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1985-10-22 第103回国会 参議院 決算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十月二十二日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――   委員氏名     委員長         丸谷 金保君     理 事         倉田 寛之君     理 事         出口 廣光君     理 事         林  ゆう君     理 事         松尾 官平君     理 事        目黒朝次郎君     理 事         服部 信吾君                 石井 道子君                 大浜 方栄君                 後藤 正夫君                 斎藤栄三郎君                 杉元 恒雄君                 曽根田郁夫君                 仲川 幸男君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 平井 卓志君                 福田 宏一君                 星  長治君                 矢野俊比古君                 梶原 敬義君                 菅野 久光君                 本岡 昭次君                 刈田 貞子君                 田代富士男君                 佐藤 昭夫君                 安武 洋子君                 井上  計君                 三治 重信君                 喜屋武眞榮君    委員異動  十月二十一日     辞任         補欠選任      安武 洋子君     上田耕一郎君      三治 重信君     関  嘉彦君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         丸谷 金保君     理 事                 出口 廣光君                 林  ゆう君                 松尾 官平君                目黒朝次郎君                 服部 信吾君     委 員                 石井 道子君                 大浜 方栄君                 斎藤栄三郎君                 杉元 恒雄君                 曽根田郁夫君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 星  長治君                 矢野俊比古君                 梶原 敬義君                 菅野 久光君                 本岡 昭次君                 刈田 貞子君                 田代富士男君                 上田耕一郎君                 佐藤 昭夫君                 井上  計君                 関  嘉彦君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  加藤 紘一君    政府委員        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   古川 武温君        防衛庁参事官   千秋  健君        防衛庁参事官   筒井 良三君        防衛庁長官官房        長        宍倉 宗夫君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       大高 時男君        防衛庁人事局長  友藤 一隆君        防衛庁経理局長  池田 久克君        防衛庁装備局長  山田 勝久君        防衛施設庁長官  佐々 淳行君        防衛施設庁総務        部長       平   晃君        防衛施設庁施設        部長       宇都 信義君        外務大臣官房長  北村  汎君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        外務省条約局長  小和田 恒君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        内閣審議官    根本 貞夫君        外務省北米局審        議官       渡辺  允君        外務省中近東ア        フリカ局外務参        事官       久米 邦貞君        外務省経済局次        長        池田 廸彦君        大蔵省主計局主        計官       西村 吉正君        資源エネルギー        庁石油部石油企        画官       増田 達夫君        会計検査院事務        総局第一局長   竹尾  勉君        会計検査院事務        総局第二局長   天野 基巳君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件国政調査に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十八年度特別会計歳入歳出決算昭和五十八年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十八  年度政府関係機関決算書(第百二回国会内閣提  出)(継続案件) ○昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第百二回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書  (第百二回国会内閣提出)(継続案件)     ―――――――――――――
  2. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十一日、三治重信吾及び安武洋子君が委員を辞任され、その補欠として関嘉彦君及び上田耕一郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国家財政経理及び国有財産管理に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十八年度決算外二件の審査並びに国家財政経理及び国有財産管理に関する調査のため、必要に応じ、政府関係機関等役職員参考人として出席を求めることとし、日時及び人選等につきましては、これをあらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  7. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 昭和五十八年度決算外二件を議題といたします。  本日は、外務省及び防衛庁決算について審査を行います。     ―――――――――――――
  8. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  10. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 梶原敬義

    梶原敬義君 外務省に最初にお尋ねをいたします。  先般、私ども国会の参議院から自民党の議員が三名、社会党、公明党各一名、そのメンバーでヨーロッパ東ヨーロッパを回って、一つ目的を持って、日本対外企業の進出の実態調査を兼ねて回ってまいりました。その際に、西ベルリンで総領事の御案内で旧ドイツ大使館の跡を見せていただきました。聞くところによりますと、旧大使館復旧して、そしていろいろな目的で使うということでありますが、私はちょうどここに写真を持ってきておりますが、まだ生々しくかっての日本大使館に弾が撃ち込まれた跡も入った写真でありますが、何で今の状況にこの旧大使館復旧して、何のためにどうして使うのか、どうも疑問でなりません。隣りにはイタリアのかつての大変に大きな大使館がありますし、大戦前の日独伊国同盟威容をしのばせるような、日本大使館も大変大きなものですが、これが廃墟のような形で残っておるんですが、中曽根総理大臣の手でこれを復旧するというのに対して大変危惧の念を持っておるんです。これは聞くところによりますと中曽根総理大臣というのは若いときに、私も本か何かで読んだんですが、ヒトラーを唯一尊敬をしておったというようなお話も書いておられましたが、まあその中曽根さんの手でかつての三国同盟拠点でありましたドイツの旧大使館ベルリンのこれは一等地にあるんですが、これを大変なお金をかけて復旧をするということで、どうもそんなお金があるんなら、幾つか回ってきました大使館の中でやっぱり雨漏りもしておったり、あるいは大使館員一等書記官以下転居する場合にはすぐ住宅をどこにどう見つけるかということに大変何カ月も苦労しているような状況である。そんなお金があるんならもっとほかのところに使うべきではないか、そんな気も強くしておるんですが、その辺の経緯について、そしてまた目的について、また金額は一体どのくらいかかるのか、いつごろでき上がるのか外務大臣にお尋ねいたします。
  12. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) お答え申し上げます。  このベルリンの旧大使館の再利用問題につきましては、実は既に一九七〇年代の中ごろから、あのまま廃墟のような形のままで残しておくのはいかにも残念である。何とかこれを直してしかるべき再利用の方法を考えてほしいという要望がドイツ側から強く出ていたわけでございます。経緯的に申し上げますと、既に一九七四年に当時のベルリン市長がそれを要請いたしまして、以後シュミット首相福田当時の総理大平総理、また鈴木総理歴代総理に対してその要請をしてまいった次第でございます。  それで、特にこの建物歴史的な意味も持っておるということで、それを修復することは建築史上一つの記念的な建築物としての意味もあるということから、修復への願望がドイツ側で非常に強まってまいったわけでございます。  そういう経緯を踏まえまして、一九八三年の十月から十一月にコール首相が訪日されまして、そのときに改めて中曽根総理に対しましてベルリンの一等地に廃墟が残っているのは望ましくない、これを文化的な施設先端技術の展示・研究といった目的に活用してもらえれば幸いであると、そういうお話がございまして、それに対して総理もひとつそれでは正本文化のいわばショールームというようなものにいたしたいということで、その復旧話し合いが本格的に始まったわけでございます。そういたしまして八四年の四月でございますが、総理コール首相あてに親書を発出いたしまして、その際、ロンドン・サミットでこのお話をしようという約束をされました。  そういうことを踏まえまして、昨年の秋以来事務当局の間の話し合いも積み重ねてまいりまして、それで本年の一月、いわゆるベルリン日独センターというそういう法人をつくりまして、その法人はこれは日独間の文化交流、ひいては日欧間の文化交流に貢献していくものとして構想されたわけでございますが、そのセンターの場所といたしましてこの建物復旧してこれを日本政府がその法人に貸すと、そういう形での旧大使館修復ということが約束されることになったわけでございます。したがいまして先生指摘のようなこの旧大使館復旧が過去との何らかの特別のつながりがあるということではございませんで、これをできるだけ前向きに建設的に使用しようと、そういう気持ちからこの問題が解決されたというふうに私どもは理解しているわけでございます。  なお、このためにかかります経費について御質問がございましたので申し上げますと、現在まだ最終的な見積もり作業というものは継続中でござまして、最終的に幾らになるかということははっきりとはまだ申し上げにくいのでございますが、おおむね総額でもって三十七、八億円になるのではないかと。  なお、これに対してはベルリン当局自身も、建物自身日本修復いたしますけれども、その後のセンターとしての運用につきましてはほぼ十二億円程度の基金をドイツ側も出しているということでございまして、日独双方協力によって、先ほど申し上げましたような日独交流ないし日欧間の相互理解の増進のためにこのプロジェクトを進めていこうという非常にまれな形での、新しい形での文化交流一つの成果であるというふうに私どもは考えております。
  13. 梶原敬義

    梶原敬義君 前向きに、建設的に考えていくということですが、外務省としては、これら、特に中曽根総理サミットに行きまして、ボンサミットにお土産を持っていったような形になっておるんですが、これまでたび重なる要請等もあったようですが、外務省としては、一体それならどういうように政府に対してこれまでの間に取り組んできたのか、外から政治的に言われた形でこの話は進んだようなんですが、外務省自体としてはどういうように取り組み、また政府に対して強く意見を述べてきたのか、その点はいかがですか。
  14. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) 外務省といたしましても、このベルリンの旧大使館建物自身国有財産でございますので、国有財産が、現状は廃墟のままということで、ごらんになったとおりでございますが、ああいう状況のままでいつまでも放置されておるということは非常に望ましくないというふうにかねがね考えておりました。と申しますのは、ごらんのとおり、菊の御紋章は掲げておりますけれども、その建物自体は全くの瓦れきに近いような状況でございます。しかるに、ティアガルチンというベルリンの中でも最も目抜きの高級な地域の中にそれが位置しておりまして、通る人が非常に多いわけでございまして、その人たちがそこを通るたびにそれを見る、こういう状態をいつまでも続けておくということはいろんな意味でよろしくない、したがって何とかこれの復旧とそれのよい利用の仕方を考えたいということで、かねがね外務省といたしましても考えてまいったわけでございます。しかしながら、御承知のとおりの種々の財政上の理由がございまして、何をするにもその問題が障害となりまして、今日まで我々が考えていることがなかなか実現できなかったということでございます。ですが、外務省といたしましてはかねがねこの問題については注意を払ってまいった次第でございます。
  15. 梶原敬義

    梶原敬義君 外務省は、今、西ドイツ大使館ボンにありまして、西ベルリンには西ベルリンの領事館がありますが、国有財産であったってそれは処分もできるわけで、ほったらかしておるというのは、処分をすればあなたたちが心配していることは早く解決できるわけで、処分せぬでずつとそのまま来ているから、それはあなたが言われますように、町の割合中心街にあって困るということもあるけれども、そういう点はどうして考えなかったんですか。
  16. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) 一つは、この建物が、先ほどもちょっと申し上げましたように、非常に歴史的な建築物としてああいうスタイルで建てられた建物といたしましては、爆撃を浴びましたベルリンではほとんど唯一建物である、しかもその建物がかつて日本大使館であったということがベルリン歴史の中で一つの位置を持っている。したがいまして、そういう建物をやはり簡単に一つ建造物として処理してしまうということにつきましては、非常に大きなちゅうちょがあったということがございます。それから他方、あれだけの建物をそれを尊重しつつ買い取ってくれるようなところがあるかと申しますと、これもなかなか見つからない。そういう両方の事情があったと思います。  現に、一九八七年、明後年でございますが、ベルリンの生誕七百五十周年ということで、そのときにはベルリンの代表的な建造物二十幾つかを昔の姿に戻して展示したいというベルリン市の非常に強い希望があるわけでございますけれども、その建物一つといたしまして我が旧大使館が挙げられているわけでございます。したがいまして、その時期までにぜひ修復をなし遂げたいというふうに考えているような次第でございます。
  17. 梶原敬義

    梶原敬義君 あの建物というのは一九三八年に着工して四二年に完成をした建物で、皆さんは第三帝国様式というような言い方をしておりますが、中へもずっと入ってみましたけれども、確かに横にイタリアのかつての大使館日本大使館威容を誇っておりますよね。大使館にしては、日本ドイツイタリアのあの三国同盟威容をしのばせるような状況です。そういう面では大使館としては非常に大きいわけですね。しかし、どうしてもあなたが言っているようなそういう理屈で引き取り手がないというんなら、西ドイツ政府に言えば、政府はそんなに価値のある建物なら引き取るでしょうよ、国として。何で日本が、ああいう日本イタリアドイツとがっちり同盟を組んで太平洋戦争に突入した、そういう一番拠点であるやつを、今、中曽根総理大臣の言う非常に軍拡路線の基調の中で、それをまた華々しく金のないときに復旧しなきゃならないのか、どうしてもわからないのですよ。  それで、あなた方が言っている使用目的の中に平和目的云々ということはあるが、「日・米・欧のデーターベースからの情報の提供を行うと共に、平行的に自らのデーターベースの開発」云々と。まあ「データーベース」というのがどういうことかわからぬけれども、そこにはいろんな秘密にかかわるような情報もどんどん、ここで言っております日・米・欧の情報というのが、どっちかというと西側の情報がやっぱりここには将来入ってくるようになるんじゃないんですか、あなた方が言っておるようなことになりますと。非常にそこでは対立を激化するようなそういう秘密情報だってそこに集まるようになるんではないですか。そういうことは全くないと言うのかどうなのか。だから、そういう状況の中で、何で軍拡を唱える中曽根総理の手で今急いでやらなきゃならないのか、日本がやらなきゃならないのか、その点についていかがですか、外務大臣
  18. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、局長がその経緯については詳しく答弁したとおりであります。これは私の承知しておる限りでは中曽根内閣の前の内閣、その前からドイツ側としては何とかこれをひとつ日独両方で再利用したいという強い要請があったわけです。また、西ベルリン市もやはり強く要請してきたと、こういうふうな経緯もあって、今回やっとコール首相中曽根総理合意によりましてベルリン日独センターという形で、これは政府だけじゃなくて民間も協力するというような形で設立されるということになったわけで、学術、文化あるいはまた経済、そういう方面でこれから大いに交流、活用していこうということですから、今までの廃墟のままであるよりは、これは大いにこれから姿を変えて世界のそうした平和のためにいろんな面での生きた活動が私はできるんではないか、こういうふうに思っております。ただ、これまではいろんな財政的な問題、今日も財政問題としては残っておりますけれども、なかなか踏み切りがつかなかったということで、今回やっと合意によってスタートを切ったということでありまして、おっしゃるようないろいろと批判はあることも聞いておりますけれども、しかし私は、これはそれなりに歴史的な建物でありますし、そして日独友好関係を進める上におきましても、このベルリン日独センターの設立というのは今後に向かって非常に意義のある事業であろう、こういうふうに思っております。
  19. 梶原敬義

    梶原敬義君 そんなに価値のある建物なら、局長にちょっとお伺いしますが、引き取り手がないと言うんなら、外務省としては西ドイツ政府に引き取ってくれ、あのままで復旧してほしい、こういう詰めをしたことはあるんですか。
  20. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) 私が記憶している限りでは、西独政府にこれを引き取ってほしいというふうな話し合いをしたことはないと思います。と申しますのは、相手政府でございますと、こういう建物が一体どの程度に見積もられてどうなるのか、そういうふうなことにつきましても正当な対価でもってそういうものが売却できるのかどうかというふうな問題もございますし、政府相手にこの引き取りということを話し合ったことはないのではないかというふうに思います。
  21. 梶原敬義

    梶原敬義君 冗談じゃないですよ。幾ら政府政府の話だって物を売ったり買ったりするときに値段がつかないことはないでしょう。そういう答弁じゃちょっと納得できぬですよ。
  22. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) 先ほど二つの理由と申し上げましたが、一つは、それ以上に大きな理由は、先ほど申し上げましたようにこの建物というものが日本大使館のために、時のドイツ政府が何であれ、特にああいう土地につくった記念碑的な建築物である。その歴史的環境は別といたしまして、建物それ自身が非常に大きな建築史上意味がある。そういうことがありまして、それと日本国というものとが結びついていたということがありましたので、そちらの方もというよりも、そちらの方がより大きな理由として、これを簡単に売却するという発想は生まれなかったんだと思います。  しかし、その付加的な理由としまして、より現実的な問題といたしまして、先ほど申し上げましたように、ああいう廃墟のままでああいうものを引き取るということになりますと、一体どういうふうな条件を付されて、結局日本日本国有財産としての価値をちゃんと保証できるのかどうか、そういう疑問もあったと思います。
  23. 梶原敬義

    梶原敬義君 私はベルリン西ベルリン東ベルリンもずっと見てまいりましたけれども、あの辺の建物で、幾つかありますが、建築様式で、東ドイツだっていっぱい残っていますよ、西ドイツの中にもいっぱい残っていますよ、石でつくって、これくらいの建物は。あなた見たんですか、中は。これがそんなに建築史上云々と大きな声で言うような内容ですか。
  24. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) 室内は御指摘のとおり全くの廃墟になっております。と申しますのは、かつては中をきらびやかな大理石その他でもってけんらん豪華に飾られておりまして、それも一つ様式であったわけでございますが、終戦後一切その中に住むことを禁じられた結果、いろんな人間がそこに入り込みまして、その間に中の物を全部持ち出してしまったわけでございます。したがって、中はもうほとんど空洞化しております。  問題は、中であるよりもむしろ外側のスタイルでございまして、正面から見ました列柱スタイル、先ほど先生自身指摘になりましたような第三帝国様式と言われている建物で、あれだけいまだに原形を保っているものは、ほかにあるかもしれませんが、あれだけのものはほとんどないというふうに聞いております。私は建築については全くの素人でございますけれども、現在これの修復の設計をやっております黒川紀章先生なんかもそういうことを非常に強く言っておられます。
  25. 梶原敬義

    梶原敬義君 時間が過ぎますからもう最後にしますが、外務大臣、もう外務大臣長いわけでして、こんな問題については、私はどうしてもわからぬのだけれども外務省でもう少し企画立案するなりして、そして外務省がイニシアチブを持って、平和目的で使うなら使うとか、こういうふうな形の物の進め方というのはどうしてやらないのか。もう外務大臣は要らぬじゃないですか、今の政治のあり方で、総理大臣がほとんどのところはやっているような状況で。少なくともこのくらいの、金額で言うと三十七億円、これは私は大変な金額と思いますけれども外務省が考えている中では大したことないんでしょう。そういう問題なら、全く平和目的で使うというんならば、しかも西ベルリンというのは東ドイツの中にある閉鎖されたところなんですね。そこを例えば日欧日本と欧州全体の文化センターみたいなのにすると言うけれども、場所とすれば非常に遠いし、しかも東ドイツの中で孤立しているところ、ここを日欧文化センターにするという考え方、それは外務大臣外務省が一生懸命言って、それがどんどん研究されて出るならいいけれども、何かこう西側諸国の親分同士が話をして、そしていろんな目的を持って、西側諸国に日本は帰属しているんだ、その西側諸国の一員としてやるんだというような進め方はどうも納得できない。この辺のことは外務大臣の線でぐらいやれば、またそういうところから出てくるならば、これはもう何も余り取り上げて言うつもりはないんですけれども外務大臣どうですか、その点。
  26. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは企画とかそれからいろいろと立案については、私が実は外務大臣になったときもいわゆる懸案事項として引き継ぎを受けまして、外務省自体でも実はずっと計画といいますか、そういうものをつくっておったわけです。しかし、これはなかなか財政的に、外務省にとっては三十億なんというのは大金ですから、今の財政の中ではなかなかそう思い切ったこともできない。しかし、何とかせっかくの歴史的な建造物でもあるし、西ドイツの要望もあるし、あるいはまた西ベルリン市の要請もありますし、これはやっぱり生かして使うべきだということで、そうした計画を実現すべく努力はしておったわけですが、幸いにしてといいますか、両国の首脳が熱心にこれを取り上げるというような形になったもんですから、この外務省の企画というものを一つの基盤にして日独センターという運びになったわけでありまして、このいきさつ、その実質的なこれを取り進めるに当たってはもちろん外務省が中心になってやっておるわけですが、形としては今お話しのように、両国の首脳の話し合いで大きく前進したということは言えるわけであります。
  27. 梶原敬義

    梶原敬義君 もっとずばっと物はやっぱり言ってもらいたいんですが、経費については、ではこれは外務省の所管なんですか、内閣の所管なんですか、復旧費用は。
  28. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) これは外務省の所管でございます。それで、これのための修復の費用は外務省の予算のいわゆる国際分担金という形でも  って見ていくということになっております。  それから先ほどの大臣の申されたことについて一言付加いたしますと、既に外務省といたしましては、八三年の十二月以来、外務省の委託調査でまず鹿島平和研究所に報告書を提出を求めておりますし、その後、大来佐武郎氏を座長とする外務大臣のいわば諮問機関を設けまして、八四年一月、二月、三月、五月と集まっていただいて、この問題にどういうふうに対応したらいいかという検討を外務省のイニシアチブにおいて進めてまいったわけでございまして、話の形の上でのまとまりは確かにおっしゃるとおり首脳間でつくられたわけでございますけれども、その実態的な内容は外務大臣の御指導のもとに今のような形でずっと進めてまいったわけでございます。
  29. 梶原敬義

    梶原敬義君 まあそこまで言うならお尋ねしますけれども外務大臣は現地を見ておるんですか、局長
  30. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) 外務大臣ごらんになっております。
  31. 梶原敬義

    梶原敬義君 いつですか。
  32. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私はもちろん現地は何回も見ております。外務大臣在任中は行っておりませんけれども、その前から何回も行ってこれには関心を持っておりました。
  33. 梶原敬義

    梶原敬義君 外務省サイドで諮問委員会とか検討委員会とかつくってやっておるというか、それは非常にいつも、これはメンバーが今言われましたようにどんな人を入れているかよくわかりませんけれどもね、それはきのう皆さんからもらった資料でよくわかりますよね。しかし、それは何年か前に行かれたんでしょう、外務大臣。しかし、やっぱりそこまで外務省サイドでずっと進んできたと言うんなら、それは総理大臣が行くより前に、この前サミットのときも外務大臣行ったんだから、どうして外務省としては外務大臣行ってもらってやっぱり事は外務省で進めるようにしないのか。どうも私は引っかかるんですよ。中曽根総理大臣というのはどうしてもやはりヒトラーのようなやり方を好む人なんですからね。そして横にイタリアの大きな大使館があって、日本大使館があって、日独伊国同盟のあの威容を再び――こういう感じにとられてならぬのですよ。これが国際平和を緩和をする方向じゃなくて、緊張するような方向に私は行く可能性が非常に強い。あなた方はあそこを日欧の、日本と欧州の文化センターみたいな形にしようと、こういうような言い方をしておりますけれども、それ場所が悪いんじゃないの。飛行機で東ドイツの中まで通ってベルリンに降りなきゃならない、西ベルリンに。やるならフランスかどっかでしょう、一番場所がいいのは。同じ金かけるんなら。だから、物の考え方、発想がどうも危険てしょうがないんですよ、どうですか。どうしてあなた方がそう言うのなら、大臣にサミットのときに見てもらわなかったの。
  34. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) 外務大臣は、先ほどのお話がありましたとおり、既にこの問題があることはかねがね御存じでありまして、この問題はいつか解決しなければいけないという、そういうお考えをずっとお持ちになっておられたことを我々は承知いたしております。  しかしながら、先ほども大臣みずからおっしゃいましたように、やはり財政問題ということがございますので、結局その問題が最高首脳の間で結論が出るまで積極的にはなかなか我が省としては動きにくかったと、そういう事情があったことを御了承いただきたいと思います。  それからもう一つの、なぜベルリンかということにつきましては、この発足に当たりまして中曽根総理ベルリンでなさいました演説があるわけでございますが、そこの一行をちょっと引かせていただきたいんですが、そこで総理が言っておられますことは、「ベルリンは東西問題の最前線であります。」と、「ベルリンは東側内部に位置する唯一の東西の接点として、全欧にかかる橋でもあります。」と、「私はここにこそ相互理解に基づく相互信頼を培う最大の必要と、困難ではあるが決して絶望的ではないその可能性があると信ずるものであります。」と、こういうことを言われまして、特にここにそういうものをつくることの意義を強調されて、それでこの「センターの最終的な目的は、東洋と西洋の文化交流と世界の平和と繁栄の永続的実現に寄与することにある。」と、こう言っておられます。それがこの位置づけについての一つの説明になるかと存じます。
  35. 梶原敬義

    梶原敬義君 一つ財政問題というんなら、もうやめようと思ったんですけれども、そこまで言いますとね、財政問題があるから外務大臣が前に出れなかったというようなニュアンスだ、僕の一貫した質問に対するあなたの答弁はですね。外務大臣が三十七億ぐらいの、あなたたちが言う、大したことないんでしょう、あなたたちの考えでは。そのくらいの問題で大体の判断ができないの、総理大臣がやらなきゃ。そうなるじゃないですか、話の都合で。僕は当然サミット外務大臣が行って、このくらいの問題でやるんなら、まず外務大臣が、外務大臣在任期間中は行ってないんだから、行って話をつけるべきじゃないか、相当した話の八割か九割は。それが行ってないんだ。財政問題がめどがつかないから行けないというような、そんな話は総理大臣でなきゃつかぬの、そのくらいの財政問題が。それが第一点だ。  それから第二点は、なぜベルリンかという問題で、今総理の演説のそこが問題です。その内容が問題なんです、総理の。その演説の内容は、東西緊張緩和じゃなくて、激化の方向に進む内容じゃないの。我々はそうとるよ、私は。そこが問題です、どうですか。
  36. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私が行かなかったのは別に関心がなかったからではないわけでして、よく現状は承知しておるわけです。それからまた私が外務大臣を引き継いで以来この問題に関心を持って、調査費を私のときにつけまして、それから諮問委員会を、これは私の主導のもとに外務省で諮問委員会を大来さんを中心に設けていただいて、どうしたらこの大事な国有財産が生かしていけるかと、西ドイツ政府も非常に熱心であると、何とかこれは生かしたいということで諮問委員会にお願いしてその案をつくっていただいた。これは私がそれまでやったわけで、それから何とかこれを具体化しようという運びに持っていかなきゃならぬなと考えておりました。そういうときにまたコール首相日本にお見えになって、そして首脳間でこの話が大きく浮上すると。そして中曽根総理も大変熱心になられて、ぜひともこれやろうじゃないかという話もあって、私もかねがねこれは何とかしなきゃならぬ、諮問委員会の方向も出たということで、これはぜひひとつやりましょうということで、これは総理大臣と私の間では何も意見の相違とかそういうものはありませんで、実態的に我々がこれを進めて、そして首脳会議の結論、合意を具体化したと、こういうことでございまして、ですから、何も総理が一方的に何もかも全部ただ思いつきだけでやったということではなくて、土台があって、その上に立って首脳間の話があり、そして実質的に私どもとで外務省がこれを進めたと、こういうことでございます。
  37. 梶原敬義

    梶原敬義君 それは大臣の方はそう答えるんですけれどもね、しかし、このくらいのこの問題を、やっぱりこういう目的で今言われたようなことなら、私はやっぱりもう総理大臣がやると言えば、いや、総理大臣、この問題は外務省でやりますよと、外務大臣が、今度はナンバーツーか何かわからぬけどね、やりますよということでどうしてやれないのかね。何でもそういう方向で危険に歴史の流れを引き曲げるようなやり方をする総理大臣がどんどん飛び歩いていくようなやり方に対して、どうにも危惧の念にたえない。やっぱりこの点については外務大臣がいるんだから、外務省当局も総理大臣を抑えるところは抑えて、どうもこの問題やるならやるようにしてもらいたい。いいですか。そうしなきゃ外務大臣存在価値ないじゃないですか。  じゃ、次行きます。次に、十月十八日の新聞ちょっと持っておりますが、横須賀に米海軍の攻撃型原子力潜水艦ヒューストン、六千トン、これが入港した記事を持っておりますが、これはあちこちでやっておりますから余り時間かけたくないんですが、総理大臣の先般の衆参両院の所信表明演説で非核三原則を遵守する云々の項目が出ておりますが、その点については、この潜水艦はトマホークとか核搭載はしていないということはもうはっきりここで言ってください。
  38. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日米安保条約という立場から、艦船によるものを含めて核の持ち込みが行われる場合はすべて事前協議の対象である。したがって、核の持ち込みについては事前協議が行われなければなりません。その場合においては政府としてはこれを拒否するというのが日本政府の一貫した方針でございます。したがって、ヒューストンの入港の場合においても事前協議がない、これは日米安保条約、そのかたい合意の上の信頼性の立場から、ヒューストンの入港に当たっては核の持ち込みはあり得ない、あり得なかったということでございます。これは、日本政府としてはあくまでも非核三原則を堅持するという立場は当然確保された、こういうふうに考えております。
  39. 梶原敬義

    梶原敬義君 防衛庁、非核三原則というのは、私も国会議員になって日が浅いんですが、後でちょっと教えていただきたいと思うんです。非核三原則の経緯とかなんとかも、私はそこはわかっていますから、三つをどうですか。
  40. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御質問の趣旨を必ずしも明確につかんでおるかどうかわかりませんが、非核三原則と申しますのは、いわゆる核兵器そのものを日本に、日本の領域内に持ち込ませない。日本が持たず、つくらず、かつ持ち込ませないということというふうに考えております。
  41. 梶原敬義

    梶原敬義君 そうでしょう。そうしますと、持ち込まないということですから、先ほどの外務大臣の答弁では、当然事前協議制であの中には核は積んでいないと思うと、こういう見解ですね。ところが、あの艦船については世界の常識として、結局トマホークなり積んでおる。日本の港に停泊するときはどこかへ一回おろして持ってくるわけですか。
  42. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、これはおろして持ってくるかどうか知りませんが、とにかく日米間においては日米安保条約というのがありますし、核の持ち込みについてはあくまでも事前協議の対象になっておる、これはもう条約上の信義、信頼性の問題ですから、これは事前協議にかかってない以上は、これは核は持ち込まれていないというのが政府の一貫した立場です。
  43. 梶原敬義

    梶原敬義君 重ねてお尋ねしますけれども、世論あるいは我々の感じですけれども、大半の人は積んでおると見ておるわけですよ、国民は。外務大臣の奥さんもそう思っているでしょうよ、恐らく。みんなそう思っているんですよ。それで、積んでいない、積んでいないだろう、条約の精神が生かされていると言っているのはあなた方だけですよ。どうしてくれるんですか、これ。
  44. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもう政府が一貫して言っておりますように、やっぱり条約というのはこれはもうあくまでも両国の信頼というものが、そしてこれを守るということが大前提でなければ条約の有効性というのはあり得ないと思います。そういう意味において我々は日米安保条約はかたく守られているし、日本もこれを守っておる、アメリカもこれを守っておる、こういうふうに思います。その日米安保条約の非常に大きな核になっているのがいわゆる事前協議、特に核の持ち込みについては日本国民が大変な関心を持っているわけで、この事前協議制というものがある以上はこれはアメリカ側はきちっとこれを守っておるというのがこれはもう大前提でありますし、したがって事前協議制度がある限りは核持ち込みは日本には協議なくしてはありえない、また協議があった場合はこれを断るというのが日本の立場でありますから、核の持ち込みというのはあり得ない、こういうことでございます。
  45. 梶原敬義

    梶原敬義君 私もそういう専門家の資料をいっぱい持っておるんですが、時間がありませんからそこら辺のことをほじくりませんけれども、しかし、専門家もそれは積んでおる、こう言っておる、ほとんど。アメリカのあっちこっち、旧将官もこう言っている、マンスフィールドもちょっとそんなようなことをみんな言っているんだよ。それで奥さんもそう思っているでしょう、外務大臣、あなた。奥さんにそんな信頼するしかないと言ったって理解しますかね。みんな理解しますか。だから、一回乗り込ませなさいよ、参議院の決算委員会。私も乗り込みますよ、一人として、質問した以上。そこで検証しましょうよ、どうですか。
  46. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは政府間のかたい約束事ですし、やっぱりその約束事の最も大きな事前協議制というのが確固として存在している以上は、これはやはり日米間の条約の建前、信頼関係からいってこれを信じるということは、これはもう当然のことだと思いますし、我々としましても、この事前協議制度が存在しておる限りは核の持ち込みはこれまでもあり得なかったし今後もあり得ない、こういうふうに確信を持っておるわけです。
  47. 梶原敬義

    梶原敬義君 政府間の約束だからもう何でもそれを信頼するしかないというような言い方です。もう依然として言っていますね、絶えず言っておりますが、まさに、ただそれだけで検証も何もしないということは、もう完全なやっぱり安保条約の中での従属的な、対等関係じゃなくて従属的な関係なんですね。検証もできない、だから信用するしかないと。この点についてやっぱり、はい、我が国はそういう面については弱いんです、従属的ですとはっきり言ってください。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日米は私は対等だと思っておりますし、日米安保条約もそういう対等の立場に立って結ばれた条約である、こういうふうにかたく信じておりますし、そういう中の事前協議制度、これは忠実に運用されておる、こういうふうに思っております。
  49. 梶原敬義

    梶原敬義君 まあ何ぼ言ったって、この点についてはまさにもう従属以外にはないでしょう。きょう外務省から少し資料ももらったんですが、私は出身が九州の大分ですが、別府湾にもフリゲート艦とかあるいは駆逐艦とか指揮中枢艦とかいっぱい入っておるんですが、この点について資料もいただいたんですが、その中の幾つかには核搭載可能な船も幾つかついておるんですが、これらについては、これも同じことでしょうが、これはもうないとはっきり言えるんですか、積んでいないということは。
  50. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはやっぱり同じように搭載可能であるとかないとかいうのじゃなくて、それよりはむしろ核を実際に積んでおるかどうかという問題ですから、その点については事前協議というのがある以上はそれはあり得ないと。核を積んで入ることはあり得ない、事前協議制を無視してはあり得ない、こういうことであります。
  51. 梶原敬義

    梶原敬義君 そうでしょう、水かけ論でね。  これは非常に地域の人もやっぱり不安に思っているんですよ。次々に五十八年だけでも六回入っている、五十八年だけでね。七隻か九隻入っているんですよね。巡洋艦、指揮中枢艦その他が入っているんですが、これはもう地域では、やっぱり核を積んでいる可能性もあるし、艦船の寄港については反対だという運動を起こしておるんですけれども、例えば我々がここに入った船に対しては乗り込んでそういう場合には見る、そういう船に。そういうことについては外務省は、我々というか現地のそういう関心のある人には乗り込ませるということについては、今後そういう方向でアメリカ当局と話を進めるように、要請があった場合はしていただきたいんですが、いかがですか。
  52. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 先ほど来大臣から御答弁申し上げておりますように、安保条約の建前上、核を持ち込むときには当然日本に事前協議をしなければならない、こういうことになっているわけでございます。  他方、それでは信頼ができないから、実際に見なければ確実ではないではないかという御指摘でございますけれども、大臣が申し上げておりますように、国と国との関係においてきちっと約束をしておりまして、米国政府はしばしば、安保条約関連取り決めに基づく日本に対する義務というのは誠実に今までも履行してきたし、今後も履行していくつもりであるということをはりきり言っているわけでございますので、それを日本政府としては、尊重しかつ信頼関係に基づいてそういうものとして理解する、こういう基本的な立場にあるわけでございます。  他方、それでは、そういうときに入って検査をすることを要求できるかということになりますと、御承知のとおり、国際法上の問題としては軍艦には不可侵権というものがございますので、我が方からそういうことをすることはできないというのが国際法上の立場になるわけでございます。
  53. 梶原敬義

    梶原敬義君 ちょっと私も先ほど言い足りませんでしたがね、時々艦長か何かが市民を呼んでパーティーをやったりするんですよね。だから、そのときに我々の方から希望を出してそういう船を見るように、勝手な好きな者だけ呼ぶんじゃなくて、そういうようなときにはひとつ外務省の方も、そのときには、関心のある者が乗り込むということについては、一般市民を呼ぶんだから僕は問題ないと思うんですよね、そういう方向で要望しておきますので、そういう方向でアメリカと場合によっては話をしてください。
  54. 渡辺允

    説明員(渡辺允君) 米国の艦船が日本の港に寄港をいたしました場合に、親善等の目的で現地の方と交流が行われているということは私どもも承知しております。  理屈を申しますようですが、最終的には例えばどういう方をお招きするかというようなことは艦長の権限になるかと思いますけれども、友好親善あるいは現地の方々の感情を配慮するということは重要なことであろうかと思います。
  55. 梶原敬義

    梶原敬義君 まじめに質問しているときにはやっぱりまじめに、そういう前向きでやるとか、そのぐらいのことはもういいじゃないですか、答えていただきたいと思います。そういうように要請をします。  次に防衛庁にお尋ねをしますが、五十八年度決算検査報告というのを会計検査院が出しておりますが、ここで、指摘事項といいますか、によりますと、「北海道大演習場十三号道路改良舗装工事ほか五件」ということで、舗装工事の設計ミス、設計が不十分で舗装材料の選定が適切でなかったという点で、約四千万円結局不経済になったという指摘があるんですね。それで、この点について、もういろいろこうこうというのはいいですから、やっぱりこういう場合の責任は、これはもう私などから見ますと大変初歩の間違いで、こんなものを専門家がやるのに、こんなことで四千万円も国費を損をさせるということはこれは大変な問題だ。これは単純な問題だ。こういうときの責任はだれがとるんですか、一体。
  56. 宇都信義

    政府委員(宇都信義君) 御質問の戦車道の舗装につきましてはセメントコンクリートによって従来から実施してきたところでございますが、近年、舗装材料等の開発、技術の進歩等がありまして、その技術が向上したことによりまして、キャタピラをつけた車両の通行に対応するようなアスファルト系の高安定度特殊アスファルトコンクリートが開発されました。そういうコンクリートが開発されたことによりまして、昭和五十一年度に、防衛施設庁としましては、六一戦車あるいはM41戦車が走行する宮城県の王城寺原演習場周辺においてテストケースとして耐キャタアスコン舗装を実施したのでおりますが、それが良好な状況であったので、昭和五十八年度においても仙台あるいは呉防衛施設局で同様の舗装を採用したものでございます。こういう経緯を踏まえまして、北海道や富士演習場周辺におきまして、七四戦車が頻繁に走行する道路については、こういう積算の内容につきましては、現場の条件かとそれから交通条件あるいは経済面等を十分検討しながらやることでございまして、御指摘のありました舗装条件の内容につきましては、防衛施設庁としましては、既に五十九年十一月十三日に各局に通達し、耐キャタアスコンを採用するように指導しているところでございます。
  57. 梶原敬義

    梶原敬義君 私が聞いたのは、こういうような初歩的なミスが起きて、それは責任はだれがどうとるのかということを聞いたんです。
  58. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 今、部長の方から経緯を御説明したように、我が方でも、新しい素材ができて、それを古い型の軽い戦車の場合には対応できるということで使って、そして重いものにはちょっと無理かなと思っておったようでございますけれども、それによって検査院の方から、そっちの方も使えるじゃないかということを指摘され、そしていろいろ議論の結果、今それをやることにいたしたということでございます。私たちとしては、検査院の指摘をちょっと受けてすぐ、いろいろ技術的な討議もございましたけれども、それを改良いたしましたので、その点については御了解いただきたいと思います。  今後ともむだのないように努めてまいりたいと思っております。
  59. 梶原敬義

    梶原敬義君 私はこの問題は責任の問題だけ聞くつもりだったけれども、そこまで言うと、新しい素材ができたからそれで改良した、それを使うようにしたというような今防衛庁長官の答弁だね、そうしたら会計検査院が指摘したこと自体がこれはちょっとずれている、会計検査院の指摘自体がおかしいような今の答弁のとり方になるのです。防衛庁はやっぱり、会計検査院が指摘したのはこれは不経済だったと、四千万円損害かけたと、こういうことを指摘している。だから、その点について一体どう責任とるのかと言っているんですよ、そういう場合は。
  60. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 重い戦車の場合にそれが本当に対応できるかどうかいろいろ議論があったと思います。そこで、これを検査院の方でもその後できるじゃないかということで、議論の結果直したものでございまして、検査院の指摘が間違っていたということを申し上げたつもりはございません。
  61. 梶原敬義

    梶原敬義君 だから責任はだれがどうとるのかと、こう聞いているんですよ。
  62. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) この問題は検査院からの指摘、それぞれの観点からの指摘を受けてそれを直していったりすること、それが政府部内でいろいろ議論ありながらやっていくわけでございまして、現在のところきっちり直すということが重要でありまして、どこが責任とるというような問題ではないように思います。
  63. 梶原敬義

    梶原敬義君 そういう場合は責任はとらぬのだと、それでこれからようやっていくんだというような解釈ですね。そんなの納得できぬですよ。
  64. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  先ほど来担当政府委員御答弁申し上げておりますように、六一式戦車というのは三十一トンでございまして、七四式は三十五トン、この重い戦車に対してこの素材がいいか悪いかテストをしておる段階でそういう御指摘があり、その結果、これでも十分耐えるであろうと、こういうことで会計検査院の御指導に従いまして方針を改めた、こういうことで防衛施設庁の責任において、これ以上むだのないようにやり方を改善した、こういうこととして御理解をいただきたいと思います。
  65. 梶原敬義

    梶原敬義君 そんなことを言っているんじゃないんだ。だれがこういう場合に、そういう初歩的なミスを犯したと会計検査院が指摘されておるものは、これはほかの防衛庁の仕事の中にもたくさんあるんだ、僕は聞いているんだ。そういうようなミスがはっきりしたときには、だれがどういうように責任とるのかと言っているんですよ。
  66. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 再々お答えいたしておりますように、この工法がそれに妥当するかどうか、それについて十分検証をしないまま、その結果大きな国損を引き起こしたとすればより大きな問題であろうかと存じます。その点、違う種類のより重量の重い戦車について、キャタピラの幅も違いますし、つめも違います。こういうものについていろいろ検討した結果、会計検査院の御意見、これも妥当であるということでこれを修正をした、こういうことで、行政はそういう相互のチェック・アンド・バランスでもって運営をしておる問題でございまして、御指摘の点につきましては十分改善をされておる、その意味において責任は果たされておると考えております。
  67. 梶原敬義

    梶原敬義君 それは今後はそうかもしれない。しかし、過去において四千万円損をしているということは取り返しがつかないんだ。その部分について一体どうしているかと言っている、どう責任をとるか言っている。
  68. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 会計検査院の御指摘ということでございますが、これは国損をかけたという御指摘ではございませんで、こういうやり方もよいのではないかという御指導というふうに理解をいたしております。
  69. 梶原敬義

    梶原敬義君 読み方はいろいろあるけれども、ここに書いているやつをずっと読んだら、いいですか、これは十年間やれるというものをもうやらなくなった、こうなっている。だから、これはもう不経済だと、こう指摘をしているじゃないですか。これ、あなたたちの言うように、いやそれは非常にやわい指摘だというようなとり方にはならぬよ、これは。この決算報告書の二十九ページからずっと書いているじゃないか。読んだですか。
  70. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  会計検査院の御指摘は私ども十分読ましていただきまして、その趣旨は十分理解をいたしております。先ほど申し上げておりますように、この十分検討されない工法によってより大きな国損が出るのではないかという行政判断によって従来の工法ということであったわけですが、それが十分両種の戦車に可能であろう、こういう御指摘があり、検討した結果、そういう可能性があるということでその御指導を受け、それに従って改善をしておる、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
  71. 梶原敬義

    梶原敬義君 会計検査院は技術のことはわからぬ。これは設計したりあるいは土木建築に詳しい人だったら、もっとそれより知っているわけだ。しかし、素人の会計検査院からここで指摘されている。四千万も不経済にしている、こう指摘されているのだから、これは一体どうするのかというんですよ。してないというんですか、四千万。そんならそう言ってください、不経済にしてないという、そこから議論しましょう。
  72. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  四千万節約できたのではないかという御指摘であって、この四千万の何らか不正あるいは甚だしい過誤、事実認識の不足、こういうことから生じた国損という御指摘ではないと理解をいたしております。こういう節約をせよという、行政の合理化、節約化についての御指導と理解をいたしております。
  73. 梶原敬義

    梶原敬義君 それは違いますよ。違う、それは、書いている内容は。明らかにそういう指摘をしておるじゃないですか、設計のミスだと。  大臣、その指摘事項をあなた読んでいるんですか。そうしてどうしてそういう答弁になるのですか。
  74. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) それぞれの行政の場におきまして、いろいろ不正がありましたりミスがありましたり、そういうようなことになりましたら、責任をとりますのはそれぞれの部署の人間であり、最終的にはその行政官庁の責任者である大臣であろうと思っております。  しかし、今度のことにつきまして私も経緯をずっと聞いておりましたけれども、それぞれ本当に、この耐キャタアスコンというものがどの程度に耐えられるものか、仮に七四式戦車というのはかなり重いものでございますから、それが本当にまだ使えるかどうか、使えなかったら逆に国損になるじゃないかという判断は、それぞれの行政の人間がいろいろ考えたりすることは、私はうちの事務のやり方として当然のことだろうと思っております。したがいまして、それが私はここで従来のことをやっていた人間が悪意に基づいて、そして怠慢に基づいてそういうふうにやっていたとは思いません。そして、検査院からの指摘を受けて、そしていろいろ議論の末、それもやれるかなと、そしてかなり仙台局の方で七年八年やった結果を見て、まだちゃんともっているからやれるかもしれぬということでその方針を転換したということでありますので、私はその今回の措置は、検査院からの指摘と私たちの対応というのは国益をなるべく損じないようなプロセスであったと思っております。
  75. 梶原敬義

    梶原敬義君 この問題はちょっと理事会で検討してくださいませんか、時間がありません。  三十一ページに会計検査院の指摘では、「本件工事費を約四千五十万円低減できたと認められた。」、こうこうこうすることによってということを書いておりますから、これはあなたたちの言っているのと僕が質問している内容と違うんだよ。だから、その点について何でもいいかげんにやっておって、そして結果は、いやこれはやるだけやったんだからこれはもうしようがないですよというような言い方ならだれでもできますよ、そんなことは。だからこの問題は、部下にないんなら防衛庁長官に責任があるんだ。あなたが責任とらなきゃならぬ問題だ、こういう問題は。部下にないんだからあなたがとる問題だ。
  76. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 関連して。今のやりとりを聞いておって、我々も技術屋の端くれだけれども、余り一般的な議論をごまかすような論理のすりかえはやめてもらいたい。  したがって、今の問題については、時間のむだですから、後ほど社会党の方から理事会で提案して、理事会で防衛庁を呼んで十分真意を確めるという議事の取り扱いをしてもらいたいということを提案します。
  77. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) それでは後刻、理事会で協議いたします。
  78. 梶原敬義

    梶原敬義君 防衛庁にお尋ねしますが、レーダーサイトについて私は防衛庁の方に、日本防衛庁が設置しておりますレーダーサイトの金額、それから能力、そういうものについてずっと資料を出していただきました。それから、メーカーについても出してもらうように要請をしましたが、どこにどういうレーダーがついて、その金額がどうか、そして能力がどうなのか、メーカーはどれかということで出してくれたんですが、それについては個々のものは出せないということで資料をいただきました。  問題は、大韓航空機の撃墜事件のときに、稚内、網走、それから根室、この辺のレーダーが大韓航空機の機影を捕捉しておるんですが、その捕捉したレーダー、そのレーダーをつくったレーダーのメーカーをきょうは参考人として来てもらって、そしてその能力の問題について防衛庁がとらえている見方とメーカーとを突き合わせたかったんですが、どうしても防衛庁はメーカーの名前は言わない、そして参考人に対してもそうはいかない、こういう結論になったわけでありますが、非常に残念です。  ただ、一九八三年九月一日に撃墜された大韓航空機の機影をとらえた時間とそれから位置、距離ですか、これをもう一度お尋ねしますので、その点についてだけ御答弁ください・
  79. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 当該大韓航空機をレーダーがとらえ、それが三沢のCC・DCに通報されて記録が残されておる状況が我々の知り得る範囲ではございますが、その記録によりますと、時刻は三時十二分から三時二十九分の間でございます。  なお、その際の各レーダーからの位置は、三時十二分の段階では稚内のサイトから約三百キロメートル、網走のサイトからは約四百キロメートル、根室のサイトからは約五百キロメートルの位置に三時十二分段階ではございます。さらに、機影が消えた三時二十九分段階では、稚内から約百三十キロ、網走から三百六十キロ、根室から四百九十キロの位置にありまして、その位置はそれぞれ三時十二分段階では北緯四十七度四十分、東経百四十三度四十五分、三時二十九分の段階では北緯四十六度三十分、東経百四十一度十五分という記録が残っております。
  80. 梶原敬義

    梶原敬義君 今の位置につきましては、事件が起こった後に森空幕長が発表した時間、それから同僚議員の質問主意書に対する六十年五月十四日の政府答弁、これで少し食い違いが出ておりまして、結局今御答弁いただいた内容がこれはもうレーダーに映った動かせない事実だと、こういうふうにとらえていいですね。
  81. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私どもの手元に現存しております記録等を調査した結果、今申し上げた事実が我々の知り得る範囲の事実でございます。
  82. 梶原敬義

    梶原敬義君 稚内、網走、根室のレーダーサイトがいずれにしてもとらえて、三沢のバッジシステムの中に入っておるんだろうが、結局その機影をとらえたレーダーというのはどのレーダーですか。
  83. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私ただいま申し上げたのは、位置が三時十二分段階、三時二十九分段階、それぞれその位置であるので、その位置がそれぞれのレーダーサイトから何キロメートルあるということを申し上げたんでございまして、どのレーダーがとらえたかということは、過去たびたび御答弁申し上げていると思いますが、それぞれのレーダーサイトから自動的にあるいは口頭で三沢のCC・DCに通報をされます。それが三沢のCC・DCで総合的に判断されて記録が残っておりますので、現在残っておりますデータがどのレーダーサイトからの通報に基づくものかということは確認できません。
  84. 梶原敬義

    梶原敬義君 かねがね疑問を持っておるんですが、固定三次元レーダーというのが一式約二十億円、固定三次元レーダーの改良型が一つ昭和六十年三月三十一日の価格であると思うんですが約二十四億円ですね。これは政府に対する、私の文書で質問した運輸省に対する質問の回答を見ますと、目的は違いますが、気象庁が富士山頂に設置しているレーダーは昭和五十三年に三菱電機が約五億八千万円で設置しているんですよ。富士山の山頂のレーダーの見える範囲というのは約八百キロ見えるんです。そのほか上品山航空路監視レーダー、これが五十一年に東芝が四億五千万円で設置しているんですが、このレーダーで捕捉できる範囲が三百七十キロですね。それから幾つかずっと出しているんですが、四億か五億くらいで相当遠く見えるんですよ。そうすると、防衛庁が設置しているレーダーというのは二十億あるいは二十四億かかってわずか三百キロから四百キロ、稚内が捕捉したレーダーごときは二百九十六キロしか捕捉してない、捕捉距離は。どう見てもそんな高い金かけて逆転層があったとか気象条件どうこうと言ったってちょっとあんまりじゃないですか、これは。どうなんですか、この辺は。
  85. 山田勝久

    政府委員(山田勝久君) ただいま先生指摘のように、私どもが設置をいたしました固定三次元レーダーは、片一方が二十億円程度、もうちょっと新しいのが二十四億程度でございます。また、運輸省関係で五億円ということでございますが、私ども防衛庁が調達をしておりますレーダーというのは、民間あるいは運輸省で使用されている二次元レーダーと異なりまして、まさに先生指摘のように三次元レーダーでございます。目標の距離、方位、高度を同時に測定をする機能を持ったものでございます。そのほか妨害というものに対しまして耐える対妨害能力をつけ加えるとか、あるいはいろいろ特殊な機能を採用いたしておりますので、レーダーの仕様が民間のものと違う、そういう意味で高価になるというふうになりますが、それは防衛庁の役割というものから勘案して、その技術水準からいって必要なものでございます。  例えば、コード信号を普通の旅客機ですと発するわけでございますけれども、国籍不明機のような場合には、しばしば向こうから信号が出てまいりません。それも私どもの方では把握できるようにいたしておりますので、そういった面で技術的なニーズというものが違うという点、御了承をいただきたいと思います。  また、実際最大探知能力からいって十分距離が出せなかったじゃないかという御指摘もございますけれども、それは先生指摘のように、またしばしば私ども御説明いたしておりますように、いろいろな気象条件等々からいってケース・バイ・ケースで決まってくるわけでございまして、一概にレーダーの性能が問題だということではないのではないかと思っております。
  86. 梶原敬義

    梶原敬義君 最後になります。ぜひ委員会の方で今後問題を残していただきたいんですが、大変な金額をかけたレーダーが二百九十六キロしか、いろいろ三次元だということはあっても、しか見えない。これは私はやっぱり理論的に言うと四百四、五十キロは見えなきゃならぬのがそのくらいしか、二百九十六キロしか見えてない。それは問題は見えなかったとすればつくった納入したメーカーが瑕疵のある、問題のある製品を入れたとしか思えないわけです。ですから、私は一体とりなのかということでここに参考人として来てもらって、どっちが言っていることが正しいのかというのをきょうはこの委員会でやりたかったわけですが、それはできない。だから、この点についてはぜひ今後さらに問題を残して、この問題の一体真相は何か究明をしていただきたい。  それから、会計検査院に最後にお願いしますが、会計検査の検査のやり方というのは経済性とかあるいは効率性、そういう能力面まで見るということになっているんですから、やっぱりそういう高い物を買って、しかもそれがたった二百九十キロかそこらしか見えないようなそういうような機械を、会計検査院としてもそこのところもちゃんと見て、問題があるなら問題があるようにこれから指摘をし、改良すべきだと思うんです。その点について会計検査院の見解を聞いて終わりたいと思います。
  87. 天野基巳

    説明員(天野基巳君) お答えいたします。  一般的に申し上げまして、購入した物品等が契約において定められた性能等を発揮していないということであれば問題であると考えられます。したがいまして、会計検査院といたしましては今後とも購入物品等の規格、性能等が契約内容に照らして適切なものであるかどうかという点につきましては十分留意して検査してまいりたいと思います。
  88. 菅野久光

    菅野久光君 時間が余りございませんので端的に御質問申し上げますので、お答えの方もひとつ端的にお願いをいたしたいと思います。  まず、六十一年度の概算要求基準の決定に当たりまして、増額要求が認められた例外事項の中で特に問題なのは防衛費と経済協力費でありますが、そのうちの防衛費について御質問を申し上げます。  九月十八日の政府・与党連絡会議及び閣議で防衛庁の五九中業を政府の中期防衛力整備計画に格上げをいたしました。そして、期間中の防衛費総額は十八兆四千億円で、五六中業見積もりの十五兆五千億円に比べて二兆九千億円、実に一八・七%の大幅な増となっております。  そこで、まず五六中業と過去三年間の予算計上額を対比して、その進捗状況を説明していただきたいと思います。
  89. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたします。  五六中業の五十八年度からの過去三年間の防衛関係費はそれぞれ二兆七千五百四十二億円、二兆九千三百四十六億円、三兆一千三百七十一億円でございます。  なお、これらはノミナルな数字でございますので、それぞれをGNPデフレーターを使いましていわゆる五六中業の計画である実質ベースといいますか、五十七年価格に換算いたしまして計画値と比較いたしますと、デフレーターそのものが逐次修正されておりますので今後若干変動するかもしれませんけれども、総額として八兆六千七百六十八億円になります。これを五六中業の計画値、十五兆六千億ないし十六兆四千億円と比較しますと、進捗率といたしましては五二・九%ないし五五・六%ということになります。
  90. 菅野久光

    菅野久光君 今防衛局長の方からお答えがありましたが、私の方で調べたものでは五六中業と過去三年間の予算計上額を対比した進捗状況、これは五六中業の下限対比で五六・五%、上限対比で五三・八%、つまり半分程度の実績であるわけです。したがって、五六中業は五カ年の計画期間中に計画達成はまず不可能だということが言えます。そうであるならば、五九中業、すなわち中期防衛力整備計画はこの実績を勘案して、五六中業以下の防衛費支出の計画を作成する必要があるというふうに思うんです。しかるに、今度の中期防は五六中業を三兆円近くも上回る大きな計画であります。このことは明らかに矛盾していると言わざるを得ないわけですが、この矛盾をどのようにお考えでしょうか。
  91. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御案内のように、今回の政府決定を見ました中期防衛力整備計画と申しますのは、この五カ年間で防衛計画の大綱の水準、つまり防衛計画の大綱で期待をしております防衛能力というものが達成されるようにということを前提としてまず組み立てたということを御理解いただきたいと思いますが、さらにその内容的に、あるいは金額的に申し上げますと、確かに五六中業をつくった当時に比べましてさらに三年時限が進行しておりますので、先ほどGNPデフレーターについて申し上げたように、ノミナルなものの関係で物価の値上がり等もありますし、人件費等の値上がり等もございますが、そういったものを含めて全体的な伸び率としては私どもは今回の五カ年計画の方がより緩やかなものになっておるというように考えております。
  92. 菅野久光

    菅野久光君 五六中業で五六%程度ぐらいしか実際達成できなかったというのを、さらに額をふやしていって本当にそういうことになるのかどうか、私は非常に疑問だと思います。  そこで五九中業、まだ格上げになる前の五九中業が決められた時期、これはいつでしょうか。
  93. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 五九中業につきましては昨年の五月に国防会議で基本的な方針を示されまして、以後防衛庁の内部で、防衛庁の内部資料でございますので、作業をいたしておりまして、ほぼ五月ごろ防衛庁の内部としてはある程度の成案を得たわけでございますが、以後財政当局等と若干のすり合わせをやっておったという状況の中で政府計画につくり直すということになりましたので、五九中業としてはでき上がったというか、完成したという時期はございませんで、そのまま政府計画へ移行していったというようにお考えいただきたいと思います。
  94. 菅野久光

    菅野久光君 そうであれば、今回の概算要求基準の決定に当たっては、私は見過ごすことのできない問題があるというふうに思うんです。それは、五九中業が正式に決定されていない八月三十一日現在、六十一年度の予算要求が大蔵省に提出されました。これは手続的に大きな問題を含んでいるのではないでしょうか。つまり、防衛庁の概算要求は中期業務見積もりに基づいて行うということになっておりますね。六十一年度の予算要求のこの時点では五六中業しかないわけです。新聞等で報じられていた装備品等、五九中業で計画しているものの予算要求は厳密に言うとできないのではないかというふうに私は疑念を持たざるを得ません。  そこで、この点に関しては防衛庁はどのようにお考えでしょうか。
  95. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先生指摘のように、防衛庁の内部規定、訓令でございますが、いわゆる中業というのは概算要求の資料とするというように定められております。したがいまして、防衛庁の内規から言えば、中業に基づいて概算要求をするということが必要であろうと思います。しかしながら、先ほど来御説明申し上げておるように、今回は五九中業が政府計画に格上げ、さらに再審議していくという作業過程にございましたので、やや大げさであったかもしれませんが、私どもとしましては、概算要求につきまして、今回は国防会議で実は五九中業の枠組みについて、あるいは内容について御説明いたしておりましたが、その内容というものを、まだ防衛庁の中の、内部の案でございますが、それを前提として概算要求をさしていただきたい。しかも、その概算要求の中身は、これこれこういう内容のものでございますということを国防会議レベルで御審議をいただき、御了承を得て、概算要求をさしていただくことにいたしました。
  96. 菅野久光

    菅野久光君 何というんですかな、まだ正式に決まっていないものを一応国防会議にかけて、そしておおよそこういうものでございますという了承を得て、そして概算要求を行ったと、こういうことですね。
  97. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 五九中業全般につきましてはおっしゃるとおり、おおよそのこういうものでございますということでございますが、と同時に概算要求そのものについて、従来であればそこまでやることにはなっておりませんが、概算要求の事業なり要求内容につきまして国防会議に御披露いたしまして、それについて御審議を願った上で、これで概算要求をさしていただくという御了承をいただいたわけでございます。
  98. 菅野久光

    菅野久光君 手続的に私はおかしいというふうに疑念を持たざるを得ません、先ほども申し上げたとおりですね。この点については大蔵省としては、こういったような形での概算要求を決める、そういうことについてはどのようにお考えでしょうか。
  99. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 私どもも、ただいま防衛局長から御説明申し上げましたような趣旨と理解しておりますが、いずれにいたしましても慎重に手続を進める意味から、八月の二十七日の国防会議においてもそのような取り扱いについてお諮りした上で概算要求をお受けしたというふうに理解しております。
  100. 菅野久光

    菅野久光君 まあ、そうであれば、まさに大ざっぱな形での概算額の決定と、こういうことになったというふうに理解してよろしゅうございますね。大蔵省、いかがでしょうか。
  101. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 概算要求につきましては、あらかじめ概算要求の基準について政府部内で検討はいたしますが、具体的な内容につきましては要求する側の御意見というかお考えに基づいてやっていただくという建前になっておるかと理解しておりますが、防衛庁についてもそういうことで、防衛庁のお考えに基づいて内部の手続をお進めになり御要求されたと、こういうことで理解しております。
  102. 菅野久光

    菅野久光君 そうしますとね、中期防が策定は後からされましたけれども防衛庁の内部でいろいろ相談をされたことを受けて、今回の場合はそういうことになりますと、今度の防衛計画はできましたけれども、それ以前の問題でありますから、いわゆる来年度の予算についてどういうものが必要なんだということ、例えばまあ兵器なら兵器ですね。そういうことの一々については、何というんですかなやりとりがない。あくまでも防衛庁側の要求で額で勝負をしたということに受けとめざるを得ないわけですが、そういうことでよろしゅうございますか。
  103. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 来年度予算編成を、現在私ども防衛庁と十分御相談しながら進めておる過程でございます。中身についての検討、政府としての取りまとめはこれから十二月を目指しまして、私ども今鋭意進めておるところでございますので、そういうことで御了解いただきたいと思います。
  104. 菅野久光

    菅野久光君 そうであれば、概算要求は額だけを決めて、中身の装備その他の問題についてはこれから十二月までの間に詰める、そういう作業の手順になっていると、こういうことですね。
  105. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 先生指摘のとおりと理解しております。
  106. 菅野久光

    菅野久光君 そうなりますとね、防衛費だけが突出をしていくということについてやはり大きな問題をはらんでいるというふうに言わざるを得ません。そのことについてはまた別なところでやりたいというふうに思いますが、中期防が今度できた、これは総額明示方式ということで、六十一年から六十五年度までの防衛費、これを閣議決定したわけであります。これによって防衛費の抑制機能を持つと政府は主張しておりますが、五六中業がそうであったように、三年目で次の計画に乗りかえる、いわゆるローリング方式がとられると費用の拡大が繰り返されることになります。防衛費の歯どめにはならないということは今までの三次防、四次防、そのことで十分に経験済みのことではないかというふうに思うんです。このことは、同時に我が国の防衛政策の基本である防衛費の対GNP比一%枠以内という原則をも踏み外す、そういう危険もあります。  そこで、総額明示方式は防衛費の膨張を防ぐことになるのか、さらに三年ごとに見直すローリング方式、つまり計画の見直しで防衛費の増大は行わない、GNPの一%枠内を堅持する、そういうことを保証できるのか、その点について大臣いかがでしょうか。
  107. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 今度の五カ年総額明示方式と申しますのは、従来防衛庁内部の概算要求の基準であったものを正式に政府レベルに格上げいたしまして、国防会議、閣議を通しまして政府が責任を持って計画を提示するわけでございます。その内容は国会にも御報告申し上げ、そして非常に責任のある案といたしまして、いわゆるこれを中心に、国会におきまして防衛力整備につきまして御議論いただくことになるわけでございまして、これは最終的にシビリアンコントロールの最後のよりどころであります国会の場を通じまして国民に対し御理解をいただき、また御批判をいただく形になりますので、そういった形での歯どめというものはより権威を持って行われる仕組みであろうと、こう思っております。  これはかって三次防、四次防のときにもこの方式でやられておりますので、このたび私たち本年度の初頭ないし夏におきまして、例えば六十年度のベースアップを実施したならば一%の枠の中におさまらないかもしれないという悩みを抱えたときに、どういった歯どめとして対処したらいいかということを考えた段階で、私たちこの方式が最良ではないかと、防衛についてまたは日米安保についての国民世論がもっともっと厳しかったときの原点のコントロールシステムに戻ってみようかということで御提案申し上げた次第でございます。
  108. 菅野久光

    菅野久光君 十八兆四千億、この総額を明示された、五年間でですね。しかし、三年ごとに見直すというローリング方式もとるということなんですね。そういう中で総額が堅持されるというふうにここできっちりお約束できますね。
  109. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) まず第一にローリング方式というのは、三年後にこの計画を見直す、ローリングするかどうかにつきまして三年後に検討するということでございますので、ローリングが必ずしも固まったものではないと申し上げたいと思うんですが、一応そういうローリング方式の可能性を十分に残したものであろうと思っております。  そこで、菅野委員指摘の四次防、三次防のときはその額を超えていたではないかと、それと同じでんを踏むのではないかという御指摘でございますが、三次防、四次防もその五年間、最終の締めでは計画の額を下回っております。もちろん物価が非常に高騰しているときでございますから、名目値ではまた別の議論でございますが、三次防、四次防、計画を立てたときの実質価格は、それぞれ、今数字を申しますと、三次防の場合には達成率が九五・八%、四次防のときは九三・二%でございまして、世上言われておりますように三次防、四次防というものが計画を立てたときよりも大幅にオーバーしているということは事実とはちょっと違いますので、そこの御理解はいただきたいと思います。  それから五六中業でございますけれども、先ほど防衛局長から御答弁申しましたように、実は三年目で達成率が五三から五六みたいな数字でございます。本来ならば三年目であれば六〇%というのが常識的な線でございますが、それも達成できないから計画をつくりかえるというようなのが事実でございますので、今後いろんな経緯があっても五年後に十八兆四千億を六十年価格で超えることはございません。
  110. 菅野久光

    菅野久光君 六十年価格で五年たって総額で十八兆四千億円は超えることがないということですね。その点はそのように確認をいたします。  私は十八兆四千億がいいということで言っているんじゃないので、その点はお間違えのないようにお願いをいたしたいというふうに思います。  しかし、これは後からも申し上げますけれども、兵器の価格というのはあくまでも六十年価格で、次から次にいいものが欲しくなる、そういったときに本当にそういう形になるのかどうか、これは後からまた論議をいたしたいというふうに思います。  そこで、防衛庁長官はGNP比一%枠を突破するようなこともあり得るというようなことをたびたび発言もされております。そこでいろいろ、GNP比一%枠というものを突破することによって日本が軍事大国になるのではないかということで、アジアの諸国では大変危惧しております。このことについて中曽根首相も防衛庁長官も、我が国は軍事大国にはならないというふうに言っておられます。私は、軍事大国にならない歯どめといいますか、ならないというあかし、それはこのでNP比一%以内の防衛費というふうに見ているわけです。そのほかにも基盤的防衛力の整備だとか、専守防衛だとか、非核三原則だとか、そういうことはありますけれども。  そこで、首相やあるいは防衛庁長官が言う軍事大国というのは具体的にどのような姿あるいは装備等を指しているのか、ひとつ明らかにしていただきたいというふうに思います。
  111. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 軍事大国というものをどう定義するかはいろいろ御議論あろうかと思いますが、私たちは軍事大国というものは、国の政策の諸般の分野の問題につきまして、軍事的考慮がすべて優先してしまうような状況、そしてすべての政策の上位に軍事政策が立ってしまうような状況というものがいわゆる軍事大国になった状況なのでないかなと、こう思っておりまして、現在の我が国の現状が決してそういうものではないということは私たち身をもって実際に感じておりますし、私たち防衛庁の方針がすべて通るような状況ではございませんし、また今後ともそういった国にこの日本がなるとは私は一つも考えておりません。
  112. 菅野久光

    菅野久光君 ある程度攻撃的な装備といいますか、そういうものをある程度持っても、装備の面で言えばですね、そういうものを持ったとしても軍事大国とは言わないというふうに理解をしてよろしいですか。
  113. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 先生指摘のように、私たちの防衛政策につきましては、過去、戦後の自衛隊というものが創設されて以来、またその前後からも新憲法のもとに基本的な防衛政策の原則というものをだんだん形づくってきたと思っております。その中には、平和憲法に徹するということ、そして極めて厳しい文民統制に従うということ、そしてまた専守防衛と申しまして、決して侵略を目的とした攻撃的兵器を持たないということ、そしてまた非核三原則を厳守するということをきっちり守ってきたと思っております。そういうことを通じまして私は、東南アジア諸国がかつて我が国にかなり軍国主義復活についての危惧の念を持っていたと思いますが、だんだん最近は理解していただけるようになってきたのではないかと思っております。そういう状況が約二十年ほど続きまして、そうして五十一年からいわゆる一%の閣議決定が入ってきたわけでございますが、世上言われますように、一%のみで軍事大国を阻止する基本原則になっているのではないと思っております。ほかのすべての政策をしっかり守ることによって私たちは諸外国の信頼を受けるのだと、こう思っておるわけでございます。  御質問の点につきまして、私たちは今後とも専守防衛の精神はしっかりと守っていかなければならないと思っております。
  114. 菅野久光

    菅野久光君 防衛庁長官は九月二十九日のNHKの番組の「政治討論会」で、閣議決定された中期防衛力整備計画と防衛費のGNP比一%枠の閣議決定との関連について、各年度の予算編成では一%枠をできるだけ守っていきたい、としながらも、今後のGNPの伸びによっては一%を超える場合もあり得る、また、そうした状況になったら従来の討議経過を踏まえ慎重に判断し、最善の処置を行わなければならない、と述べ、そして一%枠よりも防衛計画の達成を優先させたいという趣旨のことを発言しておられます。そういったようなことからいって、GNP比一%枠を突破するということと軍事大国ということとは関係がないというふうに先ほど何かおっしゃられたように私は受けとめたんですが、そういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  115. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 一%枠をこの五年間で突破するかしないかということはかなり多くの不確定要素がございます。GNPがどのように推移してまいりますかということもございますし、単年度の予算でどのような金額が決まるかということもございます。この分母、分子ともが不確定でございますので、それは単年度で論じなければならないと思います。特に五十一年度の三木内閣の閣議決定は、それぞれ単年度のGNPと単年度の防衛費について論じているものでございますので、そういう理解でいいのではないかなと思っております。  ただ、今後の見通しをこの段階で言った場合、例えば経済企画庁が現在持っております展望と指針というものによりますと、実質四%程度の成長ということでございますし、私たちの額が十八兆四千億でございますので、この五年間の面積対それから十八兆四千億というものを比べますと、現在の展望と指針をもとにしますと一・〇三八%になるという事実でございますので、その点につきましては、もし仮にそれが続けばそういう年があり得るということを言わなければ数字上論理上合わないわけでございます。しかし、今後私たちとしては、各年度、他の諸施策との関係を論じながら財政当局と予算を決めていきますけれども、そういう守れるところができるだけ長く続きますように精いっぱいの努力をしてまいりたいということでございます。
  116. 菅野久光

    菅野久光君 守れるようなことを願うといいますか、そういうことじゃなくて、私が言っているのは、一%枠は突破するかもしれない、しかし突破したとしても防衛大綱の方を優先させたい、一%枠よりも、そういうふうに発言されているわけですよ。ですから、私が言っているのは、この一%枠を突破するということと軍事大国ということとの関連ですね、それをどのようにお考えでしょうかということを申し上げているんです。
  117. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 私たちは、累次御答弁申しておりますように、例えば一%の枠を一円でも突破した途端に軍事大国になるというふうには思っておりません。例えば仮に一%の中であっても、私たちが非核三原則を守らずに原爆を持ったり攻撃型武器を持ったら、これは軍事大国とそしりを受ける可能性もあるだろうと思っております。したがって、私たちはそのように防衛の基本原則を守っていくことが必要でございますが、一%というものが国民に防衛についての理解を促進してもらう、そういう大きな効果を持ったことも事実でございますし、世論も、また党内以外の意見もできるだけ守るようにすべきだということでございますので、その努力を続けてまいりたいと思っております。
  118. 菅野久光

    菅野久光君 努力を続けることはいいんですが、〇・〇一%でも突破したらどうのこうのということを今言われましたが、これは実は五十六年度の予算のときに、福祉関係の予算よりも防衛費が〇・〇一%初めて戦後上回ったわけですよ。そのときに何を言われたか、わずか〇・〇一%じゃないかと。しかし次年度から防衛費が突出していったわけですね。ですから、この歯どめが外れれば当然次からどんどんこの防衛費だけが一%を超えてふえていくということは、これは今までのいろんな経過から見てやっぱりはっきりしてくるんじゃないかというふうに思うんです。  それで、この一%枠と軍事大国という問題は、これはもっと古く日中の平和条約締結のために当時の田中首相が中国に行かれたときに、日本が軍事大国になるのではないかというそういう質問に対しても、日本は国民総生産、GNP比一%以内の防衛費だから軍事大国にはならないということを言われているんですよ。そのことは大臣も御承知だというふうに思うんですが、そうしますと、日本総理が中国へ行ってGNP比一%以内だから軍事大国にならないと中国の国民にそうはっきり言っている。今度は一%突破もあり得る、あるいは中曽根総理に言わせれば、自分が泥をかぶってでもそれをやるんだというようなことを言われた時期がありました。そういう中でアジアの諸国が一%枠の突破ということと軍事大国になるということとが一体のものとして受けとめるということは、これは当然ではないかというふうに思います。それは幾ら大臣がそのような努力だとかなんとかという言葉を使ったとしても、実質的に一国の総理がそういうふうに言われているわけですから、それをずっと踏まえていきますと、今我々が日本の政治を預かるそういう立場に立ったときに、我が国の総理が外国へ行って約束したこと、それを後代にいる我々が破るということになってはならぬのではないか。だから、あの一%の問題は靖国の問題やなんかとも絡み合ってこれは大変なことになるという思いをアジアの国の人たちが、特に中国が抱くのは私はもっともだというふうに思うんです。そういう意味で、私は一%枠と軍事大国ということについてお尋ねをしたわけですが、大臣いかがでしょうか。
  119. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 私たちこの一%の問題につきましては、遠くさかのぼれば過去二、三年、そして前通常国会からかなり激しい議論をし、国内でも報道されました。  そこで、この報道が諸外国にどう受けとめられるかということを丹念に外務省を通じて調べておりましたし、また九月十八日五カ年計画を決定した後も諸外国の反応をつぶさに心配して見ておりました。幸いなことに、一部の共産圏の諸国を除きまして一%を突破するかもしれないということによって日本が軍事大国になるというような報道はほとんどございませんでした。中国の方も新華社電で冷静にこの日本国内の一%論議を報道しただけで、中国の人民日報でも、またその他新華社評論におきましても一切のコメントはございませんでした。したがって、私たちは一%の問題も非常に重要でございますけれども、我が国の防衛政策で最も重要なのは、憲法の精神を守り、文民統制に従い、そして専守防衛の鉄則を守り、非核三原則を守り、こういうような戦後からずっと続けておりました基本政策をしっかり守るということがかなり重要なことなのではないかなと、こう思っております。
  120. 菅野久光

    菅野久光君 今、防衛庁長官が諸外国の反応は余り一%の問題についてはなかったと、中国の新華社電が云々ということがありましたが、ちょうど外務大臣この間行かれたばかりでございますから、靖国の問題が非常に大きく新聞等でも報じられておりましたが、その問題と一%の問題とは中国ではさほど大きな問題としてはとらえていなかったというふうにお感じてお帰りになられたでしょうか。
  121. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 中国で私もいろいろと要人との会談を行いましたが、日本の防衛政策の問題あるいはまた一%をめぐる問題については議論として何も出なかったわけでございます。しかし私は出なかったからといって中国が関心がないと、こういうことは言えないと思いますし、やはり中国も長い歴史日本との関係の中にあって日本がこれからどういう国として進んでいくかということについては、防衛も含めた大変重要な関心を持っておることはこれは事実だと思っておるわけです。ただ中国全体として、今日の日本の防衛に対する基本的な姿勢、こういうものが続く以上は、中国がこれに対して何ら批判を加えるとか、あるいはまた議論するとか、そういう状況には私はないものである、こういうふうに考えております。
  122. 菅野久光

    菅野久光君 新聞等で報じられた報じられないということだけで判断されるということは、やはりいろいろ過ちを犯すことになるのではないかというふうに思うんです。いろいろ新聞報道等でも、靖国の問題も大したことはないだろう、ある新聞によれば、公明党と社会党がたきつけたから靖国の問題が中国でああいうふうになったんだなどというようなことを書かれているところもありましたけれども、しかし、判断を誤るとこれは大変な問題ですね。三兆円ぐらいの防衛費ところではないような大変な、国の今後のいろいろな問題について大きな問題になっていくわけでありますから、軽く見るということだけはこれは絶対やっていっては大変だということを私はこの機会に強く申し上げておきたいというふうに思います。今までも総理の答弁なども含めて、大綱と一%というのは別だ、一体のものではないということがよく答弁されておられるわけですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  123. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 昭和五十一年の十月の二十九日だったと思いますが、大綱が決定されました。そして、それから一週間後に三木内閣におきます例の閣議決定ができたわけでございますが、これ一週間差がありますということ自体、当時の経緯から見ますとワンセットということではなく、大綱というものがまず設定され、そしてその後の進捗の財政のめどとして、とりあえず当分の間一%を超えない金額をめどとするということになったのだと私たちは理解いたしております。そこで防衛についてはいろんな議論がございますけれども、私たちとしては、この大綱に基づく考え方と、そしてそれに基づく整備方針というものを中心に国民的なコンセンサスを得ていきたいと思って努力してまいりましたし、またそれは平時における最小限の保有しなければならない防衛力であろうと思っております。    〔委員長退席、理事目黒朝次郎君着席〕 当初十年程度でこれをなし遂げたいということが五十一年の気持ちでございましたが、現在約十年たっても、そして今後五年間で達成するというわけでございますので、かなり進捗がおくれておるわけでございます。その意味で、防衛計画の水準に達成することを基本にしつつ考えてまいりたいと思っております。
  124. 菅野久光

    菅野久光君 これは五十二年度の防衛白書で「政府としての総合的な見地から、当面の防衛力整備については、年々の防衛関係経費の「めど」を示すことも必要であると考えられたので、この「防衛計画の大綱」とは別に、昭和五十一年十一月五日の閣議において、次のとおり決定された。」というふうになっているわけですよ。これはどう考えてみても、この大綱と一%枠というものはセットで決定されたものだというふうに思うのが当たり前な解釈ではないか、今の長官の解釈では無理があるのではないかというふうに思いますが、いかがですか。
  125. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 先ほど私も申しましたように、防衛力整備の進捗状況を示す一つのめどとして導入をされたものだ、こう思っております。そして従来から、防衛計画の大綱の水準にできるだけ早く達成したいというのが歴代総理大臣及び防衛庁長官の国会における公約であり、発言でございます。また一%も五十一年以来いろいろな経緯を経て政府の方針となっておりますけれども、実はこの二つにつきまして、その後の経済発展の状況によって矛盾が生じたときに私たち出っくわしたわけでございます。その意味におきまして私たち今後いろいろ考慮しなければならないことが多いとは思いますけれども防衛庁としましては防衛計画の大綱の水準の達成を基本にしつつ、そして一%の閣議決定につきましてはその精神をできるだけ尊重していきますように努力してまいりたいと思っております。    〔理事目黒朝次郎君退席、委員長着席〕
  126. 菅野久光

    菅野久光君 前回の決算委員会のときもできるだけという言葉の持つあいまいさといいますか、そういうものを私は指摘をしたわけでありますが、私は我が国の防衛の基本方針というのは基盤的防衛力構想、そして防衛計画の大綱、GNP比一%以内の防衛費、これが三位一体の関係であるというふうに思っているわけであります。このことについては防衛戦略だとか防衛政策、防衛コスト、そういう三つのものを形成して一つのつながりになっているというふうに考えるわけですが、この基本方針についてはどのようにお考えでしょうか。
  127. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 現在の私たちがつくって持っております新しい五カ年計画も防衛計画の大綱の枠の中でつくられております。したがって、基本的防衛力の構想、そういった考え方はそれを堅持いたしております。先ほどの一%の閣議決定との問題でございますが、五十一年以来それを守るように政府の方針としてやってまいりましたし、現在も今後その精神をできるだけ尊重して守ってまいりたいと思っておりますが、本年度御議論いただいたこと、ことしの七月、八月御議論いただいたことは、その幾つかの大綱水準の達成という問題と五十一年閣議決定という問題との間に、経済の発展によって両方達成しようと思うと矛盾が生じてきたというところから悩みが始まったことは御理解いただきたいと思います。
  128. 菅野久光

    菅野久光君 大臣ね、余り悩まなくてもいいことをみずから悩むようなことをやるからそういうことになってくるんだと思うのです。防衛費を一%以内に抑えていれば別に悩む必要はないんで、それを大綱を何というんですか、何としても達成したいという願望はわかりますけれども、そこのところをやっぱりきちっと整合すれば余り悩まなくてもいい、みずから悩む種をつくり出したといいますか、そういうことになるのではないか、そこで苦しい答弁になるんだろうというふうに私は思うのです。  そこでさらに確認をいたしたいというふうに思いますが、我が国の防衛戦略であります基盤的防衛力構想、これは非軍事的要素を重視した防衛戦略であるわけですね。脅威には脅威をといういわゆる脅威対抗論とは相入れないものだというふうに思います。具体的には専守防衛の立場にあるというふうに私は理解しますが、その点はどうでしょうか。  また、この基盤的防衛力構想について、最近防衛白書に言及されなくなってきております。特に六十年版白書には全く触れていないのはどのような理由からでしょうか、お伺いいたします。
  129. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 防衛計画の大綱というのは基盤的防衛力の構想によってつくられておりますし、現在もその考えには変わりません。したがって、白書につきまして言及してあるかどうかにつきましては、白書というのは比較的一般国民の方にわかりやすく記述いたしておりますし、特に六十年度版につきましては抑止力の意義とかそれから日米安保の意味とか、そういうことをかなり平易に書こうという努力をいたしておりますので、若干そういう専門的な用語があらわれてなかった部分があるかもしれません。しかしその発想は変わっておりません。
  130. 菅野久光

    菅野久光君 基盤的防衛力構想というのは、今後もずっと堅持をしていくというふうに確認をしてよろしゅうございますね。
  131. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 私たちは我が国の置かれております国民の意識、世論、財政状況、私たちの地理的状況というところからいわゆる所要防衛力の考え方、そして相手の脅威の増大に一〇〇%対応して我が方も対処していくような、脅威に完全に対抗していくというような考え方をとろうと思っても、それを現実にやれるような国ではございません。  したがいまして、防衛計画の大綱の枠の中で、そしていわゆる基盤的防衛力の考え方でいくという方針には変わりございません。
  132. 菅野久光

    菅野久光君 防衛庁は、今度の中期防衛力整備計画に検討課題として盛り込んだ洋上防空構想、これは六十二年夏をめどに結論を出す方針のようでありますが、装備の面でどのようなものを考えておられますか。
  133. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 洋上防空につきましては、具体的には五カ年計画で考えております洋上防空そのものにつきましては、過去続けております洋上防空についての考え方、つまり航空自衛隊の全般防空の覆域内ではそれにできるだけ依存をし、そういうものに依存できない分野については艦艇等の対空火器その他を整備してできるだけ対抗していこうというものが具体的に入っておる計画でございますが、今先生御質問のさらに検討する項目として挙がっております洋上防空につきましては、これは最近になって新しい状況が生まれておる。その状況と申しますのは、一つは非常に航続距離の長いハイスピードの航空機が出現して、従来余りそういう空からの脅威はほとんどないであろうと考えられておった洋上をかなり離れた海域でも、そういう空からの脅威があるということが第一点でございます。もう一つは、最近航空機から発射されます対艦ミサイル、巡航ミサイルというものの射程が非常に延びてきて、いわゆる艦艇が従来持っております火砲等ではその武器に対抗することができないという状況が出てきております。  したがって、そういうミサイルにどうやって対抗するかという新しい問題が生じてきた。それらについてこの五カ年間の中で研究をし、しかるべき方法が見つかったらその整備に一部着手をいたしたいということでありまして、具体的にまだ研究する前でございますので特に案はございませんけれども、我々が関心を持っておりますのは、一つはそういう洋上を遠く離れたものにつきましてはOTHレーダーという非常にレンジの長いレーダーがございます。そういったものの探知能力というものを基盤にいたしまして、それで早期に敵機を発見をして、それに対して何らかの要撃ユニットというようなものを発進させて対抗する方法もあるんではないかなというようなことを一つ考えております。もう一つのミサイル対策につきましては、現在アメリカ等では例えばAEGIS船といったようなすぐれた対ミサイルミサイルを搭載した艦艇等が出現しつつありますが、そういったものも参考にしながら、我々としてはどのような装備を持つべきなのかという研究からまず始めていきたいというようなことを考えております。
  134. 菅野久光

    菅野久光君 新聞報道でありますけれども防衛庁が検討中の洋上防空構想は、ソ連の長距離爆撃機バックファイア対策の一環として約四千キロ先まで採れるOTHレーダー、AEGIS艦、空中給油機の三装備の導入を検討しているというふうに言われておりますが、これが運用されるようになれば、これまでの基盤的防衛力構想、いわゆる専守防衛から前方防衛攻撃戦略への転換ということになって憲法違反の私は疑いすらあるのではないか。そこで、洋上防空構想と基盤的防衛力構想との関係はどうなるのか。そこを明らかにしてもらいたいと思います。
  135. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まず、海上交通保護と申しますのは、御承知のように自衛隊発足以来海上自衛隊の主たる任務になっておるわけでございますが、その際海上交通保護に際して空からの何らかの攻撃を受けるということは当然考えられておったわけでありまして、三十年代当時から海上自衛隊の装備する艦艇等には対空火器あるいは対空ミサイルというものを装備いたしておりましたので、海上自衛隊発足以来洋上防空ということは当然考えられておったわけでありますし、当然のことながら、その継続である防衛計画の大綱、基盤的防衛力構想の中にも洋上防空というのは、海上交通保護という作戦の中の一環として必要な機能というように、考えられておるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、最近軍事技術が進歩してまいりまして、洋上におけるそういった空からの脅威というものがより大きくなる傾向にある。それにどう対抗するかということが新しい課題として我々の前に出てきておることは確かでございまして、これをどういうようにカバーするかということについては今後研究をし、でき得れば適切な措置をとりたいという希望を持って今回の計画はつくられておるわけでございます。
  136. 菅野久光

    菅野久光君 時間がございませんのでちょっと申し上げますが、今言われているように洋上防空構想は、これまでの水面防衛から防空まで含めた立体的なものである。そして防衛計画の大綱の限定的かつ小規模の侵略に対応する基盤的防衛力構想を事実上踏み越える、そして米国の南西、北西太平洋に配備されたアメリカ艦隊の補完の役目を果たして、突発的な有事の際には憲法が禁止している集団的自衛権との関係で重大な問題があるというふうに思います。これはアメリカでも、「五九中業達成されれば「日本、戦略的戦力に」」と、これは六月十六日の読売新聞でございますが、そういうふうに述べられておりますし、また、アメリカのウルォウィッツ国務次官補が、量、質両面にわたるソ連の軍事力増強は、日米が慎重に考慮した上で行っている軍事力改善よりも急ピッチだ。さらにペルシャ湾の状況がインド洋における米海軍の継続的プレゼンスを必要とし、米国の太平洋戦力にかかる負担が大きくなっている。これらの理由から我々は日本に対し、日本がその防衛上の役割と使命のためにみずから必要と定めた防衛力を時宜を得た方法で達成するようあらゆる努力を払うことを勧めてきたと、去る九月十八日の東京都内のホテルで開かれた日米協会主催の昼食会で講演をしております。  したがって、今のいろいろお話をされました洋上防空構想というのは、まさに基盤的防衛力構想というものを踏み越える、集団自衛権に発展をする、そういう憲法違反の疑いといいますか、そういうものになるおそれが大きいということをこの機会に申し上げておきたいと思います。そういうふうに非常に今中期防衛力の整備計画をめぐって、日本が危険な方向にいっているということをこの機会に私はやっぱり申し上げなければならないというふうに思うんです。そのことが十九日でしたか、これは宇都宮先生あるいは前に防衛庁長官をなさいました赤城先生などが集まって、非常に危険だと、一%の厳守重要というようなことでなされたものだというふうに思いますから、加藤長官もハト派というふうに言われておったんですが、いつの間にかだんだんくちばしが鋭くなってタカになってきたのではないかというふうに思いますし、こういったような政治の姿勢といいますか、そういうものが、そして現実的に行われていく日本のこの防衛力の整備というものが、いつの間にかだんだんいわゆるシビリアンコントロールがきかなくなって、制服の言うような方向にいくのではないか。いい武器があればそれが欲しくなるのが制服の必然的な気持ちなんですね。それをどうやって抑えるか。どうやって抑えるかというのは、総額明示方式しかないというふうに言われるのかもしれませんが、しかしこれもローリング方式、そして一%枠はいつ突破されるかわからない。そういうことの中で極めて危険なことになっていくのではないかということを私は申し上げたいと思います。  最後に、もう時間がございませんから、御紹介だけしておきます。読まれたかと思いますが、十月四日の朝日ジャーナルの十ページに福田総理が書かれた「歴史の教訓に学ぶ。平和大国への道」という、この文が載っております。そこの最後のところが、私は本当に今日本の政治を担当する者にとっては大事なところだなというふうに思いますので、ぜひひとつ、長官読んでいただきたいというふうに思います。  靖国問題も実は質問をしたかったわけでありますが、時間になりましたので、私の質問はこれで終わります。
  137. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ―――――・―――――    午後一時二分開会
  138. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十八年度決算外二件を議題とし、外務省及び防衛庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  139. 服部信吾

    服部信吾君 まず初めに外務大臣にお伺いいたします。  外務大臣、臨時総理ということですので、きょうはひとつ総理になったつもりで前向きの御答弁の方をよろしくお願いいたします。  まず初めに、十月の十日から十三日にかけて第一回の日中外相会談が中国で開催されたわけであります。いろいろな問題が検討され討議されたようでありますけれども、その中で、中国側から靖国神社公式参拝に対する批判等があった、このように聞いておりますけれども外務大臣としてはこの点についてどのようにお考えですか。
  140. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今月の十日から十三日まで中国を訪問いたしまして、第一回の定期外相会談を行ったわけでございます。これは、先般七月に実は日中の閣僚会議が行われた際に私の方から提案をしまして、日中関係はこれまでも広がりそして深まっていっておるし、今後とも非常に大事な関係であるし、外相間で定期協議を持って、いろいろな問題が出る、あるいは起こる、そういう点について十分ひとつ意見を交換して、率直に話し合って日中間の大局を誤ることがないようにしたい、それにはやはり定期外相会談が必要であるということで申し入れをしました。中国側も快く私の提案を受けて今回の運びとなったわけでございます。  今回の三日間の外相会談、その中では鄧小平主任を初めとしまして超紫陽首相ともお目にかかりました。しかし主力は呉学謙外相との会談でありました。時間を費やしまして二国間のいろんな経済、政治、文化交流、その他あらゆる問題について、さらにまた国際情勢、アジア情勢、そういった問題について率直な意見の交換ができまして、大変有意義であったと思います。そうした中で、実は靖国神社公式参拝の問題も出ました。これは私としましても、この問題についてむしろ積極的に日本政府としての立場を中国側に説明する必要がある、こういうふうにも思って、私の方からもむしろ積極的に説明をしたわけであります。その内容については官房長官談話で尽きておりますが、官房長官談話を説明をし、日本としてはあくまでも日中共同宣言、そして平和友好条約、さらに四原則、そういうものを遵守していく姿勢には変わりない、そして日本は軍国主義への道は決して歩まない、こういう基本的な考え方のもとに、靖国神社公式参拝を、これは長い間の実は検討課題で、官房長官談話に説明があったような形で総理大臣初め閣僚が参拝をしたのであると、こういうことを説明をいたしました。  これに対しまして中国側呉学謙外相は、あなたの話の趣旨はよくわかった、しかし中国側にはやはり中国側の人民の感情というものがあるし、そして日中間の歴史というものもあるし、そういうものを十分ひとつ踏まえてほしい、日中間の関係、特にまた中国人民の感情を傷つけないように日本側も十分中国側の立場をひとつ理解をしてほしい、こういう簡単に言えば趣旨でございました。  したがって、靖国神社の公式参拝については、日本側から政府の立場を説明をし、そして中国側がこれに対して中国側の立場を説明をされたわけでございます。最終的には、こうした問題があるけれども、しかしとにかく日中関係が大事であって、今後日中間の大局を損なうことがないようにお互いに今後とも話し合っていかなければならないということで合意はいたしたわけでございます。しかし中国側として、この靖国神社公式参拝の問題については非常に中国側の立場として重要に考えておると、こういうことは私としても理解をいたしたような次第であります。
  141. 服部信吾

    服部信吾君 日中友好二十一世紀委員会ですか、これは中曽根総理が胡耀邦さん寺といろいろお話をしてつくられたという、また民間団体。今後のある面から言えば二十一世紀の日中関係を大変展望するような、青年あるいは壮年、老人、こういうような形で日中間のお互いの友好を図っていこうと。今まで共同声明以来ずっといいムードできた中で、この日中友好二十一世紀委員会の中でもいろいろなことを中国側から靖国神社公式参拝に対して批判があったわけでありますけれども、この点については外務省としてはどのようにお考えですか。
  142. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) お答えいたします。  日中友好二十一世紀委員会は、先日北京、大連で行われましたのは二回目でございます。昨年九月に第一回目の会議が東京で行われましたけれども、この二十一世紀委員会はただいま御指摘のように、二十一世紀に向けていろいろと日中の関係、将来の問題、あるいは経済問題、それから文化交流等を考えていかにゃいけないということで三つの委員会ができております。その中で一番ただいまの御質問に関連いたします委員会というのは最初の第一の委員会でございまして、お互いが社会制度が異なりますので、この異なる社会制度の前提に立って、日中間で生ずるいろいろな問題についてできるだけ率直かつ事前に話をしていこうということで、民間というか、いろいろな分野での委員を網羅した委員会でございます。  今回の委員会におきましては、全体的には率直かつ有効な意見交換が行われたと承知しております。その上で、率直な意見の交換こそ、ただいまの大臣も言われましたように、日中の理解増進の上で十分有益なものであろうということが合意されたと伺っておりますが、靖国の問題につきましても議論がなされたということは承知しております。しかし、この靖国の問題だけが非常に議論の中心ということではございません。要するに、中国側の立場を向こうも説明し、こちらの委員もそれぞれの立場で日本側の立場ということを説明し、究極的には、特に日本の場合には日中共同宣言、あるいは平和条約、四つの原則等踏まえて軍国主義にならないという点で、日本側のいかなる先生も、主体的にも客観的にもそういう条件はないんだということで、十分な議論を闘わせたということで、お互いには結論的には相互の理解を深めだというような会議であったと承知しております。
  143. 服部信吾

    服部信吾君 次に、いわゆる日本映画製作者連盟、日中間の文化交流の一環として映画製作会社各社で組織したこういう団体があるわけでありますけれども、これが七九年からずっと毎年こういうような形で映画をやったりいろいろやってきた。その前夜祭等を今回は中国側から中止をした方がいいんじゃないかというようなあれがあったということなんですけれども、この辺についての事実関係はどのようになっておりますか。
  144. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) ただいまの御指摘の映画祭でございますが、前夜祭が中止されたことは事実でございますが、私どもの承知する限り、むしろ日本側の主催者の方で今回は前夜祭はやめた方がいいんだろうという自主的な判断でなされたものと承知しております。ただし、前夜祭そのものは中止されましたけれども、いわゆる普通の映画祭は行われていると承知しておりますが、今の御質問につきましては、むしろ日本側の主催者が若干中国側の関係者とどうだろうかというお話はしたそうでございますが、最終的には日本側の主催者側がこの時期においては自主的にやめたいという判断をされたと承知しております。
  145. 服部信吾

    服部信吾君 そんなのは本当はおかしいじゃないですか。だって毎年前夜祭をやっているわけでしょう。今回何でやめたんですか。それは何らかの中国側からのこれはやはりあれがあったからこそ、それは自主的にはそういう形でやめますとは言いますけれども、そんな簡単なものじゃないんじゃないですか。もう少し詳しく述べてください。
  146. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 私どもは、先生のような御懸念というか、私も何かそこにさらに難しい事情があったのかということを聞いておりますけれども、正直申し上げまして、私の承知する限りは、今私が御説明した域を出ておりません。いわゆる自主的にお決めになった。ただ、なぜ自主的にそういう前夜祭を中止したかという判断の中にどの程度、例えば今お話がありました靖国の問題にかかわっているかどうかという点については直接的な言及がお互いにはなされてはいないというように私ども承知しております。
  147. 服部信吾

    服部信吾君 だって、自主的にやめたといったって、本来ならばきちっとやるということで契約もしており、ちゃんと決まっていたわけですから、それをこういう形でやめたと、こういうことですけれども、私心配するのは、こういう問題で、今言われたように靖国は一因だと言いますけれども、こういう文化の問題、文化交流までやめざるを得ないという状態になってきておるということは、やはりこれは単に、いつも総理が言いますけれども、これは本会議場でもこれは中国の問題、中国は中国、日本日本と、内政干渉的なというような感覚でとらえていたら大変な問題になるんじゃないか。心配するのは、やはりこれが文化の問題、とれからやはり経済的な問題とか、いろんな面にこれが波及するんじゃないかという気もするわけですよ、これは。自主的にやめたとは言うものの、それはやめさせられたという形でしょう、これ。この点についてもう一回お伺いしておきます。
  148. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 私もこのような文化交流一つの象徴としてのこのような映画祭の前夜祭が中止されたということ自身、私も非常に残念に思っております。むしろ日中の友好が本当にそうであるならば、こういう交流こそさらに進められていくことが相互の理解の増進に役立つだろうと思っております。ただ、こういう問題が今後とも生じないためにも、先ほど大臣が申し述べましたように、やはり十分な意見を闘わして、こういう点について遺漏がないように努力しなくちゃいけないと私どもは思っております。
  149. 服部信吾

    服部信吾君 この点について臨時総理にお伺いしますけれども、今回靖国神社の例大祭というんですか、これは公式参拝をやめたと、こういうことでいろいろ理由はもっともらしくついておりますけれども、これはやはり中国のこういうような問題があって、やはり総理は取りやめたと、このように考えていいわけですね、これ。
  150. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは官房長官が、例大祭に参拝することを中曽根総理が取りやめられたその理由については説明をいたしておりますが、総理の日程の問題とか、その他いろいろと状況を判断されておやめになったんだろうと、こういうふうに考えております。
  151. 服部信吾

    服部信吾君 新聞報道によりますと、何か百名か百五十名の自民党の議員の方がみんな行っていると、こういうことですから、その間そんなに忙しいことはないと。やはり私はそういう面から言えば、そういうような中国の批判なり、また内外からのそういう批判によってやめたんじゃないかと、非常にいいことだと、私はそう思っておりますけれども、今後総理がいつも理解を得ていくと、中国側のこの問題については理解を得ていくと言っておりますけれども、どういう形で理解を得るのか。私はこれはやめなくちゃ理解は得られないと思うんですけれども、この点について外務大臣防衛庁長官のお考えをお伺いしまして、この問題については終わります。
  152. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは中曽根総理も本会議で答弁をいたしておりますが、その年その年の政府のといいますか、総理大臣の判断によって決めていくと、こういうふうに私は承知をいたしております。私はやはり一つ外務大臣ですから、一面においてはこれは国内の問題でありますが、一面においては外交の面、特に日中関係、そうしたものも今後いろいろと問題を決めていく場合において、そうした大局というものも考えることはこれは当然のことであろうと、日中関係の将来の発展というものを思うとき、そういうことを考えるのはやっぱりそれなりの一つの問題点であろうと、こういうふうに思います。
  153. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 我が国は過去におきましてアジアの国々に大きな損害と苦痛を与えた歴史があるわけでございますので、私たちとしてはそれを深く反省して、再び軍事大国にならないように戦後四十年の道を歩んできたと思います。この我が国の防衛政策につきましては、今後ともできるだけ御理解いただけるように、そしてまたいささかとも再び戦前のようなことにならないように、政策をしっかり立て、原則を守っていくということを私たちとしては心がけていかなければならないと思っております。
  154. 服部信吾

    服部信吾君 次に、今緊急サミットについてちょっとお伺いしたいんですけれども、本年初頭に、五月に西ドイツボンサミットが開催されたわけですけれども、今回急にまた緊急サミット、こういうことでレーガン大統領から招請があったと、レーガン政権からね。この目的はどういうことなのか、どういう要請があったのか、この辺について外務大臣にお伺いしておきます。
  155. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはアメリカのレーガン大統領の要請に基づいて実は今回の首脳会議が行われるということになったというふうに承知しております。  その背景としては、十一月十九日、二十日に米ソの首脳会議が行われる。これは世界にとって今後の世界情勢というものを考えると極めて重要な会議であるわけですから世界じゅうが関心を持っておりますし、特に日本も自由世界の一員としてこの米ソ首脳会談がどういう方向で進められるか、あるいはその後の軍備管理、軍縮交渉がどういうふうなステップをとっていくかということについては極めて重要な関心を持っております。そういう中でレーガン大統領のいわゆる主要先進国への呼びかけがございましたので、日本としても積極的にこれに応じたということでありますし、また日本中曽根総理出席をして日本の立場をその中で鮮明にしていかなければならない、こういうふうに思うわけであります。
  156. 服部信吾

    服部信吾君 十一月に行われる米ソ首脳会談、その前に西側諸国が集まって結束をしてこれを成功さしたい、こういうことですけれども、実際に今回の緊急サミット、これは西側は結束されたと思いますか、外務大臣
  157. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 残念ながらミッテラン大統領は参加しない、こういうことでございまして、我々極めて残念だと思いますが、しかし、今回ミッテランさんは来ない中での首脳会談が行われるわけでありますが、同時に米仏の意見交換ということも十分行われるのであろう、そういうふうに思っておりますし、私はそういう中での今回の六カ国、まあイタリーのクラクシ首相は出席できるかどうかということもまだはっきり決定しておりませんけれども、少なくとも六カ国の首脳が集まって米ソ首脳会談に臨む方針について協議をし、それぞれの意見をレーガン大統領にそれぞれの国が伝えるということは私は意義があるんじゃないかと、こういうふうに思います。
  158. 服部信吾

    服部信吾君 例えばフランスが今回の緊急サミットに参加しないと。そういう理由の中に、たまたまソ連のゴルバチョフさんとミッテランさん、いわゆる仏ソ首脳会談があったわけですが、これは今回参加しない理由になりますか。
  159. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) どういうことで決定的に参加されないということになったか、その真の理由は我々としても推測する以外にないわけですけれども、今おっしゃるような、ゴルバチョフ書記長がフランスを訪ねて、そしてミッテラン大統領とも会談をした、そういうこともやはりその中には私は全体的に見ると一つの要因でもあろうかと。これは推測の域は出ませんけれども、私もそれは一つの要因であろうと。そういう中でちょうどレーガン大統領から出席要請が来たと。ちょうどゴルバチョフさんが訪仏した前後だったと思いますが、そういう時期とも絡んだものですから、そういうことも一つの要因であったように、これは私もそういうふうに推測いたします。
  160. 服部信吾

    服部信吾君 どうもレーガンさん、気が早いみたいなんだよね。もう少し気を使ってあげればフランスだってやっぱり考えるかもしれません。  と同時に私もう一つ総理は口を開けば西側の結束と、こう言うわけですよ。例えば前々回のサミットにおいても、これは御承知のようにINFの配置の問題において日本の、アジアの総理大臣がいろいろと言っておる、根回しをした。また今度のポン・サミットでもフランスの問題に対していろいろと根回しをした。こういうのがあるわけですね。  私は、アメリカと西欧の関係というのは、例えばアメリカと英国の場合は親子みたいなものだと。また西欧――フランスとかああいう欧州というのは兄弟みたいなものだと。たまには親子げんかもするだろうし兄弟げんかもするだろう。そういう中に何で東の方の総理が出てきて、そうして何だかんだ言うのかと。私はそういう何となく、余りしゃしゃり出ると言っちゃ言葉は悪いかもしれませんけれども、確かにアメリカと西側の結束は大事だと思います。しかし、ある程度スタンスを持たないと、向こうから見れば何だと。例えば、私もボンサミットを見ていまして、それぞれあれはみんなよその各国が全部テレビで放映している。うちの大統領はどこに座っているのか、レーガンさんのそばにいるとか握手をしたとか、フランスだってみんな国民が見ておる、英国も見ておる。そういう中でアジアの総理大臣が行って、そうしているいろやっている。大変そういう面からいえば不快感を感じているんじゃないかなという気がするわけですけれども外務大臣、これはどうですか。
  161. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあ座席がどうだこうだということじゃないと思いますが、大体先進国の首脳のサミットというのは、これはジスカールデスタン・フランス大統領のときに始まったので、いわゆる石油危機を切り抜けていくために先進民主主義の主要国が集まって、そしてお互いに経済を中心に解決の道を探ろうというのがそもそもの始まりであったわけで、そういう中で特に経済ということになれば、日本はまさにアジアにおける先進民主主義経済大国でございますから、日本も招待されてここに参加し、それがずっと今日まで続いてきたわけですが、そういう経過の中で、最近は経済サミットといった形から政治の問題も随分論じられるようになったことはこれは事実でありますし、そうした点について、ボンサミットなんかでミッテラン大統領なんかは、余りにも政治の話が行き過ぎるんじゃないか、本来のサミットの形に改めるべきじゃないかと、こういう意見も出されたわけでございます。  まあしかし、私はこの先進七カ国を中心としたサミットというのは、世界経済の安定のためにそれなりに大きな役割を果たしたと思いますし、そして今後ともこのサミットは定着していくんじゃないかと、こういうふうに考えております。  何といいましても仲間うちですし、そして日本はもちろんアジアの一国ですが、やはり経済の面においては大きな役割を世界の中で果たしておるわけでございますから、これはやはり積極的にそういう場で発言をしていかなきゃならぬ。そういう中で政治も論じられる。  また、日本経済とともに政治の面においても最近世界の中で発言力というものが強くなってきておるわけで、今回の米ソの首脳会議という中では、やはり日本も招待されれば喜んで出席をして、米ソ首脳会談に対する日本の注文をレーガン大統領に対しても率直にぶつけるのが、これは日本としても当然な役割じゃなかろうかと、私はこういうふうに思っております。
  162. 服部信吾

    服部信吾君 まあそういう意見を聞いたわけですけれども、やはりある程度置かれた立場というものを考えて行動しないと、いろいろと西側の結束を図る図ると言いながらかえってその結束を乱しているような形の不快感というものがあると。それはそれなりの各国の、欧州のあれも全部その後ろに国民がついているわけですから。例えば一つの席にしても、これは不思議なもので、あなたはここに席りなさいなんという場所はないにしても、ひとりでに人間というのは、ここに大統領が座ったら大体身のほどがわかってここにこう座る、これがまた日本のいいところだと思うんですよね。それがちょっとこうというようなことも私はあろうかと思いますけれども、ちょっと心配の面もあるんじゃないかと思います。  その中でサミットが今まで続いてきた。果たした役割も非常に重要だと私は思います。しかし、今までのサミットと今回の緊急サミット、これは性格が緊急であればあるほど大事であるし、もっともっと結束しなくちゃならない、そういう性格であると私は思うんです。たまたま年に一回やっていたのが、これはもう大変重要な問題なので緊急サミットをレーガンさんとしては招集した。しかしフランスは来なかった。またイタリアもいろんな面で渋っておる。このレーガンさんに対する姿勢、こういうものもあると思いますけれども、私が心配するのは、ある面からいうと、今回の緊急サミットと今までのサミットというものを考えたときに、そんなに遜色のあるものじゃない、緊急だから軽いものじゃない、こう私は思うわけです。そういう面からいって、今回フランスが来なかったということは、ある面からいうと、今までやってきた先進国サミットに何となくちょっと緩みといいますか、そういうものが出てきたんじゃないか。いわゆるサミットの存在すらちょっと何となく揺らいできたんじゃないか、こう思うんですけれども外務大臣、どのようにお考えでしょうか。
  163. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回のニューヨークでの主要国のいわゆる会議というのは、今おっしゃいました緊急サミットとよくこういうふうに言われますが、外務省ではこれは緊急サミットとは言ってませんで、主要国会議と言っております。しかし、一般的にはそういうふうに緊急サミットと言われております。ですから、これはボンサミットの延長線上に私はあるとは思っておりません。ですから、ボンのサミットの次に行われるのは来年の東京サミットであろうと思います。しかし、レーガン大統領としては、やはり気心の知れた主要国の首脳と国連に出席する機会に会って、そして米ソ首脳会談に臨むアメリカとしての、まあこれはいわば自由国家群を代表する立場で臨んでいくわけであります。もちろんアメリカ自身の問題でもありますが、そういう中で意見も聞きたいというのが目的であったと思います。  そういう意味では、ゴルバチョフさんと一番論議をしたミッテランさんが出られないのは、私も外から見て非常に残念に思うわけですが、しかし米仏間ですから、今回の首脳会議には出られなくても、やはり何らかの形で十分な意思疎通といいますか、それなりの意見の交流というものは行われておる、こういうふうに見ております。
  164. 服部信吾

    服部信吾君 この問題の最後ですけれども、心配されるのは、来年の五月ですか、東京サミットもあるわけでありますけれども、やはりこういう緊急サミットに来なかったという面からいって、来年フランスのミッテラン大統領は東京サミットに来るのかどうか、この点について、また当然今回出席しなかったということで外務省としてもいろいろな手を打たれて何とか東京サミットを成功さしたい、こういうことだと思いますけれども、その辺についてお伺いしておきます。
  165. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 来年の東京のサミットは、各国間の話し合いが完全につきまして、フランスも含めて参加をするということで日程も決まったわけでございます。来年の東京サミットは大変重要な時期でございますし、我々としても全力を挙げてその準備を今進めておる、こういうことであります。
  166. 服部信吾

    服部信吾君 ちょっとSDIについてお伺いしますけれども、今回ソ連軍の参謀総長が、アメリカ大統領が宇宙戦略であるSDIについて、何回も勧告したにもかかわらずますますやっているということで、これに対抗するんだというようなあれを発表しておりますけれども外務省としてはこれをどのように受け取っておりますか。
  167. 渡辺允

    説明員(渡辺允君) SDIの問題につきましては、先生指摘のようなソ連軍・官首脳の発言があったということは報道では承知いたしております。いずれにいたしましても、ソ連といたしましても、防空ないし弾道弾防衛というような方面でいろいろ措置をとっておりますし、研究も進めているということは私どもも承知しておるところでございます。
  168. 服部信吾

    服部信吾君 このSDIに、研究に理解をして、参加するかどうかという問題で、九月末から十月にかけて外務省あるいは防衛庁、科学技術庁、通産省等のプロジェクトチームをつくって会見をアメリカでしているようでありますけれども、その内容あるいはどのような結果であったのか、この点についてお伺いしておきます。
  169. 渡辺允

    説明員(渡辺允君) 先生今御指摘ございましたとおり、九月の末から十月の初めにかけまして、二日間でございますが、関係省庁の実務者レベルでワシントンに行く機会が、実はほかの用であったこともございますので、SDIの現状についてブリーフィングをアメリカ側から受けたわけでございます。  SDIにつきましては、今年の四月にアメリカ側から一度ブリーフィングチームというのが参りまして、その際、その当時の状況についていろいろ説明を受けたわけでございますが、それから若干時もたちましたので、今回こちらから行ってまた話を聞いたということでございます。話の中身は、主には現在アメリカが進めております各種の技術の研究の状況についての説明がほとんどの部分でございました。
  170. 服部信吾

    服部信吾君 その中で、通産省さん等も行っているようでありますけれども、今回初めて対米武器技術供与の問題で第一号の要請がアメリカ側からあった。それで、このようなことはその席上で問題になりましたか。
  171. 渡辺允

    説明員(渡辺允君) 実は、先ほど私、この実務者レベルのグループと申しますか、チームがワシントンに参りまして、たまたまほかの用があったというふうに申し上げましたけれども、私がそれを申し上げましたのは、まさに今、先生指摘の対米武器技術供与の方の話でございます。これは、一昨年日米間で交換公文を結びまして、その後具体的な手続の細目を詰めること、それからアメリカ側からは第一号の具体的な要請が出ているわけでございますので、それについても若干の話し合いをするということで参りましたけれども、これはSDIの方の話とは全く別個の話でございます。
  172. 服部信吾

    服部信吾君 その中で、例えば我が国がSDIの研究に参加をした場合に、我が国の場合は何かちょっと情報が流れちゃうんじゃないか、いろいろなSDIの研究に関して、そういう懸念が米国側からもあったと。他の英国とかそういうところは大丈夫だけれども、どうも日本の場合は、例えば参加を決定した時点でそういう技術がどこかに流れてしまうという、そういう懸念がある、そんなような話し合いはあったんですか。
  173. 渡辺允

    説明員(渡辺允君) 今回ワシントンに参りました調査団は、当然のことながら、前提といたしまして我が国の参加の問題についてはまだ政府として検討中でございますし、結論が出ておりませんので、我が国の参加を前提としたような話をアメリカ側としたということはございません。調査団としては、SDIの現状につきまして、アメリカ側から今こうなっているという説明を聞いたということでございます。
  174. 服部信吾

    服部信吾君 ということは、そこまでの具体的な話し合いはなかった、こういうことでいいわけですか。
  175. 渡辺允

    説明員(渡辺允君) そのとおりでございます。そういう具体的な、日本が参加した場合にどうする、どうなるというような話はございませんでした。
  176. 服部信吾

    服部信吾君 それならそれでいいわけですけれども、きょうの新聞にいろいろと書かれておりますので、その点について確認をしておいたわけであります。  そこで、ちょっと対米武器技術供与とSDIの研究参加についてなんですけれども、五十八年に対米武器技術供与における交換公文がなされたと。そういう中で、米国から我が国に対していろいろな技術の供与というものは来ると思うんですね。その中で、それにおいて要するにどんな技術がアメリカから日本要請があったかと。こういうことはお互いにいろんな機密の問題でいわゆる公表できないと、こういうわけですね。私考えますけどね、アメリカが今進めておるのは、何といってもこの戦略防衛構想(SDI)、アメリカの欲しい技術も私はここにあると思うんです。そうなりますと、アメリカが要求してくるのは、当然この武器技術供与の中においてもSDIに関連をした技術というものが。これから出てくると思います。そのときに政府としては、これをノーとかイエスとかということをするわけであります。しかし、私ある面から言えばSDIの要するに技術における参加というものは、もうこの対米技術供与のいわゆる公文が交わされた時点である程度土手穴があいているんじゃないかと。もうSDIに対するある面から言えば、研究というものに対しては参加をしているんじゃないか、こういうふうにとれるんじゃないかと私は思うんです。もしこれで、じゃSDIの計画に対して、研究に対して、もし日本の国が反対をしたと、もう参加しませんよ、そういうふうに言ったときに、アメリカから武器技術供与の要請がどんどん来ると思う。これに対して、やっぱりじゃあ全部ノーと言うのかと。それは最初ですから、今回第一号の要請がそのものに関係なくて簡単なもので言ってきて、だんだんそういうものが来ると思いますけれども、そうなりますとこの辺の武器技術供与とSDIの参加の問題に対しての整合性というものが非常に問われると思うんですけれども、この点はどうですか。
  177. 渡辺允

    説明員(渡辺允君) 武器技術供与の方の問題につきましては、現状を申し上げますと、これまでに大体でき上がった手続に基づいてアメリカ側から第一号の要請が出て、それでそれを現在供与するかどうかを検討しているという段階でございます。それで、特にその後引き続きどんどん出てくるという話も具体的にはなっておりませんけれども、そういう状況のもとで、この第一号の要請についてはSDIとの関連で要請したものではないというふうにアメリカ側も言っております。他方、SDIの方の我が国としての研究参加の問題につきましては、なお我が方として検討中でございますので、これについて現在どうこうと申し上げるのはちょっと難しいところでございます。
  178. 服部信吾

    服部信吾君 だから、どうこうというよりも、やっぱり武器技術供与というものはある程度決定し、今やっているし、実際にもう第一号来ているわけですからね。あとSDIの研究参加というのはまだ決めていないわけです。これでもし研究参加に反対し、ノーと、実際にこれがレーガンさんが言うようなこととちょっと違うんじゃないかと、こういうふうになったときにね、武器技術供与は認めて合意しておるにもかかわらず、一番欲しい肝心の技術というのはみんなここでノーと出すのかということを私非常に懸念するわけですよ。それから、やはりこれだけ西側の一員の結束結束と言っていて、これは外務大臣にお伺いしたいんですけれどもね、これだけ西側の結束結束と言いながら、このSDIが一つのターゲットになっている。そう言いながら日本の国が、これでもしね、いやこれはどうも危ないから研究参加しないよと言ったときに、対欧州の人たちどう考えるかね。これだけ突っ込んで西側の結束を図り、SDIが一つの大きなターゲットになっているときに反対なんか言えますか。それこそ日本の外交が物笑いになるんじゃないか、こういう批判もあるわけですけれども、この点についてはどうですか。
  179. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだ話がそこまでいってないわけです。今まだ理解というところにとどめておりましてね、そして調査団が来て、またこちらから調査団出しているという段階で、これは慎重にこれに対応しなきゃならぬという立場で、いろいろ具体的にSDIそのものについてはもっと研究もしなきゃなりませんし、またヨーロッパ諸国もまだ態度を決めてないところも多いわけで、ヨーロッパ諸国がどういうふうに動いておるかですね、そういうこともやはりよく見なきゃならない、そういうふうに思っておりますから、今の段階においてはこれからどうするかということを言う立場にもありませんし、とにかくもっともっと慎重にこの点については研究をして、そして方針を決めるという必要があるならば、それはそのときになって決めればいいんじゃないかと、こういうふうに思っております。まだそれだけの材料は集まってないと、こういうふうに思います。
  180. 服部信吾

    服部信吾君 アメリカの国内でもABM条約に今回SDIがどうなのかという問題に対しては、かなりアメリカ国内ですらぎくしゃくしている。統一見解としては研究段階までというようなことが出ておりますけれども、やはり私これ総理が西側の一員一員と言いながら、なおかつ、何回も言っておりますけれども、SDIに対してここまで突っ込んじゃうと、ここまで足を突っ込んだときには、日本がノーと言ったときに、本当に繰り返しになりますけれども日本の外交姿勢がかえって問われるのじゃないか。言えない立場にあると、私はそう思います。と同時に、このSDIのあれについては、研究参加は今検討していると言っておりますけれども、五十八年の対米武器技術供与によってある面から言えばノーと言えない立場にある、風穴があいている、私はこういうように思います。そういうことで、これからやっぱり慎重に対処していただきたい、このように要望をしておきます。  そこで、次に経済摩擦云々、今回政府としても内需拡大と、こういうことで経済摩擦問題についての対策を発表したわけでありますけれども外務大臣としてこれじゃちょっと不足だと、もう少し対応すべきだと、こういうようなあれがあるようですけれども、この点についてはどのようにお考えですか。
  181. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカとの関係だけじゃなくて、ヨーロッパその他世界全体に対しまして日本が市場開放をさらに進めていくと、そしてやはりニューラウンドを何とか成功させるということが極めて必要である。自由貿易体制によって日本は生きているわけですからやらなきゃならぬと思います。そのためにいろいろなことをやっておるわけで、アクションプログラムについても関税率の引き下げを含めて今度の国会でもお願いをするということにいたしておりますし、あるいはまた日米間で民間の業界に要請してアメリカからの製品輸入を促進するとか、あるいはまたG5の会議が行われまして、その結果円ドルに大きな変化が来ておる。そういういろいろの面で努力が続けられておりますし、また日米間のMOSS協議等も大方の問題が煮詰まりまして、残っておる問題はわずかになってきておるわけでございますが、そういうことで努力はお互いに続けておるわけでございます。そういう中で日本の内需振興というのは、やはり今までのいわゆる外需依存型の経済をこれから内需を中心にした経済の方向に変えていかないと、これからやっぱりこの黒字がどんどん続いていきますと、いろいろなことをやっても、それではあるいは日本に対する風当たり、あるいはまたアメリカの保護主義というものはなかなかこれを防圧することはできないと私は思うわけで、そういう点はやっぱりアメリカ側も非常に注目しているわけです。日本自身としてもこれからの将来の経済のあり方を考えても、もっと外需と内需との関係を変えていく必要があるのじゃないかと、私はそういうふうに思っております。そういう中で今内需振興の具体策が出ましたけれども、この効果は三兆円余ということで、それほど大きなものではありませんし、これはいわばこれでもって日本が内需をやりますよと言って、大きく胸を張るようなものでは私はないと、こういうふうに思っております。これは今後の予算編成あるいは税制改正、そういうことも含めた中で、これからの内需問題に対して政府としてどういうふうに対応していくかということを最終的にこれは固めていかなきゃならぬ、こういうように思っております。内需振興という立場から言えば、今回の措置というものはいわば第一弾といいますか、そういうものではないだろうか、こういうふうに考えておるわけです。
  182. 服部信吾

    服部信吾君 一つはこの黒字減らしということで、駐日米大使であるマンスフィールドさんが、アラスカ原油、この輸出を図れ、こういうふうなことも提案されて、その解禁というようなことで、またアメリカの下院においてもこのような法案が出てそういう動きがあると、こういうあれも聞いておりますけれども、通産省は、昨日アラスカの知事が来て通産大臣といろいろとこの問題について話し合いをしたと、こういうふうに聞いておりますけれども、どのような話し合いをしたのかお伺いをしておきます。
  183. 増田達夫

    説明員(増田達夫君) 今の御質問にお答えいたします。  先生御承知のとおり、きのうアラスカ州知事のシェフィールドさんが参りまして、通産大臣と懇談いたしました。目的は、アラスカ州政府日本とのエネルギー関係の貿易でございまして、LNG、石炭、石油という議論がされました。特に石油につきましては、アラスカ原油は、日米双方にとって輸出解禁は有益であるということで意見が一致しまして、今後ともその輸出解禁についての努力を進めようということになっております。  それから、アラスカ原油につきましては、輸出が解禁される場合には、あくまでもこれは商業ベースの話でございますので、余り複雑ないろいろな条件をつけるというのは望ましくないんで、なるべく自然な形で輸出してほしいということでも双方意見が一致しております。現在のアメリカでも御承知のとおり法案が出まして議論がされておりますが、いずれにしても議会がどう判断するかという問題でございますので、引き続き見守ってまいりたいということでございます。
  184. 服部信吾

    服部信吾君 外務省にちょっとお伺いしますけれども、アメリカの議会ではどのような動きになっておるか、この問題についてちょっとお伺いしておきます。
  185. 池田廸彦

    説明員池田廸彦君) ただいまの御質問にお答え申し上げます。  十月八日、下院共和党議員八十三名の方が連名で一九八五年貿易パートナーシップ法という法案を提出されました。この中にアラスカ原油輸出解禁の要素が含まれておりまして、大きく分けまして二つの条件が入っておりますが、第一は日本が農産物、林産物、電気通信機器その他アメリカの輸出関心のある輸入について実質的な譲歩を行うことを条件にアラスカ原油及び天然ガスの対日輸出を認める、こういう趣旨でございます。もう一つは、この法律施行後一年の間に大統領が米通商代表部を通じて、日本側と対日輸出を許可する場合、合意を結ぶための交渉に入ることができる、こういう骨子でございます。最近の時点ではこれが一番大きな動きでございます。
  186. 服部信吾

    服部信吾君 この法案が通って、アラスカから原油を輸入することになったと、こうなったときにはかなり黒字減らしに役立つのか。こういうことで外務大臣、どのようにお考えですか。
  187. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私もアメリカの政府や議会の人にも、やはり黒字の問題を言われるなら日本に対しても輸出できるものを積極的に輸出してほしい、それはアラスカ石油があるじゃないかということをしょっちゅう言っておるわけでございますが、今の法案にはいろいろと条件がついておるようであります。しかし、日本もこれはいわゆるコマーシャルな形で世界各国から石油を輸入しているわけですから、そういう中でやはりアメリカだからといって特に値段が高い石油を買うわけにもまいらぬだろうと思うわけで、そういうコマーシャルベースの中で輸入できるという道が開かれれば、これは積極的にアメリカからも業界として輸入してほしい、こういうふうに思っておるわけですが、余り条件をつけられてもこれは困ると思っておるわけであります。
  188. 服部信吾

    服部信吾君 この対米経済摩擦に対してよく総理の私的諮問機関と、こう言われるわけでありますけれども、また総理がこの対米経済摩擦、こういうものを解消するために、国際協調のための経済構造調整研究会、こういうものを設けたわけですね、設置した。この名簿を見ますと、大体いつもの人が入っている、こういうことなんですけれども、この研究会の内容、目的、これについて内閣官房の御答弁を願います。
  189. 根本貞夫

    説明員(根本貞夫君) ただいまの御質問につきましてお答え申し上げます。  先生指摘のその研究会は、我が国をめぐる最近の国際経済の環境変化に対応して、中期的な視野から我が国の今後の経済社会の構造及び運営に関する施策のあり方を検討するため、各界の最高権威の方々に御参集いただいて、総理の研究会として開催されることとなったものでございます。それで具体的には三点ございまして、まず一が近年の国際経済からの要請に適切に調和させるための、中期的な経済構造の調整に関する施策、二番目が適正な国際収支バランス(貿易収支と資本取引)維持のための施策、三番目が適切な国際的通貨価値の安定と維持のための国際協調に関する施策について自由闊達に検討いただけるものと、こう聞いている次第でございます。  それで、なお今後の運営につきましては十月三十一日に第一回の会合を開催いたしまして、来年の三月を目途に勉強していただくという話を伺っているところでございます。  以上でございます。
  190. 服部信吾

    服部信吾君 これは座長はだれなんですか。それで何かまた答申みたいなものを出すんですか。
  191. 根本貞夫

    説明員(根本貞夫君) 座長につきましては十月三十一日の第一回会合において互選される予定でございます。  なお、どういう形で取りまとめを行うか、これにつきましても今後の会合において決めていかれるものだと聞いております。一応のめどといたしましては三月末という話を聞いております。
  192. 服部信吾

    服部信吾君 それで、例えば今言われたようなこと、これは経企庁の経済審議会あるいは通産省においては産業構造審議会、こういうのでやられておりますし、またそういうことでしたら、今もう経済摩擦、こういう問題でたくさんとにかく政府挙げてやっているときですから、こんなのは必要ないんじゃないですかね。この点どうですか。
  193. 根本貞夫

    説明員(根本貞夫君) この点につきましては、各省庁でそれぞれやっておられることは十分承知しているわけでございますけれども総理の方でより高い見地から勉強会をやりたいという話のように聞き及んでいるわけでございます。
  194. 服部信吾

    服部信吾君 三月にはこれはもうやめちゃうんですか。
  195. 根本貞夫

    説明員(根本貞夫君) このあたりは総理にお聞きしないとなかなかわからぬ点でございますけれども、一応十月から会合を開くわけでございますけれども、そこで具体的なことは決めていかれるものと、こう確信している次第でございます。
  196. 服部信吾

    服部信吾君 ちょっと聞いたところによりますと、これは何ですか、東京サミットに向けての勉強会とそういうふうなことも聞いているんですけれども、そんなのを今さらつくる必要はない。これだけやっぱり私的諮問機関についていろいろと国会で議論があるときに、また何でこんなのをつくるのか。それで、今までもどこでもやっているようなことをより高い見地なんといったって、そんな出ないですよ、これ以上のものは。臨時総理、これは、何でまたここへ来て、こういうときに総理が新しい研究会をつくろうとしているのか、また、この研究会について安倍外務大臣のお考えをお伺いしておきます。
  197. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それこそ、まさに本物の総理に聞いてもらわないとよくわかりませんが、これは中曽根総理の判断で、やはり今の日米関係、それからECとの関係、そういう関係でいろいろと難しい事態になっているし、やっぱり保護主義を排して自由貿易体制をつくっていく、それからニューラウンドも成功させたいし、あるいはまた東京のサミットも成功させなければならないと。それには、やはり日本経済の中長期的なあり方、貿易、経済、そういう点を世界経済との協調、そういう形でどういうふうに持っていったらいいかという根本問題にさかのぼっていろいろと検討する必要がある、こういうことを考えられてこの私的な諮問機関ができた、こういうふうに実は判断、推察をいたしておるわけでございます。問題は、この諮問機関がこれからの論議でどういう成果を上げるかということにかかっておると思います。
  198. 服部信吾

    服部信吾君 今までこれだけ国会でこの私的諮問機関についてはいろいろと指摘をされておる。そういう中でまたこういうことを出すということ、もう全く国会を軽視しているんじゃないか、私はこういうように思います。この点については、総理がいないんですから外務大臣に言ってもしようがありませんけれども。  次に防衛庁長官、ちょっと今いらっしゃらないけれども、先般、十月十五日にヘイズ米太平洋軍司令官と防衛面での日米関係についての意見を交換した、こういうあれが出ておりますけれども、その中で、やはり米空母ミッドウェーの艦載機のNLP、いわゆる夜間離着陸訓練、こういう問題についてかなり討議がなされたと思いますけれども防衛庁、長官今すぐ戻ってきますけれども、この件についてわかる方、どのような会談がなされたのかお伺いしておきます。
  199. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  ヘイズ太平洋軍司令官と長官の会談には私出席をいたしておりませんでしたので、仄聞したところでございますが、いろいろな問題があるがよろしくと、こういう一般的な御依頼ということで承知しております。
  200. 服部信吾

    服部信吾君 そのいろいろな問題というのが、ある面から言えば、今、日米間で最も大変な重要検討事項である厚木基地のNLPの問題じゃないか、こう思うわけでありますけれども、そのように考えてよろしいですか。
  201. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) いろいろな問題よろしくとおっしゃった際には、当然その問題を含めておっしゃったものと理解しております。
  202. 服部信吾

    服部信吾君 この艦載機のNLPの問題について三宅島を最有力候補として検討しておる、こういうふうに聞いておりますけれども、この点についてお伺いしておきます。
  203. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  このNLPの問題につきましては、アメリカ側の希望は、ミッドウェーの家族が横須賀地区に居住をしておる関係で、関東平野もしくはその周辺で厚木から百海里以内、こういうところに代替基地を提供してほしい、こういうことでございました。  私どもいろいろ候補地を検討し、また既存飛行場の活用あるいは浮体飛行場の建設等の代案をいろいろ考えましたが、その検討結果、島嶼部であり、かつ比較的騒音問題を最小限に食いとめることのできる三宅島の皆様が御協力いただけるならば、三宅島が最適地であろう。また厚木の騒音問題、七十五W騒音に関する環境基準に該当するものだけで十万世帯、三十二万人に及んでおりますので、この問題も早急に解決しなければいけないだろう。こういうことから三宅島を最有力候補地と決め、現在鋭意村当局等と折衝をしておる、こういう状況でございます。
  204. 服部信吾

    服部信吾君 最有力候補地ということですけれども、今までは、要するに新しいところにつくる、あるいは既存の飛行場を何とか利用する、あるいは海上に新しくつくる、この三つがあったわけですね。今、施設庁長官のお話によりますと、これはもういよいよ、あとの二つはある面からいってなくなって三宅島が候補地と、こういうことになったわけですか。これは防衛庁長官
  205. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  あとの二つの可能性を全然検討しないということではございませんが、先ほど申し上げました選択肢三つ、ちょっと説明不十分でございましたが、飛行場新設というのが三番目の選択肢でございまして、その新設をする場合の最有力候補地は三宅島であろうかと考えております。なお、三宅島が仮にお引き受けをいただきましても一年、二年でできるものではございませんので、その間どうするか、こういう問題につきましては既存の飛行場にお願いをする、こういう可能性も残っておろうかと思います。
  206. 服部信吾

    服部信吾君 そういうふうに言いますけれども、私もこの間ちょっとこれを見させていただきましたけれども、「艦載機着陸訓練場 東京防衛施設局」、ここでもう完全に三宅島という形で出ているわけですね、これは。それで、この三宅島は厚木飛行場から約百五十キロで、艦載機で飛ぶと約十五分、いろんなメリットとかでそれで三宅島だと、こういうことですので、ほとんどここに決定したんじゃないか、私はこのように思います。防衛庁長官、どうですか、これは。
  207. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) これは、現在の日米の間の懸案の一番重要なものでございますし、また厚木飛行場近辺の住民の皆さんに騒音の面でおかけしている事態を考えますと、できるだけ早く解決しなければならない問題だと思っております。  三つの選択肢があって、その中で私たち他の二つも考えてはおりますけれども、どうしてもやはり新設ということを考えなければならないのではないか、その場合にはぜひ三宅島にお願いしたい、三宅島がいろんな条件から考えて私たちは一番最適であろう、こう思っておるわけでございます。今、施設庁長官が申しましたように、できましても、三宅島なかなか難航いたしておりますが、仮にそういうことがお引き受けできるような事態になりましても、それまでには四、五年かかってしまうかもしれません。その間厚木の状況がそのままでいいということではないと思いますので、そういう場合にはできる限り他の既存飛行場にも分担していただくということを考えなければならないと思っておりますけれども、しかし、先が見えませんと、最終的にどこをつくるということがはっきりしませんと、分担していただいても、永遠に自分のところにかわってしまうんではないかという感じになりますので、とてもなかなかお引き受けしていただくだけの雰囲気が出てこないと思います。そういうわけで、最終の決着点をどこにお願いできるかということを決めることがまず第一ではないか。そういう意味でぜひ、三宅に一生懸命御説明申し上げ、御理解いただけるように努力しておるところでございます。
  208. 服部信吾

    服部信吾君 先般、今まで話し合いすら拒否をしておった三宅村の村長さんが防衛施設庁を訪問していろいろとお話をしたと、こういうことでありますけれども、その点についての内容、どのような話し合いがあったのか、この辺についてお伺いします。
  209. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 先般施設庁を訪ね、こちらにおります佐々施設庁長官等と会談をしていただきました。それでその際私あての反対の陳情書を出されまして、そしてその空港の建設には反対である旨の立場を三宅村の村長さんはおっしゃいました。私たちの方としてはぜひ三宅にお願いしたいし、我々の説明をぜひ聞いていただきたいということを申しました。私もその場所にいたわけではございませんが、記録を読み、また報告を聞きますと、三宅の村長さんは堂々と自分の反対の立場を明確に申されて、そしてその反対の意思というのはかなり強いということをおっしゃっておられました。しかし、私たちの方もぜひ私たちの説明を正式に聞いていただきたいと、できるだけ民主的な立場でやりたいと思うので、最後まで民主的にやりたいと思うので、話を聞いていただきたいと申しましたら、反対ではあるけれども、国の考え方を議会を通じて村民に知らせるということはしなければならないでしょうから、それはやりましょうということを言っておられました。私たちその村長さんと会談ができたことによって事態がすぐ解決できるというようなふうに楽観はいたしておりません。かなり厳しい強い態度でございますので楽観はいたしておりませんけれども、私たちの説明を聞いてもらえるという段階が一歩進んだところにつきましては防衛庁として評価したいと、こう考えております。
  210. 服部信吾

    服部信吾君 その中で、今後の三宅島とのいろいろな交渉の中でどのような形でやっていかれるのか。やっぱり大変な問題ですので、村民の皆さんの感情を害さないようにしなくちゃいかぬでしょうし、いろいろな要望があると思いますけれども、今後例えばどういう形でいろんな話し合いをしていくのか、この辺について。
  211. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  実は、その十八日に行われました会談におきまして、私どもは三宅島にお願いをする以上、大変御負担をかけ、御迷惑をかけるわけでございます。したがいまして、もしもお引き受けいただける場合には、政府を挙げて民政安定、周辺対策、障害防止、その他の必要な諸施策をいたしますことをお約束をいたしました。できれば、現在必ずしも正確な事実に基づかない議論が行われておりますので、政府の原案あるいは考え方というものをよくお聞きとりをいただき、島民に共通の事実認識に立ってメリット、デメリット両方お考えの上賛否の御議論をいただきたいと、ついては説明会を開催させていただきたいと、また、いろいろな地元に御説明をする際に、まだ現場の調査をいたしておりませんので、この調査のお許しをいただきたい、こういう申し入れをいたしましたが、この点につきましては、現在そういうことをされると混乱が助長するのでということでお断りになりました。しかしながら、個人としては反対だけれども、村政の責任者として、現在話を聞こうという声も出ておるので、村長という公職にある立場で公平に文書でもって質疑をしたいと、文書の問い合わせがあったときに政府側の回答があれば、それは正確に村議会及び島民にお伝えをすると、今後もその種の連絡を折に触れてそういう窓口を開いていただきたいと、こういうお願いをいたしましたところ、これも御了承をいただいたと、こういうことで、これからは村当局を窓口といたしまして、町長さんは国の主張をあるいは説明を島民に村議会を通じてお伝えいただくと、こういうことでございますので、そのチャネルで粘り強く民主的なルールにのっとって説得を続けたいと、かように考えております。
  212. 服部信吾

    服部信吾君 まあ大変な問題ですので、ひとつ慎重に対処していただきたい、このように要望しておきます。  それから、一つの仮定と言っちゃおかしいんですけれども、今厚木基地でそういうことでいろいろ離着陸の訓練をやっております。まあなぜ米軍がこれに対して非常に急いでいるのか。急いでいるというか、そういう面からいろいろ何回も要望がある。これはいろんな住民の危険というものもあると思います。しかし、その中で今現在P3Cの弾薬庫を新しく今まで一つあるのを二つにふやすというようなことで、何か地元でもいろいろと反対が出ておる。何かそれじゃ三宅島へ行った後今度P3Cとかそういうのがどんどん来るんじゃないかという、こういう地元の心配が大変あるわけですけれども、この点についてはどのようにお考えですか。
  213. 池田久克

    政府委員池田久克君) 厚木の基地に弾薬庫を新設する計画を我々は持っております。これは、現在厚木に展開しております海上自衛隊の固定翼の対潜哨戒機、P3CとかP2Jがございます。それに対潜のヘリコプターがございまして、現在展開しているものが必要とする対潜魚雷とか対潜爆弾とか、そういうものを格納するための弾薬庫でございまして、現在持っておるもののほかに、どうしても足りないものですから、五十九年度の予算で建設する予定だったものがいろんな事情でおくれておりまして、現在その計画を実施したいと考えておる、そういう内容でございます。
  214. 服部信吾

    服部信吾君 まあ地元からもいろいろな要望が出ておりますし、陳情書も出ておりますので、よくひとつ地元の考え方を聞いて対処していただきたいと、このように考えます。  それから次に政府開発援助、ODAの新しい中期計画が先月の十八日に決められたわけでありますけれども、この七年間で今の円ドルベースでいきますと約九兆七、八千億あるいは十兆になる、大変大きな計画であります。その中でこれに対して、当初このODA中期計画は年末の予算編成に決まる予定であったと。ところが、今回まあ防衛予算と一緒になって抱き合わせで決まったと。これについていろいろな考え方があろうと思いますけれども、この点についてはどのようにお考えですか。
  215. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いわゆるODAの中期目標については、この三年倍増計画、五年倍増計画を果たしまして、これからどうするかということについて各省でいろいろと検討しております。そういう中で、やはり今の日本財政情勢も考え、さらにまた国際責任を果たしていくためには、七年で倍増するということが適当ではないかということを私も発言もしましたし、関係閣僚とも相談もいたしたわけでありますが、その関係各省の話が煮詰まってきましたので、ちょうど防衛計画も決まるという段階でありますし、また日米の貿易摩擦等も非常にシビアになってきておる、そういう状況にあるわけですから、これはやはり早く決めて、そして国連総会において私の演説で早く国際的にも日本の立場を表明することが適当ではないかと、こういうふうに考えて決定をした次第です。
  216. 服部信吾

    服部信吾君 まあこれから大変な財政の厳しいときにこれだけ伸ばしたということで、これは当然国民の血税ですから、今まで我が国がこれだけお金をつぎ込んでおきながら、対外的に黒字国であるのに応分の負担をやらないとか日本株式会社だとか、あるいは対内、日本の中においても国民の間からは浪費されているんじゃないかとか、非常に批判が出ているわけですね。これだけの大きなお金を、大体一兆円ぐらいのお金をこれからも毎年つぎ込んでいく、なおかつそういう中で批判が出ているんじゃこれは大変な問題だと思う。こういうことだと思いますけれども、これからやはりこの政府援助に対する理念というものを、これだけのお金をつぎ込むんですから、きちっとして私はやっていかなくちゃいけないんじゃないか、こう思うわけです。  それで、政府も衆議院の外務委員会の決議だとか、あるいは鈴木・レーガン共同声明あるいは中曽根・レーガンの要するに合意、日米諮問委員会報告、こういうものがありますね。これを読んでいると、どうも変わってきているんじゃないのかなという気がするわけです。例えばその援助の方法ですね。昭和五十三年の四月五日の衆議院外務委員会の決議によりますと、「恒久平和と国際協調を宣明した我が国憲法の精神に基づき、」、こういうふうに、要するにとにかく向こう側に立った、援助される側に立った施策である、平等にしなくちゃならぬだろうと、こういうようなことが書かれているわけです。そしてその経済協力の実施に当たっては主権の尊重とか互恵平等、内政不干渉の原則、経済協力に対しての相手国の経済社会の発展と民生の安定、こういうことで決議がされているわけです。五十六年の三月におきましてもこの外務委員会で、決議に対しては「紛争当事国に対する経済・技術協力については、その紛争を助長するがごときものは行わないこと。」と、こういう一つの決議があるわけでありますけれども、この鈴木・レーガン共同声明、一九八一年、これは昭和五十六年ですけれども、その決議がなされたすぐ年の中のこういう鈴木・レーガン共同声明が出されておる。その中で、同政府が世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助を強化していくべきだ、あるいは中曽根・レーガンの合意の中で、日米諮問委員会報告を読んでみても、いわゆる今までとは違って、要するに特別な海外援助努力を正当化する総合安全保障政策の一部として決定すべきだ、あるいはアジア地域以外の国にも拡大していくべきだ、こういうことで、この衆議院の決議とちょっと違っているんじゃないか。そういうことで、政府としてはよく言われるように、これだけの血税を使うんですからその面においては東西間の戦略援助じゃないかとこういう批判があるわけですけれども、また外務大臣のお考えをお伺いしておきます。
  217. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように、ODAはまさに国民のとうとい血税が中心でありますし、そういうものを踏まえてこれは進めなきゃなりません。ODAの目的は、これはあくまでも今お話しのように、世界の平和と安定に資するため、特に開発途上国の安定のために日本が積極的に協力していくという目的でありますし、その理念はあくまでも人道主義、そして相互依存を進めるということがいわば日本の開発援助の理念になっております。その理念に従ってこれまでODAを進めてまいりました。まあ全体的には開発途上国に非常に喜ばれておると、こういうふうに思います。もちろん部分的には批判を受ける点もあります。この点についてはよく反省をして、日本としても十分こうしたせっかくの援助ですから、相手の国に喜ばれ、そして相手の国の安定に資するものでなきゃならぬ、こういうふうに思うわけでございます。したがって、日本の援助というものの基本は人道主義と相互依存、これはしたがってアメリカの援助政策とは基本的には考え方も違う面があるわけでございます。しかし日米間でこうした援助について話し合いもしておりますが、これは日米間で共同してやった方が場合によっては効率的であるし、それだけ役に立つという場合に限ってこれは進めておるわけでありますし、日本のこうした理念あるいは目的というものから逸脱してODAを進めようという考えは我々は毛頭持っておりませんし、今度の七カ年の長期倍増計画につきましてもこうした基本方針を貫いて我々は世界のために尽していきたい、こういうふうに思っております。
  218. 服部信吾

    服部信吾君 最後に会計検査院にお伺いしたいんですけれども、今海外援助に対して会計検査院もいろいろやられているようでありますけれども、これで十分であると思いますか。実際にきちっとしたチェックができるものかどうか、この点について会計検査院にお伺いしておきます。  それから外務省としても今まで何か年間百件ぐらいの報告書をもらって、これは外務省がつくって、それでチェックをしているんだと、こういうことでありますけれども、やはり第三者機関的なものを今後設けて、そしてこれだけ国民の血税が使われるわけですから、きちっとした態勢でやっぱり国民が納得できるようなそういう機関を設けるべきじゃないかと、このように思いますけれども、この点についてお伺いしまして、私の質問を終わります。
  219. 竹尾勉

    説明員(竹尾勉君) お答えいたします。  政府開発援助に関します私どもの海外調査でございますが、五十年度以降十年間におきまして十一回、一回に二ないし三カ国程度を三週間余りをかけて検査しておりまするが、一回の出張で大体十四件ほど検査いたしてございます。先生指摘のとおり本件援助は近年特に重要性を増しております。そこで私どもといたしましては、事前に外務省等関係機関から書類なりあるいは説明を求めまして、十分審査いたしまして現地に赴くわけでございますが、今後ともこれをなお一層濃密かつ広範囲に常時本院内におきましてプロジェクトの実態把握に努めてまいりたいと存じますとともに、私ども、外国へ参りますると、政府関係の現場の方々ばかりではなくて、相手国当局者から自発的に説明を賜ることもございます。そういうとこで特に相手国の御協力によりまして相当詳しくわかることもございます。その結果につきまして私どもの所見を外務省並びに現地の我が国の関係者等に申し上げまして、開発援助効果の確保、向上に努めております次第でございますが、今後もこの方向に沿いまして、外務省の評価報告書等も参考にいたしましてますます意欲的に調査に邁進してまいりたいと、このように考えております。  なお、私ども会計検査院のアジア地域におきます国際機構がございまして、そこでは職員の研修をしておりまするが、開発途上国から職員を我が国にお招きいたしまして研修をさせていただいたり、あるいは我が方から講師を派遣したりなどいたしまして、このような援助が適切かつ効果的に行われるよう努力しておるわけでございます。
  220. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま委員から外務省の行っております評価活動にもう少し公平な第三者の声を加えるべきではないかという御指摘がございました。同様の御指摘をいただきまして、本年四月から外務大臣を囲みましてODAの実施効率化研究会というものを十六名の民間有識者の方々にお集まりいただきましていろいろ御意見を伺っております。その過程で種々評価のあるべき姿についても御報告ないし御意見が出ているという現状でございます。  他方、今委員が御指摘になりました外務省の年間約百件行っております評価の中に、私ども自体ではなく、民間の有識者の方の評価というものを増していくように現在そういう増加の手段をとりつつあるというのが今の状況でございます。
  221. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まずSDIの研究参加についてお伺いします。  渡辺審議官が団長となって、先月末から十月の初めまでアメリカに行かれたわけですね。先ほども質疑がありましたけれども、国防総省のエイブラハムソンSDI局長などといろいろ話し合いをされたと報道されているんですが、SDIにもし日本が参加するとすると――検討中というんですけれども、もし参加した場合、秘密保護問題が問題になるときょうの新聞にも報道されております。  アメリカと西ドイツの七八年十月十七日に署名された二国間協定があります。軍事技術協力についてのものですけれども、この第四条には「秘密保全」というところがあって、この秘密区分を指定した場合「必要なあらゆる手段を用いて、その秘密を守らねばならない。」というふうになっているわけですね。どうなんですか、もし日本がSDI研究に参加した場合、こういう西ドイツとアメリカのような二国間協定を、何らかそれに似た取り決めを新たに結ばなければならないですか。
  222. 渡辺允

    説明員(渡辺允君) SDIの研究参加問題についての御質問でございますが、先ほども私申し上げましたように、あるいは大臣も先ほど御答弁なさいましたように、我が国の研究参加問題については検討中でございまして、全くどういう決定をするかというのがこれまだ先のことでございます。そういう前提で私ども調査団もワシントンに参りまして、先方の話をSDIの現状について聞いてきたところでございますので、ただいま先生の御質問はいわば将来の仮定の問題になるかと思いますので、私としてはここでそれに御答弁申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思います。
  223. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、どういう結論を出したかというんじゃなくて、研究中のプロセスについて聞いているんです。  新聞報道では、防衛庁が所有している技術については、対米武器技術供与を決めた日米交換公文に基づく細目取り決めで可能だと、この中に秘密保護規定があるからいいというんですね。民間の場合にはその規定がないので新たな政府間協定が必要になるだろう、そういう法技術的問題について聞いているんです、その研究結果を、どうですか。民間の場合には何か要るんですか、秘密保護規定が、要ることになりそうですか。
  224. 渡辺允

    説明員(渡辺允君) SDIの参加問題につきましては、いろいろ研究しなければならない問題もございますし、正直申し上げて今先生の御質問の点については私どもまだ深く研究をいたしておりません。
  225. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大分口がおかたいようで。  じゃ加藤長官にお伺いしたいんですが、この問題口がかたいようなので、あなたが語られた国家機密保護問題についての態度をお伺いします。  長官は、九月の十七日、静岡県函南町での自民党研修会で講演した。その中で国家機密法案問題についてこう述べたと報道されています。「さらに新しいスパイ防止法案が必要かどうか、それで得られる利益と国民の知る権利とのバランスを考えなければならない。国会と相談する必要もあり、当面、慎重に扱うべきだと考えている」。これはあなたが述べられたわけだから、その場で聞いた新聞記者の報道なんですね。今、大問題になっておりますけれども、国家機密法案問題についてはこういう慎重な態度をおとりなんですか。
  226. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) その点につきましては、従来答弁申し上げておりますように、その必要性の出題とそれからそれに伴ういわゆる国民の権利との問題との調整等につきまして、世論の動向を見きわめながら慎重に対処していきたいというのが従来からの立場でございます、
  227. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 前国会の幕切れににわかに継続審議になってしまったんですが、あのときアメリカの国防総省から強い圧力があったという報道もあったんですが、安倍外務大臣、あなたはこの国家機密法問題というのは対米関係からもやっぱり必要だとお考えになっておりますか。お伺いします。
  228. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカからそんな圧力があったとは全く聞いておりません。今の法案に対する姿勢は今防衛庁長官の答弁と同じです。
  229. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなたも慎重にという態度ですか。
  230. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 防衛庁長官が申し述べましたように、やはり国民の知る権利というのもありますし、あるいはまた今、日本の機密保護という面の必要性もあるわけですから、そういう調和をどういう形でとっていくかと。これからの国会の審議だとか、国民世論とか、そういうものを踏まえながら慎重にやった方がいいんじゃないかと思います。
  231. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この問題、我々代表質問でも述べましたし、大変なファッショ法案なので絶対これは阻止しなきゃならぬと考えております。  次に、洋上防空、アメリカの法律では何かエアレーンと書いてあるそうですけれども、この問題について質問します。  先ほども話がありましたけれども、OTHレーダーでバックファイアなどの動静を調べて早期に要撃戦闘機を出すというんですけれども、F15と言われておりますのは、要撃戦闘機、早期警戒機あるいは空中給油機、この航空基地は本土以外にどういうところを考えておりますか。防衛局長、お伺いします。
  232. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) たびたびお答えしておるところでございますが、この洋上防空、いわゆる我が国領土からかなり離れた海域における洋上の防空をどうするかという問題につきましては、今回の五カ年計画で十分検討してしかるべき方策が見つかればそれを着手したいということでありまして、現在のところどういう方式がいいのか、あるいはどういうシステムを考えるのかということは全く未定でございますので、ましてやどこに基地を置くとか、そういったことについてはまだお答えする段階になっておりません。
  233. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 F15の滑走路は最低どのくらい必要なんですか。
  234. 山田勝久

    政府委員(山田勝久君) 着陸、離陸両方違いますけれども、大体二千メートル程度でございます。
  235. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 八一年六月二十九日に大村・ワインバーガー会談が行われて、このときワインバーガー長官は、F15百機を硫黄島に置いてくれと、そう申し入れたという大きな報道がありました。硫黄島の飛行場は二千六百メートルあって、海上自衛隊が持っている最長の飛行場です。もう一つ、三宅島の、先ほどから質問のあるNLPありますけれども、アメリカの国防総省の考え方として、これNHKの日高特派員が国防総省から直接取材して書かれた記事によりますと、アメリカ国防総省は「三宅島、硫黄島に航空基地を完備すれば、日本は空母を持たずにシーレーンの制空権を手にすることができる」と、はっきり日高特派員に国防総省は述べているんですね。硫黄島また三宅島にもしNLPの飛行場を置くと、将来ここをF15あるいはP3C、空中給油機などの基地に絶対することはないと言えますか。長官、はっきり答えてください。
  236. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答え申し上げます。  ワインバーガー長官がそのようなことを申されたということは私寡聞にして全く聞いておりません。  なお、洋上防空ということについて若干補足して御説明いたしますが……
  237. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、いいです。そんな説明要らないです。やるかやらぬかだけ答えてください。
  238. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私どもは、洋上、海上そのものを守るわけではございませんので、何百機も飛行機が要るということではございませんで、たまたま出てくるかもしれない我が方を攻撃する航空機に対してどう守るかということでございますから、洋上遠くまで戦闘機がついてくるというようなことはまず考えられませんので、そんなに多くのこちらが戦闘機が要るというものではないということは御理解いただきたいと思います。  なお、洋上防空そのものについてどの基地を使うかということについては、そのような要撃戦闘機等を使った洋上防空手段を考えるかどうかということも含めて検討中でございますので、現在の段階ではお答えできる段階にないということでございます。
  239. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  三宅島の問題でございますが、三宅島は現在官民共用ジェット飛行場、こういう構想でございまして、これは五十七年九月十七日、三宅島村議会で空港ジェット化、こういう強い要望がございまして、たまたま噴火後、政府の代替基地調査とこの地元の要求が合致をいたしまして、五十八年の十二月二十一日、誘致決議となり、その後いろいろな村内の政治情勢あるいはその際の話し方が非民主的であった、民意を無視したというようなことから反対決議になって今日に至っており、ようやく村長さんとも話し合いができるという段階になったわけでございます。  現在、私どもが考えておりますのは、米空軍が常駐をして軍事基地とするというような主格のものではございませんで、昼間は三宅島の産業振興あるいは観光事業の促進、また何かあったときの避難飛行場というようなことでジェット化する、民航が就航をいたしまして、ミッドウェーが横須賀に入港した期間のみ、大体今までの実績でいきますと、年間七十日から八十日でございますが、夜間の訓練基地として二4(b)提供、こういうことで使わせる、こういう構想でございます。
  240. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 防衛局長、ワインバーガー長官がそういうことを言ったことはないと言われたけれども、私はこの毎日の大きな記事、当時の八一年六月三十日のを持ってきています。後で見てごらんなさい、多くの新聞に出ていますから。  ワインバーガー長官は、一、硫黄島、小笠原諸島の父島など三つの島にレーダーサイトを設置する。二、三つのレーダーサイトの中間の海空域はE2C早期警戒機の増強でカバーする。三、レーダーサイトのE2Cの防衛用としてF15戦闘機百機を硫黄島に配備するという具体案を挙げた、こう報道されているのです。  それから、防衛施設庁長官、米軍は常駐しないとあなたは言われましたけれども、これは当時の三宅島村議会に提出された防衛施設庁長官との会談記録が出ています。これには、米軍兵士の三宅島の居化は多くないと思う。だから、やっぱり居住するわけですな、多くなくとも。これは施設庁側の答弁ですよ、空港管理については米軍が行う可能性があるとはっきりそう言っているんですよ。これは村議会に提出された文書ですからね。当時、誘致決議で喜んでこういう話まで全部あなた方されているんだ。それは訓練期間中だなんていうが、ちゃんと、多くないかもしれぬけれども米軍管理で、米軍は多くないけれども常駐するとあなた方は説明している。  施設庁長官、三宅島のNLP、広さはどのくらいですか、幅と長さは、飛行場。
  241. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) まず滑走路でございますが、これは長さ、民間ジェット機の就航を想定しておりますので二千メーター、幅四十五メーター、それに伴う飛行場施設、こういう広さでございます。  なお、ただいま御指摘の点、正確に申し上げますと、防衛施設庁のお配りした資料ということでございますが、反対派がお配りになった資料かと存じます。  米軍は常駐しないと私申し上げましたが、例えばそのF15なりF16なりの飛行隊が常駐するということはロジスティックスの関係、整備の関係ございますので、例えば三沢の例でございましても、一個飛行隊で三千五百人、こういう規模でございます。NLPが行われている間、当然タッチ・アンド・ゴーの指揮管理、これをやるための米軍兵士が陸上にその期間若干おるということは当然あろうかと思いますが、私の申し上げておることは、常駐して、それを軍事基地化して、あるいは作戦運用上の基地として使うという構想ではない、あくまで訓練用の飛行場でありまして、訓練、タッチ・アンド・ゴーが終わりましたらば厚木にパイロットも戻ってくる、こういうことでございます。  それから管理権、航空管制権が米軍になるということは、それが米軍基地として提供されるものでない以上、そういうことはあり得ないと考えております。  いずれにせよ運輸省か自衛隊の関係者か、どちらかが管制ということに相なろうかと思いますが、まだ現在できておりませんので、それは将来管制をどうするかという問題は航空行政全般の流れの中で協議さるべき問題であろうかと思います。米軍ということはございません。
  242. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 なお、この資料によりますと、施設庁長官が滑走路は幅四十五メートルだけれども施設全体の幅員三百メートルから四百メートルくらいと言っているけれども、大体そういう面積ですか。
  243. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 御指摘の点は、着陸帯安全距離、その旋回の半径その他のことかと存じますが、まだ計画が地元と話がついておりませんで具体化しておりませんので、まだ三百メートルということが決まったわけでございませんが、所要の安全距離、転移表面、こういうものは確保することになろうかと思います。  なお、NLPの訓練の旋回半径に。つきましては、このコースを海上にとる、こういう計画で考えております。
  244. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は五月に現地にも行きましたけれども、あすこに幅三百メートルから四百メートルのところをとりますと、非常に大事な農地その他がかなり被害をこうむるという点で、騒音その他私は村民が絶対反対するのは当然だと思います。  次の問題、OTHレーダーについてお伺いします。  OTHレーダー問題では送信受信施設設置の候補地が硫黄島、父島、沖縄などいろいろ報道されておりますけれども、大体候補地として、もし設置することになると候補地として考えているのはそういうところですか。
  245. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) たびたび申し上げているように、OTHレーダーにつきましても、現在我々はその有用性に着目をして、この五カ年間で検討し、要すれば整備に着手をしたいということを考えておりますので、具体的な場所等は決めておりませんが、OTHのレンジその他から考えれば、今先生が言われた硫黄島、南西諸島等の、いわゆる島嶼部になろうかと思います。
  246. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 かなり膨大な施設で、アンテナの高さ十五メーター、送信所の場合は幅八百メーター、受信所の場合には二キロメーターという膨大な施設なんですね。こういうものをどうやらまた硫黄島あるいは小笠原などに置こうという大変な重要問題だと思いますけれども、これは衆議院で若干取り上げられたようですが、朝日が去年の九月の二十四日スクープをやったんですね、粟原・ワインバーガー会談について。そこでスクープされたトーキングペーパーにはこう書いてあるのですね。「自衛隊による同レーダーの導入は「防衛計画大綱」改正問題と関連するため、極めて困難。」と言って指摘してある。大綱の別表は、レーダーサイトについては二十八となっているわけですな。別表を超すことに、枠外になると思うのだけれども、長官、この大綱達成のためというのとちょっと違ってくると思うのだけれども、この問題どうですか。
  247. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先生御承知と思いますが、別表に書かれておりますのは、レーダーサイト、つまり警戒管制部隊の固定型のものでございまして、OTHレーダーがいわゆる警戒管制部隊というふうに私どもは考えておりません。違う目的のものであろうかというふうに考えております。したがって、大綱でいう別表にあります管制を行うレーダーサイト、航空機の管制を行うレーダーサイトとは別個のものでございますので、その数値とは別に考えていただくべきだと考えております。
  248. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いよいよ重大じゃないか。大綱には一切レーダーサイト以外にOTHレーダーに対応するものは何もないじゃありませんか。大綱外のものだと長官もお認めになりますか。
  249. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 大綱別表には部隊として掲げてあるのが幾つかございますが、それ以外に、例えば情報収集のための各種のものその他は本文に書かれてあるだけで、大綱別表に個別には書かれていないものはたくさんあるわけでございまして、それと同様に、OTHレーダーにつきましても情報収集あるいは監視のための機能として当然大綱本文の中で読める部分だと考えております。
  250. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは恐るべき詭弁ですよね。別表以外に本文の中に情報収集だとかなんとか書いてあると、何でも入ることになりますよ、自衛のために必要だということになれば。だから、別表のあの数字を達成するというんじゃなくて、数字は数字で達成する、そのほかに本文に書いてあるさまざまなことは全部やるんだ、これで大綱並みだ。こんなの通りませんよ、そういう答弁を国会でやるというのは。問題にならない、全く。  それから、このトーキングペーパーには二番目に、米側が同レーダーを設置し、日米共同で運用を行った場合、憲法解釈上その行使が認められていない集団的自衛権に関連する問題が生ずる、米側のレーダーと相互補完の運用形態をとる場合にも同様の問題が予想されるということになっている。アメリカ側の構想では、太平洋方面にOTHレーダーをどことどことどこに置くことになっていますか。
  251. 古川清

    政府委員古川清君) 私どもが承知しております限りでは、現在アメリカは十二基のOTH、アラスカに二つ、それから米本土に合計十個、計十二基のOTHレーダーの計画があるというふうに承知をしております。
  252. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは朝日の七月四日の報道によりますと、「米海軍の構想では、アラスカのアンカレジ、アリューシャン列島のアムチトカ島、西太平洋のグアム島にOTHレーダーを建設する。」、そうすると、ちょうど日本海があくというんですね。そうすると、もし硫黄島に設置するとグアム島、アムチトカ島、アンカレジ、これ相互補完に当然なるというんですね。これどうですか。トーキングペーパーがあったかどうかについては、衆議院の委員会でどうも事実を否定されたようだけど、私はきょう、この朝日のスクープが事実かどうか、これは追及しませんが、朝日の創作でないことは明白なんですよね。追及しないけれども、ここに書かれている日米共国運用あるいは相互補完した場合には集団的自衛権問題が起きる、これはもう極めて明らかだと思うんですけれども、もし日本がこれを設置すると、こういうアメリカのOTHレーダーとの共国運用あるいは相互補完、こういうことはあり得ますか。
  253. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 朝日新聞の件についてはその際申し上げましたが、一応お断り申しておきますが、私どもはOTHレーダーについては先般、この六月に加藤防衛庁長官が訪米された際に、我々としては広域の哨戒、監視等にOTHレーダーが有用ではないかということで、でき得れば技術提供をしてほしい、いろいろな情報を提供してほしいということを申し込んだのが最初でございます。  なお、今回私どもが考えておりますOTHレーダーの研究あるいは場合によってはその採用というものは、あくまで我が国防衛のために必要な洋上防空なりあるいは早期警戒、監視のために必要だということでありまして、米側の全般の配置とどういう関係になるかということについては私どもは関知をいたしておりませんが、いずれにしてもOTHレーダーというのは非常にレンジの長いものでございますから、米側としては、自分にとって必要であるならばそれなりのところに配備をすればそれでカバーでき得るものというように私は考えております。  なお、集団的自衛権との問題でございますが、いずれにしましても私ども、まだOTHレーダーについて十分検討し、その運用の状況等を考えているわけじゃございませんので、一般論としてお答えすることになると思いますけれども、我々が何らかの形で得た情報というものの取り扱いあるいは活用につきましては、我が国自身がその国益に照らし、かつ自主的な判断に基づいて、その都度その都度事例に即して決めるべき問題であるというように考えております。  例えば、我が方の持っておる情報というものを情報をさらに収集する手段の一つとして情報交換をするというようなことも十分考えられるわけでありますが、いずれにいたしましても、これまた一般論でございますので私からお答えするのが適当かどうかわかりませんが、憲法上許されていないと言っている集団的自衛権の行使というのは、自国が攻撃されていないにもかかわらず、他国のために、他国を助けるという目的で武力を行使するということでありますので、情報交換のようなものは一般的には実力の行使に当たるというものではございませんので、集団的自衛権云々ということには当たらないというふうに考えております。
  254. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今の答弁、ちょうど問題の非常に重要なかなめにあなたは触れたんですよね。ガイドラインで情報交換、これ決まっているわけですね。それでOTHレーダーで得たバックファイアその他についての情報を、日本有事でない場合、日本は平時の場合、アメリカに提供するかどうかということが問題の焦点なんです。  八二年の二月二日に、不破委員長が予算委員会でP3Cで得た情報を米軍に平時に提供するかどうかという問題を聞いたことがある。その六年前は防衛庁側の答弁は有事の場合だけ提供するという答弁だった。不破委員長は六年後に、では平時には提供するのかと聞いたら、当時の塩田防衛局長防衛庁長官、鈴木首相は、全部答えを控えさしていただきますと言って答えなかったんですよ。平時にP3Cの得た情報を米軍に提供すると集団的自衛権に触れることになるんですよ。このOTHレーダーも同じですよ。日本は平時てどこからも攻められていない。ところがアメリカは有事、極東有事とか中東有事で。アメリカが有事のとき、戦争しているアメリカにソ連軍についての軍事情報を提供しだすと、日本は平時だからといって、これは米ソ有事のときに、一方で戦っているアメリカに対して軍事情報を提供することになるんだ。これは情報はあなた武力行使じゃないと言ったってとんでもありませんよ。今核戦争を初めすべての戦争のC3Iというのは中心問題になってるんだから、これはアメリカの国防報告でもあれだけC3Iの抗堪性強化というのは最優先課題だとワインバーガーは何度も言っているじゃないですか。そんな武力行使じゃないなんてとんでもない。  そうすると、あなたが今答えた平時でも情報提供というのはこれは武力行使でないから集団的自衛権に触れない、自主的に判断して提供することにどうやらした、これは大問題ですよ。それでいいんですか。これは集団的自衛権にそういう場合触れないと、防衛庁は既に八二年のときは答えなかったのに今度は答えると、そういうことになるんですね。OTHレーダーの情報は平時にも自主的な判断で、ガイドラインに基づいて米軍に提供するんですね。はっきり答えてください。
  255. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 最初にお断りしておきましたように、情報を提供するかしないかというのは個々の事例に即して判断すべきものだということを私申し上げましたが、一般論として申し上げれば、繰り返すようでございますが、これはかねがね政府が答えているところでございますけれども、我が方が得られた情報を、国益のために、あるいは自主的な判断に基づいて、例えばより多くの情報を得るために情報交換をするというようなことは当然あり得るし、できるというように考えております。  なお、集団的自衛権の問題につきましても、これまた私自身の考えということではなくて従来法制局長官等から御答弁になっているところでございますけれども、これもその目的なり態様等、その情報提供等についての、具体的な実態に即して検討すべきものであるけれども、仮定の事態を想定して抽象的に論ずるということはできませんから一般論として申し上げれば、憲法上認められていない集団的自衛権の行使というのは、我が国による実力行使を伴うものであるので、実力の行使に当たらないものは憲法上差し支えないというのが従来からお答えしておる線であります。
  256. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 長官、ちょっと大事なところなんで長官にお聞きしたい。  P3CあるいはOTHレーダーで得た軍事情報を、個々のケースでも日本は有事でない場合米軍にガイドラインに従って提供をすることはあるのかどうか、これは集団自衛権に反しないという解釈を防衛庁としてはとっているかどうか、はっきり簡潔に答えてください。
  257. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 今、上田委員のおっしゃったことは、平時ということをおっしゃったり、それからアメリカ有事の場合に我が方が平時のときにと、若干ケースがいろいろふくそうして御質問なさっておるようでございますが、私は、一般的な情報というのは私たちの国にとっては非常に重要でありまして、私たちの国はちょうど非常に耳を長くしておかなければならない国で、情報についてはしっかりしておかなきゃならぬと思っております。その情報を、個々のケースによりますし、また、それを提供することが我が国の国益からいいか悪いか、それは反対給付との兼ね合いもありますし、そういう意味で平時からいろんな情報を収集をし、またそれを我が国の判断に基づいて米側と交換したりするということは、私は集団的自衛権の問題には直接触れないと思っております。
  258. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この問題は議論すると非常に大きな問題ですけれども、今の防衛庁の答弁は、やっぱり安保条約というのが日本を守るためなんというのは全くフィクションだと、今、長官は、日本有事、米軍有事というのを私が複合させて話したと言われたけど、当然なんですよ、日本有事というのは安保条約五条に書いてあるように、五条のあの規定に基づいて、日本がどこかから攻められているというのが日本有事なんですよね。日本はどこからも攻められていない、中東、ヨーロッパあるいは朝鮮でアメリカが有事になる、日本が攻められていないということはあり得るんです。ところが、アメリカが有事だと、防衛庁長官いみじくも言われたように、日本も有事に自動的になってしまう、ソ連に対して三海峡封鎖など交戦作戦とる、そうなると安保というのはアメリカの戦争に巻き込まれる仕組みだということが極めて明白なんで、だから我々は安保条約はなくせと言っているわけだ。  さて、エアレーン問題で最後に一つお聞きしたいのは、そうやってOTHレーダーはやる、E2C、それからF15、AEGIS艦、こういうのは要る、ところが先ほどの答弁でも、どうも最近のミサイルというのは非常に足が長くなったと、そうするとF15ぐらいでは届かない、滞空時間が少ないんで、軽空母が必要だという議論が出ているという報道が新聞にも出、ジェーン年鑑にも出始めたんですね。防衛庁の中にもいろんな意見があるというんだが、本当に軽空母を持つことを主張する意見が防衛庁内にあるんですか。
  259. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 軽空母を持ちたいというようなことを私どもは聞いたことはまだございませんが、要は洋上の防空であるから、空母があれば守れるのではないかというような素人論があるいはあるやもしれませんけれども、空母が一隻おるということは、その周辺数十海里か百海里か知りませんが、防空ができるかもしれませんけれども、特に軽空母であれば垂直離着陸の航空機の行動半径というのは通常五十マイルぐらいでございますので、そのようなもので洋上防空ができるというふうに考えておりません。さらに言えば、空母というのは洋上における最もねらわれやすい目標であるというように考えておりますので、防空のために空母を持つという考え方はまさに背反したといいますか、目的に対して全く逆の方向をとっておるというような選択ではないかというふうに考えておりますので、そのような考え方は出てこないというふうに思っております。
  260. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 OTHレーダー四百億円から五百億円と言われていますし、AEGIS艦は二千億円と言われています。局長は軽空母は今考えていないと言われたんだけれども、軽空母は三千億円かかると書かれているのですね。どうもこういうものを入れていきますと、例の軍事費GNP一%枠問題というのは、先ほど長官悩みを答えられておられたけれども、明白に単年度計画でも突破する時期が必ず来るだろうと思うんですね。長官どうなんですか、できるだけ守る、できるだけ尊重すると言われているんだけれども、守れるところまでは守る、守れなくなったらやむを得ないという考えが防衛庁側にはやっぱりあるんじゃないですか。
  261. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) できるだけ守ってまいりたいと思っております。そしてこれは経済の動向それからそのときどきの防衛関係費が予算でどう決定されるか、分母、分子ともに不確定な要因でございますので明白なことは言えませんし、したがって今後とも単年度でできるだけ守ってまいりたいと申し上げているわけでございます。  ただ私があえてこの五カ年の中で守り切れない場合が理論上あるかもしれぬと申しましたのは、いわゆる経済企画庁の展望と指針によりますと、四・〇%程度の実質成長であるし、それに基づいていったならば一・〇三八という数字でございますので、この五カ年間の総GNPと十八兆四千億円の比率を考えますと理論的にはそういうことになります。しかし、繰り返しますが、経済の実態がどう動くかわかりませんし、単年度の財政がどうなるかわかりませんし、その点につきましては不明確でございます。できるだけ守ってまいりまして、そして仮に万が一そういうような場合になりましたら、従来の国会における御討議それからこれまでの各党の御意見、党内の意向、国民世論等を勘案しながらそのとき適切に処理してまいりたい、こう考えております。
  262. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 できるだけ守っていこうとしてできない場合は云々で適切に処理するという答弁は、適切な処理の中にできるだけ守るけれどもできない場合はやむを得ないというのが当然入っているだろうと思います。  次に外務省にお伺いしたいと思います。  これはことしの五月二十二日に公表されたアメリカの外交秘密文書五二年から五四年の日本と中国という文書ですね。この問題で、これも防衛庁と関係のある有事の場合の日米統合軍、米軍の司令官を任命してその指揮下に自衛隊が入るという問題についての日米密約についての疑惑であります。当時読売新聞に非常に重要なこの極秘文書の概要が報道されました。当時外務省にすぐこれくれと言ったら、膨大なのが入っていてまだよく見てないというお返事だった。今度の質問で再度要求しましたら英文を昨日いただきました。それでこれを見ますと非常に重大な内容が書かれていると思うんです。当時の新聞報道は、行政協定についての岡崎・ラスク会談で原則的にアメリカの指揮権を認める、認めるけれどもそれを公表してしまったら内閣がつぶれてしまうというので、公表しないでくれと言うので、アメリカものんで行政協定二十四条、協議制度という形でけりがついたということは大きく報道されたんですね。それはそれでいいんですけれども、その後が問題だ、後が。その後アメリカ側は何をやったかということがこの文書で詳しく書かれている。岡崎・ラスク合意の後アメリカの統参本部は、この問題で日米間の協定をつくらなきゃならぬ、口頭の。文書じゃないんですよ、口頭による合意の協定をつくらなきゃならぬというので、文書をつくってある。それでこの文書について国務省並びに国防総省の承認を求めている。それを求めている極秘文書がここに出ています。これ文書番号五百七十三番です。さてこうやってアメリカ側が口頭で日米間の秘密合意の案文をつくったのがこれによりますと五二年の大体六月です。いいですか、その次が問題なんです。その次はこの文書で五百八十四という番号がついてある文書で、これは当時のマーフィー駐日米大使からアメリカ国務省に対する極秘文書報告です。五二年七月二十四日付です。極東アジア担当のアリソン国務次官補閲覧用、他への配付一切禁止と書いてある。アリソンだけ見てくれ、ほかには配付しちゃいかぬという物すごい極秘文書ですよ。読んでみるとそういう極秘文書になるわけです。  七月の二十三日の夜、夕方です。私というのはマーフィー大使。クラーク極東軍司令官は吉田首相、岡崎外務次官と非公式に会談。この首相が出席していることが大事なんですね。吉田首相、岡崎次官と、岡崎さんは担当官だったと思うんですけれども、マーフィー大使とクラーク極東軍司令官と四人でこの問題で会談をやったと。有事の場合の日本、アメリカ両軍の統合司令、訓練、装備、日米両軍の調整についての立案を早期に行う必要がある。首相は直ちに二つの問題点に理解を示して受け入れた。吉田首相はどうもタツミという人を代表に任命すると、細かく詰めることを任命したということまでここに出ている。それで、さらにその後、ここに注がついていますけれども、五四年二月八日アリソン駐日大使からの報告、今度アリソンさんが駐日大使になったわけだ、マーフィーさんの後で。「日本での軍事力使用にかかわる緊急事態が発生した場合、最高司令官は米国の将軍である、との日本政府の意向を吉田首相は再確認した。彼は、現在、この点は秘密にされなければならない、と説明した。しかし、この点を確認するのに何のためらいもみせなかった。」と、そう述べておる。そうすると、私はなぜ七月二十三日の会談を重視するかというと、岡崎・ラスク会談だとこれはまあ出先の合意ということで一応済むんですよ。しかし、吉田さんは首相ですよ、条約を締結する権利を持っている日本の首相なんだから。その首相がアメリカ側の大使と極東軍司令官と合意をし、二年後再確認している。そうすると少なくとも五二年七月に日米両国のトップで、トップシークレットで有事の場合には日米統合軍をつくってアメリカの将軍をその最高司令官に任命するということを、口頭で合意していたという恐るべき重大な事実がアメリカ側の文書で公表された。大変な問題だと思うんですが。外務大臣はこの問題、国会で問題になったとき、外務大臣じゃない、これは粟山北米局長だな、ただいま入手いたしまして、検討しておる段階だということを五月二十八日、参議院外務委員会で答えている。それからもう五カ月近くたっているんですね。この問題を検討して、この日米間の秘密の密約、存在しているとしか考えられないけれども、事実を認めますか。
  263. 渡辺允

    説明員(渡辺允君) 私どもただいま先生指摘のございました米側の公表文書、承知しております。私どもの記録につきましては私どもとしても現在調査中でございますけれども、遺憾ながらまだ現在のところ調査は完了いたしておりません。
  264. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは日本側には恐らく記録はないんですよ。日本側は文書公開からもこういうものは除いてありますけれども、記録はないんですよ、これ。なぜなら口頭にしなきゃならぬということを詳しく書いてあるんだ。例えば最初の六月十六日付の極秘文書の北東アジア課長ではこう書いてある。「北東アジア課としては、この問題で近い将来日本政府合意することが軍事的に必要と認めるが、これらの話し合いは、高度な秘密かつ口頭ベースのものにとどめることが必要だと強く感じている。この問題について日本政府が譲歩したことがちょっとでもわかれば、政府の倒壊を意味」する。政府はつぶれるんですよ。だから口頭でって言うんだ。だから日本側には記録は恐らくない。アメリカ側が文書をつくって担当のアリソン国務次官補以外に一切配布禁止というそういう極秘のやり方でやっているんだから、日本側が幾ら調べてもわかりませんといっても、アメリカ側があの文書を公表してあなたが持っているんだから。  それで、安倍さんね、私これ非常に重要だと思いますのは、私は昭和五十三年に沖縄の返還に関連して沖縄に核兵器を再持ち込みするという佐藤・ニクソン密約というのを追及したことがあるんです、予算委員会で。このとき佐藤首相は京都産業大学の若泉敬教授を個人的密使としてアメリカに送って、大統領特別補佐官のキッシンジャーと二人で詰めて密約をつくって、佐藤・ニクソン会談の議事録とそれから共同声明に当時の外務大臣も知らない一句を挿入して、沖縄に再び核兵器を持ち込む権利をアメリカ側は握ったんですよ。これは有名な佐藤・ニクソン密約。これはキッシンジャー回顧録にもその後詳しく書かれて、木村さんが、もうお亡くなりになったけれども、あの密使は若泉さんだということを認めたという有名な事実。この問題で私は参議院予算委員会で真田法制局長官に詰めたんですよ。もし首相がひそかに密約を結んで公表はされない、だれにも話さない。佐藤さんは本当にこれをだれにも話さなかったんだから、恐るべき口のかたさだと僕は感心しているんですけれども、だれにも話さない、ほかの大臣はだれも知らない、次の総理大臣も知らないわけだ。そういう場合でも密約というのは有効かというふうに聞きましたら、これは真田さんは有効だと言うんですよ。それは条約締結権を総理大臣というものは持っているんだと、持っているから公表されなくても、だれに言わなくても国と国との取り決めてございますからと言うんですよ。無効とは言えないと。私たちは、次の内閣を拘束するのかと聞いたら、「拘束を受けるのは国でございますから、政府が交代しても、国が同一である限りはそれは効力は続くと言わざるを得ないと思います、廃棄されない限りは。」と言うんだ。いいですか。だから、首相が結んだ外交密約というのは恐るべきものなんです。ほかの大臣が知らなくても、申し継ぎがなくても、国と国が結んだ密約、条約として効力を持っているんですよ。だから、渡辺審議官幾ら調べても出てこないでしょう。これは外務大臣も知らぬかもしれない、中曽根さんも知らぬかもしれない。吉田首相が当時こうやって結んで、その後廃棄されないと、これはいざというときにアメリカが持ち出したら有効なんですよ。今度アメリカがこれを公表したのはそれを僕はねらってやったことだと思うんだ。はっきり吉田さんがこのとき密約を結んだと、口頭ベースだと、日本の国民はだれも知らなくても、さあいざ有事のときに、さあ有事になった、いやガイドラインで調整機関をつくってありますなんてそういう答弁してもだめです。朝日新聞の小川特派員はこの日米共同作戦計画案についてワシントンからの非常にすばらしいスクープを彼がやったことがあるんですよ。このスクープで小川特派員は、この調整機関というのは事実上統合司令部になると、アメリカ側はそれを認めていると、これは国防総省で取材したら、いざというときのこのガイドラインで言う調整機関というのは統合司令部だと、米側はそれを認めているというのを当時のスクープで小川特派員はワシントンから打ってきているんですよ。さあ、私はこういう大問題で外務省がどう否定しても、これは本当にいざという場合、日本の自衛隊は統合司令部ができて米軍司令官のもとに調整機関という名でその指揮下に入るという密約がどうも五二年の七月、吉田首相のもとで行われた。これはその後安保改定のときに行政協定が地位協定に移りますな。二十四条というのはなくなって安保第五条の中の条約本文に入るわけだ。そのとき再討議されたかもしれぬけれども、アメリカが一度オーケーとったものを引っ込めるはずはないんですよ。譲歩するはずもない。触れられないままに今まできているかもしれない。また、ガイドライン交渉のときも調整機関というのを詰めるときに問題になったでしょうけれども、だれも触れなかったら、法制局長官が私に答えたように、廃棄されない限り有効なんですよ。大変な問題じゃないですか、日本国の。私は恐らく文書ないだろうと想定で言ったけれども、あるかもしれない。  それで、私は外務大臣に、この重大な日本国民の運命にかかわるような日米密約の存在、アメリカが五月に公表したんです。このときの文書、もしあれば、その後の安保条約改定のときの地位協定に関する交渉で、旧行政協定二十四条、第五条に、ないしはその交換公文に移すときのこれにかかわる文書、それからガイドラインの交渉のときの調整機関、これについての関連文書を国会にやっぱり明らかにしてほしいと私は思うんです。外務大臣、きちんと答弁いただきたいと思います。
  265. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはちっとも重大な問題じゃないと思います。それはもう決着済みだからです。行政協定で、今お話しのような二十四条で既に一般的な協議条項を規定することで決着を見ておりますし、その後の日米防衛協力のための指針においても明らかにされておるわけですから、その後の経過を見ていただけば明快になっておるということでございますから、ちっとも御心配は要らない。
  266. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなた、のんびりしたお人柄で評判いいようだけれど、今のような答弁をするというのは外務大臣の資格ないですよ。安倍さん、大体この文書読んだことないんでしょう、読んだことないでそういうことを言っている。行政協定二十四条で決着ついたなんてとんでもないです。吉田首相の「回想十年」、これにかなりはっきり書いてあるんです、その当時の経過を。  米軍側では、一朝事あるときには、米軍も警察予備隊も共同して防衛に当たらなければならぬ、北大西洋条約と同様な規定を設けたい、つまり統合司令部です。これは筋としてはうなずけることだと吉田さんは書いている。日本防衛部隊がばらばらで行動したんでは意味がない、だれが指揮するかの問題が出てくる。しかし、規定を置くというだけでも当時の我が国内事情では大変だということで、吉田さんは米国側の言い分はよくわかるけれども、事情において困難があるので二十四条になった。一々述べませんけれども吉田さんはかなり真相に近いことを書いてるんですよ、この「回想十年」で。  そこで、アメリカ側の文書で非常にはっきりしたんです。岡崎次官とラスク米大統領顧問が非公式に協議した。それで、米軍司令官指揮下に統合司令部を置くこと等々日本政府の全般的な態度が明るみに出た。「岡崎次官および首相は、敵対行為およびその脅威が迫っている場合、統合司令部をおき、米国が任命する司令官の必要性に原則的に合意した。」と書いてある。吉田さん書いているとおり筋はわかる、原則的に合意したんです。「ただし、彼らは、その合意を公表することは不可能である。なぜなら、それは政治的に重要で、自由党にとっては死の鐘声となりかねず、来るべき総選挙で政府の確実な敗北を意味するからだ。」だから、原則的に統合司令部をつくってアメリカの司令官の指揮下に入るということを合意した。合意は公表はできない。そこで、二十四条になったという経過が岡崎・ラスク交渉、五十二年の一月から二月にあったんです。それに基づいて私がさっき述べたように、六月にアメリカ側は口頭の協定案をつくったんです。七月二十三日に吉田首相出席のもとで口頭で合意したんです。恐らく細部は吉田首相が代表、詰めてやったんでしょう。詰めてやった経過の議事録なんかも私は当然あると思うんです。  外務大臣、まだあなたこれ読んでおられないので、ひとつきちんと読んで――この非常に重要な去年の十二月二十六日に日米共同作戦計画案なるものに渡部統幕議長上ティシエー在日米軍司令官とが署名したんです、厚さ五センチの。今度は極東有事の日米共同作戦計画案がほとんどできているという、シーレーン防衛の共同作戦計画案も今作成中でしょう。そういうものをどんどんつくっていって、いざ有事ということになると、日本有事でなくて先ほど言いましたようにアメリカ有事の場合に自衛隊は参戦するんですよ。その参戦のときにこの秘密防衛が生まれかねないのだ。  私は、これ以上外務大臣にこの場で答弁を求めても無理だと思いますので、はっきりしたお答えとられないと思いますので、委員長にお願いしたいのは、これに関連する文書の国会提出を要求したいと思います。きちんと処理していただきたいと求めたいと思います。
  267. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 今の問題は、理事会でよく相談をさせていただきたいと思います。
  268. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私が言っていることは間違いないと思います。  確かにいろいろとこれまで歴史もあると思います。吉田さんも回顧録等をいろいろと書いておりますし、私も読ましていただいたわけですが、アメリカ側から確かにそういう要請が出たことは事実だろうと思います、それは文書等も残っておりますから。しかし最終的に、いずれにしても昭和五十三年に作成された日米防衛協力のための指針においては、「自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下に、それぞれの指揮系統に従って行動する。」と明記をされておるわけでございますから、これで私は十分ではないかと、こういうように思います。
  269. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう時間も参りましたし、今の答弁で絶対納得できませんので、ガイドラインの調整機関を規定する首相のもとでの日米密約が存在するのではないかという疑惑なので、先ほど申し上げたとおり理事会でこの関係文書の提出問題を協議していただきたいと思います。
  270. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 指揮調整の問題について御質問がありましたのでお答え申しておきますが、先生、五十二年の密約というふうにおっしゃいましたが、私どもは七八年に現行の安保条約に基づく正式の協議機関でございます安保協議委員会におきまして日米防衛協力のための指針というものについて日米間が合意をいたしております。その中にはっきりと自衛隊と米軍は、それぞれの指揮系統に従って行動するということになっておりますので、御心配のようなことは全くないというように考えております。
  271. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 最後に一言。  そういうことがたとえあっても、日米密約が廃棄されない限りだめなんですよ。本当に廃棄したという文書があるなら出してください。この吉田密約を廃棄したという文書があるんなら出していただきたい。  以上、私の質問をこれで終わりたいと思います。
  272. 関嘉彦

    関嘉彦君 本日は経済摩擦の問題と、それから新しい防衛計画、防衛整備計画の問題について質問したいと思いますけれども、その前にカレントの問題ですが、追加質問として南アフリカ共和国及びナミビアの問題について質問することをお許し願いたいと思います。  南アフリカ共和国のアパルトヘイトの問題については、既に国連あるいはその他の国際機関において多くの非難がなされているということは御承知のとおりでございますが、実は私、先般カナダのオタワで開かれました列国議会同盟、IPUの会議出席いたしまして、その席上リコロナイゼーション、脱植民地化と申しますか、に関する決議がなされまして、その中でもこの問題が取り上げられております。私たちはその決議そのものは、コロナイゼーション、リコロナイゼーションという言葉の意味がはっきりしないし、また一方ではアメリカのマイクロネシア諸島なんかの問題をやはりコロナイゼーションとしてとらえているのに対して、もしそれをとらえているのであるならばソ連のアフガニスタン侵入なんかの問題も同じように取り上げるべきじゃないかというふうに考えまして、その決議案そのものは非常に一方的でありますので、我々は反対したわけでございます。しかし、この決議案の中には今申し上げました南アフリカ共和国なんかの問題も含まれておりまして、それについては我々はむしろ支持したいという気持ちであったんでありますけれども、やはり今のボタ政権と申しますか、力によってだけ黒人を弾圧しているああいう政策に対して、やはり国際的な圧力を加えることが必要だろうと思います。つきましては、今まで南アフリカ共和国に対してどういう対策を講じてこられたか、あるいは現在どういう対策を考慮中であるか、新聞で断片的には承っておりますけれども、改めてお伺いしたいと思います。
  273. 久米邦貞

    説明員(久米邦貞君) 我が国といたしましては、これまでもいろいろな機会をとらえまして、南アのアパルトヘイトに対して強い反対の態度を示してきております。そういう我が方の立場を示すことの一環といたしまして、従来から我が国の場合は南アとは外交関係を持たず領事関係にとどめるということをやってまいりましたし、また民間の投融資の面でも、南アに対する直接投資、それから中長期の融資はなるべくこれを控えるということでやってまいりまして、また七四年以来はスポーツ、文化、学術面での南アとの交流を差し控えるというような措置をとってきております。    〔委員長退席、理事林道君着席〕 しかし、また昨年の夏以来非常に緊迫化しております南ア情勢、またそれをめぐっての国際社会の厳しい反応等を考慮いたしまして、我が国といたしましても、国際社会がこの際一致して一層強力な対南ア措置をとる必要があるという判断に基づきまして、先般十月九日、外務大臣談話の形で四つの追加的措置を発表いたしております。  その第一番目といたしましては、これはことしの七月の国連の安保理での決議の中にもございますけれども、南アの軍隊、警察等アパルトヘイトの執行機関の活動に資するような電子計算機の輸出を停止するというのが第一番目でございます。  二番目といたしましては、南アの象徴とも言えますクルーガーランドの金貨でございますけれども、それの日本への輸入を自粛するということで、これは関係企業に要請をして自粛を行うという措置をとっております。  三番目といたしましては、黒人の地位向上のために南アフリカにおける人づくりの協力を今後とも拡充していくということで、これは従来から国連の機関等を通じて我が国としても既にやってきている措置でございますけれども、今後これをさらに強化していくということを考えております。  最後に四番目といたしまして、南アに事務所を有します日本の企業に対しまして、黒人、白人を問わず、平等かつ公正な雇用慣行を遵守するという形の行政指導を行っております。
  274. 関嘉彦

    関嘉彦君 最近、黒人の詩人のモロイセですか、あれの処刑なんかもありまして、今までのやり方ではまだ不十分ではないか、もっと強硬な政策をとるべきではないかというふうな意見も聞いております。最近南ア地方に行って帰ってきた人の話によりますと、経済制裁というふうな問題は、単にボタ政権だけじゃなしに、あるいは向こうの白人たちだけじゃなしに黒人に対してもいろんな被害を与える、したがってよほど慎重にやる必要があるわけですけれども、しかしそれであってもなおもっとその圧力を強めるべきではないかというふうな意見が黒人の間からあったそうであります。    〔理事林道君退席、委員長着席〕  もちろんこういった経済制裁なんかの問題は、一国だけでは到底できない問題で、各国が協調してやるのでなければ何ら効果はないわけですけれども、そういったふうな問題について今後各国間で協力して何らか対策を講ずることを考えておられるかどうか、そのことをお伺いします。
  275. 久米邦貞

    説明員(久米邦貞君) 南アに対する経済制裁につきましては、今先生のおっしゃいましたとおり、これは南アの黒人に対しても大きな打撃を与える、あるいは周辺諸国に対してもいろいろな影響を及ぼすという議論は、南アの国内あるいは周辺国、それから先進諸国でも行われておることは事実でございます。  ただ他方、今先生のおっしゃいましたとおり、それにもかかわらず、やはり国際社会がこの際一致して南アに対する圧力を強めて、アパルトヘイトを撤廃し、国内体制の改革の方向へ持っていくということが非常に肝要だということも確かでございます。  我が国といたしましても同様な認識から、今後とも各国と協調しつつ南アに対する対策ということを考えていきたいと考えております。
  276. 関嘉彦

    関嘉彦君 南ア共和国というのは、日本にとって、資源としてマンガンとかクロムとかそういう点で非常に重要な国でありますので、それだけになおさらやはりあそこの政情が安定しているということが日本の安全のためにも必要であろうと思います。その意味において各国と共同してさらに適切な対策をとることを検討していただきたい、そのことを希望しておきます。  次に、経済摩擦の問題、特に日米関係の問題に移りますけれども、この問題につきましては、外務委員会におきまして今まで私たびたび質問してまいりました。しかし、この問題、我が党の佐々木前委員長が本年初めに申しましたように、最大の日本の政治課題であります。したがって、既に前に言ったことの繰り返しの点もあるかと思いますけれども、今度私、塚本委員長を団長とする民社党の訪米使節団の一員として向こうの政府の要人にも会ってまいりましたし、関係者の意見も聞いてまいりましたので、改めて質問をしたい、むしろ提言をしたいというふうに考えております。  まずアメリカに駐在しておられる大使あるいは総領事を初め、そういった日本の在外公館の方がこの問題につきまして、あるいは講演会あるいはテレビの出演、非常に大変苦労して努力しておられるのを私実際にこの目で見てまいりました。しかし、やはりそういった人たちの努力を背後から支える日本自身の態度がはっきりして、そういったのを激励してやるのでないと十分効果を上げることができないのではないかというふうに考えますので、若干の提言をする次第であります。しかし、その前に、なぜこういうふうにこの問題が深刻化してきたのか、そのことを考える必要があるんではないかと思います。もちろん、この問題はアメリカの方にもいろいろ直してもらわなくてはならない問題があります、財政赤字の問題であるとか高金利の問題であるとか。しかし同時に、日本の方にも私はやはり反省すべき点があるんではないかというふうに考えております。  私は、一つの原因はやはりアメリカ側が日本を十分に信頼してない、この問題について。今度我我向こうに参りまして、アクションプログラムの問題やなんかもいろいろ説明したんですけれども、確かにあれは立派にできているけれども、一体あれはアクションにアクセントがあるのかプログラムにアクセントがあるのかというふうな皮肉な質問も受けた次第であります。というのは、今まで日本が小出しに数回にわたって少しずつ譲歩してきた。何か圧力を加えれば日本は譲歩するんじゃないか、そういう印象を与えているようであります。プログラムだけはいつも掲げるけれども、そのアクションが伴わない、そういう不信感があるんではないか。これもあるアメリカの要人ですけれども、アメリカは今まで日本に対してプレッシャーを加えてきたけれども、そのプレッシャーはツーマッチであると思うかツーリトルであったと思うかというふうな皮肉な質問をした人もあります。これはやはりしかるべき圧力を加えていかなければ日本というのは動かないんじゃないか、そういう印象を与えているからでないかと思うんです。そういったふうに日本が小出しに対策をやってきたその原因は一体どこにあるというふうに外務大臣、判断しておられますか、それをお伺いしたいと思います。
  277. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに今おっしゃいますようにアメリカの、特にアメリカの議会の日本に対する不信感というふうなものが相当根強くあることは事実だと。ですから、これがいろいろのもろもろの保護主義的な法案になって提案されているということにもなるわけですし、その不信感の根底というのはやはり日本の貿易のあり方の不公正さ、そういうところにあるんじゃないかと、そういうふうに思うわけであります。しかし、これはアメリカが言っているほど日本は決して不公正なことをしているわけでは私はないと思っておりますし、日本がこれまで累次やってまいりました市場開放措置というものはそれなりに日本は努力をして進めてきたわけですが、そうした努力をしながらも、しかし、日本の黒字はふえていっていると。しかし、黒字がふえていっていることは日本だけの責任じゃなく、やっぱりアメリカの景気あるいはまたドル高とか、あるいは高金利だとか、そういうところにも大きな原因があるんじゃないかと思いますが、しかしそういう全体的な動きの中で、アメリカとしては、やはり黒字はふえていっているじゃないか、いろいろと貿易市場開放措置をやりながら黒字の方はどんどんふえていっている、どこかに間違った点がある。それは日本が結局不公正なことをしているというところに結びつけておるんじゃないかと思います。  しかし、日本としましてもやはり自由貿易体制というものを守っていかなきゃならぬ。これによって日本経済は発展、繁栄をしていたわけですし、今後とも日本の繁栄は自由貿易体制以外ないわけですから、日本としてもやはりこの自由貿易体制を守るためにできるだけのやはり市場開放措置あるいはまた黒字のこれからどんどん大きくなる、そういう流れを変えていく努力をしていく。輸入拡大措置、そういうこともとっていかなきゃならぬことは当然であります。そういう最終段階としてのアクションプログラムあるいはまたMOSS委員会の協議、もろもろのことを今やってきておりまして、そして、それはそれなりにG5の会合等とも相まって、今効果が出つつあると。したがって、今私は、アメリカの議会は先生がちょうどアメリカにおられたころと違いまして、多少一服ぎみじゃないかと。当時、私がニューヨークに行く前なんかは、むしろ繊維法案なんかはアメリカの大統領が拒否権を発動してもなおさら三分の二で覆すというふうな勢いであったんですが、今は多少その辺が一服したという感じを持っておりますが、しかしそれでもって厳しい背景がなくなったとは私は思っておりません。  したがって、日本としましては、こうした状況の中で今我々がやっていることを確実に進めていくということが必要でないかと思います。そしてまた、同時にアメリカ側の努力も要請する。  また、今度、二階堂ミッション等が行かれましていろいろと会合をされた。そういう会合の内容等を聞いてみますと、アメリカ側にも随分誤解もあるようでありまして、既に日本がとった措置を今になってまだとられてないというふうなことで議員が問題にしているということも聞きますし、そういうやっぱり日本のアメリカに対するPRといいますか、今までやってきた措置、これからやろうとする措置のPR等もまだまだ十分でないように思いますし、そういうことを全体的にやはり踏まえながら、やっぱり非常に大事な事態でございますから、これから全力を傾けて努力をしてまいりたい、そして同時にまたアメリカ側も努力をしてもらわなきゃならぬと。  私は、シュルツさんとの会談におきまして、この日米関係のこれまで築き上げた信頼関係というものをやはり貿易摩擦といったことで大きく傷つけないように持っていくと。それには日米両国がお互いに努力をしなきゃならぬということで合意をしたわけでございまして、日本としましても今やっておりますもろもろの政策、アクションプログラム、あるいはまた輸入拡大、あるいはまた円ドル関係の修正、あるいはまた内需拡大、そういった面をこれからひとつ総合的に取り組んでまいりたい、そして今の一つの流れを、黒字がどんどん拡大していくという流れを何とかやはり変えていく、そしてアメリカの保護主義の動きというものをとめていかなきゃならない。そして、最終的にはやはり私はニューラウンドをスタートにつけて、ニューラウンドの交渉を開始せしめるということが大事じゃないか、こういうふうに思っております。
  278. 関嘉彦

    関嘉彦君 その後ドルが少し安くなりまして、一時小康状態でありますけれども、果たしてこれがどの程度続くか必ずしも油断はできないので、この小康状態の間に対策をとるべきだというふうに私は考えておりますが、まず、とりあえず短期的な対策とそれから中長期にわたる対策とあると思うんです。それで、短期的にはやはりアクションプログラム、これをやはり早く具体化することだろうと思うんです。  実は、帰ってまいりましてから、このアクションプログラムについての報告書が出ておりますので、これを詳細に検討したんですけれども、この中には例えば認証の問題であるとか基準の問題であるとか、今まで何でこういうことがとられなかったんであろうかと思うような点もございます。あるいはその中を見ますと、「検討する」とか「見直す」とかというふうな言葉もあるんですけれども、できるだけ早急にこういう問題を具体化していく対策をとっていただきたいというふうに希望いたしておきます。  しかし、それと同時に私は、一つ重要なことは、何か日本人は金もうけだけは非常に熱心であり、エコノミックアニマルではないかというふうな印象をアメリカ人だけでなしに諸外国に与えてきたんではないか、私は日本人は必ずしもエコノミックアニマルだとは思いませんけれども、そういうふうな印象を与えてきている。やはり、その印象を払拭することが必要ではないか。そのためには何かシンボリックなことをやることが必要ではないか。これは私、コロンビア大学であるとかサウザンカリフォルニア大学であるとか、昔から知っております知日派の学者の人たちとも随分会ってまいりました。そういう人たちが言いますのは、日本を弁護したいんだけれども、何か弁護するための弾丸が欲しいんだ、そういうことを言っておりました。このままではどうも弁護するのによほどの勇気を要する、そのくらい一般の空気が変わってきているんだ、そのことを知ってほしいということを言われたんですけれども、何かシンボリックなあるいは理想主義的な、日本人も損得を離れて国際社会に貢献できるんだ、そういう意味で何かシンボリックなことをやることが必要ではないかというふうに私は考えております。  先般、二階堂副総裁がアメリカを訪問されるに当たりまして、新聞の報道によりますと、アメリカの余剰農産物を買ってそれをアフリカあたりの飢餓に苦しんでいる人たちに贈与する、第二マーシャルプランとかあるいは二階堂プランとか、新聞の方はそういうふうに形容しておりましたけれども、そういう案を持っていくんだということを新聞に書かれておりましたが、帰ってこられてからの新聞報道ではそういうのは姿を消しているように思うんです。これ外務省として何かそういったふうなシンボリックなことを行うことを検討したことがございますかどうか、そのことをまずお伺いしたいと思います。
  279. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 外務省としましても、何とか貿易摩擦解消のために役に立つことがあればやはり日本も思い切ってやるべきだということで、今のような農産物の、例えば一千万トン購入して、これをアフリカ諸国に回すとか、そうした案も含めていろいろと具体的にも検討したわけでございますが、なかなかこういう問題にしても一長一短ありまして、具体化するということになると問題が非常に出てきて難しいという壁にぶつかっております。  しかし、そういう中で、今政府全体として進めておることは着実に進める、やっていくということで、私は、まあシンボリックとよく言われますけれども、今のアクションプログラム、これはもう相当政府としては思い切った、これまでできなかったことを相当決断をもってやったわけでありますし、ただ問題は、これはたしか三年間以内にやるというどころに問題があるので、アメリカの人たちに会うと、三年間というのがいかぬと、やっぱり一日も早くこれをやるということでなければ意味がないじゃないかと。まさにそういう点が私は最も必要なことであろうと思います。したがって、これも三年間ということじゃなくて、できるものはもうすぐやる。今度の国会にも法案化して、かけるものほかける。あるいはまた関税の引き下げ等も、ことしの末の関税率審議会じゃなくて、この国会で二〇%に引き下げ措置も講ずるとか、そうしたやはり早急にやれるものをきちっとやっていく。あるいはMOSS委員会なんかも、例えば木材やなんかも残っておりますけれども、その他の問題については相当な進歩が見えておりますから、残った問題についてもできるだけ早くこの結論をつけていく。こういうことを確実にやっていく。G5の影響というのは非常にいい方向に出ておるわけでございますし、そうした全体的なやっぱり政策を私はやっていけば、今の流れを変えていくという可能性は十分あるんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。  しかし、おっしゃるような何か新しい措置、例えば、今アラスカ石油の輸入問題なんかも日本が求めておって、これによって三十億ドルとかあるいは五十億ドルというようなことでも輸入が拡大できれば、それはそれなりに大きな貢献をするわけです。これはアメリカがなかなかうんと言わないということで、いろいろなことを検討もしなきゃならぬ、これからもしなきゃならぬと、こういうふうに今思っておるところであります。
  280. 関嘉彦

    関嘉彦君 アメリカの余剰農産物を買うについてはボトルネックがあるというふうなお話ですけれども、どういう点に問題がございますか。
  281. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) まず、御質問の余剰農産物を購入しますに際しましての財源ということから申し上げますと、もしもこの余剰農産物を現在のODA予算というもので購入するということになりますと、極めて大きな制約がございます。  順序立てて申し上げますと、現在の食糧援助は、食糧援助規約というのに基づいて我が国の最低義務量、小麦換算三十万トンというのを毎年供与することにいたしております。その三十万トンの枠内で、規約上は開発途上国の産品を優先的に使用するということになっております。したがいまして、タイ米、ビルマ米、パキスタン米というものを優先的に購入し、それを飢えている国々に供与するという形をとっております。ただ、国によりましては小麦ないし小麦粉を希望する国がございます。その場合には、開発途上国の小麦ないし小麦粉というものはアルゼンチン以外ございませんで、かつアルゼンチンの方は援助による使用というものを希望しておりませんので、小麦を好む国に対しましては米国産の小麦を用いるということで、現在、昨年の例で申しますと、七万七千トンぐらいの米国産小麦を購入いたしております。しかしながら、これに要します費用が運賃を込みで大体七万七千トンで五十七億円程度でございます。食糧援助の総予算が二百億円弱ということでございますので、この程度の規模の食糧援助を行っているのが現在の状況であると。それに比しまして、今話題になっております何百万トンないし一千万トンという規模の穀物を購入するという予算的な裏づけは非常に少ないということが申せるかと思います。  ちなみに試算いたしますと、一千万トンで大体五千億円ぐらいというふうに言われておりますが、我が国の本年度の援助の総予算が一般会計で五千八百十億円ということでございます。ちなみにアフリカの飢餓ということでございますけれども、本年は、アフリカは大体飢えに瀕しております国で外部の穀物依存量というのが一千二百万トンぐらいでございます。本年が一千二百万トンぐらいでございますが、七百万トン弱を商業輸入、五百万トン弱を援助成約ができておりますので、現在いまだ満たされていない不足分というのは三十万トンちょっと、三十一万トンというふうにFAOでも推計をいたしております。  これが事実関係でございます。
  282. 関嘉彦

    関嘉彦君 財源の問題は確かに一つの問題だと思います。飢えに苦しんでいる人はアフリカだけではなしに、バングラデシュなんかでもかなりの人が飢餓線すれすれの生活をしているわけでありまして、アフリカ以外の国を考えてもいいと思うんですけれども。財源の問題としては、これは早急な答えは要求しませんけれども、例えば自由貿易の推進のための特別の公債を別枠で発行するとか、そういうふうなことを考えても私はいいんじゃないか、必ずしも既存の予算の枠内に縛られる必要はないんじゃないかということを考えておりますけれども、この問題もっと検討していただきたいと思います。  それから、むしろ長期的な問題につきましては、産業構造の転換の問題でありますとか、あるいはさらに進んで国際通貨制度の改革の問題でありますとか、いろいろあると思いますけれども、それと同時に、私はやはり日本人の考え方をもっと国内的なものから国際的なものに、インターナショナルマインデッドのものに変えていくことが必要ではないかというふうに考えております。  その一つの提案なんですけれども、例えば五月の四日、これ休日にするという案がありますけれども、例えば五月の四日なら四日を国際協力デー、国際協力日とでもして、そして海外青年協力隊で働いて苦労している人たちを表彰するとか、あるいはベトナム難民のために現地で働いている人たち、そういう人たちを表彰するとか、あるいは外国で日本のために非常に努力して働いている人たち、そういう人たちを表彰するとか、何かそういったふうな催しをする、そういう国際協力デーができたからといって直ちに日本人の考え方が変わるとは思いませんけれども、やはり一つの象徴にはなるんではないかというふうに私は考えておりますけれども、そういうことを検討されたことございますかどうか。
  283. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 五月四日を休日にするという案は進んでおるように聞いておりますが、これを国際協力デーというふうなものにするという今のお考え、大変貴重なアイデアであろうと思います。これはひとついただいておきまして、我々としても何とかそうした国際協力的な国民の意識をやはり高めていかなきゃならない、そういうふうなことは強く考えておりますので、そういう一つの考え方のもとで具体的にこうしたアイデアが実現できるように努力してみたいと、私もそれは同感でございます。そういうふうに思います。
  284. 関嘉彦

    関嘉彦君 こういうことを私が言いますのは、日本の財界なんかでも、一部の人たちだろうと思うんですけれども、自分たちで一生懸命働いてそして輸出して金もうけしているのが何が悪いんだというふうな考え方を、余り公にはされないけれども、プライベートな話ではそういうことを言われる人があるように思うんです。私はやはり今まで日本は自由貿易の受益者、ベネフィシアリーであったと思うんですけれども、今後はやはり自由貿易を維持していくために恩恵を与える方の授益者、ベネファクターになる必要があると思うんです。そういう意味の発想の転換をやはりやる必要があると思いますので、その問題についてやはり政府がリーダーシップをとる必要があるというふうに考えるのでそういう提案をした次第であります。  次に防衛力整備の問題に入りたいと思いますけれども、その前にちょっと外務大臣にもお伺いしておきたい。お二人にお伺いしておきたいんですけれども、向こうのホワイトハウスの人たちに会いますと、自分たちは決して防衛の問題と貿易の問題を絡めるつもりはないんだと、これは切り離してセパレートにすべき問題であるということは言いますけれども、しかし同時に。その後に続けて、しかしコングレスの方では、議会の方ではそれを結びつけて考える考え方があるし、国民の間にもそういうふうな考え方を持っている人は少なくないというふうな話を聞きました。先日も、これはアメリカではございません、イギリスの防衛関係者の人たち日本に来たときの話ですけれども、自分たちはペルシャ湾に軍艦を派遣して、オイルの安全通航のために犠牲を払っている。ところが、日本は自分たちよりもはるかに立派な洋服を着ているし、はるかに立派な食べ物を食べているのに何ら犠牲を払っていないじゃないか、そういうふうな意見を述べた人がありまして、そのときの日本人との間にけんかになったらしいんですけれども、私はやはり外国人の立場から見ると、日本は十分そのシェアを負担していないじゃないか、バードンを、負担を受け持ってないじゃないか、そういうふうな印象を持つのは当たり前じゃないか、日本には日本の方の言い分はもちろんございますけれども、しかし、そういう印象を外国人が持つのは私は当たり前ではないかというふうに思う。それで、経済摩擦の背後には私はそういったふうなやはり日本の防衛のあり方についての不満がある、そのことは考慮に入れておいた方がいいんじゃないかというふうに考えますけれども外務大臣、どういうふうにこの問題お考えになりますか。
  285. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も米国の政府の要人と会いますときは、いろいろとその会談の中で防衛問題を話すこともあります。しかし、政府ははっきりと防衛問題と貿易摩擦との問題はこれは切り離して考えるべきだというのがアメリカ政府の考え方でありますし、同時に、これはまた日本政府の考え方であります。その点については完全に一致しておるわけでありますが、しかし、議会では、今お話しのように両方混同して議論しているということも事実でありますし、また国民の中では、今お話しのような批判もあると思います。しかし、日本の防衛は日本なりに自主的にこれはやっていくわけであります。しかし、同時にまた安保条約という立場から、アメリカが日本の防衛のあり方についてそれなりに期待し、要望してくるということもこれはまた当然のことであろうと思います。そうしたことをやはり念頭に置きながら、日本なりの基本的な防衛の姿勢の中で日本の防衛の努力というものをしていかなきゃならぬ、そういうふうに思っておりますし、私は、日米間においてはそういう問題については政府間できちっと整理をされてこの話は進められる、こういうふうに思っておるわけであります。  それぞれの国にはやはり憲法もありますし、国情もありますし、一概にただ自分の国の尺度で相手の国をどうだこうだということはできないんじゃないか。今イギリスの話もありましたけれども日本日本なりの立場あるいは憲法、国情というものがありますし、そういう点はやっぱり世界に理解してもらわなきゃならぬ。日本もしかしそういう中で国際責任を果たしていかなきゃならぬことは事実でありますから、今回、七カ年ODA倍増計画をあえて世界に向かって打ち出したのも、やはり今援助疲れでむしろ世界じゅうの先進国が援助に対して手控えているという状況の中で、日本が率先してこの際こそ積極的に国際的責任を果たしていかなきゃならぬという立場から、七カ年の倍増計画というものを出したわけでございます。こうしたやっぱり積極的な国際協力面あるいはまたそうした援助といった面については、これからも財政の苦しい中でやはり特に配慮をしてこれは進めていくべきだろうというのが私の考えてあります。
  286. 関嘉彦

    関嘉彦君 そこで防衛費の問題ですけれども、最近日本では、防衛費がGNPの一%以内におさまっていれば安心だけれども、一%を超すと心配だという人がございます。私はその理由がよくわからない。一%以下でこれで果たして国が守れるかどうか、それじゃ心配だと言うんだったら私は理解できるんですけれども、何か一%を超すと日本は軍事大国になるとか、軍国主義になるとか、そういうふうなことを言う人があるんですけれども、これは、つまり日本人は非常に好戦的な国民であって、一%以上の軍事費を持つと外国に攻め寄る、外国に戦争をしかけるかもしれない、一%以下であれば安心だけれども。つまり外国人は非常に平和愛好国であるけれども日本人だけが何か好戦的であるかのようにそういう人たちの話を聞いていると思うんですけれども、果たして日本人はそんなに好戦的であるということが言えるというふうに外務大臣はお考えでしょうか。
  287. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 戦後の日本はやはり新しい憲法の中で、特にああした戦争の惨禍を受けたという厳しい体験の中で平和を誓ったわけでありますし、そうして今日、そうした新憲法の枠組みの中での努力をしてきておるわけですから、私は諸外国が日本に対して好戦的な国民であるというふうな判断を持っているとは決して思いません。ただ、アジアの国々、かつて日本が非常に大きな損害を与え、犠牲になった国々の中では、やはりかつての日本にはそういうイメージがどうしてもありますから、それだけにやはり日本としてあるいはまた日本人としてはそうした過去の反省だけは忘れずにやはりおつき合いをしていかなきゃならない、こういうふうに思っておるわけでありますし、防衛問題については私が今さら申すまでもありませんが、今の日本が進めてまいりました防衛の基本的な原則をきちっと守っていけばアジアの国民は日本に対しても安心してつき合っていただける、こういうふうに考えております。
  288. 関嘉彦

    関嘉彦君 確かに防衛費は少なければ少ない方がいい、極力削減すべきであると思いますし、また日本が戦前に犯した失敗に対しては十分反省する必要がある、不必要な誤解を与えないようにする、その意味において靖国神社問題なんというのは私は非常にまずい政策だというふうに考えておりますけれども、最近、これは自民党の中でもある意見ですけれども、戦前、高橋大蔵大臣が軍事費の増大を抑えるために非常に努力していたけれども、結局それが退けられて、そして日本は軍事大国になりああいった無謀な戦争をするようになったんだ、一%を外すとそういうふうな危険が再び繰り返される心配があるんだというふうなことを言う人があるんですけれども、私は当時と現在との政治体制、社会体制、その差を考えずに簡単に昭和の初期と現在とを比較するのは歴史における不当な比喩の錯誤と言っていいんではないかと思う。現在の日本において統帥権が独立しているというふうなこともないし、軍人が政治を支配しているということもないと思います。したがって、安易な比喩でそういった日本が軍国主義になるんだというふうなことを日本自身が言い出すことが、私はかえって外国にそういう懸念を与えることになるというふうに考えております。その問題についてはお聞き取り願うだけで結構です。御意見、答弁はいただきません。  次に、中期防衛力整備計画の問題について防衛庁長官にお尋ねしますけれども、これが国防会議で承認されて閣議決定された、というように格上げされたということは、私はシビリアンコントロールの点から大変いいことだというふうに評価しております。しかし、この計画が完成したときにおいて、継戦能力あるいは隊員の練度といいますか練習度、訓練度、そういったふうなものが果たして心配ないかどうか。どうも正面装備の問題が大きく取り上げられるんですけれども、いかに立派な正面装備を整えましても積むだけの弾がなければ戦うことができないわけですし、あるいは運営する人が十分な技術を身につけていなければ全くむだになってしまうわけです。その点から、もしこの計画が完成したときに、例えば弾薬、これは弾薬は今から十年ぐらい前が一番最低じゃなかったかと思うんですけれども、この計画が完成した暁において、例えば弾薬なんかはどの程度まで回復してくるのか。現在では自衛艦に満載するだけの弾薬がないそうですけれども、そういったことは解消されるのかどうか、そのことをまずお伺いしたいと思います。
  289. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 有事の際に自衛隊が組織的な戦闘を継続するためには、常に継戦能力を向上させておく努力が必要だと思いますが、そのためには平時からある程度の弾薬や整備用部品等を備蓄しておきますとか、それから有事に備えて予備人員を養成しておくことが必要であろうかと思っております。今度の中期計画におきましても、この点に配慮いたしまして、最も重要な弾薬の備蓄につきましても引き続き努力しております。  例えば自衛隊について見ますならば、侵略事態は千差万別なので一概には申し上げられませんけれども、我が国に対する限定的な小規模な着上陸に対して、かねてからおおむね一カ月程度の持久戦闘を継続するために必要な弾薬の備蓄を目標としてきておったのでございますが、今回の計画におきましては、全部とまではいかないまでも、一部弾種につきましてはほぼこの目標が達成できることになるだろうと思っております。また海上自衛隊につきましても、例えば艦艇の弾薬について搭載分一定数を確保することになるだろうと思います。  このように今回の計画によって自衛隊の継戦能力はかなりの向上が期待できると思っておりますけれども、今後とも努力していく必要があろうと思っております。
  290. 関嘉彦

    関嘉彦君 練度の問題につきまして一つの例として、例えば戦闘機パイロットの練習度、一人当たりの年間飛行時間は大体外国と比較してどの程度であるかお尋ねしたいと思います。
  291. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) パイロットの年間飛行時間でございますが、自衛隊もかつてはNATO並みの百八十時間程度のものを飛んでおったわけですが、石油ショック以後石油の高騰等で節約を重ねまして、現在は機種によって若干の相違がございますけれども、年間百四十三時間という飛行時間の予算をいただいております。  それに対しまして各国はどうかということでございますが、各国いろいろございますが、カナダ、イスラエルが二百四十時間、アメリカも最近二百時間から二百四十時間になっておる、NATOが百八十時間、インドが百五十時間といったようなところが私どもの承知しておる数字でございます。  なお、今回の五カ年計画によりまして私どもは今後十年間でNATO並み百八十時間、かつて自衛隊の飛んでおった百八十時間まで上げたいということで、この五カ年間逐年三・五時間ずつ飛行時間を上げていって、期末には約百六十時間程度の飛行時間まで上げたいというように考えております。
  292. 関嘉彦

    関嘉彦君 まだこの数年間ではなかなかNATO並みにいかないという話ですけれども、まあ予算なんかの問題でやむを得ない点もあると思いますけれども、努力していただきたいと思います。  さらに自衛隊員の隊舎、宿舎の問題についてお尋ねしたいと思いますけれども、私は、自衛隊員というのは普通のサラリーマンなんかと違って、いざという場合には命を投げ出して戦う人たちであります、それだけに栄誉を与える必要があると思うんですけれども、承るところによりますと、例えばその自衛隊の隊舎の中には明治の初期につくられた建物がそのまま残っている地方なんかもあるそうですし、あるいは宿舎なんかでも極めて貧弱なところに住んでいる人たちも少なからずいるという話ですけれども、やはりいかに正面装備を立派なものを持っていましても、隊員の士気が上がらなければ何にもならないわけであります。その士気を鼓舞するためにもやはり平時からそういった人たちには普通の人たち以上の待遇を与えることが私は必要ではないかというふうに考えているんですけれども、今度の計画でどの程度改善されるというふうに推定しておられますか。
  293. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先生お話にありましたように、自衛隊員はかなり厳しい勤務条件の中に置かれておる。また、自衛官の特性から相当数の者が隊内生活をしなくちゃいけないということもございますので、私どもかねがね隊員の生活環境の整備といいますか、できるだけいい環境下で生活させたいということについては配慮いたしておるところでございますが、仰せいろいろ財政事情その他もございますし、かつ一般社会の生活環境の向上が非常に著しいということで、現在の自衛隊員の置かれておる生活環境というのはかなり劣悪なものになっておるというのは事実でございます。この点につきまして、今回の中期計画でもできるだけの改善を図っていきたいということを考えておりまして、例えば隊員が起居いたします隊舎につきましては、古くなった老朽の木造のものについてはこの期間内にすべて建てかえを終わらせたいというようなことで、特に現在まだ二段ベッドで生活している者が相当ございます。そのうち、曹の階級の者についてはすべてこれを解消する、さらに士につきましても。例えば寒冷地等に居住しておる者、そういった者についてはこれを解消するということを目標として計画を組んでおります。  さらに公務員宿舎でございますが、これにつきましても、よく言われておりますように木造の九・五坪の宿舎がまだかなり残っておるといったような状況でございますので、そういったものはすべて解消いたしたいということで計画を考えております。
  294. 関嘉彦

    関嘉彦君 時間が切迫してまいりましたけれども一つだけお伺いしておきたいのは、現在の支援戦闘機にかわる次期の戦闘機FSXの調達をめぐりまして、新聞なんかいろいろ報道しておるようであります。国産のものを使うか、あるいは外国から購入するか、外国から購入するにしてもアメリカのどういう種類のやつをやるか、あるいは西ドイツやイタリーなんかで共同開発したやつを使うか、いろいろの議論を新聞紙上で承っているんですけれども、その場合に、どういう基準で、選ぶ場合の選択の基準としてどういうことを主として考えておられるのか。簡単に言えば費用対効果の問題でしょうけれども、費用と申しましても、現在の費用であるとか何年先の費用であるとか考えるといろいろの問題があると思うんです。どういう基準で、選択の場合どういうことを考えてやっておられるか。  私はもう時間がないので私の意見を申し上げますけれども、例えば貿易摩擦の解消のために、ほかの点では劣っているけれども例えばアメリカから購入するんだというふうな考え方、これは私は絶対にとるべきではないと思う。そういうふうな問題で貿易の問題と防衛の問題とを絡めるべきではないと思うんです。費用なんかははるかに向こうの方が安ければそれはまた別問題ですけれども、そういった単に現在の貿易摩擦を解消するためにアメリカから高価な買い物をするというふうな考え方は私はよくないんではないかと思うんですけれども、どういう考え方で選択されるか、その基準をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  295. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お尋ねの次期の支援戦闘機につきましての機種の選定基準でございますが、支援戦闘機でございますので主たる任務は対地支援ということでございますが、同時に、平時においてはこれが防空任務、アラート、領空侵犯対処任務にもついておるし、有事にも防空任務にもつくこともあるというような、そういった支援戦闘機の任務態様、運用構想から見てどういう性能が要求されるかということをまず第一番に考えております。それに応じた飛行性能なりあるいは搭載する武装等の状況はどういうことになるかといった、まず性能上の一つの基準というものがございます。  さらに、経費の問題がございます。経費につきましては、開発する場合にはその開発コストも含めまして実機を取得する場合の価格、さらにそれを維持運用していくための経費、さらにはその航空機を導入することによって必要になってくる施設の整備あるいは教育訓練等にどういった経費がかかるか、どのくらい逐年かかっていくか、そういったもろもろの経費面で検討する。さらに加えますと、今度は、後方支援面と申しますか、整備補給なりあるいは教育訓練といった点でどういった点を新たに手当てしなくちゃいけないかとか、あるいはどちらが有利であるかとか、そういったもろもろの基準を総合的に判定をして、最終的には費用対効果と申すべきかと思いますが、機種を決定するということでありまして、防衛庁といたしましてはあくまで自衛隊の任務とそれを効果的に果たすための費用対効果ということで検討さしていただいております。
  296. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今、国会の中でまた国民の中で特に平和と民主主義を守るという柱から問題になって論議されておるのはGNP一%枠の問題、あるいは防衛の問題、あるいは靖国の公式参拝の問題が特に論じられておると思います。私は、この観点からそのような方向が沖縄で具体的に象徴的にどのようにあらわれつつあるかということを見て、その中から、時間の関係で多くをお尋ねできませんので、一つの問題を具体的に取り上げたいと思うのであります。  そこで、今具体的に象徴的に何が起こりつつあるかということについては、まず県議会が七回にわたって超党派で全会一致で決議をして政府要請したけれども、その反響がいわゆる民意が、これは沖縄県民の決定的な意思であるわけですが、少しもその県民要求が反響がないという立場からの那覇空港の軍民共用を民の専用にしてもらいたいという問題がありますけれども、事実は自衛隊基地がどんどん強化されつつあるということなんです。次には、極東一を誇っておる嘉手納米軍基地が、これまた質量ともに日本政府とタイアップをして、いろいろの施設が日夜設置されつつあります。さらには爆音が耐えがたい。普通の人間の生活する環境ではないという百十三ホンと、百ホン以上の爆音が日にち毎日、音の爆弾が降りまかれておる。次には、軍事演習が量的にも質的にも深化して、そうして山を打ち砕き赤土になって、それが雨ごとに川に海に流れて海洋を汚染しサンゴも死滅する。そこから山火事がまた派生し、事故も多発しておる。これが最近の沖縄の現状であります。  ところが、具体的に申し上げる時間がございませんので、その具体的な事実については今後の委員会の中で、国会の中で尋ねていきたいと思うのでありますが、私がきょうここで問題にして質疑を交わしたいのは、軍事基地の推移についてどうしても我慢ならない、こんな犠牲と差別と、憲法にも違反すると思っておるわけですが、このようなことが現実の問題として強制的にそれが行われてきておるということであります。米軍占領時代の二十七年の軍事基地支配は言わずもがな、復帰後公用地暫定使用法という法のもとに十年間強制使用してきた。さらに駐留軍特措法というさらに悪法のもとに五年間刻みで強制使用してきた。それがこのたび、この五年間でさえも他県には例のない期間であります。それが四倍の二十年に引き上げて、二十年間さらに強制使用していくというこの事実なんです。それには背景としてアメリカのあるいは要望があったかどうか知りませんが、あったにしてもなかったにしてもとにかくその事実は何よりの真実でありますから、日米合同委員会においてそれが取り上げられたと思うのでありますが、その経過、実態をまず外務大臣に伺いたい。
  297. 渡辺允

    説明員(渡辺允君) 沖縄の軍用地使用特別措置法に基づいて防衛施設庁の方でとっておられます措置につきましては、これは私どもといたしましては日本政府の独自の立場からとっている措置というふうに理解しておりますし、現実にアメリカ側からこの問題について合同委員会の場を通じましても、あるいはその場を通じましても何らかの要請なり働きかけというようなことがあったことはございません。
  298. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そうなるといよいよ問題は出てくるわけでありますが、このことはどう考えても、これは被害者の立場から、県民の立場からはこれは承服をできない。喜びも苦しみも悲しみもともに分かち合うというその立場から、国民として公平な、しかも憲法に照らしても妥当であるという、納得のいく、こういうことであるならばともかくといたしまして、それでは聞きますが、尋ねていきたいと思うのでありますが、政府は先般私の質問に答えて、日米安保はもう定着しておる、そして長期を見通されるからこのようなこともやむを得ないというあんばいで、先取りした格好で押さえておられるという、こう思われてならないんです。ということは、安保条約の長期存続化を挙げるが、その安保条約さえも十年を区切りにして、六〇年安保そして七〇年安保のときには一方が破棄を宣言すれば一カ年後にはその破棄宣言が成立する、こういう最短一年に短縮されておる。こういう安保条約に基づいて基地は存在しておるわけでありますが、その安保条約でさえも十年を区切りにして、さらに双方の意図によっては一方が破棄宣言すれば一カ年後には成立するという、さらに沖縄を本土並みに開発していくためにはということで、開発振興計画の十年刻みの今第二次振計の四年目半ばに差しかかろうとしておる。こういうことからしても、どうしても二十年もということになると、一体これは何に根拠を置いて二十年という根拠が生まれたのか、またそういった見通しといたしましても、現法規の規定の中からしましても、どうしても二十年というむちゃは生まれるはずはない。ところがそれを強硬に強制使用しようというところに私は沖縄の民意を、しかも政府の意図も沖縄基地の整理縮小ということは確認された一貫した方針でありますよ。こういったことに反してこの特措法によって二十年になったという根拠は一体どこにあるか、防衛庁長官外務大臣お聞きしたいんですが。
  299. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  安保条約は確かに先生指摘のように一方当事国が通告をいたしますと、一年後に効果を消滅する、こういう仕組みに相なってはおりますけれども、今日の日本の防衛政策の基本は安保条約による抑止力と、国力、国情に応じた自衛力の整備、こういうことで、この安保条約は我が国の防衛政策の基本でございます。また現在の国際情勢あるいは日米関係から考えますると、この安保条約が一年後あるいは近い将来にどちらかの政府が廃棄を申し出るという可能性は考えにくいという現状にございます。  この安保条約によりまして我が国は駐留する米軍に対しまして第六条で基地を提供する義務を負っており、この義務に基づきまして駐留軍用地特措法という法律が制定をされておるわけでございます。この特措法は御承知のように土地収用法の特別法でございますが、問題になっております未契約地主、この方々は公用地暫定使用法が二回にわたって使われました五年、五年の十年間、そしてまた特措法が適用になりましてからの三年間、六十二年の五月十四日にエクスパイアいたしますが、この期間に二千九百名を数えておりました未契約地主が、いろいろ御理解を賜るべく努力した結果、百三十六名、全体の〇・四%まで減っておりまして、この土地も〇・七平方キロという状況に相なっておったわけでございます。  しかるに、最近特に嘉手納の米軍基地の中枢部にございます二千平方メートル、約六百坪の土地の所有者がいわゆる一坪運動を始めまして、この結果現在千八百四十三名の共有権者が発生し、さらにこれがふえる傾向にある、こういう状況にございます。一人一平方メートル程度の土地共有権者がどんどんふえておる。こういう状況でございまして、沖縄県における我が国の国としての義務である基地提供、提供される基地の安定的使用のためには、この方々が御理解をいただいて契約に応じてくださればその必要はないわけでございますが、駐留軍土地特措法によりまして、これの長期安定的な使用ということに踏み切った次第でございます。  それでは二十年間という期間はどういうことから出たかというお尋ねでございますが、これは民法に定める賃貸借契約の長期期間を参考にいたしまして算定をいたしたわけでございます。  ちなみに、本土における駐留軍用地につきましては、一〇〇%契約によって皆さんの御同意を得て使用しておるという状況でございます。
  300. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今、安保をかなめにして長期的、安定的にということでありますが、地主は合法的に自己の財産を守るために主張しておる。それを抑えるのに、例えば他県では二年ないし四年が、今でさえも沖縄だけは五年、それをさらに二十年に抑えるということから、これは憲法上の問題にもかかわると思うわけなんですが、それは権力の立場からは憲法の空洞化ということがいつのまにかなされて、ねじ曲げてでもその意図を通すために憲法さえも権力の側に都合のいいように今日まで行使してきた。これが憲法の空洞化、そこに常に肯定と否定の対立があるわけでありますが、こういう憲法上の問題としても、一応これは地主の立場から、県民の立場からは憲法二十九条と法のもとでの――十四条ですね、の立場からもこれが問題になるわけでありますが、そこで言いたいことは、安保は憲法に優先すべきものか、ここにも一つ問題があると思うんです。我々国民の立場はあくまでも憲法が国民の生命、財産、人権を守る建前でなければいけない。こういう見解から、しかも、未契約地主に対しては、経済的にもいろんな形で差別と犠牲を強いておるということが具体的に言えるわけでありますが、例えば契約地主の場合には毎年地料の改定が行われておる。それから年三ないし四%の地料の値上がりがある、加算されておる。土地も一施設一評価方式である。さらに、契約謝礼金とか見舞い金とか、このようなのしをつけていろいろ手を変え品を変えて説得してきておる。ところが、未契約地主の場合には一括払いを建前にしておる。ここからくる物価変動、累進課税の問題、税負担が非常に過酷で大きい。さらに、その単位も従来の二施設一評価方式から個別評価方式に改めて、結果的には減額になったものも多い。このような不平等な扱いは、これはまことにゆゆしい問題である。このような差別をつけること、このような仕打ちをしておるということは、これは反戦運動の封じ込めの一つの圧力である、こう思うわけなんです。  このようなことがまかり通っていいか。しかも二十年を適用したということには、双方の合意契約ということが前提であるはずであります。未契約のその地主に民法を適用するというところにも問題があると思うんですが、防衛施設庁長官どうですか。
  301. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  まず憲法違反ではないかという御指摘でございますが、前回の先生の同様の御質問に対しまして御答弁を申し上げましたとおり、憲法二十九条第三項、これは「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」という規定がございまして、私どもは違憲であるとは考えておりません。  それから、本土との差別があるのではないかという御指摘でございますが、先ほど申し上げましたように、本土ではすべて契約によって平穏裏に賃貸借が行われておる。さらに過去にさかのぼりますと、この強制的な使用以上の権利の制限であるところの収用も本土において行われたことがございます。  また、一括払いの方式が甚だ不利益であるという御指摘でございますが、これは土地収用法の場合と同様、法の定めによりまして契約期間の賃貸借料を一括してお払いをするというのは御指摘のとおりでございますが、一概にそれによって不利益をこうむるかどうか、経済情勢の変動あるいは諸般の情勢がございますので断言はできないのではないだろうか。時の利益というのがこの地主側にまいりますし、一括して支払われた金額を現在の貯金制度、いろいろ高率の長期貯蓄がございますので、この運用によっては利益になる場合もございましょうし、また地価が毎年必ず上がるということを御指摘がございましたが、実績を見ますと三年間据え置きだったこともございまして、この一括支払いという方式、これは土地収用法の特別法でありますので、その方式によることと法に定められておりますのでこの方式によらざるを得ないわけでございますが、一概にはどちらが有利でどちらが不利だということは言えないのではないかと存じます。
  302. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 どちらがいいか悪いかということを決めるのは権力の側ではないと思います。受益者が選択する権利があるのじゃないですか、どちらがいいか悪いか祖。だからその要望に検討してこたえていくということが最も民主的なあり方だと思うんです。こういう押しつけの、どちらかわからぬというようなことを押しつけるべきものじゃない。国民はばかではない、愚かな者じゃない。だから、そこに話し合いを持って合意を得ていく、このことが最も大事であると思うんです。  それで、ともかくそのような形で本土から離れた沖縄においては、日米安保のいろいろの形での吹きだまりはみんなみんな沖縄に吹きだまって、ひどい目に遭っておるのは沖縄百十七万四千人の県民である。このことが、国会で論争されておる平和と民主主義の問題から派生した防衛の問題、あるいはGNP一%の枠の問題、靖国の公式参拝の問題などなど、その他幾多もありましょう。そういうことが何で沖縄にだけ吹きだまって、そのような不平不満を、生命、財産、人権を侵害するようなことがやられるのか、やっていいのか。このことが問いたいことなんです。  それで、最後に防衛庁長官外務大臣にもコメントを求めたいんですが、まず防衛庁長官に。  このあり方に対して激しい反対の不満を持って代表が沖縄からきょう駆けつけてきておるわけでありますが、その要望の結論は、こういうこの二十年延長のまた強制使用はどうしても我慢できないから撤回してもらいたいということが第一点。百歩譲って、百歩譲って契約地主並みに従来の五年、五年に基準を置いてその地料の受け取りも支払いもあの地主並みにやってもらいたいということが百歩譲っての要望であるということを私にも言っておりますが、そのことについてどうしても撤回の方向へ、それがどうしても無理なら五年を単位にして、今契約地主が協力しておるようなあの形でやってもらいたいということに対する要望、防衛庁長官外務大臣、ひとつその方向に検討を、どうしても再検討してもらいたいと要望いたしまして、コメントをいただければ幸い、答えられぬならばコメントなくてもやむを得ぬでしょう。  終わります。
  303. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 沖縄の施設の問題でございますが、施設庁長官から申しましたように、安定的な使用ということを私たちも訴えまして、そして全体の九九・六%の方には御契約いただいたわけでございます。もちろん少数者であるということで、その意見を無視してはいけないとは思いますけれども、私たちは全体の我が国の防衛そして平和のためにも、ぜひ日米安保条約の安定的な運用というものが重要だと考えておりますので、ぜひその意味で御理解そして御協力いただければと思っております。
  304. 丸谷金保

    委員長丸谷金保君) 他に御発言もないようですから、外務省及び防衛庁決算についての審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明二十三日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会      ―――――・―――――