○栗林卓司君 私は、自賠責の問題でまたお尋ねをしたいと思うんですが、きょうは時間が少ないものですから、ちょうど十三日に決算
委員会が大蔵を中心に行われますので、そこに話を続けながらお尋ねをしてまいりたいと思います。したがって、きょうのところは差し上げた
資料の
説明と、御見解をもしいただければ、御見解を伺うということで時間を使いたいと思います。
二つ差し上げてあるんですが、
一つはメモみたいな
数字がごちゃごちゃと書いてあって、これは本当にメモでありまして、差し上げるまでのことはないんですが、
数字の
議論なので、あったらかえって御便宜かと思いまして、メモがわりにごらんいただきたいと思います。
まず、このメモから申し上げます。実は自賠責というのは、交通事故が大変ふえてまいりました一方、保険金限度額もふえて、支払い保険金もふえてまいりました。これが現在単
年度で二千億円を超える赤字になっている原因でありますと一般に言われるものですから、私なりに検証してみたんです。
一番をごらんいただきますと、「交通事故発生
状況」、これは警察庁調べです。というのは、交通事故といいますと、大体警察調べと受け取るのが普通なものですから。それで比べますと、五十二年と五十八年、死者は六%、負傷者は一〇%ふえております。ちなみに、昭和五十二年というのは単
年度収支がまだ黒字であった年です。五十三
年度から赤字になってきたんです。保険金の限度額が改定されまして、三番目をごらんいただきますと、実際の限度額改定の効果というのは平均支払い保険金に出るわけでありまして、平均の
数字を見ると、死亡は二四%ふえました。傷害は一五%、後遺障害は五%支払い保険金がふえました。
ここで、交通事故の伸び率と支払い保険金の伸び率がわかりますと、単純な計算ですが、五十二
年度の実績をもとにしてある推定をすることができるわけですね。そこで五十八年を推定してみますと、五千九百八十億という
数字が答えとして出たわけです。これに附帯費用を加えて、実際には五千九百八十一億。
もしこの
数字どおり五十八
年度実績が出たとしたらどうなるかというのが六番目でありまして、収入純保険料の方は六千二百三十七億。今推計の右のところで御
説明申し上げております。六千二百三十七億で、支払い保険金は五千九百八十一億ですから、差し引き二百五十六億円の黒字、五十八
年度ですよ。実際どうかと見てみると、二千六十三億の赤字なんです。
そうすると、どうも一般的には交通事故がふえております、支払い保険金がふえております、よってもって赤字ですと言うんだけれ
ども、少なくも交通事故を警察統計によってみると、そしてまた支払い保険金の伸び率を考えてみると、それだけでは赤字になりそうにもない。一体どうなったんだろうかというのが七番目でありまして、下の方をごらんいただきますと、米印で「増減率比較」という欄があります。そこで死者を見ると、警察統計では六%増、自賠責の保険事故では一〇%増、この
程度は似た
数字だと見ておけばよろしいと思うんですが、負傷者になりますと、警察統計では一〇%増、保険事故では負傷者合計で言いまして何と五四%もふえているんです。実はこれが二千億円を超える赤字の主な原因ではないか。警察統計で交通事故がふえているのも決していいことではありませんけれ
ども、収入純保険料というのは加入者が年々ふえているものですから、この
程度の伸びであれば十分中に入っちゃうんです。したがって、今現在、本当だったら黒字なのがどうして赤字になったんだろうか。
端的に言いますと、負傷者で比べると五四%もどうしてふえてきたのかと思いまして、
大蔵省に御苦労をいただきまして、
数字をいただきながらグラフをつくってみました。それをごらんいただきたいんですが、上の方に、太線で右上がりにずっと急上昇している線があります。これは自賠責の事故件数であります。したがって、その裏側には事故があるわけです。その下に横ばいになっておりますのは、警察統計で言う交通事故者、これは常識的には一緒になるはずなんですね、自賠責というのは人身事故しか対象にしておりませんから。ところが、警察統計の方は上がっておりますが横ばい、自賠責の事故の方は急角度で上がっておる。
そこで、もう少し申し上げますと、この角度が上がっている事故件数というのは、例の救急自動車の搬送人員と実によく似ておりますという御
説明を伺いました。したがって正直にそれも並べてあります。
ついでに、事故件数の太い線の下にちょっとくっついて並んでおりますのが、法人及び個人の医療機関の
取り扱い件数です。
問題は、この交通事故者、警察統計で言うこれの線と、それから各事故
年度における事故件数。正確に言いますと、事故件数の方は
年度でありますが、警察統計は年です。ところが、トレンドで見る場合には、年と
年度の違いというのはある
程度目をつぶって私は構わないと思います。そういう目で見てみると、ここにできてくる川中島なんです。しかもこれが広がっているんです。この理由が一体何なんだろうか。ちなみに申し上げますと、任意保険の場合には、自賠責の証明がないと人身事故の場合には保険金がおりません。ところが、自賠責の場合にはその証明がなくても保険金はおります。したがって、この三角地帯、川中島は実は自賠責だけがカバーしている部分なんです。これがこうやって急角度で開いてまいりますとそれは赤字になる。
その問題でまず伺いたいのは、この開いているのは一体何なんだろうか。まず考えられますのは、警察統計が間違っているんじゃないか。これが
一つですね。それからもう
一つは、救急自動車が勝手に動いているんじゃないか。
そこで警察に聞きますと、人身事故と物損事故とあるんだけれ
ども、一体おまえさん方はどうやって区分しているんだと聞きましたら、それはもう社会常識でありまして、けが人がちょっとでもいれば、それは人身事故ですという答えなんです。そこで、じゃ救急車で運ぶような事例だったら全部人身事故かねと言ったら、それは当然そうですと言うんです、警察はですよ。一方、救急自動車はどうしているかといいますと、実施基準というのを
自治省が出しております。それを見ますと、救急記録表というのがありまして、そこには救急事故発生年月日、発生時刻、発生場所、発生原因、傷病者の住所、氏名、年齢、性別、傷病の部位、
程度、医療機関名、そして医師を書かなければいけない。これも当然だと思うんです。ところが、こうやって開いている表を見ますと、警察がおかしいのか、
自治省の救急自動車がおかしいのか、あるいは、もしかすると、交通事故による救急搬送人員というのは警察統計のまだ内数ですから、救急自動車が扱った割合がふえてくると支払い件数はふえるんだろうか。この点についての解明がないと、二千億を超える赤字になったから、したがって、よってもって料率を上げてくださいと言われましても到底わからないというんで、実はきょうこの
資料を出してまず御見解をお伺いし、続けて決算
委員会で
質疑を続けたいと思うんですが、きょう現在のところでは、この三角の開き、これは一体何なんでしょうか。