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1984-03-30 第101回国会 参議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月三十日(金曜日)    午後三時十四分開会     ―――――――――――――    委員異動  三月三十日     辞任         補欠選任      河本嘉久蔵君     竹山  裕君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         伊江 朝雄君     理 事                 岩崎 純三君                 大坪健一郎君                 藤井 孝男君                 竹田 四郎君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 倉田 寛之君                 竹山  裕君                 中村 太郎君                 福岡日出磨君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 穐山  篤君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 青木  茂君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   井上  裕君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵大臣官房審        議官       山田  實君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省関税局長  垂水 公正君        国税庁次長    岸田 俊輔君        国税庁税部長  渡辺 幸則君        国税庁間税部長  山本 昭市君        国税庁徴収部長  兼松  達君        国税庁調査査察        部長       冨尾 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        厚生省医務局総        務課長      古川貞二郎君        厚生省保険局企        画課長      多田  宏君        厚生省保険局医        療課長      寺松  尚君        農林水産省農蚕        園芸局肥料機械        課長       清田 安孝君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置  法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○物品税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○石油税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○所得税法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、河本嘉久蔵君が委員を辞任され、その補欠として竹山裕君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 関税定率法等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  4. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま議題となりました関税定率法等の一部を改正する法案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、最近における内外の経済情勢の変化に対応し、我が国市場の一層の開放を図る等の見地から、関税率特恵関税制度等について所要改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、関税率改正であります。  まず、東京ラウンド交渉に基づく我が国関税譲許品目のうち、鉱工業品千二百八十品目に係る実行関税率段階的引き下げを一年分繰り上げて実施することといたしております。  また、主要関係国の関心の深い半導体、再生木材香水バナナ等関税率の撤廃または引き下げを行うことといたしております。なお、これに伴い、入国者が携帯して輸入する香水に課される簡易税率引き下げることといたしております。  第二は、特恵関税制度改正であります。  鉱工業品に対する特恵関税適用限度額等について、約五割の拡大を図るため、その算定方式を変更するとともに、特恵関税の便益をより多くの開発途上国へ均てん化するための措置を講ずる等所要改正を行うことといたしております。  以上のほか、昭和五十九年三月三十一日に適用期限の到来する暫定関税率及び各種の減免税還付制度について、それぞれその適用期限を延長するとともに、関税に係る延滞税計算方法等について所要改正を行うことといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  この際、酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案石油税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案、以上六案を議題に追加し、七案を便宜一括して質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 丸谷金保

    丸谷金保君 委員長さんに。きのう理事会預かりになった件についてまず御報告いただかないと先へ進めないのですが……。
  7. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記をとめてください。    〔速記中止
  8. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。
  9. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、資料の収集の問題についてお伺いいたしたいんですが、    〔委員長退席理事岩崎純三着席〕 実は昨日から私の方で、税務訴訟係属中に減額更正処分の通知を受けた件数を、実は再三にわたって、ないかということで要求したんですが、同じような資料が二回出てきた。この二回とも私の質問に全然答えてない。それで三回目に、じゃ言葉ではだめだから文書で照会するということで、訴訟を取り扱った案件のうちの取り下げの件数ですね、判決した件数は出てきていましたから、この中で訴訟係属中に減額修正更正決定になった件数はどれだけあるのかと、これを聞いたんです。これを書いてやった、何遍言っても出てこないから。ところが、これに対して、わからないということなんだよ。で、国税当局の方でわからなければ、減額修正については会計検査院がいつも検査しているから、じゃここへ会計検査院を呼んでお聞きしようと思った。そして出席要求もしました。ところが、けさになって件数が報告されたんです。この件数があるかないかによって私の後の質問の仕方が非常に変わってくるんで、なければ、ないような組み立てをしなければならないと思っていたやつが、三回やって、文書でやってもだめで、しようがないから会計検査院を呼んで聞こうと思ったら、ようやく出てくるというのは、これはどういうわけですか、主税局長ね。この程度のことがどうしてできないんですか。再三ですよ、きのう。一日朝からかかって、何遍も出てくるけれど、私の要求は出てこない、最後ゆうべ、出せないということだった。けさになって、そしたら出てきた。こんなばかなことってありますか。こういうことでこういう資料出し惜しみすると、審議を我々が遅滞するんじゃなくて、提案者であるところの大蔵省の方が遅滞することになりかねないと思う。一体これはどなたに答弁してもらったらいいのか、大臣、一体どうなっているんですか、こういうのは。
  10. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) ただいまのお尋ねでございますが、いきさつにつきましては委員指摘のとおりのようでございまして、私どもも大変申しわけなく思っております。  最初どもが伺いましたのは、私ども訴訟事案判決言い渡し件数と、それから処分が取り消されたもの、というふうに実は誤解をいたしましたか、あるいはその伝達の過程でいろいろ意思の届かなかったところもあろうかと存ずるわけでございますが、そういうことでお伺いいたしましたものでございますから、その資料をお出しをしたわけでございます。しかし、それは委員ただいま御指摘になりましたように、委員の御趣旨に沿わないものであったということは事実でございます。  それで、後からまた調べたわけでございますが、実は委員お尋ねになりました、課税処分取り消し訴訟係属中に原処分減額更正をした、これがまさしくお尋ねでございますが、この事案につきまして、私ども画一的に全国国税局から資料をとっておらないわけでございます。これは事務負担という面もございましてそういうことをいたしておらないわけでございますが、したがいまして、各国税局がそれぞれ判断して減額更正をする場合もございます。また、事案によりまして、私ども国税庁に対しまして各国税局から個別に相談があって上がってくる場合がございます。そういう場合にも減額更正をいたしておるわけでございます。当庁に相談がございますのは、訴訟係属中の事案で、更正期間制限、これは五年でございますが、これを超えるものについてでございまして、これは若干特異なケースでございますので私どもで処理をいたしておるわけでございます。この件数につきましては、最近三カ年度を申し上げますと、昭和五十五年度が七件、昭和五十六年度が三件、昭和五十七年度が一件でございます。  そういう状況でございますので、若干その辺に不行き届きがあったのかもしれませんが、どうかひとつ御了解を賜りたいと存じます。
  11. 丸谷金保

    丸谷金保君 最初にこういうふうに聞かなかったんで別な資料出した、そういう食い違いもあることはあるでしょう。それを私は言わないんですよ。何度もやったりとったりしながら、最後に私ここで書いたんですから。そうして出したのに対して回答ができないという返事ゆうべは来たの。で、回答大蔵でできないんならしようがない、会計検査院を呼んで聞こうと思ったわけだ。  私も昔、臨時税務代理士を長いことやってましたから、修正確定申告なんというの、税務署の方と一緒になって更正決定をするの手伝ったんですよ。    〔理事岩崎純三退席委員長着席〕 あることがありまして、それじゃお手伝いしよう、これ争いにしないと。当時も一番気にしていたのは会計検査です。とにかく会計検査院の目に触れて指摘されたときに説明できるようにしなきゃならないから、丸谷さん協力してくれと。そのときの税務官吏、今でも生きてますよ。それであるから、ああ減額修正に対しては会計検査官は非常に詳しく調べるんだなと思ったから、それがあったから私はけさ会計検査院出席要求した。いいですか。それでなかったら、そういうものは報告できない、できないでおしまいですよ、おたくの方出さないんだから。会計検査院のところへ出席要求をしたら、あんたの方から今度出てきたんだよ。これは一体どういうわけだと言っているのです。地方のはわからなきゃわからないでいいですよ。国税庁で押さえているのがあるでしょう。今国税庁で押さえているのは、あなたが言ったように、これだけですと、あとはわかりません、それでいいじゃないですか。それが、わざわざ文書にして出してまで、きのうの段階では全然だめなんです。大蔵政府委員室というのは非常に不親切だ、そういう点で。ほかにも頭にきていることあるけども、ここでは言わない。だめだと言えばそれでもって済むと思ってるんだ。私は幸い実務の多少経験があったから、そんなばかなことないということで、さらにそこまでやったらようやく出てきた。
  12. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) 大変おしかりをこうむったわけでございますが、私ども実は何か他意があってとか、そういうことで資料をお出しをしない、あるいはお出しをするのを遅くした、そういうことは全くございません。実は私ども国税庁の方におきましても、若干先生の御質問趣旨取り違えておったというところがあろうかと存じます。会計検査院をお呼びされるということでお出ししたとか、そういうことは全くございませんので、誠意を持って資料の作成をいたして提出したわけでございますし、今後ともそういうことで気をつけてまいりたいと思います。
  13. 丸谷金保

    丸谷金保君 あなたの方で取り違えがあったというような答弁されると引っ込めないんだよ。文書まで書いてやっているのにどうして取り違うの。取り違えたやつがどうしてきょう出てくるのか。出したくなかったんでしょう。取り違えると思ったから、わざわざ書いて、私が直筆で書いたのでないと思われたら困るから、署名したんだ、わざわざ「丸谷金保」と。そしてこのとおりとやったやつが、きのうの八時ころには、できません、こういうことなんだよ。それはあなたのところまで行かなかったかもしらぬよ。しらぬけれども、言い方を取り違えだというのは、二回目まではいいですよ。三回目は文書にしてやったのに、まさか字が読めないわけでもないのに、取り違えるわけがないでしょう。文書にしてやったものの返事は、できませんということだった。あるいは偶然かもしらぬけどね。それじゃしょうがない、会計検査院を呼んで聞こうと、こう思ってそっちの出席要求をしたら、できましたって来た。だから故意としか思えないでしょう、だれが聞いたって。こんなばかなことありますか。あるいは故意でなかったかもしらぬけどね。こう連動したら故意というふうに考えざるを得ないんですよ。  委員長ね、こういう点については、冒頭、これがあるかないかによって全体の流れが変わるようなことに対して、そこまで三回四回しつこくやらなきゃ出てこない、こういうことについては、ちょっと委員長の方からも御注意をお願いいたしたいと思うんですがね。
  14. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  15. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。
  16. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは出したくない資料だとは思いますよ。税務訴訟の問題は、国税当局が勝訴するのが多いんです、パーセントからいって。どうしてそんなに多いんだろうと思ったら、こういう抜け穴があるわけだよね。負けそうなやつは減額修正をするんだ、自分の方が。被告の側は減額修正にどんどんやってくる。国税庁の方まで来た案件は少ない、それは五年以上たったやつだけです。一年から四年の間に各税務署でやるわけだ、国税局と。で、五年以上たってからでさえ、訴訟係属中に減額すれば、もう争うことなくなりますから取り下げる。そうすると残るのは勝つやつだけになる。そんなこと決まっている話だ。そういうことがあるということを実は私は知りたかったんです。出したくない資料であることは間違いないと思います。  しかし、これは大変重要なことなんです。五年過ぎても減額修正訴訟係属中でも一方的に国税庁側でできるということ。一方では今度の改正で、原告は遅滞なく応訴しなきゃならぬと、こういう矛盾につながっていくんです。それで私はこの資料を執拗に何回も出せと言った。なかなか出さないで、最後出してきた。  資料の問題でもう一つあるんですよ。例えば今度の法案の中で記帳義務三百万ということにしましたね。ところが、最初の案は二百万でしたね。自民党税調と話し合いをする中でこれが三百万に変わった。そうすると、二百万がなぜ三百万に変わったかというふうないろんな資料が出ているはずです、自民党税調におたくの方から。そして、いや、それじゃこういうことで、こういうことだから、自民税調の方もこういうふうにしなさい、三百万まで上げてもいいじゃないかと。確かに国税の統計はありますよ、年報なんか。だが二年も三年もおくれる。月おくれ雑誌どころでないんだよ、実際の印刷で出てくる資料は。  こういう資料は、少なくとも大蔵委員会には自民税調出し程度のこういう基礎的な資料出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  17. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 委員会の御要求資料につきましては、ただいまおしかりをこうむったような点もございますけれども委員会並びに委員の御要求資料につきましては、私ども従来から誠実に、できるだけのものを出す努力をしておるところでございます。  ただいま御指摘の、所得三百万以上の事業所得者等に新たに記帳義務を課するということを決定するまでの間に、いろいろ内部的にも議論の経過があったことは事実でございますが、もしこの種の資料、こういう具体的な資料が必要であるということが御指示いただければ、この場で私ども答弁できるものは答弁申し上げますし、あらかじめ御指示いただければ資料として提出いたしますけれども、一般的に税制改正作業全般資料といいますと、どの範囲のところまでのことなのか非常に難しい問題もあるわけでございます。いずれにいたしましても、御要求資料につきましては、御提出できるものは誠意をもって早急に提出する努力を今後ともいたしたいと存じます。
  18. 丸谷金保

    丸谷金保君 結局、聞かなきゃ出してこないんだよね。言われれば出しますと。そうすると、こういう法案審議というのは、公式の席上でもって聞いて出してもらって、それから審議しなきゃならぬというと、これは何日もかかることになるんだよね。少なくとも税制調査会――あなたたちはいつも税制調査会がどうこうと言いますけれど、税制調査会なんか会議非公開だと。いろいろ差しさわりもあるから会議非公開だと。ところが税制調査会大蔵省から資料出してますでしょう、いろいろと。これも税制調査会がこれとこれを出せと言って出すんですか、あなたたち税制調査会審議資料にしてくださいと言って配付するんですか。あれどうなんですか。少なくとも税制調査会出したぐらいのものは我々のところへも出してくれたっていいんじゃないですか。
  19. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 税制調査会資料は、通しナンバーを打ちまして、公表資料でございます。したがいまして、従来からも立法府から御要請がございましたら、その都度この資料提出いたしておりますけれども、ただいま委員がおっしゃるように、調査会の都度国会の方に御要求なしに御提出申し上げるという従来の慣例はないようでございます。
  20. 丸谷金保

    丸谷金保君 だから、すべて秘密主義なんですね。大体税制調査会だって審議を公開してしかるべきだと思うんですよ。それができなきゃ今、税制調査会にこういう資料出しましたぐらいのことは。そうすると、これからその都度とにかく、税制調査会は今やっているようだけれども、今出している資料出してくれと一回一回言ってくれということですな、簡単に言うと。そうすれば出しますと。それじゃ出してください、税制調査会の今次改正案をめぐる検討の資料として大蔵省出したものを。私たちもそれによってどうして二百万から三百万に変わったのかとか、そういう基礎的な数値の問題を検討しなきゃならぬと思う。よくわからない、全く。与党の皆さんはわかっているかもしらぬけれど。そういう点を御注意申し上げます。  それから次に、実はクロヨンの問題とかトーゴーサンピンと言われている問題で、これは巷間そういうふうに言われていることでありますけれど、大蔵大臣も時々、比喩としてお答えのときに言葉が出てきます。あれは全く私にしてみるとけしからぬと思うんですよ。そんなことないですよ。実は私の手元にある資料を、委員長大臣主税局長、それから理事さんのところへもあげてください。   〔資料配付
  21. 丸谷金保

    丸谷金保君 大体、農業なんかの場合で非常に所得が隠れる隠れるというのは東京の人の言うことなんだよ。東京近郊農業だけ見ているんだ、東京近郊農業だけ見ててそういうことをおっしゃるわけです。   〔委員長退席理事岩崎純三着席〕 しかし農業の大きな地帯で専業農家をやっている人たちの農薬の実態というものを余りおわかりにならないんですよ。国税庁人たちも余りおわかりにならぬものだから、何となく歯切れの悪い答弁をするんじゃないかと思う。もう少ししっかりしてくださいよ。例えば五十七年の農業所得者全国で二十万三千人、総所得金額が三千七百十八億で、申告納税額が百六十八億円。このうち北海道は納税人口が二万人、総所得が五百九十二億円ですけれども申告納税額が三十七億。つまり納税人口は一割だけれど払っている税金は二二%、二割を超えているんです。こんなところでそんなクロヨンだなんていうようなことはないですよ、全然。  今資料手元に渡しましたけれども、十七町歩の州といったらもう夢みたいに皆さん多いと思うんです。ところが、小豆や金時、ここに計算明細書がありますけれども、それから小麦だとかビートだとか、そういうものみんな農協なりあるいは会社に出すんで、収穫量というものは全部押さえられているんだよね。収入を隠すとこなんかどこにもないですよ。  例えば五十七年、この方、名前は伏せてありますが、まあAさん。Aさんの場合千二百三十三万一千百三十一円、総収入ですよ。ところが経費を引いて四十九万三千円の申告納税をしております。このうち、経費特別控除としてトラクターだとか機械類土地改良費支払い利子。借金の利子が十二万九千円、約十三万くらいの利子も払っている。この方なんかいい方ですよ、どっちかというとね。ところが、これらの控除は、その大半が機械で六百二十三万八千六百十八円。これはこれでちゃんと税務署へ申告して認めてもらっている数字ですがね。千二百万の収入を上げるのに特別経費だけでも半分かかるんですよ。こんな商売ほかにありますか、こんなに楽でない商売。しかもこれは七人家族なんだ。それで四人が働いている。四人が働いているけど、これの控除なんか知れてますよ。所得は五百万しかないんです。四人働いて五百万といったら一人百二十五万です。そして三人が控除を持っているから、入れたって六百万ですよ。七人のうち四人働いていて、三人扶養家族がいるから、これをくっつけてごらんなさい。四十九万なんていう税金東京のサラリーマンだって払ってますか、そんなに。全然払ってないでしょう。給料にすればそんなことにならないんですよ。そうでしょう、給料にしないから四十九万払わなきゃならぬです。四人で働いて、しかも経費を半分以上かける。まさにこれ機械の下敷きなんです。十七町もやっていると機械を使わないではやれないんですよ。どこにクロヨンのあれがあるかということを私は言いたいんです。  その証拠に、こういうことになるんです。これは新聞に出ているからあれでしょうけど、都市の近郊だと全然違うんですね、いろんな野菜だとか農協やなんかに出荷しないで直接現金収入あるところは。さらに同じこの農民の隣の村は有限会社にしているんです。全農家の六〇%が会社組織にしているんだよ。ほとんどこの農業法人の八〇%は赤字申告なんです。いいですか。赤字申告。そうなるんですよ、会社にすれば。じゃ、なぜ会社にしないんだ。記帳ができないからです。ある農協が、優秀な指導者がいて一生懸命やっていれば、記帳できますから、記帳をみんな代行してやって、きちっと有限会社にして届けができる。こういうシステムがとれれば全然税なんか払わないでもいいんだ。できないから、北海道でも、二万人からの農民が税金を払わざるを得ない格好になっているんです。私はサラリーマンの税金が安いとは言いません。しかし東京の人が考えるほど北海道の農民は税なんかごまかしていないですよ。  だから、これから皆さんが答弁するときも、農業所得の問題についても、東京近郊にはそういう例外もあるでしょうということをちゃんとはっきりして答弁してもらわなきゃ困るんだ。日本じゅうの農家みんな、ごまかしているような話になっちゃいます。この点についてひとつ大蔵大臣、どう思いますか。第一、サラリーマンはなかなか倒産しないですよね、会社が倒産することあっても。しかし農業なんか離農者がどんどん出るんです。税金払いながら倒産しなきゃならないような農業をやっていて、これが税金四割だとか五割しか払っていないなんというふうに思いますか。
  22. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今ちょっと拝見さしていただいて、十七町歩ですか、私は島根県でございますので四反幾らでございます、平均が。したがって、そういう環境にはありますが、クロヨンとかトーゴーサンというのが実存しておりますということは、大蔵省としてはこれはタブーだと思うんです。ただ、間々そういう批判がありますということの認識はあっても、クロヨン、トーゴーサンが実存しておりますということは、大蔵省として言の葉に上せるべきものでない。こういう考え方を一応基本的に持っております。  東京周辺とおっしゃいましたが、いかにも東京周辺だけに限定されたかの感がございますけれども、間々マスコミ等でそういう議論が出てくるのは、むしろ人口集中地帯となって、かつての農地が住宅その他の開発計画に供せられてその異常な値上がりをしたものが、かつての農業専従者の家庭に所得として帰属することに対する、ある意味においてねたみとか、そういう問題が、えてして新聞紙上等に取り上げられるところであって、大蔵省としてトーゴーサンとかクロヨンの実態が存在しておりますということは言ってはならないことである。間々そういうマスコミ等の評価があるという認識はしておっても、トーゴーサンとかクロヨンというのが実態として存在しておるということは、これは大蔵省のタブーだというふうに思っております。
  23. 丸谷金保

    丸谷金保君 だから私は頭にくるんだね。大蔵大臣、いいですか。言ってはならないタブーだということは、そういうのがあるということを認めていますよね。それは中にはあるでしょう。給料取りだってそういうのがいるんですから。俸給のほかに別に金貸しか何かして全然わからない収入ある人だっているんだから、何もこれは農民に限ったことではないんですよ。それはどこの社会にもあることなんです。それを大臣がそういうふうな言い方をすると、いいですか、普遍的にあるけれども言ってはならないというふうにしか受け取らない。もう少しはっきりと、そんなものは私たちの山陰だってありませんよというふうに、都市近郊の農村で間々皆さんの目につくところで、特に土地成金というふうなものを目の当たりにしているところで、農家税金をごまかしてえらい豪奢な生活をしていると言われているけれども、日本の全体の農民の立場に立ったら、そんなばかなことございませんと。いわばタブーでございますと、大臣がそんな歯切れの悪いことだから、こんなことがマスコミの中ではびこるんですよ。もう一回、もう少しはっきり言ってくださいよ。
  24. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いや、大体丸谷さんおっしゃることと同じことなんですよ。ただ、禁句だと申しますのは、トーゴーサンとかクロヨンとかいうものが実在するという認識を持ったときに、税務行政が公正に行われていないということになると思うんです。だから、そういう実態は承知しておりません、これが私は共通した認識であらなければならぬ。ただ、マスコミ等にそういう言葉があることは承知しております。私どもの共通した言葉の整理はそういうことじゃないかなかというふうに考えております。
  25. 丸谷金保

    丸谷金保君 大蔵大臣も農村地域の出身だと思うんですが、どうも農村の実態を余りよく御理解していないようなんです。というのは、今もうちの方では四反だと。そういうところではほとんどもう皆兼業農家なんです。本州方面の農村の九割以上が兼業だ。そういうところで別の収入がある農民を見ていれば、そういうこともあるわけです。じゃ、それでは四反だけで食っている農家は何軒ありますか。ほとんどないんですよね。だから、少なくとも専業農家の中で、トーゴーサンピンとかクロヨンと言われているようなことの事実はない。それは中にはあるでしょう、何かかにかでそれはあることはある。だけれども、それは農村に限ったことじゃないんです。町の中だってあるし、俸給生活者の中にだって例外はあるんです。その例外を取り上げていかにも普遍的にあるような風潮に対しては、大蔵大臣、もう少しはっきりと。  それごらんになったらわかるように、どこもごまかしはないでしょう、その数字を見られて。国税庁だってわかるでしょう、その数字を見れば。収入はぴたっと押さえられているんだ。大体これは経費をかけ過ぎているので、農水省を呼んで農水省にも聞くけれども、とにかく収入の半分も減価償却しなきゃならぬ。しかも、そのうちの大半が農機具で、補助毒薬なんだよね。それで機械の下敷きになるような借金をしょっている。こういうことについて農水省はどう考えているんですか。
  26. 清田安孝

    説明員(清田安孝君) 農業機械の導入に関しましてお答えを申し上げます。  農村におきます農業機械の導入は、兼業化の進展に伴う労働力不足あるいは重労働の農作業からの解放等の要請から、急テンポで進みました結果、農業経営費に占める農機具の比重は、農業の形態あるいは経営規模によって異なりますけれども昭和五十七年度では、全国平均で一九・四%を占めております。農業機械が経営上の負担になっているという面も否定できないと思っております。  しかし、こうした農業機械化の進展は、労働生産性の向上とか農業生産の維持拡大に大きな役割を果たしているという面も評価できると思います。  しかし、農業機械投資が農家の経営負担となっている状況を改善するために、農林水産省といたしましても、各種の施策を講じておりますけれども、例えば農業機械化促進法に基づく高性能農業機械導入基本方針、あるいは型式検査、こういうようなものによりまして優良な農業機械の効果的な導入を図る。あるいはまた農業機械銀行方式の普及定着、これによりまして受委託の促進を通じて農業機械の効率的な利用を図る。あるいはまた中古の農業機械流通促進事業を実施し、中古農業機械の市場確立に努めております。  ただいまお話ありました農業機械の補助金につきましては、五十七年に農業機械施設補助の整理合理化につきまして、通達を出してトラクター等個別経営になじむ機械は補助しない等大幅な合理化を進めているところでございます。
  27. 丸谷金保

    丸谷金保君 補助事業をもらえば補助分だけが減価償却の対象になるとか、それが幾らになっていくとかという大変面倒な計算、これは白色の確定申告をやるときには、いまお配りした程度計算書を必ずつけなきゃならぬことになっていますね。ところが、いままではそれは必ずじゃなかったんです。しかし、そうはいっても、みんなつけ出しています。これは個々の農家ができないから、北海道の場合は、御承知のように、農業協同組合その他が数字を入れて、そしてみんなの分をまとめて整理しているということですよね。だから、できないんですよ、個々の農家にやれったって、そんな細かいこと。その先にまだたくさんついているんですよ、機械の年度ごとの償却の区分だとか、細かいやつもたくさんつけなきゃならぬ、四枚も五枚も。とてもそれは農家にはできない。そこへもってきて今度はあれでしょう、記帳義務ということになるわけだ。そんなこととてもじゃないけどできない。  それは何も農家だけじゃない。大工さんやいろんな人たち、そういう人たちもみんな、今でも確定申告のときには収支明細書というのをつけろといってつけさしていますよ。一人親方だとか大工さんだとか左官さんだとか、こういう人たちは、この程度のもので今までつけているんだって、なかなか自分で書けないから、それぞれ皆さんが骨を折って組織でもってやっているんです。たとえばこういう大工さんや左官さんだとか、そういう人たちのためには、全建総連などがやっています。それを今度こういう記帳義務というふうなことでかぶせられる。罰則がないと言いますけれども、できないことがわかっていて何でこんなものを義務化しなきゃならないのですか。義務化したってできないですよ。できなくたって罰則規定がないからいいんじゃないかと私たちは聞いてみました、農村の人にも。いや、あれは罰則規定がないからどうということないですよと。そうすると、ちゃんとする人とちゃんとしない人に不公平ができるし、わざわざなぜこんなことしなきゃならぬのか。ねらいは大型間接税だというところに行き着くんですよ。実効のないこんなことやる。どうなんですか。
  28. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、主税局長がお答えする前に私からお答えします。  むしろ丸谷さんに対して政治論みたいなお答えになるかと思いますが、元来、青色申告というものを慫慂しておる立場に日本政府はあるわけです。そうすると、可能な限り青色申告に近づける努力というのはしていかなきゃならぬ。今度のこの記帳義務というのは、ある意味において、それの一段階を経過したらこの青色申告になっていく過程として受けとめるべきではないかと、こういう感じが私自身は非常にいたしております。  特に、いささか私事にわたりますが、全建総連の方、随分今度御関心をお持ちになっておりますが、ちょうど今から十五、六年前でございましたか、まだ全建総連という組織の中でいわゆる日雇健保の擬制適用を受けていらっしゃる時代がありました。そのとき、少し制度が変わったので指導してくれと言われまして、いろいろ相談しましたら、全建総連の中に神主さんがお入りになっておったり、ホステスさんがお入りになっている。何でだろうかと思ったら、起工式のときのはらいたまえ、清めたまえをやるとか、あるいはバーテンに出るので全建総選に入っている。こういう議論がありまして、仲よくなりまして、いろいろ指導しました。  最近見ますと、全建総連の、今度は変わりますが、健康保険は非常にうまくいっているのですよ。だから私は、むしろ今度は、違っておったら申しわけないんですが、主観に基づく答弁になりますけれども、これはむしろ組織点検のために運動をやっていらっしゃるのじゃないか。組織点検をしつつ、またあれだけの能力のある組織だから、恐らく皆さん記帳義務の方へ進んでお入りになって、そしてやがてそれは青色申告の方へ移行していただける一番いい機会に遭遇していらっしゃるんじゃないかというふうな、うがった考えかもわかりませんが、私の過去のつき合いの程度の中からそういうふうにも感じておるわけであります。  したがって、その青色申告にいくまでの間は、それは特典もなければ罰則もありません。しかし、その段階というのは非常にいい段階を経過されることに結果としてなるのじゃないか、こういう私流の認識をしております。これは政府答弁としてはいささかはみ出した答弁でございますけれども、正確を期するために主税局長からお答えをさせます。
  29. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回の記帳義務につきましては、事業所得等年間三百万円以上の方にお願いをするということで御提案を申し上げているわけでございます。これは先ほど委員がおっしゃいましたように、立案の過程におきまして、この所得限度をどうするかということを、各方面の意見も聞きながら、大変いろいろ検討する期間なり時間というものがございました。先ほど大蔵大臣の答弁にもございましたように、記帳能力の問題と青色申告制度との連関というものを考えました場合に、現在青色申告の割合は事業所得者で平均五〇%強の水準にございまして、これを二百万ぐらいの線で引きますと、そういう平均的なところに非常に近い数字になるわけでございますけれども、初めての制度ということでもございますし、委員もおっしゃいますように、記帳能力といいますか、せっかく制度化いたしまして、罰則がないとはいえ、記帳を求めるのがいかにも困難である事業所得者という者の負担にならないようにという配慮はぜひ必要なわけでございます。  三百万円というところは、青色申告で言いますと、七割ぐらいの方が既に三百万円以上でございますと青色申告に入っておられる。この辺の事業規模は、本人を含めまして従業員の規模が四人ぐらいの規模でございます。そういったことを総合勘案いたしまして、しかも今回お願いいたします記帳内容は、現在青色申告でお願いしておりますものよりもより簡易な記帳から出発していただくというふうなこともかねて勘案いたしまして、三百万円ということでお願いしておるわけでございまして、何とか私どもはこの制度が定着していくようにということを念願しておるわけでございます。
  30. 丸谷金保

    丸谷金保君 主税局長、そういうふうにおっしゃいますけれども、一方で三百万円と言っている。それから総収入の明細をつけなきゃならぬのは百二十条ですか、これによると四項で五千万円以上。これ五千万円以上の収入でしょう。そうすると、赤字の法人でも赤字の個人でも、収入が五千万円以上あれば明細書をつけなければなりませんわね、五千万円以上の所得じゃないのですから。五千万売ったけれども六千万損して、差し引き一千万赤字になっても、これはつけなきゃならぬでしょう、収支明細書ね。「総収入金額及び必要経費内容を記載した書類を当該申告書に添付しなければならない。」と。赤字法人だってつけなきゃならぬわね。そうとしか読めないでしょう。  ところがね、いいですか。一方ではまた所得税法では、今度の改正で確定申告も、確定申告書には必ず収支明細書をつけなさいとなるでしょう。三百万と言っているけれども、百万の人だって確定申告書を出さなきゃならぬ。そうでしょう。三百万の人だって出さなきゃならぬ、控除の権利があるからね。何も三百万だから、三百万以下の人はそんなことしないでもいいんだということになってないんです、実際には。実務的にはなりませんよ。  そうすると、簡易な明細書を今度はおたくの方でつくるとすると、一体どんなものをつくるんですか。私がそっちに出したのは、今までの所得計算書として申告書につけたやつです。これは全建総連だとかいろいろなところも同じですよね。山林所得にしても、皆おたくの方で出しているんだから同じです、こういうのをつけなさいと。これよりもっと簡易になるんですか。
  31. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回御提案している内容をちょっと整理して御説明申し上げることをお許し願いたいんでございますけれども、まず、委員最初おっしゃいました百二十条の四項の収支のいわば計算書、明細書でございますが、これは現在も確定申告書に事業所得者等にはお願いしておる内容のものを法制化させていただくということでございまして、現在のものより申告される方の負担が加わるという問題ではございません。  それから五千万円以上の方にお願いしますものは、これは二百三十一条の三でございますけれども、確定申告をなさる方はもちろん確定申告をなさるわけでございますけれども、現在所得税法では、納付すべき税額がない場合は確定申告の義務がないわけでございます。俗な言葉で言えば赤字の方でございますね、個人の場合。法人の場合は、赤字の場合でも確定申告の義務があるわけでございますけれども、個人はその義務がない。今回は、年間五千万円以上収入額がある方は、その収入金額を報告していただくということでございまして、その報告していただく内訳は、まず所得の種類は記帳の場合と同じでございまして、不動産所得、事業所得、山林所得、この合計が五千万を超える人が確定申告をなさる場合は、確定申告をなさるわけですけれども、確定申告をするまでに至らない赤字の場合でもその所得の合計金額を報告していただく。内訳の細々したもの、つまり収支の明細みたいなものの報告を求めているわけではないわけでございます。この点はひとつ誤解のないように御理解願いたいと思います。
  32. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこまでやらない。じゃ、ここまでやるんだというものは様式ができているんですか、この程度でいいんだという様式が。今まではこういうのをつけなさいということだったんだけれども、これのもっと簡単なやつでいいわけでしょう、今までつけているのよりは。今までは強制じゃないんだ、義務じゃないんだよね。指導でつけさしているんだ。
  33. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず、その様式は大蔵省令で定めさしていただくことにしておるわけでございますけれども、今までお願いしているものよりも負担が重くなるような詳細な内容のものを予定いたしておりません。  それから総収入金額報告書の方は、先ほど申しましたように、所得ごとの収入金額の合計額だけでございます。
  34. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、問題は、そういうことで簡単なのにしておりますが、しかし実際には今度、通則法の百十六条と関連してくるんです。そうすると、赤字のあれは出さなくてもいいが、確定申告は、それは税がないんだから申告しないけれども、報告だけはしなさいということになるでしょう。収入はありました、だけど赤字ですということだけは。確定申告書は確かに税がないんだから出さなくてもいいけれども、収支の計算書は出さなきゃならないことになるわね、五千万円以上あれば。要らないですか、全然。ちょっとそこのところはっきりしてください。
  35. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 先ほど私の説明があるいは不行き届きであったかと思いますけれども、先ほど御説明申し上げましたように、今回御提案申し上げております二百三十一条の三でございますが、総収入金額報告書、不動産所得、事業所得もしくは山林所得を生ずる方々でございますけれども、ここで求めております報告の内容は総収入金額でございまして、例えば事業所得なら事業所得の収支の明細の報告を求めているわけではないわけでございます。
  36. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、総収入は一億ありましたと報告しなければならないね。だけど、私は経費たくさんかかっているから税金は払うことないから申告はしませんと。そうすると、これは控除の権利もなくなりますわね。だから控除の権利だけあれするためにゼロだけど申告するということもありますね。  問題は、ここでこういうことが起きるんです。そうすると、たくさん収入はあったけれども税金を払わぬ連中のところへは見積もりとって調査に行くでしょう、まずね。そうすると、冗談じゃないということで裁判が起きる可能性もあるんだよ。このときに今度はこういう問題がたくさん起きてくると思うんだ。収入はあるけれども税は払わない。何だということでそういうところから取ると。そうした場合に、今度は、国税通則法でもって遅滞なく事実を具体的に主張しなさいと、こういうことがありますわね。そうすると、先ほど私が申し上げましたように、国税当局の方は、五年たってからでも修正申告でも何でもするんだ、恐らく裁判やっても負けぬと思ったら。自分の方は全然期間内だろうが何だろうがあれして、片方の原告の方には遅滞なく反論しなさいというふうなことで、非常にその格差がひど過ぎるんじゃないか。被告である国側の方はいつでも新しくどんどんどんどん調べて、何年たったってやれるんだよ。片方は一遍きりだ。そうなったときに一体どうなるのか。私はここに実はそうした今係争中の案件訴訟関係の写しを持ってきたんですがね。これは名前だとかそういうのは差し控えますけれども、おたくの方の調査で、僕らこれを見て、こんなことがまかり通って裁判になっているのかと思うようなのがあるんですよ。  例えば、この人の場合、別表一ということで、番号四の八月十二日に、アートコーヒーほか五万八千二百五十八円、これらが経費として認められないということで否認されているんです。いいですか。コーヒー代が五万八千二百五十八円もかかるわけないからね、まず普通常識的に。ほかの方が多いんですよ。それをおたくの方は中身がわからないのに経費否認をしているわけさ。こういうのはこの資料の中でも枚挙にいとまがないんです。こんなの遅滞なく主張するという気になったって主張できませんよ。  昭和五十三年三月二十三日、東方会館ほか十八万四千七百二十四円、こういうふうに指定されております。  こういう具体的な問題に入って実はやろうと思ったんだけれども全然時間がないんです。  それで、問題点として、通則法の二十三条で、あれでしょう、更正の請求をやった。税額をたくさん間違って納めたから早く返してくれと。その場合、申告書の決定あるいは更正すべき理由がない旨を通知することになっていますね。ところが、これは返す期限がないんですよね。要するに請求をせいと言う方は一年以内と言っております。一年以内でなければだめですよと。ところが、それを請求された場合に何年たって返してもいいことになっているんだよ。しかもこれには返すときに利息がつかない。もう実に矛盾した問題が、国税通則法の、百十六条を中心にして、この間日弁連の参考人が話したように、今度裁判官の手や足を縛るような形でみなし規定がつくられてしまうと、訴訟を起こしても救済されない問題がたくさん出てきます。その辺は、私、具体的な問題をいっぱい持っているんで、それらについて次の機会にします。今ただ一つの事案、これは現に係属中の訴訟事件の事案ですが、こういう問題についてひとつ明快な答弁をお聞きしたい。  きょうはもうそういうことで時間がございませんので、鈴木さんの方にお譲りしたいと思います。  それから先ほどの委員長見解のあれは、私がやっているうちに出てこないとすれば、この点についてはきょう質問を留保することをここに通告しておきます。
  37. 岩崎純三

    理事岩崎純三君) 答弁を求めるんですか。
  38. 丸谷金保

    丸谷金保君 はい、答弁を求めます。
  39. 岩崎純三

    理事岩崎純三君) 速記をとめて。    〔速記中止
  40. 岩崎純三

    理事岩崎純三君) 速記を起こして。
  41. 鈴木和美

    鈴木和美君 大変申しわけないんですが、先ほど連絡がございまして、大臣の都合もあるようでございますから、大臣に先にちょっとお尋ねします。  大臣、今たばこは何を吸われていますか。
  42. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ハイライトを吸っております。
  43. 鈴木和美

    鈴木和美君 ハイライトは単価幾らですか。――百七十円でございますが、大臣の月給とハイライトの百七十円、それから汗水流して働いている低所得者の百七十円、年金生活者も百七十円、ビールは値上がりすれば大瓶で三百十円。こんなことに対して簡単な感想を聞かしてください。
  44. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、単価というのを私、製造原価かと思いまして失礼いたしました。  今おっしゃいましたことは、いわゆる間接税というのが逆進性の高い税金だと、こういう御主張でなすったんではなかろうかというふうに私はこれを受けとめました。
  45. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つお尋ねしますが、一般論で結構ですから大臣お尋ねします。  多くの国民は今税金を納めたいと思っておりますか、納めたくないと思っておられますか。
  46. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 納税の義務という考え方は多くの人がお持ちであるのではないかと思っております。
  47. 鈴木和美

    鈴木和美君 一般的に述べて、税の負担が公平だとみんな思っていますか、負担感が強いと思っていますか、負担感が平均的だと思っておられますか。
  48. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 不公平というのは主観によって大変違いますので、国民の相対的なバランス感覚からいえば、まずまずかなと、こう思っておるんでありましょうが、多くの個人、個人は隣の人と比べてみたりいろいろいたしますから、それなりの不公平感があると思っております。
  49. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つお尋ねしますが、私は極めて不満という意味で尋ねます。先ほどのクロヨン論とトーゴーサンピンの問題について、私は竹下大蔵大臣の答弁に不満です。なぜならば、私は昭和五十六年からこのことを追求しています。そして、その追求の中で、先般五十六年の十月に、主税局が中心になって大変苦労した総理府統計局と国税庁が共同で行った世論調査というのがあります。この世論調査は、私は中身について評価が違うかもしれませんけれども、そのことはいわゆるトーゴーサンピンとかクロヨンとか、所得の捕捉ということにおいて不公平があるんじゃないかということの新しい手だてのもとにできたものではないんでしょうか。だとすると、今大臣の答えられていることは、税務当局がそのことを認めると、おかしな税務執行をやっていると言われるからこう答えざるを得ないんだ、これが今のお答えですね。私はこの論に対しては反対ですし、納得できません。いかがですか。
  50. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる一般的に言われますクロヨンとかトーゴーサンということがあるという認識の上に立った場合には、不公平そのものを認めた前提の上に立つんじゃないか。だから感覚的に存在することを意識しておっても、クロヨンという実態がございますということは、みずからの執行について必ずしも適正な自己認識ではないではないかと、こう思って申し上げておるわけであります。
  51. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は後ほど自分の意見を申し上げます。  今の調査は、私がしたわけではなくて国の総理府統計局でやったことです。その中で、現在納めている税金の負担感については、全然負担には感じていないという人が三%、余り負担を感じていないという人が一八%、ある程度負担を感じているという人が五三%、非常に負担と感じている人が二一%、わからないと答えた人が五%。つまり負担を感じない者二一%に対して負担を感じていると答えた者が七三%です。この数字を見る限りにおいては多くの国民が今税金に対して大変な不満と、それから不公平に対して、何というんでしょう、胸の中で燃えるような不満を感じていると思っているんです。  そこで、時間がありませんので私から先に申し上げますが、私はこういう感じに現在あるというものを私流にこういうふうに分析するんですが、この見解に賛成でしょうか。つまり、そういう感じになっているということは、まず一つには、大臣、政治に対する信頼が持てないということじゃないでしょうか。その中身は、先般政治倫理の問題が取り上げられましたが、政治家たる者の資格の問題、また中身がどういうふうに使われているかということもありましょう。今防衛論争をやるつもりはありません。  二番目には政治がわかりにくいということがあるんじゃないでしょうか。大臣も、増税なき財政再建という言葉に対していろいろな言葉を使われておりますが、上手な言葉使いかもしれません。しかし、多くの国民はこの言葉に対してだれも信頼してないんじゃないでしょうか。そういう問題が私はあると思うんです。  もう一つは政治に信頼がないということ。国の財政を預かる大蔵大臣、六十年度の予算編成に際して三兆八千億円、四兆の要調整額がどうなるかということに対して多くの国民は今大変な心配をしている。一体展望はどうなるのかということに対する大変な危機感と、増税ではね返ってくるんじゃないかという心配。しかし増税であるなら増税であるようにはっきり物を述べなきゃいかぬのじゃないでしょうか。政治家というのはそういうものではないでしょうか。ましてや政権を担当している自民党としては、そのことに対して全面的にこうだということを私は述べるべきだと思うんです。大臣のお話を聞いていると、勉強に値するという言葉がよく出ます。この指とまれというやり方はしたくないとあなたは言うんだ。皆さんのコンセンサスを得てという話もあった。しかし政権を担当する自民党というものは、自分の選挙公約のもとにおいて、おれはこうするということを堂々と出さなきゃならぬのじゃないでしょうか。そういうことに対する政治不信というのは私は免れないと思うんです。これが言いたい一つです。  二つ目は、自分だけが損をしているという感覚があるんじゃないでしょうか。これは何を言うかというと、不公平税制が全然解消されていない。同時に執行上の問題もありましょう。自分だけが損をしている、そういう感覚が私は蔓延していると思うんです。今度の八千七百億円と、それから酒税、物品税その他で増税が行われるのを差し引き勘定をしても、こんなごまかしという感じが私はあると思うんですね。そういうことに対して不公平税制は何ら解消されていない。解消しようともしない。グリーンカードだってしかりでしょう。医師優過税制だってそうでしょう。土地税制だってそうでしょう。利子配当課税だってそうでしょう。そういう不公平税制に対して何の手も加えないで、そして国民にだけ増税を押しつけるというやり方は、私は国民が問題にしているところだと思うんです。  大きい三番目に、この減税のあり方です。多くの国民は所得五百万から七百万のところに大きな期待感を持っておったと思うんです。どうですか、今度の税の区分表から見てみれば、何で上の方にだけにあれだけの減税が行われなきゃならぬのですか。そういうことを見ると、私は制度全体に対する非常に不信が今日の状態を起こしていると思うんです。そういうことに対して財政を預かる大蔵大臣として、これからの大きな展望に対して確信を持って言ってほしいと私は思うんです。今そのことを述べなければ、細かいことも大切でありましょうけれども、今そのことを述べることを私は多くの国民が望んでいると思うんです。所見を伺わせてください。
  52. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、私は、税に対する考え方といたしまして、この私自身のかねての考え方でございますが、いわゆる負担感というものは、義務であるから皆さんが喜んで納めていただくのがこれは当然でございますが、負担感というのはある程度あった方がいいという考え方を持っております。それは一つは、重税感というよりも、ある意味においては痛税感みたいなものではないか。したがって、先ほど逆進性の強い間接税のお話が出ましたが、間接税というのは、ある意味において脱税が少なかったり、それから選択の自由があったり、そういう点のある税制であると思います。そうして今おっしゃった逆進性も確かにございます。しかし、えてして、この間接税というものに大きく依存した場合に慣れると、痛税感を失って、物価の中に転嫁されてしまうわけですから、したがって歳出に対する厳しさというようなものがなくなって、少し言い過ぎかもしれませんが、先進国病みたいなことになる一つの要因ではないか。だから、ある程度痛税感あるいは負担感というものはあって初めて、税の使い方に対する監視の眼というものがお互いできてくるではないかと、こういう自己認識を一つは持っております。  それから全体的な政治不信等についての問題でございますが、確かに政権党でございます。が、私は、日本人の知識水準というものは、それこそ文盲率の低さからしても、高校進学率からしても、すべてで世界一の民族だと思っております。事ほどさように知識水準の高い民族に対しては、新しいリーダーのあり方としては、このようにしたい、皆さんついてきてください、これが一番危険じゃないか。むしろ国民の意思が那辺にあるかというそのコンセンサスをどうして探り出すかという、これが新しいリーダーシップの一つじゃないか、こういう考え方を持っております。したがって、極度に厳しい財政状態の中でその財政の方途を模索していくということになると、それこそ仮定計算とかそういうものをお出しして、要調整額等をお示しして、それが国会の議論の場を通じ国民にじわじわとその議論が浸透していって、そうして、なれば負担するも国民、受益者も国民でございますから、そこで初めてこの財政再建の方途というそのコンセンサスというのが見つかるものではないだろうか。昔そうであったかどうかは知りませんが、おれについてこいと、こういうような時代ではないようになったんじゃないか。これはある意味において私思いますが、自由民主党というのが百点満点の政党でもないのに長らく政権を担当してきたというのは、案外、野党の皆さん方の主張を一年おくれあるいは三年おくれぐらいで先取りする、そういう柔軟さというものがあったから続いてきたんじゃないか。こういう評価も私ながらしております。確かにこういうことで要調整額は埋めたい、それを出す以前の、国民の皆さん、これだけのものがかかります、受益者も国民、負担するもまた国民、どの組み合わせでやりましょうか、そういう問いかけをしておるというのが、今の私どもの政治姿勢ではなかろうかなと、そういうふうな感じがしております。  それから不公平税制の問題でございますが、確かに自分だけ――不公平というものは自己中心によって、主観によってそれぞれ異なるものでございます。したがって、その不公平感というのはだれしも持っておりますが、今御指摘になりました個別の問題については、それぞれ税調答申等においても引き続き検討の課題、利子配当課税なんてまさしくそうでありますが、そして可能な限り夏ごろまでに結論を出せということも言われておるというようなことでございますので、そういう国民の意識を感じながら絶えず見直していくという姿勢はとっていなければならぬというふうにはいます。  それから減税問題、今鈴木さん御指摘の、要するに増減税抱き合わせと申しますか、あるいは差し引きチャラ減税とでも申しますか、それにつきましては私どもも、それは好ましいことはこういう姿でない減税が好ましいと、これは同じように思っております。ただ、これ以上財政状態を悪化させない、すなわち赤字公債を財源に充てることはいけないという一つの前提の上に立って組み上げてまいりますと、このような形で、この増減税チャラということでお願いをしなければならなかった現時点におけるぎりぎりの政策選択ではないかというふうに御理解をしていただきたいものだと、こういうふうに理解しております。
  53. 鈴木和美

    鈴木和美君 国税庁お尋ねいたしますが、私が五十六年以来ずっと指摘してまいりましたそれこそ税務環境の整備の中で、実調率が非常に低いということで、これは人を何とかせないかぬぞと、そういう国会決議が行われていますね。それから二番目、私は職員の訓練をしっかりしてくれということを述べたんです。税務署の職員は目つきが悪いということも言って、そんなことじゃいかぬからしっかり訓練してくれよということも述べました。もう一つは、税務の相談というものを積極的にやってくれぬか、そういうことも述べました。建物についても、非常に暗いところではいかぬので、建物も積極的にやってくれ、こういうことを述べて、努力しますと言われてきました。そういうものについてどういう実態になっているのか聞かせてください。これが一つです。  それからもう一つは、主税局長お尋ねします。今も大臣とのやりとりの中で、五十六年の十月の総理府と国税庁が一緒にやったあの調査の結果の評価というものはどういうふうに受けとめているのか聞かしてください。この二つ。
  54. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) まず第一点の御指摘の定員の問題でございます。これにつきましては、非常に行財政厳しい状況下でございますけれども、関係方面の御理解を得まして、漸次増加して、おるような状況でございまして、五十九年度の予算では、ネットで十六名の増員をいただいているという状況でございます。これからますます環境厳しくなってまいりますので、定員増加につきましては、これから最大限の努力をまた続けてまいりたいと思っております。    〔理事岩崎純三退席委員長着席〕  それから教育の問題でございます。国税の仕事というのはまさに人でございまして、人材の確保、その養成ということに私ども最大の重点を置いてやっているわけでございまして、税務大学校におきます基礎的な各種の授業その他の充実、さらには一般の職場におきます研修、そういうものにつきましては、予算の許す限りにおいてこれからも格段の努力をしてまいりたいというふうに考えております。  それから相談事務の問題でございますが、これにつきましては、さらにこれからの行政サービスの向上という意味合いから、相談室の内容の充実、特に有能な人材を相談室に配置していくというような面にも配意して、相談事務の充実を図っていきたいと考えております。  それから建物の面でございますが、これはかなり狭隘な庁舎もふえてまいってきているわけでございまして、これにつきましては、関係方面の理解を得まして、逐次充実をいたしてきておるわけでございまして、ちょっと手元に数字……
  55. 鈴木和美

    鈴木和美君 概略で。
  56. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 現実に建物の増改築というものも充実させるようにいたしますと同時に、既存の建物の中のいろいろな模様がえとか、その他の工夫によりまして、職場を明るくし、かつ行政サービスが向上できるような環境づくりをいたしたいと考えております。
  57. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは、ただいま大臣の答弁にもあったわけでございますけれども、まず、率直に申し上げまして、この総理府の世論調査を拝見いたしまして感じましたことは、税金に対する関心あるいは意識というのは、私ども税制に携わっている者の予想以上に関心が高いという点がまず第一点でございます。  それから第二点は、負担感でございますけれども、ある程度の負担を感ずるというのは、特に所得税についてこの割合が高いということは、これは非常に重税感であるということになると問題でございましょうけれども、ある程度負担感を感じるというのは、市民の意識としては健全な証拠であろうということでございますけれども、この辺は常に注意して見ていかなければならない一つのポイントであろうと思います。  それからもう一つは不公平感が非常に強い、これは文字どおり不公平感でございますので、それと客観的事実ということとはまた別でございましょうけれども、私ども税制担当者といたしましては、そういう心理的な意識として不公平感が高いということは、これは非常に重理なことを意味しておるのであろうというふうに感ぜざるを得ないわけでございます。  今回、納税環境の整備の問題を提起いたしておりますのも、それから税制調査会の十一月の答申にも触れておりますのも、我が国所得税制において特徴的なことは、納税者の九割以上がサラリーマンであり、かつその大部分の人が年末調整の源泉徴収で税務が完結してしまう、こういったグループと、事業所得者等を中心にした申告所得税の納税義務者との間に何となくわだかまりがある、それはあるいは不公平感という言葉で置きかえてもいいかと思いますけれども、そういった不公平感というものが事実存在するということは、これは注目しなければならないわけでございまして、そういったものを今後解消していく努力、それは制度面の努力でもありますし、執行面の努力でもありますし、もう一つは、これは国税庁を中心にして毎日努力をいたしておるわけでございますけれども、いろんな税務の指導、それから正しい広報活動、そういったものを通じて解消していかないと、基幹税である所得税に対する不公平感、不信感が、ひいては税制なり社会制度一般に対する不信感につながる。その意味で私ども国の仕事の中でも非常に重要な仕事をさしていただいておるという責任を痛感するわけでございます。
  58. 鈴木和美

    鈴木和美君 主税局長、今の御答弁で私が非常に気になるのは、確かにこの調査をやられた努力というものは多とするし、ある程度、二千何名がですから、必ずしも全体に及んでいるかということはよくわかりませんで、そういう問題点はあるとは思うんですが、今回、税務環境の整備というような問題が飛び出してきたその主なる背景、原因を見ると、どうもこの調査が根っこになって、そこのところが軸になって今回の納税環境の整備、つまり通則法の問題が出てきたというように思われるんですが、それは違うんですか、全く別な角度からですか。
  59. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回の納税環境の整備の問題は、昨年十一月の税制調査会の答申に具体的な方向づけをいただいたわけでございますけれども、その前の昭和五十五年の中期答申におきましても、所得税制の見直し、つまり負担のあり方の問題とともに、所得の捕捉をめぐる不公平感の解消という観点が、今後の所得税制を検討する場合の大きな主眼点であるという指摘もいただいておるわけでございます。五十五年の答申は、要するに、その前三年間の税制調査会審議の過程の集積ということでございますから、時系列的に見ていただきましても、この総理府の世論調査と、今回御提案申し上げております政府税制調査会の答申を基礎といたしました納税環境整備の問題、これは直接の関係はないわけでございます。
  60. 鈴木和美

    鈴木和美君 主税局長、よくわからないんです、今の答弁。この調査というものが全然無視されるとは言いませんけれども、そういうことを軸にして今回提案に及んだというものではないんだという答弁ですか。
  61. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回御提案申し上げております納税環境の整備のための布石となった世論調査であるかというふうな御指摘と承ったものでございますから、そういう直接な関係はございませんということをお答え申し上げたわけでございます。
  62. 鈴木和美

    鈴木和美君 参考にしているというふうに見てもいいですか。
  63. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 政府税制調査会は、各委員の方々の御討議、御議論の結果集約されるわけでございまして、この世論調査そのものを税制調査会審議資料として提出したという事実はございません。ただ、この世論調査も含めまして、各界各層の委員の方が御参加になっておるわけでございますから、それぞれいろんな角度から日ごろ税制に対して意見をお持ちでございましょうから、こういった世論調査を念頭に置きながら議論に参加なさった委員もあるいはいらっしゃるかとは存じますけれども政府といたしまして、この世論調査を中心に税制調査会で議論してもらったということはございません。
  64. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうしますと、今回のこの通則法の改正というものはどういう意味で出されたのか、本当によくわからないんですよ、私も。つまり、いままで述べてきたことを総括的に私が述べれば、いろんな調査の中でも、また調査をしないまでも、私も現に個人的にいわゆる法人と言われるところの個々個々の事例の中で、奥さんと一緒に御飯食べても経費で落としてみたり、それからガソリンも息子と一緒に会社で落としてみたりなんかいうことを現に私だって見ていることあるんですよ、そういうことはね。けれども、そういう個々個々の実態はあるんでしょうけれども、全体としては今まで零細な企業の人たちが本当に記帳に対しても大変なことをやっているのに、今回一挙にこのことをこの法律で、PRもなしに教育もなしに宣伝もなしに一挙にこの法律でやっていくということに対して無理があるんじゃないかと思うんですよ。私はそういう方法、手法よりも、つまり納税者に負担をかけるというよりも、徴税側の方がもう少し皆さんに納得できるような方法を講じてほしいという観点から、税務職員の増加というものを何回か主張してきたんですよ。  ところが、そのことがいろんな事情でできないというものだから、逆にこのことを出して、つまり自分たちの徴税側の不備の点を納税者側に責任転嫁してしまうというところに私は大きな問題があるような気がしてならないんですよ。なぜならば、不公平を是正するのにどうしたらいいかというこの問いに対しても、正しい申告のための対策ということで、この調査の中で一番圧倒的な数字を示しているのは、脱税者に罰則を重くした方がいいというのが八三%の答えでしょう。こういうことが現実にあるわけですね。だから、そういうようなことを背景にしながら、つまりこれから罰則規定はまだ一挙にはつけられないけれども、自分たちの、不備な点を何としても納税者側に転嫁するというような考え方、背景というものがありありと私は見えるんです。そういうふうに私は受け取っていますが、間違いですか。
  65. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これはぜひ御理解を賜りたいわけでございますけれども、たびたび税制調査会の答申を引用させていただくわけでございます。五十五年の答申におきましても、昨年の秋の答申におきましても、申告納税制度の公平な課税を実現するためには、もとより執行面での努力、これは大事であるということでございまして、これは国税庁の五万の税務職員が毎日鋭意努力しておるわけでございまして、私どもその執行面の努力をおろそかにするという気持ちは毛頭ないわけでございますが、同時に、制度面で過去三十年以上にわたりますこの申告納税制度の定着の歴史を振り返りながら、現時点におきまして制度面でこれを補強していくということも、必要と認められるところがあればこれを手直ししていくべきではないかという観点に立ちまして、今回の納税環境の整備をめぐって税制調査会で足かけ二年ぐらいの研究、検討作業の結果、今回その中で当面制度化していただきたい、お願いしたい点につきまして、今回御提案申し上げているわけでございまして、執行面での努力をおろそかにして、制度面で一方的にこれを強化していくというふうな考え方に基づくものではないということをぜひ御理解を賜りたいと思うわけでこざいます。
  66. 鈴木和美

    鈴木和美君 国税庁でもいいですし主税でも結構ですが、多少事務的になりますが、法人税だけで結構ですが、昭和五十一年から五十六年までの間に実調率はどういうことになっていますか。
  67. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) 法人税の実調率は現在一〇・九%でございます。五十一年からの推移については、ちょっとただいま持っておりませんが、大体において同程度に推移しておるということでございます。ただ、その内容につきましては、職員数が増大しない割に法人数が増大するものでございますから、簡易な調査とかそういうものを若干入れまして、件数を仲はすというような努力はいたしておるわけでございます。
  68. 鈴木和美

    鈴木和美君 私、この点は通告しておかなかったですから申しわけないので、私の手元資料を見れば、五十一年は大体七・五%、五十二年度で七・九%、五十三年度で九・五%、五十四年で一〇・四%、五十五で一〇%、五十六年で一〇・四%という数字を私は把握しているのです。ところが、この実態たるや、なるほど実調率はパーセンテージでは高くなっていますけれども、この実調の状態というものは、私が知っている限りにおいては、時間を短くしてただやっているというだけにすぎないんです。何かそういう意味では税の完全な捕捉というものが今行われていないと私は言うていいと思うんです。そこで、そういう実態であるから、どうしてもその定員不足をこういうことで補おうということで私は出てきたんだとしか見ざるを得ないんですよ。  そこで、後ほどまた丸谷先生からもいろいろお話があると思いますから、私は結論だけこの件について述べておきますが、私は、どんなにあなた方が強弁し主張なさっても、今回の受け取り方としては、現在よりも容易に推計課税ができる法的根拠を得たいということが一つですね。それから二番目は推計課税の範囲を広げたい。三番目は訴訟の優位性を確保したいということに尽きると思うんです。私はこれだけのことでは反対です。つまり、もう少し時間をかけた、そして零細な人たちが本当に納得して納税に協力してもらうようなそういう態度をとるべきだと思うんです。その意味で、私はぜひ委員皆さんにもお願いを申し上げたいんですが、いろんな中で確定申告書に添付する書面については、小零細業者に過酷な負担とならないよう円滑な運営を図るということを十分踏まえてやっていただきたいと思うんです。もちろん衆議院でもいろいろ議論がありましたから、附帯決議のことにつきましては、また理事会で御相談をしていただきたいと思いますが、十分そのことを踏まえてやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  69. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これもぜひ御理解を賜りたいわけでございますが、今回御提案申し上げております納税環境の整備に関連いたします、所得税法なり法人税法並びに国税通則法の改正でございますが、これの改正によりまして、推計課税なり立証責任の現行の制度そのものに実質的な変更を加えるというものでは毛頭ないということでございます。  推計課税につきましては、御案内のとおり、正確な記帳がない場合に、税務官署として合理的な所得を追求する手段として法律上推計課税の法的根拠を与えられておるわけでございますけれども、これは判例にも明示されておりますように、そういうものがない場合には実額課税を行うべきであるということは基本的な考え方としてあるわけでございます。したがいまして、今回記帳義務等をお願いしておりましても、その考え方に変更はないわけでございます。つまり、この制度によって推計課税が強化されるという法的地位を与えられるということでは毛頭ございませんので、その点がまず第一点でございます。  それから立証責任の問題でございますが、これも我が国の判例上、立証責任は租税債権者たる課税庁にあるということで現在も運営されておりますし、税制調査会等の議論におきましても、これは今後の判例、学説の展開にまつ問題であるとしても、今にわかにこれを制度的に変更すべきではないということで、今回提案申し上げております国税通則法百十六条の改正訴訟指揮に関する規定でございまして、立証責任の転換を図るという観点から、税務訴訟において原告となるべき納税者の訴訟上の地位を危うくするというふうな内容のものではないということを御理解賜りたいと思います。  最後の点の御指摘につきましては国税庁の方から御答弁申し上げます。
  70. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) 最後の申告書の添付書面の件でございますが、私どもはこの制度が導入されました暁には、単に添付書面にとどまらず、記録全般につきまして、これを各種の業種業態の状況に即しまして運営をしてまいるつもりでございます。今回の改正は、所得三百万を超える人たちを対象といたすわけでございますし、そういう方々は、おおむね多数の方々は今までも何かの記帳はされておったでございましょうし、また今回の記帳に当たりましても、いろいろ負担になるようなことはないと存ずるわけでございますが、中にはおっしゃいましたように零細、中小の方もおいでになるかと思うわけでございます。そういう場合には、業種の実態に即しまして、弾力的な運営、それから指導的な運営ということを考えていきたいと思うわけでございます。制度の導入の初めに当たりましては、とかく不慣れでございますので、書き間違いとか見損じとかということもあるわけでございましょうが、私ども税務当局としては、そういうものを一々とがめ立てをするというような態度では臨まない、努めて温かく指導して申し上げるという態度で臨むようにいたしたいと存じておるわけでございます。
  71. 鈴木和美

    鈴木和美君 その答弁でも私は不満です。それで意見だけ述べておきます。  グリーンカードでさえ五十五年から五十九年まで三年間もかけて一生懸命宣伝してやろうと、それがまた延ばされるんですよ。片っ方は、今回提案して、それで一挙にいきましょうというやり方でしょう。私は、どんなに皆さんが御説明されたとしても、ちょっと拙速であるということの感を免れません。私は弁護士でもございませんし、裁判官でもありませんから、細かいことはわかりませんけれども、全体として見たときに、納税環境の整備とはいいながら、みそもくそも一締にして税額を取り込もうということしか私、今のところわかりません。しかし、そのことも必要だということが、片っ方、調査では出ているんですから、なるべく納得ずくのようにやるようにしていただきたいと思うんです。これは意見として述べておきます。  さて、大臣がおりませんので、私は主税局長に、多少事務的になるかもしれませんけれども、別な点をお尋ね申し上げたいと思います。  今回の所得税の改正に基づきまして、税率区分表が十九から十五になったと思うんです。これを見る限りにおいてどうも不思議に感じでならないのは、かつて給与所得控除は頭打ちがございましたですね。現在は一千万超の部分について五%程度必要経費扱いとして今回採用しているようですが、非常に不合理だと思うんですが、この点についてはどういう見解をお持ちでしょう。
  72. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 給与所得控除につきましては、御指摘のとおり、かっていわゆる頭打ちの制度がございました。この頭打ちの制度は、昭和四十九年の改正によりまして実は撤廃されたわけでございますが、そのときの基本的な考え方は、給与所得控除は、昨日来当委員会でも御議論ございましたように、基本的には経費の概算控除であるとともに、勤労所得の他の所得との負担の調整と担税力を勘案するといった要素も入っているわけでございます。  勤務に伴う経費というのは、結局、収入がふえます場合に、その収入のふえ方に応じて何がしかふえていくという性質のものであるという観点から、四十九年いわゆる青天井と申しますか、頭打ちの制度は撤廃されたわけでございます。五十七年の家計調査によりまして、これもたびたび引用させていただいておるわけでございますが、各収入階級別の家計費の費目の中から該当の費目を洗い出しまして、収入に対するいわゆる経費的なもの、これは勤労世帯でございますが、それを集計いたしますと、収入階層によってばらつきはあるわけでございますけれども、比較的に各収入階級ともその収入に対する経費の割合というのは、大局観察でございますが、かなり比例的でございます。したがいまして、収入が多くなると、ある一定のところで控除を打ち切るというのは、給与所得控除の概算経費的な性格というものを考えるならば、四十九年の改正の観点は正しかったのではないかということでございまして、現在の税制調査会の答申の中でも、そういう頭打ちの意見はあるけれども、勤務に伴う経費というのは収入が上がるに従って何がしかふえるという観点から見て、頭打ちは適当でないというふうな考え方に現在は変わってきておるわけでございます。  ただ、御承知のように、現在の我が国の給与所得控除の体系は、ただいま委員がおっしゃいましたように、四〇%から、最高といいますか、収入一千万円以上に適用されます五%まで、五段階控除率が逓減いたしております。したがいまして、平均的に見ますと、大体給与収入に対して三割ぐらいが控除されている結果になりますが、年収三百万ぐらいのところでございますと控除率が三五%でございます。ところが、収入が一千万から二千万のところになりますと二割以下に逓減していくという格好でございまして、必ずしも今の給与所得控除の体系が高収入の人に非常に有利になっているということではないのではないかというのが私どもの考え方でございます。
  73. 鈴木和美

    鈴木和美君 今度の税率の見直しを見てみますと、私の当委員会での議論の経過をずっと見てみますと、今回の税率の改定については理論的根拠が薄弱のように思えるんですよ。なぜかと言うと、高額所得者の税率の問題の議論というのは、相も変わらずグリーンカードの導入のときから議論されているわけですね。そしてグリーンカードというものが、資産の保有状態を把握するということでは一番いい制度だ、しかしそういうことになれば、最高の税率を考えなきゃならぬのじゃないだろうかという、私はこういう二つの兼ね合わせの中で議論がずっと進んできたと思っているんですよ。ところが、グリーンカードは三年も先に延ばされるというような状況の中で、今回のカーブを見てみますと、高額所得者の方に優遇されちゃって、本当に議論すべき減税のところの部分というのは何にも手当てされていないということが、今回表から見て私は明らかだと思うのです。なぜこういうふうになっちゃったのか、もう一度お聞かせいただきたいと思うのです。
  74. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 我が国所得税の最高税率現行七五%、改正後七〇%でございますが、この七五%の水準が今日先進諸国の所得税制を見ましても非常に高い水準にある、しかも累進構造が非常に急であるという議論は従来からございまして、その場合に、この最高税率の見直しとの関連で、ただいま委員がおっしゃいましたように、グリーンカード制度によって利子配当課税が総合課税になる場合には、なおさらこの限界税率は高過ぎるという関連で議論されたこと、これは事実でございます。  ただ、今回の最高税率の引き下げの考え方は、これも税制調査会の答申にも書いてございますけれども、現在の七五%というブラケットあるいは税率水準は実は昭和四十五年から放置されておるわけでございます。ちなみに限界税率六〇%、所得で申しますと四千万円超の部分は、昭和四十五年から今日まで、その間下の方は累次に何回か手直しがあったわけでございますけれども、そのままに放置されておる。したがいまして、累進構造が非常に急になっておる一因にもそこがなっておるわけでございます。  そういった観点から、今回、しかも諸外国と比べて非常に高い水準にあるという専らその観点で、今回はある程度引き下げる必要があるという税調答申が昨年の秋まとめられまして、それに伴いまして、今回五%引き下げるという御提案を申し上げておるわけでございますが、それに関連して二点ほど補足をさせていただきたいと思うわけでございます。  一つは、グリーンカード問題をめぐる利子配当課税の問題でございますけれども、これは本年の夏ごろまでに緒論を得べく税制調査会でも検討する必要があるということとされておりまして、利子配当課税の問題は、残念ながら五十九年度の税制改正までに成案を得るに至らなかったわけでございますけれども、グリーンカードの問題も含めまして、これは早い機会に結論を得て、また立法府の方に御提案申し上げる段取りにしなければならないと私ども考えております。  それからもう一点でございますけれども、最高税率を七五から七〇に引き下げることといたしておりますけれども、現在、住民税と所得税との関係で賦課制限という制度がございます。現行の制度はこの賦課制限が八〇%でございますが、今回これを七八%に下げております。したがいまして、賦課制限を受けるような高額の所得者の場合は、所得税は限界税率で五%の減税になりますけれども、実際はこのうち二%がネットの負担軽減になりまして、三%分は住民税の方でふえる。そういうことでもございますので、そういった観点もぜひ含めて御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  75. 鈴木和美

    鈴木和美君 私の持ち時間が十三分までだそうですので、時間がございませんし、直間比率の問題や、これからの財政展望の問題や、課税所得ベースで見ると五百万円の人が相変わらず一%増税ですね、こんなばかげたことはないんであって、大変議論をもっと進めにゃいかぬと思うんですが、とにかく私は今回のこの納税環境の整備やその他を見ても非常に悪らつな法案であることに反対の意を表明して、その質問の時間が少ないことも不満を述べて、質問を終わります。
  76. 丸谷金保

    丸谷金保君 冒頭に御質問いたしておぎました委員長に対する所得税法等という「等」の問題につきまして文書をちょうだいいたしましたので、一応委員長の御努力を了としてこの文書の趣については了解いたします。  ただ、その中身になりますと問題点がいろいろございます。特に「甲法に対しC法部分を削る修正案」云々ということにつきましては、持ち帰りまして、党の竹田理事さん以下国対とも相談して、今後のそうした処置について検討してもらうということにして了解いたします。
  77. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、法案審議に入ります前に、先般の中期答申等を含めて、今回の法案改正に対する大蔵省の基本的な見解を二、三承っておきたいと思います。  税制調査会の中期答申には、負担の急激な増加やひずみをもたらさないよう、社会経済情勢の変化に対応して数年に一度は適宜その見直しを行う必要があると、こういうことでございますが、この点をどう受けとめておるのか、見直しの内容はどういうことか。いわゆる物価調整減税のようなものを定常的にやれという意見もあるわけですけれども、そういう点も考えておるのかどうか、今後の問題として承っておきます。
  78. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ただいま委員が御指摘になりました税制調査会の答申のこのくだりは、そういうふうに具体的に将来物価調整減税とかあるいはインデクセーションというふうな具体的な見直しの考え方を前提にして指摘されている問題ではございませんで、むしろごく一般的に、所得税制は御案内のとおり名目所得に対して累進税率構造で税負担を求めるものでございますから、特に名目所得等が急激に上昇するような場合には、次のブラケットに移るということで納税者の負担の累増感が非常に強くなる傾向がございます。同時に、それを長く放置しておきますとどうしても負担にゆがみが生じてくる。したがいまして、今回の税制調査会では、数年に一度そういう物価の上昇等も勘案しながら絶えず見直すべきであるという、一般的な考え方が述べられておるというふうに私どもは受け取っておるわけでございます。
  79. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 本委員会の答弁におきましても、六年間の税制、所得税法を動かさなかったために、中堅所得者届を中心に負担の累増感が高まっている、それと多人数世帯における生活のゆとりが独身者に比べて相対的に少ない、こういうような点が顕著になってきたために今回の改正に及んだように私は理解しているわけでございますが、中堅所得者層を中心に負担の累増感が高まっているとか、多人数世帯のゆとりが少ないという、こういうのは、何かそういう客観的なデータというか、そういうことはよく言われますけれども、もうちょっと税法を改正するにしては正確な理論的な根拠が必要じゃないかと思うんですが、その点はどう理解しておりますか。
  80. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 背景となっております考え方は、今、委員がおっしゃったように、独身世帯とそうでない多人数世帯の問題、あるいはライフサイクルから考えて、ちょうど中堅所得者層と言われる階層が教育費等で負担がかかるといったふうなことが言われておりますし、そういった背景を素直に受けとめてこういった考え方になっておるというふうにお受けとめ願って結構であろうと思うわけでございます。  ただ、今、委員がおっしゃいましたように、もう少し統計的にと申しますか、きちんとしたデータを整理してそういうふうな結論を得たのかどうかというお尋ねだろうと思うわけでございますが、これは十一月の答申をまとめていただく前にかなりの期間をかけて、経済学者とか財政学者とか、学者だけの作業委員会で家計調査を中心にかなりの時間をかけて分析をしていただきました。その結果は、学問的にはある種の仮説に立った統計処理でもございますので、公表は差し控えるということになっておるわけでございますけれども、その中におきましても、生活のゆとり感のようなものを一応計量的に定義をされまして、そういった分析を行った結果、世に言われておるようなことは、統計的にも何となくそういう傾向が出てきておるということは否定できないという背景があるということを申し上げたいと思います。
  81. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵大臣お尋ねしますが、私は中堅所得者層は教育費という問題があると思うんですね。これはしかし税法とはある意味では別の問題ではないかと思います。  それから独身者にゆとりがある。特にOLあたりが一番お金を持っていて、海外にもどんどん行っておる。これは一つには、月給はもらっても、部屋代はただだし、食事代は親からもらって、親には食費を入れないと、こういうような税法以外の要素があるんではないか。  したがって、今回の税法改正に至るその基本となる今言った二点の考え方については、科学的な根拠が非常に乏しい、もうちょっと慎重にやってもらわなくちゃいけない、こういう意見なんですが、大蔵大臣はどうですか。
  82. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も認識として同じゅうする面はございます。確かに、独身貴族に熟年こじき、あるいは独身天国、熟年地獄とかというようなことがございますけれども、これも言葉でございまして、現実は今おっしゃいましたように、親元から通っている独身のOLと、田舎の方からこちらへ出かけて、ちゃんと下宿もして自炊もしてというのとの相違というのは、これは確かにございますから、観念的に言われておる感じもないわけじゃございません。  それから教育費の問題は、税では非常になじまない問題であるということも私も常日ごろ感じております。申し上げるまでもないことですが、この教育減税の問題を議論するときにいつでも問題になるのは、進学しないでみずから働いて、その人は税金を納めている、一方はそれが控除になっているというような矛順も感じます。ただ、大きくいいまして、ちょうど子育て盛りあるいは進学、学齢期の子供を持っておるというような階層をその対象にして、それが少しでも優遇されるようにという観念は私どもにはございましたが、それの科学的な分析ということになりますと、確かに私も素人でございますが、難しい問題はあろうと思います。現実、ブラケットを少なめたり、税率構造をなだらかにしたということになれば、結果として、総じては中堅所得層に厚い改正ということになったではないかというふうな私は理解をいたしております。
  83. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 当委員会におきましても、いわゆる給与所得控除ということが十分かどうかという論議になったわけですが、税制調査会は概算的に控除するという観点からは、既にかなりの水準に達しているということでございますが、大蔵省はどう考えているか。また、かなりのそういう水準に達しておるんであるならば、当委員会におきましても、同僚委員質問に答えて、給与所得控除に比べればはるかに低い経費である、そういうことであるならば、いわゆる長年サラリーマンの必要経費を認めよという、こういう意見に対しましては、選択制にしても大半はいわゆる給与所得控除で、もうごくごく特定な人が確定申告をする、あるいはこの経費を認めるように申告を出す、こういうことになって、税制としてはより公平になるんじゃないかと思うんですが、そういう考えはないかどうか。
  84. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 給与所得控除の現在の水準がかなりの水準にあるということは、これは税制調査会の答申にも指摘されております。これは必要経費の概算控除という観点から申し上げますと、現在、平均的に収入に対する控除割合は大体三〇%でございまして、低収入の方へまいりますほど四〇%に近くなっていく。最低保障の方は実は一〇〇%の控除を受けているという格好になるわけでございます。  一方、家計調査等で、勤労世帯のそういう家計調査の費目の中からそれらしき費目を洗い出してみましても、おおむね一〇%程度の数字が出てくるわけでございます。そういった観点から、現在の給与所得控除の水準はかなりの水準にあるという考え方に立っております。  で、経費の実額控除の問題でございますけれども、これは各国の税制を見ましても、実額控除というのは非常に限られた範囲でございまして、現在各国の税制で認められております実額控除の水準と、我が国の給与所得控除の概算控除の水準を比べました場合、これは比較にならないほど高いということは言えると思います。  それから各国の税制を見ましても、概算控除と実額控除の選択を認めておるという国も御指摘のとおり、あるわけでございますけれども、その場合においても、概算経費控除を選択している方が多いという実情にもございます。  で、税制調査会の考え方では、給与所得控除のわが国の控除率の水準がかなり高いものであるということからすれば、経費の実額控除という議論は余り実益がないという観点が一つございます。  それから仮に実額控除といたしましても、何がサラリーマンにとって必要経費であるか、その尺度を見つけるのは非常に困難であるという問題もございます。  それからそういった仮に基準をつくりましても、今度は立証技術の上手下手と申しますか、巧拙によって、実質的な負担の不公平を招くということで、実額控除の導入については、これまでの税制調査会の考え方は極めて消極的であるわけでございます。  それから実際を見ましても、給与所得控除がそれだけの水準にあるわけでございますから、実額控除を導入いたしますと、これは結局確定申告でお願いするということになりますと、現在の我が国の税務行政の実態等から見ましても、そういう実益があるのか。つまり納税者側の手間の問題と同時に、税務行政側の手間の問題という点を考えますと、現時点におきまして、この実額控除制度の導入を議論することは、余り現実的ではないのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  85. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回は刻みの数を非常に少なくしておるわけでございますが、税制調査会は、刻みの数が多いことが負担の累増感を強めていると書いてあるわけです。私は刻みの数が少なくなれば、今度は上がるときの上がり方が大きいわけですから、むしろ刻みの数をふやして連続的な方が負担の累増感を強めないんじゃないかと、そういう感じがするんですがね。この点はどうですかね。
  86. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) この刻みの数の議論は、いろいろな見方があろうかと思うわけでございますけれども、一般論として申し上げますと、非常に刻みの数が多くて精緻にできておりますと、収入といいますか、所得の上昇に応じて、その所得の上昇の伸びよりも税負担の伸びの方が大きくなるわけでございます、累進構造を持っておりますから。したがいまして、一般論として言えば、刻みの数が精緻に組まれておればおるほど、それから所得なり収入の伸びが急激であればあるほど、負担の累増感は高まる。これは否定できないと思うわけでございます。  例えばイギリスなどは非常に刻みの数が少なく、かつ低所得者のところで非常に広い範囲で比例税率になっております。こういう税率構造でございますと、どんどん賃金が上がっても税は比例的に上がってまいりますから、そんなに累増感が起こらない。  そういう現象が当然起こってくるわけでございますが、しかし所得税というのは、累進構造を持った応能負担の税ということに特色があるわけでございますから、累進構造のない比例税率という考え方もございますけれども、累進税率を持つ限り、何らかの刻みの数は起こってまいるわけでございまして、その辺のバランスをどこに求めるのか。ただ、今の十九という数は先進国の中で見てもいかにも多過ぎるということで、今回、その刻みの数を若干縮小したということでございます。
  87. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回はなだらかな累進構造にする。こういう理由として、いわゆる所得の平準化、それを一つの理由に挙げているわけですね。けれども、平準化ということと、なだらかな累進構造にするということは、余り必然的な理由はないんじゃないか。今回こういう財政難のときに、なだらかな累進構造にするということよりも、全体のカーブを右の方へ移動するというか、物価も上がっているわけですが、それぞれの金額を上へ上げるということで、最高税率などは今までどおり設けるべきではなかったかと思うんですが、その点はどうですか。
  88. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 累進構造と申しますか、所得税の所得の再配分機能というのが所得税制の一つの大きな特徴であるわけでございますが、再配分機能あるいは担税力に応じた税負担という観点から見ますと、これは大局的な議論になりますけれども所得格差の多い社会の構造のもとでは、むしろ所得税率も累進税率も急であるというのが再配分機能が一番効果的に働くわけでございます。我が国の場合、現在でも先進国の中で所得の平準化が一番進んでおるというのは、これはOECDの報告等でもはっきりいたしておりますし、同時に昭和三十年代から最近までこの所得平準化というのが非常に進行いたしております。  これはジニ係数等の分析もあるわけでございますが、端的に例えば総理府の勤労世帯の家計調査で可処分所得の比較をいたしますと、世帯を五分位に見まして第一分位と第五分位、つまり低所得の方と高収入の世帯の倍率比較でいきますと、昭和三十年代は四・一倍ぐらいであったわけでございますが、今は二・五倍になっておる。これはマクロのジニ係数でも平準化が進んでおるということが立証されておるわけですが、そういったことを背景に考えますと、現在の先進国の中でも急とされております累進構造を若干なだらかにするというものは、合理的なそれなりの根拠はあるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  89. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、今回の所得税法の改正の中で一番各地から反対の多いのは、記帳の義務化の問題、あるいは総収入金額報告書の提出の問題、あるいは国税通則法の改正、こういう点、私たちのところにも非常にいろいろな反対の要望が出されておるわけでございますが、まず、所得税法二百三十一条につきまして、事業所得等を有する者の帳簿書類の備えつけの義務、こういう点は所得が大体三百万以上の白色申告者と、そのように書いていると思うのですが、これは全国で大体どの程度の数になるのか、これをお尋ねいたします。
  90. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは現在の納税者の割合、数等から推計いたしますと、約十五万人弱になろうと思います。
  91. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは十五万人弱というのは、いろいろ小さいところとか大きなところとかあると思うんですけれども、大体どの程度の比率で、例えば我々は常識的に考えてどの程度の規模のものがこれを備えつけなければならないのか、こういう感じはどうでございますか。
  92. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは十五万人弱と申しましたのは、昭和五十六年分の実績から申しますと三百万円超で、今回記帳をお願いいたしますクラスが十四万四千人という数字になっておりまして、それで私、十五万人程度というふうに申し上げたわけでございます。同じく五十六年当時の納税者数から見ますと、これは白色の納税者のおよそ一〇%程度でございます。
  93. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いろいろ反対している人たち理由は、小規模事業者に過重な負担を課すのではないかと、こういう点が非常に心配をされておるわけでございます。今までの答弁では、できるだけ非常に簡易に、余り負担にならないようにと、こういうことでございますが、この条文を読みましても余り詳しいことはわからないわけで、全部大蔵省令による。問題の二百三十一条の二を見ましても、大蔵省令というのは四カ所出ているわけですね。私たちも国会でいろいろこういう国民の関心のある重要法案審議する場合に、細かいことは全部大蔵省令と。ではこの法案が通った後に大蔵省令がどうなるのかということで、今後、こういう場合に予想される大蔵省令はこういうものであると、こういう点も一緒に出していただくと、その方がまた理解も早いし、国民の無用な心配もなくなるんじゃないかと思うんですけれどね。そういう点は今後の方針として私は努力をしていただきたい。この点は大蔵大臣どうでしょうか。
  94. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 省令の基本的な考え方等については、御質問のときに御答弁申し上げているわけでございますが、現在作業中でございまして、ほほもう成案を得ておりますので、なるべく早く御提出申し上げたいと存じます。
  95. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の御趣旨に沿ったような形で作業が今日まで続けられてもおりますし、そのような方向でこれからも進めてまいりたいと思います。
  96. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 結局、記帳の義務化ということが、これが罰則がないにしても、もしそういうことが、記帳の義務を果たしてない場合には推計課税への強力な理由となって安易な推計課税に道を開くんではないかと、こういうことを心配している人もいるわけですが、そういう点についてはどう考えますか。
  97. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これも今回御提案申し上げるときに御説明申し上げているところでございますけれども、推計課税と申しますのは――本来、課税と申しますものは、正確な記帳がございます場合に実額課税でなければならない、これが基本でございます。これは判例の示しておるところでございまして、そういうものがない場合に、課税庁としてどうしても、そういう手だてがない場合に、合理的な所得を求める手段として課税庁に認められておるのがいわゆる推計課税の規定でございますから、今回の記録の保存あるいは記帳の義務化ということによりましても、この推計課税に対する考え方は変わらないわけでございます。したがいまして、現行の推計課税の制度的な意味あるいはその運用につきまして、今回の御提案申し上げている納税環境の整備によってそれが変更を受けるというふうなものではないということでございます。
  98. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから現在、青色申告にはいろいろな税法上の特典を与えて、そうしていろいろ帳簿を記帳して申告していただくと、こういうことを政府としては今日までやってきておるわけでございますが、ところが、今回の記帳義務というものには何らそういう特典はないわけですね。一方、青色申告の記帳義務、その記帳というものが、当初はかなり高度な複式簿記システムによる帳簿の備えつけと、そういうものがだんだん緩和されて、現金出納帳中心の簡単な帳簿を備えていれば資格が与えられると、このようになっておると理解をしておるわけでございます。  当委員会の御答弁でも、大体白色申告者の簡易帳簿よりもちょっと簡単な程度のものであると、こういうことになりますと、そのあたりの差が非常になくなって、そういう特典を認められていない白色申告書提出者に対して一定の帳簿の備えつけ義務を命ずるだけの合理的根拠があるのかどうか。この点はどうですか。
  99. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在の青色申告の帳簿記帳内容でございますが、おっしゃるように、複式簿記に限りませんで、簡易簿記の方法によっても記帳をお願いするということをいたしております。  ただ、青色申告の簡易簿記の場合は、資産・負債の取引、損益取引、すべてを網羅的に記録していただくということでございますが、ただ、その場合に、複式簿記よりは簡易な手械であるという点でございます。  今回お願いいたします記帳は、これもたびたび申し上げておりますように、取引は損益取引に限定するということでございまして、帳簿の種類から言いますと、現金出納帳とか売掛幅、買掛幅、そういったもの、固定資産台帳とか、そういったたぐいのものは一切今回の記帳の範疇の外にあるものでございまして、日々の売り上げ、それから仕入れ等の取引を、しかも実情に即してなるべく簡易な方法で記録していただくという内容のものでございますので、青色申告の簡易簿記の場合に比べまして、相当簡素化された内容のものを予定しておるわけでございます。
  100. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私たちも課税の公平を期する上から、原則的には納税環境を整備していくということは必要であると思いますし、また税務の合理化から言えば、これは非常に原則的には推進しなければならぬと思うんでありますが、しかし、そういう悪質な人に対しては厳しくあっても、本当に善意の人が不当な権力に苦しむことのないように、そういう点は十分配慮をしていかなければいけないんじゃないかと思うんですがね。そういう点を私は強く要望をしておきたいと思います。  それから国税通則法の改正の問題につきましては、当委員会においてもいろいろ論議が行われておるところでございますが、一つは、先般の参考人の人も、司法界の意見を聞いてないじゃないかと。それに対して、法務省には意見を聞いたと、こういう大蔵当局の御答弁ですがね。こういうような問題は、例えば法制審議会あたりにかけてもうちょっと慎重にやった方がよかったんじゃないか。この点はどのようにお考えになりますか。
  101. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これはむしろ法務省の方からお答えすべき問題でございますが、法務省の政府委員がおりませんので、私どもの関知する範囲でお答えすることをお許し願いたいと思うわけでございます。  私どもは、そういった手続上の問題も含めて法務省当局と協議の上、今回の案をまとめさせていただいたわけでございますけれども、法務省の御判断として、本件については法制審議会にかける事案ではないという御判断があったようでございます、必要はないという御判断があったようでございます。
  102. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今の点については、私は率直に言って、もうちょっと慎重にした方がいいんじゃないか。一つの税制というものはただ法律を変えればいいというものではなしに、国民の皆さんのコンセンサスというか理解がなければうまくいかないわけでありまして、そういう意味で急がば回れというか、法務省がどうあろうとも、大蔵大臣としてもっと慎重にやるべきじゃないか。この点はどうですか、大蔵大臣
  103. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに法制審議会、オーソドックスな立場から言えば、ねばならないものでなくても、今塩出さんおっしゃったように、慎重さからすれば、ねばならなくても意見を聞くという姿勢があった方がいいではないか、こういう御議論は私は素直にちょうだいして結構な議論だと思っております。ただ、法務当局自身、言ってみれば、その方の専門家との打ち合わせも十分済んだ姿でございましたので御容赦をいただきたいと思います。
  104. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この間参考人の方が言っておった点で、課税庁の言い分が固定してから自分たちはその。反論の資料出したいと。ところが、一回出しちゃうと、もう後から出す証拠は採用されないという、こういう点に非常に危機感を持っておられたわけですけれども、私はこの点、最初このような課税をしたという客観的な証拠を国税庁が裁判所に出す、それに対して向こうがいろいろ反論してくると、さらに新たなる事実をこちらが出せば、それに対してまた納税荷の方も新たな証拠を出せると、こういうようにならないといけないのであって、出せないと終わりだというのではちょっと不公平な気がするのですが、そのあたりはどのように理解していますか。
  105. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) お尋ねの件でございますが、今回の規定は、私どもが存じておる範囲内で申しますと、まず課税庁から課税の処分の根拠となった事実というものを御説明をいたすわけでございます。その説明をいたしました後で原告側、つまり納税者の側から証拠を出していただくということでございますが、その証拠を出していただく場合に遅滞なくお出しを願いたい、こういうことでございます。これは私ども租税訴訟と申しますのは、通常の民事訴訟と異なりまして、いきなり訴訟になるわけではございません。まず課税処分に異議がございますと、納税者の方が税務署においでになりまして異議の申し立てというものを税務署長にさせていただくわけでございます。それからその異議の申し立てにつきまして審査の請求というものが不服審判所で行われる。それでも片づかないという場合に初めて訴訟になるわけでございます。  そこで、その不服審査の段階におきまして、お互いに両当事者が相当議論をしておるということがあるわけでございます。そうしまして、現在の訴訟の建前では課税庁がいわゆる総額主義ということでございますので、訴訟段階になりまして新しい主張をすることもあるわけでございます。これはだんだん調査の過程におきまして新しい事実というものが出てまいるわけでございますので、そういうことを申し上げることもございます。しかし、そういう事実につきまして、不服審査の段階で議論しておることもございますし、また議論していない場合におきましても、納税者の方々におかれましては、大体におきまして自己に有利な事実を御主張なさる。すなわち経費その他について御主張いただくわけでございますので、経費の実額その他についての何かの証拠というものをお持ちなんじゃなかろうかということでございます。  ただ、全く課税庁が新しい事実を主張するという場合がないわけではないかと思いますが、そういう場合につきまして、納税者があくまでも遅滞なく証拠を出すことが無理だということであれば、これは恐らくはこの規定の一項のただし響きにございます責めに帰すべき理由がないということになるのじゃないかと思います。したがいまして、そういう場合には、納税者の方々が遅滞なく出さなくても必ずしもその責任を問われないということになるんではないかと私どもは思っておるわけでございます。
  106. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 納税環境の整備につきましては、臨調あるいは税制調査会等もいろいろ論議されてきたわけでございますが、その中で諸外国の例等から見て、記帳の義務化、そういう罰則を伴う記帳の義務化、それともう一つは挙証責任の転換という、こういう点がかなり臨調等の意向としてはそういう線が強かったように思うわけでございますが、国民の中にもそういう方向を非常に心配している人もいるわけですが、大蔵省としては、将来の方向としてはどう考えているのか、これを承っておきます。
  107. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは答申にも議論の経過が述べられておるわけでございますが、今委員がおっしゃいましたように、論外国の法制では、まず記帳義務について何らかの罰則なり制裁が制度化されているのが一般でございます。  それから立証責任につきましても、財政裁判所なり租税裁判所で、司法制度等を前提とはいたしておりますけれども、納税者側に立証責任を求めているのがこれも一般の例でございます。したがって、そういうものを踏まえて税制調査会の中でもいろいろ議論されましたけれども、まず記帳義務に対する罰則あるいは制裁の問題につきましては、現在の我が国の申告所得税におきましては青色申告の制度がございます。これは一定の特典を与えて奨励的な制度として設けられておるわけでございますが、今回の記帳義務の制度はそういう青色制度と併存させる、将来は青色制度の方へ移っていただくという制度配置にしようということでございますので、当面、今回の記帳義務に罰則を科するということはしないという結論になったわけでございます。  それから立証責任の転換の問題でございますが、これはむしろ訴訟の専門的な議論でございまして、私ども税制調査会での専門の部会での議論を拝聴しました限り、学者なり法律実務家の共通の御意見としては、この問題は一税法で規定すべき問題ではなくて、今後の日本の行政訴訟におきます司法制度の問題、それからもう一つは判例なり学説の展開の定着を待って考えるべき問題ではないかということで、今回は、この立証責任の問題については、税制調査会の中でも、これは当面そういったものに任せるという態度をとっておられます。したがって、私どもとしても、そういった方向で今後対処してまいりたいと考えておるわけでございます。
  108. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵大臣にこの問題につきまして最後に要望しておきたいわけでございますが、いろいろ諸外国の例はあるにしても、日本には日本のまた行き方があると思うんですね。そういう意味で今回記帳の義務化についての罰則を設けなかったのも、これは一つの行き方でありますけれども、そういうものがちゃんと行われないと、またある意味での不公平が出てくる場合もありますしね。青色申告が普及するように、あるいはまたこの記帳の義務化というものがちゃんと守られて、そうして正しい納税が行われるように、そういう指導というか、あるいは学校の納税思想の普及、学校の教科の中に入れるとか、そういうような点に力を入れる。また税務署における今まで何回も論議になりましたいわゆる実調率を高めていく、現地へ調査に行くということは、一つはこれが一番大きな指導にもなるわけですから、そういうような形でひとつ正しい納税制度が普及していくように、権力によるんでなしに、そういう思想を徹底していくと、こういう点に私は努力をしていただきたい。余り軽々しく法律で罰則を設けて性急にやるということは慎重にすべきである、この点についての御意見を承っておきます。
  109. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の塩出さんの考え方というのは、徴税、課税という形でなく、すべて納税者、タックスペイヤーの立場に立った場合、例えば実調率を上げるということも、これは言ってみれば最も適切な指導の機会とむしろこれをとらえるべきだ、そしてPR、教育、指導、すべて上からの権力でなくして、タックスペイヤーのサイドに立っての考え方で物を進めていくべきだというのは、私はあるべき姿であるというふうに自覚しております。
  110. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、今日まで委員会でもたびたび論議された不公平という点についてお尋ねをしたいと思います。  不公平という中には、税制の不公平と執行面の不公平、こういうことが今まで言われてきたわけでございます。ここに一つのアンケートの調査があるわけでございますが、不公平があると思うというのが大体七三%。自営業者が七〇%、それからサラリーマンが八一%。サラリーマンの方が不公平があるという意見は高いわけでございますが、しかしどういう点に不公平があるかといいますと、それぞれ違いがあるわけでありまして、サラリーマンはいわゆるクロヨンという点に不公平があるという。自営業者の場合は、所得の非常に低い、高い、そういう点、あるいは脱税がある、あるいは政策的に優遇税制がある、そういう点に不公平を感じておる。同じ不公平だと感ずる中身もそれぞれ人によって違うわけですね。しかし私は税の不公平というものがいろんなそういう所得制限の面にも非常に影響して、不公平というものをますます拡大していくんではないか。そういう意味から税の公平ということはこれは本当に大事な問題で、真剣に取り組んでいかなければならないんではないかと、このように考えるわけでございます。  そういう点から二、三の質問をいたしますが、去る二月二十四日に国税庁がまとめました高額資産取得者の全国調査について簡単に概要を説明していただきたいと思います。
  111. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) 私どもでは常に、高額、悪質な申告漏れの防止に懸命の努力を払っておるわけでございますが、その一つの流れといたしまして、ここ二、三年の間に高額の資産の取得者に対しましていろいろ資料を集めて調査をいたしてきたわけでございます。それが今委員が御指摘になりました新聞発表となってあらわれてきたわけでございます。  これは全国規模で、高級マンション、高級乗用車、高価なゴルフ会員権、それから。高価なヨット、モーターボートにつきまして幅広く資料を収集いたしまして、そのうち一定額以上の取得者につきまして申告額との比較検討を行ったわけでございます。  で、特に申告額が問題があると思われる者を抽出して、その中から実地調査をいたしたわけでございます。昭和五十八年末までに終了いたしましたのが二百四十三件でございまして、この申告漏れ所得金額の総計が二十六億三千七百万円、申告漏れの税額十二億九千七百万円を追徴いたしたわけでございます。  特徴的なことといたしましては、高額資産を取得しているにもかかわらず所得が一千万円未満の方々が相当あったということでございます。
  112. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 国税庁としては、そういうのは一つは一罰百戒というか、そういうような意味もあってそういう発表もされると思うんですけれども、そういう記事を見ますと、かなり不公平がまだ残っているんだな、税務署のそういう調査というのは、まじめなサラリーマンから見れば、まだまだ抜けているところがたくさんあるんだなという、そういう感じがするんですが、そのあたりはどうなんですか。実際ある程度の調査でどうもおかしいなというところをやっているわけですけれどもね。
  113. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) この調査につきましても、ほかの調査と同様でございますが、私ども資料を収集しまして、いろんな角度からこれは相当多額の申告漏れがあるのではないかと思われるような方々につきまして実地調査をいたしたわけでございます。調査の前から相当の申告漏れがある可能性は極めて高いという者を抽出したものでございます。したがいまして、これが全国的にとても申しますか、全般的に納税者の実態であるというのはちょっと私どもは言い過ぎではないかと思っておるわけでございます。  全般的に見まして、多数の納税者の方々は、これは誠実に申告をなさっておると私どもでは思っておるわけでございます。ただ反面、今委員がおっしゃいましたように、一部の方でございましょうが、こういうふうに高額資産を取得しながら、かつ所得が低いという方々もおありになるわけでございます。  しかし、高額資産を取得した方々で所得が低いと申しましても、私どもが調査いたしました結果、あるいはこれは相続で得られた財産からお買いになったというものもございますし、また数年前に土地を譲渡して相当のお金を得られたという方もございますし、なかなか一律ではございません。ただ、おっしゃいましたように、こういうような一部の方々の申告漏れがあることは事実でございますので、私どもは、この辺につきまして今後とも資産、所得の両面からアプローチをいたしまして適正な課税に努めたいと思っておるわけでございます。
  114. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 前の国税庁長官の福田さんは、税務署員が一人ふえれば年間五千万円ぐらい税金が上がるんだ、だから税務署の職員はもっとふやすべきである、そういうことを言っておるんですね。あの人は、しかし、国税庁の長官の間にはそんなことは言わなかったが、やめてからああいう話をされてるようなんですが、そのあたり現職の間にはそういうことはなかなか言えない空気があるのかなという、今はまあ行政改革の途上ですからね、そういう感じがするわけですが、我々も決して、余り税務署や警察がふえたそういう国家というものには反対ではありますけれども、しかしある程度の公平を保っていかなければ、これはもうだんだん国民の不満も高まってくるんじゃないかなと、そういう感じがするんですがね。  一人ふやせば五千万ぐらいという点についてどうか。今本当に人手がなかなか足りないんじゃないかと思うんですがね。そういう中で、実感としてはどうでございますか。
  115. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 確かに税務行政を取り巻きます環境は非常に厳しく、事務量も増加してまいりました。ぜひ増員は図っていただきたいというふうに考えておりまして、関係方面の御理解を得るために最大限の努力をいたしているわけでございます。  ただ、先生御指摘の、一人ふえれば五千万円という数字でございますけれども、これは確かに私どもがそういう計算をしたということは事実でございますけれども、それに至ります前提にはいろいろな仮定を置いておるわけでございまして、例えばこの計算でございますが、まず職員の昨五十七年度調査によりました増差額を基準にいたしております。これ自体が、先ほど直税部長が申し上げましたように、調査の選定に当たりましては、相当申告に問題があるとか、そういうものを選定しておりますので、割合確度の高い数字でございます。それを調査に従事いたしました日数で割りまして、それがもしも職員が一人一年間フルに調査に従事した場合の数字という結果でございますので、直ちに一人増員されれば五千万ふえるというふうにはなかなかいかないんではなかろうかなというふうに考えている次第でございます。
  116. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 国税庁は今日まで、税務職員をなかなかふやすことができない、それを補う意味でいろいろ機械化に努力をしてきた。そういう意味で、昨日もいろいろ岸田次長の方から、その機械の導入によってどの程度の人員が節約できたか、そういう点をお聞きいたしましても、まことに数が少ない。しかもその数は、いろいろ税務署の職員の人に聞いてみると、とてもとてもそんなに節減はできないという。そういうことになりますと、機械化ということもどんどん進めなくちゃいけないと思うんですがね、おのずから限度があると思うんですね。  それから特に最近は海外との取引も非常にふえてきておる。そういう意味で、国税庁といたしましても、海外の担当の審議官をふやして、いろいろなそれに対する対応はされているわけですけれども、経済の規模の拡大、そういうものになかなか追いついていかないわけでありまして、そういう意味で私は、これは本当に公平な税制の実現のために、また本当に納税思想を徹底していくためにも、税務署の体制をもっと強化していかなければいけないんではないか。こういう点はどうでしょうか、大蔵大臣。  この論議はいろいろな委員会等でも何回も繰り返されたわけですけれども、なかなか急にこうだと言っても無理だと思うんですが、ある程度五年、十年の長期計画とか、そういうものをつくってこれを充実していく。こういうお考えはありませんか。
  117. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税務行政がより効率的になるためには、一つは人をふやすこと、それからさらには機械化をさらに促進すること、三つ目は職員の皆さん方の資質の向上を図ることと、およそ三つであろうなと。その組み合わせでどこまで進んでいくか。  基本的になります問題は、今も御論議なすっております人の問題でございます。いつでも言うようでございますが、予算編成のぎりぎりになってまいりますと、その年の各省庁の人員の問題がまずは議題となります。そうすると、予算編成のさなかでございますと、私の置かれる立場は、どちらかといえば、まず隗より始めよ、こういう集中攻撃の中へ入るような、いささかこれは意識過剰かもしれませんが、そんな気持ちになるわけであります。それにもかかわらず行管等いろいろな角度から議論をしていただいて、それでも国税職員についてはやっと増員になった。だが、ひっくり返してみると、一けたあるいはことしやっと二けた。こういうことになりますと本当に済まぬことだなと、こういう気持ちになります。  したがって、一体それを支えておるものは何かというと、結局こういう国会の議論とか附帯決議とか、そういうものが私どもを支えるある意味において唯一のてこになって今日まで来ておるんじゃないか、こういう印象を持っております。  さらに、総定員法というものがある中、別途、税務職員のいわば長期充実計画というものを政策的になじますというのは、なかなか問題でございますけれども、御見解は私も理解できない話ではございませんので、よく勉強させていただきたいと思います。
  118. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 特に実調率等について、これもある程度上げていくように努力をしていかなくちゃいけないんじゃないかと思うんですけれどもね。会社をつくっても三年間は税務署来ないから大丈夫なんだといって、そこで三年たったら会社を畳んでほかへ行く、そして申告もしない。こういう風潮があるというような記事も読んだわけですけれども、そういう意味で、かなり低下してまいりました実地調査を今後計画的に目標立てて努力していく、こういう計画をつくる考えはございませんか。
  119. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) 実調率でございますが、御指摘のとおり、実調率は税務執行の上で一番大切な要素であろうかと思うわけでございます。  御承知のとおり、昭和四十年代の前半あるいは半ばまでは、申告所得税につきましては五%台、法人税につきましては一〇%台でございまして、最近では、申告所得税は四・一%、法人税は一〇・九%となっておるわけでございます。  所得税につきましても、法人税につきましても、この四十年代の後半から、私どもは内部事務の合理化とか機械化を進めまして、また調査の方法をいろいろ工夫いたしまして、簡易な調査とか、そういうものも織りまぜまして、むしろ実調率を引き上げる方向でやってまいったわけでございます。その程度は微少でございますが、少しずつ実調率がむしろ上がってきたということであろうかと思うわけでございますが、一方対象となります納税者の方々は、これは所得税にいたしましても、法人税にいたしましても、年々ふえておるわけでございます。この十年間をとりましても、所得税の方が三割ぐらい、それから法人税の方が五割ぐらい納税者がふえておられるわけでございます。  そういった両面の兼ね合いからいたしまして、私ども今後とも内部事務の省力化その他によりまして実調率を維持してまいるわけでございますが、これにつきましては最大限の努力をするということであろうかと思うわけでございます。
  120. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 税調におきましても、所得の再配分という点から見て、所得の再配分というものは税金だけではなしに歳出も所得の再配分をやっておる。こういう点から、所得の再配分というものは所得税だけではなしに歳出もあわせて総合的にやっていかなければいけない。こういう考え方は私は正しいと思うんですけれども、この点大蔵大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  121. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、要するに税というものがすべての国、地方によらず財源となり、それから政策需要に応じてそれが歳出として支出されていく。これはまさに所得の再配分機能そのものであるというふうに思っております。そこにおのずから限界がありますのは、努力と創意、勤勉が報酬につながるという競争原理というものの限界と、それから来る所得の再配分機能、それの調和をどうとっていくかということになろうかと思われます。  したがって、長い間の税の動きを見てみましても、その都度都度の社会情勢の要請によって多少の違いはございますけれども、そういう筋は通っておる。それが現実の不公平感の中で極端に税の持つ所得の再配分機能などとはおよそ迂遠な方向に行っているような問題に対しては、これは厳正に対応していかなければならない課題だというふうに理解をさしていただいております。
  122. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これはあるデータでございますが、現在、我が国の歳出の面でいろいろな所得制限というのが設けられているわけですね。大蔵省としては、我が国所得制限というものには特に今どういうものがあるのか、大蔵省関係だけしか掌握していないかもしれませんが、ちょっと簡単に御説明願いたいと思います。
  123. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず税制の面で所得制限がございますのは、特殊な人的控除としての老年者控除あるいは寡婦(夫)控除、勤労学生控除、それぞれ所得金額所得制限がございます。それから配偶者控除の適用を受ける場合、これは扶養控除の場合も同じでございますが、給与所得の場合と給与所得以外の場合で一定の所得限度、適用を受けるための所得限度がございます。  それから租税特別措置法におきまして、例えば住宅取得控除等を受ける場合に、これは最近の改正所得制限を設けることにいたしたわけでございますが、所得制限がございます。  それからこれは私の所管でございませんが、歳出面で、特に社会保障関係で各種の福祉施策、福祉給付を受ける場合、それぞれの態様に応じて所得制限が設けられております。
  124. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵大臣所得制限というのをいろいろ調べましたら、例えば建設省の場合は、公営住宅とかあるいは住宅金融公庫の金利、それから供給公社の地域特別分譲住宅あるいは水洗便所設置補助金、あるいは文部省の場合は奨学金とかあるいは幼稚園就園奨励費、ともかく非常に大変多いわけでございますが、特に保育料の負担などは、これはA、B、C、Dと四つありまして、それからCがさらに三段階、Dが二十一段階というように物すごく分けられまして、そしてゼロから一番高いのは三万四百円、こういうようにたくさん段階があるようでございます。  ところが、同じ例えば子供を保育所にやっているそういう中でも、サラリーマンの方は非常に高い保育料を払わされておる、見た目には収入のはるかに多いような人が安い保育料を払っている。こういうような点は、園児の服装とか、持ち物、そういう点からも大体わかるわけであります。  そういうようなことが言われておるわけでありますが、そういう意味で、そういう税金の面不公平というものが、捕捉率の不公平というものがもしあるとするならば、それは所得制限あるいは福祉政策という点でさらに拡大をされていくんではないか。二重三重の不公平を拡大していくことになる。そういう意味で私は、税の不公平という問題については、本当に真剣に取り組んでいただきたい、このように要望するわけであります。そのためには、今言ったように、税務体制もさらに強化していくというある種の英断を私は下さなければならないと思うんですが、そういう点についての大蔵大臣の見解を承っておきます。
  125. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) 大臣がお答えになります前に、技術的なことだけちょっと申し上げさせていただきます。  確かに今、委員が御指摘になりましたような保育料の問題、サラリーマン家庭と事業者家庭の間に不均衡がある、大変所得の高いと思われるような個人事業者の家庭の子女が保育料が低い、一方サラリーマンの家庭の方は高いといった問題は、私ども伺っているわけでございます。私ども直接の所管ではございませんが、所得税に関係をいたしまして、常日ごろから関心を持っておるわけでございます。厚生省の方へお伺いもいたしておるわけでございますが、ここに二つ問題があるわけでございます。  委員が御指摘のような所得の差額といった問題もございますが、そのほかに、事業者の方々は、いわゆる専従者給与と申しますか、奥さんが働いておられる、あるいは子供さんが働いておられる場合に、専従者給与をとるわけでございます。現在は保育料の算定につきましては、御主人の事業所得だけと、それからサラリーマンの方の給与の方を比較されるという格好で行われておるわけでございますが、この点につきましては、委員がよく御承知のとおり、課税への単位をどうするかといった問題があるわけでございます。  そこで、私ども聞いておりますところでは、厚生省では、最近行政指導によりまして、事業所得者の家庭につきましては、当該事業の世帯全員の所得税の合計額、すなわちだんなさんの事業所得だけではなくて、奥様の専従者給与の分も足した合計額を基礎にして算出するように指導をされておる。これは全国一律にされておるようでございますが、そういうふうに伺っておるわけでございます。  若干技術的なところを申し添えました。
  126. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 保育所の関係で今、事務当局から御説明申し上げましたが、これはこのたび、本委員会じゃございませんが、いずれ御審議いただく児童扶養手当の問題等につきましても同じような議論が確かにございます。したがって、それらの問題からくる問題というのは、現実、私どもとしては、今、委員指摘のとおり、税務体制というものを強化することによってそういう不公平感というものを是正していく努力を引き続きしなきゃならぬ課題だというふうに思っております。  そもそも所得制限が別の意味においてございますのは、実際、例えば住宅金融公庫のお話がございましたが、そういう金利問題等にしますと、確かにそれは国民の皆さん方からいただいた税でもって利子補給を行って、それによって利息が低減されるわけでございますから、そうすると、それが所得制限がない場合は、言ってみれば、高所得の人に対して特別に支出する予算、こういうことになります。もろもろの問題の政策実行について、今一例を金利で申し上げましたが、所得制限がそれぞれ設けられておる。そうなれば、その所得制限の中で、それがいかにも客観的に見て公平感を失うような体系であってはならぬ。さらに負担額の側から見た場合、今おっしゃいました保育所の問題というのは、恐らく税当局と厚生省との話し合いもございますが、私は議論を聞いておりましたが、幼保一元化のときなんかにもう一遍出る議論ではなかろうかなと、こういう感じを私もひとしくいたしております。
  127. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 所得の再配分という面につきまして、私はそういう税金、それから歳出等を含めて、本当に今の制度でいいのかどうか検討する必要があるんじゃないか。というのは、本当に所得制限が非常に多いわけでね。所得制限のそのちょっと上の方の人と所得制限のその上限の人との間のバランスがどうなのか。大蔵省に聞いても、所得制限なんかは、大蔵省の管轄はわかるけれども、厚生省、建設省それぞれ別個につくっておるわけでありましてね。もちろん所得制限というのは、所得の低い方に対するそういうある意味での補助ですから、その方向は決して悪くはないと思うんですけれどもね。それがある種のアンバランスを生む危険性もあるんじゃないか。  そういう意味で私は、そういう点、税制も含めて、果たして所得再配分というものがうまくいっているのかどうか、こういう点にもうちょっとメスを入れた方がいいんじゃないか。これはやるとすれば、大蔵省が中心にやっていかなきゃならないんじゃないかと思うんですがね。そういう点をもう少し研究していただきたいと思うんですが、その点はどうでしょうか。
  128. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 本当は、所得再配分の一番がんと申しますか、問題は公債依存度の問題だと思うんです。いつでも予算を組むたびに思いますのは、国債費というのは、言ってみれば既発の国債に対する利子でございますね。その既発の国債を所有しておるのは、個人であれ企業であれ、そういう所有する能力のある人が所有しておる。そこへ初めからある種の巨額な比率を占めるものが国の歳出として支出されていくわけですから、これは所得の再配分機能から言えば最も好ましいことではない。したがって、財政改革をしてまずそれをやらなきゃいかぬ、こういう議論がいつでも出る議論であります。しかし、ときに、国民経済全体を考えた場合に、弾力的に財政があるいは公債という形において出動して全体の水準が向上するなり維持されるという場合は、それはそれなりの意義はありますけれども、基本的に国の歳出はいわゆる国民の負担、すなわち税によって賄われ、それが富の再配分機能を果たせば、最も理想的な姿だと思うわけであります。そうして今おっしゃいました具体的な問題につきましては、私も不勉強でございますが、それぞれのよってもって立つ政策の淵源からいたしまして、所得制限の付された恐らく基準もございましょう。そこにまた財政当局も御相談を受けておるに違いないと思うんでありますが、それにある種の整合性を持つように検討してみるという御提言は謹んで承らせていただいて、それはやってみることにしたいというふうに考えます。
  129. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それともう一つ。大蔵大臣は、臨調答申を受けて、歳出につきましては、対前年度マイナスシーリングではなしに、制度・施策の根源に立ち返って見直しをすると、そういうことを言われたわけですけどね。私は税制の面でもかなりいろいろな、言うなれば、建物で言えば増築、増築をしてきたり、そういうようなことで整合性が合わない。我々は福祉というものの充実はわかるわけですけれども、それが特定の分野に偏ったり、こういうことはあってはならないんじゃないかと思うんですね。そういう意味で、今までの税制の改正というのは、歳出の場合であれば、制度・施策の根本に立ち返ってのそういう検討はまだ余りなされていないんじゃないか。この際、いろんな政策税制とか、いろんなものをもう一回白紙に戻すつもりで、税制のあり方を根本的に見直す必要があるんではないか。また、例えば国立大学なんかに、大変高額所得者であってもそういう息子を国立の施設に入れるとか、いろんな意味で所得の再配分ではないけれども、国の税金を使っているような場合があると思うのですけれどもね。そういうような場合に、そのあたり例えば教育費について控除を認めるとか――今の件はひとつ取り消します、ちょっと説明が難しいし、時間がかかりますので。  いわゆる税制について制度・施策の根本に立ち返って、政策税制というのは一遍なしにして、そこからもう一回税制を考える、こういうことをする必要があると思うのですが、その点はどうでしょうか。
  130. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、今まで制度・施策の根源にさかのぼって歳出のあるべき姿を再検討して厳しくやりますと、こういうことを申し上げて、そのはしりとでも申してみましょうか、余り賛成いただけないようでございますが、心の中は別として、期待をしております問題がいわゆる医療費の負担の問題でありますとか、児童扶養手当の問題でありますとか、あるいは地方財政制度の問題でありますとか、一応制度・施策のそれなりの根源にさかのぼった案を御審議いただくと、こういう予定にしております。一方、臨調答申見ましても、歳入歳出両面からその合理化をと、こういうことが指摘されておりますので、税の問題についてもいろんな議論がある。中には、いや税制臨調をつくったらどうだと、こういう議論もございますけれども、これは総理大臣の諮問機関であります税制調査会というのが厳然としてありますし、そこまでは別といたしまして、たまたま今年度の場合、夏ごろまでに利子配当課税等の勉強をお願いしておるところでございますので、どっちかといえば、税調等が開店休業になる機会が今年度は少ないわけでございますので、そういう問題が今後も絶えず検討されていく環境には私はあるんじゃないか、こう思っております。  それから教育問題というのは、教育政策というのは、いわゆる税の面から見ないで、政策、施策としてこれを見ていこうというふうに組み立てられておりますが、税の問題から見ると、教育控除を設けた場合、一方、学校へ行かないで働いて税金を納めておる同年代の若者ということの間に対して非常な矛盾を感ずる点がございますので、税の問題で消化するのにはいささか検討すべき課題が多過ぎるんじゃないかと、こういう感じがいたしております。  しかしながら、中期答申をちょうだいしましていろいろな問題が指摘されておる。元来、租税特別措置というのは、まさに租税の特別措置でございますから、ある意味においては公平帯の外に存在しておるとも言えるかもしらぬ。そういうものを絶えず勉強していくということを考えていかなきゃなりませんが、我が国の税制そのもののよって立つこれも歴史的な経過がございまして、一挙に例えば革命的な第二回財産税を取るとか、そういうようなことはなかなかなじまないと思いますが、基本にさかのぼりながらの検討はこれからも続けていかなきゃならぬ。  あと一言申し上げさしていただきますと、大蔵大臣というのは、どっちかといえば、歳出ばっかり考えておればよかった、過去の人は――過去の人というのは政治家として過去にお亡くなりになった人というわけじゃございません。古い人はよくおっしゃいます。今は税のことばっかり考えていなきゃいかぬというのが大蔵大臣になりましたので、そのことも世の中の変化を象徴的にあらわしておるところじゃないかなと自戒しておるところでございます。
  131. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私の昨日の日切れ問題に関する質問につきまして委員長から文書をいただきました。委員会の認識にかかわる問題だということですが、そこで、私は昨日大蔵省にお聞きしたのは、この委員会としてこの認識をどうするのか。特に与党である自民党の議員の皆さんに行政と司法の問題を真剣に考えていただきたいということで、その判断材料、資料として大蔵省にお聞きしたわけであります。昨日は子供だましな答弁に終始したわけでありますが、しかし、御承知のとおり、きょう既に参議院予算委員会で日切れかどうかについて明快な政府の見解が出ております。  そこで、私はもう一度端的にお伺いしたいと思うんです。大臣、きのうは、私の質問に対して終始沈黙を守られたんで、きょうは大臣からいい答弁を、もう答弁できているそうですからいただきたいんです。要するに三月三十一日に成立しなくともいいかどうか。これが問題なんですよね。で、改めてお伺いしますが、四月一日以降の成立であっても税収その他には響かぬじゃないか、この国税通則法百十六条の問題は。具体的にそれが訴訟上に影響が出てくるのは六カ月ぐらい先じゃないかと思うんですが、この国税通則法百十六条の問題はどうでしょうか。
  132. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 昨日、日切れかどうかという御質問があったわけでございますけれども、昨日も申し上げましたように、所得税法等の一部改正法案政府といたしましては、四月一日施行でぜひ年度内の成立をさせていただきたいと考えておるわけでございます。
  133. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そんなことを聞いているんじゃないんですよ。一体かどうかというのはきのうもさんざん言われたんでね。私が聞いているのは、四月一日以降の成立でも税収その他に響かぬじゃないか、そして実際に訴訟上に影響がこの問題で出てくるのは六カ月ぐらい先じゃないか。ちゃんと恐らくもう答弁要旨には書いてあると思うんですがね、それを端的にお答えいだだきゃいいんですよ。そんな一体がどうかなんということは余計な議論であって、私の質問時間は二十七分しかないんだから、端的に答えてください。
  134. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 通則法百十六条改正案は四月一日からの適用と考えておりますが、訴訟において現実にその適用が問題になるのは一般的に半年程度以後のことと考えられます。すなわち、改正後の通則法百十六条は、通常の手続法の経過措置の原則に従い、改正法施行後、つまり四月一日以後に新たに提起された訴えから適用することとされているところでありますが、一般的には、四月一日に訴えが提起されますと、被告すなわち課税庁に対して、約二カ月後を期限として答弁書の提出が求められ、さらにその後約二カ月後に課税の経緯、課税の根拠を説明する期日が開かれます。したがって、納税者が、課税庁の主張に対して、具体的な主張と証拠を申し出しなければならない期日はさらにその後約二カ月後となるのが通例であります。  このように本条が具体的に適用されるまでには相当の期間が存在しますが、原告(納税者)を初めとする関係者に本制度を十分知ってもらう上でもこの程度の期間が適当であり、またそもそも所得税負担の見直しと一体である納税環境の整備の重要な一部であるところから、年度内の成立をぜひお願いいたします。
  135. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 お聞きのとおりのことで、半年先のことで、きょう、あしたの問題じゃないんですから、ひとつ委員長以下、特に自民党の各委員におかれましては、今の答弁をよく頭に入れて今晩一晩ゆっくりお考えいただきたいということを申し上げたいと思います。  そこで、きのう私が最後にお聞きした問題ですが、今度、簡易な記帳義務、省令で定めるというんですが、実際どんなものになっていくんだろうか。  そこでまず、私が最初にお聞きしたいのは、青色で現在記帳要求されている事項と今回の簡易記載、これは省令で予定されている中身ですが、どう違うんだろうかということをお聞きしたいんです。  そこで、青色ですと、現在、例えばこれは売り上げに関する事項の問題ですね。「取引の年月日、売上先その他の相手方、品名その他給付の内容、数量、単価及び金額並びに日々の売上の合計金額」、こうなっております。そして、それを相手方別にということですが、実際これが青色で守られているかどうか、これを全部守らないと青色が実際取り消しになるんだろうか、この点どうでしょうか。
  136. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) お答えいたします。  青色につきましては、完全な複式簿記のものと、それから簡易簿記のものと、それから現金式とあるわけでございますが、現金式は全体の四%程度でございまして、残りの大部分は簡易簿記という格好になっておろうかと思うわけでございます。その比率は私ども分明でございません。  それで、簡易簿記につきましても、複式簿記につきましても、私どもは、青色申告の承認の取り消しとか取りやめとかいう制度がございますが、その要件といたしましては、取り消しにつきましては、その年における帳簿書類の備えつけ、記録または保存が大蔵省令に定めるところに従って行われていないこと、その他の事項、例えば取引の金額の全部または一部を隠ぺいまたは仮装して記載する、こういう場合は青色申告の取り消しをいたすことになっているわけでございます。  このほかに、青色申告者の方から提出をやめるという制度もございます。
  137. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今言われた青色の簡易の場合には、給付の内容、数量、単価などはこれまた免除されて、「相手方別に、日々の合計金額のみを一括記載することができる。」と、こうなっていますね。これをもしも守っていないような事例があった場合には、実際の扱いとして全部青色が取り消されていますか。私は税理士さんに聞いたんですが、大体この相手方別でなくても実際には青色としてみんな認められていると言うんですよ。もしそんなものを厳格に、これは青色の基準を守っていないからというので青色を片っ端から取り消ししましたら、今やっているうちの大半がみんな青色でなくなっちゃう。こういう実態ですが、それはどうですか。
  138. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) 青色申告承認の取り消しというのは、納税者に非常に重大な影響を与える場合がございます。納税者ばかりではなく、その取引先も含めまして、場合によっては企業の存立にかかわる場合もあるわけでございます。そういう点も勘案いたしまして、私ども青色申告承認の取り消しについては慎重に行っておるわけでございます。したがいまして、委員今御指摘のように、現実の青色承認取り消しの数はそんなに多くはございません。したがいまして、場合によりましては、この記載どおりになっていないという事実もあろうかと思うわけでございます。ただ、そういう場合には、私どもは関係の団体とか、あるいは私ども税務署員の方からきつく指導申し上げるという格好で運営をいたしておるわけでございます。
  139. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、要するに、これは守っていなくても大体指導でおさまっているんですよね。それが実態だと思いますが、それを端的にお答えいただきたいと思うんです。
  140. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) 青色承認取り消しの運営は慎重にいたしておりまして、多少の記載事項の、何と申しますか、不遵守と申しますか、そういう件については指導をもって臨んでおるわけでございます。
  141. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そして、今度省令で予定されているのは、これは個人の白色の場合ですが、日々の合計金額のみを一括記載することができるということで省令をつくろうとしているようであります。そう聞いたわけですが、そうなりますと、今の青色の実態と、今度青色よりは簡易な方法と言っている実際と、全く同じじゃありませんか。そうでしょう。どうですか。
  142. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは今、国税庁の方から御説明いたしましたように、簡易簿記の現在の記載事項、売り上げのところを今委員指摘されたわけでございますけれども、基本的には品名その他給付の内容、数量、単価までを決めるのが原則である。ただ、一括記載する場合もあるというふうになっておるわけでございますが、今回私どもが決めることを予定しておりますのは、基本原則におきましても、品名その他給付の内容、数量、単価、例えばですが、こういうものを今回の白色申告者の帳簿の記載には求めない。さらに一括記載を認めるという点では、青色の簡易簿記の場合と同じでございます。  で、この部分だけではございませんで、そのほか、昨日も御説明申し上げましたけれども、掛け売り等の場合の記載の省略の規定とかいうものは、青色の簡易簿記と違うわけでございます。  そのほか、これは売り上げ、仕入れに関する事項は大体似たような感じで簡略化しておるわけでございますが、基本的にもう一つ、資産・負債の取引は一切今回の白色申告者の場合には記帳を求めないわけでございますから、現在の青色申告の簡易簿記の場合と比べましても、今回お願いいたします記帳内容は、より簡易なものにしてあるわけでございますし、またそうする予定でございます。
  143. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 盛んに簡易だ簡易だと。だから青色にある特典がなくてもよろしい、あるいは処分についての理由付記も必要ないという差をつけておるんですよね。しかし実際は、現に行われている青色の実態、それはいま資産の問題があり、資産だけの点が違うのかどうかという問題はありますが、それは別において、少なくともこの売り上げに関しては実際、全然変わらないんですよ。もし今局長言われたような内容、数量など厳格に求めたら、青色全部取り消しになっちゃうんですね。となればほとんど実態が変わらない。要するに、今の青色と同じものを要求するんです。しかし恩典はない。これが実態で、簡易だ簡易だと言うが、とんでもないことなんですね。その実態について大臣、これは簡易だからいいんだ、そんなきついことは求めていないと。そんなことでここで逃げていいんですか。
  144. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) 先ほど青色承認取り消しにつきましては、慎重に運営し、青色の記帳については指導的態度をもって臨んでおるということを申し上げました。しかし、このことは青色申告の記載事項につきまして、個々の事項につきまして、多少の書き間違いと申しますか、間違いがございましても、強いてとがめだてをしないということでございまして、全体としまして帳簿がどうにもならない程度に達しておるというときは、数は少ないが取り消しはしておるわけでございます。  それからもう一点重要なことは、私ども青色申告承認の取り消しというのは、その取り消し事実の発生しましたときまでさかのぼって取り消すので、非常に慎重にいたしておるわけでございますが、別途、青色申告の取りやめというのがあるわけでございます。今委員が御指摘になりましたような、非常に内容がずさんであるとか問題であるといった場合におきましては、私どもは納税者と話をいたしまして、青色申告承認の取りやめというケースで出てくることが多いわけでございます。これは決して強要いたしておるわけでございませんが、この場合は将来に向かって効果を発生いたしまして過去に遡及はいたしません。そういうことで、実際上青色に一たんおなりになりましたんですが、取りやめということになっておりますのは相当の件数に達しておるわけでございます。  そういう意味で私どもは指導とこの取りやめの運用によりまして青色制度の実効を期しておるわけでございます。
  145. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 あなたはやっぱり実務を知らぬと思うんですね。実際に担当している税理士さんが言うんですからね。どうにもならない帳簿だったら、今度の白色のあなた方が言う青色より低い簡易記載、日々の合計金額のみを一括記載することができる、こういうのにだって該当しませんよ。そんなどうにもならないやつだったら、青色が実際取り消されるようだったらね。これが実務なんです。  そこで、さらに法人等の場合、これは権利能力なき社団の場合も含みますが、これも具体的に聞いてみますと、今の青色と具体的にはほとんど異ならない。  そこで、きのうも答弁ありましたが、資産についての記帳というんですね。となりますと、まず個々に聞きますが、固定資産については、取引年月日、それから取引事由、相手方、数量、金額、これは全部記載するわけでしょう、減価償却に関しての事項も。それからさらに資産に関して言うと、資産の取引その他は無数たくさん、例えば別表二十、「当座預金の預入及び引出に関する事項」、「手形上の債権債務に関する事項」、「売掛金に関する事項」、「買掛金に関する事項」、それから「有価証券に関する事項」、「減価償却資産に関する事項」、「繰延資産に関する事項」等々、いっぱいあるんですね。十四までありますね。こういうのは全部、法人の場合には、今度大蔵省が考えている白色の簡易記載の場合にも求められるんじゃないでしょうか。どうですか。
  146. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 資産・負債取引の、いろいろ例示して申し上げなければならないわけでございますけれども、例えば現金の場合でございますと、青色の場合は「取引の年月日、事由、出納先及び金額並びに日日の残高」ということになっておりますけれども、今回の場合は少額な取引については、その科目ごとに日々の合計額を一括記載することができるというふうなことを予定いたしております。  それから手形に関する記載は青と同じものを予定いたしております。  それから売掛金につきましては現在、「売上先その他取引の相手方別に、取引の年月日、品名その他給付の内容、数量、単側及び金額」ということが記載事項になっておりますが、今回は、白色の場合でございますが、保存している納品書控え、請求書控え等によりその内容を確認できる取引については、その相手方別に日々の合計額のみを一括記載することができる。  買掛金についても大体同じでございます。  それから有価証券につきましては、青色と今回お願いいたします白色の場合は、大体同じものを予定いたしております。
  147. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 結局、これは法人ですから複式簿記が要求されるんでしょうね。どうですか。
  148. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 必ずしも複式簿記は要求いたしません。
  149. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 しかし、先ほどの答弁を聞いても、そして実態も、先ほどの個人の場合と同じように青色として実際に行われているのとほとんど変わらない状況が、今考えている省令の中身なんであります。  そこで、法人の中でもいろいろな法人がありますし、それができるところもあると思うんですが、しかし問題は宗教法人あるいは労働組合その他、きのうも議論になった無数に存在する権利能力なき社団、これについて先ほど述べたような現在の青色とほとんど同じようなことが要求される。となりますと、これは本当に大変なことになるんじゃないか。例えば資産、これは先ほど指摘したような例えば固定資産の現合ですが、宗教法人で言いますと、百年に一度くらいしか開かないような御神体なり何なりあるでしょう。そんなものも書かなきゃいかぬことになるでしょう。それはそうなりますよ。そして、それが実際にあるのかないのか、それほどの価値がどうか。それから入手時期までこれはいくんじゃないですか。そうなりませんか。
  150. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 人格なき社団は、法人税法にも規定しておりますように、収益事業に係る部分について法人税の納税義務があり、今回の記帳義務についても収益事業に係る分でございますので、宗教法人の例えば御本体のようなものは、これは収益事業ではございませんので、そういうものは財産記録する必要はないわけでございます。
  151. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこで、その収益事業の範囲が、きのうも指摘した通達でどんどん広がってきておるし、またこれが広がっていくと思うんです。大体その限界が極めて不明確なんですね。そしてまた、こういう社団が収益事業をやる場合、本体との区別、これは難しいんですよ。  例えば、竹下さんを総理大臣にする会というのが仮に島根にありまして、そして資金も必要だということで、定期的にバザーなり事業をやるんですね。そして、もしそういう一つの権利能力なき社団が存在して、建物を持っている、その施設を使ってやるとなりますと、収益が上がってくれば当然これは課税対象になるでしょう。そうでしょうね。
  152. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) 権利能力なき社団につきましてのお尋ねでございますが、確かにたくさんございますし、また定義も難しいわけでございます。  私どもが税務執行の指針といたしますのは、司法御当局からいただく判決その他でございまして、例えば最高裁の判決では、人格なき社団というのは、「団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定している」、こういうような指針をいただいているわけでございます。税務執行の方におきましても、こういう指針を踏まえながら執行を行っているわけでございます。  それから収益事業の範囲につきましても、御指摘のとおり、難しい点がございます。個別の場合になりますと、非常に範囲が不明確であるという場合も間々生ずるわけでございます。  今委員が御指摘のように、例えば学校法人のようなものが年に一、二回バザーをやるといったような場合に、これは果たして物品の販売業ということになるのか、あるいは例えば海水浴場などあるわけでございますが、こういうものは夏だけ開いておる、あとはもう全然閉っておるというような場合に、これを席貸し業と言うのかというような難しい問題があるわけでございます。  私どもは基本通達であるところの線まで出しておるわけでございますが、今申し上げましたバザーのような点につきましては、年に一回とか二回とか、こういうものは収益事業とは見ないということにいたしておるわけでございます。
  153. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 竹下さんを総理にする金なら、年に一回じゃないですよ。これはもう毎週か毎月か知らぬけれども、とにかく一生懸命やるとするんですよ。それならばそれで当然課税対象になるんです。  この間、私は大臣が銀行にパーティー券を買わせた問題について指摘をしましたけれども、あれはお祝いだというので課税されないんだけれども、資金を稼ぐためのいろんな事業であれば当然かかりますよね。そしてそれは一つの事業、後援会ですね。  それから、より問題と私が思いますのは、宗教法人、労働組合その他権利能力なき社団、団結権なり信教の自由が保障されてそれなりに活動しているんです。しかし、それに対する申告権とか納税義務とか、これは法律では極めて不明確ですね。片方、今言った収益課税問題がありまして、これはこの間の通達以来広がっているんですね。しかもそこに記帳義務を課す。そうすると、自分はそんな収益事業をやっていないと思ってやっている場合もありましょうし、ある日突然、これはおまえ記帳義務があるということを言われて、いろんなことを追及されてくるという場合が出てくるんですね。  何より心配するのは、そういう収益事業から団体本来のところへいろいろ権力の一機構である税務署がそこに入っていく。そうするとこれは本来の活動を制限しやしないか、これが第一点です。  それからもう一つは、先ほど言った資産とか、とても記帳できないような無数の権利能力なき社団がありますね。それがたまたま収益事業でないと思ってやっていることが、税務署から見れば収益事業だとなりますと、それに対して、これはある日突然、おまえは納税義務があり、かつ記帳義務があるんだ、こう指摘されますと、これは大変なんですね。そんなことになるんじゃないでしょうか。二つです。
  154. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず、収益事業を営む場合、公益法人等につきましては、法人税法上収益事業に対する納税義務がある。それから人格なき社団につきましても、収益事業については法人税法上納税義務がある。これは今何御提案申し上げている記帳義務の問題以前に既に納税義務が収益事業には確定しておるわけでございまして、その問題については今回の記帳義務との面接関係はないわけでございます。記帳義務があろうとなかろうと、収益事業について潜在的な納税義務が発生しているわけでございますから、したがいまして、今回の私どもの制度の提案と今先生が御指摘になった点とがどういうふうに結びつくのか、ちょっと私ども理解に苦しむわけでございますが。
  155. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間が来ちゃったので、私の趣旨を詳しく言う時間がございませんけれども、要するに記帳義務がある。しかも中身は、先ほど言ったように、固定資産の購入から、それから先ほど言った手形の問題から、極めて広範囲ですね。それについて記帳義務があるから、記帳があれば調べるわけでしょう、収益事業があれば。そうすると、それが例えば労働組合なり、宗教団体の本体とかかわる部分があるんですよ。その区別がなかなかつかないんですね。そうすると勢い収益課税という面から入っていって、本体の例えば儒教の自由や、労働組合活動に介入することがあり得るんじゃないかということが一つの疑問。  片やもう一つは、本当にもうそういう記帳の能力もないような団体が、ある日突然、おまえは記帳義務があるということで、記帳がないために推計課税をされてとんでもない目に遭う。そういうことがこの場合にはあるんじゃないか。しかも、小さい力のないところは、こんな記帳の能力はないわけですからね。それをどうするのか。この辺が私の質問趣旨でありますが、お答えいただけましょうか。
  156. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) 問題は二つあるようでございます。  一つは、現在の制度のもとにおきましても、収益事業とそれから権利能力なき社団その他の固有の事業との間の境界の問題であろうかと思うわけでございます。  もう一つの問題は、記帳義務記帳の制度が導入されました暁にそれがどうなるか、特に強化されるのではないかというようなお尋ねではないかと思います。  節一の点につきましては、私どもは調査をいたしますが、調査は、収益事業と、それから収益事業に関連をいたしました限度において、その社団の固有の部分に及ぶわけでございます。例えば経費というものがあるわけでございますが、これは全体の経費の中で収益事業だけの経費が特定できればいいわけでございますが、しかし特定できない場合もある。そういう場合はおのずから調査が及ぶわけだろうと思うわけでございますが、ただ、そこが収益事業だけが截然と区分されておるということでその経費も認定できるということであれば、あえて固有の事業の方に踏み込まなくてもできるわけでございます。  それから第二点の記帳の方でございますが、私ども現在でも、もうほとんどの場合におきまして、権利能力なき社団も含めまして大多数から記帳簿をいただいておるわけでございます。これは権利能力なき社団ではございませんが、宗教法人、それから学校法人その他につきましても、それぞれ相当の固有の会計システムと申しますか、そういうものを開発になって、かなりの程度記帳が進んでおるわけでございます。今回の制度によってそれが進むことが望ましいわけでございますが、私どもそういうことで執行の観点から、これにあえて不当な負担と申しますか、不当な介入と出しますか、そういうことをするというようなことは毛頭考えていないわけでございます。
  157. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 きょう私は、日切れ法案の問題について逐一お尋ねをしようと思って御連絡をしておったんですが、その質問は取りやめることにします。  そこで、昨日の質問に続いて若干お尋ねをしてきょうは終わりたいと思うんですが、源泉所得税というのは、給与所得者の担税力に着目して課税をしている税目だと思います。  そこで単身赴任を例にとるんですけれども、遠隔地に単身赴任になった。そこで赴任地と自分の家庭の間を往復する必要が出てきた。そこで、まあ月二回なら二回、二回にしましょうか、月二回分の往復旅費というものを手当として出した。その場合に、確かに金額が手当として出たことは間違いないんだけれども、生活の実態を考えますと、単身赴任なるがゆえに実費を使って毎月二回なら二回行き来をしなきゃいかぬ。そう考えますと、この単身赴任の往復旅費というのは果たして机視力を高めたんだろうか。実態に即して言いますと、担税力は何ら変化していない、そう見るのが普通ではないのかと思うんですが、この点についていかがでしょうか。
  158. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) その部分に限定した前提での今の議論でございますと、それは担税力を持つ部分とは言えないと思いますが、ただ税法の、特に所得税の議論というのは、個人の総合的な所得の総体の担税力をどう判断するかという問題が一つ。それから今の所得税法では、実費的な往復の交通費的なものとしては通勤手当、これは一定の限度で非課税にいたしております。それから通常の勤務のいわゆる旅費でございますが、これは本来は事業主の負担すべきものを、たまたまお金の形で一たん被用者が受け取って、いわば立てかえ払い的な格好で使っておるわけですから、これはもう非課税になっております。それから赴任の場合も、赴任地まで行く旅費はこれは非課税ということでございます。  それから、今委員がおっしゃいました、企業から帰省手当といったようなものが出るという想定に立つ場合でございますが、税法上はこれは手当として給与の一つとして見なければならないだろう。それがもし企業が一つの手当として出して、それには税金がかかってくるわけでございますが、そういたしますと、税の世界から物事を言わせていただきますと、それによって結果的に可処分所得が減るわけでございますね、そういう給与所得者は。そういたしますと、むしろそれは帰省手当の水準を税込みで幾らかという観点から給与体系をつくっていただくという問題になるのではないか。非常に難しい問題でございますが、税の議論だけでそこの分の担税力はどうかとおっしゃると、実費だけしかもらわない場合、それに税金がかかってきた場合、それは先生がおっしゃるような問題は私はあると思いますが、そこの点をどういうふうに考えるかという問題であろうと思います。
  159. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 確かにそうなんですね。通勤手当を考えると、それも経済的利益を得ているんだという見方からすると本判は課税対象なのかもしれない。    〔委員長退席理事岩崎純三着席〕 しかし生活の実態を踏まえて議論すると、それは担税力のある所得増加だとはとても認められない。現状は、ある枠をつくってその範囲内で非課税、こうなっているわけですね。単身赴任手当の問題というのはごく最近顕著になってきた社会現象ですから、今こういった議論をしているんですけれども、なるほど考えてみると、往復旅費の実費分を払ったからといって担税力が高まったとは言えない。しかも往復旅費たるや東京―福岡とか大体遠いところが多いですから、それを含めて課税対象とされると非常に値がさが張ってくる。したがって、何とかしてくれないかという議論が出ていると思うんです。これは最近特に顕著になった社会現象なんですが、これをどう取り扱うか。きのう大臣の御返事では、そういった御議論もありますんで検討してみなければいけないという一般的なお答えだったんですが、より踏み込んでこの問題を至急取り上げていただきたい。この点について御所見だけ当局に伺っておきます。
  160. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは、大臣の御答弁があります前にもう一言補足させていただきたいと思うわけでございますが、通勤手当の場合は、結局、会社の門をくぐったところで労務の提供が行われる、その労務の対価というところでそれ以後が給与所得。したがいまして、会社の門へ来るまでは、通常の勤務に要する部分についてはこれは労務の対価ではないということで、給与所得から外して非課税という考え方になっているわけでございます。  同じ交通機関を利用した交通費であるという点では、通勤手当も同じようなもんでございますけれども、帰省旅費と通勤手当というのはどうも税法の世界から見ると同列に論じがたいし、極めて難しい問題であるというのを税制当局者としては申し上げざるを得ないと思うわけでございます。
  161. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私もきのう申し上げましたように、いろいろ議論してみると、現状は雇用政策の立場から議論していくしか方法がないじゃないかと、こういう感じを持っております。  ただ、顕著にあらわれた社会現象である、これは間違いありませんよね。しかしそれはまた多種多様であって、いわば個別事情のしんしゃくの対象の中へこれをとらまえると税の問題ではなかなか律し切れない。だからこうした議論が出たわけですから、素直に税調に報告するわけですから、そういう中で議論してもらう課題ではあるという認識はあるんですが、やっぱり雇用政策なのかなと。  これは非常に下世話な話をして申しわけないんですが、大分前のことでございましたけれども一度お話ししたことがございますが、建設大臣をしておりますときに、橋がかかってフェリーがだめになって海員組合の方が陸へ上がられる。それから仲よくなりましていろいろ話してみたら、我々の手当の中でかつて議論した中で人間性回復手当というのがあった、ところが、その人間性回復手当も、竹下さん、あれはちゃんと税の対象になるんですよという話を聞きまして、そういうところからやっぱりそれは雇用政策上の問題かな。  いずれにしても、素直に伝えて、私どもとしても勉強さしていただける課題ではあると思っております。
  162. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ぜひ御検討いただきたいと思います。  ただ、それは雇用政策の問題ではないかというにしては社会性が強過ぎるんです。    〔理事岩崎純三退席理事大坪健一郎君    着席〕 というのは、遠隔地に単身赴任をする。そのときには企業の側として冷たく構えますと、これはおまえ仕事なんだ、向こうへ行ってやれ、あと実家との関係で何回帰ろうか、それはおまえの財布と相談事だ、と言っていいことなんですね、一義的には。ところが、家庭生活を考え、しかもそれの安定というのが大きな社会性を持っていることに着目しますと、往復旅費についても企業として負担していかなきゃいかぬ。企業が負担するというのは、任意的に負担するんではなくて、負担するのが当然だという社会性を裏で持ってきている。それは大きく言えば企業の社会的責任ではないか。その向こう側に経済的利益があるわけです。そう考えてみますと、これも含めて課税対象から外していくというのは十分理解を得る議論ではあるまいかと思いますが、これ以上入りません。至急御検討いただきたいと思います。  今の話を少し広げてまいりますと、物価が倍になりました。したがって給与も倍になりました。生活水準はごく大ざっぱにいって横ばいであります。この場合には担税力は変化ない。一応こう見るのが普通だと思うのですが、この点はいかがですか。
  163. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) いろいろな見方があると思いますけれども、それは一つの成り立ち得る想定であると思います。
  164. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それで、その絵にかいたように物価水準が倍になって、それはそのまま実生活水準も変えずに名目所得は倍になったというような暮らしがあると私は思ってません。思っておりませんけれども、あのオイルショックがもたらした物価、賃金の変動というのは、そういう腰ため的な類推議論を十分納得させるような変化だったんです。したがって、名目所得は倍になったけれども、実効税率は前と同じ、これならわかるというのが庶民感情ではないかということをきのう申し上げたのでありまして、これは深い議論に入ろうとは思いません。ただ、その意味で、今回の所得税減税というのが十分であったのかという点には常に御留意いただきたいと思います。  話題を変えまして、法人税の延納制度の廃止で初年度七百億円見込んでおられるわけですけれども、この延納制度の廃止というのは、逆に言うと、今までは何でこの制度があったんだろうか、それを今度何でやめたんでしょうか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  165. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) この延納制度は、沿革的に申し上げますと、昭和二十七年に創設された制度でございまして、当時の経済状況、特に企業の資金繰りが非常に苦しいということで、滞納も頻発した情勢でございました。したがいまして、これは法人の個々の事情に立ち入ることなく、法人が延納を選択するという場合には一定の条件で、利子税は負担してもらうわけでございますが、延納という制度を取り入れたわけでございます。それがその後ずっと今日まで続いてまいりまして、近年これを若干圧縮したわけでございますけれども、最近の企業の状況を見ますると、そういった昭和二十七年に創設されたような状況でもない。それから各国の法人税制を見ましても、こういう形での延納制度を持っている国はないわけでございます。  したがいまして、今回所得税の減税財源を何とか税制面で補てんする一助といたしまして、しかも実質的な税負担を伴わないで、これは本来なら六十年度に入るべき分を五十九年会計年度に前倒しで国庫にいただくという観点でございますが、そういったところで今回これを廃止させていただくというふうにいたしたわけでございます。  ただ、こういう制度をとることによって、企業の本当に苦しい資金繰りのところなんかについては非常に酷ではないかという御指摘がよくあるわけでございますが、これにつきましては、別途一定の条件のもとで、例えば納税猶予の制度とかあるいは納付委託の制度は別途ございますので、そういう制度を御活用いただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  166. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 とはいうものの、初年度で七百億円の歳入を見込んでいるわけですから、その程度の働きはしていたこれまでの制度であったわけです。これは恐らく延納している納税側から考えますと、資金繰りに役立っていたんだと思うんです。今度取りやめてしまうと、格段金融市場に大きな変化があったとも思えませんから、七百億円初年度で見込めるほどの影響において民間の資金繰りを圧迫したことであることは、これは間違いないわけですね。
  167. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) その限りでマネーフローと申しますか、それだけの影響はあり得るわけでございます。  ただ、この延納制度は企業の広い意味での金融措置の一環でございまして、利子税は負担していただいておるわけでございます。したがいまして、この七百億というものをどのように考えるかということでございますが、これは現実には一月決算から三月決算の法人にこういう事態が起こり得るわけでございます。しかも圧倒的に大きいのは三月決算の大法人でございますので、私どもそういった点から見れば、これが金融市場に攪乱を起こすというふうな事柄ではないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  168. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いや、私が金融市場と申し上げたのは、逆の意味で言ったんです。金融は大変緩んでましてね、いや別に政府の御厄介にならなくても回ってきますよと言えるような段階でもないでしょうと。それは大きな役割を今果たしているとあるいは言えないかもしれませんけれど、初年度七百億円見込めるくらいの効果はやはり発揮していた制度なんですね。私言いたいのは、それを財政事情の厳しいことを理由にして今回取りやめるんだけれど、これは国民の側に対して随分とぶざまなやり方だな、ここまでしないと今の財政の緊迫した状況というのは切り抜けていけないんだろうか、そういった印象を私は非常に強く持ったんです。このことを見るたんびに、ここまでやるんなら、なりふり構わずにやるんだったら、いろいろと手をつけていかなければいけない税制の改正問題というのはたくさんあるんじゃないか。  一つ例を挙げて申し上げたいのですが、これもいろんな意味で社会の不公平感の原因になっている交際費なんですけれども、これは長年課題として上がりながら税調自身も慎重な態度をとっているのです。しかしこういう延納制度の廃止というのは、税制改正をやってまで切り抜けていくことを考えますと、交際費については思い切って原則益金扱いにして、特別な例外だけ限定的に交際費として認めましょうというところまで踏み込んでいいんじゃないか。そういった事例の方が海外ではむしろ多いのです。日本ではいろんな商慣習等ありまして、交際費支出というのが社会の商業生活の重要な一部をなしていることは事実なんだけれども、だからといってあれをそのままにしておくことが果たしていいのだろうか。むしろ交際費については全部益金扱いにして原則課税、ただし限定的なものについては非課税にするという、むしろ海外の方式に切りかえた方が社会の公平感を高めるという意味でもいいんではなかろうか。私はこう思うのですが、この点については今大蔵当局はどうお考えなんですか。
  169. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 交際費につきましては累年強化してまいりまして、現在では、御案内のとおり、資本金五千万円以上の法人の交際費は全額損金算入になっているわけでございます。  今問題は、資本金五千万円以下のところの、これは二段階になっておりますが、定額控除という制度がございます。この制度につきましては、率直に申しまして、税制調査会におきましても、今回の答申にも触れていただいておりますけれども、定額控除が現行のままでいいのかという問題がございます。ただ、ここは実は中小企業の法人税の実効負担との問題で非常に大きな影響のある分野でございますので、なかなか税制調査会の中でも問題として議論をされながら明確な結論なり、それからこれに対する今後の改正のあり方についてはかばかしい成案が、今日までのところ得られてないというのが実情でございますけれども、私どもは現在のような厳しい財政事情のもとで、しかも交際費の損金否認という形はかなり我が国の税制の中で定着してきておりますので、租税特別措置法の中の一つの制度とはいえ、これは今後とも維持すべきであろうと思いますし、定額控除の制度をもし検討するとすれば、これは縮減する方向で検討すべき問題であると考えております。
  170. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今の中小企業の定額控除問題が、ある意味では諸悪の根源みたいな感じで残っているものですから、その意味で大きく踏み込みながら原則課税という方向に御検討を急いでいただきたいと思います。  以上で終わります。
  171. 青木茂

    ○青木茂君 御質問申し上げる前にお断りをしておきたいと思います。  午前中の予算委員会で、最後のところで時間が参りまして、なおかつ少し申し上げようと思ったら、時間切れ、早くやめろという大変上品なやじもいただきましたものですから、非常に早口にしゃべりまして、速記の方でしかられまして、速記ができぬぐらい速くしゃべってもらっちゃ困るということでございますから、ちょっとこの席上をかりまして、あのとき申し上げたかったことだけつけ加えさしていただきます。  人約三控除と課税最低限の問題をめぐりまして、例えば昭和四十二年五月二十四日の最高裁の判例、いわゆる朝日訴訟というあれで、憲法二十五条、いわゆる健康で文化的な最低生活の保障ですね、憲法二十五条の計量的基準として、生活保護法による生活保護基準が挙げられるというような文言があるということ。それから昭和五十五年三月二十六日、東京地裁の判例で、課税最低限が現実の生活条件を無視したことが一見して明白なほど低額である場合には違憲の問題が生じるというような判例がございますから、課税最低限を早く計量的に確定するということは憲法問題と絡んで重要なことではないかということを申し上げたかったわけでございます。  それはそれとして、間接税関係で御質問申し上げたいんです。清酒業界ですね、清酒業界がねらわれると思っておったら、ついにねらわれたというようなことを言っていたんですけれども、まあ消費が落ち込んでいる、にもかかわらず税金が高くなる、これは大変不満だと。業界の不満というのは、どうも原料に日本の米を使うことが何か強制されている、これはもう少し自由に企業努力で安い米が使えるというようにしてもらいたいと。そうすれば、税負担が高くなってもまあ理屈は通るんだけれどもと。こういうような不満があるようなんですけれども、その点はどんなものでしょうか。どなたにお答えいただけますか。
  172. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) ただいま先生御指摘のとおり、清酒業界の拡大の問題は原料米の問題でございます。  そこで、私ども国税庁といたしましては、食管制度の枠内におきまして何とかして安くお米を手に入れるようにということで、自主流通米につきましては、主食米と同じ補助金もいただいておりますし、少しでも安い、例えば政府管理米と申しますのは三千五百円ぐらい一俵当たり安いんでございますが、そういうものも徐々にふやしていただいております。そういったことで、この枠内での努力は最大限いたしておりまして、関係当局からもそういった御配慮をいただいておりますが、酒類業界としましては、許されるならば、何とかしてその枠外で安いものを取得したいというような声があるようでございますが、いかんせん現在の農政が米が過剰でございまして、減反を図っております中におきまして、なかなかその日本全体の施策の中で難しゅうございます。加州米等を輸入できますと半額で入るという事情もございます。いろいろ業界は考えております。  ただ、加州米の問題につきましては、碓かにコストは安いんでございますが、日本酒は日本の国酒でございまして、そういう原材料を外国から輸入するのはいかがかという感じもあるようでございます。
  173. 青木茂

    ○青木茂君 いろいろ理由はあるでしょうけれども税金たくさん取っているんですから、業界の要望も少しは加味してやっていただきたい、それだけです。  それから物品税関係につきまして、国民は、えらい高級なものが案外免税になっている、あるいは何か有力政治家のいる地場産業のところはどうもちょっと物品税免税がある、にもかかわらずというような素朴な疑問もあるわけなんですよ。そこら辺のところはいかがでしょうか。
  174. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在、物品税でいわゆる高級な奢侈品等については第一種物品として課税されているものでございますけれども、今委員がおっしゃいましたのは、例えば織物とかあるいは家具の部分的なもの等についてそういう議論があるわけでございます。これはそれぞれかつては課税されておりましたのが廃止になった経緯があるわけでございますが、一つは伝統的な工芸技術を保存するという分野がたくさんございます。例えば漆塗りの家具なんかはそういうふうな問題でもございます。それから、いろいろ例示されますのは、西陣の高級織物のようなものもございます。こういうものは、伝統技術のほかに、こういう一品ごとに非常に高価なものは比較的に零細な中小企業者がつくっておられる。しかも一品ごとに高いものほど加工過程が非常に多いということがございまして、これは一概には言えないわけでございますけれども、かつて課税しておりました時代に課税のトラブルが絶えないというような問題もございます。そういった執行上の問題も踏まえまして、物品税の課税対象が戦後ずっと縮小されてまいりました経緯の中で、そういったものが廃止されてきたということは事実でございます。  私ども、それが非常に不明朗な過程でそういうことが行われたというふうには毛頭考えていないわけでございまして、そういった誤解が生じないようにぜひお願いをしたいと思うわけでございます。
  175. 青木茂

    ○青木茂君 その次は医療費関係の問題でちょっと厚生省の方にお伺いをしたいんです。大蔵大臣大蔵省の方々も大変お疲れだと思いますから、あと二十分くらいはどうぞゆっくり御休憩をいただきたいと思います。  厚生省関係の方、よろしゅうございますか。大臣はいらっしゃらないですか。答弁は責任持っていただけるわけですね。
  176. 多田宏

    説明員多田宏君) 私、保険局の企画課長でございますが、一緒に医療課長も参っておりますし、それから医務局の総務課長も参っておりまして、それぞれ担当のセクションとして責任を持ってお答えをさしていただきたいと思っております。
  177. 青木茂

    ○青木茂君 政策的なことでも責任を持っていただけるのですか。
  178. 多田宏

    説明員多田宏君) 私どもでお答えできる限りお答えしてまいりたいと思っております。
  179. 青木茂

    ○青木茂君 まあ進めましょう。  大蔵委員会は歳入委員会で、それから歳出問題ということを取り上げるのはいかがかと思ったんですけれども、しかし、考えようによっては、今度の予算で厚生省が削らなければならないものが六千九百億円あった。そのうち六千二百億円を医療費カットでいったということになりますと、これがもしほかのところで必要なくなれば、それだけ歳入の方も助かるわけですから、そういう意味においてお伺いいたします。  一つは、CTスキャナーというのがありますな。頭がなんかをレントゲンで切ってがんか何か見つける。あれは非常に高価な、一億だとか二億だとかするような非常に高価な機械ですね。それの日本にある総台数とヨーロッパの総台数の比較ですね、それをちょっとお願いしたいんです。    〔理事大坪健一郎退席委員長着席
  180. 古川貞二郎

    説明員古川貞二郎君) お答えいたします。  高額医療機器につきましてでございますが、ちょっと古うございますが、五十六年十二月末現在で申し上げますと、わが国のCT、これはコンピューター断層診断装置でございますが、千六百九十三台、心臓血管連続撮影装置が八百八十五台、リニアック、これはがんの放射線照射の装置でございますが、二百十三台、ベータトロンが五十四台、生化学自動分析装置が三千六百台と、こういうふうな状況でございます。なお、これは五十六年の末でございますので、非常に急速に伸びてございますので、今日においては二千台を若干超えているだろうと、こういうふうに推定されるわけでございます。  それから主要国でございますが、諸外国におきますところのコンピューターの断層撮影装置につきまして申し上げますと、年度が若干それぞれ違いますけれども、アメリカにおきましては、一九八二年におきまして台数が二千三百十八台という状況でございます。イギリスも同じく一九八二年で百十五台。それから西ドイツにおきまして、これも一九八二年でございますが、三百三十台。それからフランスが同じ年で八十台。スウェーデンは五台。それからイタリアでは九十台と、こういうふうな状況でございます。これはコンピューターの断層撮影装置でございます。
  181. 青木茂

    ○青木茂君 いまの御答弁でもわかりますように、日本のスキャナーがヨーロッパ総合計をはるかに超えているわけですよ。しかも二億に近い価格である。そういうのを償却しようと思ってめちゃくちゃに使うわけですね。二日酔いでも撮られた人がいますからね。これが乱診乱療というのか、医療費をつり上げるもとになるんじゃないかということを私はこの問題で申し上げたかったわけでございます。  そしてもう一つは、入院日数、平均入院日数みたいなものがありますね。あれも日本ではヨーロッパに比べて日数、平均入院日数が非常に多いということを聞いているんですけれども、これも数字的に証明できるでしょうか。
  182. 古川貞二郎

    説明員古川貞二郎君) 数字的に証明できますけれども、実は今手元にございませんので、後ほど御説明させていただきたいと思います。
  183. 青木茂

    ○青木茂君 私のところにある資料で見ますと、日本の場合、約四十日、アメリカ八日、西ドイツ十六日、フランス十五日と非常に入院日数が長い。これは日本人の病人とヨーロッパの病人とどう違うかわかりませんけれども、これもあるいは土曜日に退院させるやつを日曜日も置いて月曜日に退院させるというような意識的な水増しがないか、これが医療費高騰の原因になっておるんじゃないかということも考えられる。  それからもう一つ、私の手元にございますところの、これは五十五年十月九日の読売新聞でございますけれども、大阪府の医師会のニュースでしょうね、この五十二年六月の六月号で、「実った府医の努力、保険診療平均点数ついに全国一に」とお祝いしているわけです。こういういわゆる出来高競争、出来高競争が私は医療費を高騰さしていくんじゃないか、その原因がまさにここにあるんだ。こういうことを無視してしまって、今度の健保改革、患者側へだけ切り込んでしまうということ。これが私どもは甚だしく不満なんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  184. 多田宏

    説明員多田宏君) 先生おっしゃるとおりに、医療費の増高の中には非常にむだな形で増高している部分というのが間違いなくございます。ただ、老齢化がどんどん進む、それから医療機器もどんどん高度化をするといったことでやむを得ず伸びている部分もございます。両方相まって医療費は高騰を続けているというふうに私ども認識しております。  先生が今御指摘になりましたような部分というのは、実はコスト意識が非常に希薄であるというところにかなり大きな原因があるということでございまして、その最たるものが十割給付ということだと私ども考えております。十割給付でありますと、どうしても自分の懐が痛まない。したがって、患者の方にも若干の甘えがある。それから医療を施す方でも、十割でございますから、一つ薬を余計にやっても、高価な検査をやっても、患者に一つも迷惑がかからないということで、もう一回検査ということにどうしてもなりがちな傾向がございます。そういったようなことが総合的に、必ずしも必要でない、あるいはどうかと思うような増高要因にもなっている。  こういうところがございますので、私どもといたしましては、今回ぜひ定率負担を導入さしていただいて、患者にも医者にも十分なコスト意識を持つでいただくということをお願いしたいと考えているわけでございます。
  185. 青木茂

    ○青木茂君 今のお答えは、すべて診療側性善説、患者側性悪説に立っているんですよ。全額負担だからほとんど病院ヘサロン的に遊びに来るとかね。だから、私の申し上げるのは、あれだけの大改革をおやりになるのならば、診療側への切り込みということ、これとセットされて患者側の負担増なら、これは話がわからぬことないんです。わからぬことはないんだけれども、診療側への切り込みというものは具体的に行われていない。診療性善、患者性悪じゃ困るということをこの問題で申し上げたかったわけです。
  186. 多田宏

    説明員多田宏君) 私は、患者の方だけに問題があるというふうに申し上げたつもりではございませんでした。医者の方も、もう一つ高額の検査をやる、あるいはもう一つ高額の薬を出すということによって医者の収入はふえるということでとございますから、ついつい医者もどうしても十割のところに余計な診療をつけ加えやすいという体質になっているということを実は申し上げたかったわけでございます。  診療側の方に対しまして切り込みが足りないではないかというお話でございますが、来年度におきましても、指導監査職員の増員、それからこれまで置いておりませんでした顧問医師団というのを厚生大臣の顧問というかっこうで置きまして、そして医学論争上なかなか不当が指摘しにくい難しいケースにつきましてもいろいろしっかりした指導を繰り返していく。それからこれまで非常に高額な請求を続けていても、医学論争になるとなかなか決めつけられにくいために、指定の更新の段階でも、自動的に更新がどうしてもされていったといったような、非常に高額の請求を続けているような、指導を続けてもなかなか直らないようなそういう医療機関につきましては、今度の法案の中では、これについて更新を拒否するという手段まで用意をいたしまして、しっかりした体制を組んで、むだを徹底的に排除するという姿勢を打ち出しているわけでございまして、そういうことを前提としつつ、先ほど申し上げたように、体質的にどうしてもむだが混入しやすい体質を直すということで定率の負担をぜひお願いしたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  187. 青木茂

    ○青木茂君 だから、あくまで診療側への切り込みは、そういう意味においては間接的なんですよ。  私に与えられた時間はそうないんですから、一つ一つ詰めていきますけれども、私どもがこの医師の場合で非常に不愉快なのは、領収書を出す医師の方が少ないんですよ。ある例によりますと、愚者が領収書を請求したら文書作成料を取ったというのもいますからね。これは今お金を払って領収書を出さないというのはお医者さんと国鉄ぐらいなものです。国鉄は仕方がないけれども、これを患者側から請求しろという指導は僕は無理だと思いますよ。だから医師側から領収書を出す義務づけですね、義務づけぐらいは行政指導でやってもらわなければ困る。医療費のことはわからないわけですからね、一人一人の患者は。これはどうなんでしょうか。
  188. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 今先生の御質問の件でございますが、明細書と領収書と二つあると思うんでございますけれども、まず明細書の方から申し上げたいと思います。  明細書の発行につきましては、医療機関側の事務的な、あるいは経済的な負担というものが非常に大きいものですから、法律的には一律に課すのはなかなか難しいのではないか。非常に零細な医療機関もございますので、そういうふうに考えておるわけでございます。しかしながら、私ども五十六年の六月に、中医協におきまして、明細書の発行についてはできるところからやれと、こういうような御指示がございまして、その線に沿いましていろいろ指導いたしておるわけでございます。それで、実は、そういう明細書を発行しやすいような環境づくりをお願いをせにゃいかぬと、こういうことでコンピューター化というのも今後進めていかなければならぬのではないか。それによって容易に明細書が発行できるようになるんではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから領収書の方でございますが、これは先生御指摘でございましたが、かなりといいますかほとんどの機関が領収書は発行しておるように聞いておるわけでございますが、私どもとしましても、新聞雑誌等を通じまして発行の促進及び医療機関に対する指導というものを徹底をいたしておるわけでございます。  それからまたつけ加えさしていただきますが、今回の健康保険法の改正案につきまして、特定療養費というのがございますが、それにつきましては、その費用について領収書の発行を義務づけるというようなことも考えておるわけでございます。  以上でございます。
  189. 青木茂

    ○青木茂君 ほとんどの医師が領収書は出してないのですよ。つまり出す方が例外であって、出さない方が一般的なんです。それは事実なんです。そういうのを残しておいてもらっては困るということです。  それからもう一つはレセプトが来ますよね。レセプトが来た場合に、これはこの委員会でも何か御質問があったようですけれども、七秒間ですか、一枚七秒ですか、そういうことでやっている。私どもみたいな横着な大学教授だって、答案一枚見るのには大体三分くらいかけますからね。七秒だったらめくるだけです。こんなことで実際審査ができるのかということなんですよね。ですから、これは抜本的に、例えば国立大学の医師の資格を持っている人に全部少し分担させるとか何か、とにかく抜本的なことをやって、少なくともレセプトの不正を摘発するようなことをやってくれなきゃ、患者側ばかり負担したって医師会の方は涼しい顔していますよ。これでは困る。こういうことなんです。レセプトに関してはどうなんでしょうね。
  190. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 今、先生の方から御質問ございましたレセプト審査の件でございますが、確かに一件当たりの秒数でいきますと七秒ぐらいで一枚と、こういうようなことになるわけでございますが、実はレセプト自身は、非常に簡単なものから非常に複雑なものまでいろいろございまして、しかも額にしまして、と申しますか、点数にいたしましても、非常に高いものから非常に低いものまであるというようなこともございますので、私ども審査委員を増員するということも一つの方法かと思いますが、何とか効率的に審査ができないか、こういうふうなととを考えておりまして、いわゆる高額なレセプト、あるいはもう毎回高いといいますか、過剰な診療点数が出てくるような医療機関については、ほぼ見当がつくものでございますから、そのような観点から取捨選択いたしまして、そういうようなものを重点にして時間をかけて審査をしていただくと、このようなことも考えて現在実施しておるところもございます。  それから、実は私ども実際に、非常に高額なレセプト、これはどのくらいがいいか現在検討中でございますが、五十万点とか六十万点とかというふうなものにつきましては、何とか中央で特別審査をやろうではないかというふうなことを考えております。また、非常に審査が難しいというよりも、専門家の少ないような漢方薬でございますが、そういうふうなものにつきましても中央で特別審査というような形を考えたいと、とういうふうなことを考えております。
  191. 青木茂

    ○青木茂君 全部、患者側の負担は非常に抜本的な改正が行われようとしておるのに対して、診療側に対する負担というもの、この医療費高騰の本当の元凶であるところの診療側に対しては、物すごく及び腰だという感じは否めないんですね。そういう意味におきまして、さっき申し上げたように、出来高払いでもってお医者さんの方は、さっきの大阪じゃないけれども、保険点数が全国一になったといって乾杯やってたんじゃ、これでは患者はたまったもんじゃないですよ。そういうような状況を残しておいたんじゃしょうがないんです。これは今回というわけにはいきませんけれども、とにかく思い切って出来高払いを何らかの形において諸外国に例のあるような形にしないと、この医療の問題は抜本的には解決できないと思います。  時間になりましたから失礼いたします。
  192. 野末陳平

    ○野末陳平君 物品税のことですけれども税調の答申などにも、もはや今までの考え方では時代に適応できなくなってきているとありますとおり、物品税を負担する購買者つまり消費者の立場からいいますと、要するに物品間のアンバランスがあり過ぎて、何がゆえにこれが課税対象がわからないと、こういうことだろうと思いますね。例えばゴルフなんぞやる人が非常に多いわけですから、なぜ大衆のスポーツというか、レジャーというか、このゴルフに対して、娯楽施設利用税はともかくとして、バッグからボールから全部に三五%の高率の税金がかかっているか、こういう疑問を持つのは当たり前です。  まず、これはなぜゴルフはこのぐらい高い高率の税金を負担しなければならないのか。これはどうでしょうか。
  193. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在の物品税の課税対象と税率の区分でございますが、昭和三十六年の税調答申で一応の分類がしておりますので、それに基づいて現在の物品税の構造をごく簡単に御説明申し上げますと、一応課税物品を奢侈品、それから趣味娯楽品、便益品、嗜好品、社交的身回り品というふうに五分類いたしまして、御案内のとおり、税率構造は一五%を中心にいたしまして、三〇%を最高に、上の方に三段階、それから下の方に一〇%、五%と合計六段階の税率構造になっておるわけでございます。  考え方といたしましては、まず奢侈品でございますが、これは二種物品の場合は、全部三〇%の一番高い税率に張りついております。一種物品の場合は、これは例えば貴石貴金属製品等でございますが、こういったものは一種物品で最高税率の一五%。この一種物品の一五%は大体二種物品の三〇%と見合うという考え方に立っておるわけでございます。それから次の趣味娯楽品と便益品、これは物によりまして、三〇%から最低五%までに全部それぞれの物品の性質に応じて区分といいますか、配列がしてあるわけでございまして、基本的な考え方は、趣味娯楽品でございますと、趣味娯楽品の娯楽性の高い物ほど高い税率に張りつける。便益品につきましても便益性の高いものから高い税率に張りつけるということでございます。  ただいま委員が御指摘になりましたこの趣味娯楽品の中で、ゴルフ用具はこの部類に入るわけでございまして、三〇%でございまして、周りに並んでおる品物を申し上げますと、大型モーターボート・ヨット、ビリヤード台、猟銃といったものでございます。  それから次の、参考までに一ランク落としますと、例えば大型テレビ、それから真ん中辺にまいりますと、中型モーターボート、小型テレビということでございまして、基本的にはそういう趣味娯楽品なら趣味娯楽品の中でそれぞれの物品の趣味娯楽品の娯楽性といいますか、そういったものの度合いによって税負担の配列が決められておるということでございます。
  194. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、ゴルフが趣味娯楽品の中で特に高いところに張りついている。こういうふうになりますと、それほど高くなくてもいいですから、スキーとかテニスとか、この辺は趣味娯楽品の中に多分入るでしょうから、これはどうして課税対象にならないのか、この用具は。
  195. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは物品税につきましては、税制調査会の答申でも、最近の消費の態様に応じて、むしろ現在課税されておる物品とのバランスを考慮して課税範囲を拡大するという方向が打ち出されておるわけでございまして、五十九年度の物品税の改正に当たりましても、今挙げられましたテニスとかスキーとか、それから釣り用具でございますが、こういったものを課税の対象にすることを実は検討いたしたわけでございます。  まずスキーでございますが、もちろんスキーも非常に高価なものもございますけれども、雪国に行きますと、これはまさに生活の足がわりの用具であるという議論がございます。それから小学校で学校生徒がこういうものを使って楽しむといった用具である。テニスについても同じでございまして学生が非常にこれを使っておる。もちろん高級なものもあるわけでございましょう。それから釣り用具につきましても、これもいわゆるスポーツと言われるようなものから非常に大衆の趣味娯楽品といったものまで千差万別でございます。  もちろん、こういったものを非課税とするためには、免税点という手法もあるわけでございますけれども、今言いましたようなテニスのラケットのたぐいのスポーツ用品の趣味娯楽性というものとゴルフというものを比べると、その使っている階層等から見まして、今日ゴルフ人口が非常にふえていることは事実でございますけれども、そこに相当その趣味娯楽性という点で開差がある。かたがた、それを楽しむ人の階層で、今申しましたように、学校生徒も非常に多いというような点もございまして、五十九年度の改正ではこれを課税物品に取り入れるというところまでの結論に至らな、かったものでございます。
  196. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあ、いろいろな理屈はついても、常識的にアンバランスだという点は、物品税を負担する消費者から見れば当然感じるだろうと思うんですよね。  で、今のだってちょっとおかしいんだけど、ゴルフの方が何かいかにも金がある、高級なレジャーみたいに思うけれども、今やスキーの方がむしろ高級ですからね、まあ雪国の事情は別として。  それからテニスだって、学生がやると言うけれども、サーフボートとかハングラはどうだ。今度はサーフボードとハングラは入っていますから、そうするとこの辺の違いを説明しろと仮に言われた場合に、これは苦しくなりますね。どうですか。
  197. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) サーフボードとかハンググライダーとかでございますが、これは現在課税になっております例えば小型のヨット、ゴムボート、それからゴム製のサーフライダーとか水上スキー、こういったものがすでに課税物品となっておりますので、それとのバランスで税率も同じくいたしまして、今回課税範囲の中に取り込むということにいたしたわけでございます。  先ほど学校生徒が使うということで申し上げたわけでございますけれども、テニス、スキーぐらいになりますと、小学生ぐらいからのスポーツ用具でもあるという点で、いささか趣を異にするのではないかという点もあるのではないかと思います。
  198. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですから、一つ一つの品目について見ればそれなりの理由がつくだろう。今回、全自動以外の電気洗濯機は課税になりました。これだったらわかりいいんですよね。ですから、何といいますか、回りくどい説明をしなきゃならないようなアンバランスを持った物品税というものは、これは時代に合わなくなっているということは言えると思うんです。さればとて、これをどうするかというのは、これは非常に難しい問題です。税調は何か間接税を志向しているようですけど、むしろ道なんで、例えばゴルフなんぞは、これを決めたときには、趣味娯楽品としてはかなり高い位置にあったけれども、大衆化してきたんだから低めるという方向だってあるわけだ。  そんなことで、大臣ね、この物品税について一番心配なのは、こういうアンバランスというのは恐らくこの物品税がある限りなくならないと思うんですね。なくならないままに、そのときそのときの時代の動きに応じて拡大していく。こうなりますと、消費者というか、納税者の方に、何か決め方が非常にいいかげんじゃないかという感じすら持たせかねないと思うんですね。ましてや伝統工芸とか、そういうような名目で非課税の高価なものがある。そういうのがだんだんわかってくる。いままで物品税について意外とわかってなかったのが最近わかってきたわけですよ。わかればわかるほどこの矛盾を感じるという気がして、これが一種の不信感につながることを恐れているわけです。どうですかね。このままで物品税をずっと毎年何となく見直していきながら続けていかざるを得ないということなのか。そろそろ思い切ってこれを税調の答申の方向に持っていくのか。どれが一番いいと思いますか。
  199. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは大変難しい問題でして、物品税の議論をいたしますと、例えば、これは非常に下世話な話をしますと、この間、野末さん、その道の専門家ですが、私どもが座談会に出たときに物品税の話がありまして、スキーとゴルフ用具の話です。スキーは私も雪国ですから子供のころ足ですよ、あれで学校へ通う。しかしゴルフも今やまさにこれだけ大衆化しているじゃないか。ところが、時たまですけれども、ゴルフには大変貴重な十四金のパターなんというものがあります。そうするとスキーには金のスキーはないなと、こういう感じで説明したことがございます。これは笑い話みたいな話ですけれども。これは同じことで、酒を従価税にした方がわかりやすいじゃないか。こういう議論のときに、従量税の議論をしましたときに、なぜかといったら結局、酒は、俺、今晩百円だけ飲むぞという者はいなくて、一杯飲むと言うから、やっぱり従量税だと。そういう大衆の中にわかる説明も必要だと思いますが、今の物品税の議論をぎりぎりしていきますと、それならば一番ある意味における公平性というのは、消費一般にかかる税、そこから抜き出して口に入る物とか、そういうものから抜き出していく方法がいいじゃないかと、こういう議論もございますよね、現実。消費一般にかかる税制というものは学問的には否定してないけれども、五十四年の選挙のときにあれだけ痛い目にも遭いまして、それでその便益性からする物品税というものの範囲の拡大というところから検討した方がいいのかなと、こういう感じがしております。私みずからも絶対ではございませんので、感じだけ申し上げたわけであります。
  200. 野末陳平

    ○野末陳平君 余りこの物品税の矛盾を突いていますと、だんだん今の幅広い消費の消費税みたいな話になっちゃうから、また変えましょうね。法人税の方をやりましょう。  法人税ですけど、今回二年限りでアップが決まりました――まだ決まってないんですね、決めようとしているんです。(笑声)僕は法人税については、今回これが減税の財源にもなり得るんでやむを得ないと見ているんですが、一つ心配なのは、この税率アップと景気の関係なんです。これはあれでしょうかね、今でも法人の半分は赤字申告をしているというような実態ですから、そうすると税率アップが果たして大蔵省の期待どおりに増収になっていくかどうか。これは景気の見通しとの関連も大事なんですけれども、ここら辺はどうなんでしょう。  というのは、景気が順調に回復したとしても、企業そのものは過剰人員を抱えたり、それらいろいろな事情があって、そうそう税収に結びついていくとも思えない節もあったりして、その辺のことをどういうふうにお考えになってこの程度の税収アップの効果を期待するか。この辺の説明がちょっと欲しいんです。
  201. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回の減税財源を考えるに当たっての基本的な考え方は、税制の改正の中で財源補てんを見出さなければならないわけでございますけれども、せっかく上向きになった経済でございますので、その税目を選択する場合には非常に注意が要るということは議論をしたわけでございます。間接諸税につきましても、なるべくその幅を小さくいたしまして、減税の効果が相殺される割合を少なくする努力をいたしますとともに、延納制度の廃止等の増収措置を極力活用いたしました。しかし、それでもまだ補てんが十分ではございませんので、最終的に二年間の臨時的な措置として法人税の税率の引き上げということをお願いしておるわけでございます。  ただ、この法人税の引き上げにつきましては、いろんなマクロモデルでシュミレーション等の作業もいたしたわけでございますけれども、現時点におきます企業の設備の動向あるいは内部留保等の状況から見まして、大幅な税率アップでございますと、たとえ利益処分の中から負担してもらうものとはいえ、企業の活動なり経済に悪影響を及ぼすということは否定できないわけでございますけれども、いろんなシュミレーションをやりますると、今回の税率の引き上げ幅程度、これは実効税率からいきますと戦後最高の水準でございますので、ぎりぎりの水準であるとは私ども考えておりますけれども、この程度の引き上げ幅でございますと、それが直ちに経済に、あるいは企業の設備投資にマイナスの効果となってあらわれるという影響はほとんどないのではないかというふうな感触を持っておるわけでございます。
  202. 野末陳平

    ○野末陳平君 これはとにかく年度が終わってみなきゃわからない話でしょうけれども、一応その説明を聞いておきます。  そして、大臣最後に素朴な質問をしたいんです。政府税調自民党税調両方が答申を出してきているわけですが、今回は特にその両者の間にいろんな点で違いがあったりするんですが、ランクはどっちが上になっているんですか。政府税調自民党税調、どっちが権威があるのか、どちらが最終的に力を持っているのか。そこがさっぱりわからない。今までは政府税調の方だとばかり思っていたんですが、ところがどうもそうでもなさそうなんで、その辺はどういうことになっているんでしょう。
  203. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはなかなか難しい話でございますが、政府税調というのは内閣総理大臣の諮問機関でございまして、それで三年に一遍、まあ今度はちょっと延期さしていただいたわけでございますけれども、三年に一遍任命申し上げて、それで国税、地方税のあり方について、こういう諮問をするわけでございますね。ことしこの問題はどうだろうかというアプローチの仕方はしないわけでございます。しかし、長年これが御審議をいただいておりますので、国会で議論された問題、もちろん各党の税制調査会等で議論された問題も皆正確にお伝えするようにしておりますので、私は法律的な意味における権威ということは、これは政府税調というのは非常に高いものだと思っております。  一方、法律こそ、政党法はございませんけれども、現実には今、政党政治の状態下におきまして政府・与党一体、こういうことになりますと、党税調というものに政府も進んで出席して意見を申し述べる、こういうスタンスで臨んでおるわけでございます。  そこで若干の相違を感じとして申し上げますならば、いよいよぎりぎりのときの、例えば今物品税の例をお出しになりましたが、そういう感じで議論を聞いておりますと、どちらかといえば、政治家の集団というのはみんな選挙をしておりますから、肌でいろんなことを感じておるような意見の方がより具体的に表現され、税調の方はその点理論性の方が先行すると、こういうような感じは受けておりますが、どちらが偉いかというような問題ではなく、政府税調はまさに法律でもって決められた権威ある機関であり、党税調政府・与党一体でありますから、今、自由民主党の税調というものはそれなりにクローズアップいたしておりますものの、どの政党が政権をおとりになっても、政府・与党一体という形の中で機能するということは、一応長い経験の中で定着して、大きく出過ぎたりはしないというふうに私は理解しております。
  204. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですから、政府税調が権威があって、そして基本的方向を決めて、その中で具体的に自民党税調が決めていくというのが当然というか、普通だと思っていたわけですね。ですけれども大臣の答弁の中にもちょっとありましたけれども、少しいろいろと政治家の事情なども入ってくるんでしょう。ただ、政府税調が基本的に決めている方向からやや外れるというか、むしろそれを否定するような方向で幾つか突如案が今回も入っているようなんですがね。そういうのは政府税調の権威を失わせるものだと思いますから、そういうことがこれからないことを望みたいですね。これは大蔵大臣に言うべきことかどうか知りませんが、いずれにしても、我々が政府税調の方針というものを一番権威があるものとして受けとめているので、その権威がなくなるようなことが現実に税法改正に反映すると困ると、そういうことだけを指摘しておきます。
  205. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 七案に対する質疑は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後八時十三分散会      ―――――・―――――