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1983-05-11 第98回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十一日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 山崎平八郎君    理事 亀井 善之君 理事 北口  博君    理事 玉沢徳一郎君 理事 小川 国彦君    理事 日野 市朗君 理事 武田 一夫君    理事 稲富 稜人君       上草 義輝君    浦野 烋興君       太田 誠一君    川崎 二郎君       川田 正則君    岸田 文武君       北川 石松君    北村 義和君       工藤  巖君    近藤 元次君       桜井  新君    志賀  節君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       羽田  孜君    保利 耕輔君       松野 幸泰君    三池  信君      三ツ林弥太郎君    串原 義直君       新盛 辰雄君    田中 恒利君       竹内  猛君    前川  旦君       松沢 俊昭君    安井 吉典君       吉浦 忠治君    神田  厚君       横手 文雄君    寺前  巖君       藤田 スミ君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         農林水産政務次         官       楢橋  進君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         環境庁水質保全         局水質規制課長 片山  徹君         大蔵省主計局主         計官      千野 忠男君         大蔵省銀行局保         険部保険第二課         長       田中  寿君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      吉田 孝雄君         建設省都市局下         水道部流域下水         道課長     辻  栄一君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ───────────── 委員の異動 五月十日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     中島源太郎君   串原 義直君     城地 豊司君 同日  辞任         補欠選任   中島源太郎君     上草 義輝君   城地 豊司君     串原 義直君 同月十一日  辞任         補欠選任   石田 博英君     工藤  巖君   小里 貞利君     川崎 二郎君   川田 正則君     北川 石松君   佐藤  隆君     桜井  新君   渡辺 省一君     浦野 烋興君   神田  厚君     横手 文雄君 同日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     渡辺 省一君   川崎 二郎君     小里 貞利君   北川 石松君     川田 正則君   工藤  巖君     石田 博英君   桜井  新君     佐藤  隆君   横手 文雄君     神田  厚君     ───────────── 五月一日  日本農業自主的発展等に関する請願(第九五六号)は「田口一男紹介」を「非上普方君外一名紹介」に訂正された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案内閣提出第五一号)  漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案内閣提出第五二号)      ────◇─────
  2. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより会議を開きます。  内閣提出沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案及び漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田誠一君。
  3. 太田誠一

    太田委員 沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案を中心といたしまして質問をさせていただきます。  まず、沿岸漁業をめぐる今日のいろいろの問題の中で、特にこれに関連をいたしまして、私ども西日本地域に住む者からいいますと日韓関係というのが大変重要な問題となっておりまして、本題に入る前にそのことを少しお尋ねをいたしたいと思います。  五月の六日、七日と韓国との間に実務者会議が持たれ、そして十月の三十一日で期限切れとなる日韓の間の書簡の交換というこの問題があるわけでありますが、今日、二百海里の漁業水域制度というものを韓国に対して適用することも検討してはどうかという意見がありますが、その点についてただいまどういうふうなお考えを農林水産省はとっておられるか、まずお伺いしたいと思います。
  4. 松浦昭

    松浦政府委員 お答えを申し上げます。  韓国漁船日本周辺水域におきましていろいろな問題を生じておりまして、特に北海道の沖の水域、それから西日本の長崎あるいは福岡県の沖合いの水域におきまして違法な操業を繰り返しており、これによりまして漁業者方々が非常に心配をなされ、二百海里の漁業水域制度を適用してはどうかということがこれらの地域沿岸漁業者方々から声として強く起こってきているという実情は私どももよく存じているところでございます。  ただ、このような二百海里の漁業水域制度韓国にも適用するかということにつきましては、わが国漁船が現に韓国水域内において出漁し、そこで操業しているという実態がございまして、これに対する影響等考えなければならないところでございます。また、現存の日韓漁業秩序との関連あるいは竹島問題も含めまして、日韓関係全般にどのような影響があるかといったような問題につきましても十分に慎重に検討しなければならないという状況でございますので、さようなことから、私どもとしては慎重にこの問題については対処するということで考えておる次第でございます。  ただ、現実西日本水域におきましても、操業につきまして支障の出るような非常にひどい侵犯事件も起こっておりますので、私どもといたしましては、海上保安庁とも協力いたしまして、取り締まり船を重点的にこの地域に配備するといったようなことで韓国漁船違反操業を防止したいというふうに考えておりまして、実は、一昨日も一隻領海侵犯をいたしてまいりました韓国漁船を拿捕いたしまして、外規法違反でこれを摘発するといったようなこともやっておるわけでございます。  また同時に、韓国側指導取り締まりといったようなことが厳重に行われることが期待されますので、わが方としては、先般、私、韓国に参りました折も、先方の庁長西日本水域においての取り締まりということについて強化をするように十分に頼んで、話してきておりまして、一月十四日以降四月末までの期間に十二隻の指導船韓国より派遣されておりまして、今後ともこのような韓国側の手による取り締まりというものも十分に強化して、違反操業の防止に当たってもらいたいというふうに考えておる次第でございます。
  5. 太田誠一

    太田委員 いま韓国漁船違反操業に対してどういうふうな対応をされるかというお話もありましたけれども、実際にいま西日本での韓国漁船違反操業実態というものはどの程度わかっておられるのでしょうか。
  6. 松浦昭

    松浦政府委員 西日本水域におきますところの韓国漁船違反状況でございますが、領海あるいは漁業に関する水域内の操業で、延べの操業でございますが、五十七年、九百八十四隻の違反状況水産庁監視船として視認しているという状況でございまして、この動向は非常に異常な動向であるというふうに思っております。
  7. 太田誠一

    太田委員 この韓国漁船の問題につきましては、わが国韓国政府の間でもって、ただいまの状況では旗国主義ということで領海外沖底ライン内に入る韓国漁船につきましてもわが方では取り締まる権限がない、そして韓国政府の方は必ずしも徹底した取り締まりを業界に対してしていないということも現実の問題としては見られるわけでありますから、何とか密接な協議を続けていただきまして徹底した取り締まりをお願いしたいと思うわけでございます。  それから次に、本題に戻りまして、まず栽培漁業関係でありますけれども、今回の沿岸漁場整備開発法改正ということでもって、今後資源管理型漁業確立に対してこれがいかなる貢献をするのか、今回の沿岸漁場整備開発法改正というものをどのように位置づけておられるかをお伺いいたしたいと思います。
  8. 松浦昭

    松浦政府委員 今回沿整法改正をお願いいたしまして、特に栽培漁業振興という角度からその法制の内容を強化していただきたいということをお願いいたしておるわけでございますが、これとの関連におきまして、ただいま先生おっしゃいましたいわゆる資源管理型漁業確立とこの沿整法、特に栽培漁業振興がどういう関連を持つかということについてお答えをいたしたいと思います。  資源管理型漁業と申しましても、今日におきまして必ずしも定まった概念があるわけではございませんが、私どもいろいろな方の御意見を承っておりますと、おおむね水産資源の状態を的確に把握いたしまして、一方で操業隻数あるいは漁船トン数制限等の措置によりまして漁獲努力量を適正に持っていく、これによって管理を適正な状況に置いていくということ、さらに種苗放流あるいは魚礁投入等によりまして資源そのものをふやしていくということによりまして水産資源を適正に利用していく、こういう三本の考え方から成り立っているというふうに思うわけでございます。  このような考え方というのは、二百海里時代の定着状況下にありまして、わが国漁業振興あるいは国民への水産物の安定供給を図っていくということで一つ考え方として重要性を持っているというふうに思っているわけでございますが、水産庁といたしましても今後水産資源保護、培養に努める、あるいは種苗づくり魚礁づくり、さらにはこれを総合的に進める海洋牧場の試みといった、いわゆるつくり育てる漁業を推進していくということで積極的に取り組んでおりますと同時に、漁船隻数あるいはトン数規模制限等についての漁獲努力適正化ということも図ってまいっており、今後も図ってまいらなければいかぬと思っております。  ただ、完全ないわゆる資源管理型漁業ということを考えてみますると、現段階ではまだ科学的にも技術的にも多くの研究開発が必要な段階でございますし、また、資源の増殖を図る栽培漁業もようやくこれから振興していくという段階でございます。このようなことから、やはり資源状況のより的確な把握をさらに進めていくということが必要でありますし、また、漁業法等に基づく漁獲努力の適正な管理というものも、漁民方々の自主的な努力というものもあわせまして今後さらにこれを考えていかなければならぬという状況であります。また、栽培漁業等もこれから開発していくという分野も多いわけでありますので、これにつきましてはさらに今後長期的な課題として考えていくということが必要だろうと思います。  しかし、基本的に申しまして、このような管理型漁業に近づけていくということの中におきましても、いわゆるつくり育てる漁業という栽培漁業を、国が基本方針都道府県基本計画をつくりまして種苗生産放流、育成を計画的に推進するということは非常に重要なことであります。特に放流効果実証事業実施を通じて漁民栽培漁業定着を図っていくことが非常に重要でございまして、そういう資源管理型漁業へのアプローチの一つの側面として、この栽培漁業振興というものが非常に重要であるということから、この法律も重要な関連を持っているというふうにお考えをいただいてよろしいかと思う次第であります。
  9. 太田誠一

    太田委員 いわゆる栽培漁業というものはすでに各地でもって実施段階に入っておるようでございますけれども、たとえば玄海海域ではアワビ稚魚放流してかなりその歩どまりがよいということも報告をされているわけであります。そしていま六つの魚種マダイクロダイヒラメクルマエビガザミアワビといったこの六魚種については寄与率が四%、全体の漁獲量に占める放流による漁獲量の増加が四%あるのだということが報告をされているわけでありますけれどもアワビの場合には六〇%歩どまりがあるというふうにも言われるわけであります。このような栽培漁業についてはどれだけの効果があったか、放流効果実証事業というものが重要になってくると思うわけでございます。そしてまた、この栽培漁業というものは、実際に国がまず先頭を切って危険を負担して事業を進めておられるわけでありますけれども、これは実際に栽培漁業が成功した、あるいは実用化段階に入ったということが言い得るためには、国がこれにかかった開発費用稚魚を育ててそれを売るという事業が、漁業者自身によって栽培漁業実施を行うために漁業者稚魚を買って放流をする、そしてその値段が十分に政府が投じた資金を回収するに見合うだけのものでなければいけない、そういう段階になって初めて栽培漁業というものが成功したということになるかと私は思うわけでございます。  それにつけても、放流をしたものがどのぐらい歩どまりがあるのか、あるいは漁獲量全体についてどのぐらいの割合を占めているのか、どのぐらい貢献をしているのかということが正確に把握されることがまず第一かと思うわけでございます。そして、いわゆる放流効果実証事業というもののみならず、現に漁業者方々がやっておられる栽培漁業あるいは放流というものがきちんと数字の上で把握をされているということが大切かと思うわけでございます。そして、そういうことは現実にこれは稚魚段階放流したものと自然のままの魚というものは全く違った、見分け、識別が簡単であるということも魚種によっては言えるわけでございます。そういう意味におきまして、もっと徹底をした調査というものが実施されるべきではないかと思うわけでございます。今後の栽培漁業を成功させる、つまり民間でもって十分にペイするということをめどとしてぜひ御努力をいただくことをお願いするわけでございます。  その調査といいますか、どれぐらいの歩どまりがあるか、どのぐらいの放流貢献があるかということについて、いまわかっている範囲でもってもう少しお話をいただきたいと思います。
  10. 松浦昭

    松浦政府委員 栽培事業を推進するに当たりましては、先生おっしゃられますとおりでございまして、まず初期の技術開発段階におきましては、国なり県なりという公的機関がその費用を持ちながらリスクをしょって技術開発に努めていくという段階でございますが、最終的な段階は、漁業者がみずからの手で種をまき、そして種苗をつくりながら最終的に放流をやっていくというところまでいくべきだと思います。しかし、なかなかそこまで至らない段階といたしまして中間的な段階がございまして、やはり繰り返して放流を大量に実施することによって、そこで漁業者みずからがなるほどこれは成果があるものだという事業としてこれを確立していく中間段階があると思います。このために、今回の法律改正でお願いいたしております放流実証事業というものをここに取り入れたわけでございまして、その中で、私どもといたしましては一層の普及徹底を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。  そこで、特にこの放流事業定着させていくということのためには、何と申しましても、御説のとおり一体どれだけ効果があったかということが如実にわかってくるような仕組みが必要でございます。たとえばアワビなどにつきましては、人工種苗によるアワビというのはそもそも色が緑色でございましてすぐに識別できるということもございますが、マダイとかクルマエビといったような魚種はその場でわからないわけでございまして、その場合には標識放流といったようなことが非常に重要になってまいります。標識放流につきましても技術的にさらに深めていかなければならない段階でございまして、相当数標識が回収されるようなきちんとしたそういう方式を確立することが必要で、このためには、漁民の方、釣り人の方あるいは市場の方々協力によって回収がきちんとされることが非常に必要な段階でございます。  現在の段階でわかっております状況を申しますと、いわゆる栽培漁業漁業生産への寄与ということで考えてみますると、漁獲量で申しますとアワビが六%、クルマエビは二二%に上っております。それからガザミが五、マダイが二、クロダイが二、ヒラメが二、そういったようなところが五十五年の実績でございます。現在の段階はこれよりももう少し高くなっていると思いますが、寄与率ということになりますとこの辺の水準でございます。
  11. 太田誠一

    太田委員 ありがとうございました。  次に、最近、釣りを楽しまれる人が非常にふえているということがあるわけでございまして、それに伴って、釣り舟と本来漁業生業として営まれる漁民との間にトラブルが絶えなくなっているわけであります。この遊漁の現状と遊漁行政に対する水産庁方針をまずお伺いしたいと思います。
  12. 松浦昭

    松浦政府委員 現在の遊漁人口と申しますか、釣り人人口は、レジャーとして国民全般に非常に普及をいたしてまいりました状況から、約一千七百万人という方々釣りを楽しんでおられる状況でございます。一方におきまして、一千百万トンからの貴重なたん白源でございますところの魚を生業として漁獲しておられる漁業者方々がおられる。この両者方々の間でトラブルがあることは非常に残念なことでございまして、特に沿岸漁業振興を図る上においては両者調整が非常に重要であるということから、今回の法改正によりまして、漁業釣り人との調整の方法ということで新たに漁場利用協定の導入、それによる都道府県知事にあっせんあるいは勧告をお願いするといったような制度を導入したわけでございます。  これを運用するに当たりましての基本方針は、一方ではそのような国民たん白食糧を確保するために日夜非常に努力しておられる漁業者方々のお立場も考え、それからまたレジャーとしての釣り人方々考えるという、両方が共存していくことが非常に重要であるというふうに考えまして、この共存関係前提として、漁業者に対してその漁業活動支障になることがないように、また一方におきまして釣り人方々をいたずらに排除することがないように、その間の調和をとっていくことがこの釣りに関する行政の基本的な方針であるというふうに考えている次第であります。
  13. 太田誠一

    太田委員 いまのような漁場を利用する際の遊漁者漁業者の間の協定というのは、言ってみれば紳士協定といいますか、お互いが紳士であるということを前提にして初めてその協定意味をなすわけでございます。ところが、遊漁案内業者組織率、もちろん良心的な方々もたくさんおられるわけでありますけれども、実際には遊漁案内業者というのが余り良く全体が把握できてない、あるいは組織化されてない、片一方の協定相手方である漁協の方はしっかりした組織であるということもあるわけでございます。そうしてまた、特に私の住んでおります福岡市の周辺などでは、遊漁案内業者というよりも、モーターボートで勝手に来て勝手にとってくるという人が多いわけでありまして、必ずしもこれは業者ではなくて、自分でモーターボートを持って、あるいは船舶を持ってとりに来る素人が非常に多いわけであります。これが漁網を切断したりあるいは漁船に被害を与えるということが現実の問題としてあるわけでございます。そうすると、遊漁者というものを実際問題として把握ができないだろうと思われるわけでございます。そうである以上、こういう漁場利用協定というものが締結されましても実効性が本当に担保されるのかどうかというのは、私はいささか疑問があると思うわけでございます。  そして、これは一つ考え方でありますから、よしあし、反対もあるでしょうし賛成もあるでしょうけれどもアメリカやそのほかの諸外国に行きますとライセンス制度というものをとっているわけでありまして、ともかく一匹たりとも魚をとる以上はそこに自然保護を国なり地方自治体などが責任を持ってやる、その自然保護のための費用ライセンス料で払ったらどうかという考え方もあるわけでございます。したがって、この協定を締結することを促進することもさることながら、自然保護考え方というものをもっともっと法律の実際の制度として確立をしていく必要があるのではないかと思うわけでございますが、この点についていかがでしょうか。
  14. 松浦昭

    松浦政府委員 遊漁案内業者、この方々協定の一方の当事者として漁業利用協定を締結していきたいと考えておるわけでございますが、その組織化は、漁協、いわゆる漁業者組織化に比べますと格段の差があるということは確かに御指摘のとおりでございます。しかし、現在におきましても、たとえば当事者たり得る遊漁案内業者といたしましては、東京湾と一部の地域ではすでに中小企業等協同組合法による事業協同組合が存しておりまして、この方々地域によっては相手方になり得るという状況でございます。また、東京以外の地域におきましては業者協議会といったようなものがすでに存在しているところもございます。しかし、まだ未組織段階でございますので、遊漁案内業者につきましては、案内する海面もある程度まで特定されてもおりますし、漁業者の兼業も多いわけでございますから、そういうことで、県を通じまして漁協協力等も得ながらこの遊漁案内業者組織化をこれから促進していくということを考えております。  遊漁者組織化は確かに非常に困難な面も多いわけでございまして、特にマイボートによる釣り人方々組織化するということになりますと、これはなかなか大変なことでございますが、釣り人全国団体もございますので、これらをそのような面を通じて組織化するということを考えてまいりたい、また、そういうことによって遊漁者もできるだけ多くの協定締結の対象にし、そしてまた遵守をするようにしていきたいと考えております。  ところで、ただいまお尋ねライセンス制でございますが、確かに私どもも、遊漁者から料金を徴収しまして行政機関遊漁免許証と申しますか、いわゆるライセンスを発行するというような制度アメリカで行われているということも知っておりまして、これもずいぶん勉強もいたしたわけでございます。確かにこれも有効な手段として将来考えるに値すると思いますが、ただ、アメリカ等の諸外国におきましてライセンス制がある背景には、天然資源は国または州が管理するという観念がすでにでき上がっておりまして、この観念日本では乏しいのではないか、魚ならだれでも自由にとっていいという海の幸である、そういうわが国の主張とまだかみ合わないという状況であるというふうに思っておりまして、今後の課題としてこれは検討していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  15. 太田誠一

    太田委員 天然資源は有限であるというのはアメリカであろうが日本であろうが同じことでありまして、そういうことを認識しないで、海の幸だから勝手にとっていいのだということ、そういう考え方そのものが是正をされるべき考え方ではないかというふうに思うわけでございます。ぜひとも効果のある調整と申しますか、秩序のある遊漁というものを確立するために引き続き御努力をいただきたいわけでございます。  それでは次に、密漁対策というものについて少しお伺いをいたしたいと思うわけでありますが、昨年の二月に、福岡県の相の島という島がありまして、ここで地元の漁民方々密漁取り締まりをしている最中に、突然密漁をしている船が包囲されている包囲網を破るために体当たりで逃げ出した。そして、一名死亡、二名負傷というふうな大変悲劇的なことが行われたわけであります。そしてまた、最近の密漁というのはだんだん手が込んできて、高速艇など高度な装備を用意をして組織的に行うことが各地から報告をされているわけであります。人によっては、これは明らかに暴力団の資金源になっているということを言う人もいるわけでございまして、密漁の問題というのは本当に深刻な社会問題になっているわけであります。  そして、そういう中で今度は密漁対策としていわゆる密漁に対する罰金を十倍に引き上げるというふうな、法律の主たる内容はそういうことでございますけれども、こういう程度のことでは、実際問題としては密漁を防ぐということの方策としてはいかにも弱い。つまり、上がったといってもこれは大したことのない罰金でありますし、本当はもっともっと、言ってみれば組織的に行われる犯罪でありますから、組織的に行われる犯罪に対してはもっと腰の入った取り組みが必要ではないかというふうに思うわけでございます。この辺の取り締まりの強化といいますか、防止策というか、そういうものについて、高度な装備あるいは組織的な密漁に対してどのようにこれから取り組んでいかれるか、そのお考えをお聞きしたいと思います。
  16. 松浦昭

    松浦政府委員 アワビ等を中心といたしますところの密漁は最近非常に激化しておりまして、私どもも非常に憂慮しているところでございますが、今回漁業法及び水産資源保護法の一部を改正していただきまして、罰金を十倍に引き上げていただくということを御審議願っておるわけでございますが、私どももちろんこのような罰金の引き上げのみをもって密漁の対応策のすべてであると考えているわけではございません。やはりこのような罰金引き上げを契機にいたしまして、従来から関係漁協あるいは都道府県水産庁海上保安庁あるいは警察の方々が一体になって連携をとりながら、海上、陸上の両面から取り締まりを行っているわけでございますが、この法改正を契機にさらに一層これを強化して、お互いに連携をとりながら密漁の防止に当たっていただくということを考えまして今回の法律改正をお願いしているというところでございます。したがいまして、実態的にこれを十分に取り締まるということがこれから非常に重要なことであろうというふうに考えます。  また、特に最近の密漁が高速艇を利用しているという状況もございまして、これにつきましては、やはり海上、陸上取り締まりの連携ということが非常に重要でございます。それから、何と申しましても高速艇には高速の監視船をもってこれに当たるということが必要でございまして、予算が非常に乏しい中でありますが、水産庁も一隻三十二ノットまで出る高速艇を用意いたしております。各都道府県も相当高速な船も用意しておりますので、これからさらにこのような面の取り締まりの強化というものに当たってまいりたいというふうに思っております。
  17. 太田誠一

    太田委員 私がいただいた質問時間はもうすでにオーバーしているわけでありますけれども、もう一問、今日の沿岸漁業にかかわりのあります問題を取り上げさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。  漁業を取り巻く環境については近年きわめて厳しいものがあるわけでありまして、諸外国における二百海里体制の定着といった悪条件、あるいはたび重なるオイルショックによって燃油価格が上がっている、そして魚価は低迷状態にあるというふうに、漁業経営は大変大きな打撃を受けているわけであります。これを受けていろいろな施策が行われているわけでございますけれども、五十七年度においては、従来からの漁業用燃油対策特別資金などの緊急的融資措置というものを継続しつつ、それに加えて減船あるいは施設の合理化など、漁業生産構造の再編整備の円滑化を促進する手段として、これに参加する漁業者の負債整理のための長期低利の資金を融通する漁業経営負債整理資金制度が設けられたところでありますが、これは五十七年度については三百五十億の融資枠を設けられていたにもかかわらず、実際には六十六億しか活用されなかった。そしてこの背景には、実際問題としてこれは業種の指定と申しますか、遠洋マグロ漁業のみがその対象となったところであるわけでございます。そして、実はもっと多様な種類の業界においてもこのような制度が利用できるようないろいろな努力がなされてきたけれども、それが実らなかったということでもって、三百五十億のうちの六十六億しか活用されなかったということになったわけでございます。  これについて、業界の方からは、本資金の貸付条件が厳し過ぎることが原因であるということが指摘されているわけでございまして、厳し過ぎるのであれば五十八年度の融資においては必要に応じた改善をすべきではないかというふうに思うわけでございます。特に五十八年度においては予算上の融資枠というのは六百五十億にふえているわけでありまして、本来こういう救済制度というものは広く利用されて初めて価値があるわけでありまして、条件をいたずらに厳格にすることは得策ではないというふうに思うわけでございます。  そしてまた、これは沿岸漁業者から言いますと、同じようにただいま業界として困難に見舞われているわけでありまして、燃油価格の高騰といいますか、あるいは魚価の低迷といったことも、これはすべて沿岸漁業漁民もひとしくこうむっている困難な状況でありますから、何とかこれはこういうマグロ・カツオといったものだけではなくて沿岸漁業者においても利用できるような形に、この漁業経営負債整理資金の制度というものを改善する方策がないのだろうかということを、あわせてお伺いをしたいと思うわけでございます。
  18. 松浦昭

    松浦政府委員 漁業経営が燃油の高騰等によりまして非常に悪化しておるわけでございますが、それに対応いたしまして負債整理資金を設けたわけでございます。ただ、この負債整理資金はやはり固定化債務を単に借りかえをするということだけではなくて、減船とかあるいは施設の合理化といったようなことで漁業生産構造の再編整備をしていく、これを前提といたしまして漁業者の負債整理をしていくということが基本的な考えでございます。さような意味から、貸付対象者をやはり限定せざるを得ませんし、また、貸付限度額といったようなものも漁業生産構造再編整備のための自助努力の程度に応じてこれを定めるという考え方になっているということで、これはやはりこの制度の根幹でございますから、その点はひとつ御了承いただきたいということを、当委員会においても私何度か申し上げているところでございます。  確かに五十七年度におきましては、三百五十億の貸付枠に対しまして遠洋マグロのみが対象業種であり、融資額は六十六億にとどまったところでありますが、これは一つは、対象業種が業界内部の調整のおくれによりまして五十七年度の融資枠を計上した当時の見込みより減少してしまって、マグロ漁業だけしかこれが対象にならなかったということもございますし、まだほかの業界の話し合いがまとまらなかったということがございます。それからいま一つは、五十七年度は、五十六年度に実施いたしました緊急融資資金の二年間の据え置きがございました。まだその据え置き期間中にあるということで六十六億しか出なかったという状況がございます。このようなことで、やはり本資金の整理対象債務の採択基準ということよりも、本資金の融資額は、その年度の対象業種として指定される業種の数とかあるいは規模、あるいは期限の到来する制度資金の要償還額というものに非常に大きく左右されるわけでございます。  ただ、私どもとしましては、五十八年度においてもさらに六百五十億の枠を設定して負債整理に当たりたいというふうに考えておりますので、対象業種を引き続き拡大していくということで、たとえばイカ釣り漁業とかあるいはカツオ釣り漁業等が対象業種になることを希望しておるところでありますし、また、現に要償還額になってまいります分もマグロだけで二百数十億に上るだろうと見まして、今度、五十八年度からは相当資金が出ていくというふうに考えておるわけでございます。また、いま先生が申されましたこの運用面の改善ということについてでございますが、私どもとしては、五十七年度における本資金の融通の実態、五十八年度における本資金への資金需要等を正確に把握いたしました上で、関係業界の要望も参酌いたしましてその仕組みを適切に定めてまいりたいと考えておる次第でございます。ただ、先ほど申しましたような本資金の制度の根幹というものは堅持していかざるを得ないということはひとつ御了承願いたいというふうに思います。  それから、沿岸漁業につきましてもこれがなかなか貸し出されないということの問題点があるわけでございます。これは、いろいろと私どもも施設合理化を行う場合にも貸し出すというようなことで考えてまいったわけでございますが、なかなかこれは対象にならないということで苦慮をいたしておるわけでございますが、沿岸漁業経営安定資金とかあるいは金融公庫の沿岸漁業経営安定資金、いわゆる再建整備、これの活用といったようなことも考えられると思います。  そこで、ただいまのようなことで上記のような措置を活用するということも考えられるわけでございますが、将来、その状況によりましてさらに何らかの措置が必要と認められる場合には、対象とすべき沿岸漁業グループの実態あるいは目標とする生産構造再編の形態及びその実現のための資金需要等の実情を十分に把握いたしまして、その上で必要に応じ所要の措置を検討することといたしたいというふうに考えております。
  19. 太田誠一

    太田委員 ありがとうございました。  これで終了します。
  20. 山崎平八郎

    山崎委員長 前川旦君。
  21. 前川旦

    ○前川委員 漁業白書を読みましたが、ことしの漁業白書はなかなか力のこもったものであります。これは敬意を表しますが、現状分析はずいぶんできておりますが、将来に対する見通しについて若干お伺いしたいと思います。  まず水産庁の長官に伺いますけれども、いま日本の食生活は理想的な食生活だと言われています。特に炭水化物、脂肪、たん白質がバランスよくとれて、たん白質の半分までは水産資源だ、非常に理想的な状態だと言われておりますが、この状態がこれから続くのかどうか。あるいは、魚離れということが言われておりますが、魚離れして欧米のような畜産物に偏ったとり方になるのか、その辺のこれからの推移、どういうふうに判断されますか。
  22. 松浦昭

    松浦政府委員 近年の水産物の需要の推移を見ますると、一人一日当たりの動物性たん白の供給量で見ますると、水産物は、五十年までは年々増加してきた後におきまして、五十四年までは停滞期でございました。その後再び若干ふえまして、五十六年度の速報によりますと、一人一日当たり十八・一グラムというところまで来ておるわけでございます。微増といった段階でございます。それから、動物性たん白質合計に占める水産物と畜産物の割合は五十年以降はおおむね一定ということで、推算四五・六という水準でございます。  このような近年の水産物の需要につきましては、やはり実質個人消費の落ち込みもございますし、また、若い世代の方々がなかなかお魚になじまない、さらに加えまして畜産物の競合の関係、これもございます。また、家屋の構造といったような点からなかなかこの伸びの鈍化を改善するということがむずかしい状況にございます。さらにまた、魚離れといったような価格との関係における問題といったものもございまして、私自身といたしましても、この需要の伸びにつきまして、やはり努力をして将来この需要を伸ばしていくべきであるというふうに考えるわけでございます。  そのためには、何と申しましても、先ほど先生がおっしゃいました日本型食生活の定着ということが非常に重要でございまして、現在最も栄養的にバランスがとれているこの食生活の体系というものをほかの農産物、特に国内でとれる農産物と適当に調和した形で定着させるということが必要であろうというふうに考えますし、また同時に、水産物というものが栄養的に非常にすぐれた食品であるということを再認識していただく、そのPRが非常に必要であるというふうに思います。また、他の食品と比べまして品質等も加えまして値ごろ感のある商品を供給する。それからまた、若い世代の新しいニーズにつきましては加工の開発あるいは消費者に対するいろいろな啓蒙といったようなことも考え、特に消費者のニーズに合った形で加工もしていくといったようなことから水産物の需要をさらに増進していくという必要性があり、このような対応策をとっていけば、私は、水産物の需要につきましては十分将来性があるというふうに考えておる次第でございます。
  23. 前川旦

    ○前川委員 かなり努力をしなければ望ましき食生活が維持できないというお話でしたので、どうぞ十分の努力をお願いいたします。  それでは、大臣は専門家でありますから、大臣に二、三質問をいたします。  遠洋漁業の将来ですけれども、四十八年から減少を続けまして、五十三年以降は横ばいです。ピーク時から半減している。これからの将来ですが、これまでの漁獲高が確保できるというふうに考えていいのか、あるいはこれは次第に撤退していかざるを得ないのかどうか。まず遠洋漁業の将来について大臣のお考えを伺います。
  24. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御承知のとおり、遠洋漁業は二百海里が設定される以前のちょうど半分の水揚げに落ち込んでおります。その半分が今後どのように推移するだろうかというお尋ねと思いますが、私は、ソ連にしましてもアメリカにしましても大変強い圧力を年々かけておりますので、やはり粘り強い漁業外交を今後展開しましてひとつこの数字は確保していきたい。これは話し合いの上で決まることなんですから、交渉次第によって現在の遠洋漁業の二百万トンの水揚げを維持することはできる、このように考えております。
  25. 前川旦

    ○前川委員 できるとおっしゃいました。それは努力次第だと言われますけれども、何となく将来は暗いという感じが私はいたします。  それとあわせて沖合い漁業の将来ですけれども、いま沖合い漁業日本の全漁獲高の六割を占めていますが、最近、サバ、サンマ、アジがうんと減少しており、マイワシが異常に多い。そのマイワシの多くの漁獲量がありますからいまの漁獲量を維持できておる、こう白書に書いてありますね。このマイワシは昭和四十年ごろにはわずか一万トン足らずに落ち込んで幻の魚になりかけていた。それがサバやサンマやアジがなぜ減ったのか、なぜマイワシがふえているのか、こういう漁業資源に対する調査というものは、予算が少ないですから完全に行われていないと思うのです。なぜかという理由が的確に把握されていないと思うのです。いまのマイワシが豊漁だから沖合い漁業が維持できておるという、これもいつまで維持できるかわからない不安定な要素がありますね。そういうことを考えると、沖合い漁業の将来というものについてどう考えていらっしゃるのか、これも専門家の大臣にお伺いしておきたいと思います。
  26. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御意見のとおりの推移を続けております。イワシの水揚げが三百万トン以上になりましたので、沖合い漁業の水揚げの六百万トンが維持されておるわけですね。今度はその代替でサバとサンマが激減しておるわけなんです。私は、半世紀以上この大衆魚、イワシ、アジ、サバ、こういう魚族資源の動きをずっと見ておりますと、大体水温とか潮流とか、いろいろそういう自然の気象条件の影響によることだろうとは思いますけれども、サバがとれなくなるとイワシがとれる、イワシがとれなくなるとサバがとれるということを繰り返しておるわけですね。十年周期みたいにずっと繰り返してきております。これは何がそういう影響を及ぼしておるかという断定は、どのような研究を続けていても結論が出し切らないのではないかと私は将来とも考えております。生物の自然現象、そういうことでそれこそ神様しか知らないような状態が続いていきますので、ただ資源をどうして守るかということだけはよく注意しなければならない。いわゆる価値のない稚魚を乱獲して資源の繁殖、生育を阻害するとかいうことは、やはり水産庁なり生産者みずからが十分心して今後資源保護していく、傷つけないようにするということはお互い努力を続けていかなければならないことと思います。
  27. 前川旦

    ○前川委員 この二百海里の体制が定着したということで、ここの範囲の資源については日本も責任を持たなければいけないということになりますと、大臣いまなかなか原因がわからないとおっしゃいましたけれども、やはりある程度の予算をきちんとつけて、資源状況をもっと把握するという努力をお願いをしておきたいと思います。  さて、もう一つ大臣に、そうなりますと、これからの沿岸漁業の位置づけはどういうふうに考えたらいいのか。たとえば、ずっと二十年間漁獲高が横ばいですね。それから、これは漁業白書に出ていますが、五十六年、わずかですが、一%、三万トンぐらい減少を来しています。そこで、この沿岸漁業というものを、いまの漁獲高を維持するために必死になってがんばるのか、もう一歩踏み出して、どうも沖合いも不安定、遠洋はお先真っ暗——お先真っ暗と言うと言い過ぎかな、不安ですから、沿岸漁業にウエートをかけた政策に変えていかざるを得ないように私は思いますが、その点、大臣のお考えはいかがですか。
  28. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御承知のとおり、沿岸の水揚げ高は横ばいでございます。ただ、その中にかつてないつくる漁業、いわゆる養殖、養魚、これが入っておりますので、天然のものをとっておった沿岸のいわゆる漁業資源はやはり減っておる、こういう見方を私はしております。ただ、資源が減少するということもさることながら、私は、漁業従事者が今後他産業と所得の格差がなくて、むしろ漁業をやっていた方がいわゆる収入が多いんだという時代が続く間はこのような状態を沿岸も続けていきますけれども、もしまた高度成長時代が来て鉱工業生産が非常に活発になり、そしてやはり所得水準が漁業者とうんと格差がつくようになると、漁業後継者はちょうど農業と同じでぐんぐん減っていく、これが将来沿岸資源を現状の数字を維持していけるかどうかという大きな問題をはらんでおる、私はこのように考えております。  それに加えて、燃油の高騰が大きな災いをしております。たとえて言えば、ブリを三本引くぐらいならば、もう燃油はブリ三本引いても引き合わないほどの高い燃油を消費するので、沖には出ない、休んでおった方が得だという打算をして漁業を休んでおる漁村も、私の選挙区の中にもおります。それは季節的な問題でございます。昔は、仮にブリが一本とれても引き合うというふうな時代だった。したがって、燃油コストがかつていまのような高騰を見ないうちは、二%か三%が漁船漁業生産コストの中の燃油の占める比重でしたけれども、いま二、三〇%の比重を占めていますので、この燃油高が沿岸漁業といわず沖合いといわず遠洋といわず、すべてのわが国漁業には将来大きなかげりが差しておる、私はこのように心配をいたしております。
  29. 前川旦

    ○前川委員 私は、この法案について、これは沿岸漁業をこれからもっと力を入れて振興するのだ。つまり、漁業政策のウエートのかけ方が三つ平等だと言わざるを得ないかもしれませんけれども沿岸漁業の方へ力を入れるのだというふうな理解でこの法案を実は受けとめておったのですが、そういうような受けとめ方をしてもよろしいのでしょうか。それはいかがですか。
  30. 松浦昭

    松浦政府委員 どの漁業が最も重要かということは、私どもやはりどの漁業も重要であるということを大臣も申し上げておると思うわけでございますが、ただ、沿岸漁業は最近におきましてやはり横ばい状態で推移している。しかも、沿岸漁業に従事しておられる方々の所得水準が若干下がりぎみであるということに私ども着目いたしまして、しかも二百海里の時代を迎えた場合には、沿岸漁業というものが非常に重要な位置を占めてきているということも、これは事実でございます。  さような意味で、いままでの単にとる漁業から、つくり育てる漁業ということで資源そのものを培養していくという考え方。それからいま一つ重要なのは、やはり沿岸漁業漁場の荒廃というものを防いでいく。これは、何と申しましても漁場環境の維持保全ということだろうと思います。これが非常に重要な課題である。それからいま一つ遊漁の対策、こういったものが今後の沿岸漁業振興対策として必要であるという観点から、ただいまの法案を沿岸漁業振興という形の一環としてこれをお願いしたということでございます。
  31. 前川旦

    ○前川委員 これは皆さんの立場としては何を重点的にということは言えませんから、不毛の論議になりますので、やめます。  さて、水産物の輸入がずいぶんふえていますね。たとえば五十五年と五十六年を比べてみると、数量で八・八%、金額で一五・一%ふえています。それから総漁獲量に対して、量にして一〇%、金額にして三〇%輸入になっていますね。まだまだ輸入がふえるという趨勢にあるように思いますが、これはこのまま放置していっていいのか、あるいはこれはぜいたく品が主だからいいという考え方もあるかもしれませんけれども日本の漁家に与える影響も大きいと思います。これは何かの歯どめをかけるのか、今後放置するのか、そのお考えはいかがでしょうか。
  32. 松浦昭

    松浦政府委員 何と申しましても重要な国民のたん白資源でございます水産物の安定的な供給を確保するということのためには、沿岸あるいは沖合いの漁業というものを一層振興しまして、わが国周辺水域で漁獲された水産物の有効利用を図る、これがやはり基本だろうというふうに思います。  ただ、消費者の需要が強くて国内生産では賄えないような中高級魚、いま輸入をたくさんしておりますのは、エビとかあるいはべニザケとかそれから一部のマグロあるいはカニ、カズノコ、スジコといったようなたぐいでございますけれども、こういったものにつきましては今後ともある程度は輸入に依存せざるを得ないというふうに考えておる次第でございます。しかし、無秩序な輸入がわが国漁業者に悪影響を与えるようなことがないように、現在も沿岸、沖合い漁業者の主要漁獲物につきましては輸入割り当て制度をしいておるわけでございますから、今後国内の関係業者影響がないように、クォータの運用に当たりましては適切な配慮をしていくということが基本であろうと思います。このようなことで、やはりわが国の特に沿岸、沖合いの漁業者を守るという立場で今後の輸入政策を運用していくべきであるというふうに考えておる次第でございます。
  33. 前川旦

    ○前川委員 いまのお答えは、何らかの歯どめが要るという、私は歯どめが要るのじゃないですかというふうに伺いましたが、そういうふうな意味ですか。
  34. 松浦昭

    松浦政府委員 輸入政策の運用に当たりまして、特に沿岸、沖合いの漁業者が漁獲いたしております漁獲対象物につきましては輸入割り当て制度がしかれておりますから、その運用に当たりまして十分先生のおっしゃいましたようなことを頭に入れまして運用したいということを申し上げた次第であります。
  35. 前川旦

    ○前川委員 それでは次に、海洋法条約の確定によりまして世界の二百海里の体制が定着したということは、沿岸国が自国の二百海里水域の生物資源管理、利用に責任を持つ時代が来た、こう言っていいのではないでしょうか。これが一つです。  そうすると、日本は当然日本の二百海里水域資源漁場漁業の適正な管理を図る義務が生じたと考えるべきであろうと思いますが、そうなりますと、一体魚というものはどういうものであるのか。魚は公のものであるか、その二百海里の中の範囲の魚は日本の国の財産なのかどうか、その辺の魚に対する考え方。二百海里の外の場合、それから二百海里の中の場合、沿岸の場合、いろいろ違うかもしれませんが、いま私がお尋ねしておりますのはとりあえず二百海里の問題ですが、その二百海里内の魚は日本のものである、日本の財産である、国の所有権ということが明確にならざるを得ないと考えてよろしいのでしょうか。その辺、いかがでしょう。
  36. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに、おっしゃいますように近年相次ぐ二百海里漁業専管水域の設定によりまして、二百海里内の資源につきましては沿岸国がいわゆる排他的管轄権を持つということは海洋法条約によりましても明確になってきている原則でございます。このような意味で、国と国との関係におきましては二百海里内の資源沿岸国に漁獲する優先権があるということが決められ、これが国際的にほぼ定着してきたというのが現状であろうと考えます。  ただ、そのことは直ちに二百海里内の資源の所有権を国が持つかどうかということとは若干違った問題であろうと考えておるわけでございまして、もちろんわが国漁船わが国の二百海里内において優先権を持って漁業を営むという状態ではありますが、個々の魚そのものについては、国の所有権まで確立したそういう国際的な観念ではないというふうに考えておるわけであります。その意味では、長い漁業の伝統を踏まえまして、国内では水中に生息する個々の魚は所有権の対象とはなり得ないという意味で、従来から特に浮き魚につきましてはいわゆる無主物という考え方定着しているわけでございます。そこは若干国際的な関係と国内の関係は違っていると考えております。
  37. 前川旦

    ○前川委員 魚が無主物であるか有主物であるかというのは、後に専門家である日野委員から質問されますので私は深く突っ込みませんが、ただ外国に対して排他的、優先的にとれる、それだけではなくて、入漁料とか漁獲制限といったようなことは実際ありますね。ということは、どう考えても、所有権という強いところまでは言えないかもしれないけれども、これは国の財産だという何か宣言というか、魚に対する考えで、一切無主物なんだという従来の考えと違う考えで対応しなければいけないのではないでしょうか。
  38. 松浦昭

    松浦政府委員 私どもとしましては、たとえば外国漁船の入域を認めるというような場合には、当然これは沿岸国に優先権があるということから、たとえばソ日の条約といった場合におきましてはわが方がこれに対する割り当て権を持つといった形で国と国との関係を律しているということでございます。  むしろ問題は、国内における資源の所有権ということでございます。確かに私どもとしましては、従来からこの魚というものを国の所有物であるという考え方はとってこなかったわけでございますけれども、これから二百海里を迎えまして水産資源に対する管理を強化していくという意味での必要性は増してきていると考えるわけでありますし、また、魚礁の設置とか栽培漁業といった点で多額の投資をしていくということを考えてまいりますと、ただこれは無主物であるということだけでそのままでいいかということになりますと、そこに新しい観念と申しますか、いわゆる管理漁業といった観念が入ってくるのではないかと考えている次第であります。
  39. 前川旦

    ○前川委員 それでは、その問題は日野委員に譲るといたしまして、その場合、従来の漁業制度のままでいいのかという問題が出てきます。漁業制度の見直しの検討に着手すべきであるという意見もあります。  すでに漁業制度調査会というのが法律によって設置されておりましたが、いまどうなっているのですか。これは開店休業ですか。一遍解散したのですか。もう一遍漁業制度調査会を設置して検討せよという意見がありますが、この点についてどうでしょうか。これは昭和三十三年四月の第二十八回国会に漁業制度調査会設置法に基づいて設置されていますね。法律は生きていますが、実際の運用はされていないようですが、この点はいかがでしょうか。
  40. 松浦昭

    松浦政府委員 漁業制度調査会につきましては、現在は活動を行っていないという状況でございます。  このような問題が起こる原因と申しますと、恐らくただいま私申しましたような、新しい漁業実態に即応して管理型漁業というものをどう考えていくか、それに伴って漁業制度をどういうふうに確立していくかということが重要な話題になり、そこから漁業制度といったような問題にも及んでくるのではないかというようにも考えるわけでございます。  ただ、このような管理漁業という考え方に立ちますと、やはり三つの大きな要件があると思います。  まず第一は、水産資源の評価、これにつきまして研究開発というものが必要でありまして、的確に水の中の資源がどの程度あるかということが把握される必要があると思います。  それから第二に、やはりふやしていく技術というものが確立されて、栽培漁業によって一体どの程度までふえていくかという技術の確立が必要だろうと思います。  それから第三は、何と申しましても漁業法等に基づきますところのいわゆる漁獲努力の適正な管理、これが制度的に仕組まれなければならないというふうに考えるわけでございまして、このような幾つかの手法の完成を待って、初めて制度の面でもこれを充足していくことができるのではないかと思います。  しかしながら、これらの諸点につきましては、まだ資源把握につきましては研究の段階にございますし、栽培漁業もようやくこの法律によりましてさらにこれを進めていくという段階でございます。この問題が非常に重要な問題であるということは私ども十分意識をしておりますが、何分にも漁業権ということになりますと現在ある漁業秩序、それに基づく漁業者の権利というものにも非常に大きな影響が出てまいる話でございますので、漁業者方々の御意見等も十分に聞かなければならぬということもございますから、長期的な検討の課題ということで受けとめさせていただきたいと思う次第でございます。
  41. 前川旦

    ○前川委員 先ほど、二百海里内の魚についての発想法はいままでと変えなければならないという御答弁があったと思いますが、この法律案の基礎にあるのは、私は何となく感じるのですが、受益者負担という考え方をこれから導入していくのかどうか。いままで浮き魚の場合は一切自由でしたね。ところが、サケ・マスの場合には受益者負担という考え方が入っていますね。これから栽培漁業についてもこの発想法を入れていくのかどうか。どういうふうに考えていらっしゃるのか、お答えいただきます。
  42. 松浦昭

    松浦政府委員 私ども、基本的に受益者負担につきましては次のような考え方でございます。  栽培漁業につきましてはまだ歴史も浅いわけでございまして、技術的に開発の段階にある魚種が多いわけでございますが、そのようなまだ開発段階にある魚種につきましては、受益者負担を取り入れていくということはまだまだむずかしい。やはり国なり県なりという公共的な立場の負担によりましてこれを開発していくべきであると考えます。  しかしながら、放流効果が実際に実証できまして、それによりまして漁業者みずからも相当放流も行い、栽培漁業定着するという状態になりました場合には、種苗の有償配付といったような形での受益者の応分の負担というものがあってもいいと考えるわけでございます。  ただ、現在の段階ではなかなかここまで至った魚種が少ないという実情でございまして、そのために今回考えてまいりましたいわゆる放流効果実証事業はこの中間の段階にあるとお考えいただきたいと思うわけでございます。そうなりますと、種苗生産が安定いたしまして、濃密に放流を行いながら実際に漁業者方々にもこの放流効果を確認していただくことがこの事業の主体でございますから、さような中間的な段階におきましては、一方では国なり県なりの負担をもってこれを推進してまいりますが、一方ではこのような種苗生産なり中間育成の段階において、この放流効果実証事業においては、受益者負担ということではありませんけれども協力金といったような形である程度まで協力をお願いしていく、そこに民間の資金も導入していくということを考えてはどうかということを考えたわけでございます。
  43. 前川旦

    ○前川委員 これは大変大きな政策の転換になろうかと思いますけれども漁業者団体、漁業団体、生業としている者の意見を十分に取り入れながら取り組んでいただきたいと思いますが、いかがですか。
  44. 松浦昭

    松浦政府委員 もとよりこの協力金は強制的に徴収するものでもございませんし、あくまでも漁業者方々の御協力によって進めていかなければならない、そういうものでございますので、放流効果実証事業実施に当たりましては、協議会等を通じまして十分に漁業者の御協力と御理解を得て進めていきたいというふうに思います。
  45. 前川旦

    ○前川委員 私が申し上げましたのは、基本的な発想として受益者負担を導入するというその姿勢について、このことについて、いまの協力金の問題は後の話にして、漁業団体との十分な話し合いと理解というか、慎重な態度をとってもらいたいということです。
  46. 松浦昭

    松浦政府委員 何分にも従来からの制度とは、また物の考え方とは違った要素が入ってくるわけでございますから、当然漁業者方々と十分にお話し合いをし、その過程においてこの仕事を進めていかなければならぬというふうに考えておりますので、先生のお尋ねのとおりだと思います。
  47. 前川旦

    ○前川委員 国の栽培漁業センター十二カ所、いま二カ所建設中、都道府県は三十七カ所、六十年から完全稼働に入るということでありますが、これが一巡しまして、今後はどのような施設整備を計画しておられますか。
  48. 松浦昭

    松浦政府委員 ただいまの国、県のセンターの設備の完備状況でございますが、ただいま先生御指摘になられましたように、まず国の栽培センターでございますが、昭和三十七年度から整備を進めまして、全国十カ所すでに設置を終わっておりまして、二カ所建設中であります。それから道府県の栽培漁業センターでございますが、これは昭和四十八年度から整備を進めまして、現在沿海三十九都道府県のうち三十五道府県で稼働いたしておりまして、二県が建設中。それが六十年度で完全稼働に入るという見込みでございまして、その意味では一応施設の整備は終わるというかっこうになります。しかしながら、国も県も基本施設の整備の段階は終えましたので、これからはこの施設の利用度を上げまして、何回も回転させてできるだけ多くの種苗をつくっていく、また、単位容積当たりの種苗生産をふやすということが今後の課題であるというふうに考えております。  ただ、今後の大きな問題としましては、種苗放流効果が上がっております市町村あるいは漁協から種苗生産施設あるいは中間育成施設の導入が高まってくるというふうに考えられますので、もう一つ下のレベルと申しますか、第一線のレベルで市町村あるいは漁協等におけるこれらの施設の整備というのが非常に重要になってくると思いますから、これに力を注いでいきたい。また、道府県の栽培センターにつきましても、種苗生産施設を増強したいというところも出てまいると思います。こういうところにつきましても、これにこたえるように関連予算の確保には努めてまいりたいというふうに考えております。
  49. 前川旦

    ○前川委員 栽培漁業を強化することで実証効果を測定して、現にこれだけの効果が上がるのだということを目で見てもらって、それからだんだんその事業漁業者に移していくという考え方が流れていますね。  どうも流れの中で、栽培事業そのものをだんだん漁業者にゆだねていくことで国の予算、負担を減らす、つまり予算の節約を図っていこうというのじゃないか、後退するのじゃないか、そういう意図があるのではないか、こういう指摘をされる向きもあります。私も、最近の財政難のことを考えておりますと、とにかくいままでは栽培漁業というのは支出するばかりだったが、これをだんだん漁業者に負担させて予算の面で撤退していくのではないか、こういう気持ちがしてなりません。しかし、これから栽培漁業関係の予算は当面の間は強化しなければいけないというのが本当だと思いますが、その点についてのお考えはいかがですか。
  50. 松浦昭

    松浦政府委員 沿岸漁業を豊かにするためには、国としては栽培漁業を当然促進し、振興していかなければならないわけでございまして、その関連予算の確保ということにつきましては従来も努力してまいりましたが、今後ともその重要性にかんがみまして予算の確保は当然努力をしていくということだと思います。ただいま先生がおっしゃいましたように、今回の措置、この法制が決して予算面での肩がわりといったようなことを考えているわけではないということをひとつ御理解いただきたいと思います。  特に、栽培事業の実験段階というのは国や県が種苗代も全額負担をしておるわけでございますし、また、放流効果が実際にあらわれた段階では、これは地元の方々への有償配付といったようなこともあると思いますけれども放流効果実証事業に当たりましては協力金という形はとりますが、これはむしろさらに放流の尾数やあるいは放流地点を増加したいというような地元の要求にこたえて、これは応分の負担を求めるというような考え方でございまして、基本はやはり放流効果実証事業につきましても国の関与あるいは都道府県の関与というのは当然期待されておるわけでございます。さような点において、このような協力金を設けたということも決して予算の面での後退というようなことを考えているわけではないというふうに御理解いただきたいと思います。
  51. 前川旦

    ○前川委員 もう一歩積極的にお考えになっていただけませんか。何も予算の節約を考えたわけではないとおっしゃったけれども、この協力制度の新設なども、やはりその分だけ予算が撤退していくのではないかという疑問がどうしても抜けません。ですから、そういう心配をなくしていただくには、むしろ栽培漁業関係の予算はふやしていくという姿勢がないといけないと思いますが、減らす意図はないのですということから、もう一歩踏み込んだお約束はしてもらえぬでしょうか。
  52. 松浦昭

    松浦政府委員 栽培事業が非常に重要な事業であるということ、また特に、現在実験段階にある、また開発段階にある魚種も非常に多いわけでございますから、さような意味では国あるいは都道府県の関与ということが非常に重要でございますので、そのような重要性にかんがみて今後とも必要な予算の確保には努めてまいるという姿勢でございます。
  53. 前川旦

    ○前川委員 緊縮予算で非常に苦しい気持ちはわかりますから、私が望むような御答弁をいただけないのかもしれませんけれども、しかし重点的に考えるのであれば、それは予算をふやすんだという強い姿勢は終始一貫貫いていただきたいということを強く要望しておきます。  それでは法案の中身に入りますが、まず第六条の基本方針ですね。これは新しく出てきた話ですが、この基本方針は一体いつごろこれを決めるようにするのか。それから、五年ごとに定めるという話を聞いておりますが、それはそういうことなのか。  それから、時間が足りませんので一緒に聞いておきますが、この「基本的な指針及び指標」というのはどういう内容を考えておられるのか、予定しているのか。具体的にどういうことを決めるつもりでここに書かれているのか。その次には、種類と量を含めまして具体的にどの程度の種苗生産あるいはそれによる漁獲増大を見込んでおられるのか。その辺の、この「基本的な指針及び指標」の中身について水産庁考えていらっしゃることを聞きたいと思います。
  54. 松浦昭

    松浦政府委員 まず基本方針でございますが、これは、幸いにして法律を通していただきましたならば、その施行後直ちに作業にかかりまして、栽培漁業の専門家あるいは都道府県等の意見を十分聴取いたしまして素案づくりを行いまして、私どもとしましては沿岸漁業振興審議会の意見を徴して定めようというふうに考えておりまして、その時期は五十八年度の後半というふうに考えております。  次に、目標年度はお話しのとおり六十五年度ということで定める予定でございます。  それから基本方針の内容でございますが、種苗生産放流と、これに関する技術開発と、今後栽培漁業を計画的に推進する上で必要な事項につきまして中長期的な枠組みを示したいと考えております。  次に、基本的な指針でございますが、これは種苗の重点的、効率的な大量生産、大量かつ継続的な放流実施、幼稚仔の適切な保護管理等につきまして規定する予定でございます。  また、基本的な指標ということでございますが、これは水産動物の種類ごとの全国的な種苗生産数量の見通しを定める予定でございますが、いま先生お尋ねになりましたのは、大体どの程度かということだろうと思います。  私どもまだつくっておりませんので、これからでございますが、私どもの腹づもりを申し上げますと、現在、道府県が持っております計画がございます。これを合算いたしますと、昭和六十年度には、クルマエビで六億六千万尾、それからマダイで二千六百万尾、クロダイが四百五十万尾、ヒラメが八百万尾、ガザミが二千四百万尾、アワビが三千二百万個、こういった種苗生産が見込まれております。これによります漁獲量、漁獲金額は、技術改善を見込みますと約二千六百トンから六千五百トン、六十億から百四十億といった増大が見込まれている状況でございます。ただ、この数字は一応の基礎となるわけでございまして、基本方針の策定に当たってはこれそのものを採用するわけではございません。栽培漁業の専門家とかあるいは都道府県意見もよく聞きまして、沿岸での資源増大にどの程度寄与できるか、あるいは技術開発の見通しがどうかといったようなことから総合的に検討いたしまして決定したいというふうに考えております。  なお、基本方針に規定する目標でございますが、基本的には種苗生産施設、中間育成施設等の整備充実、それから種苗生産技術及び放流技術の向上、さらに三点目といたしまして放流後の保護管理徹底を図ることにより達成することとなりますので、これに要する経費につきまして予算の確保に努めていくということでございます。  なお、先ほど目標年度を六十五年度と申したと思いますが、六十二年度でございます。
  55. 前川旦

    ○前川委員 海洋水産資源開発基本方針というふうにありますね。これは、昭和五十三年度を基準にして昭和六十年を目標年度として、沿岸海域における水産動植物の増殖または養殖による漁業生産の増大目標を、魚介類四十四万トン、海藻類八万トン、計五十二万トンと計上している計画が別途にあります。これとの関連はどうなりますか。
  56. 松浦昭

    松浦政府委員 海洋水産資源開発基本方針につきましては、水産物の安定的供給を図るために水産物需要の動向等に即応して増殖、養殖、新漁場における漁業生産の企業化などの方法による漁業生産の増大の目標等を定めるということで、これは養殖も入っておりますし、新漁場の開発も全部入っているわけでございます。これに対しまして、今回の改正後の沿整法に基づく基本方針は特定の水産動物につきましての種苗生産放流、育成といういわゆる増殖行為を計画的に進めていこうという考え方でございまして、おのずからこの海洋水産資源開発基本方針とは違っているわけでございます。  ただ、この海洋水産資源開発基本方針の中に含まれておりますところの増殖の推進という部分につきましては、確かに重複しているところがございますので、両者の計画が調和のとれたものになるように、これから基本方針を策定してまいる際に十分に考えていきたいというように考えております。
  57. 前川旦

    ○前川委員 それでは、第二項の第二号に移ります。  「種苗生産及び放流並びに水産動物の育成に係る技術の開発」、技術の開発でありますが、種苗生産技術、これは着実に進んでおる、わかります。しかし、この後に出てきますが、放流効果の測定技術というのがどれだけ開発されているのか。放流効果測定技術です。これはなかなか疑問だと思いますが、ここでちょっとお伺いしておきますのは、栽培漁業関係技術開発の予算というのは一体どれぐらい今年度で組まれているのか、これが水産関係研究開発費の中でどれぐらいのパーセントを占めているのか。私、非常に低かったんじゃなかったかと思いますが、数字がいま出ますか。
  58. 松浦昭

    松浦政府委員 現在の国の栽培漁業関係技術開発、五十八年度の予算でございますが、委託費、補助金を含めて種苗生産関係、約九億五千万円でございます。ちょっとパーセンテージは、いまはじいておりますので……
  59. 前川旦

    ○前川委員 非常にこれは少ない数字のように思いますね。この九億の金で一体技術開発ができるのだろうかどうだろうか。意気込みは意気込みでいいのですが、それには予算の裏づけがなければいけませんので、その辺、もう少し予算をがんばるということをお願いしておきたいと思いますが、いかがですか。
  60. 松浦昭

    松浦政府委員 何と申しましても、栽培漁業振興を図る基礎はまだまだ技術の開発を必要とするという段階でございますので、技術開発に今後とも力を入れてまいりたいと思うわけでございますが、予算そのものにつきましても、もちろん重要な予算につきましては今後とも十分に検討いたしまして対処いたしてまいるつもりでございますけれども技術開発というのはまず施設があり、それからまたそこに相当な、人的にもこの施設を運用していく方々、研究者が十分いるということが非常に重要だと思います。  予算そのものということもございますけれども、たとえば一例を挙げてみますと、実はおととしの十月に厚岸の国営センターを開場いたしたばかりでございますが、ここでハナサキガニとタラバガニを開発することになっておりまして、これは非常にむずかしい栽培技術だと言われておったわけでございますが、研究者の本当のヒントから、珪藻類を食べさせればこれが非常に有効に育つことがわかりまして、たった一年くらいの間の技術開発でございますが、ハナサキガニが四十万尾できましたし、それからタラバガニが二十万尾できているわけでございます。こういったヒントといいますか、そういうことが非常にこの技術開発では必要でありまして、予算もさることながら、研究者のアイデアと申しますか、そういうことがこの技術開発には非常に重要なウエートを占めているということ、こういった未開発の段階ではそういうことであるということをひとつ御了解いただきたいと思います。
  61. 前川旦

    ○前川委員 この技術者の数も少ないですね。ですから、技術者もこれから養成をして数を大分ふやしていかないと事業が実際にやれないと思いますが、その点も非常に心配になります。これから数の充実も考えておられますかどうか、伺います。
  62. 松浦昭

    松浦政府委員 現在、この栽培漁業の研究者、技術者につきましては、研究者は国の水産研究所で総勢四百八人おります。それから各都道府県の水産試験場で四百三十七人ということで、これはかなりのパーセンテージを占めていると思います。それから技術者の方ですが、日裁協で六十二名、各都道府県栽培漁業センターで三百四十六名ということで、四百八名が現在従事しておりまして、大変よく働いていただいていることは事実であります。  ただし、今後さらにこの栽培漁業効果的に推進してまいりますには、やはり技術者、研究者の人材を養成することが非常に重要であるということは先生お説のとおりでございますので、これから国や県の試験研究機関あるいは栽培漁業センター、それから水産関係の教育機関等の相互連携を図りまして、栽培漁業に関する研究技術の向上、研究者あるいは技術者の養成を図っていくということで前向きに対応していきたいと考えております。
  63. 前川旦

    ○前川委員 それでは、あわせて伺っておきますが、栽培漁業についていままでに非常に大きな役割りを果たしてきた協会に日本栽培漁業協会があります。この法案の中には日本栽培漁業協会の位置づけが明確に出ておりませんが、これからこの協会はどういう役割りを果たしていくのか、その組織や予算や事業内容について政府はどういうふうにこれから取り組んでいくのか。それから、各県にあるセンター、それから後で出てきます民法法人、公益法人ですか、こういう法人との関係が一体どうなるのか。それから、行管から一部仕事がダブっているという指摘がありましたね。ところが地元へ行ってみますと、この協会からクルマエビなどは種苗の配付をずいぶん受けているわけですね。急速に撤退されると大混乱が起こる。需給関係調整に非常に大きな役割りを果たしておりますので、この位置づけを明確にしてほしい。急激な撤退みたいなものは困りますという意見が強く出ましたが、この辺はどうお考えですか。
  64. 松浦昭

    松浦政府委員 まず日栽協の役割りでございますが、今回の法律にはこれの位置づけは明確に書いておりませんけれども、全国的な技術開発等の中核機関ということで、これは当然非常に重要な役割りを今後とも果たしていくというふうに考えておるわけでございます。特に日栽協は国の委託によりまして種苗生産あるいは放流技術開発といったようなことを行っておりますほかに、クルマエビ種苗生産及び供給、あるいは今後非常に重要になってまいると思われますのは、各都道府県段階で行われますところの栽培センター等がやっております栽培漁業に関する情報の収集分析、それからその成果の普及といったようなことが全国段階で行われていく必要がございまして、さような意味栽培漁業技術開発の中核機関というものに日栽協はなっていくというふうに考えておる次第でございます。  それからまた、このような役割りのほかに、種苗調整といったようなことも非常に大きな日栽協の役割りであると思いますし、非常に回遊範囲の広い種苗の開発、生産、たとえばブリとかマグロとかいったものはやはり日栽協が中心になってやっていかなければならぬということでございまして、決して日栽協の役割りがふえることはあれ減ることはないというふうに考えておる次第でございます。  なお、都道府県段階の機関というのは、当該地域に即した種苗の技術の開発、さらには種苗生産といったようなことを当然実施していくわけでありまして、今回各県に一を限って認可をいたしますところの放流効果実証事業の主体になります法人につきましても、実際の放流事業実施団体ということで当然大きな役割りを果たしていくということでございます。  なお、お尋ねクルマエビにつきまして、行管の指摘もあって一挙にクルマエビ種苗供給事業をやめてしまうようなことがあるのではないかという御懸念でございますが、この点につきましては、実は瀬戸内海における県や民間の種苗生産数量が約半分になってきておりまして、今後もこういった分野も相当大きくなってくると思いますけれども、急速に補助をやめて県とか民間のクルマエビ種苗生産にゆだねるということになりますと、これはやはり相当生産量の低下を来すというおそれもありますので、行管も直ちにこれを廃止しろということを言っておりません。この点について今後十分に関係県と協議いたしまして、クルマエビ放流尾数が落ち込むようなことがないように調整しながらこの関係は進めていくというふうに考えております。
  65. 前川旦

    ○前川委員 どうかそういうふうに運営をお願いしておきます。  それでは、この二項三号ですが、三号の最後に「重要事項」とあります。この重要事項というのは一体何を考えていらっしゃるのか。たとえば、伝え聞くところによりますと、各県で栽培漁業推進協議会のようなものをつくるということを聞いておりますが、それはそういうふうになさるのかどうか。すると、その協議会にはどんな役割りを果たさせるおつもりなのか。これは単なる相談のための機関なのか、あるいは協議決定機関にするのか。一体どういう協議をするのか。あるいはどういう構成になるのか。時間がありませんから一度に聞いておきますが、従来あります海区漁業調整委員会、漁場利用調整協議会との関連はどうなるのか。その辺のところを整理してお答えいただきたいと思います。  なお、この栽培漁業推進協議会のようなものを計画していらっしゃるそうですが、県に一つなのか、もっと細かく分けていかれるのか、それも含めて一緒にお答えいただきたいと思います。
  66. 松浦昭

    松浦政府委員 六条第二項第三号のその他重要事項というのは、ただいま先生がおっしゃられたとおりでありまして、私どもとしましては栽培漁業推進協議会の設置等につきまして定める予定でございます。  そこで、この協議会の性格でございますが、まず、この協議会都道府県段階放流効果実証事業実施地区と両方につくるつもりでございます。そこで関係者は栽培漁業の推進につきまして必要な事項を検討してコンセンサスづくりを行うということで、都道府県段階にできますところの協議会の方は、都道府県がつくる基本計画といったものや指定法人の基本計画にこういった意見を反映してもらうということでございますし、放流効果実証事業実施地域につくられる栽培漁業推進協議会は、やはり指定法人の実証事業の推進に漁民のいろいろな意見を反映してもらう協議体ということで考えておる次第でございます。  それから協議の内容でございますが、都道府県段階では、都道府県の策定する基本計画種苗生産放流、育成、あるいは技術開発ということでございますが、これが当該都道府県の水産の自然的、社会的条件から見て、技術的に見て適当かといったようなことを審議していただく。それから放流効果実証事業段階協議会は、その内容の検討、あるいは放流魚種保護管理は関する必要な措置ということを検討していただくつもりでございます。  構成員は、市町村、漁協、指定法人及び栽培漁業に関する学識経験者から成るというふうに考えていただいていいと思います。  それから海区委員会等との関連でございますが、海区委員会の方は、いわゆる漁場の総合的な高度利用、漁業に関する紛争の調整といったような仕組みでございまして、これとは全く別物であるというふうにお考えになっていただいてよろしいかと思います。
  67. 前川旦

    ○前川委員 長官ずいぶん早口でいらっしゃるからよくわかりませんが、後で議事録を丹念に調べさしてもらって、また時間をとって再質問させていただきたいと思います。  時間が足りなくなりました。次に参りたいと思いますが、第十五条の指定法人、新しいのが出てまいりました。放流効果実証事業を公益法人にさせる。これは公益法人にしたという理由がまず一つあります。道県が直営運営しているセンターもありますが、あえて公益法人にするという理由。それから、兵庫県のように瀬戸内海と日本海で全然違うところがありますが、なぜ一つに限るのか。それからもう一つ、出資者というのはだれが出資者でどういうふうになるのでしょうか。それについて質問いたします。
  68. 松浦昭

    松浦政府委員 一度にたくさんお答えをいたしておりますので、ちょっと早口になりまして恐縮でございますが、内容的には非常に細かく申し上げておりますので……。  まず放流効果実証事業でございますが、種苗の大量生産が可能になりまして放流技術も開発されて経済ベースに乗る事業ということで放流が行い得ると考えられる魚種につきまして、継続的かつ大量に種苗放流を行いまして、放流効果実証調査実施して、その結果を広く漁業者普及し、漁業者みずからによる栽培漁業実施を促進する。これがこの事業の目的でございます。  さようなことから、実は以下指定法人の性格が出てくるわけでございますが、まず公益法人にいたしました理由は、この事業は、種苗放流を、現在都道府県等が行っております試験的段階から漁協等による本格的な経済事業段階に移行させる過渡的な段階ということで位置づけております。それからまた、そのような性格でございますので、直ちに経済採算ベースに乗るとも思えないわけでございます。さようなことから都道府県の地先水面の公的な資源をふやすという色彩が強いので、そこで県、市町村、漁協等が構成員になるということで、公的な主体として公益法人ということでこの指定法人を位置づけたということでございます。  それからなお、この事業といたしましては、放流による効果を一般的に広く普及するということが必要でございますので、その意味でも公益性が非常に強いということで公益法人にいたしたということでございます。  なお、なぜ一にしたかということでございますが、これは県にかわりまして、県の地先水面の公的資源をふやすという事業を、県の強い指導監督を受けて公正的確に実施をするという必要がある。それからまた、これを的確に把握するためには大量かつ継続的な放流実施が必要でありますので、現在の種苗生産水準では必ずしも十分でない。そこで、種苗の確保が必要でございますから、相当まとまってやらなければいかぬということがございます。それから第三に、漁業者は一般に開発された放流技術とかあるいは放流効果につきまして情報の普及を受けるわけでございますが、この場合には、公益法人が一元的にこれを行って公平かつ効率的にやるということが必要なので、そこで一つに限るということにいたしたということでございます。  なお、御指摘のように、県一円で事業を行いますと日本海と瀬戸内海に分かれている兵庫県のような場合はどうなるかということでございますが、これは場合によっては支所を設けるといったようなことによりまして、事業実施支障が生じないように十分運用は考えてまいりたいというふうに考えております。
  69. 前川旦

    ○前川委員 この法案の中で私が一番不思議だと思いますのは、海域を限るという内容がないのですね。従来、この法案の最初のときには、栽培漁業振興区域をつくる、従来あった育成水面という考え方はなくして、栽培漁業振興区域をつくるというように最初の案ではあったと聞いているわけです。それがなくなってしまった。  ところが、漁場管理制度研究会報告によりますと、種苗放流を濃密に実施して、放流された幼稚魚保護管理のためには採捕制限を徹底しなければならないという報告書があります。実証事業をやるには、これはやはり一定の水面を限って、一定の時期はその幼稚魚をとっちゃいかぬよという制限もしなければいけないでしょうし、それから、調査するにしてもどこでとれたかという場所も限らなければいけないでしょうし、何らかの水面を限らないと仕事ができないでしょう。  ところが、この育成水面は、従来四十カ所設定してあったのがいま十六カ所に減っていますね。減った理由もこれはいろいろあると思うのですけれども、この育成水面といまの実証作業、これはどういう関連になるのか。育成水面という考え方を発展させて、いま十六カ所に減っている育成水面をこれからふやしていって、そこで実証作業をやるのか、それとも全然別のことを考えておられるのか、その辺が明確じゃないのですね。その辺をお聞かせいただきたいと思うのです。
  70. 松浦昭

    松浦政府委員 この法律の中にあります放流効果実証事業というものは、いわゆるある一定の水面につきましての採捕制限といったようなことと決して矛盾はしない。うらはらの関係にあるわけでございます。どの面から法律的に規定していこうかということだけの違いであるわけでございます。  そこで、まず放流効果実証事業の方から申しますと、これは先ほど申しましたように、繰り返して放流を行うことによって漁民がこの放流というのは非常に効果があるんだということを認識していただく、こういう事業でございますけれども、その際には、当然、放流効果を上げますために、関係漁協等に対しましてまず自主的な採捕制限をお願いする。たとえば協力要請の内容として、一定期間放流場所周辺での漁獲を自粛するといったようなこととか、あるいは経済サイズ以下での採捕を極力避けるといったようなことを、場合によっては釣り人の方も含めてお願いをするといったようなことが必要になってくると思います。  それからまた、このようなことをさらに推し進めてまいりまして、場合によりますと、自然界のものも含めまして資源保護の必要がある場合には、漁業調整規則あるいは委員会指示といったようないわゆる漁業法の体系そのものの中で、体長制限とかあるいは稚魚保護のいろいろな規制がございますが、この規制をかけていくということで、それと一体になって放流効果実証事業というものを進めていきたいというふうに考えておりますので、そこは全然考え方を転換したわけではございません。その点ひとつ申し上げておきます。  それからいま一つは、育成水面との関係をどう考えるかということでございますが、これはもう端的に、簡単に申し上げますと、確かに育成水面というのは現在の制度の中では余り活用されておらないわけでございます。ところが、なぜこれを活用されなかったかということを簡単に申しますと、たとえばクルマエビとかあるいはガザミといったようなものは、共同漁業権の中で大体放流されてしまうわけでございます。したがいまして、共同漁業権の中では余り第三者が入ってこないところでございますから、わざわざ育成水面をつくるまでもないということでございます。  ところが、マダイとかあるいはヒラメとか、そういったひれ魚のたぐいを栽培漁業をやっていきますと、共同漁業権の外に出てまいります。そうしますると、どうしても育成水面という考え方が必要になってくるわけでございますが、これらの魚種につきましてはまだ放流効果実証事業をやっておりませんから、漁民方々が本当にこれは効果がある放流事業だということがおわかりになっていないんじゃないかと思うわけです。そういう地域が多いと思います。そこで、放流効果実証事業を繰り返してやっていくことによって放流効果があるというところでは、漁民方々がよくその効果をおわかりになって、それでは育成水面をつくっていこう、こういうことによって将来育成水面をふやしていこうということで連結関係考えているわけでございます。もちろん、その場合におきまして、放流効果実証事業の結果、たとえば自主的な体長制限を行う、そういったこともありますし、あるいは委員会の規則といったようなことでこれを規制するといったことも育成水面のほかにまた生かされていくという便もありますが、育成水面とそういった制度を組み合わせまして、先ほど一定の制限水域内におけると先生がおっしゃいましたような効果、そういったものを今後発揮していくということがわれわれの考えている内容でございます。
  71. 前川旦

    ○前川委員 実際にそのとおりうまくいくかどうか、これは大変むずかしい問題だろうと思いますよ。なかなかそう簡単にはいかない問題だと思いますけれども、時間がどんどん過ぎていくので、これは宿題にしておきます。  それじゃ、二十一条の協力金についてお尋ねをいたしますが、これも分けないで、もう全部一遍にお尋ねいたします。  まず、協力金の性格ですね。これは一体どういうものか。これは受益者負担というふうに考えるべきなのか、あるいは全くそうではない、一種の共同募金的なものみたいで、何か性格はよくわかりませんが、受益者負担ではないのだというのか。要するに協力金の性格は何か、これが一つあります。  二番目には、協力金を受け付ける、つまりもらう対象は一体だれなのか、団体なのか個人なのか、これが二つ目にあります。  三つ目には、その徴収の仕方ですね。とにかくどういうかっこうで、どういう方法でこれを取るのかということがあります。  その次には、「任意」と書いてありますが、任意とは一体どういう意味なのか。何もしなければ、まさに協力金なんて入るはずがありません。ある程度の行政指導をしなければ協力金というのは取れませんわ、現実の問題として。そうすると、それは現実の問題として強制になりはしないか。その辺のことをどう調和させるのか。実質強制になってはいけませんね。それをどうするのか。  それから、いつの時期から徴収するのか。どの段階でこれを徴収するようにするのか。  それから、金額はどれぐらいを考えているのか。その金額を計算する基礎は何か。つまり、いま言った金額ですね、どれぐらい考えているのか。  いっぱい質問しましたけれども、時間の関係がありますので圧縮して質問いたしましたが、お答えをいただきたいと思います。  なお、取り方の問題を申し上げましたのは、漁場管理制度研究会報告の中に、「徴収の具体的方法をめぐってさまざまの見解があるが、例えば、」ということで「船ごとにその大きさによりランクをつけて一隻いくらという方式、漁具・漁法によりランクをつけて」云々とか、具体的なことがこの報告の中にありますので、取り方というのはそういう意味での質問であります。  以上、お願いします。
  72. 松浦昭

    松浦政府委員 まず協力金の性格でございますが、協力金は、放流効果実証事業実施に伴いまして放流魚と同種の魚の漁獲増という利益を受ける方が、その受益の認識に基づいて任意に拠出していただくというものでございます。したがいまして、公共事業実施等に伴って特に利益を受ける方が強制的に徴収を受けるといった受益者負担金とは全く性格を異にするものであります。それからなお、実際的には、協力金は利益を受ける者の団体が、これは漁協等でありますが、それぞれの受益の認識に基づいて、話し合いによって額を決めて拠出をすべきものと考えております。したがいまして、行政指導で実質的に強制徴収といったことにわたることのないように指定法人を指導していくように考えております。  それから次に、拠出者の範囲をお尋ねになりましたが、放流効果調査の結果明らかになりました放流魚が濃密に分布、生息する圏域の中で、そういった水域の中で放流魚と同じ種類の魚を採捕する漁業者あるいは釣り人、入漁者に対しまして、協力金の拠出について協力をお願いするということになります。その具体的な圏域につきましては、栽培漁業推進協議会で線引きをすることになります。  それから拠出の方法でありますが、これは漁業者あるいは釣り人方々、個々の採捕者から徴収すると申しますか、ちょうだいするということではなくて、舟ごとにその大きさにより一隻幾らというような方法、あるいは漁具、漁法によりランクをつけまして、漁協あるいは入漁案内業者ごとに一括拠出していただくということを考えております。  それから拠出金額の算定方法でありますが、拠出された協力金は種苗生産、中間育成と放流の経費の一部に充てられることになりますので、これらの経費が協力金を募る場合の目安になると考えます。具体的には、これらについて補助金が出ている場合にはその地元負担額に相当する金額といったようなことになろうかと考えております。  さらに、時期でございますが、これはやはり放流効果実証事業を推進してまいりまして、これは実効が上がるということが皆さんの認識の中で明らかになるということが前提でございまして、そういった時期から拠出をお願いしていくということになろうかと思います。  以上の点につきましてはまだ方針でございますが、今後長官通達を決めましてそこの中で明確に明示をしていくつもりでございます。
  73. 前川旦

    ○前川委員 それでは、この法案の中に出てきます漁場利用協定、これはいままでにも漁場利用協定はかなり結ばれているところがありますが、しかし、結ばれているところより結ばれていないところが圧倒的に多いわけです。そこで、ほうっておいたのではこれはもうこれ以上進みません。この漁場利用協定は結びなさい、つまり奨励をするという方向で県を通じて行政指導をするのかどうか。出先へ行ってみますと、こんなものは県が指導しなければとてもできませんよという話もございました。ですから、奨励する方向で、積極的に進めるという方向でいかれますか。
  74. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の漁場利用協定につきましては、やはり基本的には当事者間の合意でございますので、その内容につきましては両者のよくお話し合いの上で決めていただきたいというふうに考えておるわけでございますが、今回、都道府県知事の勧告あるいはその遵守についてのあっせんといったような規定を設けて、漁業者とそれから釣り人の間の調整を図りたい、それを推進させたいということからこのような規定を入れたわけでございますから、できるだけ紛争が起こらないようにするために、この漁場の利用の協定を積極的につくっていただける方向でやっていただきたいと考えまして、さような指導をしていくつもりでございます。
  75. 前川旦

    ○前川委員 なるほど、積極的に行政指導をして結ばせるようにするということであります。それでは関連して、紛争が生じた場合あっせんができるとなっておりますが、あっせんと調停とはずいぶん意味が違いますね。しかし、これも行政指導によっては実質的に調停に近いところまでやれると思うのですが、これも都道府県の姿勢によってうんと違います。ですから、紛争が生じた場合、この法律ではあっせんができるという非常に緩い規定ですけれども、これも事実上調停までいけるくらいの行政指導をするというお考えなんでしょうか。この点、いかがですか。
  76. 松浦昭

    松浦政府委員 この勧告、あっせんは、先ほども申し上げましたように内容に立ち入るものではなくて、双力が話し合いを進めていただくということのために今回のこの規定を置いたわけでございます。したがいまして、当事者から勧告の申し出あるいはあっせんの申請があった場合において、漁場の安定的な利用を確保する上で必要というふうに考えた場合には、当然、都道府県知事が積極的に勧告なりあっせんするように指導していきたいと考えております。  ただ、あっせんは内容まで立ち入っていただくというわけではございませんので、いろいろ話し合いの過程でお話し合いの仲立ちをするというようなことはあろうかと思いますが、調停に近いものになるというふうには私ども考えていないわけでございます。
  77. 前川旦

    ○前川委員 それでは遊漁についてお伺いいたしますが、当初、釣り舟業の適正化に関する法律案というのをお考えになった経過がありますね。しかし、今度の法案の中では、遊漁船の登録制については出ていませんが、この登録制については将来どういうふうにお考えですか。
  78. 松浦昭

    松浦政府委員 沿岸漁業釣り調整を図りますために漁場管理制度研究会にいろいろと御審議を願いまして、その報告を受けて、私ども、当初、釣り舟業者都道府県知事への届け出制の導入、それから釣り舟業者等と漁協との間の漁場利用協定の奨励、この二本立てで実は法案の作成を検討していたことは事実でございます。ただ、今回のこの法案では、漁場利用協定だけについて盛り込みまして御提出を申し上げ、御審議をお願いしているという状況でございます。  実はこの釣り舟業の届け出制については、本来自由にこういう業を営み得る業態でございますので、それを届け出制という規制を行う前提として、釣り舟業者の遵守すべき事項ということについて法的な規制を行うということが必要であるというふうに法令上の考え方がまとまってきたわけでございます。ところが、この遵守すべき事項の具体的内容につきましては、やはり既存の法律体系というものがございましてこれとの関連もあり、また、そこを所管する関係官庁といったところとの調整が必要でございまして、今回きわめて限られた会期内での国会への提出ができなくなるとほかの事柄もできなくなるということで、今回はこの分に限りまして、実は関係省庁との引き続きの調整ということを前提にして今回は法案の提出をいたさなかったわけでございます。今後は、関係省庁とも引き続き調整を行いまして成案を得るよう検討してまいりたいと考えている次第でございます。  なお、このように法案の形では提出いたさなかったわけでございますが、今回は改正案によって漁場利用協定の方はお願いをいたしておりますので、これができ上がりました場合には、この適切な運用によって釣り舟業者組織化の促進あるいは実態把握もしていくということで、実行上はいろいろな効果を上げることができるというふうに考えている次第でございます。
  79. 前川旦

    ○前川委員 時間が参りましたので、最後にまとめて質問いたしますが、一つは、釣り案内業者による海難事故が多発しておりますから、この釣り案内業者のいわゆる遊漁船に対して対人あるいは捜索費用等の保険の強制加入を義務づけてほしいという要望が釣りの団体から出ております。これについてどうお考えなのか。  それから、漁場管理制度研究会報告、これをもっと取り入れてもらいたいという意見があります。この報告に対してこれからどう取り組んでいくのか。この報告の内容をもっともっと取り入れていくという方向で積極的に対応していくのか。これが二つ。  もう一つは、遊漁レジャーですね。そうすると、これは生業遊漁両者の共存だということがしきりに言われておりますけれども、その共存というのは、生業優先という原則に立った上で調和を図っていくのか、全く無原則に両方とも一緒なのかどうか、その辺の基本的な考え方です。私はやはり生業優先という原則を入れた上で、たてまえを立てた上でできるだけ遊漁との調和を図っていくという姿勢が正しい姿勢であろうと思いますが、その点について質問いたしまして、終わりにいたします。
  80. 松浦昭

    松浦政府委員 まず第一点の釣り舟業者に関しますところのいわゆる強制保険の問題でございますが、この点につきましてはいろいろな御要望があることもよく聞いておりますが、実態把握を十分に行いまして、強制保険制度の是非につきましては、実は保険の所管の官庁は大蔵省でございますので、そちらの方と相談しながら検討したいというふうに思っております。  なお、現在釣り舟保険につきましては民間の保険もございますし、それから全国水産業協同組合共済会のいわゆるノリコーの中に、遊漁船共済契約というのもございます。こういったものをできるだけ普及し、指導していくということが必要であろうと考えておりますので、そちらの方に当面努力を傾注したいというふうに考えております。  第二点の、漁場管理制度研究会の報告を今後どう取り扱っていくかということでございますが、この法案の提出の過程におきまして、研究会におきまして十分に御審議をいただきましたことを私ども念頭に置きながらこの法案をつくったわけでございますが、その過程におきましてまたいろいろと法制度の仕組みの上での問題点がございまして、また同時に、これはある一面では釣り人とそれから漁業者との間の調和、バランスを図りながらいろいろと考えてここまで参った制度でもございます。それからまた、釣り舟業につきましての規制というものにつきましても、実は今回は提出してないということもございます。さようなことから、ある意味ではこの栽培漁業、それからまた釣りとの調整、そしてまた罰金の強化、この三つを柱にいたしました研究会の御提案を踏まえての、一歩前進したというのが今回の法案の評価ではないかというふうに考えるわけでございまして、さような意味で今後ともさらにこれにつきましては検討を加え、実現すべき点がありましたら今後ともこれを前向きに検討していくということではないかというふうに考えております。  それから最後に、釣りとそれから漁業者とのバランスをどう考えていくのかということでございますが、私はあくまでもこれは共存の関係ということを申し上げているわけでございまして、私どもも十分に、これは国民たん白の供給者としての漁業者というものも非常に重要であるということでありますが、一方におきましてやはりレジャーとしての釣りというものが国民の中に定着してきている、その尊重ということもまた非常に重要であるということから、あくまでも漁業者生業としての漁業支障を来さないということが前提である、一方において釣り人方々をいたずらに排斥しない、こういう態度で臨んでいくということが基本であろうというふうに考えている次第でございます。
  81. 前川旦

    ○前川委員 終わります。
  82. 山崎平八郎

    山崎委員長 日野市朗君。
  83. 日野市朗

    ○日野委員 まず、沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案について質疑をいたしたいと思います。  この法律案というのはかなり野心的な法律案であるというふうに私思いますし、遠洋の方からだんだん日本漁船が締め出されてくるという傾向から、沿岸を非常に重視するということの重要性、これを私も非常に痛感をするところでございまして、栽培漁業を積極的に推進をし、その実を結ばしていこうとする、そういうねらいを持ったこの法案は、非常に高く評価をいたしたいというふうに思っております。  ただ、私、こういう大事業にこれから取り組もうとなさっているわけでありますから、かなり総合的な観点からこの事業の推進ということは考えなければならないのであろうというふうに思っております。つまり、稚魚栽培漁業センターで育てましてこれを放流する、また中間育成をやるということをいたしましても、単にこれを増産をしてどんどん海に放流をしていくということだけでは足りませんで、その周辺でもやらなければならない作業というものは非常に多いというふうに私は思っております。いろいろ金をかけて栽培漁業センターの事業を軌道に乗せてこられたわけでありまして、これからさらにそれをスピードアップしていこうというときに、その事業だけがどんどん進行しても、その周辺部分にいろんな欠陥があったのでは、これは何もなりません。  それで、私は、その若干気になる点について数点伺っておきたいというふうに思います。  まず、漁場の環境の問題を最初に取り上げてみたいというように思います。  実は私の方も海辺でございまして、私の方には万石浦という魚の揺籃の地とでも言うべき非常にすばらしい漁場がございます。私なんかも子供のころのことを非常によく記憶しているのですが、そこに海水浴なんかに行きますと小さいカレイがいっぱいおりまして、ときにはそれを踏みつけてずるっと滑るというようなことがあったわけでございますが、現在はそのようなことは全然ございません。もう魚などというものはときどき目にするということなわけでありますが、これはやはり水質の関係がかなりあるだろうというふうに思います。これから放流事業なんかをやるに当たっても、水質の点というのは非常に考えなければならぬ点でありましょうし、それからいろんな干潟なんかに対する評価という点も非常に大事な点であろうと思うのですが、まずこの水質の点について、日本におけるこういう沿岸の水質の状況というものはどんなふうになっているものか。環境庁においでをいただいておりますから、まず環境庁の方の見方というものをひとつお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。
  84. 片山徹

    ○片山説明員 環境庁といたしまして、毎年全国の公共用水域調査結果をまとめておるわけでございますが、昭和五十六年度の公共用水域水質測定結果によりますと、海域の環境基準の達成率、これは水質指標でCODで評価しておりますが、昭和四十九年以来上昇の傾向を示してきておりまして、五十六年度におきましては八〇%程度ということになっておりまして、河川とか湖沼の他の水域と比べましても高い達成率を維持しておるというのが現状でございます。
  85. 日野市朗

    ○日野委員 漸次これは改善をされてきているであろうということは、われわれも関係者の努力を高く評価をしているわけでありますが、常に問題にされるのは水質の富栄養化というようなことが問題になっておりまして、琵琶湖における燐を含んだ洗剤の使用を規制することになったわけでありますが、私はこういう問題について日本の環境行政というものは非常にネガティブな姿勢を維持しているように思われてならないのであります。この洗剤の問題については、これはいろんな漁協ども強い関心を持っておりますし、それから漁民なんかの間にもかなり強い関心があるところでありまして、この問題についてきちんとした対応がこれからもなされなければならないというふうに思うのですが、この点について環境庁はどのように対処をしておられるのでしょうか。
  86. 片山徹

    ○片山説明員 ただいまのお話にございます富栄養化対策につきましては、一つにはやはり工場排水の問題、それから二点目には下水道にかかわる生活排水対策、三点目にいま先生の申されました洗剤対策、この三つがございます。これらの諸対策を講ずる中で、特に洗剤対策につきましては、過去から、環境庁が通産省を通じまして日本石鹸洗剤工業会に対しまして、特に洗剤中の燐の含有率を低減させるような措置を講ずるように申し入れをしてきております。その結果、現在におきましては全体の洗剤の中で無燐化の割合が約六〇%に達しておる、こういう状況でございます。  それから工場排水等につきましては、特に瀬戸内海におきまして燐の対策といたしまして、燐の削減指導指針というものを各都道府県で策定いたしまして、それによりまして事業場その他の工場に対しまして指導をしてきておるということでございます。  その他COD対策としましては、水質汚濁防止法によりまして、特に閉鎖性水域におきまして従来の排水規制に加えまして総量規制制度を導入して対策を講じてきておるという状況でございます。
  87. 日野市朗

    ○日野委員 環境庁の環境行政、これは日本の政治の非常に重大な一つの問題として常にやり玉に上がるところでありますが、環境庁における環境行政のあり方とも密接に関係するわけでございますけれども、こういう事業をやろうとする際に、これは水産庁としても漁業環境を守っていくということに熱心にならなければならないであろうと私思います。それから、このような事業を進めるに当たって、水質のいかんによっては、せっかく放流した稚魚等の種苗がその水質のために成長を阻害される、場合によっては死滅してしまう、こういうことに対する配慮なんかもなされなければならないところであろうかと思います。この法案ではそういった配慮はどのように表現をされているのか、その点についていかがでしょうか。
  88. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の栽培漁業を推進してまいります対応策といたしまして、漁場の保全、維持を図るということは大前提であると私ども理解をいたしておるわけでございます。したがいまして、今回の法案の中にはその規定はございませんけれども、しかしながら関連いたします法律はたくさんあるわけでございまして、特にただいま環境庁の方の所管の御説明もございましたけれども、そのほかの関係官庁、たとえばいろいろな廃棄物等の流出あるいは生活排水、そういったいろいろな面での規制というものが充実されまして、それによって水質が保全され、そこに栽培漁業が行われることによって初めて栽培漁業振興が図れるということでございます。さような点ではまことに先生の御指摘のとおりでございますので、関係官庁と十分に連絡をとりまして、これらの法律の運用につきまして私どもいろいろとお願いもし、また、促進を図っていただくということにしていきたいと思います。  ただ、私ども自身がやっていける分野もございます。たとえば漁場環境の悪化を防止しますために、漁業者地域住民に対しまして公害による漁業被害の実態あるいは公害防止対策について啓蒙普及を図る、こういった予算も持っておりますし、また、生活排水に起因している漁場に堆積した汚泥の状況あるいは有機汚泥の堆積量等の把握、こういった調査も私どもやっております。また、生活排水に起因いたしまして水質あるいは底質が悪化している漁場につきましては、ヘドロのしゅんせつ等、漁場生産力の回復を目的としたいわゆる沿岸漁場保全事業というものも実施しております。こういったわれわれ自身が行い得る分野につきましても今後さらに強化を図りまして、栽培漁業振興を図る基礎的な前提につきましての漁場の保全というものに当たってまいりたいと考えておる次第でございます。
  89. 日野市朗

    ○日野委員 いま御答弁あったわけでありますが、私、この点についてこの法案に直接触れた部分がないということについて非常な危惧感を覚えるわけであります。これは何らかの形で表現していくということはこれから考えておられるのかどうか。いかがでしょう。
  90. 松浦昭

    松浦政府委員 この法律そのものは、栽培漁業振興を図るというその側面でこの問題をとらえておりますので、法律上の表現ということは必ずしも必要ではないのではないかというふうに考えております。しかしながら、ほかの諸法規がございますので、それを前提にしてこの法律が成り立っているというふうに私ども理解をしている次第であります。
  91. 日野市朗

    ○日野委員 では、次の問題点に移らしていただきますが、具体的な例を引いて若干お話をしたいと思います。  先ほど申し上げました万石浦というところなんですが、ここではマコガレイとかクルマエビ、これの放流をやっております。私、そこにしょっちゅう行ってみるのでありますが、釣り人が来ておりまして、本当にやっと針にかかるぐらいのカレイをいっぱい釣り上げるわけですね。これは見ていてまことに胸が痛むことなんであります。こういうことをやっていたら、これはせっかく放流をしても一体何になるのかなというような感じがいたします。これは釣りばかりではなくて、恐らく網にも大分かかっているのでございましょう。あの辺の特産物でいわゆる珍味なる、小さなカレイを加工した、酒のつまみなどにちょうどいいものがあったりもするわけでありますが、こういう事態に対処をしていくことの必要ということを私非常に強く感ずるわけでございます。これは、この法案でどのようにこういう事態に対処していかれるつもりなのか。いかがでございましょう。
  92. 松浦昭

    松浦政府委員 放流事業を特に今回強化いたしまして、放流効果実証事業ということで規定をいたしておるわけでございますが、その場合に、放流いたしました幼稚仔が放流直後やあるいは経済的な価値がまだ低い段階でとられてしまうということになりますと、何のための放流事業かということになることはごもっともでございます。ただいま万石浦の例を引かれましたけれども、たとえば瀬戸内海のマダイといったようなことにつきましても、私ども実は同じような経験を持っておるわけでございます。  さような意味で、幼稚魚の採捕制限ということはどうしてもこの放流効果実証事業とうらはらになっていかなければならぬというふうに考えておるわけでございまして、その意味で、放流効果実証事業実施地区につきましては、先ほど御質問ございまして御答弁いたしました協議会、これは関係市町村、漁協あるいは指定法人等で構成する協議会をつくるつもりでございます。そこで、自主的な採捕規制措置を定めまして関係漁協等に遵守を呼びかけていくということがまず第一段階としてあると思います。  かようなことで、たとえばその水域で一定期間は採捕行為をしないとか、あるいは一定の体長になるまでは採捕しないとか、そういった自主的な規制をかけていくということが必要であり、この場合には、必要に応じましてただいま先生も御指摘ありました釣り人関係方々も入っていただきまして、こういった規制を遵守していただくというふうにしたいと思っております。  しかし、それだけで足りるかという問題もございます。ある程度まで強制力を持った形でこれを実施しなければならぬという場所あるいは事態もあり得るというふうに私ども考えておりまして、これはこの法律の中では直接は規定しておりませんけれども漁業法あるいは水産資源保護法といった体系が今回の法律と密接に関連をしているというふうに御理解をいただきたいわけでございます。さような場合に、要すれば都道府県漁業調整規則あるいは海区漁業調整委員会の指示等を出しまして、体長制限等の規制を行っていくということも考えておりまして、さような一貫した総合的な対応策の中でこれを実現していくというふうに考えている次第でございます。
  93. 日野市朗

    ○日野委員 法文を読んでみますと、確かに放流魚の採捕に関する必要な協力の要請という言葉が出てきているわけでございますね。これから読み取った私の印象を申し上げますと、このような協力の要請というような言葉で表現される程度のことで足りるのかなというふうな率直な印象を実は私は持ちます。それほど釣りというのは、釣りにしても生業としてやっている漁師の方々もそうでありますが、魚はとれるものはどんどんとってしまうということが現実でありまして、そういう点から見ると、いま長官がおっしゃった、そういう裏打ちもあるんですよということはよくわかりますよ。しかし、たとえばこの地域では何センチ以下はとっちゃいかぬですよということになっていても、針にかかってくればそれはとってしまうわけですね。それではさらにペナルティーを科するところまできちんとやれるのかという点になりますと、私は、それに対する監視の目が行き届かないという点もありましょうし、釣り人や何かのモラルというような問題もありましょうし、そこいらは非常にむずかしいのではないかという感じがするのですが、そこを徹底していこうというところまで、これは役所の側も釣り人の側も漁師の側もそこらまでいけるのかどうか、見通しはいかがですか。
  94. 松浦昭

    松浦政府委員 この法律の規定の中ではいわゆる協力要請ということで書いてあるわけでございますが、私先ほど御答弁申し上げましたように、そこから踏み出しまして、ペナルティーも含んだいわゆる強制措置ということになりますと、水産動植物を採捕する者に対するペナルティー、また強制力というものは漁業法の体系の中で、これは業としてこれを行う漁業者のみならず、釣り人方々も同じようにかかってくる法律でございますから、さような体系の中でこれを処理すべきであるという法制上の理由からこの法律の中には規定されていないということのみでございます。したがいまして、当然他の法令と申しますか、最も関連のある漁業法あるいは水産資源保護法の運用によりまして、都道府県漁業調整規則あるいは漁業調整委員会の指示といった強制力を持ったそういった規定によりまして、先ほど申しましたような体長制限であるとかあるいは一定期間の採捕禁止といったようなことをかけていくべきであるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、その場合におきまして、やはり一片の法令あるいは規則の制定によりましてこれが実現できると簡単に考えるわけにはいかないと私は思います。やはりそこには漁業者、それから釣り人のモラルというものが非常に重要な要素をなしてくるというふうに思うわけでございまして、私どもとしましては、漁業者に対しましては漁協等を通じましたところの指導あるいは啓蒙普及、さらには釣り人の方は釣りの案内業者組織あるいは釣り人組織というものを通じまして、この法案を契機にして十分な啓蒙普及を図りまして、資源の増大があってこそ初めて両者とも成り立っていくんだということを十分に指導いたしまして、このような放流事業効果があるような、そういう方向に持っていきたいというふうに考えている次第であります。
  95. 日野市朗

    ○日野委員 私は決して厳罰をもってよしとする立場をとっているわけではございません。しかし、刑は刑なきを期するわけでございまして、やはりときには毅然とした態度をもって臨むということも必要な場合があるのではないかというような感じがいたします。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕  こういうことを私申し上げるのは、現在の沿岸漁場の荒廃と、それからまた後で問題として取り上げますが、密漁の横行であるとか、そういうモラルの低下というのは非常に強くここで指摘せざるを得ないというふうに思いますので申し上げたいわけでありますが、やはり毅然として対処すべき点は対処する、この点は水産庁としてもお考えとしてはお持ちでしょうか。
  96. 松浦昭

    松浦政府委員 必要がある場合にはそのとおりに考えております。
  97. 日野市朗

    ○日野委員 もう一つ、これはこの事業を行うのに非常に大事なことであると思いますが、追跡調査ですね。追跡調査を行うに当たって、その技術が現在どのような水準に達しているのか、これは魚種によっても違いがありましょうし、一般論で伺うのもちょっと気が引けるのでありますが、こういう追跡調査の技術というものはある程度の水準に達しているのか。それから、これからこの技術を革新していくということは必要が強いと私思うのですが、これについてはどのような態度をおとりになりますか。
  98. 松浦昭

    松浦政府委員 放流魚の追跡調査ということは、この放流効果実証事業効果が出てくるためにも非常に重要なものでありまして、一体どの程度まで採捕率が上がっているか、あるいは寄与率がどの辺まであるかということを漁民方々に知っていただく上において非常に重要な点であろうと私ども思っておるわけです。  ただ、現在の段階における追跡調査の技術ということで申し上げますと、たとえばアワビなどにつきましては、これは、種苗生産によるアワビの稚貝というものは緑色をしておりますので比較的明確にわかるわけでございますが、たとえばカレイとかあるいはヒラメとかあるいはマダイといったようなものに移ってまいりますと、現在、標識放流、たとえばひれを切断、切除をするとか、あるいはタグピンをつけるといったような技術を開発しておりますけれども、まだタグピンがとれてしまうというような、そういうケースもあるようでございます。まだまだこの点につきましては、これからもこの技術を完成していかなければならぬということで、今後とも技術の開発に努めなければならぬという感じがいたしております。
  99. 日野市朗

    ○日野委員 この追跡調査をやるにしても、これは漁協の中にいろいろ研究会のような、特に若い人たちなんかが集まって研究会のようなものをつくってやっている例が非常に多うございます。これは単に追跡調査ばかりではなくて、この事業がどんどん進んでまいりますと、漁協のこの事業に対するかかわりというものは非常に重大さを増してくると思うわけでありますから、こういう研究会とか、それから非常に熱心に研究意欲を持ってやっている漁民方々、こういう人たちを組み込んだ一つの方式は考えられないのかというような感じがいたしますが、いかがでございましょう。
  100. 松浦昭

    松浦政府委員 放流結果が判明いたしますのは、やはり放流した稚魚が大きくなって、それが採捕された時点において確実に報告されるということが重要でございます。さような意味で、漁協等の御協力によりましてこれの結果がはっきり判明するような、そういう手段、方法がとられていくということが非常に重要であります。その際におきましては、ただいま先生が御指摘なさいましたような漁民のグループ、こういった方々がこれに協力をしていただくということは、私どもとしては非常に歓迎するところでございます。  それからまた、こういった実際に採捕をする段階だけでなくて、たとえば市場に出てきた段階におきまして、たとえばマダイ等を例にとりますと、タグが体の中に入ってしまうというような例もございます。さような状態で、やはり市場の方方の御協力も必要である。それからいま一つ協力を願いたいのは、釣り方々も相当おられるようなところでは、釣り人方々もひとつ御報告をいただくというようなことが非常に重要になってくると思います。たとえば神奈川県の周辺マダイ放流に当たりましては、かなり釣りの方からも報告が来ております。  さような総合的な力によりまして初めて追跡調査というのが完了し、その中で放流の結果の魚の回遊経路、そういったものも含めましてわかってくるのではないかというふうに思うわけでございます。
  101. 日野市朗

    ○日野委員 この制度は、行く行くは漁協あたりが主体的に種苗放流して、そしてそれぞれの地域における沿岸漁場を豊富化していくということが期待されているわけでございますが、現在の漁協の力量、その体質の弱さといいますか、そういったものから見て、そういう期待を実現していくために一体どのようなことが必要なのかという点、いかがでございましょう。
  102. 松浦昭

    松浦政府委員 栽培漁業段階というのは、クルマエビであるとかあるいはマダイであるとかガザミアワビといったようなものにつきましてはかなり放流効果というものも上がってまいりまして、漁民方々、つまり漁協の構成員の方々がこれは効果があるということがおわかりになってきておられる段階でありますけれども、それにいたしましてもまだまだこれからその放流効果というものをわかっていただいた上で御協力をお願いしなければならぬという段階にあろうというふうに思うわけでございます。  そこで今回の法律に取り込んでまいりましたのが放流効果実証事業という点でございまして、このような大量の放流を行い、そこで継続反復して放流を行うことによって現実に漁獲がふえていくということが実証できました暁におきましては、漁協方々もこれは効果があるものだということで、これに当然乗ってきていただけるというふうに考えておるわけでございます。さような観点からも、この実証事業というものは非常に重要なものであるというふうに考えている次第でございます。
  103. 日野市朗

    ○日野委員 遊漁関係でもいろいろ物を申したい点がありますが、時間がありませんので、一点だけちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  それは、このごろの釣り具の度を過ごした優秀さということです。中には超音波なんかを発生させて、そしてそこにいる魚群を全部集めて、漁師の人たちの表現をかりれば、いるだけの魚が全部とれるというような、優秀なといいますか、悪魔の道具とでも言いたいような釣り具すらこのごろは開発されている。  遊漁については、私はその価値を認めないわけではありません。しかし、そこにはやはり一つの節度があろうかというふうに考えているわけでございます。こういう釣り具などについて何らかの規制をしていく必要があるのではないかというふうに私は思います。そういう優秀な漁具を使いますと、まさに魚が根絶やしになるくらいとれるというようなものもございます。そういうものを野放しにしておいていいのかどうか、ここらはいかがでございますか。
  104. 松浦昭

    松浦政府委員 遊漁者釣り人方々が使用される漁具、漁法につきましては問題があるやり方があるわけでございまして、たとえば現在まきえ釣りのようなことは、各都道府県漁業調整規則なりあるいは調整委員会の指示によりましてすでに禁止している府県もあるわけでございます。かような考え方というのは、漁業者が正常な状態において漁業を行っておるのに支障が出てくるといったようなことは、先ほど私が申しました漁業者釣り人との間の調整を図っていくという基本的な観点から申しましても適当ではないわけでございまして、ただいま先生が御指摘になりました、漁業者のそれに比べて格段にすぐれた漁具、漁法といったようなものを用いまして漁業者生業支障が出てくるといったようなことになりますと、また、資源の乱獲をもたらすといったようなことになりますと、こういうことは大変なことであるというふうに考えます。  したがいまして、このような場合には、遊漁者漁業者、それに学識経験者等から構成しますところの都道府県漁場利用調整協議会という協議会もございますので、こういったところで協議をしていただきまして、沿岸各地の実情に応じまして適切な規制が行われますように、今後とも都道府県指導してまいりたいというふうに考えております。
  105. 日野市朗

    ○日野委員 これからも都道府県指導してというお話でございますが、そういったものについては水産庁として鮮明な形で考え方を打ち出す必要がある時期にもう来ているのではないかというような感じが私はするのですが、いかがでしょう。
  106. 松浦昭

    松浦政府委員 実態を十分調査いたしまして、都道府県指導に遺憾なきを期していきたいというふうに考えております。
  107. 日野市朗

    ○日野委員 今度は密漁関係について若干伺いたいと思います。  現在、密漁の横行というのは本当に目に余るものがあります。それが漁民の生活を脅かす、漁業の健全な発展を非常に阻害しているというふうに私考えているわけでありますが、今度、密漁についての罰則の強化が行われるわけであります。私、罰則の強化が行われたこと自体正しい方向であろう、いままでが何しろ安過ぎましたから正しい方向であろうというふうに思っております。  しかし、私、もう一つ別の問題点があるのだろうと思うのですね。これは、法律上罰則が強化されても、現実に適用される、その適用のされ方という点に問題があったかと思います。改正案がいま出されておりますけれども、それ以前の罰則規定にもちゃんと二年以下の懲役もあったわけでありますし、船なんかについても没収の規定がちゃんとあったわけであります。しかし、現実にはこれが適用された、実刑が裁判で言い渡されたとか没収が現実に行われたという例は余り聞いていないのでありますが、これらのいままでの傾向としてはどんなものだったのでしょうか。
  108. 松浦昭

    松浦政府委員 漁業法の第百四十条におきましては、いわゆる無許可漁業等につきまして体刑が科されるという規定がございまして、その場合には「犯人が所有し、又は所持する漁獲物、製品、漁船及び漁具は、没収することができる。」と決めておるわけでありますが、実際には、漁獲物の没収ということはやっておりますけれども漁船まで没収した例というのは承知しておりません。
  109. 日野市朗

    ○日野委員 私は、先ほども言ったように厳罰主義者ではないのでありますが、現在の密漁の横行、しかも金をかけた業務性の非常に高い密漁というものが非常に横行するという現状においては、その密漁者を根絶やしにしていくということを考えるならば、単にいままで五万円だったものが十万円になりました、一万円だったものが十万円になりました、これだけで威嚇的効果を持たせようとしても足りないのではないかというふうに私は思うのですね。体刑があるのならばもっと体刑を科すような状況をつくっていく。それから、漁船なんかも高速艇が最近非常に多用されております。こういったものは普通の漁民は本来は使わないものですね。そんなにスピードの出る船なんというものは普通の漁民には必要ありません。それを使うのは密漁者というふうに見ていいと思うのですが、そういったものまで没収をできるような状況をつくっていくことが必要ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。いかがでございましょう。
  110. 松浦昭

    松浦政府委員 御指摘のように、近年の密漁等の漁業法違反事件はきわめて悪質な例もあるわけでございまして、被害金額も非常に多額に上っている現状でございます。したがって、今回罰金の引き上げを行ったわけでございますが、それだけではなくて、漁船の没収のように犯人にとって相当重い処分に当たるようなことも運用として行っていくべきであるというふうに私どもは理解しておるわけでございます。  ただ、この問題は、この罰条を適用なさいます司法当局の問題にかかわってまいることでございますので、私どもとしましては、特に最近の密漁実態等を踏まえまして、関係当局と連携を密にしまして、没収規定の適用についてできるだけこれが適切に運用されるように努めていきたいというように考え、また、取り締まり上もそういったことに十分留意してまいりたいと思います。同時にまた、ただいまの没収規定も含めますような罰金、罰則の強化を機会にいたしまして、都道府県とかあるいは海上保安庁、警察等の関係者の間で各地の密漁実態を十分把握いたしまして、取り締まり、処分のあり方につきましても幅広く御検討をお願いするように私どもの方から働きかけていく、そういう場をつくりたいというふうに私ども考えております。
  111. 日野市朗

    ○日野委員 確かにこれは裁判所の問題であります。私もきょうは法務省でも呼んで、法務省の考え方なんかも聞こうと思ったのですが、何しろ法務省の検察当局も仕事上ある程度の独立性を持っているのできょうは遠慮いたしました。しかし、たとえば法廷で検察官がこの種事案で没収が求刑できるような、または体刑を求刑できるような、実際の密漁における現状の認識を高めてもらうというような努力は私は必要であると思うのですね。  これは、大臣、法務当局、最高検あたりと大臣との間でこういうことについての協議をなさるというような場をおつくりになってはどうですか。密漁がいかに現在の沿岸を荒らしているかということについて御認識でしょうから、そこいらはいかがでしょう。
  112. 松浦昭

    松浦政府委員 私、ただいまそういう場をつくってまいりたいという話もいたしたわけでございますが、より高次な場においてそういうお話し合いをしていただく機会があるということは非常にありがたい話でございまして、場合によっては大臣からそういうお話を法務当局、たとえば法務大臣といったような方々に実情をお話しになっていただくことは非常にありがたいことだというふうに私思う次第であります。
  113. 日野市朗

    ○日野委員 じゃ、終わります。
  114. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、新盛辰雄君。
  115. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これまでわが党の同僚議員から沿整法漁業法及び水産資源保護法の一部改正に当たりましてそれぞれ質問がございました。一時間の時間の中でございますが、これから総括的に、沿整法あるいは漁業法にとらわれずに、いま当面する漁業問題を含めて質問をしておきたいと思います。  今回のこの法律改正案は、栽培漁業の推進体制づくり、ある意味では計画的な体制を確立しようという意図がありますし、放流効果実証事業の創設、さらには漁場利用協定づくり、沿岸漁業者と釣り業者、いわゆる遊漁者との調整、そして密漁の対策強化、こういうことが主力になっているわけで、内容的には私どもとしても賛成であります。  ただ、これの実行に当たっていく場合に、附帯決議の中にも明確にしておりますが、生業とする漁業者の生活権あるいは遊漁者レジャーとしての位置づけ、そうした面で釣り業法というのをおつくりになろうとしたのだが、それが実行不可能になったのか、あるいはもめごとがございまして、釣り団体の方も私どもに要請があるのですが、なかなか沿整法には賛成しかねるなどという振興会からの申し入れもありました。いろいろと内容を探ってみると、どうもスタンドプレーらしい。しかし、全体的に見てこれからの調整は非常に問題が出てくると思います。この点についても決意を持っておやりにならなければ——将来釣り業法をおつくりになるのかどうかわかりませんが、明確にしていただきたい。  それから密漁の問題は、確かに罰則強化、いまもペナルティーをもっと強くという、罰金一万円を十万円にした、それで密漁が減るかというとそうじゃないと思いますね。もっと本質的な問題がある。それは海区調整の問題やら、これから起こるであろう沿岸の育成水面における取り扱いにしましても、これは一応法律で決めますけれども、そういう面でもこれからまた出てくるし、漁業者同士のモラルの問題も実はありますね。こうしたことについて、罰金を強化されることもいいのですが、これから先の、密漁をどうしてもなくするという面では、これは沿岸における漁業経営の大きな問題でもございますから、そうしたことについて大臣はいままで御答弁になっておられるのですが、総括的にどのようなお考えを持っておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  116. 金子岩三

    ○金子国務大臣 四十五万の漁業者は生活を守るために漁業をやっているのでありまして、遊漁というのは読んで字のごとく遊ぶ漁と書いてありますが、日本の生活程度がどんどん高くなりまして、レジャーとしてやはりこれも見逃すわけにはいかない。その調和、調整をどうしてとっていくかということをいろいろ検討された結果、当初から比較しますと内容に相当大きな変化が出ているようでありますが、この法案を提出して御審議を願っておるのでございます。これは、実際にこの程度のものを法制化したからといって、漁業遊漁が本当にバランスがとれて今後うまくいくのかなというような、私もいささか懸念を抱いております。したがって、これを施行してみて、今後はまた手直しをして強化していく時代が遠からず訪れる、こういう考え方でおります。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕  漁業は、新盛先生御承知のとおり、資源的にも生産者自体が自分のものを自分が保護していくという考え方に立って、ただ役所の指導ばかりではなくして、まず資源保護するという基本的な姿勢を持って取り組まなければならないと思います。その場合、漁業者資源保護に非常に気を使って、産卵期あるいは稚魚の育成、こういうものを心して漁業をやるとしても、遊漁者はなかなかそうはいかないわけです。私は、この点が非常にむずかしくなってくる問題であろうと思います。いろいろ検討を加えた結果、こういう法制化をやっておりますけれども、これについては一段と御意見を承りましてよりよきものに改正をしていかなければならない、このように考えております。
  117. 新盛辰雄

    ○新盛委員 先ほども質問の中にございましたが、まだ不明確な気がしますので要望しておきますが、協力金の問題です。「放流効果実証事業協力する者が任意に拠出した金銭」と第二十一条に書いてございます。こうした性格、これは強制的になるのじゃなかろうかとか、協力金の算出基準とか拠出者の範囲あるいは拠出方法などなど、具体的な面で、これはこれからの問題ですから十分にこなしていかなければならないと思うのですね。この辺のことについては先ほどお答えがあったあの程度のことだろうから追及しませんが、十分に配慮いただきたい。  それから、これからは漁場利用協定締結といったことが起こるわけですが、これがいま大臣が答弁されたバランスをどうするかという問題にもかかわってくるわけで、漁業者の生活権を、生業であるのか副業であるのかという話になってきますと、やはり私ども漁業者を主体に考えたい。しかし、遊漁者についても、国民レジャーを奪い取るわけにはいきませんから、その辺のところをどうするかの調整だと思いますね。こうした議論をしたことが一般的には釣り業者の間にも流れていきまして、大変手かせ足かせの要求も出てくると思いますよ。だから、そうしたことについても国民がどの目から見ても納得できるような形へ指導体制をつくっていただきたい。これは要望しておきます。  漁業外交の面で、最近では韓国との漁業、それから日ソサケ・マス交渉、そしてまたこの後には日米間の漁業交渉と、いろいろ問題がございます。  そこで、これらに関連をして、実はきのう政府が朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮に入国許可を与えるということで、異例の措置でありますが、これはAA法律諮問委員会が日本で開催されることに対する入国許可だと思います。私はすぐ思い浮かべたのでありますが、日朝漁業暫定協定の再開ができるのじゃないかなという気がするわけです。民間協定を結んで私ども一生懸命努力しましたが、日本の外交上の問題もございましてなかなか進みませんね。国交のない国との問題がある。最近民間でもって進めてまいりましたが、その穴をあけることができませんで、これについてこれからの動き、朝鮮半島は非常に微妙な動きを示しておりますので、そういう中で西日本漁業者はこれを見守っておるようですから、このことについて、きのうからきょうの移り変わりですけれども、これをてこにして日朝間の漁業外交が早まるようなことにならないのかどうか。水産庁としてはこれからどういう対応をされるか、それをまず聞かせてください。
  118. 松浦昭

    松浦政府委員 多分、先生御指摘なさいました報道は、五月十一日、本日付の朝日新聞の一面トップ記事、「北朝鮮代表の入国許可 AA法律委」これの話だろうと思うわけであります。近く東京で開催される国際会議への北朝鮮代表の入国問題につきましては関係当局で検討しているということで、水産庁としてはまだ承知をいたしておりません。ただ、外務省によりますると、国際会議への北朝鮮の代表の入国については従来からも認めておりまして、異例の措置ではないということは聞いております。  そこで、北朝鮮との民間漁業協定が切れましてわが国漁船が北朝鮮水域から退去しているという事態でございますが、この点につきましては私ども一日千秋の思いで交渉の再開ができる日を待っておるわけでございますけれども、それがなかなか実現しないという状況でございます。すでにマスのはえ縄あるいは流し網の漁場は北朝鮮の水域の中に移っておりまして、私ども非常に苦慮をいたしている次第でございますが、先般から申し上げておりますように、この問題につきましては北朝鮮側がどういう態度をとってくださるかということにかかっておりまして、その意味で、日朝議員連盟あるいは日朝漁業協議会等の関係者が北朝鮮におけるわが国漁船操業が再開できるような状態へ努力をしているところでございますから、その成果を一日も早く実現できるように期待をいたしておる次第でございます。  なお、報道によります入国問題と民間漁業協定の問題は、私、この場で直接結びつくかどうかということの判断にちょっと苦しむ点でございまして、さような意味でここで的確な御答弁を申し上げることはできないわけでございます。私どもとしては、とにかく先ほどから申し上げておりますように、一日も早く北朝鮮水域における漁業が再開できるように関係者の話し合いができるような状態になることを期待いたしておりますし、水産庁も今後とも努力を続けていくつもりでございます。
  119. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、韓国船の違法行為が行われ、無秩序操業関係漁民の怒りが日ごとに高まっております。北海道周辺漁業のあり方について、ずばり言ってこの際もう二百海里を設定しなさいという強い要望が出されているようです。水産庁長官は御苦労されて現地で交渉されて、友好的に問題の進展が図られたと聞いてはおるのですが、二百海里を設定するとすれば、また西日本関係の皆さんの中にも、長崎漁連あたりは賛成だという話がありますが、竹島領有問題がございますね。そしてまた、日本漁業との調整も必要になってきます。現行の「相互自主規制方式を改めて、最低わが国の二百海里内で操業するすべての漁船を対象に」云々、二国間漁業協定のことですけれども、こういう状況です。あなたが行かれて、向こうの責任者は、監視船を出してそういう違法行為がないようにということを徹底いたしますと遺憾の意を表してそうなったというのですが、その後は実務者レベルでもって四月下旬からまた始まっているようですから、こうした状況を踏まえて、一体どうなっているのか。また、二百海里設定という声も出てきている。日本がそうすると、これは必ず韓国も中国も行うわけですから、この辺についてこれからどういうふうにされようとしているのか。  ついでながら、日ソ漁業交渉でも協力費が実は二億五千万円引き上げられました。漁獲量については六年据え置きの四万二千五百トン、どういうごろ合わせか知りませんが、四十二億五千万円、こういうことになりまして、これから先もソ連側は相当強く協力費を要求してくると思われるのですね。このことに対応してこれからどうされるのか。  それからアメリカですが、これもまた非常に問題があります。対日の漁獲割り当てを、四月からは予定量を十万トン削ってきております。日米漁業交渉は七月に割り当てを決めるのですね。四月の割り当てが十万トン下がったのですから、七月は一体どういうことになるのか。これは削減されると思います。それがいまアメリカの上院に提出されております経済水域実施法案との取引材料になるのじゃないかという話が一部に出ています。前回の委員会で私が指摘したIWC、国際捕鯨委員会での日本の態度、それに対するアメリカの不信、そうしたものと絡んでおりますので、これは日本の姿勢としてはきわめてきちっとしなければならぬと思うのですが、そのことを二点、結論だけお聞かせください。
  120. 松浦昭

    松浦政府委員 まず日韓関係でございますが、先ほどお話がございましたように、私、三月の十日から十二日まで訪韓をいたしまして、韓国水産庁の金庁長と当面の日韓問題について話し合ってきたわけでございます。特にこの問題につきましては、昨年の年末からことしの一月にかけましての韓国漁船の襟裳沖の操業が非常にひどい違反でございまして、この点につきまして遺憾の意を表明しますと同時に、また、北海道の漁民方々が二百海里を引いてほしいという要望を強く持っておられるという点も先方に十分に話をいたしまして善処方を依頼したわけでございます。この点につきましては、先方も違反を再発させたくないということでございまして、直ちに先方の監視船をわが国の北海道沖に派遣してきたといったことがございます。  そこで、問題は十月の末をもちまして期限切れとなりますところの北海道沖及び済州道沖の漁業の合意、これをどうするかということにかかってくるわけでございますが、この点につきましては、私参りましたときに、実は実務者会議を開いて十分に話し合いをしようということで先方も合意をして別れてきたところでございます。  そこで、五月五日から八日まで、実は私ども水産庁の次長でございます尾島次長をソウルに派遣いたしまして、先方の崔次長との間で実務者会談をいたしました。これは、十月末の最終的な期限までの予備的な交渉でございまして、まだ結論は出ていないわけでございますが、わが方といたしましては、北海道周辺のスケソーダラ及びマダラ等の資源が非常に厳しい状態になっているということを指摘いたしました。また、武蔵堆周辺水域のタラ刺し網漁業等の漁獲量が著しく減少し、大きな問題が生じているということを具体的に先方に資源の評価を含めまして話したわけでございます。それからまた同時に、取り締まりの面につきましては北海道周辺水域への韓国指導船の派遣、それから監督官の出漁船への乗船等につきまして韓国側に対しまして検討をするようにということを話をいたしました。これに対しまして、韓国側は前向きに具体案を検討しましょうということを言ってきているわけでございます。  もう一点は、北海道周辺水域におきましてすでに起きました漁具被害でございますが、この処理促進をいたしますために民間団体に対します両国水産庁指導内容を具体的に協議し、これはひとつできるだけ早くまとめようということで確認をした次第でございます。  なお、済州道周辺水域における資源につきましては、昨年秋の日韓漁業共同委員会における見解を変える必要はないということで両国の意見はこの会談では一致を見た次第でございます。  このようなことで、実はまだ予備的な会談でございますが、特に資源の評価、北海道周辺水域における資源状態を中心にいたしまして今後どのような規制措置を行っていくか、それといま一つは、効果的な取り締まりを担保するのにどういう方法があるか、これを十分に詰めまして今後実効ある措置をとっていくことが必要であるというふうに考えまして、この次の会談といたしましては、七月ごろにまた会いまして向こうと話し合いをしたいということで先方と約束をしているという状況でございます。これが韓国関係でございます。  なお、韓国関係で、二百海里の問題につきましては先ほど御答弁申し上げましたが、やはり韓国水域へ出漁しているわが方の漁船に対する影響なりあるいは竹島問題を含んだ日韓関係というものも十分に配慮しなければなりません。さような意味で、私どもとしては慎重な態度でこれを検討しなければならぬというふうに考えているわけでございます。このようなことで、現在問題になっている点につきましては十月末の期限切れを控えまして十分に先方と話をいたしまして実質的な効果ある措置がとれるように交渉してまいりたいというように考えております。  それから第二の日ソの交渉でございますが、日ソにつきましては先般サケ・マスの交渉がございまして、私、向こうに参りましてクドリャフツェフ次官との間で話し合いをしたわけでございます。その際大きな問題になりましたのは、一つはクォータの問題、それから漁獲尾数の問題がございました。それからまた、規制水域の強化の問題もございました。それから、第二点は何と申しましても協力費の問題、第三点が監視体制の強化という問題でございます。  結局、最終的にはほぼ一九八一年並みのクォータと、それから漁獲尾数の規制ということで話が落ちつきまして、ただ大きく違いましたのは四十億の協力費が四十二億五千万円になったということと、それからオブザーバーを乗せる監視船を一隻ふやすということだったわけでございます。  特にお尋ね漁業協力費の問題でございますが、先方は、日本漁業者も利益を受けているソ連系のサケ・マスが回帰してまいります河川の改修あるいは産卵場の保護のために相当程度の金を使っているということで、それは日本側も利益をしているじゃないかということから、先方の計算によりますと、そのままこれを適用いたしますと日本協力費が約四十九億という状況になる、そういう数字を示してきたわけでございます。私どもといたしましても、一応われわれがメリットを受けているということは認めざるを得ませんが、何分にも漁業者がこのような燃油価格の高騰のもとにおいて、また同時に魚価もそれほど上がらないという状況のもとにおいては、支払いの能力がないということを先方に十分に話をいたしまして、結果、四十二億五千万円ということで先方との話をつけたわけでございます。この協力費につきましては、モスクワにおられました漁業の代表の方々、顧問さん方とも十分に御相談をいたしました上でこれを決めた次第でございますので、さようなことで御了承をいただきたいというふうに考えるわけでございます。  最後にアメリカ関係でございますが、これも非常に厳しい状態になっておりまして、御案内のように四月の割り当てにつきましては二五%の割り当てがあるはずでございましたのを、九%削って約十万トン削られてきております。実はその背後にある事情といたしまして、環境保護主義者の方々が非常に政府を突き上げまして、捕鯨問題の解決が前進がない限りこういった割り当てをフルに割り当てるわけにいかないということから、このような割り当ての削減と申しますか、留保が行われてきたわけでございます。  私どもとしましては、この点についてはあくまでも捕鯨問題というのは割り当てとは違うではないかということを主張いたしてまいりましたし、また、このような科学的な根拠に基づく合理的な資源の利用ということについては、われわれは捕鯨問題についての考え方は変えていないのだということを先方に十分に申しているわけでございまして、日米間の現在の友好的な関係あるいは伝統的な漁業実績ということから考えましても、四月の割り当てを戻してほしいということを先方に話しているわけでございます。七月の割り当てがどうなるかということはこれからの交渉にかかってまいるわけでございますけれども、私どもとしましては、七月の割り当てが行われます前に十分に先方にまた粘り強い交渉を持ちかけまして、この問題についての解決を図り、四月の割り当て分を戻してもらいたいということで交渉したいと考えておる次第であります。  なお、先生がお触れになりましたスチーブンス法でございますが、これはいわゆるフェーズアウトを規定した条項が入っておりまして、いろいろと先方の事情等も実態をいま報告を徴している状況でございますけれども、やはりこの背後にはいろいろとアメリカ漁民の不満があるようでございます。特に漁民だけではなくて、加工業者が余り利益を受けていない、その交渉のてことしてこのスチーブンス法案の問題が出ておるというふうに考えておりますので、これは業界も含めました先方との話し合いを進めまして、このような法案が実現しないように最大限の努力を払ってまいるという方針でございます。
  121. 新盛辰雄

    ○新盛委員 日本側の態度として、これからも毅然たる態度で漁業外交の実を上げられるように全力を挙げていただきたいと思います。  大蔵省、来ておられますか。漁業経営負債整理資金制度ということについて、通称固定負債整理とも言いますが、大蔵省は、この五十六年度、五十七年度、特に五十七年度三百五十億の融資枠、五十八年度六百五十億の融資枠を決めておられるわけですが、これについてどのような理解をしておられるか、大蔵省からお答えをいただきたいと思います。
  122. 千野忠男

    ○千野説明員 お答えをいたします。  漁業経営負債整理資金は、これは減船とかあるいは施設の合理化など漁業者の自主的な努力に基づく生産構造の再編整備を円滑に進める、こういう趣旨のものでございます。現在の財政事情が非常に厳しいものであるにもかかわらず、このようなきわめて長期低利の融資措置を講じましたことは、最近の漁業経営の実態に顧みまして、その抜本的な漁業経営の再建を進め得るように、財政当局といたしましても特段の配慮を払った結果でございます。したがいまして、漁業経営負債整理資金の運用に当たりましては、このような現下の厳しい財政事情のもとで設けられたといった経緯も踏まえまして、制度の趣旨にのっとった厳正かつ適切な運用が行われるべきものであると考えております。  ただいま委員御指摘の五十七年度の融資実績の件でございますが、確かに五十七年度の融資の実績は六十七億円弱と承っております。これは、一つはマグロ漁業以外に減船などを行った業種がなくて、結果的に融資対象の業種がマグロ漁業のみになったということが一つと、それから制度発足の初年度でもございますので、漁業者側におかれましても対応のおくれがあったといったこともございまして、いろいろな特殊な事情からこういう数字になったものと伺っております。
  123. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この問題は、こういう緊縮財政、ある意味ではマイナスシーリングという状況下にありますから、大蔵省としてはシビアに問題を考えておられるとは思いますが、いまの御趣旨はよくおわかりのようですけれども、遠洋マグロはえ縄漁業者を中心にしたいわゆる二〇%、二割減船の実態に照らして、また、船を廃船にするためには残存業者が共補償という、一隻三百トン型で五千万、この負債額も相当なものでありますが、そういうものに対する手だてを含めてこの融資枠というものが決められているわけですね。  前回から私これを取り上げてまいりましたが、どうも制度資金にしても非制度資金にしましても、内容的に共通して言えるのは規制が厳しい。それはぐだぐだ言いません、前回も質問しておりますから。ようやくその取り扱いを簡便法という形で直したわけですよ。当初、昨年度の分、三百五十億、それで従来の方式でありますと十億円ぐらいしか出ない。簡便法で六十六億三千七百万円という形になってきました。あとは、これはもうこれで終わりです。予算の枠を三百五十億つくって、あとはもうないのです。  今度、五十八年度六百五十億つくって、その六百五十億を完全消化できるのか。簡便法を継続することはまだ検討されていないわけですから。恐らく継続していただかなければならないと思いますね。もっと適切な措置はできないのか。この間、業者が倒産を一部でしました。こういう状況ですから、生きた金を使いなさい。見せ金じゃありませんよ。この辺の理解がどうも、水産庁が腰が弱いのか、大蔵省がかさに着てどう言うのか。シビアに、理屈の通らないものはだめよ、こう言っているのか。これは大問題だと思うのですよ。業界の方からも、これについては最近になって、これは大変なことだというのでいろいろと御要望が出ておりますね、後で申し述べますが。この理解について、大蔵省、一体どういうふうに考えておられるのか。
  124. 千野忠男

    ○千野説明員 採択の基準が厳しいために実績が比較的少額にとどまったのじゃないかという御意見でございますが、私どもは必ずしもそういうふうには考えておりません。これは先ほど申し上げましたように、制度の趣旨というものに照らしまして、しかも厳しい財政事情のもとで特に設けられた制度でございますし、やはりこれは適切に趣旨に沿った採択をしなければならない、こう考えております。先ほど申し上げましたように初年度であったということで、これはいろいろ時間がかかるわけでございます。初年度であったということ、それからいろいろほかの業種もあり得ると思っておりましたけれども、この五十七年度につきましてはマグロ漁業だけということになったということ、そういったようなことから、当初の予算額に比べますと比較的少額でございますが、これは必ずしも採択基準が厳しいためということではございません。私どもはそういうことで、採択基準が厳しいためにこうなったというふうには考えておりません。  なお、これは御参考まででございますが、私ども先般発表になりましたことしの漁業白書を見まして大変にショックを受けておる事実が一つございます。  これは、先生も御承知のとおりのところでございますけれども漁業に対する融資というものがトータルにどういう状況になっているかということでございます。白書によりますと、漁業関係の融資額の伸びが引き続き漁業生産額の伸びを上回っておる。したがって、たとえば数字で言いますと、漁業関係生産額が五十六年度が五十五年度に対して〇・二%しかふえていないにもかかわらず、漁業関係の貸出額の合計額は四・一%、残高でふえている。これは非常に問題の点でございますね。こういうことで、かつまたもう一つの数字は、年間の漁業生産額、これが二兆八千億程度でございますが、これの貸付残高あるいは借入残高が二兆九千億でございまして、残高が年間の生産を上回っておる。これは大変に深刻な事態でございます。したがいまして、白書にもありますように、このような借入金比率の高い状態から何とか脱却して極力負債を減らし、自己資本比率を高める努力をせねばいかぬということを言っておるわけでございます。  確かにこのような状況の背景には、言うまでもなく五十二年ごろからの二百海里とか、あるいは二度にわたる燃油の高騰とかございます。ございますけれども、このように厳しい環境のもとにおきましても、多数の黒字の経営体が存在している。個々の置かれた状況のもとにおいて、その状況に応じた最善の努力を重ねて黒字経営をやっている、そういう経営体も多数あるわけでございます。  そういうようなマクロの漁業に対する融資の実態というものを考えてみますと、やはりこれは安易に借入金に依存するという、そういった経営体質を今後長期の課題として直していかなければいかぬ。そういうことを考えましたときに、今回のようないろいろな政策的な目的は入っておりますけれども、一種の借りかえ的な、こういったような資金につきましては、やはり厳格に制度の趣旨にのっとった運用を図るということが長期的な漁業経営の改善のために必要なことである、かように考えております。これは一つの背景でございますけれども
  125. 新盛辰雄

    ○新盛委員 非常に大蔵省なりの答弁の仕方で、私はこの問題は一昨年から取り上げて言っているわけですよ。生産額に対していわゆる借金漬けになっている固定負債の方が大きい。これはゆゆしきことなんです。だから政策制度資金のあり方についても検討する、あるいは見直していくべき時期に来ている。これは、大臣、大事なところですが、どんどん二百海里時代に入って、漁業経営のあり方という問題は非常にオーソドックスな問題もありますけれども、いまお話がございましたように、固定負債の方が生産額を上回るなんというのは、ここ二、三年続いているのですよ。五十六年以降こうなってしまいました。しかも、たん白質源の供給としても、肉よりも魚が落ちているのですね。これは大臣も嘆いておられるのです。  こういういろいろな背景がございますけれども、こうした固定負債の整理をいつかの時期にやらなければいかぬ。後で油の相乗効果についても申し上げておきたいと思うのですが、現実にいま活用しなければならない、倒産がそこにもう目に見えてどんどん増大するであろう、そんなこともございますので、ここは一番、現実の固定負債を一掃させる、そういうやり方はできないかということを、これは前からお願いしておるわけです。  私の方で遠洋マグロはえ縄で五十八年一月末で調べてみると、一般資金で四百二十億、政策資金で五百四十億、九百六十億の固定負債が現にあるのですね。カツオもありましょう。沿岸のいわゆる栽培漁業である生けすでいろいろな種類のものをやっておられますね、そういうものもほとんどあると思いますね。固定負債がふえていることは間違いないのです。だから、この解消について一体どうすればいいか。現実の問題、遠洋マグロの問題だけにいま二〇%減船、百六十四隻、五十六年、五十七年の両年度にわたってやっておるのですね。皆さん方がもう血みどろな経営の努力をしておられる、合理化その他。にかかわらず、どうも補償の面では、現に共補償でも二百五十六億ですよ。こういう状況ですし、現に、いま申し上げた五十八年一月でも遠洋マグロはこうなっておる。これをどういうふうに一掃するのかというのがいまの当面の課題ですね。だから、農林水産大臣も、日鰹連だとかあるいはその他業界の方から五十八年度のこの負債整理資金を活用させてほしいという要望も出ておるわけですから、これについて毅然たるというか、本当に深刻に考えて答弁をしていただきたいと思うのです。
  126. 松浦昭

    松浦政府委員 大臣がお答えになります前に、私から一言、事前の御答弁をさせていただきます。  私ども、この負債整理資金を運用していくに当たりまして基本的に考えなければならないことは、一方におきまして、先ほど大蔵省から説明のありましたような燃油の高騰、二百海里の規制のもとにおける経営の実態、そしてまた借金の状況ということをどう考えるかということもございますが、それを解消していくに当たりまして、漁業者の経営悪化を単なる旧債借りかえということだけではなくて、やはり固定負債を抱える経営をどうやって打開策を考えていくかということを一方において考えながらこの負債整理資金を貸していくということであろうというふうに思うわけでございます。したがいまして、やはり各業界が自主的な努力をやって、そこで生産構造を改編し、そしてまた経営をよくしていく、端的に申せば借金が返せる状態になるということを前提にして、それならば旧債をどうやって処理するかということを考えていく、これがやはり基本でございまして、ここの一線というものは私どももどうしても堅持してお貸しをしていくということだろうというふうに私は思うわけでございます。  そこで、今回、三百五十億の融資枠の中で六十六億数千万円の枠しか消化できなかったという御指摘でございますが、この点につきましては、確かにまだマグロの漁業だけが対象でございまして、これからまたいろいろな工夫をこらし、また、業界の自主的な努力もやっていただきまして、イカ釣りとかあるいはカツオとか、そういうところにも業種の対象を拡大していくということが必要であろうというふうに思うわけでございます。  それともう一つは、制度の発足が相当遅くなりまして、こういった自主的な業界の努力が実らなかった時点において年度末が来たということがあろうと思います。この点につきましては、私どももこれから大いに業界を指導していかなければならぬというふうに考えるわけでございます。  それといま一つは、何と申しましても、先生もよく御承知のように、五十七年は五十六年度に実施しました緊急融資資金の二年間据え置きによるいわゆるモラトリアム、据え置き期間中でございまして、その部分の整理対象になるいわゆる制度資金の債務額が比較的低額であったという問題があろうと思います。それにつきましては、五十八年度になりますと恐らくマグロだけで二百数十億という金が出るというふうに考えられますので、六百五十億の消化という問題につきましては、かなりの消化がこれから行われていくというふうに思うわけでございます。  そこで、今後の問題といたしまして私ども検討するということになりますと、この五十八年度の枠の執行ということに当たりまして、いかにすれば先ほど私が申しましたような基本的な原則にのっとりながらなお消化が進んでいくという状態になるかということでございまして、そこにおきましては業界の意見も十分に参酌しますと同時に、また、置かれている実態も十分に調査をいたしまして、その上で適切な対応策をとっていくということが必要であろうというふうに考えておる次第であります。
  127. 新盛辰雄

    ○新盛委員 確認しておきますが、日鰹連あたりから要望が出ておりますね。これは十分御存じのとおりでしょう。これは、結論から言うと、制度資金の適用対象を拡大してほしい、沿岸とかあるいはカツオ・マグロ——マグロはそうですが、カツオに広げてほしいとか、あるいは非制度の資金について基準日をどうか変更してほしい、また、簡便法を継続でやってほしい、こうした要望が出ておるようですが、これはどうなんですか。基準日の変更とか、具体的に検討を進めておられるのですか。
  128. 松浦昭

    松浦政府委員 日鰹連等から五十八年度の枠につきましての、これをどのように扱ってほしいかという陳情は十分に聞いております。私どもとしましても、五十八年度をどのように事業の執行に当たっていかなければならないかということは当然検討に入っておるわけでございまして、これからまさに詰めていこうという段階でございます。  ただ、幾つかいま例示をなさいました件につきまして若干申し上げておきますと、一つは簡便法についてどうするかという問題でございます。  この点につきましては、五十七年度における本整理資金の適用に当たりまして、実務上個々の債務ごとの基準に該当するかどうかということを算定することは事務的に非常に繁雑で、そのためにこの枠の消化がほとんどできないという事情でございましたので、便宜的な措置ということで簡便法を導入したことは先生もよく御承知のとおりでございます。五十八年度において本資金の整理対象債務の採択基準をどういうふうに決めるかということについては、目下関係業界の要望も参酌しまして鋭意検討中でございますが、事務の繁雑化の防止を図るという観点から、整理対象債務の確定が円滑に行われるように所要の配慮を行うということはいずれにせよ必要なことであると考えておるところでございまして、五十八年度における整理対象債務採択基準の検討の一環として検討してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  それから基準時点の問題がございますが、基準時点につきましては、これは基本的に申しまして、先ほど申しました趣旨から申しますと、この整理対象債務の対象となる減船の実施時期に関連しまして特定される基準時点における既往債務の固定化部分に限るということ、これは当然のことだというふうに思うわけでございます。まだその時点が来ていないというようなものについてまで一括してこれを払うということはなかなかできないわけでございまして、やはりこの非制度資金の基準時点をいつにするかということが問題の焦点であろうというふうに思うわけでございますが、昨年は五十六年三月末ということにいたしたわけでございます。そこで、五十八年度の執行に当たりましても、この時点をいつにするかということは早急に決定すべきであるというふうに考えますが、これは減船促進対策の一環であるという本資金の趣旨、それからマグロ漁業者の経営の実態、本年度予算の執行の実情等も考慮しまして、各方面の意見を聴取した上で適切に決定するというふうに考えておる次第であります。
  129. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これからもまた具体的な問題等に入っていく場合に議論をしてまいりたいと思います。  これと関連をしますが、漁業近代化資金について、これまた省エネあるいはこれからの新しい秩序維持のために、船の構造を変えるために、新造船その他ございますが、そういう近代化を進めていく面で、融資枠は昨年と同じに予算は組んであります。千二百五十億ですね。ことしもまた千二百五十億。昨年の実績を見ますと、千二百五十億円に対して七百七十五億九千万円、これまたきわめて低いわけです。ある意味では投資意欲が減退をしている、この不景気の時代ですから。そこで、五十八年度の近代化資金融資枠、これはどういうふうにお考えになっておられるか。
  130. 松浦昭

    松浦政府委員 先生御指摘のように、漁業近代化資金制度につきましては、昭和四十四年に発足をいたしまして以来、特に漁業者の資本装備の高度化ということを中心にしまして、漁業近代化のための制度融資ということで大きな役割りを果たしてきたわけでございますが、残念ながら現在その伸びが十分でないという状況でございます。  これはやはり、いま先生も御指摘のように、現在の漁業経営が悪化した状況においては、これの投資の意欲がなかなかわかないという点に問題があるというふうに思いますし、また一方におきまして、経営の維持安定のためには、漁業用の燃油資金であるとかあるいは経営維持安定資金等いろいろと創設しまして、その面の資金を充実させたということ、それから負債整理資金等も設定してきたということから、これらの資金の需要が伸びてきたという反面、これが伸びなかったという点があろうと思います。私どもとしましては、やはり沿岸漁業対策を対象といたしました漁業近代化資金というものにつきましても活用を図っていくということが非常に重要であるというふうに考えておるわけでございまして、特に公庫の資金とあわせましてやはり車の両輪のようにこの資金が使われていくという必要があると思います。  そこで、この資金がどうやって実情は使われるかっこうにしていくかということにつきましては、現在漁業制度金融のあり方につきまして、本年十二月末までを目途にしまして水産金融問題研究会というものをやっております。ここで制度資金の運用についても今後どうするかということを実はお諮りをして、これからお話し合いに入っていただくということでございますので、この御検討を十分にやっていただきまして、その結果を尊重しながらこの近代化資金の今後の対応策というものを考えてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  131. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最後に、最近OPECにおける石油の価格が下がりまして、国内にもその影響は当然出てくるわけで、この油の相乗効果をどうするか、非常に漁業者にとっても考えていかなければならない問題です。漁業用A重油、いわゆる漁業燃油は、昨年一キロリットル当たり八万円というのが大体高騰しておった時代に出ていました。遠洋漁業は、とてもじゃないが、これから来る経営の不振というのは当然出てきたわけです。ところが、最近六万七千百円という、これは全漁連の販売価格で見ているわけですが、こうして価格が下がってまいりますと、経営の側に立ちましても、あるいは政府としても、この取り扱いをどうするかという問題が当然出てきますね。  いま検討中だとは思いますが、一体この相乗効果ということについてどういうふうに役立てていった方がいいのか。先ほど申し上げた固定負債整理に向けるために、この際政府指導して借金を一掃しようじゃないかという考え方もあります。あるいはまた、次のオイルショックがいつかの時期に来るかもしれないから、それにひとつ備えていこうという考え方も出てくるかもしれない。あるいは、もうこのままほうっておいて、安くなるのですから、経営者はそれなりに燃油コストの面で経営がだんだん立ち直ってくる、たれ流しでいいじゃないか、こういう考え方等いろいろあると思います。これをどういうふうにしたら効果をあらわすことができるか。この点、これからの経営の立て直しという面でも非常に大事なことですから、考え方がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  132. 松浦昭

    松浦政府委員 第二次の石油危機以来燃油価格が非常に高騰いたしまして、日本漁業経営に大きな悪影響を及ぼしてきたわけでございますが、それだけに、最近の漁業燃油の価格の値下がり傾向というのは、このような厳しい環境のもとにある漁業経営につきまして非常に朗報だったということは事実であろうと思います。しかしながら、今回二回に分けて合わせて約一万二千円の漁業用燃油、特にA重油の価格の値下げがあったわけでございますけれども、これが経営のレベルで一体どの程度の影響を与えるかということを実は若干試算をしておりますので、簡単に申し上げてみたいと思います。  まず第一に沿岸漁業経営でございますけれども漁業支出に占める燃油の割合が平均一三%でありますので、値下がりによる燃油の減少額が八万円ということではじきますと、利益率への貢献は一・二ポイントということでございます。  それから中小漁業経営につきましては、漁業支出に占める燃油費の割合が平均二二%でございますので、値下がりによる燃油費の減少額が四百五十万円程度ということで計算しますと、利益率が三・四ポイント上昇するということになります。  さらに主要業種で見てみますと、遠洋マグロはえ縄漁業、これは二百トンから五百トンクラスでございますけれども、これにおきましての燃費の割合が平均二五%でございますので、値下がりによる燃油費の減少額が千五百万円見込まれます。これによりますと、漁業利益率がマイナスの一三・八%が四・五ポイントだけ上昇する。つまり、その分だけマイナスが減るというかっこうになります。  それから遠洋カツオ釣り漁業でございますが、これも二百トンから五百トンでございますけれども、これでは漁業支出に占める燃油費の割合が平均三一%程度でございます。非常に高うございます。したがいまして、値下がりによる燃費の減少額が一千六百万円程度と見込まれます。こうなりますと、漁業利益率がマイナス一四・六%から五・六ポイント、マイナスが減るというかっこうになります。  それから大中型のまき網漁業でございますが、これは大体主船が百トンから二百トン規模でございますけれども、これは漁業支出に占める燃費の割合が平均一八%でございますので、値下がりによる燃油費の減少が三千万円程度になる。漁業利益率は四・六%から二・九ポイントだけさらに上昇するということでございます。  それから沖合い底びき網漁業におきましては、漁業支出に占める燃油費の割合が平均二五%程度でございますので、値下がりによる燃油費の減少額が七百万円程度、漁業利益率がマイナス一二・四%から四・四ポイント上昇するということでございます。  ただいま申し上げましたように、これはあくまでも平均でございますから、個々の船はまたいろいろと違った動きを示すと思いますが、マイナスになっている非常に悪化した漁業を取り上げてみますと、かなりの改善にはなりますけれども、まだ経営を安定させるまでには至らないということが実証できると思います。したがいまして、私どもしましては、やはり経営の安定化を目指す上においては、このような燃費の値下がりというものに加えて省エネルギーということを心がけていただいて、その相乗効果によってさらに安定した経営に持っていくということが必要ではないかというふうに考えるわけでございます。  それからまた、先ほど先生御指摘になりました非常に重要な点でございますけれども、この値下がりの動向を踏まえて、今後、中長期に一体どういう対策をとっていったらいいかということでございますが、確かにおっしゃられますように、現在のこの借金漬けの漁業というものから脱出するためにこれを有効に使うということもございますし、また、将来の値上がりに備えるといったような考え方もございましょうし、いろいろな考え方が私はあると思います。  そこで、基本は、この効果を一時的なものにすることなく、長期的な観点に立ってわが国漁業の経営の安定のために使っていくということが非常に重要でございまして、このような方策はいろいろあろうかと思います。水産庁としては真剣に取り組むべき課題であると考えておりまして、特にこれは関係漁業団体の協力なくしてはできないことでございますから、さような団体の意向等も十分に聞きまして、今後慎重に検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  133. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間が来ましたので終わりますが、申し上げた一連の諸問題は当面の日本漁業の中心課題であります。したがって、この種問題解決のために全力を挙げていただきたい。そのためには、先ほどから出ております借金漬けを当面一日も早く解消したいと思うのですが、大臣、最後にお答えをいただきたいと思います。
  134. 金子岩三

    ○金子国務大臣 大変適切な御指摘をいただきました。  どうして消化できなかったかの理由を聞きますと、ただ対応がおくれたということをさっき大蔵は言っておりましたけれども、大体、金利の問題も大変支障になっておるわけですね。これは私の持論ですけれども、同じ農水省の中で農業の政策融資の金利は平均三分五厘くらいですよ。漁業は六分六、七厘、倍近くになっておる。これを是正すべきだと一ころ私はずいぶん水産庁を督励しましたけれども、なかなか下がらない。これはどうしたことだろうか。漁業は安定してない、いわゆる危険産業の中に入っていますから、当然金利は高くしなければという一つ考え方が基本的にあるかもしれませんけれども、戦前あるいは戦後の当時の漁業とは違って漁業もやはり安定してきておるわけですから、少なくとも食糧を生産する部門の農林と漁業、これの政策融資として取り扱うならばバランスのとれた金利体系をつくるべきだ、これが基本の問題なんですよ。金利が高くてこの金を借りても余り変わらないということで、条件を整えるためにはいろいろ手続上もうるさいですから、一分か幾らか金利が高いなら地方銀行からということにも走ったりしておると私は見ております。そういうことを考えますと、まず金利体系を、漁業政策金融の基本的な手直しをする、これに取り組むことが先決だと思います。  それからもう一つは税制の問題です。仮にことし非常な大漁年で十億の利益を上げた。地方税を入れますといまの法人税は約六五%ですから、六億五千万は税金に取られる。翌年は十億の赤字が出た。こういう目に遭ったら漁業は崩壊するわけです。私はその繰り返しが現在行われておると思うわけですね。したがって、他の産業と比較してみて投資金額あるいは借金の金額、それと生産金額のバランスがとれない、ここにも大きな問題がある。まことに不安定な、産業と言っていいかどうかわからないほどの漁業なんですから、これはやはり税制の面でも考えなければいけない。以前、一時期は変動所得で五年平均で課税しておった時代があるのですよ。それも最近十年ばかりは消えてなくなっておる。日本漁業が動物たん白の二分の一を水産で今後も持っていくとするならば、こういうあらゆる面で根本的な問題に手を触れていかなければならない。私は、これからいつまで任期がありますかわかりませんけれども、直ちにひとつ取り組んでまいりたい。長くないと思って手をつけないであきらめておりましたけれども、少し延びるようですから、ひとつ手をつけるだけは手をつけて、こういうかねて懸案であった問題に手をつけてまいりたい、このように考えております。
  135. 新盛辰雄

    ○新盛委員 終わります。
  136. 山崎平八郎

    山崎委員長 武田一夫君。
  137. 武田一夫

    ○武田委員 私は、沿岸漁業整備開発法の問題につきまして三問ばかりお尋ねを申し上げます。  栽培漁業の問題につきましては、昭和五十六年の第九十四国会で、民社党さんの協力を得まして、わが党としましても栽培漁業振興法案というものを本委員会に提案いたしたといういきさつがございまして、非常に関心を持ってこの問題に取り組んできたということでありまして、今回この法案が一つ大きく前進することを期待をしておるわけでございます。  そこで、まず最初に、まだわれわれの考えとは同じようにまでいかないということで、今後そういう方向に持っていきたいと私は思っているのですが、一つだけここで確認しておきたいのは、広い範囲の回遊性のある魚種の場合、今後相当研究開発の余地がありそうです。ですから、今後の問題も兼ねまして、これはやはり高級品ですから、放流された幼稚魚保護管理が非常に重要な課題だと思います。この点の対応、予算措置を含めて十分な措置をしていけるものかどうかという問題をまずひとつ確認をしておきたい、こう思うのです。
  138. 松浦昭

    松浦政府委員 大変的確な御指示でございまして、特にマダイ等をとりますと、回遊範囲がかなり広い魚種でございます。たとえば瀬戸内海でマダイ放流いたしました場合には、その回遊範囲は和歌山、大阪、兵庫、徳島といった諸県に広がってまいるわけであります。そのような意味で、かなりの種苗生産放流が行われるという段階になれば、当然数県にまたがる回遊性の魚種についての対応策というものを考えていかなければならないと思うわけでございます。  この点から申しますと、数県に連合の栽培漁業推進協議会、こういったものをつくっていくことが一つの対応策であろうと思いまして、さような数県連合の協議会が自主的な採捕規制措置を決めて、各漁協等に遵守してもらうということが考えられます。  それから、先ほどから、そのような自主的な措置では足らないではないかという御議論に対しまして、これに対するある程度まで強制力を持った対応策ということも申し上げたわけでございますが、その場合には数県協議をいたしまして、同一の採捕規制を協定いたしまして、これをおのおのの県が漁業調整規則または海区調整委員会の指示の形で定めていく、そういう放流稚魚保護管理というやり方もあると考えております。  このようなことを今後検討し、推進してまいりたいと考えておりますが、それに関連する予算措置は、そういう段階が参りましたところでどうやったらいいかということを十分検討して考えてまいりたいと思っております。
  139. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、そういう場合、この法案を見ますと、国は技術開発の経費は負担するけれども、それ以外は県とか漁協等という感じがするわけですが、そういう広域的なものについては技術開発以外の問題も国が負担をすべきではないかというのがわれわれの主張でもあります。これは今後の一つの大きな問題となってくるのではないかと思うのですが、方向性としてはそういう考えはないのかどうかという点、まず確認をしておきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  140. 松浦昭

    松浦政府委員 先ほどから申し上げておりますように、まだ栽培漁業はその魚種別に見ましても開発が進んでいない分野が多くあるわけでございます。したがいまして、まだ技術的に開発の進んでいないそういう魚種につきましての栽培漁業種苗生産から放流に至るまでのそういった経費につきましては、やはり国なり県なりといった公共的な負担において処理しなければとうていリスクをしょえないということでございますので、それはそのようなことで考えているわけでございます。  ただ、それが開発が相当に進んだ段階で、もう十分に漁業者もこれを定着した形で受け入れられるというものにつきましては、ある程度まで有償の形にしていくということでございまして、その中間にあるのが先ほど申しましたように放流効果実証事業協力金である、こういうことを申し上げたわけでございます。したがいまして、いま直ちに技術開発の分野に限ってしまうとか、そういった考え方は持っておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  141. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、技術開発、これは非常に重要な問題で、相当力を入れなくてはならないと私は思います。  マリーンランチング計画というのがありますね。これは、何か聞くところによりますと当初は一年間に十億くらいの予算は取りつけたいということだったけれども、結局は財政事情もこれあり、五十五年が二億八千万、五十六年が二億八千万、今度五十八年が三億九千方とふえておるが、相当縮小させられたということで、相当規模も縮小するし、技術陣の対応も非常に窮屈な思いをしているのではないかと私は思うのですよ。今後、これは、ことしはもうやむを得ないとしても、水産庁または国としてもこの面のてこ入れを相当しなければ大変長期にわたるものになってしまうのじゃないかということで、この点はひとつ予算措置を含めましてもっと力を入れる必要があるのじゃないか、こういうふうに思いますので、これは答弁は要りませんが、ひとつがんばってほしい。われわれもやはりこの面の予算の状況を見てはちょっとお寒いな、こういう法案が出てきて、マリーンランチングというのは相当大きな、言うなればこれでもって全体的な栽培漁業というのが完成するのではないかと思うだけに、がんばらなければいかぬな、こう思っていますので、ひとつ長官初めがんばってほしい、こういうぐあいに思います。  ところで、こういう仕事をやっていく上に大事なのは私は漁場だと思います。ところが、沿岸漁場は非常に汚染が激しい。養殖などをしているところも大変なことで、赤潮などがありまして、きょうのテレビでは、愛媛県では漁協が赤潮のために倒産というようなことも出てきた。私の住む宮城県を中心としたきれいな海で有名な三陸方面も、いろいろと下水の流入とかあるいはまた廃油を船が水法投棄するとか、海が汚れているということを考えますと、種苗生産して放流してもそういうものが海洋汚染にやられてしまっては大変な損失でございまして、私は海の掃除並びに海を汚さないということをあわせて重要視しなければならない、こういうふうに考えているわけであります。五十六年などを見ましても、百八十一件という被害が発生して十三億という被害額がある。こういうことを考えますと、汚染漁場の機能回復をどうするかという問題、また、漁場を汚さない対応をどうするかということを私はこの際あわせて非常に力を入れていかなければならないと思いますので、この点につきましてお尋ねします。  そこで、環境をきちっと守るというための担当者のようなものも必要ではないか。人をふやすことが不可能だとすれば、種苗生産に当たるような方々が担当としてそういうことの仕事ができるように、ひとつ技術やら勉強をさせるとかいうことを考えたらどうか。それから、海の汚れの状況というのは非常に大変だそうでありまして、海底を見ますと非常に汚れている。特に大陸棚はヘドロあるいはまたビニール、空き缶、空き瓶等が大変多くて、魚のすむ環境には非常によくないというのが多いということでございますので、そういうような状況を逐次調査をしながら、そしてそれを清掃するといいますか、クリーンにしていくという対応も必要ではないか。となれば、そのための潜水士というのですか、こういうような方々を張りつけるようなことも必要ではないか、こういうふうに思うわけでありますが、いずれにしましても、そういう環境をきちっと魚のすめる、しかも公害のないような漁場にするための対応について水産庁としてはどういうふうに考えているか。この点、ひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  142. 松浦昭

    松浦政府委員 栽培漁業を推進してまいります上におきまして、そのもとになります漁場というものがいかに大切かということは申すまでもないわけでございまして、種をまく際に畑がどうしようもなかったら、これは種が育たないということでございます。  そこで、私どもとしましては、先ほどもお答えいたしましたように、特に生活排水の問題であるとかあるいは産業廃業物の問題であるとか、いろいろな問題が他省庁の関係において起こりました場合には、これにつきまして関係省庁と十分に協議をいたしまして、できるだけ漁場がクリーンな状態になるように努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  水産庁独自といたしましても、ただいま先生がおっしゃられましたような点は非常に重要な点であるというふうに考えておるわけでございまして、たとえば漁場公害調査指導事業費補助金というのが水産庁予算に組んでございますが、これは四十七都道府県漁業公害に係る調査指導員というものを設置いたしまして、漁場における水質等の監視あるいは漁業被害の発生の現場における初動態勢の指導といったようなことに当たらせておるわけでございます。また、このような指導員の設置だけではなくて、さらに一般の方々に、油濁、赤潮、工場排水あるいは都市排水等によりまして漁場環境の悪化が進みますというようなことがないように、関係事業者、地域住民、漁業者等に対しまして、公害による漁業被害の実態と公害防止対策ということについて啓蒙普及する費用も持っております。こういった指導員の中にいま先生がおっしゃられましたようなお考えを取り入れていくということが適切ではないかと私は思うわけでございます。  さらに水産庁といたしましては、沿岸漁場の整備開発事業の一環としまして、効用の低下している沿岸漁場生産力の回復を図りますために、漁場の堆積物の除去、しゅんせつ、作澪等を行いまして漁場機能を回復する、いわゆる沿岸漁場保全事業というものを実施しておりますので、これらにつきましても今後積極的に推進してまいるといったようなことで、先生がおっしゃられましたような御趣旨を貫いてまいりたいというふうに考える次第であります。
  143. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、一番問題になってくるのは下水処理です。われわれの調べによりますと、これは二次処理あたりではとてもとてもだめで、三次処理でも一〇〇%いかないという現実がありまして、栽培、養殖漁業、いずれにしましても水の問題、これは気温の問題等もいろいろあるようですが、いずれにしてもバクテリアが異常にふえてみたりしていろいろな弊害があることを考えますと、建設省来ていると思いますが、沿岸を抱えている市町村に対する対応というのはよっぽどしてあげないと、これは金がずいぶん現実にかかるわけです。しかも、下水整備事業というのはなかなか思うように進まない。しかしながら、これは汚してしまいますと、ヘドロを取るにしましても掃除するにしても、ちょっと地上を掃除するようなわけにいかぬということで、いろいろな業者も海を掃除するための努力をして、ポンプでくみ上げたりあるいはコンポスト化するようなことでいろいろやっているようですが、なかなか思うようなことができないということですから、しょせんは流れてくる水が魚等に影響のないような対応をするために下水道の完備ということに対してやはり特別な配慮をした財政的な助成といいますか、支援をしてやらなくちゃいけないのじゃないか。これがやはり根本的に大きく海を守ることにつながるのじゃないか。  あと、長官が言われたように、そういう当事者等が海をきちっと汚さないようにするという、そういう問題もありますが、建設省としましてはこういう問題をどういうふうに今後考えていくものか、この点につきましてお尋ねをしておいて、今後水産庁等としっかりと連携をとりながら一層充実した対策をお願いしたいと私は思うわけでありますので、この点についての御見解をひとつお聞かせいただきたい、こう思います。
  144. 辻栄一

    ○辻説明員 下水道につきましては、先ほど先生のお話にございましたように、湖沼とか海域とか、こういう公共用水域の水質を保全する基本的な施設であるということでございますが、残念ながらその整備状況は、五十六年度末、総人口普及率でまだ三一%にしか達していないというような状況でございます。このため、五十六年度を初年度といたします第五次下水道整備五カ年計画に基づきまして下水道の整備を鋭意進めているところでございます。  その整備に当たりましては、一つは公害防止計画あるいは閉鎖性水域におきます総量削減計画、こういうものへの対応等に重点を置いてやっておるわけでございまして、特に水質汚濁の著しい水域について早期に水質の改善を図るために下水道の整備をしなければいけないというようなところにつきましては、事業主体は地方公共団体でございますので、そういう地方公共団体を早期に下水道整備を行うように指導してまいっておるというところでございます。  財政措置が特別なものが要るのではないかという御指摘でございますが、下水道の整備にお金が非常にかかるわけでございますけれども、現在のところ、先ほど言いましたように全国でまだ三一%しか普及をしていないというようなことでございますので、できるだけ早く普及させたいというようなことでございまして、いまのところ現在の財政制度で進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  145. 武田一夫

    ○武田委員 各市町村でもこれはまだ七割ないし七割以上の不備なところもあるわけだから、早くしてもらいたいというのはわかるのですが、特に海を抱えている地域に対しては、ほかと違った重要性というものを考えた上での対応はひとつ検討してほしいということだけお願いしておきます。時間がありませんから。  最後に釣り人対策について、長官、団体の方々から前々から釣り人課の設置をどうするんだということを聞かれるわけですが、水産庁としてはこれはどういうふうに考えておりますか。
  146. 松浦昭

    松浦政府委員 釣り人と申しますか、遊漁と申しますか、水産動植物を採捕するということにつきましては漁業と同一行為でございますので、基本的には水産庁の担当であるというふうに考えておりまして、所要の対策を講じてきているところでございます。特にいわゆる遊漁行政という面を担当している課は現在沿岸課でございますけれども、その内容はかなり充実してきておりまして、昭和五十四年に遊漁担当の専門官を置きまして、五十七年度におきましては遊漁班を設置するところまで来ておる次第でございます。  現在、このような組織実施しているわけでございますが、いわゆる釣り人課の設置という点につきましては、漁場管理制度研究会の報告でもその整備を図ることが指摘されておりますし、また、国会においても請願が採択されておるという事情につきましては私ども十分に承知をしているところでございまして、今後十分に検討してまいりたいと考えております。
  147. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、各県の遊漁者対策の機関というのは専門的な内容ですよね。こういう問題、これからいろいろトラブルが起こったときの現場での処置ということを考えれば、各県にそういう指導機関がやはり必要じゃないかというふうに思うわけですが、どうでしょう。今後、現場主義ということを考えますと、その方が私はベターじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  148. 松浦昭

    松浦政府委員 これからこの法律ができました暁での執行を考えてみますと、漁場利用協定にいたしましても、いろいろと都道府県が勧告なりあっせんをしていくという形におきまして、そういった専門的な知識を持っていただく方が都道府県段階におられるということが必要になってくると思いますし、また、今後、遊漁の団体あるいは漁協等を指導しながら、釣りのマナー、釣り人との調整、こういったことをやってまいります上におきましても、都道府県の役割りというのは非常に大きくなるというふうに考えております。したがいまして、組織そのものをどういう形にするかは今後の検討課題でございますが、できるだけそういう専門の方々を置いていただけるように都道府県指導してまいりたいと考えております。
  149. 武田一夫

    ○武田委員 それでは、終わります。
  150. 山崎平八郎

    山崎委員長 午後二時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後二時六分休憩      ────◇─────     午後二時三十分開議
  151. 山崎平八郎

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神田厚君。
  152. 神田厚

    神田委員 沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案について質問をいたしたいと思います。  まず、昨年三月の第三次国連海洋法会議の第十一会期で海洋法条約草案が採択され、わが国もことしの二月に本条約に署名をしたのでありますが、いよいよ二百海里時代が定着したと思うのであります。  そこで、わが国漁業はこのような現実に立って漁業生産の基盤をわが国周辺漁場に置き、また、遠洋漁業の継続を図りながら管理型漁業を目指さなければならないと考えております。提出されております両法案も資源管理型漁業確立のための一つの方策だろうと思いますが、今後の資源管理型漁業についてどのように考えておりますのか、基本的な考え方をお伺いしたいのであります。
  153. 松浦昭

    松浦政府委員 いよいよ海洋法条約が採択されて二百海里体制が定着してきている時代に入ってきているわけでございますが、その際において、将来の方向として資源管理型漁業というものが重要な今後の日本漁業のあり方であるという御議論が盛んになっていることは私ども十分に承知をしているところでございます。  いわゆる管理型漁業というものがどのような漁業であるかということがまだ定着した状態ではないというふうに思うわけでございますけれども、私どもなりにこの考え方を翻訳して考えてみますると、やはりまず水産資源の状態を的確に把握するということが前提になりまして、これに操業隻数なりあるいは漁船のトン数制限といったような、いわゆる漁獲努力を適正にして合わしていく、そういう考え方ではないかと思います。さらにまた、資源状況を的確に把握するのみならず、種苗放流あるいは魚礁の投入といったことによりましてその資源の培養、増大を図っていく。こういった三つの柱から成り立っているのではないかというふうに考えております。  水産庁といたしましても、基本的に申しまして、水産資源保護、培養、あるいは今回御提出申し上げております栽培漁業振興といったようなことには十分に取り組んでいるつもりでございます。また、漁業法等に基づきますところの漁船隻数、トン数規制の漁獲努力適正化ということもやっておるわけでございますが、まだまだこの管理型漁業といったような、そういう目標に到達するところまでは至っていないというふうに考えます。  その場合に、われわれの今後さらに考究を要する点としては、水産資源の状態をより的確に把握していくという技術が必要であろうというふうに考えますし、また、栽培漁業等につきましても技術の確立、さらにはその普及ということが非常に重要になってまいります。そしてまた、漁獲努力量適正化ということにつきましても、やはりその推進の母体になってまいります漁業者の自主的な努力あるいは自覚といったようなものが今後の漁獲努力適正化に非常に重要である、こういう感じがいたすわけでございまして、これらの諸般の要素が総合的に調和をいたしまして、管理型漁業へと近づいていくということではないかというふうに考えている次第であります。
  154. 神田厚

    神田委員 資源管理型漁業につきましては、私は、国民が必要とする水産たん白食糧の需要量を自給するため、資源の水準と漁獲努力の調和を目指すものでなければならないというふうに考えておりますが、その具体的な方法としては、沿整法によります魚礁設置、栽培漁業の推進により資源量をふやすことも重要でありますけれども、第一にまず、漁業資源の評価が大変基本であるというふうに考えております。水産庁は、そういう意味におきまして、わが国二百海里水域内の漁業資源調査を行っておりますけれども魚種ごとに資源量を把握しているのかどうか、その点につきましてお答えをいただきたいのであります。
  155. 松浦昭

    松浦政府委員 水産庁といたしましては、特に日本周辺水域、それからまた外国漁業との関係におきまして、たとえば北洋のベーリング海の水域といったようなところにおきまして調査を行い、その資源の賦存の状態というものを的確に把握すべく努力をいたしておるわけでございますが、その手法といたしまして、私どもは三つぐらいあるというふうに考えております。  その第一は、現状の漁獲の量とかあるいはその漁獲された魚種、さらにその魚種の体長組成、そういったものを把握いたしまして、そこから推定して資源量を想定していく、こういうやり方が一つございます。この方法は相当程度まで現在進んできているというふうに考えられます。  その次の方法といたしましては、いわゆる卵稚仔と申しますか、産卵された卵それからまたそこから産まれた子供、これが浮遊している状態を的確に把握をいたしまして、これから推定をいたしまして全体の資源の賦存量をはかっていく、こういうやり方が一つあろうと思います。これにつきましても、水産研究所あるいは都道府県の試験場等の連携によりまして、こういった方面での資源の的確な評価というものをするための技術というものがかなり進みつつあります。  それから第三の方法でございますが、これはいわゆるクイックアセスメントと呼ばれている手法でございまして、この方法は、最近非常に進んでまいりました科学魚探、これを使用いたしまして、魚探の探知の方法によりまして資源の状態をはかっていくという方法でございます。この方法は、ハードの分野におきましてはかなりの科学技術の進歩によりまして資源の状態をある程度まで推測できる、そういう状態まで達したわけでございますが、まだそのソフト面が十分に開発されておらないというのがうらみでございまして、たとえばそこの魚探に映りました映像から解析いたしまして、たとえばこれがどういう魚種に属するか、あるいはその体長がどのような体長であるか、あるいは魚種の組成がどういうものであるかといったようなことが探知されるソフトの技術がまだ十分に開発されていると言えない状況でございます。  こういった手法に基づきまして、われわれといたしましては、かなりの程度まで科学技術の進歩に支持されましてこのような資源の状態の調査というものを進めているわけでございますが、残念ながらまだ資源管理型の漁業というものを達成する点までの精度を確保した、そういう技術ということになりますと、まだ十分でないわけでございまして、さらにこれから一層この技術というものを開発していく必要があるというふうに考えている次第であります。
  156. 神田厚

    神田委員 適正漁獲量を決定するという場合におきましては、科学的な資源の評価に基づきまして、その許容漁獲量を基礎にして水産食糧需給計画、市場条件あるいは漁業経営、雇用などを勘案した上で決定すべきだという考え方がありますが、まず第一に、水産食糧の需給計画を立てる必要があるというふうに考えております。  また、資源調整、適正漁獲量を決定する調査研究機関を設置する必要があると思いますが、その点につきましてはいかがでありますか。
  157. 松浦昭

    松浦政府委員 管理型漁業というものの一つ前提といたしまして、いま先生おっしゃいますように食糧需給計画、さらに市場条件等を考えまして適正漁獲量を決定していくということは一つの方向であるというふうに考えるわけでございますが、何分にも需要の予測から漁獲量を決めていくことにつきましては、魚種別の需要推定、それから計画的な生産が可能であるということが必要になってくると思うわけでございます。しかしながら、それは確かに理想ではございますけれども、水産物の需要は、たとえば畜産物との関係で非常に代替性が強いという問題がございますし、また現実漁業といたしましては、漁況、海況によります水揚げの大きな変動というものがございまして、特に多数の中小漁業者による漁獲という中で行われる生産行為でございますので、生産計画というものを立てていくことはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えるわけでございます。将来、資源動向魚種別に相当程度正確な精度をもちまして把握できるような段階に達しました場合においては、ある程度まで需要量を念頭に置いた生産を誘導していくという政策も考えていきたいというふうに考えるわけでございますが、そこまでいきますには、まだ科学的なあるいは技術的な開発というものが相当必要であろうということでございまして、将来の課題として検討させていただきたいというふうに考えるわけでございます。
  158. 神田厚

    神田委員 次に、漁業管理についてでありますが、資源の有効利用を図るためには、最適漁獲期、適正な漁獲努力、経済効率等を確保する必要があるわけであります。沿岸、沖合い、遠洋の海区ごとに、漁業種類、魚種別に大海区、中海区、小海区を設定して、漁船ごとに漁獲量を配分する方式を採用するとか、あるいはまた適正漁獲量に基づいて漁業種類別に漁船隻数を決めるというような考え方もありますが、この点につきまして、この漁業管理方式についてどういうふうにお考えでございますか。
  159. 松浦昭

    松浦政府委員 この点につきましても、将来の一つの理想的な形といたしまして漁業管理方式ということを考えてみますると、先生のおっしゃられることも理解できるわけでございますが、そのような漁業の形態というものを実現し、それに向かって施策を集中するという形になってまいりますと、何分にもやはり魚種別、地域別の客観的かつ正確な資源評価というものが必要でございますし、それからまた、これに裏づけされた適正な漁獲管理というものが関係漁業者の十分な理解と協力のもとに成立するということが不可欠だろうと思います。それからまた、栽培漁業による資源の増殖というものも、かなりの程度技術の開発に裏づけられて実施されるということが重要であるというふうに思うわけでございます。  しかしながら、先ほど申しましたように、水産資源の評価につきましても、クイックアセスメントで現在の段階でやれます状態は、まだ魚種別の状態というものがなかなか把握できないという状況でもございますし、また、研究開発に非常な努力をこれから傾注しなければならないというような段階でございます。それからまた、栽培漁業についても緒についたばかりでございます。それから、もう一つ非常に重要なことは、やはり適正な資源管理ということについての漁民方々の自覚と申しますか、適正な漁獲努力量というものに場合によっては抑え込んでいかなければならないという、みずからを律するというそういうことがなければ、この管理漁業というものは成り立たないというふうに考えるわけでございます。  そのように非常に大きく取り組むべき課題が多くあるわけでございますが、一方においては、こういった科学技術の進歩に合わせた技術の開発ということによりまして、適正な評価あるいは栽培漁業振興ということが図れるわけでございますし、また同時に、漁業団体等とも十分に話し合いをしてまいりまして、たとえばただいま全漁連等では営漁計画といったお考えも出てきておるわけでございます。こういったお考えも助長していくというようなことで、将来の像といたしまして、こういう管理型漁業へという方向へ進んでいくということは私ども考えているところでございまして、さような意味で、長期的な検討の課題ということでこの問題に対処させていただきたいというふうに考える次第であります。
  160. 神田厚

    神田委員 次に、管理機構の問題でありますが、漁民の積極的参加によりまして自主的で民主的な管理機構を設置し、わが国周辺漁場等を管理する方式を採用する。この管理機構が、具体的な漁獲割り当てあるいは漁獲努力量を決定するというような、漁業管理の中核としてこれを使っていったらどうかというような考え方がありますが、これらについてはどういうふうにお考えになりますか。
  161. 松浦昭

    松浦政府委員 これがやはり管理型の漁業に移行していく場合の非常に大きな、重要な前提になるというふうに考えられます。漁民が一定の漁獲規制を漁民みずからの手で行って、資源管理漁業管理をしていくということが、これは将来あるべき姿ということで理解できる点も多いわけでございます。  ただ、現状から申しますと、なかなかこのような漁獲の努力量をみずから調整するということが漁民の手によってできるという段階にはまだ達していないというふうに思われますし、また、われわれ現に大臣許可なりあるいは都道府県知事許可といったような公的な規制ということによって、現実漁獲努力量を抑えざるを得ないというような実態もございますので、やはり将来の漁民の方方の自覚ということが前提になりましてこういったことが達成できていくんではないかというふうに考えます。  ただ、現在も、先ほども申しましたが、全漁連の中に営漁計画といったようなお考えもだんだん出てきておりますので、そういう芽が出てきているということは事実でございます。こういった点を十分に私ども見守りながら、こういう機運の醸成を待ってこの課題に取り組んでいくということではないかというふうに思っております。
  162. 神田厚

    神田委員 現在の漁業制度でなかなか困難な問題がたくさんあることはよくわかっておりますが、海洋法条約も近い将来発効するわけでございまして、そのときに備えていまから漁業制度全般の見直しを進めていかなければならないというように考えております。私どもは従来から、三十七年の漁業法改正のときのように漁業制度調査会を設置し検討を始めるべきであると主張してきたわけでございますが、漁業法見直しには少なくとも四、五年かかるわけであり、早急に着手すべきであると考えるわけでありますが、いかがでありますか。
  163. 松浦昭

    松浦政府委員 やはり漁業の将来のあり方ということを考えてみますると、それがどのような姿であるべきかということを描きながら漁業制度の問題に取り組んでいくということが必要だろうと思います。  その場合に、先ほどから先生が御提唱なさっておられます管理型漁業というものを一つ想定して将来の漁業制度というものを描いてまいりますると、やはりそこには先ほど申しましたような資源の評価の問題、それから栽培漁業の技術的な開発の問題、さらには、どのような資源管理をどのような漁民の手によってどのような形で実施していくかといったような大きな問題が幾つか含まれているわけでございます。これらの問題をやはり実態的に解明し、また、その実績を積み上げながらそういう方向に持っていくということが先決でございまして、まず制度面から入ってしまうということについては、私どもややちゅうちょを感ずるわけでございます。  そのような意味で、私どもとしましては、この漁業制度というものはやはり漁業権というものと非常に大きな結びつきがあるわけでございまして、現実漁業秩序というものを形成している、その中における漁民の利害というものも非常に大きな影響を及ぼすということも考えますると、先生おっしゃられますようになるべく早くこれに着手をして、将来の方向を見定めながら長時間かかってこの問題に取り組むべきではないかという点も十分理解ができるわけでございます。しかし、一方におきまして、この問題がそういった問題を抱えているということを前提といたしますると、やはりある程度まで長期的な課題ということでわれわれも取り組ましていただくということが最もよい解決の方法ではないかというように思っている次第でございます。
  164. 神田厚

    神田委員 法案の具体的な内容で二、三お伺いをいたします。  まず、栽培漁業関連しまして、法案では栽培漁業センターの公益法人化の促進、重点放流による経済効果実証協力基金制度の導入などを行う、こういうことにしております。これら一連の措置は、現在の財政状況を反映しまして栽培漁業から国、県の財政的撤退を目指している、こういうように思われておりますが、栽培漁業の現状を見ますと、対象魚種の漁獲に占める割合は四%程度でありまして、沿岸漁業に占める割合はわずかに〇・〇八%であります。このようなことから、現段階で民間に依存していく方向は、今後の栽培漁業の発展に歯どめをかけることになるおそれがあると思いますし、国、県の助成を強化をして人工種苗生産放流は今後とも増大させていかなければならないと考えておりますが、栽培漁業についての現状認識と今後の国の助成についての考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  165. 松浦昭

    松浦政府委員 沿岸漁業を豊かにいたしますために国が栽培漁業振興しなければならないということは、これは大きな課題でございまして、さような観点から従来から関連予算の確保にも努力をしてまいっておるわけでございますが、今後ともこの栽培漁業重要性にかんがみまして、必要な予算の確保については努力をしてまいりたいというように考えておる次第でございます。特に、栽培漁業が実験的な段階、実は現在の段階ではまだまだそういう魚種が多いわけでございますけれども、そういった段階におきましては大きなリスクが生ずるわけでございますから、これは国や県が種苗代も含めまして負担をしていくということは当然のことであろうと思うわけでございます。ただ、放流効果も安定的にあらわれるといった本格的な栽培漁業段階に至りますれば、地元漁協種苗代も有償負担して、みずから収穫する者がみずから種もまくというような形に移っていくというふうに考えるわけでございます。  恐らく、先生が国の助成の後退ということを懸念なすったのは、協力費ということが今度の法律にあらわれたからではないかと思うわけでございますが、放流効果実証事業というものは、ただいまのような実験段階とそれから本格的な段階との中間にある、いわば過渡的な段階事業でございまして、放流効果がかなりあらわれてきた魚介類につきまして地元の漁協放流尾数やあるいは放流地点数の増大を要望したときに、これにこたえるためにその増加を図るというために地元の応分の負担もあり得るということで考えたわけでございまして、これはあくまでも任意的な協力金ということでこのような所要の規定を設けたわけでございます。  したがいまして、私どもとしましては、放流効果実証事業はやはり国、都道府県が行う技術開発の分野とか、あるいは漁協、漁連等が行う栽培漁業定着化に関する国の補助の肩がわりというものをねらったわけではないわけでございまして、漁業者等による協力金は、種苗生産に充てられた、従来国ないし県の配付していた種苗数量に上乗せられて、むしろ放流規模が拡大するためにこれが使用されるということで考えている次第であります。
  166. 神田厚

    神田委員 次に、遊漁問題でありますが、遊漁者が二千万人にも及ぶということになっておりまして、いろいろ漁業とのあり方におきまして問題も提起をされているようでありますが、これらにつきましては行政当局としてはどういうふうな認識と、あるいは行政指導といいますか、そういうものについてお考えになっておりますか。
  167. 松浦昭

    松浦政府委員 今回、遊漁者と申しますか、釣り人とそれから漁業者との間の調整を図るために、都道府県知事のあっせん、勧告、さらに漁場利用協定といった制度を盛り込んだ法案の改正を御提案申し上げた次第でございますが、その趣旨は、やはり一方におきまして、漁業者という、漁業をなりわいとして、しかも国民たん白食糧の供給ということのために大きく貢献をなすっておられる方々、その漁業の活動というものを十分考えなければいけない。それからまた一方におきましては、一千七百万人という大ぜいの方々に上られました、国民レジャーとして定着している釣りということの、釣り人方々に対しましての漁業との調和を図っていくということが非常に重要である。こういうことを考えまして、両者の間に現在トラブルが発生していることはまことに残念な事態だ、これを何とか解決する方法はないかということで今回の法案を御提出したわけでございます。  したがいまして、私どもの基本的な両者調整に関する理念ということは、先ほども御答弁申し上げましたように、あくまでも漁業者釣り人が共存していくということが前提でございます。釣り人の方は、漁業者がなりわいとしておられる漁業というものの生産活動にいささかも支障があってはいけないということが前提でありますし、一方漁業者の方は、釣り人をいたずらに排除するということがなくて、双方が共存していけるという状態を実現していきたいということでこのような法案を御提出したのでございます。
  168. 神田厚

    神田委員 いろいろ問題が起こってくる前に、行政当局として適正な指導をしていただきたいということをお願いしておきたいと思っております。  次に、密漁の問題でありますが、この密漁の現状を見ますと、七割が同じ漁業従事者だということで、どういうところにこの原因があって、これに今後どういうふうな指導をしていけばいいのかという問題が残っておりますが、その辺はどういうふうにお考えでありますか。
  169. 松浦昭

    松浦政府委員 確かにわれわれの違反の統計から見ますると、密漁者の約七割が漁業者であるということは事実でございまして、やはり漁業者自身漁業関係法令を遵守しなければならないことは当然でございますし、漁協の系統組織を通じて法令遵守意識の醸成、強化、不法採捕防止の徹底といったことについて従来から指導をしてきたわけでございます。  特に全国漁業協同組合連合会、全漁連でございますが、全漁連が、密漁が大きな問題となっております道府県の代表者によりまして密漁対策会議を開催いたしまして、漁業者、一般国民に対する啓蒙、密漁防止のPR活動、漁協内の自主規制の強化、防止体制の整備等、密漁に対する今後の対応策を検討しておられるというふうに聞いております。  また、私ども水産庁としましても、漁協系統組織を通じまして漁業関係法令の遵守の徹底ということも図れるように努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  また、このような啓蒙活動と同時に、密漁取り締まりということも非常に重要でございまして、従来から関係漁協内、都道府県水産庁海上保安庁、警察といったようなところと緊密な連携をとって、現在海上、陸上から効果的な取り締まりということで努力をしておるところでございますが、この法律改正を機会に、私どもとしましては密漁というものをなくするように、啓蒙とそれから取り締まりについて重点的に行っていくということをやってまいりたいと思っております。
  170. 神田厚

    神田委員 最後に、三月三日に質問をいたしました日韓漁業問題でありますが、その後、三月十日には長官が訪韓をされ、今月の五日には次長が交渉されたというふうに聞いておりますが、両交渉の経過及び新協定の締結の見通しについてお伺いをしたいわけです。
  171. 松浦昭

    松浦政府委員 先生の御質問をいただきまして直後であったかと思いますが、韓国に参りまして、韓国水産庁長、金庁長日韓問題について話をしてまいった次第でございます。  その際には、私ども、北海道周辺水域におきますところの年末から一月にかけましての韓国漁船違反操業につきまして韓国側に遺憾の意を厳重に申しました。特に北海道の漁民方々、それからまた西日本沿岸漁業者方々も二百海里を設定してほしいとまで言っておられるということを先方に伝えたわけでございます。そこで、先方としては、やはりこれに対しまして非常に重大な事態であるということを受けとめてくれまして、韓国指導船を派遣するということを約束したわけでございますが、これはちゃんと約束を守ってまいりまして、北海道の沖に、二年ぶりでございますが、三月二十四日から四月十一日まで先方の指導船を派遣してきたという状況でございます。  問題は、これから北海道周辺水域及び済州道の周辺水域におきますところの漁船操業につきまして、本年の十一月以降、現在のいわゆる日韓間の合意、これをどうしていくかということが大きな問題でございますが、この点につきましては、私と金庁長との間で、両国実務者間で協議させるということと、それから北海道の沿岸漁業者の漁具被害の処理促進について民間を両国政府指導するということで合意をした次第でございます。  この合意を受けまして、実はこの五月五日から八日までわが方の尾島水産庁次長が先方の崔水産庁次長と会いまして予備的な会談を始めたわけでございますが、特に北海道と済州道周辺水域操業問題につきましては、わが方から北海道周辺のスケトウダラ及びマダラ等の資源が非常に厳しい状態になっているということ、それから武蔵堆周辺のタラ刺し網漁業等の漁獲量が著しく減少して大きな社会問題になっているということを、先方に具体的に事実に基づいて説明をしたところであります。  それからまた同時に、取り締まりの問題というのが非常に重要でございますので、北海道周辺水域への韓国指導船の派遣、監督官の出漁船への乗船等につきまして韓国側に要請をしましたところ、先方は、前向きに具体案を検討してわが方へ提出してくるということを言ってまいりました。  それからまた、両次長間で、両国は北海道周辺水域における漁業被害処理促進のために民間団体に対する両国水産庁指導内容を具体的に協議し、これを確認した次第でございます。  なお、済州道周辺資源については、昨年秋の日韓共同委員会における見解を変える必要はないということで両国間で意見が一致しております。  そこで、問題は、これからこのような予備的な会談を踏まえまして、十月末の期限切れまでにどういうふうに対応策をとっていくかということでございますが、ただいま申し上げましたように、やはり資源問題、これに基づく規制をどうするか、それから操業上のトラブルの防止ということで取り締まりをどうするかということが最大の山であると思います。  私どもとしましては、この問題につきまして実効ある措置がとられますように、さらに韓国側と話し合いを詰めていきたいというふうに考えておるところでありまして、先方の出方いかんでは相当厳しい交渉もあるというふうに考えておりますけれども、いずれにせよ努力を続けていくというつもりでございまして、次回の会談もこの次の七月ごろにまたやろうかというふうに考えておる次第であります。
  172. 神田厚

    神田委員 しっかりとひとつお願いをしたいと思っております。  これで終わります。
  173. 山崎平八郎

    山崎委員長 吉浦忠治君。
  174. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。  わが国の二百海里内の生物資源の内容把握あるいは管理体制を整備する、そういう結果に基づきまして水産物の需給動向あるいは漁業経営の状況等を踏まえた適正な漁獲量を決定する等、資源やあるいは漁場及び漁業の適正な管理を図る制度確立するための漁業法あるいは漁業制度全般の見直しを行うべきであるというふうに私は考えるわけであります。今回の沿岸漁場整備開発法改正は、資源管理型漁業確立のための一つの方策でありますが、ここで政府が本改正案にどのような位置づけというか、お考えをお持ちでこの改正案を提出なさっているのか、この点についてまず最初にお尋ねをいたしたいと思います。
  175. 松浦昭

    松浦政府委員 お説のように、二百海里体制の定着化という状態のもとにあって、水産資源を適切に管理していくということはますます重要な課題となっていることは事実でございますし、水産庁といたしましても、従来から漁業法等に基づく各種規制措置あるいは関係国との漁業協定といったようなことを通じまして、水産資源の維持、管理ということに努めているという状況でございますし、また、今回法案を提出いたしましたとおり、逐次育てる漁業というものを推進しようというふうに考えておるところでございます。  そこで、このような考え方を一歩進めまして、ただいま先生おっしゃいましたいわゆる管理型漁業というところまで推し進めるということになってまいりまして、これを漁業制度として仕組んでいくかという課題になるわけでございますが、このようないわゆる管理型漁業というものを実現するためには、何と申しましても、まず資源の状態を的確に把握いたしまして、魚種ごとあるいは海域ごとの資源というものが十分に判明しているという状況にならないと無理であろうと思います。このためには、先ほども御答弁申し上げましたが、いわゆる漁業管理技術の中の一つの大きな技術として資源の評価の技術というものが確立される必要があるわけでございますが、これは、先ほども申しましたように、まだ十分な確立を見ていないという状況でございます。  それから第二に、漁業の栽培ということを進めまして、これを計画的に進めて、国が基本方針をつくり、都道府県基本計画をつくって種苗生産放流、育成というものを計画的に推進していく。この技術開発を進めていくということは、今回の法案によりまして、これを通していただきました暁に、全力を挙げて推進をしてまいりたいと思うわけでございますが、この法案の内容をごらんになってもおわかりのように、これまた、これから解決すべき課題というものが多々あるわけでございます。そして、このような資源把握、その上での、今度は漁業資源の造成といったようなものの上に立ちまして、それに対応するだけの漁獲努力量というものをどの程度まで投入したらいいか、これは漁業者自身の自覚と自助努力も兼ねました漁業管理という面の一つの大きな課題でございます。  このように幾つかの課題がまだ管理漁業にはございまして、そのような面で、将来の課題として、われわれとしてはこのような方向へ向かって十分に検討を重ねていかなければならぬという段階にあるわけでございます。しかしながら、そのような過程の一つといたしまして、今回私ども栽培漁業振興ということを考え、その中でも特に基本的な計画の策定、さらには栽培の放流効果実証する事業というものを仕組みまして栽培漁業の前進をさせたいということを考えまして、そのような位置づけのもとにこの法案を出したということでございます。
  176. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 このたび各県に栽培漁業推進協議会というふうなものをおつくりになるわけでございますが、栽培漁業の推進方法について協議されることになるだろうと思いますけれども協議会の構成員は、政府は、各県の実情に応じて栽培漁業センターなりあるいは市町村あるいは漁協あるいは遊漁者等の関係者の中から適宜選ぶ方針のようであります。その構成のあり方について、協議会の決定内容に影響が及ぶことが考えられるわけでございますか、協議会の性格とそれから協議の内容、それから構成等のあり方についてどういうふうに考えておられるのか。
  177. 松浦昭

    松浦政府委員 栽培漁業推進協議会と申しますが、これは二段階考えております。一つ都道府県段階、いま一つ放流効果実証事業実施地区、ここに協議会を設置するつもりでございます。  この協議会は、性格といたしましては、関係者が栽培漁業の推進につきまして必要事項を検討し、コンセンサスづくりを行って、その意見都道府県のつくる基本計画あるいは指定法人の実証事業の推進に反映させるといった事実上の協議体ということでこの協議会考えているわけでございます。  さようなことで、協議の内容といたしましては、都道府県の策定する基本計画、これは種苗生産放流、育成とそれに係る技術開発、これが一つの大きな協議の内容になりますし、それから、これにつきましては都道府県の水産の自然的、社会的条件から見てこのような計画が適当であるかどうかということにつきまして協議会の御検討をお願いしたいと思っております。  それから放流効果実証事業の内容を検討していただく段階におきましては、この事業の内容、たとえば放流尾数であるとかあるいは時期とかあるいは体長とか、そういったものが適当であるかどうかということ、それからまた放流魚種保護管理に必要な措置といったようなことにつきまして御協議を願い、御検討を願いたいというふうに考えております。したがいまして、構成員は市町村、漁協、指定法人、それから栽培漁業に関する学識経験者等が考えられるというふうに思っております。
  178. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 このたびの改正によりまして、指定法人が放流効果実証事業を行うことによって一定の効果があらわれたところ、いわゆる水域については、育成水面の設定に移行させていく、こういうような方針のようでございますね。今後の特定水産動物育成事業の運営方針とそれからその円滑な実施のための方策というものはどういうふうにお考えなのか。
  179. 松浦昭

    松浦政府委員 現在、育成水面制度という制度がございまして、昭和四十九年度から始まっておるわけでございますが、現在は九県、十三水域が育成水面ということで、必ずしもその数は多くないわけでございます。  どうしてこのように育成水面の制度が十分に定着していないかということを考えてみますると、やはり育成水面というのは、種苗をまいた漁業者が、そのまいた水面を自主的に管理して、これを保護しまして、その収穫をもとにさらにまた種苗をまく、いわば栽培事業が本来軌道に乗った段階考えられる制度であるというふうに考えられるわけでございます。ところが、クルマエビとかガザミとかいう事業は共同漁業権の漁場の中で実際行われておりまして、共同漁業権の設定されている水域の中でこういう放流事業が行われている場合には、特段に育成水面を設定いたさなくても、無断で立ち入ってこの水域で漁をするといったような方もおられないわけでございまして、その意味では育成水面というものは必ずしも採用しなくても事足りたということが一つあるのじゃないかというように思います。しかし一方で、タイとかヒラメとか、ひれ物と申しますが、こういう漁業になってまいりますと相当回遊範囲も大きくなってまいりますので、漁業漁場の範囲内ではとどまらなくなって外に出ていくわけでございますが、こういったところではまだ放流効果が十分に確認されていないということのために育成水面をつくってみようかというところまで至っていない、これが現実であろうと考えるわけであります。  そこで、今回私ども考えておりますのは、放流効果実証事業というものを中間段階に入れたわけでございまして、何度か放流を大量に特定の地域に繰り返して行うことによって、漁業者方々にも放流効果があるということがわかっていただける段階をつくろうと思っておりますから、そうなりますと今度は育成水面に移行しようというところも出てくるということで、その先は育成水面で管理していくことになっていくのではないかというふうに考えます。  なお、放流効果実証事業をやっていきます過程におきまして、いわゆる協力要請ということを先ほどから御答弁申し上げましたが、そこでコンセンサスができまして、たとえば体長を規制するとかあるいは初期の一定期間とらないといった自主規制ができますれば、それが一つの育成水面にかわる規制になってまいります。また同時に、場合によってはいろいろな規則を制定しまして、ある程度まで強制的な効果を持ったような施策によりまして体長制限なりあるいは禁漁期といったようなものができ上がってまいりますれば、それはまたそれによって規制が行われていくというようなことで、育成水面とかいろいろな制度によりまして放流効果実証できた段階における放流事業の円滑な実施というものを図ってまいりたいというふうに考えている次第であります。
  180. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この改正案によりますと、都道府県知事は申請によって放流効果実証事業を行う公益法人を一つに限って指定することができる、こういうふうにされているわけですね。指定法人としては、各県に設置を指定されております栽培漁業センターの運営を行うような民法法人を想定しているようでありますが、全国に三十五の道県栽培漁業センターのうち道県が直接運営しているものが十九、民法法人等に運営させているものが十六、こうなっているわけでありますが、その指定法人を公益法人とする理由と、一つに限っている点、この点を明らかにしていただきたい。
  181. 松浦昭

    松浦政府委員 まず、指定法人を公益法人とした理由でございますが、放流効果実証事業というのは種苗の大量な生産が可能になりまして放流技術もある程度まで開発される、経済ベースにも乗るということで、そういった魚種について継続的に大量に種苗放流する、それによって初めて漁業者方々もその結果がわかってくる、こういう事業を営みたいということでございます。  そういう前提に立ちますと、この事業は、種苗放流を、現在県などの公共団体が行っております試験的な段階から、漁協等に移っていく、本格的な経済段階に移行するための中間的な段階であるということで、相当公的な色彩を持っているのじゃないかということが考えられる。それからまた、このような性格でございますから、直ちに経済採算ベースには乗りがたいということで、ある程度までリスクは負っていただけるような県なり市町村なり漁協等が構成員になるような、公的な団体が指定団体として適当ではないかというように考えたわけでございます。それからいま一つは、この事業放流効果を一般に広く普及していくことが目的でありますから、公共性も非常に高いということで実施主体を公益法人に限ったわけでございます。  それから、なぜ一つにしたかということでございますが、これは県にかわって県の地先水面の公的資源をふやす事業であって、県の指導監督も非常に強く受ける団体であり、公的なあるいは適格性を期する団体である必要がある。あるいは放流効果を的確に行うためにはかなり継続的に放流実施が必要であり、また、種苗生産水準も相当大きなものでなければ効果が出てきません。そういう意味で、余りばらばらたくさんあってはうまくないということがあります。さらに、広く一般漁業者に開発された漁業技術や放流効果についての情報の普及を行う場合に、公益法人が幾つもあることは適当ではないということから、その一元化をねらう意味で、公平、効率的な運用を図る意味で一県一つ限りということにした次第であります。
  182. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次は、協力制度についてお尋ねをいたしたいと思います。  この協力制度については、漁場管理制度研究会報告の中で「放流する魚介類の種類と同一のものを採捕する漁業者等の協力を広く得る意味栽培漁業を重点的に実施する区域の中で、放流した魚介類と同一の魚介類を採捕する者が、種苗代や中間育成費等に相当する額を拠出するという考え方を導入する。」このように指摘されておりまして、これを踏まえて改正案が出されたものと思うわけでありまして、大体こういう制度水産庁は沿っていらっしゃるようでございますから、同様の考え方と思っていいのじゃないかと思います。  そこで、育成水面制度におけるいわゆる利用料とどういうふうに違うのか、これが第一点です。それから、放流効果実証事業協力する不特定の者が任意に拠出するものであって、報告書にあるような、受益者が負担するという考え方は盛られていないかどうか。その二点、お答えをいただきたい。
  183. 松浦昭

    松浦政府委員 栽培事業の現在の状態におきましてはまだ解明すべき点が多々あるわけでございまして、必ずしもその効果が広く漁業者一般に認められていないということで、一部の魚種を除きましては受益の実態がまだ明らかでないと考えられます。そこで、みずからの負担による事業実施までには至っていないというのがかなり多くの魚種についての現状ではないかと考えておるわけでございます。  そこで、今回協力金という制度を設けましたゆえんのものは、一方においてはまだ実験段階にあるものがございますけれども、これが将来完全に経済ベースにも乗って有償で事業が進められていくといったような段階に至るまでの過程におきまして、いわば中間的な段階として放流効果実証事業実施して、たとえば国や県が種苗代を全額負担するということではないけれども、また一方で受益の程度が明瞭でないというところをねらいまして、資源を積極的にふやすために放流事業を継続的大量に行って、漁業者にその放流効果をわかってもらう状態においては、受益者負担といったものではなくて、いわば漁業者の側から協力的に自主的に拠出するという資金の制度が非常に適当なのではないかということでこの制度を仕組んだわけでございます。
  184. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 協力金の問題は漁業者方々も大変心配をしているところであろうと思うわけでありまして、拠出額の規模なり拠出の方法、その具体的内容については各県の栽培漁業推進協議会で話し合いが行われることになるだろうと思うわけであります。  協力金の拠出は自主的なものであると言われておりますけれども、簡単で結構でございますから、何を基礎に協力金の額を積算されておるのか。それから、放流効果が実現した後に協力金を拠出することになるのかどうか。あるいは、拠出者の範囲はどのような操業を行っておる者から拠出していただこうと思っていらっしゃるのか。それから、個々の漁業者なり遊漁者等から拠出するというふうなお考えなのか。これは漁業者からは、協力金が任意であるというふうに言われても実質的には強制徴収じゃないかというふうな危惧が多分にあるわけです。簡単で結構でございます。
  185. 松浦昭

    松浦政府委員 私ども、決してこの協力金を強制的に徴収するつもりはございませんし、また、さようなことにならないように十分指導をいたすつもりでございます。  それから拠出金額でございますが、これは種苗生産あるいは中間育成と放流した経費の一部に充てるということでございますので、この経費が協力金を募る場合の目安になるというふうに考えられますけれども、具体的には、これらについて補助金が出ている場合には地元負担額に相当する金額ということになるだろうと思います。  拠出の時期でございますが、この実証事業は、県の放流技術開発によりまして増殖効果がある程度明らかになった段階ということで考えておりまして、実証事業についての漁協等の協力が得られると見込まれる段階で初めてやるつもりでございます。  それから拠出者の範囲でございますが、放流効果調査の結果明らかになった放流魚が濃密に分布、生息する域内というところで放流魚と同じ種類の魚を採捕する漁業者あるいは遊漁者に対して協力金の拠出につき協力を求めるということでございます。  それから拠出の方法でございますが、これは個個の採捕者から取るということはなかなか容易ではないというふうに思いますので、船ごとあるいはその大きさにより一隻幾らという方式、あるいは漁具、漁法によってランクをつけまして漁協あるいは遊漁案内業者ごとに一括して拠出していただくというような方式になると思います。  このような基本的な方針は、長官通達で十分に練りまして明確に定めて示達するつもりであります。
  186. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 協力制度が導入されますと、栽培漁業に対する国の財政援助が減るのではないかというふうな心配もあるわけですが、この点はいかがでございますか。続いて、沿岸の整備事業についても受益者負担の考え方が進むのではないかというふうに思われるわけです。こういうふうに両面とも心配な点が出てきておりますけれども、今後、水産公共事業等に対する受益者負担のあり方について政府はどのようにお考えなのか。
  187. 松浦昭

    松浦政府委員 私ども、今回の協力制度を導入した場合におきまして国の援助の後退を意図することは全くないわけでございまして、先ほど申しましたように、本来実験的な段階において実施されている栽培漁業の推進というものはやはり国費あるいは県費といったものが中心にならなければならないというふうに考えております。ただ、将来におきまして十分にこの事業がペイする状態になりましたら、それはやはり民間の段階でやっていただくということになろうと思います。  この放流効果実証事業というのはその中間的な段階だということを先ほどから申し上げておるわけでございますが、放流効果実証事業は、国、都道府県の行う技術開発の分野あるいは漁協、漁連等の行う栽培漁業定着化に関する国の補助、これは従来どおり出していくわけでありまして、これに肩がわりさせるという意味ではなくて、むしろこれらの国あるいは県の配付していた種苗数量にさらに上乗せしてより多くの種苗放流しよう、そのための協力ということで協力金を出していただくというふうに考えているわけでございます。  それから、お尋ねのいわゆる公共事業の地元負担、これは恐らく沿整の事業、たとえば魚礁設置等の沿整の事業の地元負担であろうと思いますが、これは現在ほとんど国と都道府県が負担をしておりまして、漁協等の地元負担はほとんどないわけでございますが、この補助金の負担割合については基本的には現在のものを維持するように努力してまいるつもりでございます。
  188. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 続いて、遊漁関係についてお尋ねをいたします。  私は何回か本委員会で遊漁問題を取り上げてまいりましたが、この遊漁遊漁法として御提出をいただけるものと私は期待をしていたわけでございます。一歩後退で大変残念でございますけれども、ようやく法案として日の目を見る、そういう先駆けをしたという点では、私はその労は大変多とするものでございます。そういう点で、少しばかり時間があればと思いますけれども、制限されておりますから、本論に入って述べられないのが残念でございますが、この改正案で遊漁対策の一環としては受け取れるわけです。  漁場利用協定の締結の勧告及び紛争のあっせん等の措置を講ずる、そして遊漁秩序確立を図ろうというお考えでございます。しかし、今回の措置というのはいわば遊漁秩序確立の第一歩でありまして、水産庁は、遊漁対策として、本改正案のほかに遊漁案内業者等の登録なりあるいは届け出制なりの法律案を別途検討中というふうにも承っているわけでございます。また、そうしていただきたいと思っているわけであります。今後における遊漁制度について、政府の基本的なお考え方をお述べいただきたいと思います。
  189. 松浦昭

    松浦政府委員 遊漁に関する法律につきましては、長い間の懸案でございまして、遊漁者が一方におられますし、また、漁業をなりわいとしておられる漁業者がおられるわけでございまして、その間の調整を図りながら法案の形にまとめるという過程におきまして、なかなかいろいろなむずかしい問題があったことは事実でございます。それからまた同時に、それを法制化するという点におきましても非常にむずかしい事態がございまして、かような形になったわけでございますが、私どもといたしましては、当初考えておりました法案の内容といたしましては、漁場管理制度研究会の報告を受けまして、一つは、現在の御提出申し上げております釣り舟業者等と漁協との間の漁場利用協定の締結、これが一つの柱であります。いま一つは、釣り舟業者都道府県知事への届け出制の導入ということも同じく考えておったわけでございます。これが恐らく御指摘の点だろうと思うわけでございますが、今回はこの漁場利用協定だけを御提出申し上げまして、御審議を願ったわけでございます。  その理由は、釣り舟業の届け出制を実現しようと思っていろいろと努力を重ねてきたわけでございますが、本来釣り舟業というのは自由に営み得る業態でございますために、これに何らかの規制を加える、つまり届け出制をとるということのためには、その前提として釣り舟業者の遵守すべき事項というものを定める必要があるということになったわけでございまして、この遵守すべき事項の具体的な内容というものを詰めたわけでございますが、その場合に既存の法体系との関係もあり、これを所管する関係官庁と十分な検討、調整を必要としたわけでございます。その調整をいたしておりました段階におきまして、国会の法案審議の時間も非常に少なくなりまして、なかなか間に合わないということで、今後関係省庁と引き続き調整を行って成案を得るように検討してまいりたいということで、今回の提案を見合わせたということでございます。  しかしながら、遊漁の用に供する自家用の釣り舟、このような釣り舟実態につきましては、先ほど申しましたような釣り舟についての実態調査というものが当然必要であるというふうに考えておりますし、また、漁場利用協定の運用の過程におきましてこの実態をつかまえていくということが必要であろうと思いますので、さような点につきましては、この法案の提出をしなかったということとかかわりなく、私どもとしては努力をしてまいるつもりでございます。
  190. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 基本的な問題だけ先にお尋ねをいたしますが、漁場管理制度研究会の報告書の中には、漁業者遊漁者の共存を本旨としてというふうな項目がございます。そこで、漁場利用についての漁業者遊漁者との基本的あり方、これを政府はどのようにお考えなのか。大変大きな問題ですけれども、簡潔にどういうお考え方を持っていらっしゃるか、お尋ねをいたしたい。
  191. 松浦昭

    松浦政府委員 これは、この法案を提出いたします際の基本的な考え方に私はなると思います。  一方におきまして、日本漁業者国民のたん白資源の供給という大きな役割りを果たすべく生業として漁業をなすっておられるということは、これは決しておろそかにできない事実でございます。一方におきまして、年間延べ千七百六十万人と言われている釣り人の数というものもあるわけでございまして、この方々が健全なレジャーという形で釣りを楽しんでおられる。この間の調和を図っていくということが非常に重要であり、さような観点から先ほど申されました研究会においても「共存を図る」という言葉が入ってまいったと思います。  そこで、私ども考え方を端的に申し上げますと、この「共存を図る」ということが前提でございまして、この考え方は、漁業者方々が営まれる漁業というものの活動に支障を生ずるようなことがないようにする。一方において、また釣り人遊漁者方々をいたずらに排除しない。そこに調和を求めていくということがこの法律の基本的な精神であり、また、今後の運用の基本的な考え方になっていくというように考えておる次第でございます。
  192. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 改正案によりますと、漁場利用協定は「漁場の安定的な利用関係の確保に必要な事項」について「それぞれの団体の構成員を指導すべきことを内容とする協定」、こういうふうにしてあるわけでありまして、遊漁者各人に協定を遵守させるということを期待されているわけであります。しかしながら、いまは遊漁案内業者、それから遊漁者組織化というものは大変低い現状でありまして、漁協等が締結したいわゆる漁場利用協定を遵守すべき遊漁案内業者は少なく、また、いそ釣りを含めまして遊漁者等の組織化を進めない限り、この漁場利用協定というものの実効は大変むずかしいのじゃないかというふうに思うわけでございます。  政府として、遊漁者組織化及び遊漁者団体の育成ということについてどういう対策をお考えなのかどうか。
  193. 松浦昭

    松浦政府委員 この漁場利用協定を締結してこれをうまく運用していくということのためには、片方の漁業者の方は漁協等によりまして組織化されておるわけでございますから、一方の遊漁者の側の組織化ということが非常に重要であるということは御指摘のとおりでございます。ところが、御案内のように釣り人と言われる方々は趣味同好会的な任意組織をつくるという場合が多うございまして、同好クラブ的な団体というものを一定地域単位あるいは都道府県単位さらには全国単位に包括的に組織化するということはなかなかむずかしいということは御指摘のとおりでございます。しかし、私どもとしましては、現在釣り人全国団体もございますので、こういった団体と相談しながら各地域団体の組織化を進めていくということを考えてまいりたいと思っております。  ただ、このような遊漁者そのものを組織するということは非常にむずかしいわけでございますが、一方、遊漁者方々は、多くの方々釣り舟を利用されるということでございます。これは、釣り舟単位、釣り舟の業界を地域単位で組織化していくということは、遊漁者と申しますか、釣り人方々個人個人を組織するよりも楽ではないかというように私ども考えておりまして、これが大切なまず第一着手ではないかというふうに考えておるわけでございます。私どもとしましては、昭和五十七年度から舟釣りの船頭さん方、こういった方々に対する啓蒙普及を目的とした漁場利用講習会というものを全国各地で開催することとしまして、この講習会を通じて受講者を把握している状況でございますので、このような方々を通じてこの種の地域組織の育成を図るということで取り進めてまいりたいというふうに考えますし、また、都道府県指導ということも十分努めてまいりたいというふうに思っております。
  194. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 遊漁船秩序についてお尋ねをいたしますが、最近、遊漁船というものが非常に高速化あるいは機動力化されておりまして、いわゆる高馬力のエンジンを装備しているために遠距離までその行動範囲が広くなっているという点で、漁船との間にトラブルが起こってくる。高速の自家用ボートが無法な航行をして安全運航というものに大変支障を来しているというような向きもあるわけでありまして、漁船の航行、操業支障を与えている等から、海上保安庁もお見えでございますので、こういう対策をどのように、対策というよりも遊漁船を守る意味から私はお尋ねをしているわけですけれども、そういう面を、保安庁、どういうふうにお考えなのかどうか。実態を、細かな実態でなくて結構でございますからお知らせ願いたいし、長官に、遊漁船の登録制度、いわゆる届け出制度というものを検討する必要があろうというふうに思うわけでございますけれども、そういう取り締まりという意味からでなくて、そういう点はどういうふうにお考えなのか。  まず海上保安庁から先に、簡単で結構でございます。
  195. 吉田孝雄

    ○吉田説明員 先生御指摘のとおり、最近、遊漁船漁船が非常に高速化、高馬力化しておりまして、これを扱いを誤りますとやはり事故につながるということで、海上保安庁としても憂慮しております。たとえ関係法令、船舶職員法、船舶安全法というものを守っておっても、船が高速である、高馬力であるということから事故につながる確率が非常に高い、それから、他船に迷惑をかける可能性が非常に高いということが考えられますので、海上保安庁としましては、いままでの遊漁船漁船以上に海難防止活動に重点を置いて対処しておる次第でございます。  やり方といたしましては、海難防止の訪船指導実施したり、また、全国各地で漁協等で海難防止講習会を開催する等しているわけでございます。また、これはもう言語道断なことでございますけれども関係法令に違反があるというような場合には、これはなおさら事故につながる、あるいは他船に迷惑をかける可能性が強くなるわけでございますから、その取り締まりについては、未然に事故防止をするという観点から、従来から特に重要な船舶職員法等の関係法令を中心にいたしまして取り締まりを重点的に行っている次第でございます。万一過失によって事故を起こしたような場合には、関係法令に照らして厳重に捜査を行っており、今後ともその方針で臨んでいきたいというふうに考えております。
  196. 松浦昭

    松浦政府委員 釣り舟につきましての届け出制ということにつきましては、釣り舟業者の届け出ということで実は法案を考えておったわけでございますが、関係省庁との調整がなお必要でございますので、今回は見送ったということは先ほど申し上げたとおりでございます。  そこで、さらに自家用の釣り舟マイボートまでこれを登録制なり届け出制といったようなことをとるかどうかという問題でございますが、実はこの数はきわめて膨大でございまして、所有者の確認という面で非常にむずかしい面も多い。直ちに都道府県知事の登録制ということにかかわらしめるという場合にはその事務能力からもなかなかむずかしいというふうに考えまして、今回はこれは考えておらなかったわけでございますが、まず実態調査を行いまして、それに基づいて今後必要な措置をとってまいりたいというふうに考えております。
  197. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 前にも、私、この委員会で質問申し上げたのですが、釣り保険について再度質問をしたいと思います。  保険の方、お見えでございますか。遊漁者自体が加入する保険と、釣り舟がその搭乗者について加入する保険の二種類がありますが、これは両方とも任意保険でございます。したがって、最近の遭難等の事故の多発から見まして、やはり自動車の強制賠償保険のような義務加入が必要ではないかというふうに思うわけでありまして、こういう点でどういうふうにこの釣り保険についてお考えなのかどうか。  また、釣り保険の加入促進のための具体的な方策として、あるいは釣り具を購入の場合とか、何かそういうものを求める場合に保険に入るようなシステムになっていればそれも促進の方策になりはしないかと思うのですが、その二点をお尋ねいたしたい。
  198. 田中寿

    田中説明員 先生御指摘のとおり、任意保険におきましては、釣り舟は、遊漁者、船客の物損あるいは身体の損害賠償につきましては、通常船客傷害賠償責任保険というのがございまして、これを利用していただいているわけでございます。それから、釣り人自身の身体傷害あるいは物損、それから捜索救助費用等の事故に対しましては釣り保険がございます。  その両者のいわば強制保険化についてどうかということでございますが、強制保険には、法律で付保すること、加入すること自身が義務づけられております自動車損害賠償責任保険等から行政指導によって事実上付保されているものとか、いろいろ態様があるわけでございます。  さて、現に船客傷害賠償責任保険にいたしましても釣り保険にいたしましても、ベースになる保険がすでにございますので、これをいわば強制化するということを考えてみますに、本来保険というのは、加入するかどうかというのは契約者の自由意思、任意というのが原則でございますから、これを強制化するということになりますと、それなりの公共性、必要性が前提になるということだと思います。この公共性、必要性が果たしてあるかどうかということに関しましては、まず所管の省庁で御判断をいただいた上で、強制化に踏み切る必要があるということでございますれば、やはりその契約者のコンセンサス等を得ながら、そういう条件が満たされるのであれば、その強制化についての検討を業界を交えながらやるということについてはやぶさかではございません。そういう意味で、強制化に踏み切るということになりますと、くどいようでございますが、そういう公共性、必要性があるのかどうか、それから、何よりも実行が担保できるかどうかというような点でいろいろ検討のポイントになろうかと思います。  それから、先生御質問のたとえば商品に附帯してやれないかということでございますが、いわば釣り具という商品に保険を附帯化して販売するということになりますと、保険商品としてのフィージビリティーがあるかどうかということだろうと思います。これは、そういう形で釣り具を利用する利用者が均一の危険に遭うのかどうかということだろうと思うのですが、釣り具といってもいろいろな利用の仕方があろうかと思います。遊漁者といっても、本当の家族のレジャーから、かなり危険な場所に行って釣りをするいそ釣りだとか、いろいろな態様があろうかと思いますので、そういうのを一つの危険としてとらえられるかという問題もあろうかと思います。しかし、それにいたしましても、そういう保険をいわば保険商品として設計するということになりますと、これは釣り具メーカー等が契約者になるというのが一つの例だと思いますが、そういうニーズがあればそういう形で業界等も交えて検討を進めていくことについてもやぶさかではないのでございますけれども、果たしてそういう条件が満たされるかどうかというのが問題かと思います。  それから、釣り保険に関しましてはそれなりに業界もPR等をやり、あるいは釣りの愛好団体を通ずるとか、あるいは各職場の釣り団体を通ずるというようなことをやっておりまして、まだ普及は十分ではございませんけれども、逐年契約件数、被保険者数は増大しているという状況にあるわけでございます。
  199. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ありがとうございました。  時間になりましたが、最後に、漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案の中で一点だけお尋ねいたしたいと思います。  特にいま問題となっております組織的な密漁の防止のための対策が必要でございますが、そのためには、漁協とか都道府県あるいは海上保安庁の保安部、それに警察等もございますけれども、十分な協議をしながら効果的な取り締まりを行っていただきたいと思うわけでございます。最近は、操業形態の変化に即応し得るような取り締まり体制を強化する必要があろうと思いますが、漁業者の中にはこういうものを守ってもらわなければならぬ面も、密漁の点はあるわけでございます。漁場監視員制度というものを創設していただきたいという意見を私は持っているわけですが、その点と、それから特に組織的な密漁防止のために海上保安庁等でも頭を痛めておられると思うのですが、こういう点の取り締まりを緊密にやっていただきたいのです。  まず海上保安庁からこれに対する考え方、最後に長官から漁場監視員制度に対するお考えをいただいて、終わりにいたします。
  200. 吉田孝雄

    ○吉田説明員 先生御指摘のとおり、最近の密漁はきわめて組織化しております。これは暴力団が絡むこともありますし、漁民同士がやるという場合もありまして、いろいろ形態がございますけれども、いずれにしても組織化、巧妙化しているのは事実でございます。たとえば北海道の根室周辺でのウニの密漁とか三陸沖でのアワビ、サザエの密漁等がございまして、海上保安庁でも非常に憂慮している事態でございます。  海上保安庁としましては、この種事犯が漁業秩序を乱すことはもちろんのことと言えますが、さらに漁業者を介しまして暴力団等の資金源にもなっていると考えておりますので、従来より警察を初め水産庁、県と連絡をとりましてこの対応に頭を痛めているところでございます。特に、やり方といたしましては、高速型の巡視艇あるいは機動艇、それから航空機等を有効に使いまして強力な取り締まりを行っている次第でございます。  まだやり方についてもいろいろ研究するところがございますので、関係機関ともよく連絡をとりまして、今後もこの方向で努力してみたいと思っております。
  201. 松浦昭

    松浦政府委員 今回、密漁対策として罰則の強化をお願いをいたしたわけでございますが、もとよりこの罰則の強化だけで事足れりということではないわけでございます。私どもといたしましては、さらに都道府県あるいは海上保安庁、警察等と十分に連絡をとりまして密漁対策に臨んでいかなければならぬ。また、関係漁業団体等も十分に指導しながら、この法案を契機としまして私どもこの対策を強化してまいりたいと考えておる次第でございます。  お尋ね漁場監視員でございますが、この点につきましては漁業者みずからが漁場の保全、管理に努めることは当然のことでございまして、特に一部の県におきまして漁場監視員ということで、知事が任命されました漁業者によりまして漁場の監視等を行っている例があることを私ども承知しておるところでございます。この場合、漁場監視員の役割りというのは関係者に対する漁業関係法令の周知、指導あるいは漁業関係法令についての関係機関との連絡といったような点でございまして、これによりまして密漁の未然防止あるいは密漁取り締まり協力が行われるということは大変結構なことだと思うわけでございます。  ただ、この監視員に司法上の捜査権とかあるいは漁業関係法令の励行に関する行政上の質問検査権といったものを付与するということになってまいりますと、ちょっと問題は別でございまして、現行の刑事訴訟法とかあるいは漁業法の趣旨から見てこれはなかなかむずかしいのではないかと考えます。  それから、漁業者漁場監視員として密漁防止等に一定の役割りを果たさせることは結構でございますが、その場合、任務を越えたような行為によって関係者との間でトラブルが発生したりする例もありますし、逆にまた、場合によっては漁場監視員の身体に危害が加えられるというようなことも考えられるわけでございます。このような点では、一定基準以上の資質の方々を確保するということとかあるいは身体の安全の確保、それから万一身体に危害が及んだ場合の補償措置といった点についても十分に検討なすった上で設置していただくことが必要ではないかと考えておる次第でございます。
  202. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 終わります。
  203. 山崎平八郎

    山崎委員長 寺前巖君。
  204. 寺前巖

    ○寺前委員 いろいろな委員さんが改正案についていろいろお聞きになりましたので、私、最後でございますので、気になったことだけをしぼって五点お聞きしたいと思います。  最初に、問題を提起しておきたいと思うのです。  第一点は、沿岸漁業をこうやって栽培漁業云々として論じている最中に、きょうの昼にテレビで愛媛県の北灘漁協ですか、倒産をしたという異常な事態が報道されました。聞いていますと、三年来の赤潮の発生だ、そして同時に放漫経営が伴うのだろうと思うのですね。片方で沿岸漁業を云々しているときに起こっているだけに、この問題について現時点においての見解を聞かせていただきたい。これが一つです。  それから第二番目に、海洋開発審議会の答申を見ていますと、相変わらず異常な埋め立て計画が進められています。それで、一方で沿岸漁業を云云しているのだけれども漁場をつぶしてそういうことが成り立つのだろうか、この答申についてどういうふうに見ておられるのか、水産庁としてどういう対応をせられるつもりか。これを第二点の問題としてお聞きしたいと思うのです。  第三番目は、この法案の中に放流実証事業というのがございます。現段階実証事業をどういうふうにおやりになるのだろうか。放流効果が明確でなくても法律で決めてまで乗り出してくるというのはどういうことをもたらすのだろうかという心配があります。この問題についてお聞きしたいと思います。  第四番目に、漁場の利用協定というのが出されていますが、圧倒的な釣り人というのは組織されていません。そういう中で利用協定効果あらしめるためにはどういうような今後の対応をとられようとしているのか。これが第四番目です。  第五番目に、魚礁の設置をかなり広範に莫大なお金を使ってやってまいりました。これについて、確かに一定の役割りを果たしてきているけれども、改善する点はないのだろうかという問題について、NHKもこの間放映しておりましたから、若干の意見を聞きたい。  大体五つを考えていますが、時間が余りましたらまた追加させていただきます。  まず第一点の愛媛県の問題です。  テレビを見ておりましたら、今日までに二十六億からの借金がある。どんなことになるのだろうかと関係する漁民は心配しておられます。そこで、まず最初に、この発生した倒産という事実は、ざらに起こることであって異常な事態とは思わぬとおっしゃるのか、やはり異常な事態と見ておられるのか。そして、報道でもなされましたように、愛媛県の当該の漁協はハマチの養殖を大々的にやっている地域だ。ハマチの養殖を大々的にやっているところで赤潮が発生して、片一方で魚価が低迷しているときに、起こり得る危険性を持っておった事態だと見ておられるのかどうか。要するに、当該の漁協でこういう事態が生まれてきていることについて従来から心配があったのかどうかということについてまずはお聞きしたいと思うのです。
  205. 松浦昭

    松浦政府委員 私、そのテレビを見ておりませんので、どこのどういう地域でどういう形態での倒産か頭の中にございませんから、とりあえず私が考えましたことを申し上げる次第でございますが、赤潮というのは、非常に異常な発生を見ました場合には大変な損害を漁民に与えるものでございまして、特に養殖の漁業の場合にはこの赤潮による損害は一挙に大量の斃死ということが伴いますために、非常に大きな被害を漁民に与えるものであると考えるわけでございます。  ただ、最近の時点におきます赤潮の発生は、ここ数年間の動向はやや下火になってきておりまして、特に、ただいま愛媛県とおっしゃいましたが、それがどの場所であるかよくわかりませんけれども、瀬戸内海の地域であろうかと思います。この地域におきましては、局地的には赤潮が依然として発生しておりますけれども、最近やや下火になっていると考えておったところでございまして、さような意味では、現時点において通常しょっちゅう起こるようなものではないと考えている次第でございます。しかし、その実態、態様がどのようなことであるか、私もよく存じておりませんので、十分に調査したいと思います。
  206. 寺前巖

    ○寺前委員 先ほど、関係する県なり町なり漁協なり、思い当たる程度ですが、いろいろ電話をしてみました。従来、これは愛媛県の津島町とかなんとか言っていましたが、やはり赤潮が西部で問題になったことがございます。下火になっておって心配はないと思っておったということをいま言われました。ところが、聞いてみると、大型のハマチの養殖をしているところでは、えさ自身がもたらす赤潮の心配というのは全国的に非常に大きいものがある。それと魚価が低迷してくる問題と重なると、異常に投資をした場合には非常に心配な経営形態に陥るというのが今日一つの問題点ではないかということを、幾つかのところで私聞きました。  いまの長官の話を聞いていると、ここだけの特殊な現象として見ておられるのかなということになると、これは私がいま電話で聞いた程度ですからあれですけれども、やはり気になるわけです。そこで、大量にハマチを養殖している地域は赤潮の状況がそういうえさその他を含めて異常な段階になり得る条件を持っていないのか、魚価の低迷の中で経営困難に陥るという事態がないのか、この際緊急に全国的にも主なところについて調査をやって手を打ってみる必要があるのではないだろうかという気がするのです。  それからもう一つの問題は、当該の漁協です。聞きましたら、いままで二十六億からの借金がある。これで倒産された。そこに参加しているところの漁民は、それぞれがあすの仕事を同時にまた心配しなければならない事態になっている。そうすると、この二十六億について、大部分が信連のようですけれども、ちょっと一時的に棚上げでもしてもらってそしてまた緊急の融資を漁民にしてくれなかったならばあすからのことが心配になるという問題提起をやっています。ですから、そういう意味で、直ちにこの要望にこたえるところの対応措置をやってもらう必要があるんじゃないだろうか。これが当該のところに対する第二の問題です。  第三に提起をしたい問題は、南予レクリエーションセンター構想とかいうのがありまして、養殖、栽培について非常に大きな奨励をしているんだそうです。ですから、余り夢を持たすような大きな構想を言って、実際の個々の経営にそれによって金をどんどん貸し付けをさせるような指導をもしもなされているとするならば、夢を描くのはよろしいけれども、実際の個々の経営問題に対するあり方論としては慎重に指導しなかったら大変なことになると思うのです。そこで、個々の漁協の当該地方におけるところの指導のあり方について、ここだけやったらいいということはないですけれども、その周辺のほかのところでも同じような事態が起こっているとすれば大変なんで、特別に当該地域におけるところの漁協の活動がどうなっているのか、これも調べていただく必要があるんじゃないだろうか。  以上三点を提起したいのですが、長官の見解を聞きたいと思います。
  207. 松浦昭

    松浦政府委員 私、先ほど申し上げましたのは、一般的な傾向として、過去非常に赤潮の被害が高かった時代に比べまして、諸般の対策によりまして赤潮が最近やや下火になっているということだけを申し上げたわけでございまして、当該地域につきましてどのような状態になっているかにつきましては判断ができない状況にございます。もちろん赤潮のことでございますから、局地的にもいろいろな漁況、海況の条件、それからまたプランクトンの分布の状態等によりまして突発的に赤潮の被害の起こる可能性は十分にあるわけでございまして、さような危険は養殖の地帯ではどこも皆持っておるというふうに私は思っております。  その次に、対応策でございますが、まずそのような事態につきましては、実は私ども主要な内海、内湾におけるヘドロの分布あるいは堆積量につきましても調査をいたしておりますし、赤潮の分布あるいはプランクトンの種類等につきましても、発生状況につきまして常に予察の事業をやっております。その事業の一環といたしまして当然報告の徴収が行われますので、それに乗せましてこの事態につきましても調査をいたすつもりでございます。  それから三点目でございますが、赤潮の被害によってただいま二十六億という大きな金額の負債が生じて、そのために倒産というお話でございます。これに対してどのような対応策をとるかということでございますが、ただいま私先生からお聞きしたばかりでございますから、県等に照会いたしまして、どのような実態になっているかということをまず聞いた上で対応策を考えてみたいというふうに思う次第でございます。  それから南予レクリエーションセンターの話をなさったわけでございますが、これは水産庁は全然知らない事業でございまして、私どもどのような実態であるかは知っておりません。これは恐らくよその官庁の話じゃないかというふうに思うわけでございますが、わが方の漁協関連する話でございましたら、この点につきましては漁協等から話を聞いてみたいというふうに思います。
  208. 寺前巖

    ○寺前委員 緊急に発生した事態でございますので、私はやはり異常だと思いますので、異常な事態に対応して、他に被害が及ばないように、二つの面から、すなわち、赤潮発生の条件というのが他にも起こっていないのかどうか、あるいは魚価が低迷する中で漁協が成り立たないという事態が生まれかかっているのじゃないかという心配の面からが一つと、もう一つは、当該地方のレクリエーションセンター構想の中で個々の漁協が同じような雰囲気になっていないかどうか、そこから受けるところの被害というものはないのか、両面からぜひ水産庁としても直ちに調査をやっていただき、当該漁協の立ち直りのために、また漁民の立ち上がりのためにぜひとも援助をしていただきたいということを申し上げて、一番の問題は終わりたいと思います。  第二番目の海洋開発審議会の答申の問題ですが、七九年の八月十五日に「長期的展望にたつ海洋開発の基本的構想について」というのが答申されています。これを見ますと、二〇〇〇年までに現在の埋め立て面積十一・九万ヘクタールを十八・八万へクタールにするという展望を出しています。これを達成させるためには毎年三千五百ヘクタールの規模で埋め立てていく計算になる。これは高度成長時の最高時に匹敵するもので、近年の二千ヘクタール前後という水準を大幅に引き上げるところの目標になっているわけです。こんなに埋め立て事業を次々とやっていって一体どうするのだろうか、一方で沿岸漁業を云々しているのに、ということをまずは率直に感ずるものであります。  そこで、私はこの間うちから、この法律が出るというので、あちらこちらに、あなたのところはどうなっているのだということで電話をかけて聞いてみました。たとえば香川県に聞く。そうすると香川県の漁民は、本四架橋の問題をめぐって漁場が荒らされている。何ぼ補償をもらったか知らないけれども、荒らされていることは事実です。兵庫県へ電話をかけてみました。そうすると、たとえば明石市というところに五十六年に県営の栽培センターをつくって種苗生産放流を始めておりますが、その県営の栽培センターができているところはどこかと聞いたら、埋め立てた人工島なんですね。何でそんな島ができたのかというたら、すなわち工業団地として埋め立て地域をつくった。その埋め立てをやったところはどういうところかというと、自然の藻場であって魚がよく集まってきたいいところだった。いまから考えると、わずかな補償でもって埋められてしまったということで不満が出てきた。不満にこたえるようにしてこの栽培のセンターがつくられた、こういうわけです。  考えてみると、片一方で栽培だ、栽培だと言うけれども、片一方で漁場をどんどんつぶしている。そっちの方に注いだ金の方が大きいんじゃないだろうか。本当に総合的に沿岸漁業を問題にするならば、総合的な国土のあり方問題について検討してもらわないと、これはちょっと筋違いになるのじゃないだろうか。本当に栽培漁業を云々するならば、埋め立てをやったり、海を汚したり、稚魚をとったり、いろいろな形で片一方で破壊をしておいて、その対応策として、ちょっと栽培して何とか生きていきましょうかという発想で栽培漁業を見ておったら、主客転倒じゃないだろうか。やはり自然をもっと大切にするという立場から沿岸漁業を見ていくという立場に立つべきではないだろうか。そう思ったら、国が立てているところの海洋開発審議会のこの方向づけというのに対して、農水省として、一言どころじゃありません、基本的に考え方を改めてもらいたいという問題提起をすべきではないだろうか。私は、基本的なこの栽培漁業に取り組む姿勢問題としてこの問題について考えるのですが、大臣、いかがなものでしょうか。——大臣が二人になったわけじゃあるまいに。
  209. 松浦昭

    松浦政府委員 大臣のお答えの前に、私から事実に関してお答え申し上げます。  昭和五十四年に海洋開発審議会が二〇〇〇年を展望した海洋開発の基本構想を明らかにするということで、わが国周辺の埋め立ての構想ということも含まれた構想をお出しになったようでございます。しかし、この構想の中で一体どの程度の埋め立てが実施に移されるかということにつきましては、審議会答申後の経済情勢の変化といったようなことも考えてみますと、実際に埋め立て用地の需給動向から考えまして、これに左右されるということを前提にいたしますと、現段階では、どの程度一体これが実現するものかということは必ずしも明らかでないというのが私どもの見解でございます。むしろ埋め立て事業実施につきましては、一々すべて許可をしていくわけでございますから、当然水産庁といたしましてもその埋め立て事業実施に対しまして関与し、アセスメントの中に関与できる体制になっておりまして、もちろんその場合には優良漁場は極力これを避けて地元漁業への影響を最小限に抑えるということで私ども常に対応していることでございます。また、関係漁業者等の円満な納得を前提にして実施されるということが必要であるということで考え、また、そのように常に対応しているという状況でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、個別具体的な問題としてこのような埋め立ての事態には対応し、そして基本的に申しまして、やはり栽培漁業振興ということのためには海面がきれいであるということが前提である、そういうことの立場に立って今後の事業を進めてまいりたいと考えている次第であります。
  210. 寺前巖

    ○寺前委員 個々の問題で対応される、こうおっしゃったけれども、ビジョンそのものというのは、これは考え方ですから、考え方の面において改めてもらう必要があるんじゃないだろうか。  それと、もう一つ提起をしておきたいのは、一九八〇年の水質汚濁等による突発的漁業被害の状況について、資料を見てみますと、海面の漁業被害の合計件数が二百十一件と史上最高になっているのですね、一九八〇年が。とりわけ赤潮、油濁の件数がふえて、一九六九年から七五年と七六年から八〇年の発生件数を見ると、一九六九年から七五年が、赤潮が三件が三十三件にふえた。ところが七六年から八〇年を見ると、それが二十四件から四十二件へさらにざあっとふえていくという数字が出ているのですね。油濁の場合を見ると、一九六九年から七五年が二十四件が九十一件へ、七六年から八〇年を見ると百三件から百三十七件へどんどんふえているわけですよ。一九八一年は、発生件数は減ったといっても環境改善をそれは決して意味するものでないと昭和五十七年度の漁業白書も指摘しているところです。  ところが、五十八年度の予算を見ると、五十五年度対比で漁業公害対策費は一二%減っているのです。それから赤潮防止対策費は二二%減っているのです。沿岸漁場保全事業費は二二%減っているのです。ところが、漁業白書の方では漁場環境回復の必要性は一層高まっていると指摘しているわけですね。そうすると、言っていることと予算的にやっていることとは違うじゃないかということになるわけです。ですから、それは予算というものは諸関係があって減らされましたということになるかもわからない。私は、さきのビジョンの考え方と、また現実に発生しているというこの事実を考えたときに、ほかとの関係において減らさざるを得なかったではちょっと通用しないんではないだろうか。わざわざ法律まで持ち出して改正をやろうというんだったら、まずビジョンを考え直させ、そして予算面においても考え直させる、そのぐらいの決意が必要ではないだろうか。大臣、いかがなものですか。——いつでも代理大臣やな。どういうことなのかな。
  211. 松浦昭

    松浦政府委員 突発的な事故につきましての漁業被害でございますが、ただいま先生おっしゃられましたように、被害件数を見てみますると、少なくとも先ほど私申しましたように、赤潮の被害は昭和五十六年は二十五件、金額につきましてもかなり落ちているということはお認めになっていただけると思います。それから、油濁につきましても百五件でございまして、これも大分落ちてきているということは事実であろうと思います。しかし、私このことを申し上げますことは決して漁場の保全関係につきまして今後力を入れなくてもいいということを申し上げているわけではないわけでございまして、ますますそれは必要であると考えるわけでございます。  ただ、御指摘の漁場環境保全対策事業がここ数年間減りつつあるじゃないかということでございますが、これにつきましては、厳しい財政事情のもとにありまして予算を重点的に振り向けざるを得なかったという面はございますけれども、特にこの漁場保全対策関係事業の予算が減っておりますのは、大規模漁場保全事業というものが特に北海道中心でやっておったわけでございますが、この要望が非常に少なくなりまして、実は小規模の方を大幅にふくらませましたということから金額的に減っているという状況でございます。さような意味で、予算技術的な編成の側面で若干移動があったというふうにお考えをいただきたいと思うわけでございます。もちろん今後の対応策といたしましては、所要の予算の確保を図って、漁場の保全を十分に実施しているということは当然のことであると考えております。
  212. 寺前巖

    ○寺前委員 繰り返しませんが、考え方のビジョン、それから現実的に予算的に見てもべらぼうに減ってきている、しかしゆるがせにするわけにはいかないということは漁業白書では指摘している。私は、せっかく法律を出して構えられた以上は、このビジョンそのものにもやはりもう一度メスを入れる、予算のあり方の面においても、もう現に倒産が起こる事態までの赤潮の発生していることが報道されているぐらいなんだから、ゆるがせにすることができない事態が起こっているということもやはり考えてみるときに、基本的に構え方を改善させるように予算面でも手を打つべきではないだろうか。重ねて私は大臣の見解を聞きたいと思うのです。
  213. 金子岩三

    ○金子国務大臣 大変きめ細かい、適切な御指摘でございます。  ただ、ビジョンと現実が大変違うじゃないか、こういう御指摘なんですが、ビジョンを立てるときはやはり遠大な理想と構想を持ってビジョンは立てておりますが、現実にこれを実行に移す場合はいろいろ理想どおりに理屈が合わない点が出てくるわけでございまして、ビジョンと現実が大変食い違っておるということは私は正しい御指摘と思います。そういう点については、ビジョンを立てる場合も、あるいは現実にこれを実行に移す場合にも大いにひとつ念の上にも念を入れて慎重に取り組んでまいりたいと思います。
  214. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、よろしく頼みます。  その次に、放流効果実証事業にかかわる問題です。  京都の海洋センターで働いている現場の人の話をいろいろ聞いてみました。栽培に最近いろいろ取り組んできて放流して効果があるのかどうかということをやってみた。マダイについては何回か放流しているが、当該の地域では採捕率は二%そこそこだ。しかも、それは放流直後の採捕を含めての計算だ。アワビについては現在中間育成をやっており、効果がわかるのは二、三年先であろう。いずれにしても、京都の諸君たちの話を聞いていると、今回この法の改正がなされて法律が成立したからといっても、放流効果実証事業を直ちに始めるというふうには考えられない、そういう段階にないのではないだろうか、こういうことを言っています。これは京都に限らないのです。いろいろなところへ行って聞いていると、何でわざわざ法律改正してまで、まだそこまで放流効果実証されていないのに、何でやるんだろうかという声というのは各地で聞くわけであります。  ここに農林水産委員会調査室の資料があります。この資料の中で問題点というのが指摘されています。これを見ますと、こう書いてある。「どのような魚種がこの水準に達したのであろうか。」そうなんです。どこへ行ったって、その効果について一定の水準に達したという話は出てこない。そして、重点放流を行う方向で、話が法案の準備の過程の中でなってくるわけでしょう。大量重点放流の目標は、地元の漁民方々協力しなかったならば達せられないのではないか。あるいは将来的には地元漁業者による栽培漁業実施を意図するものであったならば、地元漁業者意見を十分に配慮する必要があるだろう。いわば全体としてまだ放流実証事業以前の段階にあるというのが、これがみんなが率直に感じておられる問題だと思うのです。  そこで、今回の改正で指定法人による放流効果実証事業を始められるという県はどこの県だ、どういう魚種が対象になるのか、全国的に、全面的になるのかどうか、お話を願いたいと思うのです。
  215. 松浦昭

    松浦政府委員 栽培事業の技術的水準につきましては、各魚種についていろいろな段階の差がございます。相当に進んだ魚種、たとえばクルマエビあるいはガザミあるいはマダイアワビといったようなものにつきましては、これは相当の技術水準に達しております。それからまた、御案内のように一種の放流事業でございますサケ・マスにつきましては、大変な水準に達していることは先生もよく御承知であろうと思います。そこで、また一方におきまして、たとえばヒラメであるとかあるいはクロダイであるとかあるいはカニの類であるとか、まだまだ実験の段階であるものもございます。さような魚種による差というものが相当あるということは、これは当然のことであろうと思います。一方におきまして、また地域によりまして、場所によっては非常に放流効果が上がっているところ、それからまた放流効果が上がっていないところ、これはまたいろいろな段階の差がごございます。  先生がお回りになってお聞きになったところがそのどこに該当したかということは、私、定かではございませんけれども、相当効果があった地帯もあるということは、これまた私、時間がございませんから申し上げられませんけれども、幾らでも事例を申し上げられる自信がございます。  そこで、今回の放流効果実証事業をやろうということを考えましたのは、いままで放流といいましてもごく少量の放流を分散的にちょぼちょぼとやっていた。そのために効果がほとんど発見されていないというところが多いわけでございまして、さようなことから、大量に、継続的に反復して放流を行う、それによってその水域放流効果も上がり、そしてまた採捕率も上がってくる、そういう事業を期待して、それによって初めて漁業者方々もその効果が上がるということがわかるわけでございます。さような点で、まさに実現をしなければならないという方向に向かって進むためにこの放流効果実証事業というものをやってみたいということで法案を御提出申し上げているということを御理解いただきたいというふうに思うわけであります。  いま一つは、今後どの地帯を選んでどういうふうにするかということでございますが、これはこれから立てる国の基本方針、それから県の基本計画に沿いましてこの放流効果実証事業というものが行われてまいるわけでございますから、いまこの時点で、どこでどれだけの数の放流事業が行われるということはまだ申し上げられる階段ではないわけでございますが、当然この場合には地元の関係者、先ほど申しました栽培事業協議会というものもつくってまいるわけでございますから、その方々意見も十分に聞きまして、この放流効果実証事業を実効あるような形で実施してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  216. 寺前巖

    ○寺前委員 おっしゃらないから、どの程度どういうふうに大量放流をおやりになるのかわかりませんけれども……。  そこで、ちょっと心配の声がさきの質問の中にもありましたが、漁場管理制度研究会の報告では、日本栽培漁業協会の果たしている役割りについて評価をしているわけですね。ところが、今度の法の改正段階では、県段階における指定法人の役割りを明確化した反面、この協会の位置づけ、役割りについては触れられていないわけです。今後の栽培漁業の推進のためにこの協会が果たす役割り、これはやはり大きいんじゃないかということをみんな言っているのです。ところが、法律に出てこない。これはおかしいなというふうに感ずるわけですね。  それと実は関連をするわけですけれども、こうやって各県に栽培センターがつくられていって、そうして実証事業や指定法人だ、こういうふうになってきて、これは財政的な援助というものから国が手を引いていくということを考えているんじゃないだろうか。ところが、現実には、さっきも言いましたように、京都の例で言うと技術開発段階としてはまだおくれているわけです。ですから、財政援助、技術開発などの援助をやはりもっともっと強める必要があるんだということでは、決してそういう考え方ではないんだということを、実証事業をこれから全面的に考えていこうとするならば、国の果たす役割りというのはもっと大きいんだから、予算的にも責任を持ってやりますのやということを、私は明確におっしゃることができるのかどうかをお聞きしたいと思います。
  217. 松浦昭

    松浦政府委員 まず、日栽協の役割りでございますが、確かにこの法律案の中には日栽協の文字は出てこないわけでございますけれども、日裁協が果たす役割りというものは非常に重要なものであるというふうに私どもは認識をしております。何ゆえなれば、日栽協といたしましては、将来の各県段階におけるいろいろな技術もさることながら、基本的な技術開発というものは日栽協が行っていくべきであるというふうに考えておりますし、また、県段階で開発された技術というものを集大成して、これをさらに集大成し普及していくということは、日栽協の大きな任務になるというふうに考えております。また、ブリとかあるいはマグロといったような非常に高度に回遊する魚種につきましては、やはり個々の県でセンターがやりますよりも、日栽協といったような全国段階でこれが行われていくということが適当であろうというふうに考えております。  さらに、種苗の供給の調整といったような観点からも日裁協の果たす役割りは非常に大きなものでございまして、国が定めます基本方針というのが法律の中に載っておりますが、その基本方針の中で、技術開発の項がございます。この項の中でこの日栽協の位置づけというものをやってまいりたいというふうに私どもとしては考えている次第でございます。  なお、このような放流効果実証事業を行いますがゆえに、国は一部の経費を肩がわりを民間にしてもらうのじゃないか、こういう御懸念があるやに伺ったわけでございますが、これは先ほどから申し上げておりますように、私どもは、基本的な技術の開発段階にありますそういった魚種につきましては、これは国なり県なりがその開発をしていくということは当然のことでございまして、そういうリスクのあるものを民間の方々にお任せするということはとてもできないものだということはよく承知をしております。それからまた、一方で非常に技術が開発されて十分に民間段階種苗の供給もできるということであれば、みずから畑を耕す方に種もまいていただくということも、これも正しい行き方ではないか。  放流効果実証事業というのはその中間にあるということを先ほどから申しておるわけでございまして、われわれは従来の国ないしは県の果たしていた事業を肩がわりをさせるのじゃなくて、いままでの役割りの上にさらに放流効果あらしめるためにより多くの尾数を増大してこれを放流したいというような場合にこの協力費を拠出していただいて、そしてより大きな規模で放流をしていただくということを考えているということでございます。
  218. 寺前巖

    ○寺前委員 協力金の問題が法案の中に出てきます。法律を見ていると、放流効果実証事業協力する不特定の者が任意に拠出するものであって、報告書にあるような受益者が負担するという考え方ではないようです。ところが、実際になってくると、これが任意拠出と言いながらも強制的な徴収になるということは絶対にさせないように指導するのかどうかという問題が一つです。  それから、協力金の拠出は自主的なものでありますけれども漁業者遊漁者の中には、何を基礎として積算するのか、あるいは放流効果が発現した後に協力金を出すことになるのか、拠出者の範囲というのはどのような操業を行っている者を対象として想定しているのか、協力金は個々の漁業者遊漁者からも拠出するのか、いろいろな疑問が出ています。  どういう構想を国として持っているのか、この辺についてはどういうことを考えておられるのか、お聞きをしたいと思います。
  219. 松浦昭

    松浦政府委員 この放流効果実証事業における協力金は、受益者負担といったような性格は全く持っておらないものでございまして、あくまでも漁業者方々あるいは釣り人方々放流効果に対する認識によりまして任意に拠出していただくということでありまして、強制的なことにわたるようなことがないように十分に指導をいたすつもりでありますし、また、そのような考えは全然ありません。  それから次に、拠出金額の算定方法でありますが、拠出された協力金は種苗生産あるいは中間育成と放流の経費の一部に充てられるということになりますので、これらの経費が協力金を募る場合の目安になるものと考えられます。具体的には、これらについての補助金が出ている場合には、その地元負担額に相当する金額といったようなことになると思います。  それから拠出時期でございますが、この実証事業は、県の放流技術開発によりまして増殖効果がある程度明らかになった段階で、かつ、実証事業についての漁協等の協力が得られると見込まれる段階で法人が拠出をしてもらうということでございますから、当然放流効果があらわれた後になります。  その次は拠出者の範囲でありますが、放流効果調査の結果明らかになった放流魚が濃密に分布、生息する域内で放流魚と同じ種類の魚を採捕する漁業者あるいは遊魚者に対して協力金の拠出につき協力を求めることになると思います。  それから拠出の方法でありますが、これはやはり漁業者とかあるいは個々の釣り人といった方々から拠出していただくのはなかなかむずかしいと思いますので、船ごとあるいはその大きさにより一隻幾らといったような方式、あるいは漁具、漁法によってランクをつけて漁協あるいは遊漁案内者ごとに一括して拠出していただくという方式になると思います。  これらの方針につきましては、長官通達で明確に定めて指導をすることといたします。
  220. 寺前巖

    ○寺前委員 もう時間がだんだん迫ってまいりましたので、あと二点ほどお聞きをします。  漁業遊漁との関係の問題になるわけですが、漁場の安定的利用関係を確保するために、今度の法改正の中で漁場利用協定というものが出てきます。ところが、この利用協定を結んだとしても、アウトサイダーの方がたくさんおるという問題が出てくると、これは実際上の効果というものが非常に少なくなってくるということになると思います。全国的には、この研究会にも御参加になったような日本振興会とかあるいは全日本釣り団体協議会というようなものがございますけれども、しかしそれは全体として言うならば、釣り人の部分にしかすぎないことになります。そこで、自主的にいろいろな釣り人組織が、たとえば勤労者釣りの会というようなものが各地にもう現実的にも存在しています。  そうすると、現実効果あるようにするためには、もろもろのそういう諸君たちを参加させて、そうして協定をさせていくということが、実効あるためにも非常に重要になると私は思うのですが、この点では、今後の指導のあり方として広くいろいろな団体に協定に参加させるようにされるのか。それとも、たとえばこの法案をつくり上げるもとになるところの管理制度研究会ですか、ここに参加している団体だけを対象にするというふうにされるのか。この点は一体どういうふうにされるつもりなんだろうか。私は、いろいろな団体が一つになってきたらそれにこしたことはないと思うけれども、いろいろな経過があるし、また、そこらの特殊な産業の団体とは違い、やはり遊漁という性格を持っているだけは、いろいろあると思う。地域的にもいろいろな団体の構成が生まれてくるだろうと思う。だから、私は広く参加させるということが重要なんではないだろうかというふうに思うのですが、その点についてどういうふうに考えておりますか。
  221. 松浦昭

    松浦政府委員 先ほどちょっとお触れになりました全国段階の団体、二つお触れになりましたけれども、私どもとしましては、この協定当事者になる遊漁者の団体というのは、むしろ地元に非常に密着していて、当該利用協定の対象になる漁場において、実際上そこに釣りに行かれる方々、こういう方々が実際上、その契約に参加をし、その契約に従っていただく、こういうことが前提であるというふうに考えておりますので、かえって全国団体といったようなことは考えておりませんで、むしろ地元の団体ということが、この釣りとそれから漁業者との間の協定を結ぶ対象になるというふうに考えておる次第でございます。  なお、アウトサイダーの問題でございますが、もとよりこのようなかなり広範な相手方を一方の当事者としまして契約を締結いたしましても、その場合にどうしてもアウトサイダーが出てくるという要素があると思います。もちろんこの漁場の利用協定は団体同士の契約でございまして、各団体は当然その構成員に対しまして、できた協定を遵守してもらうというその義務を負っているということでございますが、そのような構成員ができるだけ多い団体というものがこの協定の対象として望ましいということは当然のことでございます。しかし、それにしてもなおアウトサイダーが出るということはやむを得ない事実であろうと考えますので、さような場合には、やはりできるだけこの団体の会員を増していくように普及啓蒙に努めていくということと、それからまた、なかなか入ってきてくださらない方々に対しましては、その団体を通じ、あるいは釣りの案内業者等を通じまして、パンフレットその他を使いまして、漁場におけるマナーというものを十分に普及啓蒙して、契約が結ばれているとできるだけ同様な状態をつくり上げていくことが肝要であると思っております。
  222. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっとお聞きしますけれども政府の方にはやっと釣り人の班ができました。都道府県が窓口になってお世話をしているのを持っている県というのはどこの県でしょうか。何県ありますか。御存じだったらちょっと御説明をいただきたい。
  223. 松浦昭

    松浦政府委員 現在、水産庁におきましては、御案内のようにようやく釣り人の班が五十七年からできておるわけでございます。この点につきましては、将来、これを十分に検討してまいりたい、課にしてほしいという陳情もございます。さような点も十分考えましてその強化を図っていくということであろうと思います。  県の方の段階でございますが、残念ながら特定のそういう組織を持った県というのはないわけでございまして、現在の段階では各水産担当課がこれを担当しているという状況でございます。しかし、今後の問題としては、私ども、ぜひこのような専門的に釣りを扱う部署というものを県の段階でも組織をつくっていただくように指導してまいりたいと思っております。
  224. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっと恐縮ですけれども、もう一問お許しをいただきたいと思うのです。  それは、私、実はここに写真を借りてきたのです。これはこの間NHKで放映されておったことでありますので、これはどういうふうに考えたらいいのだろうか、最後にちょっとお答えをいただきたいと思うのです。  それは魚礁の問題なんです。昭和五十一年から、魚礁設置事業を去年までで八百億円からの金をかけてやっているわけです。魚礁に対するところの期待というのは、漁業者にとっては大きいものがあります。また、釣り人の中でも、釣り人を乗せて漁船が釣らすのにそこへ連れていくというほど、魚確というのは一定の期待を持たれていることは事実なんです。  ところが、実際に水産庁の方で聞いてみると、魚確というのは耐久性は三十年だというふうに言われているのだけれども、実際に三十年耐えられるような魚礁なのかどうかということがやはり疑問に感ぜざるを得ない放映がこの間されたわけです。私は、できるだけ安上がりで、そしてできるだけ有効なもの、しかも耐用年数は長いものをもっと開発し、研究する必要があると思うのです。ところが、検査をやって合格品を、わざわざそういうふうに合格をさせてまで海へ投下をさせるものが、実際には十数年にしてつぶれてしまうということでは、一体その検査というのはどうなっていたんだろうか。  私がここにお借りしてきている写真というのは、宮城県の水産試験場が魚礁設置事業追跡調査というのを水中写真をもってやっておられるのです。宮城県の石巻市の網地島というのですか、昭和四十二年から五十三年まで、並み型魚礁事業の中で角型魚礁を投下しているわけです。実際にやってみた結果について、四十二年に投下したものが十三年にしてつぶれていっているというのがこの写真の中に出てくるわけなんです。これは、まともにほうったときはこういう写真のとおりの状況ですよ。しっかり角型になっておるわけです。ところが、そこにもうつぶれているやつがある。ここらはつぶれているやつですね。これなんかつぶれている写真ですが、この間ずっと放映されましたよ。ここにたくさんある。当時、それを放映する前にいろいろ写真を撮っておられるときに、つぶれているところがばっと出てくると、それは写すな写すなと言ってやっておったようですけれども、そういう事態が現実に発生しているわけです。  この角型魚礁というのは、五十七年度の予算を見ても魚礁全体の四〇%というシェアを占めているわけです。そうすると、せっかく水産庁がその試験までしてやっているやつが、実際の中身はそうじゃないということになったら、八百億からの金を注ぎ込んでまでやっているのに、これでいいのかいなということを広くテレビでまで放映されてしまったら、私は水産庁としても直ちに研究し、対応策について乗り出さなかったらいかぬじゃないだろうかということを感ずるわけです。  たまたま一月二十八日の水産経済新聞を見ていると、沿岸漁場整備セミナーにおいて水産庁の水産工学研究所の水産土木工学部長の中村先生が、やはり構造の設計の指針について改善をする必要があるという問題提起をやっておられます、専門家は。さすがに水産庁もそういう人を持っているのだなということを私はその新聞を読みながら思ったのだけれども、問題は、大胆にその足を踏み出さなかったらあかぬのと違うか。テレビでも放映されたし、現に県でこういう実験をやっておられるのだから、調査もしておられるのだから、こういうことについてどういう見解をお持ちなのか。直ちにどうしようとしておられるのか。担当の先生がそういうことまで提起しておられるのに、これをいつまでもほったらかしておくのかいな。それでは、いつから直ちに改善をするのか、私はそれを聞きたいと思うのです。
  225. 松浦昭

    松浦政府委員 ただいまお写真で、遠くからでございますが拝見したのでありますが、一・五角型等の魚礁だと思います。その経済性と簡便性及び耐久性から申しまして、昭和二十年代の終わりから盛んに使用されたものであると考えておるわけでございますが、その効果、耐久性については十分実証されていると考えているわけでございます。ただ、壊れた事例があるということでございますので、これにつきましては、まだ報告は受けておりませんが、御指摘の事実があれば調査をいたしたいと思います。  それから、魚礁等の設計指針のことにお触れになりましたけれども、技術の進展等を考慮して常に見直す必要があることは当然であります。現在の段階のものは昭和五十三年に勧告されたものでございますが、魚礁の安定性に関しましても、最近の土木水産工学の知見に基づいて設計条件、たとえば流速であるとか抵抗係数等、考え方の見直し作業というものが進められているところでありまして、これは昭和五十九年度までに成案を得たいと考えておりますので、その成果に沿って今後運用してまいるということでございます。
  226. 寺前巖

    ○寺前委員 時間を延ばしまして、どうも済みませんでした。
  227. 山崎平八郎

    山崎委員長 これにて両案に対する質疑は終丁いたしました。     ─────────────
  228. 山崎平八郎

    山崎委員長 まず、沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  229. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  230. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、本案に対して、亀井善之君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。前川旦君。
  231. 前川旦

    ○前川委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  最近の我が国沿岸漁業をめぐる情勢は、世界の二百海里体制の定着の下で、燃油費の増大、漁場の荒廃等幾多の困難な問題が生じている。  よつて政府は、我が国周辺漁場の整備開発を促進するとともに、本法の施行に当たつては、左記事項の実現に努め、国民食料の安定的確保と漁業経営の向上に万遺憾なきを期すべきである。      記  一 栽培漁業の現状にかんがみ、種苗の適切な生産放流管理を通じその振興に努め、沿岸漁場の活用を図るとともに、栽培漁業の推進に当たつては、関係漁業者等の意向が適切に反映されるよう措置すること。  二 基本方針基本計画については、水産物の需給動向に応じて沿岸漁業生産力の向上に資するよう策定すること。  三 指定法人が放流効果実証事業を行うに当たつては、放流魚の保護育成が十分図られるよう実効ある措置を講ずるとともに、協力金については、その趣旨を周知徹底し、拠出額、拠出方法及び漁場の利用等をめぐり紛争が生ずることのないよう万全の指導を行うこと。  四 漁業遊漁との漁場利用の在り方については、国民食料の確保及び生業である漁業の存続・発展を旨とし、双方の共存を図ること。  五 遊漁人口、遊漁船の増大等に伴い、漁業遊漁との調整を図る必要があることにかんがみ、漁場利用協定の実効の確保を図り、併せて、遊漁者に対するマナーの指導資源保護培養への参加及び安全対策の徹底等を期するため、遊漁案内業者及び遊漁者組織化を促進するとともに、遊漁船秩序化、関連施設の整備に努めること。  六 遊漁が、漁業者の就業機会の増大、漁家所得の向上に果たす役割並びに漁協が行う遊漁あつせん等事業の現状にかんがみ、都道府県関係団体に対し、遊漁問題につき、地域の実情に即し適切に取り組むよう指導すること。  七 我が国内外における漁業環境の変化に即応し、資源把握漁業管理等のための技術の充実・整備に努めるとともに、漁業制度の見直しを図り、資源漁場及び漁業の適切な管理を期すること。  八 沿岸・沖合・遠洋漁業の経営の現状にかんがみ、その円滑な経営改善を期するため、漁業経営負債整理資金がその制度の趣旨に即して適切に活用されるよう、運用に努めること。  右決議する。  以上でありますが、決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の十分御承知のところでありますので、その説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願いいたします。
  232. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  亀井善之君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  233. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よつて、本案に対して附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  234. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  235. 山崎平八郎

    山崎委員長 次に、漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  236. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よつて、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  237. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、本案に対して、亀井善之君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。日野市朗君。
  238. 日野市朗

    ○日野委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法の施行に当たつては、左記事項の実現に努め、沿岸・沖合・遠洋漁場における操業秩序確立に万全を期すべきである。      記  一 沿岸漁場における密漁発生の増大に対処し、国民に対する水産資源涵養についての理解と協力を深め、また、漁業法令の周知徹底を図るとともに、漁業者自らの法令遵守精神が醸成、高揚されるよう積極的に指導すること。  二 最近の内外における漁業規制の強化及び密漁の現状に対処し、指導・取締り体制を整備充実するとともに、特に組織的、広域的密漁の防止対策を早急に確立すること。  三 漁業法違反に係る罰金等の額については、今後における社会経済事情の変動等に応じ適宜見直しを図ること。  右決議する。  以上でありますが、決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の十分御承知のところでありますので、その説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願いいたします。
  239. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  亀井善之君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  240. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よつて、本案に対して附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  241. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  242. 山崎平八郎

    山崎委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  243. 山崎平八郎

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よつて、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  244. 山崎平八郎

    山崎委員長 次回は、来る十八日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十六分散会