○
井嶋政府委員 司法試験
制度は
委員御
承知のとおり法曹三者の後継者を選抜いたします事実上唯一の試験でございまして、国家試験の中でも最難関の試験であるというふうに言われておるわけでございますけれ
ども、近年、この試験が非常に異常な
状況を呈してまいっておりまして、平均受験回数が六回以上、合格者の平均年齢が二十八・九一歳というようなことに象徴されますように、司法試験の受験を目指す者にとって非常に過酷な試験になっておるという
現状があるわけでございます。そういったことから、法曹の後継者を実務家として修練する機会と申しますか、開始する機会が非常に遅くなってきているということもございます。そのような結果、定年制を持ってキャリアシステムで進んでまいります判事、検事につきましては、給源としての問題も非常に出てまいっておるという面もございます。そういったことで、本来法曹三者がバランスよく採用される、登用されるという姿であるべき司法試験が異常な形になってまいっておりますために、そのバランスよく採るという点においても
一つの破綻を来しておるということがあるわけでございます。
そういったところから、
法務省といたしましても、まず司法試験の
現状を改めて、より多くの人がより早く合格できるような試験
制度に改めて、若くて優秀な人たちが司法試験に魅力を感じて受けてもらえるようなものにしたいという観点で改革の提言を行ったわけでございます。そして昨年十二月から一昨日まで十一回、法曹三者協議会でこの問題について討議を重ねてまいりました。その間におきまして、司法試験の抱えております
現状と問題点をそれぞれ資料に基づいて分析、
検討いたしまして、協議を行ってまいったわけでございます。まだ認識の程度あるいは質において必ずしも全部が一致したというわけではございませんけれ
ども、少なくとも共通項といたしまして、
現状の試験を改革する必要性があるという点におきましては認識が大体まとまった。そこで、ではこれからはいかにすべきかということを審議するために、提案者でございますので、
法務省としてのたたき台をお示ししようということで、一昨日、司法試験
制度改革の基本構想というものを提出したわけでございます。
それで、今申しましたような経緯でございますので、改革の基本的構想というのは、まさに現在の司法試験に比べまして、より多くの者がより短期間に合格し得るような試験とするということを目途といたしまして、次のような改革の具体的内容を提言いたしました。
まず、
制度上の改革でございます。
一つは、甲案と申しておりますけれ
ども、司法試験第二次試験におきまして、初めて受験した年から五年以内に限って受験することができる。これは
一つの受験資格の制限という方向の改革でございます。したがって、五年以内に連続いたしますと五回受けられる、しかしそれ以上は受けられません、こういう形にする案がまず甲案でございます。
〔
委員長退席、逢沢
委員長代理着席〕
しかし、それだけで打ち切ってしまいますと、法曹というものは必ずしも若いときだけでなくて、いろいろな
社会経験を積んだ後に法曹を目指して司法試験を受ける方も
現実におられますし、またそういった方々のキャリアも法曹にとって重要であるというような観点もございますから、これを単に一律に当初から五年連続五回でおしまいだということでは酷であるということで、復活制というものを設けまして、五年引き続いてやって失敗されましたら五年間はお休みいただきます、五年お休みいただきましたら前と同じように、原則と同じように、さらにまた五年間連続受けていただけます、こういうような
制度にいたしまして、いわゆる
社会経験をされた方で改めて司法試験を目指そうという方にも道を開くということを
考えたわけでございます。
それから、乙案と申しますのは、そういった五年以内連続五回という受験制限の
考え方を一応原則といたしまして、合格者数の八割ぐらいに当たるものをそういった五回以内の方々から選ぶ、しかし、
現実に現行
制度では制限をしておらないわけでございますから、そういった方も将来ともあるだろう、そういうことのために、残りの二割ぐらいの合格者の数につきましては、引き続き六回、七回、十回と受けておられる方の中からでも採るようにしよう、そのぐらいの枠をその方々に提供しよう、ただし、もちろん合格最低点はいわゆる八割の方の合格最低点と同じものにする、こういう
考え方が乙案でございます。
丙案は、これは逆にと申しますか、発想を変えておりまして、現在五百名ばかり採っておるわけでございますけれ
ども、現在の姿をそのまま維持いたしましょう、したがって受験回数制限も一切いたしません、その方々で大体七割くらいを採らしていただきましょう、残りの三割につきまして、今度は受験回数三回以下の方々についてこの枠でもって合格の判定をさせていただきましょう、こういう
考え方を示しておるわけでございます。
甲案は受験資格そのものの
制度的改正、乙案と丙案はいわゆる合否判定のやり方の改革、こういうようなニュアンスでございますけれ
ども、そういった三つの案を提示いたしまして、こういった案をたたき台としていずれがいいのか、また他に方法があるのかを含めまして、法曹三者で引き続き
検討してまいりたいと思っておるわけでございますが、このような
制度改革をいたしますに伴いまして、今まで御
説明しましたように、当然前提として、やはり合格者数は約七百名くらいにふやす必要があるということを
考えておるわけでございまして、あわせて
一つの改革になるというような
考え方を示したわけでございます。
それから、もう
一つの
制度上の改革といたしまして、教養選択科目を廃止するということを提言いたしております。これは先ほど申しましたように、相当数の科目の中から一科目選んでいただくわけでございますが、これも
考え方によりますれば、教養というのはもっと幅広い教養を身につけることが
要求されるわけでありますけれ
ども、その程度を一科目の教養試験の成績で判定し得るのかというようなこともございますから、あえてこの際、受験生の負担を軽減するという意味で教養選択を廃止いたしまして、もっと本来的な法律の勉強に従事してもらうという
考え方で、これも廃止するということを出したわけでございます。
以上が
制度上の改革でございます。
それから、運用上の措置といたしましては、従来やっておりました論文式試験の結果を全員に通知をいたしまして、自分がどのくらいの力なのかということがわかるようにする
制度をつくっておりますが、これを短答式試験にも及ぼそうということを提言をいたしております。
それから、
検討事項として、一時議論になりましたいわゆる大学推薦制といったものにつきましては、大学教育との整合性を図る意味において将来の
検討課題にしよう、それからまた、試験
制度というものは必ずしも万古不易なものではないはずであって、やはりいろいろ、改革でベストのものだと思ってその時点で選んだものであっても、またその結果におきまして検証して、変えるべきことがあったら変えようという柔軟な姿勢で臨もう、こういうようなことも
検討項目としてつけ加えておる、こういうことでございます。
いずれにいたしましても、この基本構想をたたき台といたしまして、法曹三者で何とか
意見を
一つに取りまとめたいと思っております。そして取りまとめましたら、これは法律の改正を要することになると思われますので、所要の手続を経まして、司法試験法の改正を国会にお願いするという段取りになるかと思っております。