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1985-11-27 第103回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月二十七日(水曜日)     午前十時十六分開議 出席委員   委員長 三原 朝雄君    理事 伊藤 公介君 理事 奥野 誠亮君    理事 小泉純一郎君 理事 羽田  孜君    理事 佐藤 観樹君 理事 山花 貞夫君    理事 伏木 和雄君 理事 岡田 正勝君       上村千一郎君   小宮山重四郎君       佐藤 一郎君    坂本三十次君       塩崎  潤君    近岡理一郎君       西山敬次郎君    村岡 兼造君       森   清君    角屋堅次郎君       上西 和郎君    川俣健二郎君       堀  昌雄君    斉藤  節君       中村  巖君    小川  泰君       野間 友一君  出席国務大臣         自 治 大 臣 古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         総務庁統計局長 北山 直樹君         自治省行政局選         挙部長     小笠原臣也君  委員外出席者         議     員 森   清君         議     員 山花 貞夫君         議     員 伏木 和雄君         議     員 岡田 正勝君         議     員 江田 五月君         総務庁統計局統         計調査部国勢統         計課長     酒井 忠敏君         自治省行政局選         挙部選挙課長  吉田 弘正君         自治省行政局選         挙部管理課長  岩崎 忠夫君         自治省行政局選         挙部政治資金課         長       中地  洌君         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ————————————— 委員の異動 十月三十一日  辞任         補欠選任   足立 篤郎君     塩崎  潤君 十一月二十七日  辞任         補欠選任   佐藤 一郎君     近岡理一郎君 同日  辞任         補欠選任   近岡理一郎君     佐藤 一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  公職選挙法の一部を改正する法律案金丸信君  外六名提出、第百二回国会衆法第二九号)  公職選挙法の一部を改正する法律案田邊誠君  外六名提出、第百二回国会衆法第三七号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  議事に先立ち、この際、謹んで御報告を申し上げます。  既に御承知のとおり、長い間本委員会委員長として御活躍されました中野四郎君が、去る十月二十一日に逝去されました。まことに痛恨の念にたえません。  ここに、委員各位とともに故中野四郎君の御冥福を祈り、謹んで黙祷をささげたいと存じます。一全員御起立をお願いいたします。——黙祷。     〔総員起立黙祷
  3. 三原朝雄

    三原委員長 黙祷を終わります。御着席を願います。      ————◇—————
  4. 三原朝雄

    三原委員長 第百二回国会金丸信君外六名提出公職選挙法の一部を改正する法律案及び第百二回国会田邊誠君外六名提出公職選挙法の一部を改正する法律案の両法律案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  両法律案につきましては、第百二回国会において既に提案理由説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————  公職選挙法の一部を改正する法律案金丸信君外六名提出)  公職選挙法の一部を改正する法律案田邊誠君外六名提出)     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  6. 三原朝雄

    三原委員長 これより両法律案に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上村千一郎君。
  7. 上村千一郎

    上村委員 本委員会がようやく開催の運びになりまして、この臨時国会に課せられた最大課題であります衆議院議員定数是正につきまして審議が始められ、私に質議の機会を与えていただきましたことにつきまして深く感謝の意を表する次第であります。  私、実はこの法案につきまする質疑をいたすに際しまして、従来の法案に対する審議その他関連の点を検討させていただきましたところが、非常に多くの問題点指摘され、そして真剣な質疑が行われておりました。改めて記録を拝見しまして感銘を覚えたわけでございます。  これを今振り返ってみますと、まず自民党案国会提出されたのが本年の五月三十一日でございます。いわゆる野党四党の統一案提出されましたのが六月の十七日ということになっております。そして、本会議での法案趣旨説明が行われましたのが昭和六十年の六月二十四日でございました。そして、それを終えまして、当委員会におきましても提案内容趣旨説明が行われました。そして、これが実は閉会中の審査案件として議決されまして継続案件になっておるわけであります。その後精力的にこの法案につきまして当委員会閉会中も審議に取り組まれたわけです。そして、委員方々が現地に調査のために派遣されまして、その報告が八月三十日に当委員会報告されて聴取されておるわけであります。同日に四人の参考人方々から御意見が聞かれておる。そして、委員方々から政府御当局に対しまして質問が展開されておる。そして、本日に至っておるという経過でございます。  実は、この法案国民の注視の的になっておりますし、また立法府としましても最大案件になっていることは公知の事実であるわけであります。それは一体どういうことかということでございます。これは既に、先ほど申し上げましたような審議過程におきましてもいろいろと論議されておりますが、民主政治基本にかかわることである。しかも、この直接の問題になっておりますのが衆議院議員定数配分の問題でございますが、このことは憲法上から見ましても重要な位置づけになっておりますことは今申し上げるまでもございません。  それで、この問題につきまして、自民党におきましても既に五十七年以来いろいろと党の正式機関によって討議が開始されて、野党各党におかれましても重大な関心をお持ちになられて真剣に討議されておったものだと思います。しかるに、先ほど申し上げましたようないきさつで、世論の動向その他厳しくなってまいっておる。そして、それに追い立てられるような形で国会に各政党法案提出されたということなんです。これは私は、実は重要な問題であるから非常におくれたと思うのであります。しかし、重要であるからといってこれは解決が延びていいという議論にはならぬ。ここに複雑な問題が展開されておるわけであります。  と申しますのは、実は憲法におきましても法のもとに平等、憲法十四条第一項におきまして、この法のもとの平等、一票の重み、一票の価値ということが論議されてきております。しかし、それたらば人口比例によって、そして定数配分をしていけばいいか、それほど簡単なものではないわけです。  憲法の十三条を見ますというと、各人の幸福追求権権利が保障されております。そういう意味におきまして、人口別だけでこれを考えるわけにいかぬ。  何とならば、一票の価値が薄いとされておる地域、要するに過疎地帯、そういうような、本法案におきまする減員対象選挙区としましても、その住んでおられる人々の幸福追求権というものがある。ですから、そのいわゆる非人口的要素と言われておる最高裁の要件、そういう部面が非常に働いてくるわけでありまして、一律に人口によって配分していけばいいというほど簡単なものではないし、また日本国憲法はそれだけを要求しておるわけではない。こういうわけでありまして、具体的な案を出すに際しましては極めて難しい問題を抱えておるわけであります。  なお、選挙区の問題につきましても、また定数配分の問題にいたしましても、各政党の利害に極めて影響が深い。また、その選挙区の議員方々につきましても影響は極めて深いわけなんです。これは直ちに党利党略派利派略だとか個人のエゴだとかといって割り切るわけにいきません。これは今、憲法上におきましても、単なる人口比例というだけではなくして非人口的要素というものを加味すべきであるということは前提となっておる。  そうしますと、いわば原理原則で貫かなければならぬ、合理的判断をしなければならぬという要請とともに、具体的妥当性といいましょうか、適正というものをどこへ置くかというものであります。これにつきまして非常に意見が分かれてくる、そして真剣な討議がされる、これは私は当然なことであるというふうに踏んまえておるわけでございます。  でございますが、しかし、この五十八年十一月の最高裁の大法廷判決違憲状態判決、また本年七月の違憲判決というものが出てまいりますと、これは非常に難しい、重要な問題であるとばかり言ってはおれない。重要な問題であることに間違いありませんが、これを何らか早期に解決をしていくということは立法府として当然の対応措置であろう、こう思いますし、その対応措置立法府がとっておると思うのでございます。そういう点につきましていろいろとこれから論議を進めていく委員会になると思います。  既にきょうの新聞などを拝見いたしましても、世論を代弁しておる各新聞社としましても、この法案についての問題点をもうほぼ集約されております。私も、先ほど申し上げましたように、今までのこの法案に対しまする趣旨説明なりあるいは質疑なり参考人の御意見なり、そういうものを拝見いたしまして、ほぼ出尽くしてきておるのではなかろうかと思われるように感じます。しかしながら、基本的な考え方の相違というものが浮き彫りになっておる。ですから、これからその点についてお尋ねをしていくという順序になるかと思います。  その前に、実は、これはどうしても、どこら辺が妥当であるか、どこら辺が適正であるかというような判断になってまいります。なぜそういうことか。それは憲法上におきましても最高裁判決におきましてもそれを指摘しておりますので、お尋ねを進める前にその点を申し上げたがら、あるいは大臣からでもちょっと御意見をお漏らし賜れればと存じます。  五十一年の判決を拝見しますというと、非人口的要素内容が記載されているわけです。それは従来の選挙の実績、それから要するに、選挙区と国との割合と申しましょうか具体的な状態、あるいは市町村その他の行政区画の問題とか面積の大小、人口の密度、商工業が多いのか農業が多いのか、その住民の構成、それから地理的状況、こういうようなことが指摘されております。そして、審議過程におきましていろいろと御質問をされる委員方々あるいは答弁をされておられる方々表現方法を申し上げますれば、あるいは地理的内容だとか従来の伝統的なものだとか経済的なものだとかあるいはいろいろなそういう要素、こういうことになるわけでございまして、これは最高裁もはっきり支持をいたしておるわけであります。実はこの問題につきまして、暫定的に今回の法改正につきましては案を取りまとめ、そして抜本的な改正検討というものは、この十月一日に行われました国勢調査の結果に基づきまして行おうというようなふうになっております。  自治大臣お尋ねするわけですが、今回はこの法案につきまして、政府提案でなくて各党法案になっておるというわけでございますが、所管の自治省とされましては、その問題につきまして何らかお考えになった点があるのかどうか、最初お尋ねをいたしておきます。
  8. 古屋亨

    古屋国務大臣 自治省としてどう考えるかということでございまして、私どもは先ほどのお話のように、この七月の最高裁判決によりまして違憲状態にあるという判決が出ましたので、これはどうしても早急に是正すべきものでありますが、やはり選挙の定員の問題は基本的部分の問題でございますので、これはどうしても立法府において真っ先に考えるべき問題である。政府におきましては、その際立法府におきましてできるだけ早急に御検討いただける資料と申しますか、役立つ資料を御要求によりましてはどんどん提出しておるのでございます。  非人口的要素を加味すべきであるという御意見もございましたが、衆議院議員選挙区別定数配分基礎をなすものは人口であると考えておりますが、それが唯一絶対の基準であるとは考えなくて、最高裁判決におきましても、今先生のお話のように、行政区画地理的状況等事情が考慮されてしかるべきものであるということを昭和五十一年四月十四日の判決に示されております。そのような事情を勘案して定数配分を行うことにつきましても、おのずから限度があると考えられておりまして、その結果、合理性を有するものとは到底考えられないような大きな格差が生じますことは、憲法上許されないものであるというふうに考えておる次第でございます。
  9. 上村千一郎

    上村委員 私は、衆議院議員定数是正をめぐる各般の情勢にかんがみまして、今臨時国会において一日も早く定数是正を実現するべきであると考える一人であります。この観点から、自由民主党定数是正案並びに野党四党のそれぞれの提案者の方に多少のお考えをお聞きいたしたいと存じます。  去る七月十七日に最高裁判決が下されまして、そして現行衆議院議員定数配分規定憲法に違反しておるというふうに判断されたということは御案内のとおりであります。この前の通常国会のときには、その判決が出るであろう、出たら違憲判決、従来の違憲状態というよりも一歩進んで違憲判決が出るんじゃないか、何とか通常国会においてこの法案について成立を期すべきではないかという御意見現実に出ておるわけであります。それで、そのとき論議されましたような結果になりまして、そして、この七月に違憲判決が出たという状態であります。  そういうことで、民主政治根幹なる議会あるいは国権最高機関である国会を構成する衆議院議員定数基盤違憲とされたわけでありまして、これは極めて異例な事態であることは間違いございません。いまだこういう事態はなかった。立法府の一員としまして私もこの事態を深く憂慮しておる一人でございます。この最高裁違憲判決をどのように受けとめられておるかということ、これは今古屋自治大臣から政府側のお考えを述べられましたが、政党側の御意見を承りたいと思うわけであります。  この最高裁の大法廷における判決は、三権分立をとる我が国におきましても司法から立法に対して異例な注文、警告がなされておるということは間違いがありません。主権者たる国民の強い世論もこれに対応して起きてまいっております。三権分立を守って民主主義を守っていくためには、国権最高機関でありまする立法府といたしましては、司法のかかる判断に対して直ちにこたえてまいる責任があると私も思っております。この意味からも、さきの最高裁判決が下された最初の今臨時国会にこの定数是正を実現することの必要性につきまして、提案者方々お尋ねをいたしておきたいと私は思います。まず、自民党の案の提案者、それから野党統一案提案者の方にお尋ねをいたしておきたいと思います。
  10. 森清

    ○森(清)議員 上村委員にお答えいたします。  最高裁において違憲判決を受けた定数配分規定については、速やかに是正をしなければならないという方針はただいま御指摘のとおりでございます。ただ、この法案提案いたしておりました段階ではまだ違憲判決が下っておりませんでしたが、七月に違憲判決もありましたので、なおその必要性が高まっておる、このように考えるのであります。  なお、敷衍して申し上げますと、最高裁において衆議院定数に関して三回判決がございました。第一回の五十一年判決もこの六十年判決と同じように、定数配分規定憲法違反である、ただし事情判決法理によって選挙は無効としたいという判決がございましたが、そのときは既に五十一年法改正を行っておりまして、違憲とされた法律は既に過去のものでありました。したがって、その後の選挙について違憲とされた法律によって選挙を執行したことはございません。  五十八年判決においては、その格差状況違憲状態にあるが、国会においてそれを是正するにはそれ相当の期間を要するであろう、その合理的な期間内であるならば違憲とはしたい、このような考え方に基づいて五十八年判決違憲とされたかったのであります。  したがって、六十年判決においては、その合理的期間も過ぎたということで違憲判決でありましたが、五十一年判決と同じように事情判決法理を援用して我々の五十八年総選挙違憲、無効とはされたかったわけであります。  そこで、このような状態になっておるのは七月の判決以来我が国では初めての状態でありまして、現実に我々の選挙基盤は既に違憲と断定されておる法律によって我々がここに、国会に籍を持っておるわけであります。事情判決法理によって我々が選挙を無効とされておらない。我々全部であるか、あるいは一部であるかについてはなお問題がありますが、そのような状態になっておるわけであります。  したがって、我々といたしましては、自由民主党といたしましては、早急にこの是正を図らなければならない、こういうことで続継審査をお願いし、そして、この臨時国会始まって以来、早急な審議、そして是正案成立、これに向けて最大努力をいたしておりますし、今後も努力をいたしまして違憲状態違憲法律を一日も早く是正をして合憲の法律としたい、このように考えておる次第でございます。
  11. 山花貞夫

    山花議員 国民参政権議会制民主主義を支える根幹にある基本的権利である、したがって、この基本的権利が著しく侵されているという現状は国民政治に対する期待、関心が失われることになり、民主主義の危機に通ずる重大な事態になる、これが我々野党統一案をつくるに当たりましての基本的な認識でございます。そうした認識の上に立ちまして、御指摘最高裁判決の重さを私たちは受けとめているところでございます。  ただいまもお話ありましたけれども、今回の七月の判決に至るまでには、五十一年の最高裁判決以来、最高裁判決だけではなく、その他の多くの下級審判決を見てみましても、いわば裁判所の立場といたしましては今日の不均衡が違憲状態にあるということにつきましては判例の流れとなっておったわけでありまして、今回の最高裁判決違憲状態ではなく違憲であるということを明確にしたという意味におきまして、我々は、いわばそうした意味における最高裁判決の最後の判決があった、このように受けとめていかなければならないと考えているところであります。  同時に、前五十八年の判決におきましても、憲法選挙権の平等の要求に反するに至っており、違憲状態であると判断した上に、「できる限り速やかに改正されることが強く望まれる」といたしまして、国会の自律的、公正な是正の実現というものを期待しているわけでありまして、今回の判決につきましては、多数意見の中にそうした指摘はありませんけれども、少数意見検討してみるならば最高裁のいら立ちと思われる点も感ぜられるわけでありまして、私たちは、申し上げましたとおり、この判決重みをしっかりと受けとめて、野党統一案を、先ほど述べました基本認識のもとで提出した次第でございます。抜本策の確立というものを当然の前提としながら、当面の暫定措置として本法案野党四党が統一してまとめたところでございます。  以上でございます。
  12. 上村千一郎

    上村委員 現在一部に、定数是正は将来の課題として昭和六十年国勢調査の結果を受けて行えばよいではないかという意見もあります。確かに現在提出されておる定数是正案というものは、昭和五十五年の国勢調査数値基礎としております。そして、昭和六十年の国勢調査数値が判明する、これは明確な最終集計というものは来年の十一月というように予定されておりますが、しかし、もう十二月中には速報値が、最終値ではありませんけれども報道されるというように承っております。そういう状態になっておる。だから、現在の定数是正案では是正が十分ではないんじゃないかというような御意見が出ておる。これは現実に今までの論議の中の過程においても出ておる。しかしながら、昭和六十年国勢調査の結果が判明するのは来年十一月になる。来年末に出されるのであります。確定の数値が出るのは来年の十一月、速報値はこの十二月末というように報道されております。  そういういろいろな点を考えますというと、これは御意見もいろいろ十分出てくるわけですが、先ほど各政党の代表の方々お話しになりましたように、違憲という状態判断が示されたという状態になってまいりますというと、これは速やかに何らかの対応をし、結論を出さなくちゃ立法府としてその責任を果たしたと言えないだろうと思うのですね。それで、将来においては不十分ということも予想されますけれども、現在提案されておる定数是正案を全然無視しまして、そして将来抜本的なことを検討すればいいじゃないかというわけにもいかないんじゃないかと存じます。ここら辺、将来の抜本対策はどうするか、もう少し具体的に自民党の方も言うべきじゃないか。そうしたいというと、この暫定案が通ったならばあとはほおかぶりをしやせぬかというような危惧の念が一部にあると言われて報道されております。これは現実新聞などを見ますというと、そういうことが出てきておる。こういうような点が当委員会におきましても今後の審議の一つの重要な課題になってくるんじゃないかというふうに受けとめておるわけであります。  この自民党案としましての六・六増減案また野党四党のいわゆる統一案、それを拝見いたしますというと、暫定的措置というふうに趣旨説明の中にも述べられております。この点につきまして、ひとつ自民党提案者野党統一案提案者の方からお考えを承っておきたいと思います。
  13. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  先ほどお答えいたしましたとおり、憲法違反と断定されておる現行定数配分規定は一日も早く是正する必要があるわけでありまして、従来国勢調査人口の結果に基づいて更正をしてまいっておりますので、現在用いられる国勢調査結果は昭和五十五年国勢調査のみであります。したがって、この結果に基づいて一日も早く是正をすべきである。それが三倍以内ということを目途といたしておりますので、これが定数配分全体の精神に沿うかどうか、今後なお検討しなければならない問題が多々あると思います。しかし、最高裁判決違憲とされないその範囲内でできる範囲のことをやろうとすれば、この案しかとり得ないのじゃないかということで我が党が提案を申し上げた次第でございます。  そしてさらに、既に国勢調査が行われたわけであります。この結果は、通称速報と言われておりますが、それが十二月の下旬には出ますし、また最終的に確定するのも来年の十一月、このように伺っておりますので、そのようなものが出れば当然これは手直しをしなければならない、このようにも考えております。  さらに、定数配分の問題は、いわゆる選挙権の平等の原則というものをいかに現実に即しながら反映していくかという非常に難しい問題がございますが、その抜本的改正についても、これは単に自由民主党のみならず国会の問題でございますので、与野党を通じてお互いに検討をしていきたい、このように野党間とも話し合っているところでございまして、直ちに検討を開始したい、このように考えておる次第でございます。
  14. 山花貞夫

    山花議員 私たち野党四党は、日本における選挙制度としていわば成熟した、完熟した中選挙区制を前提といたしまして抜本的な対策については引き続き検討して処理をする、そのことを前提として、とにもかくにも違憲状態にある今日の極端な不均衡について是正暫定策をつくらなければならない、こうした気持ちで今回の統一案をつくったことにつきましては、提案理由の中でも明らかにしているところであります。  我々は、今回の暫定策によりましては、いわゆる一票の重みにつきましては一対三、一対二・九九程度にしか改善されません、それではまだ十分ではないと考えております。したがって、抜本策につきましてはより一票の価値が平等になる方向に沿って、かつ三人−五人の中選挙区制を堅持した上でつくらなければならないと考えているところであります。  なお、御指摘の十二月下旬と予定されておりますけれども速報値が明らかになった場合には、その段階で今日の六・六案で一対三とされております各選挙区だけではなく、より三を超える地域も出てくるわけでありまして、この速報が出た段階では直ちに、少なくとも一対三の範囲におさまるということなどを含めた暫定的な措置、具体的な措置を講じなければならないと考えているところであります。今回の暫定策はあくまでも五十五年国調に基づいての一たんの整理ということでありまして、今後の国調の速報の発表あるいは確定ということを見まして次の段階に進んでいかなければならないということが我々の共通の認識であることについて御報告申し上げる次第です。
  15. 上村千一郎

    上村委員 ただいま各党提案者からお話がございました。そういうふうに私どもも受けとめております。自民党案としましても、暫定措置として、いろいろ不十分ではあるけれども、対応するにはこれが適切であろうというふうな案であろう。野党四党統一案も、原理原則からいえば、憲法十四条一項の点からいえば非常に不満ではあるけれども、この前の三倍以下、一対二・九二において極端な格差は一応解消したであろうという最高裁判断の線で歩み寄られまして、そして統一案ができたものだと受けとめております。これは趣旨説明の中にもそういうふうにお触れになっておる。このことは立法府におきまして各政党がずっと、とにかく暫定案でもこの際まとめていこうという努力が結集しておると思います。この点につきましては国民もよく理解しておると思いますが、それならばなぜすっとできないのかというと、これは二人区の問題であります。この問題が実は最大の相違点になると思います。二人区問題につきまして少しお尋ねをしてまいりたいと思います。  自由民主党定数是正案野党四党の統一案とを比較しますと、最大の相違点が、というよりも唯一の相違点と言っても過言でない二人区をどう評価し、どう位置づけるかということであろうと思います。これが二人区の問題でございます。自民党は二人区というものを設定した、これはやむを得ない暫定的な措置としてやった、将来は抜本的にいろいろ考えていこうという御趣旨の答弁になっております。それから、統一案の方としましては、二人区というものはけしからぬ、こういうことである。これは自民党が二人区制を認めておいて、そうして、これから要するに一人区、完全な小選挙区制、これの突破口にするのじゃなかろうか、あるいは従来の四人区、五人区というようなところを二つに割って二人区を創設していくのじゃないかというようないろいろな意見が、新聞紙その他の報道によりますと、これがうかがい知れる点があるわけであります。  この二人区の設定というものにつきまして、自民党提案者それから統一案提案者にお考えを承っておきたいと思います。
  16. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  我々がこのいわゆる六・六案をつくりましたときには、総定数を五百十一名そのまま据え置く、そして格差は三倍以内におさめる、最小限の是正を行う、このような基本方針のもとにつくった案でございます。そういたしますならば、選挙区の改変ということは選挙制度そのものの改変につながるような大きな問題でありますので、定数の増減をもって措置するのが最も暫定案としてはふさわしい、このような考えによりまして、上から六選挙区、下から六選挙区それぞれ定数を増減してこの案をまとめたものであります。  御高承のとおり、選挙区制については、一人を選出するのを小選挙区制、二人以上を選出するのを大選挙区制というのでありまして、我が国におきましても明治二十二年にこの国会が始まったときには小選挙区制で始まりました。明治三十三年に大選挙区制になり、大正八年に再び小選挙区制になり、そして大正十四年に現在の中選挙区制になったわけであります。  そのときの考え方でございますが、明治二十二年の小選挙区制といっても一人区に対し、二人区もあったわけであります。それから、明治三十三年の大選挙区制といいましても一人区から十三人区まで、各区ごとに定数がばらついておりました。しかし、それをも通称大選挙区制と言っております。それから、大正八年のを小選挙区制といいますが、これも一人区を原則としますが、二人区、三人区を含んで大正八年の定数ができております。それを三人区を含んだもの、二人区を含んだものを含めて小選挙区制と通称言っておるわけであります、すべてこれは通称の問題であります。大正十四年に中選挙区制にしたときは、出発当初はもちろん三人−五人でございましたが、それ以来数えて六十年でございますが、六十年のうちの二十数年間はその原則で通しております。あとの三十数年は、三人−五人の中選挙区と一人区の小選挙区を含んでやっておりますが、これも中選挙区制と言っておるわけであります。  したがって、我々は、そういう言葉の概念規定から、あるいは歴史、沿革から、中選挙区制は三−五に限るんだというふうには考えておりません。しかしながら、中選挙区制とは三から五だなというおおよその合意があるわけでありますから、今後検討するときは、それを原則としてやるが、奄美復帰に伴う小選挙区制たる一人区もあると同じような意味で、この例外的に生ずる二人区はやむを得ずできたものである、二人区をつくろうとしてやったものではない。例えば、五人区を分割して三人にするとか四人区を分割して二人にする、こういうことをやっておるわけじゃないのでありまして、人口の調整上やむを得ずできた案である、このように考えておりますので、二人区が中選挙区制度に反するというふうな認識は毛頭持っておりません。  しかし、先ほど申し上げましたように、中選挙区制という制度の本質を生かしていくにはやはり三から五がよかろう、こういうことも考えられますので、将来の検討として、抜本的な改正を中選挙区制のままでやるとすれば、そういう考え方も一応大きな基準になるものである、こういうふうに考えております。しかし、今回できました二人区は、奄美の一人の小選挙区を現在包含しておると同じような意味において、概念的に広い意味における中選挙区制を崩したものとも私は思っておりませんし、今後こういうものは抜本的改正をするときに検討すべき問題であり、言われるとおり暫定案である限りはこれは合理的であり、また大方の国民あるいは大方の議員の御賛同を得られる案ではないか、このように考え提案しておる次第でございます。
  17. 山花貞夫

    山花議員 我々、野党統一案を作成した側といたしましては、二人区創設には絶対反対である、こうした立場で一貫しているところであります。私たちといたしましては、今お話ございましたけれども、我が国選挙制度の歴史を振り返ってみるならば、沿革的には、二名区は小選挙区制の範疇に入るものではなかろうか、中選挙区制は三名ないし五名を指すのだ、こうした考え方が定着している、このように考えるものであります。二名区は小選挙区制に通ずるものである、私たちはこのように考えているところであります。  先ほど来議論となりましたとおり、今回のそれぞれの提案は、いずれも暫定策と位置づけられております。将来、国調の状況を見て抜本策をつくらなければならない、これが当然我々のこの次の大きなテーマとなるわけでありますけれども、政府・与党におきましては——自民党におきましてはと申した方が正確かもしれませんけれども、抜本的な改正を行うとするならば、現行選挙区制を前提としての抜本改正は困難である、すなわち小選挙区あるいは比例代表という、制度を大きく変えることがなければ抜本改正は難しい、こういう考え方が支配的であるというように私ども承っているわけであります。こうした暫定策であるといたしましても、小選挙区制に通ずる二人区が創設されるということは、将来の抜本策における小選挙区、比例代表、そうした制度に通ずる危険がある、これが私たち認識であるわけであります。  本来、今回の定数是正が問題となりましたのは、最高裁違憲判決基本的な指摘におきましても定数是正にあるわけでありまして、選挙制度の改革にあるわけではありません。国民世論が問題としておりますのも一票の格差の問題でありまして、定教を是正して平等を実現せよというのが有権者の要求であると私たちは受けとめております。国民の声として、現在の中選挙区制がだめである、選挙制度を変えるという声ではないと受けとめているわけでありまして、私たちは、そうした定数是正ということで今後も貫いていかなければならないと思います。  以上申し上げた観点から、二人区につきましては、我々は一貫して反対をしてまいりましたし、これからもその立場を堅持していくということについて御報告申し上げる次第であります。
  18. 上村千一郎

    上村委員 これは両法案の唯一のと言っていいくらいな争点になっておるようでございます。  具体的な統一案の問題につきましては、兵庫五区の問題などにつきまして森議員から本会議質問がされております。具体的にいろいろな問題が出されておりますが、私に与えられておる時間は一時間でありますし、同僚の質問がございますので、突っ込んだ質問はちょっと時間的にできませんので省かせていただきます。既になされておりますので、お互いにひとつ論議を進めていかなければならぬ、こう思っております。  次の一つの争点というものはどうか。今後の抜本策についてどう具体的に進めていくかという一つの大枠、これはまだ突っ込んで余り言っていないような気がします。時間がもうありませんから、その問題に入りたいと思います。  まず、定数配分基本になりますのは人口問題であります。これは間違いない。この人口という、人の数という問題につきまして、最高裁判決などを見ますと、有権者の数が出ておりますね。それから、公職選挙法の別表第一の末尾にありますところを見ますと、はっきり国勢調査人口考える、五年目ごとに見直すことを例とするという規定があります。こういう点を考えますと、我が立法府としましても、一体何をやっていたのだということを言われるおそれがありますけれども、冒頭に私が申し上げましたように、重要な問題であり、各党も一生懸命になってやっているわけであります。けれども、なかなか重要な問題だから結論が出なかったということであろうと思いますが、法律にはそういうふうに入っている。  それで、この人口という問題については将来どういうふうに考えていくかという問題です。なぜこういうことを言うかというと、過密、過疎の対策あるいは減員区の状態参考人などの御意見を拝見しますと、一番最初に申し上げましたように、非人口的要素、こういうものが入ってくるわけであります。そうすると、頭数だけというわけにはいかない。そうかと言って、憲法第十四条第一項によれば、頭数ということになることははっきりしておる、こういうふうになります。  それで、総務庁の方から見えておる人がございましたら、国勢調査の今後の発表の見通し、それをひとつ。
  19. 北山直樹

    ○北山政府委員 お答えいたします。  昭和六十年の国勢調査につきまして、要計表による人口、これはいわゆる速報値でございますけれども、これは本年の十二月の下旬に発表する予定にしております。  それから、確定値でございますが、これは基本集計と申しますが、その結果を六十一年の十一月に公表する予定にしております。  以上でございます。
  20. 上村千一郎

    上村委員 新聞などに出ておりまして、いろいろ論議が重ねられておりますね。というのは、ここに十月二十一日のある新聞でございますが、最大の千葉四区と最小との格差、これが四・六四倍になる、是正は八増・八減になるだろうとか、いろいろな見通しが出てきますね。それから、相当詳細な人口の数が発表されておる。これはどういうところから出たのでしょうね。
  21. 北山直樹

    ○北山政府委員 実は私ども、人口のそういう見通し等はやっておりませんで、現在は総務庁に統計センターというのがありますが、そこに集まってきます調査の書類、調査票その他を集計しましてちゃんとした数を出す、こういうようなことに努めておるわけでございます。  今先生御指摘の点につきましては、これは統計法第十五条二項というのがございまして、これによりまして、国勢調査の場合はいわゆる地方集計というのが認められております。したがいまして、これは法的には、いわゆる指定統計である国勢調査の結果ではないわけでございますけれども、各都道府県で地方集計の結果を出しているというふうなところがあると思いますので、そのようなものを使って推計している面もある、こういうふうに考えております。
  22. 上村千一郎

    上村委員 とにかく本年十月一日の国勢調査の結果に基づきまして相当見直さなくちゃならぬ。要するに、各党でありますが、この暫定法案をおつくりになられる際の基本とは大分違ってくる基礎数字になるであろうと思うんですね。そういう意味において、これから抜本的な対策がどうだというのが真剣に討議される、私は当然だろうと思うのであります。今後のこの抜本策の取り組み方につきまして、各党からひとつお考えを承りたいと思います。
  23. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  定数是正あるいは衆議院議員の選出方法そのものについての抜本改正策については、今後各党とも協議の上、方針あるいはそれに基づく調査、あるいはその具体案の作成というものを行っていきたい。したがって、ただいま自由民主党内においても、その抜本策とはどのような方向であるか、あるいは内容のものであるかということについて、いまだ討議はいたしておりませんし、まして、いわんや各党との協議もいたしておりません。しかし、方向といたしましては、やはり一票の価値の平等をできる限り実現していく、そして先ほど上村委員指摘のとおり、最高裁判決においても認められておる各般の事情というものも十二分に考慮をしたから、そしてまた政治の場で解決する問題でありますから、そのような実現可能な案を目指していくべきものであろうと考えておりますが、具体的な方向なり内容については、いまだ結論を得ておらない段階でございます。
  24. 山花貞夫

    山花議員 今委員会が開催されるに当たりまして、野党四党は方針を確認をいたしました。六十年十月の国勢調査、すなわち速報値により直ちに是正措置を行い、引き続き、憲法の精神に基づく抜本的な定数是正の実現を図る、これが現在における野党の意志統一したところであります。  抜本策につきましては、一対三ということではなく、より平等を実現するためということで、各党が議論をしているところであります。  その中身につきましては、各党若干中身が違っていると思いますけれども、現行定数は守る、あるいは第三者機関にゆだねるか、あるいは期限を設けるか等につきましては各党それぞれの立場で議論をしているところでありまして、要は、憲法の精神に沿った抜本策を実現しようをいうことで、各党が今内部的な議論を進めている、こういう状況でございます。
  25. 上村千一郎

    上村委員 まだまだ具体的な問題でお聞きしたいこともたくさんありますが、私に与えられた一時間がもう迫っておりますので、最後に締めくくって、同僚議員質問に譲りたいと思います。  実は二人区の問題、あるいは将来の抜本策のある程度の具体的な方針というのがもうだんだん煮詰められた論点になっているような気がするのであります。それで、将来の問題につきまして第三者機関みたいなものも設置する意向があるかどうか、それについていろいろな御意見も既に質疑の中にあらわれております。それから、最初に私が申し上げましたように、非常に重要な問題であり、また各党の利害にも非常に影響する、また、その対象選挙区の議員方々にも非常に大きな影響力を持つ、しかも、その方々の御意見というものは、これはまた尊重しなければならぬ、まことに重要であるということは確かであると思います。しかし、先ほどいろいろと御意見も出ておるように、最高裁司法府の違憲というはっきりした判断が出てきておる、いまだかつてない事態であるということになりますと、これは重要な問題であるからといって、いつまでも決を出さずに済んでおくというわけにはいかぬ、もうぎりぎりな状態に立ってきておるのではないかと思われるのが一般の考えではないか、こういうふうに存じます。  それで今、定数是正をめぐる基本的な問題につきまして、自民党並びに野党提案者にお考えをお聞かせいただいたのであります。しかし、何度も申し上げましたとおり、現行衆議院議員定数配分規定については、最高裁によって、違憲という判決が出たわけでございます。そういう次第でございますので、何とか臨時国会中におきまし寸も、この自民党提出定数是正というものについて、ぜひ成立ができるような方向でありたいというふうに考えるわけであります。  時間が参りましたので、私の質問は、この程度で終わりたいと思います。
  26. 三原朝雄

  27. 近岡理一郎

    ○近岡委員 発言の機会を与えていただきまして、感謝申し上げたいと思います。  質問の時間に制限がありますので、したがって、私は準備した資料を、委員長の許可を得て配付できればと思うのでありますが、結構でございますか。——それではお願いします。  今回、最高裁は、違憲立法審査権によって、衆議院定数是正に係る違憲という事情判決がなされたわけであります。したがって、この問題は、私は最高裁判決を待つまでもなく、国会国民に向かってみずからが責任を持ってやるべき行為であるというふうな認識の上に立って、以下質問したいと思います。したがいまして、できるだけ早く正しいルールをつくって、そして、これに向かわなければならない、このようにも思うわけであります。  そこで、第一番目に、今回の違憲判決は、憲法十四条の法のもとの平等並びに十五条の普通選挙の平等によって違憲判決が出されたわけでありますが、そこまで私は理解ができます。しかし、あの判決文を読んでみますと、このままでもし選挙をやった場合は、次は無効判決を出すかもしらぬぞというふうな内容のことが記されているわけであります。  そこで、普通、参議院の場合は任期六年、解散なし、衆議院の場合は任期四年並びに総理の解散権によって国会選挙されるわけであります。ところが、三権分立の立場からいって、最高裁といえども一体選挙無効まで出せるものかどうか。  と申しますのは、なぜかといいますと、そういった判決が出ていながら、やはり国会審議過程においてもし四年間の任期切れになった場合、是正がなされる前に任期切れが来た場合、そうすると、当然国会がないわけでありますから参議院の緊急召集しがたい。そうなったときに、それを是正するということは衆議院の場合できないわけですよ、だれもいないわけでありますから。身分につきましては可分論と不可分論があるわけでありますが、これはどのように出てくるかわかりませんが、いずれにしても無効ということになりますと、これは衆議院の不存在になるわけでありまして、国民から見れば、私がさっき申し上げた以外のものがもう一つ日本の国に存在するんだという新たな問題が私は出てくると思うわけであります。  したがって、まずこの件について、最高裁違憲立法審査権は持っているけれども、法律をつくる権限はない。私どもは、法律をつくる権限を持っていると同時に憲法改定する権限すら持っているわけでありまして、その国権最高機関の存在に触れる、そういう無効判決というものが一体出せるものかどうか。まず、この一点を伺いたいと思います。
  28. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる定数訴訟というのは、公職選挙法の二百四条に基づく選挙争訟として扱われておるわけでございます。一般的に公職選挙法の二百四条では、衆議院議員及び参議院議員選挙の効力に関する訴訟を認めておるわけでございまして、同法二百五条におきましては選挙の無効の判決も認めておるわけでございます。選挙の無効の判決があったときには当然選挙の効力が失われるわけでございますので、当選の効力もない、したがって、議員の身分が失われる。それで、再選挙を行わなければならない、一般的にこういうふうになっておるわけでございます。定数配分規定違憲を理由とするいわゆる定数訴訟においても、この法条に基づいて最高裁は認めておるわけでございます。したがいまして、純法律的には法第二百五条によりまして選挙の無効の判決があり得ることになるわけでございます。  ただ、御指摘のように、最高裁は、仮に選挙の全部の効力を無効にする、定数配分規定全体を無効ということになれば、全国会議員がいなくなるという事態が生ずるし、仮に当該選挙区のみにおいて、争われておる選挙区のみにおいて議員の身分が失われるとしても、憲法の予想しない不都合な事態が生ずるということで、事情判決法理を援用して選挙を無効としたいという措置を講じておるわけでございます。
  29. 近岡理一郎

    ○近岡委員 ですから、私は、その無効の判決の出た後に任期満了が来た場合は一体どうなるのだと。任期満了が来て、これは当然なくなるわけですから、いないわけですから、そのときはどうなんだと。
  30. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  無効の判決が出て任期満了になった場合というお尋ねでございますけれども、無効の判決が仮に出たといたしますと、そういうことはちょっと、全く新しい事態でございますのでなかなか想定がしにくいわけでございますが、純法律的に見て無効の判決が出得るわけでございますし、本年七月十七日の最高裁判決の補足意見等におきましても無効判決の可能性を示唆いたしておりますので、仮に無効判決の可能性があるとしました場合には、その場合には先ほど申し上げましたように、再選挙を執行するということになるわけでございまして、任期満了ということにはならない。その前に再選挙を執行しなければいけない、こういうことになるかと思います。
  31. 近岡理一郎

    ○近岡委員 再選挙をやると言ったって、選挙無効があれば、是正しない限りはどうしようもないじゃないですか、再選挙をやったって。それは機能を発揮しますか。
  32. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  そういう違憲判決が出るということになりますれば、立法府におきまして当然早急に是正措置が講じられるものであろうというふうに私どもは考えております。
  33. 近岡理一郎

    ○近岡委員 私は、あろうだけでは済まない問題だと思うのです、これは。三権分立の建前からいって、この点は明確にしておかぬと、そういうことは絶対あり得ないなんて、やっぱり国会審議過程においてあり得ることなんです。今回の法案だってどれほど難儀しておりますか。ですから、そういうことを想定すると、私は、三権分立における国権最高機関に対する最高裁の無効判決というものは相当重大なものである、こういう認識に立っているわけでありまして、したがって、総理の解散権と同じように、一体そこまで——あの判決の中に国会の裁量権の問題だと言っていながら、裁量権に対して明らかに最高裁が制約を加えている。このことは重大なことだ、憲法の解釈上。この点、私は今の答弁ではとてもだめだ、わからぬ。いいですか、わからぬわけです。事態はあり得るわけですから。無効の選挙をやったってまた無効でしょう、はっきり言ってもう一遍だけ答弁してください。
  34. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  全く仮定の問題でございますけれども、選挙が無効とされました場合には、判決内容にもよるわけでございます。本年七月に出されました最高裁判決の補足意見等におきましても、直ちに選挙を無効とするということではなくて、一定の期間経過後に選挙を無効とするというようなこともあり得ると言っております。そのように判決内容にもよるわけでございますけれども、一般的には選挙無効の訴訟の対象選挙区の議員が身分を失うことになるわけでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、当該選挙区におきまして公職選挙法の百九条に基づいて一定期間内に再選挙を行わなければならないということになるわけでございます。最高裁において違憲判決が出された場合には、立法府において当然速やかに是正措置が講じられることになると思うわけでございますけれども、もし、そういう是正措置が講じられないということになりましたら、極めて不都合な形のまま再選挙を執行しなければならないという事態になるわけでございます。法律の規定はあるわけでございますし、改正されていない以上、現行法に基づいて再選挙をやらなければならないということになるわけでございます。  そういうことで、いろいろ問題はあるわけではございますけれども、法律的には我々といたしましては現行法によって選挙の管理、執行をする以外にはないと考えておるわけでございます。  いずれにしましても、そのような御指摘のありましたような問題もあるわけでございますし、そういう事態の生じないように速やかに定数是正を実現していただくようお願いを申し上げます。
  35. 近岡理一郎

    ○近岡委員 この問題は、私はまだちょっと了解できない。したがって、これは一応留保しておきたいと思います。  次に、第二番目として、最高裁判決を読んでみますと、先ほども上村委員から指摘がありましたように、ずっと内容を見てみると格差是正する、定数是正するというのは、選挙人数の格差が終始一貫基本になっているわけですよね。したがって、あの判決文を読む限りは選挙人数と国調の人口がほぼ比例しておると思われるから、国調人口を使うことも許される、これが一貫した流れだと私は思うのですが、それに対して御理解どうですか。簡単でいいですから言ってください。
  36. 古屋亨

    古屋国務大臣 今の御質問は、国会議員選挙区別の定数配分につきまして、基準として人口を用いるのか、あるいは有権者数を用いるかについての問題だと私は解しておりますが、それぞれ御意見があることは承知しておりますし、どちらによるべきかという絶対的なものはないんじゃないかと私は思っております。  ただ、現行公職選挙法は、衆議院議員定数配分を定めました別表第一に、「国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」ということを規定しておりまして、これは人口によるべきものとしておるのではないか。また他面、地方議会議員定数配分は……(近岡委員「わかった、大臣、簡単でいいです」と呼ぶ)まあそういうことでございまして、我が国におきましては明治二十二年の衆議院議員選挙法以来一貫して人口を基準として定数配分が行われておるという歴史があること、あるいは議員定数の配分についてはある程度の安定性が必要である、そういう点で人口を基準にすることが適当であると考えておるわけでございます。
  37. 近岡理一郎

    ○近岡委員 最高裁で言う選挙人というのはどういうふうに解釈しますか。有権者と解釈して間違いありませんか。簡単でいい。
  38. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 そのとおりでございます。
  39. 近岡理一郎

    ○近岡委員 今もお話のありましたとおり、先ほども上村委員から指摘がありましたとおり、別表には国勢調査の結果により、人口とは書いてないんだ、はっきり言うと、厳密に言うと。  そこで、私は、次に国調というものと選挙法の別表についてお尋ねしたいと思います。  そもそも国調というのは、原則は三カ月以上常住または三カ月以上常住するとみたされる者、しかも十月一日午前零時を期して申告する、これが基本原則です。したがって、国調は十七項目にわたって調査をする、このようになっておるわけでございます。  そこで、この国調の資料、要綱を見ましても、第一番目に、私は、結論から言うと、国調というものは権威がない、それについてちょっと触れてみたいと思います。  まず第一に、各市町村で調査したもの、これの保存期間がない、それが一点。したがって、関係害類の保存というのはこの要綱を見ましても「総務庁統計センター所長は調査票を三年間、総務庁統計局長は結果原表文は結果原表が転写されているマイクロフィルムを永年保存するものとする。」したがって、町村から出てくるものは今言ったような保存の要綱に出ているのだけれども、町村に関する限り総務庁長官が任命した調査員がした資料、これは極端に言うと、調査した次の日、鉛に入れて海の中にぶん投げてしまってもいいのですよね、はっきり言うと。違いますか。この保存期間、末端における保存期間の規定はない、私はこのように理解しておるのが一点。  それから、万が一不正が行われた場合、警察権が介入できないと私は解釈しておるのですが、その点が第二番目。  三番目は、国調の目的というものは、今、国会定数是正に絡んでいる大変重要な資料だと私は思います。したがって、このような、要するに保存期間、末端でもし不正があっても調査ができない、証拠隠滅もできる、そういうものを定数是正の別表に使うということは、余りにも明治以来の国勢調査の結果というものをまだ継承している何物でもない。今、住民基本台帳あるいは選挙人名簿、これこそまさにきちっとした法的な裏づけのある資料だと私は思っております。  そういった意味で、私はどうしてもこれからの別表というものは有権者というものが最小限度、人口と——過去の地方における高裁の判決を見ましても、広島は有権者、大阪も有権者、東京は人口、札幌は有権者と人口、こういうふうに何件となくずっとあるわけです。  私がなぜこんなことを申し上げるかというと、後で皆様のお手元に配付した資料指摘したいと思いますが、今私が主張しておる問題について、三点ほど指摘したわけでありますが、それに対する回答をまず求めたいと思います。
  40. 北山直樹

    ○北山政府委員 お答えいたします。  国勢調査等指定統計につきましては、御承知のように、統計法第七条というのがありまして、その七条でその調査関係書類の保存責任者及び保存期間を決めることになっております。したがいまして、調査票その他は今先生が御指摘のように、そういうふうな関係で保存期間が決まっております。  今先生御指摘の市町村等に残された、こういうようなお話でございますが、実は私どもは調査票等を含めまして市町村にそういうふうなものを浅さないということで全部提出をさせておるわけでございまして、そういうふうな意味で、私どもは基本的に国に集まってくる資料につきまして保存期間及び保存責任者を決めておる、こういうようなことになっておるわけでございます。
  41. 近岡理一郎

    ○近岡委員 そうすると、町村の調査資料を全部センターに集めるのですか。
  42. 北山直樹

    ○北山政府委員 指定統計である国勢調査に関する限り、そういうことになっております。
  43. 近岡理一郎

    ○近岡委員 そうすると、今、三年以上ですから五十五年のものはありませんね。
  44. 北山直樹

    ○北山政府委員 今お尋ねのは、私どもに集まっているものは全部廃棄しております。
  45. 近岡理一郎

    ○近岡委員 今何年のものがありますか。
  46. 北山直樹

    ○北山政府委員 今申し上げましたように、調査票等、これは保存期間が三年でございます。ですから、昭和五十五年のものにつきましては現在もう廃棄して、ございません。したがいまして、現在昭和六十年の調査票が総務庁統計センターに集まっておるところでございまして、これがある、こういうことになっております。
  47. 近岡理一郎

    ○近岡委員 もし、不正が行われた場合には警察権が介入できないという問題。それと関連して、もし警察権が介入できないとすれば、あとは国政調査権が介入できますか。それから、高裁の判決を持たなければならないと私は思うのですが、どうですか。
  48. 北山直樹

    ○北山政府委員 日本の統計調査は私どもが基本的に責任を持っておるわけでございますが、日本の統計調査につきましては、これは正確性あるいは中立性等におきまして世界に冠たるものでありまして、非常に精度が高いというふうに考えております。したがいまして、私ども調査をする段階におきましても、強権によってそういうような調査をするというふうなことはできる限り避けまして、説得をもってその調査に当たってもらう、あるいは国民に協力を求める、こういうようなことをやっておるわけでございます。したがいまして、今お尋ねのような不正その他警察権の介入が必要である事態というのは、私どもは予想はしておらないわけでございます。
  49. 近岡理一郎

    ○近岡委員 予想をしておらないとおっしゃっても、例えば十月一日の午前零時にどこそこの土建会社が、ある現場にこれから三カ月以上常駐して工事しますよと言って、もし申告する。次の日いなくなった。あるいは東京都内においてアパートに、きょうまではおった。次の日からいなくなった。それでも、そういうものは一々だれがチェックするのですか。午前零時を過ぎてからはだれがチェックをするんですか。
  50. 北山直樹

    ○北山政府委員 先生お話しの十月一日の午前零時といいますのは、これは統計技術的には調査期日、そういうようなものでございまして、実際には調査票を集めます期間というのは十月一日から七日ということでございますので、その期間に今のような形のものにつきましては発見に努めまして、そして、もし申告が間違っていればその時点で訂正をする、こういうことになります。
  51. 近岡理一郎

    ○近岡委員 いつまでに訂正できるんですか。
  52. 北山直樹

    ○北山政府委員 これは十八日ぐらいだと思います。ちょっとあれですが、十月の中旬までにもし誤りがあれば申し出てくれ、こういうふうなことを言っておりますので、その期間までに訂正し得る。それから、あと集計その他の段階で見まして、そして、その結果が非常におかしい、あるいは論理的に矛盾している、いろんなことが出てまいりますので、その場合には再調査をいたしまして訂正をする、こういうようなこともございます。
  53. 近岡理一郎

    ○近岡委員 少なくても三カ月以上常駐されるであろうという人を含めるならば、三カ月間きちっと確認する責任があるじゃないですか。
  54. 北山直樹

    ○北山政府委員 三カ月と申しますのは、原則は要するに先ほど申しました調査期日、つまり十月一日までに過去三カ月というのを原則としておるわけでございまして、非常に移動が激しい人につきましては、例外的に十月一日を挟んで三カ月間いる見込み、こういうような人をとっておるわけでございます。ただ、これにつきましては、一人一人確認をするというのは調査技術的に大変難しいわけでございまして、従来の方法といたしましては、それぞれの世帯の申告で、十月一日を挟んで三カ月間いる、そういうふうに申告した者につきましては、私どもそれをそのまま受け入れている、こういうのが実情でございます。
  55. 近岡理一郎

    ○近岡委員 私はいろいろな意味で、国調というものは非常に不安定であり、確実性が薄い。わかりやすく言うと、やっぱり統計上の書類だけにしかすぎない。五十五年の国勢調査で、これはどこかのテレビで、日本で夫より妻の数が五万三千人多いという報道をやっておった。これは原因はいろいろあると思う。そのくらい国調というものが、日本の国権最高機関の構成にかかわる資料としては、はっきり言って余りにも法的裏づけがない。裏づけがなさ過ぎる。したがって、総務庁として、こういう国調を別表に使われることに対してむしろ嫌だと言いたくありませんか。
  56. 北山直樹

    ○北山政府委員 先ほどの夫と妻の数の差というのにちょっと触れますが、これは現在夫が海外赴任をしているケースが非常に多いものですから、そういうふうな人につきましては、国内で妻だけが申告される、こういうことになりまして夫と妻の数の差が出てくる、こういうことになるわけでございます。そのほか仮に差がありましても、これはあるいはみんなが正直に申告をしておる証拠ではないかなというふうに考えておるわけでございます。  なお、今の別表の問題につきましては実は私どもの問題でございませんで、公職選挙法上の問題でございます。私どもは統計をつくっておるわけでございまして、後の利用の方はそれぞれ利用者の方の意見によって、こういうことだと思います。
  57. 近岡理一郎

    ○近岡委員 したがって、結論から申し上げて、住民台帳とか選挙人名簿という法的にきちっと裏づけされておるものがありながら、なおかつ最高裁選挙人数が基本だという指摘をしながら、あえて国会だけがこの国調を院の構成にかかわる資料基本に使うということは、国会の権威にかけても私は重大なる疑義を持っている。この点はこれくらいにしておきたいと思う。  次に、具体的に質問いたします。  新潟四区と山形県二区、これはお互いに二十六市町村であります。ある新聞では、現地調査によってもう既に明らかになっておるわけであります。東京都が一番遅くて来月の十七日ごろ、私の山形県なんかは既に新聞に発表してあるのです。新潟県の結果だって、そんなに東京みたいにでかいわけじゃないですから、もう既に現地の町村ではでき上がっていると思うのであります。そういったようなでき上がったところは総務庁に早く報告してくれと督促するくらいのことは、今、国会で重大な問題になっているときですから、可能じゃないかと私は思うのですが、そういう意思はありませんか。
  58. 北山直樹

    ○北山政府委員 総務庁との相談といいますか調査票の提出、これは実は私どもの方の集計の方の能力の問題がありまして、これを七つのグループに分けまして順次提出をしてもらう、こういう格好になっておるわけでございます。したがいまして、早くと申しましても、もちろんそれぞれの都道府県では非常に熱心にやっておるとは思いますけれども、そういうふうな意味では限度があるということを御理解いただければ大変ありがたいと考えております。
  59. 近岡理一郎

    ○近岡委員 私がなぜ今、他県のことまで指摘したかといいますと、お手元に配布した資料を一応ごらんになっていただきたいと思います。私は二年ほど前から終始一貫——今回基本になっておる五十五年の国調、山形県二区が三・〇三、新潟四区が二・九九、その差が二百十三人だ。次の二ページは、五十五年の六月二十二日に衆議院議員選挙があったわけでありますが、それは山形県は有権者からいうと九番目であります。差が千九百三十九人もある。あるいはまた、五十八年の十二月十八日、選挙があった。やっぱり有権者は山形県は三千八十人も多い。それから次は、五十九年の九月二日、これは自治省が九月二日に定例的に毎年発表する有権者の数であります。これを見ても山形県は二千七百二十七人多い。それから、参考のために私は住民基本台帳を五十五年以降調べてみました。五十五年の三月三十一日となりますと、国調の数カ月前であります。この表を見ましても、やっぱり新潟四区より山形県二区が七百二十三人多い。五十六年に至っては千四百四十人多い。それから、次の六ページになりますと、やっぱり二千三十六人山形県が多い。次に、五十八年に至っても二千二百六十一人多い。それから、五十九年の三月三十一日、二千百人多い。それから、今度は六十年三月三十一日、二千七十三人多い。それから、九月二日現在、これもやはり自治省で発表したものでありますが、有権者にして二千八百七十六人多いわけであります。したがって、有権者の格差からいえば二・九七。それから、一番最後の九ページのもの、これは自治省資料ではありませんから御了解願いたい。この毎日新聞の現地集計を見ますと、国調の結果も、まだ結果と言って妥当かどうかわかりませんが、八百七十八人も多い。  したがって、過去のいろいろな資料を調べてみても、客観情勢から見て、この表をごらんになっていただくとわかるとおり、有権者も一番から五番まではずっと変わってないのですよ。六番と七番だけが変わっているこの現況、これはどうしても納得できない。したがって、私は、本当に警察権が介入できれば告発したいのです、はっきり言って。警察権が介入できないから告発もできない。しかも、もう既に資料がないでしょう。だから、私は、本当に委員長に申し上げたいのだけれども、あえて言いにくい言葉は使わぬけれども、やろうと思えばできることなんだ。こういうことが再びあったのでは、はっきり言って、私は選挙民に対して説明がつかない。県民がみんなおかしいと思う。ほかの県が一番から五番まで変わらないにかかわらず、何で六番と七番だけが、五十五年の国調だけがぴょっと出ているんだ。その点は、選挙民に説明できないことに対しては、私は何党の案といえども賛成はできない。  そういうことで、この資料は私が勝手につくったわけではないのだから、自治省資料なんだから、したがって特に自民党の代表の森先生におかれましても、私がきょう発言した内容を十分にひとつ党幹部なり党の推進機関にお伝え願って、できるならば、その原因は一体何なんだ、そのときだけ人口が多いのは何なんだということがわかればいいけれども、わからないとするならば、少なくともあの六減六増というものを修正するくらいの討議をひとつしてもらえないものだろうかどうだろうか。私は、後で確定値が出て追加修正することは何もやぶさかでたいと思います。私は、党のときも、初めは五減五増を出しておいて、後ではっきり原因なり何なりかわかった時点において修正しても結構ですよというだけの含みを持って発言したつもりでありますが、残念ながら六減六増が出てしまったということで、いまだにこの問題に対してだけは私は疑義を持っております。  そういった意味で、この問題は大変重要なことでございますので、ひとつ自民党におかれましてもそういう話をお伝え願いたいと思いますが、それに対して森先生のお答えをお願いします。
  60. 森清

    ○森(清)議員 ただいま近岡委員指摘の、国勢調査人口、住民基本台帳人口、それから有権者、それぞれそごを来しておりますが、これはそれぞれの統計のやり方、基本になる考え方が多少食い違っておるというところに原因があるかと思います。ただ、有権者の方は、御存じのとおり、これは原則として二十歳以上が有権者でありますから、二十歳以上の人口の割合が多いか少ないかによって国勢調査人口ないし住民基本台帳人口と有権者の差が出るわけであります。現在、選挙区ごとに見ますと、一番多いのが東京八区で、七六%くらいの割合になっております。一番低いのが沖縄の選挙区で六十数%、これくらいな差ができております。  それから、基本論になりますが、人口をとるのがいいのか有権者をとるのがいいのかということにつきましてはいろいろ問題があろうかと思いますが、我が国は、先ほど委員も御指摘のとおり、明治以来ずっと人口をとっており、国勢調査の制度が確立して以来、国勢調査人口によるということになっておりますし、諸外国の例を見ましても、アメリカ、西ドイツ、フランス、イタリーは人口をとっております。イギリスは有権者をとっておる。このような状況でありますので、人口をとるか有権者をとるかということは、なお今後抜本的改正の際に十二分に論議をすべきものである。御指摘のとおりであろうと思います。  次に、国勢調査人口と住民基本台帳人口は、いわゆる制度的にも違い得ることがありますが、それはさておき、現実に食い違っておることは事実でございます。制度的に違う面はそう大きく数字が出るわけじゃありませんので、なぜこのように大きく食い違うかということについては、近岡委員指摘のとおり、私も大変疑問に思っております。しかし、結果はそのように出ておるわけでありまして、その出ておる結果をどのように使っていくかという問題になりますと、ただいま御説明いたしましたとおり、明治以来人口でやっているということ、それから法律にもそう書いてあるということ、こういうことを考えますと、この際は国勢調査人口によらざるを得ないのじゃないか。  それから、もう一点申し上げておきますと、人口は後の確認の手段等問題があるのじゃないかという近岡委員の御指摘がありました。住民基本台帳はそれぞれ台帳という制度に登載されておる、こういうことを言われましたが、それはそれなりに意味があろうかと思います。また一方、住民のとらえ方は、制度面で申し上げましたが、住民基本台帳の方は住所、これは民法上の住所と恐らく一致するのでありましょうが、経済的、社会的なものと意思も加味して住所が決まるわけであります。それを現実の運営としては市町村に申告をいたしまして、市町村ではそれをそのまま認めておるようでありまして、必ずしもそのときに実際そこに住んでおるかどうかという実態調査まではしておらないのが現状であります。  ところが、国勢調査人口は、先ほど統計局長からお話がありましたように、十月一日を中心として三カ月間そこに定住している、こういう概念規定でございますが、さらに、それには準公務員として国勢調査員というものを任命いたしまして、そこで現実調査をいたしまして確認をした上、調査ができ上がるわけでありますから、そういうことを考えますと、先ほど近岡委員の御指摘のような問題があるにしても、さて、どちらが正確な人口統計であるかということについても、そういう面からも多少問題があろうかと思います。  しかしながら、そういうことがあったとしても、基本は、何を使うということは、現在法制上も国勢調査人口ということになっておりますので、まさしく新潟四区と山形二区を考えますと委員の御指摘のとおりでありまして、我々もその点を考えまして、六・六案をつくるときは、特に山形は三・〇三というふうな非常に僅差であります。しかも、三というのが、例えば西ドイツのように何分の一以上になったらそれは直さなければいかぬという法律があるならば、それは厳格に適用してもいいかもわかりませんが、三倍以内ならば今後合憲判決、いわゆる違憲判決は下らないであろうという我々の考え方に基づいてやっておることも事実であります。  しかしながら、一方、先ほど野党の方も申されましたとおり、一票の価値をできる限り平等に近づけるというのが基本精神でありますから、三・○三といえども超えておれば是正の対象にせざるを得ない。しかしながら、近岡委員指摘の、人口統計調査のあり方そのものを含めまして大変な問題がありますので、今後検討するときはやりたいと思いますが、御指摘のとおり、我々、野党を含めて、六十年人口調査が出れば、それに基づいてさらに追加の、四つか五つになるか知りませんが、やろうということでございますから、そのときにはそういう問題は全部解消して、新潟四区も山形二区も恐らく入るだろうと思います。したがって、今の議論は、暫定的な何カ月かの議論にすぎないのじゃないか。やはり将来にわたってもあるいは抜本的な改正といたしましても、人口というのをとるということであるならば、大変、山形二区の方々あるいは山形県の方々、そして特にそれを代表されて今質問されている近岡委員の立場は十二分にわかりますが、この際はこの案で御賛成をいただきたい、このように思う次第でございます。
  61. 近岡理一郎

    ○近岡委員 私は、今出している案に対して疑義を持っているから、将来のことに対してはどうのこうのと言わぬ、現在私が納得できない今指摘したとおりのものに対して私は言っているわけですから。はっきり言って、将来のことは最終結果が出ないとわからないでしょう。だから、私は、幾ら森先生から今の六・六案に賛成してくれなんて言われたって、これはできない。したがって、むしろ別表を改正すべきだという考えを私は持っている。  なぜかというと、最高裁では要するに国会の裁量権の問題だと言いなから、私がさっき言ったとおり、その限界範囲があいまいなんですよ。というのは、五十八年の十一月七日の判決は最高が三・九四なんですよ。そこで、あのときは何ぼに是正したかというと二・九二なんだ。だから、最高裁といえども二・九二から三・九四までの幅があるのですよ。だから、二・九九、新潟みたいに、悪くいえば逆算してぴたり合わせたみたいな数字が妥当であって、三・〇三が最高裁違憲だなどという判決は何人にもわからない。だから、私は、むしろ最高裁選挙無効まで出すとするならば、少なくとも議会の裁量権とは一体幾らなんだということを国会の名において最高裁に対して確認の請求をしたらどうですか。これはいつまでも、将来にわたって出てくると思いますよ。過去、そのときそのときによってみんな変わっているでしょう。判示したのを見てごらんなさいよ。二・九二にたったりもっと低くなったり、ずっと過去の例を見てみなさい。そのときそのときで変わってくる。特に今回の場合は初めからふやさない。これは行革その他の客観情勢があるでしょうにしても、人口もふえている。  ですから、本当に過去の例を見ても、その何対何というものに対しては、全然基準がない。したがって、最高裁といえども、国会に裁量権ありと言っていながら、場合によったら無効を出すぞといっても、その幅たるや一・何ぼあるでしょう、一・〇二。そういった意味からいうと、むしろ我我は、その該当者に森先生もなるであろう、なるでしょう。だとするならば、ばっさり何対何以上は違憲だということを示してもらった方がやりいいのです。納得もする。そうでないと、これから将来にわたって一体幅が、裁量権を認めていながら片一方では無効判決という枠を、拘束している。そういったものに対しては、日本の、国会という国権最高機関に対して、明らかに、将来法のもとの平等を旗印にして司法万能主義国家にならないとは限らない。そこに総理の解散権を制約するような印象を国会に与えてみたり、あるいはまた国会が不存在になるような印象を与えてみたり、これは国会といえどもゆるがせにならない問題だ。  したがって、この辺で国会を挙げて、もっともっと国民の前に、今後こういうルールで——ルールづくりの問題だと私は思うのです。だとすれば、きちっとしたルールのもとにやってもらいたい。そのときそのときの何対何が変わるようなことでは国会の権威がないし、最高裁といえども裁量権を認めていながらはっきりした数字を示さない、しかも片一方では無効にしてやるぞというおどかしみたいなことをやるということは、三権分立上もっと国民に対して明確にする問題が、この問題に含まれていると解釈するので、まだまだ私、質問したいのでありますが、昼になりましたので、委員方々ももう相当おなかの方も減ったと思うので、時間が残っておりますが、端的に聞いたものですから、これくらいで私の質問を終わりたいと思います。
  62. 三原朝雄

    三原委員長 この際、午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  63. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山花貞夫君。
  64. 山花貞夫

    山花委員 八月三十日に当委員会におきまして、官房長官から解散権をめぐる問題についていろいろお伺いをいたしました。時間の制約もありまして基本的な幾つかの問題についてお伺いできなかったものですから、官房長官の時間の御都合もあると思いますけれども、この機会に必要なポイントだけについてお伺いをさせていただきたいと思います。  まず第一は、今回の最高裁違憲判決を受けましての基本的な認識をお伺いしたいということでございますけれども、七月十七日の最高裁判決は、昭和五十八年十二月十八日の総選挙当時の現行議員定数配分規定憲法選挙権の平等の要求に反し、全体として違憲、違法であると判示をいたしました。補足意見が確認的に申しておるところでありますけれども、本件選挙違憲で違法であるとの宣言は、実質的には本件選挙憲法に違反するものであることを明らかにしたものにほかならない、極めて決定的、重大な指摘であったと思うのであります。  ある雑誌でありますけれども、たまたま衆議院の本会議場の皆さんが写っているわけでありますが、この解説を見てみますと、「違憲状態の議席につめる議員。」とありまして、難問抱えながら爆笑しているではないかと大変皮肉たっぷりな記事になっているわけであります。これを読みますと、私自身が選ばれてきたその選挙に関する規定が憲法に違反をしておったということになるわけでありますから、一議員としても極めて深刻に感ずるところでございます。こうした違憲判決を受けての基本的な御認識をまず冒頭に伺いたいと思います。
  65. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 さきに行われました最高裁判所の判決は、現行衆議院議員定数配分規定違憲としたものでありまして、国権最高機関であります国会を構成する衆議院議員の選出の基盤違憲という極めて異例な状態になっておる、ただいま議員指摘のとおりでございます。このような異例な状態を一日も早く解消いたしますために早急に定数是正を行うことが立法府及び内閣に課せられた大きな責務である、そのためにはぜひとも今臨時国会におきまして定数是正が実現をいたしますことを強く念願をしている、これがただいまの政府考え方でございます。
  66. 山花貞夫

    山花委員 今立法府責任と同時に内閣の責任についてもお認めになりました。実は今回、自民党の六・六法案野党の統一法案審議の対象となっているわけでありますけれども、私たちは六・六法案提出されるに至る経過等いろいろ振り返りましても、今御認識にあったところがどうも少しわきにそれまして、結局は党内のさまざまな利害の調整ということが中心であったのではなかろうか、こういうように考えざるを得ないわけであります。  実はその点、政府のいろいろな場面における答弁等を詳細に検討してみたわけでありますけれども、典型的な御見解といたしましては、中曽根総理大臣が本年六月二十四日、自民党六・六案、野党統一案提案された本会議において次のように答弁しておるわけであります。当初新聞で伝えられたところによりますと、実は今回は政府提案するのだという方向が一時あったわけでありますけれども、最終的には議員提案となりました。この辺をちょっと意識されての答弁だと思うわけでありますけれども、次のようにおっしゃっております。「今回、内閣提出法案としたかった理由につきましては、過去、三十九年及び昭和五十年の二回にわたりまして提出したのは、いずれも政府提出でございました。昭和三十九年の定数是正は、第二次選挙制度審議会の答申を受けて政府提案し、昭和五十年の定数是正は、国会における各党合意に基づき政府提案の形式をとりました。定数是正問題は、選挙基本的ルールづくりであり、各党の党内合意形成ということが中心でございます。」こう言って、全体の提出に至る経過について御説明されておるわけであります。  選挙基本的なルールづくりだから各党の党内の合意形成が中心である、これが認識の中心にある、こういうように総理はお話しになったわけでありまして、ここのところはいささかおかしいのではないか、問題の中心を党内合意ととらえておるけれども、これは少しおかしいのではなかろうか、こういうように思うわけでありますが、総理の本会議における明確な答弁として党内合意がまず大事なのだ、そこから物が始まっておる。先ほど官房長官の御認識のように、今日の違憲状態解消のため、最高裁判決を受けて、立法府、行政府ともに責任を感じなければならない、ここからスタートをしていないわけでありまして、この点につきまして官房長官としての御所見を伺いたいと思います。
  67. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 最高裁判所の判決に示されておる違憲という状態を一日も早く是正するということにつきまして、立法府及び内閣が大きな責任を負ってこの是正に努めたければいかぬという認識を先ほど申し上げたところでございます。  問題は、総理が御答弁を申し上げておりますように、是正のための法案提出者がだれになるかということでございますが、従来の例でいきますと、各党間のいろいろな合意ができて、そして政府から改正案を提出して御審議を願うという形で進んできた場合もあるわけでございますが、今回の場合、各党間にまだいろいろな御意見もあるということで、自民党の中でいろいろと調整をお進めいただいてまいりまして、自民党として議員立法で提出をするということになりましたので、政府といたしましても自民党ともいろいろ相談をいたしまして、自民党からの議員提出という形になった次第でございます。  やはり現実的にこの是正を実現をしようと思いますと、政府の方で、自治省の机の上でいろいろと検討してみてそれを改正案として提出をする、御審議をいただくというふうに持ってまいりましても、なかなか合意が得られるものではない。いろいろと自民党の党内あるいは各党間で論議を深めていただいて、そして初めてこの問題が解決に向かって動き出していく、こういうことになるわけでございまして、そういう意味で、党内のいろいろな調整が必要である、各党間の論議が深まることをぜひお願いをしたいというふうに総理が申してきたというのが私どもの立場からの気持ちでございます。ただ、政府といたしましても、党内のいろいろな調整や各党間の論議責任をゆだねるという意味ではなくて、内閣として大きな責任を痛感いたしております。党あるいは各党の皆様どこの問題について一緒に御相談も申し上げ、解決に向かってぜひ進んでいきたい、こういう気持ちを持って従来も取り組んできておるところでございますけれども、くどいようでございますけれども、政府が案を準備いたしましてもそれで現実的にそれが解決にたるというものではない、あくまでも各党間の論議の深まりによって、政府もひとつ一緒に相談をさせていただいてこの問題の解決に当たらせていただきたい、こういう気持ちで政府といたしましてはこの問題に対処してきているということをぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  68. 山花貞夫

    山花委員 官房長官のお話は、法案提出の手続におきましては党内合意、調整というものが大事であるということでそれなりに理解できるわけでありますけれども、総理が本会議でおっしゃったことは、実はかなり厳密に読んでみたつもりでありますけれども、意識的かどうか、実はそうではたかったわけでありまして、定数問題は選挙基本的なルールをつくる問題だけれども党内合意形成がまず中心である、こういう御認識は、私はどう考えても先ほど官房長官がおっしゃったような憲法感覚を欠いているのではなかろうか、こういうように考えざるを得ないわけであります。今回の最高裁判決指摘しておりますとおり、憲法国会の両議院の議員選挙する制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の裁量にゆだねてはいる、こういうことでありますけれども、しかし自民党の党内のいわば裁量とか党内合意にゆだねているわけではないわけでありまして、この点は官房長官のお話しのような形で考えていただかなければ困るということに尽きるわけであります。  さて、そうしてこの党内合意だけではなくて、国会答弁、藤尾政調会長もその点いろいろな形で賛同されておりましたけれども、党内の合意の次は与野党の合意である。話し合いが土俵のルールづくりに大変大事である、こういう観点になってまいりますと、やはり与野党意見の調整、ここのところがその次の過程として大事になってくるわけでありますけれども、現実にこれまでの与野党協議の経過を振り返りますと、我々は残念ながらそうではなかったというように申し上げなければならないわけであります。  提案者の側は、これまでもずっと御説明いただきますと、午前中の議論でもありましたけれども、とにかく今度の六・六法案をつくるにも三年かかったんだ、そして苦労して具体的に六・六法案の具体案ができてからだって一年たったんだ、こういうことで自民党の党内合意にしがみつくと申し上げましょうか、断固としてその一線は譲らぬ。問題点は二人区の創設の問題でありますけれども、与野党意見の対立点もまさにそこにあるわけでありまして、一歩も譲らぬということで一貫してきているわけであります。三年間それは党内で御苦労されたところでしょう。また、法案ができてから一年間、それもいろいろなことをお考えになって、最終的に自民党の案としては二人区を含む六・六案ということになったと思いますけれども、さて、そういう党内合意ができたその次の段階に進んできたならば、やはり与野党の話し合い、ここに重点を置いていただくということが事の順番からしたって大変大事なんではなかろうかと考えるわけですが、これまでの経過は、我々とするならば幾ら押しても引いてもといいましょうか、二人区問題については全く譲るところがない、鉄壁であったわけであります。政府の立場でごらんになっていただきまして、前回問題となりましたような解散権の問題もこれあります。我々は法律的にも政治的にもこれはだめであると考えているわけでありますけれども、官房長官のお答えとしては、前回の議論によりまして、法律的には可能である、しかし政治的にはなかなか難しい、こういうように我々受けとめたわけであります。  その後、今一、二申し上げますけれども、新しい情勢も出てきているわけでありまして、こうなってくると、確かに法案としては議員立法という立場でありますから政府はちょっと横から見るということになるかもしれませんけれども、最大問題点となっておる二人区問題について、この点さえ壁を乗り越えることができれば与野党の協議も一挙に進むであろう、常識的にそう考えられているわけであります。この二人区問題について政府としてどのようにお考えだろうか。野党が断固反対しているということであるとするならば、与野党が話し合いを進めようとするならば、この問題についてやはり譲歩すべきではなかろうか。この点について官房長官の御意見を伺いたいと思います。
  69. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 政府といたしましては、さきの最高裁判所判決もありまして、ぜひとも今臨時国会において定数是正が実現することを強く念願いたしておるところでございます。  お尋ねの二人区の問題につきましては、本委員会において審議が始められたちょうどその時期でもございますし、ぜひ各党間での御論議を深めていただきたいと考えておるところでございます。  なお、先ほど御質疑のございました、総理大臣が御答弁を申し上げましたのは、各党の党内の合意を得ることがまず肝要か、こういうふうに申し上げてきておるところでございまして、そういう意味各党の党内の合意が得られ、そして各党間のいろいろな論議の深まりをひとつぜひ見ていただきまして、その深まりの中で解決策を具体的に決定をしていくというふうな形になると大変ありがたいが、こういうふうに考えておりまして、今の御質問に対しましても、ぜひ各党間で論議を深めていただきたいということをお願い申し上げたいと思う次第でございます。
  70. 山花貞夫

    山花委員 この辺、誤解のないように念のため申し上げますけれども、各党の党内合意ということの中で、自民党自民党の党内合意だけを中心に考えてきたのではなかろうか、こういうつもりでお伺いをしたわけでありますので、その意味で御理解をいただきたいと思います。  官房長官、もうちょっといらっしゃる時間があると思いますので、あと一つ、二つだけ伺いたいと思います。  実はこの間、今後の問題点を示すものとして幾つかの出来事が我々の耳に入ってきているわけであります。一つは、今月の初めでありますけれども、練馬の選管委員が抗議をして辞任したということが新聞記事に大きく出ておりました。これは直接的には、練馬区選管の態度がこの定数是正問題について消極的である、そして一貫して主張してきたテーマについてまともに取り上げてくれない、こういうことに対して抗議の目は向けられているわけでありますけれども、根本的には、過日の、定数是正なき場合の解散ができるかどうかというような問題とも絡んできているわけであります。実は、これは一つの選管の動きでありますけれども、もしこういう動きが、全国的に波及するということにはならないかもしれませんけれども、あちらこちらで問題提起があった場合には、これは前途大変大きな問題提起になるだろう、こういうように考えておるところでございます。  それから、私、これはまだ新聞記事だけで、事実の確認について若干正確を欠くかもしれませんけれども、二十一日の新聞に、実は、本日二十七日、東京地裁に対し、定数是正されない限り衆院選を実施しないよう求める訴訟が提起されるという報道がございました。差しとめ請求と損害賠償、精神的苦痛に対する慰謝料の請求ということになっているわけでありますけれども、これは従来の違憲裁判のいろいろな仕組み、取り組み経過を考えますと、大体こういう裁判がこれから起こってくるであろうということは従来学者の先生方も指摘しておりましたし、我々もあるんじゃなかろうかと思ってきたわけであります。  こうした状態が次々に出てまいりますと、たまたま選管の委員辞任あるいは裁判の提起ということでありますけれども、後で自治大臣にこの点いろいろ伺いたいと思っているのですが、いろいろな問題が次から次へと出てくるんじゃなかろうか。ということになりますと、ここで与野党対立のまま二人区問題を中心として審議が前へ進まぬということでは重大な事態に向かうわけであります。改めて、そうしたいろいろな出来事が発生しておりますから、政府としても二人区問題について一体どうするかということについては強い関心を持って取り組んでいただかなければいけないんじゃなかろうか。議員立法ということで高いところから見ているということでは済まない事態まで来ているのではなかろうか、こういうようにも思うものですから、今の選管委員辞任問題や新しい形での裁判の提起等につきまして御所見を伺いたいと思います。
  71. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたように、最高裁判所で、現在の議員定数の配分規定が違憲である、こういう判決が出ておるところでございまして、極めて異例な事態であるというふうに認識をいたしておるところでございます。今御指摘がございましたような、こういった問題をめぐりましていろいろな動きがあるということも情報として聞いておりますし、現在の状態に対しまして非常に心を痛めておるところでございます。  そのことについてどう考えるかということでございますけれども、とにかくこの臨時国会でぜひ定数配分規定是正が行われまして、そして現在の異例な状態から改善されますように、そのことをひたすら願っておる次第でございます。  二人区を中心にいたしまして与党と野党とが議論の食い違いがある、ここをどう考えるかということでございますが、ぜひこの国会解決をしていただきたいというふうに願っておる次第でございますが、そのためにも、ぜひ与野党間でいろいろお話し合いをいただきまして、論議を深めていただきますことを切にお願いを申し上げたい、こう考える次第でございます。
  72. 山花貞夫

    山花委員 法案審議野党の一番最初質問の機会でありますので、まず、問題となっている二人区問題について、野党の主張にも政府の立場でも十分耳を傾けていただきたいということについて、最後に重ねて申し上げる次第でございます。  あと、ちょっと質問の順番を変えまして、官房長官がいらっしゃる間に伺っておきたい問題があるものですからお伺いしたいと思うのですが、実は参議院の比例代表制の問題であります。  伝えられるところによりますと、自民党の選対委員会におきまして、六十四年から参議院の比例代表制を廃止する、こういう方向を決めて、その後具体的に、次期、来年の選挙の該当の皆さんの一次公認決定を機会にこうした方向を具体的に進めようということから、何か各候補から同意書をとるんだということが新聞で報道されておりました。参議院の定数の問題あるいは比例代表の問題も、当面この委員会では議論されるところではありませんけれども、今後問題となる大事なテーマであろうと思います。  同じ制度の問題として、参議院の関係につきましてもこの点だけは伺っておきたいと思うのですが、こういう問題について、これは自民党の選対委員会の動きかもしれませんけれども、政府としても当然耳に入っておるところではなかろうか。あるいは御相談になってきた経過もあるのではなかろうか。この参議院比例代表制廃止の問題をめぐって、政府では今どう議論されておるのか、この点だけ官房長官に最後に伺っておきたいと思います。
  73. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 五十八年の比例代表選挙は、我が国にとりまして初めての経験であったわけでございますが、選挙管理の面におきましては、さしたる問題もなく一応円滑に執行できた、このように政府としては考えてきたところでございます。  御指摘のように、比例代表制につきまして、いろいろなところでいろいろな御意見があるということはよく聞いておりますけれども、ただいまのように、これを廃止するかどうかといったような基本にかかわります問題につきましては、もし検討する必要があるといたしますれば、制度導入の経緯でありますとか、あるいは事柄の性格にかんがみまして、まさにまず各党間で十分御論議をいただきたい問題である、こういうふうに考えておりまして、政府といたしましては、五十八年の比例代表制の選挙を無事に執行できた、非常によかった、こういうふうに現在のところ考えておるという域を出ていたいということをお答えを申し上げたいと存じます。
  74. 山花貞夫

    山花委員 どうもありがとうございました。  それでは、以上で官房長官に対する質問を終わりまして、次に自治大臣にお伺いをいたしたいと思います。  これまで議論されてまいりました今回の七月十七日の最高裁違憲判決の特徴、これまでの違憲判決事情判決を含めてでありますけれども、と比較いたしましても、大変特徴的でありましたのは、補足意見の部分ではなかろうか、私はこういうように考えているところでございます。  一番最初の五十一年の判決でも、一番最初違憲判決でありましただけに、さまざまな傾聴に値する補足意見が実は付されておりました。五十八年の判決におきましても、厳しく、三倍ではだめなんだということを含めての少数意見が付されておりました。  今回の判決につきましては、国会がもし定数是正措置をとらなかった場合につきまして厳しい補足意見を付しているところにある、こういうように私どもは最高裁判決を読んだところであります。  寺田、木下、伊藤、矢口四裁判官の補足意見におきましては、「右是正措置が講ぜられることなく、現行議員定数配分規定のままで施行された場合における選挙の効力については、多数意見指摘する諸般の事情を総合考察して判断されることになるから、その効力を否定せざるを得ないこともあり得る。その場合、判決確定により当該選挙を直ちに無効とすることが相当でないとみられるときは、選挙を無効とするがその効果は一定期間経過後に始めて発生するという内容判決をすることも、できないわけのものではない。」こうしております。また、木戸口裁判官の補足意見によりますと、「違憲議員定数配分規定に基づいて行われた選挙を無効とすることなく、事情判決的処理によってその効力を維持すべきこととする背後には、裁判所の立場から国会に対し早急に議員定数配分規定是正を実現することを促す趣旨が込められているものと考える。したがって、国会としては、この点を充分考慮し、速やかに右規定の是正を図るべきである。本件選挙について前記のような趣旨を含む事情判決的処理がされたにもかかわらず、なお国会議員定数配分規定の改正を行わないため、同一の違憲議員定数配分規定に基づき選挙が行われたときは、もはやその選挙につき重ねて事情判決的処理を繰り返すことは相当でなく、」「原則どおり、当該選挙を直ちに無効とするか、又は少なくとも一定期間経過後に選挙無効の効果を生ずるとの判決をすべきものと考える。」  ちょっと長くなりましたけれども、大事な部分でありましたので引用させていただきましたけれども、こうした最高裁判決の補足意見における厳しい指摘について自治大臣としてはどういうふうに受けとめておられるか、お伺いしたいと思います。
  75. 古屋亨

    古屋国務大臣 補足意見につきましては、今先生の方で御説明がありましたので、補足意見はこういうものがあったということはこちらから繰り返して申し上げませんが、要するにこれらの補足意見は、訴訟の対象であります昭和五十八年十二月十八日の選挙にとどまらないで、将来の仮定の問題についてもわざわざ言及をしておるところでありまして、その意味においても、定数是正問題に対する各裁判官の厳しい態度がうかがわれると感ずるのでありまして、そういう意味におきまして、私どもはその趣旨を厳粛に受けとめておりまして、早急に定数是正を実現していただきたいということを念願している次第でございます。
  76. 山花貞夫

    山花委員 早急に定数是正をというお話がありましたけれども、先日来の議論を大臣もお聞きになっておりますとおり、中曽根総理としては、政治的には難しくとも、法律上、解散権は拘束されておらぬ、我々はそういう立場は間違っていると思いますけれども、しかし、そういう立場を貫いているわけでありまして、任期満了ということは先のことといたしましても、解散権問題につきましては、常時ついて回った問題である、こういうように言わなければならないと思います。  現実にこの定数是正法案が、緊迫した与野党のやりとりがある中で、残念ながらまだ審議がスタートしたばかりであるということでありますと、自治省といたしましては、もし、この定数是正がなされないで解散、総選挙が行われた場合には一体どうなるだろうかということについては当然御研究なさっているのじゃなかろうかというように思いますので、そういう場合予想される混乱といいましょうか、法律的な問題、あるいは選挙の実務の執行上どういうことが予測されるかということについて、ひとつこれまでの御検討の結果についてお話しいただきたいと思います。
  77. 古屋亨

    古屋国務大臣 定数是正が実現しないままで総選挙が行われることになった場合には、自治省選挙の管理、執行に当たる役所といたしましてどういうふうに考えるかという御見解だと思いますが、自治省といたしましては、現行法が改正されていない以上、現行法によって選挙の管理、執行を行わざるを得ないというふうに考えておるのであります。  ただ、その場合、選挙の執行をめぐっていろいろの問題が起こることももちろん私どもは想定をしておるのでございます。過去の事例から考えますと、先ほど山花委員お話にございましたような、例えば選挙の差しとめ訴訟とか選挙の無効訴訟あるいは損害賠償請求というものが提起されるということも私どもは予想をしておるのであります。したがいまして、このような事態の生ずることのないよう、鋭意審議を進めていただきまして、早急に定数是正が実現いたしますよう選挙の管理、執行の責任者である自治大臣としても強くお願いをするところでございます。
  78. 山花貞夫

    山花委員 大臣としては現行法によってやらざるを得ない、こういう立場だと思いますけれども、しかし、その現行法が今回の最高裁判決によって明確に違憲である、こういうようにいわば断定されたわけでありまして、そうなると大臣としては憲法に違反した法律に基づいて選挙を執行するおつもりなんでしょうか、その点について伺いたいと思います。
  79. 古屋亨

    古屋国務大臣 法律的問題や事実上の問題、今先生のお話を聞くとあると思いますが、ただ法律的に自治省としてどうしたらいいかと言えば、もし、このままで解散があった場合にはやはり現行法によらざるを得ない、ただその場合にはいろいろ申し上げたような問題がありますということを申し上げておるのでございます。
  80. 山花貞夫

    山花委員 憲法に違反した法律に基づいて選挙を行うということになればいろいろな問題が予想されるとおっしゃいましたけれども、まさにあらゆる問題が出てくるのではなかろうか。例えば、先ほども官房長官に伺ったわけでありますけれども、選管の委員が、あっちの選管委員、こっちの選管委員、抗議をして次々に辞任をするということになったら選挙の執行にも大変支障を生ずるのではなかろうかと思いますが、自治大臣、そんな場合は御検討になっていますか。
  81. 古屋亨

    古屋国務大臣 いろいろの問題が予想されることはもちろん私どももよく知っておりますし、また、そういう例も先ほどのお話のように出ております。ただ、自治省の立場だけで言いますと、選挙の執行に当たる者としては、今申し上げたような問題がありますが、法律的にはやはり選挙を執行せざるを得ない。ただ、そのときにいろいろの問題が出まして、今のお話のように、選挙管理委員会の方が辞任するとかいろいろな問題になりますと、そういう場合はどういうふうに措置すべきかというような問題も想定的にはいろいろ考えておるところでございますが、私どもはできるだけそういう問題を起こしたくないということで、とりあえずこの最高裁判決によりまして、ぜひ早急にお話し合いの上この法案成立に御尽力をいただきたいと思っておる次第でございます。
  82. 山花貞夫

    山花委員 実は今回の判決によれば、五十八年十二月十八日の総選挙、この際にも既に違憲であった、こういう判決だったわけであります。当時の自治大臣憲法違反法律に基づいて選挙を執行した、こういう責任が問われるところでありますけれども、今回いろいろ問題点が明らかになったわけでありますから、国務大臣としての憲法擁護義務とのかかわりで違憲法律であるということを大臣はよくわかっておる。しかし、それで選挙を執行しろというのは非常にジレンマに立たれるのじゃなかろうかと思うのですが、大臣の立場でのお気持ちとしてこの憲法擁護義務との関係でどうお感じになり、どう受けとめますか。
  83. 古屋亨

    古屋国務大臣 今の御質問はもちろん仮定の問題でありまして、私もお答えするには大変難しいものを持っておるのでありますが、日本国民として憲法は擁護するのは当然でございます。したがいまして、その擁護としては私どもは憲法に沿うようなそういう法の改正というものをできるだけ早くやっていただくことが一番大切ではないかと考えておりまして、そういう意味で、私どももそういうつらい立場になりますと大変でございますので、この御審議につきましては両案につきましてお話を進めていただきまして、できるだけ早急に解決をしていただきたいということを心から念願しておるところでございます。
  84. 山花貞夫

    山花委員 大臣のお立場といたしますと、そういうような御答弁以外難しいのじゃなかろうかと理解はいたしますけれども、しかし、とにかく総理大臣が解散できるのだ、こういうように言っているわけでありますから、どうしても詰めて我々もうちょっと伺わなければならないわけであります。  今例えば選管の委員がやめた場合、こういうことで伺ったわけでありますけれども、もっと直接的な支障ということになりますと、選挙の執行上選挙事務を担当する自治体の職員が憲法違反法律に従って仕事をするのは嫌である、こう言って仕事をやらない、これはストライキとは違うと思います。こういう問題も当然予想されることだと思うのですけれども、そういう場合は自治省はどう指導されますか。各自治体の現場の職員が、ともかく三権の中の司法権の一番最高にある最高裁判所がだめだと言っている、違憲であると言っている。そして、地方公務員の場合には公務員として当然その立場で憲法法律、法令を守らなければいかぬという立場がある。しかも、これだけ世論の支持も憲法違反であるという最高裁判所にある。説得力もあるということからすると、自分の良心からしても護憲の意識というか憲法感覚からして仕事がしたくない、違憲の仕事は御免です、こう言った場合にはどうするのでしょうか。自治省はそういった問題が出た場合にはどう指導されるおつもりですか。これはまた仮定のことということではなくて、総理は解散できると言っているわけでありますから、いつあるかわからぬということでありまして、そういうことでお伺いするわけでありますので、この点自治省のお考えを伺いたいと思います。
  85. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま御指摘になりましたようなかつてないような事態、あるいはまた選管の職員が事務を拒否するというような問題を想定いたしますことは、私ども選挙管理に当たる者としてはまことに不本意なわけでございますけれども、先ほど来大臣からも申し上げておりますように、定数是正がなされないまま現行規定で解散になり、選挙ということになった場合、私どもはこのように考えておるわけでございます。  憲法四十二条によりまして、国会は衆参両院で構成するものとされておるのは御案内のとおりでございますが、選挙を執行しないということになりますと、国権最高機関である国会が構成されない、不存在ということになるわけでございまして、憲法全体の秩序を維持するという観点からやはり選挙を執行せざるを得ないということでございます。  また、御案内のように、憲法五十四条によって、衆議院が解散された場合には総選挙を行わなければならないという規定もあるわけでございます。また、純法律的に申し上げますならば、今年七月十七日に出されました最高裁判決昭和五十八年十二月の総選挙に対する司法判断でございまして、その違憲判決によりまして公職選挙法で定める現行定数配分規定が直ちに無効あるいは法律として効力を失うということではないわけでございます。たとえ違憲とされた法律でありましても、改正されていないわけでございますから、それ以外によるべき法律がない場合には、私ども行政庁といたしましては現行規定に基づいて選挙を執行せざるを得ないということになるわけでございます。こういう趣旨を都道府県及び市町村の選挙管理委員会によく説明をいたしまして、そういう事態に対処してまいりたい、このように考えております。
  86. 山花貞夫

    山花委員 一つの御説明の仕方だと思います。法制局の説明とは若干違った角度から説明されておると伺ったわけでありますけれども、今のような形で指導されても現実に仕事しませんよという職員が出た場合にはどうされますか。
  87. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  選挙の執行に当たりましては、自治大臣は都道府県選挙管理委員会を指揮監督できることになっておりますし、さらに都道府県選挙管理委員会は市町村の選挙管理委員会を指揮監督するということになっておるわけでございます。もちろん、そういう法律上の権限のみならず、先ほど申し上げましたような趣旨を十分説得し、理解をしていただいた上で円滑に選挙が執行できるように努力をしてまいらなければならないと思うわけでございますが、仮にも選挙管理委員会のそういう指示に違反をして選挙事務を拒否するというような職員が出た場合には、これはやはりそれ相当の処分、懲戒処分等を考えなければならないのではないかと思います。
  88. 山花貞夫

    山花委員 職務執行命令、業務命令に違反したら懲戒処分である、こういうお話でありますけれども、懲戒処分するためにはそれなりの法律的な根拠が必要でありまして、法律的な根拠というものは法令に従うというところがあると思います。あるいは労働契約に従うところもあるかもしれませんけれども、しかし、その場合にも違憲法律に基づいた職務の執行命令であるということですと、違憲法律に従わなければならないのかという問題は当然出てくるわけでありまして、その場合に、これは一方的に処分する、首を切る、免職、停職ということにはならないのじゃなかろうか。違憲法律に基づいた職務執行命令は当然その法律的根拠を失ってくるのじゃなかろうか、こういうように考えますけれども、違憲法律でも構わぬ、こういう御理解ですか。
  89. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  執行すべき法律の合憲性あるいは合法性等につきまして判断が分かれるような場合は、やはり上司の命令に従うべきであるというのが今まで判例等で見られる考え方でございまして、私ども、明白に命令に瑕疵があるような場合は別といたしまして、一般的に執行すべき法律憲法判断につきましては上司の命令あるいはさらに上級官庁の判断にまつべきものだ、このように考えておる次第でございます。
  90. 山花貞夫

    山花委員 かなり難しい話でありまして、今明白なと言いましたけれども、この定数配分規定憲法違反であるということは重なる裁判所の判決、とりわけ今回の判決によって世の中だれでも知っているわけでありますから、いわば違憲法律に基づいた命令であるということは、その意味では客観的に明白など言ってもいいような状態であるということになりますと、その場合には大変大きな混乱を避け得ないのではなかろうかというように私は考えるわけであります。今ここでこれだという結論を出すことにつきましては、そのお立場もあり、答弁で詰めるわけにはいかぬと思いますけれども、要するに、そうした大変大きな混乱が予想される、こういうことになってまいりますと、今大臣もおっしゃったとおり、法案を何とか成立させるための努力ということになるのだと思うわけでありまして、一番問題となりますのは、何といっても、午前中から議論のありました二人区の問題。  ということになりますと、自民党提案者にここで伺いたいわけでありますけれども、これだけ大混乱が予想されるような差し迫った事態になっている。そして、この膠着状態を抜け出すためには、単に一日も早く審議をやれ、毎日審議をやれと責めるだけでは野党も言い分が出てくるわけでありまして、一致点を求める、妥協するということになれば、この二人区問題については自民党側でももう一度検討することが必要なのではないかと思うわけであります。  この点について提案者の側に、まず基本的な二人区問題についてのお考えと申しますか、問題を解決するための手段としてもう一遍検討する余地はないのか、党内合意を練り直す余地はないのかということについて、これまでの御苦労は十分伺った上でお尋ねをしたい、こういうふうに思います。
  91. 森清

    ○森(清)議員 山花委員にお答え申し上げます。  山花委員は我が党の党内で十二分に検討を尽くしているという経過を十分御承知の上でのお尋ねでございます。したがって、二人区問題についての議論は、先ほども答弁をいたしましたので省略いたしますが、簡単に申しますと、我々はこの違憲である公職選挙法別表を一日も早く是正をしたい、それがためには最小限の是正措置をとりあえずやるということでございます。最小限の是正措置をやらなければ——そうして党内、各党内も含めまして全議員ができるだけ賛成しやすいような形のものをつくりたい。二人区をつくるということは、野党統一案提案された側から言うと中選挙区制度の根幹にかかわる問題である、このような御認識でありますが、我が党の認識はそうではない。午前中にも申し上げたとおりでありまして、一人区、二人区、三人区があるときでも小選挙区と言ってみたり、あるいは一人区、三人区−五人区があってもずっと中選挙区と言ってきている。例外的にこのようにできる中選挙区については御理解いただけるのではないかということが一つ。  それから、現実野党案との相違を見ますと、選挙基盤というものは、よく御指摘のとおり、六十年間安定してやってきている選挙区であります。そこを基盤として、単に選出された者の意思のみではございません。そこの有権者が六十年間にわたってこの地域から何名かの国会議員を出すということでやってきておるわけであります。主権者の意思は選挙区の区画を通じて発揮される。このような選挙区制度をとる以上、この選挙区の改変ということこそ選挙の本質にかかわる問題である、私はこのような認識を持っております。したがって、二人区を解消するために、野党統一案のごとく、あるところは合区し、あるところは境界変更するがごときことをやることは選挙基盤を大きく変動させる、こういうことから我々は了承できないのでありまして、やはり同じ選挙基盤の中において定数をふやす、あるいは減らすことの方が選挙制度として安定をしている。そして、将来抜本的に改正するときは、中選挙区制度が仮に三人から五人ということで正しいということになれば、それに向かって抜本的改正をすることにやぶさかではございませんが、暫定的に、そうして先ほど言われましたように、諸種の混乱が起こるであろうことを考えますと、一日も早く定数是正を行いたい。  こういう考え方から申しましても、自民党内のみならず野党を含めて大方の議論の一致するのは、やはり二人区をつくることではないであろうか、こういう考え方のもとに提案をし、また野党の皆様方とも精力的に御相談を申し上げているところでございますので、私は、二人区の問題について妥協するというその意味は、私のような考え方において我が提案に御賛成いただきますことを切にお願いして、答弁といたします。
  92. 山花貞夫

    山花委員 最高裁判所が違憲であるとして是正を求めておりますのは、先ほど申し上げましたとおり、議員定数の不均衡の問題であります。選挙制度についての改革を求めているのではないわけでありまして、この点については有権者の要求もまさに同じであります。現行選挙区制につきまして、その利害得失については議論があるといたしましても、今提案者もお認めのとおり、六十年の沿革がございます。この制度自体についてどう変えるかということはまさに抜本的な問題ということになるわけでして、こうした自民党の六・六案自体が暫定策としてお出しになっているということであるとするならば、選挙制度を変えるということになるような二人区導入というものは我々は困る、こういう主張でありまして、我々が選挙制度の変革であると主張いたしますと、提案者の方は例外をほんの少しつくるだけであると言って、議論が平行線で来たわけでございます。  振り返ってみれば、午前中の議論における提案者説明によりましても、明治二十二年の小選挙区制で、一人区が二百十四に対して全選挙区の約二割に当たります四十三選挙区が二人区であった、あるいは大正八年法によりましても小選挙区制でいっておりますけれども、一人区は二百九十五、若干の例外を除きました六十八の選挙区につきましては二人区であったわけであります。むしろ我々は、歴史といいますか沿革を振り返ってみるならば、小選挙区制と言った場合には二人区もそれに含まれて考えられた場合が多かったのではなかろうか、こういうように考えているところであります。もっともその辺になりますと議論が平行線になる部分もありまして、大選挙区制、中選挙区制、小選挙区制についての概念をどう規定するかというところにいってしまうところもありますけれども、沿革としては六十年間続いた中選挙区制ということの是非についてはこれまで議論がなかったわけでありまして、必ずしもおっしゃったようなことではないと我々は理解しておるところであります。  もう一つ、そうした歴史の中でその先の議論になりますと提案者は逆の立場に返るわけでありまして、この地域からこう出しておったのだからということで、分区、合区問題については野党の案はだめなんだ、こういうお話なわけであります。  これは正式の意思統一とか文書になったものではなかったようですけれども、私の手元に昭和五十年六月四日の衆議院公選特別委員会における説明、これはたしか小泉先生が口頭でされているものでありますけれども、これは五十一年の定数是正の際に分合区の原則というものがある程度意思統一されておるわけでありまして、分区の原則はこれこれである、区域変更の原則はこれこれである、こういう形でいわばこの公選特としても分合区についてのある程度の意思統一があったわけであります。このときは与野党が恐らくこういうことで一致したのじゃなかろうかと思うのですけれども、実は公選特のこれまでの経過を振り返ったって、この分合区の原則を確立して、場合によってはそういうことがあり得る、こうなっているわけでありますから、中選挙区制の歴史があったんだからこの選挙区は動かせない、こういう理屈は公選特における過去の議論の経過から見てもおかしいのではなかろうかと思うわけでありますけれども、その点についての提案者の御説明を伺いたいと思います。
  93. 森清

    ○森(清)議員 国会に上程されて正式に論議された案を見ましても、先ほど山花委員は大正八年法が小選挙区制であり、一人区と二人区と言われましたが、三人区も十一あったわけでありますから、三人区を含めまして小選挙区制と言ったわけであります。それから、大正九年に、政党の名前はいろいろ変わっておりますからいわゆる民政党ですが、民政党はずっと大選挙区論であったわけでありますが、その民政党提案した案は二人から四人の中選挙区制とするという案でございました。さらに、国会選挙制度審議会を設けて定数是正について答申を求めましたところ、その答申は、中選挙区制、三人−五人を堅持するということが一つ、ただし人口のアンバランスがひどいので中選挙区制、三人−五人であるが、暫定的に二人区と八人区まではみ出したところはつくるという答申を得ました。これは国会審議会法によってつくった答申でございますが、二人区をつくり、八人区までやるのを中選挙区制として答申いたしました。それに基づいて、昭和三十八年、政府において二人から八人区の中選挙区制を提案いたしました。これは審議未了になったところであります。さらに、提案に至りませんが、戦後中選挙区制度が論議されたときには各党いろいろな案がございまして、その中では二人から五人、四人から七人、あるいは四人から何人というふうな中選挙区制度が論議され、現に山花委員の所属されている社会党は二人ないし三人、四人だったかの中選挙区制度というものを提案された、これは新聞報道でございますが、片山総理大臣の案として提案されております。そのほかいろいろな学者、評論家その他選挙について詳しい者の意見は、すべて、中選挙区制というものが三人から五人に固まっているという前提での議論ではないのでありまして、選挙制度審議会の答申も二名から八名という中選挙区制を答申し、それに基づいて政府から提案したことも今申し上げたとおりであります。  したがって、選挙制度というのは、多数党がうんと有利になるか少数党が有利になるか、あるいは完全に比例代表制にするか、こういう各党の利害消長に関係する問題であり、そのようなことの妥協の上において選挙方法、選挙区制というふうなものができ上がってくるわけでありまして、でき上がってきた選挙区制を小選挙区制と言おうか中選挙区制と言おうか大選挙区制と言おうかというふうなことは後からついてくる議論であります。小選挙区制と大選挙区制については、これは学問上きっちりしております。一人を選出するのを小選挙区制、二人以上を選出するのを大選挙区制、これは学問上も確立いたしておりますが、あと中選挙区制とは何を言うか、あるいは大選挙区というのは何人ぐらいから言うのか、こういうことについてはそのときそのときにつくられた選挙制度を後から眺めてみて、さあこれを中選挙区制と言おうとかこれを大選挙区制と言おう、こういうことでございますので、中選挙区制とは三人から五人であるという前提は、私は確立したものとは考えておりません。  しかも、今回つくろうとする二人区は、五人区あるいは六人区になるところを三人に割ったり四人に割ってつくろうとするものじゃございません。また、先ほど御指摘になった五十年当時の議論も、大きな選挙区になって分区をする場合の基準を恐らくお考えになったのじゃないか、こう思うわけでありまして、私たちはそのようなときに二人区をつくろうという意図は毛頭ございませんと申し上げているところでございます。  したがって、このような人口基準によって早急に暫定的につくらなければならないということになりますれば、選挙区の改変と三人区を二人区にすることとはいずれが現行選挙制度、選挙方法に近いか、そして国民を含めて大多数の納得が得られやすいか、こういう観点から総合的に研究をいたしまして、我々は三人区は二人区にするということにいたしたのであります。二人区が自民党に有利であるからつくったというようなことは毛頭ございません。これは、そのような原理原則に従って、その方が選挙制度としても実際問題としても現行制度の徴調整で終わる、こういう観点のもとに暫定的な案として御提案申し上げておりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  94. 山花貞夫

    山花委員 微調整ではなくて制度を変える大問題であると我々は受けとめているわけであります。また、先ほど私が挙げましたかつての公選法特別委員会における分区の原則、区域変更の原則につきましても、おっしゃった趣旨とは違った趣旨でできておる、そういうものがあり得るということでできているというように我々は受けとめているわけであります。ただ、当時は増員であるから今のようだ難しい議論にならなかったわけたんだけれども、今回減員であるからなっているというところが違うだけであって、分区の原則だけではなく区域変更の原則につきましても、小泉先生が委員会で発言して了承を得ているところでありますから、ここのところの理解もいささか異なるのではなかろうか、こういうように思うわけです。  議論を先に進めることにいたしまして、今二人区をつくるのは決して自民党に有利ではないんだ、党利党略ではないんだ、こういう趣旨の御説明がありました。従来から御説明としては、自民党だって二人区をつくりたくないのにつくっているんだ、こういうお話もあるわけですが、現実にできると絶対的に自民党有利になることは今後の問題を考えてみれば明らかなわけでありまして、建前論としてのつくりたくないのにつくったというのは、党内のいろいろな動きがあるからということがあるのじゃなかろうかと思うわけです。二人区というのはつくれば、この先を考えますと自民党に有利になる、こういうように我々は考えるわけですが、この点はいかがですか。現実の動きについて御説明をいただきたいと思います。
  95. 森清

    ○森(清)議員 一般的、抽象的に申しますと、小さい選挙区ほど多数党に有利であり、そして大きい選挙区になり定数が多くなるほど、多数党もやりますが、小政党も当選可能性が出てくる、こういうことから言う一般抽象論はそのとおりであろうと思いますが、現実に二人区をつくったときに、今頭にあるような二人区と申しますのはほとんどすべて自民党が三議席独占をしておるか、あるいはたまに議席を失っているというところが多いわけでありまして、少なくとも二人は絶対に確保してきた選挙区であります。そこの方が二名になるわけでありますから、これは全部当選してもさらに減っておるわけであります。したがって、一人落としますれば大変な減少になるわけでありまして、そういう意味から申しましても、今回できる六・六案につきましては我が党としては非常に不利である、このように考えております。
  96. 山花貞夫

    山花委員 自民党が三人独占しているところが一つ減れば不利になるかもしれませんけれども、そういうところだけではないわけでありまして、三人区で野党一人が出ているところはいわば自民党独占の体制というものが強固になるわけでありまして、我々、選挙をやっている立場から見れば、これは自民党が圧倒的に有利になるということについては一目瞭然ではなかろうかと考えているわけであります。  また、抽象的にこの二人区問題で損か得かということについてはなかなか議論しにくいところでありますけれども、外国の例などを見ましても、二名区でやりますと、得票率に比較いたしまして与党の方が圧倒的に得をしている、こういう現実は、ついせんだって、この春の韓国の選挙でもそうだったわけでありまして、二名区というものは与党に圧倒的に有利であるという問題点もあるので、我々は二人区反対、しかも、それが小選挙区制に通ずるものである、こう主張しているわけでありまして、若干御説明とは実態が違うのであるということについて強調しておきたいと思います。  それから、もう一つつけ加えておきたいと思うのですけれども、現実選挙定数が減れば減るだけどうも有利になるのじゃなかろうかということは、過去三十三回、三十四回、三十五回、三十六回、三十七回と、前回の選挙までの三人区における党派別当選者数、それから四人区における党派別当選者数、五人区における党派別当選者数を調べてみますと、この五回の選挙の平均で、五人区になりますと自民党は五〇%を割っておりまして四六・八三%、これが四人区になりますと五〇%台に乗っかりまして五〇・六一%、三人区になりますとぐんと伸びまして五六・〇三%。五人区だと五割にもいかないのだけれども三人区になったら五六%いくということになると、二人区になりますと一〇〇%というところも多くなってくるということでありますから、今の御説明は実態とは若干違っているのじゃなかろうかということを指摘しておきたい、こういうように思います。  同時に、もう一つの問題として、小選挙区制度の問題とか損得の問題はちょっと横に置きまして政党の利害の問題を離れて考えてみますと、やはり中選挙区制が、これまでいろいろ問題点がありながらも日本では制度として確立し、成熟したものであると我々主張しておるわけでありますけれども、この利害得失、特に二人区とか小選挙区制になった場合と比べると、それぞれ欠点があるのだけれども、やはり中選挙区制は日本になじんでいるのではなかろうか。もし、定数が少なくたって選挙区がだんだん小さくなるということになったりいたしますと、選挙区は小さくなりませんけれども定数が少なくなるということになりますと、国会の仕事というもの、どうしても国会に来て議論するというよりはいわば地盤培養的地元活動といいますか、そこに力が入らざるを得ない。少数激戦ということになってくるならば、そうした意味におきましてはそれに伴うさまざまな弊害も出てくるのじゃなかろうか。党派の利害その他を抜きにいたしまして一般的な国会議員の日常活動という面からいたしましても、定数が二人になることについてはいろいろな弊害が出てくるのではなかろうかと我々は予想するわけでありますけれども、提案者といたしましてはその点についてはどうお考えになっているか、お話しいただきたいと思います。
  97. 森清

    ○森(清)議員 我が国選挙制度の沿革を見ますと、大正十四年法までは小選挙区制あるいは大選挙区制、内容はいろいろありますが、そうなっておりまして、大正十四年に普選法と同時に中選挙区制と言われるものができ上がったわけであります。  その当時まで、政党の名前は別としまして、いわゆる政友会系統と民政党系統が二つありまして一政友会は常に多数党であったわけであります。民政党系統は常に少数党であったわけであります。そして、多数党である政友会は常に小選挙区制を主張し、少数党である民政党が大選挙区制を主張しておったわけでありますが、大正十四年の段階に至って政友会が分裂をいたしまして、そして、その一部が、一部というか約半分でありますが、それは民政党と革新倶楽部という小会派、その三派で合同いたしまして政府をつくりました。これがいわゆる護憲三派というものであります。そのときは民政党が一番主導権を持っておったわけでありますが、護憲三派の中で選挙区制について議論をし、小選挙区制論者である政友会の分かれと大選挙区制である民政党、これが護憲三派の中でほぼ互角の勢力を持っておりまして、その妥協の結果できたのではないか、このように推察されるのであります。これは公式の文書は残っておりませんが、そのころの各種の評論等にはそのように出ておるわけであります。  そのときに政府が中選挙区制度を提案いたしました提案説明には、大選挙区制、小選挙区制それぞれ短所がある、そして、その短所を捨てて長所をとるんだ、採長補短という言葉を使っておりましたが、そういうことでできたんだということであります。その中選挙区制ができた途端に憲法学者その他から大変な非難が起こっておるわけであります。これはいずれの国にもない特殊な制度である、いずれの国においても大選挙比例代表制とするか、あるいは小選挙区制である。民主制度のもとにおける国会政党前提としなければ成り立ち得たいものである、政党を選ぶのであって個人を選ぶものではないというのが政治の大原則であります。そういう観点からいうと、中選挙区制というのは——その当時は民政党と政友会、それに小さい会派が一、二ありましたが、それは別といたしまして、三人ないし五人を選出するということは必ず同じ党の者が同じ選挙区で相争うことになるのであります。したがって、政党はその主義主張を前面に押し出すよりか個人的な利害関係その他を中心として選挙運動をしやすい、よって腐敗が起こりやすい、しかも国民政治意識も、政治に対する関心よりかもっぱらそのような個人的な利害関係に走りやすいおそれもある、こういう指摘が直ちになされておりまして、そのころの選挙制度を研究する者で、中選挙区制度は非常にいい制度であるという評論は余りないのでありまして、ほとんどすべて、これは短所のみであるという議論の方が多いわけであります。  その後の議論でありますが、昭和の段階になっていわゆる戦争中になりましたので、そういう選挙制度について基本的な議論は行われず、昭和五年ごろにはやはり政友会は小選挙区制案をまた持ち出しておりますが、そのまま終戦まで至ったという現状であります。  戦後の事情については皆さん御存じのとおりでありまして、中選挙区制度についてもいろいろ問題があり、選挙制度審議会で審議をしたところ、委員の中で今の中選挙区制度を支持した者はほとんどいない、小選挙区制と比例代表制を支持する者が選挙制度審議会の委員の大多数でありまして、現在の中選挙区制度をそのままでよしとする委員はほとんどいなかった。これも現実であります。  したがって、選挙制度については、各党の消長もあり、あるいは国民民主政治に対する考え方政党政治に対する考え方、あるいは選挙腐敗と言われておるもの、そういうものを総合的に考えて、そうして何が民主政治のもとにおける選挙区制として最適の選挙制度であるかということはここで静かに、そしてまた深く研究すべき問題であろう。したがって、中選挙区制度というのは非常に立派な制度である、欠点がないんだという御指摘、これも私は一方的な御指摘ではないだろうか。これは多少言い過ぎにたるかもわかりませんが、大政党である自由民主党は百三十選挙区においてすべて複数の候補者を立てて、党内の争いを各選挙区においてやっておるという現状があります。中政党である社会党は幾つかの、二十ほどでございますか、選挙区において複数の候補者を立てております。しかし、その他の政党は、共産党に一部京都で立てた例がありますが、しかも全選挙区に立てておるわけではございませんが、どの選挙区においても一人の候補者しか立てておらないわけであります。そういう皆さん方がみずから選挙運動をやりながら感ずる感じ方と大政党である自由民主党と、あるいは中政党である社会党がお感じになる、山花先生はあれでございますが、やはり二十ぐらいの複数の候補者を立てておるときに、それが本当に政党政治として、選挙運動として確立するのであろうかという御疑問を恐らく山花委員もお感じになるのじゃないか。やはり民主政治というものは、また議会政治というものは政党を通じて実現していくものである。この政党政治というものを確立する上についてどのような選挙制度がいいかということも我々は考えていかなければならない。六十年間中選挙区制でやったのだからそれでいいじゃないかという観点のみならず、政党政治民主政治基本に立ち返ってどのような選挙制度であるべきかということを含めて根本的に検討していかなければならない、このように考えておる次第でございます。
  98. 山花貞夫

    山花委員 日ごろの持論をお述べになったわけであります。そして、その持論の上に立つのが、だから政党法をつくって小選挙区制でなければならぬというところに行くのだと思いますけれども、我々はきょうそこまで議論するだけの余裕はありません。我々はそうした小選挙区に対しては徹底的に反対した立場である、こういうことでこれまで議論してきたということについてだけ申し上げます。  また、もう一つは、いろいろ過去の歴史についてお話しになりましたけれども、我々は今日の現代の社会にマッチした民主的な制度はいかにあるべきか、こういう観点から議論すべきであると思っているわけでありまして、小選挙区制あるいは二人区ということになりますと、何といっても多数代表制的な本質を持ってまいりますから非常に死に票を生み出すというような問題点のほか、国民価値観が非常に多様化したと言われておる、現実に複数政党が、多数の政党が存在して各選挙区相争っている、こういう現状からするならば、やはり三人−五人の中選挙区制の意義というものが改めて今日の時代にマッチした制度として議論されるべきじゃなかろうか、こういうように考えているわけでありまして、今の御主張については我々は全く違った考え方を持っているということだけを指摘しておきたいと思います。  あと十五分ぐらいでありますから、私、質問を先に進めたいと思いますけれども、大体最近の話題といたしましては、大きく分ければ三つの具体的なテーマに沿ってあると思います。第一は、与党の六・六法案野党の統一法案についてどうするかという問題。第二番目は、十二月二十四日と伝えられておりますけれども、速報値が出る。そういたしますと、午前中に議論ありましたとおり、逆転する区あるいは一対三で処理するためには、あと四・四と言われておりますけれども、新しい選挙区もテーマに上げなければならぬ、こういう問題。こうした速報値をめぐって改めて是正措置をどうするかというのが第二番目の問題。第三番目は、抜本的な対策をどうするかというように我々は理解しているわけでありますけれども、そうなってまいりますと、最近特に大事な問題として議論されておりますのが速報値をめぐる議論であります。  午前中ちょっと速報値の関係について御説明もありまして、七つぐらいのグループに分けてこれから集約されて、最終的には速報が大体十二月二十四日に出るということだったわけですが、今御説明がありました七つぐらいのグループというのは大体どういうふうに分かれておって、どういう順番で出てくるのか。  それから、その速報値が出た後、最終的に、来年十一月と言われておりますけれども、確定値が出るまでの手続と申しましょうか、公選特が始まりましたこういう機会でありますから、正確にこれからの経過、見通しにつきまして、事実関係だけで結構ですから御説明いただきたいと思います。
  99. 北山直樹

    ○北山政府委員 お答えいたします。  今速報値につきまして、都道府県を七つぐらいのグループに分けて、こういうようなお話でございましたが、実は七つのグループに分けておりますのは、県の人口の大きさで大体七つに分けておるわけでございますが、これは県から統計局に対しましていろいろな書類等を提出するためのグループ分けでございまして、結果そのものは一定の期日で、十二月下旬に全部一括しまして速報値として公表する、こういうような格好になっておるわけでございます。  七つのグループ分けそのものにつきましては、これは今申しましたように、県のサイズでやっておるわけでございますので、一番最終的な、そういうふうな意味では一番大きなところのグループが問題になると思いますが、東京、神奈川、大阪というのが一番大きなグループで最後のグループ、こういうことになるわけでございます。  それから、確定値でございますが、これは前からお話ししておりますように、来年の十一月に出る、こういうことになるわけでございます。ただ、確定値が出る場合につきましては、これは県ごとに基本的な集計をやっていきますので、そういうふうな集計がある段階になったときにまとめまして官報に公示する、こういう形で全体を幾つかのグループに分けまして最終的に十一月に最終のグループが公示され、そして全国の結果がまとまる、こういう格好になる予定でございます。
  100. 山花貞夫

    山花委員 細かい内容についてこの場で御説明いただくのは非常に時間も要することと思いますめで、また改めてこの資料要求いたしますので、いろいろ今お話しになったもうちょっと詳しいところについては別に伺っていきたい、こういうように思います。  自治大臣に伺いたいと思うのですけれども、今の御説明のような形で十二月も下旬になれば速報値が出る、こういうことになりました。今野党の議論の中におきましても、速報値が出た段階で直ちに是正措置をとる、一つのこうした話のまとめがあるわけでありますけれども、自治省といたしましては、この速報値についての取り扱い、どういうように位置づけておられるのかということについて実は伺いたいと思うわけであります。この点まず自治大臣あるいは省の方でも結構ですけれども、お話しいただければと思います。
  101. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  御案内のように、衆議院議員定数配分につきましては、公職選挙法の別表第一で「直近に行われた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」ということになっておるわけでございます。この定数配分基礎となるべき数値につきましては確定値によることが基本であり、最も適切であるということが言えるかと思うわけでありますが、速報値につきましても政府が官報によって公示をするものでございまして、これも法的には国勢調査の結果と言えるかと思うわけでございます。したがいまして、定数是正を行うに際して、国勢調査の結果としての人口について、速報値、概数人口でございますが、これによるべきか、あるいは確定値、確定人口によるべきかにつきましては、当該定数是正の時期とかあるいは内容等を総合的に考察をいたしまして決定されるべき問題ではなかろうか、このように考えておるわけでございます。  ただ、一般的に申し上げまして、衆議院議員定数配分は国政上極めて重要かつデリケートな問題でございます。したがいまして、その根拠として最終的に確定していない、誤差の生ずるおそれのある概数人口速報値によることが適当であるかどうかということもございます。また、定数配分は一たん決定されればある程度永続性を持つものでございますから、その決定の際に速報としての性格を持つ概数人口による必然性、緊急性があるかどうかというようなこと、そういうもろもろのことを慎重に検討して対処すべき問題ではなかろうか、このように考えております。
  102. 山花貞夫

    山花委員 今のお話を伺うと、何か緊急性というような特別な要件がなければ使えないのだ、こういうふうに伺ったわけですが、地方自治法の二百五十四条、人口についての定義がありますけれども、これについては通達が出ているんじゃないですか。どういう内容の通達ですか。今の問題について明快に結論が出ておるように思いますが、いかがでしょうか。——時間があと五分ということでありますから、私の方で引用させていただきながら質問を進めたいと思います。  地方自治法二百五十四条は、「この法律における人口は、官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口による。」こうなっておるわけでありますけれども、五十五年十二月十八日に文書で通達が出ておりまして、「「官報で公示された最近の国勢調査の結果による人口」とは、確定人口が公示されるまでは、要計表によって算出された人口を指すものと解する。」こうなっておるのではなかろうかと思いますが、この点、確認だけしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  103. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 そのとおりの解釈を示しております。
  104. 山花貞夫

    山花委員 そして、先ほど、議員定数の問題は非常に大事な国の政治の問題なんだからという前提を置きまして、緊急性とか慎重な配慮とか、非常にたくさんの条件を前提とされまして、その上で決定されることもあるかもしらぬ、こういうお話だったわけなんですが、現実選挙の関係では、五十六年七月に東京都の都議会議員選挙が予定されておりました。問題となっておる五十五年の国勢調査のいわゆる要計表人口は、五十五年の十二月十九日官報に登載されました。なお、確定人口は五十六年七月九日から五十七年三月十九日の間に官報に登載されたわけであります。選挙の時期から考えまして、ちょうど今回と似たような感じとなりました。同じような感じでありますけれども、東京都は、要計表人口に基づきまして選挙区条例を改正いたしまして、東京の南多摩選挙区でありますけれども、日野、多摩、稲城、この三市で定数一というのを分区いたしまして、日野選挙定数一と、南多摩選挙区、多摩・稲城定数一としたわけでありまして、東京都議の総定数は、従来より一名増の百二十七名となったというのが過去の経過であります。  ほかに、地方交付税の算定基準等を要計表を使ってやっておる。こういう、ほかの仕事につきましても、要計表につきまして先ほどの通達の趣旨に基づいて実際上行われているということのほかに、定数是正についても要計表を使ってやっている前例があるのではないでしょうか。ということであるとするならば、さっき申しておりましたような慎重なとかなんとか、余り条件をつけなくても、あっさりと、要計表が出たならばこれに基づいて検討してよろしいのではないか、こういうことになるのではないかと思いますけれども、この辺自治省自治大臣でも結構です、お話を伺いたいと思います。
  105. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 まず、地方議会定数配分について速報値を用いているケースにつきましてちょっと御説明させていただきますと、五十六年の東京都議会の場合もそうでございますし、その前の五十年の速報値について、それを定数配分基礎にした場合もそうでございますけれども、いずれも任期満了による議会選挙が目前に迫っておって、確定値を待って総定数を決めたり定数配分をしたりすると間に合わない、したがって、その是正をしようとすればさらに四年先の一般選挙まで延ばさなければいけないというような事情があって速報値によったわけでございまして、そういう意味で、緊急性といいますか、時期を勘案してそういう措置がとられたものだというふうに理解をしておるわけでございます。  それから、先ほどいろいろ慎重に対処するということで申し上げましたけれども、決して確定的に要件を断定して申し上げたわけではございませんで、一つには、あくまでも速報値というのは誤差が生ずるおそれがあるというふうに聞いておりまして、国会議員定数配分の対象選挙区を決める際に、確定値が出たことによって変動するようなことになるといろいろ問題が生ずるのではないかということも一つございますし、あるいは速報値に基づいて定数是正を進めていくという時期の問題等、いろいろなことを十分考えて対処する必要があるということを申し上げた次第でございます。
  106. 山花貞夫

    山花委員 今おっしゃったように、誤差云々という問題は余り出ない、こういうふうに割り切ってよろしいような全体の状況だと私は思っておりますし、あるいは今、都会議員選挙等の場合はもう任期が迫っておった、こうおっしゃっていますけれども、今、国会の場合には総理大臣がいつ解散するかというような話も伝わってくるわけでありまして、緊急性はもっと強いのじゃなかろうかと思うわけであります。  一応自治省の御意見をそう伺っておいたことを踏まえて提案者に伺いたいと思うのです。  従来、速報値の取り扱いにつきましては、若干の議論はありましたけれども、これまでの議論を踏まえれば、定数是正という問題を行うに当たって、速報値が出た場合には、これを前提として、これを基準としてと申しましょうか、直ちに是正措置を行うことも可能ではないか、こういうように思うのですが、提案者の御意見を最後に伺っておきたいと思います。
  107. 森清

    ○森(清)議員 国勢調査人口は何であるかということについての地方自治法あるいは公職選挙法、しかも、それが都道府県議員その他に適用される場合、あるいは地方交付税に使われる場合に何がそうであるかということの有権解釈権は自治大臣にありますので、それに従うことは当然であろうと思います。我々は、今、立法府として、その有権解釈権は国会にあるわけでありますから、私たちは必ずしもその見解によっておるわけではございません。それが第一点であります。  もう一つは、三倍以内とかあるいは何倍というのも、これは我々政治家がお互いの了解のもとに、暗黙の前提としてやっておることでありまして、三倍以上を超えたら是正をしなければならないという法律があるわけでもありません。そういうことを総合して考えますと、要計表が出ましたならば、そう大して狂いかないということも常識であります。  したがいまして、今山花委員指摘のとおり、我々は、速報値が出た段階においては、これは客観的に明らかな数字でありますから、これに基づいて、続いての暫定的な是正措置も行います、しかもまだ抜本的な改正もこの速報値に従って検討いたします、このようにお答え申し上げます。
  108. 山花貞夫

    山花委員 三時間ぐらい伺いたいと思ったのですが、時間が詰められたものですから、一応以上で終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  109. 三原朝雄

    三原委員長 中村巖君。
  110. 中村巖

    ○中村(巖)委員 いろいろな経過を経まして、自民党提案公職選挙法改正案、いわゆる六・六案並びに野党四党提案公職選挙法改正案、これがようやく委員会審議に上ったわけでございますけれども、この自民党提案の改正案につきましては、私は衆議院会議におきまして、その提案趣旨の説明の際に、我が党を代表いたしまして質問をいたしたところでございます。  その際にも指摘をいたしておるところでありますが、この衆議院定数是正の問題は大変重大であるわけでございまして、投票価値の平等というものを何としても実現をしなければならない。投票価値の平等というものは選挙法における基本的な原則であるわけで、国民主権というか議会制民主主義というものを根底において支えているところのものである。国民の投票価値が平等でないということになりますると、議会制民主主義そのものが揺らいできてしまう。と同時に、平等でないそういう選挙権のもとで選挙をやるということでは、国民そのものもこの議会制民主主義、ひいては政治全般に対して信頼を寄せることができない。言ってみれば、言葉は悪いけれども、インチキな選挙制度の上に乗っているところの議会政治をゆだねることはできないと国民考えてしまったとしてもそれは当然であるということになってしまうわけでございます。その意味において、この定数配分是正をして選挙権価値の平等ということを何としても実現をしていかなければならない、こういうことであるわけでございます。のみならず、本年の七月十七日には最高裁判所の判決がございまして、五十八年十二月の衆議院選挙時における定数配分の実情というものは憲法違反であると断定をしているわけでございます。前回の当委員会における私の質問においても申し上げましたとおりに、こうなってくると事はますますゆゆしき大事であるわけでございまして、本当に我々立法府としてもあるいは政府としても、事態を深刻かつ重大に受けとめなければならない、こういうことになろうかと思うわけでございます。  そこで、その後さらに、五十八年十二月の選挙以来、なおもこの定数配分の不均衡が拡大をしている、そういう実情にあるわけでございますので、その状況から考えましても、今日に至ってはなおこの問題は緊急の課題であると言わざるを得たいと思うわけであります。  そこで、まず現状の認識ということでお尋ねを申し上げるわけでありますが、昭和五十五年の国勢調査というものがありまして、その時点において、その投票価値の不均衡が兵庫五区を標準とすると一対幾つである、こういう数字が出されているわけでございます。その数字以降、つまり五十五年の国勢調査以降、さらに六十年の十一月十七月には、自治省の方で選挙人台帳による格差というものを発表なすったわけでございまして、それ以前には、自治省の方で住民登録者数による人口把握というものを発表されているわけでありますけれども、そういう数字を通じまして、現状では人口格差はどういう状態になっているか、五十五年国勢調査よりも格差は拡大しているのかどうか、この点について、まず自治省お尋ねをいたしたいと思います。
  111. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  五十五年国調と比較をしてどうかというお尋ねでございますが、比較をして数値を申し上げるのは、同じ基礎に基づくデータではないだけにちょっと問題があろうかと思います。  事実として申し上げますならば、直近の住民基本台帳人口による格差でございます。これは昭和六十年三月三十一日現在で自治省が発表した数値でございますが、これによりますと、千葉四区の最大選挙区と兵庫五区の最小の選挙区の格差が四・九一倍というふうになっておるわけでございます。それから、有権者で見てまいりますと、最大の千葉四区の有権者の数と最小の兵庫五区の有権者の数の比較において、格差が四・六四倍というふうになっておるわけでございまして、数字の上だけでいきますと、五十五年国勢調査の四・五四倍というよりはいずれも高くなっておるわけでございます。
  112. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そういう状況というものは、今数字の上で兵庫五区と千葉四区を比較するということでやられているわけでありますけれども、ただ単にその両区を比較するということだけではなくて、さらに他にも格差が、例えば一対三を超える選挙区が数の上でどういうふうにふえてきたのか、あるいは一対二を超える選挙区がふえてきたのかどうか、こういう点についてはいかがでしょうか。
  113. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 一対二を超える選挙区の数が、五十五年国勢調査のもとにおける数とそれ以降どういうふうに変化してきたかということは逐年にわたって比較をいたしておりませんが、現状で二倍を超える選挙区がどういうふうになっておるかと申し上げますと、自由民主党提案されておりますような六増・六減案と同様な考え方で二倍を超える選挙区を計算いたしてみますと、二十八増・二十八減、関係選挙区は四十九選挙区、こういうふうになっております。
  114. 中村巖

    ○中村(巖)委員 それに関連をして、今御指摘を申し上げたように、自治省は六十年の十一月十七日に選挙人台帳による登録選挙人の数、つまり有権者の数というものを発表いたしているわけであります。この有権者数と人口との関係ということでございますけれども、有権者数で見る場合におけるいわゆる格差、これは兵庫五区と千葉四区の格差考えるほかないわけですが、あるいはまたそのほかの選挙区も想定のうちには考えられるかもしれませんが、そういうものを含めて、現実に今、現時点で調査をした場合、あるいは十一月の段階で調査をした場合に、人口による格差の方が有権者の格差よりもさらに大きいのではないか、こういうことが考えられるわけでありますけれども、そういうことは一般的に言えるでしょうか、自治省にお伺いします。
  115. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  昭和五十五年の国勢調査の結果に基づく格差よりも最近発表いたしました昭和六十年九月二日現在における有権者による格差の方が格差が拡大しておることは、先ほど御説明したとおりでございます。ただ、現行の制度の上から申し上げますと、議員定数配分はあくまで、直近の国勢調査の結果によって考える、こういうことになっておりますから、有権者数の格差をもとにして定数配分を行うということは現行制度上は考えられない、このように考えております。
  116. 中村巖

    ○中村(巖)委員 私は定数是正をするに何によるべきか、こういうことを言っているのではなくて、現状把握としてこの格差というものがどうなっているかということを問題にしているわけであります。  それと同時に、今御質問申し上げていることは、この十一月十七日の発表による有権者の関係での格差が一対四・六四ということであれば、同一時点で調べれば、有権者でなく人口で調べればですが、さらにその格差は大きいのではないかということを伺っているわけであります。ちなみに申し上げれば、今お話しの中でも三月三十一日現在の住民登録数による格差でも四・九一であります。ところが、有権者の方は四・六四である。やはり格差は住民基本台帳による方が大きいではないか。さらにまた、その時点で国勢調査があったとするならば、それはさらに大きいのではないかということをお尋ね申し上げているわけであります。
  117. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 今のお尋ねの件に対応してお答えさせていただきますと、五十五年国勢調査が最も直近の国勢調査人口であるわけでありますが、そのときの格差が四・五四倍ということになっております。それで、その同年における有権者の格差というのは、五十五年九月十日現在の格差でございますが、四・〇一倍ということで、国調による格差よりも数値の上で低くなっております。  これは、一般的に申し上げまして、議員一人当たり人口の大きい、いわゆる都市部の選挙区につきましては有権者の比率が低く、逆に議員一人当たり人口の少ない農村部といいますか、過疎地域の選挙区におきましては有権者比率が高いということによって、同年における国勢調査と有権者の数で格差を比較した場合には、こういうふうに有権者で考えた場合の方が格差が低く数字の上で出るということになるわけでございます。  これが六十年国勢調査現在においてどういうふうに推計されるかということにつきましては、六十年の国調の先の推計に関することでございますので、私どもの方からはちょっと答えるのを差し控えさせていただきます。
  118. 中村巖

    ○中村(巖)委員 それはそういうことだろうというふうに思うわけで、例えば地方にいる人が都会に稼ぎに来るといった場合に、住民票も田舎に置いたままにしておる、選挙人台帳もそのままにしておる、しかし実際には都会で働いているんだ、こういうような現象というものが多いわけでございますから、当然そういうことになってくる。そうであるがゆえに、今お話で布権者の格差において四・〇一であったものが人口格差においては四・五四である、こういうふうに大きな開きが出てくるわけであります。  そうたると、今有権者の格差において四・六四である、こういう現状のもとにおいては、恐らく人口格差においては、これはまあ推察ということになるわけでありますけれども、一対五を超えておるのではないか、こういうことになるのではないか。今先回りして推察はできないんだというお話でございますので、これは回答を求めようというふうには思っておりませんけれども、まさに今現状は一対五を超える、こういうようなゆゆしき状況になっている、こういうことだろうというふうに思うわけでございます。  そこで、次の質問でありますけれども、これは総理府にお尋ねをいたしますが、五年ごとに国調というものが行われているわけでございますが、四十五年の国調以来五十年の国調、五十五年の国調、そして今度の国調、こういうことになる。今度の国調においてはまだ数値が出てないわけでありますけれども、四十五年以降五十五年までに至るその各国勢調査の概数、確定値の発表の日時というのはどういうふうになっておりましょうか、お伺いをいたします。
  119. 酒井忠敏

    ○酒井説明員 中村委員質問にお答えいたします。  昭和四十五年の要計表による人口の速報公表日は四十五年十二月二日でございます。確定値につきましては四十六年四月二十八日でございます。昭和五十年の要計表による人口の公表日は五十年十二月十日でございます。人口数、世帯数の確定値につきましては五十二年六月十五日でございます。昭和五十五年の国勢調査につきましては要計表による人口が五十五年十二月十九日、確定値が五十七年三月十九日となっております。
  120. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そこで、本年の十月一日に国勢調査が行われたわけでありますけれども、先ほど来質問があったかと思いますけれども、今度の国勢調査の結果についての概数の発表予定及び確定値の発表予定というものはいつごろになっておりますでしょうか。
  121. 酒井忠敏

    ○酒井説明員 昭和六十年、本年の国勢調査につきましては要計表による人口を六十年十二月下旬に予定しております。人口数、世帯数が確定いたしますのは基本集計の結果といたしまして六十一年十一月末日を考えております。
  122. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今度の国勢調査の要計表による概数、その発表が十二月下旬である。伝えられている新聞紙上なんかでは十二月二十四日であるというふうに言われていますけれども、総務庁の方は下旬ということで、今、日にちを明示されませんのですが、それはどういうわけでしょうか。明示をすることができないということになるのでしょうか。その点が一点でございます。  それと同時に、四十五年、五十年、五十五年と要計表による概数というものの発表の日時が十二月二日から十二月十日、そして十二月十九日と順次おくれてきておる、こういうことになるわけです。そうして、今度はさらに六十年は十二月の下旬である。さらに一層おくれる。これは本来ならばそういう統計技術と申しますか、集計技術と申しますか、そういうものが年を追って進歩をしてくるというか効率よくなってこなければならぬ。それがどんどんおくれてくるということは、これはどういうことでしょうか。二点目にはこの点を伺いたいと思います。
  123. 酒井忠敏

    ○酒井説明員 要計表による公表を本年十二月下旬ということでお答えいたしましたけれども、先ほど質問がございましたが、都道府県からの要計表及び調査書類を七グループに分けて進達さしておりまして、第七グループの最後の調査票を私どもが入手いたしますのは十二月十七日でございまして、その要計表を入手いたしますのは十二月十日ということでございまして、現物を見ないうちにその結果のよしあしということをなかなか検討できないわけでございます。私ども受理いたしました後は、要計表につきましてはその受理後内容を審査いたしまして、さらには統計局により要計表の合算、結果の審査、分析、そういうのを行いまして、公表資料の作成、その後公表になるわけでございますが、今のところ十二月下旬ということでございます。  集計技術の進歩ということで言われましたけれども、要計表は調査員が自分の担当地区を回りましたサマリー表に基づきまして、どちらかといいますと調査票のほかに手集計で作業を行うものでございます。最近の技術の進歩はコンピューターによるところが多いわけでございますが、コンピューターを使わずに集計する従来の手集計の方式でやっておるところでございます。  それから、さらに前回に比し若干おくれているけれども、どういう理由によるかというお尋ねでございますけれども、前回等に比し若干おくれますのは、最近の調査環境と申しましょうか、留守がちの世帯がふえたりしておりますので、そういう環境等を勘案いたしまして、調査員が世帯から調査票を回収いたします回収期限を二日ほど延長いたしましたし、さらには最近のプライバシー保護等の観点から調査票の封入等の措置を講じたわけでございますけれども、それに対応して市区町村、都道府県の審査事務がふえることになりますので、都道府県からの調査書類の提出期限を最終的に数日、四、五日間でございますが、前回よりもおくらせているところが大きな要因でございます。  この提出期限につきましては、集計業務の内部進行管理のために総務庁と各都道府県におきまして四月の時点にそれぞれの要望をお聞きしたりして相互に決めたものでございまして、本年四月に既に各都道府県に示達済みのものでございます。
  124. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今お話によりますと、十二月十日の時点で要計表というものが、それまでには上がってくるんだ、こういうお話でございました。そこから、それについての分析とかあるいは検討ということで十二月下旬になるんだというお話でありますけれども、その要計表が上がってきてからそういう調査検討をする期間というものは、従来の経験によったら何日ぐらいかかるかということははっきりしているのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  125. 酒井忠敏

    ○酒井説明員 各都道府県から市区町村要計表、都道府県要計表が上がってまいるわけでございますけれども、これの内容いかんにかかるわけでございまして、都道府県要計表、市区町村要計表のよしあし、さらには、その結果出ました結果の分析上、異常に伸びているところ、異常に減少しているところ等は原因を考えた上で公表する運びとなりますので、若干の期間をちょうだいして公表しております。
  126. 中村巖

    ○中村(巖)委員 新聞紙上なんかに言われているところによりますと、今回こうやっていわゆる六・六案というものが国会審議をされているという状況、こういうものを自治省の方で勘案をして、早期に概数を発表すると政治的に非常にぐあいが悪いのではないかということであえてこの発表をおくらせているのではないかということであります。そういう事実があるとするならば、これはゆゆしき問題であるというふうに思いますけれども、その辺について本来もう少し早く発表されるものを何らかの形で調整しているのではないかという疑いについて自治省はどうお考えですか。
  127. 酒井忠敏

    ○酒井説明員 国勢調査の集計業務は総務庁統計局が行っておりますので、総務庁統計局酒井がお答えさせていただきます。  先ほども申しましたけれども、私どもの調査書類等の進達につきましては、四月の時点で各都道府県に示達申し上げたものでございまして、今回の臨時国会定数是正等をにらんだものでは全然ないわけでございます。前回も要計表を最終的に受領いたしました後、二週間程度かかっておりますけれども、慎重に審査し、分析した結果、前回の誤差があれぐらいでおさまったと私たち考えております。その以前は早目に出しておった時期がございますけれども、純誤差、総誤差ともかなりの誤差を生じていたところでございます。
  128. 中村巖

    ○中村(巖)委員 総務庁の方でそういうふうにお答えになるので仕方がありませんけれども、私は、何かやはり自治省が総務庁と打ち合わせをしてそういう形をやらせているのではないか、こんな疑念も必ずしも払拭することができないわけであります。  それはともかくといたしまして、さらにこの質問を先へ進めます。  現状いろいろ格差の問題がありますけれども、それはそれとして、一応定数配分は、公職選挙法によりますならばこれは直近の国勢調査の結果によるのだということになっているわけです。公職選挙法の別表の末尾に「本表は、この法律施行の日から五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」というふうになっているわけであります。この条文の書き方は大変特異でございまして、「例とする」というような書き方になっているわけで、どれだけ拘束力があるのか、大変わかりにくいということでございます。端的に申し上げれば、国勢調査の結果によって更正しなければならないとはなっていない。その辺のこの条文の拘束力の解釈について自治省はどう軸考えでしょうか。
  129. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答え申し上げます。  「例とする」という規定は、一般的に申し上げますと、当該規定の定めるところにより一定事項をなすべきであるが、絶対に違背することを許さないという趣旨ではございませんで、仮に違背しても法律上の義務違反にはならないという、ごく緩い訓示的な規定を意味するものと解されておるわけでございます。  このことは、公職選挙法の制定に際しまして衆議院委員会審議で明らかにされております。ちょっと読ましていただきますと、この規定の趣旨は「これは将来国勢調査が行われまして、いろいろ人口移動等がありました場合、その結果によって、必要があればそれを改めることもあろうし、また改めないこともあるであろう。やはり国勢調査の結果によって、必要があれば更正することもあり得るのだ、こういう規定を別表の中に置こうという趣旨だと考えられるのであります。」こう説明しております。
  130. 中村巖

    ○中村(巖)委員 その拘束力は大変弱いというか、そういうことの結果がどうかわかりませんが、現実問題として昭和四十五年の国調に基づいて五十年に一度改正があった以後、五十年あるいは五十五年の国調があったにもかかわらず現時点では少なくとも修正されていない、今法案審議しているさなかでありますけれども、修正をされていないわけでございまして、こういうような状況のもとにおいては、先ほど申し上げたように、七月十七日の最高裁判決にもありますとおり、さらにまた、それ以前の最高裁判決にもあったとおりに、やはりこれは違憲あるいは違憲状態ということで、これを何とかしたい限りいろいろな支障が生ずるし、先ほど申し上げたようないろいろな世論の批判等々も生ずるわけでありますけれども、そのうちでやはり一番大きい問題は解散権との関係であると思うわけでございます。  この問題については前回の委員会におきましても私ども御質問申し上げたのでありますけれども、依然として政府の御答弁は解散権は制約をされないということでございます。現状のままで解散権は行使はできるのかどうかということについて、ここで改めて内閣法制局の御見解を承りたいと思います。
  131. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  最高裁判決違憲とされた議員定数配分規定につきまして是正措置が講ぜられていたいうちに衆議院の解散権の行使ができるかという問題でございますが、この点につきましては過去におきましても何回か御質問を受けまして、その都度御答弁を申し上げておるとおりでございまして、純粋の法律論としてはそのような解散権の行使が否定されることにはならないというふうに私どもは考えておるわけでございます。  その理由を申し上げますと、まず衆議院の解散制度は、立法府と行政府意見が対立するとか、国政上の重大な局面が生じまして主権者たる国民の意思を確かめる必要があるというような場合に、国民に訴えてその判定を求めることを主たるねらいといたしまして、憲法に明定されている基本的に重要な制度であります。この解散権の制度は、同時にまた権力分立制のもとで立法府と行政府との権力の均衡を保つという機能を果たすものであると言われておるわけでございます。そして、このような基本的に重要な機能である解散権につきまして憲法上これを制約する明文の規定はございません。また、衆議院で不信任決議案が可決されたような場合におきましても解散権の行使が許されないということになりますと、内閣としては総辞職の道しかないということになりまして、憲法六十九条の趣旨が全うされないということになるわけでございます。  さらにまた、解散がありますと、それに伴って当然に総選挙が施行されることになるわけでありますが、解散は議員の身分を任期満了前に失わせるという行為でありまして、総選挙は解散あるいはまた任期満了に伴って国民が新たな議員を選任するというものでありまして、それぞれ別々の規定に従って行われる別個のものであるということは明らかでございます。  これらのことを総合勘案いたしますと、純粋の法律論として言えば、定数配分規定の改正前における衆議院解散権の行使が否定されることにはならないというふうに考えておるのでございます。
  132. 中村巖

    ○中村(巖)委員 純粋の法律論という観点から、繰り返し同じようなことを説明をされておるわけでありますけれども、しかし現実にこういう現状のもとで解散が行われたということになりますと、これは大変な混乱を来すことは明らかであろうと思うわけでありまして、一たび解散ということになって総選挙が行われるということになれば、これに対するいろいろな形での国民の反発というか、そういうものがあるわけだろうと思います。  その中で一つ、二つお伺いをしておきたいのは、法制局にお伺いをするわけですけれども、こういうふうにたってくると、これはあくまで裁判所のことでありますけれども、選挙の差しとめ訴訟というようなことが起こらないかということでありますけれども、確かに差しとめ訴訟は今の法律体系の中には訴訟の形態としてはないわけでありますけれども、こういうことについてこれまた一つの法律解釈としてそういうことがあり得るかどうかということをお伺いしたいと思います。
  133. 茂串俊

    ○茂串政府委員 仮に選挙事務の執行の差しとめ訴訟が起こされたらどうなるかというような点につきましては、これは仮にそのような訴訟が起こりました場合に裁判所がどのような判決を出すかという、いわば司法権に関する固有の問題でございます。したがいまして、行政府に属する者が意見を申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思います。ただ、委員御承知のとおり、お尋ねのような訴訟が過去において何回か提起されたことがございまして、これにつきましてはいずれの案件も裁判所、これは下級審でございますが、裁判所におきまして不適法として却下されるというような事跡があることを申し述べておきます。
  134. 中村巖

    ○中村(巖)委員 過去にはそういうふうに却下をされた、門前払いをされたという事例があることを私も十分承知をしておりますけれども、しかしながら、五十八年十一月の最高裁判決でも、あるいは今年六十年七月の最高裁判決でも違憲ということが非常に強く指摘をされている、こういう現況のもとでは、裁判所それ自体もその種の訴訟類型というものがないといたしましても、そういうものを認めていくという可能性はあり得るのではないかと思います。それをお聞きいたしましても、あるいは法制局はお答えをいただけないだろうと思いますけれども、さらにまた、従来ずっとこういう形で最高裁判決に至るような選挙の無効訴訟というものがあったわけでございますから、これはまた、現状のまま解散をして総選挙ということになると、その総選挙に対する無効訴訟というものは数多く起こってくるのではないか、こういうことになろうかと思うわけでございます。  それと、さらに法制局に御意見を承りたいのは、今、選挙事務の執行というものは衆議院選挙に関する限り、都道府県の選挙管理委員会というものがやっておるわけでありますけれども、この都道府県の選挙管理委員会違憲といって、この定数配分規定に基づく選挙は執行できない、こういうような形で選挙の執行を選挙管理委員会、これは独立の行政機関だと思いますけれども、こういうところが、今のような考え方に立って事務の執行を拒否する、そういうことは法理的にはあり得るのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  135. 茂串俊

    ○茂串政府委員 先ほど申し上げましたように、いわゆる定数是正のための措置が行われる前に衆議院の解散権の行使が可能であるかどうかという点につきましては、純粋法律的には可能であると申し上げたわけでございます。また、解散権の行使の場合に限らないわけでございまして、任期満了に伴う総選挙というものもあるわけでございますけれども、いずれにしましても、総選挙をしなければ衆議院が組織できないわけでございまして、そういう意味衆議院が不存在になってしまうということになりますと、これこそ憲法秩序全体から考えて、到底放置できないというような事態となるわけでございます。そういう意味で総選挙をやらざるを得ないといたしまして、その選挙を執行する手続を定めるものといたしましては、違憲とされた定数配分規定を含む公職選挙法しかないわけでございます。そういう意味で他に準拠すべき法律がないということで、政府としましてはこれに基づいて総選挙を行うほかないということになるわけでございまして、それによって憲法全体の秩序を全うすることができるというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、ただいま申し上げましたような衆議院の解散が行われた、あるいはまた任期満了があったということで衆議院議員の総選挙必要性が生じ、そして、その衆議院議員選挙に関する事務が執行されるということになりました場合には、公職選挙法の五条の二項とか地方自治法の規定によりまして、自治大臣衆議院議員選挙に関する事務について選挙管理委員会を指揮監督するという権限も持っておりますような制度もございます。そういった意味で、制度的にはこの自治大臣の指揮監督のもとで適正な選挙事務の円滑な執行が確保されるということが期せられておるわけでございまして、もし、そういう事態が起こった場合にはそのようなことで運営がなされるというふうに考えられます。
  136. 中村巖

    ○中村(巖)委員 自治大臣は都道府県選挙管理委員会の指揮監督ができる、そういう規定は公職選挙法に確かにあるわけでございます。しかし、あるからといって、それによって選挙ができるんだということには必ずしもならないということだろうと思うわけであります。先ごろ非常に世の中をにぎわしましたところの外国人の登録の際の指紋押捺問題にいたしましても、国の機関委任事務でありますから各自治体がそれぞれその事務を執行しなければならぬ、こういうことであったわけでありますけれども、自治体によっては、自治省の指揮命令、指揮監督、そのとおりにはやらぬのだというふうに言った自治体もあったわけでございまして、都道府県選挙管理委員会がこの違憲定数配分に従っては選挙の執行はできない、こういうようなことで問題を起こしてきたら、これは仮定の問題でありますけれどもどういうことになるのか、これは自治省にお伺いをしたいと思います。
  137. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 衆議院議員定数是正が行われないままに解散あるいは任期満了の選挙を迎える、その場合は先ほど法制局長官からお答えになりましたように、現行法に基づいて私ども選挙を管理、執行せざるを得ないというふうに思っておりますが、そういう事態のもとで選挙理事務を拒否されるというようなことについて想定することは、まことに私どもとしては不本意なのでございますけれども、そういうことについてどのように考えておるかということでございますが、制度的には現行法の制度に基づいて指揮監督権を発動して、訓令を出すなり命令を出すなりして拒否をしないように努力をする、それからさらに、選挙事務という大変重要な仕事を管理、執行しておる立場にある人でございますから、やはり良識を持っておられる方というふうに私ども信じておりますし、現行法に基づいて選挙を管理、執行しなければならないという事情をよく説明し、それが決して憲法に違反するとかいうことではないんだ、やはり現行法に基づいてやることが憲法の秩序を守ることにつながっていくということもよく説明し、理解をしていただいて、円滑に選挙が行われるように万全の措置をしていかなければならない、このように思っております。
  138. 中村巖

    ○中村(巖)委員 それでは、また質問を変えますが、提案者にお伺いをいたすことにいたします。  四十五年の国調に基づいて五十年の改正が行われた、以後、先ほど申しましたように、五十年の国調あるいは五十五年の国調というものがあったにもかかわらず、今日までこの定数是正の改正というものが行われなかったわけでございまして、しかも五十五年国調がなされてから現実にもう五年の年月が経過をしようとしているわけでございます。五十年国調、五十五年国調を過ぎて五年に至る今日までなぜ改正が行われたかったのだろう、そのことについて自由民主党は、与党でありまして、しかも国会内の第一党であるわけでありますけれども、何で今までそれを放置してきたのか、そのことをお伺いをしたいと思います。
  139. 森清

    ○森(清)議員 中村委員にお答え申し上げます。  衆議院議員定数是正については、常に国会においてあるいは政党内において検討を加えていかなければならないわけでありますが、特に五十一年判決、ああいうものも受けておりますし、鋭意検討を続けてまいったのであります。  自由民主党においては、選挙制度調査会という恒常的な機関を設けまして常時検討を続けてまいりました。参議院比例代表制をつくるというふうな大きな問題もありまして、衆議院定数是正に集中的にかかったわけではございませんが、常時検討を続けてまいりました。特にこの定数是正問題を真剣に取り上げてやり始めましたのは、私の記憶では昭和五十五年からでございます。選挙制度調査会に定数是正の小委員会をつくりまして、広範な検討を加えまして各種の試案をつくってまいりました。さらに、五十八年判決を受けまして五十九年一月からその作業を継続いたしまして、そして約半年ぐらいかかって、大体いろいろな検討をしたが、とりあえず暫定措置としては六・六案でいこうという党内の大方の合意を得たのが五十九年の六、七月でございました。さらに党内で検討を進めて、最終的に一年後の本年五月に提案をいたした次第でございます。  国会の構成に関することでございますので、非常に綿密な、そして広範な研究調査をいたしておりましたことと、やはり我が党がある程度の成案を得ました段階において、これは国会の構成の問題でございますので、野党各党とも協議をするという合意に基づきまして、いわゆる実務者会議というものを五十九年三月から数回開いております。その中で意見の調整を図ったわけでありますが、野党と私たちの主張の相違は、まず大体おおむね五百十一名をそのまま据え置こうじゃないかということは合意を見たわけでありますが、人口格差の点について、我々はとりあえずの是正措置であるから三倍以内ぐらいでやろうということでございましたが、野党各党の方ではもっと抜本的な是正が必要である、こういうふうな御主張もありました。また、今問題になっております我が党の案、大体合意した案では二人区ができることになっておりますが、それについて野党は二人区をつくることには反対であるというふうなことで、五十九年三月ごろから始めた協議も一年以上にわたって合意を見なかった、しかし憲法違反という判断が下されるであろうことも大体わかっておりますし、早急に是正をしなければならないということで、この五月に提案をいたしたわけであります。  したがって、これは国会を構成するものとして、そして今言われましたとおり、多数を占めておる我が自由民主党においては、この五年間、あるいは精力的にその具体的問題に入りましても約三年近く鋭意検討を続けてまいったのでありまして、その成果をここに提案を申し上げておりまして、それがなぜできなかったか、これは私たち自由民主党に招いても反省をしなければならぬと思いますが、事国会の構成に関することでございますので、政府の与党であるかどうかということは私は関係がないのではないか、こう思います。したがって、野党においても十二分に御研究なさっておられたことだと思いますが、そういうものをすり合わせて、ここに至ってもまだ成立しておらないということは、多数党である、過半数を占めておる我が自由民主党については最大責任があろうかと思いますが、各政党の皆様方もともに責任を分担していただいて、ともにこの定数是正について努力をしていきたいものだ、このように考えております。
  140. 中村巖

    ○中村(巖)委員 一生懸命努力をされた、こういうお話でありますけれども、やはり私どもの目から見ますと、自民党が今日までこの定数配分の改正については非常に消極的であった、改正をしたくないという考え方、それに立っていたがゆえにこんなにも長い間放置をされてきたのだ、こういう意味自民党には責任を感じてもらわなければいかぬ、こういうふうに思っているわけであります。  それはそれとして、同時に、自治省にもお伺いをしたいわけでありますけれども、自治省も、公職選挙法については政党の問題であるからといって、国政に責任を持つ以上これを放置しておくということは、立法府に全部お任せするのだという、行政は関係したいのだという考え方でおられるということは、私は妥当でないのではないか、こういうふうに思いますけれども、自治省は、この公職選挙法に基づいて五年ごとに国勢調査の結果によって是正をするのだというこのことに、こういう規定に基づくところの責任をどういうふうにお考えになられておるのか、お伺いをいたします。
  141. 古屋亨

    古屋国務大臣 行政府である自治省におきましても、やはり最高裁判決は極めて厳粛なものに受けとめておるのでございまして、最終的に、私どもは、国会の構成に関する基本ルールでありますので、自治省はどんな資料でも御要望によって提出をいたしておりますけれども、ただそれで傍観しているという意味ではございません。私どもも十分責任を感じておるのでございまして、あらゆる資料提出するということを私どももモットーとしておりまして、そういう意味におきまして、ぜひ立法府自治省も含めました行政府におきまして、この案をできるだけ早急に成立さしていただくことを心から念願しておる次第でございます。
  142. 中村巖

    ○中村(巖)委員 それは自治大臣おかしいですよ。最高裁判所の判決を深刻に受けとめるか受けとめないかそれ以前の問題として、判決があろうとなかろうと、やはり不正常な状態になっているということを深く自治省認識をしなければならぬわけで、最高裁判所の判決がありましたからこれは大変です、こういう受けとめ方では私はおかしいというふうに思っているわけです。  それと同時に、これは自民党ばかりを責めるわけではありませんけれども、自治省というものがもう少し主体的に、本当にあるべき形の選挙法というものはどういうものか、あるいはまた、定数配分をあるべき姿としてはどういうふうにすべきか、その辺をお考えになられて主導的にいろいろな形で動かれない限りにおいては、どうしても政党間の党利党略派利派略というものが横行をしてしまうことになる。その意味で、自治省の、今自治大臣の御答弁になったような御答弁では、これは無責任きわまるというふうに言わざるを得ないわけでございまして、その辺、自治省基本的な考え方として、定数の問題あるいは選挙法の問題というものは、自治省は主体的には手をつけないという考え方で一貫してやられておるのかどうか、もう一度お伺いをします。
  143. 古屋亨

    古屋国務大臣 今先生のお話を承っておりまして、私どもは、最高裁判決があったからそういう態度をとっておるということは全然考えておりません。やはり選挙の公正な執行ということが私どもの責任でございますので、その限りにおきましては、従来も行政組織として最大努力をしておるつもりでありますが、先生のおっしゃるように、まだ足らぬ点がある、そういう点がありますれば十分反省いたしまして、今後とも資料の提供あるいはいろいろの問題につきましても一層積極的に努力してまいるつもりでありますので、この法案についての早急な御審議をよろしくお願いしたいと思っております。
  144. 中村巖

    ○中村(巖)委員 これからこの問題の自民党提案の六・六案に入ろうという段階でございますけれども、時間が非常になくなってしまいましたので、それからの質問は次回に留保するしかないわけでありますけれども、まずさしあたって、今回自民党から提出されておりますこの六・六案、こういうものがどうして作成をされて先国会、五月に御提案になられるようになったのか、その六・六案を作成をする基本的な考え方はどういうことなのか、それをお伺いをしたいと思います。提案者にお伺いいたします。
  145. 森清

    ○森(清)議員 お答えをいたします。  戦後衆議院定数是正は二回行われたわけでありまして、三十九年には、平均に対しておおむね上三分の一、下三分の一の範囲内のものはいいが、それを超えるものは是正すべしという選挙制度審議会の答申がありまして、そして、それに基づいて、兵庫五区は二名区とする、それから東京、大阪等にありました選挙区は六名区あるいは八名区というものにするという答申があって、しかも、それに基づいて政府提案をしたということは午前中にも申し上げたとおりでございます。それから、その次に行われました昭和五十年の改正でございますが、その際は、そういう大方のルールができておりましたので、当委員会に設けられました小委員会において各党の代表で十分議論がなされました。その議論の経過、そして、さらに最終的に結論になりましたことを後で、数字的に言いますと、平均に対して小さい方、二人区は、減員は余りしないで増員のみで解決する、増員対象区は平均に対して一・五を超えるものを分区をする、こういう方針のもとで大体行われました。したがって、二回の改正ともいわゆる増員による解決をいたしたわけでございます。  そういう手法が、人口格差を比べて、そして、はみ出すところを解決するのだが、従来二回は増員によって解決した。この一応国会で二回やったという例も十二分に頭に置きまして、それから我我が改正をするについて、現在の国内の情勢あるいは国民常識ということから考えて五百十一名の定数を増加させることは、これ以上増加することは国民的な賛成は得られないであろう。否、むしろこの五百十一名は厳守すべきであるという原則をまず立てました。  その次に格差範囲でございますが、それは各党には二倍とか一・五倍とかいろいろございましたが、我が党におきましては暫定的な改善措置としては憲法違反と断定されない範囲内をとりあえずやる。それならば、判決の理由書等をよく読んでみますと、三倍以内にしておけば憲法違反とはならないのではないか、こういう判断がございました。  それから、その次に、先ほどもお答え申し上げましたが、選挙区の改変を行うような、これは制度と言っていいのかどうかわかりませんが、そのような大きな選挙についての改変は行わず、できる限り最小限の是正にとどめる、こういう三つの方針を立てまして、それに従って作業を行った結果、我々が提案している六・六案がそれであります。逆に言えば、六・六案のみがその条件に該当する、こういうことになったわけであります。  したがって、るる午前中にも御説明いたしましたように、これは二人区をつくろうとしてつくったものでもないのであります。たまたま上の六人、区ができなかったのは幸いと申すべきでありましょうが、二人区をつくろうとしてつくったのではなく、あの該当区はそれぞれ四人区であったならばこういう問題は起こらなかっただろうと思います。たまたま六つの選挙区のうち四つが三人区であった、したがって、たまたま二人区ができた、こういうことでありまして、我々は長年三人−五人というものを一応原則としている現在の選挙制度というものを前提にすれば、それを守ることが望ましいと考えております。しかし、このような暫定措置であるならば、それは許されるのではないだろうか。奄美群島を復帰させたときは小選挙区そのものである一人区が既に三十数年施行されている。普通選挙、中選挙区制以来二十一回の総選挙が行われましたが、一回は大選挙区制でありましたが、あとの二十回のうち九回が三人から五人の選挙区、十一回は一人と三人−五人の選挙区で行われた。  したがって、そういうことを考えると、例外として二人区ができるということは、奄美群島の一人の小選挙区を例外として認めたのと全く同じ趣旨に基づくものである、このように考えまして、我々は選挙区の改変を含むそのような大手術は行わずに、これでやっていきたい、これが制定に至るまでの考え方であり、そしてまた、その結論でございます。
  146. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今の考え方自体についてもいろいろ御批判を申し上げなければならぬわけでありますけれども、時間がなくなりましたので私の質問はこれで終わりまして、また次の質問の機会が与えられましたらいろいろ申し上げたい、こういうふうに思います。  終わります。
  147. 三原朝雄

    三原委員長 小川泰君。
  148. 小川泰

    ○小川(泰)委員 私は、午前中の質問、いろいろうんちくのあるところを聞かされておりますので、極めて常識的に、従来この問題を扱ってきた経緯に照らしながら、政府並びに自民党案とでも申しますか、御両者に御質問を申し上げたいと思います。  最初に、午前中でも問題になったのですが、最高裁判決、これは今度違憲ですよということが初めて明確に出たのでありますけれども、一般の国民がずっと、衆議院定数問題というのは今始まったのじゃなくて、再三お答えがあるように、随分長い間これがされてきました。時には高裁であってみたり、時には最高裁であってみたり、その都度、今回のように、次に選挙をやったらその選挙は無効ということもあり得るぞというふうな、そんな厳しいものではなくても、とにかく違憲だというものが、ちょっと見ただけでも一回、二回、三回、四回くらい続けて出ております。こういう流れを、選挙する側に私たちは大いに立たなければいけない、される側よりもする側に、一番わかりやすく政治に参加するという、そういう立場からこの種の問題は扱っていかなければいけないのではないか、こういう立場に立って、今度の六十年七月十七日に出た最高裁判決をどのように基本的に御両者は受けとめていらっしゃるか、ここをまず冒頭に伺っておきたいと思います。
  149. 古屋亨

    古屋国務大臣 去る七月の最高裁違憲という判決でございますが、最高裁違憲立法審査権に基づいて法令が違憲とされました以上、司法判断を尊重してできるだけ早急に法令を是正するということが要求されているものと考えております。
  150. 森清

    ○森(清)議員 全く同様でありまして、憲法違反という判決が出されておるわけであります。  ただ、午前中も申し上げましたが、つけ加えて申し上げたいのは、高等裁判所、いろいろありますが、これはすぐ控訴しますのでその段階であれして、結局衆議院定数につきましては三回最高裁判決がございました。  まず、五十一年の判決については、憲法違反であり、選挙はその点に関する限り無効とすべきであるが、選挙無効をしたならば回復できないような混乱を生ずるので、事情判決法理を用いて選挙を有効とするという判決でございました。しかし、そのときはその争われた法律は既に改正されておりました。したがって、その判決当時の現行法は合憲であったわけです。  それから、五十八年判決は、これは憲法違反状態になっておるが、国会においてそう早急に是正することはできないであろうから、一定の期間が必要だ。その一定の期間内であったから憲法違反ではない。格差状態違憲状態であるが、法律そのものは憲法違反でない、こういう判決でございました。  六十年判決は、五十一年判決と同じように、憲法違反である、したがって、選挙も無効とすべきところであるが、無効としたのでは回復しがたいことになるので、事情判決法理に従って選挙は有効にする、こういう判決でありまして、現在の法律がそのような状態になっているという判決を受けた最初判決でございます。  したがいまして、そのことを含めまして我々は大変深刻にこの問題を受け取っておるわけであります。先ほど来の御質疑においても、憲法違反法律に従って選挙事務を執行しなければならないときには予測できないような混乱が起きるのではないかというふうな御質疑も先ほど来あったわけであります。そういう状態にならないように一刻も早く是正すべきであるし、これは単にこの国会でやったらいい、次の国会へ持ち越していいという問題ではなくして、我々は憲法違反という公職選挙法を現在持っている、これは一日も早く成立をさして改正すべきである。それは次に解散するとかしないとかいう問題じゃない。我々国会は、憲法違反状態を一日も早く是正する国会としての義務があるのではないか。こういう考え方に従いまして前通常国会において提案をし、継続審査もお願いをいたし、そして、この臨時国会になりまして、我々は早急に審議して結論を得たいということで現在努力中でございます。
  151. 小川泰

    ○小川(泰)委員 そのお話はもう何回も伺いまして、気持ちはそんなに変わるものじゃないので、野党も四党そろってひとつ是正しようと言っているわけですから、そんなに変わりはないと思います。  そこで、問題は、そんなに大事な問題を長く放置しておる我々自体もこれは大いに反省しなければならぬ。私は一番恐れるのは、昨今の社会風潮、あるいは経済や社会や教育やいろいろな問題が出てまいりまして、いわば政治に対する国民の不信とでもいうような問題が、この問題だけに限らずここ数年いろいろな問題で続いて出ていますね。むしろ私はその一つの大きな問題提起として国民世論が凝結されて今度のような判決も出ざるを得なかった。こういう条件を長年我々がいつまでもつくっておったということは、これは院全体としても反省しなければならぬというぐらいに私ども受けとめておるわけなんです。したがって、気持ちは一緒でしょう。しかも、その判決内容というものを平たく言えば、平等であるべきものが少し格差が広過ぎるよ、それも了解する範囲を超えちゃった、だから了解する範囲内に早く直したさい、こういうことだと思うのです。  だとしますと、もう一つ、これは衆議院ですから私余り言いたくたいのですが、参議院の地方区、この格差の問題についてもやはり法のもとに平等だというものに、我々が姿勢を正そうとするならば当然のごとくこれは同じような態度で当たっていかなければいけないと思うが、これに対していかなる見解を持っているか、伺いたいと思います。
  152. 古屋亨

    古屋国務大臣 参議院議員定数是正も私どもは極めて重要な課題であると認識をしております。総定数を何人にするか、あるいはまた半数改選制や各選挙区の有する地域代表的な性格をどう考えるかなど、選挙制度の基本にかかわる重要な問題でありますので、この問題につきましてはやはり十分検討を進めなければならぬし、私ども自治省といたしましてもいろいろ検討しております。どうしても立法府を構成する各党間で十分この際御論議を尽くしていただきたいということを心から念願しております。     〔委員長退席、羽田委員長代理着席〕
  153. 小川泰

    ○小川(泰)委員 ちょっと語尾の方がよくわからないのですが、参議院についても最高裁判決の思想をそのまま延長して真剣に検討してもらいたい、こういう意味合いですか。
  154. 古屋亨

    古屋国務大臣 判決そのものは衆議院に対する判決でありますが、判決の趣旨、精神というものを考えますと、私どもとしましても十分検討しなきゃならぬし、また国会におきましてもひとつ専門ルールのつくり合いでございますので御検討いただきたい、こういう意味でございます。
  155. 小川泰

    ○小川(泰)委員 わかりました。  森さん、あなたはさっきから答えているので質問しづらいのですが、これは立場を超えてひとつ平易に質用申し上げたいと思うのです。  今最高裁が、直しなさい、そうしませんと違憲ですよ、だから直しましょう、こういうことでここまで来ました。その内容にいろいろ、自民党の有志の皆さんは二名−五名区ということで六・六、こういう案が出ていますね。野党四党は三名−五名ということでどうだいな、こういうのでここまで来ているわけです。  ところが、先ほど来から国勢調査の問題について何回か伺いました。そこで、論議をする前提として材料がいいほどいい。世の中の移り変わりは大変激しいのです。五年も前のことをどうのこうのって、まあ法律上はあるかもしらぬが、国民政治不信あるいは正義に対する疑義にこたえるには今から四年、五年を見通してなるほどなというふうにして論議をするのが本来あるべき姿だ、こう思うので、国勢調査速報値国民は大変心待ちに待っていらっしゃると思うのです。  そういう意味合いで、速報値と確定値というものについて大体似たようなものだという認識でいいのかどうか、政府の方の認識を伺いたいと思います。
  156. 酒井忠敏

    ○酒井説明員 国勢調査速報値と確定値の位置づけという問い合わせだと思いますが、国勢調査速報値は、確定値が公表されるまでの間、早期の利用に供するため速報として公表するものでございまして、速報値、確定値とも統計法に規定された指定統計としての国勢調査の結果ということでございます。
  157. 小川泰

    ○小川(泰)委員 だとしますと、ここであわてふためいて六・六どうのこうのというやつを今一生懸命やっていますが、仮にこれが進んでいったとしても、旬日を経ずして、せっかく合憲の法案をつくろうということでこの立法府が知恵を絞ってやっているのですが、ばっとそれが出てきましたらまた違憲の箇所が明瞭に出ることは大体推定できるというのが常識じゃありませんか。としますならば、先ほども速報値の扱いについて、事務的に何年度はこのくらいかかった、このくらいかかった、こう説明がありまして、大体来月の下旬くらいに発表できます、こういうお答えもいただきました。それを聞くと、七グループに分ける、そして一番大きなところが作業上おくれるのでしょう、最終的に参りますよ、こういう説明まで伺いました。でありますならば、せっかく今急いでこういう論議をやっているのですから、少しでもこの論議に新しさと国民にわかりやすいような論議が展開できるように、今問題になっておるところは大体常識的にわかるのだから、そこら辺のところは非常に人口も少ない県なのだから、できたところから出せませんか。それがこういうものを進めるための国民へ向かってのありざまだと私は思うのだけれども、それをちょっと答えてください。
  158. 酒井忠敏

    ○酒井説明員 従来から要計表による人口は全国の結果をベースといたしまして、その中の都道府県の結果、市区町村の結果ということでございまして、全国の結果がそろいました段階で公表させていただいております。
  159. 小川泰

    ○小川(泰)委員 それはもう何回も先ほどの論議で聞いたのだが、事態は、今私が申し上げたように、法理論も大変大事に扱わなければなりませんが、最高裁判決を受けて、我々立法府政治的に判断して、今国民は何を求めておるのか、国民がこれだけ関心を持った世論に対してどうこたえるかというのが政治判断なのだ。我々が法律をつくる側なのだ。だとするならば、また、つくったはいいが、すぐおかしくなるぞというようなものをわかりながら法律をつくるなんという非常識は、国民から見ると何かこの中だけの論議のように思えてならない。したがって、選挙する側に立ちますたらば、一番わかりやすい方法、できるだけ新しい材料によって論議するというのが、これは普通じゃありますまいか。そのために、今統計局の方はそういう立場で答えざるを得ないでしょうが、一歩進めて政治判断として自治大臣なりあるいは政府なりが少し相談してもらって、まともに論議するなら論議する材料をできたところからちゃんと調査して出してもらいたい。お答え願います。
  160. 古屋亨

    古屋国務大臣 御趣旨はよくわかりますが、所管は総務庁でございますので、総務庁にひとつ私からも先生の御趣旨は連絡いたします。
  161. 酒井忠敏

    ○酒井説明員 要計表による人口速報値の公表までに、最後に要計表を受理しました後、その内容等全国並べまして審査いたし、要計表の合算、結果表の審査、分析を行って、その後公表資料の作成を行うところでございますので、十二月下旬の線を動かすことは不可能でございます。
  162. 小川泰

    ○小川(泰)委員 それはあなた方の立場は僕はそうだと思いますよ。したがって、この審議の仕方もいろいろ僕はあると思う。材料をできるだけ、我々はまじめに取り得るすべてを尽くして、この段階で何ができるのだという工夫をしようじゃありませんか。五年も前のことについて、法律論はこうだと言ったって、国民の皆さんはむしろ先へ向かってどうなのだということに非常に関心がある。また、我々立法府はそれにこたえるべき役割を持っておる。  したがって、こういう委員会のやり方も私は一つのやり方だと思うけれども、そんなに資料をオープンにするときに一つの責任をきちっとしなげればならないという手続が必要とするならば、それ以前に我々が論議する材料として、できているものならひとつ見せてもらおうじゃないですか。そういう判断に基づいて論議するのが、この問題に対する最も親切で、我々が論議を尽くす一つの手法ではないかと私は思うけれども、そういう論議の運び方はできませんか。
  163. 酒井忠敏

    ○酒井説明員 昭和五十五年における速報値と確定値の差、純誤差と総誤差とよく議論されますが、五十五年における純誤差は二千九百十一人ということでございます。これは二週間程度審査等を十分に行った結果の誤差でございます。その前の年は五千八百二十五人ということでございまして、四十五年、そのさらに前は一万六千百五十四人ということでございます。拙速をたっとんで早く出しますとそれだけ誤差が大きくなるということでございます。
  164. 小川泰

    ○小川(泰)委員 あなたのお答えはその程度なんでしょうけれども、さっき午前中に最高裁判決だって格差何倍かというのがきちっと三倍なら三倍ということで三回出ているならいい。何・何倍といって、その判断の基準の格差さえも相当ふれている。一億二千万分の一万というふうなものがこういうものを論議するとき何の支障になるのですか。だから、もういいわ、あなたの方は。そうじゃなくて、そういう生まれかかろうとする赤子がおって——生まれたのか、十月一日には。ただ、ちょっとこっちに届かないだけの話なんだが、できるだけ早くそれを見て論議するという方法が、国民の立場に立つならば普通ではありますまいか、私はこれを伺っているところなんです。森さん、どうですか。
  165. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  我々は議員定数是正という非常に根本的な、しかも現実政治としては非常に困難な問題に立ち向かっておるわけであります。したがいまして、先ほど来申し上げましたとおり、憲法違反と断定されているこの定数配分表を一刻も早く是正をしたい、それにはよるべきものは五十五年国勢調査の結果しかないわけであります。したがって、これに基づいてやる。また、それについては、先ほどから申し上げましたとおり、自民党内において数年にわたる検討の結果、自民党において合意をしたものであります。政治でございますから、一つのことをなし遂げるには相当の研究と、それから賛成を得るための討議が必要であります。したがって、さらに国勢調査の結果があと一月先に出るではないかということを待って政治日程を考えましても、例えば年末年始には予算編成あるいは予算委員会審議、我々は予算委員会審議中でも審議をしていただけるかと思うのでありますが、今の国会の慣例によれば、予算委員会審議中は他の法案審議はしないという慣例もできておるようであります。そうこう考えますと、十二月に国勢調査の結果が出るのだからそれに基づいて是正をしたらいいじゃないかということが、現実政治の中においてどのような意味を持っておるかということも考えていただかなければならない。  それでは、予測される範囲でやったらいいじゃないか、また小川委員の言われるとおり、三倍という確定的なものはないじゃないか、その辺のところは大ざっぱに判断をしてこの程度にしておけばいいじゃないかという御議論もあります。私はそういうことはあり得ないと言っているわけじゃない。しかし、我々が今やろうとしていることは、最高裁判所において憲法違反と断定されたい範囲是正をするにはこれである、しかも最小限の是正でとりあえず暫定措置としてやっていこうということでやっておるものですから、現在確定的に公表されておる五十五年国勢調査人口を使わざるを得ないのです。そして、それを放置することは単に政治的に二カ月、三カ月延びるということじゃなくして、我々は憲法違反法律を現在持っている、我々自身が憲法違反法律によって選出されている国会議員であるという自覚を持っていただきたい。したがって、それを一日も早く是正をするというのが我々国会の責務ではないか、そういうことでこの法案の早急なる結論、審議をお願いしている次第でございます。
  166. 小川泰

    ○小川(泰)委員 そのとおりでしょう。だから、私は言っているのです。六・六案なるものが、これは自民党案も四党案もそうなんです。決めて間もなくまた憲法違反になるのです。これは明らかにわかるのです。そうしますと、そういう経過を国民がずっと見た場合に国会は何をやっているのだろう、私はこの方が怖い。だから、その結果に照らして、政治はその都度終わるわけではないので、大きな流れの中で国民と直結しなから、信頼を寄せ合いながら進めていくということは先輩諸兄がよく教えてくれているところなんです。だとするならば、今決めようとするのは、合憲のものをつくろう、だけれども結果としてそれは合憲でないことは目に見えてわかる、こういうばかみたいなものがどうして論議されたければならぬのかなというふうに普通の国民はお思いでしょう。したがって、そういうものにこたえるような運び方をなさったらいかがですか、これを申し上げているのです。一つ一つのあなたの御意見、また四党案の意見はそれぞれよくわかります。しかし、大きな政治という流れの立場に立ったときに、そういう扱いを改めてなさったらいかがでしょうか、そういうものを検討する御用意がおありかなということを先ほど来から伺っているところでございますので、どうぞお答えいただきたいと思います。
  167. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  ただいまの法律憲法違反になっておるわけであります。したがいまして、それを是正するのが我が党案であり、また野党四党案もそれを是正することになるわけであります。また、皆さん方も早急に是正をしなければならないという観点から前国会に御提案になり、そうして皆さん方の全会一致、共産党は反対されたかもしれませんが、皆さん方の賛成によって継続審査としておるわけであります。したがって、継続審査になった法案はこの国会において早急に結論を出すべきであろうと思います。  したがって、現在は憲法違反なんだ、それを直すんだという観点がなければならないと思います。そうして、この我々の六・六案あるいは野党の六・六修正案的なものが通ったとしたならば、いずれが通っても、あるいはどのような形で通りましても、これは憲法違反でない法律になるわけであります。それが憲法違反であるかないかは、さらにそれに基づいて選挙が執行されたときに提起される訴訟、それによって最終的には最高裁判所が判決をするまでは憲法違反であるとかないとかという断定はできないわけであります。したがいまして、我々は十二月を過ぎればすぐ憲法違反になる法律をつくろうとしておる、このようなことは考えておりません。それは法律論であります。したがって、我々は政治的には、この速報値が出たならば直ちに暫定的にも是正をいたしましょう、さらにそれに基づいて抜本的な定数是正措置も研究に入りましょう、こういうお約束をしておる次第でございます。
  168. 小川泰

    ○小川(泰)委員 これ以上お話を続けましてもそういうお答えになってまいりましょうが、私は、そこが一番肝心な、国民にわかりやすい国会のありざまではないかということを、しつこいようですが、強調しておきたいと思います。  次には、二名区、先ほど来からいろいろ造詣の深い森委員の方から我が国の制度の歴史の展開がありました。それはそのときどきの社会環境、そのときどきの政治環境というものからおのずから生まれてきたことも御承知のとおりだと思います。そこで、私たちがごく自然に考えておりますのは、五、六十年間慣習的になじみになじんできたものというのはよほど何かぐあいの悪いものでもない限りはまあまあ続けていこうというのが普通じゃないか、私はこう思っているのです。したがって、奄美大島の一名区、これは御案内のとおり、ああいう経過でそうなって、ルールという一つの形式論議の体系としてはあり得るというふうに私は認めますけれども、では、それはどんどんできていっていいのかというと決してそうではない。こう考えますと、拙速をとうとぶ余り——あるいはいろいろな論議もなさったことでございましょう。そういう中とはいえ、二名区というものがこの際でき上がるということについては、制度上の欠陥なり理由なりが国民にわかるようにしてやっていくのが私は本来の姿だろうと思います。むしろこういうものこそ少し時間をかけて抜本的に制度全般のありざまとして考えるべきだろうと思っておりますが、森さんのお考えはいかがですか。
  169. 森清

    ○森(清)議員 二人区制度が小選挙区でもなければ何でもない、それは大選挙区制度の一部であり、それを中選挙区制度と言おうと何と言おうとそれは名称の問題にすぎない、こう私は午前中答弁申し上げましたので、二度と繰り返しません。  ただ、暫定的と言おうか、この際選挙の別表が憲法違反になっている、これを是正するとき、我我の案は具体的に言えば三名区のところを二名区にしようということであります。ところが、野党の案は、三つの選挙区について隣と合区し、一つの選挙区については境界変更しようとしておるわけであります。どんなに長くかかっても今から二年先には選挙が行われるわけであります。そういたしますと、まさしく小川委員の御指摘のとおり、六十年間安定した選挙区でございます。その選挙区の人は、その選挙区の中において今まで三名の国会議員を送るということで六十年間なれ親しんできたわけであります。そうして、それが既に社会的、政治的に確立しておるわけであります。ところが、合区をし、境界変更をするということは、その枠組みを取り外して、例えば具体的に、ここにも関係者がおられますが、自分たち選挙運動もしたことがない、選挙民に対して活動もしておらない、選挙民から理解もされておらない、こういう方々を急に選出しなければならない、こういうことになるわけでありまして、私は選出されておる国会議員の立場を申し上げておるのじゃないのです。選挙区から選出された者は国民の代表として選挙区に拘束されるものではないということは百も承知いたしております。しかしながら、選挙区というものはなぜつくっているか。一定の地域に分けてそこを選挙基盤とし、そうして、その地域における有権者の声、有権者の判定、この判定の下った者を国会に送ってそれが国権最高機関を構成する、こういうことをやるために選挙区を設けておるわけであります。そうすると、その選挙区の枠組みを外すことの方が選挙に大きな影響を及ぼすのであって、そこから三人を選出するか四人を選出するか五人を選出するか二人を選出するかということよりか、選挙のそういう枠組みを変更することの方が選挙に関するより大きな変動である、このように我々は考えますがゆえに、合区あるいは境界線変更を行わず、定数の増減によってこれを処置しよう。しかも、その考え方は、この国会において制定した選挙制度審議会令によって選挙区及び定数是正について諮問を発しました選挙制度審議会においても、三人区から五人区の選挙制度を前提として暫定的にやむを得ず二人区から八人区の中選挙区制とすべしという答申を得ております。しかも、それに基づいて政府国会にそういう法案提出したことがございます。  そういうことから考えましても、我々自由民主党が現在行っておりますやり方は普通世間に妥当と思われるやり方ではないだろうか。選挙制度審議会において学識経験者にもお願いして大いに議論した結果もそうでありますし、これは恐らく国会議員の中でも多数の御賛同を得られることでありましょうし、また国民多数の御賛同を得られるものだと考えて私は提案をいたしておるわけでありまして、多数の御賛同を得られるかどうかはこういう審議を通じて最終的に御決定願いたいと思っております。     〔羽田委員長代理退席、委員長着席〕
  170. 小川泰

    ○小川(泰)委員 今のお答え、何回も伺いました。私が伺ってますのは、だとしますなら、過去にも二回選挙制度を変えていますね。分区だ。明らかなる分区で、私のところなんかに関係のあるところをやっています。そうすると、森さんの論拠を合区に当てはめるとするなら、分区だって同じで関係なくなってしまう。こういう論議で物を進めていきますと、なかなかこの種の問題は難しかろうなというふうに私は思っておるわけなんです。  したがって、私が伺っておるのは、大体三名から五名というのが大方、全体百三十選挙区があるうちずっと続いてきた。これをきちっと守っていくことの方がよろしいのではないか、私の方はこの発想なんです。よろしゅうございますね。そこへもってきて何で今のような論拠で二名区をつくらなければいかぬのかなというものの方が大いになじみにくい。しかも、これを午前中論議して、いろいろ諸外国の例その他を見て二名区の選挙の場合の結果論、また評価、あるいは一名区の結果論、評価論、三名、四名、五名というような実績等の問題を論議したような経過がありますので、私の考えといたしましては、無理に暫定措置であり、時には、たしか本会議場だったと思うのですが、質問があって、緊急避難的案として大いに論議していただきたいみたいな発言があったぐらい。であればあるほど、制度の根幹に触れるようなことはできるだけ置いておいて、むしろそれは抜本の方でじっくりやってもらえばいいのであって、当面、最高裁判決にこたえようとするこの範囲内で物を進める方がよほど国民の皆さんにはわかりやすいのではなかろうかというので四党案は出ているわけでありますので、森さんの意見意見として、一つの見識として承っておきます。  何回も申し上げますけれども、どうもここが余りにも変わり過ぎる、こういうことでございますので、これ以上二名区の理由というものを私は伺いませんが、先ほど午前中の御質問者も、これはどんなことがあっても絶対に賛成できないと言い切って質問を終わった方もおったように、この中にはなかなかの問題を含んでおるということなんでありまして、私も今まで何回御答弁を伺いましても、二名区をこの段階において論議の俎上にのせ、しかも、つくり上げるということは絶対に容認するわけにはまいらないということをはっきり申し上げておきたいと思います。  さて、次の質問でありますけれども、先ほど前の質問者がちらっと、政治の運びというものの中で幾つか物が類推されるという観点から、解散論の問題が触れられておりました。この解散の問題についてこの委員会で、休会中だったでしょうか、一般質問ということで官房長官と幾つかやりました。これは先ほども大体お答えを聞いてわかっておるのですが、これは私まだ不勉強で、本当にどうなのか実はわからないところもありますけれども、普通の常識で憲法をざっと見てみた場合に、解散に関する条項が二つありますね、憲法の中に。果たしてこの解散権というものが合憲かどうかという制度の問題を離れて考えた場合においても、戦後解散をやった場合に幾つかのやり方がある。こういう点を考えてみますと、どうもこの問題と絡み合いながら、何かいつでもどこでも自由に解散権が行使できるやの印象を非常に強く受けておりますので、ちょっとそこら辺のところを確かめてみたいというふうに思います。これはどの所管庁でしょうか。先ほどおられましたね。
  171. 三原朝雄

    三原委員長 法制局長官が帰ったようでございます。
  172. 小川泰

    ○小川(泰)委員 それでは、この問題は次に留保させていただきたいと思います。この辺を私は明らかに申し上げておきませんと、この定数是正から類推をしていって、今の政治環境の中でどうだという問題に、先ほど来の法制局長官のお答えでは、こちらが聞きたいなという真意に触れていないものですから、改めてこれは御要請申し上げて質問をさせていただきたいというふうに思います。  では、次の質問に入らせていただきたいと思います。  先ほど来申し上げたとおり、どうなんでしょう。今最高裁判決が出る前に自民党有志さんの方も六・六案を決め、提起してきましたね。それに対して野党四党案も呼応するように六・六ということで問題を提起してここまでやってまいりました。経過はもう御案内のとおりなんです。先ほど私もしつこく申し上げるように、せっかくそういう努力をいたしたといたしましても、近き将来にまた国民のなかなか納得いかないような状況ができるということが類推されるとしますならば、一刻も早く、森さんがおっしゃるように、違憲の中におる我々という認識、盛んに強調されておりますが、同様な認識もあり得るのでしょう。この六・六案というものを、今提案されておりますが、提案者同士で将来へ向かって修正なり新しく想定されるものなり、そういう論議には入れませんか。
  173. 森清

    ○森(清)議員 ただいま当委員会で鋭意両案について審議が行われておるわけでありますから、この審議を十二分に尽くしていただきたい、その後の問題ではないかと思います。
  174. 小川泰

    ○小川(泰)委員 そういうお答えなんでしょうな。しかし、それはこの中では通用すると私は思いますけれども、先ほど来申し上げているとおり、国民全般から見て果たしていいのかなという政治判断がこの段階においては非常に大事だというふうに私は思いますので、いろいろ委員会のありさま、法案提出の仕方、手続、こういうものも国会の慣習やいろいろな圧力はあるかもしれませんが、そういうものの中の一つとしてこの段階でそういうあり方があっていいのじゃないかというふうに私は思いますけれども、いかがでしょう。もう一回伺います。
  175. 森清

    ○森(清)議員 小川委員の御意見として承っておきます。
  176. 小川泰

    ○小川(泰)委員 これは非常に大事な問題だと私は思うのです。何も一つの法案を行政側の政府が出して立法側の我々が審議をするというタイプと違うのですね、この委員会は。しかも、皆さん方が盛んにこれはもう院全体の問題である、したがって衆知を集め、お互いに苦労しながら、そして全体の意見がまとまるようにやりましょうやというための一つの手だてとして自民党有志案が、六・六案が出たものですから、あの段階で野党四党案も、こういう考えもありはしませんか、こうぶつけていったように全体から見ますととれるのですね。だとしますならば、この六・六案というものについての法的根拠、手続、論議の仕方は今もうよくわかりました。したがいまして、これからこの問題を将来にわたっても国民に疑念を抱かせないように進めるためにはいかなる方法があるかということを論議しても少しも構わないのがこの委員会だと私は思うのです。それをあなたは大変見事なお答えで、それは小川委員意見として伺っておきます、こう申しておりますけれども、それなら質問もしづらくなるし、この審議というものも、どこに向かって物を言ったらいいのかなというふうに、私まだ出て新しいからわからないのですが、ごく普通のように、院全体が合意を得るようにこういうものは進めようということで始まったのだから、そういう方法もあるのじゃありませんか。それは検討してください。
  177. 森清

    ○森(清)議員 これは委員会全体の運営の問題でありますから、またそういう相談の場もあるだろうと思っております。
  178. 小川泰

    ○小川(泰)委員 そういう大事な問題でありますので、何もこれは賛成、反対というものを続けていってどうだという種類のものとはちょっと違うなというふうに私は思っておりますので、これ以上私は申し上げませんが、ぜひこれは委員長の方でよくお図りを賜りまして、私の趣旨はもう何回も申し上げていますからおわかりいただいたと思いますので、しかるべきところでそのような運びをされますようお願いを申し上げておきたいと思います。  私まだ持ち時間があるのですが、そういう答弁とか雰囲気とか流れの中で、しかも憲法論議をやろうと思いましたら、どうもちょっと私の方の手続も不手際があったかもしれませんが、お答えする方もいらっしゃらなくなってしまったということでございますので、時間は早いのですが、この辺で質問ということではやめたいと思いますけれども、大事な二つの点、これはぜひひとつ委員長の手元で御理解をいただきまして、次に私は続けさしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
  179. 三原朝雄

    三原委員長 二点の留保については委員長よく承知をいたしております。他の問題については理事会で十分お諮りをいたす所存でございます。
  180. 小川泰

    ○小川(泰)委員 よろしくお願いします。終わります。
  181. 三原朝雄

    三原委員長 野間友一君。
  182. 野間友一

    ○野間委員 申し合わせによりましてきょうの質疑時間、制約がありますので、どの程度できるかわかりませんけれども、数点にわたりまして質問をしてみたいと思います。  まず、最初にお聞きしたいのは、議員定数の配分、いかにあるべきなのか、また、その是正はどうあるべきか、こういう問題であります。すぐれてこの定数あるいは是正の問題は議会制民主主義根幹、根本にかかわる問題であります。したがいまして、選ばれる側の党利党略あるいは派利派略というものをすべて捨てて、選ぶ側の権利、つまり一票の価値の平等、これをどのように実現していくのかというのが最も大切なことではなかろうかというふうに思っております。  そこで、両提案者に対しましてこの点についての基本的な認識をまずお伺いしたいと思います。
  183. 森清

    ○森(清)議員 野間委員にお答え申し上げます。  憲法その他我が国の法制といいますか、その秩序、根本の基本観念、これに従いまして適正妥当なる議員選挙区及び定数配分というものをつくらなければならない、このように考えております。
  184. 山花貞夫

    山花議員 憲法十四条が法のもとの平等を宣言しているところであります。国民基本的権利である参政権につきましてもその立場に立って考えなければならない、投票価値の平等につきましては最高裁判決指摘しているところであります。できる限りその精神にのっとった定数の配分、これが我々の目標とするところでなければならないと思っているところであります。
  185. 野間友一

    ○野間委員 森さん、大変そっけない答弁で、ちょっと抜けておったと私は思いますけれども、要するに選ばれる側の理屈、党利党略等、こういうものをすべて捨てて、選ぶ側の一票の価値の平等ということが定数配分問題あるいは是正考える場合に最も大切な問題である、これがまさに議会制民主主義根幹にかかわる問題だという点の基本認識をお伺いしたわけです。
  186. 森清

    ○森(清)議員 まさしく選挙制度は選ばれる側の論理ではなくして選ぶ側の論理である。国民主権者でありまして、その主権者の権限を、この選挙制度を通じて国会の構成員として送り出し、そこで主権を行使しておるわけでありますから、おっしゃるとおり選ばれる側の論理ではなくして選ぶ側の論理に従ってこの選挙制度は考えなければならない、この原則については野間委員と全く同様の考え方でございます。
  187. 野間友一

    ○野間委員 基本的な認識やよしということですけれども、またずっとお聞きしたいと思います。  そこで、今基本的な認識についてお答えをいただいたわけですけれども、そういう観点から考えますと、本来的に国会の構成、国会に民意の正確な反映、こういうものを得るためにどうするのかという問題であります。つまり、そういう観点から考えまして、これは各党共通の認識が非常に大事だと思いますし、そのためにも共通の土俵、ルールづくり、これを行って、それに基づいて配分や是正を行うべきであるというのがまた基本的な前提であると思いますけれども、いかがでしょうか。
  188. 森清

    ○森(清)議員 仰せのとおりであると思います。
  189. 野間友一

    ○野間委員 そこで、さらに森さんにお伺いしたいのは、先ほどからも話が出ておりましたけれども、五十八年十一月の最高裁判所の判決違憲状態、この判決がされまして二年になるわけですね。ところが、全会派による公正、民主的な一票の価値の平等を実現するための協議、これは最近になってやっとなされるようになりましたけれども、ほとんどなされてこなかったわけですね。私ども共産党は、亡くなりました中野委員長のときも、その前任委員長のときも、再三にわたりまして共通の土俵づくりを急ぐべきである、本委員会を開きまして、そこで協議を行うべきであるという立場を一貫してとり続けてまいりまして、申し入れもしてまいったわけですけれども、残念ながらそれが得られできませんでした。御承知のとおりです。確かに我が党と自民党、そして我が党以外の野党自民党という二本立ての極めて異常な形での協議、これは実務者協議ですね、これがなされたわけでありますけれども、これもさっき申し上げた五十八年の判決の後一年以上もそのまま放置された、その後やっとなされたというのが経過だったわけですね。しかも、森さんの答弁にもありましたけれども、自民党案がほぼまとまった段階でやっと協議が始まった。私も実務者協議に出てまいりましたけれども、その中では「この指とまれ」式に、自民党の内部で固められた六・六案、これに何とか賛成してほしいというような形であったと私は思うのです。つまり、我々があの協議の中でいろいろな意見を申し上げたけれども、一つもそれが反映されてこなかったということも事実であります。しかも、今国会におきましても、初めに六・六案ありきということで、せっかく当委員会を中心に是正のための協議が行われてきたわけでありますけれども、またこれも自説の固執でデッドロックに乗り上げる、国対委員長会談というところまで上がったわけでありますけれども、ここでも二本立ての協議ということで、そして、これがおりてきて本委員会できょうから審議が始まったという経過があるわけです。  森さんが、先ほどの答弁でも、各党共通の土俵づくりであるから十分な協議をするのが基本だというふうに言われたわけでありますけれども、こういう経過からいたしますと、今までの手続面を考えてみましても、議会制民主主義という観点から私たちは納得できない、反する、そういうものであったというふうに言わざるを得ないのですが、いかがお考えでしょうか。
  190. 森清

    ○森(清)議員 他の委員にもお答えしたところでありますが、自由民主党におきましては、五十五年以来鋭意検討を続け、特に五十八年判決を受けましたときには精力的な検討を続けました。各党合意をしなければならない、あるいは各党が一致するところでやるというのは当然のことでありまして、その努力はしなければなりませんが、自分の党の意見が大体こういうものであるということがないのに各党お話しするわけにもまいりません。そこで、我々は鋭意努力をいたしまして、言われましたとおり、五十九年の初めごろから実務者会議というものを精力的に行いまして、そしてまた別の意味で、共産党とも協議をさせていただきました。各党合意を得べく努力してまいり、しかし残念ながらその意味では合意が得られませんでしたが、やはり最高裁違憲判決を受けることはほぼ確定的であり、どうしても早急に是正しなければならない、それならばほぼ合意に達した点、例えば五百十一人の総定数は動かさない、これは合意に達したわけでありますからそれを前提とする、ただし共産党の方は少しふやしてもいいというふうな御提案でかったかと思いますが、野党風党と自由民主党では総定数はふやさないということで合意をいたしました。その中身の是正策について意見が違った、しかし、意見が違っておるからといってこれを放置しておくわけにはいきませんので、我が自由民主党の案として国会提案をして、そして国会の正式な場所でさらに審議を続け、各党とも協議をしていきたい、こういう方針でまいり、そのとおり実行してまいったわけであります。
  191. 野間友一

    ○野間委員 私が申し上げておるのは、最高裁判所の判決が五十八年十一月でしょう、それからずっとこれは放置されてきたわけです。私どもは何度も何度も申し入れをしました。共通の課題、共通の問題でありますから、みんなで寄ってどういうものをつくるのかということを協議しようじゃないかということで言い続けてきたわけです。ところが、ずっと長い間これは放置されて、やっと協議が始まったと思ったときは既に自民党案がまとまって、そして、これについては聞く耳持たないと言ったら語弊がありますけれども、我々が意見を申し上げてもそれが全然入れられずに、二人区の問題からあるいは格差が三倍まで、しかも五年前の国調に基づくということで、待たされたわけですね。  ですから、先ほどの論議にもありましたけれども、急ぐのだとか緊急性を要するとか言われますけれども、それは何も今に始まったことでなくて、あの五十八年の違憲状態判決、その前の五十一年もありますけれども、ずっと以前からそういうことが言われてきた。ところが、それは何らやられることなしに、そして昨今、緊急性を要するから当面緊急措置をというようなことを言われても、それはなかなか納得できるものではないということですね。  そこで、今も中身について森さんも触れられましたけれども、私どもは昨年の三月に、御承知のとおり、定数是正の問題について、現行の三ないしは五人区、この中選挙区制をあくまで維持し、二人区制の導入は絶対認めるべきではないという立場、それから選挙区間の定数格差は少なくとも一対二未満とすること、さらに、是正に必要な場合には合分区を行いますけれども、これは党利党略を排して公正に行う、こういう基準を発表して、各党ともに共通の是正基準を出し合って、まず国会の意思としてどういう方向で是正すべきかという原則の確立が重要だということを言い続けてまいりました。しかしながら、結局、先ほどから申し上げておりますように、是正のための国会共通の意思形成がなされないまま今日に至ってきたという点は、大変私は遺憾だと言わざるを得ないと思うのですね。  こういうような経過を踏まえまして、私ども共産党は、十一月の十五日でありますが、定数是正についての見解を改めて発表して、自民党案さらには野党四党案は現時点で既にみずからの是正基準としていた一対三の格差すら超える、これで是正してもなお憲法違反状態が残る、いわば憲法違反の部分的な是正にしかすぎない。そして、そのことは憲法の要請にも国民の期待にもこたえられない、そういう点で、自民党案そして野党四党案は今の時点で撤回されるべきであるという点。と同時に、もう一カ月先には六十年の国調の速報値が出るわけでありますから、それを踏まえて公正、民主的な定数是正、これを実施するに当たって必要な原則的な基準の合意、そして改正案を取りまとめる、そういう協議を早急に開始しようということを各党に申し入れたところであります。  そういうことを前提にいたしまして、これから順次質問を続けてまいりたいと思います。  そこで、初めにお聞きしたいのは、憲法の平等の原則ということであります。一体平等の原則とはどういうものなのか、この点についてですが、一人が二票行使するということが許されないのは当然であります。その点、価値の平等ですね、これを考えても、一人が二票の投票を認めるということに等しい一対二倍以上の格差ということは許されないというふうに私は思うのですけれども、憲法の平等原則は一体格差をどのように理解、認識をされておるのか。これは両党の提案者にまずお聞きをいたしたいと思います。
  192. 森清

    ○森(清)議員 ここで憲法解釈を私が申し上げるにふさわしい立場におるかどうかわかりませんので、それはさておきまして、ただ我々は、五十一年判決、あるいはそれがその後の判決においても引用されておりますが、格差が二・九二倍に是正されたことは、正確な表現は忘れましたが、たしか違憲状態を脱したと認めることができる、こういう判決理由も中にありますし、あるいは我が国が二倍を超える格差になって以来既に相当長い期間にわたってこの選挙法が施行されておりますので、学問上とか個人の意見として二倍以内でなければならない、あるいはアメリカの最高裁判所のように一・何倍くらい違っても憲法違反だというところもありますし、西ドイツのように上下三分の一を超えたら必ず是正しろというところもあります。いろいろなことがありますので、憲法の解釈上、何倍以内ということを我々なかなか言えないのじゃないか。具体的に、つくった定数配分が果たして憲法違反になるかどうかはそういう訴訟が起こされて判決をまつ以外にわからないことではないか。しかし、原則的に、野間委員指摘のとおり、一票の価値が平等でなければならない、したがって、それに近づける努力をしなければならない、この原則は全く賛成でございます。
  193. 山花貞夫

    山花議員 ただいま話題となりましたとおり、今回の最高裁判決も、五十年改正法による改正の結果、昭和五十一年大法廷判決によって違憲判断された従前の議員定数配分規定のもとにおける投票価値の不平等状態は一応解消されたものと評価することができる、こう判示しているところであります。しかし、これは何倍ならよろしいということをはっきり言ったわけではないわけでありまして、憲法十四条の立場からするならば、できる限り平等ということになれば、できる限り二倍を起さないようにというのがその解釈としては当然出てくるところではなかろうかと考えます。  過去の選挙法の改正の経過を振り返りましても、定数是正ということで昭和二十六年法以降最初に行われたのが昭和三十九年の奄美の増員一名、そして十九名増、このときだったと思うわけであります。当時の法律による公選法の増員の改正の際にも新たに議員総数をふやすという手段をとりましたが、これを適宜配分をいたしまして、選挙区別議員一人当たりの人口の開きをほぼ二倍以下にする、こういうことを目的としておったわけであります。  したがって、できる限りということになれば、二倍を超さないことが理想であるというのが憲法の解釈からは当然出てくるということになると思います。そうした原則に基づきまして、憲法もその先の具体的な配分につきましてはいわば国会に征しておるわけでありますから、与野党協議をして決定をするということになると思いますけれども、立場ということからいたしますれば、今申し上げたようなことになるのではなかろうかと理解しておるところであります。
  194. 野間友一

    ○野間委員 森さんにもう一遍念のためにお聞きしたいのですが、価値の平等という観点、その理解の仕方ですけれども、一人が二票の行使をしてはならない、その価値、投票の効果についてもそれと同じような効果を持つようなものはまさに平等の原則に反するというようなことをお考えなのかどうか。
  195. 森清

    ○森(清)議員 昔ございましたいわゆる複数投票権といいますか投票制、これは明らかに憲法違反であると考えます。ただ、選挙区の人口をその定数で割ったものの比率において、それが仮に二倍以上開いておるからそれは二票を行使したことになる、このようには直ちに結びつかないわけであります。そういうことを総合勘案して、いろいろだ観点から選挙区制あるいは定数が決められ、そして、それがある種の評価を受けるわけでありまして、憲法上の要請とかいうような観点から、そういう意味での二倍ということも一つの考え方である。しかしながら、それは絶対的なものではない。また、そういうことであるならば、二・九二が違憲状態を脱したものと認められるというふうな最高裁判決が出るはずがないわけであります。したがって、そういうことを全体総合してどのような格差まで是正していくか、先ほどもお答えいたしましたとおり、一票の価値はできる限り平等であるべきであるという原則は当然でございますから、それに向かって我々は努力していかなければならないし、その努力が具体的にあらわれるようにしていかなければならないと思っております。
  196. 野間友一

    ○野間委員 どうもよくわからぬわけですけれども、一人が二票の行使はできない、そうすると、価値の点についていいましてもこれと同じような効果が出てくるということですね。つまり、一人が二票の投票をする、それに等しいような価値を認めることはまさに平等の原則に反するということではないのですか。ですから、憲法の保障する平等の原則というのはそういう観点からとらえていかなければならない、最高裁のこの判決は別ですよ。そういうふうな基本的な認識に立つべきだというのが私の考えですけれども、その点についてお聞きしておるわけですよ。
  197. 森清

    ○森(清)議員 先ほどお答えいたしましたとおり、一人に二票を与えるという複数投票制は憲法違反であると断定して差し支えないと私は思います。選挙区の人口定数で割った数が二・幾らであるとか一・幾らであるということが、すなわち二票の行使と直接的には結びつかない、私はそうであろうというようなことであります。したがって、野間委員の御指摘のようになれば、一・五でもおかしいし一・二でもおかしい、一票しか行使できないのに一・二を行使しているじゃないか、一・三を行使しているじゃないかということになるわけであります。したがって、そこには全体の選挙区制のつくり方、定数のあり方を各国において総合的に考えて、合理的なものであると考えて立法していくものでありますから、必ず幾らでなければならぬということ、あるいは国会で合意をして西ドイツのような法律をつくることも一つの方法でありましょうが、そういうものもないという我が国の現法制下においては二倍以上が憲法違反で二倍以下なら憲法違反でないというふうな議論にはならないのじゃないかと考えております。
  198. 野間友一

    ○野間委員 一人の自然人を二つに割るわけにはならぬのですよ。ところが、一人が二票、これはやればすぐにおかしいということはわかるわけです。そうでしょう。森さん言われますように、そうすると、憲法の平等原則というのは価値の平等という点から考え格差はどの程度まで許されるとお考えなんですか。
  199. 森清

    ○森(清)議員 平等という言葉は完全に何もかもすべて一緒、数学的にも全部一緒でなければならぬとは——これは法律憲法でございますから数学的に平等でなければならぬということではないと思います。したがって、それはおのおのその制度本来の趣旨に従って平等というものはこういうものだということが出るのでありまして、数学的に平等ということではないのじゃないかと考えております。
  200. 野間友一

    ○野間委員 ずばり答えてくださいよ。今一対二とか一対三とか二・五とかという問題が特に判例等の関係で論じられておりますから、私は基本的な提案者としての認識を聞いておるわけです。だから、平等の原則としては格差はどの程度までならよいとお考えなのか、もう一度答えてください。
  201. 森清

    ○森(清)議員 いろいろ御議論がありましょうが、我が自由民主党では格差は三倍以内は合憲であると判断いたしまして提案申し上げた次第でございます。
  202. 野間友一

    ○野間委員 何でこんなことを聞くかといいますと、与野党合意がありますね。私ども共産党を除く与野党合意の第一項に「憲法の平等原則に基づく議員定数の不均衡是正は、緊急の国民課題である。」これについて自民党の回答は、異議がないということになっているわけです。ところが、私ども、これは当然の問題だと思いますが、問題はその中身なんです。  今の平等の原則についての基本的な認識についても違いがあるということが今わかったわけでありますが、少なくとも二倍未満でなければならぬということが一人一票投票の原則からしても当然言えることで、これは何人も否定するようなものではない、否定はできないというふうに理解をするのが当然だと私は思っておるわけです。  そこで、その点に関して言いますと、公職選挙法昭和二十五年に施行されましたが、このときの格差が一対一・五、これが平等の原則考える場合の基本的な基準になると私は思うわけですが、この点についてはどうですか、認識は。
  203. 森清

    ○森(清)議員 一・五ということも別に根拠のあることではないんじゃないか。  その前にちょっと申し上げておきますが、二倍以内は何人も疑わないということを申されましたが、少なくとも最高裁判所の判決理由においては二・九二は合憲であると推測される言葉があるのでありますから、二倍を超えたら憲法違反になることは明白であるということではないんじゃないか。私たち最高裁判所を最終的な憲法判断のところと考えておりますので、そのように考えております。  昭和二十五年の現在の公職選挙法でありますが、これは昭和二十二年の衆議院選挙法がそのまま引き継がれたわけでありますから、昭和二十二年からそうなっておるわけでありますが、昭和二十二年に議会修正によって中選挙区制にしたわけであります。そのときの修正の考え方は、総定数を各府県に十何万でありましたかで割り振り、そして、できる限り郡市の区域を変えない、それから大正十四年のいわゆる中選挙区制の区域もできる限り尊重する、そういうことを原則といたしまして区割りをしていきました。したがって、今、野間委員の御指摘のとおり、一・五の格差が出ておるのは、一・五の格差があってよろしいという考え方でやったのではなくして、平等にしようと思ったが、郡市の区域によるものですから、県に配分するときにその段階で多少の不均衡が出てまいります。そういうことの結果できたものであると私は了解しておりますが、それは立法過程の問題でありますから、それ以上のことはわかりません。したがって、野間委員の御指摘のとおり、何倍以内ならいいとかいう議論をだれも非常に間違って議論をされているんじゃないかという感じがするわけであります。  我々が現在提案している法案考え方は、先ほどるる申し上げましたように、最高裁判所において二・九二ならば合憲である、こういうふうに受け取れる言葉があるものですから、我々は三倍以内ならば合憲であるという考え方のもとにこの法案を作成しておるわけであります。しかし、将来抜本的に検討するとき、各党合意ができまして、そのような格差をもう少し縮めようじゃないかという合意ができますならば、そういう合意の中においてまた区割りやその他検討すべきものである。それも抜本的是正というものの内容の大きな柱であろう、このように考えております。
  204. 野間友一

    ○野間委員 最高裁判所の格差についての判決をどのように読んでいくのかということは一つの大きな問題であろうと思います。これについては前回の当委員会において私も最高裁判所の調査官の評釈にたぐいするものを引きだから、これは合理的期間の中で述べたものであって、決して三倍まで認めるものではないんだ、これは学者もいろいろと言っておりますけれども、そういうことだと思うのですね。  と同時に、私がここで言わなきゃならぬのは、最高裁判所が仮に三倍までは許容しておるという立場に立ったところでそれはぎりぎり限界であって、それで事がよいというものでは決してないわけですね。立法府立法府として、国民の納得のいくような平等の原則を本当に実現する立場で我我は仕事をする責務があるわけですね。そういう点から、最高裁判所の判決が三倍まで認めておるからそこまでは我々はよろしいんだというようなことは、国会の、立法府の見識が問われる問題だというふうに言わざるを得ないと私は思うのです。  実は「ジュリスト」の座談会の中で、これはナンバー八百六、八四年、去年の二月一日号ですが、ここで東京大学の篠原教授はこういうふうに指摘されております。「例えば最高裁が一対三を超えなければ違憲とはいえないというふうに判断をすると、政治のほうもだから一対三でいこうというふうに思うところがある。しかしこの一対三という基準で改正するとすぐ違憲状態がきてしまうわけで、実際の改革としては一対二以内におさめておかたいとまずい。この選挙法が出発した二五年段階では一対一・五でした。それでこういう工合になるのだから、少なくとも一対二くらいに押さえて改正案をやらなければいけないというふうに政治のほうで解釈すればいいのですが、この判文を読むと今度は一対三でいこうかということになるのではないか、」したがって、「法で限度と考えるのと、政治的にどれが合理的であるかということは別問題」だということを五十八年の判決について篠原教授は憂えておられるわけです。今の国会状況を見ますと、私はまさにその憂いがずばり当たっておるというふうに思うわけでありまして、大変残念であります。  そこで、私が言いたいのが、最高裁判所の判決をどう理解し、どのように受け取るかということは別に置きましても、私どもは立法府の見識、権威にかけても、公正、民主的な、国民が納得のいく一票の価値の平等を求める作業を早急にやることが、まさに合意事項にあります「憲法の平等原則に基づく議員定数の不均衡是正は、緊急の国民課題である。」これにこたえるただ一つの道だと言わざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
  205. 森清

    ○森(清)議員 るる申し上げましたとおり、そういう問題につきましては、暫定的な案と言われますが、この法案を通していただいて、そうして各党さらに抜本的是正について検討を始めるということでありますから、その中において大いに論議し、検討すべき問題である、このように考えております。
  206. 野間友一

    ○野間委員 山花先生、もし何かありましたら聞かせてください。
  207. 山花貞夫

    山花議員 御主張の点については我々と共通する部分もあるわけでありますけれども、我々といたしましては、現に自民党の六・六案が提出されているということの中で、その問題点、例えば小選挙区制とのかかわり等明らかにしなければならない。また、もし一つの法案だけ提案されたということになれば、これが独走するということになってはならない等々検討した上で、抜本的な改革につきましては当然の前提としながら暫定案を出した。たまたまそれが一対三ということになっておりますけれども、最高裁が一対三でよろしいと言っているから我々も甘んじてそのとおりであるということにしたのではないわけでありまして、法案提出のそうした経過につきましてもぜひ御理解をいただきたい、こういうように考えるところであります。
  208. 野間友一

    ○野間委員 各界の意見等をいろいろ調べてみますと、二倍未満の是正というのが専門家、学者、国民の多くの方の声でもあるわけですね。  私はここにいろいろ持っておりますけれども、日弁連が憲法学者、公法学者に格差は一体憲法との関係で何倍までが合憲かというようなことについてアンケートをとっておるわけです。これを見ますと、圧倒的な学者が、これは二倍以下という言葉を使ってありますけれども、二倍以下。数で言いますと、衆議院の場合に二倍以下と答えた人が七十六、それから二・一以上と答えた人が三、その他七。つまり、圧倒的な学者がこういう見解を発表しておるわけですね。ですから、これはまさに学者、専門家の通説なんですね。これを我々は十分押さえておかなければならない、こう思うわけであります。  また、これは五十九年二月二十四日に日弁連からいただいたものですが、日弁連の見解等も、いろいろな討議を加えて、その結果「当連合会は、」「議員選挙人口格差が一対二・〇以上の状態となることは、他の非人口的要素を考慮しても憲法の許容するところではなく、その場合には、できる限り人口格差を一対一に近づける改正を行うべきである」、こういう結論をいたしたということですね。これは御承知のとおりだと思いますけれども、これは法律実務家の一致した見解でもありますし、先ほど申し上げた学者もやはりそうなんですね。  さらに、選挙の専門家の意見なども、いろいろ資料はありますけれども、これを見ましても、例えば明治の富田教授、御案内のとおりこの方は日本選挙学会の理事長ですが、この人のあれを見ましても、一票の投票価値が保障されない限り、国民の民意を反映しているとは言いがたく、また一人一票という観点から格差は二倍未満に抑えるべきは当然と言えよう、こう言っておられるわけですね。ほかにもいろいろと学者の考え方、私もたくさん持っておりますけれども、これが常識なんですね。新聞の読者の欄を見ましても、常識的に考えて一対二が妥当であることは子供にでもわかる理屈であるとか、私、読者の欄もたくさん集めてまいりましたけれども、そういうようなことが支配的だと言わざるを得ないと思うんですね。  先ほどからいろいろと答弁をされておりますが、こういう専門家、学者あるいは実務家、さらには特に選挙関係の専門家の学者、あるいは世論等、私こういうものを紹介したのは、是正するのに当たりましてこういうものが最も大切な基準ではなかろうかと考えるものですから聞いたわけですが、それに対してどのような評価をされるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  209. 森清

    ○森(清)議員 ただいま御指摘のように、学者、実務家等がそのような意見を持っておることは十二分に承知をいたしておりますので、今後抜本的改革をするときには、そういうものも参考にしながら各党間において協議を続けていきたいと考えております。
  210. 野間友一

    ○野間委員 冒頭に、選ばれる側の理屈でなくて選ぶ側の理屈でということを申し上げたのは、まさに理由がありまして、決してそんなに難しいものではないと私は思うんですね。選ばれる側の理屈、これを排して、本当に一票の価値の平等ということを前提にして作業を進めるならば難しいものではない、私はこういう点からお聞きしておるわけです。どだい、定数是正に二段階、三段階ということは必要がない。定数是正定数是正であって、緊急も抜本もないと私は考えるわけですね。決して難しいことではない。なぜこんなに二段階、三段階に分けて考えなければならぬのか、そこに党利党略とか選ばれる側の理屈が優先しておると私は指摘せざるを得ないと思うのです。  そこで、自治省にお聞きしたいと思います。先ほどからいろいろと問題になりましたが、選挙人名簿の登録者数、これは十一月十七日の発表ですが、これで格差三倍を超える選挙区は一体幾つあるのか、これは現実の問題ですからお聞かせをいただきたい。
  211. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 昭和六十年九月二日現在の選挙人名簿登録者数によりまして、自民党提案されておりますような六増・六減案と同じ考え方に基づきまして対象選挙区を挙げた場合、六選挙区において減、六選挙区において増という格好になります。
  212. 野間友一

    ○野間委員 その際、議員一人当たり有権者数、これは少ない選挙区、兵庫五区が一番少ないのですが、ここから順番に行きますと、兵庫五区、鹿児島三区、石川二区、愛媛三区、秋田二区、新潟四区、山形二区が七番目。それから、多い選挙区は、千葉四区、神奈川三区、埼玉二区、東京十一区、北海道一区、埼玉四区、七番目が千葉一区、こういう順番になっておりますが、これは間違いありませんね。
  213. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 そのとおりでございます。
  214. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、例えば一番目から六番目まで見てみますと、新潟四区が六番目に入り、山形二区は外れる。それから、北海道一区は五番目に入っておりますね。これは増員対象になっておりませんね。そうしますと、仮に格差が三倍まではよろしいという立場に立ったとしても、既にこの選挙人名簿登録者数、有権者数の現実の姿からしても、これはおかしいということになるんじゃないですか。
  215. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 ただいま御提案になっております定数是正法案は、五十五年国勢調査に基づいて是正をするということで対象選挙区を挙げておられるわけでございまして、それから約五年たちましたことしの九月二日現在の有権者数で同じ方式で対象選挙区を挙げた場合には、当然調査のもとになる資料も時期も違っておるわけでございますので、対象選挙区が若干異なるのはやむを得ないかと思っております。
  216. 野間友一

    ○野間委員 いや、五十五年の国勢調査とこれは資料が違いますけれども、基礎人口、発表された有権者数、先ほどから申し上げているように、六・六の手法からいえば、これによって入るべきところが抜けて、入らないところが入っておる。北海道一区だって実際ふえて当然だけれども、これはふえる対象になっていない。ですから、五年前の国調は別にして、今申し上げたような最新の数字からしたら、六・六というのは全く欠陥と申しますか、間尺に合わぬということは事実ですね。
  217. 森清

    ○森(清)議員 この手法は我が党案も野党四党案も同じことでございますが、今野間委員の御指摘の事実はそのとおりでございます。しかし、公職選挙法で一貫して流れている考え方は、国勢調査人口に基づいて是正をするということでありますから、私たちの案も野党案もその尺度を使って六・六案というものができたわけであります。別の尺度を使えばまた別の考え方が出るのではないかと思います。  これは例えば悪いのでありますが、人口というのはちょうど人間の背の高さだとしますと、一定の資格のある者が有権者でありますから、身長を比べたらこうなっている、座高を比べたらちょっと逆転したじゃないか、こういうことと同じ理屈でありまして、しかも、それは五年前の調査でありますから、その後、身長も座高もそれぞれふえたり——減るのは人間はないと思いますが、有権者はふえたり減ったりするわけであります。したがって、そういう矛盾は、尺度を一定しておかないと必ずできるわけです。別の尺度を用いればそういう矛盾が必ずできるわけであります。したがって、我が党案及び野党四党案は尺度を国勢調査人口を用いたということでありますから、それはあくまでそれで判断をしていただきたい。別の尺度を用いたり、あるいは身長と座高みたいに違う尺度を当てはめれば、またそのように別の結果も出るであろうと思います。
  218. 野間友一

    ○野間委員 午前中の質疑にもありましたけれども、六十年の国調が十二月下旬に出てきますが、これは実際には変わりません。森さんの試算でも新潟、山形という順序になっていますね。そうでしょう。ですから、選挙人名簿の登録と六十年の国調を考えた場合でもほとんど変わりませんね、縦に振られましたけれども。つまり、私が言いたいのは、仮に一対三を前提にしても六・六そのものが間尺に合わないということは既にいろいろな数字、事実で証明されておると思うのです。  しかも、自民党は今国会でこれをやろうとするわけでありますが、午前中近岡委員の方からも話がありましたけれども、山形と新潟はもう逆転しておるわけでしょう。しかも、六十年の国調が出れば、これまた逆転が確実なんです。そういう点で、これはこの点一つとりましても致命的な欠陥になっておると言わざるを得ないと私は思うのです。  それから、もう一つ聞きますが、三月三十一日現在の住民基本台帳による人口格差三倍、六・六で是正した場合、これを超える選挙区は一体幾つあるのか、これも自治省にお聞かせいただきたいと思います。
  219. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  六十年三月三十一日現在の住民基本台帳人口によって選挙区間の格差を計算いたしまして、自民党案と同じ方式で対象選挙区を選定いたしたとすれば、八選挙区増・八選挙区減という姿になっております。
  220. 野間友一

    ○野間委員 そうですね、八・八でなければ間尺に合わぬということになります。  その次に、総務庁にお聞きします。  これも午前中にも質疑がありましたが、速報値がどんどん入っております。私も出身の和歌山、地元の速報値を全部持っておりますけれども、七つのブロックに分けて入っております。和歌山の場合は、十一月九日に総務庁に届け出がなされております。もう既に早いところから順次総務庁に集まっておるわけでしょう。これを見ますと、兵庫五区、鹿児島三区、石川二区、愛媛三区、秋田二区、新潟四区、山形二区という順序で人口がきっちり集約されて上がっておるわけですけれども、この点について間違いないかどうか、まず確認をしておきたいと思います。
  221. 北山直樹

    ○北山政府委員 お答えいたします。  現在出ております各県の人口と言われているものは、地方集計、つまり統計法第十五条二項によって承認されたものによる結果ということでありまして、指定統計である国勢調査の結果ではないということでございます。  したがいまして、これは各県が地方集計として出しておるわけでございまして、出します際に、これは後で総務庁で発表される公式の数字と異なることがあり得るという注釈をつけて出す、こういうふうに指導しております。したがいまして、私どもとしましては、今御指摘の結果につきましては、県はそういうことになっておるというふうにしか申し上げられないということでございます。
  222. 野間友一

    ○野間委員 ですから、今申し上げたところは全部上がっておるわけですが、県の統計集計ではこういうことになっておるということを今総務庁は認めたわけです。したがって、住民基本台帳に基づく有権者名簿だけではなくて、十月一日にやった六十年国調の今私が挙げた選挙区の集約が現段階では既に上がっておるわけです。これは事実なんです。これは県が集約したわけだし、今も総務庁が確認したわけです。だから、もう既に集約済みのものを我々も入手しておりますけれども、それでもってしたら一目瞭然に少ないところから順序が上がっておる。だから、この国調に基づいても逆転しておりまして、山形二区と新潟四区が既に逆転しておる。十二月下旬といいますと、この先あと一カ月くらいしかないわけです。しかも、各都道府県段階では相当なところまで集約が進んでおり、我々もそういう資料を入手しておる。目の前に見えておるわけです。それでもなおかつ五年前の国調に何で固執しなければならないのか、私は全くわからぬわけです。  だから、今も私がいろいろるるお聞きしたのは、そういうことで、五年前のもう既に破綻した、しかも非常に古いものを基準にしてさあ法律を上げろ上げろと言うのは、国民も納得しないし、我々の立法府の見識も問われると言わざるを得ないと私は思うのです。この点についていかがですか。
  223. 森清

    ○森(清)議員 ことし十月一日の国勢調査人口速報値として発表されるのは十二月下旬であります。野間委員が今御指摘のとおり、現段階で地方集計として発表いたしておりますが、三倍以内になるかならないかはそこだけでは判断できないので、東京、大阪、神奈川、千葉等大府県のものが出なければ三倍以内になっておるかどうか、論理的にはわからないわけであります。したがって、それらが全部発表になる、すなわち十二月下旬の速報値を見なければそれはわからないわけであります。  しかし、それはそれとして、我々は、野党四党も同じでありますが、五十五年国調人口をもとにして早急に是正を図る、その第一段階をやり遂げたい、そして、さらに各党合意のとおり、速報値が出たならば直ちに是正を行う、そういう方針でおりますので、この国会においてこの法案成立促進をよろしくお願いしたいと思います。
  224. 野間友一

    ○野間委員 近岡委員も盛んに指摘をして質問されておりましたけれども、これは説明が実際はできないわけです。山形二区と新潟四・区、格差の少ないところは入れられて一人減らされる、多いところは抜ける、これは合理的な説明ができないです。  しかも、森さんは今言われましたが、それは形式的なへ理屈なんです。形式論理なんです。今これは資料が着々と集約されて発表寸前にあるわけです。目前にあるわけです。ですから、政治家としてはそういう形式的な理屈でなくて、堂々と国民のだれもが納得いくようなものをつくるのが責務ではないか。何でそんなに形式論理に終始して逃げられるのか、私は非常に不可解なんです。いかがですか。
  225. 森清

    ○森(清)議員 議員定数是正という非常に根本的な重要な問題でありますから、我々はそういう点について配慮したがらやっておるわけでございます。  また、つけ加えて申し上げますと、そういう矛盾であるとか今や破綻しておると言われますが、例えば過疎選挙区において人口が非常に急増しておる、したがって五十五年国勢調査人口では三倍以上になっておったが六十年国勢調査ではそれを脱して是正対象区にならないというふうな見込みがあるならばここで真剣に検討しなければならないと私は思いますが、十月一日は既に過ぎております。そうすると、どの選挙区を見ましても、その間に急激に何万という人口がふえたであろうというふうな兆候もありませんので、結局先ほど言われましたような順番だけの問題でありまして、いずれは三倍を超える選挙区になるのでありますから、別に現在の六・六が破綻しているわけでも何でもない。続いてそういうものができれば、与野党合意いたしておりますとおり、追加して何選挙区かについての是正を図っていく、こういうことでありますから、何ら問題はないと考えております。
  226. 野間友一

    ○野間委員 だれも納得しませんよ、森さんは心の中と恐らく全然逆のことを言っておられると私は思うのですけれども。今申し上げましたように、いっぱい指標を挙げましたね。住民台帳、それから速報値や有権者、どの指標からしてもおかしい。後から追加するの、どうのこうの言われますけれども、自民党としてはこの六・六案を何とかこの国会成立させたいとおっしゃっておるわけですね。その際に、今の具体的な数字からいいますと、六・六の手法で考えた場合、減らさなくてもよいところが入り、減らすべきところが抜けておる、これは事実ですよ。成立すれば、それだけの差があって実際に減らされるわけですよ。そうでしょう。ですから、そういう形式的な理屈でなくて、五年前の国勢調査人口でなくて、今の時点で、既に目前に迫っておるわけですからそれに従ってやるのは当たり前だと思うのです。  そこで、私がお聞きしたいのは、ちょうど五十年の是正のとき、この手法であります。このときも五年も前の国勢調査、四十五年の国勢調査基礎にやりました。そして、二・九二倍に抑えた。ところが、同じ年の五十年の国勢調査で既に格差が三・七二倍となっておった。そのために五十一年の選挙について違憲訴訟、高裁段階では違憲判決が出ております。今の手法はまさにこの繰り返したんですよ。私たちはこういう繰り返しを絶対許してはならない、こう思うのです。二・九二倍に抑えると言い条、実は同じ年の数カ月後の国勢調査では三・七二倍になっておった。ちょうど今の五十五年の調査に基づく格差三倍の六・六と、そして先ほどから申し上げております住民基本台帳からずっと今の速報値の県段階の集計、この結果と全く同じ手法で六・六案が審議されておるというところに私は最大の問題があるんじゃないか。この際撤回をされて、あと本当に目前ですから、そういう最も新しいもので、だれしもが納得いくようなものをつくるべきじゃないか、こう考えますけれども、その点について両案の提案者にお聞きしたいのと、さらにもう一点申し上げたいのは、早く上げろ早く上げろとおっしゃいます、緊急性があるとおっしゃいますが、十二月の下旬に速報値が出る、今臨時国会に上げなければならない合理的な理由が一体どこにあるのかということなんです。つまり、十二月の下旬には出るわけですから、それをこの臨時国会の中で上げるという合理的な理由はどこにあるのか、私はないと思うのです。あるとするならば解散絡みで主導権の確保、これしか考えようがないと私は思いますけれども、みんなが納得いくようなひとつ御説明をいただきたいと思います。
  227. 森清

    ○森(清)議員 先ほどの野間委員の御質問の中に、この六・六案の手法に従えば減少させなくてもいい選挙区がこの我々の提案の中にあるじゃないかと言われましたが、それはないと我々は心得ております。先ほど御説明したとおりであります。人口が急激に増加して、六十年国勢調査の結果三倍以内になるという選挙区はない、このように考えております。  それから、なぜということはるる御答弁申し上げましたとおり、我々の今の段階が憲法違反状態になっておるのである。したがって、これは各党合意もそうでありますが、緊急に是正をしなければならない。それはこの通常国会提案し、そうして継続審査にし、この臨時国会において議了をすべきものである。これはだれが考えてもそのようにお考えいただけるのじゃないか。しかも、そのままではない。各党合意によってさらにそのような新しい国勢調査の結果が出たならば直ちに次の是正を行う、このように公約を申し上げておるわけでありますから、ただいまの憲法違反状態を直ちに是正したい、こういう考えてこの国会においてぜひ議了をしていただきたい、このようにお願いしている次第であります。
  228. 山花貞夫

    山花議員 野間先生御指摘のとおり、住民基本台帳、そして、この十七日発表されました有権者名簿、それぞれ新しい問題を提起しているところであります。我々も野党の立場といたしまして四党その点については十分協議をしてまいりましたけれども、具体的な問題といたしましては、過日の与野党の合意と先生おっしゃいましたけれども、合意ではないわけでありまして、野党四党の方針に対する自民党の回答ということで、若干ニュアンスが違っているわけでありますが、我々としては御指摘のような問題をできる限り避けるために、六十年十月の国勢調査速報値により直ちに是正措置を行え、こういう要求をしておるわけでありまして、前回の轍を踏まないようにというための一応の措置につきましても、こういう形で自民党要求して今日に至っているということでございますので、問題の認識は十分しておるということについて申し上げる次第であります。
  229. 野間友一

    ○野間委員 もう時間が参りましたので、課題はたくさんありましてやりたいのですけれども、最後に一言だけ提案者に申し上げたいと思います。  今るる申されましたけれども、私が言うのは、緊急性と言われますが、その緊急性が六十年の国調の速報値まで待てないという理屈は全くないということです。何でそれまで待つことができないのか。拙速でなくていいものをつくるのが当然だと思いますし、速報値まで待てない理屈は全くないということを重ねて申し上げまして、あと二人区の問題からいろいろな問題がありますから、それは次回にやらせていただきたいと私は思います。  終わります。     —————————————
  230. 三原朝雄

    三原委員長 この際、公聴会開会承認要求の件についてお諮りいたします。  ただいま審査中の金丸信君外六名提出公職選挙法の一部を改正する法律案及び田邊誠君外六名提出公職選挙法の一部を改正する法律案の両法律案につきまして、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  231. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、公聴会は来る十二月六日開会することとし、公述人の選定その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  232. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  233. 三原朝雄

    三原委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両法律案審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  234. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選及び出頭日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  235. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る十二月二日月曜日午後三時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会      ————◇—————