしたいと思います。裁判所の方でお願いします。
  272. 島田仁郎

    ○島田最高裁判所長官代理者 日本語を解さない外国人について勾留が請求される場合には、その請求が予想された段階で検察庁の方から裁判所に対しまして、勾留請求をするが被疑者が日本語を解しない、いつ幾日勾留をする予定であるというようなことの連絡がございます。そして、通訳人が必要なケースにつきましては、検察庁においてその通訳人を裁判所に同道してまいります。
  273. 北側一雄

    北側分科員 そうしますと、勾留質問での通訳人といいますのは、先ほどの話から総合しますと、警察段階からの通訳人がそのまま勾留質問で通訳をするというように理解すればよろしいのか。
  274. 島田仁郎

    ○島田最高裁判所長官代理者 何分にも勾留質問ということは時間的な余裕も余りございませんので、勾留質問の段階では委員御指摘のようなケースが大半であろうかと思います。
  275. 北側一雄

    北側分科員 次に、取り調べについてお聞きしたいと思います。  当然黙秘権の告知は捜査官の方からなされていると思いますが、被疑者の供述調書の作成手続が具体的にどのようになされているのか。刑事訴訟法によりますと、調書を被疑者に閲覧させる、そして読み聞かせる、閲覧と読み聞かせという二つの要件を挙げておるわけなんですけれども、この具体的な手続について刑事局長の方にお聞きしたいと思います。
  276. 中門弘

    ○中門政府委員 取り調べまして供述を調書にする場合でございますが、その場合には、通常は通訳人に通訳をさせまして日本語の供述調書を作成をしておりまして、これを通訳を介して通訳して読み聞かせを行いまして、そしてその日本語の調書に被疑者の署名、押印を求めるということをやっておるわけでございます。しかし、場合によりましては、特に必要がある場合には被疑者本人から外国語の供述書を提出させるという場合も場合によってはございます。
  277. 北側一雄

    北側分科員 調書の翻訳文というものはつくらないわけですね。
  278. 中門弘

    ○中門政府委員 通常は作成しておりません。
  279. 北側一雄

    北側分科員 被疑者本人の供述書を場合によっては書かせるという御答弁でございますけれども、どういう場合に被疑者本人の供述書を書かせるわけでしょうか。
  280. 中門弘

    ○中門政府委員 例えば、被疑者本人が自分でみずから書きたいというふうに申し出た場合等でございます。
  281. 北側一雄

    北側分科員 供述調書の作成手続に関しまして、同じ質問、検察庁、法務省の方にお願いしたいと思います。
  282. 松尾邦弘

    ○松尾説明員 検察庁におきましても、中門刑事局長が御答弁なさったのとほぼ同じでございます。
  283. 北側一雄

    北側分科員 私は、できれば、重要な事件については調書の翻訳文というものをつくるというふうなルールを部内でつくっていかなければいけないんじゃないか。さらには被疑者本人の供述書については、そんな手間暇かかるわけではございませんので、これも一定のルールのもとで本人の供述害というものを書かせる、そうしたルールが取り調べの場合は非常に大切なんじゃないか。その理由は、通訳の正確性を担保していくためには、そのような翻訳文があれば一番いいわけですけれども、少なくとも本人の供述書、これがあれば後で裁判所の段階で、果たしてその通訳が正確であったかどうかが担保されるわけでございますので、私は、本人の供述書をある一定のルールのもとで、こういう要件のもとでは書かせるというふうな取り扱いをすべきではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。
  284. 中門弘

    ○中門政府委員 いろいろな事件があるわけでございますので、事件の内容によりけりだろうと思いますし、また、その通訳の方の時間的な能力、労力、そういうふうな問題とも関係する問題と思いますので、検討させていただきたいと存じます。
  285. 北側一雄

    北側分科員 外国人被疑者の場合、文化も風習も違いますし、刑事手続は当然各国によって相当異なっておりますから、被疑者の精神的な不安を除去するためにも、逮捕による身柄拘束後、取り調べがなされる前に、今後被疑者本人が、自分がどういう手続の流れで捜査されていくのか、また、審判されるのか、日本の刑事手続のごく簡単な概略を教えなければいけないのじゃないかというふうに私は思います。この点、いかがでしょうか。
  286. 中門弘

    ○中門政府委員 現在も外国人の被疑者につきましては、日本の刑事手続がどうなっているかということにつきまして、可能な限りそれを示すような努力をしてまいっておるわけでございますけれども、今後ともそういう方向でやっていきたいと思います。
  287. 北側一雄

    北側分科員 可能な限り、結構なんですけれども、やはりルールとして、そういう日本語がしゃべれない外国人の場合に、取り調べの冒頭に簡単な手続を教えるということが本人のためにとって大切なんじゃないかなというふうに私は考えるわけなんですけれども法務省の方、同じ質問に対していかがですか。
  288. 松尾邦弘

    ○松尾説明員 お答えします。  検察官がそうした言語的な問題を抱えている被疑者を調べる際には、現状におきましても、我が国の刑事手続あるいは当該被疑者が間擬されている犯罪事実、その構成要件あるいはその刑罰等につきましては、できる限り通訳を介しましてでございますが説明するようにしているわけでございますが、先生の御指摘の点も踏まえまして、今後とも外国人の人権に十分配慮しながら、なお一層そうした趣旨が伝わるように努力していきたいと思っております。
  289. 北側一雄

    北側分科員 それでは、次に裁判所の方にお聞きいたしますが、起訴状が被疑者の方に送達されるわけですが、この起訴状に関する翻訳文というのは添付されておるのでしょうか。
  290. 島田仁郎

    ○島田最高裁判所長官代理者 起訴状については訳文はつけられておりません。先ほど来委員の御指摘のように、訳文かつけられることが望ましいのではないかというようなことも考えられるわけではありますけれども、ただし、被告人の権利がそれによって害されないかどうかという点につきましては、まず、先ほどの勾留の段階がございます。それで、勾留質問を受ける際に被疑惑実を告知されまして、それについては十分通訳がされておる。起訴事実は「その勾留された被疑事実と大体同一であるわけでございます。それからまた、取り調べを受けている被告人としては、その捜査の手続においてどのような罪で取り調べを受けているかということは十分理解されておると思われますし、また、起訴までには被告人と弁護人との間で面接も何回かやっておるのでございますので、弁護人の方からもおいおい説明も受けておるだろうというようなことがございますので、その点で起訴という段階になりますと、被告人の方では大体どのような事実で起訴されているかは十分わかっておる。また、起訴状を受け取った後でまた通訳を頼んで、被告人の方でそれについて訳してもらうということは十分ございますので、そのようなことで防御権は保障されておるというふうに考えておるわけでございます。
  291. 北側一雄

    北側分科員 弁護人の場合、これは国選弁護人がつくのがかなり多いのじゃないかと思うのですが、実際国選弁護人が被疑者と接見できるというのは、起訴から相当日数がたってからになると思います。  また、警察、検察庁での取り調べ段階で、取り調べられている内容と起訴事実とが、例えば窃盗の場合でしたら、余罪がたくさんあって一部の事件だけを取り上げるということも当然あるわけですので、起訴状が送達された段階で、それがまさしく公判での審判の対象になるわけですから、一体自分はどういう犯罪事実で起訴されたのか早く伝えていくという保障が非常に大切であると私は考えますけれども、いかがでしょうか。
  292. 島田仁郎

    ○島田最高裁判所長官代理者 確かに現在法律上は要求されていないわけではありますけれども、仮に今後の問題として、起訴状の訳文がつけられるといることになれば、それだけ手厚い措置ということは言えると思います。  ただ、制度上そのように持っていくためには、例えばこれを行うとした場合に、限られた時間の中でどこのだれかそれをやるべきかというような点については、いろいろ検討しなければならない難しい問題があるということは御理解いただきたいと思います。
  293. 北側一雄

    北側分科員 御趣旨よく理解できるのですけれども、通訳文を添付するのが一番いいと思いますが、そうでなくても、例えば通訳人がこういう内容であるということを伝えるということもできると思いますし、ぜひその辺、手段、方法を検討していただきたいと思います。  次に、法廷での公判手続における通訳の運用について少しお聞きしたいと思いますけれども、法廷での検察官の陳述、また証人の証言に対して、被告人の防御権、反対尋問権を保障していくためにも、その日本語の陳述、証言が通訳をされないといけないのじゃないかというふうに考えますが、実際はどのように運用されておられるかお聞きしたいと思います。
  294. 島田仁郎

    ○島田最高裁判所長官代理者 その点につきましては、法廷における通訳人が十分に被告人にわかるように通訳しておるのが実情でございます。
  295. 北側一雄

    北側分科員 通訳人は法廷ではどこに座っておるのでしょうか。
  296. 島田仁郎

    ○島田最高裁判所長官代理者 おおむねは書記官の隣などに座りまして、被告人と相対する形のが多いわけでございます。ただ、通訳のしやすいようにということで、裁判長がどこへ座ったらいいかというようなことを通訳人にもいろいろ希望を聞きまして、場合によっては被告人の隣に腰かけさせるとか、いろいろ座る場所は工夫しております。
  297. 北側一雄

    北側分科員 時間もございませんが、いずれにしても通訳人の絶対量がそもそも不足しておるのではないかと私は思います。  それで、この通訳人の確保及び通訳人の育成について今後どうされていくのか、その施策についてお聞きしたいと思います。警察庁に伺います。
  298. 中門弘

    ○中門政府委員 確かに、御指摘のとおり通訳の絶対数が足りません。私どもといたしましては、できれば都内で通訳可能な人が一人でもふえるということが望ましいわけでございますので、まず部内においてそういうことのできる語学教養の充実ということに努めまして、都内通訳者の増強ということを一方で図っております。また一方で、それだけでは十分でございませんので、民間の方で、平素から委嘱をしまして引き受けていただけるという方の数及びその質の確保ということにも配意をしているところでございます。
  299. 北側一雄

    北側分科員 同じ質問法務省の方にお願いします。
  300. 松尾邦弘

    ○松尾説明員 法務省も優秀な通訳人の確保については大変苦労しているところでございます。捜査の過程で必要な通訳につきましては、現状では警察にその過半をお願いしているというところでございますが、検察庁といたしましても、各地で通訳人の名簿を整備いたしたり、あるいは通訳人に必要な予備知識を得ていただく必要がありますので、刑事手続についての解説をしたパンフレットを配るなど、通訳人との情報連絡等に努めておるところでございますので、今後ともそうした名簿の整備あるいは諸般の手段を講じまして充実に努めていきたいと思っております。
  301. 北側一雄

    北側分科員 同じ質問を裁判所の方にお願いいたします。
  302. 島田仁郎

    ○島田最高裁判所長官代理者 裁判所におきましても、数少ない通訳人を何とか有効に利用させていただこうということから、現在全国八カ所にある高等裁判所におきまして、管内の全裁判所からの推薦に基づき、これまでに各裁判所において頼んで非常に信頼が置けると認められた通訳の方々につきまして名簿をつくりまして、これを管内の全裁判所に送付し備えつけております。昨年十一月にこれが全国八高等裁判所で既に完了し、全国の裁判所に送付されております。この名簿は毎年新しく更新しながら、なお通訳人の数をふやしてまいろうと思っております。  それからなお、そのほかに、通訳の付される事件が比較的多い裁判所におきまして、裁判官、書記官と通訳人候補者との間でいろいろと研究会を開きまして、そういう研究会を通じてまた通訳人からの忌憚のない意見を伺いながら、通訳実務の改善に役立てるだけでなく、裁判所と通訳人との間のいわばパイプを太くしていこうということで、そういう研究会を年々催してまいりたいと思っております。
  303. 北側一雄

    北側分科員 最後に一点だけお聞きします。  公安委員長にお聞きしたいと思うのですけれども、今外国人被疑者の通訳ということを中心にしまして、その人権保障に十分配慮しながら捜査を進めていかなければならないという視点から質問いたしました。最初に申し上げましたように、そもそも外国人が被害者の場合や事件関係者であることも非常に多くなっている現状でございます。例えば外国人旅行者が窃盗に遭った、近くの派出所に行って被害を訴えたが、警察官は、何を言っているのか全然わからない、適切な対応や保護がおくれてしまった。これではいけないと思う。急速に国際化が進展する中で、通訳人の育成というのは非常な急務であると私は思います。予算をしっかりつけて通訳人の育成をすべきであると考えますが、この点に関する委員長の所信をお聞きしたいと思います。
  304. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 国際化対応の中で外国人犯罪が起きておるという厳粛な事実は紛れもないわけでありますし、あってはいけないことですけれども、傾向としてはそういった外国人の犯罪者がこれからますますふえるということも十分予測しなければなりません。  はっきり言って、外国人であろうと日本人であろうと、我が国で発生した事件に対して人権は当然尊重されるべきでありますし、内外無差別、そういった原則に立って、とりわけ言語の不自由な、慣習も違う形の中で、たとえ被疑者であれ本人自体もそういった形においては大変苦労されるわけでありますから、公正な起訴あるいは裁判の方向に持っていくという形においても通訳体制の充実は急務であろうと今お聞きして思っておりました。また、供述等においても翻訳文、確かに必要であろうと思います。通訳の署名捺印という形で真実を担保しておるようでございますけれども、より一層の正確というか内容の公正を期する上において翻訳文添付も必要なことであろうと思っております。特に私の所管内である警察体制において、そういった外国語を理解できる優秀な捜査官の育成はもとよりでありますけれども、そういった体制を含めて、今後の通訳官養成にかける、増員対策を含め、予算措置に関しては私なりに万全の体制をつくっていきたいと思っております。
  305. 池田行彦

    池田主査 これにて北側一雄君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして警察庁についての質疑は終了いたしました。     ─────────────
  306. 池田行彦

    池田主査 次に、皇室費について審査を進めます。  政府から説明を聴取いたします。宮尾宮内庁次長
  307. 宮尾盤

    ○宮尾政府委員 平成年度における皇室費の歳出予算について、その概要を御説明いたします。  皇室費平成年度における歳出予算要求額は、六十四億七千五百二十一万五千円でありまして、これを前年度予算額四十九億七千七百三十一万四千円に比較いたしますと、十四億九千七百九十万一千円の増加となっております。  皇室費の歳出予算に計上いたしましたものは、内廷に必要な経費、宮廷に必要な経費及び皇族に必要な経費であります。  以下予定経費要求書の順に従って事項別に申し述べますと、内廷に必要な経費二億九千万円、宮廷に必要な経費五十九億三千三百七十二万七千円、皇族に必要な経費二億五千百四十八万八千円であります。  次に、その概要を御説明いたします。  内廷に必要な経費は、皇室経済法第四条第一項の規定に基づき、同法施行法第七条に規定する定額を計上することになっておりますが、前年度に比較して、三千三百万円の増加となっております。  これは内廷費の定額二億五千七百万円を平成年度においては、二億九千万円に増額改定することを予定していることによるものでありまして、これに伴う皇室経済法施行法の一部を改正する法律案は、今次国会に提出いたし、御審議を願うことになっております。  宮廷に必要な経費は、内廷費以外の宮廷に必要な経費を計上したものでありまして、その内容といたしましては、皇室の公的御活動に必要な経費三十一億九千四百五万七千円、皇室用財産維持管理等に必要な経費二十七億三千九百六十七万円でありまして、前年度に比較して、十四億三千二百四十二万一千円の増加となっております。  その増加の主な理由は、皇室の行事として行われる皇位継承儀式のために必要な経費二十五億六千七百六十六万六千円を計上したことによるものであります。  皇族に必要な経費は、皇室経済法第六条第一項の規定に基づき、同法施行法第八条に規定する定額によって計算した額を計上することになっておりますが、前年度に比較して、三千二百四十八万円の増加となっております。  これは、内廷費と同様に、年額算定の基礎となる定額二千三百六十万円を平成年度においては、二千七百十万円に増額改定することを予定していることによるものでありまして、これに伴う皇室経済法施行法の一部を改正する法律案は、今次国会に提出いたし、御審議を願うことになっております。  以上をもちまして、平成年度皇室費の歳出予算計上額の説明を終わります。  よろしく御審議くださるようお願いいたします。
  308. 池田行彦

    池田主査 以上で説明は終わりました。  別に質疑の申し出もありませんので、皇室費については終了いたしました。  これにて本分科会審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了するととができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後五時十一分散会