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1985-06-19 第102回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年六月十九日(水曜日)    午前九時四十三分開議 出席委員   委員長 小川 省吾君    理事 北口  博君 理事 野田  毅君    理事 山崎平八郎君 理事 渡辺 省一君    理事 多賀谷眞稔君 理事 中西 績介君    理事 斎藤  実君 理事 小渕 正義君       金子原二郎君    久間 章生君       古賀  誠君    自見庄三郎君       松田 九郎君    三池  信君       三原 朝雄君    岡田 利春君       細谷 治嘉君    宮崎 角治君       滝沢 幸助君    小沢 和秋君  出席政府委員         通商産業大臣官         房審議官    高木 俊毅君         資源エネルギー         庁石炭部長   高橋 達直君  委員外出席者         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     有吉 新吾君         参  考  人         (石炭労働組合         協議会会長)  野呂  潔君         参  考  人         (産業情報研究         会会長)    田中洋之助君         参  考  人         (北海道大学名         誉教授)    磯部 俊郎君         商工委員会調査         室長      朴木  正君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 小川省吾

    小川委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  今後の石炭対策について調査のため、本日、参考人として日本石炭協会会長有吉新吾君、石炭労働組合協議会会長野呂潔君、産業情報研究会会長田中洋之助君、北海道大学名誉教授磯部俊郎君、以上四名の方々出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小川省吾

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 小川省吾

    小川委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人におかれましては、今後の石炭対策につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、各参考人からそれぞれ二十分程度意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得て御発言を願います。  それでは、まず有吉参考人お願いをいたします。
  5. 有吉新吾

    有吉参考人 日本石炭協会会長をいたしております有吉でございます。  昭和三十八年第一次石炭対策実施以来今日まで、国内石炭産業安定化のため、本委員会の諸先生を初め関係当局の格別の御配慮をいただいておりまして、深く感謝を申し上げます。  また本日は、石炭業界立場から発言する機会を与えていただきましたことを心から御礼を申し上げる次第でございます。  まずは、このたび四月二十四日の三菱高島炭鉱ガス爆発事故並びに五月十七日の三菱南大夕張炭鉱ガス爆発事故と、引き続き重大災害を惹起いたしまして、多数のとうとい犠牲者を生じ、諸先生及び関係当局を初め各方面に大変な御心配、御迷惑をおかけいたしましたことをこの席をかりまして深くおわび申し上げますとともに、数々の御厚意に対しまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。  私ども、このような重大災害発生石炭産業全体の命運を左右する問題であり、もはや一社一山の問題ではなく業界全体の問題として受けとめ、絶対にかかる重大災害を撲滅すべくあらゆる対策を講じ、全社炭鉱挙げてこれに取り組んでいるところでございます。  この対策につきましては、去る五月二十九日通産大臣殿にお目にかかりまして内容を報告申し上げましたのでありますが、まず当面の対策といたしましては、六月三日を特別保安日に指定し、全炭鉱特に生産を停止いたしまして総点検保安作業保安教育並びに避難訓練を実施いたしました。全炭鉱が一斉に操業日生産を停止して総点検保案作業等を実施いたしましたということば炭鉱の歴史にない初めてのことでございまして、その効果はもちろんでございますけれども、全山の保安意識の徹底、向上に極めて大きな効果があったことと信じておる次第であります。  次に、この六月を期しまして重大災害撲滅基盤確立月間を設定し、坑内構造を初めといたしまして諸設備あるいは保安管理監督体制作業手順点検方法等につきまして徹底的な見直しを行い、ガス爆発ガス突出自然発火、山はね、坑内火災という重大災害を未然に防ぐための基盤確立することにいたしております。この徹底的な見直しの結果改善すべき事項につきましては直ちに実施いたしますが、改善に時日を要する事項がありました場合には、その改善についての実施計画を作成して、できるだけ速やかに実施するようにいたしております。  さらに、この重大災害撲滅基盤確立月間終了後引き続き業界として自主的に技術調査団を派遣をいたしまして、この間における検討事項並びに改善実施状況及び改善実施計画をチェックし、万全を期する予定でございます。  このような重大災害撲滅基盤確立の上に立ちまして、日々変化いたします炭鉱自然条件に即応して定められた保安のための事項を確実に遵守し、今後長期にわたり保安確保していくよう、業界挙げて取り組んでまいる所存でございます。  また、保安の第一線を守る保安技術職員、特に係長、主席という上級職についての研修を、これまでも社内教育あるいは九州北海道保安センターにおいて行われておりますが、さらに強化していきたいと考えております。  さらに、先般通産省の両政務次官殿がそれぞれ九州北海道炭鉱を視察されまして、その後六月六日全社の社長に対し御訓示をいただきました際、特に保安確保のための対策として御示唆のありました、第三者により編成するアドバイザーグループの大所高所からのアドバイスを受けてはどうかという対策等についても、極めて適切な御示唆と存じますので、できるだけ早期に実施する所存でございます。  このような諸対策を講ずるとともに、労働組合協力も得て、経営者管理者はもちろん、炭鉱に働くすべての人に至るまで保安確保に徹し、絶対に重大災害を起こさないことを期する覚悟でございます。  いろいろ災害対策を申し述べましたが、保安確保の上に立って災害のない安定的生産を行わない限り、産業としての存続も難しいと考えている次第でございます。  次に、御高承のとおり、現在実施されております第七次石炭政策政策期間昭和六十二年三月までとなっておりますので、引き続き第八次の石炭政策を策定、実施していただきたいと存じます。つきましては、いずれ通産大臣殿より石炭鉱業審議会に対し第八次石炭政策の諮問が行われると存じますが、この機会をおかりいたしまして、ぜひとも諸先生初め関係当局の温かい御高配をいただきたく、石炭業界としての要望についてその大綱を申し述べさせていただきたいと存じます。  まず第一に、第七次策の際にもお願いいたしましたが、第八次策においても現存炭鉱維持ということを政策基本としていただきたいと存じております。  現在、我が国年間石炭生産量は約千七百万トンでございますが、この現状程度生産保安確保の上に立って安定した生産維持してまいりたいと念願いたしておる次第であります。  第一次、第二次のオイルショックを経て、石炭原子力と並んで石油代替エネルギーとしての重要な役割を担うよう位置づけられるに至りましたが、国内炭につきましては、海外炭との価格差が開くにつれて極めて厳しい環境に置かれております。しかしながら、現在国内炭供給は、原料炭については約六%の供給にすぎませんが、一般炭については日本の総需要約二千九百万トンのうち約五〇%を供給しておりまして、大きなウエートを占めておると思います。さらに、昭和五十八年十一月の政府の「長期エネルギー需給見通し」によりましても、昭和六十五年にはこの一般炭需要は四千三百万トン、昭和七十年には五千八百万トンと増加する見通しとなっております。  国内炭現状より大幅の増産は難しいと考えられますので、今後増大する需要海外炭で賄われることになると思いますが、国内炭現状程度生産を行い安定的な供給を続けていくことは、我が国エネルギー確保の上から意義のあることと信じてやまぬ次第であります。  また、現在でも世界最大石炭輸入国である日本が、今申し上げたように近い将来においてさらに増大する海外炭輸入確保するには、海外資源保有国との友好親善関係の中で、当初の開発から手がけ、輸入に結びつける、いわゆる開発輸入が最も安定的な海外炭確保の手段になると存じます。その際、長年日本石炭産業に蓄積された地質調査技術から坑内採掘技術、さらには選炭技術等がこの開発輸入に役立つと存じますので、これらの技術維持し発展させるためにも、現存炭鉱維持を図っていくことが必要ではないかと考えておる次第でございます。  さらに、現在日本には二十九の炭鉱がありますが、そのうち全国年間生産量の九五%を生産している主要炭鉱ともいうべき炭鉱は十一炭鉱であります。この十一炭鉱は、夕張市には二炭鉱ありますが、それ以外は、三池炭鉱が二市一町にまたがり、残りの九炭鉱はそれぞれの市もしくは町に分散して存在し、関連する中小商工業も極めて多く、これらの市及び町の経済面雇用面に多大の貢献をし、これを支えているのであります。  このようなことから、私どもは、まず第一に現存炭鉱維持ということを第八次石炭政策基本に据えていただきたいと要望申し上げる次第でございます。  次に、現存炭鉱維持のためには、何と申しましても、再生産が可能となるよう、炭価政策補助により生産費が償うようにしていただくことが不可欠であります。  石炭協会において欧州の石炭事情調査いたしましたが、イギリス西ドイツにおいては日本と同様に内外炭価格差は大きいのですが、これを炭価政府補助等により補てんし国内炭確保しておりますし、フランス原子力に力を注ぎ将来は国内炭を減らす考えのようでありますが、現在はやはり国が大きな補助をしております。そこで、第八次策の第二の基本的な問題として、現行基準炭価制度はぜひ存続していただきたいと存ずる次第であります。内外炭価格差が大きく開いている現在、需要家各位には大きな負担をおかけしていることはまことに申しわけないと存じておりますが、それだけに、この基準炭価制度がなければ現存炭鉱維持も不可能でございますので、ぜひともこの存続お願いいたしたいと存じます。  ところで炭価でございますが、第七次策で取り上げていただきましたように、私どもは、炭鉱深部化、奥部化することによって生ずるコストアップ内部要因としてこれまでも炭鉱の若返りあるいは各種合理化によって吸収してまいりましたが、今後においてもみずからの努力によってこの部分は吸収していくことができると考えております。  しかしながら、このところ数年他産業水準より低い率で従業員方々に我慢してもらってはおりますが、それでも毎年のペースアップはしなければなりませんし、諸物価の値上りがあればこれは避けられません。炭鉱現状からいたしまして、このようなインフレーターによるコストアップまでは到底吸収いたしかねますので、何とか炭価お願いせざるを得ないのが実情でございます。  第三の問題は政府の助成でございますが、現在、石炭対策特別会計合理化安定対策費昭和六十年度予算で三百八十七億でございまして、千七百万トンの出炭といたしましてトン当たり約二千二百円になりますが、イギリスフランス西ドイツにおきましてはこれよりはるかに大きなトン当たり補助を行って白国の石炭維持しております。  この合理化安定対策費の主たる内容は、いわゆる坑道補助金安定補給金保安補助金等でございますが、これらの補助なくしては現存炭鉱維持は不可能でございます。したがいまして、石炭対策特別会計による補助はぜひ維持していただき、さらに、さきに述べました保安対策の必要上、坑内構造改善のための坑道掘進あるいは機械器具設備改善、さらには新技術導入等中心といたしまして、今後一層の補助強化をしていただくという方向で第八次策を展開していただきますよう、切にお願い申し上げる次第であります。このほか、基本的な政策に関連いたしまして、これを達成するための細かいテクニカルな問題がいろいろございますが、業界におきましてただいま検討中でございますので、本日は、その基本となる事項についてのみ申し上げた次第でございます。  最後に、私どもは絶対に保安確保し、その上に立って唯一の国内エネルギー資源ともいうべき日本石炭を安定的に供給してまいりたいと念願いたしておりますので、諸先生初め関係当局の御指導、御鞭撻並びに御支援を切にお願い申し上げる次第でございます。  以上をもちまして私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  6. 小川省吾

    小川委員長 ありがとうございました。  次に、野呂参考人お願いをいたします。
  7. 野呂潔

    野呂参考人 石炭労協会長野呂です。  本日は、常日ごろ石炭産業発展のために御協力をいただいております本石炭対策特別委員会委員皆さん方の前で意見を述べさせていただく機会を与えてくれましたことは、私の光栄であり、また、この機会にすべての炭鉱労働者と家族を代表いたしまして厚く感謝を述べさせていただきたいと思います。ありがとうございます。  では、第八次石炭政策に向けての意見を述べます。  第七次石炭政策が六十二年の三月末で対策期間を満了するのに伴って、今第八次石炭政策検討時期を迎えていますが、まことに残念なことに、昨年一月の三池炭鉱有明鉱坑内火災に続いて、ことしに入って、四月二十四日長崎県の高島炭鉱で、また五月十七日には北海道南大夕張炭鉱でそれぞれガス爆発があり、この三件だけで百五十六名に上るとうとい人命が奪われているのが実態であります。  このような中で、これ以上国内炭採掘することは保安上問題があるのではないかという意見が、これまで国内炭に深い理解を示してこられた方々からもいろいろと出されてきていることは、私どもといたしましても十分承知いたしています。我が国でこれ以上石炭採掘すれば、必然的に第二、第三の有明南大夕張発生するのか、もしそうであれば、確かに国内炭生産を継続するか否かについてまさに重大な岐路に立たされていると考えざるを得ません。  そこで、まず初めにこの点に関する私たちの見解を明らかにいたしますと、基本的には、重大災害をなくすることはでき得るという立場に立っています。  既に御高承のとおり、我が国で稼行している炭層は、地質時代で言いますと新生代の前半、今から六千万年ほど前の比較的新しい時代のものです。外国の場合は古生代で、今から約二億年から三億年前のものです。しかし、日本の場合、火山活動の影響で炭化が進んでいるわけですが、同時に、断層や褶曲が発達しており、また、ガス包蔵量も非常に多いというのが特徴となっております。のみならず、既に浅い部分を掘り尽くし、幌内炭鉱ではマイナス千百二十五メートルという我が国最深部採掘を行っているほか、砂川炭鉱でもマイナス九百九十五メートル、さらに、今回大惨事を引き起こしました南大夕張炭鉱マイナス九百一メートルと、ほとんどの炭鉱深部開発を余儀なくされています。このようにもともと自然条件が悪い上に深部移行という状況の中で、炭層ガス包蔵量ガス圧が増大するとともに、盤圧地圧も非常に大きくなります。この結果、ガス湧出量がおおむね増加し、ガス爆発危険性が増大するのに加え、ガス突出、山はね等の発生要因も一段と強まることになります。この場合、特に問題になるのはガス突出であります。今後、国内炭生産を継続していく場合、これをどう克服していくかが保安問題の最大課題となると考える次第です。  ところが、このガス突出についてどのようなメカニズムで発生するのか、理論的にも未解明の分野を残しており、その発生可能性をあらかじめ把握し、予知していくという点で完璧と言いがたいのが実態であります。  しからば、ガス突出への対応性が全くないのか、私たちは決してそうは思ってはいません。  これまでの長い経験から言いますと、ガス突出断層、盤折れ箇所の付近あるいは岩石坑道炭層に逢着する箇所等で多く発生しております。また、ガス突出発生に先立って、当委員会でもあるいは参議院のエネルギー対策特別委員会でも論議されましたが、メタンガスの湧出量の急激な増減、山鳴り、小崩落、岩壁の張り出しなど、いわゆる前兆現象を伴うのが常であります。  したがって、第一に、あらかじめ探査ボーリングを打ち、そのような危険箇所事前に把握する。第二に、ガス抜きボーリングによりガス去勢を図る、あるいは応力解放する等の予防対策を実施する。第三に、ガス突出前兆を絶えず監視し、前兆が少しでも認められれば直ちに退避等措置をとる。第四に、救急バルブ避難所等防災体制を二重、三重にも強化していく等々の対策をきめ細かにとることによって十分克服していけると考える次第であります。  このほか、ガス爆発坑内火災などといった災害も相次いでいるわけですが、これらについてはその発生原因は明確であり、災害を引き起こさないための予防対策を強化すること、万一を見越して防災体制を完備していくこと等によって十分回避していくことが可能であると考える次第であります。  現在、各炭鉱ごとにとられているこれらの重大災害に対する予知予防対策を見ますと、もちろん一通りの対策はとられているわけですが、最悪の状況を想定して、それでもなお重大災害を防止していける対策確立されているのかといえば、率直に言って、改善すべき余地がまだまだあると言わなければならないと考えます。この意味で、今後、各炭鉱監督指導に当たる政府の一層の努力が特に望まれるところと判断いたします。  私たちといたしましても、危険箇所労働者を働かせるつもりはありません。このような十分安全率を見た保安体制を整えることが資力の関係でできないという炭鉱が仮にあるとすれば、その炭鉱で働く労働者はいなくなり、閉山に追い込まれるのは必然であります。また、労働組合立場からも、安全の確保なくして生産なしという考えで、閉山を覚悟して対応をいたします。  前置きが大変長くなりましたが、次に第八次石炭政策に向けての私ども考え方要望などについて若干触れさせていただきたいと考えます。  私たちは、第八次石炭政策確立に当たって、第一に、さきに触れた現状を踏まえ保安をどう確保していくのか。第二に、必要エネルギー安定的確保という立場から国内炭をどう位置づけ、どの程度年間生産規模を想定していくのか。第三に、この国内炭位置づけに基づき、現有炭鉱に加えて新鉱開発等も考慮し、どう国内炭供給体制確立していくのか。第四に、国内炭の恒久的な需要をどう確保し、また生産費を償う炭価をどう設定するのが。第五に、石炭産業維持発展を通して産炭地域社会の振興をどう図っていくのか等々、多くの課題があると考えますが、これらの点について当石炭対策特別委員会としても前向きの方向で御検討いただくよう、あらかじめお願い申し上げる次第であります。  以下、これらの課題中心にして私ども考え方を述べたいと思います。  ①まず第一に、保安確保に関する問題でありますが、先ほどもるる申し上げましたように、最近続発している重大災害現状技術水準でも十分回避できたはずであり、この点を厳粛に受けとめ、今後各炭鉱において文字どおり保安最優先に立った操業体制確立していくことを政策基調の柱に据えるべきであると考えます。この場合、各炭鉱において鉱山保安法規で示された基準がクリアされればそれで可とする姿勢を根本的に払拭し、各炭鉱自然条件稼行条件を加味した、十分安全率を見た政策を上積みしていくことが重要であると考えます。  このような基本的な考え方に立って、1 各炭鉱坑内骨格構造を再点検し、極力重大災害発生しづらい構造、万一重大災害発生しても被害を極力局部にとどめる構造確立していく。このような考え方に立って、国が施業案の認可、保安計画のヒアリングに際し十分チェックしていく。  2 保安設備充実強化を図る。特に坑内火災早期発見が可能となるよう集中監視網拡充強化監視要員の配置を図るとともに、効果的な初期消火を推進できるよう消火設備を完備していく。ガス突出についても、探査ポーリングによる自然条件事前把握、先行ガス抜き、前兆監視等を十分行い得る設備人員体制を整えるとともに、近代的な予知予防方法開発を急いでいく。  3 省力化の名のもとに人員削減の傾向があるが、各種機械設備監視委員保案件業要員は常に十分確保していく。  4 技術者技能労働者の系統的な確立を図るため、国が主力になってその養成機関拡充強化していく等々の措置具体的施策として確立していくことが必要であると考えます。  ②次に、国内炭位置づけに関する問題でありますが、第六次石炭政策では二千万トン以上、第七次石炭政策では二千万トン程度、そして五十七年十一月に決められた合理化基本計画では一千八百万トン、状況により二千万トンを目指すというふうに、下方修正に次ぐ下方修正が行われてきています。  このような背景には、重大災害発生閉山等による生産力の落ち込みがあり、必然的にこうなったと考えられます。しかし、必要エネルギー供給源一つとして国内炭についてそれなりの役割を持たせる、第六次、第七次石炭政策ではこのように位置づけられていたとすれば、生産力の低下に対しこれを補う別の対策を推進することが必要であったのではないかと考えられます。特に、IEA、国際エネルギー機関では、一九七四年七月、そうして一九七九年四月の東京理事会において、油の代替としての石炭最大限に開発、活用することを決定いたしました。我が国石炭政策はその意味からすれば国内炭軽視策であり、世界の動きと逆行すると言わざるを得ないのであります。  したがって、国内炭位置づけとしては、(1)我が国必要エネルギー供給源一つとして、遅くとも第八次石炭政策最終年度において二千万トン程度生産規模に到達する。  (2) このため、現有炭鉱における生産力維持し増強するとともに、露天坑の開設、できれば上茶路、舌辛、留真などの地区で年産三十万トンから五十万トン程度の小規模な新規炭鉱開発していく等の措置をとることが重要と考えます。  ③新鉱の開発。現在まで、年間十七、八億円ほどの国の予算石炭資源開発基礎調査が推進されてきていますが、西彼杵沖有明海、釧路沖などで有望な石炭資源賦存が確認されています。もちろん実際の採掘はさらに精査を行う必要があり、当然将来の課題となると考えますが、我が国必要エネルギー安定供給体制の一環としてこれらを開発していくことが大切であると判断いたします。しかし、他方、開発費の面から見ると莫大な開発費を必要とするわけであり、たとえ現行の新鉱開発資金融資制度の適用を受けても、石炭企業が個別ないしは共同で開発することは不可能であると判断せざるを得ません。  そこで、例えば新鉱開発に伴う坑内基本骨格の造成のための基幹坑道の開削までは国の事業として行い、これが完成した段階で当該石炭企業にリースして石炭採掘に当たらせる等の思い切った対策が必要であると考える次第であります。  ④次に、国内炭需要確保問題について触れたいと思います。  御承知のとおり、これまで石炭火力の設置、IQ制度の活用等により一定の国内炭需要確保対策が進められてきています。しかし、ここ何年か鉄冷えが深刻化し、最近国内原料炭の引き取りが大幅に抑えられ、原料炭産出炭鉱における山元貯炭も相当増加してきているのが実態です。また、北海道においても、現在建設中の泊原発が稼働する段階では道内一般炭需要も大きく制約されることが予想されています。  国内炭需要確保問題の背景には、もちろん内外炭の値差の問題があるわけであります。しかし、この点だけから国内炭開発をやめたり、あるいは大幅に縮小するとすれば、これに伴う弊害がいろいろと生じてくると考えられます。  少ないながら我が国が国内で石炭生産を続けることは、海外炭価格の決定に当たり一定の抑止力を持つものと考えられます。のみならず、それにも増して炭鉱基盤として直接間接的に生計を営む多数の産炭地域住民があることを、また産炭地市町村においても税収その他の面で石炭産業に大きく依拠していることを考慮すると、単に目前の内外炭の値差だけで国内炭生産の価値を決することは非常に危険である、こう言わざるを得ないのであります。  このような点を十分考慮の上、(1)国内炭最優先使用という考えに立って、IQ制度を強力に活用し、外炭輸入量に応じて一定の国内炭を引き取る制度、これは現在既に実施されておりますけれども、それをさらに強化していくこと。(2)ユーザーに対し国内炭引き取りに伴う一定の助成を行うこと。(3)国内炭の新規需要面を開拓していく等の措置をとることが必要であると考えます。  ⑤次に、国内炭価格の決定方法に関する問題について触れたいと思います。  国内炭炭価については、合理化法による基準炭価制度として、通産大臣が適正な基準となる額を毎年告示し、これに基づいて業界間で話し合って決定することがうたわれております。しかし、実際には業界間の炭価交渉が先行し、その妥結額を通産大臣が基準炭価として告示するという逆の方式がとられていると言わざるを得ないのであります。もちろん、業界間の炭価交渉に際しては政府が一定の指導的な役割を果たして努力をしてくれていることは認めますけれども、最終的には業界間の力関係生産費さえ償われない炭価が決められるという結果となっております。  いずれにせよ、このような形態は合理化法の趣旨にも反するものであると言わざるを得ません。やはり政府国内石炭産業の存立基盤確立するという考えに立って適正な基準炭価を決めること、この基準炭価で少なくとも各炭鉱ごと生産費が償われ、かつ再生産が継続される体制を確立していくことが重要ではないかと考えます。  したがって、第八次石炭政策の中で、以上述べたところを基本として具体的な炭価決定の方法その他必要事項を明示していくことが大切ではないか、このように考える次第であります。  結び。第八次石炭政策に向けての私たち要望については以上述べたとおりでありますが、これは主として当面対策に限ったものであり、体制問題を含めて当然解決しなければならない基本的な課題もいろいろあると考えます。  先ほど大型の新鉱開発をめぐり若干申し上げましたが、これも根本的には、開発費負担にたえる強固な企業体により開発することが、よりましな姿であると考えます。また流通機構についても、根本的には、一元化することにより今抱えている種々の問題を抜本的に改善していくことが可能となります。したがいまして、第八次石炭政策の中では、石炭企業の共同化など体制問題をめぐり突っ込んだ検討を今後継続していくという方向確立していくことが大切であると判断するのであります。  特に私たち炭鉱労働者立場からいいますと、労働条件の問題や時間短縮の問題や休日問題などがございます。しかし、我々は最大限に努力をし、みずからの努力の中でもってそれらの問題は解決していきたいと思っております。  最後に、特に私たちが不満に思いますのは、災害が起これば約千三百億円の税金を石炭労働者がむだ遣いをしているかのごとく喧伝をされますが、今後第八次石炭政策が討議されたといたしましても、そのうちの約五百億円に及ぶ対策分だけしか討議対象とはなりません。八百億に及ぶ鉱害問題、産炭地その他のものは私たちの手の届かない、第八次対策の手の届かないところにあるわけであります。  衆議院石炭特別委員会委員各位におかれましても、それらのことを十分に御認識されておると思いますが、そういう問題があること、私たちのそういう気持ちを十分お酌み取りの上、石炭産業を唯一のよりどころとして今日まで多くの苦しみや困難な事態を乗り越えて頑張ってまいりました私ども炭鉱労働者と家族の心中も御賢察の上、ぜひ前向きの政策方向確立されんことを切に要望し、私の意見陳述を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  8. 小川省吾

    小川委員長 ありがとうございました。  次に、田中参考人お願いをいたします。
  9. 田中洋之助

    ○田中参考人 私は経済評論家でありまして、特に石炭問題の専門家というわけではございません。しばらく石炭鉱業審議会委員をやっておりました関係上、石炭問題に触れることが多かったわけでございますが、きょうはもう少し広い観点から、日本国内炭政策をこれからどうすべきかということにつきまして私の考えておりますことを少しばかり述べさせていただきたいと思います。  先ほど来、有吉野呂参考人の方からもお話がありましたように、ことしに入りまして大きな炭鉱事故が続発しております。我々一般国民の立場からしますと、貴重な人間を殺してまでどうして高い国内の石炭を掘らねばならないのかという疑問が今かなり出ておると思うのですね。そうして、この疑問は非常に重要な疑問だろうと私は思うのです。もちろんこれは単なる素朴な一般の世論にすぎないのかもしれませんけれども、これから第八次の石炭対策考える場合に、実質的には大きな影響を与えるのじゃないかという感じがいたします。  しかし、経済専門家から見ますと、もっと重要な問題が国内の石炭産業にあると思うのです。それは、商品としての国内石炭が今や市場において競争力を急速に失いつつあるということであります。  御承知のように、原料炭一般炭ともに内外の炭価の格差がかなり開いております。原料炭につきましてはトン当たり一万円、一般炭につきましても八千円以上の値開きがあるということで、大口の需要家の鉄鋼業界とか電力業界はできるならば国内の石炭は使いたくないというのが本音だろうと思うのです。ただ、国の政策もあり、これまでのいきさつもいろいろありまして、応分の協力はするということで炭価の値上げにこれまでも協力してまいりまして、一定量の国内の石炭確保してきたわけであります。しかし、私が鉄鋼業界の首脳あるいは電力業界の首脳といろいろ突っ込んで話をしてみますと、もうこれ以上日本国内炭を掘る必要というものはないのじゃないか、そういう本音が聞こえできます。  商品として市場における競争力を失いますと、その産業は成立しなくなります。買ってくれないわけですから、その産業維持するということがなかなか難しくなるわけであります。そこに今国内炭の直面しておる最大の問題点があると私は思うのです。政策としては、そういう現実を率直に踏まえてどうすべきかということになるわけであります。市場経済の原理からいいますと、特に最近、経済摩擦が激しくなりまして、市場開放の要求が各国から日本に出ております。恐らくエネルギー、石炭についてもこの要求は例外ではないだろうと思うのです。アメリカは石炭を買えと言っておる。豪州もそういう要求を出しております。そういう中で国内石炭を一定量どうしても保持していくためには一体どうしたらいいか、そもそも一定量保持する必要があるのかないのか、その一定量とは一体二千万トンなのかあるいは千五百万トンでいいのか、こういった大変難しい問題が第八次石炭政策では根本的に問われるのではないかという感じが私はするわけであります。  日本石炭政策は、単なる経済問題だけではなくして、地域問題と深く絡んでおります。全国に十一の主な山がある。十の市町村にそれが散在しております。特に北海道九州が多いわけでございますが、石炭産業をどうするかということは、地域社会にとっては死活の問題だろうと思います。したがいまして、そういう地域社会の観点というものも今後の石炭政策に当たっては配慮せざるを得ないと思います。  それからまた、商品と申しましても、エネルギーは多分に国の安全保障にかかわる重要な商品であります。仮に国内炭が全くなくなった場合、一体日本のエネルギーの安全保障は確保できるのかということを問われた場合、いや大丈夫だと言い切る自信はだれにもないと私は思うのです。しかし、いろいろ聞いておりますと、やはりこれは経済性との兼ね合いになるのではないか。一万円も開いているこの現実を無視して、安全保障という観点だけで無理に国内炭維持していくということは、果たして現実に通るかという疑問も出ておるわけであります。  したがいまして、この国内炭政策は地域問題とかあるいは経済性の問題、エネルギーの安全保障、そういった各種の要因をかなり総合的に考えて、バランスよく調和をとって政策を決めねばならぬと思います。しかし、この安全保障の問題というのは人によって皆違います。これは一種の神学論争でありまして、なかなか一義的結論が出てこないのです。  ただ、私は、今の時点で仮に国内炭の出炭量が現在よりも大幅に減って、より以上海外炭に頼るというような事態が来た場合に、炭価の交渉力、値上げをする場合に足元を見られて上げられるのではないかというような心配がありますが、そういう点につきましても、やはりもう少し真剣に考えねばならぬだろうという感じがいたします。鉄鋼業界あたりに聞きますと、いやそんなことない、現に我々は外国から石炭を買っているときに、日本国内炭がどんどん減っておるにもかかわらず別に高い石炭を押しつけられているわけではないのだ、これは影響はしないのだというようなことを言っておりますけれども、これがもっともっと減った場合には問題は別だろうという感じもいたします。  そういう意味で、八次の石炭対策というのは最後の選択をすべき段階に来たのではないかという感じがいたします。これまで七回、ずっと石炭対策というものが施行されてまいりましたけれども、率直に言いまして、これは撤退に次ぐ撤退であります。決して成功したとは言えません。なぜそうなったのかということを根本的に検討する必要があるだろうと思います。無理があったのではないかという疑問も当然あります。そのほか、いろいろ国際的な情勢の変化といった外的な要因もあるだろうと思います。いずれにしても、この第八次の政策におきましては、過去のいろいろな問題点を総洗いしまして反省をした上で、最後の対策とも言えるこの八次対策に臨むべきだろうと考えております。  エネルギー問題としての石炭問題、これは私は非常に重要な位置を占めていると思います。日本の電力業界の動きを見ておりますと、脱石油ということで、現在、原子力発電に一番のウエートを置いております。また、原子力発電というものが一番コストも安い。それからまた、言われているような危険性もないということでありまして、現実に相当大きな発電量を占めるに至っているわけでございますが、この原子力発電と並んで石炭火力の見直しということも大事だろうと思います。  電力の各社では、今、東京とか関西、中部といった大手のところが比較的石炭火力の建設がおくれております。しかし、北海道とかあるいは九州とか中国とかといった地方の電力会社におきましては、重油火力から石炭火力への切りかえというものが出ております。しかし、その切りかえというものが残念ながら国内炭の使用につながらないで、専ら海外炭の方にシフトしておるというのが現実であります。これは、国内炭海外炭に比べて割高であるという観点から来ているわけでありまして、電力経営者立場からすると、かなり長期にわたって安定した供給と価格が見込まれておる海外炭の方が安全だという考え方があると思うのです。これは経営者の観点からするとごく当たり前のことだろうと思いますが、そのために、不幸にしまして国内炭需要が伸びないということになっております。  鉄鋼と電力会社が国内炭最大需要家でございますが、御承知のように鉄鋼業界はこのところ粗鋼が一億トンを上下するという格好で、大変伸び率が低いわけであります。それから電力の方も、景気の動向を反映しまして伸びが年率二%から四%内外ということで、一時に比べますと大分低くなっております。しかもその中で、原子力発電のウエートが高まるとかあるいはLNGを確保するとかあるいは海外炭というようなことで電源の多様化には努めておりますけれども国内炭の専焼火力発電所というものがなかなかできない。期待できるとすれば、国策会社としての性格を持っている電源開発会社にこれをどうやらせるかということだろうと思います。  電源開発会社は日本国内炭のユーザーとしては最大のウエートを占めているわけで、御承知のように現在、竹原とか磯子とかあるいは高砂とかといったところにいわゆる揚げ地火力発電所がございます。そして、この発電所ができましてから既に二十年近くたちます。これがいよいよリプレースの段階にこれから入るわけでありますが、このリプレースの段階に、今度は海外炭の方に切りかえようじゃないかという声もないわけではない。そういうことが行われますと、回内炭の需要というのはさらに減るということになります。しかし、国策会社としての電発ということで、海外炭じゃなくて国内炭の一定確保ということも考えまして、リプレースに当たっても従来どおり国内炭を使用していこうという方針のようでありますが、いずれにしても、大きな政策的な下支えに支えられてやっと存在しておるというのが今の日本国内石炭産業の偽らざる姿だろうと思うのです。すべての政策は、こういう厳しい現実を直視してそれからスタートするということだろうと思います。  一般炭需要は、先ほど有吉会長が申されましたように、なお五〇%を占めておられるという話であります。それから原料炭の方は圧倒的に多くを海外炭に依存しまして、五%ぐらいになった。六千万トン、七千万トンの原料炭海外から輸入しまして、鉄鋼業界は大体三百四、五十万トンの原料炭国内炭に依存しておるわけでありますが、全体のウエートから見ますと五%ということでありまして、極めてウエートは低いわけであります。ウエートが低ければ、多少値段が高くてもそのくらいのものは十分抱いていける、消化できるのではないかという議論もありますけれども、最近はなかなか経済情勢が厳しくなっておりますために、鉄鋼業界あたりは、たとえ一万円の違いであっても年間三百四十万トンということは三百四十億円違うんだ、こういうことを知った上で高い国内炭を買うということはある意味では背任行為にもなるんですよということを言いかねない雰囲気であります。だんだん経済情勢が厳しくなって、鉄鋼業界としても高い国内の石炭を使用する余裕とか余地とか、協力したいけれども我々も困っておるんだというような声が今強まりつつあるのが現状であります。  そういうことで、いささか需要業界の生の声にウエートが傾き過ぎた嫌いがあるかもしれませんけれども、それがやはり需要者の本音だろうと思います。したがいまして、私は、この厳しい情勢を踏まえながら、先ほど来申し上げましたように経済政策としての石炭政策、それから地域問題としての石炭政策、それからさらに国のエネルギーの安全保障上国内炭の占める位置づけといったものを、やはりもう一回真剣に、徹底的に議論した上で八次対策というものを進めてもらいたい、そう考えておる次第であります。
  10. 小川省吾

    小川委員長 ありがとうございました。  次に、磯部参考人お願いをいたします。
  11. 磯部俊郎

    磯部参考人 北大の名誉教授磯部でございます。本日は、こういった機会意見を述べさせていただくことができましたことを大変感謝申し上げる次第でございます。  冒頭に申し上げますが、私は必ずしも現状石炭をそのまま残すという論議を持ってはおりません。ただいま田中参考人がおっしゃった意見とは若干違いますけれども、そうかけ離れたものではないと思っております。以下、私が考えております一般的な所見を申し上げます。個々のことにつきましては御質問の折にお答えしたいと思います。  私どもは、往々にして、常日ごろ国家社会のために大いに働く、こういう言葉を耳にしております。しかも皆様、衆議院議員の方々は、党派、綱領こそ違え、我々国民の生活と福祉のために日夜お心を砕いておられるということについては大変感謝している次第でございます。それならば、一体人間の幸福、国民の幸せというのは何でありましょうか。これは多分、言い古されていることかもしれませんけれども、布団の上で両親と縁者に歓迎されてこの世に呱々の声を上げ、しかも幼い時代はかわいらしく育って、大きくなればたくましく生活して、年をとればやがて美しく老い込んで、最後にはやはり布団の上で子供たち、親戚縁者に見守られて惜しまれつつこの世を去る、これが人間の幸福であり、世界の目的であり、人類の目的ではないかと考えております。  これに反して、暗い坑内の中で汗と炭じんにまみれ精いっぱい努力をして、しかも突然襲ってきた爆風と火炎の中でのたうち回ってこの世を去るなどということは実に言語道断なことではないでしょうか。しかし現実にはその事実は繰り返され、悲しみと嘆きはひとり妻子、親族ばかりではなくて、日本全体を衝撃させております。  炭鉱にとって保安が第一であることは言うまでもありませんが、それは人の注意力とか教育訓練のみによって達せられるものではないと考えております。例えば落盤防止のために先受けということが法規上に盛られました。そのために、随分落盤による死者が減っております。あるいは泥砂充てんといいまして、派とか砂等をまぜて水で坑内採掘跡に送り込み、それによって自然発火の防止を行おうという試みは随分前から行われております。それによって、現在は自然発火がほとんど姿を消し去ろうとしております。  話は非常に飛びますけれども、例えば何百年か前にジェンナーという人が種痘を発明いたしました。それによって、ごく最近ですが、世界から天然痘がなくなったといううわさを聞いております。また、らい病などというのは不治の病だと言われていたのが、今では立派な薬ができて、ちゃんと治るんだということになっているようであります。心がけとか教育だけでは決して病気が治ったり幸せがやってくるものではありません。もちろんそれは一つ効果はあります。しかし、やはり科学、いわゆるサイエンスによって根本をきわめ、合理的な対策を講じてこそ初めて災害の根絶があるものと考えているわけであります。また、若干余談になりますが、もしアメリカとかソ連、その他の国々で一発も原爆がなくなったと仮定したならば、それを廃棄したとしたならば、核戦争は永久に起こらない、我々人類は安心して毎日を送ることができるのではないかと思います。  いわゆる精神論とか宗教論とか、そういうもので救えるのは一人一人の心の生きざまであって、大多数の人々は科学と資源によって幸せが得られると考えております。もちろん科学といえども悪用される場合がありますから、科学を悪用させないためには教育も宗教も、もろもろの精神文化も必要であるということは言うまでもないことだと思います。  翻って、地下千メートルあるいは地表から到達するのには斜坑によっても数千メートル、そういった地表深い地底に密集して働いている人々に降りかかる災害は、多分大量死以外にはないのではないかと思います。しかも残念なことには、災害はないとは言い切れませんし、きっと何回も繰り返していくだろうと私は思っております。  それでは一体どうしたらよろしいのでしょうか。大抵の人は、そんなところに人は入れない方がいいと言うに決まっております。あるいは口を開けば、ロボット採炭をしろ、ロボットを開発しろ、こう言うかもしれません。しかし、実際に炭鉱で働き、現場を見た人の気持ちからいえば、炭鉱坑内というのは千変万化する自然条件の中に存在しております。それらの自然条件をよく観察し、よく対応して適切な行動をとれるようなロボットは、現在のところはあるとは思いません。これからつくり出さなければならないものであります。しかも、たとえロボットができたといたしましても、それを操るのは人間でございます。そして、人とロボットの間にはどこかで交流点があります。その交流点に災害が起こったとしたならば、人もロボットもともに消し去ってしまうであろうと思います。私どもは、確かに災害予知と防止に努めなければなりません。しかし、もし一たん災害が起こったとしたならば、その被害を最小限に食いとめていくという処置もしなければいけないと思います。火の用心と同様に消防が必要なのはその理由であると思っております。  例としては大変恐縮でございますが、夕張炭鉱で十五名の方々が何時間か生命を保っていたにもかかわらず、万斜の涙をのみながら生きながらにしてついに死んでいった、そういう気持ちを考えますと、私どもは、そういった閉じ込められた人、坑内に働く人々、それをどうやって助けるか、どうやって救うかという方法を研究するためには、試験炭鉱以外には絶対にできないというふうに言ってはばからないものであります。  一方、日本石炭は高過ぎる、これは今田中参考人のおっしゃったとおりでございます。これは多分いういろな原因で安くはできないのだろうと思います。しかし、もし画期的な採炭法ができ、今よりもっと安い石炭生産できる方法が発明されたとしたならば、その問題は解決すると思います。必要は発明の母である、言い古された言葉でありますが、このような革命的な採炭法というのは確かに試行錯誤の結果生まれてくるものと思います。そういった試行錯誤を商業ベースの炭鉱でリスクを覚悟しながら行うということは、これまた到底できない話だと思います。試験炭鉱の必要性はここにもあると思うわけであります。  また、現在の時代は私はワンマンプレイの時代ではないと思います。学問でもすべてのものでも、衆知を集めて、そしてその結果妥当な結論を出すのが現在の行き方であり、民主主義の基本であろうと思います。その意味で、日本の国でいろいろな災害があります。世界各国にもあります。そういうところの問題を研究している学者、技術者はたくさんおります。それらを我々のような条件の悪いところに一堂に会して問題を提出し合って、お互いに討議する国際会議というものもぜひ必要でないかというふうに考えているわけでございます。一人の人あるいは数人の人が諸外国を経めぐって、外国はかくかくであったという話を聞くよりも、現実にそれらの研究者が集まって、たくさんの我々がそれを聞き、批判し、お互いに交流するということは非常に大切な点でないかと思っております。  そういう意味で、私は一九八七年にガス突出の国際会議を提唱しておりますが、いまだ日の目を見ておりません。もしできれば、そういう点に御助力いただければ、日本石炭産業ばかりでなくて、どうせ買わなければならない日本石炭の中には外国人労働者の血と汗と命が入っているということを忘れてはいけないと思います。それは、これから数千万トンあるいは一億トン以上日本が使おうというその石炭を掘るための人に対するヒューマニズムでないかと考えているわけでございます。  ある方が、多分この席だと思いますが、おっしゃったと思います。私は、この方は大変立派な方で尊敬をしている方でございますが、その方が試験炭鉱に対してこういう発言をなさいました。  炭鉱というのはそれぞれ自然条件が違う。したがって、試験炭鉱をつくっても、一つの試験炭鉱で成立しても他炭鉱で成立するとは限らない。したがって、もし試験炭鉱をつくったとしたならば、試験炭鉱はよいが、ほかの炭鉱はよくないからそれは国費のむだ遣いになる、そこまでおっしゃったかどうかわかりませんが、それに類することをおっしゃったと思います。  私は、これに対して非常に大きなある種の気持ちの憤りを感じたわけでございます。なぜかといいますと、医学の研究というのは何でやっているか。人間でやっているだろうか。人体実験で医学の研究をやっているでしょうか。それはすべて動物実験でやっております。動物と人間は違うのだから、動物に成り立つことが人間に成り立つとは限らない、したがって動物実験をやることは国費のむだ遣いである、こういうふうにもし医学の研究者に言ったとしたならば、あなたは学問を知っているかという反論が戻ってくるのではないかと思います。  試験炭鉱というのは基礎をやるところであります。共通点において問題点をとらえる研究を進めるのが試験炭鉱でございます。それに対する個々の応用は個々の炭鉱で行えばよろしいわけであります。その基礎すらまだ研究が進んでいないというのが現状でございます。いわゆる深部化、奥部化ということを言っておりますけれども深部化、奥部化のテンポの方が研究のテンポより速いわけであります。したがって、深部はわからない、深部の問題は未知であるという言葉だけが残ります。我々はそれではいけません。わかっているところのみ、情報のはっきりしているところのみ採掘を展開すべきであります。そのためには、深部化という問題より先に、深部とはいかなるところであるかという研究が先行すべきであると思います。  日本石炭産業をこれからどうするか、経済ベースの上でどうするか、あるいはエネルギーの安全保障の上でどうするか、地域の問題でどうするかということに対しては、私自身は、特に決定する権限もございませんし、それに対して非常に心が千々に乱れております。世論は要らないと言う。しかし、私のような炭鉱関係者はぜひぜひ残してほしいと思う。その二つのジレンマの上に立って、何とも決めかねております。これらの基本線を本当の意味で決め、日本のエネルギーの将来、石炭産業の将来というものを百年の計の中に打ち立てていただけるのは、皆様、先生方の責務でないかと思っております。それを私は心から期待いたしまして、本日の冒頭の陳述を終わらせていただきます。大変ありがとうございました。
  12. 小川省吾

    小川委員長 ありがとうございました。  以上で四人の参考人からの意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  13. 小川省吾

    小川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古賀誠君。
  14. 古賀誠

    ○古賀委員 本日は、参考人の皆様にはおのおののお立場から大変貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。  お話をいただきましたが、田中参考人がお時間の都合があるようでございますので、一問だけ御質問をさせていただきたいと思います。  御案内のとおり、石炭産業というのは、我が国の戦後のあの荒廃の中から、今日の経済の復興に大いに寄与した産業であるということは申すまでもないことであります。その間、いろいろなエネルギー事情の変化の中で、今日では競合エネルギーとしての海外炭に対しての価格差、今おのおの四参考人の皆様からお話をいただいたとおりでありまして、今大変な価格差があるわけでございますが、そういった現況の中で非常に苦しい、厳しい状況下にあるということはお話をいただいたとおりであります。また、そういった中で先般の長崎それから北海道重大災害発生をいたしているわけでございまして、さらに石炭産業を今日苦しい立場に置いているということが言えるのではなかろうかと思います。  今日、お話をいただきましたように第七次石炭政策が実施されているわけでございますが、これは六十二年の三月までということになっているわけでございます。時あたかも第八次石炭政策をこれからいよいよ検討すべき段階に入ってきている、そういった中で、田中参考人のお話の中に、第八次石炭政策というものは、国内炭政策の中で我が国のエネルギーの安全保障の立場から、それからまた商品という立場から、また石炭産業が与える地域社会への影響という立場から、そういった総合的なバランスのとれた石炭政策、第八次政策というものはそういったことに力を置くべきではないか、そういうお話だったと私は思っております。  またお話の中で、今までの石炭政策というものは撤退撤退の連続であったのではなかろうかというような陳述もいただいたようでございますが、今度の第八次石炭政策というものは、そういった意味ではもうこれより以上撤退を許されない、逆に今総合的なバランスをこの第八次石炭政策の中に織り込まなければいけないというお話でございましただけに、これより以上の撤退というものはもう許されないぎりぎりの線に来ているんだ、私はそういう考えで第八次石炭政策に取り組むべきだという考えを持っておりますけれども参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  15. 田中洋之助

    ○田中参考人 今古賀さんが第八次政策は最後の政策だ、これ以上の撤退は許されないと思っておるとおっしゃいましたけれども、私も全く同感であります。  これまで七回やってきました、今度が最後、これは最後にせざるを得ないという状況だろうと思いますので、これはよほど抜本的な御審議を願い、我々の方も、先ほど来申し上げましたように幾つかの要因があります。一つだけを取り上げてそれに徹するということは、現実の政策としては私は難しいと思うのですね。経済性というものも大きな要因でありましょうし、地域社会をいかに維持していくかということも、それぞれの地域にとっては大変大きな問題でございます。そして、これらがお互いに矛盾し合っているのが現実だろうと思うのですね。そういったいろいろ矛盾した幾つかの要因を、これは連立方程式を解くようなものでありまして、実際問題としてはなかなか難しいということだろうと思います。  しかし、私がここでちょっと強調しておきたいことは、やはりここまで炭価が開いてまいりますと、需要業界協力というものが並み大抵のことではなかなか難しくなったという事実があると思うのですね。そこは一つのポイントだろうと思いますので、これは経済性、商品としての国内炭一つのデメリットということになるわけですが、そこにある程度かなりのウエートを置かざるを得ないという感じがいたします。
  16. 古賀誠

    ○古賀委員 ありがとうございました。
  17. 小川省吾

  18. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 田中参考人は経済専門家ですから、お聞きいたしたいと思います。  第一次から第七次まで答申がございました。撤退に次ぐ撤退という話がございました。これらの答申の中で、殊に第四次政策の前、それから七次政策の前に、業界内部にいろいろ議論がありました。それはいわば体制的な議論、ちょうど時あたかもライン・シュタール・プランというのが西ドイツで論議をされ、私と岡田君が急遽、シーラー経済相のもとでつくられました石炭適応化法案というもの、これが通過をした後に行ったわけであります。  西ドイツというのは日本炭鉱のように裸ではないので、要するに需要業界と極めて密着した体制にある。まさに資本主義としてはかなり典型的である。要するに、鉄鋼と石炭というのは資本系統が同じである。しかも、炭鉱は四割、電力の発電をみずからして供給している。もちろん、イギリスのように電力も鉄鋼も炭鉱も国有である、あるいはフランスのように炭鉱も電力も鉄鋼も公社である、こういうところは別としても、あれだけ強靱な資本主義体制の中にあるドイツが、なぜルール炭田株式会社というのをつくったか。これは国有も、もちろん今一社残っている。私企業も四社ぐらい残っています。これはほとんど海外資本です。それなのにほとんど八割をまとめたかというと、やはり将来の炭鉱の危機を感じておったのではないか。要するに、残存炭量を残したままつぶれていくわけですから。日本でもそういう例があるのですよ。言いにくいですけれども、中以上の炭鉱が鉱量があり、開発したのになぜつぶれなければならぬか。それは母体のいわゆる会社が経営能力がなくなった、脆弱であった。この間の北炭新鉱の問題も同じです。言いにくいですが、三井鉱山が経営しておったらああいう状態になっていなかったという問題もある。  そこで、需要業界日本の場合は皆別々ですね。三井でもない、三菱でもないのですよ。これは日本の経済資本主義がずっと上がってきた過程で、日本製鉄株式会社が官営を中心としてできた。それから電力は日本発送電という会社ができて、それが九分割された。こういういわば需要業界炭鉱とが密着していないというところに、先ほど野呂さんが言っておりましたように、日本石炭というのは地質上見ると石炭紀の石炭ではないのだ、新しい時代石炭だから災害も多いし、断層も多いし、非常に困難だという話。そのほかにもう一つの特徴は、欧州に比べてそれが特徴なんですが、まさに炭鉱は裸なんです。需要業界関係がないのです。だから、これをどうするかという問題は、皆よそは炭価の問題はもたれ合いなんですよ。要するに、炭鉱が悪かったら電力がかぶってやっておるわけです。あるいは鉄鋼がかぶってやっているのですよ。かぶり切れなかった場合はそれに補助金を出した。こういう体制がないところに日本炭鉱の非常な苦労があり、七次答申を出したけれどもまだ不安である、こういう状態があるんじゃないか。  そこで、一体そういう体制論が今後八次政策の中に浮上してくるのかどうか。なかなか今のような状態で難しいと思いますけれども、それが来るのかどうか。もし来なかったとするならば、需要業界にそれだけ理解を求める以外にはない、あるいは政府がそれだけ金を出していく以外にはない。ひとつそういう点について御意見を承りたいと思います。  とにかく、能率を見ましても、日本の場合は坑内で大体八十七・九トンでしょう。英国だって五十二トンぐらいですよ。それからフランスだって二十七トンぐらいです。西ドイツが三十八トンぐらいですよ。これだけ努力をしているのにまだうまくいかないというのは、やはり何らかの体制を考える、体制ができなければ需要業界協力を求める、協力ができなければ政府がそれだけ補助金を出すということが考えられはしないかというのが一点。もう時間がありません。もう一点は、国内炭を使う私企業では北電に多くかかっている。北電というのは、率直に言いますと北海道開発はすごく伸びが悪いわけですね。東京電力とか関西とか中部というのは国内炭をそう使わないのですから、国内炭を使う会社に、何らか電力会社、業界でかつてあった水火力調整金のようなものを求めないと、北海道の電力生産用の一般炭生産をしている会社はますます厳しくなる。  この二点をひとつお伺いいたしたい。
  19. 田中洋之助

    ○田中参考人 今、多賀谷先生の方から、需要業界との協力日本では薄いんじゃないか……(多賀谷委員「体制」と呼ぶ)体制ですね。日本石炭産業は非常に古い産業でございまして、大体三井、三菱、住友といった財閥系の会社が多いわけですね。一方電力は、これはそういう資本系列から申しますと財閥系ではないのですね。中立的です。新日本製鉄を初め鉄鋼もそうです。そういう関係で、ドイツのように炭鉄共同体というようなことは日本の経済の中では歴史的事実としてはなかったと私は思うのですね。  ただ、ここ数年間ずっと動きを見ておりますと、鉄鋼業界にしてもあるいは電力業界にしても、国内炭の引き取りにつきましてはそれなりの協力はしてきたと私は思うのですね。特に鉄鋼業界業界の性格としまして、私企業とはいっても天下国家の立場に立つという気風が比較的強い業界であります。特に新日鉄はそうだろうと思います。したがいまして、毎年の炭価の値上がりをのんできたということもありましょうし、一定量の国内炭を引き取ってきたということも、これは認めざるを得ないと思うのですね。それから電力業界の方も、これは料金に転嫁できるということもありまして、それなりに一般炭を引き取ってきたと思うのです。そういう意味で、日本需要業界も決して石炭業界の経営に対しまして非協力的であったとは言えないと思うのですね。それなりの協力をしてきた。ただ歴史的に見て、やはりドイツとかイギリスあたりに比べますと、英国の場合は全部国営でございますから国の政策でもってそれができる。しかし、日本は全部私営であります。民間経済でありまして、私企業でありますから、その経済原則は私企業の原則でありますから、同じ系列だからといって高いものを無理に買うということはなかなか難しいというのが事実だろうと思います。  それからもう一つ北海道電力のお話が石炭の問題に絡みまして今出ましたですね。電力業界協力と申しましても、北電と電発に今非常に石炭を引き取ってもらっていますね。北海道電力は北海道地域というものと非常に深い関係があります。それから石炭産業北海道の一番重要な産業でありますから、北電としてはできるだけ北海道産の石炭を引き取るということで、苫小牧の一号基というのは御承知のように道内炭を燃やしているわけですね。二号基が今度できて、これは海外炭ということになったわけですけれども、電力九社の中では地域的な特性もあって国内炭の使用、引き取りについては北電が一番大きなウエートを占めておる、また今後もそうせざるを得ないだろうというふうに考えられます。  問題は中央三社でございますが、実は今、東電が水戸の射爆場跡に二百万キロワットの石炭専焼火力発電所の計画があります。それから電源開発会社も百万キロワットの、これは国内炭専焼の火力発電所を射爆場跡につくるということで、両方合わせまして三百万キロワットの発電所ができる計画になっております。しかし、需要が非常に落ち込んでおりますためにそれがだんだん延びまして、恐らく実現するのは昭和七十年代に入ってからだろうと思うのですね。これが完成しますと、三百万キロワットの石炭専焼火力といいますと年間その二・三倍ぐらいの石炭、つまり六百万トンから七百万トンぐらいの国内炭需要を必要とするわけでありますから、これができますとかなり大きな需要増大になる。ただ、ちょっと今電力の需要が落ち込んでおりますから先延ばしになっておりますけれども、東電がとにかく二百万キロワットの石炭火力をつくるというわけでありますから、将来期待できるのじゃないかというふうに思われます。
  20. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっとお忙しいのですけれども、コールペニッヒという西ドイツの電力に今それだけの負担をしているのですが、これも油と火力の調整金から出ておるのですね。日本でも水火力調整金があったのですから、北電が国内炭を使うなら北電が使う、ほかは海外炭を使う、こういうようにして、やはり全体の中で業界が制度的にそういう調整ができないかということ。  それからさっき私が言いましたように、需要業界協力を私も確かに多としておるわけです。多としておるが、やはり制度的にそういうシステムができないか。そうすると日本炭鉱は割合に安心できるかという、要するに実態論ではなく制度論としてできないかということを申し上げたわけで、ひとつよく専門家ですから検討していただきたい。  以上で終わります。
  21. 小川省吾

    小川委員長 宮崎角治君。
  22. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 大変思い切った御提言と御意見を賜りました田中参考人にお尋ねしたいわけであります。  率直に言って、国内炭をどうすべきか、こういうメーンテーマでお話しになった参考人の御意見の中に、多くの坑夫を殺して、しかもまだ高い石炭を掘らねばならないというその要因、あるいは多くの業界方々意見も集約されて、もうこの辺で、本音のところはこれ以上国内炭云々、さらに深部とかあるいはまた奥部というような問題もありまして、この辺で見直す問題があるんじゃないか、あるいはまた無理があったんじゃないか、こういった御意見のようでありました。  確かに、三十五年の当時におきましては五千二百万トンの採炭だった。現在はこうしてもう二千万トンを切った。あるいは炭鉱にしても、三十五年で六百二十二を数えたのが今三十、そして重要が十一だ。さらには、二十三万一千人だった鉱員が今一万五千人、そういった減少の中にありますが、炭鉱問題は地域の経済性と、あるいは人々がそれにあずかっている恩典というものも大変多い長崎県の高島の例もあるわけでございますが、この辺で田中参考人の率直な御意見、本当に今の国内炭というものをどうすべきなのか。通産大臣が今の山は減らさないと言う。そして中小企業には、いわゆる二〇%の国内炭を買わなければという一つの条件もあるようでございます。これについて、ひとつ参考人の率直な御解明と御意見を承りたいと思っております。
  23. 田中洋之助

    ○田中参考人 建前論じゃなくて、本音を言えということでございますね。  経済問題として考えますと、私はやはり国内炭をめぐる環境は非常に厳しいと思います。これだけ大きな価格差が出るということは、やはり市場においての競争力を失いつつあるわけでございますから、ほうっておいたらこれはてこ入れ、何らのてこも入れなければ日本の国内産業は崩壊すると思います。今IQ、輸入割り当てですね。外国から石炭輸入する場合は国内炭を二割扱えというようなことで、これは一種の抱き合わせ販売、抱き合わせでやっておるわけでございますが、これがなくなったら現実としては日本国内石炭産業は崩壊する。したがいまして、先ほど来のお話になりますけれども、地域の問題とエネルギーの安全保障問題というものがどうしても最後に残る問題だろうと思いますので、こういう視角というか、こういう観点もあるわけですから、これをひとつ徹底的に議論してもらいたいというふうに考えておるわけであります。何か一つで割り切るということは、現実の政策としては難しいということでございます。
  24. 小川省吾

    小川委員長 小渕正義君。
  25. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 時間が限られて五分ですから、一問だけお尋ねいたします。  田中参考人のお話をお聞きしておりまして、まず何といいましても経済効率性の面から非常に問題があるということ、しかしながら、それぞれ石炭会社の置かれている地域の経済といいますか、そういう問題がまた別にあるということ、あわせてエネルギーの安全保障という関係もあるということで、この三本の柱を中心にして第八次政策検討さるべきであるというようにおっしゃられたと思います。だから、そういう意味においては当然そういう問題三つ絡まった中であの七次政策はできてきたのじゃないかなという意味で、八次はどこが違うということで言われるのかなと思って少し戸惑ったわけであります。  先ほど古賀委員の質問の中で、撤退は許されないし、そうかといってぎりぎり最後の段階だ、そういう中で需要家の協力ももう限度に来ておる、こういうようなことをあえて言及されていることをずっと考えていきますならば、そういう三つの柱の調和の中で今までとまた違った何らかの新しい政策を国として考えるような状況だということでおっしゃられているのかどうか。需要家としてはもう限界に来ているということを考えながら、なおこの石炭政策というものを推進するとなればあと何が出てくるのかということになりますと、もう少しそこらあたりについてのお考えが何かありながらおっしゃられたのかどうか、ちょっと疑問に思いましたので、その点についてのみお尋ねいたします。
  26. 田中洋之助

    ○田中参考人 実は私にも名案はございません。需要家の態度が非常に厳しくなっているということはもう否定できない事実でございますので、今までに比べまして恐らくそうした声がかなり強く政策形成に反映されるのじゃないかという、これは私の予想であります。しかし、それだけですべてを決めるというわけには恐らくいかぬでしょうから……。そんなところでございます。
  27. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ちょっと時間がありますので。  そうかといって、これ以上需要家に負担をさせてはいけないということを考えると、あと何か次にかわるものを新しく考えていかなければいかぬのじゃないか、そういう考えを持つわけですから、その点について何か示唆に富むようなお考えがありましたらお聞きしたいわけです。
  28. 田中洋之助

    ○田中参考人 今三つの柱で支えていると思うのですね。一つ需要家の協力というものもございますし、それから国の助成、それから労使の合理化努力、国鉄の場合もそうでしょうし、日本石炭産業の場合もこの三本柱によって支えられておる。いわば三万一両損という格好で国内石炭産業が支えられているということだろうと思います。  そこで、合理化努力というのは、率直に言いまして石炭業界はかなりやってきたと私は思うのですね。一人当たりの労働生産性も外国に比べてかなり高くなっております。しかし、それにもかかわらず国際競争力が落ちてきたというのは一体どういうわけだ、この辺は私もまだ自信のある解明というのはできておりませんので、こうだという回答はできないのでございますが、政府の方もそれなりにかなりの助成もしておりますし、合理化努力の方もやっておる、それから需要業界協力も、業界側にするとこれがぎりぎりだというようなことで協力を続けてきて、そして辛うじて今の石炭産業維持されているというわけでございます。こういう今の三つのほかに何かもう一つウルトラCの名案はないかということでございますけれども、ちょっと私にはその案が浮かびません。
  29. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ありがとうございました。
  30. 小川省吾

    小川委員長 小沢和秋君。
  31. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 私は、二問ほどお尋ねしたいと思うのです。  一つは、いわゆる内外の炭価の格差が非常に大きくなってきている、これに災害も絡んで、果たして国内炭を掘るだけの値打ちがあるか、こういう話が盛んに出ているわけでありますけれども、私は石炭政策というのはもっと長期的に考えなければいけないのではないかと思っております。特に、今ドル高で、こういうふうに非常に国内炭が高いということになっているのですけれども、早い話がアメリカなどもことしじゅうには純債務国に転落するのではないか。こうしたときに、今異常にドルがアメリカに集中しているのが、事態が一変してドルの大暴落だってあるのではないかということも今では取りざたされるような状況です。だから、私は、そういうような局面に一喜一憂して、国内炭をどうするかというようなもう百年というような単位で考えなければいけないような問題が振り回されるようなことがあってはならないのではないか、その点まず一つお尋ねをしたい。  それからもう一つは、私どもは、国内炭は非常に資源に恵まれない我が国にあって非常に数少ない資源だ、だからこの国内のエネルギー資源を大切に掘っていかなければならない、今後もずっと活用していかなければならないというふうに考えるわけであります。先ほど最後の選択という言葉を使われたと思うのですが、今直面をしている選択というのは、今の程度の国の関与あるいは助成策ということでいくならば先行きというのは非常に暗いものにならざるを得ないのではないか。だから、この程度でいって、結局のところ石炭をだんだんもうだめだという方向に追いやってしまうように決定的に最後の選択をするか、それとも国が思い切って関与をする方向に決断をして、先ほども新鉱の開発などは国がやるべきだというようなお話もあったと思いますが、私もそういうようなことを考えなければ今後の展望というのはないと思うのですよ。だから、そういうような意味も含めて、抜本的に前向きに国の関与を変える、それ以外にない、この選択が最後の選択ではないかというふうに私は考えておるのですが、この二点、お尋ねしたいと思います。
  32. 田中洋之助

    ○田中参考人 最初の御質問でございますが、内外炭の格差が今開いておると言いましたけれども、これは内外のいろいろな情勢によって今後どう変化するかわかりません。御承知のように、為替レートの変動によってかなり大きく変わります。為替レートの場合、今御指摘のように、ドルが今後暴落する可能性もある。既に純債務国に転落しているわけでございますが、私はそういうことはないと思うのですけれども、為替レートでございますからこれは市場に聞く以外にないわけで、決して固定したものではございませんから、レートの動きいかんでは格差が再び縮まる可能性だってあるわけです。そういう意味で、国の基本的なエネルギー源である石炭とか石油とか原子力につきましては、より長期の観点に立って物を考えていくという視角が必要だろうと思います。  ただ問題は、孫のことを考えるにはまず子供のことを考えなければいかぬわけですね、子供がなければ孫はできないわけですから。問題は過渡期の、当面がなり深刻な状態になっておりますので、それをどう対策するかということで、やはり長期の視点に立って、赤字であってもこれは残しておくんだ、そのためには体制論までいって、極端に言うと国有、国営化して、それでやってもいいじゃないかという議論も一つ考え方としてはあり得ると思うのですね。ただ、体制論議になりますと、これはかなりいろいろ論争のあるところでしょう。私自身はやはりヨーロッパ型あるいはイギリスとか、ああいう型に日本産業体制というものを持っていくことについては必ずしもいいとは思っておりません。そういう意味で、石炭産業につきましても、一部では国有、国営とかということを言いますけれども、それで問題が解決できる、あるいはその解決の決め手になる、所有形態を変えるということが決め手になるとは思わないわけですね。これは私の個人的な意見でございます。
  33. 小川省吾

    小川委員長 この際、申し上げます。  田中参考人が所用のため退席されますので、御了承願いたいと存じます。  田中参考人には、御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございました。  古賀誠君。
  34. 古賀誠

    ○古賀委員 それでは、質疑を続けさせていただきたいと思います。  最初に、有吉石炭協会会長に御意見を聞かせていただきたいと思います。  御案内のとおり、第一次、二次オイルショックを経て、我が国の今日のエネルギー政策というものは、過度の石油依存体質からの脱却を目指して今日展開されているのではないかと考えております。そういうことを考えますと、石炭というものは原子力と並んでこれから最も重要な石油にかわるエネルギーであるということが言えるのではないかと私は思います。今後も日本経済というものは伸長していかなければいけませんし、また進捗するでありましょう。そういったものに伴って増大するであろう石炭需要というものに対する供給は、いろいろなお話を聞いている中で、海外よりの輸入炭によって賄わざるを得ない、そういうことは言えると思いますけれども、そのペースに日本の唯一の国産エネルギーであります国内炭というものをいかに位置づけして、いかに活用していくかということがこれからの安定的なエネルギーの確保の上で最も重要なことではないかというふうに考えるわけでございます。  そういった中で、再三お話が出ておりますけれども、先般の長崎、それから北海道、そういった炭鉱災害、非常に重大な災害を起こし、しかも多くのとうとい人命を失うというようなことでは産業としての価値がないというふうに今言われていますが、そう言われても仕方がないのではないか、ある面ではそういう考えがするわけでございます。先ほど有吉会長の御意見の中で、そういったいろいろの対策を今後施すことによって重大な災害を撲滅する、そういうお話でございました。しかし、これから炭鉱というものはなお以上深部化、そして奥部化が進行するわけでございますが、本当に保安というものを確保して、そして千七百万トンの安定生産というものが可能なのかどうか、この際特に有吉会長にこの点についてお伺いをしておきたいと思います。
  35. 有吉新吾

    有吉参考人 私どもは、冒頭陳述申し上げましたように、現在の炭鉱維持いたしまして千七百万トンの出炭を維持していきたい、こういうふうに考えております。基本的には現在の炭鉱維持していきたい、こういうことでございまして、千七百万トンが多少ふえるとか多少減るとか、こういうことはあるかもしれませんけれども、それを基本にいたしております。  もちろん深くなり遠くなってまいりますので、自然条件というものは非常に厳しくなってくるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、北炭新鉱の場合のようにいきなり深部に入っていったというのと違いまして、上の方から石炭をずっと掘ってきて現在に至っているわけでございます。したがって、今までの深部移行に際しましてもいろいろな角度からの対応策というのを講じてきておるわけでございます。ただ、そう言っても事故を起こしたじゃないか、こういうことに対しましては申しわけないわけでございますが、これに対しましては徹底した保安対策を講じましてひとつやっていきたい、こう思っております。既に八百メーター、九百メーターあるいは千メーターというような山も二、三あるのでございますけれども、今後五年間、深部に移りましても百メーターとか百二、三十メーターの深部移行でございまして、今までの経験から言いまして、今の採掘条件というものが著しく変更するであろうということは予想されない、こういうことでございますので、そういう覚悟でひとつ千七百万トンは維持していきたい、こう思っております。
  36. 古賀誠

    ○古賀委員 有吉会長、それから組合の方の野呂会長にもお尋ねをさせていただきたいと思いますが、最初に有吉会長意見陳述の中で、六月三日でございましたか、全炭鉱保安の徹底的な見直してございますかをやっていただいたようでございます。また、そのお話の中に、石炭業界というものが六月を重大災害撲滅の基盤確立月間として徹底的な保安見直しをやろうという御意見がございました。今回の長崎の高島炭鉱、それから北海道南大夕張炭鉱、それから一年半前でございますが、三池炭鉱有明鉱にいたしましても、非常に近代的な炭鉱だと言われております。そして、この近代的な炭鉱でありながらあれだけの大きな災害発生させている。集中監視装置やその他近代的な機械の設備保安確保に非常に大きな役割を果たしているということは疑いないのでございますけれども、果たしてそれだけでいいものかどうか。これだけの非常に大きな事故が相次いで起きますと、そしてまたそういった事故が起きます炭鉱が非常に近代的な炭鉱と言われておりますだけに、私どもは非常に心配と同時に素朴な疑問を持つわけであります。  今申し上げましたように、近代的な機械、設備というものは当然保安確保に大切なものでありまた、今日も非常に役立っているということは疑わないわけでありますけれども、それ以前の問題として人の問題というのが言えるのではないか。そういうことはないのでしょうけれども、どうも人の問題というものがおろそかになっているのではないだろうか。保安というものはハードの面とソフトの面というものを、両面ぜひひとつ相調和して、そしてまたこの両面についての見直しというものがぜひ必要になるのではないか、私はそういう気がいたすのです。私は有吉会長にこの基盤確立内容というものを具体的にお伺いいたしたいというふうに思います。  それから野呂会長には、意見の陳述の中で、いろいろな予防、防止を施していくとこういった重大災害というものは必ず防止できるという明確な御意見を私はお伺いいたしました。そういった御意見の中で、今私がお話をいたしましたハードの面とソフトの面、そういった点をとらえていただいて、もう一度ひとつ重大災害を予防できるという確信をお聞かせいただきたい。
  37. 有吉新吾

    有吉参考人 今御指摘ございましたように、まさに保安確保につきましてはハード面だけでなしにソフト面というものが非常に大事である、こういうふうに思っております。  ハード面につきましては、基本的に坑内構造から見直してみる必要がある、こういうことも今度の六月の基盤検討月間の一つの項目でございますし、それから機械器具設備の再検討というハード面の検討は第一にやらなければならぬと思っております。  しかしながら、御指摘のように一番大事な問題はやはり人の問題でございまして、爆発災害等につきまして、何といいましてもガスを停滞させないというのが根本でございます。したがって、一番そういう危険の可能性のありますところをいろいろなセンサー等によりまして先行的に探知する、こういうことも必要でございますけれども、何といっても巡回とかそういうことによりましてチェックをしていく、こういうことをあわせて行いませんと万全を期すことができないわけでございまして、そういう意味で、今度の保安月間におきましてもさっき申しましたようなハード面の再検討、整備、こういうことと並びまして、ソフト面といたしましては保安管理監督体制、こういう問題とか、それから作業の手順とか検査、点検の方法とか教育訓練の方法、最後には最悪の場合の対応策といたしまして退避、避難の方法、こういうふうなことを内容として月間でやる予定にいたしております。
  38. 野呂潔

    野呂参考人 災害をどういうふうにして防止をしていくのかという問題について私見を述べましたが、御質問でございますのでお答えをいたしますと、災害を防止するためにはまず坑内の骨格構造のつくり方自体を再検討をする必要があるのではないか、こういうように考えているわけであります。特に通産省では毎年の保安のヒアリングというのをやるわけでございます。その場合には、鉱山保安法に基づいて一定の考え方であればそのとおり通るわけでありますが、やはりその骨格構造で事故を起こしているわけでありますから、そういうようなことが起こりにくいような構造にするように施業案のときあるいはヒアリングのときでもチェックをして、そして十分にそういうような対策を立てていただくというのがまず基本ではないか、こう思っています。  それと、教育問題については十分にこれは労働組合協力してやっているのでありますが、考え方を若干述べますと、災害が起きますとそのときは本当に真剣になって取り組みますけれども、人間の悪いところとして時間がたてばそういうことをまた忘れるということがございますから、執拗にどういう事故はどんなことでもって起きたのかということを各炭鉱においても再度繰り返し繰り返し、その過ちを起こさないような教育といいますか、再点検とかいうものが必要であろうというふうに考えています。  同時に、炭鉱技術職員、並びに坑内で先山というのもあるのですけれども、そういう人力に、これはドイツやイギリスなどでも採用しているのでありますが、一定期間賃金を全部保障して教育をしていく。機械のことであるとかあるいはすべてのことについて万能労働者みたいに、機械のことも点検をしたり直せたり、発破のことについても、あるいはすべてのことについて常に理解をして対応していく。そういたしますと、係員が、仮に会社側の方としてもあるいはミスなどがあって危険なことを未然に把握できなかったというようなことなども、そういう者を通じてでもはっきりと把握できるし、災害を未然に防ぐことができるというように考えますので、ここのところは保安係あるいは先山を含めて教育期間を思い切ってとっていく。ですから、私が先ほど政府のそういう指導とか機関を強化してほしいというように申し述べましたのは、そういうことを十分含めて申し上げた次第であります。  以上です。     〔委員長退席、多賀谷委員長代理着席〕
  39. 古賀誠

    ○古賀委員 ありがとうございました。事保安に関してはぜひ十分な御検討をいただきますようにお願いを申し上げておきます。  それから有吉会長の陳述の中に、炭鉱深部化、奥部化、そういったことによるコストアップというものは今までも若返り、それから徹底的な合理化等によって十分吸収をしてきた、また、これからも吸収できるということの御意見がございました。しかし、今もお話があっておりましたように、炭鉱というものはますます深部化、奥部化をしていくわけでございます。そういたしますと、当然実労働時間というものはどんどん深部化、奥部化が進むにつれ減るでありましょうし、また逆に運搬コストというものは当然増加をしてくるわけでございます。それからまた保安の面での予防につきましてもいろいろな面で難しい問題、要するにお金のかかることが出てくるのではないか、こういうふうに我々思うわけでございます。そういった問題もあって、コストの増加というものは避けられないのではないかというような考えを私は持っておりますけれども、ひとつこれまでの実績、それからこれからの将来の見込みについてお話をお聞かせいただきたいと思います。  それから、この問題につきまして、よかったら磯部先生にも御見解があれば一言触れていただきたいと思います。
  40. 有吉新吾

    有吉参考人 御指摘のように深部に入り、奥部に入っていくことはもう不可避でございますので、それに伴いましてコストは当然高くなる、こういうことでございます。ただ、我々といたしましては賃金のベースアップとか諸物価の上昇といった、そういうインフレーター要素以外の自然条件の悪化まで需要家さんにお願いをする、こういうことではいけないので、これだけはひとつ私どもの自主努力によりまして吸収をしたい、こういうことでやってきたわけでございます。  この五十四年から現在五十九年の間の実績をとってみますと、賃金と物価上昇というインフレーター要素を除きますと、コストは上がっておりません。それから、今通産に六十六年までの計画を出しておりますが、これも賃金、物価というものを一定といたしますと、コストは大体現状のコストで賄っていける、こういうふうなことになっております。おっしゃいますように、確かに運搬距離とか維持坑道メーターとか、こういうものはふえていっておりますが、ちょっと具体的な数字を申し上げますと、五十四年と比べますと、維持坑道メーターは五十四年八十二キロであったのが五十九年は九十四キロにふえておりますし、それから平均深度は五十四年が五百七十九メーターでございましたのが五十九年は六百二十一メーター、それに伴いまして平均の運搬距離というのが五十四年におきましては六千五百メーターでございましたのが八千二百メーター、そういうふうに延びているのでございます。  しかしながら、能率はどうなったかと申しますと、七七・九というのが八八・八、こういうふうに能率アップを図っておりますし、それから平均の往復時間にいたしましても、五十四年におきましては往復八十六分かかっておりましたのが百三分、これは十七、八分ふえております。しかし、この今の往復時間等を見ましても、今後の計画で見ますと、六十六年は現在の平均運搬距離が八千二百メーターが九千九百メーターになるのでございますけれども、平均往復時間は現在の百三分が百十六分とわずかに十三分しかふやさない。これは電車のスピードアップとかその他の合理化で吸収する、こういうことでやってきております。  以上でございます。
  41. 磯部俊郎

    磯部参考人 お答え申し上げます。  私に対する御質問の内容は、多分コストの問題ということでなしにむしろ保安の面というふうに考えておりますので、申し上げたいと思います。  日本では、大体明治三十年の初年ごろから本格的な近代的石炭採掘に取りかかってきております。現在までほぼ三十億トンくらいの石炭を掘り上げております。その間において一体どのくらいの死亡者が出ておるかと申しますと、二万二千余人の死亡者が出ております。百万トン当たりに換算いたしますと、七人強でございます。ごく最近の十年間くらいを考えてみましても、やはり百万トン当たり三人程度の死亡者が出ております。  その内容を多少細かく分析してまいりますと、炭鉱災害というのはどうも二つに分極していると考えられます。  第一は、落盤あるいは運搬災害というようなごく少数の方々、もちろんそれは大変なことなんですけれども、一ないし二名の犠牲者で済んでいる、そういう災害が年に大体二十件内外、百万トン当たり一名程度災害率を出しております。これに加えまして、一年に一度とかあるいは二年に一度とか大きな災害がありまして、そこで数十人あるいは百人近くの人が一度に罹災するという現象を起こしております。  なぜこうなったであろうか。回答は既にもう皆さん御承知のとおり、深部化しているからであります。例えば幌内炭鉱などは、既に千百メートル以下の地域を掘っております。また、非常に経営状態のよいという太平洋炭鉱ですら、斜坑の長さを全部坑底まで持っていけば六千メートルの長さになるはずであります。その他日本の諸炭鉱考えてみましても、数千メートルあるいは深さ千メートル程度の場所で採掘、仕事をしているということはもう通常の状況でございます。そういった状況のところというのは、今有吉会長が申されましたように、当然自然条件は悪うございます。その自然条件を克服し保安確保するためには、優秀な保安設備なしには一日も暮らすことができません。しかも、そうした立派な保安設備を持ったところでなければ現在生き残って生産を続けていく炭鉱にはなり得ないわけであります。日本炭鉱のほとんど一〇〇%はそのような優秀な保安設備を持っているからこそ採掘が続けられているわけであります。言うならば危険と背中合わせして、それをやっとやっと逃れて採掘をしているという状況でございます。  しかも、そういった深部に大多数の労働者が集約して働いております。したがって、一たん災害が起こりますと、数千メートルの坑道を駆け上がって逃げられるでしょうか。千メートルの立て坑をはい上がって上まで出られるでしょうか。この問題を私どもはもう一回考え直す必要があると思うのです。十人でも二十人でも五十人でもいいから各所に退避設備を持つべきである。そしてその退避設備は頑丈につくられていて、その中には食料、水、圧搾空気、そのほか通信機器といったようなものを置いておいて、いざというときにはそこへ逃げ込んで何日でも救助隊が来るまで頑張るというようなものがこれからの数千メートルの深部炭鉱には必要でないかと思います。そのぐらいのいわゆる保安に対する補助金と申しますか、国の施策は必要であろうと私は思います。これはすべての炭鉱に対して言われることでありましょうし、災害は絶対になくならない、しかもそれを最小限に食いとめるにはそういう方法しかないというふうに私は考えているわけでございます。  以上でございます。
  42. 古賀誠

    ○古賀委員 ありがとうございました。  時間が来たのですけれども、最後に一点だけ有吉会長にお尋ねいたします。  御意見の中で、我が国のこの政策面での補助は一トン当たり二千二百円というようなお話でございました。また同時に、イギリスとかフランスとか西ドイツ、そういった国々では自国の石炭に対しては日本よりも十分手厚い補助をなされているというような御意見がありましたけれども、具体的にその実態を御説明いただければ大変ありがたいと思います。  そして最後に、これは有吉会長の陳述の中にはありませんでしたけれども、現在第七次石炭政策、これは昭和六十一年度まででありますけれども、先般も通産大臣はこの第七次石炭政策というものは堅持すると明言されているわけであります。そういった中で、いよいよ昭和六十一年度の予算の概算要求の時期に差しかかってくるわけでございますけれども、この際、昭和六十一年度の予算に関して特に御要望の点があれば承っておきたい。最後に御要望申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  43. 有吉新吾

    有吉参考人 国の助成の問題でございますが、陳述で申しましたように、日本におきましては三百八十億、約二千二百円でございます。この前石炭協会調査団を出しまして、イギリス、ドイツの事情を調べてきたわけでございますが、いろいろ国情も違いますし、歴史もありますし、その補助内容もやはり日本とちょっとニュアンスの違ったなにもございまして、必ずしも同じベースで比較できるかどうかという問題がございます。けれども、今協会でわかっておりますのは、イギリスにおきましては、これは円貨に換算いたしましてトン当たり四千二十九円、フランスは円貨に換算いたしまして九千四百円、ドイツが四千三百円、こういうふうな金額でございます。  ただ、御承知のように、ヨーロッパの通貨はドルに対しまして非常に弱くなっておりまして、それを円貨で換算してそういうことになっておりますが、例えばイギリスの平均のコストは大体四十ポンド、こう言われておりますが、それに対して今のポンドで助成額をあらわしますと約十三ポンドでございまして、約三〇%ぐらい、日本石炭二万円としますと六千円ぐらい。それからドイツにおきましては、平均コストが二百五十マルクと言われておりますが、今の助成をマルクで表示いたしますと大体五十マルクでございまして、ちょうど二〇%でございます。日本に当てはめますと大体四千円見当、こういうことになるのじゃないかと思っております。  それから、六十一年度予算に対する我々の希望でございますけれども、私どもといたしましては、当面やはり保安関係にひとつ力を入れなければならぬ、こう思っておりますので、保安の坑道関係あるいは保安の機器それから保安の研究開発、こういうものに対する内容を、もう少し助成の強化をひとつお願いしたい、こういうことでお願いをいたしております。  なお、そのほかに、今度の災害もそうでございますが、災害による経営改善資金というようなものも出してもらうわけでございますけれども、これの償還期限が一年になっておりまして、とても一年では償還が難しい、こういうことでございます。その辺の返済期限の問題とか、発電所なんかも、自家発をつくったりいたしますと、これは近代化資金ですが、八年で返済ということになっております。これは、できましたら、発電所の償却年数に応じた返済というような、そういう経営改善資金、近代化資金につきまして、もうちょっと幅のある運用をひとつお願いできたら、こういうのが要望でございます。
  44. 古賀誠

    ○古賀委員 ありがとうございました。
  45. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員長代理 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  46. 小川省吾

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。多賀谷眞稔君。
  47. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三池有明炭鉱あるいは三菱南大夕張炭鉱、この重大災害につきましては、私どもは非常にショックを受けたわけです。殊に、両方とも戦後開発された山であり、要するにまだ若い山である。しかも近代的な、非常に優秀な炭鉱であると言われただけに、非常に残念に思うわけであります。  そこで、朝日新聞の「論壇」に外尾東大教授が、「炭鉱保安は国家の責任で」という論文を載せられました。まさに画期的といいますか、大きな提案であると思うのです。それは、従来のように、保安生産は一体であり、企業は保安第一に徹すべきであるというような、旧来言い古されたような建前論では労働者は救えない、こうあるからです。  そこで、この真意はどこにあるのか、いろいろ我々もせんさくしたのですけれども政策論を別として、一体こういうことが技術的に可能なんだろうかということをひとつお三方からお聞かせ願いたい。こういう長い間資源工学を専攻されました先生が提案をされておるのですから、我々は傾聴に値すると思いますが、さて技術的に一体そういうことが可能であるかということについてお聞かせ願いたいと思います。
  48. 有吉新吾

    有吉参考人 多賀谷先生がおっしゃいますように、外尾先生の所論がどういうことを意味しておりますか、私も内容をはっきりつかめないものですから、あるいは保安に関する支出というようなものは国が持ってというようなことであれば、実際のオペレートは全部企業の責任でやるわけでございますから、私はある程度可能かと思うのでありますが、保安の責任を国が持って生産の責任は企業が持つということは、炭鉱実態からいいまして不可能じゃないかと私は思っております。私の意見はそういうことでございます。
  49. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は、外尾先生意見の中には、「例えば炭鉱保安対策事業団のような国家の組織で、炭鉱保安を徹底的に実施」すべきであるということで、保安施設だけを保安対策事業団でやるのかなという疑問を持っておるわけです。これは有吉さんのお話を聞きましたから、あとお二方からお願いいたします。
  50. 野呂潔

    野呂参考人 外尾先生と会って意見を聞いたこともないので、私もよく意味はわからないのであります。  ただ、保安というのは生産があるから保安があるのでありまして、石炭を掘らないということになったら保安はないのであります。したがって、それはついているものだろう、こういうふうに考えるわけですが、この外尾先生が言っているのは、炭鉱だけではなくて生産をする会社全部を言っているのかということになると、これはまた大変なことになるな。しかし、炭鉱災害が多いから炭鉱だけということになると罰則的なものなのかということですが、私は、先ほど意見を述べましたように、炭鉱災害は、重大災害も解決できるし、しなければならない、こういう立場に立っておるものですから、罰則的なものは特に私たちは望んではいません。しかし、そういう意見も私たち労働組合の内部でも起こしたことはありますが、それは可能かといえば技術的には可能でありますが、無意味ではないかなというような感じをいたしておりますので、よく聞いてみないとそれ以上の見解を述べることができませんので、このくらいにしておきます。  以上でございます。
  51. 磯部俊郎

    磯部参考人 私も今お二方のおっしゃったこととほとんど同じ観念を持っております。国だけが保安の責任を持つということは、ある意味では不合理でないかと思います。炭鉱で大きな災害を起こしますと、一つの山でさえ何十億、何百億という損失を出します。それは生産に直せば何百万トンというような数字にもなるかもしれません。そして、企業自体がそのために危殆に瀕するということは皆さん御承知のとおりでございます。  そこで、私の考えとしましては、企業もそれから国の方も、重大災害というのはどれだけの損失をこうむるものであるか、従来の統計によると年間何百億の損失をこうむるものであるということを知っておきまして、それに対してトン当たりの保険を掛ける。そうしてそれを蓄積しておきます。もし重大災害が起こったならば、その保険金を使って復旧に従事をする。それ以上になった場合には、これはいたし方がないからその起こした企業でそれ以上を補てんする以外にはないと思います。しかし、もし全く災害が起こらなかった、保険金が丸残りであったというような場合には、大変いいことですから、そのお金をボーナスとして各炭鉱生産に応じて配分する。それによって炭価を少しでも安くし、経営を楽にしてやる。同時に、保安に対する意識を高揚する。こういう効果はあるのでないかとは思っております。これは私見でございます。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 わかりました。磯部先生の御意見は、むしろ災害対策の保険基金といいますか、そういうものだと承ったわけであります。  そこで、これは有吉参考人にお聞きいたしたいと思うのですが、保安監督官が坑内をいろいろ視察をして指示をするとか勧告するということがございますね。私は、この勧告したり指示した事項というものはやはり末端の労働者全部に知らす必要があると思うのです。私どもが例えばバス会社とかそういうところの朝の点呼に行きますと、自分のところの事故だけでなくて、よその事故も全部朝知らせておるのですよ。こういうことは注意しなさい、どこどこのバスでこういう事故がありましたということで、もうよその事故まで張り紙を張って説明しているのですよ。  ですから、私は、少なくとも鉱山保安監督官が来て指示をした事項については繰り込みの掲示板に明記をしておく必要があると思うのです。それはもちろん、経営者の方からいうと、下から突き上げられることもあるでしょう。しかし、今現在は災害が起こったときにはまさに炭鉱はつぶれるわけですからね。そういうことをお互いに監視をし、そして保安点検をするという姿勢をするにはやはりそのことが必要ではないか。後から保安委員会で事後報告があったり関係者だけが知っておって非常に苦慮するというだけでは、やはり全体的な自主保安体制というのはできないのじゃないか、こういうように私は思うのですが、どうでしょうか。
  53. 有吉新吾

    有吉参考人 私は、監督官の注意事項というようなものはどういう扱いをしておりますか、今ここでお答えできない、現場の事情をよく知りません。でございますが、都合が悪いからこれを内々にしておくとか、そういう考え方ではないと私は思います、現場では。それは、事保安に関しましては毎月の保安委員会というようなものもやっておりますし、そのほか随時自主的な会合もやっておるわけでございまして、会社に都合が悪いからそれを知らせないとか、そういうことはちょっとないと私は思っております。これは私はどうなっておるか、今ここでお答えできませんけれども、気持ちは、山の現場はそうだろう、こう思っております。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは、実は三池災害後に掲示の問題は労働組合から要求があった。いろいろ論議をしまして、結局保安補佐員というものを労働者から出すということで終わったのですよ。そこで、こういう勧告や指示はどうするのだと言ったら、保安委員会に報告するということで規則の改正が行われたのですけれども、私はこれだけではやはり今日の事態というのは解決しないんじゃないか、下部、末端の労働者まで自分の箇所でなくてもやはり山全体のことを知らせておく必要がある、お互いに注意するという姿勢がとられてしかるべきではないか。というのは、何か事故が起こりまして、いや監督官から指示があったんだとか注意があったんだとか、後になっていろいろ言われるというのは非常に残念に思うので、これはひとつ考えていただきたいと同時に、労働組合の方もこれについてはどういう御意見ですか。
  55. 野呂潔

    野呂参考人 多賀谷委員の質問の教育問題とかいうことにつきましては、災害が起きたら徹底的に職場で、繰り込み場で時間をとって労使ともに説明もして、そういうことを起こさないようにということでやることだけはこれは事実ですから、そういう面では非常に厳しく受けとめて、そういう事故の起きないようにやっているというように考えています。  ただ、勧告を掲示をしているかどうかということにつきましては、そこまではいってないような気がいたします。しかし、よく現場で聞いてみないとわからないのですが、労働組合の方とかあるいは保安委員会は監督官と十分話し合っていますし、何を会社側に言ったかということは全部その場で把握をいたしています。したがって、それは組合の方で徹底をされているというところもございますが、掲示という方法をとっているかといいますと、そこのところは定かではありません。  しかし、そういうことで、少ない監督官でありますが、非常に現場では一生懸命やってくれていることだけは事実なんですが、ただ、人数が足りない。その人たちは隅々までということになると相当数の監督官を要するということが実態ではないかと思いますので、私たちは監督官の方々が非常に努力をされているということだけは、この席をかりて私たちの端的な考え方を述べさせていただきたいと思います。  以上でございます。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 規則上、保安規則としてやはりそういうのは明記したらどうかという私の意見でございます。  さて、いよいよ八次政策に臨むのですけれども、なかなか我々が頭の中で考えましても厳しい情勢下で、政策の幅が非常に狭いという感じを持つわけです。そこで、何か今までの既応の考え方からひとつ乗り越えた考え方をしないとこれは非常に難しいのじゃないか、こういうように考えるわけです。そこで、先ほど私が田中参考人に若干お話をしたのですけれども、やはり残念ながら一つ炭層が若いといいますか、そういう発生石炭ができてくる時代の問題もあるでしょう。そこで、ガスが多いとか断層が多いという問題もあると思います。もう一つは、やはり需要業界と一体でないという日本炭鉱の残念ながら特殊性があるというところに問題があるのでして、これを私が今ここでいや国有にしなさいとか一社にしなさいとか言わないのですけれども、しかし、何か全体的な管理機構というものが必要ではないかということを私はあきらめないで感じておるわけですよ。  今閉山が行われている過程を見ましても、一番限界炭鉱から閉山が行われているのじゃないのですね、日本の場合は。むしろ経営という、その経営のいわゆる体質あるいは弱さのところから閉山が行われておるというところに、やはり日本炭鉱を全体的に維持していこうとするならば何か一つその管理的な機構というものが必要ではないかという、そうして技術の問題、労働力の問題、あるいは鉱量の問題、鉱区の問題、そういうものをやはり総合的に確立するものが必要ではないかという、経営を一本にせいとかなんとか言っているのじゃないのですけれども、何かそういうものが一つ必要ではないかということを感ずるわけです。そうすると、そこに生産の合理化があるし流通機構の合理化もある、技術の向上もある、こういうように考えるのですが、これはひとつ有吉参考人初め三者にお聞かせ願いたい、こう思うわけです。  それから、僕は、やはり需要業界関係、きょうは需要業界を代表される方が見えておられませんから、残念ながら磯部先生に聞きたいと思うのですけれども、やはり外炭が安くなってくるというと、電力のコストも鉄釘のコストも相対的に安くなるのですね。ですから、そこにプール的な考え方が出ないものだろうか、こういうように思うのです。そこで、メタルの場合はこれはむしろ海外開発をやって鉱石を輸入をしてきておるということが言えるのでして、そういう場合に、残念ながら石炭は経営体質が非常に脆弱なものですから、今日自分で海外に出て開発をして輸入するというような状態になくて、むしろユーザーが商社と一緒になって輸入しておるということで、そこには技術的ないろいろな交流はあるかもしれませんけれども、全体的に国内炭と外炭がプールされてそして需要家に供給されているという面はないのですね。ですから、ここにやはり一つは制度的に何らか検討することが必要ではないか、こういうように思うのですが、磯部先生ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  57. 磯部俊郎

    磯部参考人 ただいまの点にお答え申し上げます。  現在は私石炭鉱業審議会委員を大分前に辞任いたしましたけれども、第七次政策を策定した当時に石炭鉱業審議会の中立委員として、ここにおられます有吉会長と一緒に審議に参加したことがございます。  そのときに私は三つの点を申し上げたわけなんですけれども、その三つとも採用されずに今日に至っております。  第一の点は、日本の炭田というのは、北から天北、釧路、石狩あるいは筑豊、離島方面というふうに各地域に分かれておりますが、それらの各炭田にそれぞれ三井があり、三菱があり、住友があり、北炭がある、その他中小の各社がひしめいている。そして、合理的でないと私自身は考えております地表の鉱区線のもとにそれぞれの採掘をし、場合によっては重複投資などが行われている。こういったことを避けるために、一炭田一会社にすべきである、そして、そこにある数炭鉱一つの会社に合流すべきである。例えて言うならば、かつて閉山してしまった北炭の新鉱、今度問題を起こしました三菱の南大夕張礦、また、現在生きております北炭の真谷地鉱、こういったものを集めて夕張炭鉱株式会社というものをつくったらどうか。それぞれその資本系列が違いますから、持っている財産それぞれによって持ち株を分け合えばよろしい。そして、一社として、重複投資を避けるようにその炭田全体を合理的に開発する方法をとるのが最もよろしいのではないかというのが第一点でございました。  それから第二点は、当時はまだ海外炭開発輸入という問題がかなり大きくクローズアップしておりました。私は世界各国、学会その他で歩いたことがございます。特に産炭地の国を大分歩きました。特に豪州その他日本が進出していっている国に参りますと、そう言っては何ですが、三井が行っている、三菱が行っている、住友が行っている、あるいは日鉄が行っている、電力が行っている、鉄鋼が行っている、商社が行っている、それぞれ足を引っ張り合っているというふうに私は感じたのです。これでは本当の開発輸入ができないじゃないか。もしやるとしたならば、一地方、一地域に、例えば豪州であるならば豪州石炭開発株式会社という一社をつくってそれに各社から出向させればよろしい。電力も、鉄鋼も、商社も、石炭各社も全部そこから出向者を出して、一社をもってその地域を開発するようなプロジェクトを立てるべきである。そうすると、いろいろな意味で、交渉相手もしっかりするし、約束もはっきり守れるようになるでありましょう。そういった地域を世界に何社がつくって、そうして、国内に海外炭開発事業団本部というようなものをつくって、そこですべてをコントロールしたらいかがですか、こういう話もいたしました。しかし、それはやはり聞きおくだけということで終わってしまったわけであります。  それから第三の点は、現在でもそうですが、日本石炭というのは日本のエネルギー全体の消費量に比べますと三%程度、ほとんどいえば九牛の一毛、咲けば飛ぶような存在でございます。そういう吹けば飛ぶような存在なものを何も通産省の資源エネルギー庁の一つの部が大量の人間を擁して担当する必要は毛頭ないだろう、むしろこれはいわゆる都道府県の石炭部あるいは石炭課というようなものに権限を移譲して、その地域の産業振興のために使うべき性質のものである、要するに牛刀をもって魚を料理するようなことはやめた方がよろしいということを申し上げたわけであります。  そうすれば多分シェアの範囲とか価格の問題とか、そういったことは解決する方途が見出されるでありましょうという三つを申し上げましたが、その三つとも現在でも行われておりませんし、第八次政策も多分そういった話は出ないであろうという失望のもとに、私は今こういう発言をしているわけでございます。  まだほかにありますが、ほかの方のお時間もありますので、また後ほどほかの質問があったら。いたします。どうもありがとうございました。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 日本政策を見ると、石炭については随分法律もございますけれども、ぴしっとした一貫したものがないというのが非常に残念に思うのですね。例えば西ドイツの場合に石炭適応化法案を出したときに、ルール炭田株式会社に入るのは自由ですよ、しかし、入らなければ今までの一切の補助金は打ち切ります、こういうように政策がぴしっとしているのですよね。今日どこの炭鉱も、殊に有資力の炭鉱は鉱害の膨大なものを抱えながら財政的にも非常に苦しんでおられるのですけれども、ドイツの場合は、将来計画的に掘る坑内の区域をもう既に明示しているのですね。いつでも見せてくれる。自分が家を建てたいと思ったらそれを見ればいい。ですから、鉱害賠償というのはしませんよ。しかし、土地の値段の下がる分は見るのですよ、当然。それは家を建てて補償されなければ困るのですから、土地の値段の下がるものは当然補償する。そういうように言うならばオープンにして、ぴしっぴしっと節目をはっきりしながら全体的にむだのないようにやっておる。  日本の場合は行政的にもそういうけじめがついていない。そういうときに何かだらだらふわっとやっておる。金もかなり出しておるけれども、どうも政策がぴしっといってないというのが、やはり一次から七次まで見てもその点が言えるのじゃないか。それはやはり彼らも自由競争だと言うし、資本主義だと言うけれども政策のけじめははっきりしているという点を――私は残念に思うのですけれども、こういう点もひとつ、三者の方々は八次政策にいずれかかわられるわけでしょうから、十分そういうけじめのある政策をつくるように答申を願いたい。また、我々もそういう政策をつくっていきたい。  最後にひとつ、さっき新鉱開発の問題もありましたし、磯部先生の朝日新聞の「論壇」も新鉱開発の点に触れておられました。それから、現存する価格差補給金といいますか、調整金といいますか、これについても、これはひとつ業界の中で、非常に難しいでしょうけれども、その価格差補給金についてまだ幅を持たせる業界の意思統一ができるかどうか、この点を有吉会長、後の点は三者からお伺いいたしたい。  以上です、
  59. 有吉新吾

    有吉参考人 八次策につきまして、私どもといたしましても七次策までの延長路線というようなことでは片づかないのではないかという感じを持っておるわけでございます。ただ、先生のおっしゃいますように、ドイツの適応法みたいなことをこの際一挙に考えるかとなりますと、七次までやってまいりました今までの行きがかりと申しますか、そういう問題を踏まえまして、今急にそういう大旋回というのは非常に難しいのではないかという感じを私は持っております。やはり一番ひっかかりますのは、おのおのの私企業が抱えております債務の処理でございまして、石炭の債務というのは親会社が保証しておりますが、こういうところに一つの体制的問題ということを考えますと、それがすぐにひっかかってしまいまして、ですから、借金問題をこうする、こういう形になるならばなにでございますが、今の状態では、それは言うべくして急にそういかないのではないかという気がいたします。  それともう一つは、今の現実は、そういった体制を考えますよりも、現実に即した問題点にメスを入れていった方が適切ではないか、非常に抽象論でございますけれども。それで、七次策というものは、ユーザーもひとつ価格で協力してくれ、国も助成をする、こういう相寄り相助けてひとつやろうではないかということなんですけれども、現実には外国との価格差がこんなに開きまして、一般の産業界の景気もよくない、こういう事情も反映いたしまして、ユーザーの協力というのはなかなか得られないのが現状でございます。したがって、どうしても石炭を残していこうというのであれば、どういう施策をやったら残れるのか、それに対していかなる裏づけをしたら、裏づけといいますか、体制でなしに何らかのルールづくりでございますね。協力でやりましょうというのでなしに、やはり一歩踏み込んで、こういうやり方でやるんだ、それにはこれだけの金の裏づけをするとか、だから国内炭というものはこういうふうに使っていくのだという、そういうものが今度は必要ではないかという気がするわけでございます。そういう考え方を持っております。  それから、先ほど指摘されました問題、磯部先生への質問にも関連するのでございますが、現存炭鉱につきましては、例えば夕張地区を一緒にするとかという問題は非常に難しいと私は思います。ただ、天北の新鉱開発とか、そういうことになりますと、これはやはり新たな角度から考えないととてもできないのではないか。あそこには三菱さんもあり、住友さんもあり、三井もありますけれども、これは別途の経営主体というようなものを考えないと、新鉱開発なんというものは難しいのではないか。新しいものは、やはり何か考えを新たにする必要があるのではなかろうかという考え方を持っております。  それから、技術の交流だとか流通の合理化とか、そういうお話も出ましたのですが、現在、ほかの産業みたいに各社ごとにおのおの自分の技術は秘密だ、そんなことはおよそないのでございまして、技術に関しては全部交流をやるというのが石炭業界全般のなにでございます。それから流通につきましても、非常に不合理な交錯輸送というものが現在あるかといいますと、これはほとんどないということでございます。したがいまして、問題なのは、北海道の内陸の石炭を揚げ地に運ぶ場合の内陸運賃は、海岸炭鉱の船運賃だけの場合に比べますと非常に大きなハンディキャップがあるわけでございまして、こういうふうな問題を技術的にどう公平化するかという問題として取り上げていった方がいいのではないかと思うのですね。  それから格差の問題につきまして、現在、安定補給金というものを傾斜配分いたしておりますし、それから各種の補助金も実質的な傾斜配分をやっておりますが、これにつきましては、業界としましては、おのおのが最善の努力を払いながら、そういう条件の悪いところにある程度の大きい均てんを認めることにやぶさかでない、こういうふうに思っております。  ただ、ドイツとかイギリスの場合に比べますと、日本は早くスクラップ・アンド・ビルドをやってしまったのです。したがいまして、ドイツ、イギリスのいわゆる優良炭鉱とコストの高い限界炭鉱、そういった開きに比べますと、日本炭鉱におきましては、いい炭鉱と悪い炭鉱は相当の差があるとは言いながら、その差はイギリス、ドイツに比べるとはるかに少ないのでございます。そういうのが実情でございます。
  60. 野呂潔

    野呂参考人 まず石炭産業の秘密主義でありますが、正直言って、マスコミを通じて非常に言われているわけであります。労働組合立場からいうとそれはあるのかどうかといいますと、困ったときには資料は全部オーブンにしてくれるのですけれども、いいときには、まあそんなことはいいのではないかと言って、労使の中でも多少秘密主義があります。そこで、それは私たちの力が足りないからだな、こう思って、その点、会社側にも資料を十分出してもらって、何もそれを対外的に喧伝をするということではなくて、労使相協力をする基本であるからそういう資料は公開をしなさいというように、これからも強く迫っていかなければならぬ、こういうふうに思っております。  それから次に、八次策に対する問題であります。  まず私、先ほど新鉱開発のことで若干の私見を述べたわけですが、今ある炭鉱を直ちに国有、国管であるとか、一社化だとか、北海道九州を分けて二社だとかいうようなことはなかなか難しいわけであります。したがいまして、有吉会長も言いましたように、これからやり得るもの、炭鉱は自助努力として何をやるのだということで、対外的にもはっきりわかるようにしなければならぬだろう。そういたしますと、施設の共同利用化の問題であるとか、あるいはまた流通機構の整備の問題、つまり国内炭の流通機構の一元的な取り扱いをする。昨年三池災害が起き、石炭が足りなくなれば、その方で面倒を見てもらう、あるいは今南大夕張に貯炭があるということになれば、それを解決をしていく、そういう流通機構の問題についてメスを入れる必要があるのだろうというように考えています。また、新鉱開発等の、先ほど有吉会長も言ったのですが、そういう場合には国というような形でもって力をかりるわけですが、経営をリースでやらせていただくなど、そういうような、これから起こる問題については、体制問題についてもできる限り今よりも食い込んだ形でもって解決をしていき、次第にその中のよい点を現行炭鉱にも波及させていくという形をとらない限り、現実問題としてそれは難しいであろうというように考えているわけであります。  私、先ほど述べた中でもあるわけでありますが、諸外国、イギリスあるいはドイツ、フランスでもそうですが、油が三ドル程度の値段で非常に安かった。そういう中で石炭産業がずっとやってきたわけですが、その部分はどこが見ていたか。やはり国の大きな援助あるいは需要業界協力というもの、それに石炭労使の努力もあるわけでありますが、過去の負債の分とかすべてのものはほとんど全部消しておるわけですから、日本の国内の石炭産業みたいな実態にはなっていないというのを、現段階で財政的にも困難なときにそれを望むのは非常に理論倒れになるわけでありますが、そのような思い切った観点から私たちも問題提起もいたしますし、皆様方の御協力も仰ぎたい、こういうふうに考えているわけであります。  以上です。
  61. 磯部俊郎

    磯部参考人 時間がありませんので、極めて簡単に申し上げます。  私は、やはり石炭産業が私企業である限りにおいては、経済合理性を求めるのが正しいと思います。したがいまして、現在の手厚い石炭問題に対する国家の援助、これは全部切り捨てるべきである。自助努力で、自分の力で生きる炭鉱だけが生きていき、ゼロから出発して日本炭鉱の再建をするのが炭鉱技術屋であり、炭鉱経営者であり、炭鉱労働者であると思います。私企業体制を維持する限りはそうである必要があると考えております。  以上です。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ありがとうございました。
  63. 小川省吾

    小川委員長 岡田利春君。
  64. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 きょう参考人においでを願って、保安問題また石炭政策の問題について御意見を伺っておるわけですが、最近の頻発する炭鉱災害を振り返って考えてみますと、今日的保安問題というのが一体どこから発生したのか、このことを深く反省せざるを得ないわけであります。言うなれば、今日的炭鉱保安問題というのは、第一次から続く第七次石炭政策のたどり着いた結果として依然として保安問題がある、こう考えますと、一貫して石炭政策をやってきた者としてはざんきにたえないという気持ちで実はいっぱいであるわけであります。したがって、今体制問題について意見が出されたりいろいろありますけれども、やはり世界で最も若い地層に賦存している我が国石炭を掘り出して、しかも二千万トン程度石炭を掘り出していくとすれば、今のような体制ではやはり無理がある、このことを事実をもって残念ながら証明していると私は思うわけであります。残念ながらやはりそう理解せざるを得ないわけであります。  したがって、先般ヨーロッパの炭鉱も視察をされたようでありますけれども、ECの西独、イギリスフランス炭鉱日本炭鉱の相違を全然度外視していわばヨーロッパと日本炭鉱を比較する。炭鉱を知らない人はそういう比較論が多いのであります。しかし、日本石炭は新生代第三紀層であり、ヨーロッパの場合にはこれは石炭紀とかあるいは三畳紀でありますから、地質年代が全然違うわけです。したがって、あらゆる条件が違ってくるし、石炭賦存状態も全然これは違うわけです。にかかわらず、先ほど有吉会長が言ったように能率が非常に高くて、そしてまた労働時間の面からいっても非常によく働いている。だがしかし、災害は高くて、給与の方はヨーロッパの場合には普通産業の二〇%増し、日本の場合にはエネルギー産業よりも低いという水準日本炭鉱労働者の給与水準はある。こういうぐあいにやはり炭鉱をもう一度ヨーロッパと比較しながら日本炭鉱を総括する中で保安問題を考え、新しい政策考えてみなければならぬのではないのか、私はこういう気が実はするのであります。  そういう観点に立って、私はまずお伺いいたしたいのでありますけれども、どうも最近の災害というのは、普通一般の炭鉱災害という理解でいいのかどうか、これもまた重大反省の課題のような気がします。大体、日本で例えば三池の炭じん爆発あるいは山野のガス爆発、皆特免区域でやっているわけですね。特免区域というのは、これは火源を使っていいわけであります。そこでもう何百名という人間が死んでいるわけです。あるいはまた、今回の有明災害を見ても、これは普通一般地上でもあり得るわけです、ベルトが張ってあるわけですから。ベルトに火がついた。たまたま炭鉱坑内だったから、その風回りの関係で八十三名の人が死んだ、こういう大災害に発展したわけですね。これは炭鉱の特殊な災害だと言うところに私は無理があるのだと思うのです。ですから、そう考えてくると、炭鉱坑内には特免区域などというものはないのであって、どこでも災害が起きる可能性があるのだということになってしまうと思うのですね。  そういう観点から今の法規も見直しをしてみなければならないし、あるいはまた、そういう観点からもう一度炭鉱災害というものを総括をする。そして保安という立場から、一体これからの石炭政策はどうあらねばならないのか、こういうことを原点に返って、第八次政策をやる場合には、今度の災害を契機にしてそういう立場で物事を考えてはどうか、多少時間がかかっても政策を急がないで、そういう立場からやはりみんなが納得するような政策をつくる、そういうまた保安に対する政策も出す、こういう基本的姿勢が大事だと思うのですが、この点について有吉さんと野呂さんの御意見を承っておきたいと思います。
  65. 有吉新吾

    有吉参考人 この保安につきましては、もう言うまでもございません。事故を起こしましては石炭産業の存立にかかわる問題でございますので、まずは優先的に今後の保安対策ということをどう考えていくか、これを政策基本にいたしまして、私ども先ほどから申しますように、予算におきましても保安対策というものを充実するような、そういう措置お願いしたいということでございます。やはりそういうものの入りました、そして保安確保した上での千七百万トンの維持、こういうものを中心にした政策であることをひとつ希望いたしております。
  66. 野呂潔

    野呂参考人 岡田委員の言われたように、保安問題がやはり現在一番大きな課題になっておりますので、そこを避けて通ることはでき得ない、こう思っておりますので、私たち保安が十分に確保できて安心して働けるような状況をつくり得るのかどうかということと石炭政策というのは完全に一致をしなければならぬと思いますから、そういう立場で私見も述べましたし、保安法規のことあるいはまたやっていることを念には念を押してチェックをし、そして災害を再び起こさないようにしなければならない。今後とも重大災害が起きたならば、だれも石炭に味方をしてくれる者はないし、石炭政策は終わりである、こういう認識の上に立っておりますので、今岡田委員が言われたように私たちは今後とも対応していくつもりであります。  以上であります。
  67. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 人間は、健康は人生のすべてではないと思うのですが、健康がなければすべてがないということだけははっきりしたわけですね。炭鉱も大体そういう物の考え方でなければならないのではないかな、私はこう思うのであります。特に今回の三菱の災害を見ても、高島の災害は、大体古洞につながっておった坑道を完全密閉しておった、それがいつの間にか保安図にない、そこにガスが漏れて、何らかの火源があって爆発した。単純なわけですよ。こんなところで災害が起きるなんて考えられない地点なんですよ、高島は。三菱大夕張の場合はまだこれからの問題でしょうけれども、普通は八片と思ったら、今度は八片の連れだ。比較的岩盤的な坑道で、言うなればあの八片ブロックでは安全的な箇所であろうと言われるところでガスが湧出して引火して爆発した、こういうことなんですね。ですから、そういうことを考えますと、保安体制は、ガスが一時的に出てくる、日々変わってくるわけですから、それに一体どう対応するかという組織体制がなければならないということになるわけですね。  では、今の日常の保安管理体制でいいのかどうか。私が多年主張しておるのは、ダブルチェックの体制をとりなさいということです。保安係員を置いてももうとても把握できるものではないのです。まして三菱さんの場合はセメントの職員です。そして炭鉱に派遣されているという体制にあるのが三菱さんの職員体制です。今度の場合、災害技術職員が一名亡くなっておりますけれども、これだって管理体制を吟味してみなければならない問題があるのだろうと思うのです。  保安という問題は、自主保安というのであれば、有資格鉱山労働者や指定鉱山労働者がちゃんと規則で決まっているのですから、保安に関する、それに準ずるような人が配置されていて、保安係員と有資格鉱山労働者か指定鉱山労働者保安補助員というか、そういう人がダブルチェックをするとか、そういうことをやっていかないと、日常変わるガス検なんということに、人間は間違いがあるわけでありますから、なかなか完全な体制はとれないのではないのか。まして今の災害箇所は単に危険な箇所でなくして、ここは大丈夫であろうというところで起きるわけです。ガス検が行われないから災害が起きたのです。単純なんであります。そういう点で管理体制、制度についてもう一度吟味をする必要があるのではないか、私はこういう気がするのであります。  したがって、先ほど有吉会長が今回とられた措置をいろいろ述べられました。非常にきちっとした措置がとられているわけでありますけれども、その中で第三者のアドバイザーグループ一つのアイデアでしょう。磯部先生も言われておる保安炭鉱、試験炭鉱という問題、今すぐやることはなかなか難しい問題も確かにあるでしょう。だがしかし、今十一に限られた炭鉱なんです。たった十一しかないのです。社で言うと四社ぐらいでしょう。そうすると、一炭鉱保安モデルマイン、一課題を抱える、それぞれ炭鉱の特殊条件があるわけですからね。そういうようなアイデアで補完をしていくとか、もう一歩突っ込んだ対策を立てられてはどうか、こういう気がするのであります。そういう点、今後ぜひ検討してほしいと私は思うわけです。  言うなれば、石炭協会という場合に、協会は一つの体制だと思うのです。我が国炭鉱の体制だと思うのです。体制でもいろいろな体制があるわけです。しかし、少なくとも今の石炭産業の置かれている状態は、石炭協会に対しては体制的協力を厳格に求められている、これだけは事実だと思うのです。だから、常に体制的な思考、物事の考え方がトップマネジャーやあるいはまたトップの保安管理者になければならない、もちろん労働者もなければいかぬ、そういう連帯意識が常になければならない、こう思うのであります。そういう点がきちっと意思統一を労使でされないと、これからも、世間で指摘をされている吸血炭鉱だとか炭鉱の偽善だとか、そういうキャンペーンに対応して我が国石炭産業の歴史的使命を全うさせることはできないのではないか、こう思うのですが、この点についてそれぞれお三人の参考人の御意見を承っておきたいと思います。
  68. 有吉新吾

    有吉参考人 先生のおっしゃいますダブルチェック、私もハード面と並びましてまさにそういうソフト面の強化をぜひやっていかなければならぬと思っております。  それから、協会はほかの産業にない一つの体制としての態度が要求されているということ、そのとおりでございます。協会が旗を振ってこういうことをやったという事業はないと思うのでありますが、炭鉱も十一になっておりますし、会社も大きいのが六つございますけれども、おっしゃいますように、今や石炭産業として各社の利害がどうのこうのということではなしに、今私どもは、まさに産業としてどう生き残っていくか、存在意義があるか、こういうふうな考え方をいたしておるわけでございます。
  69. 野呂潔

    野呂参考人 先生の御指摘がありましたようにダブルチェック、トリプルチェック等をこれからも十分にやっていかなければならない。そして災害が起きないような骨格構造づくりあるいは人員の配置、教育、こういう問題を徹底的に私たちはやっていく所存であります。  そういう意味で、会社側とも十分話し合いまして、今言いましたようなことを完全にやっていただくようにしていくし、そういう要求が通らなければ、私たちは命の危険なところで働かせるわけにいきませんから、ストライキを持ってでも要求を貫徹をさせるし、そしてそれが国民的な支持も得るし、それから炭鉱をやっていく者の責務であろう、こういうふうに考えているわけであります。  会社の方も、保安のことについてそんな意見の食い違いはないわけであります。重大災害を起こせばその山の存続関係してまいりますから、金をちびって、やらなければならないものだけれども、危険なのはわかっていてサボっているということは余り見当たらないのであります。しかし、私たちは念には念を押してそういうことをこれからもやっていきたい、こういうふうに思っています。  以上です。
  70. 磯部俊郎

    磯部参考人 私は、多少違った観点から申し上げたいと思います。  ダブルチェックという問題、今出てまいりましたけれども、私は長い間大学におりましたから、学生の答案を何回も見ております。ダブルチェック、トリプルチェックもやってきました。二回やりますと必ずまたその中で間違いを発見します。三回やりますとまた発見します。ダブルチェック、トリプルチェックは必ずしも完全なものではございません。  それより、例えば今回の南大夕張災害あるいは三井三池炭鉱のあの大爆発、その他炭鉱で大きな災害を起こしておりますが、政府調査団その他、私も参加したことがございます。いろいろ調査をしましたけれども、結局真の原因はわからない。多分これであろう、だからこうしようというのにすぎないのであります。なぜそうなのか。現場を見た人もいないし、その状況を克明に記録したものもないわけであります。  ただ一つ考えがあります。飛行機にはフライトレコーダーとかボイスレコーダーとかというのを積んでいるそうであります。飛行機が落ちるときにそれが克明に航空機の状態を記録して、最後にその原因を探求するのに極めて大きな武器になると聞いております。炭鉱だって、爆発を起こしたりガス突出を起こしたり火災を起こしたりというような箇所は、その炭鉱で生き、育ち、そして働いている人は、この辺だということは大体見当がつきます。そういうところにそういった計測器を、自動的に働きデータを収納するものを置いておいてなぜ悪いのですか。  この問題は、十数年来各種の委員会で言い続けてきました。委員会では、大変いい考えだ、ぜひやろうというようなことを役所その他を初め全部聞いております。しかし、いまだに一回もその実施を行っておりません。これは明らかに、私個人にとってはサボりでないでしょうか、そういうふうに思っております。  それから、保安優秀炭鉱であっても、コンピューターを使っている、何を使っているといっても、それは警報を出す装置にすぎません。あるガスの濃度がある閾値に達すれば自動的に点滅し、警報を出す、風量が減ればどうする、一酸化炭素がふえたらどうなるということしか出てきません。これは研究でなくて、いわゆる警報を出すにすぎないのです。事実が起こってから物を言うだけなんです。そういった種類のデータを克明に解析、研究して、そうして予知につながるものを引き出すというのが研究なんです。どんな大きな炭鉱でも、また国立の研究所でもそこまでのものはやってもおりませんし、また、やろうという気はあるとは思いますけれども、実行されたという例を聞いておりません。この辺が事実に謙虚でない、そして何百人もの人を殺してもまだ石炭をやろうというような気持ちのもとになっているものと、私は心の中では大変残念に感じております。  以上でございます。
  71. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私が提起しているダブルチェックというのは、日常的な変化に対応するダブルチェックです。もちろんダブルチェックの体制にはあるわけですね。係長もおりますし、通気の巡回もありますし、また、鉱山監督官も入るわけでありますから、日常の変化に対応できるダブルチェック体制をとるべきだ、こういう点を特に強く指摘をしたつもりであります。先生の御意見も拝聴いたしました。  ひとつ磯部先生にこの際承っておきたいと思うのですが、ガス突出のメカニズムですね、またこれは完全には解明されていない、こういうことが言われておるわけです。もう一つは山はね問題ですね。かつて、三菱美唄で山はね問題が起きて、山の閉山につながった。最近は、あちこちの山で深部化するものですから、山はね現象が起きているわけであります。ガス突出と山はねという問題は、今ぴしっとした即応体制というのがないわけでしょう。ないとすればどうしたらいいのか。保安法規の適用を緩和するのがあるわけですね。先ほど言った特免区域なんてあるわけですよ。ガス突出の特に危険な箇所、もちろん区域的には大体わかりますわね。それから山はねの起きる区域、これはもう保安上特別区域だ。こういう対応がないと、深部化炭鉱災害に対する対応としては、この地域はそういう特別の区域だという、むしろ特別区域の設定というくらいに進んで、日常全体が特別区域に注意を払う、こういうようなむしろ政策的なことが大事ではないかなと私自身考えるのであります。  そういう点について、先生の御意見があれば承っておきたいと思います。
  72. 磯部俊郎

    磯部参考人 ガス突出、山はねにつきましては、私もそちらの方の勉強を長年やってまいりましたので、若干申し上げます。  要するに、ガス突出はほんの一がけらの石炭が噴出する場合、何千トンという石炭が噴出する場合、それから山はねにしても、いわゆる側壁がちょっと倒壊する程度、坑道が完全につぶされてしまうような場合、いろいろ大小さまざまな状況を呈しております。そういう非常に区々な問題でありますけれども、それを処理する方法があります。それは統計学であります。どこまでの大きさのものが起こり得る確率がどのぐらいであるか。一万分の一の確率で起こり得るものとしたらこの程度、十分の一の確率で起こり得るものとしたらこの程度というようなことで、それを解決するのに確率の問題があります。仮にその山が三十年続くとします。その間に、一年間に百回ずつガス突出が起こったとします。そうすると、三千回起こることになります。そうすると、三千分の一以下で起こるような確率で起こる大きさのガス突出に対する対策をすれば、その山は多分、絶対とは言えませんが、多分閉山まで労働者は安心して働けるであろう、こういうふうに考えます。それがいわゆる切り羽元からの退避距離を決定する一つ基準になります。  こういった科学的な方法によって退避距離その他を決定し、ガス突出が仮に起こっても人災がないようにということが、現状一つの最もよいやり方であると考えております。  ガス突出のメカニズムをもし岡田先生がおっしゃるように詳しく皆さんにお話しせよと言われれば、ここで二十時間ぐらいの時間が必要ですから、今はやめておきます。
  73. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そういう観点からいろいろ保安上の問題から検討していくと、かつてはスクラップ・アンド・ビルドの中では限界炭鉱というのが設定されまして、これはもちろん資源が枯渇してくる、経済的に成り立たない、両方の相乗関係で限界炭鉱ということでスクラップされる、こういうことでありますが、しかし深部化していくということは、世界炭鉱だって、ドイツあたり、ルールあたりは平地で千メーターなんというのがもう普通であります。しかし、日本のように褶曲作用によってうねりくねっている、そして炭化作用が進んでガスが非常に多い、断層も非常に多い、こういう特殊な日本列島の石炭賦存状況からすれば、おのずから保安的に、もちろん技術がどんどん進めばいいのですけれども、しかし今もう相当深部化しているわけですから、保安的に限界が来る。資源はある。資源はまだずっと安定して、もう炭面は見えている、しかし保安上限界ではないのか、こういう命題にぶつかりたくないけれども、ぶつかりつつあるのではないかなという感じもしないではないわけですね。そういう点については、やはり現代に生きる者として的確な把握が必要だと私は思うのであります。  そういう私の心配とか考え方について、専門的に磯部先生のお考えを承っておきたいと思います。
  74. 磯部俊郎

    磯部参考人 申し上げます。  おっしゃるとおりでございます。日本炭鉱は非常に深部化して、そういった大きな問題を抱えております。それは、日本は明治以来約三十億トンの石炭を掘り、そしてさらに現在掘り続けている、その状況が、また地質条件がしからしめたものであります。  しかし、現在諸外国で条件のよい浅部を掘っている炭鉱でも、今の状態でさらに人口がふえ、エネルギー消費量がふえていったとしたならば、数十年とまではいかなくても、日本と同じ状況になるであろうと考えられます。そのときに、日本は三十年前に炭鉱をやめちゃったんだからもう石炭の研究はやっていないんだ、買えばいいんだというようなことで、世界労働者の血と汗と命で掘った石炭を札びらでほっぺたをひっぱたくように買って果たしてヒューマニズムか、私は試験炭鉱を必要とするのはそういう理由だ、それだけを申し上げておきます。
  75. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんから、最後に一問、有吉さんにお聞きいたしておきますが、第八次政策について相当触れたのですが、私の時間がないので一問だけ承っておきたいと思います。  述べられた趣旨をずっと拝聴いたしておりますと、一言で言えば、第七次政策政策基本はそのまま受け継ぐ。第七次政策基本は、地域の体制の維持と石炭鉱業の自立、企業努力による深部化コストの吸収、政府の援助と自治体の協力需要家の適正消化と協力、これが第七次政策基本なんですよ。  そうすると、今述べられたことは、この第七次政策基本と全く同じだ、だから第七次政策の延長、若干時代が違うのですから手直し、こういうことを期待されておる、こう受けとめていいかどうかというのが第一点であります。  それから第七次政策の具体的な施策の柱としては、会長が触れられておられますように、一つには基準炭価の問題、一つには政策需要需要確保ですね。これはちょっと、会長需要問題というのは余り触れていなかった。当たり前だというお考えで恐らく触れていなかったんじゃないかと思いますが、政策需要の問題。そしてもう一つは格差是正の問題ですね。私は、これが具体的政策の中における三本の柱だ、こう理解をいたしておるのであります。この点も第七次政策の踏襲ということになれば、大体客観情勢はより厳しくなっておる。背景とかそれから政策の理念、枠組み、こういうものから見ると第七次政策をそのまま受け継がれない状況の変化もあるわけでありますけれども政策基本と具体的対策の柱、こういうものを考えますと、会長意見は第七次政策を踏襲してくれということを言っているのだ、こう言わざるを得ないのですが、いかがでしょうか。
  76. 有吉新吾

    有吉参考人 基本的には七次政策の路線の延長とも言えないことはないのでありますが一合七次政策で現実にはどうにも行き詰まっておるわけです。それは政策需要の問題とか基準炭価の問題とか、実際そのとおりになっておらぬわけですね。それをいかに実現するかということを八次策で今度はっきりしてもらいたい、こういうことです。今までは項目を並べただけであって、みんな協力してやろうじゃないか。それではいかぬ、それでは国内炭維持はできないじゃないか、そこをあるルールをつくり、裏づけをし、こうするからこうしよう、こういうふうに持っていってもらいたいというのが違いでございます。
  77. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がないから終わります。
  78. 小川省吾

    小川委員長 宮崎角治君。
  79. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 有吉会長の方の日本石炭協会からいただきました委員に対する文面によりますと、午前中も出ましたように、六月三日を特別の保安日、生産作業を停止いたしまして総点検をし、保安の作業をし、そして保安教育をやった、こういった災害における事後の強化体制ということについては、まことに時宜にかなった方策だと思っております。  これについて一カ月間の期間をもって進められたわけでございますが、数項目にわたるいろんなチェックの問題も出たようでございます。あるいは、その期間にどうしてもできなかった場合は後日完備をしていくという方向でございます。これは一口に言いますと、今回だけこういった形でなされようとしているのか、あるいは今後何月かを決めて、年に何回かを決めて――こういった日本の三十の、しかも重要な十一の炭鉱については日々月々、この問題についてはいろいろとチェックをしていらっしゃると私は思うわけでありますけれども、今回このようになさった大きい理由と、そしてこれが定着化していくのか、あるいは今回限りなのか、あるいはこの期間における問題が発覚したのに対しての措置、そういった面も含めまして、有吉会長の方からるる御説明を願いたいと思うわけでございます。
  80. 有吉新吾

    有吉参考人 今回いろいろ実施いたします保安確保に対する措置でございますが、陳述書にも書いておりますように、保安月間が終わりましたならば、業界で編成いたしました調査団を派遣いたしまして、月間で検討いたしました項目について実施できるものはどういうふうに実施をしたかとか、あるいはこれからやるものについてはどうなっているのだ、そういうことを調査団を中心にしてひとつチェックしていこう、こういうような考え方でおります。したがいまして、今後の問題につきましては、もちろんこれ一遍やったからおしまい、こういうことではございませんが、その調査の結論を待ちまして、どういうやり方を今後続けていくか、こういうことにしたいと考えております。
  81. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 協会としての新たな方向として、よりこれに注意を喚起し、そして大惨事を防止するための方策としての体制については敬意を表するわけでございますが、ここで上がってきた大きいポイント、改善を可及的速やかにしなければならないポイントというのは、数点ぐらいに絞ってみて、どういうのが上がってきたのか、特に日本の国内の炭鉱におけるこういった重大な保安問題についての一番キーポイントになり、総点検をしたその結果がどういう項目であったのか、参考のためにお聞かせいただければ幸いであります。
  82. 有吉新吾

    有吉参考人 六月の三日にやりました生産作業をやめましての総点検でございますが、これは各所各山それぞれやり方が違っておりますが、総まとめをいたしますのは、大体今月中にやりました結果の総まとめをしたいと考えております。
  83. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 できましたら、またいただきたいと思うわけでございます。  それでは野呂参考人お願いしたいのですが、午前中の御説明の中に、資力の関係で非常に未整備の炭鉱があり、それはもう非常に資力という問題が大きくウエートがあるのでつぶれる方向だというようなニュアンスのお話がありました。そういう意味で、国として十分な補助をしてほしいというようなお話のようでございました。  なお、現在の炭鉱の中に新規利用という言葉を使われたわけでありますが、この新規利用という意味がなかなか理解しにくい。国内炭の新規利用という一項を挙げられての御説明が午前中あったわけでありますけれども、この辺についてひとつ定かに御説明を願いたいと思うわけでございます。
  84. 野呂潔

    野呂参考人 まず資力のことですが、災害に対することと開発に対することと二点言いました。一つは、保安維持するのに金がないから保安も守れないというようなところには労働者は働かないのです。労働力は自然にそこから流出しますし、自動的に閉山に追い込まれることになる。組合としては、そういうように自動的にということではなくて、そういうところは金もないし、保安を守らないというようなところは、私たちはやはり勇断をもってそれらの問題と閉山も覚悟して対応しなければならぬだろう、こういうふうに申し上げたわけです。  それから、資力の関係で云々という開発の問題につきましては、やはり相当資金がかかるわけであります。仮に天北であっても、舌辛でも、上茶路の方でありましても、そうしますとその金を、石炭企業が今やっていけるかといったら、金はないのでありますので、そこのところを国の方で面倒を見ていただけないだろうか。そして技術的とか、そういう開発のときには当然石炭企業の実員を派遣してやるわけでありますが、でき上がったときにはリース方式でやらしていただけないだろうかと、非常に虫がいい考え方かもしれませんけれども、そうでもない限り現実に石炭資本の中でやれといっても解決は難しい、こういうふうに考えているわけであります。  それから利用につきましては、需要問題について新規の需要面を開拓していくということにつきまして、私たちもこれは単に政府のとかユーザーの協力を得るだけではなくて、寒い国、諸外国では集中的な暖房というようなことなどもやっておるわけであります。あるとき、北海道の市で産炭地であるのに油を使う暖房なんというのはどういうことだという御指摘を受けたこともございます。したがって、公共施設だとか病院だとか、それらのことを含めまして集中的なそういう設備をつくっていくとか需要を拡大していくということを私たち労使を挙げて努力もしなければならないし、地方自治体にも協力を願いながら拡大していきたい。それから坑内から出てきますガスだとかそういうのも、ある程度、余り量は多くはないわけですが、需要のないときといいますか、そういうときは投げていた、あるいは使うときには足りなくなるということもありますが、そういうことを十分また考えて有効的に活用できるような方法などを考えたい、こういうふうに考えているわけであります。  以上です。
  85. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 午前中、きょう昼からの所用で早引きされました田中参考人にも質問したわけでありますが、日本の国内の炭鉱というのが極めて衰微といいますか、非常に問題を抱えている現実の動向を踏まえたときに、外炭といわゆる国内炭とのいろいろなバランス、炭価の問題等々もありまして、今野呂参考人からるる説明がありましたいろいろなこれからの新しい活力を生み出す、そしてまた働く方々が非常に生活面も安定していけるような、そういった希望を持つような炭鉱の採炭法でなくちゃいけないと思うわけでございます。  私は、磯部先生に次の問題をお尋ねしたいのであります。  もう既に三回ばかり磯部先生の華言葉の中から、日本炭鉱は明治三十年来約三十億トンとれておったのだ。同時に、今日まで二万二千余人という方々がお亡くなりになった、そういう殉職者を出した。そして、生産炭の百万トン当たり七人強ぐらいの人命が失われている。最近十年ぐらいの間ではその数は三人程度である。しかも、災害は一度の事故で何名か。三名の、少数の死者が出る落盤とか運搬事故等のものが年間二十回ぐらいあるんだ。それから一度にそれこそ数十人あるいは百人近い犠牲者が出る、こういう犠牲者の出る大災害、いわゆる二極化しつつある。私も有明炭鉱の問題のときに、この石特委員会で、常備しなければならないCOマスクの問題につきまして日本のいろいろな検査基準の問題とか、極端に言えば欠陥であったというようなCOマスクの問題もあったわけでありますが、その問題につきまして論戦を張ったことがございますけれども、こういういわゆる二分化の災害という原因、起因、そういうものにつきまして磯部先生の御解明をお願い申し上げたいと思うわけでございます。
  86. 磯部俊郎

    磯部参考人 ただいまの二極化のうちの小さな方の災害、これを減らすということは極めて至難なことであります。もちろんいろいろな教育、施設もやらなければいけませんけれども、このために多くの人が今まで努力をしてやっとここまで参りました。しかし、大型災害は最近の一つの特徴でございます。それは、深部化、奥部化したために結局閉じ込められた多数の人間が助かることができなかった。そこに問題点がある。したがって、急速救出あるいは一時籠居というような施設が深部炭坑には必要である、それが現実の問題であります。もう少し、一歩進めればロボット採炭を推進すべきであると思います。ロボット、ロボットといいましても、先ほど私が申し上げましたとおり、炭鉱坑内状況というのは千変万化しております。それを一々キャッチして適切な処置をするロボットはまだ開発されておりません。ごく最近似顔絵をかくロボットができたというのをテレビで時々見ておりますが、ああいうものが進歩すればあるいはそうなるかもしれないと思っております。  しかし、要は、いかに保安そのものに研究費その他人員を投入するかという問題にも大きくかかっていると思います。日本全体で、恐らく会社もあるいは文部省も通産省も全部含めて、保安に関する研究費の総額というのは二十億内外でないかと私は推察しております。  一方、石炭のガス化、液化利用、これはまだ現在できておりません。COMでさえまだ実験段階で、そういうものにかけている研究費は既に数百億の大台に達しようとしております。石炭日本のエネルギーの二〇%余を占めております。同じくらいに占めているのは原子力であります。原子力に対する研究費は、皆さん御存じのとおり数千億に達しております。いつの時代にできるかわからないと学者自身が言っておりますが、それはうそかもしれませんし、謙遜かもしれません。核融合反応にも数千億の国費が投じられております。同じエネルギー産業、しかも基底産業に対数的なスケールではからなければ乗らないような研究費の配分で果たして炭鉱保安が守られるでしょうか、私はその点を強く要求したいと思います。もしそれができないのならば石炭産業はやめてしまった方がよろしい、それの方がはるかに人道的であり、はるかに日本の経済的にも有利であるというふうに考えているわけでございます。  以上でございます。
  87. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 先生の御高見を拝しておりますと、ぱっと竹を割ったような極めて率直な御意見が飛び出してくるわけでありますが、痛快でなりません。  もう一つ先生の論文の中から引用させていただきます項目でございますが、十分な炭量がある、埋蔵量がある、それが現在眠っている、こういったものを今復活してその生産の戦列に並べるべきではないかという御高見があります。  もう一つは、今三十のうちに重要なのが十一ありますが、せめて全国の中で十ぐらいに絞って、無理のない生産量でいくべきではないか。これが二点。  それから、さらに御高見を承りたいのは、今も何かお話がありました日本のいわゆる科学技術あるいは研究、そういった費用に対する出し惜しみというのを、この石炭問題だけでなくて、いろいろな面で私どももキャッチしているわけでありますが、このいわゆる全国エネルギーの問題、あるいは基礎研究の問題、今お話があった原子力の問題、莫大な格差の問題があるわけでございますけれども、私は、この試験炭鉱という非常に珍しい、また古くて新しいといいましょうか、そういった先生の論点の中から、今三点に要約をいたしまして先生の御意見を伺いたいと思うわけでございます。
  88. 磯部俊郎

    磯部参考人 第一点のいわゆる新規開発の問題でございますが、私は、現在の千八百万トンなり千七百万トンなりの石炭政策の中の生産量というのは、各炭鉱とも渾身の勇を払い、保安の万全を期し、一生懸命やってやっとそこまで達している額だと思います。そしてその功績には、我々は頭が下がる思いがいたします。しかし、そんなぎりぎりの状態で仕事をさせてよいものだろうか。もっと楽にしてやって、そうして保安確保し、ゆとりのある生産炭鉱である必要があるだろう。そうなれば、大炭鉱生産量をある程度、二十万トンあるいは三十万トン程度軽減し、その近傍に存在する残存炭を採掘し、そこに新しい小さな炭鉱をつくり、それと合算してもとの生産量を確保していく、そういったやり方をやる場所が、考えると幾つも出てまいります。今ざっと考えただけでも、名前は申しませんが、三つ四つは必ず出てまいります。そうすると、それだけでも百万トンあるいは百二十万トンぐらいの軽減が可能になります。それ自身の量としては極めて少ないかもしれませんが、軽減される炭鉱にとっては、大変楽な、しかも保安上有利な問題になると考えております。  第二点は、それは十鉱と申しましたのは、実は十一炭鉱ございますから、十鉱ぐらいそういうものがあればよろしいというふうに書きましたので、実はおの「論壇」に書きましたあれには、多少間違いというより行き違いがございました。ここでちょっと非常に手短に申し上げますと、外尾先生の論文が出た当日、あの論文が朝出る前に投稿したのが私の論文でございます。それで、その新聞社から電話が入りまして、外尾先生の論文を読んだか、いや、読んでおりません。それじゃ読んだということにして一筆加えるからどうだ、結構ですということで加えたので、若干の食い違いがあるわけでございます。その点をお許し願いたいと思います。  それから三つ目は、それは今のその意味でございます。
  89. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 わかりました。  お三方に最後にお尋ねしたいのは、日本石炭が国の石特会計によってずっと進んでいるわけでありますけれども、今お三方の率直な御意見として、いわゆる我が国政府石炭政策、それから石炭鉱業審議会というのがありますが、こういった政策や審議会のあり方についての御意見をひとつお聞かせ願えれば幸いだと思います。
  90. 有吉新吾

    有吉参考人 石炭政策につきましては、私、先ほど、第八次において問題は何かと、こういうことを申し上げました。基本的には第七次の延長のようでございますけれども、その中で柱になっていることが具体的に実現されない、それをいかに実現するかという、そのレールをひとつ敷いてもらいたいというのが今度の中心になるかと思っております。それは具体化の問題にとどまるようでありますが、これはやはり非常に問題を含んだ根本的な問題であろう、こういうふうに考えております。  それから審議会につきましては、これはやはり広く各方面の意見を聞かれる必要がございましょうし、特にあれをどういう構成にしたらというようなそういう特別な意見は持っておりません。
  91. 野呂潔

    野呂参考人 私は多少意見がましいことを申し述べたのですが、先ほど磯部先生も申し上げておりましたように、石炭だけ経済合理性がまかり通るということについて非常に不満を持っているわけであります。つまり、太陽熱であるとか、それから風力、波力とかという問題には大変な金を使ったりしてやっているわけでありますが、直接合油の代替エネルギーである石炭に、経済合理性だけで日本の国内の石炭考えるというのは、IEAでの決議とかいろいろなところからも問題が起こるだろうし、やはり考え直すべきではないのかという視点を申し上げました。しかし、金の関係もございますから、私の言うのは理想に近いかもしれませんけれども、そういう意味で前向きにとらえてほしい、こういうふうに考えています。  それから審議会のあり方でありますが、労働組合が審議会でもって意見を述べるというのは、これは今の七次策――八次策ではどういう形をとるのか、まだ聞いてはおりませんけれども、七次策のときですと、公式的には、鉱業審議会で諮問と、それから答申がされるその前のときと、それから答申されたときと、中間に一回ほど意見を聞くということなわけであります。したがって、そういうところだけで論議をされたり意見を聞かれるというのは非常に残念でありますので、通産省にもいろいろと話をいたしまして、七次策のときにも、その過程過程で我々の意見を聞いたり、それから意見を闘わす、それから検討委員のメンバーをつくりますから、そういう人たちとの意見交換をするというようなことはやりました。  八次策でもそういうことにならざるを得ないのではないか。案をつくる場合に、端的に、生産をしている私たち需要業界とが真っ向からその中で論議をしますと、意見の食い違いが出てきますから、どうしても第三者の人たちの手をかりながらやっていくようになるのだろうと思いますが、十分に意見とかそういうものを参酌できたり、意見を述べる機会を与えてほしいし、さらに通産の考え方は、大臣の国会の答弁を聞いていますと、これからでございますということでいるわけであります。これからですと言いますけれども、先ほど私は意見で述べましたように、一千三百億のうち、八次の政策にかかわるのは約五百億に足りないものが検討されるのであって、それ以上のものはもう既に決まっているわけですね。そうすると、それでまだこれからということになりますと少し問題がありまずし、それから、意見は通産省も持ってはいるのでありますが、公式的なところには事務局ということを通じてしか出てまいりません。しかし、そういう意見先生方もチェックしたり、あるいはまた論議をしたりして、御意見を出していただくような機会をつくっていただきたいし、この国会でも、今審議をしているんだからということで、答申がされてから意見を言おうということだけではなくて、いろいろな形をつくっていただきたいものであるというようにこの席をかりて御要望申し上げておきます。  以上です。
  92. 磯部俊郎

    磯部参考人 私、意見を申し上げます。  日本石炭は、先ほどから何回も申し上げましたとおり、石特会計の手厚い保護を受けており、それでもなおかつ私企業としての赤字及び縄張り争いの愚を繰り返していると思っております。しかも世間の非難をよそに、一円でも余計の補助金を、一厘でも安い低利のお金をというような考え方で推移してきていると思います。この点は経営者皆さん方にとっては大変耳の痛い私の発言でないかと思いますし、あるいは間違っているかもしれません。しかし、こうした甘えの構造をつくり上げたのも、いわゆる国が石炭政策をつくり、石炭鉱業審議会をつくって、そこで論議をした結果にほかならないと思うわけでございます。  しかも、石炭鉱業審議会に私自身も出席しておりましたから決して罪は軽くありませんが、そこで出された素案というものはすべて政府の役人の方々の作文でございます。それをただ追認するという形で石炭鉱業審議会は進んでまいりました。ただわずかに、ユーザーとの間の炭価交渉の報告程度が目新しいと言えば目新しい程度のものであったと思います。  しかも、その審議会の委員というのは三十年一日のごとく同じ人が顔を並べているばかりか、また同じ機構、同じ機関の中からところてん式に次々と委員を選出しているだけであります。私はそれらの人は石炭を知らないと昼言いませんが、大部分の方は石炭それ自身の素人でございます。ある有名な委員はこういうことを言いました。北海道石炭がとれる、冬は寒いだろう、石油なんて使わないで石炭を使えばもっともっと炭鉱がよくなるではないか、なぜそれをやらないのだ。それは東京に住む人の言うことだと私は思います。あのばい煙の中で一日でワイシャツが真っ黒になり、鼻の中が真っ黒になる、そういうところでずっと長年暮らしておりました。石油が出てきて初めて明るい空が見れるようになった。その生活をまたもとへ戻せと言うのですか。それはまさに暴言だと思って私は黙って聞いておりました。  そういう審議会の委員がいる間は、決して石炭審議会というものはよくならない。極めてトラスチックに言えば、現在の審議会の委員は一人残らず全部退陣していただく。第二の点は、新しい委員を選ぶために極めて中立的な選考委員会をつくる。そして第三は、その新しく選んだ委員の中から新政策の起草者を出す。役人の作文であってはいけないというふうに考えております。  大変トラスチックなことを申し上げまして恐縮ですが、私の意見でございます。
  93. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 終わります。ありがとうございました。
  94. 小川省吾

    小川委員長 小渕正義君。
  95. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 参考人の方、朝からずっと一日大変御苦労さまですが、時間も限られておりますので、要点だけ絞って質問いたします。  まず有吉参考人業界の代表として苦しい状況の中で本当に大変な御心労だと思います。それはそれなりに理解いたしますが、あえていろいろはっきりお聞きしたい点は申し上げるわけであります。  このたびの南大夕張の事故によって、六月三日に特別保安日というものを初めて設けて、一斉に操業停止して徹底的に保安点検その他行った、従来からいくと異例なことであるというような形でお話があっておりましたが、実は部外者といいますか、一般から見れば、今さら初めてこんなことをやったのか、率直に言いますとそういう感じがなきにしもあらずと思います。普通、産業災害とかいろいろ発生した場合には、業界としてはそういったものはもっと早目に設けてやられておったのではないかというように私なりに理解しておったわけでありますが、そういう意味でいきますと、やらないよりも幾ら遅くてもやった方がいいわけですが、しかしそれにしてもちょっと取り組みが十分じゃない。あれだけの大きな災害を逐次発生しておる中においてちょっと業界全体としての取り組みが甘かったのではないかという感じが率直にするわけでありますが、この点に対する御見解がございますならばお聞きしたいと思います。
  96. 有吉新吾

    有吉参考人 三池有明の思わざる事故を起こしまして、それに対する対応といたしましては、業界保安調査団を編成いたしまして、古参の技術系の社長さんを団長といたしまして各社から専門技術者を団員といたしまして、大手各社の各炭鉱を全部調査してもらったわけでございます。そういうやり方で、重大災害に対して、骨格的にどういう問題があるかとか、それから退避問題等についてこれからどう対処していったらいいのか、こういうふうな対応をしたのでございますが、にもかかわらず高島、南大夕張炭鉱、こういうことになりましたので、もうこれではひとつ業界挙げて一遍総点検ということをやろうじゃないか、こういうふうなことになったわけでございます。  以上でございます。
  97. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 そうしますと、今回は異例の措置でこういう日が設けられて一斉にやられたわけでありますが、これを例えば半年に一回とか定期的に何日にやるとか、そういうところまでは現在はまだお考えになっていないわけですね。
  98. 有吉新吾

    有吉参考人 私言い漏らしましたけれども業界としてこういうことを一斉にやるというようなことは恐らくほかの産業にないんじゃないか、こう思っております。  それから今の、今後定期的にそういうことをやる気持ちはないかということでございますが、先ほどのどなたでございましたか、御質問にお答えいたしましたように、今、六片の基盤確立の月間をやっておりますので、これが終わりまして、再度業界で編成いたしました調査団を派遣いたしまして、その六月の月間におきまして検討いたしましたことをもう一度そしゃくいたしまして、それによってひとつ今後の対応の仕方を決めていきたい。マンネリになりましてもこれは意味がございませんので、そういうふうに考えております。
  99. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 あと一つだけお尋ねいたし裏す。  今度のこの取り組みの中で、いろいろの項目が挙げられておりましたが、上級職員といいますか、主任や係長クラスの研修を強化する、各社それぞれ北海道または九州の鉱山保安センター等を通じて強化するということが項目として挙げられておりますが、もう少し具体的に、例えばこういうふうにどうだとか、何かもしここでそういうものがありましたならば、ひとつお教えいただきたいのです。
  100. 有吉新吾

    有吉参考人 内容はいろいろでございますけれども、例えば九州北海道保安センターがございますので、そういうところでの訓練をやる、こういうことでございます。  趣旨といたしておりますのは、先ほどから話が出ておりますように、ハードと並んでやはりソフトの問題が非常に大事でありますし、第一線の作業員に対しまして的確な、そして行き届いた指示を責任を持ってやりますのは上級係員とか主任とか、そういうところでございますので、そこを一段と教育をなにしたい、こういうことでございます。
  101. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 できれば、例えば従来は年に一回か三年に一回か知りませんが、何時間か講習を受けておったのを、今回は全員もう一度何時間講習をやり直したとか、何かもしそういう具体的なものが決まりましたならば、資料としてでもいただければと思います。  それから野呂さんにお尋ねしますが、いろいろお話しになっておりましたが、何としてでも事故は予防できるという確信に立ってこれからも対策を練っていかなければいかぬということで言われておったと思いますが、特にその中で、やはりこういった事故、ガス突出、ガス発生その他の事故の場合には必ず前兆現象があるんだ。私、専門的にはよくわかりませんが、山はねだとか山鳴りとか、いろいろ盛り上がりですか、ともかくこういった事故の前には前兆現象が必ずあるんだ。だから、それに対するきめ細かい対策を打っていけば、何としてでも事故の予防は可能ではないかと思うというようなことが言われておられたと思いますが、そういうようなことがわかっておって、なぜそれが今日まで具体的に何とかならなかったのだろうかという、我々素人なりにはすぐそういうふうに結びつくわけですけれども、もう少しこの辺についての状況がありましたならば、お知らせいただきたいと思います。
  102. 野呂潔

    野呂参考人 先生の言われましたように、そういう予兆とかいろいろなことがあるというのは事実であります。しかし、ではそういう体制といいますか、なぜそんなことを十分に把握しなかったのか、そしてまた、そういう事故をなぜそうやって起こしたんだということを言われるわけであります。現実に事故は起きているわけでありますから、手抜かりがあったことは謙虚に反省をしなければならない、こう思っています。  そこで、私たち、これからの考え方なんですが、まず事故が起きまして、警察の方とかあるいはまた保安監督官を含めまして、事情聴取が行われるわけであります。そういたしますと、マスコミを通じても言われるのですが、山鳴りがしておったとかあるいはまたそういう兆候があったということが出てまいるわけであります。私は、労働組合としてそういう事実をやはりしっかりと把握をして、組織的に解決でき得るような体制をつくっていかなければならない。やはり保安のことですから、今のことですから、保安監督署に投書をしたりなんというようなことで済む問題ではない。労働組合も謙虚に反省をいたしまして、保安問題についてはもう直ちに、問題が起きるとか感じましたら言い、それを点検をし、そして予防対策を行うように組織的にもやっていくということを新たな方針として樹立をしなければならぬであろうというのを、今度の災害を通じて痛感をいたしているわけであります。  したがいまして、今のことについては、もう言われるまでもなく十分にやっていかなければならないし、起こしている現実の前で、何も弁解を今することはないと思いますから、身をもってそういうことを実践をして解決していこう、こういうふうに思っております。
  103. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それからあと一つ、骨格構造見直しですか、野呂参考人はこの点を強調されておったわけです。我々専門的じゃないのでよくわからぬのですが、この骨格構造見直しというのは、保安対策上非常に必要なことを言われておられたようですが、具体的にちょっと例示でも、何か挙げて説明していただければと思います。どういうことですか。
  104. 野呂潔

    野呂参考人 まず骨格構造づくりですが、できる限り岩石坑道を掘っていくということがやはり大切ではないか。しかし、岩石でなくて石炭で掘らなければならないようなこともございます。そういう場合には二重、三重に事故が起きないようなチェックをしていくというようなことも必要だろう。さらにまた採炭方式につきましても、前進払い、後退払いとあるのでありますが、先ほど磯部先生の方からも採掘方式のことにつきまして御意見がございました。したがって、そういう問題も十分これからもメスを入れて検討しながら、災害が起こりにくい、起きたとしても小規模で、その範囲内にとどまるという方法とか、そういう骨格づくりということをあわせてやっていくことが必要だろう、こういうふうに思っているわけです。
  105. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 有吉参考人にお尋ねしますが、磯部先生の方から坑内における退避設備といいますか、よりこれを整備し、重要視してもっと整備しなければいかぬという点が力説されておったようですけれども、これはどうなんですか。実際問題として、退避設備、一部というか、いろいろそれなりのことはあるようでありますが、やはり現状から見るとかなり不十分なのかどうかわかりませんが、この御意見について、実際にお仕事をやられている立場から見て、確かに指摘されたとおり不十分で、もっともっと力を入れなければいかぬと思われるのか、現状で、今まででも精いっぱいやっていたつもりでお思いなのか、そこらあたりのお考え方ですが……。
  106. 有吉新吾

    有吉参考人 退避設備につきましては、相当の炭鉱で既に設置をいたしておりますけれども、それで十分であるかどうか、こうなりますと、まだ問題もあるかと思います。ただいま監督局からもそういう御指導もいただいておりまして、その御指導のもとに退避所の増設につきまして検討を進めておる段階でございます。
  107. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 磯部参考人にお尋ねいたします。  ユニークないろいろな御意見等もお聞かせいただいたのでありますが、特に一つだけ私お聞きしたいわけです。  航空機事故の場合はフライトレコーダーみたいなのとかいろいろあって、結果的に事故原因究明の大きなものがそうやってあるんだ、坑内の場合にも何かそういう機器類をもっときちっとしてやれば、事故の発生と同時に、その後からそれらに対する解析その他が可能じゃないか。そういうものを、サボっておるという言葉じゃなかったですけれども、そういう研究をもっとやればいいという意味のことを言われたわけですね。  ところが、今度の南大夕張事故の場合には、あれだけのいろいろな設備が瞬間的に作動したと同時に、爆風で一瞬にして機能が停止したのか、停止しておっただけに爆風が発生したのか、それは今のところは定かではございませんでしたけれども、要するに、ああいう坑内の中でそういういろいろな状況を感知して、しかも事故で爆発等があった場合でも、それが吹き飛ばないできちっとしておって、後から調べられるというような機器が果たして可能なのかどうなのかということで、ちょっと私、素人なりに疑問を持つわけですが、その点はどういうような御見解なのか。  あわせて有吉参考人からも、この点について果たして現実的に可能性のある問題なのかどうかということを含めて、まず先生の方からお願いしたいと思います。
  108. 磯部俊郎

    磯部参考人 申し上げます。  ただいまの御質問、大変難しい答えでございますが、果たして可能であるかどうかという問題は今後の問題だと思いますけれども、何千メートルの高空からたたき落ちたフライトレコーダーが立派に内容を持っているということから考えますと、坑内で高い温度になった爆発でも最大で三千度程度、それから大きな圧力になったとしても大体十気圧内外、その程度のものであります。したがいまして、それに耐えるものがあり得るかどうかという検討だけでも、検討委員会をつくり、メーカーを呼び、そして知識を集めるのが当然ではないか。私はそれを申し上げ続けてきただけであります。  以上でございます。
  109. 有吉新吾

    有吉参考人 今の問題につきまして、私もよくわからないのでございますが、そういうのができればそれにこしたことはないと思っておりますし、学者の先生方等の御意見も聞いて研究してみたいと思っております。
  110. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 要するに、磯部参考人のおっしゃりたいことは、あらゆる可能性考えて、ともかくそういう姿勢でいろいろな機器類の開発にももっと真剣に取り細め。例えば、実現可能かどうかわからぬけれども、こういうことも考えられるじゃないか、ああいうことも考えられるじゃないかという意味でおっしゃられておるということに、今のお話を聞いて理解したわけであります。  それからあと一点。先生の論法でいきますならば、今千七百万トン無理して掘るな、無理して掘るから事故が起こるんだ、だからもう少しゆとりのあるようにペースを落としてやれ、そういうことが一つですね。それからあと一つは、ともかく石炭を掘らせる国が、掘らせるからにはけちけちしないで金をどんどん惜しみなく使え、そういう保安、安全対策その他、あらゆる研究開発その他についても、やらせるならもっともっとお金を使え、そうでなかったら、人命上、人道的にいってもやめた方がよろしい、こういうことを言われておったわけであります。それからまた、後から、炭鉱は甘えの構造に浸っておる、そういうのはいかぬじゃないか、そういう御指摘もあったようでありまして、そこらあたりで、先生発言の真意が私なりにちょっと受けとめかねておるわけであります。  要するに、同じ石炭を掘らせるからには、そういう保安設備その他の機器開発等について、国はほかのエネルギーに比べるならばお金をもっともっと使ってやるべきじゃないか、そういう意味での御叱責として受けとめていいかどうか、その点いかがですか。
  111. 磯部俊郎

    磯部参考人 全くおっしゃるとおりでございます。もしやるとすれば、それを十分にやれるだけの施設設備、そういうものを考えるべきである。そのやるべき意味というものは一体何かということになりますと、これは私ども一介の国民が云々すべき問題ではなくて、これはやはり国会の皆さんが国家百年のエネルギー大計のもとに、日本石炭産業をいかに考えるべきかという決断を下すべき問題として私自身は考えているわけでございます。もしそうでなければ石炭産業などはやめてしまった方がよろしいというふうに思っております。
  112. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 どうもありがとうございました。終わります。
  113. 小川省吾

    小川委員長 小沢和秋君。
  114. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 どうも御苦労さまでございます。私が最後ですから、いましばらくよろしくお願いいたします。  まず磯部先生にお尋ねをしたいと思うのですが、最近、三池それから高島、今度の南大夕張と立て続けに起こっている事故は、非常に初歩的なことがきちんと守られていなかったことからああいう大災害が起こったんだ、よく深部化、奥部化で非常に坑内が危険になっているということが言われるわけでありますけれども、私はそういうようなことが直接の原因になったのではない事故だったというふうに考えておるわけでありますが、この点についての先生の御所見。  そして、それとあわせて、現在の到達した技術をきちんと守っていくならば、新しいいろいろな未知の問題が深部化、奥部化で起こってくるから、その点大いにこれから保安問題は研究しなければならないけれども、まず安全に採炭はできるのではないかというように私は考えておりますが、そう認識しておいてよろしいか、この点をまずお尋ねします。
  115. 磯部俊郎

    磯部参考人 ただいまのお答え、私にとっては大変難しい、ほとんど不可能に近いと考えられる問題でございます。なぜかと申しますと、私は三池にも高島にも南大夕張にも行っておりません。事故直後にも行っておりませんし、それからそれの調査を依頼された覚えもないし、調査をしたこともございません。ただ知っているのは、いわゆるマスコミの報道その他でございます。したがいまして、それが果たして初歩的なものであったかどうかということについては、これはわかりません。高島は多分その傾向があったのではなかろうかという気だけしております。それから南大夕張炭鉱につきましては、これは現在のところ皆目わからない、考えようによっては極めて難しい事故だろうと思います。  したがいまして、もし原因が究明できないとしたり、あるいは原因がこうでなかろうかという結論だけに終始したとしたら、もし違う原因があったら、そこらここらに何回も繰り返される事故になり得る可能性を持つものと思っております。ですから、この問題に関しては相当慎重に対処する必要があると私個人で考えております。ただし、情報は全くございません。
  116. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 磯部先生に引き続いてお伺いをいたしますけれども、私は坑内保安確保しようと思えば、これはやはり相当にお金が必要なことだと思っているのです。ですから、その点から見ても私企業で国の補助が全くないというような状況では日本の場合やっていけないんじゃなかううか。ですから、さっきも体制の問題、私自身が田中参考人に対する質問の中でちょっと申し上げておるわけですけれども先生は、今の私企業の体制で、しかも補助金なしでやっていけるというような認識をお持ちなんでしょうか。何かさっきちょっとそういうふうに聞こえたものですから。
  117. 磯部俊郎

    磯部参考人 私はそういうふうには実は申し上げなかったわけでございます。ただいままで日本の石炭鉱業というのは余りに国が手厚い保護をやっていた、しかも年々歳々生産量は減少し、経営状態はおかしくなり、そのぐらいならまだ許せる、何百人、何千人という人命を損なってきたじゃないか、その罪だけは許せない、したがってこれは国がそこまで援助してやる必要があるか、自分で、自助努力によって災害を減らしプラスにすべきが私企業の本質じゃないか、私企業を標榜する限りはそうであるべきだというのが私の持論でございます。
  118. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 磯部先生にもう一点だけお伺いしたいのですけれども、いわゆる試験炭鉱ということで先生がしばしば言っておられることは私も承知しておりますが、深部化、奥部化に伴っていろいろな坑内保安上の未知の問題に挑戦をするためにそういうようなものを先生が構想として打ち出しておられるというふうに私も理解をするわけでありますけれども、そういうふうに理解をしてよいのかどうか。そしてまた、試験炭鉱をどういうような形でつくればそういう研究に十分役に立つような形でそれがつくれるのか、ちょっとその辺を一言だけお尋ねしておきたいと思います。
  119. 磯部俊郎

    磯部参考人 では、一言申し上げます。  この試験炭鉱問題と申しますのは、日本学術会議というのがあるのを皆さん御存じと思いますが、日本学術会議の勧告として既に政府に提出しております。そして、その中には採掘に対する革新的な技術開発する部面と、それから保安問題を検討する部面と、二つに分かれております。  それで、革新的な技術をつくり出す部面に関しましてはこれはまずさておきまして、一たん災害が起こったならば、坑内に生きたまま閉じこめられた人をどうやって助けるんだ、それを助ける方法を研究するのは生きた商業ベースの炭鉱でできるか。もちろん人を閉じ込めては試験炭鉱でもできないでしょう。しかし、動物を閉じこめて、それによってそれの救出を研究することは可能である。特に動物などは、人間との対比において、どのくらいの力まで持ち得るか、何時間で救出しなければいけないかというようなことを調べるのには極めて有効である。私は、人命尊重の見地から試験炭鉱の推進を何回も繰り返して言っております。恐らく死ぬまでできなくても言い続けるつもりでおります。  以上でございます。
  120. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 ありがとうございました。  では、引き続いて野呂参考人にお尋ねをしたいと思いますが、先ほどもちょっと話が出ました、骨格構造の問題でちょっと触れられたわけでありますけれども、さっきのお話では岩石坑道などをつくってしっかりした骨格を形成するようにすべきだというような御指摘があったわけですが、逆を言えば、そうすると今効率的な採炭をするためには場合によるとそういうような堅固な骨格坑道をつくるということは犠牲にされているようなところがあるということを認識しての御発言だったと理解をしてよいかどうか、この点が一つですね。  それからもう一つは、第三者のアドバイザーグループを設けることも今検討中だというふうなお話もさっきちょっとあったわけですが、私は何といっても直接の関係者は坑内で働いている労働者の皆さんであるし、その皆さん方が危険や何かについては一番よくおわかりじゃないかと思うのです。それで、社会体制は違うけれどもソ連などの話を聞いてみると、労働組合などが保安問題については強力な権限を持っておるというようなことも私聞くのです。だから、その発想に倣うというわけじゃありませんけれども、例えば労働者の皆さんから直接保安についての代表を選出されたら、その選出された人が非常に危険だというように判断をした場合には待避を指示するような権限を与えるとか、もっと労働者労働組合にそういうような意味での強い発言権を持たせろということが私は今の一つの問題じゃないかというふうに考えているのですが、この点どうお考えになりましょうか。
  121. 野呂潔

    野呂参考人 骨格構造のことですが、今度事故が起きて考えてみますと、これで大丈夫だろうと思っていたことが大丈夫ではなくて事故が起きたという事実があるわけでありますから、それらの点を率直に反省をするという意味で、やはり災害が起こりにくいような構造あるいはまた起きたとしても最小限にそれをとどめるような骨格坑道づくりとか、そういうものをやはり考える必要があるだろうということで、今そういう骨格づくりが保安を無視してやられていたというように私は言ったのではなくて、なおその点を十分に考えながらつくっていくようにしなければならぬし、そして私たちの労使でつくっている保安計画を監督官庁である通産省もチェックをして大丈夫なのかどうかというようにやってはいますけれども、さらにそれを目を詰めてやってほしい、こういうように考えているわけであります。  それから第二の問題は、先ほども申し上げましたが、事故が起きますと、山鳴りがしていたとかいろんなガスの突出みたいなものがあったようだというのがマスコミを通じて喧伝されるわけです。労働組合が常日ごろそういうようなことを言っても取り上げてくれないのか。私たちは、少なくとも労働組合でそういうようなことは考えてはいません。しかし、そういう問題がやはりマスコミを通じても喧伝されるわけですから、謙虚に受けとめてそこのところを徹底して内部で消化をしなければならぬ。したがって、危なければ直ちに意見を反映をさせ、出させるように、そして出たものは必ずそれを点検をし、チェックをし、そしてそれを実行させていくということをやることが必要である。保安問題で提言をしたりする者に不利益な取り扱いをするようなことはしたことはないわけでありますが、そういう心配のないように私たちはこれからもやっていかなければならない。そして、保安問題についてはもう本当にこれでもかというようにやっていかなければならない。労働組合保安委員方々とかいう人たちは全部選挙で選んでおりまして、組合の意向といいますか、謙虚に反映できるというようになっていて、労働者の意向を反映をしないような人は選挙のときには直ちに批判をされるわけです。そういう形で選んではいますが、単にそういう選挙云々じゃなくて、保安の問題は労使の問題ですから、これには階級的な対立は、今の問題について対立はない、こう思っていますから、私たちは今後とも十分に会社側とも話をして、目を詰めて、点検をしながらやっていきたい、こういうふうに思っております。  以上です。
  122. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 じゃ、あと一点だけ有吉参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。  先ほどのお話では、イギリスとかフランスとか西ドイツなどでは、国として石炭に対する助成策を日本などよりもかなり強力にとっているというお話でした。こういう国々は、今日本との間で貿易摩擦が起こっているように、一般的に言うと日本などより競争力が弱いのですね。恐らく、どうして競争力を強めるかというような議論がそういう国内で起こる場合に、一つの起こり得る議論としては、こういう高い石炭を使うよりも、日本などは海外からどんどん安い石炭を入れているじゃないか、あれに倣ったらどうだなどというような議論がそういう国々で起こってもおかしくはないのじゃないかと思うのですね。ですから、もし今度調査をしてこられて、そういうような国々でそういう石炭政策をめぐって議論などが行われているとすれば、どんな議論が行われているか、そういう中で、また石炭政策を見直すというような話があっているのか、あるいは今後もこういう日本以上の補助政策を続けていくというのは確固たる方針になっておるのか、その辺、もう少し事情がわかれば教えていただきたいと思います。
  123. 有吉新吾

    有吉参考人 協会でいろいろ調べてきたのでございますが、御承知のように、フランスは出炭量が千八百万トンぐらいでございまして、もう大きく原子力を推進しよう、こういうふうにやっておりますので、いささか事情が違いますけれども、国の基本国内炭を据えるという、フランスはそういう姿勢ではございません。しかしながら、今の千八百万トン見当、これを多少の合理化をしてスクラップをしようという考えはあるようでございますが、しかし、さっきから言いますように、トン当たり九千円からの補助をしてあとは残していこう、こういう考え方でございます。  イギリス、ドイツになりますと、これはもう圧倒的に国内炭というものはエネルギーの大宗である、こういう一つ考え方でございますので、これも正確じゃございませんけれども、英独の総発電量の相当のパーセントというものは国内炭によっておるわけでございます。西ドイツは歴青炭を八千万トンぐらい掘っておりますが、そのうちの四千万トン以上は発電に使っておりますし、褐炭が同じく八千万トン近く出ておると思いますが、これはもう地元発電に使っているというような格好で、ポーランドと同じように、ドイツ、イギリス、ポーランド、そういうところは、もう我々はやはり国内石炭をエネルギーの大もととしてやっていくんだという考え方なんです。それはもう確固たるものがありますね。ドイツのごときは、今外国炭を輸入しておりますのは一千万トンそこそこではございませんでしょうか。イギリスにつきましては、資料は余りございませんですが、それで基本的にはそういう姿勢でございます。  ただ、この前からイギリスでストライキがありましたように、それから先ほどもちょっと触れましたが、非常にコストの高い炭鉱、その格差が大きいのでございますね。日本よりもはるかに大きい。したがいまして、かつて日本がスクラップ・ビルドをやりましたように、イギリスではやはり相当量をスクラップして、その分をビルド鉱でひとつビルドをしよう、こういうふうな考え方が進んでおるようでございまして、この前のイギリスのストライキは、そのスクラップ・ビルドの、そのスクラップのたしか四百万トンか何かのそれが対象になったように聞いております。基本的に、考え方も全然違っております。そういうことでございます。
  124. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 ありがとうございました。
  125. 小川省吾

    小川委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ここに委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、来る二十一日午前十時理事会、午前十時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十六分散会