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1989-05-24 第114回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年五月二十四日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 堀之内久男君    理事 高村 正彦君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 柳沢 伯夫君 理事 安井 吉典君    理事 水谷  弘君 理事 滝沢 幸助君       阿部 文男君    逢沢 一郎君       石破  茂君    衛藤征士郎君       大石 千八君    川崎 二郎君       北口  博君    小坂善太郎君       田邉 國男君    武部  勤君       玉沢徳一郎君    中島  衛君       二田 孝治君   三ッ林弥太郎君       宮里 松正君    谷津 義男君       串原 義直君    沢藤礼次郎君       田口 健二君    田中 恒利君       竹内  猛君    前島 秀行君       武田 一夫君    玉城 栄一君       藤原 房雄君    吉浦 忠治君       川端 達夫君    藤田 スミ君       山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  羽田  孜君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産省食品         流通局長    渡辺  武君         食糧庁長官   甕   滋君         林野庁長官   松田  堯君  委員外出席者         農林水産省経済         局統計情報部長 海野 研一君         通商産業省立地         公害局立地指導         課長      和田 正武君         労働省職業安定         局特別雇用対策         課長      九重 達夫君         自治大臣官房企         画課長     石橋 忠雄君         自治省行政局振         興課長     岩崎 忠夫君         参  考  人         (財団法人食品         産業センター理         事長)     池田 正範君         参  考  人         (日本園芸農業         協同組合連合会         専務理事)   遠藤  肇君         参  考  人         (全日本食品労         働組合連合会中         央執行委員長) 田村 憲一君         農林水産委員会         調査室長    青木 敏也君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十四日  辞任         補欠選任   近藤 元次君     逢沢 一郎君   杉浦 正健君     宮里 松正君   石橋 大吉君     田口 健二君   永末 英一君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     近藤 元次君   宮里 松正君     杉浦 正健君   田口 健二君     石橋 大吉君   川端 達夫君     永末 英一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  特定農産加工業経営改善臨時措置法案内閣提  出第二七号)  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ――――◇―――――
  2. 堀之内久男

    堀之内委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定農産加工業経営改善臨時措置法案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本案審査のため、参考人として財団法人食品産業センター理事長池田正範君、日本園芸農業協同組合連合会専務理事遠藤肇君、全日本食品労働組合連合会中央執行委員長田村憲一君、以上三名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。池田参考人遠藤参考人田村参考人の順に、お一人十分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、池田参考人にお願いいたします。
  3. 池田正範

    池田参考人 私は財団法人食品産業センター理事長をいたしております池田でございます。かねてから私ども食品産業振興発展につきましていろいろ格別の御指導と御配慮をいただいておりまして、厚くお礼を申し上げます。  まず、我が国食品製造業状況について申し上げたいと存じますが、我が国食品製造業生産額は約三十兆円でございまして、全製造業の約一〇%強に当たるわけでございます。俗に一割産業などということをよく言うわけでございますが、自動車産業とか電機産業に続きまして三番目か四番目くらいの大きさに当たる産業になっております。また、国内で供給されております食用農産物の約三割がこの食品産業需要先ということになるわけでございます。雇用の面におきましても、百二十万人というふうなことでございまして、これもまた全製造業の約一割に当たるわけでございまして、雇用の受け口といたしましてもかなり大きな分野を形成しているわけでございます。  また、食品製造業では中小企業の占める割合が非常に高いのがこの業界一つの特徴でございまして、現在ほぼ五五%前後のシェアを占めておるわけでございます。平均の製造業がほぼ三五、六%と記憶いたしておりますから、それからいたしましても中小企業の占めるシェアが非常に高い分野であるということが言えようかと思うわけでございます。  また、特に問題になりますのは、工業立地が非常にしにくいような地域におきましては、地域経 済の中で非常に重要な地位を占めている分野であるということでございます。特に、今回自由化対象になっておりますかんきつ果汁とかあるいは非かんきつ果汁、でん粉といったものは、いずれの業種もかなり他の工業立地が難しい地域におきまして原料供給を通じて地域農業との間に非常に強い結びつきを持っている分野であるということが言えるわけでございまして、農業生産の面からも自由化というものに大きな影響を受けて二重のダメージになる可能性もあるということが言えようかと思うわけでございます。  最近の食品製造業をめぐります特徴的な状況を見ますと、最近ちょっと円安に振れておりますけれども、総体的に円高というふうな状況のもとで食料品輸入が非常にふえてきたということでございまして、御案内のように一九八八年に三百九億ドルというような極めて高い水準に達しておるわけでございます。しかもここ一両年の間にこのふえ方が非常に急激であるということでございまして、特に昨年の三百九億ドルというのは対前年で三割以上の増加になっておりますし、また特に加工食品等の高付加価値のものがこの中身としては非常にふえておりまして、たしか四五、六%になっておるのではないかと思うわけでございます。ところが量的にはふえ方はたった一一%ぐらいでございますから、したがってこの加工食品を含む外からの圧力というものが非常にふえてきているということが言えようかと思うわけでございます。  したがって、国内食品製造業競争力というものは最近に至りまして極端に強い圧迫感のもとに置かれているということが言えようかと思うわでございます。したがいまして、国内製造業といたしましても座して死するわけにはまいりませんので、やはり海外への生産の委託あるいは海外立地といったような形の緊急方途を講じまして企業存立を図るというふうなことがだんだん出てまいっておりまして、俗に言う空洞化という問題についてはまだしばらく時間があるにいたしましても、その方向に向かって動きつつあることは間違いのないところだと思うわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、自由化に伴います農産加工業に対しますところの金融税制上の措置、これをぜひともひとつ早急にお手当てをいただきまして、業界存立打開点にさせていただきたいと考えておるわけでございます。特に最近食品産業のみに対する立法はほとんど行われたことがございませんけれども、今回提案のこの法律は食品産業対策立法として初めてその分野に光を当てられたという意味で、私どもとしては非常に御期待を申し上げている次第でございます。  また、自由化実施時期につきましても、御案内のようにプロセスチーズが四月、トマト加工品が七月というふうにもう目の先に来ております。既に片一方はもう踏み切っておるわけでございますので、したがって早急な手当てが必要であるということでございます。  最後に、本案に対し、四つばかりの点について意見要望を申し上げておきたいと存じます。  第一点は、本法案における金融税制措置は、既存の業種の横断的な諸制度が張りめぐらされております中で特に食品産業向けに打ち出されました画期的な制度というふうに評価をいたしておりますが、食品産業は食生活の多様化高度化に伴いまして今後ますます重要性が高まるであろうということでございますので、本制度対策期間を五カ年と限定することでなくて、もう少し長く御面倒を見ていただくことができないものであろうかということが第一点でございます。  第二は、金融措置実効を期するために――この制度金融というのはえてして動き出しますというと手続が非常に煩雑でございまして、特にそういうことになれません中小企業がどうしてもこれに食いつきにくいところが出てまいります。したがって、何とかひとつ簡素な手続による貸し付け迅速化ということにお力を注いでいただければありがたいと思う次第でございます。  三番目は、金融税制措置だけでなくて、農業生産性向上ということが実は原材料に依存いたします食品産業にとっては大問題でございまして、何とかひとつ国内農業生産コストを低減させて、加工適性品種というものを積極的に開発するという対応策がとられてほしい。先端技術が必要ならばその中に組み込まれて技術水準向上に大いにひとつ力を尽くしていただきたい。こういう面から先生方の御支援をぜひお願いいたしたいと思う次第でございます。  最後に、内外の価格差が非常に大きい、例えば空き缶を含めましていろいろな関連資材がございます。価格差が大きいものは、農産物だけでなくて、実は農産物以外の工業生産物の中にも関連資材で非常に価格差の大きいものがあります。これは一つには製造コストの問題もありましょうし、流通問題もあろうかと思います。業界独自の立場で実はいろいろと努力はいたしておりますが、なかなか守られないのが現状でございます。何とかひとつお力添えをいただきまして、この生産コストを下げるということが、同時に日本農業食品産業を両立させる一つの大きなかなめになっておりますので、何とぞひとつよろしく御指導をいただきたいと思う次第でございます。  以上の点を特に御要望申し上げまして、意見を終わりたいと存じます。ありがとうございました。(拍手
  4. 堀之内久男

    堀之内委員長 ありがとうございました。  次に、遠藤参考人にお願いいたします。
  5. 遠藤肇

    遠藤参考人 ただいま委員長より御指名を賜りました日本園芸農業協同組連合会日園連専務理事を務めさせていただいております遠藤でございます。  昨年の六月、続きまして七月に、日米政府間で合意されました牛肉オレンジ及びオレンジ果汁並びに十二品目関連市場開放措置に伴う事後のきめ細かな国内対策実施につきまして諸先生方格別の御尽力を賜りましたこと、さらに加えましてこの国内対策の重要な一環として位置づけられます関連加工業体質強化を図るための措置として、このたび政府より提出されました加工法案についての国会審議に当たりまして、農業生産者立場から本日こうして参考人として直接意見を申し述べる機会まで与えていただきましたことにつきまして、まずもって衷心よりお礼を申し上げる次第でございます。  御案内のように、去る昭和六十年九月以降の急激かつ大幅な円高の進行と、それに加えて一連の農産物市場開放政策が進められてきた状況のもとで、今日我が国農業はかつて経験したことのないほど厳しい国際競争の試練に立たされております。このことは、国内食糧供給システムの中で、農業と並んで車の両輪をなす食品工業にも当てはまることでございまして、輸入製品との競合が一段と激化する状況に置かれております。私ども農業サイドから見まして最も憂慮されますことは、食品工業がこうした事態に対応した企業戦略として、原料調達面輸入原料への代替を進め、あるいは製品自体生産拠点海外に移すことであり、現にそうした動きが加速化する傾向にあります。  申すまでもなく食品工業、中でも生産額から見ましてその主力をなす加工型業種は、国内農業にとって欠かすことのできない重要な市場を形成しております。同時に、これら農産加工業は、地域雇用所得確保の面で極めて重要な役割を果たすいわば地域密着型の産業としての特質を持っております。それだけに、食品企業海外シフトは、国内農業にとって、市場縮小に通ずるのみならず、地域経済存立にも重大な影響を及ぼすものと理解せねばなりません。  以上のような認識に立ちますとき、先般の日米協議により自由化等の決定がなされました品目加工部門が、今後輸入品との直接の競合が一段と激しくなる状況の中で、あくまでも国産原料基盤に置いて存立していくためには、その体質強化対策を待ったなしに急がなければなりません。そうしないと、国内農業は重要な販路を失い、ひ いては生産縮小を招かざるを得ないのであります。  その意味で、これら自由化等関連品目対象に特定した今回の加工法案は、地域農業生産を守ることを原点に据えており、地域農業の再生産に不可欠の役割を果たす農産加工業体質強化長期低利融資税制優遇措置を通じて支援することを内容としたものと理解しております。  また、金融税制がセットされていること、さらに同じ設備資金につきまして使途を仕分けして、財投資金系統資金のそれぞれの特性を生かした役割分担がなされていることは、制度の仕組みといたしましても画期的なことと評価いたしております。私は、本法案が速やかに成立することを最初に強く要望いたしたいと思います。  そこで、本法案対象とする九業種のうち、私が現在比較的関係を持っております果汁製造業につきまして少し立ち入って言及させていただきます。  もともと日本果樹農業生食用販売を目的とした生産体系をとっておりまして、芋あるいはトマト等と違いまして、加工専用は極めて例外的であります。それでも果実全体で見ますと、出荷量ベースで二割強が加工向けに販売されており、その主体は果汁原料であります。特にミカンリンゴにおいては、昭和六十二年産の実績で、果汁原料仕向けがそれぞれ二七%、二四%と高い比率を示しております。ミカンあるいはリンゴ生産者にとって、果汁加工への原料出荷は、主たる所得源であります生食用販売市場価格を維持安定させるために、量あるいは品質を調整する手段となっておるのであります。受け手側果汁加工工場は、そのほとんどが産地に立地し、地域経済を支える地場産業として重要な役割を果たしております。  御案内のように、オレンジ果汁平成四年度より自由化されますが、それまでの移行期間増枠も極めて大幅なものであります。ミカン果汁オレンジ果汁コスト品質両面で互角に競争していくことは、ミカン果汁加工業現状のままでは非常に難しいものと判断せざるを得ないわけであります。  いずれにいたしましても、果汁加工業生食用果実価格安定装置として欠かせない機能を今後とも果たしていくためには、外国産果汁との競争力を持ち得るよう体質強化を図ることがぜひとも必要であります。  そのため果汁加工業が早急に対応せなければならない当面の課題として、一つ国産果汁の高品質化であります。幸い果汁製品品質向上につきましては、従来の濃縮還元にかわる自然の風味を生かした凍結濃縮技術膜濃縮技術といった新しい濃縮技術、また濃縮過程を経ないで、搾りたての果汁をパックし、チルド流通をさせまして、消費者に素早く届けるストレート果汁製造技術も既に開発普及されている現状であります。これら高品質果汁製造技術及びそれに必要な設備導入を一日も早く行い、外国産果汁に負けない国産果汁の高品質化を急ぐことが必要と考えられます。  もう一つ課題は、果汁工場の施設の近代化であります。  農協系果汁工場の多くは昭和四十年代の後半に緊急整備されたものがほとんどでございまして、既に十数年も経過しており、当時の新鋭設備も現在の技術水準から見ますと陳腐化してきているものも少なくありません。特に最近の、目覚ましい進歩を遂げておる電子制御システムを取り入れて工場近代化を図りますことは、我が国のすぐれた先端技術農産加工業への応用であり、コストの低減と品質の管理、向上に大きく寄与することが期待できるのであります。これら果汁工場近代化を進めるために、一刻も早く設備導入に対する特別の融資制度並びに減税措置が講ぜられるよう強く要望をいたします。  果汁以外の対象業種でありますトマト、カンショ、バレイショ、その他自由化関連加工業者につきましても同様に高品質化なり工場設備近代化が不可欠でありますので、強力な支援措置を講じていただきたいと思います。  このような農産加工業近代化等に対する支援措置としての融資については、元年度融資枠が三百億円程度と承知しておりますが、本融資制度が本来の趣旨にのっとり、対象業種業界体質改善、ひいては経営基盤強化に有効に活用されるよう所要の資金枠確保を図られるとともに、特に都道府県において利子助成予算化が確実に行われますよう、国の指導面を通じての御配慮をお願いいたしたいと思います。また、融資の前提となります経営改善措置に関する計画の作成、承認手続につきましても、時間を要しないよう加工業者経営の実情に即した迅速な貸し付けが行われることなど、本資金制度の円滑な運用を期待しております。  もう一つ念押し意味でつけ加えさせていただきたいことは、経営改善計画承認に当たりましては、土台となる地域農業活性化につながるよう両者の関連づけについて十分に配慮され、生産農家の事情なり意見が反映されますよう国及び都道府県指導体制の整備に努められ、計画の達成のために実効性のある指導が行き届きますよう期待しております。  以上、本制度運用面での幾つかの要望を申し上げました。申すまでもなく、国際化に対応した今後の農政の展開におきまして、食品産業政策充実強化が極めて重要な課題として提起されております。今回の加工法案はまさに試金石ではないかと考えております。この制度が十二分に政策効果を発揮するためには、私ども系統農協組織自体に負わされた責任も極めて重いものがあると受けとめております。このことを最後に強調させていただきまして、私の参考人としての意見開陳を終わります。ありがとうございました。(拍手
  6. 堀之内久男

    堀之内委員長 ありがとうございました。  次に、田村参考人にお願いいたします。
  7. 田村憲一

    田村参考人 委員長、ありがとうございます。  私は、全日本食品労働組合連合会中央執行委員長田村であります。  いつも先生方には食品産業振興につきまして大変御尽力をいただいており、労働組合立場からも敬意を表し、感謝を申し上げる次第であります。  私の属しております全日本食品労働組合連合会食品企業労働組合単位組織といたしました連合体で、食品関連企業種をカバーしており、現在百三十二組合が加盟しております。その構成組合員は約六万人であります。食品産業で働いております労働者並び労働組合といたしましては、本法案につきまして賛成の立場意見を申し上げます。  我が国食品製造業には約百子万人の人が働いており、安全で高品質食品を適正な価格生産、販売するために日夜努力いたしております。私たちは、食品産業が健全に発展し、企業経営が順調に推移することを通じて雇用の安定と労働条件向上、福祉の充実を実現できるとの認識に立つとともに、労働組合といたしましても生産性向上製品品質向上等に努め、地域農業とも相互に協力し合って地域経済の重要な担い手としての役割を果たしてぎているところであります。  最近の食品産業を取り巻く状況を見ますと、全産業的には内需拡大を中心といたしまして景気は引き続き拡大局面にあり、食品産業消費景気が波及してきていますが、大部分の中小企業により担われています農産加工業は、依然として経営は不安定な状況下にあります。特に憂慮されますことは、限られた市場の中での競争激化によって、企業体力低下と格差が拡大していることであります。加えて、昨今、円高の定着により、輸入加工食品が猛烈な勢いで急増していることに危機感が高まっています。とのまま放置すれば産業雇用空洞化が顕在化するのではないかと非常に心配しているところであります。  今春闘における労使交渉におきましてもこの問題が大きな焦点になり、先行き不透明な企業環境のもとでは、賃上げ率では世間相場を〇・五%程 度下回り四%台後半という結果になっているわけで、製造業の中では残念ながら最も低水準で我慢せざるを得ないというような結果に終わった次第であります。今後我が国国際化の波の中で各国とも協調していかなければならない基本的な立場については、私たちも十分認識しているところであり、厳しい国際情勢のもとで懸命な外交交渉の結果、牛肉かんきつ、十二品目自由化等を行うこととなったわけでありますが、その結果、農産加工業の存在する地域におきましては、従業員雇用不安定化の問題とともに、地域労働需給の一時的なバランスの欠如等により、地域経済弱体化等事態が懸念されます。一例を挙げれば、北海道におきましては工業製品出荷額の三九%は食品産業が占めており、従業員数でも三五%を占めております。食品産業のウエートの高い地域におきましては特に深刻な事態が生じかねません。  このような中にあって、今回の農産物自由化は過去に例を見ない規模のものであり、事態の推移によっては企業自助努力の限界を超える大きな打撃を受けるのではないかと心配されるところであります。我々といたしましても、雇用と職場を守る立場からも重要な関心を持って情勢を見守ってきたわけであります。本法案による対策は、自由化影響をこうむる特定農産加工業に対して最小限必要な措置だと理解しておりますので、今国会で早期に法案が成立し、対策効果が発揮できますようお願いするものであります。  このような観点から、本法は今回の自由化に対する最小限の措置であると認識しておりますので、生産縮小価格競争力低下等事態により経営活動困難性が予想される特定農産加工業に対しては、政府支援措置として金融税制面優遇措置を具体化して制度のPRと指導に御尽力いただき、農産加工業者に対する円滑かつ機動的な実施をお願い申し上げる次第であります。  また、私は食品産業に働く労働者の代表といたしまして、次の点につき特に要望いたします。  一つには、今回の自由化が百万人を超す食品製造業の労働者とその関係者の雇用不安定化につながらないよう関係機関と協力し、雇用動向の把握に努めるとともに、事業の転換等により雇用面の不測事態が生じた場合に当たっては機動的な対応を図ることであります。私ども食品産業が健全に発展することを願いながら、特に雇用労働条件の維持向上を図っていくためには食品産業政策の必要性を痛感しているところでありますが、そういう面からも今回の本法案につきましては雇用に対する気配りというものもあるというように理解しているところであります。  二つには、我が国食品製造業が高い技術と安全で品質のすぐれた食料品を安定的に生産し、高度化多様化する国民のニーズにこたえていくためには、生産性向上近代化の推進、事業の転換等の対策はますます重要性を増してきているところであります。国、都道府県等が協力し、食品製造業における技術開発の推進、バイオテクノロジーの合理的な導入農業分野との連携強化等により国際競争力に耐え得る食品製造業の育成を図ることが緊急の課題であると思います。  三つには、食糧の安定供給と地域農業活性化に向けては、生産、加工、流通を包括した総合的な食糧政策が必要であり、自給体制と輸入政策に一元的つながりのある整合性のとれた施策を講じていただきたいと考えます。そのためにも農業近代化を一層推進し、高品質価格面でも国際動向に一定限対応できる体制を築いていくことであります。  以上、本法案につきまして意見要望を述べさせていただきましたが、今後ともさらに充実した食品産業対策を推進賜りますようお願い申し上げまして意見を終わります。ありがとうございました。(拍手
  8. 堀之内久男

    堀之内委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 堀之内久男

    堀之内委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷津義男君。
  10. 谷津義男

    ○谷津委員 お三方ともこの法案に対する期待が非常に高いということを聞きまして、私ども一日も早くこれを通さなければいけないなというふうに今深く感じたところでございます。  そこで、参考人の方々にお聞きしたいのですが、まず池田参考人に時間がありませんから端的にお聞きをいたします。  農産加工業振興を図ることが大事だというふうなお話をおっしゃっておりましたが、問題点として施策の重点をどこに置くかということが非常に大きな問題だろうと思うのですね。そこで率直にお聞きをしたいのですけれども、この法案を含めて施策の重点、これはどういうふうにお考えになっているか、どの辺に置かれたら一番いいのか。その辺をお聞きいたしたいと思います。
  11. 池田正範

    池田参考人 御案内のように、日本食品加工業で一番大きい問題は国産農産物との原料面での縁が最近とみに薄くなってきているということです。それはなぜかと申しますと、幾つかの原因はありますが、一番大きな原因は価格、もう一つの原因は質でございます。  加工業の原料として使います農産物は、当然天然のものですから物によってみんな品質が違ってくることはもちろんなんですけれども日本農産物の場合には個別経営経営規模が小さいということもございまして均質のものが非常に得にくい、それがやはり原料として非常に適格性を持ちにくいという弱点がございます。  それからもう一つ経営が小さいためにどうしてもコストが高くかかる。そういうことから外国の原料用農産物との間の競争関係に立たされますと非常に競争力が弱い。しかし、御案内のように食品というものは現地における結びつきを非常に強く持つ産業でございますから、したがってどこの国でも大体原料農産物国内で主なものを賄うというのは先進国におきましても通常の常識になっております。しかし、日本の場合にはそれがだんだん薄くなってきて、先ほど申し上げましたけれども昭和五十五年の連関表で約三〇%、食用農産物との関連が食品加工業との間でございましたけれども、六十年の試算によりますと一割くらいまた上がっております。したがって国内農産物との間の結びつきというのは決して薄くはないのですけれども海外農産物によって置きかえられる可能性が非常に強くなってきておる。ですから今申し上げましたように一番大きな門出点は、この問題を国産農産物としてどう解決するか、これが国内食品産業にとっては一番大きな問題。  したがって、農産物価格が高いということの要素の中には幾つか制度の介在によってそういう形が行われている場合があります。それからもう一つは、もう少し新技術、特に品種改良その他について積極的に民間企業がタッチでき得る体制をとるという必要性もあるというふうなこともございますので、それら制度面での御配慮をいただきますればもう少しく今よりは前向きの対応策企業側にとってもとれるのではないかと考えております。
  12. 谷津義男

    ○谷津委員 池田参考人にもう一度お聞きしたいのですが、今回の法案では九業種、全体では三十兆弱の生産の中で九業種で一兆強ですね、そういうものが対象になるわけですけれども、その中でもいろいろ条件が異なるものがあると思うのです。この対応もまたいろいろあるだろうというふうに思うのですが、こういう九業種の中で最も考えなければならないものは何でありますか。先ほどからお話を伺っておったのですが、その辺をちょっと指摘していただければありがたいと思います。
  13. 池田正範

    池田参考人 今回の九業種の中でやはり一番大 きい問題点は、言葉はちょっと適切を欠くかもしれませんけれども、先進圏でない地域産業に非常に大きい影響を持つ。したがって、御案内のように都道府県別に主要な産業生産額の順位を調べたものがありますけれども食品産業生産額でその県の一位から三位までのウエートを持つもの、それが約二十県ございますが、その二十県の中でほとんど大部分が北海道とか鹿児島あるいは裏日本というふうなところでございます。したがって、これらの県の業種というものが実は今回の対象業極との間に非常に重なりが大きい。ですから、その県における食品産業とか農業問題だけでなくてその地域における雇用問題全体、産業構造全体に非常に大きい影響を及ぼすというところに大きな問題があるというふうに考えております。
  14. 谷津義男

    ○谷津委員 次に、遠藤参考人にお聞きしたいわけです。  遠藤参考人生産者の立場でもあるということなんですが、先ほどのお話の中で、外国果汁と互角に競争し得る体質強化を図らなければならぬ、それから国産果汁の高品質化、これも大事だ、それから果汁工業の近代化、これも図っていかなければならぬ、その支援策としての融資とかあるいは減税措置等々要望があったわけでありますけれども果汁等の農産加工業地域産業とも密着している。これは非常に大事な密着型の産業です。しかも中小企業が多いということですね。そういうことを考え合わせますと、地場産業としての加工業を育てる必要があるということですね。言うなれば産地との運命共同体にあるというふうに私は考えたわけであります。地方の中小企業者に不利にならないような対応が必要ではなかろうかなと、お話を聞いておって私は思ったわけでありますが、生産者の立場から、この辺についてお考えをもう少し突っ込んでお聞かせいただきたいと思います。
  15. 遠藤肇

    遠藤参考人 私、先ほど、先生御指摘のように果汁部門を中心に説明をさせていただきました。  ミカン果汁を例に申し上げますと、搾汁部門におきましては、九五%強が農協の直営なり関連会社として運営されておるというのが実態でございます。したがいまして、果汁加工業地域の中で位置づけられる役割というのは、即その地域における農協自体の事業展開とやはり密接に関連を持っておるわけでございまして、原料供給と、それからそれの受け側となります果汁加工というものがまさに一体的な関係に立つということでございます。したがいまして、農協系統自体の果汁工場が高品質化なりあるいはまたコスト低減をしていくということは、じかに組合員自体の生活につながる課題でございますので、この問題については、地域経済の核となります農業部門を守るためにはやはり避けて通れない課題である、こういうふうに理解しております。
  16. 谷津義男

    ○谷津委員 確かに、九五%が農協の直営である、ですから農協の事業展開と一体だ、農協に加盟している組合員もまた一体であるということですね。これは非常に大切なことでありますけれども、問題は、こういった農協あるいはまたほかの産業との競合の面というものも出てくると思うのですけれども、そういう中で、農協が非常に今努力をしましていろいろな面で対応策を考えている。その農協そのものがこの自由化の問題についていろいろな批判もあるというようなことも聞いておるわけでありますけれども遠藤参考人としてはその辺のところはどんなふうにお考えですか、お聞かせいただきたいと思います。
  17. 遠藤肇

    遠藤参考人 大変難しい問題でございますけれども、昨年六月なり七月に交渉が成立いたしますまでの過程におきましては、やはり国内農業を守るという立場から私どもこの市場開放には反対をする立場を通してまいりました。しかし、政府間におきまして事がここに決定されました以上は、やはりそれに伴う痛みを最小限度にとどめるために、生産者みずからの自主努力をどうしてもやはり基本に置かなければならない、そして、自主努力が実を結ぶような環境条件というものを政策の支援に期待をする、そういうスタンスで、昨年の農協大会におきまして決議いたしました二十一世紀の農協の基本戦略も組み立てられておるわけでございます。
  18. 谷津義男

    ○谷津委員 私たち自民党も、この件につきましてはみんな全力を挙げて頑張っておるところでございますので、これは気持ちを一つにしましてこれからも一緒に頑張っていきたいと思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  次に、田村参考人に聞きたいと思います。  田村参考人は、働く者、従業員立場からいろいろな御意見を出していただきまして、私も感銘深く聞いておったのですが、ちょっと別な面から、従業員立場からちょっとお聞きしたいと思っています。  それは、国産の農産物の消費拡大を図るというのは、地域における食品加工を強化していく、いわゆる推進していく必要があるというふうに考えるわけです。そして、食品工場に働く田村さんとしては、そういう立場から見て、何かこういうふうなことをやってみたらどうかというふうな考えるべきものがあるならば、そういった面で御意見を聞かせていただきたいと思います。
  19. 田村憲一

    田村参考人 食品産業と農畜産業は車の両輪だというように言われておりますし、私どもも、地域農業と連携し協力し合って食品産業存立基盤を守っていくということを大切にしておりますけれども、問題は原料の調達方法、特に価格の問題がいろいろ指摘されているわけであります。  私たちも、地域農業が健全に発展していくためにはどういうような方策があるのか、あるいはアイデアがあるのか、勉強はしているわけでありますけれども一つの方法として、例えば最近は消費者ニーズは非常に多様化、個性化しているわけでありますから、供給する側もそれに対応して個性化、多様化していかなければならないというように思うわけであります。画一的な定食コースだけではなかなかうまくいかないだろうというように思うわけでありまして、そのためには国としてそういう地域の個性化、多様化をフォローするような体制をとっていただきたいし、環境づくりをしていただきたいなというように思っているわけです。特に、技術や経営あるいは市場の動向等に関する情報ネットワークの基盤整備、そういうようなところに今後力を入れていただきたいな。そういうことが、市場に対応していく、食品産業ともさらに協力関係が深まっていくということにもつながるのではないかなというように思います。
  20. 谷津義男

    ○谷津委員 田村参考人に再びお聞きしたいのですけれども、先ほどお話しの中で、産業空洞化が起こって、雇用の不安定等も非常に心配だというお話がありました。また一方では、高度な技術も持っているんだよというふうなお話もありました。そういう中で農業近代化を図りながら高品質のものを確保していく必要があるんだというふうなお話もございました。  そこでお聞きしたいのです。これは端的にお聞きをするのですけれども、高品質な原料が安定的に供給されるということができれば、価格差外国製品と多少あっても外国製品には負けない競争力がつけられるとお思いですか、どうですか。その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  21. 田村憲一

    田村参考人 価格差程度にもよりますが、高品質で安全な原料が確保されるということであれば、食品産業も十分それを利用して国際競争力に負けない体制をとっていけるというように確信しております。
  22. 谷津義男

    ○谷津委員 時間がありませんので、もう一点だけ。  雇用問題で大変御心配なされておりましたけれども、今提出されているこの法案の中で、田村参考人が見る限りでは、これは安心できるか、それとももっと何か考えてほしいという面があったら一言答弁していただきたいと思います。
  23. 田村憲一

    田村参考人 今日まで農政はあっても食品産業に対する施策は十分でなかったというような御批判もあるわけですが、今回食品産業を視点に置いたこういう法案政府より提出された、そのこと について高く評価はしているわけであります。本法案が成立し、制度が十分活用されることを願っております。
  24. 谷津義男

    ○谷津委員 時間が参りましたので、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。
  25. 堀之内久男

    堀之内委員長 田中恒利君。
  26. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 参考人の皆さん、大変お忙しい中御苦労さんでございました。  時間がありませんので要点だけ御三人の方にずばりあらかじめ一括して質問をいたしますので、随時お答えをいただきたいと思います。  全体の御意見を伺って、この法案については一つの大きな意味があるという認識、そして、加工業、農業それぞれ体質改善をしなければいけない、こういう御指摘があったように承っております。  まず、池田参考人に、これはちょっと多いのかもしれませんが、要点だけ簡単に申し上げます。  一つは、食品産業、加工産業というのは非常に中小零細なという特徴があるのですね。これが今の国際情勢、内外情勢の中で大きく変わらなければいけない。まさに大きな体質変化ですが、そのために業界としては近代化を目指してどういうお考えを持っていらっしゃるか、大きな問題ですがポイントだけひとつお願いします。それから二番目は、研究試験体制というか研究開発ですね。新しい品種、低コスト、いろいろありますが、そういうものについては国も一定の援助をしておるんだと思いますが、これは業界自体で考えなければいけない側面もたくさんあると思いますので、これらについてのお考え。それからもう一つは、特に加工食品については、安全性の問題がこれから非常にやかましくなってまいりますね。この点について、できるものそのものもそうでありますし、表示の問題などもございますが、安全性をどう確保していくかということについての業界立場での皆さんのお考えがありましたら、この三つについて簡単にお願いをいたしたいと思います。  それから、遠藤参考人にもあらかじめ御質問をいたしておきます。  一つは、需要の拡大ですね。特に、今回の対象業種になっておるようなものについての需要の拡大について、特にポイントになるような点がありましたらお示しをいただきたい。二番目は、特に当面の問題になりますこのかんきつジュースなどの問題をめぐって、自由化関連対策として減反を今やっておるわけでありますが、これは百八十万トン体制というものを考えておりますね。この百八十万体制というもので果たして、これはミカンでありますけれども、これに類推して一般の果樹なんかも関係してくるわけでありますが、大丈夫なのかどうかという心配があるのですね。これでいいのかどうかという問題があるわけでありますが、この点について日園連内部でどういうお話をされていらっしゃるか、もしありましたらお示しをいただきたい。  それから、田村参考人にもあわせてお願いしておきます。  一つは、今雇用状況は比較的いい、つまり需要が上回って供給の方が足らない、こういうふうに言われておるのですが、食品産業業界としてはどういうふうに受けとめているのか、これが一つ。それから、今回の対象になっております業種などの特徴は、季節雇い、パート、臨時、こういう不安定な雇用状態というのが非常に多いわけでありますが、こういうものに対して労働組合立場からしてもどういう対応をしたらいいのか、この二つの点を田村参考人に御質問をいたします。  以上、一遍に押しなべて申し上げまして、それぞれ御回答いただきたいと思います。     〔委員長退席、柳沢委員長代理着席〕
  27. 柳沢伯夫

    ○柳沢委員長代理 それでは、順次参考人のお答えをお願い申し上げます。それでは、最初に池田参考人どうぞ。
  28. 池田正範

    池田参考人 それでは、田中先生の御質問に対するお答えを申し上げたいと思います。  今御指摘になりました食品産業の中小零細性でございますが、これは確かに御指摘のとおり、大体販売ベースにおきまして半分以上が中小企業であるという実態がございます。しかし、実はこの食品企業の零細性というものは、本来あるべくして零細性である面もあるわけでございます。特に、現地における原材料に特徴を持たせながら加工して、非常にキャラクターのある品物をつくっていく、これは物が食品でございますので、すべて同じものを大量に生産するということだけでは需要側は満足しないわけでございます。特に最近のように指向性が非常に多角化してまいりますと、単に安いということだけではだめ、同じ品質ということだけでもだめ。特に自分が食べることについて、自分に適合したものであるかどうかを個人個人が自分で選ぶという形が非常に強くなってまいっております。したがって、私どもの調査でも、大企業が従来のように大量画一生産ということでなくて、生産ラインを幾つも分けまして、そして、いわば中小企業の合体した大企業というような形に大きく申しますと転化しつつある面もあるわけでございます。したがって、中小で零細であること、即食品企業にとってマイナスだけであるということにはならないわけでございますけれども、しかし、全般的に見て生産性が劣るということは確かでございます。  したがって、やはりそこで中心になりますのは、新しい技術というもの、情報というものをこれらの中小企業の中に早く入れていく、そして、いわばベンチャービジネスとしての対応ができるような能力を養っていく、つまり人材をこの中に養成していくということが必要であろうと思います。私ども食品産業センターといたしましても、これらの中小企業の方々の中の中堅の方々、あるいは初めてのもう少し若い方々を入れまして、国公立の研究機関等に長期、短期の研修をさせるというふうな形で、これらの技術の核になる人々を養成するということをもう十年来やっておりますけれども、こういうことが一つあろうかと思います。  それからもう一つは、やはり技術の基礎を底上げをするということが必要でございます。特に新しい技術が日進月歩でございますので、したがって、農林省も中心になりまして技術研究組合を続続発生させまして、テーマ別にこの技術研究組合の中にいろいろの組合が入って、そして個々の技術を各会社が全部独占するのではなくて、一定の段階まで底上げをするところまでは、いわばオープンラボラトリーと申しますか、そういう形で技術の水準を分け合えるようなそういう仕組みをつくる、こういうこともやっております。単に企業の側を大きくするということだけではこれからは対応できないのではないかと考えております。  それから、二つ目は研究体制の問題でございますが、御案内のように最近では、後から後から新しい技術が発展をいたしまして、膜の技術だとか、あるいはエクストルージョンの技術だとかサイクロデキストリンだとか、いろいろな問題点が出てきて、それぞれについて関心を持つ企業が合体していろいろと技術を研究いたしております。新しい開発体制もとっておりますが、私ども食品産業センターといたしましても、新技術の開発について中小企業、大企業の別なくそれに関心のあるものにつきまして、毎年六テーマないし十テーマ程度のものを取り上げまして、そして、これに国の補助金を一部投入をいたしまして、実は新しい新技術開発の研究をする手助けをいたしておるわけでございまして、これらを突破口にいたしましていろいろな問題点が食品業界でも出てきておるわけでございます。また同時に、業界自身も自主的にみずからの蓄積の中から新しい新技術開発のための再投資というのを、これは昨年度でも一般の産業界の平均水準を上回って新投資するところまできております。特にバイオテクノロジーを中心とすることは、御案内のように昔から酵素を使いつけてきているという一つの実績が食品業界にございます。したがって、バイオ部門について割合に取っかかりが早かったということもございまして、これら業界が自主的にやる。また、政府 がつくりました生研機構、この生研機構なんかからの融資を受けまして、そして新しいものに取り組むというようなこともやっております。  それから、安全性の問題につきましては、御案内のように最近特に原材料が海外からたくさん入りてきております。したがって、入ってきておりますものの中身がよくわからないということが一つあることはあるのであります。したがって、各会社はそれぞれ自分のところでつくります製品の原材料に供します農産物についてはかなり神経質に分析をいたしておりまして、少なくとも外に出回ってから問題が起こることのないように、これは一遍出ますと会社にとっては致命傷でございますので、非常に神経を使っております。いずれにいたしましても、国際性が非常に出てまいりますと原材料に対する安全性というものについてはやはり共通の尺度というものが必要になってくるだろうと思います。したがって、政府としては早急に国際間で話し合いをして、安全度についての共通の認識を話し合って決めていただくということが大事な時期に来ているのではないかと思うわけでございます。特に、そのための表示制度につきましても、でき得ますれば個々の国の表示方式ではなくて国際的に決められた一つの標準で表示が決められるということでありますと使う方も極めて使いやすい、それからそれをつくった結果についてのギャランティーもしやすい、こういうことになろうかと思うわけでございます。したがって、私どもとしては、特に日本の場合には御案内のように生鮮食品に対する指向性が極めて強いわけでございまして、日本のエンゲル係数の高さの中にはかなりの生鮮指向というものに対する金の支払いも入っているように思うわけでございますが、したがって加工度が低くて生鮮度の高い原材料を使うという日本の特殊の現象のもとで考えますというと、特に安全性確保のための表示問題については厳格を期する必要があるだろうというふうに考えております。ただ、生鮮の場合には非常に物によって格差がございますから、簡単には一律の表示はできないと思いますけれども、そういうふうに考えておる次第でございます。
  29. 遠藤肇

    遠藤参考人 二点御質問を受けましたので、お答え申し上げます。  まず第一に、果実加工品の需要拡大の関係でございます。やはり需要拡大をするためには、私先ほど参考人として意見を申し述べましたように、高品質化ということが何よりも基本である、こういう理解に立ちます。しかしながら、いいものさえつくればこの飽食時代の中で非常に売れるという保証はないわけでございます。いいものをつくり、これをいかに売り込むかという販売促進なり広告宣伝なり、こういうマーケティング戦略の強化というものが絶対に不可欠な私ども課題になっておるわけでございます。これは生果実の場合もそうでございます。また、加工品の場合でもそうでございますけれども、一般の食品企業におきましては、広告宣伝にいたしましても、上場企業におきましては大体売上高の一・四%ぐらいの広告宣伝費を出しておる現状にあるわけでございまして、そういう点におきましても、やはり私ども果実加工品の需要拡大についてはもう少し販促なり広告宣伝の面において手を尽くす必要があるのじゃないかというふうに思っております。  それから第二番目の、減反に伴います百八十万トン体制で大丈夫かということでございます。私ども、現在のミカンの販売状況を見ましても、要するに高糖系の、言ってみればおいしいミカンにつきましてはむしろ不足をしておる、あるいはまたまずいミカンというものは幾らつくりましても幾ら減らしましても価格はつかない、こういうような状態になっておるわけでございます。今回の再編対策におきましても、ともかく優良園地を残すということが基本になっております。したがいまして、百八十万トンの生産の産地割りを見ましても、やはり優良産地がその主力となるという一つ基盤を前提にいたしますならば、この百八十万トン体制のもとで何とか需要を確保し、生産者として再生産加工が確保されるんだというようなことを私どもターゲットに置いて、現在この再編対策なり、さらに高品質化に努めておるというのが現状でございます。
  30. 田村憲一

    田村参考人 田中先生からの御質問で、一つ雇用状況でありますけれども、全般的には大変求人難だ、そのことによって企業活動も制約を受けるというような状況がありますが、食品産業につきましてもそういう傾向が一部に出ております。しかし、地域や職種、年齢あるいは労働条件などによってミスマッチも見られるようであります。  食品関係では、特に流通あるいは外食部門において人手不足が深刻だという状況が見られるのではないかというように思います。食品産業には不安定労働者と言われる臨時従業員あるいはパートタイマーの方々が非常に多いわけであります。労働組合といたしましてもこの問題についていろいろ検討しているわけであります。組織化ができないか、あるいは食品産業労働組合の組織率を高められないかというような取り組みをしているわけであります。全日本食品労働組合連合会といたしましてもこのパート問題などについていろいろ研究し、労働省でも検討がされているわけでありますが、私の立場といたしましては、食品産業労働組合を大きくまとめ、そういう不安定労働者の雇用の安定や労働条件の改善にも援助ができるような組織づくりを目指したいというように考えており、現在取り組んでいるわけであります。  現在のところパートタイマーの労働組合の組織化というのは大変難しいわけでありますが、企業組合を通じて包括的にそういう方々の雇用の安定や労働条件の改善について労働組合が窓口になって対処するようなやり方もしているところであります。     〔柳沢委員長代理退席、委員長着席〕
  31. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 どうもありがとうございました。
  32. 堀之内久男

    堀之内委員長 水谷弘君。
  33. 水谷弘

    ○水谷委員 参考人の皆さん、大変お忙しい中貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。  最初に池田参考人に御意見をいただきたいと思いますが、いわゆる加工食品価格に占める原材料の比率並びにそれ以外の工業資材の価格、加工費用そしてまた流通経費、これがいつも価格形成の問題で指摘をされるわけでありますが、先ほど池田参考人も関連工業資材のコストダウンのことについてお触れになりました。私もパイナップル等の缶詰工場に調査に参りましたが、そこにおけるいわゆる缶の代金の占める割合は大変高い。これがコストに占める比率も相当高い。もう一つは、流通経費がかなりを占めておる。こういう点についても食品加工産業としては、前向きに取り組んでおられると思いますけれども、今後具体的にどのようにお取り組みをされるか、このことを最初にお聞かせいただきたいと思います。  次に、国内の原材料を大切にするという基本的なお考え、これは私も非常にありがたいと思って拝聴しておりましたが、そうはいうもののやはり消費者にとってすぐれた加工品を提供するという立場、さらには国際競争力に耐え得る価格、これにおいて提供しなければならない、片方でまたそういう大変なものがあります。  そこで、先ほどの御意見の中に、国内農産物価格決定について御注文がおありのような発言がございました。これが一つ。現在の国内農産物価格の決定に対して今後どういう方向性を求められておるのか。もう一つは、新技術の開発についてもっと民間が積極的に参入できるような政策、制度の確立が必要であるとの御指摘もありましたが、特にその点について具体的にお聞かせいただければありがたいと思います。  以上二点、池田参考人にお願いをいたします。  次に遠藤参考人にお願いをいたしますが、この加工立法地域農業の健全な発展に資するものでなければならないわけでありまして、地域農業と、また地域経済と大変重要なかかわり合いのある農産加工業、この両者の意向がその地域においてきちっとした方向で検討が進められ、その上か ら特定農産加工業者の皆さんが提出される計画としてそれが承認をされていかなければならぬわけで、そのことについて先ほど遠藤参考人は、この両者の関係づけ、その地域において一体的にこれが発展をしていくためには国、都道府県指導重要性、これについて御指摘がございました。私は一歩進めて、具体的な、この一体的なかかわり合いを発展方向に向かわせるに的確な場づくり、どういう場でこれを検討していくべきなのか、それについて御意見がおありならばお聞かせをいただきたいと思います。  もう一つは、生産者のお立場からして、私はいつも生産者の皆さんにも申し上げるのですが、やはり川下の意見といいますか、消費者のニーズ、またいわゆる加工業者の皆さん方が農産物品質とか形状とか、そういうものに対してどういう御要請を持っていらっしゃるか。やはり農業生産者がこれから一番取り組まなければならないのは、加工されるいわゆる業者の方々のニーズをどれだけ生産段階で反映させ、そして例えば加工しやすい農産物の形状をつくり上げていくとか、いろいろな努力が私は必要だろうと思っております。指摘されている高品質とか安全性とか安定供給とか、これはもちろんでありますけれども、そういう方向での生産者の努力を今後どういう形でお取り組みをされようとしておるか。また、内外価格差生産コストの問題については、我が国の国土条件等あらゆるものから考えて、そんなに急激に海外の原材料と比較して内外価格差を縮めることは、私は難しいとは思います。思いますけれども、国民の期待は、やはり農業生産性向上コストダウンへ取り組んではしい、そういう強い要請がありますが、これについての生産者側としてのお取り組みの方向性をお聞かせいただきたいと思います。  田村参考人にお尋ねをいたしますが、国際競争力を持つために食品産業界がこれから大変な努力をされていく、その中で、先ほども田村参考人がおっしゃいましたが、企業自助努力を超える影響をこうむり、大変な影響が出てくるのではないか。そういう観点から、雇用、職場を守るという立場から考えて、生産縮小、そしてまた合理化が進む中で、雇用問題については深刻な問題が発生してくるのではないかと私は考えておりますが、そのことに対する国及び都道府県の対応、こうしなければならない、具体的な御要望、御指摘がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。  大変短い時間で恐縮でございますが、以上、よろしくお願いをいたします。
  34. 池田正範

    池田参考人 幾つか御指摘がございましたが、まず第一に流通経費の引き下げ対策でございますが、これは、一つ製造コストを引き下げるということがございます。もう一つは、でき上がった製品を分化いたしまして配送先に届けるまでのコストを下げるという問題がございます。流通経費に入ります前の製造コストの問題については、二番目の問題と関連がありますので後にさせていただきます。  流通経費につきましては、実は最近、御案内のようにPOS、EOSといったような品物の管理についての情報操作が非常に厳密になってまいりまして、ほとんど流通段階から先におきましては必要以上のストックを持たないという形が出てきておりまして、でき上がったものをどの段階でだれが持つかということが実はコストに非常に大きな問題で、それの引っ張り合いといいますか、押しつけ合いというような形が出てきていることは事実でございます。したがって、必要な時期に必要なだけつくって、それをつくっただけ即座にさばくという形ができますと、メーカーサイドにとりまして流通経費が非常に少なくて済むということになるわけでございますし、また流通段階では、小売段階で売れる必要量だけ受け取って、これを直ちに配送するということができればいいわけでございます。そういう意味で、最末端の川下におきますところの毎日の需要というものを直ちにつかまえて生産段階に結びつけるという必要が出てまいります。そういう意味で情報管理ということが非常に大事になってまいりまして、最近では主要なメーカーは大体におきましてそれらの情報管理をコンピューターを通じましてほとんど管理をし、そして地域別、品目別にかなり細かく製造計画を、川下の情報を直ちにはね返してやるという仕組みに変えつつございます。  したがって、全体としては御指摘の製造コストを流通経費から削減する方向で成果を上げつつあると思いますけれども、しかし、消費が御案内のように非常に多岐にわたって細かく分かれてきておりますために、従来から見ますと単品を大量に一カ所に流すという形になれないということから、必要以上に非常にコストがかかる。それからもう一つは、消費単位が非常に小さくなってまいっております。したがって、従来ですとケースで送っておったものが、ワンケースごと運び込んで結構だというような小売業者がほとんどなくなってきた、ほとんど積み合わせということになりますので、やはりこの辺の流通経費のかかり増しというものが非常に大きくなるだろう。これらはますますふえる傾向にございますので、製造単位のところから少し小さいものをつくっていくというようなことの工夫も現在なされております。  そういうふうなことで、流通経費引き下げにつきましては喫緊の問題でありながら一つずつ、これをやれば全部済むというものはございませんので、小さい施策を幾つか組み合わせて実施をするというふうなことで現在行われているのが実情でございます。  それから、国内原料についての価格引き下げ面の問題でございますけれども、御案内のとおりECでも域外との間で貿易についての課徴金その他の障壁が設けられておりまして、域内の製造メーカーが域内の農産物を使いやすい状況にいろいろと仕組まれておりますが、これはいずれも加工食品につきまして原料農産物価格との関連を制度にほとんど組み込んでおります。日本の場合には残念ながらほとんど、先ほどちょっと遠藤参考人からもお話がありましたけれども日本農産物国内で消費されるのは、ほとんど生食で食べることが原則、生食で余ったものは加工に向けるという考え方が古来ずっと続いてきております。したがって、政府が指示をいたします諸制度につきましてもすべて生食中心の考え方に貫かれておるわけでございます。ですから、制度が車の両輪と言われる食品産業の方には全然及ばない。つまり、この制度を続ける限りいつまでたっても原料用農産物が育たないという問題がございます。農家に対してどれだけのものを保証するかという問題と別に、それを使う原料用農産物についての一定の保証ということがなければいけない。わずかに乳製品等の原料乳等につきましては制度の中に仕組まれておりますけれども、これも主として予算その他の原因からどうもメーカー側にしわ寄せが来るというふうなことが現状でございまして、ここはやはり国内のでき上がります農産物の四割程度がメーカーを通じなければ消費者の手元に渡らないというのですから、したがって原料用農産物価格体系というものを真正面から制度の中で取り組んで見ていただくということが両輪となるための必要な最小条件ではなかろうか。このことと農家に対する保証をどうするかという問題は、おのずから政策的には別問題であると私は考えるわけでございます。  それから技術開発問題につきましては、一つは、大分よくなってまいりましたけれども農産物の種子についての閉鎖性でございまして、種子開発が従来十分にできなかった。最近は、農林省もいろいろ法律を改正されたりして新しい方向でいろいろと業界意見も聞かれるようになってまいりましたけれども、まだまだ諸外国に比べまして、種子を中心とする品種改良について民間が十分入りにくいいろいろな制約があるわけでございます。したがって、これらはやはり早急に国際水準に沿って、無論これは安全性の問題がありますから安全性については十分対応しなければいけませんけれども、何とかひとつもう少し前向きの行 政対応をしていただきたいということが一つありますし、またもう一つは、特に中小企業が多くて、先ほど申し上げましたが、政府の特に食品流通局を中心にした中小企業からの研修生の受け入れということを食品総合研究所等でやってもらっておりますけれども、なおもう少し敷居の高くない国公立の研究機関の体制ができますと、中小のみずからラボラトリーを持つことのできない企業ももっと安定した形、安心した形で相談に行ける。やはり諸外国等を見ておりますと、大学が大体非常に開放体制をとっておりますが、それ以上に国公立の研究機関を利用することが易しい条件にございます。日本の場合にもぜひひとつその点についてもいわばオープンラボの形をとっていただきたい、こういうことを強く希望しておる次第でございます。
  35. 堀之内久男

    堀之内委員長 参考人に申し上げますが、時間がオーバーしておりますので、簡単に、簡潔に御説明を願いたいと存じます。  遠藤参考人
  36. 遠藤肇

    遠藤参考人 お答えを申し上げます。  まず第一点の、地域経済を支えております地域農業とその原料供給の相手先でございます農産加工業が一体的な関連を持って発展していくというためには場つくりが必要ではないかということでございます。  全国的に見ましても、例えば大分県の大山町とか北海道の士幌町とか、ここあたりは一つの先進的な事例として我々受けとめておるわけでございますけれども、要は、地域経済をどういう方向に発展させるかという一つのマスタープランの中でそれぞれ農業なり農産加工部門の位置づけをするという配置がなければならないし、また、そういうための場つくりというのは先生御提案のとおり非常に必要でございますし、それは画一的にそういう場つくりをするというのではなくて、やはり地域に応じた知恵をそこに発揮すべきではないか、こういうふうに思います。  それから第二に、生産者と申しますか川下のニーズに対する対応というようなことは原料農産物であれ生鮮農産物であれ共通するものでございまして、私ども生産者団体といたしまして、例えば青果物あたりを例にいたしましても、ともかく市場に売ればそれで販売は終わりというような古い意識に依然としてとどまっておるわけでございまして、やはり川下部門に対する積極的なアプローチあるいはまた積極的な情報の収集というようなものは加工品も含めまして今日私どもの大きな課題になっておりますし、また、現にそういう点において前進をすべく取り組んでおるつもりでございます。  最後に、内外価格差の問題でございますけれども、これは非常に難しい問題でございます。特に、私どもは、内外価格差を問題にします場合に品質というものが当然かかわってくるわけでございまして、先ほどの田村参考人のお話もございましたけれども品質向上コスト低減を両立させるような手だてというものを切り開いていかなければならない。その具体的な方策につきましてはここでは省略させていただきます。
  37. 田村憲一

    田村参考人 今後雇用動向につきまして十分なる対応をとっていただきたいと思うわけでありますが、そのためにも労働省等関係機関と十分連携し、事態の推移を調査していただきたいと思います。場合によって地域においては大規模な雇用不安が発生するという事態が仮に起きた場合には、国、都道府県と労使代表による協議の場の設置なども必要ではないかと考えております。
  38. 水谷弘

    ○水谷委員 ありがとうございました。
  39. 堀之内久男

    堀之内委員長 滝沢幸助君。
  40. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長御苦労さまです。参考人の皆さん御苦労さまです。  お三人ともそれぞれ今日の世界的ないわば変動、変化のときに、しかも殊に難しい業界を持っていただきまして、これに対して政治が果たすべき役割等を必ずしも十分に果たしてはいないという点についてもおっしゃりたいのではないかとお察ししながら承ったわけでありますが、しかしそれをおっしゃらずに、むしろこの法律案について御賛成の立場でいろいろと参考になることをお聞かせいただきまして敬意を表する次第であります。  そこで、お三方にそれぞれ一言ずつの御意見と申しますか、お聞かせをお願いしたいと存じまして、連続して申し上げさせていただきますからお聞き取りを願いたいと思います。  池田参考人さんにおかれましては、この五年間の時限立法を短いとおっしゃいました。そのとおりであります。しかし、これはその時限になりますれば恐らくきっと法の延長ということになし得ると思いますのでその点は御心配ないかと思いますが、お言葉の中で、金融制度あるいはまたいろいろと申請ということにつきましてなれていないというようなことをおっしゃいまして、手続を簡略にしてほしいとおっしゃったと記憶しておるのであります。これはすべての面で言われることでありまして、しかし、これに対していわば具体性がない、これが通常であります。どうかひとつ、どういう点をどうして省略しろというふうに工夫して、それを大胆に提示をしていただいたらいかがなものか。もちろんきょうその内容までをちょうだいできなくても、そのような姿勢で臨んでちょうだいしたらいかがなものか、このように思うのであります。いかがなものでしょうか。  そして、遠藤参考人さんは、外国業界との競争がますます厳しくなってくるとおっしゃいまして、それは本当にそうだろうと存じました。そこで、この日本業界体質の改善ということについて、それに対して政治がなすべきことについて一番欠けたるものは端的に言って何であろうかということを、これまたひとつ御遠慮なくおっしゃっていただけたらと存じます。  田村参考人さんに、これはちょっと場違いであるかとも思いまして御無礼と思いますが、なかなか機会がありませんのでお伺いさせていただきますが、いわゆる連合の時代になってまいりました。しかし、労働組合の意識というものもそろそろと変わってまいっております。私は、そうした中にわけても未組織の労働者と組織を持っている労働者ないしは労働組合といいますか、それとの間の意識の格差というものは、これは相当の落差を持ってきているのではないか、こういうふうに思います。そういうことにつきまして、これはこの法律案に直接関係ないとおっしゃることでありましょうが、ひとつこの機会にまげてお聞かせをいただきたいと思います。  以上であります。
  41. 池田正範

    池田参考人 五年の時限立法については考慮でき得るであろうというありがたいお話でございまして、ありがとうございます。  制度金融の簡略化の問題でございますが、主として私が申し上げましたのは窓口事務について、例えばここで申しますと、県がいろいろ事業の計画を認定するとか、また公庫へ行って同じようなことをするとか、今の仕組みでまいりますと恐らく手続が二重三重になってくるのではなかろうか。したがって、融資を受ける方からいたしますと、例えば計画融資手続を一括して一遍で済ますというふうなことで済むような形がとれればありがたい。その一回が県で二回、公庫で何回、こういう話になりますと大変なことになりますので、この辺をお願い申し上げたわけであります。
  42. 遠藤肇

    遠藤参考人 日本農業外国農業と競争が激化していく中で体質改善のポイントは何か、一口で言えば何かという御質問でございましたけれども、私はこれはやはり農業生産を担う担い手をいかにして体質強化をするかということに尽きると思います。あらゆる技術のメニューにつきましても、やるのは経営主体でございますから、経営主体をいかに確立するかという問題だと思います。大変抽象的でございますけれども、お許しいただきます。
  43. 田村憲一

    田村参考人 御質問の点、労働組合としても今その問題につきまして検討しているわけでありますが、連合時代になりました。今までは既存組織の再編・統合ということであったわけです。この 秋には官公労と連合との統一もほぼ完成するというように思いますが、次の時代は未組織の方々をどうカバーしていくか、そういう大きな課題に取り組んでいかなければならないと思います。食品に対するニーズも非常に多様化していますが、労働者の意識やあるいは組合に対する期待感も非常に多様化している中で、労働組合の大きな課題であるというように我々受けとめております。こういう機会に先生からも御指摘された点を十分受けとめて、今後の活動に何か取り組めるものがないかどうか考えていきたいというように思います。
  44. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 大変ありがとうございました。いろいろとお伺いしたいこともありますが、時間がなんでありますし、それぞれのお立場におきましてどうぞひとつ今後とも御健闘をお願いしまして御意見を承らせていただきます。ありがとうございました。  委員長、どうもありがとうございました。
  45. 堀之内久男

    堀之内委員長 藤田スミ君。
  46. 藤田スミ

    ○藤田委員 参考人の皆さん、きょうは本当に御苦労さんでございます。私が最後の質問になりますので、多分重複しているところもあるかと思いますが、どうぞ御協力をお願いいたします。  まず最初に、池田参考人にお伺いをいたします。  先ほどのお話の中にも、食品産業海外進出について、海外への委託、海外立地がふえ、空洞化への方向に強まりつつあるという御発言がございました。農業白書の中でも、割安な原料や安価な労働力等を求めて海外立地志向が強まっていると述べられているわけですが、参考人がその動向について具体的に御存じであればもう少し詳しくお示しをいただきたいと思います。  二点目は、今回の法律では大企業についても過剰設備の処理、事業転換に対する融資やあるいは税制特例の対象としているわけです。この結果大企業にどのようなメリットがあると思われますか、御見解をお示しいただきたいわけです。  恐縮ですがもう一つ、これも先ほど御紹介がありました御発言の中に、プロセスチーズ自由化が四月、そして七月からトマトジュース、ケチャップの輸入自由化が始まるんだということをおっしゃっておられたわけですが、これによって外国食品企業の動向が大変注目されるわけですが、農産物自由化による輸入動向についてもお聞かせをいただきたいと思います。
  47. 池田正範

    池田参考人 まず御指摘の、海外に対する生産委託あるいは企業立地といったようなものが具体的にどういう方向で今後行われるだろうかという御指摘でございます。  具体的に申し上げますと、現在主として畜産関係の加工企業というものが、海外の新しい牧場の取得あるいは加工施設の取得というような形と組み合わされまして、主としてオーストラリアとかアメリカとかいったようなところにかなりの形で進出計画をしております。またトマト果汁といったようなものにつきましても、これが自由化されますと当然原料の格差が出てまいりますので、これはまた主としてアメリカとかトルコとかといったような地域との間で海外進出というような形の計画も行われ、一部もう既に進出している面もございます。それからさらにチョコレートとかその他のお菓子の産業それからビスケットの関係でございますが、こういうものも大体東南アジア、シンガポール、それから中にはヨーロッパとかロンドンといったようなところに対して技術提携をしながら進出をするというふうな計画なり実行結果もございます。そういうふうに、今御指摘ございましたような形のものは今でもかなり出てきております。恐らく、今までのところで企業立地、生産委託を含めまして農林省が調査をされました六十一年の調査が大体一五%から二〇%ぐらいでございましたが、これからしたいということを申しております企業の比率は三分の一ぐらいになるであろう。もっと細かく食品の中の業種を絞りますともっと多くなる、こういうことになろうかと思います。  それから、次に大企業のメリットの問題かと思いますが、これは実は昨年あたりの企業の財務内容等を見ましても、平均的に見まして日本の大企業を含めた経常利益率は一般の製造業に比べて常に低いわけでございます。特にその中でも砂糖だとか小麦粉だとかいった施設産業、大きい装置産業を抱えます分野は極端に利益率が低いわけでございまして、しかもそれは全部根っこの原料を制度的に押さえられております。したがって、大企業と申しますけれども日本の場合には一般の大企業が持つほどのメリットを持ちにくいのが現状でございまして、したがって今回このような形で税制上あるいは金融上の制度を講ぜられることが非常に大事かと考えておるわけでございます。  それから、これから後、外国食品輸入動向は一体どういうふうになるだろうかということでございますが、既に三百九億ドルという食品輸入でございますが、私ども今考えております水準からいたしますと恐らくこれは四兆円ぐらいになりますけれども、まだまだ今の比率はおさまりそうもない。しかも、それはだんだんに製品化率を上げていくであろう。つまり、国内生産材でなくて、でき上がったものとして入ってくるシェアがふえてくるであろう。そのことが食品企業にとりまして、業界にとりましては一番大きい脅威になっておるということでございまして、額がどのくらいということはちょっと申し上げられませんけれども、もっとふえるであろうというふうに考えております。
  48. 藤田スミ

    ○藤田委員 田村参考人にお願いをいたします。  農産物自由化で、ミカンジュースの工場を初め九業種の関係する食品工業は、過剰設備を抱え、事業閉鎖、事業転換、こういうことが余儀なくされて、先ほどから何度も言われておりますが、多くの労働者が雇用調整に直面することは必至だというふうに思います。法案では一般的な努力義務を課しているのですけれども、これは一般的な努力義務ということにすぎないものであります。  先ほど御発言で、雇用不安定化につながらぬようにとか、雇用の不測事態に機動的な対応が成るようにという御要望を出されていらっしゃいますが、もう少し具体的にそこのところをお聞かせいただきたいのと、それから、これも先ほどから問題になっていますが、農村婦人のパートの労働者、パートの婦人労働者の食品工業の中で果たしている役割をどういうふうに見ていらっしゃるかということ。あわせて、ここが真っ先に雇用調整されるというふうに考えますが、この点についてはどういうふうにお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。  最後に、遠藤参考人に一言だけお伺いをいたします。  食品産業工業立地の非常に困難な地域にあり、したがって、地域経済に果たす役割というものは、これは非常に貴重なものになっているというふうに思うのです。しかしながら、今回のこの自由化措置によって地域全体が大変深刻な打撃を受けることになっていくと思いますが、この実態と、これを受け入れた現在の農政についてどうお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
  49. 田村憲一

    田村参考人 今後、事態の推移を労働組合としても十分チェックしていきたいというように考えているわけであります。雇用問題はやはり生活の基盤でありますから、ここのところをないがしろにしてただ食品企業だけが生き残るということがあってはならないというように思うわけであります。また、必要に応じて、労使交渉の場、あるいは政府都道府県に対しても労働組合の方から申し入れをするというようなことも考えていきたいというように思います。  パートの婦人労働者は食品製造業においては非常に大きな戦力になっているわけであります。日常的に交流を深めているわけでありますが、こういう人たちが仮に自由化によって真っ先に犠牲にならないように、この点についても十分労働組合として対処してまいりたいというように考えております。
  50. 遠藤肇

    遠藤参考人 先生の御質問の、今回の自由化に 伴いますところのそれぞれの関連品目についてのこうむる打撃ということでございますけれども、これはそれぞれの品目によりましても大変幅がございます。また、自由化影響のみを切り離して把握するということも非常に難しいものがございます。しかし、いずれにいたしましても、こういう自由化のインパクトを受けまして今後これら関連品目がいかにして既存の生産を維持していくかという上において非常に大きな痛みを伴うということは必至でございます。したがいまして、当面私どもは、昨年来この自由化関連品目について講ぜられました国内対策を有効に活用いたしまして、ともかく当面の事態を切り抜けていくというようなことで現在取り組んでおります。
  51. 藤田スミ

    ○藤田委員 最後にもう一度、池田参考人にお伺いをいたします。  私が先ほど質問いたしました大企業のメリットの問題ですが、少し聞き方が悪かったかなと思ったのです。大変心配しておりますのは、大企業が今度のこの法律を活用することによって国内の事業所のスクラップ化を支え、それで一層海外進出を助けるような役割になっていきはしないかということを心配しておりますのでお尋ねをいたしました。  大変恐縮でございますが、もう一度御答弁いただきたいと思います。
  52. 池田正範

    池田参考人 そういうおそれがないかという心配はもう少し前にはございました。しかし、現在までの推移を見てみますと、やはり国内の大メーカーも、日本人の嗜好というものは非常に微妙なものがございまして、単純に外国から持ってくれば大体売れるであろうという形にならないということがだんだんわかってまいりまして、国産の原料というものについてかなり見直しをしている面もございます。したがって、今回のこの制度ができたことによって、こちらの施設をスクラップにして外国への依存度を増すという形を考えるメーカーは余りいないのではないかというふうに私は考えております。
  53. 藤田スミ

    ○藤田委員 終わります。ありがとうございました。
  54. 堀之内久男

    堀之内委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  参考人各位には、御退席いただいて結構でございます。  これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  55. 堀之内久男

    堀之内委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木宗男君。
  56. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 私は、自由民主党を代表して、特定農産加工業経営改善臨時措置法案について賛成の討論を行うものであります。  先般の日米協議の結果等により、牛肉かんきつ農産物十二品目について輸入制限の撤廃、輸入アクセスの改善が行われるところとなったところであります。  牛肉かんきつ農産物十二品目は、いずれも我が国地域農業の重要な柱であり、できるだけ早急に国内対策を講ずることが強く要請されております。  自由化等関連対策としては、農産物生産性向上等いわゆる生産対策が別途実施されております。しかしながら、農業者のみならず、農産加工業者も大きな影響を受けることが懸念されており、既に、本年四月プロセスチーズ自由化され、本年七月トマト加工品、来年四月パイナップル調製品などの自由化が迫っており、早急に本法案に基づく金融税制上の措置実施する必要があります。  すなわち、本法案は、自由化影響を受ける農産加工業者に対し、その経営の改善を促進するため、金融税制上の幅広い支援措置を講ずるものであり、その活用により、自由化への円滑な適応を進めることができると考えております。  申すまでもなく、農産加工業国内農産物の主要な需要者であり、地域農業と極めて密接な関係にあるとともに、地域経済を支える主産業として、また、地域社会における雇用の場として重要な役割を果たしております。したがいまして、本法案は、農産加工業者ばかりでなく、国内農業、ひいては地域経済にとっても重要なものであります。  以上のように、本法案が早急に成立し、自由化等関連対策として既に実施されている生産対策と並んで、農産加工業に対する対策が講じられることにより、国際化に対応した農業及び農産加工業を確立していくことが非常に重要なものでありますので、本法案に賛意を表明しまして私の討論といたします。(拍手
  57. 堀之内久男

    堀之内委員長 藤田スミ君。
  58. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は、日本共産党を代表して、特定農産加工業経営改善臨時措置法案に対して反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、この法案が、農産物自由化に備えてミカンジュース工場などの農産加工業の過剰設備を破棄させるものであり、一連の農産物自由化法の一環である点です。  農産物自由化は、昨年の畜産物価格安定法の改悪による牛肉の畜産振興事業団の一元輸入の廃止、肉用子牛生産安定等特別措置法による子牛価格の引き下げ、予算による保護措置などの整備を経た後、最終的には貿易管理令の輸入枠撤廃の省令改正によって完結するものです。  逆に言うと、このような自由化に向けての各種の整備措置が整わなければ、政府としても輸入枠撤廃の措置は容易にできないとも言えるでしょう。  この法案は、自由化を迎えるまでに、予想される過剰設備を破棄、転換して自由化体制を整える性格を持っており、この基本的性格からこの法案には賛成することはできません。  反対の第二の理由は、大企業融資税制特例の対象としており、食品関係資本の海外進出を含む国際戦略のもとでの国内事業所のスクラップ化を支えるものである点です。  食品産業は、農業白書においても「食品工業においても、円高の進行や我が国農産物市場アクセスの改善等の状況を踏まえ、市場の開拓、拡大や原料調達を目的とする海外進出が進むとともに、低コスト地域生産し高い収益を確保できる地域で販売したり、我が国への逆輸入をするなどの動きがみられ、」と指摘されているように、海外進出を含む国際戦略を持っています。  この法案は、大企業といえども国内事業所の過剰設備を廃棄する場合は、融資税制特例を予定しており、国内事業所を整理し、海外進出をねらっている大企業を支えるものであることは明らかであります。  反対の第三の理由は、農産加工従事労働者の雇用調整の促進をもたらす点です。  この法案で、過剰設備の廃棄、事業転換あるいは工場閉鎖が促進されるため、農産加工従事労働者のみならず、関連企業の労働者も含めて雇用調整が促進されます。また、農村での雇用状態は圧倒的に婦人労働のパートタイム雇用が多く、これらの婦人労働者が真っ先に雇用調整の対象になることは目に見えています。ところが、この法案では、これに対して国に一般的な努力義務を課しているだけで、具体的な雇用対策は打ち出しておらず、雇用不安は依然深刻なままであります。  以上見たように、この法案は、農産物自由化対応法であり、大企業にとっては国際戦略に沿った運用を可能にし、地域では労働者の雇用調整を促進するものであり、反対であります。  今求められていることは、このような法案の施行ではなく、自由化の撤回であります。それこそが農民の真の願いであるということを申し上げて終わります。(拍手
  59. 堀之内久男

    堀之内委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  60. 堀之内久男

    堀之内委員長 これより採決に入ります。  内閣提出特定農産加工業経営改善臨時措置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  61. 堀之内久男

    堀之内委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  62. 堀之内久男

    堀之内委員長 この際、本案に対し、保利耕輔君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。串原義直君。
  63. 串原義直

    ○串原委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表して、特定農産加工業経営改善臨時措置法案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     特定農産加工業経営改善臨時措置法案に対する附帯決議(案)   農産加工業は、農業と極めて密接な関連の下で食料を安定的に供給し、また、地域農業振興地域経済活性化に資する等重要な役割を果たしているが、今回の牛肉かんきつ農産物十二品目輸入自由化措置等により、厳しい事態に直面している。   よって政府は、国内農業振興農産加工業者の新たな経済的環境への円滑な適応を図るため、本法の施行に当たっては左記事項の実現に努め、農業及び農産加工業の健全な発展に遺憾なきを期すべきである。        記  一 農産加工業経営現状と厳しい経済環境に対処し、その振興経営基盤強化のための施策の充実に努めること。  二 原材料を含む農産加工品の輸入の急増が、経営基盤の脆弱な農産加工業に悪影響を及ぼすことのないよう努めること。  三 国産加工原料農産物の安定的供給を図るため、農産加工業のニーズに即した品種の開発、栽培技術の確立に努めるとともに、農業生産性向上による内外価格差縮小に努めること。  四 経営改善計画等の承認に当たっては、地域農業振興との関係に十分配慮するとともに、生産者側の事情が適切に反映されるよう指導体制の整備に努めること。また、経営改善計画等の達成のため実効ある指導を行うこと。  五 特定農産加工業者に対する融資については、所要の資金枠確保農産加工業経営の実情に即した迅速な貸付け、事務手続きの簡素化等本資金制度の有効かつ適切な運営が行われるよう十分配慮すること。  六 農産物市場開放措置に伴い農産加工業従事者の雇用環境の悪化、失業等が生ずることのないよう関係行政機関との連携を密にし、雇用安定対策に万全を期すこと。    右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  64. 堀之内久男

    堀之内委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  保利耕輔君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  65. 堀之内久男

    堀之内委員長 起立多数。よって、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。羽田農林水産大臣
  66. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。ありがとうございます。      ――――◇―――――
  67. 堀之内久男

    堀之内委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 堀之内久男

    堀之内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  69. 堀之内久男

    堀之内委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  70. 堀之内久男

    堀之内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業の基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。
  71. 石破茂

    ○石破委員 それでは、お許しをいただきまして、先般大臣が表明なさいました所信につきまして若干の質問を試みさせていただきたいと思います。何とぞよろしくお願いを申し上げます。  まず第一点でございます。大切なものを守るためには相応なコストが必要であろうというふうに私は考えております。もちろん国もそのとおりでありますし、国民の福祉もそのとおり。農業も大切であるとするならば、だれかがそのコストを払わねばならぬのではないか、そのような考えを持っておる一人でございます。大臣は先般の所信の中で、  農林水産業は、国民生活にとって最も基礎的な物資である食料等を安定的に供給するという重大な使命を担っているほか、活力ある地域社会の維持、生きがいの充足、国土・自然環境の保全など、我が国の経済社会と国民生活の土台を支える重要な役割を果たしております。 このような所信を表明しておられるわけであります。まことにそのとおりでありますし、網羅されておるとは思うわけでありますが、大臣は常日ごろから自立した農業産業としての農業というようなことを唱えておられるわけであります。いやしくも産業というからには、そのこと自体、農業自体が国民全体の厚生水準向上に寄与するものでなければならない、かように考えるわけでありますけれども、大臣が日ごろから唱えておられます産業として自立した農業産業としての農業、これはいかなる考えをお持ちか、承りたいと存じます。
  72. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今御指摘のございました、産業として自立できる農業という私が申し上げておりますことは、やはりまず農産業、これによってみずからの生計を立てると同時に、日本人が必要とする食糧を安定して供給する、しかもコストを下げながらそれができる、そういった自立した農業というものを実は想定いたしておるわけであります。そういったことの中には、やはり規模というものをある程度持つということも必要でありましょうし、あるいは技術、こういったものについても相当高いものを持つということもありますでしょうし、あるいは市場の動向、こういったものをきちんととらまえ、国民のニーズにこたえられ る、そういったものが必要であろうと思っております。  ただ、農業の形態の中には、全部が全部それじゃそういうものであろうかというときに、規模が小さくても例えば施設を使いながらやる方々、これは何も土地を大きく持つわけじゃございませんでしょう。しかし、創意とか工夫を生かしていく、そういう中で産業として立っていくこともできると思っております。それから、今ニーズは非常に多様化しておるということでありまして、これはただコストを下げるとか安いというものじゃなくして、やはり手間暇かけたものが欲しいということを望む人たちもおります。そういった人たちにこたえていく農業もあってしかるべきであろうというふうに考えております。
  73. 石破茂

    ○石破委員 産業としてという言葉がなかなか難しかろうとは思っております。  最近、農協の大会とかそういうものに行きますと、弁士の方で商売マインドを持った農家たれというようなことを力説される方があります。ただ、実際自立をして商売マインドを持った農家というのも確かにあるわけでありますが、山間地でありますとか高齢者でありますとか、そういう人たちに、さておまえたち、今から商売マインドを持って一生懸命ニーズに合ったものをつくりなさいよ、一生懸命売りなさいよと言っても、おれたちどうやってつくっていいかわからない、仮にいいものをつくったとしてもどうやって売っていいかわからないというような方々が、特に山間地のお年寄りを中心として多いような気がしておるわけであります。確かに若くて活力があって商売マインドを持った人たちというのもたくさんおるわけですが、同時に、農業しかできない、ここでしか生きられない、そういう人たちも枠内に入れたような農政の展開というものをぜひともお願いをいたしたい、かように思う次第でございます。  また、現在、農政批判が非常に強いわけであります。批判する人たちはさまざまでありますが、ある財界の方々から農業は非常に過保護であるというような御批判があります。また消費者の方々から非常に高いというような御批判をいただく。私ども農村出身でありますが、都会の議員なんかと論争しておりますときにこういう話をいたします。農家は非常にうらやましい、なぜうらやましいか、まず広い家に住んでいるからうらやましいというお話。第二点は、たくさん自動車を持っている、おれのうちは自動車が一台しかないけれども農家には三台も四台もある、非常にうらやましい、農家は税金なんか全然払っておらぬそうだ、それに加えて補助金なんかいっぱいもらっている、まるで現代のパラダイスみたいな話であります。そうであれば嫁不足なんて起こらぬだろうと私は思うのでありますが、とにかくそういうような批判が非常に強いのではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。その批判にいかにこたえるか。やはり農業というものは、大臣の所信表明の中にあるように、国民全体の財産であり国民全体に寄与するものでなければならない、かように思うわけであります。  では、だれがいかなる負担を持って農業を支えるか、こういう原理原則が確立をされていかない限り、消費地と生産者、都会と地方との理解が余りにかけ離れておる限り、本当の農政の確立は難しいのではなかろうか、かように考えておるわけであります。繰り返すようでありますが、大切なものは何であるか、それをだれがいかなる負担を持って支えるかということにつきまして、大臣の所見を承れれば幸いであります。
  74. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 まず前段の、ちょっとお話がありました例の商売マインドということでありますけれども、商売的な農業、これもやはり創意工夫を生かすということでは非常に重要なものであろうと思っております。ですから、私が申し上げた、要するに市場のニーズをとらまえるというのはそのことであろうと思うのです。  ただ、それだけではなくて、本格的な、産業的な農業を営む人は技術が高いということ、規模もきちんとしたものを持っておるということ、いろいろな気象条件、そういったものに対しても対応できるものを持っておるということ。そういうことになりますと、国民に対して食料を安定して供給しなければならないという一面も実は農業の場合にはあるということでありますから、そういう人たちが大半を占めていただくことがこれから必要なんじゃないかということで申し上げたわけであります。  それと同時に、今お話しのとおり山間地でなかなか規模なんか大きくできない。しかし、小さなもので手塩にかけたものを求める消費者の皆さんが今相当出てきておるということですから、そういったところには在来農法を駆使しながら、お年寄りの方なんかが手塩にかけてつくったものは付加価値の相当高いものができるであろうというふうに私は思っております。そういったものに対してきめ細かく、しかも流通とかいったものに対しては、あるときには農協なんかが相当大きな役割を果たしていただくこともできるであろうと思っております。いずれにしても、こういった問題を念頭に置きながら私たちもまた議論していかなければいけないなと思っております。  それから、今確かに都会の人と農村の人たち、あるいは学者とか評論家とかマスコミの皆さん方、いろいろな指摘があります。そういった中には、どうも農業現状を余り理解されないで一般論で何げなくばっとやって、一生懸命努力してやっておる人たちの顔を逆なでしてしまっておる一面もあるということを私自身も実は思うところであります。  ただ、農業というものは、食糧の安定供給を初めとして、また活力ある地域社会といったものを維持していかなければいけないということがありますし、国土保全的な一つの機能も果たしているだろうというふうに思っております。そういうふうに多面的な非常に重要な役割を果たしておるというふうに思うわけであります。このような農業の重要な役割を考えますときに、各国におきましてもそれぞれ実情に応じて各種の農業保護措置というものが講じられております。ところが、やはり自然条件なんというものを克服しなければならない、これはなかなか個人にやれと言ってもできない場合がある。しかしそれをやってもらわなければ困るのだというニーズが一方ではあるわけでありますから、このような農業の持つ多面的な機能というもの、これは国民全体が利益を受けているということでありますから、国民全体で必要な費用というものを負担をしていただく、こういったことについて国民の皆様方の十分な理解を求めていかなければならないというふうに思っております。このために、今後ともあらゆる機会を通じながらその理解を求めるための努力を私どもしていきたいなと思っております。  ただこの場合に、一言敷衍いたしますと、保護には幾らあれしてもいいのだよという声がたまにあるのですけれども、今後の農政の展開に当たりましては、可能な限り生産性向上というものに努めて、そしてできるだけコストの低いもの、これはやっていかなければいけないのかなというように考えております。
  75. 石破茂

    ○石破委員 農業の果たしておる機能はたくさんある。今大臣御答弁のとおり、消費者の方々の理解というものを得ていかねばならぬ。  私は、農家というのは非常によく働くと思うのですね、実際問題。私の選挙区なんかでもそうですが、ほとんど二種兼業でありますけれども、私たちの方は週休二日制なんてほとんどありませんから、月曜日から土曜日の昼間まで会社や役所に出て勤めておる。それで、土曜の午後からはちゃんと田んぼや畑に出て一生懸命働いておるわけですね。日曜日も休みなんかないわけであります。今、日が長くなりましたから、平日でも家に帰ってからトラクターに電気をつけて遅くまでやっておる、そういう人たちがたくさんおります。私の県なんかは、サラリーマンの一月の給与というのはたしか全国四十二位だと思うのでありますが、サラリーマン世帯の所得というのは全国第四位なのですね。その分だれが補てんしているかといえ ば、農業が補てんをしておるのであろうなというふうな気がするわけでありますが、農家というのは一生懸命働いておるのであって、決して怠けておるわけではない。そういうような理解を都会地や消費者にしていただくために、具体的に農水省としてどのような手を打っておられるか、そのことについて承りたいと存じます。
  76. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生御質問の、農林省における広報的な、あるいはそういった農業に関する努力の問題でございます。  この点につきましては、所信の中で大臣も二カ所にわたって、特に農林行政を進める上において広く国民の理解を得ることの必要性というものを説いておられますが、ここで私どもといたしましては、一つ消費者という問題もございますし、特に次代を担う青少年の方々あるいは多くの消費者の中における婦人の層の方々、そういった方々を対象に、特に重点を志向いたしまして農林省の行っていることあるいは農業についての正しい理解を持っていただくための活動をしていかなければいけないというふうに考えているところでございます。  まず、平凡なことではございますが、農業基本法ができて以来発表しております農業白書等を多く活用いたしまして、わかりやすく農林行政をお知らせするという努力をしていかなければいけないと思っておりますし、そういう意味においてことしの農業白書は中間色のカラーをもって彩っております。また、これからのことでございますが、特に消費者の方々に重点を置きまして、ことしの秋までに農業白書に盛り込まれた内容等を宣伝をしていきたいというふうに考えているところでございます。また農林省の場合、この二、三年でございますけれども消費者の部屋」というものを一階に置いておりまして、農林水産祭の催しあるいは各種のイベント等々も含めまして、ここで一般の都会の方々の、特に婦人層の方を中心にいたしましてのPR活動を続けているところでございます。また、農林省におきましては一日農林水産省というのをやっておりますし、さらに地方農政局においても、先生おっしゃった各県におきます活動におきまして一日農林局といったようなものも行っていきたいというように考えているところでございます。  なお、農林省の具体的な施策の中に都市農村交流促進事業といったものを仕組んでおりますが、こういった中で若い少年の方々に体験農業というものを実施させていただきまして、農業重要性あるいは農業の多面的な役割といったようなものを広く都市の皆様方に御理解賜るよう活動を進めていきたいと思っております。
  77. 石破茂

    ○石破委員 外国のことはよく存じませんが、アメリカにしてもECにしても、もう少し都市と農村との一体感というのはあると思うのですね。それは国の成り立ちにもよりましょうし、いろいろな要因があろうかと思いますが、日本ほど都市と農村がかけ離れた考え方をしている国は珍しかろうというような気がしておるわけであります。そういう意味におきまして広報活動等をよろしくお願いいたしたい。外圧をはね返すためには生産者や農水省ばかり一生懸命やったってだめなんで、消費者もその気持ちになっていただかねばならぬ。外国とはやはりどこか違うのではないかなという気がしておりますので、そのようなお尋ねをいたしました。それでは、時間もございませんので、次の質問に移らせていただきたいと存じます。  自給率、自給力というような言葉をよく使われます。確かに農産物輸入自由化に反対をする。私どもは選挙区なんかでいろいろなお話をする際に、とにかく我が国は国土が狭い、平地も少ない、いい悪いは別にして、正しい正しくないは別にして、自衛力もそんなに大したことはない、資源も乏しい、しからば食糧ぐらい自給しなければどうするのだ、国の存立は危うくなるではないか、したがって食糧自給だけは何としても守らねばならぬ、自給率を上げねばならぬ、いわゆる総合安全保障論なるものを展開をしておるわけであります。  しかし、自給力、自給率とは一体何だ、何をベースとして言うのであろうかということであります。今、グルメ時代とか飽食の時代とか言われております。都会では犬が糖尿病になったとか猫が糖尿病になったなんという笑えないようなお話もございますが、そういう飽食時代のカロリーを基本にした自給力、自給率であるのか、それとも人間が最低死なない、例えば昭和二十七年当時に必要な熱量というもの、最も効率的に、人間が死なない程度のカロリーを供給するに足るものを自給力というのか、その辺の定義が私はいま一つよくわからないのであります。国が守れる、国が維持していけるということであれば、とにかく国民が生きていけるだけのカロリーというものをベースにするべきであろうと思います。今のように飽食の時代のこんなに豊かな生活、そのカロリーを基準とした場合に、果たしてそれで外国に説得力を持つ話になるのであろうかという気がしておるわけであります。  安全保障論の中においての自給力、自給率というものをいかにとらまえるべきかということにつきまして、所見を承りたいと存じます。
  78. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 お答え申し上げます。  まず安全保障についてでありますけれども、私どもがガットの中で主張しております食糧安全保障、これはまず第一には、私どもとしては基礎的な食糧、こういったものを国内生産できる体制をきちんと守っていくのだということ、これは何とか確保していきたいということ、また一方では日本はまさに食糧の輸入大国ということになってしまっておるわけであります。というときには、これはやはり輸出国も自分の都合によって輸出するのをとめてしまったりなんかされては困りますよということで、輸出国の責任というものも問う。私どもは、この両方がきちんとしたときに食糧の安全保障ということが言えるのであろうということで、実はそのことを主張しているわけであります。  それから今の自給率と自給力でありますけれども、これは私から申し上げるのも釈迦に説法でありますけれども、米の消費量が現在まだ減ってきております。そこへ持ってきて畜産ですとか、最近では牛乳なんかが物すごい勢いで今伸びておるわけですね。飽食だと言われる中で肉とそれから牛乳、乳製品というものが今物すごく伸びておるというのが現状であります。そこへ持ってきまして糖分、砂糖類なんかをとるようになってきたということ。それからもう一つは油脂、油、こういったものをとるようになってきたということになりますと、特に今申し上げた畜産とかあるいは酪農ですとかあるいは油類、こういったものの原料であるトウモロコシですとかあるいは大豆ですとかまた麦のかすですとかいろいろなもの、こういうものは国内生産したのではとても割に合わないということであろうと思います。  しかも、日本の場合には、よその国で余りこういう例はないようでありますけれども、食生活が戦後今言ったようにがらっと変わってしまったわけですね。そういう中でそれらを供給するためにはどうしても輸入してこなければならなかったということのために自給率ががくんと落ちてしまっておるということであろうと思います。そういう意味で、農産物の総合自給率、これは主食用穀物の自給率は七割程度というものがありますし、またカロリーの自給率は四九%に落ちてしまっておる、そして穀物自給率は今申し上げたような事情で三〇%についになってしまったというのが今日の現状であるわけです。ただ、主食が確保されておるということの中に割合とみんな安心しておられると思うのですね。ですから、いずれにしましても、こういった輸入されたものによって生産されるもの、そして国内でちゃんと生産される果物だとか野菜だとかあるいは一番主である米、こういったものがきちんとつくられておるという中で日本人というのは食生活としても非常にレベルの高い豊かな生活をするようになっておるのじゃなかろうかなと思っています。  ですから、これがもし米までがおかしくなってしまうということになりますと、これはもう年がら年じゅう世界じゅうの天候に気を使いながら生きていかなければならないであろうということを考えたときに、私どもはやはりそういったものについて国際的な理解も求めていかなければいけないなと思っております。ですから、いざというときに――しかしやはり先ほど申し上げたようにいろいろな現象が起こることがありましょう。そういった意味で、常に日本の中でできるもの、こういったものをつくり出す力、いわゆる自給力、これは基盤整備を初め、きちんとした人たちを育成する問題だとかあるいは新しい技術の開発をきちんとしておくとか、そういうことについては常日ごろ考えておく、いわゆる自給率というものは高めておく必要があるということであろうと思っております。
  79. 石破茂

    ○石破委員 今米のお話が出ましたので、その自由化に関連して若干承りたいと存じます。  昨年の九月に衆参両院におきまして自由化反対の決議がなされたわけであります。一部報道によりますと、そのときに、さて市場開放反対というタイトルにするべきか自由化反対とするべきかというような論争があったと聞いております。見たわけでもありませんし聞いたわけでもありませんから、真偽のほどはわかりません。しかし言葉として、農協などに行きますと農協の三階あたりから垂れ幕がかかっておる、そこに何と書いてあるかというと、米の市場開放を絶対阻止しようという垂れ幕が大体どこの農協に行ってもかかっておる。ところが国会で決議したのは自由化反対という決議をしておる。同じようなものとしてとらまえておる人もいるのでありますが、一体その二つの言葉の概念は違うのか違わないのか、その辺についてお教えをいただければありがたいのです。
  80. 甕滋

    ○甕政府委員 今先生からお話ございましたように、米の市場開放あるいは米の自由化、確かに言葉として違って使われている場合があろうかと思いますが、私ども、この市場開放と自由化との違いをはっきり定義づけたものはないのではないか、国会の御決議の話も出ましたが、これを受けまして、米は輸入によらず国内で自給をしていく、こういう大きな方針を示されているというふうに受け取りまして、その御決議を尊重して対処しておるところでございます。これからもそのつもりでやってまいる所存でございます。
  81. 石破茂

    ○石破委員 それでは、それを大体同義というふうに、国会決議を尊重してというふうに理解をさせていただきたいと存じます。その二つの言葉が間違って使われることがありますと後で面倒くさいことになりはしないかな、そういう懸念があったものでありますからお尋ねをしたような次第であります。  そろそろまた、平成元年産の米の値段をどうするかというようなシーズンに相なってまいりました。食管制度につきましてもいろいろな議論がなされておるわけであります。食管制度の機能って一体何ですか。教科書を読みますと、これは一つ価格安定の機能である、一つは所得補助機能である。つまり、昭和十七年当時に始まったときには、消費者が貧しい、米が買えない、消費者の払える価格では再生産が保障できない、したがってその分をいわゆる逆ざやで埋めましょうというようなことであったはずでありますが、米が高い安いは別にいたしまして、今、米が高いから米が買えないよ、そういう消費者は恐らく日本全国おらぬであろうなという気がしておるわけであります。そうしますと、これから先の食管制度の弾力的な運用ということがこの間の審議会でも言われたわけでありますが、食管制度の機能は今後どうあるべきか、そしてまたどのような展開をしていかれるかということについてお尋ねをいたしたいと思います。  それにあわせまして質問をいたしますが、昨年一・五ヘクタールを基準面積とするのだというようなお話がございまして、一年先送りということになったわけでありますけれども、それは一体どういうものであるのか、そういうことを仮に行った場合にどういう影響が出るかということをお教えをいただきたいと思うのであります。つまり、それが食糧庁のかかれておるような絵のとおりいけば大変結構な話でありますけれども、それをやった場合に二種兼業農家は決してつくるのをやめなかった、かわりにこれから育てなければいけない大規模農家がかえって打撃を受けてやめてしまった、二種兼業農家は残りましたというようなことになって、過剰米もちっともなくならなかったよというようなことが起こらないという保証がなくては政策としては無責任ではなかろうかという気がしておるわけでありますが、そういうことも含めまして、これから先の政策展開につきまして承れれば幸いであります。
  82. 甕滋

    ○甕政府委員 食糧管理制度につきましては、ただいまお話がございましたように米の不足の時代の機能とは違いまして、現在、米の需給及び価格の安定を図る、それを通じまして生産者にはその再生産確保し、消費者には米の安定供給を果たしていく、こういう役割を担っておると思います。  当面、先ほどの農政審議会小委員会の中で、現実に生じております問題を解決しながらこういった食糧管理制度の機能を今後さらに発揮させていくために改善を図っていくべきである、こういう報告がなされていたところでございまして、その基本的な考え方は、米の需給あるいは今後にわたる食糧管理制度の基本的な役割を維持するという基本を維持しながら、しかし現在多様化しております需要に対して流通あるいは生産が十分に追いついていない、こういったところからさまざまな問題が生じているということでありますから、需給動向でありますとか市場評価でありますとかというものがより反映されまして市場原理がより生かされた仕組みにしていく、こういうことが方向づけとして示されたわけでございます。私ども、総じてそういった方向に沿ったそれぞれの改善措置を今後にわたって十分検討の上、条件整備を図りながら具体施策として展開していく必要がある、このように考えております。  また、米価の話もございましたけれども、現在、米をめぐります内外の諸情勢を踏まえますと、今後の米価政策につきましては、構造政策の推進にも配慮しながら生産性の高い稲作の担い手層に焦点を置く、それから需給調整機能も強化した運用が必要である、このように考えております。そういった際に、その米価政策の方向が今後の米の本当の担い手層に対して悪影響のあることがないようにといった御心配の御指摘でございましたけれども、私ども、現実に進展をしております生産性向上、これを生産費所得補償方式の中でとらえまして、これは具体的に細かなことは申しませんけれども、過去三年の平均生産費でやっていく、そうしますと、生産性向上のこれまでの成果は農家にも帰属する、こういうふうにも考えておりまして、今後の日本の主食である米の安定供給を担う担い手が本当に米の生産に精進をし、その規模拡大を図りながら発展していけるような方向で運用をしていく必要があると考えております。
  83. 石破茂

    ○石破委員 最後一つだけ簡潔に承りたいと思います。農産物輸出についてでございます。これについて大臣の御見解を賜りたいと思います。  私どもの県では、大臣御高承のとおりナシの輸出をしておる。これは外交交渉のない国でありますからこういうところで言うのはなにかと思いますが、私も台湾に五回ぐらい行ってナシを買ってくれというお話をいたしました。それは時期をずらし、そしてまた価格競合しない価格にし、量も規制するというようなことでお願いを続けておるわけであります。アメリカから我が国が昨年受けましたようなことをしておれば日本の国の農産物は輸出はできないと思いますが、これから先の輸出につきまして大臣の御見解を賜りまして、質問を終わりたいと思います。
  84. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 御指摘のございました輸出の問題につきましては、これは皆さんに輸出というものについても考えようということを呼びかけてま いりましたけれども、今お話がありましたとおり鳥取県の場合にはいち早くこれをされて、現在では我が国のナシの生産全体の一割ぐらいをアメリカですとかその他カナダですとかそういった国なんかにも輸出しておるという現状であります。しかし、今御指摘のございましたように、世界の市場を混乱させてしまうというようなこととかその国の農業そのものを追い詰めてしまう、そういうことになったのではやはりこれは理解されないものであろうというふうに思いますから、そういった点については私どももやはり注意をしながらやっていかなければいけないと思っております。ですから、特に日本でとれるもの、そしてよその国では余りないもの、こういったものを変なふうに競合する時期なんかを避けながら着実にやっていくことが非常に重要だなというふうに思っております。今、ナシに続いてキーウィフルーツなんかも出るようになりましたり、あるいはキノコ類なんかも出てくるようになりましたし、リンゴなんかも少し出てくるようになったということでございまして、そんなに大きなものはまた日本の国としてもできないと思っております。なお、九月ごろまでにはアメリカでも、牛肉についても動物検疫、こういった問題について自分たちとしてもできるだけ日本からの輸出マインドに対してこたえようということを言ってきてくれておりますので、牛肉の輸出なんかも逆に始まるのかなという気持ちを持っております。
  85. 石破茂

    ○石破委員 終わります。ありがとうございました。
  86. 堀之内久男

    堀之内委員長 安井吉典君。
  87. 安井吉典

    ○安井委員 先日の羽田農水大臣の所信表明に対する質問として、最近の二、三の大きな農政の問題をアトランダムに取り上げてお尋ねをしていきたいと思います。  まずガットについてです。  ウルグアイ・ラウンドの中間見直しを協議してきた高級事務レベル貿易交渉委員会、TNCは、四月七日に農業分野の最終合意をまとめました。その内容は、私なりの理解では、長期目標としては、農業保護の相当程度の漸進的な削減を目指して新ラウンド後半の本格的な交渉に入るということ、その場合には食糧の安全保障というのが考慮されるということが認められたこと、それから一九九〇年までに行う短期措置については、基本的には農業保護水準現状に凍結するということで合意をした、こういうふうに聞いているわけです。手っ取り早く言いますとそういうものであったと理解してよろしいでしょうか。
  88. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 ウルグアイ・ラウンドの農産物分野における中間的な合意の内容につきまして、今先先の方から長期、短期の二つの要素の核心的な部分についてお話がございました。私どもも、今回の合意はそれぞれの要素について今おっしゃられたような内容の点がその最もかなめであろうというふうに理解をいたしておるわけであります。  御存じのように、既に始まりまして二年以上経過して、その中間時点でこれまでの交渉の経過を評価すると同時に、今後残された期間における交渉の終結に向かっての具体的な方向づけをやるという中間レビューの目的、ねらいがあったわけでございますが、農産物交渉分野につきましては、そのねらいを長期と短期の二つの要素に分けまして方向づけをやった。とりわけ農産物につきましては、今回の交渉では、長期的に各国の行っている農業政策そのものを改革の対象にしようということで、長期的な交渉の方向づけというものが非常に注目をされましたし、かつまた国際市場が基本的には需給が緩和をし、輸出補助金が非常に使われて、それが中心になりまして農産物市場に悪影響を与えているという認識が強いものですから、交渉の終結を待たずに短期的な効果を持つ措置についてもあわせて何らかの合意をすべきであるという認識があったわけでございます。そういうことから、ただいま先生の方からお話のございましたような内容で、長期と短期の二つの要素を盛り込んだ中間的なまとめが農産物分野について行われたということでございます。
  89. 安井吉典

    ○安井委員 長期的な目標の表現の中に食糧安全保障という言葉が入れられたのは、かなりの努力の結果だったと思います。ただ、その言葉だけで日本の場合、基礎的食糧の完全自給を確保するということ、ないし市場開放を阻止せよという、さっきも御質問がありましたけれども、そういうふうな要求が可能なのかどうか、その点を伺います。
  90. 甕滋

    ○甕政府委員 今回の貿易交渉委員会農業合意の中で、ただいまもお話がございましたが、食糧安全保障のような事柄についても考慮が払われるということが盛り込まれております。これは我が国の従来の主張が取り入れられたということで、私ども評価しておるわけでございます。  米の問題につきましては、今後ウルグアイ・ラウンドの場で各国が抱えております困難な農業問題あるいは制度、これらの議論を行う段階になりますれば、米の問題を含むあらゆる農業問題を討議するのにやぶさかでない、こういう方針で対処することといたしておりますけれども、今回の合意に盛り込まれた事項を重要な足がかりとして我が方としての説明、主張を行ってまいりたいと考えております。
  91. 安井吉典

    ○安井委員 食糧安全保障という言葉の中には、食糧の安定的な輸入確保するということも入っているのだというアメリカの言い方もあるわけですね。我々は国内できちっと自給することが安全保障だと思っているが、輸入がちゃんと確保できれば、それが安定的に確保できれば、それでも保障ができるのじゃないかという言い方を向こうがしているようですね。ですから私は、食糧安保という言葉が入っただけで、これはまさに前進的な一つの表現であることは間違いないけれども、これだけで満足できるような事態ではないのではないかと思いますが、重ねて伺います。大臣どうですか。
  92. 甕滋

    ○甕政府委員 我が国の米が国民の主食として、あるいは農業生産の基幹として格別に重要なものであるということは今さら申し上げるまでもございませんが、こういった米の我が国における特別の意味合いにつきまして、諸外国に対しましてもこれまでさまざまな機会にさまざまな角度から説明をし、理解を求めてきたところでございます。また、米の貿易量というのは全世界でたかだか一千万トン程度というように非常に底の浅いものでもございまして、安定供給といった観点から申しますと、一億二千万人の国民の主食を賄うといった観点からいたしましても輸入に頼るわけにはまいりません。国内で自給をしていく必要があるということで、これは食糧の安全保障という言葉だけではどうかというお話がございましたけれども、そういった事柄が背後にございまして、そういったものを全体として諸外国から十分理解をされ、支持されるというような努力を今後積み重ねてまいりたい、ウルグアイ・ラウンドにおいてもそういった主張をしてまいりたいと考えております。
  93. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今、安井先生が言われたのは、アメリカの方で、日本が安全保障を言うんだとすれば自分の方も安定してちゃんと供給してやるから、別にそれで日本の食糧の安全保障は守れるじゃないかということであろうと思うのですけれども、確かにアメリカ側が今までも言ってきている中に、もし日本が本当に食糧に対して不安を持つのだったらアメリカの国内に備蓄したっていいじゃないかという言い方も実は今日までしております。そんなものを背景にしながらそういう言い方をされるのだと思うのですけれども、しかし、私どもといたしましては、今アメリカが確かにそう言うといたしましても、御案内のとおりアメリカ自体の気象状況なんかも非常におかしいということがありますし、あるいは、余りにもかんがいをやり過ぎておるという中で塩害ですとかそういう問題が起こってきているという現実も実はあるわけであります。そういうときに、私ども一億二千万人も抱える国としては、やはり基本的な食糧だけは自分のところで確保するよということはやは り世界の国から理解されるであろうと私は思っております。  そして、確かに日本ではできるだけ自給をあれするんだというお話があったわけでありますけれども、ただ先生もよく御案内のとおり、肉ですとかあるいは酪農ですとかそういうものが非常に進んできた中にあって、その飼料穀物あるいは油糧種子、こういったものなんかを日本国内で本格的にやろうと思ってもなかなか今のニーズ、需要にこたえることはできないであろうということを考えたときに、こういったものは向こうから安定して日本に対して売ってもらわなければならない。これを自分の都合によって売るのをやめたりなんかされたら、操作されたら、輸出国というのはとんでもない力を持ってしまうということになるわけでありまして、こういうものも含めてきちんと輸出国は輸出しなければいけないのですよ、日本みたいな大きな輸入国の立場も考えなさいよという意味も我々が主張する安全保障の中には入っておるんだということでありますし、そういったものを安定して売ってくれなければ、私ども日本としても、また農業をやっている人たちも困るのだということを改めて私ども考えなければいけないと思っております。
  94. 安井吉典

    ○安井委員 食糧の安全保障という言葉は、だから私はこれからのガットにおける闘いの足場だというふうに受けとめて頑張っていただかなければいけない、そういうことだろうと思うのです。この言葉があるからうまくいくんだということではなしに、これを足場にしていかにこれから闘うかということだと思うのですね。そういうおつもりでの御健闘を祈りたいと思います。  それからもう一つ農業保護の漸進的削減という長期目標の場合における表現なんですが、だんだん農業に対する保護措置を減らしていく、そういう中に米のアクセス改善、輸入制限をしているのをだんだん減らしていくというのもこの中に入っていて、それにも我々は同意をしてきたということになると、だんだん一つの私は危険な方向だと思うのですが、そちらの方に陥る危険性が残されているのではないか、そういう思いを断ち切れないわけでありますが、その点はどうでしょうか。
  95. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 今回の中間的な農産物分野における合意の長期の要素の一つといたしまして、ただいまお話がございました保護と支持の水準を一定の期間内に漸進的に、かつ相当、サブスタンシャルという英語を使っておりますが、サブスタンシャルに引き下げていくんだ、それを長期の交渉の目標とするんだということを言っているわけでございます。  それに関連しての御質問でございましたが、そもそも漸進的かつ相当の削減ということにつきましては、御承知のようにそこに合意に至る過程でアメリカあるいは、アメリカが最も強い主張を行ったわけでございますが、ケアンズ・グループもほぼアメリカに追随したわけでございますが、農産物の保護なり支持はこのウルグアイ・ラウンド交渉の中で最終的に撤廃されるべきである、そのことを交渉の入り口で合意をすべきであるということを非常に強く主張したわけでございます。それに対して農業なり農業政策の実情を主張しつつ、保護の完全撤廃ということは現実的でないという主張を我が国あるいはEC等が強く主張した結果、ただいまお話がございましたような漸進的な削減を一定の期間をかけてやるという表現に落ちついたわけでございます。したがって、この漸進的削減という表現は、議論の途中でございました保護を撤廃するという考え方を積極的に退けて、そしてやはり農業保護は段階的により緩和する方向に向かうべきであるという現実的な考え方を取り入れたという意味では私どものこれまでの主張がそこに反映されているということで、我が国がウルグアイ・ラウンド交渉に対応していく上でも、そういう表現に落ちついたということ自体が非常に積極的に評価されるのではないかというふうに考えます。  それから第二に、そういう表現で行われる長期の交渉において、先ほどお話がございました食糧の安全保障その他の非貿易的な要素についても考慮するんだということを言っておりまして、いわゆる経済能率だけで一律に律していく交渉にはしないということが合意されているわけでございますから、この両面から見て我が国の主張を確保していく上でもその手がかりが十分確保されているというふうに認識をいたしているわけでございます。      、
  96. 安井吉典

    ○安井委員 私が伺いたかったのは、段階的な減少ですか、その中に米のアクセス改善というのも入っているのかどうか、そういうことだったわけです。
  97. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、その他の国の農産物なり農業政策の問題をテーブルにのせて議論する場合には、我が国の米の問題についても同様に議論をすることはやぶさかでないという立場をとっておりますので、今の漸進的削減という考え方にのっとって長期の交渉をやる場合に、そういう考え方は当然関係国からは我が国の米の制度につきまして主張がなされるであろうということは十分予測されるわけでございますが、同時に食糧の安全保障というものに配慮をした交渉をやるというもう一つの要素がございますので、そういうものをかみ合わせた中でそれぞれの国の立場からの主張がなされていくであろうというふうに考えておるわけでございます。
  98. 安井吉典

    ○安井委員 ずばりとした答えがないものですから、わかったようなわからぬようなそういう思いになるわけですが、つまり私は、さっき自民党からの質問でも自由化反対というのと市場開放阻止というのを、その言葉はどうなんだというふうなお話が出ましたけれども、そこなんですよね。つまり、自由化をしないがほんのわずかな米ぐらいは入れるのは仕方ないという考え方で国会の決議を読んでいるとすれば、これは私は大変な誤りだと思います。したがって、国会の決議というのは完全自給というところにウエートを置いた考え方で我々は決めているわけですから、その思いをこれからの交渉の中でもきちっと生かしていただかなければいけないということを申し上げておきます。  そこで、今後のガットの交渉の展開の見通しと、これに臨む我が政府の態度、それについてちょっと伺います。
  99. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今回の貿易交渉委員会におきます農業交渉につきましては、今後の交渉の枠組み及び現状の悪化というものを防止する当面の措置、これは短期的な措置でございますけれども、決定されております。本格的な交渉がそれをもとにしてなされるであろうということであります。今後の交渉につきましては、今回の合意によります交渉の大枠に従いまして一九九〇年末の交渉期限に向けて精力的に行われていくというふうに見込まれますけれども、実は各国の主張に大きな隔たりがある現状から、合意達成には相当の努力を要するものというふうに見込まれておるところであります。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては世界最大の食糧輸入国の立場、これを反映した交渉結果、これが確保されるように最大限の努力を続けてまいりますということを申し上げたいと存じます。
  100. 安井吉典

    ○安井委員 今の段階ではそういうお答えだろうど思いますけれども、いよいよ山場に差しかかりますので、ひとつしっかり頑張っていただかなければいけないと思います。  そして、ガットはガットとして、我々はアメリカの態度というのがやはり気がかりになるわけです。先般羽田農相が訪米されて、USTRのヒルズ代表らと会ってこられたそうです。USTRが国別の貿易障壁年次報告を既に米議会に提出をしているわけでありますが、これは新通商法のスーパー三〇一条発動の基礎資料となるわけであります。日本については、例のスパコンだとか半導体等随分大きな問題がたくさんあるわけですが、米については新ラウンドで市場開放を求めていく、 それが適当でなければほかの選択肢も検討するというふうに書かれていたように思うのです。大臣がこの間の訪米に際して、ヒルズ代表らとの話し合いで、新ラウンドで米の問題は協議するということで基本的な一致を見た、そして五月末のスーパー三〇一条の発動対象から米を除外するという確認ですか確信ですかが得られたというふうな報道になっていますが、その辺の内容についてちょ  つとお話しください。
  101. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 アメリカ国内の法律でありますスーパー三〇一、これの適用の対象について、アメリカの中では現在鋭意検討しておるということであろうと思います。  ただ、これは従来からアメリカの方でも二度にわたって、しかも一回は中間選挙、二度目はちょうど大統領選挙、しかも非常に難しい選挙であるというとき、こういったときにアメリカのUSTRは、この問題についてはニューラウンドでやはり議論すべき問題であろうということで実はこれを却下してきております。そういったものも踏まえながら、この前お話ししたときにもそういった問題についてはウルグアイ・ラウンドでお話ししましょうということでありましたから、私どもといたしましては対象のあれから外されるであろうというふうに思っております。
  102. 安井吉典

    ○安井委員 日本の米市場開放に執念を燃やしているのがRMAです。これが今後どのような態度に出るというふうに観測しておられますか。また、どういう対応があるのか、それを伺います。
  103. 甕滋

    ○甕政府委員 今お話しのように、RMAがいろいろな状況から見まして今後我が国の米市場開放問題に引き続いて強い関心を持っているというふうに承知しておるわけでございますが、その出方がどうなるであろうかといったことについて、あれこれ私ども立場から観測を申し上げることは控えさせていただきたいと思います。
  104. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、十分関心を持って見ていただかなければいかぬし、RMAがどう言おうと問題はUSTRでしょうから、そういう点を十分踏まえた対応をぜひお願いしておきたいと思います。  次に、いよいよ季節は麦価の決定の段階に入ってきているように思います。いつごろ決定をなさるおつもりなのか。そのための米審の開催も必要になるわけですね。いつごろのおつもりですか。
  105. 甕滋

    ○甕政府委員 生産者麦価でございますけれども、これは例年六月に決定してきているのがこれまでの経緯でございます。ことしの取り扱いはまだ決めてございません。
  106. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、あんまり遅くなるわけじゃないでしょう、六月というともう間もなくなんですが。七月になりますか。
  107. 甕滋

    ○甕政府委員 これまでの経過は、昨年、一昨年、六月のたしか上旬にこれを決めておると思います。こういった経過、あるいは麦の作期が当然ございますので、そういったことを踏まえまして具体的な日取りはこれから決めてまいりたいと思っております。
  108. 安井吉典

    ○安井委員 もっとも内閣そのものがどうなるかわからぬというふうな状況だから、そう簡単に決められるような状況にないことはわかりますけれども、しかし麦刈りが始まってしまっているというふうなことになっては困るわけですから。そういう点、農民の側は一体どうするんだろうという目をもって見ておりますので、早目にお決めをいただくことが必要ではないかと思います。  そこで、新聞などでは昨年並みの四・六%引き下げを今度もまたやるのだというそういう引き下げの方向で検討を始めたというふうに伝えているわけですが、その点、どうですか。
  109. 甕滋

    ○甕政府委員 価格決定の内容自体、私ども今まだ何も決めていないわけでございます。  いずれにしましても、生産者麦価につきましては所定の算定方式によりまして適正に決定してまいるということになります。
  110. 安井吉典

    ○安井委員 今、国内の麦生産は非常な苦境の中にあります。麦の生産量はこの十年間で二、三倍に増加をしておるわけです。面積がふえたわけですね。しかし品質問題もあって消費は停滞をし、北海道を初め全国的に昨年の麦の生産も取引契約も結ばれないままになっている量が全生産の一四%に及んでいるというふうな状況です。そのうち新しい麦の刈り取りが始まるということです。製品輸入も増加していますね。こういったようなことが国内の麦の消費をおくらせているということにも言えるわけですが、こんなようなことから内外の麦のいわゆるコストプール方式を見直しするというふうな問題が出ていたようでありますけれども、麦管理の基本をやすやすと変えるというふうにはいかぬと思うわけですね。その点どういうふうに考えておられますか。
  111. 甕滋

    ○甕政府委員 麦の問題につきましては、ただいまも委員御指摘のとおりの状況がございます。大幅な内外価格差のもとで麦加工製品輸入が非常にふえております。原麦換算で十六万トンという大きな量に達しております。特に小麦粉調製品がこのところ急増を見ておる、こういう状況がございまして、需要者サイドも大変危機感を持っているのが実情でございます。  また、国内産麦は、昨年豊作ということもございまして、供給量が増加して全体で百万トンを超える、こういうような状況になっておりますが、品質問題あるいは用途等の制約がどうしてもございまして実需者による円滑な引き取りがだんだん難しくなっている、深刻になっているというような状況がございます。そこで、六十三年産麦につきましても現在九万トン程度が未契約という状況になっておりまして、特に産地によりましては本年産麦が出てくるのに倉庫がまだいっぱいである、何とかしてくれ、こういう切実な問題にもなっているところでございます。需給の不均衡がそういった形で顕在化してきているのが最近の状況でございます。  これは、この一月に麦の売り渡し価格を決めました際にもそういった麦をめぐる全体の状況が大きな論議となりまして、コストプール方式についてもこれは検討しなければならない、全体の生産、流通、消費についてはいろいろ見直していかなければならない点があるんじゃないかといった論議も行われておりまして、そういった麦管理をめぐる全体の課題、これに適切に対処していくために、今後コストプール等を含めましてやはり制度的な検討も必要になっているという感じがいたしておりますが、おっしゃいますように現在の日本の麦生産状況等も踏まえまして十分慎重な検討を要するものと考えております。
  112. 安井吉典

    ○安井委員 麦がこんなに物すごくふえてきているというのは、これは米の生産調整、転作が麦に進んでいるものですからぐんぐんふえてしまっている、こういうわけです。麦も余るからまたこれを減らせと言ったって、米にまた戻るわけにはいかぬだろうし、生産農民にしてみれば、米はだめ、麦もだめ、じゃ何をつくればいいのかというふうな問題にまで行くわけなんです。転作の問題は後でもまた触れますからその際にお答えを願いたいと思うのでありますけれども、そういうふうな状況に置かれている麦問題であるだけに、今日の苦しい状況を救うために積極的な対応というのが必要ではないかと私は思いますので、その点をひとつ申し上げておきたいと思います。大臣、どうですか。
  113. 甕滋

    ○甕政府委員 麦をめぐります状況、るるお話ございましたので、その麦管理をこれからどうしていくかといった点、慎重な中にも、やはり現実に解決を要する問題が切迫しておるわけでございますから、前向きな改善方策に積極的に取り組んでまいりたいと思います。大臣とも御相談をして進めてまいりたいと思っております。
  114. 安井吉典

    ○安井委員 次に脱脂粉乳とバターの計画輸入の問題に触れたいと思います。  政府は去年、ガットの自由化勧告を乳製品については拒否したわけですね。しかし国内の需要に国内生産が追いつかないものですから、緊急対策というようなことで四年ぶりに脱粉や六年ぶりにバターの緊急輸入をしたということであったと思います。政府の見通しが悪いからだということの 指摘があって、そのためか今度は当初の需給計画に初めて輸入計画を織り込んだものにされているわけであります。そのこと自体私どももいろいろ問題があるということの指摘をしておったわけでありますが、大体政府の考え方としては、いつごろ、どのように輸入をするおつもりなのか、それを伺います。
  115. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 脱脂粉乳、バター等のいわゆる特定乳製品の問題につきましてただいま先生からいろいろ御指摘があったわけでございますが、平成元年度につきましては、御承知のとおり、先般保証価格等の決定の際にこの特定乳製品の用に供する国内産のいわゆる加工原料乳の限度数量を決めておるわけでございますが、この決定の前提といたしまして、諸般の情勢をベースに置きました生乳の需給計画といいますか、需給見通しを出しております。  この見通しの内容も御説明をしなければいけないのでありますけれども、御承知のとおりでございますが、基本的には、この二年ほど大変好調な飲用牛乳あるいは特定乳製品需要の影響を受けまして、国内産では完全にカバーできないという見通しを私ども持っております。結果的には、生乳換算で約二十六万トン程度のいわば加工原料乳不足という状態が見通されております。この中で約六万トン強が、これは生乳換算量でございますが、御承知のとおり学校給食用あるいは沖縄の特別枠として従来から実施をしておるものに対応しまして、差し引き生乳換算量で二十万トン程度のいわば事業団一元輸入制度のもとでの特定乳製品輸入が必要になるであろう、こういう見通しを実は最終的に提示をしまして、いろいろ御論議をちょうだいして、このことを前提にして先般の価格決定なり限度数量決定をしております。その結果、この二十万トンという生乳量を品目別に換算をしていきますと、私どもの考え方としては、脱脂粉乳で約一万三千トン、それからバターで一万トンの実量に相当することになるであろう、これは畜産振興事業団の一元輸入対象になるものとして考えた場合です。  これにつきましては、一応これだけの輸入の枠があり得るということを明瞭にするために五月十九日に枠の輸入公表をしたところでございます。現実にその後の状況を見ますと、依然として、先般決めましたこれら特定乳製品の安定指標価格に対しまして、現実の市況は大変強含みに推移しております。大変大ざっぱに申し上げますと、脱脂粉乳については安定指標価格に比較して七%を若干超えるというふうなレベルで推移をしておる。それから、バターで申し上げますと、設定をした安定指標価格を大体一〇%弱、約九%台ぐらいのところでオーバーをしておりまして、やはり夏場に向けての需要が非常に堅調であるということを反映いたしまして、夏場に向けての不足が懸念をされる状況でございます。  したがいまして、ただいま申し上げました脱脂粉乳一万三千トン、それからバター一万トンのうち、脱脂粉乳についてはとりあえず八千トン、それからバターについては五千トンを夏場の需給逼迫時に向けて国内需給の安定を図るために早急に手当てをする必要があるということで、本日午前中に発注、入札を行ったという状況でございます。
  116. 安井吉典

    ○安井委員 時間がもっとあれば中身について伺いたかったわけでありますが、この問題についてはやはり国産の牛乳を主体とすべき原則があるわけですね、今の不足払い制度というのは。輸入自由化に道を開くようなことに先行きになっては、これは困るわけです。ですから、国産優先の原則というのを忘れることなく、今後とも慎重な運用をしてほしいということだけ一つ注文をしておきます。  次に、農政審の報告と米問題について基本的な問題がたくさんあるものですから伺いたかったわけですが、割り当ての時間が大分なくなってまいりましたので、次に米価とか水田農業確立の後期対策の問題について触れます。  米価の問題については、ガットの短期措置現状凍結ということが米価決定にどんなような影響が出てくるのかということが一つ。  それからもう一つは、昨年の新米価算定基準、一・五ヘクタール以上の農家の生産費を基準とするということが政府と自民党で確認をされていたわけでありますが、それをそのまま適用するおつもりなのか。  それからもう一つは、いつごろ米価決定をされるおつもりなのか、その三点について伺います。
  117. 甕滋

    ○甕政府委員 まず第一点のガットのウルグアイ・ラウンドの決定、合意が米価にどういう影響があるのか、こういうお話でございました。今回のウルグアイ・ラウンドの中間合意の短期措置におきまして、行政価格は現行の法制の枠内で現行基準を超えて引き上げない、こういった一般的な合意がございます。それではこれが本年の米価算定の決定内容を直接制約づける、こういうものかという点になりますと、個別の米の価格について直にこれを制約するものではないのではないかと理解しております。ただ、全体の精神は農業保護の凍結、削減ということを基本的な考え方としている点に留意する必要はあろうかと思います。  第二点の米価の算定方式でございますが、全体として生産者米価についてことしどうするかといった点は、具体的にはまだ何も決めておらないわけでございますが、新算定方式は、ただいま御指摘がございましたように諸般の事情により昨年は適用いたしませんで、本年産米から適用するとされた経過がございます。毎年の価格決定でございますので、昨年の経緯あるいは米審の論議等は当然踏まえて対処することになろうと思っております。  それから、第三点の米価の決定時期でございますけれども、現時点で私どもは何も決めておりません。
  118. 安井吉典

    ○安井委員 大臣は何か参議院の質問に対する答弁では、新算定基準の適用は慎重であるとかなんとかいうような言い方をされたと新聞では報じられておりますが、どうでした。
  119. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今米価についてどういうふうにあれしていくということについて、まだ何も決めておりませんということは申し上げたのではないかと思います。そうだったと思います。
  120. 安井吉典

    ○安井委員 これは速記録をもって言うのではないけれども、新聞の記事で、去年のものを適用することについては慎重であるべきだと考えます、そういう言い方をされたと報じられています。それで聞いたわけです。よろしいですね。
  121. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 先ほどから食糧庁長官がお答えしているとおりでありまして、私がもしお答えしたとすれば、現在のところまだ米価の算定につきましてはどうこうするということについて私どもはあれしておりませんということでありますけれども、これは米審で答申をいただいたものについてでありますから、私どもとしていろいろな角度から検討することは当然検討しておるところであろうと思っております。
  122. 安井吉典

    ○安井委員 これは一部の報道を基礎にして私は聞いているわけですから、いずれにいたしましても、一・五ヘクタール以上の生産費を基礎とするということについて、去年も政府と自民党の間で確約はできたかもしれないが、農民からは大きな反発があります。それがそのままになっています。ですから、ことしの場合はそれをそのまま直に入っていくということについては、大きな問題があるということだけ私は指摘しておきます。  それから、水田農業確立の後期対策についてもう検討がそろそろ始まっているのではないかと思うのでありますが、今度の農政審の答申にも、政府買い入れば減反の実施者に限定するというふうなことが書いてあったり、生産調整は生産者と生産者団体の組織的な対応を強化して主体的に取り組むという表現もあります。そういったようなものも基礎になって、いわゆる後期対策なるものの考え方が決まっていくのではないかと思うのですが、現在どんなような方向にありますか。
  123. 吉國隆

    吉國政府委員 水田農業確立対策の後期対策の検討状況ということでございますが、先生もただ いまお触れになりましたように、農政審議会の小委員会の報告が出されております。ただいまその要点について先生からもお話がございましたが、生産者の主体的な取り組みを進めていく、また生産調整面積の配分において地域の特性等にも配慮しながら米の需給動向なり市場評価を踏まえたものとしていく、また生産調整の手法について地域の創意工夫を発揮させるように配慮していく等の指摘がなされているところでございます。私ども、こういった報告の趣旨との関連も当然に踏まえながら検討を進めていく必要がございますし、また今後の米需給の動向等も見きわめながら検討してまいる必要があるというふうに考えているところでございます。  この水田農業確立対策がスタートしまして以来、生産者、生産者団体の主体的な取り組みを基礎に推進するという考え方になっておりますので、私ども後期対策の内容を検討するに際しましては、生産者団体とも十分に協議しながら内容を固めていく必要があるだろうというふうに思っておりますし、また一方で、地方公共団体の意見もくみ上げながらこれから検討を掘り下げていく、こういう段階になっているところでございます。
  124. 安井吉典

    ○安井委員 いつごろ結論を出すおつもりですか。
  125. 吉國隆

    吉國政府委員 来年からの生産にかかわります事業でございますので、本年秋までには決定する必要があるというふうに考えております。
  126. 安井吉典

    ○安井委員 質問時間が限られておりますので、多くの問題はかなりカットいたしましたし、さらにまた林業と水産の問題はもう全くカットということで十分に意は尽くしておりませんが、最後に農水大臣にお願いをしておきたいのは、あれは今から何年前ですかね、農林省が農林水産省という名前になったのは。当時私は内閣委員会の所属で、農林省設置法の改正法案の審議をしました。あのときに、あれは中川大臣のときでしたかね、農林水産省の名前になって、名前が長いから略称ということで、農林省ということになると前とちっとも変わりないからそれで農水省というようなことに略称が定着したときに、農水省というとそのスイという字は衰えるという字、農が衰える役所だというふうなことになりやしないかというのがちまたで話題になりました。しかし今、農業生産力の上がった部分ももちろんありますけれども、農地は減り、農民は減り、とりわけ自給率が落ちてきているわけですね。ですから、これはもう名前のとおり農衰省になってきつつあるのではないかということの心配を持ちます。ですから、これはもう近くおかわりになるのかもしれないけれども、今後とも農業に対する大きな関心をお持ちでいかれる大臣だと思いますから、特に今後の段階においても内外ともに非常に重要な段階を迎えている日本農業の問題への取り組みを、ひとつ農衰省じゃなしに農盛省、盛んにする方ですね、そういうことにするぐらいのおつもりでバックアップしていただかなければいかぬと思うのですね。最後に伺います。     〔委員長退席、月原委員長代理着席〕
  127. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ちょうど私が鈴木大臣のもとで農林政務次官をやっておりますときに二百海里問題が起こりまして、そしてこれを何としても力づけるということのために水を入れようということで、中川大臣のときに内閣設置法の改正でこれは農林水産省というふうになったということでありまして、まさに、ごろといいますか、字をそのままほかに当てはめますと衰えるとも実は読める字になるわけでございまして、そういったことを考えたときに、私たち本当にそういう御指摘もあるかなと思います。  しかし一方では確かに、農業というものが明るい面、例えば新しいバイオですとか新技術なんというものも進んでまいりましたし、あるいは農産物そのものが輸出もされるようになってきておるとか、また地方地方によりましては創意工夫なんというものが生かされるということで、むしろ工業の方から逆にUターンしようなんという動きなんかも出てきておるということでございます。  そういう意味で、今安井委員から御指摘がございましたように、まさに国の基本として、やはり農業、林業、水産業というのがおかしくなってしまったら国の基本というものはなくなる。私は別に農本主義者というものでもありませんけれども、しかし農、林、水というのはやはり国の基本であるというこの原理は私は不変のものであろうという確信を持っております。その意味で、まさに農業を盛んにする、林業、水産業を盛んにする、そんな政策をこれからも強力に進めるために、また先生方の御指導もいただきながら、私ども農林水産省一体となって努めてまいりたいということを申し上げたいと存じます。ありがとうございます。
  128. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 竹内猛君。
  129. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先般の大臣の所信の表明に関連をして幾つかの質問をいたします。  長い間原案が保留されていたのかもしれませんが、大臣の表明の中に重大なことが落ちているのじゃないか。何が落ちているかというと、最近の農村の事情からして、連鎖反応的に農青連あるいは総合農協、単位農協あるいは地域別の農協が、与党である、責任政党である自民党から離れてきている、これが大変目立っていますね。そしてそれが各地の選挙にあらわれております。こういう原因というものはどこにあり、それをどうしたらいいのか、この点について十分なお話がなかった。これをどういうふうにされたらいいと思いますか。
  130. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 確かに報道等によりまして農政批判というのが起こっておること、これは私どもも新聞等で拝見をいたしております。ただ、これがどうして起こってきたかということにつきましては、牛肉ですとかかんきつ、十二品目日本の基本的な農業生産物、農産物、こういったものが自由化等措置がなされたということについてやはり一つの不安があるということは事実であろうと思います。それからもう一方では、いわゆる合理化あるいは基盤整備等を国も支援しながら進めてきた。そういう中で、全体的なコストが下がる、そして消費者あるいは実需者の皆さん方のニーズにもやはりこたえなければならないという一方の要請があります。そういうものにこたえるために、これも農業者の皆さん方といろいろと話し合いをしながら、御努力によって価格の引き下げというようなものもあります。そういうものが全体的に理解されるというのにはやはり多少時間がかかるということであろうと思う。そういう中で不安があり、そしてまた不満があるということが、ちょうど今またリクルート問題というような問題が起こってきたという中でこれが一緒になって、また消費税という新しいものが実は出てきたということで、それのもう一つのあれとしてそういう土壌の中でそれが育ってしまったということ、私は本当に残念だと思っているのです。  この自由化はしないで済むのだったら、これは私も自由化は何とか阻止したいと思って必死になって努めた人間であります、きのうも滝沢先生の御質問等にもお答えをしたわけでありますけれども。しかし、ガットという一つの国際的な機関の中に私どもも入っているわけでありまして、その中でこれがルール違反だよと言われたものに対して全部断ってしまうということになったら、日本としてなかなかガットの中で立ち至っていかないであろうということであろうと思っております。そういう中で措置がされたものであり、またそういうものを踏まえて牛肉とかかんきつというものはガットの場で議論したときに、果たして本当に日本農業、畜産あるいはかんきつというものを守ることができるのだろうか、だったら少しでも有利なものをかち取ろうということで、日米関係で話し合い、そして国境措置あるいは国内措置というものも、これはある程度評価されるものを私ども確保したと思っております。しかし、残念ですけれども、そういったものが理解されておらないというところに、ちょうどほかの問題などと一緒に一つの柱にされてしまっておるということが残念で、私どもはこういったものはさらに時間 をかけてみんなの理解を求めていかなければならぬと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、今後の農政の展開に当たりましては、このような状況も踏まえまして農業生産性向上をさらに図っていくこと、それから農業の将来に対して希望を持って営農にいそしめるような農業構造の改善、農村地域活性化あるいは技術の開発、普及など諸般の支援策、これを一層積極的にひとつ進めていきたいと思っておりまして、私は基本的に日本の農政というのは間違っておらないという確信を持ってこれからも進めていかなければならぬと思っております。
  131. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 軌道を修正していくのは結構なのだけれども、六十一年の同時選挙の直後、これはよく新聞にも、それから玉置和郎さんの遺書の中にもかなり書いてあったけれども、当時の中曽根総理が、自民党の性格を今までは農村政党であったが都市政党に徹するということで一年生の議員を集めて講演をしておる中に、食糧は外国に安い食糧があるからそれを輸入して都会の主婦に喜んでもらう、応援してもらう、それから消費税は導入してサラリーマンに対して所得減税によって喜んでもらう、この二つは大事だと。あのときには確かに都市からも農村からも票をもらった。また、今までの農村の、医師会あるいは特定郵便局、農協を中心とした御三家から離れてもやっていけるのだ、そのうちで農協は、今まで選挙に応援に来るけれども、いろいろ言うけれどもどうも票にはならぬ、あんたは力があるからひとつ手を入れて査察をしなさいとやったことがありますね。  あれ以来農業に対する厳しい仕打ちが次々と行われてきて、それが今日に移ってきたということについての歴史は、まさか違ってませんね。
  132. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 前総理がどこでどんなふうにあれされたか、しかし、たしか一部報道されたことを私も記憶いたしております。そして、そういうものをもとにしながら私自身、農業というものはどういうものなんですよということ、それから一つの国家あるいは社会の中にあって農業の果たす役割、食糧の果たす役割、あるいはそういったものが自然環境保全、こういったものにも大きく及んでいるのだというお話を申し上げました。それに対しまして前総理は、そのことについては確かに言葉が何かいろいろなところが抜けたりなんかして報道されておるけれども、私もそのことについてはきちんと理解をしておるつもりである、しかし、もし言葉が変なふうにあれされておるとしたら、それは君たちの今の議論というものを了としようという話でありました。そして、たしかあのときに、RMAから米の問題などが起こったときに私は訪米いたしました。そのときにも中曽根総理に事前に会ってお話しをしましたときに、君の今の考え方をきちんと主張してくることを私は支持するということまでお話しをいただいたわけであります。  いずれにいたしましても、私はかつての政務次官あるいは党の部会長、そして総合農政調査会長、二度の大臣とずっと農政を担当してきておりますけれども、少なくも常に、党でも院でもまた内閣にあってもずっと農政を責任者として担当してきておりまして、それをそれぞれの内閣の皆さん方は総理大臣初め理解を示してくれておりましたし、まただ支援をしてくれたということであります。ですから、言葉の端々ですとか表に出るものにはいろいろなものが何か前後がなくなってしまって出たりすることがあるのでしょうけれども、そういった点についてはきちんと理解されておるということを私は確信をいたしております。  ただ、いろいろな、農業組織も非常に大きくなったこと、金融などについても自由化がなされてきておるということ、またいろいろな批判があること、こういったものを踏まえて、農業たちが生きていくための組織であるのだから、それに対応できるようなきちんとした体制をつくるためにこれは自主的にやってもらうこと、これはひとつあなたの方からもお話しいただきたいなということを話を聞いたこと、そして話をしたことを今記憶をしております。
  133. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この議論をすると時間がなくなってしまうが、毎日新聞の袋一平さんの本であるとか、あるいは玉置和郎さんの遺書であるとかあの人の伝記、そういうのを見ると、中曽根総理からこういうことを言われてこうやりました、ずっと書いてあるのだから仕方がない。これはよく読めばわかるわけで、悪いところは直してもらわなければ、今さら何とも言えない話だ。それはそれでいいです。そこのところはちょっと食い違いがある。それで、外圧を通じても米などは少し開放しなければいかぬということも言ったことがあるのですね。それは新聞が間違えていれば直さなければならぬ。  そこでたどってみると、今日の問題は、農協の青年の諸君あるいは心ある経営者が非常に心配しているのは、決めたことが確実にやられてこないというところに問題があるのじゃないか。財界に遠慮し過ぎている向きがありゃしないか。  まず農業基本法を決めましたね、三十五年から始まって三十六年に。これも今度の消費税を押し切ったように、社会党が入らない国会で強引に農業基本法は押し切られた。農業基本法を押し切ったのは三十年ぐらい前ですね。あのときに、都市の働く者と中核農家の所得は均衡にするのだ、実力のある農家を百万戸つくるのだ、こういうことを明らかにしながら今日まで来たけれども、そういうものは実態がないですね。むしろ農家の構造はがらっと変わってしまった。その前文などはまことに崇高なものですよ。あの農業基本法の前文を読んでみればみるほどいい。こんないい立派なものがあるのに、それがなぜ守られないか。あれを見たら大変でしょう。こういうことから考えてみて、生産性向上であるとか輸入の問題であるとか価格の安定であるとか、ともかくいいことが書いてあるけれども、それが守られない。  あるいはまた、五十五年には自給力の確保ということで安全保障としての農業、食糧、こういうものを決議しておるし、続いてその後にも何回か自由化の問題についても決議をしている。こういうことが決議のしつ放し、決めっ放し、そして国会でもしばしば質問したけれども、それは議会の中のやりとりにすぎなくて実際に移してこないところに、じりじり後退していく。そして工業製品の輸出のために農業が犠牲になるという印象が農家には強いのですよ。それは確かに農家の子弟が工場に行って輸出するものをつくっているわけだから、それを全部だめだと言っているわけじゃないけれども。そうじゃないですか。そういう点についてどうですか。
  134. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先ほど竹内先上から農業基本法の問題につきましての御提起があったわけでございます。  この農業基本法は、昭和三十六年、農業部門におきます就業人口の減少であるとかあるいは食糧消費の構造の変化といういわゆる曲がり角に対処いたしまして、農業近代化を推進し国民経済の均衡ある発展を確保するという観点に立ちまして制定されたものでございまして、二つの目標、八つの施策を内容としております。この基本法の二つの目標は、先生御指摘の他産業との生産性格差是正のための農業生産性の向上であり、かつ農業従事者と他産業従事者の生活の均衡にあります。  この経過を振り返ってみますと、制定以来今日まで二十八年をけみしたわけでございますが、需要の増大に対応いたしました畜産物の問題あるいは果実生産等の拡大につきましては、特に施設型農業部門を中心といたしまして生産性向上が実現をされてまいっております。  所得の問題に関連いたしまして、農外所得を含めた農家の世帯の所得水準を比べてみますと、白書等についても書かれておりますとおり、三十五年の七五・九%から昭和五十年におきましては一〇〇%を超え、六十二年には一一三%になっているというようなことで、勤労世帯のそれを上回る水準に達しているわけでございます。  なお、この点に関連いたしまして、農外所得を 含めたというように申し上げましたが、専業農家のうち基幹男子専従者のある農家を比べてみました場合、ことしの白書に特に書かれておりますとおり、六十二年で他の勤労所得に比べまして八七・五%ということで下回っておりますが、時系列に申し上げまして、先ほど触れましたように基本法当時の七五%、専業農家だけをとります場合に六七・五%という数字がございますが、その点につきましては改善の動きが出てきているわけでございます。  一方、先生御指摘の自立経営の問題でございます。  この点につきましては、所信等についても大臣からお話をしておりますように、我が国農業におきます国土条件の制約あるいは我が国の経済社会におきます土地の特異的な役割といったようなものから、土地利用農業部門におきましては経営規模の拡大の停滞というのがあることは事実でございまして、先ほどの数字を申し上げますと、農家の自立経営の場合に戸数からいきまして五・五%程度の数字になっております。ただ、これにつきましては、施設型農業につきましては養鶏等々におきまして七割を占めているという、生産額の上ではそういうふうな数字がありますが、稲作等については一四%というようなことでございます。  そういった事態を十分直視いたしまして、現在の中で農業基本法が提起しておりますように生産性が高く、産業として自立し得る農業を確立するために、農業構造の改善等々の施策、各般の支援策を講じて農業生産体質強化農業者の生活の安定を図っていかなければならないというように考えておるところでございます。
  135. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 説明があったように、説明のしようによればそういう理解もできないところはないが、全体としてはやはりどうしても農業自体が、例えば今度の白書にもあるように農家所得というものが七百万ある、その中で農業所得が九十四万で百五十万というものは贈与で、農外所得が四百何万、こういう状態というものは、これは通常な形じゃないんだな。だんだん農業所得がうんと減った。これは農業白書にちゃんとそういうことが書いてあります。  そこで、外国との交渉の問題について、大変御苦労されていることはよくわかるのです。それはもう審議官もよく行かれるし、特に羽田農林大臣は個人的にも努力をされたし、大臣としても何回か努力をされたし、それはよくわかるけれども、農家の方から見ると、アメリカにウエーバーがありECに課徴金制度があって、それは確かに日本は後から入ったから、後から来た者は何をされたって構わないんだ、ひっくくられたって構わないんだというけれども、大会をやれば、何万人の大会の中で自民党の国会議員がみんな鉢巻きしていって反対だ反対だということでやる。社会党も反対だ。日本じゅうが反対している。けれども帰ってくると、やはり押し切られてしまって、課徴金の問題で頑張ったけれどもその課徴金も崩れてしまって、もう牛肉オレンジもやがて自由化になる。そうすると、それは外交交渉だから、秘密だから話はできない、一々アメリカがこう言ってこっちがこう言ったと言うことはできないけれども、その辺の我が方が主張したこと、向こうが言ったこと、どうしてもそれは理解をしてもらわなければ困るんだというその説明は余りされていない。だから、何ぼ頑張ってみてもこれはだめかなという形でだんだんいって、結局、例えばミカンなんかにしても三百万に対する百八十万、そういう形で二万二千ヘクタールをあれしなければならぬ、こういうような形になって、その後始末はしているけれども、桧垣徳太郎さんに対する地元の声はそれは厳しいですよ。そういうことがずっと末端までいっているのだから、その辺のことについて。  それからもう一つは、今度の場合も食糧安保というものは入ったけれども、しかし前川レポート、経構研の報告などがあって、農水省の農政審議会の報告によると、自給率というものが抜けて供給力という形になっている。供給力と自給力とは大分違うですね。それから食糧安保という言葉も抜けてしまった。いつの間にかすっと抜けてしまっている。供給力ということになると、一たんあった場合に物を供給すればいい、自給力というのは、我々の理解によれば、その国の土地と土壌と労働力によって物をつくっていくというように理解をするわけだ。そういう点ではどうも後退をしているんじゃないかな、理解がしにくいな、こういうことなんです。いかがですか。
  136. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御指摘の自給力と安全保障の問題、あるいはそういった考え方のほかに農政審議会六十一年十一月の報告に使っております国内の供給力と申しますか、供給力といったようなものの差異についての御質問があったわけでございます。  この点につきまして、農林水産省といたしまして食糧自体の重要性、特に国民生活にとって最も基礎的な物資だという認識は変わっていないわけでございます。特に一億二千万人に及ぶ国民に対しまして食糧の安定供給を図っていくということは、大臣が繰り返し申し上げておられますように、農政の基本的な役割だというふうに考えているところでございます。農政審議会のこの報告は、二十一世紀へ向けての農政の基本方向において国内の供給力の確保に努める必要があるという点を指摘しておりますし、また別のところにおきましては、現在自給しております米等については維持をしていくんだということも明記しているところでございます。  ところで、この供給力あるいは自給力という言葉の差異でございますけれども、結論的に申し上げますと、私どもの考え方といいますかこの農政審の考え方は、従来の自給力といったような言葉の趣旨を変更するものではない、さらに、昨今におきます農業、農政に対する内外の諸要請等にかんがみ、生産性向上により国民の納得し得る価格農産物を供給していくことが重要であるという意味をあわせ込められたものというふうに理解をしているわけでございます。  今後とも、制約された国土条件のもとでも可能な限りの生産性の高い農業生産を展開をいたすとともに、平素からすぐれた担い手、優良農地、水資源の確保等を行いまして、農業に課せられました使命を全うしていかなければならないというように考えているところでございます。
  137. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 説明があったわけですが、かんきつにしてもあるいは養蚕にしても、あるときには大事だから桑を植えなさい、補助金も出します、こういうことで大分議論をしたことがある。一人前の畑になるのには三年かかるのか五年かかるのか、私は五年ぐらいかかるだろうと。そうしたら、いや三年で大丈夫だという話が農林省の方からありました。それで、減反のかわりまでして桑畑をつくってきた。ところが今度は、もう養蚕は過剰だから、事業団に生糸が余ったから、基準価格を下げて桑を抜いてしまう。ミカンも同じように、植えなさい、植えなさいと言って、今度は切って捨てろ、こういう話だ。ある程度株を残して、そこへ接ぎ木ぐらいして別なものをやろうとしても、それはだめだと言う。だから、はげた山がそのまま残り、切り取られた木が無残なものになってしまう。一貫性、どうもこれが不足しているのではないか、展望がないのではないか、そういうことが信頼を置けなくなってきたということの根っこにあるのではないか。  私が今ここで言っていることは、最初の問題に関連をして申し上げていることです。ずっとそれを並べて、幾つかの例を挙げて言っていることだ。桧垣徳太郎先生のような立派な全国農業会議所の会長さんの足元で、そこでミカンをつくる皆さんがあれだけの努力をされながら、なおかつ初めて今選挙を前にして支持をしないということを言われることは相当な決意が要ると思う。そういう決意をしなければならないほど青年が考えているということは、大変これは大事なことではないか、しっかりこれはかみしめる必要があるだろう。あるいはまた大分県でもそうです。  私もこの間福岡の選挙に行ってきました。あの 地域は、筑後川の周辺は、花卉、花と植木、見る花と食べるカキの産地であり、同時に水田でもある。いろいろな地域の特産物があるけれども、そういうものも大事にしながら農業を一生懸命やっている皆さんが、やはり中央と違った形での努力をされている点もある。地域農業というものも今盛んに進められている。けれども、基幹的なものはやはり米を中心としてやっていかなければならない。  米の問題は、先ほどから安井委員が、後からまた前島委員が言うかもしれませんが、ともかく、決めたことについては何とかしてそれを守っていく、そのためには国際的にも国内的にも努力をするということがなければ、一貫性を持たないということで場当たりではないのか、言い逃れではないのか、これが大きな原因ではないのかなというふうに思っているんだけれども、これは間違いであれば私が訂正しなければならないが、どうでしょうか。
  138. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 間違いと言うつもりはありません。ただ、場当たり的とかそういうものでないということを――これは先生もずっと国会でこうやってあれしながら全体を見ていらっしゃいますけれども、要するに、我々の食生活そのものもがらっと変わってきてしまっているわけです。私自身、生糸の需要拡大なんということを必死になってやってきた人間でありますけれども、やはり生活そのものががらっと変わってしまっているわけなんです。  例えば結婚式なんか出るのは、昔は一日仕事で御婦人は出たものです。そうすると着物なんかもきちんと着る。しかし今の場合には、お勤めに行ってその間に結婚式に出て、また友だちと一緒にそれこそディスコに行くなんというときになかなか着物を着ていけない。だから、無理して着物を着るということは無理だということ。それで、ああいうときに本当にあれで機屋さんがつぶれてしまったら、それじゃだれが日本の生糸を買ってくれるのかということ。やはり一時的に撤退をし、そして新しい需要を拡大をし、そういう中で物事を進めていかなければいけない。一つの大きな基本的な動きの変化に対して敏速に、しかも的確に対応していかなければならないということもあるのじゃないかなというふうに私は思っております。  しかし基本は、特に食糧にかかわるもの等につきましても、あるいは農業につきましても、例えば自給力、今供給力ということで御指摘がありましたけれども、あれも「国内の供給力」ということがきちんと書かれて、「国内」という字が書かれているということは、自給力と語意は私は変わらぬと思うわけでありますけれども、やはりいつでもどういうときでもきちんと対応していけるような基盤の整備ですとかあるいは水の確保ですとか、それに対応する農業たち、こういった人たちの育成ですとかあるいは技術の開発ですとか、そういうものを私たちは蓄えていく、この基本は決して変わっているものじゃないし、私はこれからもそれは進めていくべきであろうというふうに確信をいたしております。
  139. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 一遍使った言葉を余りいろいろな形で取りかえて解釈しないようにした方がわかりやすいですね。同じ言葉なら前の言葉を使っていった方がいい。この方がわかりがいい。やはり言葉をかえるにはそれだけの理由があってかえているわけだろうから。  そこでもう一つ一つも二つも申し上げなければならないが、昨年中は私どもは各地を歩いていろいろ現地に入ってきました。その中で幾つかの問題については、それぞれの部署で努力をしていただいて従来よりも前進したところがあります。ありますが、まだまだ問題がある。  これは調査をしてもらいたいわけですけれども、この間、石川県の能登半島に三回目の調査に入りましたが、そこでは四十六年の事業があり、ライスセンターをつくり構造改善事業をやった後で、生産組合をつくりながらそこの組合長が、どういうことかわかりませんがその地元に住めなくなって、今富山県に入ってしまっている。県の方で調査をしてもらっても、その調査の結果は明確ではない。本人に会ったけれども、本人も書類が十分でないと言っている。十年で書類はもうなくなってしまっているという話ですから、それでは非常に困るではないか、やはりその種の問題は、そこには農地もあり施設もあり運営もしているのですから、ぜひ十分に調査をして地域の信頼を取り戻してもらいたいということをお願いしたいわけです。せっかく国が予算をつけて指導したものが、地域で紛争を起こして、そしてその代表がいなくなってしまうというようなことは、大変農政上の信頼に欠けることである。これだけのことではすべてのことが決まりませんから、ここで答弁をしていただくことは要りませんが、やはりぜひそういうことがないようにしてもらいたいものだなと思っております。
  140. 松山光治

    ○松山政府委員 お尋ねの点は、石川県の柳田東部地区というところで、お話がございましたように四十六年から五十一年まで構造改善事業をやっておりますが、四十七年につくりましたライスセンターにかかわる話じゃないかなというふうに考えております。  何分にも十何年前の話でございますし、私どもつまびらかにしておらない部分が多いわけでございますが、生産組合が事業主体になりましてライスセンターをつくったわけでございますが、四十七年につくりまして、その後施設の運営が必ずしもうまくいかないということで欠損金を抱えるに至ったというので、四十九年に施設自体は農協に移管いたしまして運営がちゃんと行われているというふうには承知をいたしております。  それで、その際の欠損金の扱いがどうなったのかといったようなことにかかわるお話かなというふうに思うわけでございますが、何分にもちょっと前の話でございまして、今、私申し上げましたところまでしかわかっておりませんので、よく事情を調べさせていただきたいと思っております。
  141. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはいろいろ理由があると思いますから調べていただいて、地元の人たちに、現地の人たちに不信を起こさせないようにひとつちゃんと資料を整理してもらいたい、このことです。  そこで今度はもう一つ、リゾート開発の問題について意見を述べたいと思うのです。  このリゾート問題というのは、最近は各地でリゾート、リゾートという言葉が伝染病のようにもうあちこちにはやっている。この間、新潟県の湯沢に行ってきました。この辺はリゾートマンションが全国の三分の二くらいそこにできている。やがて七十五棟ができるであろう。しかし利用率というのは、聞いてみると年間で七%だ、一戸が二千五百万から少し高いものになると一億円というのですね。これは大資本、商社が後ろにいて、ダミーが地上げをしてそれでつくっている。町も大変困っています。法律に違反をするような条例をたくさんつくっております。交通難あるいは交通渋滞、ごみ処理、下水道、いろいろ都会で起こるような公害が起こっておりますね。そういう点で大変困っております、これはその中心地ですけれども。もう一つ、今度は国有林を使って林野庁が指導している苗場スキー場近くにあるところのふれあいの町といいますか村といいますか、そういう緑の中に住宅をつくって、まさにこれは十分憩いができるようなそういう施設をつくっている。これはなかなか立派なものであり、いろいろ聞いてみると、まだ黒字にはなっていないようだけれども、やがてはこれは大変愛されるであろう。今は苗場地区であるけれども、やがて北軽井沢にもやりたいという話でありました。  そこで問題はやはりこの土地の利用。土地所有権というものを与えると何をしても文句は言えない、だから民有地につくられる場合においては土地利用上の問題はあるにしても、ひとつ国有地というものをやたら開放し払い下げないようにしてもらいたい。安比の問題については大分予算委員会やその他でリクルート問題に関連して問題になったように大変世間を騒がせておりますが、ぜひ そういうことのないように、国有林を活用する場合においても所有は国が持ち、その利用について十分に現地と相談をし、そこで雇用もできるしそこの活性化が行われるようにしなければ、このリゾート問題というものは将来に必ず禍根を残す。この点について関係者からお答えをいただきたい。
  142. 松田堯

    ○松田(堯)政府委員 国民生活が豊かになってまいりまして余暇時間等が増大してきておりますので、森林の中でレクリエーションを楽しみたいあるいは教育、文化活動をしたい、そういう国民のニーズが非常に高まってきているところでございます。  国有林といたしましても、今、先生から御紹介がございましたようにふれあいの郷事業、分収育林とセットで進めておりますが、ふれあいの郷事業もやっておりますし、六十二年の二月にはヒューマン・グリーン・プランというものを施行いたしまして、野外スポーツや教育、文化活動あるいは保健休養等の場の提供ということの事業を進めているところでございます。また一方、リゾート地域を森林に求めるという傾向も非常に強くなってきておりまして、そういった意味合いで森林の位置づけというものが大変高くなってきている、こういう状況にあるわけであります。  このような傾向の中で、国有林をこれらの施設の用地として提供する場合についてでございますが、所有権は民間に移転することなく、原則といたしまして国有財産法に基づく使用許可による、つまり監督処分権限というものを残す、こういう形でございますが、そういう形の中で国有林を提供いたしておる。また当然のことでございますけれども、地方公共団体の意向を踏まえながら、地域振興とかあるいは自然環境の保全に十分配慮しながら事業を実施しているところでございます。今後ともこのような考え方に即して進めてみたい、このように考えております。
  143. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ぜひそのような方向でこれは進めてほしい。  そこで、今度は、あれやこれや飛ぶようですけれども、先般全国農協中央会が二十一世紀を展望する農協の戦略というものを決定しました。あれを見ると、今度の農協に加盟をする形は戸から個人になっている。現在農村で実際働いている人は、女性が三分の二くらいの事実上の働き手であります。それから高齢者の方々がたくさんおられます。けれども、女性の方は農協の運営というものに対して発言をする場所がない。憲法で男女平等の権利が与えられ、農協も今度は戸から個人に移ったということになるから、それならばやはり女性を農協の理事やそういうところに出して、女性の組合長がいても結構ですから、そういうふうにして働く者の気持ちがその運営の中に入るようなそういう指導ができないかどうか、これはどうですか。
  144. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 今お触れになりました農協の決定されました二十一世紀に向かう農協としての取り組みの基本方針の中で、今先生からお話がございましたように、農協の組合員にできるだけ婦人を参加させていく、あるいは青年層を積極的に取り込んでいくという考え方が打ち出されているわけでございます。  ちなみに、現在全国の農協の正組合員の数は五百五十五万くらいいらっしゃるわけでございます。そのうち、女性が正組合員として加入しているのが六十一万四千人、約二二%を占めているわけでございます。また、農協の役員のうち女性で役員についておられる方が四十九人、これは比率ではまだ〇・〇六%でございますが、組合員の中に占める女性あるいは役員の中に占める女性の比率は、征年少しずつではございますけれども上昇してきております。  私どもは、今先生からお話がございましたように、農村における女性の状況、女性は就業人口としても非常に大きな比率を占めるようになってきておりますし、また営農だけではなくて生活活動の面でも非常に大事な役割を果たしておるわけでございますので、農協の事業活動の活性化のためにも、単に御主人が入るというだけではなく、婦人層が組合員になる、あるいは役員になるということは非常に望ましい方向であるというふうに考えておりまして、我々の指導の中でも組合員への加入を積極的に進めていただく。その前提として、婦人部会などの活性化について組合が積極的に取り組むように指導しているところでございます。今後ともその方向で取り組んでいきたいと思います。
  145. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ぜひ実態に沿ったような運営ができるようにして、そういう指導をしてほしいということを要望します。  さて、今度の白書を見ますと、現在四百二十四万戸の農家があると言われておりますね。その中で、専業農家というものが六十一万戸、一四・五%ですが、一体専業農家というものは何をもって専業というのか。後ろの方の、その後から出てくる農家経済を見ると、農業の収入というものはわずか九十四万三千八百円。これは内訳が収入と支出がありますけれども、二百六十五万七千九百円というものが収入で、支出が百七十一万四千円、それを引いたものが収入になっている。年金とか被贈の収入、これが百五十五万一千四百円、それから農外収入が四百六十六万八千百円、こうなっている。合計すると七百何万というものが農家所得になっているのですけれども、これは統計情報部になりますかね、専業農家という定義、内容、これはどういうものを専業農家といったらいいのか、わけがわからないのですね。
  146. 海野研一

    ○海野説明員 お答え申し上げます。  まさしく今御指摘ございましたように、農業及び農村のいろんな状況が変わってきておりまして、なかなかこれまでの統計の定義で物を把握していくと奇妙な話がいろいろ起きてくるわけでございまして、今先生御指摘になりましたところでも、例えば専業農家と第一種兼業農家と比べるとどちらが農業所得が多いか、第一種兼業農家の方が農業所得が多いというような事態が出ております。  これまで専業農家の定義は、世帯員の中に兼業従事者が一人もいない農家をいい、逆に、農業もほとんどやらない年金所得者だけの場合も専業農家になるというようなことでございまして、なかなかどうも十分実態をあらわさないという面がございます。統計というものは時系列の比較をするものですから、定義を余り変えてしまうということには抵抗があるわけでございますけれども、やはりそういう問題は十分実態を反映させるようにする必要があろうということで、今度一九九〇年センサス、これは来年の二月一日にやることになっておりますが、その段階で、一つには、飯米農家のようないわゆる自給的農家というものと販売農家とを分けて、販売農家について専兼別というようなことを見ていくというような試みを一つしようと思っておりますし、そのほかに、従来で申しますと、兼業とは自家農業以外に従事するものを兼業というということでございまして、例えば、自分が大きな機械を持っているために、隣の人の畑、その次の向こうの人の田んぼと耕して回ると、これは兼業農家になってしまうというようなことがございまして、今回そのようなものを合わせて、従来の自家農業の観念に請負のようなものを含めまして自営農業という新しい観点を持ち込もうというようなことなどをいろいろ入れまして、特に、農家の経営の規模を面積だけで今まで見てきた面がございます、その辺を労働従事日数でございますとかいろいろなものを入れていくことによって、その辺の実態が浮き彫りになるようなことを試みようと思っておりますが、このセンサスを契機といたしまして、その他のいろいろな私どもがやっております調査も、そういう現在の実際の動きが反映するようにいろいろ改善を加えてまいりたいというふうに考えております。     〔月原委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 わかりやすい本物の統計をつくっていただかないといろいろ困ることになりますから、ぜひそれはそういうふうにしてほしい。  最後に、先ほど来いろいろ暗い話ばかりしてき たんだけれども、地元農業も攻められるばかりが能じゃないので、少し攻めていくという方式ですね。攻めの農業ということを言った大臣がいますが、良質なものをつくって、午前中は農産加工の法律も通ったわけですから、海外に物を出していくということ。例えば、山形県の牛肉が台湾やシンガポールに出ていったり、私ども茨城県のメロンが出ていく。メロンの産地が鉾田とかいろいろありますね。それから鳥取県のナシが海外に出ていく。それから、うちもナシの産地がありますけれども、それが出ていくように良質なものをつくって、そしていいものを海外に出していく。そういうことのために研究施設、特に筑波研究学園のあの研究施設などをつくり、休耕田みたいなものをもう少し活用して、もう長い間休耕して、いい転作物がないなら、これはやはり立派な海外に出すようなものをそこに植えて、これに対して十分に手当てをしながら明るい展望というものを与えていく必要がある。この点は大臣どうです。
  148. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 まさに今お話がありましたように、本当に農業というと何か暗い話、農村というと暗い話ということになると思うのです。しかしいつまでも暗いものであってはならないし、また実際に農村社会見たときに本当に暗いのかということも見詰めなければいけない。  そしてもう一つは、やはりだめだ、だめだと言っていたのでは、これはだんだん萎縮していってしまう。むしろ今竹内さんから御指摘がありましたように、やはりチャレンジしようという意欲を持ってもらう、そういう土壌をつくっていくことが、私はむしろ日本農業というものの展望を開いていくものであろうと思っておるのです。しかも、これからの農業に従事する人たちは、そういうものにこたえていくためにはやはり市場のニーズをつかまえるだけの能力がなければいかぬし、またそのニーズにこたえるだけの技術がなければいかぬし、そして、そういったものをつくり出す基盤というものを持たなければいけないということであろうと思っています。  そういう意味で、国が支援していくということは非常に大事なことであろうし、そういうきっかけをつくるものとして私は実は輸出なんかを振興すべきだということを言ってさましたら、今お話がありましたように方々に日本農産物が出ていっている。結局日本農産物が問われるのは、要するにおれのところのアップルと似て非なるものだなという感じを持つわけですね。ですから今のナシなんかにつきましても、ハイクォリティーフルーツなんというようなことで、国内に売るナシよりはむしろ輸出する方が高く売れているのですね。だから、そんなものをつくっていく。最近ではキウイフルーツをオーストラリアが日本から買おうという話がありますし、オランダが日本の花を買おうという話がありますし、私はノースカロライナに行きましたら、ウィンストンーセーラムの町で長野県経済連の赤い判こ、スタンプを押したビニール袋に実はエノキダケが入って売られておるのですね。ですから、ようやくみんな各地域の方々もそういう苦労をされながらやっておる。  私たちは、今御指摘のとおりそういったものを開発するための支援をするということ、それからそのルートをつけてあげるということ、一体世界はどんなものを必要としているのかなというアンテナショップ的なもの、こんなものも支援していってもいいのじゃないかなと思って、そういった明るい面を、これから皆さんのお話もいろいろとお聞きをしながらさらに進めていきたいと思っております。
  149. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 終わります。
  150. 堀之内久男

    堀之内委員長 滝沢幸助君。
  151. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長、御苦労さまです。大臣初め政府委員の皆さん、御苦労さま。  昨日に引き続き質疑の時間をちょうだいいたしましたが、私の論理の展開が拙劣なために昨日は意を十分に尽くさず、申しわけない限りでありました。そこで、きょうもまた限られた時間でありますが、二つの点について改めてお伺いを申し上げたいと思います。  一つは、食管制度についてでありますが、先般農政審議会の小委員会というのですか、部会というのでありましょうか、一つ意見をまとめられたようでありまして、これはその内容において、簡単に申すならば、いかなる思想によるものであろうか。そしてこれをもとにされまして、政府は食管制度を改変される考えであるかどうか。簡単に御説明願いたいと思います。
  152. 甕滋

    ○甕政府委員 食糧管理制度につきましては、昭和六十一年の十一月に農政審議会の報告がございまして、当面の改善方向が示されたところでございます。それにのっとりまして、私ども今日まで制度運営の改善を進めてまいっておりますが、さらに六十二年二月以降、小委員会が農政審議会の中に設けられまして、今後の米政策あるいは米管理の方向について検討が行われてきたものでございます。  このたび、二年余りにわたる検討の結果、報告が取りまとめられたところでございます。この報告は、米あるいは稲作が我が国において格別重要なものであるといった基本認識のもとに、現在直面しておりますさまざまな問題を踏まえまして、食糧管理の制度運営について今後の方向づけを行ったものでございます。  それは、まず米の重要性から国内自給を基本とすること、また需給及び価格の安定を図るという制度の基本的な役割を維持する必要があるとした上で、多様化しております需要に対応して、生産、流通が行われますように、改善を図ること、総じて申しますと、市場原理がより生かされる仕組みとするということを内容としておるものでございます。  私ども、この報告を受けまして、今後十分検討を加えまして、必要な条件整備も図りながら、具体策を講じてまいりたいと考えておるところでございます。
  153. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 今後検討されるというわけでありますが、大臣、農家が心配しておりますのは、今の食管制度というものが辛うじて農家の生活を支えているという、案外いろいろと考えてみればそうでもない、新しい時代の新しい農業の展望というものもあり得るのだろうし、あるいはまた死中に活を求める道もあるのだろうと思うのだけれども、しかし今のところ、まだまだ農家はこの食管制度に寄りすがっておるという実態だと思うのです。そこで心配しまするのは、これがたびたびいわばなし崩しされてゼロに至るということを案じているようなのであります。そこでやはり農家の心配の状況は、いろいろと国際競争と言われるあるいはまた自由化と言われる中で、一体国は自給率をどこに置こう、あるいはまた備蓄をどれだけにしようと思っているものであろうか、それらこれらを含めたことの結果、減反というのはいつまで続ければトンネルの向こうに光が見えるのだろうかというようなことだと思うのです。農政に対する長期ビジョンというのはおありなのだろうけれども、農家にとってはぴんとこないのであります。そこで、最もわかりやすい農政に対する長期のビジョンを国は持っていただいた方がいいのではないか。  大臣の所信表明の中でも、「やればできる」というお言葉ありまして、こういう農政でありたい、意欲、十分に理解できます。そこで、考えてみれば、ハイテクといいますか、科学農業というような時代になり、先端技術というようなこと、あるいはまた今も議論ありましたが、リゾート農業というような言い方もありましょうか、観光農業という言葉があるでしょうか、そういうふうにいろいろと考えてみますると、必ずしも農業は、土から離れちゃいかぬでしょうが、そういう意味で非常に概念も変わってくるのであろうから、私は政府がこうなるんだよということをきちんとしてくだされば、案外農家がこれに信頼を置いて頑張っていける状況があるんじゃないかと思うわけですよ。そこで農政に対する長期ビジョンを、本当に簡単なものをぱっぱっぱっと出していただいたらいいのではないか。  特に私は結論として承りたいのは、今も専業農 家とは何ぞやという議論がありました。まことにこの概念も摩滅してまいっておりまするけれども、仮に、農家戸数という言い方がありましょうか、あるいは専業農家、こういうものの数が何年後にはどう変わるんだ、変わることを期待している、変わらせるためには国はこうしようとしているよというものがあったらいいと思うのですが、短い時間で質問いかがと思いますが、どんなものでしょう。
  154. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 大変広範にわたる御質問でございますけれども、まず第一の問題は、食管についての答弁が先ほどされたわけでありますけれども、これは農政審の方からの報告の基本になっておりますのは、私どもが従来から申し上げているものをそんなに逸脱しているものではないということであります。いわゆる国内の自給というものを基本とするんだよということを言っておりますし、あるいは需給及び価格の安定を図るという意味で、制度の基本的な役割、これは生産者の立場あるいは消費者立場というものがここで明言をされておるわけであります。それから、多様化した需要というものに対して生産、流通というものが行われなければいけない、改善していかなければいけない。そのときにやはり市場原理というものを自主流通米等については特にこれをあらわしていかなければいけないということで、何とかこういったものを私どもは踏まえながら現実に対応し、そして本当に皆さん方に理解されるものをつくりあげていかなければいけないというのが第一であります。  それから第二の問題で、転作の問題に今お触れになったわけでありますけれども、この問題につきましては、ちょうど私が政務次官、当選したばかりのころですから、四十五年から要するに米の転作というようなことが始まってまいったわけでありますけれども、それから今日まで消費の拡大のために国も相当お金を使い、あるいは文部省あたりからも協力してもらったり、また農業団体も弁当箱だとかあるいは保温器だとか、いろんなことをやりながら需要の拡大というものを物すごくやってきたわけです。しかし、にもかかわらずまだ減少傾向が続いておるというのが現状なんですね。  ということになりますと、第一次、第二次のときに莫大なお金を使いながら米を処理したり、あるいはまた転作するためにお金を使ってきた、そういうことをやりながら、なおかつ過剰傾向、潜在的な過剰というものを今まだ持っておるということでありますから、そういうことを考えたときに、これはただ政府が押しつけるというのではなくて、やはり農業者の皆さん方も、消費のない生産というのはないわけでありますから、そういったことをよく踏まえていただきましてお互いにまず消費の拡大をさせること、そのためにはいろんな方法も考えますけれども、やはりみんなに喜ばれる米というものをつくっていくことも非常に重要であろうと思っております。  いずれにいたしましても、そういったことで私たちもこれはただ面積を拡大していくなんということのないようにしていかなければいけないと思うし、それが生産に従事する皆さん方の安心にもつながるということ、これを踏まえながら私たちも進めていきたいと思いますけれども、やはり実際に従事する農業者の皆さん方にも、その点についてひとつ御自分のこととして、主体的にこの問題と取り組んでいただきたいというふうに考えております。  それから今、最後にお話のございました長期ビジョン、私どもが今申し上げている長期ビジョンというのと、今滝沢委員から御指摘のありましたのとはちょっと隔たりがあるのかなというふうに思っております。というのは、私たちがよく長期ビジョンと言いますのは、何が大体どのぐらいというものについて、生産の量ですとか、何年ごろにはこうするんだよという一つの方向を示すわけなんですけれども、そのときに農家の戸数というのは一体どのくらいあるべきなのだろうか、あるいは、例えばリゾートの地としてどんなふうに使われていくのだろうか、そういうものもひとつ簡単にわかりやすく示すことがいいのではないかなというお話でありまして、確かに難しい作業でありますけれども、何らかの研究というものは私たちしていかなければいけないなというふうに思っております。しかし、一般に言われるところの長期ビジョンにつきましては、来年ぐらいから西暦二〇〇〇年までの長期ビジョンというものは来年のうちぐらいに皆さんに御提示できるような作業をしてまいりたいと思います。  なお、今後段の方でお話のありました、そういったときの農業人口ですとか農村地帯がどんなふうに使われていくのかとかいった問題については、またこれからも御議論を申し上げてまいりたい、かように考えております。
  155. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ぜひとも勇気を持って将来像を農民にあるいは国民に示して協力を求める、そしてその計画と成果については責任を持つというようなものにして、国民が、また農民が安心して政府に協力していけばやっていけるのだという状況をひとつ展開していただきたいと思います。  ところで、そのようにしてこれはいずれにしても農家における労働力というのは余ってくるだろうし、余らざるを得ないわけであります、余さなければならぬわけでありますが、その余剰労働力というものをどこにどう転用するかということ、それがきちんとしないために農家から離れられないという点が農業近代化をむしろ妨げているわけであります。かつて一町村一工場という言葉がはやったことがありました。しかし、いつの間にかこれは消えてしまいました。私がきょう自治省さん、通産省さん、労働省さんにも重ねておいでを願っておりまするのは、もちろん農水省が中核になりましてこういうことについての各省庁の連絡、協調のプロジェクトといいますか、きちんとしていかなくてはならないのではないのか。つまり、今申し上げました農政の一つのビジョンの中で、何年後にはどれだけの労働力が農業以外に転出をしていただかなければならぬ、そのときにこれを受け入れるものがなければ、これは出稼ぎとなり、そして離村となってくるわけであります。  これは自治省さんにいつも私は聞くのですが、なかなかはっきりしない。市、町村というのはそれぞれ適正人口規模というのは何人ぐらいを考えていらっしゃるのでしょうか。昭和三十年代の例の町村合併促推法というときにおきましては、市は三万でも特別の時期よろしいということで、三万で市になりました。しかし、現在は既にそのときの約束の人口を失っておる市がたくさんあります。しかし一方、二百万都市、三百万都市ができておるわけです。多ければ多いほどいいというものではないだろうと思うわけであります。あるいはまた町村におきましても、町と認定をされました一万の町が、もう五千を割っているものもあります。一万以上になっても村であるものもあります。私は、このようなことで自治省が考えておりまするこの適正規模というものはどうなんだろう、これはきちんとしているものだろうか、これがあるならばそれに合わせるような何らかの一つの働きかけがあってしかるべき、こう思うのであります。  それはそれといたしまして、私はきのう申し上げましたが、今民社党で農村雇用百万人計画というものを検討させているわけであります。つまりは、年に十万ずつ、十年間続けて農村の労働力を他に転換しようということであります。これはもちろんいわゆる古い概念における工場だけに限定さるべきものではありませんで、先ほど申しましたサービス業あるいはまた、教育業という言葉は私は嫌いでありますが、教育関係のお仕事というようなものもあるわけでありますが、とにかくいつまでもいつまでも、五反百姓という言葉がありますが、三反、五反の田んぼにしがみついていなくてはならぬ、そして、子供はそれを継がぬ、おきなやひとり山田守るらむ、と言うのでありますが、六十代、七十代の人が今田んぼの第一線であります。この人たちがそれぞれ、田んぼから上がればその家の農業は終わるというふうに見まする と、本当に寂しいものであります。  過疎地というものの規定もございまして、過疎振興法によって指定された町村もございますが、せめてこの過疎振興法によって指定された市町村に対して、いわゆる農業以外の就労の機会、特に男性型の就労を求めるものを大胆に、しかも急速に打ち出していかなければ農村は滅びる。農村が滅びるとき、総理大臣がおっしゃっているふるさと創生論というのは全く空論となる。農村の終わりは日本の終わり、こういうふうに申し上げて過言ではないというふうに私は思っておりますのでこのことを申し上げるわけでありますが、これらのことにつきまして各省庁に何らかのお考えがあれば承りたいと思います。
  156. 松山光治

    ○松山政府委員 農業の構造改善を円滑に進めるあるいは農山村地域活性化を進めるという上での就業機会の安定的確保重要性の問題、これは昨日も申し上げたとおりでございますし、そのために、各省庁と連携を保ちながら農村工業等導入促進制度を軸にいたしました各般の努力を行っておるということについても昨日申し上げたとおりでございます。  今お尋ねのございましたもののうち、過疎地域等にかかわる問題でございますが、過疎地域等の条件に恵まれないところは、それだけに農家の就業機会を安定的に確保していくことが重要でありますけれども、逆にまた立地条件その他から難しい問題を抱えておるというふうに認識をいたしておるわけであります。私どもといたしましては、これまでの農村工業導入制度運用面におきましても、なかなか単独で工業導入が円滑に進みにくいといったようなものがございますので、そういう場合には複数の市町村で相協調して広域的に対応することがいいのじゃないかといったようなことで指導もいたしてきたわけでございますが、昨年の法律改正の際には、きのうも申し上げました対象業種の拡大に加えまして、こういった工業導入が難しい条件のところ、進んでないところにつきましては、複数の市町村から成ります広域の地域対象にいたしまして、従来は市町村が実施計画をつくるというのが基本でございましたが、そういう特別の状態にあるところでは市町村と協調いたしまして都道府県実施計画をつくり、工業導入を進めていくといったようなことが可能になるような、そういう制度面の手当ても実はいたしたわけでございます。  そのほかに、六十三年度からの金融上の特別措置といたしまして、これまでの税制金融上の措置のほかに、不安定兼業農家が多くて特に就業の場の確保が必要とされる農村地域ということで、過疎地域なんかが中心になるわけでございますが、そういうところに工業等が立地するという場合には、ほかの農村地域に立地いたします場合よりも一段と低利の融資を開発銀行なりその他関係の金融公庫から受け得るような措置も講じたところでございます。  また、国の方針の問題といたしましても、改正法に基づく工業導入の基本方針を関係省庁ともども既に明らかにしてございますが、その中でも特にそういった地域に重点を置くのだという方針も実は明らかにしたという経緯がございます。私どもといたしましては、きのうも申し上げました、企業導入をお待ちしておる各団地の情報をパソコン通信システムを使って各企業に流せるような仕組みも今度整備をいたしたところでございますので、今申し上げたような各般の措置を有効に活用しながらこれらの地域への工業導入の促進という問題に取り組んでいきたい、このように考えておる次第でございます。  なお、こういった地域につきましては、いわゆる農村工業の導入といったようなことのほかに、御案内の過疎振興対策でございますとか山村振興対策といった別の非公共の補助事業も私ども持ってございます。その中では、農林業の振興ということをベースにいたしながらも、農産加工施設の整備の問題でございますとか観光的な要素も取り入れ得るようなかなり幅の広いメニューも用意しながら、そういったこともあわせてこれら地域におげる就業機会の安定を図っていきたい、このように考えておる次第でございます。
  157. 和田正武

    ○和田説明員 通産省といたしましては、農村部における就業機会の増加あるいは雇用確保を大変重要な問題というふうに考えております。こういう観点から、農工法に基づく税制金融上の優遇措置あるいは農工センターにおける各種活動の支援はもちろんのことでございますけれども、そのほかに、工業再配置促進法に基づきます補助金等各種の施策の実施によって農村部への工業導入にはこれまで鋭意取り組んでまいりました。また、工業再配置促進法に基づきまして本年三月に新しく策定しました新工業再配置計画においても、このような施策の着実な実施によって都市部の工業出荷額の全国におけるシェアを少し減少させるという方向で、昭和六十年の一八%から平成十二年には一一%に減少させる。また一方、北海道、東北、北陸、四国、九州等の中で比較的工業集積が低い、人口の増加も少ない地域の工業出荷額を、同じく二七%から三五%にしようという目標も定めております。またさらに、近年産業構造は大きく変化しておりまして、地域経済活性化のためには工業の導入ばかりではなくてそのほかのいろいろな施策も必要であろうということで、各種地域おこし活動への支援あるいはリゾート開発等も考慮する必要があるのではないかということで、この面での施策も実施中でございます。  いずれにいたしましても、今後とも農村部への工業導入につきましては、関係各省と密接な連携を図りつつ、農村部における雇用状況も見きわめながら着実に進めてまいりたいというふうに思っております。
  158. 九重達夫

    ○九重説明員 労働省としましては、農村地域工業導入実施計画の策定に当たりましては、地域住民の就業の動向でありますとかあるいは地域の就業構造の特性、これらを十分勘案いたしまして、適正な労働力需給の調整が図られるよう関係都道府県あるいは市町村を指導してきておりますし、今後ともこの姿勢を貫いていきたいというふうに考えております。  しかしながら、最近の雇用失業情勢を見ますと、全般的に景気が拡大する中で有効求人倍率が一を超える、あるいは人手が不足するという事業所の割合がふえるなど、人手不足感が拡大傾向にある状況にあります。しかしながら、これを地域別に精査したりあるいは年齢別に見ますと、なおかなりのアンバランスがございます。その辺を十分踏まえまして、労働省としましては職業相談あるいは職業紹介を拡充してまいりたいと思いますし、あるいは適切な職業訓練も推進してまいりたいというふうに考えております。また、本省レベルにおきましても関係省庁との連絡調整をさらに一層密なものにいたしまして、農業と工業との均衡ある発展、地域における雇用構造の高度化を図るための地域雇用対策を積極的に推進してまいりたいというふうに考えております。
  159. 石橋忠雄

    石橋説明員 御指摘の点につきましては、自治省といたしましても同様の観点から、かねてから地域経済活性化対策、さらには地域経済活性化緊急プロジェクト等の施策を講じまして、地方公共団体が実施いたします地域産業構造の多様化高度化に関する施策、あるいは伝統的地域産業振興に関する施策、地域資源を利用した産業育成策等々の政策に対しまして支援策を講じてきたところでございます。  さらに、本年度から人材の育成、技術開発能力の向上に重点を置きまして、内発的な地域産業振興を図るべく新地域経済活性化対策をスタートさせたところでございます。このほか、地方公共団体が地域の特性を生かした魅力あるふるさとづくりを進め、多極分散型国土の形成に資するため、ふるさとづくり特別対策事業を実施しておるところでございます。また、特に地域づくりの原点でございます市町村において、それぞれの地域の特色を生かした地域づくりを自主的、主体的に行うことを目的とした、みずから考えみずから行う地域づくり事業等を推進しているところでもございます。今後とも、地域振興発展のために積 極的に対応してまいる考えでございます。
  160. 岩崎忠夫

    ○岩崎説明員 市町村の適正規模等についてのお尋ねでございますが、市の要件でありますとか町の要件につきましては、それぞれ法律でありますとか各都道府県の条例において定められているところでございますけれども、その後の人口移動が大幅にあったものでございますから、市町村の規模にも大変格差が生じてきているというのは御指摘のとおりでございます。  そこで、市町村の適正規模は一体どの程度かということでございますけれども、なかなか一口に言いにくいところでございまして、結局のところ、当該市町村の地勢でありますとか、人口密度でありますとか、社会経済事情でありますとか、事務の処理の状況でありますとか、こういったことを総合的に勘案しまして個々具体的に決するよりほかはなかろうと私どもは考えておりまして、画一的に人口規模でどのくらいの団体が適正規模だということは一概には言えないだろうというように考えているわけでございます。  しかし、こういうように人口規模をめぐりまして市町村間の規模の格差の問題が指摘されるようになっておりますのは事実でございますけれども、私ども基本的には、市町村の合併につきましてはあくまでも関係市町村の自主的な判断を尊重すべきものということを考えているわけでございます。したがいまして、ある程度住民意識の一体化というものが進みましたりあるいは広域行政が定着したというように、地域の一体化が進んで条件が整った地域から市町村の合併特例法を活用して自主的に合併を進めていく、こういうことが基本的には望ましいと私ども考えているところでございます。
  161. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 それぞれ御苦労さまでした。  ただ一言、岩崎課長さん、それでいいんだけれども昭和三十年前後に総理大臣の勧告、命令まで出して、こうすればよくなるよと言って合併をさせた、そのなれの果てが今日の姿であることを考えまして、それぞれ市町村の自主的な御判断だけというのではなくて、この段階における将来像を設定されて対策をされるように、内部で御相談になってちょうだい。  そして大臣、今各省のいわば工業導入等をめぐってのお話を承ったわけでありますが、しかし、私たちのサイドから見ておりますると、これは同じ農水省の中だってそうですよ、各局各課でなかなか連絡が十分いかぬものでありますからやむを得ません。しかし私は、少なくともこういう一つの時代的な大きな課題については、各省庁がもっともっと連絡と協調の上に、国民に向かって安心してついてきてちょうだいというものが必要だと思いますので、大臣の懸命な対策の中で農家が合理化された運営になりまして、そこでできまする余剰労働力等につきましては、その土地におりましてしかも安心して就職できるものを創成するために、各省庁の連絡の機関等を持たれるとかというようなお考えをいただきたいのでありますが、一言コメントをお願いいたします。
  162. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今滝沢委員から御指摘のとおり、やはりその地域に定住するということは非常に重要なことでありますし、また、これが離れていってしまうということになると、そこからむしろ都市部だとか東京とかそういったところに一極に集中してしまうという一番悪い弊害をつくってしまうということでありましょうから、定住に対する対策というのは非常に重要なことであろうと思っております。今日私ども、構造改善局が各省ともいろいろとお知恵をかりたりお力をかりながらやっておるわけでありますけれども、さらにそういった連携を深めて、今お話がございました問題に対してきちんとおこたえできていくように対応していきたいというふうに考えております。ありがとうございます。
  163. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 以上で終わります。委員長、私の都合で発言の順序、時間等にいろいろと御配慮をいただきましたことを御礼申し上げます。大臣を初め政府委員の皆さん、ありがとうございました。
  164. 堀之内久男

    堀之内委員長 前島秀行君。
  165. 前島秀行

    ○前島委員 それぞれの委員がいろいろな問題で質問をしていますので、私の方は米の問題で、とりわけ十一日に農政審の小委員会から答申といいましょうか、報告が出ているものですからその辺と、特に大臣の所信表明で今後も食管制度の基本は守っていく、こういう所信表明が出されているものですから、それとの兼ね合いを中心にして質問させていただきたい、こういうふうに思っていますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  その報告書でも、冒頭「食糧管理制度は、国民の主食である米について政府が責任を持って管理することにより、生産者に対してはその再生産確保し、また、消費者に対してはその安定的な供給を確保する」こういうのが食管の役割だというふうに言っているわけであります。すなわち、食管の根幹というのは国の責任における全量管理、あるいは需給、価格調整機能、あるいは国内自給をしていくための国境措置をとる、こういうのがよく言われる食管の根幹だと思うわけであります。したがって、大臣も所信表明の中で食管は維持するのだ、こういうことでありますから、この精神を報告の中でこれからどう具体的に生かしていくか、こういうことだろうと思います。報告書を読みますと今後の検討というところが四、五カ所出てきますから、これからの部分もかなりあろうとは思いますが、我々としても米管理の問題、米政策の問題を具体的に研究、検討をしているところでありますので、そういう面でいろいろ細かな点になろうかと思いますけれども、よろしくお願いを申し上げたいと思っています。  そこで、今度の報告書の特徴というのは、いわゆる市場原理の導入なんだ、民間の流通を主体として米管理をしていく、そのことによって供給価格の安定を図っていくのだ、こういうことだと思うわけであります。完全に米を商品として扱っていく、市場原理の導入ということですからそういうことだと思うのですが、その中で、自主流通米における価格形成の場を設けるというのが大きな柱であり、これが今後の米管理のスタートでありポイントだろう、こういうふうに思うわけでありますけれども、この価格形成の場とは一体どういうものなのか、どんなイメージなのか、今後どんな機能をさせようと考えておるのか、その点をまず最初にお聞きしたいと思います。
  166. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま御指摘ございましたように、先般の農政審の第一小委員会といいますけれども、小委員会の報告がまとめられ、その趣旨とするところは、現在の米をめぐります状況に的確に対処してまいりますために、より市場原理が生かされる仕組みに改善していく必要があるということがそのポイントにもなっておるところでございます。  そこで、ただいまお尋ねの価格形成の場ということにつきまして、報告の中では、米の需給動向や品質評価を価格に的確に反映させるための価格形成の場ということで、一定の資格を有する集荷業者と卸売業者等との間の価格形成を図る機能と、流通業者間の過不足を調整する機能を果たすものとするという趣旨が述べられておりまして、そのあり方について速やかに検討を行うとされております。したがいまして、具体的にどういう価格形成の場にしたらいいかということは、この趣旨を踏まえまして具体的な姿を私どもこれから関係者の意見を聞きながら早急に検討していくことにしております。  それで、その中で、小委員会の論議の中にもございましたが、価格の乱高下あるいは投機的な売買といったものが入らないようにする必要がある、こういう御意見があり、そのためには現物市場にしたらいいではないかとか、議論としてはいろいろ行われております。しかし、現実にどうしたものにしていくかということは、今後学識経験者あるいは実務者等も含めまして、現実に日々動いておる経済の話でございますから早急にかつ慎重な検討を必要とすると考えておるところでございます。
  167. 前島秀行

    ○前島委員 その価格形成の場でありますけれど も、物を取り扱うか扱わないか、先物を扱うかどうか、これからいろいろ検討するということでありますけれども、報告書、それから全体の構成といいますか理論立てから見ると、ともあれ価格形成の場でそれが正常に機能するということが、その後の米管理の組み立てのすべてになっておるわけですね。この価格形成の場でもってその機能が正常に機能すれば需給のバランスがとれるだろうとか、あるいは適正な価格水準も形成される、あるいは生産調整も実現するのだ、こういうことに考え方は組み立てられておるわけでありますから、この価格形成の場が正常に機能するという前提ですべてが組み立てられておるわけですから、これが機能するかしないかが米管理のすべてになる、こういうふうになると思うわけですね。正確な、適正な価格、そういう意味での機能だろうというふうに思うわけですけれども、果たして正常に機能するという保証があるだろうか、ないだろうか。まあこれから検討するということですから、現物を扱うかあるいは先物を扱うか等々によってもいろいろあろうと思いますけれども、いずれにせよ市場でありますから、価格形成の場でありますから、その保証がないととんでもないことになる。この前提で組み立てられているわけですから、逆に言うと、もしこの市場というものが、価格形成の場でもって逆に米が商品として投機の対象等々で扱われる、そういう機能になってしまったならば大変なことになる、この米管理というのは根底から崩れる、こういうことになるわけでありますから、果たしてこの価格形成の場が正常に機能するという保証があるのかないのか、また、どうしたならば正常に機能するだろうというふうに考えているのか、あるいはこういうものを防止することによって正常に機能するだろう、この辺のところどんなふうに考えているか、ひとつお考えを聞かせていただきたいと思います。
  168. 甕滋

    ○甕政府委員 この報告にございます需給動向あるいは市場評価を反映した価格形成が必要である、この考え方は、最近の米をめぐります状況の変化の中で、需要が大変多様化しますとか変化を示しているのに対しまして流通面あるいは生産面が十分対応していないのではないか、これがやはり流通上も不正規の発生の原因になっておりますとか、生産面でも、例えば農家が立派な売れる米だと思って生産していただいても実際には政府にたまってしまうとか、やはりいろいろな不都合、不適合が生じている、こういうことを解決したい、こういうことであろうかと思います。  実は、そのためには、やはり価格が流通関係あるいは生産者に至るまで目に見えた形でわかりやすい姿として示される必要があるというのが、その基本であろうかと思います。実は現在、そういった民間流通のよさを生かすという点では御承知の自主流通米がございまして、もう二十年ぐらい運営してまいっております。これが現在の価格形成としては中央段階で指定法人と卸売団体等との話し合いで決まっている。これが年間一本供給ということで非常に硬直的だという反省が実はございまして、ここしばらく変動部分というものを一定設けまして、入札等の仕組みもいろいろ工夫してまいった経緯がございます。しかし、これもやはり、これまでのそのときどきの需給事情とも関係いたしましたか、なかなか所期のねらいが十分達成されないということで、今さっき申し上げたような、やはり透明性のある価格形成の場というものにしていかなければならない、こういうことになったわけでございます。  ただ、ただいま御注意あるいは御懸念のありましたように、それではこの価格形成の場が現実を遊離したものになりまして流通上非常に混乱を生ずるもとになっては大変であるということは、これは農政審の取りまとめの過程におきましても、また私どもこれを検討して実行に移す場合にも十分念頭に置いて取り組んでいかなければならない課題でございまして、そういった問題意識を今後検討いたします場におきまして十分取り入れながら具体的な姿を描いていかなければならないと考えておるところでございます。
  169. 前島秀行

    ○前島委員 これから検討するということでありますから、断定はできないし議論はこれ以上進まないわけでありますけれども、ともあれ価格形成の場というもの、そこで正常に機能しなければすべて混乱をするということは間違いないことでありますので、これから具体的な検討の段階で、いろいろな生産者を含め慎重な検討をぜひお願いをしておきたいというふうに思います。  それから、市場原理を導入する、そのことによって市場価格生産者米価や生産調整に反映する、こういう強調が何点か出てくるわけでありまして、そこに今後の大きな柱があるだろうし、この報告書の目的があるとは思うのでありますから、こうなりますと、当然競争が生ずるということは間違いないわけであります。同時に、生産条件が不利な地域は稲作が成り立たなくなるということも当然起こってくる。したがって、地域にでこぼこといいましょうか、アンバランスというのが当然起こってくる。ある意味だったら、市場原理の導入、そのことによって市場価格生産者米価や生産調整に反映する、このことを目的にしている、裏から見ればこういうふうにとれると思うわけであります。  そうすると、こういうでこぼこが生じた地域だとか生産の条件の不利、したがって稲作が今後できなくなるという地域が当然出てくる、これは一体どうするかという問題が当然出てくると思うのです。極端に言えば、切り捨ててしまえ、こういうことが当然出てくるので、今度のいろいろな議論がここから出てくるし、いろいろな不安というものが出てくると思うのですけれども、これはこの機能がより強固に働けば働くほど、この市場原理の導入という最大のポイントをより貫徹しようとすればするほど、このでこぼこをどうするのか、あるいは競争条件で成り立たないところをどうするのかという問題が比例的に発生してくる、こういうことになると思うのです。  一体、この競争条件に合わない地域、いわゆる地域的なバランスの崩れたでこぼこの地域というのは基本的にどうしようとするか、この辺のところを今後どうするか、お聞かせ願いたいと思います。
  170. 甕滋

    ○甕政府委員 先ほども申し上げましたように、自主流通米が民間流通としてのよさをより一層生かしていく、こういう観点でその価格形成の弾力化が行われていく、その中で需給動向や市場評価が価格に反映していく、こういうことになりますと、やはり米相互間の品質格差といったものも拡大するということも見込まれるところでございます。  需要に応じた生産を進める観点から申しますと、産地も米の品質あるいは価格の現況等をもっとよく知りまして、地域に合った多様な米づくりに取り組むということが望まれるのではないかと思います。その際、各地域の実情に応じて産米改良を図りましてその品質評価を高める、こういったことも重要になろうと思いますし、地域ごとに販売力を強化するということもこれからますます重要になるのではないかと考えられます。  現在でも実はそういった各地域ごとの取り組み、努力が既に始まっているわけでございまして、品質がよくて高い米というものももちろんでありますけれども地域的に特色のある品種でございますとか、ほどほどの品質でも比較的安い米、コストで勝負をするというようなことも見受けられるわけでありまして、米に対する取り組みがやはり地域の実態等を踏まえて多様化していくということが期待されるところであろうかと思います。  そういったふうに特色のある米づくりというものに取り組んで、それぞれの競争力をつける、そのために地域の創意工夫を発揮していくということが基本だと思いますけれども地域によっては、その実情に応じてその地域に即した農産物生産に取り組む、他の作物とも組み合わせて総合的な農業経営を目指していくということも必要になろうかと考えられます。地域の実態に応じて今後の米を含む農業をどのように持っていくかとい ったことが積極的に取り組まれる必要があろうかと考えられます。
  171. 前島秀行

    ○前島委員 そうすると、今の答弁を伺いますと地域に合った米をつくるのだ、条件に合った米をつくるのだということなんで、要するに量的なものは減らない、減らさない、こういうふうに受け取れるわけですね。そうじゃないのでしょう。要するに市場原理を導入して価格形成の場をつくる、そのことも生産調整に反映するということに、何カ所かこの報告書に出てきます。生産調整に反映する。そうしたら、この競争条件に合わない、市場価格市場評価に合わないところはやめさせていくということでしょう。生産調整に反映するということはそうですよね。
  172. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま私申し上げましたのは、需要に合った生産ということで、産地のサイド、生産者、生産者団体が、自分たちでつくった米の品質なり評価なり、これが価格という形で目に見えるようにこれまでよりもより一層透明性のあるものとして受け取りまして生産に反映をさせていく、こういう方向であろうと申し上げたわけでございます。したがいまして、これは量の話もございますが、当然価格を通じて質の話があるわけでございまして、よくて高い米、評価はそれほどでないけれども安い米、いずれにしてもその市場に受け入れられる、言うなれば売れる米、こういったことを念頭に置いた生産がますます必要になってくる、こういうことであろうと思います。したがいまして、その生産調整の中にもそういった要素を反映させていくということがこの中にうたわれております。その際には地域の実情、地域的な条件、これを十分踏まえながらそういった要素を入れていく必要がある、こういうふうにうたっております。  そこで、今後どういうふうに生産調整の面積配分等をやっていくかという具体的な検討の中におきましては、今申し上げました市場原理、それを反映した需要の強さ、と同時に地域的なまた特性、そういったものを踏まえてどういう具体的な配分方法をとっていくかということは、まさにこれから私ども後期対策を来年からスタートさせます際に、秋に向けてその枠組みを検討してまいりますので、その中で十分検討をしていきたいと考えております。
  173. 前島秀行

    ○前島委員 この点はもう少し後でもってまたあれしますが、要するに価格形成の場というのは市場であることは間違いないだろうと思うのです。そしてこの流通市場、これは今まで経験のない、いわば未知の世界と言っていいと思うのですね。どういう機能を果たしていくか、どういう現象が起こるのか、それがどういうふうに生産どか流通の方にはね返って価格にはね返ってくるか、全く未知の世界だろう、こういうふうに思うわけです。そうすると、こういう未知の世界といいましょうか、こういうものを今後の米の管理の柱にしよう、いわば市場原理を導入するということは、突き詰めれば、古くさいですけれどもアダム・スミスの「見えざる手」に期待をかける、未知の世界に飛び込む、そんなようなものと同じようなもので、いわばそういうところに米管理を合理的に処理してもらう、今の説明等々から見てもこんなふうなものだろうと言えると思うのですね。  そうすると大臣、今でも御承知のように生産農家、とりわけ稲作に従事している人たちの不安が非常に高まっている。展望がない。報告書もこれを認めているわけです。率直に言って、一連の農政批判というのは、展望がないというところ、不安だというところに現在でも大きなポイントがあろうと思うのです。そうすると、これからこの市場原理を導入する、その未知の世界にこれからの米管理の基本をゆだねるということは、私はますます見通しを悪くする、不安が募る、こういうことになりはせぬだろうか、こういうふうに思うわけです。当然そのことは生産農家に対する意欲の問題にはね返ってくるだろうし、いろいろな不安にはね返ってくる。結果として、いわゆる需給の安定、価格の安定という本来的な食管の基本の理念といいましょうか目的というものが、果たしてこの市場原理を導入する、未知の世界に飛び込むということでもって得られるだろうか、需給不安がないだろうか、こういうことになると私は思うのですけれども、大臣絶対大丈夫だと……。
  174. 甕滋

    ○甕政府委員 その前に補足して一つ、二つ説明させていただきたいと思います。  この米の価格形成を未知の市場に任せて、これがどうなるかわからぬ、こういう御趣旨が一部あつたように思いますが、この市場のあり方は、先ほど申し上げましたように、自主流通米がこれまで民間流通のよさを生かすということでやってきております。またその価格は、これは自主流通米あるいは特別自主流通米の形で既に産地にある程度わかりやすい形で価格が伝わるということは既に始まっておるわけでございまして、ただ、それが非常に大宗が一本供給、一本価格ということで現在の動きの早い状況になかなか対応できない、したがいまして価格形成の場と、もっとより透明性のある仕掛けが望ましい、こういうところになっておるわけでございまして、当然やってみてだめだったといった種類の試行錯誤は許されません世界ですから、その価格形成の場のあり方につきましては十分検討してこれから詰めていきたいというふうに思っております。それが一点でございます。  それからもう一つは、もともと米は作況変動とか、需要が固定しているという固定性がある、こういった特性もございまして、ややもすればその生産、流通を市場原理のみにゆだねた場合に需給価格の大幅な変動が避けがたい、投機の対象にもなり得る、こういう特性がございますから、この報告全体の中におきましては、米全体に政府が責任を持つということからいたしますと、全体の需給計画政府が立てまして、政府が必要量買い入れ、保管、売り渡しをする、こういう仕組みが当然あるわけでございます。それから民間流通につきましても、これは生産から流通を自由にするということではありませんで、生産調整あるいは流通規制その他、年間安定供給のための適切な関与ということも同時にうたわれておりまして、そういった意味での全体としての需給価格の安定を図るといった仕組み、その役割、これはしっかり踏まえたものになっているのではないかというふうに思います。いずれにしても、御心配のないようなことで今後の検討を進めていかなければならないと思っております。
  175. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 この報告につきましては、最後に長官の方からもお話ししましたように、私どもの方としても、これは本当にやってみてしくじりましたということではなかなか済むものではありませんから、十分実情というものを、自主流通での経験ですとかあるいは他の産物についての市場状況ですとか、そういったものをよく見きわめながら対応していかなければいけないと思っております。  しかし、いずれにしましても現在の米をめぐる事情というのは、先ほど来お話し申し上げておりますように、あれだけ笛と太鼓をたたきながら需要の拡大を進めているにもかかわらずまだ需要が減退しておるというのがやはり現状でございます。ですから、そういった中で、本当にどういうものを市場といいますか消費者が望んでおるのかというものを的確に反映させていくためにこれは一つの機能を果たすのじゃなかろうかなと思います。ですから、先ほど来お話ししているように手間暇をかけたりなんかしたものあるいは質のいい米と言われるもの、これについては的確な値段がつきますでしょうし、また規模を拡大しながらコストを安くし、そのかわり質という点では多少あれするかもしれないけれども、しかし我々は安いものが供給できるんだということになればそこにまた大きな需要ができてくるであろうと思っております。いずれにしましても、そんなものを含めながら今度の報告というものをもとにして、より現実に合った、そして本当に生産者の人も苦労すればちゃんとした価格がつくんだというむしろまた意欲なんかをかき立たせるようなもの、こういうものも生み出していけるんじゃなかろうかな、 そんなことも私どもは念頭に置きながら対応していきたいと思っております。
  176. 前島秀行

    ○前島委員 かつて五十九年に需給不安という事態が起こりましたね。緊急輸入という事態が起こったわけです。それ以上に今度は、市場原理の導入価格形成の場ということになってくるとより不安要因というものがかかってくる。明らかに今までの政府の直接管理がだんだん少なくなっていくということは間違いないわけですから、政府の直接管理という機能が低下していくわけですから――そこにまたこの市場原理を導入する、民間流通主体にするという目的もあると思うのですね。五十九年の需給不安ということが現に起こっているわけですよ。そういう面で非常に不安が残ることだけは間違いないわけですから、ひとつこれから慎重な検討をぜひお願いをしたいということをつけ加えておきたいと思います。  先ほど竹内委員がちょっと質問漏れがあって、畜産局長に改めて御足労願ったので、ちょっと途中で恐縮でございますが……。  岡山の場外馬券の問題について、近くまた地元の皆さんが反対の署名等々をやっているということで上京するという話がありまして、農水省、中央競馬会等々にもその趣旨をお願いをしているところでありますけれども、工事は進んでいるようだと盛んに聞くわけであります。一体工事は進んでいるのかどうなのか、ちょっとその辺のところ、どのように掌握しているかお聞かせ願いたいと思います。
  177. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 先生から御指摘のございました、岡山市におきまして中央競馬会の場外馬券売り場の建設構想がございまして、地元でもいろいろな御論議があることは私どもも承知をしております。  御指摘のございましたこの問題につきましては、私ども従来から申し上げておりますとおり、この手順というものは、中央競馬会がそういった施設をつくることについて地元の調整を十分に行った上で私どもの方へ設置の承認申請を出してくる、それに対して私ども審査をして、それでそういう段取りで対応すべく私ども指導しておるわけでございますが、そういった調整が未調整のままに建物の建設が進捗をしておるという報告を聞いております。現状で申しますと、地盤部分の地下部分の工事が現在進められておるという報告を私ども聞いております。
  178. 前島秀行

    ○前島委員 その建物自身は、当然場外馬券売り場というものを前提にして建てられていると思うのです、それでなければまた意味がないことなので。  その場外馬券売り場というのは、いわば普通の単なる事務所ビルと違った特殊な建物になると私は思うのです。御承知のように、全国にある場外馬券売り場がコンピューターで結ばれて、非常に短時間で処理できるようになるというふうな形になっているわけです。岡山は恐らく阪神競馬場が主力になるという話を聞いています。全国発売のことになりますと当然全国のネットが張られる、こういうことになりますから、予想される施設というのは当然特殊な施設だろうと思うのです。それを前提にして建物が進んでいる。  そうなってくると、できた段階でそれを利用する中央競馬会と設計、構造、いろいろな観点で事前の協議等々がされてなければ建物は建たぬだろう、こういうふうに想定できるわけです。地下まで進んでいるというけれども、当然全体の構造との関係の中で地下の議論があると思うのです。これほど許可はしていないと言いながらも現実に建物の建設が進むということは、当然そういう利用者との事前の構造上というか中身における話し合いかなければ進まぬだろうと思うのです。ぽんと行って店を借りて何か物を売るというものじゃないわけなんですね。この施設は。その辺のところを、局長どういうふうになっていますか、当然そういうふうに我々想像されるわけですけれども
  179. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 今御指摘のございましたこの中央競馬会の場外馬券売り場としての建物の技術的な特殊性というものについて、私余り詳しくはございませんけれども、先生御指摘のようなそう特殊な構造物であるというふうには私ども考えておりません。少なくともこの案件につきまして、構造、内容等につきまして中央競馬会あるいはまた私どもと建設の施主になっている方との間で事前の打ち合わせ、連絡等は一切やっておらないところでございます。
  180. 前島秀行

    ○前島委員 それは中央競馬会もということですね。いずれ近く伺ってその辺のところは直接ただしたいと思いますけれども、今これほど場外馬券売り場が、中央競馬が全国に散らばっている状況の中で、たしかあれは発走の五分前まで馬券を売れる時代になってきているわけですよ。当然そう簡単なものじゃないのですよ。それは日隈さんは馬主だから、中身を知っているから勝手にやっているんだなんていうことがあるかもしれませんけれども、そんな簡単なものじゃないと私は思うのですよ。今局長は中央競馬会も一切やってないと言うのですからそれを信じて、また近くその辺のところを伺いたい、こういうふうに思っています。  それからもう一つ、これは要望ですけれども、今盛んにやられているのは、近くに建設される予定者が公民館を寄贈するという形で、いわば利益誘導的な行為がなされているということが盛んに言われるのですよ。このことはやはり地域の住民にとっては混乱を与えるのですよ。同時にまた、この場外馬券売り場の問題について住民を逆なでする行為になっているわけなんですよ。その点を農水省の方も中央競馬会と相談し、適切な指導をお願いをしたいということだけお願いをしておきたい、こういうふうに思います。この点は以上で終わりたいと思います。     〔委員長退席、鈴木(宗)委員長代理着席〕  もとに戻りますけれども、次に米の管理における国の責任の問題と役割の問題についてちょっと伺いたいと思っているわけであります。  先ほど最初に言いましたように、この報告書のしょっぱなにも、やはり国の責任において管理するということが食管の基本なんだということを明確に言っているわけであります。しかし、この一連の報告書の中身を見ると、まず政府の買い入れ限度数量というのは一定限に絞るよ、当面は四割で今後見直していく、この率が上がるんじゃなくしてこれは下げていくという見直しであることは間違いないわけでありまして、一定限度数量を決めたら、たとえそれが過剰生産になってもそれは一切買い入れないよ、こういう考え方でもありますし、あるいは生産調整の段階でも、これからは政府が直接指導するのではなくして、生産者、生産者団体が主体的に取り組め、こういうふうに言っているわけであります。食管の大きな理念である国の責任ということが明らかに後退をしている、こう言わざるを得ないと私は思っているわけであります。いわゆる国が食管の精神を大きく後退させる、そういうふうに言わざるを得ないと思いますけれども、この国の責任という点で、どうでしょうか。
  181. 甕滋

    ○甕政府委員 この報告書におきまして、政府役割というものにつきましては、生産、流通の安定を図るために米全体の需給に関する計画を策定する、これに基づきまして安定供給の確保に必要な数量を買い入れ、保有し、売り渡すといった点がございます。また、先ほどもちょっと触れましたが、民間流通が周年安定的に行われますように適切な関与を行う流通規制も残るわけでございます。そういった全体を通じまして需給、価格の安定を図るという政府役割はきちんと位置づけられておるということが、食糧管理制度の基本的な機能は維持するというこの報告書の方針につながっておるというふうに思うわけでございます。  ただ、今御指摘がございましたように、それでは政府が必要な数量を買い入れるといったものについては、これは現に今私ども流通改善大綱につきまして、先ほど来申し上げております趣旨に従って民間流通のよさを生かす自主流通米をふやすということをやってきておりまして、当面六割を目標とするということにしてございます。昭和六十三米穀年度におきましては、これが五四%とい う実績でございます。政府米のサイドから見ますと、これが四六%ということになります。いずれにしましても、現在六対四ということが一つの目安となりまして、自主流通米の拡大、政府の必要な数量の設定といったことを行ってきておるわけでございます。  それからまた、政府が買い入れないしは売り渡しにつきましてどういうやり方をとるかといった点も、実は先ほど来申し上げております需給動向あるいは品質評価が反映されるようなやり方に極力近づげていこうということを現にやっております。食管があるがために需要者サイドの声が生産サイドにつながらない、そのためにまたそういったことで生産された米が政府にたまってしまう、たまってしまうとその分はまた生産調整だというようなことでありますとか食管批判になっていくとかいうような苦い経験がこれまでにございますので、政府米のみに過剰がたまってくる、こういった仕組みはやはり改善を要する、こういうことが、現実の必要性と申しますか、改善を要する問題にぶつかりまして、逐次改善を図ってきている点でございます。そこで、その中にあって国が、全体の需給、価格安定のためにその機能が弱まる、薄められることのないように柔軟なやり方を工夫をしてこれまでも取り組んできておりましたが、この報告の中においてはそれについて今後の行く先にわたる一つの考え方として示されておるものと私ども受け取っております。いずれにしましても、政府のこの機能というのはきちんと踏まえた報告、また、それを踏まえたそれぞれの改善方向というふうに御理解いただければ幸いでございます。
  182. 前島秀行

    ○前島委員 要するに、政府としたら過剰米が気になって気になってしようがない。そこにすべて頭がありますから、それをなくすために、そういう現象を起こさせないためにいろいろな手だてをするという感じだろうと思うのですけれども、国の責任という意味で、あるいは食管の基本的な精神という意味で、食を備蓄するというか保管するということは供給の安定を確保するということの基本だろうと私は思うのです。そういう意味では、食を確保する、安定供給を図る、そのための財政負担をするということについて、私は国民の合意が得られていると思うのです。総理府でやった世論調査については、供給の安定を図る、そのための財政負担ということは、国民はオーケーしているのですよ。だからこの考え方も、過剰米、過剰米云々という形ではなくして、やはり食を確保していくのだ、そういう観点から政府の買い入れ米というものを一定の量をちゃんとしていくということが必要だろう、これがまた食管の基本的な理念であるだろう、そのための財政負担ということは国民は支持してくれるだろう、私はこう思っているわけです。  そこで、政府の買い入れ米というのは一体何にウエートを置いてやるのか。いわゆる主食を確保するのだ、保管するのだ、そういった意味でやるのならばいいですけれども価格調整機能を発揮するというために政府買い入れ米を作用させるのか、それなら一体四割でできるのかできないのかという議論もあるだろうと思うのです。したがって、食管の基本的な理念から見て、安定供給の基本ということから見て、政府買い入れ米というのは、備蓄機能といいましょうか保管機能、食を確保するという意味で買い入れようとするのか、価格調整機能を発揮させるために買い入れをするのか、その辺どちらに力点があるのか、ちょっとお聞かせいただきたい。
  183. 甕滋

    ○甕政府委員 この報告におきましては、政府米の数量につきまして、年間あるいは全国を通じた安定供給を確保するために必要な数量というふうに書いております。これは、そういった表現になります過程で論議もございましたが、政府米の買い入れを作況変動に見合う程度の最小限のものにして、その備蓄として保管をする、いわゆる棚上げ備蓄といったこともあるではないかといったことがございました。ただ、棚上げ備蓄ということになりますと、持ち越し米だけの売却になりまして、これは円滑な売買操作が期しがたい、やはり需給、価格の安定を図るといった政府役割を果たす上で難点がある、さらには、需給逼迫時の安定供給にも支障を生ずるおそれがあるというようなことで、それは適当ではなかろうという考え方に立っております。  そこで、その品質を良好に保持しながら、新米とあわせて一定の流通経路で計画的に売却操作をするような回転備蓄方式が適当である、こういうことになりまして、当面四割は持つ必要があるだろう、こういう報告の集約になってまいった経過がございます。したがいまして、政府買い入れにつきましては、単なる備蓄にとどまらず国民に対する安定供給を確保する、こういう観点に立って位置づけられていると私ども理解しておるところでございます。
  184. 前島秀行

    ○前島委員 一連の政府買い入れ価格の問題ですけれども、まず政府買い入れ価格生産性の高い稲作担い手の層に焦点を置く、それから買い入れ価格、売り渡し価格も民間流通における需要動向と市場評価を明確に反映させる、あるいは政府買い入れば生産調整実施者に限定をする、あるいは市場評価を生産調整の配分に反映する、一連の政府の米の管理といいましょうか買い入れのところを整理しますとこうなってくるわけですね。これは一体、政府役割は何をしようとしているのか。  この四点を整理してみますと、文字どおり力ずくで価格を下げるぞ、それで力ずくで市場価格を評価して、低い生産性のところは切り捨てていくぞというふうにとれるわけですね。食管の精神とは全く逆な政策だと言わざるを得ないような気がしてならぬわけです。生産調整に協力しないところは政府買い入れしないぞというふうに、ある意味だったらおどしみたいな形になるわけですから、かなりそこに力点が置かれていると私は思うのです。それで同時に、買い入れ価格と売り渡し価格市場評価を反映するわけですから、当然価格の問題は暴落をしてくる、先ほど言いましたようにでこぼこが出てきて、そこに成り立たない地域というものが当然出てくる。こういうふうになるわけですから、食管の精神といいましょうか基本的な考え方からいうと本当に全く逆な形になるだろうと思うのです。こんなふうな高圧的な形をするのだったら全く農家の協力も得られないだろうし、中核農家も育つだろうか、農家の意欲もなくなるのではないだろうか、こういうふうに言わざるを得ないと私は思うわけです。この一連の報告書を見ると、その役割というのはそういう農家にとってマイナスに働く、意欲をなくするような方向にこれからリードしようとしていくと言わざるを得ない、そういうふうにとらざるを得ないと私は理解するのですけれども政府はその点はどうでしょうか。
  185. 甕滋

    ○甕政府委員 政府の買い入れ価格につきましては、この報告書の中におきましても稲作の担い手層に焦点を置く、また需給調整機能を配慮した運営を行う、こういった方針を出しておりまして、これが民間流通への適切な関与とあわせまして、国民の必要とする数量の米の再生産確保を図る機能を果たしていく、こういう考え方ははっきり出ているのではないかと考えております。  また、民間流通のサイドで需給実勢なり品質評価なりを反映させた価格形成を行っていくということになっておりますと、政府米につきましても、売り渡し価格が硬直的なものであってはその売り渡しの操作を通じて需給安定を図るといったことができないわけでありまして、需給実勢を反映していくということになり、それがまた買い入れ価格に反映をされるという意味で、政府の売買操作ないし価格設定の中にもそういった市場評価がより反映されるような仕組みにする、こういう考え方でございます。  また、これを生産調整に反映させていくという点につきましては、やはり生産調整のサイドでも、国が上から画一的におろしていくという現在の手法自体がもう限界である、こういうような実態も出ておりますし、やはり地域の実態に合っ て、必要とされる量、必要とされる質の米がより円滑に供給されるような仕組みを考えていく必要がある、また、そのためには地域の創意工夫を生かすようなやり方も考えていく必要がある、こういう意味での改善方策の一環として打ち出されているように受け取っております。  それからまた、政府買い入れを生産調整実施者に限る、こういったことも言っておりますが、生産調整が的確に行われることがこういった米管理の方向を可能にする重要な条件であるということもあり、米管理と生産調整というものをより密接な関係の中で取り運んでいく必要があるという問題意識でございます。ただ、そういうことを具体的にどういうふうにするかというような点も含めまして検討を要する点がある、こういうことで「検討する。」というふうにその箇所はなっているのではないかと考えておるところでございます。
  186. 前島秀行

    ○前島委員 政府が従来から言っている規模拡大、中核農家を育てるのだという考え方が非常に多く出されているわけですけれども、そういう観点から今度のこの報告書なり市場原理がどう働いていくのだろうかということと、それから、そういう政府の従来の規模拡大、中核農家を育てていくという方針等が一体できるかどうかということなんでありますけれども、作付規模別に見る稲作農家の実態などを見ますと、九〇%以上が一・五ヘクタール以下の小規模の農家というのが現在の実態なんだ、こういうふうに言えるし、あるいは別な角度で、専業農家あるいは兼業農家という角度から見ると、専業農家というのは一四・七%、第一種兼業が一四・八%、第二種兼業が七〇・五%、これが現実の実態なんですね。片っ方で構造政策とあわせて規模拡大するのだ、それから中核農家を育てるのだ、そのために今度の政府の買い入れも中核農家に標準を合わせるのだ、そこでこう言っているのだけれども、実態はこういう実態なんですね。あるいは、農用地利用増進法による借地権の設定された面積が一体どうなっているのだろうか、五十六年から六十一年までとそんなに進んでいないのですね。声を大にし太鼓をたたいて規模拡大だ、中核農家を育てるのだ、今度の価格の問題等と米管理の方もそこに焦点を合わせているけれども、実態はそうなっていない。そこに大きなギャップがあるのではないか、またそこに現実の稲作農家の不安もあるというのが実態ではないだろうか、こういうふうに私は思うわけです。  大臣、そういう面で、この一連の米管理の方向、市場原理を導入する、民間流通するという形の中で、従来政府が目指している規模拡大、中核農家は育つという自信が一体あるのかどうかというところをお聞きしておきたいと思っているのです。
  187. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今、御指摘がございましたように、五十六年から六十一年ですか、規模の拡大というもの、いわゆる利用権の設定というものが進んでおらないということでございましたけれども、ここのところ、やはり後継者問題等がございまして割合と積極的にこれが進められてきているということと、もう一点は、今度はそういったことを進めるためにいろいろな組織の皆さん方が協力していただけるような場もつくろうということでありますし、また、作業の受委託といったものによって規模の拡大は進められておるということが言えるのじゃなかろうかと思っております。  いずれにいたしましても、ただ私たちが強制的にとか強圧的に価格を下げていこうとか、あるいは機械的に下げていこうということではございませんけれども、一方では少しでもコストを下げながら、国際価格と一緒にしろなんということはありませんけれども、しかしそういったニーズに対しても私たちがこたえていきませんと、またこれで需要が減っていってしまったということになったらまた生産調整をしなければならないというところに追い込まれたしまうんだということ、こんなことも私たちは考えなければいかぬし、また、放置することによって生産が過剰になってしまったということになるとこのために大変な金を使わなければいけないということになって、食管そのものがそれこそ根底からおかしくなってしまうであろうということを考えたときに、あるときには一時的につらい、苦しいことがあると思うのですけれども、そういったことも農家の皆さん方にも理解をいただきながら進めていくことも必要であろうというふうに考えるところであります。
  188. 前島秀行

    ○前島委員 最後ですけれども、今大臣が言われたように、先ほど竹内委員とのやりとりの中にも、要するに食生活が変わってきた、ニーズが変わってきた、それに合わせていかざるを得ないんだと言われる。しかし、それは政策的に変えていった部分もなしとは言えないと思いますよ、国内的にも。あるいは外部的に農業関係者以外のところからそういう政策的なものが非常に作用してきて、そういう変化が出てきたということを私は言っているのです。いわば自然になったわけじゃない、政策的なものがあるんだということはひとつ認識してほしいということが第一点です。  それから、こういう過剰が生じたんだからどうしようもない、そして市場原理の導入価格の評価と生産調整は一体なんだと今食糧庁長官も言う。そして片や規模拡大を言っておるわけでしょう。結果的に、どういう説明をしようとしたって農家を減らすということなんですね。そうならざるを得ないと思うのです。大臣、そうしなければ理屈に合わないですよ。これに対する農民の不安なんですよ。そういうことを言うけれどもそれじゃおれたちはどう変えていったらいいのか、減反をやったけれども何にもならなかった、やっていけなかったというので、減反の実施協力者がなくなって行き詰まってしまったわけでしょう。ニーズにこたえて変化していくんだ、やむを得ないことなんだ、過剰してくるんだから、需要が減ったんだからそれに合わせて量を減らすんだ、そしてこの変化に対応するようなことをやっていくんだということになれば、結果的にそうなるんだということだけは私は間違いないと思うのです。そういう認識であるということだけは、ぜひ大臣、認識をしてもらいたい。認めろと言ったらいろいろ議論があるからそこまでは言いませんけれども。  そういう中で最後に私は、こういう国際化状況の進んだ中で、いわゆる足腰の強い日本農業といいましょうか、その根幹をなす米を何とかしなければいかぬという意味で稲作の経営改善だとか管理の改善をせざるを得ない、私はこれは否定するものではないと思うのですね。ただし、国民経済なり地域社会における稲作の果たしてきた多面的な役割を十分認識した上で対応しようとするのか、あるいは流通問題として米管理を取り扱うあるいは財政問題として食管を取り扱うという視点、これによって全然私はその具体的な運用というのは違ってくると思うのですね。そういう観点から見ると、この報告の方向というのは私は後者だろうというふうに言わざるを得ないと思うのです。そういう意味で、後者の方向だったならばますます農民の不安が募り、日本農業というものはなくなってしまう、いわゆる従来言っている食管の基本的な理念というものとは全く逆になるのではないだろうか、私はそういう気がしてならぬわけです。そういう面で前者に立った運営の改善というものをぜひお願いしたいということを要望して終わりたい、こういうふうに思います。
  189. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員長代理 前島委員質疑時間は終了しました。  次に、山原健二郎君。
  190. 山原健二郎

    ○山原委員 ただいまの前島委員の質問と重複するかもしれませんが、今回の農政審企画部会第一小委員会の五月十一日の報告について質問をしていきたいと思います。  この報告は、一つは戦前米投機の場となった正米市場の事実上の復活を意味するものではないかという問題、それから政府の方が農政審報告を全面的に具体化しようとしているということでも非常に重要な中身を持っています。また、これは日本の米を含む穀物生産の放棄という、一層食糧の対米依存を迫った日米諮問委員会の最終報告、八四年の九月でありますが、これに即して日本農業 の切り捨ての方向を明確に打ち出したいわゆる前川リポート、八六年の四月でありますが、これなどに基づいてアメリカや財界の強い要求である米の輸入自由化を進める条件づくりをするものではないかという危惧を持っております。しかも政府は、今後農政審の今回の報告の方向に沿って米食管制度に関する施策を具体化していく方針だと言われておりますし、自民党の総合農政調査会農業基本政策小委員会も基本的にはこれと同内容の中間報告をまとめております。つまり農政審報告は現段階では政府・自民党の米食管政策そのものにほかならないという見方があるわけでございまして、この点について、非常に重要な中身でございますから、逐一質問していきたいと思います。  まず第一番に、報告で「米流通は民間流通を主体とし、」とありますが、この民間流通する米とは政府米でないもの、つまり現在の自主流通米のほかに不正規流通米がありますが、これを包括したものと考えてよろしいでしょうか。第一点です。
  191. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまお尋ねの民間流通する米とは何かといった点についてでございます。  お触れになりましたように、自主流通米が現在米流通の過半を占めるということになってきておりまして、これにつきまして、今後民間流通のよさを一層生かすように改善していこう、こういう位置づけがございます。それから自主流通米の扱いでやっております超過米がございまして、これも現在民間流通する米ということであろうかと思います。この報告の中では、この民間流通する自主流通米がその民間流通のまさによさをより生かしていくために、流通の面でも規制を緩和いたしまして柔軟な流通にしていく必要がある、こううたっておりまして、その流通改善を通じて、現在流通がややもすればまだ硬直的であるといったことから発生しておりますいわゆる不正規流通米、そういうものも取り込んでいく必要がある、いくであろう、こういうことも述べております。そこで、この報告の中で民間流通する米というのは、以上そういうふうになってまいります自主流通米、超過米、それからそれに取り込まれるであろう不正規流通といったものが含まれた民間流通する米といった概念として受けとめて間違いないのじゃないかと思います。     〔鈴木(宗)委員長代理退席、委員長着席〕
  192. 山原健二郎

    ○山原委員 規制緩和によりまして自由米の発生の余地をなくするということでもあろうと思いますが、結局不正規流通の現状を追認することになるのではないか。  第一小委員会の専門委員である山種米穀株式会社の会長の山崎さん、経団連の米問題部会長ですが、ここへ持ってきておりますけれども、「週刊農林」の二月五日号の中で、「自主流通米とは言わなくなっちゃった。民間流通米。自主流通米と自由米、いわゆる不正規取引ともいえないから、それをひっくるめたもの、政府米以外はもう民間流通米だ、そういう扱いになるんでしょう。」というふうに述べておられます。米流通は民間流通を主体とする、その民間流通の規制は最小限にする、こういうふうに報告は述べておりますが、こうなりますと実質的に米の部分管理への移行ではないかと思われますが、この点はいかがですか。
  193. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 世間一般に言われます部分管理は、政府が直接売買する一定量の米以外については生産、流通を自由化して、原則として政府が関与しない管理方式を指すものというふうに理解をいたしております。このたびいただきました報告につきましては、米の需給及び価格の安定を図るという食糧管理制度の基本的役割を維持するとの観点に立って、需要に対応した生産、流通が行われるよう、米流通は民間流通を主体としていく中で政府は米全体の需給計画の策定、安定供給に必要な米の数量の買い入れ、保管、売り渡しをするほか、民間流通についても最小限の流通規制や計画的販売の誘導など関与を行い、米全体の需給安定に責任を果たすということになっております。ですから、世間一般に言われるところの部分管理に移行するというふうには受けとめておりません。
  194. 山原健二郎

    ○山原委員 第一小委員会の内村座長の発言が出ておりますが、報告発表の際の記者会見の場で、部分管理ではないかと問われて、「うーん」としばらく言葉を探して、「直接統制と部分管理の中間的なものだ」と答えたと報道されております。これは報道ですから、そういうふうに出ておるわけです。中間報告では部分管理との表現があった。こういう点から見ても政府の米管理への関与は極めて希薄となり、実質的には部分管理の方向を指し示していると占わざるを得ないと思われますが、その点。  それから、報告では政府米の比率を当面四割程度としております。ところが、現に六十三年度産米で自主流通米が政府米と逆転し五四%になっておりますし、これに自由米が少なくとも一〇ないし一五%は流通しているとされております。こうなると、民間流通が既に米流通の六割を大きく超えてしまっているということになるわけです。報告は同時に、政府米の買い入れを作況変動に見合う程度の最小限のものとするとしておりますが、最小限とは将来的にはどの程度水準を考えているのでしょうか。四割程度という目安を持っているのかどうか、この点を伺いたい。
  195. 甕滋

    ○甕政府委員 最初の、部分管理ではないのかといったお尋ねにつきましては、先ほど大臣から申し上げましたように、部分管理というのは、使う人によっていろいろ使い方があるかもしれませんが、一般に使われておりますのは、政府が売買をいたします一定量のほかは生産から流通面はすべて自由にする、何ら規制をしないという姿を指している場合が多いと思います。そういった意味における部分管理ではないという点については、先ほど大臣から申し上げたとおりでございます。  また、政府米のシェアが将来どの程度になるのかといった点についてでございますが、この報告におきましては、政府米は年間あるいは全国を通じた安定供給を確保するために必要な数量を政府が直接買い入れ、保有し、売り渡す必要がある。また、政府米の持ち越し在庫につきましては、作況変動の推移等を踏まえ、民間流通する米の持ち越し在庫も含めて米の安定供給を確保し得る水準とすることというふうにされております。その上で政府米の数量は当面主食用の流通量の四割程度を目途とする、それで、その水準が達成されていく中で持ち越し在庫の水準、民間流通する米の需給動向等を踏まえて見直しを行うというふうにされております。  先ほどお触れになりましたように、現在、自主流通米が六十三米穀年度で五四%というふうに過半になっておりますし、私ども、当面の自主流通米の比率は六割に持っていくという方向で、流通面の改善とあわせて現在その運営の改善を進めておるところでございまして、これが最終的にどうしていくかということは、まさに現在行っております運用、これから目指しております四割というものが達成されていく過程で慎重に検討する必要があろうと考えております。
  196. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、米の価格の問題ですが、民間流通米について価格形成の場を設けるということですね。  御承知のように戦前に正米市場がありましたが、かなり大きな幅で価格の乱高下があったはずであります。ちょうど米騒動のとき私は生まれているわけですけれども、今でも米騒動の状況を聞かされるわけでありますが、そういった経験を持っているわけです。今回の価格形成の場というのがこの戦前の正米市場の事実上の復活ということになるのではないかという懸念がありますが、この点についてはどういうお考えを持っておりますか。
  197. 甕滋

    ○甕政府委員 農政審の小委員会報告の中では、この価格形成の場が米の需給動向あるいは市場評価を価格に的確に反映させるための場として必要であろうという考え方が打ち出されておるところでございます。そのあり方といたしましては、一定の資格を有する集荷業者と卸売業者等との間の価格形成を図る機能、米の流れに即して適切な価格形成を図る機能、それから流通業者間の過不足 を調整する機能、いわばその横の調整機能、こういったことを果たすものとする必要があろうというふうに触れられております。  ただ、それが具体的にどのような場であるのかといった点につきましては、そのあり方について速やかに検討を行うということで、この実行段階にゆだねられておるというふうに考えられます。したがいまして、私ども今後この報告の趣旨を踏まえまして、具体的なあり方につきましては専門家を含めました検討組織をつくりまして検討していきたいと考えておるところでございますが、御指摘のような戦前のような正米市場になるということが決まっておるとかそういう方向になっておるとかいうことでは全くございませんで、どういった内容にするかというのは今後の検討にゆだねられておるということでございます。
  198. 山原健二郎

    ○山原委員 現在、実際にかなりの規模で自由米が流通していることは事実でございますが、その自由米の最近の価格動向を把握しておられれば、その変動幅あるいは変動比率等について明らかにしていただきたいのですが、お答えできますか。
  199. 甕滋

    ○甕政府委員 最近の自由米といいますか不正規流通米の価格がどうなっているかというお尋ねでございますけれども、その相場が報道されていることは承知しておりますし、またこれはかなり限界的な取引の価格であろうというふうに見ておりますけれども、私どもとして責任を持って掌握しておるものではございません。そこで、その価格でございますとか変動幅というせっかくのお尋ねですけれども、申し上げることは控えさせていただきたいと思います。
  200. 山原健二郎

    ○山原委員 これは農水省のまとめた資料の中で、自由米の東京市場の動向を示したということで日経新聞ですかに出ているわけですが、昭和五十九年から六十一年の自由米価格、最高価格が一俵二万二千七百円、最低価格が一俵一万六千八百円と、こういうふうにかなりの変動があるということはおわかりでしょうか。
  201. 甕滋

    ○甕政府委員 その報道されておりますものを見た限りでは、政府米、自主流通米がこれはかなり通年安定的であるのに対しまして、時期別に相当変動がある。それから、先ほどちょっと申し上げましたように非常に限界的な部分の取引があらわれているのじゃないかというような点とか、いろいろ参考にいたすにいたしましても注意して見る必要があるのじゃないかという感想を持っております。
  202. 山原健二郎

    ○山原委員 米の価格市場取引に任せた場合にかなりの乱高下となることが最近の自由米の価格動向を見ても明らかではないかという意味で私は今数字を申し上げたわけでありますが、米の作柄は年によってかなり変動するわけでして、八〇年が作況指数は八七、八四年が一〇八、昨年が九七という、こういう点から見ましても価格の乱高下は生じやすいものではないか。しかも保存性などの点からも、買い占めなどが起こりやすい。主食の米が投機商品となって価格や供給が不安定となる危険を指摘をせざるを得ないわけですが、そういうような心配はないんでしょうか。
  203. 甕滋

    ○甕政府委員 御指摘のように、米というものが年に一作、秋にできまして、それを一年間で食べていく、また保存性の問題がある、需要の方からいたしますと、価格弾力性と申しますか、主食として比較的固定的な性格があって、こういう投機ないしはその乱高下といった心配がぬぐい切れない商品である、こういう認識はそのとおりであろうかと思います。農政審の小委員会の検討の場におきましても、米のそういった商品特性等も踏まえて、投機でありますとか価格の乱高下でありますとかいうことが起こらないようにいろいろ慎重な検討が必要である、こういう議論も多かったわけでございまして、この価格形成の場として今後検討いたします際にもそういった点は十分念頭に置いて検討しなければならないというふうに私どもも考えておるところでございます。
  204. 山原健二郎

    ○山原委員 これは先ほども質問があったようですが、民間流通米の価格競争の激化のもとで銘柄米の主産地とそうでない産地との関係ですね。地域によっては、例えば九州あるいは四国、中国というようなところでは稲作経営が立ち行かなくなるほどの打撃を受ける事態が起こるのではないかという心配があるわけですが、これに対してはどういう御見解をお持ちでしょうか。
  205. 甕滋

    ○甕政府委員 需要に応じた生産を進める必要があるということで、流通過程で形成されます価格が産地サイドにも十分伝えられていく必要があるというふうに考えております。産地におきまして生産者あるいは生産者団体が米の品質とか価格がどうなっているかということを十分これまで以上によく知った上で、自分の地域に合った多様な米づくりに取り組んでいくということが望ましいであろうというふうに考えております。  現に今お触れになった九州とか、その他の地域もございますけれども、産米改良について非常に熱心に取り組まれておる実態がございます。やはりその品質評価を高めていくあるいはその販売力を強化していくといった取り組みが、各地で最近は強まっているのではないかというふうに見ております。したがって、その際、その地域の実態にもよりますけれども品質がよくて高い米というものもございますし、それからまた、最近、ごく短い間に地域的に特色のある品種、銘柄、こういったものもすい星のようにあらわれると申しますか、短期間に産地サイドの熱心な取り組みによって目覚ましい普及をする、こういった例もございます。また一方ではほどほどの品質でも比較的安い米、それからさらに安いコストで勝負をする、こういうような米とかいうふうに、いろいろ多様化してきている現状があろうかと思います。  したがいまして、やはりその米の品質評価等を産地とか生産者サイドがよくわかっていただいて、生産サイドでも対応していくということが結局はその地域におきまして稲作を発展させる道になるんじゃないかというふうに考えておるところでございます。
  206. 山原健二郎

    ○山原委員 稲作は地域経済の重要な柱でありますし、また国土保全という点からも、そうした産地間の競争ですね、それによるいわゆる打撃といいますかそういうものが起こらないようにすることはもちろん大事なことだと思います。これもお聞きしたいわけですけれども、時間もそうありませんから次へ移りたいと思います。  政府米の買い入れ価格についても担い手層に焦点を置くとか需給動向を反映させるとかが強調されております。こうなりますと、稲作農家の採算を度外視した米価引き下げとなることは必至である。さきに紹介しました第一小委員会専門委員である山崎氏が、これも一月五日号の「週刊農林」に書いておりますが、「僅か二割か三割のコメを米価審議会なんてもったいぶってねやる必要ないわけです。もうそんなのやめちゃって、民間価格形成の委員会を来年からさっそくやるべきだ、」こういうふうに述べております。もちろんこの方は経団連の米問題部会長という財界代表としての意見でありますが、極めて露骨な意見ですね。したがって、報告の示す方向がこういう市場原理の導入自由化論者というものを大いに勢いづかせるという結果になると思いますが、この点についてはどういう歯どめをお考えになっておりますでしょうか。
  207. 甕滋

    ○甕政府委員 今お話ございました山崎さんの個人的な発言につきましては、特にコメントするつもりはございません。  農政審の小委員会でまとめられておりますのは、政府買い入れ価格について、構造政策の推進にも配慮しながら、生産性の高い稲作の担い手層に焦点を置き、稲作の生産性向上コスト低減を価格に反映していく、こういうこと、あるいは、その際、需給動向を反映させ、需給調整機能を強化する、こういう点がございます。やはり将来の日本の稲作の担い手になる農家について、その生産費に基づいてこれを算定していく、こういう基本的な考え方であろうかと思います。現実に実現されました生産性向上のメリットを価格にあらわし、ひいては消費者価格にも反映させていくという考え方があろうかと思いますが、そういっ た中で、米について、また食管制度について高い関心を寄せられております消費者あるいは国民的な理解あるいは支持を得ていく、こういう観点からいたしましても生産面についての努力が求められる、こういう趣旨であろうかと思います。対外問題等も含めまして、やはり米の問題、食管の問題についての国民的な理解を得ていく必要があるという点は、小委員会の議論の中でも多く論議された点の一つであろうかと思います。
  208. 山原健二郎

    ○山原委員 時間がありませんからあと三点ばかり質問して終わりたいと思いますが、一つ消費者価格の問題ですね。これは、消費者負担の適正化ということで、いわゆる引き上げていく意図が明白だと思います。そうなりますと、まさに二重価格制度という食管の根幹が骨抜きになるのではないかという点が一つです。  もう一つ生産調整等の問題ですが、今回の報告は生産調整の責任を生産者側に押しつける方向を示しておりますが、いわゆる米の過剰問題に対処しようとしている場合、転作案件の整備などを進めなければ生産調整に困難を来すことは目に見えています。しかし、政府農産物輸入自由化を一方で進めておりますし、米の生産調整をますます困難にしてきていることは明らかです。この政府の責任を棚上げにしまして生産者側に生産調整の責任を押しつけるなどということはとんでもないことだと思うわけですが、これでは事態はますます混迷を深めるばかりだと思います。この点についてお答えをいただきたい。  もう一つは、政府買い入れば生産調整実施者に限定することを課題として報告は提起しております。しかし、政府買い入れ価格がどんどん引き下げられていく中で、わざわざ減反をやって政府買い入れを希望する農家があるかという点も、これは矛盾として疑問を感じるわけですが、この点はいかがでしょうか。  最後に大臣に、ガットとの関係でも、生産調整の責任を生産者側に押しつけていくということになりますと、市場開放をしないという今までの論拠が失われてくるのではないかという心配でございまして、そういう点で政府の責任を果たさなければならないと思うわけです。米の市場開放、自由化への地ならしにこの報告がなるとすれば大変なことでございますから、この点について私は厳しく指摘をしておきたいと思いますが、この点についてのお答えをいただいて、私の質問を終わります。
  209. 甕滋

    ○甕政府委員 第一点の消費者価格でございますけれども、これは需給動向とか市場評価を反映して形成されることになるわけでございますが、上げるというお話につきましては、そういう方向が出されておるものではございません。現に、このところ消費者価格についても私どもその引き下げを図っておるところでございます。また、この報告の中では、標準価格米のような低廉で品質が一定の米を供給する仕組みを維持していく必要があろう、こういうことにも触れておるところでございます。  それから第二点の生産調整でございますが、生産者、生産者団体がみずからの問題として主体的に取り組んでいく必要がある、これは、これまでも実はそういうことが言われておりまして、生産者、生産者団体側の取り組みもかってに比べますと積極的に主体的に取り組んでいただくようになっておるというふうに私も評価しております。やはり需要に応じた生産を行うということは、基本的には生産者、生産者団体自身が真剣に考えていただくべきことであろうと思います。もちろん、国あるいは地方公共団体がその円滑な実施のために必要な措置を講ずるということは当然であろうと思っております。  それから、その生産調整に際しまして政府米の買い入れをその実施者に限定するということが報告書の中にございまして、今委員から疑問も呈せられたわけでございますが、これはいろいろな御議論があろうかと思います。ただ、やはり生産調整と米管理というものは裏表一体でございますので、限られた政府米の買い入れの機能を有効に発揮する、これが生産調整とリンクしていく中で意味がある、こういうことであるならば、これは当然関係させて考えていくべき事柄であろうというような御議論であったかと思います。なお、実施に当たりましては、もろもろの条件も考えていく必要があろうという意味を含めまして、検討すべきである、こういった表現になっているように記憶しております。
  210. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ガットとの関連でございますけれども、米全体の需給計画、これは政府が立ててまいるわけでありますし、また生産調整につきましても、やはり農業者の皆さん方に理解をしていただきながら主体的にこれに取り組んでいただきたいということでありますけれども、これに対する予算等につきましては政府の方でこれを後押ししていこうということでありますから、これについても、従来のガットの中であれされていたものにこれがそんなに逸脱するものでないということ。  それからもう一つは、今度の米の問題につきましては、単にそういったことだけではなくて非経済的なもの、こういったものについても主張し得る一つ基盤というか足場というものを私たち確保しているわけでありまして、そういう面で、私たち日本における稲作あるいは米の現状というもの、こういったものについて十分説明していきたいというふうに思っております。
  211. 堀之内久男

    堀之内委員長 次回は、明二十五日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十分散会