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1983-03-23 第98回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十三日(水曜日)    午前十時三十四分開会     ─────────────    委員異動  二月十四日     辞任         補欠選任      中尾 辰義君     小平 芳平君  二月十五日     辞任         補欠選任      小平 芳平君     中尾 辰義君      宮本 顕治君     近藤 忠孝君  二月十六日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     宮本 顕治君  三月二日     辞任         補欠選任      寺田 熊雄君     丸谷 金保君  三月三日     辞任         補欠選任      丸谷 金保君     寺田 熊雄君  三月四日     辞任         補欠選任      宮本 顕治君     近藤 忠孝君  三月五日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     宮本 顕治君  三月二十二日     辞任         補欠選任      小谷  守君     丸谷 金保君      宮本 顕治君     近藤 忠孝君  三月二十三日     辞任         補欠選任      丸谷 金保君     小谷  守君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 一弘君     理 事                 名尾 良孝君                 真鍋 賢二君                 寺田 熊雄君                 中尾 辰義君     委 員                 臼井 荘一君                 土屋 義彦君                 中山 太郎君                 八木 一郎君                 小谷  守君                 近藤 忠孝君                 中山 千夏君    国務大臣        法 務 大 臣  秦野  章君    政府委員        法務政務次官   円山 雅也君        法務大臣官房長  根岸 重治君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       勝見 嘉美君        最高裁判所事務        総局総務局長   山口  繁君        最高裁判所事務        総局人事局長   大西 勝也君        最高裁判所事務        総局経理局長   原田 直郎君        最高裁判所事務        総局民事局長兼        最高裁判所事務        総局行政局長   川嵜 義徳君        最高裁判所事務        総局刑事局長   小野 幹雄君        最高裁判所事務        総局家庭局長   栗原平八郎君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (法務行政基本方針に関する件)  (派遣委員報告に関する件) ○昭和五十八年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和五十八年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (裁判所所管)     ─────────────
  2. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十二日、宮本顕治君が委員辞任され、その補欠として近藤忠孝君が選任されました。     ─────────────
  3. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が二名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事寺田熊雄君及び中尾辰義君を指名いたします。     ─────────────
  5. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 検察及び裁判運営等に関する調査議題といたします。  法務行政基本方針について、秦野法務大臣からその所信を聴取いたします。秦野法務大臣
  6. 秦野章

    国務大臣秦野章君) 委員各位には、平素から法務行政運営につき、格別の御尽力をいただき、厚く御礼を申し上げます。  この機会に、法務行政に関する所信一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。  昨年十二月、当委員会において就任のごあいさつをいたしました際にも申し述べたところでございますが、私は、法務行政使命は、法秩序維持国民権利保全にあると考えております。特に、内外の諸情勢がきわめて厳しいこの時期におきまして、民主主義を守り、国民生活の安定を確保するためには、国の法秩序が揺るぎなく確立され、国民権利がよく保全されていることが何よりも肝要であると存じます。私は、この使命の達成のために、今後とも全力を傾注し、国民の信頼と期待にこたえるよう、誠心誠意その職責を尽くしてまいりたいと存じます。  以下、私が考えております当面の施策について要点を申し上げます。  第一は、検察行政についてであります。  最近におけるわが国犯罪情勢は、全般的には平穏に推移しつつあると認められますものの、犯罪発生件数はここ数年来漸増の傾向を示し、内容にも、各種凶悪重大事犯、悪質な贈収賄事犯、大規模な脱税事犯が跡を絶たず、加えてコンピューター・システムを悪用する新たな形態の犯罪発生をみるなど、犯罪の態様はますます悪質巧妙化してまいっております。特に覚せい剤事犯が依然として増加し、その乱用者層一般国民に広く拡大しつつある上、覚せい剤薬理作用影響による殺傷事犯が続発しており、また、少年非行も逐年増加しつつ低年齢化及び悪質化の様相が一層顕著となり、過激派集団の動向にも予断を許さないものがあるなど、今後の推移には警戒を要するところが少なくないと存じます。  私は、このような事態に的確に対処するため、検察体制整備充実に十全の意を用いつつ、関係機関との緊密な連絡協調のもとに、厳正にして公平な検察権の行使に遺憾なきを期し、良好な治安の確保と法秩序維持に努めてまいる所存であります。  第二は、矯正及び更生保護行政についてであります。  犯罪者及び非行少年改善更生につきましては、刑務所、少年院等における施設内処遇保護観察等社会内処遇を一層充実強化するため、相互有機的連携を図る等その効果を高める措置を講じてまいる所存であります。  そのためには、まず施設内処遇につき広く国民理解を得るとともに、良識ある世論を摂取し、時代の要請にこたえ得る適切な処遇の実現に努め、他方社会内処遇につきましては、保護観察官による処遇活動の一層の充実を図るとともに、保護司との協働態勢強化し、また、処遇方法の開発、処遇多様化に努める一方、関係機関団体との連携をさらに緊密にし、一般国民理解協力を得つつ、現下情勢に即した有効、適切な更生保護活動を展開してまいりたいと考えております。  第三は、民事等行政についてであります。  一般民事行政事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大し、また、質的にも複雑多様化傾向にあります。これに対処するため、かねてから種々の方策を講じてきたところでありますが、今後とも人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織、機構合理化事務処理能率化省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民権利保全行政サービス向上に努めてまいる所存であります。  なお、民事関係の立法につきましては、中高層共同住宅増加に伴う区分所有建物をめぐる諸問題を解決するため、その諸方策について、かねてから法制審議会において審議が行われてまいりましたが、このたびその答申を得ましたので、その趣旨に沿って今国会に改正法律案を提出しておりますが、十分な審議を経て成立に至るよう念願をしている次第でございます。  次に、人権擁護行政につきましては、本年が世界人権宣言採択三十五周年に当たることでもありますので、国民の間に正しい人権思想をより効果的に普及徹底させるため、各種広報手段による啓発を行うとともに、人権相談人権侵犯事件調査処理を通じて、正しい人権思想普及高揚に努めてまいる所存であります。また、いわゆる差別事象についても、関係省庁等と緊密な連絡をとりながら、積極的に啓発活動を続け、その根絶に寄与し、もって国民基本的人権の保障をより確かなものにしてまいりたいと考えております。  次に訟務行政につきましては、国の利害に関係のある争訟事件は、近時における複雑、多様化した社会情勢国民権利意識高揚を反映して、社会的、法律的に新たな問題を内包する事件増加しております。その結果いかんが国の政治、行政経済等の各分野に重大な影響を及ぼすものが少なくないので、今後とも事務処理体制充実強化を図り、この種事件の適正、円滑な処理に万全を期するよう努めてまいりたいと存じます。  第四は、出入国管理行政についてであります。  近年におけるわが国国際的地位向上国際交流拡大等に伴い、わが国出入国者数は逐年増加するとともに、在留外国人活動範囲拡大活動内容多様化にも著しいものがあり、加えて、昨年一月一日から難民認定事務が開始されるなど、出入国管理行政重要性はますます高まっております。  このような情勢の変化に的確に対処し、国際協調の一層の推進を図りつつ、わが国出入国管理行政に課せられた使命の遂行に努め、その実を上げたい所存であります。  最後に、法務省施設につきましては、昨年に引き続いて整備を促進し、事務処理適正化執務環境改善を図りたいと考えております。  以上、法務行政の当面の施策について所信一端を申し述べましたが、委員各位の御協力、御支援を得まして、重責を果たしたいと存じておる次第でございます。どうかよろしくお願いを申し上げます。
  7. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 以上をもちまして所信聴取は終了いたしました。     ─────────────
  8. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) この際、派遣委員報告に関する件についてお諮りいたします。  先般、当委員会が行いました検察及び裁判運営等に関する調査の一環として、最近における司法行政及び法務行政に関する実情調査のための委員派遣について、その報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  10. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 去る十五日、予算委員会から二十三日及び二十四日の二日間、昭和五十八年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算裁判所及び法務省所管について審査の委嘱がありました。  この際、同総予算裁判所所管議題といたします。  勝見最高裁判所事務総長から説明を求めます。
  11. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 昭和五十八年度裁判所所管予定経費要求額について、御説明申し上げます。  昭和五十八年度裁判所所管予定経費要求額の総額は、一千九百九十六億五千八十九万二千円でありまして、これを前年度補正後予算額一千九百六十一億七千七百五十七万九千円に比較いたしますと、差し引き三十四億七千三百三十一万三千円の増加となっております。これは、人件費において三十七億八千二百八十九万一千円、裁判費において二億五千八百四十八万円、司法行政事務を行うために必要な庁費等において七億四千十万四千円が増加し、施設費において十三億八百十六万二千円が減少した結果であります。  次に、昭和五十八年度予定経費要求額のうち、主な事項について御説明申し上げます。  まず、人的機構充実、すなわち増員であります。  特殊損害賠償事件民事執行法に基づく執行事件等の適正迅速な処理を図るため、判事七人、裁判所書記官五人、裁判所事務官三十四人、合計四十六人が増員となっております。他方定員削減計画に基づく昭和五十八年度削減分として裁判所事務官三十九人が減員されることになりますので、差し引き七人の定員増となるわけであります。  次は、司法体制強化に必要な経費であります。  裁判運営効率化及び近代化のため庁用図書図書館図書等裁判資料整備に要する経費として四億五千二百二十六万五千円、複写機計算機等裁判事務能率化器具整備に要する経費として三億五千百四十一万七千円、調停委員に支給する手当として四十四億一千百二十四万二千円、裁判費充実を図るため国選弁護人報酬に要する経費として二十一億九千六百五十七万三千円、証人、司法委員参与員等旅費として五億八千八百五十一万六千円を計上しております。  次は、裁判所施設整備等に必要な経費であります。  東京高等、地方、簡易裁判所合同庁舎の新営は五年計画で行われておりますが、その最終年度分工事費並びに新庁舎法廷等器具整備及び維持管理のための経費として百一億七千六百六十七万五千円、その他の裁判所庁舎の新営、増築等に必要な経費として四十億四千七百六万七千円を計上しております。  以上が、昭和五十八年度裁判所所管予定経費要求額の大要であります。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  12. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま最高裁事務総長から裁判所関係予算についての御説明をいただいたのでありますが、私ども、これは戦前からでありますが、裁判所予算行政官庁予算と比較いたしますと、事業面予算において全く比較にならないほど少額であるということを経験いたしております。判事書記官等職員待遇につきましては、名目的な給与面では戦前と比較いたしまして多少改善を見たように思うんでありますけれども、なお実質的な面では決して行政官庁と比較してふさわしい待遇を受けておるかどうか、必ずしもこれは疑問がないわけではありません。ことに最近に至りまして、予算編成に昨年はゼロシーリング、ことしはマイナスシーリングというように、予算増加を抑制する方策がとられております。事業官庁でありますと、事業費の不要なものを削る、また相互に融通し合うということが可能でありましょうけれども裁判所予算のように人件費が九割近い割合を占めるというような予算編成でありますと、ゼロシーリング、あるいはマイナスシーリングというような網をかぶせられた場合に、どのような手法で事業執行を従来以上に円滑に運用することができるような方策が立て得るのかどうか、また将来もマイナスシーリングというような抑制政策を受ける場合に、これを打開していくことが可能なのかどうか、一体しわ寄せはどこに来て、どうして全体を賄っているのか、その辺をよくわれわれが納得できるように御説明をいただきたいと思います。
  14. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 政府におかれましては、毎年このところ寺田委員仰せのようにゼロシーリング、あるいは来年度予算に関しましてはマイナス五%シーリングという予算編成に関する閣議了解というものをお出しになって、裁判所に対しましても協力要請をなさっておられます。  私ども裁判所といたしましては、委員案内のように、独立機関としての立場がございますので、その閣議了解事項協力要請なるものにつきましては、拘束されるものではないと、このようには考えるわけでございますが、何せ現下財政状況が厳しいということもございますし、またその限りにおいて裁判所もやはり一つの国家機関であるということもございますので、その限りにおいて財政的なある意味での制約というものを受けるのはやむを得ないかということも考えております。ただ、しかしながら、委員仰せのように、裁判所といたしましては人件費が八十数%を占める、大きな事業も持たない典型的な事務官庁でございます。そこで、昨年あるいはことしの予算編成につきましては、いろいろと裁判運営支障を生じないように、また先ほど事務総長が読み上げましたとおりに、東京高・地・簡裁の大きな工事も継続中でございますので、その辺のところもにらみ合わせながら慎重に対処してきたつもりでございます。  具体的に申し上げますと、昨年あるいはことし続けまして突出要求をいたした次第でございます。
  15. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 何要求をいたしたわけですか。
  16. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 突き出した要求をしたということでございます。いわゆるシーリングから突き出した要求をさせていただいたということでございます。
  17. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 現実の問題としまして、マイナスシーリングで五%削るというのは、やっぱりあなた方の予算編成で受け入れたわけでしょう。それは受け入れなかったわけですか。
  18. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) マイナス五%のシーリングというのは原則でございまして、例外と言っていいかどうかわかりませんが、ただしというただし書きがございまして、これだけはたとえば積み上げてもよろしいよ、あるいはこれは削減対象にはしませんよというふうな項目があるわけでございます。具体的に申し上げますと、裁判所に関しましては、人件費義務的経費の増、つまり職員昇給原資などを積み上げる、これは前年度にそのままその金額を積み上げてもよろしいということでございます。また裁判費、これについては削減対象にはいたしません。こういうふうなことが、わが方に引き直しますとそういうことになるわけでございますので、その辺のところも絡み合わせて考えて、結局のところ五%削減対象になりますのは、各省庁統一でございますけれども、いわゆる経常経費部門関係で五%の削減対象になるということでございます。
  19. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、経常経費の面では五%の削減を受け入れたわけですか。
  20. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) シーリングというのは、要するに要求上限枠という意味でございまして、具体的な経費というよりも、要するにその上限要求枠をつくる計算でございます。先ほど申しましたように、経常経費部門マイナス五%シーリングをわが方に引き当てますと、約四億ぐらいの数字が出てまいります。
  21. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そこで、その四億円という枠はあなた方は受け入れて、どこかの費目を削って出したんでしょうか。それともそれは枠であるからそれを受け入れず、どの費目も削らずに昨年度予算額というものを維持し得たというのか、その辺詳しくちょっと。
  22. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) より具体的に申し上げますと、先ほど申し上げましたように、人件費関係昇給原資の積み上げ、これは裁判所で申しますと約十八億ございます。片や司法行政関係経常経費部門での削減対象額としましては、約四億でございます。差し引きいたしまして十四億余りというものが前年度予算額に積み上げてもよろしいという枠でございます。つまり前年度予算額に十四億余りを積んだのが、裁判所としての要求上限枠ということがそのシーリングという意味でございます。
  23. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまの総長の御説明によると、三十億前後の増加を来しておるわけでしょう、全体として。人件費で三十七億だと、裁判費で二億だ、司法行政事務を行うために必要な庁費等において七億が増加しておると、施設費において十三億が減少したと、こういうことですね。そうすると人件費増員もあり、当然に増加を来しているでしょう、ベースアップは抑えられているわけだけれども。そこで、施設費の減少が十三億というところによると、結局、実質的には施設費を削っただけで、そのほかには被害はなかったというふうに承ってよろしいですか。
  24. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 確かに施設費関係で十三億前年度に比べまして減が立っております。ただ、この関係は、東京高・地・簡裁工事が五十四年度から始まりまして、来年度完工の年を迎える、五十八年度完工の年を迎えるわけでございます。一番最終年度に当たっているわけでございます。前年度工事費が約百八ございました。それが最終年度でございまして、それだけの、その百八億程度の時期は工事の最盛時期に当たっておったわけでございます。ところが、来年度を迎えますと、工事最終年度に当たりまして、それほどの金額が要らないということで、東京高・地・簡は後でまた申し上げる機会があるかとも思いますけれども、約九十三億でございます。したがって、東京高・地・簡だけで申し上げますと十五億ぐらいの減になります。ただしそのほかに、東京以外のその他の裁判所施設というものがございます。これが約一億強増加をいたしておりますので、差し引きいたしますと施設費では十三億の減と、こういうことに相なるわけでございます。
  25. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 結論において裁判所関係に関する限りマイナスシーリング恐るるに足らずと、こういうことになるのかな。つまりマイナスシーリングというような枠はかぶせられたけれども、あなた方の努力次第によってその枠は優に突破し得るのだと、したがって、裁判所予算編成においてさしたる障害にはならないということなんでしょうかね。その点どうですか。
  26. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 予算編成は、委員も十分御案内のとおりに、単年度編成されますので、私も乏しい経験ではございますけれども、端的に申し上げまして、毎年度毎年度何かさま変わりというものがあるような気がいたします。したがって、ただいま御審議いただいております五十八年度予算は、いま私るる御説明申し上げているような状況でございますが、さりとてそれでは来年は一体どうなるのか、五十九年度予算は一体どうなるのかということになりますと、これはまたこれから今後の作業にまつわけでございまして、定かな私ども見通しなどというものはとてもいまは持ち得ない状況ではございますけれども、いずれにいたしましても、裁判所といたしましては、内閣からの協力要請もございますし、それに対して先ほど申し上げましたように、拘束はされないという立場をとっておりますけれども財政状況の厳しさというもの、そして国の一機関である裁判所立場というものも考えながら、あれこれ練り上げていくわけでございます。  要するに、裁判運営支障の生じないように、これが私どもの最重点課題でございまして、この限りにおきましては、裁判所立場も十分に財政当局にも御説明申し上げますし、財政当局からもそのときそのときの財政事情というものも十分に承りながら調整し、意見の交換をしながら最終的に煮詰めていくと、こういうようなことでございます。  ここまでお話を発展さしてはいかがかと思いますけれども委員も御案内のとおりに、財政法の十八条、十九条あたりの規定もございます。この辺のところは私どももいつも念頭に置きながら対処しておるわけでございます。財政当局におかれてもそれは十分に御理解の上で私どもに対処していただいているものと、そのように確信をしている次第でございます。
  27. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなた方一生懸命やっていることはわかるけれども、それから大蔵省が何か理解がばかにあるような答弁のようだけれども、しかし一面また、私どもの聞いておるところでは、たとえば国選弁護料の額も据え置きであると、それから調停委員旅費日当の額も据え置きであるというように、あなた方の予算要求もその意味においては通らなかったわけでしょう。かなりそういう面では弁護士会の要望も強いし、調停委員の方の要望もあるわけですが、それが通っておらないというような面を見ると、余りあなた方の意にかなった予算編成でもないように見えるから、だからその辺のところをよく御説明いただきたいと思ったわけです。  だから、あなた方がそういうゼロシーリングであるとか、あるいはマイナスシーリングであるとかいうような枠をかぶせられても、あえて痛痒を感じないと、十分われわれの要求は通るんだというのか、やっぱりこれはかなりの圧迫材料ですというのか、その辺のところを端的に答えてもらいたいと、こう考えたわけです。
  28. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 委員のお話の中の国選、弁護人報酬の関係等につきましては、私ども改善を図りたいということで予算要求をいたしました。しかしながら、先ほど来申し上げておりますような厳しい財政状況下にある中で、特に人事院勧告の凍結というふうな、いわば未曾有の危機的な財政状況の中にあった中での予算編成作業ということで、国選弁護人報酬、あるいは証人の日当等につきましては、単価改定は私どもとしてはあきらめざるを得なかったという事情にございます。
  29. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは事務総長にちょっとよく説明してもらいたいんだけれども、一体マイナスシーリングとか、あるいはゼロシーリングというようなことは、裁判所予算編成で大して苦痛ではないわけですか。そんなことはもう意に介さずに予算編成が可能だと言われるのか、やっぱりそういうものは非常に窮屈な枠なんですと言うのか、その辺実際問題としてそういう事情をよくわれわれにわからせてもらいたいと、こう考えたわけです。
  30. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 予算編成につきましては、ただいま経理局長からるる御説明申し上げたとおりでございます。基本的には、繰り返しになりますけれども裁判所国家機関の一つでございます。当然財政という制約は受けざるを得ないという一面がございます。寺田委員御心配いただいておりますように、私どもはあくまでも裁判そのものが仕事の中身でございます。裁判運営に財政的な面からの支障があってはならないというふうに私どもは考えております。その面から、この予算編成につきまして、財政当局理解を得ながら国会で御審議いただいているわけでございますが、現在の逼迫した財政の状況下におきまして、裁判所が全然影響がないのかという御趣旨でありますれば、やはり先ほどから申し上げておりますように、国家機関の一つとして財政の影響を受けなざるを得ないというふうに私は考えております。しかし、あくまでも裁判運営が損なわれるようでは困るのでございまして、そのことがないように技術的にもまた額的にもわが方の経理当局が努力しておるつもりでおります。  今後とも、財政の好転を期待いたしたいわけでありますが、こういう状況下にあって、国会の御理解をいただきたいというふうに私どもは考えている次第でございます。
  31. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなた方非常に忠実なお役人として、国家の財政事情というものを重く見て、内閣の方針に大変忠実に順応していらっしゃるからそういう御答弁になるんでしょう。しようがないな。この程度にしておきましょう。  それから、先ほどちょっとお話があったけれども国選弁護料の問題ですね。これはやっぱりあなた方は増額要求はなさったわけですか。もしなさったとすると、どの程度のパーセンテージの上積みを大蔵当局に求めたんでしょうか。その点ちょっと。
  32. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 平均いたしまして五・五%アップ、金額にいたしまして約一億一千万ぐらいではなかったかと存じております。
  33. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 五・五%アップというあなた方の要求が、やはり人勧凍結という大義名分で抑えられてしまったと、こういうことでしょうか。
  34. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 国選弁護人報酬改善につきましては、委員十分に御案内のように、従来から裁判所といたしましては、国選弁護人制度というものが刑事裁判の手続の中に占めるウエートというものを十分頭に置きながら、累年改善を図ってきたのは、委員十分に御存じのところだと考えておりますが、先ほど来申し上げておりますような厳しい財政状況下の中にあるその改善要求といたしまして、私どもは平均五・五%アップを図りたいということでるる折衝いたしましたけれども、結局それは最終的には私どもの方があきらめざるを得なかったという事情でございます。今後ともしかしながら、この点は十分に重ねて努力は続けてまいりたいと、このように存じておる次第でございます。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは人勧凍結の影響と言われるが、人勧に右へならえという関係にあるのかどうか。もしもそういう考え方でいくとすると、五十八年度は人勧もこれは勧告どおり尊重かつ実施というのですから、それじゃ、これはどういうことになるんですかね、五十八年度の人勧は尊重して実施ということになると、五十八年度国選弁護料はもう予算編成が終わって上がってないから、それに右へならえで実際上なくなるわけですか。五十九年度には上がるという関係になるんですか。そうすると必ずしも人事院勧告とパラレルの関係にないことになるね。この点どういうことですかね。
  36. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 国選弁護人報酬の考え方につきましては、私どもは人事院勧告とパラレルの考え方には立っておりません。従来のデータをごらんいただいてもおわかりだと思いますが、人事院勧告のベースを上回る改善を従来図ってきておるところでございます。たとえば、要するに一年おくれになる関係になります。人事院勧告と連動いたしませんけれども、人事院勧告がいまたとえば五%なら五%上がったといたしますと、それがいろんな意味ではね返ってくるのは翌年度になるということになるわけでございます。
  37. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうも余り感心したことじゃないな。証人の旅費日当とか、調停委員旅費日当というのはどういう関係になりますか。
  38. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 調停委員の手当の関係でございますが、これは御案内だと思いますが、現在調停委員は非常勤の職員ということになっておりますので、これは人事院勧告の影響をもろに受ける。給与法のたしか二十二条でございましたか、その規定がございますので、調停委員手当につきましては人事院勧告の影響をそのまま受けるということでございます。
  39. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 証人の旅費日当は。
  40. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 証人の旅費日当につきましては、国選弁護人の報酬と同じように私ども考えて、常々改善を図りつつあるところでございますが、来年度、五十八年度予算につきましては、同様に厳しい状況下に置かれておりますので、訴訟に御協力いただく立場にあられる証人の方について、努力は重ねましたけれども、最終的にはあきらめざるを得なかったという事情にございます。どうぞ御理解を賜りたいと存じます。
  41. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは法務省の方では法律扶助の面は担当しておられますが、裁判所は決定で、貧困な人、訴訟費用を拠出できない人、そういう人に訴訟救助の決定をしておりますね。そして、国民の訴権をできるだけ守っていこうという立場をとっておられる。そこで、訴訟救助というのは現実にはどの程度の活用を見ておるのか、その辺ちょっと説明してください。
  42. 川嵜義徳

    最高裁判所長官代理者川嵜義徳君) 五十六年度の統計で申し上げますが、訴訟救助を付与した件数は簡易裁判所五十一件、地方裁判所七百一件、高等裁判所四十三件でございます。これは件数だけでありまして、実は一件の中に複数の当事者が入っておりますために、扶助を受けた人数としては、これのほぼ二倍くらいになるだろうというふうに思われます。  扶助の中身、救助を付与するやり方がいろいろございますけれども、訴訟手続費用の全部を救助するというのと、それから主として訴状に張る印紙だけを救助するというやり方が大体ありますが、その二つのやり方は、大まかに言いまして半分半分というような状況でございます。
  43. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 職員の充足状況、これは事務総長が人事局長、次長のころから、前の事務総長に対しても、私どもが速記官の問題で強く充足を求めてきたところでありますが、ちょうどいい機会ですから、一体裁判官以下職員はどの程度定員を充足しておるのか、ざっとおさらいをしてみたいわけです。ちょっと御説明いただきたいと思うのです。
  44. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) それでは裁判官以下主なものにつきまして申し上げたいと思います。  まず判事でございますが、これは例年でございますが、大体十二月一日現在できちっとした統計をとって、定員法の改正の資料等にも差し上げてあるわけでございますが、昭和五十七年の十二月一日現在で、判事が三十三名欠員でございますが、今回先ほど予算説明の中にもありましたように、七人増員をお願いしてございまして、それで合計四十名、そのほかに春までに定年、それから願免等によっておやめになる方がございまして、大体六十名前後四月に欠員になるのではないかというふうに考えておりますが、今度判事補から判事になります者が五十三名ございますのと、そのほか検事等からの転官が少数ございまして、四月の上旬で判事はほぼ埋まるというふうに考えていただいてよろしいかと思います。  それから判事補につきましては、先ほど申しました判事になる者を加えまして、やはり六十前後という数になるわけでございますが、これも現在三十五期の修習生で判事補を希望しております者が六十名ちょっとございますので、それでほぼ充足する。  それから簡易裁判所判事についてでございますが、これの方は昨年十二月現在で二十一名欠員がございまして、その後ずっと欠員がふえてまいります。こちらの方は寺田委員御承知のとおり、八月に裁判所法四十五条に基づくいわゆる特任簡裁判事の採用をいたします。これが一番大口でございますが、それが大体例年ここのところ三十人から四十人の間採っておりますが、簡易裁判所判事につきましては、夏採用いたしました暁でも若干の欠員が残ると、そういう予定でございます。  それから次に、裁判官以外の職員でございますが、裁判所書記官関係につきましては、これも十二月現在で百名ちょっとの欠員がございまして、その後春までにおやめになる方等で欠員がさらにふえてまいります。それから、今回の予算で書記官については五名の増員ということになりますが、そこら辺全体を埋めるという必要があるわけでございますが、これは春になりますと、書記官研修所の研修生が卒業して書記官になります。そのほかに任用試験というのをやっておりまして、その数を合わせまして、四月現在では書記官については大体埋まるということでございます。  それから家庭裁判所調査官でございますが、これも春に採用いたします者四、五十ございますが、それで大体埋まるということでございます。  最後に残りましたのはただいまお話にもございました速記官でございますが、速記官も前々から寺田委員から御指摘を受けておりまして、一生懸命充員に努力しておりますが、これ数年前、五、六年前約二百ぐらい欠員がございましたが、幸いその後充足が進みまして、ことしの春ではまだ欠員は残りますけれども、大体六十前後の欠員ということになるのではないか。まあ五、六年で百名以上の充員が行われた、こういう結果になるであろうという予想でございます。  主な官職の充足状況は大体以上のようなわけでございます。
  45. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、速記官に関してはかなり努力の跡が見られる、こういうことになりますね。これはずいぶんあなた方苦しがっておられたが、わりあいにその後の努力によると全員の充足が可能なわけですか。
  46. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) ただいま申しましたように、一挙にというわけにはなかなかまいらなかったわけでございますが、毎年少しずつ二十ないし三十ずつ充足が進んできておりまして、それで先ほど申し上げたような状況になったということでございまして、今後の予想も大体それくらいの充足が進むのではないかというふうに考えております。
  47. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これちょっと余談になりますが、速記官が非常に欠員があるために、私どももなかなか速記官を、非常に当事者に強い争いがあって、証人の証言のデリケートな面が裁判の帰趨を決するというような場合に、速記官の使用を申し出ると、これなかなか欠員のためにできないという不便があります。それが充足されればある程度緩和されるでしょう。そのことで、東京地裁あたりがもう業を煮やしてしまって、弁護士が金を出して録音をする、その録音を調書に直す職業というか、そういう職業が生まれてきた。それが実質上裁判所書記官の作成する調書に代用されておる。これは私どもは好ましい現象ではないと思うけれども、現実にはもうかなりな運用を見ておるということでありますが、その点の実情はどうでしょうか。あなた方御存じだったら御説明いただきたいと思うんです。
  48. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) ただいま寺田委員御指摘のとおり、東京地裁におきましては、書記官がまず証人尋問等におきまして録音をとりまして、その録音テープを反訳グループがございましてそこに渡しまして、反訳グループにおきまして録音を聞き取りながら反訳した調書をつくってまいります。しかしこれはあくまでも原稿でございます。書記官がその反訳調書の原稿を一々点検いたしまして、それに基づいて浄書いたしましたものを書記官の調書として記録に添付する、こういう扱いがあることは事実でございます。これにつきましては、必ずしも私ども好ましい運用ではないというように考えておりまして、なるべく速記官を付するなり、あるいは外部速記というのもございますけれども、そういうふうな方法、さらには本来の書記官の調書のあり方といたしましては、法廷において手控えを十分に作成しました上で、争点に関連いたします重要な事柄を要領よくとりまとめていく要領調書というものが一番望ましいわけでございまして、そういうふうな要領調書をつくるようにという指導はいたしておりますけれども、昨今のかなり複雑な事件、それから特に当事者間の利害の対立が厳しいようなケースになってまいりますと、代理人の方々からかなり逐語録的な調書を御要求になる。そういう関係でやむなくわれわれはこれを録音反訳調書と申しておりますけれども、そういうふうな方式の調書が作成されることもあるわけでございます。できる限りそれは縮小していくような方向でお願いしているところでございます。
  49. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 要領調書というのが、本当に事件の真髄をつかんだ要領調書ですと裁判の適正に役立つわけですが、書記官必ずしも事件の全貌を、その真髄といいますか、争点の把握というものが十分でないですからね。私ども裁判官時代にかなり練達な書記官の調書でも、完膚なきまでに直したわけですね。いまはなかなか裁判官が書記官に遠慮して直さないです。間違ったままで通ってしまう。それは喜ぶべきか悲しむべきかわからないわけで、労働組合の力も強いという面もあるでしょう。それから裁判官が非常に謙抑であること。昔のようにいばってないということになるのかもしれない。どちらがいいのかわからないけれども、実際問題としては非常に当事者間に厳しい対立がある事件では、要領調書ではなくて、やっぱり弁護士が希望するように、一字一句証人の証書をとらえた、録音を速記したようなものですね、それがやっぱり望ましいです。だから、あなたのおっしゃるように、果たしていまの反訳調書というものを縮小していくべきかどうかというのは、私も必ずしも自信がありませんけれども、ただ、あなたは書記官がそれを一々点検をして自分のものにして、調書としておるとおっしゃったけれども、現実にはそうでないようですよ。書記官忙しいからそのまま調書にする。したがって、テクニカルタームなんかが、反訳者は当て字を当てる。間違った当て字がそのまま残っておる。そういう調書が多いということを、私は現実に聞きもし、また一部は見ておるわけであります。  これは事務総長、やっぱり速記官をさらに増員して、その辺の要求を満たすべきか、あるいはそれが不可能であって、いまのはみ出た、やむを得ざる逃げ道といいますか、それを認めて、反訳調書が正確なように何らかの指導といいますか、それを強化していくべきか、その辺のところを十分御検討いただいた方がいいんじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  50. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 事件局長から申し上げるのがよろしいかと存じますけれども、御指名でございますのでお答えさしていただきます。  まず、書記官と裁判官との関係につきましては、もう私から申し上げるまでもございませんが、裁判所法に書記官の権限が書いてございますし、また、当該事件担当の裁判官と書記官との関係も明確に書いてございますので、その関係はひとつ裁判官を御信頼いただきたいというふうに考えております。  なお、調書の問題でございますが、現在の訴訟法におきましては、やはり書記官による要領調書が原則というふうになっておるわけでございますが、御指摘のとおり、事件の複雑化、あるいは専門化というような点から、速記の要請が非常に高いということも十分承知しているところでございます。先ほど人事局長からお答え申し上げましたように、漸次速記官の充足を図っておりますけれども、当事者からの生の需要に一〇〇%こたえるだけの陣容としてはまだ不十分のように端的に思います。裁判所サイドといたしましては、要速記事件というものの選別というものを見据えて、それを区別しながら、要速記度の高い事件に速記官を充てていくようなやり方というものも必要ではなかろうかというふうに考えております。  なお、総務局長から申し上げましたように、書記官が調書を作成するにつきましては、本来要領調書が現在の訴訟法のたてまえであろうかと思いますが、補足的に書記官が録音機を、テープを入れて、自分の調書の完全さを期しているところもあるようでございます。  なお、テープを外に出して、それの反訳をしたものを書記官が責任を持って調書に仕上げる方法につきましては、やはり問題がないわけではございませんので、この点は先ほど総務局長から申し上げましたように、縮小の方向に持っていくべきものというふうに考えております。
  51. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただ、縮小ということは、やはり速記官を十分充足するとか、増員するとかして、できるだけ完全な調書の作成ということを一面実現さして縮小していかないと、私がこういうことをお話しして、せっかく東京地裁で逐語的な調書で事件適正化というものに役立つシステムができておるときに、それをなくしてしまうと、そういう方向にいくと、それにかわる速記官というものの採用が不可能であるということでは困りますからね。だからそこのところは十分留意してもらわなければいかぬと思いますよ。いかがでしょう、事務総長
  52. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 繰り返しになろうかと思いますが、当事者からの速記の要請が強いことは承知しているつもりでございます。ただ、実際の問題として先ほど申し上げましたように、十の希望に対して十かなえるという体制にはなっておらないわけでございますので、まず第一段階といたしましては、裁判所としては速記が本当に必要かどうかという点を区別しまして、区分して速記を付すべきものに速記をまず付すという体制を整えるべきだというふうに考える次第であります。しかし、いま御指摘のいわゆる外部にテープを渡して、それを反訳したものを書記官が点検して調書に仕上げるという方法が、これもまた繰り返しになって恐縮でございますが、やはり問題がないわけではございませんので、この方法はできるだけ縮小の方向に持っていきたいというのが先ほど総務局長からお答えした趣旨でございます。
  53. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ちょっと消極的なんですね、あなたのおっしゃるのは。速記を相当とするかどうか、つまり当事者なり代理人からそういう要望があっても、裁判所が判定して、そして真に必要なものだけに限定するということによって、速記制度というものを運用していこうということでしょう。もちろん不必要なものに私ども速記官を用いろというようなことは全然言っておりません。ただ、速記官が足りないから運用を厳しくして、それで賄っていこうというのはちょっと消極的でしょう。だから、本当に厳しい対立のある事件について、当事者に希望があれば速記官が十分活用できるように、もし本当に速記官が足りないならば、速記官をさらに増員するというようなことに踏み出していかれる、そういう積極的な意欲がやっぱりあってほしいと思うのです。それとも、それがいろいろいまの厳しい財政事情で不可能だというならば、最近何かマイクロエレクトロニクスですか、ああいう非常にすぐれた先端技術がありますね、ああいうものを活用することによって賄っていけるのかどうか。そういう点は検討しておられるんでしょうか。いかがですか。
  54. 勝見嘉美

    最高裁判所長官代理者勝見嘉美君) 技術的なことにつきましては総務局長をして答えさせます。
  55. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 寺田委員御指摘のとおり、昨今マイクロエレクトロニクスを利用いたしましたワードプロセッサーというようなものが非常に活用されているようでございます。これは定型文書につきまして非常に利用価値があるように伺っておりますけれども、たとえば供述のような非定型的な文書につきましても、かなり利用価値があると、そういうふうな指摘をなさる方もございます。和歌山の県議会で、議事録を作成するのにワードプロセッサーを用いておられるというような報告も耳にいたしております。これがどういうふうな利用のされ方をするものか、私どもまだ十分研究いたしておりませんが、今後ともそういう方面での研究というものも十分いたしていかなければならないと現在考えているところでございます。  それから、確かに訴訟代理人からの逐語録の要請というものが非常に強うございます。その需要に対応するだけの速記官というものがまだ現在定員も満たしてない状況でございますので、そういう現状はあろうかと思いますが、逆に申しますと、これを申し上げるのもいささか恐縮でございますけれども、速記録が非常に膨大になりますばかりに、たとえば控訴訳審あたりで速記録を拝見いたしておりますと、非常に膨大過ぎるとかえって事件の核心がつかみにくい、こういうふうな御批判が、特に高裁の民事の裁判官、それから刑事の裁判官もそうでございますけれども、御批判がある点もございます。それから、委員御承知のとおり、現在の裁判所の速記官につきましては、速記の反訳倍率、つまり速記原本にとりましたものを普通の文字に書きあらわして調書にいたします、その反訳倍率が十倍あるいは十二倍かかる。つまり一時間の証人尋問について調書を作成するのに十二、三時間かかる、こういう点がございまして、いろいろ能率の点でも問題がないわけではございません。その辺のところもこれから検討していかなければならない問題ではなかろうか、こういうように考えております。
  56. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 速記調書の膨大化というのは、これは弁護士の方にも一半の責任はあるんですよ。確かに余り必要のないような尋問をする、しかもそれを繰り返す。私どもも相手方の代理人に厳しく注意をしたんだけれども、反対尋問で同一の問題を五回も六回も問い直すと、そういうことになると確かに調書は膨大になるということは否定できないですね。だから、それは弁護士の方の研修をやっぱり必要とするということはあるでしょう。それはあるけれども、あなた方はやっぱり速記官が現在で十分かどうかという点の検討をやはりなさらぬといかぬのじゃないですか。なさらずに、どうも不必要なことに速記が用いられてはしないかとか、調書が膨大になるがどうだろうかとか、そういう消極的な面だけを強調なさると、ちょっと私どもとしては納得できない。だから、そういういろんな点を考量をして、もしも増員が必要かどうかも検討していくというフランクな立場がほしいわけですよ。それを私はお尋ねしておるわけですね。
  57. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 寺田委員御指摘の点も含めまして、種々の角度から検討を続けてまいりたいというように考えます。
  58. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、職員の服務規律の問題、これは私も議員になりましてから鬼頭君と谷合君と、この二人の弾劾裁判を実際にやって、それからもう一人、何かうまく町長選に立候補して弾劾裁判を免れた裁判官がおった。短期間に三人も弾劾裁判にかかる裁判官が出るということはちょっと過去に例がないものだから、いままでも事務総長にこの点をかなり厳しく服務規律遵守といいますか、裁判官の道義性、倫理性の向上、こういうものを要求してきたわけですが、その後いろいろな方策を用いられ、まず採用に当たっての厳しい試験であるとか、あるいは人物考査であるとかということをおやりになり、その上にさらにまた任官後の教育にも当たっていらっしゃるようだけれども、その点はどんなふうなことをなさって、どの程度の効果が上がっておるのか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  59. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 寺田委員御指摘のように、幾つかの裁判官の不祥事がございまして、それぞれの不祥事は突き詰めて考えますといろいろな原因があるというふうには思うわけでございますけれども、ただいま御指摘になりましたように裁判官の研さん、研修と申しますか、それがやはり服務規律を正していく上での一つの方策であろうというふうに考えまして、前にも御説明申し上げたことがあるかもしれませんが、司法研修所に裁判官の研修を専門に行えるような人的な機構充実いたしまして、具体的に申しますと、専任の教官を三名ほど昨年の春から司法研修所に置きまして、従前は判事補、簡易裁判所判事を中心にやっておりました裁判官研修に、中堅の裁判官層の研修を少し重点的にやっていこうということで、昨年の春から始めたわけでございます。  いろいろのことをやっておりますけれども、主なものを申しますと、一つには、いわば法律の研究だけではなくて、少し法律以外の関連領域の研究というものもした方がいいんじゃないかということで、中堅の裁判官に集まっていただきまして、共同研究をやりますとか、あるいは総括裁判官に集まっていただきましてやはり共同研究をやるとか、それからもう一つは最近も少し新聞等にも報道されておりますけれども、中堅の裁判官を短い期間裁判所以外のところに派遣して少しよその世界を見てきてもらおうというようなことで、とりあえず新聞社、NHK等に短期間裁判官を本来の仕事を離れて派遣いたしまして、見てきてもらうというようなこともやっておるわけでございます。何分始めましてまだ一年たつかたたないかというところでございますので、どれだけ効果があるかということを、いま即断することはちょっと無理かと思います。もう少し長期的な観点で効果があるかどうか見なきゃいけないというふうには思っておりますけれども、やや自画自賛ということになるかもしれませんけれども、たとえば新聞社へ行ってまいりましたような人の話も聞きますと、非常によかったということを言っておりますし、逆に新聞社の方でも来てもらって非常によかったというような話も伺っておるわけでございまして、現在の段階では、もう少しこれを続けていけば、いろいろな効果が出てくるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  60. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 結構です、そういう努力を続けていってくださることを希望しますが。  弁護士が下から裁判官を見てみますと、わりあいによしあしがよくわかるんですよ。中にはあの判事おれの大事な事件を負かしたなんといって、変な感情で悪く言う人もあるかもしれませんが、概して弁護士が下から裁判官をいろいろ判定したものというものは当たっておる場合が多いんです。決して弁護士の意見を何でも採用しろなんということは申しておりませんが、時に触れて、所長など監督官が、弁護士の信頼できる人の意見などというものをよくお聞きになるようなことも必要じゃないかと思います。  それから最後に、民事執行法をわれわれかなり審議してもんだ末に制定を見まして、一昨年の十月からこれが施行されて、かなり制度的な変更を見たわけでありますが、ことに競売に暴力団が介入するというようなことを防ぐために、入札制度を採用しましたね。そのほかいろんな制度の変更がありましたけれども、これがどの程度定着を見ておるのかどうか、この点を最後に伺って質問を終わりたいと思います。
  61. 川嵜義徳

    最高裁判所長官代理者川嵜義徳君) 新しい民事執行法が施行されましたのは五十五年の十月でございますが、その改正の一つの中心眼目であります期間入札制度、これが一般の人が競売に参加しやすいようにという配慮もありますし、副次的な効果として暴力団等の介入を防止するという効果も上がるだろうということで設けられた新しい制度でありますが、この制度の実施状況をまず申し上げてみたいと思います。  去年の四月段階では、支部は別といたしまして、五十の地裁本庁だけで申し上げますけれども、去年の四月段階では、十二の本庁だけがこの期間入札制度を取り入れていたにすぎなかったのであります。何分新しい制度でありますものですから、なかなかなじみにくいということで、この制度の取り入れが余り進んでいなかったわけであります。私どもの方といたしましては、御承知のとおり、暴力団の介入事件が相次いで起きました関係もありまして、ぜひこの制度を取り入れるように強く働きかけをいたしましたのでありますが、その結果、現段階におきましては、三十四の本庁がこの期間入礼制度を取り入れております。ことしの六月までに実施を予定している庁が十二ございますので、合わせまして四十六の庁がことしの六月までに取り入れるというような状況にあるわけであります。かなり浸透してきたと申し上げてよろしいと思います。  いま一つ大事なことは、この新しい制度は、いわゆる新法事件についてのみ適用されるわけでありまして、旧法事件については適用できないという状況にあります。旧法事件が滞っておりますと、いかにこの制度を取り入れましても、なお暴力団が介入する余地のある競り売り等によらざるを得ないわけでありますけれども、その旧法事件処理状況をちょっと申し上げますが、去年の末現在で新法事件が七八・七%、旧法事件が二一・三%、大体全体の二割くらいに旧法事件は減ってまいっております。ということは、期間入礼制度を取り入れる幅が非常に広くなったということを意味するわけであります。  暴力団の介入事件は相次いておりますけれども、幸いなことに、この期間入札制度の手続におきまして暴力団が介入したという事例はまだ聞いておりません。でありますので、この新しい制度がそういう意味で大きな成果を上げているということが申し上げられるというふうに思います。  なお、その期間入札制度の採用に伴いまして、いろんな週刊誌とか、あるいは、新聞とか、地方公共団体の広報誌等によりまして、この新しい制度を積極的にPRしておりますが、そういう関係もあって、普通の人の売却への参加というものがかなりふえております。そういう意味におきまして、順調に新しい制度は動いており、まだ定着とまではいかないかもしれませんけれども、かなり順調な歩みを示しているということは言えようかと思うのであります。
  62. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 先ほど事務総長の方から五十八年度予定経費要求額説明がありまして、その中で人的機構充実増員ということでありますが、その理由は、近年民事事件増加、あるいはその内容が複雑化している、刑事訴訟の方では覚せい剤事犯がふえてきたというようなことが理由になっております。  そこで、法務省の方から、これは広範になるんですが、その関係資料として昭和五十四年から五十六年までのいろいろな事件増加の表ができておるわけですが、これを見ますと、これは地方裁判所関係をまずお聞きするんですけれども、これは民事事件の第一審、五十六年が十三万三千五百七十四件、五十五年が十二万七千八百四十九件ですから、ふえているわけでありますが、ところが一方において、いま理由の中に入っている公害その他の事件の表を見ますと、これは五十五年が三千六百九十三件で、五十六年が三千六百七十四件、むしろ減っている計算になるから、この一般の第一審の民事、刑事新受件数の増加にはこれは原因になっていない。そうすると、今度は不動産競売等の事件を見ると、これが八千件ばかりふえている、五十五年から五十六年まで。そうしますと、まだ五千件ぐらい事件がふえているんですけれども、それは一体どういうものがふえているんだろうか。あなたの方で言っている公害関係の訴訟、この中には医療過誤だとか、大気汚染だとかいろいろなものを含みますよ。それから、不動産競売事件がふえてきているということもありますよ。そのほかにどういうものがふえているんだろうか。それをひとつ御説明願いたい。
  63. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、民事の第一審訴訟事件、これは累年増加傾向にございます。他方公害訴訟事件につきましては、係属事件につきまして申し上げますとさほど変動は余りございません。  民事の第一審訴訟事件増加いたしておりますのは、御承知のようにクレジット、ローン等の関係で、立てかえ金事件というのがかなり多くなってきております。これは簡易裁判所における事件増加傾向の大半はそのクレジット事件でございますが、やはり地方裁判所におきましても多少それが影響いたしておりまして、クレジット等の立てかえ金請求事件というものの増加がかなり事件全体の増加の大きな要因をなしているのではないか、かように考えております。  いま御指摘の民事の場合でございますと四人の増をお願いしているわけでございますけれども、これにつきましては、なるほど特殊損害賠償事件等は数そのものはさほど変動はございませんけれども委員御承知のとおり、非常に解決に困難かつ時間を要するむずかしい訴訟でございまして、この特殊損害賠償事件の審理期間と申しますものが、五十四年は三十二・二カ月、それが五十五年になりますと三十四・六月、五十六年になりますと三十四・八月というように、だんだん長期化の傾向をたどっております。民事の第一審通常訴訟の平均審理期間を見てみますと、五十六年では十二・一月でございまして、優に通常の事件の平均審理期間の三倍を要するような形になっているわけでございます。そこで、この特殊損害賠償事件等の処理充実強化を図ることによって、民事事件全体の処理充実強化に寄与させたいという観点から、判事四名の増をお願いしているというわけでございます。
  64. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 いまのこの表は、これは全国の平均を出したものですけれども、これは恐らく全国平均がこうであるということで、地域ごとではずいぶんむらがあるんだと思う。  そこでお聞きしたいのは、首都圏、中部圏、近畿圏、北九州圏、これの増加状況、民事事件、刑事事件、それの方がほかの地域よりもはるかにパーセント的には増加のパーセントが多いんじゃないか、こういうふうに思うんですが、その点はいかがですか。
  65. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) いま正確な資料は手元に持っておりませんけれども委員御指摘のように、事件増加状況は、首都圏、それから近畿圏、中部圏、それから福岡の近辺、このあたりの増加はかなり多うございます。
  66. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 そこでお聞きしたいんですが、これはわかる範囲でいいんですけれども、各裁判官の民事事件の手持ち件数、合議、単独に分けることができるかどうかわかりませんが、一体それぞれどのくらいなのか、合議、単独でそれぞれどのくらいなのか、それから平均審理期間というのはこの表にありますけれども、一応口で言っていただきたい。それから、いま話が出ました公害関係事件、これは医療過誤も含めて、これの一体審理期間というのは平均どのくらいかかっているのか、それをひとつ御説明いただきたい。
  67. 川嵜義徳

    最高裁判所長官代理者川嵜義徳君) まず、民事の平均手持ち件数でございます。この意味するところは、判事、特例判事補、この二種の裁判官、これは単独で裁判ができるわけでありますが、この裁判官数を分母としまして、未済事件数を分子として出したものであります。この平均手持ち件数が地裁本庁でとりますと、百九十五件ということになっております。これはしかし全国の平均でございますので、非常にアンバランスがございます。東京地裁の民事部で一体どれくらいかということをついでに申し上げておきますが、東京地裁の民事の通常部の一カ部当たりの手持ち件数はおおよそ六百件であります。そのうち合議がおよそ百件、単独が残りの五百件でありますが、この単独を裁判長と右陪席が担当いたしますので、二百五十件ずつということになります。大体東京地裁の通常の部はそのような状況になっております。  次に、平均審理期間でございますが、地方裁判所の一審通常事件の既済事件で見ました平均審理期間は、昭和五十年が十六・三月でありました。それが五十六年になりますとかなり短縮されまして、十二・一月というふうになっております。一方、公害等のいわゆる特殊損害賠償事件の平均審理期間は、昭和五十年が二十八・一月でありましたのが、五十六年には三十四・八月に延びております。これは特殊損害賠償事件と称するものの中には、公害とか、医療とか、薬害とか、いろんな類型のものがございます。やはり医療過誤などが一番その中でも審理に期間を要しているという数字が出ております。いずれにいたしましても、先ほど総務局長が申し上げましたとおり、全体の平均審理期間よりも約三倍を要しているというような状況にあるわけであります。そういう実情でございます。
  68. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 私はね、この表というのは、こういう全部平均して十二・一カ月、つまり一年一カ月で終わっていますというこういう統計の出し方というのは余り賛成しない。つまり日本人の平均年齢が延びてきたというのは、幼児の死亡がなくなっているから平均年齢が延びてきた。だから仮に二人合わして八十歳、八十歳で片一方亡くなりました、片一方は一歳で亡くなりましたというと四十歳になっちゃう。そうすると、この平均でいくと、たとえば初めから訴状を読んで、そのとおり間違いありませんというのもあるし、それから欠席判決があるし、そういうものを統計の中に入れていくと、仮に一方じゃ十年かかっている、そういうのが二件あれば平均は三年になっちゃうんですよ。だから私が聞きたいのは、たとえば三年以上かかっているもの、五年以上かかっているもの、十年以上かかっているものという統計というのをおとりになっているのかなってないのか。これは公害じゃないですよ、一般事件。その点ひとつ。
  69. 川嵜義徳

    最高裁判所長官代理者川嵜義徳君) 私どもの方の司法統計におきまして、御指摘のように三年を超えるもの、五年を超えるものの統計をとっております。それが未済事件の中で何%を占めるかというような統計もとっておりますが、ただいまちょっと手元にその資料持っておりませんので、具体的な数字を申し上げることができません。
  70. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 そこで一般民事事件で、三年かかり、五年かかり、十年かかる。その原因はいろいろあると思うんですけれども、当事者が原因ではなくて、裁判所の方がむしろ大きな原因をつくっているというような場合もあると思うんですけれども、その点はどうですか。
  71. 川嵜義徳

    最高裁判所長官代理者川嵜義徳君) 民事訴訟の迅速処理ということは、永遠の課題のようなものでありまして、これは私から申し上げるまでもないことでありますけれども、民事訴訟というものが、利害が対立する当事者間の争いであるというところから、一方が迅速を求めれば、他方は遅延を望むというような関係にある、そういうところに遅延の宿命的なものがあるように思うわけであります。ただ、そういうふうなことを言って裁判所が責任逃れを言っておるわけではありませんで、そういう宿命にある民事訴訟であるけれども、どうしたら迅速処理ができるか、もちろん適正を踏まえての上の迅速処理でありますけれども、できるかということにつきましては、いろいろな会同、協議会、研究会等で、裁判官がお互いに研究、協議しているところでありますし、また私どもの方でも、司法行政上取り得るいろんな措置を講じておるわけであります。弁論を終結してから判決言い渡しまでにかなりの期間を要するというようなことになりますと、これはもっぱら裁判官の責任だと言わざるを得ません。それまでの終結前の点につきましては、裁判官の更迭等も大きな原因の一つになるかとも思いますけれども、そこには当事者側の要因等と絡み合っておりまして、何が主要な原因だというようなことは、ちょっと申し上げかねるというのが実情でございます。
  72. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 結局今度七人増員ということなんですが、つまり判事というのはすぐにはできないわけですね。判事補は十年たたないと判事になれない。判事補は司法修習生から裁判官を志望して判事補になり、それが十年たって判事になる。そうすると、事件がふえていくから増員をどうしてもしなくちゃならぬという計画というのは、本当は司法修習生から判事補を採るときに考えなきゃいかぬわけですね。そのときには十年後には今度はやめていく人は何人ぐらいになるだろうか、途中で弁護士になっちゃったりする人はどれくらいいるだろうかという、裁判所としては増員計画というものはいきなりはできない、計画を立てていかなきゃならぬ。  そこでまず第一にお聞きしたいのは、いま司法修習生から裁判官を希望する人というのは、大体数でそう減ったりふえたりしていないようですけれども、希望者としては裁判所の方で大体間に合うなというくらいの希望者があるわけですか。
  73. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 司法修習生から判事補を希望をいたす者の数でございますが、最近四、五年とりますと、大体六十人ちょっと超えるくらいというのが最近の傾向でございます。もう少し前をとりますと、七十を超え八十というふうな時期もあったわけでございます。最近ではいま申し上げましたように六十数名ということでございまして、ことしも六十名をちょっと超えておりまして、大体コンスタントに最近では六十数名というふうなところでございます。一方、判事補の定員でございますが、これは先ほどお話しの定員法の資料にも出ておりますが、六百をちょっと超えるというふうなところでございますから、その定員を前提とする限りは、まずまずというところで実はあるわけでございます。  そこで、委員御指摘の長期計画ということでございますが、最近では判事補から判事になります者の数、ことしは五十数名でございますが、来年あたり以降になりますとかなり多くなってまいります。それは過去におきまして何年もの間判事増員をお願いいたしておりまして順次増員されてまいりました。それを判事補で埋めていったという経過がございますがゆえに、判事はここしばらくのところどんどん判事になる人がふえる、一方、定年になる人はそれほどない。ただ依願免がございますんで、これはかなり突発的に出てまいりますので、なかなかその予測がむずかしい面はございますが、定年が少ないという意味で、いままでよりは退官者が少ないであろうという、そういう予想でございます。そういうことで、実は判事判事補を通じまして過去においてはかなり欠員があったわけでございますが、最近はどんどん充足されてまいりまして、特に判事層が厚くなってきたということでございますので、まあ長期計画なかなかむずかしい面はございますけれども、いま申しましたような充員状況から考えますと、判事補はしばらくいいけれども判事について増員をお願いしていかなきゃいかぬという状況がここしばらく続くというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。
  74. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 昨年の九月に簡易裁判所の事物管轄が改定されましたね。そうしますと、改定されてから約六カ月たっているわけですけれども、事物管轄が改定された後に地方裁判所と簡易裁判所の負担の割合というのはどのぐらいに変わりましたか、それをひとつ。
  75. 川嵜義徳

    最高裁判所長官代理者川嵜義徳君) 事物管轄の改正法案をお願いいたしましたときに出しました統計は、五十五年の事件数をもとにして出しておりました。でありますので、御説明はこれを基準にして申し上げますが、五十五年度におきましては、地方裁判所六二・二対簡易裁判所三七・八ということでありました。これが事物管轄改正後、昨年の九月から十二月まで四カ月間の数字で見ますと、地方裁判所四〇・六対簡易裁判所五九・四というような割合に変わったわけでございます。
  76. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 そこで、この事物管轄、要するに訴訟物の価額によって管轄が変わるということになるんですけれども、先ほどちょっと話が出たように、簡易裁判所裁判官には、書記官から試験を受けたいわゆる特任裁判官、それから地方裁判所裁判官の定年後になる方、そういう方がおられるんですが、総じて事件処理能力というものは、私は地方裁判所裁判官には決してまさっていない、むしろ劣っている人の方が多いのだろうと。ところが、事物管轄だけでやると、たとえば都会地においては同じ面積でも、農村地帯の方だというとその訴訟物の評価額によって簡易裁判所に係属するが、都会の中心ではこれは地方裁判所の管轄になる事件というのが出てくるわけですね、土地の境界争いだとか、土地の所有権移転登記を求める訴えだとか。そうしますと、非常にむずかしい事件をさらに簡易裁判所は負担をしなければならない、事件の数はもちろん、むずかしい事件の負担をしなければならないという責任を負荷される。ただ、むずかしい事件については、本庁に移送することができるということがこれはあります。その点、一体そういうむずかしい事件について、簡易裁判所の方にそれを任せるには負担が重過ぎるというふうにお考えにならないかどうかということが第一点。  それから、民事事件について簡易裁判所事件をふやすということは、簡易裁判所で和解とか調停とかで済めばいいけれども、簡易裁判所で判決があった場合に、今度は控訴審というのは地方裁判所である本庁が控訴裁判所になる、二審の裁判所になるわけです。そうすると、ある程度のまた負担が簡易裁判所からむずかしくなって返ってくるということがあり得るわけです。  その二点についていかがかということをお聞きしたいと思います。
  77. 川嵜義徳

    最高裁判所長官代理者川嵜義徳君) 事物管轄を三十万から九十万に上げるという改正が行われまして、当然その直前の状況と、直後の状況とを比べますれば、御指摘のようにむずかしい事件がかなり簡裁へ行くではないかということになるわけでありますが、三十万円に改正されたのが四十五年でありましたので、四十五年当時の三十万と五十七年——昨年の九十万とはそうアンバランスはないだろうということで、九十万という改正が行われたわけでございますので、いわば従前とむずかしさかげんが変わるということはないだろうという見込みであります。ただ、簡易裁判所は、できるだけ軽微な事件を簡易、迅速に処理するのが本来の機能であるというところから、前回の改正のときに、単に事物管轄を上げるだけではなくて、不動産訴訟につきましては、原告に地裁へ訴訟を出すか、簡裁を選ぶかという選択権を与えるという法改正がつけ加えられたわけであります。そのほか必要的移送の制度もつくられました。そういうように、当事者の方にリーダーシップを渡す、どちらで裁判を受けるかということについてのリーダーシップを渡すというような制度ができました関係から、九十万以下の事件でありましても、不動産なんかはむずかしゅうございますから、これは地裁でやりたいと言えば地裁へ持っていけることになっておるわけであります。そういうような新しい制度がうまく機能いたしますれば、御指摘のような心配はなくなるだろうというふうに考えております。確かに事件数は非常に簡易裁判所の方が見込みよりも多く伸びまして、相当な数が簡裁へいま流れ込んでおりますけれども、その多くはクレジット関係事件でありまして、全国的に見ますと簡裁の新受件数のうち、五五%はクレジット事件である。ひどいところになりますと八〇%以上がクレジット事件であるというような状況を呈しております。そういうような状況でありますので、事件は多くなりましたけれども、このようなクレジット事件処理は非常に簡易であるのが普通でありますから、裁判官にとりましてはそれほどの負担にはならないだろうというふうに見ております。  なお、第二点の簡裁事件が多くなれば、控訴が勢い絶対数として多くなるということは当然考えられるところてありますけれども、いま申しましたように、ふえた件数はほとんどがクレジット関係でございます。でありますから、この種の事件が控訴審へ行くということは余りないのが実態でございます。でありますから、この事物管轄の改正によって、控訴事件いわゆる(レ)号事件がふえて、地裁の負担が重くなるというほどの影響はないだろうというふうに見ております。
  78. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 次に、審理期間のことについて、いま一番時間がかかると言われているのは遺産分割の家事審判事件なんです。浦和の弁護士会から浦和の地方裁判所に「遺産分割の家事審判については、終了までに長時間を要し、ほとんどその機能をはたしていない、その原因がどこにあるのか実態とあわせて報告されたい。」という第一審強化方策浦和地方協議会の一つのテーマ、問題として出されたんです。これに対してこういう答弁をしている、浦和の地裁では「受理後三年以上の遺産分割事件は、本庁管内を通じて二二件である。長期化の事由は、遺産の範囲につき民事訴訟で係争中のものが大部分で、そのほかに人的に錯綜しているもの、激しく感情が対立し当事者の協力が得られないもの、物の価値の鑑定中のもの、示談進行中のもの」があるので長くかかるんだと、こういうことを答弁しているんですが、私が現に遺産分割の申し立てをした事件で、昭和四十年の十一月に申し立てをしたんです。それで昭和四十三年ごろに、遺産分割でありますから、遺産の評価額を鑑定人に鑑定をさしてそれを裁判所に出しておるんです。非常に不動産が百何筆以上ありましたからね、昭和四十二年ごろで三億円ぐらいの評価、そして鑑定人に対する鑑定費用が三十万かかる。私が受けた事件の着手金よりよっぽど多かった、鑑定人に払った金の方が。そして裁判所に出しておる。ところが、その相手は昔裁判所に勤めて退職をした人だった。出て来ないんですよ、調停に。一つも出て来ない。調査官をやる、必ず出ていきますよ、また出て行かない。今度は過料の制裁の通知を出す。それでも出て行かない。ただじんぜん調停の日数が長引くだけ。そこで、裁判官がこれもうしようがないから審判します、あなたの方で鑑定も出ているんだから審判します。そして審判の方へ移されたと思ったら、裁判官が、たいてい三年ぐらいでかわりますからね、家庭裁判所の場合は、それで転任しちゃう。するとまた新しい人がやってくる。もう一回調停に回しましょう、それでまた出て来ない、また審判に行く、裁判官がかわる。結局当事者があきれはてて去年の五月十一日に取り下げたんです。それまで全然事件が進まない。だから、裁判官が、普通の事件なら調停不調ということで、あとはどうぞ訴訟出してくれと、こういうことが言えるんだからいいけれども、遺産分割の事件は審判やってもらわなければしようがない。審判やってもらおうと思ったって、裁判官が調停能力もない。まるでキャッチボールですよ。審判、調停。審判、調停。それは一つの例ですけれども、全国的に私はこの遺産分割の家事審判事件というのはおくれていると思うんです。もちろんその中には当事者がはっきりしないとか、それから遺産が特定をしないというのは余りないと思うんです。特定しないという、それはもう大したことはないと思う。それから当事者が錯綜しているといったって、行方不明ならそれなりの手続をやればいいんだから、あるいは外国にいるんなら外国にいるような手続をやればいいんだから。だから、結局裁判所の、いま私が言った例なんかは転任ですよ。転任の関係で長くなる。それはそれとして、最高裁判所として各出先の各地方裁判所に、特に家事審判事件のうちの遺産分割の事件について促進をするようにというような指示、あるいは指導というものをやっておられるかどうか、また一審裁判所の方でそれに対して何か勉強というものをやっておられるのかどうか、その点をお聞きしておきます。
  79. 栗原平八郎

    最高裁判所長官代理者栗原平八郎君) お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、遺産分割事件は家事の審判、調停を問わず最もむずかしい事件の一つとなっておるわけでございます。年々事件がふえてまいりますとともに、権利意識が高まると申しますか、さらにはその土地の高騰による利益の対立が深まるといいますか、あるいは均分相続の考え方が普及したと申しますか、その前提問題である遺産の範囲を争う、あるいは生前相続人の一人が被相続人からこれだけの利益を得ているじゃないかという、民法九百三条の特別受益を争うとか、あるいは先般相続法の改正で認められました遺産の維持形成にこれだけ寄与したという寄与分の程度を争うとか、そういう前提問題の争いが非常に深刻になってまいっておりますので、確かに調停でもなかなかまとまりにくいというそういう現状もあるわけでございます。統計で見ましても、未済事件はふえ既済率は低くなっておると、こういう状況であることを私どもは掌握いたしております。  そこで、何とかこれに対処しなきゃいけないということで、昨年度実は全国の家事審判官の会同を持ちまして、この遺産分割事件の効率的な処理を図るにはどうしたらいいかというようなことを検討をいたしました。現に全国の家庭裁判所のかなりの庁におきまして、裁判官の申し合わせによりまして、遺産分割事件処理をこういうやり方でやったらいいのではないかというような処理要領を作成して、現に着々とその事件処理効率化に努力をしておるというような庁もふえておるわけでございまして、私どもといたしましては、今後ともそのような面に力を尽くしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  80. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 最後に一点、地元のことで恐縮ですけれども、浦和地方裁判所の越谷支部、これはいま乙号支部でありますけれども、これが昭和三十年には民事訴訟の新受が二十六件だったのが五十七年度では五百三十三件、刑事が百四十九件であったのが二百七十八件、合計して新受事件昭和三十年が百七十五件だったのが現在では八百十一件になっている。裁判官は昭和五十年まで一人だったんですが、それが五十五年から三人になって、ずっと三人が定員になっている。そこで、これは調査によりますと、全国甲号支部が八十五あるうちの受件数からいって、あるいは管内人口、この管内人口は、昭和三十五年が十九万だったのが、いま八十六万人になっている。そういうことからいって、全国の八十五の甲号支部のうちの中ぐらいになるんじゃないかと言われております。乙号として全国甲号の中位にあるぐらいですから、これを甲号に昇格させるということが適当ではないか。ただ、それには要するに先ほども話も出ました施設関係で合議法廷をどうしてもつくらなけりゃならない。法廷をつくらなけりゃならないと思うわけでございますけれども、これは地元の要望もありますし、何かその敷地ももう確保されているということを聞いております。行革の問題でいろいろ大変だろうと思うんですが、やはりこういう人口急増地域、あるいはこういうところに対しては、やはり住民のニーズというものがあるわけですから、甲号支部ということに対してぜひとも早く実現をしてもらいたいと思うんですが、それに対する見通しについてひとつお願いいたしたいと思います。これで終わります。
  81. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 委員御指摘のように、越谷支部は管内人口の急増等によりまして、事件増加が著しゅうございます。先ほどおっしゃいましたように、甲号支部の中でも、八十五庁のうち三十番目あたりの庁に匹敵するわけでございます。その意味で、人口それから事務量に関します限りは、甲号支部としての実力を備えていようかということも言えようかと思います。私どもといたしましては、その事務量に見合った裁判官、書記官等人員の増強と庁舎の拡充にこれまで努めてきたわけでございます。  委員仰せのとおり、越谷支部を甲号支部に昇格せよという御意見のあることは私どもも承知いたしておりますけれども、他面、全国的に見ますと、越谷と同じような状況にある乙号支部といたしまして岸和田、倉敷がございますし、逆に事務量が三人分に達しませず、裁判官を一人、あるいは二人しか置いてない甲号支部も数多くあるわけでございます。そこで、乙号支部のあるものを甲号に昇格させ、甲号支部のあるものを乙号に格下げする、そのようにいたしまして現実に合わせるということも一つの方法ではございますけれども、甲号、乙号の支部の定めを改めるということになりますと、事、裁判所機構にかかわる問題になってまいります。人口とか、事務量のほかに、管内周辺の地理的条件でありますとか、隣接の本庁、あるいは甲号支部までの交通事情、それから当該支部の設置されました沿革等々の要因を総合的に、かつまた全国的に検討しなければならない問題でございます。  反面におきまして、甲号と乙号の権限の違いは、結局合議事件とか、家裁において少年事件を取り扱うことができないという程度の差にすぎないので、むしろ甲号、乙号の区別を廃止すべきではないか、こういう御意見も片方にはあるわけでございます。  いずれにいたしましても、一般論としましては、甲号、乙号の支部が設置されました昭和二十二年以降の人口分布、交通事情の変化等によりまして、甲号、乙号の格付の当否のみならず、支部の配置、管轄区域、さらには甲号、乙号の区別そのもののあり方について、見直しを必要とする時期に来ているのではないかということが言えようかと思います。私どもといたしましては、越谷支部の問題もこのような裁判所の適正配置という大きな問題の一つとして、今後研究しなければならないというように考えております。  以上でございます。
  82. 中尾辰義

    中尾辰義君 最初に裁判費につきましてお伺いいたしますが、五十八年度予算の明細書には、裁判費が七十九億八千百万と、こういうふうに計上されておるんですが、前年度と比べてどうなっているのか、まず最初にお伺いいたします。
  83. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 五十八年度、ただいま御審議いただいております裁判費の総額は七十九億八千百万円でございますが、前年度に比べまして三・三%のアップと、このようになっております。
  84. 中尾辰義

    中尾辰義君 金額では幾らになっていますか。
  85. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 前年度がたしか七十六億余であったと思いますので、約三億余の増であろうかと思っています。
  86. 中尾辰義

    中尾辰義君 三億余と言っても、説明書では裁判費につきましては「二億五千八百四十八万円が増加し、」と、これでいいんですな。
  87. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) そのとおりでございます。
  88. 中尾辰義

    中尾辰義君 そこで、お伺いしますけれども裁判の費用はこれは裁判運営にかかわる重要な項目であるというふうに思っているわけですが、この裁判費昭和五十五年、五十六年度の決算において相当な不用額が計上されておりますけれども、この不用額は幾らになっておりますか。
  89. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 委員御指摘のとおり、五十五年度、五十六年度につきましてそれぞれ裁判費に不用額が出ております。五十五年度で申しますと五億八千万余り、五十六年度におきましては三億一千万余りということに相なっております。
  90. 中尾辰義

    中尾辰義君 いまおっしゃったように五十五年度、五十六年度かなりこれは五億から三億不用額が出ておりますね。にもかかわらず、本年度は約二億五千八百万の増と、こういうことで要求をされておる。そこで、裁判の費用というのは国選弁護人などへの謝礼金だとか、裁判所における証人旅費とか、こういうものが含まれておると思うわけですけれども、この国選弁護人の全刑事弁護事件に占める割合、私の調査ではこの表を見ますと相当ふえておるんですけれどもね。国選弁護人のついた被告人の割合、地裁の方でいいますと昭和五十一年度が四五・九%、それから五十四年が五〇・三%、五十六年が五五・一%、こういうふうにだんだんだんだんふえております。簡裁の方では五十一年度が六八・六%、それから五十四年が七一%、五十六年度で七四・八%、こういうふうにふえておるんですが、こういうふうにふえているにもかかわらず、ふえておるということは旅費等もふえるわけですけれども、不用額が多く出るのはこれはどういうことなのか、重ねてお尋ねします。
  91. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 委員仰せのように、五十五年度、あるいは五十六年度それぞれ不用額が出ておるようでございますが、一口に申しまして裁判費予算額というものは、結局裁判所に係属する事件数が基本になっていくのはもちろんでございますが、たとえば五十五年度を例にとりますと、五十五年度裁判費関係の積算をする場合には、その事件数の基本となりますのは、前々年度、つまり五十三年度事件数をもとに、事件の伸び率を勘案するわけでございます。ただ、前々年度、一年度のみではいかがかということで、その前の年、あるいはもう一つ前の年、その辺のところの、両三年度ぐらいのところで事件数の動向を見ながら、たとえば五十五年度予算ですと、その事件数の推定をして積算をしていくということになるわけでございます。したがって、その限りにおいては、五十五年度の場合に、その推定がたとえばぴったりでなくて余る、あるいは乖離が出るというのは、ある程度はやむを得ないことではないのかなという気がいたしておる次第でございます。
  92. 中尾辰義

    中尾辰義君 裁判所に限らず、各省が多目に予算要求しまして、大蔵省でばっさりとやられるのが通例でありますけれども、つまり三年も四年も不用額が出ておるのに、またことしも二億五千万も増額を要求しておるという、私はこの辺がちょっと納得いかない点もあるんですけれども、いまおっしゃったようなことも多少はわからぬでもないですが、それで、これは別に追及はしませんけれども、あなたも御存じのとおり財政再建のときでもありますし、寺田委員からもさっき御指摘あったように、これは検討してもらう必要があるんじゃないかと思います。これはこれで終わります。  次に、裁判官の研修につきましてちょっとお伺いいたしたいんですが、これは先ほども少し答弁があったようですけれども、この裁判官の研修費は五十八年度予算要求で幾らになっています。
  93. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 裁判官の研修経費昭和五十八年度では一億三千五百万円ばかりでございます。
  94. 中尾辰義

    中尾辰義君 その中で中堅裁判官の研修費、先ほどあなたから答弁があって非常に大事な点ですが、中堅裁判官の研修費は幾らになっておるのか。それと研修の具体的内容ですね。これは先ほどちょっとありましたが、具体的内容をもう少し詳しく説明をしていただいて、さっきも話がありましたように、新聞社に派遣したり、NHKに行って研修をしたりというようなこともありましたけれども、これ新聞社とか、NHK、どういう点をねらって研修の目的にしたのか、その辺もお伺いしたい。それから今後もずうっと続けていくのか。本年度の研修の内容、方式など、その点についてお伺いしたい。
  95. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) ただいま申し上げました裁判官研修経費のうちで、中堅判事等の研修の金額でございますが、大体二千四百万円くらいでございます。  そこで、この中堅裁判官の研修の中身でございますけれども、いろいろございますけれども、先ほど申し上げましたように、一つには地方裁判所、家庭裁判所等の部総括の裁判官を司法研修所に集まってもらいまして、合議体の運営をどうするかとか、あるいは後輩の裁判官はどういうふうに育成していくかとか、そういうふうな問題等について集まって共同研究をするというようなことが一つございます。  それからもう一つは、先ほどもちょっと触れましたように、いままで余りやっておりませんでした法律以外の関連の分野の共同研究を少ししようということで、最初の昭和五十七年度では、医療問題を取り上げまして、共同研究をやったというふうなことがございます。そのほかにもう一つは、いまお触れになりましたように、裁判所以外のところを少し自由な立場で見てもらおう、裁判所ばかりに閉じこもっていて、よその世界のことを知らないということではいけないのではないかということで、しばらくの間裁判事務を離れまして、これは三週間、あるいは四週間くらいのところでございますが、とりあえずはいわゆるマスコミでございますが、新聞社三社、それからNHKというふうなところにことしは二人ずつ派遣いたしまして、これはもう本当にフリーな立場で見せてもらうということをし、またしつつあるわけでございます。  この目的といいますのは、先ほど来寺田委員の御指摘にもありましたように、裁判所は最近裁判官についていろいろ不祥事もございました。それだけではございませんが、それが一つの契機ということでございますが、もう少し裁判官が、できれば法律とか事件処理だけに没頭するということではなくて、少し別のことをやるという、裁判官に任官いたしましてから十年、二十年たったところで、一遍別なことをやってみる、見てみるというふうなことがいいのではないかということで、そういう目的のもとに始めたということでございます。  今後どういうふうにするかということについては、まだ確たるものはございませんけれども、まだ一年やっただけでございますから、たとえばいま申しました医療問題、これは専門研究会というふうに呼んでおりますが、医療問題に限るわけではございませんで、そういう関連領域の共同研究というものをまだ少しは続けてみたい。それから、外へ派遣いたしますものも受け入れ先との関係もございまして、いろいろ今後開拓していきたいというふうには思っておりますが、とりあえずはまだ新聞社等一年やっただけでございますので、もうしばらく続けてみたい。一回だけやったのではまだ効果もはっきりいたしませんし、もう少しそういう方向で続けてみたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  96. 中尾辰義

    中尾辰義君 今年度の研修の内容、方式はまだ決まってないんですか。
  97. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 昭和五十八年度につきましても、いま申しましたような部総括の研究会、そのほかにたとえば地方裁判所、家庭裁判所の支部長クラスの研究会をひとつやろうというようことも考えておりますし、それと専門研究、それから新聞社等への派遣というのを五十七年度に引き続き行いたい、そういうふうに考えております。
  98. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ次に、この最高裁の判決に関係いたしまして一、二お伺いをいたしたいと思いますが、最高裁の上告審の判決は、その判決の言い渡しの期日が訴訟当事者に事前に通知されずに行われていると、こういうふうに聞いているわけですけれども、五十七年九月の長沼ナイキ訴訟では、これは新聞にも出ておりますが、弁護士が問い合せをしたのにもかかわらず、言い渡しはないとこういうふうに答えて、弁護士側はだまし討ちに等しいといって最高裁に質問状を出したという、こういうことが新聞報道にもあったわけですけれども、その経緯及びこれに対する最高裁の考え方、さらに今後の措置、こういった点をお伺いしたいと思います。
  99. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 最高裁のそれぞれの法廷におかれましては、上告を棄却または却下する場合、判決言い渡し期日を当事者に告知しないという扱いになっております。これは民事訴訟法の三百九十九条の三で、上告が不適法で補正することができないような場合、この場合には口頭弁論を開かないで上告却下の判決ができる、こういうふうになっております。それから民事訴訟法の四百一条によりますと、上告状、上告理由書等の書面審理によりまして、上告理由なしと認めるときは、これまた口頭弁論を開かないで上告棄却の判決をすることができる、かようになっておるわけでございます。そこで、そのように口頭弁論を開かないで上告を却下、あるいは棄却する判決をいたします場合、それまで口頭弁論を開いておりませんので、判決言い渡し期日の告知をいたしますと、当事者といたしましては当然上告却下、あるいは上告棄却の判決だなというように判決内容が事前にわかってしまうわけでございます。そういう関係からいたしまして、判決の事前漏洩ということになりますと非常に大きな問題が出るわけでございますが、大体それと同じような形になってしまいますので、これまで当事者には期日を告知しないで呼び出し状を送達しないと、そういう扱いをとっているわけでございます。当事者に対しましては、言い渡し後直ちに判決正本を送達いたしておりますので、特に不利益は与えていないのではないか、かように考えているところでございます。  以上でございます。
  100. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、もう一つお伺いしますが、最高裁では判決の言い渡しは主文だけで判決の理由は述べないというように聞いておるわけですが、この点はどうなんですか。
  101. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) これも委員御指摘のとおり、判決言い渡しの際に主文の朗読をなさいまして、理由の朗読、あるいは要旨の告知はなさらないというのが長年の慣行になっているようでございます。この点につきましては、刑事判決の場合でございますと、判決の原本に基づかないで言い渡しができる。したがいまして、規則の規定におきましても、判決の主文及び理由を朗読してやるというようになっているわけでございまして、民事判決の場合でございますと、判決原本に基づいて言い渡しをなしますところから、主文の朗読だけで足りる、場合によって理由の朗読、あるいは理由の要旨の告知をすることもできると、こういう規定になっているわけでございますが、最高裁で判決の言い渡しをなさる場合は、原本がすでにできておりまして、当事者に即刻判決正本をお渡しすることができますので、そういう関係から理由の朗読はこれまでなされていなかったのではないかというように考えております。  事柄は裁判部の問題でございますので、事務当局として申し上げることは以上の程度で差し控えさせていただきたいと思います。
  102. 中尾辰義

    中尾辰義君 これは新聞にも出ておるんですけれども、いまもあなたがおっしゃったように、最高裁の長年の慣例で主文のみ述べると、こういうようになっていますな。慣例だけですか、これは。この場合、いまもあなたがおっしゃったように、刑事事件では、刑事訴訟規則第三十五条第二項で、「判決の宣言をするには、主文及び理由を朗読し、又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げなければならない。」こういうふうになっておりますが、理由を告げないのは規則に違反するんじゃないかと、そういうふうに思うんですが、これは規則どおりやるわけにはいかないんですか。どうです。
  103. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 刑訴規則の規定が、委員御指摘のとおりになっていることはそのとおりでございます。規則どおりにやれないかという仰せでございますが、これは先ほど申しましたように裁判部の問題でございまして、事務当局の私からこれ以上何も申し上げられませんので、御容赦いただきたいと思います。
  104. 中尾辰義

    中尾辰義君 わかりました。  時間がありませんのでこれで終わりますけれども裁判所庁舎及び構内の警備に関係いたしまして二、三お伺いしたいと思いますが、各裁判所庁舎及び構内の警備はそれぞれどういうふうになっているのか。各裁判所の警備担当者の責任において行われておるのか、それとも警備会社等に委託をして行っているのか、それをお伺いいたします。これを警備会社等に委託している裁判所はどのくらいあるのか。  それから、庁舎の出入りについて弁護士や傍聴人とトラブルが発生したことはないか、まずその点をお伺いします。
  105. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) まず、警備の関係でございますが、最高裁判所の場合は構内につきましてのみ警備会社が行っております。それ以外の裁判所につきましては、裁判所職員が警備に当たっておるのが現状でございます。  また、次のお尋ねは、外部の者の出入りについてのトラブルの起きた例があるのかないのかというお尋ねでございますが、最高裁判所につきましては、ここ数年トラブルが発生したことはないと私ども認識しております。また、下級裁判所庁舎の警備につきましては、各庁にそれぞれゆだねているところでございまして、トラブルの発生等については特段の承知はしておらないのが現状でございます。
  106. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ具体的に二、三お伺いしますが、これは去る二月の八日、仙台高裁の法廷において、被告人が証人に空き缶を細工した器具で襲いかかるという事件発生したわけです。これも新聞報道されておりますが、これは法廷における警備に手落ちはなかったのかどうか、その後の調査の結果を報告を願いたい。それと今後の防止対策ですね。  二つ目は、これは二月の二十五日、福岡地裁柳川支部構内で起きた短銃による殺人事件についても、その後の調査結果、防止対策についてお伺いしたいと思います。
  107. 小野幹雄

    最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) まず仙台高裁の事件でございますが、この被告人は身柄拘束中の被告人でございまして、当日三名の刑務官が看守して出廷しておったということでございます。たまたま証人尋問が終わりましたその直後に、証人席の後ろに被告人席がありまして、その両わきに看守が三名おったわけでございますが、いきなり被告人席から立ち上がりまして、いすにまだ座っている証人の背後に駆け寄って、証人の右顔面を左のこぶしで腕を右から左に振り払うようにして一回殴ったということでございます。横におりました刑務官三名が直ちにこれを取り押さえて、それで一応済んだわけでございますが、その取り押さえた際に、弁護人席の前の床に凶器のようなものが落ちていたということでございます。その凶器というものは、どうも缶詰の空き缶の側面を平らに伸ばしまして、それを縦に四つ折りに曲げたもので、長さが約十九センチメートル、幅が二・五センチメートルありまして、そのつかのような部分、約十センチ部分でございますけれども、そこに厚紙が巻きつけてあったということでございます。  どうも後の調べによりますと、この被告人はこの凶器で証人に危害を加えようということを企てまして、これをどうやら股間に隠して出廷したということで、それを法廷で取り出して左手に握って殴りかかったけれども、刑務官に制圧された際に床下に落としてしまったと、そういうことで結局証人にはその凶器で殴りかかるということはなくて、素手で殴りかかったということで、証人の右の首と右の目じりのあたりにちょっと痛みを感じて、若干赤くなるというようなことがあった程度で済んだわけでございます。  証人の保護につきましては、かねてから裁判所は意を払っているところでございますが、たまたまこの被告人の場合には身柄拘束中でありまして、そういう凶器を持ってくるということは裁判所も全く予想していなかったようでございますし、まして刑務官三人が看守しているというようなことでございましたので、裁判所としても全く意外であり、それについて特段の警備はなかったというようなことでございます。  この事件が起きましてから仙台高裁の方では、証人を調べるような場合にどうするかというようなことを含めまして、目下いろいろ検討しているということでございますし、これは正式な報告ではございませんけれども、拘置所の方でもこの問題を非常に重要視して、被告人がこういうものを持って出廷したということについて、いろいろ検討されているというふうに聞いております。  それから、いま一つの柳川支部の事件でございますが、この事件は、福岡地裁の報告によりますと、二月二十五日の午前十一時十分ごろでございますが、この日、十時二十分に開廷した第二回公判でございますが、それに出頭した、威力業務妨害、器物損壊、銃砲刀剣類所持等取締法違反、傷害という事件の被告人が、閉廷いたしましてこの支部の正面玄関を出てまいりまして、構内の駐車場に向かおうとしたところ、そのそばにいた男が被告人に近づいて拳銃で至近距離から発砲した。この被告人は胸に弾を受けまして、そばにいたこの被告人の妻などが一一九番しまして病院に収容したが間もなく死亡したということであります。この犯人は、どうも当日この法廷で傍聴していたらしいのでございます。この第一回公判の日にはかなり傍聴人があったようでございますが、この第二回の公判のときにはごくわずかしかいなかった。どうもそのうちの一名はこの犯人であって、あとうち一名は被告人の妻——当時情状証人として出頭したわけですが、そういうことであったということでございます。  当日の警備状況でございますが、この事件につきましては、確かに土地の暴力団と多少関連のある事件でございますが、検察庁あるいは警察から特別な警戒情報も入ってなかったし、また弁護人の方からも特に身辺警護について何の情報もなかったというようなこと。また、この事件内容から見ましても、これは単なる交通事故の賠償のもつれということで、特に暴力団の対立抗争というようなものではないというふうに考えていたということ。また、第一回公判のときにも多数傍聴人があったけれども、何のトラブルもなかった。また、この日の法廷でこの傍聴人、犯人でございますけれども、格別不審な様子はなかったというようなことから、全く警備をしていなかったということでございます。  これが発生いたしましてから、福岡地裁では管内いろいろ暴力団関係事件もございますので、この警備というようなことについて、改めていろいろと検討しているということのようでございますが、事は裁判の公開というようなことと、また、凶器を持っているというようなものを発見するためには、身体を捜検したり、あるいは所持品を検査さしてもらうというようなことで、人権にかかわる面もございますので、また、その面で慎重な考慮も必要であるというようなことでございますので、また法廷でこういうことが起こってはなりませんので、その両方の兼ね合いをいろいろ考えて、対策を考慮しているというところでございます。
  108. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 全体の予算、一千九百九十六億円余の予算ですが、まず総論的にお伺いしたいのは、これで司法の、憲法の要求する役割りを果たす上で必要かつ十分な予算と考えているのかどうか、いかがですか。
  109. 原田直郎

    最高裁判所長官代理者原田直郎君) 先ほど来るる申し上げておるところでございますが、私ども裁判所所管予算編成するに当たりましては、裁判運営支障のないようにというのが最も重大な点でございます。その点から、いろいろな財政事情等の制約もございますけれども、私どもといたしましては、十分な目配りをして編成作業に当たったつもりでございます。こういう言い方をしますとおしかりを受けるかもしれませんが、お金は多いにこしたことはないというふうな気はいたしますが、先ほど来申し上げておりますような財政状況下ということに照らして考えますと、五十八年度予算につきましてはこれでやっていけると、そのように考えている次第でございます。
  110. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 全体についてはすでに質疑もありましたので、私は最近の問題で、少年非行問題が多発しているという関係で、家裁の問題について聞きたいんですが、全体の中で家裁の予算がどのくらいかということになると何か区別ができないそうですね。  そこで、一般的に聞きますが、家裁、特に少年事件関係で人員増は必要ないという、こういう御判断なんですか。
  111. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) お答え申し上げます。  近藤委員御指摘のとおり、少年非行増加傾向にございまして、家裁で取り扱う少年保護事件を見てみますと、昭和五十六年には約六十一万件に達しているわけでございます。しかしながら、長期的に振り返つてみますと、昭和三十年代の後半から四十年代の初めにかけましては、年間約百万件の少年保護事件が係属していたわけでございます。その当時に比較いたしますと、現在特に家庭裁判所の負担が過酷であるというようには考えていないわけでございます。  裁判官の増員につきましては、委員御承知のとおり、特に判事につきましては給源が限られておりますし、そのレベルを維持しなければならない。そういう観点からいたしますと、充員の困難性というものが出てまいります。そこで私どもといたしましては、当初要求を考えます段階では、いろんな角度から検討いたしまして、あれもしたい、これもしたいということは考えてみるわけでございますけれども、結局は枠をとりましても充員できなければ意味がないわけでございますので、結局は充員可能数を見ながら、現実に相応できるような増員数というところに落ち着いてくるわけでございます。先ほど申しましたように、家裁の事件も漸増の傾向にはございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、昨今におきましては、民事裁判における特殊損害賠償事件等の処理充実強化というのがやはり最大の眼目になってまいります。片方、刑事裁判につきましては、覚せい剤取締法違反等の事件がふえておりますし、さらにはガス爆発事故であるとか、そういう関連のいわゆる非常にむずかしい過失事件、あるいは税法違反事件、あるいは収賄事件というような、非常に合議事件として適切に処理していかなければならない事件もかなり多いわけでございます。覚せい剤取締法違反事件がふえてまいりました関係で、単独係の裁判官の手がそちらの方へとられてしまう。勢いその合議率が低下してまいります。そういう関係から、合議の充実を図るために、刑事裁判のために判事三名の増もお願いいたしたい。さしあたりはそういうふうな民事事件、刑事事件充実にとりあえず力点を置いて、家庭裁判所につきましては特に裁判官の増員は今回は求めなかったわけでございます。
  112. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 家裁の問題はまた後で伺います。  この次のことは事務総長に聞きたかったんですけれども、憲法が裁判所に求めているもの、特に国民主権のもとにおける司法においては、国民基本的人権の一つとしての公正な裁判を受ける権利、これは私は司法にとっての最高の原理的価値を持つものだと、こう思うんですね。したがって、その関係で、たとえば司法の独立とか、裁判の公開、あるいは当事者主義というような観念も、この原理的な価値をいわば実現するためのものと私は位置づけるべきじゃなかろうかと、こう思うんですが、その点のお考えはどうですか。要するに、裁判の一番大事なことは、国民が公正な裁判を受ける権利じゃないかということで、その関係司法の独立とか裁判の公開等々、そしてその中でこれから関連してくる裁判の威信、あるいは裁判所の威信というようなものもそのためのものと、こう理解すべきだと思うんですが、どうかという問題です。
  113. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) もちろん司法部の使命と申しますのは適正、迅速な裁判の実現を通じまして国民権利擁護、法秩序維持に寄与するわけでございますから、委員御指摘のように、国民裁判を受ける権利というものの保障、これもまた当然重要なわけでございます。私ども司法権の独立という保障が与えられておりますのも司法部の使命である国民権利擁護と法秩序維持、これを確保するために独立の保障が与えられているものと理解しております。
  114. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで、よく言われますのは、裁判の威信とか、あるいは裁判所の威信ということが言われるわけですね。これは私はやっぱり国民主権のもとにおいては、国民から離れて威信はないと、こう思うんです。そして国民から離れたら威信がないというのは、やはり国民の側の信頼があるということですね。信頼があるというためには国民がまず知るというところから始まると思うんですね。その点はどうですか、威信とはそういう立場から見るべきだという点はどうですか。
  115. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) もちろん私ども司法部につきまして、司法部が公正に使命を果たしていくためには国民の皆さんの信頼が何よりも基礎でございます。その国民司法部に対する信頼に基礎づけられて司法部の威信というものも成り立つのではないかと考えております。
  116. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで、公開、一つは傍聴、それからもう一つは報道ですね、報道が重要な位置を占めるということはお認めになるでしょう。
  117. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 報道の重要であることは十分認識いたしております。
  118. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで、いままで法廷の写真が写されたことはありますね。私も公害裁判などあちこち出さしていただいたんですが、大体行くところは出るわけですね。ああいうことによって裁判の威信が傷つけられたとお考えになったことありますか。
  119. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) これは委員も御承知のとおり、三十年代でございましたか、一時期東京地裁の法廷の中にカメラ等が入りましてかなりのトラブルがあった事例がございます。そういう事例からいたしますと、場合によりますと、そういうことによって裁判の威信が傷つけられる場合もあるというように考えます。
  120. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 傷つけられる場合もあるけれども、私が例を挙げた、具体的に公害事件でいいですよ、これは現にやっていることだから。それで威信が傷つけられたとお考えかどうか。
  121. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) もちろん各庁によりまして、それぞれの裁判体がそれぞれのお考えによりまして、たとえば開廷前の三分間に限って写真撮影を認めるというような事例は各庁にあることは承知いたしております。そのことによって特に裁判の威信が傷つけられるというようなケースは、これまでには先ほど申しましたような例外的にはある場合もございますけれども、そうでなくて平穏裏に撮影等が行われている場合には、特に裁判の威信がそれによって傷つけられたというようには考えておりません。
  122. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 要するに例外的な場合ですね。そこで国会でもいまでもああいうように写真を撮ってましてね。これで決して国会の威信が傷つけられたとかなんとかにはならないわけで、裁判所はまたそれと違うんだということはないと思うんですね。私は裁判の威信が傷つけられた場合というのは、たとえば裁判官の不祥事、ときたま居眠りしていることがありますね、裁判長なんか。そんなのはやっぱり威信が大分落ちますね。それからあるいは誤判、それからもう一つ先ほども指摘があった裁判所内で殺人事件が起きるなんて、これなんかは私は威信を傷つけることになると、こう思うんですが、どうですか。
  123. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 誤判の問題につきましては、これはいろいろ見方もあろうかと思います。時によって裁判の誤りがあることを前提にいたしまして三審制度ということがあるわけでございますから、誤判そのこと自体が裁判の威信を傷つけるというようには考えておりません。  それから、裁判所構内での殺人事件につきましても、もちろん私ども法廷警備、庁舎警備につきまして十全の配慮はいたしておりますけれども、その配慮の外にあるような事柄によりまして突発事故が生ずるということもあり得ないわけじゃございませんので、そのことによっても特に裁判所の威信が傷つけられたというふうには考えていないわけでございます。
  124. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これは私はちょっと大事なことだと思います。「裁判所庁舎等の管理に関する規程」、その第十二条によりますと、次のような場合にはこれは退去や排除をしなければならないと書いてあるんですね。やっぱり裁判所はそういうところですから、もう国民は安心していくところですよ。たまたま裁判所がそのことを知り得なかったと。恐らくあの場合はそうだと思いますよ。やむを得なかったと思うんですよ。しかし、そういう場合に起きたことについて、あれは私は知らなかったんだから、突発事故だからこれは関係ないと、裁判所の威信なんか関係ないんだと、こういうことでは私は本当にこれから国民は安心して裁判所に行けますか。また、片や裁判所はある場合には大変厳しいチェックをしますよね。そういうことまでできる裁判所、大変権限を持っているんです。そういう中で起きたことについて、私はそれが威信にかかわる問題だと思わないその感覚の方がおかしいと思いますが、どうですか。
  125. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) お言葉を返すようで恐縮でございますけれども裁判の公開がございまして、裁判所の出入り口で厳重なチェックはいまやってない状況でございますので、私ども十分配意はいたしておりますけれども、時にはそのすきにそういうふうな突発事故が生ずることもあり得るわけでございますので、その辺のところはひとつ御理解をいただきたいと思います。
  126. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は前回起きたことを決して責めているわけじゃなくて、たとえば私が裁判所の所長だってそれはちょっと防げなかったと思います。しかし、内部で起きたことの結果に対して私はやはり責任を持つべきだと思うのです。たまたま管理がまずくって、そしてもし人が死んだ場合も、裁判所はやっぱり責任問題発生するんでしょう、管理上のミスで。その点どうですか。
  127. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 抽象的に仰せられましてもちょっとお答えができないわけでございまして、具体的なケースがございました場合に、この場合には裁判所に管理上の手落ちがあるということで、場合によれば裁判所の責任が問われる場合ももちろんあり得ようかとは思います。
  128. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで大事なことは、新聞協会から法廷内カメラ取材に関する自主基準などを設けまして認めてほしいという要請が来ておりますね。私はこれが裁判所で問題となる場合は被告人の権利、名誉の問題、あとは裁判所の威信の問題、先ほど問題にあったように。それぐらいだと思うのです。被告人の名誉の問題は、たとえばこんな両手錠で車から庁舎へ入るまで写されるよりは、あそこはもうりっぱな場所ですし、むしろ検察官と対等の場所にちゃんと座っているんですからね。元総理大臣なんかたくさん弁護人を控えて堂々とやっているんですから、私は決してこれは被告人の名誉に、しかも写ったとしましても関係がない。しかも今回の申し入れは大変自己規制がありまして、開廷前であるとか、それから代表によって写すだとか、大変ある意味ではつつましい要求だと思います。そこで私は、きょうは予算審議ですけれども、金が全然かかることじゃないんです。全然かからないどころか、逆にサービスして、国民裁判所をもっと近づけるという点では私はむしろ積極的に受けとめるべきだと思いますが、いかがですか。
  129. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) 委員御指摘のとおり、日本新聞協会におかれまして法廷のカメラ取材にかかわるルールについて検討する小委員会を設けられまして、昨年来種々御検討を重ねられました結果、撮影は代表取材とする、原則としてスチールカメラ一名、ビデオカメラ一名とする、開廷前三分間とする等の法廷内カメラ取材に関する自主基準を定められました上、今月の十七日最高裁判所にいらっしゃいまして、右自主基準をもととする法廷内カメラ取材の実現方についての配慮を求めてこられたわけでございます。  法廷内における写真の撮影につきましては、当該事件を担当する裁判所の許可にかかわっている事柄であることは、委員御承知のとおりであろうかと思います。最高裁事務当局がこれに関する方針を決定して、下級裁判所に対し指示をしたり、命令をしたりする性質の問題ではないわけではございますが、ただこの問題は裁判権の行使と、報道の自由とに関連する重要な問題でございますので、最高裁判所といたしましては、日本新聞協会から要望のありましたことを何らかの形で下級裁にも伝え、下級裁判官におかれて十分検討されるよう材料の提供という形で考えてみたいと思っております。
  130. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 伝える場合に、最高裁としては特に異存があるというような立場はお示しにならずに、まさに白紙の立場で臨まれるのだと思いますね、それが一点。  それから問題は、法廷に行く前に庁舎の中で撮影禁止やそういうチェックがありますと法廷へ持ち込めないでしょう。だから、そういう点ではこれはむしろ裁判所の法廷の中じゃなくて、いわば庁舎の管理の問題ですね。その辺での規制がありますとこれはできない。そういうことがないかどうか、その点どうですか。
  131. 山口繁

    最高裁判所長官代理者(山口繁君) まず第一点の下級裁判所にどのような形で伝えるか、こういう点につきましては、先ほど申しましたように、お見えになりましたのが三月十七日でございますので、どういう形でお伝えするかまだ現在検討中のところでございます。  それから、第二点の庁舎管理の問題でございます。これはやはり法廷において撮影を禁止しております場合には、当然庁舎内への持ち込み禁止という形になるわけでございまして、法廷内で撮影を認めるということになりますと、その部分だけは解除という形になろうかと思います。したがいまして、要は法廷内での撮影を認めるかどうかにかかわってくる事柄ではないかというように考えております。
  132. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこで、重ねてお伺いしたいのですが、ただ地域によって、たとえば東京地域はきわめて厳格でほとんど認められていないと、別の地域に行くと比較的認められているということになりますと、これは個々の裁判官の問題じゃなくて、やはりその裁判所の問題、あるいは司法行政的な面が大変やっぱりかかわっているのじゃないかと思いますので、そういう問題ではないということをひとつ明確にしてほしいということが一つですね。  それからもう一つは、新聞協会からの申し入れは開廷前三分間の問題ですからね。大体われわれ全部いままで経験してきたことですね。そういうものは決して裁判の威信とはかかわりないと思うんですけれども、その辺の見解を賜りたいと思います。
  133. 小野幹雄

    最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) まず、その裁判所が撮影を許すかどうかということでございますが、これはたてまえといたしましてはもうただいま仰せられましたとおり、これは各裁判体が訴訟指揮権、あるいは法廷警察権に基づいて決める事柄でございます。いま東京周辺というお話がございましたが、たとえば東京地裁では全面的にいまのところは許してないという状況にあるわけでございますが、これは裁判官が寄り寄り集まりまして、そしてどうあるべきかということを協議したところで、ただいま東京の場合には許さないのが相当であるというコンセンサスが得られて、そういうことになっているということでございます。その東京地裁で理由としておりますところは、その裁判の威信というようなことではございませんで、実は確かにこの報道の自由、あるいは裁判の公開というような事柄も尊重しなければいけない。しかし、一方で当事者なり、被告人なりそういう者が、その法廷の場で写真を写されることを非常に嫌う、あるいは特に被告人の場合に、これは構わないじゃないかという仰せでございましたが、実際の被告人に当たってみますと、自分が法廷で惨めな姿、そういう姿を全国にさらすというようなことはしてほしくないというのが圧倒的なようでございます。かなり昔のことになりますけれども裁判官会同で二十七年にいろいろとどうあるべきかということを協議いたしました際にも、確かに報道の自由とか、裁判の公開の原則というようなものは尊重されるべきであるけれども、しかし、被告人は法廷の場にいやでも連れてこられるということは、これは甘受してもらわなければならないけれども、被告人が嫌だと言うのに、その被告人の姿というものを全国にさらすというようなこと、被告人が嫌だと言うものを裁判所が法廷に連れてきたということの反射的な効果として、当然に国民の前に嫌な姿というものをさらさせなきゃいけないのかどうかというようなことが、非常に中心に議論されたわけでございます。この被告人の人権というものは、これはやはり尊重しなければいけないのじゃないかということで、結局は被告人に異議がないときに限って、そして、裁判所も相当と認めるときに限って開延前許すというような当時コンセンサスが得られているわけでございまして、多くの場合に、弁護人を通じて聞きましても、いやこれは困ると言われる場合が非常に多うございまして、被告人であれば構わないじゃないかという仰せでございましたけれども、お言葉を返すようでございますけれども、実際はなかなかそうはならないということで、裁判所は特に被告人の人権の配慮ということをしなければいけないのじゃないかと、こういうようなことがかなり大きなウエートを占めているというふうに考えております。
  134. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 時間ないのでこの程度にしますが、ただ、私は東京の例というのは裁判の独立から見て問題あるんじゃないでしょうかね。これは問題は合議体の裁判ですね。あるいは単独の裁判官、そこがやっぱり決めるべきで、全体で合議に基づきましてそこで決めたということは、私、ちょっとおかしいという指摘だけしておきます。  家裁問題の少年事件ですが、いただいた資料によりますと少年事件が大変激増をしているのに対して、担当裁判官は余りふえてない、調査官もふえていないんで、裁判官の一人当たりの指数がこれは昭和三十年を一〇〇として一三八、一件当たり負担件数、昭和五十年を一〇〇として一三五と、調査官の数もほとんど同じだと言うからほぼそれぐらいだと理解いたします。これは昭和五十六年ですから、最近はさらに激増し、しかも大変な社会問題化していることで大変な問題だと思うんです。  そこで問題は、もう時間ないので端的に指摘をいたしますけれども、そういう少年事件内容の大きな変化と激増に対して、家裁が十分こたえているんだろうか。二つ問題があると思います。  一つはその担当する裁判官が本当に家裁裁判官としての熱意とそのことに誇りを持ち、本当にそれにまた正しく理解して接しているのかという問題、いろんな資料によりますと、裁判官としては家裁裁判官は腰かけ的な状況で、むしろ一つの地裁、高裁から見ると低い地位の仕事じゃないかという雰囲気がある。だからそこに配属になった場合にはどうもそういう気持ちになりがちだという、その辺が一つあるように聞いております。そのことはやはり大きく事件処理に当たってもふさがっているのじゃなかろうか。それからもう一つは家裁の調査官、大変これは専門家としてそれなりの誇りと経験を持ち、いままで一生懸命担当してきたようでありますけれども、ただ最近処理件数、処理期間を短くするように、そしてたくさん処理するようにといういろいろな上からの指導やチェックがあると、こう聞いておって、なかなか家裁の調査官としての本領を発揮できないと、こう聞いています。家裁の調査官というのは、単に事件を調べただけじゃなくて、その少年と本当に接し、心からわかり合って、いわばどう処分するかよりは、どう立ち直らせるかという点が一番の問題だということが基本になって、いままでそういう立場でやってきたけれども、最近の家裁のあり方は、むしろどう画一的に処分するかという点が中心になっているのじゃないかと、こういう批判が大変強まっておりますが、それについてはいかがですか。
  135. 栗原平八郎

    最高裁判所長官代理者栗原平八郎君) お答え申し上げます。  最初の裁判官の問題は、本来は人事局所管でございますので、便宜私が家庭裁判所の実務を経験した者の一人として申し上げたいと思います。  裁判官の心境として、人それぞれこういう事件を担当したいという好みがあるわけでございます。一般的な傾向からしますれば、若い人はどちらかといいますと、民事の裁判をやりたいという、そういう志向が強いのではないかと思います。つまり、裁判官というのは法律を専攻する、法律を学び、そして法律を生かし得るような、そういう職場につきたいというようなことで裁判官になった人が多いわけでございます。かつて家庭裁判所が創設されました当時におきましては、少年審判所その他で少年保護等に関与しておられましたような方々が多く家庭裁判所に勤務し、言うならば少年保護に一生をかけようというような方がおられたわけでございますが、戦後の今日の修習制度のもとにおきましては、なかなかそのような人が得がたいということはまさしく事実であろうと思います。しかし、現に自分が家庭裁判所勤務を命ぜられた裁判官一人一人は、その仕事についての生きがいを感じなければ、あのようなめんどうな仕事は私はできないというように確信いたしておるものでございます。  それから、調査官の問題を御指摘ございましたが、それは裁判官によりましては、あるいは早く事件をやれというようなことを指示される裁判官が全くないかどうか、私はそれは全くないというようなことまでも申し上げかねるわけでございますけれども、申し上げるまでもなく、家庭裁判所使命とするところは、家庭の平和、あるいは少年の健全な育成を図るために、訴訟手続によらない、私どもの言葉で言えば社会化された手続で個別的な処遇を実現するということを使命としておるわけでございます。そのためには、単に事実があるかどうかということだけではなくして、その事実の背景にあります問題点を関係諸科学の知識を活用してそれを見きわめ、それに適応した処遇を加えるということに、家庭裁判所の持っております処遇のあり方があるわけでございます。そういう意味では、どの事件につきましても、調査官に調査命令がおり、少年事件につきましてはどの事件についても調査官に調査命令がおりるというのが原則になっておるのもそういう趣旨でございます。  しかし、事件はいろいろ多様でございます。非常に問題のある事件もあれば、問題のない事件もあるわけでございます。問題のない事件につきまして、つまり昨今非常に事件がふえておるということでございますが、その多くは年少少年のいわゆる軽微な事件が多いわけでございます。この種の事件につきまして、必ずしも詳しい、つまり少年の成育歴からさかのぼり、家族関係まで全部調査しなければ、当該少年が一過性の非行であるかどうかということを見きわめ得ないようなものではないわけでございます。そういう力のない調査官を私どもは養成しておらないわけでございます。したがいまして、そういう必要性がないだけでなく、そのような少年につきましては、むしろ早期に治療する、なるべく迅速に処遇を出してやるということの方がむしろ望ましい。また、裁判官の立場からいたしますれば、そのような軽微な事件につきまして調査をする、調査内容としては、少年のみならず家族関係のプライバシーに触れるような事柄についても調査をするわけでございます。そのような軽微な事件について詳しい調査をするということが、少年なり家族の人権とのかかわりにおいて、果たして相当かどうかという判断は、裁判官として場合によってはせざるを得ない場合もあることを御了解いただきたいというように思います。  ですから、私どもが考えておりますのは、軽微な事件につきましては軽微な事件にふさわしい調査を、問題のある事件につきましては問題のある調査を、詳しい調査、そのえり分けをどうするかということでございますが、昨今ではむしろ経験の浅い者が問題があるかないかということを、ただ事件の非行名だけを見て選別するのではなくして、熟達した、言うならば主任調査官等がそれに当たって問題があるかないかを選別しまして、それに応じてきめ細かい調査を行うということが相当であろうというように考えておりますし、恐らく全国の家庭裁判所もそのような線で事件処理をしてくれておるものと理解しておるわけでございます。  以上でございます。
  136. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 時間が来てしまったので、あと意見だけ申しますけれども、きょうは本当の全体の問題のごく一部だけをちょっと指摘をしたんですけれども、特に最近の少年事件傾向から見ますと、より一層やはり一つ一つに深くかかわり合う必要がある問題がたくさん起きているし、学校が余りうまく対応していないという状況がありますので、私はむしろ統計とすれば、事件に対する一件当たりの処理期間が長くなっているんじゃないかと思うんですが、資料を見ますとそれが短くなっている。この点で私はむしろ現場のひとつ担当の調査官なり、その辺の声をもっとよく聞いてほしいというふうな気持ちを持っているんです。これが一つです。  それから、先ほど若い裁判官が民事の裁判をやりたいという志向性があるというので、そういう裁判所に対して、ある時期青法協裁判官を家裁に大分大量に提供したという、これは制裁的にです。そのことが私は今日の風潮をつくった一つの原因じゃなかろうかということをここで指摘せざるを得ないんです。私は元青法協議長だから特に申し上げますけれども、今後そういうことのないようにということを申し上げて質問を終わります。
  137. 鈴木一弘

    委員長鈴木一弘君) 以上をもちまして裁判所所管に関する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十六分散会