運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-04-07 第112回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月七日(木曜日)    午前九時一分開会     ─────────────    委員の異動  四月六日     辞任         補欠選任      高橋 清孝君     岩上 二郎君      佐藤 昭夫君     吉岡 吉典君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 伊江 朝雄君                大河原太一郎君                 小島 静馬君                 林  ゆう君                 吉川 芳男君                 久保  亘君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 北  修二君                 工藤万砂美君                 坂野 重信君                 坂元 親男君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 田中 正巳君                 中曽根弘文君                 中西 一郎君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 林 健太郎君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 松岡滿壽男君                 小川 仁一君                 及川 一夫君                 大木 正吾君                 千葉 景子君                 野田  哲君                 安恒 良一君                 及川 順郎君                 広中和歌子君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 吉岡 吉典君                 勝木 健司君                 野末 陳平君                 喜屋武眞榮君                 青木  茂君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        農林水産大臣   佐藤  隆君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       粕谷  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  堀内 俊夫君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  奥野 誠亮君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        的場 順三君        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   増島 俊之君        総務庁長官官房        会計課長     八木 俊道君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   児玉 良雄君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁建設        部長       田原 敬造君        防衛施設庁労務        部長       山崎 博司君        経済企画庁調整        局長       横溝 雅夫君        経済企画庁物価        局長       冨金原俊二君        環境庁水質保全        局長       渡辺  武君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君        国税庁次長    日向  隆君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省高等教育        局私学部長    坂元 弘直君        文部省体育局長  國分 正明君        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局老人保健部長  岸本 正裕君        厚生省保険局長  下村  健君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産大臣官        房予算課長    上野 博史君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        農林水産省農蚕        園芸局長     吉國  隆君        農林水産省畜産        局長       京谷 昭夫君        農林水産省食品        流通局長     谷野  陽君        食糧庁長官    甕   滋君        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        中小企業庁次長  広海 正光君        運輸大臣官房審        議官       金田 好生君        運輸大臣官房会        計課長      黒野 匡彦君        海上保安庁長官  山田 隆英君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働省労政局長  白井晋太郎君        労働省労働基準        局長       野見山眞之君        建設大臣官房会        計課長      鹿島 尚武君        建設省河川局長  萩原 兼脩君        自治大臣官房長  持永 堯民君        自治省税務局長  渡辺  功君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君    参考人        税制調査会会長  小倉 武一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十三年度総予算案審査のため、本日、税制調査会会長小倉武一君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより締めくくり総括質疑を行います。上田耕一郎君。
  6. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まず、軍事費の問題についてお伺いしたいんですが、私昨年五月の予算委員会で、六十二年度の軍事費マンスフィールド米大使などの指摘するNATO基準、この方式によれば日本は一・五倍ないし一・六倍になるということで独自の計算をいたしまして、既に昨年度で米ソに次ぐ第三位の軍事大国になったことを指摘しましたが、今国会でもいろいろ取り上げられました。  まず、二月二十五日のアミテージ米国防次官補がこの問題でどう述べたか、改めてお聞きしたいと思います。
  7. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) アミテージ国防次官補は今年度の防衛予算につきまして、英国フランス及び西独のレベルを追い越さんとしており、そうなれば日本防衛予算は世界で三番目の大きさとなろうと、こう申しております。  ただ、念のために申し添えさしていただきますけれども、これがどのような資料に基づいてなされた計算かわかりませんけれども、この種の最近の米政府の発言は、我が国がより大きな防衛努力を行うべきであるとする米議会を中心といたします米国内の不満と申しますか見方に対して、我が国政府防衛面での努力を積極的に紹介することによって我が国の立場に対する米国内の理解を得ようとしているものと考えております。
  8. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 おもしろいのは、アメリカ議会向けにいや日本防衛費は大きいよ大きいよと言おうとしているんだが、日本ではいや小さいよ小さいよと言おうとしていて、言い方が違うんですけれども現実は同じなんですね。  さて、三月十五日、今度はへイズ・アメリカ太平洋軍司令官アメリカ上院軍事委員会で証言をしています。これはどう言っていますか。
  9. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) アミテージ国防次官補が申しましたのとほぼ同趣旨でございまして、現在の為替レート一ドル百二十八円で、給与及び年金の計画を含めると日本防衛予算は今、英国フランスあるいは西独防衛予算の額を上回っている。
  10. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 アミテージ国防次官補は第三位になる瀬戸際だと言ったわけですね。同趣旨といっても今度はちょっと違うんですよ。ナウ・イクシーズと言って、もう今や乗り越えたと、そういう判断で一歩進めているわけですな、議会がそれだけうるさかったのかもしれませんが。  それで、私は昨年度の軍事費について、これは東京の、日本にあるイギリス西ドイツフランスなどの大使館を通じてこの三国の昨年度の軍事費を聞いてやったんですが、今年度については防衛庁イギリス西ドイツフランス日本軍事費はどうなっていますか。
  11. 日吉章

    政府委員日吉章君) お答え申し上げます。  先生お尋ね数字はあるいはNATO定義数字をお求めかと思いますけれども、現在のところ各国NATO定義軍事費はまだ公表されておりませんので、各国が公表しております各国それぞれの定義国防費で申し上げますと、英国は百九十二億ポンド、西独は五百十六億マルク、フランスは千七百四十三億フランと、かようになってございます。
  12. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 資料をお配りいたしましたので、その表①を見ていただきたいと思うんです。  今の答弁はこの③のところですね、八八年度予算NATO定義国防費がどのぐらいかは各国が発表するわけです。それで、八五年度について防衛庁がそれをくださった数字があるので、まだ発表していないと言うけれども、その比率を掛けて、じゃNATO基準各国どのぐらいになるかということを計算したのがこの括弧内です。これは私ども計算。これは八五年度についての防衛庁比率をそのままやった、大体同じぐらいと見て。誤差は小さいと思うんですね。  その次の④これは一ドル百二十八円として計算して、ポンド、マルク、フランなども同じそういう計算ですけれども、それをしたものが④です。  それに対して日本軍事費を、これはマンスフィールド米大使に従ってと言っておきましょう、一・五倍しますとこの⑤の数字になります。日本四百三十四億ドルです。西ドイツ三百七十億ドル、フランス三百五十八億ドル、イギリス三百四十七億ドルで、昨年私はこの三国を抜いたと言いましたけれども、今年度大幅に抜いたということがこの計算で非常に明確になったと思いますが、だからへイズさんが言うわけだと。いかがですか。
  13. 日吉章

    政府委員日吉章君) ただいま先生からお配りいただきました資料を拝見いたしました。  確かに、ある推計によりますれば、英、西独フランスNATO定義によります八八年度の数字はこれに近いようなものになるのかもしれないと思いますが、我が日本につきまして一・五倍いたしております点につきましては、いささか疑問があるのではないかと思います。一・五倍の根拠は必ずしも定かではございませんが、私どもの推測するところによりますれば、これには日本防衛関係費に旧軍人遺族等恩給費海上保安庁費予算を合算いたした数字がおおむね一・五倍になるというお考えに立っているのではないかと思いますが、その点につきましては若干コメントを加えさしていただきたいと思います。  と申しますのは、NATO定義は前々からもう何度も申し上げておりますように、NATO内で取り扱いが秘とされておりまして、その内容は正確にはつかまえることができません。ただ、私がただいま申しましたように、軍人恩給費それから海上保安庁といいますか、我が国で言いますと海上保安庁に類するような沿岸警備隊とかあるいは国境警備隊等予算をどう取り扱っているかという点が必ずしも明らかでなく、微妙なところがございます。  ところが、私どもが調査いたしましたところによりますれば、まず恩給費でございますが、これにつきましては、職業軍人及び軍に雇用された文官に対し政府が直接支払う恩給が含まれているのは確かでございますが、戦争被害補償に係るものは含まれていないと推定されます。そういたしますと、我が国の場合には旧軍隊自衛隊との非連続性ということを考えますと、そもそもこれを合算することそのものがいかがかと思いますが、あえてこの点を捨象いたしまして合算するといたしましても、この場合にはやはり戦争被害に対する補償の部分は除かないといけません。それでこれを除いたものを我が旧軍人遺族等恩給費の中からそういう性格のものを出すといたしますれば、普通恩給普通扶助料になるのではないかと思われます。ところが、我が国の旧軍人遺族等恩給費の中には職業軍人に係るものと徴兵に係るものとの区分けがなされてございません。したがいまして、これを全額足すことそのものもやはり過大になるのではないかと、かように考えられる次第でございます。  それから、もう一点は海上保安庁予算でございますが、海上保安庁につきましては、海上保安庁法二十五条にもございますように、これは「軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。」と、こういうふうになってございまして、明らかに我が国海上保安庁はその他の国の沿岸警備隊あるいは国境警備隊とは性格を異にしており、合算すべきではないのではないかと、かように考えております。
  14. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日吉経理局長は、今職業軍人徴兵とを一緒にするというのはいかがかと思うと言うんですが、昨年私が聞いたとき、池田経理局長はそれを一緒にすると大体恩給費の中の四五%ぐらいに該当するんじゃないかと言っていますが、この点どうですか、四五%。
  15. 日吉章

    政府委員日吉章君) 正確な数字は直ちにお答えできませんが、大体その程度になろうかと思います。それをさらに職業軍人徴兵に係るものとに分けるということはもう極めてこれは困難でございます。困難といいますか、現在の恩給支給の実態からいいましてそれをトレースすることは不可能でございます。ただ、階級別支給者がわかってございますので、非常に乱暴でございますけれども下士官以上が職業軍人であった、兵が徴兵に係るものであったと、これは職業軍人を過大にカウントすることになると思いますが、そういうふうな計算をいたしました場合に六割程度下士官以上と、こういうふうな数字になろうかと思います。
  16. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 アメリカと違って小さくするのにいろいろ苦労していることがよくわかりました。  恩給についてはいろいろ議論があると思うんですけれども、昨年の池田経理局長答弁恩給費の中の四五%該当ということはまあもし認めたとしますわな。海上保安庁を除くというのは僕は納得いかないんですよ。今二十五条をお挙げになりましたけれども自衛隊法八十条にこういうのがあるんです、自衛隊法の八十条。つまり出動命令自衛隊の全部あるいは一部に行われたとき、つまり有事の場合ですな、「海上保安庁の全部又は一部をその統制下に入れることができる。」と、「政令で定めるところにより、長官にこれを指揮させるものとする。」と。海上保安庁有事の場合防衛庁長官の、瓦さん、あなたの指揮下に入るんですよ。そうしたら当然これは入れるべきじゃないですか、いかがですか。
  17. 日吉章

    政府委員日吉章君) 先生ただいま御指摘のように、自衛隊法八十条に基づきますれば、海上保安庁の全部または一部が防衛出動時において内閣総理大臣統制下に入り、防衛庁長官指揮を受ける場合もあり得ることになっております。しかしながら、この場合におきましても、海上保安庁法に定める同庁の任務、権限には何ら変更がないということでございます。  さらには、先ほども申しましたように、海上保安庁法第二十五条の趣旨、こういう両方からいたしまして、たとえ防衛庁長官指揮下に入ったといたしましても、その海上保安庁の職員が行う職務というものは自衛隊我が国を防衛するために行動する業務とはおのずから違っておりまして、おのずからといいますか当然に違ってございまして、その場合にも海上保安庁性格には何ら変化がないものと理解しております。
  18. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は何も海上保安庁法律的性格を論じているんじゃなくて、NATO基準で言う沿岸警備隊、この予算を入れて比較するのは当然だと、有事のときには入るわけですから、防衛庁に、ということを言っているんです。大体NATO基準というのは秘密でわからぬわからぬと言いながら、わかっているような顔をして少なく計算するというのはひどい話です。  それで、海上保安庁NATO並みに入れて計算しますと、これはだから、あなた方の言う一・二倍を認めたとしてですよ、認めてそれに海上保安庁を入れると、恩給は四五%というのを仮に認めても、その際の計算を、私これ一ドル百二十四円五十銭で計算したのが表にあります。これを見ますと、⑧見てください。そうすると、こうなるんですね。三百五十六億ドルです。フランスあと二億ドル、それで西ドイツあと十八億ドル、イギリスあと六億ドル。そうすると、こうなりますとこれはアミテージの「瀬戸際」ですよ。だから、マンスフィールドさんの言う一・五倍じゃなくとも防衛庁の一・二倍プラス沿岸警備隊海上保安庁を足しただけでもこれはもうまさに瀬戸際ということは、つまりイギリス西ドイツフランス日本、ほぼ肩を並べるところまで来たということですよ。この瀬戸際ぐらいは認めるんですか。これはどうです。瓦防衛庁長官に聞こう、瓦さん、どう。あなたのところのことだからそのぐらい言えるでしょう。
  19. 日吉章

    政府委員日吉章君) 今数字でもっていろいろお示しいただきましたが、その前提にしておりますNATO定義に準拠した仕方そのものが妥当かどうかという点もございますし、それから、こういうふうに先生が今お示しいただきました数字が非常に近いところに来ております最大の原因は為替レートの移動にございます。  我が国防衛費は諸外国に比べまして人件費率が非常に高うございます。そういう中におきまして為替レートが大きく効いてきているということでございまして、確かに同一のドルでもって換算いたしました軍事費を比較するというのは一つの比較かと思いますが、それそのものがその国の防衛力全体を正確にあらわしているというようなことでも必ずしもないのではないかと思います。
  20. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 西廣さんいらっしゃいますか。――あなたは、瓦さんがハワイにいる間に、一日早くワシントンに行ってアミテージとかなりやったという話で、あれで有事来援を決めたという話ですが、そのときどうですか、こういう日本防衛費の問題、アミテージと問題になったんですか、あなたは余り大きく言うなとか。それで、どう思います、こういう問題を。
  21. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 特段そういった話はしたことがございませんが、先生の御質問の趣旨は、主として円高によってドル比較すると非常に上がってきたということであろうと思います。これは私ども給料も同じでございますが、円高給料が二倍になったから定期昇給はなくてもいいだろうということにはなかなかならないのと同じようなことでございまして、円高によって比較されても必ずしも内容的にそれが特段に変わるものではないということは御理解賜りたいと思います。
  22. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 首相ね、例えばキッシンジャー氏は二〇〇〇年になると日本軍事大国になるだろうと、アメリカの中では今度は軍事大国化の懸念がいろいろ言われ始めているんでしょう。それで、憲法九条によれば、本来軍事予算ゼロのはずなんですよ。それがここまで来ている。軍隊もないし、戦力も持っていないはずなのに、いよいよ米ソに次ぐ第三番目の軍事大国になっているというこの現実に対してどういうお考え、感想をお持ちですか。
  23. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) まあ上田さんの方は軍事費、私の方は防衛費と、こういうことの基本的な呼称の違いからまず申しておきます。  昭和三十二年でございますか、「国防の基本方針」というものができて、それから一次防、二次防、三次防、四次防、途中単年度もございます。それから大綱、そして今日に至る経過を見ますと、それこそ一番最初決めた近代化のために国力、国情に応じた着実なる整備が行われて今日に至っておる、こう私は素直にこれを受けとめております。そして、防衛予算というのは今はああして計画というものをお認め――お認めいただいておりませんが、私どもが認めておりますが、計画に基づいて十八兆四千億というものがあって、そして単年度ごとにそれこそぎりぎり他の施策との調和を図って編成して今日に至っておるというふうに私はこれを素直にとらえております。  そしてまた、一方、軍事大国になる、他国に、近隣諸国に脅威を与えるというようなことには断じてなってはならぬというところにまた節度はきちんと存在しておるというふうに思っております。小さ目に小さ目に言うとか、あるいは大き目に大き目に言うとか、そういうことではなく、極めて適正なものを御説明しておるというふうに私は真っ当に理解すべき問題だというふうに思っております。
  24. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 小は大より小で、大は小より大なんです。このことは軍事費についても当てはまると言っておきたいんです。  三兆七千億の今年度軍事費の中には千二百億円も米軍への思いやり予算がありますね。ところが、今度米軍への思いやりどころか外国軍事費への思いやりが問題になりつつある。けさの日経には「比へ特別円借款 米軍基地費用”肩代わり”」と、これを六日方針を固めたとありますが、どうですか、この問題。
  25. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) そういう申し入れもどこからもありませんし、また、そういう方針を固めたこともどこにもありません。
  26. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 では、フィリピンが三十五億ドル援助要請、従来の円借款とは別にことしから五カ年計画で毎年七億ドルの新規経済援助を求めていると言いますが、これはどうですか。
  27. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) ついこの間ASEAN会議がありまして、そのとき総理のお供をしてフィリピンへ行って、そのときに第十四次の借款に調印しました。それ以来フィリピンからまだ具体的に何にも話は聞いておらない次第であります。近く外務大臣が来ます。そのときにあるいは話があるかもしれませんが、主として私たちが聞いておるのはやはり累積債務、この負担が大きいのでというふうな感じが伝わってきておりますが、まだ具体的な話は承っておりません。
  28. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 北米局長にお伺いします。  この三月三日、アメリカの上院予算委員会でフランク・カールッチ米国長官がこう述べております。アメリカは現在スービック、クラーク両基地の貸与料として毎年一億二千万ドル近くを支払っているが、今基地交渉でこれを大幅増額を主張している、この膨大なコストの一部または全部を日本に負担してもらうことを考えているんだと。どうですか。
  29. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) このことは既にこの委員会で取り上げられておりまして、記録を取り寄せましたところ、私正確に引用はできませんけれども、その部分は質問者、サッサールという上院議員でございますけれども、その質問者が言ったことであって、それに対してはカールッチ国防長官は何も申していないということでございます。
  30. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは外務大臣、けさの日経報道、このような事実はないし、今後こういう問題が起きてきたとき、フィリピンのクラーク、スービック基地の一部負担を事実上思いやりで日本が負担するということはない、特別の円借款、ODAをそれに使うようなことはないとはっきり言えますね。
  31. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) クラーク、スービック、今アメリカ議会の話は北米局長が言ったとおりで、アメリカ議会では時々そういうことをおっしゃる方もおられます。それはたくさん議員さんがいらっしゃるから一人や二人はそういう話になるでしょう。しかし、政府としてそういう話を考えたこともなく、政府から正確に我々にそういう肩がわりをせよという話も全くございません。  むしろ、こちらから、そういう話がしばしば日本へ伝わってきて、今予算委員会が衆参両院において開かれておるけれども、まあその当時でございますから、やはりこの問題は大きな問題になっていますよと、日本側から申し上げますが基地問題はあくまでもアメリカとフィリピンのお話でございまして、私たちの関与するところではございません、こういうふうに申し上げておりまするし、累次その間にもアメリカの要人にも出会いますと、肩がわりなんというようなことは我が国からは到底できる話でもありませんから、それは全く別の話であると理解していていただかなくちゃいけませんよと、私たちはアキノ政権はこれはやっぱり今後ともいろんな問題がありましたならば支援をしてあげてよい、こう考えておりますけれども、肩がわりとかなんとかそういう問題ではない、こういうふうに私は累次アメリカの要人にもお伝えしてあります。
  32. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ただ、宇野さんね、先ほどあなたは十五次円借款と別に外務大臣が来たらいろいろ考えるかもしれぬという趣旨のことをちょっと言われましたよね。きょうの日経報道の最後のところで「近く日比協議が始まる第十五次円借款とは別に、返済条件を緩和した特別円借款、無償援助の拡大などを検討する方針を明らかにした。」と言うんですが、こういうことはあるんですか。
  33. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) 円借款に対しましては、単にフィリピンだけではなくしていろんな対象国から、最近の極端な円高ドル安、こういう環境をいろいろ考えてみると非常に負担が重くなってきた、日本政府はこれに対して考えてくれないかということはあらゆる国々から来ておる問題でございまして、フィリピンだけの問題ではありません。したがいまして、そういう問題も我々としては累次この委員会でも申し上げておりまするが、援助の中身においてはいろいろと今後検討しなくちゃならぬ問題がたくさんあるねと、そういう一般論でございます。
  34. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 やっぱり怪しいんですね。何も金に火薬のにおいはついていないけれども、やっぱりODA十五次円借款とは別に、無償援助の拡大とか特別円借款、建前は累積債務、さっき言いましたよね、累積債務という形でフィリピンに対して特別の配慮を払い得る余地があると、それは言わないけれどもアメリカの国会で問題になっているフィリピンの軍事基地のアメリカ側の負担のまた日本への肩がわりだと、事実上、そういう危険がやっぱりあると言わざるを得ないと思いますね。参議院の私が属しております外交・総合安全保障の調査会の世話人が、今国際経済の小委員会でこのODA問題について各党何とか一致点を求めようとやっているんですけれども、こういう問題が一番大きなことだと思うんですね。  それで、首相に最後にこの問題をお伺いします。  昭和五十三年四月五日、衆議院外務委員会の決議があります。「対外経済協力に関する件」。その中にこういう項目がある。「今後とも軍事的用途に充てられる或いは国際紛争を助長する如き対外経済協力は行わないよう万全の措置を講ずること。」。国権の最高機関の国会の衆議院外務委員会の、その後も二回ありますけれども、こういう決議、このODAの使途について厳しく守る決意をお伺いしたいと思います。
  35. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) ODAのあり方については、そういう決議をも踏まえて部内でこれからやっぱり世界に貢献する日本という立場から考えて、ODAの質的な問題についてのあり方あるいはフォローアップの問題等をお互いが議論し合っておる今日でございますが、そのときにそのような決議があるということは十分踏まえての議論を続けるべきものであるというふうに考えております。
  36. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなたが決議を踏まえるとどういうことになるか、一般消費税の決議を見ても怪しいものですけれども、厳しくアメリカの戦略援助の肩がわりを絶対しないよう今後も監視していきたいと思います。  次に、宍道湖・中海の干拓淡水化問題を取り上げたいと思います。  衆参両院を通じてかなり大問題になっております。あなたは島根出身でもありますので、この問題について総理はどう現在考えておられるのでしょうか。
  37. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) たまたま私の出身地でございますので、農林水産大臣からお答えするのが当然かと思いますけれども、私自身の経験といいますか、過去に照らしてみますと、私がまだ農村の青年運動をしておるころでございました。いわば昭和の国引きなどと言って全県挙げて快哉を叫んだことがございます。しかし、その後いろんな大きな変化ができておる。したがって、最終的には関係県でございます島根、鳥取両県でいろいろ今御議論なさっておることであろう。それを私としては見守っておるということが正当なお答えになろうかというふうに思います。
  38. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。吉岡吉典君。
  39. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 関連質問をさせていただきます。  今問題になりました宍道湖・中海の干拓、淡水化問題、この問題をめぐっては、報道によりますと中央の政府部内でもいろいろ疑問を述べる意向が広がっているというふうに伝えられております。  この淡水化計画問題は、地元島根、鳥取両県の賛成が必要ですが、同時に河川管理者としての建設省の同意も必要になっております。その建設省の出雲工事事務所長は朝日新聞のインタビューに答えてこう述べております。「水質を含めた環境保護は河川管理の一つの要素なので、大きな関心をもっています。民意も尊重したい。塩分濃度が下がり、アオコが発生するなど異常事態になることがわかっていながら、事業を進めることは避けた方がいいんではないでしょうか」、国の機関内からもこういう声が出ております。河川管理者である建設省、建設大臣、この事業についてどうお考えになっているか。この出雲工事事務所長と同様、民意を尊重するという態度を貫かれるかどうか、まずお伺いします。
  40. 越智伊平

    ○国務大臣(越智伊平君) 中海干拓事業については、現在農林水産省から限定的淡水化試行の案について説明を受けているところであります。  建設省としては、河川管理者として災害発生の防止、河川の適正な水利使用、水質汚濁の防止などの観点から、河川管理上重大な支障が発生することのないように島根県、鳥取県等関係行政機関の意見にも留意しつつ慎重に対処してまいる所存であります。  工事事務所長につきましては、十分こちらから指令をいたします。
  41. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 出雲事務所長に対する指令ですか。私は出雲事務所長と同じように民意を尊重するのかということをお伺いしたわけですが、指令するというのはどういう意味か、私はもう一度お伺いします。
  42. 越智伊平

    ○国務大臣(越智伊平君) 慎重に検討をして検討の結果を、まだ今島根、鳥取からも御回答がないようでありますから、そのことが決定して、その上で我が建設省としての意見を取りまとめて指令をいたす所存であります。
  43. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 民意を尊重するという答弁がないことは大変問題だと思います。  それはそれとしまして、総理にお伺いしたいと思いますが、この宍道湖の淡水化問題というのは総理の地元の問題であると同時に私の地元の問題でもありますので、総理にお伺いしますけれども、今答弁にありましたように、淡水化試行計画について島根、鳥取両県のこの回答が延期されたという状況です。回答を延期せざるを得ないのは、県内の反対意見がこれ非常に広がったからそうなったわけです。特にことしになってから島根、鳥取県民のこの問題についての考え方の流れというのは大きく変わりまして、私はもうこの流れは決まった、幾ら検討を待ってもこれを促進しようということにならないと思います。それは県民の世論調査の数字を見ても、商工会議所等々の団体も反対の意見を表明している。もう慎重検討という段階から私、総理が決断を示す必要がある時期に来ていると思います。県当局も進むに進めず、引くに引けず困っている。そういうときに、やはり総理の決断でこの問題について明確な態度を示すべきときだと思いますが、総理、決断を持ってこの問題についての方向を示すという用意はございませんか。
  44. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 総理への御質問でございますが、所管は私でございますので、待っておりましたがなかなか御指名がございませんので、私から簡潔に申し上げたいと思います。  本事業につきましては、昨年九月限定的な淡水化試行を行う案を鳥取、島根両県に提示し、検討を願ってまいりました。三月三十日に両県から、県内の検討状況にかんがみ、回答までもう少し時間をかしていただきたい旨の申し出がございました。あなたの地元からそういう申し出がございました。農林水産省といたしましては、事情やむを得ないが、なるべく早く結果を出さなければなりませんので、五月末までに回答をいただくよう御努力願うことといたしまして、回答の延期を了承いたした次第でございます。  慎重に考えるという段階を過ぎたのではないか、こういうことでありますが、あくまでも地元の意思を尊重する意味におきまして、慎重に対応してまいりたい、こう思っております。
  45. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 総理に最後に答えを求めたいと思いますが、県民の意向がまとまらない段階で淡水化を断行するということはないということ、県民の意向を尊重するということは約束していただけますか。
  46. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 大筋は今農林水産大臣から答えられたとおりでございますが、吉岡さんと私同じ中学校でございまして、その立場は異にいたしますものの御立派になられました。そして、非常に中海・宍道湖には、むしろ生まれ在所からいえばあなたの方が近いところにいらっしゃるし、私は若干遠いところにおりますが、しかし、今お答えがありましたように、実際古い話でございますが、当時は、本当のところを言いますと超党派的な盛り上がりの中で国土を広げるんだという環境に率直にあったと思うのであります。事情はいろいろ変わってまいりました。そうして、淡水化することによって農業をより効率的に営むといういわば先行投資をなされた方々ももちろんございますでしょう。いろんな問題がありますが、今まさにこういうことこそ、その出身地である吉岡さんだからあるいは竹下登だからといってここで指示をするようなことはやはり避けるべきじゃなかろうか。やはり今、五月まで延期を農水省で了承を受けて、地元で鋭意自主的な判断ということを苦悩していらっしゃるでございましょうから、それを静かに見守り申し上げるというのが私どもの態度ではないかというふうに思っております。
  47. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 次に、間接税問題に移ります。  三月二十五日に政府税調がたたき台を決めました。いずれも既に国会と国民がノーと言ったもので、私どもはどうして亡霊を墓場から引っ張り出したのかと思っております。これは国権の最高機関としての国会並びに国民に対する挑戦だと断ぜざるを得ないんですが、この三方式には製造業者売上税、小売売上税など単段階課税は除かれているんですね。これは竹下さんは自民党総裁でもあるのでお伺いする。今後自民党税調あるいは政府案で、単段階課税というのは取り上げられる可能性はもうないと見ていいんですか。
  48. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 政府税調におかれましては、長い間御検討の末一応素案をつくられました。それをこれからまた世論に聞かれるということでございますから、政府税調御自身もまだ選択の余地をいろいろにお考えでいらっしゃるように承ります。ですが、今までの流れとしては一応ああいう三つのところへ集約されたということかと存じますが。  ところで、私どもの方の党の税制調査会は、ごく最近各団体の意向を広く聞きたいということでいわゆるヒアリングを始めておりまして、まだどういう税制ということを具体的に考えるところに至っておりません。政府と与党の関連でございますから、政府としましては、やがて政府税調が最終的にあるいは一つの範囲でのお答えをお出しになられると思いますから、その答申をちょうだいし、さらに与党の税制調査会ともいろいろに協議をしながら最終案を決めてまいらなきゃならないと思っておりまして、したがいまして、今最終案はこういうものではないというふうに申し上げることはできないと思います。
  49. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日経が去年の十一月、それから三月にも、二回書いたんですね。竹下首相は最後の腹づもりとして、製造業者売上税、庫出税で何年かかかってEC型付加価値税に持っていく腹を持っていると、かなり断定的に書いてあるんですが、側近の話等々はありますけれども、そういう可能性もありますか。
  50. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 特にそういうことを私承ってもおりません。
  51. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 政府税調案には、「個別消費税のみに依存する間接税制度は、今や我が国以外の先進国には例がみられず、」となっている。何かあたかも一般売上税、大型間接税を採用していないのは日本だけだととられるかのような表現があります。アメリカはどうなっているでしょうか。
  52. 水野勝

    政府委員(水野勝君) アメリカは連邦国家でございますので、州税というのもほかの国からいえば国並みの課税であるとも言えるわけでございます。そのアメリカにおきましては、州におきまして小売売上税が行われているところでございます。
  53. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 連邦税はどうですか。
  54. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 連邦税におきましてはそういうものはございません。
  55. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 レーガン政権になってから二回にわたって、連邦税においては大型間接税はいかなる形もとらないと言っているんじゃございませんか。
  56. 水野勝

    政府委員(水野勝君) レーガン大統領の勧告を受けまして財務省がいろいろ検討された膨大な報告書がございますが、その中でもいろいろこの問題は取り上げられて真剣な検討が行われているところでございます。
  57. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、いろいろ真剣な検討じゃないですよ。八四年十一月の改革報告でも、五月のレーガンの税制改革案でも、EC型付加価値税その他間接税はとらないと言っているんです。大蔵省の発表した資料でも、連邦税については直間比率九対一ですからね。そのことを指摘しておいて、税調案の大体この描写そのものが不正確だ、特別の意図を持っているということをまず言っておきたい。  それで、大型間接税が発達したのは主としてヨーロッパですよね。最初、いつ生まれたのか、どこの国で、目的は何だったのか、お答えいただきたい。
  58. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 各国の税制の歴史は、それぞれの背景の経済社会と結びついているところでございますので、一概には申し上げられないところでございますが、フランス、ドイツにおきましてこうした課税ベースの広い間接税が始まったというのは、第一次大戦中かその直後でございます。イギリスにおきまして現在の付加価値税に先行いたしますところの仕入れ税が始まりましたのは一九四〇年でございました。
  59. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 一番最初は一九一六年、ドイツ〇・一%です。一七年、フランス〇・二%。第一次大戦の戦費調達のためです。この問題を十年にわたって研究された八幡大学の内山さんの「大型間接税の経済学」という本がある。これを見ますと、一般売上税、まあ大型間接税のことですけれども各国で成立した時期は大体三つです。第一の時期は第一次世界大戦とそれに続く戦後、十九カ国。第二の時期は世界大恐慌とそれに続く三〇年代前半。アメリカの州税もこの時期です。第三の時期は第二次大戦中及び戦後。今お話しになったようにイギリスはこの時期ですね、イギリス、スイス、スウェーデン、フィンランド。日本の取引高税も第二次大戦の戦後に当たる。  それで、内山さんによりますと、実施経験のある四十八カ国のうち特に三分の二がこの時期、特に先進資本主義国はほとんどこの時期だったですね。つまり、この三つの時期というのは、世界大戦と世界大恐慌後です。社会的動乱期です。膨大な財政需要が生まれて、そのために導入されたものですが、総理はこの大型間接税に非常に御執心で渾身の努力を傾けるそうですが、こういう歴史を御存じですか。そういう歴史認識をお持ちですか。
  60. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 今おっしゃった歴史は私も決して間違っておると思いません。  もう一つ、私は考えてみたらいいんじゃないかなと。最初の主として共産主義社会とでも申しましょうか、ちょっと表現はどうしようかと思って考えておりましたが、これは大体全部間接税でございます、考えようによりますと。企業は国営であって、そうしてその国営というものを製造所と見るか、あるいは利潤を追求する企業と見るか。企業と見たらあるいはこれは法人税の範疇に入るかもしらぬが、結果といたしましては、消費者に価格の中で転嫁されたものが国家運営の基本になっておるということになれば、やっぱり最初は、その角度から見たら間接税というものから税制というものは入ってきたんじゃないか、こういう論理もあり得ると思うのであります。  そのときの間接税というのはどういうことかなといいますと、やっぱりその買うものの大きさによって負担が違うという意味におきましては、これは水平的公平というものがあったかもしらぬ。しかし、さらにそれが進んでまいりまして、やはり所得というものからして所得の再配分という思想が出てきて、所得税中心の一つの税体系が構築されて徐々に来た、そして、その所得税中心の所得の再配分という角度から構築された税制の中に、やはり今おっしゃった一つの変動期が、象徴的でございますけれどもいろんな行き詰まりとかいうものが出てきて、そこにもう一度水平的公平感のある間接税というものに着目されるという歴史というものがあるんじゃないかと。だから、一九一六年でございましたか、その以前の紀元前ぐらいからもう一つさかのぼって勉強した方がいいなというような、これはまことに私いつの日か言ってみようかなと思っておりましたが、上田さん非常ににこにこ聞いていただきましてありがとうございました。
  61. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、社会主義国、確かに売上高にかける税金というのはいろいろありますよ。これは一つは、東ヨーロッパは社会主義になる前にヨーロッパの流れの中で、ハンガリー、ポーランド、ユーゴスラビアなんかもそうですけれども、売上高に単段階の課税をやっていたんですよ、資本主義時代に。そういうこともある。社会主義国になりますと、これは社会主義税制の一部としてこれは確かにあるんだが、仕組みが全然違うんですから。それを一緒くたにして社会主義だってあるじゃないかと、日本を社会主義にする気もないくせにそういうことを言う。  それで、社会主義の話を僕は余り言うのはやめようと思ったんだけど、共産主義の話までされたのでちょっと言っておきますと、マルクスに「直接税と間接税」という短い論文がありまして、間接税では個人が国家に支払う額が幾らかというのは個人に隠されてわからぬと、直接税はあからさまでどんな頭の悪い人間にも誤解の余地がないと、だから直接税は国民を刺激して統治者を監督しようと、そういう気持ちにさせるが、間接税は自治への志向を一切押しつぶすと言って、直接税を中心にすべきだということを強く主張しておりますので、その点一言申し上げておきます。  さて、今総理は水平的公平の話をされました。水平的公平と垂直的公平とどちらが大事で、どういうかかわりにあるべきだとお考えですか。
  62. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 水平的公平と垂直的公平というものは、どちらがかかわりが余計あるかということを厳密にマルクスさんに私も聞いてみたことはございません。が、私はいずれも存在し得るということで御議論をいただくように、あえて水平的公平とか垂直的公平ということを長年にわたって議論をいただいてまいっております。
  63. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 水平的公平というのは、簡単に言えば同じ所得の人は同じ負担というんですよね。垂直的公平というのは所得の高額の人ほど重い負担をと、つまり累進性のことですわね。だから、水平的公平は成り立つ成り立つと言っても、本当に垂直的公平、累進性できちんと応能負担の原則が成り立っていないと水平的公平は意味がないんですよ。つまり前提でなければならぬ、垂直的公平の方が。私はそう思うんですが、宮澤さん、どうですか。
  64. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それはそのときの社会のニーズというのによって私は随分違うと思うのでございますね。今おっしゃったようなことが伝統的に考えられてきて、したがって累進税率というものはかなり高いところまでいわば自由主義国家群でも行きましたけれども、最近のアメリカイギリスのように、こいつはやっぱりもう問題がある、そうなればいわば勤労意欲というものをそいでしまうということで、逆に今度累進を下げ、またブラッケットも二つぐらいにしてしまう、そういう動きになっておりますですね。これはやはりそういうことができる社会になったという経済社会において行われているのではないか。  我が国の場合には十三から六つというところまで行こうと今いたしておるわけでございますけれども、まだ我が国の場合、それならば二つ三つにできるかというと、やっぱりしていいかして悪いかという問題もあろうと思いますので、そのときその社会の実際のニーズでやっぱり変わっていくものではないかと思います。
  65. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 サッチャー政権、レーガン政権が大資産家優遇でそういうふうに累進性を二段階にしてしまおうと。イギリスなんかでこれ大問題になっているんですよね。そういうものにまだすぐには倣おうと思われないかもしらぬけれども、持ち出してくる。日本の場合には、これはこの委員会でも例えば近藤議員なども、所得格差がいかに広がっているか、水準化、平準化と言うけれども違うじゃないかということ、それから日本の税制が大資産家、大資本に非常に優遇税制だということも我々何度も追及してきました。ですから今のお話は私受け取れません。  ただ、宮澤さん、この委員会でも、戦後日本の税制、シャウプ勧告でつくられた税制が直接税中心、生計費非課税、総合累進課税、これは曲がりなりに維持されたことについては評価をされておられます。私はやはり垂直的公平を確保するためにこの原則は維持すべきだと思いますけれども、いかがでしょう。
  66. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 結局、所得についての累進というものはやっぱり必要なものであろう。しかし、それがどの程度の累進を持つべきかということはその社会におけるニーズによって違うだろう。今イギリス――アメリカとはおっしゃいませんでしたが、それは資産家優遇に大変になるんだとおっしゃいましたけれどもイギリスでもアメリカでもああいうかなり成熟した民主主義の国でそんなに簡単に資産家を優遇する税制ができるものでございましょうか。私は、それはやっぱり一つの立場からごらんになるとそういうふうな見方ができるのかもしれませんが、そんなことは民主主義の社会でそう簡単に私はできないと思いますので、やっぱり国民全体が判断して、累進度というものがどのぐらいが適当かという議論がなされての末ではないか。イギリスの場合はこれからでございますけれどもアメリカなどはそうではないだろうかと思うのでございますが。
  67. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、アメリカは民主主義の社会だなんて私毛頭思っておりません。大体二大政党、独占資本の党ですよ。労働者の党はないんですからね、ないというか非常に小さい。そういうふうなところであれを民主主義の社会だと思って理想化しているところに大問題があるんだが、こういう議論をしていると大変ですけれども、私は、今公平の問題で多少の議論はありましたけれども、やっぱり税制の哲学問題ね、哲学というか一体どう考えるかと、こういう問題が非常に重要だと思うんですね。  さて、総理は、これは哲学に入るのかどうかわかりませんが六つの懸念という問題を挙げられました。この六つの懸念をいろいろ中和し緩和したいと、税体系全体とかあるいは生活保護問題だとか社会保障、あるいは課税最低限を上げるとかというふうなことをおっしゃっていましたけれども、その第一に逆進性を挙げておられましたね。で、自民党政調会のパンフレットもございます。「なぜ、今、税制改革か?」、これも間接税の短所の第一に逆進性をやっぱり挙げているんですね。  日経の連載に「ゼミナール間接税」というのがあって、私も質問するので一生懸命読んだんですが、その日経の連載でも「逆進性こそ最大の短所」、「税制として致命的な欠陥」だと、そう書いてあります。その致命的な欠陥をじゃECではどういうふうに緩和してきたのか、そこをちょっと聞かしていただきたい。
  68. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 具体的なECの税制で申し上げますと、端的にはフランスでございますが、課税ベースの広い間接税ではございましても、その税率の刻みを五段階、あるいは六段階ぐらいにしてもろもろの軽減税率、割り増し税率等を用いまして、これによってそうした間接税の性格を緩和するような措置がとられているというふうに言われておるわけでございます。しかし、一方イギリスにおきましては、極力これはそうした非課税はとらない。ただ、一部ゼロ税率でもってそういったものは対処する。しかし、極力税率は一本にするという考え方のようでございます。西ドイツは、御承知のように二本立ての税率で対処しているようでございます。
  69. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ここらはなかなかやっぱり大変で、ヨーロッパ諸国ではEC発足に伴って域内関税は撤廃すると、それで国境税、税制の調整が大問題になってEC型付加価値税を導入していって、ほぼ七五年に大体導入を終わったわけですな。それで最後の指令、理事会の指令が第六次指令といいますけど、これ第六次指令は免税について六つ挙げているんですよ。郵便とか医療等々ね。各国多少違いはあるけれども、逆進性を緩和するためにさまざまな措置をとっている。ゼロ税率だとか免税だとか、軽減税率それから割り増し税率、簡易課税制度等々。しかしそういうものをとって、結局これは長所を損なうばかりで税制を複雑にした、そういう結果が出ているんですよね。だから逆進性を緩和しようとすると、いろいろとると複雑になってしまうんですよ。  それで、ここでひとつお伺いしたい。総理は売上税失敗の経験から、なるべく複雑にしない、簡素にする、例外措置はなるべくとらない、広く薄くというふうに言われているんだが、じゃ広く薄くするとこういう逆進性というのはいよいよひどくなる。例外措置はとらないつもりですか。
  70. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私がお答えするが適切かどうかちょっと迷いながら立ちましたが……
  71. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 懸念を言ったんだから、懸念を出したんだから。
  72. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 懸念は言いました。やっぱり上田さんと私と同じ世代かなと、哲学以前というお言葉をお使いになりましたが、まさに出隆「哲学以前」というようなことを頭に置きながら、あの懸念を本当は考えてみたのでございます。  本来間接税そのものに存在する逆進性、これは私、決して否定するものじゃありません。それがいわば制度、仕組みの中で、中和されるという言葉を使っておりますが、されていくべき性格のものであるというふうに私は考えております。それは問答の中でなるほどなということもあり得るでしょう。まあ世代が同じでございますから、主義主張の違いはあっても時にはなるほどなと思っていただきたいと私も思いますが、そういう問答の中で中和されるものもありますでしょうし、それから今もおっしゃったように、社会保障と財政支出の問題とか、単一な税目だけを考えないで総合的な税目を調整していく中で解決する問題があるではなかろうか、それをこうして議論していただけると大変ありがたいことだなというふうに実際思っておるわけでございます。  ヨーロッパの問題についていろいろお触れになっておりますが、確かに一見これは難しい、いわば複雑だと、こういう危惧はございますが、私も大蔵大臣時代にヨーロッパの税務当局者と話したときに、いわば習熟の問題だと。習い、なれると申しますが、ただ、なれるというのも何となくならしてしまうという意味じゃなく、習い、なれる、習熟する問題だというようなことを言っておりましたが、習熟していくことによって税というものはこういうものだということが生活の中に溶け込んでいった場合に私はきちんとした対応ができ得るものだというふうに思います。しかし、私は大変な労力を要するような習熟を強要しようなどという考え方はございませんから、この手続上の問題も六つの懸念の中の一つに入れておいたということでございます。  だから、問答をしながら中和するもの、そして総合的な施策の中で中和、融合するものがあり得るということで御議論をいただいておるし、ヨーロッパは傾向的に見ますと、税率が上がるその都度所得税が減税になっていったという傾向はございます、傾向なりには。それの是非は別といたしまして、やはり私はこの習熟の限度というものを、大変なものを強要しようなどという考えはございませんけれども、それも考えのうちにあった場合に、中和し得るものじゃないかなというふうに考えております。
  73. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私、こういう問題を取り上げているのはあなたの土俵に入ってやっているつもりじゃないんです。こういうとんでもない二律背反を持ったものでやるべきでないという立場なんです。  あなたがヨーロッパへ行かれたとき習熟の問題だと言われたそうですけれども、やっぱり自民党の方には向こうはそういうことを言うんですよ。うちの議員には違うことを言う。例えば近藤さんが二年半前にデンマークに行かれたとき国税庁の次長さんが、慎重にした方がいいですよと言ったそうですよ、こういうものは。つまりやめた方がいいということですよ。  さて、小倉さんどうもありがとうございます。  二月十三日の岩手の公聴会の後の記者会見でも述べられたし、それから週刊朝日ではずばずばおっしゃっているんだが、つまり例外なしの一律課税、これはとんでもない、生活必需品、医療、教育などは少なくとも免税あるいは軽減税率、低税率にすべきだということをおっしゃっている。小倉さんは一番政府の考え方、大蔵省の考え方をよくお知りなんで、ひとつこれは国会の場ですから率直にこの問題についてお聞きしたい。自民党税調のヒアリングでも非課税品目にしてくれというお願いが相次いだという報道さえあるので、この問題は大きな問題点、矛盾のあらわれだと思うんですが、会長いかがでしょう、非課税品目、例外措置ですね。
  74. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 政府税調におきましては新しい間接税のタイプについてまだ結論を得ておりません。二、三のタイプを示しておりますが、さらにその上にその税率でありますとか非課税品目等については今議論が入ったばかりでございまして、どういうふうに決まるかまだ予断を許さないという状況であります。  ただ、これまでの議論で申し上げられる点は、これは新型間接税というものをいかなる性質のものと考えるかによって違いますけれども、例外は認めるべきでない、あるいは軽減税率を認めるべきでない、こういう意見の方がどうも多いようでございます。
  75. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなたはどうですか、個人では。
  76. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 私個人は戦前の教育を受けておりまして、逆進性というようなことを大変重要に思っておるんですけれども、近ごろはどうも、無論生活程度なり所得の水準に差はありますけれども、階層差といいますか、そういう差はありますけれども、絶対的な水準が非常に高くなっている、したがってかつてのように逆進性を問題にしている必要はないんだと、そういう経済学者といいますかあるいは評論家といいますか、そういう方面の意見が随分強くなっているということは申し上げられるかと思います。
  77. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 小倉さん、その二月十三日に言われた生活必需品ですね、衣食住、教育、医療の五つぐらいは非課税あるいは低い税率にしたいと述べられた。この点は今でもお考えは変わりませんか。
  78. 小倉武一

    参考人小倉武一君) とにかく新しく新税を導入するのでありますから、できるだけ国民に受け入れられやすいような方向で物を考える必要があるというふうに私どもは考えるわけです、税調全体はそうでもないようですけれども。したがいまして、税率はできるだけ低く、それから課税ベースは一〇〇%広い方がいいというふうには考えないというのが私の考え方です。
  79. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 考えは変わりがないということだと思うんですね。  幾つも問題はあるんですけれどもだんだん時間がなくなったので、もう一つ取り上げたいのは不完全転嫁の問題です。政府税調の間接税特別部会の素案も、検討すべき主なポイントの第一にこの転嫁の問題を挙げています。これはいわゆる税の転嫁を前提とするものであるが、事業者の抱く転嫁についての懸念にどう対処するかというのが第一の点。  やっぱり最終の小売業者が一体税金を上乗せできるかどうか。例えば千円の商品がある。そうすると、もし税率三%だと三十円でしょう。千三十円で売れるかしらと。いろいろ競争もある。そうすると千円にしまして自分でかぶっちゃおうと。税額票があるから三十円全部かぶるわけじゃないけれども、とにかくかぶるわけですよ。これは非常に大問題なんですが、どうやって中和するつもりですか。
  80. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) 今のは全くまだ仮定のお話でございますから、どういうふうに詰まってくるのか、やはりそれを見きわめた上での我々の作業になろうかと思います。十分中小企業あるいは流通業界の意見は聞いていかなきゃなりませんけれども、どうも今の段階でどういうものが出るのか、政府税調も、小倉さんがいらっしゃる前で申しわけないんですが、幾つかお示しになっておられる、党税調がこれから大分にぎやかになってくるというと、今私が仮定の御質問に対してお答えして、またやられてもかなわぬですから……。
  81. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 仮定の問題じゃないんですよ。政府税調のあの素案はどうしてもやるというんだから、間接税を。あそこに並べられてある三つのタイプでも、すべてこういう一般売上税はこの不完全転嫁問題が必ず出てくるんですよ。一番被害を受けるのは、犠牲の子羊は第一に消費者でしょう、全部消費者にかぶせようというんだから。二番目は中小業者ですよ。この不完全転嫁問題が必ず起きる。それから膨大な事務員担がかかってくる。特に不況業種だとか、景気の悪いときとか、独占度、集中度の低い業種とか、大変なんですよ。だから間接税特別部会の今後検討すべき第一のポイントに転嫁問題を挙げているんです。田村さん、あなた、一番これは大変な、仮定の問題じゃないんですよ。  それでどうですか、やろうとしているのは首相、蔵相なんだから、この転嫁問題どうやって中和する気ですか。
  82. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 元来、税率が決まった場合それが転嫁されるというそういう性質の税制そのものであるわけでございます。それに対する転嫁がいわゆる不完全転嫁、そうした議論が売上税の、売上税は本当は国会の中で議論はなかったのでございますけれども、外でいろいろ議論のあった問題でありますが、その適正な転嫁というものについては、これはやはりいろんな仕組み等が将来考えられるべき問題である。まだ前提の前にこのような方法がありますと言うだけ私も愚か者じゃございませんので、そういう税制そのものがそういう性格を持っているわけですから、これは転嫁されるべきものであるというふうに考えております。
  83. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし実際には起きるんですから。総理、あなたの六つの懸念にこの転嫁問題は入ってないんですよね。なぜ入れなかったんですか。入れますか。税調の間接税特別部会は第一に挙げているんだから、この懸念を。不完全転嫁の懸念はないんですか、あなたは。あれば、六つの懸念に少なくとも一つは足しますか。
  84. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 哲学以前におきまして、やっぱり普遍的なものは大筋考えてみてもあの六つだなと。もちろん転嫁問題等も私も考えてみたことも事実であります。あるいは、人間ある意味においてみずからの所得が捕捉されることに対する懸念というようなものもいろいろ考えてみたことがありますが、すべて正常な形で考えた場合に、私は懸念というものはやっぱりあの六つで議論していただいた方がいいなと思っております。  ただ、先ほどお話しになりましたように土俵へ上がって議論したのじゃない。その土俵がだめだと、こうおっしゃっているんですから、土俵がだめだという議論でも議論としてはいいことだなと思っております。
  85. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 不完全転嫁問題というのは大問題なんですよ。これはもし転嫁できないと中小業者はかぶるんですよ。物価上昇はその分だけ多少マイナスになるかもしれない。しかし国家税収が減るんですからね。そういう複雑な問題なんですよ。  まだまだ幾らでもありますがもう余り時間がございませんので、最後にこの大型間接税の日本の歴史をお伺いしたいと思うんです。  日本で最初にこの種類の間接税が導入されたのは、されようとしたのはいつですか。目的は何だったでしょう。
  86. 水野勝

    政府委員(水野勝君) いわゆる課税ベースの広い間接税が我が国に導入されました最近の時点のものといたしましては、昭和二十三年九月に創設されました取引高税でございます。その背景といたしましては、当時の記録によりますと、終戦処理、戦災復興のため財源調達がぜひとも必要であったこと、所得税負担を軽減するため見返り財源と考えられたこと、それから当時はインフレがかなり激しい時代でございましたが、こうしたものによりまして税が課税時点と納期と接近しているという効果が期待されること、こうしたことが言われておったところでございます。
  87. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 戦前の昭和十一年、広田内閣のときの馬場税制、ここであったのではありませんか。
  88. 水野勝

    政府委員(水野勝君) これは国会には御提案はされましたが、当時の政変によりまして、その当時の全体の税制改革を含めまして法律がすべてそのままになってしまった事態でございましたが、その中の税制改革の中の一つとして御提案されたものの中に取引税というのがございました。これは〇・一%という低い税率のものでございましたが、これもある意味では課税ベースの広い間接税の一つの御提案であったかと思われます。昭和十二年の初頭のことでございました。
  89. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 目的は。
  90. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 目的といたしましては、当時の記録によりますと、国民租税負担の均衡を図ること、弾力性ある税制を確立すること等々の目的が掲げられておりますが、これはただ、この取引税もその一環でございまして、全体としてのもろもろの税制改革の御提案の中での目標でございますので、それ自体としての目標であると言えるかどうかは必ずしも言えないのではないかとも思うわけでございますが、当時の税制改革の目標としてはそういうことが言われておったようでございます。
  91. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は国会図書館からこの「昭和税制の回顧と展望」という本を借り出して調べてみました。これは戦費調達のためだったとはっきり書いてある。当時の国税課長、この案をつくった松隈さんが述べているんです。松隈さんは山田主税局長から、「いつ戦時状態になるかもしれないから」「弾力性を持った税制が欲しい、」「準戦時財政対応税制案、戦争に準ずる体制をいまから考えておけ」と至上命令をいただいたと。それで、まず〇・一%の案をつくったそうです。〇・一%にしておけば納税者もなれるというんですよ。「一朝有事の際にはこれを〇・五%、一%にすれば、さっと税収入が相当豊富に入ってくる」と。ちょうど二・二六事件の後ですね、昭和十一年の。昭和十二年から日中全面戦争ですから、そのための税制として昭和十一年に馬場税制が出てきたんですよ。だからこれは同じです、ドイツ、フランスと。やっぱり戦費調達のための、〇・一%だってそういうものなんです。  さて、取引高税については今主税局長からお話がありました。あなたも目的の第一に終戦処理費を挙げた。終戦処理費は九九%占領軍の費用です。当時の取引高税は、全面占領下で米占領軍の費用を調達するためにその目的で導入されて、その前年度から物すごい税金で大問題になって多少所得税減税したそのかわりもあるんですけれども、導入されたんです。宮澤さんよく御存じでしょう。  この資料を読んでみましたらすごいことが書いてある。第八軍が徴税の先頭に立った、大阪の税務署長が言うことを聞かないから、二十四、五名全部首を切れと第八軍の司令部が決めたと。まあ一人しか首は切らなかったそうですけれども。大変な占領軍費用ですよ、取引高税というのは。終戦処理費とはっきり言われた。そういうものなんです、大衆課税で所得税を払わない人までかかるんだから、恐るべき逆進性ですよ。これはもう一番低所得者の人が最も過酷なんだ。その大衆に〇・一%、一%ごそっと取ろうという、そういう歴史があるんです。  さて、きょうは余り時間がなかったんだけれども、ヨーロッパでは、取引高税から始まって単段階課税、それからEC型付加価値税に歴史的になってきましたね。EC型付加価値税をその前段階なしに直接導入した国は七七年の韓国です。韓国はどういう状況になりましたか。これは外務省、大蔵省で相談してどなたか答えてくれるという話ですが。
  92. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 私ども承知いたしておるところでは、韓国はその以前におきましては営業税という多段階の取引高税がございまして、それが現在の付加価値税制度に合理化されたというふうに聞いているところでございます。その韓国のものは韓国の制度の中で定着しているものとお聞きしていますが、ほかの国のことでございますので、余り申し上げることはいかがかと思うわけでございます。  また、ヨーロッパにおきましては、先ほど申し上げたイギリスは仕入れ税というのがございまして、これが付加価値税にEC加盟とともに転換した。この仕入れ税というのが課税ベースの広い間接税であると言えるかどうか、これはやや我が国の物品税に近いものと言う方が当たるのではないかと思いますので、イギリスのような例もあったわけでございます。
  93. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ここに「韓国を震撼させた十一日間」というのがあります。七七年に導入されて、物価上昇、保守的な商人まで物すごく困って、七九年十月十六日の朴熙間政権に対する釜山の暴動は、この本によれば付加価値税が原因だったとはっきり書いてある。だから今度の盧泰愚新政権は間接税比率を下げるということを財界に打診中だという報道まで出ている。ですからいきなり、いきなりじゃなくたってそうですよ、こういう付加価値税を先進国で、政府税調の二つの方式は累積排除型なんだが、平時にこういうものを、いきなりも何も導入しようというのは世界で初めてなんです、日本が。韓国と同じ本質、同じ事態に直面しているんですよ。大変なことだ。  税体系をがらっと変える。驚くべき大増税。自民党幹事長の安倍さんは五対五にシフトすると言った。政府税調の山中さんは一月七日に社会福祉目的で十兆円がいいと言った。五対五だと十兆円ですよ、間接税十兆円の大増税。私は、これは目的はアメリカから押しつけられている軍事費と基地のもとで企業減税、そのために驚くべき仕組みがつくられようとしている。しかも公約違反であることは明らかだ。私はこういうことで、絶対やるべきでない、中止せよ、あくまでやるのなら解散、総選挙で国民に信を問うべきだと思っておりますが、最後に竹下首相の答弁を求めます。
  94. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) まず後の方から申し上げますと、いつも申しておるとおりでございますが、衆議院議員は四年の任期を信任されて当選をいたしております。その任期を大事に大事にすべきものである、これはいつも変わらない問題でございます。  それから、松隈論文から端を発しまして、そういう戦費調達的環境の中に間接税の増税というものは歴史的にこれが立証される、だからこれは軍拡路線につながるではないかと、こういう論旨になるであろうということを、絶えず上田さんの話を聞いておりますと落としどころはそういうところじゃないかなというふうに見ておりましたが、もう一つ考えてみますと、昭和二十三年の取引高税のときの議論を見てみますと、当時はまだ百万長者という言葉でございます、億万長者という言葉は使われておりませんが、百万長者もそして貧乏人も同じように税金を納めるというのはこれはけしからぬことである、やはり税というものは言ってみれば所得の再配分につながるものであらねばならぬという質問があって、それにお答えになっておるのが、いや、やはり勤労所得者の減税のためにはこれはやらなきゃならぬと、こういうお答えがあっております。  その質問者は、今の衆議院議員、当時自由党、四十歳、当選二回議員、原健三郎さんであって、お答えになっておるのは当時の労働大臣、大先輩、加藤勘十先生であったと。だからやっぱり、ははあ、いろいろな経過というものが歴史の中には存在すると。それらをすべて総合して、その時期に最も適切な税制を確立することこそ与えられた使命ではなかろうか。したがって、これを撤回しろと。出していないものを撤回するわけにはまいりませんけれども、その考え方を引っ込めるとおっしゃっても、そういうわけにはまいりませんとお答えせざるを得ません。
  95. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で上田耕一郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  96. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、勝木健司君の質疑を行います。勝木健司君。
  97. 勝木健司

    ○勝木健司君 六十三年度の減税交渉経過につきましては既に御承知のとおりでありますが、三月三十日の与野党政策担当者会議におきます自民党の最終回答については、既に与野党間で合意しているところであるというふうに思います。これは減税の規模については不明確という欠陥がありますけれども、竹下総理はこの合意をどのように受けとめられておるのか、当然のこととして尊重し実行されるのか、まずお伺いをいたしたいというふうに思います。
  98. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 三月三十日の合意の後、四月一日に与野党国対委員長会談が開かれまして、自民党の方から、六十三年度の減税の規模については三月八日の与野党国対委員長会談の合意及びこれに基づく政策担当者会議の対応を踏まえその範囲で誠意を持って対処すると、こういうふうにお答えをしておりまして、なお与野党間の御協議がこの状態で最終的に決着いたさないまま今日に及んでおると承知しております。
  99. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 政党の代表者間の話し合いというのはこれは大事なことでございます。したがって、その合意に基づいてのいわゆる規模という問題につきましては、定性的な問題、定量的な問題等がございますでしょう。それらについては今模索されておるのではないかなと、こういうふうに問題を整理しております。
  100. 勝木健司

    ○勝木健司君 三月八日の与野党の国対委員長会談での合意文書に基づいて与野党政策担当者会議が約一カ月に及んでやられておるわけでありまして、すべてがなくなったということではないのじゃなかろうか。与野党間の公約でもあります。いつから実施するかとか規模等々については予算成立までにという話があるわけでありますし、今国会中に努力をするという項目もまだ生きておるというふうに思います。このときの最大のポイントというのは、六十三年中に大幅減税を先行実施するということを約束したじゃなかろうかというふうに思いますが、この点についてはいかがですか。
  101. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 三月三十日の確認事項、これは野党の要求した減税財源は担当者間で引き続き協議する、六十三年度の減税の規模については予算成立までに結論を得る、六十三年度減税のための法案を今国会会期中に処理するよう最大限の努力をする、なお一項に野党三会派の要求する減税は実施するとありまして、これを受けまして政策担当者間でさらに多少細かい合意をしておられるところでありますが、さらにその上で四月一日の先ほど申し上げました自民党からの回答が行われていると承知しております。
  102. 勝木健司

    ○勝木健司君 細かい五項目の合意文書というものが私は生きておるというふうに思います。  中身についてお伺いさせていただきますが、まず、内職減税については長年の懸案であったものでありまして、これが実現する見通しとなったことは大きな前進ではないかというふうに思うわけでありますが、大蔵省はこれに対してみなし通達で処理する方針であるというふうにお伺いをいたしておりますけれども、そうでありましょうか、またいつから実施されるのか、お伺いしたいというふうに思います。
  103. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ただいまの御指摘の合意の中に内職所得者の課税の改善を行うという項目が含まれておりますことは承知いたしております。ただ、これは三月三十日の合意でございまして、これが全体を含めまして与野党でどういうことになり、それが具体的にどのように政府サイドに御指示があるか、まだそこまでは至っておりませんので、そうした具体的な党の間のお話、それからまたそれを受けましての与党からの御指示を受けて作業をいたす段取りになろうかと思うわけでございます。  御指摘のような、類似の制度におきまして通達等で処理しているというものがございますが、そうした方向がいいのか、どういう処理方法がいいのか、これは具体的な段階で検討をさしていただくことになろうかと思うわけでございます。
  104. 勝木健司

    ○勝木健司君 有価証券の譲渡益に対する原則課税というのもお約束をされておりますけれども、これも話し合いが調えば実行されるということですか。
  105. 水野勝

    政府委員(水野勝君) この点につきましても三月三十日の合意があるということは承知いたしております。ただ、このキャピタルゲイン課税につきましては三月二十五日の政府税制調査会の素案におきましても、原則非課税を改め今後課税の適正化を図るという方向で素案が提示され、それに基づきまして現在検討が行われておるところでございますので、この点につきましては、政府サイドといたしましてこの税制調査会の御結論をも得たところで与党とも相談しながら具体化していくことになろうかと思うわけでございます。
  106. 勝木健司

    ○勝木健司君 災害遺児育英対策についても主張どおり実行することを約束されておりますが、昨日も、四月一日にさかのぼるということも考えておるということでありますけれども、六十三年度予算で行うのかどうか、お伺いいたしたいというふうに思います。
  107. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) この問題は党首会談で出たといういきさつがございますので、私からお答えをいたします。  いろんな検討をまずやってみると、こういうことで、内政調査室を中心として検討をいたしました。私も気がつきませんでしたが、報告を聞いてみますと、漁船の難破のお方とか、警察官のお方とか、消防団のお方とか、いろんな制度が今日あるわけでございますが、いわゆる因果関係から説明のしやすいのは、交通遺児の方の問題もございます。しかし一方やっぱり、親御さんたちが病気になられたりしたというような社会福祉面からの対応策も考えなきゃいかぬということで、かれこれ考えて、そこでそれをお示しできる段階にまで来たと。したがって、まさに政策担当者の皆さん方で素材を提供して詰めていただければいいじゃないかというので、私から党首として政策責任者に指示をいたしましてそれを御提案したということであろうというふうに整理しております。
  108. 勝木健司

    ○勝木健司君 四月一日にさかのぼってやるということで調えば、四月一日にさかのぼるということでよろしいですね。
  109. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 素材を用意して政策担当者で詰めていただくのでございますから、いわゆるさかのぼった適用もあり得るであろうというふうには私も推察をいたしておるところでございます。
  110. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、三月十日の衆議院の予算委員会で竹下総理は、税制改革の定義について六つの懸念を排除したものにしたいというふうに説明されておりますが、そこでお伺いをいたしたいと思います。  まず、現在日本の経済政策で必要なものは対外的に見ても内需拡大策であることは自明のことであろうかと思いますし、G5の合意内容でも明らかであるというふうに思います。この点から考えれば、新型間接税の導入というものは内需拡大に水を差すものではないかというふうに懸念をするものでありますけれども政府方針と相入れない政策ではないかどうか、お伺いいたしたいというふうに思います。
  111. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それはそのような新型間接税が単独に提案され施行されるということでは無論ございませんで、御承知のような税制の抜本改革の一環でございますから、その中で例えば所得税の減税が行われる、あるいは法人税、相続税の減税が行われる等々の中での総合的なやはり評価をいたさなければならないと考えますので、そういう観点からいいますと、我が国が現在内外から求められておりますそういう社会資本の整備あるいは内需の拡大ということに全体の政策が相反するというようなことはないというふうに考えております。
  112. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、逆進的な税体系を排除するということで、所得の平等的配分機能を持たせるために食料品の課税対象除外の構想というものがあろうかというふうに思います。またその一方では、事業者の事務負担が重くならないようにということで非課税商品の排除や複雑税体系の排除を目指しているようでもありますけれども、この二つの点はお互いに矛盾するようなものではないかというふうに思いますが、お伺いいたしたいというふうに思います。
  113. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それは、考え方としては、せんだってこの席で小倉会長が言われましたように、公平ということと簡素ということはなかなか一致しない場合があると言われましたのは、今まさに勝木委員が言われましたようなことを頭に置いておっしゃったのだと思いますが、現実に、最終的に案を考えますときにはその辺はやはり調和を図らなければならないところだと思います。
  114. 勝木健司

    ○勝木健司君 公平と簡素を調和ということでありますけれども、あるべき理想と現実というのはなかなか一致しがたいものでありますが、あるべき姿、公平と簡素の配分とか、そういう考え方がおありでしたらお伺いしたいと思います。
  115. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) その点はまだ、御承知のように税制調査会も素案を出されたにすぎませんで、構造そのものは全くあれに述べられておりませんので今申し上げることができませんけれども、そのような問題はやはり現実の素案を書きます段階で解決していかなければならない問題であることはおっしゃるとおりだと思います。
  116. 勝木健司

    ○勝木健司君 現在新型間接税の方式として、取引高税方式、また付加価値税の伝票方式、付加価値税帳簿方式の三種類が挙がっているように思います。取引高税方式は昭和二十三年から二十四年に実施されたということでありまして、また付加価値税の伝票方式も昨年のまさに売上税でありますし、また付加価値税の帳簿方式も太平総理時代の一般消費税ではないかというふうに思います。これら三種の方式というものは既に過去の遺物ではないかというふうに思うわけであります。今なぜこの三方式をあえて提唱されるのか、お伺いをいたしたいというふうに思います。
  117. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それは実は税制調査会の掲げられた素案でございますので、政府がかわってそれにお答えする立場にございませんけれども、そんたくをいたしますと、幅の広い間接税を広いベースで考えるといたしますと個別の間接税ということにはやはりなりにくうございますから、タイプとしてはああいったようなものになっていくというふうに税制調査会は検討の未結論を暫定的に出されたのであろうと。しかし、あれから実はどういうふうに肉づけをしていくかということによりまして、過去においてこれに向けられました批判等々は解決していけるというふうに考えておられるのであろうとそんたくをいたします。
  118. 勝木健司

    ○勝木健司君 いずれにいたしましても、税制改革というものは失敗は許されないというふうに思います。ゆっくり時間をかけて行うべきものであるというふうに考えます。また、すべてを一段階のみで済ませるということじゃなしに、手順というものがはっきりしておらなければならないというふうに思います。  総理府の調査でも、八四・五%の人が現在の税制は不公平だというふうに回答しております。日経新聞の世論調査でも、新型間接税については「賛成」というのがわずか五・一%であります。「所得税減税などとセットにするなら賛成」というのが二四・五%、「不公平税制などの是正が先で新税の導入は慎重に」というのが四四%、「反対」が一三%となっております。つまり、不公平税制是正が先決で新税導入というものは慎重にという回答が一番多いのであります。このように国民の大多数というものは、新税、新型間接税の導入以前に不公平の是正というものを求めておるように思います。特に、サラリーマンの医者あるいは宗教法人、個人商店等に対する不公平感、すなわちクロヨン、トーゴーサンという不公平税制を改めない限り、国民の総意というものを得ることは難しいというふうに思われます。  そこで、総理大臣にお伺いしますが、このような世論を尊重されまして、まず新税導入前に不公平の是正をやられるのか、それともいきなり強硬に新型間接税導入によってすべてを決着する方式をとられるのか、お伺いをいたしたいというふうに思います。
  119. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 政府としては、あるべき税制の姿については税制調査会へ今御諮問を申し上げておる、その結論に基づきまして整理整とんをして国会で御審議をいただくという、筋道から言えばそういうことになります。  そして、今お述べになりました考え方でございますが、そもそも税制改革の必要性というのは、やっぱり不公平感というのがこれだけかまびすしい議論をする土壌をつくり上げてきたのじゃないかというふうに私は思っております。ただ、そこのところでいきなり、今御指摘になりましたいわゆる所得税の中における源泉徴収である勤労所得、厳密に言えば給与所得でございますが、それとそのほかの医師、商店主等の事業所得、それらに対する不公平感ももとよりございますが、いま一つ、間接税の中にも個別物品税から来るところのいろんな不公平感というものがございます。それで、個別物品税から来る不公正感を除くためには、おっしゃる新税という範疇にそれは勢い入ってこなきゃならぬ、こういうこともございますので、そういう、新税は悪税なりというのは昔からよく言われますが、新税で不公正を払拭するということもあり得るということを前提に恐らく税制調査会等でいろいろ御議論をいただき、適切な判断を下していただけるではなかろうかというふうに考えております。
  120. 勝木健司

    ○勝木健司君 個別の物品税、間接税にも不公平があるということは私たちも承知をしておりますけれども、もっとそれ以前の問題として、直接税そのものに不公平感というものがあるように思われます。特にサラリーマンの不公平感については、事業所得者と比較いたしましても、申告納税ができない、また家族に所得を分割してやることもできないなど、現行制度におきましては実に不公平な面があるように思われます。  申告納税については特定支出控除制度が導入されましたけれども、ほとんどのサラリーマンはこの制度を利用できるような状態ではありません。やはりもう少し中身のある制度に改めるべきじゃないかというふうに思います。また、配偶者特別控除という妻の内助の功を評価する制度も実現を見ておりますけれども、これも二分二乗方式、二分二乗制度への過渡的な措置であって、このままでいいとは到底思われませんので、あわせて明快なる答弁をお願いしたいというふうに思います。
  121. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御指摘のように、サラリーマンの方々にとっては申告納税の道が開かれていないというのがその不公平感の原因の一つであるといろいろな調査等からお聞きするところでございます。こうしたものにおこたえをするものとしては、実額控除制度ないしはそれの選択制度といったものも考えられるわけでございまして、税制調査会としてもかなりこの点につきましては踏み込んだ検討はされたところでございますが、何と申しましても、所得税の百年の歴史の中でこうしたものを一挙に持ち込むということになりますと、納税者の方々も戸惑う、税務当局の方も戸惑う、その間にいろいろなトラブルも生じ、かえって制度としておかしなものになってはということから、とにかく特定支出控除制度ということで去年発足をさせていただいたわけでございます。これが六十三年分から適用でございますので、この制度の利用状況、適用状況等を見ながらさらに検討をしてまいる問題ではないかと思うわけでございます。  それからまた配偶者特別控除の問題につきましては、これも御指摘ございました二分二乗という非常に徹底した制度もあるわけでございますし、アメリカ、ドイツ、フランス等におきましてはそういう方向で対処がされているところでございますが、これを一挙に日本の所得税におきまして持ち込みますと大変負担の変動が生ずる。また、家庭におきますところの配偶者の職場進出、社会進出といった問題もございます。一方、みなし法人制度とか青色専従者給与制度等とのバランスも図る必要があるというところから、これもとにかく十六万五千円で発足をさせていただいたところでございます。  この問題につきましても、底流としては御指摘のような問題があるということは承知いたしてございます。この点につきましては、所得税内部におきますところの合理化、公平化という問題の一環として今後とも問題意識としては続けられるものと思われるところでございまして、こうした方向、今度の改革の中でもどのような方向が打ち出されるか、それを待ちまして対処はいたしたい。しかし、二つの問題ともとにかく芽を出し発足をさせていただいたというところに意義があるのではないかと思っているところでございます。
  122. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、資産課税についての不公平でもありますが、株や土地などの投機が過熱していったため国民の資産格差というものはますます広がっておるように思います。このような格差は給与などの格差よりもより一層重大であろうかというふうに思われます。本人が勤労する所得に応じて差が出るのならともかく、株や土地などによって格差が拡大しておるということは非常に問題ではなかろうかというふうに思うわけであります。こんなことになるのも、歴代の自民党内閣というものが資産課税に対して骨抜きにしてきたからではないかというふうに思われるわけであります。  株のキャピタルゲイン課税については、先ほどもありましたように与野党ともほぼ合意に達しておるということでありますけれども、その捕捉についてでありますが、さらに詰めの作業を進めなければならないということであります。我が党は株式取引だけに限定したカード制の導入というものを主張しておりますけれども政府はこれをどう受けとめられておるのか、お伺いしたいというふうに思います。  また、土地につきましても、庶民や中小零細企業のささやかな土地についてはもちろん配慮すべきだろうというふうに思いますけれども、法外な土地の所有、土地の財テクに対しては重税を課してもいいのではないかというふうに思われます。例えば、現在長期の土地譲渡益について赤字法人なら全く税金がかからないという仕組みになっておるということでありますが、これはいつまでも放置しておいてはいけないというふうに思いますので、あわせてお伺いいたしたいというふうに思います。
  123. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 有価証券譲渡益課税の問題につきましては、現在素案にも提示され具体的な検討がされているところでございます。その結論を得まして今後具体的に作業をいたしたいと思うわけでございますが、ただ御指摘のカード制度といった問題、これを特に有価証券と申しますか株式の取引のときだけにこうしたものを用いてその適正な執行を図るということにつきましては、金融資産というのは非常に流動的でございますので、そうした金融資産取引の中で株式の取引だけにそうしたものを考えることが果たして適当かどうかという点は、若干私ども問題意識があるところでございます。したがいまして、もしそうしたもので制度化を図るということであれば納税者番号制度になる。この点につきましては税制調査会におきましても小委員会を設けまして現在審議が行われているところでございますので、その方向を見守ってまいりたいと思うわけでございます。  それから土地に関連しての赤字法人の問題につきましては、この点につきましても税制調査会の素案でも問題意識をお持ちになりまして、借入金でもって土地を取得する、その利子によりまして所得を相殺して赤字にしておくといった場合、そうしたものにつきまして何か制度的な対応策が考えられないかという具体的な問題が素案の中に提示されておるところでございます。そうしたものが具体的に進んでまいりますれば、それに応じまして具体的な作業に入りたいと思うわけでございます。
  124. 勝木健司

    ○勝木健司君 新型間接税の論議につきましては将来的には避けて通れない問題であるという認識をいたしておりますけれども、しかし新型間接税の導入論議は、そういう不公平感、重税感の是正ということもさることながら、高齢化社会の長期ビジョン、今後の財政再建の道筋を明確にすること、また行政改革の断行などにかかわる問題でもないかというふうに思われます。これらの諸問題を棚上げにしての導入論だけが先行することはこれまた到底国民の合意を得られるものではないというふうに強調いたしておきたいというふうに思います。  そこでお尋ねいたしますけれども、新型間接税導入を論議するといたしましても、これらの重要課題であります高齢化社会の福祉ビジョンのあり方、また財政再建計画の策定、行政改革の断行などにつきまして十分な論議を経た上で行うべきであるというふうに思いますが、それについての賢明なる竹下総理の明快な御見解を示していただきたいと思います。
  125. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 税制改正を行うに当たりましていわゆる税に伴う不公平感を是正しなければならないという御指摘は、まことに政府もそのように考えておりますし、また税制調査会においても同様の認識で、素案の中にもそれが示されております。それはやはりぜひやっていかなければならないことだと思います。  それから財政改革の問題でございますが、これは何年か進めてまいりまして、私どもとしては昭和六十五年度には特例公債依存の体質から脱却いたしたい、それを当面の目標として実現をいたしたいというふうに考えております。  それから、二十一世紀云々と言うがその際の福祉なり国民負担なりの問題が明確でないではないかという御批判はこのたびの予算案審議について寄せられまして、政府といたしまして厚生省と大蔵省と協議をいたしましてできるだけの、いわばやや機械的でございますが、将来の姿を書きまして御参考に供したわけでございます。  それによりますと、将来どのくらいの社会保障の給付があるかということは、これは結局国民がどのぐらいの負担をされるかということとのトレードオフになりますので、そういう意味で将来国民が決定せられるべきことでありますけれども、しかし、今から機械的にはじいていきますと、やはり社会保険料と租税負担を合わせました国民負担は、二〇〇〇年におきまして今より五ポイントぐらい上昇するであろう、二〇一〇年にはその上にさらに五ポイントぐらい上昇するのではないかということが一応機械的にはプロジェクションとしてはじかれておりまして、その中でどのぐらいの給付を国民が求められるかということは、やはりその段階における国民の選択ということになるのではないか。  なお、この計算そのものは、我が国に長期にわたる経済計画は御承知のようにございませんものですから、一応経済成長率をある想定のもとに計算せざるを得なかった、それが実情でございます。
  126. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いま一つ、行革についての位置づけというようなことがございました。行政の制度や運営を見直して社会経済情勢の変化に対応した簡素にして効率的な政府をつくり上げていくということで、行革行革と進めて今日に至ったことは事実であります。  そこで、その目に見えるものといたしますと、私はよく申しますが、やはり二十六人おった総裁が二十一名になった。すなわち国鉄総裁がなくなり、電電総裁がなくなり、専売総裁がなくなり、電源開発株式会社総裁がなくなり、東北開発株式会社総裁がなくなった、これが社長になったということでございますが、特にNTT株の売上代金等が既に予算の中にいろいろ工夫ができる状態になった。その目に見えるものが今日に至りますと何だか済んでしまったという感じになることが、私は一番危険なことであるというふうに考えております。そこで、表現としては、せっかく押し上げた荷車が手を放すとがらがらとまた坂を下がってしまう、そういうことではいけないと申しておりますが、元来、行政組織法、総定員法というようなことから積み上げてきたのが行政改革であります。  したがって、なおこれから、今行革審で審議していただいております規制緩和でございますとか権限移譲の問題でございますとか、そういうことに本気を出して、政府が一層スリムになることを国民の皆様方にも可能な限りわかっていただける努力を続けていかなきゃならぬ。いわゆる実人員等はこのようになっておりますと申しましても、NTTに象徴されるような非常にわかりやすい課題というものが、あるいは今目に映りやすい課題というものがない。しかし、それだけにこれで済んだという考え方に立ってはいけない。あくまでも簡素にして効率的な政府というものをつくり上げるために行政改革というものは寸時たりとも念頭から放してはならぬ、このように考えております。
  127. 勝木健司

    ○勝木健司君 竹下内閣は、高齢化社会が進むので将来安定した税収を確保するために新型間接税というものの導入を図るべきであると唱えられておりますけれども、もしそうであれば、やっぱりどういう高齢化社会でどんな負担を国民が負うことになるのかということを明らかにしなければならないというふうに思います。  また、これまでの論議の中で、厚生省と大蔵省が「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担の展望」という資料を三月十日に提出されておりますが、肝心なところが明確でないように思われます。もし現行税体系のままでこのまま高齢化が進んでいった場合に一体どの程度財政に穴があくのか、税収が不足するかという見通しというものが明らかではないように思われます。この点につきまして明確な推計というものをお示しいただけたらというふうに思います。
  128. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それは政府の経済計画というものがせいぜい五年でございますために、長期にわたって国民所得、国民総生産の成長を計算する方法がないわけでございます。その基礎を欠きますものですから、財政の税収がどのぐらいであるというようなことも実は出てまいりませんし、また別の理由もあって社会保険料の負担がどのぐらいであるかも政策の問題としては出てまいりませんものですから、先ほど申しましたように、今の状況が続きましたときの国民負担の増が二〇〇〇年におきましては今より五ポイントぐらい、それから二〇一〇年におきましては今より一〇ポイントぐらい上がるように考えられる。その場合の国民の負担は四六、七になるのでございましょうか。  ただ、それは経済成長率を何%と考えるかによって大変に変わってくる、仮定計算でもやはり変わってくる、こういうことまでが政府がただいま申し上げ得る限界になっておるわけでございます。
  129. 勝木健司

    ○勝木健司君 国民の負担率ということで四六あるいは四七ポイントぐらいだろうということはお示しいただいておるわけでありますけれども、今のままの税体系でいった場合にどういう穴になるのかということも、経済成長率もある程度見込みながら出せるんじゃないかというふうに思いますので、今すぐ出ない場合には、やっぱり速やかに作成していただいて御提出をいただきたいというふうに思いますけれども、いかがですか。
  130. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 部分的には計算をいたしてみたわけでございます。今、租税負担率は二六ぐらいでございますが、そのうち給与が負担しておりますものが四・八、いわゆる勤労者の負担でございます。それが二〇〇〇年には七ないし八になる、二〇一〇年には一〇ないし一三になる。ただいまの状況をそのまま置きますとそのようなことになるという試算はいたしてございます。
  131. 勝木健司

    ○勝木健司君 そういうふうに負担がなれば、税収に穴があくのかということはいかがですか。
  132. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) むしろ現在の四・八という負担が給与所得者にとって既にかなりつらいものでございますから、それが八になり、あるいは一三になるということは実は到底考えにくいことである。そのような負担を給与所得者が将来に向かってしていくということは現実には難しいことでございますから、したがいましてこの際、今から何かをやはりそれにかわって考えておきませんと、高齢化社会そのものが維持できなくなるというふうに申しておるわけでございます。
  133. 勝木健司

    ○勝木健司君 時間の関係で次に進ませていただきます。  高齢化に関連いたしておりますけれども、老人医療の問題についてちょっとお伺いしたいというふうに思います。  厚生省の推計によりますと、昭和六十三年度の国民医療費というものは前年度比五・二%増でありますけれども、国民所得の伸び率は四・六%増ということでありまして、国民医療費の伸び率を国民所得の伸び以内に抑えるという政府の目標というものが三年連続達成できないということになろうかというふうに思います。その最大の原因は老人医療費の急増でありますけれども、老人保健法というものが改正されて、昭和六十一年度から加入者按分率が引き上げられ、ことしで三年目になるわけでありますが、各被用者保険財政、特に健保組合財政への影響というものを厚生大臣はどのように認識されておるのか。  あわせてもう一点、時間の関係で続けて質問させていただきますけれども、健保組合の支出予算総額に占める老人保健拠出金の割合というものは六十一年度から六十二年度にかけまして四・七%も増加しております。組合財政にとっては深刻な影響を与えてきておるように思います。仮に抜本的な制度改革というものが行われず、六十五年度以降も加入者按分率が一〇〇%のまま続くとした場合に、健保財政というものは破綻を来すというふうに考えますけれども、あわせて厚生大臣の認識はいかがでありましょうか、お伺いしたいと思います。
  134. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) 先般の老人保健法の改正によりまして、健保組合の拠出金負担が増加いたしましたのは事実でございます。健保組合全体といたしましては、当面対応が可能な状況にあると考えております。しかし、健保組合によりましてはその財政運営につきまして必ずしも楽観を許さないものもございますので、そのような組合につきましては、国におきましては臨時調整補助金、また健保連の共同事業、これは調整事業でございますが、そのようなことによりまして健保組合の運営に支障の生じることのないよう最善の努力を払ってまいりたいと考えております。  それから二番目の御質問でございますが、昭和六十五年度以降の問題でございますが、御承知のように、六十五年度までに老人保健制度の見直しが行われることになっておるわけでございます。その見直しの際には、先般の老人保健法改正の際の国会での御議論、また特に健保組合の財政等にも十分配慮をいたしまして、十分に検討し慎重に対応してまいりたい、かように考えております。
  135. 勝木健司

    ○勝木健司君 この際医療保険制度というものを抜本的に改革すべきじゃないか。そしてまた、老人保健制度というものを医療保険制度から切り離した別の制度を考えたらどうかというふうに思うのでありますが、総理大臣の御見解はいかがでありましょうか。
  136. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) 老人医療制度のあり方につきましては、老人保健制度の創設時から御指摘の別建てを含めまして種々御議論がございました。しかし、御承知のように我が国は社会保険方式が定着をいたしておるわけでございまして、この社会保険制度を前提といたしました現行の制度のような各医療保険が共同して負担し合う共同事業、これによりまして財政負担をする、この方式が最も公平で現実的なものであるというふうに考えております。
  137. 勝木健司

    ○勝木健司君 時間の関係がありますので、次に進ませていただきます。  行政改革、財政再建でお答えをいただいたわけでありますけれども、やっぱり新型間接税導入の前にはぜひこの問題について決着をつけた上でやっていかなければ国民の不満というものは消えないだろうというふうに思います。行革の中で、五十四年十二月の国会決議、財政再建に関する決議ということで、これにおきまして、一般消費税によらず、まず行政改革による経費の節減、歳出の節減合理化、税負担の見直し等を抜本的に推進するとうたわれております。新税の導入に先駆けてまず行革をきちんとやる原則というものは、今日においても厳格に守るべきじゃないかというふうに考えますけれども政府の認識をお伺いしたいというふうに思います。
  138. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 五十四年十二月の国会の御決議に従いまして、政府現実にそのときから行財政改革を推進いたしてまいりまして、かなりの成果を行政改革におきましても財政改革におきましても上げつつございます。このとき、この御決議の意味したものは、国民がみんな減量経営をしているのに政府にその努力の跡がないではないかということで、それは真実の御指摘でありましたから、かなりの苦労をして今日まで行財政改革を進めてまいりました。その必要は今後も変わるところはないと考えます。
  139. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、円高と購買力平価についてお伺いしたいというふうに思います。  先ごろまとめられました経企庁の試算によりますと、日本の製造業労働者の時間当たり賃金というものはアメリカと並んだ、そしてまた韓国の七倍になったとされております。ところが現実の物価水準から算出した購買力平価、これは八七年で一ドル二百九円とされておりますけれども、これを用いますと、八七年の日本の賃金水準を一〇〇とした場合、米国が一六六、西ドイツが一四一、英国が一一六などと依然として欧米よりも低い状態であることがわかります。  このように円高による名目上の所得水準の上昇に比べ、余りにも生活水準というものが欧米と比べて見劣りがする、劣っているというのが現実じゃないかというふうに思います。この円の水準の高さと現実の円の価値とのギャップをいかに解消していくのかということが政治の、政策の課題だろうというふうに思うわけであります。このギャップをどういうふうに埋めていくのかということでの政府としての基本的な認識をまずお伺いいたしたいというふうに思います。
  140. 中尾栄一

    ○国務大臣(中尾栄一君) お答えいたします。  委員御指摘のとおり、購買力平価の問題は、問題ではございますけれども、この問題は種々の算出方法がまず一点違うということもございますし、また各国の固有の生活様式というものの相違から単純な比較計算をするということは困難でございます。概して言うならば、円高が急速に進んだということもございまして、我が国の生活関連等の物価水準というものは、御指摘のとおり国際的に見て割高な傾向にあるということは否定できがたいものだなというふうに考えております。  しかし、これに対しましては政府として、特に私どもの経企庁といたしましては累次にわたる対策、例えば三度にわたる電気、ガス料金の引き下げ、あるいは国際航空運賃の方向別格差等の縮小などによりまして公共料金の引き下げに全力を投球してきたところでございますが、今後とも公共料金につきましてはさらにその努力を飛躍発展せしめていくように地道に努力を講じたいと思っております。  また、時間のかかる問題ではございますけれども、経済構造の調整を進めていく中で規制緩和なども問題でございます。あるいはまた、輸入の促進、流通分野における適正な措置ということも、これまた競争率の確保をめぐっての条件としては当然内外格差等の縮小に努めていくということが一番大事な要件である。このように重要点としてとらえていることも付加しておきたいと思います。
  141. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 今経済企画庁長官が言われましたとおりでございますが、プラザ合意以来のことを見ておりますと、円高差益が還元されないされないと言われながら七割方還元されているというのが最近の経済企画庁のお話でございますが、還元されるのに半年以上の時間がかかってきたのだと思います。したがいまして、円高差益というものが家計ばかりでなく企業の中でもやはり今だんだん感じられているのではないか。それが経済が順調な歩みに転じまして、円はかなり実は高いと思うのでございますけれども、何か高いところで企業も何とかそれに即応しようとしている。それには私は円高差益というものがプラスに働いておるというふうに考えますので、購買力平価というのは何をとるかというのは問題がございますからそれについては何とも申し上げませんけれども我が国経済、円は、そういう意味でプラザ合意以来の事態に即応しつつあると申し上げられるのではないかと思います。
  142. 勝木健司

    ○勝木健司君 ギャップを埋めるためには物価水準をやっぱりさらに下げていく方向ということで、先ほども経済企画庁長官、公共料金の引き下げには努力をしていくということでありますけれども、物価を下げていくということが最も大切ではないかというふうに私も思います。再三国会でも論議されているところであります。政府の関与する物品について価格の引き下げを行うということにより消費者物価の引き下げというものも促進することが必要だと思います。  そこで、政府の関与する物品のほとんどが農産物でありまして、国民の不満もここに集中しているのも事実であります。農産物については対外的な配慮、国内生産者への配慮がともに必要なことは言うまでもありませんけれども、それに加えて国内の消費者への配慮といった側面も大切にすべきであるというふうに思います。  そこで、牛肉問題、オレンジ問題についてお伺いをいたしたいというふうに思います。  牛肉の輸入の場合、牛製品の輸入枠制限がありまして、IQ商品から外れているいわゆる生体牛の輸入を促進されておりますけれども、生体牛の輸入についていろんな問題が発生しておりますので政府見解をお聞きしたいというふうに思うのでありますが、まず一点は、生体牛の検疫処理に手間取っておる、検疫時間が長くかかるということで商品価値が低下するということであります。このため、動物検疫の処理能力に限界があるので、実質的には輸入の障壁となっておるんじゃないかということで、国内外の輸出入業者の不満もこの点にあるというふうに思います。そこで、処理の簡素化ということができないものかどうかお伺いしたいというふうに思うわけであります。  第二点目は、検疫設備の増強と処理能力のアップを図ってほしいということでありまして、例えば出荷国検疫、船上検疫等の簡略な措置の検討はどうなのかということであります。  三点目には、牛肉調製品の自由化というものが促進をされておるわけでありますが、自由化促進の牛肉調製品の基準というものが不透明じゃないかというふうに言われております。自由化促進を妨げることにもなりかねないということでありますので、牛肉調製品の基準というものは検討されておるのか。  以上三点お伺いいたしたいというふうに思います。
  143. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) まず、お尋ねのございました生体牛の輸入検疫の問題でございます。御承知のとおり、家畜伝染病の予防ということは国内の畜産振興の上で大変重要な課題でございまして、その中で特に外国からの悪性伝染病の侵入を防止することが何にも増して重要であると考えております。そのため、外国からの生きた牛の輸入につきましては大変厳重な検疫を行っておるわけでございますが、特にこの二、三年来、急激な円高の進行に伴いまして輸入規模がふえておることは事実でございます。これに対処しまして、私ども漸次、大変厳しい行財政事情のもとではございますが、検疫施設の拡充あるいは検査官の増員ということで対処をしておるところでございます。  ただ、お話のございました外国の検査結果あるいは船上検疫というふうな簡便な方法がとれないかというお尋ねでございますが、御承知のとおり、技術的に見ましてこれらの方法では十分な安全性を確保することが難しいという状況でございます。事実、外国の輸出検査等を経て輸入されたものを国内で検査した結果疾病が発見をされるという事例も少なくないわけでございます。したがいまして、国際的にも輸出側、輸入側の二重検疫をするという体制が一般的でございまして、これを容易に直すということは安全確保の上から問題であるというふうに考えております。先ほど申し上げましたとおり、私どもとしては国内の検疫体制の充実にさらに努力をして対処してまいりたいと考えております。  それから、牛肉調製品の問題でございます。先般のいわゆる十二品目問題で近い将来――牛肉調製品、従来輸入数量の規制をしておったわけでございますが、近い将来自由化せざるを得ないという事態になったわけでございます。この牛肉調製品の範囲というのは非常に広範でございますが、その一部につきましては国内で生産される牛肉との競合を生ずるというふうな問題もございますので、他の産品とあわせまして私ども省内にプロジェクトチームをつくりまして、その対策等々について検討を進めております。その一環といたしまして、御指摘のございました大変多岐にわたる製品分野でございますけれども定義を明確にして対策を講じていくということを現在検討しておりまして、できるだけ早く結論を得まして、その新しい定義なりあるいは対策に応じて対処をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  144. 勝木健司

    ○勝木健司君 日米通商問題、またガット等で問題となっている点は、不透明な流通経路、また特に畜産振興事業団の内容にも懸念を抱いている点ではなかろうかというふうに思います。早急に畜産振興事業団に対する抜本的対策を講ずることが急務ではないかというふうに思います。対応をお伺いしたいと思います。  また同時に、この事業団の牛肉割り当て方法が不透明であるため、安価な牛肉というものを広く流通させるための明確な方法、基準というものを御提示いただきたいというふうに思います。
  145. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 畜産振興事業団を通ずる牛肉の流通問題についてのお尋ねでございますが、御承知のとおり、国内におきます牛肉生産は土地利用型農業の中核としまして私ども大変重視をしております。したがいまして、国内で生産される牛肉について御承知のとおり価格安定制度がとられておりまして、これとリンクして輸入を秩序を持って行うために、畜産振興事業団が一定の輸入業務を行っておるわけでございます。この輸入業務の改善を図りながら、国内産牛肉と調和のとれた輸入牛肉の適切な流通を図るべく努力しておるわけでございますが、その一環といたしまして、御承知のとおり指定店制度とか、あるいは国内における輸入牛肉の配分につきまして入札方式の改善といったような方策をこれまでも続けてきておるわけでございます。  いろいろ御議論、御批判のあることは私ども承知をしておりますが、現在、御承知のとおりこの牛肉輸入問題についてはアメリカ、豪州と大変厳しい外交折衝をしておる最中でございます。この帰趨も見ながら、御質問の御趣旨をよく体しまして、国内のこの畜産振興事業団の業務執行のあり方について改善方策を考えてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  146. 勝木健司

    ○勝木健司君 ただ単に牛肉とか牛製品にかかわらず、牛の飼育とか飼料等、周辺分野にまで外国からの介入の兆しがあるやに聞いております。日本の国策としてどの分野までの譲歩を考えられておるのか、将来展望としての政策はどのように考えておられるのか、お伺いいたしたいというふうに思います。
  147. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 大変難しい問題でございまして、私どもこの牛肉等々の問題につきまして現在外国との交渉を進めておる最中でございます。  総体として見ますと、現在の牛肉の需給事情から見ますと、国内の生産が当面やや、資源的な制約もございまして停滞的でございますので、国内の需給安定を図るためには一定の輸入増加が必要であると考えておりますが、具体的にこれをどのようなテンポで進めていくか、あるいはまたその数量をどういうふうな形で国内で流通をさせていくかということにつきましては、やはり現在進めております交渉との関連もございますので、細部にわたって申し上げることは御勘弁をいただきたいわけでございますが、この折衝経過を踏まえて国内生産と調和のとれた輸入のあり方あるいは国内流通のあり方というものを考えていきたいと思っておるわけでございます。
  148. 勝木健司

    ○勝木健司君 オレンジ自由化問題に入りますが、仮にオレンジが自由化となれば、かんきつ類栽培農家に打撃を与えるのは必至じゃないかというふうに思います。これら農家に対する救済策というものは、政府として特に考えられておるのかどうかお伺いいたしたいというふうに思います。  あわせて、不公平税制の一要因ともいうものが、農家に対する保護行政というものが余りにも手厚いことにあるとも考えられます。西欧諸国の農家に対する行政活動、例えば効率的な生産を目指した自主的区画整理等には参考にすべき点が多々見受けられるように思われますけれども、先般農業白書も出たところでありますが、特に農業の国際化の観点から、日本政府の農業政策の基本方針というものをいま一度お伺いしたいというふうに思います。
  149. 吉國隆

    政府委員吉國隆君) 最初にオレンジに関しての点でございますが、日米間で御承知のように話し合い継続中という状況でございますので、自由化をした場合の救済策というお尋ねでございますが、そういった対策について現段階で云々するということは適切でないというふうに考えております。
  150. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 国際化に対応した農業政策、そういう意味でのお尋ねでございます。  国際化の進展の中で、農業問題といえども国際的に孤立するようなことであってはならないと、こう考えております。しかし、重要なことは、農業は食糧の安定供給、活力ある地域社会の維持、国土、自然環境の保全等極めて重要な役割を果たしておることは委員御承知のところでございます。また、世界の農産物貿易構造は、輸出供給力が特定の少数の国に集中をしている等、そのことを考えますと中長期的に不安定な状態にある、こう判断をいたしておりますので、将来に禍根を残さないようにするとの見地から、基本的には農産物を安定的に供給する体制を維持していくことが何よりも重要である、こう考えております。  従来もいろんな場で御答弁申し上げておりますように、先般来出されております農政審議会報告に沿って、国民の納得し得る価格での食糧の安定供給に努めることを基本といたしまして、与えられた国土条件の制約のもとで最大限の生産性向上を図る、また農村社会の多様な構成員の間における適切な役割分担、こういうことを通じまして所得機会の確保、これは雇用問題にも関連することでございます。農村社会の活性化、これを図るという観点から農政を展開してまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  151. 勝木健司

    ○勝木健司君 次は労働大臣にお伺いしたいと思います。  時短問題についてでありますが、多くの問題をはらみながらも労基法の改正というものがこの四月一日からスタートしたわけでありますが、中小零細企業も含めてひとしく勤労国民が労働時間を短縮できるにはいかにしていくのかということを真剣に検討し、必ず実現をしていかなければいけないというふうに認識をいたしております。  先般、労使トップや有識者代表をメンバーとした労働時間短縮政策会議というものが設置をされ、第一回会合が開かれましたが、この中で労働大臣は、労働時間の短縮は政府全体として取り粗むべき最重要課題であるという決意を述べられております。この時短政策会議の役割、責任は重大であると思いますので、政府としてどういう考えでこの会議に臨まれていくのか、お伺いしたいというふうに思います。  同時に、欧米並みのゆとりある生活との関連におきまして、国際的な公正労働基準の達成のためにも労働時間の短縮というものはぜひ必要なことでありますので、この取り組む姿勢についてお伺いをいたしたいというふうに思います。
  152. 中村太郎

    ○国務大臣(中村太郎君) 労働時間の短縮という問題は、単なる労働条件にとどまらないわけでございまして、広く国民生活一般、つまり家庭生活あるいは余暇活動、さらには消費者の利便等々生活にかかわる問題を含んでおるわけでございまして、影響するところ大でございます。その意味では、基調にはやっぱり国民的な合意が必要であろうというふうに考えておるわけでございまして、そのために労使双方の代表、さらに学識経験者を加えまして労働時間短縮政策会議を開催することになったわけでございます。第一回の会議を三月三十日に持ちましたけれども、今後におきましても随時この会議を開いていただきまして、少なくとも来年の初めごろにはある程度の御提言をいただきたいというふうに考えておるわけでございます。その会議などを通じまして、広く国民的な理解あるいは社会的な機運の醸成等に努めてまいる所存でございます。  また、労働省としましては、この取り組みの直接的な姿としましては、御案内のとおり、四月一日から週四十時間労働制の実現に向けての改正労働基準法が施行になっておるわけでございます。まずは何といいましてもこの施行の円滑なことを図っていかなければなりません。そのためには、労使双方に対する取り組みに対しましても指導、助言等を行ってまいりたいと思いますし、国民的、社会的なコンセンサスの形成も図っていかなければならないと考えております。  とりわけまして大事なことは中小企業の問題であると思います。一番取り組みにくい業態であろうかと思うわけでございまして、このことのためには、特に中小企業の団体、集団としてとらえまして、個々具体的に指導員などを配置いたしまして十分な啓蒙、指導、あるいはまた御相談に乗りまして環境の整備を図っていかなければいけないということでございます。  いずれにいたしましても、これは画期的なことでございますし、どうしても短縮をやらなければならないことでございますので、労働省挙げて全力を注いでこの円滑な実施に進みたいと考えておる次第であります。
  153. 勝木健司

    ○勝木健司君 最後に文部大臣並びに総理大臣にお伺いしたいと思いますが、最近スポーツの国際水準は著しく向上しており、それだけに国民の日本選手に対する期待というものは大きいものであります。しかもまた、国際的な競技の祭典による青少年の健康育成、また生涯スポーツの振興というためには大いに役立っておるように思います。  そこでお伺いいたしますが、まず新聞の報道によりますと、日本勢はソウル・オリンピックで苦戦必至とされておりますが、選手に月額三十万円を与えた体協の特別強化指定選手制度や、いろいろな強化策を講じておられるということでありますので、その内容と成果について御報告を願いたいと思います。  あわせて、衆議院の予算委員会で我が党の議員が、我が国のスポーツの長期低落というものはスポーツ予算に問題があるというふうに指摘をいたしております。宮澤大蔵大臣は、その席上で、そんなに金がかかることではないので意義のあることなら金は惜しまないと言われたそうでありますけれども、まことに心強い次第であります。あと残された半年間に文部大臣は担当大臣としてどのように取り組んでいかれるのか、お伺いをしたいと思います。  あわせて、総理大臣の私的諮問機関でありますスポーツの振興に関する懇談会の報告書が、最終原案というものが新聞で紹介されておりましたけれども、五輪メダリストへの功労金の給付、総合トレーニングセンターの施設の整備、スポーツ省の設置などかなり思い切った改革案を出す考えのようでありますけれども、竹下総理のお考えを、竹下総理はどうこれを評価されておるのかお伺いをして、質問を終わりたいというふうに思います。
  154. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) スポーツについてのお尋ねでございますが、文部省としてはこれは生涯スポーツ、それから競技スポーツ、これをスポーツ振興の両輪というふうに考えておりまして、ソウル・オリンピックもその一環上の一つのスポーツの祭典というふうに位置づけておるところでございます。  お尋ねのオリンピック強化指定選手制度、これを六十二年から発足させております。その中で特にメダルあるいは入賞が期待される選手を特別強化指定選手といたしまして、一般の合宿以外に個人的な合宿も行われるわけでありますので、そういう意味で月額十万の補助をいたしておるわけでございますが、そのうち特に期待される選手には体協からプラスをいたしまして月額三十万、こういうふうなことにしておるわけでございます。総数はソウルに対しまして二十四名を指定いたしております。  それから、そのほかスポーツ懇談会についてのお尋ねでございますが、これは総理のもとでいろいろ自由な御意見を出していただきまして、スポーツ振興策についての御意見をまとめていただいたわけでございまして、大変示唆に富むものと思っております。それを参考にいたしまして、文部省では保健体育審議会に近々諮問をいたしまして、可及的速やかに体系的におまとめをいただきたいと、こう思っておるわけでございます。  ただ、当面のソウルと中長期的なものがございますから、お尋ねのナショナル・トレーニング・センター、これについては総合体育研究研修センター、これを渋谷の西原につくるということで基本設計に入っていく準備段階に今ございます。  今後の方向としては四方面に従って充実をさしていこう。その一つは、ジュニア対策で、幼少のころから素質を認めていこう、それを育てるためには優秀な指導者が必要でありますので、指導者育成、ただ根性論だけではいけませんので、これからは医学的、科学的にそれを振興さしていこう。最後に、そういう種類あるいは年齢に応じたカリキュラムを策定していこう、そのような四方面でスポーツ振興に資してまいりたい、こう思っております。
  155. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 文部大臣とよく御相談をいたしまして対処してまいります。
  156. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いわゆるスポ懇の問題につきましては、今文部大臣からお話がありましたが、中曽根内閣以来からのスポ懇でございまして、私も内閣総理大臣になりましてから全部出席をさしていただきました。大変示唆に富んだ御提言をこの間ちょうだいしたところでございます。  今も文部大臣からお話があっておりましたが、生涯教育の中でスポーツ振興をどう位置づけるか、私どもの時代はどちらかといえば根性が先行しておったと思います。悪いことだったとは思いません。それなりの私は意義があったと思います。私もあるいはその根性の中で育てられたかもしらぬなというようないささかの自負もございますが、それにさらに近代医学というものを土台に置いた研究、いわゆるトレーニング・センターの問題、さらにはスポーツ省の問題とか、こういうような御提言までなされ、そしてソウルにはちょっと間に合いませんが、五カ年計画というようなものの御提言もいただいたわけであります。  それを今文部省へおろしましてというか、文部省にお願いしまして、保健体育審議会でございますか、そこの方でそれの具体化に対して議論していただく、こういうところまで来ておりますので、十分示唆に富んだ御提言として参考にさしていただきたいと、このように考えています。
  157. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で勝木健司君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  158. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、野末陳平君の質疑を行います。野末陳平君。
  159. 野末陳平

    ○野末陳平君 前回の質問に続けて、きょうは税制改革の締めくくりの質問をしたいと思うんです。  まず総理にお伺いしますが、いろいろな世論調査の結果を見てみますと、不公平税制とは何か、今の税制で一番得をしているのはだれか、こういうふうな設問に対しまして答えはいつも決まっておりますね、開業医、宗教法人、それから大資産家、そして政治家と、こういうふうになっておるんですね。妥当だと思うんですが、こういう世論調査の結果、国民の声に対して総理はどんな感じで受けとめておられるか、まずそれをお聞きします。
  160. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 世論調査等素朴な感じが出ておるというふうに私は受けとめております。  そこで、まず今御指摘なさったような問題で取り上げてみますと、昭和二十七年でございましたか、いわゆる七二プロの問題、医師優遇と申しますか、医師の特別措置と申しましょう。それが歴史的にいろいろ経過いたしておりますが、この辺でいわゆる地方税の問題等がやっぱり残っておる一つかなと、こういう問題意識であります。  それから宗教法人の問題につきましては、これは十八万三千ぐらいあるわけでございますから、人間の心に税金をかけるというのは私はこれはすべきことじゃないと思っておりますが、その法人の行う営利事業についての税制問題についての不公正感というものと、十八万三千の中でいわば一般的な宗教法人と我々が認識していないような形のものがかいま見られるというところに問題があるのではないかなと、そういう感じがいたしております。  それから政治家の問題、これはやっぱり個人個人の自覚の問題であろうと。自由民主党でパーティーの問題等の議論が今行われておるというのも、みずからその体験者といたしまして、あれは結構なことではないかなというふうにも思っておるところであります。したがって、素朴な国民感情の意識調査のあらわれというふうにとっております。
  161. 野末陳平

    ○野末陳平君 私もそのとおりだと思いまして、ただしこれを抜きにしては税制の抜本改革はあり得ないわけですから、となるとこの不公平を直すということは、要するに既得権を取り上げるというか、そこに手をつけることで、非常に大変である。大変であるが、今回の税制改革ではここにメスを入れて大胆に踏み出すということがもう絶対条件だと、そういうふうに考えておるわけですね。  前回私は、普通の人の素朴な疑問を二十並べてそして政府のお答えをいただいたわけですが、必ずしもいいお答えをいただいたとは思えないんで、きょうはこの二十をさらに七つに絞りまして、今度は私自身が思っているものは何だというので自分の意見を入れたいと思うんです。  私に言わせれば不公平というのはやっぱり七つある。これは税金七不思議ですよ。どう考えても常識的にわからない。言葉はやや乱暴ですが、ちょっと挙げますけれども、まず宗教法人がなぜ丸もうけかですね。これはもちろん信仰の部分でない収益部分について言うわけですが、なぜ丸もうけか。  二番目は、開業医の税金はなぜ甘いかということです。  三番目は、みなし法人がなぜ続くんだと、これなんですね。  四番目、大資産家はいつも得するということ。この大資産家というのは、現代の資産家は何かということが大事なんです。これは株とか土地を持っているとか、そういう人たちがむしろ資産家なんですね。勤労所得で高額所得を上げるという人が資産家とは言えないと、私はそう思っているわけですが、大資産家がいつも得する、これが四つ目です。  五つ目、これはいつも言われるように大企業がいつまで優遇されるんだと、引当金などの問題、これは大法人に一番有利に働いておりますからね。  六番目、これは前回も指摘しましたが、暴力団なども含めますが脱税者あるいは潜り営業、そういう人たちがなぜ多いんだということ。つかめないから数がわからないけれども物すごく多い。これはおかしい、不思議ですね。  そして七番目が政治家の申告はなぜ低いんだと、こういうことに尽きると思うんです。  これが僕の言う税金七不思議なんですが、さてその一つずつについて行きたいんです。  まず大資産家に係る不公平税制についてお聞きしたいと思いまして、総理のお得意の所得と資産の不均衡ですね。前は消費も入れていましたが、消費についてのはややわかるんです、感じで。ですから、所得と資産の不均衡とおっしゃるが、特に目立つ不均衡は一体何なのか、それをちょっと確認しておきたいんですが。
  162. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 資産に対する課税というものを税収の中でのウエートで見ますと、現在資産の移転に対する課税とそれから資産の処分利用による課税、所得課税と移転課税と両方あるわけでございますが、こうしたものは現在税収の二〇%近くを占めている。これは過去十年間ぐらいを見ますと、この比率というのは漸次上がってきているわけでございます。  それからまた、これは国際的統計でございますとOECDの統計では資産の移転課税のものだけでございますけれども、これは国税、地方税合わせますと一四%程度ある。これはほとんど諸外国と肩を並べるか諸外国より高いぐらいのところでございますので、マクロとして見ますと資産に対する課税というのは割合いいところに来ておるということではないかと思うわけでございますので、その資産所得なり資産保有課税につきましての制度それぞれの中での問題、こうした問題はあろうかと思うわけでございます。  その一つの例としましては有価証券の譲渡益。有価証券の取引には有価証券取引税といったものがかかってかなりな税収を上げている。しかし、その譲渡益に対する所得課税が不備であるということから御指摘を受けている。これなんかもまさに資産課税の中でのなお合理化を要する点であろうかと思うわけでございます。  もう一つ資産に関連しますものとしては土地の問題があろうかと思いますが、これも資産の、土地の移転につきましては不動産取得税なり登録免許税がございます。しかし、土地の譲渡益に対します課税につきましては、これは全体としてはマクロとして十五兆円ぐらいの土地の譲渡益があろうかと思いますが、課税対象となっておりますのは五兆円ぐらいで、三分の一ぐらいだけが課税対象になっておる。これも本来長期譲渡所得というのは半分が課税対象というのが所得税の本則でございますから、十五兆円の半分ぐらいが課税になるべきものでございますが、それが五兆円という課税対象になっておる。これは恐らく居住用財産を譲渡した場合の三千万控除とかそうしたものによる控除によるものではないかと思うわけでございますが、ここらの点につきましてはなおいろいろ検討すべき問題がある。  したがいまして、マクロとしては資産に対する課税というのは比較的お願いをしておりますし、また去年利子課税をお願いしましたから、だんだん上がってきている。しかし、なおその資産課税の内部に入ってまいりますとなおいろいろ問題点は残されているというのが実態ではないかと思うわけでございます。
  163. 野末陳平

    ○野末陳平君 まさにこれからは内部に入っていかなきゃならない、そういう意味で具体的でなきゃだめなんですね。  そこで、今のお答えの中で、まず株はこれはもうそちらで検討中であろうから、案が出るのを楽しみに待ちますが、土地の場合ですね、譲渡所得が今のお答えは十五兆。ところが、特例の適用を受ける所得がかなりあるがために五兆円だけが課税対象。そうでしたね、課税所得になっていますね。となると、土地の譲渡所得の十兆円が特例の適用を受けるがゆえに非課税になっているという、ここはもはやちょっとこのままにしておいていいとは思えないわけですね。  そこで、じゃ重ねて大蔵省に聞きますが、この特例ですね。土地の譲渡所得に対するいろいろな特例あるいは特別控除、そういうものの適用を受けていわば税金をまけてもらっているという、それが十兆もあるんですが、一番目立つ特例、大きな特別控除、それは何と何なんでしょう。そして、そういう特例が一体幾つ土地の譲渡所得にかかわっているのか、この数ぐらいでも、自分で調べたけれども全部わかり切らないんですよ、多過ぎて。それをお答えください。
  164. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 十五兆から約九兆九千億、約十兆円でございますけれども、差し引きまして、約五兆円が課税所得になっているということは今委員御指摘のとおりであります。  ところで、この約九兆九千億の特例適用によりまして非課税になっておりますものの内訳でございますけれども、六十一年分で私ども特例適用件数を把握しておりますので、それについて申し上げますと、全体の件数は実件数で四十一万件でございます。ただ、その特例の適用の重複がございますので、重複件数は四十二万五千件でございまして、このうち最も適用件数の多いのは、御存じと思いますが、居住用財産の譲渡の場合の三千万控除の特例でございまして、これが十五万件、次に収用等の場合の三千万円控除の特例、これが十二万件、あとはぐっと件数は下がりまして、特定事業用資産の買いかえの特例三万二千件というところでございます。
  165. 野末陳平

    ○野末陳平君 居住用の場合は今度直っておりますが、いずれにしても土地は、今のは譲渡ですけれども、保有と譲渡それから相続など、あらゆる段階でほかの所得に比べてかなり有利に思えるんです。それはかつてはそれなりの政策意図があったけれども、これからはそれをそのまま認めるというわけにはいかない時代になったんだろう、そう思いまして、いろいろな特例をどんどん削っていく、縮小する方向、これを不公平税制是正の中で今後とも検討していただきたい、それが一つです。  それからもう一つは、固定資産税が今出てきませんでしたけれども、固定資産税の安さは先進国の中では日本が一番安いんじゃないかと思うんです。固定資産税については、当然居住用のものはもう今のレベルが限界だと思いますが、そうでないものに対しては固定資産税を引き上げる方向を当然考えなきゃいけない、そういうふうに思うんですが、これについては総理いかがでしょう。  固定資産税は安過ぎるという認識、そして今後――いや、それは自治省だとちょっとだめなんですね、これ。今あるままの答えですから。今後引き上げなきゃいかぬという話をしているんですから。どうでしょうか。
  166. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) まず国際的にどうだという点がございましたので、そこの点につきまして私の方からお答え申し上げますが、私どもも不動産に係る税金というものがどういう水準にあるかということはいろいろな面から見ております。我が国の租税総額に占める不動産の課税、つまり固定資産税、都市計画税、特別土地保有税でございますが、その割合は、六十年の数字でございますが、七・九%でございます。アメリカは一三%、イギリスが一二・六でございますから、この辺から見ると確かに低い。ただイギリスはレートの改革がありますから今後どうなるかわかりません。これに対しましてフランスは六・三、西ドイツは一・七でございますから、我が国の場合特に諸外国に比べて非常に低いということではなくて、大体真ん中ぐらい。  ただ、これを今度は国内の市町村税に占める固定資産税の割合というもので見ますと、これはずっと傾向的に低くなっております。したがいまして、税制調査会におきましても固定資産税については中長期的には充実を図るべきである、評価の均衡化、適正化を通じてそれを図るべきである、こういう答申をいただいておりまして、私どももそういう方向で努力をしておるところでございます。
  167. 野末陳平

    ○野末陳平君 土地の値段が上がり過ぎたがゆえにこの問題がまた特に大きくなってきたんですけれども、大資産家優遇と言われた場合に、やはり今は土地というものを抜きにしては考えられないので、この辺のことも今後の不公平問題のテーマの一つとして積極的に取り上げていただきたい、こう思うんです。  それから次に、開業医です。もう一問一答でお願いしたいと思うんですが、開業医についてはこの間も質問しました。総理も事業税に問題があるというお答えでしたが、やはりこれは技術料などの単価の見直しをやると同時に、これと税の見直しを一緒にやる、これしか方法がないと思うんですが、これについて大蔵大臣のお答えをお願いします。
  168. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 最近この特例を利用されるお医者さんがかなり減ってまいりましたのは、刻みを昔のままに残してある、収入が上がりましても昔のままの刻みを残しておりますので、そういう意味では利用者がやや少なくなっておるということかと思います。しかし、税制調査会でやはり税負担の公平の観点から見直しを進めると言っておられますように、そういう必要があると思います。
  169. 野末陳平

    ○野末陳平君 それからみなし法人ですけれども、これはサラリーマンにとっては不公平の象徴みたいなものなんですね。これが何で続くんだ、税調の素案にも消極的に触れられてはおりますが、これはやはり廃止の方向だと思うんです、これが不公平の是正だと思うんですが、これはいかがでしょうか。
  170. 水野勝

    政府委員(水野勝君) この制度は四十八年に創設されたものでございます。御承知のように、いわゆる店と奥との区分経理を明確にして小規模経営の近代化を図ろうとする趣旨から設けられたものであると承知いたしておるところでございます。  その利用実態を見ますと、この制度によりましてその事業所得のほとんど全部を事業主報酬として給与所得とする。給与所得になりますと、それには給与所得控除が適用になるというところから全額が給与所得化され、給与所得控除が普通のサラリーマンと一緒に適用になるというところに至りますと、これはなかなかサラリーマンの方からは不公平感の原因の一つとなっておるところは否定できないところでございます。  こうしたところから、昨年の改正におきましては、全額をやるというのもいかがか。それで前三年の事業所得の平均額の八割をもってこれを天井の額とするというふうな改正をお願いいたしたところでございます。  やはり先ほど申し上げました趣旨から設けられておるところでございますので、こうしたものの必要性がなくなった、情勢が変化したとも思えないところでございますので、基本的にこの点を見直すということはいかがかと思いますが、問題意識としてはなお続いているところでございますので、今後とも頭に置いて勉強していくべき点であろうかと思うわけでございます。
  171. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 店と奥とを分けるということなんでございますけれども、実際は奥の人が店へ出ているその度合いがどのぐらいかという、現実にはそういうことだと思いますので、幾らでもいいというわけにはやっぱりいかない。ある程度のところでいわば頭を切らなきゃならないというぐらいまでは私ども現実の事態に考えております。
  172. 野末陳平

    ○野末陳平君 きょうお伺いしたいのは、不公平是正に大胆に一歩踏み込んでいただかないと税制改革とは言えないということを確認しておきたいんです。ですから、大蔵省の考えはもう毎度お聞きしてわかっているので、技術的なことを余りお答えいただくよりも、将来に向けて本気で決意があるかどうかを確かめたくてお伺いしているわけですから、ひとつそこの辺はお願いしたいと思うんですね。  それから法人税を、大蔵大臣は先日税率を下げるんだったら課税ベースを広くするというお答えを私いただきましたが、その後やはり大法人の方が、企業側が引当金の廃止に反対だということをいろいろ陳情しているということも聞きましたが、基本方針には大蔵大臣、この間のお答えと全く変わりありませんですね。
  173. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) あのときも全部というわけにはまいりますまいがと申し上げまして、課税ベースを広くしながら税率を下げたい、こういうふうに申し上げておりまして、その基本には変わりございません。
  174. 野末陳平

    ○野末陳平君 それから、脱税の場合の罰則が少し甘過ぎるんじゃないかということも、世論調査などで結果がかなり出ているんです。これは税務署員の数が足りませんから、もっとぴしぴしやれと言ったってそう簡単にはいきませんが、少なくとも罰則はさらに強化する方向であるべきだ。というのは、申告納税は性善説に立っておりますから、それでなお脱税するんですから、やはり罰則強化の方向、これも今回大きな意味の不公平是正の中で打ち出していただきたいと思いますが、それはいかがですか。
  175. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 罰則の点につきましては、昭和五十六年度の改正で懲役三年から五年に延長されたところでございます。ただ、従来租税事件につきましては実刑判決でもって対処されるという例は割合少なかったのでございますが、最近はだんだんふえてきております。そういう状況でございますので三年を五年に延長さしていただいた、そしてその後のもろもろの事件につきましての実際の適用状況等をもう少し見まして、なお検討をするのが適当ではないかと思うわけでございます。
  176. 野末陳平

    ○野末陳平君 とにかく検討の成果が税制改革の中に盛られていないことには私も税制改革に賛成するわけにいきませんので、あえてくどくお聞きしなきゃならないわけです。  それで、七不思議の一つの政治家ですけれども、これはもう言いたいことは幾らもありますが、逆にまた言いにくい面もあるんです。ですから一番嫌なのは、常に国民からうさん臭い目で見られるというのが残念でならないんですが、それは我々にも責任があるわけです。  そこできょうは提案だけ一つ二つさしていただきたいんです。先ほど総理のお答えの中にもパーティーのことが出ました。政務次官とか委員長とか、そういうときのお祝いのパーティーですけれども、あの何万円のパーティー券がどういうふうにして売られているかということを、御存じだったらちょっと説明してもらえますか。どなたでもいいですよ、経験者。――これは言いにくいと思いますね。  どちらにしても、業界から聞きますと、もう業界はこぼしていますから。政務次官、委員長、お役所を通して、つまり官庁から民間に押しつけるという形ですか。民間はそういうものに弱いですから、ですから大量に買う羽目になるという、そういう実態があるのはもう間違いないわけです。私はそれを思うと、これはフェアじゃないですね。自分で売りに行くならいいけれども、お役所を通して売るんだから、相当大量にだから、これは、そうですな、ややオーバーに言えば地位利用ですね。当然地位利用かな。職権乱用かな。そういうことだって言える、いわゆる常識的な表現では。  そこで、これで総理にお願いしたいのは、政務次官なんて少なくもパーティーをやっちゃまずいんじゃないですか。しかも、そのパーティー券を役所を通して下へ流していくという、そういうことがあっていいんでしょうかね。これは不明朗だと思うんで、これについては禁止、政務次官のパーティーなんて絶対禁止すべきだと。そうしないと疑われる。嫌です、そういうのは。どうでしょうか。
  177. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 我が党の政治資金の小委員会で西岡さんが案を持ってきまして私に説明をいたしました。それから今は福島さんが小委員長でございますか、これも説明を聞いて私も関心を持っておりますが、端的に嫌だわと、こういう御表現のことはわかりますが、その性格によって非常に分類が難しいなという感じは私自身もその話を聞きながら自問自答いたしております。  したがって、例えばの話でございますが、それぞれの選挙区の仲間たちが集まって祝賀、お祝いをするというようなことも非常に多く存在しておることでございますので、その辺までいわゆる禁止するというようなことはいかがなものかなと。だから、今野末さんがおっしゃったいわゆる役所を通してとか申しますか、そうしたことは好ましいことではございませんので、あってはならないことだと思っておりますが、その辺の区分というのを法制上位置づけるというのはなかなか難しいな。だから私は、最終的には政治家個人個人の心の持ち方に帰するんじゃないか、こんな感じで今のところ説明を聞きながら自問自答しておるところでございます。
  178. 野末陳平

    ○野末陳平君 政治家個人の励ます会とか後援会について言っているんじゃなくて、政務次官になったそのお祝い、委員長になったお祝いに役所を通してパーティー券をさばくのがいけないと言っているんですよ。ですから、禁止ができなければそういう売り方だけは厳禁しないと、業界も困るけれども役所も恐らく困っているんじゃないかと僕は思いますよ。  もう一つ提案しておきますが、余りにもパーティーが有名になり過ぎまして、パーティーを含めた政治献金のあり方が非常に何というかダーティーな目で見られている。これはむしろ残念だと思うんです。ですから、そういう国民の声にこたえるために、これはちょっと税法じゃ無理なんですけれども、やはり政治献金なんかはある程度の税負担をすることにして、五%でも一〇%でも税金をそこから納めるという方がむしろすっきりしていいんじゃないか。今回のいろいろな規正法の改正案には全くそういうことは触れられていないんですけれども、やはり私は、政治家は不公平で得をしているんだと、しかも申告所得は低いしと、そういうような疑惑の目で見られている、これを払拭せずしてなぜ不公平感の払拭ができるのか、しかも税制の抜本改革なんかできるはずがない、国民がついてこない、こう思いますよ。  ですから、そういう政治献金の課税も我々自身で考えていったらどうだろう。特にこれは野党に余り関係なさそうなんで、そちらに言うべきことだと思います。最後にそれにお答えいただいて、終わります。
  179. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 今の問題もいわゆる政治資金法の改正というところで議論されておるところでございますので、いわばそれぞれを届け出団体の名義において行って、そうすれば少なくとも政治資金規正法の届け出の中で明白化していくということでひとつ合理化されるんじゃないか、こんな議論もなされておる。成案がまとまったとは聞いておりませんが、私も大変関心を持って対応していこうと思っております。
  180. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で野末陳平君の質疑は終了いたしました。  午後二時十五分まで休憩いたします。    午後零時五分休憩      ─────・─────    午後二時十六分開会
  181. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十三年度総予算三案を一括して議題といたします。  これより喜屋武眞榮君の質疑を行います。喜屋武眞榮君。
  182. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私、締めくくりの意を体して海上保安庁長官へまず伺います。  事件の概要と今日までの経過、そして事件送致の理由を述べていただきたい。
  183. 山田隆英

    政府委員(山田隆英君) お答えいたします。  先生の御質問につきまして、第一一徳丸事件のことでございますが、本件は昭和六十二年の七月二十三日に、マグロはえ縄漁船の第一一徳丸が沖縄県の喜屋武埼の南東百二十四キロメートル付近の海上で停留中に、そこで船長が同左舷で爆発音と多数の小さなものが海面に落下する音を聞きまして、その際に上空を飛び去るジェット機二機を視認いたした事件でございます。  この件につきまして第十一管区海上保安本部は、事件発生後直ちに調査を開始いたしまして、当時の第一一徳丸の船内で発見されました二個の金属片等につきまして防衛庁に鑑定の嘱託をいたしましたほか、関係者等から事情聴取を行うなど、あるいは事件現場の実況見分その他の所要の捜査を約八カ月にわたって実施したわけでございます。  以上の捜査の結果、事件発生当時、沖縄の南部訓練区域内で空対空ミサイルの射撃訓練を実施しておりました航空自衛隊南西航空混成団所属の自衛隊員を、去る三月十四日、刑法百二十九条第一項の過失往来妨害罪で那覇地方検察庁へ書類送致いたしたところでございます。
  184. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 では次に法務大臣、お尋ねします。  その事件受理後の対処方針を述べていただきたい。
  185. 林田悠紀夫

    ○国務大臣(林田悠紀夫君) お尋ねの事件につきましては、本年の三月十四日に那覇の地方検察庁におきまして過失往来妨害罪で事件を受理いたしまして、現在捜査中でございます。捜査の内容につきましてはまだ申し上げかねまするが、同地検におきましては所要の捜査を行いまして、証拠に基づいて適正に処理するものと存じております。
  186. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 では、防衛庁長官にお尋ねします。  事件は海上保安庁第十一管区から那覇地検へ送致されましたが、この件に関する現時点での所見を承りたい。    〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕
  187. 瓦力

    ○国務大臣(瓦力君) 喜屋武議員御指摘の事案について、第十一管区海上保安本部が自衛隊員を被疑者として検察庁に送致したことは承知いたしています。具体的内容につきましては、捜査上の事項でもございまして防衛庁としてコメントを申し上げる立場にないわけでございますが、ただ、防衛庁の調査による限りにおきましては、当事案が自衛隊機のミサイルによるものであると、かように断定しがたいと実は考えておりまして、いずれにいたしましても、当該事案につきまして現在検察庁において取り扱い中でもございますので、その状況を見守り、なおかつ必要な協力はしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  188. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 重大な関心を持って見守っていきたいと思いますが、もう一遍防衛庁長官にお尋ねします。  昨年十二月の沖縄上空でのソ連機の領空侵犯の際に、航空自衛隊は初めて実弾による威嚇射撃を行ったが、その際、民間航空機、海上の船舶、地上の人命、財産の安全に対する配慮はどのようになされたのであるか確認いたしたい。
  189. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御質問の昨年十二月九日に発生しましたソ連機による領空侵犯におきましては、領空侵犯機が我が方の無線あるいは機体動作による、信号による警告にもかかわらず領空侵犯をいたしました。そういった状況が続きましたので、要撃機は海上、下方の安全を確認した上で信号射撃による警告を実施した次第であります。
  190. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私が関心を呼び起こしたいことは、空にばかり目が向いて地上に配慮があったかなかったか、そのことは非常に重大なことであると思っておるからであります。  次に、自衛隊についてふだんから私が気になっておることがございますので、これは総理と防衛庁長官にお尋ねいたします。  軍事上、防衛の問題についてある程度の秘密が存在することは事柄の性質上理解できないこともありませんが、どうも自衛隊は国民の安全よりも自分の秘密を守ることを優先する余り、国民の前に事実を明らかにして安全対策を講ずることをおろそかにしておるのではないかと、こう思われるのであります。例えば、今さっきもお尋ねし、また第一一徳丸事件に対する対応の仕方、それから一週間後に起こりました高知県沖でのニアミスの問題、百里基地でのロケット暴発事故等、その例は数多い。  このような自衛隊の秘密主義は戦時中の大本営発表を連想するものであると断じてもいいのではないかと、こういうことを私は思うにつけ、どうしても、特に最近における一連のいろんな問題について、軍隊の秘密主義の行き着くところは、国民の安全よりも軍隊の安全を優先することになるような、その愚かな結末はさきの沖縄戦における日本軍の行動の中にも証明済みであります。  そこで、総理及び防衛庁長官に伺いますが、この自衛隊の秘密体質についてどういう所見を持っておられるのか。特にシビリアンコントロールは万全に機能しておると思っておられるのかどうか、お尋ねいたしたい。
  191. 瓦力

    ○国務大臣(瓦力君) 我が国の防衛政策は、新しい憲法のもとにおきまして、国民の理解、協力をいただきながらそれらのことを進めて今日に至っておるわけでございまして、シビリアンコントロール、こうしたことは常々私どもは心がけておるところでございます。  また、ただいま委員御指摘の問題でございますが、仮に事故等が発生した場合におきましても、慎重かつ徹底した原因究明、こうしたことを行いましてさらに再発防止に全力を傾注してまいる。さらに、事故原因等につきましては、極力国民の皆さん方に御説明申し上げる、そういう理解を得る努力というものを私どもは重ねてまいっておるわけでございます。防衛上秘密にするというかような事項があることは御理解をいただいておるわけでございますが、事故原因、さらに再発防止を徹底する、こういうことは当然でございまして、今後ともこれらのことは注意してまいらなきゃならぬ。そして、さように行ってきておるということを申し上げたいわけでございます。  また、自衛隊の隊員の練度といいますか、訓練等を通じましての練度維持、向上というものを図ってまいるというようなこと、このことは大変厳しい訓練もあるわけでございますが、先ほど以来申し上げておりますとおり、事故防止等安全対策には細心の注意を払ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  192. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 喜屋武先生も今御指摘のように、ある程度の秘密保持、これは確かにあろうかと思うのでありますが、私自身、そのことが事故原因解明というところに、いわば秘密保持の思想の方が余計あって可能な限り明らかにするという、事故原因の究明そのものがその後にあるような考え方は断じて持つべきものでないということは、絶えず心がくべきことであると思っておりますし、そんなことをさせてはならぬというふうに思っております。  さてそこで、シビリアンコントロールの問題になりますが、私はいろんな今まで経験を積んでまいりましたが、やはり内局があって、そうして国防会議があって、閣議があって、さらに国会があるという中に、我が国のいわゆる軍事に対し政治優先というシビリアンコントロールの筋というものは確立されておる、またこれ自身を片時もないがしろにしてはならぬという考え方で今後とも臨みたいと思っております。
  193. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 事実は何よりの真実だと私いつも言うんですが、先ほどの防衛庁長官のお気持ちはわかりますが、それほど国民にコンセンサスを得ておらぬというのが現状ではないでしょうか。そこで総理に、シビリアンコントロールのかじ取りは何と申しましても総理である、自衛隊の独走になってはならないと、こういうことを強く申し上げたいと思います。  次に、今さらという気持ちで受けとめられるかもしれませんが、日本における米軍基地存在の法的根拠を外務大臣に承りたい。
  194. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) 安全保障条約第六条でございます。
  195. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは、横田基地、厚木、嘉手納飛行場の飛行に関して、それぞれどのような規制があるのか明らかにしてもらいたい。
  196. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 先生御質問の趣旨は、騒音にかかわるものと考えて答えさせていただきたいと思います。  厚木とそれから横田につきましては、昭和三十八年、三十九年、それぞれに日米合同委員会におきまして騒音規制に関する合意が成立いたしております。それに沿いましてそれぞれの飛行場の運用上の所要の範囲内で騒音規制にできるだけの努力をするというふうになっております。  それから嘉手納、嘉手納だけではございませんで、三沢も岩国も同様でございます。それから普天間も入りますけれども、これらの飛行場につきましては、騒音の軽減を図るための措置に関する日米合同委員会の合意というものは存在いたしませんけれども、これらの飛行場におきましても米軍は、厚木海軍飛行場及び横田飛行場におけると同様に、それぞれの運用上の所要を勘案した上で騒音の軽減についてできるだけの措置を講じてきているものと申しております。
  197. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ただいまの御答弁にも、できるだけ云々と思うというような、何か第三者的なことを述べておられますが、アクロバットにしても、厚木、横田基地では禁じられておるが、嘉手納基地では住民の意思を無視して断行されておる、これが現実。同じく日本国憲法のもとにある嘉手納飛行場周辺の住民は、厚木、横田住民に比べてまさに差別されておる。このような差別は断じて許されてはならない。  そこで、総理が施政方針で述べておられる不均衡是正の具体化の一つとして、住民側に立った最小限度の規制をこの際取り決めてほしいと思いますが、総理の御所見を承りたい。
  198. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 米軍の駐留というものが日米安保条約に基づきますならば、我が国の安全及び極東の平和と安全の維持に寄与しておると。しかしながら、現実問題として沖縄における米軍施設、区域、これは日米安保条約の目的達成のために緊要なことでございますが、総体的に見たときにそれが沖縄という地域に集中という言葉は――あるいは集中と言っていいでございましょう、非常に多くの地域に施設、区域を設置さしていただいておる、こういうことになりますと、何よりも大事なことは、沖縄県民の皆さん、それから住民の皆様方といわゆる駐留目的達成の上の問題点をどう調和していくか、こういうことであろうというふうに私は思います。したがって、最小限にこれをとどめるという努力を今日まで続けてきたし、これからもそのことはお願いしていかなきゃならぬという気持ちでいっぱいでございます。  そういうことに対しまして、住民側から来ますところのいわゆる規制というようなものに対する対応というものが、やはり話し合いの中において相互調整の点で行われるものであって、そこに何といいますか、一つの相互上の規約とか基準をつくるということについては、私は新たにそれをつくるということについては非常に慎重であるべきではないか、やはり間へ入りながら両者の調整というものに細心の注意を払って御協力すべきものではなかろうかというふうに考えます。
  199. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 本土並みという前提がありながら、量的にも質的にも差別がされておることも現実である。私が言いたいことは、何で沖縄に今の訓練の面でも差別を強いるのか。  そこで、疑わしい気持ちになりますのは、沖縄基地の自由使用に関する秘密協定でもあるのかないのかということまでお聞きしたいんですが、総理いかがですか。
  200. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) おっしゃられたようなものは一切ございません。
  201. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 あること自体も問題だが、ないという前提において現実に差別があるということ自体問題にしたいんです。  次に、爆音被害対策について。  沖縄おける米軍機の爆音は二十四時間野放し状態であります。沖縄では夏、クーラーなしの防音家屋は考えられません。ところで、防音設備はあっても使用しない状態である。なぜ使用しないか。それは金がかかるからなんです。電気料金の負担にたえられない。そこで、防衛施設庁としてはその必要性を十分認めて、十年一昔とか十年一日のごとく、昭和五十四年から六十三年まで十年間にわたって空調施設維持管理費に対する助成を概算要求し続けておりますが、いまだに認められておらないということなんです。ところが、一方では思いやり予算という名においてどんどんふやしていきよる。  この際、総理、三年前を思い出してください。北谷町の代表が、当時大蔵大臣であられた竹下大蔵大臣にお目にかからしていただいたことを思い出してください。あの熾烈な願い、切実な要望を補正予算に生み出してでもぜひ実現していただきたい。大蔵大臣、総理、前向きの御答弁を願いたいと思います。
  202. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 空調機の使用に伴う電気料金の助成の問題であります。  防衛施設庁から生活保護世帯を対象に予算要求が行われておりますが、住宅防音工事対象世帯数が今なお膨大でありまして、この財政事情のもとで限られた財源の中で、法に定められた防音工事の助成措置を推進することが実は急務でありますから、それで精いっぱいでありまして、空調機器の維持費を助成の対象と今日までしていなかったということでございます。    〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕
  203. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 総理、いかがですか。
  204. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 喜屋武先生お連れになったことは、私も覚えております。今の予算の中で、例えば生活保護世帯の維持のための電気料の助成とかがたしかあったような気がいたしておりますが、限られた予算の中で精いっぱいその要請にはこたえるべく努力をしなきゃならぬと思っております。
  205. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 百十ホンという高度のいわゆる音の爆弾を常に浴びせられておる、こういう生活が一体人間の生活であるか。日本に、政府に政治があり行政があるのならば、こういう事実にこたえていくというのが真の政治であり行政ではないかと私は思われてなりません。今からでも遅くはありません、ぜひひとつ御検討願いたい。  最後に、教科書問題について文部大臣にお尋ねします。  教育は、真実を教えることであるという一語に尽きると思います。すなわち、うそを言わない、うそを教えないことだと思います。したがって、歴史上の事実を教科書に記載することは尊重さるべきであると思います。そこで、教科書検定に関連して、真実の教育ということについて大臣はどのように考えていらっしゃるか、御所見を承りたい。
  206. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 教科書は教育の上で主なる教材として非常に重要なことだと思っておりまして、教科書の記述につきましては公正でなければならない、また客観的でなければならない、そしてさらに教育的な配慮がそれに行われなければならない、この三原則を踏まえまして厳正に検定を実施しておるところでございますが、また臨教審でもこの検定につきまして幾つかの御提案をいただいております。したがって、瑣末なことはもっと重点化し簡素化するとか、そういう面も踏まえまして、今後、さっき申しました三つの要素を十分心に置きながら進めてまいりたいと思っております。
  207. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で喜屋武眞榮君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  208. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、青木茂君の質疑を行います。青木茂君。
  209. 青木茂

    ○青木茂君 本予算委員会政府税調の名前の出ない日はない。総理は新型間接税につきまして六つの懸念ということをおっしゃいましたけれども、私は政府税調に対しまして六つの疑念を申し上げたいと思います。  第一は、密室性の懸念でございます。つまり、国会のやりとりは税調にわかります。ところが税調のやりとりは国会ではわからない。これ、逆じゃございませんか。
  210. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 税制調査会におきましては、会議が行われました都度、委員先生あるいは事務局から記者会見をいたしておるところでございます。それから、その資料もほとんど公開となってございます。また、一定の審議の取りまとめられた段階では考え方を取りまとめ、最終的にはこれを答申として御提言している。それからまた、そうした段階での審議の経過といったものもお出しになっている場合もあるわけでございます。したがいまして、税制調査会の議論の経過、その結論、こうしたものは当然公にされていると考えていただいていいのではないかと思うわけでございます。  ただ、審議そのものは非公開とするということになってございます。これはそれぞれの母体をお持ちの各委員の方々が自由に御議論を願えると、そういう意味から、会議の原則、あり方としては非公開とすることがむしろ自由な御論議を展開していただくために適切であるということで、議事規則で定められているところでございます。
  211. 青木茂

    ○青木茂君 自由な論議をして困るメンバーじゃないと思いますけれどもね。  税調の答申あるいは素案、そういうものが出ないと国会論議が始まらないんですよ、全部税調で審議中審議中と。これも国会軽視につながりませんか。
  212. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 自由な論議をいつもやっているわけですから、国会を尊重して。そうして今政府は税調へお願いしているわけですね。ここにも税調のかつてのメンバーが目の前に二人いらっしゃいますが、したがって、みずから体験の中で税調というのは一生懸命にやっておるということを確認しておられると思うのであります。  だから、政府は税調へ諮問しておるという形でございますから、したがって、法案が出てから御論議いただくというのはもちろんでございますけれども、法案のない今日でもこうして立派な議論をしていただいておるのでございますから、まさに開かれた国会だと感謝をいたしております。
  213. 青木茂

    ○青木茂君 さあどうかな。とにかくそういう状態だから、何にも国民の目に見えてきてないんですよ。だから、原則公開ということにしてしまわないと、国民は何か政府税調を政府のかつての文化大革命の紅衛兵みたいに思ってしまうようなところがあるんですけれども、原則公開ということにはいきませんかな。
  214. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それはやはり税金というものは国民の一人一人が非常に大きな利害関係を持っておる問題でございますだけに、税調の委員が自由に、しかも場合によっては自分が所属されておる会社、団体等と独立の意味で発言をされるということは大事なことでございますから、やはりそういたしますれば非公開でお願いすることで真実の意見を漏らしていただけると私どもは考えます。
  215. 青木茂

    ○青木茂君 第二の疑念。構成、人選に関する疑念ですけれども、人選の基準がさっぱりわからないんですよ。正委員三十名のうち元お役人と申しますか、官僚と申しますか、局長以上を経験なさった方は何名いらっしゃいますか。
  216. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 三十名の委員のうち六名の方が該当されるかと思います。
  217. 青木茂

    ○青木茂君 やはり多いですね。  それから、学者は何名いらっしゃいますか。
  218. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 三十名のうちでは教授という方々は四名でございます。ただ、学者の先生方は特別委員として御参加いただいている方がかなり多いわけでございまして、こちらの方には六名おられます。
  219. 青木茂

    ○青木茂君 その四名の学者のうち、新型間接税導入に賛成意見を持っていらっしゃる方は何名いらっしゃいますか。
  220. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先ほど申し上げましたように、個々の方がどのような意見をお述べになって議論されているかということにつきましては、税制調査会の議事の建前からいたしますと、それは非公開となっておるわけでございますし、また、個々の先生方が個別の問題についてそれぞれどういう御意見をお持ちかということを区分して申し上げるということは、事実上もまた難しいことではないかと思うわけでございます。
  221. 青木茂

    ○青木茂君 まあ私全部の方、存じ上げておりますけれども、すべて賛成の方ばかりですね。  それから、この三十名の方のうち、税の専門家と言われる方はどれぐらいいらっしゃいますか。
  222. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 税制調査会は、それぞれ学識経験のある方の中から、内閣総理大臣から任命されておるところでございますので、皆さん幅広い学識をお持ちではないかと思うわけでございます。
  223. 青木茂

    ○青木茂君 皆さん専門家というわけですね。  マスコミ関係者もかなりいらっしゃいますけれども、これはどこの社の方がいらっしゃいますか。
  224. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 六名の方がおられるわけでございます。その所属としての肩書におつけいただいているところで申し述べさせていただきますと、朝日、読売、毎日、日経、サンケイ、NHK、こういうことでございます。
  225. 青木茂

    ○青木茂君 普通、こういう会議にはマスコミの方は参加なさらないんです。民放とか共同通信、時事通信、これが入っていないんですけれども、これは何か理由があるわけですか。
  226. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 失礼いたしました。特別委員の方に二名おられまして、共同通信、中日新聞――東京中日新聞と申しますか、中日新聞でございます。
  227. 青木茂

    ○青木茂君 いわゆる大企業の経営者という方はどれぐらいいらっしゃいますか。
  228. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 大企業の経営者という範疇をどのように申し上げたら――若干そこのあたりが難しいわけでございますが、一応会社の方といたしますと、中小企業関係の方も含めまして、それから先ほどお示しの公務員出身の方で現在そちらに属されているという方も含めまして、全部入れまして三十名のうちでは九名でございます。
  229. 青木茂

    ○青木茂君 低所得者ですね、例えば年収六百万円以下ぐらいの方、あるいは五百万円以下ぐらいの方、それを代弁する方というのは特に御選定ではなかったですか。
  230. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 個々の委員先生方の所得水準というのはつまびらかにいたしてございません。
  231. 青木茂

    ○青木茂君 どうもいらっしゃらないようですね。  それから庶民代表とか、特に今問題になっているサラリーマンの利害を代弁するという方は、特にそういう基準でお選びになった方はいらっしゃいませんか。
  232. 水野勝

    政府委員(水野勝君) こういう区分を申し上げていいかどうかわかりませんが、労働組合所属と申しますか、御出身の方が二名おられます。それから消費者団体と申しますか、そうした団体からの御選出の方もございます。
  233. 青木茂

    ○青木茂君 消費者団体の方は何か特別委員に入っちゃっていますね。  今申し上げたように、一体どういう基準でどういうふうに選んだのか。この人選の基準というものがさっぱりわからないわけなんですけれども、その人選の基準に何か基準の基準はございますかしら。
  234. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 今まで申し上げておりますように、委員と特別委員があるわけでございます。委員は、学識経験のある者のうちから内閣総理大臣が任命させていただく。それから特別委員につきましては、特別にその事項につきまして学識経験のある人が特別の事項につきましてお願いをする、そういう形で内閣総理大臣が任命をされるということでございます。
  235. 青木茂

    ○青木茂君 ですから、各界各層とおっしゃるわけだから、本当に言葉の正しい意味で各界各層をもう少し練り直す必要があるんじゃないかと思うのですけれども、大蔵大臣、伺っていてどうなんですかね。
  236. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 税制調査会令に申しますところの学識経験のある者、あるいは専門委員は財政経済または税制に関して専門的知識のある者ということを基準にいたしまして、今の人選をごらんになりますと、私はかなりバランスのとれた人選をしておると思っておるのでございますが、あるいは特にこの分野が欠けておるというようなことでもございましたら参考にさせていただきたいと思いますが、かなり注意をして人選はお願いしておるつもりなのでございますが。
  237. 青木茂

    ○青木茂君 何となく偏っている感じがありますね。  それから、第三の懸念、これはいわゆる拙速性というものなんですけれども、今度の税制の抜本的改革に対して諮問をお出しになったのはいつでしたかね。
  238. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 今回の税制調査会につきましては、御任命いただきまして諮問をいただきましたのは昨年十一月十二日でございます。
  239. 青木茂

    ○青木茂君 それで、素案が出たのがつい二、三週間前でしたね。そうすると、その間わずか四カ月か五カ月。そういう中でまたこれで今度の国会の最後に法案を間に合わすように、あるいは秋だというような形で税調の方がスピードアップされてくるとする。そうすると、密室の中での拙速、これでは本当に国民はたたき台として何が何だかわからなくなってしまうという懸念があるわけなんですけれども、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  240. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 多くの方がこの問題については長いこといろいろな経験もされ、また学識も持っておられる。そしてまた昨年の答申づくりにも当たられた方もかなりおられまして、私は問題に関する限りは委員の方々はいわば熟知しておられるという感じを持っております。  ただ、昨年ああいうような国会の御審議の状況もございましたから、それでさらにもう一遍世論にもかんがみてお考えを願っておるわけでございますから、税調の御審議に関する限りは、随分また詰めてもやっておられますので、地方にもいらっしゃったりしておられましてかなり細かく深くやっておられると、その限りでは拙速という感じを私は持っておりません。
  241. 青木茂

    ○青木茂君 第四の懸念は、会長さんへの懸念、これは個人攻撃にわたらないように慎重に申し上げますけれども、会長及び新任者を除きまして、委員として一番長くお務めになったのは何年でしょうか。
  242. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 政府関係審議会委員につきましては、閣議口頭了解によりまして三年の任期の者は三回、四年任期の者は二回ということを原則として、特別の事由のない限りはこれを超えては任命は行われないということになっておるところでございます。したがいまして、一番長い方というのは三期目ということになるわけでございます。
  243. 青木茂

    ○青木茂君 それに比べて、会長は税調の委員になられてから今日に至るまで何年でしょうか。
  244. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 現在小倉会長が会長をされております。その会長が任命をされましたのは四十九年の十月十一日からの税制調査会でございます。
  245. 青木茂

    ○青木茂君 それまでの税調の委員はやっていらっしゃらなかったですか。
  246. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 税制調査会は、現在の制度になりましたのは昭和三十七年からでございますが、その三十七年から三期、委員としてお務めをいただいてございます。
  247. 青木茂

    ○青木茂君 今の御説明でもわかりますように、会長だけが一人図抜けて長くやっていらっしゃるわけですね。これは、やはりいろんなことで多選ということがよくないのと同じように、税調というものはどうしても現会長のイメージが出てくる。そこにいろいろ問題が出てくるのではないかと思いますね。  現会長は方々で、税調の外でいろいろ失言、暴言もやられていらっしゃるわけですが、この前の予算委員会で私とのやりとりがあったんですけれども、それを聞いていらっしゃって総理、どんなお感じでした。農家に婿養子に行けとかなんとか、日本のサラリーマンほど下品なのはちょっと世の中にいないとかというやつですね。
  248. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 両雄の御議論をちょうちょうはっしという感じで拝聴いたしておりました。
  249. 青木茂

    ○青木茂君 ちょうちょうはっしだけじゃわからないですね。総理の御感想はどうでした。
  250. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いずれにせよ、皆さん学識経験者であると思っております。専門的に言うと、それは民法学者、商法学者、刑法学者というようなことになると、そういう専門的な問題は別として、私は本当に税調の委員というのはバランスがとれているなといつも感じております。  強いて青木さんの専門とすれば、ネクタイ必要経費論者というのも一つの区分なのかなと思って今自分で書いておりましたが、いろんな角度から本当にいいやりとりをしておられたというふうに感じておりました。  税調会長は、税調会長の人柄もあらわになったように、私もああいう論議をするように成長しなければならぬなと思いました。
  251. 青木茂

    ○青木茂君 私と会長とのやりとりはそういう問題じゃなかったはずですね。サラリーマンがどうも……。御批判は我々は甘受いたします。甘受いたしますけれども、侮べつは何としても甘受できない。あの御発言の中に全国のサラリーマンに対する侮べつということはなかったかどうか、そこを伺っているわけです。
  252. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 批判を甘受するのは、体制側にある者はいつもそういう気持ちを持っていなきゃいかぬと思っております。絶えず、時には侮べつだなと思うようなことがあってもじっと耐えて、体制側としては批判を甘受していく、これが議会制民主主義の私は根本だというふうに思っております。  小倉税調会長の発言が、私はお二人様の御議論を通じておって、そういうふうには必ずしも感じませんでした。
  253. 青木茂

    ○青木茂君 私は大侮べつであるというふうに感じたわけです。もう改めてその侮べつに対する問題を来週早々でも総理に申し上げます。そして、我々は全力を挙げて全国キャンペーンをやりまして、この問題はサラリーマン諸君の合意を形成すると。これは、税制抜本改正の将来にも影響しますよ。  第五の疑念。この政府税制調査会は総理大臣の諮問機関なんですけれども、事務主任官庁と申しますか、事務は大体どこがおやりになっているわけですか。
  254. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 税制調査会令というこれは政令でございますが、その八条によりまして、「調査会の庶務は、内閣総理大臣官房内政審議室において大蔵省主税局及び自治省税務局の協力を得て処理する。」ということでございまして、事務局は内閣総理大臣内政審議室でございます。大蔵省主税局と自治省税務局とがお手伝い申し上げるという規定になってございます。
  255. 青木茂

    ○青木茂君 内政審議室が中心の事務官庁であるということ、事務担当であるということはほとんど知らない人が多いんじゃないですか。大蔵省さんが全部取り仕切っている。協力なんという問題じゃない、リーダーシップをとっているというように普通は考えるのじゃないですか。もしみんなが普通に考えるとしたら、それはちょっと大蔵省のやり方に問題があるんじゃないか、リーダーシップをとり過ぎじゃないかという批判についてはいかがですか。
  256. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 私どもとしてはまさにお手伝いをする立場でございます。税制調査会の審議をお手伝いする趣旨から、会場の設定、国会での御議論及び各界からの要望の御紹介、審議の参考に供するための計数資料の提供等、専ら庶務的な役割を果たさせていただいているところでございます。  それからまた、先ほど申し上げた調査会令におきまして、第七条でございますが、「調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。」という規定がございまして、それに応じまして、私どもその会長以下の要請によりまして御協力と申しますか、お手伝いをさせていただいているところでございます。
  257. 青木茂

    ○青木茂君 税制ということは大蔵省に直接ストレートに関係するわけですから、それを客観的に論議していただく税制調査会の事務官庁はむしろ大蔵省でない方がいいような気がしますけれども、大蔵大臣いかがですかね。
  258. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 事務でございますからいろいろな補佐をするということなのでございましょうが、これ、総理府の本府の組織令にございますのは、大蔵省と自治省、地方税は両方に関係があるからでございましょうか、それによって内政室が事務方になり、これを大蔵、自治が補佐する、こういう体制になっておるんだと思います。やはり資料にいたしましても、データあるいはいろいろ試算をしてみるとかいうようなことになりますと、そういうのが事務局のお手伝いでございますから、これはやはり専門家がお手伝いをいたすのがよろしいのではないかと思います。
  259. 青木茂

    ○青木茂君 ひとつお手伝いにとどめておいていただきたいと思います。  第六の疑念。これは自主性に対する懸念と申しますか、党税調との関係の問題でございますけれども、たまたま政府税調の決定と党税調の決定にずれがあった場合は、特にみなし法人の問題にいたしましてもグリーンカードの問題にいたしましても、みなし法人については政府税調ノーと、グリーンカードについてはイエスとしたのに対して、党税調のところであるいは党のところで変わったわけですね。  一体政府税調は、自主性の問題について、会長がやめるとか委員が辞職するとか、そういうようなことは今までかつてなかったわけですか。
  260. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 政府税制調査会と党税制調査会とは意見がと申しますか、お考えが違うということは余りないわけでございますが、今御指摘のみなし法人につきましては、昭和四十八年に党の方は積極的にこれをやろう、政府の方はこれはいいけれども、こういうものを恒久的税制として織り込むことは問題があると、そのような御答申でございました。  それから、グリーンカードの点をお示しでございましたが、グリーンカードにつきましては、これは政府税制調査会も党の税制調査会も、昭和五十五年度の答申でそれぞれこれを積極的に推進するように御答申をいただき、法律を国会にお出しして御可決いただいたところでございます。
  261. 青木茂

    ○青木茂君 その可決されたグリーンカードが、いかなる理由かどこかへすっ飛んでしまったわけなんですね。  それからもう一つ、政府税調の頭越しに党税調が物を決めた、それに対して政府税調はああそうでございますかと追随をしてしまう、こういうことはございませんですか。
  262. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 重要な事柄につきまして党税調なり政府税調だけが先行してお決めになるということは、やっぱりそれが重要な問題であれば、その年の税制改正上の大事な事柄でございますので、それぞれにおきまして御審議を願うということになるわけでございますので、片っ方だけが頭越しで決めてということは余りないわけでございます。
  263. 青木茂

    ○青木茂君 五十九年の個人年金保険料の控除、これを決めたときのいきさつはどうなんですか。
  264. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 個人年金保険料につきましてもそれぞれの調査会におきまして御議論が行われたところでございます。ただ、政府税制調査会の答申におきましては、こうした制度を先行的に実施することについては基本的には慎重な態度で臨む必要があるということで答申に述べられております。結果といたしまして年五千円という控除が新設されたということになっておるところでございます。
  265. 青木茂

    ○青木茂君 六十年の入場税減税のときはどうだったですか。
  266. 水野勝

    政府委員(水野勝君) この点につきましては、政府税制調査会におきましても入場税につきましても一通り御議論はされたところでございますが、この改正におきまして積極的に取り上げて改正を盛り込むべしとするところまで、答申でそこまで述べようというところまではいっていなかったということのようでございます。御議論はいろいろされたということで、その問題は承知はいたしておったというのが当時の実情のようでございます。
  267. 青木茂

    ○青木茂君 問題はその御議論の中身が全然外に見えてきていない。そこに我々は密室であるという第一の懸念を出さざるを得ないわけなんです。  今までの税調に対するいろいろなやりとりでおわかりいただけたと思いますけれども、税制の抜本改正ということについては国民注視の的なんですよ。できるだけ国民の意見というものがこれに反映されなければいけないんです。その意見の反映の仕方というものは、私は単なる公聴会を何回開いたということだけではいけない。党の税調にしてもそうですけれども、特に政府税調はそこのところをしっかり体していただきまして、答申を慎重に、それこそ慎重に慎重に出していただかなければとにかくこれどうしようもないことだ。だから再三申し上げておるように、いかに総理が島根県の御出身で出雲の神様かもしれないけれども、結婚を急ぎ過ぎてしまって、どういう相手なのかということがさっぱりわからなければ困るということを特に申し添えておきます。  それから、もう時間がありませんから、この問題を外しまして、最後に、六十三年度、これから自然増収も出てくるだろう、NTTの株の売却もまだ出てくるだろう。そういうもの、規模はいいです、数字は。それを一体どういう方向にお使いになるおつもりなのかぐらいは、総理、大蔵大臣にちょっとお示しをいただきたい。それをお示し願って、あるいは今の議論の総括をやっていただいて質問を終わります。
  268. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 多分六十二年度――六十三年度とただいま言われましたけれども、六十二年度につきまして非常に大きな税収が出納整理期間の三カ月に入ってくるということにつきましては、昨日当委員会の御審議の中で私も申し上げたところでございますので、六十二年度のところが実はわかり切らないわけでございます。これがわかってまいりませんと六十三年度の税収見積もりが妥当であったかどうかということもわかりませんで、その時期は六十二年度そのものにつきまして六月の下旬ごろになるということでございます。それからNTTの方は、これは法律で使用方法がはっきりいたしておりますので、六十三年度の歳入はやはりまず国債の償還に充てる、それから社会資本整備勘定に繰り入れまして一兆二千億円を限りまして使わせていただく、そういうことでございます。
  269. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 六十二年度の税収というのがはっきりするのが六月下旬、こういうことでございますので、きのう来、年度区分の問題等も含めて議論がありましたが、今大蔵大臣からその点はお答えになったとおりであるというふうに思っております。  それから、いわゆる税制調査会、六つの疑念みたいな、みたいなじゃなく、そういう御発言がありましたが、それに対して答弁も割合すっきりしておったな、恐らく青木さんもなるほどとお感じになったんじゃないかという気がいたしますが、ただ一つだけ、グリーンカードの問題についてだけは申し上げておかなきゃいかぬのは、あれは党税調、政府税調同じ答申でありました。当時私は大蔵大臣でありまして、それを共産党を除く各党賛成で通してもらいました。だが、それが執行に至る間にいわば国民から、法律が通った後執行に至る間にその仕組み、構造等についていろんな異論が出まして、そこで政令で延期して、それからまた今度私が大蔵大臣になったときにそれをやめにしていただいたということについては、私自身もそうした経験の中でじくじたるものがございます。  それから、政府税調、党税調等についていささか非礼を犯したと思っておりますのは、地方財政が最後にどうにもならなくなって二千四百億でございましたが、たばこの一円という問題は税制調査会の済んだ後で個々にお訪ねをいたしまして御了解を得たということがあったという反省がございますが、総体として人選、会の運営の仕方、大体税調というのはよく機能しておるんじゃないかなと思っております。
  270. 青木茂

    ○青木茂君 ノーですが、終わります。
  271. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上、青木茂君の質疑をもって締めくくり総括質疑は終了いたしました。  これにて質疑通告者の発言はすべて終了いたしました。     ─────────────
  272. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) この際、委員長から申し上げます。  先般、本委員会理事会において、年度内成立が期待し得ない場合を想定して、念のため暫定予算の準備に入るよう政府に要請していたところであり、その後、本委員会としては、審議が順調に進行している過程において暫定予算が提出される事態になったことは、本委員会の委員長として遺憾の意を表するところであります。  政府においては、この点に十分留意し、今後とも昭和六十一年三月二十八日の委員会決議とされた安田委員長見解を尊重し、適切に対処されるよう強く要請します。     ─────────────
  273. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上をもちまして昭和六十三年度総予算三案に対する質疑は終局したものと認めます。     ─────────────
  274. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより昭和六十三年度総予算三案に対する討論に入ります。  討論の通告がございますので、順次これを許します。なお、発言者は賛否を明らかにしてお述べ願います。千葉景子君。
  275. 千葉景子

    ○千葉景子君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました昭和六十三年度予算三案に対し、反対の討論を行います。  竹下総理、あなたがふるさと創生をスローガンに対話と協調を国民に訴えて登場されてから五カ月が過ぎました。しかしながら、この間、国民の目に映った竹下政治の特徴は、一見、国民、その代表機関である国会において対話を進め、協調するかに見せながら、実は言語明瞭意味不明と評されるように、あいまいな言動を繰り返しながらなし崩し的に自分の主張を国民に押しつける極めて危険な手法であり、それはこの予算審議を通じて見られた減税問題、大型間接税の導入問題などから一層明らかになったと言わなければなりません。  さて、今日の経済は、マクロ的には好調だと言えるかもしれませんが、個別には産業の空洞化、失業問題など多くの問題を抱えております。また、国民生活も、賃金の抑制、政府の無策による土地高騰などにより極めて苦しい状態に追い込まれていると言わざるを得ません。そして、所得、消費、資産にわたる持てる者と持たざる者との格差拡大、東京一極集中を背景に顕著化した地域間経済格差など、解決すべき問題が山積しております。  このような問題を真剣に解決するとすれば、昭和六十三年度予算は、大幅な所得税減税を実施して国民の負担を軽減するとともに、立ちおくれた地域への積極的な投資、社会保障等の福祉充実の施策が最重要課題として取り扱われなければなりません。しかし、政府予算案は、INF全廃合意という国際緊張緩和の方向が定着しつつあるにもかかわらず、防衛費を突出させ軍拡路線を続ける一方、減税措置を講じないばかりか、社会保障、教育など国民生活関連予算を厳しく切り詰め、さらに地方財政、住民への負担転嫁を強める国民生活犠牲の軍拡予算であり、到底認めることができないものです。  以下、数点にわたって反対の主な理由を申し述べます。  反対の第一の理由は、喫緊の課題である所得税減税等が講じられていないことです。  近年、財産所得や財テクによるキャピタルゲイン等により巨額の利益に潤う一握りの大金持ちがいる一方、大多数の国民の生活は、昨年の春闘での賃上げが史上最低水準であったことからも明らかなように、賃金は抑制され、異常な地価暴騰により住宅関連経費が増大し、社会保障負担が年々上昇するなど極めて圧迫されているのが実情です。  長期にわたり課税最低限が据え置かれ、期待するほどの減税が実施されなかった結果、社会保障負担と合わせた非消費支出の収入に占める割合は、五十年代当初一けただったものが今や一六%にもふえております。したがって、昨年度の減税程度では到底埋め合わせできるものではなく、所得税、住民税の減税を柱とした大幅な負担軽減の早急な実施が六十三年度にまず必要とされております。しかるに、予算編成時はもちろん、今日になっても政府は、減税を大型間接税導入を主要な柱とする税制抜本改革とセットにしようとの思惑を持ち続け、その実施を先送りしようとしており、絶対に容認できるものではありません。  減税財源としては、我々が提起した不公平税制の是正を初め、景気回復による税の自然増収が見込まれており、大型間接税によらずとも与野党の合意に基づく減税を実行することは可能であり、まず我々は大幅な減税の早期実施を強く政府に要求いたします。  反対の第二の理由は、福祉対象経費を削減する一方で、二年連続して防衛費の対GNP比一%枠を突破させ、これを既定路線化しようとしていることであります。  今日、世界が、米ソのINF全廃合意に象徴されるように、軍拡から軍縮への新時代へと大きく方向転換しつつあることはだれしもが認めるところです。しかるに、六十三年度政府予算案における防衛関係費は三兆七千三億円、対前年度当初比五・二%増、しかも昨年廃案となった売上税分を除けば五・五%増と他の経費に比べ突出し、その対GNP比も六十二年度の一・〇〇四%から一・〇一三%へとさらに拡大しているではありませんか。特に新規に計上されたイージス艦、OTHレーダーなど米国でさえ最高の軍事機密と言われるハイテク装備の導入は、日米軍事同盟強化を図る米軍有事来援研究と相まって、我が国軍事大国化を一気に進めるものであり、決して見逃すことができません。  国際的に緊張緩和の機運が盛り上がる中、平和国家日本のあかしであるGNP一%枠をなきものとし、限りない軍拡の道を歩もうとする政府の態度は、平和憲法のもと、世界の中において軍縮を率先して推進しなければならない我が国の責務に反するものであり、絶対に容認できないものであります。  反対の第三の理由は、六十三年度もまたいわゆるツケ回し、先送りが行われ、本予算案が我が国財政の真の健全化にはほど遠いものである点です。  政府はこれまで、一般歳出抑制と言いながら、その一方では政官健保の繰り入れ特例など、毎年、後年度への負担繰り延べを行ってまいりました。本予算案においても、厚生年金等への繰り入れ特例三千六百億円、住宅金融公庫補給金の繰り延べ千百四十七億円、国民年金の平準化措置六百一億円など負担の先送りが行われ、その結果、五十七年度以降累積した繰り延べ総額は一般歳出の三分の一を上回る十二兆五千億円にも達しているというありさまです。  さらに、極めて厳しい財政事情を理由に暫定措置としてとられた国庫補助率の引き下げなど地方へのツケ回しは、国庫が税の大幅な自然増収に恵まれたにもかかわらずなお継続、強化されており、とりわけ今後将来にわたり地方に多大の負担を強いる国民健康保険の改悪は全く遺憾千万と言わざるを得ません。  まさに政府の言う財政再建は上辺だけの見せかけにすぎず、実体は粉飾予算のあげくの借金財政にすぎないことを私はここで強く指摘しておかなければなりません。  反対の第四の理由は、政府税調を隠れみのに、政府が三たび大型間接税の導入にひた走ろうとしていることであります。  昭和五十四年の一般消費税、そして昨年の売上税という政府の大衆大増税のたくらみは、大型間接税には断固反対という国民の意思表示の前にもろくも崩れ去りました。国民不在の施策の強行は必ずや失敗に終わるということから考えれば、当然の帰結と言わなければなりません。しかるに、竹下総理は、これまでの失敗を反省するどころか、一般消費税を否定した五十四年の国会決議の趣旨をねじ曲げ、さらに六十年の政府統一見解、一昨年衆参同時選挙の選挙公約までことごとくほごにし、またしても大型間接税の導入を画策しているのです。国会決議をないがしろにし、公約違反を何とも思わぬ総理のやり方は、議会制民主主義を否定するものと断定せざるを得ません。その上、税制改革を急ぐ余り、税制改革に関する有識者アンケートと称して新型間接税導入のための世論工作をもくろむなど、全く言語道断であります。  さらに、大型間接税が逆進性、安易な税率の引き上げ、事業者事務負担の増大など、国民に多大な負担を強いる悪税であることは我々がこれまでもたびたび指摘してきたところですが、総理、あなたみずからが表明した六つの懸念、これこそまさに大型間接税の欠陥そのものではありませんか。しかも、政府の言う税制改正には、いまだその目的たる二十一世紀を展望した具体的政策指針もなければ、総理が繰り返し主張する所得、消費、資産の間で均衡がとれた税体系の中身さえ明らかになっておりません。税制改革に当たっては、まずキャピタルゲイン課税の強化、医師優遇税制等の租税特別措置及び各種引当金等の企業優遇措置の廃止など、不公平税制の是正を徹底することが先決ではありませんか。  国会での十分な議論を尽くさず、国民の合意が形成されぬまま、拙速に欠点だらけの大型間接税導入を進めようとする政府のやり方には断固反対するものであります。  最後に一言申し上げます。  五十七年度以来、本委員会は予算の空白除去を政府に要請し、本年度も予算委員長から暫定予算編成の準備に入るよう申し入れを行ってまいりました。ただいまも委員長からその旨の発言があったところでございます。しかるに政府は、暫定予算の年度内提出を怠り、憲法、法律上も認められない予算の空白を生じさせ、四月二日になって急遽暫定予算を提出するという極めて異常な事態を招き、その間、確立したルールがないことを奇貨とし、国会の議決を得ることもせずに政府の独断で財政支出や債務負担を行うなど、その政治責任は厳しく糾弾されなければなりません。今後、二度と予算の空白はつくらず、適法な財政運営を行うことを強く政府に要求して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  276. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、小島静馬君。
  277. 小島静馬

    ○小島静馬君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和六十三年度予算三案に対しまして、賛成の討論を行います。  竹下総理、まさに就任五カ月を経られたのであります。時に私は民主政治下における宰相の条件というものを考えることがございます。国家百年の大計をおもんぱかりながら、内外に対処するみずからの所信を内に蔵しつつ、同時に、それをただ荒々しく外にあらわしていくということではなくて、よく世論の動向を踏まえながら国民的なコンセンサスを求めることの中に具体的な政策の前進を図っていくということが、まさに民主政治下におけるところの宰相の条件であろうと思います。  竹下総理、いろいろの批判の中でぐっと辛抱なさってその手法を貫徹されておられるお姿に心から敬意を表するのでございます。  このたびの予算審議におきましても、内容につきましては、防衛問題についての予算審議かと思うほどの集中はございましたけれども、多く中身の個々の問題についての批判を余り聞くことができませんでした。これから行われるところの財政改革に対する議論に集中した感もございますし、ただいまの社会党代表の討論を拝聴いたしましても、まさにこれからの問題についての、これからいろいろなされることに対する事前の注文ではないか、かようにすら思うのでございます。  最近の我が国の経済情勢は、昨年の六十二年度第一次補正予算における思い切った財政出動が見事にその効果を発揮し、景気は極めて順調に拡大を続けておるのであります。個人消費が堅調なほか、住宅投資、民間設備投資も好調に推移し、雇用も改善されてまいっております。昨年の今ごろと比べますと、今昔の感にたえないものがあります。  他方、懸案であった貿易収支の黒字も、輸入の大幅な伸びから、確実に前年水準を下回る状況が続いております。内需拡大に向け政府のとった財政出動は、過度の輸出依存体質を改め、さらに景気を浮揚させる意味からも大成功であったと思うのであります。  経済状況の好転は、税収の増加を生み、財政にも極めてよい影響をもたらし始めております。加えて、行政改革の果実であるNTT株式の売却収入が活用できる状況となり、財政再建の当面の目標である六十五年度特例公債脱却に向け大きく前進を見ております。もちろんこれは政府が行政改革を断行するとともに、歳出節減合理化に向けた努力を毎年度続け、財政の減量化を図り続けたことが大きく寄与しているのであり、その効果のあらわれとして出てきたものであるということに対して、その労を多とするものであります。  昭和六十三年度予算三案はこの進展しつつある財政改革と内需拡大をより一層推し進めるべく編成されたものであり、時宜にかなった適切なものであると最大限評価し、賛成いたすものであります。  以下、その理由を申し上げます。  まず、公共事業関係費を増額し、内需の拡大を一層進めていることであります。  本予算案では、NTT株式の売却収入を活用するなどして、一般公共事業費について前年度当初予算に対し二〇%増加の七兆二千百七十三億円を確保しております。これは景気の拡大を持続させるとともに、進展しつつある内需の拡大を一層確かなものとし、巨額な対外不均衡を是正しつつ国際調和型産業構造への円滑な転換を促進するものと確信する次第であります。  また、国民一人一人が豊かさを求めている今日、おくれている社会資本の整備を急ぐ必要がありますが、特に事業の配分に当たっては、従来とかく硬直的であるとの指摘を受けていた快適な生活環境づくりの基盤である下水道、公園等の事業に意を用いたことは、まことに適切であり、国民のニーズにこたえ得たものと言えましょう。  次に、財政改革を着実に進めたことであります。  本予算案では、公共事業費の思い切った増加を行いはいたしましたが、経常経費については一層の節減合理化努力を行い、極力歳出の増加抑制に努め、一般歳出の規模は三十二兆九千八百二十一億円となっております。公債発行額は八兆八千四百十億円となり、前年度当初予算に比べて一兆六千六百億円も減額しております。この結果、公債依存度は一五・六%という極めて低い水準となりました。特に、特例公債の発行額は三兆一千五百十億円と大幅に縮減され、財政再建目標を射程圏内にとらえることとなったのであります。税収の増加やNTT株式が寄与しているとはいえ、やはり政府の歳出節減合理化に向けた努力を高く評価しないわけにはいかないのであります。  高齢化社会の到来や国際国家としての地位が高まるにつれ、こうした面での財政需要が高まりこそすれ減じることはないのでありますから、一刻も早く財政はその弾力性を回復し、新たな財政需要に対処できるよう態勢を整えなくてはならないのであります。そのため、今後もこの地道な努力を続け、ぜひとも昭和六十五年度特例公債発行ゼロという当面の目標を達成するよう要望いたしておきます。  このように、本予算案は我が国が抱える現下の重要課題にこたえるほか、厳しい財政状況下にありながら、必要なものには見るべききめ細かな配慮を行っております。すなわち、経済協力費や社会保障関係費、防衛関係費などそれぞれについて、さらに充実を期しているのであります。  特に、経済協力費については、我が国の経済力が増大し、国際的地位が高まった今日、世界の平和や繁栄のために協力していくことが求められており、一層の充実が必要となっております。世界の平和と繁栄は我が国の生存と発展の基礎条件でもあり、積極的に貢献することはむしろみずからのためにも好ましいことであります。  政府開発援助について前年度当初予算に比べて実に六・五%と大幅に増額させており、国際社会へ貢献するという意気込みが極めて明瞭にあらわれ、世界からも高い評価を受けるものと確信いたします。(「十分たっちゃったよ」と呼ぶ者あり)まだたっておりません。  また、来るべき高齢化社会に備え、社会保障制度の充実も必要であります。我が国は今後世界に例を見ないスピードで高齢化社会を迎えるとされており、このため、今後とも安定的かつ有効に機能するよう長期的視野に立って制度を構築しなくてはなりません。国民健康保険制度の改革など各種施策の合理化適正化に努めるとともに、老人や心身障害者に対する在宅福祉策の拡充など社会保障制度の充実に努めていることは、これらの点を十分に踏まえた措置として極めて適切妥当なものと評価をいたしたいのであります。  このほか、あしたの日本を切り開いていく上で重要な役割を担う教育や科学技術の振興費についても、教育環境の整備、国際的な研究交流の促進、基礎的創造的研究の推進などの施策の充実に努めており、防衛関係費についても、専守防衛の基本精神に基づき、防衛計画に定める防衛力の着実な整備に努めております。  野党の一部には防衛関係費を削減すべきだとの声もありますが、INF全廃条約の調印がなされたとはいえ、極東におけるソ連の軍備増強という状況に変化はなく、我が国をめぐる国際情勢にはいまだ厳しいものがあります。こうした中で、国民の生命財産を守るため、必要最小限の防衛力整備に向け計画的にその配備を進めることは、独立国家として極めて当然のことであると言わなければなりません。  六十三年度予算三案は、以上申し上げましたように、我が国が置かれている現状を十分に踏まえ、適切に対処した内容となっており、まさに最善のものであると言っても過言ではないと信ずるものであります。現下我が国内外の情勢は極めて多端なものがありますが、責任政党として我が自由民主党は、国民の全幅の負託にこたえ、政府と一体となって文化経済国家日本の創生を目指し前進し続けるであろうというかたい決意を表明いたしまして、私の賛成討論を終わるものであります。(拍手、発言する者あり)
  278. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  279. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記を始めて。  久保君から、ただいま小島君の発言中に不穏当な言辞があるとの御指摘がありました。  委員長といたしましては、後刻速記録を調査の上、適当な処置をとることといたします。  次に、及川順郎君。
  280. 及川順郎

    及川順郎君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま議題になっております昭和六十三年度予算三案に対して、反対の討論を行うものであります。  まず、反対する第一の理由は、本予算案には持続的な内需拡大を図る上で欠くことのできない所得税減税などが全く盛り込まれていないことであります。  我が国の貿易黒字は、縮小傾向にあるとはいえ、いまだ、昭和六十二年、暦年で九百六十四億ドルの大台を示しております。経済国際化の進む中で、昭和六十三年度予算は、これまでの輸出に偏った我が国の経済構造、産業構造を転換するために重要な役割を担っております。また、加えて、今日納税者に根強く広がっている税の不公平感を取り除くために現行税制の不公平是正も実施しなければなりません。私どもは、かかる観点から内需拡大策の実施、現行税制の不公平是正と、それを財源とした減税実施を強く主張してきたのであります。しかるに政府・自民党は、これら減税問題に関する与野党合意をもほごにして大型間接税導入を画策している現状であります。こうした公党間の信義をも守らぬ政治手法は全く国民を欺くものであり、減税抜きの本予算は断じて容認することはできません。  反対する第二の理由は、福祉文教予算が圧縮される一方で、防衛関係費が異常突出を続けていることであります。  特に、昭和五十七年度以降の社会保障関係費の伸びが毎年度平均二・二%にとどまっているのに対し、防衛関係費は六・四%の伸び率を示しております。実に社会保障関係費の三倍近い伸び率であります。ちなみに、六十三年度の老齢福祉年金などは月額百円の伸びにとどめられているのであります。また、防衛費の対GNP比一%枠突破額は昨年度よりさらに一段と拡大しております。政府が新たな歯どめとして明示した中期防衛力整備計画の総額十八兆四千億円すら、骨抜きの状態であります。このような福祉文教予算の圧縮と歯どめなき防衛力増強予算には断じて反対であります。  第三の反対理由は、相変わらず財政支出のツケ回し、先送りによる不健全な財政運営が行われていることであります。  厚生年金国庫負担の繰り延べを初め、住宅金融公庫利子補給金など、六十三年度の後年度への負担繰り延べ総額は一兆円にも上っております。この後年度への負担繰り延べは、実質的には隠れた赤字国債と言っても過言ではありません。このような事態は、本来の財政運営とは名ばかりで、逆に財政体質を悪化させるものであり、到底認めることはできません。  反対する第四の理由は、外国為替資金証券の発行限度額を毎予算ごとに引き上げて外国為替市場への介入を強めながら、その実態が全く明らかにされていないことであります。  円相場の安定のためには介入は必要でありますが、米国のようにその実態が明らかにされるべきであります。また、その内容を定期的に国会に報告するよう、この際強く主張するものであります。  反対する第五の理由は、政府は地方自治、地方分権の確立を唱えながら、現実には地方分権も行わず、中央政府による地方行政への負担の押しつけを進めていることであります。  現に、今日まで地方向け補助金の負担率の引き下げが続けられ、これに伴う交付税の加算措置すら満足に補てんされておりません。さらに六十三年度には国民健康保険制度を改定し、本来国が負担しなければならない経費を地方に負担させようとしているのであります。当面、交付税で補てんされるものの、六十五年度以降についてはその展望が示されておりません。これら今回の予算措置は極めて多くの問題があることを指摘せざるを得ないのであります。  以上、私は政府予算案に反対する主な理由を申し上げました。  最後に、ただいまも原委員長から御発言がございましたが、先般の暫定予算をめぐる政府対応は、これまで前例を見ない極めて不当な措置でありました。今後は二度とこのような予算の空白を生ずる暫定予算を組むことのないよう政府に強く要望して、反対討論を終わります。(拍手)
  281. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、吉川春子君。
  282. 吉川春子

    吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、昭和六十三年度政府提出予算三案に反対の討論を行います。  竹下内閣最初の本予算案は、所得税減税、相続税減税、不公平税制の是正を先送りにし、軍事費削減や福祉教育予算の拡充など、平和と生活向上を求める国民の切実な願いに背を向けた、軍備拡大、増税準備、暮らし破壊の三悪予算であり、本来予算を組み替え再提出されるべきものであります。  反対理由の第一は、公約違反、国民の世論無視の大型間接税導入を準備する予算であることです。  政府の大型間接税導入のための口実である高齢化社会論、所得平準化論などは、予算審議を通じ破綻しました。政府税調が先日公表した間接税の三素案は、いずれもかつて国会や国民が葬り去った間接税であります。亡霊を墓場から呼び戻すことなどは、とんでもないことです。あえて導入をするというならば、国会を解散し、信を問うべきです。  第二は、事実上世界第三位の軍事費を計上していることです。  イージス艦、ASWセンター、FSX、OTHレーダーなどに加えて、去年に続いて特別協定を改定し米駐留軍経費の肩がわりを増大させ、フィリピンの米軍基地費用の肩がわり分担まで問題になっています。INF全廃条約締結という世界の流れに逆らって、事もあろうに日本側から米軍有事来援研究の提案をしたことは極めて重大です。新たな軍事費負担増、有事立法による国民の基本的人権の制約、そして日本を戦争に引きずり込む危険きわまりないことと言わなくてはなりません。今こそ憲法の原点に立ち返り、日米軍事同盟、安保条約をやめるべきことを強く主張するものです。  第三は、相変わらず大企業には無利子融資、技術開発の補助金の増額、大規模プロジェクトなど至れり尽くせりですが、国民には厳しい犠牲を強いていることです。  高齢化社会を迎え、寝たきり老人は六十万人に達していますが、特別養護老人ホームの定員は十二万七千人にすぎません。雪崩の危険箇所が全国に一万四千カ所もあり、また、利根川を初め全国百九の主要河川の洪水対策も遅々として進まず、政府が経済効率優先の姿勢であるため、国民の生命財産を守るための予算が十分確保されておりません。  また、教育こそは国家百年の計によって進められなくてはならないものです。ところが政府は憲法、教育基本法をゆがめ、時の権力に迎合する教師や国民をつくるべく、臨教審答申の反動的教育改革に沿って、日の丸、君が代の学校教育への強制、初任者研修制度の導入などを行いながら、私学助成、四十人学級など国民の切実な要求には冷淡な予算となっています。  第四は、アメリカの理不尽な要求に屈伏し、経済主権放棄の予算であることです。  ガット裁定による農産物十二品目の輸入自由化に続いて、牛肉、オレンジの自由化まで認めようとしている政府の態度は、日本の農業に新たな困難を強いるものであり、断じて認められません。日米科学技術協定、ココムと東芝制裁、公共事業参入問題など、とめどなくアメリカの要求に屈伏していく日本政府の態度は、一体どこの国の政府かと怒りを禁じ得ません。  最後に、今回の参議院予算委員会の審議について述べます。  今回の異例な暫定予算提出、予算の空白をつくり、参議院審議をゆがめた原因が、いわゆる密室協議によっていることを私は質疑の中で明らかにしました。国会の機関でないところで国民の関心の高い税について話し合われ、その結果が国会に押しつけられることは、国権の最高機関である国会、そして二院制の一院としての参議院の権威を低めるものであります。国民不在の密室協議をやめ、国会の場で堂々と論議を尽くすことを強く要求いたします。  私ども日本共産党は、大型間接税導入をやめさせ、国民の平和と生活向上のために全力で頑張る決意を表明し、反対討論を終わります。(拍手)
  283. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、勝木健司君。
  284. 勝木健司

    ○勝木健司君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和六十三年度予算三案に反対の討論を行うものであります。  反対する第一の理由は、国民が待望している大幅減税の実行と不公平税制の抜本是正を当初予算案で見送り、またその予算修正を拒否し、いたずらに大型間接税の導入を急いでいる点であります。  中曽根前内閣による税制改革は、マル優制度の廃止強行と不十分な減税に終わりました。その結果、中堅所得者層を中心に国民の税に対する重圧感、不公平感はますます強まっております。この見地から我々は、約二兆円の所得減税を柱に三兆円規模の思い切った減税を実行するように提案いたしましたが、政府・自民党が予算修正をかたくなに拒否したことは極めて遺憾であります。  去る三月三十日の与野党政策担当者会議並びに国対委員長会談を通じ、自民党は、我々が要求した減税は必ず実施し、さらに六十三年度の減税の規模については予算成立までに結論を得ることを約束いたしました。しかるに、政府・自民党は、公党間の約束を踏みにじり、予算成立日の今日に至るまで、我々との協議をボイコットしているのであります。あげくの果てに、野党の要求する減税は政府・自民党が予定する抜本改革の一環として行うと竹下内閣は、公然と与野党合意を否定する方針を明らかにしたのであります。  何が何でも新型間接税を拙速に導入し、所得減税、法人税減税等を抱き合わせて同時決着をつけようとする政府・自民党のやり方は、およそ公平な税制改革とはかけ離れたものと断ぜざるを得ません。  税制改革は、まず現行制度のひずみ、ゆがみを解消することを出発点としなければなりません。税制が不公平のままで放置されれば、社会は一層不公平、不平等なものとなり、国民の勤労意識、モラールが低下することは明らかであります。まじめに働く者が苦しい生活を強いられ、株や土地取引をする者が巨利を得る社会が果たして正常な社会でありましょうか。  有価証券のキャピタルゲイン課税、土地譲渡益課税の適正化など、不公平税制の抜本是正に早急に取り組むことを求めるものであります。不公平税制の是正をきちんと行えば、今日の税収状況から見て三兆円規模の減税は実現できるものであります。中堅所得者に重点を置いた大幅な所得減税、国際的に高い法人税の引き下げ、地価高騰に対処するための相続税減税は、六十三年度中にぜひとも実現されなければならないと考えるものであります。  不公平税制の是正や高齢化社会へ向けての福祉ビジョンづくり、行財政改革の断行など、やるべきことをやらずして、議論が未熟な段階で新型間接税の導入を強行しようとする竹下内閣のやり方は、国民に背を向けた税制改革であり、到底容認できないことをこの際明らかにしておきたいと思います。  反対の第二の理由は、本予算案が内需拡大、対外貿易摩擦の解消など、今日の緊急課題の解決にこたえる内容になっていない点であります。  我々は六十三年度を生活先進国づくりの初年度予算と位置づけ、国民生活向上に直結する予算となるよう大幅な手直しを求めましたが、例えば公共事業一つをとって見ましても、道路は何%、治山治水は何%と相変わらず固定的、硬直的であります。これでは、公共事業は利権の温床となって身動きができなくなっていると言われても仕方ないことではありませんか。  反対する第三の理由は、土光臨調でもいまだ道半ばと言われております行財政改革がないがしろにされている点であります。  相変わらずの縦割り行政であるばかりでなく、行政府みずからが骨を折らず、教育や福祉を切り捨てる、言ってみればむごいやり方を政府はいつまで続けるつもりなのでありますか。  以上、我々の本予算案に反対する理由を述べるとともに、政府・自民党の強硬な姿勢により暫定予算を組んだり、予算審議が何度も中断する事態に陥ったことを厳しく批判して、私の討論を終わります。(拍手)
  285. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で討論通告者の発言はすべて終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  三案に賛成の方は起立を願います。    〔賛成者起立〕
  286. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 多数と認めます。よって、昭和六十三年度総予算三案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。(拍手)  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  287. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時一分散会