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1988-03-09 第112回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    第百十二回国会衆議院 外務委員会議録第一号(その一) 本国会召集日昭和六十二年十二月二十八日)( 月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 のとおりである。    委員長 糸山英太郎君    理事 甘利  明君 理事 北川 石松君    理事 田中 直紀君 理事 中山 利生君    理事 浜野  剛君 理事 高沢 寅男君    理事 神崎 武法君 理事 永末 英一君       天野 公義君    石井  一君       大石 正光君    鯨岡 兵輔君       小杉  隆君    坂本三十次君       椎名 素夫君    塩谷 一夫君       水野  清君    村上誠一郎君       森  美秀君    山口 敏夫君       石橋 政嗣君    岩垂寿喜男君       岡田 利春君    河上 民雄君       伏屋 修治君    正木 良明君       渡部 一郎君    岡崎万寿秀君       松本 善明君 ────────────────────── 昭和六十三年三月九日(水曜日)     午後二時開議  出席委員    委員長 糸山英太郎君    理事 甘利  明君 理事 北川 石松君    理事 田中 直紀君 理事 中山 利生君    理事 浜野  剛君 理事 高沢 寅男君    理事 神崎 武法君 理事 永末 英一君       天野 公義君    石井  一君       大石 正光君    鯨岡 兵輔君       小杉  隆君    水野  清君       村上誠一郎君    石橋 政嗣君       岩垂寿喜男君    河上 民雄君       伏屋 修治君    正木 良明君       渡部 一郎君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君  出席政府委員         外務政務次官  浜田卓二郎君         外務大臣官房長 藤井 宏昭君         外務大臣官房審         議官      福田  博君         外務大臣官房審         議官      遠藤 哲也君         外務大臣官房会         計課長     林   暘君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局次         長       内田 勝久君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         厚生省援護局長 木戸  脩君  委員外出席者         内閣官房内閣外         政審議室内閣審         議官         兼内閣総理大臣         官房参事官   鈴木 勝也君         防衛庁防衛局防         衛課長     萩  次郎君         郵政省貯金局業         務課長     三宅 忠男君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ───────────── 委員の異動 二月十七日  辞任         補欠選任   岡崎万寿秀君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     岡崎万寿秀君 同月二十七日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     川崎 寛治君 同日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     岡田 利春君     ───────────── 三月四日  国際復興開発銀行協定第八条(a)の改正受諾について承認を求めるの件(条約第一号)  日本国政府国際熱帯木材機関との間の本部協定締結について承認を求めるの件(条約第二号)  千九百八十七年の国際天然ゴム協定締結について承認を求めるの件(条約第三号)  オゾン層保護のためのウィーン条約及びオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書締結について承認を求めるの件(条約第四号)  核物質防護に関する条約締結について承認を求めるの件(条約第五号)  特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約第六条及び第七条の改正受諾について承認を求めるの件(条約第六号)(予) 二月十七日  核兵器廃絶に関する請願田中慶秋紹介)(第一六七号)  同(中路雅弘紹介)(第一六八号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第二一二号)  同(大出俊紹介)(第二一三号)  同(伊藤茂紹介)(第二五二号)  同(加藤万吉紹介)(第三三二号) 三月三日  核兵器廃絶に関する請願市川雄一紹介)(第五二九号)  同(河村勝紹介)(第五七〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  国際復興開発銀行協定第八条(a)の改正受諾について承認を求めるの件(条約第一号)  日本国政府国際熱帯木材機関との間の本部協定締結について承認を求めるの件(条約第二号)  千九百八十七年の国際天然ゴム協定締結について承認を求めるの件(条約第三号)  オゾン層保護のためのウィーン条約及びオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書締結について承認を求めるの件(条約第四号)  核物質防護に関する条約締結について承認を求めるの件(条約第五号)  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する事項について研究調査し、我が国外交政策の樹立に資するため、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期中国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  4. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  まず、昭和六十三年度外務省関係予算について、その概要説明聴取を受けます。外務政務次官浜田卓二郎君。
  5. 浜田卓二郎

    浜田政府委員 外務政務次官浜田卓二郎であります。  昭和六十三年度外務省予算重点事項を御説明いたします。  昭和六十三年度一般会計予算案において、外務省予算としては、四千四百十六億四千六百十三万八千円が計上されております。これを前年度予算と比較いたしますと、四・一%の伸び率となっております。  次に、内容について御説明いたします。  我が国を取り巻く国際情勢は依然として厳しいものがあり、外交役割はいよいよ重大であります。特に、世界GNPの一割を占めるに至った我が国は、世界に開かれた日本として、国力にふさわしい責任を果たすことにより、世界の平和と繁栄に貢献し、世界の信頼を獲得していく必要があります。  かかる見地から、昭和六十三年度においては、定員機構拡充強化在外勤務環境改善等外交実施体制強化政府開発援助ODA)及びその他の国際協力拡充情報機能強化海外啓発文化交流強化海外邦人対策等整備拡充を最重点事項といたしました。  外務省定員につきましては、本省及び在外公館合計で百二名の増員を得ました。ここから定員削減四十五名を差し引き、他省庁からの振りかえ増三十一名を加えた八十八名が純増となります。この結果、六十三年度末外務省予算定員合計四千百五十一名となります。  機構につきましては、在外公館として、在イエメン大使館を設けることとしております。  在外勤務環境改善等外交実施体制強化に要する経費は、百二十三億二百万円であり、前年度予算と比較いたしますと、九億六千八百万円の増加であります。  次に、経済協力及びその他の国際協力関係予算について御説明いたします。  経済協力は、平和国家であり自由世界第二位の経済力を有する我が国の重要な国際的責務であります。中でも、政府開発援助ODA)の果たす役割はますます重要となっており、かかる観点から、六十年九月に設定したODA第三次中期目標及び六十二年五月に決定した緊急経済対策に沿い、その着実な拡充に努めております。昭和六十三年度ODA一般会計予算については、厳しい財政状況にもかかわらず政府全体で対前年度比六・五%増の七千十億円となりました。  外務省ODA予算について見ますと、前年度比百九十一億円、六・二%増の三千二百九十七億円となっております。この予算のほとんどは贈与予算であり、ODAの質の改善に寄与するとともに、外交の円滑な推進にも重要な役割を果たすものと考えます。  このうち無償資金協力は前年度予算より百三十一億円増の一千四百七十一億円、また我が国技術協力の中核たる国際協力事業団事業費のうち、技術協力に向けられる同事業団交付金は、対前年度比七・五%増の一千六十二億円を計上しております。  また、援助実施体制強化観点より、国際協力事業団定員につき、六名の純増を行っております。  また、国連等国際機関を通じて援助等種々国際協力を行っておりますが、これら機関活動に対し引き続き積極的に協力すべく七百十九億七千三百万円を計上いたしました。  また、我が国欧米等先進諸国関係円滑化物心両面から図るため、先進国対策費として十七億八千九百万円を計上しております。  次に、情報機能強化関係経費は七十一億九千四百万円であり、前年度予算と比較いたしますと、三億二千万円の増加となっております。  海外啓発文化交流強化につきましては、海外啓発活動の促進のための経費として二十八億一千八百万円を計上しております。  文化交流拡充のための経費は六十一億三百万円であり、国際交流基金に対する補助金として日本語国際センター建設費二十一億二千九百万円を含め五十八億七千百万円を計上しており、前年度予算と比較しますと二十二億一千三百万円の増加となっております。また、外務省が実施する文化事業費として二億三千二百万円を計上しております。  また、我が国と諸外国との間の相互理解を一層促進するため人的交流拡充することとし、十三億二百万円を計上しております。  最後に、海外邦人対策等整備拡充について御説明いたします。緊急時の邦人保護対策につきましては、通信体制等をより一層強化するため、四億一千五百万円を計上しております。また、日本人学校の新設を初めとする海外子女教育充実強化でありますが、現在海外に在住する学齢子女は、およそ四万一千人に達しており、これらの子女教育が極めて切実な問題となっております。  このための具体的施策として、スイスのチューリッヒに全日制日本人学校を新設するとともに、既設日本人学校施設等充実に対する援助現地採用教員の手当に対する援助等のため十三億九千万円を計上しております。  以上が外務省昭和六十三年度予算重点事項概要であります。
  6. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 以上で説明は終わりました。     ─────────────
  7. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次に、国際情勢に関する件について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山利生君。
  8. 中山利生

    中山(利)委員 先般の本会議におきます宇野外務大臣外交演説中心にして二、三御質問を申し上げたいと思います。  この演説の中にもございましたように、ただいまの国際情勢は大変厳しいものがあり、また、世界じゅうを見回してみましても大変複雑、深刻な課題が渦を巻いておりますし、そのあらゆるものが我が国との関係がある。また、我が国が戦後のあの疲弊をした開発途上国から現在のようなGNP世界一というような大変な経済大国になりまして、世界じゅうからの大きな期待を寄せられているわけでございます。そういうとき、昔の開発途上における我が国外交とはまた一味も二味も違った大変な外交、重大な役割を果たしていかなければならないときであろうと思います。  そういうときに宇野外務大臣のような全く適任の大臣を迎えることができたということは、我々にとりましても大変心強いことでございます。そういう大事な役割を担っておられる大臣に、この外交演説の中にございましたように、平和への寄与と繁栄への国際協力、また「世界に開かれ、世界に貢献する日本」ということを再三強調をされたわけでありますが、そのことにつきましてまた改めて、具体的にどのようなことをなさろうとしておられるのか、この外交に対する心構えと、いささかで結構でございますから、具体的なことにつきましてもお話しをいただければ幸いだと思います。
  9. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 我が国GNPだけを考えましても、敗戦の昭和二十年、一九四五年にはアメリカの二十分の一でありましたが、三年前の昭和六十年には四十年たってアメリカの二分の一に迫る大きな実績を示したわけでございます。したがいまして、アメリカの人口二億、日本一億と単純に計算いたしましても、実質的に日本は今やGNPナンバーワンになりましたねというようなことを私は外交演説で申し上げましたが、なった以上はそれだけの責任があるということを忘れてはならない、かように思います。  その間、やはり我が国国民努力もさることながら、諸外国安全保障の面におきましてもいろいろと日本のことを考えてくれましたし、あるいはまた資源、食糧等の面におきましても小国日本に対しまして格段の配慮を願ったという面も多々ございますから、今大きくなった以上は、日本といたしましては世界に開かれた日本として平和と繁栄に貢献すべきである。これが一口にして言うところの今日の我が国外交でなければならぬ。そのためにはまず開かれた日本ということが必要ではなかろうかと思うのでございます。開かれたという意味にはいろいろございましょうけれども、一回り、二回り大きくなった日本でございますから、我が国の政治的な面におきましても一回り、二回り大きくなったという意識のもとに、ひとりよがりであってはいけない、私はかように思っております。  特に、大きくなったのでございますから、したがいまして経済協力あるいは援助、いろいろな面におきましても私たちはそれが諸外国国民方々福祉向上につながる、繁栄につながる、社会的安定につながる、こういう観点におきまして拡大強化していくことは当然のことであろうと思いますが、この面におきましても、単に物だけではなくして、日本人としておごることなく世界に貢献しようという心を中心とした外交を展開しなければならない、こういうふうに申し上げたわけでございます。  過般来、国会におきましてもいろいろ議論が続けられておりますが、与野党を通じまして例えば留学生の問題はどうなるのか、あるいはまた文化交流はどうなるのかというふうなことに特に関心が寄せられておる今日でございますから、単に経済問題だけではなくして、そうした面におきましても具体的に私たちは、先ほど申し上げましたような我が国の立場というものを十二分に考えながら、そして国民の御理解を仰ぎながら国民に共鳴をしていただくような外交をひとつ展開したい。  非常に抽象的でございますが、さように考えておる次第であります。
  10. 中山利生

    中山(利)委員 まさに基本的な考え方としてはそのとおりでなくてはならないと思うわけでありますが、今や昔のように外務省外交官だけのいわば宮廷外交みたいなものでは到底任務を全うできない。やはり今大臣お話しになりましたように、我が国内の各般の整備、対応をしながら、それと表裏一体になって外交を展開していかなければならないわけでありまして、その点、外務省の仕事としてはもう本当に広範な、全く我が国政府の各省庁あるいは国民の各階層を代表するような形で外交を展開していただかなければならないと思うわけでありますが、外務省としましては、そういう面において今までと違った御努力をなさっておられるようであれば、そのことをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  11. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 まず、世界の平和に寄与せんという外交方針に関しまして申し述べますと、ただいまイラン・イラクの不幸な戦争が続けられております。これに対しましても、速やかに国連決議を尊重していただいて、そして仲よくやっていただきたい、こういう先頭にも我が国はあらゆる場面に立っているのではなかろうか、かように考えております。  二番目は、例えば同じく平和に貢献しようという意味におきましては、私たちはカンボジア問題におきましても積極的に取り組んでおるのではないだろうか、かように自負いたしております。  さらに、そのほかの地域的な紛争、そうした問題に関しましても大いに積極的に取り組みまして、速やかにそうした紛争並びに戦争が終結するように国連を通じて努力し、さらにはこちらから特使を送って特に当該諸国といろいろ話し合いを進める、そして戦いが終わったそうしたときには、我々といたしましては、軍事的な面でこれに協力することはできません、しかしながら非軍事的なもので日本ができるならば幾らでも協力しましょうということを世界を通じて申し上げておる。これが一つは平和に貢献する我が国外交ではなかろうかと思うのでございます。  その次には、諸外国を回りますと、ASEANの会議に出ましたが、やはり民生の安定、私たちはこれを考えたい。福祉向上を考えたい。そのためにはやはり経済の安定です。そのためにはひとつ日本は協力してください。しばしばこういうふうな要請も受けておりますので、我々といたしましては、御承知のとおり本年度は皆さん方のおかげでODAも六・五%、政府といたしましてのODAはそれだけ伸ばすことができました。また今政務次官がいろいろお話をされましたとおりに、外務省としては六・二%ふやすことができた。これは七千億円に達した初めてのケースでございまして、円高というメリットもございましょうけれども、言うならば世界一の額を我々はそうした途上国に貢献をすることができるのではなかろうか。この面におきましても今後十分いろいろと考えなければならない面があります。例えば、条件をもっと緩和せよとかいろいろございますが、そうした面を含めまして、諸外国民生の安定、福祉向上に貢献しているところが我が外交においては大きく存在しておる。  その次は、今中山委員がいみじくも申されましたが、外交内政はまさに一体のときでございます。ある外務大臣みずから述懐されましたが、もう最近の外務大臣は時として農林大臣であり時として大蔵大臣であり時として何やら大臣だ、そういうふうな場面も必ずしも私は否定するわけにいかないほど外交の面は多極にわたって展開されております。  したがいまして、そうした面におきましても、常に我が国におきましては、農業なら農業に関してはやはり農民の心を心とした外交をしなければならないでしょう。また、そのためには農林関係方々の意見も十分に伺わなければならないでしょう。さらには、外務省としても農林省と本当に一体となるような気持ちでやっていかなければならないでしょう。しかし、その中においては、時と場合にはやはり外務省として主張すべきことはいろいろと主張し、御理解を仰がなければならないこともあろうと思いますが、要は外交内政一体である、こういう気持ちで今後もやっていきたいと思うような次第でございます。  これだけでまだまだ尽きないわけでございますが、一応重立ったところだけを申し上げました。
  12. 中山利生

    中山(利)委員 国際関係をいろいろ見回してみましても、米ソ両超大国を初めアジア太平洋の近隣の諸国、あるいは中南米、アフリカ、ヨーロッパ、いろいろな国がありますが、それぞれの国が社会経済体制あるいは宗教、価値観、すべてが異なっておりまして、一様にはまいらない。全く価値観の相反するような国々ともおつき合いをしていかなければならないわけで、これは非常に大変だと思うわけでありますけれども、やはりそれには我が国の独特の歴史なり社会体制なり、憲法を中心としたいろいろな外交の心構えなり、腹構えというものもしっかりと根底に据えた上でおつき合いをしていかなければ、人間にも人徳がありますように、我が国経済的には発展をいたしましたけれども、いわゆる国徳というような意味ではまだまだ足りないものがあるのではないか。そういう意味でも外交当局の御努力、国の中、日本人全体の国際社会の中における外国人とのつき合い方、先ほどおっしゃったような留学生の問題その他たくさんありますけれども、そういうものから立て直していかなければならないのではないだろうか。  これまでは戦後の開発途上国ということで国際社会の中でもある程度大目に見られた。日本独特の手法というものを、理解はされなくてもまあまあということで大目に見られてきたところも多いであろうと思うのですけれども、これからはそれではもう通用しない。逆に、大きな期待と同時に反発も受けてしまうのではないかと思っているわけでございます。そういう意味外交当局、非常に人員も予算も装備も貧弱な中で各当局方々が非常な努力をされているということは私どももよく存じ上げているわけでありますが、これからもひとつ大いにそういう意味でも頑張っていただきたいと思うわけでございます。  いろいろお聞きしたいことがたくさんございますが、この大変複雑な外交関係の中で、やはり日本アメリカ関係というのが一番基軸になっていくのではないか。これから我が国が生存し発展していくためには、やはりアメリカとのきずなというものを深め、固めていく必要があるということは私もよく存じているわけでございますが、その点につきまして、ひとつ大臣の基本的な考え方お話しいただきたいと思います。
  13. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 アメリカとの関係ということになりますと、まず基本線として我が外交のスタンスは、我が日本は西側にある、第二番目にはアジア太平洋諸国の一員である。これが日本外交の一番大切な足場でございます。そんな中におきましても、日米というものはすべてのものにおいて基軸をなしておるということは否定するわけにはまいりません。なかんずく、日米間におきましては安全保障条約、そうした安保体制下において今日の日本繁栄もあったということも言い得ると私は思います。また、日本が四十三年間にわたりまして久しさ平和を保つことができたのもそうした抑止力、また均衡、そうしたものがあったということを考えますと、やはり私たちはこの安保体制というものに我々自体といたしましてもさらに認識を深めていかなければならないと思います。その安保体制の中において、やはりアメリカに負うところが大きいのではなかろうか、かように私たちも考えざるを得ません。  しかし残念にいたしまして、最近は特に貿易問題におきまして常にぎしぎししたようなきしみが聞こえてまいります。このことは残念な話でございますが、考えてみれば、戦前は諸外国自国通貨の切り下げを図ることにおいて輸出を増大したという時代がございました。それに対抗して関税をつけた。その関税をぶち破らんがためにはどうしても市場を求めなくてはならないということがマーケットを獲得するという第二次世界大戦一つの端緒になったという学説もございます。そうした反省に立って、戦後はガット体制なりIMF体制なりすべて自由貿易ということが考えられまして、保護貿易が排除されたわけであります。  我々はともどもに自由貿易主義者であるというかたい盟約のもとに今日の繁栄を来しておりますので、したがいましてアメリカとの関係においては、総理がいみじくもレーガン大統領との会談において申されましたことがあります。すなわち、均衡を図る上において縮小均衡ではだめでございます、ひとつ拡大で大いに均衡を保っていこうではございませんか、なおかつ一つ一つの問題に関しましては一つ一つ協議をしようではございませんか、こういうようなことを申されまして、これは新しい竹下・レーガン間における一つ基本線をつくり上げておるのではなかろうか。  さようなことでございますので、いろいろ問題はございましょうが、二国間の問題はあくまで二国間の問題として解決すべく努力をしていく、これが今日の私のアメリカに対する考え方であります。
  14. 中山利生

    中山(利)委員 まことにそのとおりであろうと私も思っているわけでございますが、今大臣がおっしゃられましたように、最近日米のパートナーシップに少しひび割れができてきたのではないか。  この前の農産品の十二品目ですか、これのガット提訴の問題とか、公共事業へのアメリカの業者の参入の問題であるとか、日本側がこのパートナーシップを崩さない範囲で先ほど言われた自由貿易の建前を何とか立てていきたいという努力をしておりましたにもかかわらず、早急にいろいろな報復措置であるとかおどしをかけてくるような、例えば農業問題などにしても一朝一夕では解決できない、やはりある程度時間をかしてもらって対応をしていかなければならないのに、もう非常に性急にいろいろな要求をしてくる。  今度の公共事業の参入にしても、お互いのルールが符合できるような調整をしている段階でもう既に報復措置をとってしまっているとか、国際捕鯨、鯨の問題にしても、私どもが見て本当に子供っぽいといいますか単純といいますか、私どもが非常に尊敬をし信頼をしておるアメリカのやり方とは思えない全く裏切られてしまうような、そういう感じが最近出てきているわけでございます。  これは大統領選挙絡みのキャンペーンなども含まれているのかなという感じもいたしますけれども、我々日本としても、先ほどの発展途上の中では外国から見るとアメリカの言われるいわゆるアンフェアな、そういうふうに誤解されるようなこともあったかと思います。しかし、今のアメリカのやっていることは一体アンフェアではないのかという憤りも感じさせられるわけでございます。  この点も、外交当局一つの大きな仕事ではないかと思うわけでありますが、このままずるずるとアメリカのおどしに乗っていくような形で我が国も進んでしまうのか、あるいはもっともっと何か打開の道があるのか、アメリカ自体にもそういうことに対する反省というものが起きつつあるのかどうか。そういうことを含めてお話しをいただきたいと思います。
  15. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 一つの例を申し上げますと、この間アメリカの一人の国会議員がフィリピンにおける基地の貸与料を日本に肩がわりさせたらどうかと言ったら、カールッチ国防長官が、もっともだもっともだと言ったではないかというふうなことが伝わってまいりまして、これは大変なことだ。カールッチさんは私も出会ったがそんなことを言う人ではないと私は思っておりまして、会議録を早速調べてみましたけれども、前後の関係から申し上げまして、議員の一人の感想を申し述べられておる。決してそれを政府が全面的に承認したり参考にしますといったところは少しもない。こういうふうなことが今、はやっているのではないかと思います。  したがいまして要は、アンフェアということは日本にないにいたしましても、向こうから見れば何かしら日本世界一になりながらまだ洋服のサイズが合っていないのじゃないかというふうな要請に聞こえないこともございません。  だから、私ははっきり申し上げます。日本は確かに経済大国になりました。しかしこれは国民努力によってなりました。もちろん諸外国の恩恵も忘れるものではございません。常に国民の創意工夫と、経済面におきましては経営の改善等々本当に国民努力したのです。その結果でございます。しかし成長が急激であったことも事実でございますから、私たちの着ている着物が寸足らずの面もあるかもしれません。それはやはり寸足らずでないようにしないことにはみっともないという面もたくさんございますが、そのためにはすぐに仕立てられる部面もあればなかなか困難なところもありますよ。そういうこともお互いに十二分に理解し合いながらやっていくのが外交ではございませんか、それが真の友好ではございませんかというふうなことで、言うべきことは私たちはきちんと言っているように考えております。  したがいまして、アメリカの一方的なわがまま、そうしたものが日本外交を何かしら侵しておるというふうなことも時折耳にいたしますが、アメリカに言うべきことは言っておる、またアメリカもそういう人たちばかりではない、正論を吐く人たちもたくさんいる、こういうことでございますので、先ほど総理大臣が縮小均衡よりも拡大均衡だとおっしゃったゆえんもそこら辺にある、こういう心構えでやっていきたい。今後も私はそういう言うべきことはきちっと言いたいと思っております。
  16. 中山利生

    中山(利)委員 大臣の今おっしゃられた精神で今後も――日米関係というのは本当に我が国にとって最も大事な関係でございますので、これがこのままで参りますとまず国民間の信頼関係が失われてしまう。今、日本人の大多数の人たちアメリカに対する大きな信頼が薄れていると思うのですが、今ちょっと話がありましたが、このままわがままが過ぎますと抜き差しならない不信感というものができてしまうのではないだろうか。しかもそのままで我が国外交上、国政上も一歩一歩そのわがままを通して引き下がるようなことがあれば、国民我が国政府に対する信頼も失われてくるのではないか。したがいまして、その間に立っております外務当局に対する信頼感も失われてしまう。そういうことになりますと、西側諸国の結束、我が国安全保障世界の平和ということに対しましても大きなマイナス面が出てくるのではないかと思いますので、今後も大臣を先頭に外務当局の大きな、しっかりした腹構えを持っての御活躍をお願いする次第でございます。  大統領選挙その他もございますので、いろいろお伺いしたいのでございますが、時間が参りましたので、これをもって終了させていただきます。ありがとうございました。
  17. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 高沢寅男君。
  18. 高沢寅男

    高沢委員 大臣、どうも御苦労さまです。また、この国会を通じて国際情勢の質疑をいただくことが何度もありますが、ひとつどうぞよろしくお願いいたします。  初めに、昨年、米ソのINF全廃協定が締結をされた、このことに関連をしてお尋ねをしたいのですが、その後、今、米ソ間で戦略核も半分にしよう、こういう協議が進んでおりまして、どうもまとまるのじゃないかというような希望的観測を私は持っております。そういうふうに進行していきますと、第二次大戦後のもう四十年にわたっていわばアメリカとソ連がお互いに核の抑止力を持って相対峙するということで来たわけですが、今やその抑止力をこの均衡を保ちつつだんだん減らしていこう、こういう段階に入った。ということは、米ソともに核抑止理論というものに対する根本的な考え方の転換が今出ているのじゃないのか、こんなふうに思うわけですが、そういうことが日本の平和と安全にとって好ましいことであるのかどうか、まずこの辺の基本的な御認識を大臣にお尋ねしたいと思います。
  19. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今、高沢委員が申されましたとおりに、確かに核というものは久しきにわたりまして一つ抑止力として東西間においてそれだけの効果を果たしていた面もあったと思います。しかしながら、考えてみればむだな努力をしておるなというふうな面もあるいはあったのではないだろうか、かように思います。したがいましてINFのグローバル・ゼロというふうな合意ができたのであろうと私は思います。だから、日本政府といたしましては、このこと自体は核軍縮の第一歩として評価いたしますよ、しかしながらまあまあこれで緊張が緩和されたんだというふうな評価はまだまだ与えられないのではなかろうか。現にそれが証拠に、両国ともにさらにはひとつ戦略核につきましても五〇%削減やりましょう、こういうような努力をされておる。この努力に対しましては私たちはやはり敬意を表してしかるべきだ、かように存じておる次第でございます。  しかし、先ほどのINFが全保有量の中から申しますといわばわずかなことである、これだけで満足するものではないということになりまして、今度のものもさらに難しい五〇%でございますから、果たしてその五〇%をお互いに検証し合うのも難しいことだろうな、しかしやろうという、この気持ちに対しましては私たちは今申し上げましたような気持ちを抱いておるわけでございますが、はっきり申し上げまして、単に核だけではなくして、通常兵器なり、それらも含めましての均衡であり、また抑止であるということはお互いに東西で考えていかなければならないことではなかろうか、かように思います。だから、日本といたしましては、先般のINFの合意というものは実にもって、私たちもグローバル・ゼロを叫んだわけでございますが、西側が結束したからそういうような成果も得られたのであろうとこれは確信すべきである、こういうふうに認識いたしておるような次第でございます。  今後五月の初旬でございますか、両国首脳がお出会いになられまして、極力そういう話が進み、なおかつそのほかにも二国間の問題で、アフガンも大分よい傾向も示しておりますけれども、すべての問題が米ソ大国においていろいろ話し合われることは結構な話である、そのために私たちは西側陣営の一人としてアメリカの政策を大いに御支援申し上げようというのが今の立場でございます。
  20. 高沢寅男

    高沢委員 私はその核抑止力ということに絞って以下またお尋ねをしたいわけです。  そうやってアメリカとソ連の間の核の抑止力をだんだん低水準にしていくということが進んでいった場合、御承知のとおり戦後の我が国の自民党政府の伝統的な安全保障政策は、アメリカの核に頼る、アメリカの核によって守ってもらう、こういう立場でこられたわけです。そうすると、我々の頭の上に、本当にあるかどうかは別としてアメリカの核がある、核の傘があるということにもなっていますが、米ソの核軍縮が進むと我々の頭の上にある核の傘も縮小していく、こう見ていいのかどうか。  あるいはそのことは、例えばアジアにあるソ連のINFが撤廃されるというような形で、こちらを向いているソ連の核のやり、それも当然一定の均衡をもって縮小されるということになるわけですが、そういうふうな我々の頭の上の核の傘が縮小されるということは日本の平和と安全にとって、これは好ましいものであるのかどうか、この辺の御認識はいかがでしょうか。
  21. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 我が国アメリカの核の傘に依存しておるということは、これは変わらざるところでございまして、INFが進んだから、核がちょっと減ったからその分だけどうかというようなことであるかもしれませんし、あるいはまたもう核の傘なんということを考えなくてもいいのじゃないかというような御趣旨であろう、私はこういうふうに思いますが、やはり必要だと思います。  ということは、核、通常兵器、そうしたものを含めましての均衡というものが今日の世界の平和と安全というものの一つの大きな基盤をなしておる、こういうふうに考えました場合に、我が国はもちろん非核三原則でございますし、例えば安保条約によって装備の点で核を持ち込むがいかがかというときは、いかなるときといえども私たちの答えはノーである、こう申し上げておりますので、その核そのものが我が国の領空、領海、領地にあることを問わず、我々といたしましては核の傘というものはそうした意味アジアの平和にもつながる、我が国の平和と安全にもつながる、かように考えていきたいと思いますので、今、米ソ間の努力努力として敬意を表しますけれども、さればといってすぐに核の傘をすぼめていいのだというふうには考えたくないというのが我が国の立場でございます。
  22. 高沢寅男

    高沢委員 核の傘をつぼめたくないと大臣言われましたが、米ソ間の核軍縮が進んでいけば、結果として、こちらの気持ちは別として、実際にこの核の傘というものは縮んでいくのじゃないかと私はお尋ねしたわけです。  それで、今大臣から非核三原則というお言葉が出ましたが、我が国は核兵器は持っていないし当然持たない立場、核についての我が国としての独自の政策として言われた非核三原則があるわけですね。ここでもう一度、これからの議論の前提として非核三原則は我が国の国是である、このことを大臣からひとつ御確認をいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  23. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 過般来、予算委員会におきましても非常に大切な問題だとして議論が重ねられておりますが、非核三原則は国是であると申し上げてよいと思います。
  24. 高沢寅男

    高沢委員 そこで、その三原則の中に、三つありますね。その三つのうち、つくらない、それから持たない、これはもうお互いに全く自明のこととして、この点についての合意は申すまでもないと思います。  もう一つが持ち込ませない。これがあるわけですが、先ほどの傘の論議と関連いたしまして、核の傘に頼る、しかし持ち込ませない。私はこれは若干論理上矛盾しているのじゃないか、実はそう思うのです。これは自民党、与党のお立場ではあるが、私のおか目八目で見てこの立場は論理上の矛盾がありはしないか。  そこで、論理上の整合性をつけるには、核の傘に頼る、頼るからには持ち込みはオーケー、こうなるのか。そうでなければ核の持ち込みはノーだ、ノーならば核の傘に頼ることもやめる。この方法はいずれも論理整合性があると思うのですが、私は、持ち込みは認めない、したがって核の傘に頼ることもやめるということが一番日本の平和と安全のために好ましい選択である、こう思うのですが、この辺の大臣の御所見、いかがですか。
  25. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほどちょっと、核の傘をすぼめたくないといいますと、いかにも日本が核を持っているような感じを与えましたので、これはちょっと訂正させていただいて、核はだんだん縮小するであろう。INFでもそうだし、あるいはまたこれから始まる戦略核もそうである。しかしながら我が国としては核の傘の下にいる。これが大切だ、こういう意味でございますから、そこだけちょっと補充をいたしておきます。  したがいまして、非核三原則で持たない、つくらないはわかるけれども、持ち込まないというものも日本の国是である、しからば持ち込まない核の傘にどうして入れるのだというふうな趣旨なのかと思いますが、これに関しましては、やはり核が我が国にはありません、また持ち込ませません、そうした意味じゃなくて、我が国にあろうがなかろうが核というものは現在存在するわけでございますから、したがいまして、そうした核戦力並びに通常兵力等々の均衡と抑止というものが大切でございますよ、そうした中に私たちおります、こういうことでございますので、私といたしましては、核の傘は、我が国に傘がなければ傘の下にいると言えないじゃないかということは、これは当たらないのじゃないか、こういうふうに考えます。
  26. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、大臣の言われることは、つまり米ソがそれぞれグローバルに核抑止の戦略を展開している。そのグローバルな核の傘が、アメリカ側はアメリカで傘があり、ソ連側はソ連側で傘があり、そして日本に持ち込ませなくとも日本の上にはそのアメリカの傘はかかっておる、こういう大臣の御認識じゃないかと思うのです。しかし核軍縮という我々の念願からすれば、最終的にはそういうグローバルな核の傘もなくなるということが一番望ましいことではないか、こう思うのであります。  そこで傘とやりの関係になるわけですが、ソビエトが例えばアジア地区に核兵器を持っておる。こちらから見るとソビエトの核のやりはこっちを向いている、こう我々は見る。だけれどもソ連の人たちに言わせれば、いや、それがおれたちを守る核の傘なんだ、彼らはそう考えておるということになると思うのです。こちら側も核の傘で守られていると思うということは、ソ連から見れば、こちら側から核のやりがソ連を向いているというふうに相手は見る。こう考えれば、傘とやりの関係は要するに同じものの両面にすぎないということになると思うのです。その同じもの、核兵器そのもの、抑止力そのもの、これが全世界的に縮小されていくということが望ましい。これは大臣もうなずいておられるから望ましいとお考えでしょう。  問題は、その方向に行くのに米とソの交渉だけに任せておいてアメリカがやってくれる、ソ連がやっておる、我々はその結果を待つ、あるいは場合によればさっき自由主義陣営の一員としてアメリカのそういう努力日本も協力する、こう言われましたが、日本の立場としてそれだけでいいのかどうか。  私は、今や日本の独自の外交、特に核軍縮を目指した日本独自の外交というものが、アメリカのやることをただ協力するというだけでないものが今や当然出てくる段階に来ているのじゃないか。先ほど中山さんの御質問の中にも、今や日本経済的には非常に大国であり国際的な貢献を大いにすべき段階に来ているという中で、日本が平和に貢献する、核軍縮に貢献するということを日本日本の立場で独自にやるという面が一つあっていいのじゃないのか、こう思うわけです。  そういう話し合いを外交活動として展開するとすれば、一つ、相手はソ連というものがあると思う。じゃ米ソの話し合いはそれとして、日本がそういう核軍縮の問題でソ連と話し合いをやる、このことは一体あり得ないのかどうか。私は今やそういうこともやるべき段階に来ていると思うのですが、この辺、大臣の御所見いかがですか。
  27. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほどINFが合意に至った経緯、そうした中に私は御説明申し上げましたが、かつてのウィリアムズバーグのサミットにおいて我が国がグローバル・ゼロを主張したことはあまねく知られているところでございます。また、そのサミットにおいて西側陣営ががっちり組んだということが成功をもたらした大きな原因であるということも先般私は本会議場の外交方針で申し述べたところでございます。  したがいまして、高沢委員が申されますように、日本がひとつソ連と話したらどうだという、これは非常に高邁な御意見だろうと私は思いますが、事実、今日の日本の立場で、アメリカを離れてソ連とだけでそういうような話をして、ソ連が本気になってくれるだろうかという問題、私といたしましてはパフォーマンスだけに終わってしまうんじゃないだろうかというふうなことも考えられます。  今日、我々は太平洋アジアの一員だという立場に立ったときに、いろいろとそれらの諸国方々のお考え方も代表して常にサミット等には出ておるわけでございますから、御意見としては非常にいい御意見だろうと思いますけれども、では現実の外交面においてそうしたことができるだろうか、やはり我々にはもっともっとなすべきほかの問題もあるのではなかろうか、こう思います。一概に私は否定はしないわけでございますけれども、だからといって、おまえやらなかったのじゃないかと後で言われますと大変ですから、今の米ソ間、これの均衡のとれた力と、そして日本アメリカ日本とソ連、経済力におきましては確かに肩を組める仲間になっておるかもしれませんが、いろいろな面におきましては、まだまだ日本はそこへ飛び込んでいって真ん中に立ってやあやあと言う立場ではない。  しつこいようでございますが、さる有力な西側陣営の首脳の方が先般我が国の有力な政治家にお話をなさっておることを直接私伺ったわけですが、米ソがたとえ五〇%の戦略核の削減をしようともそれはそれで評価する、しかしながら、半分にしたってまだ何千発残るじゃないか、おれのところは何千発もないんだよ、我が国の保有のところまでその問題が下がってきたときに初めていろいろな問題を考えるべきであって、今はまだおれたちがそういう大きな人たちの話の中に入るべきじゃないということを申されておりますが、これは持っている国がそういうことを言っているわけでございます。我々は持たないから、持たないものの力はあろうと思いますが、今のところ高沢委員の御発言は非常に高邁な意見として伺っておくことにいたします。
  28. 高沢寅男

    高沢委員 日本は確かに核兵器を持っていませんから、だから対ソ連で、おれも減らすからあんたも減らせ、確かにこういう話はできないですね。できないですが、しかし私はできる方法が一つあると思う。  それは、つまりさっき言った非核三原則、持ち込ませないという原則はあるが、実は入っているんだろう、アメリカが持ち込んでいるんだろう、こういう見方をする日本国民が非常に多いんです。ソ連とか日本の周りの国もそういうふうに見ている国は結構あると私は思う。これが今の実態じゃないかと思うのです。したがって、日本政府として言えることは、この持ち込ませないは正真正銘、決して裏表のないものだ、文字どおり持ち込ませないでいくんだ、だからソ連の日本に向けた核はやめなさい、これは日本の立場としてソ連と話ができると私は思う。これは決してただ単なる高邁な理論じゃなくて、今の差し迫った問題として話ができるし、やるべきだ、こう思います。  NATOにおいても、つい最近、INF撤廃条約締結の後NATOの会議がありましたが、西ドイツとイギリスやフランスやあの辺のNATO内でいろいろなまたINF撤廃後の話し合いが行われていますが、西ドイツのコール首相あるいはまたフランスのミッテラン大統領あるいはイギリスのサッチャー首相、こういう人たちは、アメリカとソ連のこの交渉はそれとして、しかし自分たちも大いにソ連と話をしましょう、ヨーロッパの平和と軍縮のための話をしようというふうな段階へ今もうヨーロッパは来ていると私は思う。日本もそれをやってどうしていけないのか、まさに日本もそれに負けずにやるべきではないか、こう思いますが、大臣、いかがですか。ただ単なる高邁な理論じゃない。現実の問題、いかがでしょう。
  29. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 NATO諸国は今度のグローバル・ゼロに関しましても非常にいろいろな意見を持っておられるということはもう委員も御承知のところだろうと思います。やはり日本だけではなくして、西側陣営がこうしたことに対してどういう意見を持っておられるかということも常に大切なことでございます。  したがいまして、私たちもいつも研究をしておるわけでございますが、特に、最初、ソビエトのSS20が全廃されるということに関しては日本以上にNATOが一つの意見を挟んだということも聞いております。そういう面も多々あったのではなかろうかと私は思います。したがいまして、一時物議を醸しましたけれども、アラスカにもアメリカの中距離弾道弾を置いてほしいね、これはアメリカ自体の政策であったわけでございますが、グローバル・ゼロ、欧州をゼロにするんだったらアジアもゼロということで今回実現したわけでこざいまして、やはりそこが多少なりともNATOとまた我々の立場が違うのではないだろうかと私は思います。  もちろん核の持ち込みに対しましては断固として反対である、三原則ありということはあまねく私たちがソ連にいろいろな接触をするたびに知っていてくれることであります。したがいまして、そうした面におきましては常に話も伺いつつ、また我々としても独特の外交の場においてはそうしたことには触れる場合もあるわけでございますが、それだけを一つ主目的としてというようなことになりますと、やはり今日の日本の立場からなかなか我々といたしましても、当然のことでありますけれども、もう少しく慎重に配慮しなければならないことがある。  なぜかならば、ソ連は現在バックファイアが相当たくさん増強されております。太平洋艦隊も増強されております。そういうことに対しましては、もちろん我々といたしましては一つ懸念を有しておるということは申し上げておるわけでございます。したがいまして、核自体に関しましてもそれはSS20のときに十二分に、直接ではないけれども、その話はソ連に対しましても、日本の主張というものがあったということは伝わっておるのじゃないか、私はかように思います。  いずれにいたしましても、安保条約というものを中心として考えました場合に、私たちは直接ソ連に対して、アメリカに対しましてはこれはお互いの信頼関係で今日までがっちりと、アメリカも非核三原則が存在することに対しましてはよく知っておるということで忠実な実行をやっていてくれますから我々といたしましては安心をいたしておる次第でございますが、やはりソ連に対しまして表向き、あなたのところはバックファイアあるいはまた太平洋艦隊の増強、そういうことにつきましては私たちは言うべき機会にはきちっと話を申し上げなければならない、かように存じております。
  30. 高沢寅男

    高沢委員 じゃ、NATOと違うアジア太平洋における日本という立場でひとつお尋ねをしたいのです。  アジアには中国という核保有国があるわけですね。ヨーロッパはアメリカ以外にイギリスも核を持っている。フランスも核を持っていますね。今度の核軍縮交渉の中でイギリスやフランスは、おれたちの核は独自の核だ、だからこの軍縮交渉とは別だ、こういう立場をとっていますが、そうはいっても、じゃイギリスの核は一体どこを向いている、フランスの核はどこを向いているといえば、これは明らかにやはりソ連の方を向いていると思うのですよ。したがって、イギリスやフランスの核は結局、つまるところアメリカの核の補充物というかあるいは附属物というか、そういう程度のものにしかすぎないと私は見ています。  それに対してアジアの中国という核保有国はどうか。この中国の核は一体どこを向いているんだ。大臣、どう思いますか。中国の核はアメリカを向いているのか、ソ連を向いているのか、日本を向いているのか、どこを向いているか。まだ中国はどこに向けていると言ったことはありませんね。したがって、そのことを文字どおり受け取れば、中国の核の性格は一応全方位である、こう見ていいと思う。中国の核は決してソ連の核の附属物ではない。  その中国が核保有国として、核の軍縮の問題をこのアジア太平洋で出しましょう、そしてアジア太平洋の非核の体制、非核の安全保障体制をやりましょうというふうに出てくることがもしあれば、そのときは当然日本というものがその中国とがっちり組んで、それでアジア太平洋の非核体制、安全保障体制というものを進めていくという、まさに日本はその立場に立たなければならぬ、立つべきだ、私はこう思います。  そうすると、さっきはソ連ということで話しましたが、それじゃ中国に対して、大臣、あなたが宇野外交として、米ソ米ソでやっているが、世界はあれだけに任せてはおけない、今度は我々もアジア太平洋の核軍縮の問題を外交課題としてひとつ出していこうじゃないかという提起をされたらいかがでしょう。決してアメリカのコピーではない日本の独自の外交活動ということで、私は大変歴史に残るものになるのじゃないのか、こう思いますが、大臣いかがですか。
  31. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 中国には中国の政策があることは十分私たちも承知しておりますし、また核保有国であるということも承知しておりますが、我が国に仮想敵国がないと同じように、中国も、だからといってどこか向いておるというようなことは絶対におっしゃらない、かように思います。  したがいまして、現在も中国と我が国関係は、平和友好条約あるいは四原則、共同声明、そうしたことに盛られておるところで私たちは非常によい関係をつくっておりますから、我々が今、日米安保がある、アメリカと中国もよい関係である、しからば中国ともそういうような関係はとおっしゃることは、意味はわからないではありませんが、今それよりももっと大切なことがあるのではなかろうか。  もう現に私たちは、歴代内閣と中国の領袖とがお会いになられますと、日中は不戦でございますというような誓いを立てながら、ではそれ以外の問題で協力をしようじゃございませんか。あくまでも四原則なり平和友好条約の線に沿ってやっておるわけでございますので、私は、そこまで今我々としてお互いにしなくてもいいのではなかろうか。今のまま、お互いに不戦の気持ちを抱いておるわけだからということで平和友好条約をきちっと守る、ことしはたまたま十年目でございますから。この間、平和友好条約の中には、ひとつお互いは永久に平和友好でなくてはならぬということがうたわれておるから、私としてはもちろんこの条約は継続すべきであるし、しかもこれは永遠と書いてある以上は我々日本は永遠を望む。ここまで言っておるのでございますので、私はそこまで進むのがよいか悪いか、現在ではまだ早いというような感じがいたします。
  32. 高沢寅男

    高沢委員 私は、今の大臣のお答えですけれども、そう遠くない将来に必ずやアジア太平洋のそういう非核体制あるいは平和安全保障体制をどうするか日程に上るときが来ると思う。そのときは当然日本も、そして中国も大きな役割を果たさなければならぬ。必ずそうなると思う。もちろんそこへ今度は米とソも入ってくることに当然なるわけですが、そういう時代が必ず遠くない将来に来ると思うので、ここで宇野大臣から、私がやってみるというお答えが出なかったのは大変残念です。  次へ進みたいと思います。  話題は変わりますが、さっき大臣言われましたが、米ソ核軍縮は確かに進行しておる。しかし一方、日本との関係で言えば、先般国防総省が発表した長期戦略報告書、この中では、アメリカは新しい戦略体制をつくる。その新しいというのは高度の技術を駆使して、しかも小回りがきく、そして少数精鋭、そういう性格を持った戦略体制をつくる。したがって、核の扱いにしても地上配備の巨大なミサイルというふうなことではなくて、むしろ海上あるいは海中あるいは空から、そういうふうな非常に機動性のある核を主体にする、そういう段階にこれから移行するんだというふうなことをアメリカとして発表しているわけであります。  私は、これがそうなっていくと、今度はますます日米関係で、日本アメリカに対する防衛協力、防衛分担というものが強く求められるという段階が既に現に来ているわけですが、ますますそれが強まる、こう私は思うわけですが、この辺の大臣の御所見はいかがですか。
  33. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 具体的に申しますと、この間アメリカの下院議員でシュローダーさんという女性の方が、日本とかヨーロッパとかいわゆる西側陣営、これに対しまして防衛分担に関する話にずっと回られました。そのとき私は次のように由しました。いかに申されましょうとも、我が国にはやはり憲法というものがございます。したがいまして、我が国は、経済大国になりましても軍事大国にはならないのであります。これが第一点。  二番目には、東南アジア等におきましてはかつて戦場と化したということがございますから、我が国経済大国になっただけで軍事大国になるのではないかという危惧の念がASEANを初め東南アジアにいっぱいございますから、そういう面から見ましても、私たちは節度ある防衛はいたしますけれども、めちゃくちゃな軍事大国ということは到底できません。その点だけはよく御了解ください。  こういうふうに私は率直に意見を交換いたしておきましたが、シュローダーさんも、おおむね、憲法だけだと思っていたが、やはり日本の過去という歴史を考えた場合に今の御発言は重要ですねと、そのような感じ方で帰っていただきました。したがいまして、アメリカの肩がわりをするということは私たちとしてはあり得ない。我が国我が国独自の判断に基づきまして、自主的に節度ある防衛力の整備、これを私たち一つのモットーとして今後もその体制は崩さない、こういう決意であります。
  34. 高沢寅男

    高沢委員 私は、そのところが日本外交政策なりあるいは日本の国内政策として今出てきている最大の問題だと思うわけなんです。一九七八年、あの日米のガイドラインがありましたね。あのガイドラインを受けて、その後日米の共同作戦計画の研究が行われてきておる。これは現に行われてきていますね。それからシーレーン防衛力の研究、これも日米間で行われてきておる。あるいはインターオペラビリティー、いざというときの日米軍の部隊や施設の相互運用性の研究、これも日米間で盛んにやられてきておる。  こういうふうな研究、これは建前は日本の平和と安全を守るために、あるいはアジアの平和と安全を守るために、こういう建前でありましょうけれども、この研究がもうどこまで来ているのか、どういうふうなものが既に日米間で合意ができているのかというふうなことは私たちには全くわからないのですよ。国会議員が何にもわからぬということは、日本国民は何にもわからぬ、こういう状態ではないかと思います。そしてふたをあけてみたら、何だ、もうそこまで来ていたか。そのときはもう引き返しできないというふうなことがもしあったら大変だ、私はこう思うわけですが、それの一つの例として米軍の有事来援問題、これがこの国会では、予算委員会から始まってずっと今審議されています。  最初、予算委員会でその問題が論議された段階で、防衛庁なり政府側の答弁はこういうことを言っていましたね。WHNS、その問題と有事来援は関係ございません。そういうことを検討する考えは日米とも全くありません、こう答えている。日本アメリカにWHNS研究を申し入れていません。そんな話は日米のいずれからも出ておりません。あるいは有事立法、そんなものは先走った議論です。そんなものをやる考えはありません、こういうことが盛んに予算委員会政府側から、あるいは防衛庁の責任者から答弁された。  ところがそれに対して、八六年度のアメリカの国防総省報告書というものが指摘をしている。その中にWHNSの可能性ある研究について日米防衛協力のための指針は取り決めてある、こういうふうにアメリカの国防総省の報告書の中にある。あるいは、公式かつ拘束力のある取り決めは、日本で有事立法が可決されて初めて可能となるというふうなことが八六年のアメリカの国防総省の報告書の中にあるじゃないかということが国会で、うちの上田哲議員から指摘された。  この指摘をされたら、それまでそんなことはありません、考えていません、何もありませんと言ってきた当局が、今度はばらっと態度を変えて、それを指摘されると、いわば言い逃れはできないから、瓦防衛庁長官と西廣防衛局長は、今度は二十六日の衆議院予算委員会でどう言いましたか、この研究の結果あるいは過程で日本の戦時受け入れ国支援、WHNSの問題も出てくると考えます、こう言っておる。あるいはまた、新たな国内的措置あるいは協定が必要となる場合も当然出てくる、こういうことを答えている。  つまり、これはWHNSもやりますよ、あるいは有事立法もやりますよということを今度は開き直って答えておるということなんですが、私はこういう当局の態度、つまり国会では、ありません、ありませんで通るときはそれで通ってしまう、口をぬぐって知らぬ顔して。だけれども、ありません、ありませんで通れなくなったら、今度は開き直って、いやそれもやりますよというふうな形で出てくる。そして、そのやりますよの内容はまことに重大ですね。  今の例は防衛庁の例ですが、外務省当局もそういうふうな形で国会を適当に済ましていけばこれでいいんだ、おれたちはやることはひそかにやっていくんだというような態度がかりそめにもあったら重大だと私は思います。こういう点は外務省を統括される最高の外務大臣として、一体そういうあり方でいいのか、この点をまず御所見をお聞きしたいと思います。
  35. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今おっしゃいましたように、日米防衛に関する指針、ガイドラインというふうに呼んでおるわけでございますが、それに従いまして防衛庁は今度の有事来援の勉強をしたい、これは指針の枠内である、こういうふうに外務省は常に申し上げておるわけであります。  それで、その指針の枠内であるが、研究の結果がどうなるのかということになりますが、ガイドラインによりましては研究の結果が両国の予算並びに立法あるいは行政措置を拘束するものじゃありません。研究の結果が出たから予算を組めとかあるいはまた法律をつくれとかいうものじゃございません、こういうふうな解釈を申し上げてきたわけであります。  そのときに有事立法というお話が出てまいりましたが、今度の有事来援はあくまでも日本有事でございますから、第五条に基づくところの日本有事の研究でございます。しからば、その場合の有事立法なるものはどうしてやるんだ、こういう質問になってきたわけです。しかし、指針そのものにおきましては、一般論として指針には必ずしも立法的措置をとるべしと――拘束されません、こう書いてあるわけですから、そういうものではありませんよという説明をしてきたのでありますが、防衛庁といたしましては自衛隊に関する有事立法は既に勉強いたしております、こういうふうに答えたわけでございます。  上田議員の方からは、さらに、有事のとき来援を求めようとするのならば、有事立法がなかったならばアメリカは派遣しないが、有事立法を今からしなくちゃだめじゃないかというような話になってしまいまして、どうもそこら辺が、私も少し整理整とんをいたしますと、ああ、三段跳びで言うのならば今駆け出したばかりであって、これからどれだけ跳べるかわからないし、二段、三段跳ばなくちゃならないが、今三段目の話を既にしてしまっておるなというふうな感じもなきにしもあらずだから、いろいろと議論が混乱しましたので、上田委員に対しましては、有事来援という問題からはいろいろな問題が出てくることでございましょうからひとつ勉強させてください、その時間を与えてください、こういうことでこの間は一応予算委員会はその段階は終わっておるような次第でございますので、外務省といたしましては、五条の解釈を変えたり安保条約の解釈を変えたりしておる点は全くない。  また、防衛庁も常に我々といろいろ意見を交わしておりますので、西廣防衛局長が言ったことも、すぐに、とっぴなことを言っておるわけじゃない。一般論としての質問に対しては一般論で答えておった。だから、そこら辺が非常に混同した面もなきにしもあらずだったな、この間も私は上田さんにそう言ったのです。ちょっとすれ違いが多うございましたねということを私は直接御本人にも予算委員会で申し上げましたが、外務省といたしましては、今回の有事来援の研究はあくまで日本有事の五条のお話であって、その結果に関しましては両国は必ずしも、必ずしもというよりも、両国は予算的あるいは立法的、行政措置的な拘束を受けない、こういう線で私たちもやっていきたいと思う次第であります。
  36. 高沢寅男

    高沢委員 先ほど私が指摘しました西廣防衛局長の発言では、つまり新たな国内的措置なり協定なりが必要となる場合も当然出てくると思う、これはそのときは有事立法をやりますよということなんですよね。大臣は今、そういうものは何もやるという制約を受けないんだ、こういうふうなお答えですが、一体どちらなんですか。大臣のお答えが正しいと三……。このいわゆる有事来援は、これも論理上、今三段跳びとおっしゃったけれども、まさにそのとおり。有事来援、そのための事前集積、それにWHNS、そして有事立法、これはもう本当に鎖でつながった、論理的な帰結はそこまでいくわけです、本当に有事来援をやるとすれば。そのときに、有事立法はありません、ただ単に研究はしているけれども有事立法はありません、あるいはアメリカの来たものに対する日本からの支援、そういうことはありません、こういうふうに大臣お答えになるのか、ひとつはっきりしてください。
  37. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 詳細はまた、その当時問答に加わっておりました条約局長が整理整とんして申し上げると思いますが、一般論とそして有事来援の研究とがいろいろと議論上絡み合ったということは今申し上げたとおりであります。また、お互いの質問、答弁がすれ違ったという面もあったんじゃないか、私みずからがそういうふうに答弁いたしておりますが、一般論から申し上げまして、当然自衛隊に関する有事立法というものは、自衛隊そのものにおきまして、防衛庁においてただいま研究いたしております、こういうふうに西廣君は申し上げておるわけでございます。  さらに、第六条になりますと御承知のとおりに極東有事ということが出てまいります。これも研究の結果極東有事を勉強しようというのじゃなくして、研究は研究でございますよ、しかし一般論から申し上げれば極東有事ということに関しましても勉強することは普通でございましょうねという答えはやはり我が外務省からも申し上げておるので、それが研究の結果そこまでいっておるじゃないかというのじゃなくて、勉強会というものそのものと一般論と法律解釈というものとの間の関連が非常にこの間は交錯してしまったんじゃないか、私、さように考えております。  したがいまして西廣君が申し上げておることは決して間違ったことを申し上げておるわけじゃない、一般論として申し上げたことである、こういうふうに御理解賜ればいいと思います。
  38. 高沢寅男

    高沢委員 一般論、一般論と大変煙幕を張られますが、しかしそれじゃ具体的にこういうことをお尋ねしましょう。  そういうふうに軍事的体制をどんどん進めておる政府、特に防衛庁、それと日本国民国会との間に非常に大きなギャップがある。我々の知らない間にどんどんやっておる、既成事実をつくっておるということの心配がある。  もう一つは、防衛庁の当局外務省一体この間に果たして本当の連携、合意があるのですか。私はそれも心配なんです。外務省が知らぬ間に防衛庁が走って既成事実をつくりました、外務省は後から外交上の措置でそれを始末をつけなければいかぬ。  今度一月、瓦防衛庁長官はアメリカの国防長官と有事来援の研究をやりましょうとこちら側から問題を出したというのですね。こちら側から出した。このこちら側からその問題を出すというのを外務大臣、あなた御承知だったですか。いかがでしょうか。それを答えてください。
  39. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 防衛庁とは随時緊密な連絡をいたしておりますから、防衛庁におきましてそういう意図を持っておったということは私も承知いたしております。
  40. 高沢寅男

    高沢委員 新聞によれば、そのことは竹下総理は十分知らなかった、後でびっくりした、こういうふうに報道されておりますが、この辺の事実は大臣からお答えできるかどうかはわかりませんが、その辺はいかがなんですか。
  41. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 外務省と防衛庁はさようでございましたから、防衛庁の方の総理に対するブリーフがどのようになっておったかということは私たちはすべてを知っておるわけじゃございませんが、当然防衛庁といたしましてはブリーフをしておるのではなかろうか、こういうふうに考えます。
  42. 高沢寅男

    高沢委員 私は、今度の有事来援、それから事前集積、それからWHNS、それから有事立法、こういう一つの論理のこれを見たときにぱっと頭へ浮かんだのは、かつてこの国会で三矢作戦計画というのが論議されたことがありますね。我が党の先輩の岡田春夫さんという方がその問題を追及されたわけですが、この仕組みはあの三矢作戦計画と何だ結局同じじゃないかと私は思ったわけです。そして、そういうことが防衛庁当局によってどんどんと進められておる。しかも今度は防衛庁部内でやっておるだけでなくアメリカとやっておる。これが問題の重大性をもっと大きくしている、私はこう思うのですが、そういうふうなことがどんどん進行していって果たしてこれでいいのか。それが進んでいった後を今度は外交が追いかけるというふうなことになるのじゃないのか。  我々の絶対に忘れることのできない教訓は、この前の第二次世界大戦、あれは軍部が走ったでしょう。それこそ関東軍あり、関東軍でなくとも軍部が走って、そして戦争状態を満州でつくる、あるいは中国でつくる。近衛内閣とか当時の日本の内閣は、その軍部のつくった既成事実を後で追いかけて結局それを糊塗していって、最後は太平洋戦争に突入したということでしょう。私はこの教訓を二度と繰り返してはいかぬ、こう思うのですが、どうも今の動きはまたあの形をやる方向へ来ておるのではないか、こう実は思わざるを得ないのです。  したがって、もう間に合わなくなってからこれはとめなければいかぬと言ってもだめですよ。だから、間に合ううちにこういうことをとめなければいかぬのです。それにはやはり総理大臣あるいは外務大臣のまさにシビリアンコントロールの大きな力を発揮してもらわなければいかぬ、こう思うし、同時に事柄全体を我々国民の前へ明らかにしてもらいたい、国会に明らかにしてもらいたい、こう思うのです。  そういうことから、大臣の御決意をお聞きしたいということと、それからこのいわゆるガイドラインによって今まで日米間でいろいろの共同研究がなされてきた、その共同研究はこういうことでやっています、ここまで来ておりますということはぜひこの国会へ出してもらいたい、こう私は思うのですが、いかがでしょうか。
  43. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 戦争外務省ということになりますと、今高沢委員が申されましたとおり、第二次世界大戦におきましては確かに軍部が走り過ぎて政治が後を追っかけてという形跡は明らかでありますが、外務省といたしましては独特の和平工作をなし、常に戦争に対し反対の態度というものを一部の人たちがとり続けたということは大きな物語として残っております。私自身も学徒出陣兵でございますから、そのことを常に旨として外交はあらねばならぬと思っております。特に、我が国におきましてはシビリアンコントロールを大切にしなくてはなりませんから、当然防衛庁長官もしっかりしていただき、直接の指揮者である総理大臣も殊のほか防衛には関心を持っていただかなければならない、かように存じておりますが、外務省といたしましても十二分に今申されました趣旨を我々は尊重してやっていかなければならぬ、こういうように考えております。  なお、資料に関しましては、これは日米間のことでございますから、どういうふうに公開すべきかすべからざるか、いろいろ問題もございましょうから、私が今ここで承知しましたと言うわけにもまいりませんので、こういうふうな御趣旨であったということだけは私は関係者に伝えておきたい、かように思います。
  44. 高沢寅男

    高沢委員 では、その資料の要求については留保しておきたいと思います。――何かありますか。
  45. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 二つございまして、一つはもう十分御承知のことであり、何度も指摘されてまいったことでございますけれども、この指針のもとで行われておる研究の内容というものはまず日米安保協議委員会に報告されまして、これがいかなる内容になっていくかは別として、そこに取り上げられてそれぞれの政府に報告される。それをどうするかというのはまずその政府の判断による。加えてさらに、この研究というものは立法、財政あるいは行政措置ということでいずれの政府をも拘束するものではないということになっておるわけでございまして、このことについては、これまた念のためでございますが、米国もきちっと認識いたしております。  と申しますのは、先ほど先生が御指摘になりました米国の国防省が一九八六年に出しておりますあの報告の中でも、一方でこの研究というものはいずれの政府も拘束されるものではない。それからさらに、同じところでございますけれども、有事の際にどういう援助が可能なのか、どういうことによって可能なのかということについて理解を深めることが目的になっているということでございまして、私が最初に申し上げましたまさに指針のもとにおける研究の枠組みの中でなされていくということについて日米の間に完全な理解が存在すると思います。  それから、もう一つ、従来共同作戦、インターオペラビリティー、シーレーン等につきましては、今お話しいたしました枠組みの中で研究が行われてきていて、事柄の性格上公表はされておりませんけれども、まさに文民統制、先ほど大臣が言われましたその枠組みの中で処理されてきたものであるというふうに御理解いただきたいと思います。まさに、事柄の性格上公表はできないものであるけれども、その研究は今私がお話しいたしましたような手続的な枠組み、理論的な枠組みの中でなされてきている、こういうことでございます。
  46. 高沢寅男

    高沢委員 もう時間がわずかになりましたから、もう一つは、さっき大臣中山委員に対するお答えの中で、フィリピンのアメリカの基地の賃借料、そんな話がアメリカで出たけれども、アメリカ政府も本気じゃない、だれか議員が質問したんだ、こういうお答えですが、そういうふうにとらえれば、ああいうことは絶対我が国の側からしてない、肩がわりにその金を出すとかということは絶対にない、こういうふうに確認してよろしいですね。
  47. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 昨年の外務委員会で同様な質問が出ておったと思いますが、あくまでもアメリカとフィリピンの問題でございますから、日本がくちばしを入れる問題でもなければ肩がわりをする問題でもない、こういうふうに私たちは思っております。
  48. 高沢寅男

    高沢委員 あともう時間がわずかですが、大韓航空機の問題を一つお尋ねしたいと思うのです。  まず大臣、例の大韓航空機が十一月二十九日に行万不明になりましたね。私は行方不明になった、こう言っておきましょう。爆破されて落ちたのか、故障で、事故で落ちたのか、とにかく落ちた機体がまだどこにあるかわからぬ、こういう状況のもとで、果たしてこれでもって爆破されたという状況認定ができるのかどうか、まず大臣はどうお考えでしょうか。
  49. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 まず、にせパスポートを発見したのが我が国在外公館の職員であった、これがなければ大変なことだったと思いますが、まず発見した。だから、すぐにもう一人の男性は毒をあふって即死をした、それでもう一人の女性も毒をあふらんとしたが、バーレーンの警官が飛びかかってそのたばこを打ち落としたものですから意識を回復した、こういうふうになりますから、まず我が国といたしましても、そういう事態を目撃いたしております。  二番目には、いわゆる当時真由美と言われた女性を韓国に第一義的に、大韓航空機が落ちて大勢の人が死んでいまだ機体も遺体もわからないけれども、落ちたということは事実である、どこかに落ちたんだろう、そういう判定のもとに第一義的には、パスポートも大切だけれどもやはり多くの犠牲者を出した韓国にこの人の身柄がお送りされる方が普通であろう、こういうふうに思っておりましたら、バーレーン政府もそのように判断して韓国にお渡しした次第でございます。  特に、朝鮮半島の南北間は緊張が続いていると思いますし、そうしたデータに関しましては、やはり韓国捜査当局のデータというものは相当なものだろうと私たちも思いますが、特に我が国からも課長一名派遣いたしまして、そして真由美と出会わせましていろいろと直接話を聞いております。  そういうすべての問題を私たちは総合的に判断いたしまして、テロを起こしたのは北朝鮮である、こういうふうに申し上げたわけであります。特に、韓国におきましては、北朝鮮問題に関しましても、去る大統領選挙では強い意見を言われる方よりもむしろ皆がやわらかな意見を申されて、早く南北統一だということを主張されておったと思いますが、そのような与党、野党にしてこの問題に関しまして異を唱える人は韓国においては本当に極めてまれであるという客観的な情勢もございます。そういうような諸般の情勢を判断いたしまして、またアメリカからもいろいろ有力な情報もございましたので、我々といたしましては北朝鮮の犯行である、こういうふうに認めた次第であります。
  50. 高沢寅男

    高沢委員 例え話で言えば、大臣、ここに私は人を殺したという人があらわれてきた。私は犯人です、こういう人があらわれてきた。当然、ではあなたどうやって殺したのと聞くでしょう。その殺した人の遺体をどこへ捨てたのと聞くでしょう。殺した凶器はどこへやったのと聞くでしょう。それから、どこへ捨てたとか、こうやってピストルで殺したとか等々のことを、死体を実際発見して、ああ本当にピストルで撃たれて死んでおるとか、その人の言った場所に本当に死体があったとかいうことが確認できて初めてこれは殺人事件になるのでしょう。そういうものが何もない。ただ私は殺しましたと言っておる。これで殺人事件になるのかどうか。私は今の問題はそういう性格じゃないかと思うのです。  それで、大変不思議な事件ですが、十一月二十九日にこの飛行機は行方不明になった。わからなくなった。韓国当局はそれからわずか三日の十二月一日にもうこれは北による爆破であるということを発表した。  問題は、自白をした金賢姫というあの女性が韓国へ行ったのは十二月十五日です。十二月十五日に韓国へ行って、私がやった、私が爆弾を仕掛けたと。まあ自白をしたかどうか知りませんが、いずれにせよ、そのはるか前の十二月一日にもうこれは北の爆破であるということを韓国が発表したということは、今度の事件は初めに答えありき、こういう性格ではないか。  問題は、その答えが本当にそうであるかどうかは機体が発見されて、乗っていた人が本当に死んでいるのかどうかということが確認されて初めて私は確認できると思いますが、あの前に南ア航空機が落ちましたね。四千メートルのアフリカの深い海の中にあるものが結局発見された。今度の大韓航空機は、落ちているとすればビルマの沖の海ですよ。これは深いところでも二百メートルだそうです。四千メートルの海底から発見した技術があって、二百メートルの海からはその飛行機がどこにあるかわからぬ。これも大変不思議な事件だ。わざと発見しないのかな、あるいは発見しても黙っているのかなという感じもするのですが、南ア航空のときはアメリカも捜索に協力しました。今度の大韓航空の場合は、韓国当局も当然発見のための努力をされていると思いますが、今は一体やっているのでしょうか。韓国当局は次々と発表するけれども、落ちた飛行機を捜すのを一体やっているのかどうか。この辺は一体どういうふうに掌握されていますか。
  51. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 機体の捜索の点でございますが、これは御承知のとおり、この大韓航空機が行万不明になりまして直ちに韓国はもちろんのことタイ、ビルマの関係当局が捜索活動を続けられた。現在のところはもう続けられていないというふうに承知いたしております。
  52. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、結局見つからぬ、このまま終わり、幕引きということになるのですか、発見の努力をしないで。日本も、北の犯行だとさっき大臣おっしゃった、そういう判定に立って北に対する制裁措置をやっていますね。それなら日本にも、その機体を発見して、確かに北が爆破したということを事実で確認する一つの道義的な責任があるのじゃないですか。日本も大いにその捜索に参加したらどうですか。いかがでしょう。
  53. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 私ども、日本アメリカ、韓国はもとよりでございますが、これが北朝鮮の組織的なテロ行為の結果であると判定をいたしましたのは、先ほど大臣から御説明申し上げましたように、種々の資料を総合的に判断をした結果確信するに至って措置をとったものでございます。  それから、第二番目の捜索の点でございますが、捜索の点は委員も御承知のとおり、いわゆる機体とか遺体のたぐいは発見されておりませんけれども、この物件と申しますか、救命ボートのようなものがビルマの当局によって発見されて韓国側に引き渡されているというのは御承知のとおりでございます。  それから第三番目に、冒頭おっしゃいました二日ぐらい後にすぐ爆破だという発表をしたというお話でございますが、これは大韓航空機が行方不明になった状況が非常に異常な消失の仕方であるということで、大韓航空機が行方不明になりましてすぐ私どもが調査を始めましたのは、実は乗客の中に邦人の方がおられるのではないかということで、邦人保護の点からすぐ捜索を始めたわけでございます。  調べました結果、行方不明になりました大韓航空機の乗客の中には邦人はおられないということだったわけですが、しばらくたちまして、行方不明になり方が非常に異常である、何らの警戒というか異常事態の発生を告げる通信すらしないで消失したということで、何かおかしな状況があったのではないかということで、アブダビでおりました乗客を調べまして、二人の日本人の名前を発見いたしまして、それを調査した結果、偽造パスポートの所持者であるということがわかった。そこでこの二人を捕まえることができたということでございまして、その過程で日本が爆破したということを発表したことはございませんが、消失、行方不明になり方が非常に異常だということは私どもも感じていたところであるということを申し上げさせていただきます。     〔委員長退席、浜野委員長代理着席〕
  54. 高沢寅男

    高沢委員 もう時間がありませんが、その状況が異常である、だから判断した。結局、状況判断ということじゃないかと思うのですが、ただ一つの明確な客観的なものは偽造旅券だ。その偽造旅券は日本の旅券の偽造でしょう。それならば今からでも遅くないですよ。韓国当局へ行ってその旅券を日本へ引き渡してもらう。十分調べる。まずこれをやるべきです。それから、今からでも遅くない、金賢姫を日本へ引き渡してもらって日本が独自に調べる。この二つは当然日本外交権としてやるべきじゃないか。  日本は主権国家です。本当はまず先にとるべきであったが、既に韓国へ渡してしまったというのはまことに残念であるが、しかしこれからでも遅くない。旅券をこちらへ渡してもらう。金賢姫を日本へ渡してもらう。これは要求すべきじゃないですか。大臣、いかがですか。
  55. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 第一点の偽造の旅券しかないとおっしゃいましたけれども、偽造旅券は、本人の自白に加えまして、その自白に補充する意味で我が方の人員が直接面会したというのは先ほど大臣から御説明したとおりでございますし、本人の自白のみでなく、本人の言っております旅行経路の関係国のほとんどについてその足跡の裏づけを行っているということでございまして、決して偽造旅券と本人の自白だけで判断をしたということではございません。  それから、第二番目の引き渡しの問題でございますが、これは事件が十一月二十九日に発生しまして、当時いわゆる真由美と言われていた女性がバハレーンから韓国に引き渡されますまでの間に偽造旅券を持っているということ、それから、行方不明になりました大韓航空機との関連性等を総合的に勘案をいたしました結果、我が国としては、事柄の状況にかんがみてこの女性の身柄の引き渡しは求めないという決定をなされたわけでございまして、現在もその決定が生きているというふうに考えます。
  56. 高沢寅男

    高沢委員 決定は変えればいいじゃないですか。決定を変更して身柄を求めればいいじゃないですか。大臣、なぜ求めないのですか。私、もう時間が終わりですからこの一問で終わりますが、大臣にお答え願いたい。大臣、なぜ求めないのですか。求めてよりよく事態を調べたらいいじゃないですか。
  57. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 旅券の偽造の点につきましては、御承知のように、捜査員を警察庁から派遣をいたしまして捜査を行っている次第でございます。
  58. 高沢寅男

    高沢委員 韓国の当局の、要するに手のひらの中での捜査だと私は思う。そしてそれをよりよく事態を解明するには、問題の金賢姫を呼び、その問題のパスポートをとって日本独自に調べる、これでよりよい判断が出てくる、私はこう思いますが、どうしてもしたくないようで、一体だれに遠慮してしたくないのかわかりませんが、まことに不可解であるということを申し上げて終わります。
  59. 浜野剛

    浜野委員長代理 神崎武法君。
  60. 神崎武法

    神崎委員 初めに、南ア問題からお尋ねをいたします。  さきに四党の国際局長主催で反アパルトヘイトの映画「遠い夜明け」を国会内で上映をいたしました。大変な反響を呼んだわけでございます。私自身もこのアパルトヘイトの実情につきまして映像を通じて見まして、改めてこの「遠い夜明け」を本当の夜明けにするためにいろいろ考えなければいけないなということを感じた次第でございますし、日本がその先導的な役割を果たすべきであると痛感した次第でございます。  外務省でもこの映画を上映いたしまして大臣もごらんになったと伺っておりますけれども、大臣のこの映画に対する感想と、反アパルトヘイトへの御決意を伺いたい。
  61. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 非常によい映画だったと思いますし、あの映画の時代は今を去る十年前の時代で現在はもっとひどい、こういうふうな説明外務省局長から受けておりますので、余計その思いを深くした次第でございます。  我が国といたしましては、あくまでも人種隔離、アパルトヘイトには反対である、このことは常に申し上げてまいったところでございます。
  62. 神崎武法

    神崎委員 八七年の対南ア貿易額は四十一億二千万ドルと最大の額になって米、英、西ドイツを上回る世界一になったということが言われているわけでございます。円高のためにこうなったということを言う方もおられますけれども、円表示でもほとんど変わらないということでございまして、どうあれ我が国経済制裁の効果が上がっていないということは間違いないと思うわけでございます。  これは我が国にとってもまことに不名誉なことであると思うわけでございますが、大臣が経団連に自粛要請をしたということが伝えられております。それは大変勇気のある行動であると私は評価したいわけでございますけれども、果たしてその自粛要請によって実効ある対応がなされているのか、あるいは自粛要請に具体的な内容があったのかどうか、さらに、取引額減額の要請まで含まれていたのかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  63. 恩田宗

    ○恩田政府委員 先月二十六日、経団連の幹部を外務大臣がお呼びいたしまして、南ア問題以外も含めましていろいろな国際経済問題のお話をなさいました。そのときに大臣の方から経団連幹部にお願いをいたしましたのは、南アと日本との間の貿易がドルベースにおいてことしもまた昨年よりもふえるとか昨年と同じような金額にとどまるということであるとすれば、日本としては国際的に大変困難な立場に立つであろう、対応が難しくなるであろう、かようなことをお願いいたしまして、経団連として今後貿易をやっていく上において自粛あるいはそれに対応した行動をとっていただきたいと、一般的なお願いをいたしました。  このようなお願いは具体的な行動についてのあれはございませんでしたが、財界、経団連あるいは各個企業が今後貿易を行うに当たって、そのような事実を十分念頭に置いて行動していただくことによって期待された効果が出てくるのではないかというふうに私どもとしては期待しております。
  64. 神崎武法

    神崎委員 ところが実際に取引額が減らない。それは経済制裁に抜け穴が多い、こういう指摘もあるわけでございますけれども、この機会に我が国政府としてさらに強固な経済制裁措置をとる、こういうお考えはあるのかどうか。
  65. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 経済制裁という言葉になりますと、いろいろこれ問題がございまして、実は安保理におきましても経済制裁ということが提案されましたが、我が国は実は棄権をしておるということでございます。  なぜ賛成しないかということになりますが、実のところは経済制裁そのものに踏み切ってしまいますと、やはり人口の多くを占めている黒人の方々の生活そのものがどうなるのであろうか、あるいはその職場を失うような結果も出てくるのではなかろうか。いろいろとこう考えてまいりますと、経済制裁そのものにはくみすることはできない。しかし今日まで、もう御承知でございましょうが、軍隊であるとか警察であるとか治安当局、そうしたものに対するところのコンピューターを初めいろいろなものは、我が国は輸出いたしておりません。  そうしたことにおきまして、私たちといたしましては、輸入、輸出それぞれいろいろ事情もあるかもしれません。だから、このことに関しましては、今も局長が申されましたとおりに、残念ながら八七年度は極端なドル安・円高、そういうような結果日本アメリカを抜いてしまったという結果を招いておりますが、本年度も同じような結果が出ては、本当にこれはだめである。要は、はっきり申しますと、日本は火事場泥棒するのか、こういうような批判が多いわけでございますので、私といたしましては、経団連の幹部諸公に対しましては、ことしは何らかの方途を考えながら、ぜひとも昨年の横ばいであってはならぬ、絶対下回ってほしいものだ、このことを申し上げまして、直接には通産省がそうした衝に当たるわけでございますので、通産省に対しましても私は十分話がしてあります。  したがいまして、田村大臣もそのことに関しましてはしばしば南アのアパルトヘイト反対の意向を明らかにして、やはりその実績を示さなくちゃならない、こういうふうに言っておられますから、経済団体と通産省と外務省、これが相寄りましていろいろな方法によってやっていきたい、かように考えておるような次第であります。  並びに、経団連は終わりましたが、近く同友会とも私はぜひとも同じようなスタイルの懇談会を開きまして要請をする所存でございます。
  66. 神崎武法

    神崎委員 南アからの輸入には白金、クロムなどの希少金属があるために業界としても難しい面がある、こういう点が言われているわけであります。産業界が恐れておりますのは、このレアメタルの禁輸などの対抗措置に出られると日本経済は麻痺するということで自粛にちゅうちょしているというのが実情であろうかと思うわけであります。  その意味では、南ア以外の国からの調達あるいは備蓄ということを顧慮しまして対抗措置にあらかじめ備えておかなければ、企業にこれを要請しても実効あるものには至らないと考えるわけでございますけれども、その点についていかがでしょうか。
  67. 恩田宗

    ○恩田政府委員 御指摘のとおり、希少金属が先端産業等に不可欠であって、政情不安定な国を含めまして非常に南アその他少数の国に偏在しているということは問題でございます。したがいまして、このような観点から、希少金属の安定供給確保のために昭和五十八年度以来希少金属の備蓄を開始しているというふうに承知しております。現在四十四日分の備蓄がもう既に確保されてございまして、昭和六十六年度には六十日の備蓄目標を達成させたい、こういうことでせっかく努力しているところだというふうに承知しております。
  68. 神崎武法

    神崎委員 ぜひ我が国の対南ア制裁が世界の非難を浴びないように大臣も御努力をいただきたいと思います。  このアパルトヘイトに関連をいたしまして、人種差別撤廃条約についてお伺いいたしたいわけでございますが、この条約は、一九六〇年三月二十一日に南アで開かれました反アパルトヘイトの平和的集会が政府の弾圧によって流血の惨事となった、これを契機に国連が一九六三年十一月に人種差別撤廃宣言を出して、一九六五年にこの人種差別撤廃条約が国面総会で探択され、さらに一九六九年に発効に至ったわけでございまして、現在百二十四カ国が参加しておりますけれども、我が国は参加していないわけでございます。  条約の趣旨、目的はいいけれども、処罰義務を課しているところが問題である、憲法が保障している表現、結社の自由等の問題、それから民主主義の原点である基本的人権を不当に制限すべきかどうかというところで検討中であるという政府のお考えのようでございますけれども、それでは現在参加している百二十四カ国は基本的人権を制限されている国々というふうにお考えになっておられるのかどうか、政府の御見解を伺いたい。
  69. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 現在この条約を批准しております百二十四カ国のうち、幾つかの国が加入に際しまして宣言をいたしましたり、あるいは国内法制を手直しする、あるいは立法するということで入っておりまして、それぞれの国の状況、社会的、歴史的状況に照らして処理しているというふうに考えております。
  70. 神崎武法

    神崎委員 私は、我が国がこの条約に加入していないことが、日本がアパルトヘイトなどの人権問題に熱心でない、こういう非難につながっているんじゃないかと思うわけであります。  処罰項目について、例えば今の御答弁にありましたように宣言をする、留保、保留をするというのですか、こういう方法も考えられないのでしょうか。それともこの問題をこのまま放置をされるお考えなのか。いかがでしょうか。
  71. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 この条約の批准に際しまして、一般論でございますけれども、条約の最も重要な部分につきましてこの義務履行のための国内的な手当てを行わないで留保するあるいは宣言をもって加入する、こういったことはできるだけ避けるべきである、こう考えているわけでございます。  これは御案内のように、先ほども御指摘がございました基本的人権とこの条約の要求しております処罰義務の調整の問題でございますが、この調整をいかにするかということは、大変長い時間かかって恐縮でございますけれども、大変難しい問題なものですから、これを鋭意引き続き検討しているということでございます。あくまでも、私どもといたしましては、この条約の趣旨にかんがみまして早期に締結したいと考えております。
  72. 神崎武法

    神崎委員 大臣はいかがでしょうか。
  73. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ただいま国連局長が申したとおりでございます。  しかし、先ほども予算委員会で同様の質問が出ましたから、憲法上の人権と処罰との問題のかかわりもあるだろうし、そのほか国内諸法制の整備という問題もあるだろうし、関係する省庁は極めて多いということでございますから、一度私自身も直接にこのことに関しまして、国会の御意見も次々と出ておることであるので、勉強しましょう、そうしてその結果どうするかということに関しましても私自身の判断を申し上げましょうということを言ったわけでございますから、ひとつ勉強する機会を与えていただきたいと思うのでございますが、現状といたしましては、一番難しいのは基本的人権とこの条約による処罰とがどういうふうに絡み合うか、これは大変な問題だと思っております。
  74. 神崎武法

    神崎委員 私はぜひ早期に加入するための環境づくりについて大臣に御努力いただきたいと要望する次第でございます。  続きまして、中東政策についてお尋ねをいたしますけれども、まずイラン・イラク紛争の問題でございますが、イラン・イラク紛争は長期化、泥沼化しているわけでございます。双方の首都へのミサイル攻撃合戦によりまして民間人にも多数の死傷者が出ている実情でございますけれども、邦人の安否、また現況はいかがでございましょうか。
  75. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 イラン、イラクにおきましては、このような事態を想定いたしまして、日ごろから大使館が在留邦人と緊密な連絡をとっておりまして、万が一のときにどういうふうに行動するかということのマニュアルなどもつくって対処いたしております。現在のところ幸い在留邦人の間には被害が出ていないわけでございまして、テヘラン、バグダッド、それぞれ主として郊外に一時退避するというような形で現在のところ乗り切っているわけでございます。  ただ、今後いろいろな事態も想定されますので、あらゆる場合に時間的に手おくれにならないように、私どもも現地大使館を通じて在留邦人と緊密な連絡をとりながら対処しているところでございます。
  76. 神崎武法

    神崎委員 ぜひ邦人保護に万全を期していただきたいと思います。  私も昔領事移住部に二年ほど在籍をいたしたものですから、この領事事務は大変邦人保護という大事な仕事であるということを現場で見て痛感した次第でございますが、大臣もこの領事事務についてぜひその重要性を再認識していただきたいと思います。  このイラン・イラク紛争の今後の見通しについてどういうふうにお考えになっておられますか。
  77. 恩田宗

    ○恩田政府委員 先生御存じのとおり、この紛争につきましては国連安全保障理事会が昨年七月二十日に決議案を採択いたしました。停戦し、撤兵し、捕虜を交換せよ、こういう決議案であります。ただいまのところは安全保障理事会のメンバーが中心になりまして、イラン、イラク両国に対して、この決議案の実施に向けて説得努力中でございます。具体的には、これを受け入れるようにという努力が特にイランに対して集中しているところでございまして、これについては宇野外務大臣からも昨年べラヤチ外務大臣に対して直接やっておりますし、その他あらゆる外交ルートを通じてやっているところでございます。  今後の見通しでございますが、イラン側はこの紛争はイラクが始めたものである、こういうことをはっきりと安全保障理事会がさせてくれない限り直ちに停戦、撤兵というのは同意しがたいということで、ここが問題になっております。しかし、イラン側に対しての国際的な説得努力というものは全く効果がないわけではない。最近はこの問題についても話し合いたいという雰囲気も出ておりますし、日本としては国連事務総長にさらにこのような努力を継続していただきたいというふうに考えております。なかなか難しい問題だと思いますけれども、これはこの努力を続けていく以外にない、かように考えております。
  78. 神崎武法

    神崎委員 我が国は先進諸国として両国に外交関係を有する唯一の国というふうに承っておりますが、ぜひこの紛争解決のために積極的な働きかけをお願いいたしたいと思います。  もう一つ、同じく中東問題で、パレスチナ問題についてお尋ねをいたします。  イスラエル占領下のジョルダン川西岸とガザ地区で発生しましたパレスチナ人のデモに対するイスラエル当局の過剰な対応が暴動へと拡大いたしまして、現在国際的な注視の的になっているわけでございます。イスラエル当局に対する国際的な非難の声も大きいわけでございますけれども、政府としては今回の事件の背景、原因をどう見ておられるのか。また、人道上の観点からこの問題に何らかの発言をお考えになっておられるのか。さらに、このパレスチナ問題解決のために積極的な外交国連その他の場で展開すべきと考えますが、御所見をお尋ねしておきます。
  79. 恩田宗

    ○恩田政府委員 この問題の背景でございますが、これは基本的にはアラブとイスラエルの間のパレスチナ地域の帰属をめぐる紛争でございます。我が国は従来からこの問題の解決のためにはイスラエルが一九六七年戦争当時占領したすべてのアラブの占領地から撤退すること、それから独立国家樹立権を含む。パレスチナ人の民族自決権及びイスラエルの生存権が承認されることによって、公正、永続的かつ包括的な中東和平が達成することが不可欠だ、このような立場をとってきております。  昨年十二月以来御指摘のとおり西岸、ガザで大変な騒擾事件が起こっております。これに対しましては、このような事件は極めて遺憾なことである、イスラエル政府の対応については遺憾なことである、かように考えまして、既に二度にわたりまして在京イスラエル大使を外務省に招致いたしましてイスラエル側の、イスラエル政府の自制を要請してきております。また、外務大臣から特に二月四日、イスラエルの対応に関する遺憾の意を表明するとともに、早く永続的、包括的な平和が得られるようにという希望を表明させていただきました。  現在シュルツ長官が和平提案を持ちまして関係国の説得に当たっております。いろいろな努力が行われております。私どもといたしましては、このようなあらゆる和平努力というものを側面からサポートするということと同時に、占領地におけるパレスチナ人の生活及び自由な行動の支援ということで国連を通じる援助等をやってまいりたいというふうに考えておりまして、本年度の予算でもその増額をお願いしているところでございます。
  80. 神崎武法

    神崎委員 次に、大変小さな問題でありますけれども、本人にとっては大きな問題でございますが、新婚旅行でハワイとかグアムに行く方が大変ふえているわけでありますけれども、シーズンになりますとアメリカ大使館にビザの発給申請が殺到いたしまして処理し切れない。そのためにやむなく新婚旅行を中止する、あるいは延期せざるを得ない、こういう例が大変多いわけでございます。  円高により海外渡航者は年々増大いたしておりまして、昭和六十一年で五百五十一万人、そのうちアメリカに百八十四万人、全体の三三%がアメリカに渡航しているわけでございます。六十二年も、推定数で総数が六百七十万人、アメリカは二百三十万人、三四%ということになっているわけでございますが、これらの地域に行く観光客はふえ続けておりますし、ぜひこの問題を解決するためにビザ発給に対して相互免除による渡航ができないものなのかどうか、アメリカとビザの相互免除について協議が現になされているのかどうか、なされているとするならば今後の可能性、見通し、これから結婚する方に明るいお話をぜひ答弁していただきたいと思います。
  81. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、我が国アメリカとの間におきましては最大規模の人的往来があるわけでございまして、私ども日ごろからこの問題については大変苦慮していたところでございます。まさに二月末になりまして、米国から我が国に対しまして正式に査証免除の取り決めの可能性を打診しております。現在、私ども政府部内で技術的な側面を中心にして検討中でございますが、基本的には今のようなこういう大きな人的往来のあるアメリカとの間でございますので、査証免除を実施することは一層の人的交流を促進するという上からも大変望ましいことだと考えておりますので、そういう姿勢で私どもも迅速に検討を進めたいと思っております。
  82. 神崎武法

    神崎委員 大臣、ぜひ早急に査証免除協定、査証免除ができるようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  83. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今政府委員が申したとおり、努力をいたします。
  84. 神崎武法

    神崎委員 同じく日米の問題で、今度は少しハードな問題でお尋ねいたします。  本年一月十九日の日米防衛首脳会議で米軍の有事来援の共同研究と武器技術の日米共同開発について合意がなされたということが言われているわけでございますが、武器技術の共同開発につきましては、FSX、次期支援戦闘機の共同開発を皮切りに、今後さまざまな武器技術の共同開発が行われることが予測されるわけでございます。また、二月十八日に米国防省が発表いたしました国防報告によりますと、米日欧の軍事技術協力の促進を強調しておりまして、米日欧の軍事技術の共同研究開発という問題も今後具体化する可能性があるわけでございます。  この点について、今後またじっくり議論をいたしたいと思いますけれども、簡単に外務当局のお考えを伺いたいわけでございますが、一つは、我が国は武器輸出三原則からいいまして、NATOなどと武器技術の共同研究開発はできない、このように理解しておりますが、その点はよろしいですね。
  85. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 武器技術についての協力は米国との間にだけ道が開かれているということでございます。
  86. 神崎武法

    神崎委員 その点は確認されたわけでございますが、それでは、日米共同で武器技術を開発した場合、この武器技術が米国を経由して第三国に移転する可能性というのは常にあるわけでございます。特に紛争当事国に流れる危険性があるわけでございますが、これに対してどのように歯どめをかけるかという問題がございます。  昭和五十八年十一月八日の対米武器技術輸出に関する交換公文によりますと、第三国への開発技術の移転については事前の同意が必要だということになっているわけでございますが、この事前の同意があれば第三国への移転も理論上は可能になるわけですね。ところが、武器輸出三原則の立場からいいますと、第三国への武器輸出は禁止されておるということになると、理論上は、我が国としては仮に事前の同意を求めてきた場合にも同意することはできない、武器輸出三原則からいって第三国にこの武器技術を移転する場合には、できない、こういうふうに理論的には解釈されると思いますが、いかがでしょうか。
  87. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) 理論的な問題について御答弁申し上げます。  武器輸出三原則というものは、基本的には三木総理大臣国会で発表された政府の方針でございますが、これは御承知のとおりの三原則対象地域というのがございまして、この対象地域に対しては武器の輸出は行わないということでございます。  三原則対象地域以外の地域につきましては、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり武器の輸出を慎むものとするということになっております。  それから、武器技術の輸出につきましては、これはその後の累次の国会答弁で明らかにされておりますけれども、武器の輸出に準じて考えるということになっております。したがいまして、全く理論上の問題としてお答えするわけでございますけれども、三原則の対象地域以外の地域に対して武器技術を輸出するということは、いかなる場合でも我が国の武器輸出原則のもとで禁止されているという形にはなっておりません。対米武器技術供与取り決めの中に、第三国に技術が輸出されるときは日本国の事前の同意が必要とされているということになっているわけでございますけれども、その同意を求められましたときは、我が国は諸般の事情を考慮した上で回答する、それはイエスもあればノーもあるという次第で、当時の中曽根総理大臣を初め政府の考え万として御説明している次第でございます。
  88. 神崎武法

    神崎委員 私は、武器輸出三原則の精神からいっても、第三国への移転は理論上同意はできない、こういう立場でございますが、この点についてはまた今後いろいろな角度から議論をいたしたいと思います。  政府のお考えを今伺っておきたいと思いますが、特にFSX、次期支援戦闘機の共同開発絡みで申し上げますと、このFSXはF16を改造する形で決定しておるわけでございますが、現にF16は各国に配備されてもう二千機になっているということが言われております。このF16の改造機が出てくるのが九〇年代半ばになると考えますと、現在の配備されているF16は第一線をちょうど退く時期になってまいりますので、日米が共同で開発いたしますこのF16、FSXが現在世界各国に配備されているF16にかわる可能性も十分考えられるわけでございます。  そういたしますと、これはもろに武器輸出三原則の問題が将来生じてくると思いますけれども、その場合でも今御答弁になったような考え方で処理をされるということになるわけでしょうか。
  89. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まず、FSXの日米共同研究は、これはまさにその枠組みについて両国の政府間で事務的に詰めているというところでございまして、これが将来どのような形で具現化していくかということは決まっていないわけでございますけれども、日米共同開発において武器技術に該当するものがこちらにあった場合には、申すまでもございませんけれども、これが米側に行くということであれば対米武器技術供与取り決めに従って処理されることになるわけでこざいます。  それで、これが第三国移転ということにかかわってくるのであれば、先生先ほど御指摘になりましたように、その取り決めの中に我が方に事前の同意を求めてくるということがございまして、これについてはまさにその当該技術を米国に提供いたしましたその趣旨、背景、脈絡、それから武器輸出三原則を踏まえてそのときに諾否を決めるということ、それに尽きると思います。
  90. 神崎武法

    神崎委員 この問題についてはまた今後議論をいたしたいと思います。  次に、日韓関係大臣にお尋ねをいたしますけれども、盧泰愚新大統領は中国と韓国の国交改善を公約しておられますけれども、日本政府として何らかの役割分担を果たすお考えがあるのかどうか。
  91. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 盧泰愚新大統領は選挙戦中も、また先般行われました大統領の就任演説におかれましても、南北間の対話の促進、それからいわゆる北方外交、すなわち対中国、ソ連外交、その他東欧諸国との外交の積極化を強調しておられます。  その間、訪韓されました我が国の政界の方々等に対しまして、そのような積極的な方針を御説明になりますとともに、特に先般大統領就任式に御出席の竹下総理大臣に対しましては、このような外交を進めるに際して日本の有しておられる経験もぜひ参考にさせてもらいたいという御発言がございまして、我が国としましても、韓国と中国及びソ連との関係が現在スポーツですとか学術面、それから間接貿易等で若干の進展を見ておりますけれども、朝鮮半島の緊張の緩和という点から望ましいことと考えておりますので、もし私どもでできることがあれば御協力をするにやぶさかでないということは、これまでも総理及び外務大臣から累次お答えをしている次第でございます。
  92. 神崎武法

    神崎委員 日中問題でございますけれども、日中平和条約締結されて満十年になるわけでございますが、一応の期限になるわけでございます。手続的にはこれを継続する場合は双方がその意思を確認することになるのか、それから総理の訪中が外交日程に上がっているということが言われておりますけれども、その場で日中両首脳がこれを確認するというようなことが必要になってくるのかどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。大臣、いかがですか。
  93. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 八月が調印をした月であって、そして発効したのは秋である、こういうふうに言われておりますから、その間におきまして、ひとつ日中平和友好条約十周年の記念をやりたいものである、私たちもそう考えております。  その時期に総理が訪中をされまして、中国の首脳とお出会いになるというふうな段取りを考えればいいのではないか、かように思っておりますが、現在日中平和友好条約は御承知のとおりに十年たったわけでございますから、どちらかからもうやめるよと言わざる限り、それは続くということでございますが、我々から申し上げますと、その趣旨は、永久に日中は平和友好でなければならぬ、こういう精神がうたわれておりますから、私に御質問を賜った場合、私といたしましては、この条約は永久に大切にしたいものである、こういうふうにお答え申し上げておきます。
  94. 神崎武法

    神崎委員 日ソ関係でございますけれども、INF撤廃に引き続きまして戦略核の半減交渉が現在進展中でございまして、米ソ関係は大きく改善されつつある、このように認識をいたしております。  しかしながら、本年二月に来日いたしましたソ連外務省のゲラシモフ情報局長は、米ソ関係が大幅な改善を示そうとしておるけれども、日ソ関係は数年おくれている、その原因は日本外交政策にある、そういう趣旨のことを述べているわけでございますが、このままでは日ソ関係改善米ソ関係改善待ちということになってしまうわけでございますが、政府としてこの日ソ関係につきまして現状をどう評価し、今後どう対応するおつもりなのか、大臣にお尋ねしたい。
  95. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ソ連は我が国の大切な隣国でございます。したがいまして、日ソ間にいろいろな問題がございましたが、その関係改善は今後とも両国が努力をして続けていかなければならない、かように思っております。御承知の平和条約を結べたらこれにこしたことはありませんが、その前提は北方四島の一括返還であるということは申し上げております。  これはもうその都度申し上げなければならない重大なことであろうと私は思いますが、その反面において、現在といたしましては、文化、経済、スポーツ、いろいろな面で交流を続けておりますし、また民間も、先般日ソ・ソ日の委員会が開かれたり、いろいろなことが計画をされて、実を上げるべく努力をいたしておりますので、その方面の関係はそうしたことにおいて常に改善を図っていきたい、かように思っておる次第でございます。
  96. 神崎武法

    神崎委員 最後に、国連軍縮特別総会の問題についてお尋ねをいたします。  昨年一年間の世界の軍事費総額が九千三百億ドルということが言われております。この巨大な軍事費をどう削減していくのか、軍縮していくかということが日本にとっても世界にとっても大変な課題でございます。五月に軍縮特総が開かれるわけでございますが、これは我が国にとっても絶好のチャンスである、このように考えるわけでございますが、大臣はいかなる決意と具体的にどのような対策、提言等を持ってこの国連の軍縮総会に臨むおつもりか、お尋ねをいたしたいと思います。  いろいろな提言がございますけれども、七〇年代、八〇年代に軍縮の十年を宣言してこの問題に取り組んだこともございますし、本年からの十年は二十一世紀直前の十年でございますので、新しい軍縮元年として軍縮の十年を提案してはどうかと私は思います。また、第三回国連総会で世界人権宣言がなされまして、国際人権規約ができたという経緯がございますし、本年は世界人権宣言採択四十周年の記念の年でございます。ここで同様な提案ができないものかどうか、そういうものもぜひ御検討いただきたいわけでございます。  そういう点を含めまして、一つの例として、例えば我が国世界に誇る平和憲法を持っているわけですけれども、このことを強調できる提案というものが考えられないか、一九二八年にパリで戦争放棄に関する条約締結されたことがございます。同様に、今回の国連軍縮総会で世界不戦宣言を国際決議とするという提案も考えられるわけでございますが、そういう点も含めまして、外務大臣の御決意と具体的な対策、提言等、現在のお考えを伺いたいと思います。
  97. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 我が国の憲法は平和憲法であり、しかも専守防衛でございます。また、非核三原則もあるわけでございます。そうしたことで私たちは平和を維持することができたわけでございますが、こうした軍縮というものは、さらにそれを進める一つの大きなものであるというふうに心得ておりますので、本年度の軍縮におきましては、私たちといたしましてもひとつ日本日本らしい軍縮における行動を示したい、かように考えております。  御承知のとおり、その前後に米ソの首脳会談もございますし、また、単に戦略核を半分削減しようというだけではなくして、二国間の問題とか人権問題とか、それぞれ両国首脳が考えておる。特にアメリカのレーガンさんはそういうことを考えておるということもございますので、軍縮会議に臨む政策なり綱領なりそうしたことは、そういう時の世界の諸情勢を勘案いたしまして考えていきたいと思います。いずれにいたしましても、低レベルの防衛というところへ我々は常に考えを及ぼすべきである、かように考えておりますので、軍縮に対しましてはもちろん我が国は心より賛成するという意味で臨みたいと思うのが我が国政府の姿勢でございます。  また、本年度はちょうど人権宣言四十周年というふうな記念すべき年を迎えましたので、この機会に政府は、いろいろと関係省庁相寄りまして、このことを国民方々に十二分にわかってもらうような普及啓蒙の行事をすべきである、かように考えておりますので、いずれ具体化いたしましたならば発表させていただく所存でございます。
  98. 神崎武法

    神崎委員 ぜひ世界に向かって日本の軍縮に向ける決意というものを示すような具体的な提案を発表していただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  99. 浜野剛

    浜野委員長代理 永末英一君。
  100. 永末英一

    永末委員 私は、台湾戦没者、すなわちかつて我が国が台湾を領有いたしておりましたときに、あの戦争の時代に日本人として従軍せられた方々に関する問題につきましてお伺いいたしたいと思います。  我々日本の国は、一八九五年に日本と当時の清国との戦争が終わりまして以来、この台湾を領有しており、台湾の方々日本国民になったわけでございますが、特に四十数年前の戦争のときに日本国の軍人軍属、軍夫等という、職務はそれぞれ変わりますけれども、戦争に従事をして、あるいは戦死をされあるいは負傷せられる、そういう方々が二十万人以上に上っておるわけでございます。  ただその後、私ども日本の国とこの地域との関係がいろいろ変わるわけでございまして、我々平和条約を結び、また日華平和条約を結びまして、二十年間は国と国との交際はございました。しかしその後、昭和四十七年に日中共同声明が行われて以来、この地域と我々の政府とは国交がなくなりました。したがって、日華平和条約の中でいわゆる請求権の問題が存在しておったのでございますが、政府はそれを昭和四十七年以来は、かつての条約に基づく条項に基づいて処置する能力を失った、こういうことでございました。  しかしながら、我々日本人日本の国家をつくって、統一国家は百数十年でございますが、その一こまの中に、日本人として籍を持った人々が日本国のために戦に出、戦死をし負傷をされる、その方々に対する補償をなさないで歴史の月日をけみすることは、日本人として世界歴史に対してまことに不名誉なことである、こういう意味合いで、このことを心配するいろいろな人々が、何とか解決しなければならぬと努力をいたしてまいりました。  私どもは、昭和四十三年に、亡くなりました故岡沢完治議員がこの問題を取り上げ、特に戦死者に対する弔意の誠を表することが必要ではないかとただしました。また、昭和五十年に私がこの衆議院の外務委員会におきまして、当時の宮澤外務大臣にこのことをただしました。宮澤さんは、債務は日本政府としては必ず履行しなければなりません、こういう答弁をされました。  この問題の重要性にかんがみまして、昭和五十二年、超党派のこの問題解決のための議員懇談会が設けられまして、何とかこの問題の解決をいたしたいと諸般の努力がされてまいったのであります。この間、政府の態度は、福田総理大臣のときには処理しないんだというような意思を発表せられたこともございますが、超党派の各党に属せられる議員の有志の方々は熱心にこの補償問題の解決に努力をいたしました。この懇談会の基本的な立場は、我々日本の国が昭和四十七年に日中共同声明を結び、さらにまた昭和五十三年には日中平和友好条約を結んでいる、その枠組みの中で問題を解決しなければならぬという立場に立ちまして諸般の努力をいたしました。  また、昭和五十二年には、台湾におられる元日本軍籍にあった人々の中で負傷せられた方、トウ盛さんほか十二名の方々日本の東京地方裁判所に台湾人元日本兵戦死傷補償請求の提訴をされました。したがって、これは日本の裁判所の裁判にかかったわけでございますが、五十七年に棄却の判決を受けました。即刻東京高裁に控訴をされましたが、これまた六十年に棄却の判決をされました。それは、日本の法律上その補償をすることができないという理由でございました。しかし、これらの提訴した方々はかつて日本人であり、日本人であるならば当然死者に対する弔慰金や遺族扶助料、あるいは負傷者に対するそれぞれの法律に基づくものを支給されるのは当然である。ただ、たまたま日本人という国籍がない、したがってそれに適用する法律がないという理由でできない。  しかし、この問題は、当時の東京高裁の判決によりますと、そういうことで棄却はするけれども、「現実には、控訴人らはほぼ同様の境遇にある日本人と比較して著しい不利益をうけていることは明らかであり、」したがって「予測される外交上、財政上、法技術上の困難を超克して、早急にこの不利益を払拭し、国際信用を高めるよう尽力することが、国政関与者に対する期待であることを特に付言する。」こういう言葉が付されたのでございまして、国政関与者の第一線に立つのは国会議員でございますから、国会議員の有志がともかくあらゆる困難を克服してこの問題を解決しようということで懇談会をつくり、努力をいたしてまいりました。  その結果、昨年の九月には台湾戦没者遺族等に対する弔慰金に関する法律が全会一致で成立をし、自民党・政府もやっとこの法律に基づいて弔慰金等に対して一人当たり二百万円を支給するという決心を十二月に固められ、そしてこれを交付国債で渡す、事務は日本赤十字社と台北の紅十字会が行うという内容を盛っているものでございますが、この国会にはこの実施に関する法律が提案をされております。  さて、これらを振り返りましたときに、私どもは、なるほど政府は、政府政府との交渉においてできないということは全く無能力でございますが、日本国会が国政の基本に関する問題だということで各議員が努力をされ、そして、この法律が全会一致で国会で成立をいたしたという事実は日本の政治史上特筆大書せられるべき問題であると私どもは思います。  二月の終わりに、この懇談会の会長である自民党代議士の有馬元治君、それから野党の各副会長に呼びかけたのでありますが、それぞれ御事情がございまして、私が副会長の職にございましたので御一緒に台湾へ参り、我々がやってきたことを現場のそれぞれの責任者に御説明を申し、今後のいろいろな御尽力をお願いしてまいりました。このことは国会の記録にきちんとしてとどめておきたいというので経過を御報告申したのでありますが、さて外務大臣、かつて遺骨葬祭料というものが積み立ててあるがという話がこの議場でもございました。しかし今回は、そういうものとは変わった弔慰金という形で遺族には支払われ、負傷者の方々には見舞金という形で支給せられるわけでございますが、これでいわゆる台湾の元日本兵の方々の問題がすべて終わったとお考えですか。
  101. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 答弁の先に、この問題に関しまして永末委員を初め多くの同僚議員の方々が本当に献身的な働きをされましたことに対し、私は衷心より敬意を表するものでございます。  昨年九月、そういうふうなことで一つの問題は解決し得たと考えておりますが、しかし、台湾の人の日本に対する請求権の中にはまだまだ我々として続いて考えていかなければならない問題があろうかと存じます。それはあるいは郵便貯金の問題であり、あるいはまた未払い給与の問題であると私は心得ております。
  102. 永末英一

    永末委員 今外務大臣がおっしゃいましたように、すべてが解決したのではございません。まだ解決すべき問題が残っておるのでございまして、これらについてお伺いしたいのでありますが、未支給の給与というのは現状はどう政府は把握しておられますか。
  103. 木戸脩

    ○木戸政府委員 お答えを申し上げます。  台湾籍の元日本兵の方々に対する未支給給与でございますが、件数にして六万一千二百六十二件、金額にして八千百九十二万五千八百九十円ということでございまして、これを東京法務局に供託しているところでございます。
  104. 永末英一

    永末委員 かつて昭和四十九年に、中村輝夫さんという陸軍の兵隊さんがモロタイ島から帰還をいたしましたときに、帰還手当というものを支払っておるわけでございまして、この未支給給与の中に帰還手当は含まれておるのでありますか、それとも含まれていないのでありますか。
  105. 木戸脩

    ○木戸政府委員 まず、未支給給与の中身を見ますると、帰郷旅費でございますね、帰郷するための旅費、これは当時のお金にして一人三百円というものが含まれてございます。  一方、今先生御指摘のインドネシアのモロタイ島で発見をされてその後台湾に帰られました中村輝夫さんには、昭和二十八年に制度化されました、これは中国からの集団引揚者の受け入れの際に多年にわたり残留を余儀なくされた引揚者の帰国後の当面の生活資金、現在でも中国から帰ってきた人たちに対しましては自立支度金と名前を変えてございますが、これは今申し上げましたように多年にわたり残留を余儀なくされた引揚者の帰国手当ということでございまして、若干性格的に違うものでございます。  したがいまして、先生おっしゃられた未支給給与の中には、中村輝夫さんに支給された帰還手当というものは入っておりません。
  106. 永末英一

    永末委員 この台湾に帰られた方々もいろいろな時代があるわけでございます。すなわち、今中国から帰ってきた者に対して帰還手当を支給するということをやったというのでありますが、長くといったって何年かわかりませんね。したがって、政府は台湾に帰られた元日本兵の方々の中で帰還手当を支給せられる対象になる者は何名だと考えておりますか。
  107. 木戸脩

    ○木戸政府委員 今もお答えを申し上げましたが、帰還手当というのは多年にわたり残留を余儀なくされた引揚者の帰国後の当面の生活資金ということでございます。ただ、元日本兵の方々、中村さんのように非常に復員がおくれたという方々を除きましては戦後すぐ台湾へ帰られたということでございますので、私どもは、当時の帰還手当、現在の自立支度金というものの支給の対象になる者はいないというふうに考えております。
  108. 永末英一

    永末委員 確認しておきますが、未支給給与は残っておる、しかし中村さんが支給せられたような帰還手当の対象はいない、こういう判断ですか。
  109. 木戸脩

    ○木戸政府委員 そのとおりでございます。
  110. 永末英一

    永末委員 調査は十分に丁寧に親切にやっていただかなければなりません。  さて、国内におきましてもいわゆる軍人恩給の問題がいろいろ問題になっている。これは、その当時の法律に基づいて戦時手当を加算をいたしまして恩給年限の来た者はもらっておるけれども、それにわずかに達しない者やあるいは一度軍籍にあったけれどもという人々が恩給の問題をいろいろ言っておるわけでございますが、台湾の方々で軍人恩給の対象になる者があると日本政府は見ておられますか。
  111. 木戸脩

    ○木戸政府委員 恩給そのものは総務庁の所管でございますが、いろいろな当時のデータは厚生省が持っておりますので、便宜、私から御答弁を申し上げます。  台湾の元日本兵の方々に恩給を受給する権利がそもそもあるかどうかという問題だと思います。一般的に申し上げますと、当時特別志願兵令という勅令があったわけでございます。これに基づきまして軍務についた者の最初の人というのは海軍の場合は昭和十八年十月、陸軍の場合は実は私どもの資料ではよくわかりません。一方、恩給受給に必要な最低年限は、先生も御存じと思いますが三年でございます。かように考えますと、恩給の対象となる者はほとんどなかったと考えられますが、実際に復員をされたのは昭和二十一年九月までに復員をされた方があるわけでございますので、ケースによっては三年を超える軍歴を有して、今で言う恩給法の対象になる方というのは理論的には可能性はあるわけでございます。しかしながら、私どもで保有しております軍歴というのを見てみますると、当時の軍歴というものがほとんど保管をされておりませんので、現在およそどのくらいの方がそういうような権利があるかという点については調査が難しいような状況でございます。
  112. 永末英一

    永末委員 三年というのは一時恩給の対象になった年数であって、軍人恩給の年限は十二年であります。  そこで、わかりませんというのですから調べるつもりはあるのですか。
  113. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先ほども御答弁申し上げましたが、軍歴というものはほとんど現在残っておりませんので、極めて調査をすることは難しいかと思います。
  114. 永末英一

    永末委員 難しいという客観的な物の考え方を聞いているのじゃないのだ。この問題を解決するためには手を尽くして調べるつもりがあるかと聞いている。
  115. 木戸脩

    ○木戸政府委員 実情を申し上げますと、兵籍というものが保管をされている率は三%にも達しないわけでございます。したがいまして、私どもの現在持っておる兵籍からの調査というのは不能でございますけれども、これから日赤あるいは内閣外政審議室等とも相談をいたしまして、現地においていろいろな証人あるいは証拠等があればそれをもとに調べてみたいとは考えております。
  116. 永末英一

    永末委員 この問題は先ほど申したように他人事じゃないのであって、我々日本人が国家をつくってきたそのことの意味が問われているのだから、もっと真剣にやってくださいよ。  軍事郵便貯金。これは昭和五十年に質問いたしましたときに、軍事郵便貯金には台湾の方と日本のものが一緒になっておるというのでよくわからぬという話がございました。今これを仕分けられましたか。台湾の方々の軍事郵便貯金の部分は幾らあるか。
  117. 三宅忠男

    ○三宅説明員 お答えいたします。  その件につきましては、その後、軍事郵便貯金全体の原簿の中から台湾の方々が有するものとそれ以外のものとにつきまして振り分け作業を行いまして、現在台湾の方々が有しておる軍事郵便貯金につきましては口座数が約六万口座、所定の利子を付しましての現在高は、昭和六十二年三月末現在で約二億二千万円になっております。
  118. 永末英一

    永末委員 軍事郵便貯金につきましては、これはあちらの方の債権でございまして我々日本政府の債務でございますが、請求があれば支払わなければならない。その利子等の換算等いろいろややこしいことはございましょうが、請求があれば利子等については十分勘案して調べますね。
  119. 三宅忠男

    ○三宅説明員 軍事郵便貯金につきましては、有効に存続いたしております貯金でございますし、当然支払いをしなくちゃいかぬと思っております。ただ、その支払いの履行につきましては、ほかの省庁関係する問題もございまして、現在関係省庁で意見の調整を図っておるところでございまして、速やかに解決していきたいと思っております。
  120. 永末英一

    永末委員 外政審議室と相談してという話がありましたけれども、外政審議室はそういうことを決めるところですか。
  121. 鈴木勝也

    ○鈴木説明員 先生御案内のとおり、台湾の日本兵の方々関係のある幾つかの問題につきまして、政府といたしましては昭和六十年の五月に関係省庁連絡会議というものを設置いたしまして、ここの場を通じまして関係省庁間で協議検討すべきものについては検討するということで対処してきているわけでございます。  御指摘の台湾住民にかかわる軍事郵便貯金等の問題につきましても、既に政府といたしまして何回も御答弁申し上げておりますように国の確定債務は履行すべきであるという立場ははっきりさせておるわけでございます。  それでは実際にどうやって払うのか、具体的に問題があるのかないのか、その辺のところを関係省庁連絡会議の場におきまして従来も幾度か議論をしてまいっております。今後とももちろん検討を進めてまいる所存でございますが、御承知のとおり、最近の数年間をとってみますと、ちょうど昨年秋に先生の御尽力もございましてようやく議員立法にこぎつけましたあの戦没者遺族等に対する弔慰金等の問題が大きく動く時期になっておりましたので、連絡会議の場における検討もこの弔慰金等の問題が先行していたという事実がございます。
  122. 永末英一

    永末委員 何年も検討しておるのですね。検討したってしようがないじゃないですか。郵便貯金をした人もどんどん死んでいくのですよ。そんなことを見ているだけでは日本政府の怠慢だ。弔慰金は昭和七十年三月三十一日に最後の償還を行え、こういう法律が今出ております。昭和七十年三月三十一日までに今申しました軍事郵便貯金の支払い、未支給給与、全部日本政府責任を果たしますか。
  123. 鈴木勝也

    ○鈴木説明員 私ども、先ほど申し上げました関係省庁連絡会議の幹事役として現時点で申し上げられることは、今後この問題、この問題と申しますのは、その契約上の債務と申しますか、金額もあるいは相手方もはっきりしております確定債務の問題につきましては、これを履行すべきであるという立場に立って鋭意検討してまいりますということでございます。
  124. 永末英一

    永末委員 外務大臣、これは政治問題なのだよ。だから、外政審議室でやっていることといえば、官房長官が来て責任ある政治家としての答弁をすべきだ。ところが皆さん忙しくて来ないのだよ。閣僚はあなただけなのだよ。  そこで、閣僚として、政治家としてこの際責任ある言葉を申しておかねばならぬときだと私は思います。やっとやった弔慰金につきましては、それに対する確定、そして最後の償還が昭和七十年三月三十一日ということで日本政府の腹が決まり、国会がこれを決めれば日本の意思になりますね。私はそれから後も――今言っても、債務であることはわかっておりますから相談しておりますと。外政審議室は各省庁が言うていることを集めてやっているだけで、どちらが責任を持っているかわからない。結局、これは内閣ですよ。だから、閣僚の有力なる一人として、あなた代表して、この期日までにこれらの案件は処理しますという決意を言うてください。そうしないと片づきませんよ。
  125. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 まず、外務省の事務当局から先にお答えさせていただきます。  委員御指摘のとおり、請求権の問題は先ほど御説明のありましたとおり、サンフランシスコ平和条約第四条(a)に規定しております特別取り決めが国交正常化の結果結べなくなったという状況でございますので、請求権の問題の特別取り決めによる処理はできない状況になっているというのは、先ほどの委員の御指摘のとおりでございます。  先ほど大臣から請求権のうち残っているものがあるという御指摘がございましたが、そのうち国内法上支払い義務を有しているものについては、先ほど外政審議室から御答弁を申し上げましたように、関係省庁連絡会議の場におきまして、確定債務であるという認識に立って検討を続けているということでございまして、今後ともできるだけ早期に結論を出すよう努力を続けたいと存じております。
  126. 永末英一

    永末委員 できるだけ早期とか検討を続けているとかいう事務局の答弁を聞きたいわけじゃないのだ、これは政治問題ですから。外務大臣
  127. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 これは先ほど私、永末委員、またきょうも有馬さん来ておられますが、そうした方の御努力に対して謝意も表しました。  一つの中国というもとにおける台湾の方々日本に対するそうした問題でございます。非常に難しい問題でございましたが、そうしたことも解決しながら、ついこの間弔慰金の問題は解決したわけでございますから、やはり我が国の負債は支払わなければならぬ、私はこういうふうに申し上げてよいと思います。したがいまして、直接担当者ではございませんが、内閣の問題として早期解決するように私も大いに努力いたしたいと思います。
  128. 永末英一

    永末委員 御努力を願います。  終わります。     〔浜野委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 松本明君
  130. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣に伺います。  きょうも本委員会でも問題になりましたが、この国会で有事来援問題がかなり大きく問題になっております。これは単なる事務当局の研究だけではなくて、非常に大きな、グローバルな観点から議論をしなければならぬ大事な問題だと思うわけでございます。特に新聞記事でも、先ほども少し問題になっておりましたが、今国会での答弁は防衛庁の独走だとか、そういうようなことも出ていますし、先ほどの外務大臣の御答弁では、一般論と混同されているとか、整理をしなければならぬとか、日本有事のことだけが言われているのだとか、いろいろ、答弁を手直ししたいかのごとき答弁でもあったかと思います。そういうふうにお考えなのかどうかということ。  もう一つ、全体として、私は、この問題で瓦防衛庁長官が答えられたのが内閣の基本姿勢を言っているのではないかと思いますので、引用しながら聞きたいと思うのです。  INF全廃条約の調印後、通常戦力の抑止が重要になって米軍来援に関心を持たざるを得なくなったという趣旨のことを瓦さんは答えられた。そういうスタンスで内閣はおられるのかどうかということ。二つお聞きしたいと思います。
  131. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど来お答えいたしますとおりに、INFグローバル・ゼロは、そのもの自体は核軍縮の第一歩として評価しましょう、しかしこれによって、今まで言い古されておりますが、デタントがやってきたということを考えるのは早計であろう、こう申し上げております。それが第一点でございます。  第二点といたしましては、有事来援というものに関して瓦防衛庁長官は、いわば核の問題だけではなくして、核も有力なる均衡並びに抑止の力を発揮しておるが、通常兵力ということをも考えながらやっていかなくてはならぬ、そうした場合に西側は核も通常兵力もやや劣っておるのではなかろうか、こういうような認識において、今わきの下を甘くすることはいけないから我が国の安全とこの国の平和のためにしっかり勉強したい、こういうふうに言っておるわけでございまして、私は、この認識は瓦長官の認識としても、防衛庁長官ならば当然の認識ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  132. 松本善明

    松本(善)委員 答弁手直しかどうかということについては直接答えられませんでしたので、私、一つ一つ聞いていこうと思うのです、なかなか大事なので。  きょうは防衛局長に来てほしいと言っておいたのですが、防衛局長の答弁ではこういうことになっています。研究の結果、新たな国内措置、協定が必要な場合も当然あるだろう。仮に実施をすれば新たな施設提供、管理のための費用負担が出てくるだろう。有事来援ですよ。有事来援ということになればそういう問題も出てくるだろう。今国会では駐留経費の費用負担問題が協定としてまた出てくるということにもなろうとしていますけれども、それ以上に、有事来援の場合の費用負担の問題も出てくるという答弁をされました。これなんかは行き過ぎなのですか、それともそのとおりだということなのですか、お答えいただきたい。外務大臣
  133. 萩次郎

    ○萩説明員 最初に事実関係をちょっと御説明させていただきます。  今回、瓦防衛庁長官が訪米をいたしまして米側と合意いたしました研究、これは有事来援の研究ということでございますが、御承知のとおり、日米防衛協力のための指針に基づいて現在まで共同作戦計画の研室等々研究をやってまいったわけでございます。御存じのとおり、有事の際、米軍の来援が確実、タイムリーに行われるということは、日米安保体制の抑止機能の核心をなすものと私ども考えておりますので、従来からこれらの研究の延長線上として有事来援の研究をすべきであるということを私ども考えておったわけでございます。  なお、お金に絡むという話がございましたけれども、これは毎回申し上げて申しわけありませんが、ガイドラインにございますように、日米両国で行いました研究の結果につきましては、両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではないということをうたっておりまして、私どもの今回の研究でもそこまで話が及ぶことはないということでございます。
  134. 松本善明

    松本(善)委員 こういう答弁をぐずぐずやられると本当にかなわぬのですよ。外務大臣、お答えいただきたいと思います。政府として新たな費用負担の問題が出てくると防衛局長は言ったけれども、それはそのとおりなんだと言われるのかどうか、お聞きしたいのです。
  135. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) 防衛局長の発言というのは新聞記事ではなかったかと存じますけれども、累次政府が答弁しておりますとおり、研究の結果をどう扱うかは各政府の判断に任されているところでございまして、したがって、研究の結果が具体的に日米間でどういう形をとるかというのは全くこれからの問題でございます。  したがいまして、費用分担あるいは日本による費用負担の問題というのが起きるか起きないか、これも研究の成果を見た上での政府の判断にかかわるところでございますので、今の時点からそれを日本が負担することができるかできないかということを申し上げるのはちょっと過早な問題ではないかと考えられます。
  136. 松本善明

    松本(善)委員 事実上の手直しの答弁が出てきたというふうに受け取らざるを得ないと思います。  それから有馬北米局長は、米軍の有事来援ということになれば有事法制の研究が必要と考えている、これは当然に自衛隊じゃなくて米軍の有事法制の問題ということなんでしょうね。これも手直しをする必要があるのか、それともそのまま確認をされるのか、一言でいいですよ。そのとおりであるということならそれでいい。
  137. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 先生が今言及されました私の答弁は、米国とは関係のないことであるということをまず一つ前提として申してあって、それから全く一般論とすれば……(松本(善)委員「米軍とは関係ないの」と呼ぶ)米国とでございます。米国とは関係のないことであって、我が国が自主的に、法律というものはそういうものであるという大前提と、それからもう一つは、一般論として、今度の有事……
  138. 松本善明

    松本(善)委員 ちょっとあなた、質問を誤解しているかもしれぬから言うのですが、米軍の有事法制ということで答弁したのでしょうと聞いているのですよ。米国とは関係ないのは当たり前だよ。
  139. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 そして、米軍が万一有事というようなときにどうするかということについての法制は我が国が一般的に研究しておくことであろうというふうに申したわけでございます。ですから、それは米国との研究とは関係がない、こういうことでございます。
  140. 松本善明

    松本(善)委員 そんなこと聞いてない。大体今のは肯定的な答弁、米軍の有事来援の場合の米軍にかかわる有事立法を研究していくというふうな御答弁と伺わざるを得ないと思います。――違うのですか。はっきり答えてくれないと困るよ。何遍も何遍もやるんじゃかなわないからね。違うなら、北米局長の答弁だから北米局長ちゃんと答えてください。それは外務省の管轄でしょう。防衛庁の管轄じゃないでしょう。
  141. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 これは政府側から先般来お話しいたしておりますように、それではどういうことかといえば、多分現在防衛庁で研究しております有事の際の自衛隊を律する法律の研究によってほとんどが処理され得るのではないだろうか、こういうような実態が一つにございますし、時系列から申しますと、一方で指針のもとにおける研究がなされておりますけれども、それは将来に向かって我が方として考えておかなければならない、そういうことでございます。
  142. 松本善明

    松本(善)委員 もういいよ。たくさん聞きたいことがありまして、私は、米軍の来援したときの有事立法、自衛隊のみならずそれの研究を否定したものとは到底受け取れないです、今までの答弁は。  それでもう一つ、斉藤条約局長は、先ほど外務大臣は五条の場合なんだと言われたのだけれども、五条であろうと事前集積、ポンカスを利用することに関しては、極東有事の際にポンカスを使用することは問題ないという答弁をしているのですね。  事実それがそうだとすれば、初めは五条できたって、極東有事にポンカスは使える、事前集積された武器は使えるということになれば私は重大だと思うのだけれども、これは極東有事の際にそのポンカスを使用することは問題ないという答弁が違うのか違わないのか、一言で答えてください。ぐずぐずやられると本当にかなわぬ。本題はまだこれからなんだから、確かめているだけです。
  143. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) それは二つの異なる問題が取り扱われていると思います。  一つは、今回の防衛庁と米側の間で合意されました研究はあくまで五条事態に関する研究でございます。その結果、事前集積というような問題が起こり得るということは防衛庁から御答弁申し上げたとおりでございます。  私がお答えいたしましたのは、事前集積されました資材、装備等が極東有事の際に日本以外の地域で使われることが安保条約上可能かという御質問がございましたので、私とそれから大臣も答弁しておられますが、一般論として申し上げれば、安保条約上米軍というものは日本のみならず極東の平和と安全のために日本に駐留しているわけでございますので、日本の施設、区域に事前集積されている資材を極東のために使うことはその目的に合致する限りにおいて許されるということを御答弁した次第でございまして、したがいまして、ただいまの御質問に対する答えはそのとおりであるということになるかと存じます。
  144. 松本善明

    松本(善)委員 それで、外務大臣にいよいよ聞こうと思うのですけれども、先ほど瓦長官の答弁を肯定されたわけでありますが、INF条約の調印以後、核も大事だと言われたけれども、通常戦力の抑止力が大事だというスタンスであれば、有事来援という問題、これは通常戦力だけではなくて私は核戦争とのかかわりももちろんあると思いますよ。  同時に、日本の軍事力の強化という問題について、軍拡――先ほど軍事大国になる気はないと言われたけれども、私は非常にかかわっている問題だと思う。日本世界の平和とのかかわりで軍事大国になるかどうかというのは世界の重大な関心事です。外務大臣は先ほど否定されたけれども、韓国日報は昨年の十二月三十日に日本の軍事予算は韓国の予算の一・三倍以上だ、天文学的な数字だということを報道しています。そういうような目で外国から見られているというのは非常に重大なことになってきているのだ、事実、私たちもそうだと思います。  私たちの党の正森議員も今度予算委員会で今までの六年で軍事費は四三%伸びたけれども、このまま伸びると西暦二〇〇〇年には七兆五千億以上、総歳出の伸びを今までの六年間と同じと仮定すれば歳出の一〇%を超す、上田耕一郎参議院議員もかつてNATO基準でいえば世界第三位だということを言いました。アーミテージ国防次官補もこの直前にいるということを、西廣防衛局長アメリカの議員に説明したのと同じようだというふうに新聞で報道されている部分もありますけれども、直接的にはアーミテージ氏がそういうふうに言った。世界で第三位の米ソに次ぐ軍事大国になるというのはやや常識になりかけてきている。  私はそこでお聞きしたいのですけれども、政府の、先ほど外務大臣が肯定されたようなスタンスでいきますと、日本の軍事力の強化というのは有事来援問題と同じようにますます進んでいくのではないか。  直接的に聞きたいのですが、今度のアメリカの国防報告では、「日本は、一九八七年に軍事費の国民総生産(GNP)一%枠突破を決定した。より強力な自衛能力を達成するためには、九〇年代に日本によるこうした努力が一段と求められよう。」「米国は、日本がこの努力を追求するよう働きかける。」「働きかける」というのはエンカレッジという言葉を使われているので、促している、勧奨をしているというような意味ですね。そういうふうに国防報告で言っている。今もそういう軍事大国になりつつある道にあり、さらにアメリカはそれをもっと進めると言っているのです。これを政府は受けていくつもりなのかどうか。そのことについて外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  145. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 かつて三木内閣のときに一%という閣議決定がございまして、昨年の内閣がそれを変更するに際しましても、五十一年度の内閣の精神は尊重いたします、今後節度ある防衛をいたします、こういうふうに申しております。そしてまた、現在、防衛大綱の水準をひとつぜひとも達成したいということで中期防がございますが、この総額は十八兆四千億、こういうふうに明示されておるわけでございますから、我々といたしましても、そういう判断で自主的にあくまで防衛費は節度あるものにしなければならぬ、こういうことで臨んでおりますので、決して軍事大国になるというふうなことは考えておりません。  東南アジア、あるいは直接三十六年間という本当に大変な体験をされました韓国の方々からすれば、あるいは巨大なる軍事費であるというふうにお考えになりがちでございますが、我々といたしましては、今申し上げましたようなことで今後も防衛体制を自主的判断で努力をしていくということでございまして、そのこと自体は軍事大国になることを意味しない、こういうふうにお考え賜りたいと思います。
  146. 松本善明

    松本(善)委員 中期防自身が十八兆四千億というのは、田中内閣、三木内閣、福田内閣、大平内閣、鈴木内閣、五内閣が十年間にやった軍拡が十七兆七千億ですから、これ自体が大軍拡なんです。  そして、軍事大国にならないと言葉では否定をされますけれども、例えばカーター政権の国防長官でありましたハロルド・ブラウン氏なんかは、日本は十年間で米国に次いで資本主義国の中で第二位の軍事大国になるだろうということをやはり予想をしていますし、アメリカの国防総省の長期統合戦略委員会の報告、最近一月十二日に発表されたものでも、今後の二十年間ということについて、日本が中国などと同時に軍事大国になるだろう、言うならば、口では否定をされておりますけれども、今のまま軍拡が進んでいけば間違いなく日本世界第三位の軍事大国、現在でもなっている、あるいはそれがどんどん進んでいく、そういう状況にあることは間違いないのですね。  この歯どめをかけようということになるならば、どうしても軍縮の計画をしなければならぬ。我が党は、少なくとも今度の予算では軍事費を半減すべきだと言っていますけれども、それなしには歯どめということには絶対ならぬだろうということを一つお伺いして、それについての御見解をお聞きしておきたい。  それから、もう時間がなくなってきましたので、一つアパルトヘイトのことだけお聞きをして、その御答弁をいただいて終わりにしようと思うのです。  アパルトヘイトの問題、これは外交演説では断固反対だ。私は外務大臣外交演説がこんな強い調子で、日本語ではこれ以上の言葉はないだろうと思うのです。ところが、国連では、経済制裁についても決議は棄権をする、それから、大規模かつ残酷な人権侵害、テロ行為の拡大を非難するその他の制裁実施、いずれも、二つとも棄権していますね。  先ほど外務大臣は御答弁の中で、それをやると黒人の職場がなくなるじゃないか、そういうことを心配しているんだということで棄権を合理化されましたけれども、きょうの新聞にザンビアの外務大臣がこういうふうに述べておられます。「南アが現在の制裁ぐらいではアパルトヘイト政策をやめる気がなく、逆に国内での弾圧、アンゴラ、モザンビークなど周辺諸国への攻撃を強化している」、「南アに影響力のある貿易相手国は、一致した強い措置を取る必要がある」、経済的に南アに依存している周辺の黒人諸国は強い制裁措置で「一時的には苦しむだろう」としながら、「アパルトヘイトがわれわれを苦しめており、西側諸国が南アにアパルトヘイトをやめさせることがわれわれの最大の利益だ。」アパルトヘイト反対組織のアフリカ民族会議の幹部もそういうふうに言っています。  アパルトヘイトに反対をしている黒人の皆さんの意見に従って、断固としてこの国連での制裁決議に賛成をしなければ、日本は口先だけだ、外務大臣は断固反対だなんてえらい大きなことを言っているけれども、実際にやっていることは南アフリカの政府援助することではないかという国際的な批判はますます高まりますよ。  この点について、最初の点と二つお答えをいただきたいと思います。
  147. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 最初の防衛費の問題に関しましては、もう先ほど私が申し上げたとおりだと御理解賜りたいと思います。  特に、国防総省の次官補のアーミテージさんが、日本には直接これ以上の防衛費の負担を強要することは決して賢策ではない、こういうふうに申しておられることも事実であります。私たちは、やはり憲法上の制約はありますよ、先ほど申し上げましたとおりに韓国あるいは東南アジアも懸念を表明するのだから、この点においても我々は、平和外交推進のためにはその防衛費総額においても節度あるものを持たなくてはならぬ、こういうふうなことを言っておりますから、恐らくそうしたことも彼に投影をしたのではないだろうか、影を投げかけたのではないだろうか、こういうふうに思いまして、私たちといたしましてはそういう理解を深めていただきたい。だから、日本といたしましては非軍事的な面であるのならば我々は世界に幾らでも貢献し得る立場に現在あるから、そうした立場も今後やっていきましょうということでございます。  二番目のアパルトヘイトに関しまして、ザンビアの外務大臣ときのう、おとといの晩、私はいろいろ意見を交換いたしました。ザンビアの外務大臣も、今おっしゃったようなことを私にも申されまして、ひとつ日本、力強くお願いいたしますということでございましたので、先ほど来の御質問に対しても私は答えておりますように、昨年のごとき実績が本年も続くのならばこれは大変なことであって、日本はまさに火事場泥棒だと言われても仕方がありませんよ、これは甚だ不名誉なことである。またアパルトヘイトそのものも憎まなければならない、そういう立場において強く、まず何と申し上げましても一番大きな経済団体でございますから、経団連の幹部諸公にお願いしたものであります。  続きまして同友会にも同様のことを申し上げまして、この点はやはり通産省が前面に出て頑張っていただかなければなりませんから、私からも通産大臣とも十二分にこの点は話し合いをいたしまして、そしてはっきりとして、来年はそれが実績に出てくるんだから、出てきてからわあわあ言われたら大変ですからというので、経済界の方々も非常に重大なことです、こういうふうに受けとめていただいております。したがいまして、ザンビアの外務大臣と、そうした南アフリカ周辺の国々に対しましても私たちは今いろいろな手だてを講じましてアパルトヘイトで被害を受けられましたことに対する何らかの措置を日本は今やっておるわけであります。  もう一つ申し上げておきますが、西側陣営にして南アフリカと外交関係を持っておらないのは日本だけである、こういうふうにお考え賜りたいと思います。  また、早速、決議案に対して日本はどうなんだというお話でございますが、これはその前の決議のときにも私たちは棄権をいたしました。先ほど申し上げたとおりに、反対と言うことはいともたやすいことではございましょうけれども、やはり我々といたしましては被害者の立場のことも考えなければなりません。  ザンビアの外務大臣のお話では、幾つも優秀な大学があるが、例えば日本の東大のごとく昔は官僚養成学校であった、そういうふうなところからアパルトヘイトという思想が生まれ、またその思想が広がったんだ。しかし、最近においては、その学校においてすら、国内においてすら、やはりこれではいけないというふうな声も出かかっておるので、非常に大切なときであるから、ひとつ日本の、今私が申し上げましたような方途においてぜひとも御協力をお願いしたいというのがザンビアの外務大臣の偽らざる私に対する要請でございました。  したがいまして、そういう声をもとといたしまして、私たちはアパルトヘイト断固反対、こういう姿勢を貫いていきたいと考えておる次第でございます。
  148. 松本善明

    松本(善)委員 終わります。      ────◇─────
  149. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次に、国際復興開発銀行協定第八条(a)の改正受諾について承認を求めるの件、日本国政府国際熱帯木材機関との間の本部協定締結について承認を求めるの件、千九百八十七年の国際天然ゴム協定締結について承認を求めるの件、オゾン層保護のためのウィーン条約及びオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書締結について承認を求めるの件及び核物質防護に関する条約締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  これより各件について政府より提案理由の説明聴取いたします。外務大臣宇野宗佑君。     ─────────────  国際復興開発銀行協定第八条(a)の改正受諾について承認を求めるの件  日本国政府国際熱帯木材機関との間の本部協定締結について承認を求めるの件  千九百八十七年の国際天然ゴム協定締結について承認を求めるの件  オゾン層保護のためのウィーン条約及びオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書締結について承認を求めるの件  核物質防護に関する条約締結について承認を求めるの件     〔本号(その二)に掲載〕     ─────────────
  150. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ただいま議題となりました国際復興開発銀行協定第八条(a)の改正受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この改正は、国際復興開発銀行における加盟国の出資比率の調整を背景として、昭和六十二年六月に同銀行の総務会で承認されたものであります。  この改正は、同協定の改正の効力発生に必要な受諾加盟国の投票権数の総投票権数に占める割合を引き上げることを内容とするものであります。  この改正は、同協定の安定性の向上に資するものであり、また、国際復興開発銀行における我が国の出資比率の引き上げとも密接に関連しております。我が国がこの改正受諾することは、同銀行の業務の円滑な運営に資し、ひいては我が国が同銀行を通じて開発援助の分野における国際協力を推進するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この改正受諾について御承認を求める次第であります。  次に、日本国政府国際熱帯木材機関との間の本部協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、千九百八十三年の国際熱帯木材協定により設立されました国際熱帯木材機関の本部が横浜に置かれることに伴い、同機関がその本部において十分かつ能率的に任務を遂行できるようにするため、同機関側と本部協定案の交渉を行いましたところ、案文について合意が得られましたので、本年二月二十七日に東京において我が方本大臣と先方フリーザイラー事務局長との間でこの脇定に署名を行った次第であります。  この協定は、本文二十四カ条から成っており、同機関並びにその職員及び専門家並びに加盟国の代表の地位、特権及び免除について定めております。  同機関は、本格的な活動を開始しつつあり、この協定の締結我が国における同機関の円滑かつ効果的な活動の確保に資することが期待されます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百八十七年の国際天然ゴム協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、昭和六十二年三月二十日にジュネーブで開催された国際連合天然ゴム会議で採択されたものであります。我が国は、昨年十二月十八日にこの協定に署名いたしました。  この協定は、天然ゴムの価格の安定及び供給の確保等の目的を達成するために国際的な緩衝在庫を設置し運用すること、国際天然ゴム機関において天然ゴムに関する情報を収集すること等について規定しております。  我が国がこの協定を締結することは、天然ゴムの輸入の安定を図るとともに、開発途上にある天然ゴムの生産国の経済開発に貢献するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  次に、オゾン層保護のためのウィーン条約及びオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和六十年三月二十二日、ウィーンにおいて作成されたものであり、議定書は、昭和六十二年九月十六日、モントリオールにおいて作成されたものであります。  この条約は、オゾン層保護のための国際協力の枠組みを定めており、議定書は、オゾン層の変化がもたらす悪影響を防止するためクロロフルオロカーボン等の物質を規制することについて規定しております。  オゾン層保護のような地球的な環境問題については、国際的な取り組みが不可欠であり、我が国がこの条約及び議定書を締結することは環境分野での国際協力を増進するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約及び議定書の締結について御承認を求める次第であります。  最後に、核物質防護に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和五十四年十月二十六日に国際原子力機関で開催された政府会議において採択されたものであります。  この条約は、核物質を不法な取得及び使用から守ることを目的としており、核物質防護の義務、核物質に係る犯罪行為の処罰、容疑者の引き渡し等について規定しております。  我が国がこの条約締結することは、核物質を不法な取得及び使用から守るための国際協力強化に積極的に貢献するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上五件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  151. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  各件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会