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1983-03-31 第98回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月三十一日(木曜日)    午前十一時十分開会     ─────────────    委員の異動  三月二十八日     辞任         補欠選任      小西 博行君     田渕 哲也君  三月二十九日     辞任         補欠選任      原田  立君     太田 淳夫君  三月三十日     辞任         補欠選任      梶原  清君     源田  実君      田沢 智治君     亀長 友義君      村上 正邦君     藏内 修治君      下田 京子君     佐藤 昭夫君      田渕 哲也君     中村 鋭一君  三月三十一日     辞任         補欠選任      藏内 修治君     村上 正邦君      源田  実君     梶原  清君      桑名 義治君     三木 忠雄君      塩出 啓典君     渋谷 邦彦君      中村 鋭一君     田渕 哲也君      江田 五月君     野末 陳平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 嶋崎  均君                 関口 恵造君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 大川 清幸君                 立木  洋君                 伊藤 郁男君     委 員                 井上 吉夫君                 岩動 道行君                 板垣  正君                 岩崎 純三君                 大島 友治君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 亀長 友義君                 木村 睦男君                 古賀雷四郎君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 林  寛子君                 藤井 孝男君                 八木 一郎君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 瀬谷 英行君                 寺田 熊雄君                 吉田 正雄君                 和田 静夫君                 太田 淳夫君                 塩出 啓典君                 中野 鉄造君                 三木 忠雄君                 佐藤 昭夫君                 中村 鋭一君                 美濃部亮吉君                 野末 陳平君    国務大臣        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   山中 貞則君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  加藤 六月君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣総理大臣官        房会計課長        兼内閣参事官   渡辺  尚君        総理府人事局長  藤井 良二君        総理府統計局長  永山 貞則君        警察庁長官    三井  脩君        警察庁長官官房        長        太田 壽郎君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁刑事局保        安部長      大堀太千男君        警察庁警備局長  山田 英雄君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁総務        部長       伊藤 参午君        経済企画庁長官        官房会計課長   遠山 仁人君        経済企画庁調整        局長       田中誠一郎君        経済企画庁総合        計画局長     谷村 昭一君        経済企画庁調査        局長       廣江 運弘君        国土庁長官官房        長        宮繁  護君        国土庁長官官房        審議官      荒井 紀雄君        国土庁長官官房        会計課長     金湖 恒隆君        国土庁土地局長  小笠原正男君        法務大臣官房長  根岸 重治君        法務大臣官房会        計課長      村田  恒君        法務省刑事局長  前田  宏君        法務省保護局長  吉田 淳一君        外務大臣官房長  枝村 純郎君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        大蔵省証券局長  水野  繁君        大蔵省国際金融        局長       大場 智満君        国税庁税部長  角 晨一郎君        国税庁調査査察        部長       大山 綱明君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君        文部省体育局長  西崎 清久君        文部省管理局長  阿部 充夫君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房会        計課長      坂本 龍彦君        厚生省薬務局長  持永 和見君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        食糧庁長官    渡邊 五郎君        林野庁長官    秋山 智英君        通商産業大臣官        房審議官     野々内 隆君        通商産業大臣官        房審議官     斎藤 成雄君        通商産業省貿易        局長       福川 伸次君        通商産業省立地        公害局長     福原 元一君        通商産業省機械        情報産業局長   志賀  学君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        運輸大臣官房長  犬井 圭介君        運輸大臣官房総        務審議官     西村 康雄君        運輸省航空局長  松井 和治君        郵政省貯金局長  鴨 光一郎君        労働大臣官房長  加藤  孝君        労働大臣官房会        計課長      高橋 伸治君        労働省労働基準        局長       松井 達郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       谷口 隆志君        建設大臣官房長  豊蔵  一君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省計画局長  永田 良雄君        建設省河川局長  川本 正知君        建設省住宅局長  松谷蒼一郎君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治大臣官房会        計課長      大塚 金久君        自治省行政局公        務員部長     坂  弘二君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   小野 幹雄君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        内閣官房内閣参        事官       中村  徹君    参考人        日本銀行総裁   前川 春雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  昭和五十八年度総予算案審査のため、本日の委員会日本銀行総裁前川春雄君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     ─────────────
  6. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) それでは、前回に引き続き、和田静夫君の一般質疑を行います。和田君。
  7. 和田静夫

    和田静夫君 まず、警察庁ですが、兵庫県警のいわゆる架空調書事件について伺います。  尼崎中央署のスナック「ミネ」風俗営業法違反事件、「尼崎ロンドン」の同法違反事件歌舞伎書店わいせつ図画販売所持事件について、これは有罪確定をしている。竹林兵庫県警本部長は、松葉らが架空名前住所参考人調書をつくっていたのは指摘のとおりで深く反省していると事実関係を認めて、その非を認めているわけですが、警察庁いかがですか。
  8. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) お答えをいたします。  御質問の点につきましては、現在真相解明に当たっている段階でございますので、確定的なことにつきましてはお答えをいたしかねますが、これまでの調査結果によりますと、尼崎中央警察署保安係長松葉ほか数名の警察官が、風俗関係事犯参考人供述調書作成に際しまして、供述人真実住所氏名と異なる住所氏名などを記載したことが判明をしております。現在、なおその真相解明に努めているところでございます。  なお、いま具体的な事件名を挙げて御質問ございましたが、それらにつきましては現在調査中でございますので、詳細は判明をいたしておりません。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 警察内部のでき事でありますから、調査調査中として答弁を逃げるわけにはいかないと思うんです。  三つの事件だけではなくて、尼崎中央署では調書を洗い直した結果、架空調書が続々と見つかった、こういうことでありまして、五十二年ごろから常習的に行われているというんですが、いかがですか。
  10. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 何年ごろからこういった形のものが作成されておるかということにつきましても現在調査中でございます。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 架空住所が見つかったことは見つかっているんですな。
  12. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 尼崎中央警察署保安係長松葉らが風俗関係事犯捜査に当たりまして、協力者住所氏名真実のものでないものを記載をしたという事実はあるようでございます。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 松葉ら五人を虚偽公文書作成容疑で送検するわけでしょうか。
  14. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 現在、その点を含め真相解明に当たっている段階でございます。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 検察はどうです。
  16. 前田宏

    政府委員前田宏君) 御指摘の件につきましては、ただいま警察庁の方から御答弁ございましたように、現在警察当局の方で内容調査中でございます。したがいまして、私どもといたしましてはその結果を待って適切に対処いたしたいと思っておりますが、当然問題になっておりますので、現地の検察当局におきましてもその事情聴取等を行っているところでございます。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 神戸地検尼崎支部は、参考人氏名が違うことに気づいていたということになっていますが、確認できますか。
  18. 前田宏

    政府委員前田宏君) そういう趣旨のような新聞報道が一紙あったように思いますけれども、現在までの私どもの聞いておりますところでは、そういう事実を知りながらそのままほうっておいたということはないというふうに承知しております。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 尼崎北署でも架空調書作成した疑いがある。これは上世県警保安部長が事実を認めているのですが、いかがですか。
  20. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) お答えいたします。  尼崎北署についても同様な事件事案があるのではないかということでございますが、これについてはまだ兵庫県警から報告聴取しておりません。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 これは明確なようですから、事実関係調査されますか。
  22. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 現在兵庫県警におきまして鋭意真相解明中でございますので、真相解明過程、あるいはその結果は十分聴取したいと思っております。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁兵庫県警本部でも五十六年二月の契約売春事件、これは刑が確定している。五十六年十一月のピンクサロンわいせつ行為事件架空調書作成事実がありますが、これについてはどうですか。
  24. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 具体的な事件名でございますが、これが私どもがいま承知しておりますものと御指摘のものと一致するかどうかわかりませんが、いわゆるビニール本販売店におけるわいせつ図画販売事件、それから風俗営業所における卑わい行為事件ということで送致をした事件がございます。五十六年の二月と五十六年の十一月の事件名かと思っておりますが、なお、詳細につきましては現在解明中でございます。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 こういうふうに見てきますと、これは兵庫県警ぐるみ事件であると考えられますが、事実認識としていかがですか。
  26. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 現在まで兵庫県警から聴取をいたしました報告では、兵庫県警ぐるみでこのようなことをやっているという事実は発見されておりません。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 一方では調査中だと言ってみたり、一方では報告全部受けていてそういう結果出ていないというふうな答弁、この矛盾は一体どうなんですか。
  28. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) あくまで現在までの調査のところでの兵庫県警からの報告に基づいてお答えを申し上げました。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 刑事局としては尼崎中央署以外の公文書偽造架空調書事件可能性をどういうふうに考えますか。
  30. 前田宏

    政府委員前田宏君) 仮にも調書内容偽造するといいますか、そのようなことがあってはならないことは当然でございまして、ただ、現在ただいま警察の方で調査中ということでございますから、その結果を待たなければ何とも申し上げようがないということでございます。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁長官、少なくとも管理責任は私は重大であると考えるのですが、どうお考えですか。
  32. 三井脩

    政府委員三井脩君) 捜査過程に限らないわけでありますが、調書偽造などということはもとよりあってはならぬわけでありまして、そういう点につきましては幹部がしっかり指導、監督するということになっておりますので、その点について不十分であった、大変残念であると考えております。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 法務大臣、今回の事件は実はさまざまな問題を含んでいるわけです。警察サイドでは、架空調書であろうがやった事実は変わりがないのだから、事件は成立するのだというような一種開き直り的見解があるようなんですが、これはどういうふうにお考えになりますか。
  34. 前田宏

    政府委員前田宏君) いま和田委員の仰せになりましたような開き直りといいますか、そういう態度をとっているとは私ども理解しておりませんが、先ほど来申しておりますように、事実関係がはっきりしておりませんので、現段階では明確なことが申し上げられないわけでございますけれども、まあ言いたいことがあったとすれば、全く何にもないことについてそういう調書をつくったという意味ではなくて、実体はあるんだけれどもその名前をいろんな事情で別な人の名前にしたんだということを言った趣旨ではなかろうかというふうに思っております。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 裁判所はどう考えられますか。
  36. 小野幹雄

    最高裁判所長官代理者小野幹雄君) 事実関係が必ずしも明白でないようでございますので、私どもはっきりしたことは申し上げられませんが、少なくとも内容虚偽調書裁判に出され、それがもとになって有罪の認定がされるというようなことがあってはならないことはもとよりでございまして、もしそういうものが裁判の場に出ますと裁判を誤らせるもとになるわけでございますし、裁判に対する国民の信頼を失うという結果にもなる、もしそういうことがあればはなはだ遺憾なことであるというふうに考えます。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 法制局長官、実はこれはいずれもおとり捜査ですが、捜査行為としてのおとり捜査違法性についてはどういう見解をお持ちですか。
  38. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) いわゆるおとり捜査というものがどういう範囲のものであるかなかなか定義は困難だと思いますが、一般にはわが国においてはおとり捜査は違法という可能性が多いと思います。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 繰り返しになるのですが、犯罪嫌疑を持つときに捜査権が発生するということになるんですが、この犯罪嫌疑とは主観的ではあるが、主観を裏づける客観的な根拠が必要と。まあおとり捜査とこの客観的な根拠との関係をちょっと説明してください。
  40. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 犯罪嫌疑がある場合に捜査をするのは当然でございますが、その犯罪嫌疑捜査当局認識をする一つの手段として、一般の方々が体験をした事実、あるいは経験をした事実を捜査側聴取をするということが一つの方法かと思います。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 他人の犯罪行為を誘発、助長した者は共犯者としての責任を負う、これは一般論としてはそうでしょうか。
  42. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) そういった事案につきましては教唆、あるいは従犯という可能性があろうかと思います。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁はおとり捜査についてどういう見解ですか。
  44. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) おとり捜査というものの概念がいろいろ確定をしておりませんが、犯意のない者に犯意を生じさせるということをおとり捜査というと、そういうふうに前提を置きますと、そのようなおとり捜査、そういった捜査手法は行わないよう指導をしておるところでございます。
  45. 和田静夫

    和田静夫君 警察庁長官、私は架空調書はともかく、おとり捜査はかなり広範囲に行われている 可能性があるというふうにこの一連のものを読みながら考えたわけです。架空調書を含めて、全国的に調査、点検される必要があると考えるのですが、見解を承ります。
  46. 三井脩

    政府委員三井脩君) そういう問題については警察官の基本的な心構えの問題でございますし、監督者も常々そういう点を踏まえて監督指導をしておるものと考えておりますから、特にこの場合兵庫においてあらわれたということでございますが、他にはそういうものはないというように考えておりますので、この際、改めて調査をするということは考えておりません。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 検察として尼崎中央署尼崎北署兵庫県警の疑惑を持たれているいわゆる虚偽公文書事件、これはやっぱり起訴されるわけですか。
  48. 前田宏

    政府委員前田宏君) 先ほど来申し上げておりますように、まだ警察の方で調査中でございまして、その結果を持たなければ、まずどのような犯罪が成立し、どのような事情があったかということが確定できないわけでございますので、その確定を持って事案に応じた適切な処置をとりたいというふうに考えております。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 裁判所としては、すでに有罪確定している事件についてどう対処されますか。
  50. 小野幹雄

    最高裁判所長官代理者小野幹雄君) 偽造内容によっていろいろかと思いますが、裁判所といたしましては、もしそれが有罪もとになっているもの、それが偽造であったというようなことになりました場合に、あるいは再審というような問題が起こる可能性はあるとは思いますが、これは御承知のとおり再審の場合には裁判所が積極的に取り上げて再審をするというものではございませんで、検察官なり被告人の側からの請求によってなされるというものでございますので、裁判所の方で積極的にただいまのところどうするということには相ならないと思います。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 検察警察、同じ質問です。
  52. 前田宏

    政府委員前田宏君) 同じようなお答えになって恐縮でございますが、何分にも事実関係確定されておりませんので、まず事実関係確定する必要があると思います。そのことによって、そのことがすでに確定された裁判にどういう法的な影響を及ぼすかということを検討する必要が生じてくるわけでございます。
  53. 大堀太千男

    政府委員大堀太千男君) 事実を調査した上で判断をしたい、かように考えております。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 最後ですが、警察庁長官、きょうの議論で明らかになったことは、警察に対する不信をかき立てる、そういうことなんですが、いかなる対処を総括的にはやられますか。
  55. 三井脩

    政府委員三井脩君) 御指摘を待つまでもなく、まことに遺憾な警察官の非行であると考えます。この種事案の再発がないようにわれわれとしては十分指導してまいりたいというふうに考えます。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 その責任に対する処置の仕方などということはお考えになりますか。
  57. 三井脩

    政府委員三井脩君) 事案内容が明らかになりました上で、非行を犯した行為者はもちろんでございますけれども、それにさらにその指導監督の責任のあるものについて厳正に措置してまいりたいというふうに考えます。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 中期の経済計画に入りますが、前からの引き継ぎです。  総理は、GNP成長率などの係数についてある程度幅を持たせたいという御意向だったんですが、これはGNP成長率などであれば何%程度でしょう。
  59. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 先般、これまで審議されました経済審議会の経過報告書におきましては、一応ここ当面の経済成長の見込みといたしまして、名目では三%以内——上下の範囲でございます。それからまた、実質では二%ぐらいの範囲の成長率を示しているところでございますけれども、今後策定されますところの新しい経済の展望、あるいは経済運営の指針におきましては、今後このような点を参考としながら幅を考えていきたいと考えております。
  60. 和田静夫

    和田静夫君 私は政策決定にとってやはりはっきりした経済計画が必要であるという主張を、総理の意見はありましたが、したわけですね。  そこで、二、三例証的に伺うんですが、まず大蔵省、経企庁、通産省ですが、日本経済の潜在的成長率は、現在から中期的に考えてどの程度と見ていますか。
  61. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) これから策定する見通しでございますので、まだ幾らということはわかりませんけれども、これまでの成長の経過から見まして、そんなに高い成長率はなかなか想定できないと考えております。
  62. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) その後石油の値下がりという思わざる拾い物をいたしました。したがって、これを大切に国民経済に活用したいと、こう考えておりますが、ついきょうの報道でもごらんになりますように、まだ完全にこれが値下がり幅が定着したと言えない様相が、流動的なところがあるようでありますが、慎重に見きわめた上でさっき申し上げました天恵をむだにしないという方向でいきたいと思います。
  63. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 潜在的経済成長率ということについては、まあどう見るか今後の経済審議会の審議等の方向を見定めたいというふうに考えます。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 まあ潜在的成長率の想定自体かなりむずかしい問題であろうと思いますし、きのうも地方行政委員会で若干の論議をさしていただいたのですが、経済官庁が過去のようにまちまちの数字をお出しになるというようなことはあるのですかね、やっぱり。
  65. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 私は各省でいろいろのデータを駆使いたしまして、その駆使したデータに基づく成長率は出てくると思います。しかし、政府が示します経済成長の見通し等につきましては、私は一本に統合された見通しが出ると、こういうふうに考えております。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 いつの時期でしょう、出す時期。
  67. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 先般来たびたびお答え申し上げておりますように、経済審議会におきまして大変熱心に御検討いただいているところでございます。できる限り四月末の任期を目標といたしましてお願いいたしておりますが、いま申しますように新しいお願いを、弾力的なより長期的な観点でいたしましたので、この点がどのようになっていきますか、私どもは一応の目安をそこに置きましてお願いはいたしておるところでございます。
  68. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと違った角度から質問しますが、運輸省、関西新空港の需要予測は、これはGNP成長率に基づいているし、まあ数字もこの間もらいました、決算委員会のあれ受けて。ところがGNPが一%でも変わってくればこの需要予測は大分変わってくる、その点はいかがですか、一%落ち込んだらどうなりますかな、何万人違ってくるだろう。
  69. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) ただいま担当の航空局長は、委員会の事務手違いでちょっといま省へ戻ってしまったものですから、いまかわって総務審議官でございますが、申し上げますが、一%程度のずれがございますときに確かに予測値は変わってまいります。ただ現在、関西国際空港の将来についての需要予測は非常に低目な予測をしておりますので、現在の経済成長は昭和五十五年当時の予測よりかなり現実が低い経済成長でございますが、そういう低い成長を前提にして関西国際空港の予測を現在しております。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 これはだめだ。これは具体的に通告してあるのだから、しかも大臣がいらっしゃらないから、かわりにちゃんと出るということになって全部了解してやっているのに、何やってるの運輸省は。そしていまのやつ答弁になっていないんじゃないの。共通して何か答え書いてあるんじゃないの、航空局長しか知らないの。
  71. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記とめてください。    〔速記中止〕
  72. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  73. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) 担当局長がいなかったものですから、大変答弁に難渋しまして申しわけありませんでした。  連絡いたしましたところ、当初六十五年度におきまして五%の成長率のときに四千二百万人、四%の成長率で三千五百万人、七百万人の減となっております。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 二%の計算もお願いしてありますね。
  75. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) 三%の場合は二千九百万人、六百万人減と相なります。
  76. 和田静夫

    和田静夫君 いやいや、二%を聞いたんだよ。
  77. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) 二%の計算は現在のところまだいたしておりませんので、ただいま一応そういう形で下がってはまいると思いますが、何百万人あと減ずるかということをちょっとこの席で申し上げるわけにまいりません。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 いやいや、これは通告してあるのだからだめですよ。私はあとの質問が続くわけですからね。そうなら、もう中途半端なことはやめて、来るのを待つなら待ちましょう。一%で幾ら、二%で幾ら、ちゃんと具体的に言ってあることですから。二カ月間もやっていることなんだ、これ。
  79. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  80. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  81. 西村康雄

    政府委員(西村康雄君) たびたび答弁がおくれまして申しわけありませんが、二%の場合に、私どもは従来この計算は弾性値等を使ってやっておりますので、必ずしもはっきりしたことを申し上げられませんが、恐らく二千四百万から二千五百万程度だろうと考えております。
  82. 和田静夫

    和田静夫君 それは大丈夫でしょうな。この答弁、これは後で修正するなんて言ったって修正させないよ、もうそんなの。  時間の関係があるからあれでしょうが。大蔵大臣、この航空需要予測が変わると当然新国際空港の計画自体が違ってくるのじゃないだろうか。これは決算委員会でもやってきたのですが、どうですか。
  83. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) この前提が変わってくれば、それは変わるということになります。
  84. 和田静夫

    和田静夫君 各御出席になった大臣、非常に恐縮ですが、それぞれの所管のGNPの予測に基づく長期政策計画を挙げてください。
  85. 林義郎

    ○国務大臣(林義郎君) 私のところは、長期計画で数字を出しているものはございません。ただ、長期政策懇談会で社会保障の伸びを見たのがありますが、それは二%、四%ということをベースに置きまして、全く仮定の数字でございますから、私のところではございません。
  86. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) たくさんございますので、主なものだけ拾って申し上げたいと思います。
  87. 和田静夫

    和田静夫君 私が述べているのは、農林、運輸、国土、建設、大蔵。厚生はもう答弁ありましたので、労働。
  88. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) まず、雇用労働関係でございますと、労働雇用関係で雇用対策基本計画がございますが、これは計画の数字、いまの七カ年計画の数字と合わせてございます。  それから、農林水産業でございますが、これは農産物の需要と生産の長期見通し等が関係ございますが、これも基本的には現行計画のフレームを参考にしてつくられておるとわれわれは理解しておるわけでございます。  それから、国土庁の関係で申しますと、全国総合開発計画がございますが、これは期間が大分違いますので、この国土計画の方ははるかに期間が長いわけでございますから、その関係においては問題がございますが、基本的にはわれわれの計画と成長率を合わせてつくっておるというふうに御理解いただきたいと思います。  あと御指摘の点は……。
  89. 和田静夫

    和田静夫君 労働ですがね、労働。
  90. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 労働は、先ほど冒頭に申し上げましたように、雇用の関係の成長率についてはわれわれと整合性を保った形でつくられておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  91. 和田静夫

    和田静夫君 それは労働ですか。
  92. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) はい。
  93. 和田静夫

    和田静夫君 運輸は。
  94. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 運輸省のどういう、具体的な計画の名前をちょっとおっしゃっていただきたいと思いますが。
  95. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 和田君、お立ちになって願います。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 質問してあるんだから答えてもらいます。説明にまでそんな時間とるなんて。
  97. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) 運輸関係につきましては、具体的にわれわれと直接つながるようなものは計画としてあると思っておりませんが、個々にそれぞれ想定されてやっておられると思っております。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、私は総理との論戦を受けてやっているんですが、その基本になるところが変わってくるとどういうふうにされていくんですか。
  99. 谷村昭一

    政府委員(谷村昭一君) いまの御質問でございますが、基本的には新しい計画ができました段階において、政府のそれぞれの機関で御検討いただいて変えるべきものは変えていただくということになろうかと思います。たとえば公共事業に関しまして十四本の計画がございますし、それから、雇用の基本的な計画につきましても現在雇用審議会で御議論いただいておりますが、これらにつきましては、われわれの作業と歩調を合わせながらわれわれの結論が出た段階でそれぞれ御検討いただく、こういうことだと思います。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 私があえてこういうところを取り上げたのは、何か総理が経済計画の問題と計画経済の問題を取り違えて、計画といえば何か社会主義だというような印象を与えるような御発言になりましたから、あえてこの辺の論議をしてみたんですが、最後に企画庁長官、私は、やっぱり行政は経済の見通しと密接に関連をしているわけですから、しかも政策というのは中長期的な展望を持って立案をされなければならぬ、ということになれば、やはり権威ある、しかも正確性のあるそういう経済計画は当然必要になってくると考えているんですが、いかがですか。
  101. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 私どもは当然一つのビジョンと申しますか、目標を持った経済運営が必要だと考えておりますし、民間の方面からの要望も相当強いと考えておるところでございます。したがいまして、総理の言われますのは、これまでのような経済計画に見られた、つまり大変拘束的にとられがちの計画という言葉は避けていったらどうか、そしてまた非常に、何と申しますか、一つの目標にとらわれ過ぎて、そしてそれ一点張りで進んでいくようなやり方はどうか、こういう意味でございます。したがって、弾力的な、幅のある、ゆとりのある目標をつくりますとともに、そしてまた絶えずフォローアップをしていくようなことを考えていくべきである、こういうふうに考えておりまして、鋭意その方向で経済審議会にお願いしているところでございます。
  102. 和田静夫

    和田静夫君 簡単に、同じ質問を大蔵大臣と通産大臣から。
  103. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 総理のおっしゃる意味は、いま経済企画庁長官が申した趣旨であると私も同様に理解しております。
  104. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 私どものところも、設備投資とか、あるいはエネルギーの長期見通しとか、いろいろなものを持っておりますから、それはそれなりにやはり物差しを持っていて、そして実際の経済の動きに合わせていく、あるいはリードしていくというようないろいろな表現があると思いますが、生きている経済というのを預かっている私の役所としては、やはり中長期の展望は経済計画というまで固まらなくとも、一定のものを持って進まないと、その都度その都度やっていくというやり方は、経済官庁としてはやはり見通しを持った指導なり何なりをしなければいけないの じゃないか。ですから、総理がおっしゃった意味は、確かにおとりになったような表現もあったように思いますが、私はそこらのところを含んで言っておられるのであろう、したがって、いままでの私どもの各種の作業というものにそう変更を加える必要はないと考えております。
  105. 和田静夫

    和田静夫君 以下の問題は経済財政の集中審議で引き継ぎますが、大蔵大臣、一言だけですが、昨日の経済関係閣僚懇談会で、超長期住宅ローンの提案をされたそうですが、これはどういう構想で、いつごろをめどに実施をされますか。
  106. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いま信託銀行の一つで、すでにほぼ開発されたというのに親子リレーローンという名称が付されております。したがって、変動金利の問題で超長期というものを商品として開発してもらおうと。指示という言葉が適当でございましょうか、お願いをいたしました。それで、したがって、これについてはそう遠くないと思っておりますが、いまのところいつまでという期限をつける立場にもございませんので、感触といたしましてはネガティブではなかったというふうに御理解をいただきたいと思います。
  107. 和田静夫

    和田静夫君 官房長官と大蔵大臣、ちょっと話変わりますが、皆さん方は選挙の専門家ですから。参議院の全国区制を比例代表制に持っていかれたわけですね。私はそのときから、逆だ、地方区だとか衆議院が先じゃないかと、こういう主張者でありましたが、そこで、この参議院地方区や衆議院の比例代表制、その辺についてどういうふうにお考えになりますか。
  108. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 選挙制度というのは、それぞれの国の政治的な土壌の上で築かれておりますから、どれがいいどれが悪いと一概には言いにくいと思いますね。ただ、議会というのは、やっぱり本来的に価値観が多様化している国民の考え方ができる限り正確に国政に反映する、そういう選挙制度が望ましい、ということになればやはり比例代表制ということになりますね。そのかわりに、その場合には国会の意思の決定ができない、したがって、せっかくの国民の意思が国会の場で実を結ばないという弊害が生まれてくると思いますね。もう一つ、政局が安定してそして国会の意思の決定が容易になるということになれば、これは小選挙区にならざるを得ないと思いますね。そのかわりに小選挙区になると四九%は死に票になる。つまりは国会に多様化した国民の意思が必ずしも反映しにくい。政局は安定はするが、そうなればどうなるかと言えば、社会的不満がうっせきをするということに小選挙区はならざるを得ない。だからこの二つをどのようにあわして考えていくかというのが私は学問的な意味における選挙制度の考え方であろう、こう思います。  そこで、今度の全国区の改正の問題、衆議院に先にやるのか参議院に先にやるのか、これはそういう観点から言えば、これは一般論とすれば衆議院が先であることは申すまでもありません。しかし、それじゃやはり現実の政治を担当している者として余り学問的なことばかり振り回してみたところで始まらぬ、これは。やっぱり現実実現可能なところから改革をしていくというのが現堤的な政治家のやるべき道であろう、ならば、ともかくこの際全国区制についていろんな問題があるということは、これは和田さんもお認めになると思う。ならば、これの比例の割合がどうなっているかと言えば、いわば一種の小選挙区みたいなものですね、全部ではないけれども、二十六県ばかりは、地方区の方は。地方区の議員の数が大体百五十二、それで全国区が百と、まさに六対四ですよ。ちょうどええところじゃないですか、六対四というのは。そこでこの四についてやっていこうと。  そして、その基本は私はやはり二院制下における参議院のあり方、これは院の運営の問題ももちろんありますけれども、そういう点から考えるならば、やはり日本人の英知と言われるような方を各政党は必ずや選んでいただけるであろう、比例代表制の候補に。そうすることが本当の意味で腰を落ちつけ、自分の選挙に余り気も使わないで、本当にりっぱな人、いまいらっしゃる和田さんのような人もりっぱなんですよ。これはそんなことを言っているのじゃないけれども、それはそういうことでなしに、これは一般論として聞いていただきたい。本当に比例代表で、ともかく各界のこれは日本人の本当に英知の代表だと言われるような人を参議院に送るということが、私は参議院の二院制下におけるいい道ではないのかということでして、いろんな抵抗もございました、御案内のように。しかし、そういう意味で今度の改正をやったんだと、こう御理解をしていただきたい。  そこで、この六月には何とかひとつこの選挙制度が実を結ぶように私は心からそれを祈念しておるというのが現状でございます。ただし、五十八年と六十一年の全国区の従来の方の取り扱いということは、これはまた現実政治の上においてやっぱり私は優先的にせざるを得ない、したがって、この制度が本当に実を結ぶのは、さらにその次の次にならざるを得ないのではないか、かように考えております。
  109. 和田静夫

    和田静夫君 何か全国区に偏ったんですが、そこは六月でちゃんと決着がつくことですから、問題は、それは先行的にやったと言われると、そうするとその後に続くものがある、こういうことですか。
  110. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) それは制度として考えた場合には、私はそういうことは考え得る制度であろう、こう考えます。
  111. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、所見ないですか。
  112. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 選挙制度前調査会長、私は前々調査会長でございますので、学問的には前調査会長が申しました。私としていま気にしておりますのは、明治二十三年七月一日に選挙制度、国政選挙が初めて行われました。したがって、政党名を自書する選挙は実に九十三年ぶりでございますので、それがいかに国民に徹底していくか、徹底さすための努力、これが必要ではないか、こういう考え方を持っております。
  113. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣、INF交渉、レーガン新提案がなされたわけですが、なお在欧の日本の五大使は、日本が独自の立場で働きかけるべきだという意思表示をしていますが、この点についてどうお考えになりますか。
  114. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) INF交渉の進展を図るためにレーガン大統領が暫定的な提案をいたしたわけでございます。これはグローバルな立場で米ソが均衡のとれた軍縮といいますか、中距離核の削減を行っていこうということでありまして、日本としてもあくまでもやはりグローバルな立場、特にまた日本の立場が損なわれない、あるいはまた極東が犠牲にならない、こういう観点に立ってこれからの交渉の進展に当たって、アメリカを初めソ連あるいはまたヨーロッパ諸国にも強く働きかけてまいりたいと存じております。
  115. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣自身がお出かけになって折衝を煮詰められるというようなことはありますか。
  116. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは米ソでやるわけでございますから、われわれとしては、アメリカ、あるいはまたソ連、あるいはさらにヨーロッパ諸国にも、いろいろな外交ルートを通じて、私みずからがまた行うこともあると思いますが、いろいろな外交ルートを通じまして積極的にやらなきゃならぬ課題である、こう思います。
  117. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時まで休憩をいたします。    午前十一時五十七分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  118. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十八年度総予算三案を一括して議題とし、午前に引き続き、和世静夫君の質疑を行います。和田君。
  119. 和田静夫

    和田静夫君 私は、これまで二回にわたって海峡封鎖問題について論議を交わしてまいりましたが、どうも政府の答弁というのは納得ができませ ん。したがって、これまでの論議を総括する意味で若干の論議をいたしたいと思いますが、さきの答弁で通峡阻止作戦の際に、第三国船を臨検し得るというふうにされたわけですが、これは何のために臨検をするのでしょう。戦時禁制品を相手国に渡さないのですか、あるいは国籍船の調査のためですか。
  120. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先般私から御答弁申し上げましたので、ただいまの委員の御質問お答えさしていただきますが、この点につきましては委員御承知のように、過去におきまして法制局長官からも御答弁がありまして、たとえば申し上げますと、仮にわが国に武力攻撃を加えている国の軍隊の武器を第三国の船が輸送している、外国の船舶が輸送をしている、それを臨検することが自衛権の範囲内であればできるのではないかという法制局長官の御答弁がございますが、私が御答弁申し上げましたことも、自衛権の限度内でそういうわが国に武力攻撃を行っている国に対していわゆる軍事的な幇助、戦時国際法の言葉で言いますと軍事的幇助と申しますが、軍事的援助を行っておると疑われる船舶というものを臨検するということは、これは国際法上も憲法上も認められるであろう、こういうことを申し上げた次第でございます。
  121. 和田静夫

    和田静夫君 相手国の船舶の処分はどうなりますか。
  122. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これは従来からの海戦法規の原則に従いますれば、そういうもしいわゆる戦時禁制品という範疇に入る貨物がございますれば、これは適法に没収し得る。しかし、船舶そのものを捕獲したり没収するということは、これは第三国の船舶の場合には原則としてできないと、こういうのが現在の国際法でございます。
  123. 和田静夫

    和田静夫君 法制局長官、平時封鎖は国際法で禁止されている。そこで確認するのですが、戦時封鎖ですが、これはできませんね。
  124. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 一般論から申し上げなければいけないと思いますが、戦争というものが非合法化されていなかった時代におけるいわゆる戦時国際法と申しますか、そういうものが、今日戦争というものが非合法化され、自衛権の行使という形でなければ実力行使は認められないという、そういう一般的な原則が立てられている場合に、従来の戦時国際法というものがどういう形で今日の国際紛争に適用されるかということは、非常に個々具体的な場合によって違うと思います。したがって、いまの御質問の戦時封鎖が今日できるかできないかということについても、原則的にはいま申し上げたようなことが言えると思います。  ただ、委員の御質問になりました戦時封鎖というのは、恐らく旧来戦争状態において相手国、敵国の海岸とか、港などを実効的に封鎖をする、そういうような状態を指しておられるのだと思いますが、そういう観念は、今日いま問題になっている三海峡の通峡阻止という場合にそのまま当てはめるのではなくて、むしろ今日では、三海峡の通峡阻止というような実力行使というものが今日の国際法のもとにおいて自衛権の範囲内として認められるかどうかという観点に置きかえて考えるべきだと思います。そういう意味において、似たような実力行使が行われる可能性はあるとは思いますが、戦時封鎖が今日できないというような形でなくて、むしろ三海峡封鎖の具体的対応が自衛権行使として認められるかどうかという観点から判断をすべきものだと思います。
  125. 和田静夫

    和田静夫君 したがって、私は戦時封鎖は交戦権のカテゴリーだと。この間から論議をしてきましたように、宗谷や津軽や対馬の三海峡も国際海峡である、よって戦時封鎖はできない、こうならないでしょうか。
  126. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) いま申し上げたつもりでございますが、戦時封鎖という観念が現在の三海峡にそのまま当てはまるようなそういう前提状態ではないと思います。いま三海峡の通峡阻止というのは、過去における戦時封鎖という観念、戦時封鎖ができるとかできないとか、そういう観念とはちょっと違うように思います。
  127. 和田静夫

    和田静夫君 どういうふうに違うんですかね。
  128. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) つまり、敵国の沿岸とか港というものを、第三国も含めて、もう全面的に実効的に通航を阻止すると、そういうような状態を今日三海峡について考えているわけではないわけでありますから、そういう意味において違っているんじゃないかというふうに申し上げているわけであります。
  129. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと理解できません。どうせ集中がありますからあれですが。  私はこういうふうに総合的に考えるんですが、政府側のこの通峡阻止の実行行為というのは、まず第一に第三国船は阻止の対象としない、第二は第三国船の臨検はできる、第三番目は戦時封鎖の告知義務ほど厳密ではないけれども告知の必要性がある。私はこれらは平時の封鎖と全く同じものであると言ってよいのではないだろうかと実は思うんですが、これはいかがでしょう。
  130. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) この前も御答弁申し上げましたとおりに、平時封鎖という概念は、従来の伝統的な国際法のもとにおきまして、別に戦争状態にないときにある国が非常に重大な国際法の違反行為をした、そういう違反行為を中止させるための一種の強制手段として武力をもってその違反国の港なり沿岸を封鎖をする、こういうのがいわゆる平時封鎖でございます。  これは国際法的にはいわゆる武力復仇というカテゴリーに属する行為として従来観念されておりまして、これは先般私も御答弁申し上げましたが、現在の国連憲章のもとにおきまして、自衛権それから国連による制裁措置としての軍事力の使用、こういう場合以外は武力の行使が禁止されておりますから、いま私が御説明申し上げましたようなことでの平時封鎖というような行為は、今日におきましては適法なものとしては認められないということでございます。  それから他方におきまして、従来から政府が御答弁を申し上げております通峡阻止は、これはあくまでもわが国に対して武力攻撃が行われた場合にこれを排除するための必要最小限度の自衛権の行使の一環として行われるというものでございますから、これは平時封鎖、いわゆる平時封鎖とは全く違う概念でございます。
  131. 和田静夫

    和田静夫君 法制局長官、私、海軍大臣官房編の「戦時国際法規綱要」というのをずっと読んできたんですが、百四十一ページ以下にずっと行為があるんですよ。政府がさっき私が三つにまとめた答弁をしたことというのは大体ここに該当する。その中で、目的のところの復仇または干渉のために行うというところだけが違うんですよ。  そうするとこれは、政府の言う通峡阻止というのは国際法違反の平時封鎖だと、こういう結論になるんですが、そうなりませんかね。
  132. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) たびたび申し上げておりますが、平時封鎖というのは、先ほど条約局長も申し上げているように、わが国に対する武力攻撃がない、いわばかつて復仇とか干渉とかそういうものが認められている時代において、一定の実力行使をするということであるわけであります。それが、かつてはそういうことが国際法上も認められていた。ところが今日においては、およそ武力攻撃がない場合に、自衛権の行使として行われる実力行使しか許されないわけでありますから、そういう平時における復仇とか干渉の手段としてそういうことをやることは、これは今日の国際法の上でも許されていないし、むろんわが憲法のもとにおきましても、自衛のために必要最小限度の武力行使をすることができるのはあくまでわが国が武力攻撃を受けた場合に限られるわけでありますから、そういうことはできないと、こう申し上げているわけであります。
  133. 和田静夫

    和田静夫君 たびたび自衛権の発動問題が問題になるから、ここでちょっとそこのところを確かめたいんですが、この「国際法の基礎」で、阿久沢さんという防衛大学校の助教授が書いているのを読むと、「平時封鎖は歴史的な意味しかないという説もあるが、国際連盟以後、戦争の宣言がしに くくなってから、平時封鎖としてしか説明できないものが、かなり行われている。たとえば、第二次大戦開戦前一九三七年に日本が中国に対して行った封鎖などである。」と、こうなっている。そうすると、一九三七年の日本の中国に対する封鎖というのは自衛権発動を名目にしているのですから、そうすると阿久沢氏によれば平時封鎖、こういうことになりませんか。
  134. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 一般的な戦争というものが、国の政策の遂行手段の一つの極限として従来合法的なものとして認められてきておった。それが、戦前国際連盟というものができまして、さらには不戦条約というものができて、だんだんその性格というものが変わってきておったことは事実だろうと思います。沿革的に申し上げるとそういうことだろうと思います。  しかしながら、いずれにいたしましても、そういう自衛権の行使以外の武力行使というものが明確に国際法として一般的に禁止されましたのは、もちろん国連憲章ができました戦後のことでございまして、国連憲章のもとにおいて、まさに先生御承知のように五十一条において個別的、集団的自衛権の行使というものがそういう武力行使禁止の原則の例外として認められておる。もちろん、国連自身がそういう決定を行う場合というのが別途ございますが、それに至らざる状況のもとにおいては、自衛権、個別的かあるいは集団的自衛権の行使としてしか武力行使が認められない。そういう状況のもとにおきまして、先ほど私が申し上げましたように、武力攻撃を受けていない国が実力をもって相手の国の港とか沿岸とかを封鎖いたしまして、その国の外部との交通というものを一切遮断する、そういう行為は国連憲章のもとでは全く認められない違法な行為である、こういうことを申し上げておる次第でございます。  したがいまして、累次政府が申し上げておりますように、武力攻撃がわが国に対して行われた場合に、それを排除するための必要最小限度としての実力の行使というのは、これは憲章上当然認められるということでございまして、たまたまその実力行使を行う水域が海峡でありましても、これは国際法上合法な行為である、こういうことを御説明申し上げておるわけでございます。
  135. 和田静夫

    和田静夫君 法制局長官、一言でいいですが、自衛権行使の法理によって国際法違反は阻却できますか。
  136. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 自衛権というのがまさに通常であれば違法である武力行使の違法性というものを阻却する、阻却するための事由としては自衛のためでなければならない。そういう場合であれば実力を行使しても違法性が阻却される、こういうことでございます。
  137. 和田静夫

    和田静夫君 戦後の戦争というのは、いまお話にあった不戦条約、国連憲章によってそれが違法化された。そういうことによって国際法上の戦争はできなくなった。しかし、現実には戦争はなくならない。朝鮮戦争とかベトナム戦争あるいは中東戦争、イラン・イラク戦争、引きも切らず戦後も戦争が続いている。現に戦争が行われている。このことは政府はどのように解釈するわけですか。
  138. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 御指摘のとおりだと思いますが、事実上ある国とある国との間に、昔で言えば戦争というものに値するお互いの間の実力行使が行われているということは、これは事実だと認めざるを得ないと思います。ただ関係国は、すべてそういう場合に初めから禁止されている戦争をやっているということは言ってないと思います。無論国際法上の自衛権の行使として、お互いにそう言っているんだと思います。
  139. 和田静夫

    和田静夫君 防衛庁長官、どうお考えになりますか。
  140. 谷川和穗

    ○国務大臣(谷川和穗君) わが国の自衛権の行使の問題は別といたしまして、戦後生起しておりまするただいま御指摘のような問題は、私は、国際紛争を力によって解決しようとしたあらわれだと、その結果だと、こういうふうに感じております。
  141. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣、いかがでしょう。
  142. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 事実上戦争に類似しておるものが行われておるわけですが、そのお互いの当事国ともそれぞれやはり自衛権の発動だと、こういうことじゃないかと思います。
  143. 和田静夫

    和田静夫君 法制局長官、ベトナム戦争のときのハイフォン港の封鎖というのはアメリカの集団的自衛権の発動でしょうかな。
  144. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 私は余りその辺のところ詳しくありませんが、アメリカ全体としてベトナム紛争に関与したときにはアメリカの集団的自衛権の行使として説明していると思いますし、日本政府もまたそういうふうな理解をしていると思います。
  145. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、キューバ危機のときですが、あれのアメリカの海上封鎖というのはどういう法理になりますか。
  146. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ただいまちょっと手元に当時の具体的なアメリカの国連等に対する説明ぶりについての資料を持ち合わせておりませんので、ちょっと具体的、正確にお答えいたしかねますが、当時のアメリカは、あのときにアメリカがとりました行為を封鎖と、国際法上の封鎖という言葉では説明いたしませんでした。すなわち、封鎖と申しますのは先ほど申し上げましたような概念でございますが、キューバに向けてミサイルを積んでいるソ連の船舶の通航を阻止するということで、当時アメリカはクォーランティーンという言葉を使いましたけれども、これは封鎖とは別の概念でございまして、当時いわゆる全米相互援助条約に基づきまして、全米相互援助条約の手続に基づいてとった措置であるというふうに国連等に報告をしておったというふうに記憶しております。
  147. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣、自衛権の発動と言えば何でもできる、いかなる戦闘行動力もできる。これは国連憲章の解釈というふうな観点からどういうふうにお考えになるんですか。
  148. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 基本的には自衛権であるから何でもできるということではございませんで、あくまでも自衛権というものは、自国に対する武力による侵害行為、これを排除するために最小必要限度の実力の行使をするということでございまして、その必要の限度を超えて実力を行使した場合にそれが自衛権によって正当化されるということはございません。
  149. 和田静夫

    和田静夫君 そうですよね。そうすると、先ほど言われた国連憲章五十一条に戻りますが、武力攻撃が発生した場合は、先制的な自衛権というのはやっぱり保障しているんですか。
  150. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) いわゆる予防戦争と申しますか、現実に攻撃が発生していないにもかかわらず、先手を打って武力を行使するということが憲章五十一条によって正当化されるということはございません。
  151. 和田静夫

    和田静夫君 外務省、戦後の戦争で正規の戦争と認定できるものありましたら全部挙げてください。
  152. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 正規の戦争とおっしゃいました御質問趣旨を必ずしも理解しないわけでございますが、たとえば戦前の戦争のように宣戦布告というような手続を経て行った戦争ということを御念頭に置いての御質問であれば、私も戦後——先ほど来いろいろ防衛庁の方等からも御答弁ございましたが、非常に多数の武力紛争というものが戦後起きているわけでございますが、その一つ一つについて十分承知いたしませんが、そういうような意味での、古典的な意味での戦争というものがあったというふうには承知いたしておりません。
  153. 和田静夫

    和田静夫君 防衛庁はどうですか。
  154. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 私どももそういう宣戦布告をしたような正規の戦争、戦争中における、戦前におけるような戦争があったというふうな認識は持っておりません。
  155. 和田静夫

    和田静夫君 そういうことでしょう。つまり、戦後の戦争のほぼすべてが自衛権の行使として、自衛権行使を名目にして行われた、こういうことなんですね。法律としては戦争は消えた。ところ が戦争は残った。自衛権行使の名のもとにパレスチナ難民の大量虐殺があり、ソンミ事件があった。あの満州事変のことを考えてみても、日本は何と主張したのかと。これは外務大臣、どうですか。
  156. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは、戦前とやはり戦後は違うのじゃないかと思います。戦後は、いま国連憲章というものがありますし、いまお話しのように、やはり武力攻撃というのは自衛権の発動というのみにおいてしかやれなかったわけでありますが、戦前は、御承知のように日本の場合は国防権だとかそういうことを言って、いわば今日と違った概念でいわゆる紛争というのが起こっておる、こういうふうに了解しています。
  157. 和田静夫

    和田静夫君 防衛庁長官はどう考えていますか。いま同じ質問ですが。
  158. 谷川和穗

    ○国務大臣(谷川和穗君) ただいま外務大臣の御答弁にもございましたが、やはり戦前と戦後は違うというように判断をいたしております。したがって、戦前の事例でどういう状態であったのか、実は私はつまびらかにいたしておりません。
  159. 和田静夫

    和田静夫君 防衛庁長官、お若いからあれですが、要するに自衛権行使の名のもとに日本は泥濘の日中戦争にのめり込んでいった。これは大蔵大臣以下御出席の大臣、皆どういうふうにお考えになりますか。——大臣の見解を求めている。
  160. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先ほど私が申し上げましたようなことで、委員御案内のように、不戦条約ができました後、少なくとも不戦条約の当事国に関する限りは一般的に戦争というものができなくなりましたために、戦争を行う場合に自衛権という名のもとに、自衛権を乱用して戦争が行われたということがあることは事実でございますし、わが国の場合におきましても、そういう形をとりまして非常に不幸な戦争になったということもこれまた事実であろうかと思います。しかしながら、戦後の国連憲章ができまして、先ほど私が申し上げましたように、戦争が国際法、普遍的な原則として違法化されているということは厳然たる事実でございまして、にもかかわらず、先ほど来委員の御質問にもございましたが、現実にいろいろ各地において紛争が発生しておるということはこれは事実でございますけれども、しかし他方におきまして、そういう事実があるからといって、その国連憲章の原則というものがやっぱり不必要なものであるとか、あるいは現実にそぐわないものであるという認識は、今日の国際社会においては存在しないだろうと思います。したがいまして、そういう意味におきましてやはり国際社会の武力行使というものに対する認識が基本的に戦前と戦後とでは変わってきていると、これは国際社会全般の意識としましてそういう変化が基本的にはあるというふうに考えるべきだろうと思います。
  161. 和田静夫

    和田静夫君 答弁の部分は余りはっきりしませんが、私は日中戦争を聞いたんですが……。  防衛長官、わが国のこの自衛権の行使というのは、国連憲章の定める自衛権行使の私は限界よりももっと狭いと考えるべきだと思っているんですが、それはどうですか。
  162. 谷川和穗

    ○国務大臣(谷川和穗君) わが国も当然国際社会の一員でございますので、国連憲章を中心といたしました現在の国際条約の体系の中に入っておるとは思いますが、さらにわが国にはわが国といたしましてわが国憲法の条理もございますので、確かに御指摘の点があるかと存じます。
  163. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、私の指摘のとおりだということになりますと、国連憲章でできてわが国の憲法ではできない自衛権の行使というものがある。そこの具体的な事例を全部挙げてくれますか。
  164. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 具体的な事例をということでございますが、一点言えることは、まず国連憲章で認められている自衛権の中には、いわゆる集団的自衛権も国家固有の権利として認められるというふうなことであったと思います。わが国が持っている自衛権というのは、先ほど大臣から御答弁がありましたとおり、あくまでも個別的自衛権であるということでございまして、集団的自衛権の行使にわたるようなことはできない、こういうことになっております。その具体的な例というのは、これはいろいろな態様がありますので、これを一つ一つ例示して申し上げるのはなかなか困難だと思いますが、いずれにせよ、集団的自衛権の行使にわたるようなことはわが国としてはとり得ないということでございます。
  165. 和田静夫

    和田静夫君 例を挙げるのは困難だと言われるのでは困るんで、できないことをやった場合に困っちゃいますから、ちょっと例を挙げてくださいよ。特徴的なものでもいいや、二、三。
  166. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) しばしばシーレーン防衛に関連して御議論になりますことで例を申し上げてみれば、たとえば海峡を分担して、特定のある一定の水域についてはわが国が責任を持って、わが国の船舶のみならず第三国の船をも守るというふうな海域分担をすれば、これは集団的自衛権の行使にわたるだろうというふうに思います。
  167. 和田静夫

    和田静夫君 第三国船の拿捕なんというのはできますか。
  168. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 前提を省略してのお話ですが、いずれにせよ、第三国船の拿捕というようなことは一般的に自衛権の行使としてはできないだろうというふうに思っております。
  169. 和田静夫

    和田静夫君 占領行政はどうですか。
  170. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) これも必ずしも正確な知識は持ち合わせございませんが、占領行政というのは一種の交戦権の行使に当たるものであろう、わが国は自衛権の行使のみは認められておりまして交戦権というものの保持はないわけでございますから、そういったものはできないだろうというふうに認識しております。
  171. 和田静夫

    和田静夫君 もし仮に日本が侵略を受けた場合に、自衛権行使の前に国際機関、第三者機関に提訴する、そういう当然の手続というものはあろうと思うんですが、国際法上の論議として外務大臣はどうお考えになっているんでしょう。
  172. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 当然それは国際連合にわが国も加入しておりますから、国際連合等にそうした手続をとるということは、これはもうあたりまえのことじゃないかと思います。
  173. 和田静夫

    和田静夫君 通峡阻止で、たとえば第三国船が機雷に触れて大破した、そういう場合、あるいは第三国船を臨検した場合ですら第三国との緊張の状態を引き起こす、その船が軍艦であればなおさらだと、こういうことになる。コルフ海峡事件の判例問題をこの間論議したんですがね、非は当方にあるということに、こういう状態の中にはなると思うんです。ここは防衛庁はどう考えます。
  174. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ちょっと御質問のポイントを定かにいたさないわけでございますが、コルフ海峡事件のことにつきましては、先般もちょっと御答弁いたしまして、私の言葉は足りませんでしたが、国際司法裁判所は機雷の敷設自体を違法と認めたわけではございません。しかし、その機雷の敷設についてそういう危険が存在するということを、イギリスを含めまして第三国に十分に知らせてなかったということで、イギリスの軍艦に与えた損害についてはアルバニアが損害賠償の責任があるだろう。こういう判決を下したわけでございますが、その判決の中に書いてございます、裁判所が判示しておりますように、自衛権の行使としてアルバニアが、自国の領海でございますけれども、海峡に機雷を敷設すること自体を違法だというふうに裁判所が認めたわけでは全くございません。
  175. 和田静夫

    和田静夫君 それはそのとおりです。したがって私は、コルフ海峡事件は、その被害を受けた第三国が掃海しても、それが公海上であるならば紛れもなく合法的なもの、法制局長官、そういうふうに解釈できますかな。
  176. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 要するに機雷を敷設しました場合に、もちろん戦争状態と申しますか武力紛争の状態が存在いたしまして、そういう武力紛争の一環として相手国がこちらが敷設した機雷を、今度は実力をもってその機雷を排除する、掃海しようとすることはこれは十分あることでござ います。これが合法かどうかということになりますと、これはもう要するに戦闘行為の一環でございますから、そもそも国連憲章に違反をして武力攻撃を行っておる国の戦闘行為というのは、おおよそすべてこれは違法な行為でございますから、その掃海行為だけを取り出して適法であるとか違法であるとかというふうには認識するわけにはまいらないだろうと思います。
  177. 和田静夫

    和田静夫君 私は、通峡阻止というのは、具体的なことをいろいろ想定して考えてみると、国際法上からもあるいは憲法からもできない。どうも政府の言う通峡阻止というのは違法な平時閉鎖である、そういうふうに思えて仕方がない。そういう意味では全くきょうの答弁も納得ができません。自衛権行使の法理では説明ができないものが私はあると思うんです。憲法九条の要求するところによれば、自衛権行使はきわめて限定されなきゃならない。政府は自衛権としてできること、できないことをもっと明確にするべきだと、こう思うんです。再度要求をいたします。後ほど出してもらってもいいですけれども、ここで答弁しなくても。
  178. 谷川和穗

    ○国務大臣(谷川和穗君) 必ずしも、先生のただいまの御指摘といいますか、御質問でと申し上げてよろしいのか——にそのまま的確にお答えする形にはなりませんが、私は、今日防衛庁長官といたしまして、わが国の独立を確保し安全を維持していかなければならぬ立場にございますが、その私の責任においてただいまやり得ることは自衛権の行使でございまして、いかなる形の侵略に対してもこれを未然に防止する。もしその侵略を受けたならばこれを排除しなければならぬ。その排除するために自衛隊という実力集団は、わが国の憲法のもと、さらには先ほど申し上げました大きな意味の国際法の枠の中で行動し得ると、これはもう独立国家として当然のことだと、こういうふうに判断をいたしております。
  179. 和田静夫

    和田静夫君 具体的な事例について少し突き合わさせてもらいましょう、後で条約局長と。私が想定していることと。  官房長官、非常に待たせまして恐縮でしたが、直間比率五対五が望ましい、そういう御発言はなさいましたか。
  180. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) かつてどこかでそんなことを言ったことで御質問があるのだろうと思いますけれども、この直間比率というのは、それぞれの国の国民の納税意識であるとかあるいは税制の沿革とか制度の沿革、あるいはそれぞれの国の経済情勢、いろんなことで決まっていくのだろうと思います。したがって、何といいますか、アプリオリにどれがいいとかどれが悪いという問題ではないのではないかなと、現にそれだからこそ各国の税制で直間比率というものは国によって違いますね。それから、日本だっていまの制度は、和田さん御承知のように、シャウプ税制が基本に私はなっていると思いますね。このシャウプ税制を基本にしながらも、過去何十年の間に四〇%台の時期もあったし、今日のように七〇%を超すといったようなことにもなっておりますから、必ずしも私はどれがいいとか悪いとかは言うつもりはありません。ただ最近、七割、三割について税構造というものはこの際ひとつ見直したらどうだという意見があることも一方において事実であろう。これらを踏まえながら、最後は結局国民の選択といいますか、それに帰することではないのかと、したがって、私はどれが正しい、正しくないということは申しませんが、そういう議論が一方にあるのだということだけは踏まえて考えることがいいのではないかなと、かように考えております。
  181. 和田静夫

    和田静夫君 何と言っても税務局長経験者である官房長官が述べられたことだから、かなり重要に私は考えております。  一言だけ、もう時間がなくなってきましたが、もし大型間接税というものをやるとすれば、大型間接税というのは金持ち優遇の税制であるということは間違いありませんか。
  182. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 私は、大型間接税とかなんていま政府は全然検討しておりませんからね、そのことは一つ前置きとして申し上げますが、私は大型間接税は必ずしも——金持ち優遇とよくすぐにおっしゃるけれども、それはどんなものでしょうかね。私は必ずしもそうは思わない。やはり税制の立て方いかんによるのではないのか。間接税を取ると逆進性があるとかいろんなことをおっしゃいますけれども、それも中身次第ではないのかなと、かように考えております。
  183. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣はいかがお考えですか。
  184. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いま官房長官からもお答え申し上げましたように、いわゆる間接税の持つ逆進性、またある意味においては経済動向に対しての中立性と、こういう議論もできるかと思いますので、一概に金持ち優遇という概念でもってこれを律するべき税体系ではないと、こういうふうに考えます。
  185. 和田静夫

    和田静夫君 私の意見は集中のときに譲ります。  大型間接税がどういう経済的影響をもたらすか研究されていると思うのですが……
  186. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 和田君、時間が参りました。
  187. 和田静夫

    和田静夫君 わかりました。  ECの経験では、付加価値税を一%上げると直接的に物価上昇に一%弱の影響を与える、こういうふうにされています。これは「ザ・バリューアッディド・タックス」という本が出ていますから、アーロンの書いたやつがありますから。EC各国の大蔵省の役人たちがみんな加わってこういうことを言っているわけですが、物価上昇とこの大型間接税の関係というのはどういうふうにお考えになっていますか。
  188. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは間接税そのものがいわゆる最終的に消費者に転嫁されるという意味においては物価上昇につながる。が、しかしながら、物価そのものはそのときの需要供給の原則に従って決まりますので、それが同じ状態の場合にのみ言えることであって、これを確定的に申し上げるものではないということであります。
  189. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で和田静夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  190. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、矢田部理君の一般質疑を行います。矢田部君。
  191. 矢田部理

    ○矢田部理君 最初に大蔵大臣に伺いたいと思いますが、五十七年度はきょうで終わります。あしたから五十八年度ということになるわけでありますが、年度末にもかかわらずいまだ予算の成立を見ておりません。あと数日は少なくともかかるという状況の中で予算の空白が生ずることになるわけでありますが、この点をどんなふうに受けとめておられるでしょうか。
  192. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いま御説のとおり、本日でもっていわゆる五十七年度は終了するわけであります。したがって、今日五十八年度予算を審議していただいておるさなかでございますので、厳密に言えば、なお本日中に成立することの期待感、これは持つべきだと思いますが、現実そのことがむずかしいだろうなということは私も理解をできます。そうすると、あと数日という矢田部先生の前提から言えば、その間予算はまさにその空白になると、これは素直に認めるべきだと思います。
  193. 矢田部理

    ○矢田部理君 本来、予算なしの行財政の運営が続くということは好ましい事態ではない、財政法上も問題があるというふうに思われるわけでありますが、この点はどうお考えになりますか。
  194. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) それはおっしゃるとおり好ましい事態ではございません。
  195. 矢田部理

    ○矢田部理君 昨年このことが当予算委員会でも大変議論になりまして、委員長見解が発せられ、政府あてに厳重にその向き申しつけてあるはずでありますが、大蔵大臣御承知でしょうか。
  196. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 昨年の委員長見解、これは篤と承知いたしております。
  197. 矢田部理

    ○矢田部理君 その最後の部分を読んで見ます と、「政府においては、各委員の発言の趣旨を踏まえ、本院の予算審議権の十全な行使が制約されることのないよう暫定予算の提出等今後各般の対策に万全を期するよう善処されることを強く要望」するという旨の委員長見解になっているわけでありますが、暫定予算などについては全くお考えにならなかったのでしょうか。
  198. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 暫定予算提出の準備は整っておりません。
  199. 矢田部理

    ○矢田部理君 去年も大変議論になったのでありますが、衆議院で予算を通過して後自然成立までの間に三十日があるわけです。この間は大筋参議院の予算審議の期間と見られるわけでありますが、そうなりますと、衆議院の予算通過の段階から、当然のことでありますが、参議院の予算は四月にずれ込むということが想定をされるわけであります。したがって、そういう状況のもとでは予算の空白をつくらないために政府は暫定予算の準備などをして備えるべきであるというのが去年の見解、論議の焦点だったと思うのでありますが、その点大蔵大臣としては余りしかと受けとめておられなかったのではないかと思われるのですが、いかがでしょうか。
  200. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) まあ原則的には私はおっしゃるとおりだと思います。ここで問題がありますのは、三十日というのは言ってみれば最大限という意味で定められておる期間であろうかと思います。したがって、私も明治以来の予算審議の模様をいろいろ勉強をしたことがございますが、さてそうなったときに非常に疑問に思いますのは、暫定予算とは何ぞやということになりますと、確かに旧憲法時代には予算が通らなかった場合は、前年度予算を施行すべしと、こう書かれてある。そうすると、その前年度予算を施行すべきという条文そのものがなくなった今日、暫定予算とはこれは逆に通さなければならないものであると、こういう解釈になる。そうすると、一方通さなければならないものであるとしたら、内容的には義務的諸経費等に限るべきである、この議論もまた並行して当然あり得る。そうすると通さなければならないものであるとして、あらかじめ準備をするということは、言ってみれば、いわば非常に下世話な言葉で言えば、どうぞ三十日間やってください、通さなければならないものの準備はすでに終わっておりますという姿勢そのものは、私はむしろとるべき手段ではないではないか、あくまでも院の自主性に対して私どもは期待権を持ち続けていくと、これが行政府とそして立法府の節度とも申すべきものではないかと、いささか竹下流の解釈でございます。
  201. 矢田部理

    ○矢田部理君 竹下流というか、いささか政府に傾き過ぎた議論だと私は思うのですね。財政問題の基本はやっぱり財政民主主義でありまして、国会が関与しない条件のもと予算の空白ができ、暫定予算のないまま非常にやりくりで幾つかの支出をしなければならない、これが五日、六日になれば、さらにその支出項目はふえてくるという事態は、これは非常に財政民主主義の立場から見てよろしくない事態と言わなければならないわけであります。去年、竹田委員からも何も五日、六日になる以前に相当の項目にわたって違法な支出といいますか、やりくりの支出といいますか、予算の裏打ちのない支出といいますか、そういうものをやらざるを得ない、場合によってはそのことが国民生活に相当の影響を与えるというようなことで、暫定問題はもう少し政府として惰性に流れて、数日間程度ならば予算の空白はいいのだと、ごまかしてやっていくのだということではなしに、真剣に考えるべきではないかということが一点と、もう一つは暫定が出ないために特に五日、六日の段階になってまいりますと、さまざまな生活関連経費が予算支出できない、だから早く上げてほしいということで、言うならば参議院の予算審議権に一定の、あるいは事実上の制約条件になると、これは参議院の審議にとって好ましいことではないと、二つぐらいの観点から予算委員長見解が出たのでありますが、それをもう少し深刻に受けとめるといいますか、参議院の意思として出したわけでありますから、重く受けとめて今後対処していただきたいということを強く申し上げておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  202. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 確かに海よりも深く山よりも高く、重く考えていくべきであると思っております。事実私も長い歴史を見ますと、非常にそのことはその都度議論になっております。そして三月三十一日以後一日の空白があった場合、そこに生ずるどのような支出があるか検討をいたしました。たとえば刑務所の受刑者の皆様方も、ある意味においてはそのときから飯が食えなくなるのじゃないかと、こういうような話もいたしました。みそ、しょうゆは買いだめも効くではないか、こういう議論もございました。そして仮に二日になった場合は、一日まで働いて出所される人の経費が支払えないじゃないか、こういう議論もいたしてみました。いろんな議論を重ねて、そして政府のハウスに対する期待権というものの調和をどこにとっていくか、これはなお議論をしていかなければならない課題であると思いますが、この委員長見解なるものにお述べになりましたいまの二つの思想あるいは哲学、これはやっぱりそういう具体的な問題は別として、何よりも重く考えるべきものであるという認識には相違ございません。
  203. 矢田部理

    ○矢田部理君 話題を変えます。  安倍外務大臣に伺いたいと思いますが、安倍外交の特徴といいますか、基本的な考え方といいますか、これはどんなことになっているのでしょうか。外務大臣から、私はこういう外交をこれから展開をしていく、こういう点で特色を出したいという点がありましたら、まず承りたいと思います。
  204. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 私の外交の特徴といっても、これは長い間政府・与党として内閣を形成して、やはり日本の外交の基本方針というのはある程度定着をしておると思います。この定着したいわゆる平和外交、これを積極的に進めていくということがいま一番大事じゃないだろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。特に最近におきましては、軍縮の問題が非常に大きな課題になっております。INF交渉といった軍縮をいかに実現をするか、このままいわゆる軍拡競争というのがどんどんと拡大をしていけば、世界というのは非常に危険な状態になってくるのじゃないか。ですから、日本としてはあれだけの核の惨禍を受けた国でありますし、平和外交を展開する以上は、今日日本の国際的な発言力というものは非常に重くなってきておりますので、そうした平和外交の基本を踏まえて、いわゆるバランスのとれた軍縮、特に核軍縮化が実現されるように、積極的に取り組んでいくということも非常に必要であろうと思います。あるいはまた経済の問題も非常に混迷を続けております。そういう中で、わが国の国際的な役割りというのも非常に重いわけでございます。そうした役割りを踏まえて、自由貿易体制を堅持していく、あるいはまた開発途上国に対する経済協力を積極的に進めていく、そして世界の経済の安定を図っていく、こういうこともこれから取り組んでいかなければならない課題であろうと、こういうふうに考えております。
  205. 矢田部理

    ○矢田部理君 各論的な問題に入りたいと思いますが、外務大臣の衆参を通じての論議を聞いている中で、ひとつ従来よりも前向きなのかなと思わせるケースとして、対朝鮮外交が場合によっては挙げられるかなと、特に共和国との関係でありますが、というふうな印象を受けているのでありますが、対朝鮮外交について外務大臣のお考えはどんなふうに思っておられるでしょうか。
  206. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 北朝鮮に対するいまわが国の取り組み方は、いまは国交がないわけでございますから、政府対政府の関係ではこれを進めるということは困難でございますが、やはり私たちは北朝鮮との間の経済であるとか、あるいは文化であるとか、あるいはスポーツであるとか、あるいは人的な交流であるとか、そういう面を含めての交流がこれから進められていくということは必要じゃないかというふうに判断をしておりま す。特に現在の朝鮮半島の緊張が非常に厳しい、これを緩和していくということはやはりそういう環境をつくるということは、やはり日本の役割りでもあろうと思うわけでございまして、韓国との間には御承知のような非常に緊密な関係にあるわけでございますが、しかし、北朝鮮に対してもいま申し上げましたような、やはり政府の立場での外交という面では、これを進めることは困難であるとしても、その他できる限りの文化、経済、スポーツ、人的交流、そういう面での民間の接触とか、あるいはそういう交流が続いていく、それに対して、政府としてもできるだけの配慮を加えていくということは、私はこの際必要ではないかと、こういうふうに考えております。
  207. 矢田部理

    ○矢田部理君 民間外交といいますか、人的交流などを中心に進めていきたいというお考えはわかりましたが、さらにそれを一歩進めて、たとえば通商代表部を置くとか、航空路を開設するというようなより積極的な方向での外交の展開というようなことは、外務大臣の念頭の中には将来の展望としてあるのでしょうか。
  208. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 通商代表部を置くべきであるという議論もありますし、私のところにそういう要請も来ていることも事実、日本の団体等から来ていることは事実でございますが、まだ私は今日の段階においては、そういう機は熟してないのじゃないかと思っておりまして、それ以外の、いま申し上げましたような各般における交流というものを進めることの方が大事なことじゃないかと、こういうふうに考えております。
  209. 矢田部理

    ○矢田部理君 朝鮮の問題は、一番基本にあるのが南北朝鮮の統一の問題だと、こういうふうに思われます。特にこれを自主的に、あるいは平和的に統一をしよう、武力を使ってではなしにですね、そういうことが言われているわけでありますが、中身はまずいろいろ議論があろうかと思いますが、自主的平和統一というその基本方針については外務大臣としては支持をされるでしょうか。
  210. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) それは、やはり朝鮮民族の悲願というのは南北の統一ではないかと思うわけであります。しかしその場合も、あくまでもやはり平和的な統一でなきゃならぬと思います。北、南それぞれ統一に関する考え方あるいは提案等が出ておるわけでございますが、日本としてはまずその南北両鮮のいわゆる実質的な対話が進展をしていくということがまず第一義ではないか、こういうふうに考えておりますし、そうした対話が進められるような雰囲気といいますか、環境といいますか、そういうものをつくっていくということも、これはまた日本なりの一つの役割りとしても存在するのじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  211. 矢田部理

    ○矢田部理君 平和的にというだけでなくて、自主的に統一すべきだというもう一つの柱があるわけでありますが、その立場を支持されるとすれば、そのための環境づくりといいますか、いま言われた国際的な環境づくり、それから日本としてのその役割りとしてどんなことを外務大臣としてはお考えになっているのでしょうか。
  212. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) まず第一には、先ほど申し上げましたような南北の対話というのが促進をされるということが非常に大事ではないだろうかと思うわけでありますし、さらにまた、いま国際間で模索をされております南北のいわゆる対話といいますか、緊張緩和のためのいろいろな方策、たとえば国連に対する同時加盟であるとか、あるいはまたクロス承認であるとか、そうした問題等につきましても私どもは真剣に検討をしまして、そして、いわゆる朝鮮半島の緊張緩和にプラスになる、そうした方策が具体的に実行できるということになれば、わが国としても外交的な努力を惜しんではならないのじゃないか。私はこういうふうに思っておりますが、なかなかいまの国際情勢、必ずしもそういう方向には一挙に進むという情勢にはありません。しかし、たとえば韓国でもオリンピックが行われるということも決定しておりますし、私は、やはり全体的な雰囲気としてそういう雰囲気というものは、少しずつではあるけれども、出てきつつあるのじゃないだろうか、こういうふうな感じもいたしておるわけであります。
  213. 矢田部理

    ○矢田部理君 そのクロス承認とか同時加盟とかという議論はかねてからないわけではありませんが、それは場合によっては南北の分断を固定化する議論につながることもあり得るので、その点はやっぱり十分注意して南北問題というのは扱っていただかないと、逆な方向に行く可能性もあるので、これは警告をしておきたいと思うわけであります。  そこで、朝鮮問題の今度は、南の方の問題について一、二点伺っておきたいと思います。  一つは、金大中氏の事件に関連して、最近の動きも加味しつつお伺いをしたいと思うわけでありますが、御承知のように、日韓関係に刺さったとげとして金大中事件がありました。一応いま金大中氏はアメリカに渡って滞在をしているわけでありますが、この金大中事件はいまだ決着を見ていないということを私たちはかねてから指摘をしました。それに対して政府は、政治決着を二度にわたって行ってきたわけであります。その政治決着の重要な中身の一つに、金大中氏の日本における言動は韓国で責任を問わないという約束があり、かつ韓国もそれを了解しておった。金大中氏の韓国における裁判も、その責任は問われていないはずだというのが従来からの外務省の態度でありました。  きょうの各報道などによりますと、日本で入手をした金大中氏の判決、これは金大中氏自身、あるいはその関係者が確認をしたところ、先般の判決の内容と同じものであると。その内容を読んでみますと、まさに日本における言動の責任が先般の死刑判決では問われている、判決内容になっているという新しい報道に、確認された報道に接しているわけでありますが、この点外務省としていかが受けとめておられるでしょうか。
  214. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 金大中さんの判決につきまして、韓国政府から公式に説明を聞いた経緯がございます。  韓国政府の説明によりますと、この判決の中身につきましては、いわゆる訴因の部分とそれから背景説明の部分に分かれているということでございまして、先ほど先生御指摘の、日本滞在中における金大中さんの活動というものは、訴因の部分ではなくて背景説明の部分に入っている、こういう説明でございました。私ども友好国政府のこの説明をそのように理解している、こういうことでございます。
  215. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは衆参の各委員会等でもしばしば問題になったのでありますが、外務省自身は判決文そのものを入手しているでしょうか。
  216. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 判決文全文そのものを入手してはおりません。ただし、先ほども申し述べましたとおりに、この判決文の要旨、それからそれにつけ加えまして若干の説明をもらっている、こういうことが現状でございます。
  217. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは、瀬戸山文部大臣も元裁判官やっておられたからおわかりだと思いますが、民主主義国家で判決文が人手できないというのは少しく妙な話なんですね。どんなことが判決になったのか、これは裁判の公開のポイントの一つでもあるわけですが、いまだに外務省が判決文のそのものを入手できないというのはどういうことなのでしょうか。
  218. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 日本の国内の状況を想定いたしまして、私も先生の御意見はよく理解できます。しかしながら、やはり司法、行政、その他もろもろの面におきまして、世界にいろいろな国がございますが、やはりその国の司法制度、司法のやり方というものにつきましては、私どもは介入することは適当ではないかと存じます。  はっきり申し上げますが、外務省は判決の全文を欲しいということを韓国政府に意向として伝えたわけでございますが、しかしながら、私の理解に誤りがなければ、韓国政府は判決の全文をそのまま外に出すということはしないというのが私どものやり方であるということでございますので、 それ以上、やっぱりよその国のことでございますので、強く要求しなかったということでございます。
  219. 矢田部理

    ○矢田部理君 しかし、現に日本にその判決文が外務省ルートではなくて渡ってきておって、それを金大中氏自身が確認をしたところ、自分が受けた判決の内容に相違ないということを確認したということになり、その内容から見て、従来政府がやってきた日韓政治決着に反する内容になっている。日本における言動の責任が判決の中身からは問われているということになると、従来の外務省の説明は崩れることになりはしませんか。外務省が判決文が入手できないという態度も少しく妙な感じといいますか、異な感じをせざるを得ないのでありますが、いかがでしょうか。
  220. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 韓国政府は責任を持って判決の要旨というものを、政府の責任において私ども外務省に通報いたしましたし、また先ほど申し上げましたとおりに若干の説明もしております。先生の御指摘の、私も新聞報道で拝見いたしましたが、これを韓国政府は否定も肯定もしておりませんし、したがいまして、私どももこの判決全文、権威ある判決全文、公式の韓国の司法当局からもらっておりませんので、日本政府としても新聞その他に報道されております判決全文なるものが、そのとおり韓国司法当局における最も責任ある権威ある文書であるかどうかということを確認し得ないというのが率直のところでございます。
  221. 矢田部理

    ○矢田部理君 いずれにしても、日本に来ている判決の内容が金大中氏自身の手によって確認をされたわけでありますから、場合によっては外務省としてその判決文を入手をして、これが本物かどうかをまず確認をすべきである、一点。  それから二番目には、私どもが判決を見た限りにおいては、それは単なる背景説明や事情説明ではない、まさに日本における政治言動が責任を問われている。従来の日韓政治決着に反する判決になっている。ひとりこれは韓国の責任とだけ言い得るものではなくて、その政治決着を図った一方の当事者である日本にもやっぱり責任があると言わなければならないと思うのですが、いかがでしょうか。
  222. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 私どもは韓国政府は日本にとって友好的な政府であるというふうに確信をいたしておりますが、その友好国の政府が責任を持って説明したその内容、それから判決の要旨というものからして、先ほども申し述べましたとおりに、金大中さんの日本における言動は、これは訴因の部分ではなくて背景説明の部分に該当するということでございました。したがいまして、くどいようでございますが、日本における金大中さんの言動は訴因にはなってないというのが私どもの理解でございまして、友好国政府の責任ある私どもに対する公式の回答をそのまま受け入れたというのが私ども考えでございます。
  223. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは細かい話をすればいろんな議論を私もできないわけじゃないんです。あのときの罪名、それから死刑という刑、これから見て日本における言動が問われてないなどということを言うことは、その方がむしろむずかしいというふうに指摘をしなきゃならぬわけでありますが、そういう点で外務省のとってきた態度に幾つかのやっぱり疑問があるということをまずきょうは指摘しておきたいと思いますが、同時にやっぱり金大中氏のもう一つの問題は、ともあれ金大中氏は死刑を免れて、いまアメリカに行っておられます。  そこで、日本の外務当局として真相解明するために金大中氏から直接事情を聞きたいということで、アメリカ筋に一定の外交折衝を持たれているというふうに聞いているわけでありますが、その概況、最近の状況等について御説明をいただきたいと思います。
  224. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 先生御案内のとおりに、いわゆる金大中さんの事件につきましては、まだ捜査が継続中であるというのが私どもの理解でございまして、そこで、私が申し上げるのはなんでございますが、被害者から事情聴取をするというのが捜査の常道であるという警察庁の御意向を承りまして、警察庁の要請をアメリカ政府に私ども責任を持ってお伝えいたしまして、日本政府といたしましては、つまり日本の捜査当局としましては金大中さんから直接事情聴取をしたい意向を持っている。そこで取り次いでほしいということを、これは問題が二点ございまして、現在金大中さんはアメリカの主権のもと、アメリカの領土におりますので、まずアメリカ政府の了解を必要とする、それからもう一つの点は金大中さん御自身の御意向というものをこれまた尊重しなければならぬという二点がございますが、第一点のアメリカ政府から了解を取りつけるということにつきましては、私はアメリカ政府は了解したというのが私どもの理解でございます。じゃ、残るところは金大中さん御自身が日本の捜査当局からの事情聴取を受けるかどうかという問題でございますが、これは現在のところアメリカの当局が金大中さんと現在いろいろお話をしておられるというのが現在までの状況でございます。
  225. 矢田部理

    ○矢田部理君 米政府の了解と金大中氏自身の同意といいますか、了解が必要だということで、後段の接触をアメリカ政府を介してやっているということでありますが、それはもう大分期間がたつのですね、そういう報道があってから。その結果、あるいは経過についてはどういうふうになっているんですか。
  226. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 私は、いつとは申し上げることは困難でございますが、アメリカ政府と金大中さんとの接触の結果がそう遠くない時点におきまして私どもの方に伝えられるというふうに考えております。
  227. 矢田部理

    ○矢田部理君 そう遠くない時期に伝えられるという感触なんですか。それは日本の事情聴取にも応じてもよろしいという方向の、いい意味での感触なんでしょうか。
  228. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 正確な表現を用いませんで誤解を先生に与えましたことをおわびいたしますが、私の申し上げました感触と申しますのは、その金大中さん御自身が日本政府、特に捜査当局からの事情聴取の要求に、あるいは要請に応じますというイエスの返事と、ノーという返事と、それから考えられますのはその中間と申しますか、条件つきで事情聴取に応じてもよろしいという、この三つの場合が想定されますが、いずれにいたしましてもそれは現在アメリカの司法当局と金大中さんとの間の話し合いの問題でございまして、その話し合いの結果が、日本政府、私どものところにその話し合いの結果がもたらされて、具体的な金大中さんの御意向が明らかにされるのはそう遠くない時点であろうというのが私の感触というふうに申し上げたつもりでございます。
  229. 矢田部理

    ○矢田部理君 中身はわからぬ。見当つかない。
  230. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 中身は私、率直に申しまして、いまここで申し上げられるだけの十分な根拠を持ち合わせておりません。
  231. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本の方々も直接アメリカ等に出向いてお目にかかったりして、いろんな議論が言われてきておるわけでありますが、金大中氏問題は依然として解決をしておらない。特に、やっぱり日本の主権が侵される、あるいは金大中氏自身の人権が侵される。日本から白昼公然と拉致されたという事件でありますから、日本にやっぱりもう一回戻ってもらう、戻っていただくというのが、原状復帰論が一つ基礎になきゃならぬと思うのでありますが、それはそれとして捜査当局に伺いたいのでありますが、事情聴取ということになりますと、これは直接その犯行現場といいますか、日本に来ていただいて話を聞くのが一番いいのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。特に、捜査当局は日韓政治決着に一時期反発をした。あそこに公然と指紋まで残っているのに、ああいう政治決着をされたのでは捜査に困るということで、その後も捜査をある程度続けてこられた。まだ閉じていないという状況から考えても、真相解明のためにそういう努力をしてしかるべきなのではないかという感じもしないで はないのでありますが、いかがでしょうか。
  232. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) 金大中事件については継続捜査中であることは幾たびも御答弁申し上げておりますが、そういう意味では被害者から事情聴取を行い、詳細な内容捜査に御協力いただけることがまず第一歩であろうと思っております。そういう意味で、先ほど外務省から御答弁がありましたように、われわれとしては可能ならば金大中氏から事情を伺いたい、かように思って、外務省にその打診方をお願いしておるわけでございます。
  233. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、その事情聴取でありますが、アメリカへ出向いていって聞くという以上に、金大中氏の御意向にもよりますが、場合によっては日本に来ていただいて、そして事情を聞く、そのためのやっぱり環境整備をやるということを考えてもいいのではないか。特に、これは警察庁捜査の立場からどうかということと、それから外務省に対しては、金大中氏のパスポートはアメリカ行きだけなんですね。そういう状況になれば韓国政府と交渉をして、日本に来ることも含めてやっぱり環境整備をすべきではないのかということを考えているのですが、いかがでしょうか。
  234. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) 捜査技術的に申し上げれば、被害者に実況見分にもお立ち会いいただいて、詳細を解明することがベストであることは言うまでもございません。
  235. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 現在、金大中さんがお持ちになっておられるパスポートはアメリカ向けにのみ有効のパスポートであることは、先生御指摘のとおりでございます。そこで、金大中さんが日本に来られるということのためには、日本向けにも有効なパスポートを韓国政府から発給してもらわなければならないという問題が当然起こります。この問題につきましては、これはあくまでも金大中さんと韓国政府との関係の問題でございます。これが一つ。  それからもう一つ、先生の御意見、御指摘はよく理解できますが、まず先ほども答弁申し上げましたとおりに、先生の御指摘の問題にお答えするためには、まず金大中さん御自身が、日本の捜査当局が要請をいたしました事情聴取に応ずるかどうかという金大中さん自身の意思が明確になった時点でよく考えてみたいと、かように考えております。
  236. 矢田部理

    ○矢田部理君 ですから、金大中氏の意思が大事でありますが、その意思を発動させるためにも、従来政府がとってきたような政治決着のあり方、とりわけ金大中氏自身の受けとめ方は、これはまあ恐らくでありますが、日韓政治決着で、日本における言動は問わないということを中身とする政治決着をしたにもかかわらず、まさにその言動が問われて死刑の判決まで受けたというふうな理解に立っているわけであります。日本政府のそこにかかわる責任を明確にしなければ、それを含めて謝罪等をしなければ簡単にいかないかもしらぬと私は実は思うわけであります。そこら辺も含めてもう一度この真相解明が可能なような、あるいは人権の回復や主権侵害の問題点等が十分に明らかにされるように、こういう条件整備を日本政府としてとってしかるべきなのではないかというふうに思うのですが、これは外務大臣いかがでしょうか。
  237. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 金大中氏の問題については、すでに御承知のようにいわゆる外交決着というものはついておるわけでございます。その際、お話しのように、金大中氏の言動の責任は問わないということになっております。そして、いま判決文がいろいろと言われておるわけでございますが、先ほどから答弁をいたしまするように、日本と韓国との政府間の交渉におきましては、韓国側から責任を持って回答があり、その要旨が日本政府にも渡ってまいりました。韓国政府は責任を持って、いわゆるその判決については、金大中氏の日本における言動はいわゆる判決の背景説明であったということでございます。これは韓国政府の公式な発言でございますから、われわれはこれを信頼いたしておるわけでございます。  同時にまた、この金大中氏のいわゆる捜査は続いておるわけでございます。これは捜査当局の意を受けて外務省としてもアメリカ政府と折衝を続けておる、アメリカ政府としてもわが政府の要請にこたえて金大中氏と話し合いをいたしておるわけでございますが、先ほどからお話をいたしておりますように、金大中氏の意向がまだはっきりしないという面もあります。あるいはまた、これからのアメリカ政府を通じての折衝によってその辺は明確にして、もし金大中氏の了解を得られれば捜査当局もいわゆる尋問をしたい、こういうことでございますから、アメリカに捜査当局が参って事情聴取というものが行われると思うわけでございますが、その段階からどうなるかということは、まあこれは金大中氏の問題でもありますし、また捜査当局の御判断でもあろうと思いますが、そういう時点を踏まえて、わが政府といたしましても、また外務省といたしましても、これに対して対応していかなければならない、こういうふうに思います。結局、捜査当局がどういう判断をされるか、あるいは金大中氏がどういうふうな対応をされるか、こういうところを見て行うべきである、こういうふうに思うわけです。
  238. 矢田部理

    ○矢田部理君 捜査当局もいま、日本に来ていただくのが捜査にとってはベストであると、これはもう当然な話でありますが、言っておられるわけでありますから、その努力、そのための環境整備をすべきであるというのが第一点であります。同時にまた、その環境整備の重要な一つは、韓国政府がいままで説明をしてきたことと違った内容の問題が判決文などの入手から指摘をされておるわけであります。そこについて日本政府としてもう一度やっぱり考え直していく、政治決着のあり方にも従来から問題にされておったわけでありますから、これをやっぱりもう一回見直すというような方向で解決を図っていかないと、この問題はなかなか解決をしない。日韓関係のとげは依然として、アメリカ方面にはああ言ったけれども、このとげがなくなったということにはならないということでもありますので、ひとつ十分に外務省としてもそういう点を留意してこれからの対韓外交を進めていただきたいというふうに思うわけであります。  同時にもう一点、この対韓外交との関係で問題になっておりますのは、在日韓国人の政治犯の問題点であります。私の調べでは、現在約二十五名、あるいはそれ以上になるかもしれませんが、在日韓国人が韓国内で政治犯として捕らえられて獄中にあるわけです。うち五名の方は死刑の判決が確定をし、最近減刑をされましたけれども、無期懲役ということにはなりましたが、獄中にある、こういう状況について外務省としてはどんな受けとめ方をされておられるでしょうか。
  239. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 在日韓国人が、いまお話のように、韓国でスパイ容疑等でお話のような死刑を初めとして判決を受けているということは承知しておりますが、しかし、これは何といっても韓国の司法の問題ですから、わが国としてもこれに容喙をする余地はないわけでございますが、しかし、やはり家族の方も日本におられるわけでございまして、大変心配をしておられるわけでございますので、政府としましては韓国の政府に対しまして、死刑等については死刑執行が行われないような、いわゆる人道的な配慮が加えられるようにこれまでも要請をしてまいってきておるわけでございます。これは今後ともわれわれとしても十分留意してまいりたいと思っております。
  240. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういう中にありまして、つい最近孫裕烱氏が韓国の大法院で死刑の判決が確定をいたしました。この孫氏に対しても、外務省としては同様の態度、つまり死刑執行が行われないように韓国政府に要請をすると、関心表明を行うということをおやりになるおつもりでしょうか。
  241. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) いわゆる在日韓国人の政治犯の問題につきましての日本政府、外務省の基本方針は、先ほど外務大臣が御答弁申し上げたとおりでございます。先ほどの外務大臣の御答弁の ラインに沿いまして、私どもは、ただいま先生御指摘のきわめて具体的な問題の、孫さんの死刑判決の問題につきまして、わが国が他国の司法に対して内政干渉をすべきでないという大前提は置きながらも、やはり人道的な見地から何とかひとつ穏便な措置といいますか、人道的な配慮を加えてほしいという申し入れを近々のうちにやるつもりでございます。
  242. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは孫氏の問題だけではないのでありますが、外国の司法に属する問題である、したがって、内政干渉にわたるようなことはすべきでないということは一つ見解でありますが、同時にまた、人権問題とか人道上の問題は、場合によっては国境を越えなきゃならぬ。かつてカーターの人権外交などという議論もないわけではありませんでした。それだけではなくて、どうも在日韓国人の政治犯の問題というのは日本国内にも相当程度かかわりを持っている疑いが幾つかあるわけでございます。金大中氏なんというのは、加害者も被害者も日本国内ということで、象徴的なのでありますが、この孫氏の事件についても、先ほど質問をしておりました和田議員からすでに他の委員会指摘をされてきているところでありますが、この孫さんの裁判に使われた、あるいは提出された資料の一部が私のところに来ているんであります。これを見ますと、どうも孫さんはスパイでやられたわけです。ところが、孫さんは、奥さんが乱数表とか暗号表を任意提出したことになっている。日にちも合わないんです。これは、細かく説明をすると時間がかかりますから省略をいたしますが、五十六年になりますか、一九八一年ですね。四月の三十日の日にこちらに帰ってこられた。奥さんは主人と一緒に、孫さんと一緒に韓国に行っておられた。孫さんは韓国でKCIAにつかまってしまった。奥さんも最初やられたんだけれども釈放されて帰ってきた。四月の三十日、月末に帰ってきて、夜中まであるお葬式に出ているわけなんです。ところが孫夫人から乱数表とか暗号表が提出をされ、五月の一日の一時に韓国でそれが押収されている。私はこれは飛行機の時間その他も全部調べてみましたが、とてもそんな軽わざみたいな芸当はできるはずがない。それがしかも孫さんの死刑判決の恐らく最有力の根拠になっていはしないかというふうにも——実はこれ判決文まだ入手しておりませんからわかりませんが、思われるわけですね。そしてパスポートは渡しているんですね。孫さん自身のパスポートを渡してくれと言ってある男が来て、奥さんがそれを渡したことは事実なんです。これは乱数表だの暗号表など渡したことはない。それが奥さんが提出をしたことになっている。日時的にも非常にごまかしがあると、こんなことで実は有罪にされた。しかも死刑判決が下されていることになるということになりますと大変なことでありますし、特に奥さんが韓国からこちらに戻されるときに、KCIAに呼ばれ、ある男が取りに行くからパスポートを出せと言われたということで、黄なる男が接近をしてくるわけでありますが、どうもそれがKCIAと関係があるのではないかという疑いも実はあるわけなんであります。そういうことになりますと、どうも韓国の官憲が日本国内で捜査活動に従事をしている。警察庁の説明によると、権力的なものでなきゃいいとか、強制的なものでなければよろしいという議論でありますが、先ほどの金大中氏の話と同じように、外国の公権力が、任意捜査であれ事情聴取であれ、他の国で活動をする場合、少なくともその国の政府の了解、同意がなきゃならぬはずであります。それなしに動いている形跡すらもあるということになると、この事件は幾つかの疑問を実は指摘せざるを得ないわけでありまして、その点警察関係でも奥さんなどに当たって調査をしていることと思いますが、その調査の結果がどんなふうになっているか。  それからもう一つは、単に外国の司法に属する問題だということだけでは済まない、日本の国内にかかわって幾つかの問題点があるということも踏まえて、実はこの問題には、対韓国との関係では対処していただきたいというふうに要求しておきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  243. 山田英雄

    政府委員(山田英雄君) 外国の捜査機関がわが国の了解なく国内で捜査活動を行っていたという事実は私ども全く承知しておりません。  お尋ねの孫裕烱氏のパスポートにかかわることにつきまして、私ども最初にその事実を、そういう問題があるということを認知しましたのは、二月九日の当院の決算委員会和田議員の御質問によってでございまして、ことしの一月二十五日に孫氏の夫人が外務省に上申書を出しておるということでございます。その上申書に述べられております事実関係について、三月一日に大阪府警生野警察署において孫夫人においでいただいて事情を確かめました。  問題のパスポートの点でございますけれども事情聴取をいたしましたところでは、五十六年の四月三十日に、ソウルのホテルの部屋で、先に韓国に行っていた御主人に会ったと、そのときに北朝鮮に行ったという疑いがかけられているんだと、古いパスポートが要るという話が出されたわけでございます。そこで孫夫人としては、主人である孫氏のために必要なものならと考えて、どこに古いパスポートがあるんだということを御主人に尋ねると、御主人は自宅のどこそこに置いてあるということを言ったわけでございまして、そこで日本に帰ってきて、そのパスポートを黄という、これは身元不明、特定ができておりませんが、そういう人物に手渡したという事実関係は認められました。しかし、その間に奥さんがおどかされたとか、あるいはごまかされたとかいう脅迫、欺罔の犯罪が介在しているということは認められませんでした。同時に、御主人のためにそのパスポートを渡さにゃいかぬという気持ちで渡されているわけで、国内で領置あるいは差し押さえ、そういったようなことが行われたということも認められない、そういう状況でございます。
  244. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 事実関係はいまの警察庁の御答弁のとおりだと思いますが、政府としては、いずれにしても外国の司法権に属する問題、これに介入するということはできないわけでございますが、しかし、この事件はわが国内においても関係がありますし、また家族もおられるわけでございますから、先ほどアジア局長答弁いたしましたように、やはり刑の執行と、死刑の執行ということに対しては人道的な配慮が加えられるように、近く韓国政府に対して正式にそのことを申し入れる考えでございます。
  245. 矢田部理

    ○矢田部理君 各論的な議論をすればもう少しいろいろあるわけでありますが、官房長官の時間もあるようでありますから、少し人勧の問題を話をしてみたいと思います。  五十七年度末ということで、きょうでいよいよおしまいになるわけであります。それにしても、人勧、完全に見送られる、これはやっぱり公務員労働者にとって大変なことでありますし、年金受給者等に対する響きも非常に大きいし、他の波及効果もあるわけでありますが、したがって、私どもは今後とも五十七年度の人勧を実施すべく格段の努力を政府にお願いをする、あるいは検討をしてほしいと要望する次第でありますが、その中で一つテーマとして取り上げてみたいと思いますのは退職金の問題でございます。私の方で試算をしてみました。勤続三十五年、勧奨退職を受けた方をモデルにしてやってみたのでありますが、この人の号俸を三等級十五号俸と仮定をしてみますと、五十六年四月から五十六年中にやめますと退職金は、退職手当ですね、大体二千百四十七万ぐらいになります。そして、五十七年の一月から退職手当法は毎年、三年間にわたって減額をされてきます。しかし、人事院勧告である程度ベースが上がることに本来はなっておりますから、五十七年度の人事院勧告の率をそれにかけて、本来ならば幾らぐらい退職金がとれるであろうかということを計算しますと二千百八十五万円、つまり五十六年、暦年ですね、でやめた場合には二千百四十七万、それから人事院勧告どおりことし実施をして五十七年一月以降やめれば二千百八十五万、これ四十万前後カットされても上がることにな ります。ところが、退職手当法で減額をされる、五十七年一月から、加えて人事院勧告が実施をされなかったものでありますから、本来ならば二千百八十五万円受け取れる退職手当が二千九十三万円ということになってしまう。言うならばここの差額は九十二万の差が出てしまうわけです。加えてことしの一月に入りますと、この退職手当の減額は二年目に入りますからさらに減額をされ、本来二千百八十五万もらうべきところの退職金が二千二十二万円になってしまう。その差額は何と百六十三万円減額になります。これは後で表をお渡ししてもいいと思うんでありますが、そういうことで、言うならば公務員の方々は三十年以上も勤めてきた、平均三十五年だと言われますが、退職手当法の減額で毎年減っていく、加えて人勧の凍結でダブルパンチで減る、これは老後設計にとってもこの二千万前後のお金の中から百六十万以上の減額があるというのは実は大変なことなんですね。これは幾ら何でもひど過ぎはしないかというのがまた世の声なんです。だから官房長官に怨嗟の声が高まりつつあるのも、広がりつつあることも言わなきゃならぬのかもしれませんけれども。こういう中にあって、これは率直に言って実態をいろいろ調べていただかなきゃならぬと思いますけれども、少なくとも実態をお調べいただいて、相当のアンバラが出るような場合には、何らかの見直し措置を講ずるというぐらいの姿勢は示されてもおかしくないのではないかと私は思っているのですが、いかがでしょうか。
  246. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 矢田部さんのいまお示しになった数字は恐らく、私頭の中で計算はできませんけれども、まあそういうことだろうと思います。ただ問題は、退職手当法はこれは官民格差を直しなさいと、つまり官高民低ではないかと、それが一割ぐらいあるではないかということで、国会で、もともとあれ二年間で直すと、それは期日は四月、三月との境でと、こういうことでしたね。それを修正なさって三年間にして、そして百分の二十を百分の十七、百分の十三、こう下げているわけですから、これは基本が官高民低を是正すべしという一般の国民の声にこたえたこれ改正ですね。この改正と人事院の勧告を凍結したと、この凍結もまさに異例の措置であることだけは間違いがない、これはもうかねがね申し上げるとおりで、二年連続するつもりはありませんと、こう言っているわけですから、仮に人事院勧告が凍結を五十七年しなかったとしても、十二月末までにやめた人と一月から三月までにやめた人の格差というものは依然としてあるわけでございますので、したがって、これは論理的に、二つを結びつけての矢田部さんの御議論は私ちょっといただけないなと、こう思うんですよ。しかしながら、大変公務員について厳しい処置であったということだけは、これは私ども十分理解をしておるつもりでございます。この点はだから二つを離して考えていただく以外制度的にはこれ無理ではないかなと、かように考えます。
  247. 矢田部理

    ○矢田部理君 その退職金減額法を私どもそれは直接関与していろいろこれ審議をしてきた。そのときいろんな流れを見ておりますと、やっぱり民間より幾らか上じゃないかどうかという比較の問題があったわけですが、しかもそれは減額を毎年していくとなると、前年度との均衡はどうなのかということがまたもう一方で議論になったときに、少なくとも人事院勧告が出て毎年少しずつ率は上がると、だから絶対額においてそんなに下がることはありませんよと、政府はそう説明してきたんですよ。ところが今度は二段階落ちみたいな下がり方をして、二千万前後のお金の中で百六、七十万もやっぱり下がるということになったんでは、これは中曽根内閣、大変に恨み骨髄の人たちがふえることになりはしませんか。その点ではきょうは総理府なり、あるいは自治省からもちょっと聞きたいわけですが、時間がなくなってしまいましたから、官房長官に恐縮ですが、代表してあれなんですが、何とかこのぐらいはやっぱり是正すべく今後とも努力をしていただくということを特に強く要望しておきたいと思うんです。
  248. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連。
  249. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 瀬谷英行君の関連質疑を許します。瀬谷君。
  250. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いまの矢田部質問に関連して私も質問したいんですけれども、実はきのうは大安で結婚式がございました。学校の先生の結婚式だったんです。集まった人は校長先生を初め教育長、教育関係者が多かったんですが、いま言う人勧の凍結問題に絡んで、宴たけなわになるに及んで怨嗟の声がほうはいとして沸き起こった。われわれ野党がその怨嗟の声を聞かなければならぬというのはまことに不合理な話なんですけれども、これはやはり人勧の問題は、銀行で言うと預金者に利息を払うのと同じ約束事なんですから、すべてはこの約束事を履行しなかったことに起因しているんですから、これはやはりなるべく早く解決をするということは当然の義務として考えてしかるべきではないかと思うんです。全部とは言わないが少しでも、徐々にでも解決しようという気があるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  251. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 人事院勧告制度は、これは尊重していくということ、これは間違いがございません。ただ、五十七年度の措置については、異例の措置としてごしんぼう願いたい。私も、ここに大ぜい役人が座っているわけですけれども、怨嗟の的にはなりたくない。これはやっぱり公務員の生活というのは政府に責任があるわけですから、そこらは十分心得て、政府としては財政の許す限りやはり温かい措置をするというのはあたりまえのことではないかというふうに私自身は考えておるわけでございますが、ことしの措置については、まことに遺憾ながらごしんぼうを願わなければならぬと。なお、退職金のいまの御計算ですが、これは私、詳しいことを知らないんですが、三月いっぱいにやめるというと、あれは何か一年間の計算が四捨五入式のやつがあるんじゃないですか。そこらの点はきょう専門家が来ておりますから、私はそういうところはわかりませんので、答弁をさせたいと思います。
  252. 藤井良二

    政府委員藤井良二君) いまの技術的な点についてお答えいたします。  この段落としと、それからベースアップというのは全然関係がないということは、いま後藤田官房長官がお答えになったとおりでございます。と申しますのは、五十六年度はベースアップいたしました。ベースアップいたしましたけれども、五十六年度を見ましても、その五十六年の十二月にやめた方と五十七年の一月—三月にやめた方を見ますと、ベースアップをした場合でも一月—三月にやめられた方が下がっておるわけでございます。  それともう一つ、いま後藤田官房長官が言われました計算の点でございますが、在職年の計算で、三月に一日でも入りますと一年に満つるような計算になりますので、その場合には割り増し率が増すわけでございます。したがって、四月に入省された方が三月の一日にやめられたとしても、その分が計算されますのでその割り増し率が増加するという形になっております。
  253. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 余り気のきいた話にならないんですよ、これは。尊重するという以上は実施しなきゃいかぬ。尊重するということは実施するから尊重することになる。実施しないで尊重しますと言ったってそれはだめなんですよね。  そこでもう一つ公共企業体の年度末手当に対する差別の問題でありますけれども、これの根拠は一体何かということもお伺いしたいと思うんです。
  254. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 公企体のボーナスの問題は、これはかねがね政府が言っておりますように、労使間のこれは話し合いの問題でございまして、だから、政府自身がこれに関与するというつもりはございません。ただ、しかしながら、金がないのに云々ということになってくると、これは大蔵省の承認とかなんとかという問題が起きてくるんではないかな、こういう気がいたします。しかし、直接的にはこれは労使間の折衝。そこで、この点については、これ当委員会で私お答え したような記憶があるんですが、一方には、何といいますか、労使間の関係の安定ということが、これは私は何よりも重要な一つの柱として考えるべきであろう。もう一本の柱は、今日やはり赤字企業ということについては、私は、それなりに国民の間からは厳しい批判があるのではないのか。したがって、そこは黒字赤字は区別をしてしかるべきではないかという国民の声もある、これにも私はやはり配慮すべきであろう。この二つの柱をどうあんばいしてやるのかということが、私は望ましい姿だな、こう思って、労使間の折衝を私は見守っておる、こういうことでございます。
  255. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それならば重ねてお伺いしたいんですけれども、じゃあ、赤字だからもういろいろと労使の間にもトラブルも出てくるし、金を払わないという理屈にもなるということならば、たとえば、税収がぐっと落ち込んだからといって大蔵省や税務担当者には手当を払わないなんていうことはしないはずなんですよね。それから、公共企業体でも、もうからない仕事はやりませんという自由を与えていいのかどうか。たとえば青函トンネルだとか本四架橋だとかいうのは、これは大変な投資をして、それを今度は使用料という形でもって払わせようとしてますわね。そうすると、トンネルだとか橋なんていうのは途中に何かこさえるわけにいかない。渡るだけ、くぐるだけですからね、これはもうけようがないわけです。こういうものをしょわされてもうけなさいといったって、これは方法がないわけです。永久的にこれはもう赤字になるわけです。そうすると、それじゃ赤字になる仕事は嫌だ、青函トンネルはお断りする、本四架橋もお断りする、こういうふうに労働者側が言った場合に、それを認めることになるんですか。どうですか。
  256. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 公企体っていうのはやはり公共性がありますから、だから、いまおっしゃったように、おれはもうやめちまうぞというわけにもいかぬのではないか、そういう面はありますよ。しかしながら、国の企業体であるという特性、特質、これはやっぱり私は考えなきゃならない。だから、私は何も公企体を民間会社と同じのつもりはありませんよ、公共性がありますから。しかしながら、やはり企業体であるという実態もこれまた否定してはいけない。ならば、赤字の企業がボーナスをともかく従来どおりもらわなきゃならないというのもいかがなものですかね。これについては、やはり赤字を出した以上は、それはいろいろな理由はありますよ、労働者にだけ帰することのできない理由もあると思うけれども、やはりそこは、すべての従業員がボーナスぐらいについては若干のごしんぼうを願うということは、私は、当然のことではないのか、かように考えます。
  257. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それじゃ、赤字がはっきりわかっている仕事をやらしていても、その赤字が続く限りはがまんしてもらうということになるんですか。
  258. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) そこはいわゆる公企体の特質だと思いますね。
  259. 矢田部理

    ○矢田部理君 いずれにしても、公労協の仲裁の問題にしても、手当の問題、それから公務員の問題、もう一度政府はやっぱり真剣に考えてほしいということを強く要求しておきたいと思います。  時間が終わりになりそうでありますから、次のテーマに入ります。官房長官結構です。  あと、教育問題でありますが、勝又委員が提起をしましたように、どうも最近、受験生の間で、共通一次について平均点が大きくかさ上げされているのではないか、科目間の格差が調整されているのではないかということで、えらく不安や疑問が広がっているのですが、文部省どういたしますか。
  260. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 矢田部さんからそういう質問があり、また勝又さんからもそういう意見があったそうでございますが、そういうことは全然ないということでございます。
  261. 矢田部理

    ○矢田部理君 これだけ不安が、青春期で非常に重大な、いろんなものに関心を持っている人たちが、朝日のきょうの「今月の投書から」なんか見てもそうでありますが、たくさん出ているわけですよ。それは、そういうことはやっていないと言うだけでなくて、内容を公表したらどうでしょうか。配点細目表をどうして明らかにできないんですか。そのぐらいのことはやって、客観的に物を見させる、科学的に考えさせるのが教育のあり方ではないでしょうか。
  262. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 細部の問題については局長からお答えさせます。
  263. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 前回、勝又委員の御質問の際に大学入試センターの所長からも御説明した点でございますけれども、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、操作を行っているような事実はございません。  配点の問題につきまして、特に枝問について配点を公表してないではないかという点が言われるわけでございますが、先般も御説明いたしたとおりでございますが、現在の取り扱いとしては、正解と大問と小問の配点と平均点などを公表しているわけでございます。いわゆる自己採点方式をとっておりますのは、受験生が最終的な志望校を決める際の一つの目安として、自己の学習の進展の度合いなどを知らせるためにとっているものでございまして、各自の成績を枝問の配点にまで正確に知らせるというためにとっているわけではないわけでございます。  なお、そういうことで枝問の配点については公表しておりませんが、実際の採点に当たりましては、単に小問の配点を枝問ごとに機械的に配分しているわけではございませんので、細かく受験生の対応を見るために、私どもとしては部分点でございますとか、組み合わせ点というような、正解ではないけれども論理の思考過程について判断できる点数を配点しているというような問題もございます。そういうようなことがございまして、実は昨年、各高等学校に対しても、入試センターからその点について十分説明を加えた文書を配って、理解を深めていただくように私どもとしても対応いたしているところでございます。
  264. 矢田部理

    ○矢田部理君 それで納得しないから、いろんな疑問や問題が出ているわけです。方法としては公表しかない、そのことを強く要請して最後の質問に入ります。  農林大臣、食糧の自給についてでありますが、いままで私どもは米過剰だとばかり思っておった。ところが、ここ一、二年、急速に米が不足してきて、需給が逼迫しているという現状であります。五十八年米穀年度の持ち越し量は十万トンぐらい、せいぜい国民としては三、四日分しかない。ここでまた不作が続いたりしましたら大変なことになる。天候不順でも続いたらどうにもならなくなるということで、農林省のとってきた米に対する政策、これは間違っているんじゃないか。特に減反政策には問題がある。今年度は幾らか減反を緩めるということではありますが、一たん減反したものをそう簡単に農民は、はいきた、ことしはふやそうということにはならないのが現実でありまして、やっぱりこの状況から考えてみて、私は、農業政策はもう一回根本的に考えるべきだ。とりわけストック、備蓄等について、油はずいぶん熱心でありますけれども、二百万トンぐらいはストックしようということで、いま見直し作業をやっている。私は、こんな不安な状態に追い込んでしまうことは非常によろしくないと、その点で農林大臣にしかとした農業政策、米を含めた食糧の自給率の向上についてやっぱりもっと取り組んでほしいということを要望しておるわけでありますが、考え方を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  265. 金子岩三

    ○国務大臣(金子岩三君) 食糧に不安を持たせるということは大変な問題でございます。この端境期十月に十万トンというのも事実でございます。これはやっぱり三年続きの不作の影響で、とても予想外の私は少量の持ち越しになったと思います。しかし、これは、八月から早場米が出ますので、政府米が二百万トン、自主流通米が百五十万トン、これが八月、九月に出そろいますので、大 体端境期に食糧に心配はないわけでございます。ただ今度は、五十九年に移る場合の持ち越しが幾ら残るか。このようなことを繰り返してはいかない。したがって、ある一定の数量はひとつ確保して持ち越しを続けていかなくてはならない。二百万トン備蓄の問題等もいろいろ過去において取り組みがございます。そういうことも考慮に入れまして、ただ米の場合、減反も含めて、それじゃたくさんの米を持ち越すと財政負担が大きくなって、他の農林予算に大きな影響を及ぼすというようなこともありまして、大変精密、厳密ないわゆる計算をして米の自給については取り組んでいかなければならないということを考えております。
  266. 矢田部理

    ○矢田部理君 終わります。(拍子)
  267. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で矢田部理君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  268. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、塩出啓典君の一般質疑を行います。塩出君。
  269. 塩出啓典

    塩出啓典君 私は広島に住む一人として、軍縮問題について質問いたしたいと思います。  最初に、外務大臣にお尋ねいたしますが、米ソによるINF交渉におきまして、レーガン大統領はいままでのゼロオプションという提案に対して、中距離核ミサイルの削減についての新しい提案をしたと報道されておるわけでありますが、事前に相談があったのかどうか。また、この意図はいずれにあると判断しているのかどうか。さらに、日本政府としてどのように評価をしておるのか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕
  270. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) INF交渉につきましては、アメリカ政府から事前にわが政府に対しましては十分緊密な連絡があったわけでございます。これは、NATOの諸国に対すると同じように、日本政府に対しましても提案の内容等につきましても事前の連絡があったわけでございます。  このレーガン提案というのは、結局、アメリカのかねてから提案しておりますいわゆるゼロオプション、これを変えるものではない。最終目標としてはあくまでもゼロオプションであるけれども、やはりゼロオプションを主張しておるだけではINF交渉というものはまとまらない、こういう判断もあって、いわゆる暫定的な形でINF交渉を妥結させるための提案という形で出されたものである、こういうふうに考えております。  日本といたしましても、この暫定提案がやはりアメリカ政府がINF交渉に非常な熱意を持っておる、そのあらわれであるということのようにわれわれは理解をして、これを高く評価をいたしておりますし、また、そのアメリカ政府、レーガン暫定提案の内容、あるいはその意図等から見まして、あくまでもやはりINF交渉はグローバルな形でやらなきゃならぬということがはっきりとうたわれておりますし、また、この交渉において日本の立場が損なわれないように、あるいはまた、極東の犠牲においてこのINF交渉が行われるということがないようにという日本側のこれまでの要請というものは、アメリカも十分踏まえてなされたものである、こういうふうに考えております。したがって、評価をしておりますし、この暫定提案を中心にいたしましてINF交渉が再開をされるということを私は心から期待をいたしておるわけであります。
  271. 塩出啓典

    塩出啓典君 今回、極東配備を別枠とせずに一括とすると、こういう考え方は、日本の意図が十分反映したと、こう判断していいわけですね。
  272. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 暫定提案は具体的な内容を盛っておりませんけれど、あくまでもグローバルな形で中距離核兵器の削減が行われるべきであるというアメリカの主張でございますから、これは日本側のかねてからの意思がそこに表現されておると、こういうふうにわれわれは理解をしております。
  273. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、今日まで国連総会において毎年、インド等を中心とする非同盟諸国が提案国となっていわゆる核兵器不使用の決議、こういうものが出されてきたわけでありますが、わが国は最初賛成をいたしましたが、次に棄権、次に反対、そして昨年は棄権の態度を表明をしておるわけであります。私は、被爆国という立場から考えても、そしてまた五十七年五月二十七日、第二回軍縮特総を前にしての国会決議の趣旨から見ても、かかる決議案には賛成すべきであると思うが、今後どうするか。
  274. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) わが国は、改めて申し上げるまでもございませんが、核の惨禍を受けておるわけでございますから、こういうことが二度とあってはならないということを心から願っておりますし、この目的に資するために、やはりあらゆる実効的な措置が講ぜられるべきであると、こういうふうに思います。したがって、われわれの核の決議案に対する基本的な態度は、やはり安全保障の確保、あるいはまた、核軍縮の実効的な措置が実際に行われる可能性があるかどうかという判断に基づいて態度を決めておるわけでございまして、ただ題目だけで核の軍縮というのは実行されるわけでないわけですから、やはり実際の、この決議というものが実効的に行われるかどうかという判断が非常に大事じゃないかと。そういう点でこれまで決議案に対処してまいったわけでございまして、あくまでも基本的には、私たちは核の惨禍を再び受けてはならないという立場に立って、われわれとしての核軍縮に対する積極的な姿勢というものは、これからもますます続けていかなきゃならない。決意を持って臨むわけでございます。
  275. 塩出啓典

    塩出啓典君 昨年のこの条約にいたしましても、賛成百十七、反対十七、棄権八と、こういうことで、世界の大勢は反対をしておるわけでありますが、そういう中で、わが国の姿勢は非常に国際的にも不可解と言わざるを得ません。  鈴木前総理は、第二回軍縮特総に出席した後記者会見で、今後はこのような決議にはさきの国会決議を尊重して判断をすると。さらには、むしろわが国から提案すべきではないか、こういう意見に対して、検討さしておると、このように言っておるわけでありますが、私は賛成すると明言すべきであると思いますし、さらに、わが国が提案すべきだと思うんであります。その点はどうでしょうか。
  276. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) わが国の核に対する考え方は不動でありますし、鈴木前総理もお話があったように、やはり国会決議等も踏まえてやらなきゃならぬことは、これはもちろんのことでございます。なおわが国としては、核実験禁止の決議、そうした趣旨の決議は何回かこれを国連にすでに提案をしておるわけでございますが、ただ核不使用決議等につきましては、この決議が果たして実効性があるかどうかというふうなことで、いろいろと問題点があったものですから、私たちが態度を保留すると、棄権とか、あるいは反対と、こういうことに意志を表明したわけでございますが、先ほどから申し上げますように、われわれとしては今後ともいま申し上げましたような基本的な立場に立って、国連総会におきましても実効のある措置が可能であるならば、そうした決議案は今後ともわが国自身としても積極的に提案をする考えでございます。
  277. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、米ソ超軍事大国を頂点に持つ軍事秩序は、一方では互いに軍備を競い、他方では第三世界を系列化させようとし、その重要な手段として兵器の輸出が行われてきておるわけであります。世界の武器輸出の現状は非常に急増をしておるように聞いておるわけでありますが、外務省としては掌握しておりますか。
  278. 門田省三

    政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。  兵器の輸出量につきましては、八〇年までの十年間に九十六億ドルから二百二十億ドルへと増大していると言われておるように承知いたしております。
  279. 塩出啓典

    塩出啓典君 また、米国有数の民間外交研究機関である外交関係評議会主任研究員のアンドルー・ピエール氏は、このように指摘しております。 いま門田局長報告のように急増しておると。それから、昔は中古品であったが、七〇年代以降は最新鋭の高性能兵器が大宗を占めておる。また、輸出先がいままでは同盟国向けが大半であったが、七〇年代以降はいわゆる中東諸国、第三世界がふえておると。第四番目には、兵器の関連技術輸出が増大をしておると。二十年前は第三世界ではほとんど生産が行われていなかったわけでありますが、現在では兵器生産が現在二十四カ国で行われていると、このように述べておるわけでありますが、外務大臣としてこういう現状をどう考えますか。
  280. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) わが国としては、御承知のように武器輸出禁止三原則も持っておるわけでございますし、また世界の平和を維持するという立場から、この武器の移転というものが大幅に行われるということは必ずしも思わしくない、こういうふうに考えておりますし、そういう意味において、わが国としてもそうした武器の移転の現状の把握といったものを国連においても主張いたしておりますけれど、しかし各国ともそれぞれ安全保障という立場があるものでございますから、したがって、そうした安全保障の立場から、武器の移転とか輸出とかいうものに対して、積極的にこれを決議に盛るというようなことについては、各国とも現在のところでは慎重であるということは、今日の国際情勢上これまたそれなりの理由があると、こういうふうに思うわけでございますが、まあ全般的に見まして、やはり武器の輸出等が進み、あるいはこれによって国際緊張が高まっていくというふうな事態は好ましくないことは当然のことであると存ずるわけでございます。
  281. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは通産大臣にお伺いしたいわけでありますが、日本の国内にも武器輸出をしたいという、そういう意見もあるわけであります。確かに、不況下の世界経済の中であって、兵器産業が一時的には活発な雇用を拡大し、景気停滞を打破する。しかし、長期的かつ全体的に見るならば、経済資源の浪費を招くわけであります。全世界総生産の現在五、六%に及ぶ軍事支出は世界経済にとっては過大な負担となり、経済社会活動の停滞をもたらすことになると、このように考えるわけですが、通産大臣のお考えはどうでしょうか。
  282. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 世界産業の停滞をもたらすということになるかどうかはちょっとわかりませんし、判定のしにくい問題でありますが、しかし、日本がもし武器を輸出すればそれは外貨の獲得、そして大量調達ができますから開発費あるいは研究費、防衛庁の購入費は安くなるかもしれませんですよ。しかし、日本は兵器を売ることによって栄えるとか富むとかいう手段を絶対にとってはならない国だと、またとるべきでない。それは憲法の趣旨を踏まえるまでもなく、私たちの世代に誤ってしまった第二次大戦の結末、そこを私たちは何を学びとって、わが民族、国家というものを誤りなく伝承していかなければならないか。いやしくもどんなに困っても、どんなに金もうけにつながっても武器を売る国にはならないという、そういう私は与野党挙げての哲学を持つべきではなかろうか。したがって、そういう仮定の御質問でありますからお答えいたしましたけれども、日本は武器輸出国になってはならない、そのようなことの経済の利益についても計算することすら私は必要はない国であると思っております。
  283. 塩出啓典

    塩出啓典君 私は、わが国は戦後平和憲法を守り、武器輸出をしないという方針をとってきたわけであります。資源のないわが国が貿易を通して発展してきた大きな原因の一つは、わが国が武器輸出を行わず、すべての国と交流してきた結果であると、私はそのように思うわけでありますが、通産大臣のお考えを承りたいと思います。
  284. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) それは直接の因果関係とは言えないのじゃないでしょうか。武器を売らない国だから日本のものを買ってやろうという国があるわけじゃありませんから、それによって日本の経済が戦後発展したのではなくて、むしろアメリカの武力の庇護のもとに、安保条約のもとで侵入してくる敵がない限りは戦いということを念頭に置かないで、アメリカでよく言われていた安保ただ乗り論的な姿の経済発展、いわゆる経済の発展に没頭できたということの方がメリットとしては大きかったのじゃないかと思いますが、これはお互いの考え方の違いでございますから、いずれもどっちが間違いというわけでもないと思います。
  285. 塩出啓典

    塩出啓典君 先ほど外務大臣もこういう武器輸出が急増しておる状態は好ましくないと言われたわけでありますが、武器輸出禁止の方向に世界を変えるように日本はリーダーシップをとるべきであると思いますし、また国際的にそれを主張できる数少ない国が日本ではないかと思うのでありますが、今後サミット、あるいはあらゆる場合を通して努力する考えはないかどうか承っておきます。
  286. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) わが国はわが国なりの主張もありますし政策もあるわけでございますが、現在の国際情勢の中にあって、それぞれの国がやはり安全保障というものを第一義に置いておるわけでございます。そういう中で、日本としては先ほどから申し上げますように、武器の輸出が急増することによって国際緊張が激化するとか、あるいは紛争の助長につながるというふうなことになることは好ましくないわけでございますから、国連等におきましても武器のそうした転移等につきましての状況、実態というものを把握すべきであるというようなことを、われわれの政府の代表はそれを主張しておるわけでございますが、しかし、まあいまの現実的な今日の国際情勢の中において、各国とも安全保障という立場から、この武器の輸出に対してこれを禁止するとか、あるいは慎むというふうなことについては積極的な姿勢はとってないというのが現状でございますが、わが国なりの一つ考え方というものは、今後ともやはり平和外交を推進している以上は国連の場等において、国際舞台等において、これを声を大きくして主張するのは当然であろうと、こういうように思いますし、今後ともこれはやっていかなきゃならぬ課題であろうと、こういうふうに思います。
  287. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、通産大臣にお尋ねいたしますが、特定地域高度技術・工業開発促進法案、いわゆるテクノポリス法案を準備をしており、その要旨が一部報道されておるわけでありますが、国会への提出がおくれているようでありますが、いつまでに提出するのか。また、大蔵省、自治省との間の意見調整に手間取っているようでありますが、このあたりは解決したのかどうか、これをお伺いいたします。
  288. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 明日の閣議を経て、明日国会に提案をいたします。トラブルは解決いたしました。
  289. 塩出啓典

    塩出啓典君 新聞の報道では、特に税金の関係では事業税とか、不動産取得税の減免は見送られ、固定資産税の減額にとどめると、こういうようにあるわけですが、大体そういう方向でございますか。
  290. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) そうではございませんで、いまの地方税でありますが、予定どおりの案で成案を得ることができました。
  291. 塩出啓典

    塩出啓典君 日経新聞の報道によりますと、都道府県とか市町村、公団、第三セクター、民間などが造成しておる工業団地が全国で三百八十四カ所、面積が約二万八千ヘクタールでありますが、そのうち約半分が買い手がつかず非常に困っている。このような工業団地を抱える県では思い切った誘地条例をつくろうとしておるわけであります。  報道によりますと、石川県は先端産業が来てくれれば十億円の助成金を出す、こういう案を考えているようであります。中途半端な優遇案ではなかなか来ないんではないか。そういう点は、先端産業の進出についてはどのようにお考えであるか伺います。
  292. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 私どもはこれを歴史的にとらえてみますと、日本の戦後の急速な発展と いうものは臨海型という、地形上から見ますと形であったのではないか、たとえば太平洋メガロポリス、ベルト地帯といろいろ言われてましたように、すべて臨海型であった。それだけに、またそれだけ臨海型の産業の特徴としての、いま苦しがって法案も出してお願いしようとしている基礎素材産業などというものが一斉に勃興していって、そしていまは衰退している。そして、今度は飛行場が各県に整備されていったことによって、距離を時間に置きかえて計算をする企業の論理といいましょうかね、そういうものから言いまして、先端産業的なものが内陸部の、主として臨海、内陸と分ければ内陸部の方の飛行場の周辺に、これ自発的に出ていっているわけですから、政府が加勢したわけでも何でもないが、そういう現状をとらえて、これをそのままその工場から飛行場へ、飛行場から成田経由外国へとか、飛行場から羽田経由本社へとかというだけで、そこに立地させていくのはもったいないじゃないかと、それぞれの地域で、それぞれのすでにもう始まっている地域もあるほど、その企業の技術の地域における拡散とか、もともとありました地場産業との連結とか、あるいは地域全体が産学住一体といいましょうか、そういう形で新しい未来先端産業の町へ浮揚しようとしているいま動きがあるわけですね。そこを私たちはとらえて、これをハイカラな言葉で法律の名前としてはいかぬというので変えましたけれども、テクノポリス的なものが地方というものでぐっと浮き上がってくるというようなものを加勢してあげることはできないだろうかというのが考え方の発端でございますから、臨海型はもうおしまいだと言うつもりもありません。したがって、いま御指摘になったように、なかなか造成した土地があいているというところに金を出しても来てもらいたいというところもあるでしょうし、しかし、だれも来いとも言わないし、国も何の加勢もしないのにどんどんなぜ先端産業が地方に出ていったのか、それは先端産業自体が、それがいいと思ったからでしょう。しかし、それをほっとかないでつかまえるというだけのことですから、臨海のところで造成その他が、企業がなかなか来ないというのは、確かにそういう現象だと思いますが、それはそれなりにまたある企業というものが、臨海であっても自分たちは新しく都市を出て、そして位置しようとか、あるいはまた同じように海の関係、空の関係等でもっといい場所があるという場合には、そういう場所に出ることもあるんじゃないだろうかと思いますから、それぞれの地区、それぞれの都道府県、都があるかどうかは別にして、県の方で苦労されておる、そういうところにはそういうところなりに私どもが行政的に御加勢できるところがあれば御加勢してあげないと、地方の方はすでに先行投資した分、それの必要とした借入金の返済あるいは利子、そういうもの非常に困っていらっしゃると思うんですね。こういうことも両方に目配りをしていきたいと考えます。
  293. 塩出啓典

    塩出啓典君 新聞報道によりますと、中曽根総理が北海道で、現在十九地区候補地があるわけですが、それに対して、全国的にばらまくような考え方は効率が悪い、乱費にもなると。一カ所に集中して、それが根拠地となり伸びていくやり方が賢明であると、こういうことを言っておるわけで、やや通産大臣の方向と違うような感じがいたしますが、その点はどうなのか。また、指定地域は何カ所ぐらい指定するつもりであるのか、また、その指定の基準といいますか、そういうものはどのようにお考えでございますか。
  294. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 中曽根総理の、北海道だったかと思いますが、記者会見か遊説かわかりませんが、そのような発言があったやに聞きましたので問い合わせましたところ、それは衆議院における私の十九カ所全部指定するつもりであると言ったことが、もうその翌日から各都道府県が、都は入っておりませんから各県が、道は入っていますから、そういう関係県が急速に自分たちがやらなければ指定受けられないぞという熱意がすうっとさめて、最初何件か指定されて、自分のところが第一年度になるだろうか第二年度になるだろうか、しかし、いずれにしても指定はされるんだなという、全然盛り上がる力がすうっと消えていったですね。そうなるともうお上にちょうだい、ちょうだいという計画になってくる。当然そうなると思うんです。そこで私が、じゃ十九カ所の指定は取り消す、全部やるというのは取り消す、そして厳しい基準でもって厳選すると。そして、これは別な場所ですが、新たなる候補地で、りっぱなそういう盛り上がりのある適地があれば、十九カ所以外に指定してもいいと、こういうことを言ったわけでありますが、その前段の方の、衆議院の予算委員会における答弁を総理が聞いておられたわけです。聞いておられたので、全国的にばらまくのではないということを知ってて、それに平仄を合わせて、いわゆるどういうふうに展開したらいいかというのは、一カ所ずつきちっと計画の立ったものに対して集中的にやって、全国に年次を経て全部指定する、ばらまくようなやり方はいかぬのだという意味の表現だったということがわかりましたので、決して総理と私の意見が違っているわけではありません。しかし、さてどんなふうな基準で指定するかと言われますと、これはまた知事さんたちが耳をそばだてて聞いているでしょうから、いまのところはそこらのところは、熱意なんというのは物差しでははかれませんからね。ですから、それら全体を総合的に見てほぼ、青写真などは来ておるんですよ。そういうもので、じゃいつのことになるのか、この道路はとか、この計画は本当にあるんですかとか、これは本当に実現するんですかとか、まあいろいろお聞きもしなきゃなりませんし、青写真かくだけなら、どこの県もりっぱにかいてくるものですからね。そこらのところは最初第一次の指定を何件にするかも含めて、その際に関係県にはっきりとわかるように、あるいは国民に、国会にもわかるように基準をつくりたいと思います。
  295. 塩出啓典

    塩出啓典君 こういう先端産業の意見を聞きますと、やっぱり地元の熱意も一つ条件ではありますが、たとえば土地が安いとか水がいいとか、あるいは良質の労働力とか、交通の便とか、こういうような問題があるわけでありまして、私はそういう意味で、やっぱりそういう点も十分配慮して、本当にそれに適したところに力を入れていかないと、熱意があっていろいろ予算つけたけれども先端産業来ない、こういうことではいかぬと思いますので、はっきり通産省は方針を明示して、熱意のあるところを、陳情によく来るところを指定するというようなことじゃなしに、客観的にやってもらいたい。  そして、特にかつての新産都市、工特地域のように上から下へという同じパターンでは成功しない。やっぱり地域の自主性、特殊性を大いに発揮してもらいたい。また、国の財政の現状から考えて、余り国に財政支出を頼ったやり方ではこれは行き詰まるのではないかと思いますしね。そういう点、通産省としてはひとつリードを誤らないで、責任持ってがんばってもらいたいと思うんで、その点お考えはどうですか。
  296. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 十分肝に銘じてやりたいと思います。ことに先ほど申しました先端産業は、すでに出ていることに着目したんですが、その先端産業が、あなたの企業はあの工場の技術を地方に拡散してあげる、そういう意思がおありですかとかなんとかということを確認もしないで、それを前提に計画をつくるなんというようなことはあっちゃいけませんので、    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 地方の活力というのはやっぱり自分たちの地域をりっぱにしようという意味であって、国は知らぬ顔をしているから、元気のいいのから先にとってやるという意味じゃありませんので、それは十分に指導等もいまいたしておりますから、先生のおっしゃったことを肝に銘じて逐次指定していきます。
  297. 塩出啓典

    塩出啓典君 大蔵大臣にもお聞きするようになっているんですが、大蔵大臣としてはこのテクノポリス法案についてはどのようにお考えでござい ますか。
  298. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いま、問答の中で通産大臣から内容について明らかになっておりますが、通産省より内容について御協議をいただきまして、そして建設的な方向でこれに対して対応をしてきた、その前提となりますものは、五十八年度予算、それからもう一つは税制上の措置、それはすでにできておりますので、さらに建設的な考え方で法案の作成について御協議を申し上げて今日に至ったと、こういうことに相なります。
  299. 塩出啓典

    塩出啓典君 ひとつ通産省が中心となって閣内不統一にならないように御努力をしていただきたいということを要望しておきます。  次に、経企庁長官にお尋ねいたしますが、五十七年度の経済成長につきましては、政府は実質三・一、名目五・一に目標を修正したわけでありますが、これは達成できるのかどうか。  また、米国の予想外の景気回復、あるいは原油の値下がり等プラス要因があるわけでありますが、特に米国の景気のわが国への影響をどう考えているか。また、五十八年度の見通しについては改定の必要はないのかどうか、こういう点についてお尋ねをいたします。
  300. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) お答え申し上げます。  まず第一の五十七年度の経済成長率の達成の見込みでございます。先般、国民所得統計速報で、昨年の十月—十二月分について発表いたしました。それによりますと〇・四の成長でございまするけれども、第一・四半期の一・九、そしてまた第二・四半期の〇・九、そして第三・四半期の〇・四、いずれも実質でございますが、この達成状況から見まして第四・四半期にほぼ第三・四半期と横ばいであっても三・一の成長率は達成できるというふうに計算されるところでございまして、私どもはこの見通しは達成できると、こういうふうに見ているところでございます。  したがいまして、次にお尋ねの五十八年度の経済成長率三・四%の達成見込みも、これまでと違いまして、発射台が下がったということがない、五十七年度が三・一%達成することが確実になりますとすれば、これを土台といたしまして、五十八年度は三・四%の成長率は達成できる、このように考えているところでございます。  その上、いま御指摘の原油の値下がり、あるいは円高傾向の定着、金利の低下の傾向、そのほかに、いまアメリカの経済回復が予想外に迅速でございます。一九八三年の四・四半期の成長率を三・一から四・七%に政府が修正したことから、私はこのような三・四%のわが国の見通しは、達成をさらにまた確実にしたものだと、こんなふうに考えているところでございます。  なお、それでは五十八年度の成長率を修正の必要があるのではないかとお話がございましたが、これはまだこれからでございますし、あらゆる要素をこれから見ながら、経済成長の、と申しますか、経済の趨勢を十分に見守りながら見ていきたいと思いますし、まだまだ現実の経済はなかなか厳しいものがございます。今後の推移を十分に見守っていきたいと考えております。
  301. 塩出啓典

    塩出啓典君 経企庁は、「昭和五十七年経済の回顧と課題」という報告書の中で、現在の財政赤字の原因のうち、循環的要因が高まってきておる、この部分を少なくするために景気のてこ入れの必要性を主張しておるわけでありますが、こういう循環的要因、それと構造的要因と分けていらっしゃるんですけれどもね、これはどういう意味であるのかお尋ねをいたします。
  302. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 御指摘のように、経済企画庁は、現在の財政赤字の問題につきまして、いま御指摘のような循環的赤字と構造的赤字というふうな分析と申しますか、手法を講じて、いろいろと解決の方向を考えているところでございますが、まず第一のこの循環的赤字というものは、御案内のように、景気変動によって税収が落ちたこと、そして、そのために失業がふえ、それに対して失業給付がふえたことによるものを循環的赤字と言っているのでございます。それは、多分に税収がほとんどでございます。  一方、御案内のように、国債の発行高で象徴されますところの財政赤字というものがございます。これは、御案内のように、五十八年度では十四兆三千億ばかりでございますが、先ほど申しました循環的赤字を六兆円といたします。そういたしますと、財政赤字からの十四兆三千億から、六兆円ばかりの循環赤字を引いたもの、これが構造的赤字、つまり完全雇用になっても残り得る赤字と、こんなふうな分析をして、いろいろの対策を考えなければならないというような提案をいたしております。このような方向は、アメリカでも、あるいはドイツでも取り上げられている方向でございます。
  303. 塩出啓典

    塩出啓典君 私は、その考えはわからないことはないんですけれども、ただ、循環的要因による赤字が何%ぐらいあるとお考えであるのか。また、その循環的赤字をなくして、さらには循環的黒字のときもあると思うんですが、その循環的赤字をなくした状態というのは、どの程度の成長率を考えておるのか。いまの状態よりもかなり、もっと景気のいい状態を常と考えていらっしゃるのか。
  304. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 大変むずかしい御質問でございまするけれども、そもそもいまのような財政赤字の分析は観念的な整理でございまして、果たしてこれが現実の循環的赤字が目の前に存在するものかと言えば、なかなかこれは観念の整理のものでございます。それが、いま申しましたように、計算上は所得税、法人税、そしてまた間接税まで含めて失業が一人もなくなった場合を想定すれば六兆円ぐらいになるわけでございますから、これをなくするためにも相当な成長をしなければならないということがおわかりでございます。これまで失業率がゼロになったこともございません。やっぱり自発的な失業は基礎にもございますし、非自発的な失業をなくすることですらなかなか容易じゃないわけでございます。その上に、なお構造的赤字を消すということになりますれば、成長率は大変高くなることは必至でございますけれども、そのような成長率までの想定は、まだ研究はいたしておりません。
  305. 塩出啓典

    塩出啓典君 私は、景気の判断等について、経済企画庁のいまの考え方と、それから大蔵省の考え方がやや違っているように思います。大蔵省は、景気は必ずしもGNPだけでははかれないのだと、だから、最近はそういういろいろサービス産業等がふえて、そういう点から現在は必ずしも不景気ではないんだと。いまの経企庁長官のお考えは、循環的赤字をなくするためにかなり強い景気対策が必要であるという、そのあたりに私はちょっと開きがあるように思うわけでありますが、大蔵省の御見解を承っておきます。
  306. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 基本的に申しますと、大蔵省と経済企画庁の間に絶えずいろいろな総合した勉強会を行っておりますので、経済企画庁との間に景気判断、こういうことについて意見の食い違いというものがあっておるとは思っておりません。  それで、いま塩出委員指摘の問題は、わが方の研究会がございます。そこで出した一つの手法、考え方についての御意見であろうと思いますので、まあ簡単に申しますと、経済のソフト化、サービス化の進展によりまして、日本経済の構造は、かつてのいわゆる製造業中心のものから大きく変化してきたと、こういう考え方に立ちまして、したがって、GNPに占める割合というのは、第二次産業が四十五年は四一・八%だったものが、いまや三七・六%と、こういうことに減りまして、第三次産業が五二・一%から五八・八%と、こういうふうにふえてきたと。こういうような日本経済の構造変化の実態を正確に把握いたしまして、これに対応した政策のあり方を検討するために、委託研究というようなもので、学者の方や民間研究機関等の方々にお願いして、経済の構造変化と政策の研究会というものを、去年の九月から勉強会をやらしていただいております。その中の研究会におきまして、わが国の潜在成長力、GNP統計上の諸問題、雇用情勢等についても勉 強してもらっておるわけでございます。それで、五月をめどとして研究会の報告を取りまとめていただくようにしておりますので、いわば、今後大蔵省が勉強する際の大きな参考にさしていただこうと、こういう考え方を持っておるわけでございます。  したがいまして、この資料を見ますと、GNPの計算上、サービスの生産における質の向上というものは物価の上昇と計算されがちで、実質GNPの増大には計算上されにくいという統計技術上の問題があることでございますとか、経済的価値のみでなく、広く非経済的な価値にまで目を向けて、社会的、文化的価値をトータルとしてとらえる試みは意味のあることであるとか、こういうように指摘されておりますので、経済の情勢判断に当たって、GNPを初めとする経済諸指標を総合的に勘案していくということでございますので、言ってみれば、勉強会の参考と、こういうことで時に発表されますのが、あるいは塩出委員のお感じの中で、経済企画庁との判断が相違しているのじゃないかと、こういう御疑念につながったかと思うのでありますが、それぞれ勉強しながら、絶えず調整、突き合わせをいたしておりますので、その判断には食い違いがあっておりません。
  307. 塩出啓典

    塩出啓典君 労働大臣にお尋ねいたしますが、総理府の労働力調査によりますと、一月の完全失業率が二・七二%と統計史上最悪の数字となり、話題を呼んでおります。それで、いろいろなことが言われておるわけでありますが、労働省はこの数字をどう判断しておるのか。私は、高卒、中卒の求人率が非常に低下してきておる。企業のOA化や産業用ロボットの採用等による影響が出ておるのではないか、このように心配するわけですが、どうでしょうか。
  308. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) お答えいたします。  一月の労働力調査、これは従来と大変かけ離れた結果が生じたということは御承知のとおりだと思います。いずれにしても、完全失業者が大幅に増加して、また反面雇用者、あるいは就業者もこれまた同様大幅に増加したというようなことでございます。しかしながら、私どもやはり有効求人倍率であるとか、あるいはまた毎勤統計であるとか、あるいはまた職業安定機関からの情報等を総合して判断いたしますと、これはもう大幅にそのように変化したということはどうしても考えられない。そこで、やはりこういう雇用失業情勢等を判断する上においては、これはやはりいろいろな指標というものがございますので、これを総合的に判断いたしませんと、むしろ間違いも生ずるといかぬということで、現在も、先般の結果についても総理府統計局等ともいろいろと勉強をしておるところでございまして、いま先生御指摘のような点につきましても、これらも勉強さしていただいておるところでございます。しかしながら、いずれにしても大変に厳しいということはもう十二分に私どもも心得て、それの対応等についてもこれからより以上充実していこうという気持ちでございます。
  309. 塩出啓典

    塩出啓典君 労働関係の統計は経済指標としては非常におくれて出る、このように言われておるわけであります。私はそういう点、オフィスオートメーション化や、あるいは産業用ロボット等の問題がどのように影響していくのかということを、やっぱり労働省としても早く調査をして、それに対する対応を立てなければならないのではないかと、こういう点の御意見を承ります。  そして、特にわが党は、昨年こういう時代に備えて、たとえば事前協議の原則とか、あるいは環境アセスメントではなしに労働アセスメント、やっぱりこのようにロボットが導入されればこういうように雇用が変わってくると、そういうことをやっぱり事前に調査をするとか、こういうような提案をしておるわけで、すでに労働大臣も、きのう行っておりますからごらんはいただいていると思うんですがね。大いにわが党の提案も参考にして、そういうOA化、ロボット化に対する雇用問題の面での対応を私はもっと立てるべきじゃないか、この点はどうでしょうか。
  310. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 全体につきましては、先ほど申し上げたように非常に厳しいというふうに受けとめ、また、その対応をいたしておるところでございます。いずれにしても、先ほども企画庁長官などからもお答えがありましたように、アメリカの経済も回復しつつあるとか、あるいはまた石油も安くなってきたとか、いろんな明るい材料もないではないんですが、しかしながら、やはり国家の財政も厳しいというようなこともございまして、先行きなかなか大変な点もあろうかと思います。  そういうような中で、わが国はやはり技術革新という問題、これはもう非常に注日しておるところでございまして、いずれにしてもこの技術革新、これはわが国のあり方からいっても、もう本当に不可欠と言って過言じゃないと思います。  そこで、公明党さんが発表なさったことも私知っておりますが、いずれにしても、それやこれ、未知の分野もたくさん出てくるわけなんで、いまから対応しなければいかぬということは言うまでもございません。いずれにしても政労使がそのような問題の回避ということ、あるいはまた、それらをやはり十二分に勘案して、これからそれの成果というものをいかに配分していくかというようなこともございますので、そこら辺はやはり、経済発展に資する、あるいはまた国民生活の福祉のために有効に活用するというようなことを基調にして、いまやはり勉強している最中でございます。
  311. 塩出啓典

    塩出啓典君 今日まで、わが国はいろいろな技術革新によって国民生活のレベルも上げ、それがまた新たな雇用を生み、余り雇用問題はなかったわけですけれどもね。しかし、私はやっぱり、だからといってこれからも科学技術の進歩はすべてプラスであるとは限らない。やはり、かつての高度成長時代から低成長時代になり、物離れしてきたという、そういう点から考えれば、私はかなり雇用問題は真剣に考えていかないと、いままでと同じではいけないんじゃないか。私はそのような感じがいたしまして、労働省としても、この雇用問題にもっと真剣に取り組むべきではないか、このような意見を申し上げたいわけですが、御決意を承っておきます。
  312. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) 先生と全く同感でございまして、労働省が今日やっていないわけでなく、非常にむずかしい新しい分野であるということで、十二分に検討し、前向きにやっていきたいと考えております。
  313. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、これは大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、最近、変動相場制に対する批判が非常に厳しくなってきておるわけであります。キッシンジャー元米国務長官や、シュミット前西ドイツ首相は、現在のフロート制を改革して強い管理下での新しい固定相場制を唱えているわけであります。国内でも前川日銀総裁が、現在のフロート制の機能に不満を示し、新たな相場安定策の必要性を説いているわけでありますが、現在、フロート制が発足して十年を経過したわけでございますが、大蔵大臣はこの変動相場制に対してどのような認識を持っておるのか、お伺いをしておきます。
  314. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 確かにこの十年間、フロート制移行十年ということになりました。ちょうど私が内閣官房長官をしておる当時、いわゆるドルの兌換制停止というものが突然アメリカから通報されたとき、日本経済、どういうふうな響きになるのか、判断に日本の経済界、あるいは国民全体は非常に迷ったと思います。  私どももその後、スミソニアンレートとか、いろんな経過を経まして、フロートになって、そしてそのフロート制というものが結局、世界全体で見れば二回の石油危機を体験しまして、各国の実体経済は大きな格差を生じました。しかし、この間、変動相場制というもののもとで、主要国の為替相場が機動的かつ円滑に調整されたため、いわば世界経済は激動を乗り切ることができたという評価は私はすべきだと思っております。  しかし一方、変動相場のもとで、為替相場の乱 高下、行き過ぎを生じたこともこれは事実でございます。通貨当局としては円滑な経済活動を図っていくためには、これは為替相場が安定しておることが最も肝要である。しかし、結局考えてみますと、短期的には各国との金利差、あるいは中・長期的に見ますとインフレ率、あるいは成長率というような問題がございます。いまインフレ率も縮まってきました、あるいは経済成長率の格差も縮小傾向にはございます。しかし、なおその差がございますので、いまのような情勢のもとで変動相場制にかわって新たなる相場制度を採用するというところまでは私は機が熟していないんじゃないか。キッシンジャーさんもシュミットさんも、あるいは前川さんも竹下さんも、やっぱりそういう従来のメリットを評価しながら、さてこれからという問題につきましては、これは直ちにかわるべき相場制度というようなことがないまでも、絶えず通貨の安定という意味においては相互理解を深めて検討を進めていかなければならない課題だと、基本的にはそういうふうな認識の上に立っております。
  315. 塩出啓典

    塩出啓典君 衆議院の委員会でソニー会長の盛田氏も、企業はやはり一、二%のコスト低下に一生懸命努力をしておるわけでありますが、そういうときに為替変動で一割も一割五分も変わると、そういうことでは産業人にとっては非常に意欲を失わせる、だから貿易制限よりも為替管理の方が非常に罪が軽いと、このようにも言っておるわけであります。確かに産業人からすればそういう気持ちもわかるわけでありますが、一方また金融関係の人から見ればこれはそうではないわけで、その点は非常にむずかしいわけですが、しかし、やっぱりそれにかわるべきものをどうするかという、そのあたりが問題だとは思うんですけれども、近くサミットにおいてもそのような問題が議題になるように私は聞いておるわけでありますが、大蔵大臣としてはこの問題についてはどのような姿勢で臨まれるのか、これを承っておきます。
  316. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) このサミットにおきましての議題というのは決まったわけではございませんけれども、為替相場の安定をどうして実現していくかということは、まさにサミット参加国共通の強い関心事でございますので、当然議論は出ると思っております。総理のいわゆるサミットで出るのか、あるいは私ども大蔵大臣段階で出るのか、その問題は別といたしましても、しかし、ただこれまでのところいろいろ情報交換しておりますが、さてそれならば、変動相場制にかわる相場制を採用すべきであるという確定した意見はまだ出ておりません。結局、これはいろいろな議論を重ねますと、それぞれの国が自分の経済の健全化に努めてインフレなき持続的安定、こういうものを図っていく、それで各国の経済政策が中長期にわたって調和される、ある意味においては整合性を持つというようなこと、そして乱高下に対してはやっぱり適時適切な介入が必要である。その介入ということになりますと、本当は協調介入、「用意ドン」と私どもはよく言いますが、そういう形で介入すれば一番安定していくんじゃないか。そういうことでございますので、サミットの場においては、基本的にそういう考え方を踏まえて協調体制をより強化するような方向で努力してみたい。  いま塩出委員指摘のとおり、本当に産業人にとってはいろいろな合理化によるメリットよりも、為替変動によるメリット、デメリットが大き過ぎる。これは金融界においてもよく言われますように、円高、円安にかかわらず、レート七円が金利〇・五%に対応するとかいうようなことも言われるぐらいでございますので、この数字が定かな数字とは言えないまでも、そういう点は非常に重大な関心事でございますし、考えてみますと日本の経済も、いわゆる金融の面から見ましても恐らく世界全体の、アメリカと日本と両方で約三〇%以上、ドイツを加えたら四〇%、サミット参加国全体を加えれば私は世界経済の六〇%弱ぐらいの通貨量とでも申しますか、力とでも申しますか、そういうものを持っておりますだけに、ここで適切な介入とか、それが協調的に行われるというような雰囲気は、それぞれのファンダメンタルズが違いますから時間がかかるにしても、やはりこれは懸命の努力をする課題だと、御趣旨を体してこれは真剣に取り組んでまいりたいと考えております。
  317. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、教育問題について文部大臣にお尋ねします。  わが国教育のガンの一つは、現在のいわば東大等を頂点とするピラミッド型の序列構造を前提とした学歴偏重にあると言われております。私はこのような社会的風潮是正のためには、多様な才能を発揮し、実力を重視する専修学校等の充実発展がまことに望ましいと考えます。最近特に専修学校、各種学校が非常に発展をしてきておるわけでありますが、この現状と役割りについてどのようなお考えであるのか、文部大臣の御所見を承っておきます。
  318. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 結論から申し上げますと、あなたと全く同じ意見でございます。東大を初めとして学歴偏重という、これは御承知のとおり非常な歴史的な関係がありまして、それがだんだん社会の深層に入って、なかなかこの問題の解決といいますか、解消が非常にむずかしいのが一つのがんになっておると思いますけれども、これは文部省がああだこうだ采配振っても、これは社会全体が、思考といいますか考え方を変えてもらわなければならない。これは御存じのとおりに明治以来——少し長くなりますけれども、明治以来政府の要員をつくるという意味で、東大初め国立学校をつくって、それがいわゆるエリートみたいに、それが官尊民卑という風習をつくり上げてきたと私は見ております。最近は私学の方が大学においてはだんだんマジョリティー——八〇%は私学が国民を養成しておりますから、非常に重要性を増して、わが国の教育の充実が図られておるわけで、だんだんに官界においても、あるいは民間企業界等においても、能力主義といいますか、必ずしも学歴だけということはだんだん薄れつつありますけれども、まだまだ相当に根深いものがあることは、これは残念といいますか、現実の問題でございます。  そこで、各種学校、あるいは専修学校、これは人間の能力にはいろいろ長短、バラエティーが多いわけでございますから、同じ型の大学とか、同じ型のコースを行くということは必ずしも適切ではない。そういう意味で、以前は各種学校というものがたくさんあったわけでございますが、昭和五十一年でしたか、専修学校、まあ高等学校程度、あるいは専門学校程度ということで、あるいは一般課程というのがありますけれども、それぞれ特性に応じた教育をして、技術等を学んで社会の実用に供しよう。これは非常に急速に発展いたしまして、現在専修学校は二千八百校ということになっている。それから、各種学校が四千九百ぐらいございます。生徒数にいたしまして、専修学校が約五十万人、正確に言うと四十八万ぐらいいっていますが、五十万、各種学校が六十万余り、こういう状況でございまして、したがって、教育の部面でも、産業社会その他社会生活の部面でも、大変有効な制度になっておりますから、文部省といたしましても、御存じのように私学でございますから、助成指導、いろんな振興策を講じて今日に来ておる、これが実情でございます。
  319. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま文部大臣も言われましたように、やっぱり人にはそれぞれいろいろな才能があるわけで、何もペーパーテストがいい人だけがいい子で、それ以外は落ちこぼれというわけではない。それぞれの才能を皆持っているわけですから、それをやはり本当に伸ばす意味において、専修学校、各種学校というものの使命があるわけであります。  ところが、現在いわゆる小学校、中学校、高等学校、大学、高専、あるいは盲学校、聾学校、養護学校、幼稚園といういわゆる一条校に比して、内容においては遜色のない、むしろいろいろ教育内容を聞きますと、いまの大学なんかよりはるか に密度の高い、しかも先生方も一生懸命やっておる、でありながら、いろいろな制度上の不公平が非常に多いように思うわけでありますが、この格差の是正に努力すべきで、私は文部省としてもいろいろ努力してきていると思います。  そこで、具体的に、いろいろあるわけですが、時間もございませんので、たとえば現在専修学校への入学資格については、たとえば中卒、高卒、こういう条件で、下の方への接続はしているわけでありますが、上の方は閉ざされておる、あるいは大学や短大等への入学資格が認められていない。しかし、専修学校が今日ほど充実、発展した現在、これはまことに不合理であります。したがって、専修学校の学校教育法上の位置づけを検討すると同時に、高等専修学校において三年以上の課程を終了した者は大学、短大への入学資格を認めるとか、専門学校において二年以上の課程を終了した者は大学学部の三年への編入資格を認めるとか、こういう道を私は講ずべきだと思うんですが、そのお考えはありませんか。
  320. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 御存じのとおりに、専修学校は教育内容、あるいは目的といいましょうかが、相当ほかの一般学校と違いますから、必ずしもそれに段階的につながるというかっこうになっていないわけでございますね。そこで、その他のいわゆる一条校の編入試験を受けるなんということは、ちょっとこれは制度的に非常にむずかしいのではないかと思います。ただ、受験資格を得るかどうかという点は、簡単じゃないと思いますけれども、これは将来は検討に値するんじゃないかと、かように考えております。
  321. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、留学生問題についてお尋ねをしたいと思います。  在日外国人留学生数は逐年増加をしているわけでありますが、他の主要先進国に比較するとその数は極端に少ないわけであります。日本の大学の国際化を目指し、諸外国に日本の文化や社会の理解者をふやすとともに、発展途上国における人材育成に貢献するためには、留学生の受け入れの拡大を図る必要があると思います。わが国は防衛、武器輸出とか、そういうことではなしに、こういう形で東南アジアの国々にも大いに私は貢献すべきであると思います。そういう意味で毎年努力はしてきておるわけでありますが、まだまだ不十分であります。国費留学生の増員が必要だと思いますが、その望ましい姿と今後の実現の計画はどうなっておるのか、これを伺っておきます。
  322. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) いまおっしゃったように、わが国に対する大学、短大、あるいは専修学校等の外国からの留学生は逐年増加はいたしております、おっしゃるとおり。現在総数で八千人余りということになっている。わが国で費用を持つものもあるし、自費留学というのもありますが、各国いろんな国がありますけれども、多くは、御承知のとおりに東南アジア諸国が多い。中国あたりもだんだんふえつつありますけれども、これはいわゆる先進諸外国に比べると少ない。これはやむを得ないといいましょうか、わが国は余り従来世界から認められておらなかったという歴史的な現実があるわけでございます。しかし、最近はおかげさまで経済発展、科学技術等も場合に進歩いたしまして、日本へ日本へという風潮があります。わが国としてはおっしゃるように生きていく道はまさに国際協調、国際間の理解を深めるということが一番大事だと思うんです。そういう意味で漸次努力はしてきておるわけでございますが、たとえば五十九年からはマレーシアあたりからも、これは言葉の問題があるものですから、去年からことし、五十八年までかけて、向こうにこちらから日本語の先生をやって、五十人ぐらいの日本語の教育をやってこちらに留学を求める、こういうことを努力しておりますが、今後もこういう留学生については、またその処遇等についても精力的に努力しなければならない、かように考えております。
  323. 塩出啓典

    塩出啓典君 特に、私も広島にいるわけでありますが、広島大学にもかなりたくさんの留学生が来ているわけでありますが、特にいわゆる国費留学生と私費留学生との待遇の差が非常に大きいわけであります。国費留学生の場合は、欧米諸国と比較してもそう遜色がないわけでありますが、私費留学生の施策というのは、学習奨励費支給制度とか、国費留学生への採用、あるいは留学生寮のあっせん、医療費補助程度であります。私費留学生がわが国で勉強に励むのにはいろいろかなりむずかしい問題があるわけで、育英奨学金の支給貸与を含めて、私費留学生に対する施策の充実を図るべきである。余りこういう不公平がわが国の中にありますと、将来の日本にとっても非常にマイナスになるんじゃないか、このように思うわけでありますが、この点はどうですか。
  324. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) お答え申し上げます。  私費留学生につきましても、年々日本に参りまして勉学を希望する学生がふえているわけでございまして、これの円滑な受け入れ、あるいは留学条件の整備ということにつきましては、私どもも努力をいたしておるところでございます。現在日本国際教育協会というところを通じまして、学習奨励費というようなものを一部に支給をいたしましたり、あるいは私費留学生のうち優秀な者につきましては、大学院進学等の機会におきまして国費留学生に採用をするというような措置を講じておりましたり、あるいは医療費の補助、その他大学における指導等におきましては国費私費の別なく措置をいたしておるところでございます。  ただ、国費留学生につきましてはやはり政府としてお招きをした留学生でもございますので、それと同じような扱いということには性格上まいらない点もございますが、できる限り私費留学生の受け入れ体制の整備ということにつきましては、今後とも努力をいたしてまいりたいというふうに存じておる次第でございます。
  325. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま特に言語の問題が非常に障害になっているようでありますが、留学生の講義の理解度を高めるために英語による講義をやってはどうかと、こういう意見があります。さきの国会で成立した国・公立大学における外国人教師、教員任用法等もあるわけで、こういうのを積極的に活用して、英語による講義を実施してはどうか。東京大学工学部ではすでに、これまでに日本人学生を相手にだと思うんですが、英語による教育をして非常に成果があると、このように言われております。  日本はなかなか、大学まで行っても英語がしゃべれないってよく言われるわけですから、そういうような意味からも英語の講義をやるということはそれを受ける日本人にとっても大いにプラスになるのじゃないか。その点はどういうお考えですか。
  326. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 留学生をお招きをする、あるいは日本の大学で勉強していただく理由といたしましては、一つはもちろん専門の勉学をしていただくということでございますが、もう一つは、やはり日本をよく理解していただくという面がございまして、私どもといたしましては、やはり日本に留学していただく以上、日本語を学んでいただき、日本の社会というものをよく知っていただくということが原則であろうということで、日本語の学習の機会の充実に努めておるわけでございますが、ただ、先生御指摘のように、専門分野によりましては、専門教育について英語等で学習を行うということの方が実情に即している場合ももちろんございます。ただ、この場合に留学生だけを集めての授業ということにつきましては、関係者の間でやはりいかがであろうかということもございますが、一部の試みがすでになされておることでもございますし、私どもといたしましては適切な計画があればもちろん大学側の計画をお助けをするという姿勢はとってまいりたいと思っておるわけでございます。  なお、制度上の配慮といたしましては、大学の卒業資格要件等に外国語の単位というのが要求されておるわけでございますが、そのうちの日本語科目を留学生につきましては外国語科目扱いとするというような措置も反面講じておる状況にございます。
  327. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから、特に東南アジアの人たちが日本に来て一番困るのはいわゆる住居の問題であります。なかなか、フランスとかアメリカとかそういう国の人は、比較的受け入れやすいわけでありますが、下宿にしても非常にむずかしい状況であります。  そういう意味で、現在留学生の宿舎は留学生全体の二四%でしかない。その中で特に世帯用の宿舎の完全な不足が挙げられております。しかも、こういう宿舎は非常に古い宿舎で危険でもあるわけでありますが、私は、早急な宿舎建設。またその際に留学生だけじゃなしに、その中に日本人も一緒に住む。そのことが日本人と留学生との交流にも役立つわけでありまして、ひとつこのような宿舎を建設することは国家百年の大計の上からも必要であり、また現況の景気対策にもなっていくんではないか。これをやはり文部省としては強力に進めるべきだと思いますが、その点はどうですか。
  328. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 御指摘のように、留学生の受け入れにつきましては、宿舎問題と日本語教育の問題が大きい問題であるわけでございます。  私どもといたしましては、留学生に関する宿舎の整備ということに従来から努力をいたしておりまして、一つは、留学生の受け入れ数の多い国立大学に留学生用の宿舎を整備するということで、五十八年度は、豊橋技術科学大学等約六大学にその宿舎を開設をするというような予定で現在準備を進めておる次第でございます。これにつきましては、引き続き各大学の実情等を勘案いたしまして、宿舎の整備というのを進めてまいりたいと存じております。  なお、国・公・私立を通じまして、日本国際教育協会あるいはその他の団体等が留学生宿舎を設置をしておるわけでございまして、これらにつきましてもその内容の充実等に努力をいたしておるところでございます。  なお、日本人学生と一緒に入れるべきではないかという御指摘は、私ども基本的にはそのような方向もあわせて努力をすべきであるというふうに考えておりますが、やはりその施設の条件等によりまして、日本人学生と同じ施設に収容することが不適当な場合というのがかなりございますので、一般の寄宿舎、寮の整備状況等も勘案しまして、今後その方向の努力もいたしておきたいというような感じでございます。  現在でも筑波その他若干の大学におきましては、一般の学生と留学生と同じ寮に収容しているという状況にございます。
  329. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから、日本で留学を終え帰国した留学生に対し、留学の成果をより確実なものにすると同時に、彼らを通じて諸外国との友好のきずなを深めるために、各種のアフターケアが必要ではないかと思います。わが国は組織的なアフターケア事業は行われておらず、日本国際教育協会あるいは国際学友会などで個別的に実施されているにすぎないわけでありますが、わが国においても、こういう日本へ来た留学生たちがどうなっておるのか。そのことは今後のまたわが国の留学生対策にも生きるわけでありまして、こういう点に国レベルでも私は取り組む必要があるんではないかと、このように思うわけでありますが、その点はどうでございますか。
  330. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) アフターケアの問題につきましては、外務省とも御相談をしながらいろいろ努力をいたしておるところでございますが、現在は、先生お触れになられました日本国際教育協会に補助金等を出しまして、五年間程度は学会誌を手元に送付をするというようなことをいたしましたり、あるいは帰国した留学生を短期間再研修のために日本にお招きをする。さらには、博士号が未取得のまま帰りました留学生につきまして、こちらから教員を派遣する、あるいはこちらの大学に再び来て短期間論文の指導を受けるというような事業もいたしておるわけでございますが、さらに今後とも努力をいたしたいと思っておるところでございます。
  331. 塩出啓典

    塩出啓典君 最後に、この問題につきまして大蔵大臣の御所見を承っておきたいと思うんでありますが、やはりせっかく日本へ留学した人たちが、将来東南アジアに帰って、そして反日になっておるんではないかと、そういうことをよく言われてきたわけで、私はそれ実物直接自分で調べたわけじゃありませんが、そういうことでは非常に残念であります。そういう点から、ほかの予算に比べれば留学生対策の予算は伸びてはいるわけでありますが、まだ国際的には非常に不十分であり、わが国としてもひとつさらに努力をしていただきたい。  その点と、先ほどその前に申し上げた専修学枝の問題につきましても、教育の才能を伸ばす道を一つではなしに、やっぱり多元的に伸ばしていくと。そういう点から大蔵大臣としてもその差をなくするように努力してもらいたい。この二点について要望しておきます。
  332. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 留学生問題、私の方から言いますならば、文部省と協議の上にこの予算づけの調整作業を行うわけでございますが、御趣旨の点、そしていまの塩出委員と文部当局との問答によって浮き彫りにされた諸点等を十分考慮して配意をいたしてまいるつもりであります。  それから、専修学校の問題、これは多元的な教育効果からしての評価でございます。わが方といたしましては税制の問題と、それからいわゆる私立学校助成費の問題等がございます。そういう点につきましても御趣旨を体して対応しなければならない課題だという認識を持っております。
  333. 塩出啓典

    塩出啓典君 最後に、これは外務大臣に、最近米国議会において第二次大戦中における在米の日系人の収容問題が論じられているわけであります。当委員会でも報告があったと思いますが、率直に言って米国の筋を通す考え方には敬意を表したい気持ちでありますが、これについてのいきさつ、状況、また外務大臣の所感を簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  334. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 本件につきましては、カーター政権時代の一九八〇年に、米議会によりまして一般市民戦時移住、収容に関する委員会が設置をされました。同委員会調査が行われてきたところ、去る二月二十四日、同委員会は日系米人の強制収容問題に関する調査報告書を発表いたしたのであります。  この報告書は、公聴会及び数多くの証人の証言を得て、証拠書類の分析を行った上で作成をされておりまして、強制収容措置の不当性を強く訴えるものとなっております。  本件に係る強制収容の対象となった日系人は、日系人とはいいましても米国人でございまして、本件は基本的には米国の国内の問題ではありますが、今回の報告は、日系人十二万人に対して行われた強制収容措置は軍事的必要性によって正当化されないものであるとの結論を出しておりまして、このことは日系米人にとって満足をすべき調査結果であると、こういうふうに考えております。
  335. 塩出啓典

    塩出啓典君 そこで、わが国におきましても戦後処理として未解決の問題がいろいろ残されているわけであります。たとえばシベリア抑留者の問題、あるいはまた恩給をもらえない旧軍人の問題、こういうような問題があるわけであります。  政府としては、戦後処理問題懇談会というものをつくって、こういう未解決と考えられる問題を処理をする、こういう方向で努力をしているようにお聞きしておるわけでありますが、未解決と考えている問題はどんなものか、またその懇談会の状況はどうなのか、これをお伺いいたします。
  336. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) ただいまお話がございましたとおり、昨年の六月から総務長官の私的諮問機関といたしまして戦後処理問題懇談会、これは七人の有識者から成っておりますが、それを設けまして、戦後処理問題というものをそもそもどう考えるべきか、どういう問題を御検討いただくかということで取り組んでおるわけでございます。  現在までの審議の状況を申し上げますと、大体昨年の夏から月一回くらいのペースでこの懇談会 を開催いたしまして、関係の各省からこれまで講じてこられました援護行政の経緯、それからシベリア抑留者の問題、在外財産の問題、それからいわゆる恩給欠格者の問題等につきまして、これまで講じられてきた施策等についてのヒヤリングを進めておるところでございます。これからもなお数回はヒヤリングを続けていくことになろうかと思っております。その上でこの懇談会の場で今後の検討スケジュールというものが協議、決定されるものと考えております。  それで、この戦後処理問題、どういうことを考えておるのかというお尋ねでございますが、基本的には、さきの大戦に関しましてはすべての国民が程度の差こそあれ生命、身体、財産上の犠牲を余儀なくされたところでございまして、国民の方方一人一人にそれぞれの立場で受けとめていただかざるを得ない、こういうことであると考えまして、政府といたしましては四十二年の引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律というものの制定をもって、戦後処理に関する問題は一応全部終了したものと、こういうことで考えてまいったわけでございます。しかし、一部になお大変強い御要望もございますもんですから、この懇談会を設けまして、戦後処理問題というものをそもそもどう考えていくべきかというふうな問題を基本的に踏まえながら御検討をいただいているようなわけでございまして、その戦後処理問題のやはり中心と申しますか、主要な問題は、先ほど申し上げましたシベリア抑留者の問題、在外財産の問題、いわゆる恩給欠格者の問題並びにそれに関連する問題であろうと、かように考えております。
  337. 塩出啓典

    塩出啓典君 わが国が厳しい財政事情の中にあるとはいえ、何らかの政治判断で決着をつけるべき問題であります。そのために多少の財政負担がふえても私はやむを得ないんではないか。いたずらに解決を引き延ばすことは生殺しの感がしてならない、そう思うわけでありますが、総務長官のお考えと、大体いつごろまでに結論を出す方向でやるのか、これだけを承って質問を終わります。
  338. 丹羽兵助

    ○国務大臣(丹羽兵助君) お答えさしていただきますが、政府委員からもお答え申し上げましたように、一応は戦後処理はあれで片づいたという政府は考え方をとってまいりましたが、しかし、その後もただいまお話のありましたような向きについて強い強い要請もございまするので、ただいま戦後処理問題懇談会でどのように、どういう問題を解決していくかということを御検討いただいております。  そこで、いつごろまでに結論が出るんだと、こういうような先生からお尋ねでございますが、事は大変重要な問題でございまするので、そう簡単に結論出るものではございませんが、しかし、時間かけるだけが能ではございませんので、できるだけ慎重にはいたしまするが、できるだけ進めていくようにして検討結果をちょうだいしたい、こう思っております。いま申し上げましたように、慎重にやりますけれども、しかし、慎重だからといって時間をかける必要はないんですから、大いにひとつ前向きに急いで慎重に検討をしていただくようにしたい。  それで、どれぐらいかかるかということでございますが、そういう気持ちでやりましても、いまちょっと聞いてみますると、事務的には問題がたくさんございますから、二年ぐらいはかかるのではないか、こう言っておりますけれども、私は積極的にひとつ進めていただくように努力してまいりたい、こう考えております。
  339. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で塩出啓典君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  340. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、佐藤昭夫君の一般質疑を行います。佐藤君。
  341. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 まず最初に、福岡の観音浦団地をめぐる疑惑の問題で質問をいたします。  福岡県宇美町で林兼商会が造成し販売しようとしている観音浦団地の疑惑について、いま問題となっていますが、まず、この団地の所在地、面積、販売主体と販売方法、これを建設省、説明してもらいましょう。
  342. 小笠原正男

    政府委員小笠原正男君) 観音浦団地と申しますのは、福岡県宇美町におきまして林兼商会が造成、一部販売中の四十四・二ヘクタール、全体構想で九百九十八区画の団地のことをいうものというふうに思っております。  林兼商会が宅造を行いまして建て売り業者に卸売をするという予定で始まった事業でございます。
  343. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 この林兼商会の団地開発の許可申請の日時、その内容、県当局の審査経過、これについて御説明をいただきたい。
  344. 小笠原正男

    政府委員小笠原正男君) 国土庁では国土利用計画法に基づく届出にかわりますマンション、あるいは更地分譲、建て売り分譲等の事前確認という仕組みがございまして、それを所管しております。したがって、開発許可は私どもではございませんが、工事の進捗に伴いまして売り出します前に価格審査を受ける、そうしないと売り出しができない、こういう仕組みになっているわけであります。  この団地につきまして、全体計画では九百九十八区画を売り出すという予定でございますが、現在有効の確認のあるもの、これは約半分の五百区画ほどでございます。この経過を申し上げますと、昭和五十五年九月に第一回、全体の約一割に当たります八十三区画につきまして価格の事前確認申請が出てまいりましたが、若干県はそれは高いのではないかということで価格修正を指導したのでありますが、それを業者が了承することなく取り下げるということが最初に行われています。その後、五十六年の一月に再度同じ八十三区画について申請が行われたわけであります。その価格審査につきましては、素地取得費、それから工事費、関連公共施設等の負担金等を加算いたしました造成原価を基本といたしまして、申請価格は若干高いのではないかということで価格の引き下げを指導いたしまして、引き下げた価格で八十三区画についての……
  345. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いやあなた質問を先取りしているな。私が聞いているのは、申請の出た日時、許可を行った日時、これを聞いている。
  346. 永田良雄

    政府委員(永田良雄君) お答えいたします。  福岡県から事情聴取したわけでございますが、観音浦団地につきましては、株式会社林兼商会から県に対し都市計画法による開発許可の申請が行われましたのは昭和五十二年十二月三日でございます。当初の計画は、面積約三十九ヘクタール、計画戸数八百二十七戸でございます。県の担当部局においてこれを審査したところ、都市計画法に適合しておりますので、五十三年三月二日許可処分を行ったという報告をいただいております。
  347. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうしますと、四カ月足らずという非常に短い期間の間に許可が出ている。これだけでもずいぶん珍しいケースだと思うのですが、そこで国土利用計画法による価格審査の経過についてさっきちょっと説明を始めておられましたけれども、もう一遍詳しく説明してください。
  348. 小笠原正男

    政府委員小笠原正男君) 昭和五十五年九月に全体の約一割に当たります八十三区画に対して事前確認申請があったわけでありますが、若干県としてはその価格は高いのではないかということで引き下げを指導いたしました。その結果確認を得るに至らず、取り下げが最初に行われております。その後五十六年の一月に同じ八十三区画につきまして事前確認が申請をされまして、適法な価格審査の結果若干価格を引き下げる必要があるということで、引き下げた価格で二月の二十日に確認を行っております。それ以後かなり売れ残りも多いようでありまして、その売れ残りと工事の進捗に伴いまして、五十六年九月に三百二十七区画、五十七年三月に四百四区画の確認申請がございました。五十七年の十一月に五百四区画についての確認申請がございまして、いずれもそのたびに造成原価を基本といたしながら減額をした価格で事前確認をしておるということでございまし て、現在有効な確認のあるものは全体の約半数の五百四区画について確認が有効ということに相なっております。
  349. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ところで、われわれの調査では幾つかの疑惑が出ているわけであります。  まず第一は、最大の疑惑として、開発許可を受けるために政治工作が行われたという問題でありまして、これはさきにわが党の上田耕一郎議員が三月二十三日の建設委員会、三月二十九日の福岡市における記者発表で公表したものでもありますが、複数の人の証言で私どもは事実を固めているわけであります。つまり、観音浦団地の開発許可を得るために、林兼商会は亀井知事の確認団体、福岡県を明るく豊かにする会——明豊会に三千万円を献金しています。渡した時期は五十三年の三月の、先ほどの二日に許可がおりるその直前、林兼商会の大束副社長の指示で本藤憲司、これは大松という会社の専務と、讃井興起、林兼商会、この二名が持っていっている。これが事実とすれば、政治資金規正法の制限に違反し、かつ許可権者の職務権限との関係では受託収賄の疑惑まで出てくると思うのでありますが、警察庁はこうした事実をつかんでいますか。
  350. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えいたします。  ただいまお話しの件につきましては、現在幅広く情報収集中でございます。
  351. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私は、いまも金が渡された時期、渡した人物まで明らかにして、果たしてこういう事実を確認をしているか、法違反ではないかということでお尋ねをしているんですけれども、なぜ答弁をあいまいにするんですか。
  352. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 現在情報収集中でございますので、それ以上の答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  353. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もう一回、聞いておきましょう。  私が提起をした事実については、事実はつかんでいるんですか。
  354. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 繰り返すようでございますが、現在情報収集中でございます。
  355. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 この献金は、その後の異常な価格つり上げにも作用したのではないかというふうに考えざるを得ないわけであります。先ほど価格審査の経緯について説明がありましたが、つまり国土法に基づく価格審査では、われわれが調査をしたところによりますと、すでに五十五年十二月の時点で平米三万九千円、これが妥当な価格だったのが、一部県会議員を初めさまざまな圧力がかかって、その結果、計四回、二年間で一万五千円、約四〇%つり上げられている。これはきわめて異常なことであり、こういったことを国土庁としてはつかんでいますか。
  356. 小笠原正男

    政府委員小笠原正男君) 第一回三万九千円という内定価格という資料を拝見いたしましたが、この団地の損益分岐価格は平米当たり四万二千円を上回っているはずであります。したがって、このような内定案があるということは全く信じられないことでございます。  なお、その後、対象面積の拡大に伴いましていろいろと確認価格が上昇をいたしておるわけでありますが、これは大変条件の悪いところでございますから、たとえば途中の追加工事、調整池のかさ上げを要求される、あるいは取りつけ道路のつけかえ工事という、当初予定しなかったいろいろな工事費が工事の進捗に伴いましてふえてくるというような結果、多少なりとも地価上昇がございます。そういったものを適正に判定をしたものでありまして、国土法の運営上、全く問題はない確認の仕組みであるというふうに私ども考えております。
  357. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ここで配付をしております資料をごらん願いたいと思いますが、いま指摘をしております四〇%に及ぶつり上げが行われておるというこの事実については、資料No.1、「(3)国土法にもとずく価格修正」、ここに具体的に数字を挙げて載せておりますので、ひとつそれでごらんを願いたい。  いずれにしましても、この価格つり上げをめぐって県庁内の担当部局、具体的には企画開発部土地対策課を含めて、さまざまな金が動いたという疑惑がきわめて濃いのであります。  そこで、資料No.2、「観音浦の件 A氏渡し分」という見出しで出されているこの一覧表でありますが、県庁のA係長を経由して渡された約千七百万円の工作費の一覧表がこれであります。この中の十二月の二十四日という欄をごらんいただきますと、「県土地対策課B、C、D」、こういう人たちの三名の招待のもとに五十万円という金額が記載されているわけでありますが、このB氏というのは、ほかならぬ県土地対策課長、かつては建設省の都市計画課長補佐、現在水資源公団管理部管理課長、これを務めている人物であります。  これは全く一例で、建設省の天下り役人が同様の疑惑があるのじゃないか、この点を調べたことがありますか。
  358. 小笠原正男

    政府委員小笠原正男君) 私どもが監督しております県土地対策課に再々疑惑の有無を確認をいたしておりますが、全く事実無根であるというふうに報告を受けております。
  359. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 冗談じゃない。  私は、Bという名前を使ってはおりますが、当時の務めておった仕事、かつての仕事、現在の仕事、具体的に挙げて提起をしているわけであります。ここまで提起をしているわけでありますから、ぜひこの点も含めて、同様に天下り職員について疑惑がないかということをまず徹底的に建設省調べてもらいたい。要求しますが、見解を再度求めます。大臣、いますか。
  360. 内海英男

    ○国務大臣(内海英男君) 私は、その人物も知りませんし、いま急にそうおっしゃられましても、よく調べてお返事いたすようにいたします。
  361. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 よく調査をするということですね。  同じく、この一覧表の十二月四日の欄であります。「江口氏他四名分」四百万円ということで記載をされているわけでありますが、これは次の配付資料No.3、三つの領収書を載せておりますが、その右の上部、これが江口氏ほかに渡った四百万円の受領書であります。まさに逃れようもない証拠物がここにあるわけでありますけれども、ここまで証拠が明白になれば、一体国土庁としても、警察庁としても、いよいよ動かざるを得ぬということになるんじゃないですか。それぞれ答えてください。
  362. 加藤六月

    ○国務大臣(加藤六月君) 先生御質問の本件の問題につきましては、国土利用計画法に基づきまして価格審査は適正に厳重に行われておるという報告を承っております。
  363. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 先ほどもお答えしましたとおり、現在調査をやっておる最中でございます。
  364. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 警察庁は現在調査の途中だ、国土庁長官は不正はないと信じている、違うじゃないですか。とにかく国土庁も、長官の責任で一体何が真実かということを徹底してこの機会に調査をするということを明確にしてもらいたい。長官。
  365. 加藤六月

    ○国務大臣(加藤六月君) 報告によりますと間違いがないということでございますので、重ねてはっきり申し上げておきます。
  366. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私は、ここまで証拠を付して、領収書まで付してこの問題を提起しておるのに、そのように言われて、もしもクロということになったときにあなたは責任とりますか。
  367. 加藤六月

    ○国務大臣(加藤六月君) 部下を信頼するのが長官の仕事でございます。
  368. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 その部下を信頼をする、それよりも先立っていかに国民に対して責任を持った政治を行っていくか、ここが大臣の責務じゃないですか。少なくとも警察も調べているというのであれば、国土庁としても真実を調べる任務がある。再度、長官の答弁を求めます。
  369. 加藤六月

    ○国務大臣(加藤六月君) 警察は、警察の立場でおやりになるだろうと思います。国土庁は国土庁の立場で申し上げておるところでございます。
  370. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そういうことを繰り返しておったら、いつかはこの責任をとらざるを得なくなるんですよ。  もう一つお尋ねします。こうした工作資金は架空の工事費名目でつくられているわけでありますが、全部で七億円余りの純然たる使途不明金をわれわれはつかんでいる。  そこで、こうなりますと、脱税の疑いきわめて濃いわけでありますが、国税庁としても徹底したひとつ調査をやってもらいたい。どうですか。
  371. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) お答え申し上げます。  使途不明金が何がしかあるというお話でございますが、ただいま突然のお話でございますので、私どもその実態をよく承知いたしておりませんが、一般的に申し上げまして、私ども国税当局といたしましては、納税者から申告が出ました場合に、国会での御論議、あるいは新聞、その他の情報等を十分に念頭に置きまして検討いたしまして、調査の必要があれば行うなどをいたし、適正な課税処理をいたすというのが私どもの方針でございます。
  372. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もう一つ尋ねますが、観音浦の用地買収に当たって鉱業権が設定されていた事実、これはあるんでしょうか。通産大臣。
  373. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 観音浦団地の地域の一部には、団地の開発許可が行われた当時、鉱業権が設定されておりました。
  374. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それはどういう内容だったんですか。
  375. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 当時、二件の鉱業権が設定されておりまして、一つは金、銀、銅、モリブデンの開発をするための採掘権でございます。それからもう一つは、同様、金、銀、銅、モリブデンの開発、採掘をする採掘権、いずれも採掘権が設定されております。
  376. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 われわれの調査では、この鉱業権は児玉譽士夫が持っていたという調査であります。それを一億円ほどで買い取ったというふうに聞いておるわけでありますが、その点の事実は確認をしていますか。
  377. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 二つございまして、一つは、福岡県採掘第二四五五号というのがございまして、これは昭和三十八年一月に設定されておりまして、太陽鉱工株式会社、これが鉱業権者でございまして、現在に至っております。  それから第二の採掘権は、福岡県採掘第二八六一号ということでございまして、これは四十九年十月にミトモ電設というのが設定いたしました。その後、五十二年、株式会社東興というのに移りまして、さらに五十二年十一月十日に佐藤次郎という個人に移転されております。ただ、その後、法律に基づく所要の手続きをいたしませんでしたので、五十六年八月六日に、鉱業法第五十五条第一号によりまして鉱業権を取り消しまして、職権によりまして消滅登録をいたしておるということでございます。したがいまして、児玉云々という事実については私どもはつかんでおりません。
  378. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 われわれは、事情に深く通じた複数の方々からこの話を聞いているわけでありますが、ぜひ、この点についても徹底した調査をやってもらいたい。同時に、国税庁、この問題でも脱税の疑いが濃いわけでありますから、国税庁として徹底した調査をやってもらいたい。こう思うんですが、どうですか。
  379. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 先ほどもお答え申し上げましたとおり、私ども個別の法人についてこれを調査するかどうかということをここでお答え申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思いますが、一般的に申しまして、国会での御論議なども十分念頭に置きまして、適正な課税処理をいたします。これが私どもの方針でございます。本法人につきましても、同様な考え方に従って処理されることになると思います。
  380. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いろいろ問題を指摘したわけでありますが、重ねて聞きますが、建設大臣、国土庁長官真相を徹底究明をするというこの任務に照らして、ひとつそのための先頭に立った努力をやってもらいたいと重ねて要求しますが、どうですか。
  381. 内海英男

    ○国務大臣(内海英男君) 私どもといたしましては、正規の手続を経て開発許可がおりたものという解釈でございますが、先生のような御指摘がございました時点において、いろいろと県の方にさらに聞いてみたいと思っております。
  382. 加藤六月

    ○国務大臣(加藤六月君) 価格審査は適正に行われておると信じております。せっかくの御指摘でございますから、再度調べてみます。
  383. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 自治大臣、法違反の疑いの数々を指摘したわけでありますが、大臣としても、警察をひとつ督励をして厳正な捜査を行うということでやってもらいたいと思いますが、どうですか。
  384. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 自治大臣という立場もありますが、やっぱり警察という立場では、先ほど局長が御説明いたしましたように、情報を収集して実態の把握に努める、その上で判断をする、こういう態度でやっていきたいと思っております。
  385. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは次に、太平洋地域陸軍管理セミナー、いわゆるパムスに関して質問をいたしますが、この問題では、さきにこれもわが党の上田議員の質問主意書に対する答弁書で、パムスは一般研修の場だという答弁が行われているわけでありますが、そういうことであれば、共同作戦やこれに類する話、こういうものがやられていないということですか。防衛庁長官
  386. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたします。  パムスと申しますのは、太平洋地域の国、一部ビルマとかバングラデシュ、あるいはインド等にも招請状が出されておりますので、太平洋地域とは限りませんが、そういった地域の国の陸軍関係者が集まりまして、陸軍の各種の業務の管理技法についてのそれぞれの国の経験なり、あるいは制度、あるいはアイデアといったものを発表し合って、お互いにそれを参考にして勉強するというものであります。
  387. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私が尋ねているのは、共同作戦や、これに類する話し合い、研究、これはやっているのか、やっていないのかということです。
  388. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたしますが、先ほど申したように、集まっておる国そのものが、アメリカとニュージーランド、オーストラリアのように集団安全保障条約を結んでいる国もあれば、全く条約を結んでいない国もありますから、共同作戦というようなことをその集まった国が研究するということはございません。ただ、それぞれの経験の中で自分のやったいろいろなことについて話をするということはあろうかと思いますけれども、そのセミナーの場が、参加国の共同作戦について研究するということは全くございません。
  389. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 答弁書でこのパムスの開催状況の表を提出しておりますが、第一回から第六回までのテーマ、話し合われた内容、特に第四回セミナーの内容については特別に詳しく報告をしてください。
  390. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 若干細かくなりますが御説明しますと、パムスは四日間にわたって行われまして、第一日はホスト役であったアメリカ側のウォルフ少将というのが最初あいさつをいたしまして、その後特別発表が二件ほど行われています。特別発表というのは、たとえば、アメリカの陸軍の第九師団長が第九歩兵師団の部隊実験予定に話をするといったようなことが行われたようであります。二日目からそれぞれの発表が始まりまして、最初にアメリカの代表が国内治安維持及び開発ということについてのプレゼンテーション、いわゆる導入部の発表を行ったと。それからフィリピンがフィリピンにおける反乱対策という発表をしているようです。それからタイが国内治安維持という表題で発表をしておる。さらにアメリカの情報部の代表が情報見積もり及び情報協力といった題目で発表しておる。次いでインドネシアが国内治安維持、開発における陸軍の役割り及び対処という発表をしております。以上が第二日であります。第三日日が韓国が対浸透訓練及び沿岸警備計画という題目で発表しておる。次いで、ベッシィー大将というアメリカのこれは参謀本部の次長ですが、この人が特別講演をやっております。それからシンガポールが国内治安維持の進展とい うことで発表しておる。それから次にちょっと私名前を忘れましたが、国内治安維持開発のドクトリン及び概念というので発表しておる人がおるようであります。それから陸軍省のワッグ大佐というのが相互運用及び協同という発表をしております。第四日目は、パプアニューギニアがバヌアツ作戦、バヌアツというのは島の名前だそうでありますが、そこで反乱が起きたときの状況の発表をしておる。それから次にマレーシアの代表がマレーシアにおける反乱の経験といったような発表をしております。最後の日はニュージーランドのモロニー中佐という方と、ポアナンガ少将というのが発表しておりますが、モロニー中佐はローデシアにおける連邦顧問軍という発表をしており、ポアナンガ少将は特別講演ということであります。
  391. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまいろいろ御説明になったのは第四回ですか。
  392. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 第四回でございます。
  393. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ここにこういったアメリカの太平洋軍の広報誌、「フォーラム」というこの広報誌、一九八一年サマー——夏季号がありますが、この二十九ページに第四回セミナーの記事が載っておりますが、その最初のパラグラフにおいてこういうふうに書いております。「今回のセミナーのテーマは、国内防衛と開発であり、参加国が反乱と戦うのに用いたテクニックとその経験から引き出した教訓とが強調された。参加国が反乱に対処し、必要に応じて太平洋地域の連合作戦を行うために相互に支援し合うことができるよう集団行動と共同を達成するための方法の開発に努力が向けられた。」と、こういうふうに書いてあるわけであります。「必要に応じて太平洋地域の連合作戦を行うために相互に支援し合うことができるよう集団行動と共同を達成するため」と。これは明らかに話し合われた内容には集団的自衛権行使の疑いが濃厚じゃありませんか。そういうような話はいまの報告は全くない、明らかにしてもらいたい。
  394. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) たびたびお答えしていますように、共同作戦というのは相互に同盟関係のある国において成り立つものでありまして、そういった同盟関係がない国が共同作戦をするということはありませんし、ましてや治安維持についてよその国と共同作戦をするということは考えられないわけであります。
  395. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうすれば、この「フォーラム」に載っておるこの記載、これはうその記載だと、こう言うんですか。
  396. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 「フォーラム」というのは私読んでおりませんけれども、何度も申しますように、このセミナーというのはお互いの経験なりアイデアというものを発表し合って、それによってお互いの軍備の管理能力、陸軍の管理能力を上げようという、そういう協力体制をつくろうということでありまして、協力してお互いのレベルアップを図ろうというものでありますから、共同作戦ということは考えられないわけであります。
  397. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 こんな雑誌は読んでない、大した雑誌じゃないというふうにおっしゃるかしれないが、これはこの表紙の裏に書いておるわけでありますけれども、「アジア太平洋防衛フォーラムは米太平洋軍司令官によって作成された季刊の定期誌である」、ここまで印刷して刷り込んであるんだから、一体こんなものはうそだとか、こんなものは念頭に置かなくてもいい、そんなような暴論が通るんですか。はっきりしてもらいたい。
  398. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) たびたび申しておりますように、共同作戦というのは全く同盟関係のない国ではあり得ないものであります。ましてや治安維持についてよそと共同作戦をするといったような事態は想定できないわけでありますから、そのようなことがあろうはずがないということを申し上げておるわけであります。
  399. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そのようなことがあろうはずがないと言ったって、アメリカの公式の広報誌、向こうの米太平洋軍司令官によって責任を持って編集されておる広報誌にこう書いてあると、こうなれば、あなたが説明するのと、ここに書いておるのは一体どっちが本当かというふうに言わざるを得ぬじゃないですか。一体どちらが本当の内容なのか、それを防衛庁長官、あなたの責任できちっと真実を突きとめて、国会に報告をしてもらいたいと思うんですが、どうですか。長官。もうあなたの意見わかったよ、何遍ものこのこ出てきて。長官だ。
  400. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えしますけれども、このセミナーというものはアメリカ軍が言っていますようにオープンであり、かつアンクラシファイである。要するに、必要な手続をとれば傍聴できるものであり、かつ秘密でも何でもないものであります。そういったところで共同作戦の計画を考えるというようなことはあり得ないわけでありますから、それを御理解いただきたいと思うんです。  なお、つけ加えますれば、このセミナーというのはそういう形で参加各国がそれぞれ発表をすると、そういったことを通じてお互いのレベルアップを図り、友好関係を高めるという意味で協力を図るということでありまして、作戦計画をつくるというようなことは全くいたしておらないわけであります。
  401. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 大臣、長官。
  402. 谷川和穗

    ○国務大臣(谷川和穗君) ただいま読み上げられました文章によりますと、いかにも何か集団自衛権に踏み込んだような読み上げ方をなさいましたけれども、少なくとも私の理解しておるのは、そこで使われた言葉は「アズ・ネセサリー」、それから「コンダクティング・コアリション」という言葉を使っておるような感じがいたします。したがって、その「コアリション」という言葉は連携でありまして、いままで政府委員から答弁させていただきましたように、特に四回のパムスにおきまする主たるテーマは、それぞれの国の治安の維持、暴徒鎮圧あるいは地域的な反政府活動に対する提携をそれぞれ国柄が近づいている国ではあり得ただろうと思いますけれども、わが国がオブザーバーとして出席いたしておりまして、何も共同の作戦本部のもとに全部組み込まれた集団自衛権の研究をそこでやったというようなことを私はいささかも報告を受けておりません。
  403. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私もさっき読み上げた訳文については英語の堪能な方に念を押して確かめて、私はここで責任を持って申し上げておるということで、決してそんなような解釈じゃないというふうに言われたって、それは納得できない。ここまで、これはこういったアメリカの軍が責任を持って編集をしておるこの雑誌、広報誌にこう書いておると、ここまで言っているんですから、とにかく実際真実は何かと、何がやられたのか、何が話し合われたのか、それを防衛庁長官責任をもってきちっと調査をして報告をしてもらいたい。重ねて要求します。
  404. 谷川和穗

    ○国務大臣(谷川和穗君) 実は、すでに防衛庁といたしましては、このパムスにつきましては上田耕一郎議員から質問状がございましたものですから、それに答弁書をつくりまして国会へ提出を済んでおるわけでございます。
  405. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 答弁書でうそをついている。納得できないです。  私はこういった証拠も提示をして私の意見を申し上げておるわけなんで、ところが頑として大臣は調査もしようとしないと、こういう態度については全く納得ができません。  委員長にお願いをいたしますけれども、私のこの提起についての取り扱い、理事会でよく御協議を願いたい。政府に反省を求めてもらいたい。
  406. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 理事会で協議いたします。
  407. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは次に、最近各地で重大化をしている企業ぐるみ選挙の問題で幾つか質問をします。  まず、政治資金規正法二十二条の二は、一候補者に対し年間百五十万円を超えて政治活動に関する寄附を禁止していますが、この寄附には物品の貸与、労務の無償提供も当然含まれるわけですね、自治省。
  408. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) お答えを申し上げます。  政治資金規正法には寄附についての定義がございまして、金品その他財産的価値がその寄附の対象になり得るということが書いてあります。ですから、いまお話がございましたような物の貸し借りとかというようなものも、まあそれぞれのケースにはよりますが、寄附の対象となり得るものであります。
  409. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 神奈川県の選挙管理委員会は住民の告発は基づいて、政治資金規正法二十二条の二違反の疑いで昨年の十二月の二十七日、五つの企業に対して警告をしております。また同日、県選挙管理委員会見解を添えて神奈川県警に通報をしておるわけでありますが、この警告と通報の事実、これは自治省としても承知をしておられますね。
  410. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 県の選挙管理委員会に聞いた結果でございますが、昨年の末に、「企業ぐるみ選挙を告発する神奈川県連絡会」、それから同じく「企業ぐるみ選挙を告発する川崎市連絡会」というところから、川崎市それから神奈川県の選挙管理委員会に対しまして、いわゆる企業ぐるみの選挙についての申し入れがあったようでございます。それぞれの選挙管理委員会は、それぞれの関係企業にそういう申し入れがあったという旨を伝えると同時に、警察当局にもそういう申し入れがあったということを連絡したというように聞いております。
  411. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは、警察はいまの二十二条の二違反、この通報を受けてどのように捜査をやっているんですか。
  412. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) ただいまお話しの点につきましては、神奈川県警察が選管の方から通報を受けております。その通報によりまして、それを参考として私どもの方も対応しておるところでございます。
  413. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 対応しておるということは、当然捜査を含む対応をしておるということですね。
  414. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 実態が全面的につかまれておりませんので、直ちに捜査という言葉を使うのが果たして適当であるかどうか、これはまあむずかしい問題だと思います。広い意味で対応しておると、こういうふうに申し上げたいと思います。
  415. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 同じく神奈川県の選挙管理委員会は、従業員や下請企業に特定候補者への運動や投票など、選挙運動と見られる行為を強制をしているのは公選法二百二十五条三項の威迫による選挙の自由妨害罪に該当するとして、同様の警告と警察への通報を行ったと、こういうふうに本年一月十八日告発をした住民団体の方に回答をしているわけでありますが、この警告及び通報のその事実関係、これについては同じく自治省、警察庁、それぞれお答えください。
  416. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) ただいまのお話は、年末にありましたそういう申し入れ事項について、その後その関係団体から問い合わせがあったので、そういうことを、先段申し上げましたように、そういう申し入れのあった事項は伝えたよということを回答したのだというように承知しております。
  417. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 警察といたしましては、選挙に関しましていろいろな情報、選挙違反の取り締まりに関します情報が各方面から寄せられるわけでございます。選管の方からもただいまお話しのような情報は私どもの方も情報として寄せられておりまして、それを参考としていろいろと対応しておると、先ほど申し上げたとおりでございます。
  418. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 自由妨害罪に該当するというこの通報を踏まえて対応しておるわけですね。重ねて聞きます。
  419. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) そういった趣旨の通報があったということは報告を受けておりますし、神奈川県警の方も十分に承知をしておるということを申し上げたいと思います。
  420. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 神奈川だけではないわけでありまして、静岡県浜松市選挙管理委員会、ここも今月の四日、住民からの企業ぐるみ選挙是正に関する申し入れを受けて、浜松市内の大企業四社、四つの会社に対しての公選法と政治資金規正法違反の文章資料を添えて警察捜査を依頼している。警察はどのような捜査を行ってますか。
  421. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 同様に、「企業ぐるみ選挙を告発する浜松市連絡会」という団体から、この三月に浜松の選挙管理委員会に対して企業ぐるみ選挙、いわゆる企業ぐるみ選挙の内容につきましての申し入れがあったそうであります。市の選挙管理委員会は、その後そういう申し入れがあったこと、その事実を警察側に伝えた。それから後企業の方から連絡があったので、その企業についてこういう申し入れがあったということを伝えたと、そういうように報告を受けております。
  422. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 委員長、ここでちょっと自治大臣以下政府関係者に資料を提示をしたいと思います。    〔資料配付〕
  423. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) よろしいですか。どうぞ質問お願いします。
  424. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次は京都の、いま提示をいたしました資料、京都の日立造船舞鶴工場、ここで企業ぐるみ選挙に関して「k活動計画」なるマル秘文書がいま重大化をしているわけであります。Kとは、頭文字がKという府会議員候補でありますが、この秘密文書によりますと、「方針」として「所属職員ならびに関連企業職員に本選挙への取組みを啓蒙し、積極的な協力を要請する。」と、目標は職員一人が十票獲得、具体的取り組みとして四項目の第三項に「選対要請者の積極的対応と業務上の便宜提供」、こう書いてある。「推進要領」として、一週間置きに点検会議を持つ、五つの関連下請の会社名も挙げ点検する。その日程まで記されているわけであります。これらの内容は、一つは従業員、下請企業への締めつけで、公選法二百二十一条の利害誘導罪及び公選法二百二十五条の自由妨害罪、二つ目には労務の無償提供が百五十万円の限度を超えることになれば政治資金規正法二十二条の二違反、三つ目に強制労働で憲法十八条、労基法五条違反も濃厚ということになります。  まず、自治省の見解どうですか。
  425. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 御提示をいただきましたペーパーは、突然のことでありますし、かなり簡略にいろいろ書いてありまして、記号みたいなところもありますし、どうもこれだけでは私もよくわかりません。だが、まあ御承知のとおり、いわゆる企業ぐるみ選挙と言われているものにはいろんなタイプ、いろんなものがあり得るわけでございます。企業であっても政治活動の自由を持っているのは当然のことでございますので、企業がある程度のそういう政治活動、これは恐らく政治活動の段階のものだろうと思うんですけれども、そういったようなことをするのは、それはそれで認められている。ただ、その一つ一つの行為につきまして、あるいはそれが法律に違反することがあるかもしれない、ないかもしれない、それはそれぞれの行為について具体に取り締まり当局その他で御判断があるものだというように考えております。
  426. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 五つの関連企業の名前も記載をして、私が問題部分は少し声を大き目に読みましたように、「関連企業職員に本選挙への取組みを啓蒙し、積極的な協力を要請する。」と、こう書き、そして「業務上の便宜提供」を図ると、こういうふうに書いていると、ここまで書いておるということであれば、これは事が重大ではないかということで言っているんですが、どうですか。
  427. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 確かに紙の一番下に「註」といたしまして「担当関連企業」と書き、企業名が五つぐらい挙がっておりますけれども、この五つの企業と一体どういう関係にあるものやら、またこれらの企業とどのように働きかけをするものやら、そういうことはこの文書の上には実は全然出ていないわけでございまして、前段お読み挙げになりましたように、「方針」として、「本選挙への取組みを啓蒙し、積極的な協力を要請する。」といた しましても、そのやり方の問題ということになってくるわけで、この「方針」だけで直ちにこの文書がある企業の違反行為を裏づけているという断言はできまいかというように思っております。
  428. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 実際のやり方がよくわからないから、この文書だけではいま直ちには見解はちょっと述べにくい、こういうことであれば、よく実態を調査して、自治省としての見解を明らかにしてもらえますか。
  429. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) これもしばしば国会でお答えをしてきたところでございますけれども、自治省、選管はいわば選挙の管理、執行サイドでございまして、みずから個別の運動の内容、そのあり方について調査をするだけの権限もありませんし、またそれだけの組織も持っておりません。その立場を御了解いただきたいと思っております。
  430. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そんなこと言ったって自治省、公正な選挙が行われることについて責任があるでしょう。当然、法違反のようなことがやられておるということであれば、それをよく点検して、適切な指導をするということについてはその責務じゃないですか。調査をやってもらいたい。
  431. 岩田脩

    政府委員(岩田脩君) 重ねて恐縮でございますけれども、私の方は個別の運動ないしはそれまがいのケースにつきまして、その内容について、いまお話しのように捜査調査をする立場にございませんので、この点御理解をいただきたいと思います。
  432. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 警察に尋ねましょう。これだけ何回か繰り返しこう言っているわけですけれども、こういった事実に基づいて法違反の事実があるかどうか、こういった点について必要な調査捜査、これを警察としてはやってもらえますか。
  433. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えをいたします。  警察は、先ほども申し上げましたとおり、選挙違反の取り締まりに関しましては幅広く情報の収集を行って、違反があれば適正に処理をする、こういう方針でやっておるところでございます。ただいまお示しいただきましたこの資料は、そういった意味での資料とさしていただきたい、こういうふうに申し上げておきます。
  434. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 さらに、もう一つ挙げましょう。この公選法違反だけでない、石川島播磨重工の横浜工場、ここでは出身の市会議員候補の後援会費を個々の労働者の同意もないのに月々の賃金から天引きをしているのであります。職場からの告発に基づいて労基法二十四条の一項違反、こういうことで労働基準監督署が調査に乗り出しているというふうに聞いているわけでありますけれども、労働省としてはどのように対処していますか。
  435. 松井達郎

    政府委員松井達郎君) お答えいたします。  石播の横浜工場のケースにつきましては、今月の半ばにこの工場の労働者から所轄の監督署に対しまして、いまおっしゃいました賃金からの後援会費の控除について、これは労働基準法違反でないかという申告が出てまいっております。  私どもとしましては、この所轄の労働基準監督署におきまして調査をいたしました結果、この控除は労働基準法の二十四条に定める適法な賃金控除協定を締結した上で行われておりまして、労働基準法違反は認められませんでしたので、その旨申告者に説明しまして、すでに処理をいたしたところでございます。
  436. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 納得できませんね。  労働大臣、この機会にお尋ねをしておきますけれども、いわゆる企業ぐるみ選挙、こういう形を通して労働基準法違反というべきような、そういうような問題を絶対に発生をさせないと、来さないと、こういうことで労働大臣としても大いに目も光らせ、必要な指導もする、こういうことでやってもらう考えはありますか、大臣。
  437. 大野明

    ○国務大臣(大野明君) ただいま基準局長からお答えしたようなことでございますし、そのような事例もないということでございますので、たとえばそれがあるというような仮定のもとでの御質問だと思いますが、できる限りそういうふうに努力するつもりであります。
  438. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 以上、幾つか事実を挙げたわけでありますが、これらの問題は全く氷山の一角とも言うべき問題でありまして、今日この企業ぐるみ、官庁ぐるみ、まさに日本列島総ぐるみとも言うべき違法な選挙運動が野放しになっていると言わざるを得ません。文書や資料を添えての告発に基づいて各所の選管が公選法などの違反事実を認め、警察捜査を依頼しているわけです。ところが、なかなか迅速厳正な処置がなされないと、こういう姿になっていることが先ほど来の質疑を通しても明らかになりましたけれども、選挙が公正に行われるよう関係当局と警察の適正な対処、これを重ねて要求をするものでありますが、こうした見地からのひとつ自治大臣の明確な答弁を求めておきたいと思います。
  439. 山本幸雄

    ○国務大臣(山本幸雄君) 私は自治大臣と国家公安委員長という二つを兼ねてやっておるわけでございますが、先ほど来両方の局長部長がいろいろ御説明を申し上げました。一体企業ぐるみ選挙というのはどんなことなのかということも、なかなか具体的にはいろんな形があってわからない点もあります。また私企業でございますから、やはり公的機関とか、あるいは公的機関に勤務する個人とかとは、やはり立場は、選挙運動を含めて政治的活動の面でもいろんな規制の上では、やはり公的なものとは緩く考えなければならないであろうと。  そこで、いまいろいろ例示が出ましたが、これらは立場としましては、自治省は先ほど御答弁しましたように、これは一つの管理事務をやっておるのであって、指導をやっております。じゃあここのところ直せということが起こりましても、選挙管理委員会というのはやっぱり独立して事務を行っておりますから、それをそういう方向での自治省が立場上出ていくというのはなるべく差し控えた方がいいと、こういう立場であります。  そこで、結局もし選挙の行われている上で法律に違反するということがあれば、それはやはり警察の立場で取り締まるということになることであろうと思います。先ほど来警察の方としましてはいま幅広く情報を収集しておりますと、これは私はいつも選挙を取り締まる場合の立場でありますから、当然にそういう立場で警察警察としての正常の業務を執行していると、こういうことであろうと思います。  要するに、選挙は私どもの立場から申しましても明るく正しい選挙をひとつやっていただきたいと、こういうことに尽きるわけでございまして、その点で今後とも私ども指導をし、あるいは取り締まりもしていきたいと、こう思っているところであります。
  440. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 雇用問題を最後、残っている時間質問をいたしたいと思いますが、まず、たとえばここ最近十年間の製造業について雇用者数の推移がどうなっているか、全体を平均した場合、たとえば五百人以上の大企業、こう比較をしてみて、どういうことになりますか。
  441. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 製造業雇用者の推移につきまして、ただいま十年ということでございますが、ちょっと手元にすぐ持っておりませんけれども、五十五年、五十六年、五十七年の三カ年について見ますと、製造業雇用者計では、五十五年が対前年で二十八万人増、五十六年が十七万人増、五十七年は一万人減。規模別に見ますと、五十五年の二十八万人増のうち、五百人以上が十五万人、三十人から五百人未満が十万人、三十人未満が二万人と。五十六年の十七万人のうちは、五百人以上が十二万人、三十人から五百人未満が九万人、三十人未満は二万人減。五十七年の一万人減のうちでは、五百人以上は一万人増、三十人から五百人未満は三万人減、三十人未満は一万人減ということになっております。
  442. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまの数字でも趨勢が明白だと思うんですけれども、大企業でむしろ雇用者数が減っていく、こういう姿になっておるこのあらわれは、最近減量経営という名前で正規労働者の雇い入れを減らして、パート、社外工、これをどんどんふやしていくというやり方、そしてそれがOAとかあるいはロボットとか、こういうものの導入 によって一層拍車がかけられようとしているわけでありますけれども、こういった傾向、これについて一体労働大臣どういう見解を持たれますか。
  443. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 佐藤君、時間が参りました。
  444. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 厳しい経済環境のもとでいろんな経営合理化その他企業は努力されておるわけでございますけれども、わが国の場合は大企業に限らず、概して労使十分話し合いをされまして、労使協力のもとにこういう厳しい情勢に対応されておるということが一つございますし、また規模別に見た場合は大企業の方が中小企業よりも多角的な経営が行われておりますので、関連企業等もいろいろあるというようなことから、現在雇用過剰感があるとか、そういうものをもとに雇用調整をいたします場合にも、労使でよく話し合いをされ、その結果できるだけ失業を回避するというような形で、残業の規制とか、あるいは入職の抑制とか、また関連会社への出向とか、そういうような形で行われておるわけでございますが、私ども労働行政といたしましても、できるだけこういう情勢でございますので、失業の回避あるいは雇用の安定というような観点から、どうしても雇用調整を行わざるを得ない場合でも、そういう観点から行ってもらうように雇用調整助成金等の活用も含めて指導援助をいたしておるわけでございます。
  445. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 残念ですが、御協力願います。
  446. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 最後の一問。
  447. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ルールを守ってください。
  448. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 さっきやったじゃないですか、平等に扱ってくださいよ。  私、本日資料として、大企業の内部留保についての資料をお配りをしておりますので、その問題で詳しく論じたかったわけでありますけれども、もう時間がなくなりました。ただ、先ほどの、できるだけ失業者を来さないように、そういうことでの留意が必要だと言いながら、一月の総理府統計によれば失業率は未曽有の増大をしておる、こういうことでありますし、大企業は実は内部留保を大きくため込み、大もうけをしながらどんどんと……
  449. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 佐藤君、時間が参りました。
  450. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 減量経営をやっておるということではないかというふうに私は思うのです。  そこで、せっかくこの資料を提示しておることでありますので、(「時間だ、時間を守れ」と呼ぶ者あり)一つは労働大臣、一つは大蔵大臣、この大企業の大もうけをしておる、この内部留保というこのことから見て……
  451. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 佐藤君、ルールを守ってください。
  452. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 今日の減量経営をどういうふうに思うか、そのことを最後に答弁を求めておきます。(「必要なし」と呼ぶ者あり)
  453. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で佐藤昭夫君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  454. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、中村鋭一君の一般質疑を行います。    〔佐藤昭夫君「ちょっと不当じゃないですか、委員長。さっきはやってたじゃないの。ちょっと扱いが不平等ですよ」と述ぶ〕
  455. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 協力してください。    〔佐藤昭夫君「とにかく委員長の進行に強く抗議をしておきます。だれが見たって不平等ですと述ぶ」〕
  456. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 中村君。
  457. 中村鋭一

    中村鋭一君 夕刊には「年度末手当決着へ国鉄〇・二五カ月林野〇・三四カ月」、こういった見出しの出ている文もありますけれど、まだ林野は徹夜で交渉を続けておりまして、決着がついていないと、こう聞いております。現在の交渉状況等をまずお伺いいたします。
  458. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) お答えします。  国有林野事業の年度末手当につきましては、現在、諸般の情勢を総合的に勘案しつつ、真剣に検討しているところでございまして、本日がタイムリミットであるということを十分認識いたしまして、現在最大限の努力をしている最中でございます。
  459. 中村鋭一

    中村鋭一君 これはまあ他企業体との兼ね合いもありますから、それはわかりますけれど、どうも政府がなかなかうんと言わない、強い抑制があるのじゃないか、こう思われますが、まじめに一生懸命働いております労働者にとりましては、たとえ赤字でありましても、少なくともその努力と労力に報いはあってしかるべきだ、こう思うんですが、早急にひとつ回答できるよう、最善の努力をお願い申し上げておきたいと思います。  次に、大蔵大臣にお尋ねいたします。  臨調答申の最大限の尊重ということは、たとえば三月十八日の政府声明にも、これを最大限に尊重し、逐次所要の方策を実施に移す旨を決定した、とございます。従来から臨調の答申の最大限尊重は再々確認されているところでございまして、その中での財政再建につきましては、これは一つの用語例ではありますけれど、終始一貫、財政再建という言葉をお使いになっていたと私は理解いたしますが、それが最近になりまして、その財政再建が財政改革という言葉に置きかえられているように思います。再建はリビルドといいますか、リコンストラクトといいますか、改革はリボリュートあるいはリフォームだと思います。なぜその再建という言葉が改革という言葉に置きかえられつつあるのか、その辺について明快なお答えをお願い申し上げます。
  460. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 五十四年以来、五十九年度特例公債依存体質からの脱却を目標に財政再建と、これを進めてきたわけであります。いずれにいたしましても、財政再建であれ財政改革であれ、財政の対応力、これを回復することであるという意味においては変わりありません。    〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕  しかし、端的に申しまして、財政再建とは五十九年度赤字公債脱却と。そこで、やはりなおこれを一歩進めるためには、歳出構造の根源にさかのぼってメスを入れなきゃならぬということになると、まさに構造改革と。そうすれば財政改革という言葉は財政再建をさらに一歩進めたものだと、こういうふうに理解していただけるではなかろうかと、こういう気持ちで財政改革という言葉を使っておるわけでございまして、ともに究極するところ、財政の対応力の回復という意味においては私は大きな相違はないというふうに考えております。
  461. 中村鋭一

    中村鋭一君 まあ、その究極するところにおいて変わりないならば、あえて用語をお変えになる必要はないと思うんですね。まあ、再建というのはいわば一たん何もなくなってしまったものを立て直すというニュアンスが感じられますが、改善という言葉は、まあ現状でもそこそこいけるんだけれども、さらにこれをよくするために直していくんだというニュアンスがあると思います。大蔵大臣はやはりそういうニュアンスを含めて、いわばその財政再建と言いますと非常にシビアになりますから、財政改革という言葉で、たとえば増税でありますとか、そういったことも含めてフリーハンドを得ておくために、そういう用語の使い方をお始めになったんではないでしょうか。重ねてお伺いいたします。
  462. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 言葉の問題は、これはいま委員指摘のとおりニュアンスの問題ございます。ですから、私ども考えておりますのは、むしろいままでは将来に備えて財政の対応力を回復しようということは共通しております。いままでは五十九年度赤字国債脱却というのに財政改革という言葉がそのまま結びついてきたと。努力はしましたと、しかしこれからはそのぜい肉切りだけでなく、まあ骨まで切りましょうという意味において、まさに財政の歳出構造そのものに踏み込ん でいこうと、こういうことでございますので、一歩進めたものというふうに御理解いただければ幸いであります。
  463. 中村鋭一

    中村鋭一君 少しかみ合わないような感じもいたしますが、とにかく臨調の答申は終始一貫、最終答申に至るまで財政再建という用語例で貫かれているわけでございますね。大蔵大臣おっしゃることもわかります。しかしその反面に、そういうふうに言葉の使い方を変えたということは、何遍も申しますけれど、フリーハンドを得ておくためにいまから布石を打っておくんだと、だから再建を改革に変えたんだというふうに理解をされても仕方がないと思いますので、私は言葉の使い方というものは、たとえば中曽根総理の不沈空母問題にもありますように、言ったつもりもない大型空母が通訳の意訳でアンシンカブルとこうなったために、いわばああいう紛糾を招いたこともありますから、やはり言葉というものは最初に決められたら正確にお使いいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  いま大蔵大臣おっしゃいましたけれど、歳出面を大胆に切り込むと、こうおっしゃいました。大いに結構なことでございまして、当然ながら臨調もそのことに言及をしております。しかし、その一方では臨調は歳入面についてもたとえば三次答申におきましては、「税負担水準の上昇は極力抑制していく必要がある。」「このような税負担水準についての考え方の下で、税負担の公平確保の観点を踏まえ、所得税制における課税最低限及び税率構造並びに現行の直接税、間接税の比率等税制上問題のある重要課題につき検討すべきである。」と言及をしておりますが、歳入面についても臨調答申の再建方針の実現にお努めになるのかどうか、それをお伺いいたしたいと思います。
  464. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これはもとより当然のことでございます。ただ、全体をお読みになっての御感想であろうと思うんでございますが、まず増税なき財政再建ということをまあ哲学として、糧道を断って歳出構造に切り込めという流れが基本的に流れておると私は思います。したがって、税面でのおっしゃっておる向きはおおむね三点ございます。いまの一点も重要な一点でございます。このことももちろん私どもとしては最大限尊重すべきことであるというふうに理解をいたしております。
  465. 中村鋭一

    中村鋭一君 いま増税なきともお伺いいたしました。当然ながら、臨調はこれまでも増税なき財政再建を言っているのでございますが、大蔵大臣のお考えで増税なき財政再建とはどういうふうに理解をしていらっしゃいますか。
  466. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) やはり最終答申でも言われておりますので、まさに行政改革のてこであるという認識でございます。そして、これを定義と申しますとはなはだむずかしい点はございますけれども、やはりすでにお読みになっていることであると思いますが、「まず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、」として、「全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」と書かれてありますと同時に、いまちょうどお読みになりました、所得税制における課税最低限、税率構造並びに直間比率等において検討する、とも述べてございますので、要するに各種の観点から税制の見直しが必要だということが指摘されておる。ただ、増税なき財政再建というものは、やはりこれは理念であり、しかも書かれ方が糧道を断ってと、こう書いてありますだけに、まさに歳出削減、それの大きなてことしての哲理を申されておるというふうに理解しております。
  467. 中村鋭一

    中村鋭一君 それはまあ哲理と言えば哲理でしょうけれども、根本にその増税なき財政再建がありますが、これを具体化していきますと、哲理では済まないわけですから、きめ細かくいろいろなことを考慮に入れながら実施に移していく必要があります。  そこで、臨調の最終答申に「「増税なき財政再建」とは、当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、」これはいま大蔵大臣、言ってくださいました。「全体としての租税負担率(対国民所得比)の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」、こうございます。  租税負担率というものについての大蔵大臣のお考えをお示し願えますか。
  468. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 租税負担率は、一般論で言いますならば、国民総生産を分母としまして国税、地方税を足したものを分子として出るものでございますが、ここで租税負担率というもののどの時点を基準とするかということは必ずしも明らかにされておりません。それはまた臨調の御答申というものが、言ってみれば一つの方向を示唆された。その具体的な問題になりますと、やはり政府税調等々で御議論をいただかなきゃならぬ問題かなと。私も、その租税負担率をどう読むかということについて、これを一つ一つ臨調に対しましてお問い合わせするのも非礼でもございますよね、実際問題。いまのような分母、分子関係にございますから、経済の情勢の推移によりましてこれは変化をします。だから、租税負担率というのは実際からいうと結果的に出るものでございますので、あらかじめ数字を固定して考えるということは現実的であるとは言えない。やはりそういうようなものな目安としてやれという大方針であるというふうに理解すべきであると思っております。
  469. 中村鋭一

    中村鋭一君 哲理とか大方針とかでは私ちょっとあいまいでわかりかねるんですけれども、ここに新経済社会七カ年計画、これ、経済審議会が出した資料でございますが、租税負担——対国民所得比ですね、昭和六十年度には二六・五%程度ということを言っておりますね。大蔵大臣の頭の中にはこの数字はございますか。
  470. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私も経済社会七カ年計画をつくりました当時、二十六カ二分の一とこう申しておりましたが、二六・五でございますね。それは頭の中にはございます。が、それもまた基準とすべきかどうかということについては、私もこれが不滅の基準だという評価の位置づけをすべきでは必ずしもないなと思っております。念頭にはございます。
  471. 中村鋭一

    中村鋭一君 やはり、繰り返しますけれども、増税なき財政再建は、租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を講じないと臨調が言っているわけですね。ということは、まず、租税負担率についての基本的な考え方が定まらないと何をもって増税と言い、何をもって増税ではないと言うのか、その基本が定まらないことになりますから、やはり私は、そこのところははっきりとしておく必要があると、こう思いますが、再度大蔵大臣、その点についてお答え願えますか。
  472. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いま、最初お読みになりましたように、新たなる大きな影響をもたらすものはとらないというのが私は理解すべき限界じゃないだろうかと。といいますのは、分子分母が変わりますから、租税負担率というのは数値としてあらかじめ決める性格のものではなく、結果として出る数値でございますので、その辺は、やはり大変な偉いお方がお集まりになってお書きいただいたのでございますから、その大筋を踏まえておるということがむしろ対応する正直な姿勢じゃないかなと。余りぎりぎり詰めたことをお問い合わせするというような性格のものではないんじゃなかろうかと思っております。
  473. 中村鋭一

    中村鋭一君 三月十八日に、小倉政府税調会長は、臨調の答申についての感想を求められて「国民各位がそれぞれの立場の都合で、増税がないと理解してしまう。そうなると、現状以外の変更は駄目だということになり、税調としては迷惑している」こう語っておられるわけですね。これは政府の税調の会長の御発言でございます。この発言についての大蔵大臣の御感想をお伺いいたします。
  474. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) その後、いまのような見出しになった発言についてコメントをしていらっ しゃいました。確かに増税なき財政再建は理念であり、てことして対応しなければならぬと。しかしその言葉だけがひとり歩きした場合に、個人あるいはそれぞれの利益団体等が自分たちのかかわりのあるものについては一切現状維持だと、こういう考え方になった場合には、たとえばいわゆる租税特別措置でございますとか、俗称不公平税制でございますとか、そういうものにすら手がつかなくなることはこれは避けるべきことだというようにコメントなすっておりますので、私もそれなりに理解できる表現ではなかろうかというふうに思っております。
  475. 中村鋭一

    中村鋭一君 増税と減税を抱き合わせるといたします。そういうことは可能であり、そして大蔵大臣はそのことをいま腹の中に考えていらっしゃいますか。
  476. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) やっぱり増税なき財政再建、何よりもまず歳出の徹底的削減をやれと、そして租税負担率の上昇を大きくもたらすような新しい措置は基本的にとるなと、これを踏まえていかなきゃならぬと思っておるわけであります。  そこで、税制改正ということになりますと、増税であれ、あるいはまさに税制改正であれ、これは幅広く検討すべきものであると書かれております。いわゆる所得税の問題にいたしましても、直間比率の問題にいたしましても。したがって恐らく減税と増税とを抱き合わせて考えるなどの予断を持っていまの答申を読むような性格のものと理解はしない方がいいんじゃないかなと、増税なき財政再建、そして見直せと、こう書いてありますから、そこに矛盾点をつないでいくような読み方はしない方が対応する姿勢としては正しいんじゃないかというふうに思っております。
  477. 中村鋭一

    中村鋭一君 これは仮定でございますが、もし大蔵大臣、増税をおやりになる場合は、増税の形はいろいろありますけれども、増税をおやりになる場合には国民の選択におゆだねになりますか。
  478. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私は、現行の施策、制度あるいはこれを仮に税制に限って申しましても、要するに今日の税制というのはこの長い間の国民の合意と選択の集積というものが現行の施策、制度となってあらわれておるものであるという意味におきましては、国民の合意と選択というのはいつでも政治家として、また行政府にある者として、それは見詰めていなければならない重大な問題であるというふうに理解をしております。
  479. 中村鋭一

    中村鋭一君 その見詰め方ですけどね、また国民の世論の吸い上げ方ですけれど、大蔵大臣、手っ取り早く言いますと、大蔵大臣が率直に国民に増税をしなければどうしても真の意味の財政再建はできないんだということをお諮りになる。それを国民の審判にゆだねるという形は、やはり選挙というものが一番明快でわかりやすいと思います。六月には参議院議員選挙がございますが、これをたとえば選挙の一つの大きな争点の一つとしてお訴えになるおつもりはございませんか。
  480. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) むしろ与野党の合意というものにおいて減税問題がいろいろなされております。これはやはり国民の合意と選択をどこで吸い上げていくか。結論から言うと、その吸い上げた集積が現行の施策、制度、税制であるとするならば、これはやっぱり一つは国会の場だと思うんです。国権の最高機関たる国会の場できょうこういう問答をしておる。この中で吸い上げていくというのは重要なやっぱり私はポイントになることだと思います。それからもう一つは、今度はいわゆる法律上オーソライズされております政府の権威ある諮問機関としての税制調査会、こういうものがあるわけですよね。したがって、私は税問題というものが一体選挙のテーマとしてそれなりの価値を持つものであるかどうかと。これは選挙を戦いつつ国民のニーズを肌で感じた皆さん方の御意見を吸い上げるというのがこれが一番適切ではないかなあと。私は総理大臣でもございませんので、選挙のテーマというようなことを触れるべき立場にはございませんが、一政治家として考えるならば、そういう一番国民の合意と選択を吸い上げていく場というのは選挙の洗礼を受けた方々のこのような場における意見、こういうものは一番大事じゃないかなあと。したがって、選挙ずばりで是か非かという問題を問うような課題としては私は適切かどうか。全く否定するものじゃございませんが、そのような私なりの認識を持っております。
  481. 中村鋭一

    中村鋭一君 でも、こういった国会で論戦をするのは大変大切なことでございますけれども、国民の皆さんからすれば、国会でこういう論戦をいたしましても、それは率直に申し上げて比較的わかりにくい。その会議録を国民の皆さんが全部お読みになるわけでもございませんし、なかなかわかりにくいという面が私は、大蔵大臣、あると思うんですよ。その場合は率直に論点をはっきりと整理されて、具体的にわかりやすく、たとえばです、付加価値税を導入するんだということを一つの方針として打ち出されて、それを与党、野党が一つのまないたといたしまして、たたき台として、たとえば選挙によって国民のその方針に対する判断を問うということは、これは私はいいんじゃないかと、こう思うんです。逆に言いますと、大蔵大臣、選挙が済むまでは歳出を大胆にカットする、歳入面については比較的言及をしないでおきまして選挙が済んでから、大蔵大臣の心中をそんたくして申し上げるわけではございませんが、大蔵大臣の与党が多数をとってから後に増税を持ち出した方がはなはだ好都合であるというふうにはお考えになっておりませんか。
  482. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 何もかも黙っておって選挙で勝ってから何もかもやると、こういうことになりますと、やっぱり参議院で言えば半数改選の三年間あるいは衆議院で言えば四年間、勝った者が何でもやりゃいいということになれば野党は存在しなくてもいいという荒っぽい議論がよくあります。だから、やっぱりそうじゃなくてみんなが選挙という最も国民と接触する場の中で体でもって感じたことが議論となって出ていく、それが合意と選択としてこの政策選択に向かっていくというのが一番いいんじゃないでしょうか。いまのような付加価値税是か非かとかいうような議論をしてそれはやらないでおいて、後からそんなことやるんじゃないかとおっしゃいますと、そういうようなことをしたら私どももまた未来永劫に葬り去られますので、お互いやっぱり政治家として葬り去られなくてやるためには、その都度国民のニーズをどうして吸い上げるかということにまずは重点を置くというのが議会制民主主義、なかんずく政権交代というのは当然あり得るわけですから、そういうあるべき姿じゃないかなというふうに考えます。
  483. 中村鋭一

    中村鋭一君 未来永劫に葬り去られるとおっしゃいますけれども、はっきりとそういう争点があって選挙を戦う、戦った結果与党が少数党に転落すればやりたいこともやれなくなるわけですね。ところが野党が選挙で最大多数を、多数党となれば、それも圧倒的多数をとれば、それはたとえば参議院ですと半数改選まで三年間ありますから、その間に国会の論議はそれはしっかりとやらなければいけませんけれども、結果において大蔵大臣、民主主義というものは当然ながら議論を尽くした後に多数がそれを制するものであります。賛否を問うわけでございますからこれできるわけです。ですから私が申し上げているのはそういう意味でありますので、少なくともお願いをしておきたいことは、来るべき選挙まではそういったことはさわらぬ神にたたりなしで口にしないで、選挙が済んで突如そういうことを口にされることのないようお約束をお願いしたいと、こう思うんですが、その点についてはいかがでございますか。
  484. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 選挙が済んでどういう政権になりますのか、これも国民の選択の問題になりますけれども、私がおりますのか、それもまた問題でございますが、政治家として選挙前は黙っておって、選挙が済んだら言わなかったことをやるというようなことをしたら、これはまた国会の中の議論の中で、いかに適当な人物ではないかということを批判されますので、そのようなことをしてはならないことであると拳々服膺いたしてお ります。
  485. 中村鋭一

    中村鋭一君 選挙が済んだらいまの政椎がかわっているかもわからないとおっしゃいますけれども、やはり竹下大蔵大臣はいま将来の総理という声も出ている方でございますから、当然ながら選挙後も政権の重鎮といたしまして活躍される方であると私は理解しておりますから念を押した次第でございます。  直間比率の見直しは具体的に検討しておりません、その指示もありませんということは三月九日の参議院の予算委員会で大蔵大臣自由民主党の嶋崎委員質問に対して答えていらっしゃいますが、一方でこれはたしか二月七日だと思いますが、新自由クラブの衆議院の山口委員質問に対して「本院における議論の場を通じましても、直間比率というものに対して検討を加えるべきだ、これは税制調査会の意見の中においても出されておる、したがって、私どもとしても税制調査会の審議等を見守りつつ、直間比率というものに対しては真剣な検討を加える環境は熟しておる、このように考えております。」と。同じ委員会で大蔵大臣は、山口委員質問に対しては、機は熟しているとお答えになり、嶋崎委員質問に対しては、具体的に検討していないし、その指示もないと答えていらっしゃいますが、この矛盾をひとつ御説明をお願い申し上げます。
  486. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) まず、直間比率の見直しを具体的に検討しておることもありませんし、指示を受けたこともありませんし、また指示をしたこともございません。私が山口幹事長さんに申しましたのは、そのいろいろな問答のやりとりの中でございますが、要するに直間比率といえば、私は前回、五十四年から五十五年にかけて大蔵大臣でございました。そのとき、直間比率という言葉が出ますと、すぐ、あっ、いわゆる一般消費税(仮称)だと、こういうふうに直線的に結びついた。ところが、その後を見ますと、税制調査会で最初は直間比率ちょっと言葉として適切でないと思われたか、その後は、二回目、三回目、四回目は税体系の見直しという言葉になすっております。それから先ほどお読みになりました臨調答申にも言葉が使われておる。それから国会の中でも直間比率見直すべきだという議論もございます。したがって当時からすれば環境はずいぶん違ったという、勉強するための環境はずいぶん違ってきましたと、こういうことを素直に申し上げたわけであります。    〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕 したがって、私もいつでも申し上げる話でございますが、この直間比率というのも本当は結果として出るものであって、いわゆるアプリオリに決めていくものじゃございませんですよね、実際から言うと。したがって、わかりやすいことは非常にわかりやすいんですが、正確に言えば、税体系の見直しというのが本当かなと思っております。したがって、最初申しましたように、いまこの見直しを具体的に検討しておることも指示したこともございません。ただ、税制調査会という場は、御案内のように、まず諮問をいたします際に、いわゆる、国税、地方税のあり方について、こういう諮問になりますから、この問題は議論してくださいますな、この問題は議論してくださいませといって、こっちが予見を持って臨んではいかぬという意味で申し上げたことでございます。
  487. 中村鋭一

    中村鋭一君 しかし、それは臨調のこの最終答申、「直接税と間接税の比率等について検討する。」と答申が出ているのですから、検討もしてないし指示もしてないというのは、臨調の答申に大蔵大臣は反するんじゃないでしょうかね。
  488. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これはいつでも勉強はしております、だれしも。ただ、税体系そのものの見直しということになりますと、やはり本格的税制の問題になりますから、税制調査会で御審議していただかなきゃならぬ。その前にあらかじめ予見を持ってそれに臨んではいけない、こういう意味で申し上げておるわけでございます。  それから、臨調でお使いになっている直間比率というのも、税制体系の見直しとおっしゃっていただいた方が適切かなあなどと申しましたけれども、それはやっぱり観念的にはわかる話でございますので、りっぱな御答申だと思っております。
  489. 中村鋭一

    中村鋭一君 やはり、臨調の答申を、これはもう、政府は何遍も、積極的に尊重していくとおっしゃってるんですから、臨調が検討すると言っていることは、その含みとしては、大蔵大臣、検討をして、その結果として、機熟すればこれを実施しなさいという、私は、含みをその中に酌み取ってもいいんじゃないか、こう思うんです。ですから、私は、大蔵大臣が御検討なさるというならば、将来においてそのことは十分に機熟すれば実施し得るものである、そういう含みでの御検討である、このように理解しておいてよろしゅうございますか。
  490. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これも、税体系全体を政府税調に御諮問申し上げる場合にも、いまの中村委員おっしゃいました定義を確立しますと、やっぱり一つの予見になるわけでございますので、やはり予見を持たない方が素直じゃないかな、こういうふうに思っております。
  491. 中村鋭一

    中村鋭一君 どうもかみ合いませんので、次の質問に移ります。  これは財政再建、先ほども申し上げました第一段階として赤字国債からの脱却、これはもう大前提でございますが、この具体的な手順と方策についてお伺いをいたします。
  492. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これもいささか陳腐化した言葉になりましたが、予算審議に当たりまして、財政改革の基本的な考え方というものをお示し申し上げたわけであります。この手順ということになりますと、やはり、まずは歳出構造の見直し。この内容について申し上げますならば、今日の情勢のもとでなお財政が本当に関与すべき分野であるだろうかどうだろうか。すなわち、個人、家庭の自助努力に期待すべき問題ではないか、あるいは民間部門の活力にゆだねることができる問題ではないかというようなことについて真剣に見直しを行って、国、地方との間の役割り分担、それを適当かどうか等を幅広く検討していくということが、まず第一弾だと思います。さればその検討の課題は何だとおっしゃいますと、この間ちょうだいいたしました本答申の中に、三十三項目か、出ております。また、暮れにいただきました財政制度審議会のこの「歳出の節減合理化の方策に関する報告」という中に盛られておるものがございます。これらが、やっぱり検討対象になるべきものだと、それからまずはやっていこうと、こういう手順でございます。
  493. 中村鋭一

    中村鋭一君 三月二十五日の大蔵委員会で、この国債脱却の時期について、大臣、数年後としか言えないが、財政の中期試算で示した三ケースのうちで六十五年度脱却、Cケースと理解されても仕方がない、こうおっしゃっておりますが、この場でもそれは変わりませんですか。
  494. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは、財政の中期試算というものに対する御評価はいろいろあろうかと思います。確かに、ある仮定をおきまして、等率等差でもって七、五、三をつくりました。もっと、十年もつくってみようかなどとも考えないわけではございませんでしたけれども一般的に、やはり、大体、先進国のその種の試算とか計画というのは、かつて日本でもございましたよね、経済社会七カ年計画、そういうことがやはり限度かなと思って七、五、三と、こういうものをお示ししたわけです。  そこで、実際問題、三年といえば短過ぎるなと。私も、これは言葉の使い方で非礼になったと思ってある種の反省もしておりますが、沖縄返還のときに使われて苦心して読んだア・フュー・イヤーズというのがありました。ア・フュー・イヤーズではないと。そうするとセブラルイヤーズ。セブラルイヤーズとは何年だと、こういうことになりますと、あの中に入るものは五と七がセブラルイヤーズだというふうなことではないかな。したがって、きょう読み取られても仕方がないということは私も取り消そうとは思いません。それも検討に値する一つの年次だと思いますので、た だ、具体的に何年ということは、いましばらく経済の指針とか展望とか、そういうものの作業をも見ながら検討さしていただく課題であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  495. 中村鋭一

    中村鋭一君 もう一遍念は押しておきたいと思いますが、ということはア・フュー・イヤーズではなくてセブラルイヤーズですね。ということは五年ないし七年。ということは現在の厳しい状況からして、これ、非常に最悪の七年後という見通しを大蔵大臣立てていらっしゃる、こう理解しておいてよろしゅうございますか。
  496. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 出すとすれば、五、七というものは今日までいろいろ言われておる。それ以上出すというのは、やっぱり余りいままでの経済計画なんかにないかなと思っていたわけでございます。したがって、五か七か、あるいは八かなんて聞かれましても、どれが当たりでございますと言う状態にはございませんが、確かに、そういうところに政策目標としてめどに置くことが望ましいと考えますが、先ほど申しましたように、いましばし引き続き具体的な検討を行うということで御了解をいただきたいと思います。
  497. 中村鋭一

    中村鋭一君 せめてセブラルイヤーズがロングイヤーズにならないように、ひとつくれぐれもお願いを申し上げておきたいと思います。  企画庁長官にお伺いいたしますが、中長期的な経済の見通しと経済運営の指針をお示し願います。
  498. 塩崎潤

    ○国務大臣(塩崎潤君) 経済運営の指針、そしてまた経済展望という表題は決して決まっているわけじゃございませんけれども、これまでのいわゆる経済計画と言われているものにつきまして、新しい観点からより長期に、より弾力的に現在経済審議会で御検討をいただいているところでございます。その中には、先ほど来中村委員と大蔵大臣との間のお話がありました財政の、何と申しますか、再建といいますか、改革といいますか、一つの見通し、これはぜひともその中に入れていただきたいと。現在、国民も企業も経済の先行きが大変不透明である、こう言っておられる中に、財政の問題があり、金利の動向あるいは国債がどうなるか、こんなような問題も大変関心の的でございますし、それもまた一つ経済あるいは企業の運営の指針になると、こんなふうに考えております。
  499. 中村鋭一

    中村鋭一君 やはり税金が幾ら入っていくのか、入ってきた税金がどう使われるのか、したがって国民の可処分所得の推移がどうなるか、こういうことにはっきりした、確たる見通しといいますか、統計的数字がなければ企画庁長官も経済の見通しも立ちがたいわけでございますから、当然ながらこれは税金の問題等と景気の見通しとは大きに連動をしてくると思います。  そこで、税金の問題についてお話を伺いたいと思いますが、仮に、大蔵大臣、減税を行うといたしましたら、累進税率の見直しを行われる用意はございますか。
  500. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これも、与野党の合意を尊重して、財政改革の基本的考え方を踏まえながら、これから真剣に検討してまいるということでございます。これには税収動向の見きわめと税制調査会における検討も必要でございますので、累進税率の見直しという言葉そのものもやはり減税の内容ということになりますので、それを明示できる段階にはございません。ただ、税制調査会では当然幅広く検討をされると思われますし、それから税調でも臨調でも税率構造という言葉が使われてありますので、私は念頭に置かれて御審議いただけることではなかろうかというふうに推察をいたしております。
  501. 中村鋭一

    中村鋭一君 新聞等に頻々として報じられてありますけれど、その中で課税最低限ですね、当然この引き上げは喫緊の課題でありますが、一方では、いわゆる中堅所得層に対する税率の見直しを行いたいと大蔵省首脳は語った、こういう報道がなされておりますが、その辺について大蔵省の税当局の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  502. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) この問題は、先ほどの大蔵大臣の答弁に尽きるわけでございまして、五十八年度の税制改正の税調の答申にも、五十九年度以降税制全般の見通しの中で所得税の課税最低限、税率構造等について抜本的な検討を行うということを触れておられますが、その見直しの具体的な方向は、実はこれから税制調査会で御議論をいただき、御結論をいただくわけでございまして、税制事務当局として、これ大臣がいつもお使いになる言葉ですが、具体的な予見は持ってないわけでございます、現段階では。
  503. 中村鋭一

    中村鋭一君 具体的な予見は持ってないにしても、内部ではすでに具体的に検討をしておられるんじゃないですか。勉強の課題としてですね。
  504. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 税制の問題につきましては、所得税に限りませず、税制万般について常常勉強いたしております。
  505. 中村鋭一

    中村鋭一君 お手元に昭和五十二年と五十八年の税負担比較の表をお配りしております。これは従来から大蔵省が試算しておられるものに準拠いたしまして私どもがつくった表でございますけれども、三百万円の年収の方が五十二年から五十八年と推移する間に実質の税引き後手取り額、可処分所得、これはおよそ三・七%の伸びと、こうなっております、この六年間にです。一千万円の所得の方を見ますと、税引き後手取り額の推移は五十二年から五十八年の間にマイナス三%。ということは、可処分所得がまあ三百万円の方は三・七%、五百万円の方は一・九%、微増ではありますけれどもふえるにはふえているわけですが、一千万円の方は実質的に三%の減になっているわけでございます。  この表を見て大蔵大臣、どういう感想をお持ちいただきますでしょうか。
  506. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) まさにお示しのとおり、年収一千万円の方はマイナス三%になっておる。だから、可処分所得というものはいわゆる手取りでございますので、消費を刺激する一番大きな問題になるので、素直に見れば一千万円以上の方の消費意欲というものは減っておるなと読むべきであろうと思っております。
  507. 中村鋭一

    中村鋭一君 当然ながら長年にわたって据え置かれております課税最低限を引き上げる、これは減税の場合最優先に処置すべきことではあると思いますけれども、一方大蔵大臣、いま五百万円から一千万円にかけての所得層といいますと、どうでしょうか。四十五、六歳から五十四、五歳ですね、一生懸命会社に入って働いてやっとそこそこの収入があるようになった。子供さん大きくなった、嫁にやらなきゃいけない、大学へやらなきゃいけない、家を建てた、さあローンを払わなきゃいけない、もう出る金が圧倒的に多いわけですね。こういう言葉を使うのは不謹慎かと思いますけれど、たとえばOL貴族というような言葉があります。海外旅行に出かける人の統計を見ましても、やっぱり若い方々が比較的に少なくとも四十歳代の方よりも多いわけですね。ということは、やはり健全に自分の生活を再生産するための可処分所得はかえって若い方の方に多いんじゃないか。これは裏を返せば、そういった一生懸命何十年働いてきた中堅所得層の人々が、この過酷な、私はあえて過酷なと言いますけれど、累進税率のためにやっと落ちつく年ごろになってかえって苦労をしているということになっていると思います。  もう一遍大蔵大臣にお尋ねいたしますが、この辺の累進税率について大胆、率直な手直しを加えるおつもりはございませんか。
  508. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 言葉としてお使いになりましたが、私どもも聞かされる言葉として独身貴族に熟年こじきでございますか、若年天国、熟年地獄と、熟年と言えば竹下登クラスの年でございます。そういうことをよく聞かされるわけでございますが、まさにいまのような言葉、中村委員がお吐きにたったような言葉というようなものが念頭にあればこそ、税率構造の見直しというようなことが権威ある臨調とか税調でも言われておる問題であるという認識は等しくいたしております。
  509. 中村鋭一

    中村鋭一君 ひとつその点につきまして、仮に増税ではなく減税を云々することになったときに は、税率構造について、特に累進税率の手直しですね、私、ここに資料をたくさん持っておりますけれど、時間がありませんのでそれは省略いたしますが、大蔵大臣がいま言ってくださいましたように、もうたくさんのそういった標語めいたものもあるわけでございますから、その点について十二分の御配慮をお願い申し上げておきたいと思います。  今度は税金の捕捉率でございますが、俗にトーゴーサンピンとかクロヨンということが言われます。ここに私、一枚の表を持っておりますが、これは大蔵省主税局が租税及び印紙収入予算の説明に使われた資料でございますが、課税見込み額ですね。給与所得者に対する源泉所得税、これは昭和五十七年度が一人当たり二十三万六千円、昭和五十八年度が一人当たり二十三万四千円でございますね。五十七年度の補正後は一人当たり二十一万四千円でございます。申告所得税は、自営、農業等を見ましても、昭和五十七年が一人当たり十六万七千円、五十八年が十七万二千円、こうなっておりまして、給与所得者はおよそ二万円ぐらいふえているわけですね。ところが、自営、農業は補正後も変わっていないわけでございますが、こういう数字をどのように理解しておられますか。
  510. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 私どもが税収見積もりをいたします場合の所得者別の計数でお示ししておるものは、ただいま委員が御指摘になったとおりでございます。給与所得者の所得なり税額の伸びと申告所得税におきます事業所得者あるいは農業所得者の所得額なり税額の伸び等を比較されましてこれを捕捉率の議論と結びつけられますと、私どもは若干そこは説明をしておかなければならない点があるわけでございます。  給与所得者につきましては、御承知のとおり、その見込みで出しておりますのは、政府の経済見通し策定の根拠になります雇用者所得の伸びを置きまして推計しておるわけでございますが、事業者所得の場合は、そういったマクロの見通しの統計はございません。過去の課税実績なり経済の実勢を見ながら、私ども責任において見通しを立てるわけでございます。  それで、どうしてそういう数字の開差が出るかと申しますと、もちろん昨今の経済の局面にもよるわけでございますけれども、事業所得者の場合は現在青色申告制度、それから青色申告者の場合は見なし法人課税という制度が選択もできます。つまり、端的に言いますと、国民所得の中でも雇用者所得のウエートは、これは構造的に高まってきておるわけでございます。つまり、給与所得化が非常に進行しておる。税の面でもそうでございまして、たとえば事業主報酬制を選択した場合とか、あるいは家族従業員の所得というのは全部その給与所得者の中に入っているわけでございまして、事業所得というのはいわば法人税でいいますと純利益に該当する部分が出てまいります。したがいまして、経済の局面でこれは大きく伸びたり、あるいは伸びなかったり、過去でも経済の実勢がよかった時代には給与所得者の伸びよりも事業所得者の申告の伸びが当然ふえるわけでございます。したがいまして、現在のそういう経済局面と給与所得化が進んでいる構想的局面を両方勘案してその数字をお読み願いたいわけでございまして、それが捕捉率の差ということで結びつけられるのはちょっと誤った見方であるということでございます。
  511. 中村鋭一

    中村鋭一君 主税局長、そうおっしゃいますが、あなた自身も月給取りですよ、やっぱり心の中では、サラリーマンはつらいなと、完璧に把握されて税金をあなたも納めていらっしゃる、そう思っているんじゃないですか。そして、みずから省みて、大蔵省が捕捉率にばらつきがあるということはお認めになってもいいんじゃないですか。
  512. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 申告所得者の所得の捕捉率が、いわゆる源泉徴収で課税を受けております給与所得者に比べまして問題があるという世の中の実感、それからそういう不公平感があることは事実でございますし、私どもも、国税庁は限られた人力でもって懸命の努力をいたしておりますけれども、捕捉率一〇〇%ということを申し上げる気持ちは毛頭ございません。であればこそ、税制調査会の中に申告納税制度の特別の部会をつくっていただきまして、制度面でも、所得の捕捉といいますか、申告水準を向上させるためにどういった方策が必要なのかという検討をしてもらっているわけでございます。  先ほど申しましたのは、私どもの税収見積もりのその開差が捕捉率の差であるということは間違いであるということを申し上げただけでございます。
  513. 中村鋭一

    中村鋭一君 はい、わかりました。  私は、これは資料として提示しただけでございますから、その点の乖離を御指摘なさるのはそれは御自由でございますが、しかしその意味においては十分に局長にもおわかりいただけたと思います。  これは国税の調査で、一億円を超すマンションが売り出されたりしておるが、それからまた一千万円以上する高級車を買った人もたくさんいるが、その四割近くが所得五百万円未満か無申告という実態が国税庁のサンプル調査でわかったということでございますが、この調査の結果をお示し願います。
  514. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 国税庁では、高級乗用車、高級マンションといった報道されましたものに限らず、高級高額資産と申しますか、そういうものにつきましては、取得状況を把握することに努めておるわけでございます。また、そういう資料、情報を通じまして、その裏にございます所得形成の過程を把握するということに努力をしておるわけでございます。  新聞報道されましたのは、高級乗用車についてだけ申しますと、東京都区内で一千万円以上の乗用車を取得した人五十人について調査をしたわけでございます。そういたしますと、相当高額な所得申告をしておられる方ももちろんございますけれども、五百万円未満の申告が三十数%あったという結果が出ておるわけでございまして、私ども、こういう横並びに申告水準を並べてみまして、確かに今後これを一つ考え方の参考として所得の解明に当たっていきたい、こう思っておるわけでございます。
  515. 中村鋭一

    中村鋭一君 私から言わせれば、いまごろ何の調査をやっているんだと、そんなものいまごろわかるのは遅いわけで、世間の人は、大きな車に乗ったり、億ション買っている人は、本当にその億ション買っているだけの所得があると思っている人は私は少ないと思いますよ。  ここに雑誌がございます。これは「フォーカス」ですが、この二月十八日号には、新宿のデート喫茶の女性がこういうことを言っているんですね。真樹ちゃん二十一歳、「ポルノビデオの仕事がない時はこっちに出てる。月収は三百万位。そのうち二百九十万は遊びに使っちゃうわね。洋服、お酒、それとホストクラブ」、こう言っております。それからサチコさんは、借金返しに「毎日五万ずつ返してる。」と、こう言っているんですよ。「あと一週間位で終るの。」のりこちゃんは、二十一歳のお嬢さんでございますが、「今、デートするお客サンは多くて一日六人。趣味は海外旅行と貯金かな。」
  516. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 中村君、大事なところで時間が参りました。
  517. 中村鋭一

    中村鋭一君 「この四カ月で八百万貯めたのよ。」と、こう言っておりますが、こういう人たちを、雑誌でこれ言っているんですからね、きっちりと捕捉をしていただきたい。そのことについて最後に大蔵大臣の御見解をお伺いいたしまして、質問を終わります。まことに残念でございます。これからまだまだいい質問が用意してあったんです。本人が証言しているんですから、雑誌で。
  518. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 先ほどの御答弁でも申し上げましたが、高級資産の資料収集というのは従来からやっておるわけでございまして、それを横並びのかっこうでマスコミが大きく取り上げたのが近来例がなかったということでございます。  それから、いまのお示しのような業種で、サー ビス業務——サービス業務と申しますか、そういう仕事に従事している女性の所得の把握の問題でございます。マスコミ情報も含めまして、各種の資料、情報をできるだけ収集して、課税の充実に努めておるところでございます。これらの女性は移動が激しいということもありまして、率直に申して実態の把握になかなか苦労しておるところでございますけれども、土地、建物など資産を取得するとか飲食店を開業するとか、そういうような場合には、取得資金とか開業資金を把握して、所得形成の過程を追跡して課税をするということもやっておりますし、また所得税法上ホステス等につきましては源泉徴収の制度があるわけでございますから、源泉徴収の充実ということにも今後とも努力していきたいと思っておるわけでございます。
  519. 中村鋭一

    中村鋭一君 大蔵大臣、ひとつ不平等税制について一言御見解を。
  520. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 中村委員のお話は私も理解できるような気がいたしました。
  521. 中村鋭一

    中村鋭一君 終わります。(拍手)
  522. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で中村鋭一君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  523. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、美濃部亮吉君の一般質疑を行います。美濃部君。
  524. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 私は日銀総裁にお伺いいたします。大変遅く御足労願いまして、ありがとうございました。  最初に、日本銀行は政治的、社会的役割りと申しましょうか、責任と申しましょうか、その最大なものは何であるかというふうにお考えでございますか。
  525. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 日本銀行の職能は日本銀行法に書いてございまするが、主たる職能は、金融の調節、通貨の調節、信用秩序の維持ということでございますが、私どもそういう、それぞれ重要な仕事でございますが、なかんずく通貨の調節、つまり通貨価値の安定ということが本当の大きな職能であるというふうに思っております。
  526. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 私も、お話のように貨幣価値、通貨の価値を守るということが一番大切な役割りではないか。それが国民及び日本の経済の運営について、それを安定せしめる上に非常に力があると。その点において通貨価値を守るということが一番必要なんじゃないか、そう思っておりますが、大体正しいとお考えですか。
  527. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 通貨価値の安定や経済成長、あるいは経済の安定の基礎であるというふうに思っております。
  528. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 そうして、それが貨幣価値を安定させるということがいかに重要であるかということは、昭和以来、多くの人々が——余り多くはないかもしれませんけれども、数人の人々がそのために命を落とした。つまり、井上準之助氏は貨幣価値を安定させるために金解禁、つまり金の価値に通貨の価値をリンクさせるということを実行いたしまして、これは失敗に終わったと言うことができるかもしれませんけれども、井上さんの貨幣価値を安定させるという気持ちは非常に正しかったと思います。そして昭和六年でございますか、暗殺された。それから高橋是清さんも、軍部の要求に対して公債の制限、限界というものを固守して、そして軍部の要求に応じなかった。その結果として二・二六事件のときにやはり暗殺された。  それから、これはそういう政治家ではございませんけれども、私の恩師の大内先生が、戦争直後、昭和二十年だと思いますけれども、澁澤さんが日銀総裁から大蔵大臣になられましたときに、「大蔵大臣に与う」という有名なラジオの放送をなさいました。それはやはり軍需産業に対して終戦のために起こった損失を政府は補償すべきではない、それを補償したならば大変な借金になって公債を発行しなければならず、そのためにインフレーションが起こるということを切々として訴えられたわけでございます。  しかしながら、残念ながらこの三人の方々の命を的にしてか、あるいは痛切なる言葉にもかかわらず、すべての場合においてインフレーションがずっと進行をして、そうして塗炭の苦しみを国民に与えたということになっております。総裁はこういう方々の努力をどうお考えになるでしょうか。
  529. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 二人とも、あるいは大内さんも教えて三人になられるわけでございます。井上準之助さん並びに高橋是清蔵相のお二人のなすったことの評価は、歴史的な背景もいろいろございまするので、その評価についてはいろいろの説があるわけでございまするが、私といたしましては大内さんも含めてお三人いずれも信念を守ってその行動をなすったということは非常にりっぱだというふうに思っております。
  530. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 大内先生のラジオにおいては、「澁澤君、蛮勇をふるってくれたまえ」という有名な言葉を吐かれました。いま私は日本の通貨は非常な危機にある、インフレーションになるおそれが多分にある。その際に、通貨の番人である日本銀行総裁に蛮勇をふるってこれを押しとどめてほしいというふうにお願いする次第でございます。  そうして、私は諸悪の根源と申しましょうか、この危機の根源は累増する国債にある、そういうふうに思っております。国債の残高、発行残高でございますが、これは政府といいますか、政府の計算でございますが、これは五十八年に百十兆円になりまして、それから六十三年、六十四年までふえ続けて百四十四兆円になり、その後やや減ると。これは建設債と赤字債と両方合わせておりますけれども、私は公債というものは赤字債と建設債と違いはないというふうに考えておりますので、これを合計して申す次第でございます。  五十八年の百十兆円という額は、国民総生産に対するパーセンテージの四一%になりますし、通貨の発行高の一・三%になるという巨額なものでございます。総裁はこういう公債の残額がふえているということは異常なふえ方であるというふうにお考えになりませんか。
  531. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 異常であるかどうかはこれは判断の基準はいろいろあると思いまするけれども、財政再建が叫ばれるゆえんである財政の赤字が続いておるということにつきましては、私ども通貨価値の維持を職能とする者にとりましては重大なる事実であるというふうに認識しております。
  532. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 公債の残高が百兆円も超えるということから起こる通貨の膨脹の危険性ですね。これは、公債というものは、いまは日銀の直接引き受けではございません。そうして、民間のふところに入って、そうして一年間はたしか日銀は買えないということになっております。それでありますから、昔のように、戦時中のように公債の発行が直ちに通貨の膨張というものとは連結いたしませんけれども、一年の後にはやはり公債は日本銀行に売られる。そうして、それが通貨に変わって流通する、そういう可能性が非常に多いと思います。そうして、そういう意味において景気が少し上昇し出す、そうして資金の需要がだんだん旺盛になる。そうして財政の方はいまのような状態でありますから、財政からは資金が余り出ないということになりますと、私は、この民間に滞留している公債が通貨に変わるという可能性が非常にふえるのではないだろうか。その点におきましては、たとえば五十七年の平均の消費者物価指数は二・七%でございます。これが新聞やなんかは低成長に伴って物価が安定していると申しますけれども、私はこれは不景気によってもっと物価が下がるべきものである。それはこれだけ深刻な不景気のもとにおいては消費者物価はもっともっと下がっていいわけだ。それにもかかわらず二・七%の上昇があるということは、すでにインフレ的な傾向があらわれている。下がるべき物価をこれだけ押し上げているということではないかと思います。  そうしてその逆の問題といたしまして、日本銀行券の発行高は、五十七年に五十六年に比べまし て六・八%、およそ七%ふえている。さらにマネーサプライ、つまり、預金貨幣も入れました通貨といいますか、通貨及び預金貨幣は九・二%ふえている。これは商品の流通量に比べて高過ぎる流通量だ。そこにこういうインフレ的な傾向があらわれて、そうして下がるべき物価を下げないで、二・何%にとめておいたというふうに考えるんでございますが、総裁どういう御意見でございましょうか。
  533. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 消費者物価は昨年、暦年中の平均が二・七%上がりました。ただ、この中で公共料金あるいは私立学校の授業料でございますか、そういうような公共料金的なものの上がり方が寄与率で〇・八五でございますか、あったわけでございまして、これは前年からの物価の影響がそこへ出てきているというものでございまするので、二・七%そのまま上がったというわけではございません。ただ、お話のございまするように、消費者物価が二・何%ではあっても、やっぱり上がるということは、この不況の折からもう少し、もっとインフレ率が低い方が望ましいことは当然でございます。私ども通貨価値の安定と申しまするのは、要するに物価のことでございまするから、物価を上げないようにということは常に頭にあるわけでございます。  私どもの金融調節、金融政策の一番対象になりまするのはやはり卸売物価の方でございまして、卸売物価の方は暦年、昨年中は一・八%でございますか、上昇でございました。ただ、円安になりましたものですから、円安の分を差し引きますと、差し引いた純粋の物価はマイナス〇・四でございますかということで、ほとんど横ばいであったというふうに思います。とは申しましても、消費者物価の方を全然無視するわけではございません。これももっと安定することが望ましいことは当然でございます。  それと、マネーサプライとの関係の御質問がございました。  マネーサプライにつきましてはオイルショック以降、私どもマネーサプライの管理ということを非常に重要視してきておるわけでございます。第一次のオイルショックのときにはマネーサプライのふえ方がちょっと多過ぎまして、そういう経験にもかんがみまして、私ども最近はマネーサプライの管理ということを非常に重視しておるわけでございます。  マネーサプライが昨年平均で九%ふえたということでございまするが、実は昨年の四半期をずっと通算してまいりますると、第一・四半期は一〇%の増加でございました。第二・四半期と第三・四半期は九%。第四・四半期になりまして八%台になりました。年がかわりましてからは、最近は七%台ということになっております。  そういうことで、このマネーサプライが、こういう経済環境の中で余り大きくふえないようにというのは、私ども十分管理に力を注いでおるつもりでございます。  それでも多過ぎるのではないかという点でございまするが、経済成長が、名目成長率が五%前後というときに七%のマネーサプライが適当であるかどうかという一つの問題がございます。ただ最近のように、景気の悪いときはどうしても通貨の回転率が低くなるものでございまするから、まあこれは数字的に何%がいいということがはじけないわけでございますが、物価ともにらみ合わせながら、マネーサプライの管理についてはこれからも十分に注意してまいるつもりでおります。
  534. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 それはそれといたしまして、ただいま問題になっている公定歩合の引き下げでございますが、私は、限度以上の公定歩合の引き下げはインフレに通ずると思います。日銀総裁がんばっておられるようでございますけれども、蛮勇をふるって、必要以上の公定歩合の引き下げはやめるように全努力を傾けていただきたいとお願いをいたします。  それはお願いに終わりまして、それから次に、国債残高が百兆円あるいは百四十四兆円というふうにふえることによりまして、財政が非常に圧迫される。そうして、それが赤字を生んで、そうしてインフレを促進する要因になるということが考えられるんじゃないか。  それで、国債残高の増加によって国債費がどのくらいふえるかと申しますと、これは一つの計算でございますが、五十八年が八兆円、それが六十一年に十二兆——十三兆円になってしまう。そうして、財政がどうなるかということ。これも機械的な計算ですから実際とは大分違うと思いますけれども、機械的な計算によって、五十九年が四兆八千億円、六十年が六兆四千億円、六十一年が七兆六千億円、この計算もやはり政府側の計算でございます。  それで、こういうふうに公債の残高がふえればふえるほど国債費が多くなる。そうして国債費が多くなるということが財政を圧迫して赤字を拡大する。そうして、そのために結局は公債を発行せざるを得ない。そこで、また通貨の膨張が起こるという悪循環的傾向が起こるのではないか。それが私には一番恐ろしいというふうに思うんでございますけれども、総裁いかがでございましょうか。
  535. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 財政の赤字が続きますれば国債が残高がふえる、国債費がふえるのはいまお話しのとおりでございます。財政の赤字がなかなか減らない。その結果、民間資金需要も圧迫する、国債の償還に難渋する、金利が上がるという結果になるわけでございまして、そういう点につきましては、私どもマネーサプライを管理いたしまする場合に、マネーサプライ、要するに通貨総量をふやす要因というのは財政と民間信用の増加、対外関係はまた別にございまするけれども、この二つが大きなものでございます。そういう意味におきまして、財政面からのマネーサプライの増加要因というものがやっぱり一定限度でございませんと、マネーサプライの管理が困難になるという事情にございまするので、私どもの立場から申しましても、財政については財政再建をできるだけ早く実現していただきたいというふうに念願しておるわけでございます。
  536. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 さらに、赤字公債の累積というのは、財政の赤字を通じて通貨膨張につながるまたもう一つ別な面があると思うんです。それは累積した公債の償還の問題であって、累積すればするほど償還額、償還しなければならない額がふえる。これはあたりまえのことでございます。これは経済の見通しとかなんとかいうのが加わりませんからわりあいに正確な数字だと思いますが、五十八年が五兆二千億円、それが六十四年ころには十七兆六千億円になって、そうして七十年には二十一兆八千億円という巨額な償還が行われなければならない。もちろんそれは借りかえとかいろいろな方法によって償還されるでありましょうけれども、そういう借りかえその他がもちろん最大限に利用されるとして、それに残った額は一般会計の予算から繰り出さざるを得ない。そうして国債の償還に要する償還費と申しましょうか、これはもう使ってしまったと。それだから、五十八年から六十年まではとにかくまだ余裕金があって余裕金を出せるけれども、それ以後は一般会計の繰り出し以外にはない。その繰り出しは六十二年に三兆七千三百億円、それから六十四年に五兆六千億円、それから六十八年に六兆八千億円、それから七十年に五兆三千億円というふうに相当巨額なものが、つまり累積した赤字を償還することからも生じてくるというふうに思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  537. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 国債の償還の計数について私、詳しいことは存じませんのでございまするが、国債の償還期が到来するときの償還資源をどうするかというのは財政再建に関連して一番大きな問題であろうというふうに思います。私どもはそれが金融面にどういうふうに影響が出てくるかということに一番関心があるわけでございまして、いやしくも日本銀行の信用によってそれが賄われるということになりますると通貨の膨脹になり、インフレにつながるということでございまするので、そういうことの起きないように、先ほど のマネーサプライ並びに私どもの金融調節の面から申しましても、その点については十分注意してまいらなければならないというふうに考えております。
  538. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 蛮勇をふるって、そうならないように対策を講じていただきたいのでございますが、その対策がうまくいかないで、ずっといまのように堆積した国債それ自体が日銀に売られるということと、それから国債費の増加によって財政が赤字になるということと、それから償還の困難から来る赤字、そういうものがもし、このいまの状態がそのままであるというふうに仮定すると相当にふえて、財政の赤字が続いてという、そうして公債が発行されて、そうして通貨が膨張する。そういう状態になりまして、そうなりますと通貨の膨張が起こって、通貨の膨張がさらに財政の赤字を生む。それは支出がふえますから、名目的な支出がふえますから赤字がどうしてもふえる。そこでインフレーションの一番恐ろしい悪循環、僕は悪循環が起こった、インフレーションがいわゆる悪性インフレというやつであって、いまの状況のままに進むとなると、悪性インフレにまでいってしまうという可能性が非常に大きい。そうしてその根源は百兆円という、百兆円を超える異常な公債の堆積にある。そういうふうに考えるのでございますが、いかがでございましょうか。それは日銀さんが有効な対策を講じなくて、いまのままに進んだときの仮定でございますが。
  539. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 国債の償還あるいは国債費の問題、これは非常に将来の問題として大きな問題でございますが、私どもの全体のマネーサプライの管理、これが通貨の価値の安定にとって非常に必要なことであろうというふうに思います。そのために金利政策、その他あるいは金融の量的な調節、そういうものをいたさなければいけないわけでございます。その中で財政資金につきましては、日本もお話のように、過去に何遍もインフレを経験しておりました。先ほど高橋蔵相のお話がございましたけれども、実は昭和七年でございますか、八年でございますか、日本銀行が国債を引き受ける方式が始まったわけでございまして、それがだんだん高じて財政インフレになったわけでございます。そういう意味で、戦後のいまの財政法には、日本銀行の国債の引き受けが禁止されております。日本銀行の通貨信用によって財政資金の需要を賄うということが禁止されておるわけでございまして、これはその法律の精神に基づきまして、直接はもちろん禁止されておりますが、間接的にも日本銀行の信用によって財政需要を賄うということをしてはならないことであろうというふうに考えております。問題は、そういうふうな借りかえ等の将来の財政資金需要が起きてまいりましたときに、経済状況に応じまして民間資金需要も起きてくる。その民間資金需要をどうやって賄っていくか、財政の方に資金がみんな取られてしまうという危険もあるわけでございます。そのときのバランスをどういうふうにとるのかというのが私どもに与えられた非常にむずかしい問題でございます。いわゆるクラウディングアウトという危険は常にあるわけでございまして、そのときに財政資金と民間資金との調節をどうするのか。民間資金の需要ならば日本銀行の信用は出てもいいというわけではございません、もう金に色はついておりませんから。やはりインフレになるおそれがある。そのバランスをとることが非常にむずかしいことであり、また重要なことであろうというふうに思います。しかし、そういう事態になります前に、やはり財政面からの資金需要がそんなに大きくないという、つまり財政再建が実を結ぶということがやはり大事なことであろうというふうに考えておりますが、私どもの立場から申しますると、そういう意味でマネーサプライを管理する方法はいろいろございまするけれども、そういう点について十分意を用いてまいりたいというふうに考えております。
  540. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 大蔵大臣に伺いますが、私は、いまの日本銀行総裁との話で、つまりインフレが起こる、それがしかも悪性化すると。それは歴史の上においても百何兆円と、およそ国民総生産の半分に近い公債がたまっているというのはまことに異常な状態であって、これが諸悪の根源であって、これは何としてでもたまった国債をできるだけ早く何とかしなければならない。しかし、いまの計画ですと、先ほどの計算から——これは政府の計算ですけれども、百四十四兆円までまだまだふえていく、危険きわまりないと思うんです。  それで、私は私なりに、これは自民党の政府にお願いしてもとてもかなえていただける政策ではないと思いますけれども、私はこういう政策を講ずる以外にこの百兆円というたまりにたまった公債を短期間に何とかして返済して半分にでもするということはできないのではないであろうかと思うんです。  それで、第一は、景気をよくする、それによって税収がふえます。しかしながら、いま自民党政府がやろうと思っているような前倒しとかあるいは公定歩合の引き下げとか、そういう政策は一過性といいますか、一時的な政策であって、それによってさらに財政状態を悪くする。それは高度成長の教訓で、いままでの池田さん以来の高度成長によってこれだけ百兆円以上の公債がたまったんです。それの二の舞になるおそれがあるので、そういう人為的な、政治的な政策は使っちゃいかぬというふうに思うんです。  それでは、何によって景気上昇を実現するかと言えば、それは一般大衆の消費力をふやす以外にない。それには賃金を上げるということ以外にはない。そうして、それに対しまして、私は、賃金の凍結ということなどは全く逆な方向である。つまり一般の消費力の上昇によって購買力を上げていく、景気をよくするというのではなく、つまり資本を、何といいますか、財政の前倒しというふうなことで一過性の計画を立てるべきではないと思うんです。  それから第二には、補助金が十四兆七千億円あります。これを思い切って減らすということ。これは臨調もそう言っておられますけれども、これは半分に減らせば七兆円浮きます。  それからもう一つは、これは自民党の政府には一番困ることですけれども、資本課税をする、財産に、つまり金持ちですね、金持ちに課税をする。それにはいろいろ方法がありますけれども一つ例を申しますと、土地課税をする。土地の、いまの所有地の時価の評価は七百九十一兆円ございます。それが帳簿価額ですね、法人、企業の……
  541. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 美濃部君、時間が参りました。
  542. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 はい。  百二十兆円なりその差額に課税するということが考えられると思うんです。大蔵大臣、どうお考えでしょうか。
  543. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 公債政策で最も注意しなければならない、それがいわゆる財政インフレにつながる、これは基本的な認識を私も等しくいたしております。だからこそ今日まで公債政策の出発の際からその歯どめをどうするかということが本院を初めとする国会の重要な論点であったと思うんであります。  ただ、公債政策そのものが果たしてきた役割りというものを考えますと、これはむしろ高度経済成長期には、わずかながらオリンピックの翌年の戦後最大の不況のときにございましたものの、やはりそれに期を画した時期としてはドルショックであり、そして一次、二次にわたる石油ショックであったと思うのであります。それが財政の対応力がそれだけあったということの評価にも私はつながると思います。それが五十四年で大体私は限界に達したんではないかと。それからいたしまして今日のような状態になったと。したがいまして、私どもといたしましては、いまの政策的な御提言がございましたが、まずはやっぱり公債の持つ、これは建設国債であれ、赤字国債であれ、先生御指摘の同質のものであるということには変わりございませんので、これを当面いかに減していくかということが政策選択の大きな課題であると いうふうに私も理解しております。  そこで、それをある意味において、借りかえの問題等時間をとりますので避けるといたしまして、基本的に日銀さんにお引き受けいただくというようなことは、これは財政法上禁止しておりますから、これをやっちゃいかぬ。そしてやはり念頭に置かなければならないのは、償還に当たってまた新たに赤字国債の借りかえとか、そういう手法をとってはならないということも念頭に置いておかなければならない。そこで、いま御指摘の一挙に半分とか、いろいろ返すという方法についての資本課税、なかんずく土地の再評価税というような問題でありますが、ここのところが一番見解を異にしますのは、やはりいわゆる土地増価税というものは、要するに売られたときに初めて価値を生むものであるというような問題点がございますだけに、この問題を私どもは念頭に置いて、これのいわゆる赤字国債を解消する手法としてこの土地再評価税というものを導入していこうという考えはいまございません。  それから一方、補助金を減らせという問題がございます。これを、いつも申しますように、法律に基づくものが約八割、それから社会保障と文教とそして公共事業と、これがちょうどまた八割になります。そして地方を通じて出すというくくり方をしてみるとまたこれが八割になると。それぞれこの補助金というものはその時代に即応して設定されてきた政策的意義というものを考えますときに、むやみやたらとこれを半分にしろというような議論は、なかなかこれは通る問題ではございません。しかしこれはやっぱり聖域なしで私どもは対応していかなきゃならぬ課題であると思っております。  それから賃金と物価論争というものについては、あるいは美濃部先生とは異なった賃金、物価の悪循環論というものもあるいはあり得るかもしらぬということを考えますときに、そこに苦しいながら、衆知を集めながら基本的には公債政策というもの、公債依存度をとにもかくにも減していくということを念頭に置いて、私は財政運営の方でございます、日銀の方はこれは政治的な中立のもとにおいてマネーサプライあるいは金利問題等を御担当になるわけでございますが、財政を担当する者としてはまずはやはり基本的には公債依存体質からの脱却を図る営々たる努力を衆知を集めてやっていくということに尽きるではなかろうかという考え方でございます。
  544. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 言いたいことは山ほどありますけれども、これで終わらせていただきます。
  545. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で美濃部亮吉君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  546. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、野末陳平君の一般質疑を行います。野末君。
  547. 野末陳平

    野末陳平君 私は、大蔵大臣には使途不明金、それからマル優の廃止などについて、それから行管庁長官と官房長官には行革関連で質問したいと思います。  まず、特殊法人の問題ですけれども、一年前のこの委員会でも私苦言を呈したんですけれども、それに関連しまして、特殊法人の役員というのがかなり高齢化しているようでして、中には八十歳以上の御老体という方もいらっしゃるんで、どことどこに何歳の方がいらっしゃるか、まずそれを。
  548. 中村徹

    説明員中村徹君) お答え申し上げます。  八十歳以上の方は二人いらっしゃるわけでございますが、日本自動車ターミナル株式会社の社長さんと、日本航空株式会社の会長さんでございます。
  549. 野末陳平

    野末陳平君 その方は、聞くところによると、八十三歳と八十四歳であると。それから七十九歳の役員も、あるいは七十七歳の役員さんもかなりいらっしゃるようですが、それはどことどこですか。
  550. 中村徹

    説明員中村徹君) 七十七歳以上の方は先ほどのお二人を除いて四人いらっしゃいまして、私立学校教職員共済組合の理事長、放送大学学園の理事長、日本私学振興財団の理事長、それから国際電信電話株式会社の会長、以上四名でございます。
  551. 野末陳平

    野末陳平君 御老体でがんばっていらっしゃるのは敬意を表しますが、それにしてもしかし老齢化が過ぎるんじゃないかと、そう常識的に思われますね。  そこで特殊法人の役員、閣議決定で年齢制限というものが決められているはずなんですね。それはどういうふうになっていますか。
  552. 中村徹

    説明員中村徹君) 高齢者の問題につきましては、原則として理事クラスで六十五歳、それから総裁、副総裁クラスでは同じく原則として七十歳に達するまでというのが閣議決定の内容になっております。
  553. 野末陳平

    野末陳平君 その原則としてというところがあいまいなわけでしょうけれども、それにしても、そういう閣議決定がありながら、この年齢制限をオーバーしている特殊法人の役員さんというのがかなりいらっしゃるようで、全特殊法人の中でどのくらいいらっしゃるんですかね、失礼ながら。
  554. 中村徹

    説明員中村徹君) 全常勤役員七百十七名おりますけれども、そのうち二十三名でございます。約三%でございます。
  555. 野末陳平

    野末陳平君 率で言えば三%と少ないようですが、それにしても閣議決定を超えてこういう役員が老齢化してくるという理由を何となく考えますと、どうやらこの在任期間が長過ぎて、就任のときは若いんですけれども、若いといっても六十歳代で、ところが留任期間が長いうちにいつやら八十歳を超えてしまうと、こういうことだろうと思うんですね。そこで、この役員の長期留任を禁止する閣議決定もあるやに聞いておりますが、これはどういうふうに具体的になってますか。
  556. 中村徹

    説明員中村徹君) その前に、ただいま申し上げました高齢役員というのは必ずしも長期留任とは限らないというわけでございまして、たとえば先ほど申し上げました日本航空の会長さんというのは財界の大物であるとか、それから放送学園とかあるいは私立共済なんかの場合には、私学のたとえば学長、塾長を終えられた方とか、そうでないとなかなか組合なりその事業団の運営がうまくいかないというようなそれぞれの特殊事情がございまして、必ずしも長期留任とは直接の関連性はないというふうに考えております。  それから、長期留任につきましては、原則としてやはり理事クラス六年、総裁、副総裁クラス八年を限度とするという閣議決定がなされております。
  557. 野末陳平

    野末陳平君 そうしますと、ここでもあえてお伺いしたいんですが、まあ原則としてでしょうが六年とか八年とか、こういう閣議決定がありながら、これを上回ることたとえば長期留任十五年以上なんという方もかなりいらっしゃるようですが、十五年と決めてそれ以上任にいらっしゃる方はどのくらい、どこの法人ですか。
  558. 中村徹

    説明員中村徹君) 在任期間が十五年を超えます方は五人いらっしゃるわけでございますが、日本航空の社長さん、帝都交通営団の総裁、先ほど申し上げた日本自動車ターミナルの社長、それから国際電電の社長、それから動力炉・核燃料開発事業団の理事長でございます。
  559. 野末陳平

    野末陳平君 一概にこれをもっていけないときめつけるわけじゃないんですけれども、それぞれの事情もあるとは思うものの、特殊法人のことが行政改革のテーマとして大きく取り上げられている。そして、一方において閣議決定もこうありながら、そこで官房長官にお伺いするんですがね。閣議決定なんか全然これは無視されたも同然のような印象を受けますね。そうすると、閣議決定というのはもっと権威のある重いものだと私どもは思いますけれども、これでいいのでしょうかね。どういうふうに思われますか。
  560. 後藤田正晴

    ○国務大臣(後藤田正晴君) 野末さんの御質問の点は、まあしばしば国会でも御指摘があり、いわば古くて新しい問題でございます。内閣としては何度かそういった基準について、年齢の制限であ るとか、あるいはわたりは認めないとか、あるいはお役人の前歴の人と民間の出身の人は少なくとも半々ぐらいにすべきであるとかいった、みんなこう決めておるんですね。それに従いまして内閣としては交代のたびにそういう方針でやっているんです。しかしながら、やっぱり例外はまあどうしても出てこざるを得ない。先ほど参事官が言っておりました日本自動車ターミナルですか、こういった方であるともう民間の方からの御推薦をそのまま受け入れませんと、このターミナル自身が運営ができないといったような、そういった一つ一つすべて、いま年齢オーバーしている人とかわりあい長期になっている人については、全部個別の理由がございます。そこを、内閣の基本方針はそうだからといってばっさりやってしまうということも、それは不可能ではありませんけれども、かえってそれはマイナスになるのではないかということで、例外として認めております。  ただ、御質疑のように、それでは閣議了解なんて要らぬじゃないかという御疑問も出るかと思いますが、それはいま数字的に参事官から答えさせますが、毎年これは改善の跡がずっと見えておるということでございます。したがって、五十五年なら五十五年にはどのような状況だったと、今日はどのような状況になっておるんだということは、いまお答えさせますからお聞き取りをいただきたいと、かように思います。決してそのままに放置しているわけではありません。
  561. 中村徹

    説明員中村徹君) 高齢者の数でございますけれども、五十二年に実は閣議決定がなされたわけでございますが、五十三年の一月一日に五十名おられた高齢者の数がただいま二十三名になっております。これは五十八年の三月三十一日、本日現在でございます。それから長期留任者も、同じく五十三年の一月一日に七十七名おられた方が五十八年の三月三十一日で二十九名となっております。
  562. 野末陳平

    野末陳平君 確かに参事官お答えのとおりに改善されているということはわかります。ただ、一つ気になるのは、その例外とかあるいは個別の理由というものに余りにも気をとられますと、これが例の行政改革の総論は賛成だが各論は反対だということになってしまうわけですね。ですから、特殊法人でこういう調子ですと、これで行革が、臨調の答申の実行ができるのかどうかという不安を、これは当然国民が抱くであろうと、そう思うわけですから、これをたまたま例にしてなお一層今後改善をしてほしいと、こういうお願いをしておきます。  それから同じく特殊法人の問題ですけれども、去年のこの委員会で統合整理という問題について具体的に幾つか苦言を呈したわけですが、その後、今度は行管庁長官に聞いていただきたいと思いますけれども、去年の七月に、たとえば一例ですけれども、日本学校給食会と日本学校安全会が統合されて日本学校健康会になったと、これはいいことだと思いますが、さてこの結果、職員とか役員とか、とりあえずどれだけ減ったんでしょうか。
  563. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) お答え申し上げます。  昨年の七月二十六日に、お話しのように旧日本学校給食会と安全会が統合いたしまして日本学校健康会として発足したわけでございますが、まず役職員数につきましては安全会、給食会、旧の二つの法人につきましては、役員につきましては全体が十三人でございました。これが新しい健康会になりました場合八人にいたしたわけでございます。内訳といたしましては、常勤役員としまして七人であったものを五人にいたしております。それから非常勤の役員につきましては、六名を三名に減らしておる、合計いたしますと、十三人が八人というのが実情でございます。  それから予算につきましては、これは健康会につきましては本年度の運営費補助は十七億三千四百六十七万四千円でございます。五十七年度、旧の場合の合計が十七億三千二百三十三万一千円でございますから、運営費補助につきましては二百三十四万三千円の増でございます。これは主として定期昇給等に係るものでございまして、この運営費補助の若干の増はやむを得ないというふうに考えております。  それから災害共済給付事業の補助につきましては、五十七年度を先に申し上げますと、十九億七千八十八万三千円でございましたものを十九億二千三百五十三万八千円にいたしております。これはマイナス四千七百三十四万五千円でございますが、これはやはり教育活動における学校事故の割合というものの統計データから若干その割合が減ってきておるということから減額をいたしておるわけでございます。  そのような形で運営費補助、災害給付補助につきまして申し上げますれば、以上のようなとおりでございます。
  564. 野末陳平

    野末陳平君 統合してすぐですから、すぐそんなに大きな成果が上がるとは思いませんが、まずまずだと思いますが、ただ問題は補助金ですね、二つ統合した場合にふえているでしょう、ここの辺がよくわからないんですね。行政改革の一環としてこれは統合があれば、補助金などもいままでよりも減るんではないかと思うんで、これはどのくらいの額が、なぜふえたか、その辺の説明をお願いします。
  565. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) ただいまの先生のお話の運営費補助につきまして、二百三十四万三千円ふえた理由でございます。  まず一点といたしまして、役職員給与費につきましては、職員給与費の定期昇給分がございます。職員が二百数十人おりますので、その定期昇給分等を勘案いたしますと一千百七万八千円の増があるというのが一点でございます。  それから、管理運営諸費で三十万一千円の増がございます。これは旧安全会支部の借料の増でございます。  それから、事業費につきましては六百八十八万一千円の減を立てております。この六百八十八万一千円の減の内訳といたしましては、経費の節減その他を全体として五%行いまして、その点では二千三百八十八万一千円の減を行ったわけでございます。この点はせっかく努力したわけでございますが、この二千三百八十八万一千円の減をいたしますとともに、健康会として統合したゆえんのものとして児童生徒の健康保持増進という形でのやはり、たとえば児童生徒の疾病の問題、災害の問題と食事等のあり方の問題を総合的に研究する必要があるというふうなことで、新しく健康増進事業の特別調査研究を約二百万計上いたしました。  それから、なお学校給食にかかわる家庭と学校との連携についていろいろ指導することについての事業費を新たに一千五百万計上したわけでございます。そのような意味におきまして、節約を図るとともに、健康会としてふさわしい事業を考えるというふうなことで、結果として三角が六百八十八万一千円になったということでございます。  それから、さらに予備費につきましては、全体として二百一万九千円の減を立てたわけでございます。それで全体を合計いたしますと、役職員給与費等の一千百万が若干大きいものでございますから、減を立てましても二百四十七万九千円の増になるわけでございますが、収入増の十三万六千円を差し引きまして、結果といたしましては二百三十四万三千円の増が立つ、こういうふうな内容になっておるわけでございます。
  566. 野末陳平

    野末陳平君 だけど、あれでしょう、二つの団体の、二つの法人の合計をすると、もっとふえているわけですよね。だから、そうやって理屈を一つ一つ聞きますと、なるほど統合はするけれども、仕事もまた一方でふえるから予算もというのはわかりますが、それにしても行政改革というのは大体人も減るし、それから補助金も減るしというのが常識ですから、そういうわかりにくいような統合の形ばかりが続きますと、これ、結局何にもならないという気がしてくるわけです。  そこで、いまのがいけないというんじゃありませんで、行管庁長官にお願いしたいことは、今後いろいろなケースが出てくるという場合に、何か かにかいろいろと理屈をつけたりあるいは事情があって結果的にはいままでと少しも変わらない、そういうケースばかりになってしまいますと、結局国民が期待しているような行政改革の内容にならないわけですね。そうすると、これは何のために行革と騒ぐんだ、そういうことになってしまいますので、そういうことのないような方向で今後努力をしていただきたいと、そういうふうに思っているわけなんですね、行管庁長官
  567. 齋藤邦吉

    ○国務大臣(齋藤邦吉君) ただいまお述べになりました日本学校健康会の統合問題については、そういう事情にあるわけでございますが、これはもうお述べになりましたように、行政改革は行政の簡素効率化ということが目的でございます。そういうふうなことで、職員の数は現在のところいま日本学校健康会の例をもってすれば、そう大して減っておりませんが、長期的に見ますと、やっぱり類似機能の統合ということ、児童の健康を守っていくという、保持をするということの類似機能の統合ということは長期的に見ると私はやっぱり相当効果が出てくるんじゃないかと、こういうふうに考えております。しかし、私はこれで十分だとは申し上げるわけでもありませんで、今度臨調答申の方にも学校給食事業については事業の改革ということを取り上げておりますから、そういうふうなこと、これは最終的にはどういうふうにするかまだ決まっておりませんけれども、やっぱりその統合の際には事業の改革ということを伴いながら合理化を図っていく、そうしてやっぱり簡素効率な行政というものを築き上げていく、こういうふうに努力すべきじゃないかと思いますので、今後とも行政の合理化には努力していきたい、こんなふうに考えております。
  568. 野末陳平

    野末陳平君 長官、どうもありがとうございました。結構ですから。今度は大蔵大臣にやりますから。  大蔵大臣には、先ほど言いました企業の使途不明金なんですけれども、いつもこれが問題になるんですが、ひとつこの課税上の扱いについてきょうは質問したいと思うんですね。  現在、法人の使途不明金というのは、課税上はこれは利益に計上して法人税を払えばいいということで、あくまでも使い方について何の説明をする必要もないんだと、こういうことになっているだろうと思うんですが、大ざっぱに。そこで、この法人の使途不明金というのが去年あたりどのくらいの額で、一法人当たりどのくらいになっているのか、最近の傾向がどうなのか、その辺を簡単に説明してくださいますか。
  569. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) お答えいたします。  法人の使途不明金についてのお尋ねでございますけれども、私ども法人全体の使途不明金の統計は持っておりませんが、調査課所管法人、資本金一億円以上の法人でございますが、それの中で実地調査をいたしました四千二百社についての統計を持っております。それによりますと、昭和五十六事務年度の使途不明支出金の総額は三百八十七億円でございます。四千二百社のうち、約千社についてこういった使途不明支出があったものでございますが、その集計が三百八十七億円でございます。傾向といたしましては、五十四事務年度が三百二十一億円、五十五事務年度が三百三十四億円ということでございますので、ここ二、三年をとって見ますと若干ふえているという傾向でございます。  ただ、冒頭に申し上げましたように、これは調査をいたしました法人ということで、全体の法人百数十万件の中のほんの一部でございますので、全体の傾向を必ずしも示しているものとは判断いたしかねる面もございます。
  570. 野末陳平

    野末陳平君 まあ一部の調査でも三百億円台の使途不明金があるんで、全体ではかなりだろうという感じはしますね。  そこで、この使途不明金の使途ですけれども、当然これは不明なわけですから……。だけれども、この不明のままでほっておくわけにはいかないわけで、税務調査のときなどに当局もいろいろとわかる点があるだろうと思うんですが、さあ、この法人の使途不明金は大体推測されるにどのような使われ方をしているのがいままでのあれですか、結果ですか。
  571. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 三百八十七億円のうちで使途——どんな目的に使われているかということが大ざっぱに推測される部分がございます。その部分が約六十億円ございますが、その具体的な内訳といたしましては、たとえばリベートでございますとか手数料でございますとか、そういったものがそのうちの約十八億円、それから交際費に該当すると思われますのが十二億円、その他ということで私ども整理しておりますが、それが三十億円、まあこの中には労務対策費でありますとか、あるいは総会屋対策費であるとか、そういったものではないかというふうに推測されるものが含まれております。
  572. 野末陳平

    野末陳平君 中でもリベートとか、それからリベートとは全く違いますけれども、結果的に個人の所得に帰するような役員報酬のようなやみ賞与というか、それも当然あるわけですね。
  573. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) 役員賞与と見られるものもございます。
  574. 野末陳平

    野末陳平君 そこで、この使途不明金の中でも結果的に個人に流れているというお金は、これはまあその個人の所得ですから、本来そこで課税がなきゃおかしいわけですね。しかし、課税は実際にはなくて、使途不明金の名前もとですべて処理されている、法人税を払うことで免れている、こういうのが実態だと思うんですね。税務調査段階であるいは使途不明金を解明する段階で、当局がたとえばやみ賞与というようなことがわかった場合には、これは当然課税をしているわけですね。
  575. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) そのとおりでございます。
  576. 野末陳平

    野末陳平君 具体的に二、三の実例を金額的に示すことできますか。
  577. 大山綱明

    政府委員(大山綱明君) はっきりと賞与として社長なり役員に支出されたもの、こういったものはもう当然賞与ということで課税をいたしますが、私どもやはり真実の所得者を追求していくのが使命だと心得ておりまして、その解明に努力をいたしているのでございますが、一〇〇%これは役員にいったということが判断できない場合でも、たとえば例を申し上げますと、その使途不明の支出が代表者の個人の預金勘定から出ておる、そしてその代表者というのがその企業の株式をすべて保有しているといったような同族的な会社であります。そしてその代表者は経理、営業のすべての実権を掌握しているというような場合には、その使途不明支出金というのは代表者個人が費消したのではないかということを推認をいたしまして、推認をいたします場合にはこれはただそれだけの個人の預金口座から落ちているということだけではなくて、その他もろもろの客観的な状況証拠と申しますか、そういうものがあった上ででございますが、そういったケースにつきましては、代表者に対する賞与ということで課税をしている事例もございます。また同じようなケースで、やはり売り上げを除外した資金を代表者の預金口座に持っている。一方それが支出されていると同時に、他方で家屋を建てるとか、財産の増加があるとかいったようなケースが見られるわけでございますが、そういった場合に代表者の役員賞与ということで認定し、課税をしたケースもございます。数字的にちょっと把握をいたしておりませんので、そういった推認課税をしたものがどの程度になるか、ちょっとお答えいたします数字を持ち合わせておりません。
  578. 野末陳平

    野末陳平君 推認課税ですから、むちゃなことができるはずもないんですけれども、この使途不明金の問題は、要するにリベートであろうが、やみ賞与であろうがいいんですが、個人の所得に帰する部分がずいぶんあるんではないか。そうなると、そこは一種の税逃がれになっているわけですから、その辺がいわば税の不公平という、公平確保という点から見て非常に問題の性格を持っているんですね、このお金が。もともとこれを認めて いる以上、もちろんこれをなくすというわけには恐らくいかないと思いますけれども、認めている以上はいまのようにつかみがたいと、法人税を課して終わりだということで終わっておりますが、果たしてそのままでいいんだろうかと、こういうことなんですね。これはそのお金の使われた先がはっきりしない以上は、この使途不明金そのものに、この根っこのところに法人税とは別に課税をするということも考えなくてはいけないんじゃないかと、こういうふうに思うので、主税局の立場で使途不明金を今後どういうふうに課税面から見ていくのか、これを説明してください。
  579. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 使途不明金の制度上の問題でございますけれども、先ほど来国税庁が説明しておりますように、現行の制度では、使途がはっきりしない経費については損金性を否認して、一〇〇%課税しているわけでございますね。先進諸国を見ましても大体このやり方をやっておりまして、通常の税制の考え方としては、これが限界的な措置だと思います。ただ、これは委員御案内のとおり、特別の使途不明金に対する課税という制度が実はフランスにございます。考え方といたしましては、いまおっしゃいましたように、本来使途がはっきりしておれば、受け取った人は当然その所得に対して課税されておるわけですが、その課税を免れていると。その免れている部分を、支出した人の方が負担をするという考え方。同時に、そういう免れるようなことは、いわば税の秩序を乱したということで、そういう制裁的な意味。二つの意味でフランスはああいう制度をとっていると思うわけでございます。  ただ、その制度を見ますと、やっぱりそういうことをやろうと思いますと、企業なり納税義務者が一定のお金を支出する場合に、必ず税務当局に対してはその支出先を明らかにしなければならないという一般的な法的義務をまず課しておく必要がございます。それと同時に、フランスの場合は、特定の経費につきましては、つまり毎年一件ごとに経費の額と支出先を税務当局に届け出の義務がありまして、実はその義務違反に対して特別の税を課するという法的構成になっておるわけでございます。したがって、わが国の場合もそういう法的構成をとるかどうかということが一つございますが、その前提といたしまして、そもそもその企業なり納税義務者の帳簿記録がきちんとしておるという前提がまずないと、そういう制度をつくってもワークしない。  ところが、わが国の税法の場合、いま税調で議論してもらっておるわけでございますけれども一般的な帳簿記録の義務すらない。まずそれが前提になるわけでございますが、その上にそういう一般的な義務を課すると。これは課税の公平といる目的自体を追求する場合には、当然そのうらはらの関係として、納税義務者にいままで以上の重い義務を負担してもらわなければいかぬわけです。それと同時に、それの相対的な関係におきまして、税務当局の質問調査権限の範囲が実質的に拡大するわけでございます。したがいまして、その税の公平という一つの理念といいますか考え方と、税の公平という次元を離れました、わが国の取引社会の風土と申しますか、そういう税務当局の権限も拡大するし一般の企業なり個人の納税義務者の税務当局に対する義務負担も非常に重くなる。その辺のバランスを一体どう考えるのかという問題になると思うわけでございます。  したがいまして、いずれにしてもこれは究極的には世論の選択の問題ということにはなりますけれども、私どももいろいろ内部的には勉強はいたしておりますけれども、そういう単なる税の公平という議論のほかに、広範な社会的負担を伴う問題でもございますので、やはりよほど慎重に検討しなければならぬ問題が多い問題であるということもまた否定できないと思います。
  580. 野末陳平

    野末陳平君 その辺の事情はいずれ税調でも議論があるのだろうと思うんですけれども、大蔵大臣、私は使途不明金がいまのままでいいとは思えないので、これは一般の益金とみなして課税するということでなく、やはりペナルティー的な高い課税というものが必要になるのではないかなと、こういう気がしているわけです。  いまの答弁にフランスの例も出てきましたけれども、いずれにせよ、使途不明というのは税務調査段階で明らかにするよう求められたらばやはり明らかにすべきであって、もしそれができないならば高い課税に応じるとか、その程度までできるように今後していかなければいけないと思っているのですけれども、大臣の御意見をお聞きしたいと思います。
  581. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) わが国の使途不明金に対する税制上の対応の仕方というものを見ますと、先進国の例で比較してみますと、大体西ドイツと一緒の取り扱いと、こういうことになっております。観念的には私は、野末委員のおっしゃる意味は庶民感覚の中で非常にわかりやすい話だと思っております。  先ほど来主税局長からお話しいたしましたように、いわば使途不明金の場合は経費として認めないということで、一〇〇%課税の扱いとなっておりますので、したがって税としての限界的な措置であるので、これ以上の場合は言ってみれば罰則の範疇に入るということではないかというようなことと、それからいま一つは、基本的に非常にいろいろの技術的な問題等もございますので、だからやっぱり検討するに当たっては、非常に慎重な検討を要する課題であるというふうに私どもは理解しておるところでございます。今後とも慎重にこれは検討していかなきゃならぬ課題であるというふうな認識に立っております。
  582. 野末陳平

    野末陳平君 この使途不明金の流れた先も、いわば一種のアングラ的な、アングラマネーとかアングラ経済とかというところにつながりがあるんだろうと思いますけれども、さて、グリーンカードの三年凍結がきょう成立しましたけれども、それにつけても、マル優の問題で一時前大蔵大臣のときも廃止論がちらっと出てきたりしておりまして、このマル優の不正利用の実態について、極端な例はちらちら出ますけれども、どの程度一般的に不正利用が行われているのかという、その辺のことがさっぱりわからないわけですね。何かそれを示すような資料は当局にあるんですか。
  583. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 私ども、金融機関に対しまして、源泉所得税の調査指導をやっておるわけでございますけれども、その場合にはマル優の不正利用の是正というのが一つの大きな眼目になっておるわけでございます。  五十六事務年度の数字で申し上げますと、全金融機関の店舗の一〇%に相当いたします約三千八百件について調査指導をやったわけでございますが、調査指導の対象としたほとんどの店舗でマル優の不正事例が把握されております。この中には非課税限度を超過したというもののほか、架空名義や借名でマル優を利用しているというものも少なからず見つかっておるわけでございます。この三千八百件の調査指導の結果、不納付加算税、場合によりましては重加算税も含みますが、これら加算税を含めまして約九十億円を追徴しておるということでございます。
  584. 野末陳平

    野末陳平君 いまのは、当局の調べとしては、相当予想よりも多かったのか、それとも思ったより少なかったのか、その辺はどうなんでしょう。いまのは何しろ一〇%ですから、九十億という数字だけではその辺の感じがつかめませんけれども
  585. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 私どもは、この追徴税額ができれば少ない方が望ましいわけでございまして、三千八百件で九十億円というのは、比較する物差しがございませんけれども、かなりの追徴額であると考えております。
  586. 野末陳平

    野末陳平君 ということは、かなりの不正利用があるということになるわけでしょうけれども、さあその税額ですが、追徴された税金ですけれども、これはどこが負担するんですか。当然のこと、マル優の不正利用をしている預金者が負担をすべきものだけれども、現実の処置はどういうふうになっているんですか。
  587. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) これは源泉徴収すべき ものをしてなかったということでございますので、追徴は金融機関から行いますけれども、金融機関と預金者の関係では、預金者が金融機関に払うという場合もございましょうが、場合によりましては金融機関の負担になるということもあろうかと思います。
  588. 野末陳平

    野末陳平君 いずれにせよ、どちらが負担しようが、金融機関が立てかえてそのままにして預金者に黙っているとか、いろんなケースがあるにしても、最終的にはそれでマル優の正しい利用に戻ればいいとは思うんです。ただし、そういう不正利用の実態がどこの店舗にもあってまたかなり広範囲だということになりますと、いまの程度の資料でなくて、もうちょっときちっとしたデータがありませんと、今後マル優問題を議論する場合に、存続すべきか廃止すべきかという議論の場合にも非常に、もちろんこれだけで決めるわけじゃありませんけれども、不便なんです。  そこで、国税当局のマル優に関するデータはいま少しわかりましたが、同じく非課税の問題で、非課税貯蓄で郵便貯金がありますね。郵便貯金も、当然ながら不正利用というか、限度額オーバーというのがあるわけでして、今度は郵政省の立場から、郵便貯金の三百万円をオーバーした場合に、それがわかって、超過を通知してそれを減額させたと、こういうようなデータですね。これを、ここ一、二年でどうなっているか、それわかりますか。
  589. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) 郵便貯金の場合には、全国のどこの郵便局でも預け入れそれから払い戻しができるというシステムのために、預入の際の総額制限の確認につきましては、後方機関でございます地方貯金局で行っておりますけれども、この限度額をオーバーいたしましたものにつきましては、貯金法の規定によりまして先生御指摘のように減額をしていただくということで通知を差し上げております。そして減額をしていただいておりますけれども昭和五十五年度の制限超過件数が四万九千件で、金額五百九十億円、五十六年度が四万七千件、五百八十二億円となっております。
  590. 野末陳平

    野末陳平君 それ以前に比べてこれはどうなんですか、いまの数字は。
  591. 鴨光一郎

    政府委員(鴨光一郎君) それ以前の数字、昭和五十四年度が二万一千件、二百十二億円、五十三年度が二万件、二百二十一億円ございますけれども、御指摘のように五十五年度になりましてふえておりますのは、御承知のように昭和五十五年度におきまして金利の天井感から郵便貯金が一時的ではございますけれども増加をしたということがございます。それから五十六年度につきましては、いわゆる純増加額の伸びが余り大きくはない状態でございます。五十五年度に比べましても落ち込んでいるわけでございますけれども、一面で、先ほど申しましたこの限度額の監査をいたします地方貯金局での監査の手段といたしまして、従来手作業でやっておりましたものを最近コンピューターを導入して逐次コンピューターによる回線に切りかえてきているということから、これが比較的効率的にかつなお正確に行えるようになりつつある。まだ全域ではございませんで、全国の約半数の地域でございますけれども、こういったことから五十五年度は貯金の総体的な増加、五十六年度におきましては伸び悩みでございますけれども、いま申しましたような手段的な効果といったことから件数、金額がふえてきているという状況だと判断をいたしております。
  592. 野末陳平

    野末陳平君 つまり、いまの数字も、郵便貯金は三百万円まででその利子には税金がかからないと、こういうことになっていて、マル優と横並びなわけですね。しかし、郵便貯金は実は制限額を超過したようなケースもずいぶんあると。郵政省が一応減額通知を出して減額措置をとった部分が一年で六百億円近いということですよね。そうすると、これと、それからマル優の方はここまで具体的なところが出ないと思いますが、いずれにしても、郵貯の場合でもこれが全部の数字かどうかは疑わしい、まだあるんじゃないかという気もするので、今後オンラインになればますますこれがふえるような気もするし、またこれは減るかもしれない。この辺はわかりません。いずれにせよ、問題は、マル優と、それから郵便貯金と、ほかに国債の特別マル優もありますけれども、あれはそんなにむちゃな不正利用というか適正ならざる利用はないような気もするのですね。  大蔵大臣、このマル優、郵貯、どちらをも三百万を超えて預貯金をし、利息の課税を逃れているという、この辺がやっぱりきちっと資料としてできるだけ実態に近い数字としてわかることがいま一番大事じゃないか、こういうふうに思うんです。郵政省に比べてマル優の利用状況の方は国税庁の資料が若干劣るという気がしますので、今後ともマル優の利用状況のための調査を、銀行の、金融機関の源泉監査のときについでにやるというのじゃなくて、マル優そのものを調査するという姿勢でもっとしっかりした資料をつくるべきじゃないかと思うんですけれども、どんなものですか。つくれれば、できだけ早く具体的な資料をお示し願いたいと思うのです。
  593. 角晨一郎

    政府委員(角晨一郎君) 私どもが源泉所得税の調査でマル優の不正事例を把握するといいますのは、マル優の不正事例については、御承知のように本来の利子についての源泉徴収をしなければいけない。それがまた私ども調査の眼目でもあるわけでございます。全国三万八千余りの金融機関について調査をするわけでございますから、その事務量にも限りがございますので、年間約一割について調査指導をしておるということは先ほど申し上げたとおりでございまして、このマル優の不正事例の状況というものを源泉調査と離れた形で把握するということは私どもとしてはできかねるということでございます。
  594. 野末陳平

    野末陳平君 しかし、資料がないと今後マル優問題を議論する場合に一つ欠落する部分ができるような気がして残念だと思いますけれども、できるだけわかる範囲で資料をまとめてもらいたいと思うのですね。  最後に、大蔵大臣にお聞きします。減税ですけれども、与野党の合意ができておりますから、総理も減税をやるとおっしゃっていますけれども、赤字国債には頼らないで、しかも景気浮揚に役立つような大幅なと、こういうふうになりますと、どうしても一兆円ぐらい、あるいはそれ以上と、こういう期待をする向きも出てきますね。しかし、現実にいまの財政状況でそんな減税ができるはずがないわけですね。そこで、大臣もきっと財源にこれからいろいろと苦心をなさるのでしょうけれども、その財源が本来は歳出カットによるものであれば一番いいわけです。しかし、それができそうもないと、何となく増税と引きかえの減税なんということだって出てくるかもしれない。それは非常に意味のない減税になりますね。そこまでして減税すべきかどうかむずかしいところですが、もうやると決めた以上、そういうこともあるかもしれない。  そこで、たまたまいまマル優が出ましたから大蔵大臣の御所見を伺っておきますけれども、その減税財源にマル優の一部廃止、一部廃止ということは要するに限度額を引き下げるなりその他いろいろ工夫はあるかもしれませんが、このマル優をいじることによって財源を見つけ減税に回したらどうかという考え方もあるのですね。これについて大臣がどうお考えか、それを最後にして質問をやめます。
  595. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) このマル優をどうするかと、こういう問題でございますが、種々議論があることは私どもも承知しております。したがって、いまマル優を廃止するということは検討を命じたことも、また指示されたこともございませんが、税調で御審議いただくに当たっては廃止するとか、そのまま残すとか、そういうあらゆる予見を与えないで、そして御審議をしていただこうと、こういうふうに考えております。ただ、いま御指摘のありましたように、そういう審議の際に言ってみればデータが不足しているんじゃないかと、こういう御指摘ですが、それについては非常 に困難な問題でございますものの、今日までいわば把握したものでもって全体を推しはかるということは困難にいたしましても、できるだけいわゆる税調の御審議に際してのデータはいろんな角度から整えて差し上げなければならない問題であるというふうに考えております。
  596. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上、野末陳平君の質疑をもって一般質疑は全部終了いたしました。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時二十一分散会