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1985-04-22 第102回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月二十二日(月曜日)     午後一時一分開議 出席委員   委員長 大内 啓伍君    理事 仲村 正治君 理事 深谷 隆司君    理事 町村 信孝君 理事 川崎 寛治君    理事 島田 琢郎君 理事 玉城 栄一君    理事 青山  丘君       臼井日出男君    太田 誠一君       中村喜四郎君    上原 康助君       安井 吉典君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      有馬 龍夫君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済協         力局長     藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君  委員外出席者         防衛施設庁総務         部業務課長   小澤  毅君         通商産業省通商         政策局北アジア         課長      山浦 紘一君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      神谷 拓雄君         特別委員会第一         調査室長    内野 林郎君     ————————————— 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   大島 理森君     臼井日出男君   東家 嘉幸君     太田 誠一君   野中 広務君     中村喜四郎君 同日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     大島 理森君   太田 誠一君     東家 嘉幸君   中村喜四郎君     野中 広務君     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖縄及び北方問題に関する件      ————◇—————
  2. 大内啓伍

    大内委員長 これより会議を開きます。  沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仲村正治君。
  3. 仲村正治

    仲村委員 安倍外務大臣お尋ねをいたしたいと思います。  我が国固有領土である北方領土が、ソ連に不法占拠されてから四十年が過ぎた今日もなお同地域返還実現できないことはまことに遺憾であります。そして衆議院は、本委員会の発議により去る四月十九日、北方領土返還決議全会一致で行ったところでありますが、今や、北方領土我が国固有領土として我が国主権回復を求める声は全国民一致した願望として累次にわたり国会決議を行ったところでありますので、その実現が一日も早からんことを希望するものであります。  我が国は、対ソビエトの戦後処理を図るべく、一九五六年鳩山・ブルガーニンによる日ソ共同宣言及び一九七三年旧市・ブレジネフによる共同声明、一九七五年の宮澤外相訪ソ、そして一九七六年一月のグロムイコ外相訪日等々の会談を通じて、日ソ平和条約締結の前提は第二次大戦のときからの未解決の諸問題、すなわち北方四島問題の解決であると日ソ両国が確認を繰り返してきているのでありますけれども、ソ連は、一九七六年夏以来、同島への墓参拒否漁業協定への圧力等々、強硬な姿勢に変わってきて、最近では、一方的に日ソ両国には領土問題は存在しないなどと主張し、一九五六年の日ソ国交回復後の日ソ共同宣言及び一九七三年の共同声明等々の取り決めを無視した理不尽というか乱暴というか国際的慣習に反するソ連態度には義憤慷慨を禁じ得ないものでございます。  そこで、私は、大臣お尋ねをするのでありますけれども、昨年十月二十五日から十一月一日まで、衆参両院議長招待我が国を訪れたソ連最高会議代表団団長クナエフ共産党政治局員は、衆参両院議長招待のレセプションの席上でのあいさつの仲で、日本は軍縮に逆行しているとか、国際情勢険悪化日本を含め西側の侵略的行動の結果だとか、さらには、日ソ関係の停滞、後退はソ連にはその責任はなく日本の側にあるなどなど、悪いのはすべて日本であってソ連ではないとソ連立場を正当化する一連の発言報道されたが、これは、善隣友好目的としての招待訪問外国要人招待国及びその国民に対しつばを吐きつけるような無礼千万な侮べつ的言動であり、国際的慣習や儀礼として全く許しがたい事柄であると思います。私は、我が国外交史上これ以上の屈辱はないと思いますけれども、中曽根総理安倍外務大臣も間髪を入れずに反論をなされたことも報道をされておりましたが、このようなソ連の対日姿勢について外務大臣はどのような御見解をお持ちであるのか、またその後のソ連の対日外交姿勢がどのように変わってきたのか、この点についての大臣の御説明をいただきたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連側は、従来より、最近の日ソ関係冷却化原因はすべて日本側にあるとしまして、領土問題につきまして、こうした問題は存在しないあるいは解決済みである、こういう主張を繰り返しておりまして、交渉のテーブルにも着こうといたしておりません。  確かに、おっしゃいますように、昨年の十月に最高会議議員団団長として来日したクナエフ政治局員も、今御指摘のとおりの発言を行った次第でありまして、この発言に対しまして、十月二十六日でありましたが、私が同政治局員会談をいたしました際に、私から、そもそも北方領土における軍備の強化、アフガニスタンへのソ連軍事介入、またさらに、SS20の極東配備あるいは大韓航空機事件等日ソ関係冷却化の原風である、しかし、何といっても日ソ関係が厳しい状況にあるところの最大の原因は、やはり領土問題、日ソ間に未解決領土問題が存在をし、そのために平和条約が未締結ということである旨の指摘をいたしまして、同政治局員の注意を喚起した次第でございます。  その後、ソ連の対日姿勢基本的には変化は認められておりませんが、いずれにしましても、我が国としましては、ソ連が重要な隣国である、こういうことでございますから、ソ連との間に真の相互理解に基づいた安定的な関係確立する、こういう基本方針にのっとりまして、今後とも対ソ外交を進めていきたいと考えております。基本的な領土問題はございますが、そうした基本的な方針のもとに日ソ間の対話をいろいろな面から今促進をしておる立場でございます。
  5. 仲村正治

    仲村委員 ただいま大臣から、昨年十月二十五日訪日したクナエフ団長発言等に関連して御答弁をいただいたところでございますけれども、ソ連態度はまさに、一九五六年以来日ソ両国平和条約締結に向けて積み上げてきた約束事、もちろんその中には北方領土問題も含まれているわけでありますけれども、そういったものを一方的に破棄しようとする、日ソ両国共同宣言共同声明国際条約にももとる行為であると言わざるを得ないのであります。  このようなソ連態度に対しましては義憤すら感ずるものでございますが、ここはやはり沈着冷静に対話努力をすることが我が国外交姿勢でなければならない、こういうふうに思うわけでございます。ソ連チェルネンコ書記長死去ゴルバチョフ政権が誕生したので、いろいろな意味ソ連に新しい時代が来たというのは世界の一般的な観測であります。これをきっかけとしてソ連外交政策も大きな転換期を迎えるであろうというのは、ソ連共産党政権の従来の閉鎖的で独善的な対外政策変化を求める願望みたいなものである、私はこういうふうに思うわけでございますが、また我が国も、冷え切った両国関係を改善する糸口を何とかしてつかみたい、こういう気持ちだと思うわけでございます。  しかし、私は、ソ連の側に対日関係改善についての誠意ある姿勢があるかということについては非常に疑いを持たざるを得ないのでございます。なぜならば、最近赴任したアブラシモフ日ソ連大使は、去る四月十六日、日本記者クラブでの着任後初めての講演と記者会見を行い、日ソ関係を中心としたソ連対外政策について見解を明らかにした中で、北方領土問題に関連して言及し、日ソ間に戦後未解決の諸問題があるとの一九七三年旧市・ブレジネフ共同声明は有効ではなくなった、したがって、現在日ソ間に未解決の問題はもはや存在しない、そういうようなソ連側公式見解を明らかにしたと報ぜられておるわけであります。政府は、この報道公式見解を明らかにしたということについて、たとえこれが一方的なものであるにせよ、その事実関係調査し、それに対応する措置を直ちにとるべきだと思うが、大臣の御見解お尋ねしたいわけでございます。そして我々は、ゴルバチョフ政権誕生によってソ連対外政策も柔軟な転換が期待されると希望を持っていたわけでありますが、アブラシモフ大使発言ソ連政権の対日姿勢として受け取るべきかをも含めて大臣の御所見を承りたいのであります。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 お尋ねのように、十六日にアブラシモフ在京ソ連大使日本記者クラブにおきまして演説を行って、記者団との質疑応答の際に、一九七三年の日ソ共同声明に関して御指摘のような発言を行ったことは私も承知をしております。  アブラシモフ大使発言は、一言で言えば、一九七三年の日ソ共同声明は現在では有効ではなくなったとの趣旨と思われるわけでありますが、一九七三年の田中・ブレジネフ会談において、北方領土問題を含む戦後の日ソ間の未解決の諸問題を解決し、平和条約締結することが両国間の真の善隣友好関係確立に寄与することで両首脳部の認識が一致し、その事実を共同声明において明確に記述していることが北方領土問題との関係で重要な意味を有しているのでありまして、同声明は現在におきまして有効であるとか有効でないという議論は全く的外れではないかと思います。いずれにいたしましても、七〇年代の後半からソ連側北方領土問題は存在しないあるいは解決済みであるとしているのは極めて遺憾であると考えております。  この領土問題につきましては、先般のチェルネンコ書記長死去に伴いまして中曽根総理と私が訪ソいたしました際にゴルバチョフ書記長とも会談をいたしましたが、その際に中曽根総理から、領土問題を解決して平和条約を結ぶことが日ソ間の真の友好関係確立することであるということを強調されたのに対して、ゴルバチョフ書記長は、ソ連態度はこれまでと変わらない、こういう趣旨を述べられた次第でありまして、したがって、ソ連領土問題に対する基本的な立場は変わらない、こういうふうな新しい指導者の表明であろうと思うわけであります。しかし、日ソ間において対話を促進し、友好を推進していこうということにつきましては、両首脳の間に意見一致も見ました。特に懸案でありますグロムイコ外相訪日問題につきましても、向こう側はこれを実行するという方向で対応していきたいという趣旨発言をいたしましたし、可能性として今までよりは大きくなったわけでございます。  現在、日ソ間におきましていろいろと対話を進め、問題を詰めておるわけでございますが、我々は、基本的には領土問題は解決しなければならぬと思いますが、同時に、米ソ間に緊張緩和の空気が出ておりますから、こうした際に、やはり日ソ岡においても対話を推し進めまして、そしてさらに一歩進んだ友好関係に入っていきたい、こういうふうに思って努力をいたしておるわけであります。
  7. 仲村正治

    仲村委員 私たちは、新政権誕生で何らがその行き詰まった状態が打開できるのじゃないかという希望を持っておったわけでございますけれども、新駐日大使発言からいたしまして、やはりソ連態度は変わってないというような感じであるわけであります。外務大臣もたびたび、今度はソ連から日本に来て話し合いをすべきことだ、こういうふうに言っているわけでございますが、このアブラシモフ大使発言からすると、何ら実りのない訪日意味がないんじゃないか、こういう感じ発言も含まれているわけでございます。これに対してグロムイコ外相訪日実現というのはあり得るのかどうか。もし今の態度だと、この北方領土問題について簡単に解決するとは思いません。先ほども申し上げたように、やはり沈着冷静に気長に対ソ外交を推し進めていかなければならないけれども、しかし、最終的にはそれは訴えるべき場所がある、いわゆる国際司法裁判所に訴えてでも当然我が国固有領土主権回復を図らなければならない、そういう感じを持っているわけでありますが、グロムイコ外相訪日実現ができるのか、あるいはこうして北方領土に対するかたくなな態度であれば、やはり最終的には訴えるべき場所で争うしかないというようなこともお考えがあるかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 グロムイコ外相訪日について、成果がなければ訪日をしても意味がない、こういう考え方は我々はおかしいと思っております。やはり訪日するところに大きな意味があるわけでありますし、訪日することによって、また成果も生まれてくるわけであります。我々としても今話を進めておるのは、訪日した結果、日ソ間に実りがあるようなそうした立場に立っての対話を進めておるわけでありますから、やはりグロムイコ外相訪日というのは、日ソ外相定期協議による訪日でありますから、訪日するということが大事であろう、こういうふうに思っております。そのことはソ連側にもよく説明をいたしておるわけでございます。  同時に、領土返還につきましては、我々は、ソ連との対話におきましては事あるごとにこれを強く求めておる。私もグロムイコ外相との会談においてまず冒頭にこの問題を発言をし、日本立場を明らかにしておるわけでありますが、残念ながら、ソ連はこうした日本考え方に対して同調するという立場にはないわけで、先ほどからお話をいたしましたように、領土問題は解決済みであるというふうな態度をとっておりまして、この領土問題について全く平行的になっております。しかし、私たちは、あくまでも北方領土日本領土であるという信念を持っておるわけでございますから、この信念に基づきましてソ連にはこれからも辛抱強く交渉してまいりたい。国際司法裁判所に訴えるという一つの考え方もあるわけでございまして、これはいろいろと十分検討をしたこともあるわけでございますが、残念ながらソ連がこれに応じない、こういう姿勢でございますから、そうなれば国際司法裁判所で論ぜられるということも可能性としてないわけでございますし、やはりこの問題については、あくまでも二国間の基本的な問題として辛抱強い交渉によって実りを上げる以外にはないだろう、こういうふうに思って、これは日本としても絶対に曲げることのできない基本方針としてこれからも進めてまいる決意であります。
  9. 仲村正治

    仲村委員 ぜひそういう方向で御努力をいただきたいと思います。  次に、尖閣列島主権確立についてでありますが、この問題について私は第百一国会でも取り上げましたところ、大臣の御答弁も、その地域我が国固有領土であり、そして我が国尖閣諸島を有効に支配しているということでございました。しかし、私の質問の、同地域海底油田開発についてはどうかということには、そのようなことをすれば、我が国がその地域有効支配を誇示すもようなもので、日中友好協力関係を阻害しかねないというような御答弁であったわけでございます。私は、中国に気兼ねしてその地域開発できないということは、やはりその地域主権確立が十分なされてない、こういう考え方に立っておるわけでございますが、その点についていま一度大臣の同地域に対する考え方を御説明いただければと思います。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 尖閣列島領有権につきましては、中国が独自の主張を有しておりますことは御承知のとおりであります。尖閣諸島我が国固有領土であるということは、歴史的にも国際法上も疑いのないところでありまして、現に我が国はこれを有効に支配しております。したがって、中国との間に尖閣諸島領有権をめぐって解決すべき問題はそもそも存在しないというのが我が方の立場であります。我が国国内及び中国要路筋に、東海大陸棚石油資源につきましてこれを共同開発してはどうかという考え存在することは政府としても承知をしているところでありますけれども、東海大陸棚開発に関しましては、日中間境界画定等の問題がございます。これらの問題につきまして中国側とも十分に意見交換を重ねる必要があると考えておるわけでございます。意見交換によらずしてこの問題を進めるということはなかなか困難ではないかと思っておるわけでございます。協議につきましてはまだ具体的な考え方は持っておらぬわけでございますが、今後中国側とも相談をしていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  11. 仲村正治

    仲村委員 次に、日米安保条約に関する件についてでありますが、在沖縄米軍基地高密度是正についてお尋ねをしたいと思います。  日米安保条約我が国の平和の維持経済発展に果たしてきた役割は評価されるべきであります。そして我が国国防外交及び経済政策を初めとする国策基本は、今後とも日米関係がその基軸でなければならないと思います。ただしかし、日米安保条約締結から三十三年の年月の経過や国際情勢変化等考えると、基地の形態は質、量ともに再検討の時期に来ていると思うのであります。特に沖縄米軍基地は、日米安保条約負担沖縄県民に集中的に背負わさせ、県の面積人口比率から余りにもその負担は過重であると思います。沖縄米軍基地は、太平洋戦争での戦場化、それに続く長期の米軍占領下米軍勝手気まま安保条約とは全く関係なくつくったものであるが、復帰実現するために核抜き本土並みという巧みな方法で、表面上当時沖縄に配備されていたメースBなどは撤去したものの、在沖縄米軍基地復帰後も五・一五メモによって従来どおり使用条件が取り決められていまして、安保条約地位協定に基づく基地提供といっても、沖縄米軍基地の現状は、全国土のわずか〇・六%という狭隘な面積の中に全国米軍基地の四四・二%も存在するという超過密な状態で、その面積は全県土の一一%余の広大な地域を占拠し、沖縄地域振興開発の大きな阻害要因となっているのであります。しかも、陸上では民間地域の至近の距離に実弾射撃演習場パラシュート降下訓練場航空機射爆場が存在し、海浜は上陸演習場、さらに海域空域は広大な地域沖縄本島を取り巻くようにして航空機及び艦船の訓練地域として設定され、戦場さながらの米軍演習及び軍事行動が一年を通して行われているために、米軍による殺人事件原野山林火災、跳弾、飛弾事故航空機からの落下物事故、ヘリやパラシュートの誤落下事故等々が頻発し、県民はもはやこのような基地あるがゆえの過重な負担に耐え忍ぶ我慢の限界に来ていると思うのであります。そのために、安保平和維持のために必要だとは認めつつも、一体安保とは何ぞや、国防とは何ぞや、そのために県民生命財産が脅かされては平和も何もあったものではないという、今や国策基本にまで疑問を抱かざるを得ないほどに心の底からの激憤を禁じ得ないのであります。とにかく、全国比一%足らずの沖縄に四四・二%の基地存在することは、超過密な基地の偏在としな言いようがありません。このような視点から、沖縄米軍基地の質、量的再検討、なかんずくその整理縮小並びに国内の他の地域への配置転換について真剣に検討すべきだと考えますので、私は外務大臣に本当に祈るような気持ち県民の心情を訴えたいと思うのでございます。ひとつ誠意ある、実効性のある御答弁をお願いしたいのであります。  これは沖縄県の地図であります。この赤く塗ったところが米軍基地なんです。緑色のが海域空域制限訓練場であります。本当に手も足も出ない状態なんですね。これでどうして沖縄県の振興開発が図られるかと言うのです。そういうことで、そういう高過密な状態を何としても是正していただきたい、こういうふうに思うのでありますが、ひとつよろしく。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国としましては、日本の安全、極東における国際平和、安全の維持に寄与するために、安保条約地位協定に基づきました米軍の駐留を認めて施設区域を提供しておるところでございまして、右目的達成に必要と認められる施設区域につきましては、今後とも地位協定のもとで引き続き我が国としての条約上の義務を果たしていく考えであります。この点につきましては、地元の御理解協力を今後とも求めていきたいと思います。また、これまで沖縄県民より御理解、御協力を得てきておることにつきましては、政府といたしましても感謝をいたしております。  他方、政府としましても、今いろいろと御指摘がございました沖縄県における米軍施設区域の密度が非常に高くて、その整理統合についてかねてより強い要望があることは十分承知をいたしておるわけでございまして、これまでも現地における要望あるいはまた開発計画、民生の安定等に配慮するとともに、日米安保条約目的達成との調和を図りながら、安保協議委員会等での米側との協議を通じましてその整理統合の推進に努めてきたところでございまして、今後もさらに、御指摘点等も踏まえながら、安保協議委員会で了承された整理統合計画のうち残余のプロジェクトの早期実現努力をしていく考えでございます。また、政府としましては、施設区域存在米軍の活動に伴って生ずる周辺住民生活への影響を最小限に食いとめるように、可能な限りの努力をひとつ誠意を持って行ってまいりたいと思っております。
  13. 仲村正治

    仲村委員 私は、冒頭申し上げましたように安保条約を否定しているものでもございません、また基地提供を否定しているものでもございません。余りにも超過密な状態復帰前に勝手気ままにつくった状態を継続してはならない、こういうことで、何としても適正な配置、適正な規模の状態に再検討していただきたい、こういうことを申し上げているわけでございます。  日米安保条約締結されてから三十三年の月日が経過した、もうそういう時代とは変わってきた、そして沖縄復帰してから十四年目になるわけでございます。当時としては、復帰したら米軍基地機能が低下するのじゃないかというような心配があってあの五・一五メモによって使用条件が決められたと思います。しかし、もう時代は変わっております。そういうことで、私は、この五・一五メモについてももう再検討の時期が来ている、本当に県民生活を最優先するんだという立場からひとつその点についての検討をいただきたいというふうに思うのであります。このことについて、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  14. 栗山尚一

    栗山政府委員 仲村委員沖縄県における基地事情についての御要望につきましては、政府といたしましても十分念頭に置いて対処をしてまいりたいと思います。  当面のところは、委員御案内のように沖縄返還後、日米間において合意されました基地整理統合というものをできるだけ進めていく。これまでの進捗状況は必ずしも県民方々の御期待どおりに進んでおらないということは、外務省といたしましてもよく理解しておるところでございますが、移転先検討の問題とか地元の地主の方々との調整の問題とかいろいろ問題がございまして、必ずしも当初の予定どおり基地整理統合が進んでいないという事情につきましては、政府としても非常に残念に思っておるわけでございます。今後とも基地整理統合をできるだけ迅速に進めまして、県民方々の御負担の軽減に努めてまいりたい。これは先ほど大臣から御答弁申し上げましたことの補足として申し上げさせていただきたいと思います。
  15. 仲村正治

    仲村委員 今御説明があったとおり第十四、第十五、第十六日米安保協議委員会でそういう取り決めをしたわけでございますけれども、これは県内に代替地を求めようとするからそういうことができないわけです。それじゃ基地整理縮小にはならないのじゃないかという考え方を私たちは持っているわけでございます。あくまでもほかの地域に移すべきであるということで、根本からその見直しをやっていただかなくてはならぬと思うわけでございます。  次に、米軍基地から派生する事件、事故等の徹底的防止、根絶について、政府はその措置をとる責任があると思います。殺人事件や流弾、跳弾、飛弾事故、山林原野火災、漁網切断事故、米軍車両の民家への突っ込み事故等々際限がなく、今私がやっている最中にも起こっているかもしれない。三月二十八日に私はこのことを強く指摘したわけです。そのときに金武町で車両が民家に突っ込んでおったということで、本当に私たち気持ちとしてこれでいいのかという感じがしているわけでございます。その都度政府に対して被害の補償、再発防止、軍紀の粛正を訴えておりますが、一向にとどまるところを知りません。このことを私は強く指摘したいのでございます。  ここに金武町で起こった事故の新聞記事がございます。キャンプ・ハンセンだけで昭和二十一年からことしの一月までに八十七件、殺人事件及び人身事故だけで二十件、その人が三十八人。私がグリーンで塗った部分は全部殺人事件なんですね。これはもうごく一部なんです。私は、資料がたくさんあるので、きょう持ってこようと思ったのですが、これだけでもお示ししようということでこれだけ持ってきたわけでございます。  こういうことで、本当に私たちは我慢の限界に来ている。何としてもこれを根底から根絶していくための措置をしてもらわなければ、事故が起こる、決議をする、陳情に来る、ああまた来たかということで全く問題視をしていないのではないかという感じでございますが、この件について徹底的な措置ができるのかどうか、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、最近沖縄における米軍によるいろいろな事故がこれまでよりは多過ぎるように私も思っておりまして、これは極めて残念に思っております。こうした事故が頻発すれば日米間の信頼というものに大きな影響が出てくるわけでありますし、日米安保条約理解していただいて沖縄の皆さんにも基地提供等について協力していただいておるという関係、信頼感が崩れることを非常に心配もしております。  事故を未然に防ぐことが極めて大事であります。それには米軍に積極的に対応してもらわなければならないと思いまして、私からも事務当局に指示いたしまして寸米軍との間でこうした問題について日本側の強い意思を、事故を未然に防ぐために米軍努力すべきであるという強い意思を表明させることにいたしたわけであります。この私の指示に基づきまして、先般四月十八日の日米合同委員会におきまして、米側に対しまして米軍の規律維持の徹底及び再発防止のための具体的安全措置をとることを強く申し入れた次第です。これに対して米側よりは、米側としても事故等を極めて深刻に受けとめている、またこうした事故が起こっていることについては遺憾である、こういう意思の表明と、米軍の綱紀粛正を図るとともに具体的な再発防止措置を誠意を持って検討する旨の米軍からの説明がございました。  政府としては、今後とも米側がとるべき具体的な再発防止措置を見守りつつ、安全対策に万全を期して周辺住民生活に最大限の配慮を払うように求めていく所存であります。
  17. 仲村正治

    仲村委員 安保国防については県民の中でもいろいろ意見の分かれるところでございますけれども、しかし、私たち安保が、国防が独立国家としていかに大事かということについてはわかるわけでございます。しかし、そのために生命や財産が失われるようでは何が安保だという感じを持っておりますので、この点については本当に毅然たる態度でアメリカとの話し合いを持っていただいて、重大器類を使う基地の撤去をぜひやっていただきたい。これは昨年十一月に西銘知事からも現地の調整官ジェームズ・L・デー少将に申し込んでありますが、それは私の権限ではない、権限外だ、現地では難しい、こういうことを言っているわけでございますけれども、国の責任においてこういった発生源になる場所の除去をぜひやっていただきたいということを私は特に強くお願い申し上げたいわけでございます。  次に、去る四月七日、沖縄県の久米島西方海上で遭難船として発見された沖縄県石垣市船籍のマグロはえ縄漁船第一豊漁丸は、乗組員全員が行方不明になっているため一体何が起こったのかという、まことに想像を絶する大惨事が発生したのであります。海上保安庁第十一管区が船体を那覇港埠頭に陸揚げいたしまして船体の痕跡検分から、当て逃げの線で加害船のチェックを進めてきたということでございますが、きのうの新聞からいたしますと、香川県坂出港に係留中のリベリア船籍のLPGタンカー、ワールド・コンコルド号にその疑いがあるということで報道されているわけでございますけれども、その後の調査はどのようになっているのか、もし加害船がはっきりすればそういったものについての賠償などの手続はどうなるのか、その点も含めて御説明をいただきたいと思います。
  18. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 まず、第一豊漁丸当て逃げ事件についての捜査状況から御説明申し上げます。  第一豊漁丸の衝突事件については御承知のとおりでございますが、現在、私どもの第十一管区海上保安本部に捜査本部を設置し、全力を挙げ捜査を実施しているところでございます。  それで、同船を揚収後検分いたしましたところによ方ますと、同船の後部左舷側が大きく破損しておりまして、これは明らかな当て逃げ事件であると考えられますので、捜査本部では全国の各海上保安部署に手配して、現場付近を通航した船舶等について手配を行いますとともに、揚収いたしてまいりました第一豊漁丸の船体あるいは付着している塗料等について鑑定を行っているところでございます。その結果、現在までに全国七十六海上保安部署から三百二十八隻が現場付近を航行したというふうに回答がございまして、現在それについて一隻ごとに調査中でございます。  それから、一昨日のNHKのテレビあるいは昨日の新聞等で、香川県の坂出に入港しているワールド・コンコルド号が加害船ではないのかというようなことが大きく報道されておりますけれども、先ほど申しましたように、現在のところ、捜査本部に対しまして現場付近通航船舶として回答のあったうちの一隻でございまして、入港しております坂出の海上保安署において調査、確認を行っているところでございます。そういうことでございまして、確実にこれであるというような形での容疑が固まったということではございません。  それから、補償の話でございますけれども、民事上の問題につきまして、捜査当局でございます私ども警察機関が介入すべきではないと考えてはおりますけれども、一応被害者は加害者の本国か加害船の差し押さえられた国に自己の選択で訴訟を提起することができるというふうになっております。しかも、当事者が合意すればどの国の裁判所へも提起することができるというふうになっていると聞いております。
  19. 仲村正治

    仲村委員 今、リベリア船にそういう疑いがあるということで調査を進められておるということでございますが、これはぜひ徹底して加害船の調査をして割り出していただいて、被害者に対する補償の実現を図っていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  ことしの一月十六日に、これも沖縄県那覇市船籍のマグロはえ縄漁船です。これがバシー海峡、ルソン島と台湾のちょうど中間あたりで「バンガーロ22 マニラ」と書かれた船にカービン銃で威嚇発砲されているわけです。停船をして一時間ぐらい監禁状態に置かれた上言われているわけでございますが、これを含めて、この尖閣列島海域から久米島西方海域沖縄における優秀な漁場なのです。だから、そこに漁船が集中する。しかも、そこはまたソビエトや米軍の艦船の航路でもある。年間に何と約一千隻ぐらいの船がそこを通ると言われておりますので、そこで漁業をする人たちは非常に危険な状態にあるわけでございます。そういったものの事故防止対策、これがどういうふうに行われるのか。  先般、四月十九日にSAR条約の審議が外務委員会で行われたのでございますが、これは非常に広範な地域我が国の守備範囲が決められるようでございますけれども、この条約との関連はどうなるのか。また国内で措置できることは一体何か。今申し上げたマニラ近くの襲撃事件あるいは当て逃げ事件、こういったものに対しての海上保安庁あるいは外務省の対応の仕方について御説明いただきたいと思います。
  20. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 まず最初に、先生御指摘のような事件とSAR条約との関連でございますが、SAR条約は本来海難救助のものでございますので、海賊行為を直接の対象とするものではございません。ただ、海賊行為の結果として船舶が遭難しておるような状況の場合にはもちろん条約の適用がございます。  それから、先生御指摘のような海賊行為一般につきまして、公海の海賊行為を抑圧するために国際協力をする、こういう一般的な概念はございますが、従来それはそれぞれの国ができる範囲で実施するということになっております。ただ、先生も御指摘のように、最近海賊行為というものが頻繁に起こっております。そのために国連の専門機関でございます国際海事機関でこの実態をまず調査して、それに従って何か対策を講ずるべきである、こういう機運が生じておりまして、一昨年実態を調査する決定が行われました。それに基づきまして、我が国は八一年から昨年八月三十一日までの案件、約四十件ございますが、四十件を報告いたしました。各国からの報告を待ってまず海事機関で実情を調査の上、どのような形で抑圧するような国際協力の枠組みをつくったらよいかということを検討することになっております。その検討に際しましては、我が国といたしましては積極的に貢献いたしたい、かように考えております。
  21. 仲村正治

    仲村委員 時間が参りましたので、終わります。
  22. 大内啓伍

    大内委員長 続きまして、川崎寛治君。
  23. 川崎寛治

    ○川崎委員 安倍外務大臣の創造的外交論というのにときどきお目にかかるわけであります。あなたが対談をされておるものも一、二読みました。そして創造的外交論、つまり新しいというか、今日のこういう混迷した時代の中で軍縮、平和ということに力を入れたい、こうあなたは言っておられるわけでありますが、創造的外交論というものの全体の姿というのはまだよくわかりませんが、ただ部分的にはいろいろ言っておられることについては賛成の面もあります。その意味では、高いとは言えませんけれども、私は評価したい、こういうふうに思うわけであります。そういう点でことしはヤルタ協定の四十周年、二月の初めに四十周年を過ぎたわけでありますけれども、そういう意味では一九八五年というのは大変大事な一つの大きな節目だ、こういうふうに私は思います。それだけに戦後一番長い外務大臣として御苦労しておられますが、このヤルタ協定の見直し論などいろいろありますけれども、ただ、私は見直し論というのをここでやろうとは思わない。例えば去年、私たち西ドイツへ参りましたときに、シュミット前首相の後の副委員長を引き受けておりますフォーゲルさんなどともいろいろヤルタ協定の問題やら東西ドイツの問題なども議論し合ってまいりました。そういうことは時間がございませんので、きょうは特別に議論をいたしませんけれども、しかし戦後の秩序というものに大きくかかわっておるわけでありますから、国際連合やあるいは戦後の平和やそういうものにも非常に大きなかかわり合いもありますし、その一面は評価もしなければなりませんけれども、ただ、東西ドイツであるとかあるいは朝鮮半島の問題であるとか、さらにはなかんずく北方領土の問題はこのヤルタ協定にかかわっておるわけであります。ですから、そういう中でボンの会議もございますけれども、ひとつ北方領土の問題というのをヤルタとの関係で少し詰めてみたい、こういうふうに思うわけです。  二月四日、アメリカの国務省がヤルタ会談の内容とその歴史的意義を分析した内部文書の要約を公表した。新聞の報道によりますと、「東欧諸国によるソ連圏形成が、ヤルタ協定を無視してソ連が東欧を軍事占領した結果だ」ということとともに「北方領土についても、当時の米政権ソ連による占領を認めたわけではない」「米国がソ連北方領土占領を承認しておらず、日本の同領土返還要求を支持している旨を改めて確認した。」こういう内容の国務省の発表があったのでございます。  そこでお尋ねしたいことは、そのヤルタ会談の際に、当時のルーズベルト大統領がソ連を対日戦争に参加させるためにサハリン南部の返還及び千島諸島の割譲などの条件をスターリンに提唱して密約を結んだ。これは今や定説ですね。疑いのないところです。そしてルーズベルトはスターリンが合意したことに最も満足であった、こういうふうに言われておるのですが、この点についてはそのようにお認めになりますか。
  24. 西山健彦

    ○西山政府委員 お答え申し上げます。  ヤルタ協定というものは、協定の性格そのものからいいまして、当時の連合国の首脳者の間で戦後の処理方針というものをお互いに述べ合ったものでありまして、関係連合国間においてすら、領土問題の最終的処理について決定した、そういうふうには考えることはできないものではないかというふうに考えております。  また、我が国は当然のことながらこのヤルタ協定なるものの当事国ではございませんので、いかなる意味でもこれには拘束されることはないというのが我が国立場でございます。
  25. 川崎寛治

    ○川崎委員 いいかげんな答弁をしちゃだめですよ。私が聞いているのはその前の方じゃなくて、当時のルーズベルト大統領がこうしたことをお認めになりますかということを聞いているのです。ヤルタ協定がどうしたとか、これを日本は認めているとか、私はそんなことは聞いていない。そんなことはきょうは議論の外です。問題は、当時ルーズベルトがソ連側に対して提案をした、そしてスターリンの参戦ということに対して非常に喜んだということをお認めになりますか、どうですかということを聞いているのです。そのものずばりをお答えいただかなければ先の議論にならないのです。
  26. 西山健彦

    ○西山政府委員 最近のさまざまな書物などを見ますと、先生御指摘のとおり、当時の事情はそうであったのではなかろうかと想像されます。
  27. 川崎寛治

    ○川崎委員 そういたしますと、これは先ほど仲村委員がいろいろと北方領土問題についての議論を展開されましたけれども、つまり、ソ連と同時にアメリカは、戦後の秩序を決めたという非常に大きな責任があるわけなんですね。  もう一つお尋ねします。  一九八三年三月でございますけれども、米政府が、トルーマン元大統領が一九四五年七月のポツダム会談に際しまして、私もポツダムには参りましたけれども、夫人にあてたという手紙を公表しているわけですね。ニューヨーク・タイムズによりますと、その手紙は、「自分がここに来た目的を果たした。スターリンは何の付帯条件もなしに八月十五日に参戦する。戦争はいまから一年以内に終わろう」こう書いてあり、トルーマン元大統領がソ連に対して対日参戦を非常に強く要求し、そのことを喜んだということを発表しております。その点は、外務省としてお認めになりますか。
  28. 西山健彦

    ○西山政府委員 ただいま先生が御指摘になりました書簡それ自身は私存じておりませんけれども、関連したほかの文書によりますと、そういうふうな気持ちであったようであるというふうに考えます。
  29. 川崎寛治

    ○川崎委員 そういたしますと、戦後の北方領土問題というものについてのステータスというのは、ヤルタ秘密会談におけるアメリカ側の一つの提案、そしてそれが対日の降伏文書、ポツダム宣言になってくるわけでありますが、ポツダム会談におけるトルーマン大統領の発言の意図、そういうものがそこに明確になってくるわけですね。そういたしますと、この二月にアメリカ国務省がヤルタ会談の内容と歴史的な意義というものの内部文書の要約を発表したということでございますが、当時のルーズベルト大統領の提案、トルーマン大統領の態度ということがかかわっておることについて、つまり公表された文書についての日本にかかわる問題の日米間での確かめ、そして北方領土問題に対するアメリカのかかわり合い、責任、そういうものについて日本政府としてどのように交渉されましたか。
  30. 西山健彦

    ○西山政府委員 当時の日本は、申すまでもなく第二次大戦の戦敗国であったわけでございますので、当時の連合国、勝利国の間でいろいろな話し合いがあったことにつきまして、それを確認し、あるいはどうであったかということを調べる立場には、少なくとも当時はなかった、そういう状況でございます。
  31. 川崎寛治

    ○川崎委員 それはその当時でありまして、今日なお日ソ間において領土問題が未解決である、しかも日ソ間の大変大きな問題である、こういうことになりますならば、米国務省が北方領土については当時の米政権ソ連による占領を認めたわけではないと言うことは、今の西山欧亜局長のルーズベルト並びにトルーマン元大統領に関する御答弁では、これは違う、かかわっておった、認めたわけではないではなくて認めておるということは明らかじゃないですか。その明らかなことをなぜ——先ほど仲村さんの方から、ソ連はけしからぬとか、つばをどうのこうのとかいう大変な御議論もございました。しかし、肝心かなめのアメリカが、ルーズベルト大統領、トルーマン大統領というところでこの北方領土の処理ということについて米ソの間で確認されて進められてきておる、そういう事実関係をなぜ明らかにしないのですか。そのことがまたこの問題を解決するについて、米英ソというのがヤルタ体制をつくった、なかんずく米ソという超大国が戦後の体制をつくったわけでありますが、日本側として進めていく大変重要なポイントだ、こういうふうに思います。外務大臣、いかがですか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ヤルタ協定とかあるいはポツダム宣言、それにかかわるところのルーズベルト大統領あるいはトルーマン大統領、スターリン、そうした人々の動きというのは、おっしゃるとおりの動きであったし、そういうことを背景にしてカイロ協定が生まれたし、あるいはまたポツダム宣言ができたのじゃないか、私もそういうふうに思います。しかし、我が国自体の立場からすれば、先ほど局長が言いましたように、もちろん当事国ではありませんから、ヤルタ協定にも参加してないわけでございます。そういう意味では特にこうしたヤルタの秘密協定、そういうものに拘束されるという筋合いのものではないと思います。したがって、少なくとも日本との関係においてソ連がヤルタ協定を引き合いに出すということがあったとしても、これは全く筋が通らない、そして我々としてもこれを受けるわけにはまいらないというふうに思いますし、またポツダム宣言を見てみますと、これは一九四五年七月二十六日に行われたわけですが、「カイロ宣言の条項は、履行されなければならず、又日本国の主権は、本州、北海道、九州及び四国並びに吾等の決定する諸小島に限られなければならない。」こういうふうに述べておるわけですが、戦争の結果として領土の最終処理というのは平和条約で行われるわけでありますし、その意味で、ポツダム宣言のこの規定は平和条約と別で、それだけで領土処理についての法的な効果を持つものではないというのが政府の公式な見解です。
  33. 川崎寛治

    ○川崎委員 平和条約でと、ところが平和条約に行き着かぬからそこのところを私は確かめているわけです。それはアメリカが非常に大きな責任を負っているということについてなぜアメリカと明確にしないかということなんです。アメリカは北方領土についてはソ連による占領を認めたのじゃないのだとうそを言っているわけですから、それはうそですよと、あなた方は、日本政府はルーズベルト、トルーマン、そういうものからしてもこう判断しますと、当然言うべきことは言うべきじゃないのですか。  では、次にお尋ねしますけれども、戦後の領土問題でなかなかいじれない、こういう議論がございます。なるほどポーランドからずっとあるわけですから。フィンランドが一九四四年、ナチスドイツに協力をしたということでソ連に占領をされた、攻撃を受けた、そしてヘルシンキ休戦協定に当たってヘルシンキ近くのポルカラ半島をソ連に租借地として取られた。しかし、それは一九四八年、パーシキヴィ大統領がその返還を求め、それを実現したという、つまり最も近い関係の中における近接の地域でこの領土問題を解決しているという前例があることを外務省はお認めになられますね。
  34. 西山健彦

    ○西山政府委員 先生が御指摘のとおりの事実はございます。ただし、その結果を得るためにフィンランドはソ連との間で相互友好協力条約というものを結びまして、もしもドイツが再びフィンランドの領土を通過してソ連に攻撃をかけるような場合には、フィンランドはソ連とともにそれに対応して防衛するための措置をとる、そういう友好条約を結んだわけでございます。
  35. 川崎寛治

    ○川崎委員 そのことは私も承知いたしております。しかし、それは東西ドイツともかかわる問題でありますから、ここでの領土問題の解決そのものとかかわる問題ではないというふうに思います。  そうしますと、私は改めてこういう事実関係を明らかにする必要があると思うのです。だから、私は先ほど仲村委員の御議論を聞いておって、やはりこれではいけない、つまりこれでは本当に日本国民が一体になって——今度の国会決議というのは超党派なんです、全党が参加した。大内委員長が大変御苦労になり、各党の理事さんも大変御苦労になって全会一致決議をしたというのは、大変皆さんの御苦労に感謝をしたいと私は思うのです。そういたしますと、そういう全会一致決議をしたこの領土問題を解決していくということのためには、ただ一方的にソ連がけしからぬのだという国民の反ソ感情をつくる、例えば地図を塗らす政府の宣伝なんというのはやめさせたいと私は思うのですよ。そういう一方的な反ソの感情をあおることによってこの領土問題が解決するとは私は思いません。それだけに米ソの責任というものをやはり明らかにする必要があると思うのです。  そこで、ここで議論しておりますとほかの問題に入れませんから、この問題に関して、最後に、私は外務大臣に要求いたしたいと思うのですが、北方領土をめぐる日本とアメリカの交渉に関する文書、つまり二十五年だては文書公表ということになっておるわけでありますから、外交関係の文書を公表してほしい、そのことを要求いたします。いかがですか。
  36. 西山健彦

    ○西山政府委員 ただいま先生が御指摘になりました文書がどういうものを指すのか、私、必ずしも御理解申し上げたとは言えないかと思いますが、もしもそれが平和条約に至る前段階において三十六通に上る書簡がアメリカに対して送られたというものであるといたしますと、それは北方領土についてのみの文書ではなくて、当時の日本の政治、経済、社会情勢等々についての書簡がその数に上るということでございまして、領土についての文書というものはそのうちの幾つかにすぎないということでございます。  ただ、その文書の公表自体に関しましては、外交文書の公表の原則というものがございまして、確かに先生がおっしゃいますとおり、一定年度がたったものは公表することになっておりますが、それが国家の利益を害するようなおそれのある場合には、それはその時点では公表しにくい、そういうこともあわせて外務省方針といたしておることを御了承いただきたいと存じます。
  37. 川崎寛治

    ○川崎委員 ただ出せないというのではだめですよ。いろいろと基準を設けて国家の安全にかかわるということで肝心かなめのものは公表しないということもあるわけでありますけれども、そこらは公表することによって国民一致をした北方領土問題についての認識というものを明確にする、そういう意味において大変大事だと私は思うのです。創造的外交論の安倍外務大臣、どうですか。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今局長至言いましたように外交文書は三十年たったら出すということになっております。これは原則ですから。国の安全に関するものあるいはまたプライバシーに関するもの以外についてはできるだけ公表する必要があると思いますし、そういう意味ではこれまでも相当の戦後の外交文書がいろいろと出されておると思っております。  私は、この際申し上げたいのですが、領土問題については、これまでもいろいろと文書がありますし、特に日ソ間においては戦後の交渉があるわけです。重光さんが行かれたときの交渉、鳩山さんが行かれたときの交渉あるいは田中さんが行かれたときの交渉、その間において領土問題というのはいわば懸案の問題だということをソ連自体も認めておるという事実もあるわけです。今ソ連は、領土問題は解決済みだと言っておりますが、そのソ連が戦後のある段階においては、北方領土の問題が懸案の問題であるということを認めた事実もあるわけです。ヤルタ協定、ポツダム宣言、それまでさかのぼればいろいろと今おっしゃるような議論もありますけれども、その後の交渉の中で、この問題というのも歴史の中において日ソ間の懸案問題となっていたという時代もあったということももう御承知のとおりであります。
  39. 川崎寛治

    ○川崎委員 できるだけ公表してください。そして国民に正しい認識を持たせるようにお願いをしたいと思うのです。  日ソの問題でもう一つあれしますと、戦後の未解決の問題、つまり領土問題はない、今ソビエト側がこう言っておるわけですね。いつも原点になるのは七三年の田中一ブレジネフ会談共同声明を言っておるわけでありますが、その前の年の暮れ、七二年十二月にソ連邦結成五十周年記念というのがあるのです。そのときにブレジネフ報告というのがあるわけでありますが、そのブレジネフ報告は日ソ間の未解決の問題ということで明記をされておるわけです。私は、たまたまこの会議に社会党を代表して参っております。ですから、その文書も確認をしておるわけでありますが、それが田中・ブレジネフ会談にそのまま未解決の問題ということで出てきておるわけです。それがドロップした。そして、何年でありますか、宮澤外務大臣当時の日ソ間の共同声明以降落ちちゃうわけです。  それで、戦後の未解決の問題ということについてソビエトの文書自体に載っているわけですが、そのことを確かめたことがあるのか。  それから、とするならば何を理由にそこからドロップしたことになるのか、これからどうしたらそれを未解決の問題としてさらに前進させられるか、その点についての外務大臣見解を伺いたいと思います。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それまでのソ連邦の文書もいろいろとあると思います。まさに日ソの最高首脳によりまして未解決の問題だということが共同声明において確認をされたわけですから、私はそれで十分だというふうに思っておりますが、その後、確かに今おっしゃるように、ソ連がドロップさせたということは遺憾のきわみでありまして、何としてもこの問題をまさに田中・ブレジネフの線まで戻さなければならない、これが一番大事じゃないか、テーブルに着いて、それから話をするということがやはり大事じゃないかと私は思っております。したがって、これまでもしばしばグロムイコ外相とその点について話し合っておるわけでございますが、依然として平行線のまま今日に至っておりますけれども、今後とも我々は腰を据えて、この点について少なくとも田中・ブレジネフの線まで問題を戻して、そこから始めていかなければならない。ソ連も当時はっきりこれを認めておるわけですから、我々としてはそういう努力をしなければならぬ。それにはやはり、領土問題以外の日ソ友好とか対話とかいろいろの問題の前進というものが非常に大事じゃないか。また国際情勢というものももちろんその背景にありますが、これが大事じゃないかというのが私の基本的な考えで、そういう点で去年から日ソ間の対話を各方面にわたって進めて、今日に至っておるわけであります。
  41. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしますと、その前段にもなりますけれども、来月二十日ごろソ連のカピッツァ外務次官が来日をして、第五回の日ソ事務レベル協議が行われる、こういうふうに報道されておるわけでありますが、その際に文化協定、税務協定、貿易支払い協定の三協定が論議をされるだろう、詰められておると思うのでありますが、そういう問題の調印というものを前提にしてグロムイコ・ソビエト外務大臣の来日をどういうふうにごらんになっておるのか。つまり、七六年以来もうずっと向こうから来ていないわけでありますけれども、今度はグロムイコ外務大臣がやってくるという方向に進むとごらんになっておるのかどうか、いかがですか。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今お話しのような文化協定とか支払い協定とか税務協定とか、そうした三つの協定をグロムイコ外相訪日の条件としておるわけではもちろんないけれども、今の懸案の問題を前に進めていくということがやはり大事であるし、そういうことによってグロムイコ訪日というものに実りを持たせることができる、そして日ソ関係の空気を改善して、全体的に日ソ友好関係を推進できるのではないか、そこから始めていかなければならぬ、そういうふうに私は思っておるわけでございます。その他いろいろと日ソ間の対話があるわけですから、こうした対話も進めていこう、幸いにして肝心の米ソが今軍縮会議を再開している、世界的にいわば緊張緩和状況にあるわけですから、やはりこういう時期は日ソ間の改善を進める大事なときではないだろうか、そういうふうに私は思っております。
  43. 川崎寛治

    ○川崎委員 そういう意味では、冒頭申しましたように、世界全体が動こうとしておる中ですから、その中で日ソ関係を改善していくということについては努力をしてもらいたいというふうに思います。  次に、朝鮮の問題に入りたいと思います。  昨年の暮れ、私はスウェーデンのストックホルムでSIPRI、つまり平和研究所を訪ねまして、これは党の多賀谷前書記長などと一緒に行ったわけでありますが、日本側からは前のパキスタン大使をしておられた大塚さんが行っておられまして、所長や大塚さんたちともいろいろ話し合いをしたわけであります。そのときに、私大変興味深く話を聞いたのでありますが、ドイツの問題というのはやはりなかなか難しいと思いますね。再統一ではなくて新しい統合だというふうなことをドイツでも言っておりますけれども、大塚さんが言われるのに——大塚さんと言うよりも平和研究所と言った方がいいでしょう。大塚さん個人の責任にするとまたあなた方がいじめたりするといけないから、平和研究所ということで申し上げたいと思うのですが、日米中ソの各代表というか研究員が来ておるわけですね。そして、そこでアジアの安全保障という大変難しい議論をそれぞれしておる。ディスカッションではできるのだ、しかしペーパーにしようとするとなかなか困難だ、こういうことを言っておりました。しかし、その中で南北朝鮮の問題については、中長期的にはやはり連邦というふうな方向に進むと思う。ドイツは非常に難しいだろう、しかし、中長期的に見れば朝鮮半島は進むのではないか、そういう見方を平和研究所としてはしておりました。そのことのいい悪いを私はお尋ねするのではありません。今南北朝鮮の間で経済会談であるとか赤十字会談であるとか体育会談であるとかいろいろなものが、まだ具体的に動きませんが、動こうとしておる、さらに南北の国会会談と一つ一つ積み重ねようとしておるわけですね。つまり、これはある意味において南北の当事者会談というところまで行っておりませんけれども、やはり私は南北の会談だと思うのですね。そうしますと、もう一つここで大変大事な問題は、北の朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ、米朝会談が次の問題だろう、私はこういうふうに思います。日本外務大臣としてどうお考えになりますか。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 西側における西独と東独の問題は、今の状況では両独の方が、こちらの南北両鮮よりはむしろ対話というのはいろいろな面で進んでおるのではないかと思います。しかし、確かにおっしゃるように最終的な答えは、やはり東西両ドイツの方が大国の思惑も絡んでおりますし、その辺は見通しとしてこれから非常に困難な時代があるのではないかと私も思いますが、交流という面から言えば両独の方が進んでおると思います。しかし、まず我々が思うには、この南北両鮮の対話がこれまで以上に進むということを非常に期待しておるわけでありまして、今国会対話等も出ておるわけですが、こうしたこと等が行われることは私は大変結構だ、そういう対話を繰り返すことによって本格的な将来の合併といいますか統一へ向かっての話にも入れる可能性というものがありますし、そういう点では日本中国もあるいはまたアメリカも期待を持ち、協力をするということははっきりと表に出しておるわけです。ただ、日本の場合もアメリカの場合もそうですが、やはり南北の対話が大事だ、南北の対話をさらに推進するということが基本的に大事だという姿勢であります。したがって、私も今回、シュルツ国務長官とこの朝鮮半島問題についていろいろと話をしてきましたけれども、今の状態の中でアメリカが北朝鮮と直接接触する考えはないということをシュルツ長官もはっきり言っておりました。対話を進めることが大事だというのがアメリカの考えであるようであります。
  45. 川崎寛治

    ○川崎委員 それではこの問題はこれ以上はお尋ねしません、そうストレートにどうという問題ではないわけでありますから。  そこで、朝鮮半島は非常に動いてきていると思います。そして北側も開放政策をとり始めているわけですし、動いていると思うのです。そうしますと、日本中国、アメリカ、ソビエトという関係国の動きが大変大事だ、私はこういうふうに思います。  そこで、私は先般、大蔵委員会でも大蔵大臣にもお尋ねしたところなのですけれども、やはり日本は経済交流ということについては、つまり日中の国交回復の場合にも日中の経済交流というのが先行したわけです。北朝鮮については、ただ細部の問題その他いろいろまだ未解決の問題などもありますけれども、動きがあってしかるべきだ、こう思うのです。  そこで、端的にお尋ねしますが、通産省、補助金の中に、予算補助、北朝鮮に駐在員を置き、「北朝鮮市場の調査等を行うため必要な経費に対する補助」というのが四十八年度から計上されていますね。このことは大蔵委員会でも確認をしました、ずっとありますと。今までにこの補助を使おうとして動いたことがありますか、どうですか。
  46. 山浦紘一

    ○山浦説明員 先生御指摘のとおり、通産省としましては。昭和四十八年から、北朝鮮市場調査費ということで、しかるべき民間団体が北朝鮮に貿易事務所を設置するという場合には補助金を出すということで予算を計上しておりますが、御指摘のとおり、現在まで未使用でございました。それは、しかるべき民間団体が、そのような設置の具体的な話が今までのところなかったという背景があるわけでございます。
  47. 川崎寛治

    ○川崎委員 それじゃ見本市をやろうとした動きはありましたか、ありませんでしたか、つまり日本と両方で。
  48. 山浦紘一

    ○山浦説明員 そういう動きはございました。具体的にはここで御説明できませんけれども、全体としてそういうことがあったということは聞いております。
  49. 川崎寛治

    ○川崎委員 外務大臣、これは四十八年、四十九年にはお互いに見本市をやろうという動きがあったんですよ。ところが、残念ながらそれは実現しないまま、これは金大中さんが拉致されたためにこの予算というのは動かないまま今日に至っているのです。これはこの間も申し上げたことなのですが、ちょうど田中通産大臣、中曽根通産大臣時代に日中国交回復を契機に、国交未回復の国との間にもやろう、こういうことで積極的に動いた時期があるわけです。これについては、私が田中通産大臣とも、中曽根通産大臣とも話し合って、ピョンヤンに行き、お互いの意思の交流というか、それを両政府間でやったこともあるのです。しかし、残念ながら、金大中さんが拉致をされたので、これはそのまま来ておるわけです。そういう意味では、歴史というのは、一つのきっかけによっては歴史の歯車というのは逆回りしてしまうということを痛切に感じておるわけです。しかし、それを今動かさなければいけないときに来ておる、それを進めることこそまさに安倍外交の創造的な外交だ、こういうふうに思うわけです。ですから、外務大臣として、この問題についてどういうふうにお考えになり、また対処しようとするか、具体的な動きがないと言えばそれまでになりますから、基本的なあなたの見解というものを伺いたいと思います。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本的には私は、これまでいろいろと周辺の動きもあったし、確かに日本と北朝鮮との間の民間のそうした交流が今日よりも深まっておったという時代もあったと思います。しかし全体の情勢から見ると、私は、やはり今ほど朝鮮半島の情勢が動いているときはないと思います。そして、その基本はあくまでも北と南の対話ですね。この動きは相当活発なものがありますし、これに、またいろいろな問題が起こってブレーキがかかることがないように、これが進んでいくことを私は期待をしておりますし、そのために日本もできるだけの環境をつくるための努力をしていかなければならぬ。そういう意味で私は、将来に向かって今の大きな動きがさらに具体化していく動きを見詰めながら、政府として、最終的に日本の対応というものが、朝鮮半島のさらなる対話の促進、そしてまた南北統一という悲願に向かっての役割を果たしていくための努力もしていかなければならぬ。今のところは南北の動きというものが非常に重大であるし、それは刻々として動いておるし、今の状況ではいい方向に動いている、そういう状況を見詰めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  51. 川崎寛治

    ○川崎委員 そういう動きに対しては積極的に進めてほしい。具体的に動けばそれを進めてほしいということを申し上げておきたいと思います。  次に、きのうの新聞、これは名前をはっきり申し上げて議論した方がよろしいのだろうと思うのですが、朝日新聞に「核の積み替え、米は断念」という大変重要な報道がワシントンからなされております。これはベトナム戦争それから沖縄問題、ベトナム、沖縄の議論が非常に進められました六〇年代、私たちが非核三原則の問題と絡んで、この問題については繰り返し追及したわけです。そのときには政府は、いや、日本に入るときはちゃんと核は撤去して積みかえてくるのです、こういう答弁だったわけですね。それを繰り返しておった。しかし、だんだん無理がきますと、今度は、事前協議で相手側から協議がなければ信用しますということで今専らきているわけです。しかし、この報道は、六〇年代、核積載艦の寄港に際しては、事前に核兵器を日本以外の基地や洋上の他の艦船に移すということは断念をしたということが元軍首脳らの証言ということで証言されておるわけで、当時の軍首脳や元政府高官らの話で二十日までに明らかになった、こういうふうに言われております。具体的な名前がないということは、やはり背景があるんだなというふうにも思うのでありますけれども、ライシャワー元大使の発言あるいはラロック退役海軍少将の米議会での証言、そういうものにもう一つ、つまり当時の軍首脳や元政府高官、当時関係しておった政府高官の証言でございますから大変重いと思うのです。そうしますと、つまり積みかえが検討されたことがないということ、それから日本寄港のために核をおろしてくることはあり得ないと。今は八〇%近く核武装もされるわけでありますけれども、そうなりますと、この問題について政府は、事前協議がない以上、核は持ち込まれていないという従来の答弁を依然として続けられるのかどうか。つまりニュージーランドとかあるいは北欧とかそういうところでは、核艦船に対する厳しい態度というのがそれぞれ今大変問題になってきておるわけです。日本政府としては、従来どおり態度をおとりになるのかどうか、外務大臣見解を伺いたいと思います。
  52. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、今川崎さんのおっしゃるような報道は新聞で見ました。どういう人がどういうところで言ったのか具体的にはまだ承知しておりません。これに類する発言はライシャワー発言とかあるいはラロック証言等であったわけでありますが、政府としては、こうした発言についてはそれを非常に重要視するという立場ではありません。その必要はない。というのは、日本とアメリカの信頼関係に基づく安保条約がありますし、それに基づく事前協議という制度がアメリカと日本の間に確立しているわけですから、事前協議によらずしてアメリカが核を持ち込むということはあり得ないわけです。これはアメリカの義務です。ですから、日米間に関する限りはいろいろと報道があるし、それから各国いろいろと核政策をとっておりますけれども、全く御心配は要らない。これは事前協議制度という立派な制度がありますから、これを無視してアメリカの核の持ち込みはあり得ないというのが日本政府の確固不動の信念であります。
  53. 川崎寛治

    ○川崎委員 アメリカの言うことだから信頼しておる、立派な事前協議制度があるからと。大変幸せな話でありますけれども、核は、日本に入るときは核積載艦と見られておる船は全部どこかでおろしてくるあるいは洋上で積みかえてくる、そういうふうにお考えになっておるのですか。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、おろすとかおろさないとか、そういうことまで技術的に関知する立場じゃありませんけれども、この事前協議制度によって、アメリカは、核を持ち込む場合は日本に事前協議をかけてくるという義務があるわけです。これは安保条約というものによってはっきりしておるし、条約の基礎は両国の信頼関係にあるわけですから、いかなることがあってもそういう安保条約を無視する、あるいは関連規定を無視するということは日米関係にはないというのが我々の考えでございますし、そういう立場に立つ以上は今のそうした問題に一々具体的にどうだこうだということを心配する必要は全くない、こういうふうに思います。
  55. 川崎寛治

    ○川崎委員 核は、ひょいひょいとフィリピンかどこかに置いてやってくる、そういう簡単なものだとお考えなのですか。どこにおろしてくるかわからぬけれども、信頼しましょう。  では、先ほど北方領土の問題、ルーズベルト大統領やトルーマン大統領の発言についてはそういう認識を持ちながら、アメリカに対しては信頼しておりますということで、領土問題の根幹にかかわるそういう問題すら疑問を提示したりあるいは話し合ったりということをしていないのでしょう。この核の問題も事前協議があるから、こういうことですけれども、申し込んでこない、そうしますと、持たず、つくらず、持ち込ませずという非核三原則の「持ち込ませず」は事実上機能していないと国民の多くは受け取っております。疑惑がある。そして、トマホーク等の問題もそうです。そのことについて事前協議を求めない。相手が事前協議を求めないから信頼するのだ、立派な事前協議、三原則があるからだ、こういうことを言っておられるのでありますけれども、そうすると、要するに非核三原則の「持ち込ませず」は事実上ドロップしてしまっておる、機能してない、こう断定せざるを得ないのですが、いかがですか。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、マンスフィールド駐日大使と、外務大臣になりましてからこの問題について話し合ったことがあります。これは国会でも答弁したわけですが、その際マンスフィールド大使は、アメリカは核に対する日本国民の感情、非核三原則というものについても承知しておる、またアメリカは安保条約、その関連規定はこれを遵守するということをはっきり言っております。そうした日米間の信頼関係がある以上は、我々としては核の持ち込み等についても全く心配は要らない、こういうふうに思います。
  57. 川崎寛治

    ○川崎委員 しかし、ニュージーランド等は疑惑があるものは入港拒否ということで、国民の多くもそれを支持しておる、そういう国民感情もあるわけです。だから、非核三原則というのが完全に崩壊している。つまり非核二原則だ。エンタープライズその他のときも非核三原則を尊重します、こういうことを言ったから信用します、こういうことなのだろうと思うのです。そういうことで日本列島全体が核基地としてのそういう機能を果たしていくということになるわけでありますけれども、こうした問題が明るみに出るたびにきちっとしておく。非核三原則の事前協議がないというだけで核の存在を疑わないということについては、私は外務省姿勢を大変疑わざるを得ないのです。それは国民立場で明確にしていくということがまた日米間の信頼その他もきちっとしていくことになるわけです。先ほど仲村さんからも、日米安保というものが沖縄でどんな状況にあるかという具体的な御指摘がありました。立派な日米安保があるからとあなたは言うのだけれども、仲村さんの方は、沖縄では日米安保のためにこんなに痛めつけられているのだ、こう言っているのですよ。どうですか。ですから、この核の問題は、こういう報道がなされているわけでありますけれども、こういうことについては明らかにしていくということが必要だと思います。再度お尋ねします。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国内にも日米安保条約に対するいろいろな議論があります。しかし、国内の世論の大半は日米安保条約によって日本の平和と安全は保たれている、日米安保条約を支持する、そうした考え方が非常に強いのじゃないかと思うわけであります。これは日米両国の信頼関係日本国民の間に定着しておるということではないかと思うわけでございます。我々としては、こうした安保条約の信頼性についてさらに国民理解を求めていきたいと思います。その中で今おっしゃるような核の問題については、政府が言っております事前協議制度によって日本の非核三原則が守られておるということも、これまた国民の皆さんに十分理解をしてもらわなければならぬ。ニュージーランドは残念ながら事前協議制度というものがないわけですから一々チェックをしなければならぬわけですが、日本の場合は事前協議制度があるわけですかもこの心配は要らない、こういうことでございます。
  59. 川崎寛治

    ○川崎委員 かえって事前協議制度があるから核の確認ができないということになるわけじゃありませんか。これはまたさらに追及をいたしてまいります。  ボン・サミットを前にしておりますから、貿易摩擦とSDIの問題、二つお尋ねをしたいと思うのです。  四月十三日、安倍・シュルツ会談が行われました。大変御苦労になったと思います。汗を流したのだろうと思うのです。つまりシュルツ国務長官が個別開放では限界だ、内需拡大をという強い要求をいたしてまいりました。中曽根総理は四分野の開放だ、今こう言っているのです。そうしますと、あなたも中曽根総理を支持しておられる、民間活力で、こう言っておられる、外務委員会、衆参どっちかでしたか、言っておられますね。じゃ、民間活力で具体的にどういう貿易摩擦の解消がなされるのですか。
  60. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 四分野はもちろん大事ですが、私は、シュルツさんは別に日本に対して内需拡大を要求したということじゃなくて、自分のプリンストン大学における演説を引用して自分としてはこういう意見を持っているということを私に述べられたと思いますが、これはやはり市場アクセスだけでは日本の黒字というのは解消はできないということが一つの主眼ですが、私は全くそのとおりだと思います。そういう中でシュルツさんは、やはり日本の非常に高い貯蓄率というものがもっと日本の内需拡大といいますか、日本国内投資等にも活用されるべきじゃないかということを指摘をされたのだろうと思いますし、その点についても我々としても検討に値する議論であろうと思いますが、しかし、シュルツさん自体も内需拡大を財政によって行え、こういうことを言っておるわけではありませんし、私もOECDの閣僚会議にも出ましたが、今の日本の黒字問題は大きな議題になっておりますけれども、しかし、日本の内需拡大について財政というものによってこれを行うべきであるという議論はほとんどなかったように思います。  もちろん私も、黒字問題の解消についてはやはり内需拡大というのは大事だと思いますけれども、世界が求めているのはそうした日本の一部にありますような財政主導によって内需拡大をやれということでもないようにも私は思います。その点はこれから日本としても知恵を出していかなければなりませんし、七月までのこれからの政策決定においてそういう一つの具体的な内需拡大についての考え方というもの、政策というものを盛り込んでいかなければならぬと思います。  私は、全体的に見まして、今おっしゃるように、これからボン・サミットに向けていろいろと議論も出てくると思います。ボン・サミットでも出てくると思いますが、やはり日本の市場開放、市場アクセスの改善とともに、それ以上に日本に対してそうした内需を振興すべきであるという議論は相当出てくるのじゃないだろうか、これは当然のことじゃないかというふうに予想はいたしておるわけでございます。しかし、これを財政でやれというようなことまでつながっておるということではないようにも思っております。
  61. 川崎寛治

    ○川崎委員 あなたは、米国の財政赤字がドル高を招き、それが日本の輸出競争力をより高めている、こういうふうに米国の財政赤字を言っておりますが、アメリカの財政赤字の一番大きい原因というのは、私は異常な大砲優先の予算だ、軍事費だと思うのですね。例えば一般歳出は一・五%増、しかし防衛費は一二・七%の増、こういうことになっておるわけでありまして、そうしますと、軍縮、平和ということをあなたが言っておりますけれども、私は、やはり世界全体が軍縮という方向に行く。アメリカも国防費をいかに減らすかということの議論もありますけれども、やはり軍縮ということに徹底して持っていく。あなた方は、あからさまにアメリカに対して国防費を減らしなさいと言えばただ乗り論やられるから恐らく言い得ないと思うのでありますけれども、しかし、やはり軍縮ということが何より大事だということについて、どうお考えになりますか。
  62. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにアメリカも、これは世界の平和、アメリカの安全というものを維持していくためにもやはりソ連との間に軍事バランスをとらなければならぬという立場からの軍事力増強という点はそれなりに私もわかるわけですが、しかしこれもやはり限界があるわけで、今の財政赤字の原因もそういうところに大きな要因があることも、これは客観的に見ても事実だと思うわけであります。したがって、議会等でそういう議論も起こっておりますし、またソ連においても、ソ連の軍備拡張というのもソ連経済に対して大きな打撃となってあらわれておるわけで、ソ連もやはりそういう点では一つの限界に来ている。  そういうところに両国の軍縮の会談が再開されるという一つの背景もあったのじゃないかと思いますし、お互いにそうした軍備拡張をやっても得るところは何もないわけですから、結局、両方の会談が成功して、軍縮といいますか、そういう方向が世界的に進むことが世界経済の安定と発展につながっていくわけですから、我々としてもそうした米ソ両国の軍縮が進むことを期待をしておりますし、今おっしゃるような点については、私もやはり世界の将来、世界の平和というものを考えるときはそういう方向にぜひとも持っていかなければならないし、日本としてもそういう面で日本なりの力というものを尽くしていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  63. 川崎寛治

    ○川崎委員 最後にSDIの問題でありますけれども、今軍縮ということを大変強調されましたね。私はそういう立場からまいりますならば、このSDIという、何年かかるかわからぬ、そして一兆ドルぐらい、こういうふうにも言われておるのでありますが、これを進めれば進めるほどソビエトもやはりやるわけです。それは軍拡というものに当然つながるわけです。だから、ジュネーブにおける米ソの包括的な核軍縮会議の中でも、この宇宙兵器の問題は大変大きな厄介な問題として横たわっていると思うのです。  そういたしますと、今度のボン・サミットで日本がどういう態度をとるか。つまり、このSDIの研究、理解、参加、いろいろあるわけですね。ヨーロッパを見ておりますと、ヨーロッパはほとんど慎重論ですね。いろいろな議論を今やっておるわけです。しかし、日本としてこのSDIの問題について、つまり、ウィリアムズバーグのときには大変中曽根総理が政治宣言、そしてヨーロッパヘの核配備という積極的なイニシアチブをとり、ヨーロッパからはひんしゅくを買ったわけです。私はドイツで具体的にそういう議論も聞いてまいりました。びっくりするぐらいの厳しい批判も聞いてまいりました。今度のSDIの問題について日本がどういう態度をとるかということは、私は大変大事だと思います。そこで、このボン・サミットにおけるSDIの議論というものについての日本政府態度というものを伺いたいと思います。
  64. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今軍縮がどうかという話がありましたけれども、日本としましては、このSDIがいわゆる核廃絶につながるというレーガン大統領の考え方を聞いて中曽根首相もこれに理解を示したわけですが、しかし、これは研究の段階で、その研究自体がどうなっていくのか、これから研究、開発、配備、どういう方向へこれが進んでいくのか、その実情についてはまだはっきり把握しておりません。  実は、きょうからアメリカの専門家が日本にやってまいりましてこちらの専門家が話を聞くことになっておるわけでございますが、このSDIというのは、ソ連においても既に研究もされているというふうに承知もいたしておるわけでありますし、これに対して日本態度も非常に重要に考えて決めていかなければならぬ。今は研究に理解を示したわけでございますが、最終的判断は日本にとりましても極めて重大な判断だと私は思います。したがって、これから理解をどういうふうに持っていくか、これから理解からどういう方向に進めていくかということについては、これは十分慎重にSDIそのものの実体というものを見きわめなければなりませんし、あるいはまたヨーロッパその他の各国の判断というものも見きわめてやらなければならぬと思います。慎重に、自主的にこれに対応していかなければならぬ、こういうふうに私は思っております。
  65. 川崎寛治

    ○川崎委員 アメリカの戦略防衛構想局のヨーナス局次長代行ほか五人ですか、やってきてこれから話し合いをするそうですが、これは時間的なタイムテーブルで言いますと、一中曽根政権の問題じゃない。そして今も外務大臣答弁のように、ソ連も研究しておる、こういうことなんです。上しますならば、サミットでみんながよっしゃやろうやというふうな方向にいけば、また相手側も対抗上やっていく、これはもう明らかに軍拡の方向に行くのですね。ですから、つまり今中曽根政権が中曽根政権時代解決しないそういう問題について深入りするということは、私は大変信越だと思いますし、そういう意味では今慎重の上にも慎重、こういうことを外務大臣は言われましたけれども、そのサミットにおけるSDIの問題というものについてはアメリカ側から専門家が来ていろいろ勉強もするのでしょうけれども、ひとつ絶対に深入りしないという方向であなたの言う軍縮、平和ということを貫いてもらう、私はそのことが今後日本の貿易摩擦——つまり日本経済というのは、中曽根さんはヨーロッパは、ECは三十二、三万円の買い物をするけれども日本は八、九万円だ、こういう言い方をしておりましたが、これは経済の構造が違うわけですね。日本経済は資源がありませんから自己充足型でやってきておるわけです。しかしそのことが今日大変大きな摩擦を生む原因でもあるわけですから、そうしますと、この構造をどう直していくか、改善をしていくかという大変大きな問題がある。ヨーロッパ側は地域の分業体制というのができておるわけですから、つまりそういう中で経済構造もかかわっておりますけれども、そういう中で軍縮、平和という方向こそ私は日本の進むべき方向だと思いますし、また摩擦を解消していく基本でもある、こういうふうに思いますので、そうしたことでサミットにも臨んでもらいたいということを強く要望いたしまして、終わりたいと思います。
  66. 大内啓伍

    大内委員長 玉城栄一君。
  67. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほどもちょっと御質疑があったわけでございますが、私も最初にお伺いしておきたいと思いますのは、先日私も直接外務省にお伺いいたしまして、最近の沖縄における米軍並びに米兵による事件、事故について、栗山北米局長さん、そして安保課長さん御同席いただきまして、抗議も含めて申し入れを行いました。その際粟山さんは、私自身も非常に最近の米軍沖縄における事故については目に余るものがある、したがって、自分自身で直接米側と具体的な話し合いをしたいというお話がありましたけれども、その後どういうお話し合いをされたのか、まずその点から御報告いただきたいと思います。
  68. 栗山尚一

    栗山政府委員 先ほど仲村委員の御質問に対して大臣から御答弁がありましたように、外務省といたしまして最近の一連の沖縄におきます各種事故の続発という事態は非常に好ましくない事態であるという認識でございます。大臣の強い御指示もございましたので、十八日に日米合同委員会を開きまして、その席上日本政府代表としての私から米側の代表、これは米軍のフィリップス参謀長でございますが、米側の代表に対しまして、アメリカ側がこういう状況が続くことによる地元県民方々米軍との関係、ひいては安保体制全般に及ぼし得る深刻な悪影響というものを十分認識した上で、米軍内部におきます綱紀の粛正と申しますか規律の徹底それからこの種事故の再発防止について抽象的に注意を払うということではなくて、具体的な措置を検討してほしいということを大臣の御指示に基づきまして強く申し入れを行った次第でございます。  これに対しましてフィリップス参謀長の方からは、米軍としても今、日本側から指摘を受けたような事態の深刻さについては十分認識をしているつもりであるということで、我が方の申し入れに対しては誠意のある対応をしたい、事故の再発防止については具体的に一部検討を始めていることもあって、これについては真剣にひとつ日本側とも相談をしながら検討をしていきたい、こういう応答がございました。
  69. 玉城栄一

    ○玉城委員 今もお話がありましたとおり、そういう事態が続くならば安保体制に及ぼす深刻なあつれきとか地元米軍との関係等からしてというお話もされたようでありますが、私は改めてこの際確認をしておきたいと思うのです。  先ほど大臣もおっしゃっておられましたけれども、日米安保条約、いわゆる信頼関係我が国の安全そして平和、ひいては極東の平和と安全にとって安保体制の堅持ということは非常に重要である、そういう意味大臣外交演説もありますし、この委員会での所信表明もあったわけであります。今おっしゃる安保体制の堅持ということはやはり政府の重要な基本的な政策だと思うのですが、いかがでしょうか。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 極めて重要な基本的な政策であります。
  71. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、今大臣もおっしゃいましたように、極めて重要な基本的な政策ということからしますと、その基本的な政策が円滑かつ安定的にあるいは効果的に運用されるために外務省当局が最善の御努力をされることも、これは外務省のお仕事の重要な一つだと思うのですが、いかがでしょうか。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全くおっしゃるとおりです。
  73. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、逆に言いましても同じことだと思うのですが、そういう安保体制あるいは安保条約の遂行に支障を来すような、あるいはひび割れするような事態が起こることを避けるために努力することもこれまた当然なことだと思うのですが、いかがでしょうか。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは当然なことですし、そのために努力も続けてきておるわけです。
  75. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、今大臣が何回も確認しておられるわけでありますが、私非常に疑問に思いますことは、米軍沖縄における事故というものは何もきのうきょうに始まったことではなくて、ずっと続いてきておるわけですね。ですから、そのたびに外務省米側と話し合う、ところが事故は起こる、そういう実効の上がらない形式的な話し合いを続けているだけでは問題の解決にはならないということは現実の結果がちゃんと証明しているわけですね。このままの状態が続くならば、今大臣が御確認されたように、むしろ現地において反米感情とか反米軍感情というものが大きく起き上がらないとも限らないと私は思うのです。  そういう意味で、実はこういう事故が起こりまして沖縄の県議会は全会一致、与党も野党も、保守、中道、革新含めて、先ほども与党の自民党の仲村先生からも非常に憂える御質疑もあったわけであります。関係する地方自治体は同じ全会一致で抗議決議を繰り返す。最近は、御存じのとおり金武町においても全会一致基地撤去決議までやっている。そして抗議の派遣団を東京に派遣する、そして政府に抗議を繰り返す、そういう繰り返しなんですね。私はそういうことだけでは、さっきおっしゃいました国の、政府の重要な基本政策というものの円滑かつ安定的とか、そういうものに重大な支障を来すと思うのですが、どうでしょうか大臣、どう思われますか。
  76. 栗山尚一

    栗山政府委員 事故が再三にわたります日本側の申し入れ等にかかわりませず再発するということ自体については、私どもも極めて遺憾に思っております。最近特にそういう傾向が少なくとも表面的に見る限り甚だしいということにつきまして、結果としましてまさに委員指摘のような問題が生ずるということは、私どもといたしましても極めて強く意識をしておる次第でございます。したがいまして、今回の合同委員会における申し入れに際しましては、私の方から特にそういう基本的な私どものあるいは政府としての認識というものに触れまして、その上でアメリカ側もこれを通り一遍の日本政府の申し入れというふうに受け取らず真剣に考えてほしい。それから、事故の再発防止については、抽象的な再発防止の努力ではなくて、最近起こりました一連の事故、すなわち特殊車両関連の事故、それから射撃場におきます小銃弾の事故、こういうことにつきましては、具体的に事故の再発防止というものが効果的に行われるような措置というものを考えてほしい。そのためには防衛施設庁との協議も必要だということもありましょうし、あるいは地元のほかの当局、例えば建設省でございますとか警察当局でございますとか、そういうものとの協議、相談というものも当然必要であろうと思います。そういうことも含めまして何らか実効的な措置というものを考えてほしいということを強く申し入れをしまして、アメリカ側もこれに今真剣に対応したいということを申しておりますので、今後その点のフォローアップを行いまして、先週の申し入れでもってよかれとせずに、アメリカ側と十分フォローアップを行いまして、何とか実効のある措置というものができるようにしたいというふうに考えておる次第でございます。
  77. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは大臣に率直にお気持ちをお伺いしたいわけであります。あるいは御相談と言ってもいいかと思うのですが、大臣もそのうちに我が国の最高責任者である総理にもあるいはおなりになるかとも思うわけでありますが、いわゆる政治家安倍晋太郎さんとして、私はずっと繰り返しませんけれども、御相談なんですけれども、私非常に不思議に思いますことは、日米安保条約に基づいて約半分という大きな基地沖縄に置いている。そこに外務省から一人も常駐させていない。大阪にも置いておる、北海道にも置いておる。アメリカ側は総領事館を置いて対応している。そういうことはこの前からもお話し申し上げているわけでございますが、沖縄県側も県庁内に部屋を用意してもよいというようなところまで来ているわけですね。ひとつこの際そこまで検討してみる必要があるのではないかと私は思います。大臣、いかがでしょうか。
  78. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはこれまでいろいろと議論の出たところでありますし、外務省としましても検討もいたしておるわけでありますが、なかなか結論も出ておらないというのが現状でありますし、私はそうした外務省の職員を派遣したから、しないからといって、沖縄における米軍のあり方そのものにつきまして、これ自体が直ちにどうなるこうなるという問題でもないと思います。基本的には、今頻発しているような事故がなくなるためには、米軍が綱紀粛正等をきちっとやってもらわなければならないということでありますし、沖縄米軍につきましては日米合同委員会というのが正式な機関としてあって、そこを通じて日本としても物を言っておるわけで、特に今回の事件等については、北米局長が今申し上げましたように、私の指示に基づきまして非常に強く申し入れをいたしまして、アメリカも率直に遺憾の意を表明して、事故の起こることを防ぐような措置をこれからひとつ米軍全体としても進めていくということでありますし、これはただ申し入れだけでなくて、日米合同委員会というのがあるわけですから、それを通じまして、今後は特にこの問題については日本としても重要視して取り組んでいかなければならぬ。おっしゃるように、安保条約自体というものに対する信頼性が問われるということは大変遺憾なことでありますし、安保条約あるいはその信頼性というものに対して沖縄の皆さんが理解をし支持をしていただくということが大変大事なことでありますから、そういう面で今後とも最大の努力をしたい、こういうふうに思っておるわけです。
  79. 玉城栄一

    ○玉城委員 こういう沖縄における米軍の事故が起きたときの情報が外務省は非常に遅いですね。私の場合であれば現地の方から直接電話が入りますが、外務省は何かまた沖縄で起こったのですかと。ところが、防衛庁の方は出先がありますから非常に早いですね。先日の決算委員会で防衛庁から非常に深刻に受けとめて米側と強く話し合いをしているというお話もありました。そういういろいろな事柄を含めて、政府の重要な政策を円滑に遂行するという中で現地においていろいろなそういうトラブルが続いている、そこに外務省の方は一人もいない。あるいは県に対する助言を与えるとかいうことは、皆さん方は大阪にも北海道にもちゃんと置いているわけですから、それはまさに国の重要な政策を遂行する外務省の重要な仕事だと思うのですね。しかも、県もそのことを強く要望している。現地の施設局は、外務省は非常に冷たい、何か自分らの送る情報でどうのこうのというか、非常に不満もあるわけですね。  重ねてこの際、結論は出ていないというお話でありますけれども、そういう問題も含めて検討してみる時期に来ているのではないか。相並行して日米合同委員会等も進めながら、県に対する助言をしたり、向こうだって総領事館もあるわけですから、いろいろな話し合いに外務省も加わって話し合いをするということが政府の重要な政策遂行の外務省の仕事として当然だと私は思うのです。検討してみたらいかがですか。
  80. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これまでもいろいろとやっていますし、検討していますし、今後ともおっしゃる向きについては検討してみたいと思います。  ただ、今米軍施設のお世話は防衛施設庁がやっていますし、施設庁と外務省との間は緊密に連絡をとってやっておるわけですから、そういう点で外務省沖縄の問題についてなおざりにしているとか、あるいはまた領土問題提起等について時期おくれになっているとか、そういうことはないと私は思いますし、またそういうことがあってはならない。その点についてはこれからも連絡は密にして、そういう批判が起こらないように努力していかなければならぬ。この辺は政府一体として努力すべき問題であろう、こういうふうに思います。
  81. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、政府間はそうではありますけれども、例えば沖縄県の場合、実際にそういういろいろな事故が起きた場合に対応するのは渉外部長さんですね、あるいは副知事とか、あるいは必要になると知事も出ていくわけです。非常に御苦労していらっしゃるのですよ、これは実際に頻発しますからね。しかも、そういう中で外交権はない。ですから、皆さん方が皆さんの大事な外交を防衛施設庁に任せるというのであればいいですよ。そういうことはできないと思うのです。ですから、どうですか、例えば県の方から正式にそういう要請なりが来た場合には検討されるのかどうか、いや、もう自分らでやってくれということなのか、いかがですか。
  82. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 県の方から何もまだそういう要請があったとは聞いておりませんが、私も沖縄へ行ったときなんかはそういう声を聞いた事実はあります。  ただ、外務省が大阪に出している大使とか、あるいはまた北海道に出している大使は、それはちょっと沖縄の問題とは性格が違いまして、あそこには外国の国公賓等がしょっちゅうおいでになりますし、あるいはまた外国の総領事館等も随分ある。そういう面もあって、そういう面での世話等が必要でありますから、特に派遣をしているわけでございます。  今おっしゃるような沖縄に関しての、米軍交渉するためのそうした外務省からのだれかを出すということならば、何も出さなくてもこういう問題は、合同委員会もありますし、また防衛施設庁と緊密に連絡をとってやれば遅滞なくできる課題ではないだろうか、それさえしっかりしておれば十分できる、こなすことのできる課題ではないだろうか、こういうふうに思っています。
  83. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういう点がしっかりしてないからいろいろな事故が起きる、また皆さんやる、こういうことですね。大阪は大阪の理由がある、北海道には北海道の理由がある。沖縄には日米安保条約に基づく約半分の基地が置かれている。それを円滑に運用するために、そういう皆さん方の、何も大使とは言いませんよ、そういうどなたか一人常駐させて、県と、あるいは向こうの総領事館とも話し合うとか、そういうものをぜひ御検討いただきたい、このように要望いたします。  それで、先日、沖縄国際センターが十七日オープンされまして、大臣も御出席されるということは現地で報道されておったわけでございますが、御多忙で、経済協力局長の藤田さんほか幹部の方々が御列席になったと思うのですが、その意義と御感想も含めて、ちょっと御報告いただきたいのですが。
  84. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいま御指摘のように、四月十七日に沖縄の国際センターの開所式が行われまして、御承知のとおり本センターは、昭和五十六年に、当時の鈴木総理大臣がASEANを御訪問になりました際に提唱されましたASEAN人づくりプロジェクトの一環として建設されたものでございます。ASEAN各国、当時はまだ五カ国でございましたが、五カ国における人づくりセンターもほぼ完成を見まして、シンガポールだけちょっとおくれておりますけれども、ほかの四カ国は完成を見まして、それから、ASEAN人づくりプロジェクト、五カ国のセンターの連携を行う役割を担う国際センターが完成を見ましたので、鈴木前総理大臣以下我が方及びASEAN諸国の大使列席のもとに開所式が行われました。沖縄という土地柄に建てられましたので、やはり沖縄の特性を生かすということから、熱帯農業でございますとかその他沖縄の特性に関係する研修を行うということが一つと、もう一つの柱は、コンピューター及び視聴覚教育というものを沖縄国際センターの非常に大きな目玉と申しますか、柱ということで、今後運営を行っていきたいと考えております。
  85. 玉城栄一

    ○玉城委員 今の沖縄国際センターについては、現地でも大きな期待を持って見ているわけであります。現地だけでなくて、まあ沖縄の場合は琉球王朝のころからそういう近隣アジア諸国、遠くはヨーロッパとかと交易をしてきたそういう歴史的な経過もあるわけですが、今藤田さんのお話のとおり、ASEAN諸国とかそういう国々と、あるいは自然条件等でも似通った点もありますし、二十一世紀に向けて、あるいは日本がこれから平和国家として生きていくためには、地政学的にやはり沖縄というのは環東シナ海とかASEAN諸国だとか太平洋諸地域とかそういう中継地としても非常に私は重要なポイントにしていかなくちゃならない、そういう中にこういう国際センターが今回オープンをした。やはりこれをどんどん活用していく必要が当然あると私は思うのです。大臣、その辺はどういう御所見をお持ちでしょうか。
  86. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今局長答弁しましたように、この沖縄における国際センターが今回完成したということは、沖縄の将来にとりましても極めて意義が大きいというふうに私は思います。おっしゃるような沖縄の歴史的な中継貿易の基地としてのこれまでの地政学的な意味もありますし、そして東南アジア諸国との長い間の一つのつき合いというものもあるわけでございますし、これからのそうした国々との間の日本との関係考える場合においても、この国際センターのできた意義は非常に大きいのじゃないかと思います。今ASEAN諸国とともに日本が進めておる人づくりにつきましても、これはいよいよ事務的にも今人づくりプロジェクトが進められておるわけでございますが、こうした人づくりセンターとしてのこれからの果たす役割というものもだんだん大きくなってくると思いますし、いろいろな角度から見まして、やはりこうした国際的な一つの役割を担うセンターというものが沖縄にできたということは、二十一世紀に向かっての沖縄がいろいろな意味で発展していくという面から見ると、大変先兵的な役割をしていくのじゃないかというふうに私も思っております。私、ぜひ行きたいと思っておったわけでございますが、国会等の都合でできませんでしたけれども、近いうちにぜひとも見さしていただきたい、こういうふうに思っております。
  87. 玉城栄一

    ○玉城委員 あさってから「アセアン人造りシンポジウム」が東京で行われますね、これはJICAの主催で、外務省後援ということで。このシンポジウム、どういうテーマで、どういう背景で、その意義あるいは参加国。何か沖縄の方も視察に行くということがあっておりますが、その辺も御説明いただきたいのですが。
  88. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 この「アセアン人造りシンポジウム」は、昨年の七月、ジャカルタで行われました拡大ASEAN外相会議の機会に安倍外務大臣から、近く沖縄の国際センターも完成するし、その他ASEAN諸国の人づくりセンターも軌道に乗るので、この機会に人づくりについての今までの日本及びASEAN諸国の経験を話し合って、より人づくり協力の改善に資そうではないかということで提案を行われまして、各国の賛同を得て、ただいま先生おっしゃられましたように本月の二十四日、二十五日の両日開かれる次第になりました。  参加国は、ASEAN六カ国と日本、それにパプアニューギニアとフィジー、これが今後南太平洋に人づくり協力を拡大していく際の当面の関係国ということになりますので、この二カ国からも代表が参加しております。そのほかに、拡大外相会議の先進国側のメンバーということで、カナダ、オーストラリア、アメリカ及びニュージーランドも代表を派遣してくるということになっております。  主題は「二十一世紀に向けてのアセアン及び南太平洋諸国の経済開発と人造り」ということで、副題と申しますか、サブタイトルに「人造りにおける官民協力のあり方」というテーマを掲げております。  本来、沖縄国際センターの開所式にあわせて行われるというタイミングからも、このシンポジウムが終わりました後、参加の皆様方を沖縄国際センターに御案内して、視察をしていただこうという計画でおります。
  89. 玉城栄一

    ○玉城委員 いいタイミングでもありますので、今後の沖縄国際センターに対する期待も大きいわけでありますので、ぜひ今後我が国の発展のためにも、あるいは国々の発展のために生かしていただきたい、このように御要望申し上げておきます。  それから質問は次に変えますが、これは先日の、私も外務委員会でお伺いいたしました例の第一豊漁丸の当て逃げ事件についてでありますが、海上保安庁の方はもうあらゆる機能を動員されて、大変御苦労しておられることについては、心から敬意を表するわけでありますが、先ほどの御質疑の中でも三百二十八隻という中に、一つ一つ容疑のかかるものについては今事情聴取をしているというお話もさっき承ったわけでありますが、きのうは大きく報道されておりまして、リベリア船籍のワールド・コンコルド号、報道の範囲からしますと、非常に容疑は濃厚ではないかという感じが私はいたします。  そこで、ひとつここでお伺いしておきたいことは、その行方不明者、五名の乗組員の方々、必死になって海上保安庁が捜査していらっしゃることもよくわかるわけでありますが、この三百二十八隻の、皆さん方がリストアップした、そして容疑のある、そういういろいろな事情聴取をしている中で、行方不明者についての手がかりは何か得られたかどうか、その点をお伺いいたします。
  90. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 お答えいたします。  三百二十八隻のうち、現在までに事情聴取したのが三百一隻でございます。あとの船は外国へ行ったりしておりまして、帰って来次第事情聴取をする予定にしておりますけれども、残念ながら、今その三百一隻の中からは行方不明者についての手がかりは得られておりません。  なお、私どもといたしまして一刻も早く行方不明者を探し出すべく捜査と並行いたしまして、依然捜索を続けている次第でございます。
  91. 玉城栄一

    ○玉城委員 今おっしゃった三百一隻の中には、当然今報道されておりますリベリア船籍の大型タンカー船も含まれているわけですね。
  92. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 含まれております。
  93. 玉城栄一

    ○玉城委員 いずれにいたしましても、その五名の行方不明の乗組員の方々についての必死の捜索をぜひともお願いをいたしたいわけであります。  そこで、こういう当て逃げ容疑のある船について、いろいろ事情聴取をしていらっしゃるということでありますが、こういう容疑のかかった船舶については、その事実関係が、あるいはこれが公海上であろうが、領海内であろうが、その事故現場は別にしましても、こういう船舶が我が国から出航することについては、やはりあらゆる法律を動員して、出航させるべきではない、私はこう思うのですが、いかがでしょうかね。
  94. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 御趣旨はよくわかるのでございますけれども、法律的に出航を差しとめるというのは、実際のところ無理でございまして、容疑が固まりまして強制捜査にでも移れば、それは別でございますけれども、依然まだ容疑が濃いという段階におきまして、そういうことはちょっとなかなかできない相談だろうと思います。したがって、次善の策といたしまして、やはりそういう船に対しましては、私どもの方でよく説得をいたしまして、完全に容疑が晴れるまでは、ひとつ協力してくれというような形でいくしかないのではなかろうか、また事実そのようなことはやっております。
  95. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間も参りましたので、また次の外務委員会でこれに関連する条約の審議もありますので、その際いろいろな問題についてはお伺いもいたしたいと思いますし、また捜査上の非常に微妙な段階でもありますので、こういう公の場でこれ以上突っ込んでお伺いすることもどうかと思いますので、また次の機会にさせていただきます。  以上です。
  96. 大内啓伍

    大内委員長 青山丘君。
  97. 青山丘

    ○青山委員 先般のチェルネンコ書記長の葬儀に際しまして、中曽根首相とゴルバチョフ書記長との間に会談が行われました。     〔委員長退席、深谷委員長代理着席〕 私は、日ソ両国首脳同士が会談をされた、しかもこれは十二年ぶりに首脳同士の会談であった、そのことだけでも大変意義深いものだと思いますし、中曽根総理の訪ソに際しての決断に対して敬意を表したいと思います。  ただ、会談の中では、北方領土問題については従来の非常にかたい態度がいささかも変わっておらなかった、こういうことでありますけれども、日ソ関係改善の時期が来た、そういう点では認識が一致した、こういうことが新聞で報道されておりますが、外務大臣、ひとつ今回の日ソ首脳会談に対する評価、どのように受けとめておられますか。
  98. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 チェルネンコ書記長葬儀の際に行われた中曽根・ゴルバチョフ会談には、私もグロムイコ外相とともに同席したわけでございますが、同会談の内容につきましては、従来のソ連主張に比べ、特に大きな変化はなかったように思いますが、今回は葬儀出席の際の比較的短時間の会談でもありますし、会談の中身を云々するよりも首脳間の接触が多くなってきておる現在の東西関係の中にあって、日ソ首脳が直接接触の機会を持ったということ、そのことが今後の日ソ関係にプラスの影響を及ぼすことが期待されるという意味においては、評価をされるべきである、こういうふうに思っております。  新政権が今後どのような対日政策をとるかを引き続き慎重に見守っていく必要がございますが、ゴルバチョフ書記長もこの会談日ソ関係発展への意欲を表明しておるわけでございますから、その点についても期待をしていきたいと思っております。
  99. 青山丘

    ○青山委員 この会談の結果について藤波官房長官は記者会見で次のように述べておられます。北方領土問題では前進はなかった、しかし我が国政府の真意を語ることができ、日ソ関係改善への足がかりができた、この足がかりを大事にして、改善への努力をしていきたい、こう述べておられますが、外務省も同様な考え方でしょうか。
  100. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も藤波官房長官の見解と全く同じ考えでありまして、領土問題については残念ながら、中曽根総理から領土問題を解決して平和条約を結びましょう、こういう発言に対して、これは従来とソ連態度は変わらない、基本姿勢は変わらない、こういう意味ゴルバチョフ書記長の返事でしたから、進歩があったとは見えないわけでありますが、しかし日ソ関係は極めて重要な二国関係であって、これを積極的に進めていこうということにつきましては、両首脳意見一致しましたし、それに基づいて今、日ソ対話が続けられておるわけで、私はそういう意味では、いろいろの意味で前進が今後ともあり得る、こういうふうに考えております。まず、その象徴としてグロムイコ外相訪日というものを私どもは期待をしておるわけであります。
  101. 青山丘

    ○青山委員 日ソ関係については、ソ連の今から数年前における対外的な姿勢に対して、例えばアフガンであるとかその他幾つかの姿勢に対して日本は厳しい態度をとってきた。そして今ここに来て日本日ソ関係の改善のために努力をしていく。これは見方によれば日本の方が揺さぶりをかけているともとれますし、何かここへ来てやけに日本の方が急に親善友好を求め出してきた。何となくここが釈然としないところも実はあるのですが、しかし今おっしゃられたようにグロムイコ外相訪日は、それなりに私は意義あるものだと思っています。  そこで、首脳会談の中にもゴルバチョフ書記長が、グロムイコ外相訪日問題については肯定的に対応する、こういうふうに述べられたと伝えられております。これはロシア的な表現なんでしょうか。日本語だったら前向きに善処する、こんなふうに理解してよろしいのかどうか。  ただしかし、つい先日、この十六日にアブラシモフ日ソ連大使日本記者クラブにおける講演の中で、グロムイコ外相訪日実りあるものになるなら実現をするが、旅行のための旅行ならば難しい、こういうような発言があります。具体的に成果が生まれる可能性があれば訪日するんだ、こういう態度表明と受けとめてもいいかもしれません。ところが、これは従来からもソ連側が言い続けてきたことで、グロムイコ外相訪日は具体的な成果があれば可能性が生まれるというようなことを言ってきたわけでありますが、日本側立場からしますと、グロムイコ外相訪日のための具体的な構想をお持ちであるかどうか。それから、現実に訪日のときの構想はどんな日程を考えておられるのか、まだそこまで詰めておられないのかもしれませんが、その辺の方針を聞かしていただきたいと思います。
  102. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係については、いろいろ問題がまだ横たわっていることは事実です。領土問題が基本的ですけれども、例えば極東におけるソ連の軍事力の増強というのも依然として続いておるという事態は我々も決して無視しているわけではありませんし、アフガニスタンへの侵入というものは、我々はこれを今日も非難し続けておるわけでございます。大韓航空機撃墜事件というものがありましたが、これは今日時間がたつに従って鎮静化をいたしておるわけでありますが、基本的には日ソ間にはそうしたなかなか越えがたい主張の差というものが横たわっておるわけです。しかし、何といいましても隣国でありますし、特にソ連は隣国の大国でありますし、そして日ソ間は、いろいろ問題はあっても隣国として友好関係を進めたいという国民の感情というものもあります。  日本外交としてもそういういろいろな問題はあり、言うべきことはちゃんと言わなければなりませんけれども、しかしやはり日ソ間の関係友好的なものに持っていきたい、こういう姿勢で今日まで来ておるわけで、幸いにいたしまして米ソの間が緊張緩和という状況が生まれておりますし、そして日ソ首脳会談も行われた。そして新しい書記長日ソの改善に意欲を持っておる、こういうことであるならば、やはり大きな問題を片づけなければならぬ、そういう一つの大前提はありながらも、できる限りのいろいろの対話というものはこの際、厳しければ厳しいだけに進めていく必要があるのではないか。ですから、日本が先に飛び出してどうだこうだということではありませんで、やはり日本外交基本的な方針の一つとして取り組んでおるわけであります。幸いにしてソ連側対話がうまく進んでおるじゃないか。ただグロムイコさんの訪日というものはまだ確定していない。私も指示を出していろいろと日時等について、できれば詰めたいということでやっておりますが、まだ詰まっておりません。  アブラシモフ大使の演説の内容について実は私はまだよく承知しておりませんが、実りがなければ来れないということは、これは私としてはちょっと納得のできないことであって、グロムイコ外相日本に来るということはそれなりに大きな意義がある。これは、そもそも日ソ間では定期外相会談ということで出発したわけでありますから、そうして今度はグロムイコさんが日本へ来る番だということを私に対してもはっきり明言をしておるわけでありますから、日本を訪問するというところに大きい意義があるわけでございます。グロムイコさんが日本を訪問するということになれば私もソ連を訪問ができるわけでありますし、さらにまたグロムイコさんが訪日をするための一つの状況づくりというものはしなければなりませんので、その点で今いろいろと話もしでおるわけでありますから、私は訪日された結果は実りが出てくることは間違いない、そういうふうに思っております。そういうことで、これはぜひとも来られるべきであるということを私は強く言っておるわけでございます。
  103. 青山丘

    ○青山委員 外務大臣の御所見をぜひ聞かせていただきたいと思いますが、新しいゴルバチョフ政権が生まれましたが、何か新聞報道では日ソ関係がこれから着実に改善されていくという、そういう期待感が実は出ております。しかし、新しい政権が生まれで私はまだ国内的な、例えば人事であるとか経済問題であるとか幾つかの問題を抱えているであろうと思うのです。それから対米関係の改善という重要な課題も抱えておりまして、さて急速に日ソ関係が大きく前進するのか、率直にどのように受けとめておられるのか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  104. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ゴルバチョフ政権ができましたけれども、ソ連基本的な対外政策が、対日政策だけではなくて全体的に大きく変わりつつあるという印象は、率直に言って持っておりません。しかし、例えば米ソ首脳会談に対してゴルバチョフ書記長が意欲を持っておるということは、それなりにやはりゴルバチョフ書記長の一つの意欲というものがここに出ておるのじゃないだろうか。ですから、ソ連外交、政治体制の枠組みからいって、今ゴルバチョフ書記長が新しく大きく一歩を踏み出すということは簡単には考えられないわけですが、しかし、空気は多少出てきていることは事実じゃないかと思っております。また日ソ関係、対日関係につきましても、領土問題等については、依然として厳しい姿勢でございますが、グロムイコ訪日というものについては肯定的に対応しようという非常に柔軟なところも見せておるわけでございますから、こうした世界の情勢全体が緊張緩和の方に向かっておるときには、お互いにそういう方向努力していく。基本的にはいろいろな問題が先ほど言ったように横たわっておりますけれども、そういう問題もこれから話し合いをすることによって、またおのずから道が開けてくる可能性があるわけですから、やはりまず努力をすることが大事じゃないだろうか、こういうふうに思っておるわけです。
  105. 青山丘

    ○青山委員 なぜ私がこんなことを言ったかといいますと、この間の日本記者クラブでのアブラシモフ日ソ連大使発言、これは新聞によっていろいろな報道がされておりまして、その真偽を調査するということにこの間の十七日の当委員会でも実はなっておりまして、事の真相は外務省も既にある程度つかんでおられると思うのです。その辺をひとつ明らかにしていただきたいと思いますが、私の誤解であれば幸いですけれども、新聞報道によりますと、新しい大使は日本を東ドイツか何かと間違えておるのじゃないか、失礼な人だというような印象が、率直に実はいたしました。東ドイツはソ連とのいろいろな関係であんな発言も許されるかもしれないけれども、日本に対して少し思い上がりがあるのではないか。ベテランの外交官にしては少しとんちんかんなことも言っていますしね。一九七三年の田中・ブレジネフ会談の合意については、つまり未解決の問題については、その後の日米関係とは、恐らく一九六〇年の日米安保条約のことでしょう、十三年間も前後していますし、恐らくそれは五六年の共同宣言のことの誤解かもしれません。しかし、ベテランの外交官にしては少し羽目を外しておられるのではないか。このことは外務省としてきちっと対処すべきだと私は思う。いかがでしょうか。
  106. 西山健彦

    ○西山政府委員 ただいまの問題は、私どもといたしましても当然非常に注意深く調べたところでございます。そこで、その部分に関しますアブラシモフ大使の原重言をまずロシア語でもって聞きまして、ロシア語の専門家がそれを文字どおり訳しましたところ、それは以下のとおりでございました。「一九七三年の未解決の諸問題の解決協議に関する合意への言及は、日本が米国と直接ソ連に対抗する知られた条約締結した時まで、我々の間に存在した。よって、この年々の合意は、これによりダメになった……。」そこでちょっと小声が入りまして、「(あるいはこれを日本語で何と言うか……)」と言いつつ、「合意は事実上無効となった。」これがロシア語を訳したものでございます。それをソビエト大使館の通訳は次のように日本語に直しました。「一九七三年の共同声明に言及された訳ですが、しかし、この七三年に合意されたことは、例の、その後になって、日本とアメリカがとった行動によって、その行動をとった時期までに有効だったと思います。」したがいまして、明らかに何かアブラシモフ大使が思い違いをされたか、何か的外れの発言をされたのではないか、そういう印象を禁じ得ないわけでございます。  したがいまして、先生御指摘のとおり、問題は重要なことを示唆しているわけではございますけれども、仮にも一国の大使の発言でございますので、まずは正確に何を言われたのかを捕捉した後に我々としては必要な措置をとるべく、ただいまのような調査をいたしたわけでございます。しかし、こういうわけでその中身はわかりましたので、一方においてこの発言が極めて不明確かつ的外れであるということも考慮しつつ、適当な機会に、大使に対して当方の立場を明確に示して注意を喚起したい、かように考えております。
  107. 青山丘

    ○青山委員 外務大臣の所信表明の中で、「北方領土問題は、基本的に日ソ両国間の問題ですが、ソ連側が我が方と交渉のテーブルに着くまでの間は、国際社会に対して我が国の正しい主張を訴え、日ソ間の交渉促進のための好ましい環境をつくっていくことも重要と考えており、今後ともそのための努力を継続していく所存であります。」こういうふうに述べておられます。  国際社会に対して我が国の正しい主張を訴えていく、こういうことですが、大臣、ひとつぜひ聞かせていただきたい。これは具体的に何かを指しておられるのかどうか。あるいは何か新しい具体的な方針をお持ちであるのかどうか。例えば国連総会における大臣の演説を考えておられるのか、あるいは世界に対していろいろなミッションを出して運動を展開されるとか、何か具体的な方針をお持ちなら明らかにしていただきたいと思います。
  108. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 北方領土問題については、基本的には日ソ両国の問題でありますし、両国の話し合いで解決すべき問題であるというのはそのとおりであります。しかし、ソ連が我が方のたび重なる返還要求にもかかわらず依然として、領土問題は存在しないと、交渉のテーブルにすら着こうとしておりませんし、その点二国間の交渉が進展を見せていないわけですから、こうした状況のもとで、国際社会において北方領土問題の存在我が国の正しい主張を広く各国に訴えることによりまして、日ソ間の交渉促進のための好ましい環境をつくることが重要だと考えております。  こういう観点から、我が国は、広報活動として英文パンフレット及び英文フィルム等を利用しまして海外への広報に努めるとともに、一九八〇年の第三十五回総会以降、国連における外相演説におきまして毎年北方領土に言及する等によりまして、我が国の正しい主張を広く国際社会に訴えておるわけでございます。私も国連総会におきまして、八三年、八四年、二度にわたって直接国連総会を通じまして国際社会に訴えておるわけでございます。同時に、いろいろと外相聞の交流もあります。サミットにおける外相の交流の場等におきましても、北方領土の問題を私として主張したことも何度かあるわけでございます。
  109. 青山丘

    ○青山委員 質問を終わります。
  110. 深谷隆司

    ○深谷委員長代理 瀬長亀次郎君。
  111. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私、最初に三月八日の予算分科会で、米兵による殺害事件について示談書の問題について質問しましたが、栗山局長安倍外務大臣も全然それに触れられていない。粟山局長は覚えていると思いますから繰り返しませんが、その前に、きょうの電話で知ったことなんですが、防衛施設庁那覇防衛施設局の職員が今——城間幸栄、これが殺されたのですが、この原告五名、それから法廷代理人の弁護士新垣勉、この新垣勉のところへ二回、それから原告にもみんなそれぞれ会って、国を相手に今訴訟を起こしているのですが、この訴訟をもし取り下げなければ補償金やらないということを、むしろ脅迫的なことを言っているが、施設庁、それ知っていますか。
  112. 小澤毅

    ○小澤説明員 お答えいたします。  ただいまの先生御指摘の城間さんの件につきましては、ただいま先生からお話がございましたように、城間さんの方から国を相手取りまして公務上の損害賠償ということに関して裁判が起こされているということは承知しております。また、本件につきまして米側と公務外の事案として示談がそれぞれ現在成り立って、補償金についての慰謝料の支払いが行われているということも承知しております。なお、その際この裁判を取り下げないとお金をやらないとかやるとか、そういうふうないきさつがあったかということについては、現在私のところではつまびらかではございません。
  113. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは非常に大事な基本的人権に関係する問題なんです。国を相手に訴訟を起している、取り下げなければ金やらぬぞ、しかも原告は五名ですね。それから法定代理人、弁護士が八名です。この弁護士の一人新垣勉、それと原告の五名に対して脅迫がましいことを言っている。この事実は実に重大なのでぜひ調査して、委員会に報告してもらいたい、委員長、お願いします。
  114. 小澤毅

    ○小澤説明員 城間さんの件につきましては、先ほどお答えいたしましたが、現在公務上の事案についての裁判がそのまま続行しておるというふうに承知しております。
  115. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が言っているのは、それを聞いているのじゃないですよ。あなた方の那覇防衛施設局の職員が行って取り下げろ、脅迫がましいことを言っているのにあなたの方は知らないと言う。知らないから、調査して報告しなさいということを言っているのですよ、いいですか。調査して報告しますか。
  116. 小澤毅

    ○小澤説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げたように、現在その詳細についてはつまびらかではございませんので、今後調査してみたいというふうに思っております。
  117. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この件は、調査してみたいというのじゃなしに報告してほしいということなので、報告しますか、しませんか。
  118. 小澤毅

    ○小澤説明員 調査の結果を見まして、適切な対処をしてまいりたいというふうに思っております。
  119. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 適切な対処ではなくて、私の言っているのはそういうことの事実なので、事実であるか。事実でなければない、事実であればあると委員会に報告しなさい。どうですか。
  120. 小澤毅

    ○小澤説明員 繰り返しの答弁で恐縮でございますけれども、調査をした上で適切な対処をしてまいりたいと思っておりますので、御理解願いたいと思います。
  121. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 対処すると言いまして、繰り返しても同じことしか返事は返ってこない。これは委員長委員会の方でぜひ取り計らってほしいと思います。希望いたしておきます。  それから次に、外務省ですが、これは局長知っておられると思いますので繰り返しませんが、この金額を受け取る場合にアメリカ政府日本政府を免責するという示談書の内容になっていますね。だから、こういったような示談書は示談書ではない、脅迫だということを申し上げました。これは大変なことなんですよ。公務外の問題について、安保条約の問題とも違って基本的人権に関係する問題なんで、私の方でこういった示談方式をやめる、なぜ日本政府は免責——日本政府免責というのは、日本国民の憲法に保障された基本的人権である訴訟権を放棄させることになる。これについて局長大臣も全然触れられなかった。大臣、いかがですか。局長答弁しますか。
  122. 栗山尚一

    栗山政府委員 先般瀬長委員から御質問がありまして、示談書の書式を見せていただきましたときに、アメリカ政府を免責する理由については、そのときに御説明申し上げました。日本政府を免責する問題につきましては、その時点で突然の御質問でありましたので御答弁申し上げられませんでしたが、その後示談書の様式をよく検討させていただきましたが、その結果、これは委員承知のとおりに、アメリカの軍人の公務外の不法行為によって発生した損害に対する支払いの問題でございますので、そういう観点からいたしますれば、これは法律的にはそもそも日本政府に責任がない問題でございますので、その点を示談書において明確にする、そういう趣旨日本政府もアメリカ政府とあわせて免責ということを明確にする、そういう趣旨委員指摘のような様式になっておるということでございまして、これは決して被害者の人権無視というようなものではないというふうに考えます。
  123. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この件についてもう一言申し上げますが、今国を相手に訴訟を起こしています。この訴訟権についてはこれに制限されないというふうに理解していいんですね。
  124. 栗山尚一

    栗山政府委員 いずれにいたしましても、被害者の方で示談という形でお金を受け取っていただく場合には、以後、アメリカ政府でありましても日本政府でありましても、それに対して請求をいたさないということが確認されることが必要であろうと思います。その点が第一点。  それから第二点は、示談のための金額というものが被害者の方にとって不満である場合には、これは地位協定にも明確に書いてございますが、正規の裁判によって問題を解決するという道が開かれておる。これは地位協定上明確に規定されておりますので、そういう意味での被害者の権利というものは十分確保されておるというふうに考えております。
  125. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 一言で言えば、今被害者が原告になって国を相手にして訴訟を起こしています。この訴訟を起こす権利はこれによって制限されないというふうに理解していいかということなんです。
  126. 栗山尚一

    栗山政府委員 今委員指摘の裁判の件につきましては、詳細を私承知しておりませんので、直接私の見解を申し上げることは差し控えさせていただきたいのでございますが、一般論として申し上げれば、示談の金額を満足したものとして受け取られるということで示談が成立すれば、当然その後の裁判の訴えというものは、これは制度上あり得ないものだろうと思います。他方、その示談に示されました金額というものをあくまでも不満としてそれ以上のものを要求されるということであれば、これは当然のことながら裁判によって問題の解決を図る道が開かれておる、こういうことだろうと思います。
  127. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がございませんので、基地の被害の問題についてお聞きしたいと思います。  キャンプ・ハンセン、これはアメリカの海兵隊なんですが、この被害は最近でも、前泊さんを殺害し、さらに強盗事件、そのほかいろいろの被害が起こっております。山林を焼いた。この山林被害の問題も大変なことなんですが、これは施設庁が出したものですが、復帰後私が調べただけでも、山林火災だけでも最近五年間で三十七件発生して、実に二十五万三千平方メーター、これは全部焼けてしまったのです。これは後楽園球場の五倍なんですよ。これにつきましていろいろ質問いたしましたら、この前防衛庁長官の話では、これは訓練する、演習する必要上やむを得ないというようなことを答弁しておりますが、大臣もやむを得ないといったような認識ですか、少々の被害はやむを得ないと。これは少々の被害じゃない。今言ったように後楽園の五倍くらいの山林が焼けておるのです、金武町だけで。だから、防衛庁長官と同じやむを得ないといったような認識がどうか。
  128. 栗山尚一

    栗山政府委員 防衛庁長官の御答弁というのは私、委細承知しておりませんので、そのような趣旨で御答弁があったかどうかということは理解いたしませんが、いずれにいたしましても、外務省といたしましても防衛施設庁といたしましても、この種の山林の火事がやむを得ないというふうに認識しておるというつもりでは毛頭ございませんで、従来からも合同委員会の下部機関におきまして、この種の山林の火災発生というものが起こらないようにできるだけアメリカ側に措置をとってもらうとともに、日米双方が協力をしまして、この種の火災事故の発生というものをできるだけ防止するための種々話し合いが行なわれてきておるというふうに理解をいたしております。
  129. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは大臣にお答え願いたいと思うのですが、防衛庁長官は、こういったいろいろの山林火災、殺人、強盗、強姦その他を挙げて、自然を破壊している、安保条約の建前上安全じゃないじゃないか、自然を破壊しているじゃないか、恩納岳あたり山が焼けてしまって変わっていると言ったことに対して、米軍の訓練は日本の防衛を確保するためのものであり、多少の犠牲はやむを得ないといったような意味のことを言っているのです。安倍外務大臣もそういった考え方ですか。
  130. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米軍演習は、それ自体安保条約を効果的に運用していかなければならぬ、こういう立場から行われるわけでありまして、それに対しては日本としても、日米安保条約という立場からこれをもちろん理解もし、認めるわけでありますけれども、それによって被害が出る、それがまた市民の皆さんに迷惑をかけるということになりますれば、そういうことがないようにやっていくのが日米両国立場でありますし、特に日本としても、国土においてそういう米軍存在によりまして住民に迷惑をかけないように努力をしていかなければならぬ、そういうふうに私は思っております。そのために努力もしておるし、米軍との話し合いもしておる。残念なことにはいろいろと被害が出ておるわけでありまして、そのために合同委員会日本側としても、被害を食いとめる、あるいはまた被害の発生を防ぐということについて、強く米側に求めておりますし、米側もそうした事態が起こっておることについては、極めて遺憾である、今後ともそうした事態が起こらないように努力を払うということを言っておるわけでございますから、さらに連絡を緊密にいたしまして、できるだけ迷惑がかからないようにやっていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  131. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が来ましたので、私、最後の一点申し上げますが、前泊さんが殺害された以後、山林火災の問題もどんどんふえてくる。そこで金武町議会で基地撤去を打ち出しているのです。この地元の金武町伊芸区というのは百七十世帯。ここでこの前抗議大会で六百五十名が集まって、基地がある限り——もう再びこのようなことを繰り返しません、繰り返しませんと言いながら繰り返しておる現状だ。この金武町伊芸区自体は百七十世帯ぐらいです。六百五十人が男も女も子供も集まって基地撤去を要求している。生存の極限に達している。こういった問題が今提起されておるわけなんで、これは外務大臣、よほどその意味では決意を新たにして——再びこのようなことが起こらぬように、起こらぬようにと言うけれども、起こっているわけです。これが現実なんです。だから、安保条約というのは安全を保障するのじゃなしに、むしろ安全を保障しない条約であるということを現実に金武町の人々は肌で感じて、その怒りが極限に達してこういった決議をやるということまで来ておるのです。きょうの新聞を見ましたら、沖縄タイムスも琉球新報もですが、今度は県議会で取り上げて決議するかどうかということが軍特委にかかっているところへ来ています。全県民がそういった基地の被害の極限状態に来ておる。そういうことで結局安保条約国民沖縄県民の安全を守るのじゃないんだ、基地はそのために諸悪の根元であるということまで来ておる。だからその意味外務大臣、こういったような県民の怒り、しかも金武町はもとは保守的な部落だった、これが基地撤去を言わざるを得ない、極限まで達しておる、この点を深く認識してもらって、私は、外務大臣は対米折衝の最高のリーダーでしょう、そうした点でどういうふうに対処されるか、もう一遍大臣答弁を求めます。
  132. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基地は、日米安保条約日本の平和と安全を守るために必要であります。しかし同時にまた、基地によっていろいろと問題が起こらないように、日本政府努力し、またアメリカ、米軍協力してもらわなければならぬと思います。実情を調査して、日本として言うべきことは言って米側にも反省を求め、そしてまた米側に対してもその対策を求めてまいりたい、こういうふうに思っておりますし、住民の皆さんにはそうした基地が必要だという理解についても求めてまいりたい、こういうふうに思います。
  133. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が参りましたので、これでやめますが、外務大臣、ニューリーダーとも言われておりますから、今度は胸を張ってアメリカに日本国民の不安、疑惑、怒り、こういう点を堂々と言えるような外務大臣になってほしいということを要望をして、私の質問を終わります。
  134. 深谷隆司

    ○深谷委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十一分散会