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上田耕一郎君 これは
日本側には恐らく記録はないんですよ。
日本側は文書公開からもこういうものは除いてありますけれ
ども、記録はないんですよ、これ。なぜなら口頭にしなきゃならぬということを詳しく書いてあるんだ。例えば最初の六月十六日付の極秘文書の北東アジア課長ではこう書いてある。「北東アジア課としては、この問題で近い将来
日本政府と
合意することが軍事的に必要と認めるが、これらの
話し合いは、高度な
秘密かつ口頭ベースのものにとどめることが必要だと強く感じている。この問題について
日本政府が譲歩したことがちょっとでもわかれば、
政府の倒壊を
意味」する。
政府はつぶれるんですよ。だから口頭でって言うんだ。だから
日本側には記録は恐らくない。アメリカ側が文書をつくって担当のアリソン国務次官補以外に一切配布禁止というそういう極秘のやり方でやっているんだから、
日本側が
幾ら調べてもわかりませんといっても、アメリカ側があの文書を公表してあなたが持っているんだから。
それで、安倍さんね、私これ非常に重要だと思いますのは、私は
昭和五十三年に沖縄の返還に関連して沖縄に核兵器を再持ち込みするという
佐藤・ニクソン密約というのを追及したことがあるんです、予算
委員会で。このとき
佐藤首相は京都産業大学の若泉敬教授を個人的密使としてアメリカに送って、大統領特別補佐官のキッシンジャーと二人で詰めて密約をつくって、
佐藤・ニクソン会談の議事録とそれから共同声明に当時の
外務大臣も知らない一句を挿入して、沖縄に再び核兵器を持ち込む権利をアメリカ側は握ったんですよ。これは有名な
佐藤・ニクソン密約。これはキッシンジャー回顧録にもその後詳しく書かれて、木村さんが、もうお亡くなりになったけれ
ども、あの密使は若泉さんだということを認めたという有名な事実。この問題で私は参議院予算
委員会で真田法制
局長官に詰めたんですよ。もし首相がひそかに密約を結んで公表はされない、だれにも話さない。
佐藤さんは本当にこれをだれにも話さなかったんだから、恐るべき口のかたさだと僕は感心しているんですけれ
ども、だれにも話さない、ほかの大臣はだれも知らない、次の
総理大臣も知らないわけだ。そういう場合でも密約というのは有効かというふうに聞きましたら、これは真田さんは有効だと言うんですよ。それは条約締結権を
総理大臣というものは持っているんだと、持っているから公表されなくても、だれに言わなくても国と国との取り決めてございますからと言うんですよ。無効とは言えないと。私
たちは、次の
内閣を拘束するのかと聞いたら、「拘束を受けるのは国でございますから、
政府が交代しても、国が同一である限りはそれは効力は続くと言わざるを得ないと思います、廃棄されない限りは。」と言うんだ。いいですか。だから、首相が結んだ外交密約というのは恐るべきものなんです。ほかの大臣が知らなくても、申し継ぎがなくても、国と国が結んだ密約、条約として効力を持っているんですよ。だから、渡辺審
議官が
幾ら調べても出てこないでしょう。これは
外務大臣も知らぬかもしれない、
中曽根さんも知らぬかもしれない。吉田首相が当時こうやって結んで、その後廃棄されないと、これはいざというときにアメリカが持ち出したら有効なんですよ。今度アメリカがこれを公表したのはそれを僕はねらってやったことだと思うんだ。はっきり吉田さんがこのとき密約を結んだと、口頭ベースだと、
日本の国民はだれも知らなくても、さあいざ有事のときに、さあ有事になった、いやガイドラインで調整機関をつくってありますなんてそういう答弁してもだめです。朝日新聞の小川特派員はこの日米共同作戦計画案についてワシントンからの非常にすばらしいスクープを彼がやったことがあるんですよ。このスクープで小川特派員は、この調整機関というのは事実上統合司令部になると、アメリカ側はそれを認めていると、これは国防総省で取材したら、いざというときのこのガイドラインで言う調整機関というのは統合司令部だと、米側はそれを認めているというのを当時のスクープで小川特派員はワシントンから打ってきているんですよ。さあ、私はこういう大問題で
外務省がどう否定しても、これは本当にいざという場合、
日本の自衛隊は統合司令部ができて米軍司令官のもとに調整機関という名でその指揮下に入るという密約がどうも五二年の七月、吉田首相のもとで行われた。これはその後安保改定のときに行政協定が地位協定に移りますな。二十四条というのはなくなって安保第五条の中の条約本文に入るわけだ。そのとき再討議されたかもしれぬけれ
ども、アメリカが一度オーケーとったものを引っ込めるはずはないんですよ。譲歩するはずもない。触れられないままに今まできているかもしれない。また、ガイドライン交渉のときも調整機関というのを詰めるときに問題になったでしょうけれ
ども、だれも触れなかったら、法制
局長官が私に答えたように、廃棄されない限り有効なんですよ。大変な問題じゃないですか、
日本国の。私は恐らく文書ないだろうと想定で言ったけれ
ども、あるかもしれない。
それで、私は
外務大臣に、この重大な
日本国民の運命にかかわるような日米密約の存在、アメリカが五月に公表したんです。このときの文書、もしあれば、その後の安保条約改定のときの地位協定に関する交渉で、旧行政協定二十四条、第五条に、ないしはその交換公文に移すときのこれにかかわる文書、それからガイドラインの交渉のときの調整機関、これについての関連文書を国会にやっぱり明らかにしてほしいと私は思うんです。
外務大臣、きちんと答弁いただきたいと思います。