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川崎寛治君 厳しい
国際競争と
たばこ需要の
停滞の中で、安くてうまくて安心して吸える
たばこの
安定供給と、
明治以来八十年の
たばこ専売制度の中で果たしてきた国や自治体の財源
確保という役割が、ただいま提案された
たばこ事業法案を初めとする
専売公社改革法案によって満たし得るものか、疑問なきを得ません。
私は、
日本社会党・護憲共同を代表して、中曽根
総理及び
関係閣僚に
質問いたします。
我が国の社会経済が急速な
変化をたどっていることは周知のとおりであります。とりわけ情報化、高齢化、国際化が進んでいますが、それに
対応して行政も
改革されなければなりませんが、その原点はあくまでも国民生活の安定と向上にあります。しかるに、これまで
政府が進めてきた
行政改革は、国民の社会的、経済的不公平を拡大する結果を引き起こし、大衆のための
行政改革、国民のための政治からは大きく後退しているのであります。(
拍手)
そこで、
法案について具体的にお伺いします。
まず第一には、
公社論であります。
公社論における問題の所在は、安
企業における
公益性と
企業性との
関連であります。いわゆる民営論の多くは、安
企業の本来の
目的である
公益性についての議論をおろそかにし、公益の
確保を犠牲にして収支均衡を図るという逆立ちした
内容になっています。公益セクターに課せられた役割は、それが市場原理を通じて
国民経済の組織化を進めるための機能を果たす点にあるといってもよいと考えるのでありますが、いかがでありますか。
総理は、
専売公社が今日まで果たしてきた役割をどのように評価されていますか。
日本専売公社は、八十年にわたる
専売制度、三十余年の
公社制度の歴史を経てきており、
財政収入の
確保、
たばこ産業の確立、
日本農業の維持、地域経済への貢献等々広範な分野で大きな役割を果たし、
公共性と
企業性の調和を図ってきたことは衆目の認めるところであります。今回の
改革の
必要性を改めて国民に
説明していただきたいのであります。これまでの
専売公社経営で、大きな欠陥として何が指摘され得るのか、どんな不都合が生じているのかを明らかにしていただきたいのであります。
第二には、
経営形態の変更が、やがては分割・民営化に行き着くのではないかとの疑念をぬぐい切れないことであります。
臨調答申は、
専売公社から
特殊会社へ、
特殊会社から民営
会社への移行を打ち出し、今回の
改革案には
答申どおりの流通専売の廃止が含まれているのであります。
製造独占が維持されたとはいいながら、
たばこ製品の
輸入自由化が行われるなど、やがて
製造独占の廃止、分割・民営化に進むのではないかと考えざるを得ません。
そもそも臨調の民営化路線は、
日本の
たばこ産業の現状を無視したものと断ぜざるを得ないのであります。世界的な
たばこ需要停滞のもとで、国際的な
たばこ資本の寡占支配体制が強化をされ、国際三大資本にとっては、
我が国三千億本の市場は垂涎の的と言っても過言でありません。この一事を見るだけでも、分割・民営化は非現実的であり、国民的利益にも反するものと言わなければなりません。今回の
改革が
臨調答申のような分割・民営化のための布石ではないと断言できるかどうか、伺いたいのであります。
第三には、
葉たばこ問題であります。
例えば私の郷里の鹿児島は、
日本一の畜産県であり、カンショでん粉の産地であり、また
葉たばこの主産地でもあります。それゆえに、中曽根内閣が進める農産物の
輸入自由化政策や
専売制度の
改革で、鹿児島県の農民は直撃を受けるのであります。
葉
たばこ専売制度が、
全量買い取り制度ということで実質的に維持されるとはいえ、国際的な比較で見た
価格の高さは、今後の大きな課題であることは明らかであります。この
価格の問題は、いわば
我が国農業の宿命とも言うべき難題であり、
価格差だけに立脚した
輸入政策を指向すべきではないことは、他の農産物の
自由化問題と同様であります。原料葉に占める国内産葉の使用割合は現在六七%ですが、当分の間この比率を守りながら、品質の改善、生産性の向上等に努めるのが
我が国の
農業政策の一環として欠かせないものであります。
しかし、ただいま田中君の
質問にありましたように、
外国たばこのシェア拡大は当然に
耕作面積の減少をもたらします。シェアが一%伸びれば、耕作者の耕作放棄は千三十八人になると言われています。もしシェアが一〇%も増加すれば、何と一万人余の耕作者は放棄を余儀なくされるのですから、深刻な問題であります。
日本の
たばこ事業にとって
葉たばこ問題は極めて重要で、複雑な点を含んでいることは否定できませんが、
たばこ耕作農民の生活基盤を守ることを基本に将来にわたって
対応していく方針であるのか、明らかにしていただきたいのであります。具体的には、今後も農政的経費や
葉たばこ代金の概算払い等の実行が必要と考えますが、いかがであるか伺いたいのであります。
第四には、当事者能力、
経営の
自主性の回復の問題であります。
従来からも、
公共性と
企業性の調和に立った
経営を行うに当たっては、当事者能力の付与、業務範囲の拡大等、
経営の
自主性がより一層求められてきたのであります。今回の
改革によって
目的達成
事業が可能となるなど、前進が図られていることを認めますが、
法案全体を見ると
大蔵大臣の監督、
認可の部分も多く、政令、省令の
内容も明らかでなく、
経営形態の最終的なあり方が不明であります。新聞報道によれば、大蔵省、
専売公社は、新
会社の
競争力強化のために、一万人の人員大幅削減など大規模な
合理化を進める方針を固めたと言われております。移行に伴い雇用の安定が
確保されなければ、将来にわたって
日本の
たばこ産業を守り
発展させることは不可能であり、近代的
労使関係をいかに図ろうとしておられるのかを明らかにしていただきたいのであります。
第五には、今回の
改革が国民一般にとっていかなる
影響、特に利益を与えるか明らかにされていない問題であります。
生活必需晶である塩については
現行どおりの
専売制度が維持され、公益
目的が明文化されたことは高く評価できます。しかし、
たばこ事業は流通専売の廃止に伴い複数の納税主体が出現することにより、
専売納付金制度は
たばこ消費税制に変えられることになりましたが、税収の
確保は極めて不安定になるでありましょう。
地方たばこ消費税については減収は必至であり、各自治体は徴税強化のために人員をふやさなければならず、それはまさに
行政改革に反するものと言わざるを得ません。何のための
専売制度改革でありますか、
総理並びに自治大臣の明確な
答弁をお聞かせください。
さらに、国民の大きな
関心を呼んでいる
喫煙問題について、消費者が安心して吸える
たばこの開発、研究体制の充実、情報の公開等の面でいかなる前進があるのか明らかにされたいのであります。安くてうまい
たばこへの
愛煙家の要望は強く、これらにこたえることも今後の特殊法人の責務であります。
なお、付言すれば、
喫煙と健康問題の観点からも、
たばこ産業の民営化を展望すべきではないと私は考えるのであります。
第六に伺いたいことは、特殊法人の民主化と、この
法案審議に当たっての民主的な姿勢についてであります。特殊法人の
経営に関する大きな特徴は、審議会、調査会、懇談会等が設置されていることでありますが、その構成を含めて、それらの
意見に民意が十分反映しているとは言えないのが実情であります。少なくとも今回の新法人への衣がえを契機に、各種の審議会等の民主化を進めることが極めて重要であります。
また、この
改革法案の特色は、政令、省令にゆだねられている
内容が極めて多いことであります。八十年ぶりの大
改革でありますから、政令、省令も
法案審議に当たってその
内容を示し、十分な審議を行うべきであります。もし、それらが示されないならば、我々は審議を進めるわけにはまいりません。拙速は厳に慎まなければならないと考えます。
以上、
専売公社改革法案に対する若干の
質問を申し上げましたが、最後にお尋ねしたいことは、今回の
改革が、
我が国の陥っている深刻な赤字
財政の克服にとっていかなる意味を持つものかということであります。
中曽根内閣は
行革内閣とも言われていますが、
財政立て直しの内閣とはだれも認めていないのであります。国の財産を民間に払い下げるだけで、
財政赤字が解消するとは到底考えられません。
総理の
財政再建への自信のほどをお聞かせください。軍事費を増額して赤字
財政を克服した国は古今東西存在しなかったことを、この際申し添えておきます。
我が国の近代社会の幕あけとなった
明治維新の英傑勝海舟の言う、そもそも
改革は公平でなくてはいけない、そして大きなものから始めて、小さなものを後にするがよい、言いかえれば、
改革者が一番に自分を
改革することが
改革を成功させる極意などの金言を
総理に進呈をして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕