○橋本敦君 それでは、この問題は中身には入らずにこれで終わりますけれども、大臣がおっしゃった自主的な立場ということを政府としては貫いていっていただきたいと思います。
次に、私は労働者の
人権問題に関して
質問をしたいと思うのであります。
労働者の
人権問題ということを申し上げましたが、職場における労基法三条違反と見られる不当な差別扱い、そしてそれが同時に村八分あるいは見せしめ的差別扱いとして、労基法三条というよりむしろ
人権問題そのものにもかかわっている、そういう
事態が職場の中で起こっているとすれば、まさに私は憲法に照らしても早急にこれを是正しなくちゃならぬ課題だ、こういうように
考えるからであります。
具体的にそれは、住友軽金属の名古屋製造所というところで
鈴木明男さんという一人の労働者が不当な扱いを受けているという問題でありますが、私ども共産党は、今週の初めの十六日に日本共産党・革新共同の田中美智子衆議院議員や小沢衆議院議員を
調査団として現地に派遣をいたしまして、実情
調査をしてきたわけであります。
具体的事実を申し上げますと、この名古屋の
住友軽金属名古屋製造所はアルミの製錬を主としておる工場でありますが、敷地面積は四十一万九千六百平米という広大な敷地を持つ大工場でありまして、従業員は千五百二十名を擁しているところであります。
この労働者の
鈴木君というのは、この会社に就職をいたしましたのがもうかなり古いことでございまして、昭和三十六年でありました。そして、私が差別
事件と言うこの
事件が起こったのがことしの四月一日であります、この四月一日に突然職場配転を命ぜられるまで本人は、第一精整ラインと呼ばれる流れ作業部門で、その一員として流れ作業に従事をいたしておりましたが、この部門で約七年間働いて、この部門は四直三交代でやっておりますが、残業も含めて他の労働者と同様に仕事をしておったわけであります。ところが、突然三月末に作業長から呼び出されまして、職場の配転を本人の同意を得ずして一方的に命ぜられたのであります。それは全く新しい「段取班」という名前をつけた職名でありますが、本人全く一名でございます。
そして、それではどこで仕事をするのかといいますと、これがまた大変なことでございまして、今までの生産ラインは工場の中でありますけれども、今度は一人だけ外へ出まして、何とひさしの下に間口二間、奥行き三間、約十二畳ほどの広さの小屋をつくりまして、工場のひさしの下でございますから屋根がすかすかでございますが、天井は今言いました間口二間、奥行き三間の小屋のような上にビニールのテント張りという
状況で急ごしらえでございます。そこに大きな
窓ガラスがはめ込まれているのでありますが、これはそれ自体開閉するというのじゃなくて、ガラスがはまったままで、出
入り口を除いて
窓ガラスがはまったままでありまして、まさにこれは外から丸見えという
状況でつくられているわけであります。ここへたった一人で入るわけです。それで、ここで仕事をせよということでありますが、ところが、その仕事が今までと違ったスプールという部品の、鉄スプールのさび落としというのをそこで一人でやらされるわけであります。
問題は幾つかありますが、まず第一の問題は、その職場に入って当初、大変ひどいことでありますけれども、まず外の労働者と話をするようなことをやるな、外へ出歩くなど。そこで鉄のさび落としをやって、次から次に材料を持ってこなくちゃいかぬわけですが、必要とあれば電話があるから電話で言ったら持ってくる、おまえがとりに行くな、要するに外の労働者と接触するなという、こういうやり方であります。ていよく、電話があるからそれで言ったら持っていってやるということですが、実際は外の労働者と交流をさせないということがねらいであることは明らかでありますが、そのために、工場の中のトイレは使わずに外にある事務所横のトイレヘ行けと、トイレまで指定するというようなことをやってきたわけであります。
そして、もう一つは残業の問題でありますけれども、本人は今まで残業だけで約九万円、子供が四人おりまして両親もありますから本当に苦しい暮らしで、この残業九万円が収入のほぼ三分の一を占めておるんですが、今度の職場では一切残業はないということを申し渡されるということで経済的にも締め上げられるという
状況であります。そして、仕事はたった一人ここでやらされて、通る労働者からは丸見え、つまり見せしめという
状況がたれが見ても明らかなような、そういう客観的
状況の中で仕事をさせられておるというのであります。
私どもは、これはアルミ製錬工場でありますが、まさにアルミの小屋、アルミのおりに入れて労働者を差別扱いする不当なやり方だということで、早くこれをなくさせなくちゃならぬということで
調査団も派遣をしてきたわけであります。
じゃ、なぜこういうことをやるのかということを検討してみますと、この
鈴木君が五十七年ごろから住友軽金属、これを簡単に住軽と言いますが、「住軽の仲間」と題するこういうビラを門前でまいた、それは共産党のビラだからけしからぬというようなことで、まずそこから差別扱いが始まっていったように思うわけであります。そして、会社の中に労働組合がありますが、そこでもいろんな意見はありますが、基本的には、会社の合理化がどんどん進んでくる中で組合の民主的な運営や、あるいは合理化反対ということで本人も奮闘するようになるわけでありますが、そういったことが会社の意にも沿わないというようなことで会社から不当な扱いを受けてくる嫌いがあったんですが、いよいよことしの四月一日に今言ったような扱いを受けるに至ったというのであります、
こういう問題を
考えてみますと、私は、まさにこれは労基法三条が思想、社会的身上あるいは出生、門地によって差別待遇をしてはならぬということを決めておる問題、これは憲法十四条から来ておるわけでありますけれども、公然どこれに違反する
状態がやられている、こういうことは許せないと思うのであります。それと同時に、今お話ししたように、これはまさに
人権問題にもかかわる、そういうような
状況でありますので、本人はこの問題について十二月七日付で、名古屋の方で
人権擁護局に申し立てをして
調査を求め、できれば早急な勧告もしくは処置を求めるという
態度をとり、同時にまた労働基準監督署にもこの点について是正の申し立てをしているという、これが今までの経過であります。
そこで、まず
法務省の
人権擁護局長にお伺いするのでありますけれども、私が今
指摘したようなこういう
状態が実際に起こっているとするならば、村八分の問題あるいは見せしめの問題、そして他の労働者と比較をしても明らかに差別扱いと見られるような、たった一人だけそういう
状況で仕事を強制するというような問題は、これは労働者の
人権にかかわる問題だというとらえ方を当然するのが当たり前だと思うんですが、
法務省のお
考えは、まずこの点いかがでしょうか。