○内閣
総理大臣(竹下登君) まず最初は、第一富士丸
事故の問題についてのお尋ねであります。
今回のような痛ましい
事故が発生して多数のとうとい人命が失われましたことは、まことに遺憾であり、まさに痛恨のきわみであります。私としては、このことを厳粛に受けとめ、かかる
事故がそれこそ二度と起きないよう、
事故原因の早急かつ徹底的な究明と再発防止対策の確立を図ることが、何よりも今私どもに課せられた重要な
課題だと思います。そのため、
事故発生の翌日から第一富士丸
事故対策本部を設置いたして取り組んでおるところでございます。今後、
事故原因の
調査結果を待って、一層の航行安全対策を講ずる
考えであります。私としては、このような措置などを通じて、今御指摘にもございましたように、
自衛隊の存立の基盤は
国民にある、この点に思いをいたし、より一層その信頼の得られる
自衛隊であるよう不断の
努力を行うことが大切である、このように思料するものであります。
なお、
海上自衛隊がこの
事故の直後において遭難者に対してとった措置等について、いろいろな御批判があることは承知いたしております。私は、今回の
事故で得られました反省、教訓を今後一層生かしていく、それが犠牲者の方へのせめてもの供養であると思っております。永末
議員におかれては、今もお話にありましたように、旧海軍の先輩として、平素より
海上自衛隊に御厚情を賜っておりますことを感謝いたします。今後とも変わらない御叱正を心からお願いをするところでございます。今御指摘がありましたように、
制度、
施策、万全を期してまいりたいと
考えております。
次の問題は、リクルート事件と
政治家のモラルの問題についてでございます。
いわゆるリクルートコスモスの問題につきましては、株式
公開に至るプロセスが投資家保護及び公正な証券
取引の確保といった見地から適切な規制のもとに置かれていたかどうかという点につきましては、現行法の定めるところによりまして
調査検討を進めてまいります。そして、健全かつ公正な証券
取引の確保という観点から
現行制度に欠けるところはないか、
関係者の御意見を十分聞きながら、改善すべき点についてはきちんとした対応をしていく
考え方であります。
今また、
原則課税から、みなし分離等が完全でない、こういう御指摘のありましたことも十分承知いたしております。そして、
政治家ないしその
関係者がその中に含まれておるではないか、この点につきましては、
現行制度のもとにおいてみずからの
責任において行われたものであるといたしましても、たとえそれぞれの行為は
現行制度の中で許された
経済取引であるにいたしましても、
国民感情として割り切れないものがあるという批判
は、この際しっかりと受けとめるべきであると思います。李下に冠を正さずの教えのとおり、私自身を含め、一人一人の
政治家として今後とも十分心してまいりたい、このように
考えておるところであります。
さて、次の問題であります。いわゆる
所得、
消費、
資産の
バランスの問題についてお触れになりました。
いかなる税目も、それぞれの長所を有する反面何らかの問題点を伴うことは事実でありますので、税収が特定の税目に偏り過ぎることには問題があります。その
意味において、
税体系は全体として
所得、
消費、
資産等に対する
課税が適切に組み合わされている必要がありますが、もとよりそれは、それぞれ単一に各三分の一ずつであるべしというようなものでは全くございません。今御指摘のありましたそれぞれの
内部的構造改革、これも重要な問題であります。現行
税制について問題となりますのは、直接税、とりわけ給与
所得に対する
課税が大きくなり過ぎていること、その裏腹として
消費課税のウエートが下がり過ぎており、しかも現行の個別
消費税制度が時代の変化に即応していないことにもございます。このような認識に立って
税体系を見直しますことが、いわゆる
不公平税制の
是正と相まって、税に対する
不公平感、重圧感の払拭に資するものである、このように
考えておるところであります。
資産課税につきましては、株式
譲渡所得の
原則課税への転換、そして、
法人の借入金による
土地取得に対する
課税強化等が図られます一方、
昭和五十年以来十数年ぶりに
相続税の見直しを行うことといたしております。その
最高税率につきましては、
昭和五十年以前の七〇%に引き下げることとしておりますが、なお諸
外国と比べましてかなり高いものであります。富の再
配分機能がこれによって損なわれるという性格ではない、このように
考えております。
次が、
土地税制の
是正についてであります。
土地税制については、
土地政策の一環として、
税負担の公平にも配意しつつ、種々の措置を今日まで徐々に徐々にとってきております。さらに、今回の改革案にも、
法人の借入金による
土地取得を通ずる
税負担回避行為への対応策が盛り込まれておるということを指摘申し上げておきます。
土地問題の解決には各般の対策をまさに総合的に実施していくことが必要でありまして、
土地税制についても、総合的な
土地対策の一環として、先般の総合
土地対策要綱、
税制調査会の検討等を踏まえて、
負担の公平にも配慮しつつ、今後とも適切な
対処をしてまいる
考え方であります。
次は、私がかつて申しました六つの懸念あるいは七つの懸念等について具体的にお触れになりました。低
所得者問題であります。
今回の
税制改革では、二兆円を上回る大幅なネット
減税を行いますことによって、働き盛りで収入は高いが教育費、住宅費などの支出がかさみ家計にゆとりが余りない四十代、五十代を
中心に、
サラリーマンのライフサイクルではほとんどの
世帯で
税負担の軽減が図られるものと
考えております。今の永末
議員のライフサイクルに対する二十対六十という問題は、私、にわかにそれに対して
お答えする準備はいたしておりませんが、いずれにせよ、
サラリーマンのライフサイクルを見ながら
税制は構築されておることは事実であります。
所得や
世帯の
状況によりましては
負担増が生じる場合がありますことは否定できませんが、租税はだれもが受けている公共サービスを支える財源でありまして、この社会共通の費用を広く薄く公平に分かち合っていくことは、二十一世紀に向けてより豊かな
経済社会を築いていく上で非常に重要になっておること、
我が国の
所得税の
課税最低限は今回の改革により国際的に見てもなお一層高い水準となること、また、真に手を差し伸べるべき
方々については、これは
税制の面だけでなく
財政面で引き続ききめ細かな配意を行っていくこと、このようなことによりまして、具体的には生活保護あるいは福祉
年金等々になりましょうが、私は懸念が中和されていくものであると
考えるものであります。
さて、
不公平税制の
是正についてであります。
納税者の信頼の基礎となるものは
負担の公平であり、今回の
税制改革におきましても、
税制改革法案に述べられておりますように、公平の
原則をまず基本的
理念の
一つとして置いております。いわゆる
課税の
適正化にできる限りの
努力を行っているところでありますが、
負担公平の確保は
税制のかなめでありまして、今後ともよりよき改善への検討は、これは継続してまいらなければならぬ
課題だ、このように
考えておる次第であります。今後、
税制改革関連法案の十全な御
審議を心からお願い申し上げる次第であります。
次は、酒税の問題にお触れになりました。
近年における酒類
消費の態様の変化や国際的な観点等を踏まえて、従価税及び級別
制度の廃止等酒
税制度の簡素合理化を図りますとともに、各種酒類の
税負担水準の見直しを行うこととしておるところでございます。
税負担水準の見直しに
当たりましては、各種酒類の
消費の実態等にも配慮しながら、酒類間の
税負担格差を
縮小した上で
消費税相当分の
税率引き下げを行うこととしております。なお、
清酒及びし
ょうちゅう等の中小酒類製造者に対しましては、
税率を軽減する特別措置を講ずるなど、所要の対策を行うことといたしておるところであります。
牛肉・かんきつ問題についてお触れになりました。
今回の交渉では、佐藤農林水産大臣を初めとする
関係者が米側と粘り強い交渉を行って、
自由化までの期間、そして国境措置、これらにつきまして米側からも相当の譲歩を引き出し、日米間の
協力とまさに共同作業によって決着したと
考えてお
るところであります。
我が国としては、輸入数量制限をめぐる厳しい世論、
我が国の置かれております国際的立場等を考慮して、国境措置とそして国内対策を講ずることによりまして
牛肉・かんきつ生産の存立を守り得るとの
判断に立って決断を行ったものであります。これらの経過、結果等については
関係方面にも十分御説明申し上げ、
政治不信につながってはならない、この
考え方にこたえるべきであると思っております。
次の、いわゆる
不公平是正の与
野党協議の問題であります。
この問題については、私自身事情はよく承知いたしております。しかし、きょうは私自身行
政府の立場としての
お答えを申すべき立場にございますので、
各党間の話し合いの問題についてはコメントをする立場にないということをこの場では御理解を賜りたいと思います。
次の、
福祉ビジョンの
提示でございます。
これは、永末
議員から前回の
国会の
予算委員会の際にも私どもにこのことについていろいろ御示唆がございました。まず、
昭和六十一年六月に長寿社会対策大綱を閣議決定して、これに沿って各種
施策を総合的に
推進しているところでございます。また、本年三月に、二十一世紀初頭における社会保障を展望していただくために、人口の
高齢化状況や社会保障の給付と
負担の見通し等を明らかにいたしました。これは、御指摘なさいましたとおり、いわば現行の
施策、
制度を前提に置いたものであるということは御指摘のとおりであります。したがって、さらに具体的な形で
高齢化社会の福祉
施策の方向を示すことにつきましては、最終的には、これは
国会に預けるというお言葉もありましたが、
国民の合意と選択を得るべき問題があります。種々難しい点もございますが、何とか御趣旨に少しでも近づけられるような姿が描けないものか、これからも工夫、検討をしてみたい、御示唆のほどをお願いをいたす次第であります。
さて、次に
行革中期計画についての御議論がございました。
確かに、
財政力なくば、いかに立派な「
世界に貢献する
日本」などと申しましても、その実行は不可能であります。まず、
行財政改革については、従来から
行革審答申などを最大限に尊重しながら着実に
推進してまいっております。
行財政改革の
中期計画を示せとの御指摘につきましては、
国民の必要とする
行政サービスの水準は毎年毎年の
予算編成過程等を通じて決定し、
国会の御
審議を仰ぐべきものでございます。内外の
経済社会情勢が流動的な中で、行
財政についてのみ将来を先取りして拘束性のある具体的な
計画を示すことについては、これはぎりぎりの議論をいたしますと、非常に困難な面がございます。しかしながら、
国民の理解と
協力を得て
税制改正を実現するために
行財政改革を一層
推進する必要があるということについては、御指摘のとおりであります。したがって、新
行革審の意見等を踏まえ、今後
行政改革について誠心誠意これに取り組んでいきたい。
確かにいろいろ御指摘がございました。しかし、例えば国鉄の分割・民営、たばこ会社あるいはNTTの民営化とその株式売り払い代金の既に果実の活用等々、そうしたいわば目玉になるものを今すぐ示せと言われてもなかなか困難であります。しかし、やはり原点に立って、地味でございましょうとも、この問題は根気強く続けていかなければならない
課題だ、このように理解しておるところであります。
さて、首都
移転問題についてお触れになりました。
私どもはいろいろな
政策を打ち立てておりますが、これらが大きく議論が展開して首都
移転問題等につながっていくということは、私どももあらかじめ承知いたしておるところであります。しかし、首都機能の
移転再配置それそのものについてまず議論いたしますと、
国民生活全体に大きな影響を及ぼして、国土
政策の観点のみでは決定できない面がございます。したがって、さきの総合
土地対策要綱におきましても、政治・
行政機能の中枢的
機関の
移転再配置につきましては、幅広い観点から本格的検討に着手する、このようにいたしておるところであります。超党派の新首都問題懇談会ができていろいろな提言を私どもにも賜っておりますことは、私も十分承知いたしております。
さて、
間接税と
経済の混乱の問題についてお触れになりました。
消費税においては、
経済に対する
中立性や
事業者の納税事務
負担の軽減の観点等から、帳簿上の記録等に基づきます税額控除
方式や簡易な税額計算
方式を採用いたしております。また、
消費税の実施に
当たりまして、
税負担の円滑かつ適正な
転嫁が行われるよう、
消費税の仕組みの周知を図りますなど、法令面の手当てをも含めまして必要な
施策を講じて、その環境づくりに努めていかなければならない、このように
考えます。
さらに、
消費税の
導入に伴いまして
物価への影響が生じる場合には、生活保護、さきにも申しました在宅福祉等、真に手を差し伸べるべき
方々に対する
施策については適切な配慮を行うべきものであります。
政府としては、
消費税の円滑な
導入に資するためこうしたさまざまな配慮を施しておるところでありまして、したがって、これらの懸念というものは、私はお互い議論する段階におきまして中和、解消されていくべきものである、このように
考えておるところであります。
税率問題についても、
国会にげたを預けておるではないかという趣旨の御発言がございました。しかし、この最大の歯どめというのは、まさに租税法定主義の建前において
国会こそがその機能を果たすものであるという私の
考え方は、いつも申し上げておるところであります。
税制改革に時間をかけるべきだという御意見がございました。
確かに、六十三年度税収の動向につきまして、本格的な収納が始まったばかりでございますので、
予算額の一割にも満たない現段階において今年度の見通しを申し上げることは困難でございます。六十二年度は、一時的要因といたしましても、自然
増収があったことも事実であります。そこで、私は、やはりこういう機会にこそ、すなわち、いわば
物価が安定して、いわゆるよく言われますインフレなき持続的成長の過程にある落ちついた時期にこそ、
税制改革というものを本当に冷静な環境の中でお互いが議論をし合って選択肢を求めていくということには絶好の機会ではなかろうか、このようにも
考えておるところであります。
さて次に、北方領土問題等外交問題にお触れになりました。
歴史的にも法的にも
我が国固有の領土であります北方四島の
一括返還を実現して、北方領土問題を解決することによって平和条約を締結することは、従来よりの一貫した対ソ外交の基本
方針であることは御指摘どおりであります。いろいろな御意見がございました。しかし、
政府としては、今後ともこの基本
方針にのっとって、あらゆる機会に北方四島
一括返還実現のため、粘り強い対ソ交渉を行っていく
考え方でございます。(
拍手)
アジア・
極東の
通常軍縮問題についてもお触れになりました。
欧州におきます通常戦力安定化交渉は、国境の不可侵と国家の領土保全につき
関係国間で明確な合意が達成されたとの経緯を経て、かつ欧州におきましては、NATOとワルシャワ条約機構がほぼ東西
ヨーロッパに対称的な形で対峙してきたとの
状況等を背景に進められるものであると承知いたしております。これに対して、
アジアにおいては、まず領土問題、それから各種地域問題が未解決のまま残されていること、また、そもそもこれらの諸問題の背景にありますところの政治、軍事情勢が欧州とは基本的に異なりますことなどから、欧州と同様の
方式を適用することが現実的かつ適切であるとは必ずしも申せないと思います。
我が国といたしましては、現状においては、まず本地域における紛争、対立の
原因、例えば北方領土問題の解決を図ることがより肝要との立場から、今後ともこのための外交
努力を継続していく、このような
考え方に立つものであります。
中国との問題であります。
中国は、軍縮のための国際
会議に参加する条件として、圧倒的多数の核兵器を
保有しております
米ソがまず核兵器を大幅に
削減しなくてはならないという立場であると承知しております。私は、
国会の御理解を得て、今月末訪中し、
中国国家指導者との間で率直な意見交換を行う予定にいたしております。現在、詳細
日程、議題等については打ち合わせを行っておりますが、御指摘いただいた点等を踏まえてこれに当たる覚悟であります。
さて、バードンシェアリングのお話がございました。
米国において、近年の日米間の
経済情勢をも反映して、
議会を
中心に
我が国に一層の防衛
努力を求める動きがあることは私も十分承知しております。安保条約上、
我が国に対する武力
攻撃が発生しました場合に
我が国を防衛する立場にある米国として、
我が国の防衛
努力につき関心あるいは期待を有するということは、これはいわば自然の姿であろうと思います。他方、
我が国は、憲法及び基本的な防衛
政策に従って節度ある
防衛力の
整備に努めてきておるところであります。また、在日米軍経費の
負担についても可能な限りの
努力をしているところでございますが、これはあくまでも
我が国の自主的
判断に基づいて行っているものでございます。したがって、
政府としては、今後ともかかる
努力を自主的
判断の中で継続していくべきものである、このように
考える次第であります。
ODAの
理念、
目的、諸
原則、これは私どもが
考えておりますことと
考え方をおおむね等しくいたしておるところでございます。これから、それこそ量、質の改善を含め、一層の効果的、効率的実施を図ってまいる、このような
考え方でございます。
さて、
衆議院定数是正の問題にお触れになりました。
確かに、
予算委員会において私も一問一答したことを記憶いたしております。
衆議院議員の
定数是正問題につきましては、これは本院の本
会議において抜本
改正の検討を行う旨が決議されたわけであります。この問題は、
国会の構成にかかわる
選挙制度の基本にかかわる問題でございますので、やはりまずは
各党間で十分
論議を尽くしていただくことが重要である、
政府としては、その
論議等を踏まえて
努力すべきものではなかろうか。ただ、いわば与党たる自由民主党がイニシアチブをとるべきだという永末
議員の前回
予算委員会等におけるお尋ねでありました。この点については、十分心して対応すべきものと
考えております。
さて、
官僚出身者の問題についての御指摘がありました。
公職
選挙法は、公務員の地位利用によります
選挙運動や
選挙運動類似行為を禁止しておることば御案内のとおりであります。国家公務員はこのような
法律の趣旨を十分理解して、いやしくも世間の疑惑を招くようなことのないようにすべきであるは当然であるというふうに私も思っておるところでございます。
そこで、今度は
選挙公報違反、
公約違反等の問題に
最後にお触れになりました。
昨年二月
提案いたしました
売上税は、二年前の
選挙の際の
中曽根前
自民党総裁の発言をも十分踏まえた上のものでございましたが、結果として
審議未了、廃案となりました。
政府としては、こうした経緯というものを真剣に、かつ謙虚に受けとめて、
国民各界各層の意見は那辺にあるかということを幅広く伺いながら、改めて
税制改革案を取りまとめ、このたび提出した次第でございます。したがって、何とぞこの
国会において十分御
審議を賜りますことを心からお願いをする次第であります。
さて、
選挙によって信を問えという御意見もございました。
選挙によって私どもに与えられました任期というのは、その任務を果たす上で大切な大切なものであると私は
考えております。したがって、解散といったようなことは全く今日私の念頭にはございません。
以上、
お答えを終わります。(
拍手)
〔
国務大臣宮澤喜一君登壇〕