○福島
委員 私はちょうど
昭和五十一年の初当選以来、水俣は私の選挙区でもございます、大変大きな、不幸な深刻な水俣の問題につきましては、あるいは火中にクリを拾うというような、そういった面もないではないわけでありますが、しかし私の政治家としての
一つの大きな使命であると考えて、水俣の問題に取り組まさせていただいてまいりました。
この国会におきましても、先般水俣病認定促進に関する臨時措置法の議員立法をお願いをいたしまして、その際は当然のことながら、答弁側に立って御
質問する機会がなかったわけでありますが、また野党の皆さん方からも、たまには与党からも与党
質問をしろという、そういう御意見もございます。きょうは、この国会の実質的な最終日である本日お許しをいただきまして、主として水俣病問題を
中心として若干の御
質問を申し上げたいと思います。
まず第一に、いわゆるチッソ県債の問題についてでありますが、この県債方式は
昭和五十三年度にスタートし、当初
昭和五十六年度補償金支払い分までの予定でありまして、これをさらに三年延長して、現在のところ五十九年度補償金支払い分まで発行することが水俣病
関係閣僚
会議で決定をされまして、かつ熊本県当局もこれを了解されているところであります。
しかしながら、昨年、五十八年五月の県債引き受けの際、これを県議会が
承認するに当たりまして、県の
公害対策特別
委員長は次のように発言をしておいでであります。すなわち「チッソ県債の発行はあくまでも緊急避難的措置であることにかんがみ、
関係閣僚
会議の申し合わせにより県債を発行する予定となっている六十年六月までに、より適切な対応策を見出すよう執行部において十分
検討し、国を初め
関係者とその実現について協議を始めるよう強く要望する。」こういう要望が附帯条件的に提起をされております。
そのことからもおわかりいただけるように、少なくとも本年度中に国と県は何らかの対応を迫られている状況にございます。きょうの御
質問は、この懸案事項に対して根本的に解決できるというようなものでは到底あり得ませんけれ
ども、多少でも問題打開のためにお役に立てればという
趣旨のもとに行いたいと思っております。ひとつできる限り明瞭率直に御答弁をいただきたいと思います。また一面、そのような背景を持つ案件でありますし、また
趣旨でもございますので、逆に私の発言は、
質問というよりもむしろバックグラウンドを明確にしてお互いの共通の認識を持つという
意味で、いささか冗長になることもあるかもしれませんが、あらかじめお許しをいただきたいと思います。
特にきょうは、国土庁から塚本参事官、山田
計画官、国土庁
関係の御
質問はもう最後の十分間ということで、大変御迷惑でございますし、また大変お忙しい中を、大蔵省からは吉本主計官、寺本企
画官、そして理財局の高橋地
方資金課長、さらに
自治省の
財政局から横田調
整室長がお見えいただいております。そのほとんど多くの皆さんが最近の時点での異動でおかわりになられたばかりでございまして、この水俣の問題というのは大変長い歴史を持つ沿革的な、非常に深刻な問題でございます、いろいろ過去の背景というものを十分に御認識いただくことがこれからこの問題に取り組んでいただくに当たって大変大切なことでもございますので、大変御多忙の中で恐縮ではございますが、ひとつそういう
意味合いを含めて、場合によっては御
質問にお答えいただくという機会があるいはないかもしれませんが、どうぞ私の申し上げるところを十分にお聞きいただき、今後の御参考に供していただければ幸甚でございます。
さて、県債方式に基づくチッソに対する貸付金は、五十三年十二月の第一回から昨五十八年十二月の第十一回の貸し付けまでで総額二百六十二億三千四百万円に上っております。この金額は本年度の熊本県の一般会計
財政規模四千六百六十九億、県税収入の八百九十七億と対比いたしますと、その負担の額がいかに大きく、しかも今後いつまで、またどれだけ増大し続けるかが全くわからないという点で、熊本県側がチッソとともに県が倒産をしてはたまらないというような素朴な心配を持つことも、一面また当然のことかと思います。
しかも、患者の皆さん方への補償金を担保し、
地域経済の
一つの核としてのチッソの倒産を
防止するという
趣旨でスタートをしたこの県債方式は、元来熊本県側が要望した
趣旨とは全く違っていた、ここに問題の混迷の大きな原因があると思います。県側が要望しておりましたのは、別途何らかの国側の手によるチッソに対する金融支援措置でありまして、いわば県債方式というものは、県側からすれば、国側の立場からすりかえられた、ありがた迷惑な代替策だ、県は緊急避難措置としてこれを受け入れたにすぎないという感覚が県の感覚の
前提となっておるのであります。
このことの当否は別といたしましても、この点は県債問題の処理に当たりまして大変重要な点であり、特に大蔵、自治、両
財政当局にしっかりとこの辺は理解していただくために、当時熊本県で流布されておりました若干の新聞記事あるいは当時の
責任者の御発言、こういったものを御
紹介しておきたいと思います。
順序は不同でありますが、五十三年の一月二十三日の熊日の社説では、この当時県債問題を受け入れるかどうかということが大変熾烈な論議となっておった時期でありますが、この社説で「国の水俣病に対する一貫した巧妙な”
責任回避”の姿勢」こう題しまして「熊本県の
行政負担で県債を発行させ、国は”
責任逃れ”では、
地元としてはたまったものではない。県民としては”特例”ではなく”
法律”に基づきPPPを回避することのない補償に関する抜本策を要求したい。」こういうふうに言っております。
また、五十三年一月二十一日の県議会
公害対策特別
委員会でも、その中の発言で「国は認定業務もチッソ救済も県に押しつけてくる。県債の話が出たらけ飛ばすべきだ。我々の要望したチッソ支援策は特別立法措置による
政府系金融
機関の特別融資だったはずだが、何ら進展させぬまま、これを飛ばして県債の条件闘争に県執行部が入るのは筋が通らない。」こういう発言に対しまして、当時県の
公害部長がこれに答弁して「この県債は県の希望で起こすものではなく、
政府が県に協力を求めてのものだから、一〇〇%保証は当然だ。」こういうような答弁をいたしております。
また、同じ五十三年一月二十三日の県の決算特別
委員会では「何らの歯どめもなしに引き受けたら大変なことになる。将来県は背負い切れないほどの公債費を抱え込み、
財政は破綻し、必要な事業もできなくなる。」こういう発言があっております。
さらに、五十三年二月十一日朝日新聞に登載された沢田知事の談話として「県債発行について、県としては国による
償還の一〇〇%保証や水俣病患者認定業務の一部の肩がわりなどの条件が整えば引き受ける腹づもりでいる。しかしこちらから頭を下げてお願いする筋合いではない。」こう申しております。
もともと熊本県と国、
環境庁と言ってもいいわけでありますが、私もずっと終始その
関係を見ておりました。かつては、大変残念ながらその
関係は険悪でございました。当時の沢田知事が同じ五十三年一月二十三日に西日本新聞のインタビューの中でも言っておられますが「昔から、いわば県の国に対する怨念の歴史がある。」そういう言葉さえ使っておいでであります。当時県議会で水俣病認定業務の返上決議ということがなされましたが、それもやはりそのような背景から提起されたものでございます。この県債方式は、
地元の熊日新聞等から「国の水俣病に対する一貫した巧妙な
責任回避」だ、こういう評価をされました。さらには「県民感情を逆なでする案」であるとまで酷評された、そういう経緯がございます。
そして、このことは、単に
地元熊本県内だけではなくて、当初は
自治省も極めて消極的でございました。このことは五十三年六月六日に参議院の地方
行政委員会で、社会党の小山一平さんの
質問に当時の
自治省の森岡
財政局長が答えておられますが「熊本県は県に負担がかかるような措置には応じられないとしているが、これはもっともだと思う。」と、当時
自治省の
責任者が答弁をしておられることからも明らかであろうと思います。
もちろん自民党の熊本県連としても、全く今申し上げたような論調に立って、五十三年の二月九日に上京して党本部に要望しておりましたが、その内容も、県債などということは一言もありません。開銀融資によってチッソを支援してほしい、そういう内容でありました。
また、国は県に県債を押しつけるならみずから国債でやればいいじゃないか、こういうような主張も、例えば現在
地元の水俣の市
会議員である川本輝夫さん
あたりから提起されたこともございます。
単に患者さん側の発言ということだけでなく、当時の沢田知事も、その後参議院に転出された後で「県政十二年を回顧して」という記事を五十八年九月朝日新聞に連載をしておられますが、その中の九月二十九日付では「熊本県を患者の矢面に立てて国は隠れていると恨みました。ずるいですよ、国はいつも。”チッソ県債”も私は最後まで”国債”でと抵抗したのです。国債はPPPの原則を崩すというけれ
ども、原因者負担の原則を聖域にしておくこと自体おかしい」、こういうふうに主張をいたしております。また同じくそのときに沢田さんは「
自治省は初めは県債反対の私を応援してくれたんですが、途中で私の説得係に変身してしまいました。ギブアップです。」こうも語っておいでであります。
私は、何もPPPの原則に抵触するから国債がだめだとは思っておりません。
財政制度上そもそもなじまないから国債は無理だと思います。そこで、今申し上げたようなことを念頭に置いていただきまして、まず、果たしてこの問題の処理のために、従来県債方式を踏襲してきたわけでございますが、何か県債方式にかわるようなよいアイデアが考えられるかどうか。特に国債あるいは融資、特別立法、こういった問題がそれぞれ
関係者からはちらほら話題になっておるわけでありますが、一体
政府側としてそういうことが可能性があるものかどうか、
各省からひとつ
見解を伺っておきたいと思います。最初に大蔵省、お願いしましょうか。