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1984-03-31 第101回国会 参議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月三十一日(土曜日)    午前九時三十八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         伊江 朝雄君     理 事                 岩崎 純三君                 大坪健一郎君                 藤井 孝男君                 竹田 四郎君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 倉田 寛之君                 竹山  裕君                 中村 太郎君                 福岡日出磨君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 穐山  篤君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 青木  茂君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   井上  裕君        大蔵大臣官房長  吉野 良彦君        大蔵大臣官房総        務審議官     吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵大臣官房審        議官       山田  實君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省関税局長  垂水 公正君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       酒井 健三君        国税庁次長    岸田 俊輔君        国税庁税部長  渡辺 幸則君        国税庁間税部長  山本 昭市君        国税庁調査査察        部長       冨尾 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        通商産業省産業        政策局企業行動        課長       藤原武平太君        通商産業省立地        公害局工業再配        置課長      小林  惇君        建設省計画局不        動産業課長    斉藤  衛君        建設省住宅局住        宅政策課長    内藤  勲君     —————————————   本日の会議に付した案件酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置  法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○物品税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○石油税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○所得税法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  前回に引き続き、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案石油税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案、以上六案を便宜一括して議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 丸谷金保

    丸谷金保君 大蔵大臣にお尋ねをいたします。  昨日、所得税法等提案の問題について委員長見解書面で承知いたしました。しかし、この問題はあなたが提案者なんです。したがって、提案者としての心構えの問題についてまずお伺いいたしたいと思います。  一括提案というふうなことが時にはあり得るし、違法でもないと思います。実は私ごとになりますが、町長時代私もそういうような形で一括提案したような条例を出した経験もございます。だから、あながちすべてをいけないと言うつもりもありませんが、ただ状況から言いますと、田舎の町の町長でございましたが、それは圧倒的多数の保守党の野党議員を相手にして理事者としてほかに方法がなかった。こういうことにおいて二回くらいそういうことを行った記憶がございます。万やむを得ずです。少なくとも町議会で与党勢力が多くなってからそのようなことをした記憶はございません。ですから、今回の所得税法等の御提案もそういう点で万やむを得ないというふうなときにのみ許されるものであって、現在の議会制民主主義を守っていくという立場では乱用してはいけないことでないかと思います。特に今回の所得税法国税通則法というのは、むしろ国税通則法の方が幅の広い法律であります。すべての国税に共通する法律であって、国税通則法等の中で所得税の一部が論議されるということはあり得るとしても、この場合は本末転倒と言わざるを得ない問題も持っております。提案者としての大蔵大臣はこうした提案与党多数の本委員会において万やむを得ざる措置とお考えになったかどうか。恐らくお考えになっていないと思いますが、そのときにはそういうことが軽々しく乱用されてはいけないんだという自戒も込めて、こうした御提案に至った御心境をお伺いいたしたいと思います。
  4. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御心境ということでございますから、極めて私なりに法律根拠に基づく窮屈な角度からでなくお答えをしてみたいと思います。  まず、国会法案提出するということになりますと、今度は特別会でございますけれども、普通の常会にかわるべき特別会という性格を帯びておる。そうすると、内閣でおよそ何本ぐらいの法律を例年の例から見まして一応物理的にも消化していただけるかというような考え方から、非常に大ざっぱな話でございますが、まず本数検討に入ってまいります。そういたしますと、今度はそのときの政策選択の中で、それぞれの個々委員会へどれだけ御負担をおかけするかということも検討をいたすわけであります。本国会などは本大蔵委員会が大変多い法律を御審議いただく場になるわけであります。  そこで、今度は、整合性を持つことができるものならばこれを一括法の形で整理整とんしてみようじゃないか、こういう角度から今度は検討を始めるわけであります。そうして、例えばそのときの政策選択が大きな行政改革というものであれば、行政改革一括法案の中にあるいは社会保障厚生年金の問題が入ったり、地域開発の、北海道開発の補助率の問題が入ったり、それをそのときの政策選択角度から、ある意味においては異質であるものを一括して一括法とする。こういうことを今日までもやってきております。  したがって今度も、まず、できるだけ一括して本数を滅して御審議にあずかりたいという考え方が基本的に私どもにございました。それで所得税法等という中にこの法律を一括して審議していただく、我々の当初の政策選択の目標に少しでも近いものは一括して御審議をいただこうと、結論から言うとこういう考え方になったわけであります。  したがって、法人税法の場合にいたしましても、この法人税法の本体で御審議いただくものと租税特別措置法の中で御審議いただくものとは、これはどうしても法人税法そのもの一括法とするにはなじまないというものは租税特別措置の方へ入れたりいたしまして今御審議いただいておる税法全部の本数になったわけでございます。  したがって、私は国会の構成の今のマジョリティーの問題は余り考えておりませんでした。が、要するにできるだけ一括した方が御審議の便にも供されるし、また我々として全体の本数を整理整とんすることができるというような考え方が少なくとも私自身には先行しておったことは事実であります。したがって、異質がどうか、あるいは異質範囲が大きいか狭いか、こういうことにつきましては、いわば見解を異にする場合もあるでございましょうけれども原則的に言われる、できるだけ異質範囲の多いものに対しては一本一本の法律審議に供するというのも一つの私は見解だと思います。  そこで、今おっしゃる言葉をそのまま引用すれば、何と申しますか、みだりに乱用すべきものではないと、こういう御指摘は私も素直にそういう御指摘を受けても一向差し支えないというふうに感じておりますが、今法案審議をいただきながら大変に自戒の念にかられておるかどうかということになりますと、何と申しますか、私ども政治的配慮の経過の中にも三分の理屈はないわけではないと、こういうような素直な気持ちを申し述べてお答えといたします。
  5. 丸谷金保

    丸谷金保君 提案権でございますから大臣の方にあるわけですが、乱用というのはいけないわけです。  大臣、非理法権天という言葉がございます。非は理に勝てず理は法に勝てず、だから今回の法案にいたしましてもいろいろな問題点があっても通ってしまう、納税者の側に理があってもなかなか法に勝てないもんです。法というのはそういう要素を持っております。それから法は権力に勝てない。法をつくっても、権力の側はその法を変えて権力執行がしやすくするような方向に行くことは非常に多うございます。しかし非理法権天、その権力も天には勝てないんだ。これが中国の易姓革命の一つの思想的な柱になっております。  ですから、余り権力のもとにおいて法をかさに着て理を押さえつけるような行政が行われると、いわゆる議会制民主主義の根幹をも揺るがすような国民風潮を生まないとも限りません。このことは我々与野党を問わず自戒していかなければならないところだと思いますし、特にこのような形の提案については、提案中ですので言葉を濁しておりましたけれども大蔵大臣も内心多少じくじたるものを今の御答弁のニュアンスの中に感じますので、これがいいんだとお思いになっておらないというので、私も一応この件についてはここまでにいたしておきたいと思いますが、やはり非理法権天、こういう革命のバックボーンになっているような、そういう風潮が起きないように十分ひとつ気をつけて、これらの法の執行について万全を期していただかなければならないと思いますので、そういう立場を踏まえてこれから逐条的な問題点について入っていきたいと思います。  先日、日弁連樋口参考人が私の質問に対して、憲法違反とまでは言い切れるかどうかわからないけれども、少なくとも憲法精神には反している国税通即法百十六条の改正だと、こう言い切っておりました。私もその点については同感です。三権分立思想日弁連に言われるまでもなく、それらの点から言いますと多大の疑義がある。これをわずかの時間で審議しなきゃならないことは非常に残念に思います。したがって、憲法精神に照らして、こうした裁判官の判断を縛ることがしばしば許されてはならないと思いますので、この法案について、日弁連の責任ある人がそう言い切っている点を踏まえて、大蔵大臣見解をお伺いいたしたい。
  6. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 日弁連の方が当委員会参考人としてお見えになりまして、憲法との関連で今回の国税通則法百十六条の改正について観点をお述べになったということ、詳細は承知いたしておりませんけれども、そういう御意見の陳述があったということは報告を受けております。  さまざまな論点の御議論があるかと思いますけれども、今回の国税通則法百十六条の改正は、若干時間をおかりして私ども考え方を申し述べさせていただきますと、税務訴訟につきましては、我が国の場合、一般論としては、これは行政訴訟そのものとして扱われておるわけでございまして、税務訴訟の場合は一般行政訴訟に、行政訴訟民事訴訟の例によって訴訟が進行するわけでございますが、税務訴訟特殊性といたしまして一般民事事件と違いますことは、債権者である課税庁は、実はその債権基礎となりました取引の事実については第三者的な地位におるわけでございます。一般民事の争いでございますと、債権債務者はまさにその経済取引当事者相互間の関係でございますが、課税庁はいわば第三者立場にある。  しかしながら一方、民事訴訟の、といいますか、訴訟段階においては一般債権者と同じ立証責任を負わされておるという観点にあるわけでございます。したがって、そういった税務訴訟特殊性から見まして、各国におきましても、いろいろな税務訴訟について民事訴訟との特例的な制度的な規定があるわけでございますが、我が国におきましても、原則課税庁立証責任を負いますけれども訴訟経済とかあるいは真実の発見という観点から、納税義務者に対しても積極的な立証活動を期待するという観点から、いわばそういった特例ということでこの国税通則法規定があるわけでございます。しかもこの規定は、繰り返して申し上げておりますように、訴訟指揮に関する規定でございます。  今回この改正をお願いしておりますのは、従前規定によりますと、この規定が活用されてないという点があるわけでございます。したがいまして、今回、そういう従前の事例にかんがみまして、この制度が活用されて訴訟経済にも資するとともに、当事者主義当事者対等主義と申しますか、そういったものに一層近づくようにという観点からこの制度改正をお願いしておるわけでございます。改正に当たりましては、従前規定国税に関する抗告訴訟一般でありますものを、今回は国税課税処分取り消し訴訟に限定する。それから第二点は、納税者一定の場合に事実の主張なり、つまり課税庁の事実の主張に対しまして納税者側からの事実の主張立証の、証拠提出をお願いしておるわけでございますけれども、その場合にも、対象となる事実は、納税者に有利な事実、つまり具体的には「必要経費又は損金の額の存在その他これに類する自己に有利な事実」に限定するということになっておりまして、さまざまな御意見はあるかと存じますけれども、私どもは現行ございます百十六条の規定の整備を図るという観点から提案申し上げておりまして、この点に関して憲法違反議論というのは少し当たらないのではないかというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  7. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣、重ねてお伺いいたしますが、少なくとも日弁連の代表として御出席なさった樋口参考人が、違反とまでは言い切れないかしらぬけれども憲法精神には反する、こう私の質問に対して答えているんです。これは今の条文解釈論や何かでなくて、その重みをどう受けとめなさるかということなんです。そんなもの、日弁連なんかというふうに考えられるのか。日本の法律を守るという立場の中で大きな柱であるんですよ。今の具体的なそういうことをやっていると、きょうは晩まで私一人でかかってしまうんです。ですから、できるだけ大臣簡潔に、私の質問に対して、私がお尋ねしたいと思う方向に沿ってひとつ審議に御協力願いたいと思います。大臣お願いします。
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) お答えはできるだけ質問の趣旨に沿ってお答えをすべきでありますが、その質問の中に誘導されて私が本法律案を否定するような答弁にもならないように、私もまた気をつけなきゃならぬと思っております。が、憲法論議ということでございましたので、私もちょっと自信がございませんでした。  ただ、これは非常に古い感覚の一つの、権力じゃなくして、権威の象徴というものが勲章であるならば、日弁連の会長さんというのは必ず勲二等になるということが決まっておりますから、日弁連というのは、勲章で判断するのは不適当でございますけれども権威のある団体だとは思います。しかも法の専門家の方が、いわゆる憲法違反ではないが、その憲法精神に背くかの印象をお受けになるだけでも、我々はそれに対しては謙虚に耳を傾けなければならない問題だと、こう理解します。
  9. 丸谷金保

    丸谷金保君 そういうふうなお答えをいただければ長々とした時間をとらないでもよかったんです。これから今御答弁された主税局長答弁を踏まえて御質問をいたしたいと思います。  まず、改正法の中で、今度は相手方当事者から国税庁長官国税局長が抜けていますね、百十六条。これはどういうわけなんでしょうか。
  10. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは、現行条文先ほども申し上げましたけれども、「国税に関する法律に基づく処分に係る行政事件訴訟法第三条第一項(抗告訴訟)に規定する抗告訴訟」ということで、国税に関する抗告訴訟一般でございますけれども、現在御提案申し上げております改正案におきましては、国税に関する法律に基づく課税処分取り消しの訴えというものに限定いたしておりますので、課税処分はこれは税務署長でございますので税務署長当事者である。それから関税の場合は税関長でございます。したがって当事者税務署長税関長に限定されておるわけでございます。
  11. 丸谷金保

    丸谷金保君 旧法ではそれじゃどういうわけであったんですか。旧法には国税庁長官国税局長が入っているんです。それが抜けているので聞いている。
  12. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 旧法は、国税に関する抗告訴訟一般が百十六条の規定になっております。したがって、国税に関する処分一般では国税庁長官あるいは国税局長当事者となるような処分もあったわけでございますが、今度は課税処分取り消しだけに限定いたしたものでございますから、課税処分税法税務署長が行うということでございますので、税務署長が常に当事者になるということでございます。
  13. 丸谷金保

    丸谷金保君 それから今、訴訟経済の面からも原告遅滞なく具体的な証拠提出するようにと。しかしどうも今までそうした面でむしろ国税庁側の理由によって遅滞した例も非常に多いんではないか。これは今度とうなるんでしょうか。  例えば昨日も指摘いたしました五年たって国税庁段階減額修正をせざるを得ないような案件というのは、そこで修正するということは、それまでの国税庁側主張が明らかに間違っていることを認めるから修正するわけですね。その間違ってたのを五年も主張しながら裁判をやってきた、国税庁側あるいは税務署側がですね。そういう例がたくさんあるんです、きのう報告を受けているんですから。この方はどうなるんですか。原告側にだけは訴訟経済主義というふうなことをおっしゃって、被告である国税庁なり税務署側訴訟経済主義は従来と変わってないんです。  しかも事実は、そういうふうにむしろ税務署側主張することによって延び延びになっている例が幾つもあるんです。これじゃ不公平じゃないですか。少なくとも憲法精神に基づいて判断するならば、訴訟当事者はお互いに同等の権限を持って向かい合わなきゃならないはずなんです。その点において百十六条は疑義があると言わざるを得ない点を含んでいるんです。これはどうなんでしょうか。
  14. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 個々訴訟の進行に応じてケースによっていろんな問題が生じるわけでございましょう。委員が御指摘になっている具体的な訴訟事件がどういうものであるかということによりまして、そのケースについてはいろんな議論は生じ得ると思いますが、制度一般議論といたしましては、先ほども申し上げましたように、税務訴訟については課税庁である税務署長つまり国側立証責任を負っておるわけでございます。現在の我が国判例によりましては、そういうことで訴訟が進行しておるわけでございます。  今回の制度提案しております考え方は、そうは言いましても、課税庁側はあくまでそういう租税債権の成立の基礎になりました取引にとってはいわば第三者関係にございますので、基本的に立証責任課税庁側が負っておるということは、従来と全く変わらないわけでございますけれども納税者側に有利な事実については証拠納税者側が持っておられるわけでございますから、一定の要件のもとで遅滞なくそういうものは主張していただく、そういう積極的な立証活動納税者にも期待するという観点から訴訟経済という観点を申し上げたわけでございます。したがいまして、当事者対等主義という観点から言えば、むしろ今回の制度提案によりまして一歩さらにその原則に近づくというふうに私どもはむしろ考えておるわけでございます。ただ、個々訴訟事案について課税庁がとりました行政処分なり訴訟に対する対応の態度がよかったか悪かったかというその批判の問題はまた別でございます。
  15. 丸谷金保

    丸谷金保君 確かにその判例、きのうもお答えしておりましたよね。判例で課税した税務署側立証責任があると。ところが、今度はそれがちょっと差がついちゃっていますね。例えば百十六条の一項によりますと、「税務署長又税関長当該課税処分基礎となった事実を主張した日以後遅滞なくその異なる事実を具体的に主張し」となっているんですよね。片っ方は事実を立証すればいいんです。片っ方は事実を具体的に主張しなきゃならないんですよ。この事実の主張と事実の具体的な主張とどう違うんですか。これ一緒じゃないじゃないですか。あなた何ぼ言ったって。
  16. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず、前段の課税庁側課税処分基礎となった事実を主張するということは、これは当然の結果といたしまして具体的な主張をしておるわけでございますね。それに対して、それと同程度の異なる事実を具体的に主張するということ、まあ注意的に書いておるわけでございまして、具体性のレベルが納税者側により詳細な事実の主張を期待しているという意味じゃございません、この条文は。
  17. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、これはわざわざおたくの方の答弁がやりやすいようにきのうちょっと事案の一部を申し述べておいたんです。本当はこれからいきなりやった方があるいはもっと効果があったかしらぬけれども、十分それに対して答弁できるようにと思ったから、わざわざ質問の内容の一部を昨日申し上げておいたんです。ところが、これによりますと、当局側は具体的なはずだと。当局側主張は具体的にやっているということになってないことを私きのう申し上げたじゃないですか。これは青色に関するところの訴訟ですけれどもね。  例えば準備書面で、原告側は、昭和五十二年の三月期の交際費損金算入主張に対し、一は認めるけれども、二については、厚生福利費会議費及び請負担金の各勘定科目に仕分けして、どの支出交際費等にかかわるかについて、右勘定科目該当部分支出年月日、摘要、金額等によって特定されてから認否すると、こういうふうに準備書面で反論しているんです。  同じことは、準備書面求釈明に対して、おたくの方は、別表のとおりだというのを今度出してきたんです。交際費等の不算入額主張に対する求釈明について、交際費等と認定した各支出金額支出年月日支払い先支払い金額の明細は別表一のとおりである、さらに第二で、別表二のとおりであると、こういうふうに求釈明しているんです。その別表が昨日ちょっと申し上げた五十一年八月十二日のアートコーヒーほか五万八千二百五十八円、以下幾つもあります。そして最後に申し上げた東方会館ほか百十八万四千七百二十四円。  そしてこれに対して原告側は、別表二の二枚目以降(注)云々として、各支出交際費等にかかわるとする被告の処分理由とその適法性について具体的に明らかにされていない、こう釈明しているんです、原告側が。  きのう申し上げたこれらの点については具体的でない、何々ほかではね。具体的に税務署側、被告側はあれだと主張しているんだと言うけれども、具体的でないんですよ。ほか幾らだというんじゃ具体的じゃないでしょう。裁判記録の中なんですからね。  ですから、それをさらに具体的にしていただきたいと原告側主張したのに対して、準備書面の中で、準備書面を読んで、原告準備書面三の求釈明に対して、各係争年分の交際費等損金算入額に関する求釈明に対して追って立証すると。これでは裁判を延ばしているのは税務署側でしょう。しかも追って立証するたって——今度のこの法律が通れば、この場合の具体的でないからもう一遍ひとつ立証してくれ、一回出てきたら速やかにそれに対して答弁しなきゃならないんだから、具体的に原告側が。こういう裁判は今度できなくなっちゃうわけですね。できなくなるでしょう。できるんですか。
  18. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 一般的な今回の提案考え方についてまず申し上げまして、具体的な訴訟の実態について必要とあれば後ほど国税庁の方から申し上げますが、先ほど先生がおっしゃいました今回の百十六条一項にございます事実を具体的に主張するという関連でございますが、前段にあります税務署長が「課税処分基礎となった事実を主張し」というのは、先ほど申し上げましたように、例えば実額課税処分に対する取り消し訴訟でございますと、納税者側がそれに対して訴訟を提起されます。そういたしますと課税庁側答弁書を提出し、次の期日にはこの課税の基礎となった事実を主張するわけでございますが、それは実額課税処分に対する取り消し訴訟の場合は、売り上げと経費というものについて具体的な事実、課税処分基礎となった事実を具体的に課税庁主張するわけでございます。  それに対しまして、次の「遅滞なく」今度は原告側、つまり納税者側が反論の主張をし、それに対する立証をしていただくわけでございますけれども、その場合の主張は、「具体的に」と書いてございますのは、単に課税庁側が言っている事実があるなしというふうな抽象的な反論ではなくて、課税庁側が出している主張に対して、それぞれそれに対応するそういう課税庁主張している経費は存在しないんだとか、そういったことを具体的に主張してその証拠を出すというふうにこの条文は構成されておるわけでございまして、納税者側にだけ具体的に主張するということを求めているということでバランスを欠いているんではないかということは、訴訟の実態としてはそういうことはあり得ませんし、そういう条文ではないわけでございます。  ただ、個別の具体的な事案等につきましては国税庁の方から補足して御説明申し上げます。
  19. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 現在の租税措置法の実態におきましては、委員が御指摘になりましたように、まず被告の課税庁の方から答弁書と申しますか、こういうものを提出いたしまして、そこでどういう理由で課税の処分をいたしたかということを説明申し上げるわけでございます。その説明に対しまして、必要とあれば委員がおっしゃいましたような求釈明、釈明を求めるという行為がございまして、その釈明をまたいたします。その後で原告の方から準備書面をお出しいただく、それに対して被告の方からまた準備書面を出すということでだんだん訴訟が推移していくわけでございます。そのたびに争点もいろいろ出てくるわけでございまして、その争点についての主張立証がなされるということが一般的な慣行であろうかと思うわけでございます。  今御指摘になりましたような交際費の点、具体的な事件については、私ども存じないわけでございますが、この交際費も費用である以上はやはり原則として課税庁主張立証責任があるわけでございますので、その点についての主張立証をこちらの方から申し上げる。それに対しまして相手方からまたいろいろな御主張をなさる。こういうことではないかと思うわけでございます。
  20. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこで主税局長ね、「遅滞なく」が今度生きてくるんですよね、今度「遅滞なく」が。遅滞なく具体的事実を立証しなければならない。  今度はその「遅滞なく」を聞きます。いいですか。今度その「遅滞なく」にひっかかってくるとこういう抗弁ができないことになりますよね。アートコーヒーほか五万何ぼ、これは何なんだといってもう一回できないわけですよ、もう一回聞くことが。いや、これはこうこうこういうことだからいけないですよと、こう言わなきゃならぬ、この場合に。立証責任は今度は原告側にあるでしょう。「遅滞なく」というのは一体何年間を「遅滞なく」というんですか。それはもうすぐやれということですよね。そして、そうしますとこういうことになるんですよ。  この場合なんかでもわからないでしょう、アートコーヒーほか五万八千二百五十八円、税務署の方がこういうふうにこれは損金算入と言われたって、何の分なんだか原告の方はわからぬわけです、これじゃ。だからもう一回今度は聞く。  今度の百十六条によりますと、それが今度できなくなるわけですわね。もう一回聞く。しかし被告側は幾らでも調査して次から次から出してこれる。これは間違いないですね。この具体的な事例で言いますと、一回だけで、あとは、これ聞きましたが、そうしたら、いずれ立証すると。税務署がそれでもっていずれいくでしょう。その間にどうも自分の方の主張がぐあい悪いと思えば修正決定ができますわね。局長言ったように、同等の立場でやっている裁判にならないんじゃないですか、これじゃ。
  21. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず遅滞なく申し出ていただき、主張していただき、証拠をお申し出いただくということでございますが、課税庁課税処分基礎となった事実を主張いたします。で、次回の期日に納税者の方が自己の有利な事実について主張されれば、それが「遅滞なく」であるということは通常考えられるわけでございます。  ただ、条文を注意深くお読み願いますと、後段の方に、「その責めに帰することができない理由によりその主張又は証拠の申出を遅滞なくすることができなかったことを証明したときは、この限りでない。」と。つまりこれは訴訟ケース・バイ・ケースで裁判官がまさに当事者対等の立場から御判断なさるということでございまして、次回の期日に申し出をしなかったからそれで永遠にそういう申し出の機会が、機械的にそういうことが失われるんだというふうなことのないように、裁判官が訴訟経済と真実発見の両方を考えながら訴訟指揮をしていただくような規定として盛り込まれておるわけでございます。
  22. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、私は具体的に聞いているんで具体的にお答えいただかないと困るんですが、この係属中の訴訟については、税務署側主張していることはわからないんだから、これは何なんですかと。税務署から出てくるまでは今あなたの言われたことになりますわね、世間の常識から言ってですよ。ほか何件もない、ほかで五万八千円だと、こうなるとわからないです。わからないから聞くことは理由になりますよね。これは裁判官が判定することで、あなたたちが判定することでないとおっしゃるかもしらぬけれども、これはあなたたちが出している法案なんだから。裁判所が出している法案でないんで、提案者としてはその場合はどうだというふうに答える義務ありますよ、法律は出したけれども、判断は裁判所であるからこの場合わかりませんということにはならぬと思うんだな。
  23. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 若干事実関係がわかりませんので事案を分類して申し上げたいと思うんでございますが、今お尋ねの具体的な件に即しまして、ある交際費案件がある、その案件で、アートコーヒーでございますか、そのほかというようなところについてのお尋ねでございます。  で、私どもが、課税庁の方が仮にその他というのを特定いたしまして、それについての経費性を争っておるということであれば、まさにこれは課税庁の方から主張立証、挙証をしなければいけない事柄であろうかと思うわけでございます。ただ、納税者が個人か法人がわからないんでございますが、いずれにいたしましても、記録がある場合であれば、私ども課税庁としてはその原始記録にさかのぼっておるわけでございます。帳簿の科目の中にアートコーヒーその他と書いてございましても、必ず普通の場合にはそれを裏づける領収証とかその他の書類の原始証瀬というものがあるわけでございます。その原始証瀬をお調べしているわけでございますから、この原始証憑のお調べした結果を法廷に願出するということによりまして挙証をいたすわけでございます。  ただ、交際費とアートコーヒーその他というのが、これは納税者の方でその他ということをお決めになっている。その場合には、私ども課税庁の方には直接にはわからないわけでございます。もし調査の過程でその他ということを納税者の方が特定なさいましておっしゃっている場合、これは当然私どもにもわかっているわけでございますから、法廷においてもその旨を主張いたします。しかし訴訟におきまして、突然と申しますと失礼でございますが、アートコーヒーその他のその他ということをおっしゃいました場合は、これは私どもにはわからないわけでございます。そういう場合は原告の方におっしゃっていただかないとわからないと、こういうことであろうかと思います。  事案がどちらかちょっとわかりませんので、分類して申し上げました。
  24. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこで問題なんですよね。局長は、あれですね、課税処分の適用性について、立証責任当局側にあると言っておりますね。そうするとこういう場合に、何だかわからぬけれど、ひっくるめてその他としてやっておきゃ、これは幾らでもできるわけですよ。あと立証責任原告がやれということで、要するに昨日から問題になっているように、立証責任のすりかえがこういうことで行われるんじゃないですか、今度の百十六条が通りますと。とにかく、わからなくても何でもいいから調査に行ったらこれだけぶっかけておけ、その他幾らだ、これは全部経費否認だと。そういうことになりますよ、これ。そうならぬという保証がありますか。
  25. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 委員がどういう具体的事案で御主張なさっているのか、またそういう具体的な事案があるのかどうかということはおきまして、今、仮説例として委員がおっしゃったことに即してお答えを申し上げますと、もし課税庁がアートコーヒーその他これだけの経費ありと、それだけを課税庁が言いまして処分をしたと。その場合は課税庁はその経費を立証してないわけでございますね、これは。だから、詳細については明らかに課税庁立証をする責任があるわけです。で、ここに出ておる争点は、アートコーヒーについてこれだけの経費があった、何々会社についてこれだけの仕入れを払った、それから何々会社については交際費としてこういうものを使ったという、個々のものについて課税庁が言っておる場合に、納税者の方が、いや、もっとこういう経費もあります、したがって所得はもっと減りますという有利なことを主張する場合に、それの証拠をもって納税者主張すべきであると、こういう規定でございまして、そこは誤解のないようにお願いしたいと思います。
  26. 丸谷金保

    丸谷金保君 ところが、この場合はその他については何らの記帳も何にもなかったんです。損金算入の分の金額をふやすために、アートコーヒーほかこれだけあるぞと。記帳が何にもないんですよ、数字が。数字がないやつをこういうふうに税務署側から示されたわけなんです、その他これだけ、そしてトータルで幾らだという、しりだけ合わせるために。どっかの帳面にあったのを、これとこれとこれと合わせて十件でその他として五万八千何ぼと。それなら、その所得を全部あれせいというのはわかるんですよ。しかしこの事案では、いいですか、この事案ではトータルとしての下の方は合っているけれど、その金額の部分については、アートコーヒーほかというそれに該当するようなものが記帳にも何にもないんですよ。あなたたちは、そういう記帳があったら、それを具体的に説明する責任は原告側にあると言うけど、何も書いてないものをいきなり、これ裁判所ではんと、こういうふうにあるからこの分引いたんだと言われたんですよ。そういう事案なんです。いいですか。そうすれば、これはあなた、ないものを立証せいと言ったってできますか、ないものを。ないものの立証。そういう場合どうなんですか。
  27. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 通常は私どもが課税をいたします場合に、実額課税と推計課税とがあるわけでございます。  実額課税と申しますのは、納税者の方の帳簿、記録に基づきまして課税をいたすわけでございます。この場合、損金あるいは経費につきましては、当然その帳簿に記載してある経費あるいは損金、それからそれを裏づけますところの先ほども申し上げました原始記録があるわけでございます。それを見まして、その両者によりまして、これは経費である、これだけの支出があった、五万何千円であれば、五万何千円の支出があったということが確認されますれば、それを経費として控除するという扱いをいたしておるわけでございます。しかしながら、今御指摘がございましたように、仮に帳簿の方には記録がある。しかし、それを裏づける原始記録と申しますか、領収証とか、そういうものがないということでございますと、これは経費として私ども立証されてないんだと思うわけでございます。そういうような経費として立証されていないものを、税法の方だけで経費なり損金としてお認めいただくのはどうかなということでございます。  これは税法の方からだけ直接やっているわけではございませんで、例えば相手が会社でございますと、法人税法の二十二条というのがございますが、その中で税法一般に公正妥当と認められる企業会計慣行に従って所得を計算しなければいけないということになっておるわけでございます。この場合の一般に公正と認められる企業会計慣行ということは、やはり帳簿の記載だけではなくて、それを裏づける記録とか原始証憑があって初めて経費となるということであろうかと思いますので、そういう点に沿って処理をいたしておるわけでございます。  したがいまして、お尋ねのように、帳簿には記録があるけれども原始的な記録が全くないという場合は、遺憾ではございますが、やはり経費としてお認めするわけにはいかないということでございます。
  28. 丸谷金保

    丸谷金保君 極めて明快な御答弁なんですよね。全くそうだと思います。それじゃ、なぜ求釈明に対して追って立証するなんということで裁判を延ばすんですか。まだ延ばしているんですよ、これ。だから冒頭に私申し上げたように、裁判を遅延しているのはむしろ税務署側でないかというのはこのことなんです。今言ったように明快なものだったら、何でこんなもの延ばすんですか。今の答弁でいいんですね。この案件はそういうふうに進みますよ、そうしたら。そういうことになりますよ。しっかりそめ点について答弁しておいてくださいよ、係争中の案件ですから。いいですか、間違いなく。まことに立派な御答弁だと思うんです。それなのに何でこんなことに延ばすのですか。それで一発で決まりでしょう。そうでないからなんです、あなたの言っているようでないから。
  29. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) お尋ねの案件が必ずしも全部わかりませんので、あるいは間違いを犯す可能性もあるわけでございますが、私どもといたしましては、釈明を求められた場合には、それに対しましてなるべく早く御回答を申し上げるということでございますが、釈明の内容によりましては、実は課税庁側でも準備をしなければいけないということがあるわけでございます。全くこれはもうわかり切ったと申しますか、私どもでちゃんとわかるようなことをお聞きになっていただく場合は、これはもう当然早く御回答を申し上げなければいけないわけでございます。そこから訴訟がスタートしなければいけないわけでございますが、そうではない場合もございますので、そういう場合はいろいろまた準備をしなければいけないということがあろうかと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、お尋ねの案件が今係争中だということでございますが、御議論になっておりますこの国税通則法の百十六条は、これは念のためでございますが、この係争申の案件には適用されないのではないかと思っておるわけでございます。四月一日以降に開始されます訴訟につきまして適用されるわけでございます。これは念のためでございますが、申し沿えます。
  30. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、税務署側としてもいろいろそういう釈明するのに準備が要るし、いろいろ要ると。原告側だって税務署側から釈明を求められた場合に時間が要るでしょう。例えば香典なんか否認されたとする。否認されている。こんなものは領収証も何もないのです、世間常識からいって。それを何とかして香典どこか探して、それらのものを持ってきて、あなた、こういうふうに確かに出していますよというふうなこと、こういうことだってあり得るわけですわね。原告は「遅滞なく」と言われたら困りませんか。あなたは自分の方だけはいろいろ準備もしなければならぬと言っているのです。そうすれば、原告側だけ、納税者側だけ「遅滞なく」ということは酷でないですか、こういう面からも。自分の方だけはそういうときは調べなければならぬし、準備も要ると言っている。
  31. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これはまず基本的には、先ほどお答えしたわけでございますけれども遅滞なく主張していただき、証拠の申し出をしていただくわけでございますけれども原告、つまり納税者の責めに帰することのできない理由によって主張なり証拠の申し出を遅滞なくすることができなかったことを証明したときはこの限りではないということでございまして、これは裁判官がそういった観点から訴訟指揮をなさるということでございます。  それからもう一つ、その二項をお読み願いますと、この主張または証拠の申し出は、民事訴訟法の時機におくれた攻撃防御の方法として却下するという規定がございますが、これはまさに裁判官が訴訟当事者主義に基づいて御判断なさることでございまして、一方的に原告側が言うべきこと、主張すべきことをこの規定によって封ぜられる、訴訟上封じられるということは万々ないような法律の構成にしてあるわけでございます。  それからもう一つ念のために申し上げますけれども、それは課税の基礎となった事実の争いに関する主張、反論の関係でございまして、この納税者がまず反論なさいますが、それをさらに補強するような事実というようなものが出てくれば、これは幾らでもお出し願ってもいいわけでございます。
  32. 丸谷金保

    丸谷金保君 本当ですか。
  33. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) はい。これはもうはっきりしておるわけでございまして、それはもちろん裁判官がその範囲を具体的にそのケースについてどう判断なされるかということはあり得るでしょうけれども、これは訴訟指揮の基本的なルールとしてそれは当然のことだと考えております。
  34. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっと時間があれなんでもう参ってしまうのですがね。これは非常に大事なところで、こんな案件をこういうことで論議途中にして採決してしまったり何かするということは、まことにこれは議会制民主主義に反する。  いいですか。あなた、今そう言われたけれども、確かに裁判官は、民事訴訟法の百三十九条、「当事者カ故意文ハ重大ナル過失二因リ時機二後レテ提出シタル攻撃又ハ防禦ノ方法」云々で、「裁判所ハ申立二因リ又ハ職権ヲ以テ却下ノ決定」をすることができると、裁判所はそういう権限を持っているのです。それだから僕は、これは憲法違反とまで言い切れなくても、少なくても疑義があるし、精神には反するのではないかという参考人意見は傾聴に値すると思うのです。というのは、裁判官にこういう権限があるのに、なぜ百十六条の二項でみなし規定を入れなきゃならないのか。みなし規定を入れたことによって、百三十九条の裁判官自身が判断するそういうものを縛っているでしょう。おくれた場合にはこれはもう百三十九条の却下したものとみなすんでしょう。要するにこれは時機におくれた攻撃として、そういうふうにこれ読めるでしょう、百十六条の二項ね。「遅滞なく」を入れて、さらにみなし規定を入れて、日弁連からの意見書も来ていますけれども、まさにそのとおりだと思うのですよ。  しかもこれが所得税法等という中でこんな大事な法律がだんごにして出されている。本来これは法務委員会でも当然問題にしなきゃならない、少なくとも連合審査の案件でもあると思うのです。しかし、それはこちら側の問題ですから、おたくたちに文句を言っても始まらないことだけれども、今あなたの言われる、それならどうしてみなし規定が要るんですか。裁判官に任じて、民事訴訟法百三十九条に任しておけばいいじゃないですか。こういうところにやはり対等ではないことになる可能性があるんです。冒頭私が申し上げました理は法に勝てずなんです、こういうところへ来ると。
  35. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) それがまた今回の私ども改正一つの重要なポイントであるわけでございますが、なぜ現行法の百十六条を改正すると御提案申し上げているかということでございます。  もう一度繰り返して申し上げますと、現行の規定は、税務署長主張を合理的と認めたときに原告側に対して証拠の申し出をさせるという訴訟指揮規定があるわけでございます。ところが、これが活用されていない。活用されていない理由として二つございまして、一つはまず被告ですね、課税庁側主張が出てきた段階で、それだけを見て合理的であるかないかということを裁判官がなかなか判断できない。したがって、活用されていないであろうということが一つ。  仮にそういう判断をされてそういう訴訟指揮をなさっても、その訴訟指揮の結果それに従うか従わないか。原告側が従わなくても現行の規定では何ら訴訟上の効果が生じないわけでございます。したがいまして、今回の規定ではまず課税処分を絞って、有利な事実だけにまず限定しておるということと、それが原告側の故意もしくは重大な過失によってそういう主張なり立証がおくれた場合には、その規定民事訴訟法の百三十九条の時期におくれた攻撃防御の方法ということで、裁判官がそこで訴訟上の効果を判断していただくということで、そこは訴訟当事者主義といいますか、の観点から、むしろその原則に近づける意味条文を整理させていただいたということでございまして、あくまでこれは民事訴訟法上の百三十九条の規定訴訟になるわけでございますから、それによって納税者と申しますか、原告の権利が不当に訴訟法上侵害されるという結果にはならないというふうに私ども考えておるわけでございます。
  36. 丸谷金保

    丸谷金保君 提案者の側としてはそう考えていないと言うけれども、実際問題としては、一昨日の発言の中でもありましたように、こうなったら、もう弁護士さんは訴訟できなくなるというような意見さえ出ているんですよ。なぜかというと、訴訟の継続、訴訟の維持が非常に困難になる。そうすると、いいですか、あなたたち首かしげるけれども、どういうことになるか。今度は裏で原告に対して、とてもじゃないけれども、こんなことをやってたって簡単にいかないよ、それよりは税務署さんのおっしゃるように修正申告を出して何ぽかまけてもらうよう頭下げるよりないと。現実はこういうことになるんですよ、あなたたち首がしげるけれども。  あくまでも権利を主張するというふうなことがこういうふうに手縛り足縛りです、これでは。裁判の当事者が同等の権利では全くないんです。法律でガリバーと小人みたいなことにしておいて、それで同等の権利を持って争えるようになっているなんて。原告側が今まででさえも修正申告で取り下げているのがたくさんあるわけでしょう。それは原告側主張が正しかったから、税務署側は修正申告して、そして修正申告すればまあいいや、これだけ下げてもらったんだからということで取り下げます。第一あれでしょう、中には全額修正決定したのがありますよね。そうしたらもうあなた争う対象がないんだ、取り下げますよ。出てくる数字は、税務署が国税訴訟においてはほとんど一〇〇%に近く国税庁が勝訴のものばかりが記録として残っているでしょう。だから、税務署の更正決定というものは正しいのだというふうに数字は見えるけれども、実際はそうじゃないのがたくさんあるわけだ。  そういうことだから、これらの法律というのは非常に国民の権利を抑え込む要素を持っている。そんなことないと首がしげるかしらぬけれども、なりますよ、そういうふうに。恐らくあれでしょう、税務訴訟は半減どころか激減するでしょう。しかし、それは決して民主的な日本の行政の前進ではないんです。権利を縛っていくということについては、我々は恐れをもって対処しなきゃならない。安易にすいすいとやっていくべきものじゃないんです。  それで、あなたたちはそういうことを言われるけれども、あなたたちの今の話聞いていますと、納税環境の整備の問題にしても、言っていることと実際の内容とでは随分違うんですよ。例えば税調。あなたたちは当事者のそれぞれの対等主義というふうなものを撮っていないと言うけれども、税調答申の中で、五十八年十一月の答申で、「納税環境の整備」で、「証拠申出の順序の整備と相まって、今後の具体的な訴訟の展開において、納税者立証を求める方向へ漸次進んでいくことを期待できるのではないかと考える。」と、税調はこういう答申をしていますね。あなたたち、そんなことはない、税調なんていうのは何もわかっていない、こんなこと間違っているんだと言い切れますか。この答申を受けてあなたたちは法律をつくったと今まで言ってきたでしょう。税調の中でそう言っているでしょう、明らかに。それが違うんだとあなた言えますか。今までの答弁と全く違うでしょう。
  37. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) そこはもう少し御説明を申し上げなければならないわけでございますが、今回の国税通則法百十六条の改正が、課税庁側立証責任ありとする現在の立証責任の分配の原則を変更するという制度意味を持たないということは、繰り返し申し上げているとおりでございます。ただ、税制調査会の答申をまとめられます過程で、この立証責任のあり方については非常に時間をかけて議論があったことは事実でございます。  諸外国の法制を見ますると、むしろ日本とは逆でございまして、税務訴訟については納税者側立証責任ありとするのが一般でございます。ただし、外国の場合には、租税裁判所とか財政裁判所という別個の司法制度があるというふうなことも関係がございます。  そういった過程を踏まえまして、税制調査会では、今回はこの立証責任の問題について税法上で、税法だけで手当てをするということは適当でない。我が国の場合は税務訴訟という特別の訴訟があるわけでございませんで、行政訴訟一般の問題でございますから、税務訴訟だけについて立証責任の特例を設けるということは適当でない。したがって、この問題については、今後判例なり学説の展開を待つというのが、税制調査会のこの問題に対する基本的な態度でございます。ただ、そういった議論を背景として、今後そういう方向議論が発展することを期待するという希望の表明が行われていることは事実でございます。
  38. 丸谷金保

    丸谷金保君 あなたたち外国の事例を持ち出せば黙っちゃうと思ってしばしば持ち出しますけれども、そういう事例までやっていたら、とてもじゃないけれども、きょうの議論にならないのです。例えば、私はAOの日本に翻訳したやつをずっと読んでみました。特にそれを中心にして——AOというのは西ドイツの法律で、それを読みますと、確かにあなたの言っているようなことがありますよ。しかし前提が違う。例えば税務署員というのは、この場合は帳簿を閲覧しないこともあり得るんだ、日本の法律では。しかし西ドイツの法律なんかでは、必ずまず記録や帳簿をきちっと閲覧しなきゃならぬという義務をしょわしているでしょう。ところが今度の法律は、そういう義務をしょわしてないでしょう。条文があります。税務署職員は、ある場合には帳簿を見ないこともあり得るという条文がありましたわね。ちゃんと逃げが書いてあるでしょう。おたくの方でわかっているでしょう、そういう条文。  だから、こういう場合にでも、そういう調査、例えば所得税法でも二百三十四条がな、要するに納税者の方には、受忍義務というか、そういうものがある。見せると言ってきた場合に必ず見せなきゃならぬ。きょうは都合悪いからあした来てくれとは言えても、おまえなんかに見せられないとは言えないようなあれにしておいて、しかし税務職員の方は場合によっては見なくてもいいようになっている。ちゃんと逃げをつくってあるんだよ。だから、違うようなところは違うようにしておいて、都合のいいときだけドイツがこうだ、フランスがどうだ、そんなこと言い出したら、まだ何ぼでもありますよ。  例えば抜き打ち調査をやってますわね。少なくとも十日ぐらい前に、今度調査に行く、普通の調査だったらあらかじめ通知を出して、それから行くのは当たり前です、準備さしておいて行くのが。ところが、たまたまそうでなくていきなりばかっと行く場合ありますでしょう。ドイツやフランスでは、こういう場合は、必ずちゃんと通知をして、それから行きなさいというふうな義務を税務職員に与えている。もっと極端に言えば、担当する弁護士なり税理士なりがいれば、そういうところにもちゃんと通知しなさいというふうなことを、税務署に対して、権力の側に対してそういう義務を与えている。そういうところが日本では皆ずっこ抜けているでしょう。そういうところ全部ずっこ抜かしておいて、都合のいいところだけドイツはどうだ、フランスはどうだ。外国の話はよしましょうよ。それやってたら何日もかかるよ。幸いにして日本に翻訳されている本がたくさんあるので、ある程度は我々でも読めるの、あなたたちのように横文字を読める者だけでなくて。日本の法律を今審議しているんだから。  そんなことを言えば、例えば直間比率の問題だって、大蔵大臣もよく言うけれども、欧米では欧米ではとか、あるいはヨーロッパでは五分五分だとか、よくそういうことを言いますよ。ところが、アメリカでは直間比率、直接税が八割近いんだということはちっとも言わない。ヨーロッパの方では直間比率が半々か四分六だから、日本の直間比率からいうと、間接税をもっとふやしてもいいんだという言いようはするけれども、アメリカは日本よりもっと直間比率が高いんだという話は全然しない。  そういうふうに外国の法制なり制度なりの都合のいいところだけをとってきて今のような答弁をすると、我々もやっぱりそういう形でそれじゃ何日でもやりましょうかと。そういうところへ逃げるのはやめなさいよ、どうなんです。
  39. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 外国の制度議論は別といたしまして、繰り返し申し上げておりますように、今回御提案申し上げております国税通則法百十六の改正規定によりまして、従来からの立証責任の分配の原則、つまり課税庁側が基本的に立証責任を負うという法理については何ら変更は生じないわけでございます。
  40. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃ、今このことで一番心配なのは、推計課税がうんと行われるようになるんじゃないか。例えば今記帳義務とかなんとかあなたの方で言っているが、しかし帳簿の検査を困難とするような事情があるときにはこれを採用しないでもいい。白色申告の場合にはそういう規定がありますわね。二百三十一条の二の第二項、青色だけなんですよ、帳簿尊重義務。尊重もしないような法律をそのままにしておいて納税者にだけ記帳義務、全部一方的じゃないですか。どうなんです。
  41. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ただいま御指摘にありましたように、二百三十一条の二の第二項で今回記帳義務をお願いするわけでございますから、課税庁側もそれに誠実に対応するように、調査に当たりましてはこの帳簿を検査しなければならない。これは税務職員に義務づけておるわけでございます。ただし、ただいまこれも御指摘になりましたように、検査に上がりましても、帳簿をつけておられることはおられるわけですけれども、その検査ができないような物理的な事情、例えば実際検査に行きましたときに帳簿が紛失してないとか、とにかく帳簿がないといったような事情とか、平穏に帳簿を調査させていただくような状況にない場合は、これはいたし方ございませんので、そういった場合を除き、税務職員はその帳簿をまず検査するということを義務づけているわけでございます。
  42. 丸谷金保

    丸谷金保君 じゃ、例えば西ドイツでは、すべての記録と帳簿を課税の基礎としなければならないというAO百五十八条の規定があります。そういう点で実額計算による、この推計課税を極力税務署員に成しめる、そういう規定があるんです。しかし検査を困難にする事情があるわけですね。困難にする事情というのは具体的にどういうことを想定しているんですか。
  43. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは先ほど申し上げましたように、まず物理的に調査に赴きましたときに帳簿がないというふうな、いろんな事情によって帳簿が紛失したとか物理的に帳簿がないという場合がございます。これは帳簿を検査しようと思っても検査できない事情でございます。  それからもう一つは、帳簿はございますけれども、通常平穏な形で調査させていただけないような事情がある。これも物理的に帳簿の検査ができない事情の一つの対応でございますけれども、そういうやむを得ず帳簿が検査できないというふうな事情の場合はその限りではないということを書いておるわけでございます。
  44. 丸谷金保

    丸谷金保君 「当該帳簿の検査を困難とする」。阪簿がない場合という場合に「当該帳簿」という言葉を使いますか。この法律で「当該帳簿」というのは、あなたの今言うように、ない場合に「当該帳簿」という言葉はどこから出てくるのですか。
  45. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) この「当該帳簿」というのは、前項から引いておるわけでございます。納税者はとにかく帳簿を記帳していただいているわけでございますね。帳簿があるわけでございますけれども、検査に行ったときに帳簿がないという場合でございますけれども、しかしそれはかってあった帳簿でございますから、「当該帳簿」ということになるんじゃないかと思うのでございますが。
  46. 丸谷金保

    丸谷金保君 いいですか、二百三十一条の二の二項には「当該帳簿の検査を困難とする事情」。それは当該帳簿がなかったら「当該帳簿」と言わないでしょう。この法律にしたら、これはなかった場合も入るんですか、「当該帳簿」に。法律は難しいな。どうなんですか。帳簿がないのに「当該帳簿の検査を困難とする」というのか。当該帳簿があるから「当該帳簿の検査」でしょう。最初からなかった場合どうなんですか。
  47. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) この「当該帳簿」というのは、前項の規定を引いておるわけでございまして、二百三十一条の二の第一項ですね、そこに「当該帳簿」という言葉がございますが、これは記帳し、保存されている当該帳簿でございます。  ところが、検査に赴きましたときに、当該帳簿が、例えば非補に遠隔地にあるといった場合に、そこで検査できないわけです。しかし当該帳簿は遠隔地にあるわけでございます。そういった事情も入るわけでございます。
  48. 丸谷金保

    丸谷金保君 あのね、農家に調査に行く、遠隔地にあるなんていうことはありませんよ。最初からないんです、当該帳簿は。遠隔地なんというのは、何か納税者は憩いと考えているからそういう発想ばっかりになるんだよね。冗談じゃない。あんた、タックスペイヤーですよ、納税者は神様でしょう。少なくとも税務職員はそれくらいの気持ちを持ってやってくれないと困るんだよ。  この間参考人として来られた方が、税理士会の顧問ですか、日本税理士会としては相当偉い人だと思うんですが、あの方が、今の税法で、控除の問題は非常に難しくて、長い間経験を持っている我々商売人と言いましたが、我々商売人でもわからないと言うんだよ。この人はおたく関係ない税理士会の顧問。ところが、いずれはあなたの方で勲章を出すんでしょう。何かそういうふうに内定しているようだ。税理士会の最高の地位まで上ったような武田亨さんが、所得税の控除について、私も経験あるけれど、我々商売人でも簡単にわからないと言う。こんなものを記帳させる。今の日本の自主申告の中で、記帳義務だとかなんとか、今からこんなことつけて、やれますか、実効が上がりますか。こういう人たちでさえわからないと言っているんだよ。こんな難しい法律だから、今のように、当該帳簿が遠くにあるとか、無理な答弁をしなけりゃならないように、すべての仕組みの中で無理に無理を重ねるから、次から次に神様であるべきはずの納税者の手足を縛るような法律を出してこなければやってけないようになる。発想の転換が必要だと思いますが、大臣いかがですか。  こういう仕組みのわかりにくい税法ですから、税務の職員だって自分たちのやっている仕事をよくのみ込めない人もたくさんおりますよね。税理士さんのうんと偉い最高の人さえもわからない。控除くらいでもそうなんですからね。これはなかなか難しいよ、税法というのは。そして、わからないから、わからないなりにむちゃもやるし、無理もやらざるを得ないことになる。だから、いろいろ不信も起こってくる、不公平感も起こる。おれたちはこうだけれども、あいつらだけはうまいことやっているんじゃないかと。こういう全体の仕組みの中でもう少しわかりやすい税法体系をしっかりつくり直していかなければ、申告納税制度というのは形骸化するし、ましてこの記帳義務だとか、こういうふうなことで縛りつけていくような方向というのは間違いだと思いますが、いかがでしょう。
  49. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税理士会の専門家の方が商売人にもわからないとおっしゃったのは、恐らく複雑だという表現がそうなったではないかというふうに私どもは思います。元来、税法というのは確かにわかりやすいものであることが好ましゅうございますし、それはこれからこうして議論を続ける間に逐次わかりやすくしていかなきゃなりませんし、また議論を通じて国民自身の理解度も上がってくるかもしれませんし、その意味においては相対的なもんではないかな、こういうふうに考えております。  それから今次の記帳というのは、内容はこれからでございますが、非常に簡易なもので、私の表現をもってすれば、むしろ申告制度のあるべき姿としての青色の方へ誘導する一つ段階ではなかろうかと、こういうふうな理解をさしていただいておるところであります。
  50. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃ、もう時間ですのでこれでやめますけれど、最後に一つだけ要望しておきます。  青色、青色と言うけれど、満足に記帳ができないから青色もできないでいる多くの納税者のいることを忘れないでください。これは無理なんですよ。農家なんかだって、それをやれば有利なことはわかってます、きのう言ったように。できないんです。それに無理な記帳義務を課すことがいかに大変な法律であるかということを理解していただくことを要望いたしまして、私の質問、残念ながら時間切れで終わります。
  51. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 全体の時間の関係もあるようでございますので、本来ならばまだ問題をたくさん持っているわけでありますけれども、あと五分ぐらいで私の質疑答弁を終わりたいと思いますから、主として要望程度にとどまると思いますが、ひとつ御検討を賜りたいと、こういうふうに思います。  その一つは、この前もちょっとお話を申し上げましたんですが、家内労働法に基づく家内労働手帳を持っている人の税金というのが非常に優遇されていない。これはもう皆さんも御承知のとおりだと、こういうふうに思います。今度パートで働く人たちの減税額というのがかなり上がったわけでありますけれども、家内労働をやっている人たちの点は上がっていないわけであります。条件は、自分の家でやっているのと工場に勤めてやっているのと、そういう違いだけでありまして、現実的には大した違いはない、こういうふうに私は思います。まあいろいろ税法の諸問題がありますから、そういうことになると思いますが、この辺はひとつ十分検討していただいて、この辺にも税の不公平の問題というのが制度的にもあるわけでありますから、この辺も十分にひとつ検討をしていただきたいということが一つであります。  それからもう一つは、欠損法人といいますか、赤字法人がありまして、かなりの数の赤字法人というのが出ているわけでありますけれども、この中には実際は黒字なんだが税法によって赤字になったものがある。たとえば指定寄附金などというようなものはその一つでありましょうし、あるいは特別償却をやったために赤字になる、あるいは配当金の繰り入れの問題、益金不算入の問題なんかもそういう問題の一つだと思うんです。実際は黒字なんだけれども税法で赤字になるというものは、私はそれはそのままでいいとは思わないんですね。何らがこの問題を国税考えてもいいんじゃないか。地方税では確かに法人割という一番最低の基礎額というのはあるわけでありますから、これは国税の中でもそういうものを考えるべきだ、こういうふうに思います。あるいは指定寄附金なんかにしましても、もしそれによって赤字になるというようならば、それは一定の額というものをそこで抑えてそれ以上はだめなんだ、こういうような何らかの形にしながら、指定寄附金をしたために赤字になって税金は払わない、あるいは特別償却をやったから税金を払わない、こういうようなことは少し考え直してもらわなければならない点であろう、こういうふうに思います。きょうはお答えはいただかなくて結構でありますから、ひとつこれは今後の検討課題として検討してみていただけませんでしょうか。  あと税務署の問題とかありますけれども、これはまた別の機会に私、御質問を申し上げますから、この二つだけひとつ課題としてお考えをいただきたいと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  52. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 最初の家内労働法の関係でございますが、パートの問題を今日まで一応定着さすまでにも、そのことがあったからいろいろな矛盾を消化しながらやっと定着さした。今度の場合なおのこと、内職の方とかあるいは婦人外交員の方とかいう問題との間の感覚的矛盾というものに対して割り切れない気持ちを私も持っております。それで各党間の専門家で今度少し話し合いしてもらえませんでしょうか、こういうことすら私の方からむしろ御提案しておる。したがって当然のこととして、もう一遍原点に返るというと表現が少しオーバーですが、そういう形から私は検討すべき課題だと自覚しております。  それから二番目の問題は、ああして税調等から、全法人の約五〇%が赤字申告を行っておる、この法人といえども公共サービスを享受している等の観点から何らかの応益的負担を求めてもよいではないかと。応益負担は、いわば応能負担でない応益負担は、地方税の方では若干今御指摘のとおりあるわけでございます。したがって、これについては所得課税である法人税の性格から見て企業に対する他の租税との関係等幅広い観点から検討する必要がある、こういうふうに税調でも指摘されておりますので、御趣旨の点十分踏まえて検討を続けさしていただきます。
  53. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最初に、本日私は租税特別措置法質問をしたいと思っているんですが、最初に委員長にぜひお伺いをしたいのです。  昭和四十八年の三月十九日に、当時の河野参議院議長が中村衆議院議長を訪ねて国会の運営等について申し入れをいたしました。その申し入れの中には、参議院での審議権を確保するために少なくとも二十日前、ここは会期切れとなっておりますけれども、その二十日前には法案を参議院に送ってほしい、こういうふうに申し入れをした。それに対して中村議長は、趣旨はよくわかったので理事会等に図って努力するということを答えておりますが、この申し入れは、その前の八日の日に開かれた参議院の各党幹部会会議の了解に基づいて行われたということでございまして、したがって参議院の総意として申し入れをしたんだということでその趣旨をわかってほしいという説明をしております。  これに対して、今回、こういう重要法案は、二十日間の審議の期間を保障しようということがそのときに言われて以来衆参両院の間で生きてきていることは間違いないと思うんでございますが、そういう点からしますと、今回その点を委員長はどう御認識なさっているか、まず最初に伺っておきたいと思います。
  54. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 鈴木君、これに関連するその他の質問がございますか、もっと。
  55. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 あります。
  56. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ずっとおっしゃってください。総合的にお答え申し上げたいと思います。
  57. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、この審議期間の保障ということは、大変重要な問題でございますから生きていると思いますが、間接税の三法が来たのは二十三日、直接税関係が十六日、石油税が十八日ということでございまして、これはいずれも重要法案だと私は思うんです。重要法案でないなら何も夜中まで審議をする必要はないだろうと思いますので、重要法案であるとしますと、二十日間の審議ということになりますと、間接税の方は十一日、直接税が十六日、関税が四月の十八日まで、送付された日からかかるとすると期限があるわけであります。何か口切れだからということで、もうばたばた火事場の片づけみたいに忙しくさせられておりますけれども、そんなんじゃなくやっていかなければならないと思いますんですが、この点について委員長として、これはもう当然、衆議院の方の委員長に対して、議長を通してでも、きちっと早くよこすように申し入れをするべきではなかったかという点。  いま一つは、これから先こういうことが恒常的にあるかもわかりません。会期末を控えてばたばたとする、そういうことはあると思いますし、そういうこともございますので、こういう点についてのこれからの委員長としてのきちんとした御決意と態度をまず最初に示していただきたいと思います。
  58. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 全体として鈴木委員の御指摘の趣旨については私は賛成でございますけれども、第一点の二十日という時間的限定がいいかどうかは別として、参議院において十分な必要な審議の時間を確保すると、こういう趣旨であると理解するならば、私は現在もそれは生きていると思います。  それから二番目の点で、ぎりぎりに送ってきて審議の時間がないことに対する抗議を衆議院の大蔵委員長にすべきじゃなかろうかという御質問につきましては、これは釈迦に説法ですけれども国会の運営というのは有機的な連携のもとに行われるのが筋だと思うんです。そのためには与野党各党が協力していただくことが前提だと思うんです。今回の事態を見ますと、先ほど指摘のとおり確かに異常異例であるかもしれません。したがって、これは全党的な問題としてお互いの党を通じ、またお互いの機関を通じて今回の問題を反省すべきじゃないだろうか。単に大蔵委員長だけの責任じゃないと、こういうふうに私は思っております。  それから第三番目の点は、こういうふうなことで審議時間がしょっちゅう短いような状態においてどういうことをこれから考えるのかという御指摘、御質問だと思うんですが、まさにそれこそ先議・案件をふやしていただくなり、あるいはまた今回やっていただきましたように予備審査をどんどんふやしていただいて、そして実質的な審議時間を前もって確保しておく、こういうことについて各党の御協力をいただきたい、そういうことによって実質審議時間の埋め合わせをやっていくべきじゃなかろうかと、こういうことでございますので、議事整理に当たる委員長といたしましても、今後そういう点について各党の皆様方に御協力を賜りたいと、むしろ逆にお願いを申し上げておきたいと思うんです。答弁になりましたかどうかわかりませんが。
  59. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 先ほど送付の月日を間違いまして、間接税が二十七日、直接税が二十九日ですからおのおの十五日と十七日までに上げればいいということにもなるわけでございますけれども、今委員長の大変謙虚なお話がありましたが、院の委員長というのは権限が無限でございまして、参議院の規則や国会法を見てもわかりますように、理事や委員なんてなくても、委員長一人いればできるような感じの法律になっておりますから、強大な権限を持って院の運営に当たっていらっしゃるわけでございますので、この点はよく御理解をいただいて、委員長から委員長というより、委員長から議長、議長から党へというふうな院としての行動というものを起こしていただければありがたいということで、この点は御配慮のほどをお願いします。これは答弁結構です。
  60. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 委員長個人という立場ではございません、院を代表するためには理事会の御賛同を得なきゃなりませんから、その際はお任せいただきたいと思いますが、御趣旨の点についてはよくわかりました。
  61. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 租税特別措置について伺いたいと思います。  租税特別措置、とりわけ企業関係特別措置は、これは隠れた補助金、こういうふうにも言われております。昭和五十一年度以降累年にわたって整理合理化されてきた、こう言われておりますけれども、まだまだ整理の余地は残されているというふうに思わなきゃなりません。私もこの間の予算委員会においては、資本蓄積型歳入構造から転換しろということでこういう問題について申し上げたわけでございますが、そこで五十一年以降の整備状況をまず明らかにしていただきたい。  また、いま一つは、例年二年延長とか一年延長とかいうふうでやっておるようでありますが、そういうものの中にはかなり以前から、年がら年じゅう二年延長をやったり一年延長をやる、こういうようなものもあって、恒常的になっているようなものもありますが、その実態をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  62. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず第一点でございますが、御指摘のとおり、企業関係租税特別措置につきましては、なかんずく五十一年度を起点にいたしまして連年厳しい見直しを行ってまいりました。やや計数的にわたりますけれども、五十九年度の予算の見込みにおきます企業関係租税特別措置の減収額は三千六百四十億円ということでただいま国会提出をいたしております。これの法人税収に対する割合は三・三%でございます。五十一年度租税特別措置の整備合理化に本格的に取りかかりました以前、例えば昭和四十七年度でございますと、法人税収に占めます企業の減収額の割合は九%ぐらいの水準でございまして、したがいまして、現在の企業関係租税特別措置の規模は、その意味では四十年代の大体三分の一ぐらいの規模になっておるということでございます。  で、項目数で申し上げますと、現在五十九年度、今回提案申し上げております租税特別措置法をお認めいただきました後で項目の数は七十四項目に相なりますが、五十一年の整理に取りかかります前の件数が九十八件でございますから、まあ大体四分の一ぐらい項目数としても減っておるわけでございます。その間大きなものといたしましては、公害防止準備金とか違約損失補償準備金とか電子計算機の特別償却等々数々、約四十項目の措置を廃止してまいりましたけれども、ただ、その間新しい政策的な要請が出まして新しく創設した措置もございますので、結局ネットでは、先ほど申しましたように二十四項目当時より減っておるということでございます。  私ども考えといたしましては、企業関係租税特別措置につきましては、御承知のとおり、これは実質的な企業に対する補助金でございますので、その意味では、税制面におきましては、既に早く五十一年からスクラップ・アンド・ビルドの整理を行ってきたというふうに私どもなりに評価をさせていただいておるわけでございます。その意味で、現在ではこの整理合理化の余地は率直に申し上げましてかなり狭まっておるのではないかというふうに考えておりますけれども、今後ともこれを見直し、合理化を図っていくという努力は続けなければならないと考えております。  それとの関連におきまして、企業関係租税特別措置のうち、二年ないし三年の時限措置を持っております項目が多いということは御指摘のとおりでございます。私どもはこの二年間、原則として二年間という措置を、時限措置を講ずる一つ考え方といたしまして、もちろんそれは個々の政策によりましては二年間だけそれをやれば、もうそれで使命が達せられる、当初からそういうものが予定されているようなものもございますし、当分の間その政策が必要であると考えられても、とりあえず二年間なら二年間ということで時限を切っておきますことは、期限の到来をしたときにそれを改めて見直す、いわば既得権化しないという意味でスクラップ・アンド・ビルドの手法を今後も続けていく限りにおいては、むしろ小刻みではございますが、原則として、特に企業関係特別措置につきましては、そういった二年間といったような時限措置を講じてまいるのがいいのではないかと、過去の経験からいっても私どもはそういうふうに考えておるわけでございます。
  63. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 特に財政再建の前提として、現在は不公平税制の是正ということが求められておりますし、    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 そういう点では隠れた補助金とも言われるこの特別措置についても十分国民の前に明らかにする必要があるだろうと思います。大蔵大臣は、いろいろ事あるごとに課税ベースの広い間接税についてそれを十分勉強していると、こういう御発言がございますが、この際、企業関係特別措置の全面的な見直しもこれはあわせて勉強をすべきであろうと、こういうふうに思うんでございますが、いかがでございますか。
  64. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはよく言われる不公平税制、そのときにいつもお答えに困りますのが、人それぞれによって不公平という問題に対する受けとめ方が違う。しかし税の制度論の中から明確にその範疇に仮に入るとしたら、租税特別措置というのはまさに特別措置でございますから、ある種の補助金であるという意味においても、制度論からいえば最も公平でない税制だということは言えると思うんであります。したがって、全く別の政策選択意味で、この問題はそのときどきの情勢に応じてできてきておるわけでございますから、本来、絶えずこれは見直していかなきゃならぬ問題だ。  それで、税調の答申を見ましても、言葉も非常に気をつけて、絶えず吟味をするというふうな言葉が使われておりますが、吟味と見直しとどう違うかは別として、いかにもそれに適切な言葉のような感じてその答申の内容を見ております。したがって、ゼロの段階から見直すというべきものか、現状の、現存する制度というもののいわく因縁があってできたものですから、そこからまさに吟味を加えるべきものかというふうな点について、私も私なりにそれをそしゃくしてみなきゃならぬなと。が本来制度上論理的にあり得る不公平というのは、特別措置でございますから、まさに委員の御指摘のとおりの考え方で、絶えず見直しを行っていかなきゃいけない問題だという事実認識は私もひとしくいたしております。
  65. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今回いろんな租税特別措置がなされております、新規もあります。その租税特別措置をより複雑にしているのは、今回の改正でもわかりますが、物品切手の免税点の引き上げを新たに指定しております。六百円のものを七百円にしているというわけでありますけれども、本来これは印紙税法の方で規定すべき改正じゃないか。それを特別措置の中で行っている。また乗用自動車等の物品税率の引き上げも、本来は本則の方でやるべきじゃないかと思いますが、それもことしの租特別措置の方に回ってきている。うがった話をすれば、租税特別措置法の中に盛り込んでおけば、ほかの日切れ法案と一緒に年度末にかかっていきますので、法律の成立が容易になると。これは随分うがった、意地悪い質問で申しわけないんですけれども、そういうふうにも考えていいんじゃないかとまで考えられますが、そういうことになれば、先ほど私が委員長に、大変恐縮だったんですが、御質問したような国会審議権の拘束ということにもなっていくのじゃないか。だから、こういう法律規定の仕方を、特別措置の内容の見直しと一緒に、今申し上げたような法律規定の仕方についても一度見直す必要があるんじゃないかということがどうしても考えられるわけですが、これについて大臣の御見解をひとつ伺いたい。
  66. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 大臣の基本的な御答弁があります前に、今回、今御指摘になりました物品切手の印紙税の免税点の問題、それから普通乗用車の物品税率の引き上げをなぜ租税特別措置でお願いしておるかという私どもなりの考え方をまず申し述べさせていただきたいと思います。  まず、印紙税の方でございます。これは端的に申し上げまして、今回酒税の税率の引き上げ、なかんずくビールの税率の引き上げをお願いしておるわけでございます。現行の物品切手の免税点は六百円未満ということでございまして、この水準が決められましたのは実は四十二年からでございます。その後物品切手の税率を逐次引き上げてまいりまして、現在この六百円を超えますと二百円の印紙税がかかってまいるということでございます。ところが、今回ビールの税率の引き上げを行いますと、現在ビールの二本券というものがビールの市場で非常に出回っておりまして、このままでほうっておきますと、ビールの二本券が六百円の券面を上回るわけでございます、小売価格が上がりますから。そういたしますと、一挙に二百円の税負担ということになりますと、ビールの流通市場に非箱に大きな影響を与える。私ども割合この問題を簡単に考えておりまして、それではピールの一本巻にすれば同じことではないかというふうに考えたわけでございますけれども、まずビールの二本勢で流通しておるということが一つと、一本券にいたしましても物品切手をつくるコストは同じでございます。そういたしますと、流通業界にかなりの影響を与えるということがわかりまして、結局、財政物資ということで、しかも現在の財政事情等も考えまして、ピールの税率を引き上げさせていただくわけでございます。  これは財政収入の確保の点からいきましてもこの問題を放置するわけにはいかない。正確に計算いたしますと、ピール二本券だけに税金がかからないようにするとすれば六百三十円でよいわけでございますけれども、免税点は従来百円刻みでございますのでぎりぎりの七百円にさせていただいた。しかし、これは物品切手そのものの免税点の見直しという観点じゃなくて、専らビールの問題に着目した引き上げでございます。かといって、ビールの二本券だけ免税であるというのは、やはりこれは課税の公平上おかしいわけでございますので、物品切手についてだけとにかく免税点を百円とりあえず緊急避難として引き上げさせていただいた。しかし、印紙税の各種の免税点等につきましては、印紙税全体の見直しの中でいずれかの適当な機会にもう一度見直すべきであるという、いわばそういう位置づけを沿革的にもはっきりさせておくという観点から特別措置法規定させていただいておるというのが私ども考え方でございます。  一方、普通乗用車の問題でございますが、これは御案内のとおり、本則は税率が三〇%になっておりますけれども昭和四十七、八年の例の日米の貿易摩擦、一自動車戦争の経緯がございまして、現在の租税特別措置の政策税制で、いわば軽減措置として規定がされておるわけでございます。今回の物品税の税率の引き上げに当たりまして、小型乗用車については一%の引き上げ幅でお願いしておるわけでございます。  そういたしますと、本来の本則税率の構造からいきますと、少なくとも普通乗用車につきましても一%以上の税率の引き上げをお願いしなければならないわけでございますけれども、やはり日米間の自動車問題を考慮しなければならない。つまり普通乗用車というのは大型車でございますが、そういった事情は四十八年当時と同じような状況、あるいはそれよりもさらに強くなっているような環境でもございますので、小型乗用車については一%引き上げながら、実は普通乗用車につきましては逆に〇・五%の引き上げ幅にとどめた。したがいまして、そういう政策的な位置づけは四十八年当時と相変わらず変わっておりませんので、今回も租税特別措置法で軽減税率ということで規定させていただいておるわけでございます。
  67. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今主税局長からお答えがあったとおり、私自身も実は今のような説明で納得したと、こういう事実経過でございます。
  68. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 所得税減税との関係からですが、同居特別障害者等の特別控除を二万円引き上げて七万円にするということにしておりますが、本制度は今後とも引き続き存続されるようになるんだろうと、こういうように思いますね。そうすると、今述べたような税制を簡素化する——今の二つの答えはよくわかりました。将来、物品税については根本的な見直しをするということで、さしあたり今こうなっているという話でしたが、そうでなくて、税制簡素化をやるという上からいっても、こういうふうに期限を限定していない制度については、これは所得税の本法の方に組み入れるべきではないかというふうに思うんですが、なぜ特別措置法の中に置いてあるのかということでございます。
  69. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これもやや沿革的な理由があるわけでございますが、特別障害者に対する控除は本則に規定されておるわけでございますけれども、同居の場合にいわば加算される形で租税特別措置法に同居の部分について規定がある。これは五十七年度に創設された制度でございまして、それ以前に特別障害者の福祉対策として、国の福祉施策といたしましては、一定の社会福祉施設に収容いたしまして公費でもっていろいろ施策に当たっておるわけでございますが、いわゆる寝たきり老人等の場合は、御本人の幸せという観点もありまするし、効率的な福祉を今後考える上で在宅対策をもっと重視すべきじゃないかという御議論がありまして、それの税制面での受け皿として在宅福祉を奨励するという極めて奨励政策的な位置づけでこの制度が設けられたわけでございます。  その制度の趣は、恐らく五十九年度この額を引き上げさせていただく場合においてもまだ変わっていないのではないか。将来こういったものの人的控除を税体系の中でどういうふうに取り込んでいくのか、あるいはむしろ整理していくという方向も基本的な考え方として底流にもあるわけでございますが、そういった段階でもう一度在宅対策の特別控除、本則ものとして考えるのかどうかという議論は、将来の議論としては私はあり得ると思いますけれども、五十九年度の改正においては従来の位置づけでこれを引き上げさせていただいたという考え方に立っておるわけでございます。
  70. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 将来としてはあり得るというのはわかりましたけれども、あり得るじゃなくて、あり得なきゃならないというふうに思うんですね。そうしていかないと、何か特別措置以上のものであって恒常的に措置をされなきゃならないものというふうに思いますので、この点は、あり得るということじゃなくて、あり得なきゃならないというふうにひとつ考えていただきたいと思います。  その次に利子配当課税問題、この委員会でも何回も何回も今までに議論がなされてきました。特にポスト・グリーンカード制度の行方について注目されておりますし、八月ごろまでに結論ということでこの前も大蔵大臣からも御答弁があったことはよく存じ上げております。これは一月二十四日の朝日新聞に出ていたのを私ども読んだのでありますけれども、この利子配当課税の改革、こういうことから考えてどうなっていくのか。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕 特にグリーンカード制代案は、マル優に対して所得制限を設けるというやり方、それから利子所得すべてに高率の源泉課税をつけるとか、正しい住所氏名の申告者に低率にして、そうでない架空名義みたいな預金については高率の源泉課税を課するとか、そういう税率の格差を設けるとか、そのほかマル優を廃止してしまうとか、グリーンカード制を凍結解除して改めてもう一度実施するとか、あるいは現行制度の維持によるグリーンカード制の凍結の延期であるとか、ありとあらゆることが考えられているわけでございますけれども、このような考え方はどうか、今後のポスト・グリーンカード制についてはどう考えていくのか。まずひとつ伺いたい。
  71. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは今御指摘にありましたとおり、本年一月十八日の五十九年度答申におきましても、「この問題は、多数の貯蓄音及び貯蓄取扱機関等に関係するほか、金融市場に大きな影響を与え得る問題であるので、中期答申に示された考え方を踏まえつつ、今後なお時間をかけて検討を進めることが適当である。」と、こうされておいて、そしてその後で「ただ、グリーンカード制度の凍結期間との関連から」、ここのところがちょっと気にかかるんですが、「できれば」と、こう書いてあるんです。「できれば今年夏頃までに結論を得ることが望ましい。」とされております。私どもは「できれば」でないことが好ましい。すなわち、おっしゃいましたように、「夏頃までに結論を得ることが望ましい。」というようなことで、政府としても、今後の税制調査会での検討の推移を見ながら鋭意検討を進めなきゃいかぬ。  それで、今おっしゃいましたように、五分類、五通りあるとか、六通りあるとか、それを組み合わせすれば七つになる、八つになる、いろんな議論ございますが、そういうこと点、政府として、これで行こうじゃないかといって特段の具体的な案について検討をしておるというところまでまだ行っておりませんけれども、今のように考えられるいろんな制度について網羅的に挙げたものの中で、税調の検討を踏まえながら私どももそれを正確にフォローしていって、「できれば」じゃなくして、夏までに結論ができ上がりたいものだというふうに認識しております。
  72. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今言った六つ以外の何か方式というのは今考えられるでしょうか。
  73. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ただいま大臣答弁にもございましたように、これからいろんな議論を煮詰めていただくという段階でございますが、ただいま委員がおっしゃいました幾つかの通りというのは、この問題にアプローチするパターンとしてはおよそそういったものの中から、もちろんその中でも具体的にどういう手段でということになりますと、さらに細分化されたいろんなパターンが出てくるかと思いますけれども、基本的な検討のパターンは、今おっしゃったようなものがやはり大部分ではないかというふうに考えております。
  74. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 まず、これを消去法で考えていきますと、もうすでに国民の間にすごく浸透しているマル優の廃止というのは、これは確かに総合課税になりますので余り問題はなくなるんです。それから税調が一度否定してしまったというか、もうすでにグリーンカード制は否定されております感じでありますが、そうなるとこのグリーンカード制をもう一度出すということは難しい。正しい住所氏名をと言ったって、本人をどう確認していいんだかわからないという問題も起きるだろう。正しい住所氏名がある人ならばいいと言っても、本人であるかどうかの確認がまた難しいという問題が出てくる。逆にこれはひょっとして番号制じゃないかなんて議論が出る。発展しやすいわけですね。そうすると大変選択が限られてくるんでございますが、今のいろいろの中で、きょうは詰めても詰まらないかもしれませんけれども、実現性の高いものとしては一体どういうものが考えられるのかということなんです。
  75. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 非常に難しい御質問でございます。今の段階での大変難しい御質問でございますけれども、私ども利子配当課税の問題点として、ただいま委員も御指摘になったわけですけれども、問題を大きく分けますと、一つは利子配当課税に対する基本的な課税方式をどうするのかという点が一つと、それから少額非課税貯蓄、いわゆるマル優制度をどうするのかと、大きく二つに分けられると思うわけでございます。  利子配当課税の基本課税方式をどうするのかというのも、これも観念的にパターンを分けますと、完全総合課税をやるやり方と、一部分離選択制度を存置した形での現行の枠組みのような原則総合課税、一部分離選択といったような制度、それから税制調査会の中で一部の委員から強い議論があるんですけれども、一律分離課税という考え方もあるわけでございます。ただ、この一律分離課税というのは、所得税制として観念する限り、非常に問題があると私ども考えております。つまり、新規の税目としてそういうものを議論するという場合は別にいたしまして、一部分離課税というのはなかなか問題があるのではないかと考えておりますけれども、しかしこれは識者の中にも有力にこれを主張される人もおりますので、私どもは今の段階で、税制当局として、これを頭から否定してしまうわけにもいきません。恐らくこういったものの中から議論がされる。  ただ、問題は、総合課税にいたしましても、分離選択課税にいたしましても、その手段でございます。どういう技術的なシステムでそれをやるかというのは、実はこの問題の一番難しいところでございます。  それから、それと関連するわけでございますけれども、マル優につきましても、税制調査会のいわば中間的な答申というふうに考えてもいいと思うんですが、昨年の十一月の答申なり、ことしの年度答申におきましても、問題として指摘されておりますのは、マル優あるいは郵便貯金を含めまして、乱用の実態というのはこれは否定できない。これを何とかしなければならないという問題意識と、それからもう一つは、現在マル優のような広範な非課税措置、貯蓄に対して、その政策的意義ありやなしやというこの基本からの議論があるわけでございます。したがって、それは存廃論にもかかわる問題でございますけれども、これについても大変大きな問題でございますので、現時点で税制当局として消去法的にこの問題にアプローチするというのは、なかなか問題が大き過ぎまして、確定的なことを申し上げられる段階ではございませんし、またそういうことを申し上げるのは適当でもないと考えております。  それともう一つは、仮にそういうマル優貯蓄、マル優制度等を存置いたしました場合でも、このグリーンカード制度等の経験から見まして、民間の貯蓄と郵便貯金のイコールフッティングといいますか、このバランス論、これが非常に大きな問題になります。それからその場合にグリーンカード制度をごく限定的に残すのか、あるいは発想を変えて別の現実的な限度管理の方法を考えるのか、あるいはもっと別の考え方先ほど委員がおっしゃいました少額利子控除のような考え方でアプローチをするのか、いろんな考え方が出てまいっておりますが、これにつきましても、現時点で税制当局として消去法的に問題を絞るわけにはなかなかまいらないわけでございます。先ほど大臣答弁にもございましたように、夏ごろまでを一応の目途といたしまして、とにかく真剣にこれから具体的な検討に取りかかるという段階でございます。
  76. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今の答弁の中からちょっと私も一つ方向が出たような感じがしたのは、これは徴収にも関係するんでしょうが、税務職員の負担がふえてしまうような行き方は、これはとれないだろうと今の答弁で想像がつきました。そうなると、後で全部還付申請をするというようなことにはできないだろうというふうに思いますので、自然どこれは方法が決まってくるんじゃないかという感じがしたんです。これはもっと詰まる問題ですけれども、きょうのところはこの程度にしておきますが、このところで今一番安易な考え方、また可能性が一番強いと思えるのが、今のまま現行制度を維持して、そうして源泉分離選択課税の三五%の引き上げということ、それからグリーンカード制の再延期をそのままにしておくこと。ちょっとこれはさぼったような感じですけれども、そういうような措置があるわけでありますけれども、これだけは採用しないと考えているのかどうか、これぐらいはわかると思いますから伺いたいと思います。
  77. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これも先ほど来申し上げておりますように、現行制度のあり方も含めましてどういうふうに考えるか、これは総合的にこれから検討する課題でございまして、本日の段階で具体的に消去法的に限定的に方向を申し上げるという段階にないということを御了承賜りたいと思います。
  78. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大臣いかがですか。
  79. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私のような極めて素人でも、この問題、ここで問答している間にある種の予見を与えるようなことになってもいけませんので、私自身も大変慎重に構えております。今おっしゃったような問題も、これは税調の方へ正確に伝えるわけですが、そのほかいろいろな議論がございますね。時にはとっぴだと思うような議論まございますが、そういうのを全部総合して税調で我々から予見を与えることなくやってもらおうと、こういう姿勢で臨みたいと思っております。
  80. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 利子配当課税の行方との関係もあるんですが、現在の配当所得については、一銘柄について一回支払いを受ける金額が二十五万円、これは一年間で一回しか決済しないところでは五十万円と、こうなっておりますが、それ未満は三五%の源泉分離課税が認められている。これ以上になると総合課税になっているわけです。現在の株式の第一部の平均利回りが五十九年一月現在で一・〇六%ということです。東証第一部の単純株価が六百円程度ですから、配当所得に総合課税が及ぶのは計算の上ではかなりの金額の株式資金を持っている者でなければなるない。何千万ということになると思うんですね。余りにもこれでは高資産者優遇ということにならないかどうか。だから、むしろそこまでが分離ということでなくて、この配当所得の総合課税との絡みもありますけれども、分離選択を認められる受取配当の金額の上限を年間五十万じゃなくてこれをもっと下げていく、半分ぐらいにしてしまうというふうにした方がよろしいんじゃないかとも思うんですけれども、その点の見直しを含めてお考えいかがですか。
  81. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在の制度は、ただいま委員が御指摘になりましたとおりでございまして、これは昭和四十年度に株式配当に対する源泉分離選択制度が創設されて以来そのままになっております。この問題につきましても、先ほどの利子配当課税の総合的な見直しの中で、結論はどうなるのかということは別にいたしまして、現時点においてこれは検討されなければならない課題であると考えております。
  82. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 先ほど課税方式について一律分離課税とかいろいろあったようでありますから、そういう中で検討されるということですけれども、私は、五千万以上持っていなければこれだけの配当はないということになるわけでありますので、もうちょっと納める人のすそ野を広げてもよろしいんじゃないか。ここでは断定はできないかもしれませんけれども方向性はそういうような税制の考え方があっていいんじゃないかというふうに思うんですね。この点ひとつ将来問題かもしれませんが、大蔵大臣はどうお考えでございますか。
  83. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この基準は四十年度でございまして、源泉分離選択課税制度が創設されて以来そのまま据え置かれておるとお答えしたとおりです。分離課税の対象となっておるものは二百三十九億円、これは全体の〇・九%程度、そういうことになるわけであります。が、御指摘の問題を含めて、この問題はさらに税制調査会で検討が進められるものであるという認識を私もしております。
  84. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今回診療報酬の源泉徴収税率、その軽減措置を廃止することになっておりまして、これは二十七条でしたか、忘れましたが、それを廃止することになっておりますけれども、これは残しておいても最終的に確定申告のときに調整されますので、こういう制度をなくしたからといったって、あったからといっても不公平税制とは言えないし、なくしたから不公平税制がなくなっていくことじゃないと思います。  それに対して、平年度ベースで社会診療報酬課税の特例による減収額というのが約千百十億円と試算されておりますけれども、この課税の特例自体の方を是正するのが本当ではないか。これは前からさんざん議論されてきたことでありますけれども、現行の社会保険診療報酬額五段階の逓減控除率、これは五十四年に改められまして五年目を迎えております。もうすでに五十九年でございますから、この際、これについてもう一度適正なのかどうなのかということについての見直しをすべきではないか。こういうふうに思うんですが、これについて御所見をお伺いしたいと思います。
  85. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 社会保険診療報酬課税の特例の問題でございますけれども、この問題につきましては、常に検討の課題であるべきであるということは御指摘のとおりでございます。  ただ、現行の制度は五十四年に今の五段階制度になったわけでございます。そのときの考え方は、現在の五千万円以上五二%、これが当時各種の実態調査で行いました全診療科目に通じます平均的な経費率でございます。そういうものを目安におきまして五千万円以上五二%、ただ、激変緩和というような観点から、最低のところを七二%に置きまして五十四年の改正が行われたわけでございます。  で、その後、この制度の運用の実態を見ますると、診療報酬課税の特例の縮減がいろいろ議論されました当時、現在五二%となっております診療報酬五千万円を超える開業医の数が大体一割を割っておりました。ところが五十七年当時の実績で見ますると、すでに五二%を超えるところの開業医の数が四割を超える格好になってきております。かたがたそういう実態でもございますので、この特例を受けるよりもむしろ実額で申告をする数がふえてまいっております。その意味では、年々この五十四年度の特例は、効果を発揮しておるといいますか、実質的に診療報酬課税に対する課税の強化の役割を果たしてきておるわけでございます。  税制調査会の五十九年度の税制改正議論におきましても、この問題を俎上に上げていただいたわけでございますけれども、恐らく将来はこの制度は廃止されるべき性格のものであると私どもは率直に言って考えておりますが、税制調査会の現時点の御判断では、この五十四年の改正の効果をもう少し見るということで、とりあえず五十九年度はこの制度改正を見送っておる、現状のままにしておると、こういうことでございます。
  86. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ところで、本会議でも私はお伺いをしたんですけれども、自動車関係諸税の負担が諸外国に比べて大変極めて重い。特にアメリカ、西ドイツ、こういう国々に比べても重いのでありますけれども、車が日常の必需品になっている。これは間違いのないことでございます。その負担軽減を図るということは非常に大事だと思うんですが、とりわけ今回租税特別措置法によって自動車重量税について本則税率よりかなり高い税率で課税している。これはなるべく早く本則税率に近づけるように努力をすべきじゃないかと思うんです。  私はついせんだっても若い人に言われたんでありますけれども、せっかく所得税の減税があっても、自動車関係の税金が上がってしまって減税分は全部なくなっちゃう、何のために選挙をやったんだかわかんないなんて怒られたんでありますけれども、そのくらいの意識がヤング層には物すごく強烈にあります。もはや車を持たない家庭はないという状況に来ているだけに、これはどう考えておりますか。これはできるだけ本則税率に近づけるのを速やかにやるべきだと思いますが。
  87. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 自動車関係諸税、なかんずく揮発油税、自動車重量税の税負担がどうも問題になろうかと思います。これは御指摘のとおりこの二つを合わせましたところで、それから車体課税等を全部含めますと、我が国の自動車関係諸税の負担が、これは先般矢野委員の御質問にもお答えしたわけでございますが、イギリス、フランスよりは低いわけでございますが、西ドイツよりやや高いところにあるということは御指摘のとおりでございます。ただ、その中で揮発油税だけを取り出してみますと、アメリカは別でございますが、他のヨーロッパ諸国よりは我が国の揮発油税の負担水準はまだ低いということも事実でございます。  この税負担をどのように持っていくかということでございますけれども、これは四十九年、ちょうど第一次オイルショック後の原油の価格の動向等をにらみながら、それから一方、御承知のとおり、これは特定財源として道路財源の方に大部分が投入されておるわけでございまして、そういった財源事情との勘案をしながら、現行の租税特別措置法によります本則税率よりも高い税負担水準ということになっておるわけでございます。したがいまして、これは一租税政策という観点だけの議論ではなくて、特定財源の財源事情との関連もございますので、当面、現行の負担水準を急激に切り下げるということはなかなか難しいのではないか。  これは道路財源として今後どういうふうに考えていくかという問題にも関係はいたしますけれども、私どもといたしましては、現在の税負担水準を急速に下げる、本則へ近づけるということはなかなか難しいというのが率直な考え方でございます。
  88. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 財政再建が、今、特定財源についての考え方検討というすべてのことにわたっての話がありましたから申し上げるんですが、財政再建が現在緊急な課題になっているというとき、福祉後退予算なんて五十九年度予算は言われてきている。今の話は道路の特定財源でありますが、いつの間にか特定財源として取ったものがあちらにもこちらにも目的税としてある。その特別会計の収支のためにまた税金を上げる。何だかいつの間にか一般財源としてあるべきものが特定財源と目的税的なものになっていってしまって、そうしてそちらの会計のためにまた税金を上げるという、何か非常に納得しがたいものがあるわけです。今特別会計が五十兆、一般会計と並ぶぐらいにありますので、そういうことから考えると、これは全体的に見直しをといいますか、何か洗ってみないと、戦後の大きな転換期に来ているような気が私はするんです、今までの中で。  そこで私は伺いたんですが、今のような同部税関係を一度一般財源としてどう取り扱うべきかということを本当に本格附に考えなきゃいけないところへ来ているだろう。そうして一般財源としてどう持っていくか。いろんなものの調整金とかそういうものもございます。そういうすべての税負担してきたものも含めてこれは考えなきゃならないだろう。一般会計の部分についてのみの議論がほとんどのところでございますけれども、そういうのじゃなくて、今の特会関係も全部そこへ入ってくるようになれば目も通りますし、私はそういう点で目的税のあり方、特定財源のあり方というものを本格的に考え直していかなきゃならないところへ来ているんじゃないかというふうに思うんですよ。何か母屋の方が軒先につぶされるような感じの会計制度になっては終わりでございますので、この点についてどうお考えか。
  89. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは御指摘にありますとおりに、特定財源制度というのは本当は資源の適正な配分をゆがめます、極端な表現をしますと。それから財政の硬直化にもつながることでございますので、その妥当性については絶えずこれは見直していくべきことは言うまでもないことです。ただ、今度御審議いただいております石油税の問題もございますけれども、エネルギー対策とか道路整備等の現況から見ますと、その関連性からいって、特定財源としてのまた意義を今日はまだ十分果たしておるんじゃないか。それで別の角度から、これは財政全体からいえば色のつかない財源が好ましいことであるけれども、時には、国民の皆さん方に負担を求める際は特定した方が国民の皆さん方に理解も得やすいと、こういう議論も依然として存在しておりますので、私どもとして、これは基本的な問題として絶えず見直していかなきゃならない問題であるという事実認識は十分にしておるつもりであります。
  90. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 目的税を全部やめてしまえとか、そういうことを言っているわけじゃありませんのでね。ただ、いつの間にか特別会計ばかりふえてくるという行き方は何か心配ということでございます。その点についても、そういう根本的な命題としてこれは考えていただかなきゃならないということで申し上げているわけでございますから、その辺が果たしてきた役割とか、目的税の持っている、また領民に理解されるという、そういうことはもちろん認めた上の議論ですので、この点のところは誤解のないようにしていただきたいと思うんですが、そういう会計制度そのものというものはどうお考えですか。
  91. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 特別会計、これは整理合理化すべきものであると思っております。今度お願いすることになります特許関係特別会計でございますね、その節また御議論いただくことになろうかと思いますが、これも三年ぐらい議論をいたしまして、今度御審議をお願いすることになっております。そうした問題は別として、もとより整理合理化の方向で進めるべき課題だというふうな考え方を基本に持って進めてきております。
  92. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      —————・—————    午後一時三分開会
  93. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案石油税法の一部を改正する法律案法人税法の一部倉改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  94. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、今度は投資減税について午前中に引き続いて伺いたいと思います。  今回の設備投資減税は、エネルギーの利用効率化投資促進税制、それからテクノポリス促進税制、さらに中小企業メカトロ化減税、この三本柱から成っておりますが、この投資減税実施による需要創出効果をどのように試算しているか伺いたいと思います。
  95. 藤原武平太

    説明員藤原武平太君) お答えいたします。  投資減税の投資誘発効果につきまして、計量的に正確に把握することはちょと困難なところもございますけれども一定の仮定のもとに試算をいたしましたところでは、昭和五十九年度に創設する予定となっております設備投資減税につきましては、約四千五百億円強の投資増が見込まれ、この結果、波及効果等も含めまして名目GNPは少なくとも〇・一%強押し上げられるのではないかというふうに考えております。
  96. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 我が党は従来から中小企業中心に投資減税の拡充を求めております。前回も、前にどこの委員会だか忘れましたが、申し上げたことがあると思いますが、開銀の設備投資研究所が出したこの計算によりますと、日経NEEDSマクロモデルを使って計算をしておりますが、これを見ると、投資減税によるものがGNPの引き上げについても効果は大きいし、また税収増についても大変効果がある、回収率等を見るとやはり非常に高いということが見られております。  そういう点で、これからも投資減税というものが、公共投資との関係でも投資減税の効果の方が大きいということがはっきりしているんですが、今回の財政当局は投資減税について大変消極的である。税調もその実施は慎重に対処すべきとしておりますけれども、民間活力導入ということを本気になって考えていくと、これはそう消極的になってはいけないし、導入の点からも否定してはならない問題だろうと思います。我が国の法人数の九〇%強を占める中小法人の投資を促す必要が私どもはあると思うんですが、その点で本年度は六百億円となっております。中小企業中心の投資減税の拡充ですね、これは初年度五百二十億、平年度六百億ということですけれども、一千億円規模にまで近づける必要があるんじゃないか、これは再考する意思はないかどうか伺いたいと思います。
  97. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる投資減税の問題につきまして財政当局は消極的という表現でございますが、投資減税の一番の問題点というのは、これは投資減税が行われたから投資されたものであるか、あるいはそれがなくても、企業の自己責任の中で将来の企業のあるべき方向はだれが決めるかというと、企業の当事者自身でございますだけに、そういう投資減税がなくても行われたものであるかもしらぬというようなことから考えてみましても、その評価は非常に難しい点が多かろうと基本的に思うわけであります。したがって、投資減税ということに対しては、産業界自体から見た場合は、財政当局は消極的だなと、こういう印象を与えるということは、私はそのとおりではないかというふうに考えております。したがって、そういう政策税制とそれの需要の喚起の波及効果等々総合的に判断して結論を出したのが今度のぎりぎりの措置ではないか。中小企業対策という点からとらえた税制そのものであるというふうに理解をしております。
  98. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この日経NEEDSマクロモデルを使った分析の結論を見てみると、一兆円の投資減税をやっていくと、五十八年度に一兆円投資減税をやれば、五十八年から六十一年までの四年間で、民間設備投資を一兆九千八百六十億円ふやし、GNPを二兆八千五百十億円ふやす、国税と地方税合わせて税収が九千三百十億円増加するという、そういう計算が出ております。こういうことから一兆円の減税で九三・一%の税収の増ということは九三・一%減税した分が回収されてきたということになるわけですから、そういう点では公共投資よりもはるかに景気を押し上げる、あるいは上げていくということに大変いいということがこの計量モデルを見るとわかります。五十八年に一兆円やった場合もこうなっておりますが、五十九年にやっても、同じような結論が恐らくこのモデルで計算すれば出るだろうと思います。そういう点から言うと、減税によって誘導していくことの方が私は効果が大きいような気がしてならないんです。そういうことが非常に大事な点と考えられるんで、今回は私は何か六百億円じゃ少ない、一千億でも少ないような気がするんですけれども、これは大臣に、大変恐縮ですが、もう一度その点考えてみる必要はないですか。
  99. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 大臣答弁の前に、大臣先ほど答弁とほぼ同じことを申し上げるわけでございますが、ただいま委員が御指摘になりましたように、日経NEEDSモデルによる分析のほかに、学者の方でそういった分析をしていらっしゃる方が何人かいらっしゃるのを承知いたしております。  そのポイントは、先ほど大臣答弁にもございましたように、例えば一単位の投資減税を行った場合に何単位の投資が誘発されるかという前提に立ってマクロモデルを動かすと、確かに理論的にはそういった効果があらわれるということなんだろうと思うわけでございますが、まず実際問題といたしまして、そういう投資減税の税制を仕組んだことによって一体どれだけの投資が誘発されたかということは、これは恐らく弁別は不可能だろうと思うわけでございますし、税制の仕組みといたしましても、結局は、トータルのその年度の投資額に対して根っこから投資減税なり特別償却を与えるということになりますと、実はプラスアルファ分だからこそ一単位で済んだ財源が、根っこからの財源が必要になるわけでございますから、現実問題としてはその財政資金のコスト・ベネフィットから言いますと、必ずしも投資減税が非常に効率的な投資誘発政策であるということはなかなか言いにくいという話がございます。  それから一番徹底した投資減税の制度を持っておりますのはアメリカでございます。これは一九六〇年代に当時時限措置として設定されたものが、七〇年代、八〇年代に続いて既に恒常的な投資税額控除の制度になっておりますが、アメリカと日本とをその投資規模で比べました場合に、恐らくは日本の場合は今GNPに一七%ぐらいのシェアを持っておると思いますが、アメリカは恐らく一〇%前後だろうと思うわけでございます。  で、アメリカは、投資減税があるからこそアメリカの投資は今あそこまで来ているのが精いっぱいで、あれがなければもっと低いという議論もあり得るのかもしれませんけれども、過日アメリカの財務省の税制担当者が参りましてフリーディスカッションしたことがございますが、私は率直に彼らに、アメリカの現在の投資減税なり、それからもう一つは税額控除のほかに加速度償却をレーガン政権になってから導入いたしましたが、その効果についてどう思うかと言いましたら、率直なところ効果についてはわからないと。したがって、この種の税制政策を導入するときには、税制担当者としては非常に慎重であらなければならないということを、非公式ではございますが、そういうことを申しておりましたということをつけ加えさしていただきたいと思います。  したがいまして、一般的な形での投資減税というのはなかなかむずかしい。したがって、今回御提案申し上げておりますように、例えばエネルギーの効率化を促進するとか、あるいは中小企業の電子機器を利用したような高度技術設備の導入を促進するといった、そういう個々の政策誘導としては非常に意味がありますし、それなりの財源を振り向けるのは意味があると思いますけれども一般的な投資減税というのは財政当局なり税制当局としては慎重にならざるを得ないと、こういうことでございます。
  100. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この間予算を提案する際、河本経済企画庁長官からも、私と党の責任者に対しまして、言ってみれば、税制調査会等はどちらかといえばその年の税のあり方についての答申を出す、開店休業になりがちだ、したがってことし自分としても主張した投資減税等も含めてひとつ基本的な議論をしてみてくれぬかと、こういう要請がありまして、それは素直に我々も受けとめておるところであります。  したがって、今基本的に申しますように、確かに財政当局は投資減税については非常に慎重で、基本的に慎重でありますが、今度お願いしておるのはまさに個々の問題であります。若干景気が緩やかながら上向きになって、それが定着しつつあるという認識のときに、さらに心理的効果もありはしないかというような議論も十分踏まえつつ、これからも引き続いて勉強していかなきゃならぬ課題だという問題意識は持っております。
  101. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今回の三本柱の一つであるテクノポリス促進税制について、他の二つに比べて三〇%の特別償却のみしか認められておりません。この理由はどこにあるのか。  また、具体的なテクノポリス地域は当面、この二月十日に指定方針を決めた十五道県の十四地域になると思われますが、その指定や地域決定に当たっては誘致運動が先行し過ぎて、企業進出がどの程度になるか危ぶむ声もあります。確かに視察に参りますと、テクノポリスで浮かれているばかりで、中身があるのかどうか、将来どの企業が来るのかということの見通しもつかない、立地条件もようわからぬというような感もございます。そういう地域もあります。通産当局あるいは財政当局は見通しについてどういうふうに思っているか、この二つを伺いたい。
  102. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 前段の問題については私の方からお答え申し上げます。後段の問題につきましては、具体的な産業政策上の問題でございますので、通産省から後ほど答弁をいただくことにいたしまして、テクノポリス地域におきます投資につきましては、御指摘のとおり、特別償却制度だけにとどめておるわけでございます。税額控除制度は文字どおり絶対免税でございますので、税制の減税のフェイバーとしては非常に手厚いものでございます。ということは、反面、それだけ制度の創設には慎重でなければならないわけでございまして、それだけの効果でもって誘導しなければならない政策に極力限定しなければならないというのが基本的な考え方でございます。  ところで、テクノポリスの今回の特別償却でございますが、これは当該地域に高度技術産業が誘致されると、その場合もこれは通産省と十分調整の上、ワンロット十億円以上の大きな投資を誘導するという考え方に立っておりまして、しかもその対象は、したがって機械装置だけではございませんで、建物も償却の対象として取り上げるという大規模なものを考えておりますので、そういたしますと、税額控除ということではなくて、特別償却だけで十分誘導効果が期待できるということで税額控除制度を避けておるわけでございます。
  103. 小林惇

    説明員(小林惇君) 先ほど先生が御指摘いただきました、テクノの計画が上滑りになっているんではないかという御指摘でございましたけれども、テクノの計画自身は企業誘致のみに依存する考え方ではございませんで、地場の企業の活性化ということにも力点を置いておるわけでございまして、現実に昭和六十五年度までの目標におきまする企業誘致の依存度でございますけれども、全地域を通じまして二割程度という状況でございます。  それから企業誘致そのものに関連いたしまして、租税特別措置をお願いしておるわけでございますけれども、既に五十八年あるいはその前の五十七年におきまして、テクノポリス候補地域におきまする企業誘致の実績といいますか、大変に上がってきておりまして、従前のものに比べますと、地元の自主的な企業誘致努力あるいはいろいろな意味での体制整備というようなことが相まちまして非常に実績が上がってきておるという状況でございます。したがいまして、今回の特別償却を実現していただくことによってさらにその動きが活発化いたしまして、当初の目標を達成できるというふうに我々は確信をしておる次第でございます。
  104. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それは確信しなければできないことでしょうけどね。実際地元の地場産業の活性化はよくわかります。しかし、何か現実のところを見ていると、飛行場の近くでなければなりませんし、いろいろな点で指定されたからといってうまくいくというんじゃないという感じがしてなりませんので、この辺はこれから十分見ていきたいと思います。  それから、もし思うような企業進出が見込めない場合には、税制の中身をより促進していくというような弾力的な考えはありますか。
  105. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは六十年度以降毎年の税制改正に当たって私どもは同じ作業過程を繰り返しておるわけでございますが、その時点におきまして産業政策上のいろんな観点から、税制上の問題について関係当局と話し合いを重ねながら、必要なものについて対処をしていくということで従来もきておるわけでございます。具体的に今後の構想等については伺っておりませんので、どういう方向であるかということを税制当局からただいま申し上げるという段階にはないわけでございますが、ただ企業関係租税特別措置については、極力政策効果の期待できるものに限定して厳密な制度の創設なり見直しは必要であると考えております。
  106. 竹下登

    国務大臣竹下登君) テクノの問題というのは、今いみじくもおっしゃったように、地方へ参りますと、ある時期テクノブームというような感じがしたことは私も同感であります。これはいささか饒舌に尽きますが、どこへ行ってもテクノポリスの陳情があります。そうすると、大体言われるのは飛行場も近い、土地もある、水もある、人もおる。そうするとすぐ頭の程度がついていけるか、こういうようなことを冗談で言っておる人がございましたけれども、いろんな工夫をした地場産業の問題等で組み立てられておることに対する期待感が我々も強いだけに、今度こういうものを御審議いただいておるわけでありますので、今後の推移を見きわめなきゃいかぬ問題だというふうに考えております。
  107. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 建設省が見えておると思いますが、今度住宅促進税制の一環として、二年間限りでありますけれども、住宅取得資金に贈与税の特例が認められております。このことで最初に建設省に伺っておきますが、このような特例を認めるよりもむしろ、私の方では、今回の税制改正でも二年間延長が提示されている住宅取得控除の内容充実の方が社会的に望ましい、こう見ているわけです。この贈与税の場合、それからこちらの住宅取得控除の場合、住宅建設に与える効果を伺いたい。
  108. 内藤勲

    説明員(内藤勲君) お答えいたします。  ことしの五十九年度税制で行われます生前贈与の特例制度につきましては、御承知のとおり、三百万円までの贈与については非課税、五百万円の場合であっても現行では百三十六万円の税金が二十万円になるということで、住宅建設促進に与える効果は相当のものがあるように思います。  それから住宅取得控除制度でございますが、昨年大幅な改善を見まして、民間の住宅ローンを借りて住宅を建てる場合に最高限で年十五万円、三カ年の適用期間がございますので最高四十五万円の税額控除という、そういうことになりまして、それも大変な効果があったと思います。  どちらの制度が効果があったというのはなかない判定しにくいことだと思いまして、またその制度の趣旨も若干違っておりますので、私どもはそれぞれに効果があり、両方相まって住宅建設の促進の効果があると、そういうふうに判断しております。
  109. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 具体的戸数はわかりますか。
  110. 内藤勲

    説明員(内藤勲君) 戸数につきましては、なかなかその前提の置き方とか推計の方法で大分違ってくると思うんですが、今年度の贈与税の特例に関しましては、私どもはおおむね三万戸程度の建設増が期待できないかと考えております。  それから昨年行いました取得控除の改善につきましては、これは昨年の私どもの試算では少なくとも一万戸くらいの戸数増が期待できるのではないかと、そういうふうに考えております。
  111. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは今の贈与税の特例のものですが、五分五乗方式をとる。山林所得等は今までやっておりますがね。しかしそれは長期間に及ぶ所得の発生が一時的にぽんと出るということから、こういう五分五乗方式をとってきて平準化したということでございますから、確かに累進税率が緩和されるということでわかるんですけれども、こういう贈与の場合ですと、これは不労所得的なものです、長年のものが一遍にぽんと来るわけじゃありません。そういう点で課税を緩和するということは、税体系そのものとしては新たな不公平を生じるという心配はありますね。
  112. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) この種の贈与税の特例を考えます場合に、ただいま委員が御指摘になりましたように、贈与税というのはあくまで相続税の補完税でございますから、相続税の税体系なり相続税の税体系の枠組みを崩すような、そういう不公平なものにならないように配慮することが大変大事な点であろうと思います。しかも、これも御指摘のように、今回の五分五乗の場合、山林所得の五分五乗の場合と趣を翼にするわけでございます。  今回の考え方は、うちを建てるときに、例えば親御さんからそういう建設資金の一部あるいはローンの頭金のようなものが贈与されるというケースが間々あるわけでございますけれども、それを一遍に贈与される場合の税負担に比し、それを何年かに分けて贈与するとそれだけ税負担は軽くなる。しかもそれは合法的な節税行為でもあるわけでございます。したがいまして、今回の五分五乗というのは、仮に一括して贈与された場合ではなくて、分割された場合五年分が例えばまとめて贈与されたという前提に立ったわけでございます。したがいまして、現行の六十万の基礎控除部分の五年分、三百万を基礎控除いたしまして、しかもそれは贈与額が幾らでもいいということではございませんで、五百万というところで頭打ちにしてございます。その分を五分五乗いたしまして、なおかつ次年度以降新たな贈与が行われました場合は、その五分の一ずつは贈与があったものと仮定して上積み計算をするということで取り戻していくという建前にしてございます。  それからもう一つは、この特例を受けられる人は年所得五百万円以下という所得制限も設けておりまして、世上余り不公平な利用をされないようにということでいろんなことを考えて御提案を申し上げておるわけでございます。
  113. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最後に、この問題でせっかく建設省に来ていただいていますから伺いたいんです。  最近新聞紙上で見かけるいわゆるリースマンションの投資、これが節税ということでえらい宣伝をされている。税制の持つ中立性から見れば、節税だけが強調されるということは宣伝の仕方としてはどうかという感じなんです。サラリーマンの間では完全に所得がガラス張りで把握されておりますから、少しでも重税感から逃れようということから確かにこういうところに行くんでしょうけれども、長期間持っていれば資産の価値も大きく落ち込んでくる。投資をすることが悪いと私、言いませんけれども、税制上の利点だけが強調されて宣伝の具に供されるという点は問題があると思うんですが、この点はいかがでしょうか。
  114. 斉藤衛

    説明員(斉藤衛君) 先生御指摘のとおり、最近のリースマンションの中には、その一つのセールスポイントといたしまして節税効果をうたったものが見受けられております。ただ、その前提をいろいろ見てまいりますと、将来の物価あるいは金利の動向等を見てまいりますと、極めて不確定な要因があるわけでございます。したがいまして、そういう販売方法の中に消費者の方々を著しく誤認させてしまうというようなものがありましたら、これはもう事実をよく調査いたしまして、宅建業法に照らしまして適切に指導をしてまいりたいと思っております。
  115. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 終わります。
  116. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 国税通則法百十六条に関する午前中の質疑の中で、課税庁第三者立場にあると、こういう発言がございました。この意味は、その前後の脈絡から見まして、普通の国民よりは一段高いところに課税庁がある、こういう趣旨にとれるわけでありまして、これは国民主権の憲法の理念に反する発言であり、考えだと思います。国民主権の立場に立った申告納税制度、それはその申告によって確定するわけです。法に違反した申告あるいは申告しない場合に初めて税務署が措置をなし得るということです。それに対する不服申し立てがあった場合、そして訴訟になればこれは課税庁も一当事者ですね。今回のこの国税通則法百十六条の問題は、その一方当事者である課税庁が、それこそ第三者である裁判所に対してこういう審理をせよと言って戴いてもらう相手の手を縛ろうという、そういうものなのであります。そこで、私は改めてこの部分を分離撤回することを求めたいと思います。  そこで、理事会では先ほどこの直税三法について本日質疑を終局して採決に入るという決定がなされたわけでありますが、私はその措置には絶対反対であると、このこともこの機会に表明しておきたいと思います。  そこで、大臣、一昨日以来一言も私の質問に対しては発言なかったんですね。後で聞いてみたら、ちょっと難かし過ぎるというんで、一番易しい質問をいたしますので、ひとつお答えいただきたいと思います。  丸谷議員が言った、国税通則法百十六条が憲法の趣旨に合致しないという日弁連意見に謙虚に耳を傾けると、こう大臣はおっしゃったわけです。それに関してお伺いするわけですが、その謙虚に耳を傾けるということは、税務訴訟においては当事者対等の原則を尊重して、税務署長などが課税処分基礎となった事実の主張を行うに当たっては、あとう限り具体的に事実を特定してこれを行って、主張の変更によっていたずらに訴訟の遅延などを来すことのないように配慮すると、そういう趣旨だと私は思うんですが、ひとつ謙虚に受けとめた大臣の御見解を承りたいと思います。
  117. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 日弁連というのは大変権威のある団体だという認識は持っております。会長さんというのは、あれは一年交代で、去年から二年交代になりましたか……
  118. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間がないので、大臣、端的に。
  119. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 日本である程度有名な選挙制度でございますけれども、したがって、そういう権威のあるお方がこうした席上で御発言なすったことには、当然謙虚に耳を傾けるべき問題だという理解を私は申し上げたわけでございます。
  120. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは丸谷議員からも指摘があったように、税務署の方が勝手にどんどん主張を変えていったり、そういうようなことがあっちゃならぬと。それに対して、そういうことはしないということですから、今私がお聞きしたような納税訴訟をきちっとやっていくという立場はそのとおりじゃないんでしょうか。
  121. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そういうことには謙虚に耳を傾けるし、元来丸谷さんの主張そのものも、いつも徴税とか課税とかという立場にあらずして、税務職員というのは納税者の、タックスペイヤーの立場に立って対応するという姿勢を貫くべきだと。それは訴訟によらず、すべて原則としてそうあるべきであるという考えてあります。
  122. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次に、二百三十一条の二の第二項についていろいろ議論がございまして、せっかく帳簿の記帳を義務づけたけれども、その帳簿を検査しない場合があるという、その点について「帳簿の検査を困難とする事情」ということについてもいろいろやりとりがあったんです。私はいろいろ各地を実際に調査しておりまして、税務署員の方がみずからこの帳簿の検査を困難にしている、そういう実情をしばしば見るんです。例えば守秘義務に関係しないような場面でも、たまたまそこに人がいる、しかもその人というのは納税者本人が立ち会いを求めている人ですね。それだけで調査もしないですぐ反面に入って、そして推計課税と。こんな場合、例えばクリーニング屋さんに行ったら、店先にお客さんからとったいろいろデータがあるんですし、それを見れば全部わかるんですよ。ところが、たまたまもう一人そこに人がおったということで見ないで帰っちゃう。そして推計課税と。こんなことが行われているんですね。まさにこれは「検査を困難とする事情」という現場の状況を国税庁ないしは主税局のお偉方はよく御存じないために、そんな議論をするんだということを私は指摘をしたいと思うんです。答弁要りません。  そこで私は、そういう状況がいろいろ行われているということで、最近大蔵省に対して大変厳しい二つの判決がありましたので、その関連で質問をしたいと思います。  一つは、つい最近、三月二十二日、京都地方裁判所で、原告小富信吉さん、被告は国。その損害賠償事件で、税務署員が調査のために、原告の意思に反して内房のとめ金を外して無断で店内に侵入したのを違法であるとして、金額は十万円でしたけれども、慰謝料の支払いを命じたわけです。小畠本人もこの間井上次官にじかに会っていただきまして、井上次官からも温いお言葉をいただいて帰りましたけれども、私はこういう違法調査の、あるいは不当調査の事例というのはほかにもあると思うんです。今まで私はあちこちで不当調査の事例などを聞きまして、実際税務署へ行ってその点を指摘しましても、そういうことはない、あるいは我が部下がそういったことをすることはないと信ずると。これは大臣も、この間私が予算委員会で聞いたらば、ないと信じますというようなことを言っておりましたけれども、と言って片づけちゃうんですよ。こういう判決が出まして、税務署は先ほど第三者で一段上だという、そういう考えの結果こういうことが現場で起きておるので、これに対しては、それこそ謙虚に受けとめ、判決ですから、控訴などしないように、これは大臣の決意、それこそ謙虚にひとつこの判決を受けとめていただきたいと、こう思うんですがどうですか。
  123. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 大臣お答えになります前に、技術的なところから私の方から申し上げさせていただきます。  今の小畠事件でございますが、おっしゃるようなことで、損害賠償十万円という御判決を京都地裁からいただいたわけでございます。私どもといたしましては、これはこの納税者に税務署員が初めて行ったということではなくて、何回か接触をして、しかも御本人が不在でございましたので、その不在を確認するということでその住宅の中へ一部入ったということでございます。今、具体的な点につきましては、係争中のものでございますのでコメントを差し控えさせていただきたいと存じますが、そういうことでありますので、目下控訴につきましては、法務御当局とも相談をいたしまして協議中でございます。
  124. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この判決の中では、税務署のそういういわゆる言い分、例えばこの本人が税務調査に非協力的であったというような状況までも、実際はどうか知りませんけれども、そういった税務署側の事情も十分踏まえて、そういった事実があったとしても、実際かぎをこじあけて入っちゃったんだからそういうのは違法だよということで、一般にいろいろ納税者との間でやりとりあるんですが、しかしそういう中でも、こういったことはしちゃいかぬという一線を決めた判決だと私は思うんですよね。  それで、法務当局と相談というんですが、この間、私カネミ事件で法務大臣に会いましたら、法務省は代理人だって言うんです。だから農水省なり厚生省の意見で私は動きますと法務大臣は言っておるんで、結果的にはこれは竹下大蔵大臣の判断にかかる問題で、どうですか、こういったものはきっぱりと、私は納税者全般の信頼を得るためにも控訴はしないとここで言ったら、大臣、株上がりますよ。どうですか。
  125. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 一点、二点さらに補足させていただきますが、判決の中で、この事件で税務職員が原告の家の中に、調査資料を収集するとかあるいは家宅捜索をするとか、そういう目的で入ったのではないということは確認されているわけでございます。あくまでも御本人の不在を確認するために入った。ただ、その入った行為の当否がどうか。かけ金を外して入ったということでございますが、現場の作業場の入り口までやや距離がある。そこのところを声を外からおかけしても本人がいらっしゃらない、御返事がなかったものでございますから、前二回の臨場の経緯にかんがみましてそこまで入ったという事案でございます。  具体的な事案に即しましては、ただいま申しましたように法務省とまだ協議を下しておりませんので、御相談をさせていただきたいわけでございます。  なお、それとは別に、税務職員が一般的に調査に当たりまして、これは社会的相当な行為の範囲内にとどめなきゃいけないということは私どもも重々承知しているわけでございます。
  126. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大臣からはお答えはないようですね。ありますか。
  127. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 裁判の問題は、これは個別的な問題、個別事犯として私も詳しく知っておるわけではございません。税務職員の一般的にあるべき姿というのは、私も、今直税部長からお答えしたとおりでありますが、裁判自身の問題は、これは法務省の訟務局というところが、新たに部から上げましたが、そこでいろいろ念査するという仕組みになっておりますので、そのまた相談もしてない状態のようでございますので、それはこれからの問題だと思っております。
  128. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 せっかく大臣の株を上げてやろうと思ったのに、ちょっと残念でしたね。  そこで、第二の厳しい判決は二月二十七日です。熊本地方裁判所で、ネズミ講の判決で国敗訴の判決が下りました。原告はこの破産管財人で、中身は、天下一家第一相研の実体は内村健一個人と同一視されるべきで、権利能力なき社団としての法人税の課税は違法であるという判示です。ネズミ講の被害も本当に気の毒なたくさんの事例がありますが、中身の紹介は省略します。  そこで、これについて国が払うとなると恐らく約百五十億円ぐらい返さなきゃいかぬじゃないか。結果的には、この被害者の皆さんはもうあと余り財産ないんで、この百五十億が国から返ってくるのを期待して破産事件を進めておるんですね。だから、国が争っていることが被害者の救済をおくらせておることにつながっていく。今までこういうものを放置してきて被害者を拡大させた国としては、これは本来は控訴すべきではなかったと思うんです。この点については、先ほど税部長から権利能力なき社団についての最高裁の判例について紹介がありましたね。私は、それが大体大蔵省としては権利能力なき社団がどうかの判断基準だと思うんです。どこに一体不満があって控訴したのか。どうですか。
  129. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) いわゆるネズミ諸事件の判決についてのお尋ねでございます。どこに不満があっての控訴かというお尋ねでございますが、これは法律問題、事実問題、いろいろあろうかと思っておるわけでございます。  法律問題に即しますと、ただいま先生御指摘になりましたように、この判決は第一相研というものが人格なき社団ではないと。したがいまして、すべての所得は内村氏個人に帰属すると、そういう立場からの御判決でございます。しかしながら、この理由とされますところは、会員の資格の得喪その他の問題をめぐりまして、いわゆる開かれた社団と申しますか、そういった見地からの御見解一つあろうかと思うわけでございます。  また、事実に即しまして言いますならば、私どもこの訴訟においていろいろ主張を展開いたしてきたわけでございますが、そういった主張にもまた再検討すべきものがあるであろうということを考えておるわけでございます。  この点につきましては、係属中の訴訟の個別的な攻撃防御の方法に関しますので、ちょっと私の方から今の段階でここで申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思うわけでございますが、とにかくそういういろんな方面の争点につきましてさらに高裁の御判断をいただきたいと思うわけでございます。  なお、私ども、こうは申しましても、このことが被害をお受けになった方に対しましての同情を課税当局が全然持っていないということではございません。私ども社会的、常識的にこういう方には同情すべきであろうと思うわけでございますが、一方、課税当局といたしましては、発生しました所得に対しましては、適正に課税をしなければいけないという立場でございます。
  130. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは私は、課税庁は取れるものは何でも取ると、取ったものは絶対返さないという結果の反映だと思うんですね。印紙が、控訴の結果、第六号事件では九百二十六万円、第七号では三十七万二千円の印紙ですね。大変な印紙です。しかしこれだけの印紙を張って、これから時間かけてやっても勝ち目ないんですよ。先ほどのあなたが引用した最高裁判例に従ったネズミ講の実体につきましてのたくさん判例があるんです。長野地裁、昭和五十二年三月三十日。それから熊本地裁、五十三年十一月八日。静団地裁、五十三年十二月十九日。さらに五十五年七月十八日、そして今回の判決。実体をつぶさに見、そして最高裁判例の基準に従った結果、いずれもだめなんです。大臣、絶対勝ち目ないんです。  この訴訟の中身で、国の主張を聞いていますと、どうやら控訴理由らしい控訴理由あるいは争う理由は、内村健一が天下一家という社団法人で申告したんだから、今さら、一たん申告したものを実体が違うからといって一回課した法人税を返すわけにいかぬと、そこにあるんですね。こういう争い方は絶対勝ち目ありませんよ。これほど判決も重なっている。  私がここで指摘したいのは、この勝ち負けももちろんそうですが、このように法人の概念、あるいは権利能力なき社団の範囲を勝手に解釈している。これほど判決が重なり、最高裁判決があるにもかかわらず従わない。大体権利能力なき社団がどうかというのは民法上の概念ですよ。民法上の概念及び認定は行政庁は勝手にやっちゃいかぬですよね。そうでしょう。それは裁判所の判断に従う、これが当然なんです。これほど積み重なっている司法の判断があるにもかかわらずなぜ争うのか。私は、これを昨日来問題にしている。きのうは、権利能力なき社団の業務に対する課税、その範囲がどんどん広がっているのじゃないか、そして記帳義務を課することによって本体にまで調査が行き、それに対する介入になるんじゃないかと。その可能性があるという答弁もありました。すると、これは、その考えや、そのもとである権利能力なき社団の概念についても、税務署は取るだけ取る、取ったものは返さない、こういう態度で臨んでいる以上、今回のこの納税環境整備、いろんな記帳義務とか、あるいは国税通則法百十六条問題、これでは国民は絶対納得しませんよ、こういう事例があるのだから。どうですか。
  131. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 御指摘のように、この事案につきましてはいろいろの訴訟があるわけでございます。ただいま御指摘になりましたような幾つかの地裁段階での訴訟、それから内村健一氏個人に係る破産関係抗告訴訟といったものもあるわけでございます。そういうものを私ども承知いたしておるわけでございます。しかしながら、こういう訴訟は被害者の方々と内村氏ないしは第一相研との間の訴訟でございまして、私ども国が面接入ったわけではございません。もとより裁判所としては、大変慎重にいろんな点から御審査になりまして、第一相研というのは存在しない、内村健一個人あるのみだという御判決になったわけでございましょうが、委員もよく御承知のとおり、裁判は事実の上に立って法律判断がなされるわけでございます。  私どもといたしましては、私どもといたしましての事実の主張がある。それから被害者の方としては被害者の方としての事実の主張のあり方がおのずからおありになる。それぞれの利益に即しまして内村氏個人が所得を有しておった方が有利か不利か、そういう点からも見ましてそれぞれの主張がなされ、その主張の上に裁判所の御判断がなされるのが、これが弁論主義の現今の民事訴訟法の基本的な建前であろうかと存じておるわけでございます。  そういう意味におきまして、私どもといたしましても、一遍裁判所の御判断をいただきたいわけでございますし、またこれは地裁に限らず控訴審まで事実判断、法律判断、さらには上告審まで、場合によりましては、そういう私どもの機会も与えられてしかるべきであろうかと思っておるわけでございます。  かつまた、委員がまさしく御指摘になりましたように、この訴訟に絡みますのは非常に巨額でございます。二面におきまして、この課税の適性というものは額にかかわらず重要でございますが、特に巨額な場合には私どもとしては慎重にならざるを得ないわけでございます。所得は発生しておりますが、私どもは当初は内村氏個人に対して課税をいたしました。しかる後、第一相研が人格なき社団として成立したと認めてこれに課税をいたしました。今日ではもはや除斥期間を経過いたしまして、第一相研に課税いたしましたものをさかのぼってこれは内村氏の所得ということで課税することもかなわない状態でございます。さような状態でございますので、国全体の立場から申しまして、やはりもう一度私どもにも機会をお与えいただきたいと、かような意味で控訴いたしたわけでございます。  なおまた、最後の御指摘でございますが、人格なき社団がどうかはもとより司法御当局の判断でございます。私ども行政庁が勝手にとやかくすべきものではございません。そういう意味でも、果たしてこれが人格なき社団であるかどうか法廷の場において適正公正な御判断をいただけると思っておるわけでございます。
  132. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 判断の機会をいただきたいということで思い出すのは、被告がまだ最高裁が残っているということで無実を最後まで争ったのがありますよね。しかし、これほどの強大な力を持った、そして調査能力を持っている税務署がやったことが間違っておったと、一度ならず、さっき言ったとおり二度、三度全国の裁判所で判断されておる。しかも基準は、しっかり最高裁の判例立場に立った事実認定ですね。で、司法の判断に従うと言っているんだから、それは従うべきなんです。にもかかわらずこれをやるということは、私はまさに先ほども冒頭触れましたけれども、要するに税務当局は国民よりは一段高いところにあって、そしてその立場で進めていくんだ、税金を取りゃ国民のためになるんだからと、そんなことを考えてこういう普通の常識じゃ考えられないようなことをやっているんだと私は思います。  時間がなくなりましたのであと大臣に、また大臣が答えられる質問をいたしますが、基本的には関連をするわけです。  この記帳義務法制化の問題は、これは申告納税制度の根幹にかかわる問題です。一昨日来、主税局長の口からもしばしば申告納税制度の理念ということが出てまいったわけです。しかし、理念と言う以上、私は憲法の理念、国民主権に基ずいた租税法律主義の理念からこの内容も吟味すべきだと、こう思うんです。  そこで大臣にまとめてお伺いします。  人権の歴史の中で、国家と国民の間の税金をめぐる争いが常に大きな問題であったということは御承知のとおりです。そこで、権力による課税に対する人民の抵抗の歴史が近代国家を生み出したものだという点が第一点ですね。  第二点として、イギリスのマグナカルタ、アメリカの独立宣言、フランス革命、これに沿って、これもそういう立場から出てきた革命ですが、わが国の憲法はこういう成果の上に立っているという認識をお持ちか。  第三点。国民主権、これを受けて憲法上も財産権の保障、租税法律主義、罪刑法定主義なども決めています。憲法第三十条は「納税の義務」となっておりますけれども、その主眼は「法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」、やっぱり「法律の定めるところにより」というところに主眼がある。そしてこういう立場から申告納税制度考えますと、ともかく納付すべき税額が納税者の行う申告によって確定することが原則。さっき言ったとおりですね。そうだとするならば、記帳義務もそういう立場から考えられてしかるべきなんです。  ところが、今までずっと聞いていますと、主税局長の言う申告制度の理念なるものはその一部、要するに先ほど言った一段高いところに立って課税するという、そういう立場から記帳義務を持つのは当然だ、ないのはおかしいんだと、そういう態度なんですが、私はそういう憲法上の理念も含め、申告納税制度についての大臣の所見をここでまとめて伺いたいと思います。
  133. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 元来租税法定主義である、これはよく存じております。そうしてまたこの納税の義務、これが存在しております。その納税の義務に忠実である国民、だれが一番みずからの所得を知っておるかといえば、考え方によれば自分であります。その自分がより正確にみずから自身の所得を捕捉するためには記帳というものはその有力な手段であるというふうに考えております。したがって、シャウプ勧告以来のいわゆる自主努力によるところの申告制度というものをより定着さす必要がある。それがためには、いわゆるこの環境の整備の中において義務づけられて、しかも特典もなければ逆に罰則もないという形の段階を踏むということが、皆さんが進んで奨励されておる青色申告の方向へ誘導されていく大きな機会を提供しておるというふうに私はこれを理解しております。
  134. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 自分が最もよく知っているからということが申告納税制度の基本だと言うんですが、それは私は一つの側面だと思うんです。その面だけ強調すれば、ずっと主税局長が言ってきたような考えにつながっていくんですが、もう一つ大事なことは、国民主権の立場に立った申告納税制度ということは、単に賦課課税される対象じゃなくて、自分はこの国の主人公として国政に参加をする、しかも当然税金を納める、それは自分の申告によって決まると。要するに申告する権利ですね、そしてそれによって確定する、あとは間違いがあった場合のみ初めて税務署はそれを審査したり修正できるという、それが私はこの申告納税制度の真髄だと思うんですが、その点についてのお考えを聞きたいと思います。
  135. 竹下登

    国務大臣竹下登君) みずからの所得を最もよく理解する一つの手段としての記帳ということは私は理解できると思います。それによって初めてみずからの義務というものもこれを自覚していくということでありますので、間々近藤さんの考え方の背景には、いわゆる税務署を徴税官とし、課税官として、権力としてこれを意識しておられるところに私どもとの見解の相違があって、むしろ国民に課せられた義務というものをより正確に本人の自覚意識の中に実行に移すためのいわばサービスの機関である、そう認識を変えることによって私ども主張の正しさということが浮き彫りになってくるんではないかというふうに考えます。
  136. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 国税通則法の百十六条の改正問題がいろいろ不安を広げているようであります。若干重複するかもしれませんがお尋ねをしていきたいと思います。  今回改正をするに至った理由として挙げられておりますのは、税務訴訟の場合にそろそろ終局の段階に立ち至ったころ重要な証拠がぽろっと出てくる。これでは訴訟経済から考えても何ともやり切れないので、今回こういう改正をしますということだったように私は思います。  そこでお尋ねをしたいのは、仮に例えば税務訴訟が行われて相当長い時間がたって、終局の寸前に重要書類が証拠として出されてきたという場合に、現行法ではそれは処置できないんだという点についてはいかがですか、現行法の枠内では。
  137. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 確かに委員指摘のような場合が実際上税務訴訟においてあるわけでございます。私ども数は全部とっておらないわけでございますが、異議の申し立て、審査の請求といった行政不服審査の段階を経まして訴訟が提起される。その訴訟が提起されましてから三年、出年、それから長いときは五年以上もたちましてから突如、納税者の方から帳簿があったというような御指摘をいただきまして訴訟が進行するというような場合がないではないわけでございます。むしろ相当数あるわけでございます。そういった場合の現行規定の対応の仕方といたしましては、これは恐らくは民事訴訟法百三十九条の運用が考えられるかと思うわけでございます。「時機に後れた攻撃防御方法の却下」という条文がございまして、裁判官が申し立てまたは職権によりまして、そういった申し立てを時機におくれたものと認定をいたしまして却下をされるわけでございます。しかし、この却下につきましては要件がございまして、まず第一に故意または重大な過失がないといけない、それから第二に訴訟を遅延せしめることがはっきりしておるということがなければいけない、そういった要件があるわけでございます。裁判所もこれは訴訟指揮その他の関係でございましょうか、私ども必ずしも存知しておらないわけでございますが、非常に慎重にこの規定を運用されておるわけでございまして、従来まで私ども租税訴訟に関します限りは、この規定が援用されたということは三例だけでございます。
  138. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうしますと、民事訴訟法の今引用された百三十九条、これを積極的に活用していくと、だれが見ても目に余る訴訟遅滞をねらっているような証拠提出については却下をする、いわばそういうことができるんだけど、裁判官の訴訟指揮の実態を見るとなかなか機能していない、したがって今回こういう改正をしたと聞こえるんです。そうしますと、この改正の主眼というのは、裁判官の訴訟指揮に対してある指揮をする、ある方向づけをする、そこにねらいがあったんでしょうか。
  139. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 端的には、現行の百十六条の「証拠申出の順序」の規定が活用されていないということで、この規定の整備ということで今回の改正をお願いしておるわけでございます。  この百十六条のできましたものは、これはシャウプ勧告に淵源があるわけでございまして、納税者は政府に対してみずからの方で立証すべき責任があるんだという勧告がありまして、それを受けた規定所得税法に盛られ、国税通則法ができまして、それが通則法に移されたのがこの百十六条の条文であるわけでございます。  この制度の活用がなされていないということは、訴訟指揮上、一つは現行の規定課税庁主張があった場合に、そこで課税庁主張が合理的であるという裁判官が心証を得られないと、この条文による訴訟指揮が発動できないということと、仮にそういう訴訟指揮を発動されましても、今回お願いしておりますような民事訴訟法百三十九条にその訴訟指揮の効果がつなげられておりませんので、いわば有名無実と申しますか、せっかく訴訟経済等も勘案した規定でありながら活用されていなかった。ただいま委員がおっしゃいましたようなことも含めまして、ただそれだけではなくて、訴訟経済全体の観点から今回百十六条の規定改正をお願いしておるということでございます。
  140. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 訴訟経済が頭にあることは、それは私も異論がございません。ただ、この中を見ますと、「併せてその事実を証明すべき証拠の申出をしなければならない。」と、こう百十六条の一項に書いてあるわけです。この「しなければならない。」というのは、別に罰則がついているわけでもないし、これに従わなかったら別にどうこうということはないわけですね。ただ、「しなければならない。」というのは、裁判官の訴訟指揮に対して有効にきくわけですね。したがって、これは訴訟指揮に対するある方向づけをしている法規でございますね。従来ですと、「行政機関の長の主張を合理的と認めたとき」にはこうするものとすると、こういう書き方なんです。そうすると、裁判官がそういった心証を持った場合にはそうしてよろしいという意味ですね。今度は合理的であろうとなかろうと、その条件がないわけですから、合理的であろうと、いや合理的だという心証を持とうと持つまいと、「事実を証明すべき証拠の申出をしなければならない。」という、訴訟指揮をしなければいかぬ、これが法律の現実の効果ですね。という改正案だと理解しても由形ではないですね。
  141. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) それは委員の仰せのとおりでございまして、現行の百十六条は、今おっしゃいましたように、裁判官の合理的であるという心証を得て初めて訴訟指揮が行われるわけでございますが、今回はそういう裁判官の心証といったことではなくて、課税庁の事実の主張があって、それに対して、ただし今回の場合は原告、つまり納税者に有利な事実を主張するときには遅滞なくしなければならない。ただ、それを遅滞なく行わなかった場合等はどうなるかということは、それは第二項に移りまして、それが民事訴訟法に言う百三十九条の時機におくれた攻撃防御の方法であるかないかは裁判官が御判断になる、民事訴訟法の規定において。こういうことでございます。
  142. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今お触れになった二項が非常にギラギラと見えるんですね。百三十九条ですと、「故意文ハ重大ナル過失二因リ時機二後レテ提出シタル攻撃又ハ防御ノ方法ハ」という条件がついてまして、それが「訴訟ノ完結ヲ遅延セシムヘキモノト認メタルトキハ」で裁判官の判断が入るんだけど、これは文句なしに「攻撃又は防御の方法とみなす。」と大胆に切ってるわけですね。ここまでやってしまうと、問題は裁判官の訴訟指揮、いわば裁判官の心証、そこまで入り込んだ法律規定になると、やっぱり今いろんな方面で不安が出てくるのも無理からぬところではないだろうか。むしろこの二項というのは、仮にこの法律改正を是とする立場をとってみたとしても、二項は要らないんではないか、蛇足ではないかという気がするんですが、あえてこれをつけ足した理由は何ですか。
  143. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) この規定の直接の効果につきまして、今委員がお尋ねのありました点につきましては、主税局長から御答弁申し上げたとおりだと思うわけでございます。ただ、この規定の全体の意味合いというものは、もう少し広い見地から解釈することも可能かと私どもは思っておるわけでございます。  すなわち、訴訟におきましては、何といっても一番大切なことは、一つはフェアプレーということであり、もう一つは不意打ちを避けると、この二点だろうと思います。あらゆる訴訟の仕組みが恐らくそういうものに即してでき上がっておるんだろうと私ども思っておるわけでございます。そういう意味におきまして、従来の民訴法百三十九条の運用その他にかんがみまして、大きな見地から当事者が、私ども課税庁側主張をいたす、それに対しまして原告納税者の方が無理のない範囲で——無理のない範囲と申しますのは、責任に帰することができない事由がありますときは、一項のただし書きがございまして、そういうことをなさらなくてもいいわけですが、無理のない範囲遅滞なく主張をなさる。それに対しまして私どもがさらに主張していく。そういうような仕組みがいわばこの規定によって担保されるというところに大きな意味合いがある。また、私どもにとりましても、これは不意にいろんな証拠が出されると、そういう不意打ちがありますと、私どもとしましても、それに対応するだけの証拠とか時間が要るわけでございまして、さらに訴訟が遅延するということになるわけでございます。  そういった観点からこの二項につきましてのお尋ねは、ここに限局すれば、委員の御指摘するところもごもっともでございますが、大局的な見地からそういった訴訟の遅延を防ぐための一つの枠組みということで御理解を賜るべきものではないかと存ずるわけでございます。
  144. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 委員がおっしゃいましたこういう規定の文理的な意味をもう少し補足的に御説明申し上げますが、この二項にございます「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法とみなす。」と、ここまで書かなくてもいいんではないかという御指摘でございますが、ここの意味は、民事訴訟法百三十九条に規定する時機におくれた攻撃または防御の、あそこに言う攻撃、防御の方法の問題ですよということでございますので、そういうものとして却下するかどうかは、先ほどおっしゃいましたように、それが原告の故意、過失によるものであるかどうか、それからそれが訴訟を遅延させるものであるかどうかということを総合的に判断されて裁判官が決定を下されるということでございまして、この規定によってすぐ却下されるという意味ではございませんから念のために。
  145. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 一項ですけれどもね、一項の後段のところで、「ただし、当該訴えを提起した者が、その責めに帰することができない理由によりその主張」云々と、こうありますけれども、「責めに帰することができない理由により」ということの中身は、故意によらず重大なる過失によらずと読みかえてもそう大きくは違わないんだということですか。
  146. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これも結局、裁判官の訴訟運用でケース・バイ・ケースということになるでございましょうが、理論的に言いますと、故意それから重大なる過失、場合によっては軽過失も入り得るかどうか、それは個々訴訟の場面におきまして裁判官がどう御判断になるかという問題であろうかと思います。
  147. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ですから、民事訴訟法百三十九条の「当事者カ故意文ハ重大ナル過失二因リ」云々という言葉を、この法律では全く同じところは別にしまして、大体において「責めに帰することができない理由により」と書きかえている。書きかえて、この「前項の訴えを提起した者が同項の規定違反して行った主張」はこうみなすと、こうなっているんです。こう持って回らなくても、百三十九条だけをもとにして、後は裁判官の訴訟指揮に従うとした方が素直だったんじゃないか。  一項については私も当然だと思うんです。みずからの利益についてみずから挙証するのは当たり前ですからね。ただ、後段のところで、言葉は悪いんですけれども、裁判官不信がどうもちらちらしているという印象が強いものですから、裏返して言うといろんな不安を高めるんではないかと思います。これはいろんな税務訴訟の実態を踏まえたことでありますから、これ以上ここでの議論を避けますが、法律というのはできるとひとり歩きをするものですから慎重な運用をぜひお願いをしておきたいと思います。  あと時間がありませんのでこれは大臣にお尋ねしたいんですが、実は国税職員の数の問題なんです。同僚議員も前々から数が足りないではないかと。大臣からも、確かにそうなんですと。しかし大蔵省というのは他に対して物を言う立場にある、みずから緩めるわけにはいきません。そんな中でも皆さんの御激励が一つの力になっております。今後も努力してまいります。あれだけ努力をしてもこれまでは一けた、今回はやっと二けた。これではというお話がございました。その点でお尋ねをしたいんです。  この委員会でも恐らくやがて附帯決議をつけると思います。で、人員については格段の努力を、特段の努力をしろという国会決議が従前もございましたし、今度も出ると思うんです。ということは、超党派で決めるわけですね。税務職員の数が足らない。したがってふやさなきゃいかぬ。超党派の意思が決議になるんです。これが実現しないというのはどういうことなんでしょうか。決議をしながらだんだんむなしくなってくる。今の総定員法の枠の中ではとにかく全体を縮減していこうということでありますからね。必要な部分は特に伸ばして、要らないところは削ってということが合意であるはずなんです。今の行政の中では、そうは言ったって隣近所を考えながら歩かなきゃいかぬ。したがって数が足らないのはわかるけれども、やっぱりふやせないのだ。このあたりを同じように堂々めぐりをしていくしかないのだ。一体どうしたものでしょうという質問なんです。
  148. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 栗林さんは非常に素朴な表現でなさいましたけれども、現実をついたそのとおりの心境を私自身も持ちます。  時に附帯決議というものが行われ、当然のこととして超党派で行われ、しかしそれが結果として実りがどうあるかと言えば、期待をはるかに下回る実数であるということが間々あるわけであります。これは難しく言えば、いわゆる附帯決議は附帯決議であって、それを体して最大限の努力をした結果、行政府としてはこれが限界であったということに尽きるでございましょうけれども、それで済むものじゃない、お互い政治家として。そこに難しい問題がございます。  私なりに、総定員法ができまして、それから行政組織法ができまして、あの当時からの自分の過去を振り返ってみても、総定員法というのはある意味においては大変画期的な法律であったと思います。それが全体の定員を抑制するそれなりの効果は今日まで発揮してきたと思う。しかしその中におけるでこぼこ調整といいますか、必要なものはふやし、必要でないという表現はおかしいのですが、行政需要がそれほどないものは滅していく。こういうことをいろいろな工夫してやってみましたけれども、率直になかなかそれが現実の姿となって出ていない。しかし見てみますと、例えば米穀検査員の方々等に対するいろんな批判がございましたが、今日かなりそれは減る傾向にはございます。  そのときに他省庁との配置転換を考えてみたらどうだというので、私もいろんなことを考えてみましたら、最初本当は期待をしていなかったことで、その米の検査員のおじさんを外務省が引き取ると。はてな、米の検査員のおじさん、ロンドン、パリで間に合うかなと素朴に思いましたら、旅券発行業務をやる際の判を押すことは、これは大変上手だということで、やっぱり人の使い方というものも工夫によってあるものだなと、そういう幾らかの感覚がありながら税務職員の場合にもそのことをいろいろ考えてみました。  しかし今最も好ましい姿というのは、年齢構成もいろいろございますが、税務職員の皆さん方はいわば税務大学校等で研修を受けて、そういう質的なものと年齢構成とが一致した場合が本当は一番いい。適当にこっちの職場からこっちへかえた場合、必ずしも機能しない、十分には機能しない面もある。こういうようなお話も聞きながら、御声援を受けながらやっと二けたというようなことですから、だからこれから先もこのことは、私もあのときある種の熱意を持っておっただけに、総定員法の天井を外すとか、あるいはその枠の外へ持ってくるというところまで踏み切る実はまだ決心も自信もございませんけれども、そういうことを考えてもう少し工夫してみなきゃいかぬかなと、今度の財務局の定員減のときにも考えてみました。たまたま例えば私の庁でどうしてもそこにおりたいという人があるとすれば、むしろ税務職員の方へ異動きしたらどうだというようなことも実際は考えてみました。しかしそれについてはそれなりにまたいろんな疑問が出てまいりまして、いわばその職場になじんだということ、給与体系の問題は別としまして、それで一応我々の内部の議論倒れに終わったという感じがいたしております。  だからおっしゃる表現こそ素朴でありますが、おっしゃった意味をどういうふうにこれを現場で、我々が数の上であらわれるようにこれから——時には自分と勝負するようになるわけです。大蔵大臣国税庁を監督する大蔵大臣が勝負する。公安委員長さんが自治大臣を兼務しておりますと、警察官の定員を要求しながら査定しておる。それと同じような心境を持ちながら、私も回数が重なってまいりましたので、もう一工夫も二工夫もして、少なくとも国会決議の後のむなしさというようなものが残らないような努力はしていくことが私に課せられた使命だと、こんな感じでおります。
  149. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 もう少し言葉を足しますと、努力が十分だったかどうかというのはどの基準で判断するんだろうか。大体私はこういった基準でいつも決めるんですが、人を育てるのに何年かかるか、一声国税職員も十年といっていますね。十年後の税制はどうなっているんだろうか。大臣、これまでの先輩大蔵大臣は歳出を考えていればよかったけれども、今は税金、歳入だけでありますと言っていますが、十年後はもっとそうかもしれません。高齢化はもっと進む。しかも一声十年として人を育てるとしてだれが教えるのか。教える人たちは既にリタイアしている。こんな中で時間との勝負なんです。それで国会が数が足らぬよと言っているのは、実調率が低いということだけじゃないんです。時間の勝負であの一けたや二けたではだめだよという意味でしょう。そうすると、それは総定員法の天井を外すのか、枠外にするのか、方法はいろいろあると思います。ただ、自問自答して悩んでいるだけでは、結果としてサボタージュになってしまう。外交官とか国税職員というのは、たまたま両方そうですけれども、外交官というのは数をふやして仕事をさせれば、国にとって一番重要な情報を集めてくるんです。国税職員というのは、勤勉な人たちが努力をすると、税負担の公平を確保してくれるんです。だから両方とも隣近所の心配しているのは理由にならない。  そこで、私のお願いは、こうなったらもう総定員法の枠から外してもらう、何らか思い切った対策をぜひ考えていただきたい。もう毎年これではこっちがやりきれませんという意味であります。御答弁要りません。
  150. 青木茂

    ○青木茂君 御質問申し上げます。  まず第一に、資料のことでございますけれども、私、前回の委員会で、今度の税法改正におきまして所得税の刻みを今まで十九段階であったものを十五段階にしたんで、その場合それぞれのブラッケットに何万人の人が張りつき、十九段階のときは何万人張りついておって、十五段階になったらそれがどういうふうに移動したかという資料がいただきたいというふうにお願い申し上げまして、当局の方から係の方が見えましていろいろ御説明をいただきました。非箱に努力はしてくださったわけなんですけれども、必ずしも納得のいくものがどうも出ていない。これは時間がなかったからそうなってしまったのか、どうしてもこれは立法政策の基礎になる資料だと思いますから、これからきちっとしたものをおつくりいただけるかどうかということ、まずそれが第一点でございます。
  151. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 前回の委員会で確かに青木委員からそういう御要請がございました。ただ、現在の私どもの税務統計におきましては、所得税の税率表におきますそれぞれのブラッケットの所得ごとに税務統計をとっていないわけでございます。これは私どもが現在歳入見積もりの資料あるいは各種の納税人員あるいは所得額、税額の基礎として使っておりますのが、国税庁でやっております民間給与実態調査と申告所得税の実態調査、これはいずれも全国税務署を通じまして階層別のサンプリングによりまして集計しておるものでございますが、これは技術上の問題がございます。  例えば民間給与実態調査でございますと、税務署から今度は源泉徴収義務者にお願いをするわけでございます、一定の様式で。その場合に、課税所得ごとの集計ということになりますと、これは大変面倒なことでございますので、まずその場合には収入単位でとっておるわけでございます。  それから申告所得税の場合は、これは各税務署がデータを持っておりますから、これは所得ごとの集計ができるわけでございますけれども、これも現在のやり方はブラッケットごとではございませんで、具体的には例えば百万とか百五十万とか二百万とかいった刻みでとっておりまして、そういうサンプルのデータを中心にいたしまして、今度は例えばこういうふうに税率表が変わりまして、所得のブラッケットが変わりますと、そういう収入の一定範囲の中に何人の方がいらっしゃる、所得でも同じでございますが、その場合の配偶者とか扶養者の数、これも大体とっておりますから、そういうものを基礎にいたしましてある種の統計処理をやる。統計といいますか、統計分布を前提にいたしました処理をコンピューターでやっておるわけでございます。したがいまして、ブラッケットごとの所得で何人の人がいてというのは、そのままずばりでは出てこないということでございます。
  152. 青木茂

    ○青木茂君 給与所得者につきましては、各民間企業組織に一文も払わぬで徴税をやらしておるわけだから、それはそれ以上のことをやれというのは無理だと思います。逆に言うならば、であるからつくらなければならない統計が出てこない。しかも政策の基礎にしなければならないものがないのではこれはちょっと困ると思うのです。したがって、それではどうですか、内借所得者だけでもつくれませんか。
  153. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず人数でございますけれども、五十七年分で源泉、申告、両方合わせまして、重複がございますが四千二百万人強でございます。そのうち申告所得税の人員というのは六百五十八万人でございまして、圧倒的に多いのは源泉徴収を受けている人員でございます。したがいまして、やはり所得税の全体の姿をとる場合に、そういう所得分布の問題も含めまして、申告所得税だけでございますと非常に変わった姿に出てくるわけでございます。  それだけを取り出すことの意味があるかどうかという問題はまずこちらへおきまして、そういうブラッケットごとに税務署に作業をさせるということは、今からそれは物理的には可能でございますけれども、これは毎年申告所得の実態調査でかなりの作業量を使っておりますので、今直ちにこれをやる実益の問題も含めまして、今後の問題として、どういうやり方がいいのかということは検討はさせていただきますけれども、もともとはこの制度自身は毎年毎年私どもがやります所得税の歳入見積もりの基礎データに使うという意味でこの調査を始めておるわけでございます。  したがいまして、繰り返しになりますけれども、あるブラッケットの間の一定の分布というのは統計分布、パレート分布といいますか、ああいう確率分布のような手法で推計をしておるということでございまして、ぴっちりの税務統計というのはとっていないわけでございますし、むしろいろんな意味でこの統計を活用する意味では、現在のとり方の方がいろんな意味で使いやすいという問題もあるわけでございます。
  154. 青木茂

    ○青木茂君 ここでも人間が足らぬから余り余分な仕事を押しつけるなということになってしまうわけなんです。税務職員の仕事の質に比べて割り当てられる人が足りない、これは私も理解できますし、だからこそこの行革のさなかにおいて——附帯決議が出るらしいのですけれども、それに私もあえて反対をしないということなんです。ただ、やらなきゃならない仕事を人間が足りないからということで逃げられては困る。今その問題は別にいたしましても、仮に人間が足らないから医療費控除の足切り限度を上げるとか、人間が足りないから二分の二乗方式は考えないとか、そういう全部人間が足らぬということに還元されては我々としては大変困る。これだけはひとつ念を押さしておいていただきたいと思うわけでございます。  それからデータの問題につきましてもう一つ、昨日もお願いを申し上げましたけれども、課税最低限を考えるにいたしましても、人約三控除を考えるにいたしましても、これからこれを理論的に詰めていく場合はどうしても最低生活費というものが一つの尺度にならなければならないということはもう当然の常識になってまいりましたから、税務当局といたしましても、最低生活費計算方式、プリンシプルをできるだけ早くお立てになりまして、それの結果というものを我々の方にお示しをいただきたいというふうに、これもお願いを申し上げておきます。よろしゅうございますか。
  155. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 課税最低限と最低生活費の関連の問題は、当委員会並びに、昨日でございましたか、予算委員会委員の御質問に対してお答えをしてきたわけでございますが、もちろん一つの研究課題としてこれは情時念頭に置いていかなければならない問題でございますけれども、その最低生活費といいました場合、税制当局が最低生活費はこれだという——最低生活費もいろいろな考え方といいますか、設定の仕方があるわけでございますが、少なくとも現在生活保護法によりまして国の最低生活費という基準はあるわけでございますね。  最低生活費そのものは非情に相対的なものだと言われておりまして、これは絶対的な基準ではないわけでございますから、したがって最低生活費の議論を政府当局としてやる場合は、生活保護基準あるいはその場合に教育扶助、住宅扶助も入れたところで議論するのか、あるいは生活扶助で議論するのか。それから今お示ししておりますのは、一級地における男子三十五歳のところで標準四人世帯のモデルの家族でつくっておるわけですけれども、これも生活保護基準自体は年齢別、性別に非常に細かい表になっておりますから、結局はああいうものをよりどころにしていろいろ議論をしていくということが、今の場合現実的なアプローチではないかと思うわけでございます。
  156. 青木茂

    ○青木茂君 それならそれでいいんですよ。要するにこれから我々が課税最低限の水準を考えていかなければならない、人約三控除も考えていかなければならない、そのときの判断の材料がないんでは考えようがない。考えようがないから、その判断の材料を大蔵省としてよりもむしろ国としてつくるべきである。それが生活保護基準であるという御見解なら、それはそれで私は十分意味があると理解できますから、この問題はこれで差し控えます。
  157. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ちょっと補足をさせていただきますが、最低生活費の議論をする場合に現在の生活保護基準なり扶助基準が有力な手がかりになるということでございまして、あれを唯一のものと言うのも問題は私ども持っておるわけでございます。
  158. 青木茂

    ○青木茂君 そうなるとまた問題がもとへ戻るんで、あれを唯一の手がかりにしてくださいとは私は申し上げていないわけですね。税の中にどうしても最低生活費というものを踏まえておかないとこれから論議ができない部分がありますから、税務当局といたしましても、それなりの最低生活基準というものをこれはひとつ、何と申しますかな、御研究願いたいというのか御勉強願いたいというのか、そして、その結果を当委員会にお示し願いたいと、こういうことです。
  159. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 生活保護基準というのは、政治の場所でいろいろなことで今のような議論というのは数多くなされておると思います。例えて申しますと、四人世帯ではございますが、生活保護基準というのは、おおむね見てみますと、お米百俵と大体一緒でございます。そうすると今度は農家の皆さん方から見る生活保護基準、いろいろな相異がございますけれども、私は一つの政治の場所で議論されるときには割に標準的評価になっておると思います。  ただ、見てみますとかなり難しい積み上げがなされておりますので、私どもも、最低生活費とは何ぞや、さればそれを生活保護基準とイコールにした場合税の中へどう位置づけされるかということを、たとえ仮定計算であっても、やってみます。
  160. 青木茂

    ○青木茂君 ありがとうございました。現段階においてはそれで結構でございます。  それから次に移りますけれども、実はいろいろ先生方の御意見を拝聴いたしておりまして、直税三法の審議が記帳義務のところへかなり集中しておったということは、我々にとってはやや異様な感じがしたわけです。私ども立場からいたしますと、申告である以上やはり証拠をそろえていただいて、記帳していただいて申告をしていただくというのが、源泉で徴収される者とのバランス上は当然ではないかと思っておるわけです。ただ、御議論を聞いてまして、これが訴訟に持ち込まれた場合の訴訟規定というものには少しきついところがあるかなあという印象は実は否めなかったわけでございます。どちらにいたしましても、脱税というものはあるわけだからそれをどうするか。  ただ、私が聞いておりまして一つこれは心外に思いましたのは、脱税とか節税とか漏税とか、そういう問題が非常に所得の低い方々をどうするかという問題に何か集約をされていて、肝心かなめの高所得者というのか、いわゆるアングラマネーですね、アングラマネーの摘発というところにアクセントがどうも置かれなかったという不満は残るわけなんです。だから、そういう意味におきましてグリーンカードとマル優と絡め合わせて御質問を申し上げたいと思うわけでございます。  この前税制調査会の会長代理の先生のお話を伺いましたときに、グリーンカードが消えかかったということで、政府税調全体が一種の虚脱状態に陥ったと、そこまでの表明があったわけです。非常に権威があると言われるところの政府税調が非常に長い間かけて答申をして、しかも法制化された。それが簡単に凍結をされてしまった、これは一体どういうことなんだ。このグリーンカードの問題こそいわゆるアングラマネーをいかにして吸い上げるかということの一つの方法ではなかったのかということでございます。  しかしこれは、凍結されたものは凍結されたで仕方がないんですけれども、それに絡みましてマル優の問題を申し上げるとするならば、マル優は、少額貯蓄非課税制度になっておりますけれども、実際上は少額にならないんじゃないか、むしろ高額貯蓄非課税制度の実態になっておるんじゃないかという感じがして仕方がないわけでございますけれども、この点の御見解はいかがでございましょうか。
  161. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も主観に過ぎる感があるかもしれませんが、私自身政治家になりましてこれほどみずから悩んだことがありません。それはグリーンカード問題です。と申しますのは、税調の先生方が長い間検討されて、五十五年度から、さあ、やるかというようなところで、五十四年度もう本当に詰まった議論が行われ、そうしてそれが法律で出たわけですね。そのときに私が初めて大蔵大臣というものになりました。私が説明をして、そして大方の各党の賛成を得て通したわけです。通して大蔵大臣在任中からこれに対する今度は疑問の声が出だしてきた。だから言ってみれば、まあ必ずしもそうではなかったと思いますけれども、やれゼロクーポンにシフトするとか、あるいは金庫が売れるようになったとか、あるいは過大な幻想であったかもしらぬと思いますが、そういう問題が出るほど、事ほどさようにこの制度は国民に理解をしていただくことができなかった、こういう反省に立たざるを得なかったと思います。  そして一年数カ月私は休んだ。休んだわけじゃありません、大蔵大臣でなかったわけでございますが、その後いろんな経過を経て、これを凍結しようというときにまたぞろ私が大蔵大臣になった。気持ちの中では、過ちを改むるにはばかることなかれとかいうようなことわざも承知しておりますものの、政府提案でございますから、提案者になるまでの間、私なりにちゅうちょをしたわけです。しかし、確かにどこで判断するかというと、その制度が国民に容易に理解されなかったというところに判断基準を置くべきだというので、凍結法案を結局出さしていただいた。本当は僕は不信任を受けるだろうと思いました。それで御協力を得てこれは通過したわけであります。  そういうこの問題の経験から、言ってみれば、別の角度から、他の先進国に比べればいわゆるアングラマネーというものは総じては少ない国だと確かに思うんでございますけれども、そういうものをどのような形で潜在化しておるものを顕在化さすかということについては知恵を大いに絞っていかなきゃならぬ課題だと、その問題に対してはまずそういう事実認識が私にございます。  それから少額貯蓄か中額貯蓄かという問題は、これもどこに基準を置くかという問題だと思います。一人当たりの貯蓄額にすればまだとてもそこまでいっておりません。そしてこれがむしろ、少額貯蓄というよりも、少であろうと中であろうと大であろうと、貯蓄奨励という意味においてはそれなりの意義があると思うんでありますが、問題は、竹下茂がおったり、青木登がおったりするかもしれません。そういうことからする捕捉の仕方というものには一工夫も二工夫もしていかなきゃならぬ課題だ。しかし、貯蓄奨励というものは、私は、日本国民の貯蓄性向が強いというのは、それが今日の産業を支えてきたわけでございますから、それはその意義が薄らいでおるとは私は必ずしも思っておりません。
  162. 青木茂

    ○青木茂君 その点はよくわかるんですけれども、貯蓄奨励を隠れみのにして脱税が行われてしまっては、これはどうしようもないわけですから、ですから、貯蓄奨励という趣旨を外さない限りにおいてグリーンカードが復活すればいいんですよ。そうでないとるならば、マル優制度を少し考えなきゃならないと思っておるわけであります。私は、思い切って世帯当たりで考えてみまして、世帯当たりの平均貯蓄額は大体五百万円だから、その五百万円プラス財形の五百万円、それぐらいで世帯当たり一千万ぐらいに抑え込んでしまって、あとは税金を出していただくというような形ぐらいはとれないものか。郵便局だ、銀行だの区別をやっておったら切りがない。こういう問題はそういうふうに考えております。  それから貯蓄奨励というお話が出ましたものですから、この貯蓄奨励についてちょっと伺います。大蔵省に貯蓄奨励官というのがございますね。これは何名いらっしゃるんですか。
  163. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 銀行局長がおらないわけでございますけれども、銀行局に一人総務課に配置されていると承知しております。
  164. 青木茂

    ○青木茂君 そして、その職員の方もいらっしゃるわけですか。
  165. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 貯蓄奨励官という官職におる者が一人でございますが、下にスタッフがおります。
  166. 青木茂

    ○青木茂君 私はその貯蓄奨励ということはわかるんですよ。これは必要だと思います。しかし貯蓄奨励官というものが一体必要なのかどうか。ということは、日本銀行の内部に貯蓄増強中央委員会というのがあるわけなんですよ。そこで大々的に貯蓄奨励はやっていらっしゃるわけですわ。それと大蔵省にあるところの貯蓄奨励官、まあ仕事がどう違うかわかりませんけれども、素人で見ますと、何か同じことを二つのところでやっている。まさにここら辺あたりから隗より始めよで、行政改革は始まってくるんじゃないかというような気がしないでもないわけです。きょうは私、突然こういうこと言ったから銀行局長いらっしゃらないから、それは無理だから、これはそれでいいですけれども、何かそこに、日本銀行の貯蓄増強中央委員会は物すごく大々的にやっていらっしゃるわけだから、それに屋上屋を重ねて大蔵省内部に貯蓄奨励官なるものがあるということが、何となくむだと言っては失礼だけれども、余分じゃないかという気がしないでもないということをつけ加えさしていただきたいと思うわけでございます。  それからもう一つ、給与生活者の場合は確かに源泉でとらえてしまっていわゆるガラス張り。さっきのクロヨンということが、これは一つの俗語で流行語ですから、そのとおりの割合だということを私どもも決して申しませんけれども、徴税技術上にやり方の差があることは間違いないわけですね、徴税制度上に。で、もしいわゆる節税、合法的な税の軽減ですね、合法的な税の軽減においても給与生活者は何も特に所得分散の自由がないわけです。これに対しまして、事業所得の場合は各種の方法でもって所得分散の自由がある。これが不公平だと思いますから、この際私は我が国にも二分二乗方式を導入したらどうかという気がしております。この点について御見解を伺いたいと思います。
  167. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この二分二乗方式で、これは非常に角度を違えた問題ですが、解決できるのは何だろう。パートは解決できるんじゃないかという考え、一時期そういう意見を個人的に申し述べたことがございますが、しかし、そもそもその二分二乗方式とは、今お願いしておる源泉徴収に対して大変な御迷惑をかけるということでなしに、その基本として所得の稼得に対して着目してそこに担税力を求めておるわけでございますから、二分二乗方式にした場合、独身世帯の場合、あるいは扶養控除の多い場合、そういう多種多様の家族構成の中でこれをとるということは非常に難しい問題じゃないか。非常に興味のある問題でございます、家族を対象にするのは。いろいろな勉強をしてみましても、今日の日本のやや定着した稼得所得を担税力と認めて、個々の人を対象にしてやるということの、これは大変な抜本的な考え方の変化になります。強いて言えば、戦後の相続税の中の奥さんに対するものに若干二分二乗みたいな思想が入っておるのかなあと、こういう感じがしております。
  168. 青木茂

    ○青木茂君 二分二乗にはこだわりませんけれども、いずれにいたしましても、給与所得者と事業所得者の間の所得分散の自由と不自由、これの不公平があることは、これは歴然たる事実でございますから、ましてや、みなし法人なんというものができてしまったら、その不公平はますます拡大してしまうわけですね。こういう不公平がそのままあるということが国民の税に対する不満というものの超爆剤になっているわけだから、その点は十分お考えをいただきたいと思うわけでございます。  何か委員会の方も御都合があるようですから、これで終わります。
  169. 野末陳平

    ○野末陳平君 公示制度のことで先に聞きたいんです。  今度は給与所得者の場合の確定申告義務は、これが一千万から一千五百万、ですから一千五百万までのサラリーマンだったら年末調整の方でやってもらえるというので、これは妥当だと思うんです。適切な考え方で、僕はこれを前も言ったと思います。しかし公示制度の方になりますと、これはちょっと乱暴な感じがするんです。  年間所得一千万超であった者が今回納税額というふうに変わりますね。額は同じだけれど年間所得と納税額。これは一見、素人にはちょっとわかりにくいといいますか、この納税額一千万というのは今までの年間所得というものに置きかえると大体どのぐらいになりますか、随分人によって違いますけれども
  170. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 標準四人世帯で二千六百万ぐらいになると思います。
  171. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうなりますと、僕は、去年でしたか、意見をここで言いましたときは、公示制度も一千万から上げてもいい、一千五百万かそこらが妥当ではないかというようなことを言ったと思うんですね。ですから、本来だったらば、今までのこういう税法にかかわる細かい改正の場合は、従来の考え方をがらっと変えるということは余りなかったように思うんですね。今までの考え方の上に立って額を引き上げる、あるいは引き下げる、こういうことだったと思うんです。ですからフェアに考えれば、年間所得一千五百万超とか、あるいは何か特殊な理由があれば二千万とか、そういう考えの延長なら何ら問題ないんですけれども、なぜこれが納税額に変わったのかという説明をお聞きしたいと思いますね。
  172. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在の所得公示の限度額の一千万円が決まりましたのは昭和四十六年でございます。それから十数年たっておるわけでございまして、五十七年の実績によりますと、公示された方の人数が四十四万人、納税者に対する割合が六・七%、恐らく、現行の制度のままでいきますと、五十八年分は、これは毎年一割ぐらい最近ふえておりますから、五十万人近くになると思うわけでございます。四十六年に一千万円に引き上げられます以前はこれは五百万でございました。当時これを倍にしたわけでございます。そのときの公示の数が約七万人でございますから、納税者に対する割合が一・七%でございました。  過去ずっとさかのぼって御説明申し上げますと、昭和二十四年当時から大体五年置きぐらいに倍あるいは二・五倍ぐらいに限度額が引き上げられておるわけです、それぐらいのインターバル。というのは、限度額を放置しておきますと、どんどん公示の数がふえできますから、それでずっと大局観察をすると、納税者に対する割合が大体一%から二%、三%ぐらいの近くになりますと、従来これを切りかえておるわけでございまして、これが従来のあれでございます。  ただいま申しましたように、一千万円は、今までから見ますと、基準がそのまま据え置かれた期間としては非常に長くなっている。二、三年来この基準額を引き上げるべきであるという議論がございまして、これは第一線の税務署も大変な手間になっておりますし、委員からも、これは引き上げるのがいいだろうという御指摘をいただいておったわけでございます。  これは税制調査会の中でもこの議論をいたしまして、中期答申にも議論の経過が書かれております。たまたま今回の納税環境の整備の一環といたしまして、そもそも現在の公示制度の意義はどうかということから議論をしていただいたわけでございますが、税制調査会の意見の中でも、現在の公示制度がいわば形骸化して興味本位になっておるから、この際こういう制度はやめるべきであるという意見もあるわけでございます。それからまた、この制度を残すにしても、税額で公示すべきであるという意見もございましたし、所得と税額ともに公示すべきであるというふうな意見、さまざまな意見がございました。結局、中期答申ではさまざまの意見がありましたけれども、結論が出ないままに、しかしながら、少なくとも今の限度額はこのままで放置してはいけないということが大多数の意見ということで集約されたわけでございます。  五十九年度の改正に当たりまして、私どもいろんな方面の意見も聞きながら、とにかくこの一千万円を引き上げるという方向検討しなければならないということでいろいろ議論したわけでございますが、税調の意見の中にもありましたように、この税額で公示するという要望が現在公示されている方々の中にもかなり強い要望としてあるわけでございます。これは私ども無視し得ない一つ意見であるということを従来から感じておったわけでございます。  そこで、今回税額公示に切りかえさせていただいたわけでございますけれども、そもそもこの所得公示の制度は、一定以上の高額の所得者を公示することによりまして第三者がチェックする、そういう牽制効果を通じて適正な申告水準を維持し、その向上を図る、つまり申告納税制度を間接的に補強し、その水準を高めるというのが本来の制度の趣旨でございますから、これを税額公示に切りかえてもその税額の背後にある所得というのは推認できる。そういたしますと、所得公示と同じように第三者によるチェック機能と申しますか、牽制効果は期待できる。そのほかに所得公示にはないいろんな副次的な効果も期待できるのではないか。一つは、そういう多額納税者といいますか、高額な納税者の税額を見ることによって、一般の国民といいますか、納税者めいめいが自己の税負担と引き比べていろいろ税負担のあり方について考えていただくという意味で、税負担なり納税の意欲を高める、あるいは啓蒙的な機能が期待できるという面が一つ。それから高額の納税者の方は、それなりに国家に貢献をしていただいておるわけですから、その意味でそれが世の中に公示されるということはある意味では顕彰的な機能もあるということから、結局そういう高額納税者の方々の納税意欲を高めるという効果も期待できるのではないかということで、急激な制度の変更でございますし、それも基準を引き上げるということと同時に、今回の制度提案したものでございますから、一部今回の制度の切りかえによって高額所得者隠しとか、いろんな誤解があるわけで、私どもそれはこの制度の本来の趣旨では毛頭ございませんので、少し時間かかりましたけれども、政府の考え方を御説明申し上げたわけでございます。  それから今回の税額一千万の公示によりまして、この法案をお認め願いますと、ことしの五月の公示は新しく税額公示で行われるわけでございますが、この公示対象人員はおよそ七万人から八万人ということでございますので、四十六年当時の、前回五百万から一千万円に引き上げました当時ぐらいの公示対象人員になるということでございます。
  173. 野末陳平

    ○野末陳平君 長い説明があったんですが、それを聞いてもなお、それならば年間所得を二千万というふうにしたってそれほど変わらない。つまり納税額公示にしたからという積極的なプラス面が説明ほどには納得できないんで、僕はこれは上げて何ら悪くないんで、二千万でいいじゃないか。二千五百万、三千万、これはちょっとと思いますよ。しかし納税額に切りかえたという場合に、くしくもこの数字を合わしているというあたり、かなり知恵者がいて何かの意図があるのじゃないかというふうにとりますよ、これは。だって素人は、年間所得と納税額だ、こういうふうに説明しているけれども、去年どことしでそう違ったとわからずにただ一千万以上と、こういうふうにとりかねませんからね。だから、それを主税局は誤解というんでしょうけれども、僕らはストレートに年間所得二千万やっても何ら悪くないのに、わざわざ納税額に切りかえたというのは悪知恵じゃないか、こう思ったわけだから、やっぱり所得隠しと思う人がいても不思議じゃない。それは誤解を招くようなことを突然やるというのがまずいんじゃないかと思いますね。  それなりの効果があるのかしれないけれども、逆に言えば、去年まで公示に出てくる人数四、五十万がぐっと減っちゃったという。これ見たって、もとへ戻ったと説明するけれども普通の人はそう思わないですね。それだけ隠れちゃったんじゃないか、こう思うでしょう。だから、僕はこの納税額に変えたというのはさっぱり意味がわからないし、フェアでないような気がするんであえて質問しているんだが、大臣、これはあれですか、税調にも一部こういう考え方があったというのは主税局長から聞きましたが、税調のとおりこれでいいと、つまりこの考え方に賛成して、納得して、その上でこうなったわけですか。
  174. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 大臣お答えの前に、五十九年度の年度答申には税額公示に切りかえるという税制調査会の答申はいただいておりません。これは中期答申に今言いましたようにさまざまな意見併記が行われて、少なくとも公示の限度額はこの際引き上げるべきであるというところで税制調査会の意見はとどまっておるわけでございます。
  175. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この問題、素朴なそういう議論が行われるであろう。で、私も気がつかなかったんですが、もう一つ素朴に国民の皆さん方が思うのかなあと思うのは、国会議員が大体みんななくなっちゃうわけですね。
  176. 野末陳平

    ○野末陳平君 なくならないよ、みんなは。
  177. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ほとんど出ません。
  178. 野末陳平

    ○野末陳平君 出ないの。
  179. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 出ないわけです。私もこの間申告しましたらわずかに足らなくて入りません。ですから、それまではよかれあしかれ、各地方の税務署でも国会議員一千万円以上で出ておりますね。それが今度は一人も出ないようになるわけです。ははあと思って、そこまでおれも考えなかったなあと思いながら、税調も諸説あったと、こういう感じでございます。  で、私どももその後いろいろな人に会うと、公示されておる側は、私は事ほどさように所得があります、しかしそれが間々全部所得かのごとく見られがちだ、むしろ税額で示してもらった方が、合いい言葉で顕彰的な意味と言いましたけれども、そんな感じもあるという、公示される側の方ではその意見が確かに強うございました。数はおよそ五十万ぐらいになるのが七、八万ぐらいになるだろう。そうすると、当初の数と余り変わらないからその点は事務量もそれで減りますし、まあいいじゃないかなあ、こう私も判断をいたしまして、みずからのこととして計算してみますと、私自身がそれの下に出ないようになっちゃう。そうすると、東京ですと、どうってことはございませんが、私どもの小さい町では最高の高額所得者が公示されないことになるということに対して村人たちはどういう関心を持つだろうな、これから帰って聞いてみようと思っておるところであります。
  180. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですからね、僕なんかは年間所得が二千万になってもそれなりに意味がある。出ない人もいるかわりに今度は出る人もいる。出ないことに、あの人なぜ出ないという意味で、公示されない側から見ればそれなりの意味がある。今までどおりの制度でそのまま額を上げるというのが妥当だと思っていたんですよ。でもね、今の大臣の話を聞いて何となくわかりますね、これは。政府税調は全く意見はあっても答申していないんだ。ところが自民党の税調はそれを答申して、結果的に大蔵省の案にどうもなっているようなんだ。というのは、あれじゃないの、国会議員がなるべく潜ろうと思って意図的にやったんじゃないですか、恐らく党の税調の人が。そのぐらいに誤解を招きやすいんで、突然こんな納税額に変える積極的な理由は全くないんではないか、こう思っているんですね。今からこれを直せというのもできないんでしょうけれども、これは余りよくないですね。  まあ、いいでしょう。出た結果によって、世論の動きなども見て検討すべきはすればいいと思いますね。次に行きましょう。  次は、これも素朴な疑問をどう説明したらいいかで、なまはんかな知識を持つちゃいけませんから、あえて政府側から聞いて理解を深めたいと思います。  お酒のことなんです。特級、一級、二級、洋酒にも日本酒にもあるわけです。クラスがついている、ランクがついているということは、品質の格差といいますか、上級品、高級品が上で、二級品はそれなりに落ちるというのが常識的でしょう。それじゃ洋酒の場合、特級、一級、二級というのは客観的基準によって格差がつくが、それをどう説明つければいいんですか。どこが特級で、何がゆえに二級なのか、これを簡単に。
  181. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) ウイスキーの級別の基準のお尋ねでございますが、ウイスキーにつきましては、法律、政令、いろいろ規定がございますが、最終的に結論を申し上げますと、原酒三十度以上が特級でございます。一級は二〇%以上二七%未満でございます。二級はウイスキー原酒が一〇%以上一七%未満ということになっております。
  182. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうすると、原酒でもって客観的にこの差が明らかになる。そうなりますと、これは飲む方もそれを意識して飲むわけですから、値段が高くても納得できるし、それから税率が高くてもこれは妥当であろうと素人は判断できますね。  今度は清酒の方です。清酒も洋酒と同じくこういう客観的な基準というものがあった上の級別ですか。
  183. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 清酒につきましては、ただいまのような計数的な基準はございませんで、官能審査ということで地方酒類審議会におきます委員の審査の結果によりましてそうなっているわけでございます。  そこで、実はこの官能審査につきましてはいろいろ御疑問がおありでございます。かなり技術的な問題でもございますので、私、先生のお尋ねがございましたので、国税庁の技術系統の職員と十分に相談しまして、どのような御説明を申し上げれば御理解いただけるかということで調べてまいったんでございますが、国税庁には醸造試験所がございます。全部で技術系職員が百十名おりまして、農学博士が二十名おる。こういうような職場でございますが、その結論的なことを申し上げますと、清酒の品質でございますが、これは化学成分、つまりその混在しております物の化学分析や物理的性質を測定することによって決まるものではない。清酒の中に含まれる多くの香味成分の全体としての調和である。具体的に申し上げますと、清酒には甘辛がございます。それから味の濃淡、それから香りと味のバランス、こういったいろいろな香味成分がございますが、それらが全体として調和がとれているかどうかということによりまして品質の評価が決まるわけでございまして、その結果、機械的な分析装置によりますよりは、むしろそういうすぐれた能力を持った審査員の五官をフルに活用いたしましたところの、官能と申しますとそういう人間の五官でございますが、そういう能力をフルに活用して審査をいたします。それで官能検査と申しております。  いろいろ議事録を拝見いたしますと、舌先三寸でと、こういうような御議論もあったようでございますが、これは五官をフルに活用いたしまして真剣に審査をさしていただいております。そういった世界は酒だけじゃございませんで、例えば自動車の乗り心地、それから家庭用品でございますいすの座り心地でございますとか、それから文房具ですとボールペンの書きやすさ、こういったものはなかなか機械では判定しにくいというようなことでございまして、そういった一連の世界に属するのではないかと考えておるわけでございます。  それからもう一つこの官能審査につきまして申し上げておきたいことは、非常に迅速に分析が可能でございまして、例えば酒の甘辛の判定でございますが、これを機械でやりますと約一時間かかるわけでございますが、審査員の官能によりますと三分以内でできる。こういったようなことも言われておるわけでございます。  なお、決してこれは我が国だけの扱いではございませんで、例えばフランス、西ドイツあるいはイタリア等におきましては、国家機関がやはりワインの上級酒の格付の際に官能審査をしているわけでございます。それからまた我が国におきましても、例えば農林省のJASというのがございますが、日本農林規格でございますが、例えばしょうゆにつきましては、公認のしょうゆ官能検査員というのがおりまして、そういった方々がしょうゆ、みそ等につきましては官能審査を実施しているということでございます。  そこで、しかしながら、私どももこれで十分というふうに考えているわけではございませんで、今後いろいろ改善すべきは改善すべきであろうということでございますが、例えば官能審査以外に考えられます客観基準といたしましては、原料米の品質とか塩割合、あるいは精米ぐあいでございますが、お米をいかに精白度を増してつくったかということでございますね、それからアルコールの添加重、糖類の使用の有無、清酒の分析成分、こういったものが挙げられるわけでございます。清酒のよしあし、品質のよしあしてございますが、こういった多くの要因が複雑に絡んだ結果決まるというようなことでございまして、なかなかこういったものをどのようにして絡ましていくかというのがこれからの課題であると思うわけでございます。  長くなりましたが、以上、御説明さしていただきます。
  184. 野末陳平

    ○野末陳平君 残念ながら僕は酒飲めないからよくわからないんで聞いているんだけれども、官能審査が悪いと言っているんじゃないんですよ。そういうような個人の趣味嗜好の世界に、また個人の主観による判断で香味性の全体的な調和なんていったって、それでいい悪いと言われても困るんですが、まあ、それにしてもクラスがあってもいいかもしれない。しかし、特級があり一級があり二級がある、そして値段も相当違い、税率も違う。この差が果たしてそんな官能審査によってもたらされていいのかということになるので、洋酒と清酒と比較して、清酒については、何といいますか、業者その他の事情を考えていろんな点で優遇すべきだと思います。客観的基準がないのに特級、一級、二級と決めて、こうやって税率をいつも少しずつ上げてみても、どうもこれで将来こんなことやっていていいのかと、こういう疑問があるわけですね。  そこで、官能審査以外の方法をやれというんじゃありませんで、大臣、この税の負担率がどうやらこの程度の主観的な審査から来る級別にしては違い過ぎやしないかと思うんですね。だからこれは、上に寄せるか下に寄せるかは別なんですけれども、ちょっと差があり過ぎて、洋酒に比べてこの辺が弱いと思うんですが、どうでしょう。このままずっと二年ぐらいごとに変えていっているようですが、僕自身は前回は賛成しておりますが、でもこのままだとどうも何かいつもいつもその場つなぎの手直しみたいな感じがして、ちょっと困っているところですがね。
  185. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるいは正確を欠くかもしれませんが——その前に一つだけ。国会議員云々と言いましたが、大体今までに七百人ぐらいが千万以上で出て、今度税額で千万になりますと恐らく一割ぐらいになるだろう、公示される方は。しかし、これは税額でなくて上がっておっても、数は同じぐらい出ないようになるでございましょう。これは主税局から答えますとなお正確な数字でないといけませんので、私が答えれば大ざっぱな勘でもいいと思いましたので、そんなことじゃないかと思います。  今の官能審査の問題ですが、私もささやかなメーカーのせがれでございまして、昔からアマガラビンと申しまして、甘くて辛くてぴんときたやつが大体一番いい。大体優秀なせがれが、我々のように政治家がなんかにならないで、本当に優秀なせがれがおりますとみんな滝野川醸造試験所で訓練されまして帰りますから、そして滝野川醸造試験所には大変な先生がいらっしゃるので、だんだん日本じゅうの酒が本当は同じような味になってきつつあるという感じがございます。が、今まで長くなじんだ特級、一級、二級も上下二つにしろという議論もあります。  ただ、アルコールの度数だけでは問題があります。日本の国酒、国の酒として見た場合、今、酒税の範囲は一六%ぐらいに下がっておりますけれども、官能審査が行われ、そういうものの格付はあっていい。現実どうするかといいますと、我々は特級の審査をちょうだいしましても、宣伝力もありませんから、結局二級にして売って税はそれだけ少なくするわけでございます。現実、我々二級酒しか売れないメーカーは、特級の官能審査では合格しても二級で売っておるというような企業体自身の中で、そういう問題はある程度消化しておるんじゃないかというふうな感じがしておりますが、級別の考え方についてもう検討する時期だ時期だと言われるのは、みんながわかってこれは本気に勉強しましょうということに今日なっておると思います。
  186. 野末陳平

    ○野末陳平君 ただ一つ心配は、これによるかなりの増を見込んでいるわけですが、どうなんでしょう、このままで税率が安く値段も安く二級酒が提供できるならば、当然二級酒やしょうちゅうを飲む人がふえるのはいいんですが、いわゆる税率のみが低くて高い高級な二級酒ばかりがどんどん。出てきて、特級、一級が余り存在意味がなくなるなんという、そういうような心配はないんですか。
  187. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 確かに今回の酒税の紋別の増税割合が、清酒産業の経営の実態を考慮いたしまして二級が有利な扱いになっております。したがいまして、ただいまの先生の御疑問ごもっともなわけでございますが、ただ、だからと申し上げまして、すべて二級酒がふえていくかということになりますと、必ずしもそうでございません。一部最近非常に高価格の二級酒等もあるわけでございますけれども、これは地方の蔵が、技術を保存するといいますか、そういった関係からごくわずかつくっているだけでございまして、例えば計数を申し上げますと、一万円以上の値段をつけて、一リッター当たりでございますが、一万円以上の二級酒をつくっております製造業者は、これはことしの三月調査でございますが、二十六者でございまして、その移出数量は十三キロリットルでございます。業者数の一%、全体の二級の中で〇・〇〇二というごくわずかでございまして、この数字を仮に五千円以上で申し上げますと九十八者、三・七%、移出数量が五十キロリットルで〇・〇〇七という数字でございまして、全体がそういう高価格の税を負担しない二級酒がふえていくということにはそれはならないかと思います。  国税庁といたしましても、なるべく、級別制度がございます以上は、その級にふさわしい級別認定を受けるようにというような御指導も申し上げておるわけでございます。そんなことで若干全体としては二級酒がふえるのかなと思いますが、それほど大きな御懸念になりますような姿にはならないのではないかというふうに考えております。
  188. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいま議題となっております六案のうち、法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  189. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 御異議ないと認めます。  なお、三案の自後の審査は後刻に譲ります。  これより関税定率法等の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
  190. 穐山篤

    ○穐山篤君 関税の問題について先にお伺いしますが、時間がかなり制限されまして、そこで少しはしょって申し上げます。  最近、関税率の引き下げとか、あるいは非関税障壁の改善というふうなことを幾たびかやってきました。今回もその一例として関税定率の改正が出ているわけですが、今まで日本は前倒しということを含めてかなり対外的には配慮をしながらやってきたつもりですね。その点について例えば輸入量の面であるとか、あるいはEC、アメリカからのその後の評価であるとか、そういう効果の面についてはどういうふうにお考えになっているんでしょうか。
  191. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) ただいま御質問のありました我が国の市場開放措置の効果の点でございますが、まず第一点は、諸外国からの効果、あるいは国際機関からの効果について申し上げますと、もちろん私ども関税の引き下げは自主的な決定でございますので、諸外国からのあらゆる要求にこたえているということではありませんが、しかしながらアメリカにおきましては、例えば具体的に申し上げれば、昨年レーガン大統領が来日されましたときに、日本の市場開放措置関税措置については評価するということを言っておりますし、またECについて申し上げますと、対外総局長は、東京ラウンド関税の前倒しということは他国への波及もあって大変結構なものであるということを言っておるわけで、そういう意味でも他の先進諸国についての関税の引き下げを促すというような効果を持っているという評価もしておるわけでございます。  なお、国際機関の関係で例を申し上げますと、二つだけ申し上げておきますが、ガットのダンケル事務総長は、我が国の十月二十一日に決定した市場開放措置というものは自由貿易体制維持のための重要なシグナルであるというふうに申しておりますし、またUNCTADのコレア事務局長におきましても、今回の個別の品目の引き下げにつきましては、あるいはまた鉱工業品の特恵関税のシーリング拡大につきましては、大いに歓迎するということを申しております。  ただいま申し上げましたようなことで、諸外国のそれなりの機関、責任者の方から正当な評価を受けている、かように思っております。  他方、輸入についての効果でございますけれども、これは具体的に申し上げた方がよいと思いますので、昨今の例で申し上げますと、前年の改正の主要品目でございましたチョコレート、ビスケットにつきましては、必ずしも直ちに輸入の増加をもたらしてはおりませんけれども、前年の改正のいま一方の柱でございましたシガレット、紙巻きたばこについては輸入の増加を来しておりますし、その他メントール、紙、コンピューター等はそれなりに輸入の増加をもたらしております。  そういう一般的な傾向がございますが、総じて関税率引き下げは輸入促進の効果を持つものでございますけれども委員御存じのとおり、輸入そのものは需給の状況、あるいは相対価格、そういうものによって決定される部分が大きいものでございますから、関税率の引き下げそれ自体で直ちに輸入の増加をもたらすということが常には起こらないということは御理解いただけると思います。
  192. 穐山篤

    ○穐山篤君 そこで関税水準といいますか、関税負担率のことが一つの目安になるわけですが、最近の実績では先進講園と比較してどんな数字になっていますか。
  193. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 私の手元にございます直近の関税負担率を申し上げますと、たしか八一年の数字でございますけれども我が国の場合は二・五%、アメリカが三・二%、ECが二・六%、それが直近の数字でございます。
  194. 穐山篤

    ○穐山篤君 今お話がありましたように、日本の場合が二・五、米国が三・二、ECが二・六、この三つを比べてみましても日本の場合は低水準にある。低水準にあるということは総輸入額に対して関税の収入が少ないという相関関係になるわけでして、その限りでは日本の二・五というのはある意味では貢献をしている、国際的には貢献をしている。しかし我が国関税財政の面から言うと少し勉強をし過ぎていると、こういう感じになるわけです。なお、カナダであるとかオーストラリアであるとか、そういうところと比べますと日本は非常に低水準にある、それだけ、努力をしている。にもかかわらず、米国からしきりに関税の引き下げ、あるいは非関税障壁の改善という問題が主張されましたね。それからECにつきましても、製品輸入をもっと促進してくれということも含めてかなり厳しい注文がついたわけです。  そこで、去年の十月二十一日の閣議でも関税の問題について三つの問題意識を持つことになりましたし、それから先日の三月の十九日の対外対策関係閣僚会議におきましても、関税引き下げの問題は大きな課題として上がっているわけです。それほど関心が持たれ、また関心を持つことは当然だろうと思うんですが、しかしこれは日本が自主的に、積極的にやることもさりながら、このバランスのことをしっかり考えてもらわなければならぬと思うんです。  そこで、今回の改正に触れて申し上げますと、昨年の十月二十一日に決まった関税の引き下げの方針に基づいて今回の法律改正案が出てきたわけですが、その中に「主要先進諸国における自主的な関税引下げの実施を期待し、東京ラウンド合意に削った関税引下げの繰上げ措置を、農林水産品を除き、鉱工業品につき昭和五十九年度から実施する。」、これが今回のものであります。「実施内容については、主要先進諸国における関税引下げの状況を勘案して決定する。」、こういう注目すべきことも入っているわけですね。  そこでお伺いをするわけですが、ECについて総括的に言いますと、景気が回復をしなければこの分野についての協力はしばらく遠慮さしてもらいたい、そういう注文がECからはついているわけですね。それからアメリカからは、今の牛肉、オレンジの問題にも関連をするわけですが、日本が農水産品に手をつけなければおれの方としても関税の問題について協力できない、こういう厳しい注文があるわけですね。そういう状況を踏まえて今回の改正ではどういうふうに考え昭和六十年にはどういうふうに展開をされようとしているのか、その点をお伺いします。
  195. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) ただいまの御質問お答えする前に、先ほど関税負担率について特に委員の方からカナダとオーストラリアにお触れになりましたので、八一年の数字を念のために差し上げておきますが、カナダは四・五、オーストラリアは九・〇でございます。  そこで、御質問の東京ラウンドの前倒しについての関係主要国の動きは穐山委員の御指摘のとおりでございます。やや私の方で御説明申し上げれば、ECの方は確かに昨年の秋までのところでは、とにかく国内の、EC地域内の景気の動向が好転しないと関税の引き下げはできないということで、事実ことしについては実施しないことになったわけでございますが、    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 その後、年末に至りましてECはいわば二つの条件、一つはECの国内の景気情勢が好転するということ、いま一つは他の主要国が同様の措置をとること、これを前提にして六十年の一月一日から実施に移す方針だけを一応決めたわけでございます。ただし、具体的には、本年の秋に先ほど申し上げた条件が充足しているかどうかというようなことを含めて検討して最終的な決定に至るものと思っております。  また、アメリカにつきましては、その後の動きを申し上げれば、アメリカの行政府自体は前倒しについての積極的な姿勢をとっておりますが、御存じのとおり、アメリカは行政府による法案提出というのはございませんので、議会に対して働きかけを行っており、議会の議員の方からの大統領に対する関税引き下げ権の付与を内容とした法案を作成させておるようでございます。しかし、それがまた審議には至らないというのが現状であると思います。  そういう現状を踏まえまして、私どもといたしましては、先ほど穐山委員が仰せのような十月二十一日の総合経済対策を本年にはどうするかということを検討いたしまして、第一には諸外国がといいますか、貿易相手国が今回共同行動をとらない場合にあっては一年間の前倒しにとどめたいということに決めたわけでございますが、これは主としてこの種の保護主義防圧に対する行為というのは共同行動であることが必要であるという認識からであります。明年、それ以降の措置につきましては、私どもは今申し上げた関係国の動きを見て六十年度改正の過程で検討してまいりたい、かように考えております。
  196. 穐山篤

    ○穐山篤君 その点また後で触れますが、まだ依然として輸入検査手続の簡素化というふうなものを含めて、EC並びに米国から厳しく要求があるわけですが、こういうものについての環境整備について、これから積極的に対応しようとしている分野は何がおありになるんでしょうか。
  197. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 輸入手続の簡易化につきましては二つに分けて申し上げてよいと思いますが、輸入通関手続、それが一つ。いま一つは通関前及び通関後手続、この二つに分けられると思います。  輸入通関手続につきましては、一昨年、つまり五十七年の四月一日からいわゆる五項目の改善措置を講じまして、その結果、現在は平均で、輸入申告から審査終了までは〇・三日、つまり二時間というスピードアップが図られておるわけでございます。これについては、したがいまして、アメリカも含めて諸外国から高い評価を受けておりまして、一部のアメリカ政府の関係者は、通関手続に関する限り問題のほとんどは解決した、こういうふうに申しておるわけでございます。  他方、通関前及び通関後の手続でございますけれども、これはいわゆる他省庁所管の法令に基づく輸入手続でございまして、そういう意味では私が責任を持って申し上げにくい立場でございますけれども、これについては一つは、基準・認証制度というものが五十八年から、昨年から国際化され、簡易化されて、大きく進展をしております。それから私ども関係省庁の間、例えば薬事法等についての運用について相談をいたしまして、小口の事案については、一定の条件のものについては厚生省にわざわざ出かけていかないでも済むというような措置も講じてまいっておりますので、そういう他省庁分の手続も含めて簡易化されておるというふうに考えております。
  198. 穐山篤

    ○穐山篤君 大蔵大臣にお伺いしますが、鉱工業品の前倒しの問題につきましても、それから個別品目についての引き下げにつきましても、アメリカが要求を今までしきりに主張してきたもの、ECから、国によって多少製品が違いますが、要求してきたもの、それを整理して今回のものに当てはめてみますと、ざっくばらんに言えば、問題はかなり残っているというふうに言わざるを得ないと思うんです。そこでこれから個別折衝になるかもしれませんけれども、ボンのサミットで、いろんなものもほかに議論されると思いますけれども、この関税の問題あるいは非関税障壁の問題について議題になる可能性というのはどんなふうに展望されているんですか。また個別に折衝されるだろうと思いますが、その場合、残すところ昭和六十年度にどうこうするという対応を言わざるを得なくなると思うんですが、その場合の我が国の政策というものについてどの程度のことを準備されていくのか、その点をお伺いします。
  199. 竹下登

    国務大臣竹下登君) サミットでは、何分参加国がカナダを入れて七カ国でございますから、その双方の個別関心品目ごとで議論するということは、これは別の場所であろうと思います。ただ、大蔵大臣同士で話すとき、あるいはサミットというのは朝飯から昼飯から晩飯まで全部飯を食いながら会議するというふうな慣習がございますので、そういう際に、特に食事のときなど出てくる問題が皆無とは言えませんけれども、大筋の議題はこれから個人代表等々で詰めていただきますので、まだ定かでございませんが、総じて言えることは、お互いいろんな国内事情を抱えながら保護主義貿易の台頭というものをお互いが抑制していくことを絶えず合意、確認するというような話し合いになるんじゃないかというふうに考えております。で、貿易自由化等々から来ます問題につきましては、この間出したものというのは、ECの関心品目も、あるいはアメリカの関心品目も、それなりにはございますけれども、    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕それぞれが国内の事情、国内の産業事情を考えておりますから、したがって保護主義が出てくるのを抑圧するためには、その保護主義の出がちな相手国のものがより自由化されることが国内にも説明しやすいと、これはだれしも言えることでございますけれども、そういう意味において、議論をしながらも、最大公約数としては、保護主義を抑えるようにお互い努力しようというようなことはいつも確認される問題じゃないかというふうに考えております。  そこで、年に一回関税審議会を開きまして、そして国会でお願いして、こうして御審議していただくわけでございますが、ことしの審議会が終わりましたら、もう翌日から、いろんな関心品目は、そりゃあちらこちらから正式な外交ルートばかりでなく言ってまいります。そういうものは、その都度の改正の際念頭に置きながら、終局的には我が国のそれに対応する国内産業、特によく評価されるときに、日本の前向きは評価するが、農産品に対しては不満が残るとかというような個別評価がございますように、その年度ごとに対応して相手の出方を見ながら一つ一つ決めていく課題ではないかというふうな理解の上に立って進めなきゃいかぬ。  ただ、総じそ言えますことは、確かにカナダ、オーストラリア、これは一人当たり所得で見ますと、大体日本ととんとんというところでございますけれども、何分一人当たり所得掛ける人口というものが国力とするならば、これは人口から言えば大変な差があるわけでございますので、したがって、まだそういう点においては日本より比率は高いと、こういうことが言えるんじゃないかなというふうな感じでございます。したがって開発途上国の問題は、また特恵のシーリング枠をふやしていくということで対応しながら、アメリカ、ヨーロッパ、日本、人口で見ますと、ECと日本とアメリカを足して恐らく七億弱ぐらいだと思いますけれども、世界の四十七億の人口の中から言えば、恐らく一三%程度だと思いますけれども、経済力から見ると、その辺が先進国としての相互理解が絶えず進んでいなきゃならぬことだというふうに理解をいたしております。
  200. 穐山篤

    ○穐山篤君 それから例のシーリングの総枠の問題ですが、私も関税の問題に関心を持ちましてからここ五、六年ぐらいになるわけですが、この総枠問題ではいつも韓国、台湾、それから最近中国、これでほぼ五〇%を占めている。特恵のメリットというのは、ある意味で言えば、広く持つことの方が政策的にいいのではないかと思っているんですが、この比率がほとんど変わらないんですね。これについて時間がありませんから、これからどういうふうにこの分野について知恵を出していくかということをひとつお伺いをしておきたいと思います。
  201. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) ただいままでのところ、特恵制度を四十六年に創設されてからずっと見てまいりますと、おっしゃるように、中国は後に受益国になったわけでございますが、最近におきましては、韓国、台湾、中国が受益の五割をちょっと上回る程度の占有率になっておることは御指摘のとおりでございます。  したがいまして、この現状に対してどうするかということでございますが、一つは、特恵受益の範囲を拡大していくということは、途上国対策として関税の分野でできる一つの有効な対策でありますから、これを総体として大きくしていくということを考えておるわけでございます。それが今回の措置で言うシーリング総枠の五割拡大という具体的な御提案申し上げている制度改正でございます。  それからいま一つは、メリットが偏在しているということは、できれば一層多くの国に均等化させた方がよいということで、この点に関しては、従来、品目別のシーリング枠の中で一国が二分の一を占めるとその特恵受益が停止し得るという制度になっておったわけでございますが、それを三分の一になった場合でもその国の受益を停止することができるというふうに改めてまいる、これが今回御提案申し上げておる改正の主要な第二点でございます。そういうことによって、途上国対策としての関税面の措置は、それなりに有効にかつできるだけ広範な分野で活用されるように取り進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  202. 穐山篤

    ○穐山篤君 それぞれの国がみずからの国益を考え、域内、国内の産業政策を考えながら者やっているわけですから、全体を眺めながらやらなければならぬということは当然だろうと思うんであります。しかし、例えばECのように製品輸入が少ないじゃないかということで注文がたくさんつけられる。その場合に、GNP対比でこのくらいという数字が並べられる、あるいは製品輸入をした場合、一人当たりの金額をすらすらと並べておまえのところは低いじゃないか、これも攻撃の手としては一つの方法だろうと思うんですが、しかし少なくとも協力、共同はするにしてみても、我が国の国益を損なわないように、なおかつ日本が積極的にこの分野で対応するということは言わざるを得ないと思うんですね。この点について大蔵大臣見解をただしておきたいと思うんです。
  203. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 何はさておいて、先ほどカナダ、豪州、日本、一人当たり所得が大体一一緒だというふうに申しましたが、そのとおりであります。一人当たり所得掛ける人口ということでやりますと、まさにアメリカ、日本、西ドイツ、フランス、イギリス、イタリー、こういう順番になります。そういう全体の生産力もあればまた消費の市場でもある。そして世界二位の経済力を持っておれば、おのずから開発途上国に対する貢献の責任、そしてそのことはまた日本の工業製品等が売れるいわば開発途上国にも購買力をつけていくということにも結果はなるわけでございますから、かれこれ総合的に勘案しますと、いわば先導的役割という表現は少しオーバーかもしれませんけれども、それなりの役割を十分認識して果たしていかなきゃならぬ。一方、しかしながら国内産業というものをお互いそれぞれの国々持っておるわけでございますから、これの国際競争力、国内における産業面で持つ雇用の役割とかいろんなものを、今いみじくもおっしゃいましたトータルの国益というものを踏まえてやっていかなきゃならぬ。そういう原則はきちんと背骨に持っていなきゃならぬ課題だというふうに考えております。
  204. 穐山篤

    ○穐山篤君 さて、今、関税の問題も当然でありますが、対外経済対策の重要な問題の一つに、金融なり資本市場の自由化、国際化、こういうことが挙げられます。現に過日の閣議でもその点が取り上げられました。最近の状況によりますと、日米円・ドル委員会というのが何かいろいろ議論されているし、新聞を見ますと、リーガン財務長官は大分激怒して帰ったというふうなことも言われているわけでして、この点公式に今まで明らかにされておりませんでしたので、その点について若干お伺いをいたします。  なるほど、金融市場なり資本市場の自由化という問題は、日本の国内的な金融あるいは経済、いろんな分野で少しずつ開放をしていかなきゃならぬ必然性を持っていることも私は認めます。それと同時に、国際的な分野から考えてみても、自由化をしなさい、あるいは国際化を図るべきだという声も一応うなずけると思うんです。そこで、ECなりアメリカが公式に日本にこの分野で何を要求をしてきたのか、まずその点を明らかにしてもらいたい。
  205. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 実際円・ドル委員会に出ておりますのは国際金融局長でございますから、後から答弁をいたすことにいたしますが、リーガンさんという問題は私との会談でございます。  そもそも円・ドル委員会というのは、御案内のように、私とリーガン財務長官の共同記者発表というものを中曽根・レーガン会談でこれを確認した。それを具体化していくにはどうした方がいいか、それには実務者の円・ドル委員会をつくって、それの報告をまずリーガンさんと私がもらって、それをお互いが確認し合いながら自由化、国際化の方を具体的に進めていこう、こういう性格のものでございます。今おっしゃいましたように、自由化とか国際化の必然性は考えをひとしくしておるところでございます。  それで、結局、具体的な問題は国際金融局長から申し上げますが、リーガンさんの基本的な考え方というのは、三年前ぐらいからたびたび主張しておりますのは、とにかく日本は今やまさに世界第二位の経済的地位を持っておるではないか、そしてそれにふさわしく資本市場の開放や金融の自由化やあるいは国際化を行ったならば、一般的に今国際基軸通貨といえばお互いドルと、こう考えますが、円はそれが国際化していきさえすれば現実国際基軸通貨になる力を持っているんじゃないか。そして、それが国際化しておれば、円・ドルレートが絶えず変動したりしてお互いの企業見通し等に苦労しなくても済むようになるじゃないか、こういう一つの哲学がリーガンさんにあるわけであります。  冗談で言いますときには、仮に大変だという場合、ドルを持って逃げる人はおっても、ある国から、さあ大変だ、円を持って逃げようという人はまだいないじゃないか、これは私が食事のときなんかで言う話です。したがって、その原則はお互い一致しているから、それは進めていこうと。そこで、激怒したわけでもございませんが、いささかの認識の相違からいいますと、日本のやり方というのは、第一回、第二回、この次第三回やります、そういうことで積み上げ方式と、こういうわけですね。リーガンさんは、どちらかといえば、一回に一つ、二つずつ結論を出していこう、こういうやり方。したがって、事務当局同士の評価とリーガンさんの評価は必ずしも一致していない。これは私も忙しかった、リーガンさんも中国からの帰りでございますから、事務当局同士の会合の模様を必ずしもよく知っていらっしゃらなかったかもしらぬ。そこに、何といいますか、百メートル競走だというのと、マラソンとまでは差がありませんが、ステップ・バイ・ステップという感じとの差はあったと思うんであります。  したがって、基本的に考えますと、いつも申す話でございますけれども、多少誤解もございます。日本の三菱銀行はアメリカの銀行を買収することは自由じゃないか、アメリカの銀行は日本で買収できないじゃないか。これはできないわけじゃございませんが、身売りする銀行がこっちにはいないわけでございます。それもそのはずで、銀行が相互銀行以上百五十七ございます。ちょうど国連加盟国の数とたまたま一致しておりますが、百五十七。アメリカは一万四千五百ございます。日本も明治三十四年が千八百ぐらいあったことございますけれども、だから言ってみれば、銀行だけを見ますと、要するにすべて自己責任主義でございます、どちらかといえばアメリカは。そんなところへ預けておったおまえが悪いんだ、経営者のおまえが悪いんだ、だから倒産したとか。が、日本の場合は、銀行とは絶対つぶれないものであるとだれもがそういう認識を持っていただいている。すなわち投資家保護、被保険者保護、預金者保護という歴史的な育ちの相違というのがございますが、そういうのは具体的にまた話をしながら、一方いささかスピードの間隔を縮めていく努力は私自身もしていかなきゃ、なるほどちょっとのろいという感じを受けておられるのかな。しかし、その記者会見の後、また一緒に飯も食いました。つかみ合いのけんかをしたという環境ではございません。
  206. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 大臣の御説明に若干補足させていただきますが、いわゆる円・ドル委員会、私ども事務レベルの作業部会を第一回目が二月の二十三、四日、第二回目を三月二十二、二十三日東京で行ったわけでございます。その際にアメリカ側から示された関心事項、大きく分けて四つございます。一つはユーロ円市場の拡大という問題、二番目がアメリカの金融機関の日本の金融資本市場へのアクセスの改善、参入を容易にしてほしいということ、それから三番目が我が国の金融資本市場の自由化の問題、それから四番目が日本への投資交流の促進の問題という四つでございます。  最初のユーロ円市場の拡大につきましては、アメリカ側は、ちょうどユーロ・ドル市場で各国が資金調達、運用を自由にやっているように、ユーロ円市場というもので外国の人も日本の人も自由に資金調達をし、運用をするようなことを考えてほしいというのが主な事項でございます。  二番目の日本の金融資本市場へのアクセスの改善、これにつきましては、証券取引所の会員になれないのかというような問題のほか、いわゆる信託問題というものにつきまして関心が表明されました。  それから三番目の金融資本市場の自由化の問題につきましては、我が国の金利の自由化をもっと積極的に進めてほしい。それから我が国における資金調達及び貸し付けをもっと自由にできないだろうか。例えばCDの満期であるとか譲渡性とか、そういう問題、BA市場の創設であるとか、そういうようなことの指摘がございました。  四番目の投資交流の促進につきましては、これはアメリカ側と共同新聞発表で述べておる指定会社制度改善のための法案の進捗状況、それから日本への投資の内国民待遇の問題、そういうものが簡単に触れられただけでございます。  アメリカ側の関心の主なところは、一番目のユーロ円市場の拡大と、それから三番目の金融資本市場の自由化、この二つが大きな関心事項であったというふうに私どもは受け取っております。  ECとの関係では、EC委員会等から我が園の金融資本市場の自由化に関しまして幾つかの要望事項が私どもにも寄せられております。それはCDの発行条件の改善であるとか金利の自由化であるとか、資金調達の自由化、円建てBA市場の創設、大体アメリカ側が言っていることよりも項目は少のうございますが、似たような事項について関心が表明されております。
  207. 穐山篤

    ○穐山篤君 ちょっと細かいといいますか技術的なことですが、ユーロ円市場を、今も多少あるわけですが、もっとそれを拡大をしろと、こういうふうにまず第一に言われたと。そこで、ユーロ円債がどのくらいボリュームとして今出ているんですか。
  208. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) ユーロ円債につきまして現在発行が認められておりますのは、非居住者の場合には外国の政府それから国際金融機関、その二つのものについて、私ども年間六、七件、一件当たり二百億円ぐらいを限度にして認めております。ただ、発行の状況は、そういうような政府とか国際機関の資金事情、それから金利の動向等によって、六、七件のときもございますし、昨年はもう少し少ない件数でございました。今まで過去十年間くらいの歴史がございますが、それで大体件数としては三十件弱という状況でございます。  居住者につきましては、今日までユーロでは公募の形では発行されておりません。  今回、十一月の大蔵大臣と財務長官の共同新聞発表の項目の一つの実施といたしまして、四月から、日本の企業につきまして、従来は原則としてユーロ円債の発行を認めておらなかったのでございますが、今度、一部につきまして発行を認める、緩和するということにいたしております。
  209. 穐山篤

    ○穐山篤君 政府としても、市場の拡大についてはある程度、やむを得ないと言えば語弊がありますけれども、日本の金融市場を混乱しない程度の拡大はやむを得ないというふうに御判断になっているんですか。その点はどうでしょうか。
  210. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) ユーロ・マーケットに対する基本的な姿勢がアメリカ側と私ども若干違っておりまして、アメリカ側の言い方は、日本の国内の金融資本市場の自由化を望むのであるけれども、そこは制度、慣行いろいろの問題があって、そう急速に自由化を急テンポで進めると言っても無理だろう。例えば金利の自由化の問題一つとってみても、アメリカでも金利を自由化するのには十年の歴史があるわけでございまして、そこを急速にやれと言うことも難しいであろう。それから例えば債券発行、今日、外国の政府、国際機関、企業につきまして東京マーケットでいわゆるサムライ・ボンドというような円建ての債券発行を認めておりますが、それにつきましても、やはり日本の国内の日本の企業等の債券発行との兼ね合いもあって若干の制約がある。それを急速に全く自由にしろ、税金の問題も含めてそういうことを言ってもなかなか難しいかもしらぬ。ところが、翻ってユーロ・ドル・マーケットを見ると、これは今日の状況では、各国の通貨当局が余り関与、介入できないような自由なマーケットになっている。そこでユーロ・ドルの市場というのはかなり大きくなっておるわけです。そこで日本も、自由主義世界で二位の経済的な実力を持つようになってきたのであるから、円がそういうようなユーロの市場でももう少し自由に使われることを許容すると。そういうことをアメリカ側が言っておるわけです。  ところが、私どもの基本的な考え方は、円の国際化、円が国際的に使用されるとか保有されるというようなことは、日本の金融資本市場の自由化が進み、外国の方々が日本の市場で円を調達し、そしてまた、あるいは日本の市場で円資産を運用する、そういうような形で円が国際的に使用、保有されるのがオーソドックスなことではなかろうか。それに伴ってユーロ・マーケットで円が補完的に使われるのはこれは許容していかなければならないかというような考え方を持っておるわけです。  と申しますのも、やはりユーロ・ドル・マーケットというのは必ずしもアメリカ側が積極的に育て、つくり上げていこうというようなことでなくて、委員御承知おきのように、歴史的な沿革でアメリカの規制を逃れるドルの資金というものによってマーケットが形成されてきた。それが国際金融社会に及ぼす影響等いろんな問題があり得る。例えば通貨の管理についていろいろ問題を投げかけるであろうとか、それから銀行の経営の圧迫要因になるんでなかろうかとか、いろんな要因が考えられて、先進諸国でもユーロ・ドル市場というものを野方図にしなくて、何らかの規制をする方法はないかというような議論が行われていたわけでございまして、今日でも必ずしもユーロ市場というものを大きく育てていこうというような国際的な合意もないということでございます。したがいまして、私どもも、ユーロ円マーケットを政策的に育てて大きくしていくというような問題については十分慎重な議論検討が必要かと思います。しかし今日の日本経済の国際社会における地位を考えますと、補完的と申しますか、ある程度はニーズに応じてユーロ市場での円の許容も認めていかざるを得ないかと、そういうふうに考えている次第でございます。
  211. 穐山篤

    ○穐山篤君 時間が来ましたので、大蔵大臣、最後に私の考え方を述べて、決意といいますか、これからの考え方を示してもらいたいと思うんです。  先ほどお話がありましたように、ユーロ市場の拡大というのが一つの本命、それから日本の国内金融についての参入自由化というものが大きな眼目と、こういうふうに拝見をしました。そこで、我が国の場合には金利の面でも規制金利の体系としてはなっているわけですね。それから金融界の特殊事情として少額貯蓄、郵便貯金というものがあることも厳然たる事実であります。しかし国際的に商売をやっていくとすれば、開放したり自由化をしなければならぬ運命にもあることも事実です。しかし、そうは言いましても、国内の環境整備が終わらないうちにどんどん進められることになりますと、信用秩序の上からいってみても重大な問題が生ずるわけです。そこで、この三月十九日に決めました対外政策八項目の中の一つにこれが挙げられているわけですね。農産物の枠の拡大という問題と並列になっているかどうかよくわかりませんけれども、もしこれがパッケージになっていてアメリカがどんどん攻めてくる、ECが強い主張をするということになりますと、問題の解決を非常に複雑にすることになると思うんです。そういう意味では私はこの種問題は農産物の……
  212. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 穐山君、時間ですから簡潔に。
  213. 穐山篤

    ○穐山篤君 枠の拡大というような問題と切り離してやってもらう。  それからもう一つは、いずれボン・サミットで話が出るわけですから、これは国内的にもう少し意見を聞く、あるいは状況を十分に国民の前に知らしめる、そういう努力がありませんとかえって混乱をする、そういうことを非常に恐れます。そういうことを配慮をして、ぜひ考え方を聞かしてもらいたいと思うんです。
  214. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的には穐山さんおっしゃることは一番大事なことだと思っております。郵便貯金の話をしましても、時に外国の人にわからぬことがございます。それはそうでございましょう、これだけの伝統ある国家的貯蓄手段であるものがない国が多いわけでございますから。  それから金利の自由化ということになると、だれしも、これがもっと国民に対する理解度が深まっていないと、今おれの少額貯蓄、おれの郵便貯金と、こういう不安感を起こしちゃいけませんから、もとより大口のCDとかそういうようなところから徐々にやっていくわけでございますけれども、要は国民の理解、原則的に私は悪いことだと思っているわけじゃございませんが、国民の理解とハーモニーした形でやっていかなきゃならぬだろう。それが向こうにとっては少しステップ・パイ・ステップ過ぎるんじゃないか、こういう印象を今与えているんじゃないか。  それと同時に、もう一つ、若干違いますのは、牛肉、オレンジみたいなシンボリックな問題ではない、非常に全体のオーソドックスな問題でございますから、したがって経済対策というようなことはパッケージでやりますが、具体策ということになりますと、おのずから月がずれましたり、あるいはやるテンポの相違は、これはもちろんございます。
  215. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 関税定率法の一部を改正する法律案についてお尋ねしたいと思います。  いろいろ御質問をしたいと思っておったわけでございますが、同僚議員の質問に対する答弁もありましたし、非常に時間も限られておりますので、二、三の点についてお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、税関の業務の問題ですね、業務体制の問題についてお尋ねをしたい。  税関の業務は、通関あるいは収税、監視取り締まり、それから犯則処分、こういう仕事を担当しておるわけでございますが、最近の国際化で非常に海外との交流も多い。また世界の国から批判を受けるぐらいに貿易もどんどん伸びておる。そういう状況にあるわけでありますが、この十年間を見て、大ざっぱにいって、いろいろな出入国者数とかあるいは貿易の量とか、そういうような点がどのように変わっておるのか、これをお聞きしたいと思います。
  216. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 税関の業務は、ただいま塩出委員の御指摘のように、多岐にわたっておりますが、かつ同時に近年その行政需要は増大をしております。  具体的に指標で申し上げますと、出入国者数で見ますと、四十八年に対して五十八年は約二倍になっております。それから覚せい剤の摘発数量は三・八倍、それから大麻の摘発数量で見ますと五・三倍、それから貿易の量でございますけれども、貿易の量といいますか、貿易の額で申しますと、輸出が三・五倍、輸入が約三倍、保税関税が一・五倍と、こういうような数字が挙げられると思います。そういうことが端的にあらわしておりますように、行政需要は増大しているという御指摘はまことにそのとおりであると思います。
  217. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは税務当局の場合とも非常に似通った点もあるわけでございますが、そういうように非常に仕事量がふえておる中で、果たして税関職員の体制はいいのかどうか。五十八年度は対前年度四十八名減っておると、このようにお聞きしておるわけですが、そのことは事実なのかどうか。そして五十九年度はどうなるんでしょうか。
  218. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 最後にお尋ねのありました税関の定員につきましてでございますが、五十八年度は増員が三十五名認められたわけでございますが、いわゆる定員の計画削減等がございまして、御指摘のように純減は四十八名になっております。それから五十九年度は、予算によりますと、増員は三十三名認められておりまして、しかし計画削減等がございますので、純減ベースで申し上げれば五十一名の減というのが実情でございます。
  219. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 行政改革、定員管理という面からそのように減ってきておるわけでございますが、この輸出入貨物の現物検査というものは、実際に検査するのは五%程度であると、このようにお聞きをしておるわけです。もちろん輸出入の品物の中には自動車のように検査の簡単なのもいろいろあると思うんですけれども、五%ぐらいのパーセントで心配はないのかどうか。その点はどうなんでしょうか。
  220. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 先ほど来申し上げておるような業務の増加でございますから、これに対処するには、一方においてその業務の効率化、重点化の必要があると思っております。と同時に、他方において、先ほど来話の出ておりますように、定員の要員の確保というようなことが必要になってくるんじゃないかと思っているわけでございます。  そういう両方にわたる措置のうち前段の通関手続の合理化につきましては、先ほど指摘のような検査率というものの低下は確かに発生をしておりますけれども、そこは例えば取り締まりについて言いますと、情報検策を効率化するとか、あるいは他の取り締まり官署との連携を強化するとか、あるいは取り締まりに当たっての機器を導入するとか等の措置によりまして、問題の社会悪事犯と言われておるようなものについては重点的な取り締まり体制をとっておるわけでございます。  他方、一般の通関の体制につきましては、例えば例を航空貨物について申し上げますと、五十三年に輸入航空貨物の通関について電算化処理を開始いたしております。さらに本年の計画といたしましては、本年秋に輸出通関、航空貨物の通関についても電算化を実行に移したいと、こういうふうに思っているわけでございます。  そういうようなわけで、増大する需要に対しては効率化で迅速化の処理を促進すると同時に、他方取り締まりの観点では、できるだけ重点的な取り締まりを通じて従前の取り締まり体制に近づいてまいるよう努力しておるわけでございます。
  221. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほどのお話ではこの十年間で覚せい剤が三・八倍。これは摘発したのが三・八倍ですね。それから大麻が五・三倍になっておる。我々は日本の国内のいろんな諸悪の根を断つためにも、あるいはけん銃の持ち込みに対する厳しい検査、そういうものをやってもらわないと安心できない。ところが、今の覚せい剤関係はどんどんふえておるわけですけれども、その点一つはそういう体制で十分なのかどうか。それと、感じとして大体何%ぐらい捕まっておるのか。その点はどうなんですか。
  222. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 覚せい剤、銃砲等の取り締まりにつきましては、水際取り締まりという観点でいえば私どもの責任であると思います。と同時に、国内での取り締まりについては、厚生省の関係機関あるいは警察庁の担当機関と和協力してやってまいるというようなことになっておるわけでございます。  取り締まり体制について、先ほど航空貨物について輸出入についての電算化体制を申し上げましたけれども、一例を空港の旅具の分野における取り締まり体制の重点化といいますか、効率化といたしましては、五十四年に成田空港に電算機による情報処理システムというものを導入しております。それから五十六年に伊丹空港について同じような要注意人物等に対する取り締まり体制を確保する電算システムを導入しておるわけでございます。  そういうことでだんだん努力をしてまいっておるわけですが、しかしながら、もちろん国内に銃砲の存在があり、あるいは具体的に申し上げれば、麻薬の摘発が行われているということは、その取り締まりの目を抜けて持ち込まれているという事実があるわけでございまして、そういう意味においてはまだまだ努力が足りないということを理解はしておるわけで、そういう意味におきましては、私どもは、ただいまの社会悪事犯の取り締まりは税関の取り締まりの中の最優先課題の一つであると、かように考えております。
  223. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、十年間を見ましても、このように急速にふえている中で定員はほとんどふえていない。最近はどんどん減っておるわけであります。先般我が国でも宮澤さんの事件とか、グリコの社長のああいう事件があった。ああいうものは幸いにしてハッピーエンドに——ハッピーエンドというか、生命の危害がなかったわけでありまして、これには日本の税関当局のそういう取り締まり、また日本の警察当局の御努力もあるわけです。そういう点で、日本はけん銃を持たせないということは非常にいいんじゃないかと思うんですけれどもね。しかし今後考えるときに、五十八年は四十八入減っておる、ことしはまた五十一入減る。もちろん全体を減らす中である程度やむを得ないにしても、機械化はもちろんやってはいるが、これでは心配です。しかし関税局長は、今の状態ではやれませんということは、言いたくてもなかなな言えないんじゃないかと思うんでありますが、もうちょっとこれは検討してもいいんじゃないかなと、このように思うわけですが、その点はどうでしょうか。
  224. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、局長から十年前からの比較がありましたが、ちょうど私が初めて国会へ出ましたときに海外旅行者の数四万五千人、それが今四百万を超しているわけでございますから、それは大変な相違でございます。その上に、先ほど来のいわゆる社会悪物品と申しますか、そういうものに対する水際作戦は税関が担当するわけでございますから、この水際作戦が完全になれば、なるほど厚生省のお方、警察のお方の荷を軽くすることにもなるわけでございますので、その点に十分配慮しなきゃなりません。それは犬を入れて見つけるだけが能じゃございませんので、そういう配慮は今、局長からも極めて控え目に答えておりましたが、その重要性は十分認識しておるつもりでございます。
  225. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 税関の仕事は、覚せい剤の密輸入をチェックするとか、大変危険な仕事でございまして、一昨年大蔵委員会が大阪の方に行政視察に参りましたちょうどそのときに、大阪湾で一人の方が夜巡視中に亡くなられて殉職をされたわけであります。確かに税関の仕事というものはそういう大変な危険を伴っていると思うんですね。またいろいろ国際的なそういう関係も大変必要なわけであります。  ところが今、税関職員の俸給表というものが、これは一般と一緒になっておる。これは別に設けてもらいたい。例えば税務職員とか、あるいは警察とか公安関係の人にはそういう特別な俸給表があるわけですけれどもね。僕は、数がこういうふうにふえない状況の中であるならば、せめてそれぐらいはやってもいいんじゃないかなと思うんですけれどもね。その点はどうなんでしょうか、そういう御決意はありますか。
  226. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 税関職員の処遇につきましては、御指摘をまつまでもなく重要な問題だと思っております。御指摘のような給与の改善という意味で、特別の例えば税関職俸給表というようなものを設定してはどうかというような御意見かと思われます。確かにそういう考え方があり得ると思っておるわけでございますが、私の知識で申し上げれば、問題は二つあります。  一つは、確かに税関の職員の職務の特殊性があるとしても、それゆえに税関職の俸給表を設定すれば、ほとんど同程度に特殊な各種の行政の職にある者についてまた別途の特別の俸給表をつくらなければいかぬ。こういうような問題を派生させるということが一つあります。それからいま一つは、税関の職員の中に、先ほど大阪税関の職員の殉職のケースを引用されましたように、大変公安職的な機能を果たしておる職員もございますけれども、すべての職員がその種の公安職的な仕事をしているというわけではなくて、通常の行政職職員としての機能を果たしていると見てよい場合もあるわけでございまして、したがいまして、税関職員全体を一つの特別の俸給表にするということについては技術的にも問題がある。私の理解ではそんなことが問題点であろう。その他いろいろ技術的なことはあろうと思います。  そういう意味で、私どもとしても人事院当局にその種のお願いをしたことがございますが、人事院当局は全体のことを考えてなかなか縦に首を振ってくださらないという状況でございます。そこでどうしておるかということでございますけれども、上位の等級級別定数を確保する。それが一つ。それから特殊な交代制勤務をしいておる等に伴う特殊な手当を拡充していく。そういうようなことについてはかなり関係方面の御理解を得て改善をされてきているんではないか。そういう方面については引き続き努力をしてまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  227. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いろいろそういう問題はあると思うのでありますが、きょうは人事院の方にはお越しいただいていないわけでありますが、ぜひひとつ大蔵大臣としても、私は細かいことは余りわかりませんから、どういう形が一番いいのか別としても、それ相応の待遇をしていく。私はお話を聞いたんですが、税関だけじゃ数が少ないから特別のをつくったらいろいろな面で支障があると。であるならば、同じ大蔵省である国税と税関を一緒にするとか、こういうような道もあるんじゃないかと思うんですがね。そういう意味で、これはぜひ、ただ人事院がだめです、ああそうですか、というんではなしに、もっと積極的に努力をしてもらいたい。この点はどうでしょうか。
  228. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税務職員の場合は、私から毎年人事院総裁に対して直接御要望を申し上げまして、人事院勧告に当たっても何らかの配慮がなされるようにということがそれなりの実を結んでおるんではないか。税関の場合は、確かに税務職員と違いますのは、公安的仕事の人、いろいろ多種多様な点がございますが、一度人事院にもアプローチしてみた経験も持つわけでございますので、他業種との関連も見定めながら十分検討さしていただくことにいたしたいと思います。
  229. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連というよりはなんですけれども、けさの新聞を見まして、ユーロ円債の発行条件の決定ということで報道がありました。今、穐山委員からのいろいろ質問に対してのお答えがあって、いわゆる拡大には慎重にいくとか、ユーロ・ドル・マーケットの補完としてというような認識でそういう発言をなさっているお考えということもわかりました。今のところユーロ円債の現状が約三十銘柄である、かなりの金額に上ってきてるというのはそれでわかるわけですけれども、円建ての外債もございますし、これからの資金、こういうように発行できる企業ができたということになりますと、資金手当てというものが全世界的にならざるを得ませんから、私は何かこれをずっと見て追っかけていきますと、現在でもスイス・フラン市場であるとかユーロ市場であるとか、米国市場等から資金を調達しておるのもかなりあるわけでありますから、何か、銀行局よさようなら、国金局よこんにちは、というような感じをちょっと持ったわけでございます。  一番大事なことは、基本的には円の国際化と国内金融政策の調和ということだろうと思うんですね。この辺のところでこれ一つ伺いたいんです。先ほど考えはわかりましたが、もっと基本的なことでこれからどう考えていくかということを伺いたいと思うんです。
  230. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 我が国の経済、企業の国際化というのは、委員御承知おきのように、近年急速に進展しておりまして、またオイルショック後の競争の激化、激しい競争の世界で生きていかなければならないということで、効率化が進められているわけであります。企業として見れば、資金調達をできるだけコストを低く、そしてまた資産があればそれをできるだけ効率的に運用したいというニーズがあるわけです。現在外貨建てのものにつきましては調達も逆用もほとんど自由になってきてるのが現状でございます。そしてユーロ・マーケットにおきましての債券による資金調達も、先ほど御説明申し上げましたように、外国の政府、国際機関等が行われるようになっているわけです。  恐縮でございますが、数字を今手元に届きましたんで御報告申し上げますが、初めてユーロ円債の非居住者による発行を認めましたのは昭和五十二年の五月の欧州投資銀行債が初めてでございまして、それ以来、ことしの三月までで合計二十六件、三千九百五十億円の発行が行われているわけでございます。  私ども、居住者、日本の企業につきまして従来ユーロ円債の発行を認めてなかったわけでございますが、企業の先ほど申し上げましたようなニーズも勘案いたしまして、国内の金融政策等との調整、調和を図りながら、これにつきまして緩和をしていくことが望ましいと考えまして、昨年の秋そういうような方針を定め、その後関係者の意見調整が調いまして、四月からユーロ円債の非居住者のガイドラインにつきまして緩和が実現することになったわけでございます。  そういう意味で、これはある意味では円の国際化の一つの動きであるということが言えると思いますが、今回のどの程度の企業にユーロ円債の発行を認めるかという問題につきましても、国内の起債市場との調整、そういうものにつきまして関係者の十分な配慮のもとに漸進的に第一歩を踏み出したという状況でございまして、私どもも円の国際化というものの進展というのは、国内の金融市場の自由化、それと平仄を合わせて考えていくべきだという慎重な姿勢を維持しているつもりでございます。
  231. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 問題は、非居任者については何か今までは年に六ないし七銘柄だったのを月一銘柄というようなことが報道されていまして、そうじゃない、今度はいわゆる居住者、これが出すわけでありましょうけれども、問題は向こうのアメリカからも言われているように、外国企業や外国政府、非居住者でございますが、それによるユーロ円債発行、ユーロ円債を持つ外国人に対する利子課税の廃止ということを言っております。非居住者に対する課税が非課税になっているのは、加税特別措置法で利付外貨偵の発行差金の非課税ということが既にされているわけですね。だから、そういう点から考えても、私はこれからのユーロ円債を魅力ある商品にしていかなければならないだろうと思うんです、いよいよ各社出ていくとなりますと。そうすると、今のようなことをやらないと二重課税というふうになるわけでございますから、そういう点のことから魅力あるものにするための努力、または対象企業をどう広げていくかということでございます。こういう点について、拡大には先ほど慎重だと言ったんですけれども、そのほかに今の問題についてもお答えをいただきたいと思います。
  232. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) アメリカ側からユーロ円債の問題の提起があったときに、あわせて源泉徴収税の問題についても提起があったのは事実でございます。委員御承知おきのように、非居住者、外国の政府とか国際機関とか、あるいは外国の企業がユーロで社債を発行しまして、それを外国の投資家が買った場合には日本の税金は及ばないわけでございますので、アメリカサイドが言ったのは、日本の企業がユーロで出したときに、それを買った外国の投資家に対する源泉徴収税の問題でございます。  この問題につきまして、アメリカサイドの言い方では、ユーロ市場とユーロ社債市場ではそういうような源泉徴収税をするような慣行はないんだ、だから日本の企業のユーロ円債についてもユーロ・マーケットの慣行を考えて源泉徴収税が課されないような方策を考えてほしい。  ただ、アメリカも法律的には、アメリカの企業がユーロ・ドル債を発行した場合には源泉徴収税を課すことになっておるんですが、そこは租税条約の関係で実質的に税金が課されないというような状況でございます。第二回目の作業部会におきましても、この問題は議論されました。その辺は主税局の方からお答えいたします。
  233. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 もう一問だけ。  特に今回、関税が下がるわけで、税、物価が下がるように、また便乗値上げじゃなしに便乗値下げというか、大いにPRをして効果が出てくるようにひとつ努力をしてもらいたい。閣僚としての大臣にこれを要望しておきます。
  234. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 関税率が下がるということ、それから円高基調とかいわゆる輸入物価の下がる要因はございますので、極力それが消費者に直結するような、大蔵省だけの問題じゃございませんが、指導はしていかなきゃならぬ課題だというふうに理解しております。
  235. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この関税定率法の改正案はいつから準備され、いつその作業が終わったのでしょうか。
  236. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 先ほどもちょっと大臣からお話がありましたとおり、作業のごく初期の段階を申し上げれば、前年の改正が終わったときから始まっておるということでございます。  次に、終期はいつかということでございますが、この法律案国会提出いたしました二月でございます。
  237. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この法案基礎となった政策決定、要するに税率引き下げ幅とか品目の選定、これはいつも予算の決定と同時に、その前にこれはできておるものでしょう。そうですね。にもかかわらず、今なぜこの三月三十一日という年度末に我々これを審議しなければいかぬのでしょうか。一番最初に出してきてどんどんやるべきなのに、なぜ今ごろ我々は日切れ法案として泣く泣く協力しなきゃいかぬのか、それを説明してください。
  238. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 確かに、税率そのものにつきましては、委員の御指摘のとおり、予算と一体と決めておりますので、一月十八日の関税審議会の答申をちょうだいしまして、そこで税率は決まっております。
  239. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大臣いかがでしょう。
  240. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただ、何といいますか、審議のスピードとかいうようなことになりますと、これはハウス自体の問題ですから、政府側からはお答えするのは適当でないと思います。
  241. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 だから、ハウスの方は来た順番にやるということなんですね。一番最初に出してくれれば、もうとっくの昔に成立するんですよ。なぜ、まず先に酒税あるいは租特措置などを出し、その後で関税を出して押し上げているのですか。大蔵省がまさにハウスを気ままに翻弄しているんですね。  国会は一寸先はやみですから、これから何が起きるかわかりませんね。万が一きょうじゅうに成立しなかったらまさに大混乱、その責任は一体だれが負うのか。それはハウスの方じゃありませんよ、そんなものは。遅く出してきた、ほかのより後から出してきた。それは最終的には大蔵大臣の責任じゃないでしょうか。
  242. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは責任とすれば提案権者である私に帰するでございましょう。しかし、例えばその場合は、あるいは不可抗力と言わざるを得ないかもしれぬなと思います。
  243. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それは責任転嫁なのです。そんなことしなくたってまっ先に出せばいい。我々だってほかの日切れ法案全部、例えば三月十五日に成立させてほしいといえばちゃんとやっておるのです。それを重要法案がまさにメジロ押しになっているそのときに出してくる。それは何とか押し出したいという意図があるからでしょう。
  244. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 押し出しとか、まくらとかいうのは、ハウス自体で考える問題でございましょう。
  245. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは、私は委員長に要望申し上げるのですが、こういうやり方は改めるように当委員会としても一つの意思決定をしてほしい、今後の問題ですけれども。きょうここで言っても仕方ありませんからこの程度にとどめますけれども、これは大臣、責任転嫁しちゃ困ると思うのですね。今後ともお考えいただきたいと思うのです。  そこで、次に具体的な問題になりますが、発展途上国の輸出所得を増大するために途上国からの輸入をふやすことは必要だと思うのですね。しかし、これによって我が国の関連中小企業や農業に打撃を与えないよう慎重な配慮が必要だと思うのです。  そこで一つの問題は、現在特恵枠の管理方法として月別管理、日別管理があるわけです。日別管理でもたった一日で年度全体の枠を突破して、極端なものでは年度枠の十倍から百倍もの輸入がたった一日でされてしまうということ、こういう事態が実際生じています。これは国内業界に大変大きな脅威となっているんです。  そこでお尋ねしたいのは、昨年四月一日特恵枠を突破して翌々日特恵停止になるのですが、これは何品目あるのか、そのうち特に枠を大きく突破した品目名及びその超過した割合についてお答えいただきたいと思います。そして、これは大変なことなんですが、これら昨年大幅に突破した品目について事前割り当て制の対象にするなど何らかの対策をとるべきではないかと思うんですが、この点についての答弁をいただきたいと思います。
  246. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 第一に、その日別管理で枠を超えたのは十六品目でございます。  それから主なものは何かという第二の御質問についてでございますけれども、全部をちょっと申し上げるほど資料は整っておりませんけれども、例えば銅の塊、フェロアロイ、フェロニッケル、履物、それからドレス等の衣料附属品、男子用の外衣、女子用ないしは乳児用の下着、手袋、その他竹製のくし及び引き抜き機、そういったようなものがあると思います。  それから第三に、そういう事実に対して五十九年度で制度を改めるものがあるかということにつきましては、フェロニッケルについては割り当て方式に切りかえることを各省との間で相談して決めております。
  247. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そちらからの事前の資料によりますと、例えば引き抜き材及びくしの場合は枠は二百万円、大臣、何と輸入額が二億七千四百万円ですね。もう枠を決めた意味が全然ないんです。それからグルタミン酸ソーダの場合には、枠二千二百五十八キログラムに対して輸入は五万八百七十四キログラム等々ね。そういう点で、これは今後の問題として十分にお考えをいただきたい、こういう要望を申し上げます。  大臣、こんなこと知らなかったでしょう。知ってました。
  248. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いや、グルタミン酸なんか知ってました。
  249. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうですか。そういうことであります。  それから次にもう一つは、経団連がこのほど、現在、原則禁止、例外許可となっている関税法などの体系を、原則自由、例外許可に全面的に改めるべきだという内容の要望書をまとめたということが新聞報道であります。これによりますと、輸出は許可制をやめて届け出制にする、それから輸入貨物到着前の事前申告を認めるということ、三番目には関税を貨物輸入後にまとめて支払う後納制を設けるなどとなっておりますね。しかし、通関制度というのは、これは企業の営利活動の便宜のため、簡便かつ迅速であればあるほどよいというものじゃないと思うんです。国民の健康と安全、農業、中小企業保護など、社会的要請などを満たすために輸出入に対する諸規制を水際においてチェックする、こういう重大な役割を持っていると思うんです。この点の認識についてお伺いしたいと思います。  また、ことし四月よりコンテナ貨物については許可後検査方法が導入されるわけですが、これも物流のスピードアップを最優先させて、事前のチェックという税関の当然の責務をないがしろにすることになるんじゃないか、こう思うんですが、どうでしょうか。
  250. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 第一の、経団連に御指摘のような意見があることは承知しております。そのポイントとして寸輸出の許可を届け出制に変えたり、あるいは後納制を導入したりというのは近藤委員の御指摘のとおりだと思います。しかし、私どもといたしましては、現行の関税法が許可制をしいておりますのは、先ほど質疑にもございましたとおり、輸入については社会悪の物品の水際防圧、あるいは関税の徴収というような観点がございますし、輸出について許可制をしいておりますのは、具体的な例で申し上げれば武器の輸出禁止、あるいは高度技術物品の輸出のコントロール、そういうものの確保のためのものでございますから、私としては、そういう所要の規制の実効を期す意味で現行の体制で十分ではないかと思っております。  なぜならば、現行の体制であっても、先ほど来申し上げておるとおり、輸出通関、輸入通関についての迅速化はそれなりに十分図られておる。輸出については、申告の処理は平均で申し上げれば一時間、輸入については二時間ということでございますから、そう物流を損なうという事態にはなってないと思っております。  第二のコンテナ貨物の検査でございますが、税関における輸入貨物のチェックは、輸入貨物が国内の流通の過程に入る前にチェックされることが必要であるという意味においては委員と全く同意見でございます。で、この場合に許可後検査としているのは、税関の検査が終わりまして、その税関の許可を受けましても、その許可の条件として検査を後に受けるということを条件にして物流の必要性に応じて例外的に認めておるものでございますから、そういう意味においては、コンテナが流通に入る前に検査をするという意味において問題はないと思っております。
  251. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最後に、今回の改正の最大の問題は、私たち毎年の改正指摘しておりますように、我が国がアメリカなどの要求によって必要以上に過大な関税の引き下げを行っているのじゃないかと、こういう点であります。もちろん貿易国家である日本にとって世界に率先して自由貿易を進めることは必要だと思います。しかし、その場合重要なことは、一部の大国の要求に屈して一方的に引き下げることではなくて、発展途上国を含めた国際的な場で国際的ルールに基づいて公正に行うべきではないか、その上でのみ自主的な関税政策が成り立つのじゃないかと、こう思いますが、最後に大臣答弁を伺って質問を終わります。
  252. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 珍しく今おっしゃったのと大体私とそう違っておりません。
  253. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 時間が限られておりますので、一、二若干お尋ねをいたします。  五十九年度の関税改正について第一の眼目は、鉱工業品関税の東京ラウンド合意の繰り上げ実施、五十九年、六十年度のうちに三年分繰り上げるという御予定なんですが、五十九年度については主要先進諸国がまだ実施していないので一年分だけにしましょうと、こうありますが、一応この関税定率法の改正案が通ったとしてその後の見通し、主要先進工業国に対する影響等含めてどうごらんになっていますか。
  254. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 現時点における見通しを申し上げますと、先ほども申し上げたとおり、アメリカは東京ラウンドの前倒し措置につき大統領に議会から授権をもらうべく行政府としては努力をしておるわけでございます。それがどうなるかは米議会の問題であると思っております。それからまたECにつきましては、昨年の末、本年は実施しないけれども、明年一月からは条件つきではあるが、つまりまた来年の秋にもう一度決定をするということではありますが、実施に移したいという内々の決定をしておるわけでございます。したがいまして、昨年の暮れの事態に比べますと、環境は明るくなっておるのじゃないかというふうに思っております。  なお、私どもの今回の改正については、先ほど質疑で申し上げたとおり、国際的にも評価されておりますし、なかんずくちょっと申し上げておきたいのは、OECDの場においては、他のアメリカ、EC、カナダ等の前倒しのいわば誘因となっているという面がございます。そういう理解をしておるわけでございます。
  255. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうすると、六十年まで両年度で三年分前倒しというのは、五十九年度は一年分やりました、六十年度は周りの状況を見ながら結果として三年繰り上げにならないかもしらぬけれども、先頭に立って努力をすると、こういうぐあいにこの三年繰り上げというのを受け取っておいてよろしいですか。
  256. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 私としての立場は御指摘のような立場でございます。
  257. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 どちらにしても大変結構なことだと思うんですが、ただ最近、関税問題というのが影が薄くなってきたわけじゃないですけれども、国際的な交易から考えると、為替レートの影響の方がむしろ大きくなってきているという面が、これは否めない事実だと思うんです。  そこで、これは大変漠とした質問になるんですが、今の円・ドルレート、あの水準がいいかどうかということを公式に論評するのは別でしょうけれども、といって、あの水準のまま横に行って、いろんな経済摩擦がそうふえもしないで落ちつくということは、それは期待する方が無理だ、日本政府として何らかの円高誘導の政策をとっていかなければいけないと思いますし、また、そういった政策をとっていくことがある意味では経済摩擦解消の一つの条件になるかもしれない。そこで、円高誘導ということを頭に置きながら、今政府は大体どういったことを考えておられるのか。それとも、この問題についてはあくまでも市場で決める問題ですから、政府としては、関心は持ちますが中立でありますと。どういう立場にお立ちになっているのか伺いたいと思います。
  258. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 変動相場制のもとでは、本来でございますと、為替レートの変動によりまして国際収支調整が行われることが期待されていたわけでございます。ところが我が国の場合、この三年ぐらい、年々拡大してきている経常収支の黒字にもかかわらず余り円高の方向に進まない。見方によれば円安であるというような見方もあるわけでございますが、その基本的な原因というものにつきましては、これは私どもは基本的な原因はドルにある、その原因はさらに何かというと、アメリカの財政赤字に伴う高金利、それが何といっても一番大きな原因ではなかろうかと思います。  今日、円と欧州通貨との間にはそうミスアラインメントと申しますか、不調和はないかと思います。したがいまして、ドルが円及び欧州通貨に対して全般的に高くなり過ぎているということが一番大きな原因であります。したがいまして、根本的な原因に対応してもらわなくちゃいかぬというようなことで、私ども機会あるごとにアメリカに対しては高金利を是正するようにということを強く主張しているわけでございます。  ところが、円の日本のサイドでは何もやる必要はないのか、ただ単にマーケットに任しておけばいいのかという話になるわけですが、今日為替市場が大きくなってきておりますので、介入によってどうこうできるような状況でないのは御承知おきのとおりでございます。ただしかし、我が国の経常収支の黒字が非常に大きいというような状況のもとで、これはもう少し縮小するような方向に持っていく必要がある。それには政府としても内需振興等の基本的な輸入拡大の努力が必要であろうかと思いますが、だんだんアメリカの金利に反応する為替レートの度合いも少し下がってまいりまして、金利離れという表現をする方もいらっしゃいますが、そういうようなことで徐々に日本の基礎的な条件、ファンダメンタルズのよさを反映して円高の方向に行くことを期待していきたいというふうに考えております。
  259. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、国際金融局長から申し上げたとおりでございますが、今栗林さん十分配慮してお話しいただきましたが、私どもが国際会議においてお話しする場合も、あなた、今円安じゃないか、一体どう考えているんだと申されるときに申しますのは、私が前回就任したときに二百四十二円でした、やめるときは二百十九円でございました、そのようなことを私としては誇りに思っておりますという程度が、率直に言って限界でございますが、今申しましたように、アメリカの高金利、これは我々は声をそろえて半ば合唱のように申しますね。しかし、それの要因はあなたの国の財政赤字だということの突っ込みのぐあいによっては内政干渉にもなっていく、その辺我々としての限界もございます。しかし、私どもは、今の状態、引き続き円高基調が定着することを少なくとも期待をしておる、そしてそうなることに対する願望も強く持っておるということでございます。
  260. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  法人税法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の修正について近藤君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。近藤忠孝君。
  261. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表し、政府提出所得税法等の一部改正案及び法人税法の一部改正案に対する修正案につき、提案理由並びにその概要を御説明いたします。  言うまでもなく、我が国の納税制度は、納税者みずからが税額を計算し、自発的に申告・納付するという自主申告に基づく申告納税制度原則としています。そして、申告する書類を確定申告書と呼ぶように、この納税者の申告によって税額が確定するというもので、税務当局がこれに介入するのは、極めて例外的な場合に限って行われるべきものとされています。これは、戦前、税務官庁が最終的に税額を確定する賦課課税制度にかえて、戦後、憲法に基づき主権者たる国民が行使し得るようになった重要な手続的権利の一つであります。この申告納税制度精神を尊重した民主的な税務行政の確立こそが、今日求められているのであります。  ところが、今回提出の二法案に盛り込まれている申告納税制度にかかわる納税環境の整備なる諸措置は、この戦後税制の大原則である自主申告に基づく申告納税制度の根幹を揺るがす一大改悪にほかならないものとなっております。  第一に、記帳に基づく申告なとはあくまで奨励されるべきもので、提出法案のように法的に義務づけ、強制すべきものではありません。これはつけたくともつけられない広範な零細経営の業者、農民、建設職人などに新たな過酷な負担を強いるばかりではありません。それを遂行していない者、あるいはそれが法律の要求する水準に達していないなどとして、結局、税務当局による安易な推計課税、押しつけ課税に道を開くものであります。また制裁措置がないというものの、いずれ裁判等で挙証責任を求められるなど、これが実質的な制裁措置として機能することが予定されています。このように納税者に新たな負担を強制していながら、何の特典、見返り措置も講じられていません。これらは、記帳義務の乏しい者から自主申告権を奪う結果となり、税務行政の強権化を助長させることは必至であります。  一方、法人税法改正による記帳義務導入などは、零細法人や収益事業を営む公益法人等及び人格のない社団等としての労働組合、民主団体、学校法人等に対する課税強化や不当な介入の手段となることも明らかであります。  第二に、資料収集制度として設けようとする総収入金額報告書の提出義務は、事実上の総収入申告制ともなるもので、小規模事業者等に過重な負担をもたらすばかりか、同時に記帳義務、記録保存制度と連動して、予想される大型間接税の実務的な下準備ともなるものであります。  さらに、税務当局の官公署への協力要請は、当面、守秘義務を侵さない範囲内とはいうものの、税調答申によれば、これは当面の措置で、さらに将来その強化を検討するとしております。これは課税資料関係者のすべてに、協力義務規定をつくるとの検討と相まって、課税がすべてに優先する重税国家への突破口となる懸念もあるものであります。  第三に、所得税法等改正案の中の国税通則法改正で、とりわけ許しがたいのは、同百十六条改正として課税処分取り消し訴訟において被告側の税務当局には何の規制もしないで原告側納税者に一方的な制限を加えたことであります。これは、訴訟の大前提である当事者対等の原則を崩壊させるとともに、裁判手続である民事訴訟法そのものを事実上改悪し、憲法第三十二条に定められた国民の公正な裁判を受ける権利を侵害するものであります。しかも、裁判の基本にかかわるこのような大改悪を、法制審議会にも語らず、日本弁護士会連合会の意見も聞かずに、税法改正の中に紛れ込ませて一方的に強行しようとしていることは、二重三重のファッショ的暴挙であり、断じて許すことはできません。本改正について、記帳義務等の法制化に賛成する個人や団体をも含めた広範な人々が反対しているのも当然生言わなければなりません。  また、脱税者等に対する行政上の制裁強化策として打ち出されている過少申告加算税の二段階制導入と一部加重についてであります。これは、結局、社会的にも最も非難を加えられるべき大口・悪質な脱税者や大企業の巨額な脱税の公表制度を見逃す一方で、一握りの脱税者制裁の名をかりて、多数の善良な弱小納税者いじめとなるものであります。  第四に、納税額一千万円超の高額納税者公示制に変える公示制度改正は、同制度発足以来の性格を、事実上、高額所得者の国への貢献度を示す顕彰制度に一変させようというもので、容認できません。  以上、政府提出法案には、制度の根幹にかかわる重大な問題が介在しており、この部分については、年度内成立の必要が求められているいわゆる日切れ法案とは分離して慎重な審議を行うことが必要とされています。  もとより我が党は軍事費の削減、不公平税制の是正などによって一兆四千億円の大幅減税を要求しており、政府減税案に賛成するものではありません。しかしながら右に述べた理由から、政府提出所得税法等の一部改正案法人税法の一部改正案のうち、納税環境の整備に係る部分を削除すること、これが本提案の理由と内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに賛成くださいますようお願いいたします。
  262. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 以上で修正案の趣旨説明聴取は終わりました。  これより四案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  263. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、日本社会党を代表しまして、ただいま議題になっている四法案について、関税定率法案については賛成し、他の三法案については反対の意見を表明し、その討論を行うものであります。  なお、近藤君提出の修正二案に対しては反対いたします。  冒頭、政府に対して国会における審議権に関連し警告しておきます。  今次税制改正は、所得税減税、納税環境の整備、あるいは酒税、物品税の増税法案が盛り込まれており、国会における十分な審議が強く望まれておりました。ところが、政府は、日切れ法案審議より増税関係法案の優先審議に固執し、このため委員会審議権が不当に拘束される結果になったことに対し、強い憤りを感じ財政当局に反省を促すものであります。  今次税制改正案は、所得税の負担の軽減という点では余りにも小規模な減税であり、全く国民の期待を裏切るものであります。さらに、所得税減税の内容を見てみますと、中堅給与所得者層への配慮は必ずしも図られていないのであります。なるほど課税所得五百万円から八百万円の適用税率が緩和されてはいますが、税額で比較した場合には一千万円を超える高額所得層が税率手直しの恩恵を最高に受けているのであります。高額所得者には最高税率の五%の引き下げで減額が厚くなっているが、低い所得層には最低税率の〇・五%の引き上げで負担は重くなっているのであります。高額所得者の公示制度も年税額一千万円超の者を対象者にするなど、公示制度を大きく後退するもので容認できません。  また、いわゆる課税最低額という概念があいまいなままに最低生活費との関連づけも行わず、その構成要素とされる人約三控除も単に一律引き上げがなされているだけで、給与所得者、わけても多人数世帯の中堅所得層への配慮は何らなされていないのであります。  また、納税者の負担増となるのが今回の納税環境の整備であります。所得種類間の負担の公平の見地から所得捕捉の向上は望ましいものではありますが、このたびの白色申告書への記帳及び記録保存制度などの導入は実効性がありません。白色申告者の大部分は零細な事業者であり、過重な負担を要求されることになる一方、青色申告者との格差は広がるばかりであります。また、納税者にとっての最後のよりどころとなる訴訟においてその証拠申し出の順序を変更し、当事者対等主義を抹殺するなど厳しい措置がとられており、徴税権強化への懸念を抱かせるものとなっております。  以上の点のほか、大企業中心の租特の整理合理化は何らなされておらず、また政策減税は慎重にしろという政府税調答申に反して実施され、さらにグリーンカード制度の凍結問題は先送りされております。  このように今次税制改正は、減税に寄せた国民の大きな期待にそむき、国民をより一層厳しい納税環境に追い込むものであり、決して容認できるものではありません。  以上、申し述べまして私の関税定率法を除く他の反対討論にいたします。終わります。
  264. 藤井孝男

    藤井孝男君 私は自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案外三法律案並びに近藤委員提出法人税法改正案及び所得税法改正案に対する両修正案につきまして、両修正案に反対、四原案に賛成の意を表明して討論を行うものであります。  昭和五十九年度税制改正の最大の眼目は、国民的要請ともなっていた所得税及び住民税の全般的見直しによる大幅減税を実現しようということであることは言うまでもありません。  しかしながら、大量の公債に依存する深刻な財政のもとにあって、財政本来の機能を回復し、我が国経済の着実な発展と国民生活の安定向上を図るために、財政の改革は緊急の課題とされているところであります。  したがいまして、所得税減税の財源は、原則として他の税目、すなわち、現行税制の枠内においてこれを求めざるを得ないのでありまして、酒税、物品税等について社会経済情勢の変化に対応した見直しを行い、さらに企業課税についてもある程度の負担の引き上げによる増収措置を講ずることはやむを得ないと考えます。  そこで、まず、所得税については、社会経済情勢の変化に応じて見直しを行う必要がありますが、今回、人的控除をそれぞれ四万円引き上げる等の措置が講ぜられているほか、給与所得控除の控除率適用区分の是正、さらに税率についても急激な累進度を緩和するための見直しが行われ、その結果、課税最低額は四人家族の給与所得者で現行の二百七万九千円から二百三十五万七千円に引き上げられ、また中堅所得層の負担軽減にも資する内容となっております。  さらに、申告納税制度の定着と課税の公平の推進を図る見地から、国税通則法改正を行うこととしておりますが、このような納税環境の整備が行われることにより、給与所得者と事業所得者等の間にあるわだかまりの解消に貢献するとともに、所得税制のみならず、税制全体に対する国民の理解と信頼をより強固なものとするのに役立つものと確信いたします。  次に、法人税につきましては、租税特別措置法におきまして、二年限りの措置として、税率を普通法人において一・三%、中小法人において一%引き上げ、さらに欠損金の繰り戻しによる還付制度の適用を停止し、あわせて法人税法改正案において延納制度を廃止することとしております。企業を取り巻く内外の環境が極めて厳しい折、企業に税負担増をお願いすることはまことに忍びがたいものがありますが、さきにも申し述べましたように、所得税減税の財源を確保するための措置として、まことにやむを得ないものと考えます。租税特別措置法改正案においては、このほか、累年にわたってその整理合理化が進められてきておりますが、税負担の公平確保が一層強く求められていることにこたえて、五十九年度においてもさらに整理合理化が図られているほか、エネルギーの効率的利用促進と中小企業の電子機器利用推進のための設備投資促進税制を導入し、さらに住宅建設にかかわる贈与税の特例を設ける等、景気対策についてもきめ細かい配慮がなされており、必要かつ適切な措置と認めます。  最後に、関税定率法等改正案は、鉱工業品関税の東京ラウンド合意の繰り上げ措置を初め、主要関係国の関心の深い個別品目の関税率を引き下げる等の措置を講ずることにより、我が国市場の一層の開放を図ることとしており、これによって対外経済摩擦の解消に資し得るものと確信するものであります。  以上の理由により、四法案に対する私の賛成の討論といたしますが、政府におかれましては、財政改革が急務の課題であることにかんがみ、これまでにも増して財政収支の改善に努力されますとともに、今後において税体系の抜本的な見通しを推進されることにより、税に対する国民の信頼を維持確保されんことを期待して、私の討論を終わります。
  265. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました所得税法等租税特別措置法法人税法のそれぞれを一部改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  反対する理由の第一は、まず課税最低限の引き上げが不十分で、減税見送り六年間の物価上昇から考えても物価調整分を補うものにもならず、減税規模が少なくなっていることと、その上さらに見返りに大幅増税を強行し、減税の景気浮揚効果などを殺していることであります。  我が国経済は、景気に明るさが見えてきてはいるものの、その多くは輸出に支えられてきたものであり、内需、特に個人消費は伸び悩んでおります。  内需の停滞が中小企業に厳しい景況をもたらし、地域間、業種間格差を拡大し、依然として失業、倒産を高水準で推移させていることは明らかであります。  家計面でも、所得税減税による負担軽減は大衆増税、公共料金の値上げなどによって帳消しになり、生活防衛には役立っておりません。  このような事実は、国民が所得税減税に期待した景気浮揚、生活防衛、税負担の公平化などの効果をことごとく減殺してしまうものであり、到底認めがたいのであります。  また、所得税の最低税率を引き上げ、一方、最高税率を下げることは、大衆課税の強化を進めるものであり、見過しにできません。  申告納税制度の見直しも、各種団体よりの要望を踏まえつつ配慮していく必要があると思われます。  反対する理由の第二は、中小零細企業に対して極めて厳しい法人税の税率引き上げが強行されていることであります。  申すまでもなく、我が国経済財政の主要課題は、世界経済の景気回復、物価安定などの好材料を生かしつつ、内需拡大によって景気浮揚を図り、経済を安定成長軌道に乗せ、その基盤に立ち、財政再建を推進することであります。  法人税の税率引き上げは、中小企業の設備投資意欲を減退させるぱかりか、その措置が二年間の時限立法とされていることから、二年後の増税延長、他の大衆増税との入れかえなどさまざまな憶測を生み、経営の不安定要因を増加させるものです。  中小企業に対する設備投資減税も、我々の要求を大きく下回っており、その景気浮揚効果に疑問を抱かざるを得ません。  このように我が国の緊急課題である景気浮揚に逆行する税制改正には、強く反対せざるを得ないのであります。  また、政府が、所得税減税の見返りとして大幅増税を強行しながら、利子配当所得に対する課税の適正化など不公平税制の是正に極めて消極的であり、また隠れた補助金と言われている租税特別措置に対する切り込みが不十分であることも、反対する主な理由の一つであります。  最後に、共産党の修正案には、我々はいささか意見を異にすることを申し添え、以上で私の討論を終わります。
  266. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表し、法人税法租税特別措置法並びに所得税法等の各一部改正案関税定率法等の一部改正案の政府提出の四法案に反対、我が党提出所得税法法人税法一部改正案に対する修正案に賛成の討論を行います。  四法案に反対する第一の理由は、所得、法人税法改正案に含まれている納税環境の整備関連規定が、戦後税制の大原則である自主申告に基づく申告納税制度の根幹を揺るがす大改悪にほかならないからであります。  記帳に基づく申告はあくまで奨励されるべきであり、法律で義務づけ強制すべきではありません。これは零細業者に新たな負担を強いるばかりか、記帳不十分を理由とする税務当局による推計課税の押しつけが強化されることが必至であります。また労働組合や民主団体等への記帳義務導入も、これら団体への課税強化と政府の介入を招く重大な危険を持つものであります。  さらに、総収入報告書の提出義務と総収入金額及び必要経費の添付義務の創設は、事実上の総収入申告制となるもので、予想される大型間接税導入の環境づくりとなるものであります。  とりわけ許しがたいのは、国税通則法改正として、課税処分取り消し訴訟において、原告側納税者証拠提出などで一方的な制限を加え、裁判で一層国に都合のよい判決を出させようとしていることであります。これによって課税当局は一層恣意的な推計課税を行うことができ、自主申告制度と国民の権利は著しく侵害されることになるのであります。この点について、当委員会において日弁連の代表が重大な問題点指摘したにもかかわらず、その問題点が十分解明されないまま採決を急ぐことには二重、三重の暴挙と言わなければなりません。  反対する第二の理由は、所得税の七年ぶりの本格減税が実はまやかし減税であることであります。政府案の減税規模はこの六年間の減税見送りによる実質増税のわずか二割に満たず、しかも下に薄く上に厚い金持ち優遇減税であり、かつこの減税の財源に酒税など間接税増税が抱き合わせとなっており、これに公共料金などを加えれば、大多数の国民は減税どころか新たな負担増となるのであります。  反対する第三の理由は、法人関係税御で、中小企業に増税を押しつける一方で、大企業には新たな特別措置を設け、不公平を拡大していることであります。  表面税率から見れば、確かに大企業の方が中小企業よりも高いが、各種の大企業向け優遇措置によって実際の負担率は大企業ほど低い逆累進になっていることは明らかであり、担税力に見合って大企業に対する課税を強化すべきであります。  さらに、今回改正で期限切れとなる大企業特別措置のほとんどを延長するばかりか、エネルギー投資減税など、多くの新しい特別措置を創設し、不公。平を一層拡大したことは許されません。  関税定率法等改正は、アメリカ等の圧力に屈した形の過大な引き下げで関税政策の自主性を失うものであること、特恵枠の拡大は、我が国関連中小企業への打撃も予想されること、大企業向け優遇措置となっている航空機などの免税制度が温存されることなどから反対であります。  以上の理由から、政府提出の四法案には反対の態度をとるものであります。  とりわけ、我が党が本委員会において再三取り上げた申告納税制度部分の切り離し問題について、何ら誠意ある態度を示さず、原案のままごり押ししようとしていることは甚だ遺憾であります。  我が党修正案は、この立場から、申告納税部分を切り離すという最小限の合理的な修正であり、速やかに成立させるべきものであることを強調いたしまして、私の討論を終わります。
  267. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました所得税、法人税及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、政府提出葉並びに共産党提出修正案それぞれに反対、関税定率法の一部を改正する法律案について賛成の討論を行います。  私たちが今一番配慮しなければならない問題は、納税者の間に広がる税の不公平感であります。特に給与所得者が抱いている重税感は、所得税の累進税率構造のもとでまさに切実なものがあります。また、可処分所得は伸び悩み、景気は現在回復期を迎えたとはいえ、その足取りは極めて弱々しいものになっております。  こうした状況を踏まえて、我が党は一兆四千億円の所得税、住民税の減税を要求しました。しかし、この要求とても至って不十分であり、もし給与所得者が納得する所得税、住民税減税をはじくとしたら、三兆なり四兆なりの減税規模でなければなりません。それは減税というよりも、取り過ぎの是正と考えるべきであります。しかし、今回の改正案所得税減税に踏み込んだとはいえ、不徹底不十分であり、できればやりたくなかったという本音が今回の直接税、間接税六法案の全体を通してにじみ出していると言っても過言ではありません。  私たちは、既存税制の枠の中で、その日その日を暮らすことではとても乗り切れない時代を迎えていると思います。求められているものは勇気と智恵であります。そして、残念ながらその勇気と智恵を欠いたのが今回の直接税三法の一部改正案だと思います。  また、関税定率法の一部改正案は将来に対する明確な指向と、世界の関税政策全体をリードしていこうという決意が認められます。しかし、こうした未来への一歩は必ず国内の政治問題としてはね返ってくるはずであります。そう考えながら今回の面接税三法の一部改正案を眺めるとき、大きく失望せざるを得ません。  以上で討論を終わります。
  268. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより順次四案の採決に入ります。  まず、法人税法の一部を改正する法律案について採決を行います。  まず、近藤君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  269. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 少数と認めます。よって、近藤君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  270. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  271. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、所得税法等の一部を改正する法律案について採決を行います。  まず、近藤君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  272. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 少数と認めます。よって、近藤君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手」
  273. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、竹田君から発言を求められておりますので、これを許します。竹田四郎君。
  274. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、ただいま可決されました法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、参議院の会及び新政クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、所要の措置を講ずべきである。  一 今後の所得税負担のあり方については、所得税の租税体系の基幹税としての地位にかんがみ、国民の理解と信頼が得られるよう一層の公平確保に努力し、社会経済情勢の変化に対応して適宜見直しを行うこと。  二 利子・配当所得等については、郵便貯金を含め、本人確認、名寄せの厳正な方途の確立を図り、その適正・公平な課税のあり方につき、早急に結論が得られるよう検討を進めること。  三 退職給与引当金、貸倒引当金等については、その繰入率を引き続き実態に応じて検討すること。   なお、退職給与の保全措置についても、検討を進めること。  四 準備金、特別償却等各種の租税特別措置については、さらにその整理合理化に努力すること。  五 高齢化社会をはじめとする今後の社会の変化に対応するあるべき税体系の検討を進めること。  六 税務執行の一層の公平を確保するとともに、納税者の実態に十分配意しつつ、執行にあたっては今後とも適正な運営を図るよう、特段の努力をすること。  七 納税環境の整備に関する諸施策の導入に際しては、申告納税制度の趣旨に則り、かつ、これまでの経緯や納税者の実態に十分配慮し、小規模事業者に過大な負担とならないよう円滑な運営を図ること。  八 記帳・記録保存制度及び確定申告苦に添付する書面制度等に関しては、その内容、方式等について納税者に過大な負担となることがないよう十分留意するとともに、適正な運用に努めること。  九 変動する納税環境、財政再建の緊急性にかんがみ、複雑困難で、かつ、高度の専門的知識を要する職務に従事している国税職員について、職員の年齢構成の特殊性等従来の経緯及び今後の財源確保の緊急性かつ重要性並びに税務執行面における負担の公平確保の見地から、今後とも処適の改善、中長期的見通しに基づく定員の増加等につき特段の努力をすること。  右決議する。  何とぞ皆様の御賛同をお願いいたします。
  275. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいま竹田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  276. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 全会一致と認めます。よって、竹田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、竹下大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。竹下大蔵大臣
  277. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
  278. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 次に、関税定率法等の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  279. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、大坪君から発言を求められておりますので、これを許します。大坪健一郎君。
  280. 大坪健一郎

    大坪健一郎君 私は、ただいま可決されました関税定率法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、参議院の会及び新政クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は次の事項について、十分配慮すべきである。  一 関税率の引下げに当たっては、国内産業への影響を十分考慮し、特に農林水産業、中小企業の体質改善を併せ考えつつ、輸入の拡大を図り、国際的協調を進めるとともに、国民生活の安定に寄与するよう努めること。  二 税関業務の増大に加え、覚せい剤、銃砲等の取締りが大きな社会問題となっていることにかんがみ、通関制度等の一層の見直しを行うことにより、税関業務の効率的、重点的運用に努め、特殊な職務に従事する税関職員についてその要員の確保と処遇の改善に努めること。  右決議する。  何とぞ皆様方の御賛同をお願いいたします。
  281. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいま大坪君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  282. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 多数と認めます。よって、大坪君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、竹下大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際これを許します。竹下大蔵大臣
  283. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。  ありがとうございました。
  284. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) なお、四案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  285. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十分散会      —————・—————