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1984-04-19 第101回国会 衆議院 決算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十九日(木曜日)     午前十時十二分開議 出席委員   委員長 横山 利秋君    理事 近藤 元次君 理事 白川 勝彦君    理事 谷  洋一君 理事 東家 嘉幸君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 貝沼 次郎君 理事 神田  厚君       榎本 和平君    小坂徳三郎君       桜井  新君    塩崎  潤君       河野  正君    島田 琢郎君       近江巳記夫君    草川 昭三君       三浦  隆君    中川利三郎君       阿部 昭吾君  出席国務大臣        法 務 大 臣 住  栄作君  出席政府委員        内閣法制局第一        部長      前田 正道君        環境庁大気保全        局長      林部  弘君        法務大臣官房長 根岸 重治君        法務大臣官房会        計課長     村田  恒君        法務大臣官房司        法法制調査部長 菊池 信男君        法務省民事局長 枇杷田泰助君        法務省刑事局長 筧  榮一君        法務省保護局長 吉田 淳一君        法務省入国管理        局長      田中 常雄君        林野庁長官   秋山 智英君  委員外出席者        内閣総理大臣官        房参事官    石出 宗秀君        内閣総理大臣官        房参事官    麻植  貢君        総理府賞勲局総        務課長     田中 宏樹君        警察庁交通局交        通指導課長   山崎  毅君        大蔵省主計局司        計課長     加藤 剛一君        大蔵省銀行局銀        行課長     千野 忠男君        国税庁税部法        人税課長    谷川 英夫君        国税庁税部資        料管理企画官  中川 浩扶君        国税庁調査査察        部調査課長   木下 信親君        文部省大学局医        学教育課長   佐藤 國雄君        文部省体育局学        校保健課長   青柳  徹君        文部省管理局企        画調整課長   福田 昭昌君        厚生省公衆衛生        局精神衛生課長 野村  瞭君        厚生省医務局指        導助成課長   柳沢健一郎君        厚生省保険局医        療課長     寺松  尚君        厚生省援護局業        務第一課長   森山喜久雄君        運輸省自動車局        業務部旅客課長 豊田  実君        運輸省自動車局        整備部整備課長 佐々木 毅君        自治省行政局選        挙部政治資金課        長       山崎宏一郎君        会計検査院事務        総局次長    佐藤 雅信君        会計検査院事務        総局第四課長  磯田  晋君        最高裁判所事務        総長      勝見 嘉美君        最高裁判所事務        総局総務局長  山口  繁君        最高裁判所事務        総局人事局長  大西 勝也君        最高裁判所事務        総局経理局長  川嵜 義徳君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長 上谷  清君        最高裁判所事務        総局刑事局長  小野 幹雄君        最高裁判事務        総局家庭局長  猪瀬慎一郎君        日本電信電話公        社総務理事   寺島 角夫君        決算委員会調査        室長      石川 健一君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   城地 豊司君     島田 琢郎君   玉城 栄一君     草川 昭三君   塚本 三郎君     三浦  隆君 同日  辞任         補欠選任   島田 琢郎君     城地 豊司君   草川 昭三君     玉城 栄一君   三浦  隆君     塚本 三郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十六年度政府関係機関決算書  昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (裁判所所管法務省所管)      ――――◇―――――
  2. 横山利秋

    横山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、裁判所所管及び法務省所管について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  裁判所所管審査に関し、国会法第七十二条第二項の規定による最高裁判所長官の指定する代理者から出席説明する旨の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱い委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 横山利秋

    横山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 横山利秋

    横山委員長 それでは、順次概要説明を求めます。  まず、裁判所所管について概要説明を求めます。勝見最高裁判所事務総長
  5. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 昭和五十六年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算概要を御説明申し上げます。  裁判所所管歳出につきましては、当初予算額は、千八百八十億五千四百二十九万円余でありますが、これに、大蔵省所管からの移しかえ額六億七千二百六十八万円余、昭和五十五年度からの繰越額十五億九千百二十五万円余、予算補正追加額二十九億二百五十四万円余、予算補正修正減少額四億一千八百八十万円余、差し引き四十七億四千七百六十七万円余が増加されましたので、歳出予算現額は、千九百二十八億百九十七万円余となっております。  これに対しまして、支出済み歳出額は、千九百十二億二千五十一万円余であり、歳出予算現額との差額は、十四億八千百四十五万円余であります。  この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は、五億八千六百二十九万円余であり、不用額は、八億九千五百六万円余であります。  不用額となった経費は、人件費五億六千四百十二万円余と、その他の経費三億三千九十四万円余であります。  裁判所主管歳入につきましては、歳入予算額は、十二億五千二百二十万円余であります。  これに対しまして、収納済み歳入額は、十七億二千四百二十八万円余であり、歳入予算額に対し、四億七千二百七万円余の増加となっております。  この増加は、相続財産相続人不存在のため国庫帰属となった収入金等増加によるものであります。  以上、昭和五十六年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  6. 横山利秋

  7. 佐藤雅信

    佐藤会計検査院説明員 昭和五十六年度裁判所決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  8. 横山利秋

    横山委員長 次に、法務省所管について概要説明を求めます。住法務大臣
  9. 住栄作

    住国務大臣 昭和五十六年度法務省所管一般会計歳入歳出決算の大要を御説明申し上げます。  法務省主管歳入につきましては、予算額は六百九十七億二千四百五十一万円余であります。  これに対しまして、収納済み歳入額は七百四十九億三千三百六十二万円余であり、歳入予算額に比べますと、五十二億九百十一万円余の増加となっております。  この増加しました要因は、罰金及び科料三十二億二千九百七十二カ円余刑務所作業収入十八億二千三百八十六万円余が増加したことによるものであります。  次に、法務省所管歳出につきましては、当初予算額は三千四百三十億七千五十四万円余であります。これに予算補正追加額四十億七千六百十八万円余、予算補正修正減少額九億六千四百十四万円余、予算移しかえ増加額五百六十四万円余、前年度からの繰越額二十五億七千八十万円余、予備費使用額七億九千三百四十七万円余、差し引き六十四億八千百九十六万円余の増加がありましたので、歳出予算現額は三千四百九十五億五千二百五十万円余となっております。  これに対しまして、支出済み歳出額は三千四百八十億七千九百五十九万円余であり、その差額は十四億七千二百九十一万円余となっております。  この差額のうち、翌年度へ繰り越した額は六億八百八十五万円であり、不用額は八億六千四百六万円余で、不用額の主なものは人件費であります。  支出済み歳出額のうち主なものは、人件費二千七百七十億七千三百九十四万円余、外国人登録事務処理経費十二億六千五百四十八万円余、登記事務等処理経費四十六億九千八百五十九万円余、検察事務処理経費二十五億八千二十八万円余、矯正施設における被収容者収容作業等に要する経費二百三十六億八千八百五十万円余、補導援護経費三十五億一千九百二十九万円余、出入国籍査難民認定及び被退去強制者収容送還等に要する経費六億九千二百六十一万円余、暴力主義的破壊活動団体等調査に要する経費二十一億二千三百六十七万円余、施設費百五十三億六千三十三万円余となっております。  以上、昭和五十六年度法務省所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。  よろしく御審議を賜りますようお願い申し上げます。
  10. 横山利秋

  11. 佐藤雅信

    佐藤会計検査院説明員 昭和五十六年度法務省決算につきまして検査をいたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  12. 横山利秋

    横山委員長 これにて説明の聴取は終わりました。     ―――――――――――――
  13. 横山利秋

    横山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  14. 新村勝雄

    新村(勝)委員 五十六年度決算について、法務省裁判所には違法、不当が全くない、これはさすがでありまして、敬意を表する次第であります。  次に、ちょっとお伺いしたいのですが、今の大臣法務省説明の中で、罰金及び科料が三十二億、予算よりもふえたということがございますけれども、これは犯罪がそれだけふえたのか、あるいは犯罪の現在の趨勢はどういうことになっておるのか、これを伺います。
  15. 筧榮一

    筧政府委員 細かく具体的には私承知いたしておりませんが、一般的な趨勢といたしまして、犯罪の総件数は、ここ数年間微増でございますが増加傾向にございます。それと、一般傾向といたしまして、罰金金額が従前から少し多くなっているという傾向もあろうかと思います。それらの原因で罰金額増加しておると理解しております。
  16. 新村勝雄

    新村(勝)委員 次に、北海道にある東日本学園大学の件について伺いたいわけであります。この問題については今までも何回かお伺いをいたしておりますが、まだすっきりした解決を見ていないということでありまして、大変遺憾であります。同大学渡辺享理事長と新日本観光興業社主佐々木真太郎氏が寄附金取り扱いをめぐり業務横領で告訴されておりました。その処分はどうなったかお伺いいたします。
  17. 筧榮一

    筧政府委員 お尋ねの事件は、昨年、昭和五十八年五月二日に札幌地検北海道警捜査二課から送致を受け。ました事件でございます。  内容は先生承知のとおりでございますが、渡辺佐々木の両名が共謀の上学校法人東日本学園定期預金名義佐々木名義に変更するなどいたしまして、昭和五十三年七月から五十四年四月までの間三回にわたり業務上預かり保管中の同学園預金二十六億円を横領したという事件でございます。札幌地検では、所要の捜査を遂げました上、昨五十八年十二月二十七日で不起訴処分にいたしたと承知しております。
  18. 新村勝雄

    新村(勝)委員 この問題は、大学への寄附金とされているゴルフ会社の新日本観光興業からの二十八億九千万円と同社社主佐々木氏からの五十六億円が、債務の肩がわり貸与という名目で事実上大学から引き揚げられていることがわかったわけで、それが実務上横領に当たるのかどうかという問題だと思うわけです。正式な手続を経た寄附金を裏で持ち出すのは犯罪ではないのか、不起訴理由が釈然としないわけですけれども、伺います。
  19. 筧榮一

    筧政府委員 御指摘のように、この五十六億円でございますかの金額、これが佐々木真太郎氏等からの学校法人に対する寄附金である、それを勝手に返済等したということは横領であるという告発でございます。  そこで、問題は、この五十六億円の金額寄附金であるかどうかということにかかるわけでございますが、捜査いたしました結果、これにつきましては、佐々木等から学校に対する貸付金といいますか、学校から見ますと借入金であるという疑いもございまして、いろいろ捜査をいたしましたが、寄附金であると認めるに足る十分の証拠はない、したがって、寄附金とは断定できないので、業務横領罪成立についても、これを認めるに足る証拠がないということで不起訴処分にいたしたわけでございます。
  20. 新村勝雄

    新村(勝)委員 この問題は二つのポイントがあると思うのです。一つは、寄附金の趣旨、性格、もう一つは、肩がわり貸与に正当な理由があったかどうか、貸した金ならば返してもらうのが当然なわけですが、この金はどういう性格であったのか、もう一回伺います。
  21. 筧榮一

    筧政府委員 検察庁捜査におきましては、告発されました二人の被告発人刑事責任があるかどうかという観点から捜査するわけでございます。そうしますと、業務横領罪成立するためには、この金がやはり学校に対する寄附金であるということが認定できませんと、その後の貸し付けあるいは肩がわり等業務横領にならないわけでございます。したがって、この金の性質というものがポイントになるわけでございますが、それにつきましては、いろいろ証拠を集めましたところ、寄附金であるというような疑わせる証拠もありますと同時に、学校側から見れば借入金であり、佐々木等からは学校へ一時貸与して後で返してもらったというように見受けられる証拠もあるわけでございまして、それを比較検討いたしました結果、結局、結論としては、寄附金であるというふうに認めるに足る証拠が十分でないということでございまして、検察庁としては、この性質がどういうものであるかということまで確定するわけではなくて、寄附金、つまり業務横領罪成立のもととなる寄附金という性質があるかどうか、それが十分証拠上認められるかどうかという点に捜査を絞ったわけでございますが、結論としては、今申し上げましたように、寄附金認定するには証拠が十分でない、したがって、業務横領罪成立についても不十分であるという結論に達したわけでございます。
  22. 新村勝雄

    新村(勝)委員 業務横領成立しなかった理由としては、この金の性格寄附金と断定できなかったといつただいまのお答えでありまして、これは検察調査を信用したいと思うわけです。  そうしますと、もう一つの問題が同時に起こってくるわけであります。文部省では、昨年七月この問題については、寄附金申込書預貯金等証明春入金伝票あるいは役員会議事録などにより寄附金と確認をした、だから大学認可をしたのだということを主張しておるわけでありますけれども、そうしますと、検察当局見解とはこれは違うわけですが、その点どうですか。
  23. 筧榮一

    筧政府委員 文部省の方でいかなる経緯でいかなる認定をされたかは承知いたしておりませんが、検察庁結論は、今申し上げましたように、寄附金であると認めるに足る十分の証拠がなかったということでございます。
  24. 新村勝雄

    新村(勝)委員 そうしますと、文部省にお伺いをいたしますが、これは文部省の御見解とは違う。新たに学校法人設立し、大学設置する場合の手続、そしてまた財政的にはどういう条件が必要かということは、もう決まっておるわけでありますけれども、どういう条件が必要なのか、まず文部省伺います。
  25. 福田昭昌

    福田説明員 私立大学設置しようとする場合には、一つには、学校法人設立に係る寄附行為認可ということ、もう一つには、私立大学そのもの設置認可を受ける必要がございます。第一の、学校法人寄附行為認可につきましては、私立大学審議会に諮りまして、一生として学校法人財政状況など経営的な面から審査が行われるわけでございます。また、大学そのもの設置認可につきましては、大学設置審議会に諮った上、主として大学教育課程教員組織施設設備等、教学的な面から審査が行われるわけでございます。  そこで、私立大学資金財政面につきましては、私立大学設置者でございます学校法人と申しますのは、その設置する学校に必要な施設設備またはこれらに要する資金あるいは経営に必要な財産を有しなければならないということで、私立大学審議会におきまして、資金財政面につきまして、大学設置のために最低必要な、例えば建築費だとか、設備整備のために必要な資金というものを有しているかどうか、これをまた必要な自己資金として保有しているかどうか、そういった面から慎重な審査を行うことになっておるわけでございます。
  26. 新村勝雄

    新村(勝)委員 今御答弁がありましたし、また、私立学校法によると、「学校法人は、その設置する私立学校に必要な施設及び設備又はこれらに要する資金並びにその設置する私立学校経営に必要な財産を有しなければならない。」こういうことになっておるわけです。去る四十九年二月の同大学薬学部認可の際に必要とされた施設、必要な金額は幾らであったのですか。
  27. 福田昭昌

    福田説明員 私立大学の創設に当たりましては、その大学の規模に応じた校地校舎等施設機械器具、図書、学術雑誌等設備を必要とするわけでございますが、東日本学園大学の場合には、これらのための資金のうち、自己資金分として^計画としまして四十八億三千五百万円を必要としたわけでございますが、四十八億九千万円を寄附金によって調達をいたしたわけでございます。
  28. 新村勝雄

    新村(勝)委員 認可条件となっていたのは、新日本観光からの二十八億円と佐々木氏からの十四億円だった、こういうことになっておるわけですね。これがなければ認可そのものはあり得なかったと思うのですが、寄附がなければ認可があり得なかったということになりますけれども、その点はどうですか。
  29. 福田昭昌

    福田説明員 これらの資金が調達できなければ、認可は行われないということになったであろうと思います。
  30. 新村勝雄

    新村(勝)委員 私の手元に、薬学部認可当時の資金計画があるわけですが、それによると、寄附金として計算に入っているのは、新日本からのわずか十四億九千万円だけで、残りは銀行からの借金で賄い、それに運用資産の売却などで穴埋めすることになっている。これは学校計画ですね。法務省説明でも、この金は寄附金と断定するに至らなかった、こういうわけですが、そうしますと、これは寄附金として断定できない、寄附金ではないということになりますと、文部省は全く財政的な裏づけがないのに大学設置認可したということになりはしませんか。
  31. 福田昭昌

    福田説明員 東日本学園大学設置審査に当たりましては、種々の手段によりまして厳正な審査を行ったわけでございますが、佐々木真太郎氏からの個人寄附金につきましては、同氏からの寄附申込書銀行入金通知書あるいは銀行残高証明書等によりまして入金を確認し、また、新日本観光興業を初めとします法人からの寄附金につきましては、寄附申込書あるいは取締役会議事録銀行入金通知書あるいは銀行残高証明書等によって入金を確認したわけでございます。そういうことで、文部省といたしましては、寄附行為があったということで認可を行ったものでございます。なお、その後、先生承知のような、無利子による資金貸し付け等、遺憾のことがあったことが明らかになったわけでございまして、この点につきまして、文部省としては厳正に指導をいたしまして、これらの資金につきましては、今日までに全額学校回収をされたところでございます。
  32. 新村勝雄

    新村(勝)委員 裏でそれを引き揚げたという事実がわかってから後の文部省指導については、これはとやかく言いませんけれども、そもそもこの大学認可するときの事情が問題だと思うのですね。この金は、先ほどの検察当局の御説明のように、寄附金とは断定できない、貸付金と思われる証拠もある、こういう御説明であったわけですけれども、さらにそれを裏書きするかのようなものがあるわけでありまして、ここに東日本学園大学の内規で定めた会頭佐々木真太郎氏の大学へのメモがあるわけです。このメモには、この内訳個人寄附金が三十六億円、指定寄附金が三十五億円と記載されておりますが、この寄附金には配当が記入されている。これはメモですよ。配当金が記入されておる。これはおかしいわけです。  そして、このメモによると、個人寄附金三十六億円は貸付金であるとここに明記してあります。そして、内訳は二十二億と十四億の計三十六億である。これについては明細に記入されておりまして、銀行肩がわりをして年一割の利息を払うこととしておる。この三十六億円が表面では二十六億円であり、十億円がどこかへいってしまったというようなことも言われておるわけでありますね。指定寄附金の三十五億円については、寄附金の代償として年八分の配当をするようにというようなことも記載されておる。これは佐々木氏のメモであります。  こういうことからいたしまして、この金は、表面寄附金という名目で一時いわゆる見せ金として積んだけれども、実際にはこれは寄附金ではなかった、貸付金であったということが立証されるわけです。しかも、これは検察当局の御調査によっても立証されるというわけですね。こういう大変不明朗な事実があるわけですけれども、文部省はこういう事実をどうお考えであるか。
  33. 福田昭昌

    福田説明員 先ほど御答弁いたしましたように、学校法人認可に当たりまして、寄附金につきまして、その寄附行為というものが実行があったということは事実でございます。その後、先生承知のような遺憾な点があったのも事実でございます。その点につきましては、先ほど申し上げましたように、学校法人に対して厳正な指導をいたしまして、今日までその資金回収が図られたわけでございます。そういうことで、今後この学校が適正に運営されるかどうかを見守っていく必要があろうかと思っております。
  34. 新村勝雄

    新村(勝)委員 いわゆる運用上の不正不当、これが発覚した後における文部省の処置、これについては今申し上げてはいないわけでございまして、大学設立申請が出されたときに、そうしてまた、それに必要な資金が用意された段階における文部省の対処の仕方がまずかった。この金がどういうものであったかということを見抜けなかったということは、これは神様でないのですからやむを得ない点があろうかと思いますけれども、そしてまた、その段階捜査権を発動するということはできませんから、これはやむを得なかったとしても、その後文部省はこの事実がわかったはずであります。御存じであったはずです。ところが、それを改めもしないで事態の進行を黙認しておったということは、これは大変遺憾なことであるし、既に検察当局の御判断によっても、この金は寄附金ではない、断定できないということでありますから、それでもなお寄附金であると文部省は主張されるのかどうか、その点をもう一回伺いたい。
  35. 福田昭昌

    福田説明員 設立当初におきまして寄附行為が行われた事実につきまして、さまざまな手段で私どもでできる限りのことを尽くして確認をいたしたわけでございます。その後、債務負担を肩がわりする、あるいは無利子で資金貸し付けるというような遺憾な点が生じたわけでございます。これは、私どもが、私大審の方で視察に行きまして、そのことを発見したわけでございまして、直ちにその是正を指導いたしたわけでございます。学校におきましては、先ほど申し上げましたように、今日までその資金回収が図られた、こういうことでございます。
  36. 新村勝雄

    新村(勝)委員 大学設立の申請が出されたときに、文部省は、一説によりますと、これは一時、金を積めばいいのだ、いわゆる見せ金でいいのだということを言ったというようなことも伝えられておりますけれども、そういうことがありますか。
  37. 福田昭昌

    福田説明員 そういうことはあり得ないと思います。
  38. 新村勝雄

    新村(勝)委員 その後の経過の中で、大学理事者側は、二度と寄附金を引き揚げるようなことはしないと約束はしていると思いますが、それを仮に約束をしたとしても、この場合には余り意味がないわけなんですね。というのは、佐々木真太郎氏ですけれども、会頭という定款にも何にもないポストについておるわけなんです。そして、大学佐々木氏と協定を結んでおりまして、これは裏の協定でありますが、経営方針、財産の管理運用、人事面、すべての点について佐々木真太郎氏の指揮に従うということが裏で協定されておるわけです。その文書もここにありますけれども、こういう事実が裏であるわけですね。だから、佐々木氏が金を用意しろと仮に指示をしたとすれば、大学はどんな工面をしてもこれは指示に従わなければならない、こういうふうにがんじがらめに拘束をされているわけです。第一、この会頭というポストは定款にはないのですね。この会頭というポストは、ある意味では寄附金の見返りとして与えられている、しかも、絶対的な権力を有するポストであると考えられます。寄附金というのは無償のものでありますから、そういう意味からいっても、これは寄附金ではないということが言えるわけでありまして、文部省は、これはあくまでも寄附金だ、不正なことが、この金についても不明朗なものがないのだということを主張されるとすれば、これは会頭をやめてもらう、あるいは会頭の系列の理事さんがいらっしゃるようでありますけれども、これらの方々にもやめてもらわなければ、大学の本当の浄化というか再建はできないのじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
  39. 福田昭昌

    福田説明員 私立学校は、先生承知のように、自主的に学校法人として運営をされておるわけでございますから、その学校としてどういう組織を設けるか、これは自主的に学校が判断することでございます。  今御指摘の会頭職のことでございますが、大学説明によりますと、名誉職的なものとして内規で定めておるというふうに伺っておるわけでございます。東日本学園では、御承知のように、寄附行為の上で、学校法人の運営というのは、理事会あるいは評議員会等が正規の機関としてあるわけでございまして、この理事会、評議員会等を中心といたしまして運営されているというふうに承知をいたしておるわけでございますが、大学理事会を中心にして運営をされていかなければならないことは、先生が御指摘のとおりでございまして、そういうことがないように十分見守ってまいりたいと存じております。
  40. 新村勝雄

    新村(勝)委員 大学の自主性というのは、学問の自由という立場からの言葉であって、大学の運営について不正あるいは不明朗な点があっていいということにはならないと思いますね。  それで、協定書なるもの、これは裏の文書でしょうけれども、その一節にこういうことがあるのですね。「乙」というのは大学です。「甲」は佐々木真太郎氏ですけれども、「乙が設立認可申請並にその後の手続等に当り文部省並に関係筋に提出した諸書類は手続き便法の都合上、乙より甲に無理に依頼して架空に作成したものでそれ等に対する甲の責任と義務とは全く皆無のものである。」、ですから、佐々木真太郎氏は責任は負わない。命令に従えばいいのだということをこの協定書では書いておるわけですね。こういうことが許されていいかどうかということです。  それで、これも佐々木氏の指示と思うのですが、去る一月十一日、設立時点からの理事長だった渡辺享氏が辞任したと伝えられております。同氏は大学用地の低廉売却の直接の責任者であるわけですが、辞任理由は何であるのか、また退職金はどのくらいもらっておるのか、お伺いします。
  41. 福田昭昌

    福田説明員 理事長としましては、一連の問題の解決のために今日まで努力を重ねてきたわけでございますが、土地問題につきましては、早急な解決は困難な状況にあること、また債務肩がわりの弁済問題や貸付金問題につきましては、最近に至りまして完全に解決を見たといったようなことを勘案いたしまして、この機会に一連の問題の責任をとって辞任をするということで、五九年一月十一日に辞任をされたというふうに承知をいたしております。  なお、退職金につきましては、現在まで支払われていないというふうに承知しています。
  42. 新村勝雄

    新村(勝)委員 責任をとってということでありますが、解決をしたその機会にということでありますけれども、これはまだ解決していない問題がたくさんあるわけですね。  先ほども申し上げたように、渡辺理事長佐々木氏との間に交わされた協定書でありますけれども、そこには保証人がちゃんと名前が記載されておるわけですけれども、これによりますと、佐々木氏自身が不利になると考えられることは、一方的に保護され、責任の回避をしておるわけです。保証人の証言によりますと、この協定書は、佐々木氏が渡辺氏に無理に押しつけた一方的な作文である。渡辺氏が引責辞職するのならば、佐々木氏及び系列の理事も総退陣すべきであると思うが、先ほどもこの点についてはお伺いしたわけですけれども、この点については文部省はどうお考えですか。
  43. 福田昭昌

    福田説明員 五十三年だったかと思いますが、先ほど申し上げたような遺憾な点が学校にあったということを発見をいたしまして、文部省としては、その是正措置について大学として取り組んでほしいこと、また、その関係者の責任を明らかにしてほしいということを指導いたしたわけでございます。当時、理事長は、その責任は非常に痛感をするということでございましたが、とりあえずそういった問題について解決をしたいということで、今日まで資金回収等、そういう問題に取り組んでこられたわけでございますが、先ほど申し上げたようなことで、文部省の前の指導もあったということで、今回その責任をとられておやめになったというふうに承知をいたしておるわけでございます。
  44. 新村勝雄

    新村(勝)委員 渡辺氏の辞任によって、土地の問題は今後どうするのかということがあるわけですね。その辺が佐々木氏のねらいではなかったかと思うのです。また、その最初の問題の金にまつわる利息の未払い分は現在どうなっておるのか。また土地の転売について、これは大きい問題ですけれども、損害を与えた穴埋めとして、渡辺氏や四人の理事が五十七年、五十八年におのおの一千万を補てんしたと説明されておりますが、とてもそんなわずかな金銭ではいつになったら解決するかわからないわけです、これは大変な資産ですから。可能な限り補てんをさせると文部省は言っておりますけれども、今後の補てんをどうしていくのか、なぜこれを一挙に解決をすることを指導しないのか。
  45. 福田昭昌

    福田説明員 利息につきましては、今月までにすべて学校の方へ入金をされて解決をいたしております。  なお、土地の低廉譲渡の問題につきましては、これは先生も御承知のようなことから今日まで解決に至っていないわけでございますが、相手方もあるということで、早急な解決は困難な状況にあるということは御指摘のとおりであろうと思います。これは五十二年当時から、私ども、大学として対応を検討されたいということで、今日に至ったわけでありますが、その間、理事者としても、なかなか解決が困難であるということで、その責任を痛感して、先ほど先生が御紹介なさったようなこともやってきたわけでございます。また、理事長は、特にそのことの責任を痛感して、今回辞任されたと承知しておるわけでございますが、大学として今後どのような対応策があるのか、さらに大学の検討を促してまいりたいというふうに存じております。
  46. 新村勝雄

    新村(勝)委員 この土地の低廉譲渡については、地元の音別町ど大学当局との協定書の中に、この土地を処分をする場合には事前に協議をするという一項があるはずですけれども、それがなされないままに処分されたということについて、そしてまた、もう一つは、当初の学園都市計画が未完成であるという理由で、この処分を差しとめる仮処分の措置を現在町がとっております。そして、近く正式の返還訴訟を起こす通知を学園関係者に出しておるはずですが、これについて文部省はどう対処するよう指導されますか。
  47. 福田昭昌

    福田説明員 残されている土地の問題につきましては、昔別と大学との関係につきましては、当事者間の問題として今後推移を見守りたいというふうに考えておりますが、文部省といたしましては、大学が低廉譲渡により法人に損害を及ぼしているという観点から、大学が今後どのような対応策を考えていくことができるか、さらに大学に対して検討を促してまいりたいというふうに存じております。
  48. 新村勝雄

    新村(勝)委員 まだその主要な問題については解決がついていないわけですね。問題山積という状況です。こういう大学に対して文部省はこれからどう指導していくのかということが一つあるわけです。  もう一つは、補助金の問題でありますけれども、補助金については、今までは出ていないと思いますが、これに関連して、佐々木真太郎氏の実子である建設政務次官の糸山英太郎氏が、今度は副大臣になったんだからがっぽり補助金は取ってやるというふうに豪語しているそうでありますけれども、文部省はこの補助金を出すお考えはありますか。
  49. 福田昭昌

    福田説明員 この大学につきましては、かねてから文部省といたしまして指導をしてまいったわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、資金のことにつきましては、先般までに一応の解決を見たわけでございますが、土地の問題についてはなお解決を見ないというようなことで、引き続き大学の対応を促していきたいというふうに存じておるわけでございます。  なお、補助金につきましては、今御指摘のように、大学から申請がなされておりませんので、補助金は出されていないわけでございます。  仮にこの学校法人から補助金の申請があったらどうするのかということでございますが、これは他の私立大学の場合と同様でございますが、補助金は私学振興財団において執行いたしておるわけでございます。ここにおきまして、運営審議会という学識者の集まりの機関でございますところで厳正に審査をいたしておりますので、そういう申請がなされましたならば、その時点での大学の状況を勘案して、厳正な審査をなされるものと存じております。
  50. 新村勝雄

    新村(勝)委員 現在の状況において文部省見解はどうですか、補助金を出すことについて。これは最終的には文部省の責任でしょう、文部省予算から出すのだから。この補助金の支出の案ができた場合に、文部省の意見がつくでしょう。文部省の意に反して補助金が出されるということはありますか。この問題についての文部省の御意見をお伺いいたします。
  51. 福田昭昌

    福田説明員 補助金の執行は、私学振興財団法によりまして、私学振興財団におきまして審査をし執行するということになっておるわけでございます。したがいまして、私学振興財団におきまして、先ほど申し上げましたような機関において厳正なる判断を行って執行するということになっておるわけでございます。
  52. 新村勝雄

    新村(勝)委員 文部省は毅然たる態度で大学の再建に御努力をいただきたい。  それから、大臣にお願いしますけれども、これは大臣の所管ではございませんが、この東日本学園大学、相模工大あるいは九州の方の大学私立大学でいろいろな問題を起こしていますね。大学というのは、いわばこういった問題については聖域でなければならないわけですよ。神聖な場所でなければならない。真理を探求する、しかも、学問の自由という名のもとに外部の不当な干渉を許さないというくらいの聖域でなければならないわけですけれども、そういうところでこういう金にまつわる醜聞が絶えないということは、大変残念なことだと思うのです。ですから、大臣も、所管ではありませんけれども、法務大臣という立場から、そういうことのないようにひとつ御努力をいただきたいということをお願いします。  次の問題でありますけれども、これは大臣にお伺いいたします。  平沢貞通という人が死刑の判決を受けた後において二十九年間も拘禁をされておる。しかも、その間、恩赦あるいは再審の申請を何回か繰り返してまいったわけですけれども、そのたびに却下をされて、現在も恩赦あるいは再審の申請が出ておる。しかし、既に平沢氏は九十二歳という高齢になっておるわけですね。どうですか、大臣、九十二歳の老人に対して死刑執行の判こを押すお気持ちはありますか。
  53. 住栄作

    住国務大臣 お尋ねの件につきまして、確定判決から既に二十九年もたっておりますし、年齢も九十二歳、おっしゃるとおりでございますが、現在、御承知のように再審請求も出ておりますし、それと同時に、中央更生保護審査会で恩赦のことも今審査をしておるわけでございますから、そういうことをいろいろ考えながら、これは対処――現にそういうところで審査なり扱われておるわけでございますから、このことについて私からとやかく言うのは、ちょっと差し控えさしていただきたいと思います。
  54. 新村勝雄

    新村(勝)委員 懲役、禁錮等自由刑については、七十歳以上であるときには執行の停止をすることができるというのが刑訴法にございます。  また、世界各国の例を見ても、高齢者、八十歳、その線は国によって違うでしょうけれども、八十歳、九十歳という高齢者については、重罪犯であっても、仮に平沢氏が真犯人であって重罪犯であったとしても、これは考慮すべきだという有力な根拠があるわけです。そして、平沢氏が今日まで死刑の確定犯でありながら執行されなかったということは、やはり判決について国家あるいは社会も同じですけれども、本当に平沢氏が真犯人であったという確信がなかったのではないか、その点について疑問を差し挟む余地が全体の経過の中であったのではないか、あったからこそ、このように二十九年間、来年は三十年という死刑の時効に達する年数になるわけですけれども、こういう長い期間執行できなかったというのは、やはりそれなりに検察あるいは裁判所が全力を尽くしたということは認めますけれども、これについての執行するだけの確信がなかったということ、あるいはまた、そういうことが法治国家の中で現に存在してきたということ自体、これは一つの事実として重いものではないかと思うのです。  そういうことから判断をして、あるいはまた九十二歳という人道上の問題から判断をしても、この際、恩赦によって釈放する、九十二歳を超えた老人を獄死させないということが、やはり人道上の問題からして十分考慮すべき問題ではないかと思うわけでありますが、その点。  それから、もう一つは、いろいろこれは議論があるようでありますけれども、死刑囚の時効の問題でありますが、この時効の問題については、先般私もこの問題について御質問したところが、これは拘禁中の犯罪人については適用しないということでありましたけれども、もちろんそういう行政実例はないと思いますけれども、理論的な根拠があるのかどうか。三十年間経過したというのは本人のこれは選択ではない。そういう状況が生じたわけでありますから、状況が生じたということについては、これは国家も責任があるわけでありますから、こういう状況の中で、この三十年という時効を本人に有利に解釈することはできないのかどうか。この二点をお伺いいたします。
  55. 住栄作

    住国務大臣 第一点につきましては、私も、先生おっしゃられるような事情、そういう事情は私なりに理解しているつもりでございますけれども、現在、先ほど申し上げましたように、恩赦の出願中でもございますし、それからまた、再審請求も継続しておるわけでございますから、その点はひとつお答えするのは差し控えさせていただきたい。繰り返しになりますが、そういうことでございます。  それから、第二点につきましては、これはもう非常に理論的な問題でございますので、刑事局長から御答弁させていただきたい。
  56. 筧榮一

    筧政府委員 第二点の時効の点でございますが、先回申し上げましたとおりでございまして、私どもといたしましては、この解釈としては、死刑の執行に至るまでの拘置、刑法十一条の拘置でございますが、これは死刑の執行のために法律上当然に予想されている身体の拘束というものでございまして、いわば死刑判決という裁判の執行としてなされるものである。したがいまして、その拘置が現に行われております以上、時効に関しましては、刑が執行されていると同じような、同視すべき状態にあるということで、その間は時効の進行の問題は生じない。したがって、平沢貞通氏につきましては、時効は完成しないというふうに考えておるわけでございます。
  57. 新村勝雄

    新村(勝)委員 それから、平沢氏の健康管理の問題でありますけれども、九十二歳になってもう衰弱その極に達しているというふうに伝えられておるわけです。そういう場合に、刑務所の医官だけではなく、外部の専門家といいますか、外部の医師に診療をしてもらう、あるいはまた病院に移送をする、こういうことは考えられませんか。
  58. 住栄作

    住国務大臣 健康の問題、これは刑務所としても特に配慮しなければならないと思っております。今までも東北大の附属病院等とも連携をとりながらいろいろ配慮をしておるようでございまして、その点につきましては、なお十分心得て対応してまいりたいと考えております。
  59. 新村勝雄

    新村(勝)委員 時間短縮の要請がありましたので、以上で終わります。
  60. 横山利秋

    横山委員長 河野正君。
  61. 河野正

    ○河野(正)委員 きょうは法務省関係ということでございますから、私の場合は、主として今いろいろな点で問題になっております人権問題をめぐっての問題を取り上げていろいろ所見をお伺いしたい、こういうふうに思うのでございます。そこで、非常に時間の制約がございますので、私どもも端的にお伺いいたしますから、ひとつ政府側も端的にお答えをいただいて能率的に進行させていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、その第一は、既に我が党においても立法化しようという方針を決定しておるわけですが、一つは指紋捺印反対、外国人登録法の問題です。これが今非常に社会的に問題になっておりますことは御案内のとおりでございます。この指紋捺印は、在日外国人を犯罪人扱いする、これは人権侵害じゃないかということから、外人登録法の指紋捺印制度に対するいろいろな批判が出てまいっておりました。御承知のように、五十五年の十一月から翌年の一月にかけまして、北九州の小倉で在日韓国人牧師の崔さんという方が親子でこの拒否運動を展開された。それが非常に全国的に広がりまして、今日では四百十九の地方議会でこの廃止決議、それからまた、いろいろな事情を勘案いたしまして指紋制度の是正、こういう意味での決議が、今申し上げますように、全国のそれぞれの地方議会において四百十九という多数の決議が採択されておるわけでございますが、政府の見解を聞きたいと思います。
  62. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  今、委員がおっしゃいましたように、全国四百二十二の地方議会において外国人登録法の改正を主張する御意見が出ております。我々はこの点について十分承知しておりますし、また、この事態についても十分の認識を持っておると考えておりますけれども、現在、地方議会は全国で三千数百あると承知しておりまして、そのうちの四百十九が現在のところ反対の意見を言っておるということでございます。  我々に対しては、指紋制度あるいは常時携帯制度を廃止すべきであるという御意見も寄せられておりますが、またそれと同時に、在留外国人というのは、その国にある間はその国の法令を守るべきだという御意見も寄せられております。硬軟いかなる御意見であろうとも、我々としては謙虚にこれを傾聴しているわけでございますけれども、外国人登録法の在留外国人の居住関係、身分関係を明確にし、そして公正な管理をするという目的を達成するためには、委員御指摘のいろいろの問題の制度は必要と考えている次第でございます。
  63. 河野正

    ○河野(正)委員 今お答えがございましたように、現在は四百十九地方議会でございますが、現段階でそうですね。逐次この運動が広がってきておることは御承知のとおりだと思うのです。ですから、全国的に莫大な地方議会があるのだ、そのうちの一部じゃないかということでなくて、これがだんだんに拡大されつつあることが今日の現況です。特に、法務省は人権を守らなければならぬ立場の行政機関でもあるし、いろいろ事情があっても、人権侵害、特に日本の外国人登録法というのは日本独特の法律だというふうに私は承っておるわけです。外国の場合もっと緩やかだというふうに承っております。  そこで、これがなければ外国人であるかどうか、その確定、確認ができないじゃないか。しかし、諸外国では必ずしもそういう方法ばかりをとっておるわけじゃないのですから、したがって、それらに対する、人権を守らせるという立場からもっと考慮の余地があるのではないかということを私どもは考えており、また、私の政党もそういう見解で、今度独立して立法を出そう、法改正をしようという意思を決定いたしておるわけです。重ねてそれに対して御見解を承りたい。
  64. 田中常雄

    田中(常)政府委員 日本の登録制度でございますけれども、日本は世界において非常に特異な登録制度を採用しているとは決して言えないのではないかと考えております。我が国においては、外国人の同一人性を確認するということで、登録法の中で指紋制度を採用しておりますが、世界各国において、同じく外国人の同一人性を確認するために三十数カ国において指紋制度を採用しておる次第でございます。  また、世界の枢要国において指紋制度を採用していない国においては、それぞれ警察が独自の制度を持っておりまして、その国に在留している外国人を把握している。そして、我々はあくまでも外国人の身分関係、居住関係を明らかにするための手段としてこれをやっている次第でございまして、我々としては、これは人権を損なうものとは考えておりませんし、また国際人権規約に違反するとも考えていない次第でございます。
  65. 河野正

    ○河野(正)委員 いろいろな方法があると思います。ただ、多くの国がこうだから、そこで日本もこうやるのだということではなくて、少なかろうが多かろうが、人権侵害の疑いがあるならば、この際その点に対する配慮が必要じゃなかろうか、こういうことを申し上げているわけです。何も数に左右される必要はないと思うのです。そういう点に対していかがでしょうか。
  66. 田中常雄

    田中(常)政府委員 外国の事例を申し上げましたが、何も外国でやっているから日本でやっていいということではなくて、もちろん、委員の御指摘のように、日本独自の判断でこれはやっていいことと考えております。しかしながら、こういうような国際化の世界におきましては、日本がやっていることが外国の諸制度に比べて特異なものであろうかそうでないかということについては、比較考量することが必要なために、今各国の事例も申し上げたわけでございますが、我が国独自の立場としても、我が国の在留外国人を的確に把握するという見地においては、やはり確実に外国人を特定し、そしてそれを登録させるということが必要だと考えている次第でございます。
  67. 河野正

    ○河野(正)委員 実は、御承知のように、来年は大幅な登録の切りかえが行われる年度になっているわけですね。大体三〇%、数で言いますと約二十六万人の登録の切りかえが来年は行われるだろうというふうになっているわけです。ですから、この連動は今から非常に発展していくと思うのですね。  今、局長は、とにかく今までやってきた、外国人を確認するという意味では一番いい方法だということでございましょうけれども、国民の世論というものは、今申し上げたように今日までずっと盛り上がってきたし、それからまた、来年を目指してこの連動がさらに大きく展開されるだろう、こういう情勢です。ですから、今までの地方議会では数が少ないじゃないか、そういう考え方でこの問題を処理されることについては、私はむしろ、人権を尊重しなければならぬ法務省の立場としては、いささかいかがなものであろうかと思うわけです。この点は、私もあと問題がありますので、ひとつ大臣、一言答えてください。
  68. 住栄作

    住国務大臣 外国人登録制度の問題でございますけれども、河野先生おっしゃるように、地方公共団体等から、制度の見直し、指紋制度、常時携帯その他いろいろ要望等あるいは決議等があることは承知いたしております。  繰り返しになるようでございますけれども、経過等から申し上げますと、改正法の施行が実は去年から始まったばかりでございまして、この改正法の審議の際についてもそういう問題もいろいろ検討いただいた。施行直後でございますし、そんなに事情の変化もあるわけではない。そういう際に、来年の大量切りかえのこともありましてそういうようなことが出ておるのだろうと思うのでございます。私どもはそういうことも十分考えながら、現在のところ外国人の同一人性だとか身分関係というものをぴしっと把握しておきませんと、事国際問題等にも波及するおそれもあるということも考えまして、これは慎重に考えていかなければならない、こう思っておるわけでございます。
  69. 河野正

    ○河野(正)委員 外人として把握しなければならぬ、それは私どもは否定するものではないのですよ。ただ、把握する仕方がいわゆる人権的に問題があるんじゃなかろうか。大体日本のそういった方面の法律というのは非常に厳しいんですね。難民問題もしかりですよ。でございますから、法改正した直後だからという話ですけれども、いいことは幾ら改正してもいいと私は思うのです、悪い方に改正してもらっては困るけれども。でございますから、時間がございませんけれども、後は、今申し上げましたように、全国的な運動もますます熾烈になるだろうし、既に裁判闘争も行われているわけでございますから、どういう法的な判断が下るかわかりませんが、外人であるということを把握しなければならぬという点については私ども否定するものではないけれども、そのやり方いかんによっては、人権を侵害するということではなくてもっと適切な方法があるのではないか。アメリカあたりは非常に緩やかだと聞いております。ですから、そういう意味でこの問題は地方議会の決議もたくさん出てきているわけですし、ぜひそういう情勢というものを把握しながら私はひとつ大臣としても今後検討をせられるべきではないか、こう思うわけです。いかがでしょう。
  70. 住栄作

    住国務大臣 人権の尊重と外国人の関係で万一のことがあっては、問題も大変重要なだけに私ども慎重でございまして、そういう観点から、そういう配慮をバランスを考えながら、現行制度は、これは随分改正で改善もしたところでございますので、最善の方法ではないか、こういうように考えておるわけでございますが、せっかくの河野先生の御意見でございますので、むげにどうのこうのというわけでございませんが、そういうこともひとつ御理解をちょうだいしたいと考えております。
  71. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、これまた同じ人権問題ですけれども、毎日朝起きて新聞を見ますと、カラスの鳴かぬ日はあっても例の宇都宮病院の問題が新聞記事にならぬ日はないということです。これも私どもが大きな関心を持っておりますのは、何といってもいわゆる人権問題、これを通じてこういう病院のあり方がいかがなものであろうか、そういう意味で、人権問題から考えてまいりましても厳しく処理すべき点はやはり処理しなければならぬ。そういういろいろな問題が提起されておるわけですが、十年ごとに厚生省が精神病患者の実態調査をする、これはことしも随分反対がありましたけれども、あえて厚生省は強行したのです。ところが現実には、人権問題ということで大都市ではほとんど協力してないわけですね。東京、埼玉、神奈川、大阪、兵庫、福岡、長崎、滋賀、徳島、奈良、こういうところは協力しなかった。協力しなかった府県がこれほどたくさんあるということは、やはり人権問題に対してもっと慎重でなければならぬということでそういう結果が出てきたと思うのです。宇都宮病院に対して人権問題、人権問題と言いながら、一方では厚生省がみずから人権を侵すような方針を実行してきておる、これはいささか大きな矛盾点ではなかろうかと思うのですが、まずこの点について厚生省の御見解を承りたいと思います。
  72. 野村瞭

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  既に五十八年度の精神衛生実態調査は終了しておるわけでございますが、今回の精神衛生実態調査は、精神障害者の社会復帰の促進と今後の精神衛生対策を積極的に推進するための基礎資料を得ようとしたものでございます。この調査の実施に当たりましては、特に患者さんのプライバシーが侵害されることのないよう最大限の配慮をいたしたつもりでございます。  具体的に申し上げますと、例えば調査方法にいろいろと工夫を加えまして、対象者となります患者さんの匿名性を完全に担保いたしておりますし、また、患者さんの主治医が調査票を記入することになっておりましたが、その調査票を記入するに際しましては、対象となりました患者さんまたは場合によってその家族の方ということがあったわけでございますが、その承諾を求めた上で調査票を記入したということにいたしたわけでございます。  また、この調査の企画の立案から実施の段階に至るまで、終始関係者の理解と協力を得るべく努力をいたしたところでございまして、患者家族の方や医師会の代表者等から成ります調査委員会の意見に基づきまして調査方法を決めましたし、また関係者の意見も踏まえまして、先ほど申し上げましたような患者さんの承諾を求めることといたしたことなど、調査方法について一部を改めたというようなこともいたしておるわけでございます。今後もこの種の調査を実施するに当たりましては、調査対象となります患者さんの人権に十分配慮いたしますとともに、関係者の幅の広い理解と協力が得られるよう努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  73. 河野正

    ○河野(正)委員 精神衛生対策を設定するためにとおっしゃるが、それはいろいろな方法があると私は思うのだ。あえて人権侵害だと言われてまで実態調査をする必要はないと思うのです。しかも、当初予定した回収率は五千百七十二枚ということですから五一・七%、約半分しか回答しなかった。このあらあら了承するであろうという施設でもそういう状態ですよ。その他は反対ですから。特に東京とか大阪とかいう大都市が反対をしている。そうしますと、それで果たしてそのアンケート、実態調査が非常に効果ある調査になるかどうか。政府が少なくとも自信と確信を持って今後の精神衛生はどうあるべきかという方針を定めるためにやらなければならぬ調査なら、やはり家族なり施設なり患者さんなり積極的に協力するという状態での調査でなければ、私は所期の目的は達成できないと思う。それはなるほど五千竹七十二枚の回収ができたといっても、大都市の方では全然やってないわけです。それで果たして今後の方針を定めて、それが的確な方針に。なるかどうか、これは私は非常に疑問だと思うのですよ。全国的にそういう協力をして、その中で幾らか回収率が悪かったというならば別ですけれども、とにかくここならいけるというところでやったにもかかわらず回収率が約五一%。そうして大部分の大都市の施設は全く協力してないということでしょう。そういう実態調査をもとにして今後の方針を決められることは、私は非常に問題があると思うのです。この点いかがです。
  74. 野村瞭

    ○野村説明員 先生御指摘のように、大都市圏を含む一部の自治体が落ちておりまして、そういうことから申し上げますと、厳密に統計学的に申し上げれば、確かに調査の信頼性というのはそれなりに落ちていると思います。しかしながら、私ども、先ほど申し上げましたように、今後の社会復帰対策の基本的な柱を得るための調査でございまして、調査項目の中には必ずしも地域格差によらないものもございますので、今後の行政対策に生かすという意味からすると、私ども得られました五千有余の調査表からそれなりのデータを得たというように考えておるところでございます。
  75. 河野正

    ○河野(正)委員 そういうお答えだったら私どもは納得できませんよ。東京とか神奈川とか、大阪、福岡、こういう大都市の施設の患者さんが全然協力していない。そして、なるほどやるのはやってみたけれども約五一%しか回収できなかった。その五一%も、やはり患者さんの家族の方は、施設に預けておるわけですから施設から言われると弱いですよ。反対と思っても、反対ということを言うわけにはなかなかいかない。そこで、人権問題については非常に配慮をした、こうおっしゃるけれども、この五一%すら私は必ずしも人権問題を納得して協力したとは思えないのですね。というのは、患者さんというのは、施設に入れば、施設から言われれば協力しなければならぬ。また施設も県から言われれば協力しなければならぬ。そういう立場で一応形だけの協力をしたこともあるわけですから。そこで、この実態調査、そのデータというのは、必ずしも的確な調査ではないというふうに私どもは判断します。ですから、今回の調査は必ずしもうまくいかなかった。それはほんの一部の参考事項で、今後の対策を設定する場合の参考にしたいというなら、これはまだしも、一応評価して、そしてそれに基づいて今後の精神衛生対策の基本方針を決めていこう、これでしたら、ちょっと納得いきませんよ。
  76. 野村瞭

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  私ども、この調査の結果を重要とは考えておりますけれども、この調査結果だけで今後の施策を立てるというようなことは考えておりませんで、その他参考となるような資料も有効的に使ってまいりたいと考えております。
  77. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、それと関連して宇都宮病院があるわけですが、一応厚生省も現地へ向かわれて調査をされたわけですから、一番新しい結果、毎日毎日カラスが鳴かぬでも宇都宮病院は新聞に出てくるわけですから、その後刻々と情勢が変わっていますね。一番新しいところをひとつここで発表をいただきたいと思います。
  78. 野村瞭

    ○野村説明員 宇都宮病院についての調査結果の概要でございますが、医療従事者から申し上げますと、医師については、四月十日現在でございますが、常勤医師が六名、非常勤医師については、これは常勤換算をいたしておりますが、これが一名ということで計七名ということになっております。それから、看護従事者につきましては、四月十日現在で五十九名となっております。それから患者の収容状況でございますが、これは四月十五日現在で七百五十三名の収容となっております。  それから、今までの調査結果でいろいろ医療法上、そのほか身分法上問題があったわけでございますが、それについて申し上げますと、病院の構造、設備についてでございますが、医療法上の知事の許可を得ずに病棟内を一部改造していたという状況が認められております。それから、病棟管理の状況でございますが、入院患者さんを許可された病室外に収容していた状況が認められております。それから、無資格者による医療行為の状況でございますが、これはレントゲン撮影それから脳波検査等におきまして無資格者が操作した疑いがあるという事実が判明をいたしております。そのほか、面会の状況でございますが、閉鎖病棟におきまして面会室がございませんで、面会を看護室で行ったということでございまして、これについては問題というふうに認識をしておるところでございます。それから、入院患者さんの預かり金につきまして、預かり金の管理台帳の残高と関係預金通帳の残高が不突合であったという事実が判明をいたしておるところでございます。それから、死亡者につきまして、今までの調査から申し上げますと、五十六年一月から五十九年三月二十一日までの間に宇都宮病院における死亡者が二百二十二名あったということが判明をいたしておるところでございます。
  79. 河野正

    ○河野(正)委員 今、結果も非常に抽象的で、患者の預かり金に対してもいろいろある。それが幾ら流用されたか幾らどうなったか、その辺をここで具体的に明らかにされなければこれは意味ない。幾らか問題があるということはもう新聞で出ているのですよ。だから、私どもは、監査をしたらこれこれの問題はこうでした、こういう答弁をなさらぬと、これは全く答弁になっておりません。ただ、時間がございませんから……。  どうも私ども思うのは、一つは、いわゆる行政と宇都宮病院との癒着、それからもう一つは、今度新聞にも出ておりますが、東大との癒着ですね。こういう癒着の問題があるから、この宇都宮病院というものがこういうような全く不当な不祥事件を起こしてきたと私どもは言わなければならぬと思うのです。  ですから、そういう意味で、私どもここで特にお伺いしたいと思いますのは、行政がとにかく病院と癒着しておる。一つの例として私は申し上げますが、例えば今新聞でいろいろ問題になっています精神鑑定医の問題、鑑定の問題にいたしましても法律では、御承知のように、精神衛生法の十八条に、「厚生大臣は、精神障害の診断又は治療に関し少くとも三年以上の経験がある医師のうちから、」「少くとも」「うちから」ですよ、「その同意を得て精神衛生鑑定医を指定する。」と書いてある。それなら、この石川文之進という院長はどういうことで精神衛生鑑定医に指定されたか。「少くとも三年以上」、私どもかつての精神衛生法の改正の中で、十年ぐらいにしたらどうか、こう言っているわけですね。ところが、この石川院長は三年三カ月半ですね。「少くとも三年以上」ですから、三年でも一日でもあれば「三年以上」でしょうけれども、「少くとも三年以上」の経験者の中から、それが全部じゃないですよ、中から、こういうことでよかったのかどうか。そして、それを証明しておるのは院長なんですよ。ですから、一体どこで研修されたのか。ただ医師として三年間経験があるということじゃないのですよ。先ほど申し上げましたように、精神障害者に対する治療、診断ですよ、それが「少くとも三年以上」、そういう経験者の中から指定をするとなっている。ところが、三年たったらぽっと院長の証明でしょう。宇都宮病院の院長の証明ですよ。それで鑑定医の指定を受けたわけです。こういう点に対してどういうようにお考えになりますか。
  80. 野村瞭

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、石川医師は宇都宮病院におきまして、三十七年の五月から四十年の八月まで三年三カ月の間精神診療に当たったということで、その当時の院長であります平畑医師の証明を受けまして、私ども、厚生大臣が精神衛生鑑定医の指定をしたわけでございます。  私ども、精神衛生鑑定医の質の向上については特段の配慮を払っているところでございますが、法律の上では「三年以上」ということになっておりますが、現在は運用上五年以上ということで指定をしておるところでございます。  それで、この石川医師についての鑑定医の取り消しの必要性につきましては、現在、事実関係の究明をしている中で、その必要性について検討をいたしているところでございます。
  81. 河野正

    ○河野(正)委員 今申し上げますように、行政と宇都宮病院の癒着。それだから、少なくとも三年、そして三年で申請しても、その中で特に鑑定医にふさわしい人を指定するとなっておりますな。  それで、これはその背後にいろいろな問題があろうということが一つですね。それからもう一つは、平畑院長、宇都宮病院の院長がそういう証明をした。この平畑院長というのはどういう経歴の人ですか。
  82. 野村瞭

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  平畑医師の経歴について詳細には存じ上げませんが、把握している範囲で申し上げますと、最終学歴は昭和六年の三月に京都帝国大学医学部を卒業されておられます。医師の免許取得は昭和六年の五月二十六日でございます。職歴は、昭和六年の四月に、当時の京都帝国大学附属病院の精神科の副手についておられます。その後、幾つかの病院で診療に当たっておられますが、戦後、昭和二十一年の九月に大阪女子医学専門学校の精神科の教授に就任をされておられます。二十四年にはそこを退職されまして、民間病院に移っておられます。宇都宮病院に来られましたのは昭和三十七年の十月でございまして、そのときに院長に就任をされまして、その後、同病院において継続して診療に当たっておられるわけでございます。
  83. 河野正

    ○河野(正)委員 この精神鑑定医の指定の状況を見ますと、厚生省は、もう既に鑑定医の数が多いということで、なかなか指定をしないということですね。そういう状況があるわけです。しかも、今問題になっておる宇都宮病院については、三年三カ月すればそのまま鑑定医に指定をされておる。私は、こういうところも一つの癒着があった、背後にどういうことがあったか知りませんが、癒着があったと考えます。  それから、いま一つは、政治的にもこの宇都宮病院がいろいろ介入する。そして、その政治力というものがどういう形かわかりませんけれども、栃木県の衛生部長に対してもいろいろ圧力を加える、こういう風評があることも厚生省は御存じだと思うのです。私どもも具体的に聞いております。とにかく行政が一般の私的医療機関の方から圧力をかけられる。それだから、今の鑑定医だって、とにかく法律どおりですから、待っておりましたと言うばかり。しかし、法律の中身というのはそうじゃないですよ。治療、診断に少なくとも三年以上の経験がある。これは三年三カ月ですから、三年以上には間違いないでしょう。その中から指定するとなっているわけですね。だから、出てきたからすぐ指定しなければならぬということでもない。しかも、院長が証明しているわけですから、これはなれ合いみたいなものです。そういうところに問題があると思いますが、最後にひとつその点について明快に答えていただきたいと思います。
  84. 野村瞭

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  精神衛生鑑定医の質の向上につきましては、今後とも十分に最大の努力を図ってまいりたいと考えております。
  85. 河野正

    ○河野(正)委員 今まで鑑定医に対する行政指導は必ずしも適切じゃない。特に、宇都宮病院の場合はなれ合いで行われていると言わざるを得ぬでしょう、今の経歴を見てみたら。しかも、この石川文之進という人は本来耳鼻科か何かでしょう、いかがですか。
  86. 野村瞭

    ○野村説明員 石川先生のこれまでの略歴の中で、どういう専門科の道を歩んでこられたかということについて、詳細について存じておりません。
  87. 河野正

    ○河野(正)委員 そういう前歴もわからぬで、ただ先ほど言いましたように、三十七年五月から四十年八月まで勉強したのだ、しかも、それも院長が認めた。大学の教授が認めたとかなんとかいうことじゃないのです。そして、三十七年まではどういうのが本職だったか、それは私どもも真偽はわかりません。世間では耳鼻科の先生だというような話も聞いています。そういう点はつまびらかにしないと、つまびらかにしないで、厚生大臣が指定をするということは、極めて軽率じゃないでしょうか。その点いかがですか。
  88. 野村瞭

    ○野村説明員 石川医師が精神衛生鑑定医の指定を受けましたのは、先ほど申し上げましたように、昭和四十一年でございまして、当時の状況については、得られる資料の範囲で先ほど申し上げたとおりでございまして、その当時、どういう観点から指定をしたかということについて、できるだけの努力をいたして調査をいたしたいと思いますけれども、私ども、精神衛生鑑定医につきましては、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、精神衛生法に規定をしております措置入院制度の根底にかかわる重要な任務を負うておるわけでございますので、精神衛生鑑定医の質の向上については、最大の努力を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  89. 河野正

    ○河野(正)委員 今度いろいろ問題が出てきておるわけですが、その一つに命令入所ですね。措置入院患者というものが全くずさんであった。それにまつわる問題はやはり鑑定医の問題でしょう。ところが、その鑑定医というものが、今申し上げますように、全くずさんな調査でやっておる。それはやはり三年以内であるわけにいかぬですから、法律が「三年以上」になっているわけですから、三年たったら、そして何にもその他の状況というものは勘案しないでやっているところに癒着があったのじゃないか、こういうふうに言っているわけですよ。ですから、今の課長の答弁では納得しませんから、また別の機会にそれをやりたいと思います。  そこで、時間がございませんから、文部省にお尋ねいたしますが、御承知のように、東大の精神科との癒着、これも今非常に大きな問題になっておるわけですね。これについて簡単に現況をお答えいただきたい。
  90. 佐藤國雄

    佐藤説明員 お答えいたします。  報徳会宇都宮病院へ東京大学の教官が参っておりました件につきましては、東京大学から今日時点までに得ました報告によりますと、まず一点は、東京大学医学部教官三名が毎週土曜日、病院の非常勤医師に対する診断の指導に当たっていたということでございます。  第二点は、これに対しましてそれぞれ一回約五万円の手当と、年間十万円の交通費を病院から受けていた。  それから、第三点でございますが、教官たちは三月十四日に新聞で初めて病院の実態を知りまして、こうした病院で指導に当たることは適切ではないということで、三月十五日までに、兼業を取りやめる、国家公務員でございますので兼業の許可が必要でございますが、兼業を取りやめる旨大学に届け出たということでございます。  また、東大の医学部の方から患者を報徳会宇都宮病院へ送っていたという報道がございますけれども、そういった事実はないというふうに東大からの報告を受けておるわけでございます。
  91. 河野正

    ○河野(正)委員 それでは、全く新聞の報道というのはでたらめですか。
  92. 佐藤國雄

    佐藤説明員 私ども、新聞の報道がでたらめであるかどうかということについては申し上げることはできませんが、少なくとも、私どもが東大当局から現時点までに受けている報告というものについて申し上げているところでございます。
  93. 河野正

    ○河野(正)委員 その報告を受けられて、それはそうだ、そういう感じを持っておられるのか。例えば手当の問題についても、斎藤さんは一回に十万円もらっておった、こう書いてありますね。それからまた、患者を送ったり、また同時に、送ることによって脳波その他の勉強ができるということでお互いにメリットがあったのです、こう言っていますね。私はやはりそういったメリットがなければやるはずないと思うのです。ところが、今言ったように、年間交通費が十万円だった、そして一回行って五万円ですか、そういう回答ですが、それからまた、患者を送ったとか送らぬとかいう問題がございますけれども、それについても大幅に食い違っていますね。しかし、御本人は、自分も勉強できた、それから宇都宮病院も助かっておる、どっちもメリットがあったのだ、こういうふうにはっきり言っていらっしゃるでしょう。それが今の話では、全然患者を送ったこともないと。そういう回答を聞いて、はいそうですか、これが文部省の態度ですか。
  94. 佐藤國雄

    佐藤説明員 お答えいたします。  この問題は二つあると思うのでございますが、一つは、宇都宮の方の病院でございますね。それからもう一つは、昨日新聞で報道されました本郷クリニックと言われている病院との関係でございますけれども、第一番の、要するに宇都宮にございます報徳会病院への派遣について先ほどお答えいたしたわけでございますが、このほかに、先生御指摘のように、附属病院の精神神経科の講師が、斎藤講師でございますが、宇都宮病院で開かれる臨床病理研究会に出席していたということでございますが、詳細は現在大学において調査中でございまして、私どもとして実態をまだ十分につかんでおりません。こういうことでございます。
  95. 河野正

    ○河野(正)委員 そのことと、今新しい問題は本郷の診療所ですよ。特に、パソコンなんかを持ち込んだとかいう問題もありますね。それからまた、患者も、東大の外来に来てスムースにいかぬので、それで本郷の診療所に送り込む、そのために東大の外来も非常にスムースだった、こういう発言があるでしょう。  ですから、二つあることはそのとおりですよ。今一番大きな問題になっているのは本郷の診療所ですよ。これは御承知のように、文部省から科学研究の補助金をもらいながら、そういうパソコンすら一部持ち込んでおる、こういう問題もある。し、それから、週何回か斎藤講師が出張しておる。それはそうでしょう。それは東大から送り込んでやるわけですから、やはりどなたか東大の方が行ってやらぬと意味がない。ですから、私は、今申し上げましたように、最近新しく大きな問題になったのは本郷の診療所である、そういう立場で答えてもらわぬといかぬです。
  96. 佐藤國雄

    佐藤説明員 本郷クリニックへ斎藤講師が出かけていたという問題につきましては、新聞の報道がきのう出たわけでございまして、それにつきまして附属病院長が斎藤講師から事情聴取しておりますが、なかなか新聞の報道とは違うような印象を持たれているようでございますし、また、斎藤講師が、昨日でございますか、東大の内科の方に入院をされた、こういうような状況でございまして、先ほど私が御答弁申し上げましたように、調査中であるということでお許し願いたいと思います。
  97. 河野正

    ○河野(正)委員 これは悪いことをしたらすぐに病院に入院して、そして司直の手から逃れるとが、一般の世間で言う常套手段なんですね。しかし、本当に心痛の余りに病気をされたということになれば、それはお気の毒だと思います。ですけれども、どうもそういうようなにおいがしますね。そのことはやはり新聞その他マスコミで報道されるような事実があって、非常に心痛をしてということではないでしょうか。私は、やはり少なくとも、報道が正しいか正しくないかということは別にしても、それはマスコミからはしかられるかもしれませんけれども、いずれにしても、私も医師の一員ですから、そういうことが多分あったろうということはわかるわけです。  ですから、今日宇都宮病院があれほど世間から厳しい非難を受けていますが、私は、その非難に対しては当然だと思うのですね。ですけれども、そういうことにしたいろいろな条件が東大の精神科にあった、あるいは栃木県にあったのですね。そういう点をやはりここで明確にしておかぬと、私は、まじめに経営されておる病院関係者に対しても申しわけないと思うのです。  そういう意味で、今報告されたことと事実とはかなり隔たりがあるような気がするが、文部省はその点に関してどういうふうに踏まえておられるか、お聞きしておきたいと思います。
  98. 佐藤國雄

    佐藤説明員 私どもとしては、新聞で報道されたことがそのまま事実であるかどうかということを、ただいま大学当局調査を叱咤激励して早くやるようにということでやっておるわけでございまして、今日時点までに起きましたことは、先ほど申し上げたようなことを言ってきている。したがいまして、私どもとしては、それが東大当局からの報告でございますので、当面そのことを信じていくということでございます。  なお、私どもとしては、新聞の情報と若干違っている面が先生御指摘のとおりございます。したがいまして、その点について先生方からのはっきりとした御説明を承りたいということで、事務当局指導をしておるところでございます。
  99. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、時間がございませんので。  先ほど申し上げましたが、もう毎日毎日この問題が出てくるわけですね。きょうは、死体解剖をやった、これは死体解剖保存法等に違反するんじゃないかというようなことも指摘されていますね。この点は医務局ですか、いかがですか。
  100. 柳沢健一郎

    ○柳沢説明員 本日の新聞報道に、ただいま先生御指摘のようなことが報道されておったわけでございます。それらにつきましては、県を通じましてよく調査を進めたいと存じております。
  101. 河野正

    ○河野(正)委員 調査するのじゃなくて、やったかやらなかったかということを聞いているわけですよ。そして、どういう形で何でやったかということは今後の調査でしょうね。やったかやらなかったか。やったことは全然知らなかったとおっしゃるなら、これは別ですよ。
  102. 柳沢健一郎

    ○柳沢説明員 宇都宮病院に対しましては、県が去る三月の二十六日を中心にいたしまして三日間ほど立入調査をしたわけでございますけれども、その際には、本日報道されていたような事実につきましてはつかんでおらなかったところでございますので、御指摘の件につきましては、今後調査をいたしたいと存じております。
  103. 河野正

    ○河野(正)委員 もう時間がございませんから締めくくりたいと思いますが、私は、やはり行政というものは先取りしなきゃならぬ。今の日本の行政というのは、医療行政もそうですけれども、後追いでしょう。何か起こったらそこで慌てる。ですけれども、私はこういう問題は、そういうことが起こらぬような予防措置をしていく、指導していくというのが真の行政でなければいかぬと思うのですよね。とにかく何か起これば、慌ててそれに対して右往左往しているというのが今日の現況だと思うのです。  そういう意味で、私は、今度の宇都宮病院、これは徹底的に究明しなきゃならぬけれども、しかし、その前になぜもっと行政指導ができなかったのか。例えば措置入院の問題にいたしましてもそうでしょう。これは年に一回ですね。さもなければ二回ですよ。それこそ別な鑑定医が入ってきて、そして指導監察するたてまえになっているのですよ。それをやっておってなぜこういう問題が起こってきたか。これは大阪の中野診療所でも言えると思うのですよ。あんなでたらめな保険医療が行われた。しかも、それは十年前からわかっておったというのでしょう。わかっておったら、なぜその間にきちっと指導しておかなかったか。  私どもは、悪い者に対しては徹底的にメスを加えるべきだと思います。しかし、やはり行政というものは指導行政ですから、指導というものをもう少し的確にやってもらわなきゃいかぬですね。  ところが、今度の宇都宮病院を見てまいりましてもそうですが、あれは行政が正しい指導をやってきておれば、私はあんな大きな問題にならなかったと思うのですよ。しかし、今日出てきたことについては徹底的にひとつ究明してください。私どももしなきゃならぬと思います。ですから、私はやはり行政というものは指導行政ですから先取りしなきゃならぬ。起こってきてからじゃなくて、起こる前にそういう事故が起こらぬようにしなきゃならぬ。例えば歯科の合金問題も出てきて、そして警察庁から厚生省に報告されて初めて知ったような状態でしょう。これはどうですか、最後ですが、厚生省。
  104. 寺松尚

    寺松説明員 今、先生の御指摘の事件でございますが、私ども昨日警視庁の方からいろいろ資料をいただきましたので、その資料の中身を十分精査いたしまして、その結果に基づきまして、しかるべく厳正な対応を行いたい、こういうように考えております。
  105. 河野正

    ○河野(正)委員 それではいかぬと言うのです。とにかく保険医療でしょう。そして、治療に換算すると、請求点に換算すると実に二十億くらいになるというのですね。それが警察庁からいわゆる氏名の報告、これからこうやりましたよ、そういう報告、それがあって初めて厚生省が十分調査をしてやります。しかも、警察庁から報告されたのは千四十七名ですよ。こういう莫大な不正が行われておって、それも厚生省が気づかないで警察庁からやられて、さあ今から実態調査します。これが果たして行政のあり方であっていいのかどうかです。そういうことになることによって、今、国民が期待しておる医療保険制度が崩壊される、こういうことを私どもは心配するわけですよ、そういう不届きの者のために。しかも、その不届きの者に対する指導というものが、厚生省は非常に手抜かりしておる、怠慢であるということを指摘せざるを得ぬと思います。  もう時間が参りましたから申し上げるわけにまいりませんが、いずれにしても、行政というものは先取りしなければいかぬ、後追いじゃいかぬ、こういうことを最後に強く申し添えまして、私の質疑を終わりたいと思います。
  106. 横山利秋

  107. 島田琢郎

    島田委員 先般、当委員会において、私は那須の国有林交換にかかわります幾つかの問題点を提起をいたしまして、その際、資料の提出と話題の人心針暦二氏の証人喚問並びに関係者の参考人招致を委員長を通じてお願いをいたしましたところ、理事会において委員長を初め大変御配慮をいただきまして、まことにありがとうございました。  しかしながら、残念にも自民党の諸君はこれを拒否してまいりました。したがって、我が方としては、参考人として呼びたいということに切りかえをいたしましたが、これも実を結ばずに今日に至っている。私は甚だ自民党の諸君のとった態度に疑念を覚えるものであると同時に、こうした国会におきます正しいいわゆる問題解明に当たっては、政党の枠組みを越えてしっかりひとつやっていくということがなければ、これはどんな問題が出てまいりましても、とても解決できないのではないか、こんなふうに思いますので、この際、自民党の諸君はおりませんけれども、たった一人いらっしゃるから、代表してしっかり耳にとめておいていただきたい。こんなことに反対されるならば、自民党も共犯者と言われてもいたし方がない、こうひとつ御自覚願いたい。そのことを私はこれからまた角度を変えながら、この問題をもう少し追及してみたい、こう思ってきょう決算委員会に時間をいただいた次第であります。  さて、国有林の交換にまつわります問題は、その後も農林水産委員会においても、保安林としての受け財産が大変不備であるという点を指摘をいたしまして、林野庁長官からもこの点についての釈明がなされておりました。しかし、私はこの際、会計検査院に一言お尋ねをしておきたいと思うのです。  会計検査院からの御報告をいただきました。確かに二十年というこの歳月は厚い壁になっております。当時を検証し切るにはまことに難しい問題が山積をしていることは事実でございます。しかし、私は、刑事事件に時効はあっても、こうしたいわゆる政治の姿勢を正し、また不正を正すというものに時効があってはならぬ、こう思います。したがって、この点について今後厳しく追及をしてまいりたい、こう思いますが、この際、大変遺憾に思っておりますのは、会計検査院の皆さんが、せっかく受け財産の新潟県関川村の国有林の実態を足で御調査なされたと報告されているにもかかわらず、あの山が保安林であったという事実について言及されていないというのが私は大変疑問に思います、というよりは、遺憾にも思います。この際、御釈明をいただきたい、こう思います。
  108. 磯田晋

    ○磯田会計検査説明員 ただいまお尋ねの点でございますが、四十年度決算検査報告には受け財産の記述がございます。その内容は、受けた林野の状態がよくないという指摘にとどまっております。しかし、このことは先日も申し上げましたとおり、問題にならない点は当然のこととして検査報告で言及しなかったまでであるというふうに考えざるを得ません。私ども、その後審議記録等についても確認いたしましたが、結論は同様であります。  こういうようなことでございまして、何分にも古い事例でありますので、いろいろ努力いたしましたが、むしろ、この際、会計検査一般論として申し上げさせていただきますと、先生御指摘の点は、会計検査の過程で通過すべきポイントであることはもちろんでございますので、当然検討済みであるというふうにお答え申し上げたいと思います。
  109. 島田琢郎

    島田委員 私の指摘は少し厳し過ぎるかもしれません。ただ、まことに私は遺憾だと思いますのは、当時保安林としての視点からこの受け財産を検討されておれば、あるいはあれほど小針暦二氏をしてここに自信を得さしめるようなことは起こらなかったのではないかという思いが私にあるからであります。しかし、これは時間の関係で、今の御答弁を了解できないけれども、やむを得ざるものとして受けとめざるを得ないと思います。  しかし、この際、渡し財産の方について当時の検査院が御指摘になった点は極めて高く評価していいと思います。ただ、残念なことに、これも当事者であった国有林の管理者である林野庁が、あなた方の御指摘の点について強い反省があってしかるべきだと僕は思うのですが、どうしてもこの点について、今までの資料の提出や説明によっても私がいま一つ納得しがたいところである。  この点を少し再現してみましょう。当時の会計検査院の指摘であります。「渡財産の評価についてみると、」という題になっております。大事な点ですから、ここは読み上げていきたいと思います。   三十九年三月の交換契約分については、同年一月、同営林局において山林として各種課税標準価格を基とした価格等により三・三平方メートル当たり六十四円と評価しているが、本件土地の周辺は近年別荘分譲地等として開発されつつあり、評価時においては、土地会社が別荘分譲予定地として地元民等から購入したものが相当あり、位置環境等からみて本件土地よりも品位が劣ると認められるもので三・三平方メートル当り平均三百五十円で購入されている例もあったのであるから、評価にあたりこれら売買実例価格を十分に調査したとすれば相当有利になるように相手方と交渉できたものと認められる。 つまり、なぜこんな大損をして売ったのかという厳しい指摘であります。  続いてレポートは、   現に、本件土地のうち五十九・七ヘクタールは、湯本温泉市街地に近いなど良好な箇所ではあるが、三十九年七月、三・三平方メートル当り二千二百円程度で転売されている状況である。 驚くべき価格で売られているという実例があるということを指摘しているのであります。驚くべきというのは、決してこの価格を不当と言っているんじゃないのです。こういう実例があるにもかかわらず、驚くべき安い値段で国有林を手放しているという指摘に通ずるのです。  さらに、第二回目の分についても触れています。これは四十年七月の交換契約分についてでありますが、  三十九年十一月、同営林局において山林として各種課税標準価格を基とした価格、売買実例価格および民間精通者の鑑定評価格を平均して三・三平方メートル当り五十六円と評価しているが、売買実例として採用している価格は、地元民が山林経営のため購入した場合のものであり、現地の状況からみてこれを採用したのは適切とは認められず、また、鑑定評価格についても十分調査をしないで採用したのは適切とは認められない。さらに、前記三十九年七月の転売の事実も登記簿等について十分調査を行なっていれば判明したものと認められ、その後さらに土地会社が別荘分譲予定地として地元民等から購入したものが相当判明していた状況であり、評価にあたりこれを十分調査したとすれば、相当有利になるように相手方と交渉できたものと認められる。   現に、本件土地のうち六十六・七ヘクタールは前回同様良好な箇所ではあるが、四十年八月および十二月、三・三平方メートル当り三千円程度で転売されている状況である。 この点は私が前の決算委員会で指摘をいたしました。なぜこんな売買実例も近くにあり――林野庁は手放すときの理由に、那須の国有林は極めて劣悪な土地である、評価に値しない土地に近い答弁をなされているのであります。ところが、その当時会計検査院は、それは全くうそであると指摘をされている。厳正に地元を足で稼いで調査をされた結果であるとも言われております。これだけの指摘をしておきながら八千八百万円で交換された土地、まことに国家的大損を犯した、そういう意味において、罪万死に値すると私は厳しい口調でこれを指摘をしたのでございます。三千円でも、それは一番高い場所かもしれませんが、現に近くに三千円という売買実例がありながら、なぜ六十五円などという低い値段で評価したのでしょうか。私でなくたって疑問が残るのは当たり前です。  そこで、私はこの際、問題の人小針暦二氏について法務省に若干お尋ねをしたいと思います。  小針暦二さんという人は、私の表現で言えば大変したたかな人のようでございます。彼の経歴を少し調査させていただきました。昭和十一年に詐欺で懲役一年に処せられております。昭和十三年には公文書不正事実記載でこれまた懲役一年六カ月に処せられております。昭和十六年、住居侵入でこれまた懲役六カ月であります。昭和十八年、有価証券偽造で懲役三年。戦後になりますが、昭和二十一年、食管法違反で、これは罰金刑ですが千円の刑に処せられております。そしてその後、白河の鉱山を買収いたしまして、光鑛業を資本金百万円で興しました。亜鉛採掘をしていた会社でございますが、銀行から不正融資を受けていたことがばれまして、奥さんや子供さんを置いて逐電をいたしました。その後、どういうつてでか兼松江商に食い込んで大阪市で材木商美福を興した、これが美福の始まりであります。  そして、最近といいますか、今話題にしております国有林の交換が行われるちょっと前、昭和三十三年の十二月ですか、福島県の開発課係長を巻き込みまして、村有林の払い下げに、これはまんまと成功いたしました。かわりに村長に対して百万円の通帳を贈りました。これはやはり法務省もねらいました。全国に指名手配をいたしました。翌三十四年、福島地検から罰金刑に処せられるという、そういう経歴を繰り返してきたわけであります。  しかも、四十二年になりまして、福島交通の三十万株のうち二十万株を買い占めまして、当時の織田大蔵社長から小針氏背任の告訴を受けたのでありますが、しかし、これをはねのけまして翌年福島交通の社長となった。そして、福島交通二百五十万株のうち小針社長が百三十万株を保有し、その三カ月後には福島交通不動産をつくられた。こういう経歴を持っているわけであります。今申し上げました一連の彼の経歴の中で、国有林の不正交換事件を彼は画策をし、政界を巻き込み官僚を押さえ込んでこれをまんまとせしめたのであります。  私は、以上申し上げました点について、法務省にいわゆる事実についての確認を求めたいと思います。
  110. 筧榮一

    筧政府委員 ただいま小針暦二氏の経歴、特に前科について具体的な御指摘があったわけでございますが、個人の前科の有無あるいはその内容は個人の名誉にかかわることでございます。さらに、今御指摘の前科を聞いておりますと、いずれも二十数年以上前のものでございまして、刑法上、刑の言い渡しの効力も当然消滅しているとうかがわれるわけでございます。そういう関係でございますので、私どもといたしましては、御指摘の前科についてこれを確認するということは差し控えたいと思います。
  111. 島田琢郎

    島田委員 疑いも持っていないということですか。
  112. 筧榮一

    筧政府委員 御指摘の前科について、それがあるかないかという点について、私どもの方からそうであるとかそうでないとかいうような確認を差し控えさせていただきたいということでございます。
  113. 島田琢郎

    島田委員 確かに、人権を大切にするというのは、これはおっしゃるとおりでございます。しかし、初犯ならいざ知らず、累犯に累犯を重ね今日これだけの話題の中心人物となっています。法務省として、刑事局として疑いも持たないということで許されるでしょうか。重ねてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  114. 筧榮一

    筧政府委員 疑いという御趣旨が私よく理解できないところでございますが、前科につきましては、御承知のように、私どもの方で可能な限りのものを把握しておるわけでございまして、これにつきましては、個人の名誉、それから今のように古いものもございますし、そういう観点からあるとかないとかという確認は差し控えたいということで、疑いがあるとかないとかいうことではないと思います。
  115. 島田琢郎

    島田委員 しかし、私は疑いに足る人物だと思います。これだけ連日新聞でもテレビでも、まさにロッキードに次ぐか上回るかと言われる話題の人物です。こうした状況のもとでもあなた方の正確なる任務を果たすことを否定なさるのですか。
  116. 筧榮一

    筧政府委員 先ほどはちょっと御質問の趣旨を取り違えたかと思います。  最近、新聞紙上でいろいろな小針暦二氏に関連いたします事実が報道され、国会でもいろいろな事実について御論議があることは私ども十分承知しておりますし、検察当局におきましても、その事情は十分承知をいたしておるところでございます。したがいまして、検察庁におきましても十分な関心を持ってあるいは資料、情報等の収集に努めていることかと思いますし、今後事態の進展に伴いまして、犯罪の嫌疑がある場合には、これに厳正に対処するというふうに考えております。
  117. 島田琢郎

    島田委員 十分法務省としても関心を持ってこの件に当たりたい、法網をくぐるようなことは許さぬという構えと受けとめました。よろしゅうございますか。
  118. 筧榮一

    筧政府委員 そのとおりでございます。
  119. 島田琢郎

    島田委員 さて、林野庁長官、こういう経歴の持ち主だったということは当時いただいた資料には記述一切全くありません。しかし、私は残念だと思うのです。少し厳しく言い過ぎるかもしれぬが、札つきの男でした。まんまと国有財産をせしめられたといったら、本当に悔しくて国民は涙を流すのではないでしょうか。その点なぜお調べにならなかったのだろうか。重ねて私は新たな疑問を持つのですが、今の件について御意見ございますか。
  120. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えいたします。  当時、林野庁が交換の相手方の社長個人につきましてどのような認識があったかは、実は私どもわからないわけでございます。
  121. 島田琢郎

    島田委員 確かに、冒頭私が申し上げましたように、私もこの件を悔しい思いであるいはまたときには正義感に燃えて、こんな不正を許してたまるか、こう思って取り組んでまいりましたが、二十年の壁の厚さに私は改めて自覚を強く持ちました。しかし、今度は、渡し財産のところで、先ほど私が指摘した点で、もう一遍申し上げておきますが、会計検査院は実に正確な指摘をされたと私は思います。その後二十年前を検証してみましたが、渡し財産に対する会計検査院の指摘は、当時の状況から見ても極めて異例に厳しいものだったと私は思います。大変適正なまた指摘であったと思います。しかし、残念ながら、会計検査院には実はこれ以上の権限がない。つまり、こういう悪いことをしているのだからもとに戻しなさい、あるいは適正を欠くような行為があったのだから原形に復帰させるという、そこまでの力を持っていない。もちろん、不当に強い権限をどの機関にも与えてはいけません、そのことは私もよくわかります。しかし、権限とは別に、正義感というものがあり、国有財産を所管している林野庁にいわゆる任務感がもっと強くあるならば、この種の事件は起きなかったのではないか。現にこういう指摘があるのですから、これを原形に復帰させるだけの勇気も当時の長官だって持ち得たはずでありますが、残念ながらそこには、これもいつか実名を挙げて指摘をいたしたいと思いますが、政治家ともが寄ってたかってあなた方のせっかくの行政に対する責任を押しつぶしてしまった。そういう意味で、林野庁長官以下皆さんも私はある意味では被害者であり犠牲者だと思って見ています。  しかし、その後今日までの経過の中で、資料提出や国会における答弁を聞いておりますと、私は、それは被害者じゃなくて何か共犯者のように思った時期がございました。そしてまた、今指摘しているような件について言えば、私は、確かに当時のことは一件書類としてもなかなか精査しにくいものがある、これはありますけれども、しかし、こうした事件に対して正確に機能する当時の林野庁のいわゆる幹部諸公の頭があったら、私は二十年経た今日まで疑惑の思いを持って見られるようなことは未然に防ぎ得たのではないかと思えてならぬのです。  そこで、ちょうど時期を同じくした一つ事件、これはきのう朝日新聞に報道されました。もう一つ税金逃れ、こういう事実が判明してまいりました。いわゆる世に言う逆さ合併であります。実に奸知にたけた人であります。逆さ合併によります税金逃れは税法上問題があることは言うまでもありません。先ほども指摘をいたしました美福は、その後、美福不動産を設立されておるのでありますが、実は美福というのは当時は不動産という名前ではなくて、美福という株式会社でございました。これは、この新聞によりますと、小針暦二氏が持っております企業グループ、これは二十数社あるそうでありますが、まさにこの美福というのは総司令部的役割を果たしている。言葉をかえて言えば、悪さの頂点に立っている総司令部であります。これは三十六年五月に小針氏が社長になりましてみずから設立をしておるようでありますが、四十一年四月二十日、同じ二十数社のグループの中の一つである三永製鉄に吸収合併をしている。四十一年といいますと、私が問題にしている那須国有林が交換されたあの時期とちょうどタイミングをよくする時期でございます。なぜこんな手の込んだことをやったのか。冒頭言いましたように、逆さ合併、これは税金逃れであることは間違いがない。逆さ合併の中身について、状態を一々説明する必要はありませんが、しかし、同じ会社の社長が経営する一方の会社が大きな黒字を出し、一方の会社が大きな赤字を出した。そこで考えられたのがこの逆さ合併でございます。こういう制度が今も残っているというのは極めて問題だと私は思います。そのためには、例の国有林の交換のときと同じような手法が用いられている。つまり、渡した方の国有林であった那須の方はできるだけ値段を抑え、先ほど指摘のとおり、三千円でも売られている実例がありながら、六十五円などという安い値段で抑えて評価をし、新潟県の小針社長が出す方の山は極力高い値段に引き上げて等価交換に持っていこうとした、この手法と同じであります。  転売先にバックマージンを出して籠絡をしますね、売り値を低く税務当局に申告してくれるように頼んで回ったり。さっきの国有林のときも同じなんですよ。役場へ行って、固定資産税をなるべく高く評価してくれ、片一方は何としても等価に持っていくためにはもう少し高くしなければならぬ、こういう工作を二度にわたってやっておるという事実を私は現地で承知をしてまいりました。ついでのことだから申し上げておきますが、私は国会に証人として呼ばれれば、いつでもあなたの証人として国会に立ちますとまで言ってくれておる確信に満ちた発言をもとにして私は言っておるのであって、だから、私はなるほどここでも同じようなことをやったか、こういう感じでおるわけでありますが、そうして、美福の帳簿上の黒字幅というのはなるべく抑えるということをやった。三永製鉄にそうやって吸収合併をするわけでありますが、同社の赤字によって当然のことながら利益分は消えまして、税金を納めなくて済むという結果を生んだ。これが逆さ合併をもくろんだ彼の目的なのであります。  私は、こうした実例というものを見ておりまして、重ねて申し上げてみますと、美福というのが、那須の国有林と関川村の民有林を不当な交換によって大きな利益を得ました上で、一方、累積赤字を抱えた三永製鉄と逆さ合併をして巧妙な税金逃れをした。国は国有林の交換によって大損をして、さらに、こんな不明朗きわまりない手段でもって得た巨額の利益に対して税金が一銭も取られていないとしたら、一体、国民はこれで納得しますか。国税当局はこれを見逃した、罪万死に値しますよ。これもまた、二十年前の出来事だからと言って済まされるかどうか。私は何ともいわゆるふんまんやる方ない。法務大臣、いかがですか。
  122. 住栄作

    住国務大臣 所管外のことでございますので、私から背のことをとやかく申し上げる立場にないと思うのでございますが、先ほど刑事局長が申し上げましたように、検察当局としては、そういう問題、容疑等につきましては厳正に対処していってもらえる、こういうように私は期待をいたしております。
  123. 島田琢郎

    島田委員 ところで、国税庁、こういう制度というものはそのまま今も残っているわけですけれども、私が指摘した点について、ひとつ正確にこの件を含めてお答えをいただきたい。
  124. 谷川英夫

    ○谷川説明員 個別の問題につきましては、答えを差し控えさしていただきたいと思います。  赤字会社が黒字会社を吸収合併するいわゆる逆さ合併の場合の税務の取り扱いについて申し上げます。  まず、そういう合併が商法上適法になされている、そういう場合には、一般的には税務上もその合併を前提として税務処理をするということになっているわけでございます。しかしながら、その合併が、例えば事業活動を全く行っていない無資産の休眠法人、そのようなものが存続法人になる、このような形で租税回遊のみを図っているというふうに認定されましたものについては、過去にもこれを否認した例がございます。しかしながら、赤字会社と申しましても、その実態は非常に千差万別でございまして、決算上赤字でございましても多額の含み資産を持っている場合とか、あるいは赤字ではあっても事業活動が大きいとか、そういう実態がいろいろでございます。ですから、そういうことからいたしまして、単に赤字であるということから税務上これが問題があるというわけにはいかないわけでございまして、先ほど言いましたように、全く実体のないような会社が租税回避のみを目的として合併をした、そのように認定されるような場合について、個々に適正に処理するというような取り扱いになるわけでございます。
  125. 島田琢郎

    島田委員 時効になっている話だけれども、追徴していただきたいぐらいの気持ちなんですが、そういう認識は、私の考えているに近い認識ぐらいはお持ちなんでしょう。
  126. 谷川英夫

    ○谷川説明員 先ほどの繰り返しになりますけれども、個別の問題につきましては答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
  127. 島田琢郎

    島田委員 指摘の山でもうけた金が九十億、税金は幾らになりますか。
  128. 谷川英夫

    ○谷川説明員 その税額云々の話につきましては、やはり個別の話になってしまいますので、私から申し上げるのはちょっと差し控えさしていただきたいと思いますけれども、ちなみに、法人税率について申し上げますと、昭和四十一年一月一日以降に開始する事業年度、それにつきましては、当時法人税率は基本税率で三五%でございます。しかしながら、資本金一億円以下の法人、いわゆる中小法人でございますけれども、こういう小さい法人につきましては、年所得三百万円以下の部分についてだけは二八%の軽減税率ということになっております。
  129. 島田琢郎

    島田委員 ともかく三十億がらみの税金をみすみすこれは取らないで逃してしまったということになるのです。もってのほかではありませんか。  そこで、林野庁長官、彼の経歴、いわくつきの上に、さらに当時ちょうど時を同じくして、あなたの所管している国有林において現に大損をし、それがあろうことか、大蔵省も税金を取ることを忘れてしまったのか、取ることができなかったのか、まあ逆さ合併という合法手段によってやったのだから取れなかった。改めて林野庁長官に、私は、この件に関しての当時とった態度について、あなたはどういう御認識をお持ちか、お聞かせ願いたい。
  130. 秋山智英

    ○秋山政府委員 那須の森林の交換の件につきましては、会計検査院の指摘も受けましたし、当時の国会でも論議されたところでありますが、さらに二十年経ました今日にこの問題が取り上げられておりまして、本件につきましては、私まことに残念だと思っております。  申し上げるまでもございませんが、国有林野は国民の大切な財産でございまして、この管理、処分につきましては、いやしくも社会の批判や疑惑を招くことがあってはならないと思っております。今後とも国有林野の管理、処分全般にわたりまして厳正かつ厳格を期してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  131. 島田琢郎

    島田委員 さらに重ねて、こうした問題の後の処理について、いろいろ資料も提出がありましたから、会計検査院の指摘に基づきます反省があったと伺っております。この際、林野庁として、ただいま国有林が、財産処分なども含めていわゆる厳しい風にさらされている。よもや二十年前の愚を繰り返すようなことはないと私は思います。しかし、新聞にも出ておりましたが、六本木のあそこ、林野庁、国有林の大事な財産も売り払わなければならぬほど追い詰められている。どうかすると、またぞろここに不正が起こらないという保証はない、そうは言い切れないと私は思うのです。決意を伺っておきたい。
  132. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この問題につきましては、先ほども申し上げましたとおり、四十一年に会計検査院から交換を行う場合の基準、評他方法の改善等につきまして御指摘をいただいたわけでございます。林野庁におきましては、当時の交換制度が経済社会情勢に即応しなかったということも反省材料にいたしまして、国有林野の管理、処分のより一層の厳正を期するという観点から、昭和四十年の国有財産中央審議会の答申、国有林野の交換をめぐる国会での論議等を踏まえまして、関係省庁の意見をお聞きしまして、種々検討を重ねてまいりまして、昭和四十二年四月に交換の基準、渡し財産の用途指定、評価の具体的方法等、新たにこれを定めました。これを各営林局に対しまして統一的に指導を行いまして、運用の一層の適正を期しているところでございます。今後私どもはさらに厳正に対処してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  133. 島田琢郎

    島田委員 ついでに最近の渡した財産の実情をいろいろ調査をしてみましたら、その後は藤和不動産が中心になって那須ハイランドの建設が行われ、そしてまた別荘地の分譲が行われてまいりました。だんだん地価が上がりましてね、一番高かったときは五十六年ごろでありますが、A、B、Cと三つにランクして分譲しているそうであります。その地価はAランクで、申し上げました五十六年のころが一番高い値段で売られたようですが、これが十万円から十二万円、三・三平米当たりであります。現在は七万から八万だそうであります。Bランクが四万五千円から六万円、Cランクが三万五千円から四万円、これを若干単純計算ではありますけれども、国有林三百七十ヘクタール譲り渡したところにこの幾つかの単価をはめ込んで計算してみますと、安くても千二百八十五億、高い値段で計算をいたしますと実に二千九百六十億になっているのです。もう繰り返して言う必要はありませんが、売ったときは林野庁は八千八百万円なんです。三江七十一ヘクタールをたったの八千八百万円で売った。あれから二十年たったとはいうけれども、これどういう値段でしょうか。  だから、私は今までも厳しく申し上げてまいったのであります。しかし、長官から、襟を正して厳正な態度で臨む、厳格にこれを運用してまいりますと、こういうことでございますから、国有林にかかわります問題は、この件、本日をもって終わりにしたい、こう思っています。しかし、これは免罪にしたのではもちろんありません。幾度も申し上げておりますように、刑事的な事件あるいは税法上の問題としては確かに時効でしょう。殺人事件だって十五年たてば時効になるということであります。しかし、札つきの小針暦二という人物がここに生存する限り、この悪は逃してはならぬと思うのです。油断ならないから、私は厳しい指摘をしてきたのでありまして、たまたま国有林がねらわれました。しかし、ともすると、秋山長官の山であるような錯覚を持ったり、あるいは中曽根総理大臣の山であるかのごとき管理運営がなされては困るのです。国有林は明らかに国の財産であると同時に国民の財産だからであります。いささかもこれをおろそかにしては困るのであります。その点について、厳しく私の考え方をつけ加えて、林野庁に関します問題あるいは会計検査院にかかわりました当該国有林の交換にかかわる問題は、一応ここでしばらく持ち越しをしていきたい、私はこう思っています。  ところで、小鉢暦二という人物について、ほぼ余すところなく本日私は御紹介をし尽くしたと思いますが、まだし尽くさない面がたくさんある。例えば、五十三年十二月一日に「国民ジャーナル」というこんな新田が出ています。これは私が大嫌いな右翼の新聞です。右翼の新聞なんですが、さすがに右翼もたまりかねて小針暦二を糾弾しています。「小鉢暦二研究」、この中で、「悪徳資本家の土地買占め 自然破壊の実態を働く」、なかなかいいところをついていると思います。しかも、「許してはならぬ小針の暴挙」、なかなか適切に研究がなされているようであります。「土地買い占めのカラクリ全貌解明間近!」、実に今日的な話題として、既に五十三年に右翼の新聞がこれを書いているわけであります。この小針暦二なるものの人物、ぜひ私は頂ねて委員長にお願いを申し上げますが、確かに、証人喚問というのは切りかえをいたしまして、参考人として呼んでいただきたいことをお願いを申し上げております。ぜひ、ここまで疑惑の深い、やはり本人の国会における証言というのは大変問題の解明をする上で重要なかぎにもなり、またそれを促進する手だてにもなると思います。自民党の諸君が小針本人の国会における参考人としての招致にも反対する、こういう態度を私は解せないということを先ほど申し上げましたが、意外に小針暦二社長というのはそんなところ案外憶する人ではないような気がいたします。呼んだらさっさと出てくるという感じを私は強く持っている。当委員会ばかりではございませんで、ほかの関係する委員会でも同じように証人喚問を要求いたしました。現在時点では、参考人の国会におきます招致ということに相なるわけでありますが、彼にまつわりますエピソード幾つかございますが、私はつい最近、本当に彼と会って直接長時間にわたって話をした人物のお話を伺いました。そういう中でも、証人喚問という形ででも呼ばれれば行くという意味のことを言っているわけであります。しかも、この人物、一体どこまでが彼の人物のすべてなのかちょっとはかり知れないところもありますけれども、こうした堂々たる公開の席上、おれはだれだれのところに何千万の金を持っていったという話まで、聞かしてならない場所で聞かしてはいけない人たちを前にして話しているんですね。これを考えますと、国会に呼ばれればおれだって行くよというのも私はかなり信憑性の高い話だと受け取るわけであります。幸い我が党の委員長でございますので、甘えも少しございますが、横山委員長、ぜひひとつ当委員会において彼を呼んでいただきまして――私が今まで申し上げてまいりましたことが一方通行になる可能性もございます。単なる小針暦二という人物を批判するという形で私は終わらせたくありません。それでは私の正義感が泣こうというものでございます。私の言っておることが正しいのか正しくないのかを立証する必要が今日時点ではもうあると思っているからでございます。引き続き機会をいただきまして、小針暦二氏を国会に呼んでいただく席で、私がいろいろとまたお話をしたいこと、ただしたいことなどがございますので、そんな機会をお与えいただきますことをこの機会にお願いを申し上げながら、最後になりましたが、もう一遍、住法務大臣、先ほど何かおれに聞かれたのは筋違いだというような顔をなさって立ってまいりました。あれは私のあなたに対する質問が唐突であったかもしれません。私の思いの中には、今、政治倫理あるいは社会におきます不正の糾弾、これが国民的な期待であり課題でありますので、そうした問題に真っ向から立ち向かっていただかなければならぬのが法務省であります。その大臣として、しかも中曽根内閣の閣僚の一人として、その御決意を聞きたかったからであります。再度、正確にこうした私の期待にしっかりこたえていただける法務大臣としてのいわゆるお話を承りながら、本件に関します本日の質問を終わりにいたしたい、こう思うのであります。
  134. 住栄作

    住国務大臣 法務省は法を守っていく立場でございます。法治国家であるということも申し上げるまでもございません。そういうことで、いやしくも法に対する信頼が失われる、こういうことは絶対避けなければならないことでございます。そういう意味で、厳正公平な立場で対処してまいりたい、こう考えております。  それと同時に、政治倫理の問題、政治に対する国民の信頼、これも民主主義国家として最も大事なことでございますから、政治家の一人として、そういう立場に立ってまたいろんな対応をしていくのは当然の任務だと考えております。
  135. 横山利秋

    横山委員長 委員長からお答えいたします。  御要望の線につきましては、いまなお理事会で継続審査中でございますので、さよう御承知ください。
  136. 島田琢郎

    島田委員 ぜひよろしくお願いいたします。  終わります。
  137. 横山利秋

    横山委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十四分開議
  138. 横山利秋

    横山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  139. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず、私は、指紋押捺の問題についてお伺いをしたいと思っております。  この問題につきましては、廃止の要請の声が各方面から上がってきておりまして、先般、全国市長会も総会で指紋押捺制度の廃止要請を決議しております。また最近、各地方議会においても反対決議がもう既に四百以上の市町村で行われておるという状況でございます。皆さんも御承知のとおりであると思います。岡山地裁の法廷で、同法違反で起訴されたある被告は、犯罪捜査の手段として開発されてきた指紋押捺を、犯罪者でもない外国人に義務づけるのは、「何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。」という国際人権規約に反する、また、憲法十三条個人の尊重、十四条法のもとの平等、これに違反するという主張をしておられるわけでございます。この指紋押捺を強制するのは、犯罪者並みの扱いで人権侵害であるという声が日ごとに高まってきておるわけでございまして、誓願署名も先般は百八十万名、数は定かではございませんが、非常に多くの方々がその署名をなさっておるということも聞いておるわけでございまして、この点、廃止の方向を政府として考えていらっしゃるかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  140. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  委員がただいま御指摘しましたように、現在四百二十二の地方議会から外国人登録法の改正に対する意見が寄せられております。その他の団体からも法務省に対していろいろ御意見が寄せられております。また、同時に、我が国においては外国人は、我が国に滞在する以上は我が国の法令に従うべきであるという御意見も寄せられております。法務省といたしましては、硬軟いかなる御意見であろうとも謙虚にこれを傾聴して検討しているわけでございますけれども、やはり我々の立場からいたしますと、外国人登録法において種々の制度を採用しておりますが、それぞれしかるべき合理的理由があってやっているわけでございまして、これが人権侵害をしている、または犯罪人扱いだということは、これは当たっていないと考えている次第でございます。これは我が国だけが世界で独自の特異な制度を採用しているわけではございませんで、各国ともそれぞれの歴史的、社会的、経済的事情に応じてそれぞれ制度を持っておりまして、これは国際的にも容認され得るものであると考えている次第でございます。
  141. 近江巳記夫

    ○近江委員 その合理的な理由というのをひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  142. 田中常雄

    田中(常)政府委員 外国人登録法の目的は、在留外国人の身分関係、居住関係を明らかにし、そして公正な管理を行うということになっておりますが、この身分関係、居住関係を明らかにするためには、外国人の同一人性を確認する必要があるわけでございます。その同一人性を確認するためには、指紋が持っている万人不同という特性を使う必要があったからこれをやっているわけでございます。  また、指紋制度を採用しているのは、世界において我が国だけではございませんでして、世界に約三十三カ国ございます。そして、そのいずれの国においても指紋が人権違反であるという声は起きていないと聞いております。
  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 この押捺制度というのを実施し出したのは、朝鮮戦争の後、韓国等からの密入国者がふえてきた、しかも、写真を張りかえるなど登録証明書を偽造する、不正使用する、そういうケースが頻発したのが理由であるということを聞いておるわけです。しかし、密入国者も現在非常に減少しておるわけで、また同一人性確認の方法がいろいろ開発されていると思うのです。例えば現在の自動車の運転免許証にしても、写真を、何というのですか型で押さえてはがれないようにしておるとか、写真の方も非常によくなっておりますし、時代の進展とともにいろいろなことが開発をされてきておるわけですね。いつまでもそういう制度に、これだけ人権問題にも絡んでおる制度でございますし、それに固執するということはどうかと私は思うのですね。ですから、かたくなにそういう指紋押捺の義務を課し続ける必要があるかどうか、非常に大きな疑問を感じるわけなんですよ。ですから、そういう点で、その同一人性の確認ということであるならもっと科学的にいい方法がないかということを考えてないのですか、これだけ問題になっておるのに。それはいかがですか、大臣
  144. 田中常雄

    田中(常)政府委員 まず、指紋の問題でございますけれども、指紋はそれぞれの機関によっていろいろな目的に使用されております。入管においてはこれは同一人性の確認のためでございますし、警察においては犯罪目的に使うと思います。国によりましては自国民に指紋を押捺させるところもあり、また、国によりましては旅券を発給するに当たって自国民から指紋を採取する国もございます。それぞれその機関の目的に応じて指紋というものは採取いたしておるわけでございますけれども、入管は同一人性の確認のためにこの方法を採用しておるわけでございます。  それでは、指紋以外に何らかいい方法があるかという問題でございますけれども、まず判こというわけにはいかないわけでございます。それから、西欧諸国や何かは、同一人性の確認の方法として顔写真及びサインというものを非常に有効に使っておりますけれども、我が国においては、サインというので同一人性を確認することが社会慣習化されていない次第でございます。また、我が国に在留する外国人の大半は、サインで向分の同一人性を主張するという慣習は持っておらない次第でございます。また、例えば米国におきましては、サインというのが完全に同一人を確認するための手段として社会慣習化しておりますけれども、しかしながら、米国においても十指の指紋をとっているというのが現状でございます。
  145. 近江巳記夫

    ○近江委員 現状はお聞きしたわけでございますけれども、これだけ非常に科学技術も発達しておるわけでございますし、何らかのそういういい方法が考えられるはずなんですね。やはり何とかしてそれを変えていこう、そういう根底から出ていった場合にはいろいろな発想が出てくると思うのですよ。いや、この制度はもう変えないんだ、しかし外国の状況もこうだ、変えないんだというそういうような前提があった場合には知恵も出てこないと思うのですね。その点いかがなんですか。それは真剣に研究しているのですか。
  146. 田中常雄

    田中(常)政府委員 指紋制度を採用したのは昭和三十年以来でございますけれども、その後のいろいろな事情の変更もありまして、法務省としては折に触れいろいろな研究はしたわけでございます。しかしながら、やはり万人不同、一生不変という、こういう特性を持っている方法というのはほかにないわけでございます。それからまた、顔写真によって同一人性を確認することができるのか、これは法務省において指紋だけで確認しているわけじゃございませんで、その顔写真も同一人性確認の方法としていろいろ使用しているわけでございますけれども、やはり顔というのは年齢によって変化が起こり、また髪型によっても変化が起こり、それから写真を撮った環境においていろいろ写真が違って撮れるということもございまして、それによって同一人性を確認することは困難だという結論になりまして、そして、指紋とそれからもう一つ写真と両方をもって同一人性の確認に当たっておるわけでございます。
  147. 近江巳記夫

    ○近江委員 現段階においてあなた方はそういう考えに固執なさっているわけでございますけれども、しかし、今申し上げたように、やはりこれだけの請願署名も集まっておるわけでございますし、各議会でもこれだけの反対決議がなされておる。市長会においても先ほど申し上げたとおりの状況でもございますし、したがいまして、さらにいいそれにかわるものがあるかどうか、やはりこれは真剣に検討していただく必要があると思うのです。今こうだからもう一歩も進みませんというのであれば、これだけの署名なさった方々の意思に反すると私は思うのですよ。今後十分検討されますか。
  148. 田中常雄

    田中(常)政府委員 以前予算委員会において法務大臣が、いかなる御意見であろうとも研究をいたします、そういうことを申しております。我々としましても、いろいろな事態に対しては慎重に研究だけは続けようと考えております。
  149. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、大臣から重ねてお聞きしたいと思うのです、研究なさるかどうか。
  150. 住栄作

    住国務大臣 この外国人登録関係につきまして、指紋の問題、それから常時携帯の問題等々いろいろ地方公共団体あるいは市長会ないしは署名の問題も、先生おっしゃるとおり私どももよく十分承知をいたしております。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕 そういう背景の中ではございますけれども、実は、外国人登録法、これは申し上げるまでもないことでございますけれども、国会にお願いいたしまして、この法の改正を行ったわけでございます。指紋の押捺につきましても、従来原票二枚に押していただいたところを一枚にするとか、あるいは書きかえ期間を五年にするとか、そういうようなことを考えまして改善をいたしました。それで、やはりどうしても外国人の同一人性というものをどうして把握するかということになるわけでございますけれども、写真の技術も進歩しておりますけれども、まだまだそこまで自信が持てない。それからまた、署名等につきましても、今ほどお話がございましたように、日本の場合に社会慣習化もしていないというようなこと等々がございまして、私どもそういう改善を図りながら、実は昨年からこれを実施に移しておるわけでございます。そういうことがございまして、それから、改正した以降のことを考えましてもそんな大きな変化はない、こういうことから、ひとつ現行制度でお願いしたいと考えておるわけでございます。  しかし、今おっしゃいましたような事情もあるわけでございますから、私ども研究しないなんてそういうかたくなな態度はとってはいないのでございます。常に――その改善の方向に勉強していく、こういうことも必要でございますので、またいろいろな方面の意見を聞きながらひとつ研究は進めてまいりたい、こういうように思っております。
  151. 近江巳記夫

    ○近江委員 今、指紋押捺以上のものはないというようなお話でございますけれども、運転免許証は写真ですね。これで済ましておる。実印というのは社会生活の中で大変重要なものでございますけれども、この印鑑登録制度には、指紋はおろか写真すら要求されていないですね。これは実際考えてみれば、非常に何というか、こういうことで社会の中で通っておるわけですね。ですから、同一人性の確認のために指紋が唯一の方法というわけでは決してないと私は思うのです。ですから、やはりその辺真剣に研究をして、まあ考えてみますけれども最善のものですということで、ニュアンスとしてはできないというような印象が広がるということは、反発感情というのを必要以上に拡大させることになる、私はこのように思うのです。大臣も御承知のように、我が国の外国人登録者は八十三万人、うち六十七万人までが在日韓国人また朝鮮人という特殊な事情にあるわけでございます。しかも、その多くの方が第二次大戦中は日本人であったわけですね。一九五二年四月の講和条約の発効によって選択の余地なく在日外国人にされた人々並びにその子孫であるわけです。そして、日本で生まれ育ち、十六歳になった途端指紋押捺を強要される、そういう屈辱感、異和感というものは、日本人は抽象的にしか理解しがたい、本当にされる人は大変な感情を持っておられるわけですね。先ほど大臣もおっしゃったように、昨年八月の法改正で登録義務年齢を十四歳から十六歳に引き上げた、登録証明書の切りかえ期間を三年から五年に延長した、指紋原紙を二葉から一葉に減らす、こういう一歩前進はあるわけですけれども、考えてみれば、世界百六十何カ国の中で採用しているのは先ほどおっしゃったようにわずか三十三カ国でしょう。やってないわけです。これをいつまでもかたくなに守っておるというのは、世界の大勢から見ても私はおかしいと思うのです。ですから、これは指紋押捺の廃止の方向でぜひとも検討していただきたい、このように思います。世界の趨勢からかんがみてどうなんですか。
  152. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  今世界の百六十数カ国のうち三十三カ国とおっしゃいましたが、実は事実関係はこういうことでございます。我々は四十九カ国について調べたわけで、その四十九カ国のうち三十三カ国が指紋押捺制度を全面的または部分的に使用しているということでございます。なぜ四十九カ国しか調べなかったかと申しますと、実は、まずソ連、共産圏につきましては独自の出入国管理体制をとっておりますもので、我が国の参考にならないわけでございます。また、中近東、アフリカ等はそれぞれユニークな入管制度を持っておりますもので、これも直接我が国の参考にならないという次第でございまして、大体参考になり得るような国々を調べた結果でございます。  それで、我が国においては指紋と写真をもって同一人性を確認しております。それでは、部分的にしか指紋制度を採用してない国の事例を申し上げますと、これは例えばヨーロッパ九カ国でございますけれども、ヨーロッパにおきましては、実は外国人登録をやっている事務所は内務省でございまして、もっと具体的にはこれは警察でございます。要するに警察官が登録官になっているわけでございまして、登録官が先ほども申し上げましたようにサインと写真をもってまず同一人性を確認する。それからもう一つ我が国にない制度をヨーロッパ諸国は持っているわけでございます。それは、その国に在留する外国人の移動を警察が確実に把握しているということでございます。具体的な制度といたしましては、ヨーロッパにおいて外国人がホテルに泊まると、ホテルのマネージャーは二十四時間以内にそれを土地の警察に報告する、非職業的にそれをやっている人は四十八時間以内に土地の警察にそれを報告する、そういう義務が法律によって課されているわけでございます。このようにしまして国内を移動する外国人を警察が確実に把握している。そういうような方法でそれぞれ在留外国人を把握しておるわけでございまして、我が国だけが特別に何か世界の中で厳しい制度を採用しているということは言えないのではないかと考えておる次第でございます。
  153. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかし、世界の中で三十三カ国しか採用してないわけですよ。いろいろな制度を共産諸国においてやっているとかいうお話がありましたけれども、現実に三十三カ国ですよ。ですから、いろいろそこにおいてミックスしていろいろな制度改正というものを真剣に考えていかなければいけないと思うのです。これが最上のものであるということで、ただその場だけ、研究しないとは言いませんというぐらいのニュアンスではまずいと思うのですよ。ですから、そういう点、真剣な取り組みを強く要望いたしておきます。  それから、昨年八月改正されたことは一歩前進であると思うのです。今の政府側の答弁を聞いておりますと、廃止というのは非常にまだ壁があるように思うのですが、それに至るまで次善の策として、いろいろ昨年八月改正されたように、また次への前進という次のステップということがまた考えられるのではないかと思うのです。例えば、これは十六歳ということになっておるわけでございますが、普通少年法では二十歳、児童福祉法では十八歳となっておるわけです。現在は十六歳以上の者については登録証明書の携帯、提示義務、指紋の押捺義務、こういうものを課せられておるわけですが、せめて第一段階十八歳から二十歳くらいの国内法と同様にすべきじゃないか、こういう考えも一つあるわけです。また、十四歳から十六歳に引き上げたというこの法的な根拠、また社会的な慣習というのはどういうことなんですか。
  154. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  前回の法改正に当たりまして、在留外国人の諸種の義務の軽減を図ったわけでございますけれども、その最中に、委員ただいま御指摘のように、義務を課せられる年齢を十四歳から十六歳に引き上げたわけでございます。この当該の義務を課すべき者の範囲に関してでございますけれども、いまだ保護者の監督のもとに生活しているような幼少の者は独立して行動することは非常にまれでございますもので、したがいまして、登録証明書の諸種の義務を課す必要性が乏しいということは当然のことでございます。前回の改正による年齢の引き上げというのはこのような見地から行ったわけでございまして、通常独立して社会生活を営むことのない十六歳未満の者については、諸種の義務を課さないことにしたわけでございます。  ここで、その十六歳の年齢ということでございますけれども、十六歳に達しますと、交代制の深夜業に従事することができるようになりますし、また二輪車免許等の一定の運転免許を取得することもできますし、また女性の場合には婚姻することも可能となるということでございまして、このような見地から十六歳ということを考慮した次第でございます。また、主要先進諸国の立法例を見ましても、英国、フランス、西ドイツ等が十六歳をやっております。また、米国においては十四歳が指紋押捺の義務づけられる年となっております。しかし、十六歳というのが国際的にも一つの通例となっておりまして、国際的にも受け入れられる通念と考える次第でございます。
  155. 近江巳記夫

    ○近江委員 私が先ほど申し上げたように、児童福祉法では十八歳、こういう国内法というものがあるのですよ。ですから、そういう点につきましては、ひとつまた一歩前進の意味において検討していただきたい、このことを申し上げておきます。検討しますか、もう一遍聞いておきます。
  156. 田中常雄

    田中(常)政府委員 実は、前回の改正におきまして、この十四歳から十六歳というのは慎重に国会において御審議をされたその結果でございまして、私としましては、現行法を的確に運用したい、かように考えておる次第でございます。
  157. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかし、何回も申し上げておるように、さらに一歩前進という意味で検討していただきたい、これを申し上げておきます。  それから、この登録時において確認の申請のたびごとに指紋押捺をやる。指紋というのは考えてみますと終生不変でありますね。万人不同であるわけです。同じ者は一人もおらぬわけですね。ですから、こういう点から考えてみますと、技術的な工夫によって、一度とればいいんじゃないか、そのように思うわけです。せめて成人になったときに登録原紙に押捺した指紋というものを永久保存する、そういうようにしますと、切りかえ申請のたびごとに押捺を求めるということは要らないんじゃないか、こういう意見が非常に強いわけですね。これについてはいかがですか。
  158. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  現在の法律は、五年ごとに確認申請をすることを義務づけております。新規登録に際しまして一回指紋をとる以上、せめて五年ごとには同じ外国人が間違いなく在留しているということを確認する必要がございます。一回外国人が登録し、それ以後すべて登録がなくなってしまうということは、在留外国人を把握するという見地からいたしますと、我々としてはとても考えることはできない問題でございます。
  159. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常にかたくなな御答弁ばかり続いておりまして、私も今かりかり来ておりますけれども、これはひとつ検討課題として法務省として十分検討していただきたい、これは申し上げておきます。  それから、戦争前から住んでおられて、またその二世、三世が誕生している、こういう人は、少なくともこの義務から外していいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  160. 田中常雄

    田中(常)政府委員 戦前より我が国にいる在日韓国人の問題について御指摘がございました。そういう在日韓国人は、確かに先生の御指摘のように、特殊な経緯で我が国に在留を続けている人たちであることはそのとおりでございます。しかしながら、外国人登録法の基本は、国籍のいかんを問わず、また在留経緯のいかんを問わず、あらゆる外国人を同等に取り扱うということでございます。  また、在日韓国人に限って申し上げれば、日韓間には法的地位協定というものがございまして、在日韓国人の法的地位について規定しているわけでございますけれども、その第五条においては、他のすべての外国人に適用される法令は在日韓国人協定永住者に対しても適用されるということが明記されておるわけでございます。在日韓国人、我が国において非常に密着しているといえど、これらの人々はあくまで日本の国籍を持たない外国人でございまして、韓国に忠誠を誓った人々でございます。したがって、我々としては、日本人と外国人ということを区別することはやむを得ない仕儀と考えている次第でございます。
  161. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは法の解釈であって、法というものは改正できるのですよ。だから、私はその命題を出しているわけなんです。あなたは今、法の解釈だけおっしゃっているんだ。私は今後考えられるべき改正点として一つの命題を出しているわけなんですよ。法の解釈、そんなことはわかっていますよ。だから、今後そういうことも含めて考えなさいということを言っているのですよ。それはいかがですか。
  162. 田中常雄

    田中(常)政府委員 御指摘の点でございますけれども、それぞれの国にはいろいろな在留経緯を持った外国人がいるわけでございます。そして、主権国家が併存しているという現代の国際社会構造というのを前提にいたしますと、やはり外国人に対する取り扱い日本人に対する取り扱いというものの間には差異があることはいたし方がないと考えている次第でございます。外国人と孝人との間を区別するということは、何も日本独自のことではございませんで、これは国際通念となっていると考えている次第でございます。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 これも十分検討していただきたいと思います。  それから、切りかえ期間の延長の問題ですが、我が国は五年ということでございますが、アメリカでは十年なんですね。この点についてはいかがですか。
  164. 田中常雄

    田中(常)政府委員 米国の法律によりますと十年ということは明記されておらない次第でございます。それでは、米国はどういう方法をやっているかといいますと、これは行政府の権限として実質上二年ないし三年のタイムスパンで切りかえをやっているわけでございます。これは、いわゆる偽造登録証がどうも町に出回っているというような情報を行政府が入手いたしますと一挙に切りかえを行う、そういう形になりまして、前回は一九七八年から八一年にかけて大幅な切りかえをやっております。それが実情だと考えております。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 切りかえの延長問題につきましても十分検討していただきたいと思います。  それから、この証明書の切りかえ申請期限につきまして、例えば、世帯主の生年月日を基準としまして、一世帯の単位で申請できるような方向で改正できないかという問題です。さらに、この切りかえ申請の場合は、事前の案内、例えばはがきなどを用いてこれを徹底して行う、あるいはまた体の不自由な人たちには代理申請を認める、また期限内に確認申請ができなかった人でも、相当な理由があると認めたときは人道的な措置を講ずるべきである、このように思うわけですが、こういう点についてはいかがですか。
  166. 田中常雄

    田中(常)政府委員 ただいま御指摘の点でございますけれども、例えば病気等によって確認申請に出頭することができなかった、またはその他の義務ができなかったという場合においては、それぞれ法によって特例が設けてあるわけでございます。また、登録事項が二十項ございますが、そのうち実際に登録する外国人が書かなければならない十七項目につきましては、現状において大体行政の目的を達しているのではないかと考えている次第でございます。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 これもいろんなケースがあると思いますので、それをもう一度十分検討していただいて、前向きの前進ができるように考えていただきたいと思います。この問題は、今日の情勢からかんがみましても、廃止の方向にぜひとも法務省としては検討していただきたいし、また、次善の策として私が何項目かについて提起したわけでございまして、こういう点につきましても、早急にひとつ研究を開始していただいて、一歩また前進できるように十分な努力をしていただきたいと思います。その点について大臣からお伺いします。
  168. 住栄作

    住国務大臣 先ほど来、外国人登録制度について、指紋押捺の問題あるいは義務年齢の問題、あるいは指紋は当初一回だけでいいんじゃないか、それからまた、切りかえ期間五年をさらに延ばすことを考えたらどうだ、その他いろいろ御指摘がございました。これは申し上げるまでもないことでございますけれども、外国人に対して日本の社会保障制度その他につきましてもだんだんその範囲を広げていっております。そういう意味で、外国人鑑定の、果たして同一人であるかどうかあるいは身分関係がどうであるか、こういうようなことを正確に把握する必要がこれからますます強まってくると思います。そういうようなことも考えまして、例えば書きかえ期間を五年にしたということ、あるいは義務年齢を上げたというようなこと、あるいは指紋の押捺を一葉にしたということ、これは一つのバランスのとれた制度として考えておるわけでございます。それと同時に、もう一つ、現在なお不法入国者が年間がないの数に上っておる、あるいは不法残留者もなかなか多いわけでございまして、私どもはそういう点に非常に苦労しながら管理行政を進めておるわけでございます。そういうこと等も考え合わせまして、今近江先生の御指摘になった点、これも問題点としてあるということは十分理解できますので、そういう点を総合的にひとつ研究していく、これは当然のことでございますから、念頭に置きながら、適切な入管行政をどう進めていくか、こういうこともあわせて検討してまいりたいと思っております。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、ひとつ大臣を中心として、法務省におかれて鋭意真剣な取り組みをしていただくことを強く要望いたしておきます。  あと、もう時間がありませんので、余り中身にこれは入れません。もう一つお聞きしたいと思っておりましたのは、中国の残留孤児の問題でございますが、厚生省も力を入れて取り組んでおるようでございますけれども、省は違いますけれども、御承知のように遅々として進んでおらないというのが現状でございます。それは、相手、中国政府の問題もあるわけですし、非常に困難なことはよくわかるわけでございますが、そういうことで皆いらいらしておるわけでございますが、そういう中で、先般、熊本家庭裁判所日本国籍を取得をしているわけですね。そういうことで帰国の道が開かれた一つのそういう判例がございまして、明るさが非常に出たと思うのです。ところが、考えてみますと、中国に残留の孤児はそういうことも知らないと思うのですね。そういう点、これは裁判所が判断する問題でございますし、ケース・バイ・ケース、それは非常に難しい問題でございますが、こういう方法もあるということにつきまして、法務省が直接向こうにいる残留孤児に教えてあげるということもこれは難しいと思いますし、厚生省また法務省がいろんな資料を外務省にも提供して、外務省がまた大使館を通じて残留孤児に、こういう道もありますよと教えてあげるということは非常に大事だと思うのですね。こういう点、努力していただけますか。
  170. 森山喜久雄

    ○森山説明員 先生の今のことでございますが、各省いろいろ相談いたしまして、善処してまいりたいというふうに考えております。
  171. 近江巳記夫

    ○近江委員 厚生省は、各省と十分連絡をとってよく相談してやりますということですが、法務省も努力していただけますか。
  172. 田中常雄

    田中(常)政府委員 本件は、事人道問題でございますもので、法務省の所管する範囲内においてできる限り側面的に協力いたしたいと考えている次第でございます。
  173. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは時間が来たようですから、終わりたいと思います。  では、よろしくお願いいたします。
  174. 新村勝雄

    新村(勝)委員長代理 次は、草川昭三君。
  175. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  高度情報化社会ということがよく言われておるわけでございますが、ニューメディア時代になったことは間違いございませんが、それと会社法というのですか、商法との関係についてお伺いをしたいと思うのです。  今、INS時代だとか、VANだとか、また各企業においても非常に大量にパソコンだとかいろんなものが使われておりまして、情報の伝達処理方法が飛躍的に発展をしてきておるわけです。事務処理等においても紙が非常に少なくなりまして、ソフトコピーという形で画面に打ち出すことによって書類の事務だとか処理というものが迅速に図られるようになってきておるわけです。いわゆる紙の時代から電子記録の時代になり、少なくとも数字情報は電子的な方法によって伝達をされる方向になってきておるわけでございまして、きょうはこの問題を取り上げませんけれども、例えば、ディスクロージャーというのですか、経営情報公開、こういう面におきましても諸外国ではかなり大胆な提案がされておるわけです。  そこで、きょうは、最近私、電電公社の横須賀の研究所へ行ってまいりましたら、テレビ会議というものが非常に応用されるようになってきておるというのをこの目で見てまいりました。事実、企業でも採用されておるというような報道もあるわけでございます。  そこで、このテレビ会議というのが今後電電公社によって相当たくさん市中に販売をされるのか、言葉が適当ではございませんけれども、普及をするのかどうか。もちろん、料金あるいは今後の見通し、コストダウン、便利さ、いろいろなものがあるわけでございますが、まずそれをお聞きをして、現在会社法等でいろいろな公示義務等が義務づけをされておるわけでございますが、その関係をお伺いしたい、こう思いますから、公社の方からお伺いしたいと思います。
  176. 寺島角夫

    ○寺島説明員 ただいまお話にございましたテレビ会議でございますが、通信回線とテレビ映像と申しますかテレビ端末を結びまして、遠隔地におきまして会議が行えるようなシステムにつきまして公社では開発を進めてまいりまして、ごく最近でございますけれども、去る三月三十日からこのサービスを開始をいたしたところでございます。それで、サービスの開始の時点で三つの会社がこのサービスの御利用を現在いただいておりまして、さらに現在数社から申し込みがございまして、現在利用開始の準備を進めておる、こういう段階でございます。  それで、現在のところ、サービスの提供地域といたしましては、東京、大阪、名古屋、神戸といったところでサービスを行っておるわけでございますけれども、この対地につきましても今後の需要の出方等によりまして拡大を図っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  177. 草川昭三

    草川委員 今度は法務省にお伺いしますけれども、今の商法では幾つかの条文で、公示というのですか、開示だとかいろいろな要求がされておるわけでございますけれども、例えば取締役会ということからお伺いをしたいと思うのでございますけれども、従来企業で取締役会というものが開催をされて、それなりの議事録をきちんと整備をして、あるいはまた決算をし、総会を開き、株主の名簿をそれぞれ備えつけをしなければいけない、さまざまなものがあるわけでございますが、この取締役会をもしテレビ会議でやったとするならば、例えば、東京と大阪で重役が相対峙をして取締役会をやったとするならば、それは商法で認知をされる取締役会になるのかどうか、まずそこら辺からひとつお伺いしましょう。
  178. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 現在の商法の法制のもとでは、ただいまの東京と大阪とにそれぞれ取締役がいてテレビ電話で結んで会議をするという方法では、正規の手続を踏んだ取締役会という評価はできないのではないかというふうに考えております。
  179. 草川昭三

    草川委員 では、具体的に、例えば会社の定款で東京、大阪に分かれて取締役会を開くことができるとか、あるいは議事録はまたちょっと別な話になりますけれども、では、どういう要件ならば、法的な立場からこのような問題点をクリアすれば今日のいわゆるテレビ会議というものが取締役会として認知をされるようになるのか、お伺いをしたいと思います。
  180. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 なかなか難しい問題でございますけれども、一つ会議体が有効な会議体として認められるというためには、相互の意見が十分に会議に出席した者に伝わって、その中で各人が最終的な判断をして結論を出す、そういうふうな状況下で会議が持たれることが一般的に必要だろうと思います。現在のテレビ会議のやり方というのが技術的にどこまでできるのかわかりませんけれども、そういういわば臨場感を持ってそして相互の意見が十分に伝わる、言葉とかそういうものだけではなくて、いろいろなニュアンスを含めたことが相互に伝達されてというふうな状況がもっと立体的にテレビ会議の方法でも実現できるということになりますと、これはどういう手だてでそれを認めていくことになるかということは一つの問題でございますけれども、取締役会がそういう方法でやることが認められるという方向にいくのではないかと思います。
  181. 草川昭三

    草川委員 では電電公社にお伺いしましょう。  私、実は電電公社の横須賀の研究所で、三鷹と横須賀で今局長がおっしゃったとおりのことを目で見てきたわけです。双方のコミュニケーションは十分であります。にっこり笑うこともできるし、手を挙げることもできるし、喜怒哀楽も全部出るわけです。そして相手の説得もできるわけですし、受け手の方もそれを認めることができるわけです。ただ、それは議長がどちらにおるかは別ですね。そこら辺の問題はあると思うのですが、例えば議長を本社側に置き大阪の支店でやるということについては、今おっしゃったとおりのことが実はテレビ会議では表現されるのです。電電公社にそこまでの表現はまだ不十分なのか、十分それは受けることができるのか、答えていただきたいと思います。
  182. 寺島角夫

    ○寺島説明員 お答えいたします。  法務省からお答えがございました法で言う取締役会の要件というものが会議でどの程度のものを指すのかちょっと私わかりかねるわけでございますけれども、現在私どもが提供しているサービスがまだ完全に十分と言えるかどうかはわかりませんが、いわゆる会議という比較的動きの少ない状況を、双方向に伝達し、かつ音声でそれを同時に伝えておるわけでございますから、現状はそういう点までは来ておるということを申し上げておきたいと思います。
  183. 草川昭三

    草川委員 局長、どうでしょう。私自身もそういうことだと思うし、今の局長の答弁はそれでいいと思うのです。  では、局長は否定する側でこの問題を見ようとするのか、例えばジャッジをどこでやるのか、第三者がオーケーするのか、非常に難しい点があると思いますけれども、局長としては認める方向で考えていきたいのか、答弁してください。
  184. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 現在の商法の規定では明文の規定はございませんけれども、やはり一堂に会してということを前提にしてつくられているように思います。したがいまして、テレビ会議の模様が今のお話のようなことで仮に完全に、先ほど臨場感を持ってというふうに申し上げましたけれども、そういうふうな条件を満たして会議結論が一堂に会すると同じように得られるということになりますと、それはそちらの方向に法律を改正していくというふうなことも考えられようかと思います。  ただ、現在法律で言っております取締役会で決めなければならない事項を決めるのではなくて、日常のいろいろな打ち合わせ的な会議というものがあるわけでございます。そういうものでテレビ会議というものが各方面で十分活用されまして、そして、これならば法律的な意味のある決定もやるのに適しておるということが各会社とかそういうところでも十分認識されるようになれば、これまた、法改正とかいうふうな意味での改正機運が盛り上がってくると思います。私どもの方では技術的にどうかということについてのはっきりした確信は持っておりませんけれども、そういうふうな意味で、技術の進歩とかあるいは取締役会と銘打たない実際の会議での受け取り方というものをこれから見守ってまいりたいというふうに思っております。
  185. 草川昭三

    草川委員 これはもっと詰めた話ですが、法務省がどの程度の認識を持っておみえになるのか、いろいろな議論があったと思うのです。当然のことながら、この技術革新ということについても対応なされておみえになるわけでございますから、今のようなお話ならば、例えば、私は、カラーで見れば非常に鮮明に意思の疎通ができるがモノクロではだめだとか、いろいろな判断がもう少しあってもいいと思うのです。例えば、カラーのような時代で、しかも今料金の関係がございますから、画面全体をすべて回線で結ぶというのは高くなりますので、手が動いたり表情のところだけは映像で送る、こういうシステムになっておるわけですが、そんなことを見てまいりますと、私は、必ずしも商法を改正しなくても、いわゆる現法の解釈の段階の中で、後で株主総会のことを聞きますから、総会はだめだけれども一般取締役会は当然あってもしかるべきではないか。ただし議事録は、いわゆるフロッピーではございませんけれども、署名ということがあるのでこれはビデオではまずいとか、そういう考え方をそろそろ出されてもおかしくないのではないか、こう思うのですが その点はどうですか。
  186. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 確かに、株主総会と違いまして、取締役会の方は場所に関する明文の規定はございませんので、社会的な承認といいますか、そういうものが非常に強くなる。例をとって申し上げて恐縮でございますけれども、国会の議事運営にもそういうことが話題になるというふうな状況になった場合には、一つの状況の変化に伴う法律の解釈が変わるということで処理できる面もそれはなくはないというふうに考えます。
  187. 草川昭三

    草川委員 法務省は非常におかたい役所ですから、またそれでいいのですけれども。  ちょっと話が飛びますけれども、実は法務省の中でもパソコンだとかワープロというのは物すごく伸びています。弁護士あるいは起訴のいろいろな書類のやりとりがありますけれども、法務省はワープロを認めておみえになるのですね。ちょっと確認しますがどうですか。
  188. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 認めると言いましても、どういう場面で認めるかでございますけれども、一種の文書作成方法としてワープロを使うということは別に問題はないというふうに考えております。
  189. 草川昭三

    草川委員 ちょっと後で賞勲局に聞くのですが、話が行ったり来たりで恐縮なんですが、役所の段階でもワープロによる書類をまだ認めてない役所が一つか二つあるのです。非常におかたい法務省は今おっしゃるような形の合理化をそれなりに図られているわけですし、それから登記所なんかで、もうとっくの昔でございますけれども、リコピー等についてもこれは採用されておるわけですから、かなり時代の流れと並行して見ておみえになるわけです。  ところが、今電電が開発した、これからどんどんこれを普及させようというときに、さしあたり東京と大阪あるいは九州と会議を開こう、あるいは常務会とか取締役会とかいろいろなグレードの会合がございますけれども、日常的にはある程度記録でとっておきたいという時代も目の前に来ておるわけです。だから、今のようなお話は最初は非常に否定的だったけれども、具体的なお話になるとかなり示唆に富んだようなお話もあるわけなんです。もう少し、テレビ会議というものについて、今おっしゃったように、現場でもっと活発に使われるならばとおっしゃいますが、裏づけがないと、使われるのかどうかという問題もあるわけですね。もう一歩進んだ御発言はないのですか。
  190. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 私どもは、現在、科学技術が進歩してまいりますのにつれて、社会がいろいろ変わってまいると思います。それに対して、法律制度とかそういうものがいつまでも従来の形のものに固執するということは適当でないと考えております。殊に、商法の分野と申しますのは、私どもの所管する法律の中では、そういう面に一番最初についていかなければならない分野であると思いますので、ただいま申し上げましたような方向がどういうふうに動いていくかということを実は関心を持って見ておるところでございます。
  191. 草川昭三

    草川委員 では、関心を持って対応を立てたいという御発言がございましたので、納得をいたしますが、ちょっと念のためにお伺いをしますが、とりあえず、株主総会は現状としてはテレビ会議では無理だというようなニュアンスになると思うのですが、定款を変えて、例えば東京と大阪でそれぞれの場所でやるとかいうような、定款を変えていくとするならば、総会等にも適用になる方向が将来出てくるのではないか、こう思うのですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  192. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 総会というのは、やはり回し時期に総会の椎成員が集まって、そこで意見を出し合って一つ結論を生み出すということが必要だろうと思います。したがいまして、時と場所とを異にして、分けて、それが総体として総会になるという評価はちょっとできないのではないかという気がいたします。  それで、総会につきましては、先ほど来、法律に場所の規定がございますので、そこが一つの問題になりますけれども、そのほかに、技術的にも、取締役会のようにせいぜい数十人程度の方が集まるというのではなくて、何百人あるいは千人を超すというふうな人が集まるということでございますので、技術的に、そこまで臨場感を持ったものが出せて、先ほど申しました会議体の実態ができる、そういうことになるところまでは、まだ少し先ではないかという気がしておるところでございます。
  193. 草川昭三

    草川委員 続いて、株主の名簿の公示等について、開示というのですか、しなければならないというのがございますが、例えば株主名簿等は、画像で引き出すことによって、フロッピーから画像によって、要求があった場合に見せることができれば、例えば新日鉄のように五十万人、六十万人の大量な株主の名簿を一冊の本にして必ずしも常備しなければいけないということでもないと思うのです。フロッピーに一枚か二枚で入れて、それでボタンを押せば要求にこたえるということができるわけですが、そういう意味では、ディスクというのですか、磁気なり、今ある事務機器で応用ができるのかどうか、それは裏打ちすることができるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  194. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 株主名簿につきましては、それは法律は一つの文書というものを前提にして書いておるわけでございますけれども、今のようなお話でやるということは十分に検討に値するだろうと思います。ただ、技術的にいろいろな問題があろうかと思いますので、ひとつ研究をしてみたいと思っておるところでございます。
  195. 草川昭三

    草川委員 では、実は時間も余りございませんので、総理府にちょっとお伺いをしますけれども、賞勲局ですね、これは非常に、永久保存という立場があるわけですが、上申書でございますけれども、ワープロによる上申書は認めておられるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  196. 田中宏樹

    田中説明員 直ちにこれがいかぬ、これがいいということは直接は申し上げてございませんが、ただし、私どもでも、先生今、保存性ということをおっしゃっていただきましたが、永久保存という関係がございますので、新しい機器の開発ということが絡みまして、実績として保存性にまだ確信が持てておりませんので、今直ちに結構ですということは言っておりません。
  197. 草川昭三

    草川委員 実は、賞勲局の上申書というのが、和紙でなければならない、毛筆でなければならない、一字字句の訂正があったらその訂正文書は絶対認められないというお話がございました。  そこで、私、賞勲局にお伺いしたら、いや、そんなことは決してございませんよという御答弁でございました。御答弁だったのだけれども、各県庁だとか、それぞれの申請団体の人に聞きますと、いや草川さん、あなたはそう言うけれども、やはりそれはえらいことなんだよ、これは大変なものなんだということが実は世上には上っておるのです。上っておりますから、後でもう一回答弁していただきますが、和紙なんかは絶対必要ないよ、毛筆なんというのはそんなことを言っておりませんよ、何でも結構です一何でも結構ですとはおっしゃっておりませんけれども、例えばタイプで結構ですとか、手書きで結構ですとか、ペン書きでも結構ですとかいうことを御答弁願いたいと思うのですけれども、今率直に申し上げて、まだワープロではだめだということだと思うのです。しかし、今日、これほど便利な時代になってきたわけでございますから、これは役所としても統一的な対応を立てていただきたいというので、実はきょうは行管庁にもここに来ていただいて、行管庁からお話を聞く予定だったのですが、ちょっと待ってもらいたいというあけすけな話でございますから、私きょうは差し控えておるわけでございますが、非常にシンボル的な役所でございますから、ぜひ事務の合理化には対応を立てていただきたいと思うのです。それから、今私が申し上げたことは、どうかお答え願いたいと思うのです。
  198. 田中宏樹

    田中説明員 先生がおっしゃった和紙を使えとか、毛筆でとかいうことは一切ございません。そういう御心配はないと思います。  それから、ワープロの採用ですけれども、先ほども申し上げましたが、保存性あるいは明瞭性という点で、先生からのせっかくの御示唆もございます。私どもも、審査書類の簡素化といいましょうか、従来からも検討もしておりますし、努力も重ねておりますので、方向として、各方面での採用の動向なんかも見守りつつ、なお検討させていただきたいと思います。
  199. 草川昭三

    草川委員 きょうは法務の関係でございますから、実は企業サイドに立ては、有価証券報告書等も大蔵省の証券局に出すわけでございますが、非常に分厚い書類でございますけれども、本当に株主に経営の情報公開をするというような一つの制度であるならば、今日的な、マイコンとは言いませんけれども、新しいディスクで情報を送っておき、保存をしておいた方が、対前年度の比較なんというのはグラフですぐ出るわけです。今の場合のように、膨大な貸借対照表なり損益計算書を一一見るよりはもっと楽なんですね、私はそういう時代が来たような気がしてなりません。あるいは商法の中にも、何々新聞に損益計算書なり貸借対照表を出さなければならないということになっておるから、出ておりますけれども、それがいつ出るか出ないかわかりません。これなんかも中央のセンターに企業がぼんとインプットさえすれば、将来は、各家庭からとは申し上げませんけれども、必要なときに株主が必要な企業の何年度版のボタンを押せば、それなりのものは出てき、経営の動向がわかるということが、本来の情報公開なり企業経営の公開で、株主に対する保護の一番のサービスではないだろうか、こう思うわけであります。そういう時代が来たわけでありますから、従来の商法に載っておりますさまざまな開示、公示方法ということは、思い切って再検討の時期が来たのではないか、こう思います。そういうことを含めて、ひとつこれは大臣から一遍お答えを願いたいと思います。
  200. 住栄作

    住国務大臣 とにかく、技術の進歩、各方面にわたって大変目覚ましいものがございます。制度はそれに反して固定しておりますから、進んでいく現実になかなか対応し切れない、そういう面もあることはおっしゃるとおりだと思うのです。そこをどれだけうまく対応していくか、あるいは先取りしていくか、これはやはりこれからの社会進歩の観点からも極めて大事なことだと思います。余り政府全体のことを言う立場にございませんけれども、私ども法務省においても常にそういうような観点から勉強を続けておりますので、特に保守的になりがちな点もなきにしもあらずのところもございますので、十分注意して弾力的に対処するような考えで進んでまいりたいと思います。
  201. 草川昭三

    草川委員 では、この問題はこれで終わりますから、公社を初め関係の方、結構でございます。  続いて、自己破産と同時廃止の問題で裁判所にお伺いしたいと思うのですが、サラ金二法が成立をいたしましたけれども、依然としてサラ金悲劇というのは絶えていないわけであります。サラ金業者の過剰貸し付けたとか取り立ては非常に巧妙になっておるわけでございまして、サラ金被害者の犠牲というのは激増をしております。そこで、駆け込み寺と言われるこの消費者破産、自己破産の効用についてお伺いしたいのでございますが、東京と大阪と、あえて裁判所の名前を言うわけではございませんけれども、自己破産で同時廃止の決定がおりる件数が東京と大阪で違いがあるのではないか。これはかなり具体的な数字もあるわけですけれども、昭和五十六年度程度の数字を私持っておるので、七年、八年というところはわかりませんが、はっきり申し上げると大阪では非常に積極的に救済をするという形の方向がございます。東京は非常に厳しいようでございますが、運用上問題じゃないか、こう思うのですが、その点どうでしょうか。
  202. 上谷清

    ○上谷最高裁判所長官代理者 昭和五十年から五十六年ごろにかけまして、委員御指摘のとおり、破産事件における同時廃止の件数が東京地裁と大阪地裁でかなり違いがあったということは御指摘のとおりでございます。破産事件の具体的な事件において、同時廃止をするかどうかというのは、実は個々の事件の処理の問題でございまして、裁判官のお考えになるところでございますので、事務当局として詳しい論評をすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に申し上げますと、現在事件数が非常に増加しておりまして、何かと話題になっておりますいわゆるサラ金絡みの自己破産でございますが、これはむしろ大阪を中心としました関西地区で、借金に苦しむ債務者の救済というふうなことで始められてきたいきさつがございます。これが徐々に東京でもふえてきた、こういうことが件数の大小に影響しているのではないかと思います。ちなみに、五十七年度、五十八年度の数字がございますので御紹介申し上げますと、昭和五十七年度では、東京で既済になりました事件が三百三十二件のうち同時廃止になりましたものが二十件、それに対して大阪では九百五十五件のうち三百十一件と、まだかなり数字が開いておりましたが、昨年度五十八年度の数字で見てまいりますと、東京地裁の場合に八百二十件のうち三百二十九作、約四〇%が同時廃止ということになっておりますし、大阪地裁では千四百七十七件中九百五件、割合にしまして六〇%ぐらいが同時廃止になっておりますので、この差はかなり詰まってきております。運用から申しましても、最近はそう差はなくなってきておると申し上げてよいかと思います。
  203. 草川昭三

    草川委員 ぜひ東京、大阪、差のないようにお願いしたいわけでございますが、同じ自己破産で同時廃止が見込まれる事件の予納金額ですが、予納金額裁判所によって多少違いがあるようでございます。適正な予納額という一つの基準というものがあってしかるべきではないか。実は私どもも個人的にいろんな相談を受けるわけです。一体幾ら用意をすればいいのかというときに、いやあという感じがあるわけです。そこら辺はぜひあらかじめ定めておくべきであると思うのでございますが、どうでしょう。
  204. 上谷清

    ○上谷最高裁判所長官代理者 御指摘の点につきましては、実は昨年の十二月に、全国の破産裏件をたくさん抱えております裁判所の裁判官あるいは書記官が集まって問題を協議いたしまして、その際に、一件につき大体一万五千円ないし四万円程度の予納金を納めていただくということでほぼ皆さん方の同意が得られた、そういう結果になっておりまして、その皆さん方の御検討の結果を各裁判所にお知らせするということをいたしております。予納命令もやはり裁判所がお決めになることでございますので、私ども事務当局として基準というわけにはまいらないわけでございますが、今申しましたとおり、重立った裁判所の担当者の方がお集まりいただいて御研究の結果が出ましたので、現在は東京あるいは大阪その他の大裁判所ではその基準でやっていただいているはずでございますし、その他の全国の裁判所にも近く研究の成果をお知らせする予定でございます。また、それぞれの裁判所から御紹介がございましたときにもそういうことをお答えいたしておりますので、全国的にほぼこの基準で行われると思います。若干金額の差がございますのは、地方によりまして新聞に公告する場合の値段が発行部数等によって違ってまいりますので、それで若干の差がございますが、先ほど申しましたとおり、一万五千円を基準としまして、それに新聞公告の費用等を加算した額でございますので、おおむね先ほど申しましたとおり、一万五千円から四万円前後ということで予納していただければ、同時廃止が見込まれる場合には事が済む、そういうような運用になろうかと思います。
  205. 草川昭三

    草川委員 これは各弁護士会のアンケートがございますが、今のようなお話がございますが、確かにローカルでは、例えば静岡の場合だとまだ三十万とか五十万とか、これは一番高いところでございますので、相手が相手、事件事件、問題が問題でございますので、ぜひ今の御趣旨で進めていただきたいと思います。  それから、問題は、同時廃止でない場合の予納金の問題も一つあるわけでございますが、それは金額にもよりますからあれでございますが、国が破産費用をとりあえず立てかえておくというのですか、国庫仮支弁制度というのがあるわけです。これは予算では、年間たしか五千万でございますか、この法律ができてからずっとついておるわけですが、実際上これはほとんどといってもいいほど使われていないわけであります。これはやはり裁判官のお考えによってかなり差があると思うのでございますが、せっかく仮支弁という制度があるわけですから――それは考え方ですよ。それは私どもは被害者が来ますから、どうしても被害者の立場に立って物を言いますから。ところが、借りたやつが悪いじゃないかとか、だらしがないじゃないかという立場に立てはまた別の考え方が出ますので、難しい点があると思いますけれども、法の趣旨からいって、せっかく仮支弁があるわけですから、これはその趣旨に応じて使われたらどうか、あるいは現状はどの程度の使われ方になっておるのか、お伺いしたいと思います。
  206. 上谷清

    ○上谷最高裁判所長官代理者 ただいまの委員御指摘の仮支弁は、破産法百四十条の規定に定められておるわけでございますから、私ども裁判所といたしましても、年間五千百三十万という予算を計上いたしてこれに備えておるわけであります。そして、本当に費用も納められない気の毒なお方の場合には仮支弁を利用していただくというふうなことを実際にもやっておりまして、現実に、件数は少のうございましたが、昭和五十八年度には十一件と例年に比べましてかなり件数もふえ、金額も九十万を超すという状況になっております。  ただ、これは委員も御承知のとおり、法律の規定にありますとおり、あくまでも仮の立てかえ払いでございまして、破産手続が終われば直ちに立てかえ分を国に返還してもらうということになるわけでございます。  そこで、先ほどから話題になっております、特に同時廃止となる場合には、予納金額も大体一万五千円から四万円と比較的少額でございますし、しかも、比較的短期間のうちに破産手続が終わります。そうなりますと、その段階で結局国庫にお返しいただくということになりますと、実際問題としてはごく短期間の立てかえということになりますので、その趣旨をお話しいたしまして、そういうことになるならば、少額でもあるので何とか予納していただけないかということをお願いするということがあるわけでございます。  と申しますのは、現在は予算的にもまだかなりのゆとりがございますが、本当に生活に困っている人の場合には、やはり仮支弁ということを利用して救済を図るということが必要でございますので、ある程度のゆとりがある人であれば、できるだけ困った人の場合に仮支弁をできるように、事実上の予納をお願いして御協力いただいている、そういうのが実情でございます。
  207. 草川昭三

    草川委員 では、この問題はこれで終わりまして、次の方へ移ります。  最近、厚生省の人口動態統計を見ておりますと、年次別に離婚件数というのが非常にふえてきておるわけです。きょうも本会議でいろいろと問題も出ておったようでございますけれども、最近、離婚相談所なるものが弁護士法違反で摘発をされたという事件が、新聞等にも大分出ておりまして話題になっておるわけでございますが、一体、当事者の方々がこのようなところに走る理由は何か、こういうことを一回裁判所側にもお伺いをしたいわけですし、これは法務大臣にお聞きするといってもむずかしい話ですから、後で御感想はお伺いをするわけでございますが、裁判の遅延だとか、それから、弁護士さんに相談をするといってもなかなかなじみが少ないので手っ取り早くという理由だとか、問題は非常にたくさんあるのです。  実は、家庭裁判所には家事相談という制度もあるわけでございますが、本当にこの家事相談の制度というものが機能をしておるのかどうか、あるいはまた、裁判所と名前を聞いただけで、一般の市民というのですか、特に悩み事の多い方々が、先ほど私は駆け込み寺という言葉を使いましたけれども、そういう感じてお願いに行けるようなことができないのかどうか、こういうことがあるのでございます。もう少し裁判所も親しまれる裁判所裁判所というのは大体親しまれないところかもわかりませんけれども、そういう感じがあってもしかるべきじゃないかと思うのですが、どのように御努力なされてみえるか、あるいは今のような離婚相談所なるものが非常に商売が繁盛するということをどのように思われるか、お伺いしたいと思うのです。
  208. 上谷清

    ○上谷最高裁判所長官代理者 家事調停については、実は私、所管外なんでございますが、調停会般を含めましてのこともあろうかと思いますので、私の方からお答えさせていただきますと、調停制度の普及につきましては、裁判所としては年年PR等にも非常に努力をしておるつもりでございまして、例えば民事調停で申しますと、簡易裁判所のいわゆるサラ金関係の調停は年々件数が非常に急増いたしております。これも、裁判所の調停を市民の皆さんが気軽に利用していただいておる一つのあらわれだと思います。  それから、家事調停、私は詳しい数は存じませんが、特に、離婚等の調停あるいはまた相談事件等も最近非常にふえていると伺っております。民事調停にしろ家事調停にしろ、例えば公の役所に調停のしおりというようなものを配付しまして、相談に来た方に調停をお勧めいただく、そういうふうな努力を民事局、家庭局ともいろいろ続けておりまして、私ども裁判所といたしましては、調停を気軽に利用していただくというPRを通じて、市民の皆さんに最近は随分利用されてくるようになっているのではないか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  209. 草川昭三

    草川委員 私がなぜこのようなことを申し上げたのかといいますと、単に離婚相談所の問題ではなくて、最近、準司法機関のような、いわゆる裁判所の機能を補わざるを得ないような機関というのが実は随分出てきておるわけです。  これは裁判所にお伺いしても仕方がないことですから、法務大臣に一回よく聞いておいていただきたいのですが、例えば、最近建設省なんかも、不動産の苦情処理には専門の不動産の苦情処理の機関をつくろうじゃないかとか、あるいは御存じのとおり、総理府に聞きたいわけでございますが、交通事故紛争処理センター、これもかなり活発に稼働しておるわけですね。ところが今度は、交通事故の後遺症の認定機関ということは、これはもちろん裁判所でもやれるわけですけれども、非常に手っ取り早く結論がつきませんので、結局、自賠責調査事務所というのがあるのです。これは、私どもがいろいろな問題を持ち込みましても、自動車損害賠償保険の自賠責調査事務所というのは、大体警察官のOBだとかそれから損保会社の方々の出向で、そこでもうジャッジというのですか、決まってしまうわけです。本来ならば、裁判所なり簡裁へ行って聞いてくださいよ、こうやりたいのだけれども、そこへ行けないわけです。保険屋さんなんかに聞くと、その後遺症認定なんかは自賠責の調査事務所へ行きなさい、こう言うわけです。そこへ行くと、言葉は悪いのですが、業者寄りというのですか、必ずしも訴える側のことを真剣に聞いていただけないというような問題もあるわけです。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕  だから、私が申し上げたいのは、世の中が非常に変わってまいりますと、進化をしてまいりますと、紛争というのですか、トラブルというのが非常にたくさん出てくるのです。たくさん出てくるというのは仕方がないことですから、それをクィックアクションで早く解決をしてやるというところに、本当の行政の手を当てる問題がある、あるいは裁判所としても聞いていただきたい問題があるわけであります。  ところが、私ども、いろいろな弁護士の先生方ともお話をしておりますと、裁判所も非常にアカデミックというのですか、質と言うと言葉が悪いのですが、非常に高いところではそれなりのいろいろな御研究もあるようでございますが、世上の非常に雑な、言葉は悪いのですがつまらない事件はついつい裁判のスピードも渋滞をしていく。そして、渋滞をするとある目、我々が横から見ておりますと、労働組合用語で言うならばオルグとでも称すべき、上の方からどんとおりておみえになって、ばっと案件を処理なすってまたどこかへ転勤なされるとでも言うような姿というのが結構あるわけですよ。  だから、私どもは、本来は一番末端の簡裁だとか、それからその地方の支所というのですか、本当のローカルのところのジャッジというものに生きがいを持っていただいて、庶民が信頼できるようなジャッジが行われることが、本当に今御答弁なすったようなことではないだろうか。立場が違いますから、三権分立の立場で我々が変なことを言うのはけしからぬとおっしゃるかもわかりませんが、これは庶民の声ですから、こういう場で申し上げる以外に機会がないわけであります。  私は、裁判所の悪口を言っているつもりではございません。労働争議等があって、裁判官の判決に対して組合の連中がデモをやっておると、私は、けしからぬと言いに行くのですよ。そしてまた別なこともあるわけですから、そういう立場の男が申し上げているということを十分理解をしていただいて、今の準司法機関等が非常に伸びてきておることも含めて、裁判所なりにも考えていただきたい、こう思うのです。  総理府がせっかくお見えになっておられますので、最近の交通事故紛争処理センター等も相談事が多いかどうかということだけ、簡潔に御答弁願いたいと思うのです。
  210. 石出宗秀

    ○石出説明員 お答えいたします。  財団法人交通事故紛争処理センターにおきます業務取り扱い量でございますが、御承知のように、当センターは昭和五十三年に設立されたわけでございますけれども、この設立当初におきます相談件数は四千二百件ほどでございますけれども、五十七年度におきましてはこの件数が八千五百件に伸びておりまして、この間に倍増するほど業務量は伸びておるわけでございます。
  211. 草川昭三

    草川委員 もう時間が来ましたのでこれで終わりますが、裁判所の方には今のような制度は一つありますけれども、ぜひ私の趣旨をお聞き願いたいと思います。  最後になりますが、一言だけ競売事件について申し上げておきたいと思うのです。  いわゆる競売物件の中にいろいろと暴力団の介入等が問題になりまして、民事執行法の制定ができたわけでございますが、競売物件の中には一般人が欲するようなものがたくさんあるわけですが、その情報の入手が非常に困難でございます。そこで、裁判所等で、私ここに週刊住宅情報というのを持ってきましたが、ここにそれぞれ地方裁判所のこれが出るようになりまして非常に歓迎をしますが、すべての住宅情報誌に出ておるわけではないわけです。それから、すべての裁判所の物件が出るわけではないわけです。ですから、もっと全国的な裁判所の物件がこのような情報に出ることを要望したいと私は思うのですが、その点はどうでしょう。
  212. 上谷清

    ○上谷最高裁判所長官代理者 競売物件が売りやすくなるためにも、なるべく情報を提供するということが一番大切なことだと私どもも考えておりますので、なお一層買い受け希望者がお集まりいただきやすいような公告方法を工夫してみたいと考えております。
  213. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。
  214. 横山利秋

    横山委員長 三浦隆君。
  215. 三浦隆

    三浦(隆)委員 違憲状態の現行衆議院議員定数を是正しないままで解散、総選挙というのは行い得るものかどうか、その場合の選挙の有効性、無効性をめぐりまして質問をさせていただきたいと思います。  初めに、これまでに最高裁の違憲判決ないし違憲状態にある旨の判決がございまして、しかも、現在なお違憲ないし違憲状態のままで改正されないでいる法令にはどのようなものがございますでしょうか。法制局の方でしょうか、法務省ですか。
  216. 小野幹雄

    ○小野最高裁判所長官代理者 これまでに最高裁判所におきまして法律の規定を違憲とした判決は三件ございます。  そのうちの一件は、尊属殺に関するものでございまして、「刑法二〇〇条の規定は、尊属殺の法定刑を死刑又は無期懲役刑のみに限っている点において、」「普通殺に関する刑法一九九条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、憲法一四条一項に違反して無効である」、こういうものでございますが、そのほかに、いわゆる「薬局の開設等の許可基準の一つとして、地域的制限を定めた薬事法六条二項、四項の規定は不良医薬品の供給の防止等の目的のために必要かつ合理的な規制を定めたものということができないから、憲法二二条一項に違反し、無効である。」というのが二つ目でございます。三つ目に、先ほど仰せになりました昭和四十七年十二月十日の衆議院議員選挙当時の公職選挙法十三条、別表第一及び附則七項ないし九項による選挙区割り及び議員定数の配分の定めは、「単に憲法に違反する不平等を招来している部分のみでなく、全体として憲法一四条一項、一五条一項、三項、四四条但し書に違反していたものである。」としたもの、この三つであろうと思います。  このうち、尊属殺の点につきましてはいまだ別に法の改正というようなものが行われていない、他のものはそれぞれ措置されているというふうに思います。
  217. 三浦隆

    三浦(隆)委員 今の刑法二百条の尊属殺の規定あるいは現在国会で検討しております公選法の規定など、こうした違憲状態のままがいつまでも仮に続き得るものとすれば、最高裁の違憲判決というのは実際上ないのに等しいのではないかというふうな気もしないではありません。言うなれば、憲法上もゆゆしいことではないかと思いますが、最高裁はどうお考えでしょうか。
  218. 上谷清

    ○上谷最高裁判所長官代理者 最高裁判所が憲法に違反するという判断を示しました法律について違憲の事態を解消するために法律の改正を行うかどうかは、専ら立法府が御判断をなさる事項でございまして、最高裁判所は、三権分立の建前からいたしましても、その立法の是非について意見を述べるという立場にはないわけでございます。ただ、法改正が行われない場合に、その法律の合憲性が問題になる事件が再び最高裁判所に係属することになったという際には、事件を担当する裁判官が、前回最高裁判所の示した判断をなお維持すべきかどうかをお考えになって、再びその判断を維持すべきものとお考えの場合には再び違憲の判決をする、そういうことになろうかと思います。いずれにいたしましても、裁判所といたしましては具体的な事件が起こりました際に改めて判断をするということでございまして、それに対する立法府の対応についてどうこう申し上げる立場にないことを御理解いただきたいと存じます。
  219. 三浦隆

    三浦(隆)委員 これまでのいわゆる学校の法学の教科書というか平凡な考え方では、国会の立法なり行政の命令などが憲法解釈上あやしいといった場合には、最終的には司法の判断を仰ぎ、司法の判断が決まった以上は、直ちに国会なり内閣なりで、もし違憲なりの状況であればすぐ正さなければならないあるいは当然正すものだというのがこれまでの通説の理解だったと思うのです。ところが、現実に正し得ないで何年も何年も過ぎ去ってしまっている。合理的期間というのも具体的に何年であるか私にはよくわかりませんが、少なくとも、国会に任せたとは言いながら、国会がいつまでも立法不作為の状況を仮に続けたとすれば、今私が言いましたように、実質上は違憲判決はあってなきがごときになってしまうじゃないかということで、問題を提起したわけであります。  そこで、先へ進みますと、最高裁は、衆議院議員の定数不均衡問題に寄せて、二度ならず、違憲ないし違憲状態にある旨判決で述べているわけです。現在、国会はこの判決の趣意を受けて、衆議院議員定数の不均衡の是正に向けて各党とも検討中でございますけれども、現在のところまだ不均衡の状態は是正されておりません。このようなとき、首相が解散権を行使して総選挙を行った場合、一つには、最高裁判決のなお書きの解釈というのはどう受けとめたらよいものか、もう一つには、また当該選挙の効力はどうなるものか、最高裁なりあるいは法制局なりの解釈をお尋ねしたいと思います。
  220. 上谷清

    ○上谷最高裁判所長官代理者 私ども最高裁判所事務当局の立場といたしましては、判決に書かれたことをそのままお読みいただくという以外に、特に中身についてコメントする立場にはございませんので、御了解いただきたいと思います。
  221. 三浦隆

    三浦(隆)委員 続けて先へ進みます。  昭和五十三年の十一月最高裁判決のなお書きには、「本件選挙当時の投票価値の不平等は憲法の選挙権の平等の要求に反する程度に至っていたのであるから、議員定数配分規定は、五十年改正法施行後約七年を経過している現在、できる限り速やかに改正されることが強く望まれるところである。」このような異例とも言える警告が述べられているわけです。そして現在では、五十年改正施行後九年を経過しているわけですから、判決の許容する合理的期間も既に当然のごとく超えているものと思われるわけであります。  また、同判決では、多数意見が八人に対して七人の反対意見があり、しかも六人は違憲説をとっているほど、衆議院議員の定数不均衡問題は、既に限界に達していると言ってもおかしくないと思います。そして最高裁は、憲法八十一条に基づき、法令審査権を有する終審裁判所としての地位を占めているわけでもあります。にもかかわらず、最高裁判決には、一方では国会の立法不作為により、他方では首相の解散権行使により、無視されかねない状況にあるわけでありまして、そこで二点について尋ねたいと思います。  一つは、三権分立に占める最高裁の位置づけ、並びに最高裁の威信あるいは権威といったものはどのように考えたらよいのだろうかということ。  二つには、憲法制定時におきまして、マッカーサー革案七十三条では、「憲法第三章に関連するすべての事件においては、最高裁判所の判断が終局的である」、しかし、その他の事件では、最高裁判所による法令の合憲性の判断は、国会の再審に服する、このようになっていたわけです。これを衆議院の審議段階で、最高裁判所の判断を国会が破棄するという事態が起こらないように考慮するため、国会の再審制は否決されたわけです。  このような最高裁重視の経緯とあわせて、司法権の独立ということについて、最高裁の御見解を尋ねたいと思います。
  222. 上谷清

    ○上谷最高裁判所長官代理者 最高裁判所は、憲法の定めるところに従って、誠実に司法椎を行使するということでございまして、それ以上特に立法あるいは行政との関係について論評するということは、私どもの立場上適当なこととは考えておりません。先ほどお答えいたしましたとおりでございますので、御理解いただきたいと思います。
  223. 三浦隆

    三浦(隆)委員 質問しているのはそういうことでないので、第一には、三権分立に占める最高裁というものがどういう位置づけを持っているのか、あるいはよく言われる最高裁の威信とか最高裁の権威といったものはどのようなものなのかということを、最高裁の人にまず第一点お尋ねしたい、こう青っているわけです。
  224. 上谷清

    ○上谷最高裁判所長官代理者 最高裁判所が憲法の定められるところに従って誠実に職務を行う、そのことの中に司法権の独立ということも当然入っておるわけでございます。憲法の規定に従って裁判所が職務を行うということの以外に、威信をどう考えるかというふうにお尋ねでございますが、私ども事務当局の立場として、これ以上論評といいますか、言うのは差し控えさせていただきたいと存ずるのでございますが。
  225. 三浦隆

    三浦(隆)委員 そして、質問の第二では、現在の憲法規定とは大変に違っておりまして、第三章の基本的人権はともかくとしまして、その他のことに関しては、最高裁の判断よりも国会の判断の方が優先するかのように言われていたわけであります。そして、憲法制定時はマッカーサー草案というのは大変な重みを持っていたものであります。にもかかわらず、最高裁のいわゆる司法の立場というものを重んじようというところから、あえてこのマッカーサー草案を変えまして、現行規定をつくり得たということは、それだけ司法への信頼というか、そうしたものを期待して寄せたからだと思うのであります。  実際の憲法の規定があろうと、憲法でなく普通の法令であろうと、それが生かされないような状況が続くとするならば、実際には憲法は崩壊の過程に入ってしまう。積極的な改正ではなかろうと、消極的には憲法崩壊の過程に入ってしまうじゃないか。少なくとも最高裁もそのくらいの気持ちを持っていただかなければだめなときもあるのじゃないだろうか。そして、今やそうした問題が振りかかってきたのじゃないか、私はそういう認識をお尋ねしたかったわけであります。  時間の関係もありますので先へ進みますと、次は、最高裁判決のなお書きもありまして、現在国会では衆議院議員定数の不均衡是正への検討が各党間でもなされております。そして、首相は参議院の予算委員会の答弁の中で、定数是正前の解散権について、内閣不信任案が可決されて内閣総辞職かというような重大案件を処理する際には、改めて検討されるべき問題である、このように述べまして、解散権の行使にフリーハンドを確保していることを表明されたと、新聞はこのように伝えているわけであります。  そこで、本来は首相の御意見をお尋ねしたいところだけれども、首相はいらっしゃらない。次いでやむを得ませんので、官房長官の御見解をと、こう期待したところが、官房長官もだめである。こうなると、私は質問する、答えていただく相手を見失ったような感じがいたしまして、ちょっと戸惑っているわけであります。  憲法六十三条の後段には、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、」「答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。」このように憲法の規定はあっても、実質に幾ら答弁をお願いしても出られないというのであれば、これも憲法は崩壊過程と同じようなものでありまして、これまで過去にどんな国会の慣例があろうと、慣例より私は憲法が優先すべきものだろう、このように思っておりますけれども、しかし、現実にはお見えになりません。いたし方ありませんので、法務大臣に、ひとつ内閣の一員として有力な大臣から、こうした気持ちをお酌み取りいただいてお答えを願いたいと思います。  まず第一に、首相の解散権はオールマイティーであり、最高裁判所の違憲判決も、これに従い違憲状態を是正しようとする国会の審議権も、一切無視し得るほど強大なものなのかどうか、これが一つ。この場合、日本国憲法における行政、司法、立法の三権相互間のチェック・アンド・バランスの関係というのはどうなるものなのか、ひとつ首相にかわって法務大臣からのお答えをお尋ねしたいと思います。
  226. 住栄作

    住国務大臣 私から答えていい問題でもないと思うのですが、総理大臣の解散権、これは伝家の宝刀と言われておるように総理大臣の大変重大な権限でございます。それと同時に、今御指摘のように、現在の定員の状況、これは昨年の十一月の最高裁の判決によって、違憲状態だ、しかし合理的な期間ということを考えて直ちに五十五年の選挙が違憲だとは言わない、そのかわりにできるだけ速やかにこれは改正しなさいよ、こういうなお書きと申しますか、そういうものが付されておるわけでございます。そういうようなこともございまして、現在鋭意定数配分の見直し作業が大きな問題として取り上げられておるということも先生承知だろうと思うのです。それと総理のお持ちになる解散権とは、それをいつ行使するかということは次元の違う問題でございまして、違憲状態はできるだけ速やかに直さぬといかぬ。これも当然のことでございますし、解散権がそういう作業と間に合うかどうか、こういうこととの関連はもちろんありましょうけれども、それはまた次元を異にして判断さるべき問題じゃなかろうか。余りに責任のない立場での有力大臣の答弁だと思ってひとつ聞いていただきたいと思います。
  227. 三浦隆

    三浦(隆)委員 首相の解散権、行政権も、そうしたことも憲法の規定であれば、立法権についても司法権についてもそれぞれ憲法に論拠を持つものでありまして、しかも、行政権の行使というか、首相の解散権いかんによっては、立法にも大変にあらゆる方面に大きな影響を及ぼすものであって、まさに切り離して考えられるようなそんな単純なものではなかろうと思います。もともと旧憲法下におけるような行政権の行き過ぎ、乱用というものを、新憲法下において何とか抑え切りたいというふうな気持ちがあればこそ、立法権は国権の最高機関という位置づけを一つにはなしたのでしょうし、特に司法においても、司法の独立ということを強く意識していたはずでありまして、そうしたような旧憲法から新しい憲法に変わったような、そういうふうな違った発想も一切なく、ただただ首相の解散権というものはそれらとは別なものだという意見だけでは済み得ないだろうと思うのです。だから、裁判所の方も、合理的期間というふうな大変苦しい表現を示されたり、あるいは事情判決的な考え方をお示しになっているのだろうと思うわけであります。当然のごとく、合理的期間が七年であればそれよりも既にそのときの判決においてすらも強く速やかに是正せよと言っているのに、今や九年たってしまっていると言えば、これはいつまでも延ばし切れる問題ではないことでしょう、そう思うわけであります。  次に、首相の参議院予算委員会の答弁では、内閣不信任案が可決されてというふうにありましたけれども、仮に今度は、国会が内閣不信任案を出さず専ら違憲状態是正のための法改正作業を行っている場合でも解散権を行使し得ると考えられるかどうかについてであります。言うならば、先ほどは首相に対して、こういう違憲判決などが出ているから衆議院の定数を是正しない限り解散はできぬのじゃないかというのに対して、首相は、すぐにできるとかできないとかを答えたのではなくて、立法機関たる国会が内閣不信任案を出した、それが通るような事態が来ればやむを得ない、その時点で考えざるを得ないだろうというふうな意味にもとれるわけであります。まさに、行政権だけではない、立法機関というものが、いわゆる違法状態を是正するための作用を捨てまして、そうして内閣不信任案を出したという限りにおいてはわからないでもない。しかし、そういうことを一切しない、国会はあくまでも最高裁の趣意を受けてまじめに取り組んで、それは一月かかるか半年かかるか一年かかるかわからないけれども、内閣不信任案なんか出さぬ、とにかく改正しなければならぬと考えているさなかに、そういう立法機関の意思も無視してというか、行政権力の長である首相は解散権行使というものはなし得るものでしょうか。これまた大臣にお尋ねしたいと思います。
  228. 住栄作

    住国務大臣 今、不信任案も出ない段階での総理大臣の解散権の行使があり得るかどうか、これは大変重大な問題でございますので、私、今お伺いして、幾ら法務大臣といっても直ちに正確な答弁ができる自信がございませんので、ちょっとこの点は差し控えさせていただきたいと思います。
  229. 三浦隆

    三浦(隆)委員 質問するのに答えないと言えば、国会のこれまでの慣例というのはどういうふうな扱いになるものでしょうか。むしろ私の方が委員長にでもお尋ねをしたいと思います。
  230. 横山利秋

    横山委員長 答えでいいですか。
  231. 三浦隆

    三浦(隆)委員 はい。私も議員歴がまだ浅いものですから、どういうふうにするのかよくわからないものですから。
  232. 横山利秋

    横山委員長 答えられないという答えのようですね。
  233. 三浦隆

    三浦(隆)委員 そうですか。大変釈然としない気はしないではございませんけれども、先へ進むことにいたします。  次に、これは法制局の方にお答えいただくのか最高裁になるのでしょうか。  裁判所は、国会によって故意に放置された立法不作為について、その憲法適合性を判断し得るという札幌高裁の判決がございます。司法と立法との大変むずかしいところをついた判決だと思うのですが、この判決そのものの当否ではないのです。そうではなくて、最高裁の違憲判決があるにもかかわらず国会が違憲法令をいつまでも改正しない場合、この高裁判決の趣意を生かすのも解決に向けての一方法ではあるかなという気もいたしますが、これについてはどうお考えでございましょうか。
  234. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 お訪ねは、在宅投票制度を設ける立法をしなかったことに関連してのお尋ねかと存じますが、この事件につきましては現在係争中でございまして、上告中と承知しておりますので、行政府に属する者が軽々に意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  235. 三浦隆

    三浦(隆)委員 質問をよく聞いておいていただきたいと思うのですね。私は、まだ高裁で最高裁の意見も出ていないから、この判決そのものの当否についてお尋ねしているわけではないのだとわざわざお断りして質問したつもりでございます。そうではなくて、司法が立法に対して、場合によってはちょっと行き過ぎかなと思えるような意見をここでは述べているわけです。ですから、大変微妙な問題に触れた。ただその上で、いつまでもいつまでも国会が、違憲の最高裁の判断がありながら、立法不作為ということが立法裁量ということのままで続いたのでは困るでしょう、言うならば、裁判の方が積極的に立法に介入しようとしているわけではない、そうじゃなくて、消極的に防衛的に司法の判決を守ろうとする、万やむを得ない処置として、合理的な期間内というものが何年たっても何年たってもさっぱりとらちが明かない、そういう場合には、一歩進めてそうした状態に対する憲法適合性を判断し得るという考え方も解決に向けての一つの方法なのかなということで、それについての御意見はいかがでしょうかと言ったわけであります。
  236. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 御指摘の点は私なりに理解できるつもりではございますけれども、お尋ねは何分にも立法、司法の両面にわたります国政全般に関する極めて重要な問題でございますので、先ほど申し上げましたとおり、行政府に属する者としてはやはり答弁を差し控えさせていただくべきものというふうに考えます。
  237. 三浦隆

    三浦(隆)委員 何を質問しても、だれがお答えいただけるのか、質問に対しての答えにならないというのは、これは国会の審議が成り立たなくなってしまうんじゃないかというふうに思うのですね。大変問題なんじゃないかと思います。しかしやむを得ませんので、これまた先に進むことにいたします。  次は、最高裁で違憲と判断された法令の規定はそこで適用を排除されるわけですが、その場合、その違憲とされた法令はその訴訟事件に関する限り効力を持たないものとして適用排除されるのか、それとも、一般的に他のすべての人に対する関係においても効力を失ってしまうものなのか。言いかえれば、最高裁は個別的効力説をとるのか、一般効力説をとるのか、どちらなんでしょうか、お尋ねしたいと思います。
  238. 上谷清

    ○上谷最高裁判所長官代理者 この点について判断した最高裁判所の判決はまだ見当たらないようでございます。
  239. 横山利秋

    横山委員長 政府委員の先ほどの答弁はわかるけれども、今の答弁ぐらいはもう少し具体的にどなたかおっしゃった方がいいんじゃないですか。――どうぞ、前田第一部長
  240. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 ただいま最高裁からのお答えがございましたので政府としての考え方を申し上げます。  裁判はもともといわゆる司法権の作用といたしまして具体的な訴訟事件についてなされる判断でございますから、その効力も当然当該具体的事件に限られると解すべきであろうと存じます。  ところで、憲法第八十一条の最高裁判所の違憲審査権も憲法の第六章「司法」の章において規定されておりますので、ただいま申しましたような意味での司法権の作用として行われるものであると考えます。したがいまして、違憲の判決が出ましたからといいまして、違憲とされました法令が直ちに無効になるというわけではないと考えております。政府といたしましては、従来から御指摘の点につきましては個別的効力説の立場をとっております。
  241. 三浦隆

    三浦(隆)委員 質問は急にしたわけじゃなくて質問要項もお渡ししているわけでして、そういう意味では質問の趣旨と答えが前半全然違うことを述べられているわけですね。  これは、たまたま宮澤俊義先生の憲法の本の中の一節を引用しまして、こういう場合どう考えたらよいだろうか、大きな問題だと思うのですね。やはりこのどちらに立つかということはいずれにしろ大変及ぼす影響が大きい。ですから、どなたでも結構だからどなたか答えられないものだろうかということをお頼みした、まあ頼んだわけですね。  それでは、最後の言葉だけ引っかかります。個別的効力説を仮にとるというふうな一番最後の結びだけにやりますと、その見解に立ちますと、その宮澤先生のコンメンタールによりますと、「最高裁判所に対して合憲性の審査権をみとめながら、その点に関する裁判所の判断に一般的な効力をみとめないとすると、最高裁判所によって違憲と判断された法律がその後もその他の一般人に対しては効力を有するとされ、それらの人が裁判所でそれを争いさえすれば、その適用を免れることが明白であるのに、裁判所で争った人はその適用を免れるのに、それを争わない人はいつまでもその適用を免れることができないという不条理を生ずる。こういう結果を容認することは、おそらく裁判所に合憲性の審査権を与えた趣旨と矛盾するだろう。」このように述べておりますが、今御答弁をされた方はひとつお答えを願いたいと思います。
  242. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 違憲とされました判決の効力についてどのように考えるかということにつきましては、学説上もいろいろな考え方があることはただいま御指摘のとおりでございます。個別的効力説あるいは一般的効力説のいずれをとるかによりまして、それぞれ功罪があると思いますけれども、仮に一般的効力説をとりましたときには、判例の変更がないという意味におきましては安定的だということが言えるかもしれませんが、今度は反面におきましてはその遡及効をどういうふうに考えるのか。わかりやすい例で申し上げますと、例えば税金の場合に、既に納めました税金というものを一体どういうふうに考えたらいいのかというようなことで……(三浦(隆)委員「質問にお答えいただきたいのですが」と呼ぶ)お答えしているつもりでございますけれども……。
  243. 横山利秋

    横山委員長 ちょっとお待ちください。――どうぞ。
  244. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 というような点がございますので、そのいずれとも決しられない。ただ、先ほど最高裁の方からも申されましたように、判例自体もございませんし、またこれに関しまして憲法にも法律にも特別の規定はないわけでございます。  先ほどのお尋ねで、個別的効力説、一般効力説のいずれと考えるかというお尋ねでございましたので、政府といたしましてはという限定をつけましてお答えしたつもりでございます。
  245. 三浦隆

    三浦(隆)委員 私は、答えとしては個別的効力説にせよ一般効力説にせよ、どちらにも論旨というものはあるんだと思うのです。これに対してたまたま宮澤先生のコンメンタールでは、もし個別的効力説をとるとすればこれこれしかじかの矛盾が出る、だから私はこの説はとれない、こう述べられているわけであります。ですから、私が答えを期待しているのは、宮澤先生の説はこれこれしかじかで間違っております、むしろ私の方が正しいんだというふうな意見を求めたのでありまして、そうでなければ、個別的効力がいいのか一般効力がいいのかと問うたときに、個別的効力だというお答えたから、それはおかしいじゃないかという説に対してお答えいただかなければどうにもならない。それに対して一般効力説の場合はどうかといっても答えがピントを外れているんだということなんです。  時間の関係もありますけれども、もしあれば一言だけお聞きして先へ進みます。
  246. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 私に宮澤先生の学説を批判するだけの能力はございませんので、御指摘のように一般的効力説、個別的効力説につきましては、先ほど申し上げましたように、いろいろな考え方があります。いろいろな考え方がございますが、政府といたしましては個別的効力説の立場をとっておりますということを申し上げたつもりでございます。
  247. 三浦隆

    三浦(隆)委員 少なくとも日本というこの国をお預けしているのが国民であり、受けているのが政府でありますから、その政府がよくわからないけれどもこの説をとっておりますなんというのは、ほとんど答弁にはならないんだろう、私はそう思います。少なくとも、大学の教師が教壇に立って説を述べて学生に質問されたときに、私はよくわからないけれどもこの説をとりますという答弁は絶対といっていいぐらいあり得ないことだというふうに私自身は思っております。  しかし、先へ進みます。似たようなものでありますが、最高裁の違憲判決を理由に国民が当該法令の有効性を認めない、また公務員が当該法令の執行を国民に対して強制しない場合、これらの国民及び公務員の態度は、法の解釈適用上どのように考えたらよろしいのでしょうか。そういうことは本来ないということでしょうか。
  248. 横山利秋

    横山委員長 どなたが――非常に理論的ないい質問でございますが、事前に御連絡してありますか。
  249. 三浦隆

    三浦(隆)委員 大体概要は、もうこの法令審査権についてということを言っております。
  250. 横山利秋

    横山委員長 御答弁をなさる方はございませんか。
  251. 三浦隆

    三浦(隆)委員 本当に残念というか、おかしなことだとは思うのですが、ここで中断するわけにもいきませんでしょうから、先へ進むことにいたしましょう。  これも実は宮澤先生のコンメンタールの中に出ている言葉でして、それに対するお答えをお尋ねしたい、こう思ったわけであります。それというのも、みんな個別的効力説をとられるというお答えがあったからでございます。ですから、答えられる以上はそれに対する反論が当然学説はあるわけでして、それに対してやはりしかるべき答えがなければ極めて納得し得ないというか、少なくとも私がここで納得したと言っても一般の国民は納得し得なくなってしまう。そんなことでどんどん進められたならば、政府に対する信頼も司法に対する信頼もともども失われるのではないかということを恐れます。  さて、その次はちょっと要旨を変えます。  最高裁は刑法二百条尊属殺に対して、本条は法定刑が死刑及び無期懲役刑に限られている点において、不合理な差別を設けるものであり憲法十四条一項に違反すると違憲判決を下しております。これが昭和四十八年四月四日です。しかし、刑法二百条の規定は違憲判決後十年を経過してなお改正されていないわけです。今、刑法の全面改正もあるいは論議され、間もなくそういう案も出されるかもしれませんが、そこには保安処分の規定その他いろいろな難しい問題もあるかもしれません。他の難しい問題があるからといって、十年にもわたってこれをほっぽり出しておいていいということも成り立たないだろうと思います。言うならば、刑法の全面改正はさておきましても、この刑法二百条だけでも単独に速やかに改正すべきものだと考えるのですが、これに対して法務大臣はどうお考えになりますか。
  252. 筧榮一

    筧政府委員 まず事務当局からお答え申し上げます。  今、先生御指摘のように、昭和四十八年刑法二百条が違憲であるという最高裁の判決が下されたわけでございます。これを受けまして、その尊属殺に関します一般社会その他いろいろの意見を参照いたしまして、法務省といたしましては尊属関係の加重規定を廃止するという案を考えまして、第七十一回国会に提出すべく準備をいたしましたが、各方面の御了解が得られなくて提案までに至らなかった次第でございます。その後も各方面のいろいろの御意見を伺っておるわけでございますが、申し上げるまでもなく、この問題は最高裁の判決自体が法定刑、死刑または無期ということが重過ぎるということでございまして、直ちに全部がいかぬという趣旨でもございません。いろいろ軸足意見あるいは別の意見もあるわけでございます。したがいまして、これに対しましては、親子関係をめぐる道徳に関連する問題でございますとか、いろいろの道徳観、倫理観あるいは家族観と申しますか人生観に基づきますいろいろな考え方が各方面にあるわけでございまして、それを検討を続けておるわけでございます。その間、先生御指摘のように、刑法全面改正の炸薬が進みまして改正草案ができ、さらにそれをまた検討を続けておるわけでございます。  私どもといたしましては、刑法の全面改正をできるだけ近い機会に実現いたしたいと考えておりまして、その一環として当然にこの尊属関係の規定につきましても、最高裁の判決の趣旨を体しまして改正を行うという方針で現在も進めておるところでございます。
  253. 三浦隆

    三浦(隆)委員 実はきょうの質問はかなり前に御関係の皆さんをお呼びしまして何回となく打ち合わせをさせていただいております。そして、その上でもしまた私の方に御質問事項があれば要項を見せるとも言っているし、またきょう来ても書き直せば聞きに来てくださいとも言っているわけでありますから、質問には答えていただけるように今後お願いをしたいと思います。  なお、最高裁にもお願いしたいのですが、国会では答弁でき得ないことが、ジュリストや何かの中では、環制裁判所調査官ということで、その人の名前で「衆議院議員定数大法廷判決の概要」ということでかなりのページを割いて詳しくお述べになっているわけです。最高裁のこの判決について全く意見を言えないならば、大体雑誌に書くこともおかしいじゃないか、雑誌に書ける範囲のことくらいがなぜ国会でしゃべることができないのだろうかという疑問を感じているということだけ申し上げまして、質問を先に進めさせていただくことにいたします。  次は、暴走族対策の問題でございます。初めに警察にお尋ねしたいのですが、最近におきます暴走族事犯の法令別検挙状況とその特色及び本年度の見通しについてお尋ねしたいと思います。
  254. 山崎毅

    山崎(毅)説明員 お答え申し上げます。  昭和五十八年中における検挙状況でございますが、道路交通法違反で五万一千四百九十九人、これは共同危険行為、無免許、信号無視、整備不良などでございます。それから、刑法犯が三千二百十六人、暴行、傷害、公務執行妨害等でございます。それから、暴力行為処罰法違反が八百六十三人、特別法犯、これは道路運送車両法、碓物劇物法などでございますが三千九百二十三人、合わせまして五十八年中の暴走族の検挙人員は五万九千五百一人でございます。  最近の大きな特徴といたしましては、整備不良車運転、無免許運転が大幅にふえておるということでございます。その反面、暴行、傷害とか凶器準備集合といった暴力的な事犯が減少いたしております。  ことしの見通しですけれども、若者の暴走指向は依然として根強いものがありまして、取り締まりの間隙をついたゲリラ的な走行あるいは一般市民を巻き込んだ暴力事犯などが惹起されております。したがいまして、暴走族をめぐる情勢は今後とも基本的には変動はないと考えております。
  255. 三浦隆

    三浦(隆)委員 警察の大変な努力にもかかわりませんでこうしたことが減らないでいろいろとふえてきているということは、本当に遺憾だと思います。しかし、今後の若者のことでございますから一層の御努力をお願いしたいと思います。  次に、横浜市鶴見区の大黒埠頭では高校生を中心とするオートバイ集団が疾走しておりまして、付近住民から善処してほしい旨の陳情が私のところに来ております。その現況と対策についてお尋ねしたいと思います。
  256. 山崎毅

    山崎(毅)説明員 ただいま御質問の鶴見区の大黒埠頭における暴走族の現況でございますが、昭和五十七年ごろから暴走族が同埠頭に蝟集をしまして最盛時には二百台から三百台の車で暴走行為等を行っておりました。そのため所轄の神奈川県警におきましては、本部とそれから警察署の合同による強力な取り締まりを実施いたしますとともに、ここは市の港湾管理者の管理する場所でございますので、夜間の埠頭入り口の閉鎖等の措置につきまして強くお願いをするなど、暴走族の封圧を図ってきたところでございます。それから、現在では従来に比べますと随分減少を見ておるのでございますが、しかし依然として小グループの暴走族が走っておりますし、また暴走族の特性もあり、ちょうど時期的にも本格的な暴走族の活躍の時期を迎えますので、今後とも暴走族の動向に対応して先制的な取り締まりを一層強化するとともに、関係機関、団体等と連絡を密にして、地域ぐるみによる総合的な幅広い対策を講じてまいりたいと考えております。
  257. 三浦隆

    三浦(隆)委員 実は、この横浜の大黒埠頭の場合には、昨年に比べますとことしの方がずっと多いわけです。そういう意味でここ数年少し減少ぎみかなと思いましたところが、暴走族が再活発化してきたというふうに地元の新聞は報じてきているということでございます。そしてまた、昨今は暴走グループがより小型化するしゲリラ化してくるしということが伝えられております。私のところに陳情に来たのは地域の町の町会長さんグループでございますけれども、とにかく今新しい道路がどんどん広がっている。そうした新しい広い道路のところがますます暴走族の格好の場所になるのじゃないか。もう既に去年よりもことしの方がどんどんひどくなってきたので何とかしてほしい、言うならば受験で勉強している子供もいればあるいは体を壊して休んでいる人もいるのだということです。しかもそれが毎夜レースのようになるものですから、暴走族ではないのですが、何でもない子供まで夜になると見物に出かけていっちゃうというのですね。その子が別にオートバイに乗るわけじゃないのですが、おもしろがって夜出かけていっちゃう。親の方としてはそんな夜中に出ていっちゃだめだと言っても子供が出ていく。そうして、あげくの果ては次の日は寝不足になって学校へ行くのにとても弱っているというふうな繰り返してございます。特にこれからがだんだん盛んになってくると思われますので、何とか早い対策をお願いしたいと思います。  そんなことと絡めまして、二つ続けてお尋ねします。  一般に蝟集走行の場所として利用されやすい施設の適切な管理対策について、これはもう横浜だけではございません。第二番目には、そうした公道を使用して走行タイムや着順を競うゼロヨンあるいはローリング、キャノンボールなどと言われる新しい形態の集団暴走行為についての対策について特段どのような対策をとられているのか、お尋ねをしたいと思います。
  258. 山崎毅

    山崎(毅)説明員 第一点の、蝟集場所、走行場所に利用されない施設の適切な管理対策ということでございます。実は、そうした場所の管理の権限を持つ者は警察でなくて別のところでございますが、私ども、暴走族の実態を把握をしている立場から、暴走族が蝟集をしやすい広場あるいは駐車場などにつきましては、暴走族を締め出すために、その場所を管理している管理者の方々に対しまして、暴走族が蝟集できないように、さくあるいはロープを張るというような物理的な措置をとっていただくというようなお願いをしております。また一方では、警察でも当然視察警戒を強化をいたしておるところでございます。  次に、新しい型の暴走行為とおっしゃいましたが、最近見られるのはゼロヨンそれからローリングそしてキャノンボールといった新しい型の暴走行為が出ております。この暴走行為は従来見られなかった新しい型でございますので、私ども取り締まりにもいろんな工夫が必要であるということからやっております。昨年、ゼロヨンにつきましては一件、キャノンボールにつきましては四件の検挙をいたしました。また、ローリングと申しますのは、比較的短い道路でコーナリングなどを楽しむ、そういう暴走行為でありますが、相当な数の車が一カ所に集まって行います。私ども視察内偵により情報をつかみますと、そこに警察力を集中して投入をして検挙をしております。一、二の事例を申し上げますと、昨年は滋賀県で三百八十二件の検挙をいたしております。また、兵庫県では七十件、高知県では五十六件、そういう状況になってございます。
  259. 三浦隆

    三浦(隆)委員 運輸省と内閣交通安全対策室にお尋ねをします。  初めに、運輸省に対しましては、暴走行為を助長するような不法改造を行う業者に対してどのように対処していられるのか、悪質な業者に対する規制を強化すべきではないかと思う。これが第一点であります。  それから、次は、内閣交通安全対策室の方にお願いしたいのですが、自動車整備事業者だけでなく、不法改造に使われる部品、用品の製造または販売を行う業者、あるいは整備業者以外の例えば鉄工所、板金工場等に対する法的規制をこの際行うべきではないかということに対してどのようにお考えでしょうか。
  260. 佐々木毅

    佐々木説明員 お答えいたします。  私どもが所管いたしております自動車整備業者に対しましては、かねてから暴走行為を助長するような不法改造を行わないよう指導監督の徹底を図ってきたところでありますし、また、自動車整備事業者団体におきましても、各整備工場の総点検を行うとか、あるいはポスター等により事業者に対しまして暴走族の不法改造に加担することがないように周知を図ってきたところでございます。  それから、先般の道路運送車両法の改正におきまして、自動車分解整備事業者の遵守事項一つといたしまして、不法改造の禁止を規定しております。これは昨年の七月から施行されております。したがいまして、私どもといたしましては、今後、事業者に対する監査や検査主任者の研修等を通じまして指導監督の一層の徹底を図るほか、不法改造を行いました事業者に対しましては厳しく対処してまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、事業者団体に対する不法改造防止についてさらに積極的に取り組むよう指導を強化してまいりたいと思いますが、具体的に申し上げますと、本年度におきまして各整備工場の総点検、それからポスターを新しく八万枚つくりまして各工場に張らせるということを考えております。  以上でございます。
  261. 麻植貢

    ○麻植説明員 お答え申し上げます。  暴走行為を助長するような不法改造を防止することにつきましては、所管省庁におきまして関係方面に対し鋭意指導が行われておるというふうに了解いたしておるところでございます。今後さらに新たな法的規制を行うべきかどうかということにつきましても、所管省庁における検討にまつべき問題ではなかろうかというふうに考えております。なお、総理府といたしましては、関係省庁あるいは地方公共団体等の協力を得まして、あらゆる機会をとらえまして暴走族を許さない世論の形成等に努力してまいっておるところでございますが、なお一層努力を重ねたいというふうに思っております。
  262. 三浦隆

    三浦(隆)委員 子供たちはオートバイとか自動車に大変興味を持っております。そういう暴走行為を行う子供たちもいけませんけれども、むしろこうした業者――多くの業者はみんなすばらしい業者なんでしょうが、中に不法なというか悪質な業者がおりますと、営業、営利という観点だけでもってこうした不法改造を行う人が出てくる。これで子供たちはまかり間違うと転落への道へ入ってしまうということでありますから、子供たちだけではなくて、今後ともども関係省庁で御協力をいただきまして、暴走族を少しでもなくすようにひとつよろしくお願いをしたいと思います。  最後に、この問題に関して文部省にちょっとお訪ねをしたいと思うのです。  といいますのは、最近の統計資料というかこの十年来の資料によりますと、刑法犯少年の年齢別補導人員の推移というものによりますと、昭和四十七年を一〇〇としますと、昭和五十六年で十四歳の子供たちは二五四、十五歳が二三五、十六歳が二一〇と大変な勢いで伸び続けてきているわけです。遠くからですとちょっと見づらいかと思いますけれども、十四、十五、十六という子供たちだけが大変な勢いで伸ばしているということであります。また、こうした刑法犯の子供たちが罪種別にどういうことを犯しているかといいますと、多くは窃盗でございますが、その中でもオートバイ、自転車、自動車の盗みが大変に多いわけであります。言いかえますと、テレビの「おしん」でありませんが、昔のオートバイも自転車も自動車も余りないときには起こり得なかった犯罪が、今や手軽に自転車、自動車、オートバイへと出てきているわけであります。もちろん子供たちが盗むという行為はいけないことでありますけれども、自転車なりオートバイにいたしましても、たまに駅のすぐそばなり道路にかぎもかけないで、だれに持ってかれようとどうしようもないような状態で放置されている事例を幾らでも見るわけであります。持っていきたければ勝手に持っていけと言わんばかりの状態がないとは言い切れません。ということは、子供たちが盗むという行為もさることながら、むしろ、そういうふうなオートバイなり自動車なり自転車には所有者は確実にかぎぐらいはかけろ、むしろ何一つかけないのはけしからぬ、むしろそういうことも何とかこれから少しずつでも規制の道を広げていけば、子供たちの窃盗ということがかなり減ってくるのじゃないかという期待がございます。いずれにしましても、十四歳、十五歳、十六歳というのが中学生、高校生にかかわるということでありますと、とれは学校教育との関連が大変大きくなります。  そこで、文部省にお尋ねをしたいわけですが、文部省としましては、生徒の暴走族化防止に向けまして、どのような対策をお立てになっておるものでしょうか。
  263. 青柳徹

    ○青柳説明員 お答えいたします。  学校におきます交通安全教育につきましては、自他の生命の尊重という基本的理念に立ちまして、心身の発達段階やまた地域の交通環境などに即しまして、安全に行動できる態度あるいは能力を養うということをねらいといたしまして、特別活動、特に学級指導、ホームルームでございますが、こういった活動、あるいは学校行事、さらに各教科または道徳なども通じまして、いわば学校の教育活動全体を通じまして、組織的、計画的な教育指導を実施していきたいということで、その充実に努めておるところでございます。  具体的には、小学校あるいは中学校におきましては、歩行者としての安全のみならず、自転車の安全な乗り方、こういった点に重点を置きまして、また高等学校につきましては、小中学校におきます指導を一層発展させ、よき社会人として必要な交通のマナーを身につけさせるというような角度から、二輪車の安全に関する内容等も含めまして、交通安全教育の充実に努めておるところでございます。  文部省におきましては、こういった指導を効果的に実施をいたしますために、小中学校につきましては、安全指導の手引、さらに高等学校につきましても、種々の指導資料を作成をいたしまして、また、いろいろな機会に、研修会等におきましてその充実についてお願いをしているというような状況でございます。  暴走族の問題あるいは先生御指摘の非行化の問題、確かに中学校段階の子供たちを中心に、大変問題になっておるところでございます。交通安全だけの問題でなくて、さらに、学校での教育活動を豊かにまた楽しいものにしていかなければならぬというような要素もございますし、また、生徒指導もいろいろな形での充実をしていかなければならぬというようないろいろな部面からの対応が必要でございますが、私どもの所管をいたしております交通安全指導につきましては、そういった方向で努力をしておるところでございます。
  264. 三浦隆

    三浦(隆)委員 首相のいわゆる教育臨調構想というのも、文部省だけでなくて、子供たちの非行防止には、運輸省であれあるいは警察であれ、各省庁がひとつ最大限に協力し合って何とかなくしていこうということだと思います。  先ほど、例えば、こうした防止に向けてポスターもたくさんつくっておるということですから、そういうポスターも、例えば中学、高校、問題となるようなそういう学校の校舎の中にあるいは校舎の門の外に、子供たちにすぐ見えるところに、いわゆる町のどこでもというわけじゃなくて、対象を学校教育として子供に限るならば、子供たちの通っている学校の中にそして門のところにとポスターを張るようにしていただきたいし、その際は文部省も協力していただきたいと思います。  そこで、時間でございます、最後に一つだけお尋ねをいたします。  実は、法務大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、一日法務省というのでしょうか、年に一度でも二度でも結構でございますから、地方都市に出かけまして、大臣局長さんたち、あるいは必要であるならば法務委員会の各党の理事も出席しまして、法務への国民の希望をくみ上げる機会というものを積極的にこれから持たれたらよいのではないか。既に外務省なども行っているようでございますが、法務省としてもそういうふうな方向に進んだらいかがかと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  265. 住栄作

    住国務大臣 大変貴重な御提案だと思います。法務省、例えば十月一日法の日あるいはそういうような週間なり月間等も設けております。そういうような適切な時期に合わせまして何かそういうようなことを考えて、要するに、法秩序を守るというような思想の普及を図った方が効果的じゃないかと考えております。
  266. 三浦隆

    三浦(隆)委員 ぜひ具体的にお進めをいただきたいと思います。  なお、きょうはまだほかの厚生省その他、皆さんにもおいでいただきましたけれども、時間がなくなりましたので失礼をしたいと思います。  質問を終わります。
  267. 横山利秋

    横山委員長 三浦君にお尋ねいたします。  あなたの先ほどの質問のうちで個別効力説、一般効力説の発言の後で法制局が発言を求めておりましたが、あなたはお気づきになりませんでしたが、答弁を求めますか。
  268. 三浦隆

    三浦(隆)委員 もう時間のようでございますから、結構です。
  269. 横山利秋

    横山委員長 それでは、中川利三郎君。
  270. 中川利三郎

    中川(利)委員 去る十三日の当委員会で、私は、福島交通が自民党の政治資金団体である国民政治協会に昭和五十一年からことし三月まで政治献金を行ってきたことは、一つに国、県からの補助を受けている会社であることから、二つには三事業年度以上にわたって継続して欠損金を計上していることからも、その違法性は免れないと指摘してまいりました。  きょう午前、福島交通の代表者が記者会見を行いまして、政治資金規制法で禁止されていることを知らずに納入し続けてきた、そのための誤納であったとして国民政治協会に対し返還請求を行い、同協会からは四月十六日返納を受け、あわせて四月十八日同協会を脱会した旨を述べたのでありますが、献金した福島交通の違反は、たとえ脱会し返納を受けましても、やはり違反そのものは明らかであると同時に、受け取った側の国民政治協会にも法違反は明らかだと思いますが、この際、自治省が先ほどお願いして来ておりますので、御見解をお聞きしたいと存じます。
  271. 山崎宏一郎

    山崎(宏)説明員 五十五年から五十七年の収支報告書におきまして、国民政治協会に対しまして二十四万円の収入があったという事実がございます。これに対しまして、その後、現在までのところ国民政治協会から収支報告書の訂正の申し入れはなされておりません。なお、御指摘のような寄附の返還が仮になされたとするならば、その返還につきましては五十九年分の政治資金収支報告書の中に記載されてくるのであろうというふうに考えております。
  272. 中川利三郎

    中川(利)委員 その点は、私先ほど自治省の方へそういう問題で提起したわけでありますが、改めてお聞きするのでありますが、そういう訂正報告が出されてないことははっきりしましたけれども、同時に、返納を求め形式上はその事実をなくしたあるいは脱会したといいましても、違法性は福島交通も受け取った側の国民政治協会も同時に問われるものであると思いますが、この件についていかがかということをもう一回お聞きしたいと思います。
  273. 山崎宏一郎

    山崎(宏)説明員 過去の事実関係は、それはそれとして残っておるわけですから、そういう事実関係をもとにそれぞれの法的な判断がなされるというふうに思っております。
  274. 中川利三郎

    中川(利)委員 つまり、この福島交通は国会で問題になったから大慌てでそうしたわけでありまして、そういうところにもこの会社の問題があると思うのです。  時間の関係もありますから、まず国税庁にお伺いしたいと思います。  国税庁当局も認めていますように、資本金わずか四千万円の福島交通不動産が四十七年から五十八年にかけて百億円もの使途不明金を出しております。この使途不明金の中には政治家に対しての貸し付けや政治献金が入っていると言われております。他途を明らかにできない金が百億円にも上っていることについて国税庁はどのようにお考えでございましょうか。
  275. 中川浩扶

    中川説明員 お答えいたします。  福島交通あるいは今委員がおっしゃいました福島交通不動産等関係法人につきましては、昨年調査を下しておりまして、適正に処理をしているというふうに申し上げられるかと存じます。  一般的に申し上げますと、使途不明金ということにつきましては、真実の所得者に課税をするというのが税務の本旨、建前でございます。したがいまして、従来から税務調査におきましては、使途不明金の解明ということについて特段の努力をしているところでございますが、税務調査では相手方の協力がなかなか得られないというふうな場合がございますと解明に弔らない、そういう場合につきましては、その支出が損金に算入される経費に当たるかどうか確認できないということになりまして、やむを得ず法人税を課税するというふうなことをいたしております。  なお、個別の内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  276. 中川利三郎

    中川(利)委員 東京国税局及び仙台国税局は二回にわたって税務調査を行って、小針氏に対しまして追徴課税を課した、こう聞いておりますが、そのとおりでございますか。
  277. 中川浩扶

    中川説明員 先ほど申し上げましたように、最近ということで昨年調査を下しておりますが、相当以前のことにつきましては必ずしも明らかでないわけでございますが、昨年調査を下しました間の件に関しましては適正に処理をしたということでございます。
  278. 中川利三郎

    中川(利)委員 小針氏は、マスコミに対しましては、使途不明金の内容については、保有土地の値上げを図るためには長期的な環境整備を図る必要があり、広く関係方面に工作資金として使っている、こう述べています。国税庁の税務調査の中でこの点が明らかになりましたか。つまり、広く関係方面に持ち土地の値上げを図るために工作資金として政治家に金を流したということでありますが、この点について税務調査の中でどのように明らかになったか、お伺いしたいと思います。
  279. 中川浩扶

    中川説明員 今、委員のおっしゃいました新聞等で種々報道されていることについては承知しておりますが、個別の内容でございますので、その内容の点につきましては答弁を差し控えさせていただきます。
  280. 中川利三郎

    中川(利)委員 それでは、さらに国税庁にお伺いいたします。  使途不明金の一部は、家族らを同伴した海外旅行費用や小針社長個人の交際費にも使われていると言われておりますが、この点はどうですか。
  281. 中川浩扶

    中川説明員 個別の内容にわたるわけでありますが、先ほども申し上げましたように、調査につきましては適正に処理をしたないしは適正に一般的には処理をしているということで答弁にかえさせていただきたいと思います。
  282. 中川利三郎

    中川(利)委員 それなりに対応して処理をしたということだと思いますけれども。  ところで、法務省にお聞きするのでありますが、社長といえども、会社から受ける正常な報酬、賞与、交際費など営業に関連する実費のほかに、会社から無償で金銭の贈与を受けることは一般に許されないことであります。法務補に聞くことは、社長みずから保管している会社の現金を自分の生活費やその他欲望を満たすために使った場合や経理担当者に命じたときは、業務横領罪成立すると思いますが、いかがですか。
  283. 筧榮一

    筧政府委員 一般論としてお尋ねでございますので、一般論としてお答え申し上げます。  会社の社長といえども、会社の業務を遂行し、それに対する報酬あるいは給与ということで正規に受領する以外に、全く私的な目的のために会社の全員を使うということは業務横領になる場合があろうかと思います。また、それが自分が保管していない会社の金を何らかの方法で支出させたという場合には、特別背任というような背任罪の成立することもあろうかと思います。
  284. 中川利三郎

    中川(利)委員 この場合は個別な問題でありますけれども、その可能性は大いにあるということですね。
  285. 筧榮一

    筧政府委員 この場合と申しましても、具体的な事実関係を私ども承知しておりませんので、やはりあくまで一般論としてのお答えでございます。
  286. 中川利三郎

    中川(利)委員 過去においてそういう場合の業務横領罪成立した事例はどの程度ございますか。
  287. 筧榮一

    筧政府委員 個々には記憶しておりませんし、資料を集めたこともございませんが、御指摘のように、会社の社長が全く個人的な目的のために会社の金を使ったという場合に業務横領になりあるいは背任になるというふうな事例は相当数あろうかと思います。
  288. 中川利三郎

    中川(利)委員 例えば、KDDのあの板野社長の場合なんかそうですね。  ところで、福島交通及び福島交通不動産が持っていらっしゃる優良資産、つまり担保的な値打ちのある優良資産を、昭和五十七年七月から九月にかけまして相次いで小針企業グループに売却していることです。このことについてお聞きするのでありますが、私の調査によりますと、この福島交通あるいは岡不動産が、短い間といいましても八二年七月二十一日一件、八二年九月三十日六件、この二カ月間のその日に限って次から次へ優良資産を売却しているわけでありまして、例えば本社の土地は、五十七年九月三十日同不動産から株式会社フクコーですね、六千六百九十九平方メートル、それから旧整備工場、これが五十七年九月三十日、これも売却です。福島交通から株式会社フクコーですね。それから旧ターミナル、これが五十七年九月三十日、福島交通からフクコー。バスプール、駐車場でありますが、これが五十七年九月三十日売却、福島交通からロイヤル、正式の名前は後で申し上げますが、この会社に行っております。それから駅前駐車場、これが五十七年九月三十日福島交通不動産からフクコーへ。旧営業所が五十七年九月三十日売却、全部売却です、福島交通からロイヤル。それから、今使っているバスターミナルが、やはり五十七年七月二十六日福島交通からフクコーへ、こういう状態になっているわけであります。  きょう運輸省、来ていると思いますが、私がお伺いしたいことは、乗り合いバス事業あるいは鉄道事業など、そういうことを目的にする会社、いわば公益事業ですね、これは地域住民の足を確保する見地から事業をやっているはずでございますが、それにもかかわらず、現在使用されておる、営業上欠くべからざる本社の土地やバスターミナル、バスプールなど、そういう資産を手放す、このような経営姿勢について、運輸省はどうお考えでしょうか。
  289. 豊田実

    ○豊田説明員 お答え申し上げます。  運輸省としましては、福島交通株式会社の運輸事業の経営につきまして、関係法令に基づきまして指導監督をしているところでございます。現在までのところ、私ども、運輸事業の遂行に非常に大きな支障を来すような事業用の施設処分というものについては報告を聞いておりませんが、私ども運輸省としましては、地域住民の足の確保の観点から、今後とも県とも協力しまして、福島交通株式会社に対して運輸事業の遂行に支障が生じないように指導監督をしてまいるつもりでございます。
  290. 中川利三郎

    中川(利)委員 親分が一人でありますから、いろいろなところへやっても実態は変わらないわけでありますが、つまり優良資産、これだけ世間で使途不明金だとかいろいろなことが騒がれているわけでありますが、そういう中で、このわずかの期間に限って担保能力のあるそういう資産が次から次に移しかえられている。いわば公益事業の分野から、もう一つの自分のグループのそういう会社ですね、つまり、ロイヤルにいたしますと、これは大した会社ではありませんけれども、こういうことについて、支障がありますれば云々というお答えでありますけれども。これは明白に、その目的からいいましても私は大変遺憾なことではないかと思うのです。  そこで、私がお聞きいたしますのは、この優良資産を売却した相手先の株式会社フクコーですね、今資本金が四千万円、そういう会社で、発行済み株式数八万株、設立当初は小針暦二が二万株を持って、小針美雄、これは長男でありますが一万六千株、山田克爾、この方が一万六千株を所有しています。山田克爾さんという方は娘さんのお婿さんでありまして、運輸省の天下りであります。そういう皆さん方が一皆さん方というよりも、このフクコーという会社は、今、小針企業グループの総本山と言われています美福、これが全株所有しているわけでありますね。美福について申し上げますならば、発行済み株数が六十八万四千株、これは小針暦二氏を初めとした美福役員が所有しています。また、先ほど言いましたロイヤルというのは日本ロイヤルクラブが正式の名前でございまして、これは資本金四億八千万円で、発行済み株数は九十六万株、その所有は小針暦二氏を初めとした日本ロイヤルクラブの役員が所有しています。この会社は五十四年八月に設立されましたが、営業を始めたのが昨年、つまり五十八年ですね、一月でございます。これらの会社は、つまり美福だとか福交だとか福交不動産だとか、福交というのは福島交通ですが、フノコーだとかロイヤルクラブだとか、その中で共通している役員は、この小針暦二氏と長男である美雄氏とさらに娘婿さんである天下りの山田克爾氏、この方々が全部共通しておるわけでありますが、このことは、言うなれば、一家で、家族で会社そのものを私物化しているということになると思うのですが、これらの売買が行われたわけでありますが、国土利用計画法によりますと、二千平方ノートル以上、こういうものの売買に対しましては、県知事の許可が義務づけられているわけでありますが、国土利用計画法の第二十三条ですね。  国税庁にお伺いしなければならないのは、そうした売買が行われますと、当然税金問題が起こって――もう既に起こっておったと思うのです。この問題について、どのように掌握し、どうしたのか、お知らせいただければありがたいと思います。
  291. 木下信親

    ○木下説明員 税務調査に当たりましては、資産の移動それから資金の流れと並びまして、一番重要なポイントでございますので、注意深くやっております。  先ほど中川企画官から申し上げましたが、既に調査の下しました範囲内に入るものにつきましては、適正に処理しております。
  292. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなた、冗談ではありませんよ。私が申し上げたのは、五十七年時点に全部の売買、優良資産七件全部終わっているのですよ。例えば、本社の土地は六千六百九十九平米、旧整備工場は六千二百二十三平米、旧ターミナルは三千七百八十七平米、バスプールは七千二百十六平米、それから旧営業所は一万九百十六平米、こういう何カ所にもわたって、二千平方メートル以上の、つまり県知事許可を受けなければならない売買が既に行われているのですよ。にもかかわらず、今の御答弁によりますと、実態を調べてとかなんとか言いますが、調査中だとか、まだ実態がわからないと言いますが、そのこととは関係なしに、これは既にそのように措置されているということですね。このことについて、国税庁は何ら実態をつかんでいないのか、どうしたのかということを聞いたのでございますから、もう一回答弁してください。
  293. 木下信親

    ○木下説明員 既に調査の範囲内に入っております時点のものにつきましては、適正に処理しております。
  294. 中川利三郎

    中川(利)委員 そこで、お伺いをいたしますが、この優良資産は資産価値が大幅に下回った値段で売られた、こういうことが言われているだけでなくて、その売られた資産ですね、その価値は百二十億円を下らないと一般に言われています、関係者の証言ですね。しかも、これら転売された土地のうち、四カ所は抵当権が抹消されているわけでありますから、いかにすばらしい土地であるかわかると思うのです、無傷の。この結果何が起こったかと言いますと、こうした土地を、優良資産を転売した福島交通及び福島交通不動産は多額の借金で苦しみ、転売先の彼の企業グループ、フクコーや日本ロイヤルクラブは優良資産を持って笑いがとまらないという格好になっているんです。これらの売買行為というのは、取締役が任務に背いて自己もしくは第三者の利益を図るあるいは会社に対して損害を与えるという可能性が十分考えられることは当然でありますが、そうなりますと、お聞きしたいことは、商法の第四百八十六条でいう特別背任罪の疑いが出てくると私は思いますが、法務省の御見解はどうでございましょうか。
  295. 筧榮一

    筧政府委員 今、先生御指摘のように、商法四百八十六条の特別背任ということになりますと、取締役等の役員が利を図りあるいは会社に損害を与える目的をもって任務に違背する行為をした、そして会社に損害を与えたという要件が必要でございます。一般論として申し上げまして、いかなる事案でも今の要件が全部備われば特別背任罪が成立することは明白でございますが、御指摘のような事件、具体的にはいろいろな条件、私も承知しておりませんので何とも申し上げかねるわけでございますが、特に優良資産の売却の場合にも、どういう売却がなされて、優良資産が売られてそれに見合う対価が得られたとすれば別に損害もないということになろうかと思いますし、その際の取締役なり社長なりの目的あるいはその行為が任務違背であったかどうかという点もいろいろ問題があろうかと思いますので、具体的な点につきましては、なるともならぬともちょっとお答えいたしかねる次第でございます。
  296. 中川利三郎

    中川(利)委員 売る方はどういう意図があったかわかりませんが、買う方の場合を考えてみますと、たった資本金四千万円の株式会社フクコー、それがどうして買うことが――その資金も、この会社はスーパーを二軒持っているだけです。小さなスーパー二軒持っておって、常識で考えてもおわかりいただけるのじゃないでしょうか。そういうことをまた、十分実態がわからないからどうかと言う。それで世間の常識なり社会の常識が通るか。明らかにこのやり方自体は私、特別背任罪だと思うのでありますけれども、何と考えたって非常に今の答弁には納得できかねる。もう一回お答えいただきたいと思います。その可能性はあるね。
  297. 筧榮一

    筧政府委員 先ほど申し上げましたように、一般論として、今の特別背任の要件が備われば当然なるわけでございまして、いかなる場合でもその可能性がないということは申し上げないわけでございます。ただ、今御指摘の事案につきましては、私ども具体的な事実を承知しておりませんので、なるともならぬともお答えいたしかねる次第でございます。
  298. 中川利三郎

    中川(利)委員 例えば不動産を売買した場合の、売買が既にできておって、その実態も国税庁はつかんでおらないと言う。したがって法務省もその中身はつかんでおらない。こういう重大な問題について、全く各省ともに実態がつかめないと言う。いつそれが起こったかというと、既に昭和五十七年段階ですね。その間何をしてきたのですか。当然、県知事からの許可ですから、知事の方から売買すれば税務当局には連絡がいきますね。当然ですね。それを今まで何してきたのか、これを証明してください。
  299. 木下信親

    ○木下説明員 お答えいたします。  先ほどから申し上げておりますように、適正に処理しておるところ。でございまして、ただ、私ども守秘義務というものがございまして、これは申し上げられないということで御勘弁願いたいと思います。
  300. 中川利三郎

    中川(利)委員 それでは、もう一つ、次の問題に移らしていただきますが、今も大変問題でありますけれども、さらに問題だと思うのは、金融機関の社会的責任でございます。福島交通に多額の融資を行った日本債券信用銀行、俗称日債銀と言いますね、この日債銀の関係についてお聞きをするのでありますが、日債銀がオイルパニックのときに、大変だということなので福島交通に役員を派遣して十分監督した。正式にはどういう役員をいつ派遣したか、この点をお聞きいたします。
  301. 千野忠男

    ○千野説明員 お答えいたします。  日本債券信用銀行が福島交通に派遣をしております役員の就任した年月目は昭和五十五年十二月二十五日と聞いております。その派遣者の氏名は村上晶俊という者でございます。
  302. 中川利三郎

    中川(利)委員 日債銀が福島交通に役員を派遣した目的は何ですか。
  303. 千野忠男

    ○千野説明員 その目的といたしましては、全般的な資金繰りの管理、事業の合理化の推進、それから担保不動産の売却の促進による債権の回収などを図るためであると開いております。
  304. 中川利三郎

    中川(利)委員 私の調査では、この派遣した人物、村上晶俊さんという人ですが、この方は、日債銀の本店の業務推進部長、香港支店の常務、人事部参事、そういう経歴を経まして、五十五年先ほど御答弁のあった日取りに福島交通に派遣され、現在、福島交通の専務取締役の任について、あわせて今問題になっている福島交通不動産の専務取締役も兼務しております。  そこで、大蔵省にお聞きいたしますが、福島交通不動産の村上氏の役職からいえば、少なくとも、自分が就任した五十五年十二月ですから、五十六年以降の福島交通不動産の使途不明金の内容について十分これを知り得る立場にあったということは当然でありますが、この点についてどういう御見解をお持ちになっていますか。
  305. 千野忠男

    ○千野説明員 使途不明金の問題につきましては、私どもは銀行法によって監督しております日本債券信用銀行に聞いておりますが、同銀行といたしましては、これについては了知していないと聞いております。
  306. 中川利三郎

    中川(利)委員 私がお聞きしたことは、日本債券信用銀行が関知しておるか関知してないかということじゃなく、日債銀の派遣した福島交通並びに同不動産の専務取締役の村上さんは、職責上当然このような使途不明金の内容について十分おわかりになっていらっしゃる、そういう立場にあると思うがどうかということをお聞きしたのでございますので、質問に答えてください。
  307. 千野忠男

    ○千野説明員 私どもは、その銀行を監督しておりますが、その銀行の取引先となりますと、その内容について具体的に申し上げることはできませんし、今まで銀行に対して聞いておる範囲では、そのようなことは銀行としては了知していないということでございます。  ただいま先生の言われました、役員がそれを知っている立場にいたかどうか、その辺につきましては、私どもはお答えをする立場にないと考えます。
  308. 中川利三郎

    中川(利)委員 これは大変な言い逃れですね。自分の方から大枚の金、何百億というものを債務保証したり直接貸しているわけですね。それは大変だ、何とか回収をうまくやらなければいけないということで、債権確保も含めて、合理化も含めて役員を派遣しているわけですね。にもかかわらず、そういう問題については日債銀は全くそこの中身までは立ち至ってわからない、こういうことを聞いているということを私に今御答弁になったわけでありますが、これは大きい問題だと思います。やはりこうなりますと、日債銀そのものの責任の問題になることはこれは当然でありまして、でなければ派遣した意味がなくなるわけでありますから。  そこで、この問題は後に譲るとして、この日債銀は、今申し上げましたように、福島交通に対する融資の目的が、白河地区開発計画を手伝うということも一つありましたね。ところが、この計画が四十八年のオイルショックで当初の買収計画を断念せざるを得なくなった、その後、不良貸し付けを行わざるを得なくなった。この経緯につきましては、我が党の正森議員がもう既に警告を発しているのですよ、五十七年の四月七日、大蔵委員会で。ところが、その後、日債銀の融資は五十七年度の時点で回収困難、これは警告されていたにもかかわらず、その後もずっと融資を続けているということは皆さん御承知のとおりですね。これは明らかに融資した側の日債銀の背任罪の可能性もあると私は思います。この点について改めて法務省見解をお伺いしたいと思います。
  309. 筧榮一

    筧政府委員 日債銀につきましても、その具体的な融資した際の事実関係は承知しておりませんので、特別背任になるとかならぬとかという断定的なお答えはいたしかねると思います。先ほども申し上げましたように、特別背任の要件、図利加害の目的、任務違背行為、損害の発生というものが認められました場合には、特別背任罪の成立することのあることは申すまでもないところでございます。
  310. 中川利三郎

    中川(利)委員 そうするとこれは、あなたは今承知しておらない、法務省ですからね。そうしますと、すぐ調査する、こういうことをお約束できますか。
  311. 筧榮一

    筧政府委員 検察庁におきましては、犯罪の嫌疑が認められます場合には当然捜査をすることになるわけでございますが、現在のところ、今まで国会あるいは報道等でいろいろ、この件に限らず福島交通をめぐる問題について御論議のあるところでございます。そういう点につきまして、検察当局におきましても関心を持って見ておるところでございまして、資料の収集、情報の収集等をやっておるところでございます。この後、事態の推移に応じまして必要な措置をとり厳正に対処するものと考えております。
  312. 中川利三郎

    中川(利)委員 最後に、委員長にお願い申し上げたいのであります。  この前、国有林の交換問題で、福島交通社長の小針暦二氏の参考人喚問ですか、こういう問題が出されておるわけでありまして、私は、この国有林問題もさることながら、百億円にも上る使途不明金の内容、しかもそれが政界にも流れている、当然これは究明する必要があると思うわけであります。そういう点で、改めて小針暦二氏の証人喚問、同時に、今申し上げました日債銀、つまり融資した側のこの日債銀について、金融機関の社会的責任の問題、そういう状況に発展しているわけでありまして、まさに放置できないわけでありますが、この不良貸し付けを知り得る立場にいた当時の副頭取、今の頭取である頴川史郎氏、このお二人の証人喚問を私は要求したいのでありますが、委員長においてよろしくお取り計らいをいただきたいと思います。
  313. 横山利秋

    横山委員長 御要望の線につきましては、理事会で後刻協議をいたします。
  314. 中川利三郎

    中川(利)委員 終わります。
  315. 横山利秋

    横山委員長 次回は、来る二十五口水曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十五分散会