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1985-12-19 第103回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月十九日(木曜日)    午後一時開会     —————————————    委員異動  十二月十四日     辞任         補欠選任      石井 道子君     藤田 正明君      杉元 恒雄君     安井  謙君      竹山  裕君     河本嘉久蔵君      藤田  栄君     徳永 正利君      松岡満寿男君     石本  茂君      佐藤 昭夫君     宮本 顕治君  十二月十六日     辞任         補欠選任      上野 雄文君     寺田 熊雄君  十二月十九日     辞任         補欠選任      石本  茂君     吉村 真事君      河本嘉久蔵君     杉元 恒雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         二宮 文造君     理 事                 海江田鶴造君                 小島 静馬君                 寺田 熊雄君                 飯田 忠雄君     委 員                 杉元 恒雄君                 名尾 良孝君                 吉村 真事君                 安永 英雄君                 橋本  敦君                 柳澤 錬造君                 中山 千夏君    国務大臣        法 務 大 臣  嶋崎  均君    政府委員        法務大臣官房司        法法制調査部長  井嶋 一友君        法務省民事局長  枇杷田泰助君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        法務省矯正局長  石山  陽君        法務省人権擁護        局長       野崎 幸雄君        法務省入国管理        局長       小林 俊二君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局民事局長兼        最高裁判所事務        総局行政局長   上谷  清君        最高裁判所事務        総局刑事局長   吉丸  眞君        最高裁判所事務        総局家庭局長   猪瀬愼一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        片岡 定彦君    説明員        警察庁刑事局審        議官       森広 英一君        警察庁警備局審        議官       鳴海 国博君        外務大臣官房領        事移住部旅券課        長        飯田  稔君        外務省アジア局        外務参事官    柳井 俊二君        外務省アジア局        北東アジア課長  渋谷 治彦君        厚生省児童家庭        局企画課長    市川  喬君        労働省労働基準        局監督課長    菊地 好司君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (三浦和義逮捕に際しての人権問題等に関す  る件)  (国家賠償請求事件の公判における警察官の傍  聴に関する件)  (帰還北朝鮮人日本人妻里帰り促進等に関  する件)  (日弁連の外国人弁護士受入れ案に対する米国  通商代表部非難声明に関する件)  (住友軽金属名古屋製造所における人権侵害容  疑に関する件)  (子の権利確保のための協議離婚制度改善に関  する件)     —————————————
  2. 二宮文造

    委員長二宮文造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十二月十四日、佐藤昭夫君、石井道子君、杉元恒雄君、竹山裕君、藤田栄君及び松岡満寿男君が委員辞任され、その補欠として宮本顕治君、藤田正明君、安井謙君、河本嘉久蔵君、徳永正利君及び石本茂君がそれぞれ選任されました。  また、去る十二月十六日、上野雄文君が委員辞任され、その補欠として寺田熊雄君が選任されました。  また、本日、石本茂君及び河本嘉久蔵君が委員辞任され、その補欠として吉村真事君及び杉元恒雄君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 二宮文造

    委員長二宮文造君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 二宮文造

    委員長二宮文造君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事寺田熊雄君を指名いたします。     —————————————
  5. 二宮文造

    委員長二宮文造君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 マスコミを大変にぎわわしております三浦和義君の事件についてお尋ねをいたします。  三浦君は、六十年の九月十二日午前零時ごろ、警視庁によって逮捕されたようでありますが、すべて警察検察におかれては、こういう逮捕の場合にはできるだけ被疑者人権を尊重して行うべきである、これは当然の道理でありますけれども、この点は警察庁それから法務省もお認めになりますか。
  7. 森広英一

    説明員森広英一君) 当然のこととして考えております。
  8. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 法務省といたしましても当然のことと考えております。
  9. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 法務省警察庁もともに、逮捕に当たってできるだけ被疑者人権を尊重しなければいけないという点はしっかりと認識していらっしゃるようでありますが、三浦君を警視庁の方で逮捕なさった、そしてその逮捕そのものは、犯罪がなされておってその犯人は被疑者である、それで逃亡のおそれがある、逃亡のおそれがないとしても罪証隠滅のおそれがあると警察考えて、しかもそう判断するのに合理的な裏づけ資料があるということであれば、これはもう正当な職権の行使と見られるのでありますが、ただ、この事件では逮捕状況が余りにもドラマチックに仕組まれていたというふうに考えられるのであります。  まず、逮捕場所でありますが、銀座東急ホテル地下駐車場逮捕せられました際に、三浦がただいま出ましたというようなテレビ中継までなされておるようであります。これは、あらかじめ警察逮捕日時場所等についてマスコミに漏らしていたのではないだろうかという疑いを持たざるを得ないわけでありますが、どうでしょうか。
  10. 森広英一

    説明員森広英一君) 逮捕の模様が放映されたことは事実でございますが、今御指摘のようにあらかじめマスコミ逮捕日時を知らせるというようなことはございませんでした。
  11. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私もそうあってほしいと思います。しかし、この東急ホテルには午後四時過ぎから続々とテレビ週刊誌新聞社等の車やカメラマンが詰めかけてきておったということであります。それが裏口から次第に駐車場出口に向けて殺到し始めた、その数およそ二百人と言われるのであります。これは、ただいま審議官が、故意に漏らしたことはないという御答弁をなさったのだけれども、そんなにもたくさんのマスコミが殺到するというのは、これはやはり何らかの意味で警察の意図が漏れていなければそういう事態は起こり得ないのじゃなかろうか。これを私がそういうふうに判断するだけじゃないんです。極めて多くの人がやはりそう感じておるようですが、それはお認めになりませんか。
  12. 森広英一

    説明員森広英一君) 警察捜査状況を当時はマスコミが注視しておりますから、あるいはマスコミは何らかの兆候から逮捕が近いということを察知したかもしれませんが、それは当方では確としたことはわからない事項でございます。
  13. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、次の質問に移ります。  今のように逮捕状況が詳細にテレビ報道される。もちろん新聞マスコミ等でもそれを大きく取り上げられる。これは朝日新聞の記事でありますけれども、「疑惑の主に光る手錠」、こんなにも大きなスペースを割いて、そして逐一それを報道しておるわけであります。この写真に写されておる三浦君の背後のおびただしいカメラ放列というのを見ただけでも、これがいかにすさまじいマスコミ取材であったかということがうかがわれるわけでありますが、こういうことではとても被疑者人権は守り得ないと考えるのであります。とりわけ警察官の中には、車の中にいた三浦を車外に出させるために、三浦警察手帳を見せろあるいは逮捕状を見せてくれというような要求をするのに業を煮やして、ボンネットに飛び上がって、窓ガラスをたたき割るぞという威嚇をした者もあったというのであります。そういうことが新聞に逐一報道されておる。しかも、その人は名前まで報道されて、牛若丸というようなあだ名までつけられたというんですが、あなたは認識しておられますか。
  14. 森広英一

    説明員森広英一君) 今御指摘の、その車に飛び乗った警察官という点につきましては、現時点では、私はちょっと存じておりません。
  15. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは、新聞に飛び上がった写真まで報道せられておるんですが、警視庁捜査一課第二強行班捜査第五係若林警部一四十一歳一というようなことまではっきりとマスコミに載っておるわけです。駐車場出口のシャッターは当時おりておって、車が走り出すような状況になかったというので、また仮にそうであっても、マスコミに包囲されておって、それを押し切って逃げるというようなことは考えられない。したがって、穏やかに車から出るように説得すべきであったことは言うまでもない。ボンネットに飛び上がって、そうして窓ガラスをたたき割るぞというような言動に出るということは、冷静さ、公正さの要求される警察官としてはとるべき態度ではない、ちょっと興奮状態にあったとしか考えられないわけで、これはそういう態度をとった者があって、そういう態度をとったことが適切かどうか。審議官、どういうふうに考えられますか。
  16. 森広英一

    説明員森広英一君) 今の状態、非常に詳細な点につきまして、現時点で私用意しておりませんけれども、当時の逮捕状況の前後関係からいたしますと、さような場所三浦の周囲に既に多くの報道関係者が蝟集をしておるということから、逮捕に向かった警察官は、なるべくこれを早く報道関係者のいない別の部屋に移して、そうして人権上の配慮もしながら逮捕をしょうということを考えておったようでございまして、その関係でいろいろ急いだことはあろうかと思います。
  17. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その急いだということはわかるけれども、ボンネットに飛び上がって被疑者に対して窓をたたき割るぞというようなことを言うことは、これは適当でない。それはお認めになるでしょう。どうです。
  18. 森広英一

    説明員森広英一君) その点につきましては、そのときの本当にもっと詳しい状況をよく後刻検討をいたしまして考えてみたい、というふうに思います。今時点ですぐその辺の判断を直ちに申し上げるだけのものを私持っておりませんので、よく検討してみたいと思います。
  19. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうも警察自分の過ちを率直に認めない傾向があるので非常に残念だけれども、これは警察官として冷静さ、公正さを失って興奮状態にあった、適切でないということは、第三者的な判断を下せばもう論議の余地がない。だから、あなたは、部下が熱心さの余りやったのだろうから、しかるということはできにくいだろうけれども、もし警察官の信頼ということを考えますと、やっぱりそういう点は戒めていただきたいと思う。  それから、それからが問題なんです、三浦警視庁に護送されているけれども、警視庁に到着したのが、新聞が詳細に時刻を報道しておるけれども、午前零時二十七分であるという。十二時ごろ逮捕されて、銀座から警視庁まで零時ごろの深夜に行くにしてはちょっと時間がかかり過ぎているのじゃないだろうか。これは、報道陣警視庁前に総ぞろいするのをいかにも待っておったのじゃないだろうか、時間稼ぎじゃあるまいかというふうな疑いさえできるのだけれども、これはどうしてそんなに時間を要したのか、あなたの方で説明していただけますか。
  20. 森広英一

    説明員森広英一君) 私の方の調べでは、午後十一時二十六分に御指摘銀座東急ホテルの中で逮捕いたしまして、警視庁に到着したのは零時三十分という記録の報告を受けておりますが、具体的にそれだけの所要時間がなぜかかったかということにつきましては、現在のところまだ聞いておりません。
  21. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、あなたの御報告だと三十分以上銀座東急ホテルから警視庁までかかっているわけでしょう。どうしてそんなに深夜、車の交通のないときにかかったのだろうか。その理由があなたとしてはおわかりにならないんですか。
  22. 森広英一

    説明員森広英一君) ただいまわかっておりません。その辺をなぜかということを聞いてくればすぐわかると思いますが、ただいまのところは、私はわかっておりません。
  23. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 問題は、さらにまたその次なんだけれども、警察官三浦を連行して警視庁に入ったときに、警視庁前に待ち構えた報道陣は約四百五十人だという。ロープで仕切られて機動隊員に守られた通路を三浦君が両わきを捜査員に抱えられて歩いてこの庁舎内に入ったというのでありますが、これはお認めになるか。
  24. 森広英一

    説明員森広英一君) 詳細なことをそこまで聞いてきておりませんが、別に、認めるというか、否定するものを今持っておりませんで、その後の御質問を受けてまたいろいろお答えしたいと思いますが、現在そういうロープを張ったかどうかということを、用意して調べてまいっておりません、
  25. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 しかし、これは新聞に極めて大きく報道され、詳細に報道されたのだから、あなたとしてもそういう新聞を読んでいないということは言われないんじゃないかな。その点どうでしょう。
  26. 森広英一

    説明員森広英一君) 大変私的なことを申し上げて失礼でありますが、最近現在の職に来まして、当時それは読んでいなかったことは事実でございます。
  27. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、その逮捕のときにそんなにもおびただしい報道陣カメラの的になったということ、それをしもあなたは御否定になるのか、それとも知らないとおっしゃるのか。
  28. 森広英一

    説明員森広英一君) 否定しているわけではございません。今知らないというふうに申し上げているわけでございます。
  29. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 じゃ、これをちょっと見てください。(資料を示す)  ごらんになったですか。それから、これはたくさんの批判がなされておって、元大阪府警刑事部長をしておられた鈴木達也さんという人、あるいは御存だと思う。その鈴木さんも、これは週刊文春の「緊急大特集」という中で言っておられるんだが、「私はあれを見ながら、一体この逮捕劇はなんだろうか、まるでマスコミに見せるためにやってるみたいじゃないかと思いました。」、これはあなた方の恐らく先輩の方だろうと思うけれども、そういう先輩の人でもなおかつそういう率直な見解を述べていらっしゃるわけだ。だから、四百五十人ものテレビなり、マスコミカメラの前に手錠をかけて歩かせるというようなことが被疑者人権を侵害するということはもう当然じゃないでしょうか。あなたはそれをしも御否定になるかね。
  30. 森広英一

    説明員森広英一君) 今のような状況が、新聞で今拝見さしていただきましたが、そういうマスコミが既に事件逮捕の動きを察知をして警視庁周りを囲んで取材をしているという状況の中にあって、混乱防止のためにそういうある程度整理をして、そうして事故の起こらないようにロープなどを張って、そしてそこを被疑者を連れてくるということはもちろん考えられることでございますが、今御指摘のような、マスコミに見せるためにわざわざやっているということではなくて、これは逆に、なるべくマスコミの間の混乱で不測の事態が起こらないように整理をしてやっている行為であるというふうに私は存じます。
  31. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そんな取ってつけたような不合理な弁明をしたら困るですよ。第一、そのときに警視庁の前で手続をかけた三浦君を三十メートル歩かせて警視庁に入ったというんですね。そんなことをしなくたっていいじゃないか。あるいは警視庁に幾らでも裏門があるのだから、私ども知っておるけれども、向かって左の方から入れる裏門がある、その裏門からすうっと入っちゃえばいいじゃないか。なぜそんなにカメラ放列の前に、殊さらに手錠をかけて腰ひもをつけて、そして天下衆人環視の中を被疑者を歩かせるのか。これほど被疑者人権を侵害することはないでしょう。どう思います。
  32. 森広英一

    説明員森広英一君) 基本的に私はそういう衆人環視の中を連れてくることがいいことだと申し上げているわけではございません。しかし、ああいう特殊な事件で非常にマスコミ報道関心が深くて、あらゆる警視庁入り口に全部マスコミ関係者がたむろしておるという状況下の中にあって、最も事故も防止し安全に連れて帰るために、そういうふうにロープを張って、そこの中にはマスコミが入ってこないようにして、その中を安全に連行した、そういう目的の行為であろうというふうに思います。
  33. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それではあなたは、車がそのままずっと裏門に入って、警視庁の裏に入っていくという措置が全くとり得ないとおっしゃるのか。それはとり得るでしょう。そうすれば被疑者人権は守られるのだから、何か工夫をすべきであったのじゃなかろうか。どう思います。
  34. 森広英一

    説明員森広英一君) 当時の関係者はいろいろ努力をしたとは思いますが、どの門にもマスコミ関係者が警戒をしておるということであれば、どこから入ってもマスコミの察知するところになって、いろんな混乱の起こることが予想されたのではないか、そういうことで特定の門から入ったのであろうというふうに思います。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうも一向に反省の色がないので困る。これは、三浦君の奥さんの良枝さんは、市中引き回し現代版だと言って悲憤の涙を流しておる。弁護人五十嵐二葉さんも朝日ジャーナルで、そう考えられても仕方がない、裏道から車を滑り込ませることもできたのではないか、余りにも被疑者人権に対する配慮を欠いてはいないかということを言っておられるんだけれども、警視庁が勢い込んだことは私もよくわかるんです。それは、捜査官としてはそういうふうに意気込んで捜査に当たるということはわかるけれども、しかしそれはやはり被疑者人権を重んじなくてもいいということにはならない、だから、これはいかにも何か警視庁のイメージをアップさせるためのPR効果をねらったのじゃなかろうかと、捜査官が胸を張ってテレビ放列の中を堂々と歩いていくという状況を見ると、これは警視庁のイメージアップのためにあえて被疑者人権というようなものに対する配慮を全く欠いたのではなかろうかと、第三者から見るとそういうふうに思われる。審議官、どうです。
  36. 森広英一

    説明員森広英一君) 何遍も申し上げるようでありますが、そういうカメラ放列の中を放映可能な姿、状態で連れてくることが好ましいというふうに申し上げているわけではございません。そういうマスコミが非常に手厚い報道をするために待ち構えているような場合においてまことにやむを得ない措置であったと、こういうふうに我々は思っておるわけでございます。この事件以外でも、そういうふうにいろいろ関心の深い事件におきましては、警視庁のあらゆる入り口についてマスコミが待ち構えておってなかなか入りづらいというようなことは間々あることでございまして、まことに好ましくはないけれども、やむを得ない結果であったというふうに考えております。
  37. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは、まず法務省人権擁護局長お尋ねをするけれども、被疑者人権捜査官というものはできるだけ尊重しなければいけないということは、先ほど刑事局長それから警察庁審議官、お二人ともお認めになったわけで、これは当然の原理だ。ですから、逮捕する場合に手錠をかけ腰ひもをつけて衆人環視の中を歩かせる、テレビ放列の前にさらすというようなことは、できるだけこれはないように配慮しなければいけないと私は思うんだけれども、人権擁護局長としてはどうお考えになりますか。
  38. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 刑事事件被疑者についてもその人権はできるだけ厚く保護されなければならないということは当然のことでございます。先ほど来警視庁の方でもおっしゃっておられますように、逮捕等に当たりましても、当然のことながら、人権に対する配慮は十分行われるべきであるというふうに考えております。ただ、具体的な事件になりますと、その具体的な状況は必ずしも把握いたしておりませんので、その点について今ここで意見を申し上げることはちょっと差し控えさせていただきたいと考えております。
  39. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 人権擁護局長のお答え今お聞きになりまして、これは人権を擁護する部局があるのは法務省だけなんですけれども、法務大臣としてはどんなふうにお考えになりますか。
  40. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 被疑者逮捕、収容というような問題をめぐって、我々が十分その立場というものを考えて運用しなきゃならぬというようなことは当然なことであるというふうに思っておるわけでございます。ただ、現実の問題として、この案件につきましては逮捕される前から相当にぎやかな報道等がなされておるというような経緯もあって、一般の報道機関皆さん方が大変な関心を持っておられたという事実は、私承知をしておるわけでございます。そういう中で、実は私もたまたま東京におらなかったときの事件で、その内容の詳細は知らないことではありますけれども、そのときの警察当局、特に警視庁周りあるいは逮捕に至るまでの経過、いろんなやはり問題があってそういうことを避けたいという努力をされておったのに違いないと、私は実は思っておるわけでございます。しかし、今後ともそういう点については十分注意をして、間違いのないようなきちっとした処理をしなきゃならぬというふうに思っておる次第でございます。
  41. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 今、森広審議官法務大臣の御答弁お聞きになったと思うんです。つまり、仮にこの件があなたのおっしゃるように、好ましいことではないけれども、やむを得なかったのだといたしましても、これからはできるだけ被疑者人権を尊重して、衆人環視の前にさらすというようなことはできるだけ避けるべきだと私は考えるんです。あなた方は、やはりそういう努力をしてしかるべきだと思うんです。そういうお気持ちでおられますか。
  42. 森広英一

    説明員森広英一君) できるだけの努力をして、やむを得ない中にもなるべくそういう被疑者衆人環視にさらされることができるだけ少ないような努力は今後ともしてまいるという点は、お説のとおり、私どもも考えておるわけでございます。
  43. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、私はこの三浦君の逮捕に関連して、どうもこいつは好ましくないなと感じたことがもう一つあります。それは何かといいますと、もう既に退職なさった人ではあるけれども、当時の警視総監でいらっしゃった福田勝一さんが週刊誌のインタビューで、この事件に関して、三浦が自供しないのは彼がしたたかということが原因だと、あの人の幼児体験少年期青年期体験ね、刑務所に入っていたときもあるでしょうなどというようなことを話をしたり、白石千鶴子さん、三浦一美さんの銃撃事件、二件の殺しでも容疑は極めて濃厚ですなんて、こんなことを話をしておられるわけだ。で、公務員は自己の扱った事件、それは直接調べたのか指揮したのかは別として、自分が担当した事件について得々として容疑が濃厚であるとか、それから自白をしないのは被疑者なり被告人したたかだなどという、幼年期にどうだこうだというようなことを語るというのは、これは公務員としての心構えが全くできておらぬ。もう公務員としてのモラルの基礎ができておらぬ。これは遺憾千万だと思うんだけれども、あなたはそういう事実を承知しておられますか。
  44. 森広英一

    説明員森広英一君) ただいま御指摘のその雑誌の記事でございますが、それは今初めてお聞きをいたしました。
  45. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 今初めてだというように言われるが、こんなに山のようなマスコミの情報があって、そうしてあなた方の上司であった人が語っているそういうことについて全然知らないというのも、どうも面妖な話だと思うんです。今見せてあげる。(資料を渡す)書いてあるでしょう。こういう、元の警視総監が捜査のときのことを語った、それは適当でないでしょう。どうですか。
  46. 森広英一

    説明員森広英一君) ただいま拝見いたしましたが、何分にも雑誌の記事でございますので、事実こういうことを話したのかどうか確認しないままにその評価をするということは差し控えさせていただきたいと思います。
  47. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなたに以前の上司、あなたの先輩の好もしからざる行動について批判を求めるというのは、私は無理かもしれない。しかし、これがよくないことはわかり切ったことで、もうちょっとあなた方の上に立って指揮をなさる方はやはりそれだけの公務員としての心構え、常識というものを持ってほしいと思うから、あえて私がお話をしたわけだ。  なお、五十嵐二葉弁護士から私は見せられたのだけれども、三浦君の青年時代の犯罪を裁いた裁判官が三浦から来た私信をマスコミに見せておる記事があるんです。これも、どうもやはり好もしいことではない。殊に裁判官なんというものはそういうモラルを一番強くお持ちになっていらっしゃる方々なんだから、それがどうも御退官の役といえどもそういうことをすべきではないことは当然なんだけれども、最高裁としてはどうお考えになるか。
  48. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 御指摘の書簡が週刊誌に掲載された経緯につきましては私ども事実関係を承知いたしておりませんが、一般に裁判官のモラルとして申しますと、裁判官が事件関係者から受け取った書簡等をみだりに公表すべきものではないと考えております。
  49. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはまた大臣にお尋ねをします。これは刑事局長でもいいですが、大臣の方にお答えいただくのがいいと思うのですが、やはり警察官なり裁判官なりが現職当時に扱われた事件について余り語るということは好もしいことではない、まして資料を見せるというようなことは好もしいことではないと思うんですが、大臣としてはどういうようにお考えになりますか。
  50. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 国家公務員の場合、特に検察行政等に携わっている者がそういうことを明らかにするということは適当ではないと私は思っております。
  51. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なお、捜査に当たられた警察官措置にも、それは熱意を私も非常に多とするんですよ。ただ、やはり被疑者人権の尊重という点で極めて遺憾の点があったということをお話ししておるわけで、これはマスコミの方でもちょっと熱を上げ過ぎて行き過ぎがあったと思わざるを得ない。これはもう週刊誌が極めて頻繁に取り上げて、彼は有罪であるというふうに断定をしておる。週刊誌の記事を全部総合してみると、三浦君は間違いなく犯人であるという決めつけ方をしておるわけで、しかも非常にふてぶてしい人間であるというようなプロフィルまで掲げている。そのために裁判がこういうマスコミフィーバーに影響されては困る。これは老婆心までに私は考える。  なぜ私がこんなことを言うかと申しますと、弁護人の一人が担当部の書記官室に行ったところが、書記官室に三浦君に関係する週刊文春などの週刊誌が山と積まれてあったのを見たと言うんです。それは、裁判所書記官も週刊誌を見たいと考えられることは当然かもしれません。しかし、担当部のその書記官のところに余り積まれていると、裁判官もこれを読むのじゃなかろうかというふうに弁護人考えないでもない。できれば裁判官がそういうマスコミフィーバーに影響されることがないようにと、私も司法府の一人の先輩として考えざるを得ないのだけれども、どうでしょうか。
  52. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 一部の事件につきましては公判開始前から週刊誌テレビ等にいろいろ記事が出ることがございますが、裁判官がこれらの記事に影響されて事実認定を誤るようなことがあってならないことは言うまでもございません。現に裁判官としてはあくまで公判で取り調べた証拠に基づいて正確な事実認定を行うべく全力を傾注し、またそのために修練を重ねているところでございますので、裁判官が事実認定に当たり、そのような週刊誌テレビ等の記事により影響されるようなことは決してないと信じております。
  53. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 このマスコミフィーバーのために三浦君は取引先から取引を断たれてしまった。そのために輸入雑貨販売会社フルハムロードという事業を閉鎖するように追い込まれてしまったということを訴えております。  三浦君の御両親から私に切々たる訴えの書簡があるのでありますが、マスコミが家を包囲して取材に狂奔するため、一時は買い物にも行けない、食料難に陥ったこともありますというような記事さえもあります。かつ、三浦君の二人の子供が幼稚園、保育園に通うこともできなくなって、退園のやむなきに至って、毎日家に閉じこもる日も続きましたというようなことも訴えられておるのであります。これは、本人が仮に有罪であったとしても子供には何の罪もないということは、もうだれしも肯定することであろうと思います。したがって、マスコミが家を包囲して買い物にも行けないというようなことは、明らかにこれは家族の人権を侵害する行為であることは言うまでもありません。  三浦本人はさらに、郵便物は抜き取られる、一晩じゅう車のエンジンをかけっ放しの車さえもありますというようなことを訴えておるようであります。外出すると十台余りのハイヤーや社用車が追いかけ回して、銀行に立ち寄る場合でも入り口をふさいで、銀行内部に向けてカメラのフラッシュをたきますというようなことの訴えもしておるようであります。  これは、被疑者それから被疑者の家庭に対する人権の問題でありますが、弁護人を担当なさった五十嵐二葉さんは随分いろんなことをお考えになって、やはり弁護士としては国民の人権を守るというその重要性を重く見まして、この弁護人になることを相当いろいろなことを配慮なさって引き受けられたようでありますが、弁護人になったら絶えずマスコミが尾行する、そして路上で平然と写真を撮る。肖像権の侵害ですよということを言いますと、いや、公道上で撮るのはいいんですというような答弁さえも返ってくる。公道上であろうとどこであろうと肖像権を侵害するという事実には、これは全然間違いがないので、そういう誤った解釈をしておられては困るんだけれども、弁護人人権も侵害されておる。昼夜の別なく面会を求めてドアをたたき続ける、チャイムを鳴らす。かなりな常識を持った知人の方々さえも、かぎがないとどんどん入ってきてしまうというような状態であるということであります。  こういうマスコミフィーバーが、被疑者人権それから家族の人権、それから弁護士のそうした人権までを侵す。もちろん、プライバシーの権利というようなものは完全に侵害されておる。こういう点について人権擁護局長としてはどういうふうに考えられますか。
  54. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 報道の自由、取材の自由というものは民主主義の基盤をなすものでございまして、私どもが大切にしなければならないものであるということは言うまでもないところでございますが、最近マスコミ取材合戦がもうだんだんとエスカレートをしてまいりまして、御指摘のように家族の迷惑も考えない。深夜にあるいは担当弁護士の家庭を訪問する、路上でむやみに写真を撮ってそれを雑誌に公表する、あるいは被疑者の家族のプライバシーにわたる事実まで報道しておるという状況が見られるのでありまして、私どもはこのようなことは人権上好ましくないというふうに考えております。  ただ、もう御承知のように、この問題は報道の自由と個人の名誉、プライバシーにかかわる問題でございまして、これにいかに対処していくかということにつきましては、人権擁護機関として非常に苦慮いたしておるところでございます。もとより、取材報道というものが法令に違反するなどいたしまして、明白な人権侵犯である、人権侵害があるというふうに認められます場合には、私どもはこれを人権侵犯事件として対処し、所要の措置をとってまいりました。  最近におきましては、フォーカスが少年の被疑者写真を公表いたしました件につきましては会社に勧告をいたしておりますし、また、アフタヌーンショーにおきましていわゆる少年のリンチのやらせの場面が作出されました件につきましても、ことしの十一月にテレビ会社に対して説示処分をしたりしてまいっておるところでございます。しかし、何といいますか、非常に限界線上にあるような問題につきましては、何とか問題の性質上、できるだけマスコミの内部で自律的に、自主的に解決していただくのが望ましいことであることは申すまでもないところでございます。  現に、多くの雑誌社、新聞社におきましては自社にマスコミ倫理に関する委員会を設けられまして、いろいろな場面について、これはどこまで報道できるかといったことをまじめに検討されておられますし、またマスコミ倫理懇談会というものが業界の団体としてございまして、ここにおいても日ごろこういった問題が論議されておるのであります。私どもは、これまでもこういった問題が起きましたときには、このマスコミ倫理懇談会に事件を持ち込みまして、何とか善処を願いたい、よい方向に向けての解決策を考えていただきたいということを訴えてまいりました。本日ここでいろいろ議論がございましたことにつきましてもそちらにお伝えをして、何とか自主的な方向でまず解決できないものかという方向を考えてみたい。また私どもも、この問題についてなおできることがあれば研究してやっていきたいと、かように考えておるところでございます。
  55. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大臣も人権擁護局長も大変努力はなさっておられるようですが、大臣も、今私がお尋ねしたようなマスコミフイーバーによって個人の人権、プライバシーの侵害がとかく行われやすいという点については、十分関心を持って善処していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  56. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) ただいまの御質問に対しまして人権擁護局長からお話をしたとおりであると思っておるわけでございます。  なかなかこの問題の処理というのは難しいんです、つい先ごろも私は、あるスポーツ新聞でございましたけれども、「二十億円嶋崎法相に献金か」と書いた、こんな大きい記事が載ったんですよ、新聞の一面トップのところに。あとは桑田さんか何かの記事がずっと載っておりました。私もそれを見まして、もう全くびっくりしまして、どうあってもこれは承知できないというので、抗議を申し込んで訂正をしてもらったんですが、訂正の記事というのはこんな小さい記事になるというのが現実であるわけでございます。  私は余りそういう目に遭ったことは少なかったわけでございますけれども、ああいう経験を踏みまして、やはり報道をされる場合にはよほど報道される人の気持ちというものを考えて、人権擁護の面から支障がない感覚で事柄をやっていかなきゃならないし、そういうことは、非常にこういう競争社会、激しくなっておるマスコミの社会でございますから、難しい点はあろうと思いますけれども、やはり社内の中でそういう倫理委員会というようなものを通じてきちっと整理をしていただく努力をぜひしてもらわなければいけないのではないか、そういうぐあいに考えておる次第でございます。
  57. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは最後に、三浦君の事件については先ほど福田前警視総監の、白石千鶴子さんの変死事件三浦一美さんの銃撃事件について容疑は濃いというような談話が載っておるようでありますが、これは警察の方はなおこの二つの事件について捜査をまだ続けていらっしゃるんですか。
  58. 森広英一

    説明員森広英一君) そういう容疑事件について現に捜査を続けているとかいないとかいうことは申し上げるのを差し控えたいと思います。
  59. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただ、そういう捜査本部が解散したという報道がありますね。マスコミには載っておるので、それでお尋ねするわけだが、事実そういう捜査本部というようなものは解散をしたのですか。
  60. 森広英一

    説明員森広英一君) 先般検挙いたしました殺人未遂事件捜査本部につきましては解散をしております。
  61. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 では、法務省の方にお尋ねしますが、この三浦君については追起訴はあり得るのですか、もうそういうことはなく、既に起訴されました事件一本でいかれるのですか。どちらですか。
  62. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 今の段階では、お尋ねの件につきましては何ともお答えいたしかねるわけでございますので、その辺でひとつ御了承いただきたいと思っております。
  63. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは捜査のことだから、余りお答えを迫ってもいかぬかもしれぬ。これでとどめておきたいが、問題は、弁護人のあれを聞くと、記録、証拠物とか証拠書類なんかが一メートルもの高さにもあるのだけれども、証拠開示をしていただいたのはわずかにロスの実況見分調書であるとか、あるいは被害者に対する診断書であるとか、そういう極めてもう微々たるものしか証拠開示がないのだということなんだけれども、これはやはりできるだけフェアに証拠開示をなさった方がいいのではないかというふうに思われるんだけれども、これはどうでしょう。
  64. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 検察官といたしましては、公判立証上必要な証拠は開示するという方針でやっておると思うのでございますが、本件の具体的事件につきましてどういう方針で対処するかにつきましてはちょっとお答えいたしかねるところでございます。
  65. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、三浦君の事件については質問を以上で終わります。  次に最近、週刊法律新聞に出た記事がちょっと私としてこれは軽く見るわけにはいかないんじゃないかと考えたのでお尋ねをするわけですが、見出しは「警察官裁判妨害」と「覆面し傍聴要求」と「東京地裁二度も審理中断に」というような見出しで報道されておる。その中身を見ると、この国家賠償事件というのは中核派の活動家が勾留理由開示公判の直後、地裁の地下の控室で警視庁の警部補に首を絞められた、そういう暴行を受けたので国家賠償の訴訟を提起をしたと、そういう案件であるようでありますが、その民事事件で昨年三十人の私服刑事が法廷に押しかけて無理やり傍聴席に入ろうとしたため裁判が中断された。さらに十一月二十六日の公判、前のが第九回で、この十一月二十六日は第十回であるけれども、これは帽子、マスク等で顔を隠した刑事四十二人が裁判所に押しかけたため、やはり裁判が中止されたというのだけれども、こんなにたくさんの警察官が傍聴に押しかけるというのはちょっと異常なんだけれども、そういう事実があったのかどうか、まず事実関係をお伺いしたいのです。
  66. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) それでは、事実関係をかいつまんで、まず御報告いたしたいと思います。  御指摘いただきました事件は、昭和五十七年の十一月二十五日に提起されました警察官及び都を被告とする国家賠償請求事件でございます。訴訟の経過でございますが、昭和五十八年二月七日以降これまで八回の口頭弁論が開かれております。ところが、昭和五十九年の十月二十二日以降四回にわたりまして裁判が延期されております。  それぞれについてかいつまんで申し上げますと、第一回目は先ほどお話がございました五十九年の十月二十二日の第九回口頭弁論でございます。この口頭弁論では被告の警察官警察官が被告でございますが、これに対する尋問が予定されておったわけでございます。ところが、傍聴しようとした警察官に対して原告側の傍聴人がスクラムを組み、傍聴をさせないようにしたために裁判長は、これでは裁判の公開の原則が確保されない、そこで審理ができない、そういうことで、次回期日を告げたのみで閉廷した。  第二回目でございますが、これも今触れられましたが、五十九年の十一月二十六日でございます。このときは警察官が傍聴券を得ようといたしまして並んでいたことにつきまして、原告側の傍聴人が騒ぎましてこれを妨害したために整理券の交付ができないということで延期されたわけでございます。  第三回目でございますが、これは昭和六十年の四月十九日で、裁判長が訴訟指揮ということで、何とか適正な傍聴を実現しようということでいろいろ原告側、被告側にお話し合いを進められておったわけでございますが、その一環として、公開原則の確保の立場から事前に調整を図ろうということで原告側にもお話があったわけでございます。ところが原告側としては、警察官が一人でも傍聴すればこれを排除すると、こういう主張をいたして譲らないために、裁判長としては混乱が予想されるということで延期されたということでございます。  第四回目でございますが、これは昭和六十年七月十九日で、原告側傍聴人が、傍聴整理券を得ようといたしておりました警察官に罵声を浴びせかけるなどいたしまして、裁判所職員の方々の整理に従わず、混乱いたしたために整理券の交付が中止のやむなきに至りました。したがって延期された、こういうことでございます。  こういう次第でございまして、それぞれ裁判が延期のやむなきに至りましたのはいずれも警察官の傍聴を原告側が妨害いたしたためでございまして、警察官裁判の傍聴に多数押しかけたといったようなことが原因ではないわけであると承知いたしております。
  67. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 今あなたの御説明の中にちょっと落ちている点があるのだけれども、それは傍聴に行った警察官というのは三十人であるとか四十人であるとか、そういう多数であったのかどうか。それはどうです。
  68. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) そのときどきで数は違うわけでございますが、十四、五人から四十人行った場合もございます。
  69. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 裁判公開の原則というのは、これは憲法上の原則で、極めて大事なんだけれども、警察官が四十人も押しかけるというのはちょっと異常で、それは自由意思で行ったんですか、それとも何か出張とか公務上行ったんですか。その点どうなんでしょう。
  70. 鳴海国博

    説明員(鳴海国博君) その経緯、若干かいつまんで御説明申し上げたいと思いますが、結論的に申しますと、これは自由意思でそれぞれ赴いたということでございます。結果として十五人とか四十人程度ということになりましたのは、こういう経緯がございました。  すなわち、第七回の口頭弁論のときでございますが、被告が証人尋問のために出廷いたしますと、その法廷の傍聴席のほとんどが先ほどお話のございました中核派と見られる、そういう系統の人々であると見られる人たちで占められておりまして、おまえが○○かと——この○○というのはこの警察官の氏名でございます。ただじゃおかないぞ、こういう罵声を浴びせかけたり、主尋問の際にもたびたびやじを発して裁判官から何度も注意を受けるような、そういう傍聴態度が見られたわけでございます。しかも、閉廷いたしましたその直後、被告が廊下に出ましたところ、被告の三万をそれらの人々が約三十人で取り囲みまして、口々に、絶対に許さないぞ、そういうことを叫び、なじるということでございました。このときは被告側の弁護士が中に割って入りまして、そして一緒に非常階段を使って七階から一階までエスコートして避難する、そういう状況がありました。まさしく被告に対する中核派系と見られます人々の威迫と威力といいますか、これは目に余るものがございました。その中核派について御承知のことと思いますが、いわゆる対権力闘争を主張しているグループでございまして、先日世間を大きく騒がせ、国民に多大の迷惑をかけました浅草橋駅の放火事件とか国鉄ケーブル切断事件、そういったようないろんな悪質なゲリラ事件をやっており、あるいは警察官の個人名を挙げて威迫している、そういうこともございます。こういうことを平生見聞きいたしております同僚の警察官のそれぞれが自発的に、これはひとつ我々が同僚として公判を傍聴して被告を精神的に励まして安心させ、平生な気持ちで審理に臨めるように、そういう精神的支援を与えようということがやはり以心伝心伝わったものと思われます。そういうことで結果として十五人あるいはそれ以上の数の者が公判の傍聴に赴いた、かように聞いておるところでございます。
  71. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 時間が来ましたので、余りこの問題に深く入ることはできません。最高裁の方は事実をどういうふうに掌握しておられるか、それを最後に承って、あとまた傍聴と公開の原則についての論議は次回に譲りたいと思います。
  72. 上谷清

    最高裁判所長官代理者(上谷清君) 最高裁判所に報告されておりますところによりますと、昭和五十九年の十月二十二日それから十一月二十六日、六十年七月十九日、それぞれの期日に傍聴をめぐって警察官と思われる者が含まれていたことで原告側の傍聴者との間にいろいろトラブルがございました。裁判所としては、果たして何名ぐらい警察官が来ておられたのか、本当に警察官がいたのか、その辺も確認はできていないわけでございますが、そういうトラブルがございましたので、実際問題としては開廷をすることができず、期日の延期を重ねていると、その程度の報告は受けております。それ以上具体的な点につきましては私どもの方へ報告もございませんし、特別把握はいたしておりません。その後スムーズな訴訟の進行のために双方の訴訟代理人の方に協力をお願いして、審理をスムーズに乗せていくために努力をしている、そういう経過の報告でございます。
  73. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 終わります。どうも大変御苦労さまでした。
  74. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 本日は、北朝鮮に帰られました日本人の妻の自由往来の問題について質問をいたしたいと思います。  これは私最近承ったところですが、昭和三十四年、日本と北朝鮮の両国赤十字社間の帰還に関する協定というのを基礎にしまして、その年の十二月十四日から北朝鮮帰還事業が開始された。それで今日までに九万人余りの人々が向こうに渡りまして、その中には朝鮮人と結婚した日本の女性が千八百三十一名、日本国籍保有者が六千六百七十九人含まれていると、こう伝えられているわけでございます。ところが、そうした人たちが出発されるときには二、三年たったら里帰りもできるという話で、またいろいろ交際もできるということで行かれた。ところが、今日に至るまでただの一人も帰ってないという現状だというわけでございます。そして、大部分の人が音信不通の状況にある、こういうことでございます。  そこで、お尋ねを申し上げるわけですが、日本で北朝鮮人の妻となった人、これは日本の国籍を失っておるかどうか、こういう問題であります。いかがでしょうか。
  75. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) お尋ねの件は、日本国籍を持ったまま出国して、朝鮮人の夫に従って北朝鮮へ帰った人々が現在日本国籍をまだ持っているのかどうかということであろうかと存じますが、この点につきましては、我が国の国籍法の建前からいたしまして、単に北朝鮮に帰ったというだけでは日本国籍を失うということにはならないのでございます。すなわち、本人の意思に基づいて外国籍を取得するということが要件になっております。ただ、この点につきまして北朝鮮側は、北朝鮮の領域に入った時点において北朝鮮国籍を取得したものであって、したがってこれらの人々の動向は北朝鮮の国内問題であるといったようなことを言明した経緯が過去においてあったようでございます。しかしながら、この点につきましては私どもの法律的な解釈とは差異がございまして、私どもとしては、何らか本人が北朝鮮に入って以降、法に定める手続きをとっていない限り、引き続き日本国籍を持っておるものというふうに推定いたしております。
  76. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 現在我が日本国と北朝鮮は国交がないということになっておりますが、国交がない国の方でいろいろのことをお決めになったそのことは、日本国としては外国の行為として認めておられるのでしょうか。それとも、そういうものは国交がないから日本とは関係がないと、こうお考えでしょうか。
  77. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) 国交の問題でございますから、あるいは外務省の方からお答え申すべきかとは存じますが、私どもといたしましては、北朝鮮との間に人的な交流を開いていくということが我が国の国際関係の立場からも望ましいことであるというふうに政府全体として判断されるに至った時点以降、この交流について入管当局といたしましてはこれに便宜を計らうという立場をとってまいっております。御承知のように、最近ラングーン事件といったような不幸な事件のために一時これを停滞せしめる政策をとった時期がございました。しかしながら、現在では旧に復しておりまして、この点につきましては事実上の関係として両者間の人的交流を我が国の国益を損じない範囲内において認めていくという政策をとっておるところでございます。
  78. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 北朝鮮は我が国と国交がない状況ですが、これは我が国の立場としては韓国と認めるのでしょうか。それとも韓国とは関係ないので、これは全然、例えば南極のようなところのような地位にあるとお考えでしょうか。外務省、どういう御見解でしょう。
  79. 渋谷治彦

    説明員(渋谷治彦君) もちろん日本といたしましては、朝鮮半島にある国としては韓国だけを認めております。北朝鮮との今後の関係につきましては、もちろん朝鮮半島をめぐる諸情勢を考慮しつつ、朝鮮半島に現在成立しておりますバランスの状況を崩さないような形で北朝鮮との関係考えていきたいと思っております。
  80. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 私が今御質問申し上げましたのは、国交がない国において我が日本人がいる場合に、その日本人の人権擁護とかあるいは生命財産の保護とかいったような、国交のある国なら当然我が国でなし得るようなことをできるのかできないのか、できるなら、どういう方法を講ずれば国交のない国におるところの我が日本人の保護ができるのか、こういうことをお尋ねするわけでございます。
  81. 渋谷治彦

    説明員(渋谷治彦君) もちろん、北朝鮮との間に国交関係がないとはいえ、現在日本にも北朝鮮の方々が住んでおられますし、また日本からも北朝鮮に行って住んでおられる方々もおられるということで、私どもといたしましては北朝鮮政府との間に直接の接触は差し控えておりますけれども、そのほかででき得る限りの方法、第三者を通ずるとかあるいは赤十字を通ずるとかいうことで、人道問題の重要な一つとしてこの問題の解決に努力いたしております。
  82. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 もう一つ初めに確かめておきたいことですが、国籍法によりますと、これは十一条ですが、「自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」となっておりますが、北朝鮮の方へ事実上結婚した夫とともに渡航した者は「自己の志望によって外国の国籍を取得した」ということになるのかならないのか、その点はいかがでしょうか。
  83. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) 国籍法の主管当局でございませんので多少ちゅうちょはございますけれども、私の承知しておる限りにおいてお答え申し上げますと、もちろん結婚そのことによって国籍には何らの影響もないわけでございます。結婚した後も従来の国籍を保持することは、本人が特別の措置をとらない限り認められておるわけでございます。なお、先ほども申し上げましたように、したがいまして正式に結婚した上で北朝鮮の領域に入ったということによっても我が国の国籍法上何らの影響も受けないわけでございますから、北朝鮮に入った後において北朝鮮の国籍取得のために法的な手続をとらない限り、日本国籍の保持は依然として続くということであると私は了解いたします。
  84. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 国籍法の十三条一項によりますと、「外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を離脱することができる。」、こういうふうになっておりますが、北朝鮮に行かれた人が北朝鮮の国籍を取ったかどうかということは、我が国においてはわからぬのは当然でありますが、それならば、届け出があったかどうか。つまり、日本の国籍を離脱するために北朝鮮の国籍を取得したという届け出ですね、これが今まであったかどうかということが問題になるわけですが、こういう事実についてはいかがでしょうか。
  85. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) もしそういう連絡があるとすれば、当省におきましては民事局がその連絡を受ける受け皿に、担当機関になるわけでございますので、私どもであるいは承知してない案件があるという可能性もあるかと存じますが、私どもといたしましては現在まで正式にそういう届け出があったということは聞いておりませんのが現状でございます。
  86. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 そうしますと、現在北朝鮮に行っておるいわゆる日本人妻と称される人は今日も日本国籍を持っておる、日本人であるということになるわけなんですが、そういたしますと、こういう人たちの人権擁護という問題はやはり我が国の政府の責任ではないか、こう言い得るわけでございます。そこで、いろいろ日本人妻自由往来実現運動の会などの方が運動しておられるところを聞きますと、今日まで一人も日本には里帰りしていない、こういうふうに言われておるのですが、これは事実でしょうか。
  87. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) 私どももそのように理解いたしております。
  88. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それでは、こういう三十四年以来もう二十七年たったという今日までの長い期間一人毛里帰りしないということ、これは大変不自然ですが、この不自然なことを証明する事実が余りないわけです。手紙が来ておるけれども、ほんのわずかしか来ていない。しかも、それには生活の苦しいことが大変訴えられておる、こういうわけですが、里帰りを希望しないから一体帰ってこないのか、あるいは事実上できないから帰ってこないのかという問題があると思います。こういう点につきまして政府御当局ではどのようにお考えでしょうか。つまり、里帰りをしたくても帰れない事情があるから帰ってこないのか、あるいは日本よりも北鮮の方がいいから帰らないのかという問題ですが、その点はどのような御認識でおられましょうか。
  89. 渋谷治彦

    説明員(渋谷治彦君) 私どもも、北朝鮮におられるいわゆる日本人妻の方々と直接は接触できませんので、留守家族の方々にアンケートを出して照会いたしましたところでは、もちろん希望されている御家族もございますし、さらには、安否の確認だけで里帰りは当面は望まないという方々もおられます。この理由はいろいろさまざまだと思いますが、中にはやはり日本と北朝鮮との間に国交がないというところからいろいろな困難があって、日本に帰りたくても帰れない方々もおられるものと想像いたしております。
  90. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 先方の事情がわからないから帰りたくても帰れないのではなくて、別に帰るという気はない、ただ安否さえ問えたらいいのだといったような者もいる、こういうような今お話でしたが、別れていって、日本に置いてある子供とか両親とか兄弟というものがおる人ばかりなんですが、それが二十七年の間に年をとってしまって、あるいは死んでしまう人もおるし大変境遇も変わってしまう人もいるという状況なんですが、北朝鮮に行った人の年齢ももう六十歳以上になってしまっている、こういうことになりますと、果たして日本に帰りたくない人が多いというふうに言い得るかどうか、これは疑問だと思うんです。こういう問題は想像で語るのではなくして、やはり何らか手を尽くして真実を調査する必要があるのではないかと思いますが、真実を調査する方法として今までお考えになり、手を打たれたことはございましょうか、お尋ねします。
  91. 渋谷治彦

    説明員(渋谷治彦君) 政府といたしましても、この問題はあくまでも人道的な観点から取り組むべきであるという方針は従来より一貫して維持してきております。北朝鮮との間には国交がないということもありまして、政府がとり得る手段につきましてはおのずから限界がございますが、従来、日赤等を通ずるとかあるいは北朝鮮との間に人の往来があった場合には、関係者を通じてそういった人たちにお願いするという措置はとってきております。今後ともそういった措置は続けていくつもりでおります。
  92. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 中国のいわゆる孤児というのがございますね。この人たちの里帰りを今盛んにやっておられますが、これも年をとってしまってどうにもならない人が多いわけです。北朝鮮に行かれた人たちはなるほど向こうで捨て去られた人ではない、こちらから行った人であるけれども、やっぱり明らかに日本人なんですよ。日本人が向こうで大変苦しい生活をしておるということであり、また、これは日本には全く事情もわからないような鉄のカーテンの向こうにおる、こういうような状況なんですが、こういう問題について何らか事情を明らかにし、救済する手段をとることはやはり日本政府の責任だと言わざるを得ないわけです。あらゆる国政上の手段を講じて救済するということは、これは憲法の十三条、あれに書いてあるとおりですから、あらゆる手段を用いることが必要だと、こういうわけです。  そこで、今まで具体的におとりになった方法というのは今お尋ねしたら余りないようですが、伝え聞くところによりますと、先般、総理大臣あるいは外務大臣が訪中された際に中国政府の首脳から、北鮮当局との間に立って日本人妻問題を人道的見地から解決するように打診してみよう、こういうような提案があったということが伝えられておりますが、これは朝日新聞にも載っております。こういう問題につきまして政府ではどのように受け取られ、どういう対応をしてこられたのでしょうか、お伺いいたします。
  93. 渋谷治彦

    説明員(渋谷治彦君) 委員指摘の点に関しましての中国側の胡耀邦総書記の発言は、広い意味で日本と北朝鮮とがお互いの実情をよりよく理解することが朝鮮半島の緊張緩和の観点からも望ましいことで、両者間の意思疎通のため中国としても努力したいという趣旨のものであったというぐあいに承っております。日朝間には外交関係がないということもございまして、従来から日赤ルートを通じてこの問題の解決のために可能な限りの努力はしてまいりましたが、中国等第三国への依頼につきましては、この問題が依然未解決であるということもございますし、さらに今後とも第三国の協力を得ていく必要があるということもございますので、その具体的内容につきましては御容赦いただきたいと思います。
  94. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 それでは、これもまた別の情報ですが、自由民主党のAA研というのがあると書いてありますが、藤井勝志さんが団長として訪朝団を編成されてお行きになった。この際に金日成主席の発言としてその要旨がここに書いてありますが、日本人妻の訪日、つまり里帰りと日本にいる家族の訪鮮を歓迎する。事務的問題は朝鮮労働党、対外文化連絡協会と連絡をとって話を進めていただきたい、こういう返答があったということが発表されておるわけです。これは昭和五十五年の九月の話です。こういう発言があるんですが、これについて政府はどういうように対応されたでしょうか、お尋ねします。
  95. 渋谷治彦

    説明員(渋谷治彦君) 確かに、私どもといたしましても、昭和五十五年九月に訪朝をした自民党AA研の先生方によれば、こちら側からこの問題を提起したのに対し、金日成主席がこれを基本的に了承するとともに、具体的には対外文化協会と相談するように述べたということも聞いております。その後、これを受けてAA研側と対外文化協会とが現実に話し合いを行ったけれども、具体的な進展は見られなかったというぐあいに聞いております。その後、こういうこともございましたので、先ほど申し上げましたように、五十年ごろから日本赤十字社を通じて北朝鮮側に安否調査等を依頼しておりましたけれども、さらにこういうAA研と金日成主席とのやりとりがあったことを契機といたしまして、私どもとしましては従来の努力を強化してまいりましたが、残念ながら目ぼしい結果は得られませんでした。この努力の結果、五十七年十月に初めて北朝鮮側から、日本赤十字社を通じて特に家族から安否調査の要望の強かった九名の日本人妻について安否が判明した旨連絡がございました。その後も、最近では五十九年七月に北朝鮮側より、日本人妻からその家族にあてた手紙十二通が伝達されるとともに、別途五名の日本人妻の安否につきましても日赤に対し連絡があったというぐあいに承知しております、  政府といたしましても、今後とも安否調査につき御家族の方々からの要望があれば日本赤十字社等を通じまして北朝鮮に取り次ぎ、その安否の照会に全力を尽くしていくつもりでございます。
  96. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 情報によりますと、先ほど述べましたように日本国籍保有者が六千六百七十九人も向こうにいるそれらの人たちの消息が不明で、わかったというのは九人か七人といったような少数の者しかわからない。こういうようなことが今日の文明の社会で行われておるということは、結局北朝鮮に渡った日本人が貧乏なので、手紙さえ出すだけの金もない、とても旅行する金がない、そういうためにこういうことになっているのか、それとも北朝鮮の政府において何らかの理由で日本人が日本と連絡をとることを禁止しておるのかという問題があります。どっちかだろうというふうに疑われておりますが、こういう点について外務省はどうお考えになり、また今後こういう問題についてどういう手を打っていこうと考えておられるでしょうか。
  97. 渋谷治彦

    説明員(渋谷治彦君) 安否がなかなか判明しないのは、いろいろ理由があるかと思いますが、やはり一般的には朝鮮半島をめぐる国際情勢、特に日朝間の雰囲気がどうなっていくかということにも相当影響されるものだと思います。したがって、こういう観点から、このいわゆる日本人妻の問題をも念頭に置きながら北朝鮮との関係にも対応していきたいと思っております。
  98. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 これは非常に大変重大な問題であると言わざるを得ないのでありますが、これにつきましてその人権擁護の任務を持っておられる法務省、特に法務大臣の御見解とか御決意というものはどういうものでありましょうか、お尋ねいたします。
  99. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 我が国が北朝鮮からの入国を認めておる状況になっておるにもかかわりませず、日本人妻の里帰りを一切認めてないというのは非常に私は残念なことであるというふうに思っておるわけでございます。既に御承知だと思いますが、昭和五十六年ですか、閣議におきまして奥野大臣が発言をされておるわけでございまして、そういう閣議の趣旨からも本件がうまく解決するように努力をしなきゃならぬというふうに当然思っておるわけでございますが、何分にも北朝鮮当局の対応の姿によってそれが左右されておるというような状況になっているやに我々は受け取っておるわけでございます。そういう意味合いから、なかなか両国間に外交関係が存在してない現状では、先方との接触というのはなかなか難しい点もあろうかというふうに思うのでございますけれども、極力努力をいたしまして、日本人妻の帰還が一日も早く実現をするように努力をしなければならないというふうに思っておる次第でございます。
  100. 飯田忠雄

    飯田忠雄君 どうかその点、よろしくお願いをいたします。  きょうはまだそのほかに質問する事項たくさん用意してきたんですが、時間が参りましたので、この次の機会にいたします。政府の御当局でわざわざ御出席願いましたお方には申しわけないですが、どうぞ御了承ください。終わります。
  101. 橋本敦

    ○橋本敦君 大臣も昨日の夕刊各紙をごらんいただいたと思うのでありますが、外国弁護士の受け入れ問題について十二月九日、日弁連は臨時総会を開きまして、外国弁護士の受け入れを基本的には承認をするという方向を明確にいたしました。そして、来る二十日、つまり、あすですが、理事会その他を開きまして今後の具体的な詰めの協議に入ると、こういう状況でございますが、時あたかもそれをにらんだ形で、昨日の夕刊一斉報道によりますと、米通商代表部はこの日弁連決議を非難する声明をわざわざ発したということが一斉に報道されておるわけであります。  新聞報道によりますと、米通商代表部はこの日弁連の決議が極めて不十分であるというようなことを言っておるようでございまして、米側の要求に全面的にこたえていないということで、これからの日弁連の動向あるいは法務省を中心とする弁護士法改正案の法案づくりに向けて対日圧力を強めねばならぬという、こういう意図で非難声明を出したと報ぜられているわけであります。そうだとすれば、まさにこれは日本に対する不当な内政干渉と受け取られても仕方がない行為だと私は思うのでありますが、この通商代表部非難声明なるものについて大臣の御所見はいかがでありましょうか。まず、この点をお伺いしたいのであります。
  102. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 御承知のように、今外国人弁護士の受け入れの問題につきましてはいろいろ日米間でも交渉を進めており、また弁護士会との間におきましてもいろんな苦心をして、その調整に内部的には努力をしておるというのが実情であろうかと思うのでございます。  今回の通商代表部のステートメントが内政干渉ではないかというような御質問でございますが、そういう関係に現在あるわけでございまして、私たち、これは交渉事でございますから、必ずしも内政干渉であるというふうには受け取っておらないわけでございます。ただ、日本政府としては、我が国における外国弁護士の受け入れの問題につきましては、国際的にもあるいは国内的にも妥当とされるような案をつくるように日弁連とも累次協議を重ね、また、今申し上げましたように米国政府とも誠意をもって協議を重ねているところでありますので、今後ともこの努力を継続していきまして、何とか実を結びたいと思っておるわけでございます。そういう考え方からしますと、今回のステートメントが時宜を得た適切な内容のものであるとは私は思っておらないわけでございます。  この問題は貿易摩擦解消の一面を持っておるというようなことが言われて、それだけで反対をされるというような人があるわけでございますけれども、我々はそういう観点からのみ考えておるわけではありませんので、各国の司法制度、なかんずく弁護士制度と直接かかわる重要な問題であるわけでございまして、外国弁護士受け入れ制度をきちっと確立し、これを円滑に実施するためには弁護士団体の意見を十分尊重しなければならないことは当然のことであり、またそういう考え方は我が国のみならず、米国においても州の幾つかをどういうぐあいに開放しようかというようなことで大変苦心をされておるところだろうと私は思っておるわけでございます。  そういう意味で、我が国におきましては全国の弁護士を構成員とする弁護士連合会の方と、先ほど御指摘のありましたように、いろいろ協議を進めてまいりましたわけでございますが、この十二月九日の日に総会を催していただきまして、いろいろな議論も激しくあったようでございますが、内外の意見を参酌しつつ外国の弁護士を仲間として受け入れるとの画期的な議案を採決していただいたわけでございまして、これによって基本的には外国の弁護士が我が国において事務所を開設し、自国法に関する一般的な法律事務を行う道を開くとの意思を決定したのでありまして、そういう意味では、私はこれを高く評価をしているというのが実情であるわけでございます。  しかし、具体的なこの受け入れ制度の詳細な内容とかあるいは個々の問題について結論を得てない問題もないわけではないのでございまして、我々としましては今後とも米国政府とも十分協議を遂げまして、何とか相互の理解を深めることによりまして、最終案の確定に向けて日弁連ともども努力をしなきゃならぬのじゃないかというふうに思っておる次第でございます。
  103. 橋本敦

    ○橋本敦君 この問題は単なる貿易摩擦の解消ということにとどまらず、弁護士制度というのが司法制度の重要な一環でございますから、大臣もお認めいただけますように、まさに我が国の民主的な制度の根幹、国民の権利にかかわる、それ自体その国の独自の伝統的制度も含んでの重要な意味を持っておるわけでありますから、本来的には、私ども共産党としては大臣にも申し入れさしていただきましたように、国際社会への対応ということが必要であるとしても、まさに自主的に慎重に検討すべき課題でありますから、アクションプログラムとは切り離して慎重に検討すべき性質のものだということを申し上げておるわけであります。  この問題について、それがまず第一の基本問題でありますけれども、第二番目としては、今大臣もおっしゃったように、当該日本弁護士連合会、これはまさに大事な自治機能を持って我が国の司法制度の発展にも寄与している法律上認められた重要な組織でございますから、この日弁連の意見も十分に尊重するという立場を堅持していただいて、それでこの問題の解決に当たっていただかなくちゃならぬ、これが第二の問題点。この問題については大臣もそういう方向で日弁連の意見を尊重するということを表明していただいておるわけでありますが、とりわけ私が指摘したいのは、アメリカの弁護士と日本の弁護士が非常に違うということです。  一つは、アメリカではロースクールを出れば簡単に弁護士になれますから、毎年二万、三万という弁護士が生まれてくる。日本では御存じのように、昨今の法務委員会でも私質問しましたが、五十倍近い大変な競争率を経て、しかも司法修習制度という研修期間を経て、そして弁護士になるということでございますから、そのことからいっても基本的に非常に大きな違いがありますし、さらに具体的に言えば日本の弁護士は、弁護士法そのもので、基本的人権を擁護して社会正義の実現に貸さなくちゃならぬという、そういう使命を負っておるわけでございます。アメリカの場合は、そういうような規定はありませんで、全く自由に企業のコンサルタントその他として営業活動を主体にやっておるわけでございまして、非常に歴史的にも経緯が違う。  そういうわけでありますから、この外国弁護士の受け入れ問題は、こういう事情も十分に考慮した上で、単なる貿易摩擦問題ということではなくて、まさに国際的に司法制度をどのように我が国が自主的に今後検討していくかという視点を貫いていかなくちゃならない。そういう課題であるときにアメリカの通商代表部が単なる貿易問題ということのみに立脚をして、そしてアメリカの要求どおり十分に自由化が進んでいないということで非難声明をこの時期に出すというのは、大臣が指摘されたように適切でないという側面だけじゃなくて、私はこれはまさに不当だというように思わざるを得ないわけであります。  そこで、大臣にお願いしたいのでありますが、日弁連の意見も十分尊重していくとおっしゃいましたけれども、何よりもアメリカとの交渉においてはこうしたアメリカの意図的な貿易摩擦のみに着眼をした対日圧力的な非難に屈せず、我が国の自主的立場を断固貫く立場で、まさに日本の主権を擁護する立場、こういう立場を貫いて、今後日弁連ともよく協議をして交渉を進めていくという姿勢を貫いていただきたい、このことをお願いしたいのでありますが、いかがですか。
  104. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) この問題は、非常に私重要な問題であるというふうに思っております。  ただ、御承知のようにサービス関係の自由化問題というのは非常に一方で緊急な問題でありまして、そういうことの一環として事柄が取り上げられてきていること自体、私は今の国際情勢の中である意味で避けられない点であろうというふうには思っております。しかし、先ほど来申し上げておりますように、日本の弁護士制度というものはそれなりに長い歴史というものを持っているわけでございます。したがって、この問題の処理につきましては、十分この日本の自主的な立場というものを堅持して、きちっと整理をするような努力をしていかなきゃいけないと思っております。  ただ一方、弁護士会の方でも非常に垣根だけ高くするというような印象を与えるだけではいけませんので、そういう点につきましても、これから具体的な案を練る場合に、十分ひとつそういう意味で積極的な姿勢を見せていただくことも期待をしながら弁護士会の中でのいろいろな御努力をひとつ酌ましていただいて、本当に一致したような形で問題の処理ができるように今後とも努力を積み重ねてまいりたいというふうに思っております。
  105. 橋本敦

    ○橋本敦君 それでは、この問題は中身には入らずにこれで終わりますけれども、大臣がおっしゃった自主的な立場ということを政府としては貫いていっていただきたいと思います。  次に、私は労働者の人権問題に関して質問をしたいと思うのであります。  労働者の人権問題ということを申し上げましたが、職場における労基法三条違反と見られる不当な差別扱い、そしてそれが同時に村八分あるいは見せしめ的差別扱いとして、労基法三条というよりむしろ人権問題そのものにもかかわっている、そういう事態が職場の中で起こっているとすれば、まさに私は憲法に照らしても早急にこれを是正しなくちゃならぬ課題だ、こういうように考えるからであります。  具体的にそれは、住友軽金属の名古屋製造所というところで鈴木明男さんという一人の労働者が不当な扱いを受けているという問題でありますが、私ども共産党は、今週の初めの十六日に日本共産党・革新共同の田中美智子衆議院議員や小沢衆議院議員を調査団として現地に派遣をいたしまして、実情調査をしてきたわけであります。  具体的事実を申し上げますと、この名古屋の住友軽金属名古屋製造所はアルミの製錬を主としておる工場でありますが、敷地面積は四十一万九千六百平米という広大な敷地を持つ大工場でありまして、従業員は千五百二十名を擁しているところであります。  この労働者の鈴木君というのは、この会社に就職をいたしましたのがもうかなり古いことでございまして、昭和三十六年でありました。そして、私が差別事件と言うこの事件が起こったのがことしの四月一日であります、この四月一日に突然職場配転を命ぜられるまで本人は、第一精整ラインと呼ばれる流れ作業部門で、その一員として流れ作業に従事をいたしておりましたが、この部門で約七年間働いて、この部門は四直三交代でやっておりますが、残業も含めて他の労働者と同様に仕事をしておったわけであります。ところが、突然三月末に作業長から呼び出されまして、職場の配転を本人の同意を得ずして一方的に命ぜられたのであります。それは全く新しい「段取班」という名前をつけた職名でありますが、本人全く一名でございます。  そして、それではどこで仕事をするのかといいますと、これがまた大変なことでございまして、今までの生産ラインは工場の中でありますけれども、今度は一人だけ外へ出まして、何とひさしの下に間口二間、奥行き三間、約十二畳ほどの広さの小屋をつくりまして、工場のひさしの下でございますから屋根がすかすかでございますが、天井は今言いました間口二間、奥行き三間の小屋のような上にビニールのテント張りという状況で急ごしらえでございます。そこに大きな窓ガラスがはめ込まれているのでありますが、これはそれ自体開閉するというのじゃなくて、ガラスがはまったままで、出入り口を除いて窓ガラスがはまったままでありまして、まさにこれは外から丸見えという状況でつくられているわけであります。ここへたった一人で入るわけです。それで、ここで仕事をせよということでありますが、ところが、その仕事が今までと違ったスプールという部品の、鉄スプールのさび落としというのをそこで一人でやらされるわけであります。  問題は幾つかありますが、まず第一の問題は、その職場に入って当初、大変ひどいことでありますけれども、まず外の労働者と話をするようなことをやるな、外へ出歩くなど。そこで鉄のさび落としをやって、次から次に材料を持ってこなくちゃいかぬわけですが、必要とあれば電話があるから電話で言ったら持ってくる、おまえがとりに行くな、要するに外の労働者と接触するなという、こういうやり方であります。ていよく、電話があるからそれで言ったら持っていってやるということですが、実際は外の労働者と交流をさせないということがねらいであることは明らかでありますが、そのために、工場の中のトイレは使わずに外にある事務所横のトイレヘ行けと、トイレまで指定するというようなことをやってきたわけであります。  そして、もう一つは残業の問題でありますけれども、本人は今まで残業だけで約九万円、子供が四人おりまして両親もありますから本当に苦しい暮らしで、この残業九万円が収入のほぼ三分の一を占めておるんですが、今度の職場では一切残業はないということを申し渡されるということで経済的にも締め上げられるという状況であります。そして、仕事はたった一人ここでやらされて、通る労働者からは丸見え、つまり見せしめという状況がたれが見ても明らかなような、そういう客観的状況の中で仕事をさせられておるというのであります。  私どもは、これはアルミ製錬工場でありますが、まさにアルミの小屋、アルミのおりに入れて労働者を差別扱いする不当なやり方だということで、早くこれをなくさせなくちゃならぬということで調査団も派遣をしてきたわけであります。  じゃ、なぜこういうことをやるのかということを検討してみますと、この鈴木君が五十七年ごろから住友軽金属、これを簡単に住軽と言いますが、「住軽の仲間」と題するこういうビラを門前でまいた、それは共産党のビラだからけしからぬというようなことで、まずそこから差別扱いが始まっていったように思うわけであります。そして、会社の中に労働組合がありますが、そこでもいろんな意見はありますが、基本的には、会社の合理化がどんどん進んでくる中で組合の民主的な運営や、あるいは合理化反対ということで本人も奮闘するようになるわけでありますが、そういったことが会社の意にも沿わないというようなことで会社から不当な扱いを受けてくる嫌いがあったんですが、いよいよことしの四月一日に今言ったような扱いを受けるに至ったというのであります、  こういう問題を考えてみますと、私は、まさにこれは労基法三条が思想、社会的身上あるいは出生、門地によって差別待遇をしてはならぬということを決めておる問題、これは憲法十四条から来ておるわけでありますけれども、公然どこれに違反する状態がやられている、こういうことは許せないと思うのであります。それと同時に、今お話ししたように、これはまさに人権問題にもかかわる、そういうような状況でありますので、本人はこの問題について十二月七日付で、名古屋の方で人権擁護局に申し立てをして調査を求め、できれば早急な勧告もしくは処置を求めるという態度をとり、同時にまた労働基準監督署にもこの点について是正の申し立てをしているという、これが今までの経過であります。  そこで、まず法務省人権擁護局長にお伺いするのでありますけれども、私が今指摘したようなこういう状態が実際に起こっているとするならば、村八分の問題あるいは見せしめの問題、そして他の労働者と比較をしても明らかに差別扱いと見られるような、たった一人だけそういう状況で仕事を強制するというような問題は、これは労働者の人権にかかわる問題だというとらえ方を当然するのが当たり前だと思うんですが、法務省のお考えは、まずこの点いかがでしょうか。
  106. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 御指摘の事案につきましては、既に鈴木さんから名古屋法務局に人権侵犯であるとして申告がなされておるところでございまして、法務局といたしましても、その内容が果たしてどうなのであるかということで目下調査をいたしておる段階でございます。いずれ結果が出てまいると思いますので、その結果、人権侵犯の事実がはっきりしてまいりますれば厳正に対処してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  107. 橋本敦

    ○橋本敦君 今局長がおっしゃったとおり、今調査をしていただいておるということでございますが、人権侵犯事件であることがはっきりすれば厳正に対処するというお答えをいただきました。  問題は、私が指摘したようなそういう状況のもとで明らかに他の労働者と労働条件の扱いを差別するという、そういうことを通じて見せしめ的に今言った小屋のような中に入れて、それで全く本人の人格を無視するようなやり方をしているという、そういう状況があれば、これは私は人権侵犯事件だということは当然言えると思うのですが、その点のお考えはいかがですか。
  108. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 先ほど来御指摘になっておられます事実は鈴木さんから申告のありました事実でございまして、私どもは、この事実がそうであるとすれば人権侵犯の疑いが濃いということで調査を現在進めておるところでございます。
  109. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点については人権擁護の立場で、調査官のそれぞれのお仕事にもいろいろ限度も苦労もあると思いますけれども、調査の仕方としては直接会社に行って現場の現認もするというような立入調査も含めて、事実の確認はやっていただけるのでしょうか。ぜひそうお願いしたいのですが、いかがですか。
  110. 野崎幸雄

    政府委員野崎幸雄君) 現実に現在どのような調査を進めておるか、まだ報告を受けておりませんけれども、恐らく問題は、そういったところで隔離をされておるそれが村八分と同じではないかという御主張でございますので、今御指摘になったような方法も含めて調査がなされるものではないかというふうに考えております。
  111. 橋本敦

    ○橋本敦君 では、次は労働省にお伺いします。  この問題は、今私が話したように、現地の名古屋南労働基準監督署にも申し立てをしておるわけであります。この申し立ては、既に本年の四月になされておるわけであります、そして、この問題がその後も若干の改善、例えば便所は近くの便所を使ってもいいというように事実上なってきているようでありますけれども、改善はあるけれども基本的にまだ改善されていないというので、十二月十日、衆議院の社会労働委員会で、我が党の小沢議員もこの点の調査と善処を質問の中で取り上げました。労働大臣は、その事情を小沢議員から聞いて、そういう問題については労働省としても厳正に調査をするというようにその答弁でお約束をいただいたわけでありますが、現在この申し立てによる調査はどのように進んでおりますでしょうか。
  112. 菊地好司

    説明員(菊地好司君) 御指摘の点につきましては、名古屋南監督署におきまして、御本人の職場におる日との調整も整いまして、明日実地に調査をすることにいたしております。
  113. 橋本敦

    ○橋本敦君 これまで聞きますと、二回ほど監督署も行っていただいたようでありますが、本人がそこにいない、あるいは会社が監督署から来られるというのを知って、本人に他の場所での業務を命じたのかもわかりませんが、いないときに行かれたという話も聞いておるのです。だから、本人が現場にいないときにお行きになっても十分の現認調査はできないわけですから、あした行っていただくというのは、まさに現場に行って状況も見、本人からも意見を聞く、会社からも意見を聞いて結構ですが、そういうことで遺漏のない調査を遂げていただかないと十分の真相が出てこないと思いますので、その点は、調査としては本人がいる現場へ立ち入って見ていただくということを必ずやってほしいと思いますが、やっていただけますか。
  114. 菊地好司

    説明員(菊地好司君) 御指摘の趣旨を踏まえまして調査いたさせます。
  115. 橋本敦

    ○橋本敦君 調査していただいた結果、これが労基法三条を含む不当な労働者に対する差別扱いだという、そういうことが明確になってくれば、監督署あるいは労働省としてはどのように対処をしていただけますか。
  116. 菊地好司

    説明員(菊地好司君) 私どもは労働基準法の履行確保を使命としておりますので、違反の事実があれば厳正に対処をしたいと考えております。
  117. 橋本敦

    ○橋本敦君 今の調査の結果、厳正な対処で労働者の人権が回復され、憲法に基づく健全な正しい労働関係がすべての職場でもキープされる、確保されるという方向になるように、国政の場から私も今言った調査を厳正に遂げていただいた上での処置をお願いするものであります。そういう結果を今後期待をして見守らしていただいて、この問題についての質問は終わらしていただきます。  次の問題は、離婚に伴う子供の養育の問題であります。  この問題については、最近の新聞でも大きく報道されましたが、厚生省の児童家庭局長の諮問機関である離婚制度等研究会が報告書を提出されました。これが大きく新聞でも報道されて関心を呼んでいるようであります。この報告書を私も見さしていただきましたが、我が国の離婚制度は諸外国に比べて非常に自由である。憲法で結婚そのものが両性の合意のみによって成立するということで、結婚する当人の意思を法律的にも憲法上も尊重するという立場を貫いておる、その反面、破綻をした婚姻についても、その解消は双方の合意を基本にしてやられているということは間違いないわけですが、その離婚が他国に比べてそれほど自由であるというそのことの是非はきょうは別として、その離婚に伴って子供の養育費の問題が、これが非常に問題として残されてしまうという不備があるという指摘であります。  この点は、なるほど私もこの指摘はもっともな指摘だと思うのでありますが、まず厚生省にお伺いいたしますが、この報告書はどういう点が検討すべき不備な点だと指摘しておるのか、厚生省が調査をなさった実情はどうなのか、その点いかがでしょうか。
  118. 市川喬

    説明員(市川喬君) 御説明申し上げます。  ただいま御引用ありました離婚制度等研究会でございますが、これは、私ども児童福祉を所管いたします立場から、近年におきます離婚の増加という状況を踏まえまして、主として児童福祉の観点から離婚及び離婚制度をめぐる問題点を整理分析していただきまして、今後とるべき諸方策について検討をするため御提言をいただいた、こういう趣旨でございます。  それで、報告の提言でございますが、大別しますと三つに分かれてございまして、一点は「相談機関の整備」でございます。二点目は「離婚制度等の再検討」、それから三点目が「公的扶養と私的扶養の調整」、以上でございます。  相談機関の整備につきましては、問題が生じました御夫婦の身近に、気楽に足を運んで相談をできるような相談機関が存在するよう、相談機関の整備充実を図ることが必要であるという提言でございます。  次に、離婚制度等の再検討でございますが、これにつきましては、まず離婚手続におきまして子供の権利を確保するための方策といたしまして、例えば未成年の子を有する夫婦の離婚に関しまして、養育費等につきまして取り決めがある場合に、それを離婚の届け書に記載させること等であります。そういう点とか、それから協議離婚におきます離婚意思の確認手続を導入するというふうな具体的な検討項目が提言されております。また、子供の養育費の支払い義務につきまして具体的な規定を整備をすること、それから養育費の支払い義務の履行を確保するため、より簡易な執行方法を導入すること、こういう点についても検討の必要があるという指摘がなされております。  最後に、公的扶養と私的扶養の調整の問題でございますが、これにつきまして検討すべき具体的方法について提言されておりますが、これを実施するにはいろいろと問題点も多い事情がございますので、なお慎重な検討が必要であるというふうな指摘がなされております。  以上が提言の大要でございます。
  119. 橋本敦

    ○橋本敦君 ありがとうございました。  私もこの報告書は読ましていただきまして、理解しておるつもりでございますが、今なされたような提言を踏まえて、厚生省としてはこの問題について今後どういうように対応なさるか、御意見を聞かしていただけますか。
  120. 市川喬

    説明員(市川喬君) ただいま申し上げましたように、この報告書で問題提起されました事項の中には、例えば離婚制度の再検討のように厚生省の所管を越える事項もたくさんございますので、今後の具体的な提言の実行につきましては法務省さんを初め関係省庁等と十分に相談して進めてまいりたいと、かように考えております。
  121. 橋本敦

    ○橋本敦君 確かに子供の養育費の問題は心を痛める問題でございまして、厚生省の調査でも、離婚をした後母親が親権者になって子供を育て、前の夫から養育費を受けている数は全体のわずか一一%程度だという数字もあるようでございまして、子供の養育と人権ということを考えましても、この不備は本当に何とかしなきゃならぬ、こう思うわけです。  そこで、最高裁判所から現在の裁判所でわかっている実情についてお聞かせをいただきたいのでございますけれども、この養育費の履行状況、これをめぐって家裁の調停あるいは履行確保の制度等の活用、こういったことで、最近の事件数の推移を含めて、どういう状況だということになっておりますでしょうか。
  122. 猪瀬愼一郎

    最高裁判所長官代理者猪瀬愼一郎君) 養育費について当事者間に協議が調わない場合には、権利者は養育費を定めその支払いを求め、調停または審判を家庭裁判所に申し立てることができるわけでございます。これは家事審判法九条乙類四号の子の監護に関する処分事件として係属することになりますが、この種の事件についてここ十年間の新受件数の推移を見ますと著しい増加傾向を示しておりまして、昭和五十年度は約二千二百件余りでありましたのに対して昭和五十九年度には約八千二百件余り、ここ十年間で約三・六倍の増加になっております。この数字の中には子の監護者の指定等の事件も含まれますけれども、大部分は養育費請求事件であろうかと思われます。  それから、家庭裁判所の調停、審判で定められた義務が義務者によって履行されない場合には、履行確保の手段としまして履行勧告制度、さらに履行命令、さらに強制執行と、こういう大きく分けまして三つの方法があるわけでございますが、このうち主として機能していると申しますか、利用されておりますのが履行勧告制度でございます。養育費についての履行勧告事件の統計は、これだけの統計はちょっとないのでございますけれども、養育費請求や婚姻費用分担請求を含めた、いわゆる生活費の支払いに関する履行勧告の件数はここ十年間で増加傾向をやはり示しておりまして、昭和五十年度は約五千百件余りでありましたが、昭和五十九年には約七千百件余りというふうになっておりまして、約一・四倍程度の増加を示しております。  この履行勧告制度の運用状況でございますが、かなりの成果を上げているものというふうに言えるのではなかろうかと思います。例えば昭和五十九年度におきますこの種の事件の履行勧告後の履行状況を見ますと、全部履行されたものが約三〇%ございます。一部履行されたものが約四〇%でありまして、全く履行されなかったものが全体の約三〇%程度になっております。  次に、履行命令でございますが、これは利用がかなり少ないわけでございまして、養育費についての履行命令は、ここ十年間でほぼ毎年数件程度の利用にすぎない状況でございます。  それから、養育費請求や婚姻費用分担請求等をも含めた生活費関係事件の強制執行の申し立て件数でございますが、昭和五十年には四百二件ございましたが、その後多少の起伏はありますが、増加傾向をこれも示しておりまして、昭和五十九年には六百三十九件となっておりまして、この十年間に約一・六倍の増加となっております。  こういうふうにいろいろな履行確保のための方法はございますけれども、養育費の支払いは比較的少額の金銭を定期的に継続して給付させる、そういう性質のものでありますので、できるだけ義務者を納得させて履行させるという方法が効果的であろうかと思います。その意味におきまして、これらの幾つかの履行確保の手段のうち、履行勧告制度がやはり今後とも重要な機能を果たしていくのではなかろうかと思います。
  123. 橋本敦

    ○橋本敦君 ありがとうございました。現状がよくわかったわけでございます。  どちらにしましても、今おっしゃったように、本人の納得、そして誠実な履行、そして継続的履行の義務が果たされるということが子供の養育にとっては大事である。今おっしゃった、家庭裁判所でも事件がふえておることはわかりましたが、それだけ養育費をやっぱり出させるという要求が強いし、大変多くふえておるわけですが、ベースとして、自由な協議離婚で養育費も決めないまま離婚だけしてしまうというケースが依然として多いし、裁判所で事件がふえているといっても、そのうちの一部という状況だと私は思うんです。そこで、現状に照らしてこの離婚制度研究会の報告書も今日的意味を非常に持っている。そして、これからも子供の養育費の問題については前向きに検討してやらねばならぬという、そういう課題がはっきりしていると思います。  そこで、最後にお伺いしたいのは、今厚生省もおっしゃいましたように、この問題の提言の方向は、一つには民法、家族法あるいは強制執行法を含めた法制度の改正も必要だという部門もあるわけですね。そこで、この研究会には、これは法律の専門家という、そういう立場からも法務省あるいは裁判所からもお入りいただいて検討されていただいておるわけでございますけれども、この提言が出て今後どう対応するかということについては、厚生省もおっしゃったように、法律問題、法制問題も含むので法務省ともよく協議したいと、こうおっしゃっておるわけでございますが、これを受けて今後子供の養育費をめぐる問題について十分に対処してやっていただきたいと思うんですが、大臣あるいは民事局長の今後この問題についての対応についての御意見をお伺いして質問を終わりたいと思うわけでございます。
  124. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) このたびの報告書に盛られております問題点というのは、私どももよく理解をできるところでございます、かねがね私どもとしても問題であろうという認識は持った点でございます。ただ、その問題を解決する方法として、実はどういうことをそのほかの周辺の問題との整合性の上からとるのが妥当か、またとることができるかということについては、難しい問題がたくさんございます。そういうことでございますけれども、このたび報告書の中に幾つかの提言がございますので、私どもはその提言を一つ一つ十分に研究をさせていただきたい。そして、厚生省あるいは裁判所等も十分協議をしながら何かうまい解決方法を見つけていくように努力をすべきだというふうに考えております。
  125. 橋本敦

    ○橋本敦君 今の局長答弁でこれからの努力も期待されるわけですが、大臣もひとつ関心をお持ちいただいて、しかるべき御指導をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  126. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 何か本日、厚生省の方からこの報告書の送付を受けたようでございます、今、民事局長から説明がありましたように、法務省としてもこれらの問題については互いに関連、関心を持っておる事柄でございましたので、十分その内容を検討させていただき、また各省庁ともよく協調態勢をとりまして、何か法制上どういうような問題の処理をしなきゃならないのか、よく研究をさせていただきたいと思います。
  127. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりました。よろしくお願いします。どうもありがとうございました、
  128. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 きょうは北朝鮮日本人妻の問題を取り上げて、いろいろな角度からお聞きをしてまいりたいと思います。  最初にまず振り返ってみまして、この問題は日本赤十字社と北朝鮮赤十字会との間でもってカルカッタ協定が結ばれて、昭和三十四年の十二月の十四日に第一次の帰還船が新潟港から出港したわけなんです。それからこの北朝鮮帰還事業が開始をされてまいりまして、昨年の七月二十五日までに百八十七回にわたって輸送されていった出国者の総数は九万三千三百四十人。その中に日本国籍を持っている人が六千六百七十九人おります。そのうちで日本人妻と言われる人が千八百三十一人いたわけなんです。この五十九年の七月二十五日までの数字はそのとおりに掌握はしているわけですけれども、それ以降、この帰還業務というか、帰還船が行われたのかどうか。行われていたとすれば、五十九年の後半、さらにはことしどのくらいの人たちが送り出されたのかということからお聞きしてまいります。
  129. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) ただいま御指摘の五十九年七月が現在までの量後の帰還船でございまして、その後いまだ帰還船の実施は行われておりません。しかしながら、これは協定あるいは合意がなくなったということではございませんで、北朝鮮への帰還を希望する者の数が相当数に達し次第、日本赤十字から先方赤十字に連絡の上、配船が行われるという段取りは依然として残っておるわけでございます。
  130. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 それでは、これも私が言わなくてもむしろそちらが十分おわかりのとおりに、今までのこの帰還事業というのは第一段階が昭和三十四年十二月の十四日から四十二年十二月の二十二日までの八年間、百五十五次にわたって、この間に八万八千六百十一人の人たちが向こうに行かれた。次の第二段階というのが四十六年の五月十四日から四十六年の十月二十二日までの五カ月間、この間に六次にわたって千八十一人の人たちが向こうに行かれた。その後、第三段階で四十六年の十二月の十七日から今の五十九年七月二十五日までの十三年間に二十六次にわたって三千六百四十八人が行かれたわけなんです。  この第三段階というのが事後措置ということでもって扱われたわけなんですが、事後措置というのが十三年間続くというのもいささか長いというふうに思うんですが、その後、今のお話だと希望者が余りないからやられてない。これから後この帰還事業というのはどういうことになっていくのか、どういう扱いにしようとしているのか、その辺のお考えをお聞かせいただきたいんです。
  131. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) ただいま現言及のございました事後措置帰還事業は、両国赤十字の間におきます会談要録という文書に盛られた合意に基づいて行われておるわけでございますけれども、この会談要録には失効の時期についての記載がございません。と申しますことは、改めて双方の合意がない限り、これの合意は続くということでございます。そこで、その要録には、ほぼ二百五十人から三百人ぐらいの帰還希望者が集まった段階で配船を求めるという規定になっておるわけでございますけれども、最近の例を振り返りますと、過去数回は五十名以下で帰還船の手配が行われております。と申しますことは、そこまで弾力的に扱いをしてきておるということでございまして、今後ともその程度の数がまとまればこの配船は行われるというふうに了解いたしておりますし、政府といたしましても、別段これについて異論を申し述べるというような気持ちはございません。  私どもといたしましては、帰還希望者がおる限りはこの手続を残しておいても差し支えないのではないかというふうに考えておりますので、この希望者の出てき次第、現在までと同じような手続が繰り返されるものと考えております。
  132. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そうすると、事後措置として十三年間続けたのだけれどもやめるのではなくて、その事後措置はまだ生きているのだという考えでよろしいんですね。  だけれども、この十三年間の事後措置なんというのは、本来からいけば二年か三年のものでしょう。だから、十三年間ずっと続いて、それで何らかの向こうと協議をするとかなんとかそういうことは、これは直接は赤十字社の方がおやりになっていることだけれども、そういうお考えはお持ちにならないんですか。それで、今のまま、こんなこと言っちゃいかぬけれども、だらだらこれをこれからも続けていくというふうに考えているのですか。そこはどうですか。
  133. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) 私どもといたしましては、現在までの措置、現在までの手配を打ち切るというか、現在の状態に変更を加える必要ということ、あるいはそういう要望に接したということもございませんので、現在までの状況が、その帰還船手配の期間がだんだん長くなっていくあるいは帰還船と帰還船の間の期間が長くなっていくということはあるかと存じますけれども、もはや帰還を希望する者がなくなったというな状況にならない限り現在の措置は残しておくということになるものと考えております。
  134. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今度は法務省と外務省と両方にお答えいただきたいんですが、在日北朝鮮人が北朝鮮に帰られて再び日本に入ってくるといういわゆる再入国、この再入国許可というのが四十年から始めて五十九年までに二万八千二百四十二人になっているという、これはことしの春私がお聞きした数字ですから同じだと思うんです。これについて、昭和四十年に再入国許可というものをお認めになったんですが、そのお認めになるときに政府の見解というものはどういうものであったのかどうか、また北朝鮮側との間ではどういう合意事項をもってそういう再入国許可というものを始めるようになったのか、その点をお聞きしたいんです。
  135. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) まず数字でございますが、現在までの統計で申し上げますと、北朝鮮向けの在日朝鮮人に対する再入国許可数は二万九千九百九十件となっております。二万九千九百九十名と申してもよろしいのですけれども、あるいは重複があるかもしれませんので、これは延べ数ということになります。  そこで、昭和四十年の再入国許可を発給するに至った経緯でございますが、昭和四十年という年は韓国との間の国交が正常化した年でございます。そのとき以降、韓国籍を有しております在日の朝鮮半島出身者は韓国との間の往来をかなり自由に行うことができるようになったわけでございます。こうしたこととの均衡をも考慮いたしまして、朝鮮半島出身者が北朝鮮に居住する親族との再会等のため北朝鮮へ渡航を希望する場合には、人道的な観点からこれを可能ならしめるために再入国の許可を与えるということにしたわけでございます。ただ、その後も北朝鮮とは国交関係がございませんので、両政府間の合意というものはございません。法的にのみ申し上げれば、これは一方的な措置、しかしながら相手方が事実上容認しておると申しますか、了承しておる措置ということでございます。
  136. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) ただいま法務省の方からお答えを申し上げたとおりでございまして、北朝鮮との間では、残念ながら国交はございませんので、行政的に合意をするというようなことはできないわけでございまして、ただいま御説明のあったような我が方の措置によりましてこの業務をやっておるというのが現状でございます。
  137. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これも法務と外務と両方にお答えいただきたいんですが、先ほども言いましたように、昭和三十四年十二月十四日から二十五年間、百八十七回にわたって九万三千三百四十人を向こうへ送った。それから、今度は昭和四十年に再入国許可というものを出すようになって在日北朝鮮人が本国に帰ってまたこっちへ帰ってくるのが、今一番新しい数字を局長から聞いたんですが、二万九千九百九十人で、最近は年間五千人前後が再入国で来るわけでしょう。  ここでお考えいただきたいのは、しかも今の入管局長のお話だと、北朝鮮の方と合意ではなくて、日本政府の方の一方的な判断でやりましたんですということで、日本政府がそれだけ、言うならば人道的な好意を持っておやりになった。ところが、こちらから向こうに行っているいわゆる日本国籍を持った人あるいは日本人妻、そういう者が二十七年間一人も帰ってきていない。日本政府の方はやっぱり相手のそういうことも考えて、行きなさい、また戻ってきてよろしいですよと再入国許可を与えているにもかかわらず、北朝鮮側ではそういう形でもって日本がやったものに対して、こちらへ来たいと言ってもよこさないという形でずっときているわけでしょう。この辺のところで、今も外務省の方からは国交がございませんのでと。その再入国許可を毎年五千人からやる人たちも、日本と北朝鮮は国交がないけれども人道上の立場から好意的に扱ってやってくれているわけでしょう。で、向こうは何もしてくれない。その辺のところについて法務省や外務省がどういうお考えをお持ちなのか、法務大臣も含めて、この辺の政府の御見解をきちんとお聞かせいただきたいんです。
  138. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) 最初にその数字のことをちょっと御訂正申し上げたいと思います。  二万九千九百九十名というのは本年上半期、すなわち六月末までの数字でございましたので、そういうことで一番新しい数字というふうに御了解いただきたいと存じます。  そこで、ただいまのお尋ねの件でございますが、政府が在日の朝鮮半島出身者で北朝鮮への渡航を希望する者に対して再入国許可を与えることにいたしましたのは、北朝鮮のための措置というより、何よりも在日の朝鮮半島出身者のための措置でございます。そういうことで、先方がこれを受け入れる限りにおきましては、これに対してその渡航の便宜を図るということから再入国許可を出したということでございます。  他方、先生おっしゃられるような片手落ちの面、確かにございます。これは、北朝鮮におりますいわゆる日本人妻あるいは日本国籍保有者の立場を考えての私どもの立場でございます。その人々のために先方も人道的な配慮を持ってこれを処遇するということを希望するのは当然のことでございまして、そういう観点から国会でも何度も御指摘がございましたし、私どもといたしましてもできる限りの努力は続けてまいったつもりでございます。また今後とも続けるつもりでございます。これは双方の国のためということではなくて、それぞれにかかわっておる人々の人権の問題あるいは処遇の問題でございます。そういう観点から私どもとしては重大な関心を持っておるということでございます。
  139. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 私どもといたしましても、この北朝鮮にお帰りになった方々、また一緒に行かれた日本国籍のいわゆる日本人妻の方々の御苦労、また御家族あるいは友人の方々の御心配というものはよく承知しておるつもりでございます。御指摘のように、この問題まさしく人道的な問題でございます。ただ、他方におきまして、北朝鮮と国交がないということから、直接話し合うというような手段がないという点におきまして、この手段におのずと限界があるわけでございますけれども、政府といたしましては、この問題はあくまでも人道的な観点から取り組むべき問題である、そういう方針のもとにおきまして、五十年ごろからでございますけれども、日本赤十字を通じまして北朝鮮側に安否の調査を依頼する等の種々の努力をしてきているところでございます。今後ともこのような手段を通じましてできるだけの努力をいたしたいというふうに考えております。
  140. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) この問題につきましては、先ほど本年の上期までに再入国の許可をした者が二万九千九百九十人というようなことですが、それに見合う数字を北朝鮮から我が国に入ってきた人の数字で見ますと二千八百十二人であるというふうに聞いております。比率で見ると相当のかけ離れがあるということは事実であるわけでございます。しかも、そういう中で一面、それはいろいろな意味で日本に居住する北朝鮮の方々が非常に多いということの反映でもあろうかと思うのでございますけれども、逆に帰還をされたというような感じで日本に入ってこられた人の数というのは、私聞いたところでは十人以下というようなぐらいの数字であろうというふうに承っておるわけでございます。したがいまして、そういう姿になっていることは決していいことじゃなしに、もう少し自由な行き来ができるような状態になることが非常に望ましいことであると思います。しかし、御承知のように今のような国交の状態になっておるものですから、この問題が十分に解決されてないというような点が多いのだろうと思いますが、今後ともいろんな意味でそういう努力を間接的ながらでも続けていかなきゃいけないのじゃないかというふうに思っている次第でございます。
  141. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 その辺のところは柳井参事官にも申し上げたいのだけれども、私がお聞きしてから、国交がないからおのずと限界があるということをもう二回言われたんですけれども、本当にお考えをいただきたいことは、日本政府の良識ある意思という言葉を使ってもいいと思うんだけれども、こちらはそうやって二十七年間やっているわけでしょう。外交関係がなかったにもかかわらず、それは両方の赤十字社を通じて話をして、もう二十年以上そういうことを続けてきて、相当の人たちを向こうへ善意をもって送り出している。それで、こちらの希望というのは何にも聞いてもらえない、ただの一人も帰ってこない。今、柳井参事官も、御家族のことも十分承知しておりますと。承知しておったらば、これだけの長期間、四半世紀のような間どうにもこうにもならぬと言ってほうっておいてよろしいのですかどうですか。その点は後でもうちょっと詰めてお聞きをしたいと思うんです。  次にいろいろ聞きたいことを聞きますけれども、まず北朝鮮からの再入国の許可を与えた人、ことしはどれくらいいるのですか。それで、再入国の人と、それから向こうにおった人でこっちに来る人もいると思うんです。北朝鮮におって日本に入ってきたいという人にも、皆さん方の方ではどういう形でビザを与えているか私知りませんが、何らかの方法でともかく問題なく入れるようにしてあげていると思うんです。ですから、そういう人たちはどういう用件とか用務をもって日本に来たいと言って入ってきているのか。それで、さっき言った再入国許可を与えた者、それがことし幾らいるか、そこの辺お聞きしたいんです。
  142. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) 北朝鮮からの入国者の総数、すなわち日本から出ていって帰ってきた再入国者ではなくて、北朝鮮に居住しておる人物で我が国に入国を認められた者は、本年上半期で申し上げますと百五十九名でございます。その内訳は、スポーツ関係が三十二名、商用が七十七名、芸術関係が三十名、その他の文化交流関係が三名、それから一般的な友好親善ということで招待等によって日本へ入りましたのが十七名ということになっております。これらの数字は、先ほどの三万名足らずの過去二十年間に許可されました、日本から出ていって帰ってきた人々の数字とは全く別の数字でございます。本年一年の統計はまだ出ておりませんけれども、再入国許可をもらって出ていって帰ってきた人々の数は、先ほども御指摘ございましたように四千名から五千名になるものと存じます。
  143. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そのときにこちらの日本政府として何か条件をつけることはできないのか。どこでビザを与えるのですか、それこそ私もよくわからぬけれども、日本に来たい、その手続の申請をしたい、よろしい、ではしてあげましょう、しかしそちらの政府の方も、日本から来た人で帰りたい人がいるのだから、そういう人はやってやってくれと、そのときに何かそういうふうなそれが私は相互主義だと思うのだけれども、そこはどうですか。
  144. 小林俊二

    政府委員(小林俊二君) 我が国は北朝鮮との間に国交がございませんので、北朝鮮の旅券を公式文書として、旅行文書として認めるわけにはまいりません。そこで、渡航証明書という文書を我が国の方から、通常、北京の大使館において北朝鮮からの渡航希望者に交付することにいたしております。その手続を経て北朝鮮から入国希望者が渡航してくるわけでございます。  先生ただいま御指摘のように、こういう人々の入国を認めるについては、こちらからも日本人妻といった人々の渡航を認めるようにという交渉を間接的に行うということは不可能なことではないと存じますけれども、私どもといたしましては、むしろこうして北朝鮮の方から日本へ来る人々の中で何らかの影響力を持っていると思われる人々に実情を訴えて、そうして日本人妻の里帰りを認めてくれるように北鮮当局内で働きかけるような方向で考えてほしいといったような訴えもしておるわけでございますし、また日本人妻の帰国のみならず、それができないのであれば、日本の方から日本人妻の親族が北朝鮮を訪問することができるように手配をしてもらいたい、考えてもらいたいといったようなこともしておるわけでございまして、今もし先方が認めなければこちらも認めないといったような態度に出るとすれば、結局そういった交流が漸減していく、打ち切られてしまうということになって話が終わってしまうおそれもございますので、そういった態度には今までのところ出ていないということなのでございます。
  145. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 入管局長のお気持ちよくわかります。  それから、こっちから行きたいのはまた後で聞きますが、柳井さん、今外務省の北京の日本大使館で扱っているというわけでしょう。そうすると、北京の日本大使館で北朝鮮の方の人が来たときに、今も申し上げたように、日本側のこういう希望があるのだよと一人一人にくどいたっていいじゃないですか。それで、そういうことについて北京の日本大使館の方には、外務省としてはどういう指示を与えているのですか。
  146. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  ただいま法務省の方からお答えございましたように、私どもといたしましても、直接の交渉ができないわけでございますので、それ以外の可能な手段をできるだけ使って私どもの気持ちあるいは要望を先方に伝えるように努力しているところでございます。今までもいろいろお話がございましたように、日本赤十字を通ずるということのほかに、例えば我が国の国会議員の先生方が北朝鮮にいらっしゃるというような場合でございますとか、あるいは限られてはおりますけれども、先方の、北朝鮮の要人と申しますか、党の関係者等が日本に来る、あるいはその他の場所で接触をするという機会もあるわけでございまして、そのような機会をとらえて、私どもとしてはこの問題をできるだけ取り上げるという一般的な方針で臨んでおります。したがいまして、私どもの北京の大使館もそのような方針のもとで、これはどのような人に頼むのが効果的かということはそのときどきで違うと思いますけれども、これまでもそのような機会をとらえまして、北朝鮮側といたしましても人道的な配慮を払ってほしいというような私どもの気持ちを伝えてきているところでございます。また、今後ともそのような一般的な方針で努力を続けていきたいというふうに考えております。
  147. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 柳井さん、これはここで御返事というと無理ですから、北京の日本大使館ができるだけそういう形で努力しているというお話がありましたので、北京の日本大使館で日本人妻の問題についてどの程度のそういう努力をしてどういう状態がということの報告を求めてくれませんか。それで、資料という形でもって私の方にいただければと思います、今ここですぐといっても無理ですから。  次に申し上げたいことは、これは五十六年の春の予算委員会のときに私がこの日本人妻の問題で手紙を読み上げまして、そうして政府の見解を求めたんです。時の園田厚生大臣は、その私が読み上げた手紙というものを聞いておって、実情察するに余りある、中国人孤児の問題も道が開けたので、さあいよいよこれから北朝鮮の日本人妻の問題だと自分考えている、これは所管が外務省とかなんとか、そんなことを言わないで私はやりますということを答えてくださったのです。  その後におきましても、法務大臣は当時は奥野法務大臣で、奥野法務大臣にも園田厚生大臣にも非公式にお会いをして、何回もいろいろなことを申し上げているんです。そこでどういうことを申し上げたか、大臣がどういうお答えをされたかということはこういう場では言うべきでないから申し上げませんけれども、そういうものを通じていって、時の奥野法務大臣が五十六年の七月の十七日の閣議で、我が国が在日朝鮮人の北朝鮮訪問について人道的配慮をしているにもかかわらず北朝鮮当局が日本人妻の里帰りを今なお認めないことはまことに残念である、政府は挙げて実現にぜひ取り組むべきだということを発言をなさった。それからもう四年有半になるわけですけれども、何らの変化もこれは起きていないわけです。言い方が悪いかもしれませんけれども、日本政府というものが余りにもなめられっ放しじゃないですか。法務大臣、そうじゃないですか。  それで、私は、これはもう外務省もそうだけれども、むしろ一度奥野法務大臣が閣議で言ってくださったんだから、今度は法務大臣の方でもって、このことについてこれだけ長期間にわたってもいまだに実を結ばないんですから、何らかの決意を閣議でもって表明をしていただいて、閣議決定をするか何かして、この道が開けるように御努力をしていただきたいと思うのですけれども、法務大臣いかがですか。
  148. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) この問題につきましては、国外にいる日本人の問題にかかわる問題でありますし、また日本の国籍を持っている人たちとの関係でもあるわけでございますから、主管は外務省の所管事項であろうというふうに思うわけでございまして、そういう意味で外務省の方でもいろいろ検討を願い、我々もそれに協力をしていくという姿勢をとっていかなきゃならぬというふうに思っておるわけでございます。ただ、御指摘のように五十六年閣議発言がありまして、今日まで言葉で言うだけでは解決しない問題であるということもどうやら相当はっきりしている事実のように思うものでございます。したがいまして、何らかの形でこれらの進展を図るように、やはりいろんな機関を通じてそういう整理を進めていくということが一番大切なことではないかというふうに思います。  先ほど来説明をしておりますように、我々の方としましては在日の北朝鮮の皆さん方について割合自由な往来を認めておるというような姿勢をとって今日まで来ておるわけでございますし、またそういうようなことの反映としまして、過去にもいろいろな意味で、例えばAA研のグループの人が行かれていろいろな話があって、それについて段取りを進めましょうというようなことになり、また、そういうことを下敷きにしていろいろな議論をしておりましたけれども、結果的にそれがなかなか実が結ばないというような経過もあるようでございます。しかし、そういう一つ一つの努力というものを積み重ねることによりまして、やはりそういう雰囲気を早くつくって、そういう段階で物を言う方がかえっていいのかもしれない。その辺の判断、私まだ十二分についているわけじゃありませんので、そういう点は十分研究さしていただいて、今後どういうような対処をするか、検討をさしていただきたいと思います。
  149. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これは、もう外交関係の問題は非常に難しい問題です。でも、大臣、比較の例で言うのはいかがなものかと思うけれども、防衛費のGNPの一%以内なんというのはかなり権威を持って、そうして毎年毎年国会の中で問題になるくらい閣議決定というものは重きをなすわけでしょう。この問題だって、そういう意味においては、もちろん奥野法務大臣のときもそれは閣議決定ではないけれども、そういう閣議での発言ということでみんなが了解した範囲のことであります。それで、あのときでもいろいろ私も個人的に行って話して、法務大臣が好意的にそういうことについてやってくれるという話を聞かされておりますし、それは園田厚生大臣だって中国へ行くときにも、まるっきり非公式だけれども、いろいろなことをやってくれたのですが、積み重ねと言われるなら、それはもうぜひやっていただきたい。  でも、どうなんですか。いろいろ相手があって、あるいは外交関係もない、国交もない、なかなか限界がありますと言うけれども、それは外務省の方だってさえないが、余りにも長過ぎるじゃないですか。それで、どうにもならないといってこのまま放置をして、こういうことをしておっていいのかどうかということだと思うんです。  それで、本来ならきょうは私は外務大臣に来てくださいとお願いしておいたのだけれども、どうにもならないということですから、総理なり外務大臣が中国へ行ったときにいろいろこのことを話をしていることも聞いておるわけなんで、そういう意味に立っては、その辺の点の真相というか、どういうことを言って、そうして中国側がどういう御返事をなさった、それでいろいろやっていただいた返事というものは来ているはずなんだから、その辺の点を要点的にだけお聞かせいただけたらと思うんです。いかがですか。
  150. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 私どもといたしましても、この問題なかなか進展が見られないということで大変に焦慮しているところでございます。主として日赤というルートを使っておりますけれども、先ほども御説明申し上げましたように、その他の機会も使えるものはできるだけ使いたいということで努力をしているところでございます。  また、先ほど先生の方から北京大使館で何かしたらどうかという御意見もいただきました。これまでのところ私の承知しておりますところでは、北京の大使館では査証発給事務をやっているということでございまして、それ以上のことをどの程度やっておるか、必ずしも私承知しておりませんけれども、恐らく査証の手続をやっているということであろうと思います。ただ、大変貴重な御意見もいただきましたので、ほかにどのような方法があるか、どのような方法が効果的であるかという点もさらに検討さしていただきたいというふうに考えます。  また、先ほど先生の方から御指摘のございました昨年の中曽根総理が訪中されました際のことでございますけれども、御指摘の訪中の際の中国側との会談におきましては、私ども必ずしも具体的あるいは個別的な問題について中国側から仲介の申し出があったというようなふうには聞いておりませんけれども、中国側から一般的な形で日朝間の意思疎通のために役割を果たす用意があるというような申し出をいただいているわけでございます。  御承知のとおり、朝鮮半島におきましては緊張が継続しております、この朝鮮半島をめぐる国際情勢というものがこのような人道問題にも大変に影響を与えているというふうに考えておりますので、このような中国側の申し出あるいはまたそれ以外の接触というものも通じまして今後とも努力をしていきたいというふうに考えております。
  151. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 さっき小林局長の方からの御答弁の中にもちょっとあったのだけれども、これは外務省の方にお聞きしたいんだが、日本人妻のこちらの家族で、もうどうやったってこうやったって来ない、じゃ、こっちから出かけていって娘に会いたいなんという家族が結構いるわけです。そういう人たちもだんだん亡くなっていってしまうわけなんでして、だから、こちらから北朝鮮を訪問したいという家族がおるのだけれども、そういう人たちが向こうへ行かれるようにするにはどういう手続をとって、どうやったら出ていかれるようになりますか、その辺の外務省として御努力をしていただけるのかどうか、そこはどうなんですか。
  152. 飯田稔

    説明員飯田稔君) 手続の問題になりますが、北朝鮮の渡航に際しましては、旅券の申請に先立ちまして渡航目的とか滞在期間あるいは費用負担等、本人の略歴とともに記載いたしました渡航趣意書というものを提出していただいております。これで渡航の事実関係を確認した後で、あとは普通の一般の渡航者と同じような手続をいたしております。したがいまして、渡航趣意書を特に事前に出していただくという以外は普通の申請で全く問題なく北朝鮮を渡航先としました一往復用の旅券を発行しております。  なお、御参考までに、昨年は八百八十九件発行いたしております。
  153. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 じゃ、それは外務省の方へ申し出れば、必要な手続、今言われたそういうことは書いて出さなきゃいかぬけれども、そうしたならば行かれるように御努力をしていただけますね。  次には、時間も余りなくて、なんですけれども、日本人妻自由往来実現運動の会といって、いわゆる日本のこちらの家族の人たちがそういう会をつくって、そして長いこと運動なさっているのですけれども、ことし映画をつくりまして、「鳥よ翼をかして」という映画なんです。それで、この封切りのときも私も御案内いただいて行きました。国会があったので、半分くらいですぐ帰ってきまして、その後今度は国会でもあちらの衆議院の方とこちらの参議院の方、両方やったわけなんです。なかなか皆さん方もお忙しいからごらんになる機会もないと思う。これは法務大臣や外務大臣にも行っていただいて、それから各局長さん、課長さんも全部一回ごらんになっていただきたいと思う。一度も涙を出さないであの映画を見られたら、私は見上げたものだと思うんです。私なんか、どれだけ泣いたかわからない。そして、あれは一つの映画だけれども、日本人妻というものをめぐって家族の方たちがどれだけそういうことについて苦労をしているか、努力をしているか、その願いというものがどんなものかと、少しでも人ごとではなくて自分のことのようにお考えをいただきたい。  そして、これは外務大臣いないから法務大臣にお願いしておくのだけれども、何かお忙しいだろうけれども、仕事も何もないときに、もし皆さん方がというならば、私、往来実現運動の会にお願いをして、出ていかなくたってこの中でやれるのだから、関係皆さん方に一度私ぜひ見ていただきたいと思うけれども、それはいかがですか。
  154. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) ただいま先生のおっしゃいました映画につきましては、あるいは私どもの同僚の中に見た者もあるかもしれませんが、私自身は残念ながらまだ見る機会がございませんでした。もしそのような機会があればぜひ拝見したいと思います。  また、私どもといたしましては、これは御承知のことと存じますけれども、ことしの四月以来、安否の調査等に関しまして従来から要望のございました家族の方々につきましてアンケート調査を実施するというようなことを通じまして、その具体的な御意向、要望等、実情の把握に努力しておるわけでございます。また、そのアンケートの結果も出つつございますが、これにつきましては日赤の方にも手交いたしまして、北朝鮮側への働きかけについてこれも利用していただくということで種々検討をお願いしているところでございます。
  155. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 先生からこの前お話を聞いておったのですけれども、まだそういう見るチャンスを失しておりますので、機会がありましたら、ぜひ見せていただきたいと思いますし、それを通じてこの問題についての重要性というものをいよいよ認識をさせていただきたいと思っておる次第でございます。
  156. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 それで、法務大臣にも外務省の方にもお願いしておきたいんですが、先ほどから言っているように、もう二十七年間、余りにも長過ぎるわけです。だから、日本人妻の問題というものはどういうような手段、方法をとったら解決ができるのかということを、本当に自分の家族が、自分の娘が向こうに行ってしまったとかなんかという、そういうふうな気持ちになってお考えをしていただきたいと思うんです。どうにもならないで手をこまねいているだけでは、私は政府の責任を果たすことにならないと思う、日本の国籍を持った日本人が異国のところに行ってそういう苦しい思いをしているんですから。あの人たちの中のごく一部のだけれども、手紙もなんならばお持ちして、皆さん方がお読みをいただいたら、これは本当にもうじっとしていられないような気持ちになると思うんです。これがもし北朝鮮と日本が逆な立場で向こうがそういう状態であったときに、日本政府が二十七年間もほっかぶりして、そっぽを向いていられるだろうかというのです。とても日本の政府はそんなことできぬと思うんです。  ですから、そういう点でもってお願いしたいことは、人間の生命にかかわる問題なんですということです。私は前もここで申し上げたけれども、あの予算の委嘱審査のときですか、もう今でもこうやっている間でも、向こうへ行ったその人たちというものはかなりの年輩になっているので、もう息を引き取っている方もいるかもわかりませんというんです。ですから、そういうふうなことでもって人間の生命にかかわることなんです。人道上の問題だと、これはみんなも口にするのです。だったら、少しその気になって、そして言うならば超法規的発言ということを時々政府もおやりになるのですから、そういうふうな形でお取り組みをいただきたいということを御要望申し上げまして、最後に一言それについての法務大臣の御見解をお聞かせいただいて終わりたいと思うんです。
  157. 嶋崎均

    国務大臣嶋崎均君) 日本人妻の問題につきましては、それが一刻も早く解決するように努力を積み重ねなきゃならぬというようなことは、既に奥野元法務大臣の発言にありますとおりでございますので、今後ともそういう面について、引き続き努力をしてまいりたいというふうに思っております。しかし、本件が進展するかどうかということは、やはり北朝鮮当局の対応のいかんにかかっておるというような感じがするわけでございまして、今後ともあらゆる手段を通じてこの問題について真剣に取り組んでいただけるような努力をやっていかなきゃならぬ、そう思っておる次第でございます。
  158. 二宮文造

    委員長二宮文造君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十一分散会