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寺田熊雄君 私はこの法案に賛成なのでありますが、しかし多少いろいろ問題点があるので討論をいたしたいと思います。
まず、本法案の審議に当たりまして、
工場抵当法そのものを改正せよ、あるいは整備せよという議論があったわけでありますが、それは別段現行の
工場抵当法の欠陥を具体的に指摘して改正の方向を指し示したものではないように思うのであります。法務大臣は、
有線テレビジョン放送事業のほかに
工場財団制度を活用する必要のある
事業がほかにもあるのではないだろうか、それらを横並びにして法を整備する必要を考えて、あえてこの法案を
政府提案としなかったという
趣旨のことを当
委員会で述べられておりますけれども、私は
工場抵当法の整備あるいは改正そのものよりも、むしろ
有線テレビジョン放送法自体をもう少し整備する必要があるのではないかということを特に本法案の審議に当たって感じたのであります。
この
有線テレビジョン放送法は
放送施設の
設置をする者、
放送施設者と
放送業務を行う者、
放送事業者とを概念的に分けておりまして、そして
設置者とは
放送施設を
設置することについて第三条第一項の
許可を受けた者としておるのであります。第三条では、それでは
許可申請をする者はだれかと申しますと、
放送施設の
設置者ではないのであって
放送事業者であるということをむしろ
建前としておるのであります。したがって、この場合に
放送施設の
所有者がみずから
放送業務を行う場合には別段何らの問題を生ずるのではありません。しかし
放送施設が
他人に
賃貸されたような場合、あるいはその
業務が
他人に委託されるような場合はその
貸借人なり受託者が
施設を
管理する立場に立つので、これはその
賃借人なり受託者である
放送事業者が
他人の所有する
放送施設について、その
設置についての
許可を
申請するということになるのだという
政府の
説明でありますけれども、
他人の所有物について、それを
設置することについて
許可を
申請するというのはいささかこれ変則的な事態のような感を免れないのであります。
むしろこの
法律の第四条第一項の
条件を見てみますと、第一号、第二号は
施設の計画が合理的であるかどうか、
放送施設が
技術的な水準に適合しているかどうかということでありますけれども、第三号を見ますと
放送施設を確実に運用するに足る経理的な基礎を持っているだろうか、あるいは
技術的な能力を持っておるだろうかという
事業者の
資格要件をむしろ定めておるのであります。こういう
規定を総合いたしますと、この
法律は
設置の
許可というよりも実質的にはむしろ
事業許可ではないだろうかと考えられるのであります。
なぜこれを
事業許可とせずに
施設の
設置許可としたのであろうかということを尋ねてみますと、
政府の答弁は
憲法第二十一条の
表現の自由の尊重にあるような答弁も見えるのであります。二十一条だけではなくて二十二条第一項の
職業選択の自由の尊重の念慮から出たとも考えられるのでありますけれども、しかし実質上むしろ
事業の
許可と見られるべきものである以上は、その
許可がでるだけ容易に得られるものであるという保証さえしっかりとしておけば、直接にやはり
事業許可とする
建前をとった方がすっきりするのではないだろうかと考えるのであります。
無線
放送の場合は、
電波法では確かに
無線局を開設する者は
郵政大臣の
免許を取れという
規定がございますけれども、
放送法を見ると、
放送局の
設置の
免許を受けた者を即
放送事業者としておるのでありまして、これは本法のごとく
設置者と
事業者を分けておらない。これは大規模であることを予想して
有線放送のようなものとは性格が違うと考えたのかもしれませんけれども、
設置免許即
放送事業というふうにとらえておるのであります。そういうところから見ましても、これはむしろ
事業の
許可と私えるのが適切ではないだろうかと考えるのであります。
それからもう
一つは、
工場財団制度を利用して本法を改正しようといたしますと、
競落人の
所有権取得によってその
事業が当然に継続されるということを確保いたしませんと、これがやはりもしもそうじゃなく
事業の継続が不可能になった場合には、これは国民経済的な見地からも損失でありますし、
競落人の利益も損なう、受信者の利益も損なうという結果を生ぜざるを得ないのでありますからして、
工場財団制度を設けるということは
競売があり得るということであります。入札があり得る。したがって競落もあり得るということを
前提にしておりますので、そういう
競売制度の確実性といいますか、安定性というものを確保するのにもうちょっと配慮が必要であったのではないだろうか。
道路
管理者が架線の
設置についての同意をするであろうということは
有線テレビジョン放送法の三十条からも当然予想されるのでありますが、もしも広い範囲にわたって私人の土地を架線がまたぐという場合には土地
所有者の同意が確実に得られるという保証があることが望ましいわけでありまして、こういう場合には架線はよる土地の利用というものを地役権のような物権的なものにすることを保障する、あるいはそれを必要とするというような
制度を設けるとか、それから電電や電力会社の電柱を利用する場合、その電柱を利用して架線をする場合には当然に電力会社なり電電会社はそういう
競落人に権利
関係が承継されるということを承認することを何か義務づけるような
制度ができないだろうか。
これは
政府側の答弁では行政指導によって十分賄えるというのでありますけれども、行政指導によって賄うというのにはやっぱり法的な
制度としては一抹の不安があることを免れないのであります。そういう利用椎を物椎化してもっと法
制度として確実なものとする。行政指導によらなくても、例えば同意を擬制するとか、先ほどお話ししたように物権化するとか、法的
制度としてもうちょっと安定性を持たせる必要があるのではなかろうかというふうに考えるのであります。
それから、この
制度は
有線テレビジョン放送法が
施設の一部を
賃貸するということは法第九条によって予想しておるけれども、全体を
賃貸するということは必ずしも明確に予想をしておらないようであります。しかし、これはやはり架線を認めておる電力会社等が同意をすれば容易に
賃貸も可能なのでありますからして、将来の経済的ないろいろな諸事情によって
賃貸がなされないということはないのであって、これは十分可能なことである。それが殊に極めて大きな利益を生むというような場合にはそういう
事業者があらわれてくるということも予想できるのでありますから、こういう点についてももっとそれを予想して法的
制度としても整備しておく必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。
こういう意見を述べまして、そして本法案に賛成をするわけであります。