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1989-11-14 第116回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年十一月十四日(火曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 戸塚 進也君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 井上 喜一君 理事 太田 誠一君    理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君    理事 中村  巖君       赤城 宗徳君    伊藤宗一郎君       上村千一郎君    木部 佳昭君       戸沢 政方君    稲葉 誠一君       清水  勇君    山花 貞夫君       冬柴 鉄三君    山田 英介君       滝沢 幸助君    安藤  巖君  出席政府委員         法務大臣官房長 井嶋 一友君         法務大臣官房審         議官      米澤 慶治君         法務省入国管理         局長      股野 景親君  委員外出席者         参  考  人         (千葉大学法経         学部教授)   手塚 和彰君         参  考  人         (日本経済新聞         社論説委員)  小井土有治君         参  考  人         (日本経営者団         体連盟常務理         事)      増田 雅一君         参  考  人         (全日本民間労         働組合連合会調         査法制局長)  加藤 敏幸君         法務委員会調査         室長      乙部 二郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十四回国会閣法第六三号)      ────◇─────
  2. 戸塚進也

    戸塚委員長 これより会議を開きます。  内閣提出出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として千葉大学法経学部教授手塚和彰君、日本経済新聞社論説委員小井土有治君、日本経営者団体連盟常務理事増田雅一君、全日本民間労働組合連合会調査法制局長加藤敏幸君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本案について、参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  御意見の開陳は、手塚参考人小井土参考人増田参考人加藤参考人順序で、お一人十五分以内に取りまとめてお述べいただき、次に委員からの質問に対しお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願います。  それでは、まず手塚参考人にお願いいたします。
  3. 手塚和彰

    手塚参考人 ただいま御紹介いただきました手塚でございます。  私は、この問題につきまして、ポイントとしまして五つくらいの点につきましてお話をさせていただきたいと思います。  第一は、外国人労働者受け入れに関する一般的な考え方をどう考えるべきかということでございます。それと同時に、第二番目の問題としましては、諸外国におきましてはこの問題はかなり長い経験を持っておりますので、その点につきまして第二にお話をさせていただきます。それから第三には、我が国外国人労働者受け入れた場合の保護等について、既にいろいろ問題が起きておりますので、これらの点についてお話をさせていただきます。第四につきましては、今後の我が国における外国人労働者受け入れあり方につきましてお話をさせていただきます。そして最後に、入管法の今回の改正案につきまして評価を加えたいと思います。  まず第一点でございます。  皆さん御存じのとおり、昭和六十年にいわゆるプラザ合意、五カ国蔵相会議合意ができ上がりましてから円高が急激に進行いたしました。これが一つの引き金になりまして大量の、とりわけアジア諸国からの外国人の方が働きに来られる、こういう現象が出てまいりました。しかし、この背景には、単なる円高現象だけではなく、幾つかの現象が重なってこれが顕在化したと言えると思います。  第一は、アメリカ西ヨーロッパ経済が、状況自身が余り芳しくないという停滞期を迎えました。アメリカで五%、ヨーロッパ諸国は一〇%前後の高失業時代を迎えるということがございまして、ヨーロッパにしてもアメリカにしましても、一九八〇年代には外国人労働者受け入れを強く法的な規制をもってシャットアウトいたしたわけでございます。  それから、第二番目の潜在的な要素としましては、いわゆるオイルダラー諸国、いわゆる石油産油国が、イラン・イラク戦争等々の影響もありまして、従来の建設のテンポが非常に停滞しているという状況で、かつてアジア諸国から大量の労働者を吸収していたこれらの国での動きがとまったということでございます。  それから第三は、やはり日本がこの間持っていたアジア諸国で抜きん出た経済力というのが一気に明らかになってきた。こういうことでございます。一九八六年に、例えば中国をとりましても、日本は一人当たりの国民総生産は四十三倍ございます。それから、最近になりましては五十三、四倍というぐあいに評価されております。そして、バングラデシュなど非常に貧しい国につきましては、八六年が八十倍くらい、現在では九十九倍、約百倍くらいの所得格差がある、こういう状況でございます。  この中で、人と金と物が同時に国際化をする、そういう状況日本は迎えたわけでございます。この中で、金と物が国際化するのに伴って人の出入りも多くなりましたけれども、日本一定所得を求めて入国なすって働く、そういういわゆる外国人労働者問題がこの間はっきりしてまいったわけでございます。  通常言われている定説は、これらの外国人が動く、いわゆる国際的な労働力移動につきましては、第一は、所得格差があって所得によって、それがインセンティブになって動くということ、それから第二は人口、いわゆる労働力の圧力があって出てくるというこの第二の要因がございますが、第三に重要な点で私は着目しなければならないのは、いわゆるインフォメーションや具体的なルートがなければこれらの人々も出てはこないわけであります。これらのインフォメーションルートが、例えば日本からの輸出の電化製品を通じてかなり一般化してアジアの豊かな国というイメージを与えたり、それから日本に来て、帰った方たちインフォメーションなどが大きな理由になりまして現実に雇用創出がなされてきたということでございます。と同時に、昭和六十年から始まりました内需拡大方向が、人手不足現象というものを生じました。  こういう中で徐々に今起きている現象は、六十二年の前半はそれほどの人手不足は感じられませんでしたけれども、後半から約二年間、一般的に人手不足現象と言われる求人倍率が二・〇を超えるような、そういう現象が出てまいりました。こういう中で人手不足の業種あるいは企業において外国人雇用されるということが出てきたのが今回の問題の発端であったと思います。  これらは皆様先刻御承知のとおりの状況でございますが、現在の事態解釈の仕方に二通りの解釈の仕方があるということでございます。  その第一は、いわば今日私どもが直面している人手不足というのも、長年来ありました我が国高齢者や婦人あるいは中小企業のいわゆる低賃金や長時間労働と言われる現象を解消する、そういう絶好のチャンスではないかということでございます。  それと同時に、我が国産業界は挙げてこの二、三年の間、政府の施策としましても国際分業体制を進め、構造調整を進めていて、アジア諸国とともに発展をしていく、こういう方向をとってまいりました。こういう状況一つございますが、他方では、二十一世紀に向けて人口が若干高齢化していくという現象あるいは人手不足していくということに対して、日本で働いていただくような外国人が入ってこなければならないのではないか、こういう議論があるのは御承知のとおりでございます。  これらの結論めいたことは最後に申し上げさせていただくことにいたしまして、諸外国における外国人労働力の移入あるいは移動の問題につきまして、これらの経験我が国が学ぶ点があるとすればどのあたりを学べばいいかということの私なりの考えを申し上げたいと思います。  第一は、よく言われるように、アメリカのような移民国でございます。オーストラリア、カナダもともども、これらの国はかってはヨーロッパ大陸中心に比較的自由に移民を認めてきたわけでありますが、移民永住前提としたいわゆる人の移動でございますけれども、そういうことが認められてまいりました。しかし、第二次大戦後、とりわけこれらの国々でも、かつて割り当て制度というようなものを出身国別にとっておりまして、不合理な状況がございました。実績に基づいて割り当てをしたために、日本アジア諸国が不利な状況をこうむったのは戦前以来の歴史でも著明な事実でありますが、これが現在では、一九五二年あるいは六五年以降、優先順位制というので、ごく限られたプロフェッショナルな者あるいは技能労働者についてだけ五万四千人程度受け入れるということになって、限定的な受け入れに変わっております。  しかも注目すべきことは、一九八六年の移民管理修正法というので、かつて数百万単位でメキシコ国境から入ってきたいわゆる外国人不法入国者をシャットアウトするために、これらの人々を雇っている雇い主あっせん者に対して処罰規定を設けたということでございます。  これらの点を考えまして、日本と対比しますと、一つ割り当て制度というようなもの、優先順位制度というようなものがアメリカでどう行われているかということがございますが、それ以外に、大量の人々が出入りする国ということでは、アメリカのタイプは日本には当てはまらないということになろうと思います。  第二はヨーロッパ型と言われるものでございますが、ヨーロッパの場合は、百年来、いわゆる労働力不足周辺国中心外国から補う、こういう方式をとってまいりました。とりわけ、私が端的に御紹介させていただきたいのは、西ドイツの例でございます。今般問題になっておりますベルリンの壁が一九六一年の夏にできました。それ以前、第二次大戦後約二千六百万人の方たち東欧諸国あるいは東ドイツから移住して、これらの方がすべて身一つで移住をして、西ドイツ経済の再建に役立ってきた、こういう事実がございます。ところが、これが一九六一年のベルリンの壁でシャットアウトをされまして、結局それ以降外国人労働者受け入れられるような結果になったわけでございます。一九五五年のイタリアを初め合計八カ国と二国間協定を締結いたしまして、外国人労働者受け入れました。  この受け入れについて着目したいのでありますが、これにつきましては、まず二国間協定相手国日本のいわゆる職安連邦雇用庁と呼んでおりますが、その出先機関をつくって、地元の職安で募集をしてドイツ人あるいはドイツ求職者がない場合に、雇い主から労働契約にもう既にサインをしたものを送らせて、向こうの相手国職安に数人の者をあっせんをさせ、そして健康診断等を経て選考をし、そして相手方の労働者サインをすれば労働契約が成り立つということを双方の国が認めて便宜を与える、こういう形をとって、旅費を支給して受け入れたわけであります。  このときの受け入れには三つ前提がございました。一つは、西ドイツのこの当時の産業自身は非常に技術革新が進んでおりまして、必ずしも熟練労働者だけでなくて、補助的な労働者受け入れればいいのではないか、そういう発想法がございました。そのために、現地選考をして受け入れまして、すぐにOJT、つまり現場の訓練を通じてすぐに入職をさせたわけであります。これによって大量の労働者西ドイツ経済界に入ってまいったわけであります。この初期におきましては、今申し上げましたように、文字どおり補助的な労働、つまり不熟練労働者中心受け入れたわけでありまして、当時の予測としては三つ予測がございました。  その第一は、外国人労働者が不熟練労働につけばドイツ人スキル、つまり熟練は上がって、ステータスも上昇するであろう、そういう前提がございました。第二は、外国人労働者は二、三年で帰るだろう、一定所得を得れば帰るであろうということがございました。第三は、地域的に人の不足のところへ外国人受け入れればミスマッチが防げる、こういう予測でございました。  ところが、五年を経ないうちにこの三つとも恐ろしい間違いであるということがはっきりしたわけであります。  その第一は、ドイツ人スキルが上がるといっても、この技術革新の流れの中で、ドイツ人でそれに対応してちゃんとスキルを上昇され得る人は限定されてきたということがございます。第二は、二、三年で帰るということであったわけですが、こういう契約最初は結ぶような方向であったのですけれども、結局雇い主も優良な方であれば手放さないし、家族を呼び寄せ子供が生まれる、そういう状況で滞在は長期化していったわけであります。それから、地域的ミスマッチも、外国人だから左から右へというぐあいに動かすわけにはいかなかった、こういうことでございました。  しかも注目すべき点は、七〇年代の後半から、オイルショック以降、永遠西ドイツ経済と言われる繁栄が崩れたわけであります。当時の、六〇年代後半の西ドイツ失業率は、全体の失業率が〇・七%前後でございました。およそ想像もつかない失業率であります。現在の我が国失業率と比べても、日本失業率は統計上低く抑えられるように、半分ぐらいに抑えられるようになっていますから、およそ想像を絶するくらいでありました。外国人の場合には、その当時は最初から雇い主が決まっておりますから、〇・二、三%という失業率でありました。これがオイルショック以降、いわゆる外国人が大量についていた鉄鋼、造船、炭鉱、繊維あるいは機械等々の重厚長大型産業から一気に吐き出されるという事態を迎えまして、結局ドイツ人自身が五%くらいの失業率に上がり、六、七%に外国人がなるという逆転現象が生じたわけであります。その後現在に至るも、大量の九%前後の全体の失業率に対して、外国人労働者が一四、五%の高失業であるということは皆様承知のとおりでございます。  こういう結果を見てまいりますと、学ぶべき点としましては、その国の経済労働力不足という現象がありながら永遠繁栄というようなことはないということでございます。技術的な点あるいは研修などを抜いて受け入れをしても、故国に帰ってもする仕事がないという状況がありまして、生活をして、それで永住を始めたのが外国人労働者問題のヨーロッパ版、フランスもそうでありますが、西ドイツ等々の状況でございました。  これらの点を考えますと、日本でいかに受け入れを行わなければならないかということがはっきりしてまいると思います。  それから、外国人労働者保護の点につきましては、日本受け入れた以上は、たとえ不法入国をして不法就労している方でも、憲法十四条、あるいは労基法三条、職安法三条、あるいは国際人権規約の七条等によって、労働者保護をすべての点において行わなければならないということであります。それからさらに社会保障等々の問題を考えなければならないということでございます。  それから、受け入れの今後のあり方でございますが、結局、今申し上げました点を含めて後ほど補足さしていただきますが、日本にとってチープレーバーではないということであります。それから補助労働ではないという受け入れ方、そして長期にわたる見通しを持って受け入れるべきであるということであります。これはアジア諸国にとっても大切なことでありまして、受け入れをきちんとし、研修をし、資格を与え、雇用をかなりの長い期間認め、昇進もさせる、こういうシステムが我が国ではまだでき上がっていないということであります。  今回の入管法は、こういう状況の中で、物と金の国際化、あるいは国際化対応する整備を一応私は終えたと思います。ただ、いわゆる単純労働者問題というアジアの方が働きに来るチャンスを与える与え方につきましては、今申し上げました点をやはり今後明確な方向づけの上で細部にわたって検討をし、国民の合意を得た上で受け入れをすることが大事だと思います。  最後に一言申し上げさしていただきたいのは、現在入国管理あるいは外国人の就労に関する我が国の行政の対応が余りにも手薄な陣容、予算等々があって、対応ができていないということがあると思います。この国に入ってくる入り口は最も重要なインプレッションを与えるものでして、入り口インプレッションが悪ければ、この国について最初から条件はよくならないわけであります。物についての受け入れであります税関等々に比べましても、その定員は五分の一程度というぐあいに承っておりますけれども、やはり今後これらの点での改善策をなさることもお願いしたいと思います。  簡単ではありますが、終わらしていただきます。(拍手)
  4. 戸塚進也

    戸塚委員長 手塚参考人、ありがとうございました。  次に、小井土参考人にお願いいたします。
  5. 小井土有治

    小井土参考人 手塚先生意見と重複する点がかなりあるかと思いますが、四点について意見を申し述べさしていただきます。  第一点は、外国人労働者問題についての一般的な意見、第二点は、人手不足問題と外国人労働者受け入れ、次に、外国人労働者東南アジアとの関係、そして最後に、本改正案についてであります。  いわゆる外国人労働者問題には二つあると思うのですね。現在既に認めている専門的な能力経験資格を持つ人々の問題が第一でありますが、これに関しましては、これからもさらに枠を広げる、量を広げるというようなことが必要であろうかと思います。それが日本企業活力あるいは関係国との友好増進ということにつながるのではないだろうかというふうに思います。  いわゆる不法就労問題が第二点であります。これが今非常に深刻であり、当委員会でも御審議いただいておるわけでありますが、これがクローズアップされましたのは為替調整が始まった以降であります。今ほど日本全国に普通の外国人がいて普通の日本人とつき合っている時代はなかったと言っていいのではないかと思います。それ自体は大変結構なことでありますけれども、そのあり方によっては、国際親善友好の促進ということと逆行する結果になることもあると思いますが、そういうことにならないようにすることが大事であろうかというふうに思います。  この不法就労問題は、日本経済の膨張、産油国の低迷とほぼ同時進行してきたわけでありますが、最近の特色は女性よりも男性が多くなったという現象ではないかと思います。もちろんまだ女性が非常に多いということであります。たまたま私、けさ乗りましたタクシーの運転手さんの話を聞きましたところ、東京の繁華街では女性が非常に多い、八割ぐらいが外国女性ではないかということで非常に危惧の念を持った発言をしていたのが印象的でありますので、この席でちょっと御紹介さしていただきます。  五月以降のベトナム難民問題がまた注目されておりますが、この中でクローズアップされたのが偽装難民であります。こういうことを見ますと、不法就労問題がさらに深刻になる公算が大きいだろうと思います。しかも、我が国経済が好調さを持続する限り、この問題の全面的な解決はかなり困難ではないかというふうに思います。その理由は、アジア各国我が国所得格差が大きいこと、現地での雇用機会が多くなく、その雇用条件も良好ではないこと、産油国が国際的な出稼ぎ先でなくなりつつあること、急激な円高によって日本で働くメリットが大きくなったこと、好景気と若者意識変化でそういう外国人の方が日本で働く機会が非常に多くなっていること、というようなことが挙げられると思います。  世界最大債権国我が国としては、こうした基本的な問題に本格的に取り組む必要があろうかと思います。国会は、ぜひこの事態を放置せず、真剣に対処していただきたいと思います。このまま放置すれば、法を無視した事態拡大するとか、偽装難民問題に象徴されるような公然たる密入国がふえる、あるいはアジア各国中南米諸国からの労働者人権が無視され、その結果、日本に対する信頼感が低下する、さらには外国人労働者の低賃金などが我が国労働者労働条件改善向上を阻害するということが予測されるのではないかと思います。また、劣悪な労働条件、厳しい仕事外国人労働者に任せるといった風潮を生み、それが仕事に対する差別アジア人々に対する差別につながる懸念もないではないと思います。それがまた社会の公正さを損ない、社会活力をそぐということにもつながりかねないと思います。  この問題の解決は極めて難しいのでありますが、我が国国際化を進めなければならないから無条件外国人労働者受け入れるとか、さきの戦争責任との絡みで受け入れるべきであるとか、漠然とした理由での問題解決は後々に大きな問題を残すおそれがあるのではないだろうかというふうに思います。したがって、想定される影響などを十分かつ慎重に検討して、出稼ぎ労働者の送り出し国の理解も得られるような解決策を打ち出すことが必要であろうかと思います。当然各省庁の御協力が必要であろう、こう思います。  第二点、人手不足問題と外国人労働者受け入れについて申し上げます。  最近、我が国経済円高メリットによって長期の好況を持続しておりますが、それが深刻な人手不足を招来し、さらに近い将来の労働力不足という想定もありまして、外国人労働者受け入れたいという要求の根拠にされております。確かに円高開始直後の深刻な雇用失業情勢さま変わり人手不足という現象がありますが、しかし、この人手不足、正確には若年労働者不足円高だけに原因があるのではないだろうと思います。  その一つ理由は、高齢化ゆえ、言いかえれば我が国社会的な変動、若年労働力不足であり、それに企業が十分に対応してきたのかどうかという問題があるのではないかと思います。無論、企業はこれまでも合理化生産性向上などの対策はお進めになってまいりましたけれども、それで十分だったかどうか。特に最近、人手不足が深刻だという業界に関しては、労働条件がすぐれているのか、仕事に見合った待遇、職場環境になっているのかどうか、あるいは学校教育の問題に問題がないか、そういった多様な問題があるのではないだろうかという感じもいたします。  若者が来ないから外国人労働者を採用したいというのはちょっと虫がよ過ぎるだろうと思います。我が国高齢化社会であるとともに、今や女性進出時代に入っております。高齢者女性は若い男性に比べて体力などの面で見劣りする面があるかもしれませんけれども、こうした人々は重要な消費者でもあり、企業の戦力としてその経験、センス、能力などを活用する方策を真剣に探るべきではないだろうかというふうに私は考えます。  第三点、外国人労働者問題と東南アジア各国との関係についてちょっと述べさせていただきます。  アジア各国は多くの困難な課題を抱えており、生活水準向上雇用機会拡大は容易ではないと思います。私もインドあるいは韓国に滞在したことがありますが、そういうのを実見しております。そのため、中国、フィリピン、韓国など近隣諸国は、最近官民が一体となって建設市場の開放や労働者大量受け入れなどを日本に対して希望しているようであります。外交的には、これらの期待にこたえれば当面の友好関係増進には直結するでしょうけれども、その供給圧力はかなりなものと考えるべきであり、定住の問題ということも出てくることは当然予想されるわけでありまして、当面は慎重な対応が必要だろうというふうに思います。  我が国で戦後外国人労働者受け入れ問題が浮上したのは今回が二度目でございますが、戦前にも朝鮮半島からの強制的な労働者移動という事例がございました。今回のケースは自発的な動きという点で戦前とは事情が異なるわけでありますけれども、受け入れた場合には同じような差別、べっ視などの問題が生ずるおそれが大きいだろうと思います。  このため、即効性ということは期待薄でありますけれども、我が国アジア諸国に対して地道な経済協力を行い、現地での雇用機会拡大に努力すべきではないかと思います。同時に、円高で国内の名目賃金が上昇した結果、企業の海外進出が加速されているわけでありますが、この進出企業現地スタッフを日本人社員並みに扱い、積極的に登用するなどの手だても講ずるべきではないかと思います。さらに、海外から受け入れ研修生枠や企業研修拡大等に努め、実質的な技術移転を促進するための制度拡充なども早急に行う必要があると思います。  第四点、本改正案についての意見を申し述べます。  今回の改正案につきましては、外国人の入国増大、不法就労の急増という事態に対処するための当面の法的措置として妥当なものと考えます。  在留資格の種類、範囲の見直しは外国人の入国目的が多様化していることへの対策でありますが、これは遅きに失したのではないだろうかというような感じもいたします。円高以降我が国企業は国境を超えた活動を展開しており、こうした企業企業内転勤の項目の新設、これも妥当なものであろうと思います。これは、外国人現地スタッフの日本への転勤を促進する効果を持つものと思われますが、企業がこれを活用して現地スタッフの能力開発に一層努力し、彼らの日本企業観を変えるのに役立つかもしれないと思います。また、現に働いている外国人労働者労働条件について、企業日本人並みということを徹底させてもらいたいというふうに思います。  在留資格が一般人にもわかりやすく改善された、これも評価できますが、これももっと早い段階で実現すべきではなかったかと思います。入国審査基準の明確化、手続の簡素化も異論はありません。ただ、入国審査基準については情勢に応じて、時に問題が生ずるわけではありますが、情勢に応じて対応するという弾力性も考慮していいのではないだろうかというふうに思います。  また、いわゆる単純労働者の入国は認めていませんが、これは国内のコンセンサスができていない現状ではやむを得ないだろうというふうに思います。この法改正を契機に、国会初め各方面での議論を深めていただきたい。なお、現に不法就労している外国人労働者も、その人権については尊重するのが基本でありまして、法務、労働両省の関係政府機関だけでなく、労使の御協力を期待したいと思います。  外国人労働者を不法就労させている雇用主への罰則が設けられましたが、これも反対する理由は特にないのではないだろうかというふうに思います。繰り返しますが、こうした企業では高齢者女性の活用のために労働条件の改善などの方策を真剣に考えていただきたいと思います。  以上。(拍手)
  6. 戸塚進也

    戸塚委員長 小井土参考人、ありがとうございました。  次に、増田参考人にお願いいたします。
  7. 増田雅一

    増田参考人 増田でございます。本日は、外国人労働者問題に関する基本的な考え方と、入国管理改正案に関する考え方を述べさせていただきたいと存じます。  まず、外国人労働者問題に関する基本的な考え方でございますが、最近、物、金に次いで人の自由化をすべきであるというようなことが説かれておるわけでございますが、私は人の自由化につきましては慎重な対応をとるべきであろうというふうに考えるものでございます。  人の自由化に関しましては、お二人の参考人が述べられましたように人手不足ということがやはり最大の引き金になっているのではないかというふうに思われます。そして、そのために不法就労問題というようなことがいろいろ起きているわけでございますが、こういう人手不足から単純労働者受け入れるということにつきましては、やはり安易にこれに対応いたしますと、将来大きな禍根を残してくるということが予想されるわけでございます。  例えば、いわゆる三キ産業と言われる危険、汚い、きついというような労働がありますいわゆるダーティーワークと言われるような仕事をいたします産業につきましては、近代化のおくれが出てくるのではないか。外国人労働に安易に頼りますと、近代化のおくれということが予想されるのではないかと思います。こういたしますと、日本にとって必要な産業外国人の手にゆだねてしまうということになりまして、日本人がいつまでたってもその仕事につかないというようなことも考えられるわけでございまして、こういうことがあってはならないというふうに思います。  それから、人手不足に関連いたしまして、我が国では現在労働力ミスマッチということが言われております。特に年齢と地域的なミスマッチは甚だしいものがあるように承知をしておるわけでございますが、現在の人手不足はやはりこの労働力ミスマッチを解消する絶好なチャンスではないかと思います。これを外国人労働に頼りますと、そういうチャンスをつぶしてしまうということが考えられるわけでございます。したがいまして、これもお二人の参考人が述べられましたように、やはり高齢者女性の活用ということと、それから地域格差の解消にこの人手不足を利用すべきである、そして将来の若年労働力不足に備えるべきであるというふうに考えるものでございます。  それから、現在の不法就労につきましていろいろ問題が出ておりますように、現在我が国では外国人労働者受け入れ体制がやはり整備されてないということがあるのではないかと思います。特に単純労働者につきまして低賃金あるいは労働条件の低劣さというようなことがございまして、人権無視というようなことさえも起きているわけでございます。これはやはり国際問題を惹起することになりかねないわけでございまして、国際問題についての配慮が必要でございますし、それから外国人労働者が定着した場合に将来の社会、文化、教育問題というようなことも考えていかなければならない問題ではないかというふうに考えるわけでございます。  私ども日経連では、二年に一遍くらいトップミッションと称しまして私ども幹部が欧米諸国を回りまして、政府あるいは経済界労働組合を訪問いたしましていろいろ意見を聞いているわけでございます。前回、二年前に参りましたときに、西ドイツで経営者団体でございますBDAに行きまして、この外国人労働問題を聞いたところが、答えはただ一つでございまして、我が国の歴史を見ればわかるじゃないかということでございました。これは、先ほど手塚参考人が詳しく述べられましたような西欧諸国の教訓というものをやはり我々としても大事にしていかなければならないのじゃないかということではないかと思います。  このように人の自由化につきましては慎重に対応すべきであると思いますが、同時に私どもはやはり我が国の国際的役割というものを考えていかなければならないというふうに考えます。  御承知のように、我が国は世界におきまして第二の経済大国というような地位を占めるに至りました。こういう情勢からいたしまして、外国人労働に今申しましたように慎重に構えるということから全くシャットアウトすることはできないわけでございます。特に最近のように文化、社会経済の各面における人の相互交流というものが活発化している時代には、学識経験者、専門的技術、技能を有する方、あるいは日本の国内では得られないような能力を持っているような方々を中心に交流の幅を広げていく必要がますます大きくなっているのではないかというふうに考えるわけでございます。  かような専門家等と同時に、私ども経済先進国としては、発展途上国や最貧国の経済発展を援助する必要性もあるのではないかというふうに考えるわけでございます。  日経連では昨年十月にアジア・太平洋地域経営者サミットを開催いたしました。これはアジア・太平洋諸国の経済団体の幹部を、十七カ国でございましたがお呼びをいたしまして会議を開いたわけでございます。そこでの会議の主要な論点は、やはり日本が発展途上国の経済発展を援助するための行動を大幅に積極化してほしいという強い要望でございました。  こういう要望に私どもはこたえなければならないわけでございますが、この場合、発展途上国の経済発展ということを考えましても、これはその国の国民自身が自分たちの手で豊かさを築き上げるという方向で考えなければならないものではないかというふうに思います。  富というものは分配によってはふえないわけでございます。すなわち、外国人労働者にこれを置きかえますと、外国人労働者が出稼ぎをする、そしてその得た報酬を仕送りをするというようなことでは、やはりその国の経済発展は望めないと思います。やはりその国に産業が起きてなければ、幾ら仕送りをいたしましても、それはやはり外国の品物を買うだけにとどまってしまいまして、付加価値なりあるいは富なりというものがその国々に落ちないわけでございます。したがいまして、その国に生産基盤を置いて生産を進めるということによりまして富がふえ、その国が発展するということになるのではないかと思います。  したがいまして、私どもがやるべき必要なことは、発展途上国の経済発展に必要な知識、技能を相手国へ移転するということでございます。具体的には、相手国から人を呼びまして、経営、技能、各面にわたる技術研修をさせる、そしてその研修を終わった人を帰国させて、それぞれの国の経済発展に役立たせるということでございます。私どもは、この意味での人の交流というものはこれからますます活発化していかなければならないと思います。ただ、もちろんこの場合に、ねらいはあくまでも帰国をいたしまして自国の経済発展に資するということでございますので、在留期限というものは厳守してもらわなければならないというふうに考えるわけでございます。  次に、この入国管理法の改正法案に関しましての考え方を申し述べさしていただきますが、以上述べましたことで御推察いただけますように、私はこの法案には基本的に賛成でございます。  特に、在留資格の整備拡充と入国手続の簡易・迅速化につきましては、現下の国際情勢から見まして人的交流分野の拡大が必要であること、そういうことからぜひとも必要な措置ではないかというふうに思っているわけでございます。なお、この面では今後とも柔軟な対処が望まれるわけでございます。  また、在留資格の中に単純労働を含めないということも当然の措置ではないかというふうに考えるわけでございます。この理由につきましてはただいま申し述べたとおりでございますので、重複は避けさしていただきたいと存じます。  それから、不法就労防止措置につきましては、在留資格を限定する以上、不法就労は不法なものとして厳正に対処するために必要な措置でないかと思います。最近の不法就労の状況を見ますと、中間搾取を行うような受け入れ組織があるようでございますので、この罰則の強化という面ではぜひその中間組織的なものの根絶ということを重点にしてほしいと存じます。  このように入国管理法の改正法案につきましては賛成でございますが、同時に、この法案だけでは外国人労働問題についての基本的な解決にはならないのではないかと思います。やはりこれを補いますような行政庁のいろいろな施策が必要になるのではないかというふうに思っております。  この外国人労働問題に関しましては関係省庁が十七もございまして、百家争鳴の状態であるというふうに伺っているわけでございます。各行政庁が、いろいろ御主張はありましょうけれども、やはりそれぞれの縄張りにとらわれることなく、大局的な見地から外国人労働力の活用と我が国の国際的な貢献の仕方の基本的な図式を描いていただきたいというふうに考えるわけでございます。  特に、アジア・太平洋地域諸国からの要望が強い技術研修生の受け入れにつきましては、審査基準、受け入れ体制、あるいは民間企業の役割などの考え方を早急におまとめいただければありがたいというふうに思っております。この点に関しまして経済界は積極的な協力をする用意があることを申し述べまして、私の意見陳述を終わらしていただきます。(拍手)
  8. 戸塚進也

    戸塚委員長 増田参考人、ありがとうございました。  次に、加藤参考人にお願いいたします。
  9. 加藤敏幸

    加藤参考人 加藤でございます。  外国人労働者問題に関する連合の考え方並びに私の考え方、そして本法案に対する考え方を申し述べたいと思います。既に各参考人の御意見の中で重複する部分もあろうかと思いますので、簡単に申し上げます。  まず第一に、人、物、金と一口で申しますけれども、物、金の次に人の自由化であると、いわば延長線上に論ずる方もおられますが、残念ながら物と金とそして人との間には本質的に差があり、この地球は人類のために我々がつくってきた秩序あるいは世界でございまして、物と金と同列に人が論ぜられることにつきましては、まして労働力というえたいの知れない状況でその人格を外した形で論ずることにつきましては、私はいかがなものかと感じます。まして、その労働市場が自由化されるということにつきましては、例えばEC、経済共同体のような形で経済体制を各法制のもとに整備をされて単一のものにするというような状況において初めて可能であるわけでありまして、政治、経済、文化、社会、あらゆるもので異なる体制、国家間において労働市場が開放されるということについては、過去そういう議論は学者の間においてもなかったのではないかというふうに思います。  二点目は勤労観の問題でございまして、皆様方先輩諸氏におかれては特に強いかと思いますけれども、戦後我が日本国のこの経済発展、再生の道というのは、言ってみると私たちが、すべての国民がある意味で公平、平等に扱われてきて、額に汗を流して働いてきた結果であると我々後に続く者も感じております。すなわち、職業に貴賤はない。総理大臣であろうがあるいはタクシーを運転する者であろうが港湾に働く者であろうが、働くということについては貴賤はないのであって、その報酬については随分差がありますけれども、それが私たちが今までとってきた一つの哲学ではなかったかと思います。この勤労観というものについては、我々労働組合といたしましても二十一世紀に我が日本国においては続けていきたい、このように思います。職業にいいもの、悪いものの差をつけることはやはり日本国の将来の発展にとってもよくないのではないか、このように考えておるわけであります。  三点目に、国は国民のためにあるものであります。特に、我が国においては完全雇用を国民に保障するということが大変重要であるというふうに考えます。雇用なくして福祉はないわけでありますので、国が完全失業率でいえば二カ二分の一以下というふうに雇用政策の中で言っておりますけれども、私たちは二%以下ということを主張してきました。また、マクロな雇用保障ではなくてミクロな雇用保障も非常に重要であります。先ほど小井土参考人も申されましたように、女性の問題、高齢者の問題、そして心身障害者の雇用の保障、それらのものが十全になされて、初めて国が国民に対して約束を守ったというふうに我々は考えておるわけでございまして、まず日本国における就労保障というものは日本国憲法のもとにある我々が第一であり、かつ、不幸にして日本に在住される方々に保障されるものではないか、このように考えるわけであります。  以上三点を基本にいたしまして、私たちはそういう考え方の中で、しかしながら外国人労働者というものを完全に遮断するということは考えておりません。むしろ、現状以上に拡大をするということについては、その方向は賛成であるというふうに考えております。ただし、受け入れるべき外国人労働者、これを考えるに当たっては、私たち三つ条件がある、原則があると考えております。一つは、国内の雇用労働との調和ということがあります。二つ目は、社会、諸制度を含めた環境の整備ということでございまして、三つ目は国民的合意。この三原則が確立しなければ外国人労働者受け入れということについては問題が大変大きいのではないかというふうに私は考えておる次第であります。  そこで、外国人労働者受け入れるに当たっての条件でございますけれども、これにつきましては、私たちは、一つは国内の雇用労働条件に悪影響を及ぼさないこと、二つ目は雇用主の責任が明確にされること、三つ目はその外国人労働者受け入れ日本社会にとって有用であること、四つ目はそれらの社会的コストの負担が明確にされること、これは後年、十年ぐらいしたときに、これはだれが払うんやというようなことがないように当初から明確にされるということであります。五つ目は、関係する国内労働者意見が十分反映されることということでございます。これは、我々国内労働者が利害の当事者であるということを考えれば当然ではないかというふうに考えております。  次に、これらの条件をもとにして、じゃ個々の労働者固有にどういう条件があるかと申しますと、一つは十分な職業能力を有するということでございます。これは単に書面上の資格があればいいということではございません。実証され得る十分な職業能力があるということであります。二つ目は本人並びに周辺の者に安全衛生を確保するための最小限の知識を有するということでありまして、基本的には、例えば立入禁止でありますとかそういうところには入らない、劇物の所在がわかっておる、あるいは地震が来ればぱっと火の元を消せるとか、そういうことを含めた基本的な条件というものがあるのではないかというふうなことでございます。  また、我々は不法就労者を雇用する者あるいはあっせんする者に対する罰則の必要性については過去から申し述べてきました。ただし、不法就労者を直ちに国外退去させるということの必要性は考えておりますけれども、その間における当該労働者保護については十全な措置というものが基本的人権を守る上でも必要ではないか、このように考えておりますし、いわゆる暴力組織の支配下にある労働者等の保護については十全な対応が必要ではないか、このように考えております。  私たちは、特にアジア開発途上国の経済の発展、政治の安定等については心から希望するものでありますけれども、それらの方法論に、その国の労働者を大量に受け入れて、もって国際協力とするのはいかがか、こういう論もございますけれども、労働者を輸出する、海外に派遣し、その送金で国内経済を成り立たすということが長く続いたためしはございません。道のりは遠くとも、その王道というのは、各国の国内産業を育成していくということが一番大切なことであり、その国自身に見合った産業を興し、そして雇用を開発をしていく、これが大切である。そのために国際協力もあるし、我々労働組合もその一端として協力を惜しまない、このように考えております。我が国にあるスキル、技術等を海外の人たちに与えるための研修等については我々は大いに賛成であるということも既に明らかにしたことでございます。  さて、以上の考え方をもとにいたしまして今回の法案についての考え方でございますけれども、まず第一に、個々の受け入れ、就労活動の具体的な基準については法務省令で定めるというふうになっておりますけれども、しかし私たちが過去いろいろ考えてきました中で、この具体的な基準をどのように運営するかということが一番重要ではないかというふうに考えております。例えば企業内の出張ということで本店が日本にある場合の海外支店の採用者を国内に呼び寄せることについては社内転勤の扱い、このようになっております。このことの考え方については私は否定するものではございません。ただし、直接的な支店なのか、あるいは一〇〇%資本を支配する企業なのか、あるいは合資、ジョイントベンチャー的な、例えば五一%支配するのか、連結決算対象なのか。企業の形態というのは、既に日本の中におきましても分社化されたり分離化されたり、いろいろ多様化しておるわけでありまして、それらの扱いの問題、そしてそれらの職業能力、そういうものを一体どのように特定していくかだとか、いろいろ具体的な基準においては問題がございますので、これらがどのように決められていくかということについては我々多少の不安を持っております。また、それらを決めていく手続につきましても、私は、多少といいましょうか、我々自身も参加の場が必要ではないか、このように考えておるわけであります。  二点目は、就労資格証明書の交付等について取り扱いがなお不徹底な部分があるのではないか。ただ、この扱いにつきましては諸論がありますからなお議論する余地もあろうかと思いますけれども、この就労資格証明書の交付についてはいま一つ議論は徹底されるべき必要があるのではないか。また、雇用主責任を明確にするという意味で就労資格の確認方法についても議論が残っておるのではないかというふうに考えております。他方、研修生のOJT、オン・ザ・ジョブ・トレーニングという場合のそのあり方論について、やはり個々にある労働組合が現場においては一番よく精通しておりますから、その労組の事前合意ということも必要になってくるのではないか、このように考えております。  以上のような問題点を感じます。これらにつきましてはより一層の御議論をお願いしたいし、善処をお願いしたいと思いますけれども、しかし現下の外国人労働問題、特に不法就労問題を考えますに、在留資格を整理し、基準を公開し、手続の簡易化、迅速化を図り、雇用主への罰則規定を新設した点につきましては、連合としては一応の評価ができるものではないか、このように考えております。  外国人労働者の取り扱いにつきましては、私は総合的政策であるというふうに考えておりますし、先ほど申しましたように各界の議論の一致をもって対応することが重要であるというふうに考えております。そういうふうな意味では、本法案の修正というものは十全ではないというふうに考えます。しかしながら、現下の状況を少しでも改善するというのは百年の議論を待っておっては仕方がないわけでございまして、少なくともできることにつきましては迅速に改善の一歩を行っていく、そういうふうな意味では百点満点でなくても合格点であればやっていくという態度も重要ではないか、私はこのように考えております。  最後に、不法就労者であっても既に労働の実績があればその者についてはいわゆる寛容する道を開いてもいいのではないかという議論もございます。しかし、このことにつきましては、在留資格に違反した活動を行っておるわけでありますから、過去行った労働に対して、当然本人の権利ということについては保護すべきでございますけれども、過去不法な活動を行ったという実績をもってきょうからあるいはあすからの就労権を日本で認めるということについては、私はいかがなものかというふうに考えております。不法であっても我慢をすれば、目を逃れさえすればいつかは花が開くということであって、この法治国家のいわゆる秩序の維持に役立つのであるのかということを考えたときに、労働者保護と、しかしながらその取り扱いというものにつきましては次元が少し違うのではないか、私はこのように考えております。永年勤続のような表彰制度ではなくて、その本人自身は保護されるけれども、本来法の厳格な適用のもとで人権は十分尊重されながらも扱われていくということの方が日本の場合には状況に合っているのではないか、私はかように考えるわけであります。  時間が参りましたので、私の参考意見は以上で終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  10. 戸塚進也

    戸塚委員長 加藤参考人、ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 戸塚進也

    戸塚委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井出正一君。
  12. 井出正一

    ○井出委員 自民党の井出でございます。きょうは参考人皆様方、御苦労さまでございます。貴重な御意見を拝聴させていただきまして、大変勉強になりました。心より御礼申し上げます。  私は十五分しか与えられた時間がございませんものですから余りお聞きできませんが、それぞれの参考人に一点ずつ御質問申し上げようかと思います。  まず、単純労働者受け入れに関しましては、四人の参考人大体同じ御見解で、私も考えを同じくするものであります。労働力不足の問題と単純労働者受け入れの問題は別問題だと私は考えるのであります。特に労働力不足ということは、日本経済の今までの発展を見ましても、それを機会に機械化とか合理化とかあるいは近代化がなされたわけでございますから、これが安易な受け入れであることは先ほどどなたかもおっしゃっておりましたが、むしろ三キ労働みたいな分野の近代化をおくれさせてしまうことにもなるわけでございますし、また労働力不足労働力不足と言っておりましても、年齢的には高齢者はむしろ大変職を求めているような状況ですし、地域によっては仕事がないというところがございます。定年制の延長をしなければならぬ、年金問題との絡みもございますし、あるいは多極分散型の国土形成をしていく上でも、むしろこういうときこそいいチャンスだと私も思うのであります。  ただ、私の地元なんかでも、やはり建設業なんかを中心に大変労働力不足で、何とかこの単純労働でも、極端な人は難民の皆さんでも連れてきてくれぬかというような声すらあるわけでございますが、私も会う機会がある方々には今申し上げたようなことを言っておるのですけれども、特に経済界の代表できょう来られました増田さん、経済界としてのそういう皆さんへのPRといいますか啓蒙が必要だと思うのですが、そんな点についてちょっとお聞かせいただけたらと思います。
  13. 増田雅一

    増田参考人 単純労働者人手不足解決方法として使うということにつきまして、私自身もやはり建設業その他の実際に企業を行っている方々からそういうお話を聞きます。むしろ待望論に近いようなお話を伺っておるわけでございますが、しかし先生もおっしゃいましたように、また私も先ほど申し上げましたように、やはり安易に外国人労働者を単純労働者として受け入れるべきではないというふうに考えてまいりたいと思いますし、その辺につきましては、先生もお話しになりました高齢者の活用であるとかあるいは女子の活用であるとかというようなことを通じまして、また企業の近代化という点で省力化の措置というようなことも考え合わせまして長期的な考え方でこれに対処していくように、経済界といたしましてもできるだけ意見を一致してまいりたいというふうに考えております。
  14. 井出正一

    ○井出委員 それでは、連合の加藤参考人にちょっとお尋ねいたします。  先ほど、就労資格の確認方法については、今回の改正案、若干まだ疑念があるということをおっしゃっていらっしゃいましたが、具体的にもうちょっとお聞かせいただけますか。
  15. 加藤敏幸

    加藤参考人 具体的な基準ということについてなお「法務省令で定める」というふうになっておりまして、これは改正案の中にいろいろ「外交」から、その類別については今明確になっておりますけれども、例えば「技術」ということにつきましても、個々具体的に一人一人どういう条件に合致した場合に在留資格を認めるのかということについては、なお具体的な細かなことは明らかになっておりません。  例えば我々が考えておるのは、いわゆる明示的な基準でなければならない。これは海外におけるAさんとBさんとが、私の場合はオーケーで彼の場合はだめだとか、彼がオーケーで私はだめだとかというときに、日本国として、海外に対しても国内に対しても公平な基準を明示してやる必要があると思うのですよね。例えばAという大学を卒業した技術者だからいいのか、あるいはそれに準ずる実務経験があるとかないとか、そういうふうな内容についてもやはり具体的な基準を明らかにしていかないと、担当官のそのときの判断ということではだめではないか。また、運用される内容等についても、これは大変細かな中身が出てくるのではないか。  そういうふうな意味で、私はちょっと疑念があると申しましたのは、解釈、運営によっては際限なくスキルの低い部分にもこの基準が適用されていく、そういう解釈がされていくと、最終的には、いわゆる未熟練労働力でなくても、未熟練労働力に近い層も資格が与えられていくということになりはしないかということにおいて、我々は少し心配を持っておるということを先ほど申し述べたということでございます。  以上です。
  16. 井出正一

    ○井出委員 小井土参考人にお尋ねをいたします。  今、入国あるいは入国されちゃった方々の中の不法就労という点が大変問題になっているわけでございますが、これからだんだん外国から来る皆さんがふえていく場合、それは永住する方も中には若干はいらっしゃるでしょうが、やはりある時期が来たら帰っていただかなくちゃならぬと思うのです。どうも、出入国管理法という名前なんですが、これからは出入のうちの出の方もかなり管理していかなくちゃならぬ時期が来ているのじゃないかなと思うのでございますが、そんな点について何かお考えがありましたら、ちょっとお聞かせいただけたら……。
  17. 小井土有治

    小井土参考人 先生のおっしゃる出の意味が正確に理解できないので恐縮なんですけれども、やはり外国人労働者の問題に関しましては、日本に来た、まず入る時点での管理を徹底する、それから入った後の管理を徹底させる、そして、その間に労働条件そのほか人権の問題も配慮をする、同時に、お帰りいただくということが私は必要なんではないだろうかと思います。  ただし、いわゆる単純労働の方でない方たちに関しては、出についてはまた違った視点があるいは必要なのかな、要するに長期永住型になることもあり得るし、場合によってはそれを許容するということも検討する必要があるのではないだろうかというような感じがいたします。  お答えになっているかどうか、あれですが……。
  18. 井出正一

    ○井出委員 手塚先生、お尋ねいたしますが、今度の改正案の中に出入国管理基本計画をこれから設けるんだというあれが出ております。先週の委員会の中では、これがきちっとできてからむしろ改正案を出すべきではないかというような委員の御発言もあったわけでございますが、大変こちらが緊急を要することですからそれはそれといたしまして、この出入国管理基本計画について、まだ大変漠然としておるようでございます。これから関係省庁の協議が行われるようでございますが、先生のお立場から何かこういうようなことはどうしてもその中へ入れるべきだといったようなことをお考えでしたら、少し教えていただきたい。
  19. 手塚和彰

    手塚参考人 私が考えております出入国管理計画は、長期と中期と短期という三つの点が必要だろうと思います。  長期につきましては、二、三十年先まで、日本産業構造がどうなっていくか、それからアジア諸国、とりわけ人の行き来の多いでありましょうアジア諸国との関係がどうなっていくかということを、経済面あるいは社会面について分析をした位置づけが第一に必要だろうと思います。これにつきまして、今のところ我が国では、二十年ぐらい先を見たような、そういう長期産業構造なり日本産業がどうなっていくかということを考えた計画というのはございません。それに伴ってやはり人の雇用計画なり人員の配置計画というのが必要になってくると思いまして、その点が長期については必要だろうと思います。  それから、第二の中短期につきましては、これはどのような職場、職種をいわゆる外国人に適用できるのか。例えば外国である一定資格を持っている方が日本に入ってきたときに、そのままその資格が生きるのかどうかというような研究が今のところまだ全くなされておりません。このあたりを緻密に行うことによって、どの程度の人をどの国から受け入れたらいいかという計画ができ上がっていくと思います。  同時に、私が三番目に注目したいことは、いわば相手国人々産業との関係でどういう状況があるかということが大事なことでございます。とりわけ、熟練労働者日本にだけ引っ張ってきてしまいますと相手国が非常にお困りになるということがあるわけでございまして、やはり相手国産業の動向なりというものもきちんと見きわめなければならない。この三つの点が相まって計画ができるのではないかというぐあいに考えております。
  20. 井出正一

    ○井出委員 まだ時間がありますものですから、もうちょっと続けます。  今の問題につきまして、小井土参考人に同じことを聞きたいのですが。
  21. 小井土有治

    小井土参考人 この問題について、正直に申しまして私はそれほど研究しておりません。手塚先生の線で進めていただければいいのではないかというような感じがいたします。
  22. 井出正一

    ○井出委員 それではもう一問、小井土さんに済みませんけれども。  難民問題は別としまして、外国人労働者問題というのは基本的には国の主権事項、これだけ入れてもいいとか、こういう人たちは入れないんだというような、オーストラリアなんか最近はかなり厳しいわけでございますが、日本が国際的にかなりのウエートを持ってまいりますと、必ずしも日本だけの都合でいかなくなるんじゃないかなとは思うのですけれども、これに対して外国からもかなりの批判が出てくるかもしれません。それに対してもうちょっと、無論政府もあるいは我々も日本の国益に基づいた発言をしなくてはならぬと思うのでございますが、言論界としてもぜひ御協力をお願いしたいと思うのですが、いかがでございましょう。
  23. 小井土有治

    小井土参考人 基本的には井出先生の認識と同じであります。  先ほども私は冒頭申し上げましたけれども、往々にして、国際国家になった、債権大国になった、さきの大戦でのいろいろなアジア各国に対する罪の意識があるというような視点からの議論がかなり盛んに行われていると思いますけれども、それは正しい問題の解決につながらないし、将来に禍根を残す懸念があるのではないだろうかというふうな気はします。もちろん、日本移民国家ではないという点でアメリカなり豪州なりあるいはヨーロッパ諸国と違うわけであります。そういうような上に立って、日本日本なりの判断をするべきである。もちろん、その際、各国との外交的な関係なども十分配慮して、そしてまた労働情勢それから経済情勢なども勘案して独自の政策を行うべきであろう。ですから、先ほど手塚参考人が言いましたように、欧州には大変貴重な経験がありますから、これも十分検討していただきたいというふうに思います。
  24. 井出正一

    ○井出委員 加藤参考人最後にお伺いします。  今回の改正案の中に不法就労外国人雇用主とかブローカー等に対する処罰の規定が新設されました。私もこれはいいんじゃないかなと思うのですが、中には不法就労をかえって潜行させる、潜らせてしまって人権侵害の救済が一層難しくなるんじゃないかというようなことで反対をしていらっしゃる方の陳情書なんかもいただくのでございますが、連合のお立場というか、内部のいろいろなお話の中ではそのような問題は出なかったのでしょうか。それだけお聞きします。
  25. 加藤敏幸

    加藤参考人 多少そういうケースが発生する可能性があるかもわかりませんけれども、しかし総体的に言えば現在もう既に潜行している部分もあるわけでありますから、全体的なバランスを考えるならば罰則を新設することに踏み切った方がトータルとしては益がある、このように私たちは考えております。潜行する部分については別途の手だてでそれらに対する救済を総合政策の中で考える必要があるのではないか、これが私たちの議論でございます。  以上です。
  26. 井出正一

    ○井出委員 時間が参りました。ありがとうございました。
  27. 戸塚進也

    戸塚委員長 稲葉誠一君。
  28. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 社会党の稲葉誠一でございますが、各参考人皆様方に御質問をさせていただきたい、かように存ずる次第でございます。  手塚先生お話をいろいろお聞かせ願いまして、先生の御本も読ませていただいておるわけですが、これは長期の見通しというのも、日本経済がどうなるのかもわからぬ、アジア経済あるいは政治がどうなるかもわからぬ、いろいろな不安定な要因もありますし、それから国民の合意というのも、率直に言うと、どうやってどこでどういうふうにして図っていったらいいのか、なかなか得にくいものがあると私は考えておるわけですが、この法案だけですべての問題が解決するものではございません。その点は、もうさっき増田さんもおっしゃったとおりなんですが、そこで、先生は行政の対応が特に入り口で薄いというようなことをおっしゃいましたけれども、この点は具体的に言うとどういうことなんでございましょうか。
  29. 手塚和彰

    手塚参考人 行政の対応としましては、現在出入国管理の面だけで手いっぱいという状態でございます。それで、実は私が日本に来ている留学生あるいは外国の方から承る状況によりますと、日本の入管自身が人手不足のゆえもあって、ある意味では入管の機能というのは、管理をする、マネージメントの面もございますが、外国人の方が日本の主権の中に入ってきてきちんと人権を守られ安全に生活できる、その最初の第一歩の窓口のサービスでございます。そのサービスの印象が悪いというのは、私なども外国に参りまして、特定の国の名前は挙げませんけれども、極めて悪い国というのは最初からその国自身が嫌になるような状況でございます。それで、人につきましては、そこの窓口のサービスがどうであるかということで、例えば半日待つあるいは一日待たせる、そういう状況はあってはいけないということでございまして、物などは翌日に回しても構わないわけでありますが、いかんせん外国からお入りになってきた方々でありますから、そういう人たちのまず第一歩から、入り口のところ、それからお入りになってから後のいわゆる労働生活の場における行政側のサービスという点でも、とてもサービスできる状況ではないということを申し上げたわけでございます。——よろしゅうございますか。
  30. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは入管だけの問題ではなくて、ほかのいろいろな問題もあると思いますので、どうですか。
  31. 手塚和彰

    手塚参考人 まず入り口につきましては、入管が今取り扱っているということで、入管が圧倒的に人手不足というのは皆様承知のとおりでございます。それから、中に入りましては、やはり労働当局の職安なり基準局さらに市町村レベルの行政が具体的に生活をなさる外国の方の面倒を見るわけでありますから、そういう人手が全く今配置されていないという状況でございます。やはり諸外国なり人の受け入れが進んでいるところでは、これらの関係諸機関、具体的に言うと労働あるいは住民のサービスをする社会保障の部面、あるいは教育の面、それから各自治体の窓口などが全部一つのサービスができるような、そういう系統的な流れができ上がっているわけでございますが、これを早急につくりながら人を受け入れていかなければいけないのではないかということでございます。
  32. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私も東京入管なり成田の入管、視察してきたのですが、あそこへ行きますと例えば入ってくるところで窓枠がいっぱいあるわけですが、ところがフォリナーのところがずっと並んでおりまして、それでみんないらいらしているわけですね。そして人数が足りないものですからほかのところがあいてなかったりなんかしまして非常に困って、何とかして人数をふやすなりもっと事務が簡素化できないものか、こういうふうなことで再三入管当局にも要請しておりますし、きょうも入管局長聞いていますから、そういう点よく今後もこれはみんなで努力してやっていかなければいけない問題だ、こういうふうに思っておるのです。  そこでもう一つの問題は、これはアメリカ移民法なりの中で改正がありまして、随分長くかかって改正したようなんですが、例えばある一定の時期までに在留しておる者であっても申し出をすれば一種のアムネスティーですかを認めて在留資格を認めるというような制度がアメリカでとられたわけです。いろいろな議論があったようなんですが、そのことについて日本でもある段階で国民的合意ができればやらざるを得ない状況になることもあり得るんじゃないだろうか、こういうふうに思うのですが、アメリカのその問題等、あるいは日本の中でそうしたことも将来の問題としてどう条件的に考えられてくるだろうかということについて、御意見といいますか御見解があればお申し出ください。
  33. 手塚和彰

    手塚参考人 この点につきましては私はやや否定的な見解を持っております。  と申しますのは、アメリカでアムネスティーが行われたというのは、アメリカ自身がかなり長いこと入国管理の中で、とりわけメキシコ国境を越えてくるような人々に対して半ば容認してチープレーバーとして受け入れをしてきたようなそういう歴史の中で、一九八六年法に至る国境閉鎖の問題というのが問題になったわけであります。  そういう状況が歴史的に長年積み重なっておりましたために、一時期では七百万人ぐらいが外国から不法入国をして定住している、こういう推定もなされるくらい大量の方たちアメリカ合衆国の中に入ってきたわけです。この方たちがもう既に長年アメリカの中で生活をし、家庭を営み、職業を営んで定着をしているその状況を、アメリカが今後の法律を厳しくするからといって過去にさかのぼってこれらの人々をすべて出すことは不可能だという判断から、現状の中で解決をしていきたいというのがアメリカのアムネスティーだったわけです。  ただ御参考までに申し上げたいのは、十数年の議論の中でアムネスティーをするということが国際的な情報の中に、流れの中に乗りまして、一九八四年というときがその法律が通るのではないかと言われた時期でありますが、この年は一挙にこのうわさがうわさを呼んで、メキシコ国境を越えてくる越境者が年間百万程度のものだったものが、三百万人を超える方たちアメリカへ越境すればアムネスティーで中に定着できるんだ、こういう行動を起こしたという今日の報告がございます。御参考までに申し上げますと、当時のアメリカとメキシコとの一人当たりの国民所得、一人当たりのGNPは、アメリカはメキシコの四倍でございました。それから一人当たりの自動車の台数はさらに開いて八倍くらい。それから電話やテレビの台数というのは六倍くらいという状況でありましたけれども、にもかかわらず、陸続きであるということや、あれだけの国境線しかないということがありまして、日本が島国であるというのと状況は違いますが、非常に大変な流れができてきたということであります。  ですから、したがいまして、私は、この点はアムネスティーという形ではなくて、日本に今来ている方たちはかなりレベルの高い高学歴等々の有能な若者たちが多いということを考えますと、一たん国に帰るなら帰って、正当なルート受け入れをして日本研修をできるあるいは技術を発展させる、そういうチャンスを与えるような方策を明確に示すことの方が大事であって、アムネスティーという策は次善、三善の策だと考えておる次第でございます。
  34. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 小井土参考人にお伺いさせていただきますが、それは、さっきのお話の中で、あり方によっては何か逆行するというようなお話がございましたね。この意味というか具体的なところはどういうふうなことをおっしゃっていらっしゃるのでしょうか。
  35. 小井土有治

    小井土参考人 それは、私が今、日本全国外国人がかつてないほど滞在し、普通の日本人と交流をしているというくだりでの御質問かと思います。  というのは、要するに正しいビザによって入って、その資格によって日本全国をお歩きいただき、交流していただきますと、これは当然表のつき合いで友好関係も非常に深まるだろうと思います。不幸なことに今、日本全国各地にいらっしゃる外国人の方々はアジア系の方が多くて、最近は南米の二世あるいは一世の方もいらっしゃるようでありますが、さらにはアフリカ諸国からもおいでになっている、非常に多くの方たちが来ておりますけれども、これは合法的な行動を逸脱している方が多いということで、私は、例えば労働にしても労働条件が劣悪である、南米からの日本人の移民の方々に関していいますと、かなりなピンはねが行われたということが新聞報道で出ております。したがって、東南アジアあるいはアフリカの方々に関しても同じようなことが起きている可能性がかなりあるのではないだろうかと思います。そういうような待遇を受けた方たち日本に関していい印象を持って帰らない危険性が非常に多いというようなことを考えまして先ほどのように述べた次第であります。
  36. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それから、研修生の枠の拡大についてお話がございましたが、これは本当の研修生ならば枠の拡大は当然なんでしょうけれども、研修生という名前でそうでないのがどうも入ってきているというようなことも言われているものですから、そこら辺のところを含めて研修生の枠の拡大ということについてのお考えをお聞かせ願えれば、こう思うのです。
  37. 小井土有治

    小井土参考人 かつて中曽根総理が留学生の枠の拡大ということを言って、それが今日の日本への就学生の増大を招いたと思うのです。これはちょっと不幸な結果を今見せつつあるのでありますけれども、そうでなくて、先生がおっしゃるように、企業研修生といいますかあるいは技術研修生というものをきちんとした制度、枠の中で行うということになりますと、日本及び相手国にとって非常にいい結果を招くのだろうというふうに思いますね。最近も企業研修生という名で来たけれども、実際の座学といいますかそういうものは行われないような、要するに就業だけが目的の実態の研修生があるということが新聞報道で行われておりましたけれども、そういうものはなくす方向で努力すべきではないだろうかというふうに思います。これは政府及び関係業界あるいは労使双方が御協力いただければ実現できるのではないだろうかというふうに思います。それによって技術移転ということも当然可能になるのではないだろうかというふうに思います。
  38. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今の研修生の問題は、その研修生のフォローが現実にできないのです。どこがどういうふうにしてやるのかよくわからぬものですから、現実はどうも行われてないらしいのですが、その点について手塚先生、何かお考えがございましたら……。
  39. 手塚和彰

    手塚参考人 私は、今企業等々の研修の実態を少し調査を開始いたしました。それで、企業が責任を持って研修をやるとなりますと、かなり長期の見通しがないと、短期的には結局OJTで自分のところで時に必要な労働力を調達したという意識になってしまいますので、やはりそのあたりのけじめを各企業がどのくらい持って受け入れるか。二、三年の研修ぐらいの期間でようやく本当に戦力になる、あるいは逆に言ったら日本になじんで日本の中で生活できるようになってくるというのが実情のようでございます。  したがいまして、今は主に公的なルートを通じて、研修制度というのは現在では必ず二、三年してお帰りいただくという形の前提でつくられている制度が主流でございますけれども、将来拡大していくとなりますと、各個別企業だけではなくて一つの業界、これは労働組合なども関与した形でかなり厳格な形の研修計画というものにのっとって受け入れないと、なし崩しになるおそれがあるのではないかという心配をしております。  現在のところ非常にうまくいっている例というのは、これはもう一人くらい本当に専任でついてその人たち生活を面倒見るところまで一緒に生活するくらいの、わかりやすく言ってしまいますと高校野球の監督さんのような、やはりそのくらい生活まで一緒に面倒見ながら喜びも悲しみも一緒に分かち合えるような、そういう研修受け入れ方をしたところで初めて立派な人たちが育っているということでございます。
  40. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 増田参考人にお尋ねをいたしますのは、いろいろお話をお聞かせいただきましてその基本的な考え方、人に対して慎重に対応しなければならないということ、それから近代化のおくれの問題も出てくるということなんですが、そこでミスマッチの解消というお話がございまして、私もそれはそのとおり大事なことだと思うのですが、ミスマッチというものを具体的に解消するためにはどういうふうにしたらいいということになるのでしょうか。お考えお聞かせ願えれば、こう思うのです。
  41. 増田雅一

    増田参考人 言葉で申し上げるのは大変簡単でございますが、実際は大変難しい問題であるように感じております。  やはり高齢者の職業能力をふやすために必要な技能教育なり職業訓練というようなこともしなければいけないでしょうし、女性についても同じだろうと思います。そういうようなことを徹底すると同時に、また地域的な問題につきましては、むしろ働きたい方がどちらかというと地元を離れないというようなことが非常に多いようでございますので、やはりそういう住居の移転等の便もいろいろ図っていくというような措置も講じなければならないと思いますし、いろいろ労働省当局その他がお考えのようでございますけれども、そういう手段をできるだけ有効な方途で実現するということが必要ではないかというふうに感じております。
  42. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今のお話は、直接当委員会なりこの法案では解決できない問題なわけですね。そこで、お話がございました、この法案だけではいろいろな問題は解決できないのだ、行政庁のあり方についてやはりいろいろ考えなければいかぬ、こういうことなんです。十七省庁がありまして、私どもも主なところはわかるのですけれども、十七省庁全部がどことどこだと言われてもちょっとすぐ出てこないぐらいなわけなんです。  そこで、一体十七省庁が集まって具体的に何をどういうふうにしたらいいというふうに日経連としてはお考えなんでしょうか。そのときに法務省なり労働省なりの果たす役割といいますか行政の果たす役割といいますか、そういうふうなものを含めてお話し願えれば、こう思うわけなんです。
  43. 増田雅一

    増田参考人 この問題につきましていろいろなお役所がいろいろにかんでおられるという点につきましては、私も新聞報道を読んでいる程度でございまして内容まで詳しく存じているわけではございません。しかし、それぞれの省庁がそれぞれの所管でいろいろな御発言をなさっているようでございます。それが結局は建設的な意見の足を引っ張るというような結果に終わる可能性もあるわけでございまして、決してそういうことがあってはならないと感じておるわけでございます。それぞれのお役所はそれぞれの御所管がおありなわけでございますので、やはりその所管の任務を十分に遂行するような形でもってそれぞれの役割を負担していただきたいと思っております。  例えば法務省でございますとやはり入国管理につきましての責任があるわけでございますので、その入国管理の手続、審査ということをどういうふうにおやりになるか、あるいは入国した後のフォローアップをどういうふうにお考えであるかというような点。また労働省は、入国した以上その労働者労働条件保護ということにつきましてどういうふうなことをやっていかれるかというようなこと。そういうような点につきましてそれぞれの官庁がそれぞれの御所管の事項を十分にやっていただくということが第一でございますが、またそれを急ぐ余りに他省庁の権限といいますか、なさることについてけちをつけ合うというようなことがなく、やはり自分の仕事をするために他省庁にどれだけどんなことをやってもらって、どれだけ建設的なことができるかということを大局的にお考えいただきたいというのが私の要望でございます。
  44. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 西ドイツのことがお話に出ましたものですから、これは増田参考人手塚参考人にお聞きをいたしたい、こういうふうに思うのです。  西ドイツの場合に、外国人労働者、特に率直に言えばトルコ関係中心だったのですか、それを入れて、その結果として具体的にどういうふうなことになってきてしまったのか。これは歴史を見ればわかるではないかというお話がありまして、その意味は私にもわかりますけれども、具体的に西ドイツ国内にどういう影響を与えて、それに対して西ドイツとしてはどういうふうな対処をしたのか、こういうことを、これは増田参考人手塚先生とにお聞かせ願いたい、こう思うのです。
  45. 増田雅一

    増田参考人 手塚先生から後から詳細にお述べいただきたいと思いますが、私の承知しているところでは、定住した方々の社会的、文化的あるいは教育的な問題が残るという点が一つ。それから、不況になりましたときのその方々の就労態勢が一つということ。それから第三には、外国人労働者につきましてはダーティーワークと申しますか、やはり自国の国民がやりたがらない仕事を押しつけているというような点がある。そういうことが私としては外国人労働者受け入れ国としてなすべき問題ではないのではないかというふうな感じがいたしました。
  46. 手塚和彰

    手塚参考人 西ドイツの場合には、第一は大変な労働力不足、先ほど御紹介いたしましたように失業率が〇・七%という状態で、いわば補助的労働として時にという考え方で大量の人々受け入れたわけです。ところがその方たちも、産業界もやはりなれるに従ってできるだけ期間を更新し、あるいは妻子の呼び寄せも承認するという形をとったものですから、最初のうちは半分ぐらいの方がお帰りになっていたのが、五年ぐらいたちますと二割以下の方たちが故郷に帰る、こういうことになりました。実際西ドイツでやっている仕事につきまして同じものが故国にあるわけではありませんし、商売をやるとかあるいは農地を買うとかいってもおのずから限界があることでございますから、結局いらっしゃった外国人方たちは定住をして、奥さんと何人かの子供を抱えながら生活をする、そういう結果になったわけでございます。  統計上はっきりしていることは、最初受け入れ方たちの約七割方が就労人口だったのですが、現在では一対三の比率になっておりまして、人口が三に対して働いている万が一という状況。この比率はだんだんさらに開いていくだろうということが将来的には予測されまして、つまり一家四人で一人だけ働くという、ドイツ人と同じ家族構成になっていく、こういうことでございます。  ですから、西ドイツなどで起きた現象で着目すべき点は、まず第一に補助労働者あるいは不熟練労働者として、人手不足あるいは人がやらない仕事受け入れを開始したわけでありますが、結局その方たちが定住型に転換をしてきた。これは日本ではよく言われることですが、日本は物価も高いし住宅も高いし、首都圏などではとても生活できない、こういう御意見がございます。ですから二、三年で帰るというのはこれは論理矛盾でございまして、こういう状況は我々国民にとっても不幸な事態でございまして、物価が高くて住宅が高いのでは国民はたまったものではないのと同じように、外国人も住みにくい。こういう状況解決されればされるほどやはり外国の方も日本にお住まいになる、こういう結果になるだろう。したがって、そういう中で、構造調整なり産業構造が変わったときに大量の失業者として、単純労働者あるいは不熟練労働者失業する可能性が高かった、こういうことでございます。ですから、ついに今日まで外国人の方の六割から七割近くが不熟練労働者のままで、西ドイツ政府は現在大量のお金をかけて再訓練などを開始しておりますけれども、いかんせんお金も高いし、それからこの方たちが中高年に差しかかっているために対応できない、こういう悩みがございました。  ですから私は、とりわけトレーニングをしない、研修を経ないで外国の方を受け入れるということについて、西ドイツの例というのは非常に失敗であったと思います。確かに産業を支えるという意味では一時期有効な手段ではあったと思いますが、そのように考えておる次第です。
  47. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 手塚先生、同時に、日本の場合に外国人労働者人権を守らなきゃいけないわけですね。これを我々は最大の命題とするわけですが、特に、例えば基準法三条などでは国籍のいかんを問わずとかいろいろな形で、国籍の問題なりあるいは資格の問題を問わずに人権を守らなきゃならない。特に労働法上のそういう場合の人権がまだまだどうも徹底していないのではないかというふうなことも考えられますので、その点についてのお考えなり今後の対処の仕方、こういうことについてお聞かせ願えればと思うわけです。
  48. 手塚和彰

    手塚参考人 昨年労働省が調査した結果で見ましても、およそ労働契約がはっきりしていない、あるいは労働時間もはっきりしていない、それから時間外手当も支払われないというような状態、あまつさえ賃金不払いで解雇してしまう、それから労働災害という場合に救済がされないという事態が多々発生しておりまして、現実には私はやはりこの問題は国民全体が真剣に考えるべき問題だと思います。このような状態というのはおよそ日本の歴史が戦前に逆戻りしたかのような状況でございまして、一応労働基準法というのは日本国民に対しては守られて行われるということが建前になっていたのに、外国人がたまたま不法で入ってきたからといって、そういう状況が出てくるあるいはそういう雇い主がいるということに対して、やはり私どもは国民を挙げて対処せざるを得ないだろうということでございます。  それで、Aという方は人手不足ということで安くあるいは悪い労働条件外国人を使う、Bという方はそれでも何とか日本の方も含めて高い給料を払って人を受け入れているということになりますと、そこでやはりフェアコンペティションがないということになるわけでして、この点について、日本の議論では余り言われていないことでありますが、西ドイツアメリカなどで今回雇い主を処罰するという規定が通った理由一つは、やはり不公正な、あまつさえ労働保護法が守られていないような、そういう違法な形での雇用慣行ができ上がることに対して国を挙げて、これは行政当局だけではなくて、経営者団体も労働組合も、それからいわゆる福祉団体も社会保障関係の健康保険組合のようなものも、すべての機関が合意して、現在、アメリカ西ドイツでは不法就労というものに対して対処していこう、そういうことになっております。  日本の場合はそのあたりの論点が、労働保護と、他方では同じ国民の中にフェアコンペティションがない、国の中に人によってフェアコンペティション、いわゆる公正な競争がない、そういう状況がじわじわと浸透しているということについて、今後大いに改善をしていかなければならない。そのためには、やはり雇い主処罰規定あっせん者処罰規定も当然だと私は思いますし、それから労働保護法上の雇い主に対する規定の厳正な適用をやはりするべきだということを申し上げたいわけでございます。
  49. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ありがとうございました。  加藤参考人にお尋ねをいたしたいわけですが、人、物、金ということの自由化の中で、物、金と人とはやはり本質的に差があるのだ、そのとおりだと私も思います。そういう中で、加藤さんがお話をされた中で、率直に言いましてちょっとよくわからなかったといいますか、聞き方が悪かったのかもわかりませんが、コストの負担の明確という言葉があったのですが、そこら辺のところは具体的なあれがちょっとよくわからなかったものですから、御説明を願えればと思うわけです。
  50. 加藤敏幸

    加藤参考人 コストと申しますのは、社会的なコストということでございます。仮にその労働者を雇い入れたといたしまして、雇用主はそこからいわゆる付加価値を得るわけでありますね。雇って、仕事をしていただいて、売り上げが上がって利益が出てくる。ですから、経営側にとってはそういう形で利益が発生をする。しかしながら、その外国人労働者をめぐって社会的なコストが発生をいたします。これは例えば家族ができた場合の扱いでありますとか就学の問題でありますとか、それから労災等の問題もありますし、先ほど言いましたいわゆる行政だとか社会保障にかかわる費用というのはおのずから発生をいたします。特に、それらはその年に発生するというよりも、例えば十年たったときに、これは合法的な外国人労働者の場合でありましても、むしろ十年たったときにその児童の教育権の問題でありますとか、そういうふうな行政上のコストも発生をいたします。  したがって、我々が考えておるのは、導入したときに受益した者と、導入したことによって将来発生するであろう社会的コストを支払う者というのが違うのですね、このケースの場合は。ですから、それは税金という形で一般的に払われているという抗弁を仮にいたしましても、現実に利益を懐に入れた者と、後始末のためにコストを全体で払うという場合には、やはり不公平があるのではないか。そういうふうな意味で、利益のあるところに負担を求めていくということの意味でコストの所在を明確にすべきだ、こういうことで申し述べたということであります。
  51. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それからもう一つ、個々の具体的な事案について基準を省令で出すということになっていて、その省令の運営に当然労働者側として参加をすべきだというお話でございましたが、今ちょっと企業の出張の話などで出たわけですが、具体的にどういうふうな問題が生ずるわけでしょうか。きょうはここには入管局長もいて聞いておりますから、私は、そういう省令の作成等について労働者側も参加をして、そしてその意見を述べる機会というものは当然与えられるべきである、また与えられると思うのですけれども、そういうことに関連をしてひとつ遠慮なく、いろいろ具体的なことで、こういうふうなことはこういうふうにしてもらいたいのだ、こういうことについてお話ししていただければと思います。
  52. 加藤敏幸

    加藤参考人 大変ありがたい御質問であると思います。  例えば、労働関係の各種法律に関しましては、基準法関連では中央労働基準審議会、中基審がございます。最低賃金も、これは最賃の審議会がございまして、いろいろな意味で当該の労働者あるいは経営者そして公益を代表する者の意見を聞く中で細かなことを決めていくというルールが一応確立をしているというふうに思います。この在留資格の問題すべてに関して労働組合として参画の場を要請しているということではございません。  ただし、例えば具体例を申し上げますと、ソフトエンジニアにつきましては、これは通産省を初め、将来的に六十万人のエンジニアが不足するとかいうふうな予測がされておりまして、当該領域に対してかかるエンジニアを導入することについては異論はないであろう、仮にこのように当局の方が判断をいたしましても、実は我々現場で活動している者から申し上げますと、このソフトエンジニアの場合は、例えば三十五歳定年説でありますとか四十歳になるともう使えないとか、こういうふうな現状があるわけであります。労働市場としては、人手不足にもかかわらず、その労働条件は極めて過酷でありまして、月に五十時間の残業はざらであるとか、仕事が厳しい割には所得の方が少ないとか、相対的に考えますとそういう劣位にある労働条件であります。  このような労働条件が、通常の場合は労働市場がタイトになりますと改善される、そういう定説はございますけれども、現実的には、ソフトワーカー、ソフトエンジニア等の労働条件につきましては、必ずしもここ十年間、労働時間初め福利厚生等を含めて改善されるという状況にはないわけであります。その原因というのは、例えば一人社長、三人の部下、こういうことでソフト会社として設立をして、それが子、孫、そのひ孫請という形の何重もの外注体制の中で事業に参入することによって過当競争が生じている、こういう現状もあるわけであります。そういうことを考えた場合に、マクロな意味での労働市場に、いわゆるシミュレーションとかによって言われるからといって、そこの部分に大量に当該労働者を導入されたのでは、我々自身としては過当競争を激化してしまうという個々の状況があるわけであります。こういう事例もございます。  また、「技術」というくくりの中で、「工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動」、こういうふうに申しましても、例えば大学を卒業したからといって、これは直ちに熟練労働者とは申せません。我々が経験したところによると、少なくとも大体三年程度の教育期間を経て一人前のエンジニアになるというのが実情でございます。したがって、このような実務経験と本人が持つ学問上あるいは学芸上の資格の総合関係をどのように判定するかということにつきましても、個々にいろいろ議論がございます。これは日本における高等教育制度と外国における高等教育制度並びにその水準は非常に内容に差がある。差があるというのは、能力に差があるということではなくて、その内容にも差がある。グレードにも差がある。教育課程にも差がある。そういうふうな状況は我々も把握しているところもございますので、そういうところも含めて、具体的な基準を考える際には、いわゆる不公平を拡大することのないように我々状況を把握した者の意見を参考に使っていただきたい、こういうふうなことで申し上げたということでございます。  時間が限られておりますので、以上であれしたいと思います。
  53. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 もう一つ研修生のあり方についてより一層の善処をというお話加藤さんからございましたが、その点についても御意見等があればおっしゃっていただきたい、こういうふうに思います。
  54. 加藤敏幸

    加藤参考人 研修生の導入については賛成でございます。  ただ、私は、今研修生の問題については一つ大きな課題を抱えていると思います。それは、一石三鳥ということを前提にして今議論が行われております。一石三鳥と申しますのは、導入された企業にも利がある、本人にも利がある、そして当該国にも利がある、そういう意味で一石三鳥だということでございます。  しかしながら、私たち現場でいろいろ活動してきた者の実感から申しますと、研修というのはコストです。少なくとも研修をするということは手間暇がかかるというのが真実なんです。手間暇のかからない研修は、我々が現場で見ていますと、それは研修じゃないのです。本当のことを言って、先ほどの、大卒一年生を抱えた職場というのは、その者を一人前にするために一人指導者がつきます。この指導者が相当戦力ダウンになるわけです、本気で指導いたしますと。ということは、海外からの研修生を受け入れるということは、その企業にとってまじめにやればコストがかかるということでございます。コストがかかるにもかかわらず世界の友好のために企業が積極的に研修に身を挺するというのは、真実はその中から利益もある、研修の内容がどこかでいわゆる実務労働に切りかわっているという状況があるのではないか、こういうことであります。しかしながら、そういうことをかたく申しますと研修生を受け入れ企業というのは全くなくなってしまうわけでありますから、そこのところをいかに折り合いをつけていくかということが私は知恵の出しどころではないかというふうに考えておるわけであります。  そういうふうな意味で、今直ちにこういうふうな方法論がベターであるということの提案まではできませんけれども、しかし私は、研修というのは本来的に手間暇がかかるものである、手間暇をかけたものこそ研修の成果につながるんだということをとらえるならば、研修を積極的にされる企業に対しては、いい研修に対しては何らかの形でやはり援助をするということをしないと研修の質は保証されないということも大切だと思います。  我々現場で研修生を見ておりますと、企業がどの程度本気で手間暇をかけているかというのは一目瞭然でございます。また、研修生自身がよくわかっております。このことが帰ったときに、みずからが研修のために日本国に来たのか、あるいは、猫の手と申しますと失礼に当たりますけれども、当座の労働力不足を解消するために私は使われたのかということは、本人は自分でよくわかっておるわけでございますので、この辺のところもやはり国際的にも十分配慮しなければならないのではないか、こういうことでございます。
  55. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 各参考人皆様方に貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。私の質問はこれで終わらしていただきます。
  56. 戸塚進也

    戸塚委員長 中村巖君。
  57. 中村巖

    ○中村(巖)委員 参考人の皆さん方には、貴重な御意見をお聞かせをいただきまして、また当委員会のためにお時間をお割きをいただきまして、大変ありがとうございます。公明党の中村巖でございます。  今皆さん方の御意見を拝聴いたしたわけでありますけれども、その中で私が多少意外に思ったのは、四人の方々がすべて外国人の単純労働者の問題について異口同音に、この導入はやはりよくないというような御意見であったことでございます。このことについては日本全体の意見としては、やはりかなり意見の分かれるところがあるんだろうというふうに思いますけれども、今たまたまそれに対して消極的な御意見を持たれる方々がお集まりになった結果かと思いますが、やはり単純労働者受け入れということについては、いろんな意味で決して否定的にばかり考えられる面があるのではないんじゃないかなという気もするわけです。ただ受け入れるための制度というものを整備すれば、これが今日の、これからの日本経済発展のために大変資するところがあるのではなかろうか、こんな気もするわけであります。  この問題について、今受け入れないという御意見であることはわかるわけですけれども、将来どうすべきなのか。今、言ってみれば、先生方の中には、国民的なコンセンサスが得られないから現時点ではだめなんだ、いわば時期尚早ではないか、こういうような御意見も見受けられたように思うのですけれども、今が時期尚早ならば、将来に向かってはどういうことが考えられるのか、どういうようなことが整備をされれば単純労働者受け入れということもあり得るということになるのか。その辺について、現時点での、法案の問題を離れて、将来構想というようなものについて、それぞれ四人の先生方の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  58. 手塚和彰

    手塚参考人 将来につきましては私も同感でございます。  それで、私自身の個人の見解から申し上げますと、現在の状態で受け入れをしてもいいという御意見の方が間々ございますが、個人としては、日本は人を受け入れてやってみて、その中でいろいろな試行錯誤をしてみるのもいいのかもしれないというぐあいに考えることもあるのです。ところが、現実にそれでは人を受け入れたときに、まず雇い主が全く自分の企業の中でその人の能力に合わせたような形で処遇するということの覚悟がまだできていないということが第一にございます。  それから、世論調査をいたしますと、大体受け入れ賛成というのは若い方が多いわけでございますが、この若い方ともし対等のスタートで、同じ公平な場の上で競争したときに、外国の方の方が非常に優秀で能力が高い場合に、こういう方たちの方がどんどん上に行くような、そういう体制というのは日本にはまだないわけですね。現実にそこまで平等というのを実質的に保証しなければならない。しかしながら、外国の方は入ってくるときにはハンディキャップがあるわけでして、第一には言葉の問題がございます。それから第二には、教育やトレーニングが各国との間に差がございます。これを埋め合わせるような手だてが今、日本の国内ではでき上がっておりません。  例えば、具体的なことを申し上げるわけではないのですが、一つの例として申し上げますと、看護婦さんが将来不足をするということが議論されております。だけれども、看護婦さんというのはどこの国に行ってもありますから、その国の看護婦さんで正看護婦さんだった方が日本に来て即正看護婦になれるのか、あるいは准看護婦で、ある一定のトレーニングをして、それでその施設があって、その機会が与えられて、それで正看護婦になっていくのか、それらのことについては全くまだ国内で議論されていないわけですね。  そういう状態の中で、受け入れ賛成というぐあいに言っても、今いる若い方々で、やはり西ドイツ若者がそうだったのですけれども、あいまいもことして、外国人が入ってくれば、自分の下の補助労働をしてくれて、自分が一つ上のスキルの、あるいは自分が上のポストにつくことができるだろう、だから生活もよくなるしステータスも上がるだろう、こういう選択肢によってイエスという答えを出している方が、世論調査の結果非常に多いと思います。このあたりをおもんぱかりますと、やはり国自身の施策として、これらのものについて徐々にシステムが整ったところから受け入れていくということをしても構わないわけで、それは時期が遅いということでもありませんし、今後私どもがやっていかなければならないことだと思います。  で、いわゆる単純労働者問題というのは、今回の入管法改正案によりますと、いわゆる技術ということで受け入れられる幅をどれだけ広げていくかということによって、熟練労働者についても現場の単純労働者の中に入っておりますから、そういう方々についても受け入れられるシステムが将来、今申し上げました点を考慮してできるということを私どもはやはりできるだけつくり上げなければならない、その上で受け入れることが大切だということを申し上げた次第でございます。
  59. 小井土有治

    小井土参考人 御質問はある意味で大変難しい内容で、的確にお答えできないおそれが大きいと思います。  最近日本では、外国人労働者をめぐっていわゆる全面開国論あるいは全面鎖国論というような、二つに大きく分けてそれが鋭く対立しているという状態ではないと思うのですね。最近、朝日新聞がたしか世論調査をされておりまして、私、詳細は存じませんけれども、これではかなりいわゆる単純労働者に入ってもらってもいいという御意見のようですね。非常に注目したんですが、しかし、条件つきの容認論ではないだろうかという感じがいたします。その条件の中身がはっきりしておりませんので性急な結論は出せないのですけれども、やはりいろいろな条件を提示していきましたらその世論調査の結果も相当違うんではないだろうか。  それから今、手塚参考人は、若者の容認論が多いというようなお話がございましたけれども、例えば五月以降ベトナム難民と称する方々が非常に多く漂着しております九州各地の人に御意見を聞いたら、また違ってくるんではないだろうか。あるいは東京都内にいたしましても、池袋周辺では非常に居住している外国人の方が多いということで、その考え方も随分違うだろうと思いますね。一方、川口市などでは登録している外国人の方が非常に多いようでありますけれども、そういうところでは現に仕事もしていただいているという使用者側もいますので、随分意見が違うのではないだろうかというふうに思います。消費税の問題ではありませんけれども、随分立場によって意見が相反するのではないかと思うのです。  一般論として、恐らく皆さん、私も含めまして、国際国家になった、これだけ大きな経済大国になったから外国人の方に大いにおいでいただいて隣に住んでいただこう、こう申し上げると思いますが、いざ隣にお住みになって、あなたの隣組のメンバーになったらいかがでございますか、あるいは幼稚園でお子さんが一緒になったら、あるいは学校で御一緒になったらいかがですか、あるいは自宅にパーティーに御招待いたしますかというようなことになりますと、随分違ってくると思いますね。その点では、閉鎖性を克服するということが日本人の課題ではないだろうかという気がいたします。  私は、一般論として申し上げますと、日本は単一民族的国家でありますけれども、多言語的な国家になってもいいんではないだろうかというような感じもしております。しかし、これは遠い将来の一般論であります。  それから、将来の問題としては、例えば特定のプロジェクトに関して単純労働的な仕事をされる方々の入国を検討してもいいんではないだろうかというような感じもしております。もちろん、これはいろんな条件がつきます。  それから、日本がこれだけ大変成長して豊かな国になっているわけですね。実際には連合さんなども豊かさが実感できないということをおっしゃっていて、ほとんどの日本人がそうおっしゃっているわけでありますけれども、アジアの各国から日本の大変な豊かさを目指しておいでになっているわけですね。そういう中で日本人が、成長をこのまま持続するのか、成長がスローダウンしても、今問題になっております環境などの面も配慮いたしまして成長を鈍化する政策をとるのか、そのためにやはり人手不足というのは一ついい方法ではないかというふうに考えるか考えないか、いろんな発想があり得ると思うのです。そういう時期に今来つつあるのだと思うのですね。  それから、先ほど来ほかの参考人の方もおっしゃっておりますけれども、ダーティーワーク、きつい仕事、危険な仕事、特に建設労働あたりで多いわけでありますけれども、これを外国人に押しつけるということによって日本が一種差別社会、階層社会というか、階級的社会、しかも外国人の方を下に押しやる社会になっていく危険性もあるなという感じもいたします。その辺も考えて、先ほどの冒頭発言で私は当面のと申し上げたのですが、かなり長い当面のということになるかもしれません。ただ、日本人の意識全般が変われば、外国人の方においでいただいてもいいだろうという気もいたします。
  60. 増田雅一

    増田参考人 単純労働者受け入れにつきまして積極的な態度を示される方、むしろ待望論というような議論を述べられる方が一部にございますことは私もよく承知しておりますが、現状におきまして単純労働者をそのまま受け入れるということにつきましては、先生もおっしゃいましたように、かなり大きな弊害が出てくるだろうというふうに考えるわけでございます。  将来の問題につきましては、単純労働者受け入れが現在の人手不足と関連いたしまして、人手不足解消の即効的な処方ということが頭にすぐ浮かぶのじゃないかと思いますが、現在でこそこういう景気の状況でございまして人手不足が云々されておりますけれども、将来こういう景気がどうなりますか、その辺がなかなか見通しがつかないというようなこともございますし、その面から起こる問題も予想されます。そういう面からは私も将来については非常に問題があろうかというふうに思っておりますので、にわかに現在この単純労働者の将来の受け入れ問題について御回答はできないのではないかと思います。  私は、むしろこの問題につきましては、先ほど申し上げましたように、日本の国際的な役割という面を考えていかなければいけないのではないかと思います。日本の国内的な事情だけを考えていくのではやはりまずいということでございまして、発展途上国の経済的発展ということを主眼にいたしますならば、単純労働者日本に参りまして出稼ぎの所産を持って帰るということだけではやはりだめなので、自国に産業を興し、その産業を立派に維持していくということが必要でございまして、そういう能力を付与するようなやり方で外国人受け入れるということが必要であろうかと思いますので、研修というような手法をとりまして帰国させるということが一番よろしいのではないか。そういう意味におきまして、将来的に単純労働者日本のダーティーワークを引き受けさせるために雇い入れるということにつきましては、やはり反対でございます。
  61. 加藤敏幸

    加藤参考人 まず初めに、単純労働者という言葉の問題がございます。連合の中で議論いたしまして、私は単純労働者という言葉は使ってほしくないということであります。  単純労働者ということは、一体具体的にどういう人々を意味するのか定かではございません。各種の専門家の議論を見ましても、定義できないというのが答えであります。定義ができないにもかかわらず、あたかもそのような労働者がグループとしてカテゴリーを形成しているかのごとく単純労働者の用語を使って議論を行いますと、私は大変議論が混乱するのではないか、このように考えております。  我々が主張しているのは、専門的知識、技術を有する者の受け入れについては一定の基準を課して了とするということでございます。なぜそのようなことになるかと申しますと、今世間で単純労働者というのを使っている具体的なイメージは、汚い仕事、厳しい仕事、危険な仕事、こういうふうなものを多少イメージしながら単純労働という言葉を使っておるわけであります。しかし現実には、単純労働という総称をつけられても、あるのは個々の、例えば土木従事者である、建築労働者である、あるいは林業に働く労働者である、現に具体的にあるわけでございまして、それらが果たして海外から労働者を導入するのに当たるのかどうかということを考える必要があると私は思うのであります。  そこで、私たち戦後の労働運動というのは、働く者の労働条件の改善、社会的な地位の拡大のために、向上のために頑張ってきたわけでありますけれども、今なお道はるか、目標ははるかであります。ここまで言うと言い過ぎかもわかりませんけれども、多大な課題を抱えております。  例えば、先ほど労働基準法違反の問題がございましたけれども、私どもが調べた大手の企業にあっても、パートタイム労働者と言われる方々については何らかの形で労働基準法違反が約一割の事業所において見られるという結果もございます。国内労働者においてすら基準法が守られていない状況もございます。あるいは低賃金、長時間労働と言われる部分もございます。このようなことを考えますと、私たちとして、いわゆる低賃金労働拡大するかのごとき海外からの労働力移入は、戦後私たちが運動の中でようやくここまで築いてきた努力を水泡に帰すのではないか、このような懸念を持っておるということであります。また、ある部分の産業については、前川レポートが報告していますとおり、国際的な分業体制をも日本としては考えていかなければならない。低賃金労働でしか成り立たないような産業をなお海外から労働力を移入しながらやっていくということについては、私は産業政策面からも議論の必要があるのではないか。  そして最後に、例えば西ドイツの現下の労働時間というのは、総実労働時間で平均で一千六百五十時間であります。我が国はすべて平均いたしますと二千百、これは最近ちょっと前進いたしましたけれども、二千百時間を下ることはございません。この差は五百時間を超えているという状況にあるわけでありまして、これらの労働時間の短縮が海外から人を入れれば前進するのではないかという議論もございますけれども、戦後の労働運動の経験の中で、最も労働時間が短縮したのはあの高度経済成長時代昭和三十五年から五十年までの十五年間でございました。三百七十時間の時短の実績をしております。それ以降、昭和五十年から昭和六十三年までの間は微増でございます。労働時間はふえておるわけであります。したがいまして、労働市場がタイトでなければ労働条件というものは積極的に改善されないのだ、これは私たちの体験でございます。そういうふうなことを含めて、労働団体からは、かような導入についてはすぐさまイエスとは言えないし、また、状況が改善されるには相当の日数が必要である、このように考える次第であります。
  62. 中村巖

    ○中村(巖)委員 第二点は、手塚参考人小井土参考人にお伺いをしたいわけでありますけれども、今不法就労問題というものが起こっておりますが、この原因というものは、法務省の出入国政策に大変問題があったというふうに私ども思っているわけであります。  というのは、この不法滞在をして労働をしているという多くの人たち日本語学校の就学生であったということがあると思うのですね。不法就労というのは、オーバーステイで就労しているとか、あるいは資格外活動をしているとか、こういうことなんですけれども、やはり実態を見ると、日本語学校へ行くと称して実際は働いている、また、日本語学校で日本語を学んで将来大学に行こうとかなんとかいうような人でない人をどんどん、まあ日本語を学びたいと称すれば入れてきた、こういうことが今日の不法就労問題をつくり出している原因の非常に大きな一つじゃないかと思うのですけれども、この就学生の問題について今後はどうすべきだというふうにお考えになるのか、両参考人の御意見をお願いしたいと思います。
  63. 手塚和彰

    手塚参考人 仰せのとおりの点がございます。  やはり就学生と称する日本語を学ぶ方たちは、日本に来て大学等々に留学したり技術を学ぶという以外に、働きたいということが如実にあったわけであります。  この原因は二つございまして、一つ日本日本語教育の体系ができていないということがございます。アメリカを筆頭にヨーロッパ諸国は、自分の国の言葉を学ぶ人たちに対しては、世界のどこに行ってもそのようなチャンスが与えられるような機関を持っております。例えばドイツはゲーテ・インスティチュートというのを世界数十カ国、ほとんど各国に何百カ所のセンターを持ち、自分の国で勉強ができるようにしているわけでありますし、フランスにしてもイギリスやアメリカにしても同様でございます。日本の場合には、そういうところが世界にわずかに三カ所か四カ所しかないという状況でございますし、同時になお日本語を教えるシステムなどというものもまだ確立していないというぐあいに専門家の方から承っております。ですから、日本語を学ぶことができるような機関をできるだけ早期にアジア諸国につくる必要があるだろう。これは公的な施設だけではなくて民間の力をかりて、あるいはボランティアの力をかりて、あるいはいろいろな慈善団体や宗教団体などのお力をかりてもつくらなければならないことだと思います。  第二には、やはり就学生という範疇が働くことを認められているということ自身が中途半端でございます。留学生も含めて日本ではアルバイトを二十時間してよろしい、こういう話になっておりますが、そういうことを認めている先進工業国というのは日本だけでございます。具体的には、アメリカに参ってもヨーロッパに参っても、就学、留学ビザにはぽんと判こを押されて、一切労働をしてはならないということになっておりますし、アメリカなどでは最近ではいわゆる入管当局の規制が厳しくて、いきなり日本料理屋に踏み込まれて、アルバイト学生を使っていたというので閉鎖の憂き目を見る、こういう厳しい状態がございます。その裏側には、やはり留学生がその国に行ってかなり勉学がしやすい状態、つまり奨学金とか寮とかそういったものがきちんと整備をされていて、国民の中に留学してきた人たちを大事に受け入れるような基盤ができ上がっているということでございます。この制度がないために、どうも中途半端な形で就学生というカテゴリーや留学生にアルバイトを認めるという結果になったと思いますし、そのあたりのおっしゃる点は私も同感でございます。制度の中途半端な点を今後日本は改めていかなければならないというぐあいに考えております。
  64. 小井土有治

    小井土参考人 お答えします。  不法就労問題が出入国政策に原因があるのではないかというお話でございます。私もそこに一因があるだろうとは思いますが、やはり不法就労問題は、冒頭にも申し上げましたように非常にいろいろな要因がバックにあって起きていると思うのです。円高一つ、各国との格差が一つとか、日本の業界での雇用対策が十分なっていないとか、多様な要因があるだろうと思います。  先生がおっしゃる日本語学校をどうするかという問題でありますが、今、手塚参考人もおっしゃっておりましたけれども、私は現在の日本語学校にはやはり問題があると思うのです。日本語学校に入る目的が一体何なのかというと、必ずしも日本語を学ぶということではないと思うのですね。日本語学校を修了して日本の短大なり大学へ入る、あるいは日本の国内企業あるいは在外日本企業に就職する、これが目的かというと必ずしもそこにない。あるいは、日本語を学んで日本文化なり日本の風俗、習慣、さまざまなことを学ぶのかというと、そこにもないだろうと思うのですね。  要するに、今法的にといいますか制度的に認められているのは二十時間のアルバイトでありますが、まさに上海での出来事などを見ますと、日本語学校に入るのは、日本語学校に籍を置いて二十時間の労働に従事するという形で、二十時間以上の労働に従事して収入を得て送金するなり日本に在住するということだろうと思います。二十時間の労働も、就業するあるいは実学するというそれなりの効果はあるだろうと思うのですけれども、効果以上の弊害が出ていて、今法律の改正案を御審議いただいているのだろうと思います。私は、日本語学校の目的をもう少し明確にする、日本語学校に入っている学生さん、就学生と称しておりますが、こういう学生さんへの援助政策などももうちょっと公的にお考えいただいてもいいのではないだろうかという感じがいたします。  それから、留学生、就学生が勉強しにくい、仕事をしなければいかぬというバックには、やはり物価水準が異常に高いという問題もあるのではないかと思うのです。これは国会全体あるいは政府全体でお考えいただく必要があると思いますが、内外価格差をなくす、そして欧米並みの物価水準にしていただくということが、日本国民だけじゃなくて日本においでいただいている外国人の学生さんにも役に立つのではないだろうか、非常に迂遠な話ですけれども、そういう点も御努力いただければありがたいというふうに思います。
  65. 中村巖

    ○中村(巖)委員 最後に一点、増田参考人にお尋ねいたしますけれども、研修という問題です。研修枠を拡大するということは経済界としても対応をしていきたい、こういうお話でございます。研修というのは、難しい仕事研修というだけではなくて、例えば農業のことだって研修があり得るわけでありますし、土木作業だってあるいは建築現場の作業だって研修があり得るわけで、そういうことになってくると、かなり経済界挙げてこの研修問題に取り組むと、一面では先ほど加藤参考人も言われておるように結局各企業に相当の利益をもたらすということになるんだと思いますけれども、そういう意味でいろいろな分野にわたって大幅に拡大をしていくということについてはどういうふうにお考えになりますか。
  66. 増田雅一

    増田参考人 先ほど加藤参考人が述べられましたように研修は確かにコストがかかる問題でございまして、企業の負担も多いと思います。しかしながら、発展途上国の経済振興のためには、発展途上国にそれなりの技術、技能を持つ方を育てなければいけないと思います。そしてまたその範囲というものが、先生おっしゃられましたように大変広い産業分野にわたるのではないかと思います。その意味におきまして、私どもといたしましては、できるだけ広い分野にわたりまして発展途上国からの研修生を受け入れたいというふうに考えております。例えば、労働省あたりでいろいろお考えがあるようでございますし、また今年度の予算で労働省が中央職業能力開発協会を通じて行います研修にも私ども一部お手助けをしている状況にもございますので、そういうことからいたしまして、私どもとしては日本の国際的役割ということを常に念頭に置きながら、そういう協力をぜひともやっていきたいというふうに考えております。
  67. 中村巖

    ○中村(巖)委員 では、時間ですので終わります。
  68. 戸塚進也

    戸塚委員長 滝沢幸助君。
  69. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長御苦労さまです。参考人の皆さん、お忙しいところを御苦労さまに存じます。先ほどは大変示唆に富みました有益な御見解を御披瀝いただきましてありがたく存じます。  私に与えられました時間はごくわずかでありますので、端的なことを各参考人さんに一言ずつお伺いいたしたいと思うわけでありますが、せっかくの機会でありますので、直接にこの法案にかかわることであるかどうかということもあろうかと存じますが、お許しをいただきまして、それぞれの方々のお立場、御経験に基づいての見解をお示しいただければありがたい幸せに存じます。  さて、手塚先生にお尋ねをさせていただきます。先生は教育の場面で豊かな御経験の中に御活躍いただいているわけでありますが、先ほど先生お話しのとおり、なかなか難しい課題が多い今日であります。そこで私は、人間は神と法の前に平等である、これが東西を通じての一つの共通的な認識と言っても過言ではないかと思うわけでありますが、しかし現実は、今加藤参考人がおっしゃいましたとおり、単純労働者などという言葉がありまして、何が単純労働者かといいますと、タイピストなんというのは全く単純労働者でございます。しかしこれはそういう範囲に入らない考えであります。つまり、汚い仕事、貧しい仕事、嫌な仕事。しかしこれはかつて日本人がアメリカなど先進国に行ってこれを勤めて今日の富をかち得た経過もありまして、それを追った者が追われる立場になったというのが現実ではないかと思うわけであります。  そうした中で、土工にしろいわゆる農夫にしろ、まことにこれは厳しい経験と技術と信念がなければ本当は勤まらぬことであります。ところが、この人たちの一日にして得る収入、時間給にしましても、タレントの皆さんの収入に比すれば全くこれが同じ地球上に、同じ時代に生きた人間の得る労働の対価かというふうに疑わざるを得ないのであります。ここにおいて私は、やはり教育の面で、小中学校の先生でいらっしゃるとなお的確かもしれませんけれども、大学は特殊な立場ではありますけれども、教育の面で戦後この労働というものに対しての尊厳なものをもっと強調していただいた方がよりよかったのじゃないかと思いながら、今回の法律とのいささかのかかわりがあるとするならば、このようなことについての御見解も承りたいと存じます。
  70. 手塚和彰

    手塚参考人 先生がおっしゃられるように、私ども教育に携わっている者が労働に対してどのように学生に教育ができるかというのは日夜悩んでいることでございます。  私はこの点で一つのことを申し上げたいのでございますが、現在の日本というのは、確かに先生おっしゃられますように労働の価値というのが現実に日本社会にどれだけ寄与しているかということについて、あるいは日本の我々の生活の中で大事な仕事であるということについての価値観がずれているということだと思います。そのために、法外な収入を得るタレントがいる一方で、農家が自営だけではやっていけないようなそういう状況になっているということでありますし、ましてやいわゆる中小企業の領域については、日本産業政策上、ミッテルシュタントというぐあいに申し上げますが、いわゆる中間の、中産階級という方たちを本当につくり上げていないと思います。  この点で私は一つの仮説を持っておりますが、今の日本というのは、このような人たちのところにどうして皆さんが行かないかというのを考えますと、一つ所得があると思います。もう一つは、日本の現在の状況というのはいわゆる過剰教育時代だと思います。過剰に教育をして、教育投資をしてもペイをしないにもかかわらず、一斉に日本方たちはたくさんの方が教育をしてサラリーマンをつくり出している。サラリーマンは毎日満員電車に揺られて仕事をし、大都市に集中して、この集中によってまた悪循環のために住宅や物価が高くなる、こういう状況でございます。  しかし、これはいずれの時代かには、今後十年、二十年の間に私はなくなると思います。その理由は、日本の国民も、学んだことをどの領域の中に自分を生かしていけばいいかということを考え始めているということでございます。昨今の人手不足の中でかなりの方たちが大学などを出ても地方に戻って自分の家業を継いだりする傾向が出てきまして、これが徐々に定着に向かっている。アメリカ日本と同じようにかなり過剰教育時代が一九六〇年代後半に続きまして、大学は出たけれども、例えばハーバードのビジネススクールを出た方が守衛さんになったということが注目された時代がございました。あるいはタクシードライバーになったということが注目された時代がございました。イギリスなどでも、実際に現実に教育をしてもペイしないということがございまして、例えばサッチャーさんというのはわらぶきの屋根の職人のことを英語で言うわけでありますが、そういう職人になったりということが現実にあったそうでございます。  ですから、このような時代が来るためには、あくまでもその仕事について賃金並びにその仕事のいわゆる満足度というのか、技術を学び技術を使えるような状態にしていかなければならないということであります。今人手不足と言われているような例えば建設業等々をとっても、これは大いに改善の余地があるわけでして、現実に賃金を高くしたりあるいは技術導入をしながらやっていくことができれば、かなりの若い人たちが入っていく可能性があると思います。このあたりのところを大学と実業界と一緒に、あるいは国民の皆様と一緒に考えていきたいということを申し上げたいと思います。
  71. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 どうもありがとうございました。  小井土参考人にお伺いをしますが、大変御無礼かもしれませんが、日本経済新聞というのは一種特殊の使命を持っていらっしゃるかもしれませんが、一般論として申し上げさせていただきます。  私は、病めるアメリカと言われて久しい、しかし、今や病める日本だと思うわけであります。そして、先生おっしゃいましたとおり偽装難民もあります。あるいはまた学生を装うた者が入ってきます。結婚を装うた者すらもあらわれるのは、しかし、どうしても日本に入りたい、入らざれば生きていけないということではないでしょうか。存在とは必要の別称なりというようなことであろうと思うわけでありますが、私は、そのときに実はマスコミさんが、むしろ不道徳な面、非社会的な面の報道はまことに激しく厳しく、しかし奨励さるべきようなことについての報道はまことにちゅうちょされている状況は見逃せない。朝日新聞の例の沖縄のサンゴのことを引き合いに出すまでもなく、いわゆるやらせ報道のようなものは現実私たちがマスコミに接してあり得るわけです。そのような観点に立ちまして、今後この出入国管理法案の改正が通ることは間違いないでありましょうが、その後におきましても、マスコミの積極的なしかも建設的な協力なしには日本のよき発展はないと思いますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  72. 小井土有治

    小井土参考人 先ほどの神と法の前に平等であるというお言葉、それから存在とは必要の別称なり、大変立派なお言葉を拝聴いたしました。その後のいろいろな、今の日本が病める日本になっている、報道界が奨励すべき事実関係についての報道をちゅうちょしているというようなお話、それから、この改正法案が法律として成立した後の報道界の対応の仕方についての御意見、私としては別に異議を差し挟む点はございません。  ただ、一言申し上げさせていただきますと、我々報道界にいる人間としても一段と奨励すべきことが大きくなるようなニュース報道をしたいということと同時に、今日本人がいかに生きるかということを忘れているような、先生のおっしゃる病める日本ということでありますが、そういうことへの反省ということが必要なのではないだろうか。  例えば、今日本では過密ということが言われ、一極集中を排除して多極分散をせいということを言うけれども、日本人は過密社会がほとんどの人にとってはいい社会なのです。なぜ東京に人間が集まるか、要するに過密が好きだからです。人間がぶつかるところに幸せありというような感じなのでしょう。それから、過疎の解消といいますけれども、実は過疎の幸福論的な視点から申しますと、自然というものが非常に豊かにある、ところが日本人はそういう自然をひとり独占して楽しむ余裕がないのです。要するに、肩をぶつけ合い、足を踏み合うラッシュアワーのような世界でしか生きられない日本人になっているので、その辺をどう考え直すかというようなことも必要になっていくのではないだろうかという感じがしています。過密教から過疎教へというような方向転換を日本人ができればいいのではないか。  それから、先ほど私が申し上げましたけれども、環境の問題なども考えて成長をどうするかというようなことを各界の人にお考えいただきたい。それから学校教育の面では、先ほど建設業の問題が出ましたけれども、工業高校における実業教育のあり方、それから先生方に実業を知っていただくというようなこともしていただく必要があるのではないかというふうに思います。  いろいろなことを申し上げました。
  73. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ありがとうございました。  増田参考人にお伺いしたいと思いますが、経団連というものの存在は、まさに日本の陰の政府と言っても過言でないお力を持っていらっしゃると思います。しかし、ここに集うところの企業の皆さんとは裏腹に、非常に零細にしてかつ苦悩の日々を送っている産業といいますか企業、事業所、しかしそれこそ実は日本の土台をなしていると私は思うのでありますが、そこにいわゆる偽装難民を含めた単純労務者と言われる者がひしめいてこようとしているわけであります。経団連といたしまして、このような下層の、しかし実は経団連に集うていらっしゃる偉い経済界の方々の基盤をなしている立場に対して、どのような今後の指導理念がございましょうか。
  74. 増田雅一

    増田参考人 先生のお話のように、組織上の問題がございまして直接の会員ではございませんけれども、私どもの傘下には多数の中堅中小企業がございます。そういう中堅中小企業日本経済を支えているということは、まさに先生のおっしゃるとおりであると思います。ただ、問題はそういう中堅中小企業が経営、労務の各面におきまして非常におくれているという点があるわけでございます。そういう点がやはりその企業自体の発展も阻害するというようなこともございますので、私どもといたしましては、中堅中小企業がみずからそういうおくれを直していく、正していくという方向でいろいろな御援助を差し上げているところでございます。そういうことを通じまして、日本企業の近代化と経営、労務面の前進ということを図ってまいりたい、かように考えております。
  75. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ありがとうございました。  先ほど経団連と申し上げましたのは、日経連の誤りでありました。訂正させていただきます。御無礼いたしました。  最後に、加藤参考人さんであります。連合の発足、今日に至ります御苦労そして今後に対する展望のよき展開を祈る者であります。  おっしゃいましたように単純労務者なんというものは本当に存在するのかどうかまことに疑問でありますが、それにしましても加藤さんが所属しかつ御苦労されておりまするいわゆる労働界というものは、組織を持った、いわばそこに包含される労働者というのは比較的保障された立場でありますが、私は今日連合が特に関心を持って、連合の力をもって救済をしていただきたいと思いますのは未組織の労働者、それは我々が憂えておりまする難民を含めた、おっしゃる単純労働者というようなことで日本に入ってこられる方々、しかし入らなければ生きていけない立場であります。そして、かつて日本の我々の先輩がアメリカ等においてしたことでありますから、そういう意味で、連合の力をもってひとつこの法案の通過に協力いただきますと同時に、いわばそうした未組織労働者に対する力をかしていただきたいと思いますが、一言おっしゃっていただければありがたいと存じます。
  76. 加藤敏幸

    加藤参考人 十一月二十一日以降、中小企業労働者対策局を設置いたします。また、パートタイム労働者等の組織化等につきましても今後尽力をするということでございまして、御指摘のとおり相当の努力をしたいと思います。ただし、これは大変な難事業であるということも肝に銘じておるということであります。  以上でございます。
  77. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ありがとうございました。  参考人の皆さん、ありがとうございました。
  78. 戸塚進也

    戸塚委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  79. 戸塚進也

    戸塚委員長 速記を起こして。  安藤巖君。
  80. 安藤巖

    ○安藤委員 日本共産党の安藤でございます。きょうは、参考人の方々から先ほど来貴重な御意見を拝聴させていただきまして、しっかり勉強させていただいております。ありがとうございます。  そこで、単純労働者受け入れの問題につきましては、先ほども慎重、時期尚早云々というようなお話がございました。ところが、不法就労、資格外活動あるいはオーバーステイ等々が相当な数に上っております。摘発されておるのも相当な数になりますが、未摘発というのが十万とか十数万とかというふうに言われているわけでございます。なぜこういうようなことが起こるか。私どもとしましても、こういう不法就労のことにつきましてはしっかり罰則を適用して規制をする必要があるというふうに思うのですが、なぜこういうのが起こるかということを考えますと、やはり受け入れ体制、全く拒否しているからこういうことが起こっているのじゃないかというような気がするのです。  そこで、手塚参考人の御意見もいろいろ拝聴しておりますし著作しておられる本も読ませていただきましたが、何か節度を持って、というのは、例えば期限を切るとか、あるいは二国間で、といいましても主として東南アジア関係になろうかと思いますが、そういう国ときちっと協定を結ぶとか人数を制限するとかというようなことでもっていわゆる単純労働者受け入れという方向を一遍考えるべきではなかろうか。かえってその方が不法就労をなくすし、国際的にも窓を開くし、国際的な責任を果たすという方向にもなるのじゃないかと思うのですが、手塚参考人に御意見をお伺いしたいと思います。
  81. 手塚和彰

    手塚参考人 安藤先生のおっしゃられた点は二つあると思います。  第一点は、日本が今相対的にアジアの中で豊かな状況の中で、きちんとしたルート外国人を単純労働受け入れていないことが不法就労を誘発している一つの原因だとおっしゃられるわけでございますが、これは全くおっしゃられるとおりだと思います。つまり、日本である程度の量の就労者を外国から受け入れをすれば不法就労というのは少なくなるかもしれないということが予測されるわけです。  ところが、いわゆる単純労働者と呼んでおりますものも、先生方御存じの今回の入管法の在留資格拡大をされたもの以外、たとえどんな熟練労働者であってもこれが単純労働者という概念に含まれまして、このあたりは非常に問題が大きいところだと思いますが、それじゃそれをどの職種についてどのくらいの方たち日本受け入れたらいいのかということについての見通しを立てる必要があると思います。一般に、全くだれでもできる仕事について日本にいらっしゃりたい方というのは、アジアから考えますと、これは旅費の調達ができルートができますと、恐らく一億単位で来ると思います。先般、御承知のように、土木建設に関して中国からかなりの人たち、つまり具体的な人数を申し上げますと、五百万人ぐらいを引き取ってくれというお申し出があったというぐあいに承っておりますが、しかし五百万人という数は、日本建設産業の全労働者が五百六十万人から五百八十万人でありますから、こういう方たち全体を受け入れるというわけにまいりません。そういうことになりますとやはり、考えますと、ある一定の職種についてある一定のプログラムを立て、それで、それに沿った形でお入りいただくということが必須になってくると思います。ですから、このような方式をとりながら受け入れを行っていくということについて、中期、長期の見通しを立てるということについて、私は先生と意見を一にしている者でございます。  ただ、今この段階で単純労働者を一般的に受け入れて、どなたでもお雇いになってよろしいということになるかというと必ずしもそうはいかないということは、今まで私がるる御説明させていただいたとおりでございます。——そんなことでよろしゅうございますでしょうか。
  82. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、今もお話があったのですが、単純労働者といって先ほどから三Kというお話がありますけれども、加藤参考人にお伺いしたいのです。  先ほど就労資格証明書の問題で、熟練ではなくて単純労働者に近い人たち資格証明書をもらえるのではないかとか、いろいろ懸念を表しておられたのですが、私も実はよくわからぬのです。どの辺のところを単純労働者、まあソフトエンジニアの話もありましたけれども、これは単純労働者ではないのだろうな、ワープロを打つのはどうだろうな、ビルの清掃はどうだろうな、溶接工はどうだろうな、旋盤をやる人はどうだろうな、どの辺で線を引くのがいいのか、引くべきなのか、引けるのか、その辺のところは加藤参考人どういうふうにお考えかを一遍お伺いしたいと思います。
  83. 加藤敏幸

    加藤参考人 労働組合は事の利害の当事者ではございますけれども、物事を決める当事者ではございませんので、線引きの方法について、土木の場合はこうだとか、そういうことについて今の段階で持っておるということではございません。  ただ、土木の労働者という労働市場も、細かく見ていきますとセグメンテーションというのですか、非常に細分化された分野になってきますから、入れるときに、非常に雇用情勢が厳しいところに入れるというようなことがあってはなりませんので、そのときには我々の意見をよく聞いてほしいということでございまして、いわゆる基準が、法務省令であとを決めるということを言われますと、それが具体的にどうなるかということまで我々は見なければ、いわゆる我々の意に反する部分の大量の労働者の導入ということになった場合に我々大変被害が大きいということでの懸念を申し上げた、こういうことなんです。
  84. 安藤巖

    ○安藤委員 もう一つ加藤参考人にお伺いしたいと思うのです。  研修の問題につきまして一石三鳥の話も伺いましたが、コストがかかるのだ、何かメリットがなければ企業の方もそう研修研修というわけにもいくまいというふうにおっしゃったのです。そうしますと、研修をして、ある程度期間が切られているのだろうと思うのですが、三分の二ぐらい研修して、あと三分の一ぐらいの期間、在留期間延長ということもあろうと思うのです。単純労働ではないと思うのですが、先ほどの議論で難しいところですが、実際に就労をさせていわゆる生産ラインにつかせるというようなこともあり得るのではないか。また、それによってコストがかかった分メリットを稼ごうというようなこともあり得るのではないかと思うのですが、何かそれに類するようなことを先ほどおっしゃったような気がするのですが、その辺はそれを容認される方向なのか、いやそうではないという方向なのかというのをお聞かせいただきたいと思います。
  85. 加藤敏幸

    加藤参考人 現在、中央職業能力開発協会がたしか二百五十名程度、今言われました方式によって一月から開始をするということを伺っております。  我々は、ある研修の部分にオン・ザ・ジョブ・トレーニング、つまり実務労働一つ研修の仕上げとして繰り入れるということについては賛成でございます。これは日本労働の形態というのは、チームワークでありますとか現に動くラインにどうかかわっていくかということも大きなスキルであり、技能の一部であるということからそれは言えることであります。  ただし、現在問題が起こってきておりますのは、いわゆる時間外労働を、ではその人たちに課すことができるのか、それから労働研修生でありますから賃金を払うということではございませんので、それらの妥当なる手当は一体どうなのかというあたりが、はっきり申しまして当該労働組合自身が今非常に悩んでおるということでございますし、例えば鉄鋼でありますとか交代制勤務等についても、交代制に入れるべきか入れざるべきかというあたりも労使ともに現に悩んでおるというふうに現場からは聞いております。
  86. 安藤巖

    ○安藤委員 早くお帰りになるというお話でございますので、小井土参考人にお尋ねしたいと思います。  先ほどもちょっと申し上げたのですが、不法残留の人たちが相当な数に上っておるわけですね。それで摘発されてない人が相当いる。そしてそれはふえていく傾向にある。先ほど小井土参考人には、法的、行政的な措置をもっときちっとやってほしい、手ぬるいというおしかりを受けたと思うのですが、何か具体的にこうしたらいいというような方向を、マスコミの立場からおありになればお聞きをしたいと思います。
  87. 小井土有治

    小井土参考人 お答えします。  不法残留がふえるから、それに対して行政、法的に厳しい措置をとれという立場にありましても、具体的な問題については残念ながら私お答えできません。むしろ、要するに入る段階での措置をとっていただくということの方がいいのではないかと思います。先ほど先生は不法就労に対して罰則を適用すべきであるというようなお話がありましたけれども、まず入国の場面で規制をしていただくということが必要だろうと思います。  それから、私むしろ行政当局がもっと厳しい対応をせよというのは、人権面とか労働条件の面とか、仮に不法残留であっても現に仕事をしている場合には日本人並みの待遇をするのは当然であるから、そういうことをもっと経営者団体にもあるいは企業主個人にも徹底して、不法就労はいろいろな面でよくないことだということをPRすることが効果があるのではないかという感じがしております。
  88. 安藤巖

    ○安藤委員 増田参考人にお伺いしたいのですが、今度の出入国管理及び難民認定法改正案の中で企業内転勤というのが認められるということになっておるのですね。これは先ほど来研修ということではもっと枠を広げる云々というような御要望もお伺いしたのですが、この企業内転勤といいますと研修とは違うと思うのですけれども、例えば東南アジアの諸国の会社の支店なり何かがある、あるいは工場なり何かがある、そこで相当な熟練をした労働をすることができるというような立場にある人も日本の国内の本社なりどこかの工場へ配置転換するということだろうと思うのです。私勘ぐって恐縮でございますけれども、この企業内転勤というのを研修よりももっと自由に、枠に縛られずに、全く三Kばかりではなくていわゆる生産ラインにつかせるという人を異動させる、受け入れるという方向にお使いになるのじゃないのかなという気がするのですが、その点はそういうような期待を持っておられるのか、いやそんなことは絶対にないというふうにお考えになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  89. 増田雅一

    増田参考人 今のようなお話を初めて伺いまして、私どもとしては毛頭考えてなかったところでございます。企業内転勤と申しますのは、やはり企業の必要に応じまして必要な人間を配置がえをするということになろうかと思います。先生のお話のような便法的に使えるかどうか、まだ研究はしてございませんので、ちょっと考えておりませんでした。
  90. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が参りましたので終わります。どうもありがとうございました。
  91. 戸塚進也

    戸塚委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る十七日金曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     正午散会