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政府委員(梅澤節男君) 使途不明金の制度上の問題でございますけれ
ども、先ほど来
国税庁が説明しておりますように、現行の制度では、使途がはっきりしない経費については損金性を否認して、一〇〇%課税しているわけでございますね。先進諸国を見ましても大体このやり方をやっておりまして、通常の税制の
考え方としては、これが限界的な措置だと思います。ただ、これは
委員御案内のとおり、特別の使途不明金に対する課税という制度が実はフランスにございます。
考え方といたしましては、いまおっしゃいましたように、本来使途がはっきりしておれば、受け取った人は当然その所得に対して課税されておるわけですが、その課税を免れていると。その免れている部分を、支出した人の方が負担をするという
考え方。同時に、そういう免れるようなことは、いわば税の秩序を乱したということで、そういう制裁的な意味。二つの意味でフランスはああいう制度をとっていると思うわけでございます。
ただ、その制度を見ますと、やっぱりそういうことをやろうと思いますと、企業なり納税義務者が一定のお金を支出する場合に、必ず税務当局に対してはその支出先を明らかにしなければならないという
一般的な法的義務をまず課しておく必要がございます。それと同時に、フランスの場合は、特定の経費につきましては、つまり毎年一件ごとに経費の額と支出先を税務当局に届け出の義務がありまして、実はその義務違反に対して特別の税を課するという法的構成になっておるわけでございます。したがって、わが国の場合もそういう法的構成をとるかどうかということが
一つございますが、その前提といたしまして、そもそもその企業なり納税義務者の帳簿記録がきちんとしておるという前提がまずないと、そういう制度をつくってもワークしない。
ところが、わが国の税法の場合、いま税調で議論してもらっておるわけでございますけれ
ども、
一般的な帳簿記録の義務すらない。まずそれが前提になるわけでございますが、その上にそういう
一般的な義務を課すると。これは課税の公平といる目的自体を追求する場合には、当然そのうらはらの
関係として、納税義務者にいままで以上の重い義務を負担してもらわなければいかぬわけです。それと同時に、それの相対的な
関係におきまして、税務当局の
質問調査権限の範囲が実質的に拡大するわけでございます。したがいまして、その税の公平という
一つの理念といいますか
考え方と、税の公平という次元を離れました、わが国の取引社会の風土と申しますか、そういう税務当局の権限も拡大するし
一般の企業なり個人の納税義務者の税務当局に対する義務負担も非常に重くなる。その辺のバランスを一体どう
考えるのかという問題になると思うわけでございます。
したがいまして、いずれにしてもこれは究極的には世論の選択の問題ということにはなりますけれ
ども、私
どももいろいろ内部的には勉強はいたしておりますけれ
ども、そういう単なる税の公平という議論のほかに、広範な社会的負担を伴う問題でもございますので、やはりよほど慎重に検討しなければならぬ問題が多い問題であるということもまた否定できないと思います。