運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-04-26 第112回国会 衆議院 科学技術委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十六日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 大坪健一郎君   理事 榎本 和平君 理事 小宮山重四郎君    理事 佐藤 敬夫君 理事 粟山  明君    理事 若林 正俊君 理事 上坂  昇君    理事 貝沼 次郎君 理事 小渕 正義君       櫻内 義雄君    竹内 黎一君       中山 太郎君    羽田  孜君       原田昇左右君    上田 利正君       村山 喜一君    近江巳記夫君       春田 重昭君    矢島 恒夫君  委員外出席者         参  考  人         (日本学術会議         会長(東京大学         名誉教授))  近藤 次郎君         参  考  人         (帝人株式会社         理事)     内田 盛也君         科学技術委員会         調査室長    西村 和久君     ───────────── 委員の異動 四月二十日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     前島 秀行君 同日  辞任         補欠選任   前島 秀行君     野坂 浩賢君 同月二十六日  辞任         補欠選任   竹内 黎一君     箕輪  登君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興基本施策に関する件(日米科学技術協力に関する諸問題)      ────◇─────
  2. 大坪健一郎

    大坪委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件、特に日米科学技術協力に関する諸問題について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本学術会議会長近藤次郎君及び帝人株式会社理事内田盛也君出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大坪健一郎

    大坪委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  4. 大坪健一郎

    大坪委員長 この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  本日は、日米科学技術協力に関する諸問題につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序でありますが、まず両参考人からそれぞれ三十分程度御意見をお述べいただき、その後委員の質疑に対して御答弁をお願いいたしたいと存じます。  それでは、まず近藤参考人にお願いいたします。
  5. 近藤次郎

    近藤参考人 ただいま委員長から御指名を受けました日本学術会議会長近藤次郎でございます。本日は、議員の諸先生に私ども意見を聴取していただきまして、ありがとうございます。  それでは、これから御説明に入りますが、日米科学技術協力に関することについて御説明を申し上げます。前もって委員長の御許可を得まして、資料をお手元にお配りしてございますので、それをごらんになりながら私の説明を聞いていただきたいと存じます。本日のことに関係がございますので、色刷りの「日本学術会議」の資料を用意してまいりました。これをごらんいただきたいと思います。  一番最初の一ページをおあけいただきますと、上の方に日本科学者を代表している日本学術会議構造が書いてございます。日本じゅう科学者と呼ばれる方は四十五万人おられます。これはある程度自分研究ができるという方で、前は御存じのように、日本学術会議科学者の直接選挙によって会員が選ばれておりましたが、そのような資格のある方を推定いたしますと四十五万人おります。それらの方々がいろいろな学・協会に所属しておられますが、日本学術会議に登録しております学・協会の数は、この十三期、私ども昭和六十年七月の初期におきましては、そこに書いてありますとおり七百三十九学・協会でございました。そこで、その学・協会が枠を超えていろいろな研究協力あるいは対外協力、こういうものをいたしますために、研究連絡委員会というものを百八十置いております。これは例えば統計というものを例にとりますと、農学の方面でも医学方面でもあるいは経済方面でも使いますものですから、日本経済学会日本医学会というところからその関連の関心のある方が委員として出てこられまして、百八十の研究連絡委員会がございます。  それを通じて二百十名の会員が選ばれているという構造になっております。したがいまして、私どもは逆に申しますと、日本におります四十五万人の科学者を代表しているというわけでございます。下の図は、この科学者というのが単に自然科学あるいは医学といった方面だけでなくて、人文・社会科学も含まれているという特色を示したものでございまして、これは外国のアカデミーにもその例が非常に少のうございます。  さて、私ども日本学術会議では、去る四月二十一日、つい先週のことでございますが、百四回の総会におきまして、お手元にありますような声明全員合意によってつくりました。表題は「国際間の科学技術協力研究の自由について」という声明でございまして、副題として「日米科学技術協力協定改定に当たって」としてございます。この内容を簡単でございますからこれから読み上げますけれども、それに先立ちまして大体の構成を申し上げます。  左側のページにありますのは、今まで日本学術会議がやってまいりました科学者憲章あるいは国際協力、こういったような問題についての記録でございます。要点が書いてございます。それを受けまして右側に進みまして、日米科学技術協力協定改定について言及をしていっているわけでございます。総会は御承知のように三日間でございまして、この総会の間に、日米学術協力のあり方というようなものを一般的に議論いたしておりますと、大変時間がかかってしまいます。それで、前に日本学術会議が出しましたものに準拠しているわけでございます。  ちょっと左の方から読ましていただきますと、「最近、日米両国政府間で大筋合意された「日米科学技術協力協定」の改定について、目下伝えられる内容に関しては憂慮すべき点が少なくない。」これが書き出しでございます。日本学術会議は、第七十九回総会、これは昭和五十五年でございますが、科学者憲章という声明を出しました。また第三十四回総会、これは昭和三十六年のことでございますが、「科学国際協力についての日本学術会議見解」を採択いたしました。科学者の責務と学術国際交流に当たっての基本的な原則をうたってございます。  科学者憲章と申しますのは、ここにありますとおり、参議院議員であられますところの伏見康治会長のときにまとまりましたものでございまして、五つ項目が書いてございます。この五つ項目を遵守することを宣言しております。一は「自己研究意義目的を自覚し、人類の福祉と世界の平和に貢献する。」二は「学問の自由を擁護し、研究における創意を尊重する。」三は「諸科学の調和ある発展を重んじ、科学精神と知識の普及を図る。」四は「科学の無視と乱用を警戒し、それらの危険を排除するよう努力する。」五は「科学国際性を重んじ、世界科学者との交流に努める。」という文案でございます。これにつきましては、別にもっと詳しい前文の資料がついてございますが、長くなりますので項目だけを読み上げてみました。これは要するに科学者自己規律であるとお受け取りいただきたいと思います。自分たち科学を進めていく上で、こういう点について規律を守っていくんだということを科学者自身として宣言したものでございます。  その次の国際協力についての五原則は、ノーベル賞を受けられました朝永振一郎先生会長のときにつくられたものでございますが、この五原則をつくりますために、三日間の総会のすべての日程を費やしたと記録に残っております。それで、ほかの項目の審議のために臨時に一カ月後に総会を開いておりますが、そういうふうな非常な議論の後にできました五原則がそこにあります五つでございまして、「平和への貢献を目的とすべきこと。」「全世界的であるべきこと。」「自主性を重んずべきこと。」「科学者の間で対等に行われるべきこと。」「成果は公開されるべきこと。」こういう五つ原則を表明した次第でございます。  そこで、その最後の行の「われわれは、」というのは私ども第十三期の学術会議会員でございますが、「これらの諸原則を再確認するものである。」これは基盤でございます。  次のページへ移りまして、ここに述べましたのは、一つ科学者自己規律であり、一つ国際協力という非常に全般的なものでございますから、それを日米科学技術協力協定改定という今日の問題に移しかえるためには、つなぎが必要でございます。それは次のように申してございます。「二国間の学術交流は、相手国の固有の事情があるにしても、上述日本学術会議が宣明した全世界的な学術交流原則と相容れない内容を含むものであってはならない。全世界的立場と個別の二国間協定立場とには差異がありうるにせよ、いかなる場合にも自由な研究交流成果の公開といった基本原則はかたく守られなければならない」というわけで、日米間という二国間の協定でございますから、それについて入っていきますためには、相手国、この場合には米国側のいろいろな事情がありましょうから、それに応じていろいろ科学協定を結ぶことは構いませんけれども、しかし原則は守っていただきたい、特に自由な研究交流成果の公表といったようなことは守られるべきであると述べている次第でございます。  その次が今度の問題でございますが、「今回の「日米科学技術協力協定」の改定は「安全保障」、「知的所有権」の問題を包含すると伝えられているが、このことによって科学者研究発表の自由、科学者身分保障などが実質的に制約される恐れがある。したがって、協定具体的内容の決定に当たっては、慎重な配慮が必要である。」と申しております。ここで私どもは、日本科学者を代表する責任の上におきまして、政府方々に、日本科学者が今度の日米科学技術協力協定についてこういうふうなことを全員一致考えておるということを申し上げまして、政府方々努力をお願いしている次第でございます。科学者はそれぞれ独自に研究をしております立場上、一致団結をするということが非常に難しゅうございますが、学術会議といたしましては、その責任から、政府の折衝に当たっておられる方々に、こういうことを日本科学者が言っておるということを後ろにお考えになられて、そして努力をしていただきたいと要望をしている次第でございます。  「われわれは、「日米科学技術協力協定」の改定に当たって、本会議」というのは日本学術会議のことでございますが、「が明らかにしてきた上述の諸原則精神を最大限に尊重することを強く要望するものである。この種の科学技術協力に関する国際的取極めについては、事前に広く科学者意見を聴取すべきものであると考える。」そういうことでございまして、私どもやや遅まきながら、科学者意見政府に申し入れさしていただいた、こういう次第でございます。  さて、御承知のように、この日米科学技術協定というのは米国政府の強い意向から出ております。今までも私どもはそのようなうわさを耳にしておりましたけれども、いわゆる基礎研究ただ乗り論フリーライダーという議論と、それから日米学術交流あるいは研究交流あるいは情報交流が非常に一方的であって、日本人米国へ行って研究をしている人数、それに比べて米国人日本へ来て研究する人数が非常に少ない。あるいは、日本人日本語学術文献を書いておりますけれども、これは米国人には非常に読みがたい。それに比べて日本人は自由に米国学術雑誌を購入したり、データベースを利用したりして米国情報を得ておる。これは不公平である。さらに、日本人米国研究機関へ行って長期にわたって留学をしておりますけれども米国人日本研究機関、これは国立もございますし民間もございますが、そこへ行くとしますとなかなか入れてもらえない。その全容を見ることが難しい。こういう不満がありまして、それがこのような形、今回の技術協力協定改定において相互意見が相対立しているところだというふうに伺っております。私ども科学者として反省をしてみますと、これはやはり私どもが今までに十分な努力をしてこなかったことがあったということを深く痛感する次第でございます。  まあそうは申しましても、基礎研究成果をすぐに製品に応用して、それによって多額の利益を得ているのはけしからぬというふうに米国は言われますけれども、しかし、それは事実であるといたしましても、米国基礎研究成果自分で実際の日常製品に応用することについて、私どもは邪魔をした覚えはございません。つまり、ちょっと申しますと、あいつはふだん勉強しないで山をかけていい成績をとったんじゃないか、おまえはおれの答案をカンニングしただろうというような一種の言いがかりでございまして、それについては私どもは余り責任を感じておりません。  日米相互研究者交流するということにつきましては、これはやはり日本研究所へ来たときにそこで何か得られる、またそれが米国へ帰ったときに一つステータスになる、そういう事実がありますと、もっとたくさんの科学者が来られると思いますが、日本はただ門戸を閉ざしているのではございませんで、門戸を開いているつもりでございますけれども日本へ行って二年間勉強してきたということがアメリカ社会では評価されていないということがございます。これは私どもが立派な研究成果を上げていなかったと言われてもいたし方のないところでございまして、この点についても今後は基礎科学を重視して、日本へ来て勉強したということがアメリカ人にとってもステータスになるように努力をすべきではないかというふうに思います。  情報につきましては、私ども日本語の国で生まれ育っておりまして、英語勉強するために単語帳を買ってきたり、中学以来非常に努力をしておりますので、米国の方も日本語勉強すれば、日本人は何も研究成果を隠しているのではないということがわかっていただけると思うのですが、これは、今日本語教育政府でも力を入れておられますので、そのうちに成果が出てくるものと考えます。しかし私どもも論文を書くときには、例えば概要というサマリーのところだけでも、できるだけ英語で書きますように努力をしたいと思います。またその中のせめてキーワーズ、この中身は何だと、これは中身はバイオである、中身超電導であるというようなことがその表題、そこだけ見ればわかるようなキーワーズ英語で書くように今後は努力したいと考えております。しかしながら、いずれにしましても、それらのことについて私どもの対応がややおくれておったということは事実でございます。  この伝えられる内容知的所有権の問題、あるいはどこまでが軍事技術でどこまでが非軍事技術かというような限界につきましても、科学者としては十分な勉強がまだできておりませんので、私どもはただ単に口で平和に貢献するような研究をするんだと言うだけではなくて、事実私ども自身がもう少し研究をしまして、今後の同様な科学技術協力につきましては、政府で交渉に当たっておられる方々にある程度の情報、あるいは私ども考え方をまとめてお話ができるように勉強をしていかなければならないと自分たち自身自戒しているところでございます。  この声明は、協定細目が多分六月三十日までには発表されるというふうに伺っておりましたが、それより少し早く出してしまいました。それは一つは、私ども第十三期の任期がことしの七月二十日過ぎに終わることになっております。そういうタイミングがございまして、総会はこの四月の総会最後になるという事実があるからでございます。この総会には全員出席してまいりますので、全科学者の総意を現実に討論の後でまとめるというのは、残された最後のチャンスであるからと思ったせいでございます。もう一つは、まだ現在は細目詰めをやっておられるというふうに思いましたので、先ほど申し上げましたように、私ども科学者の心配しているところがここにあるんだということをはっきりと申し上げたい、そういうふうに思った次第でございます。  その中で強調しておりますことは、科学者研究の自由、発表の自由、科学者身分保障というような点でございます。  科学者研究の自由というのは、科学者が好きなことをやらしてほしいというエゴだけで申しておるのではございませんで、学問研究というものは、自分でテーマを見つけ、そして自分で好きなように研究をする、自分で納得のいくように勉強する。これが試験勉強のときみたいに、強制されて、ここまで公式を覚えなさい、この単語はあしたまでに自分で書けるようにしておきなさい、こういうふうに言われたのでは本当の意味の学問と言うことができないと思っているからであります。  発表の自由についても同じことでございまして、学問国境なしということが言われております。これは前の声明にも出ておりますが、そういうふうに学問には国境というものがないものでございますから、相互発表をし、そして相互に相競うことによって学問が深く高くなっていく、その成果が全世界人類にプラスになって返ってくるということを基本的に考えているからでございます。  最後科学者身分保障という点でございますが、これは協定細目発表されませんとわかりません。今まで私ども新聞等で知っておりますところでは、大筋合意されたその協定改定に当たっては、何も特別に国内法をつくらないんだということが言われております。しかしながら、例えば日米共同超電導物質研究した。これはアメリカが強く要望しておることは私ども承知しております。そこで、同じものをつくりまして、これは日米一緒にやったものですから外へ漏らさないようにしよう。私どももこれは学者のモラルとして、米国との協定のもとに得られた成果は、日米双方合意がなければほかに発表することはできないと考えております。しかしながら、超電導というのは非常に簡単な物質をまぜ合わせてつくるものでございますから、御承知のように素人でも超電導物質をつくることができる。そこで、この協定のもとに作業しております研究者以外でも、それよりすぐれた、あるいはそれと同じようなものを自分で発見しないとは限りません。その人たちがもしこれを発表することによって、これは協定違反であるというようなことを言われるということになりますと、研究をやってはいけないと言うのと同じことになるわけでございまして、そのためにこの第三の研究者が不利益な処分を受けるということについては、日本学術会議としてはこの方たち身分を守ってあげる必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えてこのような声明文をつくりました次第でございます。  いろいろとございますが、その細目詰めをやっておられるというふうに伺っておりますので、できるだけ私ども意見を今後もお聞き取りいただいて、そしてこの方向でいい協定文ができるということになりますれば、私どもとしては大変望ましいことではないかと思います。国会の先生方におかれましても、科学技術というものが日本の将来にとって非常に大事であるということを十分御認識いただいておると存じます。また、首相もこれから英国へ行かれたり、あるいは中国へ行かれたりなさると思いますが、そのときに科学技術協力協定、こういう話は方々から出てくると思います。そのような際に、私どもがふだん考えております、ここにも書いてございますが、「全世界的であるべきこと。」というような基本の態度を持っておりますので、御努力いただきまして、諸外国研究者とともに手を携えて科学技術を進めていきたい、かように考えております。  以上、この声明文中心といたしまして御説明をさせていただきました。  なお、附属資料としましては、ただいまも申し上げましたけれども、三枚紙の上についておりますのが伏見会長時代に第七十九回の総会でつくりました声明科学者憲章でございます。それからその次の大きな紙にございますのは、三十四回、これはさかのぼって前でございますが、「日本学術会議見解」としていわゆる五原則をつくりましたものでございまして、これが朝永振一郎会長のときにおつくりになられたものでございます。  以上、時間が参りましたので、私の概括の御説明はこれで終わらせていただきます。
  6. 大坪健一郎

    大坪委員長 ありがとうございました。  では次に、内田参考人にお願いいたします。
  7. 内田盛也

    内田参考人 内田でございます。  最初に、委員長資料を配付して御説明することを御許可願いたいと思います。よろしゅうございますか。
  8. 大坪健一郎

    大坪委員長 どうぞ。
  9. 内田盛也

    内田参考人 私は、知的所有権中心意見を述べさせていただきます。  お手元資料の「科学技術振興基本施策」というのと、別の大きい資料と二つございます。  第一番目に、知的所有権制度というのは、一般にお考えになっておられるような特許だけの問題では決してないわけでございまして、日本国民産業全体の将来にかかわる問題であるという認識をまず御説明したい。そこで、一番上の「産業革新科学技術振興」という中で、知的所有権制度はどういう意義があったかということをまず御説明したいと思います。  そこで、別表の大きい表をごらんいただきたいと思います。別表ページに「産業活動長期波動とその革新要因」とございますが、ざっとごらんになりますと、そこにある波は有名なコンドラチェフの波でございます。一番下の方に書いてあるパックス・ブリタニカ、いわゆる第一次産業革命、その次にパックス・アメリカーナ、第二次産業革命がずっと進行したわけでございますけれども、ちょっとごらんいただきますと、一九八〇年代にカーブがずっと落ちておって、それから上がるように書いてありますが、上がるかどうかわからないわけです。累積債務問題等、全世界経済は非常に危険な状態にあります。どうしたらこれが上げられるかということで第三次産業革命ということがございますが、幸いにして科学技術が今大変なスピードで進んでおりまして、それが社会変動に結びついて、御承知のとおり日本国民経済も急速に変わっております。その両方を考えた場合に、科学技術産業上の有用性に使うということが知的所有権という制度なんでございます。  そこで、一番左の上の方に「科学技術」と書いてございます。それから「工業所有権 独占禁止法」と書いてございます。それから社会変動にマッチするようにしていろいろ経済原理があって産業革新が起こるわけでございますけれども知的所有権制度産業政策的に一番印象深いのは、十六世紀にイギリスエリザベス一世が、実は女王の大権によって特定の科学技術を、イギリスで事業を起こして産業振興になれば、これを保護するという独占権を与えたのが最初でございます。そのために、当時非常に貧乏であったイギリスに対してヨーロッパから続々といろいろな技術者が参りまして、それの風土が根づいて第一次産業革命が起こったわけでございます。  その次の第二次産業革命アメリカでは、アメリカ特許制度はちょうど建国以来できているわけでございますけれども、一八三六年と一八七〇年に大改正をやりまして、権利というのを審査して非常に明確にするということで保護したわけです。それがエジソン等の大発明に結びつきまして、折しも発見された石油の文明ということにマッチしてぐんぐん伸びたわけでございます。そして、後で御説明申し上げますけれども、今第三次産業革命ということに科学技術がかかわった場合にいかにすべきかという問題が知的所有権制度でございまして、そういう大きな世界の変革にマッチして、アメリカが先に考え出していろいろ世界に提案しているということが、ある摩擦ととらえられているわけでございまして、日本自身も自分の力でそういう見方をして、独自の考え方を出して、その両方の調整というふうにすべきだ、こういうことを申し上げたいと思っているわけでございます。  それから、例を申し上げますと、この上の方の自動車という一番わかりやすいので申し上げますけれども、自動車進化がございます。これは第二次産業革命のころ、一九一一年にフォードが大量生産をやったわけです。ですから今日進んできた文明は、石油文明に支えられた大量生産低コスト型であったわけです。そしてそういう技術が社会に根づきますと、その上に航空機という産業があり、その上に宇宙があります。よく話があるように、空洞化した上にそういう産業はないわけでございます。例えば、アメリカが自動車で空洞化したとしますと、日本でもよろしゅうございますけれども、その場合は、相互依存という形で国境を乗り越えた技術社会体制というものができ上がってないと、その上の進化のある産業はできないということでございます。それが一つ進行している、こういうふうに御理解いただきたいと思うのです。  そういう意味で、知的所有権とは何ぞやということで、この大きな紙の次の表をごらんください。「知的所有権の概念」というのがございますが、知的所有権というのは、いわゆるフランス革命までは土地というのが物権という財でございまして、それから産業革命が起こりまして、株式であるとかいろいろ債権というような財が出まして、最近、知的なものを保護する権利が財と認められ始めたというわけでございます。  この中には工業所有権と著作権がございます。工業所有権には、知的創作物としての権利、それから営業標識という事業を起こす場合の信用もこれに入るわけでございます。それから著作権というのは、本来文芸、美術というものを保護するものでございましたが、上の方にすうっと線が引いてございますように、コンピュータープログラムは著作権で保護しようということになったわけでございます。その上に半導体回路配置利用権がございますが、これらは従来の特許という考え方ではとてもとてもその枠には入れないという意味で、新しい制度ができております。ここにいろいろくくってございますように、技術革新分野に関係する権利が特許権、実用新案権、半導体回路配置利用権、コンピュータープログラムの著作権、植物新品種、最近はアメリカはトレードシークレットの中の技術ノーハウまで含める、広く言えば知識そのものがこれに入るという主張さえあるということでございます。ここまでが工業社会の物的付加価値ということが多かった時代であったわけでございますけれども、それが徐々に変貌しつつある。  もう一つは、その下の方に意匠、商標、商号、それから不正競争防止法云々とございますが、一番下にございますように、ニュービジネス、サービス産業に関する権利も全部含めて知的財産権ということなのでございます。したがって、一番右の方にございますように、最近の物流と情報革命があります。高度文化社会になっております。そうすると、国民自体が多様・多次元の市場に対していろいろな知識というものを付加価値として認めた事業が次々と起こっております。これ自体を知的所有権というわけでございますから、知的所有権ということでいろいろ話し合いした場合に、どこまで含まれるかということをはっきりしておきませんといろいろ問題があるという点と、日本全体がこれから入る社会においては、この知的所有権制度を国民の英知と努力でうまく振興するように、新しい制度、枠組みをつくる時期に来ておる、こういうことでございます。  そこで、もとのこちらの表の方にちょっと書いてございますが、そう考えますと知的所有権制度というのは公正な産業競争秩序というものの枠組みでございまして、公正な産業競争をどんどんと進めまして国民経済が豊かになる、あるいは世界全体が豊かになるというために、私権の保護、個人的な権利の保護による産業振興、みずからがいろいろやるというものをいかに保護してやるかというのが知的所有権制度でございます。しかしながら、保護が行き過ぎますと、例えば巨大企業が社会、国民のためにならないような独占行為をした場合に、初めて国家権力としての不正競争の排除という独占禁止法がございまして、国家権力で制度になっているわけでございます。この両方のバランスをとって、公正な産業競争秩序をどうつくるかということが産業技術振興の基本施策の土台かと思うわけでございます。  次に、IIの「石油文明基盤の上に電子文明開花」ということで御説明したいのでございますが、別表の三ページごらんいただきたいと思います。そういうふうに考えますと、しからば今世界は、あるいは日本自身はどういうふうな局面にグローバルに直面しているかということを御説明したいわけでございます。  そうすると、こちらの表にございますように、左の図1でございますが、「アメリカのGNP、失業率とエネルギー消費量の経時的変化」をぱっとごらんになるとわかりますように、今世紀の初めからエネルギーの消費量とGNPの伸びが完全に平行線でございます。それは当たり前のことでございまして、資源を入れて付加価値をつけて、そして重厚長大と言われるような形で商品をつくって国民に提供するということでございますから、それは並行だった。ところがオイルショック以後状況は変わっておりまして、右の方、ちょっと恐縮でございますが、これは英文でございますけれども、昨年の国際会議日本の状況が出たわけでございますが、これはぱっとごらんになるとわかりますように、GNPは伸びておりますけれどもエネルギー消費は横ばいになっております。ということは、この違いのぐんぐん伸びているところが知的財産という形で財を形成しているということでございまして、この中身は、先ほどの知的所有権の概念で御説明したように、新しい科学技術という問題と、それから国民消費の中の知的なものに金が払われるという社会に変わっているという、二つが大きく寄与していると見られるわけでございます。  そこで、技術革新のパターンがその下に種々書いてございますけれども、一番目が、かつては石油文明に支えられて、例えば大きな発電所をつくって電力を供給して、機械的なからくりで最終的ないろいろな機能を出しておったわけでございますが、最近は分子、原子レベルでいろいろ物質をデザインをして、その機能で最終的な人類の満足する商品をつくることができる時代に入ったわけです。それぐらいサイエンスが末端に直結するぐらいに進歩したわけでございます。これの一番いい例がエレクトロニクスだったわけです。エレクトロニクスは、軽薄短小と言われるように、大量の資源を入れて大きなものをつくるのではなしに、少量のものであって、しかも大きな価値が出てきて財として成るということでございますね。そういうことが進んでおります。そうすると、そういうサイエンスというものを高度に振興するためには、例えば真空技術であるとか、高度の技術がないとサイエンスができませんが、幸いにして高度の技術が進みまして、科学と技術が接近した、こういうことが言われております。  それから、物をつくっていろいろ流通関係の段階を通って消費者に提供するということが、情報化の進展によりまして、国民自体がだんだんと世界全体のこの商品が欲しいというニーズを直接情報でつかまえることができますし、発注もできます。それを即座にそこに届けるという形でドア・ツー・ドアの、クロネコヤマトさんの宅配便がいい例でございますが、こういう形が国際的に進んでおります。これはどんどん進みます。そういう形で新しい産業社会が形成されてまいります。そうしますと、そういうニーズの多様化という意味と商品というものが複雑でございますから、業種間というものがなくなってまいります。フュージョンビジネス、融合事業と言われるような形の新しい産業形態に変わっていっているわけでございます。その次には、いわゆる商品というものについては国境がなくなってまいります。こんな時代に突入した場合に、知的な財というものをつくる場合に、末端の国民消費に対してマッチするものを提供できれば大変な利益があるわけですが、逆に大変なリスクがあります。当たれば大きいけれども、当たらない場合は破産します。そういう形で、アメリカあたりは、こういう社会に対して新しい知的所有権の枠組みを国民のためにどうつくるかという投げかけがあるということをぜひ御認識いただきたいと思うわけです。  そういう意味で、その次に、そういう事態の中でグローバルな変化、日本もそこまでいっている、アメリカもそういっておるという中で日米の技術・通商摩擦があるということで御説明をしたいと思うわけでございます。  三番目が「日米の技術・通商摩擦」で、四ページごらんいただきたいのですが、そういう形でグローバルに進んでおりますので、世界との調和となりますと、今申し上げたように、社会が大きく変わっているということと前例のないほど科学技術が進歩しているということで、科学技術という成果社会変動という形でうまくアプライすることによって産業が起きますから、経済科学技術が両輪になったと言われるわけです。アメリカははっきりと科学技術が国力であるということで、経済と両輪で考えておりますが、日本社会全体はそういう認識が極めて低いということを大変残念に思っておりますので、諸先生方はぜひそういう見方で世界を眺め、国の政治を眺めていただきたいというお願いでございます。そういう意味で、産業社会の変革と知的資本の活用ということで、アメリカの動きを御説明しながら日米問題を考えるとよく御理解できるかと思いまして、この四ページの上の表をつくったわけでございます。  アメリカがどうもこういう第三次産業革命に突入しているらしいということに気がついて最初に提案しましたのが、一九七九年十月三十一日にカーター前大統領が議会に送ったインダストリアルイノベーションに対する教書でございます。それからレーガン政権にかわって、急速にいろいろな角度から検討されて今日に来て、ほぼその全貌がはっきりしたというのが現状でございます。それは、この表にございますように、基礎研究を充実する。何よりも科学技術力というものを強化しよう。そのためには、基礎科学というものは大学が中心でございますが、産業界はその知識を応用して産業を構築する使命があります。ですからノレッジトランスファー、知識のトランスファーという言葉がございまして、大学の新しい知識を産業界に転用して、それを国民のためにいかに活力あるように産業を振興するかという政策、その中でも「小企業の振興」と書いてございますが、後で御説明しますけれども、スモールビジネスの方が技術開発といいますか商品開発といいますか、産業というものを考えた場合の発明については、大企業よりずっと効率がいいというふうなことでございます。そしてその場合に、知的所有権という形で保護をして、世界的なものを押さえればそのマーケットというものがとれますから、これによってアメリカの復権をしようというのが基本政策にございます。  そこで、左の方にございます知的資本の強化というのは、レーガン大統領が昨年の一月に年頭教書でインテレクチュアルキャピタルという言葉を使ったわけでございますが、人的・知的資本強化法というものを実は提案をしております。それから、何よりも国民の知恵というもののレベルを上げて、チャレンジする体制をつくらなければいかぬ。それから、ナショナル・サイエンス・ファウンデーションを強化して基礎研究にもっともっと金を提供してあげましょう。それから、知的所有権法を強化して知識の流出規制、テクノナショナリズム、これは非常に問題がございまして私は賛成ではないのですが、そういう動きをしております。  ところが、真ん中の生産技術力というのは日本が圧倒的に強くなったわけでございます。生産技術力というのは、大量生産型という場合には、日本は明治以来基礎教育というものが定着をしました。おもしろいことに、明治の開国のころ日本の人口は三千万人、黒船が日本に来たときのアメリカの人口は約三千万人。今日本の人口の倍ということは、それだけアメリカに移民が流れ込んだわけです。アメリカの国語は英語でないということを三年前に友人から聞かされて大変びっくりしたものですが、確かにアメリカの文化というのは英語で成り立っております。八つの州が国語であり、二十五の州が国語にしようと努力しているという話をそのときにしてくれました。そして、バイリンガル法によって自分の母国語と英語勉強しようということですが、ヒスパニックであるとか中国系の方であるとかいうものになりますと、教師がおりませんから、英語をしゃべれない人が非常に多いわけです。これがアメリカの泣きどころで、レーガンも昨年の一月に、西暦二〇〇〇年までに文字を読めない人間を劇的に減らすというふうな演説をしておりますが、それがアメリカの実態でございます。  もう一つは、高校生の落ちこぼれが多いという意味で、そういう方々が労働戦線に入ってまいりますと、大量生産型の流れの中でちょっとでもおかしなことがありますととまりますので、これが大変アメリカが苦しいという立場にございまして、連邦政府として懸命に人間のレベルを上げるということをやるというのはこういう意味でございます。それと同時に、八五年だったと私は記憶しておりますが、アメリカのヤング・レポートの中の資料によりますと、日本の工学系の技術者の数が七万二千人で、アメリカは六万九千人ですから、人口当たりになりますと日本の方は倍おるわけです。しかも現場で働いておって、アメリカは働かないということ、これもアメリカの競争力を弱めるゆえんであるということですね。それから経営的にも、御承知のとおりアメリカのビジネススクールでは短期的な利益でございますから、長期的な投資をしないということもございます。  それからもう一つは、金利から見ても、連邦政府の赤字というもので高金利でございますから、産業界に流れる金も金利が上がって競争できなくなる。その他いろいろ諸条件がございまして、生産技術的な競争力は圧倒的に日本が強いし、当分強いと思います。そういう意味で、産業というものは、ある上に新しい産業というものが次々できますから、従来の産業が空洞化したから次のものが出るということはない。これはいろいろ政治的にごたごたしてもどうにもならぬ体制ができ上がっておりますので、完全に日米相互依存型の形態が生産技術体系ではほぼ進行するであろう、こう見ております。  ところが、その下に、今後の成長は何であろうということです。第三次産業というのは先ほど申し上げたように情報通信革命でございますから、そういう意味でアメリカは、ATTそれからIBMとの独禁法の和解をしまして、それらがそういうものに出る自由を与えたわけです。ですから、それらの巨人がなりふり構わずいろいろと動き出したというのが現状でございます。そうしますと、左の方に「新国際経済秩序」とありますように、将来の新しい大きな産業に進出すると同時に、アメリカは大きな市場でございますけれどもアメリカ以外の新成長市場は環太平洋でございます。御承知のように、一九八五年ごろGNPが五%以上伸びた国は環太平洋諸国でございまして、自由圏の中の四七・五%ですからほぼ半分。かつて巨大であった環大西洋の市場、アメリカと、それから大西洋をめぐる中南米、アフリカ、ヨーロッパ、それから中東も含めてソ連、東欧圏、それらがどんどん地位が下がっているわけでございます。そういうふうな成長市場に目を向けますと、初めてコンペティターである日本というものを意識した。アジアNICSがある。それまではアメリカはやはりヨーロッパの諸国がコンペティターであったわけです。  そうしますと、アメリカの市場というものは大きゅうございますから、既存市場の中でできるだけ競争力を持って、利益を出して新市場に投入するというのが常道でございますから、やはり保護的な動きが出てきて、まず第一が為替レートの変更、それから新通商法という形、包括通商法案が今出て非常に問題でございますけれども、ああいう形が出てきている。その中で、知的所有権と今申し上げたようにマーケットを押さえ、ニュービジネスに貢献し、しかも将来の第三次産業の非常に意味のある科学知識というものに直接貢献できるようにするというふうな動きから見ますと、大変重要な問題だということが御理解いただけると思います。  次の五ページをちょっとごらんいただきます。科学技術ということを、産業技術で一緒くたにお話が出ておりますので、いろいろ誤解があると思いますので御説明したいのは、真ん中ごろにグループA、グループB、グループCとございます。これを分ける根拠は、左に経済企画庁の資料がありますが、研究員一人当たりの研究費がぐんと伸びる場合と従業員千人当たりの研究者数がふえるというもの、両方ともふえているAがハイテク分野、革新分野でございます。それから一番左の方の研究員の方が伸びてないというところが成熟産業でございます。真ん中が技術指向型産業でございます。一番左の方に代表的な鉄鋼がございます。Bの代表的なものは自動車がございます。ですから、グループC、グループBというのはいずれにしても大量生産低コスト型でございますから、数量規制と、コストについてはアンチダンピング法によって抑えるということでございます。そのたびことに日本産業構造は変えられてきたわけでございます。グループAの分野が今申し上げた大変なハイテクの分野でございまして、将来の第三次産業革命に関係あるので、知的所有権という形でいろいろ問題を投げかけてきている、こう御理解ください。  そうすると、果たして日本の技術は強いか。生産技術は強いと申し上げましたのは、このグループB、グループCが強いということで、細かい御説明は申し上げませんが、一番上の方の日米製造業の比較ということで各産業分野別にずっと見ますと、今申し上げたように、強いところは通商規制であり、今後問題があるところはアメリカが圧倒的に強くて、しかも知的所有権その他の問題を発動する。航空、宇宙については防衛問題も関係する、こういう状態でございまして、決して日本は将来に対しては強くないので、学術の振興を急速に、しかも国の力で援助していただきたい、こういうふうに思うわけです。  そこで、この五ページの真ん中にございますように、産業技術は区別して論じなければならない。日本の強いのは第二次産業革命の後期における産業技術、いわゆる量産低コスト依存型の生産技術は圧倒的に強いのですが、第三次産業革命における産業技術は決して強くないと一番上の日米製造業の比較に細かく書いてあります。それは、新知識と知的財産依存型の産業でございます。  この場合に、前の四ページに戻っていただきたいのですが、「日本社会構造の変化」と書いてございます。御承知のとおり、今や世界一五%のGNP国家ということで巨大国家になっております。しかも内需振興型の経済運営に転換をしておりますが、その下の図にございますように、GNPに対する消費支出比率は年々上がっておりまして、ことしの経済企画庁の見通しでは、GNP全体が三百六十五兆円、一日一兆円、その中で国民消費が二百十一兆円、約五八%。アメリカは六五でございますが、これがまだまだ伸びるということでございます。  これが日本産業発展の基礎でございますが、その下に書いてございますように、価格とコストが乖離してきているわけです。ソフト化、サービス化ということ。従来は、原料を入れて製造工場で物をつくると、コストが幾らかかかりますから、妥当な利潤を乗せてプライスという意味ではほぼ読めたのでございますが、今はそれが変わったということでございます。商品価格選択権は完全に国民である消費者にございます。そのために研究開発等コスト回収が予測不確実であるということと、デザイン、ノーハウの模倣、盗用は比較的容易で、最近コンピュータープログラムのソフトの開発等においては大変な金がかかるのだけれども、一たん表へ出ますと模倣は容易だ、それでは困るということで著作権法問題等が起こってまいります。それは著作権法だけではなしに、先ほど知的所有権の膨大な範囲を御説明申し上げましたが、ニュービジネスに対しても、技術だけじゃなしに営業上のノーハウにつきましても、知的所有権という問題が非常に大きく浮かび上がってきているということでございます。  そこで、右にございますように、今後の産業形態は、国際市場、国民のニーズをつかみ、一番上の研究開発と直結して、それに対する流通関係をなるべく短くして、そして生産、技術、ノーハウ等を大事にして、それぞれの工場立地はいろいろなところにつくりますが、世界競争のために部品調達も世界から集める、こういう形態に変わっているというふうに御理解ください。  そういうことでございまして、その場合に一番強みは、五ページの一番下をごらんいただきたいと思います。小企業への強力な支援ということでございます。アメリカのMITの調査によりますと、一九六九年から七六年の当時でさえも、新規創出職業の八六%が小企業でございます。それでアメリカのレーガン大統領の中小企業教書の演説の中で、研究開発効率は大企業の二十四倍、中企業の十六倍もある、しかし小企業は大変な苦労をしながら連邦政府の三%以下の援助しか受けていない、絶対これを助けようというのが彼らの考え方でございます。ところが日本は、この下の表にございますように、日本の三百人以下の中小企業は、事業所数で九九・二%でございます。アメリカが五百人以下が九六・二%に対して、もっと多い。従業者数は七一・九%でございます。付加価値額が五五・九%でございます。これらの方々が、よく話が出ます、最近までは勤勉ということできたけれども、最近の経済はそれから創造へと変わる。勤勉ということは、一つはロボットにかえていきますけれども一つは価格競争力がありませんから発展途上国にどんどん工場を移します。しかし、日本国民経済が巨大な中で商品選択権を国民全体が持つようになりますから、それに知恵をつけながら回すということに対して、知的所有権制度をどういうふうにするかというのが日本の将来にかかっていると思いますので、先端技術的な問題に対して先進国に堂々と伍してやるという問題と、それを具体的な商品にして国民経済に流す場合も全部含めて知的所有権制度だ。それに対して大企業にいろいろ横暴なことがございました場合には、社会の公正なる競争秩序という形で独禁法があるという意味で、全部含めた公正なる産業競争秩序というものをぜひ諸先生方のお力で日本がつくり、それは国際化しますから、世界にそれを提案をして、そして、それに対するスタンスから日米間はこうあるべきでないかという交渉をすべきだ、こういうふうに思うわけでございます。  以上をもって、ちょうど時間になりましたので、御説明を終わらしていただきます。
  10. 大坪健一郎

    大坪委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 大坪健一郎

    大坪委員長 これより質疑を行います。  この際、委員各位に申し上げますが、質疑につきましては、時間が限られておりますので、特段の御協力をお願いいたします。  また、御発言の際は、必ず委員長の許可を得てお願いいたしたいと存じます。
  12. 中山太郎

    ○中山(太)委員 内田参考人にお尋ねしたいのですが、大変私らは感激してお話を聞いておりました。科学技術が我々人類社会の大きな変革を起こしている一つの延長の軌道をいろいろと御指摘いただいて、私ども政治家として一体どのようにこれからやっていくべきかについて御示唆をいただいたわけですが、私ども科学技術に関心を持ちながら政策をやっている立場でお尋ねをしたいのです。  この御示唆を見ておりまして、先進工業国、大体アメリカ、ヨーロッパ、日本、三極の中で非常に科学研究と技術の進歩が進みつつありますけれども、問題は、先進工業国の中で日米関係、日欧関係、それと発展途上国、アジアNICSに技術と資本が移動して工業化が進んでくる。そういう中で、先進工業国の中でのいわゆる経済摩擦が新しく起こっているわけですけれども、発展途上国と先進工業国との間でいろいろと援助をする、してほしいという要望が来ているのですが、そこへLLDCの場合は円借款もできなくなるという時代が来て、結局みんな困ってきたわけですね。だから格差は非常に大きくなってきた。そこでそれらの国々のベースをテークオフさせるために、国際ルールの中で金はもう貸せない限度に来た。そうすると、そこの富を開発してやるために人間を訓練したり工業化に対する援助をするときに、なかなかそこが国際的に大きなネックになっていくのだろうと思うのですね。だから先進工業国間での知的所有権の問題と、中程度の工業化をしている国家、LLDCとの間に非常に大きなギャップがさらに増幅していくだろう。そういう中で日本というものの科学、技術、特に知的所有権の移転問題とか保護の問題とかジョイントであるとか、そういうことで歴史的にこれから十年くらいの期間にさらに大きな変革が起こってくるだろうと、私自身参考人のお話を聞きながら感じたのですが、それをどういうふうに展開させていくべきか、その点ちょっとお触れをいただきたいと思います。
  13. 内田盛也

    内田参考人 それではお答えいたします。  ちょうどいい御質問でございますので、この二枚目をごらんくださいませ。それでわかりやすく御説明したいと思います。  まず先進国との関係を御説明いたしますと、一つには、今申し上げたような包括的産業革新政策というものを日本自体でつくっていただいたらどうか。これまでは世界の生産加工センターということをやってきたわけでございますけれども科学技術は私は日本が幾ら強くなっても構わぬと思うのです。ただ、それでお金を日本に全部集めるということが問題なわけですね。私非常に疑問に思うのは、何かアメリカにやられますと、先ほどの近藤先生のお話ではありませんが、悪いことをしてはいないのだというのですね。金を一生懸命明治以来集めてきて、それが行き過ぎちゃったことが問題なんです。科学技術は、日本は何もありませんから、世界で一番強くしていただきたい。どう使うかという問題です。  その場合に、先ほど申し上げたように生産加工センターというものがきちっと土台があって、この技術の強みがあるからこそ新しいサイエンスができるわけで、そういう意味で言いますと、生産加工をやめて知的だけやるというのは、これは絶対だめなんです。ですから生産加工センターという基盤を維持して、そしていろいろおっしゃるように内需喚起がありますと、あるいは円高になりますと、中小企業はみんな発展途上国へ出ますね。そうすると、技術とか生産体制の相互依存の土台の上に、ここにございますように国際的な相互依存をつくりつつ、その基盤の上に世界的知識創造センターをつくるのだ。この知識創造センターというのはどういうことかといいますと、それを努力するのはあくまで科学者であり、技術者なんです。ところが明治以来は、建物をつくって、まあ国の研究となりますと国家公務員。国家公務員が研究するのじゃなしに、科学者技術者が個人の努力でチャレンジするわけです。そういうチャレンジする人というものに対してどういう支援をするか。  私も日米問題で、材料が専門でございますから、一昨年ナショナル・サイエンス・ファウンデーションと文部省との協定でMITへ参りまして協議したときに、アメリカが言うのは、日本は何かというと偉い先生を呼んで講演を聞くことが日米交流と思っているが、それは知識を盗んでいることになる。そうでなしに、若いアメリカ人日本によこして、日本語勉強さして日本で学ぶということだ。日本の大学の蓄積や知識、人脈と日本全体の科学技術研究システムですね。アメリカのNASAなんかは国立ですが、アメリカ科学技術者のための共同研究体でございまして、国家機関が使わしてやるということでは全くないわけです。ところが、明治のころから日本は国王導型でございますから、何か使わしてやるのだという風潮があるのです。これは歴史的なことがございますので、過去が悪いということでは全くございませんが、そういうことに対して、先進国に並んだ場合には、科学技術者自身がやる問題についてどう支援するかという非常にシンプルな問題をきちっとしないと、先進国では通らないということが第一点でございます。  そういう意味で、この二番目の「科学技術に対する基本姿勢」ですが、先進国同士はサイエンスは人類社会発展のため自由交流原則です。欧米は、人類発生以来サイエンスが出てまいりまして、宗教とともに進んでまいりました。ですからアメリカは、建国のときは、人種がございますから宗教には関与しない。それに付随した大学にも一切関与しない。ですから国立大学はないわけです。ましてや科学技術については基本的に自由というものを標榜しておりますが、日本がそれを強く主張すべきだというのは、アメリカは建国以来そうなんですが、最近ちょっとおかしいのですよ。ですから、アメリカのためにもそれを主張してあげなければいかぬと私は思っております。  それから、科学技術成果というのは世界的にエクセレンシーでなければいけないのです。非常に苦しいことながら、科学者というのは、まあオリンピックで言えばメダルをもらわない者は価値がないのです。あとはだれも周りで見てくれません。それから産業でも、世界的な特許最初に取らなければ全部パアなんです。ですから世界的なエクセレンシーのみだ。ところが、明治以来ほんの最近までは基本発明というのはなしに来ましたから、努力、勤勉だけで国の中だけで何とかやれてきましたけれども、今はだめなんですね。そういう形で考える。  そうすると先進国同士は、そういう個人の努力に依存するということと、それを判断できるのは、ここに書いてございますが、ピアレビューということなんです。ピアレビューシステムというのは、昔本当の努力するイギリスの貴族たちが、貴族は貴族でなければ審査できないということと同じように、学会は学会で本当の専門家同士が自分の思いをありったけやりますが、正しいかどうかわかりません。議論するうちに、自分はこれでいいんだという自分の信念を持ってかけるわけです。これが学会なんです。ところがその学会も、ほとんど我々発表する科学者が日々ポケットから出した会費で全部賄っておるわけです。決して国の金は出てないわけです。小さなことで言えば、わずかな科学者自分なりの会費くらいも税制度で面倒を見てやるとか、きめ細かいほんの日々の問題の積み重ねが要る。そうしまして、確かに日本科学技術者を本当に大事にするのだということがあれば、私は先進国にいいと思いますね。  それから発展途上国のことをちょっと申し上げます。  日本全体が今こういう形で産業技術基盤を持って、知的な構造をつくっていくということになりますと、やはり世界全体というものを考えますと、先ほど先生御指摘のように、今の状態ですと累積債務問題で世界経済は非常に危険な状態になります。そうなりますと、これもいろいろ金融界の方と議論するのですが、これを救うということは金では解決できません。それぞれの国がやる気を起こさなければいけない。幸いなことに、日本というのは技術に関しては大変尊敬されております、明治以来の努力で。それと同時に、そういうふうな知的な所有権という考え方も、アメリカが言うのもよくわかるのですが、それぞれの地場産業的なもので努力して、だんだん大きくしないと発展途上国はよくなりません。  そこで申し上げたいのは、日本も明治三十八年でございましょうか、実用新案法ができたわけです。初代特許庁長官が高橋是清さんだったのですが、明治十八年ごろ勧業に対する意見書か何か出されまして、当時欧米をずっと回ってみて、海外技術ばかり導入して日本が殖産主義をやるということで浮かれているけれども、本当は日本に伝統的にある産業を国民がハッスルするように持っていかなければいかぬ。そういう意味で、欧米式の発明というものについてはちょっと高過ぎる。それから、美学的な感じとして意匠権もありますが、その中間で、例えば実用新案で例が出ますのはカメの子たわしです。カメの子たわしは決してきれいなものではございません。それから発明としても高くはありません。しかし、日本独特の制度をつくります。これは世界日本だけなんです。そのために日本は非常に興隆するわけです。そういう物の考え方、グローバルな見方で、その国その国にこういうことをしてやったらどうかということを言えるのは、現実に欧米の言う制度をそのまま入れて、刻苦勉励した日本なら言えるわけです。先進国にも発展途上国にも言えます。そういう意味で、この表の中のずっと下の方で「日本産業技術による世界への貢献」の中で、「科学技術大国への選択」と「生産基地の海外移転と相互依存体制」という場合に、日本産業技術開発力と消費市場が大きいですね。そのために各国にどうしなければいかぬかというのは、歴史、文化、社会経済にそれぞれ対応してやらなければいけませんですね。押しつけではいけません。  そのために私の提案は、アメリカが戦後巨大な市場の中で特恵関税方式をとったように、特恵産業としてこの国のこの産業に限っては特別にあらゆる意味で日本が援助しよう。国によって全部違います。というのは、ちょうど二年前の一月ですか、渡辺通産大臣がアメリカに行かれて、三極問題で、知的所有権日本が発展途上国にいろいろ啓蒙するということで日本国際会議を急遽開くことになった。私、そのときにいろいろ講演をしたのですが、発展途上国みんな見えまして、自分の国はどうしたらいいのだろうか、日本の資源をどうしたらいいのだろうか。みんな違うのです。ですから、国々をよく調べて、この特恵産業日本はこの国とは特に手を結ぼう、そのためには技術移転をしよう、相手の人材も日本への留学も面倒を見よう。今日本に留学しても感謝されませんのは、日本のシステムからいきますと、先生方のいろいろ研究に使われますが、日本で職業を持ち、帰ってリーダーになるというふうな形で、日本全体の科学技術システムを使うような制度にはなっていないのです。日本自体が、社会全体がなっていないのです。  例えば、我々の産業もどんどん出ますけれども、我々が非常に成功していい例と思っていますのは、今から十数年前タイに出たのですけれども、東大に留学したタイ国人を雇って現地に持っていきまして、それがもうナンバースリーになりまして、日タイの関係で非常に熱心にボランティアをやってくれます。そういう意味で、海外に出る場合に、ある地域については、自動車が強ければそういう技術や技能をそこの大学に入れて、そして現地採用というふうにうまく回して、将来日本の人脈なり知識を使うという形で人材を育成する。それと、やはり投資したものが還流しませんと歓迎されませんから、投資還流。それからODAという政府援助、これをまとめた形でやりながら、この国はこういう程度の知的所有権制度。まあそれがどんどん上がりまして韓国ぐらいの力を持つと、新しいOECD諸国としてどの機関に入れるかということになるのですね。そういうきめの細かいやり方をしたらどうだろう。そういうことをガットの場その他で日本が、力を持っておりますから、先進国と話し合う場合に二国間でやると同時に、国際的にもそういうレベルで考える時期だという提案をしたらどうだろう。  一八八三年、ちょうど百年ぐらい前にパリ条約という工業所有権保護同盟条約ができたわけです。これは第二次産業革命と申し上げた大量生産型が出る前夜だったわけです。今は新しい社会秩序変革期でございますから、技術に強い日本こそ急遽勉強をして提案して――パリ条約はちょうど十年かかったわけです。一八七三年にウィーンの万博に出たときに、当時の先端技術がイギリスの蒸気機関車であり、アメリカの電信機であり、フランスの捺染モスリンだった。ところが、オーストリアという大国の特許権が一年以内に公表されるということだったわけです。とんでもないという話から問題が火がつきまして、十年かけて国際的な工業所有権保護同盟条約をフランスの主導でつくったわけです。ですから、そういうことを日本が十年かけてやるということが世界に貢献するゆえんだ、こう思うわけでございます。よろしゅうございますか。
  14. 中山太郎

    ○中山(太)委員 もう少しそれに関連してお尋ねしたいのですが、例えばバンコクにESCAPがあって、テクノロジートランスファーのセンターとしてアジア・太平洋地域の人たちの指導に当たっている、そういうようなことがありますけれども、問題は、先進工業国の我々が、いわゆるLDCの国々に直に行くということが非常にストレスを生むという経験を私は実は感じております。だから、韓国のようにLDCからOECDに入れるような工業化に成功した国と協力をしながら、そういうところにテクノロジートランスファー、資本を移動させる、そういうようなことをやるために日本の国内にボトルネックになっているところが相当あるような気が最近いたしております。例えば、日本の国立大学の基礎研究制度とか、あるいは講座制で全部予算を割っていくとか、今までの長い歴史の中で仕組まれた仕組みというもので、なかなか科学と技術に携わっている人たちの力では解決できない問題が既存の体制の中に存在していると私は思う。どのようにボトルネックのところをつぶせば新しい改善ができていくのか、そこらの点、率直にひとつ御意見をお述べいただきたい。
  15. 内田盛也

    内田参考人 大変難しい問題と思います。理想論という問題と現実論という問題があって、日本はまだ明治以来のそういうふうにやってきたものについて非常に強い自信をほとんど持っておられます。ですから、新しい将来の芽が見えるということの危機感は、私はよく例をとるのですが、まあ吉田松陰みたいな扱いしかないわけなんです。しかし確実に世の中は変わってまいりますね。それは世代が変わってくると変わります。それをなるべく早く縮めないと間に合わないということが心配でございますね。  そういう意味で、現実的に今日までの大学システムというのは、昌平黌以来日本の欧米へのキャッチアップというために全力を挙げてきたシステムでございますから、それはそれで非常に役に立っている。巨艦が進んでいるのを急に変えることはできませんが、変えなければいけないという問題が出てまいります。  その一つの大きな問題点は、これは私の個人意見でございますが、いわゆる大学教授という学部の傘下に研究所があるのはおかしいので、研究者のための、研究のための総合研究大学というのがあるべきで、これは最近文部省が、総合研究大学院大学という制度を心ある先生方が大変強く主張されてやられるという意味で、大変心強いと思っているわけです。やはり研究者のための研究であって、附属ではいけないわけです。  それからもう一つは、研究という問題に対して欧米では、例えばアメリカでは教育は州の責任でやる。しかし科学技術という国全体の問題については連邦政府がある程度支援をしなければいかぬ。やるのは科学者だ、技術者だ。それから西ドイツでも連邦政府研究技術省を持っておりますが、教育は州政府がやる。ですから基本的に日本が選択するものは、多様化社会において国民全体がどうあるのだろうか。それで、一般義務教育は当然非常に進んでよろしゅうございますね。その上の教育という問題と研究技術をどういうふうに分けるかということを根底から一度議論していただいて、そうすると全部変える必要はありませんからね、特定の大学は特定の大学で研究院大学であるということも必要でございますし、新設でも結構で、いろいろな解が出てくると思われます。  それから二番目に、そういうふうにでき上がってまいりますと、研究技術というものの日本全体のデータベースであるとか設備であるとか人脈であるとか、それが世界につながる形ができますから、そこの研究に留学した人間は日本の人脈を使えるようになりますね。そして日本産業はどんどんそれぞれの国に出ますから、その国へ帰ればそこで非常にいい指導者になれますね。そういう流れの構築をきめ細かくやるべきだ。先ほどおっしゃったように、ぽっと仕掛けをつくっても、いつも申し上げるのですが、非常に偉い方々が行って、国々に握手して帰って何かやれ、これではだめなのです。やはり本当の専門家同士が話をして、これならやれるんだという積み上げの中で先生方が援助するというふうな形で、先ほど申し上げたような特恵産業というのは、そういうふうな提案でどうだろうかとか、そのための技術移転の場合にも、向こうの人も風土も向かないところもありますし、向くところもありますね。それから人も、そういう仕掛けができないと、じゃこれだったらどこの大学にする、あるいは産業はどう協力しなければならぬとか、そしてお金もこういう形でうまい仕掛けをしながらやるとか、きめの細かいことをやらないとだめだと思うのですね。そういう形で、大学一般論ではなしに、日本がどう行くかという一番上の産業革新の将来の方向ができて、それに合うように人間養成ということをどう考えるかというのが本当だと思います。それから研究環境の整備というふうに思いますが、いかがでしょう。
  16. 中山太郎

    ○中山(太)委員 例えば、LDCの国から金を援助してくれというのが随分来ています。金を貸すということ以外に、先生のおっしゃっているようないわゆる知的の投資を行うという場合に、LDCというのは昔は植民地だったわけですね。宗主国は大体ヨーロッパの国がほとんどなのです。そこらの国は独立させても一つの政治的なパワーを持っておるわけですし、あるいはそこの経験も持っているわけですから、日本が独自でそこへ入っていくというよりも、今までの歴史的なつながりがある科学と技術を持っている機関との国際共同化ということが国際摩擦を起こさないために必要なんじゃないか、しかも円滑にLDCを発展させるために必要なんじゃないかという考えを持っていますが、いかがでございますか。
  17. 内田盛也

    内田参考人 では、二つ問題点がありましたけれども、御説明いたします。  今世界経済の中でうまくいってないLDCは、いまだにアメリカ、ヨーロッパの影響力のある国で、完全に離れたASEANその他は非常に伸びております。ということは、要するにたかりの構造があるのではないか、私は個人的にそういうふうに思っております。といいながら、先生のおっしゃるとおりパイプは持っておりますから、パイプは利用する方がいいとは思いますけれども、それを利用したらできるということでなしに、政治が優先して、本当に自分が働くということがないという状態があるのではなかろうかということが問題で、国際的にもいろいろ言われているのですが、特定の国を申し上げるとちょっと問題があると思いますので、アメリカの影響力があるところはほとんど経済的に伸びておりませんね。アフリカ諸国でも、植民地の形態があるところはだめですね。完全に離れたところがいい。そういうふうに考えて、パイプを利用するということと、手段として考えるのはいいのですが、やはり基本的に技術的にどうするかという土台は、日本が独自でかけなければいけないと思うのです。  それから、よくこういう例が出るのです。ブラジルは大国でございます。日本人が非常にたくさん行っておるので、何とかしなければいかぬということはあります。私は十数年前にそういうライセンス関係の責任者でおりましたので、ブラジルの事業を見た場合に、私どもの有能な工場長が向こうで働いている場合に、当時は一ドル三百六十円時代でございますから、月給が七十万円ぐらいの換算になりますが、その上にたった二十五歳のサンパウロ大学を出た人間が乗っからないと工場が操作できなくて、月給三百万もらっておるわけです。ちょうどガイゼル大統領が日本に来るころでございましたか、お役所その他にぜひ平等に扱えということをいろいろお話をしたのですが、結局だめなんです。こんな状態では日本の技術屋が心を燃やして、よしあそこを助けてやろうということにならないと思うのです。先ほど先生がおっしゃったように、植民地型というのは大体において何もやらないで乗っかるということで言うてくるので、これは私は技術屋として反対なんです。ですからそこまできめ細かくやって、地域は非常に苦しいかもしれぬけれども自分の国と同等の扱い方をしよう。日本が明治のころは七十万対三百万じゃなしに、むしろ外国人の教師に三百万払って自分たちが七万円で働いたわけです。そういうことがないとだめだということを教えながら積極的に援助してやる。そのために日本に呼んできて一生懸命教えてやって、持っていったところの工場長にしてやってということをきめ細かくやれば、それで自力回復、セルフリハーサルできて、そして累積債務も返せるんじゃないかというのが私の主張でございます。いかがでございますか。
  18. 上坂昇

    ○上坂委員 近藤先生に伺います。  例えば日米技術協力をやっていくのに、研究者交流あるいはそれぞれの国の研究機関の利用、それからまた研究者研究成果の活用、それと同時に研究者のお互いの国における生活、アメリカ人の生活、日本人アメリカにおける生活、したがってそういうものに対する公的機関の援助あるいは社会的な協力、そういうものが総合的に組み合わさっていかなければいけないのではないかという感じがいたします。そこで、今日米間にこの辺のところで一番大きなネックとして出てきて、アメリカ日本に対して要請をし、あるいは改定を迫っている点のポイントというものがどういうところにあるのかということをひとつお教えいただきたいと思います。  それから内田先生にひとつ。これは資料の五ページなんですが、一番下の方の「小企業への強力な支援」の右の方に「研究開発効率」というのがあります。ここに「大企業の二十四倍」、そしてその下に「中小企業の十六倍」こういうのがあるのですが、これがどういうことかわからないのでお教えいただきたい。
  19. 近藤次郎

    近藤参考人 それではお答えを申し上げます。  やはり研究協力の実を上げるというのは、相互信頼ということが一番大事でございまして、私どもアメリカへ行きました戦後間もなくのころは、向こうが非常に天国のような国と思いました。来たからきょうじゅうに論文を書けとか、あしたの朝までに計算をしろとか余り言われないで、自由に研究をさせてくれたわけでございます。そこで、まずアメリカの生活を非常にエンジョイしまして、そこでできたものはお土産に置いて帰る、これが非常に大事なことでございまして、先生御指摘のように、外国から、アメリカから日本へ来ました人たち日本をエンジョイするということも必要ではなかろうかと思います。  もちろん言葉の障害というのがございますけれども、しかし日常会話は私ども日本人が思っているほどは難しくないようでございまして、テレビなどを見ておりますと外人のタレントが物すごく上手に日本語を話しております。日本には古い文化や伝統がありまして、これはアメリカ人がもう腹の底からびっくりすることでありますが、旅行者の見方でなくて日本社会に溶け込んだ見方をする、そういうふうな雰囲気にさせてやることが非常に大事だと思います。これは一つには、もちろん政府におかれていろいろな資金的な援助をいただいて、アメリカ人たちには大きな住宅を提供してあげるとか、あるいは日本の牛肉はちょっと高いですから、輸入牛肉を割り当ててあげるとかいうようなことで、生活がしやすいようにしてさしあげることは非常にいいことだと思いますが、家族の方もそれから研究者自身も含めて相互信頼というものがないと、幾らルールで厳しく縛りましても、やはり協定成果は上がらないと思います。  特にアメリカのサイエンティストに対して主張したいことは、こういう協定をやることによって日米間の科学技術協力が促進するのではなくて、場面によってはむしろ阻害する。それは、それほど秘密にしなければいけない、あるいはそれほどアメリカとだけしか発表、共同研究ができないというのなら義務だけをやりましょうということでありまして、あしたの朝までに三ページやっておきましょう、こういうことでは研究の真の協力はあり得ないと思う次第でございます。  生活の援助という先生御指摘の点につきましては、国民自体が意識を変えてあげて、海外から日本に帰ってきた子女が小中学校でいじめに遭うというような社会のムードも変えていかなければなりませんから、大変時間がかかると思いますけれども、しかし研究者社会だけでも、少なくとも外国人たちにはオープンにして仲よくやるということが立派な成果を生むことではなかろうかと思います。
  20. 内田盛也

    内田参考人 御説明申し上げます。  大変恐縮でございますが、ミスプリントで、中小企業じゃなくて中企業の十六倍ということでございます。  これはどういうことかといいますと、小企業の場合は、これをやらなければならぬとなったら朝から晩まで熱中して、土曜、日曜もなしにそれをやります。大企業の場合はビューロクラシーがあるわけですね。これは前提はアメリカのヤング・レポートの中に書いてあることを引用したのですが、現実に日本でもそうだと思います。ビューロクラシーがございまして、研究テーマを出して検討会をやり、それが認められて次に予算を出せ、予算を出してそれがついたからいろいろやる、人をくれと言っても来ないからこうだとか、いろいろなことがある。しかし、なりふり構わずやっているということが必要なわけなんですね。それをじっと見ている、じっと支援してやるということが研究が成功するゆえんなのです。ですから、名前を挙げて恐縮ですが、本田さんみたいなところは、みずから一生懸命やって、後から一生懸命金を工面していくという形ですからあれだけの大成功をしていくわけです。ところが、一般の明治以来の伝統ある大企業はそうではございません。  ということで、効率というのはそういう意味で小企業の方がずっと高い。だから新しいことには、下にございますようにベンチャーの設立が大事だということです。アメリカはそれが非常に旺盛だ。特にニュービジネスですね。確かに既存の第二次産業革命で起こったような大量生産型低コストだから日本は強いのですが、ニュービジネスはぼんぼんアメリカが活発にやっています。日本ももっと活発にしなければいけないのじゃないかという意味で、下の十万社で一%以下ではまだインセンティブの政策としては足らない、こういうふうに思っているのです。ところがヨーロッパは活発でないのです。この活性化が落ちております。  それからもう一つは、先ほど申し上げたように中小企業というのは日本を支えておるわけです。韓国は強力な中小企業群がないのです。これが競争力が弱いと言われるゆえんです。そういう意味で、逆に日本がこれを失わないようにぜひ今から活性化して、多少お金の問題とか生産工場は移っても、この活力だけは絶対日本の国是として援助し支援するし、制度考えてあげるから負けるなよということを言っていただきたい。  レーガンのいろいろな報告の中にも声涙下る演説がございまして、自分たちは給料もなしにやって、友人その他から借金をして、それも返せなくて破産しながらもまだ研究を続けていく、それに対して援助をなぜ連邦政府はしないということがございます。ですから、確かにいろいろな資金援助という面では、日本では中小企業に対しては随分いい政策なり大量のお金が流れているということを存じ上げておりますが、もっと活性化するというバイタリティーの方の知的な活動に対しての支援をぜひ研究していただきたい。そういう意味で、ここに挙げましたように大企業は自分の力でやればよろしいので、私は基本的には直接支援は要らないと思います。自力でやるように間接支援の政策税制その他で面倒を見ていただいて、国際的に同程度に闘えるように援助していただければよろしいので、直接支援こそ小企業に知的な問題でもお願いしたい、こういうことでございます。
  21. 矢島恒夫

    ○矢島委員 近藤先生にちょっとお聞きしたいのですが、四月二十一日の百四回総会内容に関しては憂慮すべき点が少なくない。とりわけ私は、安保条項の問題が秘密扱い、公開の原則との関係で非常に重要な問題ではないか、このように考えておるのですが、この声明基本的にはそういう条項が入ることは反対だという意思表示をされていらっしゃるのかどうか。  それからもう一点は、同じくこの声明の中で「広く科学者意見を聴取すべきである」、私もそのとおりだと思いますが、今日までいわゆる科学者意見が聴取される、とりわけこの学術会議に対してそういう働きかけが全然なかったのかどうか。  それから三つ目は、先生のきょうのお話の中で、研究に軍事、非軍事の境界はない、これから研究されるという御発言もございましたけれども、いわゆる数学の基礎研究もコンピューターも軍事だということで、秘密の網がかかるというような事態はゆゆしい事態だと私は思うのです。研究者としては発表の自由ということ、研究したものを発表できない事態というのは極めて重大な問題だと思うのですが、このことについてどういうようにお考えか、以上、三つの点についてお話をお聞かせいただきたいと思います。
  22. 近藤次郎

    近藤参考人 安保条項について特に名を挙げて憂慮しておるのかということでございますが、現在の段階では条約の条文がまだ発表されておりませんので、何とも申し上げかねます。つまり、軍事というものに関係のある研究はもう一切発表してはいけないというようなことがあれば、これは今御指摘のように、例えば数学の研究もとりようによっては軍事研究になるものでございますから、これは問題であると思います。しかし、この私ども声明の右側の一番上の行に書いてございますのは、「二国間の学術交流」、つまり今の場合では日米でございますが、それは「相手国の固有の事情があるにしても、」こう書いてございまして、先ほどからお話に出ておりますように、レーガン政権の状況であるとか、ことし大統領選挙があるというようないろいろな状況があり得ると思います。それが外交というものであろうかと私どもは思っております。したがいまして、現在の段階ではまだその条文も見ていない段階で、この点が心配でこの点は大丈夫であるというふうには申し上げかねますが、これはさっき冒頭に申し上げましたように、外交折衝に当たっておられる方が恐らく善処してくださるであろう。このような声明文がそのようなお助けになればと思っているわけでございます。  なお、これに関連してEC諸国との間の科学技術協定というものがやはりございまして、この中ではスウェーデンとスイスが永世中立国でありますので、セキュリティー、安保条項という言葉を入れることに強く抵抗をしたというふうに聞いております。ですから、この安保条項という問題につきましては、今後私どもも注意をして見ていなければならない、かように考えておる次第でございます。  その次に御指摘の事前に広く科学者意見を聴取するということでございますが、政府学術の問題に対して日本学術会議に諮問するということはできるようになっております。しかし、私が会長になりましたのは十三期、六十年からでございまして、少なくともその間だけをとって申し上げますと、何もこの点については御諮問がございませんでした。恐らく今の日米科学技術協力協定というものは行政協定でございまして、大平内閣のときにカーター大統領との間に結ばれたものと伺っております。したがって、最初はこれほどアメリカからの強い風が吹いてくるとは政府の方でも思っていらっしゃらなかったとみえまして、そういう意味では科学者意見を徴するということは正式にはございませんでした。ただ、御承知のように私は科学技術会議議員でもございますので、科学技術会議の席におきましては政府側のいろいろな御説明がございまして、それに対してある程度の科学者意見というのは、個人の立場では申しております。しかしながら、もうこのように学術会議としまして声明文が出ました段階におきましては、私は自分意見も全くこれと同じものでございまして、これが私も考えておるところである、かように申し上げるべきかと思います。  それから、こういったような事柄についてでございますが、これは先ほどからいろいろと御説明がございましたとおりでございまして、にわかにこの問題が起こったのは事実でございますけれども国際交流というものにつきまして非常に長い間私ども日本学術会議としては考えております。また科学者自身の自覚あるいは認識というものにつきましても、実は第一回の学術会議総会、これは昭和二十四年の一月にあったのでございますが、そのときに戦争中の科学者の態度を反省して声明を出しております。その流れに沿っているのがこの科学者憲章になるわけでございますが、そういう基本的な態度をもちろん踏襲しております。私どもは幾多変遷がございまして、御承知のように現在は会員直接選挙制ではなくて推薦制というふうに制度が変わりましたけれども、しかし、そこで大きくすっかり科学者そのものが変わってしまったというわけではございませんし、今までやってきたものの中のすべてが否定されるべきものではないと存じます。そういうのが基本のことでございまして、現在の段階では、合意されたと伝えられる改定について憂慮しているというのがありのままの状態でございます。
  23. 貝沼次郎

    貝沼委員 どうも参考人には大変ありがとうございます。  私は、今回の日米科学技術協力協定、これの交渉が始まる前にアメリカでは既に公聴会等開かれていろいろなお話があった。日本でも、何も対抗するわけではありませんが、お互いの理解を深める意味において、やはりこういう場があっていいのではないかというような考えを持っておりました。本日こういうふうになりましたので大変よろしかったと思うわけであります。  そこで、参考人先生方にお尋ねしたいと思いますが、まず近藤先生にお尋ねしたいのは、日本科学者外国科学者との間のいろんな交流とかあるいは研究会とかあると思いますが、この場合、日米だけでなく、例えば共産圏であるとかいうようなところでの交流の仕方、これが現実はスムーズに行われるものなのかどうか、あるいはそれについて何か障害があるのかどうか。この五原則の中の二番目の「全世界的であるべきこと。」ということになりますと、やはりそこに何かあるのではないか。例えば行政指導の面であるとか、そういったことがあるのかどうかお聞かせ願いたい。この点でございます。  それから内田参考人にお尋ねしたいと思いますが、先ほど中山先生の方から大体お尋ねになりまして、ほとんど出ておるような気がいたしますが、ただ、一つは、日本科学技術というものがこれほどアメリカで気になるということは、近い将来、環太平洋を眺めましてもあるいはヨーロッパを眺めても、日本科学技術世界をリードする時代が来ておるのではないかという感じの問題でございます。  それからもう一点は、何といったって人を育成することであるというお話のようでございました。そうすれば、大学院大学というお話もございましたが、財政的に一体どうするのか。これは例えばアメリカのNSF、全米科学技術財団ですか、こういうようなものを日本でも考えるべきであるという御主張なのかどうか、この辺のところをお願いしたいと思います。
  24. 近藤次郎

    近藤参考人 それではお答え申し上げます。  二国間の問題、特に共産圏諸国とはどういうことになっておるかということでございます。現実には中国、北鮮は御承知のような状態でございますから現在はございませんけれども、あるいはソ連、そういうところから学術会議会長あてにも非常に頻繁に手紙が参りますし、また私どもも参っております。そこで、向こうでマルチュクみたいなアカデミーの総裁と会って話しておりますと、私どもはある意味で日米関係をおもんばかりまして、ソ連の方には自分自己規制をやって申し上げたりしないようなことについて、実は軍事というような話が向こうから出まして、いわゆる知的交流というものは非常に難しゅうございます。先ほども御質問がありましたように、どこまでが軍事かということがありまして非常に難しいのです。ソ連、中国、そのような国は、もちろん日本日米間だけにこのような協定を結ぶということは目に見えて反対はしないと思いますけれども、どういうふうなことになるのかと思っていると思います。こういう共産圏だけでなくてヨーロッパ諸国、特に私もイギリスに何人かの友人がおりますけれども日本はどういうつもりでこれをやっておるのかということについて、相当深く突っ込んで質問をしております。  したがいまして、ここで「全世界的であるべきこと。」というのはそういう意味でございます。私ども日米の二国間交流がうまくいくことについては非常に賛成でございまして、立派なものができれば望ましいと思っておるのですが、それと同じようなことがほかの国との間にも結ばれるべきであると思いますし、先ほど中山先生から御指摘がございましたように、発展途上国に対してもできるだけ対等の交流をやっていきたい。私ども考えでは、途上国は知的レベルが日本と比べて低いので、物を教えてやるというつもりでは必ずしもございませんで、例えば遺伝子というようなものになりますと、中国とかフィリピンとかタイとかいうところには日本にないところの細菌や動物がおりますので、それから遺伝子を採取して遺伝子工学に使うということもできるわけでございますし、また実際そういう成果が上がっております。したがいまして、原則としてはここの四に書いてありますように、私ども日本と先進諸国、共産圏の諸国、そして発展途上国の科学者についても対等というふうな原則で対応をしております。  若干学者の空論というふうにお受け取りになられるかもわかりませんが、私ども基本的な姿勢はそこにあると御理解いただきたいと存じます。ありがとうございました。
  25. 内田盛也

    内田参考人 それではお答えいたします。  第一番目に、日本科学技術世界的に今後ともセンターになるかどうかという御質問でございますが、私はそうあってほしいと思っておるわけです。それになれる力は潜在的にあると思います。これは一つには、非常に重要なことは政策が関係すると思います。なぜならば、イギリス産業革命を起こしながら、保険、運輸等が盛んに進んだものですから、イギリスのエリートは一切職人業はやらなくなったために没落したわけです。そして後進国ドイツ、アメリカが伸びたわけです。ですから今よく論議されますように、日本はサービス産業と金融だけ持てばよろしいという素人の論議が実際にまかり通ることは非常に危険なのです。金融のかなりの方々も、物がなくして金融はないとまでおっしゃっているのですが、あくまで日本はそれで生きるのだということがいいのだ、それで一生懸命そういう人たちがその道に行くことを願うのだということはぜひ先生方にお願いしたい。そうすれば必ずそうなると思います。  と同時に、日本だけで世界を見るわけではございませんから、特に環太平洋を中心とした国々は文化的にも近うございます。やはり社会、文化というものとその地域地域の国民のための科学技術でございます。それが日本が歴史の示したとおりに発展しましたから、相互依存ということも積極的にやりますと、日本の弱いところがだんだん強くなりますから、相互依存という意味でさらに日本が強化される、こういうふうに思います。  二番目に人の養成をどうする、まさにどんずばりそのとおりでございます。先ほど先生も御説明ありましたが、大学で理学系というのは、伝統的にかなり皆さん世界的な交流もされて、非常にいい線いっていると私は思うのですが、工学を心配しているわけです。工学というのは、名前は確かに工学であり、私も工学の出身なんでございますが、明治以来日本産業群を強くするために孜々営々としてそういう人たちを養成し、産業に送り込んでくれましたから、日本では産業界が工学的な能力をかなり強く持っているわけでございます。ところが、例を申し上げますと、航空宇宙産業では複合材料みたいなもの、一番わかりやすい例で申し上げますと、翼がございますと、飛行機が飛ぶときに乱流が起こって引っ張られますが、層流にするために穴をあけるわけです。穴をあけますと層流が起こりますけれども、材料の進歩とそういう空気力学的なデザイン、CAD・CAMを使った全部をつないだ新しい工学が世界で進んでおって、それが大変な進歩をもたらすと言われておるのですが、残念ながら日本の大学にはないのです。それをアメリカは各大学に工学センターという形で、産学官を中心としたものをNSFを中心としてどんどん推進しております。これはぜひ考えていただきたいと思うのです。  というのは、何か入れ物をつくってという意味ではなしに、何遍も繰り返しますが、やるのは科学者技術者なんです。それを世界的にやれる人間が産業におったらその産業の人を使い、大学におったら大学を使い、国立研究所におれば使うということでございまして、その人たちにそういうセンターを国が必要とするから提供しているんだよ、それが日本になければ、外国の立派な方に頭を下げてでも来ていただいて日本のためにつくらなければいかぬ、こうなりますね。それが外国に対する、科学者に対する開放だというふうに思います。そういう意味ではこれが全く欠けておるのです。今までの日本の筑波の研究センターであるとか地域の工業試験所でございますか、これは日本産業育成に大変に役に立ってきました。しかし、今時代がこういうふうにがらっと変わりましたから、そういう意味で世界の中の日本という技術者養成と、今言った工学センター的な形にできるだけその資源を有効に使う形を考えていただければ、国のためになるのじゃないかというのが二番目のお答えでございます。  三番目にNSF的なものをつくるべきかということでございますが、日本全体の研究投資額というのは、全体の中の八割までが産業界でございます。国は二〇%しか出しておりません。アメリカは四六%を政府が出しております。日本産業界はいただいている金は微々たるものでございますから、実際上完全に民権という形で自主独立で産業を興していく形になっていますが、アメリカは国のための長期ハイリスクであるとか今言ったそういうセンター的なものというのは、国民のためですから政府が金を出しておる。これが非常に力のある科学者がおって、最も研究システムを持っている企業があればそこに委託をする、あるいはそれを大学に委託をする、こういう形をとっております。そういう意味で、何をやらなければならぬかが先であるとなると、次に大きな金はとても足らないよということになる。足らないよとなれば、これは産業界のエゴでもいけませんし公務員制度でもいけませんので、先生おっしゃるとおり日本的なNSF的なもので、私の個人意見でございますが、できれば総理と議会の人間より中立的な人間を、アメリカのNSFは大統領任命でございますが、一切その制約を受けないというふうになっておると伺っておりますので、本当に科学技術者の中で国を考える方を任命して、そして議会と行政府で本当に日本のためにやってくれる、それを信じて金をつける。それも欧米並みにどんどん流していただければよろしいと思います。そして、どういう課題をやらなければならぬかということ、それが将来国民経済にどういうふうなインパクトがあるか、あるいは世界の中にどういうふうな貢献をするか、あるいは発展途上国関係でどういう関係があるかも含めた調査とともに意思決定をして、最もすばらしい仕事ができる方に内外国籍を問わずつけるという姿勢でやっていただければ大変ありがたい、それが日本の行く道だと思っております。
  26. 竹内黎一

    竹内(黎)委員 自民党の竹内と申します。  近藤先生にややとっぴな質問かもしれませんけれども、先ほど来人材育成という話が出ておりましたが、今の入試制度ですね。私の知っている子供でも、歴史、地理はさっぱりでも数学に抜群に強いなんという子供もいるんです。そういった子供の才能を伸ばすのに今の入試制度というのは一体どうなんだろうかという疑問を持っているのでありますが、何かそういう意味で御意見がありましたら承りたいと思います。
  27. 近藤次郎

    近藤参考人 入試制度は、もう私大分出遠い昔でございまして、新制になってからの入試を受けておりませんので、正直に申しましてわかりません。確かに孫の勉強ぶりを見ていますと、こんなことでいいのかなという気はするわけでございますが、さりとて自分で問題を解いてみると全然わからぬものですから、孫の方が安心して、学術会議でもわからぬらしいという状態でございまして、これは問題であるかと思います。  最後に、ちょっと時間を超過して申しわけないのですが、最近新聞等に載っております学術白書というのを学術会議でつくりました。これは日本学術の動向というもので、四百ページに及ぶものでございます。これの中に、さっきから問題になっております創造的な学問の芽が日本でどうして育たないのかということを指摘してございます。それは次のとおりでございまして、日本では大体の見当がついている問題しか危ないからやらないというわけです。全然もう物になるかならないかわからないような問題にチャレンジする精神がない。先ほどピアレビューのお話が出ましたが、政府がお金を出していただくのは大変ありがたいのでございますけれども、すぐそれでノーベル賞があした出なければその金は引き揚げるというような窮屈な考えでは、これはやはり入試制度と同じことでございまして、おおらかに、これだけの大国でございますから、金をどぶへ捨てたと申しては申しわけないのですけれども、百年の後に芽が出ればいいよというふうに一言おっしゃっていただきますと、私どももますますやる気が出てまいりますので、どうぞ諸先生方よろしく。
  28. 大坪健一郎

    大坪委員長 予定の時間が参りましたので、以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところまことに貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、来る五月十二日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三分散会