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1984-04-20 第101回国会 衆議院 文教委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十日(金曜日)     午前十時十六分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 石橋 一弥君 理事 大塚 雄司君    利事 白川 勝彦君 理事 船田  元君    理事 佐藤  誼君 理事 馬場  昇君    理事 有島 重武君 理事 中野 寛成君       青木 正久君    稻葉  修君       臼井日出男君    榎本 和平君       北川 正恭君    河野 洋平君       坂田 道太君    二階 俊博君       葉梨 信行君    町村 信孝君       渡辺 栄一君    木島喜兵衛君       佐藤 徳雄君    田中 克彦君       中西 績介君    池田 克也君       伏屋 修治君    滝沢 幸助君       藤木 洋子君    山原健二郎君       江田 五月君  出席国務大臣         文 部 大 臣 森  喜朗君  出席政府委員         文部政務次官  中村  靖君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         文化庁長官   鈴木  勲君         文化庁次長   加戸 守行君  委員外出席者         自治省財政局交         付税課長    遠藤 安彦君         参  考  人         (私立学校教職         員共済組合理事         長)      保坂 榮一君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ————————————— 四月十九日 高校増設費国庫補助増額等に関する請願(工 藤晃君紹介)(第二九二八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件 参考人出頭要求に関する件 昭和四十四年度以後における私立学校教職員共 済組合からの年金の額の改定に関する法律等の 一部を改正する法律案内閣提出第五九号) 著作権法の一部を改正する法律案内閣提出第 六二号)      ————◇—————
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本法律案審査のため、本日、参考人として私立学校教職員共済組合理事長保坂榮一君の御出席を願い、御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 愛野興一郎

    愛野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伏屋修治君。
  5. 伏屋修治

    伏屋委員 先般来、各先輩委員の方のいろいろな御質疑がございまして重複する点があるかと思いますけれども、御容赦をいただきたいと思います。  先般、各委員からいろいろ問題提起されておりました国士館大学の問題とかあるいは九産大の不正受給の問題とか、種々私大に問題が多発しておるようでございますが、そういう補助金不正受給に対する制裁措置というものは具体的にどういうふうに今進められておるのか、お尋ねしたいと思います。
  6. 阿部充夫

    阿部政府委員 お答えいたします。  私学におきまして種々、不正受給の問題でございますとかあるいは管理運営等の面で著しく適正を欠いているというようなケースが御指摘のように見られるわけでございまして、これらのケースにつきましてはそれぞれ事例に応じまして従来から、補助金を全額ストップするとか、あるいはそのケースの軽重に応じまして七五%のカット、五〇%のカット、二五%のカットというようないろいろな形での制裁措置を講じてきたわけでございます。  しかしながら、その後、先生がただいまお話がございましたような従来に例を見ないような、さらに程度の悪いようなケースも出てまいりましたので、特にこれらのケースのこれからの根絶を図るという見地から、昭和五十八年度におきまして、従来の制度に加えまして新たに、特に問題の大きい法人に対しましては、一つには、問題が起こったその時点で直ちに補助金の不交付ということを決めてしまうということと、それからもう一つは、その際に、今後原則として五年間は事態が著しく改善を見ない限り補助金交付をしないということを決定をし、これを通告するというような、従来にも増した厳しい措置を講ずることにいたしたわけでございまして、その結果、五十八年度に直ちにその措置を適用いたした学校法人が四法人あるわけでございます。  これらの措置は大変厳しい措置でございますけれども、こういう措置を講じることによりましてこういった不祥事根絶を期すると同時に、各学校法人としての運営を、経済的な運営を的確にやっていただく必要がありますので、あらかじめ事前に通告をしておくことによって、覚悟を決めて運営をしていただくというようなことを含めての措置としてこのような措置を講じたということでございます。
  7. 伏屋修治

    伏屋委員 国士館、九産大の方に焦点化されておるようでございますけれども、先般も岩手の方の福祉大問題等の発言があったようでございます。新聞紙上で見ましたところ、私のところの手元にある新聞の資料によりますと、東北福祉大にも飛び火しておるような感じを受けるわけでございますが、この東北福祉大の問題について文部省はどのように掌握されておるか、お尋ねしたいと思います。
  8. 阿部充夫

    阿部政府委員 東北福祉大学に関しましては、新聞記事等幾つかの事柄についての報道があるわけでございまして、私どもも地元の新聞まで取り寄せる等のことによりましてその内容については注目をしてまいったわけでございますが、いま一つ、どうも報道内容等がはっきりしないような面もございまして、近く大学側から事情は聞いてみたいと思っておるわけでございます。  ただ、これまで見ております新聞記事は、大変大きく扱われているので非常に異常な事態のように書かれておりますが、書かれております内容をよく見てみますと、例えば入試の問題につきまして、教授会の授権を受けて委員会決定をしているということのようでございますので、実はそうであれば、それ自体は特段問題はないことなわけでございます。あるいは経費の問題につきましても、隠し口座だ云々と書かれておりますけれども後援会お金であると書かれております。とすれば、学校法人とは関係のない別個の団体の経理の問題であるというようなことでもございまして、内容がどうもまだ一つ判然としないわけでございます。  いずれにいたしましても、参議院でも御指摘を受けたこともございますので、近く事情を聴取してみたいと思っておりますが、現段階では、新聞記事そのものを見た限りにおきましては、特段、補助金上何らかの措置を講じなければならないようなケースにまで至っているとは思えない状況でございます。
  9. 伏屋修治

    伏屋委員 辞しいことは一遍、学校関係者事情をよく聴取していただきたいと思います。それでなくても九産大とか国士館とか、あるいはいろいろ私大の問題が多発しておるだけに、こういう問題については国民皆さんの大きな疑惑の目が向けられておると思いますので、そういう面での事情聴取を明らかにしていただきたい、このように思います。  先般来、国士館とか九産大に対して、いろいろ管理局長さんも御苦労がありまして、九産大の理事長以下呼び寄せられましていろいろ事情聴取されたとかございますけれども、そういう管理運営に対する文部省の、国としての指導監督あり方、非常に困難な面もあると思いますけれども、その辺はこれからどういうふうに考えて進められていこうとしておるのか。
  10. 阿部充夫

    阿部政府委員 私学でいろいろな問題が起こっておりますことは大変遺憾に思っておるわけでございますけれども一つには、私ども、問題を起こした法人に対しましては、先ほど御報告申し上げたような補助金上での厳しい制裁措置を講ずる。と同時に、個々の事例に即しまして行政指導という格好で、運営改善等について、極端なケースについては理事体制の刷新を求めるというようなことまで含めましての指導を行っておるわけでございますが、何よりもまず、こういうことが起こってから対応するのではなくて、起こる前に、事前にそういうことが防がれていくことが望ましいことであるということでもございますので、昨年の七月に事務次官名でかなり詳細な通達もいたしました。各学校法人が、こういったいろいろな運営上の問題の実例等にかんがみまして、みずからこの時期に学内の運営の問題を再点検してほしい、そして自主的に改善すべき点を改善してほしいという御要請を申し上げ、また、各学校法人理事者等を集めましてその趣旨の徹底を図るというような措置も講じてまいったわけでございます。  しかし、もちろんこれだけで十分とは思われないわけでございますので、新年度予算におきましては、学校法人運営調査委員という制度を新たに設けたいと考えておるわけでございますが、この運営調査委員と申しますのは、今まで教学の面に関しましては私学に対しましても、文部省視学委員という制度がございまして、大学先生等の中から適任者お願いを申し上げまして、その方々私学を回っていただいて教学面での指導をしていただくという制度でございますが、それに類する制度学校運営面についても考えようということで、非常勤でございますけれども学識経験者運営調査委員お願いをする。その方々に各大学を回っていただきまして、各大学運営実態等を見ていろいろ助言をしていただく、そういうことによって不祥事等が起こることをできるだけ防いでいきたい、そのようなこともあわせて考えているわけでございますが、今後ともいろいろな方法によりまして、私学自主性の尊重ということが大事でございますので、その点を常に念頭に置きながらさらに考えていきたい、かように考えております。
  11. 伏屋修治

    伏屋委員 五十九年度予算私学助成が大幅に削減をされておるわけでございますが、今申し上げたような私大補助金のいわゆる不正受給あるいはそういう問題の多発化ということから、将来の私学のありように警告を与える、そういうような意味私学助成大幅削減されたというようなことも一部聞いておりますが、その辺の真意はどうですか。
  12. 森喜朗

    森国務大臣 ただいまの御指摘の点でございますが、予算委員会や当委員会を通じましてたびたびこうしたお尋ねがあるわけでございます。  一部のごく限られた大学がいわゆる不正受給あるいはまた不祥事、そうしたことを行うことによってどうも私学制裁を与えたのではないか、よくこういうお尋ねやら、そういう疑念も出てくるわけですが、私どもとしてはそういう考え方で削減をいたしたわけではございません。基本的には、こういう財政状況下でもございますし、臨調答申もございました。そういう中で、ことしの財政当局基本的なシーリングの枠はマイナス一〇%ということでございまして、従来、私学予算につきましては、シーリングの枠の中でも最終的にはかなり上積みをするといいましょうか、そういうときにいろいろな意味配慮をしながら、これはお願いをしながら予算をかち取ってきておったという経緯があるわけでございます。ただ、今度の場合はこういうことで、国民全体から見ましても私学に対してはどうも同情的な声が出てこない。私学に対して予算シーリングの枠以上に何とかして取ってあげなければならぬという背景国民的世論がいま一つわかなかった。当時の新聞論調あるいはその他マスコミ等の御批判等を聞いておりましても、むしろ逆に、私学になぜ予算をつけるのかという極論すらもかなり出てきておったということも考えますと、そう今までのようにシーリングの枠以上の予算を上乗せするというようなことは、なかなかそういう意欲が全体的にわかなかったというのが当時の背景であったというふうに考えるわけです。  したがいまして、私どもとしては、私学助成法精神は今後とも貫いていかなければなりませんし、私学教育に果たしている役割というものは大変大きいわけでございますから、先ほどから先生お話もございましたように、私学助成予算、割り振りといいましょうか、配分については、今までは一生懸命積み上げてきたけれども、このあたりで一度再検討してみる必要があるのではないか。そして、その中で適正な配分あるいは傾斜配分、いろいろなことがございますでしょう。そしてまた、それにこれから上乗せして私学本来の予算私学に対してできるだけ多く取って差し上げられるような仕組みを考えていく、そういう意味でこの機会に一遍反省もしてみる、私学全体にもそういう意味でいい時期であったのではないだろうか、こんなふうに思うわけでございます。  先ほどから管理局長からも御答弁申し上げておりますが、我々としては、私学自主性大学の自治ということから考えれば、こうした不祥事等はできるだけ大学みずからが改革してもらいたいし、でき得れば大学間同士私大関係皆さん自浄能力みたいなものがあってほしい。政府として、ああだこうだと余り口を入れないような、そういうことが本来ある理想的な関係ではないかなという感じを私は持っておるわけでございまして、今後ともそうした意味私学助成配分等も十分検討した上で、なお一層私学助成の本来あるべき精神を貫いていきたい、こんなふうに考えているところでございます。
  13. 伏屋修治

    伏屋委員 昨年、行政管理庁の方からの私学に対するいろいろな監察がありまして、その中でも文部省注文がたくさんつけられておるわけでございます。そういうものも加味しながらやはり今回の私学助成削減というものがあったんではないか。これは私の推測でございますけれども、そういうような問題点、それに対して文部省はかなり反論をしておられるようでございますが、行管庁監察結果についてのいろいろな注文に対して文部省当局としてはどういうふうに対処していくのか。予算の面において私学助成削減されたその一要因ではないかと思いますけれども、それ以外にもたくさんの問題点が提起されておりますが、その辺の問題点についてお尋ねしたいと思います。
  14. 阿部充夫

    阿部政府委員 昨年、行政管理庁の方から行政監察の結果ということで、これは私学振興財団制度業務運営調査ということでございましたけれども、結果的には私学関係行政、かなり全般にわたってのいろいろな御意見等を伺ったわけでございます。  勧告の中身としては、私立学校経常費補助事業を効率的なものに見直せというようなことでございますとか、財団業務運営あり方そのものについても改善を図る、あるいはそれぞれの学校法人運営についてもいろいろ問題があるというような、幾つかの御指摘があったわけでございます。  もちろん、こういった勧告に至ります途中の段階におきましては、いろいろ意見やりとり文部省行政管理庁との間でございました。例えば、基本金制度というようなものにつきましては、行政管理庁と話し合った結果、基本金趣旨というのをかなり十分理解をしていただいたというようなこともあるわけでございますので、いろいろやりとりはございましたけれども、結果として出てまいりました勧告についてはそれなりの評価を私どももいたしておるわけでございますし、評価と申しますか、改善すべき点については改善をする措置を講じていかなければならないと思っておるわけでございます。  そういうことから、経常費補助事業内容等についての見直しも逐次進めております何も、このことばかりが原因というわけではございませんで、その勧告以前からやっておるわけでございますが、さらにそういうことも行ってきておりますし、それから財団業務運営につきましても、今年度から財団内部機構改革等も行いまして、より一層的確な業務ができるようにいたしたいというような措置も講じております。さらにはまた、学校法人運営あり方等につきましては、先ほど申し上げました事務次官通達のような形で、各学校法人に対して運営適正化についての指導をするというようなことも行っておるという状況でございまして、行政管理庁勧告内容を尊重して必要な対応を行っているところでございます。
  15. 伏屋修治

    伏屋委員 行管庁からの、私も見せてもらいましたけれども、それを見ますと、「経常費補助について、当分の間、総額抑制することとし、その在り方を見直す必要がある。」とか、あるいは「当分の間、総額抑制する必要がある。」ということが非常に各行に出ておるわけですね。ということになってまいりますと、今回、私学助成というものが大幅に削減されましたけれども、また次年度においても私学助成削減される可能性がなきにしもあらず。そういうことになってまいりますと、私大に学ぶ方々負担というものが、これから学費値上げにはね返ってまいりますので、非常に負担が大きくなってくる。御父兄の負担も大きくなってくる。それにも増してもう一つ問題になるのは、私大助成金大幅削減によって私立高校、中学、高校以下が大きな影響を受けてくる。そういうことを考えるわけですが、それに対する対応というものを、今のところは地方交付税交付金の中で踏ん張って、前年度並みに一人当たり助成をつけておるわけでございますけれども、今ここで行管報告書の中にあるように抑制していくというのが来年度も続いていくということになりますと、もう地方交付金の中でいわゆる私学高校以下の一人当たり助成金を維持していくということは非常に困難になってくるのではないか、そういうふうに考えるわけですけれども、その辺はどういうふうにお考えになっていますか。
  16. 阿部充夫

    阿部政府委員 行政管理庁勧告の中に、「当分の間、総額抑制」ということが含まれております。これは臨調答申にも同じ趣旨のことが盛り込まれておるわけでございます。私ども抑制という言葉の意味は、縮減をしろということではなくて、要するにどんどん増額をしていくということは差し控えろ、こういう趣旨基本であると理解をしておるわけでありますけれども、それにいたしましても、当面の財政事情の面から、その臨調答申あるいは行管勧告いかんにかかわらず、むしろそれ以上に、毎年度概算要求につきまして対前年度比一〇%減というような厳しいシーリングの枠がかぶせられるわけでございますので、むしろそちらの方の主たる事情概算要求そのものが制限をされ、総額が減ってきているというような状況にあるわけでございます。  これらの事情対応いたしましては、例えば今回の場合につきましても、昨年の夏にシーリングどおり概算要求にせざるを得ない、一〇%減で概算要求をせざるを得ないという判断をいたしました時点から、各学校法人に対しまして、文部省は直接あるいは各都道府県を通ずる等のいろいろな手段を講じまして、何とか経営努力をして学費値上げにはね返らないように努力をしてほしいというような要請等を重ねてまいったわけでございます。幸いに、先般までに調査をしたところによりますと、昭和五十九年度学費値上げは、最近十数年の間では一番低い値上げ率というようなことで三・二%のアップにとどまっておるということで、一応は胸をなでおろしている段階でございます。これは大学についての数字でございますが、高校以下につきましても、現在調査中でございますが、主な都道府県に問い合わせをいたしますと、大体大学の場合と同じ程度アップ率にとどまるであろうというようなことを見込んでおるところでございます。  特に高校以下についてのお話があったわけでございますけれども、これはもう申し上げるまでもなく先生御案内のところでございますが、高校以下の経常費補助金につきましては、昭和五十九年度は一〇%減ということになったわけでございますけれども高校以下の学校というのが国民生活と非常に密着度が高い、大学等に比べましてより密着度が高いというようなことにも着目をいたしまして、その縮減の率を、大学等が一一%に対して高校以下は一〇%、概算要求した金額を丸々予算計上するというような配慮はいたしたわけでございます。  さらにそれに加えまして、地方交付税措置につきましても、これは大臣みずから自治省にも御要望していただきました。そのようなこともございまして自治省の方でも御配慮いただきました結果、金額としては対前年度三%増というようなことに相なりまして、国庫補助の減った分と交付税措置のふえた分ということで、大体前年同額ぐらいの予算措置が行われたという状況にあるわけでございます。  こういったことで、種々学校側努力等も促しておりますが、なお来年度以降の国の財政事情がどうなっていくか、なかなか難しい問題でございまして、にわかに好転することを期待することは非常に難しかろうと思うわけでございます。私どもは、その中で精いっぱい国からの援助費の確保には努めたいと考えておりますが、さらに各学校法人につきましては、従来以上に経営面での努力はぜひしていただきたいということをお願いしてまいりたいと思っておるところでございます。
  17. 伏屋修治

    伏屋委員 先ほど大臣の御答弁の中にも、私学助成私学振興助成法ができたときの精神というものを生かしていきたい、こういうような御答弁がございましたけれども、今のような現況、財政事情の推移によって私学助成というものがいろいろと変貌してくるということになってまいりますと、憲法における教育機会均等精神等というものも抹殺されていくのではないだろうか。そういう意味で、何としても私学を支えなければならぬということで、大臣が当時、私学振興助成法を作成された中心者でもあったわけでございますが、そういう精神というものがどうも経済至上主義というもので圧殺されていくのではないか、そういうことを私は非常に心配するものでございます。で、そういうような私学振興助成法成立当時の精神というものを何としても生かしていって、これ以上私学助成削減されないという面においての大臣の大踏ん張りを私も大いに期待いたしたいと思いますので、その辺の見解を承りたいと思います。
  18. 森喜朗

    森国務大臣 私立学校振興助成法を制定いたしました際、私どもとしては、経常費の二分の一を一つのめどとして助成をしていきたい。ちょうど提案者が、そこに河野さんなどもいらっしゃいますが、大変苦労いたしまして、そしてその二分の一のところの表現で、財政当局あるいは自治省などと非常に激しく議論が展開されたところでございます。精神というのは、私どもとしては、経常費の半分ぐらいはやはり国で面倒を見ていくということが、先ほども申し上げたように、私学の果たす役割からいっても当然のことだというように考えております。  ただ、一方では、その精神で我々も一生懸命予算編成の際、党の立場で応援をして積み上げてきたわけですが、私学の方も、ただ唯々諾々として積み上げていく、そのことだけしか頭にないという面もなきにしもあらずだと思うのです。そうなってきますと、学部、学科を増設すればいいじゃないか、新設すればいいじゃないか、あるいは定員増を図ればいいじゃないか、そうなれば積算の関係上ふえていく、そういう悪循環みたいなものがある。私はやっぱり、これは本来の私学助成のあるべき姿じゃないと思うのですね。私学費補助もいろいろな議論はございますが、これも非常に難しいところだと思いますが、私学経営をし、その経営お金の足らざるを国費でもって補うというものじゃないはずです。ですから、ここまで一生懸命にやってきて、ほぼ三割近いところまできた、物によっては若干これを切るのもあるわけですけれども、こういう中でもう一遍、私学界文部省財団も一体になって、私学の補助というのはどういう形でしていったらいいのか、このままいけば、さっき言ったように、ただ新設をする、増設をする、学部をつくる、人間をふやす、そうすればふえてくるんだ、こんなことをぐるぐるやっていたのでは、本当の私学助成意味にはならない。  だから、私学配分は、今のところは、高い給与だとか役員の報酬だとかいうところでことしは傾斜配分をしておりますが、例えば五十九年度予算では、非常に研究あるいは特殊性、特色ある私立大学経営といいますか、そういう色を出したところには傾斜配分をしようというような、いろいろな制度も設けているわけであります。今後、なるほどこの私学は建学の精神を生かしてこういう学問を、そしてこういう人材を輩出していくということに対して私学助成をしていくような、言葉がいいかどうかわかりませんが、もうちょっと抑揚がある、めり張りがある、そういう私学制度にしていくべきじゃないだろうか。そうすることによって、本来、建学の精神を生かし、特色ある私立大学運営していく、経営していく、実質的にそういう大学についてはやはり半分ぐらいをめどにし助成ができるように、そして実質的には助成の経費が少しずつシェアが膨れ上がっていくというようなことをひとつ考えてみる必要がある。  今のような計算方法だけでまいりますと、どうしても地方の短大などは非常にかわいそうな状況になると思うのですね。地方の大学などは、若手の人材が中央、都市圏に流動することをある程度防いでいるわけでもあるし、それから、個々の御家庭からいえば、東京や大阪に出して子弟を教育することに要する経費のある程度厳しい家庭では、地元の大学、短大で我慢をして、我慢といいますか学んでいただく、そういうことに非常に大きな貢献をしているわけですから、むしろそうした地方の大学にもう少し手厚くできないだろうか、そういうようなことをいろいろと工夫をしながら、実質的には私学の補助がだんだんいい方向にいく、こういうような方策をみんなで見出してみたい、それを私は今一番願っておりますし、私学振興助成法を我々が努力してつくった当時の気持ちからも、そういう方向に何とか近づけていけないものだろうかな、こんなふうに考えているところでございます。
  19. 伏屋修治

    伏屋委員 今大臣の御答弁にありましたように、こちら側が私学の振興に対して本当に取り組んでおる、その気持ちがそのまままた私学経営者の中にも生かされてきて、建学の精神を生かしながら、本当に人材育成のために私学を振興させようという気持ちがなければいけない、これは私も同感だと思います。そういう意味においても、補助だけによっての私学振興というのではなくて、今大臣の御答弁にありましたように、多様な特色を出す大学に対する傾斜配分、そういうことを大いにこれから推進することによって私学の建学の精神が生かされるような、そういう実のある私学経営というものができてくるのではないか。冒頭に申し上げたような制裁措置もその一つかもわかりませんし、そういうもので補助金カットする、また非常にまじめに学費の問題につき、あるいはまた学校の維持、経営について一生懸命考えておる大学に対するそういう配分というものをもっと手厚くしていかなければならぬ。  御答弁にもありましたような配分の方法について、もう少し具体的なお答えをいただきたいと思います。
  20. 阿部充夫

    阿部政府委員 補助金配分方法を、大臣からお答えがございましたように、めり張りをつけたものにしていきたい、限られた補助金が効率的に使われるようにしようということであろうかと思うわけでございますが、そういった方向でかねてからいろいろな努力を重ねてまいったわけでございます。  特に昭和五十七年度配分のとき以来、種々の新しい観点を取り入れてまいったわけでございまして、例えば総定員に対する在籍者数の割合、いわゆる水増し率等の是正のために、その水増しの程度の多いところに対してはカットを多くするというようなたぐいのものでございますとか、あるいは専任教諭の数と在籍学生の数、教員をかなり多く抱えて十分な教育が行われているところにはウエートを置いて考えていくとか、さらには、財政上こういう時期でもございますので、経営上余裕のあるところについては若干の我慢をしていただく必要があるだろうというようなことから給与水準の問題でございますとか、あるいは収入超過で黒字を大変抱えているというようなものについては特別の増額助成は遠慮してもらうというたぐいのものでございますとか、いろいろやってまいったわけでございます。  また五十八年度は、さらに加えまして、五十七年度で行いましたものを一遍に行いますと各私学に対する影響が大き過ぎるということもございますので、年次的にやっていく必要があるということで、二年目を、引き続き同じようなことをさらに一歩進めるということをやりましたほかに、特に社会的にも問題になっております役員報酬が大変高いというようなケースにつきましては、これは経営努力を非常にしておってなおかつ役員報酬が高いケースと、教育研究条件は非常に悪くしておいて役員報酬だけ高いというようなケースといろいろあるわけでございますが、その辺も若干勘案しながらも、非常に高額なものについてはその部分はカットさせていただくというような措置等も講じたわけでございます。  五十九年度以降の問題につきましては、現在、事務職員給与の問題でございますとか、いろいろなことを念頭に置きながらさらに考えておるところでございますけれども、鋭意各方面のお知恵等もかりながら、配分方法の改善には一層努力をして検討を進めたい、こう思っておるところでございます。
  21. 伏屋修治

    伏屋委員 私学を今後一層振興させる意味での配分方法を具体的にさらに詰めていただいて、振興に寄与していただきたい。そしてまた大臣も、私学助成のその精神が生かされるような意味においての私学助成予算獲得に踏ん張っていただきたい、こういうように思うわけでございます。  次に、昨年の七月ですか、千代田高等学院という予備校がいわゆる大学入学資格検定というコースを創設した。ところが、それに高校中退者が非常に殺到した。そういうようなケースがあり、予備校にとっては非常に新しい市場であるというような見方をして、予備校がそれぞれ大検コースというものを開設しつつある、そういう傾向があるわけでございますが、常々大臣がおっしゃってみえる二十一世紀を目指す人材育成ということからいくならば、高校を中退した人たちがただただ進学、大学受験のためのそういう予備校に行くということが果たして人間的な教育につながっていくのかどうか、こういう疑問を持っておるわけでございますけれども、この大検の現状をどのように把握され、どういう御見解を持っておられるか、大臣答弁を願いたいと思います。
  22. 森喜朗

    森国務大臣 最近、そうした予備校が大検コースというようなことで大変人気を博しておる。若干マスコミのあおりもあるような感じもいたしますが、そういう事実があることは承知をいたしております。  しかし、高等学校教育というのは、端的に言って、学問を身につけると同時に、小学校、中学校、高等学校教育一つ機会を経ながら幅広い人格形成をするということ、教育基本法の一番目指すものも人間形成ということでございます。単に資格を取るために高等学校に学ぶわけではない。そういう意味からいいますと、確かにどうも昨今では、高等学校に入ることがあたかも大学に入る予備校化しているということの批判はあるわけであります。したがって、そういうことも含めながら、教育の今後の方策はどのようにあるべきなのかということも、新しい臨時教育審議会で御検討もいただきたいなという期待もあるわけでございます。  これは御本人にとって、恐らく伏屋先生もそうだと思いますが、いろいろな学問を身につけてこられたけれども、やはりこうして成人に達してみて、学生時代の先生や仲間や先輩や、そしてその中でクラフ活動等いろいろなことをやって、その中で自分の人間の幅というものをつけてこられた、これはだれもが実感として持っておられると私は思うのです。教育のそういう大変すばらしい人間形成の一つの方途といいますか、人間が生きていく中の一つのプロセスとして一歩一歩踏み込んでいく、階段を上がっていく、やはりそのことに教育というのは一番意を用いなければならぬ。そういう立場から見ますと、恐らく最初は、いろいろな個人の状況によって高等学校に入れなかったとか、そういう方で改めて大学に入りたいという人たちのために救済する措置であるというふうに、当時は本来の目的としてはあっただろうと思いますが、逆にそのことを悪用といいますか、利用してこういう方向をやられるということは、私はおやりになる方はおやりになっても結構だと思いますが、その人の人生にとって果たしてそのことが本当にプラスになるだろうか、そして本当に幸せな人生を全うできるだろうか、私はこういう考えてこれに対処すべきだと考えておるわけです。  そういう意味で、文部省といたしましては、やはり高等学校が本来あるべき知徳体のバランスある、本来一番大事な年齢における人格形成を目指す、そしてさらに学問を追求していく、そういう高等学校の本来あるべき姿に何とか立ち直らせていきたい、こういう考えでおるわけでございます。
  23. 伏屋修治

    伏屋委員 その大検の方に殺到しておられる中退者の方々の実態を見ていきますと、高一で中退した、あるいは高一修了時点で中退した、そういう方々が四〇%近い数を占めておるわけでございますが、その方々が予備校のその大検コースを選んだというのは、学業に不振があってというような原因ではなくて、いわゆる現在の高校に不満があるということが答えとして返ってきておるわけです。また、現在の教育システムからいいますと、転任者の高校の転学というこれ一つとってみましても、非常に難しい。また、退学者がもとの学校へ復学するというその困難さ、そういうものがこういう隘路になって出てきておるのではないかという面からも、現在の高校教育をもっともっと魅力のあるものにしていかをいと、今大臣が心配されておるような、本当に人格形成が偏った、いびつな人々がこれから育ってくるのではないか、そういうことを心配するわけでございますので、文部省としましてもやはり現在の高校のシステム、退学をしてもまた復学ができるシステム、そしてまた、高校そのものが魅力がなければならない。今大臣お話がありましたように、先輩後輩の強いきずなの中で人間性が練られていくというような高校のありようでなければならぬ。今はもう進学一辺倒というところから、偏差値で追いまくられるというところに魅力を感じなくなってきた。そんなことならもうやめてそれ専門のところへ行こう、こういう傾向になっておるのではないか。だから、この予備校の大検開校を機に、現在の高等教育というものをもう一回見直していただきたい、こう考えますが、そこら辺の御見解は……。
  24. 森喜朗

    森国務大臣 私は、しばしば申し上げておりますように、学校教育学校の現場というのは、端的な表現をすれば、楽しかるべきであるというふうに思うのです。勉強することも楽しい、仲間を得ることもクラブ活動をすることも楽しかるべき、どうもその理想とは若干かけ離れているのが今日の高等学校であるということは、私は否めない事実だと思います。だから、これもしばしば申し上げておりますが、人間の評価というのは能力、学問でするのか、あるいは人格でするのか、あるいはスポーツや社会活動、そうした体験を通じての人格で見るのか。やはり人物の評価というのはもっと多様であっていいと思います。しかし、高等教育機関にパスするために、どうもその評価の仕方が学問を中心にしておるというのは、現在否定でき得ない現実問題でございます。  そういう意味大学関係者にも、人物の評価というものを、あるいは、これはまた社会に対する評価にもつながるわけでございますから、社会全体の学歴社会的な考え方、学問追求的な考え方、そうしたことを根本的に、もう少し多様的に考えてもらいたい。そういう意味で、高等学校教育の充実ということを文部省としてはもちろん努力いたしますけれども、これはもう文部省や高等学校だけで考えられない相互の関連性が各部署にあるというふうに考えますので、この新しい教育を審議する機関でこうしたことなどもぜひ考えて、人物本来のあるべき評価の仕方、また社会におきます活躍の舞台、そうしたものを考えてみる、そういう時期が今来ておるというふうに考えておるわけでございます。
  25. 伏屋修治

    伏屋委員 今大臣のお答えのとおりでございまして、高等学校だけではいけない。やはり今の子供を取り巻く諸環境の改善が急を要すると私も思います。  時間がなくなりまして、専修学校の問題に触れる時間があと三分ぐらいになりましたけれども、専修学校について一つだけお尋ねしたいのは、専修学校というものが都道府県知事の認可あるいは都道府県教育委員会の認可等々で、一応準学校法人としての認可を得ておるわけでございまして、それに対して国の方からの補助金あるいは税制上の優遇措置というものがあるわけでございますが、認可されたそういう専修学校の実態というものがまことにずさんであると言わざるを得ません。いわゆる学校の体をなさないような専修学校すらあるわけでございまして、まして年間八百時間の授業時数というもの、あるいは生徒数、教職員の数、いろいろ細かく見ていきますと、認可を取るときには一応その体をなしておるけれども、取った後の専修学校の実態というものはまさにずさんであると言わざるを得ませんので、その辺の実態をどのように掌握されており、また文部省は直接指導の立場にありませんけれども都道府県の教委あるいは知事に対する専修学校指導監督、設置基準の遵守、そういうものについてどのような措置をとっておられるか、最後にお尋ねしたいと思います。
  26. 阿部充夫

    阿部政府委員 専修学校につきましては、その設立の趣旨から見まして、できるだけ自由に弾力的に、そしてまた多様な教育研究活動等が行われることが望ましいという一方の要請がございますので、そのような観点から、設置基準等につきましても比較的緩やかなものを定めている状況にあるわけでございます。  しかしながら、先生の御指摘がございましたように、それぞれの実態等を私ども調査等で正確に知っているわけではございませんけれども、いろいろ耳に入ってくるところによりますと、中には評価にふさわしいような非常に立派な学校もあるけれども、残念ながらそこにいかないようなケースもあるというお話も伺うわけでございます。こういった問題につきましては、私ども常時、特にこの専修学校をここまで拡充をされ、社会的には、一般的には非常に高い評価を受けるというところまできますと、これからは内容の質の充実向上、水準の確保ということが何よりも一番大事なことであろうというふうに考えまして、最近数年間は、行政の中心をむしろ質の向上ということに置いて措置をしているつもりでございます。  具体的には、各都道府県を通じまして各専修学校にそういう趣旨指導をするということのほかに、専修学校関係の団体がございますので、その団体に対しても同じようなことを繰り返し述べておるわけでございますが、そういった結果、最近では、東京都内の専門学校と東京を中心とする南関東地区の高等学校先生方との間での連絡協議の機関が持たれるというようなことも逐次行われるようになってまいりました。高校側からの批判、批評等も当然専修学校の方へ入っていくというような形で、高等学校を卒業した者が専門学校に入っていくわけでございますので、入学指導という面での関係も深いわけでございます。そういう意味では、専修学校側の実態を高等学校がよく知るということも必要でございますし、それによって批判を受けて専修学校の側がさらによくなる努力をするというような面でもこれは役に立つことであろうということで、こういうことにつきましてもぜひ東京地区ばかりでなくて、いろいろな地区でやってほしいというような要望等も行っておるところでございまして、具体的な研究会等ではございませんけれども、進路指導、進学情報のあり方等の問題について全国レベルで研究しようというようなことも進んでまいっておるわけでございます。  そのほか、私どもはその点に留意をいたしまして、国からの援助措置につきましても、予算面で専修学校教員の研修に関する補助でございますとか、大型設備の導入に関する補助でございますとか、それから特に五十九年度からは、高校以下でやっております研究指定校に類するようなたぐいのものを研究協力校制度ということで新たに設けまして、それについて援助をし、特定の研究を奨励するというようなことで、いわば国からの指導措置の面ばかりでなくて、財政的な援助措置の面におきましても、そういう質的な充実向上の推進を図るという方向にウエートを置いておるわけでございますが、なお実態等をよく見きわめながらさらに努力をいたしたい、こう考えております。
  27. 伏屋修治

    伏屋委員 今、短大の学校数を凌駕しておる専修学校でございます。また、進学の方においてもかなりの増加傾向をたどっておるということを聞いておるわけでございますので、今局長がおっしゃったように、より一層高校との連携を密にして、一条校だけの進学情報というのではなくて、専修学校への進路の情報というものももう少し明らかにすることによって、やはりそういう入試地獄の解消というものにも大きく寄与しておるわけでございますから、そういう面での御努力お願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  28. 愛野興一郎

    愛野委員長 中野寛成君。
  29. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 提案されています私学共済に全く絞って、ある部分は事務的な質問になるかもしれませんけれども、三十分間お尋ねをいたします。  まず最初に、給与関係閣僚会議のお一人である文部大臣お尋ねをいたしたいと思います。  政府は、五十八年度の人事院勧告六・四七%アップに対しまして、これを大幅に下回ります二%のベースアップを実施するにとどめたわけであります。これが今回の私学共済の改定に横並びで影響を与えているわけであります。政府が抜本的な制度改革を行わないで、勧告内容を安易に手直しをして公務員の給与改定を実施するというふうなことは、人事院の勧告制度そのものの破壊につながるということで、私どもも今日まで指摘をしてきたわけであります。  五十九年度は人事院勧告を完全に尊重するというふうなことが言われてはおりますけれども、今日までの経緯について大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  30. 森喜朗

    森国務大臣 中野さん御指摘のように、五十八年度の人事院勧告の取り決めに際しましては、人事院勧告制度を尊重するという基本的な建前に立ちまして、給与関係閣僚としても十分検討を重ねてきたわけでございますが、御承知のように異例に厳しい財政状況、そしてまた行財政改革推進中ということに対しての国民世論の動向ということ、そうしたことを総合的に勘案いたしまして、でき得る限りの努力を払った措置であって、やむを得なかった、こう申し上げざるを得ないわけでございます。  今お尋ねの五十九年度の人事院勧告の取り扱いにつきましては、先般参議院の予算委員会でも私からその考え方を申し上げておきましたが、人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢を堅持いたしまして、完全実施に向けて誠意を持って対処していきたい、このように申し上げておきたいと存じます。
  31. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 基本的な姿勢については大臣も十分御理解の上であることは、今の御答弁でもわかるのです。しかし、昨年の政府のとった態度々いうのは、大変厳しい財政事情にある、ゆえにあのような方途をとらざるを得なかった、その経緯、理由づけは私どもとしても聞くことはできますけれども、しかし、その対応といいますか、また政府としての訴えといいますか、本来人事院勧告制度というものがどうして生まれたのか、そしてその人事院勧告制度と引きかえに公務員がどれだけのいろいろな制約を受けているか、そしてこれがもし完全に守られないとすれば、逆にそれと引きかえにといいますか、その報復措置といいますか、我々も我々の仲間には、法律を守るように、違法なストはやらぬようにというふうなことを言ってまいりましたし、我々の仲間にはまたそれを守らせてきたわけです。しかし、それとても辛抱にも限界があるということになってくる。そういう中ではありますけれども、我々としては、やはり人事院勧告制度を今日の日本社会の中では堅持していく以外にないだろう。ゆえに、この人事院勧告制度を尊重するためにはどうしたらいいかということを、やはりより一層抜本的に考えていかないといけないのじゃないか。これを十分に守り切れない場合には、政府はそれ相当の決意を持って納得させるだけの行動をとらなければいけないはずであります。どうもそれがまだ安易に流れているような気がしてなりません。  人件費の膨張、よくラスパイレス指数が話題になるのですけれども、私はこういう考えを持っているのです。少数精鋭でより一層大きな仕事をしている場合に、一人一人のラスパイレス指数が高くなるということはあり得るのではないか。むしろ人件費の総枠が幾らであるべきか、それは国民、市民に対する地方自治体も含めて話をすれば、そのサービスがどれだけ効率よく行われているか、サービスにどれだけの財政が貢献をしているか、このことが問題なんであって、一人一人の公務員の中で、優秀な公務員、また真剣に、まじめに働いている公務員、そういう人たちも一律にカットしていくというふうな考え方は果たしてどうなんだろうか。それでは意欲を持って働くということはできないではないか。ゆえに総枠を抑制していく、そのために例えば新規採用の抑制をするというふうな考え方にむしろ立っていかなければいけないのではないか、こういう気持ちを強く持つわけであります。一朝一夕に直せるものとは思いませんけれども、私は、臨調行革の精神基本的にはそこにあるのではないだろうか、こういう気持ちさえするわけであります。大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  32. 森喜朗

    森国務大臣 中野さんから今御意見も含めてお尋ねでございましたが、公務員の皆さんは、国家、社会、そして国民に対するいわゆるサービスということも書めながら大変意欲的に取り組んでいらっしゃる。そしてまた、今おっしゃったように公務員であるということ、公のために働いていく、そうしたことから考えてみましても制約もいろいろある、これも十分承知をいたしておるところです。五十八年度の際には、ただいま申し上げましたように厳しいいろいろな事情の中でこうした異例の措置をとらざるを得なかった、これは御理解をいただくしかないわけでございますが、ただいまお話をいただきました人件費の総枠というものを定め、その中で配分をする。したがって、その一つの考え方として新規採用を抑えていく、こういう考え方もあるわけでございますが、総人件費の膨張の抑制につきましては、第六次定員削減計画の推進、行政の合理化等、着実に政府としてもその対策を進めているところでございます。  ただ、文部省という立場からまいりますと、中野さんのお話も十分私ども理解はできますが、文部省の場合は大学、研究所あるいは病院等というものもございます。そして学年進行というものもございますので、学問教育の場合にはどうしても間断なく進めていかなければならぬ。その間に一つの空白期が出てまいりますと、どうしてもいろいろな意味で障害になってくることもございます。特に病院を抱えておりますだけに人命という問題もございまして、看護婦さん等の問題もございます。そういうふうに考えますと、お考えの趣旨は十分踏まえていかなければなりませんけれども、そういうことも十分踏まえながら、その中で慎重に検討していかなければならぬことだろう。基本的には先生お話は非常に理解し得る考え方を私は持ってもいいわけでございますが、そういう特殊な部門を持っております文部省という立場からまいりますと、そのことも含めて慎重に検討していきたい、こう申し上げざるを得ないわけでございます。
  33. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 今後とも、文部省という立場と同時に、給与関係閣僚会議の重要なメンバーでいらっしゃるわけですから、総合的な公務員の処遇についてもあわせて前向きにお取り組みをいただきたいと思います。  さて、今回の私学共済年金改定法でありますが、数字的な面での概要を改めてかいつまんで承りたいと思いますのと同時に、それが組合の年金財政に及ぼす影響、そしてまた、改定に伴う国庫補助金の金額等について簡単に御説明をお願いいたします。
  34. 阿部充夫

    阿部政府委員 このたびの改正法案は、国立学校の教職員の年金について二%程度の引き上げを行うということとのバランスをとりまして、私立学校教職員共済組合関係につきましても同水準の措置をいたしたいということで御審議をお願いいたしておるわけでございます。  今回の年金改定によりまして増加をいたします費用でございますけれども、これは政令改正で予定している部分もございますので、そちらも合わせた金額で申し上げた方がよろしいかと思いますが、昭和五十九年度におきまして六億一千七百二十四万円、これが平年度化いたしますと、七億三千七百八十三万円という金額に相なるわけでございまして、これに伴う国庫補助額は、昭和五十九年度の場合に八千三百三十三万円。平年度化いたしました場合に九千九百六十一万円というようなことになるわけでございます。  このように支出が増加をすることになるわけでございますが、この増加する費用による年金財政への影響でございますけれども、比率にいたしまして千分の〇・三といった程度であろうかと思います。この中には国庫補助分百分の十八というのが含まれておりますので、それを除いて計算すれば影響としては千分の〇・二五という程度のものでございまして、そういう意味では非常に大きな数字ということではないわけでございます。
  35. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 余り大きな影響を与えない状態の中で、しかし個々の皆さんに対しては与える心理的影響は大きいのですよね。ですから、やはり大いに前向きの姿勢と態度が必要だと私は思うのです。  あわせましてもう一つお聞きしますが、行革関連特例法、これは我が党は賛成をしたわけであります。この特例適用期間の長期給付に対する国庫補助金、これが二五%減額されることになっているわけであります。これは三年間の減額措置総額をお聞きするとともに、この減額分については期間終了後速やかに利子を付して補てんしなければならない、こういうことになっているわけでもります。その将来展望、見通しはいかがでございますか。どのように対応をしようとなさっておられますか。
  36. 阿部充夫

    阿部政府委員 御指摘がございました行革関連特例法によって、特例適用期間は昭和五十七年度から五十九年度までの三カ年間でございますが、国庫補助金の二五%減額という措置が現在講ぜられておるわけでございます。この補助金削減額は概算をいたしますと、三年間で約五十三億というような数字に相なるわけでございますが、この国庫補助金の減額部分につきましては積立金運用収入の減額分を含め、つまり利子に相当するような部分でございますけれども、それを含めまして、将来にわたる年金財政の安定が損なわれることがないよう、特例適用期間経過後において、国の財政状況を勘案しつつ、できる限り速やかに繰り入れに着手するということに相なっておるわけでございまして、三年間で法律の期限が切れますので、この方針に従って対応していくということに相なるわけでございます。  ただ具体的に、例えばそれでは何年度に幾ら返してもらうか、あるいはこの利子相当分というのはどれぐらいの金額に見込んでいくのかというようなたぐいのことにつきましては、今後この基本方針のもとで逐次財政当局とそれぞれの年度において御相談をしていくということに相なろうかと思っております。
  37. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 その辺のことについての自信というか、これは見通しですから、今自信を答えるのも難しいかもしれませんが、責任を持ってやるという姿勢は当然お持ちなわけですね。またそうしませんと、将来いろいろなところの給付に影響を及ぼしてくるのでは困るわけです。また同時に、これは三年分の減額措置だけれどもそれは補てんされるということですから、給付その他に対して悪影響を及ぼしていくということはないはずなんですね。そういうことを考えますと、何か財政財政ということで厳しく抑えられていくということについてはどうかなという気持ちを持ちます。  ちょっと時間の都合ではしよって、最後に結論を申し上げることにして順番にお聞きします。  この長期給付の掛金に対する都道府県補助金、その交付状況についてお伺いいたします。
  38. 阿部充夫

    阿部政府委員 私学が公教育に対して非常に重要な役割を果たしているということから、昭和二十九年の私立学校済組合制度発足時以来、各都道府県から私学共済関係の長期給付掛金につきまして千分の八相当額の補助が出ておるわけでございます。しかしながら最近の実態といたしまして、各都道府県におきまして全部の学校種類にわたりまして補助を行っているというところは三十五県ということで、若干ずつでございますが減ってきておるというようなこともございますし、その他の県につきましても、細かく申し上げるとその他いろいろな種類がございまして、いろいろな対応があるものですからあれでございますけれども、高等教育機関、大学、短大を対象から外す措置をとっておるところ、さらには、物によりまして補助対象月数を十二カ月分ではなくて六カ月分とか八カ月分とか、あるいは一カ月分だけ減らして十一カ月分だけ出すとかいうようなたぐいの、若干ずつ減額をされるようなケースが最近出てきておるということは事実でございます。
  39. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 大学、短大を外すという傾向が出ているということなんですが、その理由は結局何かといいますと、地方交付税の算定基準に入れてもらえないということになっていると思うのです。なぜそういうふうになっているのでしょうか。自治省お願いします。
  40. 遠藤安彦

    ○遠藤説明員 お答えを申し上げます。  御指摘のように、大学、短大の私学共済の掛金については普通交付税の措置をいたしておりませんが、私どもといたしましては、大学、短大の私学共済の助成都道府県助成する場合の助成でございますが、これは第一義的には国が行うべきものであるというように考えております。現在、確かに道府県で助成している県もあるわけでございますが、これにつきましては各都道府県の独自の判断で行っておるものであって、別に問題になることではないと思いますけれども交付税上の措置といたしましては、やはり普遍的かつ標準的な経費を需要額に算入するという建前から、先ほど申し上げましたような理由もありまして算入していない、こういうことでございます。
  41. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 最近でこそ算入されていないからということで、大学、短大について対象にすることを外す県が出てきているということですが、ほとんどの県は実はこの補助金交付していたわけですね、独自の財源でしていたということなんですね。ほとんどの県でしている場合に地方交付税に算入したって別に問題は起こらないんじゃないですか。
  42. 遠藤安彦

    ○遠藤説明員 確かに法律上も、都道府県助成することができるという規定があるわけでございまして、各都道府県が独自の判断で助成をするということは別に差し支えないと思いますけれども、私どもといたしましては、高等学校以下につきましてはある程度義務的といいますか、都道府県が実施すべきものということで算入しておるわけでございますけれども大学、短大につきましては、やはり第一義的には国が行うべきものという考え方から交付税上の措置はいたしていないということでございます。
  43. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 行政主体が大学、短大の場合には国だ、高校以下は地方だということが自治省の判断ですな。ということは、地方自治体がこういう問題について前向きに取り組んでいるということになります。大学、短大は行政主体が国だということになれば、地方自治体がほとんどというか全部やっているというときに、大学、短大を担当する国は何もせぬ  何もせぬと言うとおかしいですけれども、もちろん一八%の国庫補助金は出ているわけだけれども、しかし、同じ性質のものについては、いわゆる大学、短大についてはそういうものが適用されていないということになりますと、そこだけ何かちょっと不公平じゃないかなという印象も出てくるわけです。国として何らかの措置が講じられてもいいんじゃないかという要望が当然出てくる。どういうふうにお考えですか。
  44. 阿部充夫

    阿部政府委員 大学、短大に対する地方の補助の実態が減ってきたということの中には、先生指摘のように、交付税措置にそもそも講ぜられていないということのほかに、最近財政事情が一般に悪くなってきたというところのあたりが全面的に変わってきているということはあろうかと思うわけでございます。  それにいたしましても、大学、短大が国の所管であるから云々という考え方につきましては、私ども自治省とは若干見解を異にしておるわけでございまして、やはり古く大学というものが非常に限られた数であった時期というものは、まさに大学というのはすべてが全国的な存在であったかと思いますけれども、既にこれだけ大多数の者が、四〇%近くが高等教育へ進むという時期になってまいりまして、各地方地方の存在でもあるというウエートも非常に高まってきているというような状況を考えますと、これは必ずしも国の管轄の問題であるというふうにも言い切れない。そこで、既に現在でも三十五県が補助をしているというような実態もあると思うわけでございます。そういうような点を考えまして、私どもといたしましても、かねて自治省には、何か考えてほしいというお願いはずっと続けてきておるわけでございますが、今後とも自治省とは協議をいたしたい、さように考えております。
  45. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 文部省自治省の見解が違うということですが、その見解が違って、そして例えば三十五県以外のところが間引かれてくるということになりますと、やはりそこには差が出てくるわけですね。言うならば、役所同士の見解が違うことによってだれが困るかといえば、給付を受ける人たちが困るわけですよ。結局行政の谷間に追い込まれてしまう、と言うのはちょっとオーバーかもしれませんが、そういうことになってくるわけですね。  これはどうですか、自治省文部省と両方からお聞きしたいのですが、その話し合いはつくのですか。ずっと平行線をたどっていってしまうのですか。話し合いがついて何か前向きの解決策が見出される見通しがあるのですか。両方からお答えいただきたい。
  46. 阿部充夫

    阿部政府委員 これまで長い経緯がある問題でもございますので、なかなか難しいことではあろうと思います。ただ、年金制度全体の改革の問題等も俎上に上っている時期でもございますので、そういった時期に合わせてさらにこの問題については話し合いを詰めてみたい、かように存じます。
  47. 遠藤安彦

    ○遠藤説明員 文部省の御意見もよく聞き、また私ども意見もよく申し上げて、よく協議いたしたいと思います。
  48. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 早急にその統一的な話し合い、協議が十分煮詰まって、前向きな姿勢でこれが実施されますように強く要望をいたしておきたいと思います。  さて、今回もう一点改正される点は、標準給与の上限、下限の引き上げ措置が行われるわけでありますけれども、その対象となる組合員の数、それからその影響についてお聞きをいたしたいと思います。国立の学校私学とでは、実際の給与体系も違いますし、実際には私学としては人材を集めなければいけないというので、大分高くなっているということもあったりすると思うのですね。これらのことについて文部省としてはどういう御判断をしておられるのでしょうか、そのことについてお聞きしたいと思います。
  49. 阿部充夫

    阿部政府委員 今回の既裁定年金の引き上げとの関係で、標準給与につきましても上限、下限をそれぞれ二%相当分の金額を引き上げようとしておるわけでございますけれども、まず、対象者数について申し上げますと、下限の引き上げのケースが、これは七万五千円から七万七千円に引き上げるものでございますが、これに該当します人数が約四千九百人、全組合員の一・四%程度の数であろうかと思います。それから、上限の方の引き上げが四十四万円から四十五万円に引き上げるものでございますけれども、これにつきましては対象者が、これも推計でございますけれども二万八千六百人ございまして、組合員数全体の中の八・二%ということになるわけでございます。  これによりまして掛金負担がどうなるかということでございますけれども、この下隈の引き上げによる組合員の掛金負担増額は、一カ月当たり百八十円という増額に相なります。また、上限引き上げによります掛金負担については、一カ月当たり九百円、こういうことになるわけでございます。  こういうことで、掛金負担はふえるわけでございますが、標準給与が上がることによりまして当然退職後の給付も上がってくるわけでございますので、そういう相関関係にあるものということで理解をしておるものでございます。
  50. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 結局、掛金がふえるということは、たとえ一円でも現在の経済状態からいって大変負担に感ずるものです。おまけに給付の方は財政財政と言って抑えられますね。この辺のことについて、より一層配慮して措置を講じていくことが大切だと思うのです。この年金財政は、いろいろ厳しい状況の中で特例適用期間も定められてやっているわけですけれども、将来補てんされる道がちゃんと講ぜられているわけですし、そしてまた将来にわたって国民の生活、労働の意欲というものを充実させていくためにはもっと前向きな姿勢がとられなければ、人事院勧告のことも含めまして問題ではないか。本当に厳しい財政事情の中にはあるけれども、こういう努力をしているというその姿が見られない限り、公務員の皆さんもまた教職員の皆さんも、張り切ってその使命を達成しようという意欲がその中でなかなか生まれてこないのではないのか、こういう気持ちを強く持つものでございます。  そういうことについて大臣に最後に、大いに前向きの努力をしていただきたいということを御要望申し上げて、質問を終わります。もう答弁は要りません。もう先ほどの御答弁で、気持ちはわかるが云々という御答弁が来ることはわかっておりますから、それ以上は御答弁を求めませんが、ぜひとも御努力お願いして、質問を終わりたいと思います。
  51. 愛野興一郎

    愛野委員長 藤木洋子君。
  52. 藤木洋子

    ○藤木委員 私学共済につきまして、まず最初に掛金の問題でお伺いをしたいと思います。  掛金の算定基礎についてお伺いいたしますが、私学共済における給与の範囲については私学済組合法第二十一条に規定されていますが、具体的にはどうでしょう、本俸、扶養手当、その他の手当、そして残業手当、交通費、これらが含まれるということになるでしょうか。
  53. 阿部充夫

    阿部政府委員 御指摘のような経費が全部含まれていると思います。
  54. 藤木洋子

    ○藤木委員 一方、国家公務員共済や地方公務員共済は本俸のみになっていて、諸手当は含まれておりません。なぜこのような違いが出てくるのか、御説明をいただきたいと思います。
  55. 阿部充夫

    阿部政府委員 私立学校済組合をつくりまして、私学について国家公務員等と同じような年金制度を適用することになったわけでございますけれども、その際に一番難しい点は、私学の場合と国とでは給与体系が非常に違っているということでございます。  国や地方公務員の場合には法令できちんとした給付体系が決まっておりますが、私学の場合には、それぞれの学校法人において、あるいは労使関係のいろいろな協議において賃金の体系が固まってくるというような状況にあるわけでございます。したがいまして、学校法人によりまして、本俸を非常に少なくしておいて手当の方にウエートがかかっておるようなケースでございますとか、逆に本俸が相当多くて手当が少ないケースとか、いろいろなケースが多様に存在するわけでございます。そしてまた、その水準もそれぞれ違うということになるわけでございます。そういったことから、国家公務員に合わせた共済制度をつくるための手段として標準給与という制度を定めたわけでございますが、その際に、給与の中身を本俸分と手当分に区別することは、私学の実態が非常にまちまちであるということからいたしかねるということで、本俸、手当を全部含めたものを標準給与として私学については扱うということで、発足以来そういう対応をしてきておるところでございます。
  56. 藤木洋子

    ○藤木委員 しかし、そうした給与が掛金の算定基礎になるわけですから、同じような掛金率でも、実際には掛金額私学共済の方が高くなるというふうに思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  57. 阿部充夫

    阿部政府委員 高くなるというお話でございますけれども、実際の所得に対してであればあるいは高くなるケースがあるかもしれません。標準給与について決めておるわけでございますから、それとの関係ではもちろん同じ率ということに相なるわけでございます。  さらにつけ加えて申し上げさせていただきますれば、そういう形で掛金にいろいろな手当が入っているということから掛金が高いのではないかというお話だと思うのでございますけれども、これはいわば朝三暮四のような関係でございまして、要するに掛金が若干高くなったとすれば、仮にそういうことがあるとしても、将来の給付はその額に応じて支払われるわけでございますので、そういう意味では、将来の給付が国家公務員より有利になっているという判断もできるわけでございます。  そこのところは大変難しい問題でございますけれども、いろいろな議論を経た結果こういう仕組みでつくり上げまして今日まで長い歴史があるということで、ひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  58. 藤木洋子

    ○藤木委員 国家公務員共済などに見合う程度に算定基礎の検討ができないだろうかと思うわけです。少なくとも時間外手当とか交通費ぐらいは給与の範囲から除外すべきだと思うのですけれども、この二つについてはいかがでしょうか。
  59. 阿部充夫

    阿部政府委員 これにつきましても結局同じお答えを繰り返すことになるわけでございますけれども、時間外手当等につきまして、大学によって特に入試の関係なんかの手当は額に非常に差があるわけでございますので、そういう意味からいっても、そういうものを一律に外してしまうことは組合員にとって有利なのかどうか。掛金は安くなるけれども、将来の給付はその掛金に沿って給付されるわけでございますから、したがって標準給与でいえば一ランク二ランク下へ下がってしまうということにかえってなってしまうという問題もあるわけでございます。こういった点につきましては、他の厚生年金の場合等につきましても同じような扱いがなされておるようでございますけれども、そういう仕組みで行われているということで御理解を賜わりたいわけでございます。
  60. 藤木洋子

    ○藤木委員 重ねて申し上げるようですけれども、本来、交通費は労働力に対して支払われるものではありませんし、残業手当も臨時給ですから、二十一条規定に照らしても、夏期、年末一時金と同様の扱いで除外してしかるべきだと思うのですが、その点、ぜひ御検討いただきたいと思いますけれども、御検討なさる意思はお持ちじゃないでしょうか。
  61. 阿部充夫

    阿部政府委員 私ども、これから年金制度等をいろいろ研究していくときの一つの問題意識としては受けとめておきたいと思います。いかに標準給与を決めていくかという問題でございます。ただ、他の共済年金全体のバランスの問題等もございます。そういうことで、にわかにそうするというお約束はいたしかねるということで御理解をいただきたいと思います。
  62. 藤木洋子

    ○藤木委員 ぜひ前向きに御検討をいただきたいという私の要望を申し上げまして、次に、掛金の折半負担についてお伺いをしたいと思います。  私学済組合法第二十八条で掛金の折半負担が決められております。この掛金の負担割合の変更は、年金あるいは健康の保障といったことにかかわる問題ですから、基本的には労働条件に関する問題だと思いますが、いかがでしょうか。
  63. 阿部充夫

    阿部政府委員 掛金の負担につきまして、そういう御意見もあるいはあろうかとは思いますけれども私立学校済組合の場合ばかりでなくて、各種のこういった制度全体につきまして法律上こういう措置を講じて、その掛金についての分担を定めておるわけでございます。  これを労使の自由な決定にゆだねるという御意見がどは思うわけでございますけれども、逆に使用者側が非常に強過ぎて、すべてが労働者側の負担になってしまうというケースがあってもいいことではないと思うわけでございまして、まさに半々で、折半で負担するというのが非常に適切な状況であると私は考えております。
  64. 藤木洋子

    ○藤木委員 これまでに折半負担割合を変更した学校法人がありますけれども、こうした動向を掌握されていらっしゃいますか。あれば御説明をいただきたいと思います。
  65. 阿部充夫

    阿部政府委員 掛金につきましては、私立学校済組合学校法人等経由で一括して受け取っておりますので、そういうお話を私、聞いたこともございませんし、実態としても把握いたしておりません。
  66. 藤木洋子

    ○藤木委員 実際には行われておりまして、ただし、今申し上げました共済組合法の二十九条によりますと、掛金を納める義務を負うのは学校法人ということになっていますから、非常に把握しにくいことではあろうかと思いますけれども、実態はそうなっておりませんので、その点はぜひ御調査もいただきたいというふうに思います。  先ほど局長は、これは私学共済に関してだけではないと折半の例を挙げられましたけれども、そうではございません。西欧諸国では労働者の負担率というのは非常に低くなっておりますし、それに比べますと、日本は大変大きな立ちおくれを来している。しかも、その日本が立ちおくれている中でも、折半というようなことを法律的に定めていること、もしもそれをあなたがお認めになるとするならば、これは労働者負担が現在四・六五負担ということになっている平均から見ましても、非常におくれている措置と言わなければならないというふうに思います。ですから、私学共済の折半は全く時代に逆行するものだというふうに私は考えるわけですが、労働者の負担率を減らす方向、これが時代の流れでもあり、世界の趨勢でもあろうかと思います。こうした立場を基調にし対応すべきだと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  67. 阿部充夫

    阿部政府委員 私学共済の制度につきましては、先ほど来申し上げておりますように、国家公務員の例に準ずるということで、一般の民間の厚生年金と健康保険という仕組みとは別に特別に設けられている制度でございまして、国家公務員である国立学校の教員あるいは公立学校の教員とバランスをとりながら措置をしているものでございます。このことで、私学共済だけにおいてそういう特別な措置をとることが適当であるかどうかというのは、これはまた一つ大きな問題があるところであろうと思います。  先ほど来のお答えを繰り返すことになりますけれども、現在の段階で半々で負担をするということは、諸外国の例等をお引きになりましたが、その点は諸外国にはいろいろなケースがあろうかと思いますが、日本の現状の中では適切な水準である、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
  68. 藤木洋子

    ○藤木委員 しかし、私が先ほども申し上げましたように、実際、私学の中でも、首都圏の千葉やあるいは東京都内の私学の中で折半基準というのがもう打ち破られておりまして、四対六というような比率になっておるところも決して少なくはございません。こういった実情からいいますと、仮にそれが折半負担となっていないといった状態で労使間で負担割合が決められているというようなことがありましても、これは尊重されるという立場はおとりになられるんでしょうね。その点はいかがでしょうか。
  69. 阿部充夫

    阿部政府委員 法律によって折半負担ということが定められているわけでございまして、それに従って各学校法人からの掛金がまとめて提出されておりますので、私どもはそのとおりになっているものとして受け取っているわけでございます。
  70. 藤木洋子

    ○藤木委員 それでは、お調べになる気持ちもおありじゃないようですけれども、仮にそういったことが行われているという事実がありましても、そのことを理由にし私学助成の減額措置を行うというようなことはなさらないようにひとつ強く要望しておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  71. 阿部充夫

    阿部政府委員 私ども先ほど来お答えしておりますように、そういう事実があるということを承知しておりませんので、それについてどういう措置をとるかとらないかということは、現在申し上げるだけの用意がございません。
  72. 藤木洋子

    ○藤木委員 では次に、運営審議会の民主的構成についてお伺いをさせていただきたいと思います。  運営審議会は、組合員、学校法人代表、学識経験者から各七名すつ、計二十一名で構成。しかも、文部大臣委員の委嘱に際して、「一部の者の利益に偏することのないように、相当の注意を払わなければならない。」と十二条第三項で規定されております。しかし、一貫して労働者の代表が入っておりません。組合員代表というのは、全私学連合に加盟をしている私学経営者七団体から各一名ずつ推薦されたメンバーが自動的に選出される、こういった慣行になっております。結局は私学共済の運営そのものが経営者寄りとなっている、こんなふうに思うわけですが、こうした構成を改めるお考えはお持ちじゃないでしょうか。
  73. 阿部充夫

    阿部政府委員 先生の御質問にもございましたとおり、現在、私学共済の運営審議会の委員は二十一名で、他の共済組合と違いまして、ここは三者構成というちょっと変わった形をとっておりますが、組合員関係法人関係学識経験者と、それぞれ七名ずつということで出ておるわけでございます。そのうち組合員関係及び法人関係委員につきましては、私立学校関係者の御意向を十分酌むという見地から、私学共済制度発足以来三十年にわたりまして、私学団体からの推薦によってこれを任命するという方式をとってきております。  この推薦団体でございます全私学連合と申します団体は、日本私立大学連盟、日本私立大学協会、私立大学懇話会、日本私立短期大学協会、日本私立中学高等学校連合会、日本私立小学校連合会、それから日本私立幼稚園連合会、こういう七つの団体で構成されておるわけでございまして、これらの団体は学校法人の役員で構成をしているという団体ではございませんで、それぞれの学校の校長さん、教職員等まで含めた学校として構成をしている団体であるということでございますので、私学全体の御意向を承る機関としては適切なものだというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、推薦をされてきております組合員代表という方々も、もちろん大学の教授の方であったり、高校等の教諭の方であったり、そういう方々が組合員代表として選出をされてきておりますので、今までの運営状況等から見ても特段支障があるというふうには私は理解しておらないわけでございます。
  74. 藤木洋子

    ○藤木委員 それでは、これまで運営審議会におきまして、全私学連合から選出された、今おっしゃいましたメンバーの方々が労働者の実態をどのように反映させてこられたか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
  75. 阿部充夫

    阿部政府委員 先ほども申し上げましたように、組合員関係という方々は、同志社大学の教授の方、あるいは神奈川大学の事務職員の方、あるいは中学校の教諭の方、小学校の主事というのですか、これはやはり教諭の方でしょうか、そういったたぐいの方々で構成されておるわけでございますので、そういった方々がそれぞれの立場で御発言になっているわけでございます。  その運営審議会の会合に私が一々出ておるわけではございませんので、どういう発言があったかということを承知しているわけではございませんけれども、そういう方々が審議に加わって御意見を述べられているわけでございますから、当然、学校現場をみずから体験をしておられる方々の御意見として出てきておる、こういうふうに理解をしているわけでございます。
  76. 藤木洋子

    ○藤木委員 それでは、具体的な事実は何も出てこなかったわけです。今の選出方法でいきますと、労働者の実態を十分反映できるはずはないと思います。どうしても教職員組合なり、そういった方たちの代表を選出すべきだと思うのですが、ぜひ実現できるように検討していただきたいと思います。いかがでしょうか。
  77. 阿部充夫

    阿部政府委員 私学関係の教職員の方々の教職員組合の実態というものを、私、よく承知しておりませんけれども、少なくとも現在の方法で現場の方々の御意見が反映されていないというふうには考えておらないわけでございます。
  78. 藤木洋子

    ○藤木委員 私は、それはおかしいと思います。教職員組合は既に私学の半数以上に組織されているというふうに私たち思っていますけれども、ぜひその実情をお調べいただきまして、組合の意向なりが反映するような方法をとっていただきたいと思います。  私が今までに質問をさせていただきました掛金の折半負担の問題やあるいは掛金の算定基礎、こういった幾つかの問題につきましても、私たちは労働者側の皆さん方から大変大きな要望をいただいていることばかりでございます。そういったことが既に運営審議会の中で論議をされているという実態があるならばともかくも、そういったことがない以上、ぜひそのことは考え改めていただきまして御検討し直していただきたい、切に要望させていただきますが、いかがでしょうか。
  79. 阿部充夫

    阿部政府委員 御意見として承っておきます。
  80. 藤木洋子

    ○藤木委員 では次に、これは特例長期継続組合員という制度で公務員の場合のことなんですけれども、この問題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  今も申しましたように、公務員の場合は定年制の実施に伴いまして特例長期継続組合員というのを認めまして、年金受給資格が取れるように救済措置が実行されることになりました。来年の三月三十一日から実施されるわけですけれども、この際、私学共済においてもこれに類似のケースが出てきているわけで、救済できるような措置を検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  81. 阿部充夫

    阿部政府委員 御指摘がございました特例継続組合員制度でございますけれども、これは昭和六十年三月三十一日から定年制が施行される。これまで予測していなかった職員たちがその時点で六十歳に達していれば公務員の身分を失い、したがって組合員資格も失ってしまうという問題があるわけでございますので、そういった方々を救うための非常に限定的な、経過的な措置として設けられたものだと理解をしておるわけでございます。  私立学校等につきまして、そういう定年制がどうなっているかというのは各学校まちまちであろうかと思いますが、そういうことの実施に当たりましては、新たに定年制を実施するというようなケースがあるいはあるのかもしれませんけれども、定年制そのものについて個々の学校の実態に応じてそういう組合員資格云々というよりは、どうしても必要ならばその前に雇用の関係の部分において考えるべきことではなかろうかと思うわけでございまして、こういった全国一律の措置、しかも非常に時限的な、限られた経過措置と、それから私学についていつ起こるかわからないようなたぐいのさまざまな問題とを一緒に処理することは、大変難しかろうと思うわけでございます。
  82. 藤木洋子

    ○藤木委員 誤解を招いたようですのでちょっと訂正させていただきますと、公務員の特例措置に連動させてということで申し上げたわけでは決してございません。既に私学の場合にはそういった問題点が今までにも出ていたわけで、何らかの救済措置がとれないかという要望が出ておりました。しかし、この際、公務員に対してとられた措置、こういったことが運用できるのではないかという点で申し上げたわけですから、少なくとも実態がどうかということは一度ぜひ把握をしていただきたい。その上で、それに最もふさわしい前向きの対応をしていただければ非常に結構かと存じますが、その辺はいかがでございましょうか。
  83. 阿部充夫

    阿部政府委員 私も、今の先生お話、実は初めてきょうここで伺いましたので、十分事情を承知しておるわけではないわけでございますが、その問題点としては、それは検討する余地のある問題であろうかというつもりで伺っておったわけでございます。  ただ、厚生年金の場合には、特例継続組合員に相当する制度を従来持っておりましたのを、今回の改正法案で六十一年の四月一日から廃止することが予定されているということをただいま聞いたところでございますので、そういった関係がどういう事情でなっているのかというあたりも、私自身、勉強してみないと何ともお答えできないということで、きょうはお許しをいただきたいと思います。
  84. 藤木洋子

    ○藤木委員 それでは次に、過疎地域の私学対策についてお伺いをさせていただきたいと思います。  過疎地域における私学経営は今非常に大きな困難に直面しておりますが、この対策についてどのような措置がとられているか、お示しをいただきたいと思います。
  85. 阿部充夫

    阿部政府委員 過疎地域の私立高校におきまして、産業構造の変化等がいろいろございます関係上、人口の社会的な流動等がございまして、その結果、生徒数が減少してくるというような地域が出てまいったわけでございまして、そういう地域の私立の高等学校について経営的ないろいろな問題が生じたということから、去る昭和五十三年度に過疎地威の高等学校に対しましては経常費補助金の特別のかさ上げ措置を講じてまいったわけでございます。  これらの地域についてこういう措置を講じました理由といたしましては、要すれば、その当時の傾向といたしましては全国的に十五歳人口が増加をしていくという中で、この過疎問題についても、人口が今は減っているけれども、子供の数がふえてくる可能性もあるということ、あるいはある一定の期間特別の補助をすることによって、その間に長期的な経営のめどを立ててほしいというようなこと、そういったような状況等を踏まえまして、五十三年から六十年までの時限的な措置ということで、そういうかさ上げの措置を講じたわけでございます。  この点につきましては、特に昭和五十九年度予算におきましても、高等学校以下の私学助成先ほど来御質問に出ておりましたが、一〇%減という措置を講じた中で、これにつきましては、補助対象人員の減少による当然減というものが若干ございますけれども、しかしながら、単価につきましては所要の改定で四・六%の増を行うという特別の配慮も行いまして、この制度を引き続き運用しているというのが現在の状況でございます。
  86. 藤木洋子

    ○藤木委員 こうした私学では、今もお話ありましたように、経常費の五〇%以上を国や都道府県からの補助で賄う学校が一般的になってきています。ところが、この特別助成は、お話しのとおり、昭和六十年度までとなっております。その延長が強く望まれているのです。過密地域の対策もさることながら、過疎地域の私学振興、そして子供の教育権を保障するという立場から、ぜひ特別助成を延長していただきたいというふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。
  87. 阿部充夫

    阿部政府委員 この問題につきましては、基本的に大変難しい問題があるわけでございます。先生も御案内のように、幼稚園等につきましても、幼児の減ということで将来どうしていくか、廃園になるケースも出てきているというようなこともあるわけでございます。こういう生徒数が減るといったいわば自然現象と申しますか、要するに生徒数を無理やりふやすことはできない状況の中に置かれておりますと、それを永遠に支えていくということはなかなか難しい面が施策としてもあるわけでございます。  そういう関係から、先ほども御説明申し上げましたように、七年間でございますか、これだけの期間において特別のかさ上げをすることによりまして、その経営の体質なり経営の方法なり対応を、将来に向けて十分考えてほしいというような意味を含めてこの七年間という期間を限っての特別な助成を行ってきたわけでございます。  したがいまして、六十一年度以降の問題は来年、再来年の問題ということになりまして、私どもも現在の段階でどうこうということは言えない状況でございますけれども、こういった補助金の本来の趣旨が全国の各該当の高等学校で実際にどんなふうに生かされたのか、どうだったのかといった実態等もよく見なければなりませんし、また、この補助金制度をつくりました時期は、高校生全体としてはふえていくという時期だったわけでございますが、今度は逆に昭和六十五年以降からは減ってくる時期にかかるという問題、全く逆の現象が出てくるという問題もございます。その他、国の厳しい財政事情等いろいろなことがあるわけでございますので、私ども、御要望は各方面から承っておるところでございますが、現在、ただいま申し上げましたような諸般の状況を見ながら慎重に考えているところだということでございます。
  88. 藤木洋子

    ○藤木委員 慎重にお考えいただくのはよろしいのですけれども、今の御発言の中でちょっと訂正をしていただきたい個所があるのです。  それは、今まで私学が果たしてきた役割というのは、公立に並んで大変大きな役割を果たしてきたわけです。その私学をまさに切り捨てまじき物の言い方がございましたけれども、それはぜひ思い改めていただきまして、私学の振興のためにほかの方途をお考えになられるといたしましても、この助成を打ち切って切り捨てるというようなことだけはおやめいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  89. 阿部充夫

    阿部政府委員 私学のこれまでの功績と申しますか、それを無視して切り捨てるというような気持ちで申し上げたわけではないわけでございます。  ただ、これから今後のことを考えていきます場合に、生徒数が物理的に減少して非常に少なくなってしまったというものを永遠に国費等で支えていくということは、それはやり方として無理であろうということを申し上げたわけでございまして、その場合にどうするのかというのは、例えばある地域で、これはいつか先生からの御質問でございましたでしょうか、問題のある場合に、その地区にはその一校だけではなくて、さらに二校も私立高校があるというようなことになりますと、それはその間で何らかの方策がないかというような別途のお考え方もあり得ることだろうと思うわけでございます。ただ、一般論としてそういうことを申し上げたということで御理解をいただきたいと思います。
  90. 藤木洋子

    ○藤木委員 では次に、経理の公開についてお伺いをいたします。  不正事件が後を絶たない要因の一つは、経理が公開されず、学校の教職員や父母などによる監査を受けていないところにあるというふうに考えております。経理公開は今日、国民的な世論ともなっておりまして、その必要性は行管庁私学に関する行政監察報告書などでも指摘をされているところです。経理公開に道を開くべき時期だと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
  91. 阿部充夫

    阿部政府委員 先生がおっしゃっておられます経理公開というのがどういう意味か、経理公開という言葉に定義がないものでございますからあれでございますけれども、適当に推察してお答えをさせていただきますが、それは学校法人の経理の適正化をねらいとしての御発言だと思うわけでございます。  学校法人の経理の問題につきましては、私立学校という自主的な存在でございますので、まずみずからが適正な経理を行っていただくということが一番大事なことだろうということから、現在の制度で申しますと、監事あるいは評議員会といった学内での検討機関、内部監査機関を設けまして監査等を行っておるわけでございますし、さらに、経常費補助金交付を受けております学校法人につきましては、公認会計士による監査というのを義務づけておるわけでございます。そして、公認会計士が監査をいたしまして、公認会計士の意見というのが添えられて文部省に提出をされるということでございますので、文部省といたしましては、学校法人の経理の状況というのはそういうことによって把握をいたしておりますし、不正があるかないかということにつきましても、公認会計士の監査の結果というのを尊重して判断をしておるというところでございます。  さらに、長くなって恐縮でございますが、これに加えまして私学振興財団の監査もございますし、あるいは会計検査院が検査に入るというようなケースもございますので、一般的には、私立大学の経理面での運営の適正ということは、制度的には確保されておる、私はそういうふうに考えておるわけでございます。  なお、先ほども申し上げましたように、学校法人自体の段階での適正な監査、検査ということが必要でございますので、監事等につきましては特別に研修会と申しますか、勉強会等を昨年も実施いたしまして、監事の本来の機能を生かして適正な監査をしてほしいという御要望や問題点指摘等も申し上げましたし、また、公認会計士の監査につきましては、公認会計士協会から大変な御協力をいただいておりまして、公認会計士協会自体としても、管下の公認会計士に対する指導をかなりたび重ねて適切にやっていただいているというような状況にあるわけでございます。  なお、制度としてはそのようなことでございますけれども、そういった問題とは若干角度を変えることに相なるかとは思いますが、学校財政状況、財務の状況というものにつきましては、学校の父兄でございますとか教職員でございますとか、一般の方々理解をしていただくということは、私どもは必要なことだろうと思っておるわけでございます。  そういう意味から、従来から学校経営に関しまして財務状況関係者に明示をするというようなことが望ましいというようなことで、これは事務次官通知のような格好でも各学校に対しての指導を行ってまいりましたし、また現に相当数の学校におきまして、大学等の場合では半数以上ぐらいになろうかと思いますけれども、学内広報というような格好で、詳しいところもあり、非常に簡単なところも、いろいろ現状ではございますけれども財政状況を周知徹底し理解を求めるという努力をするところが逐次ふえて、その程度の数までやってきているという状況にあるわけでございます。  なお、この問題につきましては、私学関係私大連盟、協会、懇話会等々といった団体におきましても問題意識を持っていただいておりまして、自主的に内部でどの程度、どういうふうにみんなに知らせていくかというようなことについても検討しようということで、既に検討が始まっているという状況にあるわけでございます。
  92. 藤木洋子

    ○藤木委員 今の制度上問題はないとしながらも、しかし、一定の努力をしていらっしゃるという様子はよくわかりました。少なくとも学校の教職員あるいは父母そして行政当局、ここらあたりまでは公開にすべきだというふうに私は思うわけです。国民の税金を使っているわけですから不明朗は許されませんし、不正をなくしていく上で経理公開が重要な一つのかぎを握っているのですから、ぜひ前向きに対応していただきたいというふうに思います。ぜひ今の御努力をさらに一層大幅に前進をさせていただくようにお願いをいたしまして、次の質問に移らせていただきたいというふうに思います。  私学共済に関して、学校法人玉木女子学園の問題について質問をさせていただきます。  昭和五十七年三月三十一日、玉木女子学園が解雇を理由に、松山恵子さんらの組合員資格を喪失させた事件で、長崎地方裁判所は、松山さんらの地位保全仮処分申請を認め、玉木女子学園に対して、私学済組合員資格喪失取り消し申請手続を行うことを命じました。ところが、玉木女子学園はこの決定に従わず、松山さんらの同組合員資格はいまだ回復されておりません。文部省はこの問題をどのように把握しておられるのか、また、それについてどのような見解をお持ちなのか、お伺いをいたします。
  93. 阿部充夫

    阿部政府委員 玉木女子学園に関する事件のことでございますけれども、玉木女子学園におきまして昭和五十七年三月三十一日付をもちまして、助教諭の方三名を臨時免許状の期限が切れたという理由で解雇をした、それについて不服の申請と申しますか、そのことについて解雇された方の方が争っておられ、そして長崎地労委でのあっせんでございますとか、あるいは地裁での仮処分、あるいは本訴といったようないろいろな争いが今日まできているということは承知しておるわけでございます。  そして、こういったケースにつきましては、解雇が行われますと、その解雇の是非善悪について私学済組合が判断をするということは非常に難しいわけでございますので、解雇が行われた場合には、その解雇されたという報告をもって組合員資格を取り消すということにいたしておるわけでございますが、その後本訴等で争われております場合に、本訴の確定等を待たずに、それ以前であっても、例えば労働委員会の判断が示された時期でありますとか、あるいは仮処分の判定、決定があったというような場合に、それによって身分回復すべきだという方向が出された場合には、その時点で組合員資格の回復を行うということが望ましいということで、各学校法人に対しては従来からそういう指導を重ねてきたわけでございまして、これまでも何件がそういうケースはございましたけれども、そういう指導をし、それによって組合員資格の回復が行われてきたというのが従来のケースでございます。  ただ、今回の場合につきましては、争いがかなりいろいろな形で続いております関係上、この仮処分の段階におきまして、その以後、私学済組合からも、それからまた文部省側からも、さらには都道府県を通じて等のいろいろな形で指導を行ったわけでございますが、学園側がその指導に従わないという状況があるわけでございます。この四月二日でございましたか、また新たな仮処分の判定が出たということでもございますので、実は先日も長崎県の担当課長を通じまして、資格回復について学園が適切な措置をとるように指導してくれということをお願いしたばかりの状況でございます。
  94. 藤木洋子

    ○藤木委員 確かにおっしゃるとおり、御指導はしてこられているのだろうというふうに思うのです。しかし、今も四月二日の仮処分申請の認容についてお話がありましたけれども、この事件はもう随分かかっているのですね。  松山恵子さんに関する概要について本当にかいつまんで申し上げても、五十四年四月一日に玉木女子高等学校被服科助教諭として採用され、私学済組合法第十四条、第十五条で組合員資格を取得しておられます。五十七年二月二十六日に学校側から免許が切れることを理由に退職を要求されて、これに応じなければ解雇すると通告を受けられて、そして三月十八日、これに対して松山さんらは長崎地方裁判所に地位保全の仮処分の申請を行っております。ところが三月三十一日、学校側は一方的に解雇を言い渡して、組合員資格が喪失いたしました。その年の十月二十三日には、地位保全仮処分申請は認容されております。学校側はこの決定を不服だとして、おっしゃるとおり応じなかったわけですね。そこで、五十七年十一月に再び仮処分申請を行っておられるわけです。これに対しましても五十八年八月二十四日に、この申請は認容の決定が下っております。ところが、これでも学校は依然として従っていないわけですね。この間に共済組合から、松山恵子さんのお宅と松山さんが通院しておられた亀田歯科医院あるいはひぐち医院、こういった医院に対して、「無資格保険診療の中止について」という通知を送りつけられているといったことも起こっております。さらに昨年の十二月九日、三度にわたる仮処分申請を行って、そしてこの四月二日に出たのがその決定だったわけですね。  こうなりますと、再三、裁判におきまして地位保全の仮処分申請が認容されている。しかも、これは三件とも裁判官が全部違う方でございます。ところが全部一様に認容されております。当然、松山恵子さんの資格回復というのは速やかになされるべきだと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  95. 阿部充夫

    阿部政府委員 ちょっと今、先生の御質問の趣旨を受け取りかねたわけでございますが、もう一度お話しいただけますでしょうか。
  96. 藤木洋子

    ○藤木委員 再三、このように裁判におきまして地位保全の仮処分申請は認容されているわけです。そういう結果が出ているにもかかわらず守らないといいますか、指導に従わないというようなことが放置されていいのかどうか、松山恵子さんの資格回復というのは速やかに行われなければならないのではないかということを御質問したわけです。
  97. 阿部充夫

    阿部政府委員 御指摘のとおりだと思います。そういうことで、特に今回の仮処分の決定は、これは先生御案内のことだと思いますけれども、要すれば、学校法人側が組合員資格は回復するんだということを私学済組合に申し出てこない限り回復ができないというような法律上の仕組みになっておりますので、今回の仮処分は、その申し出をせよということを学校法人側に命じた仮処分でございます。したがいまして、私どもも、この仮処分は裁判所の処分でございますので、これを尊重して学校法人側はやるべきであると思っておりますし、私学済組合が当事者ですから、私学済組合がそういう方向で当然やることでございますけれども、さらに私どもの側からも協力をして、この仮処分の方向に従って学園が措置するようにより一層強く指導をいたしたいと思います。
  98. 藤木洋子

    ○藤木委員 そこで、私学済組合からも本日は御足労をいただいておりますが、確認しておきたいことがございます。  私学済組合昭和四十四年、「解雇の効力につき係争していた者にかかる組合員資格、被扶養者および給付等の取り扱いについて」という通知を出しておられますか。
  99. 保坂榮一

    保坂参考人 その通知は出しております。
  100. 藤木洋子

    ○藤木委員 その通知で、裁判所の解雇無効の確定判決、身分保全の仮処分決定または労働委員会の解雇無効の命令により組合員資格が回復したときはどのような扱いをすることを求めておられますか。
  101. 保坂榮一

    保坂参考人 それは、当該学校法人から資格回復の手続の申請を組合の方に提出するように、それを求めております。
  102. 藤木洋子

    ○藤木委員 はい、ありがとうございました。  文部省も、これまで国会でこのような問題が取り上げられるたびに、仮処分決定あるいは解雇取り消しの判決などがあって、その効力が発生したときは、当然これはさかのぼってその資格喪失を取り消して組合員資格を継続する、こういう見解を繰り返し表明してこられたところです。この立場で玉木女子学園にも指導してこられたところだというふうに思うわけです。にもかかわらず、玉木女子学園が松山さんの資格回復を拒否し続けること、これは重大問題ではないのですか。
  103. 阿部充夫

    阿部政府委員 裁判所の仮処分の判定等が再三にわたって出ておるわけでございますので、玉木女子学園はその線に沿って措置をすべきことであると私は思っております。
  104. 藤木洋子

    ○藤木委員 「共済組合は、私立学校教職員の相互扶助事業を行い、その福利厚生を図り、もって私立学校教育の振興に資する」ということを目的にしている私学共済が、学校法人からの届け出制になっているのはなぜでしょうか。
  105. 保坂榮一

    保坂参考人 私学共済は、その業務遂行体制と申しますか事務処理体制につきましては、他の社会保険と同様に、事業主である学校法人の協力を待たなければ執行していけないものでございます。したがいまして、私学共済に関する法令等もこれを踏まえまして、学校法人からの届け出制というのを原則といたしております。そして、この原則を崩しますと、個人に対してその資格云々を認める認めないということをしていくということがずっと出てまいりますと、現在の私学済組合の体制、人的、物的組織ではこれに対応できませんし、またそういうことは法令上もすべきではない、そう考えております。
  106. 藤木洋子

    ○藤木委員 私は、もう一つ理由があるのではないかというふうに思うわけです。  私学共済の掛け金について言いますと、先ほどお話が出ておりましたとおり、経営者と教職員の折半です。ですから、財政的には対等ですが、教職員ではなくて経営者である学校法人が届け出ることになっているその意味は、学校法人の方が個人である教職員一人一人よりもその社会的責任が重いからではありませんか。つまり、学校法人としての社会的地位、社会的責任において届け出るべき義務が課せられているのではありませんか。いかがですか。
  107. 保坂榮一

    保坂参考人 趣旨としてはお説のとおりだと思います。
  108. 藤木洋子

    ○藤木委員 玉木女子学園の場合、この届け出制を権利のような意識で、届け出ようが出まいが勝手なのだという判断を行って、法を乱用していると言わなければならないというふうに思うわけです。  仮処分決定が出て、本来ならば資格回復されるべきものが、学園側の一方的な妨害で資格が奪われております。このような強行が許されてよいものかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  109. 阿部充夫

    阿部政府委員 再三お答え申し上げているように、玉木女子学園は仮処分の判定に従って申請を出すべきであるということでございます。
  110. 藤木洋子

    ○藤木委員 許されるべきことではありません。  この問題は、また人道的な面から見ても重大な問題です。松山さんは在職中から、平常時でも内科、外科、歯科など複数の医院に通院加療しなければならない健康状態です。彼女は、体が丈夫な方ではないのも、母が被爆者だからであろうかと胸を痛めている被爆二世です。松山さんにとって私学共済がどんなに大きな助けとなっていたか。松山さんの生存にとって私学共済が果たしている役割の大きさからいって、法的にも社会的にも、また人道的にも、松山恵子さんへの私学共済の資格回復は速やかに行われなければならないことは明白です。届け出制だから、学校が届け出ない限り資格は回復できないということで放置されるべきではありません。国はでき得る限りのあらゆる手だてを尽くして、資格回復に実効ある行政指導を行うべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  111. 阿部充夫

    阿部政府委員 これまでも文部省といたしましても直接に指導したこともございますし、それから都道府県を通じての指導あるいは私学済組合自身が指導をする、いろいろなことを重ねてまいったわけでございますが、特にこのたびは学校法人の玉木女子学園は、私学済組合に対して申請をすべきであるというところまで仮処分として判定が下ったというその時期でもございますので、より一層厳しく指導したい、こう思っております。
  112. 藤木洋子

    ○藤木委員 ぜひ大臣からも、その点についてお答えをいただきたいと思うわけです。大変ゆゆしきことが放置されてきたということについての反省も込めまして、ひとつぜひ強い決意で解決に臨んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  113. 森喜朗

    森国務大臣 先ほどから先生阿部管理局長の間での意見の交換を私も聞いておりましたが、文部省といたしましても、また私学共済といたしましても、大体先生お話をいただきました趣旨に沿って適切な処置を指導しておるようでございますから、なお一層事務当局にそのような方向でできるだけ努力するように、私からも注意喚起を促していきたい、こう考えます。
  114. 藤木洋子

    ○藤木委員 ここで私学済組合としてはいかがでしょうか。解雇などの係争事件はしばしば長期にわたるということが多いものですから、判決の確定を待っていては組合員の身分が不安定にもなり、不利益をこうむらせる結果になることを考慮して、組合員保護の立場で、さきにお聞きをいたしました昭和四十四年の通知を出しておられるわけですね。私学済組合が申請者に対して、指導、被指導関係でないことは当然です。しかし、あなたが組合員の保護の事実上の執行者であるはずですから、学校法人玉木女子学園に対して、取り扱い指針によって資格喪失取り消し申請、これを行うように要請することは当然できることだと思いますが、いかがでしょうか。
  115. 保坂榮一

    保坂参考人 玉木学園に対します資格喪失取り消しの申請を出せということは、これは玉木学園の代表者も呼びまして事情聴取も行い、それから職員が学園に出向きまして二回もこれに対しての提出を求め、それから電話等で数回もまたこれをしているわけでございます。そして、私学済組合といたしましては、現在の状況の中ではそれを厳しく勧告する、手続、提出を求めるということを続けていくということを、これから先も文部当局といろいろ打ち合わせしながら続けていきたいとも思います。
  116. 藤木洋子

    ○藤木委員 その辺はぜひ徹底して行っていただきたい。国会でこれだけ問題になってきたことですから、それも一度や二度ではないわけです。ですから、いよいよとなりましたら、当事者にここで申し開きをやってもらうというくらいの強い措置を私は要望したいと思います。  これで私の質問を終わらせていただきます。
  117. 愛野興一郎

    愛野委員長 午後二時四十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後二時五十二分開議
  118. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。江田五月君。
  119. 江田五月

    ○江田委員 私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案、なかなか長い名前ですが、要するに年金関係のことですので、ひとつ年金のことに絞って質問をしてみたいと思います。  年金改革ということが言われて、今も当院にもほかの委員会でその関係の法案がかかっている。現に継続している、審議をされている法案自体についての賛否はいろいろありますけれども、しかし基本的に年金に手をつけなければいけない、これは恐らくもうだれも否定をできないところだと思うのですね。国民年金がもう破産するんじゃないか、早く船から飛びおりないと泥船になって沈没する、国民年金に入っていらっしゃる皆さんの中でそういうふうにこの間まで言われておったりしたけれども、しかし、そんなことになって一体政治家は何のかんばせあって政治家のバッジをつけておれるのかということになる。これはみんなで知恵を絞って泥船にするようなことをしてはいかぬ、こう思って、この年金改革というものには真剣に取り組んでいかなければならぬと思うのです。  さて、私学共済年金、これはこういう年金改革全体の中でどういう位置づけを持っているものなのか。今回の改正の中にはもちろんまだ入ってこないわけですが、さらにこの次という展望、いろいろあると思うのですけれども私学共済の年金が全体の年金改革の中でどういう位置づけかということをお聞かせください。
  120. 阿部充夫

    阿部政府委員 私学共済年金でございますけれども先生の御案内のように、昭和二十九年に私学済組合法が成立をいたしまして共済組合年金という制度が明確につくられたわけでございます。それまでの間は厚生年金等に加入をしていたという状況にあるわけでございます。もちろん私学も民間の一つの機関でございますから、従来は厚生年金に加入しておったわけでございますが、その後、昭和二十九年の時点にそういう措置がとられたことの背景には、教育基本法等によりまして、国公私を問わず教員の処遇については適正な処遇が図られるべきだという規定がございます。国公立の教員と私学の教員とに著しい差があるのは好ましくないというような見地から、国公立学校の共済組合、その退職年金制度等とのバランスをとるという趣旨で、民間としては大変珍しいケースでございますが、私学と農林にこういうケースがあるわけでございますけれども、公務員に準じた共済年金という制度になったわけでございます。  この共済年金につきましては、最近の年金制度の一元化問題の中で、もちろん厚生年金国民年金、その他とのバランスをとりながら、全体の一元化を図っていくというのが基本的な方向であることに間違いはないわけでございますけれども、種々そういった成立の経緯等それぞれ抱えているということもございますし、にわかに一遍にはいかないということもございますので、とりあえずは厚生年金国民年金、それから船員保険、こういった系統の整理が第一段として現在国会に提案をされているわけでございます。  このことにつきましては、去る二月二十四日に閣議におきまして、そういうことを含めての今後の公的年金制度の発展を図るための措置についての方針が定められたわけでございまして、ただいま申し上げました国民年金、厚生年金保険及び船員保険制度については基礎年金の導入を図る等の制度改正を行うということを五十九年に実施をする、共済関係年金につきましては、そういった基礎年金の導入という方向を踏まえながらこの趣旨に沿った改正を六十年において行う、こういうようなことが定められておるわけでございます。そして、昭和六十一年度以降から全体の調整等について必要なことをさらに講じていくという全体の流れになっておるわけでございますので、私学共済年金につきましても共済年金グループの一員といたしまして、昭和六十年から基礎年金導入等を踏まえた改正を図るということを前提にいたしまして、現在検討に着手をしたというところでございます。  共済年金グループは、国家公務員共済、地方共済、農林、私学とございますので、それぞれ関係の省庁が四つあるわけでございますけれども、その四省庁のメンバーにさらに学識経験者等にも若干加わっていただきまして、三月の末から既に勉強会もスタートをさせまして、できれば今年内ぐらいにはからっとした案を固めて、次の国会に提案をするという方向での検討をしようという体制をとっているところでございます。
  121. 江田五月

    ○江田委員 その共済年金グループですが、これは検討に着手されたということで、どこまで検討が進んでいるかということなんですが、共済間の統合ということは一体どうなるのか。今四つあるものはそれぞれ四つ別々で、しかし、それぞれに全部基礎年金構想を採用していくということにとどまってしまうのか、それとも共済年金間の統合というようなことはお考えになっているのでしょうか、どうでしょうか。
  122. 阿部充夫

    阿部政府委員 ただいま検討に着手した段階でございますので、これから、特に年金の一元化と一言で申しますけれども年金制度の一元化という意味もございますし、それから年金に関する各種の資金の運用の一元化もやるのかどうかとか、あるいはさらには年金関係にかわりまして、それぞれ共済組合という組合があるわけでございますけれども、その辺の一般の業務はどうなってくるのかとか、いろいろな問題があるわけでございます。したがいまして、なかなか難しい問題でございますけれども年金の仕組みを統一のあるものにしていくということがまずは第一段階ではなかろうかということになるのではないかと思うわけでございます。これからの検討ということになるわけでございますけれども、したがいまして、共済組合を全部一本にしてしまうとかいうところまで考えて現在着手をしているというわけではございません。現在では、その基礎年金をどういう格好で導入するか、そして導入した場合に、全体の二階の部分と言っております報酬比例部分についてそれではどういう改善をしていくのか、さらには職域年金部分の三階と言われる部分がございますけれども、そういうものについてどう考えるのか、それも各共済なり厚生年金等とのバランスを考えながらどう整理していくかというあたりのところが、当面最大の検討の課題になるのではなかろうかと思っておるわけでございます。
  123. 江田五月

    ○江田委員 確かに、共済というのは年金だけやっているわけではもちろんないので、短期の給付とか福祉事業とかいろいろありますし、資金の問題もありますから、それを全部一緒にというわけにはいかない。けれども年金というものだけをとってみると、やはり年金というのは乗っている船が大きな船になっておらないと、小さな船で荒波にもまれたというのじゃ、例えばこの間うちは国鉄がまさに沈没しかかってえらいことになったわけですが、産業構造の変化、経済の変化などに伴って、年金の基礎が小さい場合には揺られ揺られて、まことに不安定になってしまう。  私学共済、これは年金という観点で見ると三十四万人足らずですから、国民年金、厚生年金という大きな船が一方である、国家公務員共済にしても私学と比べるとかなり大きい。そういう年金ということで見ると、果たして私学共済だけを年金で独立させておくことがいいのかどうか、これが本当に安定性を確保する道であるかという議論があると思うのですが、いかがですか。
  124. 阿部充夫

    阿部政府委員 年金制度は、安定したものとして将来とも続けていかなければいけないという仕組みのものでございますので、御指摘のような問題点は確かにあろうかと思うわけでございます。  ただ、私ども、詳しいことをよく承知しているわけではございませんけれども、三十万、三十三万という規模が非常に問題であるかどうかということについてはにわかに結論は出ないわけでございますが、先般地方公務員の共済組合につきまして、八十九の共済組合を統合する、統合と申しますか、連合体をつくって資金の融通をある程度やっていこうということが、昨年の法律で成立をいたしております。これの場合ですと、百八十九万人全体の組合員で八十九の組合でございますので一組合当たりが二万一千人ぐらい、実態で申しますと、市町村の職員に係る組合について見た場合、最低が二千人ぐらいの組合から最高が六万二千人ぐらいの組合があるわけですが、八十九集まって、これでひとまず安定したというような感じのようでございます。そういう従来の地方公務員の個々の共済組合等に比べますと、三十三万というのはかなりの規模を持っておるわけでございます。  また、現在の年金財政状況を現状のままで固定して将来のことを推計いたしますと、現在の財政で各年度の収支の関係では約二十年、さらに持っております資産食いつぶしというような格好で赤字が出るかどうかというところまで含めますと、あと三十年は大丈夫だというのが私学共済の現在の将来推計でもございますので、そういう意味で、私学共済の状況がすぐ危なくなってくるというようなことにはならないかと思うわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたような制度面での平均化、公平化等を進めていくにつれまして、いろいろな議論が出てくる可能性はあると思っておるわけでございますが、ただいま申し上げましたようなところから、直ちに私学共済も危ないから他の共済と一緒にならないとというふうには私ども、今の段階では考えておらないわけでございます。
  125. 江田五月

    ○江田委員 当面危ないからということではないのですが、私学共済、恐らく年金のうちではかなり財政的には恵まれた年金、それにもかかわらず七十九年には単年度収支で赤字になる、さらに積立金を食いつぶしていっても三十年後ですか、赤字になってしまう。これは構造的なものですよ。ですから、いわんやをや、私学共済以外のものはということで、そして私学共済は結構やっていけるから自分のところだけでやるのだ。けれども、産業によってはやっていけないところもたくさんある、やっていけないところはどうぞ勝手にしなさい、それでは済まないので、全体の助け合いの制度ですから、大きな船というのをみんなでつくっていかなければならぬ。それで、この第三段階というところに私学共済も乗ろうということだと思うのですがね。  船を大きくする話で、同じようにいろいろな学校の教職員であっても、資格があるのに私学共済に入っていない。例の東京六大学の東大を除いた部分その他というのがありますね。これはこの間同僚委員から質問がありましたので、その部分はよろしいのですが、もう一つ、同じ教職員でありながら資格のない部分があると思います。各種学校、専修学校学校法人及び準学校法人立以外のもの、これは学校教育法一条の学校ではないけれども学校、ここに勤務する者にはなぜ資格を与えないのですか。
  126. 阿部充夫

    阿部政府委員 先ほど一番初めに申し上げましたように、私学共済法が昭和二十九年に制定されました当時の当初の考え方といたしまして、教育基本法等の定めるところ等を勘案して、国公立学校の教員と私立学校の教員の待遇のバランスをできるだけとっていきたいということで、その場合に、法律に定める学校というのは学校教育法一条の学校であるというようなこともあったかと思います。その際に、そういうようなことから学校教育法一条の学校について対象にし私学済組合というのができ上がったわけでございます。  御疑問の点は、それじゃ何で各種学校、専修学校の教職員であっても、個人立てないものについては加盟しているのかというお話であろうかと思いますけれども、この点につきましては、当時から学校教育法第一条に規定する学校一つ学校法人が一条の学校ばかりではなくて各種学校も一緒に持っているというケースがしばしば存在するわけでございます。それを区別して扱うのも大変難しいというようなことから、学校法人が持っております各種学校の部分は本体の方の一条学校と同じに扱わざるを得ないというような措置がとられたと承知しておるわけでございます。  いずれにいたしましても、二十九年の発足以来既に三十年間ということで、その間にこちらの私立学校済組合に入っているグループは入っているグループ、それから入っていない各種学校、個人立の各種学校、専修学校等につきましては厚生年金その他の方のグループへ所属をして、その制度がいわば定着してきているというような状況にあるわけでございますので、現在の段階におきまして、他の年金制度に加入して定着しているものをこちらへ持ってくるというのはなかなか難しい問題になるわけでございまして、先ほど先生お話にございました適用除外校の取り扱いにつきまして、昭和四十八年に特別の立法措置で、その後さらに追加して入ってきてもいいという措置を講じたことがございますけれども、そういった際にも厚生年金を所管している側からは抜けて出ていかれるわけでございますので、それににわかに賛成できないというような議論等も出てくるわけでございまして、どこに所属するかというのは、三十年間の経緯というものがございますからなかなか難しい問題ではあるわけでございますが、いずれにいたしましても、どこかで切って、どっちかに分けなければならないので、その切れ目のところではいろいろな問題があるわけでございまして、先生の御指摘も私、本当にもっともな御指摘だと思って答弁に悩んでおるような状況でございます。
  127. 江田五月

    ○江田委員 お悩みなのだろうと思います。ある程度年限がたって制度として成熟しているとおっしゃっても、各種学校などは新しくできてきているわけですから、厚生年金という制度はそれは確かに成熟  年金意味の成熟じゃなくて歴史を持っているわけですが、各種学校、専修学校で新しくできている、しかし学校法人立じゃないもの、それは何も一定の歴史を持ってというわけではないので、やはりこういう制度をなるべく広く取り込んでいくことの方が大切じゃないかと思うのです。  ところで、ほかの年金制度と比べて私学共済の年金の最大の特色、これはどういうところにあるのでしょうか。例えば成熟度が非常に低い。現在が三・七%。そして、きのう、おとといあたり文部省皆さんにいろいろ教えていただいたのですが、どうもなかなかはっきりしないのですが、ピークになっても恐らく二五%くらいですか。厚生年金の場合が既に九%、ピークが三五%くらいまでいく。そういう基本的な違いが私学共済についであるという感じですけれども、これは一体どこに由来するのですか。
  128. 阿部充夫

    阿部政府委員 先生私学共済の特色とおっしゃいましたが、まさにそのとおりだと思います。  成熟度が三・数%というのは、他の共済制度がすべて少なくとも二けたのレベルに達しておるのに対しましては非常に低い状況にあるわけでございます。  このように成熟度が非常に低いということの原因はいろいろあるわけでございますけれども、一番大きな原因といたしましては、私立学校の数あるいは学校の規模そのものが、全体として制度の発足以後非常に大きく伸びてきたというところがあるのだろうと私ども思うわけでございます。国家公務員その他の共済組合もある程度は伸びておるかとは思いますけれども私学の場合には、昭和二十九年に発足いたしました当時が組合員数が約五万人であったわけでございますが、その後、今日現在では三十三万六千人というようなことで、この間に約七倍という規模にまで著しく急成長してきたというようなことがございます。こういった点が、成熟度が低いということの非常に大きな背景としてあるのではないかということを考えておるわけでございます。  それからまた、制度の発足そのものが、他の制度が恩給その他非常に古い歴史を持っておりますが、これに対しまして非常に新しいということ。さらには、幼稚園等で短期間の在職者が相当数いるというような点があろうかと思います。
  129. 江田五月

    ○江田委員 その急成長というのは確かに一つの特色ですが、しかし、それは、ピーク時の成熟度がどのくらいになるかということがこれほど、他の厚生年金と一〇%も開くということの理由にならないのですね。  私学共済の一番の特色は、例えば組合員で見ると、五十七年度が、男が十六万五千、女性が十七万一千。そのうち、大学の場合には男が六万八千、女が四万八千ですが、特色がもろに出ておるのが幼稚園で、これは男性一万二千九百、女性が七万一千。それから、被扶養者数が五十七年度で全体で一人当たり〇・九二。幼稚園というのは、全部で三十三万六千人の組合員のうちの八万四千人おるわけですからかなり大きな部分ですが、その幼稚園の被扶養者数が一人当たり〇・二六人だというのですね。これが非常に大きな特色です。つまり女性が多くて、幼稚園の先生を若いときに何年か勤めてすぐにやめる、そうすると通算年金を受ける人数が物すごく多いですね。  そういう特色というのが年金統合の中で一体どういう光と影、明暗を持っていくのかということを、これはきのう、おととい一生懸命議論してもどうもなかなかわからないのですが、きちんと勉強しなければいけないことじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  130. 阿部充夫

    阿部政府委員 幼稚園に勤務する女子教員という御指摘がございました。まさにその点が組合員の構成として非常に特色のある点でございまして、先生おっしゃいますように、比較的短期間でやめて交代していくケースが多い、あるいは扶養家族も少ない、いろいろなケースがありまして、それが通算退職年金の受給者が多くなっているというようなことにも響いているかと思います。通算退職年金を受ける者はそのほかにも、例えば国立を定年退職して私学に移った方々とかいうようなケースも相当数あろうかと思いますが、いずれにいたしましても、幼稚園に勤務する方々の数が大変多いということは、まさにそのとおりであろうかと思うわけでございます。  先生がおっしゃいました、これが他の制度との統合の——通算退職年金という制度はどこにでもあるわけでございますので、その率の多い少ないによって年金を仮に統合するとした場合に特段の支障になるかどうかということについては、私ども、必ずしもそこまでは現在の段階で考えておらないわけでございます。支障になるとまでは思っておらないわけでございます。  いずれにいたしましても、話をもとへ戻して恐縮でございますけれども、財源や何かを統合してしまうかどうかというような前に、まずはその掛金の率を平準化するとかあるいは給付内容を平準化するというあたりのところから手をつけていきませんと、なかなか全体の統合問題の議論に入れないということもあるわけでございまして、私ども十分勉強が行き届いていない点もございますが、ただいま先生から御注意いただきましたような点は、これからの研究に際しまして十分勉強しながら議論を進めていきたいと思っております。
  131. 江田五月

    ○江田委員 私も障害になると言っているわけじゃないんで、ただ、そういう大きな特色がある制度を統合していく場合に、その特色というものがどう影響していくのかということをきっちり把握しておかないといけない。例えば通算退職年金の場合には、幼稚園に若いころ五年ほど勤めた人が幾らぐらいの年金をもらえるのか、しかし、それが統合年金になって最高五万円ということになると一体上がるのか下がるのかという影響がすぐ出てくるわけですからね。  ところで、積立金の運用状況で、実はきょうは時間を短縮しろということでもう時間がなくなってしまったのですが、私学共済というのは非常に効率的に運用されておって、五十七年度の運用利回りが厚生年金国民年金と比べてはもとより、国公共済、地方共済と比べても、平均すると〇・五%かあるいはもっと、そのくらい私学共済だけが運用を上手になさっておるわけですが、これは福祉運用が随分少ないのですね。何かこれでいいのかという感じはしないですか。
  132. 愛野興一郎

    愛野委員長 簡潔に明確にお願いします。
  133. 阿部充夫

    阿部政府委員 この資産運用につきましては、各共済を通じまして法律によりまして何割以上をどちらに充てるという基準があるわけでございますが、私学共済の場合にはその基準の中で現実に運用をいたしておりますが、他の共済の場合にはその基準の中での運用がなかなか難しいということで、特例措置によってその基準をオーバーした運用をしておるわけでございます。そのオーバーをしております部分というのが、家屋の建築等のための組合員への貸し付けという関係の部分であろうかと思います。  私学共済について、それがそれほどの額を用意しなくても済んでおるということの事情の裏には、先ほど先生がおっしゃいましたように、幼稚園等が多いとか女子の職員が多いというようなことから、みずから家を建てるということが余り必要がないということのようでございますので、これは特に意図的に貸さないということではなくて、それだけで済んでしまっているという状況でございます。そのために、もうちょっと高い利子回りの方にお金が使える状況になっているわけでございます。
  134. 江田五月

    ○江田委員 これは効率的に運用するのがいいのは間違いないのですけれども、しかし年金の積立金を使ってどんどん金がもうかる。金がもうかればサラ金やっても何やってもよろしいということではもちろんないわけで、これはやはりそれなりの制度趣旨、目的に合致した運用でなければならぬ。  そこで大臣、これは私学共済の積立金だけでできるわけじゃないのですが、参議院の方で予算委員会のときに、たしか民社党の伊藤郁男さんでしょうか、年金客船というお話をされたのを、予算委員会ですから大臣もお聞きだと思います。  年金の積立金の有効な活用の方法として、還元融資のような形でしょうか、第三セクターでもひとつつくって、そして三万トン級の定員二千名ぐらいの豪華客船をつくって、年金客船でお年寄りへのプレゼントにしたらどうだ。それでなくても海洋国家日本、大臣も私も、「我は海の子白波の」というような歌で育った。しかし、今や我は海の子じゃないのです。我はプールの子みたいなことになっていまして、何か海洋国家日本がどうも海を忘れているのではないか。そして何だか知らぬが、教育の現場でも経済の現場でも、夢やロマンがなくなってしまっているときに、ひとつ豪華な客船をつくって老後、定年後、世界一周となるとなかなか大変ですけれども、クルーズを楽しんでいただくとか、あるいはそういう船ですからお年寄りと若者と一緒に洋上研修をさせるとか、海洋スクールとか、あるいはまた海で亡くなった皆さんの慰霊祭を催すとか、いろいろな使い方があると思いますが、そういうことに使ったらどうかという海員組合の組合長さんの提案があるわけです。夢物語だというふうにおっしゃらずに、大変なロマンのある提案ですから、年金関係している閣僚のお一人として、財政面などいろいろあると思いますが、この夢のある提案を大臣はどうお考えになるか、感想をちょっと伺って、質問を終わりたいと思います。
  135. 森喜朗

    森国務大臣 先般、参議院の予算委員会で民社党の伊藤さんから、そのような構想についてのお尋ねといいますか御提案もございました。一月四日の朝日新聞もすぐ取り寄せまして、今先生のおっしゃるとおり豪華客船の構想というのが出ておりました。海洋国家、ロマン、年金受給者が海上の慰安旅行ができる、いろいろな意味で多目的に、それぞれの目的が大変機能する、そういう意味では年金の船構想というのはおもしろいアイデアだなというふうに率直に申し上げることはできます。  この役なんですが、さて船をどう維持していくか、それから船員の問題、いろいろあるんですね。また委員長にしかられるかもしれませんが、かつてドルが余ってまして政府専用の飛行機があったらどうかという構想があって、ちょうど私が官房副長官をしておりました際に、飛行機を買い入れたらどうかという話で進めていったら、さあ乗組員をどうするのか、パイロットをどうするのか、所属はどうなるのか、今の日本では物すごく難しいのですね。そういうことを考えていきますと、アイデアとしては大変おもしろいのですが、これから後の維持をどうするかということはもちろん検討してみなければなりませんけれども、大変問題があるのではないか。  もう一つは、年金の積立金というのは、これは将来の年金受給者に充てられております財源でありますから、有利にまた安全に運用するということが基本的な原則でございますから、本当に組合員の福祉に役立つことがやはり本来の目的でなければならぬというふうに考えます。先生お話しのとおり、他の年金よりも成績がいいということだけでありまして、現実には幾つかの問題があるわけですし、将来にも、いま御議論のとおり大変な問題も出ておったわけでございますから、そういうことを考えますと、構想として大変おもしろい、こういうふうに申し上げて、実現はやはり大変困難じゃないかな、こういう感想を申し上げるのが限界ではないかと思います。
  136. 江田五月

    ○江田委員 最後に一言。政府の専用機とはやはり違うと思うのですね。広く大勢の人に乗っていただく、楽しんでいただくものですから。私は、政治というのは、そういう夢やロマンをどうやって実現するかに粉骨砕身するということがなければいけないので、お役人の頭ですぐ、これは財政的にピンチですからだめですよと言うのではなくて、そこはひとつお役人に大いに知恵を絞ってもらう、大いに苦労してもらうという姿勢を政治家は持たないと、これは国民に夢を与えることにならない、こういう気持ちがいたしますので、ひとつよろしくお願いいたします。  終わります。
  137. 森喜朗

    森国務大臣 江田さんの夢ある御質問に同じ世代としてどうも……。確かに御指摘のとおり、役所から言えば、この程度大臣答弁ですよということになるわけでありますから、できれば、大変いい構想だと思いますので、政府の立場で賛成だからぜひ進めたいとか、そんなことが言えることではないくらいは先生もよくおわかりです。政治家ですから、お互いにこういういい話は各党みんなで相談をして、議員でいろいろな構想やいろいろな計画を考えてみる、そして議員が政治家という立場でバックアップしていく、こういうことも一つのまたこれからのテーマとして、江田先生、また御提案をされた方々が中心になってお考えになったらいかがでございましょうか。そのときは、私も一政治家でありますから、一生懸命にバックアップいたします。
  138. 愛野興一郎

    愛野委員長 中西績介君。
  139. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、私学共済問題につきましては、今まで多くの人が細部にわたって討論をいたしましたので、きょうは私学助成問題について質問を二、三いたしたいと存じます。  そこで、臨調答申があり、それを受けた結果が私学助成につきましても大変な影響を与え始めております。したがって、私は、私学の果たしておる役割は大変大きなものがあるということ、そしてこの部分を見落としてはならないと思うわけでありますけれども文部省なり大臣、どういう位置づけをされておるのか、この点についてまずお聞かせいただきたいと思います。
  140. 森喜朗

    森国務大臣 中西さんも今御質問の中で御指摘がありましたように、私学は量的にも質的にも我が国の学校教育に大きな貢献をいたしております。特に高等教育の面につきましては、私学が八割役割負担しております。したがって、単に高等教育のシェアのところで八割というだけではなくて、今日の日本の繁栄は、私学卒業生が極めてエネルギーの供給をしたという面では大変大きな役割を果たしてきている、私はそのように認めているわけでございます。  こういう見地から、しばしばこの委員会でもお話が出ましたように、私ども私学振興助成法、それこそ命をかけてこの法案の制定をした。その精神にのっとりましてでき得る限り、単にお金を国が面倒見るというだけではなくて、この私学助成法制定の意義は、国が助成することによって私学の位置づけを国が認める、そういう意味で私は大変大きな意味を持つものであるというふうに思っておるのです。したがって、当時議員立法で私どもが立案をしたわけでありますが、かなり財政当局とも折衝の結果、後退を余儀なくされたことも事実でございますけれども、額の問題ということよりも、国が私学予算という面を助成することによって位置づけた、認めだということが私は極めて意義が大きかったと考えております。これまでいろいろ経緯はございましたけれども、この精神にのっとって、そしてまた、これからもこの精神を貫いていくという意味で、私学振興助成にさらになお一層の努力をしていきたい、こういうふうに私どもは考えているところでございます。
  141. 中西績介

    ○中西(績)委員 今大臣言われましたように、なかんずく高等教育機関におきましては大変な役割を果たしておるということが、文部省から提出されました資料を見ても明らかです。特に高等教育機関におきましては七六・四%、高等学校で二七・九%、幼稚園で七四・五%というこの比率は、やはり大変大きなものを占めるわけであります。  そこで、私立学校の経常経費がどういう推移をしていったかということについて一、二お聞きしたいと思います。特に、五十七年度から臨調を実施されまして以来、例えば大学におきましては五十七年度がゼロシーリング、伸びも全く停止をし、五十八年マイナス二・三%、五十九年マイナス一二%というように次々に引き下げてきたわけですけれども、この影響が、これは高等学校、幼稚園も同じなんですが、どういう形であらわれてきたかということを説明していただきたいと思います。
  142. 阿部充夫

    阿部政府委員 昭和五十七年度以降、御指摘のような状況にあるわけでございますが、それの影響が具体にどうなっているかということにつきまして、私ども十分把握をしているわけではございません。ただ、学納金の現状について見れば、一時の石油ショック等の狂乱物価の時代に三〇%もアップをしたというような状況から、逐次安定をしてきたわけでございます。特に五十七年、五十八年、五十九年といったあたりにおきましては漸次アップ率が下がってきて、五十九年は三・二%というところで、学生に対する影響というのは従来に比べて比較的少なかったということは喜んでおる点でございます。  なお、学生一人当たり経費等の面からということでございますけれども、これにつきましては、恐縮でございますが、事柄の性質上、各大学実態等調査いたします数字が五十六年度までしか出ておらないわけでございますので、ちょうどこの問題が起こりましたとき以降の点が今調査中の数字ということになっておるわけでございます。  五十六年までの状況で申し上げますれば、学生一人当たり経費の問題を初めといたしまして、教員一人当たりの学生数でございますとかあるいは学生一人当たりの校舎面積等々のいろいろな教育条件等の面につきましては、私学助成がその時期充実されていたということの影響もあろうかと思いますけれども、逐次国立大学との格差も狭まってきているというような傾向にあるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、決算レベルが、今、五十七年度決算が出かかってこれについての調査をしているという状況でございますので、その影響は直ちにデータとして現在の段階ではまだ持っていないわけでございます。
  143. 中西績介

    ○中西(績)委員 今お答えいただきました、例えば私立大学学生納付金の平均額の推移、これを見ましても、五十九年は確かに最低の率になっていますね。ところが、今私は非常に問題として提起をしておかなくてはならぬと思いますのは、具体的には実際に五十七年度から配分の方法を見直していったわけですね。ですから、生徒一人当たりの校納金、納付金の平均額の推移だけでこれを見てまいりますと、それでは学内における還元率がどうなっていったかとかあるいは一人一人の教師の研究費、こうしたものがどうなっていったかというようにより具体的にこれは検討していかないと、大きな問題を残していくのではないかと思っています。  特に、先ほど局長が指摘をされました国公立における差というのは、例えば学生一人当たりの経費、五十一年、今ここにありますのは五十六年と対比しておりますけれども、国立の場合、私学の場合、そのアップの率なりこれを比較した場合にどうなのか。  例えば学生一人当たりの納付金額を見ますと、五十三年で国立の場合が二十万四千円、片や私立の場合が五十七万九千円、二・八倍だ。ところが五十八年におきましては、三十三万六千円に対しまして八十四万九千円、したがってその倍率は二・五倍だという計算が成り立つけれども、しかしそのことは、今度はもう少し分析を加えてまいりますと、私学が高いということで、これに追いつけということで国立を引き上げていった経緯があるわけですね。そうしますと、この倍率だけで見ますと縮まったという見方が出てまいりますけれども、実質的に、ではそのことが、先ほど申し上げるような学内における状態がどうなっていったか、展開されておるか、こうしたところまで深く入らないと十分な検証にはならぬのではないかと私は思うのです。特に私が指摘をしたいと思いますのは、学生一人当たりの納付金額だけを見ると、先ほど言われたとおりです。  さらにまた、高等学校の場合、ではどうなのかということを見てまいりますと、高等学校等におきましては、その点が必ずしもそういう中身にはならないわけでありまして、五十八年度までしか出ておりませんけれども、だんだんは減ってきておる。波打ちがありまして、例えば五十五年度あたりにおきましては三・六%、五十六年度では四・六%、それが今度、五十七年度になりますと五・三%になってくるわけですね。五十八年度では四・七%で、五十四、五年度ごろに比較しますと、そこよりある程度上昇していますし、さらに幼稚園などにおきましても、そうしたことがある程度言えるわけですね。ですから、全般的に見ますと、確かに大学の場合にはそうしたことな言えるけれども内容的に、ではどうなったかということを私は見なければならぬと思うのです。  そういう意味で五十七年度あるいは五十八年度のこうした問題を、五十八年度におきましては「私立大学等経常費補助金配分方法の見直しについて」というのがあるわけでありますけれども、それぞれ一つずつを見ていきますと、金額をゼロシーリングなりあるいは二・三%マイナスすることによって、それぞれ幾つかの制限枠を設けていったわけでしょう。そうしますと、その中身についてできたら説明をしていただきたいと思うわけです。特に配分の方針、そして一般補助の見直し等がずっとあるわけでありますけれども、その中で、私は特に五十七年度で申し上げますならば、一般補助の見直しを見ますと、傾斜配分は実態などを考慮して厳しく見直していこう、こういうことが決められておるようですね。  そうしますと、例えば「総定員に対する在籍者数の割合」だとか、いろんなことでずっと掛けられておりますけれども、これが結果的にはどういう影響が出てきたかということの分析がされておるかということをちょっと聞きたいと思っているのです。  それともう一つは、特別補助の増額をやったわけですから、この特別措置の中身、それをより具体的に、どういうような措置をしたのか、この点についてお答えいただければと思っています。
  144. 阿部充夫

    阿部政府委員 五十七年度以来、特に補助金配分方式を検討し、ある程度改善を図ってきたわけでございますけれども、これは一つには、五十七年度以降補助金総額が抑えられる、あるいは減額をされるという状況の中で、その配分をそれではできるだけ適切にやっていきたいというような配慮から行ったものでございます。  したがいまして、一つには、私学教育研究条件を向上する方向へ誘導するような方策としてどういう配分がいいかというような点と、それからもう一つには、余裕のある私学にはこの際少し我慢をしていただきたいというような、二つのことを念頭に置きながら配分改善をやってまいったわけでございます。  その結果、ただいま御指摘がございましたように、一般補助の見直しにつきましては、従来から行っております傾斜配分を、教育研究条件等について非常に意欲的に対応しておられる学校にはたくさん行き、その辺の対応が十分でないところには少なく行くというような形で、厳しくというのはそういう意味でございますけれども、そういう格好での見直しを行ったわけでございまして、定員に対して水増しが行われているというようなところに対しまして、従来以上に厳しい水準で、水増しの率が高いものに対しては厳しく臨むというような措置を講じたわけでございます。あるいは、学生納付金収入に対する教育研究経費支出の割合につきましても、要するに、学生から取ったお金をどれだけ直接学生に還元しているかということになるわけでございますので、これも教育意欲のあらわれという観点から、これらについて従来以上にウエートをかけた配分方法に改めるというようなことを行ったわけでございます。  以上のほかに、増額措置の見直し等につきましては、教員の給与水準が高いというようなもの、給与水準そのものを問題にしているわけではございませんけれども、要すればこういう厳しい時期に、財政事情に若干でも余裕のあるところについては我慢をしていただこうという趣旨から特別増加配分をこういう学校については行わない、あるいは収入超過で黒字が相当あるところについてはやはり同様に考えていくというような、幾つかの措置を講じたわけでございます。  五十八年度につきましても、先般三月の末に配分をしたばかりでございますが、先ほど申し上げましたような一般補助の見直しにつきまして、五十七年度に一挙にやっては余りにも影響が大き過ぎるというようなこともございまして、二年間に分けてやろうとした部分もございますのでその続きの部分をやる。と同時に、専任教員に関する認定基準を厳格にすることであるとか、役員報酬が著しく高額であると思われるようなものについての補助金カットというような、幾つかの新しい措置も加えたわけでございます。  今後もこういった方向を、いろいろ諸般の事情を検討しながら、必要な部分についてはさらに改善を加えていきたいと思っておるわけでございますが、五十七年度配分を行ってまだ一年という時期でもございますので、五十七年度のこの配分方法の改善結果がどう出ているかというところを、私どもも現在の段階では的確につかむに至っていないわけでございます。調査は非常に難しい調査になると思いますので、にわかに悉皆調査等の格好ではできないかと思いますけれども、各学校法人関係者等にいろいろ実情を聞くというような格好で実態の把握には努め、今後の配分方法の改革に役立てるようにはしたいと思っております。現在の段階で、まだそういう影響が出るだけの年月がたっていないということを申し上げたわけでございます。
  145. 中西績介

    ○中西(績)委員 五十七年度教育条件を向上させるという視点からそうした見直しの中身について基準を、さらにまた余裕のある私学の場合にはある程度我慢をしてもらう、こういう指摘のようでありますけれども、まだはっきりそれが出ておらないという回答でありますが、例えば水増し率をこういうふうにして一定の中に組み込んでいくという事柄等について、各私立大学なり何なりに対して、これは私学振興財団でやるのですか、いろいろな説明なりをして十分認識をさせた上でやるわけでありましょうけれども、この点はどうですか、どこでやるようになっているのですか。
  146. 阿部充夫

    阿部政府委員 私学振興財団から各学校法人に対して説明をし、周知徹底を図っているわけでございます。
  147. 中西績介

    ○中西(績)委員 そういたしますと、水増し率なりにそういうものが加わってくるということになり、したがって一定の傾向として、水増し率が今平均は一・四ですか、そこいらだと思うのですが、その傾向が少しでも落ち込んできた、こういう傾向でもあらわれればいいのだけれども、こうした助成金でもって、制裁じゃありませんけれども、こうしたものを加味したようなやり方が、逆に今度はこれをはね上げるという結果になりはしないかということをおそれておるわけなんです。  と申しますのは何かといいますと、全体的にこういうふうにずっと制限を加えられてまいりますと、生徒をたくさんとることによって校納金をちゃんと手にすれば何も問題ないじゃないかというような考え方があるわけですね。この前も申し上げたように、五倍もとっているところがあるわけですからね。こういうようになってくると、助成金とは全然切り離して物を発想していくということになってくるわけですね。ですから、私学財団はいつも、信頼だ信頼だと言っているけれども、その信頼というものがどれだけの信頼関係の中で成り立っていくかという、そことの関係が減額すればするほどこれから重要になってくるわけですから、こういう措置がどういう影響になってあらわれるだろうかということが私は一番興味がある、と言ったら言い過ぎだと思いますけれども、注目しておるのですが、その点はどうでしょう。
  148. 阿部充夫

    阿部政府委員 水増し率の問題につきましては、五十七年度に刻みを厳しくしたということを先ほど申し上げたわけでございますが、これにつきましては、過去私学に対する経常費助成を始めました時期以降、年々厳しくしてまいってきておるわけでございまして、五十七年度の前数年間はそのままにしておった時期がございますが、その前の段階で相当年を追って厳しくしてきたというようなことがございます。その結果が、水増し率で、私学助成を始めましたときの一・八倍という全国平均が一・三倍台までに今日きている。現在一・三倍台くらいのところで横ばいという状況でございますが、そういう意味では、この水増し率に着目をし、それに厳しく対応するということが、結果的に私学教育研究条件を引き上げることに役立ったという過去の実績はあるわけでございます。  ただ、五十七年度以降の問題につきましては、まだ私どもも十分把握しておらないわけでございますけれども、そういうようなこともございますので、先生から先ほど指摘がございましたけれども配分方針はこういう考え方で、こういうふうに改めるのだぞということを、各学校法人十分理解をしてもらうという努力は大切なことでございまして、向こうが知らないうちに削っていたのでは意味がないわけでございますので、そこのところは十分理解をしてもらうということで周知徹底を図り、そして各大学に適切な対応お願いするということをやっておるわけでございます。今後いろいろな機会に各大学実態等は聞いて、私どもの判断の資料は得たいと思っております。
  149. 中西績介

    ○中西(績)委員 ただ単に水増しだけでなしに、そのほかの問題として特に特別補助の増額措置でありますけれども、この点につきまして、傾斜配分の上で百点以上のところで教員の給与水準が高いものについて抑制していく、あるいは条件は同じですが、収入超過となっておるところ、こういう内容になっておるわけですね。それに医学部の場合がありますけれども、この二つの点で、例えば教員の給与水準が高いというこの実態なんですけれども、国立あるいは公立の場合に比べますと私学の場合には、担当の学生数が多いとかあるいは時間数が多いとか、いろいろな条件がたくさんあると思うわけでありまして、こうしたことを加味しながら、どの程度をもって給与水準が高いというこうした指摘をするのか。  それからもう一つの問題として、収入超過という場合、本来ならば、私学の場合は収入超過がそんなにあってはならないわけですね。なぜならば、学生から徴収をした金というものは、本来ならば還元をすべきなんですから。あるいは、その他の条件として、環境整備なりいろいろなことをどんどんしていくということが大変重要ですから、教育条件整備ということが中心に据えられておらないというのが今までの私学であったわけですから、ここに重点的にしていかなくてはならないのに、依然そうした問題があるとするならば、どういう点でそういうような収入超過が出てくるのだろうかということを感じるわけでありますけれども、この点についてお気づきの点があればお答えください。
  150. 阿部充夫

    阿部政府委員 給与水準についての御質問でございますけれども、給与水準について高いと申しますか、余裕があるというふうに判断をいたしました基準といたしましては、一つには、五十七年度予算積算基礎単価を一〇〇といたしまして、それに対して当該大学の教員の平均給与指数が一五〇以上というものにつきましては、これはかなり経営に余裕があるのではないかというような判断から、傾斜配分増額をするプラスアルファの部分をカットするという措置を講じたわけでございます。それから、それより若干下回るもので、指数にいたしまして一二五以上一五〇未満という水準のものにつきましては、傾斜配分増額をいたしますプラスアルファ分の半分だけをカットする、こういうような措置を講じて、こういう財政事情の中ですから我慢をしていただくというふうに考えたものでございます。  なお、もう一点のいわゆる黒字問題でございますけれども、五億円以上の黒字を持っているというようなケースにつきましては、これまた傾斜配分のプラスアルファは一切しないというような措置を講じたわけでございます。  先生から御指摘がございましたように、ある特定の目的を持って、例えば近く校舎を建て直しする予定だというようなことで黒字を抱えているというケースは当然理解できるわけでございますけれども、明確な目的等も持たずに黒字だけを抱えているというのは、これは本来学生に還元すべき性格のものであろうということでもございますので、そういう余裕のあるところについては、そういう点を十分考えていただくという意味も込めましてプラスアルファの配分はしないというような措置を講じたわけでございます。
  151. 中西績介

    ○中西(績)委員 そういう大学幾つかあるのですか。学校名ではなくて件数で答えてください。
  152. 阿部充夫

    阿部政府委員 手元に数字を持っておりませんけれども、件数はごく少なくて、一けた、数件だったと思います。
  153. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうした結果が、五十六年度に比較しますと、五十七年度では実質的な減額になっているわけですね。ゼロである場合は実質的には減額ですから。今言うような見直し方式によって、どの程度財源的に浮いてきたのですか。
  154. 阿部充夫

    阿部政府委員 いろいろな形でやりましたので必ずしも的確ではないかもしれませんが、収入超過法人が設置をする大学関係、いわゆる黒字の関係カットをしたということで財源が浮きましたのが十三億、それから教員の給与水準の関係カットをいたしました金額が八十一億円等ということになっております。
  155. 中西績介

    ○中西(績)委員 結果的には、全体的なあれからいたしますと、大学のみでいいますと五十七年度は二千八百三十五億円という金額になっておるわけでありますから、額としてはわずかだけれどもこうした結果になっておるわけですね。  そうしますと、今度は二・三%の減額をされた五十八年度の場合には、さらにそれを厳しくしていったわけですね。傾斜配分についても、あるいは専任教職員に係る認定基準の改正あるいは役員報酬あるいは医学部の補助金抑制、さらにこの特別補助、そしてもう一つは私立大学に対する制裁措置、こういうものを加えていった結果は、五十八年度はまだ決算は出てないと思うのですけれども、大体この範囲内でいきそうなんですか。
  156. 阿部充夫

    阿部政府委員 五十八年度配分でございますけれども、五十七年度に比べまして予算措置が六十五億円の減になったわけでございまして、その中での配分をいたしたわけでございます。  現在、先ほど御報告申し上げましたように、細かくその配分を機械的にコンピューターでやりましたので、最後どの部分でどれだけ削ったのかというような分析がまだできておらないわけでございますが、ちょっと先ほど申し上げました五十七年度の分についてつけ加えて御説明させていただきますと、黒字の法人で十二億、教員の給与水準が高い大学で八十一億とか、さらに先ほどの中で一般的に傾斜配分を強めたということでカットした部分が二百九十三億等々となっておるわけでございます。こういった形でカットをいたしますと同時に、片方ではいわゆる当然増の経費があるわけでございまして、学部、学科がその後ふえているとか学生定員がふえているというような関係の当然増がありますので、そういうものを相殺した結果が、五十七年度はおおむね予算どおり二千八百三十五億の範囲内におさまったというような仕組みでございまして、五十八年度につきましても同様にいろいろな形でカットをすると同時に、当然増を賄うという格好でこの金額の中におさめるわけでございますが、その内訳につきましてはもう少し分析をしてみませんと、まだ配分をしたばかりでございますので、ちょっとその数字が出ておりません。
  157. 中西績介

    ○中西(績)委員 この五十八年度でやりました専任教員の認定基準について一、二お聞きしておきますけれども、今までと専任教員の認定の基準が違ったところ、どこが違ったのか、この点について説明をいただくのが一つと、もう一つは、補助対象の今度は教員でなしに職員の方の基準というのは何かあるのですか。
  158. 阿部充夫

    阿部政府委員 専任教員の認定方法でございますけれども、従来から原則として三つの点にわたって認定しておるわけでございますが、一つは発令の関係でございまして、明確に専任教員だという発令をしているかどうか。それからもう一つは、給与月額につきまして基準額、例えば教授、助教授等の場合基準額を一応十二万円といたしまして、それ以上の者でなければ専任とは認めないということ。さらに、勤務関係につきましては、一週間の割り当て授業時数が平均六時間以上であることというのが従来からの判断基準であったわけでございますが、なお実態として問題のあるケース等もございますので、五十八年度に改正をいたしまして、発令の関係につきましては、年度当初、四月末日までに発令された者に限るというようなこと。それから給与の関係につきましては、十二万円というのが、毎月十二万円以上もらってなければいけないということでございまして、一月、二月給料が削られるというようなケースの人は入れないということにいたしました。さらにまた勤務関係につきましても、一週間の担当授業時数が六時間というところは変えないわけでございますが、これは正規の課程で六時間ということに限定をいたしました。別科でございますとかいろいろな講習会でございますとか、そういうたぐいのものをやっている時間はカウントしないというようなことで、専任教員の認定方法を厳格化いたしたわけでございます。  なお、専任職員につきましても認定の方法が定まっておるわけでございますが、ただいま手元に資料を持ってまいりませんでしたので、後ほどまた先生のところにお届けするようにいたします。
  159. 中西績介

    ○中西(績)委員 今説明のありました給与の関係でありますけれども、十二万という基準、これは将来的には動くのですか。何を基準にして、大学の場合には教授、助教授が十二万で講師、助手が十万、そして高等専門学校の場合が教授、助教授十万、講師、助手が八万というふうにしてあるわけですけれども、基準は何でしょう。
  160. 阿部充夫

    阿部政府委員 この十二万円という基準は、十二万円程度ならばいいという意味ではございませんので、私学で非常に安い給料で教員を雇用してそれを専任だと称しているというようなケースがあるものですから、十二万円以上もらってない者はそもそも認めないぞ、こういう趣旨の基準でございます。そういった意味で、各私学実態等を見ながら、高い私学、安い私学あるわけでございますけれども、安いといってもこれぐらいもらっている者でなければ教授等として認めないということでございまして、これは各私学実態等を見ながら、いわば明確な計算式等で定めたものではなくて、ほぼ妥当と思われる水準を考えたものでございます。したがいまして、今後の給与の実態等に応じて逐次、これはまた年次を追って引き上げ等は考えていくべき性格のことであろう、こう思っております。
  161. 中西績介

    ○中西(績)委員 私がこのことを指摘いたしますのは、やはり従前からありました私立大学なりあるいは、この前も出ておりましたけれども幼稚園、こういうところの賃金が非常に安いということでもって、いろいろ今まで指摘をされてきたところです。したがって、この分について私たちがやはり常識的に考えて認められる金額というのは、今実態に応じてそちらに合わせてこれは設定しているものですからこのように低くなっておるけれども、しかし、これはそこに合わせるのではなくてむしろそうしたものを引き上げるべきだという、こうした指導なり何なりがなされた中でされないと、大学の基準が十二万だなんていうようなことになりますと、これはちょっと解せないわけでありますから、この点はこれから後見直すときにぜひもう一度検討をしていただくように一つ指摘をしておきたいと思うのです。  それから、勤務時間の問題でありますけれども、一応六時間という時間を設定しておりますけれども、ここで言う「役職を兼務している者。」という役職兼務者として挙げられるものは何と何と何が挙げられるのか。例えば大学などで言う図書館だとかあるいは研究所の所長さんだとか、いろいろそういう役職者としてどのように認定をするか。私、大学の場合にはよくわかりませんけれども、何を役職者と言うのか、こういうところを御説明いただきたい。
  162. 阿部充夫

    阿部政府委員 これは、国立大学等の場合とほぼ同じように考えておるわけでございまして、通常教官が兼ねているようなポストでございまして、例えば学部長でございますとか研究所長、分校などがございますときに、分校の長でございますとか、あるいは学生部等の学生部長をやっているとか図書館長でございますとか研究施設の長でございますとか、そういうたぐいの者ということでございます。
  163. 中西績介

    ○中西(績)委員 では、そういう方の場合には六時間未満であっても認めるということになるわけですね。  そこでもう一つ、この中でお聞きしておきたいと思いますのは、「住居が遠隔地にあり、集中講義と考えられる者。」というのがありますね。その程度なり何なりは、何か基準みたいなものがあるわけですか。
  164. 阿部充夫

    阿部政府委員 恐縮でございますが、ただいま手元に資料を持っておりませんので……。私学振興財団で、ただいまの基準に即して具体に適用しているわけでございますけれども、恐らく内規等をもって措置をしているかと思います。いずれにいたしましても、非常に遠距離にありまして、飛行機で飛んできて月に一回だけ講義をしていくというようなたぐいの者は専任教員と認めるのはどうも適当でない、こういう判断に立っているものでございます。
  165. 中西績介

    ○中西(績)委員 今お答えいただきましたように、専任教員認定基準につきましても、今まで発令関係が非常にルーズであったものがある程度直される。これは正しいと思う。ただ問題は、給与関係について先ほど意見を申し上げましたように、大学教授でこういう僅少な額で一つの基準にするということが私は一つ問題だと思います。  と申しますのは、これが役との関係、遠隔地との関係だとかなんとかに響いてくると私は思います。ですから、一定の、例えば三十万なら三十万という枠なりを固定すれば、これはもう遠隔地におってときどき集中講義的なものをやってそれでごまかすというようなことはないと思いますね。そして、学内におけるいろいろな、やはり大学の場合には教授会なり教学部門の確立をされておらないところはみんな問題を起こしている。そして、そこに必ずと言っていいほど理事者側が勝手なことをやっておる。こういうのはパターンがあって問題が出てくるわけでありますから、そういうものがなくなるためには教学部門の位置づけというものを、金銭的にだけはできないわけですけれども、そうした面から、そして、教授としてやはり責任ある体制をどうとっていくかということ等含めまして、中央の東京だとか大阪だとかいうようなところでは教授が集めやすいという条件はありますけれども、今度は地方になりますとそれが大変困難になるわけです。ところが、逆に今度は地方の場合の方が賃金等については安いという結果が出ているわけでしょう。そうなってくると、経営面からいろいろな問題が出てくるわけですから、結果的には遠くからときどき出てきてやってもらうことによって穴埋めをしていく、こういうのが出てくるわけですね。そうなりますと、結局大学としてのあり方がまた問い直されることになるわけです。そういう悪循環にならぬようにするためにも、こうした問題等につきましてももう少し精査していただくということが、これから後見直しをしていく過程の中では大変重要ではないかと感じます。  そのためには、先ほど説明のあっておりました配分にかかわる見直しのところを見ますと、例えば五十八年度については、特別補助の中に地方の私立大学における教育研究を対象として予算措置をしていく、あるいはこの教育研究を重視していくというようなことは大変結構なことだと私は思うし、と同時に、今言う身分をどのように確保し保障していくかということが、大変また重要だと私は思います。そうした意味で、この点について今指摘をしたわけでありますけれども、ぜひ勘案をしていただきたいと思います。  そこで、時間がだんだんなくなってまいりますが、五十九年度の場合にはマイナスの一二%ですから三百三十一億五千万という大変な額に大学の場合にはなります。そうしますと、今までの額とは今度は断然違いがあるわけですね。ですからこれだけのものの中で、今までの学生数は減るとは限りませんし、教員数にしましても、全般的に経常費が落ちるということはあり得ないと思うのです。ということになってまいりますと、これだけのものが、五十八年度はまだ正確に出ておりませんからなにですけれども、五十九年度このようなマイナ又予算で果たしてこうした措置ができるのかどうか。この点、見通しはどうでしょう、これは大変困難なことだと思いますけれども
  166. 阿部充夫

    阿部政府委員 御承知のように、実態的に申し上げますれば、今回の私学関係予算は、これこれの必要な額を積み上げてということで決まったことではなくて、シーリングによって削られたわけでございますので、それに合わせた対応ということで私ども苦慮いたしておるわけでございますが、具体の配分当たりましては、先ほど先生に御指摘いただいたような専任教員の認定基準の問題でございますとか、さらには、従来からやっております傾斜配分をさらに効果的に措置をするというようなこと等、いろいろなことをあわせ考えてこの問題に対応していきたいと思っておるわけでございます。  もちろん基本的に、従来から人件費等につきまして標準経費の二分の一ということが政令でも既に決まっておりますような大綱については大事にしながら、別途そういう措置によって、傾斜配分の強化とそれから専任教員の認定基準の強化というようなこと等を念頭に置いて対応していきたいということで、今検討を開始したところでございます。
  167. 中西績介

    ○中西(績)委員 このように大きな削減をしたわけでありますから、これから後のこの見直し等につきましては、一応この予算を見ますと、傾斜配分なりをする場合の条件になっていくと思いますけれども、例えば先ほども申し上げましたような地方大学を重視するとかこういう面で百億円、従来はゼロであったものを百億増枠するとか、こうした私たちが今まで指摘をしたり要請をしておった部分については、ある程度満たされておる部分が出てきています。しかし、全般的にこの私立大学の——奨学事業はまた変な問題が付随をいたしますけれども、これは抜きにいたしまして、他の部分は全部マイナス予算になっておるのに、こうした特別補助だけは困難の中で百億というものを組んでいったことは私は大変評価はいたしますけれども、しかし反面、そうなりますと、この三百三十一億五千万に今度は百億が加わるわけですから四百三十一億五千万という、このマイナス予算を組んだ中でどうしていくかということになるわけですね、全般的には。  ということになってまいりますと、どういうところに力点を置いてこれから後——ここでは一応こうして金額が示されておりますからこの範囲内でやるということになれば、もう何も私がここで指摘をしたり論議する必要もなくなってくるわけでありますけれども、いずれの形にいたしましても、個々にあるような問題やこういう減額の率にこだわらずに、もう少し私学助成というものを、私たちが期待したりあるいは多くの人が納得のいく中身でもってこれをどう補完していくかということが、これから極めて重要だろうと思います。  本来ならばこうして削らなければ一番いいのですけれども、こうして削られた関係から、予算が確定をしておる中でこれをやるわけでありますから、その影響面がいろいろなところにあらわれてくる。先ほど言われておりました生徒の納付金が大学だけは下がっておるといういい傾向が出ておるわけでありますが、これが来年になるとまた急上昇するということになると直ちに影響が出てくるわけですから、そうしたものを勘案しながら、国民皆さんに納得いただけるよう、逆に積極的に公表して皆さんとのコンセンサスを得ていく、そうした積極姿勢が欲しいものだと思うわけです。  したがって、そうした問題等について、大臣、どうでしょう。これから後の私大の将来をこれは決定づけていくと思いますね。というのは、財政事情がよくなるという見通しは何もないわけですから。むしろ、このことは固定化されるかあるいは増大される可能性だって考えなくてはならぬ。そうなればなるほど、それをむしろ今度はどう歯どめをかけていくかということになれば、やはり私学の今まで果たしてきた役割を認めることに私たちは国民皆さんに説得をかけなくてはならぬだろうし、より以上に、これだけのものをしましたということを多くの皆さんに納得いただける条件を出していかなくてはならぬ。そうした際に何かお考えでもあれば触れていただければと思っております。
  168. 森喜朗

    森国務大臣 冒頭に申し上げましたように、私学が高等教育機関に占める比率のみならず、国の繁栄のために大変大きな役割を果たしてきてくれた、そういう形で私学法を制定して国が私学というものを位置づけた、こういうことに私立学校助成というのは意味がある、このように私は申し上げました。私学法を制定いたしましてからこれまでは、言葉はよろしくありませんが、とにもかくにも全体額を積み上げることに最大の努力をしてきましたし、配分の仕組みにつきましても、どちらかといいますと割と粗野にやってきたという、言葉はよくありませんけれども、とにかく積み上げていくことと、そして積算の仕方についても教員あるいは学生数というような形できましたから、大きいところはどんどん膨れ上がっていく。先ほど中西先生から評価を受けました地方の大学などについては、逆に助成の面ではそう大きな評価はできなかったという嫌いもございましたから、幸い——幸いと言うとおしかりをいただきますが、そういう財政状況臨調等の指摘、そしてこの三年間の抑制期間、こういうことを一つ機会に、今反省を幾つかしながら次への胎動の模索をしておる、こういうふうに御理解もいただきたいと思うのです。  そういう中で、確かにおっしゃるように、このまま固定化されるという面も出てくるのかもしれませんけれども、いろいろな形でいろいろな積算のやり方、そしてとにかく最終的には私学全体はできるだけ国が二分の一に到達でき得るようにするという、このたいまつといいますか、のろしは絶対おろしてはならない。そういう方向を一つ展望しながらも、めり張りをつけて、そして私学が建学の精神を本当に生かし、また地方の特色も生かしながら、いい意味で国が財政的な補助を位置づけていけるような仕組みにするにはまだしばらく時間がかかると私は思うのです。補助制度を設けて、これは単なる補助ではございませんでかなり大がかりなものでございますから、そういう補助のことを考えてまいりますと、いろいろと試行錯誤は繰り返さざるを得ないのではないかなという感じがするのです。  そういう意味で、私学全体にもいろいろお考えいただきたいし、文部省もまた財団にも十分指導をしながら、的確な助成策を今後ともきちっと示していけるようになお一層の努力をいたしたい。今の段階では、御指摘の点、御心配がありますような点については、十分留意をしつつ、なお一層、本来の意義を私学助成という意味で高からしめるような方向で最大の努力をするように事務当局努力を続けていきたい、こういうふうにひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  169. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は思いますのは、例えば東京の場合であるなら若者が集中する、志向型という一つの顔を持っているわけですからここにはたくさんの若者が来る。そうなってまいりますと、数を余計に持っておる私学の場合には、東京であれば一定の、一二〇台の平均ぐらいの水増し率ぐらいで何とか今の財政事情の中でも私は措置できるんではないか、こう思うわけですね。ところが、今度地方に行きますと、なかなか残り得ない子たち、そして残っておるけれども、今度は学納金をたくさん取ればなお逃げ出す、こういう傾向があるわけですから、少なくともそういう地域における教師の賃金体系を見てみましても、なかなか国公立のところまでに追いつかないという、こういう状況もある。九州産業大学なんかの場合には、表は追いついておるけれども、実質的には別個、理事長の頭の中で全部がさばかれていくものですから、そのあれは三号も四号も出しておるものよりも低いという、選別をしていますから、こういう状況等があるわけでありますけれども、いずれにしても、そうした部分における地域というものを、もう少しやはり重要視したあり方をこれからどう追求するのかという点で、見直す際には、先ほど申し上げたような点も含めてぜひ考慮の一つに入れていただきたいと思います。  そこで、話を今度かえまして、学校法人の問題が出たものですから、学校法人運営調査委員の新設をいたしておるようであります。ここで言う調査指導助言というのを簡単に説明していただけますか。
  170. 阿部充夫

    阿部政府委員 仮称でございますけれども、この委員を設けたいということで予算措置をお認めいただいたわけでございますが、この学校法人運営調査委員、この名称がいいかどうか、なお検討いたしたいと思っておりますけれども、各大学をめぐりまして、それぞれの学校法人運営の概況につきまして事情を聴取し、あるいは現場を見せていただき、指導と助言をしていただくというようなことをねらいとしておるものでございます。個々具体に検討する中身といたしましては、理事会や評議員会の運営等が的確に行われているかどうかとか、あるいは財政運営が、個々の細かい点に立ち入ることはないと思いますけれども、全体として適切な状況であるかどうか、諸規程がちゃんと整備されて実行されているかどうか等々の、学校法人運営の最も基本的と思われるようなたぐいの事項についての助言をしていただく、こういうことをねらいとしておるものでございます。
  171. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、その金額は八百万ですから、わずかな金額でありますが、どの程度そういう指導なり何なりで図られるのか、しかもそれは定期的にするのか、どういうふうなものを考えておられるのか、お答えください。
  172. 阿部充夫

    阿部政府委員 現在、文部大臣所管の学校法人が五百七十二法人ございますが、大体、年にその一割程度のものについて、したがって五、六十校ぐらいにつきまして、委員の方二十人をお願いするつもりでおりますが、手分けをしていただいて現地を見ていただくというようなことで考えておるわけでございまして、機械的に順番に回っていくことにするか、あるいは若干問題のありそうだと思われるところから回るか、その辺のところは大変難しい問題でございますので、委員の方をお願いした段階で、またやり方を御相談いたしたいと思っておりますが、純粋に機械的に回るというのでも余り意味がないだろうというふうには思っておるわけでございます。
  173. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、二十名という数のようでありますけれども、これは機関としてはどういう位置づけになりますか。と申しますのは、この前からいろいろ問題になっておりますように、助言指導ということであるようでありますけれども、例えば経営者の寄附行為に照らしてどうだこうだというようなことまでも含んでやられるかと思うのですけれども、第三者機関的なものとしてこれを取り扱うのか、それとも文部省直属のものとして一つ文部省が各学校法人の中に入ることができるというような考え方を持っておるのか、この点どうですか。
  174. 阿部充夫

    阿部政府委員 学校法人に対しましては、現在文部省が所轄庁という立場で、学校法人に対する指導助言をするという権限は法律上持っておるわけでございます。ただ、私学自主性を尊重するというような事柄もございますので、文部省の職員、課長等がすべてじかに学校法人に入っていくということは必ずしも適切な方策でもなかろうというようなことがございますので、いわば一般の第三者の方から非常勤の職員としてこういうポストについていただいて、それで文部省の権限の一部をその方々にやっていただく、こういう性格のものでございます。これにつきましては、現在、私学等を視察等し、指導助言する制度として視学委員制度というのがございまして、これは大学の教授の方々等にお願いをして、この方々私学を回って主として教学面の問題について拝見をし、意見等を述べていだだくというような仕組みでございますけれども、それと同じ性格のものを学校法人運営面について新しく設けたい、こういうものでございます。  したがいまして、身分は一応非常勤の文部省職員ということになるわけでございますが、権限関係といたしましては文部省指導助言の権限の一部を行使する、ぎりぎり法律的に言えばそういうことになるわけでございます。
  175. 中西績介

    ○中西(績)委員 いろいろまたトラブルが起こらなければいいと思いますので、この点はくれぐれも注意をしていただくということが一つと、それから、文部省なんかがいろいろな事情聴取なりをするときに必ず欠落をしておるのは、教学側の意見が欠落をするのですね。理事者側、経営者側の意見というのは割合に入りやすいし、呼ぶ際にもそこを呼ぶわけですね。ところが教学側の代表者なりそういう人たちの意見というのがなかなか入りにくい、こういうしきたりになっております。今までの慣行みたいなものがあるようですね。ですから、こういうことを考えますと、今問題になる大学というのは、ほとんどそうした教学側の意見が通らないところですから、そういうものが十分加味されるように、もしこれを動かすといたしますならば十分意見なりの取り入れ方を勘案しておいていただきたいと思うわけです。  それともう一つは、委員の選択でありますけれども委員の選択も幅広い選考と申しますか、そうした視野を持つ人でなくてはならぬわけですから、この点は固定された観念でなくてぜひ十分留意をしていただくように、これは要望になりますけれども、申し添えておきたいと思います。よろしいでしょうか。
  176. 阿部充夫

    阿部政府委員 御指摘のような点は十分注意をして考えていきたいと思います。
  177. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、法人幼稚園の問題について、一昨年でしたか、随分論議いたしまして、未法人幼稚園助成問題について最終的には法律を三年間延長するという、こうした結果になりました。この点で私は、今までの経過を申し述べる時間がございませんからもう触れませんけれども、結果的には三年間延長で、最も最初に触れるものは五十九年で触れるわけですね。そしてあと残りのものがその補助金指定を受けた年次によって年度が——何年までいくかちょっと私、今年次については失念いたしておりますけれども、こうした措置をしてきたわけであります。この点、実質的に効果があったのかどうか。私の言う効果というのは法人化がある程度さらに進んだかどうかということで、お尋ねします。
  178. 阿部充夫

    阿部政府委員 私立の、個人立幼稚園の学法化でございますけれども昭和五十一年に私立学校振興助成法が施行になりました当時、学校法人立幼稚園というのは三千三百九十九園、私立幼稚園全体の四二・五%だったわけでございます。それが今日、昭和五十八年度におきましては五千六百二十八園が学法化された学校法人立幼稚園ということで、全体の六三・一%ということで、私立幼稚園の学法化ということは、全体としてはかなり進んできているということが言えようかと思います。  それから具体に、先般のいわゆる三年延長問題との関連で御説明をさせていただきますと、昭和五十一年、五十二年、五十三年、五十四年と、この四カ年間から補助が開始されまして、補助を受けました個人立幼稚園が千九百七園というのが全体の数でございますけれども、今日までに学法化が済みましたものが九百三十三園、それから都合で廃園になったものが二十四国、それから補助を辞退してちょっと学法化の見込みが立たないというものが百六十二園ということで、現在残っておりますのは、七百八十八園が未学法ということで残っておるわけでございます。この数字は五十八年三月三十一日現在の数字でございますので、その後この学法化の最初のグループが期限切れになります六十年三月三十一日までの間に年度として二年あるわけでございますが、五十九年三月三十一日は既に通過をしておりますが、まだその集計ができておりません。五十九年三月三十一日、六十年三月三十一日という段階でこれがどこまで改善されるかということはにわかに判断いたしかねるわけでございますが、それにいたしましても、この一カ年間に学法化が行われました園の数は百九十二園ということで、ある程度進行はしていると思います。  これが一番最後のぎりぎりのところでばたばたといくのか、それとも最初のところでどっといって後はなかなか出てこないのかというあたりのところはまだつかめておりませんが、いずれ近日中に五十八年度末、ことしの三月三十一日現在の数字がつかめようかと思うわけでございまして、その辺の状況等を見ながらまだ判断をしていかなければならないと思っておるところでございます。
  179. 中西績介

    ○中西(績)委員 一定の数は進んでおりますけれども、まだ残っておるものが相当数あるわけでございます。その点はわかりましたが、問題は、三年間を設定したその理由というものをもう一度言っていただけませんか。
  180. 阿部充夫

    阿部政府委員 これは議員立法で関係議員の先生方が御提案なさったものでございますので、私の方から理由を申し上げるあれではございませんけれども、当時の提案の理由を便宜私の方からお取り次ぎをさせていただきますと、こういう方式でやってきたけれども、なお相当数のものが個人立のまま残ってしまうということで、それによって教育界に混乱が起こっては困る、そのために三年間の期間の延長をいたしたいということでございまして、国会での御論議の間にお話が出ましたこととしては、この三年の間に幼児教育問題と申しますか、幼稚園問題等について十分検討して、ある方向を出していきたい、そのための期間でもあるというような御説明が行われていたと記憶しております。
  181. 中西績介

    ○中西(績)委員 この分については、三年延長されるそれより二年前にも、五年の期限切れが来るので、この点については論議をしておく必要があるのではないかということで私は随分指摘をしましたし、たとえこれは議員立法であっても、行政の側もそれを受けて、どのようにこれから施行するのかということをやはり明らかにする必要があるのではないかということを、五十七年の前ですから五十五年ごろに随分論議をしました。しかし、しないまま来て、また三年延期し、その三年の間に、そうした余裕期間を持ってそこでやろうじゃないか、こういうことであったわけですけれども、それがまたなされずに過ごされようとしておるわけです。したがって、こうした問題につきましては、大変残念でありますし、私自身もその論議に参加をしておりましただけに、三年がたってしまいますと私たちにもその責任の一半があるかと思いますけれども、いずれにしましても、こうした幼稚園問題、特に四月十四日の新聞を見ますと三団体が一本化しました。今まで三団体に分かれていろいろ確執があったものがいきなり一本化したので、私、驚いてしまったのですけれども、その理由はまたここには明らかになってきております。こうしたことを考え合わせていきますと、我々側の対応がおくれていったのでは大変ではないかということを考えますときだけに、中曽根さんの提案されておる臨時教育審議会、三年間の設置期間の中でやろうとしたって、これはまた間に合わなくなってくるわけですから、当時論議の過程の中にもおられたと思うのだけれども大臣、これから以降、大体どういうスケジュールでこれらの問題についてやられるつもりですか。
  182. 森喜朗

    森国務大臣 幼稚園に私学助成の一環として助成をするという見地から、まずここからスタートをしたものでございますから、当時は個人立あるいは宗教法人等いろいろ問題が招来したことは先生御承知のとおりであります。今管理局長から申し上げましたとおり、当時といたしましては、とりあえず個人立につきましては五年以内に学法化の措置をしてほしいということでスタートをいたしたわけでございます。それがはかばかしくないということで三年——この当時は私も大蔵委員長時代で、ちょっと文教委員会を離れておりましたので非常に心残りでございましたが、皆さんに三年間延長していただいたということで、かかわり合いを持つ者として私も実は大変喜んでおったわけでございます。その後、さらに一層法人化へ文部省といたしましても努力を、また団体を通じて、また自由民主党という立場からも側面からできるだけその方向にお願いをしておるわけでありますが、いよいよ最終年度ということになりました。  文部省といたしましては、最終年度を迎えたので、改めて各県に重ねて法人化への努力をしてもらうように指導していくということしか、この場からは申し上げることがないわけでございます。しかしながら、今お話がございましたように、三団体が統合いたしましたのも、従来この問題でいろいろとぎくしゃくしておった面もございまして、これも三年間延長の一つの方途を決めました際に、やはり団体が一つになってお互いにそうした点で前向きに進めていくように、枝葉のいろいろな議論や諸制度については文部省も十分後押しをしていくという形で話し合っていただいたのが三団体が統合になった経緯でもございます。今先生おっしゃった、急に三団体が一諸になったなという実感をお持ちのように、そういう方向に行きましたものですから、そういう中でなお一層学法化に進める方向で、業界といいますか、幼稚園の中でもそれぞれいろいろな形での努力がこれから続けられるのではないかというふうに考えて、期待もいたしているところであります。  先ほど申し上げましたように、文部省としてもなお一層法人化への努力を重ね、ここに大塚先生、石橋先生以下船田先生、それぞれこのことに十分御関係深き先生方もいらっしゃいますので、その方向への対応策も党としても考えていただきたいし、また中西先生初め各党の皆様方にもいろいろな意味でお力添えも賜りたい。事は善意から来たことです。私学の補助をできるだけ幼稚園にもしてあげたい、設置の主体がいかなる立場であっても、できるだけ私学助成の恩恵にあずからせてあげたいという善意から来たものでございますから、できるだけそういう方向でなお一層の努力をして何とか解決の方途を見出していきたい、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
  183. 中西績介

    ○中西(績)委員 いずれにいたしましても、こうした問題があるということを提起いたしまして論議を起こしていくことが大変重要ですし、内容的にもある程度皆さんがこの点については注目をしておると思いますので、ぜひ文部省もあわせて取り組みをやっていただかなくちゃならぬと思っていますから、要請を申し上げておきたいと思います。  私学問題で最後に、きょうは高等学校問題についてはもう触れることができませんでしたけれども、いずれにしましても、このように高等学校も一〇%、幼稚園も一〇%減ですから、この影響というのは必ず出てくるわけです。したがいまして、確定をしたことでありますから、財源が減った場合にそれがどう父母に影響していくのか、あるいはこの内容にどう影響するかということを、私たち自身がよほど調査なり何なりをいたしまして把握をしておかないと、今まで昇り調子に参っておりました私学教育環境なりあるいは教育内容が、またぞろ大きく後退をするというようなことになってまいりますと大変なことでありますから、こうした問題を付して十分な調査をし、そして文部省は私たちにその調査の資料なりをどんどん出していただいて、それをもって今度はやはり、教育というものには金が要るのだということを国民皆さんにどう知らしめていくのか。そのことによって、今大変厳しい財政事情の中におきましても、教育にはこのように必要なのだということを提案していくこと、そして国民のコンセンサスを得ることが今一番大事ではないかと思います。したがって、そうした中身をこれから後も私たちが十分検討できるように、文部省としてもぜひ徹底した調査をしていただきたいと思っています。この点ひとつお願いですが、よろしいですか。
  184. 森喜朗

    森国務大臣 私学助成の重要性にもかんがみまして、文部省といたしましても、先ほど申し上げたように、まだ補助制度をとりまして歴史も浅い制度でございますけれども、国会論議を通じましていろいろな問題が指摘されてきておりますので、調査等も、あるいはまた私学へのいろいろな意味での自覚も期待をいたしながら、大学の自治、大学自主性を尊重するその範囲の中において、そうした前提において文部省としても十分な資料もとり得るように最善の努力をしてまいりたい、このようにお答えを申し上げておきます。
  185. 中西績介

    ○中西(績)委員 きょうは、幼稚園だとか高等学校の中身について細かく論議することはできませんでしたけれども、幼稚園あるいは高等学校の場合には、地方交付金なりそうした中である程度補完をされる中身はあるものですから、直接的の影響の出ぐあいというものは、徐々に出始めてはおりますけれども大学などに比べますと急激な出方はいたしておりません。今のところ高等学校あるいは幼稚園などにおきまして出ておるのは、七十九億五千万程度に抑えられておりますから、いよいよこれから本格的にこれが出てくる。ところが、その影響たるや、ものすごく多くの人に出ていくわけですから、この点はぜひ詳細な資料をつけ加えていただきたいと思います。  最後に、国士館問題で二つの点だけお聞かせいただきたいと思います。  一つは、国士館はいよいよ四月二十日から授業を開始しておるようでおります。ところが、学部長の任命だとか教員の採用が、まだ理事会の承認がないためにできておりません。教学運営に大きな支障が来され、穴のあいているものが既に出始めておるわけです。あのように柴田氏は引退はしたけれども、依然としてその体質がそのまま残っておるといたしますと、何ら影響そのものは減っておらないわけでありますから、このような当然過ぎる問題については指導なり何なりをしていただく。代行の人がいらっしゃるわけです。理事長代行あるいは学長代行がおるわけですから、こういう皆さん指摘をしていただいて、学生にその影響がなくなるようにする。  そして、さらにもう一つは、問題になっております十一人の解雇の問題は高等学校に影響が出ているわけですから、こうした問題等を含めまして、ぜひ早急にこの解決を求めるべく指導あるいは助言ができないものかどうか。この点どうでしょうか。
  186. 阿部充夫

    阿部政府委員 国士館大学につきましては、先般来お答えを申し上げておりますように、柴田氏が退陣をし、理事体制の整備につきましてのある一つの提案が出されておるわけでありまして、御指摘の学部長の任命問題あるいは十一人の解雇の問題等が、当面いろいろ問題があることも私ども十分承知をいたしております。  したがいまして、現在文部省といたしましては、それにいたしましても新しい理事体制をどうつくっていくかということに一番基本があると考えておりますので、その問題についての判断をすべく、鋭意諸般の事情の聴取等を現在行っている最中でございますが、いずれにいたしましても新理事体制が発足し次第、まずは第一に取り組むべき課題であるということを既に大学当局側に申しておりますし、できるだけ早く体制の整備をし、この問題の解決を図るように文部省としても協力をして努力していきたい、こう考えております。
  187. 中西績介

    ○中西(績)委員 今、理事者側の体制を整えることが先決であるということを局長が言われますけれども、そこの手を経ずに教学側で措置のできる部分ですね。何人かの理事がいなければそれをかけることはできませんけれども、承認を求めるこてはできませんけれども、今何人かいるわけですからね。理事者はいるし、措置のできる教学側はちゃんとしておるわけですから、そこで選んでいる者で認めるという方式をとれば、そう大した問題じゃないわけですね。確かに先ほど言っておった首切り問題等については、いろいろまた問題が深いかと思いますけれども、いずれにしましても、以前からある、例えば大西教授の問題だとかあるいは今の学部長任命をどうするのか、教員をどうするかという、この程度理事者を新しくせずとも可能性ある問題なんですね。そして十一人の中でも、今言うように、高等学校に直接合影響の出ておるようなこういう問題等についてもある程度考える、こうしたことは今私は経過措置としても大変重要ではないかと思うのですね。いち早くこれがやはり立ち直っていっておるという姿を示すためには、このことが今一番要求されている中身ではないかと思っています。したがって、この点ぜひもう一度検討していただいて、指導なりあるいは助言をしていただくようお願いをしておきたいと思います。  それともう一つは、学長問題も理事長ができなければできぬという問題になるのか、それともこの学部関係なりで十分検討し、学内からということでもってやりさえすれば、あるいは教授会なり何なりで論議が進められていき、教学側でそのことが進められていく可能性だってあるわけですから、こうした問題等も含めまして、もう一度検討してください。この点をぜひお願いをしておきたいと思います。どうでしょう。
  188. 森喜朗

    森国務大臣 中西さんがこの問題に対しまして、大変貴重な御提言やまた御注意の喚起もいただいておりますことは、文部省にとっても大変ありがたいことだと思っております。  結論から申し上げて、いましばらくこの推移をお待ちをいただきたい。文部省としても最大限の努力をいたしておるところでございます。いろんな経緯がございますし、刺殺事件を初めといたしまして不正な問題、いろいろございますけれども、やはりこの一つ背景の中には人間関係も非常に複雑なものがあるというふうに、私も外から従来、第三者という——今では第三者の立場で言えないかもしれませんが、大臣に就任する前からこの問題を外から見ておりまして、複雑なやはり人間関係、もう少しわかりやすく言えば、派閥みたいなものがあったというような感じがいたします。  したがって、文部省のとるべき一番大事なことは、何とか正常な学園にして、光輝と伝統ある国士館大学の名誉を回復させること、そして卒業生や今国士館に学んでいる学生たちに誇りを持ってもらえること、胸を張ってもらえること、そのことがやはり文部省のとるべき最大の目的でなければならぬ、こう考えておるのです。そういう中で一番大事な問題は、柴田さんが責任をとる、このことが最大の刷新の重点であったわけでありますから、その方向で国士館は動き出してきたわけでございます。そしてまた、刷新派がいろんな角度で要求しておりました、バリケードの問題もございましたが、あえて文部省国士館に向かって双方の御意見を承りながら、原状に回復してもらって、バリケードも外していただいたわけです。このように文部省としては、派閥の抗争みたいなものを認めるというのにはいささか問題があるかもしれませんが、現実の問題として双方の意見を十分に吸収しながら、学園の正常化に一つ一つ努力を傾けておるところでございます。  理事長、学長についても文部省お願いしたいということも、文部省が推薦することがいいか悪いかという問題は今検討いたしておりますものの、そのこともやはり従来の人間関係から少し離れて公正にして、そして世間から見ても納得ができ得るような新しい学長、理事長国士館を健全に再建をしていくということが願いであるわけでございます。そういうことも考えながら、幾つかの御指摘がありましたことも、なるほど早期に個々に手を打てることはあるかもしれませんけれども、そのことで、いろいろとアクションを起こすことによってまた複雑な人間関係が絡み出してくる、そんなふうにも考えられますので、せっかくこうして全体的に改善の方向に動き出したわけでございますので、先生からいただきました御注意も十分踏まえ適切な処置をしながら、改善の方途を今見出して努力いたしておりますところでございますから、十分そうした御注意、方策等も承りつつ、なお一層、もう少し努力することにお時間をかしていただきたい、このように申し上げて、お願いをいたしておきます。
  189. 中西績介

    ○中西(績)委員 この国士館問題は十年戦争だったわけですから、このことが一定の方向性が出てくるということは、全国における、今問題になっている私学問題、こうした問題について一定の方向性というものを我々が持ちながら、これから進めることができる可能性をここから導き出すことができると思うのです。ですから、そうした意味でも私は大変重要な国士館問題である、こういう位置づけをしておりますだけに、今申し上げたように皆さんが腰を据えていただいて、この部分については可能な限り早い時期にそうした問題を出すということを前提にしながら論議を進めていただくことを要請し、そのことがまた、今まで長いこと頑張ってきた皆さんの労に報いることにもなります。ぜひこの点は認識をしておいて措置していただくことを最後に要請をいたしまして、終わります。
  190. 愛野興一郎

    愛野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  191. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、内閣提出著作権法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。森文部大臣。     —————————————  著作権法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  192. 森喜朗

    森国務大臣 このたび、政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、著作物、実演、レコードの複製物の貸与に関して著作者、実演家及びレコード製作者の権利を創設するとともに、私的使用のために複製する場合に公衆の利用に供される複製機器を使用することの制限及びその機器を使用させた者の責任について規定して著作者等の権利の適正な保護に資することを目的とするものであります。  昭和五十五年六月ごろ出現した貸しレコード店は、現在では全国千九百店舗を超えるまでに普及し、それに伴いレコードの販売量が減少すること等を通じ、著作者、実演家及びレコード製作者の経済的利益が大きな影響を受けるという事態が生じています。このようなレンタル業は、その他の著作物についても今後普及し、同様の問題が生ずることが予想されるところであります。  また、音楽テープの高速ダビング業、ビデオソフトのダビング業等新たなコピー業の出現により、著作物が大量かつ簡便に複製され、著作者等の利益が害される事態が生じています。  以上のような著作物のレンタル業及びコピー業の普及により生じている新たな事態対応して、著作物等の公正な利用に留意しつつ著作者等の権利の保護を図るため所要の措置を講ずることが、今回の著作権法の一部改正の趣旨であります。  次に、本法律案内容について申し上げます。  第一は、著作物、実演又はレコードの複製物の公衆への貸与に関する著作者、実演家またはレコード製作者の権利の創設であります。  まず、貸しレコードのように著作物をその複製物の貸与により公衆に提供することについて、著作者に新たに権利を認め、著作者の許諾を得なければ貸与できないことといたしております。  ただし、図書館、視聴覚ライブラリーにおける貸与のような非営利かつ無料の貸与は著作者等の許諾を得なくともできることとし、また、書籍、雑誌の貸与については、貸し本業が長年自由に行われている経緯等にかんがみ、当分の間、適用除外することといたしております。  また、貸しレコードについて、実演家及びレコード製作者に権利を認め、商業用レコード発売後一月から十二月の範囲内で政令で定める期間は実演家、レコード製作者の許諾を得なければ貸与できないこととするとともに、その期間経過後は報酬を支払わなければならないことといたしております。  この報酬請求権は、文化庁長官が指定する団体があるときは、当該団体によってのみ行使できることとし、この報酬の額について当該団体と貸しレコード業者との間の協議が成立しない場合には、文化庁長官の裁定を求めることができることといたしております。また、許諾に係る使用料を受ける権利についても当該団体によって行使できることとし、その場合は使用料の額について同様に文化庁長官の裁定を求めることができることといたしております。  第二は、公衆の利用に供される複製機器を使用する複製に関する改正であります。  まず、公衆の利用に供することを目的として設置されている音楽テープの高速ダビング機等の自動複製機器を用いて複製する場合は、私的使用を目的とするものであっても著作権法で許される私的使用のための複製に該当せず、著作者、実演家等関係権利者の許諾を得なければならないことといたしております。ただし、私的使用のために複製する本人については、民事上の責任を問い得るにとどめ、罰則を適用しないこととしております。  一方、営利目的でこのような複製機器を関係権利者の権利の侵害となる複製に使用させた者については、罰則を適用することといたしております。  なお、自動複製機器のうち文献複写機については、複写の分野における集中的な権利処理体制が整っていないことにかんがみ、当分の間、これらの改正の対象から除いております。  このほか、昭和四十五年の本法制定以降の物価の上昇を考慮して、著作権侵害罪等の罰金額の上限を引き上げる等所要の改正を行うことといたしております。  また、この法律の施行期日は、昭和六十年一月一日といたしております。  最後に、昨年十一月に議員立法により成立しました商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する暫定措置法を廃止し、それに伴う経過措置を講ずることといたしております。  以上がこの法律案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。  何とぞ十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  193. 愛野興一郎

    愛野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  194. 愛野興一郎

    愛野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  195. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る二十五日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二分散会      ————◇—————