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1985-04-19 第102回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会安全保障問題小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十九日(金曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     小委員長        安孫子藤吉君     小委員                 源田  実君                 佐藤栄佐久君                 杉元 恒雄君                 中西 一郎君                 堀江 正夫君                 志苫  裕君                 黒柳  明君                 上田耕一郎君                 秦   豊君     外交総合安全保障に     関する調査特別委員長  植木 光教君     小委員外委員                 岩動 道行君                 大木  浩君                 高平 公友君                 柳澤 錬造君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    参考人        法政大学教授   佐藤昌一郎君        評  論  家  山川 暁夫君        前統合幕僚会議        議長       村井 澄夫君        元海上幕僚長   大賀 良平君        青山学院大学教        授        伊藤 憲一君        筑波大学助教授  進藤 榮一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○安全保障問題に関する調査  (日米安全保障体制現状問題点に関する件)     ─────────────
  2. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査特別委員会安全保障問題小委員会を開会いたします。  安全保障問題に関する調査のうち、日米安全保障体制現状問題点に関する件を議題とし、日米安全保障体制現状問題点について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、六名の方々に御出席いただきます。  午前中は、法政大学教授佐藤昌一郎君及び評論家山川暁夫君から意見を聴取いたします。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、日米安全保障体制現状問題点につきまして忌憚のない御意見を拝聴いたし、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  これより参考人方々に御意見をお述べ願うのでございますが、議事の進め方といたしまして、まず最初に参考人方々から御意見をお述べいただき、その後小委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、まず佐藤参考人にお願いいたします。
  3. 佐藤昌一郎

    参考人佐藤昌一郎君) ただいま御紹介いただきました佐藤でございます。  時間が極めて限られておりますので、骨格だけ問題提起という意味幾つ発言をさせていただきたいと思います。  御承知のとおり、ことしは敗戦四十年、広島、長崎四十年。そして国民の大きな反対運動を押し切って批准された現行安保条約発効から二十五年になります。この二十五年をどう考えるか。安保条約の運用と政策に関してごく単純化して言いますと、一九六〇年時点での政府解釈すら改定して、事実上安保条約変質化が図られてきた二十五年と言っていい特徴を持っていると思います。  別の言い方をしますと、日米安保条約ネトー化日本ではナトーと言われておりますけれども、英語国ではネトーというのが通例のようですので、あえてネトーと呼ばしていただきます。そして近年、それがさらに一層拡大されてきて国民の安全にとって極めて憂慮すべき事態展開していると言わざるを得ないと思います。  それは特に、現状に関して申し上げますと、昨年九月に発表された日米諮問委員会報告に端的にあらわれていると思います。この報告については、委員先生方恐らく皆さんお読みになっていると思いますので詳しくは申し上げませんけれども、注目すべき点は、この報告日米両首脳が日米関係の今後の進路を示す重要な出発点であるというふうに確認しており、アメリカ国務省筋でも今後の指標になるというふうにはっきり言い、しかも、日本でも中曽根総理大臣が九月二十五日の閣議で、この報告提言内容検討政府を挙げて取り組むよう指示したと伝えられておるものだけに、見逃すことができない重要な内容であると思います。  また、ここで出されている提言は、これまでの日米両国政府政策到達点を踏まえたものであり、さらに現在及び近い将来の方向規定性を見る上で極めて注目すべき内容を持っている。ただし、私に言わせれば極めて危険な内容であると言わざるを得ない。  その特徴点幾つか申し上げますと、その第一は、安保条約適用範囲の実質的な拡大が表明されております。この報告によりますと、当初安保条約には日本本土防衛範囲に限定する概念を基礎に置いていたが、しかし、年月を経るに従い日本においても、その安全保障上の利害が自国の領海をはるかに越えているのだという認識が高まってきたというふうにとらえ、戦略的対話拡大日米両国はより広範な領域にわたって戦略的問題の協議を推進すべきであると述べ、そのような観点から一千海里のシーレーン防衛能力達成を初め、幾つかの重要な軍事要求提起しているという点であります。  第二番目は、日本自衛隊戦闘遂行能力達成の要請であります。ここでは公然とGNP一%問題を含む防衛支出をめぐる不毛な論議は避けるべきであると強調しております。日本国内政治動向とは無関係に文書でこういうことが明確に規定されてくる点は大きな問題だと思います。  それから第三は、日米間の軍事力ギャップを埋めるための日米防衛協力の一層の緊密化提起しております。これは法制上も大変大きな問題がある例の思いやり予算を初めとする日米技術協力等等極めて詳細な提起が行われております。  それから第四番目に、これも決して無視できない問題でありますが、自衛隊国連平和維持軍への派遣を提言しているという点であります。これは、恐らく自衛隊海外派兵への布石と見ていいのではないかと思います。  それから第五番目に、戦略的重要性を持つ第三世界の諸国に対する防衛努力経済援助重要性指摘しつつも、日本対外援助の増加は防衛努力を補完し得るが代替はし得ないと述べていて、重ねて軍事力強化を強調している点であります。  これは極めて骨格的な内容を紹介したわけですけれども、こういう方向が今後とられるとするならば、従来の安保条約の建前すら否定されていって、しかも日本アメリカとの軍事関係が一国の枠にとどまらず、グローバルな規模で拡大をしていく危険性を如実に示している。したがって、これまで幾つ国民世論を背景として決められてきた歯どめが次から次へと外されていく、そういう方向性提起されていると思います。それで、このような提言は、先ほど述べましたように、日米安保条約のこれまでの到達点を踏まえて出されたものであって、仮想敵国または想定敵国を根底にした軍事戦略を一層強化していく方向ではないかと考えられます。事実これまで安保条約のもとで日米政府によって追求されてきた政策は、この提言と明らかに合致した方向規定性にあるのではないか。  それを幾つかの点で指摘いたしますと、まず第一に、条約適用区域拡大多角的軍事同盟化が意図されてきたことは紛れもない事実であります。これは六〇年国会極東範囲をめぐって大きな議論がありました。この極東範囲が最近は、この極東という言葉それ自体が極めてあいまいな表現であることは御存じのとおりだと思います。したがって、こういう極めてあいまいな言葉条約の中に盛り込むということ自体条約制定の場合に注意すべき問題だと思います。これは地理的な概念意味するのではないと一方で言いながら、従来はフィリピン以北、中国は含まない、それからシベリアは含まないという形で来たわけですが、アメリカでは最近、この極東という言葉はむしろ使わない方向になってきている。いろいろな文献を読みますとそういう指摘がある。つまり、極東という言葉ヨーロッパ中心の帝国主義的な響きを持った言葉である、したがって、今日では一般に次第に使用されなくなってきているという指摘地理学者がしております。  それで、しかもそういう極東を今度はベトナムまで拡大をしたことは御承知のとおりであります。極東関連のある地域という形でそれが広げられて、さらに中東にまで広げられ、ガイドラインによる周辺海域防衛という形で一千海里問題が提起される。つまり、従来の条約の文言を前提にしても、それがどんどん広げられてきているということは紛れもない事実であります。その上に、中曽根首相の不沈空母発言、三海峡封鎖、これは正確には四海峡封鎖と当初言われていたものでありますけれども、それが提起され、しかも米韓日韓軍事同盟が連続する方向になり、さらに今度はNATOとも連携を保つという形でこの条約範囲が広がってきております。  それから、時間がないので急ぎますが、第二に、ガイドライン以降日米共同作戦が飛躍的に強化されてきて、いわば日米統合軍化といっていいような傾向が顕著に出てきております。それで、伝えられるところによりますと、日本有事に関する共同作戦シナリオは完成したと。それから極東有事、さらに中東有事という方向検討が進められ、国内ではこういう体制強化するために有事法制の準備が着々と進められ、ほぼこれはでき上がっているのではないかと思われますけれども、こういういわば軍事同盟を基軸にして国内法体系を否定していくような傾向が顕著に出てきている点も、私にとっては無視できない重大な問題だと思います。  それから第三に、非核原則ということを言い、核の持ち込みについては事前協議の対象となるというふうに今まで日本政府は繰り返して述べてきたわけですけれども、ここで事実上、核の持ち込みに関しては、特にトランジットに関しては黙認の形式をとっているのではないかという重大な疑惑を持たざるを得ない。  それからさらに、日本国内核兵器機構または核兵器体系が強力に推し進められて、アメリカ核軍事体系の中に日本列島がすっぽり巻き込まれるような、組み込まれるような事態が進展しております。これは多少きつい表現をいたしますと、核軍事同盟化というべき事態展開ではないだろうか。  御承知のとおり、現代においては核兵器というのは単に核弾頭だけを意味するものではなくて、一つ兵器体系として提起されているのは常識であります。核弾頭それだけがひとり歩きをするのではないことも自明のことでありまして、関連運搬手段指令手段なしには核兵器は機能し得ないわけであります。したがって、そういう体系ができ上がっていれば、一定の条件のもとでいつでも全面的な核基地化を図ることが可能になる。軍事論的にはそういうふうになる。特に今、各国で問題になっておりますC3Iのシステムの体系的強化日本列島を北から南に極めて強力に推進されてきていて、それで、この首都東京にある横田ではその中枢を担うような施設が現実に存在しているわけであります。こういう点から見て、極めて私は憂慮すべき事態展開していると言わざるを得ないわけであります。  それで、一言紹介をしておきますと、イギリスウインストン・チャーチル首相が一九五一年の二月のイギリス下院国民に、我々は次のことを忘れてはならないと。その忘れてはならないのは何かといいますと、アメリカイギリスにおけるイーストアングリア地方核基地をつくることによって、我々は我々自身がターゲットにされるし、ソ連攻撃の標的になることを覚悟しておかなければいけない、こういうふうに下院でチャーチルが言っております。この言葉は、単にイギリスの問題ではなくて、現在の状況から見た場合に、我々に対する警告でもあるというふうに見ておく必要があるのじゃないか。  全体として申し上げますと、米ソ対決軍事戦略の中に日本列島がすっぽり巻き込まれる事態展開しているのではないか。我々はそういう事態を避けるためには、やっぱり核を断固排撃して国是である非核原則を徹底して守っていく。そのためには、単に言葉だけではなくて、これに対する実効ある措置をとる必要がある。同時に、今各国平和運動の中で提起されてきており、これは日本だけの意見ではないわけですけれども、軍事同盟がある限り、核戦略からの離脱は極めて困難である。例えば、イギリス平和運動でも西ドイツの平和運動でもそういう問題が非常に大きな問題として議論され、しかも核保有国であるイギリスの中で、保守党を除く自由党を含んだ非常に広範な人たちによって委員会が結成され、核によらないイギリス防衛をどうするかということで極めて真摯な議論が行われてきております。それで一定方向づけが出ております。  その中で私は特に注目しているのは、自国の核も廃棄し、もちろんアメリカの核も拒否する、そして核によらない防衛をどう具体化していくか、通常戦力の軍縮も当然のことでありますが、そういう方向規定性の中でイギリスNATOにとどまるべきかどうか大議論があります。それで、当面はNATOにとどまって核をなくすために全力を挙げる、それに失敗した場合にはNATO同盟から離脱するというような政策提言がかなり広範な主張となってあらわれてきております。もちろんイギリス政府はそういう立場はとっていないことは御承知のとおりであります。そして、軍事的なブロックを解体して非同盟中立方向を志向することがイギリス国民の安全にとって最も重要な課題であるという提起がいろいろなところから出始めてきております。それで、これは日本もそういう点ではイギリスよりももっと早くこういう問題提起が行われてきているわけで、私たちの安全を守っていく方向としてやはり非核、非同盟中立という方向を追求すべきであると私は考えております。  時間が参りましたので、以上で終わらせていただきます。
  4. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ありがとうございました。  次に、山川参考人にお願いいたします。
  5. 山川暁夫

    参考人山川暁夫君) 山川と申します。政治軍事にかかわって内外の状況についての評論活動をしている者でございます。  きょうの主題であります日米安保問題、その前提に事実上もあるいは論理的にも置かれているのは、いうところのソ連脅威論ということだろうと思います。そのことをどういうふうに見るかという詳しい展開はとても時間がございませんけれども、私は、ソ連の今とっておる措置あるいは内政、外政、さらに軍事的な動向について一点の誤りなしというふうな理解はできないだろうと思いますけれども、今日、日本世論の中にも持ち込まれてきているソ連脅威論というものは非常にブーストされた、意図的に拡大をされたものであるというふうに思うわけです。  例えば、ソ連極東艦隊、七百隻ないし七百五十隻を持っておるというふうに簡単に言われる姿は、国民の多くはそういうふうに理解しているわけですけれども、ウラジオストクあるいはペトロパブロフスクというような基地を含めて考えてみても、一つの港の中に七百隻、七百五十隻の戦闘艦軍用艦がいるということは常識で考えてみて実におかしなことでありまして、横浜東京の港のことを考えてみればわかることでありまして、東京やあるいは横浜港にいるタグボートみたいなものまで勘定に入れて七百隻だ七百五十隻だ、さあ大変だという形になってソ連脅威論というものがつくられているのだろうと思います。したがって、ソ連動向についてやはりリアルな、本当に冷めた現実的な物の見方というものをはっきりさせるということが、日米安保問題を考える場合の一つの大切な課題になるだろうと思います。  仮に百歩譲って、ソ連日本を侵略する、軍事的侵攻をするというふうに考えました場合に、それは決して、単に北海道ソ連軍が敵前上陸してくるというようなことしかないというシナリオはあり得ない。私はかねてからこういうふうに考えておりますが、何もソ連SS20を持ってから日本に対する脅威が改めて出てきたのではなくて、そのことを脅威と言うならば、既にもう半世紀前ぐらいSS4とかSS5とか、あるいはもっと古臭いキッチンというふうなミサイルソ連が保有した段階で、これは何も日本海に出てくることはなくて、シベリア上空を飛びながら日本に向かって核ミサイルを発射すれば、ピンポイント、つまり地図で刺せばピンで刺すぐらいの正確度で飛び込んでくるわけですから、北海道に敵前上陸する前にそういう核攻撃を加えるでありましょうし、あるいは核ミサイルでなくてもいい、普通のミサイルでも結構、日本にある現在二十九の原発ソ連ミサイルでねらうならば日本列島はほとんど放射能で覆われる。  皮肉なことでありますけれども、といいますか、これを御説明を実は政府方々にしていただきたいことでありますけれども、日本原発の大部分が日本海側に並んで建てられておる。そういうふうな状況一つ考えてみても、ソ連脅威論というものが非常に政治的なねらいを持ったものであろうし、百歩下がって侵略があったと考えた場合のその実態というものの想定というものは、やはりはかるべからざるものがあるだろうと思います。  しかも、日本ソ連だけが交戦状態にあって世界がそれをじっと眺めておるというような絵柄は全く描けないのであって、政府側あるいは自民党の側の方々がおっしゃるように、アメリカの来援というものを前提にして考えられておる。日ソ交戦をするということは恐らく中ソ国境も動くでありましょうし、ヨーロッパ正面も動くでありましょうし、米ソ関係も動いてくる。つまりそれは、世界戦争に発展をする過程の中で起こるかあるいは世界戦争の中でしか起きないことでありまして、そういう状態が起きた中で、資源を海外に徹底的に依存をしておる日本の真の意味での安全保障というものが、自衛隊を例えば五十万にしたところでどうなるものかという、その辺のことをしっかりと押さえた上で安保の問題を考える必要があるだろうというふうに私は考えております。  その立場からいえば、今佐藤先生がおっしゃいましたように、私は、真の脅威というのはアメリカソ連どちらがどれだけ強いのかというそこから問題が立つのではなくて、真の脅威というものはやはり二つ軍事ブロックというものがあって、それが対立し、さらに核軍拡方向を進めておる、その状況そのものが人類にとってあるいは日本の我々にとっての脅威であると見なければいけないと思います。  先生方にそういうことを申し上げるのは大変失礼でありますけれども、現在世界に保有されている核の破壊量というのが広島原爆に直して百五十万発分というふうに俗に言われます、これは国連の発表でありますけれども。百五十万発分というのは、広島原爆が落ちてから今日までほぼ一万三千日ぐらいでありまして、つまり一日のうちに百発以上積み上がっているわけですね。私たちが一日生きていれば、この地球上に広島原爆に直せば百発分以上の核破壊力が積み上げられていく。それが今日の実態でありまして、もしもアメリカソ連が保有している核というものが一時期に爆発したと、これは絶対にそういうことは起こらないとは思いますけれども、仮に仮定をして計算したならば、地球人口一千億人を殺す、つまり地球人口を二十三回殺せるわけでありまして、そのうちソ連の方が十三回でアメリカが十回になったからだからソ連脅威であるとか、いやアメリカが十五回持ってソ連はなお八回だからアメリカの方が強いのだというような、バランスの問題では絶対ない、平和の問題は。  そうではなくて、先ほど言いましたように、二つ軍事ブロックというものが対立し、人々の願いを無視して核軍拡を進めているその政治、しかもそれを抑止と均衡という名のもとで合理化していく政治方向というものが変えられなければならないのだというふうに私は思います。それはアメリカソ連に対して頼む、願うということではなくて、そのブロックの一方に日本一つの力を持って参加をしていけば、相手側はそれを脅威と考える。それをまたこちら側が脅威と考えれば、それは当然に際限ない悪循環を生むわけでありまして、世界海外投資国としては今やアメリカを抜くという位置まで来ておる日本役割というのは、そのどちらかに立つのではなくて、みずからそのサイクルの中から離脱をするための責任をとる知恵を出す、そのことを通じて日本安全保障のみならず世界安全保障世界の平和に対しての決定的な寄与をしていく、それがたまたま戦後四十年に当たることしの大きな問題ではないかというふうに思っております。  その立場から申し上げるのでありますけれども、これまた佐藤先生と同じように、私は日米軍事関係軍事同盟関係というものは無視できないほど現実拡大をしてきておると思います。特に七八年十一月二十七日に合意されました日米防衛協力指針、俗に言うガイドラインというものは、私は事実上の安保条約改定であったというふうに考えます。  なぜ改定であるかというと、つまり脅威が起きたときに日米が協力して動くというのが安保条約上の成文的な解釈であります。それから安保条約によれば、日本自衛隊日本のことを担当し、アジア太平洋アメリカが担当する。そのために日本基地を提供するという構造でありますけれども、ガイドラインはそうではなくて、脅威のおそれある段階ということは、常時ということであります。常時において日米軍事的に協力する。そして日本自衛隊の果たすべき役割は、日本領域のみならず、その周辺海空域まで広がる。それが何千キロであるかということはガイドラインには特定されておりませんけれども、日本周辺海空域という形になれば、これは事実上の際限ないまた広がりを可能にする文脈でありまして、明らかに日米安保ではない、アジア安保太平洋安保という形に格上げをされた。その意味で、実態的には安保改定であったというふうに思います。  御承知のように、六〇年に安保改定がありまして、それは条約改定という形式をとりましたために、国会で御承知のような大きな争点になった。そのことからあるいは学ばれたのかもしれないし、そうするまた余地もない制約があったからかもしれませんが、条約という形をとらない日米間の合意という形で事実上の安保改定が執行されたというふうに私は考えております。  この日米防衛協力指針ができました経緯はおよそもう御存じでございましょうか。七五年のベトナムでのアメリカ敗戦直後、ほぼ六月でありますけれども、アメリカ日米共同作戦調整機構をつくろうという提案を非公式にしてきておりますね。この日米共同作戦調整機構という言葉は、実は六三年に国会で大きな問題になりました例の三矢作戦計画の中にあるネーミングであります。  当然に日本側としては、そういうネーミング日米間の協議機関をつくることには行き過ぎというか、国民の反発をお考えになったのでしょう、名前を変えて日米防衛協力小委員会という何でもないような名前に変えられて、二年間の秘密協議が進められて、そして七八年十一月二十七日に合意されるという経過になったわけです。ところが、この十一月二十七日というのは、自民党の初の総裁公選開票日に当たっておりまして、テレビも新聞自民党の中のこの問題にほとんどフットライトを浴びせた。そのために、今度事実上の安保改定が行われたというそのことについての新聞報道なども、調べてみてもわかることですけれども、全く小さな記事でありまして、ほとんど国民の頭の中にはそういう重大な転換が行われたということを理解されていないまま今日に来ている。しかし、実態はそこが拘束しておるのでありまして、それに基づいて八一年の五月佐は鈴木首相のもとでいわゆる日米同盟の確認が行われます。そして、それが中曽根首相のもとでさらに日米運命共同体とか、シーレーンあるいは日本列島不沈空母というようなさまざまの言葉を使いながらエスカレートしてきておるということは御存じのとおりであります。  鈴木首相が八一年の五月、レーガン大統領との間に日米同盟というのを認めた、その二カ月後、八一年七月に日本自衛隊の陸海空三軍統合の最初の演習が行われます。主な内容は、対馬に一万人の敵前上陸をするという内容になったわけでありますけれども、実は新聞報道ではほとんど取り上げられておりません。この対馬への上陸作戦が行われる一週間ぐらい前にいわゆる三海峡封鎖のことになりましょう、対馬及び宗谷それから津軽、この三つの海峡で、やや小規模でありますけれども、封鎖の演習が行われている。つまり三海峡封鎖の演習が行われた後、朝鮮海峡に集中するところの大演習が行われたということです。これはやや私の解析を入れておきたいと思いますが、日米同盟の確認があった翌月、ハワイで日米安保事務レベル協議というものが行われます。  そこでアメリカ側がシナリオを出した。それはどういうことかというと、要旨はこういうことです。ソ連は、今世界方向に同時進攻する軍事能力を持つに至った。アメリカ側は残念ながら二方向しか対処できない。アメリカとしては中東及びヨーロッパが優先するので、つまり極東方面はこれは手薄にならざるを得ない。そこは日本がやってもらいたい。一番可能性が強いのは中東である、問題が火を噴くのは。その場合にウラジオストクその他にあるソ連極東艦隊が、日本海を抜けて、太平洋に出、インド洋、ペルシャ湾にも向かってくるであろう。したがって、三海峡封鎖の仕事を日本自衛隊がやってほしいと。そういう態勢を日本側がとった場合に、恐らくペトロパブロフスクのソ連軍基地からソ連軍が出て、太平洋岸から日本攻撃するであろう。日本海側からはもちろんウラジオストクその他にあるソ連軍攻撃するであろう。北朝鮮の軍隊を南に下げてくるであろう。そして、朝鮮海峡を突破するために集中的なその作戦を展開するであろう。したがって、最終的には対馬海峡、朝鮮海峡の封鎖、そこのところを責任を持ってもらう必要があるという趣旨のシナリオが出されたわけであります。  それと全く同じことですね、そのシナリオに沿ったかのごとく演習が行われて、日本自衛隊発足以来初の陸海空三軍統合演習が行われるというような経過があったわけであります。  翌八二年には、アメリカ軍の陸軍との間の山桜という名前の指揮所演習が始まってまいりますし、あるいは指揮所演習のみならず兵まで含めるところの陸軍の合同演習が、ヤマトという名前で同じく八二年から始まります。ヤマト82というのは東富士演習場であり、その次はヤマト83ですが、これは別の名前で北斗83とも言います。昨年はみちのく84ということで東北で行われたのは、これまた御存じのことだと思います。そこに参加してまいりますアメリカ軍の主力というのは、ハワイに拠点を置いております第九軍団の第二十五師団、それからアメリカ本土におります第七師団、それから第九師団、これが入れかわり立ちかわり、あるいは合同して日本自衛隊との演習に参加をしてくるわけです。  第二十五師というのは御存じのように朝鮮戦争のときの主力部隊であります。それから七師というのも朝鮮にかかわります。したがって、ことしもそうですが、チームスピリットというあの有名な大演習の場合には二十五師、第七師及びアメリカの海兵隊が参加をしております。第九師団というのは、これは御存じないかもしれませんが、八三年十月にアメリカが行いましたグレナダに対する侵攻を担当した部隊であります。そういう部隊が日本の中で演習をし、そしてターゲットは朝鮮に向かってのそういった作戦行動を積み上げてきておるということは、これは無視できないことだろうと思います。  その上に、昨年の十二月についに日米共同作戦計画書なるものがサインされた。その内容は、国会志苫先生その他御追及になったようでありますけれども、政府側は一行とも明らかにすることはできないという立場で、今のところ態度を崩してはいない。日米共同作戦計画書というものが成り立ったということは事実でありまして、それが今日の軍事展開上の中での日米共同作戦計画書であるということになりましたら、これは明らかに核戦略、核というものを基点に置いた共同作戦計画書であるに違いない。それでなければまた実態的な有効性を持たないだろうと私は思います。したがって、また国民に一行も明らかにできないというふうになっている。しかも、新聞報道では、この共同作戦計画書をサインすることについて、外務省は事前に知らなかったという重大な政治にかかわる経過も出てきている。そして、それを受けて、さっき佐藤先生がおっしゃったように、ことしの一月、レーガン・中曽根会談が行われて、そこで、私はこの点は大事だと思いますが、共同声明こそ出しませんでしたが、新聞発表というのを両首脳が出した。その新聞発表の中で、日米諮問委員会報告書を重要なものとして認める、日米間のガイドラインにするということがうたわれているわけです。  つまり、日米諮問委員会報告書は単なる民間人の報告にとどまらなくなった、政府間の合意事項として取り扱われることになったということが大事でありまして、そうしますと、海外派兵の問題、GNPの一%を突破した防衛費の獲得の問題、あるいは朝鮮問題についての後方支援面の日本の責任の確立は明らかに軍事面を意味するわけでありまして、そういうようなことが日米間の共同のガイドラインとして、政府の問題としてつくられたというふうに考えます。どうも遠慮なく言わせてもらいますけれども、いわゆる臨調方式というふうな形で中曽根政治は進んでおりまして、民間人でやったことを政府の問題でやってしまう、国際的臨調版の政治が行われているというような感じさえいたします。  ことしの八月二十五日から九月十四日にかけては、北海道が舞台でありますけれども、陸上自衛隊十五万、これは欠員を含めてほとんど全員に近いと考えた方がいいと思います。十五万にわたる非常呼集演習が行われ、そして本土縦断の自衛隊の輸送、熊本第八師団まで含めた、あるいは広島十三師団というものを含めて北海道自衛隊を送って演習をするというようなところまで事が進んでおるわけでありますけれども、果たしてそういうことが必要な緊張状況というものが今日極東状況の中にあるのかという問題について、私は非常に大きな疑義を持たざるを得ません。結局のところ、千海里防衛の問題を含むシーレーンの問題を含めて先ほどお話ししました日米防衛協力ガイドラインの実体化が進んでおり、そのことが周辺に対してむしろ脅威になっている。  しかも、その動きというのは日本自衛隊の方方がどう考えようとも、それはアメリカ核戦略下に動いているのであって、トマホーク配備の問題、あるいはアメリカ核戦略で言いますと、八四—八八国防指針その展開の中にあるわけでありまして、この八四—八八国防指針というのはレーガン大統領のNSDD、ナショナル・セキュリティー・ダイレクティブ・オブ・デジション三十二号というものに基づいてつくられているわけですが、御承知のように、世界同時多発戦争戦略、一カ所ではやらない、やるならば数カ所同時にやる。さらに認識論としては、プロトラクテッド・ニュークリア・ウオーという言葉を使っていますが、長引かされた核戦争、それに対応する。つまり、核戦争というのは短期間に終わらない、六カ月以上続くであろう。それに対して打ち勝ち勝利をする体制を同盟国日本などを含めて動員をしてつくるのだという、その方針のもとで今日の軍事実態がつくられているわけでありますから、それは正直言って日本国民の利益とは非常に大きく食い違ったものであろうというふうに考えます。根本的なことは、結局これは日米安保体制の枠組みから出ることであります。  時間がなくなりましたけれども、日米安保体制というのは安保条約一条によって、一つ条約によってつくられているのでありませんで、これまた国民についぞ全部公表されたことはありませんが、二千ぐらいのいろいろな取り決めによってつくられているネットワークであります。協定あり合意書あり交換公文ありいろいろなことで二千ぐらいになります。その中に例えば日米基本労務契約というのは今だに有効でありますが、この日米基本労務契約というのは占領下につくられたものであります。それが今日依然として安保体制のもとで有効であり、そしてそれが年々更新されているのですけれども、恐らく私は議会の審議対象になっていないのではないかというふうに思います。そこはやはり議会の権威の問題としても非常に重要なことをはらんでいる。  そこで、ぜひこういう発言の機会を与えられましたのに乗りましてお願いをしたいのは、いわゆるシビリアンコントロール、議会の審議権というものは厳として確立していただきたいと思うのです。昨年三月に中央指揮所というのが生まれましたけれども、あれは関係法律の明示的な改定作業が国会で行われて進んだのではないと私は了解いたします、多少の論議はあったようでありますけれども。つまり、おととしの暮れの第百国会最後に成立をいたしました国家行政組織法の改定に基づいて各省庁にまたがる二百以上の法律が自動改定をされた。その中で防衛庁設置法も変えられ、つまり必要なことは政令でやってよろしいという枠組みがつくられたことで実際上は防衛庁訓令という形で中央指揮所というものがつくられた。つまり政令を中心とした政治形態というものがどんどんとられるようになったということ、そのことがさっき言った軍事的な状況とパラレルに進まざるを得ないでしょうし、進んでいることを憂慮したいと思います。そこでシビリアンコントロールの本当の確保というものをお願いしたいと思いますが、そういった意味で私は安保条約安保体制というものをもう一回ぜひ総合的に見直していただきたい。  日米基本労務契約だけではありません。日米相互防衛援助協定、俗に言うMSA協定というのがいまだに日本はは有効としてあるわけでありまして、そのMSA協定というのは、これまた先生方に大変失礼な言い方でありますが、第八条でこういうふうに書いております。「自国政府日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて負っている軍事的義務を履行することの決意を再確認するとともに、自国政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力、資源、施設及び一般的経済条件の許す限り自国防衛力及び自由世界防衛力の発展及び維持に寄与し、」、つまり、人力、資源を挙げて寄与していく責任を持っておるという条約があるわけでありまして、そういうことを持っていた上で、いわゆる自主的な防衛というものが果たしてどれだけ可能なのか。このMSA協定というのは一方的通告による破棄可能な条約でありますから、本当に今の世界安全保障日本安全保障を自主的に責任を担っていこうとするならば、そういったところまでぜひ御検討願いたいというふうに思います。  一番最初に申しましたように、核の問題が決定的に重要なことでありまして、核廃絶のためにさまざまの創意が今日発揮されなければならないときであろうと思います。折りしも被爆四十年というふうに申しましたけれども、例えば日本政府政府が不可能ならば、つまり国会の名によるところの、被爆四十年を機にしての世界の人々に対する非核のアピールを議会の権威において出すというようなことも御検討いただいたらいかがかと思いますし、あるいは日本自身は核を持っていないとするならば、非核国の世界首脳会議の提唱をする、非核国の世界首脳会議をやるというようなことも構想の中に入れてよかろうというふうに思います。  ちょっと長くなりましたけれども、そして早口になりましたけれども、発言はこれで終わりたいと思います。
  6. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  7. 中西一郎

    ○中西一郎君 お二人に共通の質問をしたいと思います。  まず第一は、お立場を聞きたい。それは非同盟中立というお考えのようでございますが、あわせて非武装ということなのかどうかということが第一点。  それから第二点は、これはソ連がアフリカあるいはアフガニスタン、今ベトナムあるいはカンボジア、いろいろ軍事基地強化をやっていますが、それにも関連するのですけれども、アメリカがワルシャワ条約機構なりあるいはシベリアなりに兵力を用いて侵攻するというようなことがあり得るとお考えかどうか。むしろ米ソ間で何か起こった場合に、日本自身はソ連脅威の顕在化ということを踏まえて対処しておくということは当然のことではないかと思うのですが、それが第二点であります。  それから、ミリタリーバランスその他では、ソ連の艦艇が八百二十五隻と言っています。先ほどお話が七百隻とかございました。飛行機が二千二百二十機あるとか、極東配備だけでも今申し上げたような数字。こういったことをそのままうのみにしてはいけないというお話もございます。そのためにも、私の意見ですけれども、偵察衛星というようなものがあって、お互いの軍備管理に役立つということが必要だろうと思うのですが、それについての御所見を承りたい。  その次は、核の均衡、これでいろいろお話があったのですけれども、現実にはそれが追求されている。一日に百発ですか生産されてきた、これからも続くのではないかという御心配は、私もそういうことがない方がいいと思うのです。しかし、核の相互の抑止力ということが今の平和に寄与しているという面のあることを否定するわけにはいかないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。  なお、それに関連して、お話が出ませんでしたが、SDIをどう評価されるか。これは攻撃兵器にもなるという話がございますが、しかし攻撃兵器として使わない、核を無力化するというようなことで開発されるならば、これはお二人もお考えになっておる核の廃絶ということにもつながるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。  以上でございます。
  8. 佐藤昌一郎

    参考人佐藤昌一郎君) 非同盟中立が非武装かという質問についてですけれども、私は機械的にそういうふうには考えておりません。基本的には、やはり無責任な軍国主義が存在する限り、一定のそういう危険な状況があり得るかもしれない、その問題についてはリアルに検討しておく必要があるだろうという点であります。  それから、アメリカシベリア侵攻があり得るか、こういうのに私は外交の専門家でもありませんから直接答える準備はありませんけれども、一定の条件のもとではあり得ることだ。ただ、そういう点だけを問題にするのではなくて、例えばソ連の側の論理を調べてみますと、やっぱり日本アメリカのミリタリーコンプレックスというとらえ方をしてくるわけですから、それを強化すればそれに対する対抗措置という形で出てきて、これはもう繰り返し出ております悪循環になっていくわけですね。したがって、限定核戦争構想というのは、アメリカ一定の条件のもとではシベリア攻撃あるいは日本海を中心として戦争があり得るということを考えているということは否定できないのではないかと思います。  それから、ミリタリーバランスの問題では、これは常に議論があって、一体何が本当なのか必ずしも正確につかめないという状況があるわけです。今のように偵察衛星があれだけ発展してきても必要な情報は隠しておりますから、不都合な部分はもう公にしないという形で、ミリタリーバランスが相手の不信感を誘うような形の議論にむしろ使われてきているのが現実なのじゃないでしょうか。  それから、核の抑止力の問題ですけれども、抑止力論というのは私は軍拡の論理であるというふうに考えております。これはいろいろなところでいろいろな議論がされておりますけれども、抑止力ということを口実にしたのは今に始まった話じゃないわけです。日本の明治からの軍事史料を調べてみればすぐわかるわけで、いつも脅威をあおって、それでそれに負けない軍事力強化していかなきゃいけない。最近も日本軍事力は保険論だというような言い方をする人がいろいろなところで見えますけれども、これは私の調べた限りでは、そういう議論を最も体系的に展開したのは山県有朋なのですね。明治の軍国主義者のシンボルとして言われている山県有朋以来の発想であります。それが核戦力と結合して、要するに抑止力という議論で核抑止力の容認という形になっていっている。これは現実が示しているとおりだと思うのです。核抑止力論で五万発もの核兵器地球上に累積されてきている。だから、これをどうしても断ち切っていかないといけない。ところが、日本政府は依然として抑止力論に固執している。これは大変残念なことだと思います。こういう考え方をまず捨てることから出発しなきゃいけないと思います。  それから、SDIについては、私は今調べ始めたところで断定的な結論は申し上げられませんが、ストックホルムの国際平和研究所等の報告によりますと、これは核を使わないのじゃないのですね。アメリカがいろいろ考えている構想ではやっぱり核兵器の使用計画が含まれる。それから、一〇〇%宇宙で迎撃することは不可能だというのは、これは軍事理論家が指摘しているとおりでありまして、それで漏れた部分は大気圏内で核攻撃をやるという想定になっております。したがって、核兵器廃絶どころか、こういうものがつくられればそれに対して対抗措置が必ずとられてくるであろう、宇宙に軍拡競争をさらに広げる効果しか持たないと私は考えております。  以上です。
  9. 山川暁夫

    参考人山川暁夫君) 私も御質問の順に沿って要点だけ申し上げますが、非同盟という概念は非武装という概念とは同じではありませんで、非同盟という立場をとりながらも武装をしている国というものもございますし、むしろそちらの方が一般的なことであろうと思います。それで、外交政策上の問題としての非同盟中立ということは私も積極的に私の考えでは支持をしたいと思いますけれども、武装の問題ということになりますと、これは主権の問題もございますし、たたかれればたたき返すという問題は当然あるわけでありまして、全く完全非武装ということでいくことが正しいというふうには私は思っておりません。いかなる武装力をいかなる力のもとで、政治的な方向づけのもとでつくり上げていくのかということが問われなければならないことなのだというふうに考えております。  それから、ソ連動向でありますけれども、私は思うところは、アメリカシベリア出兵なんというものはそれはほとんどあり得ないであろう。第一、アメリカは現在、御承知でしょうが、既に持てる総兵力の四三%、五十二万人が海外に出払っております。海外に配置をしております。むしろ、アメリカにとってはそこのところが軍事予算の膨張からくる国家財政の一年間二千億ドルのマイナス、赤字ということと絡み合って非常に困難を感じている問題であります。したがってまた、できるだけ世界におけるアメリカ立場からすれば、安全保障の兵力的な責任は同盟国にゆだねていきたいというふうに考えている。  じゃ、ちょっと立ち入ったことをお話しいたしますけれども、毎春行われますチームスピリット作戦というのは、始まりましたのはベトナム戦争終わった直後の七六年からでありまして、そのときは米韓含めて四万六千でありますけれども、ことしは二十万とも言われ、二十四万とも言われるわけです。急激に膨張しておるのですけれども、アメリカ軍だけの数を見ますとむしろ去年より二万ばかり減っております。それは恐らくアメリカの今後の展開の中では、常時の責任は日本ですね、日本の責任というところに持っていって、いざ有時のときには日本本土、沖縄などを基地として、出撃拠点としてアメリカ軍事力を投入するという考え方で、今言ったようなチームスピリットに関するアメリカ軍のむしろ逓減状態が出てきておるというふうに考えるのです。  本論に戻りますけれども、つまりアメリカとしては大きな兵力を持っていることは事実でありますが、シベリアに出て陸上作戦をするというようなことをやれる力を持っているわけではない。したがって、アメリカシベリア出兵があり得るかという、そのあり得るかどうかを象徴的に論議すれば絶対ないというふうには言えないわけで、しかし可能性としては極めて少ない。その極めて少ない可能性を前提にして、ここにも対応しなきゃならぬ、こういう状況にも対応しなきゃならぬということであるならば、さっき言った一つの事例をもう一回繰り返さしていただきますけれども、なぜ日本海側日本原発をあれだけ並べる必要があるのか。それだって可能性で考えたらえらいことでありまして、そういったことに対する対処をしなければならぬであろうというふうに思います。  米ソ関係というのは非常に複雑なことでありまして、現在交渉の方向というものが始まっておりますけれども、しかしこれは、アメリカにしてみればアメリカ経済の困難というものがある。実にことしはその意味で画期的になるというのは、既に、これは統計がおくれているだけでありまして、アメリカはついに債務国に変わった、御承知のように。このままいけば、再来年には世界最大の債務国に転ずる。ことしの秋には投資の純利益においてアメリカはついに赤字になる。この「ついに」というのはどういうことかといいますと、二十世紀になって初めてのことで、二百年ちょっとばかりのアメリカの歴史の中で、二十世紀に入って初めて赤字ということは、これはやはり一つの歴史的な転換点でありまして、それにアメリカの農家経済が今えらいことになって、二百七十万農家のうち一割近くが農業をやめざるを得ないというところになりつつある、そういったアメリカの持っている内政的な問題、経済的な問題、それは我々が考える以上に一方では深刻なものであります。  ソ連の方はソ連の方で、それこそ農業を含む経済の問題、アフガニスタンにおける泥沼状態、それからゴルバチョフ政椎ができてその安定までには時間も必要であろう。そういった相互の状況があって一時の息抜きあるいは時間稼ぎをしておるというのが今の米ソ関係、非常に突っ放した言い方をするとそうでありまして、平和の方向に戻ったわけではない。しかし、なおかつ交渉はせざるを得ない。そういった相互関係の中で事柄が続いて動いていくのでありまして、よく言うウオッカ・コーラ関係というものも働いているわけですね。けんかをしながら下の方ではつながり合っておるというような関係もあるわけです。ですからさっき発言をしたときに申し上げましたように、局部においてではなくて、その総体においてソ連が今どういう状態にあり、どういう問題を抱えておるのかということをリアルに考えていただくというふうにしなければいけないのではないか。ソ連脅威があるからそれに対応するのは当然ではないかというふうにおっしゃいましたけれども、対応するというのは、軍事的に対応するというのはどういうことになるのか、それは紛れもなく世界戦争になってしまう。そのときに、では日本側としてどういう安全保障上の責任が政治において担い得るのかといえば、これはほとんど肌寒いほどの思いが私はいたします。  話はちょっと前後しましたけれども、ソ連の方は余り強調されておりませんので、あえて申し上げますけれども、ことしソ連の新規労働力の増加数は五十六万人でございます、あの大きなソ連……
  10. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) 山川さん、ちょっとできるだけ要約して……。
  11. 山川暁夫

    参考人山川暁夫君) はい。ここ二年間ぐらいは続きます。それはどうしてかというと、この前の大戦のときに二千万ばかり死んでしまった、特に青年が死んだ。そのために、二十年サイクルでソ連の人口膨張率が非常に小さくなるわけです。その端境期にきている。その五十六万人を経済に入れるのか軍事戦力として動員するのか、それだけでも大変な問題をソ連は抱えておるということだと思います。  したがって、三番日の問題、つまり、ソ述の軍事情勢についての偵察衛星の必要性という問題については、私は絶対必要なものであるというふうには申し上げません。  それから、核の均衡の問題については佐藤先生のおっしゃったこととほとんど同じでありまして、核兵器があるから、核戦力があるから戦争が防がれているのではないかというのは奇妙な論理でありまして、核兵器があるからこそ核戦争の危機がある。核兵器がなくなれば核戦争というものの危険はなくなるわけでありまして、そこのロジックを考えれば極めて明快なことであろうと思います。じゃ米ソ間の核戦争以外の戦争というものはなくなったかというとそうではありませんで、戦後大小八十二回、いろいろな数字がありますが、世界じゅうで戦争が起きている。現に今地球上四十六カ所で戦争が行われている。武器をとっている青年の数は四百万を数える。それは核兵器があるからとめられているのかといえばそうではありません。米ソ間の戦争がないのは幸せでありますけれども、それは核兵器によって行われていないのであるということではなかろうというふうに思います。  SDIについては、核廃絶につながるどころかむしろ核の軍拡になり、SDI体系そのもののまたエスカレートというものが起こっている、悪循環が起こっている。現に、つい数日前の外電でありますように、アメリカはSDIの研究開発を進めると同時に、そういった宇宙戦争体制防衛網を突破する新たな軍事体系を開発すべく作業に入ったという報道がございます。ここでもやはり盾と矛の関係ですね。相手が強化すればこっちが強化するという際限ない悪循環の論理はSDIにおいても適用される。なおかつ、SDIによってミサイルすべてが防止できるという技術的可能性がないのでありまして、それはソ連の衛星、アメリカの衛星の回路が、軌跡が同じならばまた別でありますが、非常にすれ違っているわけで非常に困難。一つ有効であろうと思われているのがASATというものですけれども、これはSDI構想の一部分でありますが、アンチサテライトということでありまして、これはF15でミサイルを持って、そして飛んでくる核ミサイルを破壊をしてしまおうということであります。このASATの問題になりますと新たなまた軍事基地海外に必要になる。むしろ南半球に必要になるというような問題も出てまいります。だから、全世界的なある種の軍拡をむしろ進めてしまうというのが出てくる結論であろうと思います。
  12. 志苫裕

    志苫裕君 社会党の志苫です。きょうはどうもありがとうございました。  実は一人当たりで往復で十分しかないのです。ごくかいつまんでだけお伺いしますが、山川先生、先ほどずっと一連の演習の経緯などお話がありましたが、この間も元統幕とか海幕、陸幕の話も聞いたのですが、インターオペラビリティーの向上、相互運用性の向上というのが、兵器の互換性から共同作戦面あるいはC3Iまでずっと向上させていきますと、実際問題として一つの作戦あるいは一つの戦闘とか、そういう場合に国と国との壁とか主権の壁とか、そういうものは取っ払わられてしまうのじゃないのかという点が大変気になるところでして、この間、元制服に聞きますと、いや、そこのところはちゃんとけじめがついていて、それはあくまでも調整であって、ごちゃごちゃにならないのだというお話なのですけれども、現実の問題、その点の懸念というのはどういうものでしょう。
  13. 山川暁夫

    参考人山川暁夫君) おっしゃるとおり、私もそういう懸念を深くいたします。とりわけ指揮系統の問題でありますが、先ほどお話しした中央指揮所、これは国会で質疑応答がございますので先生方の方がお詳しいだろうと思いますが、中央指揮所は例のWWMCCS、ワールドワイド・ミリタリー・コマンド・アンド・コントロール・システムというアメリカ世界的な軍事指揮統合体制の中に入って機能するわけでありますから、C3Iが発展すればするほどその指揮系統、主権の問題にかかわりますけれども、おっしゃるように私は、運用で相互に自主性はあるのだとはいいながらも、実態的には情報の流れの問題、それから配置、重点の置き方の問題ということになれば、日本の場合はアメリカ軍との間の事実上の一体化が進まざるを得ないというふうに考えます。
  14. 志苫裕

    志苫裕君 それからもう一つですが、米ソの対立というか東西の緊張といいますか、戦後の世界史は、大体十年区切りぐらいで対立したり温かくなったり冷たくなったりということを繰り返しておるようなのですが、この繰り返しというのはいつも同じではない。戦後のいわば冷戦というのは、社会主義あるいは資本主義の価値観の違いであるとか、あるいは利益の違いであるとかというふうなものであったような気がするのですが、最近はそれぞれのブロックが必ずしも一枚岩でもないし、多分にブロック内で、例えばアメリカならアメリカが総体的に落ち込んできたので味方陣営を引き締めるといいますか、イニシアチブ、リーダーシップを回復するために相手と緊張を高める、そういう性格を持っているのじゃないかというように思うのです。したがって、雪解けの仕方も同じものにはならないという感じもするわけです。日本外交なりそういうもののスタンスが一方的にのめり込んでいくというと、相手が修復したときにこっちは修復する場所がないという立場にはまり込んでしまうのじゃないかという懸念もあるのですが、その辺はどんなものでしょう。
  15. 山川暁夫

    参考人山川暁夫君) 昨年の大統領選挙の直前に発表されました八四年共和党政治綱領の中に、グレナダ侵攻の成功はソ連のブレジネフ・ドクトリンに対する挑戦であったという言う方がございます。日本で言えば熊本県の天草ぐらいの島にアメリカ軍が入り込んだ、人口十一万のところに入り込んで、当然それは制圧するわけですが、そういうことがソ連のブレジネフ・ドクトリンへの挑戦ということになると、これは大いに検討し考えてみる価値のあることであります。要するにアメリカとしては、俗に言う第三世界、これは今の中南米の状況などを見ればもろに姿をあらわしておりますけれども、それがやはりコントロールし得なくなってきておるという状況、そこをグレナダ型に抑えていこうとした場合に、アメリカとして非常に気になるのは、その場合にソ連軍事的にどう対応するか。だから、ソ連が身動きできないように政治的にも軍事的にも、例えばトマホークなどで、ソ連周辺を巡航ミサイルで埋め切ってしまう、身動きできないようにしておいてソ連外交交渉の場に引きずり出してくる、つまり硬軟両用の策でアメリカの考える世界的な考え、戦略のもとにソ連を取り込んでくるというのが今のアメリカ側の考えであろうというふうに思います。  その米ソ交渉の中で、今志苫先生おっしゃったように、世界は依然としてアメリカソ連のコントロールのもとで動かしていこうではないかということでの新たな秩序をつくる。ことしたまたま戦後四十年というのは、ヤルタ条約、ヤルタの合意が成り立ってから四十年でありますけれども、ヤルタの合意を新ヤルタというべきものに置きかえるというのが現在の動きであろうというふうに思います。したがってソ連の側も、ルーマニアがソ連の意図に反してロサンゼルスオリンピック大会に出ていってしまったり、あるいは東ドイツ、西ドイツの間に微妙な応酬、交流が始まるというような、やや締めつけにたがの緩みが見えるわけで、そこは勝手なことではないよ、つまりソ連の方の、ソ連そのもののリーダーシップの上でやるのだ、アメリカの方もまたそうでありますね、そういった構造で現在の世界の枠組みづくりが進んでいる。波乱万丈だろうと思いますけれども、動いている流れはそういうことであろうというふうに考えます。
  16. 志苫裕

    志苫裕君 佐藤先生、一問だけでいいのですが、去年の六月に出たアメリカの国防総省の同盟国の貢献度報告によりますと、いわゆるNATO日米安保を同列に論じているという意味で、先ほどお話がありましたアジアのNATO版といいますか、日本政府はもちろん否定しますが、実態はどういう形になっているのでしょうか。
  17. 佐藤昌一郎

    参考人佐藤昌一郎君) きょう詳しいデータを持ってきておりませんので数字はちょっと勘弁していただきたいと思いますが、要するに、アメリカ側はNATO軍事同盟と全く同じような内容日本に要求してきている。したがって、ヨーロッパよりも例えば思いやり予算は確かに多いけれども、やっぱりもっと軍事力の支出をふやしてNATO並みの、いわばアメリカのスネーク体制の補完部隊を強化せよという主張だと私は理解しております。
  18. 志苫裕

    志苫裕君 ありがとうございました。
  19. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間がございませんもので、両先生に共通の質問をさせていただきたいと思います。  まず第一点は、両先生とも日米安保条約に反対のお立場であることはこれは十分承知しておりますが、もしや過去を振り返りまして、この日米安保が何か効用が日本にあったとすればどんな点にプラスの面があったか、あるいはそんなものは全くなかったのだ、この点いかがでしょうか、もしあったとすればどういう点であるか。  二問目は、十二月の下旬に日米制服で、一応日米共同作戦の案なるものをサインしてつくった。有事のときにはこれがすぐ実質的計画となって日米共同作戦が行われる。さらに、防衛庁を中心にしまして国内有事法制、第一、第二、第三段階に来ている、こういうことであります。その延長線上にあるものは、今後国内有事法制の整備あるいは日米制服同士の共同作戦、こういうものが案あるいは研究、計画として着々と行われている、その延長線に中短期的に将来どういうものが想定されるか。  もう一つ、三点目は、米ソ首脳が何か近々に、あるいは秋の国連あたりでも会うのではなかろうか、こんな観測が強くなっておりますが、この両首脳が会って何が期待できるか、こういうことについてお教えいただければと……。  以上でございます。
  20. 佐藤昌一郎

    参考人佐藤昌一郎君) 第一の点です。私は、残念ながらメリットがあったというふうには理解できないのであります。なぜかといいますと、安保条約の最大の問題は、日本の主権を制限している、そして軍事的にはアメリカ軍事体制に完全に組み込まれてきている、そういう状況からメリットを探すことは極めて困難で、私はとてもあるとは考えられない。それで、現実に運用面で安保条約を盾どって地方自治を否定したり、地域住民の意向を完全に圧殺するような動きが至るところで過去ずっと、現在もそうですが、強められてきている、これは重大な問題だと思っております。  それから、共同作戦についてでありますけれども、私たちは何の情報も持っておりません。したがって、断定的なことは今申し上げられませんけれども、私は総動員法が一つのモデルになっているのではないかという感じを持っています。それとやっぱり三矢作戦計画、一時大問題になりましたけれども、これがミックスしているのじゃないかと思われます。  それから三番目の、米ソ首脳の会談の件ですけれども、これは首脳会談は大いにやるべきだと思います。しかし、そこで一番重要なことは、今の国際政治の最大の課題である核廃絶を徹底追求して、それで米ソとも双方そう言っているわけですから、それを一日も早く実現させていくような、日本政府を初め、国際的な世論づくりを大いにやってそれをぶつけていって、その上でその決断を追っていくというのが我々にとって必要な態度ではないかというふうに思っております。  以上です。
  21. 山川暁夫

    参考人山川暁夫君) 物事には絶えず二面性がございますから、絶対の否定という、プラス関係がなかったというふうな言い方はできないだろうと思いますが、これは歴史的にも見ていかなければならない。日独伊、変な話ですが、日独伊枢軸条約というものが、その瞬間においてはやはり、じゃプラス、マイナスどうだというふうに問題を立てれば、そのときの日本立場にとってプラスであるというような物の言い方もできると思います。しかし、歴史的な総括をすれば、ほとんど事柄は多くの国民が一致した判断を出すだろうと思います。  日米安保条約についてもそうでありまして、今佐藤さんがおっしゃいました国家主権あるいは軍事的な主権の問題だけのことではなくて、その裏側にさまざまの経済上の矛盾というものも積み重ねてきたと思います。明らかに安保条約に支えられて日本というものはいわゆる経済の安定、繁栄というものを保持し得たということは、言おうと思えば言えない面はないと思いますけれども、その結果どういうことが起こってきているかといえば、農業の破壊の問題。私、詳しいことは申しませんが、恐らく両三年のうちにアメリカのカリフォルニア産米の日本への輸入の問題が大きくクローズアップされてくるだろうと思います。あるいは人々の、それこそ自主的に生きていくということではなくて、何か他人依存で生きていくという物の考え方を育てるような役割も、また安保体制というものはもたらしたというふうに思います。功罪半ばするということではなくて、物事には両面ある、そのことを認めた上で、この日米安保体制安保条約というものが日本にもたらしたものは、やはり決して喜ぶべきこと、歓迎すべきことではなかったというふうに申し上げておきたいと思います。  二番目の問題は、今後の延長線上にどういうことが出てくるかということの一つ非常に大事なことは、やはり朝鮮問題にかかわった日本の動きになるだろうと思います。  朝鮮問題というのは、日本の歴史を歴史通底的に左右してきた問題でありますけれども、恐らくこれまたこの両三年のうちに非常に鋭い問題になり、そしてアメリカとしては今軍事境界線で分かれている南北分割を国境による分割にして、そして日本アメリカが北朝鮮を承認し中国が南を承認するという、いうところの大国の力による朝鮮半島の括弧つき安定化と申しますか、それを図ると思います。その上で根拠を挙げろと言われますと非常にあいまいなことになりますけれども、アメリカ軍はもちろん核を中心とした南朝鮮への軍事展開をやりますが、地上軍については合理化するのではないか、つまり部分的に削減するのではないか、そのかわりに日本の南朝鮮に対する軍事責任がさらに大きなものとして問われてくるという構造になるのではないかというふうに思います。したがって、それは朝鮮の人たちに対する我我のとるべき態度の問題にもかかわってまいりましょうし、一方ではそういったことに見合う国内編成が急がれねばならぬということにもなりましょうから、究極的には憲法改定の問題というところに、安保条約の今の成り行き、安保体制の成り行きの趨勢上にいわゆる改憲問題というものは出ざるを得ないということだろうと思います。
  22. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、一つはお二人に共通の問題をお聞きしたい。それからもう一つはそれぞれ一問ずつお伺いしたいのです。  共通の問題は憲法との関係です。我々の憲法第九条の解釈からいって当然違憲だと思うのですけれども、政府がとっている憲法解釈からしても違憲ではないかと思うのは、政府も例えば防衛白書の中で、日本は個別的、集団的自衛権を持っているのだが、憲法上集団的自衛権は持てないという解釈をずっと明らかにしているわけですね。ところが、安保条約の第六条というのは、私は事実上集団自衛権の規定だと思うのです。安保条約前文には、「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、」とあるのです。つまり第六条というのは極東条項があるわけです。  極東条項というのは高野雄一東大教授も、これは国連憲章違反の疑いがあると言われているのですけれども、もし極東あるいはその付近で米軍が出動すると、その際に日本基地提供を第六条でするわけですね。そうしますと、日本は攻められていない、日本は平時なのに極東有事あるいは中東有時で米軍が出動するとき、日本はその米軍に対して基地を提供するわけだから、事実上この集団自衛権でアメリカを守るために、つまりアメリカと戦っている国と敵対行動に参加するということになるので、今いろいろ集団自衛権で国連平和維持軍への派遣等々の問題も出ていますけれども、本来この第六条そのものが集団自衛権行使の他国防衛の条項であって、政府解釈からも憲法違反ではないかと私は思っているのです。その点についてお二人の御意見をお伺いしたい。  それから、佐藤参考人には、佐藤さんは地方自治体と安保条約関係その他で長い研究をおやりになって、著書もおありになりますので、例えば東京でも三宅島の問題とかそれから横田基地の問題等々いろいろあります。今地方自治体に対する安保条約から生まれるいろいろな軍事的要請の押しつけがたくさんありますが、それについての御見解をお伺いしたい。  それから、山川参考人には、中央指揮所の問題を非常に強調して、国会でももっと審議、追及を要望されましたが、自衛隊の中央指揮所に対応するものとして、横田基地に在日米軍の司令官、これは第五空軍の司令官もあるわけですね。この横田基地の問題というのは首都にある非常に大きな、関東計画に基づいて約一千億円の金であすこに一つまとまった大変な基地だと思うのですけれども、首都にあるこの横田基地の機能ですね、ジャイアント・トーク・ステーション、C3Iの問題などでも大きな問題になっておりますけれども、中央指揮所と横田基地の在日米軍司令部との関係、あるいは首都にある横田基地軍事的機能等等についてお伺いしたいと思います。  以上です。
  23. 佐藤昌一郎

    参考人佐藤昌一郎君) 私は憲法の問題を詳しくやっているわけじゃありませんので、学問的な厳密な意味での回答はできませんけれども、私が理解している限りにおいて、やはり安保の第六条というのは、共同作戦というのは、それから軍事基地の利用も入りますけれども、明らかに集団的な自衛権の発動というふうに理解せざるを得ないと思うのです。だから、そういう意味ではこれは憲法違反だというふうに言っていいだろうと思います。私は安保条約それ自体が憲法違反だというふうに考えております。  それから、二番目に出された問題ですけれども、地方自治体に対する軍事基地を抱えている、あるいはつくろうとしているところに対する対策ですけれども、御承知のように、周辺整備法の新しい法律が七四年につくられて、財政作戦が飛躍的に強化されてきて、それで因果関係をある意味では棚上げをして、地方自治体に対するさまざまな補助金や国庫支出金を通じて、私に言わせますと、札束で自治体の自治権を買い取るような方策が強行されてきております。それで、どこの自治体でも財政難のところが多いものですから、ついそれに乗せられて地方自治体の本来の任務を放棄するような地域が残念ながら若干出てきております。しかもこれは単なる補助金の問題だけではなくて、その地域のさまざまな階層に実に巧妙なPRをやって、それで政策を推し進めてきている。私は、基地を維持していく人たちが非常に強調しているのは、地方自治体をどうやって政府の側に、政府の言うことを聞くように持っていくか。したがって、基地をめぐる問題というのは、基地を抱えている周辺の自治体の住民の争奪戦であるというような規定をかつてやっていた方がおります。そういう方向でどんどん強められてきております。  それで、非常に問題なのは、安保条約を盾にとって地方自治体に対して非常に強圧的な態度をとっている、一方では買収作戦的なやり方をとり、今三宅島でいろいろな形でやられているのは、財政法や財政支出に関する法律を無視するような、そういう規定を無視するような形のさまざまな動きが行われていて、それで自治体が何を言おうが、住民が何を言おうが、安保条約のもとで日本政府にとって必要なのだ、アメリカにとって必要なのだという非常に強圧的な態度が目立っております。  逗子でも同じでありまして、地方自治の本来の筋を安保でねじ曲げていくという政策が今のこの二つの地域の場合には極めて露骨にとられている。憲法で保障された地方自治の権利すら剥奪しようとしているのではないか。これははっきり言って地域の民主主義、それから憲法で保障された地方自治の権限を政府が権力的に押しつぶしていこうとするそういうあらわれではないかと思って大変憂慮しております。
  24. 山川暁夫

    参考人山川暁夫君) たしか五十一条か五十二条だったと思いますが、国連憲章でいうところの集団安保という概念は、恒常的な敵を想定したものであってはならない、それから侵略、攻撃を受けたときの対処としての集団的な措置であって、それは一時的なものであって、永久的な恒常的なものではないという、その枠組みの中で認められているのが憲章上の集団安保でありますから、その意味で、日米安保条約に基づくところの集団安保国連憲章に基づくものとして位置づけたという点はかなり牽強付会な問題をはらんでおる。これは安保条約が成立する過程から国会を含めてさまざまな論議が行われてきたことでありまして、私は上田先生がおっしゃるような考え方でこれまで理解をしてまいりました。ただ、政府解釈からいってもということになりますと、政府はそういうふうにはどうも解釈していない。国連憲章上の措置である、したがって、まあ合憲でもあるのだという考え方を押し通してきたのではないかというふうに考えております。  ついでながら、この問題についていえば、関連する自衛隊の問題、これまた違憲であるという立場に私は立ちますが、違憲である前にこれは超憲でございまして、自衛隊が発足しましたのはマッカーサー命令によってつくられた警察予備隊から生まれてくるわけでありまして、それを講和、独立をする段階でそのまま、占領下の最高指令官命令の措置が極めてこれはあいまいな措置がとられたまま続いてきた。だから、さっきお話ししました日米基本労務契約なんというものも占領下にできたものですね。それが他のけじめをつけなきゃならなかった、つけられないまま持ち込まれてきているという意味においては違憲である前に超憲的存在である。したがって、これは先ほどの問題になりますが、アメリカとのかかわりにおける日本の主権の問題にかかわってくることだというふうに申し上げておきたいと思います。  それから、横田の問題、もう時間がありませんからごく簡略なことしか申しませんが、いわゆるMAC、マックですね、戦略輸送司令部があるという点が最も象徴的なことでありまして、横田というものはそういう意味では輸送基地であり、兵たん基地であり、さらにアジア全体におけるアメリカの兵員の移動、輸送の中継基地としての役割を持っている。ベトナム戦争のときにしばしば実態が出ましたように、したがってまた、後方で、負傷したアメリカ兵を引き受けるその最大の受け入れ基地であり、医療基地でもあるという総合的な役割を持っているわけですが、当然それにまつわってアメリカのいろいろな密使なども横田基地を経由して入ってくるというようなことがこれまでもあったわけですから、ある種のスパイ的な基地にもなっている。  それから、何よりもジャイアント・トーク・ステーションの設置によって示されているように、特に空軍関係でありますけれども、核戦争態勢に対するところの指令基地である、アメリカのペンタゴンに直結したところの指令基地であるというふうに言えると思います。ほかの基地とやや違って横田というのは、そういったアメリカ極東展開に当たっての総合的な中枢機能を持っておるというふうに言ってよかろうと思います。  これもやや補足をいたしますと、昨年来、清瀬の近くにございます大和田通信所の拡張というものがありまして、それが横田のジャイアント・トーク・ステーションとセットされているというのは御案内であろうと思います。ということは物の言いようでありますけれども、横田の基地機能というのは大和田通信所のところまで実は広がっているわけでございます。その広がりの中に東京都民が居住することを許されておるという実態であろうと思います。アメリカ軍事実態からいうと、そういうふうにとらえた方がむしろ正解である。  同じようなことでありますが、神奈川にあります上瀬谷の海軍通信基地などの持っている役割というのも、トマホーク配備などとかかわって非常に重要なことでありまして、上瀬谷の基地にはアメリカのペンタゴンから直に指令が来、それが一転経路を通りました上で愛知県の依佐美通信所に伝えられ、それからNHKの国際放送、二倍の出力で太平洋全域にわたってアメリカの原子力潜水艦に対する行動指令が発せられるというような仕組みになっているわけです。  したがって、仮にアメリカソ連とのかかわり、あるいはソ連日本攻撃するというようなことがあった場合に、これは横須賀、佐世保というトマホークを積載した原潜がいる場所よりも、むしろ今言った上瀬谷とか依佐美とか、それからオメガの基地のあります対馬とか、それから横田とか、そういう中枢機能を持っているところが一番攻撃対象になり得るという状況軍事実態からとらえた場合の分析であろうし、結論になろうかと思います。
  25. 柳澤錬造

    ○小委員外委員(柳澤錬造君) 時間がございませんから、簡潔にお聞きして、また簡潔なお答えをいただきたいと思います。  両先生に同じようなことをお聞きするのですが、お話を聞いておりまして、日米安保条約はもう必要ないのだ、ああいうものは破棄した方がよろしいという御意見のようにお聞きしたのですが、そうすると、日本はいかなる同盟にも、グループにも加わらないで、自主自立でもって生きていけという御見解なのかというのが第一問です。  それから二番目には、核は持つべきでない、これは私も賛成なのですが、ただ現実の問題として今の世界を眺めておって、核のあるヨーロッパでは戦争が起きていない。核のないというか、アジアから中近東、いわゆる発展途上国というか、後進国のこういうところが通常兵器で戦後の四十年間、どこかで戦争が行われているという、この辺をどういうふうに解釈したらよろしいかということです。  それから三点目には、何としても平和でありたいのですが、日本だけの平和というものはあり得ないのであって、これは平和を築くにはいわゆる世界平和を達成して、その中で日本の平和ということを築かなきゃいけないのです。なかなか世界平和というのは大変なことですけれども、こういう方法をとったらそこに到達する方法というか、手段があるのではないか、そのような点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  26. 佐藤昌一郎

    参考人佐藤昌一郎君) 第一の点でありますけれども、安保条約を廃棄する必要性は私はもう第一優先順位で考えているわけですが、その場合に諸国間の協力関係だとか経済関係だとか、そういうものを全部切り離せという意味では全くなくて、軍事的な同盟関係をなくせというふうに言っているわけであります。それで、この軍事ブロックが、いわば先ほど山川先生も触れられましたけれども、今の軍事的な対決の大きな障害になっている。だからこれをなくしていけということであって、自主自立というのは一切協力関係日本が孤立的な状況になれなどというふうに考えているのでは全くありません。  それから、核のあるところでは例えば戦争が起きていない、むしろ核がないところで戦争が起きている、これについてはどう考えるかということでありますけれども、個々の戦争というのはいろいろな理由があるわけですね。したがって、今の、核があるからヨーロッパでは戦争が起きていないというのは短絡でありまして、例えばイラン・イラク戦争でもやっぱり領土問題が根っこにあるし、その他の問題も絡んでいるわけです。それで、こういう国に、武器を大量に生産している国が兵器の売り込みをどんどんやって、むしろ紛争をあおっているという、そういう実態ももう一つ問題としてあるということをつかんでおく必要があるのじゃないかと思うのです。  それから、もちろん日本だけの平和というのを抽象的にも具体的にも考えることはできないのだ、他国との相互関係があることは事実であります。それで、そういう場合に、だから日本政府としてどういう態度をとるべきかという問題に関して言えば、軍事的な対立をあおるような政策は絶対とらない。むしろ話し合いを軸に核廃絶は当然のこと、その紛争を武力で解決しないような、そういう力を日本政府のイニシアで各国に訴えていく、そういう姿勢がやっぱり基本的な問題じゃないかと思うのです。  こうやればすぐこうなるというような特効薬は、残念ながら簡単には出てこないと思いますけれども、そういう積み重ねの中でのみ、その平和は維持できるし、さらに紛争をなくしていくことができるのじゃないでしょうか。それには当然摩擦あるいは武力対決に至る理由が一体何か、そのプロセスは一体どうなのか、周辺諸国も含めて協力体制を強固に、つまり平和のための協力体制を強固につくっていくという方向以外にはないのじゃないかというふうに私は考えております。当然、軍事ブロックをなくすというのは、先ほど申し上げたように当然の前提になってまいりますけれども。
  27. 山川暁夫

    参考人山川暁夫君) 評論家風の観念論だというふうに御批判を招くだろうと思いますが、やはり自立し、自主的な方向をとるという以外にはないと思います。それが一番正しい道であろうと思います。  今の安保のもとで、これはこういうふうにお見せしてよろしいのかどうかわかりませんが、これは二月の沖縄タイムス、琉球新報のヘッドラインを並べてきただけのことでありますけれども、ちょっと東京あたりでの実感ではわからないほどアメリカ軍の行動というものが活発になっております。  それから、これも御存じの方もおありだと思いますが、今フィリピンにおりましたアメリカの空軍が、わかりやすく言えば嘉手納に引っ越し始めているのですね。それはフィリピンの今マルコス政権のもとで起こってきている危機状況がありまして、アメリカ軍がクラーク基地を使えなくなった場合、そのことをもう頭に入れ始めておりますから、嘉手納に置きかえてくるというようなことが起きてきているわけです。  そうなりますと、フィリピンにおいてアメリカが持っていた基地機能みたいなものを日本が今度はさらに追加、受け合うというようなことは、これはフィリピンのみならず、アジア全体の人たちにとって果たして幸せなことなのかどうか、そういうことも考えてみる必要がありましょうし、それからやや断定的に申しますが、アメリカにしてみれば軍事的なアドバイザリー、主敵はソ連であることは明快でありますけれども、しかし、二十一世紀に向かって経済的アドバイザリーは明らかに日本だと思いますね。  そういう位置づけで今アメリカの行動は組まれているのでありますから、それを本当に自主的、自立的な立場から正しい対応をしていく。そういうことがなされなければならないのに、安保があるから安保があるからということで、全部そこを頭をたたかれてしまう、方向づけられてしまうというのは、本当の意味日本の人々の望ましい選択にはならないだろうということであります。  それから、核があるところでは戦争が起きていないというのは、実態的にそういうふうに整理できるかもしれませんが、それは核があるから起きていないのだというふうには結論は簡単には出ない。これはもう佐藤先生と同じでありまして、とてもとても、いわゆる資本主義、西側の国々の比較的な大国同士が戦争し合っていくような余裕はなくなったということですね。そんなことをやっていたら、国内からも反撃されるであろうし、第三世界の力というのがどんどん強くなっておる、そういう中で西側世界のトップのところが相戦っておるなどということになれば、それはかえって危機的状況になる。そのくらいのことは当然選択としてはとらえられることでありましょうし、それからいわゆる多国籍企業の影響というものが非常に大きくなっておりますから、国境を越えて資本のインテグレートというのが進んでいるわけでございますね。  今度の電電問題でも、IBM、三菱、それからATT、三井という形でのインパクトがいわば電電問題の枠を突き破ったというふうに言えるわけでありまして、そういった国家の枠を超えた資本のインテグレートが進んでいる。その中で、問題があるから戦争をするのだというふうにはならない。そういう世界になってきているので、決して、核があるからだから戦争が起きていないのだというふうには言えないと思います。  最後の御質問については、私、最初の発言のときに、今ぜひお考え願えないだろうかということについて二、三提言をいたしましたので、それをもって御質問に対するお答えにしたいと思います。
  28. 秦豊

    ○秦豊君 きょうはどうも御苦労さまです。私は秦ですけれども、政党に関係のない無所属という存在です。  さっきからお二人の御意見を拝聴しておりまして、私の日ごろから持っている安全保障に対する切り口、あるいはアングルというか、と、かなり相似するというか、したがっていわゆるお二人が述べられたことについて質問をするというよりは、ちょっと私自身の意見にお二人がどうお答えになるか、そういうふうな観点にしたいと思います。  実は、沖縄返還の特別協定の委員会、あの当時の議事録からフォローアップしたのですけれども、あのときの担当総理は佐藤榮作氏、外務大臣福田赳夫氏。野党議員との長い応酬の中で明確に議事録にとどめられていますのは、むしろあのときの政治のトップは、沖縄の核抜きというのはソフト、ハードを含めたシステムである、つまり全体である、したがって通信システムを含めたものが撤去されて初めてそれを核抜きと認識すると、明確な答弁が残されています。ところが、今国会衆議院階段の野党との応酬の中で中曽根氏が残した発言は、通信システムは日本に存在するかもしれない、それもかなり多数、しかしそれは、存在しているということと非核原則との相克関係はない、むしろ全体として見た場合には、それは有効な抑止機能の一環を形成するという答弁に変わっています。  私は、去る四月五日の参議院予算委員会の締めくくり総括で、わずか十分しかなかったから詰め切りませんでしたけれども、その二つの議事録を対比して追及したところ、中曽根氏から返ってきた答弁というのは、それはダイメミミションの違いでしょうと。オーストラリア的な発音ですから、ディメンションだと思いますがね。本来ならばそのことが政府見解の重大な変更につながるという追及の導火線になったかもしれませんが、時間との制約でそれは留保しています。留保というか詰め切りませんでしたけれども、今後長い論争の中で明らかにしていきたいと思う。つまり、C3Iという話がさっきから随分出ているわけですが、中曽根路線の中では明らかにそれはもう評価と。この重大な転換に対して佐藤参考人山川参考人はまずどう思われますか。
  29. 佐藤昌一郎

    参考人佐藤昌一郎君) 沖縄協定の場合にそういうふうに明言したということが事実であれば、それは解釈としても正当な理解であって、核兵器というのは先ほども言いましたように一つのシステムでありますから、立体的にやっぱりとらえていくというのが正しい理解の仕方だろうと思うのです。それを否定するというのは明らかに見解の変更であり、現状追認のためにつくり出した論理ではないかと思われます。むしろそこが非核原則を有名無実化していくための一つの突破口になりかねない非常に危険な見解だと私は思います。
  30. 山川暁夫

    参考人山川暁夫君) 全く同じでございまして、つけ加えることはありません。  核戦力というのは、弾頭だけをここに持ってまいりまして、これは核兵器であるかないかという論争をやりましたら大変果てしないスコラ論議になりまして、ここに弾頭がある限りはたたいても燃やしても爆発はしないのでありまして、それはミサイルに載せて飛ばさなければなりませんし、指揮系統が必要でありますし通信系統が必要である、あるいは核を保管し動かしていく要員の配置といったものも必要です。そういうシステムとしてあるとおっしゃいましたが、そのとおりであります。だから、トマホークの配備というような問題も、日本の中におけるさまざまな通信基地その他の機能変化として、あるいは役割変化として姿をあらわしてくるわけですね。しかしそれは、痛いのかゆいのという問題がすぐ出てくるわけではないところに事柄がすっきり見えてこないということがあるわけですけれども、明らかに、個別の事例は省きまして、日本全土の基地はまたがってそういう変化が昨年以来起きております。そういうことがあるからこそ、その発言現実に沿いながら中曽根首相のもとで変えられてきているというふうに思います。  もう一つは、先ほど申しました日米共同作戦計画書はつくられておる、その中身は言えないけれども、それに見合う発言がある意味ではかなり系統的に積み上げられているのではないかというふうに私は思わざるを得ません。非核原則というのは、もともと私の理解では非核原則だけが日本政府の核政策でないというのは、これは佐藤首相の段階で明確はされたことでありまして、第一がアメリカの核抑止力依存であります。これが第一、よってもって第二に非核原則、三番目に核軍縮、四番目に核の平和利用、この四本を合わせて日本政府の核政策とする、核四政策と当時言われましたけれども。非核原則だけが抜き身であるわけではないわけでありまして、実態的には非核原則は残念ながらもうじゅうりんされている、それはアメリカ軍の基地におけるいろいろな動き、資料というものを集めてみれば認めざるを得ないことでありまして、秦先生のおっしゃったことは沖縄返還のときとの違いという意味で重要であると同時に、今後の新しい原則に移行するためのさまざまな手だてを中曽根内閣が明らかにし始めているという点で重要ではないかと考えています。
  31. 秦豊

    ○秦豊君 まだ時間が残されておりますけれども、私、今度の経済摩擦を凝視しているわけです。今は四分野を中心にした日本政府なりのベストのアクションプログラムは七月ですけれども、裏づけ、実効、どれくらいどう効果があらわれるかは、確かにアメリカ議会を含めてややヒステリカルな反応は鎮静化されつつあるが、いつ再燃しないとも限らない。ところがこれをサイクルで眺めると、今は貿易は貿易だとなっていますね。ところがこれはやがてことしの秋ぐらいから、例えばアメリカの中間選挙を目指したさまざまな選挙区に密着した動きが始まる中で、貿易と防衛のリンクがまた私は新たな位相で展開されるのではないか。例えばその一番前哨になるのは、私の認識ではハワイの今夏開催される日米防衛外交当局による定期協議ですね。いわゆる事務レベル協議。私はこの最大の焦点はやはりシーレーン防空への強力な要請だろうと思うのです。ところが我が国には手だてがないわけです。  ならばというので浮上してくるであろうという私の推測は、例えば空中給油機の導入、それからAEGIS艦の導入、どんがら、つまり艦隊は石川島播磨でもどこでもいいが日本がつくって、上に搭載するいわゆるAEGISシステムそのものは恐らく金額で一千億を超えると言われているが、それはアメリカから導入する、個艦防空から艦隊防空つまりシーレーン防空だと、CAP態勢などは空中給油機の導入で補いなさい、それはあなた方の仕事だというアプローチがもう猛烈になってくるのがことしの夏ぐらいからではないか。それが五九中業にどう反映されるかそれはまだわかりません、しかし方向はそうじゃないか。だから貿易と防衛のリンクが新たに強化されるのではないかという見方に対して、お二人のお考えを伺っておいて終わりたいと思います。
  32. 佐藤昌一郎

    参考人佐藤昌一郎君) これまで貿易摩擦との関連で、軍事力強化しないと貿易摩擦が激しくなってアメリカの言い分を抑えることができないというふうな趣旨のことが何回か言われてきておりました。しかし実態は全くそうではなくて、軍事力強化する口実にいわば貿易摩擦が利用されてきたという側面がある。軍事力強化してアメリカからいろいろな武器を買ってもアメリカは決して満足はしない、したがって、貿易摩擦というのはここずっと繊維工業から始まって繰り返し起きてきているというのが現実であります。  それで、今度の日米諮問委員会でも、完成兵器をアメリカから買えという形で提起をしている。したがって、秦先生のおっしゃるような危惧が十分私はあり得るというふうに思っております。
  33. 山川暁夫

    参考人山川暁夫君) 日米経済摩擦というのはアメリカ国内事情、それから選挙区の声に倍加されて出てくるというような側面がありますけれども、しかし、今起こっておりますのは自動車だとか家庭電器のレベルのところではないか。昔はそこのところで繊維の問題とかいう形で日米矛盾があったわけです。  八〇年代に入って、私の理解では日本の産業構造の重点、戦略産業は、第一は航空宇宙産業、これはロケットを含みます。二番目に原子力産業、三番目にエレクトロニクス、コンピューター、情報関係産業、それから四番目にバイオテクノロジー、遺伝子工学関係、ここに集中されていると思います。この四つは今日の軍需産業の実は主力でありまして、大砲と戦車の時代ではない、ミサイルとコンピューターの戦争時代の軍需産業というのは今私が申し上げた部門に帰します。そしてこの部門こそが実はアメリカが相対的に強いわけでありまして、その牙城に日本が迫り出しておるというところから生まれてきているのが今日の日米経済摩擦だ。だから自動車の問題でも、中曽根首相の対応は全くアメリカの動きを読み取れなかったということからくる問題であろうと私は思います。  ということは、つまり日米経済摩擦で起こっているそのこと自身が、ハイテクノロジーを中心とした今日の軍事的な対立、そして日本がそこに屈服をしていくことによってアメリカの中に統合させられていくという中身を含んでいるわけでございますから、来年八六年中間選挙があるということともあわせまして、先生のおっしゃるような軍事と経済の問題のリンケージというのはますます強まるし、それは単にキッシンジャー段階のリンケージというようなことと違った意味合いを持ってくるであろうと思います。
  34. 秦豊

    ○秦豊君 どうもありがとうございました。
  35. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) 以上で質疑は終わりました。  両参考人に御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、まことにお忙しい中を本小委員会に御出席を願い、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとう存じました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の本小委員会調査参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午前の調査はこの程度にとどめ、午後一時再開することといたし、休憩いたします。    午後零時一分休憩      ─────・─────    午後一時六分開会
  36. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査特別委員会安全保障問題小委員会を再開いたします。  安全保障問題に関する調査のうち、日米安全保障体制現状問題点に関する件を議題とし、日米安全保障体制現状問題点について参考人から意見を聴取いたします。  参考人は、前統合幕僚会議議長村井澄夫君、元海上幕僚長大賀良平君、青山学院大学教授伊藤憲一君、筑波大学助教授進藤榮一君から意見を聴取いたします。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、まことに御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、日米安全保障体制現状問題点につきまして忌憚のない御意見を拝聴いたし、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  これより参考人方々に御意見をお述べ願うのでございますが、議事の進め方といたしまして、まず最初に参考人方々から御意見をお述べいただき、その後小委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、最初に村井参考人にお願いいたします。
  37. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) 村井でございます。  最初に、日米安全保障体制の意義と私の立場ということで冒頭に申し上げたいと思いますが、世界軍事情勢は、米ソそれぞれを中心とする東西両陣営の軍事的対峙を基本的な枠組みとしながらも、その間にあって中東とかあるいは東南アジア、遠くは中米等の地域においては依然として武力紛争が継続するなど、厳しくかつ複雑、流動的なものがあるというふうに思います。また、我が国周辺の地域を考えましても、極東ソ連軍の著しい増強と、これに伴う行動の活発化によりまして我が国に対する潜在的脅威も増大しつつあるものと考えております。  このような情勢の中で、我が国の平和と独立を守り、今のごとき繁栄を維持するというためには、日米安全保障体制を基盤といたしまして総合的に安全保障政策を推進していただくということが必要なことは申すまでもないと思いますけれども、軍事的側面におきましても、日米安全保障条約に基づく防衛協力体制を整備していくことが必要であると考えるものであります。すなわち我が国が基本的な防衛政策の中でみずから適切な防衛力を整備するとともに、日米の共同対処行動を円滑に実施するために必要な研究、協議あるいは訓練、演習等を行って、より円滑にして効果的な自衛隊と米軍との協力体制を追求していくということは、我が国が効率的な防衛力を整備するという観点からも重要であると考えます。  以上のような視点に立ちまして、制服のOBといたしましてごく絞った形で日米防衛協力に限定をし、その現状問題点につきまして、主として自衛隊関連する分野について申し述べたいと思います。  次が、日米防衛協力現状問題点でございますが、今から申し述べます主要な事項は、日米共同作戦計画を主体とする研究、実施の状況あるいは日米共同訓練の現状と将来の努力方向及び米軍が最も関心を有し早急に解決をお願いする事項等でございます。  その第一は、日米防衛協力のための指針に基づく研究でございます。  これは御案内のとおり、五十三年十一月に示されました日米防衛協力のための指針に基づきまして、日米共同作戦計画の研究及びその他の研究が実施されておるところでございますが、その一部につきましては研究成果をまとめる段階に至っておりますものの、その他の大部分のものはいずれも鋭意研究途上であるということであります。また、ようやくその研究の緒についたというものもある状況にございます。その第一が、日米共同作戦計画の研究でございます。  本研究は、この種研究の中で最優先して進められてまいってきたものでございますけれども、昨年末、その成果をまとめ、計画案として統合幕僚会議議長と在日米軍司令官の間に署名を交換するに至ったものと聞いております。もちろん、本計画案はこれをもって完成したというものではございませんで、引き続き情勢の変化に応ずる見直しやその他の研究の成果を取り入れて補備していく性質のものでございますけれども、有事における日米共同対処行動をより具体化しより円滑にする上で、そのよりどころ、準拠となるものでございますので、計画案として誕生した意義は大きいものと考えております。しかしながら、後方支援の具体化という点につきまして、非常に不十分であるというふうに考えているのでございます。  申すまでもないことでございますが、作戦にマッチした後方支援の必要性につきましては、今さら申すまでもないことでございますけれども、これを極力具体化するということが、いざというときに戦力を発揮する上において非常に大事なことでございます。すなわち、この日米防衛協力のための指針には次のように示しているわけでございます。「自衛隊及び米軍は、日米両国間の関係取極に従い、効率的かつ適切な後方支援活動を緊密に協力して実施する。」ことと、特に「それぞれの能力不足を軽減するよう、相互支援活動を」「実施する」よう示されておるのでございますが、後方支援に関する研究の進みぐあいから、まだその成果を具体的に取り入れて掲上するまでに至っておらない、したがって、その具体化がおくれているものと理解をしておるところでございます。  次に、シーレーン防衛の研究でございます。  これは作戦計画の一環として実施されておるのでございますが、五十六年三月、第九回の防衛協力小委員会におきまして研究の基本的枠組みを確認の上、研究を開始したものでございます。シーレーン防衛のための日米共同対処をいかに効果的に行うかを研究するものでございますが、相当の進展を見ていますものの、その細部については、私、離れてから日がございますので承知をいたしておりません。  次いで、その他の研究でございます。  日米間の調整機関のあり方をどうするとか、あるいは情報交換に関するあり方をどうするとか、先ほど述べました後方支援のあり方についてもその研究の中に入っております。また、指揮、連絡等をどうするというような、いわゆる作戦実施上の共通事項につきましてそれぞれ研究が進められているところでございます。ただ、その成果につきましては、まだ研究段階ということで触れるわけにはまいらないわけでございます。  次が、相互運用性の研究でございます。  米軍との相互運用性を向上することは、共同対処を円滑にし、かつ効果的に行うために極めて大事なことだと考えております。これはただいま申した研究個々のものについては当然こういう観点から進められておるわけでございましたが、今回総合的な研究としてようやくその緒についたというふうに承知をしております。  その内容といたしましては、おしなべて言いますと、例えば装備の互換性の問題とか、あるいは運用の共通性の問題とか、通信の統一等作戦の各分野にわたるものでございます。通信の統一を一つ例に挙げましても、これまでは日米双方ともに通信組織の整備をそれぞれの所要に応じて別個に行ってきておりまして、それらの相互連接につきましては特別の考慮を払っていなかったために、日米間の通信の確保に問題を残しております。これに加えまして、著しい技術革新の結果、通信方式が非常に複雑多様化してまいっております。通信系相互の通信連絡すらなかなか困難になるという傾向にございまして、こういう意味からも、通信の統一ということは大変なことではございますけれども、相互運用性の確保というためにおしなべての研究成果が期待されるところでございます。  次は、大きく日米共同訓練のことについて申し述べたいと思います。  自衛隊が米軍と共同訓練を行うことは、自衛隊にとりましては新たな戦術、戦法の導入になりますし、また、練度の向上に資する上で非常に利益があるばかりでなくて、自衛隊と米軍との戦術面における相互理解と意思の疎通を図る上で不可欠のものと考えております。また、私の経験上も相互信頼感の醸成に寄与するところまことに大きいものがあると言えるわけでございます。海上自衛隊におきましては三十年代初頭から、航空自衛隊におきましては五十三年から、陸上自衛隊におきましても遅まきながら五十六年からそれぞれ日米共同訓練を実施しておりますが、五十九年におきましても、陸海空各自衛隊とも指揮機関の訓練を含めましてそれぞれ数回実施されております。次第に充実してまいっておるというふうに認識しておるわけでございます。  ただ、問題点といたしましては、現在まで実施してまいりました日米共同訓練は、陸海空各自衛隊ごとそれぞれ対応する米軍の各軍種間、海上自衛隊は米海軍、航空自衛隊は米空軍というように米軍の各軍種間との相互訓練が主体でございました。現下の作戦様相上、統合運用ということを余儀なくされる場面が非常に多いわけでございますが、そういう観点からしますと不十分であるというそしりを免れないと思うものでございます。そのことにかんがみまして、今後は統合幕僚会議と陸海空各自衛隊、もちろん各幕僚監部を含むわけでございますが、並びに在日米軍司令部と各軍種の司令部等が参加するいわゆる共同の統合訓練ともいうべきものをねらって、そういう訓練をも含めて実施していく必要があろうと考えております。  また、自衛隊自体にとりましても、さらに内局等も参加していただいて統合運用能力の向上を図る努力が一層必要であろうというふうに思います。これがためには努めてあらゆる機会をとらえて、先般完成いたしました中央指揮システム、中央指揮所を中核とする指揮システムを活用いたしまして実質的な統合運用の実績を積み上げていくということが必要であろうと思います。先般防災訓練等にも使用されておるということは、この趣旨に沿うものとして非常に結構なことだと思います。また、当面統合運用に慣熟するという意味におきまして、統合幕僚会議議長の権限というものをフルに活用する場を意識的につくったらどうかというふうは考えるわけであります。その事務局である統合幕僚会議事務局の組織機構というものをそれにふさわしいように強化していく、そうして時代の要請にこたえるということが必要であろうと考えるわけでございます。  次は、有事法制に関する研究の推進ということがこの訓練面からも言えるということを申し上げたいと思います。  現在、あらゆる訓練は現行法令下という枠組みのもとに実施されておるのでございますが、作戦準備や部隊行動の具体化の段階におきまして、手続上事態の推移に対応できかねる場合も少なくございません。また、住民の保護とか避難誘導というような問題、あるいは民間の船舶、航空機の航行の安全を確保する等の国民の生命、財産の保護に直接関係をしてくるという場面、また、しかもそれが自衛隊の行動にも大きく影響するというような事項等につきましては、一般傾向としてこれを避けて通るといいますか、法的にまた部内的な研究も詰まっていないためにその問題はできたものとするというような形で、避けて通るというふうに指導上実施するわけでございますが、そういうことのために本当は部隊行動をいかに阻害することを少なくして行動を進めるか、こういうような勉強が不足をしがちでございます。  そのようなことがこのような訓練に対する法的な壁といいますか、言葉をかえて言いますと、自分のあるいは自衛隊のやることではない、そういうような感じで、また、言うなれば逃げるといいますか、人任せにするという傾向を醸し出してくるということも否定できないところでございます。したがいまして、有事法制の研究に対する御指導を重ねてお願い申し上げる次第でございます。このことはまた、日米共同作戦における米軍の行動につきましても法制上の問題を研究していかなきゃならぬというふうに思うわけでございます。  次は、非常に関心のある事項でお願いをすることを申し上げたいと思いますが、空母艦載機の夜間着陸訓練場の確保という問題でございます。  いわゆるNLPの問題ということで、御案内のところで現に大変御努力をいただいておるところでございますけれども、この問題は単にパイロットの技能向上、維持向上という訓練本来の目的もさることながら、日米安全保障体制の信頼性の維持強化という面からも大いに重視していかなければならない問題であるというふうに考えておるわけでございます。  横須賀を母港とする空母ミッドウェーは、年間を通じまして大変驚くほど長い期間にわたり洋上展開をいたしておると聞いておりますけれども、わずかに横須賀に在泊いたします間におきましても、経験の少ないパイロットはもちろんのことでございますが、経験豊富なパイロットといえども練度維持のためこの種訓練を受けております。そうして、訓練をしないということが直ちに練度の低下につながる、それはまた着艦事故等を誘発し死亡事故にもつながるということでございまして、ゆるがせにできない問題であるというふうに思うわけでございます。また、軍人の名誉という観点から申しますならば、一定のレベルに達しない者につきましては乗せてもらえないということも聞いておるわけでございまして、同じように制服の一員として生活をいたしました立場上、よくその辺の気持ちがわかるわけでございまして、重ねて格段の御指導をお願いする、こういうことでございます。  若干時間がございますのでもう一つお願いをいたしますが、先ほどの作戦計画に関連する後方支援の問題の具体化について申し上げましたが、こういうようなことはすべて米軍の来援、助けに来る、来援基盤をつくるということに直結する話でございました。その来援基盤の主体をなすものは後方支援である、こういう観点でございます。ただ単に米軍に対する整備、補給等の支援のみならず基地、駐屯地等の共同使用の問題とか、あるいは飛行場、港湾の使用と広範囲に及ぶものでございますが、研究の進展が待たれるところでございます。  特にここで申し述べたいことは、NATO正面等におきましてはいわゆる展開部隊の重装備を事前に配置をしておくというようなことがございまして、言うなれば身軽にやっていける、やってこれる、こういう体制ができているのに反しまして、日本につきましてはこれが計画されておりませんし、大部分の資材は米本土から直接輸送してこなきゃならぬ、こういうことでその適否が直ちに戦力発揮に結びつくということでございます。したがいまして、我が国が実施する米軍に対する整備、補給等の支援というものはNATO以上に格別の意味を持っておるというふうに思う次第でございまして、米軍の来援基盤、来援に来やすい姿をつくるという上におきましてもゆるがせにできない問題であるというふうに考えている次第でございます。  以上、日米防衛協力の主要なものに絞りまして申し上げた次第でございますが、より円滑、効果的な運用と信頼性の維持強化という観点から、今後とも政治の絶大なる御指導をお願いするところでございます。  以上、意見開陳を終わります。
  38. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ありがとうございました。  次に、大賀参考人にお願いいたします。
  39. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) 大賀でございます。  今村井参考人から大変詳しい御説明ございました。私、自衛隊をやめまして五年余りになりまして、また、やめましてから格別こういう防衛問題を研究しているわけでもございません。自衛隊のOBでございますから、何がしかでも自衛隊のことで国民の皆様に御理解いただけばと、そういう程度のことはところどころで話しております。したがいまして、私が申し上げるようなことは新聞で読んだり、そういうことだけでございまして、今村井さんがおっしゃったことが自衛隊に関することではすべて尽きているのではないかと思います。そうでございますが、せっかくの機会でございますので、私が自衛隊におりました時代から経験的にこの日米安保体制というものを申し述べてみたいと思います。  私は、個人的なことで恐縮でございますが、海軍から終戦後、復員輸送をやったり掃海をやったり、あるいは朝鮮戦争のときには掃海に行ったり、そのまま二十七年自衛隊が発足しましてからずっと自衛隊におりまして、去る五十五年退職いたしました。その間、占領軍時代の米軍あるいは発足当時の日米関係というものをずっと眺めてまいっておるわけでございますが、経験的に申しましてこの日米安保体制の中の自衛隊と申しますのは、私の経験では、海上自衛隊の場合、二十七年の八月に保安庁あるいは海上警備隊として発足するわけでございますが、当時アメリカからPF、フリゲート艦二十隻、それから上陸支援艦五十隻の貸与を受けて発足します。  日米安保体制というものがあって、そして自衛隊アメリカと一緒になって日本の国を守るのだということは感覚的には我々も当然わかっておりましたけれども、その実態はとてもそんなものでなくて、すべて私はそれから二十年、三十年、全くアメリカ任せであったというふうに認識しております。我々は何をやったか。一生懸命いつの日かはとにかくアメリカと一緒になって日本が守れるようになるだろうというようなことを願い、そして船の操船とか訓練とかそういうものに励み、あるいは自分の持つ自衛力を一生懸命建設してきたというのが私の実感でございまして、当時の昭和三十年代、四十年代のアメリカというのは大変物わかりのいい教官で、また物わかりのいいスポンサーだったという感じがしております。  一次防から四次防まで自衛隊はいろいろと防衛力の整備ということを努めてまいるわけでございますが、その間、自衛隊が実際にアメリカとどうやって日本を守るかというようなことは話し合いも具体的なものは何もなかったというふうに私は理解しております。そういう問題が多少変わってまいりましたのが——その間いろいろな特別訓練は、先ほど村井参考人がお話しになったように海上自衛隊では早くから始めております。しかし、それはあくまで船の操船あるいは新しい対潜戦術はどうなのか、そういうことの戦術的なもの、あるいは船を扱ったり、新しい洋上給油のやり方をやる、極めて技術的なあるいは部分的な戦術の訓練に終始していたというふうに理解しております。こういう状況が変化が始まったと思いますのは一九七五年、昭和五十年たったと思います。  当時、私は海幕の防衛部長をしておりましたが、この参議院の予算委員会だったと記憶しておりますが、二月か二月の中ごろか当時の上田哲参議院議員、上田先生が、海上自衛隊アメリカの間にシーレーンで密約があるのだというような委員会での御発言がございまして、私、当時の海幕の防衛部長、責任者として大変びっくりした記憶がございます。その間、そのときの委員会でいろいろと長いやりとりがあって、私も大変関心深くテレビなど毎日眺めておったわけでございますが、それが結果的にはとにかく昭和五十年の八月、坂田・シュレジンジャー会談によって日米防衛協力のあり方を研究するために防衛委員会を置こうというようなふうになってまいりまして、これは大変な私は当時進歩であったなと思ったわけでございます。小委員会が五十一年に置かれまして、それから研究が始まりますが、大体五十三年の十一月にガイドラインが決まります。そのガイドラインに従いまして、詳しく村井参考人からお話しのあったような研究に入っていきまして、もう当時私は、私やめたのが五十五年でございますから、その後の経過はよく存じません。今おっしゃったとおりだと思います。  よく言われるのでございますが、私も現役のときによくクラブの新聞記者なんか来て、三自衛隊防衛の戦略構想がばらばらだ、よくそういうことを言われました。私はこれに関してこう申し上げたのです。今申し上げましたように我々の自衛隊は、陸上自衛隊も海上自衛隊も航空自衛隊も、それはそれなりに基本的な力を建設する段階にある、肝心なアメリカ日本防衛との間には何も研究がない。御承知のように航空自衛隊は防空軍、空軍でいえば空軍の中の一コンポーネント、海上自衛隊は言うならばASW軍、とにかく対潜一本で、装備もそういうものしかいただいていない。陸上自衛隊は比較的ワイドではございますが、非常に広くて浅い、薄い。こういう三自衛隊が一生懸命これをひねくり回しましても、なかなか日本をそれだけで守る防衛力になり切れません。それは言われておりますように自衛隊が盾でアメリカが矛、その二つが完全に整合されて初めて日本防衛力になり得るのだ。その中の三つのコンポーネントだけ取り上げまして幾らこね回してみましても、日本防衛力にはなり得なかったと私は当時を思うわけでございます。  そういう意味におきまして、これからの今村井参考人からお話がありましたような研究というのは大変重要なことであったろうと思います。本当に日米安保体制の中で日本自衛隊日本防衛をきちんとしていくというのはこれからの問題であろう、そういうふうに思っております。  今詳しいお話がありまして、これは日本のいわゆるエマージェンシーにおける共同対処をテーマとした勉強でございますが、今もお話があったように、例えばNATOだとかあるいは米韓のコンティンジェンシープランというように計画ではございません。計画でないということは、ガイドラインにも示されておるように、日本国内の問題のいろいろな制約がございます。そういうものは立法的なあるいは予算的な措置はやらないのだというようなことになっておるわけでございます。したがいまして、これからは、今も村井参考人からお話がありましたように、こういう研究をよりデベロップさしていきながら計画に近いものに持っていく。これはいろいろな国内法上の制約がございますが、そういうものの制約をのかなければ不可能と思いますけれども、そういうことがこれからの一番大事なテーマであろうかと思います。  それからもう一つ、今も共同訓練のお話がありましたけれども、私どもが前に申しましたように、その前にやっていた共同訓練は一つの部分的な非常にコンポーネントな、タクティカルな訓練でございました。こういう研究、新しい今詳しくお話があったような共同訓練というものを通じて日本防衛をどうやっていくかというのはぜひ大事な訓練であろうと思います。私がやめます前ごろから海上自衛隊としてはリムパックの参加という問題がございまして、最初のリムパックは五十五年の春に参加したと思います。ちょうど私がやめたころ部隊が出ていきまして、そしてハワイで訓練をして帰ってきた、それが第一回目でございます。  私ども当時、このリムパックの参加をお願いした最大の理由は、日本の周りでたくさん、先ほど申し上げました、何回か回数としては大変数多い訓練を、特別訓練と自衛隊で呼んでおりましたが、共同訓練をやってまいりました。それは本当に小さい部隊同士の戦術、しかも部分的な戦術訓練というものに終始しておりました。私どもは、大規模な部隊の運用、例えば空母機動部隊を含んだような部隊の運用が一体どんなものなのか、ぜひこういうものを我々も認識として勉強しておかなきゃいかぬ、書物の上でいろいろなことを読んだりいたしますけれども、実態はどうなのか、そういうことを勉強さしていただくということが最大のねらいでございましたし、またお願いした理由でもございました。  それとても、そういう大きな訓練、部隊訓練ございましたけれども、それは訓練のシナリオはあったとしても、一つのモデルケースの勉強であったと思います。これから私、村井参考人がおっしゃったような日本防衛というものをはっきり認識して、どういうふうに訓練をやっていくかということが、今、防衛研究の中身を審査し、あるいは発展する上でも大変重要なことじゃないかというふうに思います。そういう問題はこれからの問題ではないかと私は認識しております。これが私の経験的に、あるいは現状認識、その程度のものでございますが、問題点といたしましていろいろあります。  日米安保体制になって三十年。よく法制的に安保条約の片務性だとか、あるいは部隊の運用についての集団的自衛権がどうあるべきだとか、あるいは非核原則だとか、いろいろ研究されるべきことは将来に向かって少なくないと思います。ただ、私がいつも思いますのは、基本的には安全保障条約は、この条約にもうたわれていますように民主主義の原則、それから日米間の経済協力とか非常に広い範囲にわたって安全保障の基本となるべき社会体制、自由民主主義の社会を維持し、発展させるという共有の価値感、理念というものがあるわけでございます。この安保条約を将来にわたっていかに維持し、発展していくかということは、私は日米相互の国民あるいは国家が大切に育てていかなきゃいけないと思います。  いかに条約がありましても、御承知のように米ソ間の友好同盟条約、そういう条約があっても、一たび国家の利害なり共通の理念というものが失われますと、それは全く条文はあっても死文であり、凍結されていくわけでございます。そういう意味で、基本的にはそういった安全保障条約の基本となる共有の価値感なり理念というものをお互いに大切にして、信頼感を持って育てていくということであろうかと思います。大変今経済問題でごたごたしておりますが、防衛と経済というものは決して直接的にリンクされているものでは私もないと思います。しかし、そういった共有の価値感を持つという中で、国益の調整というものは当然あってしかるべきだ。そういう意味では、防衛という問題はこれからもっとしっかり考えていかなきゃならない。要するに一番大事なのはやっぱり、日本日本の国を自分から守るということをはっきり認識することだと思います。  前に申し上げましたような国会での先生方のいろいろな議論の中で、私ども外野から見ておりますと、どうなのだろうかというような、いろいろなお立場があるからかもしれませんが、そういった物の解釈なり観念というものは必ずしもこういった基本的な理念に立っての信頼感を醸成するのにはいかがかと思われるようなことが、私の立場ではそういうふうに思われるものが数少なくございません。そういう意味で、これからの日米関係は、安保条約の信頼を高める上には、先ほど申された防衛の問題でも大変見直しを進めていくことがたくさんあると思います。  よく新聞なんか読みますと、前の太平洋軍司令官のロングが議会で、日本の後方支援体制にいろいろな欠陥があるということを証言したとよく新聞を見ます。まことにそれは、そういう欠陥があることは私は間違いないと思います。しかし、それはそれ以上に突き詰めて言えば、日本の国家の体制がそういう情勢になっていないということな言っているのじゃないか。ただ、そういうことを申し上げることは、これは内政干渉の部類に入りますので、彼らはよく知っております。せめて弾が足りないのだとか程度のいろいろなことを言ってとどめておると思いますが、実際は日本の国としての諸体制というものに不備、欠陥があるというようなことを彼らは言っているのじゃないかと思います。特に先般の相互信頼を損うようなことで、対米武器技術の供与なんかの解釈などというものは、幸いにいい方向に収拾されましたけれども、同じ安保条約でお互いに守っていこうというときに大変相手の意を損う、逆なでするような事件であったのではないかと思います。  それからもう一つ、今村井参考人から日米間の自衛隊のいろいろな問題の研究のぐあいは御説明を受けたわけでございますが、さらにこの六条にかかわる問題、これも十分御勉強を進めていくことが必要じゃないか、そういうふうに私は理解しております。あるいは進んでおるかもしれません。六条、特に韓国条項についての——私、前に申し上げましたように、朝鮮戦争のときに参りました。その当時佐世保におりましたし、また、私みずから朝鮮の沿岸に掃海に参りまして見ておりまして、全くこれは日本がなくしては韓国の防衛は成り立たないのだ、また韓国の防衛日本防衛に大変重要な役割を持っているのだということを身にしみて感じました。そういう意味におきましてもこの六条にかかわるような勉強もぜひ、これやるようになっていると聞いておりますが、進めていくことが大事だと思います。  それからエネルギーの問題は、今御指摘のとおりだと思います。この問題も恐らくもう七、八年前、政治マターになってきたのはこの二、三年でございますが、私が海幕長になりましたのが五十二年でございます。それ以前からの話であったような私は気がいたします。なかなか日本のこういう問題が、事務的にあっちへいったりこっちへいったりぐるぐるしていろいろな説明をしたりして日時を過ごしてきた。これなんかも貿易摩擦の話じゃございませんけれども、向こうから見れば、ああだこうだああだこうだ言って七、八年過ぎたというのが実態ではないか、こういうふうに考えます。  それともう一つ、これは私どもがやらなきゃいけないと思いますが、確かに安保体制という中で基地を提供しているという負的な側面というものは大変ございます。また、いろいろなことが強調されます。あるいは最近もちょっと新聞を見ましたら、F16の三沢配備で盛んに、アメリカの戦略に加担するのだとか、あるいはアメリカのP3Cがオホーツク海に行くために、航空優勢を得るためにF16が来たのだとか、いろいろなおもしろい解釈新聞なんかに報道されて、果たしてこれは正しいのだろうか。こういうことはもっと自衛隊としてはっきり御説明したらどうなのだろうか。あるいは去年あたりのトマホークのキャンペーンなんかも相当なもので、相当事実に反するようなことが公然、いかにもまことしやかに言われているというのが私の感じでございますが、こういうことなどももう少し、我々も努力しなきゃいかぬと思いますけれども、大事に国民に説明してやる必要があるのじゃないかと思います。  最後に、日米安保体制の評価の問題。私ども日本立場、外から見た評価についてちょっと触れてみたいと思います。  御承知のように、日本がサンフランシスコ平和条約を持ってそれで独立を回復したときに、その直前にANZUS条約あるいは日比安全保障条約が署名されまして、これはむしろ日本が独立したことに対する懸念をアメリカが抑えるという側面を持った。それが日米安保体制の持つ一つの側面であったと思うのでございます。それからもう一つは、当時から見ますと、日本を守る、日本が本命として日本がみずから守れないのでアメリカに守ってもらうと同時に、当時朝鮮の戦争がまだ戦火がおさまらなかった。先ほど申し上げましたように、朝鮮の平和の維持あるいは朝鮮の防衛のために日本が必要だと、そういう三つの側面を持っておったわけでございます。  こういうことは、今でもよく日本がシーレーン防衛をやったら軍事大国になるなんということが日本新聞にも書かれたり、あるいは東南アジアの国々が言っているという話がございます。私も幾つかのそういった会議にいますと、むしろ日米安保体制の中で日本防衛力を漸増していく、その中でやっていくことは歓迎だ、それなら問題ないのだというような評価、これは東南アジアの国国にはっきりあると思います。だから、日米安保体制というものはそういうふうな側面を外から見た、東南アジアの国々から見た、あるいは中国自身もそう思っているかもしれませんけれども、私が直接議論し、聞いたのは東南アジアの学者先生、あるいは政府の直接の代表じゃございませんが、そういう方々がそういうふうな評価をしているということもつけ加えさせていただきたいと思います。  以上、簡単でございますが、私の申し上げたいことは以上でございます。
  40. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ありがとうございました。  次に、伊藤参考人にお願いいたします。
  41. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) 本日はお招きをいただきましてどうもありがとうございます。  私は青山学院大学で国際政治学を教えて五年になりますが、その前は外務省におりまして、アメリカに計五年間、それからソ連に三年間いたことがございます。そういうようなわけで、米ソ関係を中心として国際政治全般を見るということが私の主たる関心でございまして、そういう関連で我が国の外交問題、安全保障問題についても関心を持っております。ただいま村井参考人、大賀参考人から日米安全保障体制現状問題点について非常に現場のいろいろな問題に密着した御意見が提示されたわけでございますが、私はそういう現場の問題については余り、というよりほとんど詳しくございませんので、そういう問題ではなく、私の問題意識の観点から意見を述べさせてもらいたいと思います。  と申しますのは、日米安全保障体制意味というものが最近、と申しましてもここ十年くらいでそれまでと大きく変わってきているように思うものでございますから、その変化を認識することによって日米安全保障体制意味というものをもう一度確認してみたい、このように考えるわけであります。  日米安全保障条約が締結されてからかなり長い間の世界の情勢というのは、アメリカが圧倒的な超大国としてその同盟国との間に、いわばアメリカを中心として放射状に伸びた同盟関係を締結していた時代でございます。したがいまして、日本としてもただアメリカとの関係を考えて対処すればよいという環境の中での日米安全保障体制であったと思うわけでありますが、これが七〇年代後半に入りまして、その直接のきっかけは、私は七三年の第一次オイルショック以降起こったアメリカの力の急速な低落化、またこれは並行してソ連軍事力の増強ということとも組み合わされているわけであります。特に七三年のオイルショックの翌年からいわゆる西側先進七カ国のサミットというものが発足いたしておるわけで、そのあたりから西側同盟という言葉が使われるようになってきていることに注目する必要があろうかと考えるわけです。そういう中で、日米安保体制につきましてもこれを日米間の場合の問題としてだけではなく、むしろそれ以上に、西側同盟という多極的な構成の同盟の中における日本の位置づけとの関連でとらえ考えていく必要が生じてきているということでございます。  その意味することは、日米安保体制というものが、単に安全保障政策上あるいは日本防衛政策上の意味を有するだけではなくて、日本の国際社会における存立の基盤という意味を持つようになってきているということでございます。そういう観点から以下意見を述べさせていただきたいと思います。  その前に若干一般論を述べさせていただくことによって、その後の議論前提を明らかにしておきたいと思うわけであります。  一般論として平和とか安全というものはどういうふうにして維持されているのであろうか。その条件というものを考えてみますと、必要条件と十分条件というものがあるように思われます。必要条件といたしましては、関係国の間に力の均衡が成立している、バランスが成立しているということであります。しかし、勢力が均衡しているということだけでは永続的な平和というのはなかなか保たれないことは歴史が証明しておるとおりでございまして、両次にわたる世界大戦は勢力均衡が結局は破綻して戦争をもたらしたということを物語っているわけであります。そのことを踏まえて考えるならば、平和と安全の必要条件は、勢力の均衡であるとしても、それだけでは不十分であって、十分条件としては、それに加えて対立する力の間において共通の文化と申しますか、あるいは共通の言葉と申しますか、そういったものの存在することが必要かつ望ましい。そういう共通の文化を素地として、その上に両者が対話の場であるとか対話のルールを持つ場合に平和は永続し得るということを歴史は語っているように思われるわけであります。  戦争の歴史ということで振り返ってみましても、戦争史というものは、制限戦争と無制限戦争の二つの時代を繰り返しているわけですが、無制限戦争の時代というのは、大概の場合において二つの極端に対立し、憎悪し合うイデオロギーの間に、例えばヨーロッパにおける旧教徒と新教徒の間の宗教戦争がその典型でありますし、あるいはフランス革命以後の共和制主義者たちと君主制主義者たちの対立がそうでありますし、ロシア革命以後今日ではかなり風化してきておりますが、続いております自由主義者とこれに対する共産主義者の対立、こういった状況においては共通の言葉というものが失われがちなわけで、戦争の条件がむしろ用意されるというべきであろうかと思います。  これに対して共通の文化があるときには、最も典型的には宗教戦争がおさまった後のヨーロッパというのは王朝文化の時代といわれておりますが、この王朝文化の時代のヨーロッパ、あるいはウィーン体制以後のヨーロッパといったものにおいては、諸国家は共通の文化を土台として対話を持ち、それが勢力均衡を永続させる条件となったわけでございます。  こういったことをとかく述べましたのは、日本をめぐる極東の平和と安全というものを考えてみた場合、極東における必要条件は何であろうかということを考えてみますと、これは勢力均衡の前提条件としての日米安全保障体制ではなかろうかと考えるわけであります。これに対して十分条件は何であろうかと考えると、それと組み合わせになる日本の周到な対ソ外交であろうかと考えます。ただし、現在の世界において重要なことは、極東極東として孤立し、隔離された世界ではなく、それは世界の一部であるということであります。したがいまして、必要条件としては米ソ間のセントラルバランスというものが維持されるということがあって初めて極東の勢力均衡も維持され、その中で果たす日米安全保障体制というものの意味も生きてくるということではないかと思います。また、十分条件ということについて言えば、やはり米ソ間の対話が維持され、特に米ソ間の軍備管理交渉というものが重要であろうかと思いますが、そういった全体的な体系の中で極東においても対立する陣営の間の対話が行われ、対立が緩和されるという状況が必要ではないかと考えるわけであります。  時間の制約がございますので、そのような一般論はこの程度にいたしたいと思いますが、たまたま私が二年ほどかかりまして書きおろしで書いてきました「国家と戦略」という本の中にそれ以上の詳しいことはそれを含めまして書いてございますので、これはたまたま明日発売というタイミングでございますので、持参いたしましたので、資料として一部置いてまいります。  ところで、もう少し今日的な問題に入りたいと思うわけでございますが、実は四月十二、十三、十四とブラッセルにおきまして四極フォーラムという会合がございまして、これは日本、ヨーロッパ、アメリカ、カナダの有識者、経済人、政治家、それから官僚が一堂に会して、サミットの直前に先進七カ国首脳に対するアドバイスを議論するという場であったわけでございますが、そこでの結論ではこういうことが言われました。  それは、現代世界においては経済、技術、政治安全保障、こういったものを相互に切り離すことはもはや不可能になっているということでございます。このことを踏まえて考えますと、日米安保体制から離脱するということは、もはや西側の安全保障から離脱するということを意味するだけではなくて、西側の政治、経済、技術の体制からも離脱するということを意味しているということであります。そのような場合に、日本の安全だけではなく繁栄ということを考えるならば、日本のGNPが例えば半分程度にも減少するというような事態を覚悟しなくては、日米安保体制からの離脱ということは考えられないということではないかと思います。この日本安全保障ということに関連しましては、日米安全保障体制あるいは西側体制から離脱して、つまり西側の一員という立場を放棄して、これを捨てなければソ連との友好関係は難しい、あるいは捨ててソ連との友好関係に配慮をする方が日本安全保障にかなうという考え方があるわけでございますが、この考え方については二つ問題点指摘したいと思います。  その一つは、先ほど申し上げましたように日米安保体制からの離脱というのは、政治、経済、技術のすべてにわたる西側からの離脱意味し、その結果として日本のGNPが半分以下に縮小するというようなことを覚悟しなければならないということでございますが、もう一つは、そのような手段をとったとしても、極東のリージョナルバランスというものはグローバルなセントラルバランスから独立しているものではございませんので、その一部の系である以上、そのような行動を日本がとったとしても日本の単独行動だけでは日本の、極東のバランスも極東の安全も得られないという問題があるのではないかということでございます。  結局、正解といたしましては次のようになるのではないかと考えます。それは、まず西側内部においてその一員として認められることが必要であるということであります。これが必要条件でございます。現在日本と西側同盟内のその他の国、つまりアメリカあるいは西ヨーロッパ諸国との間に起こっている経済摩擦ということを考えますと、そのことはよくわかるのではないかと思います。このたびの四極フォーラムに参加いたしましても、アメリカの代表から、日本はGNPの一%の防衛費しか使わず、その分経済の生産性を上げて我々の市場に商品を売り込んで、三百七十億ドルのアメリカから見れば赤字、日本から見れば黒字をつくっているのである、このように防衛費と経済問題を他の西側諸国はリンクして考えているのが実態でございます。そのような中において、西側内部においてフェアな一員として認められることの重要性というのがいかに重要であるか強調しても強調し足りないことはないのではないかと思います。  しかし、それだけでは日本安全保障政策として十分条件を満たしているとは言えないであろうと思います。十分条件といたしましては、西側の内部の一員として認められつつ、かつその上でソ連との関係をよくすることにも配慮すべきであろうと思います。ただ、その場合は、日本ソ連の二国間の関係をよくするというような発想ではもはや今日の複雑な相互関連した国際社会においては不十分であるということであります。つまり、西側の一員として認められた以上、日本日本をその一員とする西側全体とソ連関係改善に努力しなければならないと考えます。そのような西側全体とソ連との関係改善があって初めてまた日本ソ連との関係の改善も可能になる、そういう現代という国際社会の状況があると考えるわけであります。  以上、非常に一般的に日米安全保障体制の今日的な意味について私見を申し上げましたが、せっかくの機会でございますので、個別的な問題についても三点、手短に私見を述べさしていただきたいと思います。  第一は、日本安全保障政策の基本原則は、憲法第九条の平和主義と日米安保条約の西側同盟主義とでもいいますか、同盟主義でございますが、この二つをどのように両立させていくかということが大切ではないかということでございます。その矛盾を法解釈論の域にとどまる議論としてだけではなくて、日本の安全と繁栄のための戦略論として解決していくことがこれからの課題ではないかと考えます。その最も適例は、例えば非核原則事前協議制の矛盾をどのように解決していくかということでございます。  非核原則の目的は何であろうか、それが宗教的な信仰の対象のようなものであってよいのか。私は、これからますます非核原則というものが日本に定着していくためには、それが日本安全保障政策として意味があるのであるということが国民から理解されていく必要があろうと考えます。それはどういうことかといいますと、例えばノルウェーの例をとりますと、ノルウェーはNATOに加盟いたしておりますが、平時におきましては核の配備を認めていないわけでございます。それはなぜ認めないかというと、核に対する宗教的な信仰からではなく、ノルウェーの安全保障上それが得策であるという安全保障政策の観点からそういう政策がとられているわけでございます。同じように、日本においても、非核原則というものは日本安全保障にかなうのだという観点から非核原則を考えていく必要があろうかと思います。ただし、私の意見では、現状非核原則解釈、つまり持ち込み、イントロダクションの中には、配備だけではなく領海通過、寄港、英語でトランジットと言っておりますが、も含むとの解釈が行われているわけであります。この解釈は私は非核三・五原則と呼んでおります。本来的な非核原則というものは純粋の持ち込み、英語でブリンギング・インと言いますが、であって、それを超える部分はこれは非核原則を超えるものであると考えております。  このような非核三・五原則事前協議制の間に矛盾があるかどうか、日本政府の公式の見解では矛盾はないわけでございますが、私は矛盾があると考えているわけでございます。このような矛盾が特に問題化してくるのは、ソ連が一九七七年以降SS20を極東を含めて全世界展開し始めたわけでございますが、御承知のとおりSS20というのは、非常に的確に目標を攻撃する選択的攻撃能力を持った中距離核ミサイルでございます。これに対抗する場合、これまで日本拡大抑止をアメリカの戦略核に依存してきたわけでございます。果たして今後ともアメリカの戦略核の拡大抑止だけでこのSS20の選択的核攻撃に対抗できるものかということを考えますと、アメリカ側もSS20の選択的核攻撃力に対抗するいわば選択的核抑止力を持つ必要を考えるのは軍事理論的に当然のことでございまして、そのような状況でトマホークの展開ということを私は考えてみているわけでございます。  果たして、日本領海を通過しあるいは寄港する米軍艦がこの核の点についてどういう現状になっており、その点において事前協議制がどうなっているのかというようなことを考えますと、現在は日米間のすれ違いによって解決されているように思われるわけでありますが、ニュージーランドの問題などを考えますと、もしこの現状の三・五原則というものをありのままの三・五原則として実施した場合、問題は生じないのか、そしてその生じた問題というのは日米関係の完全な破綻となってあらわれるのではないか、そのように憂慮するものでありまして、この問題は政治が勇気を持って国民に真実を告げ、現在の三・五原則を本来の三原則に戻すことによって解決することが一番望ましいのではないか、そういう方法によってこそ非核原則それ自体もまた国民のより幅広い信頼と支持を得ることができるのではないか、そのように考えるわけでございます。  あと二点簡単に申し上げますと、一点は、核時代の今日、軍事に対する政治のコントロールの重要性というものはいよいよ増大していると考えますが、そのような観点において、我が国においてもシビリアンコントロールというものに万全を期していく必要はいよいよ重大であろうかと考えます。そういった意味におきまして、防衛庁内部の文官と制服の問題があるわけでございますが、その問題ではなく、今回この場をかりて私が問題としたいのは、外交防衛関係の問題でございます。  満州事変から日中戦争に至る歴史的な経験を踏まえましても、外交防衛問題に対するコントロールというものが国策の基本としていかに重要であるかは指摘するまでもないことかと思います。例えば昨年十二月には、共同作戦計画の研究というものが在日米軍司令官と統幕議長の間に署名されているわけでございますが、こういったような日米制服間の研究というものはもちろん事の性質に応じて必要なわけでございますが、外交の大きなガイドラインの枠内で行われるよう制度的にも十分な配慮をしていくことが必要ではないかと考えます。  最後に、三番目でございますが、先ほど来申し上げましたような政治、経済、技術などとの安全保障問題の相互不可分性の中で、兵器国産主義というものについて柔軟な検討を加える必要があるのではないかということであります。  純軍事的、純安全保障的観点だけに立てば兵器は国産することが望ましいわけでございますが、現在のような対米年間三百七十億ドルというような貿易黒字の時代においては、その黒字減らしとの関連において兵器を輸入するということによって総合的観点から日米関係強化することができれば、それがまた日米安保体制の維持強化につながり、翻って我が国の安全保障力を強化するというシナリオも考えられるわけでありまして、兵器国産主義については柔軟な立場をとってはいかがかと考える次第であります。  どうも長い間失礼しました。
  42. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ありがとうございました。  次に、進藤参考人にお願いいたします。
  43. 進藤榮一

    参考人(進藤榮一君) 進藤でございます。  午前中の御報告が主として安保体制のマイナス面、消極面についての御指摘があったやにお聞きしておりますし、午後の御報告は、どちらかといいますと安保体制の積極面、つまり安保がいかに日本の安全に役立っているかということを当然の前提として御議論なさっているような印象を私は受けたわけであります。  一体日米安保とは何なのかということで、なぜこれほど極端に見解が分かれるのかということを、私は今お話をお伺いしておりまして考えておったのですけれども、おおむね三点ないし四点の点から国際関係を見る見方がそもそも違うのではないか。一体それじゃ三点ないし四点とは何なのかということを簡単に申し述べたいと思います。  第一に、最近核戦略論議が非常に盛んなのですけれども、日本防衛力を増強する根拠として主として言われておりますのは、要するにソ連北海道の北半分を保障占領するというわけですね。なぜ保障占領するのか。つまりこれは、中東で紛争が起きたときソ連中東軍事侵攻する、ソ連はもともと中東の石油が欲しいのだという前提があるわけですけれども、中東軍事侵攻して、そのときに西側の兵力をインド洋から太平洋に割くために逆に北海道に侵攻するとか、あるいは中東における戦略を有利に展開するために、ソ連のSLBMをウラジオから太平洋に進出させることができるために、宗谷のチョークポイントとか津軽のチョークポイントを押さえるために北海道の北半分を、北海道の部分的な保障占領をするという、そういったシナリオを書くわけです。  根底に何があるかということを考えてまいりますと、私はやっぱり一九八五年説に言及せざるを得ないと思うのです。御承知のように、アフガニスタン紛争が一九七九年十二月に起きた後、日本のタカ派の先生方あるいは防衛庁の元高官たちが口をそろえて何を言っていたのかといいますと、一九八五年はソ連世界進攻を開始する年なのだ、そのために日本軍事力を増強しなければいけないのだという、こういった議論があるわけです。これは、しかも着々とソ連の進攻への準備が進められているという議論でございますね。どういう形で進められているのかというと、要するに戦略核バランスにおける対米優位が覆されて、つまり逆に言えばアメリカの対ソ優位が覆されて、先ほどの御報告にもありましたけれども、戦略バランスが崩れたのだ。それをさらに敷衍させて、ソ連の石油の需給関係が一九八四年前後の時点で逼迫する。それで不足した石油を求めて中東に進出していくのだといったシナリオであるわけです。これはアメリカ先生方議論を読みましても、ペンタゴン筋の議論を読みましても大体この議論で終始しているわけです。  私、これは非常におかしいと思うのですね。何がおかしいのかというと、私は当時から言っておったのですけれども、八五年にソ連日本に侵攻するということが事実であれば、もうことしなんか大変なことになっているわけです。そう言った方々は今や沈黙を守ってらして、今度は別の軍事力増強のシナリオを描き始めているわけですけれども、なぜおかしいのかというと、大体ソ連というのは世界で最大の産油国であるわけです。しかも、その世界最大の産油国であるソ連は、石油の半分を非共産圏諸国に輸出しているわけです。よしんば、東ヨーロッパ諸国に石油を輸出するために、つまり、東ヨーロッパ諸国に対するソ連の支配権を確保し続けるために石油が必要であるにしても、そのために中東に進出する必要があるにしても、それであるならば、当然西側に向けた石油を削減すればいいのであって、決して軍事侵攻するという、ソ連にとっては大変大きなコストを払う必然性がどこにあるのか、シナリオがどうして書けるのかということを私は考えたわけです。  それともう一点、根本的に何が間違っているのかと申しますと、これは第三世界における紛争をどうとらえるかという問題だと思うのです。それで必ず中東が出てくるわけです。あるいはサハラ砂漠以南のアフリカが出てくる。あるいはラテンアメリカ、中米が出てくるわけです。つまり、第三世界における政治紛争、軍事紛争というのは、あれはソ連の膨張主義のあかしなのだ、つまりソ連が第三世界軍事的な膨張をしているのだ、間接侵略にしろ直接侵略にしろさまざまな形で第三世界に進出している、その証拠が今の第三世界における紛争の頻発状況じゃないかというわけです。  しかし、これは現実に違いますね。なぜ違うのか。大体第三世界の紛争というのは、これを一つ一つ丹念に分析してまいりますと内戦が軸になっているわけです。これは朝鮮戦争も同じですね、その意味では。あるいはかつての中国革命も同じであるわけです。内戦が軸になっている。なぜ内戦が起きるのか。これは貧困と圧制です。多民族国家にあるわけです。これは、民族の多分布状況というのが第三世界の共通現象でした。これは百年なり二百年なりの長い植民地体制のもとで帝国主義諸国によって民族線が分断された結果であるわけでありまして、決して不思議なことじゃないのですね。長い植民地体制下にあって急激に近代化を進めようとする。そのために国内的なフリクションが起こるわけです。権力が弱い、民衆の不安が出てくる。その間にクーデターやなんなり、軍部の動向があって、これが第三世界における紛争状況として現出してくるわけです。フィリピンのマルコス政権下でなぜあれだけテロリズム運動が起きているのか、なぜ潜在的な内戦状況にあるのかということは伊藤先生もよく御存じだと思いますけれども、同じことが朝鮮に関しても言えると思います。  しかし、朝鮮の紛争にしろ、フィリピンの紛争にしろ、どうとらえているのか。フィリピンの場合は少し違うのですけれども、朝鮮戦争をどうとらえたのかというと、釜山に赤旗が立てば日本安全保障を害することになるという、こういった議論であるわけです。これは、内戦を外戦に取り違えている議論であると言わざるを得ない。内戦を外戦に取り違える限り日本安全保障は不断に周辺諸国家から脅かされているという論理が出てくるわけです。そのために何をしなければいけないのかというと、日本軍事力を増強しなきゃいけないというわけですね。私が仄聞するところ、公明党は一九七九年でございましたですか、に領域保全論に転換するわけですけれども、その根拠の一つが朝鮮半島における戦略バランス、軍事バランスの南にとっての不利さ、南に不利に展開したという事実をその根拠の一つに挙げているというふうにお聞きしておりますけれども、これはおかしいわけです。  第二番目におかしいのは、アジアとヨーロッパは違いますね。どう違うのか。例えば、ポーランドから西ベルリンまでこれは何キロあるのかということをお考えになっていただきたいのだけれども、わずか六十キロでしかないわけです。六十キロの距離というのは、日本でいえば東京と平塚間の距離であるわけです。あるいは神戸と京都の間の距離であるわけです。その間に戦車がせめぎ合っている、対峙し合っている状況があって、しかも、そこがプレーンであるわけです。山一つない、川だけによってしか区切られていないところである。しかも御承知のように、あるいは歴史をごらんになったらわかるように、ヨーロッパの状況というのは、あれは民族の多分布状況がございまして、さまざまな民族線の混合状況があって、そして不安の内戦条件がこれまた一方で潜んでいるという状況があるわけです。そう考えると、アジアとヨーロッパを一体同じに考えてよろしいのかという疑問が出てくると思うのです。  よく日本はGNPの一%しか使っていない、西ヨーロッパ並みに二、三%の軍事費を支出するようにすべきじゃないかという議論がございますけれども、そもそも日本が一%しか使っていないというのは全くのうそでありまして、これは秦議員が国会で明らかにされたように、例えばNATO並みに日本軍事費を退役軍人の恩給、それから基地関連費を加えてまいりますと、これは一・六%を超えるわけです。しかも、GNPは西ヨーロッパ諸国に比べて日本は二倍近くあるわけです。  そうなってまいりますと、五六中業あるいは五九中業を完遂した暁に日本は一体どれぐらいの軍事力を持つのかというと、これは米ソに次ぐ軍事力を持つといっても差し支えないぐらいで、世界で第四番目か第五番目の軍事力を持つと言っていいぐらいの強大な軍事力を持つ軍事大国になるわけです。一体、平和憲法下の日本でこれが許されるのかどうなのか、専守防衛原則日本の国是としている日本でこれが許されるのかどうか。そもそも戦略環境がアジアと西ヨーロッパでは違うのじゃないかということを私はもっと突き詰めて考えていくべきだと思うのです。  私の知り合いの西ドイツの参謀本部の某氏が、一体日本にとって海洋はどれぐらいの軍事的な価値を持つのかということを計算したのです。私も複雑な式を今紹介できないのですけれども、計算いたしましたら五十個師団に相当するというのです。つまり、日本の周辺というのは、地図で見たらわかりますけれども、海洋によって、四つの海によって囲まれているわけです。この四つの海の持っている戦略的な価値が五十個師団に相当するものであるとするならば、今、日本の陸上自衛隊というのは十三個師団余りですね、旅団その他を入れてもおつりがくる状況であるわけです。一体なぜそんなに日本軍事力を増強しなければいけないのかという問題があると思うのです。私は、日米安保の現在がここに象徴されていると思うのです。  じゃ、なぜなのかということを突き詰めてまいりますと、これは兵器の性能を見ていけばわかる。例えばP3Cは何のために必要なのかというと、これはアメリカの第七艦隊、特にSLBM4のためにこれは必要であるわけです。P3Cはたしか私の記憶では八十機でございますか、五十数機でございましたですか、五六中業でショッピングリストとして載っておりますけれども、一機百億内外する非常に高価なものであります。それからF15ですね、これは自衛隊の最終目標では百五十機態勢に持っていくということであるように仄聞しておりますけれども、これは何かというと、ソ連のバックファイアからアメリカの第七艦隊を守るためのものなのです。  これはアメリカの第七艦隊、特に空母を、動く巨大な軍事基地をたたくためにバックファイアというのは非常に有効であるわけです。このバックファイアを迎撃するためにF15しか、あるいは今の段階ではF15しか機能しないという状況にあって、そのために日本はF15を百五十機持たなきゃいけないというわけであるらしいのです。そう考えてまいりますと、一体日本が今一生懸命軍拡の努力をしている、あるいは日米運命共同体という名前のもとに軍拡をしている、このそもそもの根源的な理由は何なのかと考えてまいりますと、私はこれはやっぱりアメリカ核戦略の補完機能を日本アメリカに期待されていて、それに日本がこたえている、この構図でしかないと思うのです。  この構図というのは全く正しいわけです。なぜ正しいのか。これはキャスパー・ワインバーガーが八二年十月に日本に来て、プレスクラブで会見をやってそこではっきり言っているわけです。我我が日本に期待するのはアメリカ核戦略に対する補助機能なのであると。そうなってまいりますと、日本アメリカ核戦略を補助することによって一体日本の安全は守られるのかどうなのかという問題が出てくるわけです。これは私は疑問だと思うのです。なぜ疑問であるのか。大きく言って二つあると思うのです。  一つは、これは核軍事同盟、核軍事構造が現在変わっているわけです。かつて一九六〇年代だったらまだそれでもよかったかもしれません。なぜなのかと申しますと、御承知のように、一九六〇年代までアメリカ核弾頭数というのは非常に少ないわけです。一九六〇年代当初にあっても二千個内外で、二千ちょっとしかないのです。ところが、アメリカ核弾頭は二十数年の間に今幾らになっているかというと三万数千個になっているわけです。もちろんソ連はそれに対して二万数千個持っているわけですね、二万一千個、二千個と言われていますけれども。  一体それだけの核弾頭数がふえた状況のもとで、これは軍事構造、核軍事構造自体が質的な変容を遂げざるを得ないわけです。どう変わっているのかと申しますと、これは大きく言って戦略体系がもはや対都市攻撃を基軸にしていくことはできない、対兵力戦略を基軸にしていかなければいけないという状況になっているのですね。今や例えば核のボタンがワンフラッシュ、核のボタンを押すことによって二千から三千の核弾頭が一斉に発射されるという状況があるわけです。そうなってまいりますと核の冬現象というのは、単に絵そらごととしてではなくて、現実状況として出てこざるを得ないと思うのです。  もう一つ、核の傘というものが同盟国に差しかけられる一九六〇年代的な古典的な状況がもはや失われつつある。自国の安全を最優先させるために同盟国を犠牲にせざるを得ない状況というのは、私は現在出てきていると思うのです。これは同盟のあり方自体に根源的な反省を私どもに迫っているというふうに私は考えます。日米安保がよろしいか、日米安保が悪いかという神学的論争を私はここでしたくないと思うのです。それよりも、現在日米安保がある、この現実の上に立ってそれじゃ日米安保をどうすべきかという問題の方がはるかに現実的な問題であって政策論的な問題だと思うのです。そのことを考えたときに、日米安保安保体制の持っている軍事的な側面をこれ以上強化すべきでないし、むしろ安保軍事的な側面を和らげる方向に持っていく方が日米の友好的な関係を推進し極東の緊張を緩和させるために私ははるかに有効ではないかというふうに考えます。  それは、もし日米安保体制の持っている経済的な側面に目を向けるならば一層証明されるのではないかというふうに考えます。なぜかというと、ここでもやっぱり私は軍事構造、軍事力の持っている質的な変化ということを考えなければいけないのでして、かつての軍事力と今の軍事力は違います。どう違うのか。昔の軍事力というのは技術と資本においてそれほどの投入力を、投入量を必要としなかったわけです。ところが、今の軍事力というのは膨大な技術と膨大な資本を投入せざるを得ないという状況にあるわけです。そのために軍事力に金をかければ金をかけるほど国家の経済力はなえていくわけです、衰弱していくわけです。これはアメリカに関してしかり、ソ連に関してしかり、それから、同じように武器輸出において対GNPで世界最大を誇っているフランスにおいてしかりであるわけです。これは社会主義政権であろうと資本主義政権であろうと、軍事力に力を注げば注ぐほど、経済力を注げば注ぐほど国民経済は衰弱していかざるを得ない。  その結果どうするかというと、一つ政策として出てくるのはレーガン戦略でありまして、つまり自国の今国際的に競争力の一番強い側面、それから手っ取り早い側面、ここにお金をかけるわけです、財政投資をするわけです。つまり軍需産業、軍需関連産業にお金を注ぎ、そのために財政赤字を物ともしないでやるわけです。大統領選挙までそれはGNPの高成長率を記録することができたけれども、しかしこれは長続きしないわけです。なぜ長続きしないかと申しますと、今の軍需産業、私が先ほど申しました軍事力の質的な変換によって民需生産を活性化させないわけです。これが第一。  第二番目に、世界経済を活性化させないわけです。なぜかなれば、軍需産業に特化しますと核大国は、軍事大国は、特別に化するという字を書きますけれども、自国の特化した産業部門に集中しまして、特化した部門の製品を海外に輸出するわけです。これは国際競争力が高いから、兵器においてアメリカは一番国際競争力をたくさん持っているわけです、あるいは農産物において。兵器輸出するわけです。第三世界に兵器がばらまかれますと、私が一番最初に申し上げた第三世界の紛争状況はもっと熾烈になるわけです。これは似たような形でソ連も残念ながらやっているわけです。残念か残念でないかわかりませんけれども、ソ連もやっているわけでありまして、こうなりますと世界経済自体がこれはなえていくということになります。世界市場が拡大しないわけです。これはもう去年の段階でブルッキングズ研究所が出していた報告書の中に出ておりまして、アメリカは確かに昨年の十月段階で経済成長率は急激に拡大したので、六・五%だかに拡大したのですけれども、これは赤信号ですよという報告が出ているわけです。  なぜなのかというと、今までの経済成長率の場合と違って世界経済に対する波及効果が非常にわずかしか見えていないという報告が出ているのです。私はそれを読んだときに、これは危ないなと思いまして非常に危惧しておったわけですけれども、その結果ごらんのとおりアメリカ経済は再びダウンしている。これは日本アメリカに対米軍事協力をすればするほどアメリカの経済力をますます悪くし、世界経済をますます非活性化させていく、ひいては日本の経済自体を、平和経済のもとに繁栄を誇ってきた日本のいい意味での保守の外交のよい点を、マイナスの面に変えていくという結果をもたらすと思うのです。これはやはり同盟のあり方自体に対する我々のこれまでの古臭い考えを変えなきゃいけないのじゃないかしらというふうに私は考えるのです。  そうなってまいりますと、今や私どもは、日米軍事体制の持っているプラスの側面を議論するのはよろしいと思うのです。プラスの議論ではなくてマイナスの、積極的な側面ではなくてあえてその持っている負の側面を直視すべきではないかと思うのです。それをしない限り、私は繰り返し以前から言っておったのですけれども、これは日米防衛で、つまりディフェンス領域日本が対米譲歩しても、貿易の面でアメリカから対日譲歩をかち取ることができない。よしんばそれは政治キャンペーンの一部として利用されて、ある段階までは対日貿易譲歩をかち取ることができる。例えば大統領選挙までそれはやることができるけれども、大統領選挙が終わった後、これはモグラたたきのような状況で再び日本に対する貿易圧力が強まるに違いない、これは貿易赤字がなくならない限り続くわけです。  日本は、もはや民需製品に関して十分の対米競争力をつけているわけでありますから、もし段階的にしろ何にしろ開放国家体制に向かうことによって、そして他方で内需を喚起できるような平和経済体制をもっと進めることによって、長い目で見たときに世界経済なりあるいはアメリカ経済の活性化につながるだろうし、西側経済の平和協力に対して貢献するのではないか。しかも、もしそれに伊藤先生がおっしゃったように対ソ問題に関して国際的な協力体制をつくって、ソ連をいつまでも仲間外れにしないで、極東の緊張緩和に向けて集団的な平和保障体制に向かうならば、あるいは相互信頼醸成措置で微温的な形であれ軍備管理措置をとるなら、私は日米安保体制云々よりも極東の緊張緩和に対する展望が開けるのではないかというふうに考えます。  時間がありませんので、この辺で終わります。
  44. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  45. 中西一郎

    ○中西一郎君 どうもありがとうございました。  順次お願いいたしますが、一つは伊藤先生に。昭和五十七年だったですか、先生が中央公論に国家目標と人類目標の結合ですか、という論文をお書きになった。あれを読んで大変啓発されまして何回も読み直したりしているのですけれども、平和とあるいは軍縮の問題にいたしましても、これは日本人ひとり一国民の問題ではない、人類全体の問題である、そういう意味で四十数億人の願望でもある。  それの達成ということと、日本に国家目標がないということをよく言われ続けていますが、これを結合させるということは、言ってみれば日本に新しい国家目標をつくるということにもなる。きょうのお話にございませんでしたけれども、ハイテクの時代になりましたし、資源の有限という議論もあるし、リサイクルの必要性もあるし、今お話が出た発展途上国に対するいろいろなこれからの援助というようなことも含めまして、先生の論文の題名のとおりの国家目標の樹立ということが日本にとって一番必要じゃないかと今でも考えておるのですが、少しコメントをしていただければありがたいと思います。
  46. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) 先ほどちょっと紹介しましたこの本の最後の結論もそういうことにしてあるわけですが、私の国家戦略論の基本的な考え方は、まず安全保障を確保する、その次に国家、民族の繁栄と発展を追求する。その場合、安全保障につきましては、先ほども申し上げましたように、まず勢力均衡と申しますか、力の極端なアンバランスが生じないように配慮すること、しかし、それだけでは不十分で敵対する陣営の間といえどもなるべく共通の言葉を持ち、対話の場と対話のルールを発展させるべきである。こういうことでございまして、人間の到達した歴史の現段階の我々の文化というものを見ますと、それ以上のことはすべてどうも理想論である、現実から遊離しているのじゃないか。現実に足を踏んまえればそれあたりがぎりぎりの望めるところではないか。  こういうことでございますが、その安全保障の次に国家目標といたしましては、自国のあるいは国民の繁栄と発展を追求するということでございますが、この場合におきましては別の原則を導入してくる必要があるわけでございまして、これはもう亡くなりましたが、第一次大戦から第二次大戦にかけてのころのイギリスの戦略理論家でリデル・ハートという人がいます。その人は間接接近の戦略ということを理論化した人でございますが、間接接近などと言うと何か難しいことのように聞こえますが、要するに直接接近に対する言葉でございまして、直接接近というのは何かというと、欲しい物があればそれにすぐ真っ正面から飛びつくというのが直接接近でございまして、これに対して間接接近というのは、ひとまずよく考えてみて、多くの場合において目標に到達するまでに最も抵抗の少ない最少抵抗線を通って迂回して、その結果として最も抵抗やコストが少なく目標を達成するということでございます。  日本の繁栄と発展ということを考えますと、これまではエコノミックアニマルと言われるような、言ってみれば物質的欲望をぎらぎらと全身にみなぎらせて、だれが見ても何を考えているかすぐわかるような顔で世界じゅうに進出していったわけでございまして、まことに直接接近以外の何物でもなかったのではないかと思うわけでございますが、既に世界のGNPの一〇%を占める大国となり、また、全世界に対して四百億ドルの貿易黒字を生み出している。そういう日本現状というものを考えますと、これからの日本の繁栄と発展というのは、そういう直接接近的なアプローチではなくて間接接近的なアプローチでなければなるまい、このように考えるわけでございます。  その場合当然、目標とする国益というものの認定もこれまでの古典的な国益、あるいは日本さえよければそれでよいという個別的な国益の概念ではなくて、私は、啓蒙的国益という言葉、あるいは集団的国益という言葉を使っておりますが、人類全体の公益、国際社会の公益、国際的公益、インターナショナル・パブリック・インタレスト、そういったものを踏まえた国益を追求することによってのみ初めて日本も受け入れられ、日本のさらなる繁栄も保証されるのだと考えるものでありますから、またほかの国に対しても同様のことを希望するものであります。またそうでなければ、この核戦争の危険というようなものだけではなく、環境の破壊のようなじわじわと押し寄せてくる地球的な危機というものを乗り越えて、共存共栄の世界をこれから築いていくことはできないと考えますので、私は、日本が今国家百年の計の出発点としてなすべきことは、我々の国益は一体何かということを国民議論を通じて再定義することである。  そして、再定義の結果つくり出すべき国益概念というものは、日本さえよければよいというそういう国益ではなくて、世界とともにあって、その中に所を得て発展していく国益、私はこれを啓蒙的国益と呼んでいるわけでございます。そういうものでなければならないので、国民のこれは意識を百八十度転換させる必要がある出来事かとも考えます。つい先ほども四月九日に中曽根総理大臣国民に対して、今までは世界に向かって輸出せよと言っていたものを、これからは世界から輸入せよと呼びかけたわけで、あれもまたまさに百八十度日本国民のメンタリティーの転換を求めたものでございますが、これからますます日本はそういうメンタリティーの転換、基本的姿勢の転換を迫られていくのではないかと考えます。  ただ残念なことに、日本の歴史を振り返りますと、近世におきましても日本は、その姿勢とか基本的メンタリティーの根本的転換ということをこれまでに二回やっておりますが、二回ともみずから目覚めた結果ではなくて外圧、それもアメリカの外圧でそういう転換を遂げているわけであります。第一回はペリー提督の黒船がやって来たときの明治維新でございますし、もう一つはマッカーサー元帥が厚木にやって来たときの戦後改革でございます。今三度目のアメリカの外圧が我々に迫っているかのごとくも見られますが、三度目だけは私どもみずからの知恵と意思によってこれをなし遂げるべきであり、なし遂げたいものと考えております。
  47. 中西一郎

    ○中西一郎君 進藤参考人にお願いします。  アフガニスタンにしましてもあるいはアフリカにも、大分前からになりますが、キューバ兵が五万人からあそこに入っている。アフリカの資源地帯、特にレアメタルズの関係がございますが、ソ連自身はレアメタルズについてはほとんど一〇〇%の供給力を持っているにもかかわらず、その地域を支配しようとしている。アメリカもGSAという政府機関をこしらえてレアメタルズの三年分の備蓄をしようとしている。最近ではベトナムのカムラン湾からダナン、カンボジアのコンポンソムからプノンペンと軍事力拡大が行われている。そういうことを考えますと、北海道の保障占領ということはあり得ないのだと石油を理由にされてのお話がございましたが、やはりそれは考えておく必要があるのじゃないかというのが私の意見なのです。結論として、進藤参考人のお考えで、しからば今日本はどういう道に進んで新しい道を進むべきかということについてお話をいただきたい。
  48. 進藤榮一

    参考人(進藤榮一君) 大変難しい御質問でして、最初の問題をちょっと敷衍さしていただきたいのですけれども、つまり第三世界、特にアフリカとか中東ソ連が進出しているのかどうなのかという問題ですね、これは進出しているとも言えるし、いないとも言えるわけです。  問題は相対の問題でありまして、それでは西側諸国家と比べてどうなのかという観点をもし入れますと、例えば私の手元にあります資料によりますと、これは一九六七年から七六年にかけての十年間、アメリカを中心とする西側諸国家がどのくらい第三世界軍事介入したのか、それからソ連を中心とする東側諸国家がどのぐらい第三世界軍事介入したのかというデータを取り出してまいりますと、西側の場合六十五件、東側の場合六件であるわけです。十分の一以下ですね。累積年数に直しますと二百五十七年対二十一年なのです。これは中国も東アジア諸国家の分へ入っているのですけれども、もちろんこれは七六年までの数字でございます。  これはいわゆる新聞で、ソ連がアフリカに出て行ったら、まるでトラの子をとったような形で誇張して私は報道されている側面があるのではないかしらというふうに思うのです。例えばザイールで紛争が起きたときに、西ドイツ、フランスが派兵したという事実というのは余り報道されないのですね。それが一つ。つまり客観的な数字から、データからいって、第三世界における西側と東側、アメリカソ連の進出状況軍事侵攻状況というのは一体どちらがどちらなのかというと、これは私は、目くそが鼻くそを笑うたぐいのものでないかしらというふうに言っても差し支えないというふうに思うのです。  もう一つは、先ほど中西議員がいみじくも、ソ連の場合、軍事顧問団を派遣しているという言葉をお使いになりましたけれども、これは一つのキーワードでありまして、ソ連はクレムリンの中であるいはクレムリンの内外で、ソ連の指導層の中で大変な議論があって、特にSALT交渉が結ばれた後、一体第三世界政策をどう展開するかということを議論したときに、結局直接に手を下すべきなのか間接に手を下すべきなのか。先ほどの伊藤先生の言葉を使いますと、間接戦略でいくのか、直接戦略でいくかという議論があったときに、これは直接戦略じゃなくて間接戦略でいくべきだという議論に帰着するわけです。つまり、それは武器輸出あるいは軍事顧問団、しかも軍事顧問団もソ連軍事顧問団であるよりは、むしろ第三国、この場合キューバですね、キューバの軍事顧問団を使うとか、そういった形で折り合いがつくわけです。これはもっと広くソ連世界戦略の中で位置づけてまいりますと、私がほかのところで書いているのですけれども、要するにソ連の西側との協調政策を進め、軍縮を進めるべきだという主張をする人々の意見が勝ちを制しまして、そして、ソ連はアウタルキーの道をとるべきなのだ、軍事的な孤立政策をとるべきなのだという軍部タカ派を中心にした議論というのはおさまっていく、そういったプロセスの中で、構造の中で描かれるわけです。  長くなって恐縮なのですけれども、三つ目に考えなきゃいけないのは、第三世界の場合、カムラン湾その他いろいろな事実がありまして、これは全くの事実であるし、否定するべくもないのですけれども、問題はそれをどう読み取るべきかという問題だと思うのですが、私は二つあると思うのです。  一つは、米ソの軍事対決の中で考えたとき、これは当然予想さるべき事態ではないか。特に今、核が地上配備のICBMから海中発射のSLBMに転換している。これはまずアメリカがやって、その後をソ連が追っかけているという、ソ連の方が数段おくれている状況にあると見ていいわけですけれども、今ソ連が行っている過程で、インド洋、特にディエゴガルシア基地に巨大な基地を持っているアメリカに対抗するためにソ連が当然とると考えられた道である、方策なのだというふうに見てよろしいと思うのです。ただ問題は、それをどう読み取るべきかという問題でありまして、それをソ連の一方的な膨張主義の動きの一環としてとらえ、ソ連の対西側世界制覇の一環としてとらえるなら、私はこれは間違いだと思うのです。あるいはソ連現状破壊勢力ととらえ、西側を現状維持勢力ととらえると、その一環としてソ連の行動を位置づけていくなら、私はこれは戦略の読み取りの誤りだと思うのです。  さらにつけ加えるならば、第三世界の動きというのは、アフガニスタンに象徴されるようにソ連であれ、あるいはベトナムに象徴されるようにアメリカであれ、核大国が出ていっても結局は押し返されていくという動きが働くのですね。これは七〇年代の中東状況を見ていったらわかりまして、中東で一九七二年にエジプトからソ連が追い出されるわけです。それからイラクとの仲が悪くなって、ソ連とイラク関係が冷えていく。それからエチオピア・ソマリア戦争が出た段階で、ソマリアからもソビエトは追い出されるという状況が出てくるわけです。だから、よしんばソマリアに軍事基地を確保し、イラクと軍事友好関係を結び、エジプトにソ連が相当数の軍事顧問団を派遣し、エジプトを中東第一の同盟国にしたにしろ、私はそれは歴史の流れの中で見ていったとき、つかの間のものであらざるを得ないという、上と下との力の拮抗関係が働くという論理にむしろ目を向けるべきじゃないかというように考えるのです。そうとらえますと、東西関係と南北関係の軸の中で、ソ連の例えば一連の軍事行動をとらえてまいりますと、それはむしろ西側の軍拡の動きに対応した動きとしてとらえていく、この面をやっぱり私は持っていかなければいけないと思うのです。だからといって、ソ連の動きというものを正当化すべきであるというふうに私は考えません。  それで、長くなって恐縮なのですが、日本はどうあるべきかということなのですが、私はやっぱり、経済的な関係を西側との間にしろ東側との間にしろ強めることによって平和への道が開かれるのではないか、緊張緩和への道が開かれるのではないか。国際関係を米ソあるいは共産主義対自由主義というふうな形で黒か白かで見るのではなくて、むしろ黒か白かで見るゼロサムゲームというふうに私ども呼びますけれども、つまり自分にとっての取り分は相手にとっての損分で、相手の取り分は自分の損分なのだ、AとBを足すとゼロになるのだという、そういったゼロサムゲームの論理で見るのではなくて、お互いに裨益し合うような関係というものを単に西側諸国家間ばかりでなくて、東側諸国家間との間に打ち立てる必要があるのではないか。お互いに人質を取り合うことによって、これは双方の安全保障を最も高めることができるのではないか。  これは日本の武士道以来の、侍時代以来の戦略の根幹にあるものでありまして、やっぱり人質を、特に経済的な人質を相互に取り合うという状況を私はもっと構造化していくべきではないかというふうに考えます。これは東アジア並びに国際的なレベルにおいて、国際平和への緊張緩和へ進む道ではないか。現実にこれは西ヨーロッパの非常に軍事的な緊張の激しいところにあってさえも、西ドイツなりあるいはフランスなりが部分的にしろとっている道であるというふうに考えて差し支えないと思います。
  49. 中西一郎

    ○中西一郎君 最後のところは大変私も同感の点がございます。  ただ、一時的に侵攻されても長期的に見たら侵攻した側が引き下がっていくのだというようなお話もありましたが、日本にとってそういうことがあると困るというのが私自身の見解であるということを申し上げておきます。
  50. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 伊藤参考人に私の意見を若干交えてお尋ねをいたします。  実は私、中座しまして、先生の御意見を拝聴しておらないわけでありますが、私は、戦後の日本が今日までそうでありましたように、見通し得る将来においても日本日米の協力関係をあらゆる面において基軸として、日本自身の平和と繁栄を確保すると同時に世界の平和と繁栄に寄与しなきゃならない、こう思っておるわけです。そのためにはやはり日米安保条約というものの本質を十分に理解をして、そして信頼関係の上に立たなきゃいけないと思っております。  そのようなことから考えますと、実は私の手元に最近アメリカのポトマック・アソシエーツという世論調査所の世論調査の若干の結果を持っておりますが、それによりますと、侵略を受けたときに、防衛するために進んで米軍を参戦させるかどうかということに対しては、例えば日本に対しては七〇%、過去最高でございます。西欧の場合は七六%で、ほかの地域は非常に比較にならないほど低い。それから、それに反しまして、例えば日米安保条約日米いずれが得をしているのかということに対しては、日本が得をしているというのが三六%で、アメリカが得をしているというのが六%だというような結果が出ておるようでございます。  最近の防衛摩擦を見てみましても、私はやはりこの際、条約の先ほど申し上げました本質というのは、あくまでも相互協力と、そしてその上に立った安全保障条約である。この相互条約というのは、これは経済的な協力をできるだけやっていくというのが基本なので、その上に立った安全保障条約であると思うわけです。その相互条約の中でも、したがって経済面でも本当にともに繁栄するための協力をしなきゃいけないが、同時に、軍事面においても例えば日本はもちろん攻撃面はアメリカに依存しなきゃなりません。従来は盾という面においてもアメリカに大きく依存しておった。わずかに条約では基地を提供することによってそれを相互性でやっておったわけです。ところが、こういう段階になってきますと、やはり盾の面で日本が肩がわりできる面は肩がわりするということが日米安全保障条約を機能さすためには絶対必要じゃないかと思うわけです。残った時間はもうありませんから、もっと申し上げたいのですが、これで私の意見は終わるわけです。それについて先生はどうお考えか、承らせていただきたいと思います。
  51. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) 二つコメントがあるのですが、一つは、いかなる条約関係あるいは同盟関係といえどもすべて双方がその状態に納得していなければ、幾ら紙の上の文字があってもその存立の基盤を失うということが言えると思いますが、その場合の納得というのは、一般的な形としてはその条約の双務性であるとか、あるいは相互性であるとかいうことが言われるわけです。ただ、その双務性とか相互性ということの内容になると、両方が全く同じことをしなければならないというふうに厳格にとる必要はないのではないか。そのようにとると、歴史上完全に双務的な条約関係というのはほとんど全くアイデンティカルな、つまり力そのほかの面において似たような国の間でない限り可能でなくなるわけです。したがって、アメリカが例えば日本防衛の義務を負うから、日本アメリカ本土防衛の義務を負わなければ対等でないというふうなことは言う必要がないと思いますし、アメリカが満足している限りは、私は条約の上で形式的にはある程度の片務性があってもそれは捨象されると思います。  しかし、憂慮すべきことは、ただいま御指摘ありましたように、アメリカにおいてそのような納得が次第に失われていっているということでございまして、これはまさに憂慮すべきことである。したがって、日米貿易摩擦、日本の貿易黒字、アメリカの赤字といったものが日米安保体制日米安保防衛上のお互いの約束といったことと無関係では全くないのだ。あるいは言いかえれば、私が冒頭の意見陳述で申し上げましたように、現代世界においてはますます政治、経済、軍事などが一体不可分となっているということでございまして、そういった意味からも、現在の日米経済摩擦の現状というのは安全保障問題上からもまことに憂慮すべき事態であると考えます。これをいかに改善していくかは、総合的に判断し、総合的に対処すべきことであって、にわかに防衛上の取り決めだけをしてみてもこれを回復することができるという性質のものではないと思います。これが一点。  もう一点は、先ほど申し上げましたように、七〇年代中ごろから西側同盟という新しい観念が台頭しておりまして、これは同盟ではあるのですが、そのために西側同盟条約などという条約が結ばれているわけではないわけで、例えば日本と西ヨーロッパ諸国の間には全くそういう同盟条約はないわけです。しかし、私がこの間出席しておりましたブラッセルでの四極フォーラム会議におきましても、まさに同盟国として日本を見、同盟国であるから要求するという形で議論展開するわけでございまして、現在の同盟関係条約的な基盤を持たない、それだけに相手のために何をしてやるかということが条約上はっきり書いてあるわけではなく、条約上の義務ではないけれども、こちらからそれを察し、先手を打つということによってのみ摩擦が解消され同盟が維持される、こういう新しい時代に入ってきているということを感ずるわけでございます。
  52. 志苫裕

    志苫裕君 社会党の志苫です。往復で二十分ぐらいの時間しかありませんので、そう細かくはお伺いできないのですが、まず最初に村井、大賀両参考人にお伺いしたいのです。  いずれももとは制服の方々ですから、そのような観点での御意見を拝聴をいたしました。そこで、御発言の中にもソ連脅威、具体的に脅威を考えるとそこしかないわけで、そのようになさるのだろうと思うのですが、具体的にソ連脅威というのはどのように論じられて、また、日本有事の可能性のあるシナリオというものはどのようなものとして日ごろの部隊運用やあるいは訓練がなされるのかということを、まず御両氏に伺いたいわけです。
  53. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) その前にちょっと忘れないうちにお願いしたいのですが、シーレーンの研究開始は五十六年からと申しましたが、二年後で五十八年でありまして、それをまず訂正さしていただきます。申しわけありません。  まず、脅威の問題でございますが、具体的に脅威という格好では言葉の上では取り上げておらないことは御案内のとおりでありますが、いずれにせよ、そういう能力のある存在が極東、我が国周辺に存在しておるという認識が一つございます。それを具体的に申しますと、一番端的なあれは北方領土の一個師団に余るものの不法占拠という感じで一つとらえております。  それから、最近の能力という面での向上の著しいということ、そういうようなことをいろいろ考えます場合に、それがじゃどうして我に脅威になるのか、こういうことでございますが、いろいろ今意見陳述もございましたけれども、私は自分なりに一応納得させておりますのは、極東特に沿海州ウラジオストクあたりを中心にする地域、あるいは戦略基地、戦略潜水艦の基地でありますオホーツク海とかあるいはペトロパブロフスクとか、そういうことの関連におきまして非常に極東地域がソ連自体としても重要になってきているのじゃないかという感じがございます。そういう非常に戦略的に大事な地域を防衛するといいますか、その場合における緩衝地帯の拡大という一つの歴史的な傾向があるわけでございますが、そういうことを考えますと、幸か不幸か非常に戦略的に大事な先ほども出ましたチョークポイント的な地政学的なものを日本列島自体が抱えておるということあたりを考えますと、そういう緩衝地帯の拡大あるいは防護の中で自由にそれを自分のコントロール下に置きたいという動きというものは全然否定することは、ネグってしまうことはできない。こういう意味におきまして、やはり潜在的な脅威というものが存在するのだという認識が一つございます。  それから、いろいろなシナリオでございますが、これは具体的にはなかなか申し上げられないわけでございますけれども、そういう脅威に連係したシナリオということは別としましても、私が先ほど申した共同訓練というような場合等におけるシナリオにつきましては、言うなれば、我が国の地図を東西南北からフルに使うという格好でいろいろな場を設定して、そこで訓練をするということが一般的でございます。  それから、先ほどの共同作戦計画でございますが、これのシナリオあたりはもう全くの、よく批判される方は白紙的なということにもなりかねないのですが、そういう本当にごくありふれた、ありふれたという表現は適当でありませんね、一つの場をとらえての戦力設計というような格好になっておるわけでございまして、その辺で御勘弁願いたいと思いますが。
  54. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) 今、村井さんからお話しになりましたように、自衛隊でやっておることは、私がおる時代はケイパビリティープラン、向こうは何ができるのかということに対して、日本がどういうふうに対応できるのかという、いわゆる向こうのケイパビリティーを中心に、インテンションとかそういうものは入っておりません、全くケイパビリティーとしてどういうことができるか、どういう選択が向こうにあるのか、それに対して日本がどういう方策があるのかという範囲にとどまっております。したがいまして、格別シナリオというものがそこにあるわけではございません。これは自衛隊でやっている範囲ではそういうことだと思います。
  55. 志苫裕

    志苫裕君 もう一点ですが、ソビエトの単独侵攻というシナリオはあるのですか。それとも、世界有事の場合の波及というシナリオが中心になってくるわけですか。
  56. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) その辺は何とも申し上げられませんけれども、私の感じとしては、先ほど申した緩衝地帯拡大という一つの戦略を考えた場合に、当然割に短時間に、アメリカの本格的な介入を誘因しないという一つ段階を考えてみますと、そういうところで単独に既成事実をつくるということもあるいは完全にネグることはできないという感じを持っております。
  57. 志苫裕

    志苫裕君 海幕の方はどうですか。
  58. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) シナリオというのは、よくシナリオというのがいかにも戦略の何か既定の事実、起こり得る事実というふうに一般に理解されるのでございますが、シナリオというのは一つ想定を描いてみて、それで問題を解明しやすいように設定するというだけであって、それがそのままシナリオライターが書いたように世の中が移っていくというようなものではないと私は理解しております。シナリオそのものだと思います。
  59. 志苫裕

    志苫裕君 それから、いずれも日米共同訓練、共同対処でお話しいただいたのですが、日本の場合は幾つかの制約条件を置いています。憲法上の制約、あるいはまた国策上の、政策上の制約ですね。したがって、その制約は随分アメリカ日本では違うわけですが、それぞれ制約条件の違うものの共同訓練、共同対処というふうなことでは不都合が随分生ずるだろう。先ほど大賀参考人からは、諸制約のもとで有効な対処ができない、したがって訓練の上では、実質はそれに近づけるような努力でもする以外にないという意味のお話があったのですが、ちょっとその辺に触れていただきますとありがたいのですが。
  60. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) 私が諸制約があると言いますのは、今行われていると私が理解しております共同研究が具体的な日本防衛計画になるにはそういった諸制約がある、こういう意味で申し上げております。実際に我々がやっている訓練は、もう諸制約の中で相互に戦術的な訓練をやる。私が申し上げたのは、私がおる間のことは日米安保で、日本の場合で、日米韓がどう日本を守るかという訓練は一度もやったことはございません。本当に単純な戦術訓練だけでございます。
  61. 志苫裕

    志苫裕君 それで、ちょっとそれに関連しまして、NATO米韓のようなそういう共同作戦計画ではもちろんないというお話もありまして、そのことがまた別の意味で有効な共同対処ができないという矛盾にはなるのですか。
  62. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) なると思います。
  63. 志苫裕

    志苫裕君 その点はなる。  それから、大賀さんもう一つ。朝鮮戦争の際、もちろんこれは占領下というときですが、そこでの韓国の沿岸の掃海に参加をしたということで、日本あっての韓国であり、韓国あっての日本だということを感じたというお話なのですが、これは占領下のことですけれども、そのような形での参加というのは、占領下における米軍の指揮とか、そういう性格のものであったのかどうなのかということが一つと、ベトナムのときには、例えばそのような類似の行為はあったのでしょうか、なかったのでしょうか。
  64. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) ベトナムでは一切かかわりはございません、私が知っている限り。私、当時、後半は防衛部長でございました。絶対そういうことはございません。  朝鮮のときには、私はずっと業務掃海をしておりました。これは占領軍の命令あるいは監督下で日本国内の掃海をやっておりました。それで一番最初に佐世保の港外、当時国連軍の船が大変出入りしておりました。そこで佐世保の港外の掃海に最初参りました。佐世保の港外の安全を図る。あれは十月に入りまして、上の方でどういうふうにお決めになられたか知りませんけれども、我々も行くようになりました。私が行ったところではすべての指示は国連軍の、あのときはイギリスだったと思いますが、イギリスの船からいろいろな情報と指示をもらいました。現場ではイギリスからもらいました。
  65. 志苫裕

    志苫裕君 英軍ですね。わかりました。それはまたいずれ……。  それから、伊藤さん、先ほど、日米安保を西側同盟として位置づけよ、日米の二国というよりは西側の同盟として位置づけよという意味での主張なのですが……
  66. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) の中での一部として。
  67. 志苫裕

    志苫裕君 その場合、あなたの主張からしますとNATO並みのものと、これが理想的という主張になるのでしょうか。
  68. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) いいえ、そういうインプリケーションは全くございません。
  69. 志苫裕

    志苫裕君 持ってないわけですね。
  70. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) 西側と言うときには、政治、経済、技術、貿易、金融といったものを含めて、その中で日本は呼吸し、生きているわけで、その空間から離脱してほかの空間へ入ったときに、同じように生活し続けることができないという意味での西側同盟という非常に広い意味で、NATOというようなことではないわけです。
  71. 志苫裕

    志苫裕君 その場合に、日米は集団自衛でなくてよろしいという考え方ですか。
  72. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) 日米については基本的に現在の安保体制でよいと思います、アメリカがそれで満足している限り。
  73. 志苫裕

    志苫裕君 もう一つ非核原則はこれは三・五だから本来の三にせいと。私は二・五という話を聞いておったのですけれども、これは具体的に言いますと、あるいは寄港や通過は認めよという主張なのかなという意味だと私は受け取ったのですが、事前協議で実際に核があるのかないのかわからぬのです。言ってこなければないと日本政府は言いますし、またアメリカは、あるなしは世界じゅうに言わないということですから、ないことも言わぬわけですからあることも言わぬのです。ただ、この場合の寄港というのは、日本の領海の中に核を積んだ船がどんとおるわけですね。アメリカ軍の展開というのは、そういつも遊びにきているのじゃないので、有事即応ということでしょう。この場合の寄港は、紛れもなく核そのものの寄港ということになるのじゃありませんか。
  74. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) この点につきましては、事前協議してこないからないはずだ、そしてアメリカは明らかにしない、そういうことですべての国民を含めた当事者が納得しているというのも一つ政治的な解決方法であり、政治的な知恵であることは否定しないつもりです。したがって、これは日本政治のあり方の問題で、そういう一つの虚構をもってよしとする国民と指導者であれば、それもまた一つの解決方法ではあるわけですが、私は対外関係ということから見ていったとき、その虚構が維持されている間は日米同盟関係は脅かされないわけですが、もしその虚構が破れるようなときに日米関係がどうなるかということを考えますと、SS20が展開し、これに対する対抗抑止力としてトマホークが必要なような状況が現在あるわけですが、私は、まずそのような状況自体を改善するということも一つの方法だと思います。それはヨーロッパにおいて存在するような地域的な米ソの軍備管理、東西の軍備管理というものを極東においても実現し、そのことによってアメリカのトマホークだけではなくて、ソ連SS20も撤去するというような状態が実現することが一番望ましいわけであり、その場合にはあえて非核原則実態を問う必要もないわけです。  しかし、そのような地域的な軍備管理の取り決めがなく、かつSS20が現存する場合においてトマホークの存在を拒否した場合には、極東地域においてはソ連の中距離核の核威嚇に対して有効な対抗策、抑止力という意味では存在しなくなるのじゃないか。アメリカ本土にはICBMがありますが、この戦略核はSS20の選択的な、特に対兵力の核威嚇に対して抑止力として多分機能しないだろう。また、そのゆえにアメリカはヨーロッパにおいてもいわゆるユーロミサイルの近代化という対抗措置をとったのであり、極東においてもこれを相殺するための措置をとりつつあるのであると私は理解しているわけですが、そのような状況において領海通過も寄港も認めないということになった場合に、アメリカの軍艦はトマホークを外して領海を通過し、外して日本に寄港することができるのか、これはできないと私は考えます。  ということは、それを認めなければ日本アメリカに対して要求している核の傘というのは供与されないわけで、一方においてアメリカに対して核の傘を供与せよと言い、他方において供与しようとしたらその行為をとってはいけないというようなことでは、日米安全保障体制というものは成立しない、あるいは日米の信頼関係というものは成立しない。それがどのように崩壊するかということはニュージーランドの例を見れば明らかなことで、そのことを考えると、非核原則というのは一体何のために日本は持っているのか。  これは、私は日本の安全ということを考えると、最悪の場合米ソ間に核投下が行われるようなことになっても日本にだけはソ連の核が直撃しないようにしたいという、安全保障政策としてそういう非核原則をとっているから、一〇〇%ソ連の核の直撃がないという保証が果たしてあるのかという問題がありますし、それから米ソが核投下をするようなときに、日本だけ核の直撃がないということがどれほど意味のあることなのかという問題があり得ます。にもかかわらず、そういう前提に立って非核原則日本安全保障政策として初めて意味を持つし、我々戦略論的な立場からも日本一つの選択として支持し得ると考えるわけですが、非核三・五原則までいきますとこれは行き過ぎであるというふうに私は考えますので、三原則にすればよいことである。確かに領海通過の場合と比べて寄港という場合には日本にとってのリスクはふえるわけです。しかし、陸上への揚陸配備ということと比較すると、やはり質的な差があると言ってよいのじゃないかというふうに考えます。
  75. 志苫裕

    志苫裕君 それは意見が違うので、これは議論はしませんけれども、陸上の配備といっても、今大部分は海で使っておるのです。SS20のお話がよくありますが、私どもは日本SS20が直接向いているとはなかなか思いにくいのでございまして、それは前進配備をしておるアメリカの軍隊、アメリカの装備というものに向いている。日本本土やあるいは港や周辺にそのような配備がなければSS20は向かないのではないかという発想が一部あるので、ちょっとその辺のことをお伺いしてみたのです。  そこで、進藤先生、一番最後になりましたが、今お話の出ました、一体アメリカの核の傘の信頼性というものは先生のあれではいかがなものかということをお伺いしたい。
  76. 進藤榮一

    参考人(進藤榮一君) 大体、核の傘というのですけれども、核の傘の前提に、相手の国が核攻撃しかけてくる、あるいは通常兵力によって攻撃をしかけてくるという前提があるわけです。これは私ども外交史家の間で、最近ようやく戦争直後の外交資料が解禁されまして、特にアメリカイギリス、カナダ、オーストラリアあたりを中心に解禁されているのです。日本でも若干解禁されたそれを見てまいりますと、ソ連の膨張主義というのは当時も言われていたのですけれども、これはやっぱり幻だったのじゃないか。幻だったと言うとまた御反論があるかもしれませんけれども、要するに、極東に関する限りソ連日本を侵攻するとか何とかということは考えられない、これは学術論争になりますのでここでは避けますけれども。  問題は、核の傘というのは、要するに核のおどしと関係してくるわけです。今のはSS20の問題もそうなのですけれども、例えば一九四五年当時、これはアメリカ一国が核を持ってソ連は核を持たないわけです。アメリカソ連外交官に、外務大臣に核のおどしをかけるわけです。ヤルタ体制を修正しろ、ヤルタ協定修正工作に乗り出すのです。これは九月から十二月の時点にかけて乗り出すのですけれども、そのときに当時のアメリカの国務長官のバーンズは、自分の内ポケットあるいは自分のヒップポケットに爆弾が入っていると言うわけですね。おまえたち言うことを聞かなければこれをいつでもぶっ放すのだということを言うわけです。これは外交資料に出てきておりますので、私のつくり話じゃないのですけれども、それに対してソ連の当時の外務大臣も一笑に付すわけですね。もしぶっ放したいのだったらぶっ放してみると言うわけです。そうなりますとバーンズは非常にそこでいら立ちを感じて、フラストレーションを感ずるのですけれども、要するに核のおどしは効かないのですね。  核のおどしというのは、これは一九四五年当時もそうだし、例えばキッシンジャー回顧録を読まれるとおわかりになりますけれども、ベトナムのカンボジア侵攻に対して、キッシンジャーはモスクワとプノンペンに対して核のおどしをかけるわけです。現実に二週間にわたって核警戒装置をオープンするわけです。これは明らかにシグナルとして、いつでも我々は核のボタンを押すのだという一番危ない状況に入ったということをモスクワとプノンペンに知らせるのですけれども、モスクワとプノンペンは一切反応しないのです。ということは、核のおどしというのは、要するに相手方がそれに対して応じない限り、それを本物にとらえない限り効かないのだということですね。  だからこそアメリカが今一生懸命やっているのは何かというと、限定核戦争論という形で戦略論の展開を行うわけです。つまり、核のクレジビリティー、抑止のクレジビリティー、おどしのクレジビリティー、信憑性というものを高めるために本来的に核は使えないので、非常に使いにくいために信憑性というのは失われていくというふうに我々言葉を使うのですけれども、この失われる信憑性を高めるために、限定核戦争を行い得るという戦略の転換を行うわけですね。やるのですけれども、これは一九七五年以降シュレジンジャー戦略のもとに展開されて、日本防衛計画はその中に組み込まれていくわけです。そのプロセスを見まして、しかし、限定核戦争構想を出していってもやっぱり核のおどしというのはなかなか効かない、非常に効きにくい状況に来ている。ましていわんや、今のように核の破壊力その他が増大して一触即発で核の冬が到来するという状況を考えたとき、よほど気違いか、気のふれたような指導者が、例えばホワイトハウスの主人なりクレムリンの主人なりにつかない限り、私は考えられないと思うのです。  それで、つまりそう考えるということは、SS20の問題に関しても日本が核のゲームのルールを受容しない限り、SS20というのは効かないですね。現実SS20が極東に配備されたとき、日本先生方は、SS20が次々に配備されていって、これは日本への脅威を増大する、ソ連日本におどしをかけるのだということを言ったけれども、結局日本がそれに対抗して、それにパラレルな行動をとらない限り、核のおどしは効かないですね。ましていわんや、私が最初に申し上げましたように、今のように核軍事構造それ自体が核過飽和状況にきている。つまり三万個、片方が二万個余りの核弾頭数を持ち、しかも、その一つ一つ核弾頭広島型の数倍、数十倍の破壊力を持っているような現状下において核のボタンを押すことは非常に難しくなっている。  ということは、核戦略展開の中で考えたときに、これからはますます——時間がございませんので論理を省かせていただきますけれども、私、先ほど申し上げましたように、同盟に対して核の傘が差しかけられない事態というのが出てくるのではないか。それが一番先鋭的な形であらわれているのが私は西ヨーロッパだと思うのです。西ヨーロッパ諸国は今幾つかの選択をし、迫られていると思うのですけれども、いずれにしましても、この状況が続けば私は決して平和の恒常的な安定というのは確保されないだろうし、あるいは半恒常的な安定度もなかなか難しくなるのではないか。核の傘に対して、そう単純に信憑性を置くこと自体私はいささか疑問ではないか。それよりも何よりも核のおどしの、核の傘という概念の背後に潜んでいる国際関係の読み取り、戦略状況の読み取りをもう一回少し考え直した方がいいのじゃないかというふうに私は考えます。
  77. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも御苦労さまです。共産党の上田です。  午前中の参考人お二人と、それから午後の参考人四人の方の御意見をお伺いして、かなり日米安保体制についての鋭い意見の対立があるわけで、これは進藤さんが的確に批評されたように、ソ連脅威論についての意見の分岐その他その他多くの問題があると思うのです。  私、七九年にソ連の共産党と会談をやったことがありまして、ちょうどアフガニスタン侵略の直前たったのですが、あれは知らなかったのですけれども、そのとき千島の問題も議論して、本来あれは日本の領土だからやっぱり返すべきなのだというのをかなりやったのです。  ただ、ソ連側が、そんなこと言っても日米安保条約がある、韓国も一緒になっておる、中国もあるじゃないか、もう我々は極東で取り囲まれているのだ、取り囲まれている相手に今千島を返したら一体どうなるか、そういう言い方をしまして、我々はソ連のその言い方をもちろん了承したわけじゃないのだけれども、極東での軍事緊張というのは、アメリカを中心にする日米韓等々の軍事同盟、軍拡、核配備、それに対抗してソ連がかなり歴史的な侵略されたという体験もあって過剰反発をしまして軍備強化をやる、悪循環で広がっていく状況がやっぱり極東にもあると思うのです。その断面を片方で切って、いや、ソ連が悪いと言うだけでは、片方で切ってアメリカだけが悪いと言うのでは問題は解決しないので、歴史的ないろいろな原因があって、我々はアメリカが起動力だと思うけれども、アジアだけじゃなく世界全体の軍備拡張の悪循環をどう切っていくかということが一番大きな問題だろうと思うのです。  そこで、大賀さんにまずお伺いしたいのですが、きょうおいでになるとわかっていなかったものですから、この前のこの会で、「日米共同作戦」、大賀さんもお出になられている、このシンポジウムの中での大賀発言を私は質問したのです。私の取り上げた発言は、これは前回も参考人の方も取り上げたので私も取り上げたのだけれども、かなりこわい発言をしていらっしゃるのですね。問題になったのは、例えば大賀さんの発言で、「作戦の順序としては、当然、北方四島のようなところは、樺太を叩くのと同じで、真っ先に攻撃してもらう対象になります。」、これはアメリカにやってもらうというわけですね。
  78. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) そうです。
  79. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 すると永野さんが、「北方四島はまず徹底的に叩くんじゃないですかね。」と、大賀さんが、「米軍に頼まなくても、日本で叩いてもいいんじゃないですか。」と、永野さんが、「もともとあれは日本の領土ですからね。開戦と同時に奪還するのが常道じゃないですか。」、司会者が、「そうしたら国民の士気は上がりますね。」と、こう言っているわけです。  こういう発言を元海幕長や統幕議長の方々がされて、現職をおやめになった後でも交換されているわけでしょう、ゲラをごらんになって直してもいないわけです。そうすると、北方四島、千島は開戦と同時に奪還していいというふうなことをこうおっしゃって出すと、これは七九年にソ連側が、我々は取り囲まれて大変なのだというようなことを言うのにまさに水車に水を注ぐことで、極東の緊張を激化させるだけじゃなくて、これは政府の方針とも違うのです。これは海外派兵になるのですよ。千島奪還とか、千島をたたけとか、ということになるのだが、ここの点については今の御見解はいかがですか。
  80. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) 私は防衛立場から申しますと、今一番いろいろな議論がされておりますように、先ほど進藤先生は、F15を持っているのはバックファイアをたたくのだとおっしゃった。私はそんなことは思いません。それからP3Cがソビエトの原子力潜水艦を追っかける、これも事実に反します。ただ、日本の今防空を考える場合、一番怖いのはバックファイアじゃなくて足の長い戦闘機を配置していることです。それは樺太でもあるし、千島列島でもある、日本の領土であるそういうところにそういう飛行機を置いているということを私どもは非常に遺憾だと思う。そういうものを放置して防空だけでやっていくということは大変不可能だ。そういう意味で、もし戦争状態に入ったならば、そういう一番近い日本の目の前にいる、しかも足の長い飛行機を置いているようなところはアメリカに先にたたいてもらわなければ日本の防空は成り立たないという意味で申し上げた。
  81. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そういうことを言うと、例えばF16を三沢に置いて、足は九百キロあるでしょう。
  82. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) 何でございますか、F16でございますか。
  83. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ええ、F16。核攻撃ができるわけです。三沢にアメリカが置くわけです。それは日本はのんでいるわけでしょう。そうすると、ソ連の方は、ウラジオから何から核攻撃できるのを置いているじゃないかということになるので、今のは全く問題にならぬと思うのです。  私はこの本を読んで、ちょっと戦争ごっこをおやりになっている感じがしたのです。大賀さんの先ほどの体験的な回顧のお話は、大変私どもも、やっぱり歴史的事実に大体合っていますし、なるほど大体そういうものだったのだろうな、中でお仕事をなさっていた方々がそういう体験を通じてこられて、ガイドライン以後ようやく本格的な戦争態勢をつくり得るところに、あなた方は日本防衛というふうにおっしゃるのだろうけれども、入ってきたというふうにお感じになっていることはよくわかったのです。しかし、どうもそうなってきているだけに今度は本気で戦争をと、その余り北方四島の奪還まで言い出すような危険が出ているように思うのです。  それで、もう一つ大賀さんにお伺いしたいのは、この中で、冒頭のところで日本参戦のきっかけについて論議されているのですね。どういうふうになって日本が参戦するのだろうか。やっぱりここでのお話は、単独でソ連が攻めてくるなんという話は御三家の皆さんどなたもおっしゃっていない。米ソが開戦したときにどうか。大賀さんはこうおっしゃっている。その場合の日本の対応が難しい、アメリカ日本の真珠湾攻撃を待たなきゃならなかったように、過渡的期間が必要だと、真珠湾攻撃の大変役割を果たされた源田さんもここにいらっしゃいますけれども、そういうことをおっしゃっている。  それでもう一つ、米ソの戦争に巻き込まれるという形ですが、体制の戦争で、日本の選択にかかわる基本問題だ、民主主義の社会、体制を守るという戦いと理解すべきだ、つまり米ソ対決になったらやっぱり民主主義の体制を守るために巻き込まれるという形でも踏み込むべきだという御主張としか受け取れないのです。これは日米安保条約の建前とも違う。日米安保条約の建前というのは国連憲章五十一条に基づいて、実際に日本が攻められたときに、それで日本を守るために必要最小限度の防衛作戦をやるのだ、これは憲法に違反していないのだというのがこれまでの政府のずっとしてきた説明です。  ところが、日本一つも攻められていないわけだ。攻められていないのだけれども、米ソ対決で、対決のときには当然これは参戦すべきなのだということですと、結局日米安保条約というのは、日本が攻められたときに最初はアメリカに守ってもらう、だんだん自衛隊の実力ができたので日米共同対処で、日本を守るというのではなくて国際的な米ソ対決、特に中東対決とか朝鮮での対決などで、それが日本に波及したときに当然真珠湾を待つかどうか。あなたは待てと言っているのだけれども、そのときに踏み込んで、積極的に体制を守るためにやるべきだとおっしゃっているのですね。すると、日米安保条約というのは日本を守る条約じゃなくて、建前はすっかり崩壊して、アメリカの戦争に巻き込まれる条約でしかない。我々の主張どおりのことをこの本の中でおっしゃっている。これはアメリカ国会でのウエスト国防次官補とかギン在日米軍司令官などの国会での証言でも、日本が単独で攻められることはあり得ないのだ、これは国際的な対決の中だということを言っているのとまことに符合するのです。まことにこれは日米共同の主張だと思うのですが、いかがですか。
  84. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) それは先生のお読みになり方が少し違うのじゃないかと思います。私は、そういうときに日本が攻められる立場に入るから、そういうことを心構えて日本防衛ということは考えておかなきゃならない、こういうふうに言っているつもりでございます。  これは、先ほどもちょっと村井さんからお話がありましたけれども、過去のいろいろな場合に、ちょっとこういう例は悪いかもしれませんけれども、私、「非武装中立論」という社会党の委員長のお書きになったのを読んだことがあるのでございます。それでその中で……
  85. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は共産党で、社会党と違うのです。
  86. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) いや、石橋先生はこう言っているのです。日本脅威でなければ攻められないのだ、こういう御解説をしておられます。私は、そうではないと思うのです。かつて一九三九年に第二次大戦が起きたときに、オランダはソ連にとってもそれからドイツにとっても全く脅威ではございません。フィンランドも脅威ではありません。リトアニア三国も脅威でございません。それからベルギーも全然ドイツにとって脅威でございません。しかし、そういう戦争の中でそれらの国々が戦略的な要衝にあるがゆえにドイツに攻められた、あるいはそういう目的を達するためにポーランドは分割された、私はこういうふうに思うのです。こういう事態になった場合に、日本列島がもう千マイル南にあれば、私はそんなことはないと思います。余りにもそういった戦略要衝にあるからこそ、そういう危険性があるということを申し上げておるわけでございます。
  87. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 つまり、日米安保条約軍事同盟を結んでいるからアメリカの戦争に巻き込まれるので、これはオーストリアのように、あるいはスイスのように中立条約をちゃんと結んでいれば巻き込まれないで済むし、巻き込まれないだけじゃなくて、そういう戦争の危険を防ぐ上でもっと積極的役割を果たせると思うのですが、これは余りここは議論の場でもありませんので……。  ただ、そうおっしゃるけれども、アメリカの戦争に巻き込まれると、あなたはこの本で言われているように巻き込まれる形で入るわけだ。その準備を盛んにおやりになっているのですね。先ほどの御発言の中でその際いろいろな問題点があるのだということをおっしゃって、例えば対米武器技術輸出問題自体、これは非常に相互信頼を損なうものとして残念だったと言われて、アメリカのロング司令官の言葉などを引かれて、アメリカ側のそういう批判というのは、日本の国家体制に不備、欠陥があると見ているのではないかとおっしゃったのですね。どうもあなたの文脈からいうと、あなた御自身もロング司令官などの批判の根底にある日本の国家体制についての不備、欠陥をどうもお感じになっているように聞きとれたのです。それは国内の制約問題などをもかなり強く言われて、この制約を除かなければ日米共同作戦研究をデベロップすることは不可能だと、そうまでおっしゃった。そうするとあなたが考えておられる、あるいはアメリカが考えあなたも共感されているかのように受け取れる日本の国家体制の不備、欠陥というのは、例えば憲法第九条とか、あるいは専守防衛とか、あるいは集団自衛権が待てないとか、あるいは有事法制日本自衛隊にもないしアメリカ軍にはましてやまだない、そういうようなことがあなたのお考えの中にあるのですか。
  88. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) ちょっと最初に戻って申しわけございませんけれども、当時第二次大戦のとき、ベルギーも中立であったし、オランダも中立であったし……
  89. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、中立条約を結んでないですよ、全然。
  90. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) 中立国であったわけです。
  91. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 違います、違います。
  92. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) いや、そうだと思います。そのことを申し上げているわけです。  それから、今の後段の御説明では、私は憲法とかそういうことを申し上げているより、むしろ有事法制とかそういう問題を申し上げております。そちらの意味で言っております。
  93. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 村井参考人にもちょっとお伺いしたいのですけれども、村井参考人もお話の中で有事法制問題に触れられて、日米共同対処、日米共同作戦法制上の壁があるとおっしゃったのだが、そうするとこれは米軍が自衛隊と、例えば日 本の本土で共同作戦する際にやはり法制上の壁があるので、有事法制の中には米軍がもっと自由に作戦行動できるようなものも必要なのだという御趣旨ですか。
  94. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) いや、それはそういうことがあるかどうか、やはり米軍についても研究する必要があると、有事法制指摘されていることについては、これはむしろ我の訓練等の場合のことを主体に申し上げたつもりでございます。
  95. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 シーレーン防衛共同作戦計画の研究ですね。これはお二人ともおやめになった後、進んでいるとおっしゃったけれども、八二年のハワイ事務レベル協議で、ビグレーというアメリカの統合参謀本部の第五部長がいろいろ詳しい説明をシーレーン防衛作戦についてしまして、そのときに広く報道されたのですが、一千海里シーレーン防衛については日本の海上自衛隊、海空に頼むのだが、一千海里の中の攻勢作戦はアメリカが受け持つのだということを言われて、これはガイドラインの趣旨とも合っていると思うのです。そうなりますと、シーレーン防衛アメリカが攻勢作戦やるということになると、あそこは公海ですから、公海上なので非核原則と無関係に米軍の核使用ということが当然入ってくるだろうと受け取れるのですね。今度の国会中曽根首相が、これは大問題になりましたけれども、公海上で米海軍が核使用する際に、これを日本は排除する立場にないということを何回も言われたのです。そうなると去年の十二月に調印された日本本土での共同作戦計画案とは別に、シーレーン共同防衛の作戦計画の中には、アメリカ海軍の公海上の核使用というのは攻勢作戦の一つとして入る可能性があるのじゃないかと思うのですが、大賀さん、村井さん、お考えをお聞きしたいのですが。
  96. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) 研究の枠組みとしまして、そういう核の問題等については、要するに非核原則立場でやるのだ、こういうことに枠組みを決めてやっておりますので、その点は御心配ないのじゃないかと思います。
  97. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ただ、公海上ですから、シーレーン防衛については非核原則関係ない、公海だから。
  98. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) いや、しかし、対処行動を研究するについてはそういうことは前提になりますよということでございますから。
  99. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) 申し上げます。  シーレーン防衛の問題で一千マイルというお話が出ましたけれども、このシーレーンの防衛というのは必ずしもエリアを分担しましてこれはおれが、日本が全部一千マイルを守るのだ、アメリカはそれは関係ないのだということではないのです。シーレーンの防衛というのは非常に継続的、守勢的な作戦でございまして、そういった海上輸送路の安全を維持するというだけのことでございます。したがって、その中でアメリカの第七艦隊が例えば日本防衛のために行動しても、それは全くシーレーンの防衛とは別の問題だという意味でございます。それが一つでございます。  それから、第二番目に、公海でアメリカが核を使うかどうか、これはちょっと私はわかりません。ただし、常識的に申しまして、海上の作戦で核を使われる公算というのはほとんどない。海上からの対地攻撃は別でございます。しかし、海上作戦自体取り上げてみた場合に、ほとんど核を使うというチャンスはございません。アメリカに今核兵器として残っておりますのは、核爆雷の系統は残っております。これは例えばアスロックに装備されるとかあるいはサブロックに装備される程度のものでございます。御承知のように、新しいトマホークも対艦トマホークは全く核は入っておりません。そういうことはどういうことかというと、非常に誘導精度がよくなった。したがって、すべて海上の戦闘は非核で対応できるようになってきているということでございます。  サブロックの問題はよく問題になるのでございますが、最近のアメリカの公開されている文献でも、ロサンゼルスクラスの新しいのはもうサブロックは撃てなくなっていると書いてございます。それは誘導兵器が進歩したからですね。そういう意味での海上の作戦で核兵器が使われるという可能性は私の判断ではもうなくなっているのじゃないか。  ただし、ソビエトの場合は、まだ誘導精度その他に問題があるというので、ソビエトの対艦SSMにはまだ核が装備されておりますが、アメリカの場合はトマホークにはもう核は対艦の場合ございません。それからサブロックもマーク48とか、そういう魚雷の進歩によって新しいロサンゼルスクラスでは撃てなくなっているというふうに理解していただいていいのじゃないかと思います。
  100. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう余り時間がございませんけれども、核軍拡問題で伊藤参考人と進藤参考人に一問ずつお伺いしたいと思いますので、ちょっと時間が延びるかもしれませんが、簡潔にお答え願いたいと思います。  三・五原則の問題で志苫さんからも質問がありました。中曽根首相も就任直後そういう種類の発言があったという新聞報道もあったのですけれども、今のあなたの言われる三・五原則でも現にどんどん入っているし、エルズバーグの証言したように八年間岩国に核爆弾を積んだ船までいたということもあり、カールビンソン、ミッドウェーそれからトマホークを積んだ攻撃型原潜、巡洋艦、駆逐艦等々、それから横田、嘉手納などに核の中継着陸など恐らく現にあると思うのです。あなたの言われるように、それを三原則に〇・五削りますと、本当に公然と日本核基地が進む。そうすると、私が先ほど申し上げた核軍拡のアジアにおける悪循環、ソ連側のSS20の一層の強化がもっと進むのじゃないか、そういう危惧を持つのですが、その点をどうお考えになるかです。  それから進藤さんには、一つの今の非常な危険な、先ほどおっしゃった核の冬ということまで心配されているのではなくて、アメリカの国防総省まで認めるという大変な事態にあるのですが、この核軍拡の悪循環をどうストップさせるか。三月十二日から米ソ交渉がジュネーブで始まりました。ソ連側は、例えば私どもとの去年の共同声明で核全面禁止、核廃絶をやろうということを表明したし、それからレーガン政権もSDIと結びついてはいますけれども、三十年ぶりにアメリカの政権としては初めて核兵器はなくした方がいいという態度表明をして、一月九日の外相共同声明では、今度の交渉であらゆる分野の核兵器を廃絶しようということが共同で書き込まれたという点では非常に重要な時期だと思うのだけれども、同時にそれに背く動きもいろいろな方向で米ソ双方ともいろいろあると思うのです。こういう時期にこの危険な状況を阻止するためにどういうことが必要か、また望ましいかという点です。  以上二点、簡潔にお願いしたいと思います。
  101. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) 御質問の前提となっている御認識ではそういう事実はあるけれども、これを現在のようなすれ違いというか、虚構で処理しておく方が、せめてはっきり三・五を三にするよりは歯どめという意味意味があるから、そういう虚構でも虚構の方がよいのじゃないか、こういう御趣旨でございますか。
  102. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 我々は虚構だから、もっとはっきり本物の非核原則にしろという立場ですけれどもね。我々はもっと厳しく、あなたは緩めろという。
  103. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) しかし、その場合の日米関係は、私は少なくとも安全保障条約は多分破棄されるだろうと思いますが、その点はいかがですか。
  104. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大変歓迎しますよ。
  105. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) そういうことであれば、おっしゃるようなことで結構かと思いますし、それから、私の方も三・五を三にすることが、そういうなし崩しの軍拡につながるものであってはならないという認識では一致するわけで、ただ私は、三・五を三にするときには当然そういったなし崩しにならないようなあらゆる歯どめをはっきりさせた上ですべきであると思いますので、そのような御心配はないのじゃないかということが一つ。  それから、その点の危惧を本当に取り除こうと思えば、それは、実はヨーロッパにおいて存在するような地域的な軍備管理交渉をやはり極東においても米ソ間でやってもらう必要がある。そして、その中でトマホークもSS20も両方とも撤去してもらう、これが解決の正道であって、それを踏まないでなし崩しになるから虚構の方がよい——先生の説では虚構云々ということじゃないのですが、虚構の方がいいのじゃないかという選択をするということは、私は選択しない、こういう趣旨でございます。
  106. 進藤榮一

    参考人(進藤榮一君) 大きく言って二つあります。  一つは、今の軍事力というのは核と非核が区別できないものになっている、非常に区別しがたいものになっている。先ほど私はP3CとF15の機能に関して申し上げましたら、大賀さんの方から反論がなされましたけれども、これはペンタゴンの方で公的にあるいは非公的に出ている記録によってもはっきり確認されるのであります。つまり、これは非核通常兵器なのだけれども、核兵器の中に、核戦略体系の中に組み込まれる機能を持っているわけです。これはC3Iというのですが、CキューブドIというのですが、コマンド・コミュニケーション・アンド・コントロール・インテリジェンス、この機能が今の核戦略体系の核戦力の軸になってきているということになりますと、オール・ウェポンズ・システムというのですけれども、要するに核、非核と区別できない状況というのが出てきているわけです。そうなりますと、軍縮の動きというものを核軍縮に限定するのはいささか考え物ではないか。むしろ、例えば日本がなぜ片方で核軍縮を主張しながら、片方で通常兵力の軍拡を進めているのかということが問い直されてくると私は思うのです。  これは、おけに水を入れていって底が抜けてしまっている状況でありまして、かつて、鈴木総理大臣がニューヨークに核軍縮総会に行って核軍縮を訴えたとき、ニューヨークタイムズがいみじくも評したのですけれども、ミスター・ゼンコウ・スズキはニューヨークに自国の軍拡を弁護するために軍縮を訴えにやってきたというこの表現がまさに当たっているのであります。ですから私は、なぜ日本の軍縮を矛に置いたまま核軍縮政策を進めるのかという点に非常に素朴な率直な疑問を感じます。  二つ目に言えますのは、野党、与党を含めて、私はやはり外交関係の打開だと思うのです。平和的な国際環境をつくり出すこと、これは何よりもやっぱり対ソ協調だと思うのです。かつて六〇年代、中国脅威論というのが盛んでありまして、日本安保は中国からの脅威に対処するためだといって、米中で手を結んだ途端に今度は主敵が中国からソビエトに変わってしまうわけです。五年ぐらいの間隔を置いて変わってしまうわけですけれども、この歴史的なプロセスを見てはっきりわかりますのは、敵というのは軍事力によってつくり出されると同時に、我々の方の意図ほよってつくり出されるのであって、外交関係に対する打開の努力なくして国際緊張の緩和はあり得ないし、軍縮への動きは進まないだろう、その点を与野党ともに私は銘記すべきじゃないかと思うのです。核軍縮を叫ぶことは、総理大臣が幾ら叫んでも、私はこれは率直に言って余り意味がないと思うのです。なぜかなれば、片方で核軍拡を支える通常軍拡を進めているわけでありますから、この点に対して特に強い喚起を私は促したいと思います。
  107. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  108. 柳澤錬造

    ○小委員外委員(柳澤錬造君) 大分お話がエキサイトしてきていますが、私は大変やさしい民社党の方ですから。非常にきょうは勉強になりましたので、それをさらに深める意味で、それぞれ皆さん方にお聞きをしてまいりたいと思います。  村井参考人には、もう現職を引かれたからよろしいと思ってお聞きをするのですが、日本の国はシビリアンコントロールというものが確立しているというふうにお考えになっているかどうかですね。それで、これは私は二回ほど国会の中でも予算委員会で聞いたことがあるのですけれども、総理が統幕議長ぐらいにせめて週一回ぐらい会って、いろいろとそういう世界軍事情勢について話を聞いておいたらどうかと。大平総理の時代なんかほとんどどうも私が聞いた範囲ではお会いをしていないようですし、それから鈴木総理になってから今度は直接聞きましたら、いや、私が総理になって七カ月問になるが、七回ぐらいあると、こう答弁があったのです。そうしたら後ろの方で、いや、あれはパーティーで会ったのも数えているのだろうと言ったくらいなのですが、村井さんは現職の統幕議長のときに、総理との関係ではどの程度そういうぐあいでお会いしておったですか。
  109. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) 回数的には余り誇るような回数はなかったと思いますけれども、ただ国防会議等にももちろん陪席させていただきましたし、それからごあいさつ等で、そうすると前後四回ぐらいお会いいたしておりますでしょうか。そういうことで、ただ、私が会わなくても、私たちの気持ちをよく承知されております長官なりあるいは事務次官、それからまた国防会議の事務局長あたりが、割に近しい人が最近ずっと続いておられますので、そういうような方等を通じて相当掌握されておるのじゃなかろうか、こういうふうに思っておりますが。
  110. 柳澤錬造

    ○小委員外委員(柳澤錬造君) いや、私がそういうことを聞いたのも、東京サミットのときに西ドイツのシュミット首相が日本の総理に、いよいよソ連極東SS20の配備をいたしましたよといって耳打ちをしてくれた。ところが、時の日本の総理は、SS20と言われてもそれが何だかさっぱりわからなかった。それで防衛庁のあれに確かめたら、時間的に言うとその前日に総理に話してあるとは言っているのですがね。しかし、前日にそんなような話をするところに、少なくともこれだけの日本の総理だったら、世界的なそれこそ政治も経済も軍事もいろいろな情報を頭の中に入れておいて物事を判断してもらわなければならないのです。そういうことについてそういうふうな理解や判断では困るので先ほどのようなことを聞いたわけなのです。  それからもう一つお聞きしたいのは、有事法制のお話が出ましたが、これは政府国会有事法制検討をするということを約束をしたのです。したけれども、そのうちにまたそれもうやむやにしてやめてしまいましたのです。恐らく当時統幕議長をなさっていたのじゃないかと思うのですけれども、その辺についてはいかがでしたか。
  111. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) いや、決してとぎれておるのじゃないというふうに理解いたしておりますが、ただ、今、今後進める方向として出ておりますのは、先ほどもちょっと申しましたけれども、割に、自衛隊には非常に関係がある、自衛隊の行動には非常に関係あるのだけれども、所掌が直接的には防衛庁じゃないという感じのものが多く残っておるようであります。しかし、いろいろ下請の研究はやっておるというふうに理解をいたしております。
  112. 柳澤錬造

    ○小委員外委員(柳澤錬造君) 伊藤参考人にお聞きしたい。  二点聞きますが、一つは、西側の一員という立場にあるので、それから離脱するということは我が国のGNPが半分ぐらいになるということを覚悟しなきゃいけないのだと言われましたその根拠といいますか、その背景というものはどういう観点からそういう御判断をなさったかということをお聞きしたい。
  113. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) これはスイスのように既に過去何世紀も中立という立場をとってきているいきさつがあったり、あるいはオーストリアのように戦後処理の一環として、ヤルタ体制の一環として中立国になったというような経緯から中立国になる場合はともかく、これから日本が西側同盟を離脱して中立するということになるときは、これは世界のバランス・オブ・パワーに重大な衝撃を与える安全保障上、国際政治上の重大事件であることは言うまでもないことです。そういう事件を現在のような政治、経済、安全保障等が一体不可分化している国際秩序の中で考えると、単に対米黒字が三百七十億ドルになったというだけでこれだけ緊張する日米関係というもの一つだけをとってみても、あるいはニュージーランドのようにアメリカから見てほとんど、蚊がとまった程度の痛みしか与えない国があの程度のことを言っただけでもアメリカでどのような反響が起こったかということを考えれば、日米関係が単に安全保障上の提携関係を解消するということだけで済むとは思われず、日米経済関係に重大な障害が起こってくるであろうし、それが西側同盟全体の中で、西ヨーロッパ諸国に対しても影響を及ぼすであろうことは容易に想像できるわけです。  そのときどのような攪乱効果が経済的に起こるか、これはシミュレーションをやってみないとわかりませんが、私が直感的に先ほど申し上げたところでは、そのプロセスは数年あるいは十年ぐらいかかって完成するのかもしれませんが、最終的には、日本は現在のような世界的経済大国として振る舞い続けることを期待して西側同盟を離脱するのであれば、余りにも無謀というか、軽挙妄動ということになるのではないか。概して、それから一般論として、中立国というのは大体政治的にひっそりとおとなしく、言いたいことも言わずに身を処するのは当然のことながら、経済的にも世界の大国になるようなことは考えるべきではないのですね、中立国になる以上は。中立国になる以上は、経済的にもひっそりと世界の片隅で暮らす。したがって、国民の気風、精神的な気風としても退嬰的になり、覇気や野心を失うということがどうしても伴ってくるわけです。  これはそういうことからいえば、単に軍事政治、経済だけじゃなく、文化的な問題にすらも影響を与える問題なわけで、そういうことを考えてみると、中立によって得られる安全とか平和というものが極めて確実であり、かつかけがえのないものである。それによってしか平和と安全が確保されないということが余りにも明白であるという場合には、やむを得ない最後の手段、国策の選択であるべきで、安易な選択の対象として考えるべきものではない、このように考えます。
  114. 柳澤錬造

    ○小委員外委員(柳澤錬造君) もう一つは、日ソ関係だけ改善しようといってもそれは不十分だ、西側全体とソ連関係を改善するようにしていくことが必要で、そういう中から日ソ関係もよくなっていくのだというお説を言われまして、これは一つの平和戦略というか、そういう意味で大変大事な点だと思うのです。  ただ、そういうふうに進めるについてのプロセスとしてどういう手順を踏んだらよろしいのかということで、何かお考えがあったらお教えいただきたいのです。
  115. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) 逆説的でありますけれども、やはり西側の連帯を固めるということが第一に必要だろうと思います。西側の足並みが乱れている状況ソ連との関係を改善することはできないと思います。  ただ、西側の連帯がどのような方向で固まるかということが問題なわけで、私は、レーガン政権の政策がそうであるとは断定いたしませんが、したがってレーガン政権ということではなくて、アメリカ政策には、これは逆にソ連の側に立って見ると、アメリカという国は自分がナンバーワンでないとおさまらない空気というのが、政府だけじゃなくて、むしろ国民、議会の中にありまして、現在の日本に対するアメリカのいたけだかの態度というのはそこから来るわけでございますが、経済問題と軍事問題、性質は違いますが、多分ある程度ソ連の側に立ってアメリカと交渉してみると、例えばジュネーブの軍縮交渉へ行ってみると、ソ連人の目に見えるアメリカというのは、今経済交渉で日本人の目に見えるアメリカのようなところがあるかとも思います。したがって、そういうアメリカというものに、日本としては西側の団結、連帯を確保しつつも、確保すればこそ、どこまでも一〇〇%同調するということじゃなくて、どのようなアドバイスをしていくか、あるいは問題によっては日本だけではアメリカを説得できないということであれば、ヨーロッパ諸国と話し合った上で一緒にアメリカを説得するとかいうような行動というのが可能であり、また、そういうところに日本の果たすべき役割というのが出てくると思います。
  116. 柳澤錬造

    ○小委員外委員(柳澤錬造君) 進藤参考人にお聞きしてまいりたいことは、これを一つの平和戦略への道という意味でお聞きするのですが、いわゆる米ソの核、五万数千発持っているということになっているわけですけれども、これをどうやって減らしていって、将来これは全部なくなれば一番いいことなのですけれども、そういう方向に持っていくについての手段というかプロセスとして考えられることがありましたらお教えをいただきたいのです。
  117. 進藤榮一

    参考人(進藤榮一君) 民主社会主義の基本理念でありますけれども、フェビアン主義というのがありますね。つまり漸進主義というものですね。これしかないと私は思います。つまりふやさないことだと思うのです。減らすことはとても難しいですね。ふやさないことすらできないのになぜ減らすことができるのかというふうに逆説的に問い直すことができるのでありまして、つまり、そのためにはやっぱり私はニュークリアフリーズという言葉で呼ばれますけれども、核凍結がまず最も近道だと思いますね。これはアメリカの一部でもかなり根強く残っている運動であるし、民社党筋でも相当ある働きであります。もちろんソ連は、この点に関しては繰り返し西側に対してボールを投げ続けているのだけれども、レーガン政権は全然こたえませんですね。これはやっぱり一つのキーポイントだと思います。これを実現すること。  それから、さらにつけ加えれば、核実験凍結とかあるいは幾つかありますけれども、そういう形で核軍縮におけるフェビアン主義の投入というのか、それをもっと民社党さんが加えてやるべきじゃないかというふうに私は思います。それは日本のとるべき道があると思うのです。私どもは占領時代の習性というのか、アメリカの言うなりになり過ぎてきていると思うのです。やっぱりアメリカと対等につき合う、もっと自主外交をなぜ展開しないのかと思うのです。日本の利益というのはあるのであって、それを私はアメリカ軍事戦略と一緒にやっていけばそれで日本の国益が増大するのだ、日本国民の生活がプラスになるのだという考え方というのは、もう私はやめていただきたいというふうに考えます。日本独自の立場でもっと積極的にアメリカに対して発言すべきじゃないか。そうしない限り、日本アメリカ防衛のおんぶにだっこをしているのだという形でアメリカの恩をそのまま受け入れて、日本が相当な軍事上の利益をアメリカに与えているにもかかわらず運命共同体的な論法で処しますと、これは貿易摩擦において幾らでも相手側は要求を突きつけてくると思います。これは外交のタクティクスとしては非常にまずい選択を日本は今とりつつあるのではないかなというふうに私は考えます。
  118. 秦豊

    ○秦豊君 大変どうもお疲れさまです、私で打ちどめですから。私の立場は政党には無関係、クールなインディペンデンスです。  村井さんにまず伺いたいのですが、あなたの持論を演繹すれば、統幕議長というもののあり方は軍令の頂点たらしめよ、陸海空三幕の幕僚長と横並び一線、分列行進のまねごとはもう不十分である、したがって、あるべき理想像はなるべく速やかに防衛庁設置法、自衛隊法、いわゆる二法をあなた方の感覚では改正して、統幕議長をして軍令の頂点たらしめよと、これが常識ですね。
  119. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) なるべく速やかにという辺がちょっとニュアンスが違うのでございますけれども、私はやはり作戦様相といいますか、近代戦の要求から最終的にはやはりそこに持っていくべきであるというふうに考えております。
  120. 秦豊

    ○秦豊君 あなた方の価値観では当然でしょうね。  それから、今千九百幾年に実現されるかはわかりませんが、あなたの統幕議長在任中の実感を基礎にしてお答えいただきたいのだけれども、恐らく近いうちに日米の統合訓練というものが施行されるわけですが、私たちはその前に、日米合同のCPXを一、二回積み重ねて実動部隊を動かす統合訓練に進むという発展階段が必然なのか、あるいはもうこの階段まで練度が高まってくれば、一九八六年、例えば明年くらいを基準にするともはや日米統合訓練、実動部隊を動かす訓練は可能だとお考えですか。
  121. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) 地域の問題、それからそれまでの積み上げ等の問題からなかなか難しいのじゃないでしょうか。まず、やはり司令部機構の訓練、こういう感じでございますね。
  122. 秦豊

    ○秦豊君 両三年はまだ無理ですか。
  123. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) 私はそういう感じを持っておりますが。
  124. 秦豊

    ○秦豊君 それからさっき、私の聞き違いでなければ、村井参考人がお述べになった概論の部分で、日米双方の作戦実施上のいろいろな問題については研究をしているというふうな意味の御発言があったのですが、私の理解では、日米共同作戦計画というのは政府のトップによってサインが終わった。それを作戦準則というもので集大成しないといけない階段が来るというふうに私は認識しているのです。だから村井さんの言われたのは、いろいろ今作戦上の細かいものを詰めて両方で話し合っている、まとまったらそれ全体を作戦準則と呼ぶのですか。
  125. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) 私は、必ずしもそういうふうに申し上げたようにはちょっと思いませんけれども、要するに先ほど申したように、日米共同作戦計画というものはまだ非常に寸足らずなところがたくさんある、しかし、これは日米両軍が共同して作戦するための準縄をなすものであるという位置づけをいたしております。それで、ほかのいろいろなそれに関連する研究というものはだんだん詰まるに従ってその計画の中に埋め込まれていくべきだというふうな感じでおりますが。
  126. 秦豊

    ○秦豊君 なるほど。つまり今第五空軍と日本の航空自衛隊との間にはいわゆるDEFCONのレディネスステージ、共通の準則があります。もし今村井参考人が言われたようなことができ上がりますと、陸上自衛隊ともあるいは海上自衛隊とも対応する米軍部隊の間に即応体制、レディネスステージの共通の階段ができるというふうに理解していいですか。
  127. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) その辺は余り端的に申し上げるわけにまいらないと思いますが、いずれにせよ共同の準備事項等について、具体的にどういう段階でどういうことをするかということを研究していることは事実でございます。
  128. 秦豊

    ○秦豊君 それから、さっき志苫委員に対する御答弁の中で、日米共同作戦研究は一つの場としてというふうな意味の御発言がありましたね。この一つの場というのはエリアなのかあるいは設想なのか、この辺どうなのですか。
  129. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) はっきり申し上げて、一つの設想というふうにおとりいただいた方がいいと思います。
  130. 秦豊

    ○秦豊君 設想ですか。それならわかります。あなたは御心配になって発言されていましたけれども、実はあなたの言葉を借りれば来援基盤の強化、私も数年前から質問主意書でこれを追っています。ついに去る四月十六日の参議院外務委員会において栗山外務省北米局長が私の質問に答え、また防衛庁の説明員が、その場合は局長はほかの委員会に行っていましたから、が共通して述べたことは、私は来援基盤という専門用語は使わなかったが、あり得べきこれこそ設想として、可能性として部隊単位の重装備ないし中装備の日本内地への事前集積制度、ポンカスの可能性について問うたところ、栗山局長は、あり得る、すべて否定し切れないと、防衛庁は望ましいと、こういう答弁が国会の議事録に記されて、ポンカスではついに政府側はそこまで踏み切ってきたという印象です。  それから、その次にもうちょっと村井さんに伺いたいのですが、つまり中央指揮所というのは、これはまだ空間、単なる建物ですね。これはこれから中央指揮所の運営自体をトレーニングする必要がある。単に檜町と横田が連接されるだけでは私は日米共同作戦展開はできないと思います。おもちゃだと、段階としては北東アジアあるいはグローバルな、将来はやはりナブスター衛星も連接されようというときのWWMCCS、グローバルな戦略通信情報指揮統制システム、これと中央指揮所が連接をされるという実態が裏づけられなきゃ中央指揮所はアクセサリーでしょう、軍事的にはそうじゃありませんか。
  131. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) 必ずしもアクセサリーとは思わないのだけれども。
  132. 秦豊

    ○秦豊君 いやいや、そうならなければですよ。
  133. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) だから横田に全幅の信頼を置くという格好になりましょう。横田と結ぶことによって十分我が国の防衛ということに焦点を合わした共同作戦というものが遂行できるというふうに感じております。
  134. 秦豊

    ○秦豊君 横田が窓口で十全ですか。  それから、大賀さん、あなたに伺いたいのですが、あなたも言われましたように、同僚議員にもお答えがあったのですが、掃海能力については海上自衛隊はかなりなものだと思います。けれども、機雷敷設能力というとアンバランスだと思います。第一に備蓄機雷も昨年度ぐらいで四けたにやっとなった。もちろんあなた方にそれは頭に詰まった機密事項だから答弁は期待しないが、恐らく一千五百個以前だろうと思います。それも水雷調整所の機能からすると、即応体制にある機雷なんて問われたら現在の海幕長は答弁に窮するのじゃないかな、総理から聞かれても。と思いますけれども、三海峡封鎖なんて俗に使っていますね。いともイージーに使っているが、これは自衛隊単独でできるのですか。
  135. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) 私は先生の御指摘のように機雷が一番使いやすい、いろいろな使用条件はあると思います。そういう意味では対馬と津軽は日本独自、独自というといろいろな条件がありますから言えませんけれども、日本独自でできると思います。しかし、宗谷海峡については不可能でございます。
  136. 秦豊

    ○秦豊君 今の大賀さんのたった一言でも非常に新鮮なのですね。率直と言うべきかな。防衛庁の局長とか防衛庁長官か、あるいは外務省の関連局長と十年間議論してもこんな答弁は絶対に返ってこない。
  137. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) ちょっと訂正しなければいけませんか。
  138. 秦豊

    ○秦豊君 とんでもない、もはや遅い。同僚議員も実感していると思うのです。非常に新鮮さを感じます。結構です。それであなたの立場はいいのです。  それで、もう一つあれしますと、防衛論議というのは相対性ですね。仮に宗谷を設想し、宗谷に二千個、三千個、数千個の機雷を、高性能のキャプター機雷を含めて主として米軍のC130ハーキュリーズとかオライオンの助けを借り、B52D型がグアムから出撃をして急速敷設をする、自衛隊が少し助ける、この場合は少し助けるぐらいです、能力は。その行為が行われた場合の、もちろん宗谷海峡の北半分も含めてですよ、この場合のソ連側の対応は、日本を含めた共同敵対行為、対ソ連軍事行動と見るのは軍事常識のABCのAじゃないのでしょうか。どういう対応をとると専門家はお考えですか。
  139. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) ちょっと条件が、いろいろな条件が……。
  140. 秦豊

    ○秦豊君 無数のシナリオはあろうが一般論としてどうですか。
  141. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) アメリカが独自でやるという意味でございますか。
  142. 秦豊

    ○秦豊君 ええ。
  143. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) もちろんそれはアメリカとソビエトの関係がそういった戦争状態に入っている。
  144. 秦豊

    ○秦豊君 日本もかなり支援行動するのですよ、空、海、陸上からも。
  145. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) 海峡で。
  146. 秦豊

    ○秦豊君 ええ、宗谷で。
  147. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) 宗谷に日本が何を今お手伝いできるのかわかりませんけれども、私の感性ぐらいの情報じゃございませんでしょうか。
  148. 秦豊

    ○秦豊君 ソ連側の対応が抜けているが。
  149. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) ソ連は来たものは撃ち落とそうとするでしょう。
  150. 秦豊

    ○秦豊君 当然機雷せきを急速に造成した場合、その機雷せきごと吹っ飛ばそうという対応ぐらいは軍事常識でしょうね。
  151. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) 機雷せきごとというのはどういう……。
  152. 秦豊

    ○秦豊君 機雷せきすべてを破砕する、通峡能力を確保する。
  153. 大賀良平

    参考人(大賀良平君) それは、入ったものに対して排除するという意味では当然そうだと思います。ただ、これは機雷の使い方、専門的になりますけれども、非常に狭いところ、ある程度のところだけ開けばいいわけです。全部開く必要はないと思います。日本もそうしてまいりました。六百メーターとか千メーターとか、そういうところを開いて通す。まず先に機雷を掃海するということはそういうことになると思います。
  154. 秦豊

    ○秦豊君 それからまた村井さんに質問が返りますけれども、今檜町では五九中業と陸上自衛隊の師団の改編問題がある。私、既に二週間前に質問主意書にまとめて政府側に問うておりますが、答弁を延期してもらいたいという要請だけは来ておる。とにかく今、師団の改編問題が恐らく陸上自衛隊では一つの焦点ではないかと思われますが、陸出身の村井参考人は五九中業の中に具体的に反映さるべき陸上師団の改編の限度、可能性、どの程度はやるべきだとお考えですか。
  155. 村井澄夫

    参考人(村井澄夫君) ちょっと五九中業のあれは全然なにしておりませんので、全くの私見ということになると思いますが、基本的には十三個の単位があるわけです。北海道に御案内のように四個の単位があるわけでして、四個の単位ではとてもじゃないがだめだ、質的な問題は別としましても。そういうことで勢い内地から増援せざるを得ない、例えば北海道を考えた場合に。そうなりますと、質的にはやっぱり等質性を理想とするということが一つ、質が同じということが必要だということと。  また、矛盾する話になるのですけれども、例えばソ連が来るとして、あるいはもっと言葉をかえて、今国際的に進んだ質あるいは量を備えた国際級の師団、作戦部隊というふうにおとりいただいた方がいいと思いますが、そういうものに十分対抗できる師団が果たしてどの程度あるかということになると、これは三分の一と言い、四分の一の力と言い、いろいろありますけれども、そういうことでありますので、師団自体も相当能力アップしなきゃいけないという要請もあるわけです。ところが、それを十八万の中でこなすということになりますと、これは神わざということにも相なる。その辺に非常にジレンマがあるというふうに思っております。ただ、今のままでいいということは私は毫も考えておりませんでした。これはその組織の中で、その師団の中で戦う隊員諸君に対しても非常に国家として私は無責任なことだ、今のまま放置すれば、そういうふうに思っておった次第です。
  156. 秦豊

    ○秦豊君 なるほど、今、国会と陸上自衛隊との関係、こういうことをクールに見ると、政治の側が自衛隊に与えている防衛期待度というのは分明じゃないのです、これはぼやけっ放しなのです。予備隊、保安隊の時代は問わないけれども、自衛隊現状政治の緊張関係からすると、政治の側は作文は与えているが、やはり防衛期待度、つまりシビリアンコントロールなんて議論しますけれども、実際のシビリアンコントロールのあるべき理想像というのは、例えばイギリス議会と軍部との関係のごとく、イギリスの国防省が予算を決めるのじゃなくて、イギリス議会がNATO正面に幾ら、海峡防衛に幾ら、グレートブリテンの島嶼部防衛に幾らと割り振って、そしてトライデントの購入数まで決める、これがあるべきシビリアンコントロールの当たり前の姿なのだ。我が国では残念ながら実現はしていないだけの話なのだ。  そこで、お二人の制服の方にもっと聞きたいのだけれども、時間があれだから、伊藤参考人に一問だけ。さっきから皆さんずっとおっしゃっています。伊藤さんの論文も私二、三読んでいますから。  そこで、この間、私の質問において中曽根総理に、九月の国連総会は今度は大きなエポックになっていろいろなそれこそ拡大ワイドサミットになるのだから、あなた行きなさい、行ったときにはサミット加盟国じゃなくて、まさにゴルバチョフと二度目の会談をするぐらいの意気込みで行きなさいと言ったら、それを含めて検討しますという答弁が返ってきましたけれども、その霞が関とソ連外務省との間はグロムイコ来日だけが目的意識化され過ぎてちょっとバランスを欠いているのですね。だから、具体的に伊藤さんからは霞が関外交日ソ外交について霞が関から欠落をしているもの、具体的に。例えば信頼醸成措置を聞いても全く欧亜局長なんか関心ありませんよ。実現不可能、だめ、こう非常にはっきりしている。対ソ外交に欠落しているもの何でしょうね。
  157. 伊藤憲一

    参考人(伊藤憲一君) 欠落しているものというふうに質問されますと、あら探しのような形になりますが、実は私、ブラッセルの会議に四月十二、十三日出る直前に八日間モスクワに行ってまいりまして、それで我が方の日本のモスクワ大使館のあっせんで、ソ連側の研究所及び外務省の要人とも会談してまいりました。私は、二十年前に三年間いたものですから二十年ぶりのことです。この二十年間に何が変わったのか、あるいは何が変わらなかったのか、非常に私自身興味があったわけですが、一つ思ったことは、ソ連側の要人がかなり、言っていることは協調論ですけれども、接し方がフレキシブルになった、人間味が前よりは出てきたということを感じたのです。そういう中で、ゴルバチョフ新政権の登場などとも絡めたりして、ソ連に対する期待感というものがあるわけです。  ただ、外務省ということになりますと、これはやはり例えばグロムイコの来日について見てみますと、日ソ外相の相互訪問ということは、日本の外務大臣ばかりが向こうへお百度参りするというような状況を改善することは、外から見ると、そんなことはどうでもいいじゃないか、それで改善するのなら日本の外務大臣が何回でも行ったらいいじゃないかというふうに考える方がおられると思いますが、しかし、外交の実務というものは積み重ねでございまして、それも小さなことを五年、十年と積み重ねて一定の効果が初めて出てくるということでございます。私は、グロムイコ来日を外務省が非常に固執しているようでございますが、実務当局としてはこれはやはりそうなきゃならないのじゃないか。  ただ、あえて秦先生の御質問なので、欠点を探すということじゃなくて、希望ということで言えば、外務省は欧亜局あるいはソ連課というところがソ連外交をやっていますが、グローバルにより高いレベルで、次官とか大臣とかいうレベルで、例えばおっしゃるように九月に国連でゴルバチョフと会えるなら会う、それを突破口にするというようなことを総合的に考えることは、総合的判断の結果として必要かとも思います。しかし、それがまた実務当局が積み上げてきたものを不用意な措置によって一挙に覆してしまうとか、取り返しのつかない結果に導くということもございますので、総合的調整と申し上げたことは、実務当局を含めて、しかも最高レベルの判断を入れながら、特にソ連のような国を相手にするときは非常にデリケートな判断を要する問題であろうかと思います。
  158. 秦豊

    ○秦豊君 委員長、最後に一問だけよろしいですか。  進藤参考人、よく所論は拝見しているつもりで、たまにしか読み落としてないと思います、あなたの御意見は。だから、きょうの展開はよくわかったのですが、実はさっきからの議論の中で、アメリカの国防総省の八四会計年度から八八会計年度の国防指針ですね、ディフェンスガイダンス、これはワインバーガーがはっきり署名して、そのことをスポークスマンが裏づけています。いわゆるホリゾンタル・エスカレーション・ストラテジーというか、水平的拡大戦略とも俗に訳していますけれども、これがやはりいろいろなところの下敷きに相なっており、日米安保体制現実に引っ張っているし、将来方向としても引っ張っていくという、その意味じゃ非常にきな臭い構想の中に我が国が位置しているわけです。これがなぜかこの二、三年、八四年だから、日本で小さく報道されたのは二年前ですけれども、日本のマスメディアの感度は非常に悪かったのです、率直に言って。国会論議でも、私もたまにやりましたけれども、時間がなかなかないから、いつも欲求不満で抑えているのです。この水平拡大戦略が今後日米安保をさらに危険なものに変質をさしていくベースになると私はしつこく見ているのですけれども、参考人の御意見を伺って終わりたいと思います。
  159. 進藤榮一

    参考人(進藤榮一君) 非常に恥ずかしいのですけれども、私、十分勉強しておりません。逆に教えていただければと思います。
  160. 秦豊

    ○秦豊君 後で、じゃデータを差し上げます。  終わります。
  161. 安孫子藤吉

    ○小委員長安孫子藤吉君) 以上で質疑は終わりました。  四参考人に対してお礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、まことにお忙しい中を本小委員会に御出席を願い、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとう存じました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の本小委員会調査参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時四十一分散会