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1985-12-06 第103回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月六日(金曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 三原 朝雄君    理事 伊藤 公介君 理事 奥野 誠亮君    理事 小泉純一郎君 理事 羽田  孜君    理事 佐藤 観樹君 理事 山花 貞夫君    理事 伏木 和雄君 理事 岡田 正勝君       上村千一郎君   小宮山重四郎君       佐藤 一郎君    坂本三十次君       塩崎  潤君    西山敬次郎君       額賀福志郎君    森   清君       角屋堅次郎君    上西 和郎君       田中 恒利君    堀  昌雄君       斉藤  節君    中村  巖君       二見 伸明君    小川  泰君       野間 友一君  出席公述人         朝日新聞論説委         員       広瀬 道貞君         弁  護  士 水嶋  晃君         兵庫県副知事  三木 眞一君         国際商科大学教         養学部教授   杣  正夫君  委員外出席者         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ————————————— 委員の異動 十二月六日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     田中 恒利君   斉藤  節君     二見 伸明君 同日  辞任         補欠選任   田中 恒利君     川俣健二郎君   二見 伸明君     斉藤  節君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  公職選挙法の一部を改正する法律案金丸信君  外六名提出、第百二回国会衆法第二九号)  公職選挙法の一部を改正する法律案田邊誠君  外六名提出、第百二回国会衆法第三七号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  第百二回国会金丸信君外六名提出公職選挙法の一部を改正する法律案及び第百二回国会田邊誠君外六名提出公職選挙法の一部を改正する法律案の両法律案について公聴会を行います。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。ただいま審議中の両法律案に対する御意見を拝聴し、審査の参考にいたしたいと存じますので、それぞれ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いを申し上げます。  意見を承る順序は、広瀬公述人水嶋公述人三木公述人杣述人順序お願いすることにいたします。  なお、御意見はお一人十五分程度お願いをすることとし、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、まず広瀬公述人お願いをいたします。
  3. 広瀬道貞

    広瀬公述人 おはようございます。朝日新聞広瀬です。論説委員としまして、主として政治を担当しております。  国会が紛糾するたびにいろいろ書く機会が多いのですが、私の経験から言いますと、自民党よりもむしろ野党意見に同調することの方が多かったのじゃないかと思うのです。自民党の推薦を受けまして、大変奇異な感じがしたのですけれども、有権者気持ち国会に伝える非常にいい機会でありますので、喜んで出席させていただきました。  今この委員会では、自民党の六・六案と野党統一案二つをめぐって対立が深刻化しているように見えますが、私自身から見ますと、むしろ本当の対立は別のところにあるのじゃないかという気がしております。つまり、一つは、ともかくこの臨時国会決着をつけるべきだとする積極派、もう一つは、そう急ぐことはない、次の機会に譲るべきだとする慎重派、この二つ対立の方が実は根深いのじゃなかろうかと思っております。私は、自民党積極派であり、野党慎重派だというふうには決して思いません。むしろ自民党の中も一皮むけばほとんどの人が慎重派である、非常に積極派少数国会の多数が慎重派、それが今の状況じゃなかろうかと思います。  それで、最高裁判決を出す、大抵の案件ならばそこで決着がつくわけですけれども、事定数是正については国会が何らかの決定をしなければ事態は少しも前進しない、こういう場面でありますだけに、国会の勇断ある善処を期待したいと思うわけです。  まず指摘したいのは、国会は既に三回司法及び有権者の期待を裏切ってきたということです。  最初は、五十八年秋の国会ですが、このとき最高裁から、今の定数表違憲状況であると非常に明確な違憲警告判決が出ております。違憲にしなかったのは、改正に必要な合理的な期間をまだ過ぎていないということからでありまして、判決が出た段階では既に違憲ということでありました。このときの国会では、たまたま田中角榮氏に対する東京地裁有罪判決が出まして、その政治責任をどうするか、結局、解散国民意思を問おうじゃないかということで話し合い解散になったわけでありますが、私たちは、解散の前にともかく違憲状況を直すべきだ、そうでなければ、その選挙違憲と判定されるということを強く主張したわけです。話し合い解散でありますから、その段階自民党も提起し、野党も提起し、ともかく緊急的な措置をとるということは十分できたわけですけれども、あの段階でまじめに定数の問題が語られたことは一度もなかったと思います。それで、そのまま解散、総選挙となったわけで、これは判決を待つまでもなく、違憲選挙であったと思います。  二番目のチャンスは、その解散、総選挙を受けて出てきました特別国会であるわけです。この特別国会期間も長いし、十分審議の時間もあったわけですけれども、ここではついに法案さえ出ず、結局、何の前進もなく終わってしまいました。当然のことながら、この国会が終わりますと、列島縦断訴訟といいますか、各地の高裁で違憲判決が出ております。  三度目のチャンスが、去年の暮れから開かれ、ことしの夏に終わった六十年の通常国会であります。さすがにこの国会では、自民党から六・六案が提出され、野党もこれに応ずる形で統一案が出てきたわけでありますが、審議の回数も極めて少なく、結論を得ることなく終わっております。この国会が終わるのを待つかのように最高裁違憲判決を下したわけです。  既に三度国会定数是正を怠ったということを私は無視できないと思うのです。つまり、今度が四度目、しかも最高裁判決が出て最初に開かれる国会だ、ここで決着をつければまだ言いわけが立つと私は思うのですけれども、ここでもう一度見逃せば国会全体が憲法を軽んじたと言われても仕方がない情勢じゃなかろうかと思います。  今、慎重論者の一番大きな主張の柱となっているものは六十年国調の問題です。慎重論者は、近く、つまり今月末には速報値が出るんだ、この速報値によれば格差は一層開いてきて、仮に自民党の手法をもってしても十増・十減程度が必要になる、したがって、現在出されている六・六案では違憲状況は解消できない、そればかりでなく、六・六案を仮に今国会で通すならば自民党はそのまま速報値に対してはほおかむりをして、いわば六・六案で食い逃げをするんではないか、この食い逃げを許すべきでないというのが慎重論者の大きな主張だろうと思うのです。  これには私は一理あると思います。しかし、こういうことを考えてみたいと思うのですね。  今、仮に百万円借金している、六十万円については既に返済期間が来て裁判所支払い命令も出て、いつ差し押さえされても仕方のない状況にある、残り四十万円は近く返済期限が来る、その場合に、四十万円の支払い期限も間もなく来るんだからおまえさんは六十万円待つのが当たり前だという言い方が世間で通るかどうかということです。まず六十万円を返して、四十万円についても直ちに対応を考えるというのが常識じゃなかろうかと私は思います。つまり、まず違憲状況を直した後、国調の新たな数字をもってこれに対応していく。仮に貸している方が、おまえさんそういうのは待ってやるからと言うならばいいのですけれども、そういう場合には相手は相当律儀者でありまして、常々きちんきちんと物事を処理してきているという実績があればそういう話にもなるかと思いますが、先ほど申しましたように、既に三回の怠慢ということがあるものですから、私自身はなかなかそういう気持ちになれないわけです。  仮にこのまま国会が終わりまして、十二月末に速報値が出てくる、その場合にどうなるだろうかと私自身想像してみるのですけれども、恐らく自民党選挙制度調査会を開きまして自民党案を検討するということになるでしょう。そして、今の勢いからいえば、十増・十減案ということで党内の根回しを始める。しかし、新たに加わる四減の部分議員が何と言うか。つまり、数字の差というのは極めて細かい、議員の身分に関することを速報値で云々するとは何事か、確定値を待つべきだ、そういう言い方を始めるのは極めて明らかだと思うのです。もちろんその場合に、速報値確定値には大した違いはないんだ、黙れという言い方だってできますが、今の自民党でそういうことはまずあり得ない。そうすると、自民党案そのものができるのが恐らく今から一年後、確定値が出るその段階じゃなかろうかと思います。  一方、野党はどうか。野党統一案をつくったというのは大変な力量だったし、努力だったと私は思いますが、一応これを御破算にいたしまして、この十選挙区についての対応を決めるということになると、これまた大変な作業だと思います。何しろ分区、合区というような作業がありますから、そう簡単にはいかない。特に、三倍以上の格差だけの選挙区じゃなくて全選挙区を見直す抜本改正をすべきだという意見もありますから、それを含めて論議すると、作業はそう簡単にはいかないだろうと思います。野党案ができるのも結局自民党案ができるころと同じころじゃないか、つまり一年くらいはかかるのじゃなかろうかという気がいたします。  それからまた与野党の折衝が始まる。それで、この国会あるいは前の国会と同じような状況になるとすれば、論議が煮詰まってくるのにはまた一年くらいかかるのじゃないか。そういうことを考えますと、この速報値を待てばすべて片づくという話にはなかなか乗れないなという気がするわけです。  最後に、六・六案と統一案についての私見を述べたいと思うのですけれども、六・六案と野党統一案というのは非常に共通点が多いと私は思います。  まず第一に、総数をふやさない、つまり減員をもって定数是正を図るということをともに掲げている点です。国会が今まで減員をしたことは一度もありませんで、これは与野党ともに評価できる点だと思います。行革的な見地から議員定数をふやすべきでないという意見よりも、むしろ国会あるいは衆院の権威のためにも、余り数がふえたらばまず議員の個性が国民に非常にわかりにくくなる、各党で非常に官僚的な党運営になっていく可能性がある。五百十一人というのはそういう意味では最高限度に近い数字じゃないか、増員によって安易にバランスをとるのではなくて、減員をしつつ定数是正を図っていくという点については大変評価できると私は思います。  第二番目の共通点は、ともに五十五年の国調数字を使っているということです。今手元にある数字ではこれが一番新しいわけですから、これを使ったのは当然だと思います。  三番目に、ともに抜本改正ではなくて、当面の違憲状況を正す最低限度の手直しにしているという点もまた共通しております。つまり、抜本改正を念頭に置きつつ当面はこれでいくんだといういわば二段構えの構図をとっている。この点も共通しております。  異なる点は二人区の問題であります。私自身は三、四、五という現行の中選挙区というのは非常に考えられた、すばらしい制度だと思います。つまり、定数に増減がある場合、しばしば政党の盗意、都合が出てきがちですが、三、四、五というのには政党が自分の都合でこれに介在していく余地がない。つまり、五を二つに割ろうとしましても三と二ということになってこれは割りようがない。一方、六というのは少数党にとっては有利ですけれども、必然的に三、三に分けられる。そういう意味で三、四、五というのは大変うまくできた制度だと思います。  それじゃ、二人区というのは絶対に認められないのかということになりますと、選挙制度審議会でも特別にこの二人区の案が出てきたこともある。だから、例外中の例外という位置づけならば、これは絶対に認められないという方法じゃないと思います。もちろん、私はこの際自民党案で一気に行けということを言うつもりは毛頭ないわけで、案としてこれは耐えがたい案だということではないということだけまず言っておきます。詳しいことは、御質問があればまた述べたいと思います。  ともかくこの問題は、最初申しましたように、国会決着をつける以外、ほかはだれもつけようがない。最高裁幾ら違憲違憲と繰り返しましても、立法権はこの国会にのみあるわけで、どうしようもない。それだけに、例えば憲法秩序感覚がおかしくなってくるとか、あるいは有権者が不満を抱いたまま毎回投票に行くとか、非常に陰湿な形での弊害が出てくるのではなかろうかというふうに思います。  私は、議会制民主主義というのは日本で非常にたくましい成長を遂げつつあると思いますけれども、案外盲点は、そういうごくごく小さな点と言ってはなんですけれども、そうはイデオロギー的に対立があるわけじゃない、こういう定数問題などが案外議会制民主主義を掘り崩すアリの穴になるのじゃないか、それを非常に心配しております。  以上でもって発言を終わります。(拍手)
  4. 三原朝雄

    三原委員長 どうもありがとうございました。  次に、水嶋公述人お願いいたします。
  5. 水嶋晃

    水嶋公述人 御紹介いただきました弁護士水嶋晃でございます。第二東京弁護士会に所属しております。  本日は、この委員会公述人ということで意見を述べる機会を与えてくださいまして、大変感謝しているところであります。なお、連日定数是正問題で御努力されております委員の方々に、大変敬意を表するところであります。弁護士ということで、若干法律的といいますか、かた苦しいことを申し上げることになるかと思いますが、お許しいただきた。いと思うのです。  我が国国民主権主義を国是としておるのは、私が申し上げるまでもないわけでありまして、国民は、正当に選挙された代表者を通じて行動して、その福利は国民が享受をするというのは憲法前文に書かれたところであります。  そういう点から、選挙権は、代表者を選ぶという形で公正、適格に行うことによって、みずから主権者としての政治参加、能動的に国政に参加するための重要な権利であるわけでありまして、この選挙権が、自由で、平等で、しかも直接的で、かつ秘密というようないろいろの制度的保障のもとで行使されることが最も重要であるというのは、憲法等規定から明らかなところであります。  ところで、選挙権の平等につきまして若干見解の相違がございまして、形式的な資格要件とか、あるいは投票の数等に関してのみ平等であればいいのかどうかという点につきまして、かつて見解対立があったわけでありますが、昭和五十一年の例の最高裁判例が、この点につきまして公権的解釈を明らかにいたしました。選挙権の内容の平等、換言すれば、議員選出における各選挙人投票影響力の平等、すなわち投票価値の平等も憲法要求するところであると明言したのであります。  選挙区によりまして一票の重みに著しい差異があるようでは、民意が国政に十分正確に反映するということにはならないわけでありまして、代表民主制が正しく機能しないと言わざるを得ないわけでありまして、五十一年の最高裁判例立場はもっともだというふうに考えているのであります。  ただ、投票価値の平等が最も重要でかつ基本的な基準ではございますけれども、それだけが唯一絶対かということになりますといささか問題があるわけでありまして、御案内のとおり、選挙制度の仕組みにつきましては、国会立法裁量といいますか、そういうものに任されているわけでありまして、そういう点から、国会の皆さんを中心としていろいろの方が認められる種々の政策的な要請というものと調和的に考えるべきであるというふうに考えるわけであります。  先ほどお話のありましたように、過去、衆議院議員選挙定数配分規定の問題につきまして、三回の最高裁の大法廷判決があるわけであります。  一回目は、五十一年四月、四十七年の総選挙の問題でございますが、不均衡格差一対四・九九という事態につきまして、配分規定が全体として違憲の瑕疵を帯びるというふうに断じたのであります。ただし、御案内のとおり、事情判決といいますか、選挙の違法を宣言するのみで、無効ではないというような非常に警告的な判決になったわけであります。  二回目が五十八年の十一月、五十五年の総選挙に関するものですが、このときの格差が一対三・九四というものでありまして、これについて最高裁が、この不平等憲法選挙権の平等の要求に反する程度に至っておるというふうに判断しながら、配分規定そのもの憲法違反ではないというふうにしたのであります。先ほどお話がありましたように、配分規定是正するのには合理的な期間が必要だという考え方を最高裁がとりまして、この判決段階ではまだその期間を経過していないということで、違憲ではないというふうに判断したのであります。  しかし、この判決は、御案内のとおり、なお書き部分がありまして、昭和五十年の改正後、既に七年経過しておる現在、できる限り速やかに改正されることを強く望むといっただし書きを書いたのであります。違憲とされる事態が近づいているということを改めて警告したものでありまして、刑事裁判でいえば、二回執行猶予の恩典を与えたというように考えていいのではないかというふうに思うわけであります。  ところが、三番目はことしの七月十七日、御案内のとおりでございます。前回の五十八年十二月の総選挙に対する裁判でございますが、九都道府県の二十一選挙区で裁判が起こされました。このときの不均衡格差が一対四・四〇ということでありまして、最高裁は二回目と異なりまして、五十八年の選挙当時、既に憲法選挙権の平等の要求に反して、公選法の配分規定は全体として違憲状況にあるということを述べたのであります。結論としましては、事情判決が下されたわけでありますが、ただ、三回目ということになりますと、いつまでたっても定数配分規定是正が行われないということに大変いら立ちを覚えた裁判官がおられるようでありまして、当時の寺田最高裁長官初め五人の裁判官補足意見を付記しまして、選挙を無効とする、しかし、その無効の効果一定期間の経過後に初めて発生するという趣旨判決もできますよ、いわゆる将来効判決ということでございますが、そういうものを補足意見で付したのであります。十五人の裁判官のうち、長官以下五人の方がこういうこともできますよということをわざわざ付して判決したのでありまして、是正期間が六カ月になるのか一年になるのか、それはまだわかりませんけれども。その間に定数是正を行ってくれということだと思います。したがいまして、もし今回を含めまして定数是正がなく、総選挙に突入という事態になった場合に、恐らく二十一だけではなくて、相当多くの違憲訴訟が提起されるだろうと思いますが、こうなった場合に、今申しました将来効判決、無効と宣言しながらその効果をしばらく猶予を置くというような判決が将来最高裁で出される可能性が非常に強いというふうに言わざるを得ない。裁判官はどんどん変わっていくわけでありますから必ずそうなるというふうには申し上げられませんが、傾向としてはそういう可能性が大きいというふうに考えていいんではないかというふうに思うわけであります。  ところで、本委員会定数是正問題で二つ法案がかかっておるわけですが、いわゆる六増・六減案につきましては私は反対でございます。  反対の理由は二つございまして、一点は、不均衡格差を一対三程度にしようとしておるところであります。何がゆえに三倍あってもいいと言うのか理解に苦しむわけでありまして、憲法国会の構成上二院制をしきまして、衆議院を第一院として優位的な立場を与えておる趣旨にかんがみますと、衆議院国民政治的な意思が直截にかつありのままに反映されるべきであるというふうに考えるわけでありまして、この観点からしますと、可能な限り人口比例主義により議員数を配分すべきであるというふうに考えるのでありまして、若干の政策的要請を配慮するとしましてもこの格差を一対二以内にすべきであるというふうに考えておるわけでありまして、その趣旨から反対するわけであります。  この六増・六減案最高裁判例立場唯一最大の根拠としているのではないかと思うのですが、五十年の定数配分規定改正のときに最大格差が一対二・九二になったときがあるわけですが、これにつきまして最高裁投票価値不平等状態は一応解消されたと評価するという趣旨判決をしたわけでありますが、この立場にのっとっておるのではないかというふうに考えられますが、この判決もあくまでも一応という前提でなされておりまして、しかも二人の裁判官が一対二を超えてはならないという大変説得力のある反対意見を出されております。さらに、御案内のとおり、広島、東京高等裁判所が一対二の状況違憲判断基準とするというのもありまして、今後この格差につきましては、一対二に限りなく近づいていくんではないかというふうに考えられるわけであります。こういうような点から現在の一対三という案には反対するのであります。  この立場を貫きますと野党四党の案も反対ということになるわけでありますけれども、ただ、自民党さんの六増・六減案に対する対案として提出されておるという点から理解できるというふうに思うところであります。  次に、二人区新設の問題でありますが、現行は三−五という形の中選挙区制でありますが、この中選挙区制が、御案内のとおり、大正十四年から施行されておりまして、途中戦後二年ほど大選挙区制がありますけれども、六十年余りにわたって二十一回の選挙を経過してきているところであります。  戦後この中選挙制選挙による政党政治の進展に伴って我が国も発展してきたというふうに考えられるわけでありまして、既に国民に十分親しまれかつ理解されておるもので、十分定着している制度であるというふうに考え、かつ今日の多様化した国民生活に伴う少数者を代表する議員選出を容易にするという積極面を中選挙区制が持っているのではないかというふうに考えます。  そういう意味で、一選挙区一定数の小選挙区制に二人区制は限りなく近づいていくというふうに考えまして、この二人区制を今回創設するという問題は定数是正とは別の、選挙制度自体抜本的改革に道を開くのではないかというふうに危惧するものであります。この段階で二人区を創設すれば今後ますますふえることはあっても減ることはないというふうに考えられるわけでありまして、定数是正に名をかりた制度改革が行われるのではないかと考えられるわけでありまして、この意味で二人区制の創設に反対するものであります。  新聞報道によりますと、十月一日実施の国勢調査の速報値が近く発表されるということでございますが、そうなりますと現在審議されております二法案はストレートに影響を受けるのではないかと思われますので、速報値の発表を待って定数是正抜本策を討議すべきではないかと考えます。  なお、私が所属しております日本弁護士連合会、日弁連でございますが、この議員定数の不均衡問題につきまして深い関心を持っておりまして、昨年の二月に「選挙権平等の原則を実現していくための公職選挙法改正案要綱の提案」という文書をまとめまして発表し、関係方面に検討をお願いしているところであります。  この案によりますと、衆参両議員定数選挙区画に関しまして委員会議員の方々以外の学識者で構成しまして、国勢調査の結果に基づき改定の要不要を内閣総理大臣に可能な限り具体的に意見表明するというような案になっておるわけでありまして、私は定数是正の一定のルールが確立されておるべきだと考えますので、この日弁連の案をぜひ御参考にしていただければというふうに考えるのであります。  最後に、本委員会が大変急な問題になっております衆議院定数是正につき慎重に審議なされ、最高裁のみならず国民が納得するような立派な案を確定していただくことを期待しまして私の意見といたします。  御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 三原朝雄

    三原委員長 どうもありがとうございました。  次に、三木公述人お願いをいたします。
  7. 三木眞一

    三木公述人 私、ただいま御紹介をいただきました兵庫県の副知事をいたしております三木でございます。衆議院議員選挙の一票の格差にかかわる定数配分規定是正問題はまことに難しい問題であろうと推察をいたしておるところでございまして、本委員会の先生方の御努力に心から敬意を表する次第でございます。しかしながら、最高裁違憲判決も既に出されておるところでございまして、緊急を要する問題であると認識をいたしているところでございます。国会におきましてよく御審議をいただき、国民の納得のいく早期是正というものを期待いたしている一人でございます。私はこの公聴会に発言の機会を得まして、兵庫県の副知事という県行政に携わる者の一人として、また平素県民に深くかかわっているという立場から御意見を申し上げたいと存じます。  私がまず残念に思いますことは、自民党案あるいはいわゆる野党四党案、いずれにいたしましても、兵庫県の一区から五区までの衆議院議員の総定数が二十名から十九名に一名減になるというところでございます。この点については県民の多くが危惧いたしている点でございます。  昭和五十五年の国勢調査人口における全国の議員一人当たりの平均人口は二十二万九千余人という計算になるわけでございまして、さらに四十七都道府県別の議員一人当たりの人口を平均いたしますと、二十万八千人という数字が出てまいるわけでございます。兵庫県につきましては、人口が五十五年国調で五百十四万四千人ということになっておるわけでございまして、定数二十名でございますので、平均いたしますと二十五万七千人ということで全国平均を大きく上回っている、全国で七番目に一票の価値が軽い県というふうになっておるところでございます。しかも、これがさらに一名減ということになりますと、兵庫県の議員一人当たり人口は約二十七万人に上昇いたしまして、全国では五番目に一票の価値の低い県ということになってしまうわけでございます。  定数訴訟判決のリーディングケースと言われております昭和五十一年四月十四日の最高裁判決でも、その判決理由の中で、具体的にどのように選挙区を区分し、議員配分するかにつきまして、人口以外にも実際上考慮されるべき要素は少なくないということを言われております。その文章をちょっと読み上げますと、「殊に、都道府県は、それが従来わが国の政治及び行政の実際において果たしてきた役割や、国民生活及び国民感情の上におけるその比重にかんがみ、選挙区割の基礎をなすものとして無視することのできない要素でありこと言われておりまして、この点がまず第一に述べられておるところでございます。  そこで、県政に携わる立場から、兵庫県内の議員定数二十名を厳守していただきたいというふうに思うわけでございます。なお、県内の配分を見てまいりますと、兵庫二区と兵庫五区との一人当たり人口比は三倍程度でございまして、兵庫県の広い面積等を考慮いたしますと、現在焦点となっております私どもの兵庫五区を含めて現行どおりの維持というのが考えられるわけでございます。  次に、兵庫五区の定数等の問題でございます。  既に御承知のとおり、兵庫五区は県北部の但馬、丹波地域でございます。総面積は約三千平方キロでございまして、東京都の面積を優に超えるわけでございます。県土の三五%を占めておる広大な地域でございます。しかしながら、御承知のように、気候、地形といった自然条件の制約から産業基盤も弱いわけでございますし、若年層を中心とする人口流出により一部に過疎化現象が見られるなど、地域の活力の低下を余儀なくされておるというところでございまして、一層の地域振興の強化が必要な地域ということが言えるのではないか。県といたしましても、県土の均衡ある発展を図るために行政面での努力はもとより、今後とも国政レベルの一層の御支援をお願いする必要があるというふうに考えておるところでございまして、今回の改正によりまして、この地域の声を国政に反映していただける議員が減るとすれば、地域の発展にも大きなマイナスになるというふうに危惧しているところでございます。  このことは、去る七月十一日に当特別委員会が現地調査をされました際、但馬、丹波地域の町長の多くが、人口基準だけで判断するのは問題である、過疎化している地域の発展のためには議員を減らすことは大きなマイナスであるなど、一様に現状維持の意見を申し上げたところでございます。  次に、選挙区の区域の変更という点でございますが、いわゆる野党四党案におかれましては、選挙定数三人ないし五人の中選挙区制を堅持するとのお考えから、例えば石川二区を同一区と、愛媛三区を同一区と、鹿児島三区を奄美群島区とというふうに、二人区となる選挙区について合区を行うというふうな御提案がございます。ところが、兵庫五区につきましては、阪神地域の兵庫二区、これは定数五名でございますが、これと合区をした上、新たな選挙区域として分区をする、つまり兵庫二区にあります宝塚市、川西市、三田市、そして川辺郡猪名川町の三市一町を但馬、丹波と合わせて新たな兵庫五区をつくってはどうかというふうな案になっておるわけでございまして、この点につきましても既に現地調査の際に多くの町長あるいは阪神地域の三市一町の市長、町長が一致して、この選挙区域の変更は困るとの強い意見を申し上げたところでございます。  その理由といたしますところは、但馬、丹波側におきましては、阪神間との歴史、風土等地域性の相違がもちろんあるわけでございますが、人口過密の地域でしかも人口がなお急速にふえつつあるというふうな三市一町と同一選挙区となるということは、政治の重点がそちらに移るのではないかという不安を大きく持っておるということではないかと思っております。  ちなみに、昭和五十五年国勢調査における宝塚市、川西市、三田市、猪名川町の人口は三十六万二千五百余人で、なお増加の特に著しい地域でございます。これに対しまして但馬、丹波地域の人口は三十三万余人でございまして、人口は横ばいないし漸減をいた心でおるという地域でございます。当委員会の現地調査の際、二つの案のどちらをとるかというふうな御質問があった際に、現在の選挙区域のまま二人区となってもやむを得ないという御意見も多くの町長から出たところでございまして、その辺の私が申し上げました事情を推察をしていただけると存ずる次第でございます。  次に、阪神側の市長、町長さんは、一様に阪神間七市一町の行政圏、生活圏の一体性をそのとき強く主張いたしております。」阪神七市一町を二つ選挙区に分割することに反対意見を強く出されたところでございます。  本県の県土は、明治期における兵庫県の設置の由来から、また地勢、風土の違いから、阪神、播磨、但馬、丹波、淡路の五つの顔を持つと言われておりまして、現在もその点については変わらないところでございます。それぞれの地域特性と地域としての一体性を強く持っているところでございます。例えば、北は日本海に面し、県の中央山地部に位置をいたしております但馬、丹波地域と、南は大阪湾に面する阪神地域とでは、その歴史、気候、地勢、さらに交通条件、産業等、地域的には大きな隔たりがあるように思われるところでございます。県の行政におきましても、それぞれの地域に県の総合行政機関としての県民局というのを設置いたしておりまして、それぞれの地域における県政の展開を図っているところでございますし、これは市町の広域行政の面におきましても同様でございます。但馬、丹波あるいは阪神といったところでそれぞれに総合開発促進協議会というものを持って一体的な広域行政が行われてきておるということでございます。  いずれにいたしましても、兵庫県内の議員選挙選挙区は古くから現行選挙区として根強く県民に定着をいたしておるところでございます。  以上、兵庫県政に携わる立場から県内の定数及び選挙区の問題についての意見を申し上げましたが、現在の議員定数配分規定最高裁判決において、昭和五十八年には違憲状態である、また六十年七月十七日には違憲であるとの判断が示されておるところでございまして、できる限り速やかに改正されることが強く望まれるところでございます。まことに難しい問題でございますけれども、どうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。行政にある立場から若干具体的な面を入れて申し上げた次第でございます。  ありがとうございました。(拍手)
  8. 三原朝雄

    三原委員長 どうもありがとうございました。  次に、杣公述人お願いいたします。
  9. 杣正夫

    ○杣公述人 ただいま御紹介いただきました国際商科大学で政治学を教えております杣でございます。  先ほどからの御意見を伺っていて、非常に問題が難しい、しかもまだ非常に多様な問題性を持っておるということを痛感しております。  私は、まず定数、つまり議席の数でございますが、議席というものの意味を基本的に考え直していただきたいと思うのであります。憲法の前文にもありますように、「正当に選挙された国会における代表者を通じて」国民政治行動をする、そしてまた国政の権威は「国民に由来し、その権力は国民代表者がこれを行使」するというように議会制民主主義政治体制がここにはっきり述べられております。政治学の用語で申しますならば、このように憲法に即してつくられた権力の座である議席というのが、これが正統的権力の座と申し得るものでございます。正統というのは筋の正しいという字を書きます。正統的権力の座である。議席がこのような意味を持ちますということは、議員の皆様よく御存じのことであろうかと思います。  ところが、その議席の配分に関しまして、公職選挙法がどのように措置しておるかと申しますと、公職選挙法はこの議席の配分について形式的に大変な混乱をしております。公職選挙法の第四条に「衆議院議員定数は、四百七十一人」と書いてあります。現在五百十一人です。五百十一人というのはどこでわかるかというと附則の方でわかる仕掛けになっております。それから、定数配分用の別表でございます。この別表は四百七十一人を分けておるのでありますが、現在はそれに幾段階も附則がつけられまして、附則を合わせてそれをあれこれと地名その他と照らしながらやっとその五百十一人がどこにどういうようになっているかとか見当がつくような状態でありまして、もう普通の国民の場合にとても定数状態がどうなっているかというようなことが簡単にわからないという状態になっておるのであります。国民の正統的権力の座である議席の配分の状態が法律の本文で処理されないで附則で、しかも、こうしてばらばらに処理されているという状態は非常に遺憾な状態であると、私は立法当局にこの点非常に訴えたいのであります。  それから、この混乱は昭和二十八年の奄美群島の施政権の返還による奄美群島区の一人区をつくったときから始まっております。しかし、このときの一人区の設置について、大村清一議員からこの点についての質問がございました。第十七国会の十一月三日の公職選挙法改正に関する調査特別委員会連合審査会の席でございます。これについて当時の担当の国務大臣であります塚田十一郎氏が回答しておられますが、別表の改正昭和三十年に予定されている、そのときまでのほんの臨時措置である、このとおりの言葉でこの措置を弁明しておられます。この担当大臣の弁明というのは一つの公約と考えていいかと思うのでありますが、その後現在まで三十二年たってなおかつこの奄美特別区の一人区の例外が、ほんの暫定措置というのが三十二年も続いているという現実に御留意願いたいと思うのであります。今の野党四党案はこの点を解消しておりますので、この点は大いに評価できると私は存じております。  それから、一人一票等価の原則、ワン・マン・ワン・ボート、ワン・ボート・ワン・バリューの原則、これは議会制民主主義をとっております西欧自由諸国のこれも定数冊分、選挙権の平等を維持するための基本原則として尊重されてきております。もちろん憲法もこれを規定しておるわけです。これを実行する際に、有権者数をとるか人口数をとるかといったような問題もございますが、私はやはり国民というのは人口だということから考えまして、人口基準をとるべきだというふうに考えますし、我が国におきましては明治二十二年から人口基準を守ってきております。明治二十二年の最初選挙法では約十三万人に一人、明治三十三年の改正においても約十三万人に一人、大正八年の改正におきましても十三万人に一人、大正十四年の改正におきましては十二万人に一人になりまして、この形が昭和二十五年の最初の公選法の制定のときまで維持されてきているという状態であります。  ですから、この定数の配分について人口基準をとるということ、そして、その定数の配分の仕方、まず都道府県の人口に応じて定数を配分し、都道府県の中で郡市の境界を尊重しながらできるだけその基準に近いような形で三人から五人までの選挙区に編成するというやり方、これも人口基準をとり、そして、それをまず都道府県に人口に比例して配分し、しかる後選挙区にほぼその人口基準に合うように分けるということ、これも旧憲法から新しい現在の憲法に至るまでの憲法的慣例であるというふうに私は承知しておるのであります。  ところが、昭和二十五年以後、政党政治が強化発展されてきました段階で、このよい憲法的慣例が守られていない、逸脱しているという状態が今日あるように見られるわけです。これは非常に残念なことであると思います。  さらに、との定数是正の問題に関しては多数決の原理というものの意味を考え直していただきたいと思うのであります。これは申すまでもなく、議会制民主政治の実践原理で、ございます。つまり、政治闘争というものを暴力的に解決するかわりにこのルールを採用した、そして、このルールを尊重することによって政治闘争の暴力的解決が回避されているということであります。しかも、この多数決の原理の恩恵に一番あずかっているのは多数派であります。多数派はこの多数決の原理が尊重されるがゆえに政権を担当し、政権を維持し、そして国会の運営に主導力を発揮できる、まさにこれは多数決の原理がルールとして尊重されているというところにあるわけです。  この多数決の原理が機能するためには、その多数をつくり上げている一が同じ一でなければならないのです。同じ一でなければ多数決の原理というのは数学的に機能しないわけです。この多数決の原理というのは国会だけではなくて選挙段階から働くべきものなんです。議会制民主政治の実践原理として、多数決の原理というのは選挙段階から働くべきものであります。皆さんよく御承知のとおり、選挙政治闘争でございます。これを多数決で、票の数で解決するというのが多数決の原理でありますから、やはりこれもこの多数をつくり上げている一が同じ一でなければならない。あるところの一は四であり、五であり、あるところの一は一であるというようなことでは多数決の原則というのはゆがんで機能いたします。  ですから、私はやはりこの定数是正の最後に落ちつくところは、少なくとも格差は一の見える範囲にするということでございます。極端な場合一・九九の格差でも結構でございますが、ともかく一が見える範囲にこの格差是正するということが最終的に落ちつくところであろうかと思います。アメリカの場合は大体一・一%ぐらいで落ちついております。これはアメリカでは憲法的な規定でありますからこうなるのでございます。  次に、三人から五人の中選挙区の問題でありますが、これも憲法的な慣例と見るべきものであるかと思います。この選挙区の問題というのは政党間の妥協の産物であるという色彩が強いわけでありますが、大正十四年にこの三人から五人の中選挙区が案出されましたのは、当時の護憲三派が政権を担当して、そこで妥協的産物として三人から五人の中選挙区が案出されました。戦後、大選挙区の制限連記制でありましたが、これは一回やっただけで、昭和二十二年に最後の帝国議会で自由党と進歩党が中選挙区案を推進いたしまして、かなり無理があったわけでありまするが、結局これが成立して今日に至っているということは御承知のとおりであります。こうして成立した妥協、この選挙区制については政党間の対立闘争が非常に厳しいのでありますが、その厳しい中で成立した妥協、これも民主政治の賢明な知恵の所産であると考えていいのではないか。ですから、中選挙区制のこの憲法的慣例も尊重し、守っていくべきであると考えるのであります。  それから、今自民党議員の方が提出されております六・六案がございますが、もし、これを今その形でやるといたしますと、最高裁の五十八年の判決の論理からいたしますと、定数是正ということがともかくも曲がりなりにあったわけだから、その合理的期間としてさらにこれから先五年間定数是正のために費やしてもこの点では憲法違反にはならない、定数の配分状態は違憲であるけれども、是正の合理的期間としてさらに五年間が考えられる可能性があるのであります。ですから、今の是正案の基礎になっております人口は五十五年の人口でありますが、これが六十五年までそのままに持っていかれる、速報値がどうであるとか確定値がどうであるとかという問題を超えて持っていかれる可能性が、さきの奄美群島区と同じようにあるのであります。  私は原理原則ということを幾つか申し上げましたけれども、国会審議それから選挙の争い、これ者すべて政治闘争であります。政治闘争と申しますのは、極端なことを申しますと、昔は殺し合いになり戦争になったような、そこまで行く激しさを持っているのであります。その困難な複雑な問題を処理するのにはどうしてもこれだけはという原理原則を守っていくことが一番正道であると思うのであります。亡くなられました河野謙三さん、参議院議長をやられました方ですが、あの方が非常にいいことを言われたのです。「複雑な問題は単純に考える」ということを言われましたが、名言であると私は思います。とにかく政治対立のぶつかる場面であります定数配分の問題、これは確立された原理原則に即して処理していくというのが最も賢明な、また穏当な処置であると考えるのであります。  その際にぜひお考え願いたいことは、選挙というのは国民の仕事であるということであります。選挙というのは決して議員の皆さんが主役になる仕事ではなくて国民が主役になる仕事でございます。それは初めに申しました正統的権力の意味からしてもそうであります。ですから、当然政党の利害得失いろいろございますが、そういうものを抑えて国民立場から見てどうすべきか、国民選挙としてこれを処理していくという態度に徹していただきたいと思うのぞあります。でなければ選挙国民から軽視されていく、選挙に対する関心が失われていくということが起こります。そうなりますと、結局、政党政治の力を、エネルギーを弱めていくということになりまして、戦前にたどりました政党政治の衰退という道がここに見えてまいるのではないか。現に最近の選挙を見ますと、国民選挙によっては政治はよくならないといったような選挙制度に対するあきらめさえも強く出てきているというのが現状でございます。  以上のことで、非常に原理原則というかたいことを申し上げましたけれども、こういうようなことで、私は、現在の自民党案と申しますのはこの原理原則をかなり逸脱しているという点で反対しておるものでございます。  これで意見を終わります。(拍手)
  10. 三原朝雄

    三原委員長 どうもありがとうございました。  以上で、公述人各位の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 三原朝雄

    三原委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森清君。
  12. 森清

    ○森(清)委員 本日の公聴会公述人の四氏がおいでいただきまして、大変貴重な御意見をただいま拝聴いたしました。我々特別委員会において審査をいたしておる者にとりまして、非常に有益でございました。短い時間の御陳述でありましたので、なおお聞きしたいことがありますので、二、三御質問を申し上げたいと思います。  まず、三木公述人にお伺いいたしますが、これはお伺いするというよりか、私が実は何日かの現地調査にも参りまして、御担当が違いますが、別の副知事さんからも県全体の御意見も伺いました。そのときに、五区の関係市町村長さんの方々あるいは町村会長とかそういう立場の方々であったと思うのですが、その方々の御意見は、ただいま三木副知事がおっしゃられたとおり、県全体の定数が減ることには絶対反対である、そして五区の定数が減ることにも絶対反対である、このような強い御主張がありました。  しかし、我々が、万やむを得ず減らさなければならない、こういうときには野党統一案のように三十六万もの人間を五区と一緒にしてやるのがいいのか、あるいは二人のままの方がいいのかという質問をいたしましたところ、先ほどは若干そういう意見もあった、こういうふうに言われましたが、五区の方もそれから三市一町の方もほとんど全員二名の方がよりましだ、こういうお話でございましたが、そういう点についての御認識を一つお伺いしたい。  もう一つは、私が非常に野党統一案について疑問に思っておりますことは、定数是正という観点からあるいは公平にするという観点から、一応分区をするというときは、三十九年の分区の場合も五十年の分区の場合もすべて人口完全平等を貫いたのであります。ところが、野党統一案で人口完全平等を貫こうとすればさらに伊丹市を入れて初めて人口平等になるのであって、伊丹市をわざわざ二区に残したということは合理的な理由が一つもないのじゃないかと思います。仮に一対三以内にとりあえずおさめる、だから、それでやろうじゃないか、こういうことであったら、今度は川西市か宝塚市の——三田市は一番こちらに寄っていますからどうしようもありませんが、どちらか一市を入れれば一対三の範囲内におさまるわけでございます。しかし、野党四党案は、そのいずれもとらないで宝塚まで入れている。  昔、十九世紀の初めにゲリーという民主党の知事が自分の党に都合のいい選挙区をつくってやったときに、その格好が火の中にすむというサラマンダーという鳥によく似ているということでゲリマシダーと言ったことがありますが、どうも私は、野党四党の案はまさしくそのゲリマンダーではないか、このような感じがするのです。  伊丹市を除いてやることに非常に地域的に合理的な理由があるのかどうか。そういう点について御見解を、伊丹市を除くことは本当にいいんだ、四市一町の中で伊丹市だけを除くことが非常に地理的、経済的あるいは社会的に合理性があるのかどうか、その点をお伺いしたい思うわけでございます。
  13. 三木眞一

    三木公述人 お答えいたします。  私、先ほど二区あるいは五区の多くの市長、町長と申し上げましたので、全部ではないというふうにおとりになったのだと思いますけれども、現地調査の際には全部の市長、町長が出でおりませんのでそういう表現を用いた次第でございます。  それから、伊丹市をいろいろと申されましたけれども、私その意味がよくわかりません。ただ、申し上げましたように、阪神が一体性を持っておるということについてはもう先生方もよく御承知のことであろうと思いますので、よろしくお敬いいたします。
  14. 森清

    ○森(清)委員 それでは、水嶋公述人にお伺いいたします。  先ほど時間も短かったせいか、自民党案には反対であるという明白な見解の表明がありましたが、野党統一案には御賛成なのか反対なのか、それをお伺いしたいと思います。
  15. 水嶋晃

    水嶋公述人 お答えいたします。  先ほどお話ししましたように、賛成でございます。
  16. 森清

    ○森(清)委員 自民党案にこういう欠陥があるから反対であると言われた論拠が二つあったと思うのでありますが、一つは、二人区をつくっておることで反対、こういうふうな論拠、これはその立場からすればわかりますが、もう一つ決定的な要素と私が聞いたのでありますが、その見解によれば、要するに三倍程度是正にしかすぎない、また近く国勢調査結果報告が出るのだからそれでやればいいじゃないか、そういう論拠により自民党案反対をされたのでありますが、あなたが最初に根本的な、決定的な要素として言われたと私は受け取ったそれは野党案ではどうなっているのでしょうか。同じことではないかと私は思うのでありますが、その点野党案では三倍よりかうんと縮小しているとがあるいは近く出る速報値というものを予見してちゃんと是正している、このようにお考えでございますか。
  17. 水嶋晃

    水嶋公述人 二つか問題で自民党案反対したわけですが、一対三につきましては野党四党も似たような形になっておるのは御案内のとおりでございます。それを両方あわせて現在の緊急的な措置というような考え方で、自民党案が南方あわせて十対三と二人区と双方を組み合わせておるわけですから反対。それから、野党四党案につきましては、一対三ではありますけれども、二人区の点につきまして私の考えとよく似ているということ一で賛成、こういう意見でございます。
  18. 森清

    ○森(清)委員 柔道の判定などには、わざありが二本あれば一本になるという判定の方法もあると思うのですが、ある案に対して賛成、反対というのに、これこれ二つの理由があって反対であると言われれば、その理由が一つでも含まれておれば反対というのが当然の論理の帰結であると私は思うのであります。その点についてどうお考えですか。
  19. 水嶋晃

    水嶋公述人 今お話ししたとおりでありまして、別に変わったことを改めて申し上げるつもりはございません。
  20. 森清

    ○森(清)委員 それから、二人区の問題について、三人から五人が十分定着している、こういうことを言われた。それは結構でございます。少数者代表制が非常にいい、これも一つ主張でありましょう。しかし、二人区は小選挙区である、小選挙区に反対する立場からわかるのでありますが、それに限りなく近づくから反対であるという表現をされたと思います。数字に単数と複数があるといえば、単数と複数とは質的に全然違うわけであります。選挙制度において単数を選出するのを小選挙区、複数を選出するのを大選挙区と言う、これは定義でありますからどう定義しようとも構いません。しかし、数字でも複数と単数というのはそこに質的な相違があるわけなんです。千人も一に近いのです。四人も近いのです。三人、四人が二人に近づいたから小選挙区、一に限りなく近づく、それは事実でしょう。四から一よりか、三から一よりか、二から一の方が近いことはわかる。しかし、小選挙区でないことは明らかでありますが、その点はい近づくからいけないなら三人区もいけないのじゃないでしょうか。その点どうでしょうか。
  21. 水嶋晃

    水嶋公述人 お答えします。  先生のような言い方をされればそういうことかもしれませんけれども、私の方では小選挙区制反対という立場でありまして、今三人区で定着しておるという状況の中で、それをあえて二人区ということをつくれば、これは自民党さんが今までよく言っておられたような小選挙区制にずっと近づいていくというふうに考えるのが普通じゃないかというふうに思うのですが、そういう意味で申し上げたのでございますが……。
  22. 森清

    ○森(清)委員 次に、杣公述人にお伺いをいたします。  大変学識の深い公述を聞きましたが、我々実務家でありますので、そういう観点から学者先生にお伺いをしたいと思います。  野党四党案が二人区をつくらないで三人から五人でやっているから非常に評価する、こういうお話でございました。そういう立場からすればそうでありますが、その例として、奄美群島区を鹿児島三区にくっつけたことがいい、こういうお話でございました。先生もよくあそこの選挙区の事情は御存じでありましょうが、奄美というところは、明治にこの国会が始まって以来小選挙区であったわけですね、大選挙区時代も。すなわち、大選挙区時代もああいう島嶼部は小選挙区にする、別にするんだということがあって、そして明治三十三年の大選挙区時代も奄美は独立して一人区だったわけです。  そういうことからすると、人口格差がおかしくても、例えば、最近行われたイギリスの大選挙改革においても、スコットランドにちょうどアイルランドの島の北の方にまたがった島がございます。あそこは島ですからずっと伝統的に一選挙区だった。だんだん人口が減ってきた、しかし、それを本土の方へくっつけて選挙区をつくらない。で、島は島で独立してやったから今人口格差が二倍とか主倍になっている、そういう例外区があるからですね。  私は、選挙制度というものは単に員数合わせをするのじゃなくして、そういう地域からその地域の人を代表する人が正当に選出されてくるかどうかということが選挙制度の一番大事な問題である。そういうことからすれば、今までは、例えば中選挙区時代は奄美群島の方が大隅半島の人口より多かった。したがって、中選挙制度選挙しても奄美の人が三人のうち二人通ったり、少なくとも一人は必ず通ってきておった。ところが、現在は大隅半島の人口が奄美の倍以上あるわけですね。そういうことになると、奄美群島からの代表が一人も当選してこない可能性の方が強いわけであります。そういう選挙制度がいいのかどうか。三人から五人という選挙制度をつくることはいいとしても、そういう例外的な地域については一人の選挙区をつくって、現にあるわけでありますから、もう既に三十数年やっておった、そういうものの方をそのまま残した方がいいとお考えなのか、そんなことはあってもやはり三から五におさめなければいかぬのだから、どこでもいいからくっつけろ、こういうお考えなのかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  23. 杣正夫

    ○杣公述人 まず、一つの建前論なんですけれども、公務員は国民全体の代表者であって、どこの地区から出ようとも国民全体、国家全体のことを考えて対処しなければならないということが一つ建前としてあるわけです。  それから、奄美群島から一人代表を出すべきだというお考えでございますが、住民の一体性というような問題、これは程度の問題でありまして、私、ちょっと鹿児島を調査したことがございますけれども、鹿児島の財閥の主なところには奄美出身者が非常に多いのですね。ですから、内面的に入りますと、奄美群島というのはその鹿児島の本土と決して無縁ではなくて、かなり一体なんです。昔言いますと、西郷隆盛があそこに流されておりまして、西郷隆盛と縁故があるというようなことが随分話もされているぐらいで、歴史的にも、そして経済的にもそういうふうに奄美群島と一体的な部分もあるわけですから、それを一つとして考えて、近いところで、大正十四年のあれでは鹿児島三区の中に入っておりましたから、そういう形で結構おさまるのではないか。  それからもう一つ、代表が出られないということなんですけれども、奄美群島からも十分一人を出すだけの票数があるのでございますから、決して代表が出られないというふうにあきらめたものでもない、こういうふうに私は考えております。
  24. 森清

    ○森(清)委員 大正十四年に奄美が三区に入ったのは、完全人口平等案分にする方法をいろいろ考えて、くっつけようがなくてくっついたのが実情なんであります。  それで、野党四党案をえらく高く評価されておるようでありますが、近くにやってそれを解消できるなら、鹿児島三区は鹿児島二区がすぐ近くです。地続き、そして、いっぱい交通をやっている。これを合区しても五人で済むわけですが、その案と奄美をくっつける案とはどちらが先生の政治学者としての見識からいって合理的でしょうか。
  25. 杣正夫

    ○杣公述人 奄美群島の一人区につきましては、昭和二十八年に決めましたときに塚田十一郎担当国務大臣が、これは全く臨時措置だ、ほんの暫定的な措置だというふうに大臣自身が認められておるわけですし、そのときに一人区をつくるということは例外であって、そういう大臣と同じようなお気持ちでおつくりになった、私もこう思うのです。ですから、その暫定措置を解消すべき時期はもう十分来ておるのでありますから、やはり鹿児島三区にくっつけ谷のが自然ではないかと思います。
  26. 森清

    ○森(清)委員 その経緯はよくわかっているのです。経緯はよくわかっているのですが、現実に状態をごらんになって、鹿児島二区と三区との関係と鹿児島三区と奄美との関係を考えてどちらが合理的であるかということをお聞きしているのです。
  27. 杣正夫

    ○杣公述人 今までのそういう歴史的な経緯を考えまして、やはり鹿児島三区と一緒にするということが合理的であると思います。
  28. 森清

    ○森(清)委員 鹿児島三区を奄美とやるか二区とやるか……。
  29. 杣正夫

    ○杣公述人 鹿児島三区に奄美の一人区をくっつけて三にするというのが合理的だと……。
  30. 森清

    ○森(清)委員 がいいのか、二区をくっつける方が選挙のいろいろな状況から考えて——選挙というのは形式的なものじゃないのです。その地域から、あなたの言われた国民の代表はわかっているのです、国民の代表はわかっておったら全国区にしたらいいということになるのじゃないのです。やはり選挙区をつくって、その地域の主権者意思の決定を一度やらせて、それが選出された以上、全国の代表であることはわかりますが、選出する過程は選挙区ごとにやるというのが選挙区制なんですから、そういう観点から考えて鹿児島二区と一緒にする方が合理的か、奄美と一緒にするのが合理的かということを政治学者としてのあなたにお伺いしているわけです。
  31. 杣正夫

    ○杣公述人 奄美群島区は一人区で例外で、早くこれを解消しなければならない、そういう宿題を持った選挙区でありますから、この際隣接する鹿児島三区、しかも、かつて一緒であったところに、もとのさやにおさまるというのが自然であると思います。
  32. 森清

    ○森(清)委員 杣公述人自民党案には反対であるが、野党案には賛成であると申されましたが、本来一というものが見える範囲に是正すべきであるとかいう非常に高邁な御意見であり、これをやってしまったら五年間やらないのじゃないかというふうな御意見であれば、野党案にも同じく反対されるのが今の論述、公述全体の筋からいえば当然だと思うのでありますが、そういう点について、これは私の意見になりますからやめておきますが、次に、広瀬公述人にお伺いしたいと思います。  非常に政治情勢について明快な御判断を示されました。我々痛み入っておるわけでございますが、そういう状況の中で、御指摘のとおり、この違憲とされておる公職選挙法は我々は一日も早く是正しなければならない、こういう立場から審議の促進を図っておるわけであります。非常に明快な御説明であったわけてありますが、最後に、時間も少ないので、なお御質問があればということでありますが、あと私、五分しかございませんので、具体の質問ではなくして、さらに補足して言っていただくことがあればひとつ公述いただきたいと思います。
  33. 広瀬道貞

    広瀬公述人 先ほど自民党の六・六案と野党統一案対立する部分よりもむしろ共通する部分が多いんだと言いましたが、実はその先は何を言わんとしたかといいますと、せっかくここまで歩み侮ってきたんだから、最後の調整というのはそれほど難しい問題じゃないんじゃないかということを言いたかったわけです。私は今後精力的に話し合っていってもらいたいと思うのですけれども、それについても若干の注文がございます。  第一は、やはり今回の六・六案にしましても統一案にしましても、抜本的な改正という点から見ればかなり道が遠い、離れておりますので、抜本改正をどういうふうな格好でやっていくかという点についてもはっきりした結論を出していただきたいということ。それから、近く出てきます新しい国勢調査の結果に対してもどういうふうに対処していくかということもはっきりそこで結論を出していただきたいこと。つまり、六・六案あるいは野党統一案選挙定数是正問題は終わりだという格好にはしてもらいたくないということです。  あえて私、自民党にこの際申し上げたいのでございますけれども、いろいろ新聞に出ておりますが、自民党幹部の人は、六・六についての補正はまかりならぬというようなことも言っております。しかし、例えば自民党案に近いもので話し合いがついたとしても、公明党、民社党などが極めて深刻に考えております二人区が今後ふえていくんじゃないかというような問題、こういう問題についてはそうはしないんだというようなのは、森さんの答弁では私も何度か聞きもし、見もしましたけれども、やはり法案の中にはっきり書き込む必要があろうかと思います。ともかくこの国会決着をつけるのだというところからでないと、与野党の本当の話し合いは始まらないんじゃなかろうかと思っております。
  34. 森清

    ○森(清)委員 終わります。どうもありがとうございました。
  35. 三原朝雄

    三原委員長 山花貞夫君。
  36. 山花貞夫

    ○山花委員 公述人の先生方には、大変貴重な御意見をお聞かせいただいて大変ありがとうございました。短い時間でありますけれども、つけ加えて若干お伺いをしておきたいと思います。  まず、水嶋公述人に伺いたいと思うのですけれども、先ほど定数の問題に関しまして日本弁護士連合会公職選挙法改正案、既に提示して提案しておるというお話ございましたけれども、ちょっとその点につきまして、そういう委員会というものは常設でするのか、委員の数どのくらいなのか、任期どのくらいなのか、そして格差を判断する基準としては人口なのか有権者なのか、どういう御提案かということにつきましてちょっと敷衍して御説明をいただきたい、こういうように思います。
  37. 水嶋晃

    水嶋公述人 日弁連で出しております文書をここに持ってきておりますけれども、委員は七名から九名というようになっておりまして、先ほど申しましたように、内閣総理大臣に意見を出し、内閣総理大臣がそれに基づいて出会に語る、こういう形になっております。  それから、倍数といいますか格差は、大体二倍、一対二を基準に考えております。全選挙区の有権者あるいは人口ということで、どちらかに分けておりません、全選挙区の人口または有権者定数で割った数から三分の一上下したら改定を行うのが妥当と、これは計算しますと大体二倍ということになりますけれども、一対二ということになりますけれども、そういう形でやるということであります。  委員の任期等は十年で、先ほど申しましたように、学識者を中心に内閣が任命する、こういうふうな形になっておりますが、あと何かありましたですか。
  38. 山花貞夫

    ○山花委員 今御説明いただいたその弁護士会の提案につきましても、定数の問題、区画の委員会という提案だと思います。また、先生から先ほど、過去の裁判最高裁判決の三つの流れ、とりわけ補足意見について強調して御説明をいただいたわけですが、そこでの問題提起も定数の問題、格差是正の問題ではないかというように我々理解しているところであります。  そこで、我々は、今回の二人区、自民党見解を異にして、定数是正よりも制度改正に触れるものではないか。そして、従来から自民党内では、定数是正を行うにしても従来の中選挙区制を前提としての定数是正は困難である、小選挙区か小選挙区比例代表が、この点に問題点が出てきているわけでありますけれども、この弁護士会の提案も、また御説明いただいたこれまでの最高裁判決の流れも、この選挙制度を変えるという観点はほとんど出ていないのではないだろうか。定数の問題として一票の価値の平等、憲法十四条の原則を貫け、こういう観点ではないかと理解してよろしいでしょうか。この点について御見解を伺いたいと思います。
  39. 水嶋晃

    水嶋公述人 御質問いただいたとおりでございまして、日弁連が要綱として発表しておりますのは、議員定数及び選挙区画に御する委員会というふうに限定されておりまして、中選挙区制がいいのか小選挙区制がいいのかというような問題とは全然別でございまして、議員定数とその区画に関する委員会というふうに限定されております。  以上です。
  40. 山花貞夫

    ○山花委員 二人区問題につきましては、自民党側では中選挙区の例外をつくるものである、こう言って説明されるわけではありますけれども、その大選挙区制、中選挙区制あるいは小選挙区制の概念をどう決めるかについての議論はそれぞれ平行線で、そこだけの議論では余り意味がないのではないか、こういうように思います。  先生、恐らくお仕事の関係で選挙に関する訴訟その他、有権者とそういう立場でも接する機会がたくさんおありになると思うのですけれども、二人区になりますと選挙民と議員とのかかわり、中選挙区三名−五名の場合とは随分違ってくるんではなかろうか。小選挙区なら歴然といたしますけれども、議員の行動の基準、規範といたしましても、国会での活動だけでは小選挙区に近い二人区ではなかなか有権者選挙の際の支持が得られない。地元密着型、地盤培養型の行動重点ということに変わらなければならないのではないか、こういう弊害が心配されるところでありますけれども、実際、客観的に、布権者の立場も含めて二人区の場合にはそういう弊害が心配ではないだろうか、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。
  41. 水嶋晃

    水嶋公述人 おっしゃるとおりじゃないかと思います。小選挙区制あるいは二人区制ということになりますとますます死に票といいますか、そういう票が多くなるのは明らかでございまして、一選挙区に三人の場合と二人の場合とでは、先ほどもちょっと申し上げましたように、少数派を代表する議員の方が非常に出にくくなるということが非常に特徴的に考えられるのじゃないかと思うところであります。そういう点からいいまして、先ほど申しましたように、三人から五人というのが長い間定着しているということで、これをあえて変える必要はないというふうに申し上げているところでございます。
  42. 山花貞夫

    ○山花委員 今の点、杣先生にも伺いたいと思うのですが、先生は選挙制度につきましていろいろ御研究になっているわけで、中選挙区制の問題です、憲法的慣行という観点でも賢明な知恵ではなかったか、こう御説明いただいたわけですけれども、二人区になりますと、そうした賢明な知恵の産物である中選挙区制とはかなり違った選挙区内調整というものができるのじゃなかろうかと考えますけれども、その点につきまして、できましたらつけ加えて先生の御見解を承りたいと思います。
  43. 杣正夫

    ○杣公述人 やはり二人区になりますと一人区の小選挙区に近づいていきまして、多数勢力がより出やすい形が出てきます。そうなりますと、その多数を集票地盤として培養するために、今の逆挙地盤の培養のやり方を見ておりますと、一層それが激しく日常的に選挙人をまとめていくというような行動が、今の三人や五人区からすれば大分強まっていくのではないか、そういうことを感じております。
  44. 山花貞夫

    ○山花委員 同じ問題点で広瀬先生にお伺いしたいと思うのですけれども、いろいろ世論の動向などに触れるお立場として、あるいは特に広瀬先生の場合には政治資金問題等について非常に造詣が深いと伺っておるわけですが、二人区となると、今お二人から伺ったところでもありますけれども、政治資金の使い方をも含めてかなり中選挙区制とは違った問題も出てくるのではなかろうか、また、属会議員の活動の基準もかなり違ってくるのじゃなかろうかと思うわけです。先生も先ほどは三、四、五というのはなかなかうまくできた制度であるとおっしゃっておりましたけれども、私たちは例外をつくるということは非常に心配があるわけですが、この点について御見解を承りたいと思います。
  45. 広瀬道貞

    広瀬公述人 選挙制度だとか各区の定数をいじることによって政治の仕組みを変えていこうというような考えは明らかに邪道だと思います。例えば、小選挙区でもって二大政党制にしていこうなどというのは本末転倒であって、そういう情勢が出てきて変わっていくならともかく、選挙制度をいじることによって変えようというのは邪道だと思うのです。  今の二人区の問題ですが、二人区を幾つかつくることによって政治状況が変わってくるということならばそれはそれでまた別の問題があると思うのです。しかし、例えば参院選挙の場合でも二人区のところというのは自社が分け合う一番多い選挙区であって、これは必ずしも大政党というか、自民党に有利だというような区割りじゃないと思うのです。したがいまして、そういう意味で二人区をつくることによって、定数をいじることによって政治状況が変わってくる、変えようとねらっているということは言えないと思うのです。ただし、最初にも申し上げましたように、三、四、五というのは政治の恣意が入らない、よくできた制度なんですから、できるだけこれは変えていくべきじゃない。私が再三言っておりますように、六・六案にしたって野党統一案にしましても、これはあくまでも暫定措置であって、抜本的な改正に進むための経過的な措置でありますから、それが過ぎれば、抜本改正が行われる段階になれば二人区は解消するものであろうかと思っております。
  46. 山花貞夫

    ○山花委員 抜本改正が実現すればというお話だったわけですが、私ども各党が抜本改正についての見解をそれぞれの立場で出しているところもあるわけですが、まだその点についての協議は、かなり意見が隔たっているところがあるわけでありまして、一日も早く抜本改正についての議論を本委員会でも開始しなければならないと考えているところです。  ただ、それまでの間の暫定策ということにつきまして、今六・六案が議論されておりますけれども、十二月二十四日に国勢調査の速報が発表されますと、恐らく全体の議論としては抜本改正に向けての議論をスタートさせますと同時に、それでは当面の是正策は一体どうなるか、今度は十・十で議論ということが、流れからすれば始まってくるのではなかろうかと思うわけです。  その辺、先生は先ほど三、四、五人区はなかなかうまくできた制度であるのだけれども、二人区が例外中の例外ならば是認せざるを得ないのではなかろうか、我慢できないということにはならないのではないかとおっしゃったわけですが、ついせんだっても自民党の金丸幹事長がおっしゃっておりましたとおり、六・六から十・十になったってこのパターンで一つのルール、方向が決まるんだからまたやっていくんだということになりますと、どんどん二人区がふえていくわけでありまして、先生おっしゃったような例外中の例外ということで一たん例外を認めますと、例外はどんどん膨らんでいくという問題点がありますので、私たちは心配しているところでございます。  同時に、参議院などの二人区の様子を見るならば自社分け合う場合も多いのであって必ずしも与党独占ではないではないかというお話もございましたけれども、今回の是正の対象となっている六つの地域あるいはなるであろう十の地域ということで考えてみますと、これまでの三木公述人お話にもありましたとおり、過疎地を抱えたところが大部分でありまして、都会の選挙とはかなり状況を異にしているわけであります。三人だけれども自民党が三人とも独占しているという選挙区を初めといたしまして、圧倒的に自民党が大体二人ならば独占間違いないというような従来の傾向が強いというところもありまして、必ずしも広瀬先生おっしゃったように、二人区といったって野党にも十分チャンスがあるのじゃなかろうかということがないので、我々も二人区の問題を提起しているところであります。二人区が例外中の例外なら構わない、我慢するけれども、これはどんどんふえるかもしれないという状況になりますと、広瀬先生の御見解も変わってくるんでしょうか。この程度ならいいけれども、どんどんふえるのではこれは疑問が出てくるよということかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  47. 広瀬道貞

    広瀬公述人 抜本改正があり得ぬのだということになればこれは大変な問題でありまして、今の論議は、違憲状況違憲判決された事態を正すということと抜本改正というのはいつも両方一緒に考えていかなければならない問題だと思うのです。野党統一案にしましても、仮に自民党が同調してこれが通ったとしましても、かなり多くの欠陥がそのまま残っていくだろうと思うのです。  国会での決着というのは違憲状況を正すこととあわせて抜本策についての骨格をつくってしまう。つまり、中選挙区という制度は変えないのだ。それから、五十五年の国調数字をもとにしましても、都市部と農村部では大変な開きがあっていまず府県ごとに定数を割り当てて各府県でそれを三人ないし五人に区分けしていくという新たな作業をやる、それが抜本的な改革だと私は思っておりますが、その抜本改革の手順があればこそ暫定措置が認められるということだろうと思うのです。しかも、この国会の課題というのは何をおいても違憲事態を正さなければいかぬわけですから、それをわきに置いての話というのはなかなか通じないだろうと思っております。
  48. 山花貞夫

    ○山花委員 水嶋先生に伺いたいと思うのです。  解散権の問題ですが、もちろん国会で議論になっております定数是正なき場合、法律的に解散権があるか、政治的に解散権が可能かという議論でお伺いすることは余り意味がないと思っているわけであります。これは法律実務に従事されておる皆さんの立場で、もし定数是正が行われないで解散というような事態になったとしたならば、法律家の目から見て混乱が心配されるのではなかろうか、皆さんの間でどんなことが議論されているかということについて最後にお伺いしておきたいと思います。
  49. 水嶋晃

    水嶋公述人 先ほどもちょっとお話ししたと思うのですが、選挙段階で差しとめの訴訟が出される可能性があるかと思います。  それから、地方公共団体が違憲状態のままの選事業務に非協力といいますか協力しない、そういう形が相当広範に出てくる可能性があるということ。  それから、よく言われておるとおり、違憲状態で選挙を強制されたということで損害賠償請求とか、選挙が終わった後も今回の判決と同じように違憲訴訟という形で相当の数のものが出されて、先ほど申しましたような形になるかどうか明確ではありませんが、その可能性がある。大変混乱した状況になってしまうのではないかと考えております。
  50. 山花貞夫

    ○山花委員 いろいろお話を伺って、大変ありがとうございました。  時間が参りましたので、以上で質問を終わりたいと思います。
  51. 三原朝雄

    三原委員長 中村巖君。
  52. 中村巖

    ○中村(巖)委員 広瀬公述人定数不均衝の問題について、最高裁違憲ということを指摘しておるし、三回の国会国民を裏切っているのだから早急に是正をやらなければならない、こういうふうな御意見でございました。早急に是正をしなければならない、そのことは確かに言われるとおりでありますけれども、現時点でどうしてもこれをやらなければならないということについては、私はなかなか理解ができない。つまり、六十年十二月六日というこの時点へ来て、すなわち十二月二十四日に国調速報値が出るわけでありますけれども、この速報値が出ることを前にして、この二週間、三週間、どうしても急いでやらなければならないのだ、この理屈は余り理解ができないと思うわけであります。もちろん是正をしなければならない。是正をするについては、それは選挙を想定するから是正をしなければならないわけでありまして、もう間近に選挙が迫っているのだ、二週間、三週間後に選挙が迫っているのだということであればやらなければならないでしょうけれども、そうでない、選挙が想定されないその時点で急がなければならないということはないのではないか。  そういう意味では速報値を待って、それに基づいて是正をするという考え方でも十分対応できるのではないか。それでも国民を裏切らない。むしろ、国民の方がそういうふうに期待をしているのではないか、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  53. 広瀬道貞

    広瀬公述人 もし、五十五年の国調の結果が判明した段階国会がそれに合わせて定数是正した、あるいはその後も選挙人名簿の全国の統計だとか住民基本台帳の統計だとか毎年毎年出てくるわけですから、国会がそれらの数字に敏感に反応しつつ定数是正を考えてきたその実績があるならば、あと二週間云々という話は通じると私は思うのです。ところが、今まで一度もそれをやらずにやってきまして、この段階であと何日じゃないか、こう言われても、その何日というのは、ははあ、何日からまた作業を始めるということだなとしか一般には受け取られないと思うのです。私は、これまでの実績から、残念ながらおっしゃる意見には賛成できません。
  54. 中村巖

    ○中村(巖)委員 次に、杣公述人水嶋公述人にお伺いをいたしますけれども、今この時点で自民党提案のような是正案が成立するということになりますと、その成立した案に基づいて選挙が行われる、こういう事態になったと仮定した場合に、その選挙それ自体は違憲もしくは違憲状態という最高裁判決を受けることになるのではないか、こういうふうに思われるわけです。というのは、今この時点で五十五年国調に基づいて自民党案が成立している、その意味では野党案といえども同じでありますけれども、自民党案が成立しているわけでありまして、その自民党案、一対三という範囲内に是正をするというわけでありますけれども、実際問題として現時点において既に一対三の範囲にこの六・六案というものはおさまっておらないということであるわけでございます。そのことは、現在の住民基本台帳の調査あるいはまた有権者の数の調査から見て明らかなことである。  そうなると、最高裁は、違憲あるいは違憲状態というものを五十五年国調によって判定をするのではなくて、選挙時の人口の分布がどうなっているかということで判定をする、こういうことになろうかと思いますので、この六・六案はかなり違憲あるいは違憲状態、こういうふうに最高裁から判定を受けるということになると思うわけであります。その意味違憲状態あるいは違憲そのものを創設するような立法をこの時点でやるべきではない、そういう意味野党案といえども立法の根拠を現時点では失ったのではないか、こういうふうに思っておりますけれども、その点について両公述人の御意見はいかがでございましょうか。
  55. 水嶋晃

    水嶋公述人 先ほどお話ししましたように、私個人の見解でいけば、一対二だと言っておるわけですから、一対三では違憲ということになるわけですが、じゃ、一対三の案をつくりまして選挙をやった場合どうなるかという御質問だと思うのですが、これは今の最高裁がどう言うかということだと思うのです。  先ほどお話ししましたように、一対二・九二に関しましては、解消されたというような言葉を使っておるわけでありまして、それに近づくということになるかと思いますが、いずれにしましても仮定の問題で、なかなかお答えしにくいのでございますが、先ほどお話ししましたような事情判決を重ねておる最高裁が、国会に大変遠慮をしておりますから、その辺のところを若干考慮しなければいかぬだろうとは思います。そういうふうにお答えしておきたいと思いますが……。
  56. 杣正夫

    ○杣公述人 緊急避難という言葉が野党四党案の方に使われておりますが、まあ自民党案でありますと、先ほど申しましたように、今の公職選挙法の別表の混乱をさらに広げるような形のものになってまいりますので、そういうような形になっていくのを急いでやることには反対であります。  それで、野党四党案も決して完全に満足すべきものであると言うことはできないのですけれども、野党案の場合は非常に、これは緊急案である、本当はこうすべきなんだという悩みの意識が強く出ております。その点私、野党案を評価したい。それで、もし野党案があれするなら恐らく速報値あるいは確定値が出た場合にやらなければならないというような気持ちがより強い、しかし、できるかどうかわかりませんですが。ともかく現在の自民党案でもって是正措置を済ませて、そのことによってさらに五年間は違憲状態であるけれども違反ではないという形の判断が出ることが予想されますので、そういう形はもうとってもらいたくない、こういうふうに思います。
  57. 中村巖

    ○中村(巖)委員 さらに、杣公述人にお伺いをいたしますけれども、先ほどお話の中で、三人−五人の選挙区制というものは憲法的慣例ではないか、こういうふうにおっしゃられたわけでありますけれども、憲法的慣例という、憲法解釈というものは大変重要だというふうに思うわけでございまして、憲法的慣例であるならばこれを改めるということは、これは憲法に抵触をすることになるんだ、そういうふうに思われるわけでありますけれども、憲法的慣例であると言われることの根拠をもうちょっと御説明をいただきたいと思います。
  58. 杣正夫

    ○杣公述人 慣例ということになりますと、裁判所の場面では必ずしもそれで憲法違反になるということにはならないと思いますが、しかし政治を進めていく場合に、憲法や法律だけでは処理し得ない部分がたくさんあろうかと思います。そういう処理し得ない部分でありながら、しかも今までの慣例によってそのような政治を進める、基本問題を処理してきたという事例が積み重なってきているわけですから、そういうことで処理するのが憲法政治体制を正常に発展させていくための必要な方策ではないか、こういうふうに思うわけです。  例えば、選挙に落選したから大臣をやめなければならないという規則はないのですけれども、やはり選挙に落選した方は大臣につかれない方が政治を進めていく上での力といいますか、安定感といいますか、そういうものがあるわけですから、そういうようなものを一々、これは憲法や法律によってどうするということはできませんが、しかし、その周辺にある政治問題についての処理の仕方、そしてルールにまでなっているもの、そういうものとして私は憲法的慣例ということを申し上げておるのであります。
  59. 中村巖

    ○中村(巖)委員 次に、水嶋公述人にお伺いをいたします。  私どもは、二人区を創設するということに絶対に反対をいたしておるわけでありますけれども、この二人区、三−五名区から二人区に改めるということは選挙制度の変革ではないか、こういうふうに考えているところ、これに対して自民党の提案者は、三名区—五名区から二人区を今度つくり出すということについては、それは制度の変革ではないのだ、数の問題は制度の変革ではない、むしろ合区をするとか分区をする、それが制度の改革なんだ、こういうようなことを言っているわけです。数というものは歴史的偶然の産物なんだ、こんなようなことを言っているようでありますけれども、私どもはそうだとは思っておりませんが、これが今度三−五名区というものが二名区を含むものになるということは制度の変革である、こういうように水嶋公述人も言われましたので、この点を御説明いただきたいと思います。
  60. 水嶋晃

    水嶋公述人 三から五の今の中選挙区制ですが、それの中に今度二人区を設けるというのは、私は制度の変革だと理解していますから、先ほどそういうふうに申し上げたのであって、分区するとか合区するとかというのとは性質が相当違うというふうに理解しています。  先ほどから何回も申しますとおり、講学上、小選挙区制か大選挙区制かという教科書的なことを申せば、二人以上は大選挙区制ということにどこの教科書にもそう書いてあるわけでありまして、ただ、その中で日本が三から五までの中選挙区制といいますか、そういうものを採用してずっと来ているということでありますから、これを二人区にするということは制度的な変革であるというふうに理解いたします。
  61. 中村巖

    ○中村(巖)委員 最後に、一点だけ広瀬公述人にお伺いしますけれども、広瀬公述人自体も六・六案、自民党案がこれで成立をすれば食い逃げになって、今後五年も十年もそのままにされてしまうのじゃないかというおそれはなきにしもあらずだということを御指摘になられたように思うのですが、そういう状況をなくするために、具体的な方法として必ず抜本改正あるいはまた十・十への、さらに第二次的な暫定的な改正を行う措置として何かお考えになっておられますか。
  62. 広瀬道貞

    広瀬公述人 私はやはり本委員会でいろいろな問題点を全部洗い出した後は、各党が本気で話し合いをする段階が来るんじゃなかろうかど思い童す。その段階で六・六の問題、野党統一案の抱えている欠陥、そういうのを是正するための方法を含めて本気の話し合いをしてもらいたいと思うし、やはり公明党などは一番その役柄がいいんじゃなかろうかというふうに私なんかは個人的には期待しております。
  63. 中村巖

    ○中村(巖)委員 終わります。
  64. 三原朝雄

    三原委員長 小川泰君。
  65. 小川泰

    ○小川(泰)委員 公述人の諸先生、本当に貴重な御意見を賜りまして、私ども、いろいろ検討をするに、今反代しておる点もございます。本当に御苦労さまでございます。時間がもう来ておりますが、私、ごく端的に御質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  これは水嶋公述人にお伺いすべきか杣公述人にお伺いすべきか、ちょっと私、質問で迷っておるのです。せっかくのいろいろなお話を承りましたが、今度の定数問題の事の起こりを静かに考えてまいりますと、司法という立場と立法という立場から一つの問題点を出して、やりなさいよ、こういうところから問題の発生が来ておりますね。そう考えますと、司法の立場からどこまで法律上踏み込めるのかという限界と、立法という立場から物を見る場合に随分と次元が違うかな、こういう考え方が二つ去来をしておるわけでございます。  具体的に言えば、司法の立場というのは、できた法律が何年かたってまいったり、環境、条件が変わっていく場合に、この辺までが法律が持っておる限界ですよとか、あるいはここが間違っていますよとか、こういう立場で大いにチェックをしていただくということだろうと思います。たまたまそういうことで、おかしいよい法のもとの平等からはみ出していますよ、こういうのが今回の御意見だと思います。それを受けて、法律をつくろうとする立法側から見ると、先々を考えて、ひとつ法律をつくろうといった場合に、つくった以上はしばらくいろいろな条件変化にも対応するような前向きの物の考え方で進めるべきものではないかなと私ども平易に考えているのですが、識見の高いところで、どちらの方でも結構なんですが、ちょっとそこら辺の御意見を承りたいなと思います。
  66. 杣正夫

    ○杣公述人 おっしゃいますとおり、確かに立法の立場と司法の立場とは違います。しかし、憲法に法治主義というものがあり、最高裁判所には違憲立法審査権というものが与えられております。ですから、法で決めたぎりぎりの限界を超えるような事態が起こった場合には、司法がそれに介入してくる。しかも、違憲立法審査権というものが認められている以上、それは当然のことかと思います。それにこの定数是正の問題、結局議員の皆様方が自分の選挙と関係した非常に重要なかかわりの深い法律でございますので、それに対して理性的な解答が必ずしも出てこない場合もまたあり得るわけでありまして、自分の利害あるいは党利党略、派利派略とかいろいろありますが、そういうもののこだわりというのは必ずこれには出てまいります。  これは日本だけではありません。外国でもございます。ですから、アメリカで一・一倍の格差になっていって、それが、アメリカは小選挙区でありますから、小選挙区においてもそういう形がつくられていったというのはごく最近のことなんです。ケネディ大統領が大統領になりましてから急にこれができるようになりまして、裁判所が積極的にこの状態に介入するようになってから、選挙区に至るまでこれができるようになりました。ですから、アメリカにおいても、そういう立法府の構成をどうするかという問題については立法府自身でできかねる部分が多々ございまして、それに対して裁判所がある程度積極的に介入することによってその成果が出てきているということだと思います。
  67. 小川泰

    ○小川(泰)委員 ありがとうございました。  続けて、もう一つ杣先生に伺いたいのですが、今か人口あるいは有権者定数、法のもとの平等、こういったことが中心になって論議されておりますが、先生の御意見の中に、この種のものは、平たい言葉で言えば、選ばれる側よりも主権者である選ぶ側に立って物を考える、こういう原則が必要なんだという御主張がございました。私はそのとおりだと思います。人口とか有権者でない別の要素、かつて高等裁判所で出されたこの種にかかわる判決の中に幾つかの要素があります、そういうものを勘案してこうしなさい、こういう判決が出たことを覚えております。  そういう中に地理的条件、ちょっと調べてみますと、一番面積的に狭いのが東京の八区であります。一番広い面積はどこかといいますと北海道の五区であります。この面積の差はどのくらいあるかと調べてみますと、選挙区によって九百八十七倍の差があるのです。そして、実際選挙を行うというのは、選ぶ側が選ぼうとする人の人間性とかあるいは政党とか、そのときの政治課題とかをできるだけ平等に知りながら、そして投票行為に行くという便益と、もう一面、できるだけ同じような条件下で選挙をやろう、こういう側面があると私は思うのです。  そう考えてみますと、千倍近く開いておって、しかも選挙期間は十五日間に法で限られていますが、一体こういうことの要件はこういう定数を考えるときにどんな配慮をしたらいいのかという疑問がもう一つありますので、そこらの御見解を伺いたいと思います。一番、二番、三番、四番、五番、六番とずっととっていきまして、逆に狭い方からとっていきますと、ほとんど四百倍、五百倍、千倍、こういう格差があります。そこに同じ単一民族である日本人の有権者が住んでいる、こうなった場合に、こういうものに対する御配慮、御見解を、もし、ございますれば伺いたいと思いますので、お願いいたします。
  68. 杣正夫

    ○杣公述人 人口的要素と非人口的要素、中でも面積の要素を占うあんばい、考慮すべきかという問題かと思います。  原則として人口的要素が一番明白な基準でありまして、特に憲法には、「すべて国民は、個人として尊重される。」という選挙権個人主義というものが明記されておるのでありまして、そういうことから考えまして、結局一番文句のないよりどころは人口である。これは有権者と言っても余り変わりないのですが、アメリカでも英国でもそういうものをとっていて、面積の考慮ということになりますと、これはいろいろな考え方がございまして、例えばマスメディアがこれだけ発達しているんだ、だから、この前の選挙法の改正のときには、今まで二十日であったのが十五日に運動を切り詰めてもいいんだという理由づけもなされたくらいに、今は面積に関係なしに候補者あるいは政党の主義主張意見選挙民に浸透できると考えられております。私はそうは思わないので、もっと選挙人によく主義主張、政策が伝わるようにたっぷり時間をとってもらいたいという気がありますけれども、現在のところそういうふうになっております。そこで、今お考えになっているような、どれだけの面積があればどれだけ情報をつかまえにくいかというようなことは、かなり程度の問題、水かけ論の問題になり得るわけです。  そのほかに、非人口的要素というのは経済力だとか過疎だとか過密だとかいろいろなことがあるかと思いますが、そういうものを加えていきますと事がまとまらないと思うのです。ですから、せっかく今まで日本は旧憲法のとき以来人口的要素、それに行政区画というものを参考にしましてそれで人口的要素を多少修正する。だから、一倍から一・五倍とか一・七倍とかいったような、行政区画の関係ではそういう結果も出てくる。私はこういうことは仕方のないことであると思うのです。そういうことでございます。
  69. 小川泰

    ○小川(泰)委員 ありがとうございました。  私の持ち時間はまだあるのですが、全体がおくれておるようですからこの辺で終わりたいと思いますが、最後に一つ広瀬先生に、これはお答えはなくてもいいのですが、この種の問題がずっと出た場合に、マスコミュニケーションの皆さんの取り上げ方、出てくる記事、解説をなさる内容、こういったことを見ますと、六・六案だとかいうようなものが出てまいりますと、減る方の選挙区とふえる方の選挙区がわあっとアピールされて出てまいりますね。だから、国勢調査が出たら十・十かなとか出てまいります。それはそのとおりだと思うのです。  私などはこの種の問題を取り扱う基本は、あくまで、減る選挙区あるいはふえる選挙区というとらえ方も大事でありますけれども、そういう内容を抱えておる選挙制度全体、いわゆる何の影響もない百三十選挙区あるうちの多くの問題もひっくるめて選挙制度全体が今問われておる、こういうふうに私ども認識をいたしまして、関心を持ちながらこの種の問題を取り扱っていきたいな、こんな気持ちでおりますので、御意見は結構でございますが、そんな立場でさらに御指導をいただくとありがたいなということだけを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  70. 三原朝雄

    三原委員長 野間友一君。
  71. 野間友一

    ○野間委員 お忙しい中、四名の公述人の皆さん、どうもありがとうございましたりいろいろと有益な意見を聞かしていただきまして感謝申し上げたいと思います。  最初にお聞きしたいのは、広瀬公述人と杣公述人に対してでございますが、二人区の問題であります。  広瀬公述人は、公述の中で三から五人区はうまくできた制度だ。絶対に認められない方法ではないということを言われました。しかし、二人区は避けられないものではないということはこれまた事実であります。それは合区、分区あるいは境界の変更というような手法で十分可能であります。しかも、例えば今回六つのうちの四つが二人区、さらに十・十になりますと、これまた三つふえるわけです、試算からいたしますと。そうしますと、例外的な措置としてつくられたものが固定化して、さらにこれがふえていくということになっていくことは必定だと思うのです。  そうしますと、この増員区の場合もこれは例えば五は三と二に分けるとか六は二と二と二に分けるとか、ひっきょう三人区と二人区は非常にふえるというようなことは推測されるわけです。特に奄美の問題で杣公述人の方からもお話がありましたけれども、昭和二十八年、あの復帰のときに昭和三十年までのほんの臨時措置だ。しかし、ほんの臨時措置が自来三十二年も続いて、それは固定化した。ですから、例外を一たん設けますと、これがずっと固定化してさらにふえていく。その点非常に私たちは懸念をし、反対をしておるわけです。しかも、今国民意思は多様化して、これを議席にどうしても反映させるという点から、私は憲法の精神にももとるという考え方を持っておりますけれども、それらの点について。  さらにお話しいただきたいのは、絶対に避けられない制度とは言い条、これが一つの突破口になりましてずっとふえていくことが奄美の例から、あるいは今度六・六にしても十・十にしてもそういう手法でやったらふえていくということになっていきますので、そのあたりどういうふうにお考えになるか、広瀬公述人と杣公述人にまずお伺いいたしたいと思います。
  72. 広瀬道貞

    広瀬公述人 六十年の国勢調査、さらに六十五年の国勢調査、国勢調査のたびに自民党の六増・六減の手法でだけ手直ししていくのだとするならば州これはやはり相当深刻な問題だろうと思います。私は二人区が結構だと言うつもりは全くありませんで、できればこれは避けるべき問題だと思うのです。現に今回改正の対象になっていないような選挙区でも、五人区で選挙区の面積が非常に広いから、できれば三と二に分けてもらいたいのだというような話を聞いたこともあるぐらいです。つまり、二人区が一つできると、これがふえていくかもしれないという御懸念は全くそのとおりだと思うのです。だから、私は、そういうことは故意にやる話じゃないのだというような点、それから、抜本改正に着手していくその間の非常に限定的なものだということ、それを今回の法案の中でもはっきり書くべきだというふうに思っております。
  73. 杣正夫

    ○杣公述人 私、先ほどから申し上げておりますように、公職選挙法の形式、しかも正統的権力の座でありますところの議席の配分について、これ以上原理原則を逸脱した、本文の外側にはみ出ていくというようなことはもう絶対にやめるべきである、もし三人−五人というものを変えるとするならば、それはそれとして別に議論していただきたい、こういうふうに思っております。
  74. 野間友一

    ○野間委員 それから、要するに今国会で緊急的な措置として成立をというような趣旨のことを広瀬公述人から私はお聞きしたと思いますけれども、その点について私の方から意見を交えてお伺いしたいと思います。  先ほど同僚議員からのお話もありましたけれども、きょうは十二月六日ですね。十四日が会期の終了、十二月二十四日が通常国会、百四国会が召集されるということが決まったわけですね。ことしの三月末の住民基本台帳、それから、それを基礎にした有権者名簿、さらに十月一日には国調が済んだわけですね。そして、二十四日ごろに速報値が発表される、そういう段階であります。その段階で六・六が今審議をされておるわけですね。  このことは、昭和五十年と状況が全く同じなんですね。五十年のあの改正で、二・九二倍以内に抑えた、こう言った。同じ年の国調では三・七二倍になっておった。その後の総選挙の後、違憲訴訟が起こされまして、違憲状態という高裁の段階での判決が出たわけですね。その二の舞いです。  つまり、十月一日、これは速報値はまだですけれども目前だし、国調そのものはもう既に執行しておるわけですね。そうしますと、仮に六・六をやってもこれはまさに憲法違反部分的な手直しにしかすぎない。それで、最高裁判所の一対三格差、これを前提にしてもわずか部分的な手直しにしかなりませんから、あくまで依然として違憲状態が続いていく。そういう中で、国会として、そういうようなことがわかりながらこの六・六を通す必要があるのだろうか。むしろ二十四日の速報値を踏まえて、しかも二十四日から通常国会が始まるわけですから、それに向けてやる必要があるのじゃないかというふうに私は思うのです。  広瀬公述人は借金の問題を例に引かれました。私も非常に興味深くお聞きしたのですけれども、六十万円の返済期日が来て四十万はまだだということではなくて、むしろ六十万については五十八年十一月の最高裁判所の判決が出たときから既に返済期日が来ておるわけですね。しかも、四十万についても先ほど申し上げたようなことからして既に返済期日が来ておる、あるいは来てないとしても間もなく来るわけですね。ですから、私は、六十万と四十万を合わせてきっちりしたものを今の時期に、二十四日の速報値に向けて返済するような手だてをするのが我々の任務ではなかろうかと思いますが、広瀬公述人水嶋公述人、杣公述人にお伺いしたいと思います。
  75. 広瀬道貞

    広瀬公述人 国会は、既に三回、かなり長い会期の国会が開かれながら定数是正を見送ってきた。今回四度目であり、かつ、これは最高裁違憲判決が出て最初国会だ。この違憲事態を真っ先に是正するのが国会の役目だと思うのです。完全な解決、つまり十・十を含んだような解決というのは数字がなくてできないから、今できる範囲でやるというのが政治の責任じゃなかろうかと思うのです。その点で二週間の差というのは実際には私はもっと大きな差だと思います。政治的な意味では非常に大きな差だと思います。
  76. 水嶋晃

    水嶋公述人 先ほども申しましたように、あとわずか、二十四日ということですが、新聞によると十七日くらいにもわかるのではないか、本当かうそか私よくわかりませんが、そういうことなら、今ここで議論なさっておるのを結論づけるよりは、その数値を見てから抜本的に解決された方がいいのではないか。衆議院解散がいつあるのかそれはわかりませんが、いずれにしても選挙後二年しかたっておらないわけでありまして、まだ二年任期があるようでございますから。  それから、速報値基準にして選挙の関係で利用されたことが都議選のときにあると聞いておりまして、そういうことからしまして、確定値ではないけれども速報値基準にして考慮するということは十分あり得る議論じゃないかというふうに考えております。
  77. 杣正夫

    ○杣公述人 緊急避難的な措置としてある案が仮に出るとしましても、それが憲法公職選挙法の原理原則に即したものであるということであれば国民も納得すべきであるかと思いますけれども、それから大きく逸脱しているという場合にはやはり何とか早く是正してもらいたいという気持ちはすべての国民が持っているかと思うのです。そういう批判を込めながら、まともなものが出るまで我慢するというように、国民もそういう民主政治の進行に対して良識を持って対応していくべきではないか、こういうふうに私は思っております。
  78. 野間友一

    ○野間委員 広瀬公述人に再度お聞きしますけれども、先ほど私が申し上げたように、今のような手法でやること自体が違憲状態の部分的な手直しにしかすぎないのではないかというように経過からしても思います、五十年のときと同じような手法になっておりますから。ですから、今の時点において私の意見に対して特に何か意見がありましたら、どうぞつけ加えていただきたいと思います。  ついでに、時間がありませんのであと一点だけ。格差の問題ですが、水嶋公述人は一対二以内というふうにお答えになりました。一票の価値の平等の原則からして、格差が一対二とか一対三とかいろいろありますが、私は一対二未満というふうに主張しておりますけれども、その点について憲法の精神から、最高裁判所は別にして、格差基準はどうあるべきかということです。この点について広瀬公述人、それから杣公述人にお聞きして、終わりたいと思います。
  79. 広瀬道貞

    広瀬公述人 最初の問題ですが、杣さんのように、もうちょっと待て、十二月末には新しい数字が出るじゃないか、それからでも有権者は寛容に待ってくれるのじゃないか、私も国会をそういうふうに信用できれば非常に幸せだと思うのですが、それができないという点が最初の点です。  それからもう一つ、今出ているのよりもっといい案ということもあり得るわけですけれども、今国会に出てきている自民党の六・六案、野党の六・六統一案先ほどから何度も言いますように、理想的な案からいえば、欠陥をも含めて、差よりも共通点の方が多い案だと思うのです。それが今の国会の常識かなというふうに見たわけで、それがいいというふうには思っておりません。  最後に、抜本改正のときの格差の問題ですが、今の定数表ができたとき、ほとんど格差なしにつくったわけですね。それで四十年近くたつ。その間にやはり大変な人口の流動がありまして、六・六とか十・十ではなくて、実はもっとすべての選挙区で都市部と農村部との差というのが非常に大きくなってきているわけです。自民党が長期政権を握っている一つの理由はその辺にもあるのじゃないかと思うくらい、つまり都市部の票が軽く、農村部での票が重い。その全体を手直しすべき時期に来ていると思っているわけであります。そして、新しく表をつくる場合には、格差が一・五までいいとか一・三までいいではなくて、やはり限りなく一に近いところでつくっていく性格のもので、許容限度は何だということから始めるべきではないと思っております。
  80. 杣正夫

    ○杣公述人 非常に難しい問題でありますけれども、私も、できるだけ国民立場に立って、そして選挙権の平等という方向に向けて進んでいただきたいと思うわけです。  選挙法の処理につきまして、ともすれば現職議員立場というものが非常に強く出てくる、これはどこの国でもそういうことであります。これを今の日本の現状においてこのままやっておりますと、結局国民選挙から離れていく、無関心になっていくという傾向も現実にあらわれております。これが、国民立場に立って、選挙国民のものだということをはっきりさせるような方向にこの定数是正の問題も進みますと、候補者にとって選挙は次第にしやすくなってくる。今、選挙に金がかかる、政治に金がかかるということが問題になっておりますが、選挙国民選挙になったらお金はかからなくなっていく、これは全く理屈でありますけれどもいそうなると思うのです。  例えば、一八六七年に英国で選挙権の大幅な拡張がございました。そのときに保守党はかなり慌てたのであります。それまでの名望家といいますか、そういうものに依存していた選挙のやり方では、これだけ選挙権が拡張されたらもうだめだということで、新しい保守党の近代化ということがそこでなされまして、集票組織の組織化ということについて組織政党に、この一八六七年の選挙法の改正機会に脱皮していくのであります。  それが今日の保守党の姿でありますが、現在この目の前で、当面の考え方でこれは不利だ、これは有利だというようなことでいろいろと問題がありますけれども、やはりこういう制度というのは、一つの基本の形ができまして、それに対して政党、候補者、政治活動を向けていくべきである。そうすることによって政党の本当に根のある民主的発展というものができると思うのであります。  それから、どの程度格差を縮小すればいいかという問題でありますが、今の現状からすれば、私はもう、先ほども申しましたように、少なくとも一が見える程度の状態にまで持っていってもらいたい、こういうふうに思っております。
  81. 野間友一

    ○野間委員 ありがとうございました。
  82. 三原朝雄

    三原委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位に対し、お礼を申し上げたいと思います。貴重な御意見をお述べいただいて、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、心からお礼を申し上げます。  これにて公聴会は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会をいたします。     午後零時四十二分散会