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1989-10-31 第116回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十月三十一日(火曜日)    午後三時二分開会     ─────────────   委員氏名     会 長         中西 一郎君     理 事         斎藤 文夫君     理 事         下稲葉耕吉君     理 事         梶原 敬義君     理 事         和田 教美君     理 事         上田耕一郎君     理 事         高井 和伸君     理 事         猪木 寛至君                 井上 吉夫君                 井上  孝君                 上杉 光弘君                 尾辻 秀久君                 加藤 武徳君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 田村 秀昭君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 宮澤  弘君                 翫  正敏君                 岩本 久人君                 北村 哲男君                 田  英夫君                 堂本 暁子君                 森  暢子君                 矢田部 理君                 山田 健一君                 黒柳  明君                 吉岡 吉典君                 平野  清君     ─────────────    委員異動  九月二十八日     辞任         補欠選任      上杉 光弘君     井上  計君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         中西 一郎君     理 事                 斎藤 文夫君                 下稲葉耕吉君                 梶原 敬義君                 和田 教美君                 上田耕一郎君     委 員                 井上 吉夫君                 尾辻 秀久君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 田村 秀昭君                 永野 茂門君                 宮澤  弘君                 翫  正敏君                 岩本 久人君                 北村 哲男君                 田  英夫君                 堂本 暁子君                 山田 健一君                 吉岡 吉典君                 平野  清君    事務局側        常任委員会専門        員        辻  啓明君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○外交総合安全保障に関する調査     ─────────────
  2. 中西一郎

    会長中西一郎君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る九月二十八日、上杉光弘君が委員を辞任され、その補欠として井上計君が選任されました。     ─────────────
  3. 中西一郎

    会長中西一郎君) 外交総合安全保障に関する調査を議題といたします。  先般、本院からソビエト社会主義共和国連邦スウェーデン王国ドイツ連邦共和国における外交防衛軍縮経済協力問題調査のため海外派遣が行われました。この際、派遣議員団から便宜報告を聴取し、本調査会調査の参考にいたしたいと存じます。  議事の進め方といたしましては、まず、派遣議員団を代表して下稲葉耕吉君から総括的な報告を聴取し、派遣議員方々から特に印象に残った点などについてお述べいただいた後、懇談形式派遣議員と自由に意見交換を行っていただきたいと思います。  また、発言されます方は、私から指名させていただきますので、挙手をお願いいたします。  なお、本日は懇談形式でございますので、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、下稲葉耕吉君に報告をお願いいたします。下稲葉君。
  4. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 私どもは、参議院特定事項調査団の第一班として参りました。  本議員団は、諸外国外交基本方針外交活動東西緊張緩和における防衛政策軍縮問題、国際協力現況等について調査するため、斎藤文夫君、梶原敬義君、和田教美君、吉岡吉典君、池田治君、三治重信君及び私下稲葉の七名で、平成元年九月六日から同月十六日までの十一日間、ソビエト社会主義共和国連邦スウェーデン王国及びドイツ連邦共和国の三カ国を訪問いたしました。  出発に先立ち、外務省担当課からこれら三カ国の状況について説明を受け、訪問国について団員一同理解を深めました。  以下、調査結果の概要を訪問日程に従って報告いたします。  まず、ソビエト社会主義共和国連邦に参り、九月七日は、国防省において参謀総長臨時職務代行ククレフ少将及びプレスセンター長マルケロフ少将会談し、次の諸点について意見交換いたしました。  まず、日米安保条約日ソ平和条約締結障害にならないかという日本側質問には、安保条約の存在は障害にならない。ソ連東部の二十万人兵力削減には北方領土も含まれるかという質問に、北方領土にある軍備ソ連領土として防衛のための最低限のものであり、ソ日間に相互信頼が増し、敵としてではなくパートナーとしてお互いに対応するようになれば、兵力削減することになると答えております。  日本防衛力へのソ連の評価はどうかという問いには、日本軍備脅威でない。しかし、日本兵力太平洋にあるアメリカ兵力を加えるとソ連の二倍になり、ソ連アメリカに加えられる脅威戦略兵器のみだが、アメリカには戦略兵器とこれらの兵力による二つ脅威ソ連に対して存在すると答えております。  アメリカソ連予算に占める軍事費割合が大きく、そのため国経済、財政がよくない点についての意見を求めたところ、どんな国にとっても軍事費負担マイナス要因であり、八九年度予算に占める割合は一五・五%だが、現在の対GNP比を九五年までに三分の二ないし二分の一に減少させる予定であると答えております。  次に、モスクワ市内にあるジューコフスキー名称空軍技術大学を訪問いたしました。この大学名称は、ソ連流体力学の権威であり、かつ、航空の父と呼ばれているジューコフスキー氏にちなんでつけられたということであります。  大学目的は、士官学校卒業後五、六年を経た将校である空軍大尉及び少佐を対象に、航空技術を習得させるとともに航空技術に関する研究を実施することであります。特にこの大学の卒業生には、ガガーリン、テレシコワ、ニコラエフなど十五名の宇宙飛行士がいるとのことでありました。説明を聴取した後、各施設を視察いたしました。  翌九月八日には、クレムリン宮殿においてソ連最高会議要人との会談を精力的に行い、まず、長く駐米大使をし、現在は最高会議議長外交顧問であるドブルイニン氏と意見交換を行いました。  最近における最高会議テレビ放映などの現状各国議員間の交流の重要性について説明があり、次いで衆参両院議長が招待している来日メンバーについて尋ねたところ、最終的には決まっていないが政治局員の一人が団長になるということでありました。  ゴルバチョフ議長の訪日は、大きな意義を持つものであり、何らかの合意が得られ、ゴルバチョフ議長自身両国のためになるという感触を得れば訪日することになると答えております。  北方領土については、ソ連立場に変わりがない、両国の外相間で詳しく話し合われるものと思うということでありました。  バルト三国の民族問題は、いろんな問題が絡まっているが、民族意識の高まりをある程度尊重し、以前よりも各共和国の管轄する企業をふやしたり、経済的自立も認めるなどの措置をとっていく考えだが、そのためには連邦声明関係法律をつくることになるだろうが、時間をかけなければならないとのことでありました。  東欧諸国の最近の動きについては、各国社会主義に従うと言っており、自分たち発展の道を探っているものと思う。各国はその道を選ぶ権利があり、自国の運命に責任を持っており、ソ連責任ではない。できるだけ援助するが、干渉するつもりもない。東ドイツから西ドイツへの移住の問題は両ドイツ国家の問題であり、二つの国が自分で決めることだ。全く関心はなく、移住もそれほど希望は多くないのでないかとの見方が示されました。  次いで、ニシャーノフ民族会議議長を表敬訪問いたしました。  ソ連現状について説明があり、さらに、ソ日関係は一番高いところまでは行っていないので、今後相互理解に努めることに賛成であるなどの見解表明がありました。  続いて、前参謀総長であり、現在最高会議議長軍事顧問のアフロメーエフ氏及び最高会議予算企画委員会委員長のアガローク氏と意見交換いたしました。  まず、朝鮮半島については今平和であり、二つの国の中にその国以外の軍隊が配備されていなければ軍事的緊張は少ないという答えでありました。  日本の自衛隊は脅威ではないが、問題は、日本同盟国はどこか、日本以外にはどこの国の軍隊が配備されているかである。  軍事費削減国内経済問題との関係については、軍隊削減するだけでなく、軍人も減らして軍縮を達成し、軍事産業消費物資生産に転換して国内経済問題を解決しようとしていくとの考えであります。  軍縮交渉見通しについては、通常兵力削減交渉見通しはいいが、戦略核については、アメリカの新政権の立場が決まっていないが楽観している。しかし、海軍削減は、太平洋アメリカ側が持っている優位を保ちたいと考えているため、かなり時間と努力が必要だという見方をしております。  北方領土におけるソ連軍隊の撤退については、ソ連領土内でソ連軍隊をどう動かすかは国内問題であり、主権の問題であるという認識でありました。  五十万人の兵力削減と失業問題については、未開発の国土がたくさんあり、操業中の工場でも人が足りないので心配ない。しかし、住宅、食糧などの提供や仕事を教えることも必要となってくる。今後は軍事産業における消費物資生産を四〇%から六〇%に増加させると答えておりました。  次に参りましたのはスウェーデン王国であります。  九月十一日に、まず国防省において国家安全保障問題補佐官のへルマン氏と会見し、意見交換を行いました。  平時に非同盟、戦時に中立を旨としてきたが、中立政策には国民支持を得ており変化はない。同国は、通常兵器による戦争を想定し備え、少ない人口を生かすため徴兵制度をしいている。スウェーデンには百八十年間戦争はないが、第一次、二次大戦の経験から国内に強い産業を持たなければと考え防衛産業を支えるため、そこで開発したものを輸出することも必要であるということでありました。  最近の世界的な緊張緩和情勢を踏まえ、スウェーデン安全保障変化はないかという我々の質問に対して、現在の緊張緩和は歓迎しており、ソ連は過大な軍事費が重荷になり軍縮傾向にあるが、軍事的脅威は低下しても具体的に軍事の減少が見られないので、世界情勢を見守っているとのことでありました。  バルト三国に対する姿勢は、余り強い意見を言ってモスクワを刺激することは避けたいが、できるだけ経済的に援助していくつもりであるとのことでありました。  中立国家として国防費も相当かかり、福祉先進国家としても税金が高いと思うが、国民の高負担についてのコンセンサスは得られているかという問いに対して、確かに税金は高いが、国の重要施策である教育、運輸、福祉コンセンサスがあり、軍事費はこれらに比べてどちらが大事かという議論はあるが、年一回の世論調査では、圧倒的に同意を得ている状況だということでありました。  かつて核武装議論され核武装しないと決めたと聞いているが将来も同じかとの質問には、核兵器の使われる状況、使われたときの地球への影響を考え、一九六八年に核武装しないと決めた。国際原子力委員会とか、核不拡散などで努力してきているとの答えでありました。  スウェーデン外務省の副次官ベルク氏及び対外経済援助担当次官補のリランデル氏と外交政策などについて意見交換いたしました。  まず、防衛技術発展、ミサイルの射程距離航空機の航行距離の拡大が北欧の戦略的重要性を増してきている。東側諸国におけるさまざまな変化は、いろいろ憶測するには時期尚早であり、現段階ではいろいろな変化を見守っているという情勢説明がありました。  スウェーデンに近いバルト三国の状況をどう見ているかという我々の質問に対し、同国バルト三国に何が起こるか常に監視している状態だが、そこに住むロシア人と原住民との対立がポイントで、完全な独立は難しく、独立運動が過度に進むと危険だとの見方が示されました。  ODAについての国民理解ODA理念はどうかとの問いに、GNPの一%には国民支持を得ており、全政党が強い支持をしており、スウェーデンでは草の根運動が盛んで市民が簡単に参加できる。例えば労働組合宗教団体消費者組合などが効果的な圧力となって国際連帯を進める推進力の基礎となっているとのことでありました。  次に、ソレンチュナ市民防衛コントロールセンターを視察いたしました。  このセンターは、堅固な岩盤内に地下シェルターとして建設され、ストックホルム民防区の指揮所であり、本棟、宿泊棟動力棟から成っております。建設は一九七二年から約五年を要し、当時の価格で十億円の費用がかかっており、収容人 員は教育を受けた指令要員二百十五名となっております。このセンターは各種の兵器に耐えられるようにできていて、主な任務は空襲警報無線通話暗号作業やレスキューの指揮をしたり、またBC兵器核兵器汚染を調べて知らせるなどであります。  次に、ストックホルム国際平和研究所に参りました。  同研究所は、一九六四年に、同国軍縮代表であったミュルダール女史軍備競争に関する客観的情報必要性を痛感し、当時のエルランデル首相に相談し、同首相はこれにこたえてその設立案議会に提案し認められ、法律的に独立財団として正式に認可されたものであります。総員約六十名で、その約三分の一が研究スタッフになっており、所長は研究活動責任者政府が任命し、任期は五年以内ということであります。財源は大部分議会助成金に依存しているが、ますます広範化する研究計画実施のため外部から資金援助を求めており、研究プロジェクトごとに諸外国財団などから援助を受けているが、日本もぜひ援助してほしいという強い希望が表明されました。  主な研究領域世界軍備管理軍縮問題に重点を置いた問題思考型の研究機関として特定の問題に関して継続的研究を行い、それに関するデータバンクの整備を図っております。  最後に、ドイツ連邦共和国に参り、まず、九月十四日に連邦政府外務担当国務大臣であるアダム・シュヴェッツアー女史と会見をいたしました。  外交基本方針は、東西間の対話などによってヨーロッパの緊張緩和をすることであり、米ソ両国軍縮努力を見守ることであるということでありました。  ゴルバチョフ改革に対する見方は、成功するかどうか全くわからない。同議長西ドイツを訪問したときの約束である経済支援をどうするか、当面は経済マネジャー教育や研修を行うことになろうとのことでありました。  東ドイツからの大量難民については、受け入れる用意があるということでありました。  駐留軍に対する国民の声はどうかという質問には、国民の約九〇%がNATOに対し積極的に評価しており、駐留経費は土地、建物、施設同国負担し、人件費駐留軍負担しているとのことでした。  短距離核削減及び近代化に対する連邦政府の態度は、近代化は現時点で決定する必要はない。削減東西間で同レベルで、かつ低レベルでの均衡を要求していくとのことでありました。  次いで、ホッペン連邦軍第三十六爆撃航空隊基地を視察いたしました。  西ドイツ連邦軍陸軍兵力は三十三万二千百人、空軍は十一万七百人、海軍は三万八千三百人となっており、NATO軍に占める比率は、陸軍で五〇%、空軍で五〇%、海軍は三〇%を占めているとのことであります。  同基地は、米軍と同様に最強の部隊を誇っているが、兵員は約五百名で、その他に四百人の民間人が働いており、有事の場合には三千三百人になり、アメリカ軍通常は駐留せず、十日間の共同演習の際にアメリカから飛来してくることになっているとのことでありました。  国防軍低空飛行訓練は、国外で一万九千回、国内で二万三千回行っており、国内低空飛行による騒音については、人口密度が高いので住民からの苦情も絶えないとのことでありました。当日は特に私どものために緊急発進を行っていただいたため、日ごろの訓練のほどをかいま見ることができましたが、東側と陸続きで直接接している国における真摯かつ緊張した行動という印象を深く持った次第であります。  次いで、経済協力省フィッシャー局次長及びシュミット課長会談をいたしました。  ODAはどういう考え方基本理念でやっているかという質問に、イギリスは以前の植民地を、フランスはアフリカを中心とし、アメリカ戦略的視点重点を置いているが、我が国は全世界に向けられている。特色は、連邦政府と同様に各州も行っていること。教会もNGOの分野で大きな役割を果たし、連邦議会政党財団を持ち、この財団を通じて政府同士では協力になじまないものをやっているということでありました。  東欧圏への経済協力については、東欧圏は今大きく揺れ動いているので対応が難しく、世銀を通ずる借款などになるだろうとのことであります。  基本法がなくても問題はなかったのか、必要性についてどうかとの質問に、三十年間なくても問題はなく、基本法をつくれとの議論もあるが、必要であるという動機を見出しにくいとの答えがありました。  最後の九月十五日は、連邦議会国防委員会委員長CDUCSUのヴィルツ、SPDのフォン・ビュロー及びFDPのホイヤーの三氏と懇談をいたしました。  まず、NATO演習による農地の被害はどうか、反米感情は起きないかとの質問には、農場に被害が出るが政府が補償している。中には、かえって補償を期待している国民もいる。実地演習よりも机上演習を求める声が強い。反米感情はあるが少数派であるとの答えがありました。  東欧圏における改革を求める動きソ連軍縮傾向をどう見るかという問いに、これらの動きを歓迎することで各党は一致しているが、CDUCSU見方は、もう少し注意を持って見守るべきであり、余り楽観的見通し最初から持つべきでない。SPDは、東欧圏の諸外国がこれまでの政策の破産を認めたことであり、ソ連内で、軍備負担の重圧に耐えられず、負担の軽減を図ることでコンセンサスが得られたということだと思うが、早い成功は可能なことではない。FDPは、ソ連の路線の成功を望んでおり、西ドイツがこれを支持することが大切であるなどの答えがありました。  以上をもって本団の調査報告を終わりますが、我々は今回の調査により、ソ連スウェーデン及び西ドイツ現状と問題について改めて認識するとともに、最近の国際情勢は目まぐるしく動いているということ。また、世界東西を問わず、すべての国民平和裏に繁栄することを願わずにはいられないことなどについて感銘を新たにいたしました。  なお、二週間足らずの短い期間ではありましたが、この間にありまして、過密とも言えるほどの日程の中、精力的に三カ国の要人と次々に重要課題について熱心な討議を重ねてまいりました。このような強行日程にもかかわらず、団員一同の結束がかたく、心身ともに健康で和気あいあいのうちにすべての日程を消化でき、所期の目的を達成できましたことを心から団員皆さん感謝申し上げます。さらに、駐在日本大使館総領事館等方々の一方ならぬ御配慮に、団員一同改めて心から感謝の気持ちを表する次第でございます。  以上で報告を終わりますが、別途詳細な報告書議長に提出することになっておりますことを申し添えます。  ありがとうございました。
  5. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  以上で報告の聴取は終わりました。  次に、斎藤文夫君、梶原敬義君、和田教美君、吉岡吉典君の派遣議員皆さん方から御発言をお願いいたします。  まず、斎藤文夫君。
  6. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 時間が非常に制約されておりますので不十分でございますが、思うままにひとつお話をさせていただきたいと思います。  ただいま下稲葉団長から御報告がございましたように、大変ハードスケジュールの中、我々団員、朝から夜まで一生懸命勉強させていただき、お互い考え方を超えながら非常に和気あいあいたる雰囲気の中で、日本外交安保等々の問題について高い視野からの勉強をさせていただいたと、まずもって感謝をいたすところであります。  そこで、細かな質問は実は団長がまとめていろいろさせていただいておりますので、お尋ねがあれば後ほどまたお答えもあろうかと思いますが、 私はソ連に参りまして、何といっても日本軍事力ソ連がどう評価しているか、それから北方領土ソ連軍隊が展開しておるわけでありますが、これを撤去する意思がないか、この二点だけは何が何でも確かめたい、このように思って参りました。  最初の日にお目にかかったマルケロフ少将からは、日本軍事力はもう三十万以下程度とわかっていて単独で見れば脅威ではない。しかしながら、日米安保条約アメリカの五十万の軍隊と合わせれば、これは非常に軍事力としてソ連では脅威に思っておる。さらに韓国を加えると、演習その他でも大変ソ連としては脅威を感じているということでございました。裏を返して見れば、私ども日米安保賛成者でありますから、やはり戦後のあの混乱期、そして今日に至るまで、日米安保条約というものがどんなに日本の平和と安全のために歯どめになっておったのかということを逆に感じさせていただきました。ただ、もう一つ向こうで触れておりましたのは、日本軍事力は既に純防衛的な枠組みを超えている。アメリカの千海里シーレーンの防衛というような問題に既に日本軍事力は入っているというような見方をしておったことも印象的でございました。  ただ、ソ連は御案内のように常に専守防衛日本もそうだとこう言ったんですが、ともすれば平和勢力という形の中で、ソ連被害意識の中で軍事力の増大をしてまいりました。しかし、これは東西陣営、このデタント時代を迎えて、基本的にお互いが疑心暗鬼であれば結局は恐怖論につながっていく。そして、自分は常に平和を信じ、防衛だけに専念した軍隊をと、こう思いながらも、結果的には相手にとってはそれが侵略する勢力になってくる。だから防衛をしていく。ある時期に来るとそれが爆発するというようなことが長い歴史の中で示された戦争に至るわけでありまして、これらを考えあわせますときに、もう一回こういうデタントの時期に両陣営ともお互い信頼という大きなきずなの橋をしっかりとかけて、そして軍備の縮小というものをしっかりと検証の中でどんどん進めていかなきゃいけないんだなというような感じも率直にいたしました。  ソ連の日常生活は、御承知のように非常に低うございます。ホテルでも石けんがない。いろいろな物も不足している。モスクワ市内ですらそうですから、これがほかへ行けばいろんな国民の消費生活を圧迫している。こういう状態ですから、ペレストロイカ等々で軍隊を早く縮小して平和産業国民の消費生活充実に積極的に向けていかないと、ゴルバチョフ政権は本当に先行き大変だなと。しかも東欧圏の今日のあの揺れ方、もう既にそのときに揺れていろいろ問題もありましたが、それぞれの自治を尊重するとか、一つの大きな枠組みの中で、独立運動まではいかないだろうという見方をしておられましたが、既にハンガリーのワルシャワ条約機構脱退も認めざるを得ないようなソ連の昨今のお話を聞いていますと、大きく世の中は変わっていくなという感を一層深めた次第であります。  時間がありませんから、もう一つ、スウェーデンについてちょっと申し上げます。  御承知のように非同盟中立国であります。それだけに、スウェーデンは長い歴史の中でしっかりと自国の防衛というものに国民的なコンセンサスを得て長い間努力をしてこられました。たった八百四十万の人口で、いざとなれば百万近い軍隊はすぐにできる。この辺の状況等を考え合わせますと、徴兵制度を導入して一生懸命自国防衛という意識を国民がしっかり持っているということに私は大変うらやましく思いました。通常兵器戦争脅威というものを目標にして頑張っておられるところでありますが、しかし軍事費はもとより、核シェルター等をつくるには十億円もかかっているわけですから、大変なコストをかけても自国防衛をきちんとしていこうと、これは我々大いに見習わなければいけないなと思っております。しかし、ECの統一等との今後の問題、これも非同盟なるがゆえに加わらぬということになると、スウェーデン経済、将来は大変な課題を抱えておるというふうに思いました。  最後に、西ドイツでありますが、五十万の軍隊を擁する。NATO軍が五十万、合わせて百万の軍隊があの西ドイツに駐留をしておるわけでありまして、これまた国民的なコンセンサスを得ておるというところに、いかにも日本状況と違うことに私はいろいろと思うところ大でございました。特に飛行機の低空飛行訓練とか、あるいは戦車、軍隊の移動、これは年間に五万回もある。それの被害等は国が補償するようでありますが。反核、反基地は、まあ反核はあるんですが、反基地運動などというものが全国的に広がるというわけでもない。その辺にドイツの、土地と土地を接した国境を持った国のいろんな今までの長い歴史の中の国民的な考え方というものが今日の西ドイツをあらしめているかなと。まあ島国の我々としては恵まれた状況とはいいながら、やっぱり国防というものは自国でしっかりと守っていく、それが独立国としての将来の繁栄につながっていくことと、このように感じ取らせていただいたところでございます。  雑駁でございましたが、御報告とさせていただきます。
  7. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  次に、梶原敬義君。
  8. 梶原敬義

    梶原敬義君 今団長の御報告がありまして、そんなにはつけ加えることはないんですが、感じだけを一、二点申したいと思います。  私は、ソビエト、スウェーデンは初めて行きました。いずれにしましても、このソビエト、スウェーデン西ドイツを通じまして、大使館の努力もあったことも大でしょうが、思ったより、あるいは日本と比較して、情報公開の制度面が非常に進んでいるな、このように感じました。  それからソ連の場合、消費物資の不足、石けん、砂糖、特に肉類、乳製品、こういうものが非常に不足しているというのを現地で聞いたわけですが、いろいろ聞いてみますと、パンの場合一キロ当たり三十五円、私の概算計算では。それから牛に与える穀類が三十九円。そんなことでパンを買って牛にやった人もおって、それは政府から厳しく、やってはいけないという通達が出たらしいんですが、そういうように非常にパンは安い。それから住宅費が、やはり私の概算計算では月千百円。それから地下鉄、電気、水。地下鉄はもうただみたいなものですから、私ども一区間乗りましたが非常に安い。それから電気や水はモスクワでは使いほうだい。そういうことで生活必需物資というものは非常に安いが、逆に自動車類については注文してもなかなか、何年も新車が買えないというような状況。ここら辺の矛盾といいますか、そういうものが今ペレストロイカあるいはグラスノスチの状況でどのようになってくるのか、調整をされるのか、これがやっぱりソ連の国にとって大きな問題ではないかな、このように思いました。  次に、スウェーデン福祉国家として私どもも本当に参考になる国だと思いますが、やっぱり百八十年間戦争をしていないということが大きな基礎にあるのではないか。そして、平時非同盟、戦時中立、これが百八十年間戦争に巻き込まれないまま今日に至っている最大の国の基本的な考え方、もとになっていると思います。  それから今税金問題が我が国内でも非常に議論されておりますが、非常にスウェーデンは高い。しかしいろいろ世論調査等では、税金は高いけれどもそれに対して国民は満足をしていると、国の福祉政策を中心にして国民は満足し、合意に達している、そのような報告も大使館を通じて受けました。  それからこの三国をずっと駆け足で歩いてみまして、それぞれ御意見を拝聴する中で、世界は確実に緊張緩和の流れにあるな、このように受けとめて帰ってまいりました。  以上です。
  9. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  次に、和田教美君。
  10. 和田教美

    和田教美君 私は、今回の調査では団長の総括的質問を補足する意味で、主として軍縮問題、ニューデタントの実情、こういうふうな問題を中心に質問をしてまいりました。その立場から二、三私の感想を述べたいと思います。  まず第一に、東西ヨーロッパにおいては新しい緊張緩和、ニューデタント、こういう時代が私の予想を超えるスピードで進行しているという感じを受けました。  第二番目に、ソ連ゴルバチョフ最高会議議長兵力五十万人の一方的削減表明を含めまして、ソ連が提起しております幾つかの軍縮提案は、単なる政治的駆け引ではなく、本気であり、また本音でもある、こういう印象を受けました。  第三番目には、ヨーロッパにおける軍縮交渉は、特に欧州通常戦力交渉、これが相当進展をしておりまして、来年にも何らかの合意が得られるという見通しを述べる人が多かったわけでございます。それに比べますと米ソ戦略兵器削減交渉の方は、ソ連国防省のククレフ参謀総長臨時職務代行が言っておりましたように、例えばSLCMの問題など幾つかの基本問題でまだ対立が解けていないということで、これはまだいろいろ問題が残っているなという印象でございました。それとともに、ソ連軍縮軍備管理の問題にこのように熱意を示す背景には、日常生活物資の不足などに見られる深刻な経済状態がある。いわば背に腹はかえられずに過大な軍事負担を軽減する道を選択しているというふうな印象を受けました。  我々は、今も斎藤さんからお話しございましたように、モスクワのロシアホテルに泊まったんですけれども、部屋には石けんがない、洗面器の栓はどこもない、朝、食堂でミネラルウオーターを注文すると、それは昼の食事以後でなければ出さないことになっているというふうなことで、全く驚きの連続でございました。また、ゴルバチョフに近いビリュコワ副首相、女性の方ですけれども、これが七月にロンドンで日常生活物資の大々的な買い出しをやった。ところが、そういう緊急輸入の生活物資が、輸送がネックになって、それが港で滞っているというので、ルイシコフ首相がかんかんになって怒っているとか、そんな話をいろいろ聞いたわけでございます。  ペレストロイカで軍事生産を抑制して消費物資の増産を図るという方針は打ち出されておるわけですけれども、そうした新しい経済構造への転換の過程における混乱、生産の停滞というのが今ソ連が直面している問題だというふうに感じた次第であります。  もう一つ感じましたことは、いずれにしましてもペレストロイカ、これは成功するまでにはかなり長期にわたる期間が必要だと思いますけれども、グラスノスチ、公開性といいますか、この方は急速に広がって、それに伴う市民経済的不満やあるいは民主化を求める声などが一斉に噴き出てきた。この間のアンバランスといいますか、不調和というものがかなり目立つということでございました。  私にとっては久しぶりの訪ソだったわけですけれども、かつては政治問題について市民はほとんど発言を渋ったわけでございますけれども、今度行って聞いてみますとどんどん発言をする。そして、各新聞もいろんなことをいろんな立場から書いているというふうなことでございまして、そういう面では確かにソ連は変わった、変わりつつあるという印象を受けました。  ソ連が今直面している経済的困難の理由として、肥大化した官僚機構、それから機構改革に対する官僚の抵抗というふうなものが言われておりますけれども、また古めかしい生産総量第一主義というふうなものがかなり問題ではないかという印象を受けました。画一的な総量第一主義によって、きめの細かい日常生活物資、そういうものの生産がどうしてもおくれがちになるということ。それからまた、全体に経営学的に言えばメンテナンスの問題がソ連では非常に忘れられておるのではないか。それが今のいろんな問題になってあらわれておるのではないかという感じがいたしました。  そこで、このようなソ連のペレストロイカの現状に対しまして西側としてどう対応しているかという問題ですけれども、その点で非常に私が参考になると思いましたのは西ドイツの態度でございました。シュヴェッツアー外務担当国務大臣、この方も女性ですけれども、この外務担当大臣との会談、あるいは連邦議会の国防委員の三党代表との懇談などをやったわけですけれども、そこにあらわれた、西ドイツの積極的でしかも現実的な態度というものは、日本政府にとってもこれから見習うべき非常に参考になる態度ではないかという印象を受けたわけでございます。  それはどういうことかといいますと、団長報告にもありましたとおり、ゴルバチョフ路線の成否というふうな問題についてはこの三党の間で必ずしも判断が一致しているわけではございません。しかし、総じて言えばFDPを基盤とするゲンシャー外務大臣、この判断がリードしているのではないか。つまりFDP考え方は、その代表委員が言っておりましたように、ゴルバチョフを助けてペレストロイカを成功させることが西側の利益につながる、そして軍縮の問題についてもそうした外交姿勢の中でソ連に最大限の譲歩を引き出す、こういうのが西ドイツ外交の基本姿勢であるというふうに私には受け取れたわけでございまして、これは日本外務省がこれからいろいろ対ソ連外交をやっていくについても参考になる一つの態度ではないかというふうに思いました。  それからもう一つ、スウェーデンで国際平和研究所、SIPRIを訪ねたわけでございますけれども、そのときにSIPRI側から、研究プロジェクトについて日本からもぜひ援助をしてほしいという強い要請がございました。これは団長報告にもあるとおりでございます。私は、日本政府からの直接援助というのはちょっと無理かもしれませんけれども、何らかの協力方法があるかどうか、今後会長あるいは団長、さらに我々の間で少し話し合ったらいいのではないかというふうに思っております。  それとともに感じましたことは、日本にもSIPRIだとかあるいは英国の国際戦略研究所のような権威のある平和、安全保障に関する研究所、これが一つぐらいあってもいいのではないかという印象を強く持ちました。我が国の現状は、例えばイギリスの国際戦略研究所日本防衛費についてデータを出すと、日本軍事費世界第二位だなんてデータが出ると、途端に防衛庁が別のことを言う、あちこちでいろんなことが出てくるということで、これではとにかく基礎的なデータについてさえ認識の一致がないわけでございまして、そういう意味で純中立的な権威のある研究機関をつくるということが、すなわち各政党安全保障政策についても共通の場を広げさせる一つの助けになるのではないかという感じを持ったわけでございます。  ただ、日本現状では、政府の直属機関ということにすることはなるべく避けて、できれば国会の付設機関というふうな形でそういう研究機関考えたらどうか。我々公明党はかねがねそういうことを主張しておりますけれども、いずれにしましても、政府から補助金をもらうにしても、それと運営とは絶対に切り離す、そして中立性をあくまで保っていくということが必要だろう、そういう印象を持ってまいったわけでございます。  以上でございます。
  11. 中西一郎

    会長中西一郎君) ありがとうございました。  次に、吉岡吉典君。
  12. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 大変駆け足の調査活動ではありましたが、全体として日本外交安保問題を考える上で非常に有益な調査活動になったということを最初報告しておきたいと思います。  私は、西ドイツに特別に強い関心を持って参りましたので、この西ドイツで特に強く印象を受けた二つの点について報告したいと思います。  第一は、西ドイツでは今大変大きな変化が起こっているということです。世論調査でも、ソ連脅威はないというのが圧倒的多数であり、中立 志向が大体半数ぐらいを占めているというのが西ドイツの最近の非常に大きな変化だというふうに言われております。アメリカではこういう西ドイツの動向をめぐって、NATOの帰趨について論じたたくさんの論文があるということを私は出発前に読んで参りました。  西ドイツに行って特に印象に残ったことは、連邦議会国防委員委員との会見で、緑の党がNATOは要らないと言っているという紹介がありましたが、それとあわせてSPD委員も、情勢発展ではNATO西ドイツにとって必要かどうか深刻な問題になるだろうという趣旨の発言がありました。あわせて、西ドイツでは今緊張激化の要因になるようなことはできるだけ避けて、緊張緩和に向かうような努力をしなくちゃならない、そういう政治姿勢を非常に強く感じました。  私どもは、NATO、ワルシャワ条約の同時解消、軍事ブロックの対抗のない世界ということを主張しておりますが、先ほどお話がありました、非同盟中立立場を貫いて百八十年戦争に巻き込まれなかったスウェーデンを見てきたこととあわせて、西ドイツの最近の動きからも、こういう軍事同盟の対抗のない世界ということを目指すことの必要ということを一層強く感じました。  西ドイツで受けた第二の印象というのは、今西ドイツでは日本と同様、NATOあるいは西ドイツ国防軍の超低空訓練問題が大変大きな問題になっているということに関してです。  団長報告でもありましたが、私どもはホッペン連邦軍第三十六爆撃航空基地を訪問して、ここでいろいろな話を聞きましたが、その一つは、ビデオ放映つきで超低空訓練についてのかなり詳しい話を聞かせていただきました。私はこのビデオを見ながら、超低空訓練の実情を、三百メートル、百五十メートルという高度の演習にさらに七十五メートル、三十メートルというような超低空訓練もある。もっともこれはカナダで行われているということでしたけれども。三十メートルという超低空訓練があるというのをビデオで見せていただいて本当に驚きました。同時に、そういう超低空訓練は、西ドイツ空軍についてもいろいろな具体的な規制が行われている。またNATO軍演習についても、区域時間等すべて協定で取り決められて、この区域では何メートルの演習はやってもいいという、そういうこともビデオで画面を見ながら聞かせていただきました。  そういうものを見る中で私が感じましたのは、これは日本の国会の論議でもしばしば問題になってきていることですけれども安保条約に基づく地位協定の取り決めがないままに全国各地で超低空訓練が行われ、いろいろな問題が起こっている。日本西ドイツとは非常に違うんだなと、そういうことを感じ、これらの感想というものは日本に立ち返っても、冒頭に返りますけれども外交安保問題の中でも生かす必要のある非常に多くの問題があるということを感じました。  以上です。
  13. 中西一郎

    会長中西一郎君) どうもありがとうございました。  それでは、これから懇談に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  14. 永野茂門

    永野茂門君 どなたにお答えいただくかはちょっとよくわかりませんけれども和田委員がおっしゃいました、ヨーロッパ全体が緊張緩和に向かってとうとうとして動いておるということ、軍縮努力あるいは信頼醸成努力というのがもう大変に進んでおり、かなり成果を上げておる。これはもう私も、私は皆さんがこの三国を御訪問なさっている時期にちょうどイギリス、NATO本部、NATO軍司令部、それから西独、フランス等を回り、国防大臣だとか参謀総長その他とお会いしていろいろと意見交換し、また十月初めに、NAAというNATOの協議会があるわけですが、そこでやはり二日半ディスカッションに参加し、しかもそこにはワルシャワ軍の最高司令官のロボフ大将もずっと参加していたんですが、ロボフ大将とも意見交換しました。そのときに、和田委員がおっしゃったと全く同じようなことを感じました。その点はもう全く変わりません。  ただその間に私が、今度は別なことを実際にいろいろディスカッションして、難しいことがたくさん残っているなと思ったことは、一体どうやって軍縮を進めるのか。ソ連の大将がまず言ったことは、軍縮に大変時間がかかります。それから、国内の軍需産業を今どんどん民需に転換しつつあるわけですが、これも西側全部を合わせたものより大体三倍から四倍ぐらいの生産能力を、ラインを同時に変えていかなきゃいけないわけですから、これは機械そのものを廃棄するか破壊するかということ、あるいは転換するかということ。技術者をかえる、配置転換をする、これにも非常に時間がかかりますし、それから、もちろん軍人そのもの、約百万以上の軍人を全くの民間人に変えていかなきゃいけないわけですから、これも非常に時間がかかる。そのこと自体、ソ連自体が大変に難しいということを言いますし、そしてそれを検証するということ。いわんや十数倍持っておる短距離核兵器、まあ核兵器の場合御承知のようにやや容易な面もあるわけでありますけれども、しかしこれは十数倍ですから、やっぱり量的にいって大変に難しい面も含まれますし、さらに化学兵器の全面的な撤廃なんていうことになりますと、一体化学兵器は本当に民需品と軍用化学兵器とどうやって見分けるのか。全く同じと言っていいぐらいですからね。これはまた検証し、立ち会いながらやっていくということは大変に難しい問題を含んでいる。これをどうするんだということを各国で聞きました。各国ともいい答えがありません。  したがって、軍縮、これは傾向としてこういうことを追求していることは非常に正しいことであり、いいことであり、我々が予想していた以上にヘルシンキでありますとかウィーンでありますとか、そういうところの会議の成果はあったと、私はもう率直にそう思います。したがって、これを成果あらしめることはいいわけでありますけれども、そう単純に目の前に緊張緩和が来ているとか平和が来ている、デタントが来ている、軍縮はもう成功したのだと、こういうように思うのは大変な早計であって、恐らくこれは十数年や二十年はかかる。したがいまして、一体それを容易にする技術は本当にあるんだろうかということ、これについて何かお話が訪問国の中であったでしょうかということをひとつお伺いしたいと、こう思います。  それから、それと関連して、核兵器について、今核ミサイルは既にINFについては廃棄、破壊が始まっているわけですが、一体核弾頭はどういうように処理しているか。それを、核拡散と含めて一体どういうようにやって核拡散をうまく拡散しないように処理しようとしているのか、これも非常に難しい問題を含んでおる。さらにミサイル技術の拡散だとか、先ほど申し上げました化学兵器の拡散ということになりますと、これは農薬だとか防虫薬だとか、これともうほとんど変わらない。ちょっと変えればいい。何かにちょっとこう何かくっつければいいという化学式ですね。そんなものですから、生産設備もほとんど変わらなくて済むはずですし、その付近の拡散をどうやって防ぐように考えているんだろうか。こういう話は一体どういうことであったでしょうかということを第一点でお伺いしたいと思います。  それから、ついでに申し上げますが、私はソ連の大将に、ディフェンシブ・ディフェンス、専守防衛というのは日本最初に言い出したことであって、おまえのところはこの言葉を早速かっぱらっていった——かっぱらっていったというのは非常に不謹慎な言葉ですが、利用したなと、こう言ったら、いやそうかもしれないと。もちろんはっきりそうだとは答えませんでしたけれどもね。ただ、彼らの言うディフェンシブ・ディフェンスという場合には、十分な反撃能力もディフェンスの力の中に入っているわけでして、我々の力の中には反撃能力というのは全然持っていないのに、どうして我々の力がそれをもって近隣諸国に大変な脅威を与えるような攻撃力を持っているよ うに誤解されるのかという、何かそういうような解説があったかどうかということ、これは斎藤委員ですか、それをお伺いしたい。  この二点をお伺いしたいと思います。
  15. 和田教美

    和田教美君 最初の一点だけ僕から。  確かにその問題は、ソ連の中で、軍縮といっても軍人も首を切らなきゃいかぬし、要するに、単に徴兵が解除されていくので減っていくということでなくて、上級指揮官も減らさなきゃいかぬ。だからこれは大変な問題だということは、アフロメーエフ、それからアガロークという人と会ったときに話題に出ました。それで、とにかくかなり長期的に漸進的にやっていくという話でございましたね。ただ、職業訓練をして雇用転換をやっても、要するにソ連にはまだまだ地域が広いからそれを受け入れるところは幾らでもある。また工場内にもまだ労働力不足があるから、失業が大きく起こるという心配はないと、こういう話でございました。ただいずれにしても、人員の問題については相当長期間の課題である、そういう話だったですね。
  16. 永野茂門

    永野茂門君 もう一つ、軍縮の検証をどうするか。
  17. 和田教美

    和田教美君 検証の問題は斎藤さんから。
  18. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 実は、スウェーデンのSIPRIに行きましたときに、軍縮の手だてということで先方の一方的なお話を聞かせていただいたんですが、その中でもやっぱり本当の軍縮というものは検証をどうするかだということなんです。ソ連は、我々が得た印象では、もう核壊します、ミサイル壊しました、どうぞアメリカ軍NATO軍来て見てくださいと、こういう感じで、またソ連アメリカへ行って見るとか、お互いに相互乗り入れでやっていこうと、こういう提案をしておりましたけれども、SIPRIでは、ソ連軍縮の手だてとして五十万兵力を減少する、それについての平和産業への転換を、まあ完全雇用を含めてどうしていくのか。したがって今までの軍需物資から消費物資に、平和産業にどう切りかえるか。それと今武器の検証をどう現実的に果たしていくのか。この三つをきちんとしたチェックポイントにしないと、確かに軍縮軍縮と言っても、お互いにまた相互不信感に駆られて思うようにいかない。この辺がポイントだろうと言われたわけです。これは率直に言って回答にはなりませんけれども、そういう話が出ました。  それから二番目にお尋ねをいただいたことは、アフロメーエフ前参謀総長と話した中で、日本軍備と日米安保問題というような形で出ました。今メモがここにありますので、正確ではありませんけれどもちょっと読ませていただきます。  日本軍隊は自衛隊と言われてきたことはよくわかっている。数も多くない。三十万以下と承知をしている。ソ連に対しての脅威感は、先ほどのククレフ少将にもお尋ねをしたことと同じですが、脅威は感じていない、日本そのものの軍隊の自衛力ではですね。感じていないと。でも、言葉ではなく内容が問題だ。数は少ないけれども、私どもから見ると二つの不安を抱かせている。その一つは、ソ連日本のいわば今日的な関係、まあ平和条約も締結されていない、こういう状況下である。むしろ今アメリカソ連は大変親密な関係がふえている。日本ソ連の間はまだまだ冷たいと、こういうことにつながると思います。それから二番目は、日本同盟国はどこか、これが実は問題だ。したがって、日本軍隊がいざというときにはどこに配属されるか。それはいわば日米安保条約、こういう形に置きかえられると思っております。したがいまして、日本単独での自衛力はそう心配ではないということを明確に言っておりました。  もう一つ、実は先ほど私、北方四島からのソ連軍隊撤去はどうだということをつい申し落としました。実は、アフロメーエフさんに率直にお尋ねをいたしました。そうしましたら、その回答は、通訳の話ですけれども、極めて冷たい表現でしたよということでございます。ソ連は自国の領土内以外に軍隊は派遣をしていない。外務省間で領土問題がいろいろ話は出ているということは承知しておるけれども、それ以上おっしゃるのならこれは内政干渉だと、こういうとらえ方でございました。同時に、日本も北海道に北方に対する軍隊を配備しているじゃないか、こういう言いかえ方でございました。先ほど落としましたので、あわせて御報告いたします。
  19. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 今のお話に関連いたしまして、私自身の考え方と受け取り方をちょっと御説明しますと、ソ連の二カ年間における五十万人の兵力削減問題、これはどこから出てきたんだろうか。もっと極端に言いますと、要するに、今ソ連国内問題で大変大きな問題がいっぱいある。食料品を初めとする消費財の不足ですね。あるいはバルト三国、ウクライナその他の民族問題、あるいは炭鉱ストライキの問題、それから食糧の緊急輸入の問題、そういうふうな国内的ないろいろな要因があって、背に腹はかえられなくて軍縮に走り、それで金を稼いで国内生産なりなんなりにやるのかどうか。あるいは、軍縮軍縮で別個の問題であって、国内のそういうような問題とは関係ない、こういうふうな返事をするかということで大変関心を持ったんですが、返事は、両方だと言うんです。両方である。そして、軍縮の問題については日本もそうだと。これはお世辞だと思いますけれどもアメリカが大変協力してくれている。アメリカ協力してくれるから軍縮ができるんだというふうな言い方をしているわけです。  それから関連いたしまして、先ほども軍隊をやめた失業者の問題等もいろいろお話が出ましたが、それは、今までソ連の軍需工場といえども六〇%が軍需物資で四〇%は消費財の生産をやってきた。それを今度は逆さまにして、民需といいますか、消費財、生活物資等の生産を六〇にして軍需を四〇にすればいいので大した問題じゃないとか、それから、先ほどもお話があった、広大な国土の中に働くところはいろいろありますというふうなことを何だかんだと言いながらも、やっぱり大変難しいということは認識し、また、そういうふうなことを言うておるわけです。  だから国内問題でも、人が足りないということのみならず、それは技術の問題もあるし職種の問題もあるし、それから住宅の問題もあるし、いろいろありますから大変難しい問題があるけれども、やはりそういうふうな方向に進む。それは国内の問題と国際的な問題をあわせてやはりソ連の行き方というのはそういうふうなところじゃなかろうかなというふうな感じを強く受けましたね、それはもういろんなところで。御承知のとおりです。  検証の問題については、ちょっと自信ございません。
  20. 永野茂門

    永野茂門君 もうこれでやめますが、ちょっとだけコメントさせてください……
  21. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は関連して検証問題でちょっと。  検証問題は、実は日本もいろいろかかわりがあるということが我々にとって大きな問題だと思うんですね。私は去年四月にモスコーへ行って、ちょうどドブルイニンさんが書記で国際部長だったんですが、会談をいろいろやって、そのときちょうど米ソ会談の直前だったので、いろいろな話が出たんですが、和田さんも言われたけれども戦略核兵器削減交渉で一番問題なのはSLCMなんですね。あれはINF条約のときに米ソ共同声明の中で、戦略核兵器六千発の枠外だけれどもSLCMについても数の上限と検証問題を米ソでやろうということをはっきり決まっているわけね。それが一番問題になったネックだというわけです。ソ連側は、空から見て、港にいる艦船の積んでいるSLCMが核か非核かをはっきり見つける装置を開発したんだと言うわけだ。それをアメリカ側に言うんだが、アメリカ側は、そんなの絶対不可能だということで一つネックになっておるわけですね。この間、米ソ科学者が実際に放射能検知器を持ち込んでテストをやった記事なんかもあったんですけれども、そのテストでは、ソ連が僕らに言ったような新しい装置はどうも持ち出 されなかったようで、普通の検知器でやったようなんですけれども。  僕が非常に重視しているのは、去年の予算委員会でも聞いたんだけれども、六月のゴルバチョフ・レーガン会談の後、カールーチ国防長官が日本に寄ったわけよね。新聞を見ると、瓦防衛庁長官、それから宇野外相も一緒だったかな。SLCMの検証問題では非常に慎重にということを申し入れたと。あのころアメリカ側が、核の存否を明らかにしないという政策を引っ込めてSLCMの検証に応ずるという記事がわっと出た。つまり、検証をするとこれは核の存否が明らかになりますからね。それを思い切って軍縮のためにアメリカが踏み切ったという記事が一時載って、瓦さんたちがカールーチ長官に、そういうことをやめてくれと。もしそういうことになって国際的に検証ということになって、横須賀にいるミッドウエーは持っているかとか、攻撃型原潜があるかどうか、これ、検証が始まって、もし確かにあるということになると、それは日本の自民党政府の虚構が崩壊しちゃうわけですからね。だからやめてくれということを言ったのね。それでアメリカがその後、いや、核の存否を明らかにしないという政策は毫も変えないと。それでこの検証は極めて困難だという態度がそのままなんですよね。  だから僕はこういう経過をずっと見ていると、唯一の被爆国の日本が、非核三原則で持っていないはずなのに、そういうことに自信がないから、SLCMの検証についてはアメリカは応ずるなと、実際そういうような態度をとるのは非常に大問題だ、これは戦略核兵器削減交渉の進展に妨げをつくり出す、そういう非常に反動的な態度なんですよ。だから、INF協定の後、戦略核兵器削減交渉が、次のステップとして、今通常兵器の問題にも進むというお話があったけれども、それが非常に軍縮の重要な課題なのに、大体日本政府は、そんなことを進めては困ると、そんなことを言うと日本政府の、非核三原則を実は守っていないのに守っているという虚構が崩れるからという態度をとるのは、これは大問題だというので質問をしたんだけれども、いや、そんなことは一つも言っていません、交渉経過をお聞きしただけだというようなことで瓦さん逃げましたけれどもね。  だから僕は、今の軍縮問題それから戦略核兵器削減交渉の進展、その中でのSLCMの検証問題というのは日本には非常にかかわりがあるという点で、ぜひ与党の皆さんに非核三原則を守る態度で、前向きの態度をとっていただきたいという希望を申し述べます。
  22. 中西一郎

    会長中西一郎君) 永野さん、何か言い残しがありましたら。
  23. 永野茂門

    永野茂門君 これで最後のコメントにしますが、私は、今の事実についてはよく存じませんので何もコメントはございませんが、いずれにしろこの軍縮の検証は、核兵器にしろ非核兵器通常兵器にしろ大変に難しいようですが、軍縮というのは非常に大事ですから、しかも検証が伴わなければ余り価値がないと思いますね。したがって、検証技術、あるいは検証をどういうようにお互いにやるかという協定といいますか、話し合いというのは非常に大事なことだと思います。  そこで、先ほどから五十万ということが出ておりますが、これについて一言申し上げますが、五十万というのはソ連が一方的に軍縮しようと言った数字であって、バランスをとるためにはこんな数字じゃ到底足りないのでありまして、ですから五十万はとりあえず何年かかかるということであって、本当は、私どもの計算では約百万以上減らしてもらわなきゃいけない、通常戦力について言えば。そうしますと大変に時間がかかるんですね。ということが一つ。  それからもう一つ。和田委員がおっしゃったゴルバチョフのシンシアティーといいますか、ゴルバチョフがまじめにいろんな政策を遂行して……
  24. 中西一郎

    会長中西一郎君) 途中ですが、簡単にしてください、後がありますので。
  25. 永野茂門

    永野茂門君 はい。——ということについて、私が受けている感じは、九〇%か九五%ぐらいはそうだという感じを受けておりますが、ヨーロッパでもそういう話でしたけれども、例えば六万トン級の空母を今ごろ何でつくるか、あるいは何で軍事援助を再びアフガニスタンに強化したり、カンボジアに対して強化したり、あるいはまた若干の兵器を北方四島に持ってきたりするのか。こういうことからいうと、ちょっと外れたところがあるということをまた別に感じているということをつけ加えて終わります。
  26. 田英夫

    ○田英夫君 派遣議員皆さん方、大変御苦労さまでした。二、三お伺いいたします。  一つは、まずソ連関係では、大変いろんな方にお会いになったんですが、今一番問題になっている、いわゆるワルシャワ条約機構をハンガリーは脱退をするというようなことがありますし、ポーランドのヤルゼルスキー大統領が日本のマスコミの質問に対して、ワルシャワ条約機構とNATOとの同時解体が今世紀中にもあり得るというような発言をしているわけですが、ソ連でこういうことに触れた御発言があったかどうか。お聞きになったかどうか。  スウェーデンについては、先ほどもちょっと触れられましたけれども、非同盟中立という形の中で、斎藤さんの御報告にありましたが、EC加盟問題というのは一九九二年ですからもう間近に迫ってきている。スウェーデンにとっては本当に大問題だろうと思うんですが、この点について踏み込んだ見通しのような発言があったかどうか。  それから、これは質問じゃありませんが、和田さんのお話にあった国際平和研究所、私もミュルダール女史に会ったことがありますけれども、創設者というか、きっかけをつくった人ですが、確かに日本が平和国家であるというならば、アジアで、日本にそうしたものがあっていいんじゃないか。全く和田さんの御説に私も全面的に賛成です。  スウェーデンでもう一つ。これは第三回の国連軍縮特別総会、ここでカールソン首相アメリカの、アメリカのというか核保有国の核の所在を明らかにしないという、肯定も否定もしないという政策はやめろという強烈な批判をやったんですが、それに至るまでスウェーデン議会では与野党の間で大激論をやって、その結果をひっ提げてカールソン首相がああいう演説をやっているということなんですが、これは質問でそれに触れるような発言スウェーデンであったかどうか。  最後西ドイツですけれども、これは私の経験からのあれですが、西ドイツでもいまだに西ベルリンに行くのにルフトハンザは飛んでいないわけですね。イギリス、フランス、アメリカの三国の飛行機しか飛んでいない。これは西ドイツに行くと、必ず一般の市民の中で、戦争終わっていないという発言がありますね。それから昨年東ドイツ、東ベルリンへ行きましたら、これは全く一市民としての発言ですということですが、今東ドイツには三十五万のソ連軍が駐留している、これは我々にとって決して愉快なことじゃありませんと、こういう話を聞きました。今、東西ドイツの統一というようなことに至るのではないかと特に西ヨーロッパ諸国はある意味では恐れているわけでしょうけれども西ドイツでそういう意味の、つまり戦後もう五十年が近くなってきているのに敗戦国という状態で戦後が続いているということに対する、東西ともに、まあ悔しさを込めてでしょうが、発言があったことを私は体験しているんですが、そういうことに触れるようなことがあったかどうか。  以上、質問としては三つです。
  27. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 関連して簡単に。  田さんの質問に刺激されたんだけれども、やっぱりヨーロッパの枠組みが大きく動いて、東西ドイツの再統一問題が問題になっていますわな。再統一の場合、やっぱり統一したドイツの怖さというのがあるもので、中立ドイツということになって、それが日程に上り始めているという報道が多いわけですよね。  そうすると、今の北欧諸国、ノルウェー、ス ウェーデン、中立でしょう。オーストリアは永世中立でしょう。それでハンガリーも中立ということになると、ラパツキー提案というのが前にあったけれども、やっぱりヨーロッパで中立地帯というのが問題化するという状況があって、これがワルシャワ条約機構とNATOの同時解体とこう絡みながら大きな枠組みの変化の中でその問題が出ているように思うんだけれども西ドイツで、この再統一や中立ドイツとか、中立地帯化とか、これはまた日本の問題にやっぱりかかわりが深く出てくると思うんだけれども、話が出たかどうか、お聞きしたいと思います。
  28. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 では私答弁させていただいて、間違っている点だとか、あるいはまたいろいろございましたら、和田先生なり同行の先生から御答弁いただいたらと思います。  東欧諸国に対するソ連見方ですね、ちょっと触れましたように、実際はやっぱり自分たち陣営に引きつけておきたいという気持ちが見えるわけですね。しかし、それぞれの国が自主独立です、それぞれの国の責任でお決めになれば結構です、我々としてはできるだけの御支援はいたしますけれども、だからといって強制はしませんというふうなスタンスがいろんなところで私は見えました。だから、それは国によっていろいろの対応の仕方も違う。ただ、バルト三国に対する対応というのはこれは厳しい感じを持ちましたね。これは自分の国だと、独立するといったってそれはできるものかいと、極端に言えば。向こうはできるできると言うけれども社会主義体制で、先ほど梶原先生からお話があったように、公共料金、公共物資がほとんどただだ。それを切っちゃったらとても独立なんてできっこないじゃないかというのがモスクワ考え方だ。ただ、東欧諸国についてはやはりそこがちょっとスタンスが違うような印象を受けましたね。  それから、一九九二年のスウェーデンの問題、ECのですね。これにつきましては、大変関心を持っているという印象は受けるわけです。そして、どうするかということは重大な問題だ。ただ、ECにあれするということになれば武装中立中立ですね、それとのスタンスで矛盾を感ずる。だから、やはり発言権は持っておきたいんだけれども、のめり込むのは嫌だというふうなスタンスが続くんじゃないかなという感じを持ちましたね。そういうふうな印象を、印象というか、感じ、いろいろございますけれども、流れだけ申し上げます。  それから、西ドイツへ来ましてつくづく感じたんですが、日本は昭和二十年に終戦になってから四十四年ということで、それは駐留軍の存在というのは沖縄では大変いろいろ印象をひしひしと感じている、あるいはそういうような駐留軍が駐留しておられる地域ではあれだろうと思いますが、日本全体としての受けとめ方と西ドイツ全体の受けとめ方というのはもう基本的に違う。まだ続いている。だって、半分はまだNATO軍がいるんですから。そして、訓練だとかいうてあっちこっち、戦車だ何だかんだ踏みにじっていって、そして西ドイツ政府がどんどん後をついて回っては補償だ補償だというふうな格好でいっていて、そういうような中で何とか国民支持を得よう、また得ているというふうな形ですわね。  そこで、東西ドイツの統一の問題なりなんなりについては、どんどん入ってきます、これはやはり同胞だから。難民とかなんとかという言葉じゃないんですよ。同胞ですから。同じ民族だから受け入れようというふうな感じですね。しかし、ではさて統一ドイツとしてNATO諸国なりなんなりがどういうふうな見方をしているか。これはまた大変複雑じゃないかな、こういうふうな感じがしました。  私の方はこの程度で……。
  29. 和田教美

    和田教美君 やっぱり僕は時間的ずれがあると思うんですよね。今、田さんなどから持ち出された問題は、もうごく最近の動きですわね。例えばバルト三国の問題は、僕らが行ったときにもかなりシリアスな問題になっておりましたけれども、それについての態度は、大体今下稲葉さんがおっしゃったとおりだと思うんですね。要するに、独立するといっても経済的な問題からそう簡単に独立できるか。要するにソ連のいろんな、つまりソ連中央としては相当持ち出しだ。だから、もし独立したらやっていけるのか、補助金も切られちゃうぞというふうなことをドブルイニンが言っておりましたがね。だから大したことにならぬだろうというふうなニュアンスだったね。  ところが、ワルシャワ条約機構の中のポーランドだとかハンガリーの問題はまだ、つまりワルシャワ条約機構を脱退するとかなんとかというような問題はまだ出ていなかったですよ。だからその問題は我々も、とにかくそこまで事態が急進展するというふうには思わなかったから、ここ二カ月の間の事態はとにかくもう非常に急進展しているなというのが僕は帰ってきてからの印象ですね。だから、バルトについてはもう既にそういうことを言っておりましたからある程度期待していると思うんだけれども、ワルシャワ条約機構の内部の解体論とかというようなものは、そのときはまだほとんど予想されていなかったんじゃないかと思いますね。
  30. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ちょっと田先生の質問で……
  31. 中西一郎

    会長中西一郎君) ちょっと待ってください。翫さんが手を挙げているので、その答弁、あわせてやってください。
  32. 翫正敏

    ○翫正敏君 さっき斎藤さんが御報告された中で、最初のとき報告漏れがあって、その後追加で言われた、ソ連北方領土の軍の撤退のことに関心があって聞いたところが冷たい反応だったということをおっしゃったんですけれども、事実だろうとは思いますが、軍縮というような問題は、これは相互の関係の問題で、ソ連の方が冷たいのは、やっぱり日本の方の、在日米軍の問題とか日本の自衛隊の増強の問題とかが向こうに映っていて、そういうところから冷たい反応があるんじゃないかと思うんですよね。ですから、やはりソ連の方は北方領土の軍の撤退という国民的関心が広がっていると思いますが、そういうことについて、冷たい反応だったという報告だけではちょっと不十分だなという気持ちがしました。  それからもう一つ。同じく斎藤さんのおっしゃった中に、こういうところを見に行っても、反核運動はあったようだけれども基地運動というようなものは全然お目にかかれなかったというような御報告だったんですけれども、それは事実なのかどうか。私は調査したのでないからわかりませんが、ただ、私も地元で反基地運動をやっているんですけれども、現に、例えば米軍低空飛行訓練の問題とか、夜間訓練の問題とか、騒音の問題とか、それから事故の問題とか、いろいろいっぱい起こっているわけだから、そういうことについて住民が困るということでいろいろ政府に対して物を言うのは、私は何もおかしいことではない、基本的に。そういうふうに思うのであります。  それからもう一つだけなんですけれども中立の平和研究所の設立という提案について、私も大賛成だと思って聞いたんですが、当面のところとして、例えばきょうの新聞なんかに、防衛庁の方で長官が有識者から意見を聞いたとかいうのがあって、  防衛庁の国際情勢認識について「現実は変わっているのに、防衛白書などで示されている「冷戦構造は変わらない」という説明だけでは、国民理解を得ることは難しい」 こういう批判の声が有識者の先生方が出席された中で出たというニュースがここに出ているんですが、例えばこういうことなどについても、現在日本には中立の平和研究所というのがないんですが、つくっていただくのは大事ですけれども、少なくとも当面のところとして、こういうことについてちょっと資料を取り寄せようと思えばすぐに読めるとか、コピーできるとか手に入るとか、そういうふうなことぐらいはちゃんとしてほしいというふうに思うんですけれども、そのことについてほかの委員の方はどんなふうに思われるか、 ちょっとお聞きしたいんです。
  33. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 簡単にお答えします。  最初北方領土の問題、相手が冷たいのはこっちにもそれなりの理由がある、そのとおりだと思います。なるがゆえに、先ほどお話ししたように、軍拡というのはお互いが、自分平和勢力だよ、侵略はしないよと思いながら、結局は相手を信頼してないからどうしても今までの軍拡競争になってきたと、こういう観点を御説明しましたし、あるいはまた、北海道に軍隊がいる、日米安保条約という中でソ連脅威に感じているということも御報告をさしていただきました。  日本ソ連関係は、実は桜の枝を早く渡そうじゃないかと、こういうような向こうの呼びかけもあったことも事実でございます。私どもは、北方領土はぜひ返してほしい、それが四島一括だという今お願いをしているところですけれども、それによって本当に日ソ平和条約ができればシベリア開発とか何かいろいろこう手を打てるわけでありますが、ソ連はもっと、例えば竹島だとか、いろんな日本と島の問題でももめているところもあるから、お互い知恵を出し合ったらどうだと。これは実は昨年日ソ円卓会議で行ったときに向こうから指摘を受けた点でございましたけれども、それらをあわせますと、先ほどお話ししたように、まだまだ日本ソ連との信頼関係というものは、アメリカソ連の今日の環境よりはいささかおくれているということだけははっきり認識さしていただきました。  なお、反基地運動の関係というのは全くないわけじゃありませんし、緑の党が出てきましたからいろいろ御意見はあるようです。ただ、NATO軍の駐留とか、あるいは基地の存在等について、ほとんどの国民理解をしている。これは日本の反基地運動あるいはそれら反安保運動等とは相当大きな隔たりがあるな、これは私の長い間のドイツにおける考え方でございます。  それから田先生の御質問でございますが、ワルシャワ機構とNATOとの関係は、吉岡先生が御質問をされた中にございますので、これは吉岡先生にお話しいただければいいんじゃないでしょうか。  それから、EC統合と非同盟の問題は和田先生がお尋ねになっておられるんです。余計なことは申し上げませんが、ただ、西ドイツで税制を私ちょっと勉強させてもらいました。EC統合のときの一番の問題は、何といっても貨幣価値のお互いディファレンスの問題、それと同時に、税制で頭いっぱいですから聞いてみたんですが、例えば税制の違いというのはどうするんですかと。いや、これは実は大変な隘路になりますと。しかし、その隘路を乗り越えて九二年までには統一をする。ではそのときにどうするんですかと言ったらば、これは西ドイツの人ですが、幅を持たせた二段階の税方式をすると。例えば一四%から二〇%を通常税率、四%から九%を低税率とか、一定幅を持たせた二段階ぐらいの中に、いろいろ理由はあってもその中に突っ込んでいこう、国情あるいは財政力、みんな違う国々が統一をするわけですから、西ドイツは持ち出しになってもこれは中心的な存在で努力をしていきたい、こういう考え方を示しました。となると、一方この非同盟動きが相当出てくるかもしれませんが、西ドイツは今のEC統合の中で中心として自国の力をEC諸国の中へつぎ込んでいくような決意を持っている。そこと非同盟との関係というのは一体どうなるかなと、新しい疑問がちょっと頭に浮かびました。
  34. 堂本暁子

    堂本暁子君 短かくさせていただきます。  大変ニューデタントの時期にこういう調査に行かれて、タイミングがいいと申しますか、意義のあった調査だと思うんですけれども、確かに今おっしゃったように、二カ月間の激動の間にまた随分事態も変わったかなという気がいたしますが、日本立場としてやはり一番気になりますのは、ソ連の中でどんどんデタントが進むという感じでありながら、果たして本当に揺り返しというか、そういうものが起こらないのかどうかということ、そういうことを現地をお歩きになってどういう感触で受けとめられたか伺いたいのが一つです。  それから、先ほどの国際平和研究所ですか、私もぜひ、これがもし政府ではなくて国会に附属する機関で実現できたらとてもいいなと。ノルウェーも国際人権センターというのを議会に附属した形で持っていますけれども、そのことがやはり本当の意味の中立と申しますか、ということに大変大事なんではないかということを、和田さんのおっしゃったことに大変賛成というか、ぜひ実現したいという気持ちで伺いました。
  35. 中西一郎

    会長中西一郎君) 吉岡先生に先ほど質問がありましたので、簡単にお答えいただければと思いますが。
  36. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 ワルシャワ条約とNATOとの同時解消の問題ですが、これは私はソ連でも聞きましたしスウェーデンに行ったときにも聞きました。ソ連では、我々はこれについて非常に積極的なんだという意思表示と、アメリカは非常にかたいんだと、そういう状況の中で、それを打開するために段階的にこれを進めるプログラムも持っているというそのプログラムの説明もありました。時間がありませんからプログラムの中身は省略しますけれども。  それから、非同盟中立ですからスウェーデンも当然そういう立場をとっているわけですが、スウェーデンで私の受けた印象は、軍事ブロックの解消より以上に核の問題、軍縮の問題により重点を置いているという回答がありました。同時に、スウェーデンの問題について私は非常に複雑な感じを持ちましたのは、あそこでは非常に核の問題、潜水艦の問題等であったんですが、さっき話がありました待避ごうの問題ですね、岩盤の中にくり抜いた。これは核戦争に対してもこれで防げるんだという説明なんですね。果たして核戦争というものを待避ごうで防げるというふうに本気で考えているんだろうかどうだろうかという点では私は若干疑問を持ちながらその待避ごうの中を、もう物すごいものなんですね、その中を歩き回ってきました。  それから、統一ドイツの問題がありましたので一言だけ言わせていただきたいと思います。  私は、緊張激化の要因になることを避けたいという政治姿勢を感じたというのはそういう点も含めてなんです。ドイツの中から、統一ドイツというふうな主張というふうなものは一切なかった。さっきどなたかありましたけれども、やはりヨーロッパは非常に複雑な目で統一ドイツというものは見ている。そういうことは意識しているから、彼らの側から統一ドイツというふうなことはないし、それから東ドイツからの例の移動ですか、これについても、この問題が東西ドイツ関係悪化につながらないことを我々は願っているというふうな発言もありました。そういうことを含めてできるだけ緊張激化の要因を避けたいという姿勢がうかがえたということを私は申し上げたわけですけれども、したがって、西ドイツの側から統一ドイツへの発言というふうなものは私の記憶では一切なかったように思います。
  37. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 堂本さんの御質問ソ連の揺り戻し、私でよければお答えいたしますが、簡単に言うと今のソ連の政権がもつかもたぬかという御質問だと思いますけれども、私自身は、ペレストロイカは大変進んで——ペレストロイカよりグラスノスチの方が進んでいるんですよね。ですから、先ほど来申し上げておりますように、ソ連国内的にも大変な問題を抱えている。それから軍縮初め国際的な問題も抱えておるので、言うなれば一番どん底の時期だろうと思うのです。それに向けましてグラスノスチが進んでおるから、大変いろいろ今までなかったような現象というのがソ連の中で起こっている。  これがもつかもたぬかということは、私もいろいろ聞いてみましたけれども、もつと言い切れる人もいない。わからぬと言う人が大多数なんですよ。そういうふうな中で、今度は西側へ行ってみたんですけれども、いろいろ聞いてみますと、もう皆さん大変関心を持っている。しかし、何とか もたしたいなという気持ちはあるようです。そこはやっぱりあの天安門事件みたいなものになっちゃって、保守派が非常に強くなっちゃって、そしてだんだんだんだん西側と離れてくるようなことでは困るので、何とかもたしたいなという気持ちはあるようですけれども、本当はわからないというのが実は私の持った印象です。  それから、二番目のSIPRIの問題、これはやはり今から皆様方とひとつ力を合わしてどうするかという問題だろうと思いますがね。
  38. 堂本暁子

    堂本暁子君 ありがとうございました。
  39. 中西一郎

    会長中西一郎君) 予定した時間も参りました。  海外派遣報告についての懇談は、これで終わることにいたしたいと存じます。  派遣議員の皆様方におかれては、貴重な御報告をありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会