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1984-07-31 第101回国会 衆議院 環境委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月三十一日(火曜日)     午前十時二十一分開議 出席委員   委員長 竹内 黎一君    理事 戸塚 進也君 理事 畑 英次郎君    理事 福島 譲二君 理事 岩垂寿喜男君    理事 中村  茂君 理事 春田 重昭君    理事 中井  洽君       榎本 和平君    金子原二郎君       金子 みつ君    上坂  昇君       藤田 高敏君    村山 喜一君       草川 昭三君    斉藤  節君       近藤  豊君    藤田 スミ君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       加藤 陸美君         環境庁長官官房          審議官     大塩 敏樹君         環境庁企画調整          局長      正田 泰央君         環境庁企画調整         局環境保健部長 長谷川慧重君         環境庁自然保護         局長      山崎  圭君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君  委員外出席者         国土庁長官官房         参事官     塚本  弘君         国土庁計画・調         整局計画官   山田 尚人君         大蔵大臣官房企         画官      寺本  泉君         大蔵省主計局主         計官      吉本 修二君         大蔵省主計局主         計官      涌井 洋治君         大蔵省理財局地         方資金課長   高橋 厚男君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課長   小林 康彦君         林野庁指導部治         山課長     船渡 清人君         林野庁業務部業         務第二課長   鳥居 秀一君         運輸省港湾局管         理課長     小池 公隆君         運輸省港湾局計         画課長     上村 正明君         建設省都市局都         市計画課長   鈴木 政徳君         建設省住宅局建         築指導課長   立石  眞君         自治省財政局調         整室長     横田 光雄君         環境委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 七月二十七日  辞任         補欠選任   竹内 勝彦君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     竹内 勝彦君 同月三十一日  辞任         補欠選任   上坂  昇君     藤田 高敏君   山本 政弘君     村山 喜一君   竹内 勝彦君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     上坂  昇君   村山 喜一君     山本 政弘君   草川 昭三君     竹内 勝彦君     ————————————— 七月二十日  新宿御苑内子供プール再開に関する請願金子  みつ紹介)(第八四一二号) 同月二十六日  志布志湾の自然環境保全に関する請願村山喜  一君紹介)(第八九三八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害防止並びに自然環境保護及び整備に関  する件      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  公害防止並びに自然環境保護及び整備に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田高敏君。
  3. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、きょうは、正規の委員ではございませんが、こういう形で発言の機会を許していただきました。  同僚議員はもとより、特に瀬戸内海環境保全にかかわる関係各省庁にとっては、きょう私が質問することにつきましては先刻御承知かと思いますが、主としてきょうは、俗に言う愛媛今治織田が浜環境保全の問題について質問いたしたいと思います。  その前段として、私は、今日、瀬戸内海環境保全法制定をされましてからかれこれ十カ年余りになると思いますけれども、今日のような埋め立て状態が続きますと、瀬戸内海は、特に愛媛県側になるかもわかりませんが、海岸から海を見るということができないようなテンポで埋め立てが行われているのじゃないか。愛媛県だけを言いますと、東は川之江三島新居浜西条東予市、そして今日問題になっております今治市、この一円は瀬戸内海環境保全法に基づきましても、特に指定をされて、その保全措置については厳しく規制をされておる地域でありますが、この地域埋め立てというものが毎年平均して九十ヘクタールから百ヘクタールに近い規模埋め立てがなされてきておるのではないか、こういうふうに、私、一人の地元議員として見ておるわけであります。  それぞれの埋め立てについては、当然のこととして厳正な審査検討の結果埋め立てがなされてきたと思いますけれども、私は、今申し上げたような観点からこの瀬戸内海環境保全法ができた、その目的趣旨等々から考えて、この埋め立てにはいささか問題が総体的に見てあり得るのではないかと思うのですが、まずそのあたり見解についてお聞かせをいただきたいと思います。
  4. 佐竹五六

    佐竹政府委員 瀬戸内海埋め立てにつきましては、今私から御説明申し上げるまでもなく、瀬戸内海環境保全特別措置法十三条に基づきまして、公有水面埋立法免許または承認をする場合には瀬戸内海特殊性につき十分配慮しなければならない、かように規定されておるところでございます。この規定を受けまして、瀬戸内海環境保全臨時措置法施行後五十八年十一月までの間に二千百三十九件、総面積四千八百四十三ヘクタールの埋め立て免許または承認がなされているわけでございます。  これを同法施行前の昭和四十六年一月一日から四十八年十一月一日までの実績と比べますと、年平均で見まして、件数で約六〇%、面積で二二%となっているわけでございまして、埋め立ては大幅に減少しているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、同法十三条の規定趣旨は、法の運用上、生かされているものではないか、かように考えている次第でございます。
  5. 藤田高敏

    藤田(高)委員 もう一度、今の十年前、環境保全法制定以来どれだけできたかという数字をもうちょっとゆっくり言ってみてください。
  6. 佐竹五六

    佐竹政府委員 法律施行後、五十八年十一月までの間に件数で二千百三十九件、それから面積で四千八百四十三ヘクタールの埋め立て免許または承認がなされております。これを同法施行前の四十六年一月一日から四十八年十一月一日まで……(藤田(高)委員「今のは五十八年でしょう」と呼ぶ)法律が施行されてから五十八年十一月までと、それから環境庁が設置されました四十六年の一月一日から法律施行直前までの二年間と比べますと、年平均で比較しておりますが、件数で約六割、面積で二二%、約二割となっておりまして、埋め立ては大幅に減少しているわけでございます。
  7. 藤田高敏

    藤田(高)委員 今局長からの答弁を聞きましても、その埋め立て規模は四千八百ヘクタールにも及んでおるわけですね。これは、今野球シーズンでありますが、甲子園の広さと比較すると、かれこれ、どうですかな、五千倍ぐらいになるのですか、これは大変なもので、なるほど今法制定以前の埋め立て規模から比較すればうんと減少したというのですが、極端に言うと、もう埋め立てるところがなくなってくるほど埋め立てが進んでおるというふうにさえ見られるわけでございまして、私は、やはり本来の法律趣旨から言うと、もうこあたりで一遍埋め立てそのものについてはいま少しく厳しく規制をするということが必要ではないか。法制定後十年にして、ここで一遍瀬戸内海埋め立てそのものについて総点検、総反省をする時点に差しかかっているのじゃないか、こう思うわけでありますが、そのことについての感想、考え方をひとつ伺いたい。  いま一つは、埋め立て用地利用目的ですね、これについて、ほとんどが工場立地企業誘致用埋め立て利用されて、本来、我が国が文化立国だとか教育立国だというようなことをお互いに強調しながらも、現実的にはこの埋立用地一つ見ましても、そこには文化施設らしきもの、立派な教育施設らしきもの、あるいはスポーツセンター的なもの、レクリエーションの施設、あるいは全国的にも瀬戸内海にふさわしい漁業の博覧会ぐらいできるような施設、そういうものは一切見当たらないのですね。もう十中八九と言っていいぐらいほとんどが工場用地利用されておる。こういう埋立用地利用あり方についてこれでいいのかどうかという検討環境庁中心に、特に実質的な許認可権を持つ運輸省あたりにおいてなされてきたことがあるのかどうか、そのあたりひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  8. 佐竹五六

    佐竹政府委員 年平均としてはともかく、絶対面積として埋立面積は非常に多いのではないか、それからまた法施行後十年たった現在、この埋め立て基本方針についても見直すべきではないか、かような点が御質問の第一点であったかと思うわけでございますが、確かに法律施行後十年たちまして、現在私どもとしては瀬戸内海水質保全のための施策一つの柱である燐の削減指導の総点検というようなことを検討しておるわけでございます。これが五十九年度で目標年度が一応来るものでありますから、その次期対策について検討を進めております。  それからまたもう一つの柱である総量規制についても五十九年度で目標年度が来るわけでございまして、これに対して次期施策検討しているわけでございますが、これらのこととの関連で、過去の埋め立てがどのような機能を果たしてきたかということも、当然のことながら検討しているわけでございます。そのような意味で、先生の御趣旨には私どもなりに行政実務の上でこたえているつもりでございます。  これらの燐の削減指導あるいは総量規制次期対策との関連で、埋め立てについてもさらに従来の方針に何らかの形で是正すべきものがあれば、これは当然のことながら審議会等にお諮りして検討を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから第二点の埋立地利用目的についてでございますが、確かに直接的な目的といたしましては埋立地の用途といたしまして工場用地等利用が多いことは事実でございます。先ほどお話のございました各地区につきましても、愛媛県内川之江伊予三島新居浜西条東予等につきましても企業立地として利用される面積があるわけでございますが、ただこれは、直接の利用目的といたしましては企業立地であるにしても、実質的な目的といたしましては廃棄物処分用地として埋立地利用する。それぞれ内湾等に堆積いたしましたヘドロをしゅんせつしなければならないが、これの処分用地として陸上にそれを処分すべき土地が見つからないためにやむを得ず埋立地利用するという形態もかなりあるわけでございまして、川之江東予等につきましてはいずれもこのふうな目的も持って埋め立てが行われておるわけでございます。  ただ、公有水面埋立法上はこのように廃棄物埋め立てのための埋立免許というものは法律の解釈の問題として与えられない、積極的な利用目的がなくてはいかぬ、こういうようなところから、表面には出ておりませんけれども、実質的には今のような目的も持って埋め立てが行われているという点もひとつ御考慮いただきたいというふうに考えているわけでございます。  それからなお、公園緑地あるいは都市開発用地等として埋立地利用されている例も、これまた例えば北九州港、苅田港、水島港等の埋立地につきましては、いずれも緑地あるいは種苗生産用地公園緑地等としての埋立地利用も行われているわけでございまして、すべてが企業用地というわけではございませんこともあわせて申し上げておきたいと思います。
  9. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、企業用地がすべて悪だとか、そういう考え方は持っておりません。地域地場産業を振興させ、あるいは地域経済活性化に役立つような用地づくりがどうしても必要だという場合には、厳正な規制の上にそういう用地も必要でしょう。しかし、今局長の方から二、三例外的なことを説明されましたけれども、私の見る限り、愛媛県側の川之江から今治市にわたる今御説明のありました約四千ヘクタールの地域で、目につくような教育施設なり文化施設あるいは緑地地帯なり海岸線公園をつくったというようなところがあれば教えてもらいたいのですが、これはもうほとんど皆無に近いのではないか。あるとしても海岸線の一部に、新しく埋め立て海岸線の局部的なところに釣り場をつくった程度ではないか、こう思いますので、瀬戸内海なら瀬戸内海埋め立てしてそこにいかなる利用目的のもとに土地をつくるかということになれば、工場用地方能主義と言っていいような埋め立てあり方もうこあたりで一遍再検討すべきじゃないか。  これはごらんにもなられたと思いますが、川之江から今治海岸線で直接海が見えるところはなくなってきたですね。そういう点については、私は、CODの関係がどうだ、やれ総量規制観点から規制の範囲内にあるからいいんじゃないかということではなくて、埋め立てそのものについて今日一遍総反省の時期が来ているのではないか、こういうふうに思うのですが、この点は、環境庁長官、どうでしょうか。
  10. 上田稔

    上田国務大臣 お答えを申し上げます。  先生の今の御指摘今治川之江三島の周辺でございますが、これは瀬戸内海のうちにおきましても特に埋め立てについて留意をすべき地域ということを指定しておりますので、この地域につきます埋め立てにつきましては、非常に留意をしてやらしておるのでございます。  先生御案内のとおり、川之江三島、あの辺におきましては、製紙工場から出ましたヘドロが海底に沈みまして非常に海を荒らしておりますので、それを除去するために埋め立てを大きくやらしていただいた、こういうことでございまして、これにつきましては許可をさせていただいたということでございます。私どもは、極力埋め立てについては制限をしてやらしていただいておるところでございます。
  11. 藤田高敏

    藤田(高)委員 全体的な面からいきますと、埋め立て規模というものが、法律施行以来これはもう予想外法律があってもないような状態埋め立てが行われておることについては、先ほどから指摘いたしておりますように、一遍ここで総見直しをやってもらいたいということを強く申し上げておきたいと思うのです。  それと、今まで埋め立てをやってきたところで、川之江三島あたりは、利用目的の良否は別にして、その目的はほとんど達成できておりますが、新居浜市とか西条市あるいは東予市ですね、こういった地域埋め立てが、工場用地としてつくられたけれどもその後のオイルショック、特にこの素材産業部門にかかわる不況のためにその利用目的が生かされてない。ペンペン草が生えて、工場用地としてつくったものがその機能を発揮してないばかりか、自治体がこのために起こした起債の元利償還なり利子償還で、今や自治体一般財源にまでその償還金が食い込んでくる。まさに今日国家財政の百十兆円からの国債の利子が八兆円からさらに十兆円に及ぼうとしておるような形で、このことが、地域経済の発展のためにということでつくった土地が、それどころか逆に自治体財政を圧迫して地方自治の福祉の面にまで財政的に影響が及んできておる。  こういう実態に対して、埋め立てを実質的に許可しあるいはこれの監督、指導に当たってきた中央官庁として、今日どういう反省と、その後始末についてどういう行政上の責任をとってきたか、あるいはどういう指導をやってきたか、このあたりをひとつ聞かしてもらいたいと思います。その後始末は、今指摘したようなことになれば、それはそのそれぞれの自治体責任においておやりなさいということで、中央官庁なりこの埋め立て許可したあるいは認可した政府関係各省についてはあたかも責任がないような態度に終始しておるのではないか、こう思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
  12. 佐竹五六

    佐竹政府委員 私ども愛媛県を通じまして把握したところによりますと、御指摘川之江市の場合には、埋立面積に対して実際に企業が立地した割合が四二・一%、伊予三島市が六五・五%、新居浜市につきましては八八・五%、西条市については二七・二%ということでございまして、平均的に見て愛媛県内における埋立地企業立地、これは十ヘクタール以上のものに限定されておりますが、五五・七%ということで、御指摘のように必ずしも高いとは言えないわけでございます。  この点につきましては、これらの埋め立てが行われました時期が五十年代前半でございまして、その前提となった計画が四十年代における高度経済成長下での用地需要を見込んだというようなこともあってかような結果になっているかとも思われるわけでございますが、このような点につきましては、私どもも本来瀬戸内海埋め立ては、冒頭申し上げましたように瀬戸内海の性格に十分配慮してなされるべきである、非常な貴重な海を埋め立てているわけでございますから、今後は各主務官庁におかれまして、特に利用目的確実性等については慎重に御審査をいただくように各省にもお願いをしているところでございます。
  13. 藤田高敏

    藤田(高)委員 きょうはその点について余り細かいところまでは指摘しようと思いませんが、東予市が今落ちているのですね。東予市ももっと低いですから、それを入れますと約五〇%ぐらいになるんじゃないか、直接利用されておるのは。それは数字はそんなに厳格に突き合わす必要はないと思いますが、アバウトで結構です。いずれにしても、埋め立て埋め立てとしてやったけれども、実際に利用されているのは半分だということなんです。残った半分は、財政的には自治体がその後始末について四苦八苦しておるのが現状なんです。  私が冒頭に埋立規制をもっと厳格にやるべきじゃないかということは、いろいろ経済的な見通しについては、神様じゃないですから一から十まで的確に当てることはできないにしても、結果論からいけば、この十年間埋め立ててきた四千ヘクタールだったら四千ヘクタールのうち、二千ヘクタールあったらいわゆる利用目的なり埋立申請をやってきた目的を果たすことができるのであって、あとの半分は要らない土地埋め立てておるというふうに見ても差し支えない。そうでしょう、今の断面で言えば。これから地元にとっては、もう毎日毎日、土地をとこか買ってくれないかといって土地ブローカーのごとくみんな努力をしておるわけですよ。  そういうことは、せっかく瀬戸内海環境保全法というものができて、埋め立てについては厳しくおやりなさいよ、やりましょうよということで出発したにもかかわらず、どんどん埋め立てをやって、その埋立地申請どおりには利用されてない。もう全く遊んでいる。遊んでおるところへ利子がつくという格好で財政的に困っておるという今日の現状を見るときに、これは環境庁責任というよりもむしろ原局責任といいますか、私はそういう意味では運輸省建設省があるいは自治省にしても、財政当局も含めてこういう埋め立て許可したところに一半の責任があるんじゃないか。今日こういう事態になっておることについての特に財政的な後始末について、政府機関としてはもっと積極的に努力をすべきじゃないかと思うのですが、長官どうでしょうか。
  14. 上田稔

    上田国務大臣 先生指摘のとおり、この埋立地許可免許につきましては環境庁の所管ではないのでございますが、五十ヘクタール以上の埋め立てにつきましては環境庁の方にアセスが参るわけでございます。その点におきまして、五十ヘクタール以上のものについて私ども審議をさせていただいておるのでございますが、それ以下につきましては私どもの方へそういうことは参らないのが今の状態でございます。しかし、そのほかに、特にそれ以下であっても非常に重要な、水質あるいは流れに影響があるというようなところについては環境庁の方に参るものもございます。そういう点でやらしていただいておるところでございます。
  15. 藤田高敏

    藤田(高)委員 運輸省からも来ておると思うのですが、きょうは課長さんお見えですけれども局長クラスの方に御出席を願うように要請をしておきましたが、見えてないのですが、前段私が質問した点に対する、特に実質的な埋め立てについての許認可権を持つ運輸省見解はどうですか。
  16. 小池公隆

    小池説明員 お答えいたします。  私ども公有水面埋立法に基づきまして都道府県知事が行います許可免許に対して認可しているわけでございますが、確かに先生おっしゃるとおりのような事態が生じているのは事実でございます。私どもその法律に照らしまして十分慎重に審査しているつもりでありますが、経済情勢の変動その他先生指摘のようなことが生じている。今後さらにこういう事態を踏まえまして慎重な審査あるいは指導、こういったことに努力してまいりたいと考えております。
  17. 藤田高敏

    藤田(高)委員 きょうの質問は、こういう総論的なもの以外に織田が浜の問題がありますので、そちらに移りたいと思います。  ここで特に要請をしておきたいのは、今度の今治市の織田が浜申請でもそうですけれども埋め立てにかかわる、あるいは港湾計画についての申請をしてくるときには、運輸省中心に大変積極的に地元のそういう要望を受け入れられてくる。しかし、先ほどから指摘しておるように、実際、こういうふうに土地埋め立てをしてつくってはみたものの、直接利用されておるものはわずか半数足らずだ、あと財政的にむしろ始末に困っておるということについては、許可を与えた政府関係各省がそういう後始末については行政上も政治的にも具体的な責任は一切とらないのですね。私は、そういう点では、これは結果論的ですけれども、非常に無責任だと思いますよ。物事というのは、常識的にはまあまあ八割方達成しなければ。それは、二割やそこらは——今回の場合、この埋め立て関係で言えば、残る土地があっても、八割方は計画どおり進行したというものでないと、入り口の審査のところで少し慎重さに欠けるものがあったのじゃないか、私はこの点を特に指摘をしておきたいと思う。  そういう前提に立って今治市の織田が浜の問題についてお尋ねをしたいわけでありますが、私は、結論的には、国の機関としては行政あり方として行政に筋を通した形で秩序ある行政をやってもらいたい。言葉をかえて言えば、法律違反になるような開発あるいは土地埋め立て瀬戸内海埋め立て、こういうものについてはやるべきでない。同じ今治市だったら今治市がこういう新しい第三次の港湾をつくりたい、将来の流通港湾としての拠点をつくりたいということであれば、法律に抵触しない場所でその目的が達成できるかどうかについて中央官庁も十分な検討をする、そうあるべきが当然でありますが、今回の場合はそのようなことになってないと思うわけであります。  これは端的にお尋ねいたしますが、今問題になっております今治市、俗称織田が浜と言っておりますが、この織田が浜は、都市計画法に基づく都市計画公園として昭和五十一年に県の指定を受けていると理解をしておりますが、間違いはありませんか。そして、そういう指定を受けておるとすれば、前段私が指摘をしたように、瀬戸内海環境保全法の第三条あるいは第十三条「埋立て等についての特別の配慮」という、そういう法律の条項に著しく抵触すると思うのですが、どうでしょうか。
  18. 鈴木政徳

    ○鈴木説明員 ただいま先生指摘計画公園につきましては、今治市の東村海岸公園といたしまして昭和五十一年九月に知事が都市計画決定しているものでございます。
  19. 上村正明

    ○上村説明員 七月三日に今治市の港湾管理者でございます今治市から運輸大臣あてに提出されました港湾計画のうち、富田地区の計画につきましては、一万トン級の岸壁が今治港にないために一万トンを超える木材船が喫水調整して入港したりしておりますし、また、さらに上回る貨物船につきましては、本港から十五キロほど離れた馬力潟というところで水面投下しました木材をいかだで曳航しまして陸送したりしております。また、同じく大型岸壁がないために、外国から輸入されます米穀類につきましては水島港とか坂出港などで一たん揚げまして、それを小型の内航船に積んで今治港まで運んでおるという二重輸送を余儀なくされておるところでございます。そういったものを解消するとともに、人口の欄密な今治市街地において住工混在によって騒音等環境上の問題が出ております。その問題点を解決しますと同時に、地場産業の振興を図るための企業の移転拡張用地を都市再開発用地として確保しようという計画でございます。  ただいま瀬戸内海環境保全特別措置法の十三条との関係について御指摘でございますけれども、この十三条の規定の運用に関します基本方針、これは審議会で決まっておるわけでございますが、この中には、埋め立てそのものが海水浴場等の利用に与える影響が軽微であるということにつきまして十分配慮するように求めているところでございます。  私どもが調べたところによりますと、織田が浜は、昭和五十七年以前は海水浴場としての利用度が低いわけでございます。また、今治市の市役所、教育委員会、警察あるいは海上保安部などが、従来から毎夏ごとに織田が浜の南側で水泳するのが望ましいという広報を繰り返しているところでありますし、また、この六月に愛媛県御当局が県内各地の海水浴場の水質調査されました際のデータによりますと、織田が浜におきましては、水質が北ほど悪くなっておる、前ほどよくなっておるという結果が出ております。今回今治市から提出されました港湾計画というものは、このような、どちらかと言えば海水浴場として望ましいとされる浜の南側は保全しまして北側を利用して港湾をつくろうという方針で策定しております。また、埋立地の南側につきましては緑地を配置いたしまして、またその護岸につきましては、水と親しむことができます階段式にするとか、あるいは沖合の方は魚釣りができる構造にするなど、残されます南側の海浜と十分調和がとれるように配慮されておるところでございます。  そういった観点から見ますと、私どもといたしましては、今回の港湾計画におきます富田地区の埋立地計画は、海水浴場等の利用に与える影響は軽微ではないだろうかと考えているところでございます。  また、同地区に計画されております都市再開発用地につきましては、今治市内にありまして住宅と混在しておりまして公害の発生源ともなっておりますタオル関連工業等の移転先として計画しておるわけでございまして、この用地は、公害防止のためにも必要となると考えているところでございます。  以上、私どもといたしましては、十三条との関係では、特にその運用の方針との関係では、これに十分配慮したものであると考えているところでございます。  また、先生先ほど都市計画公園との関係にも触れられましたので、これについての私ども考え方を述べさせていただきます。  富田地区の海岸部に計画されております都市公園は、浜の北側の部分につきましてはプールですとか児童遊園、駐車場、運動広場、ソフトボール場などといったように、必ずしも海浜にある必然性があるというようなものではない施設が配置される構想になっております。これは、人口が稠密な今治市の市内、内陸部にこれらの用地を求めることができないためにとられた措置だと考えております。一方、南側の方につきましては、同計画によりますとキャンプ場を設置しましたり海岸植栽を行うこととしておりまして、海に親しむことができるゾーンとなっております。今回の港湾計画は、このような公園計画考え方と適合するように北側を利用することにし、南側を保全するようにしております。また、区域の面でも都市計画公園の区域に入っておりませんので、この点からも同公園計画とは両立し得るものであると考えております。
  20. 藤田高敏

    藤田(高)委員 今運輸省の方から私の指摘事項についてああいう答弁がありましたが、環境庁環境保全の立場、いわゆる環境保全法の立場から見て環境庁見解はどうでしょうか。
  21. 佐竹五六

    佐竹政府委員 ただいま運輸省から御答弁があったわけでございますが、先生も御承知のように、本件につきましては現在九日の港湾審を目途に運輸省と調整中でございまして、したがって法律解釈の問題につきましてもさらに議論をいたしている最中でございます。したがいまして、まだ十分調整がついているわけではございませんが、環境庁といたしましては、ただいまの運輸省法律の読み方につきましては、瀬戸内法所管官庁としては必ずしも意見を同じゅうしているわけではございません。  と申しますのは、確かに運用方針の中では海水浴場等の利用に与える影響が軽微であるということは一つの配慮事項として示されておるわけでありますが、同時にその三項におきまして「次の海域については、次に示している留意事項に適合しない埋立てはできるだけさけるように配慮する」ということで特段の配慮が必要なわけでございまして、そのあたりの問題につきましてはさらに運輸省と議論を詰めたい、かように考えているわけでございます。
  22. 藤田高敏

    藤田(高)委員 瀬戸内海環境保全特別措置法十三条基本方針には、今答弁にもありましたが、この基本方針の中にはわざわざ本法の三条の条項を前段にうたいまして、   瀬戸内海がわが国のみならず、世界においても比類のない美しさを誇る景勝地として、また、国民にとって貴重な漁業資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであるという特殊性を有することにかんがみ、瀬戸内海環境保全に関する基本計画が策定されるまでの間、瀬戸内海における埋立ては、すでに悪化せる瀬戸内海の環境に影響を及ぼすものであるという認識に立ち、瀬戸内海の環境の一層の悪化を防止するため、瀬戸内海における公有水面埋立法第二条第一項の免許又は同法第四十二条第一項の承認にあたっては、左記事項を十分配慮する ということで、その一つが「自然環境保全上の見地」、その項目の中に「埋立て、埋立地の用途及び埋立工事による自然環境への影響の度合が軽微であること。」そして今答弁の中にもありましたが、「埋立てそのものの海水浴場等の利用に与える影響が軽微であること。」ここはいろいろ見方にもよりますし、今運輸省の方の見解では海水浴場に適してないというような御指摘でもありましたが、これは地元調査していただけば客観的にわかることでして、見方によれば一夏で十万、二十万の人がここを海水浴場として利用しているという強い地元の声もあります。(図面を示す)こういうふうに約一キロ余りありますが、そのうちのちょうど半分くらいは埋め立てでつぶすわけですね。そして今反対しておるというのは、この海岸線のこの間が海水浴場に利用されている。そのうちの約半分がつぶれるわけですから、物の半分がなくなるということは果たして軽微だと見ていいのか。そういう認識で物事を進めることが果たして世間の常識としても、世間の良識としても通ることであるのかどうか、私はこれは非常に問題があると思うわけであります。  そういう点で、十三条の第一項に基づく指摘要綱からいっても、あるいは先ほど環境庁局長が御答弁になりましたが、「次の海域については、次に示している留意事項に適合しない埋立てはできるだけさけるように配慮すること。」ということで、埋め立てについては二重に規制の条項が入っておる。しかも、わざわざこういう形で表になりまして、大阪湾の方は、播磨灘の方は、あるいは燧灘のうち愛媛県側はと、しかも愛媛県側は、東は川之江から西は越智郡の波方というふうにわざわざ指摘している地域の中に入っておるわけですね。その地域が国の法律都市計画法に基づく都市計画公園として指定されている。都市計画公園として指定されておるところへ今こちらの方で答弁されたようなことで、大したことないからここに港をつくるんだ、開発用地をつくるんだ、こういうことであれば、逆説的に言えば都市計画法都市計画公園として指定したこと自身おかしくなるじゃないですか。そうじゃないですか。先ほど課長が答弁したようなそんな場所だったら、なぜここを将来の都市公園になることを前提として都市計画公園として指定するのですか。そんなにごみだめみたいなところだったら公園指定をする必要はないじゃないですか。どうですか。
  23. 鈴木政徳

    ○鈴木説明員 もう一度繰り返しになろうかと思いますが……(藤田(高)委員「余り繰り返さなくていい。今言ったことだけ」と呼ぶ)東村海岸公園は、御指摘織田が浜につきまして延長一・一キロほど、幅にして六十メートルから七十メートルくらいの海岸都市計画公園として指定しているものでございます。今治市全体のレクリエーション需要に対応するために遊技施設であるとか運動施設、そういうものをつくって市民の需要にこたえようということで都市計画決定しているものでございまして、現状全く未整備状態でございます。この公園計画先ほど港湾計画は、この都市公園の予定地の地先に計画されているものでございまして、地域的に競合しているものではございません。  それから、現在運輸省から来月の港湾審議会計画部会に語るということで私ども事前にお話を伺っているところでございまして、都市公園を担当するという立場からどのように対応すべきかにつきましては、現在運輸省から詳しい事情を聞きながら、また地元地方公共団体の御意見を伺いながら建設省内部で検討しているところでございます。
  24. 藤田高敏

    藤田(高)委員 今答弁ありましたように、これからの行政手続としては、去る六月二十五日に地方港湾審議会の議を経て今運輸大臣に港湾計画についての申請をしておるところですから、八月九日予定の中央港湾審議会において十分これは検討してもらいたいと思うのですけれども、特にここで私は環境庁にお尋ねをしておきたいのです。  今、原局というか運輸省の方がああいう見解ですけれども先ほど局長の御答弁では目下八月九日に向けて法律上の解釈についても意見調整中だと言っておるのですが、この国会の答弁としては、少なくともその調整中の段階において環境庁としてはどういう立場で調整に当たっておるのか、見識のある見解を聞かしてもらいたいと思うのです。
  25. 佐竹五六

    佐竹政府委員 環境庁としては、当然のことながら瀬戸内法十三条第一項の趣旨に基づきまして、運輸省の方もこれを尊重することには御異論はないと思うわけでございます。  具体的な問題はそのやり方でございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、基本方針の三項で「次に示している留意事項に適合しない埋立てはできるだけさけるように配慮すること。」という規定があるわけでございます。「できるだけさける」ということは、二項の「極力さけ、」よりは若干緩やかでございまして、ある程度行政官庁に裁量を与えていただいていると思うわけでございます。と申しますのは、結局、この今治の今度の埋立計画がやむを得ないという判断を示すだけの実質的な理由があるかどうかということになろうかと思われるわけでございまして、その点について今後運輸省と十分調整してまいりたい。  その場合に、先ほども御答弁申し上げましたように、既に東予あるいは川之江西条等につきまして、できるだけ避ける地域においても埋め立てをある程度認めた先例もあるわけでございます。行政の一貫性という観点からすれば、そのあたり一つの判断の基準になろうかと思うわけでございます。この場合、決定的に違いますのは、先生の御指摘にもございましたような、これが自然海浜であって、都市計画公園指定を受けているというようなところに非常に大きな違いがあるわけでございまして、このあたり中心運輸省と十分詰めてまいりたいと考えているわけでございます。いずれにいたしましても、先刻来先生から種々御指摘いただきました、瀬戸内海特殊性に配慮すべしという瀬戸内法の精神が本件についても十分生かされるように努力してまいりたい、かような所存でおるわけでございます。
  26. 藤田高敏

    藤田(高)委員 重ねてお尋ねしますが、都市計画法に基づいて都市計画公園として既に指定をされておる、この都市計画公園は当然のことながら近い将来に都市公園法に基づく都市公園になる、よほどのことがない限り都市公園になる、こういうことでこの計画法による計画公園として指定されておると思うわけです。そういう公園として指定されておるところへこういう一面無理だと思われるような、適切でないと思われるような埋め立てをやることについては、これは極めて簡単に返事ができるのじゃないでしょうか。しかも海岸線指定されておる地域の半分までが新たな埋め立てとして、そこの海水浴場に使われておるようなところがいわばなくなってしまうということについては、これは法律上問題があるということは言えるのじゃないでしょうか。どうでしょうか。
  27. 佐竹五六

    佐竹政府委員 現在、本件につきましては裁判係争中でございます。したがいまして、裁判係争中の争点につきまして、もちろん裁判所等から見解を求められれば別でございますが、具体的にここで御答弁申し上げるのはお許しいただきたいと思うのでございますけれども、都市公園として指定を受けた理由が、本地域が非常に貴重な自然海浜である、確かに愛媛県の環境白書等を見ましても、干潟を伴わない代表的な砂浜海岸の事例といたしまして織田が浜がまず第一に挙げられているわけでございまして、愛媛県内においても貴重な自然海浜であろうと思うわけでございます。  瀬戸内法全体を通じまして、自然海浜は保護すべきである、海水浴場としての利用があるかどうかというのはもちろん一つの重要な判断要素でございますけれども、自然海浜はあくまで守るべきであるという強い思想が瀬戸内法全体に貫かれているわけでございまして、私ども、このような強い瀬戸内法の要請と、それからもう一方、先ほど運輸省から御答弁のあったような事業の必要性、これにつきましては運輸省で非常に慎重にいろいろ御検討いただいていることと思うわけでございます。その辺の調和をどう図るかということが課題ではないかというふうに考えておるわけでございますが、環境庁としては環境庁の立場から、瀬戸内法の精神をなるべく生かすように折衝に当たってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  28. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは後で長官から重ねてその見解をただしておきたいのですが、今局長から答弁ありましたように、この地域は自然海浜として保護すべき地域だという基本的な認識については、環境庁としては当然のことながらこれを厳格に守っていくという立場で今後の調整に当たる、こういうふうに受け取っていいですか。長官の御認識をさらに……。
  29. 上田稔

    上田国務大臣 ただいまそういう考え方でいろいろ折衝をしておるところでございます。
  30. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これから中央段階においては中央港湾審議会が行われますが、ここでは十分、今局長長官が答弁されました立場で、原局といいますか運輸省との間においても意見調整を図ってもらいたい、これを強く要請しておきます。  時間の関係もありますので先へ進みますが、私は冒頭にも断りましたように、ここに、今治の近郊にこの種の施設をつくってはいかぬなんということを言っておるものじゃないのです。こういうような公園指定を受けている地域に対してこういう開発をやることについては問題があるんじゃないか。そういう立場からいいますと、私は、昨年、この問題が少し問題になりかけたときに、運輸省に対しても、浜にべたづけで埋め立てをやるのじゃなくて、これを少し向こう、沖合に出す、いわば計画変更ですね、一部計画変更をやってはどうだろうかというようなことを、全く非公式であったけれども相談をした。しかし、その後返事がありません。  私は、これまた素人ですけれども、ゆうべもなにしたのですが、先刻御承知でしょうけれども、こういうふうに赤のところで、ここへべたづけにやるのですね。(図面を示す)これを二百五十メートルぐらいこちらへ、沖合に出しますと、なるほど深さの関係ではこのあたりは二・五メートルぐらい、このあたりでは三、四メートル、一番深いところで五メートルぐらい埋め立ての深さが大きくなると思いますけれども、こういうふうに突出させれば、そしてここへいわば簡単なトラックが走る程度の橋をかければ海水は自由にここをなにする。そうすると、ここの季節風というか、風は大体こちらの方から強く吹いてくるわけですから、ここが子供やお年寄りなんかの海水浴場にむしろ適するぐらいになるんじゃないか。十分ここが利用できる。どうしてもここ以外に場所がないという場合は、これを突出させて、そしてここへ簡単な橋をかけて海水がここを流れるようにして、ここの海岸は保全するというようなことも一策として考える余地はあるんじゃないか。そして、ここの港の関係開発用地がありますが、この開発用地を外すわけにはいかぬでしょうけれども、どうしてもここの環境保全上問題があるとすれば、そういった面についても一部変更する余地があるんじゃないか。  私は、基本的にはここにこの第三港湾をつくる以外に場所はないんだ、極端に言えばないんだという場合には、これを突出さしてこの海岸を保全するようなことについても検討の余地があるんじゃないか、こう思うのですが、このあたりについてもぜひ中央港湾審議会では、この国会審議の中でそういう強い要請なり意見があったということを運輸省としてもこの審議会の中に反映をさせてもらいたいと思いますが、その点の御努力が願えるかどうか、念のためにお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 上村正明

    ○上村説明員 先生の御意見は二つの部分に分かれると拝聴させていただきました。  まず最初は、富田地区の織田が浜の北側という位置を変えることができないかどうかということだったと思います。  検討に当たっては、港湾区域内の中でいろいろの候補地を挙げまして比較検討いたしたのでございますが、今の位置が来島海峡、潮流が物すごく速いわけですけれども、ここから最も遠くて潮流の影響を受けにくいこと、それからここは一般的に水深が非常に深いところなんですが、この地域はそれほど深くなく、かつ海底が平たんで港湾施設や埠頭用地港湾関連用地、都市再開発用地の単価が高くならないこと、それから埋立地そのものが港内の静穏度の向上に貢献しまして防波堤に対する投資が少なくて済むこと、大型船の入出港や離着岸の際の操船が容易であることといった面で非常にすぐれておりまして、また、環境の面でも残されておる浜の南側との調和が図られるということになっておりますので、この地域港湾計画するという今治市の考え方は適切であると判断しております。  また、先生が後段でおっしゃいましたこの位置にするにしても沖側にずらしたらどうかということでございますが、これにつきましては、今治市役所と一緒になって検討したわけでございますけれども、海が深いということもありまして、外に出せば出すほど土地の値段が高くなってくる、近傍の類地より非常に高くなって事実上計画が推進できなくなるというような点からこのような計画になっておるわけでございます。  いずれにしましても、港湾審議会でこれらの点も含めましていろいろ検討されると思いますので、私どもとしましては港湾審議会の結論を尊重してやってまいりたいと思います。
  32. 藤田高敏

    藤田(高)委員 計画を進める側の意向としてはそういう積極的な意向も私は理解できないことはないけれども、言葉じりをとるわけじゃありませんが、水深が三メートルや五メートル違ったから計画が成り立たないなんというような答弁はやめた方がよろしいと思いますよ。最初から必要であれば、現在十メートルや十二メートル半ぐらいなところだからなにだけれども、十五メートルであっても十七メートルであってもつくるかもわかりませんよ。私が市長だったら、これはどうしても必要だということになれば、極端に言ったら二十メートルのところだってつくるかもわかりません。全国各地を見たら、そんな水深のところでやっておるところがたくさんあるじゃないですか。計画が成り立たないなんと言うことはやめたらよろしい。  ただ、問題は、沖合に出しますと単価が少し高くなることは当然でしょう。しかし、こういう地元住民からの、繰り返すようですけれども公園として指定されておるようなところをつぶしてまでやるのだからいま少しその地域を保全しながら両立できるようなことがないかどうかというような真摯な意見は、もっと謙虚に海運当局としても運輸当局としても検討すべきではないか。それは、一遍こういう案を出しましたら、ここに進出する企業はいや二割も単価が高くなるよりも安いところの方がいい、無理してでも当初の計画どおりやってくれということになるだろうと思うのですが、問題を裁判ざたにして結論を出したりするよりも、こちらの局長の話じゃないけれども、裁判係争中だから答弁できないなんということは私は言ってもらいたくない。  私の考え方からいけば、この種の問題をなぜお互いの良識によって裁判ざたにしないで解決することができないか、そこに政治というものがあると私は思うのです。何でもかんでも裁判所へ持っていって、この種の問題で裁判所の見解を聞かなければ物事は処理できないなんて、そんなあほな話はないですよ。それは皆さんのところで我々の意見も入れて努力する、そして解決に向けて努力すれば裁判所のお世話にならなくてもいいじゃないか、そういう方向でぜひ結論を出してもらいたいと私は思う。そうしないと、それこそ裁判裁判でいくのだということになれば、ロッキード裁判じゃないけれども、国会は政治道義上の問題で決議案を出す、片一方は裁判所が結論を出す、これは愚かなことです。裁判所が結論を出して、これは法律違反だという結論が出たらどうなりますか。行政に対する信頼の問題も出てくるじゃないですか。そんなことはやめて、今私が具体的な意見を出しておりますことを含めて、問題解決に向けて中央港湾審議会におきましても御努力願いたい。  時間が参りましたので私の結論を申しますが、いよいよ中央港湾審議会にかかりますけれども、ここでは環境庁環境保全法を守るという立場から意見を十分適正に反映させてもらうことを要請いたしておきます。そして、これからどういうことになるか知りませんが、その事情いかんによっては、港湾審議会の結論を得て運輸大臣が今治市長に通知する過程において計画変更の必要性の有無についても運輸大臣の権限においてできるわけですから、今私が指摘したようなことも含めて、できれば両立できるような御努力をお願いいたしたいと思います。  なお、これは運輸大臣、運輸省の側に要請すべきか環境庁の方に要請すべきかわかりませんが、埋め立て免許申請の段階になりましても運輸大臣が環境庁長官に協議を求められるような条項がありますけれども、そういう最終段階においても世のひんしゅくを買わないような十分な協議ができますように、これまた強く要請いたしておきたいと思います。答弁は後で一括してやってください。  もう一つは、瀬戸内海環境保全法第二十条の中に、こういうふうに法律違反にかかわるような問題があるときには、長官が知事に対して勧告または助言をすることができるという条項がありますが、今回の場合はそれほどまでに重要な、裁判ざたになっておるような問題ですから、そういう手だてをやる意向があるかどうか、これもお聞かせいただきたいと思います。  最後に、大蔵当局お見えでありますが、ここには昨年既に五千万円の調査費がついております。私の知るところでは、この五千万円は未執行でことしに繰り越されておると思うのですが、これだけ行革、財政問題がやかましく言われておるときに、原局が予算要求をやってきたから環境保全の方は余り比重を置かないで原局の言い分だけ聞いて、金額の多寡は別にして五千万円だったら五千万円の調査費をつける。こういう財政が厳しくてみんな本当にやかましく言っておるときですから、五千万円を出す限りにおいてはその五千万円がその年に使えるようなものを出さないと、翌年度に繰り越しされるような金まで大蔵省、財政当局が予算をつけるというあり方については、これまたいささか問題があるのじゃないかと私は思うわけです。財政の立場からも、この事業は本当に的確なものであるかどうかということをいま少し厳しくチェックする必要があると思うのですが、そのあたり見解もお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  33. 佐竹五六

    佐竹政府委員 第一点の港湾審、九日の港湾審に向けて、先生の種々御指摘をいただいた点を含めて、運輸省並びに関係各省とも十分詰めてまいりたいと思います。  第二点の公有水面埋立法の協議でございますが、本件につきましては面積が三十七ヘクタールということで、原則の五十ヘクタールを切るわけでございますけれども、特に環境保全上重要なものについては協議を要するというふうに一応法律の方もなっておりますし、従来もそういう運用をしてまいったわけでございますから、本件につきましても当然のことながら環境庁長官に対し意見を求めていただけるものというふうに考えておりますし、またそのように運輸省の方にお願いしてまいりたい、かように考えております。  それから第三番目に、知事に対し二十条の勧告権を使うかどうかということでございますが、瀬戸内の環境保全特別措置法の一次的な執行責任者は知事さんでございまして、それぞれ国の基本計画に基づきまして各県の計画を立てられておるわけでございまして、二十条を使うかどうかは別にいたしまして、いずれにいたしましても瀬戸内海環境保全特別措置法の一次的な執行責任者としての愛媛県知事の御意見は伺う所存でございまして、そのような手続、準備を進めておるわけでございます。  以上でございます。
  34. 上村正明

    ○上村説明員 五十八年度につきましては、今治港の港湾整備に直轄改修費としまして調査費で五千万つけたわけでございますが、私どもとしましては調査費の執行は港湾計画が固まった後にするということで従来からやってまいりました。昨年は港湾計画が固まらなかったために、それが明らかになりました二月にこの五千万の金は他の港に流用して有効に活用させていただいたところでございます。
  35. 涌井洋治

    ○涌井説明員 先生からの御指摘は、五十八年度こういう厳しい財政事情の中で五千万円認めたのは遺憾ではないかという御指摘でございます。  財政当局の立場といたしましては、昨年度の予算の実施計画の協議に際しまして運輸省からはこの事業の必要性等について説明を受けまして、財政当局の立場からいたしますとやはり基本的には相手省からの説明を受け入れざるを得ないわけですから、それが適当であったわけですので、実施計画承認したわけです。ところが、ただいま運輸省の方からお話がありましたように本年の二月になりまして港湾計画の策定が行えないというお話がございまして、こういう情勢の中でございますので、他にもっと緊要なところもありますので、そちらの方に予算を回すよう実施計画の変更をしたわけでございます。そういうこともありまして、五十九年度におきましては運輸省からは実施計画の協議がまだございません。
  36. 藤田高敏

    藤田(高)委員 少し時間を超過しましたが、ありがとうございました。
  37. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、村山喜一君。
  38. 村山喜一

    村山(喜)委員 質問に入りますが、先般の志布志の港湾埋め立ての問題につきまして質問を続けてまいりたいと思います。  ちょっと委員長にお願いしたいのは、資料を関係者に配布させていただきたいと思います。  初めに、環境庁にただしてまいりたいと思います。  「国立公園内における各種行為に関する審査指針」につきましては、工作物が次の五種類に分類をされております。第一は建築物、第二が車道、第三が分譲地等の造成を目的とした道路または上下水道施設、第四が屋外運動施設、第五がその他、こうなっております。  そこで、先般、志布志の国家石油備蓄基地の取りつけ道路は車道に該当するということでございましたが、ここで確認をしておきたいのは、橋梁、漁船だまり、備蓄会社の管理棟、石油タンクなどの工作物はそれぞれ何に該当するのか、説明を願いたい。
  39. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 今お挙げになりました橋梁でございますとか備蓄基地の上のいろいろなもの、こういうものは工作物に概念としては該当いたします。  ただ、審査指針との関係について申し上げますと、この審査指針というのは特別地域におけるもろもろの行為を審査指針として取り扱いを決めたものでございますので、今お挙げになりました部分の例えば備蓄基地につきましては普通地域に該当いたしますので、これは直接的には審査指針の取り扱いになるものではございません。
  40. 村山喜一

    村山(喜)委員 私が工作物の中で具体的にお尋ねしているのは、それは特定地域、普通地域と分かれておりますが、その中で、この前車道についてはお認めになったのですね、それは五つの種類の分類の第二に書いてあるわけですから。その他の橋梁、漁船だまり、管理棟、石油タンク、こういうものは一体その分類のどれに該当するのですか。
  41. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 橋梁なり漁船だまりなり、また管理棟と申しますのは、これは一般的には工作物でございますが、今申し上げましたのはいずれも、橋梁あるいは管理棟、基地にできますもの、こういうものは普通地域の中にありますので審査指針とのかかわりは生じない、こういうことになります。
  42. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、審査指針の対象の地域外に存在をするものについてはこの審査指針の適用によって審査をしない。ということは、そういうような巨大な人工島ができてタンクが林立をする、それはどういう角度から環境保全という立場で環境庁はアセスの問題は対処をしてきたのですか。
  43. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 前提をちょっとお話し申し上げなければいけないかと思うのでございますが、一つは、審査指針といいますのは国立公園法上の判断基準でございまして、これは国定公園にも準用されるべきものと考えておりますけれども、その公園の特別地域におきますいろいろな行為が予想されるわけでございまして、それを法律の十七条で許否の判断をいたしますが、また処分をいたしますが、その行為が公園の風致に重大な影響を及ぼすかどうかの判断ということになるわけであります。  それは具体的な行為の内容なり行為地なりあるいはその周辺の自然環境の特性なり、そういうものとの関連で総合的に判断されるものである、こう考えますけれども、ただ、そういう個別具体的な審査によるべきでありますが、都道府県によりまして審査の基準が余りまちまちになるということは大変困ったことでありますし、また行政の能率化という観点も考えなければならない。こういうようなことで、昭和四十九年でございましたが、特別地域における審査指針というものを定めまして、統一的な法律の運用、執行を図りたい、こういう趣旨で設けたものでございます。  そこで、普通地域についてはどうかということでございますが、これは届け出でもって足りる、こういう割り切りをしておるわけでございまして、これは法律上そうなっているわけでありますが、この届け出に対してどういう判断をするかという問題につきましては、この特別地域というような公園の核心部にどういう重大な影響を及ぼすか、こういう問題を中心に判断していく、こういうことになるわけであります。  そこで、今そういう前提で考えますと、普通地域におけるそういう審査指針というのは私ども持っていないわけでございます。それは個別行為の判断で、特別地域にどういう影響を及ぼすかということを考えていく、こういうことになるわけでございます。先生おっしゃいましたアセスというのは公園法の判断とはまたちょっと別の問題でございまして、公有水面埋立法の流れの中で、いわゆる運輸省サイドで行っております。その一環として、環境に関する記載した書面というものを必要条件として取る、こういうことでありまして、これがいわゆるアセス書と呼ばれるものでございます。そのアセスの観点からいえば、あの備蓄基地というものが志布志の国定公園にどういう影響があるかどうか、こういう問題を今意見を求められておる、伺っておる。そういう二つに大別されると思うのでございます。
  44. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、運輸省にお尋ねをしますが、分譲埋め立てというのがございますが、この定義は、港湾関係の通達、四十九年六月十四日によりますと、埋立事業者が埋立竣功後埋立地を売却するような埋め立てのことを「分譲を目的とする埋立」と名づけておりまして、分譲埋め立てというふうに略して言っておりますが、志布志の国家石油備蓄基地は、鹿児島県が埋め立てを行い、竣功後石油公団に売却をするわけですから、「分譲を目的とする埋立」に当たる。したがいまして、運輸サイドの用語、通念からいえば、志布志の埋立地は「分譲することを目的とした一連の土地」に当たるというふうに解釈をすべきだと考えますが、その点はいかがですか。
  45. 小池公隆

    小池説明員 お答えいたします。  先生おっしゃるとおりに、一部分譲ということになります。石油公団の方に一部分譲ということになります。
  46. 村山喜一

    村山(喜)委員 一部分譲という意味はどういう意味なんですか。というのは、石油タンクを四十三基並べる土地は県が石油公団に売却をして、石油の貯蔵は備蓄会社が当たる。公団は利用料を会社に支払うわけですから、これはどの一部になるのですか。全部じゃないのですか。大部分じゃないのですか。
  47. 小池公隆

    小池説明員 先生おっしゃいますように、石油公団が使う分については石油公団に分譲いたしますが、埋立地全部ではない、こういう趣旨でございます。
  48. 村山喜一

    村山(喜)委員 そうすると、これは分譲埋立地じゃないのですか。それを目的にして造成しておるのじゃないのですか。
  49. 小池公隆

    小池説明員 言葉が足りないかと思いますが、県が管理する分が残りますものですから、そういう意味で一部分譲と申し上げたわけでございまして、主たる分は分譲、こういうことでございます。
  50. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、石油タンク、これは土地に定着をする工作物で、屋根及び壁を持っておりますから、これは建築物に当たることは間違いございませんね。
  51. 小池公隆

    小池説明員 おっしゃるとおりかと思います。
  52. 村山喜一

    村山(喜)委員 そうすると、石油タンクは備蓄会社が建設をして石油公団がそれを利用する、したがって貸し付けをすることを目的とした建築物だ、こういうように解釈ができるわけです。したがいまして、これは審査指針の対象外だとさっき山崎局長おっしゃっているけれども、しかしどう考えてみましても、後ほどまた取りつけ道路の問題等は追及をしてまいりますが、その人工島ができまして、そこに五百万キロリットルの国家石油備蓄基地ができる。しかも、それは明らかに、今運輸省の方が認めているように、大部分は分譲埋立地である。石油タンクも、これは土地に定着をする工作物である、したがってそれは建築物であるということが確認をされているわけですが、さすればやはりこの一連の関連の中で、分譲地が普通地域にありましても、その分譲地等の造成をするための目的を持った道路を建設をするということは、当然、特定地域に道路を建設をするわけでございますから、審査指針の適用対象にならざるを得ないんじゃございませんか。
  53. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 こういうふうに私どもは理解し、また取り扱いをしておるのでございますが、その取りつけ道路について申し上げれば、これは特別地域を通りますので審査指針の対象になるわけです。ところが、備蓄基地は普通地域に一部がかります。一部が普通地域にかかりますが、これは特別地域を対象にしたものたる審査指針にはかからない、つまりそういう審査指針は決めていない、こういう意味でございます。そこで、取りつけ道路について審査指針にかかるのですが、それは工作物という中の車道、そういう分類にはまると私どもは解釈しておるわけです。  もう一つ紛らわしいのが、「分譲地等の造成を目的とした道路」というのが並行してあるわけですが、そこにかかるのではないかというのが先生のお尋ねなんでございます。  ところが、これはこの前も御質問を受けまして御答弁申し上げましたように、この分譲地というのは、私ども別荘分譲地を頭に置いていろいろ考えて、これを規定して審査指針の上で明らかにしたものでございます。別荘開発があちこちで行われまして、別荘開発というのは余り形状を変更しないでも、ただ別荘の中を通るような道路あるいは別荘に至るアクセス道路、こういうものだけで問題が生じてまいりますので、そこを抑えるためにいわば苦肉の策でこういう整理を行ったわけでございます。そういう全体を考えましても、一つはそういう別荘分譲というものに入らないという意味と、仮にこの形式上入るのではないかという御批判があるいはあるかもしれませんが、それについても、そもそもこれは普通地域に所在するものでございますので、その問題は適用がない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  54. 村山喜一

    村山(喜)委員 それはやはり明らかに、普通地域であろうが何であろうが、つくる目的の主たるものは石油国家備蓄基地の建設に当たる。しかも、それは分譲を目的としている。大部分が分譲を目的としているわけですから、単なる車道ではなくて分譲を目的とした道路の建設が行われるという形に真っすぐに物を見なければならないのじゃないでしょうか。私は、そういうような意味からいえば、当然関連する行為として特別地域に道路をつくるわけですから、向こう側に、普通地域であろうがそういうタンクをつくる、建築物をつくる、そういう立場から見た場合には、分譲を目的とする道路、こういうふうに見るのが正しいのじゃないか。  今局長がおっしゃるように、この通達を出されたころは特定地域の中にそういう別荘等が乱立をするのを想定をしてつくられたわけでございます。それを抑制をするために規制のそういう基準をつくられたことは私もよく知っております。しかしながら、そういうような国定公園の普通地域というのは特定地域保護するための最小限度の地域規制であるということもこの前も申し上げたとおりでございまして、そこに巨大な人工島をつくるというようなことは当時は想定をしていなかったわけですから、私は、やはりそういう意味においては厳密に国定公園のそういう自然環境を守るという立場から、審査指針の適用に当たって関連するものとして見るべきではなかろうかという見解を持っております。しかし、この点については、論争をしてもあなたの方は審査指針の適用は普通地域には及ばないと言われるだけにとどまるだろうと思いますので、私の立場からは、そういう関連をする意味において、明らかにこれは審査指針を適用して、そしてチェックすべきものではないかということを申し上げておきたいと思っております。  そこで、次は取りつけ道路の問題でございますが、今委員長のお手元にもお配りいたしました図面でございます。  港湾計画によりますると、九・二メートルの幅員で、その他道路の使用面積が〇・九ヘクタール、こういうことになりますが、どうも平地であれば、〇・九ヘクタールですから、九・二メートルで計算をいたしますと大体一千メートルの道路の延長になります。しかしながら、道路の延長は幾らかと聞いてみましたら、三百二十メートルだ、こういう話でございます。そうなると、道路の建設を予定する地域は相当勾配があるか、あるいは台地になっているか、台地であれば掘り切りをつくって道路をつくらなければならない、こういうことになっておるものだと思います。  そこで、これは運輸省でもあるいは林野庁でも結構でございますが、この前、予定を、車道であり、やがては港湾施設の中に編入すべき道路だ、こういう話でございましたので、一体ここの標高は幾らで、道路ののり面が、その九・二メートルの道路をつくるのに当たりまして最高幾らの長さ、幅を持っているところを通ることに相なりましょうか、その点をお答えをいただきたい。
  55. 小池公隆

    小池説明員 お答えいたします。  先生おっしゃいますように、道路の幅といいますのは最大のところで三十メートルちょっと超します。それから普通にいきますと九・二メートル、こういうことになります。  その高さにつきましては、ちょっとデータをただいま持ち合わせておりませんので、わかり次第御報告さしていただきたいと思います。
  56. 村山喜一

    村山(喜)委員 高さは九メートルぐらいございますね。そこには飛砂防備林、それから保健林、それに防風林、防風林の国有のそこには松林がずっと生えているわけですが、樹齢が何ぼになりますか。
  57. 船渡清人

    ○船渡説明員 お答えいたします。  私どもが聞いておりますあの地域の松の林齢は四十年前後というふうに伺っております。
  58. 村山喜一

    村山(喜)委員 それはちょっと調べ方が不十分じゃないですか。防風林地区は六十何年たっているはずです。前の方は、防砂林の町有林の方は樹齢が若いですが、これでも三十年を超えているはずだと思います。  いずれにしても、今小高い丘になっている、そこに松林がずっと生えているわけですね。それは防風林の役割を果たしているわけですが、それを、道路の標高がどれくらいになるかわかりませんが、三十二メートルの地表の幅、それを掘り下げて下の方は九・二メートルの道路になるのですから、相当な掘り切りの道路がそこにはできるということになりますると、道路をつくることによりまして、これは当然、港湾埋め立てにつきましては届けを、内容を出すことになっておりますから、公有水面埋立法規定によりまして「埋立区域及埋立ニ関スル工事ノ施行区域」、この中から一連の書類が出され、図面が出されているはずでございます。  道路を掘削することによりましてその土壌をどれだけ取り去ることになるのですか。この点は運輸省の方で審査をされたわけですから、運輸省の方でお答えをいただきたい。
  59. 小池公隆

    小池説明員 道路の関係につきましては一万五千立米、こういうことになっております。
  60. 村山喜一

    村山(喜)委員 その掘削をした土砂は何に使うのですか。
  61. 小池公隆

    小池説明員 埋め立てに使います。
  62. 村山喜一

    村山(喜)委員 そのほか、山土を購入するのが二十七万五千立米あるようでございます。それは車道を通りまして人工島の石油備蓄基地の方に使うんだ、こういうふうに考えられるわけですが、それは全部で二十九万立米というふうに承っておりますが、間違いございませんね。——それをトラックで運んでまいりますから約五万台ということに計算上なりますが、最盛期には一日に何台のトラックがその掘り切りをした道路を通ることになりましょうか。
  63. 小池公隆

    小池説明員 お答えします。  購入の土砂は、先ほどの掘削しますのが一万五千立米ありまして、これを含めまして二十九万立米ということになっております。高山町あるいは大崎町、そちらから持ってまいります砂は二十七万五千立米ということになっております。  それから、現在試算しておりますところによりますと、ピーク時に工事用車両としましては大型車で一日五百四台、そのような推計がなされております。
  64. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、私が危惧いたしますのは、五万台のトラックが今取りつけ道路というところを通って、桟橋を通りまして、二十何万立米の山土や掘削土砂を運んでいく。一日五百台を超えるトラックが通る。私の調査では六十何年の防風林が存在をしているところを、地表三十二メートルの幅にわたって掘削をして、風のトンネルをつくるわけです。山の表面にはまだ残りの松林がずっとあるわけですね。そういうところを一日五百台のトラックが通って、振動は起こるわ、排気ガスは出るわというような姿になってまいることを想定をしながら、保安林の問題をどうするかということを検討しなければならないのじゃなかろうか、私はそういうふうに考えるわけでございます。  この前、富士スバルラインの写真を見ておりましたら、道路を改築したところが、亜高山原生林が将棋倒しに枯れていく姿を見ました。一度切り開かれた原生林は次から次に枯れていく、これはやはり自然の摂理であろうと思うのです。そこで何十年も防風林の役割をしてきた松林が、高さ約九メートルくらい、表面の幅は一番広いところで三十二メートルくらい、それが切り倒されて、そして下の方に九・二メートルの道路ができる。これは風の通路になりますし、なお残っている立木がそういうような工事等に伴う作業車が通ることによりまして相当な損害が生まれるであろう。  ここはまた台風銀座と言われるところでございますから、前の方に飛砂防備林がある。後ろの方に、小高い丘になっているのですから、そこに防風林がずっと生えている。そこには松葉の利用を行います組合がございます。共同利用権を持っている松葉組合の組合員がその国有林の松葉を利用して、農業の資材として使っている。たばこの床敷きなどに使う原料でもございます。そういうところを掘削した。そして、掘削しただけではございません。山の上の方に立っている木は一本ずつ切り取っていくにしても、そこにはちゃんと残るわけですから、そういうようなところに対する影響。それから、風が強いところですから、砂を巻き返しながら後背地の農業用地、あるいは商店街が市街地を形成しておりますから、そういうところに風が舞い込んでくる。一日五百台のトラックが通る。こういうことを考えましたときに、保安林の解除の問題は慎重にやらなければならない問題じゃないかと考えるわけですが、林野庁は、それに対しては基本的にはどういうお考えでございましょうか。
  65. 船渡清人

    ○船渡説明員 お答えいたします。  その前に、先ほどの答弁で樹齢の問題、大変失礼いたしました。国有保安林の場合、五十九年生から百十四年生というような樹齢でございます。そういうことでございますので、訂正させていただきます。  ただいまの御質問の件でございますが、私ども、保安林の解除に当たりましてはいろいろな要件を考えておるわけでございますが、その一つといたしまして、保安効果を低下させないよう代替施設等の設置が確実であることとか、あるいは環境保全について十分配慮がなされていることといったような点につきましても保安林の解除要件に考えているわけでございまして、お話ございましたように、防風保安林と申しますものはまさしく風を防ぐということでございますので、道路を開設したことによって風道になり、それによっていろいろ弊害が起きるということのないような形で解除をするというのが基本的な考え方でございます。  以上でございます。
  66. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間の関係がございますけれども、解除を前提にお考えにならないで、どうしたら保安林を守れるかということを念頭に置きながら考えてもらわないといかぬ。私はそういうような意味で、林野庁は非常に慎重な態度をおとりになって、いろいろな角度からこの問題は検討されなければならないのじゃなかろうかとあなたの今の発言を聞きながら思っているのですが、慎重に対処するということは言えないですか。
  67. 船渡清人

    ○船渡説明員 お答えいたします。  保安林の解除申請が出てまいりました場合には、私ども、いろいろ保安林の解除要件というものを持っているわけでございますが、それらに十分照らしましてこの問題は慎重に検討してまいりたい、このように考えております。
  68. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、運輸省並びに環境庁それから林野庁は、まだ書類は出てきていないわけですが、今私の方から想定をした図面をお配りをいたしました。  aというのが今の原案でございます。bというのは現道を拡幅をして、そして防風林、保安林を解除しなくてもいいルートでございます。それから、cというのは河川堤防の上を走っていけばいいという案でございます。dというのは、中之島という、河川の敷地にそういう土地がございますから、橋の途中から中之島の方に道路を通しまして、汐入川という小さな川がそこにございますから、そこに橋をかけて、漁協の持っておる土地を通っていくというものでございます。eというのは、これは対岸の方から今の漁協のありますところに橋をかける。もちろん、ここは第二種特別地域でございますから、美観を損なうことにならないような橋をつくらなければならないであろうというふうに考えます。それから、fというのは別の図面にございますが、これは国定公園の特別地域の境目から外れたところから人工島の石油備蓄基地に橋をかけるという考え方でございます。幾つかの案を施業者の県の方でも考えて、そして原案をつくったであろう。その過程の中で、保安林を残していきたいという考え方に立つならば、やはりほかの代案が採用されてしかるべきではなかろうか、こういうふうに私は考えるわけでございます。  そこで、この前私が質問をいたしましたときに、山崎局長は、他の案についても検討はしております、こうおっしゃったと記憶をしております。運輸省は、審査に当たりまして、このほかにも幾つか考えられると思いますが、これについて、こういうようなのがあるじゃないかというような指導はなさらなかったのか。また林野庁は、これであれば、樹齢六十年ぐらいの防風林を切り倒して災害が発生をするおそれがないような方法がとられる。とするならば、他にない場合には保安林を解除することができるようになっておりますが、こういう手段が他にある。そして最小限という限定もついておりますように、今私が申しましたように一万五千立米の土砂を掘削をして、それを人工島の石油備蓄基地の堤防工事等に使う、そんなことをやらなくてもいいわけでございますし、自然は守れる、国定公園は保存ができる、三つの機能を持つ保安林も立派に守られていく。  こういうことを考えてまいりますと、人工島ができまして景観に大変な支障を与えるという意味においては、それよりも、橋をかけまして対岸の方から柏原の方に持ってくるという方がかえって美観を損なわないことになるのじゃないかというような気もいたすわけでございますが、それについてはどの程度検討されたものなのか、また、そういうようなものについて進められたことはないのかどうか、運輸省から逐次お答えをいただきたい。
  69. 小池公隆

    小池説明員 お答えいたします。  ただいまの計画しております道路、これは港湾計画の際に策定されましたルートでございますが、この港湾計画を策定いたします際に、取りつけ道路の位置の選定につきまして、周辺道路あるいは市街地の状況、あるいは公園、保安林、こういった影響をそれぞれ勘案いたしまして、先生おっしゃるようなほどではございませんが、四ルートばかり選定をいたしまして慎重に検討し、さらにその後詳細ルートにつきましては五ルートほど考慮いたしまして、その中で選定したもの、こう承っております。  それからいま一つ、一万五千立米で埋め立てをすると申しましたが、これは、埋め立てに必要な土量というのは三千百万立米ほどございますので、その中の一万五千立米でございます。
  70. 船渡清人

    ○船渡説明員 お答えいたします。  保安林の解除の要件といたしましては、保安林の転用の目的にかかわります事業等によります土地利用が、当該転用の目的等にかんがみまして、その土地以外にほかに適地を求めることができないかあるいはまた著しく困難であることというような点を一つの要件というふうに私ども考えておるわけでございまして、本件の保安林につきまして解除申請がなされました場合につきましては、申請にかかわります取りつけ道路につきまして、ただいま申し上げましたような基準に照らしまして慎重に対処してまいりたい、このように考えております。
  71. 山崎圭

    ○山崎(圭)政府委員 私ども運輸省から意見を求められているという段階にあるわけでございまして、このアセスの対象には取りつけ道路も含まれているということでございます。そういうことで現在慎重にその審査を行っているわけでございますが、今の代替案につきましては、県におきまして、今運輸省からお話ありましたように四案あるいは五案という代替案の検討も行われた上で現在の計画を策定した、こういうふうに承知しております。そういうことで、私どもはそれらの代替案の今までの経緯も踏まえまして、慎重に審査を進めているところでございます。
  72. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間がございませんので予定どおり終わりますが、治山課長にちょっとお聞きします。  現在は地上権設定について合意はされておりませんね。というのは、使用なりあるいは貸し付けなり、そういうようなものに対する県からの要請というものがあるやに聞くのですが、それについてオーケーは与えておりませんね。
  73. 鳥居秀一

    ○鳥居説明員 お答えいたします。  現在のところ、同意を与えていることはございません。
  74. 村山喜一

    村山(喜)委員 どうも失礼しました。治山課と間違えまして、業務第二課でございました。  大臣、これは最後に大臣の所感をお聞かせいただきたいのですが、この前地元の代表が参りました。三十六回も上がってきまして、大臣にお会いしましたね。そして、十三年目でございます、ぜひ我々の声を聞いてもらいたいということで、大臣も三十分ほどお会いをいただいたわけですが、そのときに、いわゆる公園法上の埋立免許については運輸大臣が認可権を握っているわけですが、保安林の解除の問題は農水大臣の認可事項になります。そのやりとりの中で、これは環境庁が意見を言って運輸大臣が免許の認可をする、その場合に、まだ保安林の方の解除がなされていない場合にだめだよ、こういうような答えが出てきたら一体どうするのかと言ったら、それは答えることはできない、こういうような話でございました。  私はやはり工事の内容を知れば知るほど、さっきも申し上げましたように取りつけ道路の、何十年も自然の災害から守ってきた、それがそういうふうに一万五千立米も国定公園の保安林の部分の土砂が掘削をされていくわけです。大きな六十年ぐらいの木が切り倒されて、一番ひどいところは三十二メートルも切り倒されるわけですから、そこは風の通路になることだけは間違いない。そういうようなことを考えてまいりますときに、自然公園を守るべき立場にあります環境庁長官が、やはりこの問題についてはそういうような自分の職責の上から見まして、本当にこれで間違いないなという自信がなければ、にわかに開発にオーケーの返事を与えてはならない。私が素人目に見ましても、それは幾つかの代替案についても障害はありましょう、ありましょうが、検討に値するものでないとは言えないはずでございまして、その自然を残すということを中心に問題をとらえていくならば、県が、施行者が出してきた原案だけが最善のものであるとは私は言えないと思う。だから、いろいろな面を検討の上、この問題については大臣が判断をされることになるであろうと思いますので、大臣のしかとした所見をお聞きいたしまして、この質問を終わりたいと思います。  もう地元あたりでは既に、埋め立てに使う山、これはロッキード山という名前がついておりまして、そこを買い占めている。それに関連をする人たちがうごめいている。そしてそれが早く認可を出すように大臣のところにも圧力をかけているやにうわさが流れておりまして、そういうようなことに政治が絡み、行政が乱れてはならないという気がいたしますので、そこら辺も踏まえて大臣の御所見を承りまして、私の質問を終わらせていただきたい。
  75. 上田稔

    上田国務大臣 お答えを申し上げます。  志布志湾におきます石油備蓄基地の計画にかかわります公有水面の埋め立てにつきましては、現在運輸省の方から環境庁の方に環境保全上の観点からの意見を求められておるのでございます。環境庁といたしましては、ただいま公害防止、それから自然環境の保全という立場におきまして、この内容を慎重に審査をいたしておるところでございます。そして所要の意見を申し上げるように考えておるのでございます。ただいまのところ審査中でございますので、まだ結論は出ておりません。  それから、今先生から、ほかの方面から圧力がかかっておるのではないかというお話が出たのでございますが、そういうことはございません。知事さんにはお目にかかりました。それからまた先日先生方、地元の方々がおいでをいただきましてお会いをいたしました。この二回が私のお会いをした方でございます。
  76. 村山喜一

    村山(喜)委員 大臣としての姿勢をきちっとしてください。
  77. 竹内黎一

    竹内委員長 午後一時二十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後一時二十分開議
  78. 福島譲二

    ○福島委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長所用のためおくれますので、委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  質疑を続行いたします。草川昭三君。
  79. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  きょうは厚生省関係が主体になるわけでございますが、環境庁の方にも水質汚濁防止観点からお伺いしたいと思うのでございます。  浄化槽のことについてお伺いをしたいと思います。  まず、環境庁の方に、浄化槽法の第四十九条に関連をするわけでございますが、環境庁は、水質汚濁防止の点から浄化槽に関する問題点というのがあると思うのでございますが、どのようなかかわり合いを持つか、まずお伺いをしたいと思います。
  80. 佐竹五六

    佐竹政府委員 最近の水質保全行政におきまして大きな問題点の一つは、湖沼あるいは内湾等閉鎖性水域の水質汚濁の問題でございます。これらの水域につきましては生活系の排水汚濁負荷のウエートが非常に高こうございまして、その背景としては、一般的に下水道の整備がおくれているということに加えて、ただいま先生指摘の浄化槽の設置及び維持管理に適正を欠いた面があることも否定できないかと思うわけでございます。  幸い議員提案により浄化槽法が成立いたしまして本格的施行を迎えるわけでございますが、環境庁といたしましては、浄化槽の構造、それから工事、保守点検及び清掃は、公共水域の水質保全観点から極めて重要であると考えておるわけでございまして、これらを所管されておられます建設省及び厚生省との連絡を密にいたしまして、浄化槽の放流による水質の汚濁を生ずることのないようにしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  81. 草川昭三

    草川委員 それを受けて、厚生省と建設省にお伺いをしたいわけでございますけれども、今も御答弁がございましたように、浄化槽法というのは超党派の議員でできたわけでございますし、下水道が不完備の場合に、浄化槽は全国にも非常にたくさん利用されているわけでございます。この浄化槽法の施行に関するいろいろな政省令があるわけでございますが、厚生省関係の浄化槽法の施行規則がことしの三月三十日に官報で公布をされておるわけでございます。  その中にさまざまなものがあるわけでございますけれども、それは順を追ってお伺いをいたしますが、まず流れからいきますと、浄化槽の構造基準というのがあるわけでございます。例えば、住宅を建てる場合に、当然のことながら浄化槽の設置に当たっては、建築確認をする、その建築確認の条件の中にどのような浄化槽を選択するのかということを付して建築確認をしていくわけでございますが、建設省の住宅局として、浄化槽についてどのような監督の地位にあるのか、あるいは許可の権限を持っているのか、浄化槽の全国的な分布状況はどうなっておるのか、お伺いしたいと思います。
  82. 立石眞

    ○立石説明員 お答えいたします。  浄化槽につきましては、建築物の建築にあわせて設置されるものについて建築確認を行っているところでございます。その確認の内容といたしましては、建築基準法施行令第三十二条の規定で、し尿浄化槽の構造基準を定めているわけでございますが、この構造基準に浄化槽の構造が適合するか否かを審査しているわけでございます。  なお、御質問の分布件数等でございますが、浄化槽を設置する際の建築確認の件数については、現在、統計はとっておりません。
  83. 草川昭三

    草川委員 その統計をとっていないのは、どこで統計をとってもらうのかということになりますが、少なくとも受け付け段階では、これは各都道府県、それなりの建築確認申請をするわけですからわかると思うのでございますが、大体約五百万基ぐらいあるのではないかと言われております。無届けもあるわけでございますし、そんなものを含めますと七百万基ぐらいあるのではないかと言われております。そのことが正しいかどうか、また後ほど答弁をしていただきたいと思うのです。  実は、浄化槽の中にもいろんな方式があるわけでございまして、全曝気方式というのが初期に建設省として構造基準に出てきたわけです。ところが最近の、これは昭和五十五年でございますか、建設省の構造基準の告示から全曝気方式というものが落ちておるわけですが、それはどうして落ちたのか御説明願いたいと思います。
  84. 立石眞

    ○立石説明員 先ほど申し上げましたが、統計としては特にとっておらないわけでございますが、建設省の方で推定として概数はつかんでおる段階でございます。建築物の建築にあわせて設置される浄化槽と、既設の建築物に設置されるものを合わせた浄化槽の設置数というのは、五十七年度では大体五十万件ぐらいであろう、また先生指摘のとおり、現在のストック全体としては七百万件ぐらいというように推定しているところでございます。  次に、先生指摘の全曝気方式についてでございますが、全曝気方式のし尿浄化槽は、非常に維持管理が適正に行われた場合には性能を発揮できるわけでございますが、その構造上非常に維持管理が行われにくい面がございまして、維持管理が適正に行われない場合には十分な処理機能を発揮できない場合が多い、そういうようなところから、今回廃止したものでございます。
  85. 草川昭三

    草川委員 今回廃止をしたのは、それは悪ければ廃止するのはやむを得ませんけれども、実は全国の七百万に近い浄化槽の約七割が全曝気槽になっておるわけであります。その七割の全曝気が少し構造上に問題があるから構造基準から落とした。簡単に落としたといいますけれども、私はそもそも建設省に認定をした責任があると思うのですが、建設省としてはその反省というんですか、責任の所在をどのように考えておられますか、お伺いします。
  86. 立石眞

    ○立石説明員 全曝気型浄化槽と申しますのは、沈殿分離槽というのを設けずに直接曝気室の中にし尿等を入れる構造になっておるわけでございます。  し尿浄化槽につきましては、旧来、建築基準法が策定されたとき以来、一つの構造基準を定めてきたわけでございますが、この全曝気方式につきましては、その後、特認等によって認めてきたわけでございますけれども、その後の水質保全あるいは衛生上の観点が強化される、強調されるようになりまして以来、やはり維持管理との関係で能力を発揮し得ない、あるいは能力を発揮しない場合がかなりあるというような結果が出てまいりましたので、そういう実情に即しましてやむを得ず廃止したものでございます。
  87. 草川昭三

    草川委員 その維持管理がうまくいけば廃止しなくてもいいということにもなるわけでございますが、その維持管理をうまくするかどうかという問題にもなるわけでございます。  環整四十五号というのがあるわけでございますが、この中には、SVの値だとか、調整をする必要があるといういろいろな言い方で、今まで年一回の清掃というようなことも言われてきておったわけでございますが、先ほど触れました厚生省の今回の施行規則によりますと、これが年四回やってもらいたい、三月に一回以上の清掃という言い方になっておるわけでございまして、同じ国ではございますけれども、管理不能の欠陥浄化槽が全曝気になるのではないかと思うわけでございますが、その点はどうでしょうか。もう一回お伺いします。
  88. 立石眞

    ○立石説明員 新しい浄化槽を工事する場合には全曝気方式を認めないということでございますが、旧来の浄化槽につきましては全曝気型浄化槽が非常に多くあるのは事実でございます。こういうものについての維持管理につきましては、厚生省の方の清掃、維持管理等の管理をお願いしながら、今後とも適正な水準が保たれるように指導してまいりたいと考えております。
  89. 草川昭三

    草川委員 それでは建設省にもう一つお伺いしますけれども、浄化槽の有効年数は大体どれくらいになるのか、あるいは有効年数があるとするならば、それをオーバーした浄化槽は取りかえさせるようにするのか、どういうお考えでございますか。
  90. 立石眞

    ○立石説明員 浄化槽の場合にはいろいろな型の浄化槽があるわけでございますし、また同じ型でございましてもその維持管理によりまして相当の差があるのではないかと考えられるところでございます。今のところ、何年ぐらいで耐用年数が来るかということについては確たるものを持っておりません。
  91. 草川昭三

    草川委員 確たるものはないのですけれども、浄化槽は非常に重要なものでございますから、構造基準で認めた品物に問題が出てきたということで、何となくわかったようなわからぬような形で告示から落ちてしまったというのも問題があるような気がしてなりません。従来の告示で採用されていた全曝気方式がなぜ落ちたのかということは、もう少し科学的に明確に解明していきませんと、今後の問題にも影響するのではないか、私はこう要求をしたいわけであります。  そこで、今度は厚生省にお伺いをします。  今、建設省の方から維持管理が非常に重要だということを言っておるわけでございますけれども、一般の管理者というのですか、住民はそんな深い浄化槽に対する知識があるわけではございません。それで、浄化槽には維持管理をする人と、それから維持管理をする人たちの一つの指示によって清掃をする、清掃という言葉がいいのか、あるいは汚泥調査という言葉がいいのか正確にはわかりませんけれども、とにかくそういうことになっておるわけです。それぞれ業者も違うわけであります。具体的な知識というのは非常に不足をしておるわけでございまして、年三回とか四回、メンテの業者の方々がいろいろな証明書というのですか、報告書というのですか検査書というのですか、そういうものを配って、住民の方々にお渡しして御説明しておるようでございますが、どのように今後管理を徹底していくのか、厚生省にお伺いをしたいと思います。
  92. 小林康彦

    ○小林説明員 お答えいたします。  浄化槽の管理の責任は、通常の個人の住宅でございますと設置者と管理者が同じでございますので、その個人の方の責任になります。それから設置者と管理者が分かれております場合には管理者の責任ということにし、その管理の基準は決めておるところでございます。ですが、管理につきましてはかなり高度な技術を要するという点がございまして、設置者あるいは管理者がみずからできないというケースも多いわけでございますので、従来とも十分能力のある方に保守点検をお任せする、あるいは清掃についても適正な清掃を委託するという制度をとってきたわけでございますが、それらの規定のみでは今後の適正な管理のためには不十分ということになりまして、新たに制定されました浄化槽法では浄化槽管理士という国家資格を定めまして、外部に委託をいたします場合にはこの管理士に限って委託をすることができる、こういうことになったわけでございます。  このため私どもといたしましては適正な浄化槽管理士の育成を図りまして、これらの方の専門的知識のもとに維持管理が委託をされますよう、それから、同じく浄化槽法の中で保守点検業の場合には地域の実情に応じまして都道府県は条例をつくって登録制度をしくことができるという制度ができましたので、その登録制度も活用していただいて、保守点検業の方々の力で適正な管理を推進していきたい。国といたしましても、それに必要なPRでございますとか、業界の育成でございますとか、そういう点に力を入れていきたいと考えております。
  93. 草川昭三

    草川委員 そこで、従来維持管理の問題について厚生省は、SV値がおおむね六〇%以上になったときに清掃すること、それからSV値を一〇から一五%程度に調整をするよう指導を、環整第四十五号、昭和四十六年十月の通達でやっていたのではないかと思います。それを今回の改正によって、第六条「清掃の回数の特例」を設けまして「全ばつ気方式の浄化槽にあっては、通常の使用状態において、三月ごとに一回以上」こう言い出したわけです。  これは、実際三月に一回やったとすると、今のいろいろな業界の実態等からいって、本当にきちっとした維持管理ができるのか、いわゆる汚泥調整ということができるのかどうか。わかりやすい言葉で言うならば、すっからかんに、からからにくみ取りをする、引き抜きをしたとするならば、逆にバクテリアというのですか種というのですか、浄化槽の本来の機能を果たさないことにもなるわけでございまして、いわゆる水質検査結果に基づく清掃の時期の判定はやはり点検業者に任せないと、まず何よりも三月に一回ということが前提に来ると現状には合わないのではないかというおそれがあるわけであります。だから、いろいろと家庭といっても、共稼ぎの家庭と、お祭りがあって親戚一同が何年かに一回わあっとそのうちに来るような状況とはおのずと違うわけでございまして、そこにこそ実は保守点検業者の役割があるのではないかと思うのですが、どのようにお考えになられるのか、お伺いしたいと思います。
  94. 小林康彦

    ○小林説明員 浄化槽法のもとでは、保守点検の作業と清掃の作業は一応独立した仕事、独立した機能を有する業務ということで分けております。保守点検の結果清掃が必要になりました場合、これは連携を密にしていただきまして清掃の工程に回すということはぜひ必要なことでございますが、浄化槽の構造上、あるいは通常の使用のもとでは清掃ということも欠くことのできないものでございます。全曝気型につきましては、先ほどお話がございましたように、その構造からいきまして、環境を保全する上で年四回程度の清掃というのは不可欠である、これが浄化槽によります水質汚濁を防止する上でも、構造あるいは実態からいきましても、妥当な判断の基準であるということで、先般の省令を決めたところでございます。  保守点検の結果、その間に清掃が必要になることは十分予想されますので、その場合にはその措置につきまして今後明らかにしていきたいというふうに思っております。
  95. 草川昭三

    草川委員 そこが非常に重要ですからお伺いしたいわけですが、年四回必要だというのは、それなりの値で厚生省が計算をしてそういうことを言ったと思うのですね。だけれども、現実には、私は保守点検の結果に基づいて汚泥調整を行うよう指導するのが本来ではないか、こう言っているわけです。まず保守点検が最初に来て、その結果清掃というのが後に出てくるのではないか。まず清掃が先なのかどちらなのか、はっきりしてもらいたいと思います。
  96. 小林康彦

    ○小林説明員 基本的な考え方といたしましては、保守点検が先でございます。その判断によりまして清掃するというのが物の考え方でございます。  ただ、構造あるいは実態からいきまして、適切な管理をしていきますと、どうしても多量の汚泥が蓄積をしあるいはスカムがたまるということになりますので、適正な管理のもとで通常の浄化槽については年一回以上の清掃、それから全曝気型については年四回以上の清掃というのが妥当なところというふうに考えております。
  97. 草川昭三

    草川委員 妥当かどうかが一番問題なんですね。これは実は消費者にとりましても非常に重要なことは、清掃というのは私ども地元では一回一万円から一万何千円かというところになります。これは年に一回で済むわけですが、これが年三回から四回ということになりますと三万から四万の負担になる、これは決してばかになりません。  それから、そういうことになりますと、保守点検業者というものと兼業の方も清掃業者の中にはいるわけでありますから、本来厚生省は、まさしく、維持管理をするためには保守点検業者というものをある程度育てなければいけない。そこに実は浄化槽法の意味もあり、この保守点検業者というのをもう少し権威づけなければいけない。ライセンスも与える、あるいは彼らがある程度シールを張って、ではこのシールを張った家庭の浄化槽というのは非常に完璧に維持管理ができておるのだなというぐらいに持っていって、そしてこれがうまく稼働をすれば、当然のことながら、清掃業の方々に連絡をして完全ないわゆる全体の流れとして浄化槽というものは適切に維持できる。  そうしませんと、全国に七百万基あって、建設省はいつまで耐用年数があるかわからぬ、こう言っているわけですから、未来永劫にこれは続くわけですよ。未来永劫と言っては極端でありますけれども、ほとんど将来的に続くとするならば、保守点検業というものを位置づけさせることが私は非常に重要な問題になってくると思うのですが、その点はどのようにお考えになられるか、お伺いをしたいと思います。
  98. 小林康彦

    ○小林説明員 浄化槽の適正な管理におきまして、保守点検の重要性につきましては先生お話しのとおりというふうに考えております。
  99. 草川昭三

    草川委員 では、その点はそのぐらいにしておきます。  それから、これは実は自治省にも何回かお伺いしたわけですけれども自治省がどうしても答弁ができぬ、やはり基本的にはこれは厚生省サイドになるだろう、こう言うのですが、実は今全国の市長さん、町長さんが非常に困っておりますのは、浄化槽から引き抜いた、先ほどの御説明ではスカムというのですか、それをどこへ処理するか。現在は海洋投棄になっているわけですが、海洋投棄と簡単に言いますけれども、海洋投棄をするためには陸送でバキュームで運び、あるいは町村段階では小さなバキュームで運んだのをその町村で一回大きなバキュームに入れかえて、そのバキュームが海側の町村のところまで持ってきて、海側の町村の岸壁を使って海洋投棄をするわけです。  ところが、その岸壁の所在をめぐって、私の選挙区なんかでもそうでございますけれども、同じ選挙区内で引き受けを嫌がるわけですね。県が間に入って何とか調整をしておるわけでございますが、この最終処理については各町村では非常に悩みが多いわけです。そこで私は自治省に対して町村に悩みが多いかどうかということを聞いているのですが、自治省としては答弁をするところがない、これは厚生省に聞いてもらいたい、こういうわけでございます。  実際浄化槽の維持管理を本当にずっとやっていった場合に、例えば今、年四回という言い方をしておりますけれども、回数がふえたとすると当然このスカムというのですか最終処理の量もふえる、海洋投棄がふえていく、そういうことについて見通しがあるのかないのか。少なくとも私は今日まで自治省に何回かお話をしたのですが、個別で聞いてもらえればそれは言えぬことはないけれども、それは残念ながら今自治省としては答弁できないので厚生省へ聞いてくれ、こう言うのですが、厚生省はどのように考えているのか、お伺いしたいと思います。
  100. 小林康彦

    ○小林説明員 浄化槽汚泥の最後の処分につきましては、し尿と同じように、私どもは陸上での処理ということを基本として考えております。海上での投入処分といいますのは、陸上での処分が困難な場合に限っての例外的措置ということで、私どもの五カ年計画におきましても海洋投入処分を極力減らすという方向で計画を立て、施策を進めておることでございます。  具体的には、市町村が設置をいたしますし尿処理施設で汚泥を受け入れているところが多いわけでございまして、補助事業に当たりましても浄化槽汚泥を見込みました施設を補助対象にし、新設のし尿処理施設につきましては相当量の浄化槽汚泥を見込んでいるというのが実情でございます。  ただ、一部の市町村におきましてはし尿処理施設の設置が困難ということもございまして、現在も海洋投入に依存しておるところが多いわけでございますが、市町村及び都道府県に対しまして、極力陸上処理、県体的には下水道が近く引けますところにおきましては下水道の終末処理場での受け入れ、その見込みがないところにおきましてはし尿及び浄化槽汚泥の処理施設の建設を進めておるところでございます。浄化槽法におきましても、この観点から、市町村が浄化槽汚泥の処理施設整備につきまして特段の配慮をするようという規定が置かれておりまして、その方向で努力をしておるところでございます。
  101. 草川昭三

    草川委員 私の持ち時間はこれでなくなりましたので、まとめて二点質問しますからお答え願いたいのですが、今のお話は実は全国市長会から去年の七月十三日に要望が出ておるのでございますけれども、し尿浄化槽専用処理設備の建設に係る国庫補助制度を新設してもらいたい、こう言っておるわけですよね。あるいは浄化槽清掃料金等の標準額を設定してもらいたいというような要望も出ておるわけでございまして、陸上処理をすることが一番いいのですけれども、残念ながらプラントが違うわけです。一般の生のし尿処理のプラントと浄化槽のスカムの処理は構造的にどうも無理なようでございまして、その点は十分厚生省の方としても考えて各町村にも指示をしていただきたいあるいは予算措置をとっていただきたい、こういうことです。これは要望になります。  それから、もう一つ質問でございますが、実は管理業者の権威づけあるいは信頼性、そういうことを高めるためにも、もっと県段階でのいろいろな登録制度ということを考えていただきたい、いわゆる知事登録制度の必要性ということを考えてもらいたいと思うのです。同時に、幾ら知事登録をやろうと思っても、その前提条件として清掃業者の方々の汚泥引受証明書がないとそれができないという県があるわけであります。これは兵庫県だとか滋賀県等でそういうことがあるわけでございますので、そういう汚泥引受証明書がない場合に、せっかくの保守点検業者の登録制度ということを言ってもそれは絵にかいたもちになってしまうわけでございますから、ぜひ私は厚生省として、登録要件としては法律上からも問題があると思いますので、調整をとっていただきたい。これは要望を申し上げておきたいと思うのです。  この要望について厚生省の御答弁を聞いて私の質問を終わりたい、こう思います。
  102. 小林康彦

    ○小林説明員 浄化槽汚泥の処理につきましては技術的に困難な問題もございますが、お話にございましたように、し尿処理とあわせて行います場合の技術的な対応、あるいは浄化槽汚泥だけ処理をする計画がございましたら、それに対する対応は検討してまいりたいと思っております。  それから、保守点検業につきましては、都道府県知事に対する登録制ができたわけでございますが、私どももそれに対します標準的な条例案を示しまして、業界の発展のためそれから浄化槽の適正な管理のために、適当な内容をモデルとして示すことによりまして全国的に無理のない条例をつくり、保守点検業が健全な事業活動ができるようにということで指導してまいりたいと思っております。
  103. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。
  104. 福島譲二

    ○福島委員長代理 春田重昭君。
  105. 春田重昭

    ○春田委員 私は、若干時間を拝借いたしまして、質問といいますか、確認をしておきたいと思います。  長かった国会もあと数日で終わろうとしているわけでございます。参議院の方では今重要法案の最後の攻防といいますか、慎重な審議がなされているわけでございますけれども、我が衆議院におきましては、この環境委員会はもう一回委員会がございますけれども、こうした質疑の委員会は実は最後、こう思いますので、あえて質問をさせていただきたいわけでございます。  まず長官、この百一特別国会を振り返ってまいりまして、環境行政について長官の率直な御所見をお伺いしたいと思うのです。
  106. 上田稔

    上田国務大臣 お答えを申し上げます。  私環境庁長官を仰せつかりまして以来、この国会におきまして諸先生方のいろいろな御質疑をいただき、また法案の審議をいただきまして、大変ありがたかったと存ずるのでございます。特に今まで環境庁関係で長い間湖沼法につきましてお願いをいたしておったのでございますが、それを成立をさせていただきまして、大変どうもありがとうございました。  また、アセスの法案をどうしても出さなくてはいけない、これはやはり環境行政の基本である、こういう考えのもとに、実は私ども国会提出をお願いをしておるのでございますが、まだこれはあきらめてはおりませんが、それがまた提出をされないというところは大変残念であると思うのでございます。また、私の不敏のいたすところであると深く反省をいたしておるところでございます。しかしまだ望みを捨てずに、提出をしてもらいたいと最後まで念願をいたしております。     〔福島委員長代理退席、委員長着席〕  それから、国会中におきましていろいろ新しい問題を提出をしていただいたのでございます。例えて申しますと、ダイオキシンの問題であるとか、あるいはまた乾電池の包含しております水銀の問題であるとか、あるいはまた地下水の中にいろいろと塩素系のものが混入をして、それがいろいろ人体に影響があるのではなかろうか、こういったような問題の提出をしていただきました。  これにつきましては、私どももこれがまたまた水俣病のようにあるいはカドミウムのように問題が起こってまいりますと大変でございますので、これに対しましていろいろと検討をさせていただくことができまして、そしてまた、そういうことが今後起こらないような対策もいろいろ関係省庁ともお話し合いをさせていただくことができたことは大変にありがたいと存じます。  また新技術といいますか、そういったようなものも考えてやるように、こういう御示唆もいただいておりますので、そういう点も大いにやらしていただきたいと考えております。  また、土壌汚染につきまして、農地の土壌汚染については農林省その他で相当研究をしていただいておるのでございますけれども、都市内におきます土壌と申しますか土壌汚染につきましてはまだどうも知見が不足をいたしておりますので、これについて大いに研究をしていかなければならないということで、今知見の収集を初め、いろいろの研究を始めかけておるところでございますが、こういう問題を提起していただいて、環境庁がこれから進む方向が決まってきたと思うのでございます。  それからもう一つ、これはちょっと方向が変わりますけれども、これからの環境保全というものが、今までとは違って環境を造成するというとちょっと大きゅうございますけれども、環境の改善をしていくという方面についていろいろな面を開きかけております。これは新しい予算をとらしていただいて、これをひとつ物にしていこう、こういうことから進めておるわけでございます。  それからまたもう一つは、いろいろ先生方のお勧めに従いまして、若い方々、小学生を初めお年寄りに至るまでの方々に、ボランティアの方々に環境というよりも環境も込めてでございますが、いろいろな自然界と接するようなことを進めさしていただいて、そういう面で新しい境地を開くことができ得るようになりつつあるということは大変にありがたいことだと考えております。  環境行政を持たしていただきまして、そういったような点につきましていろいろ私も目を聞かさせていただいておるところでございます。  以上でございます。
  107. 春田重昭

    ○春田委員 私の感じからすれば、確かにこの国会におきましては、環境行政としては湖沼法が一応成立した、内容について見ればまだまだ不十分な面があるわけでございますけれども、湖沼を抱えておる地方自治体の方たちは歓迎しているわけでございまして、この湖沼法の成立は一歩前進と評価してもやぶさかではないと私は思うのですが、今大臣もおっしゃったように、アセスメントは出てない、またダイオキシンの問題、また乾電池の水銀問題、こういった問題はまだまだ大きな問題を残しながら課題として残っていっているわけですね。  一部では公害というのはタブーであって、そんな汚染は進んでないんだという意見もあるわけですよ。しかし私は、上田長官は任期がございますからいつかは大臣をおやめになると思いますが、環境庁は永久に存在するわけでございますし、存在しなければならないと思うわけですね。そういった面で、環境問題につきましては、本当に私たちのとうとい生命を守る、また自然を守るという意味においてまだまだ不十分な面がある、そういった面でこの国会を振り返りながら反省する点がたくさんあるのじゃなかろうか、こういう思いをしながら、今後前進また前進の環境行政を進めていかなければならないのじゃないか、こう私は思うわけでございます。  ところで、先ほども大臣の御答弁がございました、この国会の重要法案の一つと見られていました環境アセスメント法案でございますけれども、残念ながらまだ国会へ提出されていない状況でございます。環境庁としてはこの法案提出に対していかなる関与といいますか努力をしてきたのか、御説明いただきたいと思います。
  108. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  アセスの法案でございますが、これは環境庁といたしましては、最重要法案といたしまして当初から提出をさせていただきたい、こういうことを念願いたしまして、与党の方にお願いをいたしておるのでございますけれども、いろいろな御意見がございましてまだ調整がとれておらないというのが今の状況でございます。したがいまして、このアセスの成立ということは、この前の委員会でも、できないのじゃないかという御質問がございました。その点につきましては私も、大変申しわけございません、しかし提出についではまだあきらめておりません、とにかくこれは最後まで提出させてもらいたい、これがないと、やはり地方庁の方でもアセスをやるということが前提でございますが、もちろんやらなければいけないということでやっておられるのですが、その点において非常に苦労されておるので、やはり解消していかなくてはいけない、こういうことで強くお願いしてきたのでございます。まだ日にちがございますので、さらに私どもの方は与党の方にこの提出を希望して、強力に運動させていただきたいと考えておるところでございます。
  109. 春田重昭

    ○春田委員 当初の意欲からすれば相当大きなトーンダウンじゃないかと思うのですね。まさに大臣の本日の答弁では、成立というよりもむしろ提出という方に重きをかけられているわけでありまして、これは物理的に考えてみましても成立は無理だと思いますので、あとは提出、ここに大臣が意をかけるのはわかるわけでございますけれども、いずれにいたしましても大臣のお考えや精神というのはよくわかるのですよ。しかし、その可能性というものはどうなのですか。  これは自民党の中で鋭意、政務調査会と自民党の五部会、環境、建設、商工、地行、運輸、こういう部会との調整が今なされているやに私は伺っているわけでございますけれども、大臣も自民党の一議員でございますし、最大派閥に所属しているわけでございますから、ましてや環境庁長官という形でいろいろな面でその辺の情報等は十分仕入れておられると思うわけでございますけれども、その調整の段階で各方面の意向や意見はどんなものが出されているのか。また提出そのものが本当に可能性があるのかどうか。大臣は本当にまじめですからいつも率直な御意見として出されているわけでございますけれども、本当にその可能性があるのかどうか、その辺どうなのですか。その二点について答弁をいただきたいと思います。
  110. 上田稔

    上田国務大臣 お答えを申し上げます。  先ほども申し上げたのでございますが、各方面の意見と申しますと、一番要望しておられるのが地方庁の方の関係でございます。アセスはやらなくてはいけないということは全国的のお考えでございますけれども、特に地方庁の方でアセスを実施しようという場合において、地方庁におきまして条例をつくったり要綱をつくったりしておられるわけでございます。各省においてもアセスはやらなくてはいけないということはまあまあ一応皆お考えをいただいて、その要綱をおつくりいただいておるのでございます。  その要綱が出てまいりまして、ある省の事業をやろうとしておられる、その場合にその要綱によって予算を盛って、各地方庁にこれでひとつ説得をしてもらいたいということを言われる。ところが、その要綱とその条例とが、手続の問題でございますけれども、その手続のやり方が違う。住民の方々は、条例、要綱、こういうものが当地方では決まっているということを地方紙によってよく御存じでございます。そうすると、なぜそのとおりやらないのだ、通達のやり方ではこういうことをやっていないのはどうなのだ、こういうような御質問が出てきてなかなか納得をしてもらえないということで、条例と通達とのすり合わせと申しますか、これを何とか一つのものにしていかなくてはいけないということで苦労をされる。不足分はしょうがないから地方庁で出そうかというようなことでおやりになる。  そうすると、その内容が非常に大きいものですから相当予算も必要となってくる。だから、地方庁の方としてはこれはとても大変だということでいつも苦労をしておられる。場合によってはすり合わせに二年なりもかかったというような実例がどんどん出てきておりますので困っておる、こういうことでお困りになっておられるのであります。  それじゃ国の方の機関はどうだというと、国の方では自分のところで通達でちゃんと決めているのだからそれでやったらいいじゃないか、こういうお考えで、みんな望んでいることであるから大いにそれでやってもらおうじゃないか、こういうふうに言われる、そこに先ほどのような問題が起こってくる。  今度は経済界はどうだ。経済界も、このアセスをやらなくてはいけない、いろいろ事業を持っておられますから、その事業を実施する場合にアセスはどうしても必要だ、それは自分のところの関係の省の通達でやってもらおう、こういうことで言われる。けれども経済界の方は知事さんにそれじゃ通達でやってくださいと言って、それ以上のお金が出ませんとは言えませんので、これはどうぞアセスを十分やっていただきたいということで条例または要綱のお金もお出しいただいておやりになられる。だから、経済界の方では今の通達、条例、要綱でちっとも差し支えがございませんということでお話が出ておりまして、いろいろその間において、法律というものは本当に必要なのかというようなことが大きな問題点になってきておるわけでございます。地方の時代じゃないか、そうすると地方で条例を決めていくということはそれでいいのじゃないかというようなお考えも非常に強うございますので、そこらでなかなか意見が一致してこないというようなことでございます。
  111. 春田重昭

    ○春田委員 与えられた時間がもうございませんので、最後に私の意見として述べたいと思いますが、環境行政の後退が非常に心配されております。その一つが環境アセスメント法案の国会未提出の問題であろうと私は思うわけでございます。  既に大臣も環境庁も御案内のとおり、この法案に関しましては五十六年四月二十八日、第九十四国会へ提出されておるわけですね。それで第九十五国会におきまして法案の提案理由の説明が衆議院の環境委員会において行われているわけです。さらに九十六国会に参りますと、衆議院のこの環境委員会におきまして法案の審議が三回行われているわけです。そして、九十八国会におきましては参考人の意見聴取並びに質疑が展開されてきているわけですね。衆議院の環境委員会では相当煮詰まったところまで来ているわけです。第百国会におきましても、中曽根総理の国会の答弁がされているわけでございますけれども、五十八年十一月の衆議院の解散によってこれが廃案になって、今日までずっと来ながら法案が未提出という形になっているわけですね。こういう経緯があるわけです。  また、この国会におきましても中曽根総理は、いわゆる法案の国会提出をすることを明確に答弁なさっているわけです。また官房長官の藤波さんも、四月中には出しますというような議運での発言もあったように聞いているわけです。そういった経緯がありながらこの国会に出てきていないというのは非常に残念だ、私はこう思うのですね。  また一方、地方自治体におきましても、今長官がおっしゃったように条例で四、要綱で二十一、合計二十五の団体が既につくっているわけでございまして、未制定の三十二団体についても制度化の検討をしているわけです。地方自治体がこのように制度化したり検討していることは、国民全体がやはり望んでいるわけであって、これはそうしたいわゆる環境アセスメントの早期制定を全国民が願っていることである。そうした全国民の願いをどこが阻んでいるのか、こういう問題なんですね。  そういった面で、一部の財界人がそういう条例やまた要綱や通達があるからいいじゃないかというのは、逆にとっているわけですよね。法律がないからそういう条例やいわゆる要綱をつくって、ばらばらなそういうルールになっているわけですよ。そういった統一的なルール、権威あるルール、そういったものをつくるために、国でこの法案を早期に制定すべきであろう。これが私は環境行政の後退の一つであろうと思うのです。  もう一つは、公害健康被害補償法の第一種指定地域あり方、基準の見直しといいますか、指定地域の見直しといいますか、これがされているわけでございます。まだ専門部会で今検討がされておりまして、中公審の答申がいつかはっきりわかりませんけれども関係団体の方たちの心配は、この見直しそのものがいわゆる縮小廃止につながっていくのじゃないか、そういう御心配をなされているわけです。  こういった面で、この二つの問題が環境行政の大きな後退の、この国会で非常に心配される面ではなかろうかと私は思っておるわけでございます。この二つが本当に国民と逆行するようなことになれば、これは経済優先の理論が先行して、環境は二の次になってくるわけでございます。  そういった面で、環境庁というのは、先ほど言ったように人間の生命を守り、自然を守っていく本当に重要な唯一の省であろう、こう私は思っておるわけでございます。そういった大きな使命を持っておる環境庁が、いわゆる公害はもうなくなってきたのだ、解消されつつあるのだという、そんな誤った認識をどうか持たないように、常に国民のためのそうした環境行政を進めていただきたい、このことを強く述べまして、きょうはあえてこの環境アセスメントにつきまして質問させていただいたわけでございますので、私の意のあるところを十分酌んでいただいて、環境行政をより一層前進させていただきたい、こう思うわけでございます。よろしくお願いしたいと思います。
  112. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、藤田スミ君。
  113. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は初めに、前回に続きまして、けさほども問題になりましたが、四国の今治織田が浜の問題についてお尋ねをしていきたいと思います。  質問に入る前に、長官に「今治港取扱貨物量実績とその予測」という一覧表を持ってまいりましたので、渡してよろしいでしょうか。
  114. 竹内黎一

    竹内委員長 どうぞ。
  115. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 直接関係ないとおっしゃるかもしれませんが、大事な問題ですし、深くかかわっておりますので、どうぞ長官もそれをごらんになりながら私の質問を聞いていってほしいと思います。  私は、港湾計画の必要性の問題をまず第一にきょうは取り上げていきたいわけなのですが、この港湾計画というのは、先ほどのお話にもありましたように、既に、八月九日、中央港湾審議会で審議されると言われております。出されました今治港の港湾計画書は極めてずさんな内容のものだと、私は一言で言えばそういうふうに言わざるを得ないわけです。今回のこの港湾計画書は、昭和六十八年を目標年次として出しております。昭和六十八年を目標年次として取扱貨物量は千四百七十万トン、こういうふうになっているのです。ところが、昨年今治市がつくりました「第三次港湾計画資料」という資料を見ますと千七百十万トン、したがって今度出されたものと随分数が違うわけです。さらに、その前の年の「港湾計画案の作成及び環境調査に関する中間報告書」という資料を見ていきますと、これは目標年次を昭和七十年に置いておりますけれども、二千三百三十万トン、こういうふうに随分数が違うんですね。二年前につくったのが二千三百三十万トン、そして今度出してきたのが千四百七十万トン、これだけの違いがあるわけです。一体、いかほどの経済的変動があったのかと言いたくなるわけですけれども運輸省はこの港湾計画の基本的な数字であるこの貨物の取扱量については十分に検討されておられると思いますが、この二年間でなぜこのように変動したのか、お伺いをしたいわけです。時間がありませんので、できるだけ簡潔に御答弁をお願いします。
  116. 上村正明

    ○上村説明員 私どもが受け取りました港湾計画は、六十八年を目標年次とする計画でございまして、その前に今治市がいろいろな角度から検討したものをただいま先生がおっしゃったと思いますけれども、私どもは、これらの今治市が素案を検討している段階のものについては十分に承知しておりません。
  117. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 素案の検討の段階については十分承知をしていないとおっしゃるけれども、こういう経緯を経て今日こういう数字が案として出されてきたのです。大変ぐらつくにもほどがあると言いたくなるような経緯をたどっております。いずれにしても、その推計が大変いいかげんじゃないか、しかも、本当に必要なものか、そういうふうに疑ってしまうのは当然のことだと思うのです。  今回の貨物取扱量は、現在の港湾計画、現在の港湾計画というと、昭和五十五年を目標にしてつくられたものですが、この港湾計画に比べましても、どういうわけか五百二十万トン減っているのです。新しい港をつくると言いながら五百三十万トン減っているのです。そうでしょう。今現在は二千六万トン貨物を取り扱いますよと目標にしているのですね。それをつくったのです。だのに、新々港をつくるんだ、織田が浜をつぶすんだと言って出してきた計画が千四百七十万トン、五十六年の実績と比べてみましたらどうでしょうか。これもまた百万トン減っているのです。港湾を拡張するということは、これではとても納得できないわけなんですが、運輸省はどういうふうに考えておられますか。
  118. 上村正明

    ○上村説明員 ただいまおっしゃいましたように、今回の六十八年を目標年次といたします計画の貨物量は、昭和五十五年を目標とします既定計画の貨物量やあるいは五十六年の実績の貨物量も下回っております。その理由は、今回の計画ではフェリー貨物、これをそれぞれ既定計画より五百五十万トン、それから現状の実績に比べまして二百万トン減少するものと見積もっているからでございます。  この理由といたしましては、目標年次であります六十八年には、現在六十二年度末を目標として鋭意工事が進められております児島−坂出ルートの本四架橋が既に供用されている、それがフェリー貨物に影響を及ぼすだろうということを見込んでいるのが一つでございます。それから二つ目は、五十九年、ことしの春からですけれども、神戸−今治間のフェリーが松山にまで延伸されました。このことに伴いまして、今治で乗りおりするフェリー貨物が減少しております。この影響を見込みました。さらに、現在、当今治港と東予港からフェリーで神戸や大阪に輸送されております外貿コンテナ貨物量が、内航コンテナ船に切りかえることが確実でございますので、それによりますフェリーの減少を見込んでいるわけでございます。フェリーを除きます一般貨物につきましては、五十六年の実績に比べまして約百七万トン、既定計画に比べまして十四万トンと、取扱貨物量につきましては大きな増加は見込んでおりませんけれども、木材や米穀類のように大型の船舶で今治港に直接輸入したいという要請、外貿コンテナ貨物の増加に伴い荷扱いのヤードを拡大したいという要請、あるいは現在自動車で運び込まれております石油類を他の地域と同様にタンカーによって今治港に搬入したいという要請が強うございまして、これに対応いたしまして港湾施設を増強することとしております。  なお、今回計画では、既定計画において荷扱いが想定されておりました今治港の内港部の物揚げ場を要請の高い休憩岸壁として使用することとしましたこと、及び木材の荷役方式が水面取りからおか取りに変化してきたことに伴いまして、既定計画で予定されていました富田地区のブイバースの計画を中止しておりまして、その分だけ多くの岸壁が必要になっているわけでございます。
  119. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 答弁はその辺でとめておいてくださいな。まだ聞いてないことをどんどん答えているじゃないですか。  まず第一の大きな理由に本四架橋ができるから、もう一つはフェリーが減るから、そういうふうにおっしゃったわけですね。私の質問の主な答弁の部分は、今のはそういうことですね。うなずいておられますので、そういうことなら私はまだ納得のできないところがあるのです。その取り扱う一般の貨物、この取扱量の減る分ですね、それはフエリー貨物だ、これはこの数字から見てもそういうことなんですが、それでは、そのフェリーを除いたふえる分ですね。一般の貨物の方は、数字で見れば確かにふえることになっています。ふえることになっておりますけれども、現在の計画、五十五年目標の計画は外貿、内貿合わせて二百九十六万トンでしょう。フェリーの問題をちょっと外したら内貿、外貿合わせて二百九十六万トン。そして片方は、五十九年、今出されている計画で六十八年を目標にしている分は外貿三十万トン、内貿二百八十万トン、三百十万トンでしょう。だから、たったの十万トン、厳密に言えば十四万トン程度ということなんでしょう。一般の貨物がふえるふえるというふうに言いますけれども、たったそれだけしか計画ではふえてないでしょう。
  120. 上村正明

    ○上村説明員 そのとおりでございます。
  121. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 ふえるのはわずか十万トンそこそこだと。  そこで、次にお伺いしますが、今回埋め立てる予定の織田が浜ですね、その織田が浜地域の貨物の取扱能力というのはどれだけ見込んでおられるのですか。
  122. 上村正明

    ○上村説明員 昭和六十八年においておよそ七十二万トン程度と見込んでおります。
  123. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 内貿、外貿合わせて取扱量は六十八年を目標にしたものと現在と比べてもわずか十万トン余りしかふえないのに、織田が浜をつぶして新港湾をつくる計画では七十一万トンというような大きな能力を持つ港湾をつくる、これは全く納得できないわけなんです。先ほどいろいろおっしゃったと思いますが、もう一度そこのところをお答えください。
  124. 上村正明

    ○上村説明員 ただいまも説明したわけでございますが、そのように十四万トンしか増加しないわけでございますけれども、木材や米穀類のように、大型の船舶で今治港に直接搬入したいという強い要請がございます。それから外貿コンテナ貨物の増加に伴いまして、荷扱いのヤードを拡大したいという要請が強いわけです。あるいは自動車により運び込まれております石油類をタンカーで今治港に搬入したいという要請などが強くなっておりまして、これに対応して港湾施設を増強することとしております。  なお、今回の計画では、既定計画におきまして荷扱いが想定されておりました内港部の物揚げ場を要請の高い休憩岸壁として使用することとしておりますこと、及び木材の荷役方式が最近水面取りから順次おか取りに変化してきているということに伴いまして、既定計画で予定しておりました富田地区のブイバースの計画を中止しておりまして、その分だけ多くの岸壁が必要になってきております。
  125. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 いろいろと必要なことをおっしゃるお気持ちはよくわかるのです。よくわかるのですけれども、大変説得力がありませんよ。長官先ほどから聞いておられて、大事な織田が浜をつぶすという話をしている計画の目標が今よりもえらい数字が少ないことに疑問を持たれたと思いますが、いろいろ理由を並べられましたので、私もそれについて重ねて尋ねていきたいと思うのです。  先ほどのお話を聞いていると、大型の船がうまく入らない、こういうことを言っておられるわけなんですが、これは主には外貿ということになるでしょうが、今の港湾をつくる前の昭和四十五年の外貿の貨物量は二十一万トンでした。それが五十五年には三十七万トンにふえるといって新港湾をつくったのです。ところが、四十八年には二十九万トンまでになっていたものが五十一年を見ますと八万トン、五十二年には七万トン、五十六年は十五万トンという状況なんです。内貿の方も、フェリーを別にしましたら昭和四十五年二百万トンだったのが昭和五十六年に百八十万トンという状況。だから、どうして大型の船、そういうものが必要であるのかというふうに疑問を持たざるを得ないわけです。確かに今治港はフェリー港としてはこの地域の流通拠点都市、私はそういうふうに言えると思います。しかし、外貿の点をとってみればこれは今治の背後地の需要だけなんでしょう。外貿は背後地の需要だけを対象にしているのでしょう。違いますか。
  126. 上村正明

    ○上村説明員 背後地域も外貿、内貿によっておのずから変わってまいりまして、内質及び大部分の外貿につきましては先生おっしゃるように今治港の背後にかなり近い部分でございます。
  127. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 外貿は飼料の原料となる米穀類それから原木の両方で全体のほぼ九割を占める、これは今治の資料を見ても出ていますね。綿糸は若干あるわけですが、いずれにしても米穀類、原木、綿糸ともここ二、三年減ってきているのです。米穀類は五十五年に八万五千トンであったのが五十七年には八万四千トン、減っていますね。原木は同じく七万二千トンだったのが四万一千トンに落ちているのです。綿糸も同じく二万五千トンであったものが一万四千トンという状況になっているのです。それが六十八年の推計では米穀が現在の一・五倍の十二万トンになるだろう、原木は三倍の十四万トンになるだろう、綿糸はほぼ三倍の三万八千トンになるだろう、こういうふうに推計をしているのですね。背後地の飼料工場あるいは木材工場あるいはタオル産業が、ここだけが織田が浜に岸壁ができるや否やこんな驚くべき急スピードで成長するというようなことはとても信じられない数字だと思います。  仮に百歩譲ってそういう数字前提にしても、さっき言ったように年間七十一万トンも取り扱うような新々港湾は必要がないというふうに私は重ねて言いたいわけなんですけれども、三万トン級の大型の船の必要が根拠だ、そのためにこういうふうな数字があるとすれば、ますますこういう大港湾はむだとなる可能性が強いと私は思います。それから、こんなに取扱量がふえていない数字を見ていけば、なおさら、三万トン級の大型の船が来るといってもそれもたまにしか来ないんじゃないか、こういうふうにしか思えないわけですが、どうでしょうか。
  128. 上村正明

    ○上村説明員 まず、今木材のお話が出ました。現在、今治港には一万トン級の岸壁しかありません。ところが、木材、特に米材あたりは三万トン級の船で運ばれるのが通常になっておりまして、そういった船でこの港に入れようとしましても岸壁が浅いために入れませんので、喫水調整をしたり、あるいは十五キロ離れました馬力潟というところで一遍水面に落としましてそれをいかだで引っ張ってきて陸送するという、非常に不経済な輸送形態を強いられております。したがいまして、そういった不経済な輸送形態を前提とした現状で将来の今治港での取扱量を云々することは無理かと思います。むしろ、現在松山港を経由して入ってきたり馬力潟を経由して入ってきているものを直接今治港で取り扱うことによりまして、私どもが考えております六十八年で木材の十四万五千トンというものは確実に入るというように考えているところでございます。
  129. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 つまりは、今ほかの港に着けてそこから入ってくる分が今度は港をつくれば直接入るんだ、こういうことでしょうが、これも私、数字で何ぼでも反論できますよ。もっと細かい資料を見ていきましたら、輸出じゃなしに移出、移入という言葉があるのですね。その移入というのは、つまり大型の船がよその港に着いたのを今治まで今度はまた船で、三万トン級の大きな船が着かないからそこでおろして、それから今度今治に持ってくるのを移入という言葉を使っていると思うのですが、その移入を見ましても、農林水産品は五十五年は六万三千トン、五十六年は五万五千トン、それから林産品は三万四千トン、それが五十六年は二万三千トン、決してふえてないのです。だから、説得力ないですよ。  私は三万トン級の船は、もうこんなもの今治に必要ないとは言いませんよ。しかし、もしそれなら、こんなたまに入る船を受け入れるなら、今の港湾、五十五年に完成したばかりの今現在ある港湾で考えることは十分可能だと思うのですよ。先ほどの御説明を聞いていましたら、しかし海が深くてと言います。しかし、関西新国際空港を見てごらんなさいよ。二十メートルもあるような深いところをいけるんだ、大丈夫なんだといってどんどん土を埋めて空港をつくろうというのでしょう。海が深くてそこに継ぎ足しをしたりすることはできません、そんなのは費用が高くつくのです、そんなことは全く理由にならないわけであります。  おまけにもう一つ、午前中の討論を聞いていて私は大変不可解だと思いましたのは、運輸省は大まじめにそう信じておられるのかもしれませんけれども今治市内の公害問題を解決するために市内の事業所をこの新しくつくった埋立地に移転させて拡張するんだ、こういうふうに言っておられますけれども、これは今治市の「市政概要」、この中を見ましたら「公害」という見出しをつけたところに「当市は中小企業の軽工業都市であるため、公害発生の程度は比較的軽度であり、断片的なものが多い。」つまりは、そないに心配するほど公害はないということをちゃんと書いているのです、五十九年に出版したものに。市内の過密を解消し公害を解消するためにと言いますけれども、実際の市の概要の方を見ますとそうは言ってないのです。公害はないと言っているのです。どうなんでしょうか。
  130. 上村正明

    ○上村説明員 今治市全体が他の都市に比べて公害がどうかということについては私は十分わかりませんけれども、現に幾らかは必ずあるようでありまして、その分を移すことによって当該部分は確実によくなると考えています。
  131. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 一度つぶした海浜はもとへ戻すことはできません。どんなにたくさんなお金をかけても自然海浜をもとに戻すことはできない。そのことの方が、経済から考えるとよほど真剣に私たちが考えておかなければならない問題なんです。運輸省の言っていることは、その必要性から言っても余りにも説得力がなさ過ぎますよ。それをどうでもつくろうというのは、初めにつくるということがあるからじゃないですか。そういうことで、私はもう一度環境庁にきょうはお伺いしておきたいわけです。  織田が浜については瀬戸内法で言う留意事項には該当しない、したがってこの埋め立ては認めるべきではないという主張を私はしました。環境庁の御答弁では、海水浴場などの利用に与える影響も含めてこの留意事項に該当するか否かが判断のポイントであるということだったと思いますが、その後の検討の状況はいかがなんでしょうか。
  132. 佐竹五六

    佐竹政府委員 先生おっしゃるように、この織田が浜は瀬戸内法の埋め立てに関する基本方針において留意事項に該当しない埋め立てはできるだけ避けるべきであるとされた海域であることは御指摘のとおりでございます。問題はできるだけ避けよということでございまして、私どもといたしましては若干の裁量の余地を与えられているわけでございます。これをどういうふうに考えるかということでございますが、法律の細かい組み立てを一々引用して御説明すると時間を食いますので、簡単に申しますと、要は、利用目的がどうであるかということと、つぶされる海の性格がどうであるか、この両方から考えていくべきだろうと思います。  環境庁といたしましては、先生ただいま御指摘もございましたとおり、当然利用目的もチェックいたします。確かに、木材について言えば一般的に製造設備が過剰であるとか今後外材の原木輸入がどうなるかとか、政策論としていろいろ問題があるかと思いますが、それらの点につきましては、最終的にはそれぞれの所管官庁で責任を持って御判断をいただく限り、計画については地域の発展のための願望も込められていると思いますので、最終的にはそれらの判断に従いたいと思います。  しかしながら、守るべき海浜の性格は環境庁が判断すべき事柄でございまして、瀬戸内法上もわざわざ自然海浜保全地区という制度がございます。当織田が浜はそれには該当しておりませんけれども、私どもが調べたところでは、本来自然海浜保全地区に指定されるべきところであるにもかかわらず都市計画公園という指定を受けていたためにそれがされなかったという経緯もあるようでございまして、そのような点から考えまして、仮に埋め立ての必要性について運輸省あるいは関係省庁の間でどうしてもこれは必要であるという判断が出た場合においても、この自然海浜を埋め立てることはできるだけ避けるべきである、私どもはかように考えているわけでございまして、そのような考え方で九日の港湾審議会を前に運輸省とも調整を図っていくつもりでございます。運輸省の方におかれても、瀬戸内法十三条の瀬戸内海特殊性に配慮するという規定の精神はよく御承知いただいておるところでございますので、何とか調整が図れるのではないかと考えておるわけでございますが、せっかく努力してまいりたいと考えております。
  133. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 利用目的にはその地域の願望も含まれているだろうとおっしゃいました。地域の願望といえば、織田が浜を子供たちに今のままの姿で残してほしい、今現在織田が浜で泳いでいる子供たちから海を奪わないでほしい、これが最も切実で正当性があり、子孫のためにも最も理由のある願望だということを私は申し上げておきたいと思います。  それから、自然海浜保全地区と同等の織田が浜、その半分にそういうものをつくってしまって残りの半分を活用するのだとか、そこに海岸公園をつくるのだなどと言っても、それはもうだめです。それはもう全部つぶすのと同じことなんです。だから、海水浴場に軽微の影響なんというものではなしに全部つぶしてしまったのと同じことになるというのは、今までずっと埋め立てられてきたところをごらんになれば、そんなことはすぐわかる話です。私は、自分自身のふるさとが堺の臨海工業地帯ですが、あそこがずっと埋め立てられていく中で海浜地帯がどういうふうに滅亡していったかということをよく知っているからそういうふうに言うわけなんです。そして、必ずこう言うのです。そういうふうになってくると、海が汚れているからこれをつくってということで、海の汚れなども午前中も随分理由に出されておられたようですが、そういうふうに理由づけられていって自然海浜は全部つぶれてしまうというのが今日までのたどってきた歴史であったと私は思います。  長官、今までのお話を聞いて御理解をいただいたと思いますけれども、この貴重な織田が浜がこんなことでつぶされていって、結局でき上がった港湾がほとんど利用されない、ペンペン草が上に生えているということになってくれば、それはまさに政府の犯罪と言っても過言ではない、こういうことにつながっていくと私は思うのです。そういう点では、ぜひとも環境庁は、おまえもその片棒を担いだじゃないかと末の人々に言われないようにするためにも、自然海浜を守るのだ、瀬戸内を守るのだという立場を貫いて、慎重の上にも慎重を期してこの問題に立ち向かっていただきたい、私は長官の決意のほどをもう一度お伺いしたいわけです。
  134. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  今治のこの港湾計画は、「瀬戸内海環境保全臨時措置法第十三条第一項の埋立てについての規定の運用に関する基本方針」の記三におきまして一定の留意事項に適合しない埋め立てはできるだけ避けるよう配慮することとされております海域において埋め立てを予定しているものでございます。したがいまして、慎重に対応する必要があると考えておるものでございます。
  135. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 きょうは、残念ながら予定の時間が参りました。  最後に、今国会これが恐らく最後の委員会になるかと思いますので、長官に一言だけお伺いしておきたいわけです。それはアセスメント法案の問題です。  昨年廃案になったまま今国会ついに提出されなかったわけですが、この法案は発電所やコンビナートが対象事業から外されていた、住民参加も公聴会すら義務づけられていないというふうに、全く骨抜きの内容のものでありました。当初は、マスコミや国民からこのアセスメント法案は厳しく批判されました。そういう立場からすれば、政府が今度出すときには、こうした骨抜き法案ではなしに本当に国民が期待していたもの、環境破壊を未然に防止していくような内容の骨のあるものにして出してくるべきだと思いますが、そういう方向で努力をするべきだと考える私の意見に対して、長官はいかがお考えでしょうか。
  136. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほどアセスの法案につきまして御答弁申し上げたのでございますが、現在におきましては、今提出しております法案をこの国会に提出してもらいたいということで今懸命に頑張っておるところでございます。したがいまして、その後にということは今まだ何も考えておりません。
  137. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 答弁になっていないのです。その後にじゃないのです。今度出されるときには、前回批判されたような内容のものじゃなしに、国民が批判した点を受けとめて、そうして本当に役立つようなものを出すという方向で努力すべきだがどうか、こう聞いているわけです。
  138. 上田稔

    上田国務大臣 ただいまは、今出しております法案を本国会にとにかく提出してもらいたい、こういうことで頑張っております。その後の、もしだめだったらという仮定でございますけれども、そういうことを今考えずに、提出してもらうことに懸命になってやっております。
  139. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、しかし私は、環境庁が後退に次ぐ後退だと言われている、こういう信頼を失った庁がそれを回復していくためにも、ここらあたりでひとつ本当に国民が期待する内容のもの、これなら自然破壊、環境破壊を未然に防止できるぞと、もっと喜んでもらえるようなアセスメント法案を出す、そういうものを出すという点では早く出せ、こう言いたいわけです。そうでなければ、あんな骨抜きの法案を、しかもかえって開発の免罪符と言われるようなものを、ぺこぺことどこに頭を下げて根回しをされておられるのかわかりませんが、恩を売ってまで出す必要はない、こういうことを申し上げて終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  140. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、福島譲二君。
  141. 福島譲二

    ○福島委員 私はちょうど昭和五十一年の初当選以来、水俣は私の選挙区でもございます、大変大きな、不幸な深刻な水俣の問題につきましては、あるいは火中にクリを拾うというような、そういった面もないではないわけでありますが、しかし私の政治家としての一つの大きな使命であると考えて、水俣の問題に取り組まさせていただいてまいりました。  この国会におきましても、先般水俣病認定促進に関する臨時措置法の議員立法をお願いをいたしまして、その際は当然のことながら、答弁側に立って御質問する機会がなかったわけでありますが、また野党の皆さん方からも、たまには与党からも与党質問をしろという、そういう御意見もございます。きょうは、この国会の実質的な最終日である本日お許しをいただきまして、主として水俣病問題を中心として若干の御質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、いわゆるチッソ県債の問題についてでありますが、この県債方式は昭和五十三年度にスタートし、当初昭和五十六年度補償金支払い分までの予定でありまして、これをさらに三年延長して、現在のところ五十九年度補償金支払い分まで発行することが水俣病関係閣僚会議で決定をされまして、かつ熊本県当局もこれを了解されているところであります。  しかしながら、昨年、五十八年五月の県債引き受けの際、これを県議会が承認するに当たりまして、県の公害対策特別委員長は次のように発言をしておいでであります。すなわち「チッソ県債の発行はあくまでも緊急避難的措置であることにかんがみ、関係閣僚会議の申し合わせにより県債を発行する予定となっている六十年六月までに、より適切な対応策を見出すよう執行部において十分検討し、国を初め関係者とその実現について協議を始めるよう強く要望する。」こういう要望が附帯条件的に提起をされております。  そのことからもおわかりいただけるように、少なくとも本年度中に国と県は何らかの対応を迫られている状況にございます。きょうの御質問は、この懸案事項に対して根本的に解決できるというようなものでは到底あり得ませんけれども、多少でも問題打開のためにお役に立てればという趣旨のもとに行いたいと思っております。ひとつできる限り明瞭率直に御答弁をいただきたいと思います。また一面、そのような背景を持つ案件でありますし、また趣旨でもございますので、逆に私の発言は、質問というよりもむしろバックグラウンドを明確にしてお互いの共通の認識を持つという意味で、いささか冗長になることもあるかもしれませんが、あらかじめお許しをいただきたいと思います。  特にきょうは、国土庁から塚本参事官、山田計画官、国土庁関係の御質問はもう最後の十分間ということで、大変御迷惑でございますし、また大変お忙しい中を、大蔵省からは吉本主計官、寺本企画官、そして理財局の高橋地方資金課長、さらに自治省財政局から横田調整室長がお見えいただいております。そのほとんど多くの皆さんが最近の時点での異動でおかわりになられたばかりでございまして、この水俣の問題というのは大変長い歴史を持つ沿革的な、非常に深刻な問題でございます、いろいろ過去の背景というものを十分に御認識いただくことがこれからこの問題に取り組んでいただくに当たって大変大切なことでもございますので、大変御多忙の中で恐縮ではございますが、ひとつそういう意味合いを含めて、場合によっては御質問にお答えいただくという機会があるいはないかもしれませんが、どうぞ私の申し上げるところを十分にお聞きいただき、今後の御参考に供していただければ幸甚でございます。  さて、県債方式に基づくチッソに対する貸付金は、五十三年十二月の第一回から昨五十八年十二月の第十一回の貸し付けまでで総額二百六十二億三千四百万円に上っております。この金額は本年度の熊本県の一般会計財政規模四千六百六十九億、県税収入の八百九十七億と対比いたしますと、その負担の額がいかに大きく、しかも今後いつまで、またどれだけ増大し続けるかが全くわからないという点で、熊本県側がチッソとともに県が倒産をしてはたまらないというような素朴な心配を持つことも、一面また当然のことかと思います。  しかも、患者の皆さん方への補償金を担保し、地域経済一つの核としてのチッソの倒産を防止するという趣旨でスタートをしたこの県債方式は、元来熊本県側が要望した趣旨とは全く違っていた、ここに問題の混迷の大きな原因があると思います。県側が要望しておりましたのは、別途何らかの国側の手によるチッソに対する金融支援措置でありまして、いわば県債方式というものは、県側からすれば、国側の立場からすりかえられた、ありがた迷惑な代替策だ、県は緊急避難措置としてこれを受け入れたにすぎないという感覚が県の感覚の前提となっておるのであります。  このことの当否は別といたしましても、この点は県債問題の処理に当たりまして大変重要な点であり、特に大蔵、自治、両財政当局にしっかりとこの辺は理解していただくために、当時熊本県で流布されておりました若干の新聞記事あるいは当時の責任者の御発言、こういったものを御紹介しておきたいと思います。  順序は不同でありますが、五十三年の一月二十三日の熊日の社説では、この当時県債問題を受け入れるかどうかということが大変熾烈な論議となっておった時期でありますが、この社説で「国の水俣病に対する一貫した巧妙な”責任回避”の姿勢」こう題しまして「熊本県の行政負担で県債を発行させ、国は”責任逃れ”では、地元としてはたまったものではない。県民としては”特例”ではなく”法律”に基づきPPPを回避することのない補償に関する抜本策を要求したい。」こういうふうに言っております。  また、五十三年一月二十一日の県議会公害対策特別委員会でも、その中の発言で「国は認定業務もチッソ救済も県に押しつけてくる。県債の話が出たらけ飛ばすべきだ。我々の要望したチッソ支援策は特別立法措置による政府系金融機関の特別融資だったはずだが、何ら進展させぬまま、これを飛ばして県債の条件闘争に県執行部が入るのは筋が通らない。」こういう発言に対しまして、当時県の公害部長がこれに答弁して「この県債は県の希望で起こすものではなく、政府が県に協力を求めてのものだから、一〇〇%保証は当然だ。」こういうような答弁をいたしております。  また、同じ五十三年一月二十三日の県の決算特別委員会では「何らの歯どめもなしに引き受けたら大変なことになる。将来県は背負い切れないほどの公債費を抱え込み、財政は破綻し、必要な事業もできなくなる。」こういう発言があっております。  さらに、五十三年二月十一日朝日新聞に登載された沢田知事の談話として「県債発行について、県としては国による償還の一〇〇%保証や水俣病患者認定業務の一部の肩がわりなどの条件が整えば引き受ける腹づもりでいる。しかしこちらから頭を下げてお願いする筋合いではない。」こう申しております。  もともと熊本県と国、環境庁と言ってもいいわけでありますが、私もずっと終始その関係を見ておりました。かつては、大変残念ながらその関係は険悪でございました。当時の沢田知事が同じ五十三年一月二十三日に西日本新聞のインタビューの中でも言っておられますが「昔から、いわば県の国に対する怨念の歴史がある。」そういう言葉さえ使っておいでであります。当時県議会で水俣病認定業務の返上決議ということがなされましたが、それもやはりそのような背景から提起されたものでございます。この県債方式は、地元の熊日新聞等から「国の水俣病に対する一貫した巧妙な責任回避」だ、こういう評価をされました。さらには「県民感情を逆なでする案」であるとまで酷評された、そういう経緯がございます。  そして、このことは、単に地元熊本県内だけではなくて、当初は自治省も極めて消極的でございました。このことは五十三年六月六日に参議院の地方行政委員会で、社会党の小山一平さんの質問に当時の自治省の森岡財政局長が答えておられますが「熊本県は県に負担がかかるような措置には応じられないとしているが、これはもっともだと思う。」と、当時自治省責任者が答弁をしておられることからも明らかであろうと思います。  もちろん自民党の熊本県連としても、全く今申し上げたような論調に立って、五十三年の二月九日に上京して党本部に要望しておりましたが、その内容も、県債などということは一言もありません。開銀融資によってチッソを支援してほしい、そういう内容でありました。  また、国は県に県債を押しつけるならみずから国債でやればいいじゃないか、こういうような主張も、例えば現在地元の水俣の市会議員である川本輝夫さんあたりから提起されたこともございます。  単に患者さん側の発言ということだけでなく、当時の沢田知事も、その後参議院に転出された後で「県政十二年を回顧して」という記事を五十八年九月朝日新聞に連載をしておられますが、その中の九月二十九日付では「熊本県を患者の矢面に立てて国は隠れていると恨みました。ずるいですよ、国はいつも。”チッソ県債”も私は最後まで”国債”でと抵抗したのです。国債はPPPの原則を崩すというけれども、原因者負担の原則を聖域にしておくこと自体おかしい」、こういうふうに主張をいたしております。また同じくそのときに沢田さんは「自治省は初めは県債反対の私を応援してくれたんですが、途中で私の説得係に変身してしまいました。ギブアップです。」こうも語っておいでであります。  私は、何もPPPの原則に抵触するから国債がだめだとは思っておりません。財政制度上そもそもなじまないから国債は無理だと思います。そこで、今申し上げたようなことを念頭に置いていただきまして、まず、果たしてこの問題の処理のために、従来県債方式を踏襲してきたわけでございますが、何か県債方式にかわるようなよいアイデアが考えられるかどうか。特に国債あるいは融資、特別立法、こういった問題がそれぞれ関係者からはちらほら話題になっておるわけでありますが、一体政府側としてそういうことが可能性があるものかどうか、各省からひとつ見解を伺っておきたいと思います。最初に大蔵省、お願いしましょうか。
  142. 寺本泉

    ○寺本説明員 お答え申し上げます。  チッソに対する金融支援措置につきましては、五十三年六月の閣議了解等に基づきまして、大蔵省としてもできるだけの努力をしてまいりました。  具体的な支援の方法につきましては、ただいま先生のおっしゃいましたように、国債につきましては財政制度上なじまないというような問題もございますし、あと融資、特別立法等につきましても、過去種々の検討がなされたわけでございますけれども財政当局としての立場からは現在の県債にかわるよい方法を見出すというのは難しいのではないかと考えたところでございます。  以上でございます。
  143. 福島譲二

    ○福島委員 特に自治省は、さっき申し上げたように、当初どちらかといえば消極的であったと思いますが、その後、政府側の一員として県債方式についてむしろ熊本県当局を納得をさせる、説得をする側に立たれたというように今申し上げました。その辺を含んだ上でひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  144. 横田光雄

    ○横田説明員 委員指摘のように、当初自治省といたしましては県債発行方式には消極的でございました。その理由は、前例がないこと、あるいは回収金を確実に回収することができるかどうかという点に問題があったということでございます。しかしながら、その後県債の発行に踏み切った一つの理由といたしましては、やはり熊本県自身の対応もございましたが、それとともに、チッソが倒産した場合地域経済に対する影響がどのようなものであろうか、あるいは水俣病患者に対する補償金の支払いが果たしてできるかどうかというようなことも考えられたわけでございます。最終的には、県債発行方式によれば、チッソに資金を貸し付け、企業経営の安定向上を図ることにより将来その返還を可能ならしめることと、あわせまして国において十分の措置を講ずるよう配慮することとされた、こういうことから、緊急避難的にやむを得ないもの、このように考えたわけでございます。
  145. 福島譲二

    ○福島委員 今大蔵、自治両省から、財政当局の立場からお答えをいただきました。私もそういうことであろうと思います。特に国債説などは、大変聞こえはいいのですが、要するに、一般会計の歳出予算でチッソに融資しろという主張にほかならないわけでありまして、率直に言うと、本当にこれはもう全く実現不可能な、荒唐無稽の案と言わざるを得ないと思います。特別立法という主張も、現存するチッソの倒産を前提として立法するというようなことは、これはもうPPPの原則を持ち出すまでもなく、極めて困難なことであろうと思います。  私は、この問題を考えるときに、制度論としてはっきりと、できることとできないこととをきちっと整理して取り組んでいく必要があるのではないかと思います。同時に、今もお答えの中にありましたように、この制度が極めて異例なものである、前例のないものであるだけに、とかく起こりがちな誤解も明確に解き、関係者の正確な理解を得られるように努力すべきであろうと思います。  その最たるものは、チッソ県債のために熊本県の多くの事業が圧迫されているというような懸念、あるいは中小企業者に対する金融にしわ寄せか来ているのではないかというような懸念が、今なお一般の、少なくとも県民の中にはかなり多く見受けられます。しかし実際には、この県債のために県の一般会計は一文も負担をいたしておりません。そしてまた、必要な資金もわずか一・一%だけが地元肥後銀行の資金でありまして、大部分の九八・九%は資金運用部資金や興銀の資金を東京から熊本に導入しておるものでありまして、地元の中小企業等に対する融資が圧迫されるというような懸念は全く当たっていないわけであります。  問題は、万一チッソに不測の事態が発生したときに、県がチッソとともに倒産してはかなわないという心配であろうと思います。本来、この県債方式は、あくまでもチッソの存続を前提、いや、むしろ存続をあくまでも図るために考えられたものであります。もしも倒産の可能性が強いとすれば、この制度そのものの可否をむしろ問わなければならない、そういう矛盾をはらむものでありますが、一面、熊本県民側の素朴な心配を解くことも、現実政治面としては必要不可欠のことであり、制度発足以来、この点が常に論議の中心であったこともまた当然のことであろうかと思います。  そこで、多少長くなりますが、この点の経過を見てまいりますと、第一回の五十三年六月二十日の閣議了解では「熊本県財政への配慮」として、先ほど自治省からもお答えの中にありましたように「熊本県がチッソ株式会社に対する金融支援を行うために発行した地方債の償還財源の確保が困難となった場合においては、国において所要の措置を講ずるものとし、その具体策は、関係大臣が協議のうえ、決定するものとする。」こういうふうに規定をいたしました。さらに、関係省庁の覚書で、「地方債の償還財源の確保」として「熊本県の地方債による融資について、万一チッソ株式会社からの返済が履行されない事態が生じた場合には、熊本県の当該地方債に係る元利償還財源については、国において十分の措置を講ずるよう配慮するものとする。」こういうふうに明らかにされました。  しかし、この心配は、事あるたびに県側からのいわゆる一〇〇%保証要求として提起されてまいりました。特に、五十五年末にも県側の不満が爆発をいたしまして、今申し述べた第一回のこの文章だけでは不十分だということで、再度往復文書が交わされました。  第一回のこの考えを補足するという意味で、県知事名をもって昭和五十五年十一月二十八日付「水俣病対策について」と題する要望書が提出をされました。すなわち、   多額のチッソ県債を発行している熊本県としては、万一、将来チッソ株式会社に不測の事態が生じたときは、その対応のあり方について、今後なお論議を要するとしても、現実問題として、熊本県の財政力によってこれに対処することは到底不可能な事情を十分に御理解いただき、県の財政にいささかの支障をも来さないよう、国側において十分な対応策を講じていただくようお願い申し上げます。  チッソ株式会社の経営の維持強化のためにとるべき措置についても、これまでの検討を踏まえ、できるだけ速やかに結論を得るようお願い申し上げます。 こういうものでありまして、これを受けた形で同日付で直ちに関係閣僚会議が開かれ、その名において「熊本県の要望については、その趣旨を踏まえ、昭和五十三年六月二十日付閣議了解に沿いつつ誠意をもって対処する。」そのことが明らかにされました。これはこの時点で膠着状態に陥っておった事態を打開するために、実は、私がこの苦肉の策のやりとりの筋書きをつくりまして、当時の藤森環境庁企画調整局長と御相談の上、やっと実現をいたしたものでございます。この文章によって、その時点における県議会は、まずその際の県債の追加発行に踏み切ることにようやく同意をされたという経緯がございます。  にもかかわらず、さらにまた五十八年の春に至りまして、県債発行の際に県側の不満が再度爆発をいたしまして、再び関係閣僚会議が招集されました。その際には   熊本県がチッソ株式会社に対する金融支援を行うために発行した地方債が累増し、万一不測の事態が発生しチッソ株式会社からの償還財源の確保が困難となった場合、熊本県財政での対応が極めて困難な実情にあることに留意し、熊本県の当該地方債に係る元利償還財源については、国において所要の対応策を講ずるものとする。  熊本県においては、上記地方債について、チッソ株式会社の患者に対する補償金支払に支障が生じないよう、その円滑な発行に努めることを期待する。 こういう閣議了解が行われました。  そして、これを補足する形で会議の席上、次のような当時の梶木環境庁長官の談話がなされました。実はこの三回にわたる、今詳細に御披露いたしましたような関係閣僚会議、基本的にはやはり気分の上で、少しずつ県側の御心配になっておるところの心配に対するお答えが、少しでも安心がいくように、多少なりとも前進をしたというように関係者としての私は受け取っておるところであります。そして実のところ、この五十八年のやりとり、そして環境庁長官の談話、こういった問題が発生いたしましたときには、たまたま私が環境政務次官としての立場におりました。そういう立場でこれらの文章についても直接関与をいたしたわけでありますが、この談話の内容につきましても、当時関係大蔵当局と非常に細部まで詰めた上で関係閣僚会議で読み上げられたものでありまして、熊本県当局としては関係閣僚会議の了解事項と合わせて一本というふうに受け取られておる経緯がございます。  しかしながら、残念ながらその内容が正式記録としては残っておりませんので、いささか長くなりますが、この談話もこの際、明確に記録として残すという意味で読み上げておきたいと思います。   水俣病問題につきましては、これまで、関係省庁及び熊本県の格段の御配慮をいただいてまいりました。特に、患者補償の円滑な実施のため、これに必要とする資金を熊本県が県債を発行しチッソ株式会社に融資することによって対処してきているところであります。もちろん、この問題につきましては、まず、チッソ株式会社の経営基盤の維持強化を図ることが何よりも重要でありますが、加えて、現在の県債発行による金融支援措置が引き続き円滑に機能していくことが重要であります。  この県債問題につきましては、その発行累計額が既に二百十億円を超え、引き続き増大することが予想されます。このため、万一、チッソ株式会社に不測の事態が生じた場合には、熊本県財政に深刻な打撃を与える結果になりかねないとして、今後の県債発行について、熊本県側に消極論が強く、国としても改めて何らかの対応が迫られております。  これまで、昭和五十三年六月、五十五年十一月、五十六年十一月の三度にわたり、水俣病対策について関係閣僚会議の申し合わせを行っておりますが、この申し合わせの線に沿って、チッソ株式会社に万一不測の事態が発生したときにおいても、熊本県財政にいささかの支障をも来さないよう国側において十分な対応策を講ずるという趣旨で、本日の関係閣僚会議において、熊本県が発行する地方債に係る元利償還財源については、国において所要の対応策を講ずることを明確にし、もって熊本県側の不安を解消し、今後の熊本県債の円滑な継続的発行についての条件を具備しようとするものであります。  しかしながら、先ほども述べたとおり、そもそもチッソ株式会社に不測の事態を来さないよう、チッソ株式会社の自助努力を基本として、あらゆる努力を傾注しなければならないことは改めて申すまでもないことであり、関係各省におかれましても、この点につき今後一層の御配慮を賜りますようお願い申し上げる次第であります。  さらに、熊本県におかれましても、本日の関係閣僚会議申し合わせの趣旨を御理解の上、今後とも県債の円滑な発行に努めていただくことを期待いたします。 以上、正式文書としても残っておりませんので、念のため、今申し上げましたような経緯について間違いがないかどうか、関係各省を代表するという立場でひとつ環境庁にちょっと確認をいただいておきたいと思います。 上田国務大臣 お答え申し上げます。 本問題につきましては、熊本県にも大変にいろいろと御心労を煩わしております。御迷惑おかけいたしております。また、先生も非常にこれに対して御心労に相なっておりまして、変に申しわけございません。 ただいま御確認の点でございますが、昨年の関係閣僚会議の席上におきまして梶木前大臣ら、患者の県債問題に関しまして、チッソに万一のことがあった場合にも、熊本県財政にささかの支障をも来さないよう国側において十分な対応策を講ずる旨の発言がございまし。その考え方には今現在も変わりはございません。
  146. 福島譲二

    ○福島委員 当然のことながら、大蔵、自治等、関係各省も今の経過についての環境庁長官の発言、異存がないことと思います。  このように、二度三度にわたって関係閣僚会議を招集していただき、今のような、多少なりとも県側が納得をし、安心をしていただけるような措置というものを節目節目にとってまいりましたけれども、この域に達してもなお、県議会公害対策委員長の御報告内容を先ほど御披露いたしましたけれども、来年度以降県債を継続するについては、さらに何らかの一歩前進が必要であるというような感覚を県議会方面はお持ちであります。この問題の詰めを今後、秋ないし年末の熊本県議会までに詰めておかなければならない。県側の素朴な希望というものは、この問題のいわゆる一〇〇%保証ということであります。  しかしながら、国側が完全な意味での保証を与えるとすれば、これは国庫債務負担行為という形で、予算で議決をするということしかあり得ない。しかし、チッソ県債が、前にも申し上げましたように、あくまでもチッソの存続というものを第一前提としたものであるという意味で、そのようなことは不可能ではないかと私は思います。また、この種の措置はやはり国と県が共同して行う措置だ。そのような意味で当面、万一不測の事態があったとしても、国と県で穴埋めをするという形をとる。そして現実問題として、その額が熊本県のような貧乏県にとっては極めて巨額なものであり、また、先刻来るる経過を明らかにしてまいりましたように、県側としてはこれは押しつけられたという意識を持っている以上、実際問題として県が実質的に肩がわりをするということはちょっと考えにくいと思います。とすれば、事後対策として、その県負担分については特別交付税などで穴埋めをしてやらなければならない。しかしながら、これまた特交の性格上もあって、あらかじめ特交を具体的にお約束するというわけにもまいらない。こういうようなことではないかなと私は私なりに理解をしておるわけでございますが、その点についてどのように御理解が、ひとつ自治省にお答えをいただきたいと思います。
  147. 横田光雄

    ○横田説明員 具体的に不慮の事態が生じたときどのような対策をとるかということにつきまして、私どもも心の底から不慮の事態が生じないことを念願しておるわけでございますが、いずれにいたしましても、委員先ほどから繰り返しお述べになっておられますように、関係閣僚会議におきまして「熊本県の当該地方債に係る元利償還財源については、国において所要の対応策を講ずるものとする。」とされておりますので、自治省としましても申し合わせに沿って十分な措置がなされるものと考えております。
  148. 福島譲二

    ○福島委員 大蔵省、念のために補足していただきたいと思います。
  149. 吉本修二

    ○吉本説明員 先ほど先生から御指摘ございますように、現在の県債方式というのはチッソ株式会社の維持存続を前提としてやっておるものでございます。その建前からいたしましても、現段階においてそれに関して何らかの保証をするようなことは考えられないということでございまして、なお万一不測の事態が生ずるというような場合には、昭和五十三年六月の閣議了解等の線に沿って対処してまいりたいと考えております。
  150. 福島譲二

    ○福島委員 いわゆる一〇〇%保証の問題というのは、先ほど、それぞれの県側の不満爆発の都度一歩一歩前進して、また国側の回答によって気持ちの上で一〇〇%保証——政府側からすると言葉が悪いとおっしゃるかもしれませんが、熊本県の言うところの一〇〇%保証を気持ちの上では実質的に約束された、これ以上は政府側として物の言いようがないというような段階までほぼ来ているのではないか、私はこのように思います。  ここで、多少本筋から外れますが、本来、本質的にこの問題とは直接のつながりはないわけでありますけれども公害健康被害補償法において公害原因企業が消滅した場合の措置が欠如しておる、その穴を埋めておくことはそもそも本来必要なことであり、これはいわば法の欠陥でもあると思うわけでありますが、そのようなことを検討して法改正、これはもう簡単にできることとは思えませんし、なお従来もこの委員会で何度か話題になった問題であることも承知をいたしております。しかし、やはりこの水俣の問題とは全く切り離した意味においてこの問題をあらかじめ十分に勉強しておく、検討しておく、場合によってはいつでもその穴埋めをするだけの準備を持つということは、これはまた政府側としても当然なさっておかなければならないことと思うわけでございますが、その辺についての環境庁の御見解を承っておきたいと思います。
  151. 正田泰央

    ○正田政府委員 本件につきましては先生最高の権威者でいらっしゃいまして、つとに御洞察の上の御質問と思っておりますが、何と申しましても本法が本来当事者間の不法行為責任追及という民事上の処理を図るべく考えられた制度でございまして、御指摘のような事態は本制度として本来予想していないと考えておる次第でございますが、御説のように費用負担の根本にかかわる問題でございますので、私ども慎重に研究してまいりたいと思っております。  いずれにいたしましても、そのような事態を招かないように、政府を挙げて最善の、事態に備えた方策を講じていくことが肝要というふうに考えておりますので、御了解いただきたいと思っております。
  152. 福島譲二

    ○福島委員 今のお答えの中でそのような事態が起こらないようにということですが、私はこの問題は水俣の問題とは離れてということを申し上げたわけでありまして、一般論として、数ある企業の中には、公害原因企業と言われる企業の中にも一たん緩急あるということは十分に予想されるわけでありますから、一般論としていつでも対処できるような、あらかじめ十分な御勉強をお願いをしたい、そういう趣旨で申し上げたところでございます。  ところで、またチッソ県債の問題に戻りますが、このチッソ県債は、改めて申すまでもありませんが、単に一私企業である、しかも公害原因企業であるチッソを救済しようというものでは全くありません。万一チッソに不測の事態が生ずれば、これはもう患者の皆さんも、またチッソの会社も従業員も、また水俣病あるいは芦北地域の全体の地域の住民の皆さんも、さらには県も、また国も、それぞれ皆大変大きな困惑をするという事態になる、こういうことだと思います。  そういうことで、先ほど来この県債方式にかわる何かいい方法があるだろうかという御質問に対しては、この県債方式以外には非常に考えにくいという政府側の御答弁があったわけでございますが、これからも知恵を出して、またいい知恵があれば新しい方法でももちろん構わぬわけでありますが、いずれにしても、そういう意味で何としてもチッソを支援し続けていかなければならない、これが私の率直な気持ちでございます。  県の方では、そもそもこの県債は緊急避難の措置だという認識がございます。先ほど自治省横田調整室長も緊急避難という言葉を答弁の中で使われました。しかし、先刻来の御答弁でも明らかなように、なかなかこの方式以外に新しいよいアイデアが浮かんでこない。そういう意味では、決してこの緊急避難という言葉は、一時的なというような意味合いではなくて、まあ県債方式というものが決して褒められた堂々たる制度ではないかもしれませんが、いわば緊急避難という言葉の中に、一時的なという意味以外に、どうもこれ以外には方法がないというような感覚、例が適切であるかどうかわかりませんが、いわば刃物を持って向かってきた強盗を警官がピストルで撃つ、そういう意味での緊急避難措置であって、万一県側がこの方式に御納得いただけない、協力をいただけないというときには、これはもう直ちにチッソが本質的に経営を維持することが困難になる。そして、それを回避しようとする手段は全くない。そのことによって生ずる大きな混乱というものを十分に覚悟すべきである、このように考えるものであります。     〔委員長退席、戸塚委員長代理着席〕  そこで、先ほどせっかく、自治省御答弁の中で緊急避難というお言葉をお使いになりましたので、自治省のお気持ちの上での御答弁の中での緊急避難とは、今私が申し上げたような意味で、一体どういう緊急避難であるかについてちょっとお聞きをしておきたいと思います。
  153. 横田光雄

    ○横田説明員 緊急避難と私ども認識しておりますのは、現在のところ関係各省協議した中で一番いい考えではなかったか、しかしながらあくまでもそれが、最終的に永続的にやるべきものかどうか、そういう点につきましては、期限も暫定的でございましたので緊急避難的と申し上げたわけでございます。したがいまして、委員指摘のことと内容といたしましては変わっていないかと思っております。
  154. 福島譲二

    ○福島委員 永続的なものではない、そのために期限を切ったということは、確かにそのとおりでございます。しかしその後、この制度が実現してから数年、そして今また来年度以降の問題を改めてどうするかということを考えなければならないときに、しかも先刻来お答えの中に、この制度にかわるべきなかなかいいアイデアというものがないということを前提として、改めて今、永続的なものではないというお答えがございましたが、再度その点についての補足してのお答えをお願いしておきたいと思います。
  155. 横田光雄

    ○横田説明員 ちょっと舌足らずで恐縮でございましたが、私が申し上げました緊急避難的、永続的でないと申し上げましたのは、最終的にすべてこの方式だけでいくのかということが決まっていないという意味で申し上げたわけでございまして、現在の段階でさらにやる場合には、委員指摘のような方向が、現在考えられるものとしてはそれだけしかないのではないかと思っております。
  156. 福島譲二

    ○福島委員 この県債方式は、先般来申し上げましたように、県側には往々にして国が県に押しつけたというような感覚が、少なくともこの制度が動き出した当時はございました。しかし私は、そういうものでは決してないんだ、あくまでもこの水俣問題を大局的に考えていく上に当たって、国と県が協調して取り組んでいくべきものだと思います。  県側には往々にして、少なくとも過去においては、かくかくしかじかの要望が満たされなければ県債発行には応じられないというような表現が見受けられます。また、これもちょっと古い新聞記事でありますが、五十三年一月二十三日の西日本新聞での沢田知事の発言として、県議会方面には「好機だからもっと多くを国に要求すべきだ」、こういう、節目節目に立って見受けられた事柄でありますが、そういう気持ちではなくて、より大乗的な見地に立って、国と県が一体となってこの難問題に取り組んでいただく必要があると思います。  同時に、この問題をめぐって、とかく、どちらかといえば県側が積極的にならなかった背景として、私は、水俣が熊本県にとっては最南端の一地域にすぎないということや、あるいは水俣病問題をめぐる一般的な背景、そういった問題のほかに、チッソと地域の連帯感に関連する問題があるように思います。水俣市が本来チッソの城下町的な色彩を持ちながら、必ずしもチッソに対して根強い愛着を市民が抱いているかどうかが私は一つ疑問だろうと思います。  それに関連して水交社の問題があります。水交社と水俣の中小企業者とのあつれき、これが、現在の水交社が、正確にはチッソとは現在は関係がないのかもしれませんけれども、少なくとも沿革的にはチッソ関連の協同組合だったことから、そして現在その多くの役員がかつてチッソに勤務されたことがあるというような意味合いにおきまして、水交社の経営姿勢というものが現実に水俣の商工会議所の憤激を買って、ひいてはチッソへの風当たりが強くなっているということも現実問題として否定できないところではないかと私は思います。きょうはチッソの会社側や組合側からも傍聴にお見えになっておられますけれども、どうか、チッソが真に地元から頼りにされる、愛される企業体として再起されることが何よりも大切なことの一つであると私は思いますので、この辺はひとつ十分に御留意をお願い申し上げたいと思います。  最後に、この県債問題に関連して、国と県の協力一致が極めて重要であり、今まで申し上げました幾つかの点についてことしの秋までに具体的に県側と環境庁とで協議をして煮詰めていただく、このことが大きな懸案として残されておりますので、環境庁の方にもとの問題についてのこれから秋にかけての積極的なお取り組みをいただき、県側、県議会側がこの問題に一緒になって積極的に取り組んでいただく、そのような方向にお取り組みいただくことをお願いいたしまして、この県債問題についての御質問から、次のヘドロ県債の問題に移りたいと思います。  水俣湾の堆積汚泥の処理事業に関連してでございますが、先般この事業費が改定をされて大幅に増加をいたしまして、従来百九十三億三千万とされておりました総事業費が四百三十五億に膨張いたしました。工期も予定されていた五十八年完了がさらに六年間延長いたしました。これに伴って、公害に係るチッソ負担金も百二十五億七千万円から二百七十一億円と大きく増加することになりました。  そして、これに伴うチッソの償還金は、これは一応の推算でありますけれども、六十年十二億一千万、六十一年十五億二千万、六十二年十七億三千万、六十三年十九億三千万、六十四年二十億九千万、このように年々巨額なものに上ることが予想をされております。  今チッソの経営内容に触れるいとまはありませんが、チッソはさっき申し上げましたような一般県債に係る償還だけでも決して容易でない状況にあります。さらに加えてこのような年々の巨額の償還を負担するということは至難のわざであろうと思います。一方、このヘドロ対策は、この地域の漁業者の生活の安定を図るためにも、さらに事業が大幅に延びるようなことがあってはならないと思います。このために、チッソが負担にたえ得るよう、早急に何らかの対策をとることが必要だと考えます。  幾つかそういう具体策は考えられるかと思います。私なりに考えてみますと、一つは資金運用部資金への償還条件を緩和をする、あるいは公共事業と公害事業の負担割合について見直す、あるいは公害防止事業団の事業とする、あるいは公害防止事業団からの融資とする、あるいはまた現在進行中の埋立地を評価して、これをチッソ負担分からあらかじめ減額する、あるいはその他にもさらに専門家の皆さん方からは名案があろうかと思います。この中の幾つかには法令改正が必要なものもあると思いますし、場合によってはまた来年度予算に関連をするものもあろうと思います。そんな意味で、まだ今の段階できちっとした考え方が明示されることは非常に困難かと思いますけれども、今私が申し上げましたような事柄について、環境庁見解を承っておきたいと思います。
  157. 正田泰央

    ○正田政府委員 大変貴重な御示唆をいただきましたが、現行制度上いろいろ問題もある点もあろうかと思います。いずれにいたしましても、原因者負担という原則の上に立っていろいろの対応策を考えなくてはいけないと思っておりますが、幅広く関係者の意見を集めて勉強してまいりたい、こう思っております。
  158. 福島譲二

    ○福島委員 この問題は、水俣湾のヘドロ問題を処理するという意味で、非常に厄介な問題でありますけれども、きょうおいでの関係各省、きょうは運輸省はおいでいただいておりませんでしたが、運輸省等含めて今の段階から至急詰めていただきたい、このことをお願いをいたしておきたいと思います。  なお、これは私見でございますが、後にも触れるつもりでおりますけれども、私は、公害防止事業団は新しい時代の要請に従って基本的に改組を考えるべき時期が来ているのではないかと思います。これに関連いたしまして、できれば次の国会にでもこの公害防止事業団法を改正をすることによって、公害防止事業団を何らかの形でかませることによって処理をするということが有力な一つの案ではないかなと考えております。それは技術的にもまた内容的にも非常に困難な問題があろうかと思いますが、ひとつそういうことを含めて、運輸省、大蔵省あるいは自治省関係各省との間で今後十分に問題を煮詰めていただくことを、再度強くお願いをいたしておきたいと思います。  ところで、チッソの経営改善は、今の一般県債あるいはこのヘドロ県債、そういう問題を通じて何よりも必要なことでございます。このことは、毎年毎年の関係閣僚会議でも登場しておる課題でありますけれども、どうも率直に言って、いささかお念仏のような感じがなくもありません。具体的に実りある形で何らかの対策が考えられるものかどうか、政府側として、単に一私企業の便宜を図るわけにはまいらないという気持ちもわかりますけれども、事は世界に例を見ない悲惨な公害問題を背景としての大きな混乱を回避する決め手であろうと思います。これまた通産省、きょうおいでいただいておりませんけれども、通産省にももっと前向きに取り組んでいただくように、ひとつ環境庁からも強く申し入れていただくように要望いたしておきたいと思います。  同時に、このヘドロ関係の事業によって生まれる五十八万平米の埋立地が、水俣・芦北地区の将来の大きな飛躍につながるように——大変大きな面積でもございます。客観情勢非常に厳しい中ではありますけれども、せっかく生まれるこの土地を有効に利用して、今申し上げた意味で役立つようにあらかじめ十分に心にとめていただいて、関係各省との間でもよい知恵を出していただくように心からお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、水俣病の認定に関連して若干のお尋ねをいたしておきたいと思います。  この国会におきましても、さきに本委員会において藤田スミ委員から、また参議院においても穐山篤委員から、最近逐次認定率が低下し、棄却率が高くなっているが、これは五十三年の新次官通達の影響であり、かつ意図的に患者を切り捨てようとするあらわれではないかという御趣旨の御意見がありました。  しかし、私は常識的に言っても、事件発生以来既に約二十年、だんだんと認定率が低下していく傾向にあるのはむしろ自然の趨勢でもあり、また水俣病の程度も当初の重症患者の密度からだんだんと軽症者がウエートを増し、また地域的にも、その分布は水俣湾を中心として遠くなるに従って水俣病患者の発生率も低くなっていく、大ざっぱに言ってそういう傾向にあるのは決して不自然ではないと思います。  地域的に水俣病の発生率を見てまいりましても、中には若干のでこぼこはありますが、人口対認定者の率で、水俣の中心である月浦が一五・一%、袋地区が一二・四%という非常に高率であるのに引き続いて、だんだん遠くなるに従って、田浦あたりになりますと二・五%と、ぐんと低くなっております。  また、処分者のうちの認定者の比率も、当初四十四年は一〇〇%でございましたが、四十六年にはこれが九九%でほぼ一〇〇%、だんだん低下をいたしまして、五十一年五四%、そして五十三年二六%、最近では五十八年一四%、五十九年一〇%というふうに年々低下をいたしております。そして、同じ認定でも、古い時代には積極的に水俣病であると確認されるウエートが断然高かったわけでありますが、年々、水俣病ではないとは断定できないという、いわば消極的な認定のウエートが高くなってきております。  詳しく申し上げる時間的な余裕もありませんが、四十六年以前は詳しい資料がありません。積極的に水俣病であるという認定、これはいわば第一類型。第二類型として水俣病の可能性があるという形での認定。第三類型として水俣病の可能性は否定できないという類型。こういう類型別に若干見てみますと、四十七年には認定された二百四人のうちで、その第一類型が百三十二人、圧倒的でありました。四十八年も二百九十二人の認定者のうち第一類型が百六十一人ということであります。しかし、四十九年からその積極的な第一類型は激減をいたしまして、五十一年以降は第一類型として認定された方は一人もいらっしゃらない。第二類型、水俣病の可能性があるという形での認定も五十四年以降にはもう全然いない。そして、五十四年以降は大部分の方が水俣病の可能性は否定できないという形での認定を受けておいでであるわけであります。  こういう状況の中で、五十五年九月十八日から一部申請者団体等によって検診拒否運動が開始をされました。そして、その結果、従来八〇%以上あった受診率が三〇%台に激減をしております。かつての不作為違法の判決、そして昨年の待たせ賃訴訟の第一審国側の敗訴と相次いで、国、県は患者申請者団体の検診拒否運動の中で悪戦苦闘しておるというのが現状であります。  そこで、ここに興味ある実例を一つ紹介しておきたいと思います。  このところ、検診の通知を出しても、何の御連絡もないまま検診を受けない方も多くなっており、このため本年三月二日に県公害部長名で、未処分者のうち特に処分が急がれる旧法申請者のうち三百三十四名について検診呼びかけをいたしました。その結果でありますが、第一回の回答では、総数三百三十四人のうち、積極的に受診を希望される者が二六%、八十七人、何ら回答されない方が六五%、二百十七人ございました。この二百十七人について再度電話の照会をしたところ、受診の意思があると確認できたのがそのうちの十五人でございます。  さらに四月二十五日に第二回の照会文を発送して検診の呼びかけをいたしました結果、受診意思ありが二十一人、相変わらず回答されない方が百五十三人、結局受診意思ありというのは、合わせまして百二十三人、三七%にすぎなかったということであります。  なお、受診意思がないという中には、少数でありますが、待たせ賃訴訟を取り下げれば受けるという方、あるいは三次訴訟が決着するまでは受けないという方、あるいは審査会に疑問を抱いている方、あるいは切り捨てになるので受けないという方が見受けられたことも極めて印象的であります。  なお、申請者団体が検診拒否運動を続けておられますが、それをやめる条件としては、申請と同時に医療費を補助する、あるいは棄却者に対して行政不服審査の裁決が出るまで医療費の補助を継続する、あるいは開業医のカルテを認定審査の資料として採用する、こういったことが挙げられております。  一方、水俣周辺において、水俣病として申請される約半数の方々が、ふだん家庭医としてかかりつけておられるお医者さんに行かずに、市内の特定の病院に行ってカルテを書いてもらうということも、これまた現地での極めて特徴的なことであります。  私は、今幾つかのことを背景として申し上げました。そういう数々の事柄から判断をいたしましても、不作為違法と言われるこの状態を早く解消することは何よりも必要であるといたしましても、そのために患者さんたちと国、県の信頼関係前提であるというような公式的な見解だけでは問題が解決しないのではないかと思います。  この点について去る四月十三日、本委員会において藤田スミ委員から、検診拒否の理由は幾つかあるが「結局早く言えば、治療研究事業、医療費の問題を理由としたものなのです。ここのところはどうしてもわかっていただきたい。」という言明をなさっております。要するに、水俣病として申請をすれば、申請一年を経過すれば水俣病治療研究事業として医療費の自己負担分を国と県が負担することになります。また一定の回数はり、きゅう、マッサージ、介添え手当等が手当てされることになるわけでありますが、このような事情が、もちろんこれはすべてではありませんけれども、かなり有力に検診拒否運動の背景にあるというように私なりに理解をいたしております。  そのようなことを前提としてこの問題を考えてまいりますと、私は、認定あるいは検診拒否の現状は、患者さんと国、県との信頼関係の確立が前提というようなきれいごとだけでは済まない。現実問題としての何かがあるということを踏まえて対処していかなければならないのではないかと私は思います。長い時間の経過がありますので、その中には、ある時期に水俣病であると思い込まれておられるような水俣病に類似した症状を持った方が、その後すっかり元気になっておいでの申請者がおられるということも十分にまたあり得ることだろうと思います。  そういうことを前提として、これは第一回の検診呼びかけという意味で旧法該当者だけになさったことでありますが、さらに引き続いて新法申請者についても、積極的にそういう呼びかけを県と御協力いただいてなさっていくことが今後も必要であろうと思います。  また、寝たきりの方々に対しては在宅検診を行うとか、いろいろの努力をなお積み重ねなければならないと思いますが、いろいろな手段を尽くした後に、最終的には、今のような事態というものを念頭に置けば、場合によっては受診命令というものを提起して問題を基本的に洗い直していくこともいずれ将来必要になるのではないか、大変いろいろな意味での御苦労も多い、また困難を発生させる問題かもしれませんが、ひとつ勇気を持って取り組んでいただくこともこの問題の積極的な推進のために必要ではないか、私はこのように考えますが、環境庁の御所見を承っておきたいと思います。
  159. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  先生が長年にわたりまして水俣問題にお取り組みをいただきまして、患者の方々のお気持ちなども御推察をいただいておりまして、本当にありがたい次第でございます。環境庁といたしましては、熊本県とこの検診、審査体制の充実等各般の施策を講じてきたところでございますが、判断困難な事例の増加であるとか、一時期見られた申請者の急増であるとか、あるいはまた検診拒否運動のために検診体制が十分機能しないこと等によりまして、残念ながら認定業務が思うように推進されていない状態にあるのでございます。     〔戸塚委員長代理退席、委員長着席〕 このようなことから、今のところは検診を円滑に進める上において、熊本県の申請者におきまして都合に合わせて検診をしていこう、検診ができるようにしよう、検診希望日と申しますか、そういうものを照会をするというようなことも考えたり、また寝たきりの方々に対して在宅で検診ができるような体制もとっていこう、こういう工夫もことしやっておるのでございます。きめ細かいそういう方策を請じて申請者の理解を得るように努めていこうということを今考えてやり始めておるところでございます。少し遅きに失するとも言われるのでございますけれども、そういうことをやっておりますので、申請者に対しましてできるだけ受診命令というような形でなくて、今のところ理解を得て努力をしていきたいと考えておるところでございます。
  160. 福島譲二

    ○福島委員 私も積極的に受診命令等の、これは法律的には根拠のあることにいたしましても、荒療治をするようなことは決して好ましい褒められた事態でもないと思います。そういうことができれば回避できるような意味で、ひとつ積極的に県とも御相談の上、この問題にもお取り組みいただきたいと思います。  水俣病問題に取り組んでいただくためには、もう一つ、私は地元の公立病院等の協力をもっと得ていくことが大変大切なことではないかと思います。そういう意味で、市立病院に現在神経内科がございませんが、国、県が御協力いただく、御指導いただくという形で市立病院に神経内科を設置する、そういうことで医療体制がさらに充実することが、水俣病患者救済の推進の大きな助けになるのではないかと私は思いますが、伺っておきます。
  161. 上田稔

    上田国務大臣 お答えを申し上げます。  先生指摘のように地元の医療体制が確立をする、病院がこれによって充実をすることは、水俣病救済の上においても私は非常に有意義であると思うのでございます。地元の熊本県と十分御相談をさせていただきまして、また地元の医師会の御了解も得なければならないと思うのでございますが、そういう関係機関あるいは団体と十分に協議をさせていただきまして努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  162. 福島譲二

    ○福島委員 最近の熊本県と国との関係は、かつての、ちょっと御披露いたしましたが、沢田知事をして怨念の歴史であると言わしめたような険悪な状態は改善をされていると思います。この問題は国と県が呼吸を合わせて取り組んでいただくことが何よりも必要であり、環境庁としてはよく熊本県当局とも御相談をいただき、今後思い切って対策を進めていただきたいと思います。真に救済を要する不幸な水俣病患者さん方を速やかに救済するために、ひとつこの問題の締めくくりとして長官の御決意を承っておきたいと思います。
  163. 上田稔

    上田国務大臣 お答え申し上げます。  地元の熊本県と十分に御連絡をいたしまして、熊本県と国とが力を合わせて患者の救済また検診に当たらせていただきたいと決意をいたしております。
  164. 福島譲二

    ○福島委員 次に、水俣病の問題をめぐる水俣・芦北地区全体に対する深刻な打撃を緩和するために、これらの地域に対する振興を図ることは当初からの関係閣僚会議で決定されておったところでございますが、今までの経過を見ますと、私たち地元会議員の力不足もありますが、何かいま一つぱっとしない。水俣・芦北地域振興計画なるものは県当局でも策定はされておりますけれども、極端に言うならこれはもともとこの地域で進行中であり、あるいは予定されていた各省の各種事業を網羅的に並べただけにすぎず、各年度のそれは、実施計画で決定された各種事業の予算額をその一覧表に記入していったにすぎないという感じが若干いたします。どうも深く一本ぴしっとしたしんが通っていないといううらみがございます。  一体各省は、公共事業などの配分に当たって、このように水俣・芦北地区をクローズアップする閣議了解事項があるということを十分御存じなのかどうか、私は甚だ心もとない感じがいたします。特にお役所のことでありますので、しょっちゅう人もかわられるということもありますし、この辺で改めて、内閣官房か環境庁かどちらかわかりませんが、関係各省、特に公共事業等を考える上で、水俣・芦北地域の振興に努めることが閣議了解として決定されておるということの注意喚起をできないものかどうか。  もう一つは、きょうは内閣官房からおいでをいただいておりませんでしたが、水俣病関係閣僚会議は内閣官房と大蔵、文部、厚生、通産、自治、環境、国土の関係各省から構成をされておりますが、先ほど申し上げましたように、ヘドロ関係の事業、これは運輸省に県から委託をされておる委託事業ではございますが、実質的には運輸省が直接担当しておられると同じような意味合いを持つ。しかもその事業を遂行するに当たっての資金供与の問題として大変大きな問題をはらんでおりますので、この関係閣僚会議運輸省にも御参加いただくことの方がいいのではないかなという感じを私は持っております。その辺、所管の部局からおいでいただきませんので積極的に責任ある御回答がお願いできないかもしれませんが、今申し上げたことについて、環境庁加藤官房長、お答えをいただきましょうか。
  165. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 閣僚会議の構成のお話、これは一応かつて確定されたものではございますが、その運用につきまして、その都度その都度また考えていくべきこともあるのは当然かと存じますので、十分内閣官房とも相談いたしながら、検討させていただきたいと思います。  あわせまして、その御質問の御趣旨でございます当初の閣議決定の中にある地域振興についての考え方の周知徹底も、十分措置をとってまいりたいと思っております。
  166. 福島譲二

    ○福島委員 現在私たちは、九州西回り高速道路の建設あるいは九州新幹線の熊本−鹿児島間の延長について、大きな期待を抱きながら運動を展開中でございます。きょうは、国土庁にせっかくおいでをいただきながら大変長い時間お待ちいただきました。先ほど来、直接関係はございませんでしたがお聞きいただきまして、るる私が申し上げましたことから、この水俣の問題の、大変長い歴史を持つ、しかも非常に深刻な背景があることをおぼろげながらでも御推察いただけたかと思います。  そういう意味で、きょうは建設、農林あるいは運輸省等おいでいただいておりませんが、全国総合計画を担当されておるという意味で、ひとつ国土庁、私が今申し上げた政策的な見地からそういう問題をお考えいただくということも十分に妥当性を持つ話でありますし、関係閣僚会議のこの地域の振興という趣旨からも御理解をいただける点かと思います。一応、せっかくおいでいただきましたので国土庁の御見解を伺っておきたいと思います。
  167. 塚本弘

    ○塚本説明員 水俣・芦北地域の振興につきましては、閣議了解の趣旨を踏まえまして、熊本県の振興計画に沿って所要の事業が進められますよう、国土庁といたしましても関係各省に対しまして予算計上に当たって配慮方要請を行っております。これまでのところ、具体的には各省の方に集まっていただきまして説明会を開催する、あるいは関係各省に対しまして国土庁の地方振興局長名で文書で、事業採択に当たって計画に十分配慮するよう申し入れをする、こういった形で対応をしております。その結果、これまでの実績では、五十四年度から五十九年度までの累計でございますが、県の要望の総事業費七百六十一億円の九八%に当たります七百四十九億円といったものが予算計上されております。  国土庁といたしましては、今後とも地元開発の動向等も踏まえつつ、地域の振興が図られるよう、必要に応じまして関係各省に十分働きかけを行ってまいりたいと思います。  それから、四全総との絡みにつきましては、計画・調整局の方から御説明させていただきます。
  168. 山田尚人

    ○山田説明員 全国総合開発計画関連につきましてお尋ねがございましたので御説明申し上げます。  先生指摘の九州新幹線を含めます整備新幹線の問題等につきましても、臨調の答申でありますとか国鉄の再建監理委員会の緊急提言といったような内容に見られますように、また現下の国の財政状態といった問題からも、非常に厳しい状況にあるわけでございます。しかしながら、私ども国土庁といたしましては、やはり地方を振興し、国土の均衡ある発展を図るために、新幹線、高速道路といった幹線交通体系を整備しまして、幹線交通のサービスを全国にわたって均衡化するということが重要であろうというふうに考えているわけでございます。  現在四全総の策定作業中でございますけれども、これは昭和六十一年に策定できるようにということで準備を進めているわけでございますが、こういった面でこの高速交通体系の整備というものは重要な検討課題の一つと考えております。今後、御指摘の九州の西回り高速道路、九州新幹線、こういったものの取り扱いも含めまして、関係各省といろいろと御相談を進めながら検討を深めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  169. 福島譲二

    ○福島委員 ひとつ今後一層の御努力を国土庁にお願いを申し上げておきたいと思います。  最後に、水俣病問題を離れまして、一般問題として公害防止事業団の問題についで問題を提起いたしておきたいと思います。  公害防止事業団が生まれましてから既に約二十年、公害防止のために大きな寄与を果たしてまいりましたものの、先般の第二臨調においては真剣にその存廃の問題が討議されるに至っております。一方において環境行政は、公害防止の視点から従来からの規制中心とした公害防止の面から、新しく二十一世紀へ向かっての成熟化する社会のもとに快適環境づくりを目指して新たな対応を迫られております。  私は、このような環境行政の新たな展開に即応して、公害防止事業団も新しい展開を目指して脱皮していくことが必要であり、そのためには早急に法律改正も要するのではないかと考える一人でありますが、環境庁にそのようなお考えがないかどうか。もしあるとすればどのような構想を持ち、これをどのようなタイミングで実現しようとお考えであるか、この機会に明らかにしていただきたいと思います。
  170. 正田泰央

    ○正田政府委員 事業団につきましては、臨調の御答申をいただいて以来懸命にその運用のあり方について考えている次第でございます。なかんずく、本年度予算においてもその緒についた事業を構想いたしたわけでございますが、先生指摘のような基本的なあり方につきまして、ただいま予算編成を迎えておりまして、しかるべき人たちの御意見を聞くようなことを至急にまずやってみたい。その御意見を承った上で、日程についてはここで先生に定かにお約束することはできませんが、そういった検討を半年ぐらい重ねまして、次の次の年ぐらいを目途にいたしまして考えていけたら、こういうふうに思っている次第でございます。
  171. 福島譲二

    ○福島委員 もう最後であります。ごく簡単で結構でありますが、どのような角度で公害防止事業団の改組と申しますか、新しい展開をお考えか、そのポイントだけでもひとつ承っておきたいと思います。  同時に、今のお答えの中で、次の次の年というような感じのお答えもございました。私は、場合によっては、先般申し上げました水俣のヘドロ対策の関連において、公害防止事業団が何らかの形でかんでいただくという方策が一番具体的な方策としてとりやすいのではないか。これは全くまた私のおぼろげなる感覚でありまして、政府で十分にお詰めいただいて、ほかにも適当な対策があるということであれば、もちろんそれはそれで結構なんでありますが、いずれにしてもこの問題は先送りすることなく、本年の秋口にはある程度の何か解決案というものを見出さなければ、来年実際問題として非常に困難な事態が生ずるのではないかということを憂慮をいたしております。  そういうものの関連からいたしますと、今私が申し上げたようなことでありますと、その問題だけ切り離して来年度の国会における法律提案ということでは非常にいわば半端なものでありますし、でき得れば早急にひとつこの問題についても御検討をいただいて、新しい魅力ある公害防止事業団の脱皮をお考えいただくということも必要ではないかというような感じがいたしますので、これは私の希望として申し上げます。今この際は、その方向について、多少でも今考えておられる方向が具体的にお述べいただけるのであれば、その点をお述べいただきたいと思います。  質問はこれで最後にいたします。
  172. 正田泰央

    ○正田政府委員 基本的なテーマといたしましては、国家的見地から緊急性の高い事業かつまた大規模な事業について、臨調御答申の御趣旨に沿ったようなものを中心に据えた構想をどうするかということだと思いますが、ただいま先生のお話のような問題意識も十分踏まえて、今後のあり方について至急詰めたいと思いますが、時期につきましては先ほど申し上げたことを踏まえて、また先生の御趣旨も体して、その辺よく見計らってまいりたい、こう思っております。
  173. 福島譲二

    ○福島委員 時間も参りましたので、もう少し突っ込みたい気持ちがございますが、この辺で終わりたいと思います。  大変長時間、政府の皆さん方にも、また同僚委員の皆様方にも御迷惑をおかけいたしました。心から御礼を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  174. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十二分散会