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1989-06-14 第114回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年六月十四日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 近藤 元次君    理事 笹山 登生君 理事 杉浦 正健君    理事 保利 耕輔君 理事 松田 九郎君    理事 柳沢 伯夫君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 滝沢 幸助君       阿部 文男君    石破  茂君       衛藤征士郎君    大石 千八君       川崎 二郎君    菊池福治郎君       小坂善太郎君    田邉 國男君       武部  勤君    玉沢徳一郎君       鳩山由紀夫君    二田 孝治君      三ッ林弥太郎君    宮里 松正君       谷津 義男君    保岡 興治君       山口 敏夫君    五十嵐広三君       沢藤礼次郎君    田中 恒利君       竹内  猛君    前島 秀行君       武田 一夫君    藤原 房雄君       吉浦 忠治君    藤田 スミ君       山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  堀之内久男君  出席政府委員         農林水産政務次         官       中川 昭一君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         食糧庁長官   甕   滋君  委員外出席者         自治省財政局指         導課長     二橋 正弘君         参  考  人         (全国農業会議         所事務局長)  柳澤 和夫君         参  考  人         (全国農業共同         組合中央会常務         理事)     田久保一政君         参  考  人         (群馬粕川村         村長)     松村 慶作君         農林水産委員会         調査室長    青木 敏也君     ――――――――――――― 委員の異動 六月十二日  辞任         補欠選任   石破  茂君     熊谷  弘君   衛藤征士郎君     宮澤 喜一君   川崎 二郎君     田澤 吉郎君   二田 孝治君     近藤 鉄雄君   山原健二郎君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   熊谷  弘君     石破  茂君   近藤 鉄雄君     二田 孝治君   田澤 吉郎君     川崎 二郎君   宮澤 喜一君     衛藤征士郎君   金子 満広君     山原健二郎君 同月十三日  辞任         補欠選任   佐藤  隆君     宮里 松正君     ――――――――――――― 六月十二日  森林の復元に関する請願(阿部昭吾紹介)(  第二四八四号)  同(江田五月紹介)(第二四八五号)  同(菅直人紹介)(第二四八六号)  同(楢崎弥之助紹介)(第二四八七号)  同(上田哲紹介)(第二六一〇号)  同(金子みつ紹介)(第二六一一号)  同(渋沢利久紹介)(第二六一二号)  同(多賀谷真稔紹介)(第二六一三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月十三日  食糧管理制度の堅持に関する陳情書  (第一七〇号)  林業の振興に関する陳情書  (第一七一号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農用地利用増進法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五七号)  特定農地付けに関する農地法等特例に関す  る法律案内閣提出第五八号)      ――――◇―――――
  2. 近藤元次

    近藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農用地利用増進法の一部を改正する法律案及び特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案の両案を議題として、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  本日は、両案審査のため、参考人として、全国農業会議所事務局長柳澤和夫君、全国農業協同組合中央会常務理事田久保一政君、群馬粕川村長松村慶作君、以上三名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  柳澤参考人田久保参考人松村参考人の順に、お一人十分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、柳澤参考人お願いをいたします。
  3. 柳澤和夫

    柳澤参考人 ただいま御紹介にあずかりました、全国農業会議所柳澤でございます。  当委員会並びに諸先生方におかれましては、日ごろから農業農村振興のために大変な御尽力をいただいております。心から感謝申し上げます。また、私に意見を述べる機会を与えていただきましたことに対しまして、厚く御礼申し上げます。  私は、現在当委員会で御審議いただいております農地法案につきまして、賛成立場から御意見を申し上げたいと存じます。  私ども農業委員会系統組織では、御案内のとおり、去る四月二十四日、構造政策推進全国農業委員会代表者大会を開催いたしまして、農用地利用増進法改正等農地法案早期成立に関する要望を決議し、国会並びに政府に要請したところでございます。  さて、御承知のとおり我が国農業は、今日、かつて経験したことのない農畜産物市場開放、需給不均衡と価格の低迷、担い手の急速な高齢化後継者の不足など、解決すべき新たな課題に直面しております。これらの課題を克服して、二十一世紀に向けて産業として自立し得る農業確立を軸としまして活力のある農業農村を築き上げるためには、本格的な、かつ総合的な構造政策を強力に展開していくことが不可欠であると存じます。  昭和五十五年には、先生方の大変な御尽力によりまして、農用地利用増進法を初めとする農地三法が成立いたしました。これを契機にいたしまして農業委員会系統組織では、さまざまな組織制度上の問題を抱えながらも、担い手に対する農用地利用集積中心とする農地流動化組織を挙げて取り組んでまいりました。おかげさまで、利用権設定面積のストックは昨年末現在で二十三万四千ヘクタールに及ぶ実績を上げるまでに至りました。しかしながら、農業をめぐる新たな情勢は、担い手に対する農用地利用集積中心とした構造政策の加速的な促進を求めているのでありまして、農業委員会役割機能強化を含め、このための法制の整備を行うことが必要であると存じます。  本日御審議いただいております農用地利用増進法の一部を改正する法律案は、こうした情勢にこたえまして、構造政策を一層促進するため、中核的な担い手等に対する農用地利用集積を加速するとともに、このための農業委員会土地利用調整機能強化を目指すものであると存じます。  次に、市町村による農業経営規模拡大計画認定制度であります。御案内のとおり、全国農業会議所系統組織を挙げて取り組みました昭和六十一年九月の農林水産大臣諮問の答申におきまして、私どもは、意欲のある農業者自主登録制度とこれらの農業者に対する政策的な配慮、特に農業経営規模拡大促進を図るべきことを提案してまいりました。改正案における規模拡大計画認定制度はこうした提案を踏まえたものでありまして、あくまで農業者の自主的な意欲をくみ上げようとするものであり、決して行政がいわゆる上から選別する制度ではないと考えております。  さらに、市町村農業委員会農業協同組合農業公社など、構造政策実施推進機関並びに団体が、それぞれ責任を分担しながら相互に連携協力することによって、総合的な力を発揮して構造政策推進する体制整備しようという点、また、最近拡大傾向にあります遊休農地の解消とその有効利用促進する措置がとられている点は、構造政策の本格的な展開の第一歩を踏み出すものであると評価いたしております。  なお、私はここで特に要望しておきたい点がございます。構造政策推進に当たりまして特に重要なことは、このための条件整備の施策を充実することであります。構造政策年金でありますところの農業者年金制度の長期安定のための制度改正農村地域への工業等の導入、農産加工振興など、多様な形での雇用就業機会所得機会の確保、さらに基盤整備促進などにつきまして、先生方の特段の御配慮を賜りたいと存じます。  また、特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案は、遊休農地の活用、都市住民農村あるいは農作業体験に対するニーズにこたえるとともに、農山村地域活性化を図ろうとするものであり、いわば構造政策の補完法的な性格を持つものであると存じております。農業委員会の承認がこの事業実施要件となっているわけでございますが、この事業農用地区域で実施する場合には、本来の農業的土地利用との調整が極めて重要な課題となってまいります。この点につきましては、政省令等によりまして十分な手当てをお願いしたいと考えております。  先生方の御審議によりまして、農地法案が今国会で速やかに可決、成立いたしますよう、どうかよろしくお願い申し上げます。  最後に、農地法案が今国会で成立した暁におきましては、平成二年度の予算編成に当たりまして、農地二法の普及、啓蒙、さらに実施推進の実効が上がりますよう、予算措置につきまして特段の御配慮お願いしたいと存ずるわけでございます。  これで、私の意見の開陳を終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手
  4. 近藤元次

    近藤委員長 ありがとうございました。  次に、田久保参考人お願いをいたします。
  5. 田久保一政

    田久保参考人 御紹介をいただきました全国農協中央会田久保でございます。  諸先生には日ごろ格別の御指導、御鞭撻をいただいておりますことを、まずもって厚く御礼申し上げます。またあわせて、本日は参考人の一人として私を御指名いただき、意見表明の場をお与えくださいましたことに対しまして、委員長初め委員の皆様に重ねて厚く御礼を申し上げる次第でございます。  早速でございますけれども農地法案に対して、私も賛成立場から意見を申し上げさしていただきます。  初めに、この法律案に関連する事項につきまして、私ども系統農協としてたどってまいりましたこれまでの経過を若干申し上げ、次いで意見要望事項を述べさせていただきたいと存じます。  申し上げるまでもなく、我が国農業生産性改善に当たって大きな阻害要因となっておりますのは規模零細性であります。これを克服するためにこれまでさまざまな手段が試みられてまいりましたけれども、なかなか思うに任せない状況にあるわけでございます。その理由は農家農地に対する所有の観念に根差すものであることは申し上げるまでもないことと考えるところでございますが、そこで私ども系統農協といたしましては、こうした面の改善策として、またあわせて、非常に高率に展開されておりますところの稲作の生産調整のための転作の合理化、定着を図る見地から、集団的土地利用秩序形成を主軸として今日まで進めてまいった次第でございます。  この集団的土地利用秩序形成につきましては、私どもで三年に一度開催いたしております全国農協大会昭和五十四年の第十五回全国農協大会でこの問題を提起いたしまして、そこで決議を受けて以来これに取り組んでいるところでございますけれども、具体的な内容といたしましては、地域営農集団育成として進めてまいった次第でございます。地域営農集団は、企画、運用よろしきを得るならば、集落単位とした輪作体系が可能でありますし、また農場的大規模生産体制の構築と展開が期待できるということからであります。  その結果、さまざまなタイプを合計してではありますけれども、今日ようやく二万七千の営農集団を数えるまでに至りたわけでありますけれども、私どもといたしましては、二十一世紀に向けて、農業地帯にありますところの集落総数の約半分に当たります七万についてこの地域営農集団を編成し、合理化の実を求めてまいりたいというふうに考えているところでございます。  次に、作業受委託でございますけれども、これもまた生産単位拡大する上で実現性の高い重要な手段でありますので、全農協が取り組むべきであるということを前回の大会で決定して、今日取り組んでいるところでございます。また、利用権のあっせんや、農協農用地を借り受け、地域農業振興のための利用計画に基づき担い手農業者農地を貸し付け転貸機能を積極的に担って、中核的な農家規模拡大を図っていくということをぜひ進めていきたいというふうに念じているわけでございますけれども、この法案においてそうしたことが内容として盛られているわけでございますので、この点に期待をいたしているところでございます。  さらに、十八回の農協大会において、従来からの地域特産加工事業振興に加えて、行政等と提携をいたしまして農業公園あるいは観光農園市民農園学童農園の設置について努力をしている。そのことによって都市農村の交流を深めることを求めてまいりたいと思いますし、また、あわせて理解者を多く都市に求めてまいりたいというふうに考えているところでございます。  以上、大変粗筋でありましたが、これまで系統農協としてきょうの法案に関連する事項として進めてまいりましたことを、経過としてお話を申し上げておきたいと思います。  そこで、私からぜひ申し上げさせていただきたいと考えております意見について、これから申し上げさせていただきます。  農用地利用増進法の一部を改正する法律案につきましては、第一点といたしまして、農用地利用増進計画策定申し出農協としてもできるように、ぜひお取り計らいをいただきたいというふうに願望している次第でございます。  先ほど申し上げましたように、農協は、農業構造の再編と地域農業振興を図るために地域営農集団育成に取り組んでいるところでございますけれども、これを発展させるためには集団的農用地利用調整に取り組むことが不可欠の要件であると考えているわけでございまして、そのために、農用地利用増進計画申し出に係る農用地利用調整機能農協にもぜひ付与していただきたいと考えている次第でございます。  第二点といたしましては、農用地利用増進法の中で、農協農作業受委託推進に取り組めるよう、明確に位置づけていただきたいというふうに考えておることでございます。  農作業受委託促進は、農地利用権所有権移転土地集積が進みにくい中にありまして、中核的な農家生産単位拡大する上で重要な手段でございます。現在、農協においては千六百農協程度、これは総農協数の約四割に相当いたしますが、この千六百農協農作業受委託を進めているところでございます。これを一層充実してまいりたいというふうに念じているところでございますけれども、こうしたことを法に位置づけていただきますことは、作業受委託に取り組む農協にとりまして大いなる意義をこのことによって改めて感ずるところでございまして、そのことによって飛躍的にまたこの辺も増加をすることが期待できるというふうに考えている次第でございます。  第三点でございますけれども農用地利用増進事業におけるところの利用権設定推進に当たりましては、水田農業確立対策推進食管法米流通秩序を妨げることのないように、諸制度に違背する農業者がもし農地集積を求めてまいりましたような際には、制限を加えるなどの強力な御指導をいただければ大変幸いだというふうに考えております。  それから第四点といたしましては、法律案に、農業委員会は、農業経営規模拡大を図るための計画について市町村認定を受けた者から農用地について利用権設定等を受けたい旨の申し出があった場合には、農地保有合理化法人協力を得つつ、必要な場合には勧奨を行って農用地利用関係調整に努める旨がいただきました法案の中に記されてございますけれども、このことにつきまして、本法律運用においてぜひ混乱が生じないように適切な御指導を賜れれば大変幸いだというふうに考えておるところでございます。  以上四点を、この法案につきまして意見あるいは要望事項として申し上げたところでございますけれども、申し上げました第一の点あるいは第二の点につきましては、法案を拝読いたしましたところでは既に法案に盛り込まれているようでございますが、本委員会においてこのことを御審議いただいて、一日も早く成立して、その仕事に取り組めるようにお願いをしたいというふうに考えるところでございます。  それから、続いて特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案について申し上げさせていただきます。  この法案につきまして、私どもといたしましては、一般公衆に貸し付けることのできる農地は農振地域の白地と農用地区域農地とされているわけでございますけれども農用地区域農地は、本来農業振興を図るべき地域であることから、原則として対象農地として認めるべきではないということでございました。そのことを私どもも考え、こうしたことに対してはそういう意見を今まで述べてまいったわけでございますけれども、この点につきましては、これも法案を拝見いたしますと「農地の周辺の地域における農用地農業上の効率」云々ということの規定が盛り込まれておりまして、農用地区域農地を無原則に貸し付けるようなことにはならないということになっておりますので、また、このことを行うことによって、最前も申し上げたところでございますけれども、国民に農地を貸し付けて広く利用してもらうことによって農業のよき理解者都市住民に広げていくということも期待できるところでございますから、本法案に私ども賛成を申し上げている次第でございます。  本法律案につきましても、まことに時宜を得たものというふうに考えておりますので、今国会でぜひ成立してくださいますようにお願いを申し上げ、私の意見といたします。(拍手
  6. 近藤元次

    近藤委員長 ありがとうございました。  次に、松村参考人お願いをいたします。
  7. 松村慶作

    松村参考人 お許しをいただきました、群馬県勢多郡粕川村の村長を務めさせていただいております松村慶作でございます。農政問題で大変御苦労賜り、御活躍くださっておられます先生方の御苦労に、まずもって感謝を申し上げさせていただきます。  大変貴重なお時間をいただき、私ごとき者の御意見を聞いてくださるお時間をいただくことができましたことを厚くお礼を申し上げる次第でございます。大変光栄に存じて深く感謝をしております。駆け出しの村長にて大変不勉強のためにうまく表現できず、また失礼多いことと存じますが、お許しいただきたいと思います。  恐れ恐れ参りましたところ、大変日ごろ尊敬しており、またお世話になっておる谷津義 先生もお見えでございますので、千人の味方を迎えたような強い勇気に燃えてまいりました。私もこの二法案に対しましては大賛成であり、何とかこれを通させていただきたいという事柄から、現場を預かる者として、幼稚な御意見になろうかと思いますが率直に申し上げさせていただきたいと思います。  まず最初に、農用地利用増進法の一部を改正する法律案でございますが、一番目に、地域の実情に即した合意形成促進目標策定はどうしても必要であり、急がなければならないものと考えております。昔、子供心にお聞きいたしますと、大工さんの一日の手間代がお米三升、商工業者の一日の活動が四里四万の道のり、小作百姓小作料一反米三俵から四俵。自作農の実現とともに人力の時代は去って、電話一本でどこからでも何でも間に合うような近代社会になって、だれもがすべてのものがどこでもできるだけに、遠い方によいものがないかと目を向けがちでございまするけれども,一番大切なことが足元にあることを忘れているのではないかと思うわけでございます。そんなときに、国でお考えのふるさと創生一億円は大きな役割を果たすものと考え、大変ありがたく考えております。  私の村でも五十歳以下の農業担い手が少なく、高齢者が多く、若年層の他産業への流出は引き続き行われるものと考えております。その原因は、一つは、農作物育成期間が長く、年に一度または二期作くらいのものであるということ。農作物中で特に米、麦、養蚕の経営農家の収益がごく少ないということ。また、農家家族形成が昔のままにたえられないこと。自分の家の嫁は農家からもらいたいが、娘は農家にくれたくないという方々、また、子供が高校に入ってもなお小遣い銭や学費を自分がままにならないという家庭もありますが、農家経済の貧しさからきているものと考えます。  週休二日制と裏腹の農業に、農業構造改善で、市町村がこの法の実現によって大きな地帯、小さな地帯それぞれの地域目標策定して、農家不安感を除くための指導が必要と考えます。よき指導には農家方々はきっとついてくると自信を持っている次第でございます。  二番目に、農用地利用増進計画策定農業関係団体役割分担でございますが、農業委員会農業協同組合市町村行政が一体となって協力体制を一層強めていかなければならないとき、この法ができたときは市町村自分たち地域をまとめ、よりよい地域づくりを進める上に、農業離れ、農協離れ、深刻な事態を増すばかりで農協の占める役割は大変大きいものがあり、共存共栄の実を上げるために市町村分野責任は重くなりますが、大変よい政策と考え、高く評価をしておる次第でございます。  私の村の事例を申し上げますと、西に前橋十四キロ、東に桐生十二キロ、南に伊勢崎十一キロ、北に赤城山十五キロの谷間にありますので、比較的土地の価額が安い、手に入りやすいということで、経済的に困っている農家に、村外、遠くは東京等の個人、不動産屋から売買の話を詰められて村へ持ってまいりますが、法的その他で適切であるか否かを指導する立場に立って幾つも重なる問題が多いので、農業委員会代表者農業協同組合代表者、議会の代表者等から成る粕川土地利用対策協議会をつくり対応しているところでございますが、単に村での仮の方法でございますので、その指導性理解度が薄く苦労しているところでございます。この法ができれば、一層力強く自分たち地域自分たちみんなでよい地域をつくり、よい農業形態をつくるということから意欲自信を得るものであって、大変ありがたいと考えている次第でございます。  農業協同組合農作業委託農用地利用増進計画、また農業生産法人構成員農用地の貸し付けまたは取得については、農業構造改善上大きく有効化するものと考えます。  私の村ではいろいろな事業で国にお世話になってまいりましたが、大きなものを挙げてみますと、昭和五十三年から昭和六十二年の十カ年に村の九五%、七百九十一ヘクタールの土地基盤整備事業の完成を見ることができました。昭和五十三年から十七億の総事業費をいただき、高能率生産団地育成事業昭和五十五年から新農業構造改善事業等のお世話になりました。おかげさまで六十二年度には農林水産大臣よりお褒めをいただくことができました。また、農業構造改善普及用の映画等を撮っていただきましたが、並木先生ほか農政審議会の先生方をお迎えし御指導いただく機会もございました。  村に十一大字がございますが、機械化集団連絡協議会に七百七十四名の参加者、十カ所の機械仕組合がございますが、八十五名の農作業受託のオペレーターが対応しておりますので、遊休農地の対応と農用地利用増進事業利用権設定等も平成元年三月末で群馬県平均と同じぐらいで、利用権設定率は四・八八となっております。  また、水田対策には、大豆栽培集団連絡協議会があって、三年に一度ずつ地区を定めて村の三割程度、六十二年度は国の百三十七ヘクタール割り当てに対し百三十七・二ヘクタール大豆をつくり、六十三年が百四十三ヘクタール割り当てのところ百四十六・七ヘクタールと、一〇〇%を超すところの大豆等栽培しておるところでございます。また畑作営農推進協議会がございますが、今後さらにこの会の活用が必要となっております。  村平均一戸当たりの耕地面積が一ヘクタールで、畑が四十アール、田が六十アールでございますので、養蚕が主軸でございましたが、これは高齢者の対応で、後継者がごく少ないために大きく変わってくるものと考えておりますときに、この法案先生方のお力で何とか成立させていただきたいことをお願いする次第でございます。  三番目として、遊休農地有効利用を図るために、農業委員会指導市町村長の勧告、農地保有合理化法人の買い入れ等協議制度につきましても、どうしても必要と考えます。  なぜ遊休農地になってしまうかを考えてみますというと、人に貸してしまうと戻ってこなくなるという点、取られてしまうという点、安く買われてしまうという点など、旧制度の小作制度時代の観念がまだ抜け切れないということ。二番目に、持っていればどうにかなる、今に高く売れるなど、土地への愛着心は、農民であればだれも思う土は農民の魂であるということが抜け切れない等が考えられるかもしれません。農地は耕作して初めて価値観が生まれ、放棄しては何の価値もございませんが、今放置されているものを考えてみますと、雑草の害、スズメなどの鳥の害、虫の害等、青少年の非行の場等となっておりまして、周囲に大変御迷惑をかけており、及ぼす影響は大変大きいものがございます。農地の保護、環境の整備からも、よく農家方々指導する上でもこの法案が大変貴重なものになろうかと考えておりますので、これもぜひお願い申し上げたいと考えます。  次に、特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案でございますが、地方公共団体農業協同組合に、貸付規程を定め農業委員会の承認を受けてお許しいただけるということができるならば、大変前進してありがたいものと考えております。遊休農地の利用活用と農地への愛着、農耕の意欲に燃え、行政の仕組みから考えてもありがたいことと考えております。  今私の村では、土地基盤整備をしたところは比較的少ないのでございますが、まだ四十ヘクタールほど土地改良していないところがございますが、その三分の一ほどが遊休農地となって、周囲に大変迷惑をかけております。そこで、村の産業課の発想で農業委員会の特別の御協議で、村の中学校の生徒に農業の体験実習の場として二十アールを六十二年米作をいたしましたところ、田舎の子供でも、靴下をはいたり足袋をはいたり買い物のビニール袋をはいたりしての田植えでございましたが、収穫の喜びは大変なものでございました。生産したお米を使ってのもちつき大会、試食会、またかかしをつくってのコンクール等までして、六十三年は、全校生徒の高い要求がございましたので六十アールに発展となって、地域の老人会及び各施設等へのその米の提供で大変好評なものも得ておるわけでございます。これは役場の産業課の職員が農業委員会の特別の計らいを得るにおいては大変な御苦労があったわけでございますが、ここに実現したわけでございます。  また、家庭菜園、レクリエーション農園を一区画一アール年二千円で貸し付けを始めたところ、近所の団地に住む若い方々、老人の方々からの申し出があり、二十アールがすぐ開始することができました。東京から田舎に戻った人、もともと農家の出の人、また遠く十四キロも離れた前橋からの四世帯もおりますが、朝早く五時ごろから来て、なれない手つきながらも村で用意した手くわ、浅くわ、シャベル等を使って、老人の経験者からの手ほどきを得て、専業農家を超すほどのよいものをつくり、自分で食べ、友人に分け合って喜んでいるところでございます。長生きは食生活からの合い言葉で、一生懸命頑張っておるところでございます。または、家庭に出てくるところの生ごみを堆肥化して有機農法に生かすこと、新鮮な野菜が自分の手でつくれる喜び、また退職者が、何もすることがなくしてぼんやりしている人がその農園によって人々との交際の場ができ、体も心も健康で実益を得たところのレクリエーションとして大変喜んでいるところでございます。農は国のもとなりと昔から申しておりますが、土なくして生きることはできませんので、みんなで国土を守る意味からも大勢の方々の利用ができるように考えてまいりたいと思っておりますので、一層の御指導を賜りたいと考えております。  最後にひとつ、これは本題から外れますけれどもお願いをさせていただきます。  まず一点に、農業者年金受給者が長年御苦労して掛金をして経営移譲を後継者にしてほっとしたところ、後継者が耕作し切れず、規模拡大しようとする者に利用権設定をしようとすると年金の支給が停止されるので、やむを得ず遊休農地または放棄せざるを得ないというのが現状でございますので、長年の御苦労の恩給と考えるとするならば、この停止をしない方法がないのか、ぜひこれを考えていただきたいと考えます。また、生前一括贈与についても同じことが言えると思いますので、お願い申し上げたいと思います。  二番目に、若い青年層が農耕に志し、規模拡大または施設的な仕事を考えようとするときに多額の資金が必要となりますが、成功か失敗かわからない悩みの中で推進するわけでございます。そのとき多額のお金を借りようとしても、裏づけのない者にお金を貸すはずがございませんけれども、その事業遂行のためにはどうしても資金が入り用でございます。先ほど申し上げました村等の認定を受けた者に、優良農民または有望な方々に、きつい指導のもとに保証制度等ができて、この推進ができればありがたいと考えておりますので、この点もお願い申し上げたいと思います。  三点は、現在の社会の情勢下、国際化の中では大変御無理を承知で申し上げたいと思いますけれども農家立場から申し上げますと、若者に農業をやれというようなことが今言えないような状況下でございますので、進んで農業をやれと言えるような農業の仕組みにしていただきたいと思うわけでございます。特に、米、麦、養蚕複合農家につきましては大変厳しいものがございます。売るものと買い入れるところの資材とのバランスが大変崩れているのではないかと考える点でございます。  この二法は適地適作、地域に適合したところの政策で、だれよりも自分たち地域を一番よくしようとみんなが頑張っておりますので、特に山間部、中山間部の方々地域の改善と整備農業振興には、どんな時代が来ようとも、昔の供出制度の時代が来ても皆さんが喜んで協力できるような体制づくりの保持こそ大切であろうかと考えますので、大変御苦労いただく先生方には生意気なことを申し上げて失礼でございましたけれども、農民を救っていただきたいという立場からも重ねてお願いを申し上げ、私のお話を終わらせていただきます。大変ありがとうございました。
  8. 近藤元次

    近藤委員長 大変ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
  9. 近藤元次

    近藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。
  10. 杉浦正健

    ○杉浦委員 杉浦正健でございます。  ただいまは三人の参考人の方から、二法についていずれも賛成のお立場での御意見、実情のお話を承りました。大変貴重なお話を承りまして、ありがたく存じている次第でございます。  大体お伺いしたいと思っておりました大半が皆さんの意見陳述で語られたようでございますが、特に現場で御苦労なさっておられます群馬県の松村村長さんからいろいろお話がございましたが、まことに参考になった次第であります。松村さんおっしゃられましたとおり、日本の農業の将来にとって最も大事なことは、若い人たちに農業をやろうという気持ちになってもらうことが大事である、足腰の強い農業とかなんとか言われますが、若い諸君がサラリーマンになるよりも農業を選ぶ、そういう魅力のある農業を国、地方自治体、農協等関係者が協力一致してつくっていくということが大事だろうと思うわけでございます。この二法もそういった趣旨から提案されておるわけでございますが、きょう、主体でございます地方自治体、農協農業委員会から関係者がいらっしゃっておるわけでございますが、関係機関が連携協力を深められまして、構造政策推進し魅力ある農業をつくっていくように御尽力賜りますよう、まずお願いを申し上げておきたいと思います。  野党の皆さんもおおむね賛成のように拝見しておるわけでございますが、この二法につきましていろいろ御意見、御要望もあったわけですが、改正が実現した場合、それを一応前提としてその上の要望がございますれば、お三方から簡潔につけ加えて承れればありがたいと思います。  また、私今お話を承って、農業委員会農協系統組織、それぞれが構造政策推進を図る上で体制整備が十分いっているのかどうか、そのあたり、どのような体制でやっておられるかもお二方にお伺いできればありがたいと思います。時間が十五分しかございませんので、それぞれ簡潔にお答え願いたいと思います。  それから、新たに御提案申し上げております特定農地の貸し付けに関する法制ですが、これは都市住民と農民との交流の機会を持つということで大変意義のあることだと思いますけれども、今、村長さんからある程度お話しございましたが、農業委員会農協関係の方でどのような取り組みをなさっておられるか、若干承れればありがたいと思っております。  簡潔にお三方から御意見を賜れればありがたいと思います。
  11. 柳澤和夫

    柳澤参考人 ただいま一応申し上げたところでございますが、この法案が成立しました暁の問題でございますが、体制整備につきましては、農業委員会系統組織では農業基本法が制定されまして以来構造政策推進なり農地の流動化に取り組んでまいりましたが、制度的にも財政的にも非常に不備な点がございまして、そういう中で努力をしてまいりまして現在の実績を上げてまいったわけでございますが、今後とも事業が円滑に推進できますよう、さらに農業委員会組織整備が十分対応できて事業の成果が発揮できますようによろしくお願いしたいと思います。  以上、簡単でございますが、私の意見でございます。
  12. 田久保一政

    田久保参考人 農協といたしましては、先ほど意見のところで申し上げましたとおり、今度の法案が通りますと改めてその役割がふえてくるわけでございますので、こうしたことを十分にわきまえて体制整備を進めて十分に果たしてまいりたいということでございますけれども、当面といたしましては、法案が成立した後、具体的な事業につきまして関係職員等の研修等を図って、十分にこれに対処したいというふうに考えます。  それから、特定農地の貸し付けの問題でございますけれども、これも先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては貴重な農地が侵害されないように十分な配慮をしながら、かつ法の目的を生かすように当たってまいりたいということでございますけれども、いずれにいたしましても、現在まだ初めてのことが多いわけでございますから、いろいろなことを研究しているという状況でございます。
  13. 松村慶作

    松村参考人 先生にお答えさせていただきますけれども、今私どもも村をお預かりしておって、地域づくりを進める中で農業委員会の占める割合と農業協同組合の占める割合と村とが一致になって村の形成をつくろうとするというと、今までの農業法律にもう一つ加えていただきたいと願って既に手がけてまいりましたことが、この法が成立することによってはっきり明確化されて私どもが進む道に明るいものが見え出したということで、強く打ち出せるということで自信が持てますので、この方向で御指導いただければありがたいということを申し上げて、答弁にさせていただきます。
  14. 杉浦正健

    ○杉浦委員 松村参考人にお伺いしたいと思いますが、農地の流動化を促進しなければいけない、そして担い手農地を集中して生産性の高い農業をやるということが基本だと思うのですね。そうなれば、若い人もサラリーマンになるよりもいいだろうということで来てくれる可能性があるわけですが、それはそれで大事なことなのですけれども、それをやるためには、今まで農業をやっていた人に農業をやめてほかの仕事についてもらわなければいかぬとか、そういうことも必要になるわけですね。農村活性化ということが言われるわけですし、就業機会、工場を誘致したりそういう確保ということも一面必要だと思うのです。そういった点について、おたくの方でいろいろと御努力なさっておられるわけでございますが、御意見を賜れればありがたいというふうに思います。  また、特定農地の貸し付けの問題は、今ふるさと創生ということが言われておるわけですが、村おこしと申しましょうか、都市から多少遠くとも交通手段が発達しておりますから車で行くとかいうことで、そういう地方の活性化のいろいろな事業の中にこれを入れていろいろな試みができるのじゃないかという感じがいたすわけですが、その点についての御見解があればお伺いしたいと思います。
  15. 松村慶作

    松村参考人 お答えさせていただきます。  今、先生のお話のように、私どもも若い層に農地をもう少し広げて大きな規模体系になりなさいよと言う中で、農家の経済情勢が非常に苦しいです。私ども農家の平均所得が七十から八十万円以内でございます。そういう状況下において、若い者の農地の拡張に資金が入り用でございます。そのときに、先ほどお願いいたしましたように、何か裏づけとしたところの指導をもって資金の貸し付けがしていただければありがたいというふうなお願いが一つございます。  それから、農地があいてくるであろうと想定しますけれども、工場の誘致等も考えますが、これはやはり農地法の問題をクリアしなければならないし、土地改良法の規定をしなければなりませんので、土地改良法の十カ年という、これは大変厳しいと思うのです。これを五カ年くらいで何とかおさめていただけるとするならば工場導入というものももっと進むであろうと考えておりますので、この二点が何とかなればと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  16. 杉浦正健

    ○杉浦委員 以上で質問は終わらせていただきます。
  17. 近藤元次

    近藤委員長 次に、竹内猛君。
  18. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 参考人の皆さんには御多用中御出席をいただいて、貴重な御意見ありがとうございました。  私は、まず農業会議柳澤さんにお尋ねします。  農業会議農業委員会は日本の農業のあるべき姿を時々大会で決定をして出しておりますけれども、今日の日本の農政を見ると、外国からの自由化の圧力、国内では財界を中心とした農業つぶし、これで大変なことになっている。行政改革の中でも、工業は九五%、農業は五%、九五対五というような言い方をする委員もおる。それくらいに日本の農業というのは邪魔者にされているという中で、政府のとっている方針は、農業農村、農民、食糧、この四つに問題を整理したときに、一体このままでいいかどうか。やはりあるべき展望というものがあって、それに向かってここでこうしていくんだという筋道がなければ、最近の全国の農業青年、若い青年が今の与党から批判をして離れていくということが如実に語っているように、この問題については農業会議としてどう考えるか、この法律が通ればにわかに夜が明けたように明るくなるかどうか。  私はそうは思わない。土地の面積だけふやしても、それだけではなかなかそうはいかない。構造政策だけではいかない。なぜならば、農業基本法ができてから三十年、都市農村との所得の格差をなくすといって中核農家をつくると言ったけれども、それが今できていない。そういうことから見たときに、この点についていかがですか。
  19. 柳澤和夫

    柳澤参考人 確かに御指摘のとおりの問題が、農村、特に農業者では最近のいろいろな情勢から非常に大きな問題になっておると思いますが、たまたま政府でも、六十五年見通しは今そろそろ期限が来ておりますが、次の見通しにつきまして現在作業中と聞いております。そういう情勢を踏まえて、農業の実行に取り組んでいる連中に非常に明るい希望を持たせるような需給の姿をひとつこの辺で政府が示していただくことは非常に重要だと思いますので、その点大いに期待しておるわけでございます。私どもも、そういう厳しい情勢の中で、国民の同意を得ながら少しでもそういった情勢に対応できるような条件づくりに日夜取り組んでおるわけでございますが、そういう見通しの問題につきましても、政府の御努力をお願いしたいと思っております。
  20. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 田久保さんにお尋ねします。  最近農協を歩いてみますと、消費税ができて、書類をつくるのに非常に手数がかかってしようがない、ややこしい、あれは早くやめてくれという声が強い。特に女性の職員からこれが強いですね。それにもかかわらず、農協は消費税については意外にほおかぶりをしている。それはつくったものを売るには競りという問題があるかもしれないが、肥料を買おうが農機具を買おうが何を買おうが消費税がかかってきて、最終消費者がこれを負担するわけだ。だから消費税の問題について農協はもう少し積極的に取り組まなければ、農協自体が信頼を失うと思うのです。そういう点が第一点。  第二点は、農業の労働者、専従職員というものが男性が非常に少なくなってきた。恐らく女の労働力というものが農業をカバーしている。それと高齢者ですね。これが農協の運営の中に発言力を持たない。仕事はするけれども物が言えない。こういうことが、今度の十八回の展望、戦略の中では一戸主義から個人だという形になっているから恐らく変わるであろうと思うけれども、もう少し農村における女性を大事にできないものか、これが第二点の御質問です。それだけひとつ。
  21. 田久保一政

    田久保参考人 第一点の消費税の問題でありますが、今先生からお話がございましたように、全国の各地から消費税についてさまざまな御意見を実施後いただいております。その問題につきましては、まだ私どもとしては集約をいたしておりませんので、いずれもう少し時間を置いたところで改めて各地の意向を取りまとめて処置をしてまいりたいということでございます。  それから第二点の女子職員の問題でございますけれども、男女雇用平等法がもう施行されているわけでございますから、形の上では全く男子職員と差がないということでございますが、この雇用の問題は農協といえども農協においてそれぞれの方針があり、それぞれの考え方があるわけでございます。したがって、一般論的に私どもといたしましては女子職員の活用ということは事業効率上も必要なことでありますから申してはおりますけれども、具体的な日常的な当てはめ方につきましては、各協同組合の経営権に属することでございますので、そこにお任せをするという以外にはないと思います。  繰り返しますが、一般論としては当然、農業はともかくといたしまして、現在他産業がいんしんを極めているわけでございまして労働力の不足が言われている際でもありますので、先ほど申し上げました事業効率の問題とそれから今申し上げました有力な人材を確保するという意味で、十分にその能力を尊重してまいりたいというふうに考えます。
  22. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今ちょっと私の質問に対して誤解がありまして、女子職員というのは、農協に働いている職員の雇用の問題じゃない、そうじゃなくて、農村農業に従事している専従職員に女性が多いというふうに言っているわけです。その声が運営の中にあらわれてこないのは、つまり組合長とか理事とかそういうところへ来ないでしょう、それはどうかという話です。
  23. 田久保一政

    田久保参考人 御質問を取り違えてお答えして大変申しわけございませんでした。  これも各農協によって異なります。既に理事として御婦人を加えておられる農協もありますし、それからまたその逆に、そういうことを全然されておらないところもあります。全中といたしましてはぜひ、現実に生活の中心であり、また営農上も極めて有力な従事者でありますから、婦人の声というものが十分に伝わるようにということで、県中それから農協の方にはその旨をお伝えするようにしております。
  24. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 松村参考人にお尋ねしますが、米価の決定が、最近の新聞によるとことしは据え置きをする。本来ならば毎年下げるという方針がずっと貫かれていた。早くも新聞で、参議院の選挙にぐあいが悪いから据え置きをするというようなことになる。一体村長として、皆さんのところで今の米価というものがどうなのか、こういう形でいいのかどうか、まずこれが第一点。  第二点。米の減反をしていますね。八十、実際は七十七に五万ヘクタールだから八十二となりますね。名目はどうであってもそうなる。この減反で、二十年もやって何か定着して、これならいけるという確信を持ったものがありますか。これが第二点。  第三点。農村における人口の状況というものは一体どういう形になっているのか。この二法というものがうまく通っていけば、若い青年が定着をし、そして嫁に来るような農村が展望できるかどうか。  この三点についてお答えをいただきたい。
  25. 松村慶作

    松村参考人 お答えさせていただきます。  まず最初の米価の問題でございますが、これは国際上、現社会ではやむを得ないというふうに半分はあきらめますけれども、何とか方法がないかということがまだ捨て切れない問題の一つでございます。  私どもの方では、先ほど申し上げましたように平均一町歩であって、田んぼが四反歩、畑が六反歩の中で米をつくってまいりますと、どうしても一反歩七俵しかとれません。それで、全体的に見ますと政府に売れるお米が八千三百五十八俵でございます。出荷する農家を一軒頭に割ってみますと十三俵でございます。一万七千六百円を掛けますと二十二万八千八百円にしかなりませんけれども、これにはどうしても機械、肥料、飼料等を使いますと半分はかかってしまいますので、粕川村の平均を見ると十万八千八百円というのが数字の上からは出てまいります。しかし、これをするのに機械の耐用がどうなのかということになりますと、コンバインでおよそ六百八十万ぐらい、トラクターで二十五馬力で二百五十万から三百万ぐらい、それから六十六馬力で五百五十万から六百万ぐらいでございますけれども、これが五年間ぐらいが大きな耐用でございます。一つのロータリーを考えてみましても、歯を取りかえるのに一機一年三十万からかかっておる現状でございますので、先ほど私が申し上げたのは、売るものと買うものとのバランスがちょっと悪過ぎるので、今の農業を進めさせたくも進めろと言えない現状がここにあります。  それからもう一つは、今の減反をして定着してまいりましたけれども、おかげさまでうちの方は土地改良が村の九〇%を超えるものができましたので、大豆というものを取り入れて大豆によるところの集団化をしましたものですから、隣近所の融和、それから大型機械をそれほど使わなくも対応できるということで機械の消耗費が少なくなってきているという点から、米よりもむしろ大豆栽培の方が効率であるということが見出せましたので、この点は大変よかろうかと考えております。  そこで、人口の移りでございますけれども、ちょっとここに先生に見ていただければわかるかもしれませんが、この言い方が男、赤い方が女でございますけれども、三十歳から三十九歳のものを見ますと、男が四〇に対して女が五五、それから男が三九に対して七一というのが現在の状況でございます。したがって、一定のわらじを履いているという、奥さんに農業をやらせてだんなさんが勤めに出るという現状でございます。昨年から今後四年間の新就農を見ますと、私どもの村では一万七百五十人いる中で一人も農業につくという人がおりませんので、これから大変心配をしているところでございますので、この新法案をもとにして新しい推進を強く打ち出したいというのが現状でございます。よろしくお願いいたします。
  26. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 時間がなくなっているんですが、ことしの農業白書を見ると、農業所得というものが九十四万三千円、それから農外所得が四百六十六万八千円、それから年金、そういうものが百五十五万一千円。農家所得の合計が七百十六万三千円の中で九十四万三千円という農業所得というのは、今村長さんの言われたような状態だと思うのですね。こういうことで、高い機械を買って他の農外収入でこれを払っていく農業というものは、健全な農業と言えるかどうかということについて、時間がありませんから、それぞれの参考人方々に一言ずつお答えをいただきたい。
  27. 柳澤和夫

    柳澤参考人 現在の法案をぜひ国会を通していただきまして、一刻も早く十分な収益を上げられるような農業を育てたいと考えております。
  28. 田久保一政

    田久保参考人 農外所得が多いということは兼業主体になってきているということからしてやむを得ない結果だと思いますけれども、現在の農業所得を実質的に、いわば手取りを大きくするような努力をしていかなければならないと考えております。したがって、生産資材あるいは消費資材といったものについてさらに一層の合理化を図ってまいりたいと考えます。
  29. 松村慶作

    松村参考人 今お話し申し上げましたように、村の現状が八割が農外収入、二割が農業収入という厳しい状況にございますが、この法案をもとに一つ一つ盛り上げてまいりたいと考えます。よろしくお願いいたします。  なお、一つ追加させていただきますが、今の大豆の転作の奨励金が、これ以上下がりますと対応し切れません。現状はどうしても守っていただきたいことをお願い申し上げます。
  30. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 どうもありがとうございました。終わります。
  31. 近藤元次

    近藤委員長 次に、水谷弘君。
  32. 水谷弘

    ○水谷委員 参考人の皆様方には大変お忙しいところをおいでをいただき、さらに貴重な御意見を賜りまして、心から御礼を申し上げます。  時間がございませんので簡潔にお尋ねをいたしますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず、全国農業会議所事務局長柳澤参考人、今回のこの二法、私は方向としては大切な方向であり、この内容についても深く理解をしておりますが、今まで農用地利用増進、いわゆる中核的な農家に対する農用地利用集積のために農地三法を初めとしていろいろな取り組みがなされてまいりました。しかしながら、今日までこれが思うように進んでまいりません。そこにいろいろな原因があることはよくわかっておりますが、私どもが伺っている主なところでは、中核的にこれから自立して一生懸命やろうとしている農家方々の展望が開かれない。その人たちの展望を開いていくためには国は一体どうすべきか、自立してこれから頑張っていこうとしている人たちにとって、例えば米価の問題も、先ほど来いろいろ御指摘がありますとおり八七年度では五・九五%、八八年度では四・六%の引き下げ、現在既に六十キロ当たり一万六千七百四十三円というような低米価、本当に小作料も払えないというふうな状況の中で、どうして農地集積してこれから一生懸命農業展開していこうという意欲がわいてくるだろうか。その辺が私は一番問題だろうと思っておりますが、このことについて国に対する御要望、御要請を明確にお示しをいただきたい。  もう一つは、市町村農業委員会、私も何度も訪ねたことがございますが、そのスタッフ、陣容を拝見しておりますと、いよいよ農業委員会が今まで以上にこれから新たな事業に取り組んでいっていただかなければならない、その場合に果たしてこのスタッフ、陣容でできるのかな、こういうことを率直に心配するわけであります。この新たな二法制定後、全国農業会議また各市町村農業委員会体制をどういうふうに整えていくべきか、そのことについて御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  33. 柳澤和夫

    柳澤参考人 第一の問題でありますが、確かにその辺が非常に大事なところでございますが、政府はある程度の具体的な明るい展望を一つの見通しとして示していただくことがまず非常に大事だと思います。それと、それに到達する手段としまして、今回二法を御審議いただいているわけでございますが、その他の関連します金融の問題であるとか税金の問題であるとか、あるいは特に就業機会の問題とか構造政策推進が順調に進むような施策を充実させていただくということが非常に大事だと思います。まず展望が、例えば価格は、麦価についても四年続きで下がっておりますし、米価につきましても二年ということになりまして、今非常に不安な問題を農業者に与えております。自由化につきましても、牛肉・オレンジというふうな問題だけでなくて、そのこと自体が心理的に大きな影響を与えているというふうな感じがいたしますので、どこに農業の歯どめを設けて生産に取り組むべきかという点が非常に不安でありますので、やはりそこら辺はある程度安心して取り組めるような目標というものをかなり具体的に示してほしいというふうなことが一つ考えられます。  それから第二の問題につきましては、体制の問題でありますけれども、先ほども申し上げましたが、現在の農業委員会農業会議、県段階では農業会議でございますが、特に財政的な面で私ども組織は十分なものでございませんので、一番その辺のところにつきましては国の補助金等によりましててこ入れを十分にやっていただきたいと思いますし、いろいろ制度、仕組みの上でも、できますれば今後なるべく早い機会に、本法案とは別の問題としまして体制整備について十分な御配慮お願いできればありがたいと考えております。  以上でございます。
  34. 水谷弘

    ○水谷委員 ありがとうございました。  次に、全中の常務理事田久保参考人お願いしたいと思います。  農地保有合理化促進事業、これは農地法施行令の第一条の三の一に既に「農業協同組合農地保有合理化促進事業を行うこと」、このようにされております。しかし、いろいろ伺っておりますと、現状ではこの事業は全国的にもごくわずかしか行われていない、このように承っておりますが、その現状と、今後これについてどういうふうにお取り組みをされていくのか、その点をまず一つお尋ねをしたいと思います。  それから、ただいま農業会議柳澤参考人にもお尋ねをした問題でございますが、農協組織の中で新たにこのような農用地利用増進計画策定等の事業に取り組まれる、これは今までの農協事業の中ではまた大きな新しい開拓であり、前へ向いていく大事な事業であります。しかし、それに対する体制づくりといいますか、それは非常に大事であろう。それができ上がりませんと、法ができても制度ができても、現実に農協地域社会において大変重要なお立場にありながらその使命を果たしていただけないのではないか、こんな心配もあるわけでありますが、そのお取り組みについてはどのようになさるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  35. 田久保一政

    田久保参考人 まず第一点の農地保有合理化事業でございますけれども、この三月までは農協として農地保有合理化法人になっておりますのは全国で二つだったわけでございますが、この四月に改めて通達が出まして、その事業を行い得る農協については新しく農地保有合理化法人になることができるようになったわけでございます。現状では約百ほどの農協がこれに参加できるというふうに思っております。また、その農協は十二分にこの事業展開する資格と能力があるというふうに判断しております。それから、その他の農業協同組合につきましても、法案の趣旨でございますように、賃貸借にいたしましても所有権の移転にいたしましても、それから組織、集団にいたしましても、できるだけ農地集積して日本農業合理化を進めるようにという趣旨でございますから、それを果たしていくという意味で、その付随する仕事としては営農指導まで入ってくるわけでございますけれども、そういったことをすべて準備して、できるだけ早い機会にその仕事につけるように、内部の準備と訓練、そういったことをしてまいりたいというふうに考えます。  それから第二点の体制づくりでございますけれども、これは今申し上げたことと同じようなことになるわけでございますが、日本の農業にとりましては、日本の条件の中で農業生産をするわけでありますから、いたずらに国際価格と比べてどうのといってもできないものがあります。しかし、できる部分についてはやはり努力をするということが必要だと思いますので、そういう意味で、この農地関連二法の成立によって農業生産上プラスにできる材料というものはこれは十分に生かしてそれに役立ててまいりたい。体制といたしましては、先ほど申し上げましたように、改めて必要に応じて部署をつくるとかあるいは人員の配置が必要になってくるというふうに考えておりますが、今のところはまだ具体的にそこまでは絵をかき切っておりません。
  36. 水谷弘

    ○水谷委員 ありがとうございました。  群馬県の粕川村の松村村長さん、ことしの農業白書にも、粕川村のすばらしい「効率的生産システムの構築に向けての取組事例」ということで、村長さんのところの取り組みが紹介されております。大変すばらしい取り組みをしていただいているなということで、私どもも希望が持てる思いをして拝見をいたしました。先ほどもいろいろなお話をしていただきましたが、全村の農用地をどういうふうに有効に利用すべきか、また、それぞれの農家方々の自発的な意思をどう集積して農業の発展的な形態をおつくりになろうかということで、地域農政推進協議会とかいろいろな協議会をたくさんおつくりになって、そこでいろいろな意見を集約され、また新しい芽を既にどんどん出していただいております。大変な御苦労だなと思います。しかし、こういう方向へ持っていくことがやはりこれから非常に大切だと思います。  そこで、若い経営者の人たちが規模拡大していくためには、やはり資金的な問題が一番問題になってくる、そういう御指摘が先ほどあったわけで、私どももその点についてはこれからしっかり取り組まなければならないと思っておりますが、この事例で御紹介をいただいております農家戸数が千三十八戸、二兼農家の割合が五五%、耕地面積が千五十三ヘクタール、利用権設定面積割合が四・九%、こういう御紹介がございます。この中で、核になっておられる農家の戸数といいますか人数、どのくらいいらっしゃるのか。突然でおわかりにならなければ結構でございますが、そうして、その中心的な農家は、概略で結構ですから、どういう経営形態でおやりになってこの全体の中核的経営の一つのあり方としてお示しをされているのか、その辺お聞かせいただければありがたいと思います。
  37. 松村慶作

    松村参考人 お答えさせていただきます。  私ども農家の現状が、専業農家が百二十六戸、一種が三百四十三一尺二種が五百六十九戸で千三十八戸で専業率が一二・一%になっておりますが、今この百二十六戸というのが米、麦、蚕のほかにキノコを導入して冬場の稼ぎをやっておるのが主でございますけれども、先ほど申し上げた中で、米というものよりも今補助金をいただいていますので大豆の栽培の方が非常によい、それから大豆の方が水を使わないがために婦人層であっても共同作業ができるということで、十一大字がありますけれども、一大字は山の方なものですから畑地ですから機械仕組合という対応はしておりませんけれども、十大字に機械仕組合をつくって、八十五名ほどのオペレーターが中心になって委託作業を進めておりますものですから遊ばせずに全耕地が利用ができるということに利点があるかと考えております。  これからなお、この一種のもの三百四十三戸に今度の新法案を取り入れて、もっと農協の分野を生かしていただいて村がバックアップをして、やはり機関車がよければそれについできますけれども機関車が悪いとだめだということなので、きょうも連れてきていますけれども産業課長以下役場の職員が各家庭、部落へ出向いていっていろいろな説明をしたり、またはテレビ、ビデオを撮って現況を皆さんに見てもらって今、村でも十五カ所ほどに展示圃をつくり、また作物体系に一種目二人ずつ細かいデータをとってもらって、どのものがどうすればどのくらいの年齢でやれるんだという分析に二年ほど入ってまいりました。そのデータをもとにやるというと、やはり子供を泣かせながら四千円ほど取る御婦人方が、もっと隣近所で連携すれば子供の面倒見ながら農業がやれるはずだという方向に向いてきているであろうと思いますので、この法案を生かしながらそこに焦点を合わせたいと思いますので、よろしく御指導いただきたいと思います。
  38. 水谷弘

    ○水谷委員 どうもありがとうございました。
  39. 近藤元次

    近藤委員長 次に、滝沢幸助君。
  40. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長、御苦労さまです。参考人の皆様、大変御多用のところ本日は委員会にお出ましいただきまして、数々有益な御意見を開陳いただきましてまことにありがとうございます。  そこで、お三人ともこの二つの法案に対して大変御賛成のお立場でありますので、この法案そのものについてお尋ねするよりはむしろもう少し広い範囲でお尋ねしたらいかがなものか、こういうことで、お三人にそれぞれ一つずつのことをお尋ねし、あわせましてお答えの中で、この今日の日本の農業の状況の中で仮に今回の二法のごときいわば改善がなされたにしても、日本農業の将来というものについていかが御認識であろうか、そして、しかもそれがいろいろと不安要素がありとするならば、これを救済するための起死回生の妙薬のようなものを求めるとすればそれは何とお考えであろうかというようなことをお答えちょうだいしたいなと存じまして、大変御無礼でありますが申し上げさせていただきます。  柳澤参考人さんに、これはちょっといかがなことかと思いますが、県の農業会議等の過去のあり方、姿勢、これがややもすれば官僚的で、いわば政府ないしは県の下請機関のような感じがいたすという批評が仮にありとするならば、そのことをも踏まえて今申し上げたことについてお答えをちょうだいしたい。  続きまして田久保参考人さんには、私はいろいろと農協のことを、かかわりも持ちかつ研究もいたしてきたつもりであります。申し上げれば切りがありませんが、結論としまして、我が国における農協というものが戦後あのような経過で創立されましたけれども、いわば幹部の方々及び組合員諸君に精神的バックボーンがない、このことが言うなれば、今回は自民党さんを推薦されるとかしないとかいうこともありますけれども、批判の中には自民党の選挙の下請機関になっておるというような批判もあるがほどにこの農協がいわば混迷いたしておるのではないかというような点もありまして、これらのことについてひとつ、農協の精神的バックボーンは十分であるのかどうかということを尋ねさせていただきたい。  そして松村参考人さん、大変御苦労されておりまして、私は会津でありますから、山一つ越えればおたくの方へ行きますものですから大変親近感を持って承ったわけでありますけれども、工場導入、余剰能力をどういうところで吸収するかということを——私のところは物すごい過疎地であるものですからそういうふうに感じております。そして三割自治だ、もう中央に県にお百度踏んで市町村長の仕事というのは陳情だけと言われていること久しいのでありますが、それらこれらも含めていかがなものでありましょうか。  お三人の方々に、それぞれ簡単でございますから一言だけ教えてちょうだいできればありがたいと存じます。
  41. 柳澤和夫

    柳澤参考人 特に県の農業会議の取り組み方等についてそういう面からというお話でございますが、私ども組織は、県の農業会議は一号の会議員として市町村農業委員会の会長をメンバーにしてございますので、もとより私ども構造政策推進ということで、一つは農地行政推進するという意味で、例えば農地の転用許可その他につきまして、いろいろ農業者立場を踏まえまして農業委員会から問題があればそれに従うというふうなスタンスで仕事を進めておりますし、もう一つ土地と人ということで、今構造政策推進の問題で、農地流動化推進につきましてはもとよりでございますが、特に自発的な、意欲的な農業者を対象にいたしましていろいろ農業経営指導、簿記とかそういう問題の指導もやっておりますし、あるいは、例えば稲作とか養鶏とかそういった経営者の業種別な組織づくりにも取り組んでおりまして、そういう面でむしろ農業者の自主的な意欲を育て上げる、そしてこれからのいろいろな難しい問題を克服いたしましてあるべき姿の農業を育て上げるというふうな、そういうスタンスで取り組んでおるわけでございますので、ちょっとお話のようなことは当たらないと私どもは信じております。
  42. 田久保一政

    田久保参考人 若干御質問を取り違えているかもしれませんがお答えいたしますと、理屈っぽく言って申しわけございませんが、個人としての政治信条はもう自由でございますから別でございますけれども、機関としてはこれは協同組合でございますから、協同組合の考え方を基本にして当たっているつもりでございます。おっしゃるとおり大変な危機に臨んで、今までも協同組合主義でありますけれども一層この協同組合主義に徹して、日本の農業の再建というとおかしな話でありますけれども改善強化には大いに力を尽くしてまいりたいと思います。  それから国に対しましては、やはり日本農業がどういう位置づけで座ることができるのか。これは当然私どもとしても、こう座るべきである、こう座りたいということを用意するつもりでございますけれども、国に対しても、いたずらに経済合理主義でなしに、長期の展望に立って、あるいは総合的な農業の持つ特性を考慮した上で農業の位置づけというものをはっきりしていただくように、協同組合主義にのっとって行動してまいりたい、そんな考え方でおりますし、恐らく全国の全農協がそう考えていただいているというふうに信じ切っております。
  43. 松村慶作

    松村参考人 お答えさせていただきます。  まず最初の工場の誘致の問題でございますが、お隣の村のこと、よく御存じだと思いますけれども、私どもの方もちょうど桐生、前橋の中間ですものですから、東京初め大阪または名古屋方面からも、赤城山の南面の景色が非常にいい、きれいなところである、土地が比較的安いということで、申し込みはたくさんあります。だけれども、その工場を取り入れるというと公害の面の方が非常に大きいものばかりなものですから、どれもこれも取り入れられない状況が現況でございます。  そこで私は、どうしても欲しいのが農業関係の加工する工場。今、つくるものは幾らでもつくれるのですけれども、その加工の問題で大変困っております。まず一つ考えれば、野菜類にしてもそのとおり。特に養蚕地帯ですから、ことしは二千五百円の仮渡したということで大変いい方向に向いたというけれども農家の手取りというのは微々たるものでございます。その中で、繭が二千五百円のところを、今度は着物一反に考えてみると絹がおよそ三万ぐらい。ところが仕上げてしまうと五十万から八十万という大きなものに仕上がっているわけです。それをどこでどうして加工するのか、地元産業でそれが成り立たないのかということで、あちらこちらにお願いがしてございます。  それともう一つは、養蚕の中へつけ加えさせていただきますけれども、あれはどこへ行っても私はお願いするのですけれども、一番骨が折れるのが、繭を上蔟しちゃって繭かきする過程なんですけれども、虫を飼う過程であの絹を何とか生体のまま取り上げて加工ができないか。だとするならばもっともっと養蚕は盛んになるだろうし、農家のプラスになるであろう、こんなところがお願いできればと思っております。  次の三割自治は、昔から今も全く変わってございません。私の方も二十二億三千万の予算を組んでおりますけれども、自主財源というのは五億ぐらいでございまして、大変厳しゅうございます。したがって、何かやるのには陳情陳情というので、村長は補助金を見つけるのが仕事であって足をまめにして駆けて歩くのが現状でございますので、またその点にも御指導いただければありがたいと思っております。終わります。
  44. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 それぞれありがとうございました。なかなか十分におっしゃりにくいこともありましょうし、御苦労さまでありますが、どうかひとつ今後ともそれぞれの立場で御健聞いただきまして、日本農業の将来にひとつ明るいものを生み出すように御協力をちょうだいしたいと思います。  委員長、御苦労さまでした。ありがとうございました。
  45. 近藤元次

    近藤委員長 次に、藤田スミ君。
  46. 藤田スミ

    ○藤田委員 きょうは参考人の皆さん、本当に御苦労さんでございます。私で最後になりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  きょうは三人の参考人の皆さんから大変率直な御意見も聞かせていただいたという点で、きょうの参考人質疑は本当に意義があったというふうに考えています。柳澤参考人が、麦価も四年、米も二年連続の引き下げ、そして自由化についても牛肉・オレンジ、心理的に非常にこれが他の農家にも影響を及ぼしているという点で農業に安心して取り組めるような具体的な目標を示してほしいとおっしゃったことは、私もまた本当にそのとおりであります。そして松村参考人が、農業は国の基だ。私たちもまた農業は国の基だというふうに考えております。  きのうも「一九八九年産米米価等に関する申し入れ」というのを行いまして、私たちは「アメリカの圧力やガットの審議の行方如何にかかわらず、米の市場開放・自由化は、部分開放といえども絶対におこなわないこと」ということや、あるいは稲作農家が人並みの生活ができるような政府の買い入れ価格の決定、いわんや新算定方式の導入をやめてもらいたいということ等々、きょう皆さんから聞かせていただいたことも含めて六項目にわたって大臣に申し入れをいたしましたけれども、そうした立場から、私はこの二法案について参考人の皆さんに一つ一つお伺いをしていきたいと思います。  全国農業会議所が八一年八月に恒常的通勤兼業従事者の就業意向に関する調査というのを行っていらっしゃいます。柳澤参考人お願いをいたしますが、この調査を見ますと、兼業農家でも今後の農業に対する意向として「現状のまま」というのが六八%、「規模拡大したい」が一七%で、「縮小したい」の一〇%を大きく上回っています。また、経営耕地規模別に見ましても、〇・五ヘクタールから一ヘクタール層で「現状のまま」が七〇%、「規模拡大」が一三%ということになっているわけです。  このような中で、中小農民や安定兼業農民を政府の言われるように一方的に農地の出し手として位置づけることについて、どうお考えでしょうか。
  47. 柳澤和夫

    柳澤参考人 ただいまの調査は、九八一年でございましたですね。今は一九八九年でございますから、その後いろいろ農業情勢等は大分変わっておると思います。しかし、およそとしてそんなふうな感じのことも、現在もそういう状況が残っておると思いますが、先ほどもいろいろ問題が出されましたが、農地の流動化の阻害要因というふうなものがありまして、それと地価が非常に高騰しているというふうな問題がありまして、あるいは農地法アレルギーとか、そういうふうな問題もあります。最近の情勢としましては、例えば地価について見ましても、東北、北海道あるいは九州等では値下がりの傾向もありますし、また都市近郊では逆に東京の一極集中というふうな問題もありまして、両極端のような傾向が現在あらわれておりますが、そういう問題とか、あるいは農業後継者不足とかいうふうな問題。先ほども例がありましたが、農家所得の中で農外収入が圧倒的に多いというふうな問題もありますので、私どもとしましては、非常に情勢農地の流動化を進める方向に動いてきておる、必ずしも当時のような情勢ではなくて、かなりそういう情勢が動いてきておるというふうに今見ておるわけでございます。  したがいまして、当時と比べますとやはり経営規模拡大志向といいますか、もちろん最近の統計で見ましてもやはり経営規模の大きい方は拡大志向が非常に強いわけでございますので、そういう傾向、いろいろむしろ情勢としてはそういうものが進むような情勢になってきているというふうに考えますので、この際にただいま御審議いただいております農地二法をぜひ国会で成立させていただきまして、私ども現在やっておりますような農地の流動化の推進という仕事をより効果的に推進すればかなり成果は上がるものと私どもとしては信じております。  以上でございます。
  48. 藤田スミ

    ○藤田委員 田久保参考人にお伺いをいたしたいと思います。  農協中央会は、「二十一世紀を展望する農協の基本戦略」で、全国の水田の三分の二以上を中核的な農家、集団を中心とした農協農用地利用調整システムでカバーするよう総力を挙げて取り組むとし、その場合、農協転貸機能強化策等農用地利用調整促進し得る法的整備と施策の充実が必要、こういうふうに言っておられるわけです。  その法的整備が今回のこの法律だというふうに思うわけですが、私は、農民経営の土地所有を守り、農地を有効に活用するためには、公選制の行政委員会である農業委員会を軸とした農地管理を維持すべきだというふうに考えております。その点農協としての節度というものをどういうふうに考えていらっしゃるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  49. 田久保一政

    田久保参考人 先ほど意見の中でも申し上げたところでありますけれども農地についてはやはり優良農地はきちんと残していくという基本姿勢を失ってはならないというふうに考えております。  それからその場合に、今御質問にもございましたような内容で、私どもといたしましては、農地の経営に当たってはそれぞれの市町村集落において自然にその地帯の合意を得て拡大していく、そういう条件を整えた方は個人的に拡大していくということについて大いに進めていただきたいと思いますし、また零細な方々をただ単に零細であるというふうに整理するということではなくて、零細な方はひとつ一緒になっていただいて集団を組んで、集団の効率を追求して農業にいそしんでいただくという方向をとってまいりたい。そのために今の法律はどうしても改正していただいて、農協として利用調整ができるようにお願いをしたいというのが我々の念願でございますし、そういう考え方に立って農地運用農地の利用ということに当たってまいりたい。したがって、農業生産を一層改善して強化してまいりたい、そういう考え方でございます。
  50. 藤田スミ

    ○藤田委員 時間がありませんので、三つ一遍に質問をいたします。恐縮ですが、お答えをいただきます。  まず、柳澤参考人にお伺いをいたしますが、今回の法改正で農業生産法人構成員農地取得等の緩和というのが打ち出参れているわけです。その農業生産法人については、農外資本が畜産インテグレーションなどの形で農業に進出する際にダミーとして農業生産法人の形をとるケースがふえております。そして、その傾向は農産物の自由化やリゾート開発の中で一層強まっているところですが、このようなダミー法人やその構成員農地を取得しやすくするのは極めて問題があるんじゃないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。  田久保参考人にお伺いいたしますが、先ほどの基本戦略を見ますと、地域社会開発事業の積極的展開としてマルチハビテーションの提供や農園つき住宅の開発を図るとしておりますが、新聞などでは全国新聞農協連合会がリゾートファーム構想を打ち出しております。これを見ますと、地上二十階のコンドミニアム型のホテルを含む壮大な計画を示していらっしゃるわけです。これらについて具体的な計画があれば、また今後の見通しがあればこの際お示しいただきたいことと、リゾートは乱開発ぎみになっておりまして、計画し施設はつくったがお客さんが来ないというようなことになりはしないかという性格を持っていると考えますが、この点についての御見解をお示しください。  最後に、松村参考人が先ほど、農業公園それから市民農園学童農園について大変具体的に、いかに多くの皆さんに喜ばれているかということをるる述べられました。私も本当にそういうものをもっとたくさん整備していくべきじゃないかという立場なんですが、一九七五年に構造改善局長がレクリエーションの農園通達というのを出しまして、その通達によって農民の土地所有も守られ、都市住民も利用できる、そういう運用がなされてきたと思うのですが、それをあえて農地法に例外規定を設け、農民の土地所有を守る憲法に風穴をあけるのはどうかと考えますが、いかがでございましょうか。
  51. 柳澤和夫

    柳澤参考人 私ども組織農業委員会は、同一市町村の中におきまして農地を、たとえ農業法人でありましても農地を取得する際には農業委員会が許可権といいましょうか、そういうことになっておりますので、その段階で十分チェックをしていきたいと思いますので、まず御心配の点はないと私どもでは信じております。
  52. 田久保一政

    田久保参考人 先生のお話のありました二十一世紀に向けてのパンフレットの中にもうたってありますように、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、都市農村との望ましい交流を深めていくことによって理解者をつくりたい、それが一つのねらいでありますから、そういう意味では、お話がありましたような二十階建てのマンションをつくって云々というようなことはちょっと私、大変恐縮でありますけれども内容をわきまえておりませんので、それがどういうものであるかお答えできないのでありますけれども、私どもとしてはそういうふうには考えておりません。農村の本来持っているよさ、農村型のそういう情景と申しますか、それが今都会で生活を送っている人にとっては非常にかけがえのない貴重な資源だというふうに考えますので、そういうものを積極的に生かしていく、農村型のそういうものを開発して都市方々に提供するということによって、特に中山間地帯等についてはそうした利用の仕方を総合して進めていかなければならないのではないだろうかということをうたったつもりでございます。  なお、各市町村でリゾートブームによって、それからふるさと創生ということによってどういうふうなことが行われているのかということにつきましては、私どもとしては目下調査中でありますので、現状がどこまでいっているかということは現在は掌握しておりませんが、御指摘のありましたようなブームにうかつに乗って損失を招かないようにということだけはきちんとして、戒めとして常に会議では語っているつもりでございます。
  53. 松村慶作

    松村参考人 お答えさせていただきます。  法に穴がということでございますけれども、レクリエーション農園にはある程度の経営制限というものもあろうかと思いますし、また貸付規程というものの中において今まで農業委員会とのいろいろなお話し合いの中で進めてまいりましたけれども、今の週休二日制、また余暇時代というものの到来を考えてみたりして、今の退職をなされた方々の健康管理等もあわせながら、村の地域を一層美化し、また活力性あるものにしていくということになりますと、この事業を取り入れるならば、周辺の環境整備、また人々の連携、または健康保持、村づくりというものから大きな役立ちがあろうと思いますので、これに力を入れてまいりたいと考えておりますので、一層の御指導をいただきたいと思います。
  54. 藤田スミ

    ○藤田委員 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  55. 近藤元次

    近藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人各位には貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表してお礼を申し上げます。  参考人各位には御退席をいただいて結構でございます。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  56. 近藤元次

    近藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出農用地利用増進法の一部を改正する法律案及び特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案の両案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。松田九郎君。
  57. 松田九郎

    ○松田(九)委員 宇野新内閣が発足をいたしまして、長年にわたり特に農林水産については非常な経験を持ち、そして精力的に取り組んでもらっておった新しい堀之内農林水産大臣が誕生されたことにまず冒頭敬意を表します。おめでとうございました。  本論に入る前に大臣にちょっと二、三お聞きしたいのですが、今までの大臣を見てみると、大臣になったら金集めのパーティー、祝賀会というのをよくやるが、これはひとつ今からやめてもらわなければいかぬから、そういう計画があるかないか。本当のお祝いをやるというのは、これは日本人の習慣だし、どなたがやろうとそれは自己判断によることですからどうということはないけれども、金集めのパーティーなどと疑われることをやるのは、これは慎んでもらいたいということが一つ。  それからいま一つは、大臣は従来からいうと村、派閥は離脱をしたということになっておるが、そう言いながらも、従来の経緯からするとちょくちょく村のいわゆる選挙運動の応援弁士になってあちこち講を催すように歩くようなことがあるが、そういうことも今後やめてもらわなければいかぬが、そういうことについて、これは時に党の命令でやる、党を離脱しておるわけじゃないでしょうからこれはやむを得ぬとしても、いわゆる村の関連でそういう動きをするということは好ましいことじゃない、こう思うので、まず冒頭に大臣の所要の見解をお聞きしておきたいのであります。
  58. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 このたびの宇野新内閣の発足に当たりまして不肖私が農林水産大臣を拝命いたしました。もとより浅学非才でございますが、今後とも委員各位の格別なお引き回し、御指導のほどをいただきますよう、冒頭に当たりお願いを申し上げたいと存じます。  ただいま松田委員のお話しになりました閣僚のパーティーの問題でありますが、これは前内閣以来自粛をするという申し合わせになっておりますし、もちろん宇野内閣におきましてもこのパーティー開催については自粛を申し合わせておりますので、そういう計画は全然ございません。  もう一つのお尋ねの件でありますが、派閥を離脱したということはただいま松田先生の言われるような懸念のないようにということでありまして、したがって、これからの応援等に当たりましては党の遊説部長の許可を受けて行くこと、すなわち党の遊説部長より依頼を受けたものに限り応援には行くように、こういう内閣の申し合わせをいたしておることをお伝えいたしたいと存じます。
  59. 松田九郎

    ○松田(九)委員 明快な答弁をそれぞれいただきまして、ありがとうございました。  さて、本論でありますが、いよいよ米価のシーズン、夏の闘いに入ってきたわけです。そこで、簡略に結論的にまず最初にお伺いしたいのですけれども、ゆうべもテレビあるいはニュースあるいはマスコミも言っておりますが、とにかく政府、農林水産省の見解として、米価審議会に諮問をするいわゆる腹構え、準備として何か回りくどいことを言うたやに実は聞いておるわけですけれども、回りくどく言わぬでも、一体ことしの米価はどういうふうにしようと思っておるのか、引き下げするのか、据え置くのか、上げるのか、その三つについてまず冒頭に大臣の所要の見解をひとつお聞きしておきたいと思います。そのお答えによって以下理論的にひとつお話をしていきたい。よろしくお願いします。     〔委員長退席、笹山委員長代理着席〕
  60. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 まず本年度の米価決定の件でありますが、私どもも昨日党の申し入れを受けまして、なるべく早目に米価決定の時期を決めようということで大蔵大臣、官房長官等と協議をいたしまして、党の要請あるいは各界のいろいろな要請にこたえまして、参議院選挙公示前に行うという方針を決定いたした次第でございます。日取りにつきましては今後さらに調整を進めてまいりたい、こういうように思っております。  ただいま米価の決定につきましてのお尋ねでございましたが、生産者米価につきましては稲作の生産性の一層の向上を図り、農業経営の安定を確保しつつ、そして国民の理解し得る価格での安定供給を行うとの観点に立ちまして、米価審議会の意見をお聞きしながら食糧管理法の規定に従いまして適正に決定してまいる所存であります。
  61. 松田九郎

    ○松田(九)委員 そこで今、大臣から今年度の米価の取り組みについて聞いたのですが、私は頭が悪いのかどうか知らぬけれども、さっぱり要を得ないというかわからぬというか、私が冒頭にお聞きをしたことは、要するに例年どおり、数字は別として引き下げるのかあるいは据え置くのかあるいは引き上げるのか、その三つに絞ってお答えを願いたいということを申し上げたのだが、今の大臣の答弁を聞くとどれにも当てはまらぬような回りくどい、大変抽象的なことなんですね。  大臣は専門家だから私が言わぬでも御承知のとおりだ。今日日本の農村というのはまさにもうみんなが家出寸前、倒産寸前、あすの農業はない。特に米生産者にとって米づくりなどというのはもう夢も希望もない。きょうも農業者大会が九段会館で開かれておる。もうせっぱ詰まっておる、そういうときにひとり農民だけが毎年毎年いわゆる収入源である米価が引き下げられてきた。片や公務員や金融関係の高額所得者などというのは毎年給与ベースが上がっていっておる。ひとり農民だけが毎年毎年収入源を引き下げられて、しかも一方は週休二日制で土曜日曜休みである。農民は何百年の間そういう余裕のある日常生活ではない。おまけに、もしやと思うけれどもことしもまたぞろ引き下げなどという事態を政府がやるとすれば、これは日本の将来の存立に大きな問題を提起してくる。  今、専業農家あるいは兼業農家を含めておおよそ五百万人からの農業人口があると私は思うが、このいわゆる農業人口のほとんどは他の分野に転業や転職はきかない仲間であります。そろばん勘定をした経験もないし、エンジニアとしての経験もない、筋肉労働だけがこの仲間の最大の取り柄でありますから、農業から離れて生きる道はない。だからといって失業対策にもこれは当てはまらぬでしょう。ならば、そういうもの等の今後の雇用関係も考えなければいかぬ。今やぎりぎりというよりももうぎりぎりを過ぎてしまっておる。参議院選挙が戦えるとか戦えないとかそんなこと以前の問題だ。日本の基本的な国家民族の歴史と文化、国土の環境保全、そういうものなしで米価について例年のとおり引き下げをするなんということは断じて許されないことである。専門家であり、また従来その線で努力をされてきた新農林水産大臣は少なくとも重大な決意の中で今日の米価問題については取り組みをされておるから、先ほどの農相の答弁はまことに不愉快というか不満足だ、もう一回改めて決意のほどをお聞きしたい。
  62. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 ただいま松田九郎先生の述べられました趣旨は、私も胸の痛いほど十分承知をいたしておるところであります。しかし、今米価決定に当たりましては米価審議会の意見を聞きながら適正に決定する、こういうように決められておるところであります。しかも昨年、党と政府の方で新米価算定法が合意されております。そういういろいろなデータ等を参酌しながら今日生産費あるいは最近の労賃、物価、資材費等も今月六月三十日に出そろうということでありますので、そういうもろもろのデータの上に新しい米価の算定をいたします。そしてまた当然のことながら、いつものごとく与党と皆さんのいろいろな部会で御審議も賜ることだ、かように考えております。そのような御意見等を拝聴しながら、そして米価審議会の意見等も十分尊重しながら適正に決定させていただく、こういうことで御理解賜っておきたいと思います。  先ほど冒頭申し上げましたように、農村の実態、実情というものには、松田先生の御指摘のとおり私も全く同感であるところであります。
  63. 松田九郎

    ○松田(九)委員 これは事務当局にちょっとお聞きしたいのだが、今の大臣の答弁からすると、米価審議会及びこれに対する政府の諮問、算定の方式、そういう三つが考えられるわけだが、具体的にあなた方が諮問をするあるいは米価審議会を開く時期、そういうのはいつごろになるのか、ちょっとそれを聞きたい。
  64. 甕滋

    ○甕政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣からお答え申し上げましたように、本年産の米価の決定時期につきましては参議院選の公示前にこれを行いたい、こういう方針でございまして、米価審議会の日程調整等をこれからそのラインで決めてまいりたいと考えております。
  65. 松田九郎

    ○松田(九)委員 ちょっと待ちなさい。それはわかっておる。参議院選挙の前といったって参議院選挙が告示になった日も前だし、投票の日も前なんだな。そんななまぬるい話があるか。はっきりしてください。この重大問題が、国家的な問題がおおよそいつごろであるかということぐらいはわかりそうなものじゃないか。
  66. 甕滋

    ○甕政府委員 本年の参議院選挙の告示が七月五日ということで予定されておりますので、五日前にこれを決めるということで御理解をいただきたいと思います。
  67. 松田九郎

    ○松田(九)委員 今の長官の説明からいうと、間違いなくいわゆる五日公示前には明快な数字を出すわけですね。  そこで、大臣に改めてひとつ質問をしておきたいのですが、参議院選挙前に出すということだが、参議院選挙と言っても時期がいろいろありますね。四日に出すのか二日に出すのか三日に出すのか月末に出すのか、そこら辺については農業団体も生産者も今大変微妙な心境の中にあります。特に責任政党である自民党の農業政策については大変な不満が今横溢をいたしておる。そういう中からまたぞろ自民党は、生産者無視の、米価については全く何の反省もないそういうことを今もって考えておるのではないかという大変な疑いと不信感を与えておる。そういうことを考えれば少なくとも参議院選挙前日とか前々日なんということじゃなくて、速やかにとにかく諮問をする方向で、そして諮問を一回してそこでがたがたなんということのないように、米価審議会委員の面目もあるでしょうから、従来のようにひっくり返ってみたりあるいは米価審議会を無視するようなことの起こらないように、それには十分な根回しも必要だが、当初から政府はことしはこうだという不退転の米価決定についての基本戦略と基本線を明らかにして取り組んでいくべきだ。出たとこ勝負ではことしはどうにもならぬ。初めから農林省及び農林水産大臣は腹をくくって米価審議会に対する具体的な確固たる数字を示し対応してもらいたい、そう思うのですが、農林水産大臣のそのことについての決意いかん、そのことをお伺いしたいのであります。
  68. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 松田委員も御承知のとおり、米価審議会に諮問案を提出する場合におきましては、生産費並びに最近の労賃あるいは物材費、そうした正確なデータのもとに計算した結果を諮問しなければならないわけであります。そのデータ等が六月三十日にほとんど出そろう、こういうことに相なるようであります。とすればこれを急ぎましても一日ということになるわけでありまして、私ども事務当局は精いっぱいこの計算を急がせまして、先ほど長官から申しましたように、また党の要請もございましたので、なるべく告示前に決定できるような方向で、今後米価審議会の委員の諸先生方にも御理解を得るように、また御協力をいただけるようにこの点最大の努力を傾けていきたい、こういうように思っております。
  69. 松田九郎

    ○松田(九)委員 今のような経緯あるいはそういう空気、意見があるということを大臣よく御理解をいただいた上で、ひとつ勇断を持って積極的に、なるべく早急に政府の対応をしていただきたい。  次に、農産物の輸入自由化の問題であります。  佐藤隆前農林水産大臣当時、大変に努力をしてもらって、御承知のとおりウルグアイ・ラウンドの四月のガットにおける交渉等については一応枠組み等について残すということで今後の日米間の貿易交渉に任されてきておるように思います。そこで大臣にお伺いするのですが、今後の日米間のこの種の交渉について、日本側の基本的な農産物自由化についての対応をどのように考えていられか。これまた今日生産者農民が大変な危惧を抱いておる。かんきつあるいは十二品目あるいは牛肉等に関連をしてまた米もこの仲間入りをさせられるのではないかと思っているが、ここら辺についての見通し。そんなことは断じてあり得ないんだ、しないんだという私から言えば毅然たる大臣の見解をお聞きしたいわけだ。だから、そこらについての御決意と見通し等についてお聞かせを願いたい。
  70. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 ただいま米の貿易問題についてのお尋ねでありますが、米の貿易問題については、我が国立場は、現在進行中のウルグアイ・ラウンドの場で、各国が抱える困難な農業問題及び制度について議論を行う段階になれば、米の問題を含むあらゆる農業問題を討議するにやぶさかではないとの方針に今後とも変わりはありません。  米は日本国民の主食であり、かつ我が国農業の基幹をなすものであります一また、水田稲作は国土や自然環境の保全あるいは日本文化の発祥の源泉である。そして地域経済上、不可欠の役割を果たしておるわけであります。このような米及び稲作の重要性にかんがみ、国会における決議等の趣旨を十分体しまして、今後とも国内産で自給するとの基本的な方針で対処してまいりますが、特に先ほど御指摘ありました牛肉・かんきつあるいは農産物十二品目等、昨年来一部自由化ということで農家の不信を買いました。しかし、私は、この米の置かれておる立場は牛肉・かんきつとは全く趣を異にしておる、こういう立場で今後とも、特に農村の期待にこたえてまいりたいと思っております。
  71. 松田九郎

    ○松田(九)委員 専門家の大臣に釈迦に説法のような話ですが、今大臣が末尾に結ばれたとおり、米というのは日本だけが主食の国でありますから、いわゆる食糧安保という立場からも、一億二千万という大国民がこの小さい島に住んでおるということからいたしましても、我々は何としても現在の三分の一の自給足体制の食糧、これは断じて守らなければいかぬ。この根幹をなすものは米でありますから、これ以上自由化なりあるいは減反なりで後退をすることは断じてまかりならぬし、生産者に死ねということと同じでありますから、大臣、ぜひひとつ重大な決意を持ってこのことには取り組んでいただきたい。もしお考え等があればいま一たびお聞かせを願いたい。
  72. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 ただいま松田委員の御指摘のとおりでありまして、日本の農産物で一〇〇%自給ができておるのは米だけであります。この米が一〇〇%自給できる体制になりまして初めて今現在のこの日本の繁栄がもたらされておる。主食が完全に自給でき、いつでも買える体制にあるから国民は安心して取り組んでおるわけです。  戦後この方四十数年になりますが、あの終戦当時の主食の不足時代は日本経済というのは全く停滞をいたしております。今やここに一〇〇%の自給率を達成しております。したがって、これからも、安全保障上からも、日本の将来のためにも、私は委員御指摘のように稲作は守っていく決意であります。
  73. 松田九郎

    ○松田(九)委員 次に、今度のいわゆる農地利用法というものが提案をされることにかんがみまして、ちょっと事務的にお聞きしたいのです。  私は不勉強で大変恐縮な質問でありますが、従来から今後の農村の生産者の農地所有の限度というもの、水田面積を一時二ヘクタールと言ってみたり、一・五ヘクタールと言ってみたり、最近は〇・八ヘクタールなんということを言ってみたりしておるが、今は一体どこら辺に基準を置いているのか、それをお聞かせ願いたい。
  74. 松山光治

    ○松山政府委員 将来の農業経営ないしは稲作経営の規模のあり方について、いろいろな考え方もございますし、かつまた技術との関係ではどの辺が適当かといったような試算もあるわけでございますけれども先生案内のように地域によりましていろいろ条件が異なってまいるわけでございます。したがいまして、そういう意味からいたしますと、何か全国画一的にこういうものでなくてはならぬというようなことを申し上げるのはむしろ関係者に誤解を与える。要は、国民の皆さんが、我が国の稲作を支えてくれる、十分理解していただける、そういう効率的な生産単位といったようなものを、地域の条件に応じてどのように形成していくか、こういう観点で我々としては取り組んでいく必要があるのじゃないか、このように考えておる次第でございます。
  75. 松田九郎

    ○松田(九)委員 わかりました。今のような画一的ではなくて、ケース・バイ・ケースというか、地域性に応じて規模を考えていってもいいではないかという、多少幅のある指導の方針ですね。そのように受け取っていいですね。——わかりました。  そこで最終的に、時間がありませんから大臣にお願いしたいのですが、我が国の経済社会の急速な国際化に対応して、効率が高く、しかも足腰の強い農業実現し、国民の納得し得る価格で食糧の安定供給を図るためには、農業構造の改善を加速していくことが最重要の課題であると思います。これとあわせて農村地域活性化を図ることが重要な課題であります。  そういう意味から、今回は農地二法というものがそのような観点から提出をされておるわけでありますが、我々としては、その趣旨、経緯等は十分わかりますので、ぜひひとつこれを実現させて、農村の今後の活性化、そして生産者に対して、あすへの期待と夢を抱かせる方向に指導していかなければならない、このように思いますが、最後に、大臣の見解なり決意をお聞きしておきたいと思います。
  76. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 ただいま構造政策を進めるに当たっての基本的な考えをお尋ねでございますが、我が国経済の国際化の進展等に対応いたしまして農業構造の改善を促進するためには、地域の実情に応じまして農地の売買、貸し借りあるいは農作業受委託等を進め、中核農家規模拡大や生産の組織化等を推進する必要があります。  このような観点から、農用地利用増進事業を基軸といたしまして、第一に、地域農業のあり方についての合意形成担い手及び地域リーダーの育成確保、二番目に、農作業受委託促進を含めた多様な農地流動化の掘り起こし活動の強化、三番目に、土地基盤の整備推進、四番目に、安定的な就業機会確保等の課題に積極的に取り組んでいくことといたしております。  元年度の予算におきましても、金融、税制の各般にわたる関係施策の一層の拡充を図ったところでありますが、さらに関係機関・団体による農用地利用調整活動を活発化するために、今般農用地利用増進法の一部改正法案を御提案申し上げた次第でございます。
  77. 松田九郎

    ○松田(九)委員 時間がありませんから最後に大臣に、これまた大変恐縮な言い方ですが、ひとつお願いしておきます。  あなたは宮崎という米どころ、そして純農村地帯の選出でもあられるし、また従来長く我々の先頭に立って農業問題には殊のほか熱心、造詣もあり、そして大変な指導力を持ってこられた。だから我々は期待をしておるわけだ。だから、今度の米価の問題についても、農産物の自由化のいわゆる怒濤のごときあらしを阻止するについても、あるいは構造政策にいたしましても、あなたが腹をくくりてやってもらいたい、我々はそういう期待を持っておる。借り物の大臣じゃないんだから、あなたは本物の大臣だから、それだけのプライドとそれだけの自信があなたにはあられるはずだ。  どうぞひとつ、全国の生産者、農民があなたに期待をし、そして党を挙げてあなたを信頼をしておるということを常に忘れることのないように、精いっぱい奮闘してもらうことを最後にお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  78. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 沢藤礼次郎君。
  79. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 大臣、御就任おめでとうございます。大変な時期のお仕事で御苦労も多いと思いますが、健康に留意されまして御精進あられんことをまずお祈り申し上げたいと思います。  就任のごあいさつついでに大変恐縮でございますが、冒頭大臣の農畜産物、米の自由化についての所信を賜りたいと思います。  と申しますのは、就任なさったときの抱負というのですか、新聞記事の中には、自由化についていろいろ農民の間に不安あるいは不満があるようだ、今後農民と十分話し合いをしていきたいという趣旨の記事がありました。これは読み方によっては、自由化はやるんだが農民の不満なり不信は抑えていくんだという方向に力点を置いたようにも受け取れます。一方、三日初登庁後の記者会見で、米は文化の源泉であり、食糧安保とも絡むので、少々問題が起こり報復を受けることがあってもやむを得ないというくらいの強い姿勢で臨むというふうな記事もありました。この辺を含めて、ずばり大臣の所信をお聞きしたいと思います。
  80. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 先ほども米の貿易問題につきましては御答弁申し上げた次第でございますが、私はもう率直に簡単に申し上げれば、沢藤委員の御指摘にありました最後の記者会見の気持ちが私の率直な決意でございます。したがって、これからウルグアイ・ラウンドの交渉に臨むに当たりましても、各国が抱える農業の諸問題あるいは制度等についていろいろ交渉する場合におきましては、米の問題も討議するということについてはいささかもこれを回避するということにはならないという形で交渉には応ずるつもりであります。しかし、先ほども申しましたように、米は何といっても国民の主食であります。そして我が日本農業の基幹をなすものでありますし、水田、稲作は国土や自然環境の保全あるいは日本文化の源泉である、そしてまた地域経済上不可欠の基本の役割を果たしておる、こういうふうに私は理解しております。したがって、このような米の重要性にかんがみまして、また国会決議等の趣旨も十分尊重しながら、国内産で自給するという基本的な方針で進んでまいります。  御指摘ありましたように、昨年、牛肉・かんきつあるいは農産物十二品目の中で一部自由化せざるを得ないものもありましたが、これは我が国のぎりぎりの条件で自由化に踏み切ったところでありましたけれども、私は米はこういう農産物とはもう全く性格を異にしておる、こういう立場で今後も進めてまいりたい、このように考えております。
  81. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 大臣の御決意のほどについては心強く受けとめておきたいと思います。  ただ、私、ここ一両年本会議あるいは委員会等でいろんな方と論議をさせていただく中で、多国間の協議あるいは米の問題の協議については参加していくんだという言葉が必ずついてくるわけであります。したがって、主体的な大臣の御決意と多国間の協議の中での客観的な状況というものと、状況のバランスと申しますか力関係というものが今後微妙に影響を残すのではないかという懸念を持つわけです。と申しますのは、農政審の答申等でも明らかになっておりますが、米の管理はいわば部分管理を目指しておる、米の流通に市場原理を導入する、米流通は民間流通を主体にする、政府買い入れ米は当面四割程度として今後さらに低くやっていく、ということは、いわば米の統制管理が弱まっていく方向がはっきりしているわけですね。そういう国内の状況の変化に対応して、ウルグアイ・ラウンドで、もう状況が変わってきておるんだから米の自由化を拒否する根拠は弱いんじゃないか、そういうふうな攻められ方をする可能性が出てくるんじゃないかと私は思う。そういうことが、他国からそういう指摘があったとしても、大臣の決意は変わらないというふうに理解してよろしいんですか。
  82. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 昨年十二月モントリオールにおきましてウルグアイ・ラウンドの中間レビューが行われたところでありますが、そのときの交渉の経過を聞きましても、米国並びにEC間のいろいろな意見が対立をした、私どもこういうふうに承知をいたしております。  私は、農業というものはそれぞれの国によって相当事情が違ってきておると思うのです。アメリカのように非常に広い国土のところ、ECといえば日本より少しは規模が大きいとは思いますが、やはりそれぞれ大きな悩みを持っておると思います。まして日本は、この狭い国土に一億二千五百万の国民を擁し、そして米という主食によって一〇〇%の自給体制確立している。したがって、この米をめぐる諸問題においては、我が日本政府も大変苦労をしながら米生産農家を守っておるのが現状であります。したがって、私は、そういう各国間の抱える大きな悩みをこのガットの場で協議すれば、そうした各国間の諸問題が率直にさらけ出されてお互いに理解を深められる、こういうふうに理解をいたしておる次第でございます。  これからは米国と二国間の協議はやらないということがお互いに理解をされておりますが、アメリカといえどもウェーバー品目による八品目その他牛肉、砂糖類、いろいろ自由化されていない。やはりアメリカが抱える大きな農業問題もあるわけです。この際は、こういうものもお互いに全部ウルグアイ・ラウンドの交渉の場に出して討議しようということに相なるわけでありますし、そしてまた先般四月には主食の安全保障の問題もお互いに討議するということが合意なされておりますので、そういう日本の米の置かれる立場あるいは主食としての日本の安全保障上の問題というものを、十分意見を述べ合って理解を深めていきたいと思っております。
  83. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 この問題については、もう一言つけ加えさせていただいて終わりたいと思うのです。  農民は非常にいろいろなことを心配しているわけです。去年の牛肉・オレンジも予想に反してというのですか割合にすいすいと押し切られてしまったということがあるものですから、大臣からいえば意地の悪い見方だとおっしゃるかもしれないけれども、日本の政府があるいは自民党政府自分から米の自由化なりを言い出せないから、状況をつくっていって外国からの圧力でもって云々ということを図っているのではないかという見方さえあるのです。しかし、それは今の大臣のお答えで、そうじゃない、毅然たる態度で臨むんだというふうに理解しましたから、どうぞひとつ不退転の決意で頑張っていただきたいと思いますし、安全保障ということについても、一部の外国ですが、他国から安全に補給するのも安全保障じゃないかという言い方もあるので、安全保障即完全自給体制というふうには外国からは理解されていない向きもあるようでございます。この辺のところも十分留意されて大臣の御決意に従って行動していただきたい。期待をしながら見守らせていただきたいと思います。  二つ目の質問に入ります。  今提案されておりますいわゆる農地二法のねらいは何か、政策的な理念は何かということを端的にお示しいただきたいと思います。
  84. 松山光治

    ○松山政府委員 今回農地二法を提案させていただきました理由につきましては、先般提案理由説明におきまして御説明申し上げたところでございますが、つづめて申しますれば、最近におきます農業なり農村をめぐります諸事情を踏まえまして、国民の皆さんの幅広い理解と支持のもとに農業の健全な発展を図っていく、そのためには当然のことながら農業構造の改善が必要になってくる、あるいはまた農村地域活性化が必要だ、こういったような課題に取り組むことになるわけでございますけれども、そういうことを進めていく上で必要となる農用地利用に関します制度整備をこの際行いたい、こういうことで提案させていただいたわけでございます。
  85. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 今の御答弁と今までいろいろ論議されました中身を私なりに整理してみますと、一体となって打ち出されております農用地の規制緩和、それによって農用地の流動化を促進する、流動化の中から規模拡大を図っていく。規模拡大ということは言われる中核的担い手の養成ということになると思うのですが、規模拡大を図っていく、そして生産コストを低減していく、そして去年新しく出てきたいわゆる生産者米価との連動という問題も出てくるわけであります。構造政策が進む、規模拡大される、それに応じて生産者米価を決定していくというのが新方式なわけですから、この一連のものがあるわけですね。規制緩和、流動化促進規模拡大、そして低コスト政策、それから生産者米価への連動というふうな大きな流れがあるわけです。  そういったことを見た場合に、今度の二法そのものあるいはその法律運用そのものについては、農業団体農業委員会も非常に期待を寄せていますし、そのことに関しては私どもも論議する中では反対する要素というのは見当たらないわけなんですけれども、ただ、いわゆる農地二法の問題を一つの部分として、それに連なる、とうとうとしてつながっているこの日本農政というものをトータルとして眺めた場合に、やはり幾つかの疑問、心配というのが出てくるわけであります。  たくさんあるのですけれども、まず最初に、今度の法律改正に当たって、構造政策を進めるに当たっての基本的な考え方はどうだろうか。特に構造改善の目標ということを法律事項にしたわけですが、これのねらいと申しますか、考えはどうなんでしょうか。
  86. 松山光治

    ○松山政府委員 今我々が構造政策を進めなければならないと考えている事情について、先生の方からも一つのお考えがお示しされたわけでございますが、私どもといたしましては、今の農業をめぐるもろもろの状況の中で日本の農業が健全な発展を遂げていくためには、国民の皆さんから幅広く理解してもらい、かつ支持していただく必要があるのだろうというふうに思っております。土地という条件に制約を受ける農業でございますから、おのずからほかの国とは違った事情があるわけでございますけれども、しかし、国民の皆さんから、農業農業なりに随分頑張ってくれておる、こういったようなことを言っていただいて支持していただけるような、そういう構造をできるだけ早くつくっていくことが非常に重要なことなのではないか、こういう観点で構造政策を進めたいと思っておる次第でございます。  そういう立場に立ちながら構造政策を進めます基本的な考え方につきましては、先ほども大臣の方からも話がございましたように、地域の実情に応じまして農地の売買や貸し借り、あるいは農作業受委託などを進めまして、中核的農家規模拡大あるいは生産の組織化等を促進していく、こういうことに相なるわけでございますが、具体的には農用地利用増進事業を基軸といたしまして、地域農業のあり方につきましての合意形成を急ぐとともに、担い手なり地域リーダーの育成確保を図っていく、あるいは農作業受委託促進を含めました多様な農地流動化の掘り起こし活動を強化していく。基盤整備も必要でございます。また、安定的な就業機会の確保も重要な課題であります。こういう課題についていろいろな形で取り組みを強めていきたい、このように考えておるわけでございます、  今回、構造改善の目標というのを法律事項として規定いたしましたゆえんは、これから構造政策を進めていくに当たりまして非常に重要な点といたしまして、各地域の置かれました農業の諸条件が非常に異なっておるわけでございますから、そういう意味では地域農業をどのように持っていくのかあるいはどういう担い手を考えながらこれを進めていくのかといったようなことにつきましての地域農業のあり方あるいはその展開方向について各地域でできるだけ具体的に合意形成を図っていただき、そういう一定の方向づけのもとで構造改善への取り組みを強めていただく必要がある、このように考えられることから、今回法律事項として規定をすることにいたしたわけでございます。
  87. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 規模拡大ということは一般的には受け入れやすい要素なわけですが、ただ、構造政策というものが今の日本農政の大きな柱になっているということを農民は肌で感じているわけです。同時にそれが、繰り返すようですけれども、米価の新方式が持ち出されたことによって、構造政策と生産者米価との関連が非常に裏腹の関係で今後進むのだぞということも理解してきているわけですが、それだけに一体この構造政策目標はどこなのだ。昨年の生産者米価のやりとりのときには、いずれは五ヘクタール、当面一・五ヘクタールという数字は出たのですけれども、生産者米価の当面一・五、行く行く五ヘクタールというその次元の問題じゃなくて、構造政策を進める農水省として、政府として、この構造政策はどのくらいの期間、年数で、そして何ヘクタール農家をどのくらいつくるんだあるいは地域的な配慮があるかないかというふうなある程度のビジョンが出てこないと、農民は何か安楽死を待っているような非常に不安定な気持ちに置かれているわけです。その辺を明らかにすべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  88. 松山光治

    ○松山政府委員 規模拡大目標なりそれの達成期間についての問題でございます。  今お話がございましたように、昨年の米価審議会の小委員会の報告では、将来の稲作の担い手像といたしまして五ヘクタール以上層といったような考え方が示されておるという事実が一つあるわけでございます。また、技術的な観点からすれば、例えば大型機械化体系ならこの程度規模あるいは中型の機械化体系ならこの程度規模といったような試算が当然できるわけでございますし、また現に農政審の報告等でもそういう試算もなされておるということがございます。  ただ、具体的にこれを各地域目標として考えてまいりますときには、先ほどもちょっと申し上げましたように、各地域におきます担い手の経営条件なり農地の出し手の状況、圃場の条件、作物構成、その地域の就業構造等々、各地域によって事情が非常に異なっておるわけでございますから、そういう意味では全国画一的にこういったものでなければならないというようなことを申し上げるのはかえってむしろ混乱を招きかねないというふうに我々としては考えるわけでございます。  そこで、私ども今回農業構造の改善の目標を各市町村農用地利用増進事業の実施方針の中に明定するといったような御提案をさせていただいておるわけでございますけれども、各地域におきまして市町村が関係者の意向を踏まえながら、かつまた先ほど来申し上げておりますようないろんな全国的な指標なり指数といったようなものがあるわけでございますから、そういうものも参考にしていただき、地域の条件に即した農業構造目標を定めていただき、その実現に向かって取り組んでいただくというのが現実的ではないかというふうに考えるわけでございますし、そういうこととの関係からいたしますれば、今回予定いたします構造改善の目標につきましても、できるだけ現実性を持ったものという意味では、当面五年程度目標を定めて、それを順次必要に応じて見直していくといったような手法をとるのが適当ではないのだろうか、このように考えておる次第でございます。
  89. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 その辺が論議が分かれるところですけれども構造政策は進めますよ、いずれは五ヘクタール農家の生産費で生産者米価は決めていくんだよ。農水省の統計をそのまま引用すれば、五ヘクタール農家の生産費ですと、一俵当たり一万二千二百三十四円でしょう。そういった生産者米価の方の見通しがかなりはっきりしてきているわけです。ひょっとすると、これは一万二千円台まで持っていかれるぞ。当面一・五ヘクタールと言えば、一万三千幾らでしょう、一万四千円をちょっと切りますね。そういったところははっきり見えているんだが、では構造政策を、我々農民を含めていつまでに、どの地域、どこまで達成しようとしているのか。中山間地帯も引っくるめて五ヘクタールを目指すのか、傾斜地農地は一体どうなるんだ、飛び地で五ヘクタールでもいいのかといった疑問がたくさんあるわけです。そういったものを拡大するといって、内容なり時期がはっきりしないで、しかし、結果については生産者米価はきちっと決められている。もっと端的に言えば、これは心配し過ぎるかもしれないけれども構造政策が進む度合いというのは、私は日本で平野部と中山間地ではかなり差が出てくると思うのです。平均して何町歩になった、例えば三ヘクタールになった。では三ヘクタールの生産者米価でいきますよということになったら、それに到達してない東北なり九州というところは生産者米価はペイしないでしょう。とてもじゃないが、やっていけないということになるわけです。そこのところの連動があるものだから、やはりこの構造政策は大きな柱として今お出しになっているわけだから、土地の流動化ということあるいは農地法の改正を含めて大きな柱として、会期末が来る、急げや急げ、重要法案だということで、このくらい一生懸命やっているこの作業と関連して構造政策のビジョンを国民に示すということがなかったら、農民はやはり不安ですよ。そのことが一つ。  それから、これは食糧庁長官からお答えになってもいいですが、構造政策の進展ぐあいと生産者米価の決定と、タイミングなり連動をどう考えていますか。
  90. 松山光治

    ○松山政府委員 構造政策のビジョンということに相なりますれば、抽象的に申し上げれば、今与えられた技術条件のもとで、その技術を有効に使いまして、国民の皆さんに納得してもらえる価格で安定的な食糧供給が行えるような経営なり生産集団、そういう意味での生産単位地域の実情に即してつくっていくんだということに相なるわけでございますが、今委員から御指摘がございましたように、平場の農村地帯と、それから中山間というか山地とでは全く条件が違っておるという事情にあることも我々、承知をいたしておるわけでございます。コストという点からいたしますれば、平場に比べれば中山間の方がなかなかきつい条件にある。そういうことではあるわけでございますけれども、現に私どもいろいろな事例を見ましても、そういう厳しい条件の中にありながらも、その地域の条件を踏まえながらの規模拡大の努力を行っておるという事例も幾つも見られるところでございます。あるいはコストということだけではなくて、例えば高冷地という地域性を生かした農産物の生産に取り組んでおるとか、あるいはまた豊かな自然環境を背景とした新鮮なイメージづくりといったものをフルに活用していこうという、そういう意味での村づくり活動を行っているような地域も間々あるわけでございます。  そういうふうに考えてまいりますと、中山間地帯の問題にいたしましても、単なるコストといったようなことだけではなくて、幸いに需要面では多様化という要素もあらわれてきておるわけでありますから、その地域の得意わざを生かしながら、その地域なりの農業展開方向を考えていただく。また、その展開方向との関連においてその地域における農業担い手といったものを考えていただく。そういう意味での地域農業のあり方についての合意形成を急いでいただきたい。我々としては、そういった各地域の努力ができるだけ円滑に実を結ぶように、いろいろな意味での援助をさせていただきたい、このように考えておる次第でございます。
  91. 甕滋

    ○甕政府委員 構造政策と米価の決め方との関係についてお尋ねがあったわけでございますけれども、現在、米をめぐる情勢といたしましては、過剰基調の中で内外価格差が開く。それにつれまして、また食管制度に対する意見、批判も出てくるという状況が片一方であるわけでございます。また、需給事情につきましても、消費の減少傾向もありますけれども、三たびの過剰処理も懸念される、こういった環境の中にあるように思います。このような中で食管制度の基本を堅持していく、そのために国民の理解と支持を得ていくことが課題であると考えております。  米価の算定方式を考える場合に当たりましても、そういった条件の中で稲作の継続、生産費をベースにいたしました算定を図り、再生産を確保していくことが一方必要になるということからいたしますと、農家らしい農家をとりまして、その生産費あるいは所得を確保していく、こういう観点が要請されてくるように思います。国民の理解と支持の中で、この主食の供給の安定を考えていくサイドからいたしますと、それは当然出てくる要請のように思います。  そこで、生産性の高い個別経営農家あるいは生産組織集団を今後の育成すべき担い手ということで示しまして、その生産費を基礎として算定をするという米価算定を私ども心がけておりまして、新しい算定方式も、結局そういった今後の日本の稲作の担い手となるべき、またそういった担い手として育成していくべき農家についてその生産費を基礎に算定をする。それからまた、今後こういった稲作の将来の姿の一端が示されることによりまして、生産費が高い一定規模以下の農家についても生産組織集団に積極的に参加していただく、あるいはその地域の中核となる農家利用権等をゆだねるといった対応もございましょうし、農業団体の掲げておりますようなコストダウンの目標実現ということからも、地域の足腰の強い農業確立をそういったことを通じて実現していくということもあわせ考えていくべきではなかろうか。すなわち、構造政策の進展を踏まえ、かつまたそれを展望した米価決定という流れの中で今後考えていかなければならないのではないかと考えているところでございます。
  92. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 私、ちょっとわかりにくい点があるのですが、局長には端的に、構造政策を進める上に地域性なり地理的条件があるんだから、画一的に何ヘクタール目標とか、ことしは一・五ヘクタールだぞというふうな画一的な進め方はしないということでいいのかどうか。まずそれが一つ。  それから、食糧庁長官にはずばりお答え願いたいのですが、米価とヘクタール問題と連動するのかしないのか。去年からのいきさつであれば、新聞等にも書いてあるでしょう。ことしは一・五ヘクタール農家の生産費に基準を合わせる、やがては五ヘクタール農家だと。スケジュールはできているが、一方の構造政策がそのとおり進むとは限らない。その場合のギャップをどう考えるのか。それでも進めるのか。そこのヘクタールと生産費との連動の歯車をお聞きしたいのです。連動しないならしないと言ってくださいよ。
  93. 甕滋

    ○甕政府委員 先ほども申し上げたつもりでございますけれども、米価の算定方式の中におきましては生産費所得補償方式というものが基本にございまして、現に実現されております生産性の高い、あるいは平均的な階層、そのとり方が問題でございますけれども、現に生産性をある程度上げている農家について実現されておる生産費を基礎に算定をするということを行っておるわけでございます。したがいまして、これが生産費所得補償方式をとる限りにおきましては、今後とも実現された生産費のレベルがその基礎にあるというふうに御理解をいただきたいと思うわけであります。
  94. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 私の方が、読解力というのかな、国語のレベルが低いのかどうかよくわかりませんが、もうちょっとはっきり言っていただけないかなと思うのですがね。  問題がここまで来ましたから、後ほど触れようと思っておりました生産者米価の問題に入っていきたいと思うのですが、去年この委員会で私の質問に対して食糧庁は、諸般の情勢から、新算定方式については、理解を深めつつ昭和六十四年度生産者米価から適用するということをおっしゃっているのですね。「六十四年産生産者米価から新算定方式を適用する、」その新算定方式というのは当然のことながら米価審議会の小委員会の報告書に基づく算定方式だということをはっきりおっしゃっているわけです。とするならば、ことし一・五ヘクタールでしょう。三年間で見直しして、その次にねらうのは五ヘクタールでしょう。そういうふうなスケジュールになるのをはっきり知っている、国民はそう理解しているのですよ。しかし、現実に、局長がおっしゃったように構造政策はまだビジョンも達成期間も立てていないでしょう。何ヘクタール農家を何%まで何年までにつくる、実現するというふうなビジョンなり達成期間なり達成内容というふうなものは明らかにされていない。それで地域的に進行状況には当然ばらつきが出てくるという状況の中で、生産者米価決定方式だけはきちんとヘクタール、ヘクタールということで答弁なり御発言を聞けば決まっておる。つまり、こっちのペースとこっちのペースとの整合性というのがはっきりしていないのですよ。そこのところをお聞きしたいのです。どちらでも結構です。
  95. 甕滋

    ○甕政府委員 御指摘にございました一・五ヘクタールでございますけれども、これは昨年の米審の小委員会等でも十分論議をされ、また本委員会においても御議論を賜ったところでございますけれども、現状の稲作の生産構造あるいは経営等を踏まえまして、当面、将来の担い手となるべき、また育成していくことが期待される階層として一・五ヘクタール以上というものがとらえられるのではないか。これは、農業専従者がおりますとか、労働時間が、相当の時間農業に従事をするとか、あるいは所得も農家の中において相当部分を占めるとか、機械体系等においても合理的な水準が実現されておるとか、もろもろの指標からいたしましてそういった規模層として想定をされた、したがってこれは現状におきます一つの考え方として一・五ヘクタールというものが出されております。  ただそれを、五ヘクタールという御指摘もありましたが、機械的に三年たったら五ヘクタールにするんだ、決してこういうことを言っておるわけではございません。やはり構造改善の進展度合い等も十分見合わせながら今後検討していくという方向として示されておるものでございますので、その辺念のため申し上げておきたいと思います。
  96. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 時間だけがどんどんたつので私も気が気ではないのですが、私だけがわからないのかと思ったら、同僚に聞いたらやはりわからないと言うのです。やはりわからないそうです。  それじゃ別な角度からお聞きしますけれども、これはごらんになったと思うのですが、ある新聞の社説に出たわけです。「去年の米価決定の際、政府と自民党はことしの米価を大規模農家を対象とした新しい算定方式ではじくことで合意し、双方の代表が文書に署名までした。新方式は算定の基準となる経営規模をいまの一ヘクタールから当面は一・五ヘクタールへ、さらに将来は」云々というふうに、やはり去年からの論議を議事録その他を整理してみますと、去年、実施する予定だったけれども諸般の事情で一年先送りをした。昭和六十四年、つまりことしから新方式は当てはめますよ、その新方式というのは米審の小委員会の報告書の内容そのとおりですよということを議会で答弁なさっているわけだ。  それじゃ、そのとおりですか、そういうふうにお聞きしますか。諮問の内容はどうですか。その新方式によって諮問なさいますか、それとも巷間伝えられている据え置きで諮問なさいますか。お答えできる範囲でどうぞ。
  97. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 甕長官、わかるようにお答えください。
  98. 甕滋

    ○甕政府委員 ことしの米価をどうするかというお尋ねでございますので、これは先ほど来大臣あるいは私からお答え申し上げておりますように、新しい生産費あるいは最近の物価、労賃、こういった材料が入手できました段階で鋭意努力することによりまして算定方式に従ってこれをはじくということでございます。それ以上のものはございません。  ただ、新算定方式について申しますと、昨年、本来適用したいと考えておりましたのが一年送られまして、本年これを適用するという方針になっておりますので、そういった経緯を踏まえまして本年は計算をしていくつもりでおるということだけ申し上げておきたいと思います。
  99. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 生産者米価決定は参議院選公示前にやるということをさっきおっしゃいました。これはかなり高度な政治的な判断だと私は思うのです。時期の問題について言えば。  内容的には政治的な判断が加わる要素はありますか。どうですか、大臣。今長官は新方式で諮問するということをおっしゃった。上がるか上がらないかということを今おっしゃっているわけじゃないんですね。生産者米価を上げますよとか引き下げますよとか、あるいは据え置きにしますよということはおっしゃってない。しかし、参議院選挙前に決めるというかなり高度な政治的な判断をなさったとするならば、その諮問内容なりあるいは落ちつく先、大臣、何かお考えがあったらどうぞ。
  100. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 生産者米価の決定時期でありますが、私は最初から、自然体で粛々と例年どおり八日あるいは十日前後に決めるべきである、このことはずっと申し上げてきたところであります。ところがことしは、五日に選挙の告示ということになりますと、それぞれ各党の皆さん方も東京にはもうほとんどおられない、みんながそれぞれ選挙区に行かれるという特殊な事情なんです。それで今回の場合は、非常に作業的にも難しいのですが、五日か四日早めたというだけであって、政治的というんじゃなくて、やはり米価をめぐる諸問題等を考えますと、政治家の皆さん方もこのことには重大な関心がありますので、東京におられない、選挙半ばに決めるというのはいかがかなと思いまして、事務当局等も精いっぱいの努力をすれば告示前にできないこともないということで判断をいたしまして、選挙告示前、こういうふうに決めたわけであります。  価格の問題は、ただいま長官が申し上げたとおりでありまして、これは昨年私ども、党とも合意を見ておる新算定方式で計算はするところであります。したがってその後のことは、またその計算方式でどのような結果が出るか、それによって判断をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  101. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 この問題はもう一回で終わりたいと思うのですが、私は、先ほどからのやりとりで、やはり構造政策目標なり、あるいは地域の状況に応じた進展度合いのばらつきも出てくるだろうというふうなこと等も踏まえまして、いわゆるヘクタール、その場合はどのレベルでとらえるのでしょうか、恐らく全国平均でとらえるかどうかわかりませんけれども、ヘクタールでもって生産者米価、一・五ヘクタールとかあるいは三年ごとの見直しでもって何ヘクタールの水田農家の生産費を基準にして生産者米価を決めるといういわゆる新方式については、以上やりとりした理由から私ども反対です。新方式についての生産者米価決定ということについては反対をしてまいりますが、今後の推移を見守ってまいりたいと思います。  そこで、さっきのいわゆる大規模化、農地の流動化による規模拡大という問題に話を戻して、若干岩手の実態等をお話し申し上げながら、果たしてこれでいけるのかどうかという疑問を提示しますので、それについての御見解を賜りたいと思います。  大規模化は非常に難しいというのが多くの農民の声でありました。私もゆうべまで現地をぐるぐる回りまして終電車でこっちに来たのですが、数多くの農民あるいは農民団体とお会いしてきましたが、結論は、そう簡単には大規模化はできないよ、ましてや五ヘクタール化なんというのはとてもとても実現は難しい。その理由の幾つかを挙げますと、一つは農業事情の変化ということもありますけれども、狭くともこれはとにかく財産だ、あるいは老後の自己耕作のためには絶対とっておくという方があります。ですから、これは受委託という点では解決できるかもしれませんが、いわゆる土地の権利の移動についてはまず絶望的だろう。それからもう一つのでっかい障害は減反政策だというのですね。大規模化しようとしている意欲のある農家の人ほど減反政策には物すごく反対なのです。一町歩買って拡大してやろうと思っても、一町歩取得すれば二・五反の減反がついて回るわけですね。だれが買うものかという声がある。水田を拡大しようと思って買って減反が三割近くもかぶさってくるのでは話が違う、こういうかなりさめた言い方があります。  それから雇用の問題もあるのですが、単純計算しますと、全国の水田が二百八十八万九千ヘクタール、これは六十三年度の数字ですか、これを仮に五ヘクタール区画にしたとすると六十万戸で足りるわけですね。そうしますと、現在の農家戸数は四百万くらいあるわけですから三百数十万戸の水田農家は一体どこにいけばいいのかという問題が出てくる。これに対しては答えを準備していなかったら、私は構造政策を進める資格はないと思う。これについてはどうするのだ。  それから、果たして大規模化した場合のスケールメリットというのはあるのだろうか。これはある。当然それはあるでしょう。ただ、それは連続した土地でもって確保するという前提が必要だ。飛び地でもってしたのでは、農地から農地へ移動する間の時間から何から、とてもじゃないが大変だ。  それからもっと重要なことは、農村環境、農業環境を維持しているのは一体だれかということになりますと、一町歩から二町歩のいわゆるそういう規模農家集落形成して、一年に一遍か二遍水路の草刈りもする、道路や畦畔の草刈りもする、そういう作業があって初めて日本の農用地というのは保全されているのです。アメリカのように一軒から一軒の距離が何十キロなんというのとはまるっきり事情が違う。そういう集落機能があって初めて農業が営まれているわけです。もし仮に五ヘクタール農家がどんどんと出た場合に、草刈り一つできないだろう、こういう声があるのですよ。恐らく金を出すからだれかやってくれ、とてもじゃないがあそこからあそこまでの間の中小の河川、農業用排水路の草刈りができない。つまり先ほど申し上げましたけれども、草刈り一つ取り上げてみても、あるいは水管理、追肥というきめの細かい農業技術を発揮するにしても、五ヘクタール農家では粗っぽくなってしまう、そして、地域環境の維持はできない、こういう声がある。これに対してどうこたえられるか、まず以上、三つほど申し上げました。お答えください。
  102. 松山光治

    ○松山政府委員 広範な点にわたる御質問でございます。  日本の農業構造を改善していくという課題は、言ってみれば古くて新しい課題でございまして、そういう意味では、先生から御指摘のございましたようになかなか困難を伴う問題であるというふうに私ども厳しく考えておりますけれども、同時に、昨今の農業をめぐる状況の中では何としてでも関係者が一致した努力のもとに克服していかなければならない、そういう課題でもあるというふうに考えておるわけでございます。  今度、これからの構造改善を進めていくに当たりましてのいろいろな前提になるような認識があるわけでございますが、そのうちの一つといたしまして、今先生からは五ヘクタール、それなら六十万の農家で済むのではないか、集落機能も崩れてしまうのではないかというふうなお話もございました。まずその点について申し上げますれば、農村におきます農家の状態が、非常に農業に依存をした農家からむしろ他産業に相当傾斜しておる農家までさまざまな分化を遂げておりますし、また、農業の経営内容にいたしましても稲作中心農家からいろいろなものを複合的にやっている農家まで、これまたさまざまだという、そういう分化の状態があるわけでございます。  そういう分化の状態を一つ頭に置きながら、かつまたできるだけ国民の皆さんに納得してもらえる価格での農産物の供給といったようなことを考えましたときに、例えば稲作につきまして私なりに頭に置く生産構造ということになりますれば、流通いたします米の生産の大半のものが、五ヘクタールがいいのかどうか、これはまたいろいろと議論のあるところではございますけれども、言ってみれば中核的な担い手とでも言えるような農家の方によって担っていただくというのが基本になるのだろう。もちろん現在の農村の実態あるいは農業の実態というようなことを考えましたときには、かなり広範な自給生産を中心にした農家といったようなものも残存するでありましょうし、かつまた、日本の農場制ではない水田の状態を前提にいたしましたときには、何らかの形での集団的なつながりのもとにできるだけ効率的な生産が行われるといったような各地域の工夫が必要な現状にあるのではないのだろうか、このように考えておる次第でございます。  スケールメリットの話とも関連いたしまして農地の分散の話もございました。確かに経営規模拡大いたしましても、耕地があちこちに分散いたしておりまして、多数の団地に分かれておるといったような場合には十分スケールメリットが発揮できないのは御指摘のとおりでございまして、そういう意味で私ども圃場整備の実施に当たりましても交換分合、換地等の手法を通じましてそういったものの集団化が図られるように、そういう意味での生産条件の整備を引き続き進めていきたいというふうに考えておる次第でございます。  農家の分化といったようなことを考えましたときには、この農業構造の改善を円滑に進めます上でも、農地の出し手になる農家の就業機会を安定的に確保していく、これは言うまでもなく非常に重要な課題であるというふうに認識をいたしておるところでございます。本委員会でも何度も御議論をいただきましたように、私どもそういう考え方に立ちまして、既に制度化されており、かつ、昨年対象業種の拡大もいたしました農村工業導入制度を軸といたしました農村における就業安定機会の確保という課題に引き続き取り組んでいきたい、このように考えておる次第でございます。  そういうもろもろのことを頭に置きながら、しかしながら昨今の農業をめぐる状況の中では、やはり現在の構造を地域の条件に即して少しでも変えていかなければやはり農業の健全な発展が期待できないんだという共通認識のもとに、各地域でひとつできるだけ積極的な取り組みをしていただきたいものだ、このように考えておる次第でございます。
  103. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 時間が少なくなりましたので、局長には幾つか要望申し上げておきたいと思うのです。  先ほど申し上げましたスケールメリット、いろいろな視点、観点はあると思うのですが、村落に行きますと、一町ないし二町の規模農家ががっしりしていると、それから上の規模の大きい農家もそれに支えられる、それ以下の零細農家も生きて、営農ができるという非常に重要な役割を果たしているというのが農村集落の実態のようであります。今後の課題として、専業つまり中核的担い手育成するんだという大目標を否定はしませんが、同時に、日本の農業における専業農家の位置づけというものを少し考え直してみる時期ではなかろうか。雇用の問題も含め、あるいは、誘致企業の不安定な要素があって、ショックアブソーバーみたいな役割を果たすこともありますし、いろいろな意味を込めて、専業農家が日本農業を担っていく重要な部分を占めているんだという認識をするべきではないかという問題を提起しておきたいと思います。  大臣、本当に中核農家あるいは中核農家になろうとしている、農業に命をかけようとしている青年と話し合いますと、今おっしゃっているような規模拡大にしろ低コスト農業実現にしろ、それを邪魔しているのはやはり減反政策だと言っているのですよ。これはもうやめたらどうですか。自主判断という要素も幾つも出てくると思うのですけれども、減反のある限り、そして割り当てのある限りどこかでこの大命題とぶつかり合うのですよ。しかも、農家というのはっくるために百姓をやっているわけですから、この精神的にもマイナスな減反政策は思い切って大臣の任期中にやめる、そのことを検討する、これでもって大臣、大変な評価がほうはいとして沸いてくるんじゃないかと私は思うのです。  そのことと、では米はどうなるんだ、いろいろな自主流通米、いろいろな工夫もあるのでしょうけれども、きのう会ってきた青年から、食糧難の国に海外現物援助をさせてくれないか、ODAということでかなり予算化もしているようだが、なぜ我々のつくった米——そうなったら他用途利用米かそれ以下の値段でもおれたちはいいと言うのですよ。そういう食糧に困って飢えている国に日本として現物援助、海外協力ということで発動できない理由は一体何であろうか、障害は何なのかどうしてもわからない。それは食管法がこうあります、ああありますということは出てくるかもしれないけれども、それは人間の、我々がつくった食管法ですから、大臣がその気になれば日本の水田農業に活を入れるということと対外的に役割を果たすという大きな目標が達成されるのです。  以上、減反の問題と海外協力の問題、大臣どうぞ腹を据えてお答え願いたいと思います。
  104. 松山光治

    ○松山政府委員 大臣のお答えに先立ちまして、転作が規模拡大の阻害になっているのかどうかという点についての御質問でもございましたので、事務的にまず私の方からお答えをさせていただきたいと思います。  規模拡大阻害要因、いろいろとあるわけでございますけれども、私どもの行いました中核農家の意識とニーズに関する調査によりますれば、やはり資産保有といったような農家の意識、あるいは農地を貸し付けたらなかなか戻ってこぬのじゃないかという依然として残っておる不安感、それから安心して任せられる人がいないといったような担い手の問題、それに農業基盤の未整備といったようなことを挙げておる農家が多いわけでございます。もちろん、御指摘のございましたように水田転作が担い手規模拡大を阻害しているといったような御意見のあることも承知をいたしておるわけでございますし、かつまた、特に稲作地帯なんかにおきましては、米だけで規模拡大をやっていく方が転作とあわせて規模拡大をやるよりも易しいという事情は私もよくわかるわけでございます。  ただ、御案内のような需給事情のもとでございますから、水田を米と他の作物で有効に活用していく、これはどうしても避けることのできない課題でございまして、これを乗り越えていくということがやはりどうしても必要な事情にあるということもおわかりいただく必要があろうかと思うわけでございます。現に、転作の実施を契機といたしましてさまざまな態様で稲作と転作の双方の規模拡大をつなげておる事例が多数見られるようになっておるわけでございます。そういう意味では、水田農業確立対策と規模拡大対策を総合的に推進していくといったような観点に立ちまして、地域農業集団なりあるいは農用地利用改善団体と  いったような諸団体の活動の促進も含めまして、私ども必要な指導助成を行っていきたい、このように考えておる次第でございます。
  105. 甕滋

    ○甕政府委員 米の生産調整はもうやめるべきではないか、こういうお話でございましたが、私ども、米の角度から一言申し上げさせていただきたいと思います。  現在、七十七万ヘクタールに及ぶ水田農業確立対策、それに三十万トンの緊急対策を加えまして、ことしも昨年に引き続いて農家の御努力で今実行中という段階でございます。また、来年以降後期対策をどうするかという検討も始めておりまして、この秋までにはその枠組みを決めていかなければならないという状況かと思います。  そういった中で現在、生産調整についてはもう限界ではないか、これ以上進めるのは無理だ、こういうような御意見があるのも事実でございますし、私ども、そういった声もいろいろ耳にしておるところでございます。ただ、それでは生産調整をこの際やめてしまったらどうなるんだろうか、こういう議論も他方ございます。その際、やはり一千万トンの需要に対しまして四百万トン近い大幅な潜在過剰があるという状況でございますので、仮にこれをやめてしまうということになると想像を絶する混乱になりはしまいか、米価の一時的な大幅な低落、また、場合によりますとそれに続く高騰といったことも予想されるのではないか。いずれにしても大きな変動がもたらされるといった意味で、それではこれをいざやめてしまったらどうなるかということにつきましては、これも大変な不安と疑問があるのも事実でございます。  そこで、今回、「今後の米政策及び米管理の方向」ということで農政審の小委員会の報告が取りまとめられて、先般この委員会でも御論議をいただきましたけれども、そういった中では、これだけの需給ギャップがある中においては需給調整は何らかせざるを得ない、需給調整をする中で価格の安定、需給の安定というものを図りながらその改善を図っていくということがやはり一番いい方法ではなかろうか、こういうのが大方の意見の集約であったであろうと私は受け取っております。そこで、基本は消費が減りまして生産を合わせていく、これは質的な問題もありますけれども量的な問題で大きな問題にぶつかっておりますから、これを何とか援助その他で用途ないしは需要先を広げるべきではないか、こういう論議もございます。これは、こういった難しい局面になりますとこれまでも絶えず何回となく出てきておる論議ではないかというふうに思います。  そこで、援助に振り向ける場合に一番問題になりますのは、国際価格とのギャップの問題でございます。開発途上国ないしは食糧の足りない国に対します援助も一定の国際ルールのもとで行われております。したがって、どこへでも金さえかければ持っていけるというものでもないわけでございますが、その国際価格とのギャップが膨大な費用を要するということでもございますので……
  106. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 簡単にお願いします。
  107. 甕滋

    ○甕政府委員 その辺については私ども直ちに具体的な方向としてこれを講ずることはなかなか難しい、端的に申し上げますとそういった感じを現在持っておるところでございます。
  108. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 局長並びに長官から答弁申し上げたとおりでありますが、私は沢藤委員の御意見農家の大多数の意見だとは思っておりません。そういうような方向ができるならば、これはもう農林水産省は非常に楽するわけでありますが、現在米審の小委員会でも需給と価格の安定を図りつつ、そして今後流通等においては市場メカニズムを入れながら取り組んでいくべきだという答申を出していただいておるわけで、すなわち食管の根幹を守りつつ需給の安定を図っていこうということでありますから、今委員のおっしゃったような方向でいきますと、これはもう価格が大暴落することも間違いないわけです。潜在能力が約四百万トンあるわけでありますから、これを一斉に緩めるということになりましたら、食管の根幹そのものが壊れるということに相なりますので、また私は減反ということはみんな大変苦労していることも重々承知をいたしておりますが、需給のバランスを図るという立場から、これはやはり農民の理解を得なければならないと思っております。  それから、先ほどODAの問題がありましたが、これは他用途米でというお話ですが、これはならないわけであって、結局援助の場合は国際価格でやっていかなければならない、こういうことになりますと、トン二、三万円という米では恐らく我が農家の皆さんもそれではやっていけないだろう、こういうように考えておりますので、これまた海外援助、いろいろな農家の皆さんの声があることも承知をいたしておりますが、実際の国際間のルールというものを御承知ないからそういう端的な意見が出ると思いますが、これはまた不可能だ、かように存じております。
  109. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 時間が過ぎましたから質問はしませんが、要望さしてください。  ODAの話が出ましたが、機械を他国に持っていく、施設をこうした、ああしたという大変な問題がいろいろ出ているわけでしょう。こういったことを整理したならば、政府の一つの方針として取り組んでみて不可能なことはないんじゃないかという気がしますので、これはいつかまた、継続してお願いをしていきたいと思います。  需給調整の問題、長官の御説明としては私は理解できますが、面積でもって需給調整をやって、今度は価格で攻めてくる、強い者は生き延びろ、弱い者はやめろということになりはしないか、私は大変残念な制度だなと思っております。討論しましょう。そうなったらどうなるのかということを提起されたわけですから。もし減反をやめたならどうなるか、やめなかったらどうなるか、規模拡大できるかという論もあるわけですから。いっかやりましょう、その問題は。論議をしないで、できませんできませんという繰り返しだけでは進歩がないわけですから。農民の声も皆さんには聞いてもらいたい。機会を与えてください。  最後にもう一つお願いして終わります。質問事項が三つ四つ残っておりますけれども、これは後で農水省のそれぞれの方に申し上げたいと思います。  学童農園としての利用の方法はないか。特に必要なのは、生産に対する児童の理解ということがありますから、文部省と連携して進めていただけたらどうか。それから特定農地貸し付けで米をつくった場合の転作の取り扱いと食管制度の取り扱いはどうかという問題。それからもう一つは、農地の規制緩和ということに関連しまして、自作者主義あるいは耕作者主義というものが少し崩れてきているような感じがある。  そういった中で、資料をお上げしておりますが、岩手県南部のある町で、実際ば農業後継していないんだけれども、住民票を移した中で経営移譲年金を受給しているということで告発されているケースがあるのです。これは農地法の今までの精神からいっていかがなものだろうかということを、これも後ほど個別にお聞かせ願いたいということをお願いして終わります。  どうもありがとうございました。
  110. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 竹内猛君。
  111. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農地の流動化に関する二法に関連をして若干質問をいたします。  まず最初に、新しく宇野内閣の農林大臣になられた堀之内大臣に質問をいたします。  きょうの毎日新聞を見てもわかるように、今、全国で十七の米の中心地で現在の農政に対して厳しい批判が行われている。その根源になっているものは何であるか、大臣はどうそれを受けとめられておるのか、まずそこからお伺いいたします。
  112. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 農政に対するもろもろの不満というものがあるだろうと存じますが、最近、農政にこうした不満あるいは不安を持っていらっしゃるということは、昨年来、やむを得ない国際化の状況の中におきまして、農産物十二品目あるいはまた牛肉・かんきつ等に対してぎりぎりの条件をもって自由化に踏み切らざるを得なかった、こういう事情が十分理解されていないというところに今日の農政不信が起こっておるのではなかろうかと存じます。また、こうしてやむを得ないぎりぎりの線で自由化いたしましたそれぞれの農作物に対しては十分な対応策を講じてきたところでありますが、このような対応策が十分理解をされていない。いわゆる私どもの説明不足というところでありましょうが、そういう意味で将来に不安を持っていらっしゃいます。そのことがひいては米作地帯におきまして、あるいは将来、主食である米に対しても政府は自由化に踏み切るんじゃないか、あるいは一部自由化をするのではないかという御心配、御不安があることは承知をいたしております。そのような不満、不安というのが今日の農政に対する不信ということになっておろうと存じます。したがって、米の問題につきましては先ほどから基本的な考え方を申し上げておりますが、今後農村のそうした関係者あるいはまた農業団体等にも十分政府の意のあるところを説明申し上げて、不安の解消に努力をし、信頼回復に努めてまいりたい、こういうように考えておる次第であります。
  113. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 午前中は自民党に対して全国の農協の要請があったと思うのですが、午後、野党に対する要請がありました。その中で三県の代表が決意を表明いたしました。それは秋田県、佐賀県、三重県で、いずれも自民党の農政についてはかなり理解をして反対している。理解をしている。これは説明不足ではありません。そういうことではこれはだめだ。そんなことを言っていたら大臣失格だ。要するに、理解をしていて、このままでは跡取りができない、残らないと言っている。何としても農業の展望を開いてもらいたい、展望がないというのだ。大会を開けば、自由化は抑えます、いつの間にかずるずるずるずる、最後に残ったのは米だけになってしまったじゃないか。その米ももうあと五年間で危ないんだという状態の中で、展望のないところに信頼はない、このことを確認をしなければならない。  例えば、三十六年に農業基本法をつくったときに、社会党が農業基本法を出したときに、これも今の消費税のように社会党の出席できない国会で決めてしまった。それが、あれだけ強行採決したにもかかわらず、その中の都市農村との所得の格差を是正するということも一つもできていないし、中核農家を百万戸つくろうということもできていない、そういう状態。あるいは五十五年の食糧自給の問題についても、自給率を高めよう、これは全会一致だ。五十九年にもやはりそのことを追認した形でこれを確認をした。これは米が不足したときです。あるいは自由化の問題に対しても、本会議では決議がなかなかできなかったけれども農林水産委員会ではこれを抑えようということで、これも全会一致で決めたはずであります。そういうものあるいは長期の見通しというものをつくっておきながら、それがほとんど狂って信頼を持てない。こういう展望なり決めたことが守れない。それは野党にも責任が一部あるかもしれませんが、責任与党ということを常に言っておられる自民党に責任がないとは言わせない。要するに、いかにしてそれを実行しようとしてきて何が阻害をしたのかということを明らかにしない限り承知できません。
  114. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 委員御指摘の展望の問題でありますが、我が国農業が内外ともに極めて厳しい情勢にありますことはもう御承知のとおりであります。したがって、バイオテクノロジー等の技術革新が進展をいたしておりますから、こういう中で農地の賃貸借、農作業受委託等により規模拡大を図っている地域やあるいは果実などの輸出を試みている地域もあります。こうした技術進歩や農業者の創意工夫によりまして、地域の特性を生かしつつ農業を魅力ある産業とすることは十分可能であると考えております。  このような状況を踏まえ、さきの農政審報告でも明らかにされておるとおり、より一層の生産性の向上を進め、国内での基本的な食糧供給力の確保を図りつつ農業経営の安定を確保するとともに、国民の理解し得る価格での食糧の安定供給に努めることを基本といたしまして、諸般の施策を強力に展開してまいる所存であります。また、農業者が将来を見通しつつ営農を展開することができるよう、現行の長期見通しにかえまして平成十二年を目標年次とする新たな農産物の需要と生産の長期見通しを策定することといたしております。  今後の農政の推進に当たっては、農業者がみずからの生産活動に誇りと将来への展望を持てるようなわかりやすい農政にすることといたしまして、政策内容農業者に十分説明をし、農政への信頼を早期に回復することを心がけていきたい、かように考えておる次第でございます。本日の大会でいろいろ御批判もあったろうと存じますが、私は、やはり米作地帯中心であるところ、複合的な諸問題を取り入れた新しい農業の展望を図っていかなければならない、こういうように考えておる次第でございます。
  115. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 努力をするということは、それはもう当然しなければなりませんが、農業が果たしている役割というものについてどのような御認識をお持ちになっているのか、そのことをまずひとつ明らかにしてほしいと思うのです。  例えば前々総理大臣の中曽根さんは非常に行革がお好きでして、自分の好きな人をどんどん行革に送り込んできて、農業に対していろいろな指図をした。それで六十一年のときには、総理府総務長官でしたか、お亡くなりになった玉置大臣をして農協を調査し、自民党という政党は農村的政党から都市政党になっていくんだ、安い外国の食糧を輸入して都市の消費者に喜んでもらい、米についても、いろいろなことを言うやつがいたら外圧を加えてでも米を入れるんだ、そして消費税は、五百万以上といいますか、管理職の所得税の軽減をするために必要である、だから農協や特定郵便局や町のお医者さんから離れても自民党は大丈夫だということをお話しになったことがちゃんと記録に残っておりますが、あのような考え方というものが中心になって委員会をつくって、そしてそれに農業批判の評論家がたくさん入っている。その人の書いた本を読むと、農業と工業とを比べて農業というのは、百のものであれば五だ、九十五は工業だ、工業の原則、理論で農業を取り計らうということは誤りだと思うのですけれども、いかがですか。
  116. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 最後にお尋ねになりました、農業を工業、装置産業と同じような物差しではかることは間違いだという御指摘がありましたが、私も全く同感であります。農業というものは天候、自然に左右され、しかも年一回しか生産できないという特殊な事情にあるということ、このことは国民全体が、特に経済人の皆さん方に御理解をいただかないと、まず農業全体を語ることはできない、私はこういうように思っておる次第でございます。  そこで、そういう観点の上に立ちまして、これからの農業役割についてお尋ねでありましたが、農業は国民生活にとって最も基礎的な物資である食糧の安定供給をいたしておるということであります。さらに、活力ある地域社会の維持あるいは国土、自然環境の保全など、我が国の経済社会と国民生活の土台を支える重要な役割を果たしておると思っております。今後の農政を進めるに当たっては、このような多面的な農業役割や施策の内容について広く国民の理解が得られるように努力することが重要であると考えております。このために農林水産省といたしましては、農業白書を初めとする政府の公式報告や刊行物、それらをわかりやすく伝える広報誌のAFFによる紹介、消費者の部屋や農林水産祭等各種イベントを通じてのPR、一日農林水産省の開催など、あらゆる機会手段を通じて国民の理解を得られるように努力をしておるところであります。
  117. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今のはどうも問題をかなり指摘をされて、意見と一致するところもありますが、なお大臣は宮崎県の都城でなかなかいい農業指導をしてきているわけだから、大臣の言葉でひとつ話をしてもらいたい。  それで、問題はこういうことではないですか。農業というのは、一つは人間の生命の安全保障、それはやはり自国の土地で、自国の労働力でつくる、農村でつくる、自給を高めていくということが必要だと思う。それがなければ、次の防災あるいは空気の浄化、そういうものもできない、それがなければ地域活性化もできないわけである。すべて外国に依存をして、安いから輸入をしましょう、安全性はどうでもいい、これではまずいのではないか。したがって、五十五年のときに、含みとして少なくとも六〇%の自給はやろうじゃないか、カロリーにしても。これは今四九%に落ちている。穀物の自給率は三〇%になってしまった。しかも、その穀物は、今輸入するものを日本の土地でつくったならば、一千四百四十万ヘクタールでつくるほどの広い農地を持たなければできないほど日本は輸入している。五百三十七万ヘクタールの日本の土地からしてみたら三倍もの広い土地でつくらなければならないものを輸入している。決して安全が確保されたとは言えない。きょうの新聞を見ると、アメリカでは既に小麦が凶作で値上がりをして、来月からはえさの値を一〇%上げようということさえ日本の商社や農協などが言っている。こういうふうに、常に外国に依存をすれば、円高・ドル安の問題もあって大変なことになる。だから、日本の農業というものをもっと大事にして、そして展望を与えて、若い者が残れるようにしていくということが大事じゃないか。  それにもう一つは、今度の法律に関連をしますが、規模拡大規模拡大と年じゅうそればかり言っているけれども規模拡大といったら一体規模をどれだけ拡大したら若い青年が残るのかということ、これも全くはっきりしない。規模拡大ということになると、例えばアメリカの農業は日本の百五十倍の面積を持っている、北海道を除きますけれども。日本の場合には集落から出発をして、そこには道祖神や氏神がある。そこで皆さんが話をしながら品種改良や土地改良やいろいろなことをして村の中にそういう組織ができてきた。ところが、アメリカの農業というのは農場から出発しているのだから、そこには鎮守の森もなければ道祖神もない。土地と機械しかない。そういうものを比べて、それで何か考えるということ自体に問題はないか。やはり日本の長い文化と伝統を持ったこの米、農業、こういうものを大事にする、そういうことを大臣の言葉からひとつ話をしてもらいたい。
  118. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 私も農家生まれの農家育ちであるし、あるいは、今日までまだ農地等も相当持っておりますから、ずっと農業のよさ、苦しさ、十分体験をしてやってきております。  ただいま御指摘のとおりでありますが、これからの農政というもの、幾ら規模拡大し、あるいは構造政策を進めてまいりましても、いろいろな立場をやりましても、しょせん価格を外国の農産物に近づけるということは、少し下げれば近づくかもしれませんが、近づけるということは容易ではないわけです。  国民は安全で衛生でしかも良質の農産物を求めていると私は思います。私の町も、大変な田舎でありますが、こんな田舎でありながら、やはり米は標準米よりその上の良質米の方が相当数売れておる実態を最近知りまして、ちょっと驚いておるところであります。ましてや、消費者の大部分は、これだけ経済が豊かになってまいりますと、やはりこれから先は何としても質の高い農産物を提供する、これが国民のニーズにこたえる大きな道だと私は思います。  そして、先ほど冒頭にも申し上げましたが、農林水産省も、農業が果たしておる多面的な役割、このことに対して国民が相当な理解をしてもらわなければ、ただ生まれた農産物そのものだけで、価格だけでとやかく批判をされるということは全く心外だと私は思っております。やはり国民が本当に憩いの場所として、あるいはまたレジャーの場所として求めるのは農村であり、山村であり、海岸なんだ、したがって、農林水産業というものはそういう国民の安らぎの場所を提供している、ここをまた高い評価をしてもらわなければなりません。  昭和四十年代に転作がありました。あのときは何も植えなくても奨励金をくれました。ところが、その後転作をやめまして復旧ということになりましたら、三年農地を荒らしたらもとの農地に復旧するのには大変な労力を要したことがございました。そういうことを考えますときに、今日の農村、山村というものが、もしそういう価格政策だけでいって、今後農家の皆さんが農地を放棄し農村が荒れてまいりますと、国の全体から見まして、国土保全という立場からも大変な損害をこうむると私は思っております。そういう意味で、これからも国民全体の責任として、この農林水産業というものに対して新たな認識、新たな理解を持っていただきたい、私はこういうように感じております。  もちろん、私は、今度就任いたしまして、総理のあの施政演説の中でも二つ注意を申し上げました。すなわち、農家の経営の安定を図りつつ、これは今まで総理の演説には入ってない。あるいはまた、今までの価格のいろいろなものに国民の納得し得る価格と言ってありますが、これもだめである、国民の理解する価格であればよろしい、納得ということは安いほどいいわけですから、そんなことはだめだと言って、これも今答弁用紙は納得ということは全部削除しております。理解する価格、こういう形でいっております。したがって、これからの農村の実情というものを十分踏まえながら、一気にそうしたことまではいかないとしましても、今後広く国民の理解を得るように、そして我々農家もまた、最大の近代化やら合理化やら、そうしたものを図っていく、こういう形で私は進めてまいりたいと考えております。
  119. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大分、自分の言葉になると迫力があって、そういうようにぜひ進めてもらいたいと思うのです。  間違えたことは閣内でも大いに議論してもらいたい。そのうちの間違えたものの一つが大蔵省ですね。大蔵大臣は米価を下げるということを盛んに言ったのですね、新聞にちゃんと出ている。その後、時々訂正したが。ところが、米価審議会というものがちゃんと存在をしている。米価審議会が存在をして委員を選んでいるのにもかかわらず、米価のあれこれを大蔵省が言うというのはとんでもない話だ。そのときになぜ農林大臣は今のように注意をしないか。それは農林省の仕事だ、米価審議会があるのだから。それを大蔵省が、あれやこれや大臣が言ったらおしまいではないか、米価審議会なんかあったってなくたっていい、そんなものは。それは早くても遅くても審議会の議を経なければだめだ。それについては閣議でひとつ大蔵大臣にはっきり注意をしてもらいたい。
  120. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 竹内委員の御指摘のとおり、閣議の日にすぐ大蔵大臣に大蔵大臣の真意を尋ねました。ところが、大蔵大臣は、そのような答弁はしてない、これはマスコミの方でそう書かれたわけであって、私は生産者米価は新算定方式により粛々と算定すべきものと考えております、こう申し上げただけで、それから先の解釈はマスコミがされたんだということでお話しありましたので、私も、米価につきましてはこれ以上大蔵大臣が発言されぬようによろしくお願いしますと申し上げておきました。
  121. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでついでながら、こういう話をしていると本論に入れないから、入り口ですから、本論に行く前に言いたいことがもう二点あります。  それは、先ほど大臣の言う前提からするならば、これから出すであろう農林省の長期展望の中に、なぜ一体自給率を供給力に変えてしまったのか、あるいは食糧の安全保障をどこか取ってしまっている、ガットに行くと食糧安全保障ということが盛んに言われるが、国内の中にはそれがないじゃないか、そんなばかな話があるか、こういうことだ。これが問題。  それからその次には、予算の中で食糧庁の予算というのは、僕が最初にここへ出てきたときは、四十七年から八年、あのころには、農林省の予算の三つの中で食糧庁の予算が四五%から四八%ぐらいあったと思うのです。最近は一四%ぐらいに下がっている。それでもなお食糧庁が金を使い過ぎだと言って食糧庁たたきをしている。一体幾らになったら食糧庁の予算はいいのかというあれがないじゃないですか。その問題も一つ問題だと思う。  それから、農林水産業というものが国の生命産業であり、国土を支えるものであり、大事なものであるとするならば、農林水産省の予算というものがどんどん減ってきている、毎年減っているのです、可処分予算は恐らく一〇%を割っておるはずです。そういうふうになっているのならこれは幾らやっても、予算がないから仕事ができない、いつも大蔵省にいじめられている。これではだめだ。どの程度のものにしていくかということはやはりめどをつけて、それを単年度で処理する場合と長期のものがあるでしょう、そういうふうにしていかなかったら希望の持てる農業なんてできませんよ。いかがですか。
  122. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 竹内先生の御質問の点につきましては、現在の農政審報告に関連する点でもありますので、私の方から簡単に御答弁申し上げたいと思います。  一つは、農政審の報告におきまして、自給力という言葉ではなくて供給力という言葉になっている点でございますが、この点につきましては、国内の供給力の確保ということは、従来の食糧の自給力の維持、増強という趣旨を毫も変更するものではなく、昨今の農業、農政に対する内外の諸要請にかんがみまして、生産性の向上により、国民の理解し得る価格での農産物を供給していることは重要であるという意味をあわせ込められたものという形で、農林水産省全体で肯定的解釈をしているところでございます。  先ほど大臣が御答弁なさいましたけれども、そういったことにつきまして、今後農産物の国際需給、中長期的には種々の変更要因を抱えていることに留意しまして、この点はことしの白書にも明記されておりますが、不測の事態に対しても対応できる能力、あるいは国内の供給力を確保する必要があり、このため、今後とも制約された国土条件のもとでも可能な限り生産性の高い農業生産を展開するという趣旨を含めまして使っているものだということを申し上げたいと思います。  また、予算の点でございますが、予算につきましては、五十七年度以来農林予算全体の枠組みがほかの予算等ともあわせまして原則的に縮小をしております。その点につきましては、特に竹内先生が今御指摘のとおり、農林水産省の予算のうちに特記されております食糧管理費というものにつきましては、五十七年におきます九千九百億から約四千億といったような形になっておりまして、その点がシンボリックになっておるわけでございます。ただ、この点につきまして一言申し上げますと、食管制度におきます逆ざやの縮小といったようなものが大きな原因になっておりますし、さらに水田農業確立対策の発足の際における予算の調整等におきましての原因が大きいというふうに考えております。  ここにおきまして先生御指摘の一般農政費の占める割合でございますが、現在の実態は、当初予算におきましては、確かに五十一年度の予算の一丁三%から八・九%、平成元年度の数字はそういう状況でございますが、ちなみに一般歳出を補正後で見てみますと、例えば六十二年度あるいは六十三年度におきまして一〇・一%あるいは九・四%という数字になっているわけでございまして、今後とも予算におきましては大臣のもとでいろいろな対主計局との折衝等に努力をいたし、工夫を凝らしていきたいというふうに考えているところでございます。
  123. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今の官房長の説明の部分について、ひとつ大臣、しっかり予算を、少なくとも一〇%の線ぐらいは下がらないように踏ん張ってもらいたい、これは要望です。  そこで、最近全国の農協青年部の動きについて、この間から農協青年部の皆さんからも社会党の土井委員長に話がありました。関係団体からたくさん話がありましたし、土井委員長も地方へ出ると青年部の諸君に会われる。  それで問題は、これは与野党を通じてですけれども農業に対する今話をしたような前提の国民的合意をひとつつくってもらいたい、こういうことなんです。国民的合意をつくってもらいたい。その合意の中の一つのポイントになるようなものを考えてみると、自給率を高めなければならない。日本の食糧自給率の度合いというものをどの程度に維持をするのか、規模拡大というものはどの程度までできるのか、あるいは米の生産調整は先ほど沢藤さんの話にあったようにやめられないのか、それから食管制度はどういうふうに堅持をしていくのか、財政負担はどうするのかというようなこういうポイントを軸にして、かつて三木内閣のときに国民食糧会議というものをやって、これは一カ年間全国でいろいろな会合をやってこういう印刷物が出てきました。あれは大変国民的な課題になってよかったと思う。  今の場合には、役所と団体と、それから与党が責任与党というようなことを言って野党などは寄せつけないようなことが最近はあった。このごろはどうも農協の方が会議の持ち方が上手になって、与党と野党と分けてやるようになったから大変結構なことだと思うのです。我々が行っても傍聴人みたいなものだ。物が言えない。物の言えないようなところへ行ったってしようがないですね。  そういうことですから、こういうことをやって、それで本当に国民的合意をして、日本の農業を消費者も生産者も団体も役所もみんなで守っていくんだ、支えていくんだ、これぐらいのことはひとつ我慢をしようじゃないか。過保護だとは言わない。それはヨーロッパだってやっているでしょう。そのことをひとつするような努力をしてもらえれば堀之内名農林水産大臣、こうなる。これはぜひやってもらいたい。どうですか。
  124. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 竹内委員の御指摘は非常に全体的にもっともなことなんでありますが、今農政審議会の方で各界各層の御意見を聞きながらいろいろな御意見をまとめていただいておるところでありますが、これはやはり御指摘ありますように、農業、水産業、林業というものはひとり我々関係団体だけで解決できる問題ではない。先ほどから御指摘いただき、また御答弁も申し上げておりますとおり、この狭い国土という大きなハンディキャップがあっておるわけでありますから、その中で国民に安定的な食糧を供給し、しかも安全で衛生的で良質な品物を提供する、こういう厳粛な使命を果たしているのが農民であります、あるいは漁民であります。そういうことを考えますときには、広く国民全体の御理解あるいは御支援というものを得なければなりません。  そういう意味で、これから農政審議会の答申等もいただきながら、これからはひとつ農業団体とだけでなくて、おっしゃるような経済、産業団体あるいは一般的な消費者団体、こういう皆さん方とも討議、対話を進めて、そして農政あるいは水産行政、林業行政に対する新たな御理解を得るようにこれから私ども最善の努力をしていかなければならないと思う次第でございます。さもなければ、ただこういう時期に、米価なら米価の時期に我々だけで米価を決める、あるいはまた団体だけの話し合いで決めるということになりますと、どうしても一方的な意見ということになりまして、国民の理解を得ることができないわけでありますので、これからも幅広くそうした意見の交換を行うような機会をつくってまいりたい、こういうふうに考えております。
  125. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 本来、この問題は社会党としては非常に重要な課題ですから、本会議で総理大臣にこのことは要請をすべきことですけれども、時間の関係上農林水産大臣を介して言うほかはない。もしやらなかったら、我々また別なところでこのような声を高めてやりますから、ひとつ承認をしておいてもらいたい。承認なんかどうでもいいのですけれども、やります。  いよいよ本論に入ります。  五十五年にこの法律ができて以来の成果と欠陥について、かいつまんで説明してください。
  126. 松山光治

    ○松山政府委員 五十五年に農用地利用増進法が制定されまして九年たつわけでございますが、この間関係の皆さんには大変御苦労をいただきまして、農地の流動化の促進という点では一定の成果を見てきておるというふうに認識をいたしておるわけでございます。形態といたしましては、売買よりも、どちらかといえば賃貸借を中心とした利用権の設定という形が多うございますが、少し具体的な数字で申しますと、昨年の場合で申しまして全体で八万九千ヘクタールほどの流動化量がございましたが、そのうち農用地利用増進事業でのりましたのが、約五万ヘクタールの利用権の設定を含めまして約六万三千ヘクタールというふうに流動化面積全体の七割を占めるに至っておるわけでございまして、六十三年の十二月末現在の利用権設定面積、ストックでございますけれども、約二十三万四千ヘクタールに上っておるわけでございます。内容的にも上層が借り入れていくというような形がだんだんと出てきておるわけでございます。  このほかに、農用地利用増進事業の世界では、地域の話し合いによりまして、作付地の集団化なり農作業の共同化を進めるといった農用地利用改善団体の活動が非常に重要な活動としてあるわけでございます。既に全国で一万二千余の団体が活動を行っておりますし、また受委託という点でもかなり活発な受委託活動があることは御案内のとおりでございます。  そこで、これまでの農用地利用増進事業経過と実績を踏まえながら、私どもいろいろと問題点の検討も行ったわけでございますが、幾つかの克服すべき課題があるわけでございます。  その一つは、現行法が、御案内のように市町村農用地利用増進計画を作成いたします場合の手続を定めておる、こういう形の規定になっておるわけでございますが、農地の流動化を進めていきますためには、当然のことながら、市町村がそういう計画をつくる前の段階といたしまして、関係団体がそれぞれ汗をかきながら農地利用調整に努力していただく、こういうプロセスが必要なわけでございますけれども、そういうプロセスが制度面からは落ちておるわけでございます。したがいまして、農業委員会なり農協なりあるいは農地保有合理化法人といったような農用地利用調整に当たる機関、団体役割といったようなものを明確にいたしまして、それぞれがお互い連携を保ちながら御努力いただく、こういう仕組みを明らかにいたしまして農用地利用増進事業活性化を図っていくことが必要な状況になっておるのではないか、こういう問題意識を一つ持っているわけでございます、  と同時に、いろいろと地域農業の実態の違い、その他も考えましたときには、これからの農地の流動化問題に取り組むに当たりましては、やはり地域の実情、条件に即しました方向づけといったようなものを地域の合意として形成いたしまして、そういう方向づけのもとに関係の方にもう一段の努力を願うということも必要ではないか、そういう問題も一つあるわけでございます。  また、受委託——一定の成果は上がっておりますけれども、売買とか賃貸借以外に受委託という手法もこれからの流動化問題を考えていく上での非常に重要な手法でございますので、これを制度面できちんと位置づけていった方がこれからの問題の対策の進め方に非常にプラスになるという面もございます。  また、遊休農地が増加してきておりますので、その遊休農地の有効活用、それを中核的な担い手に結びつけていくといったようなところも一つ落ちておる点でございます。  今申し上げましたような問題点を踏まえながら今回の法律改正を提案さしていただいた、こういうことでございます。
  127. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いろいろお話を聞きましたけれども、水田と畑で何百万ヘクタールもある中で二十三万ヘクタール、五年間、これはなかなか遅々として進まない。先ほど沢藤さんが言ったように、農家というものは、農政に対して不信を持っている以上、自分土地自分で守る、自分の食べるものだけは守っていくという形で、なかなか難しいものでありますから、そう簡単にいかない。  そこで、土地利用型の水田農業あるいは畑でもそうですけれども、どれくらいの規模で何のためにやるのか。アメリカに対して対抗するのか、タイに対抗するのか、それとも日本でこれだけの努力をしているというのか、それとも自立経営、農業だけで飯が食えるようにしていくのか。何のために、これはどの辺のところを、どういう規模のものをつくっていこうとするのか、利用増進法でこの辺はどうですか。営農集団はあるけれども土地を集めていくという規模はどのくらいの規模か。
  128. 松山光治

    ○松山政府委員 やはり構造改善を進めていく最大のねらいは、国民の皆さんに十分日本の農業について理解をいただき、支えていただけるだけの中身のあるものにしていくということがポイントになろうかと思うわけでございますが、そういうふうに考えました場合の稲作経営の目標規模の問題でございます。  機械なり施設なりの効率的な稼働といったような観点を含めまして、技術的に一定の規模を想定するということは当然できるわけでございますし、現に農政審の報告におきましても一定の試算が示されております。また、先ほど来御議論がございましたように、昨年の米価審議会の小委員会の報告におきましても、今後の育成すべき担い手の姿といたしまして、おおむね五ヘクタール以上層といったような考え方が示されておるという経緯もあるわけでございます。ただ、実際の各地域におきます経営の規模あるいは経営条件、その農業展開方向といったようなことにつきましては、農地の出し手の状況あるいは圃場の条件、作物構成等々、地域の自然的、社会的条件によって大変違っておるというふうに私ども認識をいたしておるわけでございます。したがいまして、そういう意味ではその目標といたします経営規模につきましても、全国画一的にこういうものでなくてはならぬというふうにお示しすることが適当かどうか、かえって混乱を招くのではなかろうかというふうにも考えるわけでございます。  したがいまして、農政審の報告でございますとか、今申し上げましたように、幾つかのそういった全国的な指標、情報といったようなものをひとつ踏まえながら、それぞれの地域で関係者の方々の話し合いのもとに地域の実情に即した、かつコストを中心に物を考えていくのかあるいは品質を中心に物を考えていくのかといったような地域農業展開方向といったようなものも踏まえながら、具体的な目標を定めていただく、その実現に向けて関係機関、団体が一致して御努力いただく、こういうことが一番適当なのではなかろうか、このように考えておるわけでございます。既に昭和六十三年度から市町村ごとに地域の実情に即しました土地利用型農業経営の中期的な指針の作成という作業にも取りかかっておるところでございます。
  129. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 言葉の問題ですけれども、専業農家、中核農家あるいは自立経営とあるけれども、一体これは言葉自体は共通していますか、それともみんな独立して別々の内容を持っているものなのか、どういうことになっていますか、この言葉の意味、内容は。そのうちのどれをやろうとしているのか。
  130. 松山光治

    ○松山政府委員 自立経営農家につきましては、基本法に御案内のような定義がございますし、それからいわゆる一般に中核農家と言われておりますのは、農家におきます労働力の保有の状態に着目いたしまして、男子の農業専従者、六十歳未満の専従者でございますが、そういうものの存在している農家といったように、おのずからそれぞれ定義が異なっておるわけでございます。  したがいまして、基本法のもとでの政策目標といったようなことに相なりますれば、自立経営というのがまず一つ頭にはあるわけでございますけれども、今申し上げましたような地域における農業の実態の多様性といったようなこと、かつまた個別経営だけではなくて、地域によりましては兼業農家との連携のもとに、集団的な取り組みをするのが最も適切な状態にあるような地域もあるわけでございまして、そういったようなことも考えますれば、今私が御説明、御答弁申し上げましたようなことで、地域農業の実態とこれからの展開方向を各地域において関係者の間において見据えていただいた上で、具体的にイメージしていっていただく、こういうことが必要なのではなかろうか。その場合に、できるだけ効率的な生産体が形成されるような方向でひとつ物を考えていっていただく必要があるだろう、このように考えておる次第でございます。
  131. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今聞いておるのは、そういうことを聞いているわけではないのです。三つの中身のことを聞いているわけだけれども、それはいいです。  時間がないから次の方へ行きますが、現在の農家戸数が四百二十四万でしょう。そこで、専業農家が六十一万という形になっている。第二種兼業が三百二万二千戸、ほとんどが第二種兼業になってしまっているのですね。今や兼業農家安定論というような形で、第二種兼業によほどのことがなければ土地は出さない。それで、七十万戸か何ぼかの中核か、専業かの農家をつくろうと言うけれども、そういうものが農業だけでやっていけるという形の規模にしていくのかどうなのかということを聞いている。  その場合に、今度は土地を出した側の経営権あるいは所有権を、というのは売買になるから経営権を預けた場合、委託した場合に、その委託した人は何で生活をするかという問題の保障があるかどうか。例えば、農村工業導入法とかいろいろなことがけさも要求されました。あるいは、農業者年金をもっとしっかりやれというような話も参考人からありましたが、そういう他にかわるべき所得があって、それで経営を一時委託をしていくという形をとった場合の内容がどういうことかということをあわせて伺っているわけであって、兼業農家安定論という形で、なかなかこれは土地は動かさないでしょう。
  132. 松山光治

    ○松山政府委員 具体的な農地の流動化の状況を見てみますと、兼業に非常に安定いたしまして、労働力の面からもうそろそろ農業から手を引いてもいいなという方とか、あるいは高齢になりまして後継ぎもいないといったようなことで土地を預けていくといったような場合が多いようでございます。そういう意味では、農家の分化の状況というのをよく踏まえながら、かつ各地域地域におきまして、個々の農家がどういう方向にこれから進もうとしておるのかといったような意向調査なども踏まえて、地域農業におけるこれからの展開の姿をイメージしていただく必要があるのではないのだろうか。  それで、そういう状況の中で、これからも農業中心としてやっていきたいという農家の方にできるだけ土地の利用が集まってくるような誘導をやっていく、また、出し手の方の方が土地が出しやすくなるような、そういう意味での農外の就業機会の安定を農村工業導入法なり、その他各般の施策の推進を通じて図っていく、こういう総合的な対策として進めていく必要があるというふうに考えておる次第でございます。
  133. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先ほどの沢藤委員の質問に関連をするけれども、転作作物でこの二十何年間かやってきて、これなら定着ができ得る、そういうものがありますか。米はだんだん値を抑えていくという基本方針を持っていながら、今のところは参議院選挙があるからちょっとこれはまずいぞという形で早く決めてしまうのだけれども、さて、それ以外のものでよりましなものがあるかどうか。  だから、転作はもう農家では本当に専業する人が嫌がって、これは困っているのだ、何とか転作はやめてもらいたいというのが本音なんです。そして、そのものを専門につくって農家の所得を——構造政策だけ望んでいるのではないのです。構造政策で所得が確保できるかどうかという見通しがなければいけない。中学を出、高校を卒業した自分子供に、あの工場に行けば月給が幾らもらえて、ボーナスをもらえば何ぼ入るのだということは、十八、九の子供でもわかるわけですよ。ところが、農業を経営してやって規模をどうだこうだと言っている。機械は上がる、肥料も上がる、外国から来るえさも高くなった。そして今度また税金だ。消費税という形で、最終消費者になっているからこれも上がる。上がるものばかりだ。そういうときに所得というものが確保されないで、どこに魅力を持つか。  だから、構造政策構造政策と、口を開けば構造と言うけれども、所得と構造政策というものは表裏一体でなければならぬ。例えば、これだけの所得をつくるにはこれだけの規模とこういう価格政策でやっていくのだという方針がなかったら、説明にならぬではないですか。どうですか。その辺は大臣も一緒になって答弁してください。
  134. 松山光治

    ○松山政府委員 もちろん構造政策のねらいは、主として農業に従事しようとしておる方がそれなりの所得を上げてちゃんとした生活ができるということが当然のねらいでありますし、現に各地域にいろいろと存在しております個別経営あるいは集団の姿を見ましても、相当立派な中身と所得を上げておるというふうに認識をいたしておるわけでございます。そういうものをできるだけ幅広いものにするために一段の努力を必要とするというのが現在の状況ではなかろうかというふうに思いますし、また、そういった構造政策が円滑に進みますためにも、生産政策なり、あるいは価格政策なり、農外就業対策といったようなもろもろの対策が、お互いに連携を保ちながらやられていくことが当然必要なことであろう、このように我々としても考えておる次第でございます。
  135. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 委員御指摘のとおりに、この構造政策を進めてまいりますれば、私どもはやはり中核農家というか担い手農家というものを育成していく、これが当然だと思うわけでありまして、そこに農村工業導入等によって働く場所があって、一種兼業農家、二種兼業農家という方々はある程度所得が安定をいたしておりますので、この点は安定した兼業農家として発展をいただくというように理解をしております。こういう専業農家等の育成ということについては、規模のそうした拡大とあわせて、これからの価格安定対策というものを十分講じていかなければなりません。したがって、現実に米にいたしましてもあるいは畜産物価格にいたしましても、そのような農家所得というものを十分踏まえた中でこれを決定をいたしておる次第でございます。  また、これは地域地域によって相当違ってまいりますが、私の地方は大体畜産が非常に盛んであります。ということになりますと、勢い米に対する依頼度より、転作そのものにおいても自給飼料というものに重点を置いておりますので、積極的にこうした転作等も進めながら、そして他作物に対する必要性のあるえさ等々を生産をいたしておりますので、現実にはある程度専業農家も安定した経営をしております。  また、米の単作地帯あるいはそういう気象条件、気候条件でなかなかうまくいかないところ、この辺を私も、どうすれば立派な転作作物があり得るか、やはり米だけでということになりますとこれは容易でないことは承知をいたしております。我々も、これから換金性の高い、また評価の高い、そうした作物というものをお互いに今日まで検討、研究してまいっておるわけでありますが、こういう米の単作地帯に対するこれからの転作度合いというもの、これは今日までも相当格差をつけてあるわけで、我が宮崎県や鹿児島県は三三%ないし三五%が転作の割り当てでありますが、勢いその点は何とか消化はいたしておりますけれども、やはりそのように同じ日本国内の中でも気象条件によってどうしても一部左右されるということは否めない事実でありますので、新たな作物の展開というものを見い出しながら、これからの転作の指導と申しましょうか後期水田確立はやっていかなければならぬのじゃないか、こういうように思っております。
  136. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう時間がだんだん過ぎてきたので、まだ十分に質問できない部分がありますが、これは明日の委員の方に譲ります。  きょうは自治省が見えていると思いますが、全国で三千二百四十五の市町村がありますけれども、その三千二百四十五の市町村の中で過疎地帯というものがどれくらいあって、自治省としては、その過疎地帯にどのような指導措置と対策を立てているかということについて、まず報告と、それから内容を明らかにしていただきたい。
  137. 二橋正弘

    ○二橋説明員 いわゆる過疎地域市町村の数でございますが、過疎地域振興特別措置法という法律によりまして指定が行われておりまして、これは千百五十七市町村が該当いたしております。したがいまして、全国の市町村の約三分の一が該当しておるという状況でございます。こういう市町村につきましてはそれぞれの地域の実情に応じまして市町村市町村道等の交通体系の整備でありますとか、教育、文化施設の整備あるいは生活環境施設の整備産業振興施策等、もろもろの仕事を行っておるわけでございますが、こういう仕事を行う場合には、自治省といたしましては過疎対策事業債という地方債によって過疎対策を推進するということにいたしておるわけでございます。  この場合に、この過疎対策事業債が発行されますと、当然市町村の借金でございますので元利償還を要するわけでございますが、これにつきましてはその七〇%を地方交付税に算入をして財源措置をするということで過疎対策の推進を図っておるところでございます。
  138. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、過疎地帯というものがこれからが大変大事な時期になってくるであろう。今もお話があったけれども、今なお奥地山村、海岸、こういうところが交通上、文化上大変おくれている形になっている。最近はリゾート開発というものが目をつけてきて、そして膨大な投資をしてそこを押さえて好き勝手に物をつくっていくという形になる。この前の委員会でもそのことについては、所有権というものをやたら渡してはいけない、資本に渡すと後はどうなるかわからないからだめだ、やはり所有権は確保しながら同時にそこで雇用の場をつくったり、その特産物を生かしたりするという形でちゃんと所得をこしらえていくという努力をしなければだめだということを申し上げたわけですが、今度この法律を改正をした場合に、過疎地帯というものに対してこれが光をともすのか、それともそこはやはり素通りになってしまうのか、その点はどうです。
  139. 松山光治

    ○松山政府委員 過疎地帯は、平場に比べますれば、相当生産条件その他の面で厳しい条件に置かれておる地域であるというふうに認識をいたしております。ただ、先ほどもお答えしたかと思いますが、地理的な条件その他からいたしまして、生産の季節性その他を生かした特産品の生産が可能でございますとか、あるいは今お話のございましたように自然資源を生かしたような形での村づくりの可能性も持っておる。そういう意味では平場とはまた異なった特性を持っておる地域だと考えておりますし、いろいろな事例を見ましても、その地域の条件を生かしながら特色のある農業振興あるいは村づくり、規模拡大といったようなことに取り組んでいただいておるところも間々あるわけでございます。  私ども、過疎地域に対しましては、過疎法のもとで別途いろいろな助成事業等も生かしながら、その地域の特性を生かした農業振興、村づくりが可能になるような条件整備のお手伝いをさせていただいておるわけでございますけれども、今度の農用地利用増進法の改正におきまして、地域の特性を考えた農業構造の改善の目標というのを、各地域において地域農業のあり方についての合意形成として考えていっていただくのだというふうに申し上げておりますのも、ただ条件に恵まれたところだけで農業をやっていくのではなくて、それぞれ農林業の世界で生きていかなければならぬところについてはそれなりの考え方でひとつ今後も考えてほしいし、また我々もそういった地域の努力をできるだけお手伝いしていきたい、こういう考え方に基づくものだというふうに申し上げておきたいと思います。
  140. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう時間ですからこれ以上は質問をしませんが、ぜひひとつ要請をしたいことがあります。それは、やはり先ほどからの質問の中で、農業というものはその国の土地で、その国の労働力で、その国の水で物をつくり、安全で安定で安心できる供給をする、自給力を確保する、そして客観的には空気の浄化や水や緑をつくっていく、それから文化の伝統を守る、こういう大事なものであり、社会党としてはやはりこれは基幹的な産業としなければならない。同時に、今までは財界が政府にいろいろな提言をして、それがいろいろな形で報告になり法律になってきて、財界主導型の農政、そういうふうに言われた。そうではなしに、あぜ道の声を霞が関に持ち上げて霞が関の優秀な皆さんの頭がそれに対応する。それであぜ道の声と皆さんとが対応していって、はじくものははじくし、守るものは守っていくという形で日本の農業を前進させるようにひとつ頑張ってもらいたい。以上要請して終わります。
  141. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 吉浦忠治君。
  142. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最初に堀之内新大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  大臣就任、まことにおめでとうございます。大臣にとって、多事多難のときにこの農水丸の操縦ということで大変御苦労だというふうに思うわけでありますが、そういう点で新しい大臣に二、三所信を伺っておきたいと思います。  我が国農業は、御承知のように現在内外ともに非常に厳しい状況にあるわけであります。これは過去に例がないくらい厳しいときを迎えていると言っても過言でなかろう、こう思うわけであります。外には国際化の荒波でありまして、内にはまた御承知のように大変な財界の圧力なりエコノミストと言われる方々のいわゆる農業たたきの真っ最中であります。こういうときに、国際化に耐え得る我が国農業の構造の強化が何よりも今求められているというふうに私は考えております。  そこで大臣、これからの日本の農業の進め方、どういうふうに持っていかれるのか、特に農業者が将来に希望の持てる農業ビジョンを責任を持って示していただきたい、こういう要望を込めて所信を伺いたいと思います。     〔笹山委員長代理退席、保利委員長代理着席〕
  143. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 吉浦委員御指摘のとおり、我が国農業は内外とも厳しい情勢にありますが、また一方ではバイオテクノロジー等の技術革新が進展しております。また、農地の賃貸借、農作業受委託により規模拡大を図っている地域や、あるいはまた果実などの輸出を試みている積極的な園芸農業を進めている地域もあります。こうした技術進歩や農業者の創意工夫によりまして、地域の特性を生かしつつ農業を魅力ある産業とすることは十分可能であると考えております。  このような状況を踏まえまして、さきの農政審議会の報告でも明らかにされておりますように、生産性の一層の向上を進めて、国内での基本的な食糧の供給力の確保を図りながらさらに農業経営の安定を確保するとともに、国民の理解し得る価格での食糧の安定供給に努めることを基本といたしまして、諸般の施策を強力に展開してまいる所存であります。  また、農業者が将来を見通しつつ営農を展開することができるよう、現行の長期見通しにかえまして平成十二年を目標年次とする新たな農産物の需要と生産の長期見通しを策定することにいたしております。  今後の農政推進に当たりましては、農業者がみずからの生産活動に誇りと将来への展望が持てるようなわかりやすい農政にすることを旨といたしまして、政策内容農業者に十分説明し、農政の信頼を早期に回復することに心がけていきたいと考えております。     〔保利委員長代理退席、笹山委員長代理着席〕
  144. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 昨年の農産物の十二品目、また牛肉・オレンジの自由化問題で農家方々は農政に対する信頼を大きく失っておるわけであります。それに加えて、現在、国際化の荒波はアメリカによる米の自由化要求に端的にあらわれていると思うわけです。不安な中になお一層の極度の不安を農家にもたらしているのが現状であります。また、農産物の輸入は、現在は少し円安になっておりますけれども、円高という状態の中で輸入品目は急増しているわけです。国内の各種農産物の生産者価格は引き下げられているわけです。米は大規模減反が現在も継続中でありまして、農村社会の高齢化と相まって農村社会の構造は急速に脆弱化しているわけであります。農家の苦しい呻吟の声が聞こえてくるような状態でありまして、こういうときに、大臣は農産物の輸入自由化の荒波とどう取り組む所存なのか。なかんずく米の自由化の要求に対してどう対処されるか、歴代の大臣も大変苦慮をされましたけれども、これから先どういうふうにお考えを持っていらっしゃるのか伺っておきたい。
  145. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 これまでの農産物自由化の経過につきましてただいま御指摘ありましたが、昨年来農産物十二品目並びに牛肉・かんきつ等に対しましては、佐藤農林大臣を初め与党の皆さん、そして野党の皆さん方の力強い御支援もありましたが、やむを得ないぎりぎりの選択をいたしましてあのような結果になりました。しかし、私どもは結果的には二国間で話し合いの決着を見ましてあのような対策を講ずることができたわけでありまして、今日の国際化、自由化の中においてはぎりぎりの選択であった、こういうふうに理解をし評価をいたしておる次第でございます。  これからの問題でありますが、今日農村の皆さんが大変不信を抱いておるということ、これは私は十分承知をいたしておりますが、これらの農産物の自由化に当たり十分な対策等、与野党の御理解のもとに法律等も制定をいたし、十分行っておるところでありますが、いまだこの点に対する理解が十分得られていない、そのことがある程度不信につながっていると思います。これからも農家の皆さんに対しこれらの対応策を十分説明を申し上げる。  あるいはまた、最近の食の変化、国民の嗜好というものは大変要望が多いわけでありまして、時代によって嗜好が変わってくる。例えば一番端的に言えるものが果物の中でのミカンであります。ミカン等は以前は、昭和五十年代最盛期におきましては三百六十万トンも消費しておるわけです。しかし、その後だんだん時代が変わりまして最初にイチゴがどんどん出てくる、その次にはメロンが出てくる。そうなりますとやはり糖度の高いメロンあるいはイチゴの方向に国民の嗜好というか食後のデザートというものが全部移っていったということで、これがミカンに対しての消費の減退を招いております。したがいまして、農林水産省としてはずっと以前十七万ヘクタールあったミカンを十万五千ヘクタールまで伐採をしながら時代の変化に応ずるようにやってきたところでありましたが、今回そのような対応策をしましてもまだまだ過剰の状態が続いてまいりましたやさきにミカン、かんきつの自由化ということをいたしましたために、特にかんきつ地帯では大変な不信を抱いておるようであります。しかし、これはしょせんいずれはこうした国民の嗜好の変化であるということをもう少しかんきつ農家でも御理解を賜れるように、我々のPR不足もあった、かように考えております。  いずれにいたしましても、今後農産物の自由化というものはやはり農家の将来に大変な不安を与えておる、これも否めない事実でありますので、我々はこれ以上の自由化は進めないということを強く認識しながら、また生産者あるいは生産者団体等においても周知をしていきたい、こういうふうに考えております。  中でも、米の問題についてはさらに関心が高いわけであります。したがって、今後の米の貿易問題につきましては先ほどからも御答弁申し上げておるとおりでありますが、現在進行中のウルグアイ・ラウンドの場におきましても、各国が抱えておる困難な農業問題及び制度について議論を行う段階になりますれば、もちろんこれは米国のウエーバー品目あるいはそれ以外の牛肉、砂糖というアメリカの輸入制限品目等もひっくるめてこれを議論としてガットの場で行う場合になりますれば、日本の米問題も一緒に討議することにやぶさかでないという方針は今後も変わりはありません。  しかし、米は日本国民の主食であり、さらに我が国農業の基幹をなしておるものであります。そしてまた、水田の稲作が国土の保全、自然環境の保全あるいはまた日本文化の源泉である、そして地域経済上に不可欠な大きな役割を果たしておるということを十分踏まえながら、このような米作の重要性を十分強調しながら、さらに国会の決議等の趣旨も十分体して、今後とも米だけは国内産で自給するという基本方針を堅持してまいっていきたいと存じております。  この農業問題等におきましては、先般のモントリオールにおけるウルグアイ・ラウンド中間レビューにおきましても、それぞれEC等の各国がやはり強い姿勢でこれに反対されたと承っておりますが、やはり各国ともこの農業問題にはそれぞれの大きな悩みを持っておるわけでございます。特に我が米の場合は、先ほど申しますような特殊な事情にある、そして主食である、しかも国民の食糧安保という立場からも極めて重要な意味を持っておりますので、そのような基本的なことを踏まえながらこれからのウルグアイ・ラウンドの交渉には当たってまいりたいと存じております。
  146. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今大臣もおっしゃっておりますが、この米、我が国の基幹食糧でありますので、安全保障の見地からも断じて、加工米も含めて一粒たりとも輸入に応じない、こういう強い姿勢でひとつ貫いていただきたい、こう思うのです。  そこで、生産者米価の問題でありますけれども、農水省は生産者団体の要請どおりこの参議院選前に米価審議会の開催を決断されているやにも聞いておりますし、また新聞にも既に何か日にちが、七月の一日、二日は土、日だから三日、四日じゃないかというふうなこともちゃんと出ておりますので恐らくそうじゃないかなと思うのですけれども、決まっていればいつ開催されるか明示していただきたいと思うのです。  その米価審議会の開催の点について、私は日ごろから異議を持っているものですけれども、田植え後速やかにということになっておりますね、そうでしょう。田植え後速やかに決めるということで、格段規定がないようです。そこで私は、おおむね七月の上旬とか七月の第一週とかに開催されるというようなことをきちっと決めておいたらどうかと思うのです。と申しますのは、そのときの政治情勢等によって大きくおくれていたりしている面が、この五年間を見ましてもかなりの変動をいたしておるわけです。  そこで今回、政治的な配慮、こういうことで参議院選後にしようとする動きもあったやにも聞いております。そのために生産者団体がやむにやまれず参議院選前の要請をしてきた、こういうふうにも受け取られるわけですけれども、そうなりますと、米価審議会そのものの形骸化ですね。これは私毎度申し上げているわけですけれども、米審委員として、政治に対してはまるっきり無力だ、やっても意味がない、こういうことになれば、米審委員方々に対しても遺憾の点だろう。政治米価で決めてしまうということになれば、米審委員も要らないじゃないか、極端に言えばそうなってしまう。こういうことのように、そのときそのときの政治情勢に左右されているわけですから、例えば私が申し上げたように七月の第一週なら第一週に米審を開く、こういうふうな考え方はないのかどうか。  今、堀之内新大臣の自分の言葉で自分意見を述べられている姿を見ますと、私は大変心強く思うのです。今の生産者の方々も心強く感じられているだろうと思うのです。ですから、こういう点で非常に個性があるやにも私も受け取っておりますし力強く思いますので、そういう点どういうお考えを持っていらっしゃるか、どうか大臣の意思でひとつお答えをいただきたい。
  147. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 きょうの新聞等で七月の三日、四日とかいう報道がなされておりますが、私の方はそうしたことはまだ決定をいたしておりません。  これは私は就任のときにすぐ申し上げたのですが、自然体で粛々とやるべきである、こういうことを申し上げました。ということは、例年七月十日前後に大体米価というのは決めることになっておるわけです。政治的に、六十一年の場合はたまたま六月に衆参同時選挙でありましたから、したがって選挙後の八月前でしたか、七月の末であったかなと思いますが、これはもうそういう選挙がありましたからやむを得なかったと思う。それ以外には、大体七月の八日かあるいは十日前後に米価というのは決定されておるわけです。したがって、それぞれの関係機関が要望される米価の決定の時期というのは、参議院選挙前というのは、先ほどからも議論がありますように投票前なのか選挙告示前なのか、これははっきりしていなかったのです。だから、十日だったらやっぱり選挙前になるじゃないかということで、私は粛々とやった方がいい。というのは、米価を算定する場合のデータ、いわゆる生産費あるいは最近の労賃、物価、そうしたものが大体六月三十日にそろうということになっておるそうでありますが、私も労働大臣にお願いして、労賃ぐらいは五日ぐらい早くならぬかと言ったら、どんなにしても三十日でなければできないのだという返答をきのう労働大臣からもらいました。これは厄介だなと思っておりましたが。したがって今回の場合は、今度の参議院選挙前というのは告示前のことだというまた強い要請が出てまいります。というのは、ちょうど皆さんが与野党とも選挙告示があって東京におられるはずがない。各党みんながそれぞれ選挙で東京を留守にされる。留守にされる段階で米価を決めるというのもこれまた不自然じゃないか、こういう御意見がございました。  そこで、昨日私は大蔵大臣並びに官房長官とも政府機関の協議をいたしました。そして、非常に難しい段階でありますが、これから米価審議会の委員先生方とも十分連携をとりながらとりあえず告示前までに決定をさせていただくように御了解を得たいということで昨日の夕方御了解をとりまして、一応そういうふうに発表させていただいた次第でございます。政治的に人為的にやっておるんじゃないかということでありますが、今回の場合は政治的というのではなくて、こういう特殊な、皆さん御案内のとおりの選挙という一つの大きな問題を抱えております。これが終わって国会議員がそろってからということになりますと大体七月の末かあるいは八月前ということになりますので、これでは農家の皆さんも大変わかりにくいということを我々も判断いたしましたので、きのう発表させていただいた次第でございます。日にちについては今後米審の委員の皆さん方と十分協議し、理解を深めてから進めていきたいと思っております。
  148. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 そこで、生産者米価についてその生産者団体は、先ほども私は大会に出てまいりましたけれども、現行価格維持を要請しておるわけでございます。過去二年連続して合計一〇%強の引き下げをしてきたわけでありまして、稲作経営に過酷と言ってもいいほど打撃となっていることは事実でございます。昨年は消費税絡みの政治的配慮ということで一・五ヘクタールの新算定方式導入は一年先送り、本年になったわけであります。今回はどのような取り扱いをされるのか、もしも導入となれば大幅引き下げになるわけでありますが、稲作経営の危機をもたらす結果にもなりかねないと思って私は心配して申し上げているわけです。政府としてもっと先にやることがあるのじゃないか。そこで、例えばそういう生産費の資材等の価格の引き下げのための行政指導あるいは構造政策を円滑に推進するための総合政策体系の整備など、こういうことを先行してやるべきじゃないか、こう思うのです。仮に価格を据え置きとしても、いわゆる物価なり農機具等の資材費等は値上がりをしているわけですから、したがって大幅引き下げになるのと同じなのでありますので、特にまた消費税等の問題もあります。これをどうお考えになっていらっしゃるのか、この見解を伺っておきたいと思うのです。
  149. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまお話のございました米価算定の算定方式でございますけれども、これもお話ございましたように昨年のいきさつがございまして、昨年は米価審議会におきまして稲作の将来展望の上に立って新しい算定方式を十分協議の上御提言がございまして、それに従いまして私どもも米価算定を行いたいということで臨んだわけでございますけれども、諸般の事情から一年送られまして本年産からこれを適用するという方針がそのいきさつの中で決まってまいっておるわけでございます。したがいまして、私どもそういった昨年の経過を踏まえまして、本年につきましてはいわゆる新しい算定方式を採用することによりまして米価算定を行ってまいりたいと考えておるところでございます。その際、御指摘ございましたように農機具あるいは肥料その他の経費の節減を通じてコストダウンを図っていくべきである、また構造政策その他の稲作の合理化のために尽くすべき手段は尽くすべきである、こういうことはそのとおりだと思っておりまして、やはり生産対策、構造政策については価格政策と相並んでこれは積極的に進めていかなければならない課題であるというふうに思っております。  なお、この米価算定は、これは御案内のとおりでございますが、現実に過去三カ年の生産費を基礎にいたしまして、これを直近の物価あるいは労賃、このレベルに引き直しまして算定する、またその上に家族労働費等につきましては評価がえをするといったことで生産費所得補償方式と言われるものを根拠にしておるわけでございます。したがいまして、ことしの場合、五月までの直近の物価あるいは労賃というものをとってまいりますので、例えば農機具あるいは肥料等についての消費税等の影響、これは当然その物価レベルの中に織り込まれておりまして、それをもとに算定をいたしますということから米価算定には消費税の影響も織り込まれる、こういうことになるわけでございます。したがいまして、そういった現実に実現をしております生産費につきましてそれを基礎に算定する。また、それがもともとある一定年限の過去の数字がもとになっているということからいたしますと、今日までの生産性向上のメリットもその中に織り込まれるものというふうに私ども従来申し上げておりまして、生産費所得補償方式を基本とした考え方は新算定方式の中にも生かされておるわけでございますので、本年もこれに基づいて適切に算定をしてまいりたいと考えております。
  150. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 まだお尋ねしたいことはありますが、時間の関係がありますから次に本論に入らせていただきたいと思います。  農用地利用増進法改正案について伺いたいと思います。  農用地利用集積に関しては、いわゆる個人の個かあるいは集団かという意見の相違があるわけでありますが、農水省はこの点について意識的に回避してきたのではないかというふうに私は思っております。この点について基本的な見解を明快にすべきではないかと思いますけれども、どう考えていらっしゃるか、お答えをいただきたい。
  151. 松山光治

    ○松山政府委員 農業担い手像につきましては、先生から御指摘がございましたように地域農業の実態の違いあるいは物の考え方の相違とでもいいましょうか、そういうことも背景にしながら、個というもの、個別経営というものを重視する考え方と集団というものを重視する考え方があることは事実でございますけれども、結論的に申し上げれば、我が国の今の農業の実態を頭に置きましたときに、どちらだというふうに割り切って考える、これを全国的に割り切って考えるということは必ずしも適当ではないのじゃないだろうかというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。と申しますのは、もともと我が国農業は家族経営が主体でございますし、かつまた、集団と申しましても当然その中心になる方が必要なわけでございますから、そういう意味ではしっかりした個ができるだけたくさん存在するということが必要なことはもちろんでございますが、逆に諸外国のような農場制とは異なり一種の分散錯圃制のもとで地縁的なつながりの中での稲作農業といったようなことも頭に置いて考えますときには、個別経営がばらばらで全体をうまくやっていくということも実際問題としてはなかなか難しいわけでありまして、そういう意味では一種の集団的なつながりが必要な場合も間々あるわけでございます。  こういったことを考えてまいりますと、甚だ抽象的で恐縮でございますが、やはり所与の技術条件、これを十分に活用できるだけの規模で、かつまた、そういう意味では国民の皆さんに御理解いただけるような価格での安定供給が可能なそういう能率の高さを備えたものであって、かつ社会的に妥当と認められる所得が実現できる、こういう要素を含んだ生産単位として物を考えていったらどうだろうか。それはそういう生産単位形成は個別経営が中心になるのか、あるいはしっかりした個が中心になりながら集団的なまとまりの中で行われていくのかといったようなことは、地域地域農業の条件、その実態、農業者の意向といったようなことを踏まえながら、各地域に応じて見定めていっていただく、こういうことが適当かつ現実的ではないのだろうか、このように私どもとしては考えておる次第でございます。
  152. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 個か、集団か、は従来から農政上の非常に大きな問題なわけでありまして、今回の改正案では農業委員会系統は個別経営の育成の方向での利用権集積、流動化を担当する、こうなっている。農協系統は集団、集落中心にやる、こういうことで、両方がその役割を分担するということで決着をしているようでありますが、この場合に相互に密接な連携がとられないと集落の中で大きな混乱が生ずるのではないか、こう心配をいたすわけです。  そこで、稲作経営で規模拡大意欲を持つ農家に対して、今後は集落でまとめていくから参加してオペレーターになれと言われて、そのためみずから規模を縮小して賃金稼ぎをしなければならない羽目に立たされるという例も報告で聞いているわけです。逆に、中核農家が参加してくれれば団地化が図られる、こういうことでコスト低減に大いに役立つ、こういうケースも種々あるわけでありまして、いずれにせよ農地は一つでありますから、地域地域の実情に即して徹底した論議をして、合意のもとにいわゆる農用地利用の集積がなされなければならないというふうに私は思うわけです。本改正案はこうしたことに対して十分な配慮、仕組みが図られているのかどうか、この点を伺っておきたいと思う。
  153. 松山光治

    ○松山政府委員 まさに御指摘のとおり重要なことだというふうに考えておるわけでございます。  考え方といたしまして、これからの構造政策推進を行っていきます場合には、十分地域で話し合いを行っていただいた上で、こういう方向へ持っていこうやという地域の合意形成をベースにしながら関係団体が一致した努力を重ねていただきたい、こういう考え方のもとに今度新たに実施方針に農業構造の改善の目標というものも書くことにしたわけでございます。一応農業委員会を通ずる集積の仕組みあるいは農協による利用調整の仕組みといったような形で仕分けはいたしてございますけれども、今先生から御指摘がございましたように、地域における話し合いが非常に重要だということはまさにそのとおりでございまして、具体的なやり方の問題といたしましては、既に六十三年度予算から各市町村構造政策推進会議というのを設けまして、関係団体が話し合ってどういう方向に行こうか十分意思疎通を図って進め得るだけの舞台装置を一応準備もいたしておるわけでございます。かつまた、今回の農用地利用増進法改正案におきましては、関係団体が一致協力して事に当たるんだという趣旨の訓示規定も設けたのもそういう考え方によるものでございまして、今の御指摘を踏まえまして、制度運営に遺憾のないように指導を十分していきたい、このように考えておる次第でございます。
  154. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今回の改正案の中で、市町村農用地利用増進事業を行おうとするときに、実施方針に「農用地利用増進事業の実施を通じて促進すべき農業構造の改善に関する目標」、これを追加することになっておるわけでありますが、これは市町村にとって大変難しい問題ではないか、こう思うのです。難しい問題が起こるのじゃないか。それは国が長期需給見通しを明確にしなければ、これだけの農用地利用集積を図る、生産費をどのように下げるかという目標を示さなければ、市町村の構造改善に関する目標は実質的にはもう決められないのじゃないか、こう思うのです。その点どういうふうに当局はお考えになっていらっしゃるかどうか伺っておきたいと思います。
  155. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 吉浦先生御指摘の点の前段の方でございますが、現在農業基本法に基づきまして、政府といたしまして長期需給見通しというものを一応持っているわけでございます。この長期見通しは、御案内のとおり、昭和五十五年の十一月に策定をされまして、昭和の年号で六十五年の十年間というのを見通した目標でございますが、いわばこの時期におきます世界的あるいは我が国におけるいろいろな農業の変動等に基づきまして、冒頭大臣からお話し申し上げましたように、現在この長期見通しにかえまして、新たな長期見通しというものを平成十二年度、西暦でいきまして二〇〇〇年の目標に変えようとしているわけであります。この準備作業といたしまして、農政審議会におきまして小委員会を設けておりまして、去年の八月から御議論を賜っております。私ども農林水産省としましても、いろいろな資料提供とか、そういったようなことを行っておりまして、先ほど御指摘のとおり、この長期見通しにつきましては、例えば品目等におきまして四千億産業になんなんとするような花卉の問題をどうするかとか、あるいは地球環境のいろいろな問題で今回のサミットでも御議論になるというような気象の問題をどういうふうに見通すかというような御議論もありますが、できるだけ先ほどの御指摘のとおりの趣旨を踏まえまして、現行の長期見通しを変えまして、新しい長期見通しを樹立すべく作業を急がなければならないというふうに考えております。そういう意味におきまして、本来ですと約二年間の議論をしていくべきでありましょうけれども、そういう趣旨に基づきまして今年度中にこの見通しの改定をしようというようなのが現在の作業状況でございます。
  156. 吉國隆

    吉國政府委員 御質問の後段の生産費の目標を示すべきではないかという点についてお答えを申し上げたいと思います。  吉浦先生御指摘のような御指摘が実はいろいろなところからございまして、私ども今省内で部外の方も加わっていただきました研究会をことしの二月から開きまして、生産性向上、特に土地利用型の農作物、具体的には米、麦、大豆でございますけれども、これについて生産性向上の指針となるようなものを取りまとめたいということで作業に入っております。先ほど構造改善局長が申し上げましたように、各地域で条件差もございますのでなかなか画一的なものを設定するということは難しい面がございますけれども、各地域でその条件に合わせて応用動作はやっていただく必要があるといたしましても、研究会での論議の概況としましては、今ある生産技術、また機械化営農というものを駆使していくということになればどういったところまでコストが下げられるのかということについては、いろいろな先進事例なり、また技術的な試算なり、そういったものを通じて参考となるものを明らかにすべきではないかという論議の流れになっておりますので、そういった上でさらに作業を煮詰めまして、できるだけ早くこういったものを取りまとめたいというふうに考えている次第でございます。
  157. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 農用地利用集積に当たって、先ほどから質問いたしておりますように、地域の実情に即して、衆知を集めて、よりよき方向で決定していただくようにしていただきたい、これが大事な点だ、こう思うのです。  問題は、こうした集積された農用地をいかに優秀な担い手を確保して担当させるかにあるだろうと思うのです。今回、農業経営規模拡大計画を作成して市町村認定を受けた者に対して利用権設定等にできるだけ集中することは、その地域における農業担い手育成する施策として評価される、私はこう思うのです。ところが一方、場合によっては、地域における農家間での選別政策につながらないかと指摘される向きもあるわけですね。この点どういうふうにお考えなのか。  また、具体的に経営規模拡大計画認定はどのようになされるのか。指標なり基準なりがあるのかどうか。農家の経営能力を登録することになるわけでありますから、それは農家の人的能力とか技術能力を判断して、あなたは何ヘクタールまでですよというふうな、そのような目標を設定することになると私は心配をしているのです。それは最終目標なのか、そうではなくて、当座の間に合わせの目標なのかどうか。非常に不明確な認定となるのではないかという心配をいたしておるわけですが、この点どういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お答えいただきたい。
  158. 松山光治

    ○松山政府委員 ただいま御指摘がございましたように、また農政審の企画部会が先般出されました報告でもそういう考え方が出ているわけでございますけれども地域におきます十分な話し合いの上に地域農業のあり方についての合意形成を行って、その中で担い手を明らかにして、そういう担い手にできるだけ土地利用の集積を進めていく、こういうことが重要なんだということが言われておるわけでございますし、今後の農地流動化の方向を考えていくに当たっては非常に重要なポイントではなかろうかと考えておるわけでございます。  それで、今回の制度改正におきましても、農用地利用増進事業の実施方針の中にその地域農業構造の改善の目標というものを明らかにするという改正をいたしました。その意味するところは、今の目標とする生産性向上の指針あるいは農産物需給見通しといったもろもろの全国的な指標も頭に置いていただきながら、各地域農業の実情、置かれた条件、出し手の条件といったものに加えまして、関係農業者の意向も十分聞きながら、言ってみれば、どういう形の農業経営が望ましいと考えるかといった営農類型ごとの姿を明らかにし、そういった経営によって地域農業がどういう形になっていくかといった具体像を、これはなかなか難しい仕事になるわけでございますけれども市町村でやっていただいた上で、そういう目標実現していくために、私はこういう形で経営規模拡大をやっていきたいという、地域の将来の担い手たろうとする農業者市町村に経営規模拡大計画認定を求めてくるというのが今度の仕組みでございます。そういった拡大計画についての認定を受けた農業者から申し出がありましたときに、その計画実現に向けて農業委員会農地利用調整で大いに努力するといった仕組みにいたしておるわけでございます。  そういう意味では、農業委員会土地利用調整を行うに当たりまして農地利用権設定等を受ける者の明確化を行うことになるわけでございますが、先生御心配がございましたような、何か上から選別していくといったようなことであってはならないと考えておるわけでございます。認定の基準にいたしましても、今申し上げました地域の合意に基づいて明らかにされた農業構造の改善の目標に即したものになっているかどうか、あるいは地域の実情から見て実現の可能性が見られるかどうかといったようなことを十分判断基準にしながら判定していってもらおうと考えております。  いずれにいたしましても、この認定制度が今先生から御心配いただきましたような意味での選別になりませんように、運用に当たりましては、地域関係者の理解と協力のもとに円滑に進められることを基本に置いて、必要な指導を行っていきたいと考えておる次第でございます。
  159. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、規模拡大が困難な中山間地の地域における構造政策をいかに進めるかについて伺っておきたいと思うのです。  御承知のとおり、中山間地域は、全国平均で基幹男子農業専従者なし、これが二八%、山村は三四%、こういう状態であります。基盤整備の状況を見ますと、未整備地域が五七%、山村に至っては六三%、こうなっているわけでありまして、何らかの手厚い助成措置なくして今後著しい進捗は図れないのではないかと思うわけです。  現在の山間傾斜地帯の過疎の原因は、傾斜地だからあるいは高齢化あるいは技術低下あるいは品質の低下あるいは市場性の喪失、また生産消滅あるいは村落の崩壊というメカニズムに起因していると思うのです。山間の傾斜地農業は現時点ではこういう点が全部想定されるわけですけれども、一つの方向は耕地、草地、林地の諸資源を最大限に利用、活用する方策を開発して、経営主体の自家労働力の年間就業の場を創設することにあるのじゃないかと思うのです。いわゆる傾斜地農業労働の強度軽減技術の開発あるいは土地生産性の向上を併進する以外には、いわゆる高齢化、過疎化ひいては耕地の減少を食いとめる手だてはないのではないかと私は思うのです。  そこで、こうした中山間地域農用地利用の集積は、離村や高齢化によって遊休農地が多く発生する一方、その地形なり土地の土質の条件なりが悪くていわゆる高生産性農業の対象になりにくいものが多くあるわけでありますから、この改正案でどれだけの効果を発揮できるのか、大変私は疑問を持っているわけです。この問題にどのように対処されるのか。また、本法による効果が大きく期待できないとすれば、どのような方法で農業活性化を図ろうとなさっておられるのか、具体的にお答えをいただきたいと思います。
  160. 松山光治

    ○松山政府委員 御指摘ございましたように、中山間地帯は傾斜地が多い、あるいは基盤整備がおくれているといったようなことで、農業生産にとって決して条件に恵まれているところではない、なかなか厳しい状況にあると認識をいたしておるわけでございます。しかし、国土保全あるいは地域の経済を考えるにいたしましても、この地域は大変重要な役割も果たしておるわけでございますし、加えまして、高冷地といったような地域性を生かした農産物の生産が可能だといったようなことのほかに、自然資源に恵まれているといった地域の特性を備えておるというふうに考えておる次第でございます。現に、そういった地域の特性を生かしながら、かつまた過疎になってきているといったような事態を踏まえた、それをてこにいたしました規模拡大を行っておるような事例の報告も見られるところでございます。したがいまして、なかなか条件の厳しいところではございますけれども地域の特性を生かした多様な農業振興していくということが重要な点だというふうに考えられるところでございますし、私どもとしてもそういった各地域の努力というものをできるだけ支援していきたい。現におくれている基盤整備の問題につきましても、例えば山村振興地域あるいは過疎地域につきましては、公共事業などの面でも採択基準なりあるいは補助率の面で可能な限りの優遇的な措置もとっておるということでもあるわけでございます。  それで、そういう考え方と今度の法律との関係でございますけれども、これは中山間地域のみならず全体についても言えるところでございまして、今回の法律整備は、これから進めていこうとする構造改善なり農村地域活性化という重要な課題を果たしていくために必要な非常に重要な法制の整備であるというふうに考えておりますが、しかしそれがすべてだとは考えておりません。御案内のように、平成元年度におきましても予算なり税制なり金融なりの各般の面にわたりましてできる限りの施策の充実に努めたところでございますし、この中山間地域の問題につきましてもそういう問題意識でこれからも十分いろいろと考えていきたい、このように考えておる次第でございます。
  161. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間が迫ってまいりましたので、市民農園の方に移らせていただきたいと思います。  市民農園は、今後都市住民が余暇時間を豊かに活用したり、都市農村の交流を促進する場として、さらに農村活性化遊休農地の活用を図る手段としてその役割を果たすなど多様な機能を発揮できるもの、こういうふうに思っております。その整備充実が望まれているわけでありますが、本法の制定はその第一歩であるというふうに評価をしているわけでありまして、私は、昨年十二月ですか、本委員会で日本型クラインガルテンの導入を提唱させていただいたものでございます。この問題は、農水省のみならず建設省あるいは厚生省、政府全体で取り組むべき問題でありまして、要望を申し上げたわけでございますけれども、どのような検討をなさっておられるのか、まずこの点をお聞かせいただきたいと思います。
  162. 松山光治

    ○松山政府委員 市民農園に関します法制度整備の問題につきましては、昨年の本委員会におきます委員の御指摘も踏まえながら、関係省とも意見の交換を行うなど種々の検討を行ってまいったところでございます。  ただ、市民農園整備促進といったような観点からの法制度、立法措置という問題につきましては、現在規模の面なりあるいは施設等の面で非常に多種多様な市民農園我が国に存在をしておるわけでございますが、そういう中でどういうものを政策的に取り上げて対象として考えていくのかといったようなことも問題でございますし、それからどういった措置が必要かつ可能かといったような問題もございます。また、市民農園の適正な管理運営といったようなことをどういうふうにするかといったようなことについてもなお十分検討する必要があるというふうに考えておりまして、我々としては、こういった問題を実態も踏まえながら関係省庁とも引き続き検討をしていきたい、こういう考え方に立っておるわけでございます。今回の特例法は、そういうことを踏まえながら、いわゆる市民農園も含めまして農業者以外の方々農地利用を行うために必要な法制度整備する、こういう考え方で提案させていただいた次第でございます。
  163. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ところで、私は前のときにも申し上げましたけれども、ドイツのクラインガルテンについて農水省はどのような評価をいたしておられるのか、その点簡単で結構ですからお答えをいただきたい。
  164. 松山光治

    ○松山政府委員 西ドイツの制度は、市民に自然に親しむ場を提供することを通じて自然に対する理解を深めさせるとともに、都市における緑化維持を図るという役割を持っておるというふうに理解をいたしてございますし、そういう意味で我々にとってもかなり参考になるものでございます。ただ、土地所有形態でございますとか、あるいはクラインガルテンの利用形態等が百年にわたるかなり長い歴史の中で形成されてきたものでございますから、独自の特徴を持ってございまして、我が国市民農園に直ちに導入していくというのは決して適当ではない。やはり日本的な特色を備えたものをどう考えていくかということを検討することが必要な状況ではないか、このように考えておる次第でございます。
  165. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は、都市の環境を保全するためには農地は絶対に必要であるという考えでおるわけでありまして、農水省は、都市計画は建設省の領分として、農地がそこに存在するにもかかわらず放棄しているのではないか、こう思うのです。農地も含まれる都市計画というものが考えられないかどうか。今ほど市民と農家の交流が失われているときはないというふうに思うわけでありまして、有機農業なり無農薬農業が求められているのはこうした点の反動ではないかというふうに私は思っておりますけれども、どういうふうにお考えなのか。
  166. 松山光治

    ○松山政府委員 委員案内のように、都市計画は、法律によりますと「都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画」、こういうことに相なっておりまして、この策定にかかわります権限は法律上建設大臣に属させられておるところでございます。ただ、その策定に当たりましては、当然のことながら農林漁業との健全な調和を図るということが基本理念の一つになっておるわけでございまして、そういう規定のもとで、特に市街化区域の設定に当たりましてはあらかじめ農林水産大臣に協議するということが法定されております。したがいまして、私どもといたしましては、農林漁業との健全な調和を図るという観点から都市計画策定に必要な参画を行ってきておるつもりでございます。  それで、都市における緑地の問題をどう考えるかという御指摘にかかわる今の御質問でもあったわけでございますが、農地という形で保存するという考え方もありましょうが、農地以外の緑地というふうな考え方もあろうかと思っております。そういう意味では、都市形成をどういう形態のものでやっていくのが一番適当かという都市計画サイドからの観点で十分詰めていただかなければいかぬ話というふうに私は思いますけれども、特に市街化区域内の農地の問題、これは一定の期間内に市街化を図るべき区域ということで、農地転用などは届け出制にするとか、効用が長期に及ぶような基盤整備は差し控えるといったような対応にはいたしてございますけれども、現実に都市化の程度、進展度合いとの関係もございまして、現に農業を営んでいらっしゃる方もいらっしゃる。緑の保全という観点からも一定の役割を果たしておるということを私どもも十分念頭に置いておるわけでございまして、そういう意味では現に行われておる農業が継続されるのに必要な施策、例えば災害復旧でございますとか、防災とか復旧といったような、そういうふうな面で私どもも参画をしておるのが現状でございます。
  167. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 昨年の十二月に私は本委員会において指摘をしておきましたように、いわゆるみずから個人農園を行うのではなくて農地を貸し付け市民農園を開設している場合の相続税納税猶予制度の適用の件でありますけれども、これは構造改善局長が私の質問にお答えをいただいた「土地税制全体との絡みの中で、恐らくかなり突っ込んだ議論が必要になってくるような問題ではなかろうか、」こういうような点、もう時間がありませんからその点だけにしておきますけれども、その市民農園都市近郊に根づくには、このネックをどうしてもクリアしなければならない重大問題であろう、こういうふうに思うのです。どのような検討がなされたのか、簡単で結構ですからお答えをいただきたい。
  168. 松山光治

    ○松山政府委員 貸し付け型の市民農園につきまして、この問題をどう考えていくか、私どももいろいろな観点から検討を行ってまいってきているところでございます。ただ、委員案内のように現行の相続税の納税猶予制度は、自作地が主体の我が国農業経営におきまして、相続時において経営の細分化を防止するための特例制度として仕組まれておるもけでございますし、その適用対象を貸し付け農地まで拡大するといったようなことになりますれば、これは制度の根幹にかかわる、かつまた農業以外の、例えば中小企業の方々とのバランスをどう考えるのかといったような問題があるということで、貸し付け型の市民農園だけではございませんで、農地農業者に貸し付けていく場合についての適用も実現を見ておらないという、税制上非常に難しい問題を抱えた問題であるというふうに申し上げざるを得ない状況にあるわけでございます。  ただ、今度の相続税の改正に伴いまして、相続税の基礎控除が二倍に引き上げられました。したがいまして、農業地域におきますほとんどの農地を初めといたしまして、相当程度農地がこの特例措置の適用を必ずしも必要としないことになったのではなかろうかというふうに推定をいたしておるわけでございますけれども、市街化区域内のかなりの程度農地につきましては必ずしもそう言いがたい事情にあるわけでございます。そうなってまいりますれば、市街化区域内の農地の税制全体をどのように考えていくかというかなり大きな問題のフレームの中での議論ということにならざるを得ない、そういう実情にあるわけでございまして、今申し上げましたような事情を勘案いたしますと、地価の著しく高い都市地域市民農園を開設するといったような場合には、現在行っておりますように、農地所有者がみずから開設いたしますいわゆる入園契約方式で当面実施していくというような指導を行うということが現実的ではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  169. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になりましたのでこれで終わらせていただきますが、最後に、笹山理事もそこに座っていらっしゃいますけれども市民農園について大変関心を持っていらっしゃるたくさんの方々がいらっしゃる中で、特に私はこれが本委員会で成立をしていくことは大変うれしく思っているわけでございまして、最後に大臣、この市民農園振興というものをぜひ図っていただいて、立派に定着てきますように御要望申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  170. 笹山登生

    ○笹山委員長代理 武田一夫君。
  171. 武田一夫

    ○武田委員 最初に、堀之内農林水産大臣の御就任を心から喜び、御期待を申し上げておるわけでございます。私は、一度一緒に国内視察をされたとき、いろいろと見識あるお話をちょうだいしまして、大臣はいろいろな大臣の中でも今後の日本の農政を背負うには、ハイジャックに遭ったときの胆力といい、見識といい、まことにふさわしいと思って期待しておるわけでございますので、御健闘を心からお祈りいたします。  最初に、一般的な問題といたしまして大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、大臣は今後の農政の基本的課題というものはどのようなものであると御認識をなさっているか、この件をひとつまずお尋ねをしたい、こう思います。
  172. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 先ほど過分なお褒めをいただきまして、まことにありがとうございます。以前、武田委員とは、私も農水委理事時代にアメリカ等の農業視察を一緒にさせていただきましたが、それ以来いろいろと御指導いただいておりまして、感謝にたえません。これから何かとお世話になりますが、よろしくお引き回しをお願い申し上げます。  ただいま、これからの日本農業の展望と申しましょうか、進路についてお尋ねでありますが、我が国農業は、御案内のとおり内外ともに厳しい情勢にありますが、一方ではバイオテクノロジー等の技術革新が進展しております。また、農地の賃貸借なり農作業受委託により規模拡大を図っている地域や果実などの輸出を試みている地域もございます。こうした技術進歩や農業者の創意工夫によりまして、地域の特性を生かしつつ農業を魅力ある産業とすることは十分可能であると考えております。  このような状況を踏まえまして、さきの農政審報告でも明らかにされておりますように、より一層の生産性の向上を進め、国内での基本的な食糧供給力の確保を図りつつ農業経営の安定を確保するとともに、国民の理解し得る価格での食糧の安定供給に努めることを基本といたしまして諸般の施策を強力に展開してまいる所存であります。  また、営農者が将来を見通しつつ営農を展開することができますよう、現行の長期見通しにかえまして、平成十二年を目標とする新たな農産物の需要と生産の長期見通しを策定することといたしております。  今後の農政の推進に当たっては、農業者がみずからの生産活動に誇りと将来への展望を持てるようなわかりやすい農政にすることを旨といたしまして、政策内容農業者に十分説明を申し上げ、農政への信頼を早期に回復することに心がけていきたいと考えている次第であります。
  173. 武田一夫

    ○武田委員 私はいつも思うのですが、やはり将来展望というものの明確性、しかもそれは確実にそれを期待できるような、そういうものの提示を急がなければならないのではないか、こういうふうに思うわけでありまして、今回のこの農用地利用増進法の一部改正、それから特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案、この二つの問題、これは土地の問題でありますが、担い手土地というのは農業にとりましては最大の財産であり、これの対応にしっかりと取り組んでいかなければならないというのは当然のことでございます。  そういう意味で私はこの際大臣にお願いしたいのは、農業の将来展望を確立する、そして農業生産の誘導指針となる長期展望を明らかにすることによって、それが希望と、そしてその希望がかなうような、そういう対応を着実になし遂げていってほしいな、こういうふうに期待をしているところであります。  ところで、今後の農政の基本的課題としては、日本の国というのは自然的、歴史的な制約から来る経営規模零細性、それから高地価、そういう制約から来る経営規模の問題、しかしながらその中で合理的な、しかも近代的で生産性の高い農業にしていく、要するにこういう一つのジレンマに陥っている、言うなれば大変な課題を背負っているわけでございまして、農政審でも二十一世紀へ向けての農政の基本として、いわゆる経営規模零細性と高地価という制約の中で、より合理的かつ近代的で生産性の高い産業として自立し得る農業育成するという大きなテーマを掲げているわけであります。ですから、今後重要な課題は、今回の法の改正を含めまして、いわゆる経営規模拡大担い手育成という非常に重要な構造政策をいかに強力にしかも実効あらしめるかというのが、私は大臣に課せられた、また日本農業に課せられた課題だ、こう思っておるわけでございまして、この点につきましては大臣はどういう姿勢で、具体的にはどのような手法で取り組んでいきたいとお考えか、この点をまず次にお尋ねをしておきたいと思います。
  174. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 我が国経済の国際化の進展等に対応いたしまして、農業構造の改善を促進するためには、地域の実情に応じまして農地の売買、貸し借り、農作業受委託などを進め、中核農家規模拡大や生産の組織化等を促進する必要があります。このような観点から、農用地利用増進事業を基軸として、地域農業のあり方についての合意形成担い手及び地域リーダーの育成、確保、農作業受委託促進を含めた多様な農地流動化の掘り起こし活動の強化土地基盤の整備、安定的な就業機会の確保等の課題に積極的に取り組んでいくことといたしております。  元年度においても、予算、金融、税制等の各般にわたる関係施策の一層の拡充を図ったところでありますが、さらに関係機関・団体による農用地利用調整活動を活発化するため、今般、農用地利用増進法の一部改正法案を御提案申し上げたところであります。
  175. 武田一夫

    ○武田委員 いろいろとこれから各般の施策をしていかなければなりません。そこで、私は大臣に一つお願いしたいことは、例えば農用地の面積の国際比較を見ましても、日本と西ドイツなど見ても十四倍の開き、ECの場合でも十五倍ですか、フランスに至っては二十四倍、それからアメリカは百五十四倍、イギリスが五十八倍です。経営規模の比較を見ましてもそういう大変な差があるわけですけれども、しかし、その中にあって、ECという一つの国が我々日本にとっては一つ国際競争力の面なんかにおいても努力すればそれに追いつき追い越せるような条件というか、最短距離にあるのではないか、こういうふうに私は思っているのでございます。日本の一九八一年以降の農業予算というのは毎年減少の一途であります。一方、ECを見ますと毎年増加している、こういう一つのデータがあるのでありまして、予算が多い少ないというのはいろいろな施策の内容によるんだと言われればそれもそうでしょうけれども、何かしら農業にかける意気込みといいますか対応というものがその数字の面でもあらわれているのではないかという気がしてなりませんので、この点をひとつ大臣よく御検討の上、十分なる予算措置お願いをして万全を期してほしい、こういうふうにお願いを申し上げたいと思うわけであります。  そこで、農地流動化規模拡大の動向についていろいろとお尋ねしますが、農用地利用増進事業によりまして農地の権利移動は徐々に定着をしてきている、また、借り手の規模拡大や経営の安定等にも寄与しつつあることは認めざるを得ないし、私は認めているわけであります。しかしながら、あちこち歩きまして関係者のいろいろな話を聞きますと、やはり農地の流動が当初期待したほど効果を上げていないという声の多いことも事実であります。そういうことから、今後なお一層の農地の流動化を進めていくその努力が相当必要であると私は考えておるわけであります。  そこで、この事業を今後ざらに効果あらしめるために何をどうすべきかという問題について、簡潔に、ひとつ具体的にお示しをいただきたい、こう思います。
  176. 松山光治

    ○松山政府委員 これからの構造政策を進めるに当たって、農地流動化を進めるに当たりましての基本的な留意点ということになるわけでございます。  先ほども大臣から基本的な点についてお答え申し上げましたように、やはり地域の条件がいろいろと違っておるわけでございますので、そういう意味では現実に起こっております農家の分化の状態、そういったものを踏まえながら、かつまた関係の農家方々の意向も十分踏まえながら、それぞれの地域自分の条件に即してどういう方向に農業を持っていこうとするのか、どういう担い手層を頭に置いてこれからやっていくのかという意味での地域農業のあり方についての合意形成をできるだけ早くやっていくということがやはりまず第一のポイントであろう。そういうことを前提にしながら、担い手育成なり、あるいは仲立ちをいたします地域リーダーの確保といったようなことを行いつつ、流動化といいましても売買なり賃貸借なりあるいは受委託なり地域の条件に応じていろいろな多様なものがあろうかと思いますので、関係団体がそういう多様な形態の流動化手法を地域の条件に即して駆使しながら掘り起こし活動を強化していくということが第二番目のポイントであろう。第三に、やはり基盤整備が進んでいるかどうかということが流動化に大変な影響を及ぼしておりますので、これを的確に推進していくということ。第四に、今度は農地の出し手になる方々につきましての就業機会をいかに確保していくか、これが非常に重要な点でございますので、私どもはその点につきましては農村地域工業導入法等の活用を通じましてこれからも鋭意条件整備に努めていきたい、このように考えておる次第でございます。     〔笹山委員長代理退席、杉浦委員長代理着席〕
  177. 武田一夫

    ○武田委員 今局長から話がありましたが、構造政策の一層の促進というのが要請される背景の一つとして、いろいろあるわけですが、私はその一つが生産コストの一層の引き下げというこういう大きな命題を背負っての対応だというふうに思うのであります。  六十三年九月に若手農業者の意識調査というものがありまして、これによりますと、就農時に比べ稲作規模拡大したにもかかわらず稲作コストが下がらなかったと答えた農家が、その理由として、資材費の上昇、これは四七%、耕地の分散、三一%を挙げております。耕地のまとまりを伴った規模拡大と同時に、並行的に資材費の節減を実現していくことが稲作経営の場合生産性の向上に不可欠の要素だという一つの調査があります。  それから、六十二年二月ですが、中核農家の意識とニーズに関する調査結果を見ますと、府県の稲作主業農家のうちの農地の団地数が五カ所以上に上る農家が六〇%、九カ所以上の農家が二一%もありまして、また、自宅から最も遠い農地の距離が五キロ以上もある農家が三二%を占めるなど、いわゆる農地の分散したり通作距離の長い農家が多いという状況、これが出ているわけであります。  こうした実態を見るときに、まず、今出てきましたいわゆる農機具等のコストダウンという問題は一生懸命やってもらわなければならないのでありますけれども、どうしても耕地のまとまりを伴った規模拡大というものを確実に推進をしなければ、効率の上がらない法案になってしまうのではないかということでございますので、この点につきまして、今後どのような対応をなさるつもりかをお聞きいたしたいと思います。
  178. 松山光治

    ○松山政府委員 欧米のように、農場の形をとった農業の形態が一般的ではございません。したがいまして、経営規模拡大するにつれて団地数がふえる、勢い、せっかく規模拡大しても、十分な能率が上がらないといったような問題が散見できることは御指摘のとおりでございます。  したがいまして、御指摘ございましたように、農地の集団化を進めましてまとまりのある形で経営規模拡大を図っていくことが、これからの農地の流動化施策あるいは構造政策推進していく上で非常に重要な点であるというふうに考えておるわけでございます。  私どもとしては、そういう問題意識のもとに、圃場整備の実施を行いますときには、換地なりあるいは交換分合という手法を通じてできるだけ農地の集団化を図っていく、あるいはまた農地保有合理化法人が持っております農地の保有、再配分機能というものを十分活用していくといったようなことを通じて、これまでもできるだけの努力はしてきたつもりでございますけれども、本法の運用に当たりましても、農業委員会なり農協なりの農地利用調整に当たっては、できるだけ、単なる規模拡大だけではなくて、まとまりのある農地を、団地を形成していくという観点から利用調整をするように十分な指導をしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  179. 武田一夫

    ○武田委員 さらに、昭和六十三年一月の調査ですが、「圃場整備完了地区における農家土地改良負担と農地流動化に関する調査」というのを見ますと、農家が経営規模拡大する場合の農地の条件として、圃場整備済みが必要とするものが八〇%あります。また、圃場の区画は、三十アール以上とするものが五六%、五十アール以上とするものが一六%というふうな調査結果がございまして、規模拡大を志向する農家は、区画がより大きく整備された農地を希望しているものが多いということの報告、調査があるわけであります。  今後、地域における規模拡大推進するためには、そういう意味から圃場整備推進するなど、借り手農家の希望する条件を満たすような農地整備推進することが重要で、これは先ほども局長も指摘されたとおりであります。  ここで非常に問題になってくるのは、なぜ各地でいろいろトラブルがあって、意見がまとまらずに、圃場整備等の事業が一部強行されて変な形で行われたり、やりたいと思ってもなかなかできないというのがあるかというと、やはり経費がかなりかかり過ぎているということでありまして、土地基盤整備については、事業の長期化、それから労務、資材の上昇等による事業費の増大ということの問題とあわせまして、農産物価格の低迷など、農業経営をめぐる環境が厳しさを増しているという中で、いろいろとそういうトラブルがあったり、苦労しているのが現実にかなりあります。私の宮城県でも、それで苦労しているところが結構ございます。ですから、基本的にはやはりそういう農家方々にできるだけ負担をかけない、安い費用負担で実施できるような方向を考えて、償還方法の改善などによって農家の負担が軽減するという、手当てを一生懸命考えてやらないと、なかなか難しい問題ではないかと思うのでありますが、この問題につきまして、どのように今後対応なさっていくおつもりかをひとつ御答弁いただきたい、こういうふうに思います。
  180. 松山光治

    ○松山政府委員 中核農家に対するアンケート調査を見ましても、流動化が進みにくい幾つかの理由がございますが、その中の重要な理由といたしまして基盤整備が進んでいないからという事情があるわけでございまして、先ほどもお答え申し上げましたように、農地の流動化を円滑に進めていくためには土地基盤整備を的確に進めていくということが非常に重要な課題だというふうに考えておるわけでございます。  ただ、今御指摘ございましたように、農業基盤整備事業の費用負担の問題でございますが、今先生が御指摘ありましたような事情に加えまして、昨今の状況でございますから、せっかくやるのなら少し立派なものをといったような要望もあり、整備水準も上がってくるといったような状況の中で事業費がこれまで増高をしてまいりました。他方昨今の農業をめぐる状況の厳しい事情があるわけでございますから、土地改良の負担金の問題が非常に各地で問題になっておる。我々としてもこれを非常に厳しく受けとめておる次第でございます。  やはり先生から今御指摘がございましたように、基本的には事業費の単価をできるだけ安いものにして的確な事業を行っていくということになるわけでございまして、私どもとしては、そういう観点から立地条件等の実情に即しまして、できるだけ経済的な工法を採用していくということ、それから、やはり整備水準がどうかによって大分事業費の水準も違ってまいるものでもありますから、整備水準と事業費の組み合わせで複数の案をお示しする形で地元に選択してもらうというようなやり方を徹底するとか、それから御指摘のありましたような工期の長期化ということも事業費の増高にかかわる重要な要素でございますので、適切な新規採択を行いつつ、極力予算の配分も既存の着工地区に重点的に行いまして、工期の短縮に努めるといったようなことでこれまでのところ対応しておるところでございますし、これからもそういう基本線でもって対応していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  ただ、既に終わりましたものにつきましての負担金の償還問題をできるだけ円滑にしていくということも私たちにとりまして非常に重要な課題でございます。六十二年度、六十三年度と新しい制度もつくりまして、私どもなりの対応をしてきたわけでございますが、平成元年度予算の編成に当たりましては、私どもの予算対策としては、最重点項目の一つとしてこの問題を取り上げて各般にわたる対策の充実を図ったつもりでございます。  一つは、かなり負担金問題が国営事業に集中的にあらわれてきておりますので、農家負担の軽減なりあるいは事業の効率化を図るといったような観点で国営事業制度の見直しを行ったというのが一つでございます。  それから国営事業地区につきましての償還方法につきましても、建設利息の増高問題に対応するため、できるだけ早く償還を始めたいといったような地元の要望も踏まえまして、いわゆる工種別完了制度という、例えばダムが完成すれば、そこで償還が始め得るといったような制度を創設したことと、それから六十二年度から実施いたしております計画償還制度、償還期間の延長制度でございますが、これにつきまして対象地区の拡大なりあるいは償還方法の改善を行ったということがあるわけでございます。  このほかに、今度は負担金の支払いを円滑にするためのいわば資金繰りのための手当てというのがもう一つあるわけでございますが、それにつきましては六十三年度から実施いたしております土地改良事業の償還円滑化特別対策事業という、土地改良区に対する対策がございますが、これにつきましての償還期間なり事業実施期間の延長等の拡充を行いましたほかに、これは土地改良ということだけではございませんけれども農家の負債対策の一環といたしまして、いわゆるリリーフ資金という、自作農維持資金の一種といたしまして各年の償還金を低利で融資し得る新たな制度資金も創設したところでございます。  私どもといたしましては、今申し上げましたようないろいろな施策を一応準備いたしましたので、各地区の実情に応じてこれを適宜組み合わせて使っていただくことによりまして、農家負担の軽減と事業の円滑な推進を図ってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  181. 武田一夫

    ○武田委員 こうした長期にわたる事業計画の場合に、予算の関係あるいはいろいろな条件がございまして、かなり工期がおくれるという場合が多うございます。その分が結局後に負担が来るという、ここのところは今後の一つの課題として、その分にかかわる負担の増については国が、あるいはいわゆる受益者に負担がかぶらないような何か歯どめを考えて対応してやるということがないと、こういう地域方々がそういうことでなお一層の苦労、苦しみを味わっている、この点も今後の一つの課題としてひとつ御検討いただきたい。すべきだと思うのですが、どうでしょうか。
  182. 松山光治

    ○松山政府委員 やはり年々かなり新規の御要望もあるわけでございまして、既存地区の工期の短縮を図るということのためには、新規をどうするかという話にも実は及ぶわけでございます。したがいまして、私ども、今御提案のような工期が延びた場合にどこかで負担するかというのは、なかなか現実問題としては難しい問題がある。やはり予算の配分の面でできるだけ重点的に既着工地区に配分することを通じて工期の短縮を図ってまいりたい、このように考えておる次第でございます。  ちなみに最近の実情を申し上げますと、いろいろな事業がございますが、その主要事業をひっくるめました平均工期は、六十年当時には十四年というのが平均工期になってございましたが、その後の工期短縮努力もございまして、平成元年度の概算決定の段階では十一年程度の平均工期になっておる。私どもは、こういった実績を踏まえながら、今御指摘のございました工期の短縮を通じる農家負担の軽減という問題に引き続き取り組んでまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  183. 武田一夫

    ○武田委員 この農用地整備、六十三年度は農用地面積五百三十二万ヘクタールのうち田んぼが二百八十九万ヘクタール、そのうち整備済み面積が百二十五万ヘクタールで四三%、それから畑につきましては二百四十三万ヘクタール、そのうち整備済みが百十二万ヘクタール、四六%。これはまだ五〇%以下ということは、平均でそうですから、三〇%台という地域も結構ある。残念なことに私の地域などは、田んぼなどは悪い方の典型的なものであろう、いろいろ理由はあるのでございますがね。そういう点から、やはり生産性の向上という面と規模拡大はがっちりドッキングした対応をしていかないといけないわけでありますから、こういう問題についても、その整備を何年までにどの辺まで持っていくという地域ごとの指針が必要だと思うのです。  それはどういう意味かといいますと、やはり山間僻地と平場ではなかなか違います。山間僻地の方は金もかかるし大変厳しい条件がございますから、平場並みにはいかない。そういうことを考えると、どうしてもその両方のどちらにウエートを置くか、どちらかというと過疎というのは山間僻地の方が多いからそちらの方を先にやれ、それでそこに活性化を与えるという意見もある。ところが片一方では、それよりも条件のいいところは先にやって進めていけと言う。ここのところの調整といいますか、これはどういうふうに考えていくかという頭の痛い問題なのですが、痛いだけにこれは知恵を絞って、局長さん初め皆さん方のお知恵でこれをバランスよく推進してほしいと思う。これはあちこち行くと出てくる問題ですね。我々も頭が痛いところでありますが、この点については今後どういうふうにしていくかという問題、ひとつ御見解を示していただきたい、こう思うのです。
  184. 松山光治

    ○松山政府委員 土地改良事業計画的な推進という観点で、御案内のように全国段階におきましては土地改良の長期計画というのをつくりまして、計画的な推進に努めておるわけでございます。ただ、それを地域別にどういうような形ではらしていくかといったような問題につきましては、先生案内のように土地改良は地元からの申請に基づいて行っていく、それに伴って地元負担が伴う、こういう仕組みが一つあるわけでございまして、どの地域でどういうふうにというのを国の計画としてやっていくということはいかがなものかというふうに考えておるわけでございます。各県それぞれの農業政策推進方策の一環として、いろいろとお考えいただいている話ではないだろうかというふうに思います。  そこで問題は、各地域ごとの事情を踏まえながら一体どういうふうな進め方をするのかということになるわけでございますが、甚だ抽象的なお答えで恐縮でございますけれども、やはりそれぞれの事業の各地域にとっての緊要性、それに申請事業でございますから、やはり各地域における関係者のまとまりぐあいと申しますか熟度、そういったものを総合的に勘案しながら、必要なところに必要な事業を実施していただく、こういう基本的な考え方でこれからも進めていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  185. 武田一夫

    ○武田委員 それから規模拡大も大事ですが、耕地の利用率の低下という問題が一つありますね。それから耕地の荒廃、遊休化した農地有効利用というものも考えなければならない一つの問題ではないか。この問題につきましては、やはりいろんな調査によりましても指摘しているものがございますので、規模拡大の問題と同時にそうした問題の対応も土地政策では欠かせない課題だと私は思いますので、今後この問題につきましての対応をどうするかということをお聞きしておきたいと思います。
  186. 松山光治

    ○松山政府委員 全体の耕地面積との対比で申しますと、三%をちょっと切るくらいの水準には違いございませんけれども、耕作放棄地と申しますか、遊休農地がふえる傾向にあることを私どもも憂慮をいたしておるわけでございます。なぜそういう遊休地が発生するか、いろいろな要因があるわけでございますけれども全国農業会議所の調査なんかによりましても、一つはやはり高齢化等に伴います担い手が不在になっておる、そういう事情がある。もう一つは、基盤整備がなお進んでおらない、こういったような事情がバックにあるようであります。  そこで、農地の荒廃あるいは遊休地化を防止するという観点から、従来から中核的農家中心といたしまして兼業農家なり高齢農家なんかを幅広く包摂いたしました地域的な集団であります農用地利用改善団体、これは現在の農用地利用増進法に位置づけられている団体でございますが、そういう団体等におきまして農用地有効利用に関する話し合い、合意形成を通じまして、その有効利用と中核農家への結びつきを行っていく、必要があれば基盤整備を行うについて一定の援助も行うといったようなこともやってまいりますと同時に、圃場整備なり排水改良なんかのいわゆる農業基盤整備事業の実施を通じまして、遊休農地の活用を図り得るような条件整備を行ってきておるところでございます。  ただ、現下のそういう遊休農地をめぐる事情、土地基本法におきましても土地というのは利用しなければならぬのだという理念が示されておるといったような事情、こういったことも考えながら、今回の農用地利用増進法改正案におきましては、正当な理由なく耕作放棄をしている方につきまして農業委員会による指導なり、市町村長によります勧告なり、農地保有合理化法人によります買い入れ協議の制度といったようなものを新たに設けまして、こういう制度を活用することを通じて遊休農地の解消、その有効利用を図ってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  187. 武田一夫

    ○武田委員 農用地利用増進法の一部改正法案でありますが、生産性向上のための構造政策推進、これは緊急かつ必要欠くべからざる課題でありますから、したがってこの政策促進するためには改正が必要であると我々は思っております。  ただ、ここで一つこの法案について確認をしておきたいことは、遊休農地有効利用促進することは望ましいことでありますけれども遊休農地は山間過疎地における離村や高齢化によって発生するものが多い。それからまた地形とか土地条件が悪く、高生産性農業の対象になりにくいものが多いということもあり得るわけでありまして、こういうところが本法の改正によってどれだけ効果が発揮されるものかという心配もあるのであります。この点、間違いなく効果あるものになるのだという御答弁をひとつお願いをしたい。  それから、特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案についてお尋ねしたいのは、市民農園というのは、今後都市住民が余暇時間を豊かに活用したり都市農村の交流を促進する場として、また農村活性化遊休農地の活用を図る手段としての役割を果たすなど、多様な機能を果たすということは私たちも認めることでございますが、そういう意味でこの拡充整備が望まれているわけで、本法の制定がその第一歩となるということで期待をしておるのでございます。  ただ、市民農園の管理という問題が出てくるのじゃないか。こういうことがずさんになれば、先ほど吉浦議員も心配されましたように、今後周辺の農地あるいは農業経営に悪影響を及ぼさないかということも、我々農地を守り農業を守る者としては十分に考えていかなければならない問題だろう、こう思うわけでありまして、こうした問題に対する万全の対応を私はしてほしいという願いを込めて、この各法案につきまして一問ずつ最後に質問しまして終わりたいと思いますので、御答弁いただきたいと思います。
  188. 松山光治

    ○松山政府委員 遊休農地の問題は、先ほどお答え申し上げましたようにそれなりの事情のもとに生じてきておる問題でもございます。したがいまして、そういった事情を克服するような条件整備をいろいろな形でやりながらこれを進めていくということになろうかと思っておりますけれども、せっかく今回の農用地利用増進法遊休農地を解消していく、有効活用していくための新しい制度をつくっていただくわけでありますので、これが所期の効果を上げるように関係者の格段の理解と御努力をお願いしたいものだ、このように考えておる次第でございます。  それで、市民農園の管理の問題等にも関連いたしまして、周辺の農地なり農業経営に悪影響を及ぼすことになったら大変だ、私どももそういうふうに考えております。そこで、特定農地貸し付けを行います際には、貸付規程に、農地の適切な利用を確保するための方法といたしまして、貸し付け主体でございます地方公共団体なり農協なりが借り受け者の農地の利用状況を見回る、あるいは必要な指導を行うために指導員等を配置するといったようなことを恐らく定めていただくことになるのではないかと考えておるわけでございまして、こういうことを通じまして管理の適正を図ることができるというふうに考えておる次第でございます。仮にこういった管理面で適正を欠くようなことがあります場合には、周辺の農地なり農業経営に悪影響を及ぼさないように、承認をいたします農業委員会を通じまして貸し付け主体である地方公共団体なり農協なりに必要な指導を行っていく、こういう考え方で対応してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  189. 武田一夫

    ○武田委員 それでは、時間がちょっと余ったのですが、以上で終わりますが、いずれにしましても、この法案の改正によりまして、今後日本の農業の非常に重要な部分である構造改善の仕事が順調に、かつ将来農業の展望に明るい光を差しかける、そういうものにしてほしい、このために一層努力をしていただきたい、このことをお願いし、私は質問を終わります。どうもありがとうございました。
  190. 杉浦正健

    ○杉浦委員長代理 滝沢幸助君。
  191. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 どうも委員長御苦労さま、大臣初め政府委員の皆さん、御苦労さまです。  さて、議題になっております農用地利用増進法の一部を改正する法律案、また特定農地付けに関する農地法等特例に関する法律案、先ほど参考人さんの御意見におきましても、いずれも早く決定してほしいということでありましたし、全体として時宜を得た立法措置かと思いまするが、私は感じまするに、この法律というものは、読めば文章はまことにわかりやすく、しかし考えてみればまことにわかりにくい、一応わかりやすく再応わかりにくしというものであろうと思います。なぜわかりにくいかというと、それを受け入れるべき農業の置かれている今日の立場が不安定であるからということになりましょう。そういうことでこれから二、三お尋ねをしたいと思います。  各党各議員大同小異の質問で、お答えいただく方は御苦労かと思いますが、初めに確認しておきたいことは、午前中、自民党の松田議員からもそれこそ声を大にして質問があったわけでありますけれども、法令、条文のいかんにかかわらず、それ以前の問題として、農業というものは立国の大本である、世がいかに移り変わりましょうとも、それこそ外つ国という言葉もありますが、諸外国の態度がどう変わろうとも農業に対するもっと手厚い、国の基本方針としてこれを守るのだという政府の基本姿勢が確認されないことには、どういう立法措置をしようと農村に将来はない。それを一番よく知っているのが農村の青年ですよ。子供ですよ。孫ですよ。私は政府のいろいろな統計というものを余り重んじて見ないのですが、聖書にはしかばねのあるところにタカが集まる、こう書いてありますわね。これは何もタカだけでなくていいんですよ。アリだって何かお菓子でも一つあればみんな集まってきますね。ですから、多くの人々が集まるところ、特に青年たちが志すところ、これがいわゆる日の当たる恵まれたるものですよ。逆に、青年たちが去っていくところは将来性のないところということですよ。これはもう統計をまつまでもない。ですから、例えば都市部の、あるいはまたいろいろな部門の職場が大変だ。都市の構造がどうかということはありますけれども、しかし、とにかくここに、この大東京周辺に人口の一割以上が集まっているということは、ここがいいからなんですよ。将来ともいいであろうということですよ。ところが、農山村は人口が非常に希薄になってきている。跡取りがいない。このことは、つまり農村の将来がないということですよ。  私は、このことをやはり宇野新総理以下閣僚の皆さんがきちんと認識をしていただいて、農村に将来を指さしていただけばどんどん農村が一そうでしょう、都会に爆弾が落ちるとき、食糧がないとき、爆弾の落ちる必配がなくて食糧のある農村があふれたわけでしょう。このことを思い起こしていただきまして、いかに戦中に都会は厳しく農村は恵まれていたか、戦後四十三年の歴史はそれとは逆に、農村を辛い立場に追いやって都会を繁栄せしめたかということの反省だと私は思うのです。このことがきちんとしない限り幾ら議論をしても話にならぬことであろうと思いますから、大臣にまずもってここら辺の認識を承っておきたいと思います。
  192. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 ただいま滝沢先生のうんちくの深い御意見で御指摘を賜りましたが、戦後四十数年を考えますとまさしくそうかなということも改めて感じたところでございます。  私は、農業というものが国民に安定的にそして理解する価格で食糧を恒久的に供給するという崇高な使命を持っておる、しかし、この崇高な使命に対して国民全体に深い理解と御支援を賜らなければならないということを先ほど申し上げましたが、このような立派な使命を持ちながら、農業というものは改めてまた国土保全あるいは自然環境の保全その他、地域経済のために大きな役割を果たしておるということ、そしてまた一両国民の要求する憩いの場所の提供一このような崇高な多面的な役割を果たしておるわけでありますから、委員が御指摘のように国民全体が農政、これは農業、林業、水産業をひっくるめて全部だと思っておりますが、これに対する農林水産業役割というものを大きく理解をいただく、このことがまず第一だと思います。  最近ではよく国際化、自由化という中で価格面だけを取り上げていくという風潮に流れておりますが、私は、価格面ももちろん大事でありますが、国土の制約というものが——いかんせん何といっても狭い国土でありますので、この中で幾ら生産性を上げ、合理化、近代化を進めましても国際的な価格差を大きく縮めることはできない、これはもう自然の原理だと思っております。そのような制約の中にある農林水産業でありますので、これはひとえに国民全体の責任として、そして深い御理解を賜っていきたい。私は、その上に立って農林水産業が安全で衛生で、しかも良質な食糧を安定的に供給するということを心がけていかなければならない、そのためにいろいろな施策を講じていく、これがこれからの大きな農政だと思います。  日本農業情勢については、内外とも極めて厳しい情勢であることは承知いたしておるわけでありますが、一方、バイオテクノロジー等の技術革新等が進展してまいっておりますし、また農地の賃貸借あるいは農作業受委託によりまして規模拡大を図っている地域や、あるいはまた地域によっては果物等の輸出を試みている地域もございます。こうした技術進歩や農業者の創意工夫によりまして、地域の特性を生かしつつ農業を魅力ある産業とすることは十分可能であると私は思っております。  このような状況も踏まえ、さきの農政審報告でも明らかにされておりますとおり、より一層の生産性向上を進めながら、国内での基本的な食糧供給力の確保を図りながら農業経営の安定を確保し、そして国民の理解し得る価格で食糧の供給に努めることを基本として諸般の施策を強力に展開してまいる所存でございます。また、農業者が将来を見通しつつ営農を展開することができますように、現行の長期見通しにかえまして、平成十二年度を目標年次とする新たな農産物の需要と生産の長期見通しを策定することといたしております。これは大体今年じゅうに策定いたす予定であります。  今後の農政の推進に当たっては、農業者みずからの生産活動に誇りと将来への展望を持てるようなわかりやすい農政にすることを心がけまして、政策内容農業者に十分御説明申し上げ、また、農政への信頼を早期に回復することを特に心がけていきたい、こういうように考えております。
  193. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 大変自信に満ちた御答弁で力強く存じますが、大体、大臣が毎年かわるのは困りますよ。先生のように自信と経験の豊かな方に少なくとも五年くらいはやっていただかなければだめなんです。そうじゃありませんと、毎年かわってくる大臣さんに同じことを申し上げることになってしまいます。  それはそれといたしまして、具体的なことを二、三、お伺いいたしますが、今回の農用地利用増進法の改正によりまして農地の流動化は急速に展開するように実際になるものでしょうか。そして、今も大臣がおっしゃいましたが、内外の価格差を縮小する話、これは米、麦、大豆、畜産物というようなものについて一々具体的な数値を想定し得るものでしょうか。いかがなものでしょう。
  194. 松山光治

    ○松山政府委員 私の方からは農地の流動化量の問題についてお答えさせていただきたいと思います。  農用地利用増進法を基軸といたしまして各種の流動化促進策をこれまで講じてきておるわけでございますが、農地の流動化面積は五十七年以降おおむね年間八万ヘクタール台で推移しておるわけでございます。このうち農用地利用増進事業による利用権の設定面積が年間大体四、五万ヘクタール、一昨年の場合で申しますと八万九千ヘクタールのうち約五万ヘクタールが農用地利用権の設定、そのほかに農用地利用増進事業に乗った所有権移転が一万ヘクタール余ということで、関係者の御努力もございまして着実に一定の成果を上げてきておる、このように認識をいたしておるわけでございます。  今回の法改正は、こういったこれまでの農用地利用増進事業の実績を踏まえながら、かつまた構造改善の推進が非常に重要な政策課題になっておるという事態を踏まえまして、これを一層円滑かつ効率的に推進を行うべく諸般の制度整備を行おうという考え方に立つものでございます。  他方、最近の農業なり農村なりの実態を見てまいりますと、農家の分化がかなり進んでいるように思います。農業をこれからもやっていこうという農家がやはりふえてきているというのが一つあると同時に、兼業農家が増加していく、その中でかなり農業への依存度の小さくなってきておる農家といったようなものが見られるわけであります。また、生産力が規模によってかなり違うわけでございますが、その程度拡大しているという状況もございます。他方、いわゆる農村高齢化といったような、各地の流動化の理由になっているような事情も進んでおるわけでございます。こういったようなことを考えますと、農地流動化が進む要因も増加しておる、農業をめぐる状況の厳しさもあるわけでございますが、農地の流動化が進む要因も増加しておるというふうに見てよろしいのではなかろうかというふうに思うわけでございます。法改正の後で一体どの程度農地の流動化量になるかというのをあらかじめ予測するということは事柄の性格上なかなか困難なわけでございますけれども、私どもといたしましては、今回の措置の定着と関連施策の積極的な推進と相まちまして、地域の実情に即した形で相当程度農地の流動化が進むということを期待したい、このように考えておる次第でございます。
  195. 甕滋

    ○甕政府委員 内外価格差のお話でございましたが、農産物の内外価格の比較に当たりまして、これは先生御承知のとおり、品種ですとか銘柄でございますとか、さらには為替レートの変動といったことも入ってまいりまして、いろいろ難しいわけでございますが、米につきましては、一九八八年の数字をまずちょっと申し上げてみますと、我が国の価格はアメリカの六・七倍、タイの九・八倍というようなことでございます。これは生産者価格のレベルでございます。一方、消費者価格のレベルで申しますと、我が国の価格がアメリカの二・七倍、タイの七・九倍、こんな数字がございます。  ただ、先ほど大臣から申し上げましたように、我が国の国土条件の制約の中でこれを機械的に国際価格水準に近づけていくということはまことに現実的ではない話でございます。ただ、一方どの程度まで縮小させるのかということにつきましては、農家方々あるいは国民の前に目標として具体的な数値を示すということは、為替等の変動を一つとってみましても、納得性のあるものとして示すのはなかなか難しいというふうに思います。限られた国土条件のもとで、規模拡大あるいは生産組織育成を通じまして生産性を向上をさせる、コストダウンを進めるということを通じまして、これを価格に的確に反映させる、可能な限り内外価格差を縮小する努力を通じまして国民の理解の得られる価格で安定供給に努める、こういうことに尽きるのではないかというふうに考えております。これを今後一層進めるということが重要ではないかと考えておるところでございます。
  196. 吉國隆

    吉國政府委員 大豆につきましても、内外価格差、これはアメリカにおきましても価格の変動が激しい点がございまして、そういう意味でも比較がなかなか困難な点がございますが、過去三年ぐらいの平均で比較をしますと、やはり生産者価格で七倍ぐらいの開きがある状況になっております。  これの今後に向かっての努力という点につきましては、先ほど来麦につきまして食糧庁長官からお話のあったのと全く同様の問題がございます。大豆の場合は、特に作付が零細であるとか、また、つくり方によって農家間で非常に生産性の格差が大きいというような問題がございます。私どもとしては、やはりまとまった規模で今の機械化営農体系というものを効率よく実現していく、また、栽培技術もきちんとした技術を平準化させていく、こういった努力がまだまだ必要であるというふうに考えている次第でございまして、そういった努力を重ねていきながら内外価格差の縮小に向けて努力をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  197. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 これは仕方がありませんけれども、本当は、今の価格がどう違っているかということを聞いているのではなくて、それはわかっているのです、これからどうする自信があるかと実は承っておるわけでありますが、それはなかなか言えないことでしょう。  そこで、今度ちょっと目を転じまして、土地改良事業というのですか、あるいは基盤整備事業、これがどの程度の金がかかっているかということを見ますると、五十三年には圃場整備事業が十アール当たり五十五万円、国営の農用地の開発事業が五十六万九千円、そして同じく補助農用地開発事業でありますと四十七万八千円となっているのです。それが昨年、六十三年になりますと、九十一万、百二十二万、百十万五千円、こういうふうに随分と値上がりしているわけです。これは、一つは農村の素朴な疑問からいうとちょっと高いのじゃないか、高過ぎると思っている。そして、これは山間僻地に行きますとますます高くつきます。ですから、そういう山の中は田んぼやめてしまえというのが政府立場かもしれませんけれども、そうもいきませんから、そういうときに農家の負担を軽減する措置は何かひとつ考えていらっしゃるのでしょうか。
  198. 松山光治

    ○松山政府委員 御指摘がございましたように、資材費なり労務費なりが上がる、あるいは工期の長期化に伴います利息の増加の問題でございますとか、整備水準がどうしても高くなってくるといったような諸事情を背景といたしながら、御指摘がございましたようなことで十アール当たりの事業費の増高が見られるわけでございます。それに伴いまして、農家負担の問題、かなり各地で問題になっておるということを厳しく受けとめておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、従来から、やはり基本的にはできるだけ事業費が安く上がって、しかも的確な事業ができるように工夫していかなければいかぬ、こういう基本的な考え方のもとにこの問題に取り組んできておるところでございまして、できるだけ経済的な工法を採用いたしますとか、あるいはどういう水準の整備をやればどの程度費用がかかるからといったような、費用と整備水準との関係を示した複数の案を示していくといったようなことをやるとか、また、できるだけ予算の重点配分を通じまして工期の縮小に努めるといったようなことをやってきておるところでございます。  こういった事業費単価の抑制の努力も徐々にではございますが実を結んできているのではないかなというふうに考えておるわけでございまして、今御指摘のございました事例の中で、例えば圃場整備事業の場合で申しますと、平成元年度の圃場整備の新規採択地区の十アール当たりの事業費でございますが、六十二年度に比べますと約四万円ぐらい低くなりました。九十万ちょっとといったような水準まで来ておるわけでございます。しかし、これからもまた引き続きできるだけ事業費単価が安くて済むような工夫をいろいろな面で凝らさなければいかぬというふうに考えております。  そういうことを申し上げながら農家負担問題への取り組みの問題でございますが、私どもといたしましては、これまでの努力に加えまして、平成元年度の予算編成におきましてはこれを最重点課題の一つといたしまして各般の面にわたる施策の充実に努めたつもりでございます。例えば、いろいろと問題の出ております国営事業につきまして、農家負担の軽減なり事業の効率化といったような観点から再編見直しをやらせていただきましたし、また国営事業におきます負担金の償還方法につきましても、工種別完了制度を採用するとか、あるいは六十二年度から実施しております計画償還制度につきまして、その内容の充実を図るといったようなこともいたしたところでございます。あるいは償還金の資金繰りという側面からは、六十三年度から実施をいたしております土地改良区が、その年の償還金の一部を例えば農協から金を借りて払うといったような場合に、利子補給をいたしまして四%ちょっとの利子で償還金の返却に充てる資金繰りができるというふうな制度をやっておるわけでございますが、それにつきましても償還期間なり実施期間の延長を行う。あるいはまた、新しい制度といたしまして、農家負債対策の一環ということになるわけでございますけれども、いわゆるリリーフ資金というふうに呼んでおりますが、その年の土地改良の償還金も自創資金として借りることができる、そういうふうな制度も今回新設したところでございます。  私どもといたしましては、農地の流動化を進める上で基盤整備を円滑に進めることが非常に重要である、こういう問題意識に立ちつつ、各地区の実情に即した対応を今後とも考えていきたい、こういうように考えておる次第でございます。
  199. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ひとつ基盤整備事業が終わって農家が倒産したということのないように、そういうことはありますからね、せっかく四角の田んぼになったんだけれども三年後、五年後に農協のものになっちゃったということが多々あるから申し上げたわけで、よろしくお願い申し上げたいと思います。  そして、四月八日のウルグアイ・ラウンドの中間合意書というものに食糧安保というような言葉も出てまいりますが、実際あれで日本の米という立場は守れますか、どうなんでしょうね。
  200. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 お答え申し上げます。  今、委員の方からお話がございましたように、四月のガットの貿易交渉委員会の場におきまして、既に始まりましてから二年余を経過したウルグアイ・ラウンドの今後の交渉の大枠につきまして合意がなされたわけでございます。ただいま先生の方から食糧安全保障についての御指摘があったわけでございますが、そもそも今回の中間レビューにおきましては、農産物の分野については当初ウルグアイ・ラウンド宣言の中に既にある程度は出ていたことでございますが、この中間時点で今後の交渉の大きな方向性として幾つかの特徴的なことが確認をされたわけでございます。  その中で、特に私どもは、今回の農産物の交渉はガットのルール自体を見直しをしていこうということを通じまして農産物分野についての秩序そのものを交渉のテーマにしているということが第一点。それから、輸入面、輸出面のあらゆる措置を、現在のガットの条文から見て合法であるとか合法でないというような形式的な仕分けではございませんで、あらゆる措置をすべて俎上にのせて議論をしようということになっておりまして、これまた従来から再三申し上げているような、例えばアメリカのウエーバーつきの輸入制限なんかにつきましても、そういうことで包括的に対象にされるということが明確になってきているという点。さらには、御案内のように当初アメリカは完全自由化ということを相当強く主張していたわけでございますけれども、その主張を一応退けて、農業の保護の必要性ということを是認した内容の中間レビューの結末になっているわけでございまして、今申し上げたような点で我が国にとって今後の交渉を進めていく上で評価できるような手がかりがあるわけでございますが、やはり何といいましても今度の交渉は農産物についてさらに一層自由化を進めようということに力点が置かれていることは間違いないわけでございます。かつまた、過去の交渉ではいわゆる関税その他の国境措置にテーマが絞られたわけでございますが、今回はそういった国境措置にとどまりませんで、いわゆる各国の行っております農業政策措置そのものを交渉の対象にしようということになってきているわけでございまして、そういう意味では我が国農業の今後にとっても極めて重要な展開が予想されるわけでございます。  我が国は、先ほど大臣からも申し上げておりますように、食糧の自給率が非常に低くなってきているという実態がございますので、わけても食糧安全保障の確保という観点が我が国の今後の主張にとって極めて重要な要素であろうということで、中間レビューに当たりましても食糧安全保障あるいは環境の保全等農業が果たしている多面的な役割についての必要性が今後の交渉で十分配慮されるべきであるということを主張いたしました。その他の輸入国からも同様の主張が行われました結果、食糧安全保障その他必ずしも経済的あるいは貿易上の概念ではない要素も今後の交渉では考慮していくんだということが中間レビューの結論に盛り込まれたわけでございます。  私どもは、今申し上げたような経緯でこの食糧安全保障にかかわる配慮事項が入ったわけでございますので、今後の交渉のあらゆる段階におきましてこの食糧安全保障あるいは環境の保全といったような要素につきまして、そういった安全保障等の主張を手がかりとしながら、今後の交渉におきます我が国立場を十分確保すべく主張してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。御指摘のありました米の問題につきましても、ただいま申し上げたような中で十分主張をやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  201. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 わかりました。ひとつ頑張っていただきたいと思います。  ところで、話は違いますが、総務庁が一月に出しました報告書というのでしょうか、それを見ますると、全国の農業委員会の中で、もちろんその調査の対象にした委員会の中ということでありましょうけれども農家の経営指導をほとんど行ってないものが大半ということになっているんですよね。そしてまた三割程度委員会生産調整等の指導というのですか、その取り組みをほとんどしてないというふうなことが書いてあるんだけれども、これは政府立場からいうとちょっと困ることではないのかなと思いまして、今度このような法改正等も行われた機会にこれらのものに対してどのような御指導をなさることなのか、お伺いをしたいと思います。
  202. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘のございましたことし一月の総務庁の農業委員会等の運営に関する調査結果に基づく勧告の今後の取り扱いでございますが、ただいま先生の方からお話のございましたように、経営指導あるいは生産調整等の現在の農政の課題への積極的な取り組みに十分ではないんではないかという内容の調査結果になっているわけでございます。全国に農業委員会は約三千余ございますが、今回の総務庁の調査ではそのうち約八十の農業委員会が対象になって調査が行われたわけでございまして、そういう標本数の問題もあろうかと思います。また調査の内容も、農業委員会の果たすべき具体的な役割というものの観点から果たして的確な調査が行われたのかどうかという点についても、我々としては今後さらに総務庁との間で意見のすり合わせを引き続きやっていく必要があるというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、御案内のように農業委員会は、法律に基づきまして、農地法の転用でございますとかその他の権利の移転につきましての的確な意見の具申を行うという本来業務に加えまして、経営指導あるいは生産調整等について幅広い役割を持っている機関でございます。しかしながら、他方では市町村あるいは農協等、地域に同様の機関がございますので、それらの機関との相互連携、役割の分担ということについて十分配慮しながらめり張りのきいた事業運営を行うことが極めて重要ではないかというふうに考えておるわけでございます。今回の勧告を十分そんたくしながら、私ども農業委員会が本来の機能を十分発揮できるように引き続き努力をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  203. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 今のお話に関連しまして、農業委員会の選挙で無競争といいますか無投票といいますか各部落から代表みたいな人が当番みたいに出てきてという面が最近多々ありまして、いわば農家が本当に農業委員というものに対して期待とまた本人も誇りを持って取り組んでいける状況にあるのかどうかというようなことの一つの考えの指標にもなりますが、最近無投票が多くなっておりますか、それとも選挙は激化しておりますか、どうでしょう。その数字等もしも手元にありましたらお知らせいただければありがたい。
  204. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 御指摘のとおり、農業委員会委員の選挙に当たりましては無投票当選の例が少なからず見られるわけでございます。最近それが特にふえたというふうには承知をいたしておりませんけれども、そういう傾向が従来から見られるわけでございます。  これは御承知のように、やはり集落を基盤とした農業者組織でございますので、集落単位などの地域段階であらかじめ事前に候補者の調整を行うという実態が相当そこに絡んでいるのではないかというふうに見ているわけでございます。しかしながら、あくまで前提は公選制による公平な委員の選定ということがベースになって、その上にただいま申し上げたような事前調整が行われているということでございまして、私どもは、公選制自体は決して農業委員会委員の選定に当たりまして意味がないわけではないというふうに考えておるわけでございまして、今後この制度が的確に活用されるように引き続き関係団体とも、ともどもに努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  205. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 礼文島の礼文町では町長さんが立候補者ゼロで大変苦労されて、県庁から候補者を借りてきてやり直し選挙をやったみたいです。これは従来よりとおっしゃいましたが、そうじゃないのですよ。最初のころはこの制度に対する期待が大きくて随分激烈なる運動が展開されて、したがって有能な人材が出てきたようですよ。これは、各町村とも町村会議員の無投票の率よりは農業委員の方が非常に多いのです。これは一番最初に申し上げましたように、いろいろとメリットがあるかしりませんけれども、とにかく将来性のあるものに対しては群がりますから、それの逆の現象となりまして、これが農村の将来があって農村農民の農業に対する関心が非常に深まってきますと農業委員の選挙は激烈になるのですよ。これも一つの指標ですから、きょう数字をということをにわかに言いませんから、これはひとつ数字を追ってこの十年ないし二十年間の推移を見ていただくことは私は非常に意義あることだと思いまして申し上げさせていただきます。  ところで、先ほどもちょっと触れていただきましたけれども、今度法改正によりまして中核農家育成指導あるいは保有合理化促進事業というようなことにつきまして農協、そして協力いただく市町村、あるいはまた民間の団体等に協力していただかなければなりませんね、この協力関係がうまくいくかどうか。特に、こうしたことによりまして農協やその他について事務費の補助というようなことも望まれることと思いますが、そこら辺の消息はどうなっておりますか。
  206. 松山光治

    ○松山政府委員 今回の農用地利用増進法の改正におきましては、これまでの農用地利用増進法市町村計画作成手続というところに重点の置かれた仕組みになってございまして、計画をつくるに至るまでの前段階でございます農地利用調整のプロセスを必ずしも明らかにしておらなかったということがございましたので、しかも、現場の農村では農業委員会なり農協なり、あるいは農地保有合理化法人なり、そういった関係団体がそれぞれ事前の土地利用調整をおやりいただく、そういうことを通じて的確な農地流動化を進めていく、こういう考え方のもとにそれぞれの役割分担を法制度上明らかにすることにいたしたわけでございます。  先生から御指摘ございましたように、そういった各種の団体がそれぞれの役割を十分踏まえていただきまして的確に活動していただく必要があるわけでございますが、同時に、そういう関係団体間の連携がぴしっととれまして進めていくことが非常に重要な点ではなかろうかと思っております。私どもといたしましては、そういう意味では市町村の段階に既に構造政策推進会議といった関係団体機関から成る組織も設けて話し合いの場も設けております。そういったところにおきます話し合いを通じて各関係機関が一致協力した活動が行われるように、法律でも関係団体がお互いに連携しながら努力するのだという訓示規定を置いたわけでございますが、そういう訓示規定の実が上がるように必要な指導を行ってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  207. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ひとつその点のところの連絡調整よろしきを得ていただきたいと思います。  さて、もう一つの農地法の特例法についてでありますが、特定農地の貸し付けということの主体が地方公共団体農協にだけ限定されたということはどういう思想でありましょうか。むしろ農民組合など農家の自主的な結合体などに多くの期待を持つべきじゃないかと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  208. 松山光治

    ○松山政府委員 今回の特定農地の貸し付け特例法を検討するに当たりまして工夫を要したと申しますか非常に議論をいたしました点は、御案内のように現在の農地法は耕作主義と申しましょうかきちっとした農業をやる、そういう農業に精進する人によって農地を利用されるのが一番好ましいのだ、こういう考え方で全体が構成されておるわけでございます。  今回の特例措置は、農業者以外の方に農地利用をすることを認めていく、そういう意味での特例措置を設けようとするわけでございますから、扱いいかんによりましては脱法的なと申しましょうか投機的な土地取得に道を開くことにもなりかねない、そういう懸念もあったわけでございます。したがいまして、私どもいろいろと検討いたしました結果、公的主体が、そういう意味での地方公共団体農協でございますけれども、間に入ることを通じて農地法の基本的な物の考え方との調和を図っていこう、こういうふうに考えたというのが第一でございます。  もう一つは、周辺の農地の利用との間の調和その他を考えましたときに、その貸し付けられました農地につきまして、荒らしていないとか、ちゃんとした管理が行われている、栽培が行われているといったような維持管理の問題が一つあるわけでございまして、そういうことを責任を持ってやっていただく主体ということに相なりますれば、やはり地方公共団体なり農協といったような方が適当ではなかろうか、このように考えたというふうにお答え申し上げておきたいと思います。
  209. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 わかりました。  そうして、先ほどもお話がありましたが、遊休農地の活国策ということでいろいろと苦労をされるわけであります。これは、考えようによっては農地転用のいろいろの細かい拘束、つまり制限を大胆に緩和していった方が効果的でないかと思うのです。  これに関して私は、県会におりまするころ、二十年も前からいろいろと手がけたことがありますが、転用手続というのは非常に煩瑣で、例えば、御自分農地に御自分でおじいちゃん、おばあちゃんの離れをつくるなんというときにも、全部で二カ月もかかる難しい手続が必要なんです。これはいけないと私は思うのです。特に、農業のために使う建物でも、建物を建てるならば、建造物は、これは農地でなくなるみたいなことはいけないと私は思うのです。農業というものの定義が非常に変わってきているわけですから。建物を建てることも農業の一環でありますから。いわば、これは町の農業委員会に一切任せて、町の農業委員会がいいと言うならば——実態を知っているのが町村の農業委員会ですから。これが県の農業会議、ましてや農林大臣は御無理であります、田舎の末端の状況を一々わかっていらっしゃるはずがないわけでありますから、一切合財農地転用の計画策定ないしは許認可ということは市町村農業委員会におろしてよろしい、こういうふうに私は思うのでありますが、そういう大きな発想の転換をなさるというお考えは、大臣ありませんか。
  210. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 私も、市町村長、あるいは農業委員会長をずっと経験をしてまいりました。したがって、今委員のおっしゃるような、末端の農業委員会にある程度の自主性を持たせようということは、最近相当緩和してきたわけであります。しかし、大きな農地というものをそれぞれの農業委員会で全部認めるということについては、今後の農地の利用、あるいはまた将来の活性化、高度利用、その他農業構造政策推進ということで国全体から見ましてもこれはちょっと不適当だ、こういうふうに思っております。  特に、都市近郊の農業委員会ではいろいろ不祥事件が起こっております。今のような制約がある中でも不祥事件を起こしておるところがあります。したがって私は、現時点では相当大幅に農業委員会に権限が持たされて、緩められて、末端の農業委員会あるいは県の方に相当権限移譲がなされておりますので、現在程度がいいのじゃないか、こういうように私は承知をいたしております。
  211. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 実は大臣、今からもう二十何年も前と思いますけれども、福島県で県庁に西庁舎を一つ建てたのです。ところがそのとき、総務部長が我々増改築委員に会を招集して言うことには、大臣の認可がなかなか事務的にできないものだから大臣の許可が来ないうちに地鎮祭をやりたいけれどもいかがなものだろうか、こうおっしゃるわけです。そこで私はそれはおれはまことに賛成だけれども反対だ、というのは、あなたは田舎のおじいちゃんが御自分の田んぼに百坪、二百坪というものを転用して建てたいというときに厳しくこれを、許可が来ないうちにやったものは原状に返せなどと言っているのではないか、自分は下々の者に厳しく県知事の権限であるのにと言っているのに、自分が大臣の権限をいわば事前に見越して着工することはけしからぬ、あなたの持っている権限を市町村に移譲するならばあなたのきょうの提案を評価してもよろしい、こう言ったのです。  ところで、今世の中は変わりまして、例えば三反歩平均か五反歩平均か知りませんけれども農家所有拡大しようと今おっしゃっているのでしょう。そうならば、これは全部拡大ですよ。ですから、権限の単位がありますね、一千平米まではどこというようなことがあります。これも大幅に拡大をされて、大臣さっきおっしゃったように、末端市町村の権限に大きく移譲されて、大臣の持っていらっしゃる権限のごときはほとんどすべてこれが県に移譲されるということの方がよろしいのではないですか、もう一回。
  212. 堀之内久男

    ○堀之内国務大臣 去る三月三十日に大幅な農地規制の緩和というので事務次官通達で各県に今通達を出しておるわけです。したがって、今回の通達は、今日までの中で最大の大幅な農地法の改正だと私どもは評価をいたしております。したがって、先般三十日に通達を出しまして知事の方に大体権限を移譲するわけでありますが、相当な大幅緩和をいたしましたので、私は今回の去る三月三十日の通達で今委員の御指摘のような問題は十分解決ができる、こういうふうに承知をいたしております。
  213. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 いろいろと議論いたしましたが、農業が大きな曲がり角、とっくに曲がってしまってまた戻っていったみたいな、ぐるぐる回りしているのですが、大変な時期でありますから、どうかひとつ、全国の農家が大臣の大胆な施策によって将来に夢を持てるように今後とも御研さんをちょうだいしたいと思います。希望を申し上げまして質問を終わらせていただきます。  大臣以下皆さん御苦労さまです。委員長、最後の質問の時間を与えていただきましてありがとうございました。委員の皆さんにも大変御協力、御迷惑をおかけしました。ありがとうございます。
  214. 杉浦正健

    ○杉浦委員長代理 次回は、明十五日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十八分散会