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1986-11-21 第107回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月二十一日(金曜日)    午後一時三分開会     ─────────────    委員の異動  十一月十二日     辞任         補欠選任      中村  哲君     赤桐  操君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         加藤 武徳君     理 事                 杉元 恒雄君                 中西 一郎君                 堀江 正夫君                 志苫  裕君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 関  嘉彦君     委 員                 植木 光教君                 大木  浩君                 坂元 親男君                 下稲葉耕吉君                 永野 茂門君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 真鍋 賢二君                 松浦 孝治君                 大木 正吾君                 山口 哲夫君                 黒柳  明君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君    事務局側        第一特別調査室        長        荻本 雄三君    参考人        中央大学教授   斎藤  優君        東京国際大学教        授        松井  謙君        日本長期信用銀        行常務取締役調        査部長      竹内  宏君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○外交総合安全保障に関する調査  (国際情勢認識に関する件)     ─────────────
  2. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を開会いたします。  外交総合安全保障に関する調査のうち、国際情勢認識に関する件を議題とし、国際経済情勢について参考人から意見を拝聴いたします。  本日は、中央大学教授斎藤優君、東京国際大学教授松井謙君、日本長期信用銀行常務取締役調査部長竹内宏君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  本日は、御多用中のところ、本調査会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、国際経済情勢について参考人皆様方から忌憚のない御意見を拝聴いたし、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  これより参考人方々に御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進め方といたしまして、まず最初参考人方々からお一人三十分程度それぞれ御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答え願いただく、かような方法で進行いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、斎藤参考人にお願いいたします。
  3. 斎藤優

    参考人斎藤優君) 斎藤でございます。  国際経済情勢ということで参考意見を述べさせていただくわけでございますが、私は、一番最初世界経済全般動向についてお話しせよということでございますので、そういうようにやっていきたいと思います。  ここでは私は四つの点を申し上げてみたいと思うのです。皆さんレジュメが行っているかどうかわかりませんですが、まず最初は、世界経済成長仕組みがどういう方向に向かっているかということを述べたいと思います。レジュメは行っていないかもわかりません。と申しますのは、一番皆さんがごらんになって、絵を見てすぐわかるようなそういうものを手配していたのでございますけれども、何かちょっと部数が足りないとかそういうことのようでございます。  私、ここで申し上げておきたいのは、例えばアメリカの議会の参考人の陳述の場合には、後でホワイトペーパーみたいにちょっと百ページか二百ページので出ますが、やはりあれぐらいの予算をとっておきませんといい参考意見は述べられぬと思うのです。ここへ来て絵をかいてちょっと皆さんにお話しするぐらいでは、参考で来る方も、ああそんなものかということになってしまいますので、やはりそれぐらいな予算はとられてそれなりの資料をそろえて、それで意見を議論される方がいいと思います。  きょうは三十分ぐらいしかございませんので、まず最初に、世界経済全般成長仕組みがどういうふうに動いているかというのを申し上げて、そしてその次に、その中で南北問題がどのような方向に流れていっているかというものを述べたいと思います。第三番目に、ここで一番きょうは皆さんに申し上げたいことがあるのですが、世界経済成長仕組みの中でも現在その中核になりつつあるのがアジアなのです。そのアジア発展シナリオを私なりに考えたものを述べさせていただいて、これを中心に議論してみたいと思うのです。最後に、じゃそういう中で日本がどのように対応したらいいか。これを三十分で話すものですから大ざっぱな話しかできませんけれども、まず黒板を用意していただいておりますので、少し絵をかいてみたいと思います。  現在の世界経済成長仕組みを見てみますと、皆さんひとつ地球儀を思い浮かべていただきたいと思うのですが、その地球儀の中で日付変更線みたいなものを考えたらわかりやすいと思いますので、こちらをアジア、こちらを欧米としておきましょう。最近はアメリカの方が力が強いものですから、我々の国でも欧米というよりは米欧と書く場合が多いわけです。いわゆるパクスアメリカーナのもとで成長してきた場合には、もちろんこちらの方が世界経済成長の原動力だったわけです。しかし、それがだんだんと戦後の経済発展の中で変わってくるわけです。特にアジア米欧とを比べた場合に、成長率が逆転するのが一九六〇年代の半ばごろなのです。一九六〇年代、六五年から現在までの成長を比べてみると、こちら、米欧の方が大体二%というふうに考えていいと思うのです。こちら、アジアの方が六%というふうに考えていいと思います。三倍の速さでこちらが走っているわけです。そして、こちらの方は一九八〇年代に入るとまたちょっと下がってきたという感じです。  もっと正確に言いますと、こういうふうに書いたらいいと思います。全体では、全部入れて考えると、もし物価水準その他を余り考えずに考えた場合には三・五%。そしてこれを六五から八五ぐらい。それで一九八〇年以後を考えますと、これ は二%以下なのです。こういうふうに考えていいと思います。こちらの方はまだ六%から八〇年以後でもそう下がっておりません。大体五・五から六%ぐらいで走っております。どちらにしてもこちらの方が三倍で走っているわけです。ということは、世界経済成長仕組みが西から東へ、西洋から東洋へ移っているわけです。  そういう中で、皆さん外交関係の方がよく引用されますように、今東南アジア諸国の大統領や首相の方々が、ルックイーストというふうによく言われております。これはそういう成長率中身を見てもそのとおり言えるわけです。ただ、我々が海外へ出てそういう言葉の引用の際に気をつけなきゃいけないのは、新聞紙上ではルックイーストを(日本に学べ)というふうに括弧して翻訳してある。あれはできるだけ避けておいた方がいいですね。ルックイーストと言う場合に、日本だけではない、アジア全体を見直そうじゃないかという気持ちで述べていただきたいと思います。  さらにこの中身を見てみますと、成長のモメントの軸が、重心が西洋から東洋へ移ってきて、その東洋成長仕組みをさらに見てみますと、今一番その成長の大きな影響力を持っているのがアジア成長ベルトというふうに名づけられるものなのです。例えば、この辺に日本があり、それからそれに続いてアジアNICS、そしてさらにそれに連結されてASEAN、この三つの地域が連結されて、そしてこのアジア全体の成長心臓部になっているわけです。この関係は今後も変わらないと思います。  そして、このアジア成長ベルトの中で日本はどういう役割を果たしているかというと、一つは、資本技術供給センターとしての役割を果たしております。これはアジアNICSに対してもASEANに対しても、全体の数字で見ると投資で一番多いのは日本なのです。それから技術移転でも一番大きいのです。それからさらに貿易の点でも、貿易だけは特にちょっと分かれるのですが、アジアNICSの場合にはアメリカが一番多い、その次に日本ASEANとの貿易では日本が一番大きいということになります。そういうことを考えてみますと、アジア成長ベルトの中でも日本の果たす役割は非常に大きいということでございます。  ただ、我々がこれから考えていかなきゃいけないのは、一応このアジア成長ベルトは今後もアジア発展の大きなベースになるとは思うのですが、この成長力がさらに発展していくというのにはいろいろな条件が必要になってくると思います。その条件を考えてみたいと思うのです。いろいろしゃべりたいことがあるのですが、もう時間の関係からいうと、三番目のアジア発展シナリオ日本選択というところに重点を置いて考えてみたいと思います。  我々はアジア発展を考えて、そしてアジアがどうなっていくかということの将来の問題を検討する場合に、私は三つ観点からそれを見てみる必要があると思うのです。一つは、アジア発展の基本的なダイナミズムが何であるか。その次に、アジア各国が、あるいはアジア全体がそのダイナミズミの中でどういう発展路線選択できるのかという発展選択肢、オールターナティブを考えてみる必要がある。さらに、その発展路線を決定する基本的な条件が何であるかという点を考えて、この三つの点からアジアの将来、特にここでは二十一世紀ごろまでのことを考えてみたいと思います。  私は、まず第一の、アジア発展の基本的なダイナミズムが何であるかということについて四つの点を挙げております。  まず第一は、今これは世界的に進行しております新しい科学技術革命がどのように受け入れられていくか、あるいはアジアに波及していくかという点が一つ。  それから第二は、現在は貿易のみならず人、物、金、あるいは情報といったようなものが国際間で自由に動くようになってきております。今、日本企業でもお金がないといえば、国内だけで資本調達する必要がないのです。世界的に調達できるわけです。きょうはそこの代表がお見えになっておりますので、また後から御意見を伺ったらいいと思いますけれども、そういう生産要素国際間で自由に動き出すということは、産業組織国際化していくということでございます。そうすると、日本産業政策を見ても、ますます国際産業組織を考えた産業政策展開していかなきゃいけない。そういう点で日本の場合は、まだ国内向け海外向け政策がうまくリンクできていないところがあるのではないかということが考えられます。  第三は、私が今申し上げました、アジア成長ベルトが今後もアジア発展で大きな役割を果たしていけるかどうか。ということは、皆さん外交活動が本当にアジアNICS並びにASEAN諸国成長力を高めるように支援していけるような外交戦略展開していけるかどうかということにもかかわっていると思うのです。  第四番目は、これは違った体制間の関係がどのように展開していくか、異体制間ですね。今、アジアには自由主義経済体制を持つ日本だとかアジアNICS、あるいはASEANのようなそういう国があると同時に、社会主義体制を持つ国もたくさんあります。こういう自由主義経済体制社会主義経済体制の間がどういう関係展開していけるだろうか。この四つの点が皆さん外交問題の検討においても基本的なダイナミズムとして重要な点ではないかというふうに思うわけでございます。  そこで、ひとつ皆さんと試験問題的に考えてみたいと思いますのは、アジアシナリオをつくる上で最初に申し上げました二つのものは、すなわち新科学技術革命の進展と産業組織国際化というものは、これは必然的な傾向として動いておりますので、選択がどうのこうのという問題はあまり大きな問題ではない。あとの二つの問題は、例えばこのアジア成長ベルトアジア市場志向でそっちの方を重点において発展していくのか、これから変えてそういう方向へ行くのか、あるいはこれまでと全く同じように欧米志向発展戦略をとっていくのか、この二つ選択があると思うのです。よく言われますように、これまでは欧米がくしゃみをするとアジアは風邪を引く、あるいは肺炎になるというような状況をもし変えていこうとすれば、この欧米市場志向からアジア市場志向へ転換していかなきゃいけない、そういう選択の問題があると思います。  それから次の問題は、私が三番目に申し上げました違った体制の間の関係、異体制間の関係動向です。これは共存体制でいくのか、あるいは対立関係をこれまでと同じように続けていくのか。この二つ基本的ダイナミズムと、それから路線選択としてアジア市場志向でいくのか米欧市場志向でいくのか、それから共存体制を模索するのか対立関係を続けていくのか。この四つを組み合わすとちょうど四つシナリオができるわけです。  シナリオAの方は、アジア成長ベルトはこれまでとは違った、アジアをもっと大事にしていくぞ、そして異体制間関係では共存体制を求めていくぞというのが第一のシナリオです。第二のシナリオは、アジア志向的なのは変わらないけれども共存体制は余り見込みない、もっとそれぞれの体制を強化してからだというようなシナリオです。それから第三番目のシナリオは、今までと同じように欧米は大事にしなきゃいけない、そういう欧米志向的な選択とそれから共存体制選択最後欧米市場志向的な選択対立関係選択。こういう四つシナリオが書けます。  そのシナリオの中で、共存体制対立関係かという場合に、これは当然アジアで一番大きな問題になるのはいわゆるチャイナカードです。チャイナカード共存体制方向へ働いていくのかあるいは対立関係の方にいってしまうのか。このカードは、もちろん中国側が一番大きな決定権を持っておりますけれども、皆さんの働きかけ、あるいは外交戦略展開によっても皆さんの側にもある程度の影響力があるわけです。  この四つシナリオの中で、日本最初シナリオAをとってみたらどうか。当然欧米の方はシナリオA、B、CのCあたりをとると思うのです。すなわち、アジアは今までと同じように欧米志向的だ、そして共存体制、すなわちチャイナカードとしては中国開放体制を支持する、あるいはそれができるような環境づくりを応援していく、そういう欧米側シナリオ選択をしたとしてもここで一つの大きな対立点が生じます。すなわち、アジア成長ベルトアジア志向に転換しようとする、欧米の方はそれを離そうとしない、こういう対立関係が出てくるはずです。この辺が日本にとっても非常に重要な問題になってきます。私はこれらの国いずれにも何回もお伺いしておりますが、アジアの中ではシナリオA選択したいという気持ちが非常に強いと思います。その選択に対してまだまだ欧米の力のインフルエンスが非常に強いわけですから、早急に変われない。  そこで最後に、政策的にはどんな政策が考えられるのかということで、まず日本外交戦略あるいは政策としては、日本アジアに対する、あるいはもっと具体的には、アジア成長ベルトに対する資本技術供給センターとしての役割はこれまでと同じように続けていかなければならない。当然アジア諸国はそれを強く希望しておるわけです。  それから第二は、今アジア諸国全体が産業構造を非常に大きく急速に変えようとしております。こういうことを今までと同じように全く自由にしていた場合にいろいろな摩擦が起きる可能性はあると思います。  例えば、最近は進出企業でももう帰りたいという企業が非常にふえております。なぜなら、これまではマーケットと低賃金があったから海外へ行ったのだ、しかし現在は、低賃金のかわりにもうロボットでも間に合うじゃないか、帰った方がカントリーリスクも少ないし、十分にコストの上でもその方が長期的に見ればいいというような企業が相当ふえております。海外投資よりも撤退の件数が相当ふえているということなのです。この事情を私この三月に日本ASEAN経済人会議のときにそういうアンケート調査をしてお見せしたわけです。それから、確かにASEAN諸国外資戦略は大きく変わってきました。このままでは外資に来い来いと言っても、むしろ来てくれるよりも逃げていく方が多いというので、その時点から非常に大きく転換されるようになりました。ただ、どんどん外資がよその国へ行ったから、それが成長にうまくいくとかそういうことではないのです。資本だとか技術だとかいうのは、発展するように使わない限りはその国に役に立たないと思うのです。発展できるように使えるかどうか、そういうキャパシティーを持っている国かどうかということが重要な問題だと思うのです。  そういう点を考えますと、第二番目の日本対応としては、これまでの消極的な対応から積極的な対応へ転換していく必要があると私は思うのです。これまでは日本外交を考えましても、何か悶着が起きた、これをどう解決するかという問題対応型、すなわち、消極的な対応中心であったのではないかというふうに私は思うわけです。これをもっと積極的に、将来のアジア発展において経済摩擦も起こらない、お互いの国の成長を促進し合うような方向へ持っていったらどうか、そういう転換をしてほしいと思うのです。積極的な対応へ将来どういう方向へ持っていくのかという点を考えてほしいと思います。  これは、もっと具体的な話がないかというのだったら、具体的な話をいっぱい持ってきております。例えば、では一つ何か考えてみるとすれば、エネルギーならまだどの国でも困っているわけです。そしてエネルギーというのはどの国でも一国だけで解決できるということはないのです。日本だけで解決できるエネルギー問題というのはありません。そうすると、せめて共通関心を持つアジアぐらいでアジアエネルギー開発機構というものを考えたらどうかということも具体的な提案として出てくると思います。このほかにも幾つか私はある書物の中で提案をしております。実現の方向に向かっているのでは、アジアコミュニケーション機構はその一つだと思うのです。例えばコミュニケーションの上で言葉障害は非常に大きい。そこで言葉障害を取り除こうじゃないかというので、各国間の自動翻訳機をつくる、そのプロジェクトがもう既に進行しております。これは具体的に実ったものの一つです。これは私が一昨年、通産省経済協力問題研究会の座長をしておりましたので、そのときに提案したものなのです。  第三番目は、これからは一つ一つ外交問題あるいは経済関係対応策よりもグローバルで考えていく必要がある。そういうグローバル戦略をとるには、現在の日本官僚機構というのはまだまだ縦割りが相当残っておりますので非常に問題が出てくると思うのです。例えば日米経済摩擦でも、アメリカの方では農業だけじゃなくして工業も、あるいは通信もといったようないろいろなグローバル戦略展開してきます。日本の場合には農業なら農水省、工業なら通産省、あるいはテレコミュニケーションなら郵政省というので分けられてしまう。そういう点を考えますと、日本の全体の行政機構にもある程度そういう変化に対応さしていくようなことを考えていかなければいけないのではないかと思うのです。工場を一つ建てるのでも、例えば通産省立地公害局判こを押してもらったというだけでは建たないわけです。土地造成その他考えたら、建設省その他いろいろなところの判こをもらわなきゃいけない。  こういう機会にかねがね私が痛感している問題を申し上げてみますと、確かに日本高度成長の背景を考えた場合に、そういう成長政策で成功したものは多いのですが、最大の失敗あるいは取り残されているのは土地改革政策なのです。これを皆さん、どこかの党でやってくれませんか。大荒れに荒れると思いますけれども、やらなければいけない問題の一つではないでしょうか。  もう時間が来てしまったわけですが、そういうようにこれからの世界経済全体の中で、だんだんと先進国問題から発展途上国問題への比重は小さくならない、むしろ大きくなっていくと思うのです。経済の流れを見ましても、先ほど申し上げましたように、先進国よりも発展途上国は三倍ぐらいの速さで伸びている。さらに、特に発展途上国の中でもアジアがその中心になってきている。そういう点を考えた場合に、日本外交政策外交戦略の中でももっとアジアを見直したときに、消極的な対応から積極的な対応を考えてほしい。そういう具体的なものについては幾つかまた皆さんの御質問があったときに申し上げてみたいと思います。  ちょうど時間が来たようでございますので、これで終わらせていただきたいと思います。
  4. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  次に、松井参考人にお願いいたします。
  5. 松井謙

    参考人松井謙君) 東京国際大学松井でございます。  これからの国際政治経済環境がいかに展開していくか、あるいは二十一世紀へ向けて世界はいかなるシナリオをたどっていくか、そして日本がこういったことに対処していかなる外交戦略展開していくか、こういったテーマにつきましてグローバルな視点から、多々いろいろ申し上げたいことはございますけれども、斎藤さんがかなりそういったフレームワークでお話しされましたので、私は、日本対外経済援助のあり方という点に絞ってこれからいろいろ私なりの意見を述べてみたいと思うわけでございます。  これからの外交政策展開につきましては、防衛の問題とか、あるいは通貨の問題、貿易の問題、その他いろいろあるわけでございますけれども、日本国際的責任を果たしていく上においてODAを拡充していくということはほとんどの人のコンセンサスになっているように私には思えるわけです。しかし、そのODAをふやせといってもそう簡単にふえるものではないという問題を提起してみたいわけです。  資料としましてお配りいたしましたこの「援助論争座標軸」というものを見ていただきたいわけですけれども、まずこれにいろいろ各政党の考え方、私なりにこれは分類したものをプロットしてあるわけです。後からいろいろ御異論があるかと思いますけれども、いずれにしましても、この援助論争座標軸ということを中心にして述べてみたいと思います。そして後から申し上げますけれども、実はこれは防衛論争と非常によく似ているわけなのです。総合安全保障といった観点から日本援助を伸ばしていけということでありますから、防衛の問題とこれは裏腹の関係になっているのは当然のことであるわけですけれども、いずれにしましても、この座標軸資料中心にお話ししてみたいということであります。  まず、日本経済協力政策がいろいろ批判されているわけですけれども、私なりに分類すれば、日本援助が非常にパフォーマンスが悪いということは四つのポイントに集約されているのではないかと思います。  第一は、皆さん御承知のように、経済大国として応分の役割を負担していない。つまりODAGNP比率がほかの国に比べて低い。つまり援助負担の努力が非常に不足しているのではないかという点であろうと思います。そして、その量のみならず質の方も非常に悪い。開発経済学の専門用語ではグラントエレメントと申しておりますけれども、これが特にDACの中では最下位にある。つまり日本は贈与しないで借款が中心になっているということであろうと思います。この日本援助負担努力が不足しているということは、言うまでもなく日本がこれだけの貿易黒字を突出して、それを世界に還元しろという黒字国責任論、こういう考え方に基づいているわけでありまして、そしてアメリカあたりでは、防衛の肩がわりとして援助をふやせという議論も巻き起こってきているわけであります。これは皆さん御承知のとおりであります。  そして第二の批判の論点は、いわゆる日本株式会社論なのですけれども、役所と民間が一体となって国益を優先して援助政策展開しているのではないか、日本の国益というのは輸出市場を拡大することであり、かつ、援助の見返りに資源を確保しようという日本経済的利益が非常に優先されているのではないか、こういったエコノミックアニマル論的な観点からいろいろ批判されているということであります。そして、援助のメカニズムから言いますと、日本の総合商社が御用聞きの役割をして、いわゆる商社主導型の経済協力になっているのではないか、こういう点がいろいろ批判されているわけでございます。  そして、第三番目の論点は、いわゆる援助浪費説であります。これはマルコス疑惑問題をきっかけとして一気に表面化したわけでありますけれども、そのマルコス疑惑問題以前からいろいろくすぶっていた問題です。そのリベートの一五%という問題は非常に不法ではないかというような議論が巻き起こって、そしてその要請主義を見直したらどうかといった議論がいろいろ展開されてきたということであります。これの根源は、やはり日本経済協力機構の中にそのチェック体制を十分に行っていないのではないか、こういうふうな批判の論点だろうということであります。  それから第四の論点は、日本経済協力機構、システムが非常に複雑であって非能率である、いたずらに手続が複雑であって、手間暇がかかって、これを何とか改善してくれ、特にこれは日本の財界から主として起こっている批判の論点であります。いわゆる四省庁体制はちょっとまずいのじゃないかということが言われてきているわけであります。  これからの対応を考えていくに当たりましては、やはり私は是々非々主義で、この中で改めるべきは改めていかなければならないというふうに考えるわけです。しかし、これを一気かせいに改めるということもなかなか難しいわけでありまして、一つ一つ簡単に申し上げますと、第一の、日本援助負担が非常に不足しているのじゃないかと言われますけれども、何をもって負担の基準にするか、このことがまだ十分詰まっていないのではないかという気がいたすわけであります。御承知のように、今は単純なGNP基準というものを採用しているわけです。しかし、GNPが大きくなって、経済大国になったというだけでODAをふやしていけというのは、これは余りにも単純過ぎる。例えば国連とか世界銀行、IMF、あるいはアジア開発銀行といったところの分担金とか出資金の比率を決めるときには、必ずしもGNPだけではやっていないということでありまして、いろいろほかのインジケーターも加味して考えなければならない。したがいまして、私はDACの場で、日本政府としては絶対量ではこれはアメリカに次いで第二の援助大国になっているのだ、そしてその負担基準をもっと見直すべきであるということを声を大にしてPRすべきだというふうに考えているわけであります。  それから第二番目の、援助ドクトリンといいますか、日本は官民一体となって金もうけのためにやっているというふうに言われるわけですけれども、しかしどこの国を見ても、援助供与国の国益を無視した援助というのはあり得ないということです。  援助のドクトリンというのは、開発経済学では四つに分類されているわけですけれども、第一は政治的安全保障を目指すもの。これはアメリカ型の援助でありまして、共産主義の浸透を阻止するために南を開発していく、こういうふうに徹底的なイデオロギー的色彩が強い援助をやっていく。そして二番目は、日本型あるいはドイツ型と申しましょうか、供与国の国益を優先させて援助していく、こういうドクトリンがあるわけです。そして三番目のドクトリンは、いわゆる国連ドクトリンというふうに言われておりますけれども、人道主義的な立場に立って、慈善的な色彩を持って援助をしていくのだという考え方であります。そして四番目は、最近ブラント報告なんかで非常にクローズアップされてきた考え方でありますけれども、北も南もともに生き残っていくためには、相互依存ということを重視して国際強調をやっていかなければならないというドクトリンが浮上してきているということであります。  我が国は御承知のように、外務省の公式文書では相互依存とか人道主義ドクトリンというものを前面に打ち出してやっておりますけれども、本質は経済利益優先ドクトリンである、しかし、それでなぜ悪いのかということをもっと声を大にして言うべきではないかというふうに考えるわけであります。ただここで問題は、最近の中曽根政権の戦略援助とか、あるいは総合安全保障的色彩の強い援助に対してどうかという問題があるわけですけれども、これについては後で座標軸の上で申し上げます。  それから三番目に、援助浪費ということに対しては、やはりこれは援助を効率的にしていかなければならない、それに対してはチェック体制を強化して、経済協力基金とかそういう実施機関の審査能力を高めていくということであるわけです。そしてそういったことに対してもいろいろ限界があるとすれば、国会の調査権を発動して、マルコス疑惑を契機として国会に設置されましたような監査機関とかああいうやり方をもっと拡充していくべきではないかというふうに考えるわけであります。  そして、四番目の経済協力システムの四省庁体制が不備であるという問題ですけれども、これに対してはどこの国の援助機構を見ましても、歴史的な沿革とか、あるいはいろいろな要素によって自然に形成されてくるものであり、いろいろ時代とともに変わっていくものであって、どういうシステムが適切であるかということに対してはまだ正解はないというふうに考えるべきではないかと思うわけであります。つまり、アメリカ、イギリスの国務省主導型の一元化体制がいいのか、あるいは西ドイツのように専門省を設置しているのがいいのかどうか、あるいはフランスのようにミックスシステム、混合体制でやっているのがいいか どうか、これに対してはまだ正解はないと考えるべきである、こういうふうに考えるわけであります。  以上、述べてきましたところから言えることは、結局援助の見直し問題のポイントは一つに集約されるということです。つまり外圧に屈して、屈してといいますか、外圧に対応してODAを増額して、そして質を改善していく、こういう選択という問題と、それから一方、いわゆる内圧といいますか、タックスペイヤーからいろいろ巻き上がってきております援助の効率的、効果的運営をどういうふうにしてやっていくかということが焦点になってくるだろうと思うわけであります。これについて、結局援助論争座標軸という私なりに分類したのがこの表になってくるわけです。  横軸に経済合理性といいますか、援助をどうするのか、つまり援助量をふやしていくのか、あるいは効率を重視してなるべくいいプロジェクトだけを選択してやっていくのか、こういった選択肢といいますか、座標軸一つあります。それからもう一方の座標軸には、援助のドクトリンをどういうふうに設定するのか、つまり援助理念は何かという政治的選択の問題があると思うわけです。  縦軸の上の方は、非常に戦略的色彩の強い援助あるいは日本の国益を優先していく立場、つまり政治的にも経済的にも自国の安全保障のために援助を活用していくという立場です。これが下の方へ行くに従って南の立場、いわゆる人道主義ドクトリンとかベーシック・ヒューマン・ニーズということを重視していく立場というのがあるわけです。そして中庸といいますか、中間路線に世界共同体理念だとかあるいは相互依存といったことを非常に強調する考え方があるわけです。  そうだとしますと、アメリカのレーガノミックスの援助政策というのはこういうふうな左上の方に属するわけです。それに対しまして、いわゆるUNCTADの政治経済学といいますか、新国際経済秩序を樹立しようという南の声というのは、これは右下の方に属しているわけです。私は、レーガノミックスとそれからUNCTADというのは水と油ほど違うものであって、とてもこれは妥協の余地はないというふうに考えているわけです。  最近、開発戦略の危機とかいろいろ言われますけれども、結局このレーガン政権の考え方とUNCTADの考え方というのが対立して、南北サミットとか南北対話も非常に不調に終わっているというわけで、この歩み寄りが必要ではないかというふうに考えているわけです。そして比較的中庸的な考え方として、これから一九八〇年代、あと三年ぐらいしか残っていませんけれども、そのバイブルと言われたブラント報告の考え方というものが比較的中庸路線にあるわけです。しかし、そのブラント報告の考え方というのは、ともかく世界的なレベルでケインズ政策を実施していくということで、非常に援助の量の拡大というのを重視しているわけです。それに対して世界銀行あたりはもう少し効率性を重視する。特にマクナマラからクローセンにかわったワールドバンクはその効率性重視の方に座標が振れてきたような気がするわけです。そうした座標軸の中で、いわゆるマルクス主義経済学派的なラジカルエコノミストの考え方というのは、ともかくUNCTADの考え方とはもう一つ正反対の極にありまして、援助をふやす必要はないという考え方に立っているわけであります。その意味ではレーガノミックスと一脈相通ずるものがあるわけです。いずれにしましても、世界開発経済学あるいは開発戦略座標軸はこのように分布しているわけでございます。  そうした中で、日本の中もこれは百家争鳴的な感が非常に強いわけです。四省庁の中から言いますと、外務省は当然対米協調路線というものを重視しますから、援助ODAを拡大していけという立場に立つわけです。それに対して大蔵省は財布の元締めであって、こういった財政再建との両立ということが非常に重要な課題になっている折から、援助も聖域にしてはいけないという立場でODAの消極論者になっている、こういう立場になるわけです。そして、財界のスポンサーである通産省は言うまでもなくODAの拡大論者であって、しかも日本経済的利益を推進しようというところへプロットされるというふうに思うわけです。  ただここで、きょう各政党の方が御出席しておられまして、それぞれこのプロットに対してはいろいろ御異論があろうと思いますけれども、私なりに言えば、やはり保守党系というのはどちらかというと上の方の象限に属して、そして革新政党の方は下の方の象限に属しているのじゃないか、こういうふうに大ざっぱに考えてみても間違いないと思うわけです。  このことは防衛論争との類似性というものを考えていただければよくわかるわけでありまして、防衛論争の場合に、この横軸に、右の方へ行けば行くほどいわゆる防衛分担をふやすという考え方、そして左の方へ行けば行くほどその防衛費をGNPの一%枠を守って、その範囲内におさめろという主張になってくる。そして、縦軸はどういうことかといいますと、縦軸の上の方へ行けば行くほど日米安保体制というかアメリカの核の傘ということを非常に重視する。そして下の方へ行けば行くほど非同盟中立路線とか、あるいはいろいろな考え方がこの下の方に属しているということです。そうだとすれば、この援助をふやせ、減らせという議論、それから何のために援助をやらなきゃならないのかという議論は、これは防衛論争と全く同じような座標軸で考えていいのではないかというふうに思うわけであります。  私の考え方は、結局水と油ほど違うようなレーガノミックスとUNCTADの論争はどこまで果てるともしらないような論争であって、そういうことを続けていても余りプロダクティブではないし、前向きではない。結局中庸路線にシフトしていかなければならない。その中庸路線にシフトしていくということは、結局私はワールドバンクの考え方というのを非常に信奉していまして、その辺のところがこれからの南北関係軸の打開とか、あるいは日本の立場とかいうことを考えまして、こういったワールドバンク的な座標軸にシフトしていかなきゃならないというふうに考えているわけです。  つまり、世界共同体理念とか相互依存というものを非常に重視せざるを得ない。そして、量の方ですけれども、やはりアメリカあるいは発展途上国の声に対応して、これだけ黒字を突出している国としては、いろいろ黒字を還元していかなきゃならないということはだれの目にも明らかでありまして、皆さんにもコンセンサスがあると思うのです。ただ、やり方をもう少し効率的にやっていかなきゃならないというふうに考えるわけです。  その効率化運営に関連しまして社会党の提言が出ているわけでありますけれども、それは援助基本法をつくれということと、それから総合経済協力庁をつくれということが骨子だろうと思うわけです。今の四省庁体制を改めて独自の経済協力庁みたいなものをつくって、そこに経済協力基金とか、それから最近悪名高いJICAとか、ああいったものを全部そこへ吸収してやっていけというふうなお考えだろうと思うのですけれども、これに対しましては、私は先ほども申し上げましたように、どのような援助システム、経済協力システムが正解であるかというのはまだこれからいろいろ試行錯誤を続けていかなきゃならないわけでありますし、一気かせいにこういう経済協力庁はつくれないというふうに考えているわけです。これは財政再建、行革にも逆行しますし、仮に一歩譲って行革に逆行しないとしても、既得権益を固執する現存の体制が果たしてこれを納得するかと言えば、決してそうではない。だからこれはできないというふうに考えているわけです。  それから、援助基本法の問題でありますけれども、援助の理念とかドクトリンをうたってやっている国というのはアメリカなんかあるわけですけれども、しかし、DAC全体を見ますと、全部が全部こういった援助基本法で縛ってやっているわ けではないというふうに考えるわけです。ただ、社会党の考え方に同調いたしますのは、やはり効率的な運営のために事前調査と事後評価をもっと厳密にやって、第三者による、国際機関が適切だろうと思いますけれども、そういったようなチェック体制を整備していく、こういったことはぜひとも必要ではないかというふうに考えるわけであります。  大体以上が私のプレゼンテーションでありまして、また後でいろいろ各政党の方に忌憚のない御批判を賜りたいと思うわけですけれども、私は、学識経験者として中立的な立場から各政党間の援助論争を見ていまして、余りにもプロダクティブな進行がなされていないのじゃないかというふうに考えているわけであります。  大体以上、時間が来たようでありますので、この辺で一たん打ち切らせていただきます。
  6. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  次に、竹内参考人にお願いいたします。
  7. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 御指名いただきました竹内でございます。  私はこういう問題は素人でございますし、そんなことで、産業の面から世界の情勢を述べょというような御指摘をちょうだいいたしましたので、そのようなことから御報告さしていただきたいと思います。  現在、世界経済といいますか、産業は、オイルショックからの影響がはがれていく過程と、それから世界経済システムといいますか、それが変わっていって、しかもその中で技術進歩が余りないというような状態の中の混迷期ではなかろうか、こんなふうに思われるわけでございます。御案内のとおり、石油ショックのときには産油国に大量な資金が流入いたしまして、それとともに世界経済が低迷いたしましたので、油が出ない一次産品国は致命的な打撃を受けたというようなことは御案内のとおりでございます。そのような致命的な打撃を受けた国に対してオイルマネーが還流していったわけでございますけれども、この還流するプロセスの過程でアメリカあるいはイギリス、日本などの金融機関が仲介の役割を果たしたというようなことであります。つまり産油国は、発展途上国カントリーリスクに対する判断とかあるいは金融手段についてのノーハウが蓄積されていなかった、こんなようなことで世界の金融機関が活躍した時代である、こんなふうに思われるわけでございます。  現在、油が値下がりしてまいりますと、あの発展途上国経済の実力にまさる、はるかに超える工業化を実行してまいりましたので、いずれの国も資金がショートとして大打撃を受けているということでございます。現在、それらの工業化を急ぎ過ぎた産油国と、それから世界経済は依然として低迷しておりますので、一次産品国に巨額な累積債務がたまっているということが現在の世界経済の第一番目の問題ではなかろうかと思われるわけでございます。昨年でございましても約七千億ドルの累積債務があるわけでございます。日本円に直しまして約百兆でございますから、ちょうど国鉄の赤字の四倍の額があの世界の累積債務としてたまっていて世界経済を脅かしている、こういうようなことではなかろうかと思われるわけでございます。  ですから、現在この累積債務をそのままためておくといいますか、そのようなことをしておきませんと、ここで世界の銀行が一つでも引き揚げにかかるということになりますと、世界の金融が乱れてまいりますし、あるいは事によると大変不幸な事態が起きるかもしれないというようなことで、累積債務を、累卵の危機のような状態でございますけれども、それをそっと何となくなだめておくというようなことが現在の重要な課題の一つだと思われるわけであります。  ところが、このような累積債務を持った国の中でも、私、以下言葉がやや、形容詞が針小棒大になって恐縮でございますけれども、まじめにやっていた国は見事に回復しているというような感じがいたします。ブラジルとか韓国とかスペインとかいずれも典型的な代表でございます。つまり、借りたお金を資本流出させないで、そこでまじめに工業化のものにとにかく使ってきた、そのような国はいずれも成果があらわれてきまして貿易収支が見事に黒字に変わってきた、こういうことでございますけれども、その国の中でガバナビリティーがない国とかあるいは教育水準が極めて低いお気の毒な国とか、これらの国は依然として経済が悪くなる一方だろうと思われます。メキシコのような国でございましても、ファイナンスされた資金がほとんどすべてアメリカに流れていってしまう、このようなことでございますから、このあたりをどうしてしっかりなるようにするかというのが課題でございます。  それに対しまして、世界国家はございませんので、御案内のとおりIMFがそこに介入いたしまして、いわば追加融資は、経済のデフレ政策なり財政をカットしないと継続的なファイナンスをしないというような形で、途上国といいますか経済が破綻した国の経済政策に介入していっているというようなことで、IMFがかつての世界の超大国の一種のかわりを果たして何となくやってきている、このような感じがいたすわけでございます。  第二番目に、世界で最大の問題はアメリカ経済でございます。  アメリカ経済は、レーガンさんが登場した以後、それ以前から悪くなっておりますけれども、一層悪くなったのかなという感じがいたします。前に予算委員会なんかでも一応御報告させてもらったことがございますけれども、簡単に図表で書かせていただきますと、日本はGNPが三百三十兆でございます。四捨五入すると三百兆、そして貯蓄が八十兆で、毎年つくられた三百兆の物とサービスのうち二百二十兆がその年に食べられてしまい、八十兆が将来のために残されている、このような国でございますから、大変子供思いといいますか将来のためを考えた、我々はつましく生活し大量なものを将来のために残している、極端に言えばそんなことであります。現在十五兆円が住宅に使われ、五十兆円が設備投資に使われて、十五兆円分が使い切れなくて余っているというような経済でございます。高度成長のときには技術進歩によりましてどかどか工場が建てられましたので、この貯蓄がことごとく工場に使われて、日本は見事高度成長し豊かな社会が達成されたわけでございますけれども、現在は燃えるような技術進歩もございませんので、その結果投資がやや不足して過剰が生じているということであります。  この過剰分は、昭和五十年代の初めには政府はケインズが驚嘆するようなケインズ政策を実行していただきまして、大量な建設国債や地方債を発行して、これを買い上げていただいていろいろな福祉施設をつくったということでございますけれども、御案内のとおり財政は見事に破綻したというような結果になったわけであります。  そのときに、ありがたいことにお隣にレーガンさんが登場いたしまして、ここで肝をつぶすような減税政策を実行してくれたということであります。減税額六十兆に達するわけであります。アメリカ経済は六百兆でありますから、日本規模で比べますと三十兆に及ぶ減税を三年間にわたってやった、こういうことでございますから、まさに肝をつぶすほどの減税であったということであります。その結果、レーガンさんは貯蓄がふえるとお考えになりましたけれども、貯蓄が余りふえませんで、しかも財政支出をカットされないので見事に財政赤字が拡大してしまった、このような結果でアメリカの財政は大変赤字が続くわけであります。  その結果、金融をマネタリストなどが登場いたしまして引き締めぎみな運営をして高金利時代でやっていき、それに伴ってドルが上がってきた、円安の時代がやってまいりましたので、この余り物が見事にアメリカに流れていった、このようなことで処分されたわけでございます。日本から見ますと、レーガンの赤字のおかげで我々の貯蓄を取られた、このような感じになりますけれども、アメリカから見ますと、おまえらの貯蓄が攻めて きたおかげで大迷惑を受けた、このようなことで対立しているわけでございます。私も日本人でございますから、アメリカの財政赤字こそ悪い、このような立場に立たしていただいているわけでございます。  途上国も大変急成長してまいります。貯蓄率が大変高い。燃えるような設備投資アジア中進国では行われている。ここに向かって余り物が流れ、韓国、台湾でつくられた繊維機械やあるいは繊維であるとか、あるいはテレビであるとか、それがアメリカなどに輸出されていってバランスがとれていった。その結果、韓国は例えば急成長して、アメリカへの輸出が伸びますから経常収支が悪化しなかった。アメリカも結構財政が刺激され、円高でございますからインフレが抑えられて順調に成長し、日本は輸出が伸びることによって行政改革を実施しながら、つまり公共事業を抑えながら成長してきた、このようなことでありますけれども、この結果見事にアメリカの経常収支の赤字が耐えがたいほどの大きさになり、アメリカの主要産業は競争力を失っていった。御案内のとおりでございます。  そこで円高の時代になってくるということでありますし、アメリカは財政赤字を減らすというような決意を示して、そうなりますと金利が下がりますので、日米金利差が縮小して円高の基調がつくられた、このように存じているわけでございます。この過程でアメリカは、ドル高時代が続きましたので、国内投資をするよりも海外投資した方がはるかに利益が高いというようなことで、アメリカの生産拠点が次々に海外に移転していくわけでございます。韓国とか台湾などで自動車工業とかあるいは電子工業、部品工業の基礎が与えられるのは、多分アメリカのこのドル高のもとにおいて海外投資がふえていった、このようなことが背景にあったというふうに思われるわけでございます。  ところが、日本経済が逆に円高の時代になってまいりますと、日本でございましても当然経済力といいますか、力が海外にオーバーフローしていくというような事態を迎えるわけでございます。国内投資する場合とアメリカ投資する場合を考えてみますと、地価の価格は日本の方が驚くほどの高さであるということであります。坪当たりアメリカで買えば千円か二千円のところを、日本では少なくとも七、八万円するわけであります。円高と申しますのは、一言で言えば賃金水準が世界最高になったというようなことでございますから、賃金コストも高いわけでございます。  その上にエネルギーコストがアメリカに比べて圧倒的に高いわけであります。その上に、法人の実質課税率は日本は地方税を含めますと五二%であります。アメリカでございますと三十数%でございますから、当然アメリカの方が収益期待が大きいというようなことで、しかも保護貿易を超えるというような戦略に立ちまして、日本企業海外に進出していく力が強力に働いているというようなことでございます。昨年でございましても、百二十二億ドルの海外投資、直接投資が行われたということであります。もちろんそのほかに証券投資、金利差を求めてアメリカへ進出いたしまして、アメリカの財政不足を埋めた、国債を大量に買いまして、アメリカの資金不足を埋めたというような効果もございますけれども、直接投資でございましても百二十二億、約二兆円のものが海外投資されているわけであります。日本の設備投資に比べますと四%のものが海外に出ていった、このような計算になるわけでございます。  その中では、ちょうど乗用車のようにアメリカの弱った部門を助けてやるというような効果もございます。鉄鋼なども技術提携いたしまして支えていくということで、効果といいますか、アメリカの再生のために力が発揮されているというような事態もございます。自動車工業でございますと、現在は多分九百万台から一千万台つくっておりまして、海外では約百万台ぐらいでございます。あと十年ぐらいたちますと、日本国内生産は一千万台ぐらいになるでございましょうけれども、海外生産は五百万台から六百万台になる可能性がある。そういうようなことで、国内に投入されればもっと成長できる、ところが海外に投入されていくような仕組みが円高のもとにでき上がった、このように思われるわけでございます。  中進国群でございますと、通貨がさしあたってはドルにリンクしている、そういうようなことで輸出競争力は衰えません。その結果、既に韓国でもアメリカに対する乗用車の輸出が順調に伸び始めたということであります。それは韓国の国内で使われておりますポニーのような自動車でございますと、約九五%が部品は国内製でありますけれども、輸出品になりますと約四〇%の部品が日本製である、このようなことになるわけでございます。つまり、日本の部品を買ったり、あるいは輸出用になりますと、外側の薄板でも日本製品じゃなきゃ間に合わない。このようなことになりますから、それらのものを組み込んで輸出している。そういうことになりますと、日本は先ほど斎藤先生も言われたように部品基地になりつつあるのかなと、このような感じがいたすわけであります。  韓国の所得が順調に上昇していきます。御案内のとおりに、現在韓国は驚くほどの高度成長を達成して、経済が非常にうまくいっているわけであります。実質経済成長率一二%、物価上昇率ゼロでございます。貿易収支の黒字二十億ドルでございますから、日本の昭和四十年代の前半のような驚嘆すべきうまい経済成長が始まった、このように思われるわけでございます。  それに対しまして、日本の部品とか機械設備などが輸出されているというような状態で、これを組み込んで韓国が成長しておりますけれども、同時に賃金が上がってまいりましたので、下級品はインドネシアなどから輸入し始めた。このようなことで日本成長し、中進国が先進国に伸び上がり、その結果、発展途上国からの、日本のみならず中進国群への低流通製品の輸出が伸びている。このようなことで、アジア全体の成長日本が寄与しておりますし、それから大げさに言えば、アメリカの再生についても若干の寄与があったのかなと思われるわけでございます。  ところが問題は、既にアメリカでございましても日本企業があふれている。どんどん進出してまいりますし、ビルも日本製、日本がビルを買ったり、土地を買ったりいたします。そのようになりますと、日本経済力のプレゼンスが余り巨大過ぎるというようなことで、反日運動が盛り上がる可能性が既にあるということでございましょう。ヨーロッパ諸国にも自動車とかテレビとかが続々工場を建設してまいりましたけれども、向こうの立場からいいますと、日本企業は組み立て部門しか来ない、部品が来てくれないのじゃないかということで、ねじ回し産業だけやってくるということで、批判を受けるわけでございます。日本の立場からいえば、欧米の部品は物が悪くて使えないということになるわけでございますけれども、周りのレベルを上げるための努力をしない、このような御批判があります。  日本から見ますと、自動車工業から部品工業から鉄鋼業から、行ってしまったならば日本経済は空洞化するわけでございますから、欧米日本との対立は、向こうは日本の空洞化を要求し、日本はそんなに行ってもらっちゃ困るというようなコンフィリクションがあるのかな、このような感じがいたしているわけでございます。このままでまいりますと、多分円高になりますと海外に出ていってしまう。一方、それらのものが輸入品として入ってくる可能性もございますし、実際、円高のもとで輸入がふえ輸出が減退しているというような状況で、日本の低生産産業はいずれも大打撃を受けているというような状態でございます。それらのものが玉突きの状態になって打撃を受けているというような気がいたします。  例えば造船業でまいりますと、現在の日本の造船業は、船舶不況と中進国との敗退によりまして操業度は二〇%を割っている。韓国でございますとフル操業の状態にございます。来年からちょっと落ちるようでございますけれども、過去の注文 でフル操業の状態になっている。もちろん価格差が決定的に違うということであります。造船業がここから立ち直るためには多分厚板を輸入せざるを得ないだろう、二十数%安いわけでございますから。そうなりますと、鉄鋼業がただでさえも内需の不振と輸出の低迷によって参っているところが厚板の内需が失われる。こういうことになりますと、鉄鋼業も雇用調整やなんかをやらざるを得なくなり、そのうちの一つで三倍高い石炭を買わないということになりますと、ちょうど石炭産業にまさに深刻な雇用問題がやってくるというような、だんだん玉突き状態になりながら、既に完成した重化学工業の地位が下がっていくというような気がするわけであります。  そのかわりハイテク産業になりますと、これは技術進歩がございますので、あるいは新しい製品が開発できる余地がたくさん残っているわけでございますので、既に百六十円でも大丈夫だとか、五年先に百三十円を計画して戦略を立てているというようなことがあるわけでございます。そのような過程で日本経済はぐんぐんとハイテク化していくという効果があるわけでございますけれども、一方、衰退していく産業は大変致命的な打撃を受け、衰退する分だけ中進国やその他の国の経済的メリットが出てくることは御案内のとおりでございます。  このような枠組みが円高のもとにつくられて、日本の特に輸出産業は不況にあえいでいるというのが現状ではなかろうかと思われるわけでございます。このような状態が多分しばらく続くという感じがいたします。ただ、さらに円高のもとでいきますと、先ほど申し上げましたように、海外に出ていってしまう、これを防ぎますには何としても御案内のとおり、かつては国債の大増発によって埋めていた貯蓄投資のアンバランス、ごく最近までは経常収支の膨大な黒字によって埋められていたこのアンバランスがそのまま残っておりますから、これを内需の拡大によって埋めるしか手がないという羽目に追い込まれたというふうに思われるわけであります。  もちろん、内需の拡大には、余分なことでございますけれども、経済のシステムを変えないといけない。つまり現在技術進歩もございませんし、人々は変化に挑戦するという気持ちもなくなっておりますから、そのようなときになりますと、既にもろもろの国有企業が民営化されて新しい投資を呼び起こしていくとか、あるいはさらに農業問題であるとか、非常に難しい土地問題というような政治的に大変難しい問題にチャレンジしていく過程で多分貯蓄過剰部分がなくなっていけば、つまり内需がそれだけ拡大すれば、まあまあこの産業転換による被害は少なくて済むかもしれない。こういうことでありますけれども、いずれにいたしましても、その被害は大きくなりながら周りの国は成長するチャンスがある、このような感じであります。  日本海外に出て行く先は、言うまでもなく現在はアメリカが最も多いということであります。それはアメリカが大変企業誘致に熱心だ。州知事もいつも何人か日本に来られて、頭を下げて歩いていられるというような大変な熱心さでございますし、いろいろなフィーバーを与えておりますけれども、何といっても強大な市場があって、しかも取引とか制限がほとんどない、こういうところが大変魅力的であるということで、アメリカに向かって最も直接投資が進んでいるという状態でございます。  それで中進国群になりますと、大体、最近は変わってまいりましたけれども、外資に対する政策が猫の目のように変わるというようなことでありますし、特に中国なんかになりますと、大変担当者が困りますのは、いろいろなことを向こうの担当者と決めてきまして、そのような約束になったかと思いますと、向こうの方が上部に行ったときに報告が変わってしまいますから、せっかく日本国内で常務会に報告してそうなるよなんと言ったところが、偉い人が、社長さんか何か向こうに行ったら様子がすっかり変わっていたなんということで、部下は立つ瀬がないというようなことがしばしば起きるわけでございます。しかも現在、中国になりますと、御案内のとおり開放政策が進み過ぎて調整期にあるというような状況でございます。ですから、日本資本進出とかいろいろな経済協力についても中国についてはフィーバーがおさまって一休み、このような状態でございます。そこで登場しますのは、韓国とか台湾とか中進国群が驚くべき成長をしているわけでございますから、こちらに進出が向けられる可能性が多分にあるというような感じがいたすわけでございます。  それにいたしましても、海外企業は国境を越しましていろいろなところに投資していっているわけでございますけれども、日本企業はワールドエンタープライズ化している企業も多々あります。本田自動車などは、海外生産の方が間もなく多くなるというような状況でありますけれども、概して外国企業のようにワールドエンタープライズになっていくテンポが一段階少ないというような気が大変するわけであります。と申しますのは、基幹部分は日本に押さえておく、研究所とかあるいはハイテク、高技術のものは日本で押さえておいて、余分なところといいますか、別の大したところないといいますか、大したことないということはありませんけれども、ここほど重要でない部分が海外に出ていくというようなことが多いわけであります。それは多分、そこまで海外に行っては終わりだというような、一種の日本企業の背後には経営者の中にもナショナリズムがあるわけでございますから、その面だめ企業資本の精神からいきますと、国際化すべきところが一種のナショナリズムによって抑えられているのかなという面もございます。  その背景は、国際化していってもそれはことごとく英語であるというようなことでございますから、やはり日本語が通用して国際化していけばもっと出るはずでありますけれども、そんなようなことで、アジアの体質みたいなものがその背景にあるのかな、こんなような感じがいたしまして、海外に比べると一段テンポが遅いということが批判されているわけでございます。もっとも、最近になりますとアメリカのような強大なマーケットで軍需の需要がございますときには、どうしてもここにハイテクが転がっておりますので、研究所もアメリカに進出していくという例が多いような感じもいたすわけでございます。  多分、日本経済はこれからは内需がうまく拡大してくれれば非常に結構でございます。現在のように、約九百億ドル近い経常収支の黒字があってそのほとんどが海外に流出しているということは、日本経済にとっては物と金があり余っているけれども、それを国内で使い切れるメカニズムがない、このようなことでございます。しかも、それらの貯蓄が我々よりも経済力が強大なアメリカに流れていくということであります。比喩的に言えば、多分デベロッパーの方々なんかは大変切歯扼腕されるだろうというふうに思います。つまり、箱崎から成田まで行くときに、あたりにウサギ小屋の群れを眺めながらアメリカで宅地造成をやる、これまた大変悲しい出来事でございますけれども、実際には日本でできるようなメカニズムがない、ここが内需が拡大できない理由でございます。内需を拡大し、つまり外に出していた貯蓄を国内に投入すればもっともっと生活水準が上がり経済成長するはずでございますけれども、これをいわゆるパイプをつけてやるというのは、まさに経済の仕事ではなくて政治の仕事かなというような、口幅ったいようでございますけれどもそんな感じがいたすわけでございます。  でございますけれども、日本も各地に資本進出いたしまして、その結果日本文化が海外で理解されるようになったという成果がございます。ですから、一層協力しやすいような体制になるのかな、つまり、例えばアメリカの五万人以下の都市に行きますと、日本料理屋がことごとくあるようになった。アメリカ日本語を習う人が大量にふえてきた、こんなようなことでございますし、日 本食はダイエットなんと言っておりますけれども、ダイエットというよりも一種の日本食を食うことがファッショナブルになった、こんなようなことでございます。そういうことになりますと、文化が非常に輸出しやすくなってきたということであります。これは同時に、企業国際化しやすい条件が出てきたのかなという感じがいたすわけでございます。  その際、最も問題になりますのはアジア諸国でございます。韓国に対する投資もややおくれておりますのは、やはり多くの人が大嫌いだと言っている国には技術が流れない、流れにくいわけであります。日本も戦後、アメリカに負けましたけれども、アメリカが立派だ、民主主義で立派だとか、みんなアメリカを非常に過大評価いたしまして、一生懸命習った結果技術もスムーズに入ってきた。英語を習う方が格好がよく、しゃべれる方が格好よく見えましたのでアメリカ技術の導入が楽であった、このようなことでありますけれども、韓国のように日本語を習うことを数年前までは大変屈辱的なことであり、習えばかえって社会的にマイナスだというようなところになりますと、なかなか技術が流れにくいということであります。このようなことも多分韓国の成長率が高まるにつれて既に解消をされつつあるという気がするわけでございます。  そのようなことで、内外の文化の交流が進みながら日本経済が多分徐々に国際化していって、言ってみれば日本に強力なハイテクの部門だけ残るといいますか、出ていかないで、他のものは幾分ずつ出ていくのかなという感じがいたすわけであります。その進むテンポは言うまでもなく、政府の内需拡大のシステムがうまくでき上がれば、海外資本が漏えいしていかないで国内投資される。外国にとって最も必要なのは資本が出てくれることではなくて、日本成長し輸入が拡大することだ。これが外国にとって最も必要なことだということを考えますと、対外政策的な感じもよくわかりませんけれども、差し当たっては、内需を拡大して経常収支をバランスさせることが最も現在必要な政策ではなかろうか、このような感じがいたすわけでございます。  甚だまとまりませんけれども、以上、御報告を終わらせていただきます。
  8. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの御意見の聴取を終わります。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 大木浩

    大木浩君 自民党の大木浩でございます。  三人の参考人の先生から大変に内容の深いお話を伺ったわけでございますが、質問時間が私四十分でございますので、お一人の先生に十分程度お答えも含めてお聞きするとそれでほとんど時間は終わりということでございます。いろいろな面からのお話でございまして、私も質問を幾つか並べてさせていただきますけれども、どうぞ時間の範囲内で適宜質問の方も取捨選択していただきまして、お答えやすい方からお答えをいただければ、また後で他の先生とのお話の間でも同じような問題が出てくると思いますので、そのようにひとつお願いしたいと思います。  まず、斎藤先生でございますが、主としてアジアとの関係ということについてお話をいただいたわけでございますが、二、三質問をさせていただきたいと思います。  まず第一は、アジア諸国経済発展が非常に成長率が高いということのお話がございまして、そのとおりだと思いますが、ただ、子細に分析いたしますといろいろ国によって違うということです。いわゆるNICSというのは非常に立派にどんどんテイクオフしております。しかし、最近の政治的な要因もありますけれども、フィリピンなどはどうなるかというような問題もありますし、インドネシアもあれだけ資源があるのにそれほどじゃないというようなこともございますので、そのNICSとそのほかも一緒に固めてアジアということで考えていいのか、その辺の見方を教えていただきたいということであります。  それから第二の質問は、先ほど四つシナリオということがございまして、アジア欧米か、あるいは共存か対立かというような四つの組み合わせがございまして、先生は、これは私、正確に理解したかどうか、日本としてもアジアであり共存である、この選択をとれというお話であったかどうかと思いますけれども、そういった場合に、欧米とどういうふうに調整していくかということについて問題はないのかどうかということであります。  それから第三番目は、先ほどちょっとお触れになりましたけれども、アジアを考える場合に、チャイナカードというものがどういうふうに今後使われるかということが非常に大きな要素であるというお話がございましたので、これは日本の働きかけも十分これから、つまりチャイナというものは固定したものではなくて、日本の働きかけによってこれからいろいろと動いていくだろうというお話がございましたので、これはどういうふうに日本としては働きかけるべきであるかということであります。  それから四つ目に、これからのアジアとの関係というものを、もっと積極的な対応と、そして相互に成長を促進するような関係ということをおっしゃいました。時間がないので簡単にとおっしゃいましたのですが、もしも補足的にその辺をもう少しお話しいただけたらありがたいと思います。
  10. 斎藤優

    参考人斎藤優君) では、私の見解を申し述べさしていただきます。  確かに大木さんがおっしゃられましたように、アジアには高成長の地域だけではないのです。例えばLLDCと言われる、最貧国と言ってもいいと思うのですが、これが八カ国あります。バングラデシュだとかネパールだとか等々といった国です。この間に非常に格差が大きくなる可能性があります。これが日本にとってもアジア全体にとっても、また世界にとっても非常に大きな問題になると思います。アジア全体としては他の地域に比べると高成長するけれども、アジアの中では高成長地域とそれから残される最貧国地域とが出てくるわけです。その最貧国地域に関して最近、インドの周りを含めてたしか七か国だったと思いますが、南アジア諸国連合というものが形成されました。これが果たしてASEANのようにうまく経済連合として機能していけるかどうか。これは専門家の間ではちょっと難しいのじゃないかという気持ちはあるのですが、そういう地域にも日本がある程度協力していけるかどうかというのは今後の一つの重要な問題になると思います。  このアジアの高成長地域と低成長地域、あるいは最貧国地域との二重構造を解消する一つの方策は、高成長が低成長地域に波及していくというメカニズムをつくらなきゃいけません。そのメカニズムをつくるとなると、普通は高成長地域と成長地域の経済交流を活発にする以外にないのです。しかし、そのほかに援助はどうだということがあるのですが、これは皆さん、非常に重要なことなのですが、援助だけで大発展した国というのはいまだにないのです。援助を利用して発展した国はあります。しかし、援助中心に大発展した国というのはないのです。隣の韓国でも、あれは援助発展した国ではありません。それから高成長している地域としての台湾でも、むしろ一九六五年の援助が切られてから成長し始めたわけです。そういう点から考えると、これまでの援助政策も含めて、高成長地域の成長が低成長地域へ波及していくようなメカニズムを考える場合に、我々は大いに反省して新しい仕組みを考えていく必要があると思います。やはり正当的には貿易だとか投資だとかそういうことを通じての方が本流だろうと思います。これが第一の私の答えでございます。  第二の、シナリオAを選ぶ、シナリオAすなわちもっと具体的に言いますと、アジア全体が自分の地域のアジアをもっと見直そうじゃないかというのと、それからチャイナカードとして中国の方がこれからも開放政策展開していくだろうと、そういうことになります。その選択をした場 合に、確かにおっしゃるように欧米の方はシナリオC、すなわち、やはり欧米に目を向けてほしい、チャイナカードとしては開放政策をとってほしいというカードを選ぶと思うのです。その際に当然対立は生じます。そういうはざまの中でフィリピン問題もありますし、いろいろなASEAN、それからアジアNICSの中でも、高成長の持続がいけそうな国とあるいはそうでない国が出てくると思うのです。  私は、日本としてはシナリオAを選んだ中で一番重要になるのは、中国がもっと開放政策展開していけるような協力をする。そうなると当然、朝鮮半島の南北の問題にもいい影響が出てくるかもわかりません。現実に、これはこういうところでどうかと思うのですが、お隣の国では中国と国交の方向へ進みたい、それが今急に難しいからせめて学界レベルで大いにやりたい、そういう御意見で手伝ってほしいというふうにも言われておるわけでございます。そういう方向へ行くと、アジア全体としては望ましい方向に行くのじゃないかと私は思います。とにかくアジアから発展する要素を大いに引き出して、もめごとを少なくするという方向へ行く必要があると思うのです。  最後の、消極的な対応から積極的な対応へという中にも私はそういう問題を含めていいと思います。日本の首相がそういう点の援助をできるのなら大いに応援しますよという御発言をなされておるようでございますけれども、こういう積極的な対応というのは政治レベルのほかに民間レベルでもいろいろな工夫ができると思います。例えば、NGO、ノンガバメンタル・オーガニゼーションですね、非政府組織を通じてのいろいろな国際関係展開していくというのも一つの方法だと思います。この積極的な対応の中で私が日本として考えてほしいのは、経済経済、政治は政治、あるいは開発は開発、平和の問題は平和というふうに分けてやるのではなくて、それを連結したような形で積極的な対応ができないか、そういう問題が一つ方向として出せるのではないかと思うのです、これからの新しい日本の行き方としまして。  具体的な提言としては、私が幾つか申し上げているのは、先ほど触れましたアジアエネルギー開発協力機構だとか、あるいはコミュニケーション開発協力機構、これは既にちょっと例で申し上げました。そのほかに食品開発協力機構だとか海洋開発協力機構だとか、あるいは生物化学研究協力機構だとか、アジア全体で考えなければ解決できないものはいっぱいあるのです。それをもっと日本が表面に出して、先方もそれを望んでおるわけです。そういうものに積極的に力を貸してあげるとか、海外投資だとか、もっと投資条件を緩やかにだとかいうのも大切かもしれません。しかし、アジア全体が将来解決しなきゃいけない問題を差し迫った問題として持っておるのなら、それに対してもっと積極的な提言をしていく。これに少々のお金をつけてもこれは出した以上のメリットがあるはずです。そういうことを私は考えてみたいと思うのです。  以上でございます。
  11. 大木浩

    大木浩君 次に、松井先生にお話を伺いたいと思いますが、松井先生のお話は大体対外援助ということを中心にしてお話をいただきました。この座標軸の表を見せていただきまして、私たちは大体こういうことかなといって今考え込んでいるところであります。私ももちろん自民党の一員でございますから、この座標軸ではかなり上の方というか、右の方といいますか、でしょうし、それからたまたま個人的には私も通産省や外務省にかかわりを持っておりましたので、かなり右なり上なりということだと思うのです。ただ、効率性とそれから積極的増額、これはこういうふうに一つ座標軸の中で右と左に分かれる。もちろんそういうところをとらえての軸でございますからわかるのですけれども、実際問題としてはやはり積極的に増額をしながら効率性も考えることできるのじゃないかというようなことで、これは別にお答えはあれなのですが、そういう感じを持っているわけでございます。  そこで、日本の場合に対外援助援助ドクトリンが非常にはっきりしないと。これは日本の政治も各党おられますけれども、まさしくこの表にありますようにいろいろな立場の方がおられる。つまり日本国民はいろいろな考えを持っておりますから、それを総合いたしますとなかなかはっきりしないということですけれども、一つのお話として先ほどブラント報告のお話がございました。これはちょっと私よくわからなかったので、ブラント報告に言うような国際的なそれこそケインジアン的政策というものをある程度是認したい、先生はやったらいいというお話だったのかどうか、それが一つ。  それから、いろいろな国際金融機関、世界銀行のお話が先ほどございました。最近は例えばアジア開発銀行なんかでも、あれは日本が総裁をやっておりますけれども、いろいろな国が入ってきまして、例えばアメリカなんかはむしろ経済的な効率の方を重視するということを言っておりますので、それを非常に強力にやりますとなかなかまたこれは相手がありますから難しい。ですからその辺を、例えばアジアについて考えた場合にどういうふうに考えていったらいいかということが一つ。  総じて、先ほどの先生からおまとめでお話しになりました、外圧に応じて経済協力の質、量を改善するという問題、それから内圧といっていいか、とにかくもっと効率的な面をきっちりしろというお話。これは今先ほども申し上げましたように、必ずしも全く相反するものであって両方を上手にやっていけばいいのじゃないかとは思いますけれども、大体そういったことにつきましてもう一度お話を伺えればありがたいと思います。
  12. 松井謙

    参考人松井謙君) ただいまの御指摘で、こういう座標軸にちょっと表示するのは非常に短絡的ではないかという御批判でございますけれども、確かにごもっともなコメントでございまして、南北問題とか援助の問題を議論するときには人の頭の数ほど意見の数があるというふうに言われておりまして、とてもこんな単純なものではないということも私は十分存じております。ただ、議論を非常にわかりやすくするとか、あるいはややプロボカティブな観点から大体座標軸の上では、Aという人は右寄り路線とか、あるいはBという人は左寄り路線だとか、そういうふうに分類することは可能でありますし、それから最近の開発経済学座標軸の多様化ということも、やはり非常に市場メカニズムを重視するようなアメリカ流の考え方から、そういった市場メカニズムを無視して貧しい国を助けていかなきゃならないという左寄りの考え方までいろいろありまして、それはそれでこういう座標軸で表示できるのじゃないかというふうに考えているわけであります。  それで大木先生は、量をふやしていきながら、かつ効率的に運営することが望ましいというふうに言われましたけれども、しかしこれはやはりトレードオフの関係にあるというふうに言わざるを得ない。つまりプロジェクトの採算性とか、そういうものを無視してどんどんふやしていくという立場と、それから一方では、非常に経済性のあるプロジェクトだけに限って支援していかなきゃならないという考え方があるわけですから、後者の考え方に立ちますと、これはODAの積極的増額論者ではなくて消極的な増額論者になるわけでありまして、その意味では経済的合理性、援助の量をどうするかという座標軸で、非常に右の人と左寄りの人と常に分かれざるを得ないというふうに思うわけであります。それが第一です。  それから二番目の、ブラント報告の内容をもう少し詳しくというお話でございますけれども、先ほど御説明いたしましたようにブラントさんは西ドイツの元首相をやった人で、ワールドバンクの委嘱によって八〇年代の援助のバイブルというものをつくって非常に注目されていて、私自身も南北問題というのは結局このブラント報告に非常にクルーシアルな問題が集約されているというふうに思うわけであります。  そのブラント報告で提言していることは大きく 分けて三つありまして、一つは、北から南への資金の流れを現状のままでは非常にこれは不足するので、財界、日本での中島さんのような考え方に近いのですけれども、グローバル・インフラストラクチャー・プログラムといいますか、こういうものを全地球レベルでつくって、それに対して北から南への援助量を拡大していく、そしてそれはODAGNP比率、今〇・七%が目標になっておりますけれども、そんな程度じゃなくて、これを三%とか四%やっていく必要がある、そして軍縮で浮いた金を開発へ向けるべきだという徹底的な考え方を持っている。そういった意味で世界的ケインズ主義者というふうに言われるわけですけれども、要するに金をもっと投下していかなきゃならない、これが第一のプロポーザルなのです。  それから第二のプロポーザルは、今、DACベースでいろいろやっておりますけれども、南北関係軸というのは全地球レベルで考えなきゃならないということです。当時はまだ第二次オイルショック直後でありまして、産油国に非常に金がたまったというので産油国、OPECから貧しい国へ還流さしていくメカニズムをつくるということ、それからもう一つは、共産圏といいますか、中国とソ連がこれに参画してこなきゃいけないという提言をしているわけです。つまり、イデオロギーあるいは体制の違う国も含めて全世界レベルで南北対話をもっと積極化していく必要があるのじゃないかということで、これはさっき申し上げました軍縮の論者ということと裏腹の関係になっておりまして、要するに平和と開発ということが非常に全面的に打ち出されている。  それから三番目は、やはり今のワールドバンクとかガットとか、あるいは地域的なレベルで開発銀行がたくさんありますけれども、このやり方がちょっといけないのじゃないか、つまり国際的なレベルでもう一回経済機構を再編成しろという提言をやっているわけです。御承知のように、UNCTADは南の要求フォーラムと化しておりますし、それからOECD、DACは先進国援助政策の調整フォーラムであるわけですけれども、こういったところをもっと有機的連携を保っていって一つの機関にぶち込んでしまう。そして短期的な面で今IMFがあって、そして長期的な開発の面でワールドバンクがあるわけですけれども、これももう今やIMFは援助機関化している、こういうようなことでこれもワールドトレジャリーというようなことに統合したらどうか。さらに言えば、中南米とかアジア開銀とかアフリカ開銀とか、こういったリージョナルなデベロプメントバンクがありますけれども、これも全世界的なレベルの国際機構に再編成替えしろというふうな提言をしているわけです。  いずれにしましても、どの三つの提言を見ましても、なかなかフィージビリティーといいますか、実現可能性は薄いものであります。しかし、こういった抜本的な手を打たない限り北と南の生き残り戦略はないのじゃないかという警鐘を鳴らした点に非常に大きな意味があるのではないかということであります。これは第二点でございます。  それから第三点は、いろいろ世界銀行流にシビアなことで効率だけを重視していったら、余り開発戦略の実効がないのじゃないかというお話でございます。これはまさに御指摘のとおりでございまして、ともかく今のワールドバンクの直面している課題は、一方で中南米の借金大陸という問題があり、そしてもう一つの極にアジアのNICSというような問題があって、もう一つの極にアフリカの飢餓とかこういった問題があるわけです。こういった三つのカテゴリーに属するようなLDCに対してはそれぞれきめ細かい対応が必要であるということは大木先生御指摘のとおりでございまして、私も同感でございます。何でもかんでもサクセスストーリーになるような国ばかりではないわけで、その点も国別にはいろいろ配慮していかなきゃならないというふうに考えるわけでございます。  以上でございます。
  13. 大木浩

    大木浩君 次に、竹内先生にお話を伺いたいと思いますが、竹内先生のお話、経済全般のお話でございますので、どこから御質問しようかとなかなか難しいのですけれども、現状認識として、現在世界経済の多くの部分がオイルショックからは脱却したけれども、技術進歩が余り新しいものがないのだというお話がございました。ただ、我我素人がいろいろと新しい工場へ最近も行きますと、なかなかこんなに進歩しているのかというようなむしろ実感を持つわけでございますので、これは今たまたまそういうことなのか、これから十年なり二十年なり技術進歩というものはどういうふうになってくるのだろうということについて若干コメントをいただければありがたい、これが第一点でございます。  それから、開発途上国とかあるいは中進国、まじめな国とガバナビリティーが全くない国と非常に差がついておるというお話でございました。たしかブラジルはいい方にお入れになっていますね。そうすると、ブラジルとかメキシコなんというのは何となく国柄が、文化的背景が割に似ているような感じもあるのですけれども、どうしてそういうふうに非常な差が出てきたのか、そのガバナビリティーの差というものをもうちょっと御説明いただきたいと思います。  それから第三の質問は、先ほどの、日本は金が余っておるということで、一つは対外投資というような形で直接投資の形で出ていく、あるいは外国の証券やら債券を買うということで間接投資でございますか、そういった金も出る、しかし内需ももっと喚起しなきゃいかぬということで、この三つのバランスというのは、先生の結論は、もう一遍内需のところへ戻ってこいというお話なのか、今の三つのバランスのお話を伺いたいと思います。  それからもう一つ、それとも多少関連がございますけれども、アジアの中では日本、韓国、インドネシアとか、段階的に垂直分業みたいな形になるようなお話だったと思いますけれども、これは当分そういうことで日本もそれに対応して自分の体制を整えろ、こういうことであるか、念のためにもう一遍お伺いしたいと思います。
  14. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 第一番目の点は、日本アメリカにとってみると燃えるような技術進歩はないという感じがいたします。現在ハイテク製品の代表であるコンピューターの売上高が四兆円でございますからGNPの一%弱にしか達しておりませんし、非常に不遜な例でございますけれども、たまたま私、数週間前にパチンコ文化賞なるものをちょうだいしたわけでございますけれども、あのパチンコの売上高が六兆でございます。OA機器とそれから産業用ロボットの中でコンピューター部門をとってその機器だけでやりますと、売上高が一兆でございますから、ちょうど、例えば雑誌、新聞などの売上高が一兆五千ありますし、あのシイタケ、マツタケなどの売上高でも二千五百億あります。その四倍にすぎないということでございますから、日本経済にとりましては、非常に極端な言い方をいたしますと、現在のエレクトロニクスの技術進歩はささいなことだということになってしまうわけでございます。  でございますけれども、韓国のような国になりますと、現在まさにモータリゼーションが非常に進行していて、人々がもう自動車が欲しくてしようがない。このようなレベルになってみますと、自動車を買うことによって生活の内容も交通体系も一変してくるというような意味で、こういうところでは技術進歩があるということでございますけれども、リーディングな国では技術進歩がさしあたってないということでございます。多分これがあと十年ぐらいたちますと、情報であるとか、家庭にそれぞれターミナルが入っていろいろなサービスができるとか、そのようなことで、まだまだ十数年たてば再び明るい技術進歩の時代がやってくるということで、技術進歩が急スピードの時代と低迷する時代がどうも三十年ぐらいで交代して来るのではなかろうか、このような感じがしているわけでございます。経済で言えばコンド ラチェフ・サイクルなんという考え方がそれに当たるのかな、こんなように思っているわけでございます。  それから、第二番目の点でございますけれども、やはり産油国でございますと、非常に今までの工業化のテンポが速かったということでございましょうし、産油国で油が出ますと通貨の価値が上がってしまいますので、それだけ輸出がしにくくなるということでございます。大ざっぱに言いまして、オイルショック以後見事に経済が立ち直った国は資源のない国であるというのが特色でございます。資源があるというのは経済にとっては大変マイナスに働く場合がある、このような感じがするわけでございます。  それから、ブラジルはとにかく世銀から借りたり、あるいは他の国からファイナンスしてもらった金をまじめにといいますか、ダムとか電力とか送電線とか、とにかく日本から考えるとスピードが四倍か五倍遅いので何もやっていないようにも見えますけれども、実はまじめに投入してきた。それが今やっと実って生産力化してきた、このような感じがいたすわけでございますけれども、メキシコは政治的に不安定とか、地震とか油の問題であったほかに、国境がアメリカに接しておりますので、経済が危険になりますと、通貨といいますか資本がほとんどアメリカに逃げてしまうというようなことであります。中南米で経済が破綻している国の大部分はキャピタルフロー、資本が逃げ出してしまったという国が大部分だというような感じがするわけでございます。これが第二点でございます。  それから第三番目は、内需が非常に重要だということは、地方に行くと大分立派になりましたけれども、東京はまさにウサギ小屋の群れが並んでいるわけでございますし、それから大阪もそうだ。通勤地獄でございますし、これで他の国を援助したり資本輸出するだけの資格があるのかなというような感じがいたすわけであります。アメリカ資本投資したりヨーロッパに投資してそれらの国の経済成長を高めるよりも、もっと国内成長を高めるべき投資チャンスがあるはずだというようなことで内需が重要かな、このように考えさしていただいているわけでございます。  それから、最後の御質問でございますけれども、韓国はぐんぐん追い上げてまいります。多分これからウォンが切り上げになるに違いないと思われます。韓国の人々といいますか、財界のリーダーは、大体五年たてば三〇%はウォン高になるだろう、こんなぐあいに考えているようでございます。それを乗り切りますには、やはり自動車工業が三〇%のコスト高によっても競争力を持つことだ、このようなことでぐんぐんそっちが発達してくるだろうと思います。でございますけれども、日本の自動車工業も、例えば現在ですと、噴射装置なんというのはLSIを使って非常に効率がいい、低公害の最高の技術を開発しておりますけれども、今に、例えば地図を見ながらひとりでに自動車が行ってしまうとか、LSIを埋めて自動車を誘導してくれるとか、そんなものも多分開発されるに違いない。そういうようなことで高いレベルに日本が追い上げられていって、低部門、やや低いところが追い上げてくる韓国に譲るというようなことかなと思われます。  ただその際には、日本技術開発力がまさに問題だということになりますと、隣に強大な途上国がいるわけでございます。これは特に私、韓国でございますと、余分なことでございますけれども、ちょうどこの前も参りまして、造船会社へ行きましたら、一〇〇%操業で、日曜日に案内してくれたから、悪いなと申しましたら、ことしになってすべて日曜出勤だ、このような御返事でございます。韓国に講演に行きますときに、手元に三十枚ぐらいのプレプリントを持ってきてくれと言いますから、六時半ごろ成田から乗って九時半ごろロッテに着きまして、相手に手渡すと、翌日九時に講演が始まるときに、それが韓国語に翻訳されて印刷になって配られている、このようなすさまじさでございますから、多分確実に追い上げてくるに違いないと思うわけであります。  そうなりますと、日本技術水準を高めますにはいろいろなことがございます。円高になりますと、外国人が喜んで日本にやってくるようになるということで、外国のすぐれた技術者を吸収することができるだろう、アメリカの大学も寄ってくるだろう。それで最大のポイントは、日本の大学院のレベルをいかに国際水準に高めるか、このあたりも最大の問題になってくるのじゃなかろうか。今ここに先生いらっしゃって、大学院じゃないわけでございますが、特に技術系の大学院になりますと、日本の中で最も国際競争力が低いのは大学院じゃなかろうか。ここがまさに問題になってくるような感じもいたすわけでございます。  どうも失礼いたしました。
  15. 大木浩

    大木浩君 ありがとうございました。  あと数分しかございませんので恐縮ですが、まとめとして、先ほど松井先生のお話にもありましたけれども、例えば現在の日本の対外援助の政府機構は非常に複雑で非能率だというようなお話がございました。援助といわず、あるいは貿易関係でも結構ですが、三先生から現在の日本政府の対外経済体制について、何かこういうことはすぐにでもできることが、改善することがあるじゃないかというようなコメントがございましたら、お一言ずつお願いしたいと思います。
  16. 斎藤優

    参考人斎藤優君) 大がかりなものはちょっと時間がかかると思いますので、現在すぐというのなら、近年来問題になっている経済協力の評価の問題です。できるだけ早急に学識経験者を含めたそういう評価組織をつくること、これは非常に大切なことなのです。私、長いこと経済協力のお手伝いをしておりましたので、今いろいろ内部では評価をやっておりますけれども、それは資料としては外部に出しませんし、失敗した評価をやるというのは非常に経済協力を担当する機関にも難しいところがあります。ですから、皆さんこれはどの党の方でも賛成なさるのじゃないでしょうか、経済協力の評価の組織をつくる。それは内部の人たちが集まって適当にというのじゃなくて、本当に中立的な人たちで専門家を加えて正しい評価をする、これならもうどなたが考えても賛成なさるだろうし、問題はないと思います。私はこれが一番今必要だと思います。  以上でございます。
  17. 松井謙

    参考人松井謙君) 私は、経済協力プロパーの問題に関しましては、今、斎藤さんが言われたようなことに賛成なのですけれども、もっと大きな目で、これから国際化時代への対応として日本行政機構のあり方というような問題を議論するのならば、こういった調査会でレポートなり提言を出される際に余りその点はクローズアップされない方がいいということです。という意味は、こういったことは行革問題でさんざん議論されてきて、しかし、必要性はみんな認めているのだけれどもこれはもうできないという、半ば私は絶望的な意味から、言ってもしようがないよという意味で、これから日本外交戦略として行政機構をいろいろ対応していかなきゃならない必要性は認めますけれども、余り実効を期待できないのじゃないかという視点から、それほど積極的な提言をされてもむだじゃなかろうかというふうに考えております。
  18. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 三つほどございます。  第一番目には、何といっても輸入を拡大することでございます。このための規制とかあるいは非関税障壁と思われるもの、あるいは国内をさらに自由化するというようなことが現在の国際的な摩擦といいますか、そんなものを解決し、さらに途上国の成長に役立つ最もいい方法ではなかろうか。  それから第二番目には、先ほど累積債務の問題を申し上げましたけれども、金融機関の例えば対外債務につきまして、特別な危ない国に対しましては質倒準備制度の充実を認めるというようなことで、途上国の崩壊を防いでいくような力ができるのじゃなかろうかというのが第二点でございます。  それから第三番目は、先ほど御指摘ございましたように、韓国は中国に大変関心を持っておりますし、中国は韓国に大変関心を持っているということであります。これをうまくつなげてやりますと、ちょうど産業構造上からいきましてお互いの利益になるというような気がするわけでございます。  以上でございます。
  19. 志苫裕

    志苫裕君 社会党の志苫でございます。  余り時間もございませんし、また広範に同僚委員からもお尋ねがありましたから、私は最初に、援助問題、ODAに絞って若干お伺いしたいと思うのです。  松井先生からは、社会党の政策も棚卸しをしていただいて、ただ何を言ってもだめだろうということでは議会としては役割も果たせないので、だめでもためでもこれはまた言い続けなければならぬと思っているのです。  そこで、まず、松井先生、外務省は国会でいろいろと援助理念のことについてやりとりをしますと、一つは人道的な観点だ、もう一つは相互依存だと。しかし、外務省の若手のグループというか、実務者でつくりました経済協力のあり方というようなパンフがございまして、まとまった文書というのはあれしかないのじゃないかと私は思っておるのですが、あそこでは途上国の不安定要素を取り除くと。そういう国は大体不安定要因があって、そこでそういうものがまた国際不安定につながるので、そういうものの除去といいますか、そういう要素ももちろん入れておるようですが、ともあれ人道的観点と相互依存。しかし、これは公式のものではありませんけれども、日米諮問委員会とかあるいは総理の私的な諮問機関の平和研でしたか、そこで出てきます援助理念というのは外務省のそういう公式文書とは少し趣きが変わっております。最近特に西側の団結のあかしとしてのODAとか、例えば日米諮問委員会ですと、「特別な」というのは戦略的に重要なという意味だと思いますが、「海外援助努力を正当化する総合安全保障政策」という観点で見る、あるいは平和研の場合には政治的役割の重視、あるいはまた共通の価値観や安保への共同の関心を持つ共同体の側面、こういうニュアンスが非常に強くなってきているのですが、そういうものが特に出てくる背景とかそういうものについて、また先生の評価をまずはできればお伺いしたいと思っているわけです。
  20. 松井謙

    参考人松井謙君) この私の座標軸で言いますと、一口で言いますと、結局上の方へシフトしてきている現象だというふうに言えるわけです。御指摘のように、外務省の公式文書では人道主義ドクトリンとそれから相互依存というものを前面に打ち出してやってきて、そして最近ではややニュアンスの変化も起こっているわけなのですけれども、問題の核心は、中曽根政権のいわゆる戦略援助といいますか、総合安全保障重視の姿勢をどういうふうに織り込んでいくかということが争点になっていると考えるわけです。  実はこれは、外務省の経済協力局長のあるレポートに私も参画していろいろ議論をしたのですけれども、結局そこのところは複数意見があるということでお茶を濁されてしまって、日本がこれからアメリカの肩がわり的な戦略援助、あるいは防衛分担と絡んだ総合安全保障的な援助をやっていこうということに対しては非常にレラクタントであるわけです。つまり、役所の経済協力担当者の考え方はそういう方向へ傾斜していくのは非常にレラクタントである。  なぜかというのは、非常に理由は明快でございまして、それを打ち出すことによって果たしてタックスペイヤーのコンセンサスが得られるかといえば決してそうではない。特に国会でも、革新政党の方々がそこのところを最も重要な論点として与党を攻撃してくる材料になるから、わざわざそういうことをうたう必要はないのじゃないかという意味で、そこのところが削除されてきているというふうに言えるわけです。しかし、いずれにしましても、これから日本外交戦略と絡めてのODA政策のあり方ということを論議するに際しては、そこがやはりクルシアルな、革新的な論点になってきて、私は西側同盟国の一員という立場をもっと鮮明に出していいのじゃないかと個人的には思いますが、果たしてそれで革新政党の方々は納得されるのでしょうか、そこのところが私としては一番知りたいところです。  以上です。
  21. 志苫裕

    志苫裕君 ありがとうございました。  それから、先ほどODAの量についての物差しのようなお話がありました。さまざまな物差しということになるのでしょうが、量という場合に当然もう一方に質があるわけでして、量をどの程度に置くのか、もちろんブラント委員会の〇・七%、日本もそれをにらみながら倍々ゲームでそれに近づけていこうという姿勢をとっているようです。質という場合、さまざまな要素が入ってこられると思うのですが、確かに日本援助には先生が先ほど言いましたように贈与比率の問題とかあるいはひもつきの問題とかそういうものと、私らはちょっと現地を見たりしまして非常に重視をしているのは、二国間援助が多くて、しかもその贈与比率、ODAの比率が公共事業型のプロジェクトに随分ウエートが高い。  問題は、現地へ行きまして、途上国というのはさまざまないきさつを持ってきている国ですから、社会矛盾をたくさん抱えておるのがまた特徴で、そして西欧型の民主主義が必ずしも育っていない。ですから比較的強権的な権力が政府にある。こういうところへの供与ですから、一つ間違うと逆に爆発材料になるということをしみじみと体験をしておるわけです。ですから、質という場合にもう少し社会改革とか、例えば土地改革なんかなければ何を言ってもだめですが、質という場合に特に何を重視されるべきかという点について、また斎藤先生からも御意見がありましたら、お二人からいただきたいと思います。
  22. 斎藤優

    参考人斎藤優君) これは援助の考え方自体と非常に密接にかかわっている問題なのです。例えば、これまでの西側全体の援助政策を見てみますと、とにかく発展途上国というのは貧困で困っているから共産化するのだ、それを豊かになるようにすればそうでない、あるいは西側につく、これが主として西側あるいはアメリカの主要な援助政策だったわけです。しかし、これはいずれも余り成功しなかった。例えば、じゃ本当に援助をしてそれで豊かになったかというと、援助だけで豊かになった国はないのです。これは先ほども竹内さんがおっしゃったように、やはり一生懸命国づくりに頑張ったから成功しているのです。そういう援助の仕方にも問題があると思うのです。  もう一つは、じゃ豊かになったから、貧困からある程度抜け出たから西側についたかというと、必ずしもこれはそうとも言えない。それに近い国もあります。例えば、多くの途上国が非同盟運動を起こし、そして今貧困にあえいでいる国も、我我はもう一つの将来が欲しいのだ、オールタナティブフューチャーを我々は欲しいのだというふうに彼らは望んでいるわけなのです。ということは、あのように日本だとかアメリカのように先進国になっても、みんなノイローゼだとか精神病で悩みをいっぱい持っておるじゃないか。我々はこうやって見ましても、発展途上国へ行くと、我々よりよっぽどのんきで、いい顔しております。皆さんの顔、私も含めてもう本当に、陰険まではいかぬけれども、相当引きつったような顔していますね。だから、そういうところから見ましても、彼らはあのようにはなりたくないと言うのです。もう一つの国、オールタナティブフューチャーと言ったってどんな国になるのだと言ったら、そこはまだはっきりわからないらしいのですね。これは先方でも正直な話そのようでございます。  こういう基本で援助を考えますと、やはりやり方も少し変えた方がいいように思います。先ほどおっしゃったように、量だけでないのでないか、確かにそのとおりなのです。余り量をどんどんふやすような、これは国際会議に行きますと、お役人さん方はふやしてもらわぬと困るのでいろいろ 努力されるようでございますけれども、私はODAを国民所得の〇・七%にするとかなんとかいうよりはプロジェクトベースで判断していただく。本当に役に立つプロジェクトなら、ODAの仮に〇・八%になろうが、あるいは〇・三%しかなかった、これでもいいじゃないですか。何で毎年〇・七%にしなければぐあい悪いのですか。政府の代表の方がOECDだとかいろいろ議論するときでも、そういう点を少し私は話してほしいと思います。我々がやったこのプロジェクトはこういう点でこうなっているぞと、そういう話に私は持っていってほしいと思います。今の国際機関の空気なら、とにかくふやせ、量が第一の基準だということになっております。ですから、そういう点は皆さんがそういう事あるごとのシンポジウムだとかの機会で、私は今おっしゃったような疑問を投げかけてほしいと思います。  じゃ、どういう基準でいくのかとおっしゃった質問については、本当にその国の開発に役に立っておるかどうか、その国の人間が幸せになっておるかどうか、これが第一の基準だと思います。援助したからといって途上国の不安定要素がなくなったというのは余り見られないのじゃないでしょうか。  以上でございます。
  23. 松井謙

    参考人松井謙君) 志苫先生の質の定義をもう一回という話、大変重要なポイントでございまして、外交総合安全保障に関する調査報告で言われている、量の拡大と質の改善というこの質の改善という意味はだれの立場に立っているかというと、結局援助の受け入れ国の立場に立っている改善なのです。つまり、要するに贈与をふやすとか金利とかを安くして、あるいは償還期限を長くするような借款をするということで、専門用語ではグラントエレメントを高めるような質の改善をやっていかなければいけないということなので、そういう意味からすればこれはあくまでもレシピエントサイドに立っている議論であるわけです。  ところが質といった場合に、志苫先生御指摘のようにいろいろな立場の考え方があるのであって、今度日本援助する側に立ってみれば、これはあくまでもその発展途上国にとってのソフトな条件で金を貸すのじゃなくて、もっとハードな条件で貸していかなきゃならないということになるわけです。そこにまた非常に両者の間に対立点があるのであって、結局、俗な言葉で言えば採算性の高いプロジェクト、これがあるいはどぶに捨てないでちゃんと経済開発が実施されるようなプロジェクトという視点からすると、あくまでもこれは日本の側から見ると質の改善じゃなくて、むしろ発展途上国にとってみればそれは質が悪くなるような援助をもっと重視しなきゃいけない。そういうことを考えてきますと、結局質の問題というのは、その発展途上国がちゃんと実施できるような政策運営をする。そういうIMFの言葉で言えばコンディショナリティーを強化して、もっと本当にむだにならないような援助にしなきゃならないということに帰着するわけで、これはやはりもう一つのテーマである効率的運営の問題に絡んでくるというふうに思うわけです。  以上です。
  24. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっとこの問題もう少しお伺いしたいと思っているのですが、先ほど松井先生は日本ODAの特徴に触れながら、世界でもものすごい量をおれは持っているのだと堂々と言えばいいじゃないか、少ないどころか多いのだ、それから経済的利益の追求は当たり前だ、こういうふうに遠慮なしに言えばいいじゃないかという大変大胆なお話もあったわけです。  そう言わなくても、人道問題だとか何とかかんとか言いましても、実際やってきたのは日本経済的利益の追求というものが根底にありまして、すなわち供与国側の利益がやはり最優先されている。ですから、日本の場合も二国間のあれが多いでしょう。それは必ず日本資本やそういうものの輸出とワンセットになるからで、これがしかし相手側の国に立ちますと、それは必ずしも評判のいい話ばかりでもないわけです。それがまた社会矛盾を逆に悪化させたり、また、多国籍企業の存在自身が自立のときに妨げになったりというようなことを我々もよく見聞しますけれども、この二国間の分をできるだけ減らしていくという方向については、先ほどの安保の観点となりますと、これはストレートに二国間がいいわけでしょう。しかし、二国間というのはもう少しグローバルな立場で考えますと、そういう比率をどんどん変えていくという点についての御意見はどうでしょう。
  25. 松井謙

    参考人松井謙君) ただいま御指摘の二国間援助と多国間援助の比率の問題でございますけれども、大体今これがバイラテラルの方が七で、それからマルチの方が三ということで、これはアメリカとかあるいはイギリス、フランスとかそういうほかのDAC諸国を見てもそんなに食い違っておりません。日本も大体そういうアベレージに近いということ。  問題は、これから先生の御指摘のようにもっとマルチをふやしていって、バイを減らしていけという考え方は私もある程度賛成なのです。なぜ賛成するかというと、世界銀行とかアジア開発銀行に任しておけば国会で経済協力機構の役人がつるし上げられることもなくなるであろう。そういうことで、私はもっとワールドバンクとかアジア会議に拠出して、そこからやってもらったらいい。そして、日本企業は非常に国際競争力が強いですから、必ず落札してくるわけで、そういう意味からいうと日本の国益にもかなっている。そういう意味でなるべく多国間援助の比率を高めていけということは私自身も個人的には主張しております。  ただ問題は、バイとマルチというのはそれぞれメリット、デメリットがあって、二国間援助にもどうしても必要不可欠な部分があるわけです。二国間援助というのはいろいろ機動性があるとか、ともかく多国間援助に比べて非常にスムーズに運営されるし、いろいろな国自体に密着した援助ができるという意味で二国間援助のメリットというのは非常に大きい。特にここが重要なのですけれども、外交政策の、要するにレバレッジとしてもし援助を使うならば、これは絶対二国間援助でなければならないというふうに思うわけです。そこの特権というか権限まで放棄して全部世界銀行とアジア開発銀行に拠出してしまうと、これは日本外交政策の要するに決め手というか、せっかくODAをもって日本のこれから経済パワーを行使していこうというときに、一番重要な武器をみずから放棄することになる。こういう視線に立ちますと、二国間援助をもっと充実してもいいのじゃないかという見方も成り立つわけです。
  26. 志苫裕

    志苫裕君 ここで議論をしても意味がないので、先生の御意見は御意見で伺っておきますが、ただ、現実に途上国の経済的な従属とか、そういうものにもまた一面つながっていく懸念が現実にもあるわけでして、そういう意味でちょっとお伺いをしたのです。  次に、チェック機構あるいは事後評価の体制のことについてそれぞれ両先生もお話がございました。実は国会でも、例えば会計検査院のあり方とか、国会の中にそのようなポジションをつくったらどうかとか、あるいは専門家を集めた評価体制とか、そんないろいろな議論がなされるわけですが、一つ壁がございまして、それはずっとやっていきますと、相手国にもこれは関係があるわけですから、相手国の主権の壁というのが都合よく立ちはだかることもある。援助案件の発掘から始まるわけですけれども、途上国といってもいろいろたくさんございまして、四つぐらいの類型に分けられましょうか。その援助案件を発掘する技術を持っていない、極端なことを言いますと。技術のあるのは日本の商社やそういうものですから、援助案件の発掘のときからちゃんとそれが仲間入りをしている。それが評価のチェックのときに逆に主権の壁で阻まれる。こういう率直に言って難問にぶつかるわけですが、こういう点について何かうまい方法がございましょうか。これは両先生もし御意見ありましたら。
  27. 松井謙

    参考人松井謙君) ただいま御指摘の相手国の 主権の問題でございますけれども、外務省なんかの言い分は、例えばマルコス疑惑解明のときにいろいろ国会の調査委員会で喚問されたときに、結局、それは内政干渉になるから、どこの業者が落札したというリストは出せない、こんな話があったと思うのです。しかし、私は大きな目から見ると、日本外交の自主性のなさというところにこれは大きく発展していくと思うのです。たとえ内政干渉と言われようと、貸した金には条件をつけるのは当然であって、そしてそのトレースもやっていかなきゃならない。現に国際機関ではそれをやっているわけです。あるいは一歩譲って二国間のベースでも、アメリカのAIDというところはそういった意味で非常にシビアな条件をつけて金を貸していますし、それからあとのトレースもちゃんとやって、つまり内政干渉恐るるに足らずという態度でやっているわけです。  それになぜ日本がびびっているのかというところが私は納得できない。主権の壁とか何とか言いますけれども、そういう意味でアメリカ流の、あるいはイギリス、フランスもそうですけれども、かつて植民地を支配したような国民というのはそういうことをやっているわけです。日本はその点になるとちょっとしり込みしてしまうのはどうかというふうに私は常々思っているわけです。現に、いろいろなことで内政干渉めいた援助政策展開している欧米諸国がなぜ非難されないで日本だけが非難されるのか、ちょっと理解に苦しむところであります。
  28. 斎藤優

    参考人斎藤優君) この問題は、例えば評価委員会を政府でつくるから内政干渉だとかそういう問題が起きると私は思うのです。これを非政府組織的につくれば全く問題ないのです。私自身、例えば外務省の評価ミッションの委員長で行ったこともありますし、先方はきちっと受け入れてくれて、全部見せてくれて、どうのこうのいう問題も全部クリアにしてくれます。それで大蔵省から行ったりいろいろなプロジェクトごとに各省から集まって行きますから、それについては、金融の面では大蔵省から来た委員が全部チェックしていきますし、全く問題ないと思います。  ただ、あなたの国の評価も我々が全部目を光らせてやりますよということで、それは政府機構としてつくる場合には物によっては内政干渉という問題は出てくるかもしれません。しかし、むしろそういうものを評価するのは、政府機構でつくるのではなくて中立的な非政府機構でつくった方がもっと役に立つのではないですか。それならどこからもとやかく言われないと思うのです。要するに、つくるかつくらぬかの話で、つくるとぐあいが悪いところも出てくると思います。失敗したところはできるだけそんなところはない方がいいと思いますし、成功したところはどうぞやってくれということになると思います。  以上でございます。
  29. 志苫裕

    志苫裕君 この点もよく押し問答になるところですが、アメリカみたいに厚かましく振る舞わぬところが日本のいいところなのか、あるいは隅から隅まで調べるといったって、だんだん自分のところに都合の悪いところが出てくるので主権の壁をつくるのか、この辺はいろいろ問題になるところです。  今、斎藤先生のお話のあった非政府機構によるそういうチェックといいますか、実例としてその辺もしございましたら……。
  30. 斎藤優

    参考人斎藤優君) 日本ではどこもそういうことはやらせません。OECFにしてもあるいはJICAにしても外部にその評価を頼んだという例はありません。ただ、内部ではやっております。
  31. 志苫裕

    志苫裕君 外国の場合どうでしょうか。
  32. 斎藤優

    参考人斎藤優君) 外国の場合には、それはどこでつくろうが余りおっしゃったように気にしません。やはり我々のそれは控え目のいいところかどうかわかりませんけれども、日本の場合はつくっていないですね。
  33. 志苫裕

    志苫裕君 最後にしますが、先ほど先生からシナリオA選択の話がありまして、それから同僚の大木先生からは、それがいわば日米関係とかそういうものにどんな役割を果たすかというお話がありました。チャイナカードの話がありましたし、今ちょっと援助の話が出ましたが、東西関係というのが南北関係をなお律しておる。それがさまざまな援助施策や経済施策面に色濃く出ている。東西関係と南北問題とはまた次元の違うことで考えていかなければ、全部それを縦で、東西で割り切ったのじゃならぬと思うのです。幸いアジアの場合には日本中国という二つのでかい、片や経済的にでかい国ですが、この日中が双方で役割を果たすということはシナリオA選択に、また東西問題の緩和ということにもなりますし、その点での御意見はどうでしょうか。
  34. 斎藤優

    参考人斎藤優君) それはおっしゃったとおりだと思います。私はそういう意味では、日本シナリオA選択しそれに努力するということは、アジアにとっても非常にいい方向を切り開いてくれると思いますが、それを具体的にやっていけるかどうか。確かに、おっしゃったように東西問題と南北問題を切り離したらどうかということは何回も学界の中でも議論されてきたわけですけれども、これはもうそういうわけにいかずに、東も西もこっちの水が甘いぞというので援助競争をする、中には援助づけになって、国家予算の半分以上が援助に頼らないと食べていけないという国もいっぱいできておるわけです。果たしてこういう方向がいいかどうか、いろいろ問題があると思います。  それはそれとして、アジア発展の中で日中関係を基軸に考えていくということは、一つアジア成長ベルトの強化と面的な拡大に役に立つ、すなわち開発に役に立つ。それからもう一つは、アジアの中の平和の面をもっと強化していけるという点で非常に大きな役割を持っているわけです。  さらに、もう一つ考えるとすれば、アジア成長ベルトの強化と拡大に、日中関係もそうなのですが、忘れてならないのはインドとの関係なのです。インドは最近走り出しました、五%の成長で伸び始めました。ここが走ってくれると、アジアのLLDC問題、貧困問題の解決に相当役に立つ。だから、日本にとってインドも積極的な対応の対象として考えていく必要があるというふうに思います。  以上でございます。
  35. 志苫裕

    志苫裕君 もう一問だけ伺います。  松井先生、先ほどODAの量、質の議論をしましたね。そうは言っても量に何か物差しがないと、いろいろ質の検討をしていったら援助額が半分になったというわけにもなかなかいかぬでしょうし、外圧云々とはまた別に、日本なら日本なりの量が要る。私ら非常に単純なのだけれども、南と商売の延長で事実上今までやってきたわけです。南のものを持ってきて日本は栄えているわけですから、南の国々との取引の黒字分は援助で返す。偶然にですけれども、それを計量してみますと、たまたまブラント委員会の〇・七にほぼ似通った数字なのです。なものですから、ブラント委員会は何を根拠に〇・七と言ったのか知りませんけれども、そういう発想方法、もともと南北問題というのは、北の国々が南の国々に対して贖罪の意味も含まれておるわけですから、そういう物差しの当て方はどんなものでしょうね。
  36. 松井謙

    参考人松井謙君) まず、先生御指摘のように、これからODA援助量、何をもって物差しとして負担基準を決めていくかという問題は非常に重要なポイントであります。私も報告のとき申し上げましたけれども、GNP基準は余りにも単純過ぎるのだ。ですから、日本のGNPを基準として〇・三しかやっていないというふうに非難されるのはちょっとどうかというプレゼンテーションをしたわけですけれども、いろいろ考え方がありまして、例えば経常の黒字額とかあるいは財政の赤字額とか、そんなものをカウントした指標をつくったらどうか、さらには、よく言われているように、日本の社会資本が非常に不足しているわけで、そういったストックも含めて果たして日本の国力がどの程度援助を負担できるのかということをもう一回見直す必要があるのじゃないかとい うことで、私はちょっとあるプロジェクトである委員をやっていて、そういう方向で検討しております。  それから、もっと大きな考え方からいいますと、結局、黒字国責任論の問題になってくるわけですけれども、何もODAだけではなくて、あるいは市場開放のための産業調整費をどれぐらい払っているかとか、あるいは国際通貨の面で見て円はドルに比べてどれぐらいの地位にあって、そしてどれぐらいの役割を果たしているのか、こういったものまで全部含めて日本の負担能力をもう一回再検討する必要があるということを私はいろいろ主張しているわけでありまして、その意味で先生のその御指摘に大いに同感であるわけでございます。
  37. 黒柳明

    ○黒柳明君 公明党の黒柳でございます。  三先生の貴重な御意見を拝聴いたしまして、ありがとうございました。国会審議に非常に役立つ面が多々ありましたので、また今後の参考にさしていただきたいと思います。時間が限られておりますので、三先生に一問ずつお伺いさしていただきたいと思います。  まず、斎藤先生ですけれども、中国に対する我が国の投資の問題についてお伺いしたいと思います。  先ほど竹内先生も、最近は低いと、私たちの訪中は正常化以来十二年でもう二十回ぐらいになります。毎年中国からも政府あるいは学者の先生方の招待もしております。相互にいろいろなものを実情を見、またあるいは意見の交換をしておりますが、その中で絶えずこの問題が出てまいりまして、日中の間柄、また地理的な関係から見まして欧米諸国投資で相当おくれているということは、中国側に法がまだ不整備であるという条件はある。あるいはいろいろな面で体質的なまだまだおくれがあるという条件があるにせよ、この条件中国に対しては日本欧米も同じ条件なわけであります。そういう中において我が国の投資が非常におくれているということにつきまして、一にかかって向こうの体制が問題なのだと、これで済まされることかどうかというふうに思われます。最終的には政治改革がなければだめなのかなと思われますが、この点についてどうでしょうか。  松井先生には、確かに私たちもマルコス疑惑を通じましていろいろな政府対外援助に対して、野党から見まして問題だらけであると思うのです。かといいまして、いろいろ私たちが質問、追及をする中におきまして追及し切れない面がありまして、事前調査から最後のチェック段階におきまして不備だらけであります。  これは例えば、マニラの現地に行きましても、アメリカのチェック機関というのは二百名もいて、我が国は交流機関の職員が三名しかいないということもあります。事前調査も行き届いてはいるのですが、実際にはそれはコンサルタントという民間企業を通じての調査であります。それも問題がある。いろいろな問題があります。しかし、先ほど斎藤先生が、プロジェクト中心にして〇・八でも〇・三でもいいじゃないかとおっしゃいましたが、一応国際的には一つの基準が設けられている。しかも野党も援助をふやせと、前安倍外務大臣のときは急速にこれが倍々でふやされてきたことも現実でありまして、こういう中で、当面先生のお考えで、いろいろな不備の中でここだけは至急に改革できるのじゃなかろうか、またしなければならないという点があるとすればどこであろうか、こういう点をお教えいただければと思います。  それから、竹内先生にお伺いしたいのは、今の政府税調から党税調、自民党側の税制改革を行っておりますが、なかんずくマル優は廃止になるであろうと思われます。  そうなった場合に、法人の対外投資どころか、今度は低金利、それからマル優の廃止ということで個人資産があるいは海外に流出していくのか。そうなりますと、代理店や何かの問題で、日本経済、景気等の問題でどうなるのか。私の知っている企業の有力な社長さんも、日本はさっき先生が御指摘になりましたように税金が高い、例えばアメリカなんかに行きましても、光熱費も安い、千ドルぐらい出せば相当有能な人が来て働いてくれる、税金も安い、こんなことで徐々に日本の資産をアメリカに持っていくのだ、こういうふうに断言して、現にいろいろな買収をしている企業が相当あるのです。それに加えて、今言いました税制改革の中での個人の低金利の中でのデメリットがあります。これが流出していくと、果たして日本の内需拡大については今度は逆行するのじゃなかろうか、こんなことも考えられますが、その点。  それからもう一つ、これは非常に現実的になるのですが、円レートが最近は百五十円から百六十二円ぐらいを前後しております。短期的に六十一年度ぐらいをとりまして、あるいは中期的にとりましてこのレートがどのぐらいに推移するか、先生の御意見をお聞かせいただきたい。  以上でございます。
  38. 斎藤優

    参考人斎藤優君) 中国に対する投資につきましては、これは金額を今一々挙げても、約束はしたけれども現実にやる段になるとなかなか進まないというのがありまして、余り役に立たぬのです。おっしゃるように、確かに特に昨年は、ことしもそうですが、相当約束はふえたのです。しかし現に工場が動いているというのは、もう百件以上の約束をしておきながら十二、三件じゃないでしょうか。それで当然中国側からは非常に不満の表明がなされております。  こういう点で、これは一昨年、外務大臣並びに通産大臣が行かれるときに特に問題になったのが、先方のリーダーの諸先生方、これはトップからもうほとんどですね、その先生方から、日本は特に海外投資並びに技術移転にけちだという非常に厳しい評価がなされたわけです。それで、大臣が行かれる前に日中経済協会に委託して、どんなものかひとつ調べてこいというので私は顧問で行ってきたわけです。そのときに相手の方々といろいろディスカッションしてきたわけですが、やはり私がそこで思ったのは、何でも正直にぶちまけると非常に理解してもらえるということ。そこで調査した結果はあすこの協会の雑誌に書いたものが恐らく先方ですぐ翻訳されたと思います。その後は余り言わなくなりました。最近ちょっとという感じはしますけれども、一昨年の秋ごろからはそういうことは首相先生初め主席の先生もそんなにおっしゃられなくなったです。ですから、こういう状況で進まないのですよということを正確にお互いが納得するような形で話し合っていく必要があると思います。  今回はリーダーの一人が何回か日本へ来られまして、それでお互いにそれを詰めて、日本海外投資技術移転が進むようなそういう条件づくりをなされております。それが現在少しずつ進んでいるという程度のようでございます。私は今後これは増大していくと思います。ただ、これはむしろ業界の人に関係することだと思うのですが、中国が欲しいのは日本資本技術であって、中国のマーケットを提供することではないのです。そういうことを考えますと、そのような協力あるいは対応のパターンをとりませんと、やれ投資すれば、技術は持っていくけれども先方のマーケットが大いに使えるというようなことでは話は進まないと思いますし、先方もそれに応じないと思います。この点が今後の一つの重要な問題だと思います。  特に、日本では野党の方々が熱心に接触されて、それなりのおぜん立てをされて、私は相当の成果を上げてきたと思います。こういう海外投資だとか技術移転だとかいうときに一番大事なのは、どれだけ利潤が上がるか、お互いがメリットを得るかという前に信頼関係が非常に重要である、これをそういう努力の中でつくっていってほしいと思います。ですから何回でも行ってください。  以上でございます。
  39. 松井謙

    参考人松井謙君) 黒柳先生の、海外経済協力について最も至急に改善しなければならない点あるいはできる点、こういう御質問があったわけで すけれども、結論から先に言いますと、私は、国会の調査権を発動して与野党の先生方に頑張っていただくよりしようがないのじゃないかというふうに思っているわけです。  結局、不正の問題というのは三つの段階があって、御指摘のように、最初日本の商社が主導してきて、そして日本のコンサルタントが設計図をかいてやっている援助である。それはどういうことかといいますと、結局要請主義といいますか、これにすべての問題が派生しているそのことであるわけなのです。したがって、要請主義を見直すかどうかという問題がまず検討されなきゃならないわけですけれども、ある程度この点は現行の枠内でやっていかざるを得ないというふうに考えているわけです。仮に日本のコンサルタントが設計図をかいて法外な値段で日本企業が売っているとしましても、やはり発展途上国の現状を考えますと、こちらからある程度おぜん立てをしてやらないと進まないということです。したがって、私は要請主義の見直しということについてはちょっと懐疑的であるということであります。  それから第二の段階は、経済協力基金で、要するに資機材の搬入契約をチェックする点でいろいろ審査能力が不備であるというところから起こっているわけです。この点については、やはり経済協力基金のスタッフを拡充しなきゃならないわけですけれども、しかし、経済協力基金が現在二百人足らずです。これを千人とかそれぐらいの規模にしないと、各専門家が集まって契約内容まで審査できる体制はできないということになるわけです。  第三の段階では、いわゆる事後評価の段階で、金がうまく使われているかどうか評価するということですけれども、現行では外務省の局長の中に評価委員会というものが設けられて、問題的な融資を抜き打ち的に検査しているにすぎないわけです。これについてもいろいろな議論があって、第三者による評価機関とか監査機関をつくれというような議論もありますけれども、これも早急にはできないのじゃないかと考えられるわけです。そうだとすれば、私は、マルコスの不正蓄財問題をもって国会に委員会が設置されましたけれども、あの委員会がもっと活動していろいろ援助のあり方を追求していってもらいたいというふうに考えているわけです。しかし、選挙があってあの委員会は雲散霧消したように私は理解しているのですけれども、ともかく国会の調査権を発動していろいろやっていっていただくのが最も早急に望まれることであるということです。  ただ、ここで一言言っておきますと、国会レベルの議論が余りに疑惑の追及とか解明だけに終始しては結局建設的ではないのであって、やはり与野党の先生方全部が、日本の効率的な経済援助はどうしたらいいかということをもう少し真剣に議論して考えていっていただく必要があるのではないかというふうに思います。  以上でございます。
  40. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 第一番目の黒柳先生の御質問でございますけれども、やはり金利が下がってまいりますと資産の海外流出は起きるわけでございます。特に税金、法人も全体を含めまして税制が重いのでその力が海外に押し出す力になっているというのはまさに御指摘のとおりでございます。金融資産が、あるいは資産が海外に移転して、平たく言えば海外の金融資産、国債なり何なりを買うわけでございますけれども、そうなりますと必然的にドル高・円安になってまいりまして、そのうちに、ドル高のときに買って間もなくドル安に転化したときには損じゃないか、このような気持ちが働いてまいりますので、いつまでも資産が流出するということはなくなるような気がいたします。その辺でおのずとチェックが働きますけれども、いずれにいたしましても資産が流出していくということは確かでございます。  その流出先は何といっても先ほど御指摘のアメリカでございまして、先ほど来議論がございますけれども、私も来週中国で、なぜ日本から技術移転ができないのかという中国社会科学院主宰のセミナーに、なぜできないかということを説明しにいく係でございます。こんなことを年じゅうやっているわけでございますけれども、やはり中国になりますと、投資するとマイナスが多いということで、民間は出ていかないわけでございます。言うまでもなく、フィージビリティースタディーができないということが最大のポイントでございますし、水がどの程度あるかわかりませんし、電力がどの程度通るかわかりませんし、あるいは賃金すらわからないというようなことでございますので、なかなか現在のところは出にくい。ということになりますと、どうしても、アメリカ、次いでヨーロッパ、残念ながら途上国よりもそっちに資金が流れていってしまうというような傾向はしばらく続きそうだ、このような感じがしているわけでございます。  それから、第二番目の御指摘でございますけれども、円レートでございます。  これは、一言で言いますとわからないということでございますから、円レートの場合は占うと言うわけでございます。アメリカの有名な研究でございますけれども、占い師とエコノミストとか学者と、どちらが円レートが当たったかという研究がありますけれども、同じように当たらなかったというのがまじめな結論でございます。ただ、差は何かというと、間違ったときに学者、エコノミストはくどくどと理由を言うというところだけ違うそうでございます。  そんな意味で占いますと、現在、日本の金利が非常に下がっているわけでございますし、不況はさらに深刻化していく、ということが世界的な日本観だと思います。そうなりますと日米の金利差は縮小はしないというふうに思われます。そうなりますと、アメリカの金利を目がけて円は流出していく可能性が大変強いということで、これは円安の要因でございます。それからもう一つは、油の値段がどうも上がりそうだ。OPEC諸国の生産調整は、イランがかなりリーディングの役割を果たしておりますので、どうもある程度まとまりそうだ。原油価格は十七から十八ドルぐらいには上がっていくような展望が見られる。これは円安の要因でございます。そのようなところから働きまして、現在は百六十円台になっているような気がいたします。  それで、金利が一段と、三%台に下がってまいりましたので、この百六十円台のレベルは守られるのじゃなかろうか。事によりますと、景気はさらに悪くなりますから、百六十五円ぐらいには来年はなるのじゃなかろうかというように思われるわけでございます。その先になりますと再び円高になってくる、このような感じはいたしております。ただこれは占い、全く占いでございます。
  41. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 三人の参考人方々大変ありがとうございました。  最初斎藤参考人にお伺いしたいのですが、アジア成長ベルトのお話、それからAタイプの選択のお話、興味深く聞きました。両体制共存とアジア市場志向という方向ですね。その点で私思い出したのは、NIRAが去年膨大な報告書をアジア経済協力について発表してます。たしか十前後の調査団を各国に派遣して、いろいろ個別報告書もまとまっていて、それから総合的な分析もあるのですけれども、私はあれを読んで、最後の結論を見て、なんだ、こういう結論を引き出すのにこれだけ膨大な調査をしなきゃわからぬのかなと思ったのですけれども、結局、アジア諸国が、日本中心アジア経済協力については、日本の戦前型国家主義ですね、大東亜共栄圏とか、そういうものに対する警戒心が非常に大きい、ここを解決するのが最大の問題だというのが膨大な調査の結論なのです。そんなことは調べなくたって我々そう思っていると思ったのですけれども、その後も、中曽根内閣になってから、例の藤尾発言それから人種差別発言などありまして、NIRAの報告の結論はむしろその後裏づけられているだけじゃなくて、どうも高まりつつあるような感じがするのです。斎藤さんのおっしゃる展望の上で、今の問題、むしろ私らは政治の役割がそこを是正することにあるように思っているのですけれど も、いかがでしょうか。
  42. 斎藤優

    参考人斎藤優君) 私のこの分析を、実は先月同じようなタイプで韓国で報告したことがあるのです。そのときの質問者の中に、あなたの言うのはアジア主義か、ということは、その方はそこを突っ込んで言わなかったのですけれども、もっと突っ込んで言いたかったのは、それは昔のアジア共栄圏の思想が潜んでいるのじゃないかという感じの発言だったわけです。こういう特にアジアでもっと近隣諸国は仲よくやっていったらいいじゃないかという言い方は、日本がリーダーシップをとって言うのは非常に言いづらいまだ状況があるのです。その点でどうも私の論文や報告でもその辺のことを気にしながら今報告したり発表したりという段階なのです。ただ私、このまま援助でも何でも贖罪の気持ちというのを忘れたらそれはいかぬと思います。しかし、それだけで消極的な行き方をとっていたのでは、アジアの将来全体が非常に摩擦の大きいものになっていくと思うのです。共産党でもよく主張されますように、平和の問題、そういう問題をもっと強く打ち出していきませんと、皆そうやったじゃないかというので、どうもそういうところで平和の問題を議論するのはやりずらいという気持ちでおったのでは前進せぬと思います。  おっしゃられたように私は、これからは恐らく二十一世紀中心にしてシナリオづくりが相当出てくると思うのです。そういう場合に、このNIRAの報告書でも相当お金を使っていると思います。だれに研究させてだれに書かすかというのもいろいろ問題になるのです。同じ商売なものでございますので余り厳しいことは言いづらいのですが、おっしゃられるところはあります。たくさんお金をつけて、これは政府全体の年間相当の規模でコンサルタントに出しますようです。しかし、なかなかお金を出した分の成果が上がってくるかどうか、この評価も大事だと思います。しかし、今そういう評価のシステムはないですね。恐らく外務省なら外務省でも年間そういう調査予算は相当つけているはずです。しかし、それが本当に思ったとおりにちゃんと学術的にいいものになっているかどうかという評価の中立的な仕組みは、これはどの省でも持っていないと思います。その辺で問題があると思います。  それから最後に、ちょっと時間をとって申しわけございませんけれども、アジア成長ベルトシナリオAをとらない限りはもっともっと摩擦が大きくなるし、そしてアジアの平和と開発にとって非常に問題が大きくなるということだけは申し上げたいと思います。  以上でございます。
  43. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 松井参考人にお伺いしたいのですが、援助論争座標軸ですね、共産党を見ますと下の左なので、ここはひとつ異議申し立てをしたい。これは恐らく、今、ODAをすぐふやせという主張をしておりませんからそういうふうに書かれたことが一つあると思うのですけれども、日本ODAは、外務省がうんとレーガノミックスに近いように、非常に戦略援助の枠組みでアメリカの言いなりになっているので、この枠組みのままODAの量をふやしたりグラントエレメントを上げたりしただけではだめだ、枠組みを変えろという私どもの主張があるわけです。その枠組みを変えればむしろ新国際経済秩序樹立派のUNCTADに我々は近いので、もっと下の方で左へ行くのじゃなくて右へ移していただきたいと思うのです。  それからもう一つは、ラジカルエコノミスト、特にマルクス主義学派、従属派に近いのじゃないかとお考えかもしれませんけれども、フランクの理論なんかは学ぶ点があると思うけれども、例えばサミール・アミンなんというのは新国際経済秩序、NIEOさえ非常に攻撃しているようなところで、いわばマルクス主義学派じゃないのです。我々はそう思っておりませんので、共産党はサミール・アミンに近いのかなともしお思いになったら、ここもひとつ是正をしていただきたいと思います。  それから、お話の中で松井先生御自身は世界銀行の考え方に近いと言われて、同時に世界銀行がマクナマラからクローセンにかわって若干変化もあると今おっしゃいました。私、宮崎義一教授の「世界経済をどう見るか」を読んでいたら、八一年、マクナマラにかわってレーガンによって世銀総裁にクローセンが任命されて以来、世銀の報告書の中にもマクナマラの言う絶対的貧困に関する叙述が全く消えた、こう指摘してあるのです。マクナマラ時代の世銀というのは南北問題を非常に重視して一生懸命やったと思うのだけれども、宮崎さんも書いているように、どうもクローセンになってから変わってきたように思うのです。だから、世銀が真ん中にバツになっているのだけれども、クローセンの世銀というのはもうちょっと上に行くのじゃないかと思うのです。この点ひとつお伺いします。
  44. 松井謙

    参考人松井謙君) どうもいろいろありがとうございました。  共産党のお考えを今明確にしていただきまして、もう少しUNCTAD寄りにしろというような話、大変参考になりました。ただ、共産党がODAのあり方に関してどういうふうなレポート尾なり提言をされているのか詳細に読んだことがございませんので、感覚的に、大体革新政党の一番左翼だからこの辺に属するのじゃないかということで……。  それで、おっしゃるようにディペンデンス・スクールといいますか従属学派とマルクス主義経済学者の対立というのも、この間ある会合でいろいろ聞かれまして、おまえの分類は間違っているというようなことを指摘されまして、図らずもまた上田さんから今回そのような御指摘をいただきましてありがとうございました。  それから、第二番目のワールドバンクの路線変更というのも、これも確かに御指摘のとおりでございまして、確かにマクナマラ時代は所得再分配アプローチとか、それからベーシック・ヒューマン・ニーズということを前面に打ち出してやってきた。ただ八〇年代に入って、クローセンがバンク・オブ・アメリカの出身でありまして、そういった健全性の原則というのを打ち出しまして、非常に効率性というものを重視する方向に転換してきたということも事実でございます。そしてアメリカのレーガン政権の考え方にかなりこれは近寄ってきている。その意味ではワールドバンクというのはもっと上の方に来なきゃならないわけで、その辺もきめ細かくこれは十分に書けていないということも認めざるを得ないわけです。  ただ私は、ワールドバンクの開発戦略というのは、何といっても世界の核にならなきゃならないという考え方は捨てていないわけで、あくまでも開発問題を考えるならワールドバンクの政策を勉強しろと言われるように、やはりワールドバンクというのは本当に真剣に政治的中立性の立場から開発援助のパイオニアとして活躍しているという、この事実を特に強調しておきたいと思います。  以上でございます。
  45. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ありがとうございました。  竹内参考人のお話も大変視野が広くて、またパチンコ文化賞受賞者にふさわしい、大変わかりやすく、適切な実例もたくさん入っていて非常に興味深く聞かけていただきました。  まず第一に、莫大な累積債務が今、世界経済の最大問題だと言われた。確かに膨大なオイルダラーがアメリカ中心の市中民間銀行の手で発展途上国に流されていって、マーシャル・プランよりはるかに大きな規模の金だというのですけれども、それが第二次石油ショックそれからレーガノミックスで大変な苦境に陥って、金利は高くなるし返せなくなっているということが最大の問題だと思うのは、私もほぼ同意見なのです。今のワールドバンクのお話がありましたけれども、この外交総合安全保障の今は調査会ですが調査特別委員会時代に、おととしの五月に、世界銀行の副総裁もおやりになったこともあり、ルワンダ中央銀行総裁をおやりになった服部参考人が見えまして、大 変おもしろい話をされたのです。  日本企業が倒産すると債権者が寄って、真っ先に利子の減免、利子の棚上げをやる、ところが日本人が成田を飛び立つとまるで国際人という化け物になってしまって、手数料を上げる、金利を上げる、そうでなきゃ貸さないという態度になるのだという批判をされたのですが、私もあのときの服部さんの質問に対する答弁でここは非常におもしろかった。今、累積債務問題で八二年のメキシコ以来最大の問題になってリスケジュール等々をやっているわけですけれども、また非常に危機が来ているわけです。しかも民間銀行は発展途上国に貸すときに普通よりも上げるわけです、莫大な金利を取っている。今でも金利さえ取れればというのでやっているわけなので、やっぱりここのところを規制しませんと累積債務問題は解決しないのじゃないか。これが破裂するとそれこそ今、世界大恐慌直前じゃないかという議論が東海銀行の七月の調査発行もあるし、それから東洋経済の臨時増刊も「世界大恐慌への警告」という特集号が今出たばかりなのですけれども、そういう問題があるのじゃないかと思うのです。  それで、ひとつ長期信用銀行の常務取締役の竹内さんにですが、累積債務と、マーシャル・プランとは違うわけですね。あれは国家資金なのに、これは民間資金ですから結局金利が物すごいのがついているわけで、ここをやっぱり棚上げとか減免とか、今まで大分大もうけしているわけだから、ここをやらせないと解決しないのじゃないかと思うのですが、その点御意見いかがでしょうか。
  46. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 非常に一面の御指摘でございます。今の御指摘、まず国内で金利を減免するというのは、日本国内でございますと義理とか人情とかそういうのが働いておりますし、長期的な貸し借りの観念ができているというようなことであります。もし日本企業が倒産したりしたときに、その前に危機の状態から再建するときに金利を減免しないとか、あるいは元金の償還を棚上げとかあるいはそれもある程度カットするとか、そういうことをいたしませんと大変非人情な銀行だというように思われるわけでございます。ですから、それは長期的な戦略のもとでそのようなことをやっているという感じがするわけでございます。そのように貸し借りの関係をといいますか、いざというときには銀行が損しても助けたことがあるということは、お互いの信頼関係が長期的にでき上がって、いつかはその債務を返してもらえるということで、同一社会でございますと、これは同一かどうかというのは議論がありますけれども、文化的な同一社会でございますとそのような長期的な貸し借りが頭の中に入っていて、契約証書なしでも実行されるという信頼関係にあるのではなかろうかと思われるわけであります。  それからもう一つ、金融機関の社会的責任みたいなものがございますけれども、国際関係になりますとまず貸し借りの関係はない、長期的な貸し借りがあるくらい。つまりフェーバーを与えても返ってこないし、借りた方が大変威張っているというような関係でございますから、これはどうしても国際的なルールに従わざるを得ないというふうに思われるわけでございます。日本はまだ国際化してから間がないわけでございますから、国際社会におけるそのような長期的な人情の貸し借り、それはあるかもわかりませんけれども、まだその微妙な点がわかっていないというようなことで、国際的なルールに従ってこの面はダイレクトにやっていくということではなかろうかと思われます。  それで、どこでもそうでございますけれども、危ないところほど金利が高くなるわけでございます。これは競争原理でございまして、ヨーロッパとか安全な国は世界から貸し手が殺到いたしますので金利が自動的に下がってまいります。ところが、途上国といいますか、累積債務のある国は貸し手がほとんどおりませんので、金利を高くすることができるというような意味でプライスメカニズムが働いていると思われます。  それから第二番目には、貸し倒れになる可能性がありますから金利で先に取っておこうというようなことがございますし、貸し倒れが発生した場合には大変管理のコストがかかるというようなことで、管理のコストも前取りにしているのじゃなかろうかというように思われます。つまり、途上国の融資の場合には普通のところよりそういうことで金利が上がってまいります。日本の金融機関にとりますと、欧米のいいような融資先は大体欧米人同士で貸し借りしておりますので、日本のところに余っているのは非常に悪い貸し手しかないというようなことで、この途上国に対して案外貸し借り、借金が多くて、それはまさに御指摘のように、今のようなプライスメカニズムに従って普通の国よりも高い金利を取っているというようなことでございます。
  47. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 その次に竹内さんにお伺いしたいのは、先ほどレーガノミックスを上げたり下げたりされましたね。それで私も日本人だからというので非常に批判されたのだけれども、今の世界経済の大きなアンバランスというのは、一つアメリカの大赤字、それから日本、ヨーロッパの黒字のアンバランス。それからもう一つは、先ほどの発展途上国の、特に非産油途上国の累積債務です。それで日米の特に経済不均衡を考える際に、おっしゃるように日本もいろいろやらなきゃならぬけれども、アメリカがみずからの改革をすることが決定的じゃないかという指摘がいろいろあるわけです。  きのうから東京新聞で下村さんが連載されているけれども、世界経済の根本にあるのは、結局レーガンの経済政策経済問題として見るとめちゃくちゃだったという厳しい批判も持論に従って書かれている。それから日銀の「調査月報」八月号を見ますと、やはり貿易不均衡は、アメリカが輸入がふえやすい経済体質を持っている、ここが原因なのだということを詳細に分析している。それから野村総研の「財界観測」六月号、これは例のアメリカ経済不均衡を軟着陸のケースと九五年に解決するケースと二つのシミュレーションをやって有名なのですけれども、九五年に均衡させようとすると、ドルは九五年八十八円という数字を出したのです。結局シミュレーションをいろいろやってみてもこれではだめだ、うまくいかぬというのです。それで野村総研の結論はやっぱりアメリカだというのです。米国の経済構造、輸出入構造企業体質を前提とする限り世界経済における国際収支不均衡のマクロ調整には一定の限界がある、だからアメリカ企業が生き残りに向けて自己変革が見られるかどうかということだという指摘なのです。  私は、銀行やこういう野村総研の調査というのは政府の分析よりも本当にリアルな商売をおやりになっているので、かなりリアルな分析をやるところが多いと思っているのです。アメリカがこういう一番大きな原因があってここを直さない限り、つまりこれはシュミット・西ドイツの前首相も言ったように軍備大拡張に基づく財政赤字、もう一つは多国籍企業化がありますけれども、多国籍企業の問題は一応別にしても、まず何よりも軍拡経済、それに基づく二千億ドルを超える財政赤字。グラム・ラドマン法が去年の暮れにできた。しかし、ここを直させることをしないと世界経済のアンバランスは直らぬといういろいろな意見が出ているのだけれども、この点について最後竹内さんの御意見をお伺いして終わりにしたいと思います。
  48. 竹内宏

    参考人竹内宏君) まさに御指摘のとおりでございます。アメリカが輸入が多過ぎる体質に変わったというのは、アメリカ国際企業が多国籍化して生産拠点が海外に移った、それは同時に、途上国や中進国にとって大変いいことであったというような関係になるかと思いますけれども、もう一つは、まさに上田先生御指摘のように、現在の日米貿易アンバランスの原因はアメリカにあるというふうに思われます。特に下村博士とかあるいは小宮隆太郎先生とか日本をリードされる方々がいずれもアメリカの財政赤字を厳しく指摘するようになったわけでございます。実際に まさに御指摘のように、アメリカの財政赤字がなくならない限り日米貿易のアンバランスは多分なくならないだろうと思うわけであります。  それからもう一つの要件は、アメリカの人々が労働者、ブルーカラーが働かなくなってしまった。最近少しは働くようになったわけでございますけれども、だから日本が同じように働かなくなるか、アメリカ日本のブルーカラーのように働くようになるかということにしないと、日米貿易のアンバランスといいますか、通貨の安定はないというようなことだろうと思われます。ですから、当然のことながらアメリカの赤字は、これは福祉費とか軍事費とかいろいろございますけれども、世界的に見ますと、どの国も軍事負担で参っているというようなことでございますので、あるいはこれは引き下げといいますか、そんなことがあるいは可能かどうかでございますけれども、その辺のガバナビリティーをアメリカ政府が持つかどうかがどうもポイントらしいというようなことでございます。  今までは、日本は敗戦国でございましたから反省的でございましたけれども、これがちょうどややといいますか、日本の中立的な学者の方々も俄然攻勢に転じたというような感じがいたします。それは先ほどの議論もございましたけれども、敗戦国はそろそろ時効ではなかろうかというような背景ができてきたような感じがいたします。当然のことながら、経済成長率が純化いたしますと、日本の伝統とか文化とかが重要視され、国際摩擦が激化し、そして対外的な強力な発言がふえてくるということはいつの時代でもあったことでございます。現在もそんなような時流に乗って、アメリカに対する正しいといいますか、正当な発言が始まったということでございますけれども、これを大変楽しいことと見るか、悲しいことと見るか、危険なことと見るかというのは、意見の相違があるのじゃなかろうか、このように存じているわけでございます。
  49. 田英夫

    ○田英夫君 時間がわずか十分しかありませんので、三人の皆さんに全部御質問ができないと思いますので、失礼はお許しいただきたいと思います。  まず、斎藤さんに伺いたいのですけれども、先ほど違った体制間の経済の協力関係というものが発展をするのか、つまり共存関係に進むのか、あるいは今までのとおりの対立関係が続いてしまうのかという意味のことをおっしゃいましたが、具体的には斎藤さんとしてはどっちに進むと思っておられるのか。特に日中が既にいろいろ問題があるにしろ進んでおりますが、韓国の問題も、中韓問題も触れられましたので、特にその辺に焦点を当ててお話しいただきたいと思います。
  50. 斎藤優

    参考人斎藤優君) 特にアジアというのは体制の違った国もたくさん集まり、それから経済発展の段階の違う国もたくさん集まっておる。そういう点で常に多様性の中の統一をいかにつくり出していくか、私はこれで非常に苦労してきた地域だと思うのです。  最近は東側でも、中国の方でも、我々はソ連とは違った中国的社会主義を求めるのだというのでソ連から離れていっております。そして、香港問題についても一国二制度で対応するのだと。さらに、最近では国内の中でも自由主義制度をどんどん取り入れまして、もう後戻りできないという段階に来ております。  私どもが行きましても、三年ぐらい前なら、まだ国営の商店に皆さんずらっと並んで切符を持って商品を買いに行くということだったのですが、今は国営市場が閑古鳥が鳴きまして、みんな自由市場へ買いに行く。自由市場の方がいい品物を自由選択できて、安く買えるというようになってきたわけです。そういう点で、いわゆる百五十年も二百年も前に考えたそういう制度とは違った現代流の制度につくり変えていく。そういう中で、当然東側で選択、特に中国の方で選択し始めたのが、開放政策をとり、自由主義制度ともある範囲内で共存体制に進んでいこうというふうに動いております。そういう点で、私はそんなに悲観的なものではない考えを持っております。  ただ、それに対して、日本というのは世界の中では一割国家ですが、アジアの中では五割国家なのです。貿易でも海外投資でも、あるいは科学技術予算でも大体日本とその他アジアと一緒ぐらい。ですから、この大きさというのは、プレゼンスというのは無視できない。そういう点で、日本が私の言うシナリオAでいこうとすると、それなりの役割を果たしていかなきゃいけない。その役割を果たす国としての能力はあると思うのです。それと、それから気持ちを持っているかどうか。ただこれは経済協力予算さえふやせばとか、それで済む問題ではないと思うのです。やはり皆さんがよく諸外国を訪問されて、そして人間関係をつくり、政治の責任者同士がお互いに腹を割って話し合う、そういう信頼関係の中から、それは必ずしも首相さえ行ったら仲よくなった、これで片がつくという問題ではないと思うのです。ですから私は、皆さんが忙しい間を縫って大いにそういうところと交流されて、信頼関係を築いてほしいと思うのです。  結論的には、私はむしろ楽観論の方をとりたいと思います。そういう方向へ進めていきたいという気持ちをとりたいと思います。  以上でございます。
  51. 田英夫

    ○田英夫君 大変よくわかりますし、私も基本的には、国際情勢全般というものは、いわゆる東西というイデオロギーで仕分けをするという時代はもう過去のものになりつつあるというふうに思っていますし、経済もまたしかり。  若干わき道にそれますけれども、実は昨年、上海で中国の主催で国際自動車ショーがあったときに、韓国がこれに出品したいということを提起しましたら、中国は、残念ながら今回は中国主催である、これが国際的な機関で例えばオリンピックとかアジア大会とかのように中国も加わっており、韓国も加わっているならば、たとえ国交がなくとも、韓国の自動車がそこに出品されることは一向構わないという答えをしておりました。非常に一つの今斎藤さんのおっしゃった方向の道が開けるかもしれない。また、そのときに日本に対する批判として、これは中国の責任者が言っているのですが、例えば中国は、自動車の問題で言えば、扉がいかにうまくスムーズに閉まるかという、そういう極めて基礎的な技術日本から教えてもらいたい、供与してもらいたい。ところが、日本企業企業秘密ということでそれは教えない。韓国の企業が、もしこの技術を供与するならばそれは買いますと。中国言葉で技貿促進、技術貿易促進、技術を買う、貿易の対象にするということを今やっているという話までありましたので、今大きな方向としておっしゃったことは、私も、時間の問題はあるにしても進むのではないかという気がしているわけです。  時間がありませんが、もう一つだけ松井さんに伺いたいのは、対外経済協力を進めていく中で、チェック機能というものが、政府がおやりになるものをどこがチェックするか。さっきも民間の問題とかいろいろ斎藤さんからも出ましたが、国会の果たす役割というものがあるのじゃないだろうか。  私は、実は十一年前、昭和五十年に議員立法で参議院の外務委員会に対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案というのを出しまして、残念ながらこれは一票差で否決されたのです。その柱は、一つは、政府は、民主主義の原理に反する統治を行う国に対しては、対外経済協力を行ってはならない、それから、同じように軍事目的に充てられるものはいけないという一条と、もう一つは、国会の承認を求めなければならないというのが柱になっていたのですが、国会が何らかの形でこのチェック機能を果たすということについてはどういうふうにお考えですか。
  52. 松井謙

    参考人松井謙君) 今、田先生の御質問の趣旨は、先生が議員立法で提案されたようなことに対してどう思うかということでございますか。それとも……
  53. 田英夫

    ○田英夫君 いや、一般論として私の問題は参 考にしていただいて、何らかの形でどういう承認の方法があるかということです。つまり、対外経済協力の具体的なプロジェクトまで全部出して、やれと言ってもなかなかこれは難しいかもしれません。しかし、何らかの形で国民の代表である国会がやる方法はないかという大変大ざっぱな質問です。
  54. 松井謙

    参考人松井謙君) よくわかりました。  まず、行政機構とそれから立法府といいますか、国会との役割分担の問題だろうと思うのですけれども、確かに、おっしゃるように行政府がやることを全部国会でやれというようなことは、これは到底不可能でありまして、そこまでチェック機能を持つ必要はないと思うわけです。ただ、田先生もおっしゃいましたように、国会はあくまでもタックスペイヤーの代表が集まっているのだ、そうだとすればタックスペイヤーの立場に立った、例えば次元の低いマルコス疑惑、不正問題の追及とか、こういったことまでも国会でやっていただかなきゃしようがないのじゃないかということで、私はさっき公明党の黒柳先生の御質問に対しても、国会の調査権をもっと活用して、国会である程度のチェック機能を果たしてほしいという要望をしたわけでございます。  それから第二の、田先生の議員立法で、独裁政権がある国とかあるいは軍事的目的に使用するような国に対して援助をやるべきじゃない。この議論は非常におもしろいわけなのですけれども、確かに共産党を含めて革新系の学者の人でこういったことを提言あるいは主張している学者はたくさんいます。しかし、独裁政権だから、あるいはこの援助の金がニュークリアの開発に使われるとか、果たしてここまで援助基本法的なものをつくって明示することができるかといえば、決してそれはできないだろう。これはある程度行政府の裁量によって、援助協力実施機構の間で十分議論してやっていくべき問題じゃなかろうかというふうに考えるわけです。  以上でございます。
  55. 田英夫

    ○田英夫君 ありがとうございました。
  56. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 きょうはお三人の参考人、お忙しいところをどうもありがとうございました。ほかの委員会とかけ持ちしておりましたので、参考人の御意見は伺ったのですけれども、委員の質問を全部聞いておりませんので、あるいは重複する点があるかもしれませんけれども、その点御了承願いたいと思います。  まず最初に、斎藤参考人にお伺いしたいと思いますけれども、アジアとそれからアメリカ、ヨーロッパで、アジアの方に移ってきつつあるのだというお話でしたが、いわゆる環太平洋圏構想というのをどういうふうにごらんになるか。基本、技術の供給源として日本だけで果たしてやれるかどうか。やはりアメリカなりカナダというような国を巻き込んでいく必要があるのじゃないかと考えますけれども、その点についてどうお考えですかということが第一点。  それから第二点で、アジアの問題を考える場合、やはり中国、これは防衛上の問題だけじゃなしに、経済的にも私は中国がどういう方向に動くかということは非常に大事な問題だと思うのです。中国が現在開放政策をとっておりますけれども、これは後戻りはないと見ていいかどうか。もし自由化していくとすれば、どういう方向に自由化していくというふうにお考えですか。  この点をまず最初にお伺いしたいと思います。
  57. 斎藤優

    参考人斎藤優君) この環太平洋との問題というのは、非常に密接な関係を持っていると思います。  当初は、この環太平洋を二十数年前に日本の学者が、小島清先生を初めそういう方々が提唱をされたときに、提唱者御自身は実現するとは思っていなかったわけです。むしろ西一辺倒のみんなの西向け西の態度を、せめて東にも目を、顔を向けてくれたらという程度で始まった構想だったのです。これは提唱した本人から聞いた話でございます。その後、いろいろ皆さん御苦労なさってずっと続けておられるようでございますが、最近アジアの時代と言われる時代になって、初めてアメリカ、ヨーロッパは東へ顔を向け始めたわけです。レーガン政権の二期目になりますと、中にはアジア・太平洋の時代ということを提唱することに非常にくみする人たちがたくさんふえてきた。それでやっと今、環太平洋というのが何とかそっちの方向に進んでいるという状況に来ていると思うのです。そういう点で、もちろんアジアならアジアだけで、アメリカ、ヨーロッパを抜いてやっていくということはできないと思います。  ただ私は、そういう米欧の力をかりるにしても、今のアメリカ、ヨーロッパがくしゃみをしたら風邪か肺炎になるというアジアのそういう情勢がこのままでいいとは思わないのです。これをもう少し独自で体制強化する、あるいはASEANの人たちがよく望むようにもっと強靱性をつくるという意味で、アジアの中でもっと努力できるのじゃないだろうか。その努力をアジアの指導者の人たちがお互いに考えてほしいと私は思うのです。そういう点で、このシナリオ四つの中で特にシナリオAを強調しているわけなのです。こういう方向へ行くかどうかわかりません。  次の関先生の御質問の問題で、これは当然、中国がどういう方向へ進展していくのか、これと密接にかかわりを持っておると思います。  当初は多くの専門家の人たちは、開放政策はとったけれどもいずれまた後戻りするぞ、開放政策をとったり後退したりしながら行くのじゃないかという御意見の方が多かったと思います。最近でもそういう予想をされる方は多いと思います。ただ現在、中国の開放政策が、文革の時代のように完全に締めてしまうという方向には行かないと思います。もうあれで非常に多くの方々がひどい犠牲になってきましたし、もうこんなことは二度とという声の方が強いわけですから、そういう点ではああいう極端な後戻りはしないまでも、外貨の制約だとかあるいは国際環境の中で、ある程度はちょっと締めようかとか、この辺で少し後退せざるを得ないぞということで多少の揺れはあるにしましても、私は中国にとっても開放政策を続けていかない限り中国自体の発展もないと思うのです。その中国的社会主義と言われる中身は、まだ私は完全な形で明確になっているとは思わない。これは私の意見でございますが、以上でございます。
  58. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まだほかにも質問したい項目がたくさんあるのですけれども、時間が余りないようですから竹内参考人にお伺いしたいのです。  私、年をとりまして心配症になってきたのじゃないかと思うのですけれども、一九三〇年代の世界恐慌を経験した人間といたしまして、現在の世界経済を考えて、どうも二九年に至る過程とある点では似ている点があるのじゃないかというふうに考えるのです。もちろん違った面もたくさんあります。国際協調が進んできたという面は違っていると思いますけれども、ああいうことを繰り返すのを防ぐためにはどういうふうにしてやったらいいか、非常に大ざっぱな質問ですけれども、お答え願いたいと思います。
  59. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 非常に難しい御質問でございます。先ほど上田先生も御指摘なされましたような、累積債務問題に対して世界の金融機関がルールを守らなければ一挙に崩壊する可能性があるというような感じがしております。実際に計算したところは、正確な計算ができませんけれども、世の中にある債権、債務の累積、これは国債発行額も含めましてGNPで割ってみますと、一九二九年ぐらいのレベルになっております。つまりいろいろ貸したり、現在は貸し借りで非常に防いでいるということで、その間に一種の国際的に見ますと信頼関係があり、五カ国、世界工業国のリーダーたちも一年に一遍ずつ集まって顔を見合わせて約束を守るといいますか、あるいはIMF総会とか、そのようなことでお互いに顔を見合わせながらルールを守っていくというような確認をし合っているのではなかろうかという感じがいたすわけでございます。  そこから先でございますけれども、これからは 先ほどから御指摘のようにアジアに急成長国群が出てきたというようなことでございます。これは一九二九年の後に日本とかドイツが立ち上がったと同じような吸収していく力、世界成長をリードしていく力がこの部門に出てきつつあるのかなという感じがいたしますけれども、ただ韓国、台湾といっても、現在足しましても日本のGNPのたった十分の一の経済でございますし、中国もどう頑張ってもすぐにはそういう力が出てこないというようなことではなかろうかと思います。先ほどアメリカの批判もございましたけれども、今までアメリカが財政赤字を拡大し続けなかったら、もうちょっとぐあいが悪くなっていたかもしれないという意味で、アメリカはみずから大変機関車の役割をして、その結果現在大変経済的な深い病に陥った。元来経済体質が弱くなっていますからそうでございますけれども、そんなことでございます。  次の機関車をだれが果たすかということになりますと、日本でも西ドイツでもないかもしれませんけれども、少しずつ機関車の役割を果たしていかざるを得ないだろう。日本も結構その分でいきますと海外投資も進んでおりますし、海外経済援助もそんなに低くはないというようなことでございますし、ラッキーのせいかどうかわかりませんけれども、日本の周辺の国々、日本との貿易関係の深い国々は中南米と比べてはるかに経済が安定しているというような意味で、一種の責任は果たしているだろうと思われるわけでございます。それにつきましても、現在、繰り返しになりますけれども、日本の経常収支の黒字は歴史始まって以来の黒字をため込んだということでございますから、この黒字を解消していく。つまり、甚だ日本経済にとってはつらいことでございますけれども、輸入を拡大して輸出を減らしながらそのしわを内需の拡大に向けて、内需の拡大によってカバーするというようなシステムをつくりませんと、世界経済の中での役割は果たし切れないのかなと、このような感じがしているわけでございます。
  60. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それでは、松井参考人にお伺いしたいと思いますけれども、先ほど聞き漏らしたのであるいは誤解しているかもしれませんが、日本海外援助で、ODAでグラントエレメントが一番低いわけですね。一番というか、非常に低いわけですね。それでどこの国でも国益ということを考えるのは当たり前で、グラントエレメントが低くても構わないというふうにお考えですか、ちょっとその点はっきりしませんでしたから。
  61. 松井謙

    参考人松井謙君) 簡単に申し上げますと、私はグラントエレメントが低くても構わないと思っているわけです。というのは、援助を何のために行うかということと密接に関連してきますけれども、結局受け入れ国にとって非常にシビアな条件を課さないと、その援助資金がうまく効率的に利用されてきていないというのがこれまで過去のいろいろ失敗例であったということです。そういう視点からしますと、やはり援助受け入れ国にとってシビアな条件でもやっていく方が日本の効率的運営のためには寄与するのではないかというふうに私は考えております。もちろんこの点はまだ時間があったらいろいろ議論の余地があると思いますけれども、結論だけ申し上げますとそういうことでございます。
  62. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私も国益に立たなくてはいけないということは考えているのですが、今までやはりグラントエレメントの質を高めようということは外務省なんかにも言ってきたのです。つまり国益という場合に、目前の輸出奨励にすぐ役立つかどうか、これも一つの国益ですけれども、同時に、日本が人道主義的な援助をやっているということがこれは非経済的な国益にもつながると思うのです。その点を考えますと、日本の今までのやり方は余りにもグラントエレメントが低過ぎるじゃないか、輸出奨励金じゃないかというふうな悪口さえ言われているくらいで、その点は私はもう少し改善する必要があるのじゃないかという意見ですけれども、どうですか。
  63. 松井謙

    参考人松井謙君) その点は先ほど自民党の大木先生の質問への答えと同じようなことになるのですけれども、国別にきめ細かい条件を考えていく必要があるということで、アフリカのような飢餓に悩むような国に対してそんなにシビアなローンをやっていくというのはとても無理なことでございますし、おっしゃるように国別にいろいろ援助条件を考えていく必要はあるということでございます。  それからもう一点申し上げますと、結局世界共同体理念といいますか、地球中心モデルに立って考えますともっとグラントをふやしていく必要はもちろんあるわけですけれども、ただ地球中心モデルということを考えた場合に、やはりあくまでも援助をする国のことを考えていかないと実際には援助は成り立っていかないのじゃないか。特に企業性悪説がありますけれども、日本企業は相当経済協力の先兵として頑張っているのだということももう一つつけ加えておきたいと思います。
  64. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) 以上で質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、お忙しい中を御出席を賜りまして、長時間貴重な御意見を賜り、まことにありがとうございました。本日の御意見を私ども調査会の今後の参考にいたしてまいらなければならぬ、かように考えております。調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会