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1989-12-05 第116回国会 参議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十二月五日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  十一月二十九日     辞任         補欠選任      会田 長栄君     細谷 昭雄君      井上 哲夫君     笹野 貞子君  十一月三十日     辞任         補欠選任      猪熊 重二君     鶴岡  洋君      笹野 貞子君     井上 哲夫君  十二月一日     辞任         補欠選任      鶴岡  洋君     猪熊 重二君  十二月四日     辞任         補欠選任      林  紀子君     沓脱タケ子君  十二月五日     辞任         補欠選任      沓脱タケ子君     林  紀子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         仲川 幸男君     理 事                 大塚清次郎君                 北  修二君                 上野 雄文君                 村沢  牧君                 井上 哲夫君     委 員                 青木 幹雄君                 熊谷太三郎君                 鈴木 貞敏君                 高橋 清孝君                 成瀬 守重君                 初村滝一郎君                 本村 和喜君                 一井 淳治君                 菅野 久光君                 谷本  巍君                 細谷 昭雄君                 三上 隆雄君                 猪熊 重二君                 刈田 貞子君                 林  紀子君                 橋本孝一郎君                 横溝 克己君     衆議院議員        修正案提出者   笹山 登生君     国務大臣        農林水産大臣   鹿野 道彦君     政府委員        農林水産大臣官        房長       鶴岡 俊彦君        農林水産省経済        局長       塩飽 二郎君        農林水産省構造        改善局長     片桐 久雄君        農林水産省農蚕        園芸局長     松山 光治君        農林水産省畜産        局長       岩崎 充利君        農林水産省食品        流通局長     鷲野  宏君        農林水産技術会        議事務局長    西尾 敏彦君        食糧庁長官    浜口 義曠君        林野庁長官    甕   滋君        水産庁長官    京谷 昭夫君     事務局側        常任委員会専門        員        片岡  光君     説明員        厚生省生活衛生        局食品保健課長  野村  瞭君        厚生省生活衛生        局食品化学課長  内山 壽紀君        農林水産省経済        局統計情報部長  海野 研一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○農林水産政策に関する調査  (当面の農林水産行政に関する件) ○農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案(第百十四回国会内閣提出、第百十六回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨四日、林紀子君が委員辞任され、その補欠として沓脱タケ子君が選任されました。     ─────────────
  3. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) 御異議ないものと認めます。  それでは、理事井上哲夫君を指名いたします。     ─────────────
  5. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) これより農林水産政策に関する調査について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います
  6. 一井淳治

    一井淳治君 水田農業確立後期対策転作等目標面積が八十三万ヘクタールになっておりますけれども、これが決まっておるわけでございます。米の需給見通しについて、お米の消費は減る一方、しかし減反しても反当たりの生産は伸びるという状況の中で、米の需給見通しがどうなるかということをまずお伺いしたいと思います
  7. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) ただいま一井先生から御質問後期対策の米の需給見通しの問題でございますが、この後期対策期間中の米の見通し前提となります平成元年米穀年度需要量は千十三万トンと見込まれるところでございます。十月末の持ち越し在庫は百四十七万トンとなっているわけでございます水田農業確立後期対策におきまして転作等目標面積を八十三万ヘクタールと決定をしたわけでございますけれども、この結果、後期対策期間生産量につきましては、九百八十五万トン程度になるということが見込まれるところでございます。  今後の需給量減少をどういうふうに見るかというのが、この後期対策の米の需給量全体を占う一番のキーポイントだというふうに思います。その点につきまして、食料需給表という公表された表がございますけれども、そういったものによります用途利用米を除く米の需給量を引いた場合の、過去の動きをこの四年ないし五年で見てみた場合でも、年平均減少率は十万トン前後という数字を示しているわけでございます。もちろん、ある年におきましては十五万トン、六十二年の数字は十五万トンという数字がございますが、また他方、それを先行する一、二年におきましては五万トンという数字がございまして、過去の経験から見ましてならしてみますと、四、五年をとります と大体今申し上げましたように、十万トン前後というふうに考えるのが妥当かなというふうに思っております。なお、こういった数字はいろいろ食糧庁が持っておりますデータについても裏づけられるところでございまして、この十万トン前後というのがほぼ一般の御理解を得る数字じゃないかと思っております。  この数字をもちまして後期対策全体を見通してみますと、例えば需要拡大運動の経過によりまして、年間九万トンというふうなことを置いておりますと、在庫後期対策終了時点で百三十万トンぐらいになる数字かなと。それから今十万トン前後と言いましたけれども、例えば十一万トン、これは直近四年をとりますと十一万トンという数字が出るんですが、十一万トンというものを、年間需要が落ちていくんだということを前提にして考えますれば、期末段階で百四十五万トン程度になる、そういった数字が得られるわけでございます。  いずれにしろ、そういった数字が示される中で、米の全体の需給といったものは、本年置かれております段階とほぼ同じような数字が見通されるのではないか、そういうふうに我々考えておるところでございます
  8. 一井淳治

    一井淳治君 もう一遍確かめますけれども、ただいま十万トンと言われたのは、後期対策の三年間に十万トンずつ余っていくだろうという、私ちょっと聞き損なっているのかもしれませんけれども、そういう御趣旨でございましょうか。私は、もっともっと余るのじゃないかというような感じがしておるんですけれども
  9. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) この十万トン前後というのは、年間に米のトータルの需給が減っていくスピードのことでございます年間に減るスピードでございます。  そういった場合に、先ほど前提といたしまして現在の需要量というものを我々の数字といたしまして、千十三万トンと置いたわけでございますが、それをスタートといたしまして今後十万トン前後年々減っていくというふうに一応見通してみますと、そういう数字になるということでございます。  また、この点につきましては、先ほどやや重複して申し上げましたけれども食料需給表という過去のデータを見ますと、ある年は確かに十万トン上回っている年がございますけれども、ある年は、例えば特に六十年度前半あるいは五十年度末あたりにおきましては、かなり需要の減が下回っていた、十万トンを下回っていたという時点がありますので、毎年ぴったりということではありませんが、平均的に年間大体十万トン前後減っていくと見通すのが妥当ではないかというふうに思っておるわけでございます
  10. 一井淳治

    一井淳治君 結局、需要と供給とあるわけで、後期対策の三年間に、毎年冷害や台風などがあれば別ですけれども、今のままであればどれくらいお米が余る見通しなのかということを、もう余り長くおっしゃらないで、簡単にその点だけをおっしゃっていただきたいと思います
  11. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 今の段階では、どの時点をとるかということではございますけれども、先ほど触れましたように、年間の、いわゆる平年時の豊作とかあるいは不作とかということじゃなくて、平均的な平年時の生産量は、八十三万ヘクタールの現状の規模転作面積というものを置いた場合に、九百八十五万トン程度というふうに見ているわけでございます。  それに関連いたしまして、これは生産量でございますが、今の段階のごくごく最近の段階では一千万トンを超えているわけでございまして、今は余るというよりも、今の段階は少し生産の方が少ないかなと。ただそれは、先ほど言いましたのは中央の段階でございますので、後期対策に、末期になってまいります生産力がいわゆる需要といったようなもの以上になる。とんとんで、先ほどのような計画全体の動きという形で期末を見た場合に、在庫というのは今と大体ほぼ同じようなところになるのではないかということを申し上げたわけでございます。ですから、単年度で今見ることあるいは平成三年度で見ること、どこでとるかという問題がございますが、期間中で大体同じぐらいの生産力と、それから需要量が大体均衡しているというふうに御理解いただいていいのではないかというふうに思います
  12. 一井淳治

    一井淳治君 私どもは、全然農水省見通しとは違いまして、社会一般方々考えているのと私は同じだと思っていますけれども、現在のままでは米が大幅に余っていくと思うんです。毎年毎年米が余っていって、最後は米の過剰米がどえらい数量になってしまって、食管制度は崩壊するのではないかというところまで行くんじゃないかという非常に強い心配を持っております農水省の方はその心配がないというのでしたら私も安心いたしますけれども、新聞の社説を見ましても、どの記事を見ましてもそういうふうなことが大体世間の見方じゃないかというふうに思うわけです。私とすれば、農水省の方も率直にその点を見てもらいまして、そして需要拡大についてもっと本格的に取り組んでいただきたいというふうに思うわけです。そうしないと、本当に私ども農民を守る、日本の農村を守るためにこの大幅な減反に対しては反対してきているわけですけれども、成り行き任せでお進めになるんだったら大変に農民にとって不幸な事態になりますので、もっと消費拡大について抜本的な見直しをしていただきまして、御努力をいただきたいというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。簡単で結構です。
  13. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) まず、需要拡大の問題については、我が国の基幹的な作目でもありますし、それから米の重要性から、先生指摘のとおり、大いに需要拡大といった方向を行うことをやらなきゃいけないというふうに考えております。それが第一点でございます。この点につきましては、科学的な分析等に基づきまして、どういう層において減っていくかといったような意味において、例えば若い女性に的を絞ったヤングレディ・ライスクッキング・コンテストというふうなことを大臣の御出席のもとで行っておりまして、去る土曜日におきまして、大臣の御主張によりまして、料理の面から米の料理サミットというものを行い、宣言文もまとめさしていただいたわけです。さらにまた、大きな国民的運動に結びつけるような展開を図っていくというふうに考えているところでございます。  第二点で、先生指摘の点については、あくまでも成り行き任せということではございませんで、米が減少しているという実態というものを片方で見ながら、今御指摘のような需要拡大努力をしながら、そういったものについて米のギャップというものを埋めるべく、八十三万ヘクタールに及ぶ作付転換、あるいはその地域輪作農法確立という御努力を農家の方々にやっていただいているわけでございまして、そういう意味で、需給の科学的な分析のもとにおきます対応と、生産調整と申しますかあるいは作付転換と申しますか、あらゆる意味において水田高度利用を図りながら、対策というのをやっていただいているということを御理解いただきたいと思います
  14. 一井淳治

    一井淳治君 時間がありませんので、これは前にもお尋ねはしたんですけれども農水省の方で米が余らないという前提になれば、もうまともなお答えはいただけないとは思いますけれども、しかし、食糧援助にやはり使うということを考えていかないと、農水省が何と言われようとも、今のままではお米は現実に余っていくと思うんですね。ですから、食糧援助にお米を使うということも本気でお考えいただきたいというふうに思うわけでございます。  前回質問に対しまして大臣の方から、FAO余剰処理原則等があるから困難だということをおっしゃいました。これは外務省の方からもだれからも、米を海外へ出すということを言いますと必ずその問題が言われるわけですけれども、しかし具体的に細かく検討すると、FAO余剰処理原則も必ず守らなくちゃならないような規定ではありませんし、またこの余剰米対策にすれば有効な 方法が他にはないわけでございますので、やはり一挙にはいかないと思いまするから、だんだんと食糧援助方法ということをお考えいただきたいと思うわけでございますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  15. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 米による食糧援助の問題でございますが、前回について先生からの御指摘があり、外務省からのお話もあったわけでございます。この点一番大きい点は、いかに水田の多様、多目的に利用するかという問題が根本にあるわけでございますが、先生指摘のような、余った米を外に出すというような考え方の根底におきまして、外務省等々申し上げたとおり、現実国際情勢をどういうふうに認識するか。国の金に基づいてそういう米を援助という形で出すことについての、現在の置かれている、ますます厳しくなっている米をめぐる国際情勢というものをお話したんだろうと思います。  そういうような考え方に立ちまして、さらに現行の、先生指摘FAO規定をどういうふうに読むかとか、あるいはその他の援助規定をどういうふうに読むかという問題はございますが、そういった国際情勢にあわせまして、さらに一回、そういうことを行う場合に現在の国際価格日本国内価格とのギャップ、大きな隔たりによります財政的な対応といったようなものをどうするかという問題があることを、私ども十分考えていかなきゃいけないというふうに考えているところでございます。  もちろん、世界のヒューマニズムといいますか、飢えた方々に余った米をどういうふうにやるかというような発想について、私どもは根本的に否定をしているわけでございませんで、現にそういったものが水田農業確立対策の中でも、これまでも転作という微々たる形ではございますけれども、そういう善意のものに基づく対応というものが行われているわけでございます。ただ、それを大々的な形で、政府援助というふうなシステムという形で行うことについては、私ども現在の、特に米をめぐる国際情勢におきまして、いろいろな意味での困難があるのではないかということを申し上げたつもりでございます
  16. 一井淳治

    一井淳治君 私が申し上げたいのは、そういうふうにもう食わず嫌いといいますか、頭ごなしで検討しないという態度が間違っているということなんです。世界じゅうを見ましても日本とあと一国だけなんですね、自分のところの農産物を出さないのは。ですから、交渉のしようによっては、何も余っているからやるというのではありませんし、日本の米を出すとなれば財政負担も大変な額になるわけで、非常に貴重なものを出すという立場で、食わず嫌いではなくて具体的に本気でお取り組みをいただければ、もう成功するような感じがするから要望するわけでございます。  それから、これまで毎年二百三十五億ぐらいの消費拡大予算を使っておられましたけれども、この際、抜本的に消費拡大策を見直していただかないといかぬのじゃないかということを痛切に感じます。  その問題と、それからもう一つは、日本酒原料にお米を提供することができないかという点、二点一緒に御説明をお願いしたいと思います
  17. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 一井先生指摘のように、現在の米の消費拡大の中で公表してまいりました予算としての二百数十億の問題は、基本的にやはり学校給食の値引きの部分が圧倒的に多いわけでございます。私ども、先ほどお答え申し上げましたように、いろいろな意味での試みを行っておりますが、大臣の指示によりまして、この需要拡大の財政的な問題等については、やはり本腰を入れて充実を図っていかなきゃいけないという考えのもとに立つものでございます。また、引き続きそういう努力をしていかなきゃいけないと思います。  さらに今の御指摘の、第二番目の日本酒原料拡大の問題でございます。  この問題につきましては、これまで自主流通米政府米等により対応してきたところでありますけれども、六十二年度からアルコールの添加量の少ない、米消費拡大に結びつく純米酒、本醸造等需要拡大を図るために、原料用に低価格の他用途米を導入しまして日本酒原料としての米の消費拡大に努めているところでございます。過日、超党派で行われました憲政記念館におきます日本酒拡大等もございまして、諸先生の熱意ある御指導に基づきまして、私どもそういった意味におきましても、一時低迷しておりました日本酒というのが復活をしていく、特に純米酒とかあるいは本醸造吟醸酒というふうな形で出ていくというふうなことで、これまた先生がことしの六月に、前長官に御質問があった点等も踏まえまして十分検討をして、できる限りあらゆる積極的な分野というものを利用拡大の面に見つけまして取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます
  18. 一井淳治

    一井淳治君 銀座とか商店街には、最近非常に温かくて、焼いたばかりの香りの香ばしいパンが売られておりますけれども、ああいったふうに、これはあくまで思いつきな例ですけれども、例えば銀座通りでおにぎりを売るとか、何かそういったふうな思い切った消費拡大策をぜひともお願いしたいというふうに思います。  それから、転作作物の関係ですけれども、ずっとこれまで助成が行われておるわけです。転作作物定着できないという残念な事態があると思いますけれども、もう少しここのところが何とかならないでしょうか。
  19. 松山光治

    政府委員松山光治君) 転作作物定着の問題につきましては、全体としては根強い稲作志向の中で、どういうふうに経営の中に取り入れていくかあるいは地域農業の中に位置づけていくか、どういう生産形態をとるか、販売条件をどういうふうに確保するか等々、もろもろの条件が絡んでくる話だと思っております。私ども、今実行しております水田農業確立対策推進に当たりましては、生産者なり生産者団体等の主体的な取り組みを基礎にしながら、地域輪作農法確立等を通じまして、稲作転作を通ずる生産性向上ということを主眼に置きながら、その定着を図っていきたい、このように考えておるわけであります。  この結果、全国各地におきまして、麦だとか大豆とか飼料作物あるいは野菜といったようなもののほか、古くからその地域に伝わります特産物を見直したり、あるいは新しいものを入れたりといったようなことで、いろんな取り組みが行われておるわけでございます。  後期対策推進に当たりましても、そういう意味では、地域農業なり個々の営農の中にきちんとそういった転作物を位置づけまして、それの生産性向上を図っていくということを主眼に置いて、その定着性向上に努めていきたい、このように考えておるところでございます
  20. 一井淳治

    一井淳治君 それから、現在の平均三割の減反政策ですけれども、こういう政策では、大規模経営の移行が非常に困難になっている。せっかく広い土地を購入あるいは取得しても、三割を減反しなくちゃいけないというのでは大規模経営の意欲をそいでいるというふうに思うわけですけれども、それについてはどのような考えでしょうか。私は、少しこの辺で思い切った対策が必要ではないかというふうに思うわけでございますけれども
  21. 松山光治

    政府委員松山光治君) この対策推進に当たりましての基本的な考え方といたしましては、我が国農業なり稲作を担う地域なり、担い手層におきまして流通いたします米の生産の大宗が担われることが重要である、こういう考え方で、配分に当たりましてもそれなり配慮をいたしまして、かなり地域によりまして格差をつけた配分を行っておるところでございますし、また現場の市町村段階でもこの趣旨を踏まえまして、担い手層について配慮するといったような事例も見られるわけであります。  ただ、今御指摘のようなことで、大規模経営を目指す層についてだけ、極端に申し上げれば、転作目標配分しないといったような特別な措置 をとることで、全体としてうまくいくかどうかと申し上げれば、それはなかなか難しい話であろう。やはり考えてみますと、今の日本水田農業をめぐる事情が一定の需給調整転作をしながら、全体としての水田を有効に利用することが必要な事情にあるわけでありますから、将来の担い手としてやっていこうという人であればあるほど、転作営農をうまく経営の中に取り込んだ形でひとつ頑張っていただきたい、こういうふうに我々としては考えておりますし、またそういう観点から助成金の扱いにおきましても、それなり配慮を行ってきておるつもりでございます
  22. 一井淳治

    一井淳治君 次に、食品加工業に関連してお伺いをいたしますけれども、現在スーパーなどへ行きます牛乳が多量に売られております。どちらかといえば、消費者の方が製造年月日にある程度こだわりを持っているというふうに思います牛乳と同時にお豆腐も同じではないかと思いますけれども、しかし、最近は非常に包装とか衛生状態が改善されまして、かなり日にちを置いておっても腐ることはないということがはっきりしているわけでございます。  しかし、現在の小売の、商取引の実情では製造日付に非常にこだわられている。そういたしますと、牛乳販売店あるいは豆腐製造業者などは、朝の一時、二時ごろから起きて仕事をせなきゃいけないというふうなことがありまして、つくる側にとります合理化が非常に困難である。したがって、価格の引き下げがやりにくい。そこで働く労働者は、時間短縮の時代であるけれども、真夜中の深夜労働をやらにゃいかぬというふうな非常に厳しい状況があると思います。したがいまして、衛生状態も非常によくなり、保存方法も改善されておる中におきまして、この辺の何らかの対策を講じていただいた方がいいのじゃないかというふうな考えがあるものですから、質問する次第でございますけれども、いかがでございましょうか。
  23. 岩崎充利

    政府委員(岩崎充利君) ただいま先生指摘がありましたような実態につきましても、私ども承知しているところでございます。  このことにつきましては、昭和五十九年から六十年にかけまして当日付牛乳、いわゆるDゼロ問題というようなこともございまして、乳業工場におきます作業に無理を生じるというような事態が発生したために、厚生省が衛生的見地から事態の改善につき指導を行ったというような経緯があります。これを受けまして、業界が適正化に努めているような状況でございます。  農林水産省といたしましても、生産者、乳業メーカー、販売業者から成ります協議の場で事態の改善が図られるように、牛乳処理体制の正常化の指導を行っているというところでございまして、今後とも必要に応じて実情に応じた指導を行ってまいりたいというふうに考えております
  24. 鷲野宏

    政府委員(鷲野宏君) 一般論としまして、いわゆる食品の日付管理の問題につきましては、消費者の鮮度品質志向の強まりの中で、食品加工流通業界において関心が高まっておりますが、ただ、日付管理の行き過ぎは先生おっしゃるように、消費者をミスリードしまして、またコストアップを招くなどかえって好ましくない状況を招くというように考えておるわけでございます。  豆腐につきましても実情を調べてみる必要があると考えておりますが、いずれにしましても、豆腐製造業者、小売店等の十分な話し合いの中で対応されることが重要と考えておりまして、必要に応じ、関係業界の話を聞いて指導を行うなど所要の対応考えてまいりたいと思っております
  25. 一井淳治

    一井淳治君 それから、これは畜舎や干し草の保存所等に関連してですけれども、こういったものについても建築基準法の建築基準が適用される。そのために畜舎等の建築コストが高くなって、酪農製品の外国との競争で不利になっているという観点から、私は、昨年の十二月六日の農水委員会におきまして、建設省に対して建築基準法の基準を考えるように、あるいは消防法上の基準を考えるようにということを農水省に要望するようにお願いをいたしまして、それに対して時の局長さんが強く要請しておるというふうな御回答もいただいておるわけでございますけれども、その点どのようになっておるでしょうか。
  26. 岩崎充利

    政府委員(岩崎充利君) 畜舎につきましては、建築基準法が適用になりますが、その条件緩和につきましても、例えば雪おろし慣行があるような場合には積雪荷重規制の緩和があり、それから防風林等の設置による風力圧規制の緩和等の緩和措置があるほかに、また防火壁の設置義務の免除措置が講じられたというところでございます。私どももできるだけ畜舎建設の低コスト化を図るということで、例えば畜舎の整備水準を必要最小限にする、あるいは自家労力や古材なり、間伐材を利用するとかいうような形の中で、低コストの畜舎建築というものを積極的に推進することが重要であるというふうに考えております。昨年、先生から御指摘をされた点も踏まえながら、本年以降、各地におきまして関係省庁とも連絡をとりながらブロック会議を開催しまして、建築サイドを含めた関係者に対しまして、そういうような周知徹底を図っているというところでございます
  27. 一井淳治

    一井淳治君 根本的な問題として、畜舎、これもいろいろ規格があるでしょうけれども、現に田舎の方で行われている畜舎程度のものは、建築基準法の適用外というふうな方向での御努力を要望しておきます。  次に、農業者年金に関連して質問をさせていただきますけれども、現在経営移譲年金が六十五歳末満で七十三万二千幾らということになっております。厚生年金の方は百十九万二千幾らというふうなことで、格段の差ができているという、これは否定できないというふうに思います農業者年金というのは、農民にもサラリーマン並みの年金をという声を背景に生まれたという経緯がございますけれども、やはり農業に一生懸命打ち込んで、将来年をとってから不安定であるということであれば、農業の振興もできないというふうに思いますが、サラリーマン並みの年金水準を確保するためには制度の改善が必要ではないかというふうに思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  28. 鹿野道彦

    ○国務大臣(鹿野道彦君) 農業者年金は、国民年金の上乗せ年金として設けられておりまして、その給付水準は制度発足以来、国民年金の給付と相まって厚生年金並みとなるよう設定しておるわけであります。具体的には、当然加入の対象となります農業経営主の平均的な農業所得を基礎といたしまして、厚生年金と同様の方式により算定した年金額を支給いたしておるわけであります。今後の給付水準につきましては、次期制度改正の中で、厚生年金並みの考えに立ちまして、適切な水準が確保されるよう検討してまいりたいと考えております
  29. 一井淳治

    一井淳治君 農業者年金制度の特徴は、いわゆる社会保障的な要素が主であるとは思いますけれども、それに構造政策的な要素が加わっているということにあるのじゃないかと思います。この年金といいますのは、農業者の老後の生活を守るという点に主眼を置くべきであるというふうに思いますので、やはりこの農業者年金は、社会保障的な年金ということで基本を通していただきまして、構造改革的な要素は別途補助をしていただくという方がすっきりするのじゃないか。そして、農民の老後の生活の安定というためにも、その方がいいのじゃないかというふうに思いますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  30. 片桐久雄

    政府委員(片桐久雄君) 昭和四十五年に発足いたしました現行の農業者年金制度は、年金の給付を通じまして、老後の保障の充実を図るということによりまして高齢農業者の適期の引退と、その経営の若く、意欲のある者への承継を誘導いたしまして、それで生産性の高い農業経営の実現を図るということを目的といたしました、いわゆる構造政策年金という形で発足いたしたわけでございます。私どもといたしましては、こういうような本制度の仕組みは、やはり非常にうまく機能しているというふうに考えているわけでございます。  こうしたことを踏まえまして、本制度は今後とも構造政策的な側面と、それからまた、老後保障的な側面とを結びつけたものといたしまして発展さしていきたいというふうに考えておりまして、そういう観点から、現在その改善策を検討している次第でございます
  31. 一井淳治

    一井淳治君 その場合にも、例えば経営移譲の相手方の違いによって給付の額に格差が出るとか、あるいはいろんな事情によりまして土地を新たに取得して農業を再開した場合には、経営移譲年金が支給停止になるとか、そういったいろんな問題点がありますので、そういう問題点の検討是正ということはよろしくお願いしたいというふうに思います。  次に、農民方々が一番心配しておりますのは、昭和六十二年以降年金資産に手をつけられておる。このままでは、加入者が少ないのに、受給者がどんどんふえていって年金財源が枯渇してしまうんじゃないかという心配がございます。これにつきましては、早急に手厚い国庫補助制度をしいていただきまして、農業者年金の基金の確保ということを何といいましても最優先としてやってもらわねばならないというふうに思いますけれども、いかがでございましょうか。
  32. 片桐久雄

    政府委員(片桐久雄君) この農業者年金制度は、先ほど申しましたように、構造政策年金というような観点から、その政策効果に着目いたしまして、他の公的年金制度には類を見ないような国庫補助を行っているという状況でございます。ただ、先生指摘のように、現在農業者年金の財政事情は、加入者が減少しているとか、受給者が増加するというような非常に厳しい状況にございまして、この財政の基盤を安定させるために、どういう点を改善すべきかということをいろいろ検討いたしておりますけれども、この改善を図るためには、やはり加入者、受給者、それからまた国がそれぞれ一体となって改善を図るべきではないかという観点から、現在いろいろ検討している段階でございます
  33. 一井淳治

    一井淳治君 早急に検討をいただきまして、農民心配ないようにしていただきたいというふうに思います。  それからあと、農業者年金の財政基盤の問題につきましては、加入者の促進、加入促進という問題がございます。被用者年金の通算措置の問題、特定保険料の適用拡大等々をうまく措置していただきたいというふうに思います。  それからもう一つは、農業者年金の加入資格要件を改めていただきまして、専業的農業者の配偶者にも農業者年金が支払われるように、配偶者も加入できるような措置をお願いしたいというふうに思いますけれども、その点いかがでございましょうか。
  34. 片桐久雄

    政府委員(片桐久雄君) 新規加入者の加入促進ということは非常に重要なポイントだと思っております。私どももいろいろ努力をしているわけでございますけれども、今回の制度改正の検討の中でも、先生指摘のような一定の被用者年金の通算措置とか、それからまた特定保険料の適用拡大とか、そういう点もいろいろ検討してまいりたいというふうに考えている次第でございます。  それから、配偶者についての加入の問題でございますけれども、この問題につきましては、国民年金との関係とか、それからまた、配偶者を加入させる場合には特別の保険料を徴収するとか、そういういろんな問題がございますので、これは慎重に対処いたしたいというふうに考えている次第でございます
  35. 一井淳治

    一井淳治君 次に、農業基盤整備の関連に質問を変えさしていただきますけれども、圃場整備についてはいろんな問題がございます農水省の方でもかなり負担金軽減の対策を進めてくださっておるようでございます。ここで、私申し上げたいのは一つだけなんですが、融資を受ける場合に、土地改良をする関係農家が一括して連帯保証をしながら借り受けるという形になっておるというふうに思いますけれども、その関係している、土地改良をやっている農家のうちの一部の人が一括して償還してしまいたいというふうな希望を持っている場合も非常に多いわけです。農家にも資力の優劣がありまして、全然融資を受けなくてもいい農家も少なからずあるわけです。特に、お年寄りの場合には、自分の代のうちに払ってしまいたいという希望も非常に強いように思います。  この土地改良の関係の融資に対しては、手厚い利子補給とかあるいは低利融資がなされておりまして、経済的に余力のある人は払ってもらってしまえば、その低利融資分の予算は浮くわけですから、有効に国家予算を使えるのじゃないかという考え方も出てくると思いますけれども、そのあたりのことはいかがでございましょうか。
  36. 片桐久雄

    政府委員(片桐久雄君) 土地改良事業の補助事業につきましては、国、県等の補助金を除いた補助残部分、いわゆる地元負担の部分につきましては、農林漁業金融公庫からの融資を行っているわけでございます。この融資の繰り上げ償還につきましては、事業実施地区の実情とか、それから土地改良負担金の状況等を勘案いたしまして、農林漁業金融公庫が妥当と認めた場合には、繰り上げ償還を行っていただいているという実情でございます。最近は、繰り上げ償還の実態がかなりふえているというふうに聞いている次第でございます
  37. 一井淳治

    一井淳治君 土地改良の問題は、農民個々の問題、私的な問題ではなくて、今や国の事業ということで、農水省としても、農民を助けるという意味じゃなくて、もう自分がやらなくちゃいけないんだという立場で一層前進していただくことを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  38. 谷本巍

    ○谷本巍君 中山間地域活性化対策と、それから前回時間が不足いたしまして十分聞くことができなかった食管問題、食糧安保の問題等について伺いたいと存じます。  まず初めに、中山間地域活性化対策問題であります。  人が亡くなりますと、町場でも、近所、隣が集まりまして葬式を出すわけでありますが、中山間地域に参りますとお葬式も出すことができないという限界集落が異常にふえてきております。そうしたところの川下の町場では、川上の村が過疎化すると川下の町は、雨が降ると激甚災害に見舞われる、からから天気が続くと水不足に見舞われるという話が最近非常に多くなってまいりました。  その中山間地とその周辺で今どんな問題が起きてきているか。一つの問題は、不耕作地が異常にふえ始めているということであります。中山間地帯における不耕作地がどの程度あるか行政当局はつかんでおるのかどうか、初めにその点を伺いたいと存じます
  39. 海野研一

    説明員(海野研一君) 中山間地帯と申しますのは、はっきりした定義があるわけではございませんけれども、私どもこれまで用いてまいりましたいわゆる経済地帯区分、都市近郊とか平地農村とかいうその区分で農山村と山村について見てまいりますと、これは昭和六十年のセンサスで、耕作放棄面積が、農山村で二・九四%、山村で三・七七%ということでございまして、全国平均ですと二・一二%でございますので、これらに比べてかなり高いというような数字が出ております
  40. 谷本巍

    ○谷本巍君 今伺った数字ですと、まるで実態とはかけ離れた数字であります。私ども農民運動をやっておる仲間が県会などでも随分この問題で質問している例が多いのでありますが、実態とは、かなり低い数字しか出てこないというような状況一般的であります。こうした中山間部の場合で申しますというと、例えば土地改良をやった土地、ただでももらい手が最近はないんです。買い手がないどころか、ただでももらい手がないという状況になってきております。土地改良をやりますというと当然償還金がつきますから、そのためにそういう状況が起こっておるというような状況があるわけであります。  私から改めて申し上げるまでもなく、「八〇年代の農政の基本方向」で食糧安保ということが強 調され、そして担い手と農地の確保ということが強調されておりましたが、これが両面から崩れてきているわけであります。  中山間対策をやる場合に、そうした人の問題、農地の問題、実態把握はやっぱり正確にやっていくことがまず大事だと思うんですが、その点今後やっていただけるかどうなのか、そこはどうでしょうか。
  41. 海野研一

    説明員(海野研一君) ただいま申し上げました耕作放棄面積と申しますのは、あくまでも耕作放棄でございまして、少し手を加えれば耕地に戻り得る状態でございます。相当年限にわたって放棄されていまして、原野になっているようなものは入っていないということでございます。このような問題につきましては、今後中山間地帯対策との関係で一体いかなるものを調査していくか、今後検討させていただきたいと思います
  42. 谷本巍

    ○谷本巍君 十分な検討をされるように、ひとつお願いをしておきたいと思います。  それから、中山間対策をやっていく場合のもう一つの前提的要件としまして、農業生産における生産費の格差が平場の場合とどの程度あるのか、これをやはり掌握する必要があると思うんです。  米の値段で言いますというと、戦前の場合、食管制度ができ上がる前の米の自由市場時代で申し上げますというと、必要量限界生産費で当時の生産者米価は決まっていたと、こう申し上げてよかろうと思うのです。当時の生産費と生産者米価とを対比しますというと、おおむね一・七倍から一・九倍の米価が実現されていた。そういう状況のもとでは中山間部でも米づくりが可能でありました。米をつくりながら山の作業をやるということが可能な条件があったわけであります。ところが、最近の状況で言いますというと、米の消費減退に伴う過剰圧力、そしてまた、良質米と非銘柄米の値開きがひどくなってきたといったような状況の中から、中山間の場合は米の生産をやっても引き合わないという状況になってきているわけであります。  米の生産調査では、これまで階層間の生産費の格差というのについて行政当局は熱心に調査を出してくれるのでありますが、もう一つの大きな問題は、地域別に米の生産費がえらく違う、ここの状況が余り明らかにされてこなかったわけであります。中山間対策をやっていくのには中山間部の米の生産費、これをしっかりとやっぱり掌握する必要があるかと思うわけでありますが、その点いかがでしょうか。
  43. 海野研一

    説明員(海野研一君) ここのところ、特に先ほど申しました経済地帯区分、市町村単位で押さえております関係で、市町村が大きくなるのに伴いまして、どうも必ずしも地域間の動きをうまくあらわせないということで、先ほど申し上げました例えば農山村、山村で見てみますと、第一次生産費で全国平均に対して五%高とか七%高というようなことでございました。というのは、逆に都市近郊でありますとか平地農村であるとかいう市町村であっても、そういう不利な地帯を抱えているものですから、全体、その辺を平均してうまく出てないとかいうことでございます。この辺のところ、どのような工夫ができるか、これも今後検討していきたいと思っております
  44. 谷本巍

    ○谷本巍君 その点、ひとつ篤とお願いを申し上げておきたいと存じます。  次に、来年度の予算と絡みまして、「中山間地域の活性化対策等について」という文書を私いただいておるんでありますが、この第一項を読んでみますというと、   中山間地域については、国土保全や水資源のかん養といった重要な役割を有している一方、地域的、社会的ハンディのために近年その活力が急速に失われてきている。   このことが、国土の均衡ある発展を図る立場からも看過し得ない状況となっており、当該地域の振興を図ることが強く求められている。 というふうに述べられております。そして、平成二年より付加価値の高い作物づくりや生活環境の整備、就業機会の確保、そして農山漁村活性化特別対策の創設を行っていくということとともに、緊急対策として三項目挙げられておるわけであります。  これは、大変大きな農政上の一歩前進というふうに申し上げてよかろうと存じます。今までの日本の農政は、農業農業生産面からしかとらえてこなかったのではないか。これに対してこの新しい対策なるものは、農業とは国土の管理人としての農業、田園と環境を守る庭師としての農業、リサイクル可能な資源で、その保全が地球環境の保全にもつながるというような観点というのが、この中に私はあるのではないかと思うのです。中山間地域活性化対策は、その意味で農政の発想を変える重要な契機をなすものだ、こんなふうに見てよいのではないかと思うのです。  そこで伺いたいと思いますのは、この活性化対策案について、まず第一点として、中山間地とは何か、定義の問題ですね、ここがどうなのかということが第一点。  それから、二つ目の問題としまして、対象地域についてなぜ中山間等に限定をしたかということであります。といいますのは、環境保全ということから言いますというと、もちろん中山間農業は非常に大きな役割を果たしておるのでありますが、同時に、平場の場合にあっても似たような状況があるのではないかと考えるからです。例えば、都市農業がそうでありましょう。埼玉県のある市では、水田をつぶさないために農家に対して減反をやるな、やるなら他用途米をつくってくれ、つくった他用途米に対して政府米価との差額を補助するというようなことを行っておる市があります。市の当局者の話を伺いますというと、そうしていかないというと地下水がかれる、地盤沈下が起きる。でありますから、少々の差額補給をやっても長い目で見ると、その方がつり合いがとれるのでありますという話を私どもは伺ってまいりました。  都市の水田農業は、洪水の調節、地下水の涵養、地盤沈下、そして防災、子供への生きた教育の素材等々重要な役割というのがあるのでありまして、こうしたところについても、やはり一定の対象にしていく配慮があってしかるべきではないのかというふうに私は思うのであります。  さらにまた、通常の平場の純農村部の場合でも、この活性化対策の対象となるのは、恐らく過疎地じゃないと対象にならないのじゃないかと思うのでありますが、平場の場合でも限界生産地などの場合で、やはり同じような観点に立って対象にすべきところというのが私は結構あるのではないかと思うのです。その点、いかがですか。
  45. 鶴岡俊彦

    政府委員鶴岡俊彦君) 中山間地域対策につきましては、今先生指摘のように、いろんな立地条件その他から過疎化が進み、その地域の活性化といいますか、進展は重大な問題になっておるわけでございます。やっぱり私ども農水省対策をやる場合に、中山間地域に置かれております資源、特に農林水産資源を活用してやっていく、さらにその際に、単なる一次生産物じゃなくて加工度を高めていくとか、それと合わせまして農業あるいは林業が果たしている役割を十全に発揮するということが対策の視点になるということで、来年度予算あるいはそれ以前に、そういう機会がありましたらそういう方面での対策をやりたいということで、今先生からお話しがありましたようなことを中心に、来年度予算あるいは今年度のそういう機会も含めまして考えているわけでございます。  ただ、地域につきましては、必ずしも一義的な定義がないということでありますけれども、概して言いますと、平たん地域とは異なって地形的にはまとまった平たんな耕地が少ない、あるいは傾斜地が多いとかあるいは森林が多い地域であるというようなところで、今言いましたように、農林業を基幹産業とし得る地域ということでとらえていく必要があるのではないか。ただ、法制化その他になりますといろいろな問題、そういうことがあるので、まだ最終的な詰めは、これから予算段階で具体的に詰めていくわけでございますけれ ども、振興山村地域でありますとかあるいは過疎地域とか、そういうのが中心になってくるのではないかというふうに考えているわけでございます。  それから、地域を限定しました理由というのは、やっぱり農業政策自身、農業生産を主軸に置きながら、農業の持っておる機能を十全に発揮するということにあろうかと思いますけれども、特に中山間地域が、そういう中で立地条件では不利な面がある。ただ、日本のように高密度社会で、例えば基幹的な道路がつけば、南北に長く横たわり、標高差があり、気象条件がそれぞれ異なるということで、野菜とか果樹とか極めて消費性の高い生産の展開が可能な地帯もあるわけでございますけれども、そういうところを中心にやっていく。それで、対策につきましても、平場地帯の採択条件があるいは異なってくるとか、そういうふうな点で中山間地帯に特有の対策をやっていきたいというふうなこと、あるいは諸般の問題を考えまして、今回の対策におきましては中山間に施行するということで考えているわけでございます
  46. 谷本巍

    ○谷本巍君 中山間地域活性化対策の中身の問題と関連をいたしまして、大臣に若干要望を申し上げたいのであります。  要望を申し上げたいということの第一点は、自治体の自主的な事業を強めることができるような方向、これをひとつ強化していただきたいということであります。この緊急対策の中で、例えば土地利用型農業の体質強化ということがうたわれており、農地の取得、経営改善、これについて一括長期低利資金の融通を行うといったような点等が取り上げられていると思います。こうした土地利用型農業の体質強化の問題にしましても、やっぱり自治体段階でやれるところがかなりあるわけです。  具体例の一つとして、長崎県が行っております新農政推進特別対策事業で申し上げますというと、この事業の場合でしたら、農家が好きな、やりたいと思うやつを一つ県に出してください、五〇%県がその事業について補助いたしましょう。土地改良の場合には、さらに当該市町村が二五%の補助を行いなさいということにしているわけであります。そして、事業のあり方もできるだけ営農集団が主体になってやってくださいというようなことにしておるわけでありまして、土地改良で見てみますというと、三世帯一ヘクタール以上まとまりますと対象にしますというようなことでやっておるわけですね。これがまた非常に農家から評判がよいのであります。やっぱり自治体が打ち出すやつは、さすがにそれぞれの地域農業に見合ったやり方になっているなということを私は感じさせられたわけであります。  さらに、もう一つ例を挙げておきますというと、例えば岩手県の沢内村の場合でありますけれども、ここの西和賀農協では、山村でありまして豪雪地帯であります。この豪雪という条件を逆手にとりながら、生産物の時差出荷をやっているわけですね。露地物が市場になくなってきたときに、ここの生産物が結構高い値段で出ていくというようなことをやっているわけであります。やはりそれぞれの自治体段階で見てみますというと、それぞれの地域が置かれた、土地条件、気象条件、それに見合った知恵のある農政を絞り出しているという例が結構あるわけであります。  そういう意味で、やはり自治体農政の強化ということが大事になってくるだろうと思うわけです。これまでの自治体農政で見てみますと、どちらかと言いますと、一つにはつくることだけに集中するという点がありました。この中身も、これからいろいろ知恵を絞っていかなきゃならぬ問題があるわけでありますが、同時にこれからの問題は、先ほども答弁の中にもありましたように、加工を含む地場流通の問題ですね。さらにまた、地域農業学校給食との結合問題ですね。そして、食生活のあり方の問題。さらにはまた、都市との提携問題等々、自治体がやっていかなきゃならぬ問題が数多くあるだろうと思うんです。この活性化対策を成功させるのには、自治体のそういう何といいますか、知恵ある農政の展開、これと不即不離の関係でなきゃやっぱりうまくいかぬと思うんです。その意味で、自治体農政の強化について、ひとつ大臣の所見を承りたい、これが第一点であります。  それからもう一つの問題は、この中山間地域の活性化対策等、これだけでは中山間の農業がよみがえるとは私には思われません。ともかくも、よみがえらせていくための重要な契機であり、第一歩をなすという意味で私は評価したいと思うわけです。これをやりながら、もう一つ大臣にお願いをしたいと思いますのは、やっぱりもう少し大きく踏み込んだ思い切った施策を講ずることはできないのか。例えば、ヨーロッパ・ECに見られるような平衡交付金給付制度のようなものをやがて創造していこうというような考え方大臣にあるのかどうか、その辺の点も含めてひとつお答えをいただきたいと存じます
  47. 鹿野道彦

    ○国務大臣(鹿野道彦君) 今先生申されたとおりに、地域それぞれどのようにして活性化を図っていくかということで懸命な努力を払ってやってもらっておるわけであります、お互いにそれぞれの知恵を出し合いながら、こういうふうなことだと思います。  ですから、いかにして自主的に、それぞれの地域の資源の特性を生かしながら活性化へ結びつけていくか、こういうふうなことが非常に大事なときだと思います。ですから、何をやるか、どうすべきであるかというふうな、それぞれの自治体がそれぞれ自分たちの自主的な考え方に沿って、これから打ち出されてくると思います地域の活性化構想とでも申しましょうか、そういうふうなことに対しましては、私どもといたしましても、弾力的にそういうふうな実現に向かってより積極的な施策をし、また対処していかなければならない、このように考えているわけでございます。  後段の先生からの御質問の件につきましては、まさしくこれからの中山間地域条件に恵まれないところに対してどう施策を講ずるかという基本的な問題等々でもございますので、これからの勉強課題ではないか、このように考えておるところであります
  48. 谷本巍

    ○谷本巍君 それでは続いて、前回時間不足で十分聞けなかった食管問題と食糧安保の問題について考えたいと存じます。  まず、食管問題であります前回私、浜口長官に伺いましたところ、自主流通米対政府米の比率は、六十四年、平成元年ですかの検査実績で見て、六六対三三になるであろうという予測的な数字を伺いました。この自主流通米が異常にふえてしまったという主要な原因なるものが、自主流通米対政府米の価格差が拡大してきたということにあるというお話でありました。そこで私から、需給調整機能を維持するために政府米を少なくともどの程度持つ必要があるかということを長官に伺いましたら、長官から、公的な考え方として四割というお話をいただいたところであります。  そこで、政府米の数量を四割程度にふやしていくということにするためには、価格差を縮めていくということが対策上大きな一つの政策的ねらい目になっていくだろうと思うんです。どうやってそれを実現していくのか、その点についての長官考え方を承りたいのです。
  49. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 先生から御指摘の問題は、一つは、現在の自主流通米と政府米の役割の関係から、一応の四割といった位置づけをすることを前提にいたしまして、どのように政府米を確保していくのかという問題に尽きることではないかというふうに思います。  私の前回の答弁におきまして、一つの要因といったようなことについて、価格の点について大きな点があるといったようなことも申し上げたと思いますけれども、現在の動き等々から私ども考えておりますのに、現実動きというのはかなり自主流通米に比べまして政府米が多かったわけでございますが、先生指摘のように、ここ数年間におきましてやや加速がついたということでございます。それは繰り返すようでございますが、良 質米について高い価格で売れるといったような仕組みがあることが、一つの前提であろうかもしれないということ。もう一つは、具体的な意味において農家の方々が、そういうような自主流通米生産といったような形に、生産からだんだんと切りかえておられるというような生産の動向ということも大きいものだというふうに考えております。  さらにもう一つ、私どもの行政指導といったような中におきまして、そういうような動きとしまして、自主流通米の比率を先ほど先生指摘のような四割の方向、政府、六割の方向にということで進めてきたという、そういう行政的実態があるということも事実でございます。  そういったようなことを勘案いたしまして、やや結論を先に申し上げますと、私どもはいろいろな会合等におきまして昨今いろいろ皆と議論をしているところでございますが、現在の置かれております政府管掌米は、先生指摘のように、片や良質米と言っては語弊があるかもしれませんが自主流通米、片や安定的な供給を図るという政府米の二つによって大きく分けられておりまして、逆に大きく分けられるところでそれぞれのメリット、自主流通米はより市場原理に対応するという形、あるいは政府米は安定的供給というものを追うというような面はございますが、それぞれの特色はそういうことでございますが、逆に二つはそれぞれ裏腹の関係になっているわけでございます。  そういう意味で、私どもは、地域の実態に応じましてそれぞれの対策を図りつつ、その計画を十分練りながら政府米の役割を果たすべき部分を集荷する。自主流通米の部分については十分農家の方々の納得を得るような形で、その部分についての、自主的な出荷が行われるようにするということになるのではないかというふうに思っております。  そういった全体の観点の中から、具体的な意味価格差ができている部分についてどういうふうな対応をするのかという問題が出てくるわけでございまして、現に自主流通米が政府米に比べて相対的に値段が高いというのは、一面その地域においてその需要が高くなっている、あるいは良質米である、おいしいといったような特性に基づいて出てきている価格の形成の自然な姿であるかもしれないわけでございます。そういう全体の構図を見ながら、価格対策について要すれば検討していく必要があるだろう。今のところは私どもはむしろ、先ほどるる申し上げた中で第三番目の点を申し上げましたけれども、私どもといたしましては、十分そういうふうな各地域におきます個別の動きというものを把握しまして、それで農家の方々あるいは流通関係の方々が納得のできる議論をして、適正な計画をつくるべきではないかというふうに思っておるところでございます。  現にこういったようなものは、私どもの食管、自主流通米制度を四十四年から導入されて、新しい局面というふうに認識をしております。それに応じました計画の立て方とかあるいは指導のあり方といったものも、十分農家の方々の納得を得た上で行われるべき対応の時代だというふうに考えておるところでございまして、価格だけを申し上げたというふうにお受け取りになられたように思いますけれども、現時点におきますども考え方は、やはり計画性あるいはそういう指導の問題、あるいは議論をしていく過程の問題といったようなところに深くかかわっているのではないかというふうに思っておるところでございます
  50. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に、食糧安保の問題について伺いたいと存じます。  前回「八〇年代の農政の基本方向」では、食糧安保ということが強調されているが、「二十一世紀へ向けての農政の基本方向」では、それが欠落しているではないかということを私の側から質問申し上げたところ、鶴岡房長から「八〇年代の農政の基本方向」における食糧安保、その趣旨はもう今日といえども毫も変わっていないと、大変すっきりした御答弁を伺うことができました。  そこで伺いたいと思いますのは、この食管と備蓄との絡みの問題であります。「八〇年代の農政の基本方向」では、「米については、平素からその流通ルートを特定し、公的に管理しておき、いかなる食料需給事情の下でも米の円滑な供給が確保できる仕組みを維持しておく必要がある。」というふうに述べております。「八〇年代の農政の基本方向」が述べているこの点、この趣旨、毫も変わっていないかどうなのかということをまず伺っておきたいと存じます
  51. 鶴岡俊彦

    政府委員鶴岡俊彦君) 前回もお答えしましたが、今先生指摘のとおりでございまして、農政の基本的な役割というのは、国民生活にとって、最も基礎的な物資であります食糧を安定的に供給していくということにあろうかと思います。農政審報告につきましては、確かに食糧安保と言葉自身は特記はされておりませんけれども、そういう認識のもとに食糧の安定供給を図っていく、また不測の事態対応できる能力を備える、長期的には食糧供給力を確保していく、そのために平素からすぐれた担い手でありますとか優良農地、水資源の確保や技術の向上等に努める。それからまた、輸入の安定といいますか、日本でできない、国内でできないものについては輸入の安定を図る。さらにまた、短期的な変動に備えて備蓄等に努めていくというようなことが指摘されているわけでございます。そういう方向に沿って農政を進めているわけでございます
  52. 谷本巍

    ○谷本巍君 官房長前回浜口長官からも私の質問に答えていただいたやつですと、食管問題ですね、政府米というのは、これは三類を中心とした下支え価格ということが述べられており、そして自主流通米については良質米志向にこたえて、市場原理によって対応していくというのが自主流通米の役割だというお話があったわけであります。つまり機能分化ということでありました。  現実の問題として、六割以上が市場原理にゆだねた状況の中で、しかも自主流通米の量が異常にふえる、それを六割まで抑えるということは大変だというふうな状況に、今なってきておるわけでありまして、食管制度、どうやら間接統制も同然のような状況になりつつあるのではないかと思われてならぬわけであります。  そういう中で、食糧安保論のいういわゆる「不測の事態」というのは、国内の生産の目減りもさることながら、海外からの供給変動あるいは大地震等の災害、こうしたものなども含めて、それを想定して安全保障体制をつくらにゃならぬということが言われておるわけでありまして、そういう意味で言うならば、どうも今の食管制度のあり方というのが、果たしてそういう不測の事態が生じた場合に対応でき得ないような事態になっているのじゃないか、こう思われてならぬのでありますが、その点いかがですか。
  53. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 先生の御指摘の点に食管に関連する部分がございます、その部分に関連しておりますので、私の方から答えさせていただきたいと思います。  この点は、やはりどういうふうに考えていくかということにつきまして、同じ農政審のことしの六月に出されました報告におきまして、基本的に、繰り返すようでございますけれども、現行の食管制度の根幹を維持しながら対応していくのだという方針であることを再三私ども申し上げてきておるわけでございまして、具体的なくだりのところは、もう先生御案内のとおりでございますが、政府米については、年間及び全国を通じて安定供給を確保するために必要な数量を政府が直接買い入れまして、保有し、売り渡す必要があるということを書かれているわけでございます。  また、この場合一つの技術的な面、論でございますけれども、この場合、備蓄として、作況変動に見合う程度の、最小限度のものを保管するというふうになりますれば、持ち越し米のみの売却をすることになり円滑な売買操作ができなくなる、いわゆる回転操作という形で、この中を政府米の役割を十分円滑に達成するために一定量のものを持てという提言がなされておるわけでございまして、私どもは、そういった提言ということと全く 同一でございまして、先生指摘の現在の状況から自主流通米へのシフトのスピードが高まってきておるということについては、先ほどるる申し上げましたように、前回の農政審の報告の精神あるいは食管法の目的というものに沿いまして、十分計画を練りまして、そのもとにおきまして、国民の各位に安心をしていただく安定供給の役割をしていきたい、そういうふうに考えておるところでございます。十分その点をも配意いたしまして、食管制度が、食管の法律が目的としております機能を今後とも十分確保するように、私ども努力してまいりたいというふうに考えておるところでございます
  54. 谷本巍

    ○谷本巍君 今長官のお話にも出てまいりました備蓄の問題について、もう一つ伺っておきたいと思います。  「八〇年代の農政の基本方向」では、「全量を回転・更新するという仕組みを原則としているが、この仕組みでは、大量の古米を消費者に供することとならざるを得ず、実情にそぐわない」ので「見直し検討を行う必要がある。」というふうに述べております。  この考え方が変わっていないとするならば、米の備蓄、これを現在本当にやっているのかどうなのか。それからまた、ここで述べている回転備蓄だけではなくて、棚上げ備蓄、こういうものもこれまでに検討されてきているのかどうなのか、その点いかがでしょうか。
  55. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 同じ農政審の報告ではございますが、先ほどお答え申し上げましたように、今回の農政審の報告は、前回の報告の基本的路線の上に、具体的な米管理の問題について提言を行っているというくだりでございまして、そのくだりは、「作況変動に見合う程度の最小限のものとし、これを備蓄として保管するとすれば、持越米のみの売却となり円滑な売買操作が期し難い上、」というくだりがございます先生指摘のような棚上げ備蓄といったようなものにつきまして、当初から棚上げにする備蓄であるということになりますと、いろいろそれに係る財政的負担、国民的損失といったようなものが考えられますので、私どもといたしましては農政審報告の御提案のとおり、やはり回転備蓄といったような形で十分政府米の役割を果たすのが妥当だ、正しいというふうに考えております。  そういう意味で、国民の皆様の多様な要請といったようなものを自主流通米の運営と相呼応いたしまして、政府米の役割を果たしていかなければならないのではないか。その場合は、あくまでも棚上げ備蓄ということではありませんで、やはり回転備蓄という現行のことで行うべきである。そういう意味におきまして、持ち越しの規模の議論がされておりますけれども、私どもは、期末持ち越し在庫の中に備蓄の考え方も入っているというふうに考えているところでございます
  56. 谷本巍

    ○谷本巍君 古米の持ち越し量で言うならば、百万トンを下限として百五十万トンを上限とするというような考え方は以前から出されてきておるみたいですけれども、これは国内の作況変動に耐え得る量というようなことで出されてきた数字であります。食糧安保論が言うこの備蓄というのは、そういうものではなかったのではないのか。  先ほども申し上げましたが、海外からの供給変動、例えば麦の輸入が途絶えたというふうな場合には、今度は米の消費量がふえてくるわけでありますから、そういう点からいえば、どうも百万トンから百五十万トンということでは、これまで言われたところの食糧安保論からするならば、それに耐え得るような数字とは言えないのではないのかというふうに私には思えてならぬのであります。でありますから、当然のこととして食糧安保論を言うのであるとするならば、それは回転備蓄でいえばもう百五十万トンが限度でありますから、やはり棚上げ備蓄も含むものを取り上げていかないというと、食糧安保論というのが変質したという非難を受けても、これはちょっと答えることができないのじゃないかと思うんですが、その点はいかがですか。
  57. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 今の先生の御指摘は、一つは国際経済、国際需給、穀物市場というものをどういうふうに見通すかということにも深くかかわっている問題だろうと思います。  ただ他方、現実におきます備蓄のあり方、米の備蓄のあり方の場合において、そういった国際需給との関連から出てまいります棚上げ備蓄といったようなことに関連いたしまして、果たして現下におきます国民の支持が得られるかどうかという点があると思います。というのは、最初から一定の量を挙げまして、そういったものにつきまして当然棚上げ備蓄にするんだということについては、現下の国際需給あるいは現下の国際情勢、そういったようなものからやはり非効率的だという批判があろうかと思います。もちろん、一たん緩急があったという状態を極めて恒久に考える場合においては、もっと別な考え方がございますが、現在の置かれております日本の国際的情勢、その場合におきます国際需給といったようなことから考えれば、今先生指摘の、国民に安定的な供給を与える備蓄を図りながら、しかもそれが効率的に行われていくという意味において、やはり回転備蓄といったような考え方の方が現実的なものがあるというか、国民の支持を得られるというか、あるいは有用に機能する面があるというふうに考えるべきではないかと思うわけであります
  58. 谷本巍

    ○谷本巍君 時間が来ましたのでこれでやめますけれども、国民の支持を受けるためにはというようなことで、回転備蓄でいくしかやむを得ないようなお話でございますが、ガットの中でも食糧安保を盾にして、そして日本の米を守ろうということでやっておるわけでありますから、やはり食糧安保の問題についてはもっと内容的にしっかりしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、後継者対策について若干伺いたいことがあったのでありますが、時間が来たので後にまた譲らせていただきたいと思っております。  これで終わらせていただきます
  59. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 それでは私から、先般第一回目の質問で御回答いただけなかった、そしてまた私が質問のできなかった範囲内で質問をしてみたいと思います。  私は、先般も申し上げましたけれども、今、日本農業、農村は崩壊寸前である、しかしながら国民の世論は、消費者の世論はこれ以上農村を衰退させてはならない、そしてまた食糧をこれ以上外国に依存してはならないという声が大きいわけであります日本の経済は世界のトップと言われております。そしてまた、今なお発展をし続けておるわけでありますけれども、しかしながら、地方と中央との地域間格差、そしてまた職業間格差が依然として隔たる一方の状況にあるわけであります。その現象として過疎過密のより深刻な状況が醸し出されているわけでありまして、前段の質問者からも詳しくその質問が出されてございます。  それは、何としてもその原因は、安ければ輸入に頼った方がいいというようなそういう安易な政策が長期間続けてこられた結果、今の自給率が低下し、そしてまた過疎過密が深刻化し、農村を崩壊せしめている結果に相なったのではないか、こう思うわけであります。その意味で、将来農村を再生させるためにはいろんな意味で効果があるわけでありますから、大臣として、農家が明るい展望を持てるようなそういう農業政策をどう考えておるのか、その点からまずただしていきたいと思います。よろしくお願いします
  60. 鹿野道彦

    ○国務大臣(鹿野道彦君) 今後の農政を推進する上におきまして、まず農林漁業という第一次産業の重要性というものを私どももさらに認識いたしまして、そしてまたその重要性というものを農業者側だけではなしに国民の皆様方に御理解をしていただく、こういうふうなまず努力をしていかなければならないと思うわけであります。  そういうふうな中で、農家の人たちが誇りと希望を持って農業を営めるように、農業というもの を魅力ある産業としていかなきゃならない、そしてまた明るく住みよい農村というものをつくっていかなければならない、このことが大事なことだと思います。すなわち、農業というものの産業政策、そしてまた地域政策、農村づくり、これを二本の柱としてこれから農政を進めていくことが大事なことだと思っておるわけであります。またそんな中で、将来果たしてどうなるんだろうかというふうなこと、農業者の方々が、将来に対して見通しを持ちながら農業を営むことができるようにすることも非常に大事なことである。このような観点に立ちまして、今日、西暦二〇〇〇年を目標年次といたしまして、今後の、いわゆる需要生産、こういうふうな長期見通しというものも策定をすべく、今作業をいたしておるところであります。  具体的には、いろいろな産業としての魅力あるものとしていくためには、やっぱり生産性向上を図っていくとかあるいは担い手をしっかりと、これから農業に意欲を持って取り組んでもらうためにも、その研修なりあるいは教育というふうなものに一層充実した施策を講じて、そして担い手をより育成していく。あるいはまた、消費者のニーズというものも、多岐、多様、高度化というふうなことになっておる今日、バイオテクノロジー等の先端技術を活用した新しいそういうふうな製品を生み出していく、こんなようなことについてもいろいろな諸施策を講じていく。同時に、地域政策、農村づくりというふうなことにおきましても、集落道なりあるいは集落排水なりあるいは農村公園なり、またそういうところに就業の確保というふうなことも図っていく、このようなことによって農村の活性化を図っていく、こんな考え方で懸命なる努力を払っていきたいと思っておるところでございます
  61. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 大臣から大変力強い御発言がありましたが、歴代の農水大臣から常にそういう御発言をちょうだいしておりますけれども、その自民党政府の長期継続が今の自給率を低下せしめ、農村を疲弊させている現状をつくったわけでありますから、今まで以上に決断を持ってこれに努力をしていただきたい、こう思うわけであります。  その意味で、しからば二〇〇〇年の段階で、少なくとも穀物、野菜、肉類、果物、その程度の分類でもいいですから、長期の確たる見通しがあるならばお答えをいただきたいと思います
  62. 鶴岡俊彦

    政府委員鶴岡俊彦君) ただいまの二〇〇〇年を目標年次とします長期見通しにつきましては、現在作業、策定中でございます。ただ、考え方といたしましては、やはり我が国は南北に長い国土を有しておりまして、地域ごとに土地条件あるいは気象等の変化に富んでおるわけでございます。土地条件自身の制約はありますけれども、これらの自然条件とかあるいは経済条件を生かしながら、農業生産を展開していくということが基本ではないかと思います。  従来から、我が国では国民の主食であります、かつ我が国の風土に最も適しております穀物である米は自給をするというのを基本に、鮮度が求められております今御指摘がありました野菜、果実につきましては、多品目にわたりましてそれぞれの地域の特性を生かした生産を展開しております。これら我が国の伝統的な食生活の中心をなす食品については高い自給率を維持しています。また、そういう方向で施策を展開していきたいというふうに思っております。  また、近年需要が伸びております畜産物につきましては、風土資源の制約の中、国民に安価な畜産物、牛乳、乳製品あるいは食肉、鶏卵等を供給するというようなことから、大家畜のえさであります粗飼料につきましては、国内で極力生産の振興を図りながら安価な畜産物を供給するという観点から、飼料穀物につきましては安定的な輸入ということによって畜産物の安定供給を図っているわけでございます。この飼料穀物につきましては、そういうふうに輸入に依存をしておりますけれども、畜産物自体につきましては、卵、中小家畜、それぞれ品目によって違いますが、相当高い自給率を維持しているわけでございます。今後につきましても、そういう国内で生産を振興できるものにつきましては、極力生産性を上げながら振興を図っていく、あわせて輸入を適切に組み合わせていくということによって現在の豊かな食生活を享受していくというふうな方向に沿って、現在作業を行っているわけでございます
  63. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 ただいま、輸入も適切に含めながら食糧の安定を図っていくというお答えがありましたけれども、全体的には今の自給率を下げるんですか、上げるんですか、これを維持するんですか。
  64. 鶴岡俊彦

    政府委員鶴岡俊彦君) 現在それぞれの品目について策定中でございますけれども、私ども、国内で食糧の供給というのは、国民の納得する価格で供給するということを主眼に置いて対応していく必要がある、そのための生産性を上げていくということによりまして、国内で供給できるものは極力供給していくということで作業を進めているわけでございます
  65. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 同じことじゃないですか。  この間、政府が自民党に示したこの長期見通しというものを見た限りでは、ほとんどが自給率を下げる数字が出されております。ただ、野菜なりあるいはリンゴが若干伸びていますけれども、ミカンは相当減ることになっていますし、そういうことで私は、拡大生産の中でそういう状況をつくりながら農村を活力化し、そしてまた構造政策の断行ができると思うんです。今までやられてきたことは、縮小生産の中で農業を強くするということは私は不可能だと思うんです。日本のさまざまな置かれた条件、社会的な条件、自然的な条件、経済的な条件等々を見た場合に、縮小生産の中で農家個々の生産性を上げることができるでしょうか。しかもまた、土地の所有に対する意識等々を考えた場合に、その辺についての御見解をいただきたい。
  66. 鶴岡俊彦

    政府委員鶴岡俊彦君) 先ほど来お答えしていますように、日本の農地といいますのは、生産力が極めて高い、他国に見られないような高い条件を持っているところだと、また農業技術、知識につきましても高い水準を維持しているというようなことで、それを十全に発揮して最高度の生産を展開したいというふうなことで考えているわけでございます。ただ、先ほど来申していますように、一方農産物の供給につきましては、やっぱり国民自身に納得していただける、理解を得られるという価格で供給することも必要ではないかということで、両面の対応考えているわけでございます。  それで、今縮小再生産という話がありましたけれども、米につきましては、需要の減退からそういう方向を最近とっているわけでございますが、これも極力消費拡大に努めて、そういう減退の方向を何とか緩和していきたいというふうなことで対応考えているわけでございます。  それから、いつも問題となります飼料穀物につきましても、畜産物の消費の増大、なお増大するというふうに私ども見込んでおるわけでございます。それに沿って畜産を振興していきたいというふうなことで、必要となる飼料をどうやって安定供給するかという立場に立っているわけでございまして、縮小再生産がねらいではなくて、やっぱり国内で与えられています条件を最高度に生かしながら、できるだけ農産物の振興を図っていきたいという観点に立って策定いたしているわけでございます
  67. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 先ほど来何回も、国民の合意を得ながら、納得を得ながらという、そういうお話でございますけれども、国民はこれ以上農家にもっと負担を強いていくということを望んでいると思いますか、私はそうは思いません。消費者は、日本の農家は今置かれた条件の中では大変努力していますよと。日本の食糧の高いのは、必ずしも高いですか、日本のいろんな条件の中で。むしろ高くしている状況というものは、生産者価格でなくして生産者から消費者段階、いわゆる流通、販売、加工その段階で高いものをつくっているんじゃないですか。それが当たり前、常識だとする ならば、生産者のそれは、余りにも私は生産者に対して厳し過ぎるのではないかと、そのことを主張したいんです。その意味で、もう一度大臣の御見解をいただきたいと思います
  68. 鶴岡俊彦

    政府委員鶴岡俊彦君) 農産物の価格は、やっぱり工業製品とは違うところがあると思います。土地に依存する米麦でありますとか大家畜生産、あるいは比較的土地が少なくて済みます中小家畜でありますとか、あるいは施設園芸でありますとか、そういうところで内外の価格関係はおのずから形成されていることがあろうかと思います。  そういう点からいきますと、流通段階自身にも合理化を図らなきゃいけないところはありますけれども、やっぱり生産の構造、これは農家の責任ということではないと思いますけれども生産の構造あるいは流通の構造にあろうかと思います。そういう点でどういうふうな対応ができるのか、それはそれぞれ対応できる範囲内で考えていく必要があるのではないかというふうに考えております
  69. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 それでは、日本予算総額の中で農業予算が年々減少しておるわけでありまして、四十兆円時代のときも三兆円、今六十兆を超える予算の中でも三兆円ちょっと出ているだけ。そういう状況の中で、果たして農業の振興というのはあり得ると思いますか、その辺について。  しかもまた、先般私が、今論争を交わしておりますところの消費税の問題を、税特の委員会を傍聴させていただきました。そのとき、自民党の北修二大先輩が野党提案に対して質問しておりました。米価決定の際に、私も先般質問しましたけれども、今の米価の算定方式というものは努力すればするほど安くなるような、そういう仕組みになっておるから、少なくとも農家の生産努力に対する半分は農家に還元すべきだというそういう主張、私と同じことを北先生もおっしゃったわけであります。少なくともことしの予算に、自民党の先生方も野党の改正案の段階でそのようなことを主張しておる。私も同じく主張しているんです。それが農家の願いだと思うのです。  具体的に、ことしの米価に対して今予算策定の段階ですから、大臣としての心構えとその辺のお答えをいただきたいと思います
  70. 鹿野道彦

    ○国務大臣(鹿野道彦君) 農業予算につきましては、国政の重要課題であります食糧の安定供給の裏づけとなる大変重要な予算でございますので、財政再建を図るための厳しい、御承知のとおり、マイナスシーリングのもとではございますが、従来からその確保に最大限の努力をしてきておるところでございます。また、限られた財源の中で、予算の重点的なあるいは効率的な配分を行うほか、当初予算以外におきましても必要に応じ相当規模の補正予算を組むことによりまして、各種施策の充実強化を図ってきておるところでございます。  今回の予算編成に当たりましても、水田農業確立対策の円滑な推進なりあるいは構造政策推進、また中山間地域等農山村、漁村地域の活性化を図っていく。このような農業、林業、漁業をめぐる重要な課題に適切に対処すべく予算の確保、そういうふうな内容の充実、こんなところに努めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます
  71. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 具体的な個々の問題に触れても、今の段階では限界がございますから、どうぞひとつ米価に限らず農業予算の総額において、少なくとも軍事費の膨張以上に増加すべきである。それに対して、担当大臣として精いっぱいの努力をしていただきたいと私は要望しておきます。  それから、ガットの問題ですけれども、ガットの農業交渉について、日本として何としてもこれ以上農産物の自由化を拡大することはできないという立場から、農水省はどのような覚悟でこれに対処しているのか、そしてその実態がどうなっているのか、お尋ねをいたします
  72. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) お尋ねにお答え申し上げます。  ウルグアイ・ラウンドの中で各国の提案がなされておるわけでございますが、我が国も十一月の会合におきまして、農産物交渉に臨む我が国の包括的な提案をやったわけでございます。  内容は詳細にわたりますけれども、かいつまんでポイントのところをまず申し上げますと、一つは、四月の中間合意で農産物の交渉につきましては、保護を漸進的に相当程度引き下げるという基本的な合意があるわけでございます農業保護の撤廃という問題につきましては、アメリカなどは依然として撤廃の主張をしておるわけでございますけれども我が国としては、農業が土地あるいは気象条件といったような制約を受ける農業独自の特殊性といったようなものを持っておること、及び食糧の安全保障でございますとかあるいは環境保全、国土の保全など農業が果たしておる多面的な役割、こういうものを踏まえた交渉が行われるべきであり、そういう観点から、農業保護の撤廃という考え方はとれないということを明確に打ち出しているわけでございます。  それからさらに、そういった観点を踏まえまして基礎的食糧につきましては、特に食糧安全保障等の観点から所要の国内生産水準を維持するために、必要な国境調整措置をガット上の正式な措置としてとることができるような、そういう秩序をガットの中に確立すべきであるという提案をやっております。  それから、特に農産物貿易については、アメリカ、EC等の輸出補助金が攪乱要因になっておりますので、これについては、段階的ではあっても最終的には撤廃に持っていくべきであるという主張を打ち出しているわけでございます。  それから、ウエーバーによる輸入制限、これはアメリカがやっているわけでございますが、そのほか輸入課徴金などにつきましても、公平性の見地から、ガットのもとで同様の規律のもとに置くべきであるという考え方を打ち出しております。  大体、以上のような内容を主とした内容とする日本の提案を行って、ウルグアイ・ラウンドにおける我が国農業の立場を確保するという見地で努力をしているわけでございます
  73. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 どうぞひとつ勇断を持ってそれを断行されるようにお願いをしたいと思います。  それから、次の問題に入りたいと思いますけれども、私は、農業、食料というものは単なる経済的な論理から議論すべきじゃないということは再三申し上げておりますけれども、この輸入を阻止する意味でも、そしてまた、国民、消費者に安全な食料を供給するという意味から、輸入食料、輸入食品の実態がどうなっているのかをただしてみたいと思います。  さきの質問でも申し上げましたように、一九七〇年代には約十八万件あった輸入件数が、一昨年では六十五万件にも達している状況の中で、その検査の、行政検査の実態というものはわずかに三・七%だという、そういう御報告がありました。その辺についてのもう少し詳しい質問をいたしたいと思います。人員的にはその当時とどういう変化がありますか。
  74. 野村瞭

    説明員(野村瞭君) お答えを申し上げます。  十年前の食品衛生監視員の数については、ちょっとこちらに用意してございませんが、六十年度の食品衛生監視員につきましては六十七名、元年度が先日お答え申し上げましたように八十九名になっておるということで、この間、五年間で約二十名の増員をしているということでございます
  75. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 ただいま一年に九名をふやしたという報告がありましたけれども、現場で実際検査に携わっている人の論評がこの新聞に、十月二十日の日本農業新聞と経済新聞に掲載されておりますけれども、少なくとも国内食品の検査並みの六千人ぐらいは完全な検査体制をしくためには必要だという、そういうことを言われております。この一年に九名や幾ら、そして百名足らずのこういう検査員でこの職務が全うされていると思いますか。
  76. 野村瞭

    説明員(野村瞭君) 輸入食品に対する監視の体制につきましては、これは今先生指摘になりま したが、一つには実際に検査をいたします食品衛生監視員の数も関係ございますが、そのほか、かなり最近は添加物あるいは残留農薬等につきましては、高度の検査をいたさなければならないというようなこともございまして、検査機器の整備につきましても努力をいたしておるところでございまして、そのようなことで、総合的に、今後とも輸入食品の安全性の確保につきましては努力をいたしてまいりたいと考えておるところでございます
  77. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 いや、検査機器を使用して能率を上げるというけれども、一定の人員を確保しないと私は絶対不可能だと思うんですよ。ちがった見方をすれば、どんな危険な食料でも簡単に入れる条件をつくっていると言わざるを得ない状況にあると私ども思うんです。その意味で、今までのような一年に九名か十名多くするのじゃなくして、抜本的に、完全に安全な食料を輸入することのできるような、そういう国境措置と検査制度というものを私はつくり上げていただきたいと思うんです。  その意味で、少なくとも厚生省、農水省、それに対する心構え、今までのような流れで私は解決できないと思うんです。それに対する決意と方策を御説明願います
  78. 鷲野宏

    政府委員(鷲野宏君) 先般の、この委員会でもお答え申し上げたところでございますが、輸入食品の監視は、基本的には食品衛生法に基づく厚生省の業務でございます。それで厚生省は、ただいまもお答えがありましたように、その組織なり人員なり予算を使って適切に対処しておられるというように考えております。  当省としましても、この輸入食品の安全性の確保は大変重要と考えておりまして、当省は当省の職務権限の範囲で、輸入食品を含む食品一般の安全対策推進努力をしております。厚生省との連絡は一層密にしてまいりたいという考えであります
  79. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 答えになってないと思うんですよね。  今までのような考え方ではこういう結果になっているんです。抜本的に改善しようとすれば、少なくとも関係省庁の担当者としてこうありたいけれども問題としてできないと。できないとするならば、その方策を我々が政治の面で考えなきゃならぬです。少なくとも担当官庁としてどうスクラムを組んでこれを改善するか、その決意を聞きたいんです。
  80. 鷲野宏

    政府委員(鷲野宏君) ただいまにおきましても農林水産省としまして、厚生省の輸入検疫業務についてはできる範囲で協力はいたしております。例えば、厚生省の行う輸入検疫の中で自主検査業務というのがございますが、自主検査につきましては当省所管の指定検査機関がございます。これが六団体ございまして、これが分担実施をしております。全体の六五%程度は当省所管の指定検査機関において実施をしているわけでございます。  それから、当省の組織がいろいろございます。十カ所の規格検査所とか、あるいは四十七都道府県に設けられた食糧事務所等々におきまして、輸入食品を含む食品についての苦情相談の受け付けをやっております。それから、規格検査所におきましては依頼に応じまして分析検査等もやっております。その結果につきましては、厚生省に必要に応じて連絡をとりまして処理をしてもらうという体制もとっております。  さらに、本省間におきましてもこれまで随時連絡をとってまいりましたが、この問題の重要性にかんがみまして、ことしの十一月から局長レベルの定例の連絡会議も設けた、こういう次第でございます。今後とも一層この点については留意をしてまいりたい、努力をしてまいりたいという考え方でございます
  81. 野村瞭

    説明員(野村瞭君) ただいま先生の方から、輸入食品の安全性の確保についてもっとしっかりしろという御指摘を受けたわけでございますが、私どもといたしましても、これまでも努力しなかったわけではございませんけれども、今後ともさらに一層食品衛生監視員の増員、さらには検査機器の整備等努力をしていかなければならないというように考えております
  82. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 努力するということは、私は先ほど言ったように、それが実現するような努力を期待しているわけであって、単なる口先だけの努力では私は満足しませんから。そしてまた、自主検査の結果について若干触れたいと思います。  外国の公的検査機関というものは輸出時以前の、輸出する以前の検査であって、輸出するときの検査ではないという、そういうデータがありますけれども、その実態はどうですか。
  83. 野村瞭

    説明員(野村瞭君) 外国から輸入されてくる食品につきましては、当該政府が認めた公的な検査機関の証明書をつけてきたものにつきましては、私どもとしては、それを信用するということで検査を省略いたすこともございますけれども、ただ物によりましては、我が国にとって問題となっている例えば残留農薬、さらには先日も問題になりました中国産のキノコの問題もございましたが、そういうものにつきましては、改めて我が国でも検査するというようなやり方をとっておるところでございます。  御指摘の輸出前か生産段階かということでございますが、私どもといたしましては輸出前に検査をされたものというように理解をしているところでございます
  84. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 もちろん自信がないと思いますよ。輸出前の検査だと輸送の段階の薫蒸なりいろんな状態が検査の盲点をついているということになるんです。その実態はわかっているんですか。どういう形で二週間も三週間も、場合によってはアメリカから来るときは三十日以上かかって来るんです。防腐剤、防虫剤、いろんな対策を講じてきているわけです。港に陸揚げの段階で検査しなけりゃ私は検査でないと思う。日本の農産物というのは、収穫以後は農薬を絶対使っていませんよ。輸入食料だからこそ途中で農薬を使うんです。その辺あなた方、完全に日本人の健康を守るという立場からいくならばもっと慎重に対処していただきたい、このことをお尋ねします
  85. 野村瞭

    説明員(野村瞭君) 先ほど、私のお答えがどうも先生の御質問を誤解していた部分がございました。先生指摘の問題はポストハーベストに関した御質問だろうと思いますが、その辺につきましては、必要に応じまして輸入される段階で、我が国におきましても検疫所において検査をいたしております
  86. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 その体制の中でやれますか。本当にやろうとすれば、実害がなくなるような実態をつくることがあなた方の使命なんですよ。形式的にやれば事足りるという性質の立場ではないでしょう。それに対してもっと誠意のある言葉で答弁をしていただきたいんです。ですから、具体的にそういう実態でないようにするためには、農水省と厚生省がどういうプロセスを組んでこれから対応するのか、その決意をお聞きします
  87. 鹿野道彦

    ○国務大臣(鹿野道彦君) 例えば、動物検疫の検査体制につきましては、輸入動向を踏まえまして、昭和六十一年から平成元年度に向けましての予算は、約一一%動物の収容能力の増加を図りまして、また家畜検疫官の定員を昭和六十一年度から平成元年度までに二三%増員をし、円滑な輸入検疫の実施に努めているところでございますけれども、これからこの安全性の問題、大変重要な問題でございますので、厚生省ともより密接なる連携のもとに努力をしてまいりたい、このように考えておるところでございます
  88. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 ガットでいろいろ厳しい立場で頑張るよりも、これをもっと規制することによって私は相当輸入を制限することができる、そして国民の合意を得ることができると思うんですよ。安ければいいというものじゃない、食料は。そういうことで農水大臣、やはり国民に安全な食料を供給する意味でもっと頑張っていただきたい、こう思います。  時間がないので、もう一つ放射能に対する汚染についても、私は質問したいわけでありますけれ ども、残念ながらきょうは時間がないので、後にやらせていただきます
  89. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時四分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  90. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、沓脱タケ子君が委員辞任され、その補欠として林紀子君が選任されました。     ─────────────
  91. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) 休憩前に引き続き、農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います
  92. 猪熊重二

    猪熊重二君 私は、きょうは皆様御承知だと思いますが、食糧庁長官の食糧事務所長、都道府県知事にあてた本年十一月二十日付の「米穀の不正規流通の防止について」という通達についてお伺いします。三十分の短い時間ですが、私はこの通達についてお伺いするのは、初めにお断りしておきますけれども、食糧管理制度とか減反制度とか、そういう政策、制度の当否とは無関係に、通達の内容が少々法律的に問題があるのじゃなかろうか、こう考えるので質問したいわけです。ですから、答弁の方も政策問題云々ということでなくして、質問に簡潔に答えていただきたいと思います。  後々のために、最初に大臣にお伺いしておきますが、大臣はこの通達の存在は御存じで、しかも通達の内容についてはどのようにお考えでしょうか。
  93. 鹿野道彦

    ○国務大臣(鹿野道彦君) 承知をいたしております。  不正規流通米を放置しておくということは、米穀のいわゆる流通秩序の維持に重大な影響を与えるばかりでなしに、食糧管理制度そのものに対する国民の不信を招くものである。このような観点から、食糧庁長官から通達が出されたものだと、このような認識を持っておるところでございます
  94. 猪熊重二

    猪熊重二君 食糧庁長官にお伺いします。  この通達を出した目的はどういうところにあるんだろうか。要するに、米の不正規流通の実態調査のためなのか、それとも不正規流通を取り締まるためなのか、趣旨としてはどういうことなんですか。
  95. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 冒頭、先生から政策考え方といったものと別に、この通達につきまして御質問ということでございますが、私の方は、今御質問のありました点はどういう思想かということでございますので、極めて短い時間でございますが簡単に申し上げたいと思います。  この目的は、既に大臣からお話がございましたように、米穀の不正規流通の防止ということでございまして、三十分をかけて御議論賜りますこの通達の中の前文におきまして、この点については、私自身としましては明確に述べさせていただいているというふうに考えております。  まず第一点は、この通達はそこにございますように、冒頭書いてありますように、五十六年の通達あるいは六十三年の通達によるものでありまして、その経緯につきまして、五十六年というのは先生御案内と思いますけれども、本委員会等々を含めまして、食管制度について抜本的な改革が行われたことに関連する通達でございます。そういう意味におきまして、この点につきましてその次のパラグラフに明確に書かしていただいておりますが、「不正規流通米の存在は、米穀の流通秩序の維持に重大な影響を与えるばかりでなく、食糧管理制度そのものへの国民の不信を招く懸念があり」というような意味において、通達を五十六年及び六十三年に続きまして出さしていただいたということであります。簡単に申し上げれば、繰り返すようでございますけれども、制度を守るといった方々が損をし、制度を守らないというのが得をするといったようなことでは困るわけでございまして、そういう形のものに出るものであるというのがまず第一の考え方でございます
  96. 猪熊重二

    猪熊重二君 それだけ今お話しになったけれども、私の質問に答えてないじゃないですか。余計なことを言わなくてもいいから、この通達の目的は不正規流通の実態調査のためなのか、そうじゃなくて不正規流通を取り締まるためなのか、どっちなんだと、こう聞いているんです。どっちですか。
  97. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 先生の御質問の点の、取り締まるという意味はどういう意味でございましょうか。私の方の言葉で言いますれば、こういう形の上で提示をさしていただいているわけでございまして、それが二者択一で調査か取り締まりかという問題ではなくて、この流通の一片の通達ではございますけれども、それに関連いたしまして社会的な流れというものがあるわけでございますから、そういう意味の中で、法的な意味での御質問に対して私はそういうふうに答えているわけでございます。この通達の中で、この考え方というのを明確に述べさしていただいているところということでございます
  98. 猪熊重二

    猪熊重二君 あなたが答えぬなら私が答えてあげましょう。この趣旨は書いてあるじゃないですか。「米穀の不正規流通の実態を的確に把握」するためのことなんだと、それから「行政指導等の円滑な実施に資するため」だと書いてあるじゃない、自分で。書いてあるでしょう。要するに、不正規流通米の取り締まりだとかそんな問題じゃなくて、実態調査と行政指導のためだと、こう書いてある。ところがここに書いてある中身は、私から言わせればほとんど取り締まりのための各種の行動を書いてあるように思う。これは後で個々的に聞きます。  いずれにせよ、農水省の職員は食管法に基づく違反行為についての犯罪捜査権がありますかありませんか、答えだけでいいです。
  99. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 先生の御指摘の捜査権という意味の内容でございますが、まず結論的に申しまして、捜査権と俗に言われているものはこの食管制度にはない、そういう意味での食管の中での、先生のおっしゃる捜査権という意味は明確じゃございませんけれども、私ども考えております、いわゆる捜査権という概念からは捜査権はないというふうに考えております
  100. 猪熊重二

    猪熊重二君 あなた、私が質問するのに対して一々言葉の概念をどうせいこうせいと言っているけれども、捜査といったら刑事訴訟法から、憲法から全部に始まって捜査というようなことはもう明確じゃないですか。いずれにせよ、この不正規、大量かつ継続的に不正に出荷している生産者について、この通達によれば警告書を交付せよ、その者の出頭を求めて厳重注意せよ、誓約書の提出を指示せよと、こういうふうなことが書いてありますが、これは相手方の生産者に対してどの程度の法的強制力を持つものとお考えですか。
  101. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) この点につきましては、私どもの問題の前に、先生先ほど申した点で申し上げますと、あくまでもこれは一つの通達でございます日本国の憲法あるいは各法律のもとにおいて行われるものでございまして、そういう意味で、その全体のコンテクストの中で行われるというふうに、当然のことながら考えるべきだというふうに思っております。  さらに今、御指摘の点におきまして、食糧事務所や都道府県が、今御指摘の警告書の交付あるいは厳重注意あるいは誓約書の提出等につきましては、当然ここの部分に書かれておりますように、「大量かつ継続的に米穀を不正規に出荷している者に対しては、以下の措置を講じ、」というふうな文言になっておりまして、この建前の上から講じられるべきものであります。そういう意味におきまして、当然相手の方々に、そういう者に対して強制力を持つというようなものではございませんが、こちらの方から説明をし、十分それに対して事情説明して行われるべきものであるというふうに考えているところであります
  102. 猪熊重二

    猪熊重二君 要するに、これは全く捜査権もないし強制力もない、相手方の任意の行為に期待するだけのことであると今長官もおっしゃったし、私もそう思うんです。しかし、ここには今申し上げたような各種の行為について、以下の措置を講じるものとするというふうな文言になっているんです。そうすると、何か出頭を求めることが権利であって、求められた生産者は出頭しなきゃならぬというふうな誤解を生ずるおそれがある。要するに、任意のものであるというふうなことをもう少し文言的に明確にするようなことをお考えじゃなかったんですか。
  103. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 冒頭、先生がおっしゃったように、この通達は、都道府県及び食糧事務所に対してなされたものでありまして、一般国民に当然のことながらなされるべき法律とかそういった公布とか、そういったものではございません。この点につきましては、現在の不正規流通の実態に即しまして、先月の末各都道府県からお集まりをいただき、あるいは同席におきまして食糧事務所におきましての議論を行いました。そういったものの一つのマニュアルという形で出されたものでありまして、いみじくも先生がおっしゃったように、誤解を受ける点があるという御指摘ではございますけれども、あくまでもそういうもので、具体的に一般の市民に対し、一般の国民に対しこういったものが法律的な効果という形で行われるべきものとは毫も考えておりません。  あくまでも、これは一つの通達でありまして、私ども食糧庁が傘下の食糧事務所あるいは都道府県に対して行ったことでありまして、不正規流通といったような現実に起こっている事態に対しまして、どういうふうにそれぞれの吏員が、それぞれの職員が機能するか、どういうふうに行動するかの一つの指針を示したということでございます
  104. 猪熊重二

    猪熊重二君 今長官がおっしゃるように、都道府県知事あるいは食糧事務所長、それを通じての職員が法律的に全部わかっているから措置を講ずるものとする、こういう文章があったとしても任意の問題であって、相手方に強制し得るものじゃないということを農水省の職員は全部知っているから心配ないんだということであれば、それはそれで結構なことです。  次に、中止指導にもかかわらず悪質な者については氏名を公表する、こういうことが規定されています。この「氏名の公表を行う」というのは、具体的にはどのような方法で行う、どのような内容で行うつもりなんですか。
  105. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 具体的には、ここに書いてあるとおりでございまして、それ以上のものを具体的に心づもりでこういうふうになっているということを考えておりません。ここの点につきましては、極めて十分に説得をしあるいは説明をしというふうな対応を行った違反者に対して、ごくごくのものに関連いたしまして、そういうものを守らなかったというような者につきまして、氏名の公表という手段を考えているわけでございまして、そういう意味におきまして、これが具体的に細則をどういうふうに考えているかということは、個々の実態におきましての中でゆだねられるべき問題であるというふうに考えているところでございます
  106. 猪熊重二

    猪熊重二君 氏名を公表すると言うけれども、不正規流通米の調査をして、調査目的からしたって何も氏名を公表する必要性は一つもない。むしろ、調査と無関係なことだと私は思う。行政指導としても、氏名を公表するということは、行政指導として本人に対する指導でなくして、第三者に対する見せしめじゃないですか。この通達が言っている不正規流通米の調査の観点からも行政指導の観点からも、いずれにせよ氏名の公表をするなんていうことは全く不必要、不適切、さらに私は違法だと思う。氏名を公表するというふうな権利がどこにあるとお考えなのか。  ついでに申し上げれば、大体犯罪被疑者にしたって被疑者の氏名を公表するなんてことは、警察、検察庁、やっちゃいませんよ。ほかの行政庁で、どういうところでどういう氏名公表しているか知らぬけれども、あなたは不正現流通米をやっている、やめると言ってもやめませんから氏名を公表しますなんていうことが、この農水省食糧庁長官の通達の中で、どのような根拠に基づいて適法であり妥当だとお考えなんですか。
  107. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) いわゆる公表制度については、本来行政が行うべき一つの手段としての情報の提供だというふうに考えております。法律的根拠を必要とするものではないというふうに考えます。  しかし、公表が行われれば制裁的意味を持つことになるという点についての先生の御指摘があります。この運用については、当然のことながら慎重に行うべきたぐいのものでございます。私どもが一つの考え方として、公表という点について書かせていただいておりますけれども、具体的な運用等については別の観点により、もちろんその人の人権とか、そういった観点から十分考慮されるべきであります。すべてこの通達において、ことごとくそれを充足して細部まで書くということではございませんが、一つの手段として、公表といったようなものがあるということを書かせていただいたわけでございまして、ここの中で、その実態の中でどういうふうにやるかということについては、十分考え対応していかなければならないといふうに考えているところでございます
  108. 猪熊重二

    猪熊重二君 私は、このような不正規流通米を出した人間を、調査の結果を公表するということは憲法に反すると思う。個人の尊厳の条項にも反するし、個人の名誉権、プライバシー権、全部侵害すると私は思う。  先ほども申し上げたように、いわゆる犯罪者であったって氏名の公表なんていうことはないんです。不正規流通米を出したということで氏名を公表するなどということは違法行為であると私は思う。取り消すべきだと思うんです。大臣はどのようにお考えですか。  そして、あなたがこの公表ということをあくまで正当な制度であると言うなら、また次回の委員会に内閣法制局も呼んできっちり見解も伺い、明らかにしたいと思います大臣、所見どうですか。
  109. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 御指摘の点についての公表制度というものにつきましては、法的な根拠等を含めまして現実に行われている行政の一つのルール、行政の一つの手段でございます。そういったものにつきましての問題につきましては、先ほど御説明申し上げておりますように、本来の情報の提供でありまして、そういったような中で、具体的に公表するというのが完全に違法であるというようなことではないというふうに我々は考えております
  110. 猪熊重二

    猪熊重二君 情報の提供だからいいということじゃないんですよ。情報を提供するといったら、税務署で調べた結果の情報を全部提供しますと、税務署で過少申告だ、脱税だということを全部公表していますか。情報の提供だから氏名の公表が許されるなんていうことは全く論理的に関係ない。いろんな情報を行政機関が持っているけれども、その持っている情報を国民に開示することが必要だけれども、開示した場合にそのような個人情報を、個人の尊厳、個人の名誉、個人のプライバシーから個人情報は保護せにゃならぬという法律ができているのをあんた知っているでしょうや。いずれにせよ、あなたとしては、これは収集した情報の公開だから別に違法でも何でもない、取り消す気もないし修正する気もないと、こういうことなんですね。だとしたら、大臣の意見も伺っておきたい。
  111. 鹿野道彦

    ○国務大臣(鹿野道彦君) 今食糧庁長官から答弁を申し上げたとおり、情報の提供でありまして、行政の手段として行う、こういうふうな食糧庁長官考え方と同じでございます
  112. 猪熊重二

    猪熊重二君 この通達は氏名の公表というところで、まことに不当、不法だと私は思うんですが、さらに、この中に有償譲渡制限違反の疑いがある場合には、次のような調査及び事実確認を行うということが書いてございまして、「当該生産者自 らの供述を得ること。」「有償譲渡行為の現場を確認すること。」「有償譲渡に係る個別の行為について、譲渡を行った数量、日時及び場所、譲渡の対価、譲渡の相手方等につき特定するよう資料等を収集すること。」と、このようなことが書いてあります。  まず私は、ここに書いてある有償譲渡制限違反の疑いがあるのであれば、このような捜査のまねごとのようなことをするんじゃなくて告発すべきであるということは、刑事訴訟法上の公務員の一般的義務として書いてある。なぜ告発しろというふうに指導しないで、この捜査のまねごとみたいなことをしろと言うんですか、理由。
  113. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) ここで書かれました部分につきましては、当然のことでございますけれども、告発の事態というものが行われれば当然告発ということが行われます。ただ、それに関連をいたしまして、先生はまねごとだというふうにお話しがございましたけれども、当然当事者のみずからの供述が行われれば、それを得るようにしろということを言っているにすぎませんで、そういった具体的な点について、慎重に相手の供述なりあるいは現状の確認といったものをしておくことが、行政の運営の上においても全く必要だというふうに出るところでございます
  114. 猪熊重二

    猪熊重二君 先ほどから申し上げているように、この通達が目的としているのは不正規流通米の実態の調査なんです。大体その不正規流通米の実態を調査せよと、調査するということの権限はどこにあるかということになれば、食糧管理法十三条、それから規則の七十六条、これからきているんであって、これは要するに、流通の実態の調査にすぎない。何も流通の実態の調査をするのに、今申し上げたような個別的な日時から場所から、全部のものをはっきりさせなきゃならぬからそういうふうな調査、事実確認を行えというふうな必要は全くないじゃないですか。  こういうふうなことを今回の通達でやったのは、私が邪推すれば、六十年十二月に、秋田食糧事務所と秋田県知事が連名で秋田県警に食管法八条の三違反で告発した。この事件が六十三年一月秋田地検で不起訴になった。その不起訴になったときの理由が、秋田地検で今申し上げたような個別的な、具体的な問題がなければ起訴できませんよと言われた。これを補完するためじゃありませんか。要するに、今後食管法違反事件を公訴提起して裁判にかけようと、そのことのための、警察、検察庁の下働きと同じことをやろうとしている、このように思うが、今回の通達は今申し上げた不起訴になった事件とは全く無関係なんですか。
  115. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 先ほど来お話しを申し上げておりますように、今回の通達が出された背景といったようなものにつきましては、既に五十六年の通達、さらに六十三年の通達があるということを申し上げたところでございます。  ただ、先生がおっしゃったような形ですべてこの通達が、この通達の唯一の目的がそういう証拠を集めるというようなことであることは間違いであります。私どもの行っておりますのは、現在の食管制度のもとにおきまして、食管制度を守る人たちが損をし、食管制度を守らない人が得をするといったようなものに関連をいたしまして、食糧管理制度の上から、この程度の通知を出さしていただいたということでございまして、そういったものが単にひとり食糧庁だけではございませんので、それぞれの食糧管理制度に関連をする人たちの協力をもって、円滑に実施されるものだという考えに出るものであります
  116. 猪熊重二

    猪熊重二君 私が申し上げているのは、不正規流通米がいいとか、あるいは自主流通米じゃなくて、そっちの方だけでもうけようとするのがいいとか悪いとか、そういう問題じゃないんです。不正規流通米の実態を調査すると、それだけの行政目的で。法もそれしか許容していないとすれば、その法に従った行政を執行したらどうなんだと、こういうことを申し上げているんです。  もし、目的が正しいからどういうことをやってもいいということだったら、極端に言えば法律の半分は要らなくなってしまうんです。憲法三十一条で法の適正な手続と、こういうことを言っているのは、手続が正当でなかったらだめなんだということを言っているわけなんです。あなたは一生懸命食管制度、あるいは減反政策はまだおっしゃっておらないけれども減反政策、いろんな問題でこのためのこういう政策をやるための正当なことで、そのためにこの通達があるんだ、だから通達は正しいんだと。私は中身が正しいから方法は正しいというわけにはいかぬということで、先ほどから申し上げているんです。  時間がないから最後に一つだけ。減反政策についても同じことなんです。減反政策に賛成する反対する、いろんな人がいる。もし、この通達が減反政策に反対している人間を集中的に取り締まろうと、取り締まることを目的としているものだとしたら非常に重要なんです。あなたに今伺っても、そのとおり、そうするつもりでいますと言うことはないでしょうけれども、要するに減反政策に協力せず、自由に米をつくって不正規に出荷しているこういう人間を対象とし、その人間に対する調査、あるいは私に言わせれば取り締まり、そのためにこの通達を出したんですか、どうですか。
  117. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) まず、先生の御質問についてお答えしますと、先ほど来何度も具体的に御質問があり、それにお答えさせていただいたとおり、この通達の趣旨は明確に最初のところに書かしていただいているとおりでございます。食糧管理制度のもとに行われます不正規流通の防止といった観点から行われているのであります。さらに、先ほど先生が議論をされましたけれども我が国におきましての全体の体系は、一片の通達によって法律がなされるということではございません。もちろん、具体的な運用等々に十分配慮されなければいけませんが、この通達というものは全体の法律体系のもとで行われるべきものであり、かつまたその実態の目的というのは、現実の生活あるいは現実に行われている行政といったようなものを具体的に反映してこそ、中身の正確な理解ができるものだというふうに考えます。  もちろん、その技術上の問題についての先生の御提起はわかりますが、この通達が違う国において行われているものではございませんで、現に生きている具体的な食管制度のもとに行われているものであり、そういうものの中で当然に考えていかれるべきものであり、そういう意味で限定されているものだというふうに考えるべきだと思います
  118. 猪熊重二

    猪熊重二君 あなたが今おっしゃった理屈は、それは私もわかります。もしそうだとしたら、この通達は半分ぐらい書き直さなきゃならぬ。それを読んだら、あなたは、これは県知事やあるいは事務所長に対する通達だからいいと、こうおっしゃるけれども、時間がないために私は省略しましたけれども、臨検検査についても、倉庫、事務所等への立ち入りあるいは関係帳簿、書類の調査事情聴取等についていろいろ書いてあるけれども、これらが全く任意のものであって、相手方の同意、承諾がなければ何らできるものではないというふうな趣旨が全くこの通達からは出てこないんです。まるで自由に施錠を解いて中に立ち入って、勝手に関係帳簿、書類を見て占有してできるような雰囲気の記載になっているんです。もしそれが違うと言うんだったら、私がこれを読む能力がないわけだ。このような行動をするについて、相手方の同意なくして任意にできるものじゃないということについて、もう少し読んだらわかるような通達にしなければなりません。  先ほど私が申し上げたように、減反政策に反対している人間に対する集中的な取り締まり、取り締まりが気に入らないとすれば調査、指導を目的としてこの通達が出ているんですか、どうですかということについての御返事はいただいていないが、いかがですか。
  119. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 先ほどの先生の御質問について、この趣旨は、食管制度の運用、食管制度に基づく行政指導、食管制度に基づく不正現流通の対策というような観点から行われたという意 味においてお答えしたつもりでございます。  先生の御質問の点の一番の核心は、私なりに理解しますと、この通達の点だけを見れば、現行の背後にあります法律の体系というのが読めない、こういう御指摘だと思いますが、私どもの通達等々はあくまでも現行の憲法、現行の法律、現行の政令等々に基づいて行われているものでありまして、そういう意味でトータルで読むべきは当然のことだと思っております。  そういう意味において、具体的に立入検査あるいは食管制度における言葉におきますと、臨検というような言葉があるわけでございまして、そういう意味において、具体的な会議等の中で疑問になって出てきた部分について、私どもは通達をさせていただいたということでございます
  120. 猪熊重二

    猪熊重二君 もう時間ですから、私は減反政策について一言だけ申し上げておきたい。  減反政策は単なる政府の政策にすぎない、この政府の政策に賛成し反対する、これは国民にとって自由なことです。しかるに、政府の減反政策に賛成しないということを理由にして、法的に区別して差別して取り扱うとしたら、それこそ先ほどから申し上げているように日本国憲法の法体系に反する。法律をつくり、国民にそのような権利義務を課すのは法律だけだ。国会だけが国の唯一の立法機関です。その委任、命令を受けて政令があり省令があるんです。単なる政府の閣議決定などという政策によって国民に権利義務を課するようなことは絶対あってはならぬ。  これだけを申し上げて質問を終わります
  121. 林紀子

    林紀子君 私は、まず厚生省に輸入ポテトの農薬残留問題についてお伺いしたいと思いますが、子供たちの大好物であるフライドポテトから、残留農薬が検出されている問題についてお聞きしたいと思います。  私は先日、北海道の十勝の畑作地帯にお邪魔する機会がありました。ちょうどジャガイモの収穫期で、ポテトハーベスターというものに私も同乗させていただきまして、機械で収穫をしながら選別をする、そういう実態も拝見してまいりました。私がお訪ねいたしましたお宅は、兄弟二家族で四十五ヘクタールの畑作を行っている。ジャガイモ、ビート、麦、それに現金収入ということでブロッコリー畑七ヘクタールを行っているというお宅でしたけれども、この夏は二時間から三時間しか寝ることができないような状態で、ブロッコリーの収穫にも追われていた。私も広大なブロッコリー畑の真ん真ん中でお話を伺ったわけですけれども、二、三時間しか寝なくても本当に農業が好きで生きがいを持ってやっているというお話を聞いたわけです。  ところが、ビートも麦もことしは値下げをされ、この二家族で赤字は今年度で二百万円から三百万円出るのではないか、今までの累積赤字が一億円を超えるのではないかというようなお話も伺ってまいりました。本当に農業を愛して一生懸命やっている方々が、このように大赤字を抱えなければいけないというそのひどさというものは、本当に胸にこたえたわけですけれども、その上、日本で十分とれるジャガイモまでどうして輸入しなければならないのか、こういう疑問も持ってまいりました。  経済企画庁の所管法人である国民生活センターが、九月にフライドポテトの比較テスト結果を公表いたしましたが、その中で、調査した十一銘柄中七銘柄からクロロプロファムという農薬が検出された、特に調理済みのフライドポテトからは全部検出されたという、大変ショッキングな事実が明らかにされております。このクロロプロファムというのは、日本では食品の残留基準はなく、いわゆるポストハーベストとしても認められておりません。当然のことながら、国産のジャガイモを原料としたフライドポテトからは検出されていないわけですけれども、この事実関係はどうなっているか、厚生省に伺いたいと思います
  122. 内山壽紀

    説明員(内山壽紀君) お答えいたします。  国民生活センターでのフライドポテトテストの結果で、クロロプロファムという農薬が微量検出されたという報道があることは承知しております。それで、国民生活センターの検査では、本年二月から五月にわたりましてフライドポテトを検査しました結果、国民生活センターのデータでは〇・〇五から〇・三ppmの残留値であったというように承知しております
  123. 林紀子

    林紀子君 検出されたものは微量だということですけれども、これは確かに検出されている。  しかも、東京都立衛生研究所の調査では、冷凍ポテト二十検体中十五検体から最高四・五ppmのクロロプロファムが検出されています。これは登録保留基準をはるかにオーバーしていると思います。しかも、アメリカ産だけで言いますと、七検体中六検体から見つかっているということです。そして、さらに重大だと思いますが、クロロプロファムというものを油に溶かして過熱した場合、二百度以上では、クロロプロファムよりも六倍から八倍も急性毒性が強いメタクロロアニリンという物質ができるということも報告がありますが、都立衛生研究所の話では、冷凍ポテトを油で揚げる温度は、普通は百八十度だから、調理後のフライドポテトには残らないのだと言っております。しかし、この差はわずか二十度、危険なことに変わりはないと思います。  もう一度厚生省にお聞きしたいと思いますが、こういうポストハーベストの食品残留基準をことしからつくることにしているということですけれども、ジャガイモの残留基準というのはいつごろになったらできるものでしょうか。
  124. 内山壽紀

    説明員(内山壽紀君) 今先生もおっしゃられましたように、平成元年度からポストハーベストの残留農薬基準の設定に取りかかっておりまして、私どもの計画といたしましては、小麦、大豆などの主要農産物につきましては、平成三年を目途にその基準を設定していきたいと考えておりまして、現在ポテトを入れるかどうかということについては検討中の段階でございます
  125. 林紀子

    林紀子君 まだ検討中ということなんですけれども、フライドポテトというのは、本当に子供たちが大変喜んで食べているものですので、早く基準をつくるようにということもぜひお願いしたいと思います。  それから、ウルグアイ・ラウンドへのアメリカ提案発表に当たりまして、ヤイター農務長官とヒルズ通商代表が声明を発表していますが、これを読んで大変驚きました。  ヤイター農務長官はこのように言っています。植物と動物を守る措置をすべての国に共通のものとするため、衛生・植物検疫基準を調和させ、これによって消費者の健康と安全のためという見せかけのもとにつくられている貿易障壁を撤廃する。さらにヒルズ代表も、健康と安全に関する措置を消費者のためではなく、輸入制限のために利用している、こういうふうに非難しております。要するに、各国が食生活の違いに基づいてつくっている安全基準を一方的に見せかけだと非難して、貿易拡大のために基準を調和させる、こう言っているわけです。大変な安全無視の姿勢だと言わなければならないと思います。ポストハーベストに対する安全チェックをする上で、アメリカからの輸入食品が最大の対象になると思うわけですが、こういうひどい非難があっても、ポストハーベストの食品残留基準を腰砕けにならずに進める決意があるかどうかということを厚生省にお伺いしたいと思います
  126. 内山壽紀

    説明員(内山壽紀君) 私どもも、平成元年度からポストハーベスト、いわゆる輸入農産物に対します残留農薬の実態調査あるいは安全性のデータ等を十分に取り寄せまして、それから関係各国とも十分協議した上で、安全性を基本に、残留農薬基準というものを策定していきたいというふうに考えているところでございます
  127. 林紀子

    林紀子君 食品の安全チェックについては、日本政府が十一月のウルグアイ・ラウンドの農業グループ会合に提出した提案の中で、初めて日本政府としての態度を打ち出しましたが、アメリカ政府が日本提案を二つだけ評価した、そのうちの一つだと言われております。詳しく触れる余裕は時 間の関係でありませんけれども、科学的根拠、今厚生省からもお答えがありましたけれども、随分これが強調されているなという印象を受けました。しかし、これまで食品や薬品の安全問題をめぐって、比較的には大丈夫なはずの物質が安全ではなかった、こういう事実も随分ありました。また、日本提案は国際貿易の偽装された制限となるような方法で本措置、つまり食品衛生措置を適用しないものとする、こういう言い方もしておりますが、これは今、私が述べましたヤイター農務長官やヒルズ通商代表の言い方と大変よく似ているということを指摘しておきたいと思います。  次に、経済局長にお伺いしたいと思いますが、私は十一月二十一日のこの委員会で、米の自由化問題について質問を行いましたが、その後ガットに日本政府が農業について提案を行ったことを初め、幾つかの進展がありましたので、もう一度質問させていただきます。  まず、アメリカのヒルズ通商代表がアメリカの農務省主催の会議で、日本は米市場を閉ざしており、世界の貿易制度を混乱させている、基本的な改革と市場開放を日本の短期的な課題とすべきだ、こういうふうに述べたと伝えられておりますが、この事実は確認しているかどうか。また、あわせてお聞きしたいのは、日本の米輸入制限が世界の貿易制度を混乱させている、こういうのは全く根拠のない非難にすぎないと思いますが、いかがでしょうか。
  128. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) 今御質問の中で、ヒルズ代表の発言のことをおっしゃったわけですけれども、私どもは、そういう発言があったかどうかについては正式に確認をいたしておりません。  それから、正式に確認いたしておりませんけれども、いつも申し上げておるわけでございますが、日本は輸出と輸入の差額、純輸入ということでは世界最大の農産物輸入国でございまして、世界の農産物貿易の安定に大変大きな寄与をしているわけでございます。  八八年が一番最近の時点での数字でございますけれども我が国が八八年一年間に輸入した農産物の総輸入額は二百七十四億ドルでございます。これは、一人当たりに直しますと百七十二ドルになるわけでございますけれども我が国を上回る一人当たりの、例えば西ドイツが四百八十六ドルでございます。あるいはイタリーの三百四十二、英国の三百二十一ドルというような数字もありますけれども、この中には、ECの域内で加盟国同士の貿易によって輸入しているものが相当含まれておりますから、純然たるEC域外からの、第三国からの輸入ということになりますと、日本の一人当たりの百七十二ドルよりも下回るということで、我が国は総額においても、一人当たりの輸入額においても世界の農産物貿易に、非常に大きな貢献をしているということは間違いなく言えるわけでございまして、ヒルズ代表が仮に、日本の農産物貿易あるいは米の問題にリンクさして、世界の貿易制度を混乱させているという非難をしたとすれば、それは非常に間違っていることであるということは間違いないと思います
  129. 林紀子

    林紀子君 日本は、一九七〇年代に入ってからは基本的には米の輸入をしておりません。七〇年代、八〇年代を通じてアメリカが米の生産をふやす一方、東南アジアの諸国が米の自給を達成してアメリカの米が余った、そういう事実はあると思いますけれども、それはアメリカの政策でありアメリカの勝手だと思うわけです。日本の米の政策がまるで世界の貿易ルールを混乱させている元凶であるかのように言うのは、見当違いも本当に甚だしいと思うわけです。  ところで、ヒルズ代表は米の自由化を短期的な課題だとも言っています。そこで、大臣にお伺いしたいのですけれども、十一月二十八日付の産経新聞では、ヒルズ代表が小沢自民党幹事長に対して、次の総選挙が終わるまでは、日米二国間では米自由化問題に触れないことを非公式に約束していたということを報道しています。小沢幹事長も記者会見で、密約ではないと言いながらも、ヒルズ代表と米の自由化問題について話し合ったことは認めております。私は、身勝手なアメリカの米自由化の圧力は断固として拒否するのが当然で、総選挙までは勘弁してほしいなどという、泣きを入れるような問題ではないと思うわけです。外交を党利党略に使うものだと言われても仕方がないのではないでしょうか。  そして、これは総選挙が終わったら米を自由化すると言っているのに等しいと思わざるを得ないのです。農政の最高責任者として、大臣は小沢幹事長から何か聞いていると思いますが、どうでしょうか。
  130. 鹿野道彦

    ○国務大臣(鹿野道彦君) 小沢幹事長は、報道によりますと、ヒルズ代表との話においては米の自由化はだめですよと、こういうふうなことを申しておる、こういうことの承知をいたしております。ですから、私どもといたしましては、米の貿易問題につきましては日米の両国政府間で二国間協議の対象とはしない。こういうふうなことで、現在進行中のウルグアイ・ラウンドにおきまして討議をするという方針が、両国において認識の一致を見ておるわけでありますから、この方針が、選挙を意識してとかあるいはどうこうとか、あるいは選挙の前とか選挙の後だとか、そんなことにかかわらず、こういうふうな基本的な今申し上げた考え方は変わらない、このように考えておるわけであります
  131. 林紀子

    林紀子君 総選挙まではという約束にもかかわらず、先ほど申し上げましたようにヒルズ代表は、アメリカの議会の中では、短期の課題として米を自由化しろということを再び言っている。大変なめた話ではないかと思うわけです。  経済局長にお伺いいたしますが、ガットへの日本提案のポイントは、結局、所要の国内生産水準を維持するため必要な国境調整措置を講じることができる、こういうものですが、私は、前回指摘させていただきましたけれども、所要の水準をどう決めるかによって米の自由化や一部輸入を拒否することにはならないと思います。この提案が通るかどうか、可能性は極めて低いものと言わざるを得ないわけだと思うんですが、仮に通ったとしても米の輸入を拒否するものになっているとは言えない、ここに大変大きな問題があると思いますが、重ねて御答弁をお願いいたします
  132. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) 我が国の基礎的食糧についての提案は、今お話がございましたように、基礎的食糧についてはガット上の措置としてその国が必要とする国内生産水準を守っていく、確保していくために、外国から輸入がそれと無関係に行われるということでは困るわけでございますので、国内で必要とする生産水準を確保するに必要な国境措置、その中には関税でいいという場合もあるでしょうし、輸入制限でなくちゃいけないという場合もあると思いますけれども、いずれにしても、国内生産水準を守るのに必要な国境措置はとれるのであるという制度を、ガット上の新たな規律として確立していこうというのが我が国の主張でございます。  お尋ねの、その場合の国内で生産するのに必要な水準というのは、その国の基礎的食糧あるいはその国のその他の基礎的食糧以外の食糧の供給の状況ですとか、あるいは自給率とかそういったことが全部絡んでくるわけでございまして、具体的なそれぞれの国にとっての基礎的食糧についてのあるべき国内生産水準というのは、当然それぞれ違いが出てくるわけです。我が国の基礎的食糧である米については、これはもう国会の両院の決議を踏まえて、再三総理大臣も、それから農林水産大臣も申し上げておりますように、国内産で自給するという方針があるわけでございますから、それをいわばガットの場で実現するために我々は提案をしているわけでございますので、それをストレートに国内自給一〇〇%とか、あるいは米という言葉は出てないわけでございます。それは、ガットの制度として確立するから各国に適用可能な、横断的な制度として提案をしているわけでございます。  それを具体的に適用する場合の日本の米についてのやり方としては、今申し上げたようなことで 当然実行していくということになるわけでございます
  133. 林紀子

    林紀子君 この提案そのものが通る可能性があるのかどうか、それも大変疑問なわけです。また、総選挙前の現在は、米の自給を言っても終わればどうなるかわからない。それは、先ほど大臣から釈明がございましたけれども、小沢幹事長の言っていることなどを考えますと、その心配も大いにあるわけです。ですから、ガットでの協議から米の問題を除外する立場を鮮明にすること、それが本当に完全自給を守る道ではないかと思います。それができないというのなら、せめてガットへの提案それ自体の中や、ガットでの論議の中で公式に米の輸入を拒否すること、それが通らないようであればガットの農業協議から脱退する、そういうぐらいの強い決意で臨むことを改めて要求いたしまして、私の質問を終わります
  134. 井上哲夫

    井上哲夫君 私から二、三お尋ねをしたいと思います。  先ほど猪熊先生は、最後に減反の問題で法的な拘束力がないものだというようなことをおっしゃいました。同感でございますが、私は、ちょっと目先を変えて、減反の厳しい中で農家が苦しんでおる、転作対応拡大がもう少しできないかという観点からお尋ねをしたいと思います。  ゲートボール場をつくった場合に、今回は減反の対象というような新聞の記事は読ましていただいたわけでございますが、今まで転作奨励金の対象作物に不幸にも外れていたといいますか、なっていなかった作物でこれを見直す。もちろん生産が過大になる、あるいはいろんなことがあるでしょうが、もう少し転作の、何といいますか緩やかにするためにも、非対象であった作物を少し対象にするというようなお考えをとられる余地はないでしょうか。例えば、具体的に言えばブドウとかお茶とか桑とか、そういうものについてでございますが、お尋ねをいたします
  135. 松山光治

    政府委員松山光治君) 水田農業確立対策の実施に当たりましては、米からほかの作物に転作を進めるというのが基本になるわけでありますけれども、その場合に、転作いたしましたところで、また需給上の問題が出ても困るわけでございます。そういうこともございまして、前期対策におきましては、温州ミカンを初めといたしまして、ブドウでありますとかリンゴでありますとかお茶でありますとか、そういったものについては転作奨励措置の対象にしないという、こういう扱いをしてございまして、ただ特例的に一定の条件を満たします場合に、知事さんと御相談の上、個別に実績算入の扱いにするといったような措置をとってまいったところでございます。  私ども、今回の後期対策の策定に当たりましては、その後の状況の変化あるいは各般の御意見等々も踏まえて検討をいたしました結果、政府が直接国費を投入いたしまして作付転換を進めておる、例えば温州ミカンでありますとかあるいは伊予晩かんでありますとか、でん粉用の原料芋といったようなものは別にいたしまして、それ以外のこれまで対象として考えてこなかった作物につきましても実績算入の対象にする、こういう方向で考えたいと思っておりまして、今具体的な検討を詰めておるところでございます
  136. 井上哲夫

    井上哲夫君 詰めてみえるという御返事なんですが、例えば今おっしゃいました実績算入ということですが、実績算入よりもいわゆる助成金とか加算額を加える、そういう奨励作物には繰り上げを考えていないということですか。  そうしますと、そのことと、実績算入を考えているという余地がある作物について、具体的に、今お考えになっている範囲で結構でございますので、お願いをしたいと思います
  137. 松山光治

    政府委員松山光治君) 今申し上げましたもの以外のもので、これまで転作の対象にしていなかったものにつきましても、やはり需給上の心配が全くないかと言えばそうではございませんので、そこで節度ある生産を行うという観点からの一定の生産指導と申しましょうか、行政指導を前提にしながら、実績算入の対象にしたいと思っておるわけでございます。そういうものとして今考えておりますものは、リンゴでありますとかブドウでありますとかサクランボウ、お茶といったような作物が念頭にあるわけでございます
  138. 井上哲夫

    井上哲夫君 最後の桑についてはいかがでしょうか。
  139. 松山光治

    政府委員松山光治君) 桑も検討対象になっております
  140. 井上哲夫

    井上哲夫君 次に、過般の私の一般質問では、米の生産コストを下げることはできないかという観点からお尋ねをしたわけでございますが、同じことで農作物の生産コストの中には、農薬とかあるいは農機具、さらに肥料、こういうものが大きな比重を占めているわけですが、これらのものに対してやはりコストの低減を図る、それが結局は農作物の生産費を低く持っていくことができる。そして、そういう観点から、農水省がこれらの資材と言われるものに関して、より価格を下げるための具体的な、強力に推進する施策をお考えになっているかどうか、お尋ねをしたいと思います
  141. 松山光治

    政府委員松山光治君) 農業生産性向上を図りましてできるだけのコストダウンを図っていく、非常に重要な課題であると考えておるわけでございますが、そのためには構造面の改善を進める等々の施策を進める一方で、農業生産資材費を節減していくということも、非常に重要な課題であるというふうに考えておるわけでございます。  農業生産資材の節減の問題については、いろんな観点からこれを考えていく必要があろうかと思っておりますが、まず農業資材の価格が一つ問題になるわけでございますけれども、これにつきましては、御案内のように、農業団体と個々のメーカーとの間の価格交渉で決まっていくというのが本来でございます。そういう状況の中で、私どもといたしましては、さきの国会で肥料価格安定臨時措置法を廃止いたしまして、競争条件の整備を図るといったようなことをやりましたほかに、両当事者間での話し合いの結果、適正な価格が決まるようにということで、関係者に対する指導も行っておるというのが現状でございます。  このほか、農業生産資材費の節減を図っていきます場合に重要な点といたしましては、それの供給のあり方なり、あるいはまた利用の仕方のあり方といったようなことが、やはり問題になろうかと思っております。そういう点で、私ども関係省庁なり関係団体と連係しながら、この問題に取り組んでおるところでございますけれども、例えば肥料について申し上げますと、土壌診断等に基づきまして施肥の合理化を行う、あるいは肥料費を節減しておる優良な事例につきましての普及啓蒙を図る、また粒状配合肥料のばら流通方式を導入するといったようなことについて今取り組んでおります。  また、農業機械につきましては、よく過剰投資の問題が問題になるわけでございますので、そこで、共同利用なりあるいは農作業の受委託の促進等によりまして、効率的な使用を促進するという問題、また中古の農業機械の流通の円滑化を図っていく、それからシンプルな農業機械の普及を進めていく、こういった課題を今頭に置いておるわけであります。  また、農薬につきましても、きめ細かな病害虫発生予察に基づきます効率的な使用、あるいは防除経費の低廉な航空防除の推進といったような課題に取り組んでおります。そのほか、これらを通じまして適正な輸入の活用と適正な購入の指導、必要な情報の提供といったようなことを引き続き関係省庁とも連係を図りながら進めていきたい、このように考えております
  142. 井上哲夫

    井上哲夫君 今非常に詳しいお答えをいただいたんですが、俗に世間では、農家は、本当はみんなで共有して使い合った方が得なのに、コンバインその他農機具を大量に各家で買って逆に苦しんでおるというふうなことを言われておるわけです。今問題が出ましたところで、いわゆる共用化というところについて、さらに農水省でお考えになってみえるような具体的なものがありましたらお聞かせ願いたいと思います
  143. 松山光治

    政府委員松山光治君) これは、各地域営農取り組みの問題一般にもかかわるわけでございますが、例えば私ども、今力を入れて進めておりますやり方といたしましては、農協等が中心になりまして農業機械銀行というのをつくりまして、それを核にしながら作業の受委託を仲介、あっせんする、そういう形でできるだけむだな機械投資を避けていく、こういったようなことを進めておるわけでございます
  144. 井上哲夫

    井上哲夫君 ありがとうございました。  次に、今の質問にまた関連していくわけですが、バイオテクノロジー等の先端技術の活用を図って足腰の強い農業あるいは農家づくりに努めたい、これは大臣もっとにおっしゃってみえるわけでございますが、こういう先端技術の活用等ということで、今どのようにこれを具体的に進めて、つまり先端技術の研究や開発の成果を見るためには、どういうふうな取り組みをしなければならないというふうに考えているか、この点をお聞きしたいと思っております。  と申しますのは、私も新聞の知識しかないわけですが、お茶を出して熱水の抽出物からポリフェノールという虫歯を抑えるそういう成分が出ておると。これをいろいろ食品添加物として加えますと、例えばキャンデーでも虫歯にならないキャンデーがあるんだとか、そういうふうなことを民間の企業は開発をして、大々的に商品化に乗り出すというような記事がありました。その記事の一番大事なところは、秋のほとんど今までは捨てられるようなお茶八百トンが、こういうポリフェノールというものをつくり出すために新たな需要拡大になっておる。こういうことは、いわばどんどんつくらせて新しいものを先端技術でやっていく、これは攻める農業といいますか、そういうことにもつながる、こういうことを考えてお尋ねをするものであります
  145. 西尾敏彦

    政府委員(西尾敏彦君) 先生指摘のように、農業生産性の飛躍的な向上を図ったり、さらにまた農産物の需給拡大を図るためには、バイオテクノロジーを初めとする先端技術の開発というのは、大変重要であるというふうに考えております。このために、農林水産省の研究機関を中心といたしまして、さらにはまた都道府県の研究機関、それから大学、民間等の研究機関を中心として技術開発に努めているところであります。  そこで、その具体的な内容についてでございますけれども、まずバイテクにつきましては、昭和六十一年から十五年計画でバイテク植物育種研究プロジェクト、通称私ども、バイテク育種二〇〇〇年計画と言っておりますけれども、そういう研究を推進しておりまして、例えば遺伝子組みかえでありますとか細胞融合によりまして、新しい稲や麦の大変耐虫性、耐病性に強いような品種を育成するそういう研究、さらにはまた、超多収の稲の研究を進めますほか、さらにはまた米の他用途、その他いろいろの需要拡大のための研究としては、稲につきましては、例えば五十六年から十五年計画で需要拡大のための新形質水田作物の開発、通称スーパーライス計画というような研究をしております。  また先ほど、先生からお話がありましたお茶の研究につきましては、お茶の成分であるカテキンというのが大変抗菌性に富んでいるということで、これの新しい需要開発に関する研究、そういう研究も進めているところであります。  また、こういう研究体制を支えるということで、昭和六十一年には農業研究センター、さらにはまた、野菜・茶業試験場、先ほどのポリフェノールの話は野菜・茶業試験場でございますけれども、そういう研究機関で特にバイテクでありますとか、さらにはまた消費ニーズに対応するような研究体制を整備しておりますし、さらにはまた六十三年に、地域の六カ所に地域農業試験場というのがございますが、それぞれの地域農業試験場でバイテクの研究、さらにはまた、生体機能に関する研究と言っておりますけれども、そういう研究を拡充するように研究体制を整えているところであります。  いずれにしましても、今後とも、先生指摘のような生体機能を生かす研究、さらにはまたバイテクに対する研究、さらに消費ニーズに対応する研究というようなものを積極的に推進してまいりたいというふうに考えております
  146. 井上哲夫

    井上哲夫君 積極的というよりも、最重要課題というぐらいのつもりでやっていただきたいと思います。  次に、足腰の強い農業ということなんですが、これも聞くところによりますと、ことしの十月にケルンで国際食品見本市が行われた。そして、この国際見本市には日本の自治体や農業団体あるいは企業が、数々の我が国の農作物の出品展示をしたと聞いております。この見本市でどのような形で、しかも日本の農作物を逆に輸出するんだという点から、どういうような反応があったかについてお尋ねをしたいと思います
  147. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) お答え申し上げます。  先生の御質問になりましたことしの十月のケルンでの国際食品見本市、これはアヌーガと略称されておりますが、世界的な食品の見本市、このアヌーガが二年に一遍、それからもう一つはパリで二年に一遍ということで、交互にパリとケルンでやっているわけでございます。  ことし、十月にやりましたケルンでのアヌーガの規模は、二十三万平米ぐらいの敷地で参加国が八十九カ国、五千八百十九社、六日間行われましたけれども、その間に百二十五カ国から二十五万人ぐらいの関係者が入場したわけでございます我が国からは、今おっしゃいましたように、自治体、農業団体、それから幾つかの企業が出まして、五百四十五平米のブースで日本の食品の展示を行ったわけでございます。  その評価でございますけれども一般的には海外でも健康食品に対する志向が高まっているとか、あるいは高品質化、簡便化というような傾向がありまして、日本の食品に対する興味が非常に高まって、日本のブースには多数の入場者が参加したわけでございます。例えばナシ、ミカン、リンゴといったような果実も好評だったわけでございますが、そのほかに、さつま揚げですとかチーズ入りのイカの薫製といったような、純日本的なものについても外国人の関心を呼んだというふうに伺っております。  幾つか商談にまで発展した、引き合いにまで発展したものもありますけれども、必ずしもすぐそういうところに結びつくというものではございませんで、今回のやつは四回目の国際見本市への日本の出展の機会であったわけでございますけれども、私どもは、こういったタイプのものに積極的に日本が参画することによって、継続的に日本の食品を知ってもらうということを地道に続けることで対応したい。商談にすぐ結びつかないからといって必ずしもその効果がないというわけではございませんで、県によりましては、継続して出している県で年々評価が高まってきているというようなところもございますので、継続的にこういうものへの努力を続けていきたいというふうに考えているわけでございます
  148. 井上哲夫

    井上哲夫君 もう時間がありませんので、最後に大臣、こういう輸出の特例といいますか、場合によっては来年は大臣みずから乗り込んでいって、日本の農作物の輸出の対策といいますか、その旗振りをやっていただけることをお願いしたいと思うんですが、こういう輸出の振興策についてお考えを手短にお願いしたいと思います
  149. 鹿野道彦

    ○国務大臣(鹿野道彦君) 輸出は、産業の活性化並びに国際競争力の強化に向けての、関係者の努力を高めていく契機の一つとなることが期待されるわけでありまして、このようなことから、農林水産業につきましても輸出の振興を図っていくということが極めて重要なことだ、このような認識を持っております。  そのようなことから、農林水産省といたしましても、最近の情勢を踏まえまして、農林水産物の輸出の振興に資するために、海外市場開拓の推進等を図るとともに、省内に輸出対策のための窓口を設けたところでございます。今後とも輸出促進 対策の充実を図ってまいりたい、このように考えております
  150. 井上哲夫

    井上哲夫君 ありがとうございました。
  151. 橋本孝一郎

    橋本孝一郎君 農業関係二、三重複するかもわかりませんが、違う角度からの御質問を申し上げたいと思います。  先ほど、食管法違反の問題で、違反による自由米に対する御質問がありまして非常に厳しい通達であると。しかし実際、この前の委員会でもお聞きしましたら、当局としては申し上げにくいかもしれませんけれども、出回っておるのが六十万トンぐらいだというようなお話を聞きました。しかし、専門業者に言わせるとそんなものじゃなくて、二百ないし三百万トンぐらい出回っておるのじゃないかというふうな話も報道等では見るわけであります。そうなると、それは二、三〇%という膨大な量になるわけでありまして、実際守る農家、守らない農家のそういう差がないようにやりたいんだという目的だそうでありますけれども、実際現状としてそれが守られておるのか、目的が達成されておると思われておるのかどうか、お尋ねしたいと思います
  152. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) 先生指摘の点は、具体的にどのくらいの不正規流通米の存在があるかということでございますが、前回どもお答えをいたしましたように、生産段階からの点については、先ほどお挙げになられました大きな数字ではございません。今回の通達について厳しい内容の通達だという御指摘のお話でございますけれども、私ども考えておりますのは、先ほど御討議の中でも、私の方から申し上げておりますように、今回の通達といったものは、既に食管法の現在の制度を根本的に決める五十六年の法改正に関連して出された通達、さらに六十三年の通達を受けまして今回提起をさしていただいたわけでございますが、確かに、今回におきまして国会における議論とか、あるいは農政審の報告づけとかそういったこととは別に、あたかも食管制度があすにでも崩壊をするような一部の報道がなされておりましたことについての、一部不安があったということは事実でございます。  そういうような意味におきまして、現在私どもは全面的に見ましたときに、食管制度の運営等においては極めて健全だというふうに思いますけれども、そういったことにつきまして、先ほどのような趣旨に基づいて通達を出させていただいたわけでございます。この場合の考え方は、またさらに詳しく申し上げる必要はございませんけれども、一つはやはり不正規流通というとらまえ方よりも、正規の流通で集荷するというようなことが第一点であろうと思います。  それから第二点は、この制度にかかわる人たち、単に行政当局としての食糧庁のみならず、実際にこれに関与しておられる流通業者の方々とかあるいは生産者方々とか、そういった方々とトータルの対応というのが必要であろうということも、一番重要な点だというふうに考えておるわけでございまして、そういった点は、この通達の前文のところで書かせていただいておるところでございます。  私どもといたしましては、現在の不正規流通をこのまま放置しておくということはできない。食糧管理制度そのものに対する国民の不信を招かないためにも、この不正規流通米対策というものを展開していかなければならないというふうに考えておるところでございます
  153. 橋本孝一郎

    橋本孝一郎君 この問題は、これからの設置される自由米市場との関連もありますから、余り突っ込んだ質問は省略しますけれども、いずれにしても消費者の立場にすれば、おいしい良質米が欲しいという強い希望というものは、これは消すことができないわけです。それに対する生産ということも、これもなかなか抑えることができない。それを一つの物差しで抑え込もうとするところに無理があるのであって、食管そのものの是非の問題が私はそこに来ておると思います、いわゆる消費者志向というものの考え方へ。この問題は別にします。  次に、過剰米処理についてお伺いいたします。  先ほどのお答えでは現在、古米が百二万トン、古々米が四十五万トン、トータル百四十七万トン。適正在庫が大体今までどの程度が適正なのかどうか私はわかりませんけれども、百万トンと言われております。既にオーバーしておる。しかも、これからの減反政策が据え置かれていく、需要拡大はそう望めない、むしろ米離れが強い。そういう中で過剰米がもっと出るような気がするわけです。その場合の処理をどうするのか。過去四十年代、五十年代、二回にわたって額にすれば約三兆円という膨大な税金がそこに使われた、いわば悪い言葉かもしれませんけれども、しりぬぐいのむだ遣いをされておるわけです。今後それが起こらないのか、その点についてお答え願いたいと思います
  154. 浜口義曠

    政府委員浜口義曠君) この適正在庫の問題は、確かに水田農業確立対策の前期におきまして、政府米の持ち越し在庫の水準につきまして適正在庫を百万トン、それからその上限につきましては、新米と古米を混合して売るといった比率から百五十万トンであるというふうにしてきたわけでございます。今回は、先ほど御説明をいたしましたけれども、全体の一年の需要量が千十三万トンでございますが、持ち越し在庫の直近の十月末は百四十七万トンということを申し上げました。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕 この処理につきましては、先生指摘のような古々米のものについては、別途対策の中で他用途米等の交換等々を図りながら対応していかなければなりませんが、残りの百二万トンにつきましては、現在の新米とあわせまして売却をし、安定的な供給を図っていくというふうに対応していかなければならないというふうに考えておるところでございます。  この点につきましての現在の水準というのは、先生指摘の、過去の二回の過剰米処理の段階在庫が例えば四十年代におきましては七百万トン、それから第二次のときは六百万トンというふうに積み上がったわけでございますが、そういったような点と比較いたしますと、先ほどのような水準にほぼおさまっているということでございますので、通常の売却操作ということでいくことができるだろうというふうに考えているところでございます。  なお、四年後の後期対策の終わりの年の水準につきましても、需要の動向に左右されますけれども、大体百三十万トンから百四十五万トンというのが考えられるわけでございまして、そういう意味では、第三次過剰というような危険性はないというふうに今の状況では見ているところでございます
  155. 橋本孝一郎

    橋本孝一郎君 そのように期待したいわけでありますが、自由米の今の売れ行きの勢いというものから見、しかも減反政策が必ずしも行き届かない、そこに発生しておるわけですから、そういう憂いを国民の側から見ればやっぱり抱く危険性があるわけです。問題は、そういうことが起こらないようにこれは本当に願うわけであります。  さて、次に水産関係でお尋ねいたします。  流し網漁に関することでありますが、現在行われております国連総会で、アメリカは流し網漁法について、南太平洋では即時禁止、それ以外でも九二年までには一時停止を実施するとの決議案を提出しているようであります。また新聞等によりますと、アメリカはもう既に、これに対する多くの支持票を集めておるようであります。もしそれが決議されれば水産業に与える影響は極めて大きいわけでありまして、我が国としては、それを遵守するという道義的な責任を負わなければならないと思いますが、政府としてはどう対処していく方針なのか、お尋ねしたいと思います
  156. 鹿野道彦

    ○国務大臣(鹿野道彦君) 流し網に関する国連決議の問題につきましては、我が国といたしましては科学的根拠に基づきまして冷静な話し合いにより解決すべきである、こういうふうな考え方から、決議案の提出を見合わせるよう、私自身からも在京の米国大使あるいはニュージーランド大使に対 しまして書簡を出したり、また外務大臣からも申し入れを行うなど、再三にわたりまして、米国、ニュージーランド両政府に対しまして働きかけをいたしてまいったわけでありますが、去る十一月二日に、米国、ニュージーランド等は公海における流し網漁の即時停止、あるいは御案内の一定期間後のモラトリアムを求める決議案を提出したわけであります。このような動きに対しまして、我が国といたしましても、流し網の問題につきましては科学的な根拠に基づき対応すべきものである、このような観点に立ちました決議案を十一月二日に国連に提出いたしたわけでございます。  現在、この二つの決議案につきまして一本化の努力を進めておるわけでございますが、あわせて国連加盟諸国に対しまして日本案に対する理解をできるだけ得るよう、今日努力をいたしておるところでございます
  157. 橋本孝一郎

    橋本孝一郎君 努力中ということで、結果は見なきゃわからないわけですから、見通しまでもお聞きするのは無理かと思いますが、いずれにしても最悪の事態になれば、漁業者の立場を考えれば全面撤退というようなことも起こりかねないと思います。また、あるいは漁船を減らすというような方法もとらなきゃならない。これは相当な漁業者に対してはダメージでありますが、そういった場合に対する対処法というのは、今の段階で言うのは無理かもわかりませんけれども、過去の実例等もありますが、そういった問題についての御検討はあるのかどうか、まずお尋ねしておきたいと思います
  158. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御指摘の国連におきます決議につきましては、大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、いずれにしましても私ども日本の立場を確保すべく最大限の努力をしておる最中でございます。したがいまして、この国連決議の帰趨、結果いかんによってどうこうするということについては、この時点ではひとつ控えさせていただきたいと思うわけでございますけれども、この問題と離れて一般論といたしまして、御承知のとおり、流し網に限らず公海あるいは外国水域でかなり広範な国際漁業が展開をされておるわけでございます。これについて、いろいろな面で国際規制が強化される傾向が強まっております。  そういう情勢変化に対処して、我が国の国際漁業を滅船問題を含めていかに再編成していくか、そういう課題が確かに私どもはあると考えております。従来からの実例等々を踏まえながら、そういった問題に対処する仕組みについて、何か明確にしていく必要があるのではないかという認識を持ちまして、私どもは現在検討を進めておるという状況でございます
  159. 橋本孝一郎

    橋本孝一郎君 次に、就労者、いわゆる外国人労働者の問題についてお尋ねをしたいわけであります。  遠洋漁業の現在の従事者というのが約八万五千二百人、ちょっと古いですけれども、三十年前のもう三分の一に減少しておる。これはいろいろな、国際的な規制によってそういうふうになってきたと思うわけでありますけれども、ことし全国の五十一の水産高校を卒業した四千六百四十五人のうち、漁船に乗り組んだのはわずか四%の百八十六人、しかも遠洋漁船に乗り組んだのはさらにその半分以下の八十六人だけだという、これも報道が出ております。  このような事情から、関係省庁と関係団体では、外国人船員の受け入れ方等を検討しているようでございますけれども、どのような今状況になっておるのか。また、労働災害とか年金とか社会保障についても十分充実を図る必要がありますけれども、そういった面等もあわせて、どのような今状況になっておるかをまずお尋ねしたいと思います
  160. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御指摘ございましたように、遠洋漁業等に従事する労働力の不足問題がございまして、既に外国の二百海里内で操業します遠洋漁船等につきましては、外国への入漁条件として外国人、地元の労働者を雇い入れなければいけないというふうな問題が実は出てきております。  したがいまして、そういった状況を踏まえて、国内におけるそういった労働力不足あるいは外国でのいろいろな条件ということ等も考えまして、遠洋漁船等についての外国人漁船員の受け入れ問題につきまして、実は大日本水産会をベースにしまして、雇用者側あるいは労働者側、労働者側を代表した形で全日本海員組合の関係者の方々に御参加をいただいておるわけでございます。そこで、研究会を従来から進めておったわけでございますが、先般、一定の条件下で受け入れることはやむを得ないという中間的な報告をいただいております。それを踏まえまして、日本人との、いわばミックスした形での乗船形態をとることになりまして、先生指摘のようないろんな問題もあるわけでございます。したがいまして、労使間におきまして協議会を設置して、そういった問題についてさらに細かく検討をしていこうという状況に相なっております。  私どもは、そういった協議会での御論議を踏まえて、行政サイドとしてどのような対応をすべきかということを検討してまいりたいと考えておりまして、研究会の中間報告、さらにはまた、ただいま申し上げました協議会での論議の経過を見守って対処してまいりたいという状況でございます
  161. 橋本孝一郎

    橋本孝一郎君 人手不足、さらにまた高齢者対策というんでしょうか、船員の高齢化という問題も出てくるでしょうし、そういった面で長期的に見据えたひとつ対策をお願いしておきたいと思います。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕  最後に、時間がありませんので、水産でTBTOですか、トリブチルすずオキサイド、奇形養殖ハマチの発生などの一因というのは、このTBTOにあると言われておるわけであります。これは、養殖用の網とかあるいは船底塗料の原料に使われるわけでありますけれども、そのため関係各省は昨年からことしにかけて使用自粛を求めている通達を出しておると聞いております。さらに、このTBTOの製造と輸入を全面的に禁止するというのも近いうちに出されるように聞いておりますが、禁止ということになれば当然代替品というもの、あるいは転換品というものが必要になると思うんですけれども、そのようなものの用意はあるのかどうか、最後にお尋ねしたいと思います
  162. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御指摘のとおり、船底塗料あるいは漁網の防腐剤として使われておりましたTBTOにつきまして、その毒性問題等がございまして、これを輸入あるいは製造の禁止というふうな方向で具体化をするという検討が進んでおりますことは事実でございます。そういった事態現実のものになりますれば、当然のことながら代替品の確保を図っていかなければならないわけでございまして、当面はTBTOを除きました有機すず化合物、さらにまた全くこれらとは違った代替品を確保していくということで十分対処できるであろうと。ただ、長期的にはこの有機すず化合物以外の代替品あるいは代替方法というものを開発していかなければいけないだろうということで、私どもいろんな努力をしておるところでございます
  163. 橋本孝一郎

    橋本孝一郎君 林業関係も相当質問書を出してあったんですが、時間がございませんので、林野庁長官、申しわけないですが次回に譲りたいと思います。  終わります
  164. 横溝克己

    ○横溝克己君 それでは、引き続きまして漁業について御質問申し上げます。  最近、特に太平洋あるいは日本海、あといろいろ漁業についての問題点が多いわけでございますが、例えば日本海側を見ましても韓国の沿岸まで今漁区になっている、こういうこともございまして、この間あたり竹島付近で拿捕が起こった、こういうことでございますが、この辺の実情はどうなっていますか。また、トラブル防止のためにどのような指導をされているんでしょうか、お伺い いたします
  165. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 日本海におきます、いわば韓国あるいは日本の漁業展開でございますが、御承知のとおり韓国と対面をしております日本海域につきましては、日韓双方ともいわゆる二百海里をしいておりません。したがいまして、両国の領海の外の海が全部公海になっておりまして、原則的にはそこで双方の国の船が自由に漁業を営める状況に相なっておるわけでございますけれども、両国間の紛争を防止するために、御承知のとおり日韓漁業協定を締結しております。また、これに基づきまして、双方の取り締まりを円滑に進めていくために自主規制の合意を行っております。かつまた、その中でそれぞれの国の漁業規制を的確に行っていく約束をしておりまして、その中で日本海における日韓の間の漁業調整が行われておる、こういう状況でございます。  ただ、御指摘のとおり、そういった協定あるいは合意があるにもかかわらず、往々にしてそういった約束に違反した漁業が展開される、あるいはまた、日本海には御承知のとおり、日韓の間で大変微妙な外交問題になっております竹島の領有問題がございます。  先生指摘のありました事件といたしまして、去る十一月の十五日に、竹島周辺で操業をしておりました我が国のズワイガニの漁船が、拿捕され、連行されたという事件があったことも事実でございます。私ども直ちに、このような行為は我が方の権益を不当に侵すものであるということで、即時釈放を求めまして、拿捕されました翌日に釈放をされております。ただ、さらにまた、事情調査の上この拿捕連行行為が、我が国の竹島領有権を侵す不当なものであるという旨を在外、ソウルにあります我が方の公館を通じまして、先方に抗議をしたという経緯がございます
  166. 横溝克己

    ○横溝克己君 そういうようなことで、大分漁区が入りまじっているというようなことが一つございます。  それからもう一つありますのは、日本の場合には、資源保護のためにいろいろ漁期を制限したりしている、その間韓国側が出てきて漁獲をする、そういうのでは日本側の努力もむだになるのではないかと思いますし、一方においては、いろんな韓国側との交渉がちょっと古いのではないかという、そういうことも聞いておるんですが、その辺の実情はどうなっているんでございましょうか。
  167. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 先ほども申し上げましたとおり、日本と韓国の間における、日本海における双方の操業秩序の維持の問題については、基本的には日韓漁業協定があるわけでございますが、これと並行いたしまして、御承知のとおり、双方の取り締まりを円滑、適正に実施するために、自主規制に関する合意を取り結んでおります。この自主規制の最も新しいものは、一昨年の秋から年末にかけて双方で協議をいたしまして、新しい合意をつくりまして、昨年の一月一日から現在実施をしておる自主規制に関する合意が実行をされておるわけでございます。  この中で、双方の操業上何といいますか、調整を要する問題として、例えば底びき網漁業につきましては、これを禁止する区域というものを具体的に設定しております。それで、その中ではやらないとか、あるいはまた、一定の期間を決めてこの水域では底びき網漁業をやらないということを双方で合意をしております。それからまた、イカ釣り漁業についても同じように、その漁業を韓国側が行わないというふうな地域を明確に決めて、それに従って双方が取り締まりを的確にやっていくという約束をしておるわけでございますが、残念ながら、六十三年の一月一日からこの合意を実施しておりますが、実はソウル・オリンピックが終わりましてことしに入りましてから、この合意について、事実上韓国の漁民がこの約束を破るような事情が少し多発をしました。したがいまして、私ども、韓国政府にいろんな機会を通じて注意喚起をすると同時に、取り締まりに当たる担当者レベルあるいはまた、行政部局のレベルで数回にわたりまして接触をいたしまして、この自主規制に関する合意違反の事実を先方に強く是正方を申し入れております。韓国側も、我が方の申し入れに応じまして、この違反の事態について遺憾の意を表明すると同時に、韓国側の取り締まりを強化するためにいろいろな手段を講じつつあります。ごく最近におきましては、この自主規制に関する合意内容の遵守状況がやや改善をされておりますけれども、なお根絶をされておらないという状況にございますので、私ども、今月の半ばにも実務者レベルでの協議を予定しておりますので、その席におきまして、御指摘のような事態というものを十分先方に伝えると同時に、さらに取り締まりの実効性を確保すべく十分な要請をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます
  168. 横溝克己

    ○横溝克己君 わかりました。  それでは、最近人が足らないということを盛んに言われております現実に乗組員が不足して操業できないというそういう例もありますが、これは漁業に限ったことだけではございませんで、先ほどもちょっと御質問がありましたけれども、相当抜本的にいろいろ考えないとなかなか難しいのではないかと思うのですが、この点に対して、労務者不足といいますか、労働者不足に対してどのような総合的な考えをお持ちでございましょうか、お伺いいたします
  169. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 漁業に限ったわけではございませんけれども、経済の一般的な発展に伴いまして各産業分野で労働力不足が言われておるわけでございます。その中で漁業をめぐる状況を見ますと、一つには国際漁業規制の強化等に伴って、操業自体が非常に難しくなっておるというふうな問題、それからまた、従来漁業の労働力確保の一つのてこになっておりました陸上産業に比べて、比較的優位な就業条件が用意されておったものが、他産業の発展に伴いましてその格差が縮小してきておる、いわば人が集めにくくなっておるというふうな傾向がございまして、全体として就業者数が減少するあるいは老齢化するという現象が起こっております。  こういった傾向が今後どういうふうに進んでいくかということ、経済がどうなるか、あるいは先ほど申し上げました遠洋漁業そのものが、今後国際規制の強化の中でどう推移していくかということ、非常に流動的な面がございまして、私ども、なかなか断定的に見通しは得にくいわけでございますが、ある程度労働就業者数の減少は避け得ないであろうというふうに考えておるわけでございます。  御承知のとおり、遠洋漁業あるいは沖合漁業あるいは沿岸漁業という形態別に、いろいろ違った労働事情にあるわけでございますけれども、例えば減船に伴って生ずる離職者等について、他の漁業種類に従事するように転換を図るための再訓練と申しますか、そういうふうな対応策、さらにまた、沿岸漁業について申し上げますれば、改良普及事業でありますとか、あるいは省力漁業の漁業技術の普及というふうなことで対応しておるわけでございますが、やはり基本的には漁業自体が労働力を十分確保できるような、魅力ある産業として構築をしていくことが基本的に重要であるというふうに考えておりまして、先ほど申し上げました直接的な漁業種類間の労働力移動、あるいはまた若年、新しい労働力に対していろいろな指導を行うと同時に、漁業全体として労働力を吸収できるような、経営の安定を図っていくための関連施策というものを全般的に強化していくということが基本ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます
  170. 横溝克己

    ○横溝克己君 漁業の自由化とかあるいは輸入品が非常に多くなったとか、労働者の不足とかいろんな問題がありますが、大手の業者はいろいろ船を大型化して個室を設けるとか、あるいは装備の自動化、近代化といいますか、中には人集めのために交代時期は、家族を呼んでハワイで生活させるとか、そういうような一時的な生活期間を設ける。いろんなことを盛んに始めたり計画しているようですが、小さな業者あるいは零細業者、こう いったところは非常に問題が多いのではないかと思うのです。  最近、漁港の整備がだんだんとされてきているんですが、実際には仲買の人も来ないので市場も立たないというようなこともありますし、一種の過疎化みたいなものがどんどん進んでいるのではないかと思うんですが、しかし地方漁村としては非常に活性化が必要である。こういう要求もあるんですが、この辺の小さな業者の存続あるいは発展のためにどんなような対策考えられているんでしょうか。
  171. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 先ほど申し上げましたとおり、遠洋、沖合、沿岸という各ディメンションにわたりまして日本の漁業、いろんな問題を抱えておるわけでございますが、私ども、沿岸漁業の振興を図っていく場合に、やはり基本になりますのは、個々の経営体の強化ということもございますけれども、沿岸漁業者で組織されております漁業協同組合のいろんな機能というものを強化していくことが、一つの大きなてこではなかろうかというふうに考えております。  またあわせまして、先生からお話ございますように、漁村そのものの、地域としての活性を維持していくということが大変大切なことであるというふうに考えておりまして、そういう観点から、沿岸漁業に関連をします漁港の整備あるいは栽培漁業等の振興、さらにはまた、地域活性化のための各般の対策を講じておるところでございまするし、また協同組合の機能強化につきましても、従来からいろんな手だてを講じておりますけれども、合併の促進、さらには経営基盤の強化のためのてこ入れ策というふうなものを総合的に実施をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます
  172. 横溝克己

    ○横溝克己君 もう一つ、最後にお伺いしたいんですが、漁業関係者にとっては漁獲物の価格の安定といいますか、これが非常に要求されるのでございますが、価格変動も大変大きいということでございます。サンマなどは出漁調節などが行われておりますし、最近輸入物も大変よくなりまして、私の聞いたところでは、ジブラルタルあたりで買っているマグロは、冷蔵で一日半でもう市場にかかってくる、日本の漁船が近海でとって冷凍してくるのはかなわない、そういうようなことも行われておるようでございます。こういうこともあるんですが、価格安定の対策というのはどのようにとっておられるんでしょうか。一番最後に質問いたします
  173. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 漁業経営の安定を図る上で、漁獲した魚の価格の安定を図っていくということは、大変基本的な課題であるというふうに私ども考えております。全般的に見ますと、ここ数年来比較的需要も着実に伸びておるという事情もございまして、魚価全体としては、比較的安定的に推移しているのではないかというふうに判断をしております。ただ、御指摘ございましたように、ことしの漁期を見ますと、イカ、サンマがマーケットの状態に比べて漁獲量が非常に多かったということもございまして、この秋の状態を見ますと大変暴落をしております。やはり需要の動向に応じた供給の安定ということが必要な条件でございますので、マーケットの状況に応じて必要があれば生産調整も進めていく必要がある場合が多いのではないかと思います。  また、直接的な生産調整が効果を持つ前に、いわば余剰な生産物を市場から一時隔離をするための調整保管というふうな手段も用意して、一部実行をしております。ただ、やはりあくまでもこれは一時的な措置でございまして、調整保管されたものも最終的には新たに生産されたものとあわせて市場で消化をされていかなければいけない。その在庫あるいは新しく生産されたものをあわせてマーケットの状態に合わせていく、そのことを通じて価格を一定のレベルに保持安定させていくということが基本的に重要なことであろう、そのための努力というものは、今後とも私ども関係生産者とも相談をして続けていかなければいけないというふうに考えております
  174. 横溝克己

    ○横溝克己君 ありがとうございました。  質問終わります
  175. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) 本調査に関する本日の質疑はこの程度といたします。     ─────────────
  176. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) 農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。鹿野農林水産大臣
  177. 鹿野道彦

    ○国務大臣(鹿野道彦君) 農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  この法律案は、公的年金制度の一元化へ向けての条件整備の一環として、他の共済年金各制度と同様に、農林漁業団体職員共済組合制度について、農林漁業団体の役職員の老後保障等の充実に資するよう給付の改善を図る等所要の措置を講じようとするものであります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、農林漁業団体職員共済組合制度に基づき給付する年金につきましては、平成元年十月から、標準給与の再評価、定額単価の引き上げ等を行うことにより、その給付水準を引き上げることといたしております。  第二に、本制度による年金額の物価スライドにつきましては、最近における消費者物価の安定的推移等にかんがみ、これを平成二年度から完全自動物価スライド制に改めることといたしております。  第三に、組合員である間に支給する年金につきましては、従来、標準給与の高低に応じて三段階であった支給割合を、五段階に改めることといたしております。  第四に、年金の支給期月につきましては、従来の年四期を、年六期に改めることといたしております。  第五に、平成元年度における年金額につきましては、物価スライドの特例措置として、昭和六十三年の消費者物価の対前年上昇率を基準として、四月分以後の年金額を改定することといたしております。  最後に、今回の制度改正の施行期日につきましては、平成元年度における物価スライドの特例措置は公布の日と、その他の措置は平成元年十月一日といたしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます
  178. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) 次に、補足説明を聴取いたします。塩飽経済局長
  179. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) 農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。  この法律案を提出いたしました理由につきましては、既に提案理由説明において申し述べましたので、以下その内容につき、若干補足させていただきます。  第一は、年金の給付水準の引き上げについてであります。  年金額のうち給与比例部分につきましては、その算定の基礎となる標準給与の月額を再評価することといたしております。この場合、再評価率といたしましては、すべての被用者年金制度における組合員及び被保険者の給与の上昇率を勘案した率を用いることといたしております。  また、年金額のうち定額部分につきましては、基礎的消費支出の増大等に即して、基礎年金の額の引き上げに準じた額の引き上げ等を行うことといたしております。  なお、これらの措置による給付水準の引き上げは、平成元年十月から実施することといたしております。  第二は、年金額の完全自動物価スライド制の導入についてであります。  年金額の改定につきましては、消費者物価の変動率が五%を超えた場合に限り、政令により、自動的に行うこととなっておりますが、最近における消費者物価の安定的推移等にかんがみ、平成二年四月分以後、消費者物価の変動率を基準として、政令により、自動的に年金額の改定を行うことといたしております。  第三は、組合員である間の年金の支給の改善についてであります。  組合員である間の年金の支給割合につきましては、その組合員の標準給与の等級の高低に応じて、二割、五割及び八割の三段階となっておりますが、よりきめ細かな給付対応を行うため、二割、三・五割、五割、六・五割及び八割の五段階に改めることといたしております。  第四は、年金の支給期月の変更についてであります。  年金の支給期月につきましては、二月、五月、八月及び十一月の年四期となっておりますが、受給者の便宜を考慮して、二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の年六期に改めることといたしております。  第五は、平成元年度における物価スライドの特例措置についてであります。  平成元年度におきましても、一昨年度及び昨年度に引き続き、年金額の実質的価値を維持するため、特例として昭和六十三年の消費者物価の対前年上昇率を基準として、年金額の改定を行うことといたしております。  なお、本改定措置は、平成元年四月分から九月分までについて行われるものであり、同年十月分からは、先に申し述べました給付水準の引き上げを行うことになっております。また、平成二年四月分からは、先に申しました完全自動物価スライド制により、年金額の自動改定を行うこととしております。  以上のほか、標準給与の等級の上限を従来の四十七万円までの二十八等級から五十三万円までの三十等級に改めること、農林漁業団体職員共済組合の余裕金運用の具体的方法を政令に委任すること等所要の規定の整備を行うこととしております。  以上をもちまして、この法律案の提案理由の補足説明を終わります
  180. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) 次に、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員笹山登生君から説明を聴取いたします。笹山君。
  181. 笹山登生

    衆議院議員(笹山登生君) 農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正の趣旨を御説明申し上げます。  修正事項は、  一 在職支給の年金の支給割合について、原案の五段階を七段階(二割、三割、四割、五割、六割、七割、八割)に改めること。  二 平成元年度における物価スライドの特例に関する規定を削ること。  三 原案において「平成元年十月一日」と定められている施行期日を「公布の日」に改めるとともに、年金の支給期月の改定に関する規定の施行期日を「平成二年二月一日」に改めること。  四 標準給与の再評価、定額単価の引き上げ等の給付の改善については、これを「平成元年四月一日」に遡及して適用すること。  五 標準給与の等級の上限の引き上げ、在職支給の年金の支給割合の変更については、これを「この法律の施行の日の属する月の初日」から適用すること。  六 その他所要の規定の整備を行うこと。 以上が、衆議院農林水産委員会において修正を加えた点であります。  何とぞ、慎重審議の上、速やかに御賛同を賜りますようお願い申し上げます
  182. 仲川幸男

    委員長仲川幸男君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十八分散会