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1986-12-11 第107回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月十一日(木曜日)     正午開議  出席委員    委員長 河上 民雄君    理事 青木 正久君 理事 伊吹 文明君    理事 二階 俊博君 理事 浜田卓二郎君    理事 牧野 隆守君 理事 小野 信一君    理事 伏屋 修治君 理事 塚田 延充君       川崎 二郎君    熊川 次男君       小杉  隆君    穂積 良行君       斉藤  節君    森田 景一君       北橋 健治君    岩佐 恵美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局取引部長 柴田 章平君         経済企画庁調整         局審議官    田中  努君         経済企画庁物価         局長      海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁総合         計画局審議官  冨金原俊二君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部経済調査官 緒方 右武君         経済企画庁国民         生活局審議官  長澤 哲夫君         経済企画庁総合         計画局審議官  蜂巣 賢一君         法務省民事局第         三課長     田中 康久君         大蔵大臣官房企         画官      杉井  孝君         大蔵省銀行局中         小金融課長   鏡味 徳房君         食糧庁管理部企         画課長     日出 英輔君         通商産業省産業         政策局規模小         売店舗調整官  雨貝 二郎君         通商産業省基礎         産業局鉄鋼業務         課長      中尾 舜一君         通商産業省機械         情報産業局電気         機器課長    横江 信義君         資源エネルギー         庁石油部計画課         長       黒田 直樹君         資源エネルギー         庁石油部流通課         長       鴇田 勝彦君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     清川 佑二君         運輸省航空局監         理部航空事業課         長       平野 直樹君         労働省職業安定         局雇用政策課長 廣見 和夫君         労働省職業能力         開発局能力開発         課長      大月 和彦君         建設省住宅局住         宅政策課長   今泉 浩紀君         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ───────────── 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ────◇─────
  2. 河上民雄

    河上委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。穂積良行君。
  3. 穂積良行

    穂積委員 年末を迎えまして、正月向け物資調達など、消費者物価についていろいろと国民の関心を呼ぶ時期でございます。そういう中で、物価政策推進経済企画庁長官以下の皆さん誤りなき施策の推進を希望申し上げる次第でございます。  きょう、こうした時期に質問の機会を与えられまして、委員長初め関係各位に感謝申し上げます。  さて、きょうの質問の主題は、現在政治、外交、行政あるいはマスコミなど多くの場で問題とされております国内産米価格、すなわち米価問題についてどのように考えるのが正しいかということについてでございます。  私は、物価問題については、個別の物価あるいはサービス価格という問題と総体的な物価水準という二つの問題があると思います。総体的な物価水準につきましては、人間の体を国民経済というふうにとらえてみた場合、その体温みたいなものである、健全かどうかのバロメーターは体温によってある程度判断できる、こんなふうに例えられるものと思います。体が健全ならば平熱、病気になると発熱する。ぐあいの悪い病気を治すためには、基本的にはその病気を治さなければならない。しかし、熱のために苦しいという場合には、即効性の解熱剤を飲んで体温を下げる。そういうような面が物価政策にあると思います。  経済は、ある程度平常な価格で、熱がなければならないということも間違いないところだと思います。運動し、あるいは活動している人間の健康な熱、発熱、発汗、これは快適な面がございます。ところが、病気になった場合には非常に苦しい、何とかしなければならないというようなことと思います。熱が上がる場合、これは物価が上がる場合ということを申し上げましたが、実は非常に心配なのは熱が下がるような状態人間病気になって死にますと熱が下がってしまう。死ぬまでに至らずとも熱がどうも低いというのは非常に問題な状態、こういうことになると思うのです。昨今の円高に伴う物価の安定よりむしろ下落傾向というのは、対策を誤ると死に至りかねないようなそんな体温低下、こういうことになるのではないかと思いますが、そうした中で誤りなき物価政策をお願いしたいと思っております。  そうした気持ちの中で、実は私は最近大変かき乱されている問題がございます。ある商業雑誌が私に公開質問状をよこしまして、これは皆さんにも行っているかと思うのですが、その中に「食管法が提供するコメは、アメリカ産米の実に八~九倍という不当な価格となっている。」というような文言がございます。これについて代議士どう思うのか、こういうような公開質問状がありまして、私はこれに対して反論を送りました。不当な価格ではないと私ははっきり回答したのですが、まず私の気持ちをそう申し上げて、では米価というものが不当な状況かどうかということについて論議を進めるために少し話題を変えて申し上げ、あるいは御質問したいと思います。  経済企画庁のお骨折りによりまして、喫茶店コーヒー値段について昨今の状況を知らせていただきました。例えば東北新幹線に乗ると、車中でのコーヒー一杯は二百七十円でございます。最近の喫茶店コーヒー一杯の値段は総務庁の調査によれば二百九十一円ということだそうでございます。これを毎日飲めば一週間で約二千円の出費になりますが、そうしたコーヒー値段、これも突き詰めて原価分析をしますと、コーヒー原料光熱費サービス料その他、お店の減価償却等々で構成されることは明らかでありますが、その二百九十一円のうち、コーヒーの粉、砂糖、ミルクなどを入れて六、七十円ではないか、何かうまいコーヒーを選んで原価分析するとそのくらいのようだ、こういうお話も伺いました。  ところで、冒頭に申し上げました米について、ではどのような値段になっているかということでございますが、御調査いただいたところでは、平均世帯人員で割った一人当たりで見ますと、一週間の購入数量は〇・八キログラム、支出金額は三百八十一円ということになっております。そうすると、お米の一人当たり一週間の購入のための金目はコーヒーの二杯に満たない、こんな値段でございます。これを家計調査の中で調べていただいたわけですが、一カ月当たり米類への支出額が六千二百七十五円、消費支出に占める米類の割合は現在二・三%というふうなことになっているそうでございます。  このように米の国内のこれは消費者米価ということになりますが、これについて非常に高いではないかということを言われておるわけでございます。これについても、国際的に見てこれはどのぐらい高いと見られているのかについて、私の方からばかり説明してもいかがかと思いますので、これは企画庁の方からひとつお知らせ願います。
  4. 海野恒男

    海野政府委員 はかり方あるいは計算の仕方によって一概には言えないかと思いますが、生産者米価の場合と消費者米価の場合にはそれぞれ違うと思いますが、農林省等統計によりますと、タイ米あるいはカリフォルニア米、それぞれ違いますけれども生産者米価では大体七ないし八倍といったような数字が出ておりますし、消費者米価の場合には、私ども統計では大体二倍ないし三倍というような統計数字が出ております。
  5. 穂積良行

    穂積委員 今お答えのありましたような、消費者米価でいうとどうもアメリカの二倍ぐらいというような値段だということが、現在マスコミなどで、非常に高い米を食わされている、それは日本農業に責任がある、問題だ、安い米を食わせろ、自由化せよというような論調もちらほらあるわけですけれども、アンケートで言ってきましたように、米は一体本当に不当なる価格であるかどうか、そうしたことであるかどうかがまさに問題であると私は思っております。  これはそもそもの話に戻りますが、物価を論ずる場合、その個別の物品なりサービスというものが高いかあるいは安いかということについては、判断の物差しが問題ではないかと思います。時系列的な比較といいますか、ある一定期間前の価格に比べて、今の価格が前の価格よりもこのぐらい上がったとか下がったとか、その上がったのがけしからぬとかやむを得ないとか、そういう時系列比較と、それから、今の例でいいますように、国内での自由な市場ならば一物一価というようなことがありますけれども国際間で見て、今のような絶対評価、比較では高い、安いというようなことがあると思います。それから、それについてそれがいいか悪いかという話になるわけですが、その場合、自由な市場で形成される物品について需要供給関係で決まる。これについては、市場原理だから、いい、悪いということは余り言えないということが一つあると思うのです。しかも、今度は、市場に提供する側の原価、利潤などからする、市場で決まる価格妥当性という問題が絡んでまいりますが、そうしたことを含めてこれから物価というものについてのいいか悪いかということを議論しなければならないと思うわけでございます。  国民経済を構成する各産業はそれぞれ相互連関しています。その中で、一国の経済の中でそうした連関というものが静止的にとらえられた場合は、これはそれなりの現実的な妥当性がある、こう考えざるを得ないと私は思います。ただ、静止的にとらえた産業相互連関の中でのその時点での妥当性というものが、時系列的に今後を考え、今後どのような産業連関の変化を意図すべきかという経済政策からの視点で現在の状況というものを将来に向けてどうすべきかというようなことから、今の産業間あるいは物資相互間の物価バランスというものについて、変えていくべきかこのままでいいかということなどを加えての判断として今の物価の是非を論ずるべきではないか、こんなふうに思っているわけです。そういうようなこととして、まずは、私の方から意見を申し上げる前に、経済企画庁長官としては現在の国内産の米の価格というものについてはどんなふうにお感じになっているかをお答えいただきたいと思います。
  6. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 ただいま穂積先生から、物価についての基本的な考え方大変示唆に富む御解説がありました。私も基本的に賛成な感じで承っておった次第でございます。  そもそも市場物価というものは、お話がございましたように、マーケット需要供給が単純に言えばクロスしたところで決まるわけでありますから、高いとか安いとかということを言う前に、実現した物価というものはある意味ではそこで需給がマッチしたという意味では均衡価格だということが言えるわけであります。そういうマーケットによるとらまえ方。それからもう一つは、生産費から見てその価格生産費を補うものかどうか。生産費は何かと言ったら、まさに減価償却であり、原料費であり、労賃であり、例えば借入金の利子とか地代とか、こういうものが積み上がったものでありますから、それが生産の面から見た価格ということになりますので、その点を考えれば、生産性を相償っている価格というものはまさに均衡価格であって、それを超えている価格は不当に高い価格であり、生産費を下回っている価格は低い価格だ、こういう見方もできるわけであります。  ですから、マーケットによって決まった価格生産費を償ってさらに余りあればそれは高いと言えるかもしれませんし、マーケットで決まった価格生産費を償わなければそれは低い、こういうことになるわけであります。もう一歩突っ込んでいけば、生産費はそもそも何だというと、これは非常に効率高くつくった場合には安くなるし、必ずしも効率が高くなければ高くなるわけですから、生産費で決まる価格自体もそれ自体で高いとか安いとかいう議論がもう一回できるわけであります。  そういう観点から考えますと、先生の御指摘になりました現在の我が国における米の生産者価格というのはまさに生産費所得補償方式という方式に基づいて計算されているわけでありますから、この方式自身についての議論も実はいろいろございますが、その方式を前提にする限り、生産者が必要とする資材費土地代、金利、そして生産農民所得というものの積み上げで出てきておりますので、それなり妥当性を持った価格である。ただ、ほかの考慮で考えればまた外国との比較とかいろいろの議論がございますが、生産費所得補償という観点から計算された米価であるというふうに考えればそれなり妥当性を持った価格だ、かように考えているわけであります。
  7. 穂積良行

    穂積委員 今大臣からお答えがありましたように、米については食糧管理法のもとで一般の自由市場物品と違う扱いがされているという基本的な枠組みがございます。その食管法のもとで実は需要供給関係で米の値段が決まるというのでなしに生産費所得補償方式で決められているということが問題とされつつあるわけですけれども、その食管法のもとにおける日本の米の一番の嘆きは、これも皆さん御承知のように、供給力転作などをしなければ年間千三百五十万トンというような供給力がある。それに対して需要消費の方がおよそ一千万トン強というような状況で、そこにギャップがあり、そのギャップをどうしていくのかということが大変な問題となっているわけであります。  六十二年度に向けては水田面積のおおよそ四分の一に相当する七十七万ヘクタールという転作面積が予定され、政策を進めていかなければならないというような状況にあるわけですが、それにしても、こうした需給関係にある米についてこれからどのような政策を展開するか、これが農政として今当面する最大の問題であり、先月末に農林水産省が提示した水田農業確立対策というものが自民党としても一応やむを得ないところとして了承されているという状況であります。こうした政策経済政策として今後どのように評価するか、経済企画庁がこれからの経済計画の上で日本農業、なかんずくその中での水田農業稲作というものについて農政に対しどのように物を言っていくか、どういう姿勢で対処するかということは、非常に大きな問題だと私は思っております。  そこで、少し根幹的な話に戻って議論したいのですが、米は日本国民の重要な食糧ということでこれまで扱われてきたし、今後もその扱いを今のような食管制のもとで続けていくのか、あるいは手を加えるのかということが議論されつつあるわけですけれども、それを論議する基本として、世界的な今後の人口伸びあるいはその人口伸びに伴う食糧需要がどうなっていくのかということについて確度の高い見通しを持って政策を立案していかなければならないと思うわけでございます。そういう意味で、まず、経済企画庁としてはこれからの長期的な世界また我が国人口見通しはどのように持っておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  8. 蜂巣賢一

    蜂巣説明員 世界人口見通しでございますが、一九八五年に国連が行いました人口推計によりますと、世界全体で人口は一九八五年現在では約四十八億四千万人でございますが、これが二〇〇〇年には六十一億二千万人、二〇二五年になりますと八十二億一千万人に増加するというふうに見込まれております。
  9. 穂積良行

    穂積委員 今のような見通しのもとで、世界の人類に対する食糧供給についての見通しはどんなことになるのでしょうか
  10. 蜂巣賢一

    蜂巣説明員 人口は今申し上げましたようにこれからふえていくということでございますが、世界食糧見通しにつきましていろいろと検討してみておるわけですが、現在の世界農産物需給、御案内のように技術進歩等によりまして生産が非常に拡大をしております。一方、需要の方は全体に伸び悩んでおりまして、過剰基調で推移しているというのが現状でございますが、長期的に見ますと、開発途上国ではこれから人口増加が予想される、それによりまして、長期的には需要がふえていくであろう。したがいまして、先進国への食糧依存が一層強まっていくというふうに見られます。  一方、米国、ECといいましたような先進輸出国になりますと、供給管理的な政策を志向しておりまして、これが食糧需給緩衝機能を低下させるというふうに見られます。現在のような過剰基調緩和基調がこれからも続くとは限らないというふうに見ております。
  11. 穂積良行

    穂積委員 ともかくこれからの見通しとしては、我が国人口に関しては、まあ二〇一〇年を過ぎたところあたりがピークになって、その後は人口が減少していくというふうな見通しになっていると承知しておりますけれども、それにしても発展途上国人口が増加する。爆発という言葉も使われているような状況GNPの低い発展途上国人口が増加し、先進諸国が現在あるいは将来とも食糧についての供給能力発展途上国に比べて高いと言われているわけですが、そうした中で、我が国国民を飢えさせないといいますか必要な食糧確保していく上で、どのような考えで対処すべきか。長期的な経済政策からして経済企画庁はどのようにお考えでしょうか。
  12. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 現在、経済企画庁は、私ども事務局になっておりますが、経済審議会の中で経済構造調整特別部会というものを設置していただきまして、ことしの四月に、総理の私的な研究会であった国際協調のための経済構造調整研究会の座長が前の日銀総裁前川さんですけれども、この前川さんに部会長をお願いいたしまして、いわゆる前川レポートなるものをより総合的に、体系的に、そして具体的に実行できるような、そういう検討を続けております。これは来年の春には答申をまとめていただきたい、こういうことになっておりますが、先般この中間答申を発表していただいたわけであります。  その中でも、これからの農業について、生産性を高めながら同時に国民生活、食生活向上を図っていくための具体的な政策についての基本的な考え方を述べていただいているわけでございますが、先生からも御指摘ございますように、まさにこの食糧というのは国民生活根本でございますし、これの安定供給確保というものはあらゆるものに優先するものである、こういうふうに考えておりますので、その国民食糧供給確保根本である日本農業日本から仮になくすようなことがあっては絶対に相ならない、こういう基本的な考え方は私ども共通して持っておるわけであります。  そういう観点に立ちながら、しかし、先ほども価格の問題もちょっと出ましたけれども日本における食料品価格が諸外国比較して長期的に相当な差がある、こういうようなことは消費者のサイドから見てまいりますとこれも問題とせざるを得ないことでございますので、そういう点から、日本において農業というものを維持すると同時に、しかしそれをどうしたらいわば生産構造的に合理化して適切な価格で安定して供給できるような体制をつくれるかということがこれからの政策根本になければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  13. 穂積良行

    穂積委員 今の長官の御答弁で、基本的な農業についての御認識、私も一々うなずけるものがあるわけでございます。  そこで、国内農業についてどのような政策をとるべきか、特に稲作、米の生産水田農業ということについて展望を論議しなければならないと思います。実は農林水産省質問すべき問題なのかもしれませんけれども、私自身二十七年半も農林水産省在職人間でございましたので、ある程度私の方からお話しした上で、企画庁の皆様に御意見を伺いたいと思います。  まず、日本の農用地のうち、百分の一勾配の平たんな農地といいますのは約七割でございます。急勾配農地については、極端なのは段々畑とか千枚田とかいうようなことがありますが、勾配のきついところは、一枚一枚の圃場を平たんな土地生産性の高い圃場に変えるということは非常に金もかかるというような状況でして、今後農業生産性をできるだけ向上させるという課題を果たしていく上でも、自然的条件でどうも難しいところがある、金もかかるというような状況でございます。  現在の水田の一戸当たり平均が約〇・六ヘクタール、アメリカが一経営体平均が百五十ヘクタールくらいと言われておりますから、水田農業についての規模格差はおよそ二百五十分の一。そうした経営規模からしますと、農業基盤整備投資を今後もさらに投下していくとしても、努力をしても規模格差というものはイーブンなところまで持っていくのはなかなか難しいという見通しがあります。  片や、タイ米日本の米より十分の一ぐらいじゃないかと言われている。そのタイの方は、規模格差というよりはGNP比較での問題、労賃格差がそうした米価格差に大体連動している、こういう状況ですから、こちらの方はその発展途上国経済発展によってそうしたタイ米などの価格日本の米の値段に近づいてくるのかというようなことがあると思うのですけれども、これもなかなか時間がかかる話であろうと思うのです。  そうした中で、単純に今比較して安い米が海外にあるから米についても自由化して買えばいいじゃないかというようなことにできない。できないということがまず基本的な農政立脚点にならなければならないと思うわけでございます。先ほど論議しました将来の人口、それから食糧供給といったことを考えた場合に、大臣もおっしゃったように、やはりできるだけの努力によって自給率は維持していかなければならない、向上させていかなければならないということで努力をしなければならないと思います。  ただし、その中で、生産性向上のために水田圃場を広げ得るところは広げる、それから今の〇・六ヘクタールといった一経営体当たり規模構造政策などを行いながら極力大きくしていくということは当然の方向ということになるわけですけれども、その構造政策が容易なことではない。といいますのは、一挙に自由化し、冷たい風を当てて強制的に農家の大半を追い出すというような政策はとり得ない。しかしながら、その中で徐々に規模を拡大するような条件をどうしつらえ、支え、助けていくかということがいろいろ工夫してもなかなかいかないということがあるわけです。それは、結局、日本経済構造で、私は先ほど物価に関連して産業連関ということを申し上げましたが、いろいろ各産業がかかわり合っているわけです。地域それぞれの他の製造業あるいは商業サービス業といったものがその地域農業とかかわり合っているわけですから、それを一挙に改変するというようなことが経済政策としてもとり得ない話ではないかと私は思っております。徐々に徐々に生産性を粘り強く高める努力をしていく中で経済全体の発展の中でそうした農業生産性向上構造改善ということがスムーズに行われるような政策をとっていかなければならない、こういうことではないかと思うのです。  そうしたことで、まずは一つお伺いしておきたいのは、今後農業生産性向上のかぎとなる農業従事者、農家というものを他の産業で暮らしを立てられるように引き受けるような地域それぞれの産業発展、他の雇用機会の確保といったことについてどのような自信があるかと言ったら語弊があるかもしれませんけれども、一体その辺はどんな見通しになるのでしょうか。その辺について一つはお伺いしたいということでございます。それがないと、農業生産性向上の裏腹の地域における人口の定住、暮らしを立てさせるといったことができなくて、これは大変な混乱を招くということですので、それは経済企画庁としてのその辺についての考え方をぜひお伺いしたいわけでございます。
  14. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先ほどお話しいたしました経済審議会経済構造調整特別部会中間答申にも明示されてございますが、経済構造調整問題の最大の課題は雇用調整をどうするかということでございまして、一つの産業からほかの産業に構造調整する場合には、当然従来の産業に従事しておられた方々が仕事を失われるわけでございますから新しい雇用機会をつくっていかなければならない、こういうことであります。  昨年来のいわゆる円高不況がいろいろ輸出製造部門を中心に深まってまいりまして、既に新聞等でも出ておりますように、石炭だとか鉄とか造船とか、そういうものが話題になっております。こういう当面の問題に対して総理が中心になりまして内閣に雇用対策推進本部というものをつくりまして、総理が本部長になられて我々がメンバーでできてございまして、当面の円高不況に対して雇用をいかにして張りつけるかというようなことを内閣挙げて取り組むことになってございますが、農業についても、生産性を上げる場合の一つのポイントは規模の拡大である、総体的に規模の拡大をすることは従来の農業従事者の方々に農業以外の産業で仕事についていただく、こういうことでございますから、当面の円高不況に対する雇用調整対策というものと並んで、先ほど申しました特別部会の総合的な経済構造調整、これも経済構造調整推進本部、同じく総理が本部長でできてございますが、この中で、全産業についてでございますが、農業においてもどういう体制をつくるかを今真剣に検討中でございます。特に農業の場合には、先生御指摘ございましたようにそれぞれの地域社会に密着をした方々でございますから、その地域社会に新たな雇用機会をつくるということについて真剣に取り組んでまいらなければならない、かように考えておる次第でございます。
  15. 穂積良行

    穂積委員 まさに今の大臣からのお話のように、今の日本でそれぞれの地域で暮らしを立てている人たちに、日本の国土の今後の利用の方向とも絡むわけですけれども、今後とも地方それぞれに定住させていくということがまず必要であり、そうした方向を政策的にも目指さなければならないと思うわけです。しかもそのときに、片や今の零細経営というものを大規模化していく、大規模化していく場合の反面の雇用機会創出その他ということに極力努力し、その見通しとの絡みにおいて農業のそうした構造政策とあるいは場合によっては価格政策というものを十分な気配りを持って進めていくことが経済政策農業政策として正しいのではないかと私は思っております。そうして、その農業というものが、今後とも、国民の最も大事な安全の問題としての食糧確保、それからそれぞれの地域で社会を維持し、国土の保全にも寄与し、そして均衡ある国土の発展という中で国民がどうやら満足できる社会を実現していくというようなことを目指していただきたいと思うわけでございます。  そのときに、冒頭に申し上げましたように、今の米の値段が不当に高いというようなことではない、そうした経済政策全体にかかわる現状としてのやむを得ざる価格水準であり、それを今後できるだけ生産性向上との見合いにおいて下げていくという努力はするけれども、それには時間もかかり政策的な金もかかるということを経済企画庁サイドも対外的にはっきり物を言っていただきたいと私は要望したいわけでございます。  そうしたことをきょうの結論としてお願いをし、御努力を期待して、私の質問を終わる次第でございます。
  16. 河上民雄

    河上委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ────◇─────     午後一時十六分開議
  17. 河上民雄

    河上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小杉隆君。
  18. 小杉隆

    ○小杉委員 それでは、円高差益をめぐるさまざまな問題について質問したいと思います。  現在、私たちの政治の中で最大の問題は、減税の問題あるいは税制改革でありますが、円高差益が適正に還元されれば、それは実質的な減税と同じ効果を示すわけであります。果たしてこの円高差益が適正に還元されているだろうか、こういうことを私は問題にしたいと思うわけであります。  この一年間で円高が約三〇%強進んだ、さらに原油の価格が四〇%の水準になったと言われておりますが、こうしたものが加工段階を経て国内価格に反映されるはずであります。そこで、この一年間、原油の値下がりあるいは円高によって物価にどの程度まで反映されてきたか、差益還元はどのぐらいあったかということと、反映の度合いをどのように評価しておられるか。それから、今後どのように差益還元が反映されていくのか、どのように差益還元を進めていくのか。まずそういった基本的な問題について伺いたいと思います。
  19. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 御指摘ございましたように、昨年来の円高現象、そして原油価格国際的な値下げによりまして、最近の物価は安定してまいったわけでございます。  具体的に数字を申し上げますと、六十一年十月の総合卸売物価の前年同月比でございますが、これは一一・三%の下落でございます。特にその中で輸入物価は三九・〇%と大幅な下落をしておりますし、国内の卸売物価は六・九%の下落でございます。消費者物価でございますが、これも安定傾向を示してございまして、同じく前年同月比で、九月を見ますと〇・五%の上昇でございますが、十月は〇・三%の下落で、これは前年同月比として二十数年ぶりの下落、大変な下落の現象であると考えております。なお、東京都区部では十一月が出ておりますが、これは〇・三%の上昇でございます。特に、同じ消費者物価でございますが、輸入に大きく依存する品目につきましては昨年に比べても下落をしておりまして、この輸入品の小売価格について政府が十月末に発表いたしました第三次輸入消費価格動向等調査によりますと、昨年九月ごろに比べて全体としてほとんどの品目で円高効果が相当程度かつ広範に浸透していることになっております。  既に御案内のように、六月に電気料金、ガス料金を約一割前後下げたわけでございますが、御家庭に対する還元として月千五百円程度、年間にいたしますと一万六千円ぐらいになるんじゃないかと考えておりますし、さらに電力業界といろいろ話は進めておりまして、来年一月にはさらに円高と原油価格値下げの分を還元していただく方向で話し合いが進んでいると思います。  こうした形で一般的に物価が安定をしていると思いますけれども、これからさらに円高メリットの還元を進めていきたいと思うわけでありますが、輸入素材を原料としている例えばパンとかめんとかいろんな消費物資がございますけれども、今経済企画庁で分析をさせておりますけれども、全体のコストに占める輸入資材の割合が少ないものでございますので、仮にこれが円高で安くなっても、全体の末端の小売り価格に影響する場合にはたかだか数円とかそういうことになる場合が多いわけでございますが、結局円高差益の還元というのは、電気料金とかいうものも大事でありますけれども、きめの細かい、わずかでもいいから値下げが実行できるような状況をつくっていく必要がある。そのためには、流通段階の合理化から、さらに競争条件の整備をいろんな形で進めていくということもあわせてして、何とか円高差益というものが広く末端の消費者まで還元できるように、今後関係各省に対する指導を続けてまいりたいと考えております。
  20. 小杉隆

    ○小杉委員 長官の、きめ細かに、たとえわずかな還元であってもできるだけやるべきだという考え方には、私も基本的に賛成であります。  けさの新聞によりますと、円高差益は海外に流出をしている、輸出価格が低下し、必ずしも還元できないという、これは日銀が日本と西ドイツとの比較調査論文を発表したようであります。それで、本来ならば輸入価格が下がったわけですから差益が出るわけですけれども国際競争力を維持するために輸出価格が上げられないんで、企業がその分だけ苦しくて、国内にメリットが還元できないという産業構造に今なっているわけですね。したがって、そういった企業においてはなかなか差益還元ができないという部分があるわけですけれども、一方において差益還元はやはりできるだけきめ細かに各分野で行うべきだというような側面と、先ほど言ったような企業の実態から考えて、必ずしも差益還元ができない、したくてもできないというような実態があるわけですけれども、これらの点についてはどのようにお考えになりますか。
  21. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 輸出価格円高分の転嫁が十分にできない。現実に我々が調べておりましても、円高が四割になっても、うち転嫁できるのが平均で大体二割ぐらいじゃないかということで、半分は結局円手取りの減になっておるわけでございます。現実に、最近の輸出統計を調べてみましても、数量はそんなに変わらないでおって、しかしドルベースの売り上げは二割弱ふえていて、円ベースの受け取りが、本来四割上がればもとに戻るわけだけれども、上げられないものだから二割減、こうなっていますから、その落ち込み分を、おっしゃるように原材料輸入は安くなっていますから、こっちの赤字分を円高で浮いた分で企業全体として埋めるということはあると思いますので、それは考え方によれば円高を海外に転嫁したという見方も十分あると思いますが、問題は、そうした個々の企業の円高によるメリット、デメリットの相殺ということはわかりますけれども、最初に申しましたように、基本的にはお互いの競争条件を進めることによって、そうはいっても原材料が安く入った分は消費者に還元できるような市場条件というものを進めていくことが必要ではないかと考える次第であります。
  22. 小杉隆

    ○小杉委員 この点についてはまた後ほど触れたいと思いますが、そこで、先ほどの答弁にもありましたように、電気、ガス料金とか輸入牛肉の値下げとかその他、四月、五月、九月と三次にわたって総合経済対策を行ってきているわけですけれども、今焦点となっておりますのが電力とガス料金などエネルギーの料金の再値下げ、そしてもう一つは小麦の政府売り渡し価格の引き下げということだと思いますが、こうした問題について質問をしたいと思います。  そこで、資源エネルギー庁、見えていますか。――それでは、まず、先ほどの長官の答弁にもありましたように、電気、ガス料金は六月から一兆円強の規模で還元を行っていますけれども、その後の諸元の変化、つまりあの六月時点では円レートの見積もりが大体一ドル百七十八円ですか、それから原油価格が一バレル当たり十九ドルと見込んで試算されたようですけれども、その後こうしたものがさらに変化をして差益が生じている。今回、一月からやろうとしている差益の還元については具体的にどのような方法でやるのか、少し具体的にお答えいただきたいと思うのです。
  23. 清川佑二

    ○清川説明員 お答え申し上げます。  現在、料金の引き下げ措置が行われております。これは、先ほど御指摘がありましたように、春先のことでございましたが、当時の諸元に基づきまして、為替レートを百七十八円、原油価格を十九ドル、LNG価格を二十三ドルで計算いたしまして、これに基づきまして約一兆円に及ぶ差益の還元といいますか料金の引き下げ措置を電気、ガス業界でとっております。  それで、今回、先生の御指摘のとおり、原油価格の低下、円高などのいろいろな情勢の変化がございまして、来年一月以降何とかして料金を引き下げていきたいというふうに考えまして、電気事業に関しましては電気事業審議会の料金制度部会の意見をいただきました。これは十二月四日でございます。それから、ガス料金につきましては総合エネルギー調査会の都市熱エネルギー部会の意見を十二月五日にいただきまして、その上で今その方向性に沿って具体的内容について早急に検討を進めるということで動いております。  したがいまして、実施の時期につきまして概要を申し上げますと、来年の一月から十二月までの間に出ると想定される燃料価格の低下を還元するという仕組みで考えております。そして、この引き下げの方向でございますが、答申に従いまして、電気料金、ガス料金の引き下げを中心に実施する。一部もし一律の引き下げがあってひずみが出ればそこは是正しながらいく。それから、制度的な面で、この六月に実施しております特別料金制度の適用部分の減少、これは割高な部分のものでございますが、それの減少。それから、家庭用の三段階料金という割高部分がございますが、これの減少という措置は継続をし、もし余裕があればこれの是正を検討していくべきであるという答申に従って考えているところでございます。  なお、そこで一体どれだけの差益を想定するかということが大きな問題でございますが、現在、例えばOPECにつきましては価格重視の動向など打ち出しておりましていろいろ動きが見られるというふうに言われるわけでございますが、今後の為替レート、原油価格の動向、ぎりぎりの段階まで見きわめて諸元を設定し、そこで生じる差益を算定していくということで考えております。  なお、大ざっぱに言いますと、差益の計算といたしまして、現時点のところでいえば、百七十八円以降のことをいえば、為替レートで一円低下すれば、一年間それが継続すれば約九十億円差益が生じるであろう、原油価格、LNG価格両方合わせまして、一ドル低下するならば、それが一年間低下しているのであれば七百億円程度の差益が生じるであろうという、やや概算的なメジャーを持っておりますが、今申し上げましたように来年一月の諸元をぎりぎりのところで算定した上でというふうに考えております。  なお、全般的に申し上げまして、今回の措置が、国民のニーズ、各産業の置かれた厳しい状況、景気の低迷、こういったものに対応するということで考えておりますので、極力還元を多くするということで考えている状態でございます。
  24. 小杉隆

    ○小杉委員 どのぐらいの諸元になるのかというのが明確でないのですけれども、今OPECでいろいろ見通しを協議していると思うのですが、円高と原油価格の先行きについて、もう少し具体的に、どんな見通しになっているのか、OPECの動向も含めてお答えいただきたいと思うのです。そして、そういう諸元が仮にこういうふうになったらこのぐらいの差益が生じて、家庭にはどのぐらい還元できるというようなところまでお答えいただければありがたいのですが。
  25. 黒田直樹

    ○黒田説明員 原油価格の短期的な動向でございますけれども、ただいま先生お話ございましたように、本日からジュネーブでOPECの総会が開かれております。これは非常に大きな判断要素になろうかと思います。それから、短期的な原油価格の動向を見きわめるに当たりましては、今のOPECの総会の動向あるいはその結果に対する非OPEC諸国によります協調というような問題もございますし、それからちょうどこれから需要期を迎えます石油の需要動向、あるいはこれまでに世界的に大幅に積み増しされた在庫の状況、これがどういうふうに変わっていくのか、あるいは政治的にイラン・イラク戦争の展開等、なかなか不明確なあるいは不透明な要因が多いわけでございます。  今御指摘のございましたOPECにつきましては、本日から総会が開かれるわけでございますが、前回の十月のOPEC以降、価格重視という傾向が出てきております。十一月の半ばに行われましたOPECの価格委員会におきまして、バレル当たり十八ドルという固定価格制に復帰すべきというような勧告を今総会に持っていくということになっております。ただ、その実現の可能性につきましては、十八ドルの固定価格というものを支持するOPEC諸国が多いと思いますけれども、それが実効あり得るかどうかにつきましては、現在の需給状況あるいは在庫の状況等を考えますと、相当規模の減産というものがあわせて合意されないと実態的にはなかなか難しいのじゃないかというのが多数説の見方かと思います。その辺、御承知のように、夏の総会あるいは十月の総会におきましても、生産上限をどういうふうにするのか、そしてそれを国別にどういうふうに配分するのかというところでOPEC内部の調整が非常に難航している状況でございますので、現段階でこれを見通すことはなかなか難しゅうございますけれども、その辺の生産上限の決め方あるいは国別の生産割り当ての状況を十分注視していく必要があろうかと考えております。
  26. 小杉隆

    ○小杉委員 時間の制約があるのでなるべく簡潔に答えてもらいたいのですが、新聞等によりますと、今度一月からやる第二次の引き下げによると、大体五千億ぐらいさらに差益が出るだろう、そうすると今までの千五百円が二千円ぐらいになるだろう、こう言われていますけれども、それは大体どんな諸元を想定してのことなんでしょうか。  それから、今石油と石炭の価格バランスから見ると大体一バレル当たり十四ドルが限界じゃないかという説があるんですよ。ですから、もう一月から実施しようと言っているのに、今の段階でまだ不確定要素が多いということでは大変不安なのです。その辺もう少し的確にお答えいただければと思うのです。
  27. 清川佑二

    ○清川説明員 お答え申し上げます。  本日の新聞、それから過去にも随分新聞に出ているのでございますが、実は私どもの方から大体こうであるということを申し上げたことは一度もございませんで、新聞社の皆さん方が電卓を片手にいろいろ計算をしておられるというふうに私どもも目の前で見ております。それで、五千億円というのをどういう諸元で出したかということは、実は私どももよくわからない状態でございます。  なお、諸元の設定につきましては、例えば為替レートにつきましては、八月以降百五十五円、九月百五十六円、十月百五十七円、十一月になりまして百六十四円というようにじりじりと円安になっているというような状態はございます。油につきましては、先ほどの答弁にありましたように、なかなか変動が難しい状態でございます。LNGにつきましては、なかなか値下がりをしなかったものでございますが、通関統計で、この十一月になりまして相当に下がってきております。数字で申し上げますと、五月、六月ごろには二十三ドル規模でございましたが、九月、十月ぐらいには十八ドル台、十一月には十七ドル九十二セント、これは油に換算しての話でございますが、少しずつ下がってきておりますけれども、こういったところを踏まえて検討していくということで考えております。  なお、私どももいろいろなことを想定しながら考えておりますが、それはやはりぎりぎりまで情勢を見ながら最後に決めなければいけないということでございまして、まことに恐縮でございますが、現時点でそれに従いました家庭への還元というのはまだなかなか計算できない状態でございます。
  28. 小杉隆

    ○小杉委員 今度の第二次の値下げの考え方は、六十二年一月から十二月の差益を算定して対応するということですけれども、現実に、この六月にやった分でも、六十一年度じゅうにさらに差益がかなり出るわけですね。先日、中間決算でも電力会社、ガス会社が空前の利益を出しているわけでして、あの六月の時点と今日を比較しましても、一バレル当たりが大体十九ドルから十四ドルくらいになっていますし、それから円レートも百七十八円から百六十円前後ということで、ことしさらに出た差益というものは今度の還元の中に入らないわけで、これはみんな留保されるわけでしょう。それで還元率とかそういう点も、前回は三〇%くらい東電とか何か見たようですけれども、その還元率その他、次の二次の場合はどう考えるのか。それから、ことし六月時点からさらに積み増しされた差益というのは全部留保されることになるのだろうか。こういう点、ちょっと伺いたいのですが。
  29. 清川佑二

    ○清川説明員 お答え申し上げます。  まず今年、六十一年の十二月までに出てくる差益で料金で還元されてしまっていないものにつきましては、これは決算後区分経理いたしまして、原価変動調整積立金として積み立てまして、今後こういったものの原材料の値上がりによる料金の上昇を抑えることに使うということで考えております。  なお、還元率でございますが、還元率につきましては、原油価格の変動に伴うリスクに備えるための必要性はございます。しかしながら、今回の電気事業審議会の答申、それからガスの答申等もございますが、やはり還元率は過去にこういう積み立てもあることも考えて圧縮して、還元の幅を多くするという方向で私ども答申に従いまして検討を続けている状態でございます。
  30. 小杉隆

    ○小杉委員 資源エネルギー庁の立場としては非常に慎重にやらざるを得ないという立場はよく理解できますが、やはり今のこういう円高不況ということを考えますと、電気料金がほとんどコストの半分以上を占めるような中小企業もたくさんあるわけなので、できる限り差益還元をするという姿勢でひとつやっていただきたいと思います。  そこで、次に小麦の問題に移りますが、食糧庁見えていますね。――最近ふすまが急落して業者が非常に困っているというようなこともありますし、最近韓国や台湾から乾めんとかマカロニとかスパゲッティとか製品でどんどん入ってくるというような非常に不都合な問題が起こっております。そこで小麦の値下げというのが非常に私は焦眉の急だと思うのですけれども、この小麦の価格についてはどういう対応をしょうとされているのか、現時点での考え方をひとつ聞かしてください。
  31. 日出英輔

    ○日出説明員 小麦の政府売り渡し価格でございますが、これは例年十二月に米価審議会を開きましてそこでいろいろ検討していただいた上で、据え置きにするにしましても上げ下げするにしましても、一年一回ずつ見直して決めるというルールになっております。考え方は例えば国内麦のコスト価格、それから輸入麦のコスト価格、この中には当然円高等も入ってまいります。そういった内外麦のコスト価格とか消費者米価との関係とか、そういったことで総合的に勘案をして決めるということになっておるわけでございます。  そこで、今年も十二月になりましたので、私ども今予算編成とも関係いたしまして米価審議会に案をかけるべく関係省庁と協議をしているわけでございます。
  32. 小杉隆

    ○小杉委員 食管会計を見ますと、例えば六十一年度は国内麦で千二百十億の赤字、それが外麦で千三百五十二億の黒字、これで辛うじて採算をとっているという実態になっているわけです。実際に、私は東京ですけれども、東京に住んでいる者としては、特に円高のメリットというのがどうも食品の場合、先ほど食管会計の話も米の問題がありましたけれども、牛肉にしろ小麦にしろ、必ずしも差益還元が十分じゃないんじゃないかという実感を持つわけでして、この点は恐らく経済企画庁物価局も指摘しているところだと思いますけれども、現在の世界的な需給関係を見ますと、今小麦は大変な供給過剰になっているんですね。アメリカなんかは、七〇年代は二億トンだったのが、八〇年代に入ってからは三億トン、つまり五〇%も超えている。それからヨーロッパも、七五年では三千八百万トン、これが八五年には六千六百万トンで、七〇%も増産になるだろう、こういう見通しです。それから、従来自給ができなくて外国から輸入していた東南アジアとか中国とかインドも、いろいろな技術改良によって今や自給が達成されている。先ほど今後の世界人口見通しがありましたけれども、恐らく二十一世紀に入るくらいまではこの麦の需給関係というのは私は相当楽観的になっていいと思うんですね。そういう点から考えて、私は小麦というのはもう少し輸入をふやしてもいいのじゃないかと思いますし、また値段の点も大いに考えるべきだと思うわけです。  米価審議会が今月開かれるわけですね。基本的に、今いろいろ取りざたされておりますのは、円高差益がことしだけで二百六十億円ですか、来年度が三百五十億円ということですから、できるだけ下げるという方向でひとつ検討していただきたいということを申し上げて、時間が参りましたので残念ながら残りの質問はまた次の機会にやらせていただくということで、もし何か御答弁があれば聞かしていただきたいです。――じゃ、いいです。終わります。
  33. 河上民雄

    河上委員長 次に、小野信一君。
  34. 小野信一

    ○小野委員 最初に大臣の所感をお伺いします。  戦後の我が国のリーダー産業の変遷を見ますと、御存じのように敗戦直後三白景気と言われたように、紡績、肥料、砂糖がリーダーでございました。ところが、三十年代、四十年代の高度成長に入りますと、鉄鋼、造船、化学繊維ですか、これが経済界のリーダーでございました。ところが、いつの間にか今度は家電、自動車、電力、電子というような産業リーダーに変わっております。まことに栄枯盛衰というんですか、それらの産業界のリーダーを見ましてもドラマチックだなという感じがいたします。国内産業だけではなくて国際的に見ましても、戦後アメリカの鉄鋼生産量、スケールからいって、科学技術からいって、果たして日本の鉄鋼業界がアメリカにいつの日追いつくのだろうか、永久にアメリカの鉄鋼業界が世界のリーダーになるのではないだろうか、こう思っていたところが、日本の鉄鋼業界がそれを凌駕してしまいました。アメリカを凌駕した日本の鉄鋼業界ですから、当然しばらくの間は世界のリーダーとしての役割を果たすのだろう、こう考えておりましたら、NICSの追い上げ、急激な円高によって四苦八苦、瀕死の重傷になっているというのが現状だと思います。  私は、こういうリーダー産業の変遷を見まして、政治というものがこういうことに対してどういう役目を果たしていかなければならないんだろうか、政治家というものはこういうリーダー産業の変造に対して何を行っていかなければならないんだろうか、気をつけていかなければならないんだろうか、こういう感じをこのごろ持つわけでございます。したがって、意見とかそういうことじゃなくて、長い政治経験を持つ大臣の所感をまずお伺いいたします。
  35. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生の御指摘がございましたが、戦後の日本経済変動というか、成長過程の中では、いろいろな産業が、あるときは主役になり、あるときは主役から外れる、こういうことがあったと思うわけでありますが、製鉄業というのは、よく鉄は産業の米だと言われますように、近代産業経済の中核であり、そして現在もある意味で中核であり続けていると私は思うわけであります。まさに八幡に官営八幡製鉄所ができて溶鉱炉に火がともったというのは、ある意味では日本産業社会の最初のともしび、たいまつの火であったと言っても言い過ぎではないわけであります。ただ、そうした鉄を中心とした産業構造というものが、その骨格としての鉄はあっても、その上に最近の電気通信機やコンピューター産業のようなそうした付加価値の高い産業が乗ってまいったがために産業構造全体の中における製鉄業の占める地位が相対的に低くなってきたことは私はやむを得ないことであると思います。また、資材の節約や合理化、一方において省力化等において絶対量としても従来のようには鉄の製品を必要としないような産業構造に転換しつつあることは否めないと思うわけであります。  しかし、私は近藤鉄雄ですから、名前に鉄があるから申し上げるわけではございませんが、鋼材といいますか鉄の資材を離れて近代産業はないと言っても決して言い過ぎではない、やはり骨格は鉄の製品であると思いますので、日本の製鉄業は円高等で非常に影響を受けておりますが、そういう中であってもどういうふうにして日本における製鉄業をいい形で維持をしていくかということがこれからの日本産業政策の依然として一つの根幹である、かように私は考えておる次第であります。
  36. 小野信一

    ○小野委員 私は、政治の最終目的といいますか究極の目的は、国を平和にして国民生活を豊かにしてこれを保障することだと考えております。そのことを信じて疑いません。この国民生活の安定の最大の障害物は、平和日本にとっては雇用不安であり失業だと私は考えております。戦前であれば戦争遂行のために国民生活のすべてを犠牲にしてその目的を達成することに意味がありました。戦争という例は悪いですけれども、今日本国民にとって最大の敵は雇用不安ではないだろうか。リーダー産業が変遷していく過程を第三者として見ますとまことにドラマチックであり、その劇的なものには感動いたしますけれども、その企業を主体にして発展した地域、企業城下町にとっては最大の不幸であり困難でございます。昭和二十九年に労働統計が整備されて以来、今の失業率二・八%、百七十万人の失業者というのは最悪の事態であろうと思います。  私は、今日本の政治がこの雇用不安に対して、雇用を心配する国民に対して最大の責務を果たさなければならない、ある意味では財政百四十三兆円の棚上げをしてもこの問題に取り組む時期ではないのだろうか、そういう感じがいたしますが、大臣の所見をお伺いいたします。
  37. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 国際的な経済調整というものが現在日本における大きな政策課題であることは先生も御存じと思いますし、そのためにはやはり日本としては従来の輸出依存型経済から内需依存型経済に構造を転換しなければならない。こういう基本的な認識のもとに、総理の経済的な諮問機関である経済審議会経済構造調整特別部会を九月に設置していただきまして、いわゆる前川レポートの起草者である前川日銀総裁部会長として、経済構造調整に関するビジョンづくりを現在鋭意お願いしているわけでございます。先般中間答申を出していただきまして、来年の春には最終答申をお願いするということになっております。  それと並行いたしまして、八月に内閣に経済構造調整推進本部というのをつくりまして、これは総理が本部長で、私、経企庁長官に自民党政調会長が副本部長でそうしたビジョンづくりに対応いたしまして具体的な実動体制を今つくっているわけでございますが、実は総理から直接強い御指示がございまして、経済構造調整、産業調整の最大の問題は雇用調整だ、しかし、長期的な日本産業構造に伴う雇用調整の問題と並行して、当面、いわゆる昨年来の円高によって日本産業が大きな打撃を受け、そしてまさに雇用調整が焦眉の急になっている企業があり地域があるのではないか、しかも、そうした状況が、ことしはともかく何か企業がいろいろな形で抱いてこられたけれども、年を越えるといよいよ来年から本格的に雇用調整が始まってくる、これに的確に対応しなければならないということで、実は先般内閣に雇用対策推進本部を設置いたしました。これも総理みずから本部長で、通産大臣、労働大臣、経企庁長官、官房長官、政調会長が副本部長で、当面、全国的な雇用状況について雇用マップなるものをつくりまして、それぞれ地域地域の雇用状況を見ながら的確に対応する。一般的な雇用対策、雇用問題じゃなしに、今度は、特に当面は円高に伴う具体的な産業がわかっているわけですね。したがって、大体いつごろからどれぐらいの人の雇用調整が必要だということがわかるから、失業が発生した段階で職安を通じて対応するのではなしに、事前にこれを察知して対策をとれるようなことをしなければだめだという強い御指示で今政府においても早急に体制を整備しつつある、こういうことでございます。
  38. 小野信一

    ○小野委員 雇用不安、失業が発生した理由はいろいろ考えられますけれども、急激に出てまいった理由は円高であることは論をまたないわけです。御存じのように、この前もお話し申し上げましたけれども円高メリット論、為替相場の変化を通して経常収支の黒字幅を縮小する、交易条件の改善による実質購買力増加で景気を回復させる、四兆ないし五兆円の減税に匹敵するような購買力がこの秋には出るだろう、こういう見通しのもとに雇用対策あるいは産業政策がおくれたのではないだろうか、こう思います。ところが、最初の政府の予想と反しまして、構造調整を通じて経済成長が低下をいたしました。経常収支の黒字幅も少なくともこの一年間では少なくならなかった。こういう実態を見ますと、現在までに円高基調というのは日本経済にどういう影響を及ぼしたと結論づけておるのか、これからどういう形で円高日本経済にどういう影響を及ぼしていくのか、そういう予想をお聞かせ願いたいと思います。
  39. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 私ども経企庁は、円高によるメリットをいろいろ前提は置いて計算いたしておりますけれども、一年間で円高によって大体六兆円、さらに原油価格の引き下げによって四兆円強、合計十兆円強の円高メリットがある、こういうふうに考えているわけでございますが、片方で円高によるデメリットを見てまいりますと、昨今の貿易統計を見ましても、輸出は多少減っておりますけれども、むしろ円ベースの受け取りが前年同期対比二割も減っているわけでございます。これも計算の仕方がありますが、こうした円高デメリットはメリット効果十兆に対して七兆円ある、こういう計算になっているわけであります。  ただ、この片方マイナス十兆円、片方はマイナス七兆円ですから、七兆円輸出代金の受け取りが減っても支払いが十兆円減っているのだから三兆円プラスだ、これが単純に言えば円高メリットが景気を推し進めるということになる。三兆円というのはGNPの一%ですから、これが全部支出に回って景気を活性化すれば上げるのだけれども、私よく申し上げるのですけれども、デメリットは非常にアクティブな強力な効果ですね。七兆円。プラスの十兆円は、私はよくアイドルバランスという言葉を使っているのですが、円が浮いちゃって遊んでいるのですね。これは活性化してないから、これが実際の経済に活力を与えプラスの効果を持つにはいろいろな時間もかかればきっかけが要る。片方でデフレ効果を新聞なんかどんどん書きたてると、せっかく余裕があった人たちもちょっと様子を見ようということになって効果がおくれてくる、これがデメリットが進んでメリットが出てこない、こういうことだと思うわけであります。  私は、今度の円高現象の最大の問題は、先生御指摘がございました鉄鋼業とかそれからかつての造船、そして最近における自動車、さらに電気機械、そして電気電子機器、コンピューター、通信機器、こういったいわば日本の最近の経済を主導的に進めてきた自動車であり電気機器であり工作機械であり造船、鉄鋼という、まさに日本の現代産業構造の中核であった人たち、それが即輸出産業である、そして輸出によってまさに輸出主導型で日本経済をダイナミックに発展させてきたそのいわばまさに原動力を担った人たちが、先端の人たちが円高で猛烈に影響を受けているということが非常に深刻だというふうに私は考えているわけでございます。しかし、こういった産業が輸出じゃなしに国内的な私たちの生活向上を通じて経済成長ができるということに切りかえていく政策がまさに内需主導型の経済発展政策である、かように考えておるわけであります。
  40. 小野信一

    ○小野委員 昨年の九月二十二日のニューヨークG5、この円高・ドル安に対する合意がなされる、もちろん経済企画庁もその参加、相談には乗っておると思うのですけれども、当然、十兆円の円高メリット、七兆円の円高デメリット、こういうものは今大臣が言うように一緒に出てくるのではなくて、タイムラグを持って、時間差を持って出てくるのだ、こういうことが予想されているとすれば、そのタイムラグ、時間差の雇用対策なり産業政策というものは当然その時点から準備されなければならないのではなかったのだろうか。これは今だから言えるのですか、それとも、当時既に予想されたけれども円高メリット論の方が先になりまして、大丈夫だろうという予想で現在のような事態になったとお考えになりますか。
  41. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 いわゆる円高現象がもたらす効果というのは、先ほど私が申し上げましたが、両面あって、しかし多少のタイムラグがあるなという認識はみんな持っておったと思うわけでございます。関係者持っておったと思うわけでありますけれども、率直に言って昨年の九月のプラザ合意においてどれくらいの円レートを考えておったかというと、これはなかなか微妙な問題でございまして、当時私は経済閣僚の末席を汚しておりませんでしたからよくわかりませんが、当時の関係者の話をいろいろ直接聞いてみますと、少なくとも現在の水準は予測していなかったようですね。二百四十円がいいと思わなかったわけですが、ただこれは調整しよう、そういうことで調整に入ったもののそのスピードが非常に急激であって、ことしの一月においてもまだ二百円台ですから、例の経済見通しも二百四円の円レートで計算してこうだとやったわけですから、それが四月にさらに一段と円高に拍車がかかった。ですからこの円高デメリットというのは円高が進めば進むほど出てくるわけです。そしてそのことによってさっき言いました円の収入もどんどん減ってきますから、過去の水準から輸出代金が減れば減るほど企業も大変マイナスであれば経済的にもマイナスの乗数効果を持ってくるわけです。けれども、一たん円が今度は安定いたしますと、百六十円で安定すると、ここから先はそういう円代金の収入減、前期から減によるマイナスの乗数効果は働かない。ただ、事実水準が低いから企業の採算は依然としてよくありませんけれども経済GNPをマイナスに引っ張る乗数効果は円高がとまればとまるわけです。片方のメリット効果は、蓄積ですから、まさに私アイドルバランスと名づけたけれども、アイドルバランスもどんどんたまってくるわけですから、いろいろな形で還元してくればいずれこれは一定限度オーバーフローしてくるし、そうしたアイドルバランスを活性化する、投資ないし消費に向けるためには、私は積極的に、円高還元政策と並行して、よく言われておりますけれども経済成長に対して、少なくとも高度成長はともかくとして中程度の経済成長をいろいろな形で施策を通じて実現するのだという政府の基本的な方針が確立し、それに対して民間の皆さんが対応していただければ、円高メリットのアイドルバランス分はあるのですから、いずれ具体的なアクティブな経済循環に流れてくるだろう、私はかように確信をしている次第であります。
  42. 小野信一

    ○小野委員 経済企画庁で悲観的な見通しを聞いたら国民は大変ですから、楽観的な将来性を聞くことについてあるいは答弁していただくことについてはありがたいことなんですけれども、一般経済人あるいは一般国民にとりましては、果たして円高メリットがこれから出てきて自分たちの暮らしがよくなるのだろうか、こういう生活実感を持っているような気がして私はなりません。大臣の話をお聞きいたしましても、やはりこのごろ出てまいりました景気の二面性のいい面の強調が非常に強く出ているなという感じがいたします。したがって、不景気の原因として、足を引っ張っている原因として、在庫投資の大幅な減少、設備投資や輸出の停滞、その反面住宅投資と個人消費が堅調である、こういう二つの面から、これ以上の景気停滞はないだろう、だんだんよくなっていくのだろう、こういう見方をしておりますけれども、しかしこの不景気の一面、悪い方の一面がいい方の一面の足を引っ張らないという保証はないのじゃないだろうか。もしこの二つの最初の停滞要因がいい面の二つの足を引っ張り始めたら理論的にも下がっていく傾向にならざるを得ないのじゃないだろうか。そこでこの景気の二面性に対する経企庁の物の考え方を、これはプラスの方がどんどん伸びていってマイナスの方を絶対に抑えていくんだという確信ある答弁を私としてはお願いしたいのですけれども、その判断、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  43. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 まさに先生御指摘のように二面性は非常に大きくなってきていると思いますし、先ほどちょっと申しましたように、これまでは何とか経営内部でやりくりをして雇用者を吐き出さないできた企業においても、また多少株を売るとか土地を売るような形の財テクで賃金を払ってきた企業も、ここまでまいりますと、いよいよ経営体制を立て直さなければならない。そのためには、まさに雇用調整をしなければならない。そういうことがこの秋に入りまして、殊に最近いろいろ新聞等で出てきているわけでございますから、さっき申しましたように、雇用対策というものを早急にとるということが総理の御指示で、私ども関係各省協力をして体制づくりをしているわけでございます。ですから、この面の深刻な面は十分に私ども理解しているわけでございますが、メリット分を強調しているのはどうも経企庁長官ぐらいであって、新聞はデメリットの方ばかりお書きになるものですから、どうも国民皆さんの全体の雰囲気が、大変な年だな、こういうふうにお思いになると思うのであります。  ただ、私たち統計を見ましても、消費は依然として堅調でございますし、それから百貨店の売り上げも毎年並み、それ以上に伸びが進んでいる。それから、円高メリットというか、多少メリットもあってでしょう、建築資材が安くなったとか、金利が安くなったということで、住宅投資などは昨年から最近百四十万を超える年率建設戸数でありますので、これも大変な、数十%アップですので、こうしたプラス面もこれから同様に進んでいく。  ですから、デメリットとメリットと勘案してどっちが表に出るか、こういうことでありますけれども、実は、先般発表いたしました七―九月期のQEの数字を見ましても、六十一年の上半期は、消費はむしろ伸びている。住宅投資は思い切って伸びている。そして政府の支出はふえている。これは前倒しでふえていまして、ただ民間設備投資がダウンしておりますが、内需全体では近年のどの水準よりもむしろふえているんですね。ただ、それが、輸出が下がり、輸入が大幅にふえたがために、GNPとしては三%を割るような数字になっていますけれども、内需だけを考えればむしろかつてないくらいにいい状況である、こういうことを私たちは考えて、できればさらに内需を拡大して最終的にGNPをしかるべき中成長に何とか持っていきたい、こういうことを考えている次第でございます。
  44. 小野信一

    ○小野委員 円高メリットが日本経済にいい影響を及ぼして景気が徐々ではあっても上向きになるか、反対に下降線をたどるかどうかという問題は、円高がこれから長期化するのか、あるいは円安に幾らかでも向いて少なくとも経済の基礎条件にきちっと合ったようなものになるのかということも、また非常に大きな要素になるのではないだろうか。したがって、円の適正レートと現行レートとの乖離幅の問題この見通し判断もまた大きな要素になるだろうと私は思います。それから、円高が長期化するかどうかという問題。三つ目として、円高によって海外投資が倍増倍増でいかれるということになりますと、産業の空洞化が起こって、これまた日本の雇用あるいは経済全体に対する影響が大変なことになる。もしそうなった場合に、海外直接投資を加速させないような、産業の空洞化を少なくともできるだけ抑えていくというような政策を立てることがまた必要だろう。私は、この四つの条件が短期的にも長期的にもこれからの日本経済を左右する条件ではないだろうか、そう考えるわけでございます。  そこで、現在の円レートが果たして日本経済の基礎条件を適切に反映したものなのかどうかという現行レートと適正レートとの乖離の問題についてお尋ねいたします。  ことしの春ですけれども、三和総合研究所は一レートを百七十円、第一勧業銀行は百七十五円、大和が百七十円、経企庁がどこかに委託して調査させたのでは二百七円、東京商工会議調査では百九十円、中小企業庁の調査では二百円、協和銀行百九十三円、各機関が輸出産業に当たって希望レートを聞いてみましたら、こういう調査結果が出ておりました。もちろん、経済人は安目に見るわけですから、実質よりは安いんだろうとは思いますけれども、もしこの数字が適正レートであるとするならば平均して百七十五円になります。現在、百六十二、三円です。だとしますと、現行レートは十五円内外高いということになってしまいます。したがって、日米両大蔵大臣の合意によって百五十円台のものが百六十円にまで安くはなりましたけれども、あのときに、多分、適正レートに近づいたとか適正レートであるとか、こういう発言を宮澤大蔵大臣がやったように記憶をいたしておりますが、この適正レートと現行レートの乖離について経済企画庁はどういうお感じをお持ちになっておりますか。
  45. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 為替レートがどの水準が適正であるかというのはなかなか難しい問題でございまして、まさに各調査機関の調査結果も多少の幅を持っている。ですから、比較の対象にどういう物資を使うかによって計算の結果は全然違ってまいりますし、ある人が言うには、日本はともかく住宅費がべらぼうに高い、殊に東京都のマンションとか住宅。ですから、住宅費指数でいわば購買力平価を比較すれば、計算すれば、それはもう一ドル二百円なんてものじゃない、もっとはね上がってしまうよなどということを言う人もおりますから、それぞれなかなか難しい問題でございますが、私どもは、G5以前の二百四十円レートというのは、少なくとも経常勘定のバランスを維持するんじゃなしに、やはり当時のアメリカの高金利につれて日本から大変な資金が流れておりました、だから、そういう経常勘定だけじゃなしに資本勘定も加えての当時のいわば市場レートであったというふうに解釈しているわけでありますが、それは、経常勘定レートを考えれば当然非常に円安・ドル高である、これを調整しようというのがG5、プラザ合意後の基本的な精神だったと考えるわけであります。そして先般十月の末に宮澤・ベーカーの合意が発表されたわけでありますが、その合意の中で言っておりますことは、プラザ合意後の円ドルレートの調整過程が進んで、あの段階で達せられておる水準が日米両国経済のファンダメンタルズを反映したものである、もしくは反映したものに近い水準であるという評価から、認識から、これ以上意図的な円ドルレートの調整は必要がないと考える、したがってこれ以上意図的に政策的にレートをどうこうすべきではない、したがって百六十円前半ぐらいのレートが大体いいのだと間接的に読み取れるような合意になっているわけであります。  問題は、今、民間企業の平均でも百七十円だから、なおかつ十五円ぐらい差があるんじゃないか、どうするんだ、こういう御意見でございますし、私のところにもそういう御意見が具体的な業界から、為替レートの安定と言うけれども、今の百六十円のレートで安定されては困るので、できればもっと円安の方向で持っていってもらいたい、こういう強い御要望があることも事実でございます。  ただ、先生、私心配いたしますのは、そうは言っても、現在の日米間の経常収支の黒字は依然として大幅なものがございます。いわゆるJカーブ効果があっても、それを引いても大幅なものがあって、これが近い将来に一挙に改善されるという見通しは、いろいろ内需拡大、規制緩和、そして市場アクセスの推進とやっておりますけれども、そう簡単にこの日米間の黒字幅が一挙に解決することがないとすれば、やはり対米黒字、そして累積債権がどんどんふえるという状況の中で、仮にこの円安傾向が進んで百七十円、百八十円と行ったとしても、片一方で経常収支の黒字が続けば、やがて円高圧力がまた再び対米関係また国際的にも強まってきて、せっかく下がったものがまた百六十円、百五十円、万が一百四十円などということに変動しないとも限らないわけです。そういう円高是正も必要だけれども、しかし、そのことによって逆に反動を招いて円レートが不安定な状況になる、非常に急激な激変を続けるということは、まさに日本の企業にとっても大変な状況でございますので、円高是正は望ましいものの、私はまず円の現行水準あたりの安定が当面必要最低限度の我々の考え方である、こういうふうに思うわけでありまして、そこから後どうするんだということについては、多少長期的にいろいろ考えをしていかなければならぬと思うわけであります。
  46. 小野信一

    ○小野委員 それで、宮澤・ベーカー両大蔵大臣の合意によって円高が幾らかでも是正されたわけですけれども、これはファンダメンタルズにだんだん近くなった、こう言っておるのですけれども、どういう理由で近くなったのか、どういう条件が改善されたためにファンダメンタルズに近くなったのか、そういう説明が一切ないものですから、国民にとってはちんぷんかんぷんなんです。魔法の五角形ですか、ああいう中でどの部分が改善されて日本経済実力とアメリカの基礎的経済条件を反映したものに近づいた、そういう説明をしていただかないと国民にとっては困るのですけれども、それは少し専門的といいますか数字を挙げるのでしょうから、専門家の立場から御意見を聞かせていただきたいと思います。
  47. 田中努

    田中(努)政府委員 お答えいたします。  大変難しいことなんですが、ファンダメンタルズとはそもそも何かという問題が実はございまして、これは各国経済の基礎的条件である、こういう理解でございますが、その中身といたしましては、経済成長率でございますとか、あるいは物価の上昇率、あるいはインフレ率でございますとか、あるいは失業率でございますとか、また金利の水準でございますとか、あるいは国際収支、特に経常収支なり貿易収支なりのバランスがどうなっているかというふうな多面的な問題であるわけでございまして、そのどれをとらえて適正と言うかということについては、これは定説は必ずしもないというふうに申し上げざるを得ないと思うのです。  仮にこれをインフレ率という観点を重視してとらえると、購買力平価で適正なレートを探ってみょう、こういう考え方になるわけでございまして、いろいろな試みがあることも事実でございます。ただ、その場合に基準となります時点をどこにとるか、あるいは物価をいかなる形でとらえるか、卸売物価でとらえるのか、工業品物価でとらえるのか、または消費者物価でとらえるのか、いろいろな観点がございます。そういうことでいろいろやってみまして、やり方は前提によっていろいろ答えは変わってまいりますが、一つのやり方でやりますと百七十五円とかそういう試算結果も出てまいるわけでございます。しかし、これはあくまでも一つの見方でございまして、先ほど申しましたファンダメンタルズの要素となっております幾つかの要因のどれを重視をするかということによって答えが変わってくる問題であろうと思われます。
  48. 小野信一

    ○小野委員 宮澤・ベーカー両首脳の会談によって、ファンダメンタルズの反映した円レートに近づいた、こう言っているわけですから、どういう基準で考えて計算して近づいたのか、少なくとも大蔵省は計算したのですか。
  49. 田中努

    田中(努)政府委員 お答え申し上げます。  大蔵省がどのような計算をしたかということについては私どもは聞いておりません。宮澤大蔵大臣が国会等でお答えになっているところでは、アメリカにおけるグラム・ラドマン・ホリングズ法の成立等によりましてアメリカの財政赤字の縮小の傾向が今後出てくるであろう、また円高がこれだけ進めばアメリカの貿易収支の赤字にも是正傾向が出てくるものと判断をされる、そういうようなことを国会でお答えになっておられます。そういうことから考えまして、そういうふうな点に着目をされたのではないだろうかというふうに思う次第でございます。
  50. 小野信一

    ○小野委員 大臣、レートというものはファンダメンタルズの反映した結果であって、まずレートがあって、改善される、こういうものなんですか。私は、円レートというのは、賃金であるとか物価であるとかと同じように、すべての基礎条件が整ってそれを反映したものがレートではないんだろうか。ですから、それを逆にして、最初政治的に会談して合意してレートを決定することによって、それならば何をファンダメンタルズの中で改善しようとするのか、それがはっきり国民に知らされるべきではないだろうか。もしその改善が終わったとするならば、次の適正レートに向かって政治的介入をするのが当然ではないだろうか、そういう感じがするんですが、いかがなものでしょうか。
  51. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 円ドルレートというものを日米経常収支のバランスが達成できるということに限定して考えますと、現在の百六十円でも依然として対米輸出は大幅な黒字でございます。これは過去のいろいろな契約その他あっての話ですから、何もなしにここで百六十円のレートで日米商品を比較したらどうだ、こういう議論もありますけれども関係者の意見を聞きますと、もう今や値段ではない、アメリカから買うものは物がないんであって値段ではないんだ。だからレートを幾らいじったって、それは幾らいじろうが程度がありますけれども、少々なことでは日米の経常勘定、貿易勘定だけの収支バランスは達成できないということになりますと、単純に円ドルレートというものは日米貿易収支バランスを達成するためのレートだったらひょっとしたらもっと下がらなければならぬかもしれませんね。だけれども日本経済調整をし、アメリカ経済調整し、グラム・ラドマン法に見られるような財政的なディシプリンもやるという形で長期的にバランスを考えるとなればおのずからまたレートが出てくるわけでありりますし、それにプラスして最終的に為替に対する需要供給でレートが決まるわけですから、輸出輸入だけではなしに資本収支の円とドルの需給関係を上積みしてそこでレートが決まってくるとすれば、今百六十円というレートは、そういう見方から考えると、ファンダメンタルズが何かと言われれば確かにいろいろとございますが、日米間の構造的な関係から大きく隔たったものではない。少なくともG5前の二百四十円はいろいろ考えてみてもそういう関係からちょっとかけ離れたものであって、今のレートは、まあまあそういう点からいうと、相手が経済だからこれが真実唯一正しいという言い方はなかなかできないけれども、多少の枠の中には入るものだという認識が日米両政府間にあった、こういうことだと思います。
  52. 小野信一

    ○小野委員 アメリカの財政政策経済政策日本の法律、財政政策あるいは経済政策が同じレベルで同じように行われておるならばそういう議論をして当然だと私は思うのです。御存じのように、アメリカは財政赤字の上に減税するという消費刺激策を依然としてとっておる。そういう基礎条件が全然違う場合にすべてを為替レートに依存して為替収支の改善を図るというのは無理があるのじゃないだろうか、必ずどこかにしわ寄せが寄って日本経済の失業を招くだろう、そういう気がしてならないわけです。したがって、アメリカが当然是正しなければならない財政政策なり税制政策をきちっと改めてもらうことの方が先なのじゃないだろうか。私はそういう気がしてならないわけです。  そこで、労働省がおいでになっていると思いますので、この円高不況に伴う雇用情勢についてお伺いいたします。  先日、三和総合研究所が発表いたしまして、円高製造業全体で九十万人の余剰労働力が生まれるのではないか、こう言っております。円高による生産の落ち込み、人件費の急増、その金額は合計して四兆円、したがって平均賃金で割り出すと九十万人の余剰労働力、これは現在の失業率二・九%を四・二%に上昇させるのではないか、こう言っております。同時に、円高によるコスト上昇によってもし海外に一〇%の企業が進出した場合には海外シフトで百二十万人の余剰労働力が生まれるだろう、こう思われております。来年の三月までに石炭、造船、鉄鋼繊維、その他から続々と余剰労働力が発生してまいるわけですけれども、労働省は六十一年度中にどれほどの余剰労働力が出ていると計算し、失業率並びに失業者の数をどのように把握しているのかお尋ねいたします。
  53. 廣見和夫

    ○廣見説明員 お答え申し上げます。  今先生からの御質問でございますが、具体的に六十二年度失業率あるいは失業者数等がどのようになるかということでございます。私ども、確かに最近の雇用情勢は大変厳しいものがあるというふうに見ております。特に構造的な不況業種、今も先生お話ございましたようなところでそれぞれ雇用調整も進んでおりますし、いろんな形で離職者もあらわれてまいっております。それがまた特別のそれぞれの地域でも雇用問題は非常に厳しくなってくるということではございます。  私ども全般として見ますと、雇用過剰感を持っておられる事業所の割合が次第に高まってきているというふうに見ております。例えば労働省の方でやっております調査でも、八月時点では製造業の中で二〇%の事業所が雇用過剰感を持っておられるということになっておりますし、またそれを反映いたしまして何らかの形で雇用調整をやっておられる事業所の割合も製造業の中で三一%ということでございます。これらは今後、もちろん基本的な経済動向のいかんにもよるわけでございますが、経済の動向そのものと雇用情勢はまた一定のタイムラグもございますので、私どもはここしばらく当面かなり厳しい雇用情勢が続くというふうに覚悟しなければならないものと考えておるわけでございます。  ただ、具体的に今、明年度どの程度の余剰人員が出てくるのか、あるいはまたどの程度の失業率になるかということにつきましては、基本的には経済そのものの関係もございますので、労働省といたしまして必ずしも具体的な数値という形では見通し等をつくっておらないわけでございまして、一般的に情勢が厳しくなるということを念頭に置きながら、それぞれの地域対策あるいは業種に着目した対策は講じていく必要があるだろう、このような考え方で対応してまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  54. 小野信一

    ○小野委員 大臣、鉄鋼業界の現状を見ますとやはり大変な事態であることは先ほどお聞きいたしました。協力会社を含めまして従業員二十三万五千人、四十八年度以降十三年間も一億トン以上の生産を上げておったものが六十一年度には恐らく九千六百万トン、六十年度と比較して約八百万トンもの減産になるだろう、こう予想されております。  御存じのように十二月一日から大手新日鉄が一時帰休を始めました。ことしの末あるいは新年早早には高炉をストップするのではないだろうか、こうマスコミが書き立てております。大変な事態になるのではないか。業績を見ましても、六十一年度上半期大手五社で一千八百億円の赤字、今年度は四千億円の赤字になるだろう。非常に大きな体質改善が行われる、こう予想されておりますけれども、鉄鋼の体質改善について今経企庁はどのような情報をお持ちなのか、もしお持ちならばお聞かせ願いたいと思います。
  55. 中尾舜一

    ○中尾説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、最近の円高によりまして鉄鋼各社非常に厳しい状況になっているところでございます。現在、高炉大手各社におきましては、今後二年ないし四年先を目標といたします合理化計画を年内あるいは年明けを目途に策定中ということのようでございます。既に一部の会社につきましては先月末、神戸製鋼でございますけれども、六十三年度末までに六千名程度の人員合理化を行うということを内容といたします計画を策定したというふうに聞いているところでございます。ただ、他社につきましては、まだ現在までのところ、私ども計画の内容については承知していない現状でございます。ただ、いずれにいたしましても、各社とも現在中長期的な観点に立って鋭意計画を策定中であるというふうに承知しているところでございます。
  56. 小野信一

    ○小野委員 大臣が先ほど答弁で申しておりましたように、当然鉄鋼、造船、炭鉱失業者が出ることがはっきりわかっておるわけですから、その意味で今回大臣が特定不況地域ですか、城下町を訪問して現地調査に入る、こういう話を聞いておりますけれども、事実でございますか。事実だとするならば、その目的、意義について抱負などをお聞かせ願いたいと思います。
  57. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 実はこれも中曽根総理の御指示がございまして、こういう時期にひとつ経企庁長官は通産大臣や労働大臣と連絡をしながら不況地域を直接視察をして、自分の目で見、足で確かめて、現状を十分に把握して対策を講じろ。さっき御説明いたしました雇用対策推進本部もできたことであり、特に重要な関係閣僚であり、私も労働大臣も通産大臣も副本部長でございますので、総理はともかく、副本部長が手分けしてみんな回れ、こういうことでやるわけでございます。  実は先週の土曜日には私石川県に参りまして、金沢市とそれから七尾市、繊維の町ですね、地域ですけれども、これを見てまいりましたけれども、あそこもまさに、化繊メーカー、糸を買って賃加工、賃織りしているわけですね、それを国内もそうだけれども海外に出しているわけですが、円高で、まさに賃金がずばりですから、受け取りがもう半分、四割になってしまったという深刻な状況で、何とか早く設備の共同廃棄事業を新しくなるものをスタートしていただいてすっきりした形で来年を迎えたい、こういうような強い要望がございましたので、帰って早速、大蔵省、通産省、自治省に話をして協力を要請したような次第でございます。  実は今度の土曜日は岩手県の釜石に参りまして、これは新日鉄の釜石工場で、まさに企業城下町で製鉄業の不況をもろにかぶっている地域でございますので、私参りまして、いろいろ工場視察、関係者と会って、これに対して政府としてどういう対応をすべきかについていろいろ勉強してまいりたい、こういうことでございます。
  58. 小野信一

    ○小野委員 最後にお願いを申し上げますけれども、失業いたしますと、失業保険、雇用保険をいただきまして十カ月なり一年なりは生活ができるといたしましても、今の経済情勢から、新しい企業に就職するということは大変難しいと思います。特に交通の便、経済条件の悪い地域には、一度工場がつぶれてしまいますと再建することも大変難しいし、新しい企業を誘致することも大変難しいと思います。  したがって、新日鉄なり住金なり、どこの製鉄所でも、もし製鉄所を、高炉をとめた場合には、そこにその鉄鋼会社が責任を持って関連企業、今どの鉄鋼の会社も新素材産業に力点を置いておりますので、そういう新しい企業は会社をつぶした、工場をつぶしたところに設置するのだ、それくらいの大きな産業政策がなければ地域の雇用政策は立たないと私は思います。  同時に、企業城下町の場合には、単に企業がつぶれるだけじゃなくて地域経済が完全に破壊されるわけですから、その企業城下町によって他の産業がすべてはじき出されておるわけですから、他の地域よりもより深刻になるという実態になります。したがって、予想される不況地域につきましては、今までとは違った雇用対策、新規の雇用対策を重点的に投入する、こういうことをお願いいたしまして、質問を終わらしていただきます。
  59. 河上民雄

    河上委員長 次に、斉藤節君。     〔委員長退席、小野委員長代理着席〕
  60. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 初めに私は抵当証券業者問題につきましてまずお尋ね申し上げたいと思います。  現在の高齢化社会、しかも低金利時代における消費者にとりましては、その持っている金融資産をどのような利殖志向で運営していこうかと絶えず考えたとしても、これはだれもこれに対して非難することはできないと思うわけでございます。第二の豊田商事事件のおそれがあると最近問題化しております日証抵当証券だとか丸和モーゲージ事件も、この現在の消費者構造の流れの中でとらえることができると思うわけでございます。そこで、政府としても、投資環境を整備しながら、投資知識の乏しい高齢者や主婦が悪徳抵当証券業者の犠牲にならないよう早急に対策を立てる必要があると思うわけでございます。  そこで、まず最初に警察庁の方にお尋ね申し上げますけれども、今年の十一月までに全国の警察に何件の苦情が寄せられておりますか、その内訳を苦情項目別に、また概要、状況等についてお示し願いたいと思うわけでございます。これがまず第一点。  次は、豊田商事事件で悪徳商法を行っていた者が抵当証券業界にかなりの数、これは十一月十一日の各種の報道に大々的に出されているわけでありますけれども、かなりの数の者が入り込んでいるということであります。営業の自由といっても、社会に害毒を流すようなあるいは及ぼすようなものは、これはその自由というものは許されないわけでございまして、これらの悪徳業者を締め出すためには、まず私といたしましては先手必勝、被害額が余り大きくならないうちに芽を摘んでしまう方が現在考えられ得る最も有効適切な手段であろうかと思うわけでございますけれども、この二つの点につきまして警察庁の御答弁をお願いしたいと思います。
  61. 緒方右武

    ○緒方説明員 お尋ねの第一件の抵当証券問題につきましては、昨年夏以降この業界に悪質な業者の参入が目立ち始めまして、本年初めごろからその傾向が著しくなったことから、警察としましては、抵当証券に関する相談の手引等を作成し、これらを現場の警察官にまで徹底するなど、組織を挙げてこれら悪質業者の実態解明や取り締まりに努めてきました。いろいろな機会をとらえまして広報をし、消費者への注意喚起を呼びかけてきたところであります。  その結果、市民から多数の相談が寄せられ、本年十月末までに警察庁に報告があったものだけでも合計三百六十八件ありました。相談の内訳は、四十歳から六十歳前半までの人が約七割を占めております。職業別では主婦が五割弱と半数近くを占めております。相談の内容は、本年夏ごろまでは会社の信用性や安全性を心配するものが中心でございましたけれども、十月に入りましてからは、解約に応じてくれないなどといった解約に関するものや、倒産したがどうしたらよいかとか、名称の変更、休業通知が送られてきたがどうしたらよいかといった、具体的な被害に関する相談等が目立ってきております。  第二の件についてでございますけれども、昨年豊田商事問題が表面化しまして国会やマスコミで大々的に取り上げられましたことから、このような商法を継続することが困難になった悪質業者が抵当証券などその矛先を変えて一般消費者を被害に巻き込むというような事犯が少なからず発生しております。そこで、警察としましては、本年四月、このような事犯の取り締まりのために生活経済課を発足させ、全国の警察を挙げて被害の防止を最重点とした検挙と広報活動を推進してまいっているところでございます。  その結果、元豊田商事の役職員が豊田商事に類似した利殖にかかわる商法によって消費者に損害を与えた事件として検挙した事例としましては、警視庁が検挙しました飛鳥、大阪府警が検挙しました千代田抵当証券など、十三事件を詐欺罪等で検挙しております。これらによる被害者総数は警察が把握しているもので約二千七百人、被害総額は約五十四億円に上っております。  このような悪質業者というのは、法の網の目をくぐるように犯行を繰り返したり、表面的には正常な営業活動を仮装して取引の過程で明白な証拠を残さないなど、現行制度の中では取り締まりが容易でないのが実情でございます。また、先生御指摘されましたとおり、最近マル優制度の見直し等が話題になっており、一般消費者の中には、せっかく蓄えた金をどこへ投資したらよいか、老後のために蓄えるとしたらどうしたらよいかと迷われている人もふえてきております。このような人人の不安につけ込む悪質業者がさらにふえてくると予想されますので、警察としましては、これら悪質業者封じ込めのため、さらに一段と努力していく所存でございますが、その一環として悪質業者の手口等についての情報提供、広報活動をさらに積極的に推進するなど、消費者みずからの手で被害が予防できるよう消費者教育、啓発の教育を進めていきたいと思っております。
  62. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 確かに今御報告ありましたように、警察庁での御努力、さらに大いにお願いしたいと思うわけでございますけれども、既に新聞報道などでもありますように、警察庁としては既に静岡県警の日証抵当証券摘発、これは非常に適宜なものであったと私は思うし、また一般からも評価されておるようでございます。さらに大いにこのような事件が起こらないようなことを、よろしくお願いしたいと思います。  そこで、大蔵省にお尋ねいたしますが、この悪徳業者締め出し対策として、出資法違反として訴えてはどうかと思うのでありますけれども、その辺はいかがでございますか。
  63. 杉井孝

    ○杉井説明員 お答え申し上げます。  出資法第二条第一項は、「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。」というふうにされておるわけでございます。御指摘のありました抵当証券の売買に現在手法として使われておりますモーゲージ証書による取り扱いは、私どもも承知しておるところではいろいろな解釈論がございますが、不動産抵当債権、これは債権と抵当権を化体したもの、そういうものでございます抵当証券を販売いたしまして、その預かり証としてモーゲージ証書を交付しているというふうに聞いております。この場合、抵当証券の譲渡の対価として金銭を受け取るものでございますので、出資法の預かり金には該当しないものと解しておりまして、銀行法等による免許を得る必要は生じないというふうに解釈しております。ただ、空売り等の場合には顧客を欺瞞した取引行為でございまして、出資法の預かり金として該当すると認められる場合もあるのではないかというふうに考えております。
  64. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 豊田事件の純金ペーパー商法とそれから今回の悪徳抵当証券業者の預かり証商法は、ともに金だとかあるいは担保の裏づけのない危険きわまる商法であることで共通していると思うわけであります。豊田商法の流れをくむ者が先ほども警察庁の御報告にありましたようにかなりおるわけでありますけれども、この連中がこれだと思って飛びついたとしても不思議ではないんじゃないかなと思うのであります。  しかし、今回は問題は、法務局という国の機関が関係しているのが異なっておる点じゃないかなと思うわけでございます。新聞の折り込みだとかあるいはチラシ宣伝などに見られますように、抵当証券は法務局が発行した有価証券であります、このように書いてあるわけです。国の機関である法務局がバックについているから安心できる商品であるかのごとく宣伝利用されているわけでありますけれども、こういったことを書けば、だれでも安心してしまうのではないかと思うのであります。また、聞くところによりますと、法務局発行抵当証券販売店、こういうような看板を掲げているところもあるやに聞いているわけでございます。近藤長官ここにおられますけれども、最近、国の権威がかなり失墜したと言われておりますけれども、しかし、そうはいえ、高齢者だとか主婦にとっては、お上の関係している証券を購入するのであるから絶対安心である、このように考えてもとがめることはできないと思うわけでございます。  そこで、預かり証イコール抵当証券と思い込んで、法務局が保証しているから安心だという、このようないわゆる現状認識を持った多くの投資家がおるわけでありますが、この点法務省といたしましてはどのように考えておられるのか、法務省にお尋ねしたいと思います。
  65. 田中康久

    田中説明員 お答えいたします。  先生が御指摘のように、抵当証券の販売に当たって、法務局が発行したということをもって安全だというような認識で広告されているケースがあるということは私も聞いておりましたけれども、私どもとしては、確かに法務局が発行したことには間違いございませんけれども、安全だという印象を与えるような宣伝はやはり不当な広告であるという認識を持っておりまして、困ったものだという認識を持っております。  もう一つの、先生御指摘のモーゲージの問題は、抵当証券法上は抵当権そのものの流通を予定しておりまして、それにかえてモーゲージ証書というもので抵当証券の売買の効果が生ずるかどうかについてはいろいろな考え方がございまして、その点については、今大蔵省と一緒にやっております抵当証券の研究会において法律問題についても研究をしておる段階でございますので断定を避けたいと思いますが、私どもとしては、現在の実務のやり方で完全に抵当証券の移転の効力が生ずるかどうかについてはいろいろな疑義があって、やはり解決すべき問題点がたくさんあるというような認識を持っております。
  66. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 抵当証券法第十四条第一項によりますと、「抵当証券ノ発行アリタルトキハ抵当権及債権ノ処分ハ抵当証券ヲ以テスルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ」、このようにあるわけでございます。また第二項には、「抵当権ト債権トハ分離シテ之ヲ処分スルコトヲ得ズ」とあり、この証券発行の効力規定から見ると、現在、悪徳業者の預かり証販売行為はこの規定の趣旨に反すると私は思うわけでありますけれども、法務省の見解をもう一度伺いたい。
  67. 田中康久

    田中説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように条文がございまして、そういう意味では現在の抵当証券の売買のやり方については法律上いろいろ問題があるところでございますが、その点についてもいろいろな考え方がございまして、その考え方の整理も含めて現在研究会を開いて検討しておりますので、先ほど申しましたようにいろいろ問題点を含んでおりますが、その研究会の中でその点についての解決は図りたいと思っております。
  68. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 抵当証券法施行細則第四十四条を見ますと「注意」があるわけですね。「この債権は、政府が弁済の責任を負うものではない。」このように書いてあるわけであります。このような記載を購入者がもし見たとしますと、恐らく百年の恋も一遍に冷めてしまうようなショックを受けるのではないかなと思うわけでございますけれども、このような本物の抵当証券を購入者に提示するよう業者に義務づけることを新規立法の内容に取り入れるべきじゃないかと思うのでありますが、法務省の御見解はいかがですか。
  69. 田中康久

    田中説明員 お答えいたします。  先生の御指摘のような条文が設けられておりまして、原券には先生の御指摘のような文言がもう印刷してございます。今研究会でいろいろ検討しておりますが、多分この研究会の中でこういう文言をどうするかという問題も含めて検討することになるだろうと思いますが、私どもの今の基本的な発想といたしましては、抵当証券というのはほかの有価証券と若干違うところがございまして、政府としては完全に間違いのないものであるという保証はしかねるものでございます。そういう意味では、一般の投資家保護のためには、若干の危険性を負うものであるということを注意書き的に書かざるを得ないのではないかというふうに私ども考えております。
  70. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 現行法では、明らかにおかしい不動産鑑定以外は悪徳業者をチェックする手段がないと聞いておるのでありますけれども、悪徳不動産鑑定士に対する監督規制はどのようになっているのか、これは国土庁にお尋ねしたいと思います。――私、ちょっと忘れて呼んでなかったようですから、今の質問は取り消します。  抵当証券の交付に当たりまして、現在は登記官には形式的審査権しかないとのことでありますけれども、投資家保護の見地から、この場合に限り、登記官に実体的な審査権を付与すべきであると考えるわけでありますけれども、法務省の御見解はいかがでございますか。  また、抵当証券上における注意書きだけで責任回避しようとすることは、お上の切り捨て御免ということになるような感じがするわけでございますが、その辺いかがですか。
  71. 田中康久

    田中説明員 まず、先生御指摘の第一点目でございますけれども、私どもも、抵当証券を発行する際に出してもらっております不動産鑑定士の評価書が、やはり少し問題が出てきているのではないかという心配を非常にしておりまして、最近いろいろなところで、新聞にも書かれておりますようにちょっと問題のケースがあるのではないかとか指摘がされております。  そこで私どもの方では、実は今不動産鑑定協会の方にお願いしておりまして、抵当証券発行の際の鑑定の仕組みについて今までの問題のあったケースをいろいろ洗っていただきまして、こういうことなら間違いないというような基準的なものができないかどうかということの作成をお願いしております。聞くところによりますと、鑑定協会の方では近々全国の会員に対して、抵当証券発行の際の鑑定の仕組みについて、いわば自主規制ルール的なものを通達という形で出して、それに従ってもらうということを考えているようでございます。もし、鑑定協会の方のそういう通達が全国周知されて、それに従って不動産鑑定士の方が処理をしていただければ、今回起きておりますような鑑定上における過大評価という問題は、大部分は解消するのではないかというふうに期待しております。  二点目でございますけれども先生御指摘のように、抵当証券上に責任を負わないという表現をしております。ただ、これは先ほど申しましたように抵当証券は間違いがどうしてもある、そういう有価証券でございまして、そういうふうに抵当証券上に記載するかしないかを問わず、政府側としてはやはり責任を問えないといった性質のものだと思っております。そういう意味では、自主的に登記官の方で審査できるような仕組みをつくったらどうかという御指摘でございますけれども、登記所は今、書類の形式が十分整っていればやはり受理せざるを得ないような仕組みで動いております。また、その鑑定が正しいものであるかどうかということを私どもの現場の登記官に判断をしてもらうということは能力を超えたことでございまして、私どもとしては、いわば鑑定士の方の規制が完全に行われて、そちらが間違いなければやはり受理をすべきだという形で、自主的審査権の方で処理するのはなかなか難しいと思っております。  そこで、抵当証券の方に記載すればそれで済むのかという先生の御指摘ですけれども、抵当証券は場合によっては法律上どうしても危ない場合が残る、そういう権利でございますので、やはりそこは、証券上に政府が責任を負うとか負わないとか書くこと、仮に書かないでも実質は同じことだと私どもは思っております。ただ、一般投資家には、そういう性質のものであるということを注意書きをしておく必要がありますので、やはり証券上にはその文言はこれからも残していく必要があるのではないかと考えております。
  72. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 そこで、豊田商法の純金ペーパー商法対策として、さきに特定商品等の預託等取引契約に関する法律が制定されましたが、今度の新規立法に当たってはこの法律の内容がどの程度取り入れられるのか。例えばディスクロージャー、こういう制度を取り入れるのか、あるいは報告徴収、立入検査、業務停止命令、中途契約解除制度等が規定される対象となるのではないかと思うわけでありますけれども、この辺、大蔵省当局の見解をお伺いしたいと思います。
  73. 杉井孝

    ○杉井説明員 お答え申し上げます。  専門家の立場から御意見をいただくということで、先生御指摘のありました抵当証券研究会というものを去る十月三十日からスタートさせまして、研究を進めておるところでございます。私どもといたしましては、投資家保護を図るなどの観点から、法制の整備の問題も含めまして検討をお願いしておるところでございます。その検討の中でどういう具体的な議論がなされるか、確たることは申し上げられる段階ではございませんが、いずれにいたしましても先生御指摘のような点も含めまして、投資家保護を図るなどの観点から研究を続けてまいりたいと思っておる次第でございます。
  74. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 この件につきましては、私質問をこれで終わりますけれども、いずれにしましても投資家保護をして、さらにまた事件が起こらないようにひとつよろしくお願いしたいと思うわけでございます。  大蔵省の方、どうもありがとうございました。警察庁もどうもありがとうございました。  そこで、先ほどもいろいろ議論があったようでありますけれども円高差益還元というのは当然必要でありますけれども、私はかねてから、消費者だけのことを考えるのではなくて、企業の従業員についても一時金だとかボーナス等の形で返すことも必要であると考えておるわけであります。また、社会資本の充実にも充てなければならない、そのようにも思っておるわけでございます。さらには、輸入品を二五%くらい下げて物価を二〇%下げることによりまして、実質賃金を二〇%上げたことと同じようなことになるわけでありますから、これが内需拡大にもつながる、ひいては貿易摩擦解消への道も開けてくるのではないかな、そんなふうに考えるわけでありますけれども、まずエネルギー庁並びに経済企画庁としてはこの点どんなふうに考えているか、両庁にお聞きしたいと思います。
  75. 海野恒男

    海野政府委員 御指摘のように円高差益の還元をするということは、一つには内需拡大のためにも非常に効果があるということ、それから輸入を拡大することによって経常収支の改善、あるいは対外不均衡の改善ということを通じての摩擦の解消ということにも役立つという意味におきましては、円高差益の還元をすることは大変重要な政策課題の一つであるということは御指摘のとおりであります。  ただ、今先生が御指摘になりました数字につきましては、私ども若干理解しがたいところがあるわけでございまして、円高並びに原油価格の低下によりまして、輸入財の価格は昨年に比べまして大体四割前後下がっておりますけれども、それはあくまでも原材料の一部としてでありまして、大体卸売物価の中で一割強のウエートを占めておるものでございますが、それが最終財に至る過程では、製品の材料のごく一部でしかないということになりますので、必ずしも四割がそのまま同じ数字でもって最終財の、あるいは消費財の価格の低下に比例的にならないということでありまして、現在数字的に見ますと四割くらい輸入財で入ってまいりますのが中間財で大体一〇%くらいになり、そして最終財では二%くらいに下がってくる。これは一つには、先ほど申しましたように、原材料というのは製品のごく一部である、そのほかに人件費や資本費等が入っておりますので、ごく一部のものが仮に四割下がりましても、原材料のウエートが一割でしかなければ、四割下がってもそれは四%しか効果がない、寄与しないという関係にございますので、すべて四割下がったから最終財まで四割下がるというような関係のものではないということは、御理解いただきたいと思います。
  76. 黒田直樹

    ○黒田説明員 お答え申し上げます。  今、原油の価格が下がったことによる影響がまず直接的に出てまいりますのは石油製品でございますが、石油製品については先生御案内のとおり、市場メカニズムを通じまして円高、原油安によりますコスト低下メリットというのが、広範な一般消費者及び産業界のユーザーに還元されているものと理解いたしております。     〔小野委員長代理退席、委員長着席〕
  77. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 そういう円高差益というものを、先ほども申し上げましたように、消費者の方の還元だけじゃなくて、いわゆる企業の従業員にももう少し還元したらいいんじゃないか。それから、社会資本充実の方に充ててもどうかという私の質問なんですけれども、わかったようなわからないような回答をいただきました。確かに、四割下がったからといってそのとおり四%くらいの影響しかない。それは確かにそういうことでありましょうけれども、そういう円高あるいは原油安の還元というものは、そうあってもいいんじゃないかという私の考えであります。  経企庁にまた改めてお伺いいたしますけれども、経企庁は本年十月十四日の経済審議会総合部会企画委員会合同懇談会におきまして、円高、原油安による差益額の試算結果を示しておるわけでありますけれども経済企画庁はそのとき、「輸出価格引き下げに向かった分や、赤字企業に吸収された分もあるだろうが、まだ還元が十分ではない」このような新聞報道があるわけでありますけれども、この考えは今でも変わっていないのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  78. 海野恒男

    海野政府委員 十月に発表いたしました数字は、今ちょっと御説明いたしますと、繰り返しになりますけれども、合計十兆四千億ほどある。先ほど、大臣も別の御質問お答えしたことがございますけれども、十兆四千億ほどあるわけでございます。そのうち我々の計算では、四兆五千億程度が実際に消費者物価並びに卸売物価の低下を通じて、消費者ないしは需要家に還元されているということを発表したわけですけれども、その残りについてどういう解釈をすべきかということについて、今先生御指摘のような御説明を申し上げたわけでございまして、一部は輸出価格の低下ということを通じて海外に逆流してしまうという部分もあろう。それから、過去赤字であったところで、この原材料のコストが非常に安くなったためにようやく経営上一息ついたというような場合には、あるいはまだそれでも赤字のような企業は、それを下方に、下流の方に差益を還元していくという形にはならないものがあるだろう。そういう意味では、一つのパイプの入り口から最後の出口までの過程で幾つかの理由があって、一種のリーケージと申しますか、漏れて出てくるものがあると思います。  そういうのはやむを得ないものもあると思いますけれども、私どもはまだ十兆四千に対して四兆五千というのは、そういうのがあったとしても、まださらに還元して物価の下落ないしは安定を通じて、さらに国民に還元されるべきものが残っているはずである、そういう観点から、しかも一層その差益を還元して消費者に返し、あるいは需要家に返すということは、先ほど申しましたように景気の拡大、内需の拡大に大きく寄与するものであるという観点から、残されたものについてはできるだけさらに還元していくように、そういう努力を今続けておるところでございます。
  79. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 この間の、これは十月十五日の新聞報道でありますけれども、いわゆる四兆五千億円の還元額の内訳は、三兆三千億円が消費財、それから一兆二千億円が投資財ということでございますけれども、いわゆる円高差益は実際には十兆円あるんだ、しかしそのうち四兆五千億円を還元する、そういうことで経済企画庁考えておられるということですけれども、これを先ほど申し上げましたような方向にやってもらってはどうかなと私思うわけでございます。  次に、エネルギー庁にお尋ねいたしますけれども、新聞報道によりますと、これは九月二十七日でございますけれども日本石油と王子製紙との間にC重油の価格交渉が決着して、一月から三月までは四万三百五十円パー・キロリッター、それから四月から九月までは一万七千二百円パー・キロリッター、このように差し引き五七・三%安、金額にして実にキロリッター当たり二万三千百五十円安ということになるわけですけれども、この二万三千百五十円の中身はコストダウンが一万八千九百円、それから円安分が四千二百五十円ということでありますけれども、これは事実でありますか、ちょっとお伺いします。
  80. 鴇田勝彦

    ○鴇田説明員 お答えいたします。  新聞に報道がございましたように、いわゆる高硫黄分のC重油の価格につきまして、日本石油と王子製紙の間で価格について合意ができたということでございます。  ただ、一部の新聞報道は数字に若干の誤りもございまして、私の手元にございます日経新聞でございますと、数字誤りが後日、二十九日に訂正された経緯がございます。
  81. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 いずれにしましても、このように急激にC重油というものが安くなったわけでありますけれども、このC重油の例からもわかりますように、原油価格FOBは、昭和五十五年三十二ドル・パー・バレル、これが六十一年四月は十ドル・パー・バレルというふうに約三分の一になっているわけであります。すなわち、実に七〇%も安くなっているわけでありますけれども、このように円高差益があるわけでありますが、次に具体例について質問したいと思うのです。時間がありませんので、もう少し別な観点からやりたいのですけれども、やりませんので……。  ちょっと申し上げますと、まず昭和五十五年三月を基準値として現在、昭和六十一年八月を見ました場合、これは一遍にこうなったわけじゃないですから、円高まで急に上がったわけじゃないですから、こういうことは正確には言えないと思いますけれども、電気の原材料であるLNG、LPG、それから石炭など、こういったもののFOBは三分の一になっている、つまり七〇%安くなっている。また、都市ガスの原材料であるLNGとLPG及び石炭なども同じく三分の一になっていて、やはり七〇%安くなっている。LPガスの原材料であるLPGも同じく三分の一で七〇%安くなっている。十二月五日の新聞報道などによりますと、電気、ガスをまた下げるということでありますから、差益還元がかなりされているというふうに考えられるわけでありますけれども、LPGの方が、いわゆるプロパンガスの方が安くなってないじゃないか、そんなような感じを受けるわけでありますけれども、いかがでございますか。
  82. 鴇田勝彦

    ○鴇田説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘になりましたように、LPGにつきましてもLPGのCIF価格の低下及び円高の高進がございまして、非常に原料費といいますか、コストの面での低減がございます。エネルギー庁といたしましては、ただLPGの価格といいますのは電気、ガス料金と違いまして公共料金でございませんから、原則的には市場メカニズムによって決定されるべきであろうと考えておるわけですが、家庭用液化ガスについては、先生御案内のとおり継続的な供給契約によって供給されているという性格がございまして、原料価格の低下とか仕入れ価格の低下が末端のコストになかなか反映されにくい傾向にございます。ということで、エネルギー庁といたしましても、五月以来、石油部長名で価格引き下げの要請文書を出すとかいろいろな指導をやってきているところでございます。  ただ、若干申しおくれましたが、数字的に申し上げますと、通産省でやっております物価モニター、価格調査によりますと、そういった指導にもかかわらず、ちょうど十月時点でございますか、末端価格の減少幅というのが、約六%内外にとどまっているという実情でございます。
  83. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 これは、ある業者から私の方に話があったわけでありますけれども、非常にマージンが高過ぎるんだというような話でもって、一例を私の方に送ってきておるのがございます。  例えば、五十八年一月から六十一年八月まではプロパンガスの流通の内訳を見ますと、メーカー関係が、仕入れが六十五円、マージンが二十円ですね。これは一キログラム当たりです。それが特約店にいきますと、仕入れが八十五円、つまり六十五円と二十円のマージンがかかっているわけですから特約店は八十五円になる。特約店は、これに二十五円のマージンをかけまして、小売店ではこれを百十円で仕入れるわけです。小売店ではマージンを百二十七円つけまして、小売が二百三十七円というような形でもって、つまり小売店では一一五・五%もマージンを取っている。そのほか、六十一年九月からメーカーは二十二円五十銭で仕入れまして、二十二円五十銭、つまり一〇〇%のマージンをつけまして、そして特約店に四十五円で卸す。特約店は七五・六%のマージン、三十四円つけまして七十九円で小売店に卸しまして、小売店はそれに百四十四円、つまり一八二・三%のマージンをつけまして、小売二百二十三円。このように、一キログラム当たりそのようなマージンで、非常に取り過ぎているというように思っているというわけです。  小売店もお客あっての商売でありますから、あくまで消費者に安く供給したい、しかし、それができないということなんですね。その辺のことはちょっと私はわからないのですけれども、その辺の指導はエネルギー庁としてはどうしているのですか。公共料金じゃないかもしれないけれども、しかし、液化ガスの使用量というのは、三大ガス、都市ガスよりも相当多いんじゃないかなと私は思うのですけれども、その辺はいかがですか。
  84. 鴇田勝彦

    ○鴇田説明員 お答えいたします。  先生も既に御存じのことだと思いますが、家庭用向けのプロパンガスにつきましては、その安全確保という見地もございまして保安投資にかなり金を使っておる、あるいは具体的に配達をいたす場合でも、ああいったボンベを運ぶということで人手も非常にかかります等々の意味で、流通コストというのは先生が今お示しになったように数字的には非常に高い形になっております。ですから、我が方といたしましても、保安の観点というのは当然念頭に置きながら、できるだけその流通コストというのが下げられないかという見地で指導をやってきているわけでございまして、具体的には中小企業近代化促進法に基づきまして構造改善事業、流通コスト低減の観点から指導をやってきております。今後ともその点については、できるだけ強力に指導をやっていきたいと思いますと同時に、先ほど来お話のございます原油安、円高といったメリットにつきましてはある程度数字がわかっておりますので、当然ある時点と比較して適切な引き下げがなされるように指導していきたいと思います。
  85. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 時間がないものですから、細切れになってしまって大変残念なんですけれども、また、たくさんのことを質問したいと思っておるものですから十分できなくて残念なんですが、詳しいことはまた後ほど別な機会にやらせていただきたいと思っております。  いずれにしましても、円高差益、原油安、この差益の問題は私は何回も繰り返すわけでありますけれども、もう少し社会資本の充実の方にも向けてはどうかなと思うわけでございます。  そこで、それに関連をしまして、住宅問題について質問申し上げたいと思うわけでございます。これは、物価問題と住宅の関係についてやらせていただきたいと思うわけであります。  きょうの新聞の報道にもありますけれども、建設大臣の諮問機関である建築審議会は、経済社会の変化に対応した新しい建築規制のあり方について答申をまとめ、天野建設大臣に提出したわけでございます。それによりますと、市街地の土地の高度利用の動きに対応できるように住宅の高さの制限などを緩和するというものでありまして、私としては大変歓迎されるものじゃないかなと思っているわけでありますけれども、実際、最近の消費者物価指数の推移を見ますと、住宅の費用の上がり方というのは非常に高いわけでございます。そして全体の、いわゆる総合的に見ますと、今月は〇・三%先月と比べまして下がっているということであります。しかし、住宅の方、住居の方を見ますとずっと上がってきているわけです。昭和五十九年以来、六十年を標準にいたしますと、一〇〇といたしますとずっと上がってきているわけでございます。それに対して電気、ガス代といったものは下がってきている。それから生鮮食品が非常に下がってきているということで、物価全体としては安定化して、また余り上昇しないというような状況にありますけれども、そのように住宅問題は非常に大変な問題になっていると私は思うわけでございます。  そういう観点から、この住宅問題がそういう物価全体に与える国民感情というものが何となくもやもやして、円高でありながら、また原油が安くなっているといいながら、別に余り輸入品も下がらぬような、あるいは全体の社会における物価が下がらぬような、そういう感情が起こっているんじゃないかなと私は思うわけでありますけれども、その辺、経企庁長官としていかがでございますか。
  86. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 御指摘がございましたように、国民生活の中で、日本経済大国と言われながらどうも経済大国の国民だという実感が全くないのは、いろいろな理由がございますが、その最大の問題は住宅環境が先進諸国比較して非常におくれているということであると思いますので、この住宅環境の整備に内閣としても積極的な対応を講じなければならないと考えております。  実は先生も御案内のように、今年度の税制改正で、住宅資金の借入金額の一%税額控除するという措置を講じました。借入金の一%税額控除ですから、実質的には一%の利子を補給したという格好になるわけでございますが、最近の住宅建設着工戸数の対前年度の伸び考えると、従来年率百二十万戸であったものが最近は百四十万戸を超えるということでございまして、内需拡大の観点から考えても非常にいい方向に進んでいると思うわけでありますが、これをさらに進めるために建設省は、来年度税制改正でこの一%をさらにもう一%税額控除できるようにしたいという要求もしているようでございます。国民生活向上という観点からまた内需拡大の観点からも、こうした住宅建設に対する推進、促進措置について、私ども経企庁としても積極的に進めてまいりたいと考えております。
  87. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 建設省の住宅局の方来ておられますけれども、お聞きしたかったのですが、残念ながら時間がなくなってしまいましたので、近藤長官にあと二つばかりお聞きして、質問を終わらせていただきたいと思います。  住宅問題については今長官から御答弁いただきましたのでわかったのですが、先ほど最初に質問いたしました抵当証券の問題についての長官の御所見と、二番目に私がいたしました円高、原油値下げの問題。化学製品が余り値下げされていないという国民感情もあると私は思うわけでありますけれども、これらに対する大臣の御答弁をお願いしたい。
  88. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 抵当証券問題については先生からもいろいろ御質問がございましたし、前に当委員会でも御指摘がございまして、大蔵省、法務省そして私どもが入りまして、消費者保護の観点からも法制の整備を図りたいということでいろいろ検討を進めて、改善の措置が漸次講ぜられる状況にあると考えておるわけであります。  消費生活が多様化してまいりますと、いわゆる物質的なものよりも金融商品といいますか金融債券商品といいますか、こういったものを消費者皆さんが積極的に購買の対象にされる度合いがふえてまいりますが、目で見える消費財とかその他の商品と違って金融商品というのはなかなか難しい面がございますので、抵当証券を含めて金融商品の知識が十分におありにならない面があると思うわけであります。  そんなことで、実は私ども国民生活センターで消費モニター制度をやっておりまして、十二月の最初の週に抵当証券についての集中的なモニターを一週間実施してみたわけでございますが、いろいろな方々から要望がございました。相当回答を申し上げている次第でございますので、これからの新しい商品について一般の方々がおわかりにならないときには、ぜひひとつ国民生活センターを御紹介いただいて、そして適切に私どもの方でいろいろ御指導、アドバイスを申し上げるという措置を通じてやってまいりたいと思うわけであります。  円高差益還元については、電力料金とかそういったものについては目立ちますからいろいろな措置を講じているわけでございますが、これからはさらに非常にきめの細かい円高差益還元措置を講ずる必要がある。  例えばよく言われますけれども、うどんの中に占める小麦代金の円高差益分というのはごくわずかで、うどん一杯何百円に対してわずか二、三円だとか四、五円みたいなことを言われますが、やはりそういうことを少しずつ下げていく努力をしていかないと円高差益の還元にはならないと考えておりますので、実は私、物価局の方に指示を与えまして、そういう最終商品の格好であってもその中に占める原料価格は幾らだ、その中で円高還元は幾ら行われたかということを調べまして、それを国民皆さんに積極的に御報告するというような措置も考えていくということで、全体としての円高差益還元の額は少なくても、それはそうあるんだよということを消費者皆さんがお知りになれば、逆に商店なり料理屋の方では今度は意識していますから、多少サービスをプラスするとかいろいろな対応を考えなければならない。だから結局、円高差益が少なくても、積極的に還元できるようないろいろな方途、措置をこれから考えていく必要があると考えている次第でございます。
  89. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 これで終わります。どうもありがとうございました。
  90. 河上民雄

    河上委員長 次に、森田景一君。
  91. 森田景一

    ○森田(景)委員 時間が、予定がちょっと狂ったものですから、質問を若干変えさせていただきたいと思います。  先般経済企画庁長官は、円高差益がどのように還元されているか実態をごらんになろうということで、たしか市場とデパートの方を御視察なさったと私、新聞で拝見しました。長官が先頭に立ってこの円高に対する取り組みをなさっておるという姿勢には、私、大変敬意を表するわけでございますが、現場をごらんになってその円高差益還元の状況について、全部を御視察になったわけではないでしょうけれども、率直な御感想を最初にお聞かせいただきたいと思います。
  92. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生御指摘がございましたように、先般私、東京の芝浦の食肉市場それから日本橋と新宿のそれぞれデパートに参りました。  食肉市場では、いわゆる食肉の値段が年末にかけてどういうふうになるのか。それに対して輸入牛肉を放出いたしまして、小売価格も下げて、売り出し価格も下げてまいったわけでございますので、それがどういうような影響を与えているかということを視察してまいったわけであります。そうした輸入食肉の放出によって、特に十二月は前年同期より四割ぐらい余分に放出したいという話でございますので、ややもすれば上昇ぎみだった値段が、一般の牛肉の値段も安定してまいったということでございますし、関係者に聞いても、結局食肉が高いときに一番大事なのは、食肉の生産者にとっても、すなわち畜産農家も子牛の価格が上がってしまうわけですね。高い子牛をつかまされて、出るころは下がって損だということで、メーカーの生産者自身も食肉安定を望んでいるということで、消費者生産者も非常にいい結果を見ている、こういう感じでございました。  実は、デパートは主として贈欠品を中心に、特に年末年始、クリスマスで贈答品が大きく出回るものですから、円高差益還元によって、外国からいいものを従来よりもずっと安い価格でクリスマスやお年玉の贈答品に使える、こういうことがどうなっておるかということを見てまいったわけでございます。物によっていろいろ差がございますが、少なくとも直で入っているものは二割から三割、円高を反映して下がっている、こういうことでございます。しかし、総代理店を使って入っているものは直接響いてこないし、それから特定銘柄商品、ヨーロッパなんかのものはむしろ足元を見て、安くなくても売れるじゃないかということで向こうから上げてくるということがあって、必ずしもはかばかしくない面もございます。慨して、安くなったものには札がついていまして、これは円高によって安くなりました、お買い得です、こういうことを指示されておりますので、それを見て還元されたものを選んでお買いになれば、それなり円高差益の還元を消費者としてお受けになる状況にあるということで、大変よかったと思って見てまいった次第でございます。
  93. 森田景一

    ○森田(景)委員 大臣が現場を御視察なさるということについては、現場担当者は余り歓迎しないかもしれませんけれども円高差益還元ということについて実際に現場をごらんになるということは、それだけ大きな国民の利益につながるわけでございます。大臣が視察なさるということをあらかじめ聞いて現場の人たちもそれ相応の対応もあったのじゃないか、こんな推察もするわけです。円高で利益を受けている方もありますが、困っている方はたくさんあるわけですから、利益を受けている方々はそれを国民に還元するということで、皆さん方も大変ですけれども、どうぞ今後とも先頭に立ってこのような視察を実施していただければ幸いと思いますが、今後の御決意はいかがでございましょうか。
  94. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 御指摘のとおり、率直に申しまして売る方の立場に立ちますと、仮に仕入れが安くなっても従来と同じ値段で売れれば、今度はそれだけ利益、マージンがふえるわけですから、その方がいいというお考えの方も決して少なくはないと思うわけであります。したがって、円高で安くなっているはずだ、安くできるはずだということをもっともっと消費者の側が意識して、積極的に対応されることが必要だと思うわけであります。デパートのクリスマス、年末セールでも下がっておりますが、デパートでもっと大きく円高還元特別クリスマスプレゼントセールみたいなキャンペーンをするとすれば、あるいはもっと弾む気がするのですね。一応、円高差益で安くなっていますということをちゃんと札で書いてございますが、この際もっと積極的に円高差益を思い切って還元して消費者に喜んでいただいて、デパートとしても大いに売り上げを伸ばす、こういう積極的姿勢がもっとあればいいんじゃないかと思って、そのことは売り場を見て私は関係者によく話をしてまいりました。
  95. 森田景一

    ○森田(景)委員 御苦労さまでございます。私は、これからもデパートだけではなくして、円高差益の還元される部分がたくさんあるわけですから、そういう現場も御視察なさる決意がおありですかとお尋ねしたのですが、時間がありませんので、ぜひやっていただけるだろう、こういうふうに期待しまして、この問題は終わらせていただきます。  円高差益還元につきまして、航空運賃の方向別格差、輸入航空券の問題について、先般私もこの委員会でお話しさせていただきました。当時、担当の運輸省の方も、この航空運賃の格差是正については努力をするという御回答でございました。その後どのように努力なさってこられたのか、その経過あるいは結果について御報告いだだきたいと思います。
  96. 平野直樹

    ○平野説明員 お答えいたします。  円高に伴います国際航空運賃の方向別格差の是正につきましては、一連の総合経済対策に基づきまして措置をとってきたわけでございまして、つい最近、これは十二月一日でございますけれども、次のような措置を講じたところでございます。  一つは太平洋線でございますが、日本発の普通片道運賃一〇%値下げをいたしました。二番目としましてはオセアニア線でございますが、日本発の普通往復運賃の七%値下げ、同時に向こう発の普通片道運賃を一〇%値上げしております。第三番目といたしましては東南アジア線につきまして、日本発のアペックス運賃、これは事前に買いますと普通運賃の四〇%程度の割引になるものでございますけれども、こういうものを導入したわけでございます。  ただし、この中でニュージーランド関係等につきましては、相手国政府がまだ手続をとっておりませんので、十二月一日現在ではまだ発効していない、こういう状況でございます。
  97. 森田景一

    ○森田(景)委員 いろいろと努力をなさっているようでございますが、まだまだ先般質問いたしました内容についての十分な対応ではない、私はこのように思いますので、今後とも格段の努力をお願いしたいと思います。  先般質問いたしました後、航空運賃問題懇談会というのを発足させているようでございますが、輸入航空券を含めまして十分な対応をお願いしたいと思います。特に、先般通りました補正予算の中でも、政府の方が円高差益について対応した結果が出ておりました。いただきました資料によりますと、電気、ガス代、燃料費で三百六十二億円差益が出たということで、これを減額してほかの項目に有効に使うということが先般の補正予算で出ております。政府がこういう姿勢で臨んでいるわけですから、もう少しPRしたらよろしいんじゃないかと思うのです。ですから、こういう航空運賃等につきましても、十分な円高メリットが還元できるように御努力いただきたいと思います。  実は、これから円高による中小企業の問題についてお尋ねするわけですが、時間が余りありません。そこでまず、私ども公明党は、先般円高不況に悩む中小企業の調査を行いまして、現場でいろいろなお話も承ってまいりました。その中で、特に電力料金が原価に占めるウエートがかなり高い業種があります。例えば播州織といった織物などは、電力料金が三〇%ぐらい原価のコストに入っているそうです。できれば工場の電力料金を今の料金よりも三〇%ぐらい値下げしていただければ危機をかなり打開できる、こういう要望もありました。  それから、今回地域指定が行われました。先般国会を通りました特定地域中小企業対策臨時措置法によって地域指定がなされたわけですけれども、これは業種転換をするという大きな方向づけがあるわけですが、実際、工場で働いている勤労者がほかの仕事に移るというときに、長い間その仕事をやっているからほかの仕事ができない、そのためには政府でやっております職業訓練校を充実してほしい、こういう話がありまして、実は播州織の現場視察、調査しましたときに、あそこには地域の職業訓練センターというのがありまして、これは企業の職業訓練センターですから織物の関係の技術の習得に力を入れているわけです。ほかの業種に転換するのですから、ほかの職業訓練を受けたい、それには加古川市という遠くのところまで行かなければならない。この職業訓練センターを職業訓練校の分校にして、そして活用していただければ、業種転換するにしても、今度は勤労者の職業転換にしましても大変スムーズにいくんだが、ぜひ努力してもらいたい、こういう要望もありました。  そういうことですから、時間の関係で、電力料金を三〇%、特定地域がこの間指定されたわけですから、せめてこの特定地域の中の工場については三〇%値下げするという、こういう特例でもつくって、今本当に瀕死の状態にいる中小企業を、円高で苦しむ中小企業を救わなければいけないんじゃないか、こういうふうに率直に感じてまいりました。  この二点だけ、ひとつお答えいただきたいと思います。
  98. 清川佑二

    ○清川説明員 お答え申し上げます。  電力料金という観点でございますが、電力料金がこの織物の問題あるいは中小企業において非常に重要なコストを占めているという御指摘でございます。私どもとしても、この問題について非常に重視しております。ただ、電気料金は、やはり起こったコストを埋め合わせる必要があるということ、それから需要家間の負担の公平といいますか、差別のない料金であるという必要がございますものですから、特定の需要家に政策的な形で料金を適用するということは困難なのでございます。  ただ、しかしながら、先ほど御指摘のありましたように、特定企業の中小企業対策ということで、業種の転換とかいろいろな転換が行われていく、その際に、例えば電力料金が、違う業種になったためにあるいは移転したために高くなるというようなことにつきましては、できる限りのことをしてまいりたいと思います。現在の運用をいろいろ考えながら図っていきたいと思うわけでございます。  なお、それ以上に、やはり電力料金を引き下げるということが大事でございますので、この燃料費に生じましたメリットにつきまして、なるたけ広く還元するように努力してまいりたいと思います。
  99. 大月和彦

    ○大月説明員 お答えいたします。  円高不況に伴います大量の離職者が発生した場合には、私ども、一般的には地元、近くにある県なり雇用促進事業団が設置しております公共職業訓練施設で受け入れて、これで再就職の促進を図る、こういうことになっているわけでございます。しかし、最近のように特定地域で大量の離職者が発生するような場合には、それではなかなか応じ切れない場合がございます。そういう場合には、そういう公共訓練施設だけでなくて、各種学校とか専修学校とか、そういうほかの教育訓練機関に私どもの方から委託して訓練をしてもらうとか、あるいは事業主の団体なり、場合によっては企業が行っている訓練にもお願いして職業訓練を行っていく、こういうように非常に機動的に対処することとしているわけでございます。  それで、今御指摘のありました西脇地方を中心とする、要するに播州地域の離職者対策でございますが、御指摘のとおり、そこにはずばり公共訓練施設はないわけでございまして、神戸とか姫路とか加古川に場合によっては行ってもらっているわけでございます。ただ、離職者の発生の状況によりまして、あるいは離職者の方々の訓練の受講する職種といいますか訓練科の希望の中身によりまして、今申し上げましたような各種の施設を使うと同時に、もし大勢の方が同じような訓練を受けたいという場合には、私ども、そこに分校といいますか、一時的に施設をつくりましてそんなことも実施したい、こう思っております。  なお、もう一つの御指摘の点の、地域職業訓練センターをそこに利用できないか、活用できないかという点でございますが、これも当然そこに、地元にあるわけでございまして、地元の織物業者を中心として教育訓練を行っているわけでございますので、もし離職者の希望なりあるいは大勢いた場合には、そういうものを活用しまして適当な職業訓練も実施したい、このように考えております。
  100. 森田景一

    ○森田(景)委員 時間が経過しまして恐縮でございます。  いずれにしても、この円高不況に悩む中小企業の実態は大変な状況でございますから、やはり緊急に対応していただかなければならない問題がたくさんあるわけです。そういう点につきましてひとつ経済企画庁長官の格段の御努力をお願いして、質問を終わります。
  101. 河上民雄

    河上委員長 次に、北橋健治君。
  102. 北橋健治

    ○北橋委員 民社党・民主連合の北橋でございます。長官並びに政府委員の皆様方大変お疲れだと思いますが、もうしばらくおつき合いのほどをお願い申し上げます。  まず第一に、税制改正、いよいよ大詰めを迎えておりますが、日本型付加価値税、売上税の導入がほぼ固まりつつあると聞いております。そこで、私どももこの導入に当たって懸念することは、消費者物価がそれによって大幅に上がるのではないかということでございます。  これについては、十月十四日に大蔵省が試算を発表しておりまして、政府税調改革案に関する大蔵省の試算によりますと、六十二年度を想定した場合、物価上昇率は従来の場合に比べて一・八%程度高くなると計算されております。ただ、間接税導入の際に、外国の事例なんかを見ますと、大幅に消費者物価が上がった事例もございます。例えばイギリスでは、七九年に付加価値税率を改正したときに、翌年二〇%を超すインフレという事態が生じております。  こうしたことから、経済企画庁としては、まだ間接税導入が決定された段階ではございませんけれども、仮にでの話でございますが、どのような消費者物価への影響が出ると見込んでおられるか、お伺いします。
  103. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 今審議をなされておりますこの間接税でございますが、一応五%ということを考えれば、単純に考えますとその五%分上がって、それが転嫁されればその商品については五%の値上げになる、こういうことでございます。ただ、その場合に税率もこれからどう決めるかわかりませんし、また同時に、例えば食料品とかサービスとか、どの程度の商品がいわゆる非課税商品になるのか、これからの議論でございますし、また同時に、言われておりますが、取引一億円以下は課税をしないとかそういうのもこれからの議論であれば、従来既にいわゆる物品税がかかっておりますね、そういう物品税、まあ酒税のようなものも今度はどういうふうにこの場合調整されるのか、そういうことがまだ確定しておりませんので、現段階で、売上税対象になる商品が、全体の日本で取引される商品、サービスを含めて何%、何割になってどうだということがわからないものでありますし、客観的にこれがどういうような物価を押し上げることになるのか、今のところ当庁としてはきちっとした計算はできていない状況でございます。
  104. 北橋健治

    ○北橋委員 事務当局にお伺いしますが、経企庁としては、そうしますと大蔵省の出してきた仮定試算については、おおむねこんなものであろうという評価は与えておられるのでしょうか。
  105. 海野恒男

    海野政府委員 ただいま大臣お答え申し上げましたように、税率がどのくらいになるのか、あるいは課税対象あるいは非課税対象がどうなるのか、一億円以下のいわゆる非課税、免税の店のビヘービアがどうなのか、それからその他いろいろな条件がございますので、そういった不確定の要因がございますので、数字について今コメントするということはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、大蔵省の数字消費デフレーターというものでございまして、消費者物価ではございません。そういう意味で、消費デフレーターと消費者物価とは若干違いますし数字自体も範疇の違うものでありますので、直ちにコメントできないという状況でありますが、感じとしては、大蔵当局が計算したものも一定の条件があるかと思いますけれども、そう大きな計算の違いはないと私どもも思っております。ただ、条件がまだ決まってない段階での計算でありますので、私どもとしては何ともコメントができない、こういうことでございます。
  106. 北橋健治

    ○北橋委員 この問題については、民間の金融調査機関では三%程度の上昇が見込まれるということで、大蔵省の考えているようなものとは異なる見解も出されておりますので、また後日改めましてお伺いさせていただきます。  次に、当面する経済情勢についてお伺いします。  私の出身である八幡の方でも、鉄鋼産業の不振で大変苦しい事態に陥っております。政府の方は今年度の経済成長率の見込みについて、四%に限りなく近づけるという目標でこれまで来ておりますが、地元の北九州の経済情勢を見る限り、到底そのようなことは不可能ではないかと思わざるを得ません。  そこで長官にお伺いしますが、長官は十月末の講演会におきまして、年度内に総合経済対策をおおむね消化できれば四%に近づいていく、あくまでも四%達成を目指されるお考えを示しておられますが、現時点においてどのようにお考えでございますでしょうか。
  107. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 最近、私ども発表いたしましたいわゆる昭和六十一年度の第二・四半期のGNP四半期速報値を見てまいりますと、季節調整済みで前期比〇・六%増でございます。これは四―六月期の〇・九%に対して、さらに多少下がったわけでございます。ただ、この〇・六%でございますけれども、構成要素に分けてまいりますと内需が〇・九%伸びて、しかし外需が〇・三%マイナスで差し引き〇・六%、こういうことになっているわけでございます。第一・四半期、四―六月期も、内需がふえつつも外需が減って全体として減らしている、こういうことになっているわけであります。  そういうことでございますので、これは前年対比で申し上げますと七―九月期が二・四%、そして四―六月期、前期が前年同期比で二・二%でございますけれども、実は内需だけをとりますと前期四―六月期が四・二%、そして七―九月期は四・三%と内需だけでは寄与度がふえておって、しかし外需で四―六月期が二・〇%マイナスで、七―九月期が一・九%マイナスでございます。  さらに内部を子細に見てまいりますと、民間設備投資は下がっておっても、政府の支出がふえて経済を押し上げてきている。ですから、私どもは内需振興による経済成長の達成、こういうことを言ってまいりました。そのために、公共事業予算を前倒しして執行する。それから、先生方も御協力いただきましたいわゆる三兆六千億の総合経済対策、その基礎になる一兆四千億の公共事業、こういったものを積極的に消化しておりますので、内需は、この傾向でまいりますと六十年度もしくは五十九年度を上回る増大、円高による輸出関連の製造業の設備投資の伸び悩みを逆に大きく上回って、内需が増大をしております。しかし、経済政策のもう一つの目標でございます対外経済調整は、円高によって非常に進んでいる、円ベースでは進んでいる結果が、差し引きのGNP伸び率を少なくとも四―六月期、七―九月期を見る限り二%台に落ち込ませている。内需は伸びたけれども国際経済調整が円ベースで進んだ結果である、こういうふうに理解しているわけであります。
  108. 北橋健治

    ○北橋委員 結局何%になるのかという見通しは、今の御説明ではちょっとまだよくわからないのでございますが、建設省の試算によりますと、総合経済対策を完全実施しても六十一年度は二・五%程度だという話もございます。七―九月のQEを見ても年率二・六%鈍化をしているということで、大方のエコノミストの見方は三%台も微妙であるというところまで来ております。そしてまた新聞報道によりますと、経済対策閣僚会議におきまして安倍総務会長の方からも、正直にできないことはできないと言うべきではないかという御議論もあったやに聞いておりまして、経済閣僚の中でもその中心的な立場におられる経企庁長官の方からもうこの時点で、できないことはできない、あるいは四%できるのかという、その辺のところの長官見通しを端的にお伺いします。
  109. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先ほど申しましたように、外需の調整が進みまして四―六月期はマイナスが二・〇%なんですね。それから、今度発表いたしました七―九月期でも一・九%でございますから、問題はその外需によってどの程度GNPが下がるかということで、私どもは一%ぐらいの減なら、三兆六千億というのは対GNP一・一%、一・二%だから、これが消化できれば外需の一%減分はもとへ戻すだろう、こういう計算で話はスタートしたわけでございますけれども、その外需のマイナス要素が一%ほどじゃなしに二%前後だということであるとすれば、それは一%計算が狂っているわけでございますので、総合経済対策三兆六千億を入れても、それで一%強ふやしても、外需で二%ダウンすれば差し引き三%、もしくは切るようなことになるというのも、これは計算上考えられないことではないわけであります。  したがいまして、今、上半期の実績値が出ているわけでございますが、あとの下半期がどうなるか。私どもは、総合経済対策の線に沿って何としても三兆六千億のものを国の公共事業、地方の公共事業を中心に進めたい、こういうことで努力をしておりますが、その進みぐあいと、それから大きなマイナスファクターになる、しかし、これは我が国における国際経済調整ということを考えればまさに政策課題でありますから、その進みぐあいとのバランスがどうなるかということについて、実は現段階で、来年度予算編成もございますし当然来年度経済見通しもつくらなければならない、そのベースには六十一年度実績見込みを早急に立てる必要がある、こういうことで今鋭意経済企画庁で検討中でございます。
  110. 北橋健治

    ○北橋委員 鋭意検討中ということでございますので、それ以上の御質問は差し控えます。  ちょっと、質問通告はしておりませんけれども、それでは来年度の経済成長についても、まだ見方は固まっていないと思いますが、民間の調査機関によりますと大体二%台ぐらいしかいかないであろう、それぐらいに製造業の不振、円高デフレ、鉄鋼、造船等の企業城下町の経済の不振というのは深刻になっているわけでございます。頑張って三・五%前後ではないかとも言われておりますが、長官としては、来年度の経済成長率はどの程度見込んでおられるのでしょうか。
  111. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 六十年度の実績を見ましても、消費伸びはむしろその前の五十九年度よりもいいんですね。それから住宅建設は、これはもう非常によくて前年同期比十数%になっていますから、これが六十二年度どうなるか。私どもは、来年度の住宅建設投資も高水準でいくとは思いますが、問題は、六十年から六十一年に伸びたものがさらに六十二年まで伸び続けるかということについては、多少問題にする者もおりますが、何とか住宅建設促進を住宅金融公庫の融資枠の増大、できれば税制措置等を講じながら伸ばしていけば相当伸びが予想できるであろう、こういうことであります。  在庫調整については、大体このあたりで底をついたのではないか、したがってこれから在庫は上積みになってくるのではないか、こういうことでこれはプラスにカウントしていい。問題は民間の設備投資でございますが、民間設備投資だけは製造業を中心にずっと落ち込んでいて、そして非製造業伸びたものの総合で考えますと、過去五十八、五十九、六十とずっと来た流れの中ではプラスだけれども非常に伸びが少ないということで、これがどの程度内需として足を引っ張るかということでございますが、さっき言いましたように、政府の公共事業は前倒しに補正予算ということで逆に伸びておりますので、来年度の経済財政運営に当たっても、公共事業の事業量をふやすことで設備投資の低率の伸びを多少カバーすることができれば内需だけを考えますと、今年度もそうでありまずけれども相当程度の内需の拡大は期待できるし、期待しなければならないと思うわけであります。  そこで、今年度と同じでございますが、問題は国際収支の外需要件がどういうことになるかということで、これは一つのジレンマだけれども国際経済調整を進めれば進めるほど結果的にはGNPの成長率の足を引っ張る、こういう一つの二律背反する、内需は広がるのだけれども国際経済調整を進めれば結果的にはGNPの足を引っ張る、こういうジレンマに私ども立っておるわけでございますが、何とかひとつ内需拡大を成功させて、中成長と言っておりますけれども、しかるべき率の成長を何としても達成したい、こういう考えでおります。
  112. 北橋健治

    ○北橋委員 時間が限られておりますので、申しわけございませんが端的にお答えいただきたいと思います。  私どもの認識によりますと、今の円高デフレが来年も続いていくとなると国内経済は大変なことになる。特に、雇用情勢はますます悪化するということを強く懸念するものでございます。そういった意味において、もう四%成長は事実上無理である。だから中成長を維持するためには、思い切った積極的な経済財政を政府としても早急にとらねばならないということを強く主張していただきたい。その意味で経企庁長官見通しをお伺いしたわけでございますが、明確な答弁がいただけませんので先に進みます。  今、「展望と指針」についても見直し作業が進められております。昨年と比べまして急激な、異常なほどの円高、輸出の鈍化、いわゆる国内デフレの深化という問題もございますし、一九八〇年代の「展望と指針」の見直しに当たっては、これからそういった新しい時代に備えた見直し作業が進められると思いますが、新聞報道によりますと、経済審議会の中では、経済構造調整を円滑に進める、すなわち失業者の発生だとかそういった難しい問題を回避して進めていくためには、かなりの高目の成長を維持しなければならないということが広く報道されております。そして内需については四・四から四・六、そして四%程度の実質成長は確保しなければならない、このように言われておるわけでございますが、四%程度の成長が本当に維持できるかどうか、我々は非常に不安に思っております。  端的にお答えいただきたいのでございますが、一九八〇年代の残された年度において、この高目の、中成長と今おっしゃいましたけれども、今のような経済財政運営を続けておって四%成長は維持できるとお考えでしょうか。できるかできないか、端的にお答えいただきたいと思います。
  113. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 「経済社会の展望と指針」は中長期的な成長率四%というものを考えているわけでございますが、経済調整を仮に毎年百ドルいたしますと、これは一兆六千億でございますから、一兆六千億という数字GNP対比〇・五%です。したがって、四%の経済成長を達成するためには内需で四・五%拡大して、そして外需要因マイナス〇・五、差し引いて四%です。これが新聞等で伝えられている高目の成長、こういうことじゃないかと思うわけでありますけれども、それを目標といたしまして消費促進、投資拡大、住宅建設促進、そして政府の積極的な財政経済運営、金融政策、こういうものを勘案して、何とか内需だけで四%を超える需要拡大をやっていきたい。  先ほど私、百ドルと申し上げたようでありますけれども、百億ドルの間違いであります。すなわち、百億ドル国際収支を改善しようとすれば一兆六千億の外需減ということになる、こういうことであります。
  114. 北橋健治

    ○北橋委員 官民のエコノミストの見方でもいろいろございますけれども、失業率一つとりましても、三%を突破するのは時間の問題、場合によっては四、五%ぐらいに近くいくのではないかというくらい、円高デフレの将来については暗い見通しが多いわけであります。その中で、少しでも景気を浮揚させるためにいろいろな手が考えられるわけでありますが、長官にお伺いします。端的にお答えいただきたいと思いますが、公定歩合の追加引き下げを期待されますか、どうでしょうか。
  115. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 公定歩合の引き下げを私どもは期待をしておって、先般〇・五%引き下げが実現したわけでございますので、これが為替の安定そして消費、投資の促進に積極的な効果を与えるように、いろいろな措置を考えて講じてまいりたいと思っておるわけであります。
  116. 北橋健治

    ○北橋委員 中期的に四%程度の実質経済成長を確保するためには、公共投資の確保が重要な施策でございますけれども、来年度の予算編成そしてそれ以降の八〇年代後半の公共投資について、一つの目安として経済成長率の伸び以上に事業量を確保する必要があると私ども考えますが、これからの公共事業の事業量について、その名目的な経済成長率との関連で何か目安をお持ちでしょうか。
  117. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 この間、経済審議会経済構造調整特別部会中間答申がございましたが、その中でも、公共事業の伸び率を成長率よりも上回らせることが必要であるというような趣旨の文言があったと思います。問題は、最近発表いたしました七―九月期のQEにおきましても政府支出の伸び率は六%、ちょっと私記憶ありませんが、五、六%になっておりますので、これが内需を七―九月期に四・三%、対前年同期比上げている大きなファクターになっているわけでございます。したがって、来年度の予算におきましても、財政再建の枠組みの中でございますので、政府が持ち出す資金の額にはおのずから限度がございますけれども、実際の公共事業の事業量ベースでは、補正後の公共事業事業量をマイナスでない、少なくとも同程度、できればさらにプラスアルファできるような事業量が確保できるように、財政当局と今いろいろ折衝中でございます。
  118. 北橋健治

    ○北橋委員 いろいろと経企庁長官努力されていること、よく承知しておりますが、率直に経済企画庁の方から、当面の見通しについて、かなり雇用情勢の悪化などそういったところに焦点を当てて、もっと思い切った積極的な経済財政運営に転換されることをもっと強く主張していただきたいと期待しておるものでございます。  これからの景気を考えますと、鉄鋼、造船は特に顕著でございますけれども、現在の異常なほどの高過ぎる円高が続いていく限り、大変な事態になってまいります。先ほど小野信一委員の方からも御指摘ありましたように、鉄鋼大手五社だけでも、今の一ドル百五十円台が続いていきますと、百五十円、百六十円ぐらいのところを推移していきますと、四年後には半分近い人たちが離職せねばいけないというぐらいの厳しい事態に追い込まれるわけであります。  さきに経済企画庁に御質問しましたときには、大丈夫、そんなこと心配しなくていい、サービス業だとかそういったところで雇用が吸収されると。マクロではそのように言えるかもしれませんけれども、実際に今まで鉄をつくっていた人たち、船をつくっていた人たちが、しかも中高年の皆様方が、地域において一体どういうサービス業につけばいいのでしょうか。北九州をくまなく見る限り、大手三社の鉄鋼産業もございます、関連企業もたくさんございますけれども、このような円高デフレが続いていくと、新たなサービス業、第三次産業に移動しようと思っても大変なことであります。だから、ミスマッチというのは非常に厳しい事態になっていると我々は判断しております。  そういった意味で、現在の異常なほどの高過ぎる円高が続く限り、前川レポートあるいは経済審議会議論されておりますように、経済構造調整の円滑な転換を図っていくことは極めて困難である、やはりもう少し円安に戻すことが絶対的に不可欠だと私どもは思っておるわけでございます。宮澤大蔵大臣は、この点に関して十一月中旬の時点におきまして、今の円高はまだ高過ぎるということを明快に言い切っておられます。私は、鉄鋼、造船を初めとして構造転換を余儀なくされている、そしてその地域が非常な不況に陥っているという事態にかんがみるときに、構造転換が円滑に進むようにするためには、やはり百八十円前後の円安に戻すことが不可欠であると考えるものでございますが、経済企画庁長官としては、今の円高水準でもうよしとされるのか、それとも政治による介入は難しいとしても百八十円前後を期待されているのか、それともこれで満足されているのか、端的に長官の御見解をお伺いします。
  119. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 今の百六十円ではとても厳しいから、百七十円、百八十円にしてほしいという要望を私どもはあっちこっちから聞いておるわけでございますので、そのお気持ちは十分にわかります。現状、わからぬわけではないわけでありますが、ただ、率直に申しまして、現在百六十円で日本国際収支の黒字幅が、ことしが経常収支でも九百億ドル前後かな。来年、さっき言いました百億ドル減らすということも、GNPの中で〇・五%、〇・六%マイナスであるというような状況の中で、ことしの黒字が来年も減らしても相当続くだろう。日本のいわば外貨蓄積といいますか、対外債権がずっと拡大する状況の中で仮に百七十円、百八十円に戻って、片っ方で経常収支黒字が大幅に続くような状況ですと、また再び円レートの高値調整によるところの経済調整、国際経済調整ということに対する圧力なり世界的な動きというものが、ここで惹起しないという保証は全くないわけであります。  ですから、私は個人的には、それは何とか円安を進めていきたいと思いますが、しかし、仮にこれが一たん進んでまたもう一回もとへ戻ってくる、すなわち、円レートの急激な上昇、下落というものがもしも起ころうとするならば、それよりも現在の百六十円の円レートをまず底として安定させて、これを続けることによって輸出企業を中心として一つの安定したレートのもとにおける企業の体制づくりといいますか、体制改革、体制適応というものを進めていただくことの方が、ずっと円安を続けることができないとすれば、むしろ最低、ここで安定したレートを基準にして企業体制、企業の対応をお考えいただくことの方がベターではないかな、こういう感じでおりますことを率直に申し上げておきたいと思います。
  120. 北橋健治

    ○北橋委員 この問題についてもう少し突っ込んで議論させていただきたいのでございますが、時間が限られてまいりましたので先に進めさせていただきますが、あと二つほど残しております。  一つは、電力、ガス料金の円高差益の還元問題でございます。来年から再引き下げをするということが決まっておるようでございまして、我々はそれを率直に歓迎するものでございますが、例のオイルショックのときに新増設の工場向けの電力については割高な料金、三段階料金制とか、そういったオイルショックを背景とした料金体系というのが今残されているわけでございますが、一律に再引き下げするということとあわせてこの料金制度の抜本改定を図るということは、産業界の特に円高で非常に苦しんでいる業界にとっては極めて緊要の課題でございます。そういった意味で、これは所管は通産省でございますけれども、電力料金については今後早急に料金制度の抜本改定に踏み切るべきではないかと考えますけれども経済企画庁長官としてそういった考え方についてどのようにお考えになられますか、お伺いします。
  121. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 これも先生、大変大事な問題でございまして、私ども内部で検討しているのですが、新しく企業をつくるとか増設した場合にはおっしゃるような割り増し料金になる、これはまさにドル高とかオイルショックのときの対応でそうなっているわけでございますが、これをもとへ戻して、今やもうキャパシティーがふえて余っているぐらいだからもう戻すべきだという議論がございます。これはある意味では、成長セクターの企業の方々に強い要望があるわけですね。逆に、例えば非鉄とかそういったような電力多消費でむしろ縮小しているような企業は、外に新たに工場を持っていくようなことはありませんので、むしろそうした電力多消費で縮小期にある企業については特別料金をつくって、全体、一般料金は下げるわけにいかなければ、もしくは、下げるよりも不況対策として特定の、自分たちの電力料金が安くなる措置を講じるべきだ、こういう強い御要望があって、それぞれ電力料金についていろいろ、お立場はお立場、御事情は御事情でおっしゃることが違うものでございますので、なかなか一律に取り扱われない面がございますが、率直に言って、私の基本的な考え方は、やはり一律料金を下げる中で、石油が値段が高かった、電力の供給キャパシティーが少なかった当時に考えられたような料金制度は、漸次見直しの方向で検討していくべきじゃないかと考えているわけであります。
  122. 北橋健治

    ○北橋委員 経済閣僚間におきまして、今、円高デフレで苦しんでいる産業界の構造転換を円滑に進める見地からも、早急に料金体系の抜本改定に向けてぜひひとつ御尽力をいただきたいと思います。  残された最後の質問でございます。通産省にお伺いいたします。円高差益の還元を一層推進していくためには、流通機構の改革が不可欠であります。かつてサッチャーさんもイギリスの議会で、日本の円安と流通機構の複雑さが対日輸出を妨げているとはっきりおっしゃったこともございます。流通機構の改革については、通産省もこれまで鋭意御努力されてきたことを承知しておりますが、一点だけお考えをお伺いします。  といいますのは、百貨店、スーパーが出張販売で外国製品の販売を大々的にする場合に、日数制限というのが設けられております。これは、もちろん関連中小企業との調整のことを配慮されてのこととは聞いておりますが、国際化の波を乗り越えて日本経済大国としてこれから前進していくためには、やはりそういった国内の難しい問題も乗り越えていくことが必要でありまして、通産省もその見地から中小企業の振興を図るべきであります。そういった意味で、円高差益を一層還元する、そして海外から批判されている日本の流通機構について思い切った改革をしていくという見地から、現在ある大型店の出張販売の日数制限を撤廃もしくは大幅に緩和したらどうかと考えますが、通産省の御見解を伺いまして、終わらしていただきたいと思います。
  123. 雨貝二郎

    雨貝説明員 御説明申し上げます。  百貨店、スーパー等の大型小売業者は、御指摘のとおり輸入品の販売促進に一生懸命取り組んでおりまして、その一環としまして出張販売も行っております。こうした出張販売の期間につきましては、実は昨年の市場アクセス改善のためのアクションプログラムにおきましてかなり弾力化したところでございます。従来は出張販売の期間は三日以内というふうにしておりましたところを、昨年八月から十日以内というふうに直したところでございます。  で、最近のこうした出張販売の期間について実績を見てみますと、三日以内が六割強、六日以内が九割強ということで、実態的には十日以内ということでそれほど支障は生じてないのではないか、こういう見方もできるところでございますが、なお、輸入品の販売促進の一環としての出張販売期間のさらなる延長問題につきましては、こうした実績をもよく考え、また百貨店、スーパーの要望あるいは周辺中小小売業の意見等も踏まえつつ今後とも適切に、先生の御指摘をも考慮しつつ対処してまいりたいと考えております。
  124. 北橋健治

    ○北橋委員 終わります。
  125. 河上民雄

    河上委員長 次に、岩佐恵美君。
  126. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 まず、銀行の手数料についてお伺いをしたいと思います。最近、相次いで銀行の手数料が大幅に引き上げられています。また、新設手数料もつくられているわけでございますけれども、大蔵省にお伺いいたします。実態をつかんでおられますでしょうか。
  127. 鏡味徳房

    鏡味説明員 金融機関の各種サービス等の手数料につきましては、基本的には顧客の利便性とコストを勘案しながら金融機関が自主的に決定しているところでございまして、これにつきましては当局の認可とか当局に対する届け出等はございません。したがいまして、膨大にわたります各種手数料につきましてそのすべてについて私どもが把握しているわけではございません。
  128. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 五十三年当時には一覧表で資料として出しているわけなので、今の御答弁は納得できないわけでありますけれども、時間がありませんので、私ども自身が調べました六十一年十一月現在の手数料についてちょっと申し上げたいと思います。  例えば手形・小切手帳の発行手数料でありまずけれども、小切手帳の発行手数料、五十三年当時百円であったものが現在は四百円、四倍になっています。それから専用約束手形用紙、一枚三十円のものが現在では五百円になっています。それから専用口座の開設手数料、新設されまして三千円です。それから為替の取引手数料でありますけれども、為替の手数料、至急が三百円、普通が二百円であったものが、現在この区別なしで八百円に上がっています。それから文書については、一万円以上百五十円、一万円未満百円だったものが、三万円以上六百円、三万円未満四百円となっています。それから至急(ウナソウ)、普通(ソウキン)、これが三百円、二百円だったものでありますけれども、やはりこれも区別なしで現在八百円ということです。それから代金の取り立て手数料、これがやはり至急が三百円、これが現在八百円。それから普通が二百円、これが現在六百円。大幅な引き上げになっています。それから貸し金庫については、月間百五十円だったものがもう五千二百円と、これはある銀行の例でありますけれども。それから自己あて小切手発行手数料、無料だったものが、今一枚当たり五百円。それから日銀の小切手発行手数料、無料であったものが千円。それから通帳・証書・各種カード再発行手数料、これもやっぱり無料だったものが、今一件につき千円。それから残高証明書の発行手数料、これがやはり無料であったものが二百円。こういうことで、非常に銀行の手数料が上がっているわけであります。  今、円高不況のもとで中小零細業者、事業者、消費者が苦しんでいるときに、都銀十三行のことしの九月の中間決算、経常利益が七千三百二十九億円、前年同月比で三四・四%増。それから当期利益も三千四百八十七億円と二五・九%増になっています。大幅に利益がふえています。それなのにこのような手数料の引き上げは許せないということで、国民の間から怒りの声が上がっています。大蔵省は、この手数料について引き下げの行政指導を行うべきだというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  129. 鏡味徳房

    鏡味説明員 金融機関の各種手数料につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、金融機関がコストとそれから利用者利便という面を勘案しつつ、そういった手数料を決めていくところでございますし、先生の御指摘のあった年代間でも、例えば印紙税が倍に引き上がっているとか、コストについてもいろいろ上昇要因がございます。いずれにしましても、こういったものにつきましては金融機関が自主的に判断しつつ決めているところでございまして、私どもが銀行を監督しております銀行法によりましても、その目的の第一条第二項には、金融機関の自主的なこういったものについては経営判断を尊重しなければならないというようなことが書いてございます。したがいまして、そのような金融機関の自主的な判断によって決められている手数料体系については、これを尊重していく必要があろうかと思っております。
  130. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 これは、第一勧銀の為替自動振込機のリーフレットなんですけれども、窓口で利用者が伝票に必要な全額を記入して、そして銀行の人が今までは機械を操作していたわけですね。ところが最近では、利用者自身に機械操作をさせる。しかも、手数料は大幅な値上げを先ほど申し上げたようにされているわけです。こんな不合理なことはないということで、利用者はもうかんかんになって怒っているわけです。  それからある銀行では、同一店内の振り込みについても、百円から三百円の手数料を取るということを決めたというのです。利用者に知らせたんだけれども、これは何か大蔵省が認めなかったということで、どうもあいまいになっているということだそうです。今、公共料金の口座振替手数料、これも大幅値上げの動きがあるというふうに伝えられているわけですけれども、こういう状態を大蔵省が、たとえ今いろいろ理由を述べられましたとしても、全く放置するというのはおかしいと思うのです。再度伺いたいと思います。
  131. 鏡味徳房

    鏡味説明員 先生の今御指摘のあった事項につきましても、例えば機械と窓口とで手数料が違うというようなことはないと承知しておりますので、その辺につきましても必ずしもその御指摘、私ども明快に理解ができない部分もございますが、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げていますように、金融機関の各種手数料につきましては、コストと金融機関のサービス、利用者利便というところを総合的に勘案しつつ決められているところでございまして、銀行法第一条第二項にも、「銀行の業務の運営についての自主的な努力を尊重するよう配慮しなければならない。」という目的規定もございます。こういったものについては、金融機関がいろいろなコストの節減努力をする中で、利用者利便、利用者の納得を得ながら決められていることでございますので、こういった判断を尊重していく必要があろうかと考えております。
  132. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 利用者は、機械化されて値上げをされる、そんなものは納得できない、こう言っているわけです。手数料の大幅な引き上げについてある金融の学者は、金利が自由になった大口預金を集めるため、銀行は、大口利用者への預金金利を上げる結果、コストがかさむ、利ざやが少なくなる、それに、業務のコンピューター化のためさらに膨大な設備投資をしようとしている、その穴埋めの一つとして手数料収入をふやそうとしている、こういうふうに指摘しておられるわけです。まさに、利用者は犠牲にされているという事態だと思います。  日銀の統計によりますと、個人部門の五十万円未満の金額階層は、いわゆる要求払いと定期性の預金は一口五万八千七百九十三円であるという数字が出ているわけです。この金額の口数のシェアは八八・三%です。仮に、これをすべて一年定期とした場合、利息は二千二百十円になります。これは、今申し上げたように、一回の振り込み手数料が六百円から八百円になっているわけですから、年三回か四回送金すると利息は全く帳消しになってしまう、そういう計算になるわけです。ですから、手数料の引き上げというのは、八八%以上の小口利用者にとっては、結局マイナスの金利になるという結果になるわけです。  金利が自由化されて、銀行手数料収入をふやそうと手数料を大幅に上げたアメリカでは、今、いろいろな問題が起こっているわけです。例えば、これは八四年七月四日の読売新聞でありますけれども「米、小口預金者に負担増」「高利回り商品を生み出しているアメリカの金融革命は、その一方で消費者に様々な形の手数料を押しつけ、とくに小口利用者には大きな負担となっている」「アメリカの金融機関が、八三年中に利用者から徴収したサービス手数料は、約百億ドル。四年前に比べ、倍増している。しかも、手数料は、銀行の収益の三〇%にも達している」こういうことが指摘されています。  それから、アメリカの下院銀行委員会委員長の委託を受けて、アメリカ消費者連盟が銀行の一斉調査を行っているわけでありますが、この調査結果について、原文で入手し、私どもの方で翻訳したものがあるのです。全米規模の銀行・貯蓄機関調査アメリカ消費者連盟CFAというもので、全米十五の大都市で二十以上の支店を持つ百五十以上の銀行及び貯蓄及び貸付機関を調査したものですが、調査概要によると、消費者はますます銀行サービスを利用できない。全世帯の半数以上が預金利息を超える手数料と料金を支払っている。貧困及び低中所得世帯は今や効果的な当座預金または貯蓄選択ができない。それから、一九七七年から八三年の間に、NOW口座を持つ世帯の割合は八一%から七九%に低下した。これは、非採算支店、利益を生まない支店の閉鎖、それから小口預金の料金をふやしたこと、そういうことが指摘されているわけです。アメリカでは大変重大な事態が起こっているわけであります。  「金融財政事情」という雑誌によりますと、「銀行手数料が高いという批判が最近米政府主催の会議で取り上げられ、ライフライン・バンキング預金の実例が紹介された。低所得層に基本的銀行サービスを無料または低料金で提供するもので、これを法制化した州もある。」ということで、今そういう事態にもなっているわけです。  日本の銀行が、今の大蔵省のように、全く銀行に任せますということで、何ら監督もしなければ規制もしないというようなことでいきますと、まさにアメリカみたいな事態になる、私たちはそのことを非常に恐れているし、またそういう危険を指摘しないわけにいかないのです。大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  133. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生御指摘のように、銀行手数料が上がることについては、一般庶民の預金者または利用者にとって大変なことだと思います。ただ、大蔵省の方から説明もありましたように、そういう手数料はいわばサービスに対する対価といいますか、負担でございますから、銀行としてもいろいろ人件費等が上がっていけば、それに見合っての多少の対価を要求したくなるというのも経営上わかるわけでございます。ただ、コンピューター化とかいろいろなカード化を進めることは、人件費をそれで減らすことが経営としてよくなるので、人件費もふえれば、コンピューター、機械化による経費も上がるということでは、どうも理屈に合わないような気がするのです。人件費を減らしてコンピューターとかによって多少経費が上がってきても、差し引きバランスをとるというようなことではないかと思うわけであります。  いずれにしても、銀行に限らず、こうしたことは個々の企業の経営にわたることでございますので、多少は彼らに任せる面があると思います。ただ、最近いただきました経済審議会経済構造調整特別部会中間答申の中でも触れられておりますが、今後合理化を要する分野として、よく言われている農業だけではなしに、金融も他の業界にならってもっともっと合理化をしてもらいたい。従来のように、いわば過少貯蓄時代で需要が大いにあった時代から、今や過剰貯蓄時代に状況が変わっているわけですね。そうすれば、銀行間の競争というのが今後もっともっと進んでくるし、その中で銀行相互間の経営の合理化ももっともっと進められていくのではないか、私どもはそのことを期待しているわけであります。
  134. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 今私が問題にしているのは、消費者が犠牲になる、これは大変なことになりますよということで、経済企画庁として、消費者の立場に立って、大蔵省はああ言っているわけですから、やはりきちっと何らかの対応をしていかないと大変な事態になるということを申し上げているので、大臣の基本姿勢をお伺いしたい。消費者の立場に立ってどうされるのかということです。
  135. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 最近、一般の家庭の主婦も金利に対する選好が非常に高くなってまいりまして、金利差によって、ある銀行から違う銀行に、または証券投資とかいろいろなことでどんどん余裕資金をかえておられるのが現状でございます。私が競争と申し上げましたのは、そういう形で、ある銀行が他の銀行よりも手数料を高く課すというようなことになると、利用者の側で、おのずから手数料の安いところ、サービスのいいところに変わっていく、このように消費者側で、一つのマーケットメカニズムの中で費用を勘案し選択をする。私は、銀行といえどもサービス向上というのを当然やらざるを得ない状況にますますなってくるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  136. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 どうも時間がないので、そこのところ余り議論ができないのですけれども大臣、そうなっていないわけですね。手数料は今どんどんと一方的に上げられているわけですね。それは、多少は手数料の上で競争があるかもしれないけれども、しかし利用者にとって、そんなにあっちの銀行、こっちの銀行と手数料で選択できるような状況じゃないわけですね。やはり先ほど申し上げたように、アメリカでああいう深刻な事態になっているのも、そうじやないからこそああいう事態になったので、そこのところをきちっと認識をしていただきたいというふうに思うのです。  次に消費者ローンの問題に移りたいと思いますので、これとあわせてちょっと今の基本姿勢を御答弁いただきたいと思うのですが、消費者ローン金利の引き下げ、これについては当然のことだというふうに思うのですけれども、一%という話があるようですが、一%というのは非常に少な過ぎるというふうに思っています。公定歩合は、第四次引き下げで史上最低になっているわけですね。そして、企業向けの貸出金利というのは大幅に下がっている。ところが、消費者向けローンの金利だけが高どまり、そういうことで消費者は納得できないということであります。  「金融財政事情」誌、八五年八月五日号ですけれども、これに都銀の企画担当者が匿名座談会をやっているのです。ある担当者は、「カードローン残高は、国内貸出残高の約三〇〇分の一。これに対して収益に占める割合は一〇〇分の一程度だろう。どれだけ効率的かがわかる。」「融資シェア三〇〇分の一に対して国内部門収益シェアは五〇分の一ぐらいにはなるだろう。」消費者ローンは「六倍の収益効果があるわけだ。」また、別の担当者は、「当行もほぼ同じだ。カードローン残高が三〇〇〇億円になれば左うちわだ(笑)。つまり、消費者ローンは、今後、銀行収益の大きな柱になることはまちがいない。」こういうふうに述べているわけですね。こんな利益を上げながら、わずか一%の引き下げでは不十分だというふうに思うのです。先ほども申し上げたように、都銀の中間決算というのは大変いいわけですね。史上空前の利益を上げている。配当も増配が検討されているということでありますので、この点について、先ほどの答弁とあわせてちょっと大臣の、消費者サイドに立った基本的なお考えを伺っておきたい。それで、時間がないのでひとつ簡潔にお願いします。
  137. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 手数料については、先生の御指摘もよくわかりますので、改めて私の方で検討いたします。  それから消費者ローンにつきましては、これは全く御指摘のとおりでございまして、私も、この問題について総理ともお話をしてまいりましたし、庁内でもいろいろ検討し、また関係筋にも話を実は進めております。公定歩合が下がって、そしてプライムレートが下がって、貸出金利が下がって、預金金利も下がった、しかし、消費者ローン金利だけは依然として前の数字ではおかしいじゃないか、こういうことでこれは実情を今調査しておりまして、近く国民生活審議会にもお諮りをいたしまして、何とか銀行関係者の方々にも、これはある意味円高利益の還元みたいなものですから、したがって円高を還元して物も安くしていただく、金利も下げていただいて、そういう形で思い切って消費の拡大を図る、来年の経済成長は消費の拡大でさらに上積みするというぐらいのことまでしたいと考えております。
  138. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 それから、今都銀などでは個人ローンの分野でさらに利益を上げようということで、消費者ローンの利息制限法の適用除外とか、あるいは利息制限法の撤廃そのものをさせようということで大変動いているわけですね。  八五年七月二十三日の金融制度調査会の第四回消費者信用専門委員会で、卯之木昭さん、当時第一勧銀の常務だった方ですが、この委員が消費者ローンの金利について、「利息制限法の上限金利の引き上げ、もしくは適用除外の検討が必要である。」そういうふうに述べておられるわけですね。こうしたことを許すならば、もう都銀の総サラ金化ということになってしまうのですね。この点、ぜひ大臣に、そうならないように頑張っていただきたいというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  139. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 都銀のそういう動きについて、私実は十分よく存じなかったので、先生から御指摘ございましたから検討させていただきます。  消費者ローン金利を下げることにつきましては、先ほど申しました、総理とお話をしておるだけではなしに、大蔵大臣とか通産大臣ともお話をいたしまして、両大臣とも全く賛成である、こういうことでございますので、それぞれ関係筋にお願いをして、繰り返して申しますけれども消費者ローン金利を下げて消費者皆さんに喜んでいただいて、大いにローンで物を買って国民生活向上、改善していただくということが、この際大事だと考えております。
  140. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 前回も当委員会でちょっと取り上げた問題ですが、輸入食品が年間二万件もふえているということで、私たちの身近なところに大変出回っているわけですね。そういう中で町田市の消費者展で展示をされたものについて、ちょっと物を持ってきたのですけれども、これら商品について製造年月日だとか、それから輸入年月日、それとあと原産国表示、そういうものがないのですね。その点について、ちょっとこれをお見せしたいと思います。  それで、それは農水省も厚生省も公正取引委員会も全部、うちの所管ではできませんというお答えなんですね。そこにブルーベリーのジャムがありますね。これは、実はJASの品質表示基準で輸入年月日を書くことになっておるのですね。ところが五十グラム以上だというのです。それは四十二グラムなんです。だからそれは書かなくていい、こういうぐあいなんです。やはり輸入年月日ぐらい書かせるべきだし、それからイースト菌なんかは、やはりどこの国なんだろうということはぜひ書かせるべきだというように思うのです。これはどこの制度でもカバーできないということで、そういう中で輸入食品がうんとふえていっておりますので、これはぜひ経済企画庁で御検討をいただきたいというふうに思うのです。  それから、前回ここの委員会で問題にいたしました糖分、塩分の表示でございますけれども、厚生省から第一号を見せてもらいました。これをちょっと見ていただきたいのです。厚生省の場合には、炭水化物じゃなくて糖質というふうになっているのです。糖質十八グラムというふうに書いてありますね、そのクラッカー。そうすると、何かお砂糖が十八グラム入っているのかしらと思っちゃうのです。ところがそうじやないのです。でん粉とかそのほかいろいろ含めて十八グラムというふうになっておるわけです。  それから、私たちが知りたいのは塩分が幾らあるのか。塩分は一日十グラム以上とってはいけない。そのうちの私たちはどれだけ、塩分一日十グラムが最高ぐらいだよと言われている中でどれだけ加工食品からとっているのか、あるいは糖分も大体一日五十グラムと言われていますけれども、それが一体どうなのかということを知りたいので、調整をこの間お願いをしてありますけれども、大変難航しているということで、きょうは農水省と厚生省は来ていただいておりません。何かかなり縄張りがあるようでございまして、経済企画庁も大変だとは思いますけれども、こうした表示の問題について総合的に御検討いただきたい、そのことを大臣に再度お願いしたいのです。
  141. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 この表示については、先生から御指摘がございましたので、大いに事務的に農林省、厚生省それぞれ検討を進めておりますが、まだ最終的に一致に達してないようでございますが、私からも実は農林大臣、厚生大臣に近く話をいたしまして、そうして何とかひとつ一本にまとめてもらうように要請をいたしたいと考えております。  それから輸入食品も、国内製品と同じように当然製造年月日や必要なことは書くべきで、記載すべきだと私は考えておったわけでございますが、今その御指摘の商品にはどうも書いてないようでございますので、どういうことになっておるのか早速調べさせて、それぞれ適切な対策を講じたいと思っております。
  142. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 最後ですけれども、家庭用の密封パックについてちょっとお伺いをしたいと思います。  これが密封パック器なのでありますけれども、これは食品などをポリ袋に入れて脱気した後密封する器械です。空気を遮断して保存するので鮮度もおいしさも長もちなどの宣伝で、昨年ごろより大手家電メーカーからも売り出されて、一時期は爆発的に売れた人気商品であります。  この商品について、国民生活センター及び神戸の生活科学センターが、性能などの比較テストをことしに入って行っているのですね。それぞれ神戸が五月、国民生活センターが十月です。そのテスト結果によると、性能面では脱気性能、シール性能とも悪いものが多かった。脱気というか真空にするということなんですが、真空状態七百六十ミリ、それに対して最高のものでもマイナス百五十だったし、その他もマイナス三からマイナス十ぐらい、十ミリ以下だというふうなことなわけです。それで非常に性能が、もうほとんど何も真空状態になっていない、マイナス三とか四なんというのは真空状態になっていないということなんです。これも後でちょっとどういうふうにするか御説明しますけれども。そして食品保存効果の面でも、焼きノリ、干しシイタケは吸湿防止の効果なく、缶に入れたものの方が保存性がよかったとか、普通の魚、肉の保存はラップでくるんだ場合と変わらないとか、野菜は漬物のような状態になりキューパック保存に適さないとか、油菓子の酸化は市販の袋よりも進んだということで、この効果は全くひどい状態になっているわけですね。ただ、こういう包装だとか宣伝文句などを見ますと、もうとてもこれはよい保存ができるのだなというふうに思えるような、そういうチラシがまかれているわけですね。  これはいいですか、ここでちょっとあれしましょうか。こういうふうに上げて、この中に物を、今大臣持っておられますけれども、こういうふうに中へ物を入れますね、そしてここにこうしまして、ぱたっと押すわけですね。これで何かあれすると中の空気が抜けて、真空になって、そしてシールがされるというものなんですね。結構これは数千円から二万円近くの高価なものなんですね。これは輸入品です。それで、大手のメーカーのものを十社、国民生活センターではテストされておるんですね。そして、今申し上げたような効果しか出ていないということなんです。  まず公正取引委員会にお伺いしたいのですが、これは真空。パックではないのに真空パックというふうに売っているものもありますし、それからそういうふうに誤認をされるものもあるわけです。これは十分監視をしていただきたいと思うのです。それから通産省の方に、言ってみればこういう誇大広告、それから、野菜なんかもその中へ入れたらぐちゃぐちゃになってしまって、漬物みたいになってしまうという、これは欠陥商品ですね、そういうものについてぜひ適切な指導をすべきだと思うのですけれども公正取引委員会と通産省、それぞれお答えいただきたいと思います。
  143. 柴田章平

    ○柴田政府委員 今先生に見せていただいたものでございますけれども国民生活センターそれから兵庫県立生活科学研究所のテスト結果については、私ども十分承知をいたしているわけでございます。私どもとしても、このテスト結果において、脱気性能あるいは保存効果等について表示上の問題、指摘されていることについて今関心を持っておりまして、今後景表法の観点から家庭用包装機器の表示について調査を進めたい、こういうふうに考えております。
  144. 横江信義

    ○横江説明員 先生の御趣旨、取扱説明書とかあるいは宣伝文句の表示が、効果が述べられているほどのものではない、消費者が誤認をさせられるような書き方になっているのではないかという御指摘でございます。私ども、もしそういうことでございますればやはり問題でございますので、取扱説明書あるいは性能表示がその器械の有する性能を的確に表示する、それで消費者の誤解を生じることのないよう、関係の業界に対して指導してまいりたいと思っております。
  145. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります。ありがとうございました。
  146. 河上民雄

    河上委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時六分散会