○
内田参考人 私は、
知的所有権を
中心に
意見を述べさせていただきます。
お
手元の
資料の「
科学技術振興の
基本施策」というのと、別の大きい
資料と二つございます。
第一番目に、
知的所有権制度というのは、一般にお
考えになっておられるような
特許だけの問題では決してないわけでございまして、
日本国民の
産業全体の将来にかかわる問題であるという認識をまず御
説明したい。そこで、一番上の「
産業革新と
科学技術振興」という中で、
知的所有権制度はどういう
意義があったかということをまず御
説明したいと思います。
そこで、
別表の大きい表を
ごらんいただきたいと思います。
別表一
ページに「
産業活動の
長期波動とその
革新要因」とございますが、ざっと
ごらんになりますと、そこにある波は有名なコンドラチェフの波でございます。一番下の方に書いてあるパックス・ブリタニカ、いわゆる第一次
産業革命、その次にパックス・
アメリカーナ、第二次
産業革命がずっと進行したわけでございますけれ
ども、ちょっと
ごらんいただきますと、一九八〇年代にカーブがずっと落ちておって、それから上がるように書いてありますが、上がるかどうかわからないわけです。
累積債務問題等、全
世界の
経済は非常に危険な状態にあります。どうしたらこれが上げられるかということで第三次
産業革命ということがございますが、幸いにして
科学技術が今大変なスピードで進んでおりまして、それが
社会の
変動に結びついて、御
承知のとおり
日本の
国民経済も急速に変わっております。その両方を
考えた場合に、
科学技術を
産業上の
有用性に使うということが
知的所有権という
制度なんでございます。
そこで、一番左の上の方に「
科学技術」と書いてございます。それから「
工業所有権 独占禁止法」と書いてございます。それから
社会の
変動にマッチするようにしていろいろ
経済原理があって
産業革新が起こるわけでございますけれ
ども、
知的所有権制度で
産業政策的に一番印象深いのは、十六世紀に
イギリスの
エリザベス一世が、実は女王の大権によって特定の
科学技術を、
イギリスで事業を起こして
産業振興になれば、これを保護するという
独占権を与えたのが
最初でございます。そのために、当時非常に貧乏であった
イギリスに対してヨーロッパから続々といろいろな
技術者が参りまして、それの風土が根づいて第一次
産業革命が起こったわけでございます。
その次の第二次
産業革命の
アメリカでは、
アメリカの
特許制度はちょうど建国以来できているわけでございますけれ
ども、一八三六年と一八七〇年に大改正をやりまして、権利というのを審査して非常に明確にするということで保護したわけです。それが
エジソン等の大発明に結びつきまして、折しも発見された石油の文明ということにマッチしてぐんぐん伸びたわけでございます。そして、後で御
説明申し上げますけれ
ども、今第三次
産業革命ということに
科学技術がかかわった場合にいかにすべきかという問題が
知的所有権制度でございまして、そういう大きな
世界の変革にマッチして、
アメリカが先に
考え出していろいろ
世界に提案しているということが、ある摩擦ととらえられているわけでございまして、
日本自身も
自分の力でそういう見方をして、独自の
考え方を出して、その両方の調整というふうにすべきだ、こういうことを申し上げたいと思っているわけでございます。
それから、例を申し上げますと、この上の方の自動車という一番わかりやすいので申し上げますけれ
ども、自動車進化がございます。これは第二次
産業革命のころ、一九一一年にフォードが大量生産をやったわけです。ですから今日進んできた文明は、石油文明に支えられた大量生産低コスト型であったわけです。そしてそういう技術が
社会に根づきますと、その上に航空機という
産業があり、その上に宇宙があります。よく話があるように、空洞化した上にそういう
産業はないわけでございます。例えば、
アメリカが自動車で空洞化したとしますと、
日本でもよろしゅうございますけれ
ども、その場合は、
相互依存という形で
国境を乗り越えた技術
社会体制というものができ上がってないと、その上の進化のある
産業はできないということでございます。それが
一つ進行している、こういうふうに御理解いただきたいと思うのです。
そういう意味で、
知的所有権とは何ぞやということで、この大きな紙の次の表を
ごらんください。「
知的所有権の概念」というのがございますが、
知的所有権というのは、いわゆるフランス革命までは土地というのが物権という財でございまして、それから
産業革命が起こりまして、株式であるとかいろいろ債権というような財が出まして、最近、知的なものを保護する権利が財と認められ始めたというわけでございます。
この中には
工業所有権と著作権がございます。
工業所有権には、知的創作物としての権利、それから営業標識という事業を起こす場合の信用もこれに入るわけでございます。それから著作権というのは、本来文芸、美術というものを保護するものでございましたが、上の方にすうっと線が引いてございますように、コンピュータープログラムは著作権で保護しようということになったわけでございます。その上に半導体回路配置利用権がございますが、これらは従来の
特許という
考え方ではとてもとてもその枠には入れないという意味で、新しい
制度ができております。ここにいろいろくくってございますように、技術革新分野に関係する権利が
特許権、実用新案権、半導体回路配置利用権、コンピュータープログラムの著作権、植物新品種、最近は
アメリカはトレードシークレットの中の技術ノーハウまで含める、広く言えば知識そのものがこれに入るという主張さえあるということでございます。ここまでが工業
社会の物的付加価値ということが多かった時代であったわけでございますけれ
ども、それが徐々に変貌しつつある。
もう
一つは、その下の方に意匠、商標、商号、それから不正競争防止法云々とございますが、一番下にございますように、ニュービジネス、サービス
産業に関する権利も全部含めて知的財産権ということなのでございます。したがって、一番右の方にございますように、最近の物流と
情報革命があります。高度文化
社会になっております。そうすると、国民自体が多様・多次元の市場に対していろいろな知識というものを付加価値として認めた事業が次々と起こっております。これ自体を
知的所有権というわけでございますから、
知的所有権ということでいろいろ話し合いした場合に、どこまで含まれるかということをはっきりしておきませんといろいろ問題があるという点と、
日本全体がこれから入る
社会においては、この
知的所有権制度を国民の英知と
努力でうまく振興するように、新しい
制度、枠組みをつくる時期に来ておる、こういうことでございます。
そこで、もとのこちらの表の方にちょっと書いてございますが、そう
考えますと
知的所有権制度というのは公正な
産業競争秩序というものの枠組みでございまして、公正な
産業競争をどんどんと進めまして
国民経済が豊かになる、あるいは
世界全体が豊かになるというために、私権の保護、個人的な権利の保護による
産業振興、みずからがいろいろやるというものをいかに保護してやるかというのが
知的所有権制度でございます。しかしながら、保護が行き過ぎますと、例えば巨大企業が
社会、国民のためにならないような独占行為をした場合に、初めて国家権力としての不正競争の排除という
独占禁止法がございまして、国家権力で
制度になっているわけでございます。この両方のバランスをとって、公正な
産業競争秩序をどうつくるかということが
産業技術振興の
基本施策の土台かと思うわけでございます。
次に、IIの「石油文明基盤の上に電子文明開花」ということで御
説明したいのでございますが、
別表の三
ページを
ごらんいただきたいと思います。そういうふうに
考えますと、しからば今
世界は、あるいは
日本自身はどういうふうな局面にグローバルに直面しているかということを御
説明したいわけでございます。
そうすると、こちらの表にございますように、左の図1でございますが、「
アメリカのGNP、失業率とエネルギー消費量の経時的変化」をぱっと
ごらんになるとわかりますように、今世紀の初めからエネルギーの消費量とGNPの伸びが完全に平行線でございます。それは当たり前のことでございまして、資源を入れて付加価値をつけて、そして重厚長大と言われるような形で商品をつくって国民に提供するということでございますから、それは並行だった。ところがオイルショック以後状況は変わっておりまして、右の方、ちょっと恐縮でございますが、これは英文でございますけれ
ども、昨年の
国際会議で
日本の状況が出たわけでございますが、これはぱっと
ごらんになるとわかりますように、GNPは伸びておりますけれ
どもエネルギー消費は横ばいになっております。ということは、この違いのぐんぐん伸びているところが知的財産という形で財を形成しているということでございまして、この
中身は、先ほどの
知的所有権の概念で御
説明したように、新しい
科学技術という問題と、それから国民消費の中の知的なものに金が払われるという
社会に変わっているという、二つが大きく寄与していると見られるわけでございます。
そこで、技術革新のパターンがその下に種々書いてございますけれ
ども、一番目が、かつては石油文明に支えられて、例えば大きな発電所をつくって電力を供給して、機械的なからくりで最終的ないろいろな機能を出しておったわけでございますが、最近は分子、原子レベルでいろいろ
物質をデザインをして、その機能で最終的な
人類の満足する商品をつくることができる時代に入ったわけです。それぐらいサイエンスが末端に直結するぐらいに進歩したわけでございます。これの一番いい例がエレクトロニクスだったわけです。エレクトロニクスは、軽薄短小と言われるように、大量の資源を入れて大きなものをつくるのではなしに、少量のものであって、しかも大きな価値が出てきて財として成るということでございますね。そういうことが進んでおります。そうすると、そういうサイエンスというものを高度に振興するためには、例えば真空技術であるとか、高度の技術がないとサイエンスができませんが、幸いにして高度の技術が進みまして、
科学と技術が接近した、こういうことが言われております。
それから、物をつくっていろいろ流通関係の段階を通って消費者に提供するということが、
情報化の進展によりまして、国民自体がだんだんと
世界全体のこの商品が欲しいというニーズを直接
情報でつかまえることができますし、発注もできます。それを即座にそこに届けるという形でドア・ツー・ドアの、クロネコヤマトさんの宅配便がいい例でございますが、こういう形が
国際的に進んでおります。これはどんどん進みます。そういう形で新しい
産業社会が形成されてまいります。そうしますと、そういうニーズの多様化という意味と商品というものが複雑でございますから、業種間というものがなくなってまいります。フュージョンビジネス、融合事業と言われるような形の新しい
産業形態に変わっていっているわけでございます。その次には、いわゆる商品というものについては
国境がなくなってまいります。こんな時代に突入した場合に、知的な財というものをつくる場合に、末端の国民消費に対してマッチするものを提供できれば大変な利益があるわけですが、逆に大変なリスクがあります。当たれば大きいけれ
ども、当たらない場合は破産します。そういう形で、
アメリカあたりは、こういう
社会に対して新しい
知的所有権の枠組みを国民のためにどうつくるかという投げかけがあるということをぜひ御認識いただきたいと思うわけです。
そういう意味で、その次に、そういう事態の中でグローバルな変化、
日本もそこまでいっている、
アメリカもそういっておるという中で
日米の技術・通商摩擦があるということで御
説明をしたいと思うわけでございます。
三番目が「
日米の技術・通商摩擦」で、四
ページを
ごらんいただきたいのですが、そういう形でグローバルに進んでおりますので、
世界との調和となりますと、今申し上げたように、
社会が大きく変わっているということと前例のないほど
科学技術が進歩しているということで、
科学技術という
成果を
社会の
変動という形でうまくアプライすることによって
産業が起きますから、
経済と
科学技術が両輪になったと言われるわけです。
アメリカははっきりと
科学技術が国力であるということで、
経済と両輪で
考えておりますが、
日本の
社会全体はそういう認識が極めて低いということを大変残念に思っておりますので、諸
先生方はぜひそういう見方で
世界を眺め、国の政治を眺めていただきたいというお願いでございます。そういう意味で、
産業社会の変革と知的資本の活用ということで、
アメリカの動きを御
説明しながら
日米問題を
考えるとよく御理解できるかと思いまして、この四
ページの上の表をつくったわけでございます。
アメリカがどうもこういう第三次
産業革命に突入しているらしいということに気がついて
最初に提案しましたのが、一九七九年十月三十一日にカーター前大統領が議会に送ったインダストリアルイノベーションに対する教書でございます。それからレーガン政権にかわって、急速にいろいろな角度から検討されて今日に来て、ほぼその全貌がはっきりしたというのが現状でございます。それは、この表にございますように、
基礎研究を充実する。何よりも
科学技術力というものを強化しよう。そのためには、
基礎科学というものは大学が
中心でございますが、
産業界はその知識を応用して
産業を構築する使命があります。ですからノレッジトランスファー、知識のトランスファーという言葉がございまして、大学の新しい知識を
産業界に転用して、それを国民のためにいかに活力あるように
産業を振興するかという政策、その中でも「小企業の振興」と書いてございますが、後で御
説明しますけれ
ども、スモールビジネスの方が技術開発といいますか商品開発といいますか、
産業というものを
考えた場合の発明については、大企業よりずっと効率がいいというふうなことでございます。そしてその場合に、
知的所有権という形で保護をして、
世界的なものを押さえればそのマーケットというものがとれますから、これによって
アメリカの復権をしようというのが
基本政策にございます。
そこで、左の方にございます知的資本の強化というのは、レーガン大統領が昨年の一月に年頭教書でインテレクチュアルキャピタルという言葉を使ったわけでございますが、人的・知的資本強化法というものを実は提案をしております。それから、何よりも国民の知恵というもののレベルを上げて、チャレンジする体制をつくらなければいかぬ。それから、ナショナル・サイエンス・ファウンデーションを強化して
基礎研究にもっともっと金を提供してあげましょう。それから、
知的所有権法を強化して知識の流出規制、テクノナショナリズム、これは非常に問題がございまして私は賛成ではないのですが、そういう動きをしております。
ところが、真ん中の生産技術力というのは
日本が圧倒的に強くなったわけでございます。生産技術力というのは、大量生産型という場合には、
日本は明治以来基礎教育というものが定着をしました。おもしろいことに、明治の開国のころ
日本の人口は三千万人、黒船が
日本に来たときの
アメリカの人口は約三千万人。今
日本の人口の倍ということは、それだけ
アメリカに移民が流れ込んだわけです。
アメリカの国語は
英語でないということを三年前に友人から聞かされて大変びっくりしたものですが、確かに
アメリカの文化というのは
英語で成り立っております。八つの州が国語であり、二十五の州が国語にしようと
努力しているという話をそのときにしてくれました。そして、バイリンガル法によって
自分の母国語と
英語を
勉強しようということですが、ヒスパニックであるとか中国系の方であるとかいうものになりますと、教師がおりませんから、
英語をしゃべれない人が非常に多いわけです。これが
アメリカの泣きどころで、レーガンも昨年の一月に、西暦二〇〇〇年までに文字を読めない人間を劇的に減らすというふうな演説をしておりますが、それが
アメリカの実態でございます。
もう
一つは、高校生の落ちこぼれが多いという意味で、そういう
方々が労働戦線に入ってまいりますと、大量生産型の流れの中でちょっとでもおかしなことがありますととまりますので、これが大変
アメリカが苦しいという
立場にございまして、連邦
政府として懸命に人間のレベルを上げるということをやるというのはこういう意味でございます。それと同時に、八五年だったと私は記憶しておりますが、
アメリカのヤング・レポートの中の
資料によりますと、
日本の工学系の
技術者の数が七万二千人で、
アメリカは六万九千人ですから、人口当たりになりますと
日本の方は倍おるわけです。しかも現場で働いておって、
アメリカは働かないということ、これも
アメリカの競争力を弱めるゆえんであるということですね。それから経営的にも、御
承知のとおり
アメリカのビジネススクールでは短期的な利益でございますから、
長期的な投資をしないということもございます。
それからもう
一つは、金利から見ても、連邦
政府の赤字というもので高金利でございますから、
産業界に流れる金も金利が上がって競争できなくなる。その他いろいろ諸条件がございまして、生産技術的な競争力は圧倒的に
日本が強いし、当分強いと思います。そういう意味で、
産業というものは、ある上に新しい
産業というものが次々できますから、従来の
産業が空洞化したから次のものが出るということはない。これはいろいろ政治的にごたごたしてもどうにもならぬ体制ができ上がっておりますので、完全に
日米相互依存型の形態が生産技術体系ではほぼ進行するであろう、こう見ております。
ところが、その下に、今後の成長は何であろうということです。第三次
産業というのは先ほど申し上げたように
情報通信革命でございますから、そういう意味で
アメリカは、ATTそれからIBMとの独禁法の和解をしまして、それらがそういうものに出る自由を与えたわけです。ですから、それらの巨人がなりふり構わずいろいろと動き出したというのが現状でございます。そうしますと、左の方に「新
国際経済秩序」とありますように、将来の新しい大きな
産業に進出すると同時に、
アメリカは大きな市場でございますけれ
ども、
アメリカ以外の新成長市場は環太平洋でございます。御
承知のように、一九八五年ごろGNPが五%以上伸びた国は環太平洋諸国でございまして、自由圏の中の四七・五%ですからほぼ半分。かつて巨大であった環大西洋の市場、
アメリカと、それから大西洋をめぐる中南米、アフリカ、ヨーロッパ、それから中東も含めてソ連、東欧圏、それらがどんどん地位が下がっているわけでございます。そういうふうな成長市場に目を向けますと、初めてコンペティターである
日本というものを意識した。アジアNICSがある。それまでは
アメリカはやはりヨーロッパの諸国がコンペティターであったわけです。
そうしますと、
アメリカの市場というものは大きゅうございますから、既存市場の中でできるだけ競争力を持って、利益を出して新市場に投入するというのが常道でございますから、やはり保護的な動きが出てきて、まず第一が為替レートの変更、それから新通商法という形、包括通商法案が今出て非常に問題でございますけれ
ども、ああいう形が出てきている。その中で、
知的所有権と今申し上げたようにマーケットを押さえ、ニュービジネスに貢献し、しかも将来の第三次
産業の非常に意味のある
科学知識というものに直接貢献できるようにするというふうな動きから見ますと、大変重要な問題だということが御理解いただけると思います。
次の五
ページをちょっと
ごらんいただきます。
科学技術ということを、
産業技術で一緒くたにお話が出ておりますので、いろいろ誤解があると思いますので御
説明したいのは、真ん中ごろにグループA、グループB、グループCとございます。これを分ける根拠は、左に
経済企画庁の
資料がありますが、
研究員一人当たりの
研究費がぐんと伸びる場合と従業員千人当たりの
研究者数がふえるというもの、両方ともふえているAがハイテク分野、革新分野でございます。それから一番左の方の
研究員の方が伸びてないというところが成熟
産業でございます。真ん中が技術指向型
産業でございます。一番左の方に代表的な鉄鋼がございます。Bの代表的なものは自動車がございます。ですから、グループC、グループBというのはいずれにしても大量生産低コスト型でございますから、数量規制と、コストについてはアンチダンピング法によって抑えるということでございます。そのたびことに
日本の
産業構造は変えられてきたわけでございます。グループAの分野が今申し上げた大変なハイテクの分野でございまして、将来の第三次
産業革命に関係あるので、
知的所有権という形でいろいろ問題を投げかけてきている、こう御理解ください。
そうすると、果たして
日本の技術は強いか。生産技術は強いと申し上げましたのは、このグループB、グループCが強いということで、細かい御
説明は申し上げませんが、一番上の方の
日米製造業の比較ということで各
産業分野別にずっと見ますと、今申し上げたように、強いところは通商規制であり、今後問題があるところは
アメリカが圧倒的に強くて、しかも
知的所有権その他の問題を発動する。航空、宇宙については防衛問題も関係する、こういう状態でございまして、決して
日本は将来に対しては強くないので、
学術の振興を急速に、しかも国の力で援助していただきたい、こういうふうに思うわけです。
そこで、この五
ページの真ん中にございますように、
産業技術は区別して論じなければならない。
日本の強いのは第二次
産業革命の後期における
産業技術、いわゆる量産低コスト依存型の生産技術は圧倒的に強いのですが、第三次
産業革命における
産業技術は決して強くないと一番上の
日米製造業の比較に細かく書いてあります。それは、新知識と知的財産依存型の
産業でございます。
この場合に、前の四
ページに戻っていただきたいのですが、「
日本の
社会・
構造の変化」と書いてございます。御
承知のとおり、今や
世界一五%のGNP国家ということで巨大国家になっております。しかも内需振興型の
経済運営に転換をしておりますが、その下の図にございますように、GNPに対する消費支出比率は年々上がっておりまして、ことしの
経済企画庁の見通しでは、GNP全体が三百六十五兆円、一日一兆円、その中で国民消費が二百十一兆円、約五八%。
アメリカは六五でございますが、これがまだまだ伸びるということでございます。
これが
日本の
産業発展の基礎でございますが、その下に書いてございますように、価格とコストが乖離してきているわけです。ソフト化、サービス化ということ。従来は、原料を入れて製造工場で物をつくると、コストが幾らかかかりますから、妥当な利潤を乗せてプライスという意味ではほぼ読めたのでございますが、今はそれが変わったということでございます。商品価格選択権は完全に国民である消費者にございます。そのために
研究開発等コスト回収が予測不確実であるということと、デザイン、ノーハウの模倣、盗用は比較的容易で、最近コンピュータープログラムのソフトの開発等においては大変な金がかかるのだけれ
ども、一たん表へ出ますと模倣は容易だ、それでは困るということで著作権法問題等が起こってまいります。それは著作権法だけではなしに、先ほど
知的所有権の膨大な範囲を御
説明申し上げましたが、ニュービジネスに対しても、技術だけじゃなしに営業上のノーハウにつきましても、
知的所有権という問題が非常に大きく浮かび上がってきているということでございます。
そこで、右にございますように、今後の
産業形態は、
国際市場、国民のニーズをつかみ、一番上の
研究開発と直結して、それに対する流通関係をなるべく短くして、そして生産、技術、ノーハウ等を大事にして、それぞれの工場立地はいろいろなところにつくりますが、
世界競争のために部品調達も
世界から集める、こういう形態に変わっているというふうに御理解ください。
そういうことでございまして、その場合に一番強みは、五
ページの一番下を
ごらんいただきたいと思います。小企業への強力な支援ということでございます。
アメリカのMITの
調査によりますと、一九六九年から七六年の当時でさえも、新規創出職業の八六%が小企業でございます。それで
アメリカのレーガン大統領の中小企業教書の演説の中で、
研究開発効率は大企業の二十四倍、中企業の十六倍もある、しかし小企業は大変な苦労をしながら連邦
政府の三%以下の援助しか受けていない、絶対これを助けようというのが彼らの
考え方でございます。ところが
日本は、この下の表にございますように、
日本の三百人以下の中小企業は、事業所数で九九・二%でございます。
アメリカが五百人以下が九六・二%に対して、もっと多い。従業者数は七一・九%でございます。付加価値額が五五・九%でございます。これらの
方々が、よく話が出ます、最近までは勤勉ということできたけれ
ども、最近の
経済はそれから創造へと変わる。勤勉ということは、
一つはロボットにかえていきますけれ
ども、
一つは価格競争力がありませんから発展途上国にどんどん工場を移します。しかし、
日本の
国民経済が巨大な中で商品選択権を国民全体が持つようになりますから、それに知恵をつけながら回すということに対して、
知的所有権制度をどういうふうにするかというのが
日本の将来にかかっていると思いますので、先端技術的な問題に対して先進国に堂々と伍してやるという問題と、それを具体的な商品にして
国民経済に流す場合も全部含めて
知的所有権制度だ。それに対して大企業にいろいろ横暴なことがございました場合には、
社会の公正なる競争秩序という形で独禁法があるという意味で、全部含めた公正なる
産業競争秩序というものをぜひ諸
先生方のお力で
日本がつくり、それは
国際化しますから、
世界にそれを提案をして、そして、それに対するスタンスから
日米間はこうあるべきでないかという交渉をすべきだ、こういうふうに思うわけでございます。
以上をもって、ちょうど時間になりましたので、御
説明を終わらしていただきます。