運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1989-11-29 第116回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月二十九日(水曜日)     午後一時二分開議  出席委員    委員長 戸塚 進也君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 井上 喜一君 理事 坂上 富男君    理事 中村  巖君       赤城 宗徳君    伊藤宗一郎君       稻葉  修君    大塚 雄司君       木部 佳昭君    佐藤  隆君       塩崎  潤君    杉浦 正健君       戸沢 政方君    稲葉 誠一君       山花 貞夫君    冬柴 鉄三君       山田 英介君    滝沢 幸助君       安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 後藤 正夫君  出席政府委員         法務大臣官房長 井嶋 一友君         法務大臣官房司         法法制調査部長 則定  衛君         法務省刑事局長 根來 泰周君         法務省保護局長 佐藤 勲平君         法務省訟務局長 岩佐 善巳君         法務省人権擁護         局長      高橋 欣一君  委員外出席者         環境庁企画調整         局環境保健部保         健業務課長   高橋  透君         大蔵省証券局業         務課長     水谷 英明君         国税庁税部所         得税課長    森田  衞君         国税庁調査査察         部調査課長   宇都宮康雄君         最高裁判所事務         総長      川嵜 義徳君         最高裁判所事務         総局総務局長  金谷 利廣君         最高裁判所事務         総局人事局長  櫻井 文夫君         最高裁判所事務         総局民事局長  泉  徳治君         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         法務委員会調査         室長      乙部 二郎君     ───────────── 委員の異動 十一月二十九日  辞任         補欠選任   塩川正十郎君     杉浦 正健君 同日  辞任         補欠選任   杉浦 正健君     塩川正十郎君     ───────────── 十一月二十九日  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第六号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第六号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七号)      ────◇─────
  2. 戸塚進也

    戸塚委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所川嵜事務総長金谷総務局長櫻井人事局長泉民事局長島田刑事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 戸塚進也

    戸塚委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。      ────◇─────
  4. 戸塚進也

    戸塚委員長 この際、最高裁判所川嵜事務総長から発言を求められておりますので、これを許します。川嵜事務総長
  5. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 東京高等裁判所長官に転出いたしました大西前事務総長の後を受けまして、今月の二十七日、最高裁判所事務総長に就任いたしました川嵜でございます。どうかよろしくお願いをいたします。  改めて申し上げるまでもないところでありますが、裁判所は具体的な事件の裁判を通じて基本的人権を擁護し、法秩序を維持するという重要な責務を負っております。この使命を果たすために、司法行政の面で微力を尽くしたいと考えております。  幸い、今日まで当委員会委員長初め委員皆様方の深い御理解と力強い御支援によりまして、裁判所の運営は逐次充実してまいっております。今後とも一層の御支援を賜りますようお願いを申し上げまして、ごあいさつにいたします。(拍手)      ────◇─────
  6. 戸塚進也

    戸塚委員長 次に、理事会の協議に基づき、本日、本委員会に付託になりました内閣提出裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。後藤法務大臣。     ─────────────  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  7. 後藤正夫

    後藤国務大臣 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。  政府は、人事院勧告趣旨等にかんがみ、一般政府職員給与を改善する必要を認め、今国会一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律及び国際花と緑の博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は、次のとおりであります。  第一に、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給は、従来、特別職職員給与に関する法律適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職職員俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職職員について、その俸給増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、これらの報酬または俸給増額することといたしております。  第二に、判事判事補及び簡易裁判所判事報酬並びに検事及び副検事俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職職員給与等に関する法律適用を受ける職員俸給増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。  第三に、一般政府職員について、今回、単身赴任手当支給する措置を講ずることとしておりますことから、判事判事補及び簡易裁判所判事並びに検事及び副検事には、一般政府職員の例に準じて、これが支給されることになりますが、高等裁判所長官並びに次長検事及び検事長にも、一般政府職員の例に準じて、この単身赴任手当支給する措置を講ずることとしております。  これらの給与の改善は、一般政府職員の場合と同様に、第一及び第二の報酬及び俸給の改定については、平成元年四月一日にさかのぼってこれを行い、第三の単身赴任手当支給については、平成二年四月一日からこれを行うことといたしております。  以上が、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  8. 戸塚進也

    戸塚委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  9. 戸塚進也

    戸塚委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂上富男君。
  10. 坂上富男

    坂上委員 まず、関係官庁にお聞きをいたします。  この二つの法案は我が党も賛成をいたしておりますが、これに関連をいたしまして、調停委員皆様方あるいは保護司皆様方、それから法務省関係におきまして人権擁護委員、これらの人たちの日当あるいは実費弁償、こういうものはやはりこの趣旨にのっとって値上げなりしかるべき措置がとられていいのではないかと思いますが、どのような状況の見通しでございましょうか。
  11. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 まず、私どもの方からは調停委員手当について申し上げます。  調停委員手当につきましても、毎年公務員ベースアップ率を参考にしながら、それに見合った手当引き上げを行っているところでございます。平成二年度の概算要求におきましても、公務員ベースアップ率を勘案いたしまして、それにほぼ見合った手当額引き上げを予算要求しているところでございます。今後とも公務員給与の動向を見ながら手当増額について努力していきたいというふうに考えております。
  12. 佐藤勲平

    佐藤(勲)政府委員 申し上げます。  保護司につきましては、保護司法の十一条で「保護司には、給与支給しない。」「保護司は、法務省令の定めるところにより、予算の範囲内において、その職務を行うために要する費用の全部又は一部の支給を受けることができる。」というふうに定められておりまして、これが委員申された実費弁償金と言われるものになるわけでございますけれども保護司はやはり我が国の刑事政策上極めて重要な役割を担っておりまして、更生保護会などとともに更生保護に非常に貢献して大変御苦労いただいておるところでありまして、その活動の実情を見ますと、近年、犯罪や非行の態様、対象者の資質、環境等多様化、複雑化しておりますのに伴いましてますますその困難の度を加えておりますところから、これに報いるために関係当局の御理解を得て実費弁償金増額を図ってきたところでございます。なおその活動重要性、負担の重さ等にかんがみまして、今後とも増額に努力していきたいと考えております。
  13. 坂上富男

    坂上委員 これらの先生方の御活躍は、まさに司法を本当に民衆的に守っておられる皆様方でございまするので、できるだけ損をおかけしないようにひとつ御配慮のほどをお願いをいたしたいと思います。  それでは、関連として質問をさしていただきます。  きのうに引き続きまして、大和証券粉飾決算疑惑問題についてでございます。  まず大蔵省にお聞きをいたしますが、きのうの私の質問に引き続きまして、本日までの間にこれに対する対策、対応をどういう方針をお決めになったか、また新しい事実が確認されましたかどうか、お聞かせをいただきます。
  14. 水谷英明

    水谷説明員 お答えいたします。  昨日、本委員会先生から各般にわたり御指摘を受けたところでございます。私どもといたしましても、損失保証の問題でございますとか有価証券報告書の記載が適切に行われたかということについて今後厳正に調査し、適切な処分を行ってまいる考え方でございます。
  15. 坂上富男

    坂上委員 それではお聞きをいたしますが、いわゆる問題となりました損失保証の株の譲渡先についてまず確認をさしていただきます。  いわゆる大和ビルヂングの株、大和証券が持っておったものを譲渡いたしまして、これの損失補てんをしたと言われておるわけでございますが、少し確認をさしていただきます。これは私がずっと調査をしてまいりました資料に基づいておるものであって、確信を持って指摘をしておるわけでございますから、きちっと御答弁賜りたいと思います。  この株はこういうふうに譲渡されておるようでございますが、いかがでしょうか。住友銀行五万、住友信託銀行五万、日本長期信用銀行五万、鹿島建設五万、安田信託銀行三万、日本生命三万、千代田生命三万、太陽生命三万、イー・ケー・ケー・ファイナンス三万株が譲渡されていると思われます。そして、結局のところこれは第三十三期の現在で株主十四名、こういうふうになっておりまして、これが昭和六十年の七月から六十一年の六月現在の株主であると思われます。残りが大和証券であることは言うまでもありません。これはいかがですか、大蔵省確認していますか。
  16. 水谷英明

    水谷説明員 五十九年に大和証券が欠損の穴埋めに手持ち保有大和ビル管理株式会社株式をいわば含み資産を益出しする格好で売却したという点については承知しておりますけれども、その売り先については私ども現時点で承知しておりませんが、今後詳細に事実調査をする過程でこういう点についても必要があれば当然調査を進めてまいるという考え方でございます。
  17. 坂上富男

    坂上委員 これは私がきのうからきょうにかけて調査してきた資料。こんなのは公表しているわけです。大蔵省、こんなこと何にもわからぬのかな。わかっているのでしょう。わかったらきちっと答えなさいよ。こんなのは素人でもわかる。これじゃ、あなた、大和証券損失保証幾らでもやることを監督することできないのじゃないですか。何でこんなことをきちっとしないのですか。  さらに、その後三十四期、六十一年七月—六十二年六月までの三十四期、それから六十二年七月から六十三年の六月、三十五期、全部、こんなのはしかるべきところへ行って調査すればだれでも見せてくれることになっているわけです。そうでしょう。この方法だけでも、あなたお答えなさい。どうやればこの資料が入るかということ、大蔵省の立場で答えられるでしょう。きちっと答えなさい。
  18. 水谷英明

    水谷説明員 現時点で承知していないということをお答えしたわけでございますが、今後本件の解明に必要なことは、こういうことも含めまして詳細にもちろん調査を進めてまいる考え方であります。
  19. 坂上富男

    坂上委員 知っておって答えないのだろうと思いますが、これ以上どうしようもない。  さてそこで、まず最初は一株八百円で売られた、そしてこれを引き取った形になりました三協でしたか、これが今度一株三万円で今言った各大どころの銀行等譲渡になった、この利益をもって補てんをした、こう言われておるわけでございます。八百円というのはどうですか。正当ですか、どうでしょう。それから、一株三万円というのは正当なのですか。いずれも安過ぎるのじゃないですか。どうです。
  20. 水谷英明

    水谷説明員 お答えいたします。  大和ビル管理株式会社売却価格でございますが、私どもが承知しておりますのも、今御指摘ありましたように大和証券から三協エンジニアリングへは八百円で、また三協エンジニアリングからは三万円余の価格で売却したということを聞いております。大和ビル管理株式会社非公開株式でございますので流通市場における流通価格が存在しないという状況のもとでございますので、個別の取引価格について一概に判断することはなかなか困難な面が多いわけでございますが、いずれにせよそういう売却価格が全体の事実関係の中でどうか、大和証券より売却価格を決定した際の事情についても十分に聴取したいと考えております。
  21. 坂上富男

    坂上委員 さてその次に、損失保証ということでございますが、大蔵省、今まで証券業界損失保証があった、このことについてはどの程度認識をしておられますか。
  22. 水谷英明

    水谷説明員 お答えいたします。  一般論でございますけれども、過去に証券会社またはその役員、その職員が、証券取引法で禁止されております損失を負担することを約して勧誘する行為、いわゆる損失保証と言われております条項に違反して処分対象となったという事例は幾つかあると認識しております。
  23. 坂上富男

    坂上委員 さて、ここでちょっと前に返りまして、国税庁の方にお聞きをいたしますが、国税庁、いかがでございましょうか。これはリクルートも全く同じような形態をとってまいったと思いますが、これは贈賄用に使ったわけでございます。今度は損失保証に使ったわけでありまして、その使途がちょっと違うだけでありまして、全く同じやり方をしているわけでございます。  そこで、八百円で三協に売って、三協が三万円で売った。このもうけは約百十億だ、こう言われておるわけでございますが、これは課税部分ではどういうふうになりますかね。
  24. 宇都宮康雄

    宇都宮説明員 お答えいたします。  お尋ねの件は、個別にわたる事柄でございますので、具体的な答弁を差し控えさせていただきますが、国税当局としましては、国会で議論されました事柄あるいは新聞等で報道されたことにつきましては関心を持って、常に納税者の適正な課税を実現するという観点から、あらゆる機会を通じまして課税上有効な資料、情報の収集に努めまして、これらの資料納税者から提出された申告書等を総合検討しまして、課税上問題があると認められる場合には調査を行いまして、適正な課税に努めているところでございます。
  25. 坂上富男

    坂上委員 国税庁、これはもう調査を始めたのですか。あなたに言われたからこれからやりましょう、こういう答弁ですか。どっちです。
  26. 宇都宮康雄

    宇都宮説明員 個別な問題につきましては具体的な答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に申しまして、大きな法人につきましては調査をいたしておりますので、個々の問題につきましては具体的な答弁を差し控えさせていただきます。
  27. 坂上富男

    坂上委員 時間がもったいないから議論したくないのですが、何で答弁できないの。守秘義務というのは、君、そんなものじゃないんだよ。もう少しきちっと答えなさい。具体的な問題だ。この問題について調査を始めているのかいないのかということなんだ。それから、これからどうするのかということなんでございます。でありますから、一般的な問題、抽象的な問題じゃない。具体的にこれをどうするかということは、答弁義務があるんです。税金のことだと何でも守秘義務守秘義務と言っているけれども、これは間違いだ。きちっと答えなさい。
  28. 宇都宮康雄

    宇都宮説明員 お答えいたします。  資本金一億円以上の大法人につきましては、その他の一般法人よりも接触を密にしておりますので、おおむね四、五年に一回程度の間隔で税務調査を実施しているところでございます。  大和証券に対する調査につきましては、個別にわたる事柄でございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  29. 坂上富男

    坂上委員 これは委員長に言うか言わぬかという問題ですが、これはひとつ委員長、後刻御相談して、どうも税務当局守秘義務というのをまだ理解していない。これを一々私が講義していたのでは時間がかかってしようがないから、のれんに腕押しみたいになるから私はもうやめますけれども、ひとつちょっと検討してもらわぬといけませんな。  さてそこで、今度また大蔵省証券局になるのでございましょうか、お聞きをいたしますが、大和証券がこれに関連をいたしまして関係者処分した、こう言っているんですね。どんなことがあって処分したのか。処分対象者というのは、名前は言わなくたっていいのですが、どういう地位の人を対象としたのか、何人なのか、いつなのか、現在わかっている範囲でできるだけお答えください。
  30. 水谷英明

    水谷説明員 お答えいたします。  本件につきまして大和証券が内部的に処分をしておるということについては承知いたしておりますけれども、どのような時期にどのような処分が行われたかという詳細については承知いたしておりません。今後本件の事実関係調査してまいります過程におきまして、どういう処分が具体的に行われたのか、また、処分が適切であったかどうかということについても当然検討してまいりたいと思っております。
  31. 坂上富男

    坂上委員 いつ処分したというのですか。内容はわからぬでいいですよ。いつ処分をしたというのです。そして、こういう業務変更がありましたとか、いろいろの報告があるんじゃないですか。どうですか。
  32. 水谷英明

    水谷説明員 いつ処分をしたという点についても具体的に承知しておりません。私どもこの事件の推移に応じてやったのではないかと推測はいたしておりますけれども、そういう点についても今後個々に詳細に調査してまいりたいと思っております。
  33. 坂上富男

    坂上委員 さて、これに関連をいたしますが、その次は、投資をしてくれれば六%の利息をつけて返す、こういうようなことが証券業界で行われている、こう言われております。しかも、これは利回り保証と言いまして、この保証行為というのは半ば公然として行われているんだ。  しかも、その背景にあるのは大変激烈な売り上げ競争で、株の売買を代行して手数料で稼ぐ証券会社は、売り上げが上がらぬと利益につながらぬものでございますから、こうやって投資をしてくれれば利息をつけて返す、こういうようなことも言われておりまして、俗にニギリと言っているそうでございますが、こういう事実について大蔵省はどのような認識を持っているのですか。
  34. 水谷英明

    水谷説明員 お答えいたします。  株式に対して投資する方が現在のように非常に広範にわたっているという現状におきまして、その市場の担い手であります証券会社信頼というのは大変に大切なことだと思っております。そのため、証券会社行為というものにつきましても、証取法五十条の禁止行為というようなものを特に定めまして、そういうことのないように法も定めておるわけでありますが、証券業界に古くから体質的にそういう非近代的なところがあるんじゃないかということで、私どもとしても再三再四そういうことに対し一般的な指導をいたしますとともに、個別に発覚した事案に対しては厳正に対処してまいってきたところであります。特に、証券会社同士競争によってお客さんに迷感をかけるあるいは一般信頼を失うといったようなことはあってはならないことと認識しておりまして、今後もこの点につきまして引き続き厳しく指導してまいる考えでございます。
  35. 坂上富男

    坂上委員 損失保証あるいは結果的に損を肩がわりした、こういう行為は今までも少しありましたという御答弁のようですが、これをもうちょっと具体的に、何件ぐらいあったのか、そしてこれについては証券会社がどういう処分をしておるのか、これに対して大蔵省はどういう処分をしておるのか、ちょっとお答えください。
  36. 水谷英明

    水谷説明員 お答えいたします。  損失保証に限っての数字というものはないわけでございますが、証券会社役職員に係る事故というものの数字を御紹介いたしますと、六十二年九月期が八十七件、六十三年九月期が七十三件、元年三月期が三十六件でございます。  特定の例えば証券会社職員証取法の違反をするということになりますと、その外務員登録取り消し処分というようなことが、通例というのはちょっとあれでございますが、見られる行政処分でございます。
  37. 坂上富男

    坂上委員 これは結局のところ、会社が直接指揮指導しなくともそういう雰囲気の中にあるわけでございまして、会社の方としても、これに対して決してとめようとしないで、どちらかといいますと慫慂するような行為が多いんじゃなかろうかと思いますので、今回はこの問題はひとつきちっと調査をしていただきまして、善良なる庶民投資家がこんなようなことで大変な不安と証券に対する信頼を失ってはいけない、こう思っておるわけであります。  そこで、よく私たちは言われるのです。政治家先生方証券会社投資をすると絶対損をかけないというふうに言われておるわけでございます。まさにこれは損失保証そのものでございます。だれがどうということは私はわかりませんけれども政治家から始まりまして、こういう大会社が、いわば損失保証をすることによってまたそれなりの証券によるリスクを免れ、そしてその犠牲になるのが一般庶民投資家、こういうふうになるわけでございます。そんなような意味におきまして、まず大蔵省の方はいかがですか。政治家が金を証券会社に預けて株をお願いすると絶対に損にならない、こういうようなことが言われておるわけでございますが、まさに損失保証のことも指しているのだろうと思いますが、聞いておりませんか。
  38. 水谷英明

    水谷説明員 お答えします。  証券市場信頼確保のためには、投資家がだれであっても、分け隔てすることはもちろんでございますけれども、そういった損失を負担する、あるいは利回り保証をするといったことを約して勧誘するというようなことは厳にあってはならないことだと考えております。
  39. 坂上富男

    坂上委員 私の質問は、政治家がそういう恩典に浴しているという話をちらほらと聞くからそういう事実を確認をしているのか、こう言ったら、あってはならないことでございますというのは、反面解釈すると、聞いてはおりますという意味ですかな。  そこで、これを契機に、大蔵省課長さんいかがですか、こういう損失保証あるいは損失補てん、これはもうこの際、本当に証券界の重要な問題であり国民の信頼の問題でありますから、徹底的な調査とそれに対する改革をきちっとしなければいけないと思っておりますが、いかがです。
  40. 水谷英明

    水谷説明員 本件について今御指摘ありましたように厳正に対処することは当然でございます。また、こういったことを反省材料といたしまして、今後同種のことが再発しないように、あるいは証券会社の内部管理体制の整備でございますとか私どもの指導でございますとか、いろいろな点でより一層気を配ってまいらなければならないと考えております。
  41. 坂上富男

    坂上委員 そこで、今度はちょっと質問をリクルート株に移したいと思っているわけですが、まず起訴状を見ますと、一株当たり三千円で株の譲渡をして取得さした、こうなっておるわけでございます。検察の方は、最低でも一株五千円であったというふうに認定したとかと言われておるわけでございますが、そういたしますと、その差額だけでも一株当たり二千円でございますが、これらについてはどういうふうに理解をしたらいいのでしょうか。
  42. 根來泰周

    根來政府委員 リクルート関係の起訴状によりますと、前半は省きますけれども、右登録後に見込まれる価格より明らかに低い一株当たり三千円で、例えば一万株を譲り受けて取得し、こういうふうに記載しております。  それでは差額は幾らかというのは、これはなかなか難しい議論がございまして、御承知のように殖産住宅の第一審判決と第二審判決はその追徴のやり方について違うわけでございます。殖産住宅の第一審判決というのは、要するに公開時の初値といいますかそのときの価格を基準にしましてその差額が追徴される金額だ、こう言っているわけですが、二審ではそうではなくて、要するに譲り受けたときの客観的な価格はどれぐらいだったかということを考えてその差額を考えるべきだ、こういうふうに言っているわけでございます。  具体的に、それじゃリクルート事件はどうなのかというお尋ねだと思いますけれども、これはこれから公判が続けられるわけでございまして、公判の立証の結果どういうふうになるかということが一つの問題と、そういう立証の結果の結論につきましては論告で申すべきことであるというふうに考えております。さらに、論告を受けて裁判所がどういう判断をするかということでございまして、今二千円であるとか三千円であるとかということを私が申し上げるのは不適切なことだと考えております。
  43. 坂上富男

    坂上委員 局長、これはどうでしょうかね。未公開株を登録をする。登録後に見込まれる価格よりも明らかに低い一株当たり三千円です。明らかに低いと言うのです。だから安く見積もっても幾らの差がある、こう言っているのですか。
  44. 根來泰周

    根來政府委員 先ほど申し上げたのは、最終的に追徴の話に落ちつけて申し上げたわけでございますが、検察官の認定としまして数字的に幾ら安いかということまで起訴状にうたっているわけではなくて、もうだれが考えても明らかに低い一株三千円で譲り受けた、そしてそれが一般人のなかなか取得できない株であるという二つの要件に絞りまして起訴しているわけでございまして、数字的に幾らかということはちょっと私から申し上げることはできないと思います。
  45. 坂上富男

    坂上委員 そうしますと、局長、没収というのはそのものを押収しちゃうということなんでしょうが、所有を取っちゃうということなんでしょうが、追徴というのはどういう意味ですか、法律上の意味
  46. 根來泰周

    根來政府委員 これはよく御存じのことだと思いますけれども、没収があたわざるときには没収にかえて追徴する、要するに不正の利益を犯人の手にとどめないという思想で、そういう規定が特に贈収賄については必要的没収ということで百九十七条ノ五ですか何かに規定があると思います。
  47. 坂上富男

    坂上委員 さて国税庁、どうですか、このリクルートの問題については、確かに五十回以上あるいは二十万株以上の取引がなければ課税対象にならぬ、こう言っておるわけだ。一体国税庁は、まず一つは取引税、これは三千円でやったのでしょう。これは低過ぎるというのです、検察はそう言っているのだから。私が新聞を見た限りにおいては、少なくとも五千円はしたんだ、こう言っているわけです。この取引税の差額、どうしていますか。この場合今度は、今回の三協問題、大和問題、全く同じ問題。八百円で売って三万円でまた転売されている。これをまずどうしますか。
  48. 森田衞

    ○森田説明員 お答えいたします。  先生のお尋ね、有価証券取引税という点につきまして一般論としてお答え申し上げますと、売買によりまして株式譲渡した場合には、その場合の有価証券取引税につきましては実際の売買価格をもとにいたしまして課税をするという取り扱いをしているところでございます。したがいまして、例えばある株式が三千円で売買されたという場合には、たとえその株式の時価が三千円よりも上回っているという場合でございましても、その売買価格の三千円をもとにして有価証券取引税を計算いたしまして課税をするという取り扱いになっているところでございます。
  49. 坂上富男

    坂上委員 そうしますと、その取引税を免れるために三万円のものを八百円で売ったらこれはどうするのです。免れる目的があったら。
  50. 森田衞

    ○森田説明員 お答えいたします。  ただいま申し上げましたように、実際の売買価格をもとにして有価証券取引税を課税するということになっておるわけでございますので、今御指摘の点につきましても実際の売買価格を基礎として計算をするということになろうかと思われます。
  51. 坂上富男

    坂上委員 だからこの場合の実際の売買価格、どう見るの。だからこの場合どう見るのと聞いている。リクルートとこれ、大和と二つです。
  52. 森田衞

    ○森田説明員 まずリクルートについてお答え申し上げますと、リクルートにつきましては個別でございますので、リクルート問題について有価証券取引税がどうであったかというお答えは差し控えさせていただきますが、リクルートにつきましても今回の大和証券関係につきましても、実際の売買価格に基づきまして有価証券取引税を計算をするということになっておるわけでございます。
  53. 坂上富男

    坂上委員 だから実際というのは、大和の場合は三万円なんだ、実際というのは。それからリクルートも実際というのは、三千円というのはほんの形だけだ。最低どんなことをしても五千円以上です。これが実際の売買です。ただこれは損失を免れるため、わいろをやるためにこういうふうにしたものだから、金額は少ないのです。実際の売買価格というのは、実際の価格というのは、今言ったようなのが正しいのじゃないのですか。どうです。
  54. 森田衞

    ○森田説明員 お答え申し上げます。  実際のという意味でございますが、例えば売買契約が行われまして、その売買契約に基づく金額が現実に例えば三千円なら三千円ということで渡されまして、その三千円を対価としてある株式譲渡されておれば、その株式が例えばその後確実に値上がりが見込まれるという場合でございましても、その三千円の譲渡を基礎といたしまして有価証券取引税の課税を行うということになっているわけでございます。
  55. 坂上富男

    坂上委員 それじゃ、追徴というのは不当利得を残さない、犯罪による不当利得を残さない趣旨であります、それはまさにそのとおりだ。したがいまして、この場合は八百円から三万円、リクルートは三千円から最低五千円、こうやってその差額は利益、不当利得として出る感じでございます。これは実際売買というのじゃなくて、売買に名をかりた仮装の売買だ。仮装の売買というのは無効なんだ。したがって、いわば贈与に当たるのだろう、こう思います。  さてそこで、いいですか、昭和六十三年十二月十六日のリクルート問題に関する調査特別委員会で、こう答えているのだ、あなたのところの伊藤さんという方が。どういうお立場かわかりませんが。「税務の実務におきましては常々各種の情報収集、マスコミの情報を含めまして情報収集に努めておりますし、そういった各種資料から課税上問題があるという場合には必要に応じて調査をするというようなことで課税の適正化に努めてきておりますけれども、今後とも同様な方針でやってまいりたいというふうに考えております。」今私が言ったようなことをどうするのだ、こう言って、じゃこういうふうにやります、こういう答弁なんだ。したがって、もう去年の十二月の答弁なら一年たとうとしているのです。国税庁、どうしたのですか。
  56. 森田衞

    ○森田説明員 お答えいたします。  私どもの前次長の答弁、今お話があったわけでございますが、やはり私どもといたしましても、先ほどおしかりを受けたわけでございますが、個別具体的な点につきましては従来からお答えを差し控えさせていただいておるわけでございまして、一年もたっておるのじゃないかというおしかりでございますが、やはり私ども国会での今のような御議論、十分踏まえまして、従来から適正な課税の実現ということに努めているわけでございまして、現在も将来もそのような形で努力していきたいという御答弁でどうかお許しいただきたいと思う次第でございます。
  57. 坂上富男

    坂上委員 時間がもうなくて大変申しわけないのですが、もう一つ。自民党の幹事長でございましたかどなたでございましたか、要職にある方が、リクルートの未公開株をもらって、譲渡を受けてもうかったものについては寄附をする、こう言明をしているのですが、寄附というのはありましたか、どこかに。  そこでこの寄附は、いわば税法に定められたところへ寄附をすると、寄附金控除というのがあるのだね、これは。またこれで恩典にあずかるのかどうか知りませんけれども、どうも裁判にかかった人、これは没収あるいは追徴を受けるわけ。それから今度は裁判にかからない人で職務権限がなかったような人は、いわば俗に言うと、議論のあったところでございますが、寄附をする。寄附をすれば寄附控除の対象になるわけだ。何かこんなのに恩典与えていいのか、こう思うのですが、どうですかこれは。
  58. 森田衞

    ○森田説明員 お答えいたします。  寄附があったかどうかという点でございますが、種々さような報道がなされていることは私どもも十分承知しておるわけでございますが、その寄附の全般につきまして国税当局といたしまして把握する立場にないということを御理解いただきたいと思うわけでございます。  寄附の取り扱いでございますが、一般論といたしまして、株式の売却益を寄附した場合等に限らず、一般的に所得の中から寄附を行った場合につきまして、所得税の課税の取り扱いは、その寄附が所得税法の第七十八条の特定寄附金に該当する場合に限りまして寄附金控除が受けられるということになっておりまして、その場合の所得が既に課税済みの所得であるのか、課税されていない所得であるのかを問わず、一般的に所得税法ではそのような取り扱いになっているところでございます。
  59. 坂上富男

    坂上委員 そうでしょう。知って聞いているんですよ。所得税法施行令の二百十七条でだあっと書いてあるわけです。大体寄附するところはこういうところですわ。わかっているんです。  結局、そういう届けは国税庁の方にないんでしょう。どうですか、ありますか。それだけでいいです。
  60. 森田衞

    ○森田説明員 お答えいたします。  私ども税法の執行官庁といたしましては、確定申告が行われまして、その確定申告を見まして、確かに寄附を行った者が、その寄附金控除の対象となるところに行ったものであって寄附金控除を受けたいという意思を持っている場合に、確定申告書にその旨を記載して寄附金控除を受けるわけでございまして、その限りにおきまして私どもも把握できるという形になっておるわけでございます。  先生の御指摘の点につきましては、平成元年分の確定申告、これは来年でございますので、私ども現時点でそういう寄附が行われたかどうかという点につきましては、現在のところお答えできる立場にないということでございます。
  61. 坂上富男

    坂上委員 余計なこと言わぬでもいい。去年の十二月いっぱいまで寄附をしたものはことしのあれでしょう。脱税しているんですか、それを聞いているんですよ。去年寄附すると言い出したんですよ。だから、去年のうちに手続があったものはことしの三月十五日の申告になるのじゃないですか。どうですか、もう一遍答えなさい。
  62. 森田衞

    ○森田説明員 お答えいたします。  仮に昨年に寄附が行われまして、その方が先生指摘のような対象のところに寄附を行っておりまして、寄附金控除を受けたいということで確定申告をした場合には、ことしの確定申告が行われておればそれの中に入ってくると思われます。  私が申し上げましたのは、今年分について寄附が行われた場合には来年の三月ということで申し上げたわけでございます。
  63. 坂上富男

    坂上委員 そうでしょう。  ありがとうございました。
  64. 戸塚進也

    戸塚委員長 稲葉誠一君。
  65. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 まず、法務省の方からお尋ねしますが、実は日本弁護士連合会の雑誌を読んでおりますと、弁護士の登録というのがあるわけですね。見ておりましたならば、非常に将来を嘱望されておられる検事の人が弁護士になっているのを私見まして、あれあれ、こういうふうに思ったわけなんですが、その個別事件を聞くわけじゃございませんで、検事になって一年以内にやめる人とかあるいは五年以内とか十年以内とかそれ以上とか、そういう形で検事になってやめてしまう、やめて弁護士になるというか、そういう人が今どのくらいいるわけですか。     〔委員長退席、井出委員長代理着席〕
  66. 井嶋一友

    井嶋政府委員 検事のいわゆる中途退職者についてのお尋ねであろうと思いますが、任官何年後という形での調査はちょっとできておりませんけれども、年代別の調査で申し上げますと、例えば最近五年間で申し上げますと、五十九年度の中途退官者合計は四十四名、以下、六十年度が五十名、六十一年度が五十三名、六十二年度が四十六名、六十三年度が五十五名でございます。  これを年代別に若干詳しく申し上げますと、まず五十歳以上のところが多いわけで、約六〇%以上を占めるわけでございますが、五十九年度が四十四名の退官に対し五十歳以上が二十五名、以下、六十年度が二十八名、六十一年度が三十四名、六十二年度が二十六名、六十三年度が三十五名でございます。四十歳代で申しますと、五十九年度が三名、六十年度が七名、六十一年度が六名、六十二年度が五名、六十三年度が八名でございます。三十歳代で申し上げますと、五十九年度が十六名、六十年度が十四名、六十一年度が十一名、六十二年度が十三名、六十三年度が十二名でございます。三十歳以下のところでございますが、五十九年度はゼロ、六十年度が一名、六十一年度が二名、六十二年度が二名、六十三年度がゼロ、こういう実態になっておるわけでございます。
  67. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その検事がやめる理由、いろいろあると思うのですね。私もいろいろ聞いてみますと、ひとつわからないのは、検事は独立官庁あるいは独立官署というのですか、どちらが正しいのですか、と言われておるわけですね。その理由は法律的に言うとどういうことなんですか。起訴状の場合、起訴するときに検事正が起訴するわけではないわけですね。その係の検事が起訴するわけでしょう。それを独立官庁だというわけなんですね。どういう意味なんですか、法律的にいうと。
  68. 根來泰周

    根來政府委員 一般の行政機関で申しますと、大臣がその行政機関ということでございまして、我々は補佐役ということになるわけでございます。  検察庁の組織というのは、御承知のように、地方検察庁では検事正、次席検事検事と、こうあるわけでございますが、個々検事も一つの行政機関として対外的に自分の名前で検察事務を行える、こういう意味で独立機関と言われているものと考えております。
  69. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 自分の名前であれするのはいいんですが、そうすると、司法試験を受けて二年間修習して検事になって、調べたものを一々、今三席という制度もありますね、三席のところへ行ったり次席のところへ行って頭を下げて報告して決裁の判こをもらっているのが現状でしょう。そういうのはとてもかなわぬというか嫌だという形でやめる人もいるとか、いろいろあるわけですね。だから、独立官庁なら決裁というのはおかしいんじゃないですか。
  70. 根來泰周

    根來政府委員 独立官庁と申しましても、裁判所のように独立の機関ということではございませんで、自分の名前で行政行為を有効になし得る、こういうことでございます。  したがいまして、行政機関としてやることでございますから、やはり統一性ということが必要でございます。したがいまして、検事総長から検事長検事正という上下の指揮監督権というのは検察庁法でも認められているわけでございまして、その指揮監督権に基づいて、例えば地方検察庁では検事正が一般検事を指揮し、検事はその指揮を受ける、こういう形になっているわけでございまして、その辺矛盾するわけではないと思っております。
  71. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、いわゆる決裁という言葉を使っていますね。それが嫌でたまらぬと言うと言葉は悪いんだけれども、あれだということで、何か決裁という制度をある年限まで行った人は決裁しなくても済むように、裁量の幅というか自分の権限の幅を認める、こういうような形に変えたんですか。事実上変えたということですか。
  72. 根來泰周

    根來政府委員 これはただいま御指摘のように決裁という意味について、いわゆる指揮監督ということでございまして、これは法律上認められたことでそれはそれでいいのでございますけれども、やはりその決裁が非常に過度にわたるといいますか、検事の個性を殺すというふうな方向に走ると非常にまずいものですから、その辺については私どもも最高検の方でも管理者の教育ということで、そういうふうにわたらないようにいろいろ指導しているところでございます。したがいまして、ある庁におきましては特定の軽微な事件については決裁を省くというようなことも施行しているようでございますが、私ども一般的にそういう方針でやっているわけではございません。一般の方針としましては、先ほど申しましたように、あくまでも決裁が本当の意味の指揮監督であるようにお願いして指導しておるわけでございます。
  73. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ことし京都の裁判所で国が二十万円支払えという判決があって、これは接見交通権を妨害したということで判決がありました。これは確定をしましたよね。確定をしたのですが、その中で、過失の点について、「公務員の故意、過失の判断基準」というところと「具体的指定にこだわった点について」というので二点について過失があるという判決ですね。  この判決は、恐らく最高裁判所の判例の昭和五十三年七月十日の判決、いわゆる杉山判決というのですか、判示事項の一と二がこうあるわけですね。これは大阪のあれで、具体的なことについて破棄差し戻しになっていますから、私にもちょっとその後の調べがわからないのです。しかし、いずれにいたしましても、その判決の要旨としては、一の点は当然生きているというふうに考えられるので、この判決の要旨は  一 捜査機関は、弁護人から被疑者との接見の申出があったときは、原則として何時でも接見の機会を与えるべきであり、現に被疑者を取調中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせる必要があるなど捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人と協議してできる限り速やかな接見のための日時等を指定し、被疑者が防禦のため弁護人と打ち合せることのできるような措置をとるべきである。  この判決そのものは差し戻しですからまだ確定してないかもしれませんけれども、この判示の一項というのは事実上は確立している。京都の判決の中でも確立という言葉を使っています。引用してある判決は別の判決のようですけれども、それは別の意味の判決の使い方です。  そうすると、京都の裁判所のこういう確定した判決を受けて、接見交通に対して法務省としてはどういうような指示というのか通達というのかを出しているのですか。あるいは出さないのですか。例えば検事長会同とか検事正会同とかいろいろ会同があります。あるいは文書で出すとかいろいろ方法があると思うのですが、どういうふうにしているわけですか。
  74. 根來泰周

    根來政府委員 ただいま先生から御指摘のあった最高裁判所の第一小法廷の昭和五十三年七月十日の判決でございますけれども、これを前提にして先生がいろいろ意見を申し述べられたわけでございますが、遺憾ですが私どもの立場はこの最高裁の七月十日の判決についての解釈が若干違うわけでございます。  この話になると非常に長くなるものですからもう省略いたしますけれども、いわゆる接見交通につきまして限定説というのと非限定説というのがございます。私どもは非限定説の方に立っているわけでございまして、京都の事件も、検事は非限定説に立って措置したのではなかろうかと思っております。したがいまして、京都の判決については私どもとしては承服しがたいという立場でございます。
  75. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 承服しがたいなら控訴をすればいいんじゃないですか。これは確定しているでしょう。
  76. 根來泰周

    根來政府委員 控訴の問題もございますが、これは本当は訟務局からお答えする話だと思いますけれども、私どもの立場からどうして控訴をしないかと申しますと、御承知のようにこの事件について、具体的な指定について指定書というのをとりに来いということが一つ争いになっているわけでございます。これは私どもの指導といたしまして、やむを得ないときは、やむを得ないといいますかどちらを原則とするわけではなくて、場合によっては指定は口頭でしなさい、あるいは書面でやる場合もありますというふうに言っているわけですが、この具体的な場合としては、やはり指定書をとりに来いというのは少し私どもの指導に合致しない点があるのではないかという点がございます。それから、非限定説をとりましても罪証隠滅ということについて具体的に主張しなければならないわけでございますが、そういう点について控訴しても少し難しい点があろうかということで、基本的な解釈として不満ではございますけれども、そういう大局的な立場に立って控訴というのを見送ったということでございます。
  77. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 この点は、論議をしますとこれだけで大体二時間かかってもなかなか解決がつかない問題でありますね。現在地裁に十六件、高裁に二件、最高裁に三件、これに関連する事件がまだ係属しているということです。そうして京都の場合は二人の被疑者は不起訴になってしまったんでしょう。ですから、いろいろ見方はあると思うのですが、きょうは法案の日ですし、時間もありませんのでこの程度にしておきますが、どうもこれを見ると、接見交通に関連して法務省当局というか検察庁当局のやり方はこの最高裁の判例から見てもそれに十分従ってないというか、十分尊重してないものであるというふうに私は理解をいたしております。  そこで、最高裁においでを願っておりますので、給与法のことを聞くことになるわけですけれども、その前に、陪審制度についてイギリスなりアメリカへ現職の裁判官を派遣といいますか留学させて、そして実態を研究させたい、こういうふうな話が伝わっておるのですけれども、これは実際はどういうふうな事情から、今どういう現状になっておるのか、こういうことをお聞かせ願いたいと思います。
  78. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 陪審制度につきましては、国民の代表を陪審というような形で刑事裁判に参加させるという制度をとるところが欧米諸国において多くございます。これが裁判を国民に身近なものにする、また裁判に対する国民の信頼を確保するための重要な基礎ともなっているというふうに言われておるわけでございます。  そこで、我が国の場合を考えますと、そのような国民が裁判所の手続に参加する制度といたしましてもろもろ、民事、家事の調停委員とか司法委員、いろいろな制度があるわけでありますけれども、なお我が国の刑事裁判におきましても陪審制度なるものをあるいは将来導入して、裁判を一層国民に身近なものとする、あるいはその信頼を確保するということも一つの方向としては考えられるところであるかと思います。しかしながら、その点につきましては固有の歴史的あるいは伝統的な基盤がいろいろ違うというようなこともございまして、そのような基盤のない我が国にこれを直ちに導入するというようなことについてはいろいろと検討する必要があろうかと思われます。諸外国の制度を見ましても、どうやら陪審制度につきましてはいろいろと長所、短所があるようでございまして、現在の陪審制度についても各国で批判の声もあるやに聞いております。  そこで、現在各国、特に欧米諸国におきまして陪審制度がどのような運用がなされており、そしてその制度についてどのような形で議論がなされておるか、そういう点を裁判官が実地に調査に参りましてつぶさに調査してまいるということが、私どものこれから進めます基礎的な研究に役立つことであろうと思います。  そこで、まず昨年の十月中旬から、これは約二カ月間にわたりましてアメリカへ裁判官一名が参りました。また今月十九日、またアメリカでございますが、今度は約一年半という長期にわたりまして実地調査に参る。また、先ほど御指摘のように、英国へも来年二月に約五カ月という予定で実地調査に参る、こういう現状でございます。
  79. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 最高裁判所調査に行かれるのは大変結構なことなのですが、ところが裁判所は立法機関ではないわけです。調査をしてきて、それをどういうふうにしようということになるわけですか。それはやはり法務省と相談しなければいかぬわけでしょう。私は、そこら辺がなかなか問題だと思うのです。給与の場合や何かはいわゆる二重予算といいますか、そういう制度があるわけですけれども最高裁判所は立法して国会に対して出すわけではありませんからね。法務省を通じて出すということになるので、法務省を通じて出すということによっていろいろな面で法務省の力をかりなければいけないというのか、どういうふうに言ったらいいのでしょうか、そこにいろいろ問題があるわけです。だから、そういう点は将来どういうふうにしたいわけですか。今すぐどうというわけではなく、これからの問題ですけれども。ただ現在の陪審法でも、これは廃止されたわけではなくて休止という形になっていると私は思いますが、私どものときにはもう休止になっておって、陪審法廷というのはありました、法廷というのはありましたけれども、やっておらなかったわけですが、将来それを受けてどういうふうに法務省といろいろ協議をしながらやっていこうということなのでしょうか。
  80. 島田仁郎

    島田最高裁判所長官代理者 まことに仰せのとおり、仮に導入ということで立法ということになれば、当然法務省の所管でございます。それで裁判所といたしましては、実際に刑事裁判を担当しておる者といたしましてまず基礎的な陪審制度一般についての研究を進め、仮にその中から将来、この陪審制度というものについては非常に長所も多いし我が国に導入するのもなかなかよいところがあるなというようなことになってきた場合には、鋭意法務省とまた協議を進め、裁判所の意見もまた法務省へ申し上げていくことになる。あるいはまたそういうことのほかに、基礎的な研究を行っておる段階でも、ある段階になれば当然また法務省とも、いろいろお教えいただきながら双方協議を進めて話し合っていく必要もあろうと思っております。
  81. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 この前の保全法のときにも論議になったのは会同ということです。これは最高裁で例えば民事行政会同ですか、どういう会同ですか、会同があって、その結果どうも裁判に現実に影響したのではなかろうかという疑いが持たれておるのがあるわけです、いつか問題になったと思うのですけれども。  例えば岐阜県の場合、川が決壊をしたときに、国賠で国が最初の段階では敗訴し、住民が勝ったわけです。そしてその次に会同が行われた。たまたまそういう意味での会同が前から予定されていて行われたのかもわかりませんけれども、とにかく会同が行われたわけです。その次に、今度は同じ川で、下流でしたか上流でしたか、どっちかですが、判決が行われて、そのときには国が勝った。同じ川の上流と下流で判断が違ってきた。しかも、その右陪席と左陪席は同じ人であったと私は記憶しておるわけです、裁判長がたまたまかわったということはありますけれども。その真ん中に会同があって、その問題がいろいろ論議された。具体的に論議されたのか、あるいは抽象的に論議されたのかわかりませんけれど、論議された。まず、最初の事件で国が負けた、その間に会同があって、どういう話があったか、その次に国が勝った、この事実はどうかということと、右陪席と左陪席は同じ人だった、前と後は同じだった、裁判長だけが違ったのだということは事実ですか。どうですか。
  82. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 委員仰せの長良川水害訴訟の事実関係でございますけれども、最初の事件が五十七年十二月十日、これはいわゆる長良川・安八判決と言われております。これは確かに仰せのとおり原告側が勝訴いたしております。それから今御指摘になりました裁判官会同というのは、五十八年十二月二日に裁判官会同がございまして、水害を原因とする国家賠償事件の処理についての協議が行われております。それからもう一つは、五十九年五月二十九日に同じ水害事件につきましての判決がございまして、これは俗に長良川・墨俣判決と言われておりますが、これは原告側が敗訴いたしております。  そこで、朝日新聞が最初に取り上げたわけでございますけれども、中に入りました協議会が判決に影響を及ぼしたのではないかというふうに新聞で書かれたわけでございますが、その新聞を私は見まして、両方の判決を見てみたわけでございます。  まず事実を確認するために見てみたわけですが、会同というのは全く関係ございませんで、最初の原告が勝訴いたしました安八判決というのは、原因の見方でございますが、決壊した箇所は、昔の輪中堤といいますか、古い堤防がございまして、その上に新しい堤防を築いたということでございますが、欠壊の箇所に丸池という池がございまして、その池と川との間にパイピングといいますか、地中に漏水するパイピングがございました。それがあったということ。それから、丸池をそのまま存置させたことがいけないということ。それから、丸池を部分的に埋め立てたわけですけれども、底にありましたヘドロを十分取らなかったということ。それから、古い堤のところに芝生がありましたけれども、その芝生を除去しなかったということ。そういったことを原因といたしまして、古い堤は粘土質の土でありましたが、その上に丸池のヘドロ層がありまして、その上に砂質の堤をつくった、そういう関係で非常に決壊しやすい欠陥の堤であったということでございます。  次の墨俣判決では、そういうことは全くないといいますか、そういう事実は認められない。原因は、今まで起こったこともないような洪水が起こったためである、こういうことを言っておるわけでございます。  こういう状態でございますけれども、最初の判決でございますと、明治二十九年に大きな洪水が起こっておりますが、それ以下であったというのが最初の判決でございますが、墨俣判決では明治二十九年の洪水を非常に上回ったものであるということを言っておりまして、その原因関係に関する事実認定が違ってございますので、この会同とは全く関係ないわけでございます。
  83. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 事件は個別的な事件であって、それぞれの具体性というものを持っているわけですから、二つの事件を比較して直ちにどうこうと言うわけにはもちろんいかないと思いますけれども、とにかく会同の中でそういうふうなことが一応話し合われたことは事実のようです。たまたま水害ということに関連しての会同というものが行われたことが一つの問題になってきているわけですが、これは前から予定されておったというのですか。具体的にどういうことなんですか。どうもはっきりしないのですが。
  84. 泉徳治

    泉最高裁判所長官代理者 昭和五十八年十二月に会同を開催いたしましたのは、この時期に水害に関する事件が全国に多数係属していたわけでございます。しかも、その水害の態様が多種多様で原告も非常に多数であるとの理由から、これらの事件を担当する全国の裁判所で実体上、手続上さまざまな事項が問題になっておりまして、水害事件を担当する裁判官の間から、共通の問題を抱える裁判官が相互の意見交換をする研究の場を設けてほしいというような意見がございました。それを受けて開催したわけでございますが、この開催を決めましたのは昭和五十八年の四月に入ってからでございまして、既にそのときから準備いたしておりまして、正式に会同を開催するという通知を発しましたのは五十八年六月でございます。
  85. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その会同にどうして最高裁の事務総局が出て一応の見解——これははっきりしないのですけれども、別に見解を示したわけではない、ただ聞かれたからあれしたのだという意見もあるわけですが、なぜ最高裁の事務総局がそこへ出席をしなければいけないのか、こういうことも私はよくわからないのですね。別に最高裁が出席しなくてもいいんで、裁判官同士が集まっていろいろな意見を闘わすというか協議するというか、それは自由なんで、それを司会するような形で最高裁の事務総局がやらなければならない理由はないと私は思うのですが、最高裁がそこへ出なければならなかった理由は後からお答え願いたいと思います。  それはそれとしまして、実は今度の「判例タイムズ」に、私も存じ上げています前名古屋高等裁判所長官の千葉和郎さん、これは刑事裁判御専門の非常に立派な方ですが、この方が例のメモの判決についていろいろ感想を述べておられるわけです。このメモの判決についてはいろいろな見方もあるし、刑事実務をやっている方からの見方ももちろん一部にありますけれども、それをここでどうこう言うわけではありません。メモは、多数決のように、傍聴人がとるのは当然のことであるというふうに私も理解をいたしておるのですが、その中で千葉さんが言われておることで非常に参考になるのは、「本判決に関連しての感想」というところの数字2の下の方に  まず、虚偽混入の危険を防止するために設けられた証拠法則を厳格に適用し、その証拠調手続を厳密に行うこと、ことに証拠能力の要件については、原則として、その取調べ前に実質的に検討され判定されるべきこととするとともに、 ここのところはちょっと私は見解を異にしますが、  当該の事実について反対事実の可能性を吟味し、有罪と認めるについても合理的な疑いが残らないかどうかを客観的に判断することが基本的な態度とされよう。この問題については従前から種々の研究がなされ、 この論文は特信性の問題を中心として論議されておるのだと思いますが、  この問題については従前から種々の研究がなされ、裁判所内でも「運用の時代」と言われる程に会同、研究会等で繰返し論議されて来ている。ただ各地での運用状況に照らすと、これまでの研究、検討の成果が十分には伝っていないうらみがある。しかし東京地裁はじめ各地の刑事裁判官の間には「裁判は検察を検察するものなり」とか、「被告人の云い分は被告人の身になって考えよ」とか、「被告人が真に言いたいことを聞き出せ」とか、「争点には判断を」などの格言めいたものが言い伝えられていることからも窺われるように、 こういうふうに千葉さんは書かれておるわけです。  これについて最高裁側の感想を求めるとかということをするつもりはここではありません。ありませんけれども、特にこういう中で「「運用の時代」と言われる程に会同、研究会等で繰返し論議されて来ている。」ということは、恐らく任意性と信用性の問題と同時に特信性の問題が中心であろう、これは当然こういうふうに考えられるわけです。そのところが刑事裁判の真髄なんで、眼光紙背に徹してその点をよく見てほしいというのが刑事裁判をずっと続けてこられた千葉さんの御意見だろうと思うわけです。  刑事裁判では、事実認定こそその真髄をなすものとされ、裁判官は眼光紙背に徹して実体真実を発見することを使命とするともいわれたのである。 と言われておるわけです。  そして、私も存じ上げておる裁判官の方が、お名前は伏せますが、「自白の分析と評価—自白調書の信用性の研究—」という著書を発行されている。非常に勉強される方です。私この本をまだ手にしていないものですから、本を読んでのあれではございませんが、自白調書の様式が日本独特のもので、いわゆる徳川時代の口書きにさかのぼることを論証しながら、現行法に受け継がれた問題点についていろいろ言っている。  私は前から言っているのですが、現在の供述調書のとり方は、ずらずら作文というか一人の人が全部しゃべったような形でできておる。このとり方では真実は発見できないのではないか、この点を何とかしなければ本当の日本の刑事裁判はできていかないのではないかというのが私のずっとの主張なわけです。そこで、そういうふうなことを言ったら、いやそのために三百二十一条がちゃんとできているのだから、それで担保されるのだという意見も法務省サイドからはあったわけです。  しかし、それだけでは問題は解決しないのではないか。いろいろな問題点があるのですけれども、「供述録取書における自白がいったん争われることになると、」云々というのはこの方の書かれた本から出たのだと思いますが、私も本を実際に見る時間がなかったので申しわけありませんが  (1)どこまでが本来の自白なのか、(2)どこまでが取調官の質問なのか、(3)取調官の主観や表現がどう反映しているのか、(4)何回分の取調をまとめたものか、(5)その間に否認の供述はなかったのか、などの問題を調書の記載自体から判定することが著しく困難になる。 と言っている。現実の裁判の中で一番争われているのはこの点です。眼光紙背に徹してもなかなかこれはわからない。なぜわからないかといえば、質問が出ていないで答えだけが出て、それが作文のような形になって、私は何々しましたとずっと並んできているわけです。これでは真実は発見できないというのが私の年来の主張なんですが、そこでこの方も  法定刑に死刑を含む重大事件や身柄を拘束されている被疑者、防御能力の乏しい未成年者の否認事件など取調べに慎重を要する類型の事件については取調べの公正を担保するに足る立会人の介在と供述の一問一答の形式による全部録取を法律的に義務づけることが考慮されても良い時期にきていると思われる。   供述調書が……取調べの公正と記載内容の正確性を担保し得る作成方式と記載形式を備えるように改善され、取調状況を客観的に公判廷に反映させる立証が行き届くことになってはじめて、現在の刑事訴訟制度がなお引きずっている糾問主義の影がいく分でも薄らぐことになる……。 こういうふうに、私の存じ上げておる方ですが、非常に勉強家のある裁判官が言われておるわけです。  私は、これは非常に貴重な御意見だと思うし、前の千葉さんの御意見も大きく参考になる、こういうふうに思うのですが、具体的に、今でも例えば外国人同士の事件がありますね。そこでどういうふうな通訳をしているかわからぬけれども、殺人か傷害致死かで争われている事件が今現実にあるわけです、そうでしょう。そうすると、それは未必の故意をとらざるを得ないでしょう。未必の故意をとるために、外国人がこれを何かで刺したならば相手が死ぬのではなかろうかと思いましたなんてことを、まあ日本語で言えばわかるかもわからぬけれども、それも理解できないらしい。外国語で言ったものを通訳して、そしてそれが調書になってあらわれてきて、そしてそれが判断の材料にされたんでは、これは真実というものは全く追求されないで終わってしまうのではないかというのが私の考え方なんです。  ですから、これは北海道大学の先生やいろんな方がいろんなことを言われていらっしゃいまして、これらを今後十分考えながら、私は刑事訴訟法を今改正しろと言ってもすぐには無理な話なんで、少なくとも四十年たった刑事訴訟法というものはいろんな問題点を含んでいるんだから、それをどこで検討するかは別として、やはり今後検討するということをやっていかなければならない問題ではないか。そのときに問題となる一つは、やはり今言った接見交通の問題であり、同時に供述調書の問題ですよね。ここら辺のところが大きな問題になるのではないか、こういうふうに私自身は考えておる。  こういうことを申し上げて、そして今言ったようなことを中心として、さらに裁判所内部あるいは法務省内部でも論議を深めていただきたいということを要望をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  86. 井出正一

    ○井出委員長代理 中村巖君。
  87. 中村巖

    ○中村(巖)委員 裁判官報酬法改正案、検察官俸給法改正案につきましては、これは例年国会に出てくるところでありまして、質問の方も同じようなことになってしまうわけでありますけれども、まず、この裁判官報酬法が国会に出てくるたびに私は考えるわけでありますけれども一般公務員俸給の改定があるたびにそれに倣って一般公務員のベースアップと同じような形でこの報酬法の改正が出てくる。これに対してはやはり基本的に疑問があるというふうに思っているところでございます。  一つは、一般公務員と無関係裁判官報酬というものは決められないものなのかということでございますね。裁判官というものは司法の根幹をなすものでありますから、そういう人たちが何か一般の行政職の公務員と同じような方法で給与が決められているんだということは、これは明らかにおかしいのじゃないかな、こういう感じがする、それが一点であります。  もう一点は、やはり報酬の決め方というものを見てまいりましたときに、最高裁判所長官から始まりまして判事がゼロ号から八号まで、あるいは判事補が一号から十二号まで、こういうふうに大変に細かく給与が決まっているわけでございます。裁判官裁判官でございまして、例えば判事の何号の人が裁判をやろうが、あるいはまた判事補の何号の人が裁判をやろうが、裁判は同じ裁判でございますから、そういう人たちに小刻みに、これほど小刻みに報酬というものを決めておく必要があるのか。やっていることも権限も、やっているその行為の重みも同じであるのにそんなことをしなければならない理由があるのかということについて多大の疑問を感ずるわけでございまして、これは前にも私は繰り返し申し上げておりますけれども、このことについて裁判所のお考えを改めて聞かせていただきたいと思います。
  88. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 毎年裁判官報酬の改定の御審議をお願いしているわけでございまして、いつもその疑問を抱いているという仰せでございますが、今回もその疑問を私の方で御納得いただけるように御説明できるかどうか、甚だ問題でございますけれども、まず、裁判官報酬一般公務員から全く離れて決められないかどうかという問題でございます。  裁判官報酬につきましては、憲法で「定期に相当額の報酬を受ける。」ということが定めてございます。この「相当額」といいますのは、これは中身がどうであるかというのはそれ以上は憲法は定めていないわけでありますが、結局、社会通念上、裁判官の地位、年齢、さらにはその職責にふさわしいだけの報酬を、しかもそのときそのときの生計費や、あるいは他の分野で働いている人たち俸給というものとの関係で適正であるように決めるということであろうと思っているわけでございます。  その場合に、これをそういった一般世間の賃金事情あるいは一般公務員俸給というものから完全に独立して決められるかといいますと、これは、実はそうなりますと手がかりが非常に難しくなるということが一つございますし、それからまた現実の裁判官の任用ということを考えますと、裁判官は現在のシステムでは、大学を出まして、そして若干の年数はかかりますけれども、多くの者は二十代で裁判官になるわけでございます。そうしまして六十五歳の定年までずっと勤務をいたします、相当の長い年数がございます。その年数を考えますと、これは大学を出まして、そして国家公務員になってずっとその後のキャリアを積んでいく人たち、あるいは大学を出まして民間の企業に勤務してキャリアを積んでいく人たちから完全に離してしまって決めていくというのは、これはやはり相当ではないのではないかというふうに考えられるわけであります。もちろん、そこに言う「相当額の報酬」という要請を満たすために、ある程度の他の分野の人たちの受ける報酬俸給との間の格差と申しますか、優位性と申しますか、そういったものは保つべきものであろうと思いますが、そういったものを保ちながら他の分野の人たち報酬俸給といったものをある程度踏まえて金額を決めていくのが、やはり一番適当なのではないかと考えるわけでございます。  これは、実はもうずっと以前から、裁判官報酬は行政官の俸給と対応するような形で決まっております。しかも、ある程度の格差を保ちながら対応するような形になっておりまして、その行政官の俸給といいますのは民間企業の賃金とまた対応するような形になっているわけでありまして、そういった国全体の中の給与の体系といったものは、やはりそれなりの合理性が現在あるのではないかというふうに考えるわけでございます。そしてまた、それが過去数十年の運用によって定着しているものと思っております。  もう一つ、給与の刻みの細かさでございますが、確かに判事補につきましては十二段階の刻みがございます。判事補は十年間の勤務でありますので、十年に対して十二段階というのは、号俸によっては一年間に二回の昇給もあり得るということになるわけでございます。ただ、これは、先ほど申しましたように、判事補の期間といいますのは大変若い、二十代から三十代にかけての期間でありますので、ある程度その年々の昇給の楽しみというものもこれまた意味があるのではないかと思っているわけでございます。判事になりました場合には、今度は八段階の刻みしかございません。特別の場合にはさらにもう一段階ございますが、判事になりましてからの年数、長い人では三十年の年数がございますが、これを八段階で上がっていきますので、これは決して多いとは言えないのではないか。一般行政官あるいは民間企業の労働者に比べて相当に大きな刻み、粗い刻みというふうに言い得るのではないかと思っているわけでございます。
  89. 中村巖

    ○中村(巖)委員 次に、裁判官が現在足りないのではないか、こういうことでありまして、裁判官が足りないということと、裁判官になるかならないかについて給与がインセンティブになるかどうかはちょっとわからないのですけれども裁判官の不足と給与、待遇との関係というのは何か関係があるように裁判所ではお考えになっておりましょうか。
  90. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官が足りないというふうに言うべきであるかどうかというのはこれまた大変難しい問題でございまして、裁判官の本当の意味での必要数といいますのは、訴訟が運営されていく制度がどうであるかということ、それから現実の制度の運用、そういった問題とも密接に絡むものでございまして、その意味で、現時点裁判官が余っていると言うべきか不足していると言うべきか、これはそれ自体大変難しい問題であろうと思います。ただ、ごく常識的に申しまして、司法修習生を終えまして裁判官に任官する人の数、これが年度によってさまざまでございますが、かなり十分だというふうに希望者がある年度もありますが、少ないなというふうに言わざるを得ない年度もございます。  そういう裁判官の志望者の数と給与との関係でございますが、これは全く無関係とはもちろん言えないと思っております。その意味で、裁判官給与といいますのは行政官あるいは民間企業の労働者との関係である程度の格差を保っているということを先ほど申し上げましたけれども司法修習を終えます段階では裁判官と弁護士との比較ということが問題になるわけでありまして、弁護士の受けられる報酬との関係ではこれが見劣りする場合はもちろんあろうと思います。それを補う意味で私ども初任給の調整手当というのを認めていただいておりまして、これでそちらの面の不足感というものはある程度カバーできているのではないかと思っているわけでございます。  ただ、そういう志望に影響するファクターといたしましては、もちろん報酬だけの問題ではございませんで、それ以外に任地の問題であるとかさまざまのファクターがありますので、そういった事柄についても志望者に納得してもらいながら志望者を確保するということをしなければならないのではないかと思っております。
  91. 中村巖

    ○中村(巖)委員 裁判官が不足しているかどうかは物の考え方という側面があるというお話でございまして、それはそうかもしれませんけれども、単純に言えば、現に裁判所がありながら裁判官が常駐していないというところが多数あるわけでございまして、殊に地裁、家裁の支部等におきましては裁判官がいない、非常駐であるということで、裁判所も、そのためかどうかわかりませんが、地家裁支部の再配置というか統合ということを企てられて、それによって裁判所の充実をさらに図ろう、こういうことをおっしゃるわけでありますから、本来ならばできるだけ裁判所の数があってそこに裁判官が常駐しているということが大事なわけでありまして、恐らくそれは裁判官がそれだけの数がいないから非常駐庁というものが発生している、その意味では裁判官が不足しているじゃないか、こういうふうに思うわけであります。簡易裁判所も別途あるわけでありまして、簡易裁判所も今非常駐庁がたくさんあるということであります。地裁、家裁の本庁に裁判官が常駐していないところは、それはあり得ないわけでありますが、地裁、家裁の支部、さらに簡易裁判所において裁判官が常駐していないところ、全体の数がどのくらいで、常駐していないところがどのくらいか、おわかりだったらおっしゃってください。     〔井出委員長代理退席、委員長着席〕
  92. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官が常駐していないところでございますが、本庁はもちろん裁判官が常に配置されているわけでございますが、ことしの六月一日現在で支部が九十九庁ございます。それから簡易裁判所裁判官の常駐していないところが五十二庁ございます。現在支部の適正配置ということで検討を進めているところでございますが、統合されることが検討対象となっている支部はすべて裁判官が常駐していないところでございまして、もしそういったところが仮に統合されれば、そういう意味では非常駐庁はその分だけ少なくなるということになるわけでございます。
  93. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今九十九庁、五十二庁とおっしゃいましたが、全体の庁数はどのくらいになるのですか。
  94. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 支部が二百四十二庁、簡易裁判所が四百五十二庁でございます。
  95. 中村巖

    ○中村(巖)委員 ついでに、判事補もおりましょうけれども裁判官の総数並びに簡裁判事の総数、それぞれどのくらいになっておりましょうか。
  96. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官は、判事が千三百八十五名でございます。それから判事補が六百九名、簡易裁判所判事が八百一名でございます。
  97. 中村巖

    ○中村(巖)委員 地裁、家裁、高裁の一線で裁判をしておられる裁判官がおられる反面、やはり最高裁の事務総局を中心に現場から離れて司法行政事務等々を行っている裁判官、こういう者もおられるわけで、例えば国会裁判官訴追委員会の事務局長なんというのは裁判官でありますけれども、こういった現場から離れている裁判官と現場で裁判をしている裁判官、これの数はそれぞれどのくらいになっているかおわかりでしょうか。
  98. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 現在の最高裁判所事務総局に配属されている裁判官は四十四名でございます。そのほかに、高裁事務局長に充てられている判事が八名おります。それから調査官、司法研修所教官などに充てられている者が全部で六十九名おります。今申しました数を除いた者はすべて裁判に従事している、こういうことになるわけでございます。
  99. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そこで、そういう裁判所の数、それから今裁判官の数をお聞きしたわけでありますけれども、そういうことを踏まえて、裁判官が不足しているのか不足していないのか、こういうことになるとどういうことになりますか。
  100. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 もちろん裁判所の使命と申しますのは、裁判所に参りました民事の事件、刑事の事件あるいは家庭裁判所に参ります事件を処理するところにあるわけでございます。裁判官として在職している者のエネルギーをできるだけ多くその事件の処理の面に向けていくというのは必要なことであろうと思っておりますし、現実に足りているあるいは足りていない、そういった問題は別にいたしましても、今申しましたような例えば事務総局に配属されている裁判官、そういった裁判事務から離れている裁判官の数をできるだけ減少して、そうしてそれを裁判事務の方に振り向けていくということを今までやってきたわけでございます。  ただ、最高裁の事務総局の事務と申しますのは、どうしても裁判官がこれに関与しなければならないような種類の仕事もございまして、それを私ども、でき得る限り事務総局のポストを裁判官以外の者で埋められるように今までも努力してきたわけでございますが、ある程度の数はどうしても必要であるということから今のような数の者が裁判を離れた仕事に従事しているわけでございます。この点は、例えば課長ポストを一人の裁判官が併任するとかあるいは局長ポストを一人の裁判官が併任する、そういったようないろいろな工夫を行うことによって、できる限り裁判事務の方に人力を振り向けるということをやってきておりますので、ひとつこの問題につきましては、そういった考え方でいるということを御了解いただきたいと思います。
  101. 中村巖

    ○中村(巖)委員 事務総局の問題もさることながら、何といっても裁判官の絶対数が不足していると思うのですね。非常駐庁が多数あるというような状況のもとでは、やはり裁判官をもっとふやしていかなければならない。それと同時に、いろいろな原因はあるでしょうけれども、訴訟の遅延ということが言われて、殊に民事事件を中心にして訴訟の遅延ということが言われておるわけでございまして、そういう面からすれば、裁判官の人員を拡充をする、人数をふやしていくということがやはり必要なことだろうというふうに思っておるわけでございます。  にわかに裁判官をふやせと言ったってそう簡単にふやせるシステムにはなっておりませんで、そのためには、これから将来に向かって司法試験制度の改革等々も必要でありましょうし、あるいはまた裁判官の待遇の問題というものも必要でありましょうと思われるわけですけれども、一番早く裁判官をふやす方法というのは、弁護士から裁判官へ登用すれば、これは希望者がある限りでありますけれども裁判官をふやせるわけでありますが、この辺の実情はどういうふうになっておりましょうか。
  102. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 御承知のとおり、昨年の三月に私ども判事採用選考要領というものをまとめまして、日本弁護士連合会に対して弁護士からの裁判官の積極的な採用について説明を行ったわけでございます。そのとき以来、昨年度は七名の弁護士からの裁判官への任命がございました。私どもの考えとしましては、単に人数をふやすというだけの問題ではなくて、できるだけ弁護士の経験というものを裁判の中に生かしていただきたいということを考えまして、原則として経験十五年以上で年齢五十五歳末満の弁護士ということで、しかも任地や報酬などの面もできる限り配慮して任官しやすいような環境をつくるということで方針を打ち出したわけでございます。  七名の志望者があったということは、それなりの成果があったものというふうに考えておりますし、また、七名の方それぞれ弁護士時代の経験というものを生かして活躍していただいておりますので、大変ありがたいこと、うれしいことと思っている次第でございます。ただ、もうちょっと反応があってもいいと申しますか、もう少し多くの人にさらに志望していただいてもいいのではないかと思っておりますので、この点は現在鋭意また各方面に働きかけをして、そして任官を志望される方を確保していきたいというふうに考えている次第でございます。
  103. 中村巖

    ○中村(巖)委員 それからまた、裁判官になり手がないというか裁判官の結果的な不足を来す原因の一つは、裁判官も相当転勤の数が多いんじゃないか、こういうことでございまして、殊に今まで最高裁がやっておられたのは、判事補の段階においては最低三回各任地を回すということで、そういうシステムをとっておられる、こういうことでございますし、また、判事になりましてもいろいろな格好で転勤が多い、ある程度裁判所長クラスになれば極めて短期間にいろいろ転々と変わるということもあるわけで、その場合には、それはそれなりにもう子供も大きくなっているからそれほど弊害はないのかもわかりませんけれども、その中間の段階でいろいろ転勤があると、やはり裁判官というものにはなりたくないな、そんな感じを持たれるわけでありまして、その辺の裁判官の転勤の実情、それに対する最高裁の人事当局の考え方をお聞かせをいただきたいと思います。
  104. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 先ほども申しましたように、司法修習生から裁判官になる人を確保するというときに、報酬問題も一つの要素ではございますが、やはり大きな要素になりますのはこの転勤問題であろうと思っているわけでございます。特に、最近のように司法試験合格者が比較的高年齢になる、したがって司法修習生の年齢もかなり上がっております。そうなると結婚もし、子供もできているという方もかなりの数おります。そういった人が裁判官になって、そしてあちこち転々と歩かなければならないというのは、任官を希望する際の一つのマイナスのファクターになることは否定できないと思っているわけでございます。  ただ、問題は、その裁判官の勤務する各裁判所でございますが、全国津々浦々にあるわけでございます。本庁のみならず、先ほど御指摘の支部もございます。それで、そういったところへ裁判官をそれぞれ配置しなければならない。しかも各人がなるべく士気を阻喪しないように、しかも各人がその能力をフルに発揮できるように各人の配置を考えていかなければならないというのが私どもが心を一番砕き、またつらいところでございます。  通常、判事補の間は大体二年から三年の区切りでもって異動をいたしております。これは判事補十年間の間に、なるべく大きい裁判所、小さい裁判所、あるいは中ぐらいのところというところを経験してもらおうということからそういった区切りで異動をしてもらっているわけでございますが、判事補の期間を過ぎて判事になりますと、これはむしろ、それぞれの場、適材適所と申しますか、持ち味に応じたところでの勤務をしていただくという観点からの異動が行われているわけでございます。それで、単に適材適所というだけではありませんで、その裁判官が一つの任地に余り長期間いるとその任地での勤務にうんでくると申しますか、そういったようなこともございますし、それからまた、一任地の在任期間が長くなるとその土地とのつながりというようなことを心配すべき場合も出てまいりますし、そういったことも配慮しなければならない。それからまた、言うまでもなく、その裁判官の家族の問題なども考えなければならない。そういったいろいろな要素を考慮しながら三年ないし五年というような期間で判事になってからも異動をしていかなければならない。やはりそうしないと全国の裁判所の配置を満たすことができないわけでございます。  私たちとしては、この異動は避けられないわけでございますが、各人の個人的な事情といったものを十分くみ上げて、三年ないし五年ごとの異動というものが各裁判官にとって大きな負担にならないように、できる限りの配慮をしながら異動を進めていくとともに、全国の裁判所裁判官を配置して国民の要求にもこたえていかなければならないと考えているわけでございます。
  105. 中村巖

    ○中村(巖)委員 異動、転勤の問題についても、できるだけ異動、転勤を少なくするように考える余地がまだまだあるのだろうと思いますし、本来的にどういう考え方かよくわかりませんけれども裁判官の任期が十年ということで定まっているということは、いってみれば、できれば十年同じところで裁判官をやっておるという考え方に基づいているのではなかろうかなと思うわけで、それを行政官と同じようにあっちへ動かしたりこっちへ動かしたりというのは必ずしも適切ではないという感じが私はいたしております。そのことはまた別の機会にも申し上げたいと思います。  最後に、訴訟の遅延ということについてであります。私もかつて弁護士をやっておりましたから、遅延というようなことに対しまして、遅過ぎて困るということは事実であっても、それにはそれなりの理由があるんだというふうに理解をしているのですけれども、国民の側から見れば、民事裁判を中心として裁判というものが物すごく遅いじゃないか、こういう声が非常に上がっている、そういう声が多いわけでありますけれども裁判所としてはこの訴訟の遅延、特に民事訴訟の遅延についてどういうふうに考えておられるのか、それを解消すべく何らかの裁判所としての方策というものを考えておられるのか、それをお聞きをいたします。
  106. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 私自身も地方裁判所で民事裁判をやっておりまして、ただいまの委員の仰せのように、事件によっては速く処理されるものもあり遅く処理されるものもあり、それぞれその事件の個性がありまして、遅くなっているものはまたそれなりの理由のあるものが多かったようには思っております。  ただ、これを全体的に見ました場合に、やはり民事の裁判というものは、国民が期待するように、裁判所に一つのトラブルの解決というものを持ち出した場合に非常に近い将来にぱっと解決が出てくるようなことになっているかというと、それはなかなかそういうものにはなっていないわけでございまして、ある程度の期間を要している。一般の国民から見れば何とも時間のかかるものだという印象をお持ちになるのは、これまた無理もないところだと思います。  昨年、昭和六十三年の一審訴訟事件について見ますと、その平均審理期間は、地方裁判所の民事の通常事件で十一・九カ月でございます。それから簡易裁判所の民事通常事件は三・三カ月でございます。御参考までに申し上げますと、刑事は、通常第一審事件は三・四カ月、簡易裁判所の刑事事件は二・五カ月ということで、刑事事件は非常に短期間に処理されているという印象を持ちますが、問題は、地裁の民事通常事件十一・九カ月というものがどういう印象を与えるかということでございます。ただ、これを少し前の時期と比較してみますと、昭和五十九年は地裁の民事事件はこれよりもさらに一・一カ月長かったわけでございます。それから簡裁の民事事件はこれより〇・一カ月長かったということでありまして、この五年間程度をとってみますと、平均審理期間は短縮される傾向にあるのではないかというふうに思っているわけでございます。  長い訴訟といいますのは大昔からあったようでございます。訴訟の大枠組みというものは訴訟法が変わらない限りは変えることができないものでありますが、最高裁としてはその枠組みの中ででき得る工夫をできる限りやることによって、少しでも審理期間を縮めていくというふうにしなければならないと思っておりますし、またそのための細かい施策でございますが、これは最高裁の民事局を中心といたしましていろいろと検討し考慮しているという段階でございます。
  107. 中村巖

    ○中村(巖)委員 終わります。
  108. 戸塚進也

    戸塚委員長 滝沢幸助君。
  109. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長御苦労さまです。大臣初め政府委員の皆さん御苦労さま。  この質問というのは、先輩先生方の御質問を承っておりますと自分が聞くのはなくなってしまうのであります。したがって、通告とやや異なる面もあろうかと存じまして申しわけありません。  今ほど裁判官の不足のお話を承ったわけでありますが、私が漏れ聞いておるところによりますと、むしろ検事が非常に不足をして、司法試験に合格した者の中で検事になり手がない、あるいはまた、一たん任官しても途中退職して弁護士を開業することが多いと承っておるわけでありますが、そうしたことはございますか。検事の定員の充足率等の推移の数字があらば承りたい。もちろん、数字等についてお調べする必要がありましたら、後刻承っても結構でございます。
  110. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お答えいたします。  まず、検事の任官状況の数の推移を若干御説明させていただきます。  御案内のとおり、検事の給源は司法修習生の終了者から採用するということが主たるものでございますので、修習生から検事に任官いたしました数の調べを、数の推移を若干申し上げたいと思います。  さかのぼって本年度までの最近五カ年分を申し上げますと、昭和六十年度に四十九名任官いたしました。六十一年度に三十四名任官でございます。六十二年度が三十七名、六十三年度が四十一名ということでございましたが、本年度平成元年度は五十一名採用になっております。この五年間で平均をいたしますと四十二名という数が出るわけでございます。この検事司法修習生からの任官者数というのは、いわゆる戦後の一期生からずっと通算して考えますと、平均して五十人ぐらいというのが検事任官者の数でございましたが、今申しましたとおり、最近五年では平均して四十二名ということでございます。なお、例えばその前さらに十年前までにさかのぼりまして五十五年度から五年間というのを見ますと平均四十九でございますので、六十年度になりますまでは大体平均五十を確保しておる。ただ、最近五年で平均四十二名になったということで、任官者の数が減少しているということは数の上から申しまして一つ間違いないことであると思っているわけでございます。ただ、今年度五十一名採用になりまして、若干上向いたなという気はいたしておるわけでございますけれども、依然として最近の減少傾向は一つの問題点だと考えております。  他方、それでは今度、検事に任官をいたしましても中途退職をする者がどのぐらいおるのかということになるわけでございます。中途退職者の数につきましては、先ほど稲葉委員の御質問の際にも申し上げましたのですが、もう一度申し上げますと、さかのぼって最近五年間をとってみますと、これは今年度が出ておりませんので五十九年度から申し上げますと、五十九年度が四十四名、六十年度が五十名、六十一年度が五十三名、六十二年度が四十六名、六十三年度が五十五名ということでございまして、最近の五年間における中途退官者の数の平均は約四十九名ということになるわけでございます。しかしこの数は、ずっとさかのぼって見てまいりますと、最近の五年以前の分をずっと足して考えていきますと、約四十七名が年間の退官平均でございます。そういう意味におきまして、中途退官者が多くなったかという点につきましては、数の上から申しましてさほど最近多くなったというわけではないというふうに考えておるわけでございまして、むしろ問題は、このように申し上げますとおわかりのように、退官者は大体変わらない、となればやはり任官者の数が減ってきているということが現在の検察官の定員管理上の問題点になっているということでございます。
  111. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 大変詳しい数字を拝聴しました。ただ、この数字を私はよく精査するいとまがありませんからわかりませんが、承った感じからします ると、これは例えば六十二年度には三十七人が採用になって四十六人が中途退官、しかも中途退官という言葉がありますれば定年退官もあろうと存じますると、いわゆる差し引き現職の数が減っているのではないか、不足しているのではないか。  そこで、充足率ということを申し上げたのでありますが、定数というのがあるのでしょうから、そうしましたら大体何%ぐらい充足しているか。すなわち欠員がいかほどあろうかということになるわけでありまして、しかもそれらの、もしも定員数に満たざるものがある、いわゆる検事を希望する者が少ないという原因が処遇等にあるとする面があるならば、やはりこの給与改定というものがただ単に公務員に対する右へ倣えというような発想ではいけないのであって、判検事に対する処遇の改善と申しまするか、というようなものが大きな課題として研究、対処されてよかろうと思うわけであります。  あわせまして、先ほどの御答弁にもあったか知りませんが、最近の事件の件数の増減というようなものはいかがなものでありましょうか。感じますところによりますと、どうも世の中が非常に複雑になってきまして、しかも人情よりは功利というような社会風潮があるとするならば、争いの数はますます多くなってこよう。これは先般申し上げました日本の社会が急速にアメリカ化していると言うても過言ではないと思うのでありますが、それではこれらを含めまして、掌握しておられることがございましたらおっしゃっていただきたいと思います。
  112. 井嶋一友

    井嶋政府委員 いろいろ多くのことを御質問がございましたので、あるいは漏らすかもしれませんが、順次お答えをさせていただきます。  まず、欠員のことをおっしゃったわけでございます。先ほど申しました数と申しますのは、ちょうど年度の、一年間のトータルの数として申し上げたわけでございますが、採用はまさに四月でございますけれども、退官と申しますのは、定年退官も含めましてあるいは死亡者も含め随時起こるわけでございまして、定員とそれから在職者との数、つまり欠員と申しますものはその都度動いておるわけでございます。そういった意味におきまして、先ほど委員仰せのとおり、三十七名採用し、中途退官が四十六名であるから差があるじゃないかという御質問でございますが、実はある時点ある時点とらえればもっと多くなるわけでございまして、例えば手元に私ただいま持っております本年の九月末の数で申し上げますと、定員と現在員との差が七十六名というようなこともあるわけでございまして、年の途中にはそういう事態が起こるわけでございます。しかし、結局次の年の春に任官者を任官させるということによりましてカバーしていくという形になっておるわけでございます。  それから、なぜこんなに任官者が少ないのかというような原因の問題でございます。これにつきましても、これはいろいろ理由があろうかと思うわけでございまして、若干時間がかかりますけれども説明させていただきますれば、一つにはやはり司法試験の問題があるだろうと思います。  先ほど来お話が出ておりますけれども司法試験というのは非常に難関でございまして、特に最近、ここ数年では平均受験回数が六回以上というような形でございまして、それだけ試験を受けなければ合格をしない。しかもそういう実態でございますから、合格者の平均年齢も二十八歳を超えるというような実態になっておるわけでございます。これを昭和三十年代とか四十年代と比べますと、当時は平均三回ないし四回の受験で合格をしておりましたし、四十年代では合格者の平均年齢というのは二十六歳代だったわけでございます。いかに最近そういった点で司法試験の実態が困難化をしているかということがおわかりいただけるかと思うわけでございますが、修習生になる者の実態がそういうものでございますから、勢い検事を任官いたします場合、さらにそれから二年の修習を経ますのでさらに高齢になる。高齢になりますと非常にいろいろな点で任官組にとっては障害になるわけでございます。  例えば、検事は当然、高齢者であってもあるいは若年者であっても新任検事は同じラインでスタートするわけでありますから、そういった意味で、しかも定年六十三というものに向かって用意ドンと一線で走るわけでございますから、そこにどうしても、やはり高齢者というものが検事という職を選ぶ場合にそれが一つの大きな隘路になるということがあると思います。  また、さらに収入面で申しましても、平均二十八で受かって三十で検事になるといたしますれば、大学の同窓生で他の職業についた者というのは既に中堅になっておるわけでございますが、三十歳で任官しましても二十四歳で任官いたしましても初任給は同じでございますから、そういった意味で収入面では、やはり高齢化している人は妻子もあるというような事情も考えますと、収入面で非常に不利があるということもございましょう。  そういったことで、やはり全体的に司法試験の現状からくる影響で任官者の高齢化、それが結局任官をちゅうちょする一つの大きな理由になっているのじゃないかと思うわけでございます。  さらに、これも若干私の私見が入るかもしれませんけれども、近ごろの若い人たちの物の考え方というのが、検察官検事という非常にシビアな公益の代表者としての責任ある職務につくということとの絡みにおきまして、今の若い人の気持ちの中に、余り束縛されたくないとかあるいはできるだけあくせくせずに自分のペースで世の中を渡っていきたいとかいったようなものがもしあるとすれば、やはりそういった風潮が一つの阻害要因になるのではないかと思うわけでございます。  それから、待遇面におきましても、検事になりますと転勤もございます。転勤をいたしますと子女の教育問題が起こります。また最近、父母の面倒を見るという点におきましてもやはり転勤というのは非常に問題があるというようなことがいろいろございます。それから収入面では弁護士との比較においても非常に悪いだろうというようなことを考える人もおります。ということで全体的に任官者の数が減ってきたというところに問題があるだろうと思っておるわけでございます。  他方、退官者の問題につきましては、先ほど言いましたように、数字の点では最近特にふえたというふうに私ども認識はしておらないわけでございますけれども、やはりこれはいつの時代にもあることでございます。しかし、主な理由は家庭の問題でございまして、一身上の都合ということが多いわけでございまして、今申しましたような子女の教育あるいは父母の養育といったような問題点、転勤、こういったことが一般的に退官の引き金になっているというふうに考えられるわけでございます。  そういうことで、任官問題、任官者が少ないという問題も退官者があるという問題も結局同じような原因に突き詰められるわけでございますので、委員仰せのとおり、やはり待遇といった面におきましてもっと抜本的に考えるということも一つの方法でございますが、私ども今一番大事なことは、登竜門である司法試験を一日も早くもっと若い間に容易に通れる試験にしたいということで、先般御報告いたしましたけれども、今三者協で鋭意それをやっているというのが現状でございます。
  113. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 後の御答弁のときにさっき申し上げました事件の増減の動向をひとつおっしゃってください。そして、もう一つ申し上げますから。  それで、今司法試験のことをおっしゃっていただきましたが、先般私も御質問いたしたことでありますが、そこの中で私なりの一つの提案がございます。今後いろいろと御研究をされて一年後には成案を得られるというふうに承っておりますので、御検討あらばと存ずるわけであります。  というのは、おっしゃるように、最近とみに合格が難しくなってきまして、六回とそして二十八歳がそれぞれ平均になってきたというのでありますが、論語には「三十にして立つ」というのでありまして、三十になっても司法試験がとれないのではこれは大変なことであります。しかし回数制限、年齢制限ということになりますれば、これを憲法違反と決めつける論理もあります。その当否は別といたしまして、私はぜひとも実現していただきたいのは、年二回実施してほしい。これは試験をさせる立場は大変でありましょうけれども、ぜひとも年二回にしてほしい。そうしたら六回にしてもこれは年齢は大変低下するわけでありまして、私は息子のときのなんかの例を見ておりますと、一年たって必ずしも力がつくというのではありませんが、選挙もそうでありますけれども、多分にそのときの運のようなものもありまして、殊に面接試験なんというのは面接してくださる先生方の感じでありますからね。そういう面では、面接試験のごときは年に四、五回受けてもよろしい。面接試験に落ちると、学科試験はやらなくてよろしいけれども、面接を受けるのは一年間延長ですよね。そのときに行けなければまたもとからやり直しみたいな形でしょう。これはちょっと酷ですよ。ですから、年に少なくとも二回、数回実施されるのはいかがなものか、一つの案であります。  もう一つ、年齢制限というものは、公務員試験等もありまするから、採用試験という見方をすれば年齢制限も結構でありますが、しかし弁護士になってくださる者にとっては、私はやはり年齢制限というのはおかしい。特に今日老人社会であります。七十歳、八十歳になって奮発して勉強なさる人が、生活体験の中の老人にかかわる問題等の事案にかかわっていくならば、大変権威あるものとも思うわけであります。そこで、三つを、検事判事、弁護士のそれぞれを試験を分けたら、三分化したらいかがなものか。これを何も一緒にして司法試験という大きなとらえ方でなくても構わぬというふうに私は思います。  この二つを提案申し上げたいのであります。  ちなみに、私の感ずるところを申し上げれば、検事というのはなり手がないというのは、まあ判事は座っていらっしゃって出てきたものを法廷で裁けばいいわけであります。まさに知識労働者でありますが、検事というのは、コロンボ刑事というのが大変聴視率が高くて大衆の涙を誘うものは、あの服装でもって靴をすっべらかして真実を追うている姿ですよ。しかし、ああいうのはなかなか、さっきおっしゃったように今の青年にありませんから、これはなり手がないわけであります。そこで私は、検事というのは、あれはもう若くて正義感に燃えた法理に徹した方でよろしいし、しかし弁護士となれば人情の機微を心得る必要がある、さらに判事というものは神様にかわってこの両者に対する判決を下す立場でありますから、やはり相当の識見と人生経験、特にこの人生経験の足らざる判事が判決を下したならば、本当にこれは法の冷たい面だけが出てきますよね。こういうようなことを考えれば、三つの試験を分ける、ないしは採用に当たっての配慮というものがもっともっとそれぞれの職業に、分野に対して必要である、こう思うのでありますが、いかがでありましょう。
  114. 井嶋一友

    井嶋政府委員 まず、最近の刑事事件事件数から申し上げます。  一番最近刊行いたしました犯罪白書によりましてわかりますが、最近の検察庁が警察から受理します刑事事件の数というのは約百万でございます。約百万でございまして、この数は大体若干増加をいたしております。おおむね横ばいという評価もいたせますが、若干前年と比べますとふえております。しかし、このほとんどが窃盗と業務上過失致死傷と申しまして、つまり交通事故の傷害とか死亡事件でございまして、事件そのものの数、いわゆる実体のある事件の数というのはそれほどふえていない、横ばいであると御理解いただいて結構だと思います。  ただ最近、事件の中身が非常に複雑困難化をしておりまして、いわゆる否認事件も多くなりましたし、それからいろいろな新しいOA機器を使った、あるいはコンピューターを使った犯罪でございますとか、いろいろ事件の中身が変わってきておるという点において困難性を伴っておるということが言えるわけでございまして、そういった意味から、やはり有能な検事を多数、つまり必要数そろえるということは、私どもにとつても必要不可欠のことであるというふうに考えておるわけでございます。  それから、司法試験の関係について御質問がございましたが、先般御報告申し上げましたように、私ども三者協議会で法務省の考えております基本構想というものを提示さしていただいたわけでございますが、そこでは受験の年齢制限はしない、年齢制限は提案をいたしておりません。受験回数の制限をお願いするということで、五年間連続五回は受けていただけますが、五回で失敗したらお休みください、五年お休みいただいて、また復活することもできますよ、こういう案を提案したわけでございまして、今委員仰せのように、老齢になってから受けるという道もこの制度によって開けておるということでございまして、やはり年齢を制限してしまうということは御指摘のようないろいろな問題点があろうということで、私どもの基本構想からは提示をいたしておりません。  それから、年二回実施してはどうかという御提案でございます。司法試験と申しますのは、実はこれは結論的に申しますと一年間通してやります行事でございまして、一番最初、まず年の初めに一次試験というものをやるわけでございまして、これはいわゆる大学卒業資格のない方々が受ける試験でございます。これをまず厳正に行いまして、そこで一次試験に通った方、それから大学の卒業資格を持っておる方が二次試験に進むわけでございますが、二次試験では御案内のとおり、まず短答式の試験を行う。次に、その合格者に夏に論文式試験を行う。夏の間、その論文式の論文の採点を先生方が二カ月ぐらいかかっておやりになる。そこで合格者が決まりますと、秋に口述試験を行う。口述試験といいましても、五、六百の人が受けるわけでございますので、それなりの期間をかけてやらなければなりません、ということで、司法試験のやり方と申しますのは実は一年間通しての仕事であるということなんでございます。そういう実態でございますために、確かに御指摘のような年二回実施というのも一つの案なんでございますけれども、それはやはり取り入れないというのが現在の状況でございます。  それから判検事、弁護士をそれぞれ別の試験にしてはどうかという御提案でございます。御指摘のとおり、戦前には弁護士試験と判検事試験は別であったわけでございますけれども、戦後新憲法のもとで法曹一元というもので、法曹三者が一体で法曹の分野を占めるということから、司法試験というものは一本化するということが新憲法下の一つの大きな法曹界にとっての重要な柱として打ち立てられたわけでございまして、以来、法曹三者は一本の試験で合格し、二年間同じかまの飯を食って修習をし、そしてそこで皆それぞれの道へ分かれていく、こういうシステムをとっているわけでございまして、これはそれなりに新しい憲法のもとに法曹界の民主化ということも含めて考えますならば、この制度はやはり維持していくべきだというのが現在法曹界で考えられております大半の人たちの物の考え方でございます。  そうしますと、やはりそういった原則を維持することが今後も重要であると私どもは考えておるわけでございまして、言うならば、分離試験と申しますのはそういった法曹一元の理念に逆行するという考え方になるわけでございますので、現在のところ、大勢はそれは取り入れないというのが法曹界の考え方だというように御理解いただきたいと思います。
  115. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 時間が参りましたからはしょりますが、しかし、この試験が一年かかると百も承知、自分の子息をしてその試験を受けさせる親の立場というのはそんなものじゃないのですよ。だから申し上げておるわけですよ。ですから私は、これは試験官の数をふやしたり、いろいろの工夫で二回やり得ないはずはないと思いますよ。年に二回やり得ないというはずはない。全部終わってまたやるのじゃないのですよ。いいですか、五月に短答式をやりましたら、また七月にもやるというふうにして、きちんと一年でなくたってそういうふうな方法がとり得ないはずがない。もしもこの司法試験の改善を真に政府がいたそうとするならば、そのぐらいの努力と工夫がなくてはいけない。それは、三十歳になってなお、四十歳になってなお合格せずに人生行路の変更を迫られる本人もそうでありますが、またそれを支える家族にとっても大変な課題なのでありまして、それはおっしゃったような手順はようく承知しておりますよ。承知しておるがゆえに申し上げておるわけで、年二回実施、トータル二回ですよ。全部終わってまたやれと言っているんじゃないですよ、いいですか。トータル二回ですよ。そういうふうに一コースの組と二コースの組がいけばできるのでしょう。それを私は申し上げているわけです。工夫していただきたい。  そして、戦前三つの試験が分離されておりましたのにも、法理的にも観念的にもそれぞれの論理があったわけでありますから、どうかひとつ、それはもう新憲法になったからだめなのだというのではなくて、一つの意見として耳を傾けていただきたい、希望しまして、質問を終わらせていただきます。  どうも、委員長御苦労さまです。大臣以下皆さん御苦労さまでした。
  116. 戸塚進也

    戸塚委員長 安藤巖君。
  117. 安藤巖

    ○安藤委員 裁判官報酬等に関する法律改正案並びに検察官俸給等に関する法律改正案についてお尋ねをいたします。  が、まずその前に、これまでいろいろお尋ねをしてまいりました地家裁支部の統廃合の問題についてお尋ねをしたいと思います。  この統廃合の最高裁判所における作業状況、これは今どういうふうになっておりますか。
  118. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 十月十七日に一般規則制定諮問委員会の答申をちょうだいいたしまして、その直後から今月の中旬までにかけまして地元の自治体、その他関係機関からの第二次の意見聴取を地家裁の所長にしていただきました。それが終わりまして、私どもの方に報告が寄せられましたので、そこでいろいろお聞きしました個別事情を整理させていただきまして、事務当局レベルでの一応の詰めをしたところでございます。近々裁判官会議で慎重な御検討、御判断をいただきたい、こう予定しておるところでございます。
  119. 安藤巖

    ○安藤委員 地家裁の所長さんがいろいろ自治体に出かけられて説明をしておられるということですが、これは統廃合の対象になっている庁の所在地の自治体ばかりではなくて、その管轄区域の市町村にもお出かけになっておるわけですか。
  120. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 さようでございます。検討対象支部管内の各自治体をくまなく回っていただきまして、答申の御説明をし、そして個別事情について意見をお聞きいたしました。
  121. 安藤巖

    ○安藤委員 例えば、きょうは長野地家裁の木曽支部の関係についてお尋ねをしたいわけなんですが、この関係で言いますと、一番南の方に南木曽町という町があります。それから、木曽にはそのほかにも御嶽山の山ろくにある開田村あるいは王滝村、こういうところもあるわけですが、こういうところも回られたわけですか。
  122. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 さようでございます。
  123. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、これは最高裁判所の方へ私の方から木曽支部の関係につきましてお尋ねをしたわけですが、この管轄区域の面積が約千六百八十七平方キロ、人口四万七千四十八人、事件数は、五種事件で年平均約五十件、受け入れ庁松本までの時間約八十分、こういうことですが、これは間違いありませんか。
  124. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  125. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、今申し上げました面積は、四国の香川県が約千八百八十平方キロ、それから大阪府も千八百七十平方キロ、大体少し足らぬだけで香川県、大阪府に匹敵するぐらいの管轄区域の面積になっているわけですね。  それで、いわゆる裁判所の方でよりどころにしておられる相関表というので見てみますと、松本—木曽福島間のJRの所要時間が七十六分から九十分というふうになっておるわけです。ところが、一つの例を挙げますと、これは島崎藤村の生誕地で有名な馬篭です。馬篭から松本へ出かけるということになりますと、日帰りがほとんど不可能な状況になっておるわけです。馬篭発一番の、始発のバスが九時二十五分、これで南木曽の駅まで行きます。十時。それから、南木曽の駅からJRに乗りかえます。十時二十五分発、松本着十二時九分。そして南木曽の駅から最終のバスで馬篭へ帰ろうとすると、松本の駅で十四時二分のに乗らなくてはいかぬわけなんです。これでやっと南木曽発十六時二十分という最終バスに乗れる。これに乗りおくれたらもう歩くしかない、あるいはどこかに泊まるしかない、こういう状況です。となりますと、松本の駅から松本の裁判所まで大体二、三十分はかかるというふうに見られております。実質的に、今のようなことでいきますと、始発のバスに乗って最終のバスに乗るためには裁判所におる時間は三十分ぐらい。これで裁判を受ける——それは準備書面を出すだけということで、代理人がおられればいいのかもわかりませんが、代理人じゃなくて本人訴訟の場合、準備書面の陳述というのなら五、六分で済むのかもわかりませんが、そうでない場合だって幾らでもあるわけです。そうすると、三十分しかおれなくてどうして裁判が受けられるのかなと思うわけです。そうなるとやはり松本で泊まるか途中で泊まるか、日帰りは無理だというふうに言わなければなりません。こういうような点についてはどういうふうに考えておられますか。
  126. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 馬篭村から松本の裁判所まで参ります具体的な経路、所要時間については現在手元に資料ございませんので、その点について確かなお答えはできないわけでございますが、何分木曽支部管内は非常に管内面積が広い、現在検討対象として出しております五十八支部の中では最も管内面積が広い支部でございます。  そうしましたところで、木曽福島町から松本の裁判所までの時間を相関表ではとりましたが、その管内の遠いところ、先ほど委員の御指摘にありました王滝村とかあるいは開田村あるいは南木曽町といったところからの所要時間というのが、木曽福島町からに比べますと二倍あるいはそれに近いところかかるということはよく承知しております。そして、いろいろ支部によりましては遠隔地の市町村がございますが、そこでどのくらいの人口がいて年間どのくらいの事件数が出るかといったことも見なければならないと思っておりますし、仮に当該支部を廃止いたしました場合には、開廷時間、閉廷時間についていろいろ工夫を要しますし、あるいは廃止するについては遠隔地の市町村の住民のことを考えまして、特に家事事件関係では受け付け等を行う出張所といった代償措置的なことも工夫しなければならない、そういったことを現在詰めて検討しておるところでございます。
  127. 安藤巖

    ○安藤委員 開廷時間をいろいろ変えるとおっしゃっても、大体五時には終わる、それから十時から開廷、それをどういうふうにおいじりになるのか知りませんけれども、その原則はなかなか変わらぬのじゃないかと思うのですね。これは、裁判官あるいは書記官の勤務時間との関係もこれあり、そう簡単には変わらぬと思うのです。今申し上げましたように泊まりがけでなくては行けない。ところが、今木曽支部で裁判を受けることができればそういうようなことがなくて済むわけですね。だから、それだけ国民に対して負担をかける。そして、そんなに遠いところならもうやめようかということにもなりかねない。そうなれば、これは国民の裁判を受ける権利に対するゆゆしき侵害行為になるのではないかということを私は恐れるわけです。  そこで、今、事件のことをおっしゃったんですが、これはもちろん全部のものを今用意しておるわけではありませんけれども、相関表に出てまいりますのは、いつもいわゆる五種事件というのが出てくるわけです。五種事件に限定されるというのは不当であるということは私どもはいつも申し上げておるのですが、これは、いろいろ資料を見ておりましたらたまたま出てまいりました。衆議院法務委員会の視察で昭和六十一年八月二十九日に盛岡の地方裁判所へお邪魔しましたときにいただいた資料です。  これによりますと、これは盛岡地裁の関係だけでございますけれども、ほかのところも同じようじゃないのかなというふうに思います。資料として、これは家事事件関係でございますが、「調停事件は横ばい、ないしは、漸増傾向に推移している。これらの事件のうち比較的事件数の多い主なものは、審判事件では子の氏変更、保護義務者選任、相続放棄、特別代理人選任事件等であり、調停事件では、婚姻中の夫婦間の事件、親権者の指定、変更、遺産分割の事件等である。」「比較的事件数の多い主なものは、」ということで挙げておるわけですね。だから、調停の関係、家事審判及び家事調停の関係がいわゆる五種事件に入ってくるわけなんですが、この中に入らないものが比較的多いものは、というふうに指摘されておるわけです。となると、五種事件に限定をして、事件数がこういうふうに減った、あるいはふえたというような言い方は当を得ていないのではないかというふうに思いますが、どうですか。
  128. 金谷利廣

    金谷最高裁判所長官代理者 その点についてはかねがね弁護士会等からも御批判のあるところでございます。しかし、私どもは結論といたしましてやはりそれで適切であった、こう考えておる次第でございます。  五種事件を選びましたのは、当該事件の処理につきまして当事者の出頭が繰り返し必要な事件ということで、民事、刑事の訴訟事件、それから民事調停、家事調停、そして遺産分割等の乙類審判事件というものでとらしていただいたわけでございます。もちろん地裁、家裁で扱います事件には多種多様な事件がございます。中には令状請求の事件もありますしあるいは執行猶予の取り消し請求とか、当事者の出頭を要しない事件もございます。それぞれによりまして事件の重みも違います。  まず最初の作業といたしまして、この種の作業は全体的にどのあたりを検討対象にするかということが作業の性質上どうしても必要になってまいります場合に、雑多な事件を全部足し上げて、同じ比重で一と数えて、そして件数を出してこういった相関表をつくるのがいいかどうかということが問題になります。簡易裁判所の適正配置の際も法曹三者の協議会、さらには法制審議会で御異論なく認めていただきました手法としまして、民事訴訟、刑事訴訟、民事調停の三種の事件をとってまず相関表をつくった、そしてその他のさまざまの事件については、その支部を検討する際に個別事情の一つとして三種事件以外のいろいろな事件を見た。簡易裁判所の場合も、略式命令事件だとかあるいは支払い命令の申し立て事件とか、その種の事件が非常に数多くございます。しかし、その場合にも基本的な、処理の際に当事者の出頭を要する構造になっている事件を選ばしていただきました。今回もそれと全く同一の手法をとらしていただきまして五種事件を選定した。そうしませんと、また方針転換したということになりますので、むしろ私どもとしては、簡裁以来の一般に認められた一貫した方針をとらせていただいたということでございます。  確かに甲類審判事件、支部によりましては非常に多うございます。委員の御指摘になられました例えば子の氏の変更だとかあるいは相続放棄といったものもございます。これは実質上の紛争と申しますよりも、委員も御承知と思いますが、そういう相続放棄の申し立て自体は郵送でもできますし、そして裁判所の方から住所地に書面で照会して、真意に基づいているということが確認されればすぐ処理できる事件でございまして、本人が出頭しなければ処理できないという事件ではございません。しかし、その種の事件も時には本人が裁判所の方へ持参して申し立てられるというようなこともございます。ですから、そういった五種事件以外の事件は、五十八の検討対象支部を個別に検討いたします際に、個別の事情としてどのくらいどんな事件があるかということを見させていただく、これは私どもこの問題提起をいたしました初めのときから申し上げさしていただきまして、今回第二次の地元からの意見聴取をいたしました際にも、うちの方は甲類審判事件が多いとかいろいろな事情を、私ども聞かしていただくまでもなく裁判所の統計でわかっているところでございますが、いろいろ強調して訴えられたのを聞かせていただいたという状況でございます。
  129. 安藤巖

    ○安藤委員 方針転換をしたらあれこれというお話がありましたが、私はぜひとも方針転換をしていただきたい、いただくべきだというふうに思うのです。本人の出頭を要しないと言われても、いろいろ事情をお聞きしますと、やはりよくわからない、書面だけでは十分ではないから、一遍本人が出頭して説明してくださいというようなことで事が運ぶということもよく聞いておりますので、この点も十分御検討をいただきたいということを要望しておきます。  それで、この関係につきましては、金谷総務局長さんお急ぎのようでございますから、これで済みましたからお帰りになって結構でございます。  さて、裁判官報酬等に関して一言お尋ねしたいと思うのです。  先ほども議論になりましたけれども、なぜ裁判官報酬をこんなに小刻みにするのか、そして一般公務員とどうして同じような調子にしなければならぬのかという点につきましては、もう議論がありましたから私は省略をいたしますけれども最高裁判所の方が、櫻井人事局長がいろいろ説明をなさったのですが、私もその御説明を聞いておりましたが、さっぱりわかりません。最高裁としてこの報酬関係につきましても、三権分立のうちの一つの司法権を担っている裁判官報酬なんですから、何も一般公務員と横並びにする必要はない。それを一つの手がかり、参考にするのは別にあれこれ言いませんけれども、それを手がかりにするのはいいですけれども、前から申し上げておりますように、戦後間もなくの間は裁判官報酬の段階は全部で五段階ぐらいだったと思うのです。それが今、判事補だけで十二ですか、これはやはりおかしいと思うのですよ。だから、そういうふうにもっと段を少なくして、号俸の数を少なくして五年間ぐらいは一定した報酬で、そんなことは全然気にかけないで裁判に熱中というのか集中するというのか、そういうことができるような体制をとるべきだと思うのですが、どうですか。
  130. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 先ほど御説明いたしましたことの繰り返しになるかもしれませんが、私ども、現在の報酬の刻みというのは決して多過ぎると思っているわけではないのでございます。裁判官報酬をどういうふうな形にすべきかというのはいろいろな議論がありまして、例えば同じ仕事をやっているんだから全く一つの報酬にしてしまってはどうかというような考えだってもちろんあり得るわけでございます。  ただ、結局は日本の裁判官の任用の実態というものがこの問題の一つの基礎になるんだろうと思います。裁判官は、とにかく長期間、判事補あるいは判事として在勤するわけでございますので、結局国家公務員としての任用というものをその一つの根底に置いているということを完全に無視することはできない。これを無視して極端に簡素化した報酬段階を考えるというのは、現実の裁判官の人的構成というものにはそぐわないものになるというところがこの問題の根本であろうというふうに思っております。
  131. 安藤巖

    ○安藤委員 この問題につきましてはさらに別な機会に議論をさせていただきたいと思います。  時間がありませんので次の問題に移りたいと思います。環境庁からも来ていただいております。  公害健康被害補償法はもうなくなってしまっておるわけですが、この補償の制度は、現在受けておられる方は受けておられるというふうに聞いております。この補償の中身というものはどういうものでございますか。
  132. 高橋透

    高橋説明員 補償給付の内容について御説明いたしたいと思います。  これは公害健康被害の補償等に関する法律の中に定められているものでございまして、七種類ございます。  一つは療養の給付及び療養費でございまして、いわゆる医療費でございます。  次に障害補償費でございまして、これは労働能力の喪失等による逸失利益相当分に慰謝料的要素を加味したものでございまして、十五歳以上の被認定者に支給されるもので、障害補償標準給付基礎月額に相当する金額に障害の程度に応じ、性別、年齢別に一定の支給率を乗じて算定した額を支給するものでございまして、支給率は、特級、一級は一〇〇%、二級が五〇%、三級が三〇%になります。ちなみに四十五歳から四十九歳までの男性で一級の方で受ける額は月額で約二十九万四千円になります。  次、三番目でございますが、遺族補償費でございます。これは指定疾病に起因して死亡した場合に、死亡被認定者の逸失利益と慰謝料相当分及び被認定者の遺族固有の慰謝料相当分を補償するものということでございまして、被認定者によって生計を維持していた一定の遺族に対して遺族補償標準給付基礎月額に相当する金額を十年を限度として支給するものでございまして、他に原因がある場合にはこれを参酌した金額になるわけでございます。  そのほかに、四番目として遺族補償一時金がございますし、また五番目として児童補償手当がございます。また六番目に療養手当がございまして、七番目葬祭料がございます。  以上、簡単でございますが御説明させていただきました。
  133. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、民事訴訟法の第百十八条の訴訟救助の規定がございますけれども、これはたしか資力なき場合と、資力という言葉が使ってあったと思うのです、今は持っていませんが。今お聞きになったような公害健康被害補償法に基づく補償を受けておるということが資力という中に計算をされるべきものなのかどうかという点について、法務省の方からお答えいただきたいと思います。
  134. 岩佐善巳

    ○岩佐政府委員 訟務局は一当事者にしかすぎませんので、一般的な法律論を議論するのにはふさわしくないかもしれませんけれども一般的に言われておりますところを見ますと、訴訟救助の制度は訴訟費用を支払う資力のない者に対し裁判費用等の支払いを猶予する制度である、こう言われておりまして、資力の構成内容につきましては法律上一切の制約がございませんので、解釈上いろいろな問題を生じているところでございます。
  135. 安藤巖

    ○安藤委員 今お聞きいただいたように、この健康被害補償法に基づくあれは、公害によって疾病を受けるというような損害を受けた、その損害をてん補するというようなものであるということは今御答弁いただいたことで内容がはっきりしておると思うのです。だから、今は限定がないというふうにおっしゃったのですが、私の考えとしては、やはりそういう損失をてん補するものを資力というふうに扱うのはおかしいと思うのです。  そこで、時間が来ましたからひとつ具体的に事件でお尋ねしたいのですが、尼崎の大気汚染公害訴訟というのが今提起されております。これに対して、裁判所が一部の人に対して訴訟救助の決定をした。これに対して、訴訟救助の決定を受けた人たち全員に対して国の方が即時抗告の申し立てをしておられるわけです。これは簡単に言えば訴訟救助をしたのが不当であるという言い方だと思うのですが、これはどういうふうにお調べになったのか。そして、中には生活保護を受けておる人もおるというふうに聞いておるのですが、そういう点なんかは考慮していないのか。あるいは、そういうような点が明らかになれば、全部ではないにしても何人かは即時抗告の申し立てというのを取り下げる用意があるのかどうかということをお尋ねして、最後にします。
  136. 岩佐善巳

    ○岩佐政府委員 具体的な事件についてのお尋ねでございますが、尼崎の大気汚染の公害訴訟につきましてはお説のとおり国の立場で即時抗告をいたしてございます。これは、原決定には先ほども申し述べましたようにいろいろ問題がございまして、法律上の定めた訴訟救助付与の要件の適用について疑義があるということで、さらに上級審の判断を仰ぐのが相当であると考えて即時抗告をいたしておる状況でございますので、御了承いただきたいと存じます。
  137. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が参りましたので、終わります。
  138. 戸塚進也

    戸塚委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  139. 戸塚進也

    戸塚委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  まず、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  140. 戸塚進也

    戸塚委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  141. 戸塚進也

    戸塚委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 戸塚進也

    戸塚委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載)     ─────────────
  143. 戸塚進也

    戸塚委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時六分散会