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1983-03-30 第98回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月三十日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      宮澤  弘君     藤田 正明君  三月二十六日     辞任         補欠選任      藤田 正明君     宮澤  弘君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         増田  盛君     理 事                 安孫子藤吉君                 福田 宏一君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 稲嶺 一郎君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 町村 金五君                 宮澤  弘君                 田中寿美子君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 山田  勇君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務大臣官房長  枝村 純郎君        外務大臣官房審        議官       田中 義具君        外務大臣官房外        務参事官     都甲 岳洋君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        外務省情報文化        局長       三宅 和助君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によつて改正され及び補足された国際博覧会に関する条約改正の受諾について承認を求めるの件(内閣提出) ○領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 増田盛

    委員長増田盛君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。安倍外務大臣
  3. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ただいま議題となりました在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。  改正の第一は、在外公館設置関係であります。今回新たに設置しようとするのは、大使館二、総領事館一の計三館であります。大使館は、いずれも他の国に駐在するわが方大使をして兼轄させるものでありまして、カリブ海にあるアンティグァ・バーブーダ及び中米にあるベリーズの二国に設置するものであります。これら二国は、いずれも一昨年英国の施政下から独立したものであります。他方総領事館は、サウディ・アラビアジェッダに実際に事務所を開設するものであります。これは、サウディ・アラビア外務省が明年ジェッダより首都リアドに移転するに伴い、わが方大使館も同地に移転するため設置するものであります。  改正点の第二は、これら新設の在外公館に勤務する在外職員在勤基本手当基準額を定めるものであります。  改正点の第三は、最近の為替相場変動等にかんがみ、既設在外公館に勤務する在外職員在勤基本手当基準額を改定するものであります。  最後の改正点は、在サウディ・アラビア及び在ジンバブエの各日本国大使館所在地名の変更であります。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 増田盛

    委員長増田盛君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 松前達郎

    松前達郎君 ただいま提案理由説明がございました件についてですが、この中に「他の国に駐在するわが方大使をして兼轄させる」ということが書いてあるわけですが、これはどこの大使が兼轄をするのか、それをちょっとお伺いしたいと思います。
  6. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) アンティグァ・バーブーダにつきましてはトリニダードトバゴの駐在大使が兼轄いたします。ベリーズにつきましてはメキシコ駐在大使が兼轄することにしております。
  7. 松前達郎

    松前達郎君 この前もちょっと質問で触れたわけなのですが、これは前から問題になっておりました在外公館からの国際的な情報の不足という問題がいろいろな例でいままで挙がっておるわけなのですが、これを改良していこうということで、 たとえば無線局設置その他も含めていろいろと努力をされておられることは十分理解できるわけですが、このたび予定として本省情報関係のセクションを設置されるということをお伺いしておるわけなのですが、これについて一体どういう役割りを果たしていこうというふうにお考えなのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  8. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 御指摘のとおり、まさに外務省に対する期待の中で最も大きなものとして情報収集管理、そういった機能の強化ということがあるわけでございまして、私ども在外公館を通ずる情報収集ということにはいろんな面で配慮してまいっております。  専門家の育成、たとえばここでもたびたび御指摘のありましたアラビア語専門家は、現在六十二名を擁するに至っておりますけれども、そういったことで、私ども、たとえば電信量で見ましても十年前に比べれば十数倍にふえておる。この中にはもちろん外交行政に伴う事務の処理にかかわるものもございますが、その大部分は情報の量の増加に伴うものでございます。  こういうふうに、在外公館における情報収集活動というものはまだまだ不十分ではございますけれども、逐次改善しておるし今後も改善していくつもりでございますが、そういった得られた情報本省においてプロセスし、これを政策に役立て、あるいは関係官庁その他有効に利用していただけるところに有効に利用できるような形で提供する、この業務がますます重要になってきているように考えております。  今回情報課設置考えておりますのも、まさにそういったところに対応するためでございまして、一つには、公開情報分析整理しこれを関係地域局に提供する、あるいは在外から寄せられました情報を適当な形にプロセスしてこれを政策担当者、高いレベルにも処理していただきやすい形で御提供申し上げる、そういったふうなこと。それから、さらには今後情報収集手段として在外公館員がいろいろな方面に接触して集めるというほかに、たとえば人工衛星というようなものの利用考えられましょう。そのほか各種の発達した科学技術手段による収集可能性があるわけでございますから、それをどういうふうに利用していくかというようなことについての調査研究、そういうこともやらしたいというふうに思っております。
  9. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、この情報収集並びにその分析等を含めておやりになるということですけれども、これは名前情報課という名前設置をされると、こういうふうに伺っておるのですが、これは外務省の中のどこに所属するようになるのですか。
  10. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 調査企画部でございます。
  11. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、そこで外国からの、在外公館等からの情報が入ってくるわけですね。これらの情報については、これは情報公開の問題もありますけれども、一般的な公開というのは考えておられますか。それとも分析をした後に公開をするのか。その辺までは考えておられませんか。
  12. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 公開の問題は情報収集の問題とは若干異なる次元の問題のように考えますが、得られました情報の中で差し支えのないもの、あるいは若干秘の要素を含むものでございましても、民間その他利用していただけると思うものは、これをいろいろな手段で、外務省自身の資料という形で、あるいは各種協力団体の発行しております刊行物というようなものを通じて、その他日々に提供ということも考えていく。もちろん、これ各地域局その他の原局がやるわけでございますけれども、そういったものについて総合的に考えていくという職務もこの情報課が持つということになろうと考えます。  ただ、他方いわゆる情報公開ということにつきましては、外交文書については、俗に私ども三十年ルールと申しておりますけれども、三十年たったものは原則として公開するということで逐次実施していることは御承知のとおりでございます。
  13. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、いまちょっとお触れになったのですが、人工衛星等利用の問題もありますね。この人工衛星利用というのは平和的な方面、いわゆる資源探査的な面と、あるいはその他気象とかいろいろなものがありますけれども、そういうわれわれの生活に直結する分野と、それからさらに軍事情報というのがあるわけですね。これについて国連の場で、たしかフランス国連人工衛星といいますか査察衛星といいますか、こういうものを打ち上げるという案がかつて出されたようなことを聞いておるのです。考え方によっては、これらは共同で利用していくという、加盟国がその情報を入手できるということですね。そういう制約があるかもしれませんが、これから先の軍拡競争といいますか、軍備増強等、あるいは基地等をたくさんつくっていくというふうな傾向にありますから、そういうものを情報的な手段でもって世論に訴えていってこれを抑止していく、抑制をしていくということができるのじゃないかと。ですからそう見ますと、情報というものは、ある意味で言うと非常に重要な国際世論提起の大きな源になるのじゃないかと思うのですね。ですから、わが国の場合には武器とかそういう問題と関係なく、情報によってやはり世界的な軍拡に対する歯どめをするという、そういうことで今後協力することが考えられるかどうか。フランス提案そのものに協力するとか何とかいうことよりも、全体的に見てそういう方向に進むという考え方をお持ちかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  14. 門田省三

    政府委員門田省三君) ただいま松前委員からお触れになられましたいわゆるフランス提案につきましてお答え申し上げたいと思います。  第一回の軍縮特別総会におきまして、当時のフランス大統領ジスカールデスタン軍縮に関する提案を三つ行いましたが、その一つがまさに御指摘になりました査察衛星国連の手によって打ち上げ、軍縮のための査察を行うという提案でございます。この提案については各国とも大きな関心を当然寄せたわけでございますが、この査察衛星の打ち上げという問題はいろいろな面で慎重検討を要する側面が多いわけでございます。そういうことで、この提案についての具体的な検討措置ぶりというものにつきましては、まだその緒についてはおりません。  しかしながら、情報を通ずる特に査察の点につきましての軍縮との意味合い、これにつきましては非常に関心の強いものがございます。大方の関心は引き続きあるということを申し添えさせていただきたいと思います。
  15. 松前達郎

    松前達郎君 これもわれわれができる範囲の、われわれのできる軍縮活動といいますかね、そういうものと大きな関係を持つのじゃないかと私は思っておるので、これらの提案がもしか今後も出てくるようでありましたら、ひとつその辺は十分検討した方がいいのじゃないかと私は考えておるわけです。  たとえば、ソ連がアフガニスタンに侵攻をしたとき、この内輪話も私聞いたのですけれども、それもこの委員会で申し上げたかもしれませんが、必ずしもソ連が一〇〇%全員でもって首脳部が賛成をしたわけではない、ハト派も中にはおったそうですがね。その最終的な決議をするときに、前もってアフガン国境ソ連軍が集結をしているということがビッグバードでわかっていたにもかかわらず、アメリカはこれを発表しなかった。もう二十五日ぐらい前からわかっていた。もしかあのとき発表していればできにくくなったのじゃないかということをハト派が言っているわけですね。ですから、そういう意味からしますと、やはりこの国際的な世論の中でそういった軍事行動等を抑制する大きな役割りも持つのじゃないか、情報がそういう意味では非常に大きな意味を持っているのじゃないかと、私はそう思っているものですから、まあ何もソ連ばかりではなくて、これからの核戦略の時代にいろいろとその査察の問題が出て くると思います。これは国連でやるというのであればこれはもう公平な査察の結果が公表されるわけなので、大いに期待をしていいのじゃないかと私は考えておりますので、その点もひとつあわせて考えていただくと大変うれしいと思うのです。  その情報の問題で、たとえば公開する場合でも、入手した情報を選別して公開いたしますと情報操作ということにつながっていくものですから、そういうふうなことがないように、あるいは軍事情報そのものもこれまた深みに入り込みますと非常に危険なことも考えられるし、かつての戦前戦争中を通じての情報収集と同じようなことをやるようになるとまたこれ大変な問題になりますから、情報課というものの運営というものをひとつ十分その辺気をつけてやっていただきたい、これを私から要望しておきたいと思います。  それから次には、これは最近いろいろと問題になっておりますINF制限交渉の問題ですが、アメリカがゼロオプションから多少妥協をしたような案を提案したわけなのですけれども、これはもうすでにヨーロッパだけの問題じゃなくて、極東における問題まで含めて考えていかなきゃならない、これはもう当然なことだと私は思っております。そしてその事前に、レーガン大統領の方からわが国意向打診してきたというニュースも入っておるわけですが、もうその内容について発表されてもいいのじゃないかと思うのですが、果たしてそういう打診があったのか、もしあったとしましたら、差し支えない程度でどういう打診があったのか、これをひとつお伺いしたいと思うのです。
  16. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) レーガン大統領から日本に対して親書が来たかどうかということにつきましては、これはやはり相手のあることですし、いまここでコメントすることはちょっと差し控えさしていただきたいと思いますが、しかし、アメリカ日本との間では非常に詳細にわたりましてINF交渉に臨む方針につきまして打ち合わせといいますか、相談はいたしております。アメリカからも、今後のINF交渉に対してこういうふうに臨みたいと、わが国としてもそれに対してはあくまでもやはりグローバルな立場で、なおかつやはり極東が犠牲になることのないようにこれはやってもらいたいということをアメリカに対しても説明をいたしておりまして、その間については日米間においては呼吸を合わせてやっておるということでございます。
  17. 松前達郎

    松前達郎君 来ているとか来ていないとかいう問題ですとなかなかおっしゃりにくいのじゃないかと思いますが、私の方は勝手に解釈いたしまして、もしか来ていないのなら来ていないとはっきりおっしゃるはずだということで了解をしておきたいと思いますけれども。  ソビエト中距離ミサイルのSS20がわが国にとって脅威であると。これはもう射程範囲に入っておるわけですから当然そういうことになるわけであります。そうなりますと、これ、核弾頭を積むのが主目的なわけですから、いわゆる核戦略として極東における緊張というものがどんどん高まっていってしまう。そうなりますとヨーロッパだけの問題じゃない。さっき申し上げたように、極東においても大きな問題が出てくるわけで、ソビエト側がそれに対して、もう二年ぐらい前だったと思うのですが、核による攻撃をお互いに行わないための提案というものを、たとえば協定とかそういうものを日ソ間で単独に結んでもいいのだというふうなことの発言——発言というか記事が、たしかソビエト側新聞に出ていたと。ソビエト側新聞に出ているということはソビエト政府意向であると、こういうふうなことになるわけですね。ですから、核による攻撃ソビエト日本に対して行わないのだと。そのためにはやはりただ言葉だけではなくて協定を結ぼうじゃないかという提案に対して、日本政府としてこれらを検討するべきじゃないかと。すぐその協定を結ぼうとかそういうことは簡単にはできないかもしれませんが、しかし、こういう提案に対する検討というものはある程度しておかなきゃならないのじゃないかと思うのです。この前もちょっとお伺いしましたけれども、明確に御返事がなかったものですから、いままた再度お伺いするわけですが、それについてはいかがでしょう。
  18. 門田省三

    政府委員門田省三君) お答え申し上げます。  まず、わが国非核原則を国是として堅持いたしております。したがいまして、いまさらソ連が申すようなわが国の約束をするという必要はないわけでございます。他方、私ども了解では、ソ連側主張は、日本が一定の条件を約束すれば核の攻撃を行わないということでございますが、そのためには、まず極東方面に向けられておりますところの核兵器というものの撤去、廃棄ということが前提になろうかというふうに考えるものでございます。日本に向けての核の兵器が存在するという条件で、一方的にある場合には核攻撃を行わない、あるときにはそうでないというふうな立場を堅持しようとしているソ連側の態度というものには理解ができない、かように考えておるものでございます。
  19. 松前達郎

    松前達郎君 その辺がいろいろ議論もあるわけなのですけれども非核原則があるということを回答しても構わないと思うのですね。ですから、そんなものは必要ないというのであれば、そのとおりソ連側に言っておけばそれで一応事は済んでしまう。ところがどうも逆に見ますと、仮に結ぶ段取りを始めた、あるいは結んだということになりますと、わが国が今後核を導入するときの足かせになるのじゃないかという逆の発想もあるわけなので、ですから、そういう逆発想から考えた場合非常に問題になると思うのですが、いずれにしても非核原則というものを堅持するということですから、これをやはりソ連側にはっきりと認識をさせていく、今後とも堅持するという問題。そうすればいまの問題は、ソ連は核で、核を持たない国は攻撃しないと言っているのですから、本当かうそかは別として。ですから、ある意味ではそれとの関連がついてくるのじゃないか、こういうふうに思うわけなので、これはもうすでに公表していることですから、これについては問題はないと思いますけれども。  そういうことと極東緊張の問題を考えたときに、どうも最近はオホーツク海が非常に重要な海になってきたというふうないろいろな議論があるわけなのですね。これはオホーツク海にたとえばソ連デルタ型原潜ですとか、あるいはいま建造して、もう一隻はできたと思います、二隻目に入っていると思いますが、タイフーン型のチタン製潜水艦などが配備されますと、これは直接潜水艦からの弾道弾でもってアメリカ攻撃できるということになるわけですね。距離からいきましても十分カバーできてしまう。そういうふうな意味からすると、オホーツク海というのは非常に今後の問題として重要な海域になるのだと、こういうふうな意見があるのです。  こうなってきますと、わが国がいまソ連側主張しております北方領土の問題も、これはオホーツク海に直面しているわけですから、非常に大きな課題といいますか、北方領土返還問題に関して大きな問題をまたここに新たに生み出すことになるのじゃないか、そういうふうに思うのですが、こうなってくると私は北方領土を返すわけがないじゃないかという気がしてならないですね、幾らキャンペーンを張っても。ですからその辺どうなのか。たとえばソビエトは、日本が安保を廃棄すれば返すのか。あるいは私は、もうしようがないから、北方領土わが国潜在主権だけ認めさしてソ連にリースするのか、ちょうど沖縄みたいに。その辺の問題もいろいろ出てくると思うのですね。ですから、極東における戦略的な軍事的な緊張というものが非常に北方領土返還に関して大きなウエートを持ってくるのじゃないかと私は思うのですけれども、それに関して大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  20. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにおっしゃるようにソ連極東に、特にいまお話のようなオホーツク周辺等軍事力を強化しておりますし、北方四島そのもの軍備を増強しているということ はこれは事実であります。しかし、そうしたソ連の戦略的な立場というものもあるかもしれませんが、北方四島というのは、あくまでも日本固有領土であることはこれはもう歴史的な事実から見ましても明白でありますし、わが国としてはその主張を変えることは絶対できない、あくまでも今後ともソ連交渉を進めて、北方四島の返還は実現をしたいと。確かにおっしゃるように、いますぐ返してもらえるかどうかこれはなかなか困難だと思います。しかし、われわれはやっぱりこの北方四島に対する返還国民の悲願、われわれの主張を変えるわけにいかないわけですから、腰を据えて今後ともソ連との間で交渉の糸口をつくって北方四島の返還のひとつ道を開いていかなきゃならない、こういうふうに思っております。そのために今後とも全力を傾ける考えでありますし、今後とも北方四島を、われわれがとにかくこれを放棄するなんということはもう絶対にあり得ないことであります。北方四島を返還することによって日ソの間に平和条約というものを結ぶということが、これがやはり日ソ間の真の友好関係を樹立することになるわけでありますし、それがまたオホーツク海その他の周辺の政治の安定というものにも私はつながっていくと、こういうふうに思うわけでございますし、こういう方向でひとつこれからも外交努力を積み重ねてまいりたいと思います。
  21. 松前達郎

    松前達郎君 大臣がおっしゃったとおりだと思うのです。北方領土の四島の返還というのは、われわれの、国民の願望だということはもう間違いないわけですし、固有領土であるということも歴史的に見まして根拠もあるわけですから。その返還をただ叫んでいてもなかなか返還にならないわけです。いま申し上げたのは、どんどんと極東緊張が増加すればするに従って、この返還はだんだん遠のいていってしまうのじゃないか。ですから、返還の問題と軍事戦略の問題と非常にリンクしている問題だろうと私は思うのですね。そういう意味で申し上げたわけなので、たとえば国後に飛行場ができたとか基地があるとかいう、これはもう写真等である程度明らかになっています。択捉にもあるわけですね。択捉の真ん中よりちょっと北の方、ここにも巨大な飛行場がもうすでに二つ、一つは小さいのですが、できている。これもサテライトからの情報で、はっきり多分それらしきものが出てきているわけです。サテライトといっても軍事衛星じゃなくて資源衛星ですね。ですから、どんどんそこを基地化していってしまう。基地化すればするほどソ連側としては返還はしにくくなる。しないだろう。そこへもってきてオホーツク海を含めた極東緊張というものが高まってくれば、なおさらあれが重要になってしまう。ですから、いまなるべく早期に平和条約交渉といいますか、こういうものを始めたいとおっしゃいましたが、余りほうっておいたらもうほとんど不可能になってしまうのじゃないか。いまでも相当むずかしい。ほとんど不可能に近いぐらいむずかしいということはわかりますけれども、その辺の打開をどういうふうに今後していくか。ただ声を大にして返還しろと言ったって、これ何にもならないので、その辺の返還に対する戦略、外交戦略というものも含めて今後お考えいただければと思うのです。もちろんもう外務省としては考えておられると思いますけれども、その辺、いま大臣がおっしゃった平和条約の問題まで含めて今後やっていただければと思うのです。  さて、北方領土はそのぐらいにいたしまして、もうすでに軍事戦略というものが、地球上だけじゃなくなって宇宙まで最近は発展をしてきておるわけですね。アメリカの場合ですとレーガン大統領が、新しい、いわゆる宇宙を戦略の場として使うような内容のレーザー兵器とかあるいはABMシステムの開発とかいうものを提案しておるようでありますけれども、そうなりますと、とめどもなく軍拡といいますか軍事競争が進んでいってしまうというふうに思うわけなのです。外務省の場合は、宇宙三条約というのがございますね。これに今度加盟をしようということを決意されたと。これはもう前から問題になっておったわけでありますが、そういうことも報道されておるのですが、もうこの宇宙三条約というのは古いのですね。ただ宇宙飛行士の救助とかあるいは人工衛星の打ち上げのための登録の問題だとかあるいは落下物に対する損害賠償とかこんなのは前の話であって、いまもうそんなのから次元の違うところで宇宙戦略というのが始まっているわけですから、この際また日本としてもやはり軍縮に向けての努力はするべきだと皆さんおっしゃっているわけですから、こういった問題に何とか歯どめをかけるということで、国連の場でも結構ですし、何か提案なり何なり、新しい宇宙の軍拡競争の歯どめの提案というものができないものかと私は思っておるわけなのです。何か外務省の方でそういうことをお考えになっておられるか。これはコンクリートになっていなくても結構ですが、そういう方向検討されているのかどうか。ある程度内容が、考えておられることがもしかわかりましたらお知らせいただきたい、かように思うのですけれども、いかがでしょうか。
  22. 門田省三

    政府委員門田省三君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘がございましたように、宇宙における軍縮の問題、これは非常に重要であろうと思います。特に、将来を展望するときに一層その重要性が痛感されるものと考えます。  国連及びジュネーブの軍縮委員会におきましてもこの問題は真剣に取り上げられておりまして、わが国わが国軍縮外交の一つの柱として宇宙における軍拡競争の防止ということに努力しているところでございます。  具体的には、昨年の秋の国連総会におきまして宇宙における軍備競争の防止という決議案が採択されましたが、わが国は共同提案国となりまして積極的にこの決議案の採択に努力いたしました。内容は、ジュネーブの軍縮委員会に対しまして軍備競争防止のための協定及び対衛星兵器体系禁止のための協定に関する交渉について検討を継続するように要請するという内容のものでございます。  なお、また話は若干さかのぼりますけれども、一九六七年に宇宙条約が採択されました際に、わが国はいち早くこれに署名しかつ批准を行ったという実績がございます。軍縮の面におきましては、宇宙の問題というものを常に念頭の奥底深く置いて努力いたしているというふうに御了解いただきたいと存じます。
  23. 松前達郎

    松前達郎君 宇宙の問題、これについてはわが国でも人工衛星の打ち上げその他もやっておりますし、世界の中でも衛星の打ち上げの数で言いますと相当上位にあるわけですね。三番目でしたか、二番目でしたか、そのぐらいにあると思うのです。ですから、やはり宇宙に関する問題をわれわれとして真剣に取り上げながら、いまおっしゃったように後からフォローするのじゃなくて、真っ先に私どもの方でその問題を取り上げて論議をし、いろいろな条約等も含めて提案をしていくべきじゃないか、こういうふうに思っておるわけなので、そういう意味でさっきの三条約のことを申し上げたわけなのですけれども、どうも最近の様子を見ますと、諸外国の方が先行いたしましてそれで俎上に上がってからどうしようかと考えているような状況で、しかもその背後にいろいろな思惑が絡んでなかなかこれが積極的に加盟したりあるいは提案に賛成したりできない。何かどうもよそから見ておりますとそういう感じを私持つのです。そうじゃなければ結構なのですが。ですから、もうこの際積極的にわが国の方からこういった問題を取り上げていくということで御努力いただければいいと思うのですね。そうしませんと、やはり平和のための努力というものがどうもいつも後追いになってしまう。もっと積極的にやった方がいいのじゃないか、そういう感じを私持っておりますので、その点いま要望をいたしておきたいと思うのです。  そういうことで、だんだんとエスカレートしていく軍拡競争の中で、これはいまちょうどそれに関してのいろいろなディスカッションが行われて いるようでありますけれども、最近の傾向から見ますと、抑止力そのものがバランスのとれた軍備のもとに抑止をするということが基本になっておるようですが、どうもそれが、やっぱりバランスがとれているというか、一歩先んじたいというのが各国の一つ考え方だと思うのですね。そして安心したいと。ですから、バランスをとるということは恐らく軍拡競争そのものをアクセラレートする方向に進むことは間違いないわけなので、その辺をじゃどうやって今度縮めていくか。バランスをとりながら縮めていくかということが非常にむずかしいことだろうと思うのですが、そのことにわれわれ日本としても積極的に努力をしていく、これが必要であろうと私は考えておるので、この辺を含めて大臣ひとつ、もちろん大臣はそういう方向で御努力されると思いますけれども、一言御意見をいただいて私の質問を終わりたいと思うのです。
  24. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まさにおっしゃるように、いま世界で一番大きな課題はやはり軍縮の問題だと思います。特に核軍縮をどうするかということであろうと思います。現実的にはINF交渉がこれから本格的に始まっていくわけでありますが、われわれは何としてもこうした核軍縮交渉を成功さしてバランスのとれた軍縮が実現されるように努力しなきゃならぬと思うわけであります。そのためには、日本もああした原爆による惨禍を受けた国ですから、それだけに積極的に日本としての主張関係国に対して強力に述べて、そうして成功に導くための役割りを果たしていかなきゃならぬと思っております。  先ほど申し上げましたように、アメリカとの間でも今回のINF交渉に臨む態度について日本立場を鮮明にして、アメリカにも日本立場を踏まえた形でこのINF交渉に臨むように強く要請しておりますし、またヨーロッパとも緊密な連携をとりながら意見の交換を進めて、われわれの主張を述べております。核軍縮交渉ということになりますと米ソでありますが、一方のソ連に対しましても、われわれとしてもソ連の当局に対しまして、これまでもしばしば核軍縮に対して、特にSS20等の極東配備についての反省を求めておりますし、四月の十二日から実は日ソの間で高級事務レベル会談が始まります。カーピッツァというソ連の次官も来るわけでございますから、そういう中でいまの日本の核軍縮に対する考え方を詳しく説明をいたしまして、ソ連の理解を求める努力をしていきたいと思います。あるいはまた私も、できれば機会を見てソ連のグロムイコ外相とお目にかかって、そうした問題等についての日本立場を申し上げて、ソ連の核軍縮に臨む理解を求めていかなければならぬ。もちろん国連総会等、あるいは国連軍縮委員会等において積極的な主張を繰り返していくことは当然であろうと思いますが、非常にむずかしい時期にきておるだけに、平和国家、平和外交を推進する日本役割りというものが非常に私は重大になってきた、その責任を踏まえてこれから取り組んでまいりたい、こういうふうに思います。
  25. 松前達郎

    松前達郎君 ありがとうございました。
  26. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 政府が従来から一貫して主張もしてまいりましたし、私どももいろんな形で御提言申し上げていることは、将来ともにわたって日本は平和外交を強力に推進して世界の安全保障のために寄与するということであろうと思います。  ところで、しばしば本件が議題となりましたときに、何回か歴代の大臣にも申し上げてまいりましたけれども外務省の機能強化というものは与党の立場の方でも大変その点を痛切にお感じになっていらっしゃる。恐らく私を含めてほかの党の方もそうであろうということは、いまの状態で果たして、理想的なと申し上げた方がいいのか、十二分に発揮し得る体制というものが一体いつの時点で達成できるのだろうかと。現状においてはなかなか非常に厳しい側面を実は持っているわけです。  今回臨調から最終答申が出されました。その内容に若干私は抵抗がないではございませんけれども、臨調は臨調として相当英知をしぼってまとめ上げられたのであろうというふうに思うのですが、今後の日本外交をさらに強力に進める上から、まず安倍さんからこの臨調答申に対する評価と、そしてまた現実的に具体化することが可能であるのかどうなのか、その点からお伺いをしてまいりたいと思います。
  27. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私どもとしても、やはり外務省の外交の実施体制を強化していくということは、いまの状況から見まして特に必要だということを痛感いたしましてこれまでもその努力を重ねてきておるわけでございますが、まだ十分でないわけでございます。  そういう中にあって臨調から答申をいただいたわけであります。これは臨調としては、いまの外務省の機能等を見まして、やはり情報収集あるいは分析管理機能あるいはまた政策調整機能、さらに広報、文化交流機能をもっと充実しなきゃならぬと、こういう高い立場からの御判断のもとの答申であったと思います。その点はわれわれも評価をいたしておりますし、われわれとしても基本的にはこの臨調の答申を最大限に尊重してこれを実施していくという、基本線としては考えておるわけでございますが、ただその中でちょっとわれわれが首をかしげる点は、情報文化局というのを廃止する点についてでありまして、これは廃止すると。そのかわり情報調査局というのをつくるわけですから、それはそれなりにわかるわけですが、報道官を設けるというのが答申の内容にありますけれども、この報道官の立場というのが、これまでは情報文化局長がやっておりましたけれども、それをいわば一ランク下げたような形で報道官を設けると、こういう形になっておりますが、私は、これまでの情報文化局長が果たした対外あるいは対内広報に責任を持つという立場から見ますとちょっと問題があるのじゃないかと。これはただ外務省だけの情報あるいは広報のマスコミに対する説明とか内外に対する広報とかということじゃなくて、国全体の立場を代表した形でのいわゆるスポークスマンの役割りを持っておるわけですから、そういう面から見ますと、これからは非常に情報収集が大事であると同時に情報の内外に対するPRというのも非常に重要になったときに、これがちょっと少し格下げになるというふうな印象は対内的にもそうですし、対外的にも少し問題があるのじゃないかというふうな感じを、私自身は率直にしておるわけでありまして、ですから、基本的にはわれわれはこれを尊重していきたいと思いますが、もっとそういう面について今後具体的にこれを実行する場合には調整を要する、いま申し上げましたような問題点もあると、こういうふうに私は率直に感じておるわけであります。
  28. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 総理が、しばしば臨調答申についての所信をお述べになってまいりましたね。それは一貫して尊重、尊重ということは非常に幅広い解釈もできようかというふうに思うのです。ただ、われわれが受けとめる際には、これは尊重すると同時に厳重に守っていく、必ず実現をするというふうな認識に立つわけであります。しかし、いま答弁を伺っておりましても、やはり長年外務省として蓄積された経験というものに立脚すれば、果たしてそれが円滑な機能強化の上でその役割りを果たすかどうかとなりますと、いまお述べになったような問題点が出てくるであろうと。ですから、原則的には尊重しつつも調整を図ると。ただ、この調整を図る方がだんだん間口が広がってきますと、果たしていままで尊重すると言った総理の発言というものが一体どういうふうになるのであろうか。これは外務省に限らずに、ほかの省庁においても空中分解するようなそういう危険性が出てきやしまいかというおそれが実はないではない。その辺は心配はございませんね。
  29. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、閣議でも臨調の答申は最大限に尊重するということをわれわれは決めておるわけですから、臨調答申全体としてはそういう形で尊重してわれわれは実行しなければならぬと思いますけれども、しかし、具体的 な内容については、おっしゃいましたような歴史的なこれまで積み重ねてきた役割りというのがあるわけですし、そして、これからの新しいまた役割りというのも出てくるわけですから、そういう点等もやっぱり踏まえながら調整すべき点は調整をしていかなければならねと私は思うのですね。全部一〇〇%これを実行しろと、こう言われても、これからの外務省の実際の機能を充実していくという面から見ると、果たして将来どちらがいいかということを判断するときに、やっぱりわれわれも時間を少々いただいて、そして調整を図っていかなければならぬと、こういうふうに考えますけれども、その方向で私ども努力をこれから重ねてまいりたいと、こういうふうに思うわけです。
  30. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私自身も、いままで立案計画された外務省方向というものについては一応評価しているのです。できるだけ早い時期にわれわれが申し上げているような外務省の機能強化に到達するようにという願望を込めて何回か申し上げました。ところが、なかなかそれがいまおっしゃるようにいかないわけですね。大臣がかわるたびごとにまたお考えが違うのかなという感じも受けないではない。本当はしょっちゅう変わってもらっちゃ困る場合もあるわけです。外交政策というのは、その辺で朝令暮改みたいなことになっても、実に国民が迷惑するわけでございますから。  それはともかくとして、最近おたくの方から出された大変簡潔な資料があるのですよね。これを拝見しましてもいまだしという感じをぬぐい切れないわけです。  たとえば外務公務員の増員にいたしましても、この七年間で何人おふえになっているかおわかりですか。これはこの中にちゃんと入っているのです。それで外務省としては、できるだけ早い時期にイタリア並みにとかあるいはドイツ並みにレベルアップしたいということをしばしばいままで強調されてきました。しかし、現状としては行政改革等のそういう厳しい側面もありますので、他省とのバランスも考えつつということになるのでしょうけれども、事外交については、私は例外措置をとられてもいいのではないかというくらいの厳しい判断を持っているわけです。それで、平均しますと一年に七十人しかふえていないのです。そうすると、五千名、六千名にするためには、これが三十年以上かかるという——短絡的な計算ですよ、単純な計算でいきますとそういう計算になっちゃうのです。外交官というのは、上級試験を通って直ちに仕事ができるというわけにいきません。やっぱり少なくとも最低十年はかかるでしょう。そういう年限を考えていった場合に、もう百年河清を待つようなことになりはしまいかということのおそれがあるわけです。  しばしばこういった資料を中心にして切ない願望を外務省は持っているのじゃないか。けれども、短期、中期、長期の展望に立っても、果たして一体——いつごろまでというその目標も実は掲げられたことがあるのです。その目標なんかとてもじゃないけれども現実的に不可能です。外交を強力に進めるという、平和外交を強力に進めるということの必要性は感じておりましても、実際その衝に当たる外務公務員の方の内容の強化というものが図られませんと、これはもう言うべくして実を結ばないということになりはしないかということを痛切に感ずるのですが、安倍さんとしてどう思いますか。もし短期、中期の展望がございましたら、所信を披瀝していただけるとなお結構だと私は思うのですがね。
  31. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全くもうおっしゃるとおりだと思うのです。これまで外務省としても努力をしてまいりましたが、なかなか世界の中の日本役割りというのが非常に増大する反面、外務省の機能というのはそれに対応してふえていかないということで、これはこれまでもやはりもっと努力すべきであったということを私も感ずるわけなのです。  特に、日本が高度成長期の外務省の予算だとか定員を、ほかの省庁と比べての伸び等を見てみますと実に惨たんたるものでありまして、ああいう際にもう少し外務省の人員だとか予算とかいうものを強化しておればこういうことにはならなかったと思うわけですが、しかし、そういうことを言ったってこれは後の祭りでありますし、これから努力をしなきゃならぬ。  そこで、一応外務省としては、五千人定員体制をつくろうということでこれまでも予算のたびにこれを主張して、それなりにだんだんとこれに対するやはり大方の配慮というのも出てきていると思います。ですから五十八年度も、これは非常に全体の定員がしぼられた中で、外務省は七十七名という実質増の増員を見たわけですが、しかしこういう状態でいっても五千人体制まではまだほど遠いわけでございますし、予算の面も大半が経済協力関係予算でありまして、外務省の実質的な機能強化につながる、外交活動につながる予算の充実というのも、これは財政再建という折からですから思うようにいかないということですが、いつまでもこういう財政の状況じゃありませんでしょうし、われわれは一日も早くこの五千人体制をつくって、そしてまた先ほどからお話のあるような情報収集能力等を強化するためにはそれだけ予算も要るわけですから、そうした予算措置等も講じられるようにこれから努力していきたい。  ですから臨調の答申なんかも、私から言わせていただくならば、いまおっしゃるようなそうした定員をもう少しふやしていけ、予算も拡充しろ、こういうことならそれなりに理解できるわけですけれども、余り予算も定員もふえない、ただ機構をいじくっているというだけでは本当のこれは外交の実施体制の強化につながるかどうか、私もそういう点では尊重はしていきますし、けれども問題もそれなりに残っておるというふうに実際正直に判断しております。  しかし、われわれとしても努力はこれから重ねていかなきゃならぬ。そうして最終的にはいま申し上げましたように、やはり世界の中の日本としての役割りを十分果たすような外交が特に重要な時代になってきましたし、特に平和外交というのが日本の生命線でありますから、このための体制は今後ともひとつ力を注いでがんばってまいりたいと、こういうふうに思います。
  32. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま安倍さんとしては、かねがねお感じになっている核心に触れた、そういう表明をされたのだろうと思います。私も同感ですよ。ただ、願わくは在任中にぜひその道を開いていただきたい。これは私からもこの機会に特に強く要望しておきたいと思うのです。  いま予算のことをおっしゃられた。これにも予算のことが書いてあるのですよ。各国と比較をして、しかも発展途上国と比較をしてもまさにいかがなものかという、そういう状況がきわめてわかりやすい統計資料でもって示されているわけですね。一見してすぐわかります、なるほど日本の外交にかかわる予算というものはきわめて少ないのだなあと。したがってもっとふやさなきゃならぬ側面もあるわけですよ、経済協力のための援助資金ですね。そのほかに、外務省本来の機能を発揮するための予算もいまお話しのとおりだと思うのです。  だから、本当に私は不思議に思うのですよ。平和外交が大事だ、平和外交が大事だと言いながら、予算折衝のときの予算の獲得の仕方が余りにも下手と言えば下手というのでしょうかね。努力を相当されてきたのだろうと思うのですけれども、いまだしという感じをぬぐい切れない。その点はいま十分琴線に触れたようなことを通じて答弁があったわけですので、今後の御努力に御期待申し上げたいと私は思うのです。これは、いまのような状況でいったのではもうどうにもならぬ事態が必ず来るに違いないと、このように感じてなりません。  それから、いろんなこれに関連する問題があるのですが、何せわずかな時間で、あれもこれもということはなかなか言い切れませんが、まだ問題はたくさんあるのですよ。  たとえば一つは、本省から在外勤務になります ね。そうすると一番最初に困るのは宿舎の問題なのです。いろんな方から伺っていますけれども、もう大体自分で探さなくちゃならぬ。こういう問題についても、これは全部一斉に、一律にというわけにはいかないかもしれないけれども、主要な大使館を中心として、いつ転勤されても不安感がない、やはりそういう環境を整備してあげることも、外務公務員が仕事をする上できわめて重要な要素の一つではないかということが一つ。  それから、特に瘴癘地に派遣されている職員ですね。言うまでもなく中近東あるいはアフリカ、東南アジア、あるいは中南米等。最初に一番困るのは医療の問題なのですよ。病気になった、さてどこか医療設備のいいところへ、近くの国へ行ってそれで診てもらわなきゃならぬとか、いろんな問題がまだ解消されないままにあるのですよ。たとえば、そういう場合にどこかの主要国に外務省専属の嘱託医なら嘱託医でもいいですよ、置いておいて巡回診療するというような、そういう方法も考えられるのではないだろうか。恐らく定期的な健康診断をやっていないはずだと思うのですよ。やっておりましょうか。それは家族を含めての話です。まあこういった問題がありますね。やっぱり後ろ髪を引かれるような思いをして仕事をしろと言ったって、これは言う方がやはり無理ですわ。暮らしに安心感を抱かせて十二分に力を発揮してもらうためには、そういった生活環境というものはきちんとしてあげるということが必要であろうということを私はかねがね申し上げているのですけれども、それまたまだほど遠い状況に置かれているのではなかろうかと思うのです。  それから子弟の教育の問題もありますよ。もう時間がないから並べて言います。  それからまだあるのです。今度、本省から在外に出張する、五十年から旅費が変わっていないでしょう。いま旅費規程が局長クラスで何ぼぐらいになっているかわかりません。それから日当がどのくらいになっているかわからない。物価は上がっている。ホテル代も上がっている。航空運賃も上がっている。こういう状況の中で五十年から据え置きということになると、本当にパック旅行をしなくちゃならぬような状況の中で行かざるを得ないということになりますと、他国との関係考えてみた場合に、やはり襟度を失わせるような状況であってはこれはまたいかがなものであろう か。  まあ立て続けに四つぐらいいま問題点を提起しました。やっぱりこれはきちっと整理してあげて、その辺から生きがいと希望を持って仕事ができるという、そういう環境をつくってあげることが必要であろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  33. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃる点はもう皆それぞれそのとおりだと私は思うのです。これまで外務当局としましても、そういう点を改善するために予算措置等でそれなりの努力は重ねてきている。五十八年度も不健康地手当の増額等、あるいは為替の変動等に伴う対策等も予算面では多少の充実はしておりますけれども十分でない。  私も海外に出まして、これはもう皆さん方も全く同じだと思いますが、大使公邸というのは非常にりっぱですから、だから外交官というのはりっぱな生活をしているかなとこう思うわけですけれども、しかし、大使公邸以外のその他の職員の住宅難というのは、聞いてみますと諸外国に比べまして非常に見劣りがして、たとえば参事官なら参事官が、自分のカウンターパートを自宅に呼ぶというのが一番情報もとりやすいわけですけれども、そういう自宅等も整備されてないものですから、そうした自宅に呼んで交流を盛んにするというのもなかなかできない。そういう経費等も十分でないということを聞きまして、そういう点で、外交活動というのは大使だけやっているわけじゃないのですから、外交官が全体的に努力することによって本当の情報も得られますし、本当の外交活動ができる。そういう面ではやっぱり諸外国に比べるとずいぶん見劣りがする、こういうふうに思います。これは本当に充実しなきゃならぬことだと思います。  私も外務大臣になりましていろいろと人事等をやってみまして、やっぱり不健康地に行く人が——大使という人はそれはそれなりに行くわけですけれども、その他の職員が非常に嫌がるわけですね。それは待遇もありますし、いまおっしゃるような健康管理というような面から、どうしても喜んでいくという点について何かやはり国としてのそういう体制をつくらないと、世界の国々が百六十六カ国もありますし、日本はそれらの国とすべて外交関係を持っておるわけですし、特に不健康地、瘴癘地等が多いわけですから、そういう国に対してもっと外交活動を活発にやっていけるような、これは予算が中心になるわけですけれども、充実していかなきゃならぬとこういうふうに思いますが、これまでのところ努力はしておりますけれども、まだまだこれは十分でない。よく在外公館で勤務して体を壊したといって、最近でも日本に帰ってくる人がずいぶん多いわけなのですね。ですから、そういう点をもう少しわれわれも充実してあげなきゃ、本当の外交活動の充実はできないということを私も実際実務をやってみましてこれは痛感をいたしております。ですから、われわれも大いにこれからも努力いたしますが、どうかひとつ諸先生も、そうしたいまのお話のような立場外務省を御支援、御激励を賜りまして、外交体制、実施体制の強化のためのひとつ御鞭撻を心からお願いをするわけでございます。  ありがとうございました。よろしくひとつお願いいたします。
  34. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それで、もうあと一分少々しかございませんから結論を急ぎますけれども、いま私は幾つかの提言をいたしました。努力をされてきたことも事実でしょう、今日まで。これからも努力をされるだろうと私は思うのです。  ただここで大事なことは、いま申し上げたような抱えているいろんな問題を、一斉にというわけにいかないにしても、優先的にどこから一体具体的に手がけていくか、これをきめ細かく計画をお立てになって、たとえば来年度の予算編成の際にはここまでやる、あるいは五年後においてはここまでやると、少なくとも十年後にはここまで整備するというようなそういう見通しをお立てになった上でこれを具体化する、実行に移されるという、その方向だけを確認して私の質問を終わりたいと思うのですけれどもね。ただ抽象的な努力やなんかということではならぬと私思うのです。
  35. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは官房長官に後から説明させますが、大事な健康管理対策あるいは宿舎対策、さらに物資対策、福祉対策あるいは子弟の教育対策、こういうものは一応外務省としては一つの目標をつくって毎年の予算では要求も出しますし、それなりの成果も上がっておるわけですが、まだまだ先ほどから申し上げますように不十分でございますから、今後ともひとつ努力を重ねてまいりたいと、こういうふうに思います。
  36. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 先ほど来渋谷先生から大変熱のこもった御質問、御指摘がございまして、また大臣の方からも政治家として、同時に外務省の責任者として高い立場からの御答弁があったわけでございます。もう細かいことを申し上げるあれはございませんが、私ども事務当局としても大変感激して聞いておった次第でございます。  毎年私どもの予算の重点事項の一つにこの不健康地対策というものも挙げております。私は十年前に担当の課長をしておりましたが、少なくともそのころに比べれば大方の御理解も得、いろいろな施策も進んできております。昔に比べれば、アフリカ、中東その他むずかしい地域に行く連中も、とにかく本省がこういう国会方面の御支援を得ながら、決して自分たちを見捨てずによく見てくれていると、この気持ちは定着してきているように思います。  細かいことを申し上げるよりも、事務当局の官房の責任者としての気持ちを申し上げて御答弁にかえさしていただきます。ありがとうございました。
  37. 立木洋

    ○立木洋君 本件に入ります前に若干の問題で大 臣にお尋ねしたいのですが、御承知のように、先般チームスピリット83が行われ、またそれに対する朝鮮民主主義人民共和国側の厳しい反応というのがあったわけですが、現在の朝鮮半島の情勢ですね、これを大臣はどのように御認識になっていますか。
  38. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 朝鮮半島は、全体的に見れば依然として厳しい情勢にあると言わざるを得ないのじゃないかと思いますね。やはり三十八度線を中心にいたしまして南北両軍が対立をしておるということでありますし、いろいろと対話等の努力も行われておりますが、これが結実をしないということもありまして、全体的に見れば、どうも厳しい情勢がまだ続いておるというふうに判断せざるを得ないわけです。
  39. 立木洋

    ○立木洋君 いわゆる北の脅威という問題についてはどういうふうに御認識になっておりますか。
  40. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、恐らく韓国からすれば北朝鮮は同じ民族でありますけれども、これまでの情勢から見れば脅威であるというふうに韓国としてはとっておるというふうに判断をしておりますが、日本としてみれば、この緊張状態ですね、そういうものが何とかひとつ解消するという方向で進んでいくことを心から期待をいたすわけです。
  41. 立木洋

    ○立木洋君 いわゆる韓国の側から見れば北の脅威というふうなことになるかもしれないが、日本としてはそういう見方を、必ずしも同じ見方をとっておるわけではないというふうに理解していいのですか。
  42. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本としては、直接的にいまの北の脅威というものを日本が感ずる立場にはもちろんないわけなのです。
  43. 立木洋

    ○立木洋君 先般、うちの衆議院議員の野間議員が質問主意書を出して、その回答が寄せられてきているのですが、その質問の中としては、一月に行われた日韓共同声明での認識の問題についての質問に対して、「韓国の安全がわが国自身の安全にとって緊要であるとの点についての基本的認識に変わりはない。」という回答があったわけですね。  この韓国の安全がわが国の安全にとって緊要であるという認識ということになると、ひとつお尋ねしたいのは、今後日韓間で話し合いをする場合に、日本あるいは韓国の安全保障なんかの問題について協議をするというふうなことがあり得るのかどうなのか、そういう点はいかがでしょう。
  44. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはわが歴代内閣がずっとこれまでとっておる認識であります。韓国の安全というのが日本にとって非常に緊要であるということは、これまでとってきた姿勢でありますし、今後ともわれわれの基本姿勢としてあるわけでございますが、しかし、申し上げましたように、日韓間でそれではいわゆる安全保障の問題、軍事的な話し合い、そういうことを行うのは、わが国の憲法あるいはまた基本的な安全保障に対するわが国の姿勢から見ましてこれは行わないというのが、これはもうわれわれのまたプリンシプルであります。
  45. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっと最後の方あれだったのですが、両国の安全保障などの問題についての両国間での協議は行わないということですね。
  46. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そのとおりです。軍事的な面も含めた安全保障については行わない、こういうことであります。
  47. 立木洋

    ○立木洋君 いままでは、韓国の安全がわが国自身の安全にとって緊要であるというふうな見解は日米間の中では述べられてきた見解であったわけですね、佐藤総理の時代から。しかしこれは、日韓の間での共同声明の内容としてそういう認識が含まれるのかという質問に、その基本認識には変わりがないと。これは韓国との間の共同声明の内容のものとして見た場合は、日米間で述べてきた内容の問題とはやっぱり若干違いがあるだろうと思うのですよ。つまり、日韓当事国同士の間でそういう認識の問題が、そういう内容が一月の共同声明に含まれるのだということになると若干の違いがあるのじゃないか、韓国の当事国ですからね。その点はどうなのですか。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本の認識の問題ですから、アメリカに対しても韓国に対しても、世界に対してわれわれの認識は変わらないわけでありまして、ここに申し上げておりますように、朝鮮半島における平和と安定の維持が、日本を含む東アジアの平和と安定にとって緊要であるという点について認識をともにするということで日本の認識を述べ、これは韓国としてもこれをともにしたと、こういうことであります。
  49. 立木洋

    ○立木洋君 ことしの一月の日韓首脳会談ですね、新聞にもいろいろ書かれましたけれども、安全保障上の問題がやっぱり話し合いの重要なテーマの一つになったのではないかというふうなことが新聞で述べられていたように記憶しているのですが、この点はどうだったのですか、事実関係は。
  50. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 首脳会談においては、情勢の認識について、情勢の判断についてそれぞれの首脳から率直な意見の開陳がありまた論議があったことは、これは首脳会談でありますから当然のことであろうと思いますし、韓国側が韓国の安全保障という立場について詳細な説明をしたということも、これはまた韓国の立場からすれば当然であろうと思いますが、しかし、ともに日韓で安全保障の問題あるいは軍事的な協力も含めたそういう問題を論議する、こういうことはなかったことははっきりしておりますし、日韓間で少なくともはっきりしておることが、この共同声明に出ておる点が、これは日韓の合意としてはっきりした諸点であります。
  51. 立木洋

    ○立木洋君 それから、あの際にいわゆる合意されたというか約束されたというか、いわゆるあの四十億ですね。これはいままでいろいろ問題になってきた、一括であってはならないし、積み上げ方式をとらなければならない、プロジェクトごとに検討された内容に対するものであると。この点については全くいままで政府が答弁してきた内容とは変わりはないのでしょうね、どうなのでしょうか。
  52. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、この共同声明ではもちろん具体的に触れておりませんが、日韓の外務大臣の会談におきまして、私から具体的に日本立場説明した。それが円借で十八・五億ドル、その他合わせると四十億ドルを今後のめどとしてわれわれは協力していきたい、これはあくまでもめどであるということを明快にしながら、われわれのこの協力の具体的な方針を述べたということであります。
  53. 立木洋

    ○立木洋君 八一年に韓国の経済企画院から、第五次経済社会発展五カ年計画というものが出されているのですが、この四十億ドルというのはこういう内容に協力するというものとして受け取っていいのですか。
  54. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろん日本としては、韓国のこの五カ年計画、経済に関連して経済建設あるいはまた民生の安定、そういうものに対して協力するということであります。
  55. 立木洋

    ○立木洋君 五カ年計画の基本目標の一番最初に、「自主国家安保能力のレベル・アップ」というのが一番最初に挙げられているのですよ、五カ年計画のトップに。それから新聞報道によりましても、アメリカの当局者は、韓国が兵器購入資金を工面できるように日本が韓国に経済援助を与えることを望んでいるという趣旨の報道もあるわけですね。前々から問題になってきました昌原団地というのは、韓国の防衛産業、これに対する日本の各民間の団体がいろいろ技術協力をしているというふうなことなんかも問題にされてきた。実際にこの四十億ドルというのが、安保絡みの内容になっているのではないかということがやはりどうしても問題として残るのですけれども、これはどうなのでしょうか、はっきりさせていただきたいのですけれども
  56. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはきわめてはっきりすると思います。というのは、この経済協力が具体的なプロジェクトによってはっきりしていくわけですから、五十七年度もいまプロジェクトについて折衝が続いておるわけでありますが、そ のプロジェクトは、あくまでも韓国自身の経済の発展あるいはまた民生の安定というものを中心にしたプロジェクトであることはこれは明瞭でありますし、またわが国が協力する場合にはそういうものでなければならぬわけでございますから今後続いていくと思いますが、いまおっしゃる点については、これはもうわれわれの立場というものはプロジェクトにおいてはっきりと証明されると、こういうふうに存じます。
  57. 立木洋

    ○立木洋君 問題というのは、そのように大臣が幾ら答弁なさっても、事実上やっぱり安保絡みであるというふうなわれわれの疑惑というのは払拭することはできないと思うのですがね。だから、この問題はいろいろと重要な問題で、きょうは短時間ですから十分に突っ込んでお聞きすることができませんけれども、このことだけは指摘しておきたいと思います。  それから、韓国の情勢が緊張した状態にあると、朝鮮半島全体がですね。これを緩和していくために当面日本政府としてはどういう手段、方法をお取りになるおつもりなのか、その点を。
  58. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず、やはり南北の対話を促進する必要があると思います。これは南北自体の問題ですけれど、この対話が進むということが基本的に朝鮮半島の緊張緩和に大きく寄与するわけですから、これを私たちも韓国との間で話し合いもいたしましたし、韓国も積極的な意欲を持ってこれに取り組んでいこうということでございますから、大いにこれを激励いたしておるわけですが、同時にまた南北の緊張緩和の環境を、日本日本なりの役割りとして環境づくりに努力するということが大事じゃないかと思います。したがって、韓国との間では首脳会談も行われましたし、あるいは経済協力も進めるわけでありますが、同時にいま国交のない北朝鮮との間におきましても、いわゆる文化であるとかあるいはまた人的面であるとかあるいはまた漁業経済等のそうした経済であるとかそういう面の交流は、これは国交回復のない中でこれを進めていくということがまあ一つのあり方として大事なことじゃないかと、私はそういうふうに思っておるわけでありますし、あるいは韓国の方から出ております国際的なそうした環境づくりをするためのクロス提案といったような問題につきましても、これは国際情勢が、こういう状況が熟さなきゃなかなか困難な面があるわけですけれども、私はやはりそれなりに緊張緩和にとっての非常に検討に値する対案であろうと思いまして、そういう点で日本ができることがあれば、これに対してひとつ何らかの役割りを果たしてみたいということで検討は進めておるわけでございますが、なかなかこれむずかしい問題ではあります。
  59. 立木洋

    ○立木洋君 最後ですけれども、本件について、在外公館設置に関する部分についてはわれわれも問題ないし賛成だと考えているわけですが、問題になるのは在勤基本手当基準額の改定部分の問題ですね。これについては当然義務的にスライド改定を行うべきなのにこれが行われていない。結局は臨調の路線に基づいて人勧凍結の痛みを在勤基本手当に不当に及ぼしているという点はこれはどうしてもいただけない。人勧に対するわれわれの主張というのは御承知でしょうからここではもう述べませんけれども。だから、こういうふうな点については大臣はどのようにお考えになっているのか最後に御答弁をいただいて私の質問を終わります。
  60. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 御指摘のとおり、この在勤基本手当基準額を定めますに当たりまして、その際に人勧凍結という事態を考慮いたしまして、日本における物価の上昇分二・二%というものは今回の基準額の改定に当たって反映させない、むしろ減らすという措置をとったわけでございます。これはただいまの御指摘のとおり、外務公務員でありましても一般公務員と一体となって業務を遂行していく、国の行政を預かるという立場からいたしまして、痛みを分かち合うという考えに基づいたものでございます。ただ御指摘の中で、自動的に物価とか為替相場にスライドすべきではないかという点については、私ども必ずしもそう考えておりません。これは在外手当を考えます際に勘案すべき要素ではございますが、そのほかの諸般の考慮を入れることを妨げるものでないというふうに考えております。  今後の問題につきましては、五十八年度については人事院勧告を実施するよう最大限努力するというのが方針であるというふうに政府の首脳も国会答弁その他の形で述べておられますので、そういうことによって来年につきましてはこういった問題が生じないということを私ども期待いたしております。
  61. 木島則夫

    ○木島則夫君 四月の末から中曽根首相がASEAN諸国を歴訪されることになっております。この歴訪を前にしてASEAN諸国ではわが国への期待関心が高まっていることは当然でありましょう。その反面わが国が経済的に大きな影響力を持ってきたこと、また防衛力整備の動きに対して一部懸念も存在していることは事実でございます。これに対しては政府は対ASEAN政策の洗い直しをして、首相が歴訪される最終訪問国のマレーシアでクアラルンプール宣言なるものとして、日本が軍事大国にはならない、またASEANの経済発展には積極的に協力をするなど、経済力を通じて東南アジアの平和と安定に寄与する意向を表明して対日信頼の回復を図りたい考えであるというふうに私どもは聞いておりますけれども、最初に、このクアラルンプール宣言なるものを出すおつもりなのかどうか。出すとしたならば、どのような対東南アジア基本政策をこれに織り込むつもりなのか。日本は、これまでASEANを歴訪された福田首相が、心と心の触れ合いというものを提唱されてまいりました。また、大平、鈴木内閣は、人的交流、人づくりへの協力も表明されてきた。今回こういうものを出すとすると、どういう基本的なものになるのか、そしてその内容はどういうものか、まずこの点から伺いたいと思います。
  62. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ASEAN諸国というのは日本にとりましてはまさに隣人でありますし、日本もアジアの一員である、こういうことでこの外交を積極的に進めるということは当然のことであろうと思います。中曽根総理もそうした基本認識でASEANを訪問するわけでございますが、まさにそれは時宜を得たことではないかと私も思っておるわけでございます。この訪問を何としても成功させて、日本とASEANとの友好親善関係をさらに一層強化を図っていかなければならぬと私も感じております。  そこで、総理が最後の訪問地のマレーシアで所信を表明するかどうかということでありますが、これは訪問最後の地でありますから所信を表明するという予定になっておるわけですが、しかしその演説案につきましてはいま準備をし勉強中でありまして、まだ総理との間にそういう問題についての具体的な打ち合わせが済んでおらないわけでございまして、いまここで申し上げるような段階にはなってないということを御理解いただきたいと思います。
  63. 木島則夫

    ○木島則夫君 これは私の推測でございますけれども、今日までのASEAN外交の推移、経過、そしてやはりこれからの日本の対ASEAN外交の基本政策ということになりますれば、やはり軍事大国としての懸念は絶対に与えないということが基本になるべきだと思いますね。そして当然経済大国としての日本が果たすべき役割りは何なのかということが骨子になると思うわけでございますけれど、詳細な具体的なことでなくて結構でございますので、その基本的なものについてはどんなものでございましょうか。
  64. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 基本的な点についても、まだ総理から私は何も聞いていないわけですが、しかしいまおっしゃるように、ASEAN諸国が日本に対してどういう点に懸念を持っているか、あるいはどういう点で期待を持っているかということは、私も今回タイも訪問しましたしビルマも訪問しましたし、われわれもよく認識しておるわけでございますので、そうした懸念に対して は日本立場というものを明確にして、いまお話しのような軍事大国にはならないという決意を表明することはまた当然のことであろうと思いますし、また具体的な経済協力案件等もいまいろいろ訪問国との間の折衝も続けておりまして、経済協力は日本のいまの立場から見て、思い切ってこれを進めていくということもこれはもちろん大きな筋道の一つであろうと、こういうふうに思います。
  65. 木島則夫

    ○木島則夫君 とにかく制約された時間の中でございますので、その対ASEANということになりますと、やはり経済貿易問題、市場開放問題が一つの大きな柱になると思います。ASEAN各国から、貿易インバランスを背景に、一次産品の対日市場開放要求が相次いでいる、こう伝えられているわけでございます。ASEAN側は、わが国アメリカやEC向けには市場開放に努めてはいるが、発展途上国向けには必ずしも努力が十分ではない、このような主張をしてきているわけでございます。対米、対ECに次いで新たな貿易摩擦が顕在化するおそれがなしとはしない、こういった問題に対し、具体的な対策をとる所存かどうか。首相の歴訪を前に、こういうものにより積極的な対策をとるおつもりなのかどうか、いかがでございましょうか。
  66. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ASEAN諸国も経済が非常に苦しいわけなのです。そこで、日本に非常に大きく期待をしていると。日本としても、経済協力を積極的に進めてASEANの経済の立ち直りに資していかなきゃならぬ、これがやっぱり大きな課題なのですが、同時に、これまでもそうですし恐らく今後ともそうだと思いますが、いまお話のように、ASEAN諸国の産品の日本への輸出の拡大というものを求めておりますし、また、今度も求められると思います、特に熱帯産品等についてですね。  そういう中で、日本としてもこれまで市場開放を続けておりました。これは、ただ欧米諸国だけじゃなくて、ASEAN諸国に対しましても、関税であるとかあるいはNTBであるとか、そういう面についての開放措置というのはASEAN諸国に対しても大きく私は裨益をするものであると思っております。ASEANに大きく裨益している開放措置をとっておるわけでございますが、これは具体的にもいろいろと要求は出ておりますけど、いまこれは検討はいたしておりますが、なかなか熱帯農産物が中心でありますし、日本の場合もそれに対していろいろと競合する産品等もあるものですから、この辺の調整をどうするかというのは、これからの課題としてわれわれは何とかひとつ結論を出すように努力をしたい、ASEANの要望にできるだけ沿うような努力はしたいと思いますが、非常に困難な問題も含まれておるということはASEAN諸国に対してもわれわれ言っておるわけでございます。
  67. 木島則夫

    ○木島則夫君 外務省は、わが国の対東南アジア広報文化活動が、経済関係の発展とかあるいは経済協力、また技術協力の進展に比べておくれていること。もう一つは、他の先進諸国の活動に比べても、こういう言い方をしちゃちょっといけないのかもしれないけれど、大変貧弱であることから、二月の末に外務省で、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、それにビルマの在外公館の責任者が集まって東南アジア広報文化対策会議を開かれた。そして首相の歴訪に合わせて、広報文化センターの充実とか、現地テレビの活用、あるいはアジア向け海外放送の充実、人的交流の強化、日本語の普及、こういった具体的な施策を織り込んだ東南アジア広報文化対策会議提案をおまとめになった。その具体化の手始めとして、広報文化活動に対する懇談会を設けたとのことでございますが、今後この提言の具体化をどのように進めていくのか、短い時間の中ですから余り細かくなくて結構でございます。どういうふうにこの具体化をしていくのか。
  68. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 先生御指摘のとおり、二月の二十一日から三日間、この種の会議を開いたわけでございまして、実に具体的な示唆に富む提案が出てまいりました。早速、その提案一つでございます民間人による広報文化活動に関する懇談会、これは提言の一つでございますが、それを三月の十五日に設けまして、第一回会合を開いたわけでございます。これは単なる外務省の知恵だけでなしに、ある種の民間からの、広く有識者からの意見も徴するということが第一。それから、政府だけではなしに、民間の活力を使い、民間とのいわば連係プレーもやっていこうということでございまして、この中でも広報文化活動の充実ということが第一回会合においても指摘されたわけでございます。  したがいまして、われわれといたしましては、厳しい財政状況の中ではございますが、他の関係局、それから他省と十分協議いたしまして、各項目ごとに具体的にいかなる有効な手段をとり得るかにつきまして現在検討しつつございます。また、民間の活力、連係プレーにつきましても、各映画界その他の関係者とも現在協議いたしまして、何とか改善に尽くしていきたいということで現在検討中の段階でございます。
  69. 木島則夫

    ○木島則夫君 時間がないから、私は希望をずらずらっと言います。  この際、まず第一には、広報文化センターの人員と予算、これを他の先進国並みにできるだけ早く近づけるべく拡充することだと思いますが、どうでしょうか。  また、一般国民層の対日理解の増進には、テレビを初めとしたマスメディアの活用が重要だと考えますが、どうか。  それから、人的交流の拡充については、これは各国の次代を背負う若い人々との交流を推進することが大変大事だと考えますけれど、この点についてどうか。より基本的には、こういった人的交流を盛んにして心と心との触れ合いを図ることが相互理解と友好関係の増進、ひいては平和を守ることに通ずると思いますけれど、こういった観点から人的交流には特に力を入れるべきではないかというふうに考えます。  さらに、ASEANに対しましては、わが国がマレーシアのマラヤ大学日本語センターの設立援助、あるいは最近修復作業を完了したインドネシアのボロブドール遺跡の修復ですか、こういった協力の実績がございます。今後もこういった協力を充実して、経済技術協力とともに、こういうものがASEANに対する国際協力の一つの柱となるべきだというのが私の基本的な考え方でございますけれど、どうでしょうか。  もう時間がないから、一括して私の基本的な考え方に対するお答えをいただきたい。
  70. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) まず第一点の、センターの拡充でございますが、これはまさしく御指摘のとおりでございまして、ただ限られた定員の中でどうやりくりするか、あるいは現地補助員をどういう形で拡充しながらこれをやっていくかということで努力してまいりたいと思います。  それから、テレビその他の活用でございますが、まさしく東南アジアにおきまして、マスメディアとしてテレビは有効であるということで、テレビに流す映画の本数並びにその質の改善、そういうことで今後一層の努力をしてまいりたいということで、さらに民間の活力はこの点でかなり——民間からの御協力も多分得られるのではないかということで、この面の努力もしてまいりたいと思っております。  それから第三点の、若い人の交流でございますが、これは総理府、外務省の予算におきましても、かねてからこの面ではかなり充実しておりますが、今後一層この若い人の交流というものが、先生御指摘のとおり重要であるということで、この面では一層努力してまいりたいと考えております。  それから第四点の、平和のために人的交流の促進の重要性ということは御指摘のとおりでございまして、経済技術協力と並びましてこの人物交流の促進というものを、場合によっては技術協力そのものが人の交流のものでございますので、この点にも一層拡充していきたいということでござい ます。  最後に、御指摘のとおり、経済技術協力と並びましてこの人物交流というものを、国際協力の一環として大きな柱にしていったらいいじゃないかという御指摘でございますが、まさしく今後この種のことは国際協力の一つの大きな柱になるだろうということで、その理念に沿いまして一層の拡充を図りたい、こういう方向検討中でございます。
  71. 増田盛

    委員長増田盛君) 以上で質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  72. 増田盛

    委員長増田盛君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 増田盛

    委員長増田盛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  74. 増田盛

    委員長増田盛君) 千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件、千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件、千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約改正の受諾について承認を求めるの件、領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約締結について承認を求めるの件、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書締結について承認を求めるの件、以上七件を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。安倍外務大臣
  75. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ただいま議題となりました千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、延長された千九百七十六年の国際コーヒー協定にかわるものとして、昭和五十七年九月十六日に、ロンドンで開催された国際コーヒー理事会において採択されたものであります。  この協定は、輸出割り当ての実施によって国際市場におけるコーヒーの著しい価格の変動を防止し、コーヒーの需要と供給との間の妥当な均衡を達成するとともに、コーヒー生産国の輸出収入の安定を図ること及びコーヒー消費国への公正な価格による供給を図ることを目的としております。わが国がこの協定締結することは、消費国であるわが国にとっても利益をもたらすとともに、開発途上にあるコーヒー生産国の経済発展に引き続き協力する等の見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、ジュート及びジュート製品について作成された商品協定であって、昭和五十七年十月一日に、ジュネーブで開催された国際連合ジュート及びジュート製品会議において採択されたものであります。  この協定は、研究開発等の事業の実施を通じてジュート及びジュート製品輸出国の輸出収入の安定を図ることを主たる目的としております。わが国がこの協定締結することは、輸入国であるわが国にとっても利益をもたらすとともに、開発途上にあるジュート及びジュート製品輸出国の経済発展に協力する等の見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和四十六年に作成されました千九百七十一年の国際小麦協定は、小麦の市況に関する情報交換等について定める小麦貿易規約と開発途上国に対する食糧援助について定める食糧援助規約から成っておりますが、両規約は昭和五十八年六月三十日に失効することとなっておりますので、昭和五十七年十二月ロンドンで開催された政府間会議において、その有効期間を三年間延長することとしました。これらの議定書は、このような延長について定めたものであります。  これらの議定書締結することは、小麦貿易に関する国際協力の促進が期待されること、開発途上国の食糧問題の解決に貢献することとなること等の見地から、わが国にとり有益であると考えられます。  よって、ここに、これらの議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約改正の受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  国際博覧会条約は、国際博覧会の開催頻度等について規制しており、その中で国を異にして開催される二の一般博覧会の間には、最低七年間の間隔を置くこととなっております。しかし、現在、フランスは、一九八九年にフランス革命二百年記念パリ万国博覧会を、アメリカ合衆国及びスペインは、一九九二年にコロンブス新大陸発見五百年記念シカゴ・セビリア万国博覧会をそれぞれ開催することを強く希望しこれらの計画を博覧会国際事務局に申請しております。博覧会国際事務局の総会は、これらの博覧会の競合問題について検討した結果、両博覧会とも歴史的事実に由来する国家的記念事業としての博覧会であるため、いずれかの博覧会の開催の年を変更することは不適当であるとの結論を得、例外的かつ特別な場合には、一般博覧会の開催間隔を短縮できることとする条約改正案を昨年六月にコンセンサスをもって採択いたしました。  わが国がこの改正を受諾することは、国際博覧会を通ずる国際協力に資するとともに、昭和六十年にわが国で開催される国際科学技術博覧会の成功のために各国の積極的な協力を得ていく上で重要かつ有意義であると考えられます。  よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。  次に、領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約及びこの選択議定書は、国際連合の主催による全権委員会議で昭和三十八年に作成さ れ、昭和四十二年に効力を生じております。  この条約は、領事上の特権及び免除その他領事関係全般に関する国際法の規則の明確化及び統一化を図るものであり、また、この選択議定書は、この条約の解釈または適用から生ずる紛争の義務的解決について定めたものであります。  わが国がこの条約及びこの選択議定書締結することは、これまで主として国際慣習法によって規律されてきたわが国と諸外国との間の領事関係を一層円滑に処理する見地から有意義と認められます。  よって、ここに、この条約及びこの選択議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、スウェーデンとの間の現行租税条約にかわる新たな租税条約締結するため、昭和五十六年十月、昭和五十七年二月及び同年三月に交渉を行いました結果、昭和五十八年一月二十一日にストックホルムにおいて、両国政府の代表者の間でこの条約に署名を行った次第であります。  この条約は、現行条約に比し、条約全般にわたって最近の租税条約の改善された規定ぶりをできる限り取り入れたものであり、この結果、近年わが国が諸外国との間で締結してまいった租税条約と同様OECDモデル条約案に基本的に沿ったものとなっております。  この条約の主な内容は、次のとおりであります。事業所得につきましては、企業が相手国内に支店等の恒久的施設を有する場合に限り、かつ当該恒久的施設に帰属する利得に対してのみ相手国で課税できるものとし、船舶または航空機を国際運輸に運用することによって生ずる所得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での税率につきましては、配当に関しては原則として一五%、利子及び使用料に関しては一〇%をそれぞれ超えないものとしております。また、文化交流のための両国政府間の特別の計画に基づく活動による所得に関しては、そのような活動が行われた国において免税することとしております。  この条約締結により、両国間の二重課税回避等の制度がさらに整備され、両国間の経済及び文化の面での交流が一層促進されることが期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定を修正補足する第二議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和四十一年四月に署名されたドイツ連邦共和国との間の現行の租税協定に昭和五十四年四月に署名された議定書による修正補足を加え、新たな修正補足を行うための議定書締結するため昭和五十七年七月から交渉を行いました結果、昭和五十八年二月十七日にボンにおいて両国政府の代表者の間でこの議定書の署名を行った次第であります。  この議定書による修正補足の主な内容は次のとおりであります。すなわち、国際運輸に使用されるコンテナ等のリース料の取り扱いに関する規定を国際運輸業所得条項に含めることにより、源泉地国課税を免除することであります。  この議定書締結によりまして、わが国ドイツ連邦共和国との間の二重課税回避の制度がさらに整備され、両国間の経済関係の緊密化に資することが期待されます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上七件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  76. 増田盛

    委員長増田盛君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  七件に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十二分散会