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1983-05-20 第98回国会 衆議院 地方行政委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月二十日(金曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 田村 良平君    理事 工藤  巖君 理事 中山 利生君    理事 宮下 創平君 理事 安田 貴六君    理事 五十嵐広三君 理事 石田幸四郎君       池田  淳君    小澤  潔君       片岡 清一君    北川 石松君       塩谷 一夫君    竹中 修一君       谷  洋一君    地崎宇三郎君       中村 弘海君    加藤 万吉君       草野  威君    部谷 孝之君       岩佐 恵美君    三浦  久君       三谷 秀治君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   山本 幸雄君  出席政府委員         警察庁長官官房         長       太田 壽郎君         警察庁刑事局長 金澤 昭雄君         警察庁刑事局保         安部長     大堀太千男君         警察庁交通局長 久本 禮一君         警察庁警備局長 山田 英雄君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君         自治省財政局長 石原 信雄君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     飛田 清弘君         大蔵省銀行局中         小金融課長   日吉  章君         参  考  人         (住宅・都市整         備公団理事)  久保田誠三君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君     ───────────── 委員異動 五月十八日  辞任         補欠選任   田島  衞君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   中馬 弘毅君     田島  衞君 同月二十日  辞任         補欠選任   三谷 秀治君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   三浦  久君     三谷 秀治君 同日  理事五十嵐広三君四月二十七日委員辞任につき  、その補欠として五十嵐広三君が理事に当選し  た。     ───────────── 五月十三日  個人事業税にみなし法人課税制度の適用に関する請願栗原祐幸紹介)(第三四八一号)  道路交通法に基づく指導取り締まり等に関する請願高田富之紹介)(第三四八二号)  同(山花貞夫紹介)(第三四八三号)  重度障害者に対する地方行政改善に関する請願岡田利春紹介)(第三五四三号)  同(北山愛郎紹介)(第三五四四号)  同(倉石忠雄紹介)(第三五四五号)  同(八田貞義紹介)(第三五四六号)  身体障害者自動車運転免許証に付される重量制限廃止等に関する請願岡田利春紹介)(第三五四七号)  同(北山愛郎紹介)(第三五四八号)  同(倉石忠雄紹介)(第三五四九号)  同(八田貞義紹介)(第三五五〇号) 同月十六日  留置施設法案廃案に関する請願小沢和秋紹介)(第三八〇三号)  同(栗田翠紹介)(第三八〇四号)  同(小林政子紹介)(第三八〇五号)  同(榊利夫紹介)(第三八〇六号)  同(瀬崎博義紹介)(第三八〇七号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三八〇八号)  同(辻第一君紹介)(第三八〇九号)  同(中路雅弘紹介)(第三八一〇号)  同(中島武敏紹介)(第三八一一号)  同(野間友一紹介)(第三八一二号)  同(林百郎君紹介)(第三八一三号)  同(東中光雄紹介)(第三八一四号)  同(藤田スミ紹介)(第三八一五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第三八一六号)  同(正森成二君紹介)(第三八一七号)  同(松本善明紹介)(第三八一八号)  同(蓑輪幸代紹介)(第三八一九号)  同(村上弘紹介)(第三八二〇号)  同(山原健二郎紹介)(第三八二一号)  同(四ッ谷光子紹介)(第三八二二号)  同(渡辺貢紹介)(第三八二三号)  重度障害者に対する地方行政改善に関する請願高橋辰夫紹介)(第三八二四号)  同(寺前巖紹介)(第三八二五号)  同(中路雅弘紹介)(第三八二六号)  身体障害者自動車運転免許証に付される重量制限廃止等に関する請願高橋辰夫紹介)(第三八二七号)  同(寺前巖紹介)(第三八二八号)  同(中路雅弘紹介)(第三八二九号) 同月十八日  重度障害者に対する地方行政改善に関する請願愛知和男紹介)(第四〇九五号)  同(田邊誠紹介)(第四〇九六号)  同(中西績介紹介)(第四〇九七号)  同(中野寛成紹介)(第四〇九八号)  同(橋本龍太郎紹介)(第四〇九九号)  身体障害者自動車運転免許証に付される重量制限廃止等に関する請願愛知和男紹介)(第四一〇〇号)  同(田邊誠紹介)(第四一〇一号)  同(中西績介紹介)(第四一〇二号)  同(中野寛成紹介)(第四一〇三号)  同(橋本龍太郎紹介)(第四一〇四号)  留置施設法案廃案に関する請願中路雅弘紹介)(第四二三三号)  同(村上弘紹介)(第四二三四号)  道路交通法に基づく指導取り締まり等に関する請願中西績介紹介)(第四二三五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 五月十七日  留置施設法案等反対に関する陳情書(第二三九号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  地方自治地方財政警察及び消防に関する件      ────◇─────
  2. 田村良平

    田村委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田村良平

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは、委員長は、五十嵐広三君を理事に指名いたします。      ────◇─────
  4. 田村良平

    田村委員長 地方自治地方財政警察及び消防に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤万吉君。
  5. 加藤万吉

    加藤(万)委員 最初に、金大中事件に対して二、三質問をしたいと思います。  金大中氏が韓国に拉致されてから、わが国との間で一連政治決着、政治的な解決の方向を見出して対応してきたわけですが、昨年、金大中氏がアメリカに参りましてから、日本捜査に対する金大中氏側からの態度表明がなされております。この態度表明は、いわば日本が求めている真相究明、あるいはまた日本主権侵害をされた一連行動に対する解明を与えるものとして大変重要な問題ではないか、こう私は思っているわけであります。  ところが、最近の新聞報道によりますと、金大中氏がわが国に訪問をして捜査協力に当たる、日本の国を訪問してということに対する問題等を含めて一連政治決着との関連から、これは捜査に対する協力姿勢よりも、むしろそういう政治決着に対する新たな波紋ないしは捜査そのものに対する非協力的な対応ではないかという外務省あるいは政府側見解から、一連金大中氏の発言をとらえて捜査に非協力、したがって、金大中氏を呼び、また金大中氏に会ってその真相究明することに対して断念をする、このように後藤田官房長官が述べていると新聞は報道いたしております。これに伴いまして、国家公安委員長である大臣が、一昨日ですか、新聞に同様な発言を行っているわけであります。これはきわめて重要であろうと私は思うのであります。  なぜかと言えば、まさに国際的な条件から見ても、かつて西ドイツがその主権侵害に対する原状回復という問題にあれほどの政治的な努力を行ったことから考えてみても、この金大中氏の発言をもってして、日本主権侵害に対しわが国主権をしっかりと回復をする、そのきっかけをつくったのではないかとも思われますので、この際に、金大中氏がアメリカを通して日本外務省と接触した、しかもこれは捜査に対する協力姿勢ではないという断定をされた、その内容について大臣から御答弁をいただければと思います。
  6. 山本幸雄

    山本国務大臣 金大中氏の事件についての捜査については、警察としては引き続きやはり捜査をするという体制には変わりはありません。なお、いまお尋ねのアメリカとのお話は、局長から御答弁をいたします。
  7. 山田英雄

    山田(英)政府委員 申し上げるまでもないのでございますが、金大中事件捜査警視庁において特別捜査本部を設けて行っておるところでございまして、政府が行っているわけではございません。したがいまして、政府云々ということについては私ども一切承知しておらないわけでございまして、以下、捜査当局としての見解お答えしたいと思います。  御承知のように、事件発生以来、警視庁金大中逮捕監禁略取事件特別捜査本部というものを設置しまして、真相解明のために鋭意捜査をしてまいったところでございます。そこで、被害者からの事情聴取ということが現在まで行うことができなかったわけでございます。被害者からの事情聴取というのはそもそも捜査の第一歩であり、それを行うのが常道であることは言うまでもないわけであります。そこで、昨年金大中氏がアメリカに出国したということから、アメリカ同意があり、同時に金大中氏の同意があるならば事情聴取のチャンスが出たとわれわれ判断いたしまして、外務省を通じまして、その米国同意並び金大中氏の事情聴取同意というものを取りつけるように依頼したわけでございます。  その結果が、先ほど金大中氏が回答してまいったわけでございまして、ただ、そこでは三つ事柄について日本政府釈明を求める、それが事情聴取協力する前提であるという趣旨が述べられておるわけでございます。その三つ条件というのは、拉致事件日本政府安全保護を怠ったために生じた。二つ目は、日本政府真相解明を公約しながらも政治決着をつけ、自分の人権を無視した。三つ目は、一九八〇年に自分死刑判決を受けたのは政治決着違反であるにもかかわらず、日本政府韓国政府に対してこれを取り上げようとしなかったということでございます。そういうことについて釈明がなければ、日本捜査当局事情聴取に応ずるか否かの確定的な回答ができないということが述べられているわけでございます。  そういう意味で、私ども、その三つ条件というのは、言葉をかえて言うならば、事情聴取協力するための前提であろうと理解せざるを得ないわけでございます。そういたしますと、その三つ条件というのは総じて政治的な事柄でございまして、捜査機関として処理判断できる事柄ではないわけでございます。してみますれば、われわれ捜査当局としては、現段階においては事情聴取は断られたも同然と受けとめざるを得ないと考えているわけでございます。しかし、金大中氏から事情聴取ができるかどうかということは別にして、かねてから、大変時間はたっておりますが、古い資料の洗い直し、補充捜査などに取り組んでおるわけでございまして、捜査というものは継続していこうと考えているわけでございます。
  8. 加藤万吉

    加藤(万)委員 政治的な課題に対する前提を付せられたから、捜査当局としては、いまの時期に本人事情聴取をすることは残念ながら延期するか、あるいは断念せざるを得ない、こういうお答えだと思うのです。  これは五月二十日ですから、きのうですね、朝日新聞国際電話によって本人に問い合わせた結果として、新聞に報道されているわけであります。これによりますと、金大中氏は、日本政府は私が日本行きを事情聴取前提条件にしているかのように言っているが、そうではない、私が十日に米連邦捜査局を通じて出した回答ではそのようなことは前提条件にしていない、こう言っているわけですね。ということになりますと、いまおっしゃられました、いわゆる前提条件があるから捜査のための聴取を断念するということとは、大分食い違ってくるわけですね。  ですから、おっしゃられました三条件というもの、これはきょうは外務省は呼んでおりませんから、詳しくその点は私は追及いたしませんけれども、いま一遍、三条件というものを含めた、外務省米国政府との間の交換公文というのでしょうか、これを再検討される必要があるのではないか。いわば前提条件だから云々ということになってくるわけですね。あるいは国家公安委員長も、そういうことを官房長官がおっしゃっているから、捜査を預かる分野あるいは国家公安委員長としては、その面についてはおおむね断念せざるを得ないというようなことが新聞にきわめて大きな記事として扱われているわけですね。  どうでしょうか、いま一度聞きますが、この三条件に対しては、外務省と接触をし、それが確定的なものというふうに判断されていまのようなお答えになったのでしょうか。
  9. 山田英雄

    山田(英)政府委員 金大中氏が新聞記者に何を述べたかというよりは、金大中氏が公式に回答書で何を述べているかということが重要だろうと思います。その前に、いま御指摘朝日新聞によりましても、いま挙げました三つ事柄について日本政府釈明してほしいと述べた、今回事情聴取前提条件にしたのもこの三点に関する釈明であると書いてあるわけです。新聞報道によっても、それは前提条件と金氏は語ったようになっておる点を私は読み取っておるわけでございます。  それはさておき、金大中氏が国務省を通じて日本外務省にどういう回答をしたかという点については、その内容について外務当局からお話を伺いまして、その意味というものは十分に協議した結果でございます。明らかに、朝日新聞のいま私が指摘したところと同じように、日本政府がこれまでの三つ条件に対する釈明という自分要求に応じてないことにかんがみ、現時点においては確定的な回答を行えないという意思は明瞭に表示されているわけでございます。
  10. 加藤万吉

    加藤(万)委員 率直に言って、相当政治的な要素を持つ案件ですから、国民の目から見ますと、まだ何か霧に包まれた中で、しかも国家間の政治的な課題として処理するならわかるけれども、捜査として真相究明がその政治的な課題の中に巻き込まれてなくなってしまうということに対しては、やはり疑心暗鬼、疑問を持つ面が非常に強く出ると思うのですね。特に、金大中事件はいわば国際的な民主主義を擁護する全体の層からも注目されている案件だけに、わが国がどう対応するかということは、きわめて国際的なわが国権威を失する条件にもありますから、きょうは外務省を呼ばずに、呼ばずにというか、警察あるいは捜査国家公安という立場から、ぜひさらに真相究明に至る努力をしていただきたい、こう思うのです。  新聞に出てくる警備局長もあるいは国家公安委員長も、政府側のそういうものに対して常に後追いではありますけれども、否定という立場をとられております。むしろもっと積極的に捜査として前へ出て、その真相を、あるいは捜査という事件に限ってもいいですから、前へ出て国民に明らかにするという努力がなされてしかるべきではないか、こう思いますので、大臣、これによって捜査を打ち切るということがないように、いま一遍お答えをいただきたい、こう思うのです。
  11. 山本幸雄

    山本国務大臣 いまお話しのように、この三条件というのは総じて政治的な事柄であって、純粋に捜査をやっている捜査機関としては処理判断できる事柄ではない、こう判断をしたわけでございます。しかし、捜査そのものはやはり引き続き続けていくという方針には変わりありません。
  12. 加藤万吉

    加藤(万)委員 改めて申し上げるまでもありませんけれども、かつて福田総理が参議院で、もし新しい証拠があるならばこの政治決着をいま一遍見直すということまでおっしゃられておるわけですから、そういうことを踏まえて、それから出てくる真相究明のいかんによっては国際的な反応が生まれてくるし、わが国権威に関する問題でもありますから、一層の御健闘といいましょうか、あるいはこれに対する捜査強化を要望しておきたいと思います。  次に、今年度の予算が提起をされました。警察庁予算千五百六十六億二千百万円であります。この警察庁予算を見ておりまして、従来とそう変わりはないのですけれども、ここ四、五年の警察庁予算をずっと見て、一つ考えさせられることがありました。それは、一体日本警察機構というものは今後どういう形で変化していくのだろうか、同時に、それは予算の裏づけを伴ってどういう形で変化していくのだろうか、実はこう考えたわけであります。  しかも最近、広域的な事件がたくさんふえて目の前に出てきました。たとえば、過般ありました例の愛知の勝田という犯人の連続殺人事件、いわゆる広域犯罪として大変話題にもなりましたし、どこか盲点あったのではないかという指摘がされておるわけですね。そういうことを考えてみますと、一体警察機構というものは、広域的な犯罪に対して対応でき得る機構としてあるいは機能として果たす役割りを、どこを主軸としてやるべきだろうか。たとえば管区がありますし、警察庁がありますし、警察本部があるわけですが、警察本部間の連係動作によって広域犯罪というものの阻止ができるのだろうか。あるいはそうじゃなくて、管区強化をすることによって、いわゆる広域犯罪と言われるものをそこで解消することができるのだろうか。こういうふうに考えてまいりますと、一体警察庁予算というものは、どこに軸足を置いて警察関係全体の機能を充実するための予算化をすべきであろうか、こう疑問を持ったわけです。  一方、これは大臣御存じのように、わが国警察機能自治体警察から発生して今日の状況になっているわけですね。したがって、結果的には各自治体の自主的な警察機能といいましょうか、それの連続的な発展の中で管区あるいは警察庁という形態をとって各都道府県でも予算を積み上げている。こういうことを考えてみますると、一体警察庁予算というものは、確かにこの両面をとらえてつくり上げていくわけですが、かつての犯罪構造と違った構造が生まれるに従って予算重点の置き方、そういうものも変えていかなくてはならぬのじゃないか、こんな気がしてならぬのです。ちょっと質問としてはなかなかむずかしいのですけれども、一体警察庁予算というものは、警察機能全般から見てどこを軸足にしてここ四、五年立てられているのか。その辺をまずお聞きしたいと思います。
  13. 太田壽郎

    太田政府委員 最近の財政状況一般に非常に厳しい中で、ただいま御指摘のような警察に対する新しい警察活動の要請というものが次から次へと出てくるわけでございます。そういうものをどういうふうにしてこなしていくかということで、若干スクラップ・アンド・ビルドというような面もございますけれども、やはり基本は、現在の警察法基本でございます都道府県自治体警察を基盤にいたしまして、これらが十二分にそれぞれの持っている対象に対応し得る力をつけさせていくというところをまず第一の重点に置いております。  それに関連いたしまして、ただいまお話しのような広域的な犯罪情勢というものに対処するためには、管区あるいは警察庁、それから各府県の間の密接な連係というものが非常に重要になってまいりますので、その辺のところをバランスをとりながら重点を志向して予算編成を行っているということでございます。
  14. 加藤万吉

    加藤(万)委員 わかりました。大変明瞭な答えで結構です。  財政局長にちょっとお聞きしますが、従来各都道府県警察機構というものを軸足に置きながらということでありますから、都道府県では国家支弁する各車両であるとかヘリコプター、船舶も含めてですが、それのほかにパトカーであるとか警備のためのいろいろな装備を確保するわけですが、これらはいずれも地方交付税財政需要額に算入されているというように思うのですが、そうでしょうか。
  15. 石原信雄

    石原政府委員 警察費に限らず、教育関係費におきましてもあるいは社会保障関係費におきましても、地方交付税の計算におきましては、現行制度経費負担原則というものを前提にしてそれぞれ標準的な経費積算いたしております。警察費について申しますと、都道府県警察職員人件費を初めといたしまして、警察法規定により都道府県負担に属する経費について、それぞれ現在の社会経済情勢なども踏まえながら最大限の努力を重ねて積算内容の充実に努めております。  ちなみに、現在の交付税制度のもとでは、御案内のように標準税収入の八〇%を基準財政収入額に算入する、こういう制度になっておりますことと対応いたしまして、都道府県の場合で申しますと、地方団体一般財源負担の総額に対して基準財政需要額はおおむね八〇%の算入水準になっております。警察経費につきましては、市民の安全の確保という意味で非常に重要性が高い、それから経費内容も、法令の規定によりまして画一的といいましょうか、各団体で共通したものが多い、こういうようなことから、五十六年度の決算で申しますと、八六%と各経費の中では最も高い積算率になっております。  こうした中で、警察用車両についてでございますが、御案内のように警察法三十七条第六号、警察法施行令第二条第六号におきまして、警察用車両購入費国庫支弁である、こういうふうに決められておりますので、地方交付税標準経費積算においては警察用車両購入費は算入いたしておりません。
  16. 加藤万吉

    加藤(万)委員 先ほどの警察庁答弁では、できる限り都道府県警察本部機能というものを中心に置きながら、それをカバーする管区経費あるいは警察庁全体の行動経費国家支弁分野もそういう観点から、たとえばヘリコプター都道府県購入するというのは大変なことだと思うのです。何か請願も岩手県あたりで出ているようですけれども、ことしの予算でも二機購入ですね。大変なことです。都道府県ではとてもできないでしょう。したがって、そういう広域捜査に必要な条件としてあるヘリコプターであるとか通信関係を含めて、予算の非常に大きな分野では、やはり国が支弁をするという方向をとらざるを得ないと思うのです。いまお話があった車両にしてもパトカーにしても、成田の場合なんかは特別警備がありますから国で支弁していますけれども、恐らく全国的な犯罪捜査については国の方で支弁をするのだと思うのです。その先端であるパトカーにしましても白バイにいたしましても、その車両部分もできる限り私は国庫支弁を拡大してほしいと思うのです。  と申しますのは、確かに財政局長がおっしゃいましたように、都道府県には二〇%前後の都道府県が独自に使える財源の処置もありますし、単独でそれぞれ強化をしなければとても都道府県治安維持ができないという面がありますけれども、私のいる神奈川県あたりでは、同じくらいのものを都道府県購入するというような状況になってまいりますと、財政上の負担もなかなか大きくなるわけですね。恐らくはかの都道府県でもやはりそういう状況にあるのではないかというように思われますので、この際私は、都道府県における国庫支弁に当たる部分については、できる限り国家予算の面で確保するという努力を続けていただきたいと思うのです。  なぜかと申しますと、私はこれは五、六年前から言っているのですが、たとえば、警視庁が建てかえをいたしたときもそう申し上げたのですが、警視庁があれだけのりっぱなものを建てかえたときに、東京都の負担する分と国庫負担する分とが非常に区分けされていたのですね。たしか当時、たとえば渡り廊下のようなものは東京都の負担であるとか、そんな区分がされたのを、それはおかしいじゃないか、一つの建物として国が支弁すべきではないか、そういう質問をヒヤリングか何かのときにしたような記憶があるのです。  同じようにそういう中で警察庁予算を見ていきませんと、何か財政が圧迫だから警察庁予算では縮小して、それを都道府県段階で拡大をしているというのでは、一体化の予算あるいは財政の処置としては余り好ましい方向ではないのではないか。そういう意味では、常識的な予算をやはり要求されてそして予算化をする、そういう方向にぜひとも行ってほしい、こう思います。時間がありませんからそれ以上のことは述べませんけれども、ぜひそうしてほしいと思うのです。  せんだって、神奈川県のこれを扱っている県会議員に私聞きましたら、死体解剖、司法解剖とか行政解剖とかという死体解剖があるんだそうですね。あれに対する国の補助金は、補助金といいましょうか解剖費用、一体について五千円だそうですね。まあお医者さんの方で夜中に起こされて解剖するんで大変なんだということで困っている、こう言っていました。五千円か八千円ですよ。行政解剖が五千円ですか、何とか解剖というのが八千円とか、こう言っていましたけれども、いずれにしても八千円で夜中に起こされて死体解剖するんじゃ、これはたまったものではないですよね。逆に言えば、お医者さんの方ではそういうことを通して研究ができるバックペイがあるんだ、こう言っていましたが、今度は参議院の方でも献体法ができたことですから、少しそういう常識的な費用というものはやはりきちっと抱えられる、そして予算化をするということが必要ではないか、こう思いますので、警察庁予算に関連して私の希望だけ申し上げておきたい、こう思います。  次に、大阪、兵庫に起きました一連の不祥事件、遊技機賭博事件について御質問をいたしたいと思います。  本件、五十七年の十一月、そして兵庫県では五十八年、すなわち今年の二月に発生したいずれも事件でありますが、この遊技機賭博取り締まり不祥事件は、犯罪行為の広さ、それから深さ、それからいま一つは、事件が、たとえば若い警官が遊興費とかそういう観点で不祥事件を起こしたというのではなくして、きわめて熟練した警察官によって問題が発生したということ、さらに杉原前大学校長の自殺に見られるような、何かトップにも疑いがかかる、そういう条件を持った不祥事件として、日本警察機構あるいは機能そのものに突き刺さる問題ではないか。率直に言って、余りこういうことは触れたくない問題ですから、われわれとしてもそういうことがあってほしくないとは思いながら、これだけの事件が起きてまいりますと、これを本当の意味解明することによって国民警察に対する信頼を回復するということが必要ではないか、こう思うのです。  そこで、幾つか質問をいたしますが、この経過をずっと見てみますと、一つは捜査段階における問題、それから捜査が一段落をいたしまして行政上の処分があった問題、三つ目の経過としては今月の十三日、全国監察官会議が行われまして、長官の訓示によって全体を締めくくったというこの三段階に問題が分かれるのではないか、こう思うのです。そして、捜査、処分、そして監察官に対する訓示、今後の規律の回復警察としてはこれで幕引きになるんだろうと思うのです。一連のことをずっと見てまいりますと、率直に言って、少したてまえ過ぎていて、本音の部分がどうも隠されている、ないしは本音の部分に触れたくないという面もわかりますけれども、そこをもっと明らかにし、同時にそこに改善の策を求めていきませんと、今度の問題の本当の意味での解決ということにはならないのではないか、こんな気がしてならないのであります。  そこで、最初に私は、この一連の経過の中から考えられましたことは、警察官の内部の犯罪行為ですから、どうしても身内の捜査に対する甘さというものが各所に出ているのではなかろうか。新聞でも、報道関係でも指摘をしておりますけれども、たとえばこの兵庫の事件などを見ていますと、すでに地検の方から十二月十五日、当時の鈴木本部長に対して、こういう事件がどうもうわさをされている、あるいはこういう事件があるのではないかというようなことが通報されている。しかし、事件の発覚、逮捕は二月の二十五日という、その間にきわめて時間的なものを感ずる、そういうことを考えてみますと、身内の犯罪捜査ということに対して甘さが率直に言ってあったのではなかろうか。この身内の犯罪ということに対する何か指摘というものが出てきませんと、この問題の本質的な解明になってこないような気がするのですが、まず捜査段階における一つの問題点としてこの辺をどう見ておられたのか、あるいはどうこれから解決しようとされているのか、お聞きしたいと思うのです。
  17. 山本幸雄

    山本国務大臣 関西方面における不祥事件が続発をいたしまして、私は、警察としては大変に、国民の信頼をつなぐ上においてまことに遺憾な事件であり、警察としては反省を要する事件であったと思っております。  そこで、いまお話しのように、この事件はおおむね保安警察を担当している者の中から出ておる、そういう特殊性があります。したがって、特に保安警察のあり方あるいは保安警察に携わる警察官の交代とか、そういったものもやはり考え合わせ、同時に、職場における職場倫理というものを高揚していく。しかし、全体として警察官は大変まじめに職務に当たっているのが大多数でありまして、それがゆえにこそ私は日本の治安は非常にすぐれている、こう思うのです。  ただ、先ほどの話の中で杉原本部長の話が出ましたが、これは私は、故人の名誉にかけて、彼は純粋に仕事に精進をしたと考えておりまして、私は、その点は私の気持ちだけ申し上げておきたいと思います。
  18. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 大阪府警と兵庫県警の捜査状況でございますが、いまお話がございましたような、身内に甘いというような批判につきましては、これは両方の府警、県警ともに、自分の身内の不正は自分で正していく、こういった気持ちで厳正な捜査を行ったと私ども信じております。  それと、検察庁との関係でございますが、容疑情報を入手いたしましたのは両方ともでございます。そこで検察庁の方と協議をいたしまして、いま申し上げましたような、身内の不正は自浄能力として、警察国民の信頼を回復するためにも自分で正していく、こういうことで検察庁と協議の上、警察捜査を行うということで合意したわけでございます。
  19. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣おっしゃいましたように、杉原前本部長、そんなことはないと私も思います。ただ私は、前本部長が自殺をされたということは、やはり私は身内性から出ているのではないかというような気がしてならないのです。率直に言って、私たち通俗な言葉で言えば、おれがとにかく責任とるからこの事件はひとつという、そういう日本人的責任感といいましょうか、実はそういうものが近代警察というものを否定するものにつながっているような気がしてならないのです。もう少し科学的な機能とかいろいろな捜査の方法というものはあるのでしょうが、何か、言葉としては余りいい言葉じゃございませんけれども、切腹論をもって事件の始末をつける、そういう発想というものがどこかひそんでいるような気がして実はならない。亡くなられた方に対しては本当に何とも言いようがないわけですけれども、しかし、そういうことが常に行われてくるような状況がもし重なってまいりますと、近代警察としての機能がいつもそこで覆われてしまって、そこから次への脱皮ができないような気がするのです。そういう意味で私は申し上げたので、そこにまで犯罪が及んだという意味ではございませんので、御理解いただきたいと思うのです。  それから、いま身内に甘いという話をちょっと申し上げまして、検察庁も警察の本部の方も、捜査の時期は大体同じようにわかっていたので一応警察の方に任せていただく、当然のことですね、身内のことですから。ただ、どうなんでしょうね。今度の事件は、大阪の場合に私は処分された人の各署を調べてみましたら、大阪府警にどのくらい署があるかわかりませんけれども、その犯罪に関係した警察官が所属する署が十幾つに及ぶのですね。こうなりますと、大阪の警察機能の相当の部分までこの犯罪行為に巻き込まれていたという、一つの単独の署がある特定の警官によってというのではなくて、まさに組織的な犯罪行為のような気がしてならない。ところが、今度は事尼崎に入りますと、御案内のように事件が起きたのは中央署と北署だけですね。私は、逆に言えば、大阪にそれほど広範な事件が起きているにもかかわらず、兵庫ではなぜ尼崎の北署、中央署に限られたのかという疑問を持つのです。  この広範な広がりを持った最大の原因と、兵庫における問題との関連性というのはないかどうか、お聞きしたい。
  20. 太田壽郎

    太田政府委員 ただいまお話しございました大阪府警におきます不祥事案でございますが、あるいは御案内かと存じますが、昨年の三月に退職をいたしました元巡査部長野仲篁という者がおりますが、これが府下八尾警察署保安係として在勤をいたしておりました昭和五十三年ごろから、女性関係の乱れとともに酒色におぼれまして、対象業者とのつき合いが高じた結果、次第に不祥事案に手を染めて、かつて自分が八尾警察署に勤務していた当時の者、あるいはかねてからつき合いがあり、しかも株の取引とかで大きな損失を出したり、また女性関係が乱れている、私生活に問題のあった警察関係者を次々と業者に紹介して、いわゆる黒い交際に引き込んでいったという状況が認められるわけでございます。  このように今回の事案は、非常に多数の警察職員が関連しているように見受けられるわけでございますけれども、その実態をしさいに検討いたしますと、ただいま申し上げました野仲を中心といたしまして、かつて八尾警察署に勤務し、その後人事異動等により府下各署に転勤になった知り合い等を巻き込んでいったというところが認められるわけでございます。その辺が、ただいま御指摘の兵庫県の場合には、それほど大きな人事異動というようなものもなくて、二署に限定された。大阪の場合には十数署にまたがったということでございまして、実態的には両者の間に大きな差異はなかったのではないかというのが私どもの見方でございます。
  21. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いま一点聞きますけれども、野仲という、これは元港署の巡査部長ですか、それの誘惑に伴って、他は清田が連動して動き、各署の仲間に問題が波及していった。各署でその誘惑に乗らざるを得ない条件というのは何があったんでしょうか。各署の警察官がその誘惑に単に乗るというだけではどうも説明が納得いかないのですね。何か底辺にその誘惑に乗らざるを得ない、あるいは乗っていこう、あるいは何となしに乗ってしまったという統一的なものがあったような気がするんですが、いかがでしょうか。
  22. 太田壽郎

    太田政府委員 ただいま申し上げましたように、いわゆる不良的な警察官といいますか、いろいろ問題点を抱えている警察官、そういう同僚や知り合いの者の弱点というか、そういうところに目をつけて、たまたまその者がそういう保安関係の仕事をやっているというところに目をつけまして、引きずり込んでいったということが見受けられるわけでございます。
  23. 加藤万吉

    加藤(万)委員 これほどまでに広がる前には、恐らく業界側からの密告もあったというような話もその後新聞にも出ておりますし、あるいはお互いの隠し合いということがなければ、もっと事件を小さい段階で始末ができたんではないか。したがって、私は、先ほども申し上げましたように、身内の犯罪というものに対するチェック機能というものがいま少しありませんと、あるいはそういう新しい指導方向というものがありませんと、再びこんな広範な部分にまでわたる犯罪行為、不祥事件を起こしてしまう。ここは訓示その他に出ておりませんから、ぜひひとつ考えていただきたいと思うのです。  次に、兵庫の場合の特徴事件は、例のにせ調書ですね。にせ調書によっていま公判を開かれている人もあるそうですけれども、このにせ調書をずっと追及してまいりますと、最初にやはりおとり捜査の面が出てくるのですね。あそこのピンク喫茶で何をやっている、どこどこで何をやっている、売春行為がある、そういうおとり捜査といいましょうか、あるいは業者側からの通報をもらい受けながらだんだんその交わりが濃くなってきて、結果として、今度は賭博機械に対する情報の提供というような形になってきているんですね。しかも、そのおとり捜査の段階で起きた一番大事な問題は調書ですね。全く架空な人あるいは全く架空な住居によって調書がつくられ、それによって起訴され、ないしは公判に持ち込まれたという事件がある。私は、どうなんでしょうか、保安係長が部下と共同で調書をつくっていくんですが、その調書をつくられたものをいま一遍どっかでチェックするという機能というものはなかったものでしょうか、まず聞きたいと思う。
  24. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 今回、兵庫県警におきまして、全く架空の事実をでっち上げたわけではございませんけれども、参考人の供述調書作成に当たって、供述人の氏名、住所、職業等偽りの事実を書き、調書を偽造したという事案が発生をいたしましたことにつきましては、私どもまことに遺憾に思っている次第でございます。  いま御指摘の中でおとり捜査ということでございますが、私どもの理解といたしましては、おとり捜査と言われておるものは、犯意のない者に犯意を生じさせるということをおとり捜査であるというふうに、これは最高裁の判例でもそのように言われておりますが、私ども理解しております。そういった意味では、単に犯罪に関する事実を確認をするために協力を求めるという方法、捜査手法はおとり捜査には当たらないと考えておりますし、今回の事件はそういった意味でおとり捜査というふうには理解をしておりませんので、御了解をいただきたいと思います。  もちろん、こういうような重大な調書を偽造するという事件が発生をしたということについては、まことに私どもショックであるわけでありますが、何かチェック機能はなかったのかということについての反省といいますか教訓といたしまして、今回の事案の一つの原因は、やはり尼崎中央警察署の保安係長でありました松葉警部補が中心となって敢行した事件でありますが、この松葉警部補が本部からも注目をされておる保安捜査の経験が豊富な、いわばベテラン捜査官であったということから、松葉に仕事を任せ切りにしていたということがうかがわれるわけでありまして、これが幹部によるチェックが甘かったということの大きな原因であります。  松葉の上には課長もおりますし、その上には次長、署長もおるわけでありますから、チェックをすることは十分心すればできたわけでありますが、しかし、余りにも彼が長年こういった風紀関係の捜査に従事をしておったというようなことから、表面的な実績が上がっておる、彼に任しておけば大丈夫だというような安易さも、幹部の側にもあったかとも思います。チェックをする仕組みが現実に機能しておらなかったということを十分反省をしておるわけでございまして、もちろん個人の資質の問題もございますが、私ども、今回の事件を通じて、幹部による事件捜査の指揮の掌握、あるいは捜査に際してのチェックの徹底ということをさらに図ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  25. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いま一遍この問題で聞きますが、これを扱っている担当検事さんが、もしこれが間違って偽名あるいは住所等があれば、いま公判中の事件そのものを見直さなければならない、こういう発言をその後されておりますが、捜査当局としてはそれに対する協力を当然されていると思いますけれども、経過をお聞かせいただきたいと思うのです。  時間がありませんから、ついでにあと引き続いて質問していきます。  たくさんこういう問題があるのですが、いま一つ重要な問題で、やはりベテラン警官がこういう事件に巻き込まれていった、ないしは事件を起こしたということ、警察官自身の身分あるいは将来性という問題について、率直に言って、警察機構として何か保障を与える条件というものが整備されていないのじゃないかという気が実はするのです。というのは、先ほども何回も言うようですが、若い人が偶発的にお金欲しさに業者と癒着をしたというだけなら、これはもう、それはそうか、女に遊んだ、株につぎ込んだ、競輪で損した、そんなところで済むのですが、ベテランの警察官が、しかもこの時期、もうすでに定年間近の時期にこれだけのことをしてしまって、いま言ったような事件として出てきたわけですから、出てきた場合には当然解雇になりますし、犯罪行為としてやられるということを承知をしながら、なおそこに足を踏み込まざるを得ない、悪徳警官というのでは済まされない、すなわちその警官自身にとってみれば、将来の身分なり、将来自分の定年後における生活、そういうものに対してどこか依拠するところを求めなければいかぬ、それが遊技組合との関係でつながっていく、あるいはほかの面でつながっていく、もしもそういう基礎的なものがあるとするならば、私は、今後警察官の身分と将来性というものについて、人事面としてどうするかということをいま一遍考えなくちゃいかぬのじゃないか、こう思うのです。  私は、これは非常に重要な問題だろうと思うんですね。警察庁にお聞きをしまして、過去三年間、警視庁、大阪、福岡の三都道府県警察別の警視正以上の方の退職後の再就職状況を私、手元に資料としていただきました。高級の警察官ならばそこに就職も可能でしょうけれども、いわゆる現場で働いている警察官には、昇進をする制度というものに対しても、なかなか学力など養う条件もない。したがって、昇進の条件も遠のいていく。それから一方では、当然なことですが、崇高な精神力や旺勢な戦闘力というものを要請される、あるいはそれに対する規律を求められる。そういうジレンマの中に存在する警察官というものが、どこに将来の自分というものを見詰めていくのか。私は、精神論だけでは割り切れないものが出てきているのではないか、そこを何らかの形で吸収をしていきませんと、こういう事件の再発ということは防止ができないのじゃないか、こんな気がするのです。  これは非常に重要なことでございますので、官房長にお聞きをしたいと思うのです。前段のところはいま一遍答弁してください。
  26. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 前段のお尋ねの件についてお答えを申し上げますが、兵庫県警の報告によりますと、全県下にわたりまして洗い直しを行いまして、その結果尼崎中央関係で九事件にかかわります参考人供述調書四十五通、それから、尼崎北警察署関係では三事件にかかわります六通の参考人供述調書が偽造調書であるということが判明をいたしました。これらの五十一通について虚偽有印公文書作成及び同行使の罪で四月十四日に神戸地検に送致をした、こういう報告を伺っております。
  27. 太田壽郎

    太田政府委員 ただいま御指摘がございました後段の問題でございますが、警察官の仕事というのは肉体的にも精神的にも非常に厳しいものがございます。警察庁、それから都道府県警察におきましては、こういう職員の待遇の問題あるいは勤務条件の改善の問題ということで、これまでも力を入れてやってきておりますが、特にベテランの警察官の処遇ということにつきましては、豊富な実務経験を生かして意欲的に仕事に取り組んでいくようないろいろな仕組みも工夫しているところでございます。ただいま御指摘もございましたたとえば昇任試験の問題なんかをとりましても、本人の勤務成績とかあるいは実務経験というものを十分生かしました別建ての試験をやっているというようなことも現実には行われているわけでございます。  それから、職員の再就職の問題でございますが、これはもう安んじて職務に精励するための大きな条件でございます。そこで、各警察本部の警務課とかあるいは職員相談室というようなところを窓口にいたしまして、退職後の生活設計について種々の助言とか指導、これを行っております。最近は退職する警察官の数も非常にふえる時期に当たっておりますので、この辺の問題については、各府県警察におきまして従来以上に力を入れて取り組んでいるところでございます。  それから、この一連の不祥事案に関連いたしまして、ことしの一月二十四日に警察庁の次長通達を発出いたしましたが、この中で一つの大きな柱といたしまして、「人事管理の徹底」という項目を挙げてございますが、それの四番目といたしまして、「再就職相談の充実」ということを特に挙げまして、従来にも増してこの面について各都道府県警察がそれぞれの実情に応じたできる限りの積極的な手を打つようにという指導をいたしているところでございます。
  28. 加藤万吉

    加藤(万)委員 時間がありませんからこれ以上しませんが、やはり一つは警察官のモラル、モラルをつくり上げるための教養、今度の警察庁予算でも教養の部分予算がとってはありますけれども、これを常日ごろどう積み上げていくかということが必要だろうと思うのです。  それからいま一つ、私は、人間の社会ですから、人間の社会の中に存在する警察官であるということを前提に置いてあらゆることをされた方がいいと思うのです。私、退職後の警察官の方に各所でお会いします。民間の企業に来られて、たとえば普通の会社といいましょうか、来られた場合に、なかなかなじめないというのですね。警察官から民間の普通の会社ですよ。たとえば自動車教習所だとかあるいは警察に比較的関連のある企業ですとなじめるのですけれども、全く警察とは関係のない普通の民間の企業に行くとなじめないというのです。使う方も、何となしに一つの型ができ上がっちゃった人間でと言うのですね。  警察官というものも決して人間以外のものではない、人間なんですから。その中から起こる不祥事件なんです。したがって、おっしゃいましたように、確かに部分でできたことが、全体の警察官ではありませんよ、それはわかります。しかし、部分で起きてくることが実は一番底辺にある問題だとするならば、その部分にあるものにメスを差し込んで解決しなければならぬのじゃないでしょうか。私は、まずモラルの問題、教養の問題、それから、いま警察庁が言っている規律とは一体何か、この人たちにとってみれば規律という問題がきわめてそらごとのように聞こえていたのではないでしょうか。  今度三井長官が監察官会議で訓示を言われておりますけれども、この訓示の内容をずっと私、読ましていただきまして、そうあるべきだということはわかるのです。あるべきだということと、それが実際にいまの警察機構の中で機能するということとは違いますから、先ほどにせ調書事件のことが、ベテランの保安係長がいたから任せたというけれども、ベテランの警察官でもそういうことを犯すことがあり得るわけです。そうすれば一体、この密室の中で保安係長以下五人の部下と一緒に取り調べないしは調書をつくってきた、そこにいま一段階のメスを入れるという機能が存在した場合に、松葉という人がそういう犯罪行為にいったのだろうか。  私は、そういういわゆるたてまえ論を備えながら、そのたてまえを実際の舞台に移して、機能に移してみて、もう一遍この事件を契機にチェックしてもらいたい。そしてそのチェックした結果として、みずからを責めるような条件が起きるかもわかりませんね。しかし、それが結果的には国民の信頼を回復すると思うのです。警察は常に正しいものだというのが国民の目なんですから、警察が間違ったことをしているということがあったのでは、世の中の規律というものはどうにもなりません。社会秩序はどうにもならない。警察は間違ったことをしていないのだ、だからある意味では尊敬を受け、ある意味では犯罪者にとっては恐怖を感ずるわけですから、ぜひ三井長官のおっしゃられた訓示を今度は具体的にそれぞれの署、人に当てはめて実体化してほしい、たてまえを本音に直してほしい、こう思うのです。  最後に大臣、この問題、そういう覚悟で対応でき得るように指導していただきたいと思いますが、ひとつ御見解をお伺いしたいと思います。
  29. 山本幸雄

    山本国務大臣 警察というところは、私はやはり一つの権力作用の職場だと思うので、それだけに規律ということはきわめて大切なことだ、そういう一つの職場の中で、こういうことは絶対できないことだという厳しい規律をどうしてもつくり上げていかなければならないと思うのです。同時に、これはなかなか体力の要る職場ですから、私は、そういうことに耐えていくということは、なかなか人間としても容易なことではないと思うのです。  それで、いまおっしゃるように一つの型にはまった人間ができてしまうということをおっしゃいましたが、確かに私はそういうところは気になるところなんです。つまり、いわゆるしゃばと全く離れてしまった世界になってはいけないのであって、警察官はりっぱな警察官である前にりっぱな人間でなければならないというのは警察教養の基本でございまして、先ほど再就職の話なんかも出ましたが、これも非常に大事なことなんですが、残念ながら、再就職というのは非常に厳しい状態にある。これは現場で、第一線で働いてくれている警察官ばかりではなくて、中央でもそういう道はなかなか厳しい状態にありまして、こうした警察官の再就職という問題は非常に頭を悩ます問題でございますが、先ほど来大変いい御提言をいただきましたので、私ども先ほど来のお話をしかと受けとめまして今後の目標にしていきたい、こう思っております。
  30. 加藤万吉

    加藤(万)委員 終わります。
  31. 田村良平

  32. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 最初に、KGBの元工作員のレフチェンコの証言に関する警察庁一連調査の進行状況、経過あるいは見通し等についてお知らせをいただきたい。
  33. 山田英雄

    山田(英)政府委員 レフチェンコ氏は、昭和五十年の二月から五十四年の十月にかけて、新時代社の東京局長ということで在日しておったわけでございます。警察といたしましては、彼の在日中の行動から政治工作担当のKGB機関員の容疑ありということで視察しておりました。しかし、在日中違法行為にわたる事案を把握するには至ってなかったわけでございますが、五十四年十月に亡命して以降、昨年七月にアメリカの下院の情報特別委員会で証言を行った、その証言内容が十二月初旬に発表されたわけでございます。  そこで、その中でわれわれが承知しておらないような事柄もいろいろ入っておりましたし、そうした証言内容にあらわれた事実が違法行為に当たるかどうか、これがわれわれの関心事でございましたが、さらに証言の内容の詳細を直接聴取する必要があると考えておりました。外務省においても、日本の国益上その証言の詳細を知る必要がありとして、国務省に対してその情報の入手を要請しておったわけでございますが、三月上旬には、外交ルートを通じては伝達できないという回答外務省は受けたようでございます。  したがいまして、私どもとしては、ただいま申し上げた捜査課題に取り組むために、係官を三月下旬に直接米国に出張させまして、レフチェンコ氏と接触させて証言の具体的内容について聴取してまいったわけでございます。ただいまその聴取内容につきまして所要の調査をしておりますが、いましばらく時間がかかりますので確定的なことを申し上げるのはお許しいただきたいのでございますが、少なくとも彼が行っておったいわゆるアクティブメジャーズというものについての証言内容については裏づけもありますし、信憑性は高いものというふうに判断しております。
  34. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ちょっといまの経過の中でもう一度確認をしておきたいと思いますが、捜査当局は、レフチェンコが日本に来てその当初から、したがって亡命するまでおよそ四年ぐらいですか、この間については、当初来彼の行動に非常な疑いを持って、それを逐一監視をしていたということだというふうなお話でありますが、そういうことですね。
  35. 山田英雄

    山田(英)政府委員 ソ連のKGBの活動について申し上げますと、やはり外交官とか新聞記者の身分でそうした機関員が参りまして、各種の諜報活動あるいは政治工作活動をしておることは事実でございます。  諜報活動に例をとりますれば、警察が視察し、内偵し、検挙に至ったケースというのは数多くございます。ちなみに申し上げれば、昭和四十六年の七月二十一日には、コノノフ事件といいまして、ソ連の武官補佐官のコノノフという者が米軍のミサイルレーダー装置の秘密を探査しようということで、これは刑事特別法違反で日本人側を検挙しておりますが、そういう諜報活動があったわけでございます。それから、昭和五十一年の五月十二日には、ノーボスチ特派員のマチューヒンがミッドウェーの電子対抗装置について情報収集をしておったということで、同じく刑事特別法違反で検挙をしております。それから、最近では昭和五十五年の一月十八日、コズロフ事件と申しまして、武官の肩書きを持つコズロフが自衛隊の元幹部を通じて自衛隊の軍事情報を収集しておった、自衛隊法違反で検挙しております。かようにスパイ事件ということで明らかになった、検挙したケースもございます。  そういうことからうかがい知れますように、外交官、武官あるいは新聞特派員の肩書きで在日しておりながら、そうした諜報活動をやる、これは政治工作活動についても同様でございます。そういうことについての違法行為はわが国の国益上看過し得ないという立場から、容疑性のあるものについては視察しているところでございます。
  36. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうしますと、いま幾つか例がございましたように、やはり違法性のあるものについては検挙する、当然そういうことがあるわけですね。四年間彼の行動を逐一監視をしながら、検挙等に至らなかった。ことに彼の場合は外交特権を持っていないわけですね。そうしますと、その四年間というものは捜査当局でずっと目を離さず見ていたが、つまり見ている範囲において捜査の端緒に至るような問題はなかった、そういうことですか。
  37. 山田英雄

    山田(英)政府委員 結論においてただいまお尋ねのあったことになろうかと思います。  そこで、レフチェンコ証言の場合、金銭の授受ということが出てまいります。これは公然と渡すかどうかという問題もございます。われわれ、レフチェンコの行動を四六時中見ていたわけではございません。仮にソ連人から金銭の授受があるということを認めた場合においては、それは日本の国の法令による違反ということもあり得るかと思いますが、そういう現場を把握しておらなかったということは言えるわけでございます。しかし、彼が証言ではそういう事実があったということを証言しておる、その点についても調査をしておるということでございます。
  38. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 さっき幾つかの例があったように、犯罪に類する問題が生じた場合には、それぞれ、本人もそうでありましょうし、関係者の検挙等も当然考えられるわけでありますが、そういうことはなかったようであります。  まさか、おとり捜査だとか二重スパイだとか、そんなことはないんでしょうね。
  39. 山田英雄

    山田(英)政府委員 そういうことは全くございません。
  40. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 四年間監視をしていたが、捜査の端緒になるようなことはなかった、こういうことのようであります。  そこで、例の外務省職員であろうと言われたコードネーム・ナザールですか、それから公安関係者と言われていたシュバイクですか、これにつきましては言われているような機密漏れ等があったのかどうか、あるいはそのシュバイクにつきましては、報道によると複合人間であったようだとか、そういうことも言われているようでありますが、この辺はいかがですか。
  41. 山田英雄

    山田(英)政府委員 その二つのケースについても、事柄の重大性にかんがみ慎重に調査を進めております。確定的なことは、先ほど申し上げましたように、いまの機会に申し上げられないわけでございますが、ナザールについては彼自身が手がけたケースではない。特定する材料というのがただいまの判断では結果的に乏しいわけでして、これは重大な関心を持って今後とも調査してまいりたいと思っております。  シュバイクと言われたケースは、アレスという新聞記者の情報源がどこであるか、取材先がどこであるかという問題になるわけでございまして、この点についてもいま調査しておるところでございます。
  42. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いろいろな証言の内容であるとかあるいは御調査の結果からいって、いわゆるレフチェンコの行動というのは機密情報を集めて収集する一つのスパイ活動、こういうものであったのか、あるいは報道等あるいは証言の状況なんかも見て、たとえば日中を離反させるとかさまざまなそういう世論操作といいますか、ムードづくりのPRといいますか、こういうところにその活動の主たるものがあったのか、その辺はどうですか。
  43. 山田英雄

    山田(英)政府委員 彼自身の証言によりますと、彼はソ連大使館内における政治工作担当の副班長であったということを証言しております。活動の主たる内容は、そういう意味において政治工作、働きかけの方であったとわれわれも判断しております。
  44. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 おおむねこの調査のまとめを発表するのは、およそいつごろになりますか。
  45. 山田英雄

    山田(英)政府委員 できるだけ早く取りまとめたいと思っております。私のいまの調査のテンポの見込みからしまして、できれば数日中にでも取りまとめたいと思っています。
  46. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 一部に、この事件が出たからというのではないが、しかし、それを一つのばねといいますかきっかけにして、スパイ防止法的なものの制定などについていろいろ言われている向きもあるようでありますが、そんな民主主義基本を侵すような考え方というものが、戦前の亡霊みたいなものがあらわれるべくもないというふうには思いますが、念のためにこの際、大臣見解をいただきたいと思います。
  47. 山本幸雄

    山本国務大臣 いまのお話のように、レフチェンコ氏の活動というのはやはり政治的工作をするという点に重点があって、いわゆるスパイ活動というものとは少し質の違ったものであったといういまの話なんで、いま私は直ちにスパイ防止法をつくらなければならないとまでは思っておりませんが、ただ、いまのお話のように何か亡霊のごときものとか幽霊のごときものとまでも思っていないのでございまして、しかし、いまは現行法の運用によって現在のそうした事態には対処していけるであろう、こう思っております。
  48. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 つまり、そういうようなものは必要はない、現行の法体系で可能だ、こういうことですね。
  49. 山本幸雄

    山本国務大臣 将来のことはいざ知らず、現在のところは、いま直ちにそういうものをぜひつくらなければならないとまでは思っていないということであります。
  50. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そんなものが出るような世の中になりましては大変でございますから、将来ともそういうことのないように、お互いに民主的な今日の社会を守っていけるように御要望申し上げたいと思います。  昭和四十六年に、土田警視庁警務部長、当時でありますが、そのお宅で小包が爆発して夫人が死亡なされました。いわゆる土田邸爆破事件を初め、四十六年の日石地下郵便局爆破事件、四十四年のピース缶爆弾事件、これらで爆発物取締罰則違反、殺人、同未遂などの罪に問われておりました増淵被告らいわゆる統一公判組九被告にかかわる判決公判が、きのう東京地裁刑事九部で開かれました。大久保裁判長は、一連の爆弾事件すべてについて被告全員に無罪を言い渡したようであります。判決は、一部被告について犯人であるとの疑いが残るとしながらも、唯一の証拠と言える自白調書を、矛盾が多く誘導の跡があり、信用できないと証拠価値を否定して、犯罪の証明がないとして無罪判断を示したものであります。  これはもう捜査当局にとりまして、今年三月に五被告の無罪が確定した警視総監公舎爆破未遂事件に続く大変な黒星ということになるのではないかと思います。これで、四十四年から四十六年にかけまして多発した爆弾事件につきましては、ほとんどが無罪となるというような経過になっているわけであります。しかもこの事件は、警察幹部をねらって犠牲者を出した爆弾テロ事件であって、まさに警視庁が威信をかけて捜査をいたしました。検察もまたそれを受けて、死刑を初めとする重刑をそれぞれ求刑をしていたものだけに、社会に対するショックというものははかり知れないものがあるのではないかというふうに思うのであります。  この判決文は、最後のところで捜査方法について強く反省を求める感想を付しているようであります。「当初から増淵を土田邸事件の犯人と断定し、自白をせよと強く迫った。日石、土田邸事件が極めて凶悪な犯罪捜査当局が一日も早い犯人の検挙、事件究明を目ざしていたことは十分に理解できる。しかし、捜査の過程を振り返ってみると、物証の検討など、慎重な配慮の下に捜査していたならば、あるいは事件真相解明することができたのではないかと思われる」。非常に深刻な発言であろうというふうに思うのでありますが、この際、このような結果になりましたことにつきまして所感をいただきたいと思います。
  51. 山田英雄

    山田(英)政府委員 まず、ほとんどの事件が無罪になったというお話でございますが、そこは大変な誤解があると思いますので、四十六年当時の連続した爆弾事件の背景というものからお答えいたしたいと思います。  四十六年だけをとってみましても、クリスマスツリー爆弾という新宿の追分派出所に爆弾を仕掛けた、そういう悪質残忍な爆弾事件が多発をして、多くの死傷者が出たことは御承知のとおりでして、この年だけで六十二件発生しております。当時、警察としては、これは市民の不安感も高まっておりますし、この爆弾事件の続発を断ち切らなければならぬ、そういうことで懸命な捜査を行いまして、三十四件に及ぶ爆弾事件を検挙しまして、ただいままでに二十八件有罪判決が出ておるわけでございます。無罪判決というものは、いま御指摘のごく幾つかのものに限られているということをまず御承知おきいただきたいと思うのです。  その爆弾事件といいますのは、これは私が申し上げるまでもなく、少数のグループが秘密のうちに周到な準備を行う、加えて、発生した跡は粉々になって証拠の収集が困難になる、物証に乏しい、被疑者を検挙しましても黙秘するということで、自白偏重ではなくて、元来自白がなければなかなか有罪をかちとりにくい、むずかしい課題捜査であります。諸外国では、ほとんど爆弾事件を事後において検挙するという例はない。その中において懸命の努力を重ねて、三十四件中二十八件のむずかしい証拠主義に基づく裁判官の有罪判決をかち得ているということを御理解いただきたいと思うのです。  いま御指摘のいろいろな無罪判決、すでに検察が控訴を断念して確定したものもございます。昨日の判決については、控訴については今後の問題であろうかと思います。捜査官が大変血のにじむような努力をして、長期間大変な苦労を重ねて捜査して送検、起訴し、検察官も有罪としての求刑を行ったケースでございます。私は、昨日の事件につきましても、裁判官の御指摘はただいま述べられましたようにあるわけですが、警察としては自信を持って捜査に当たってきている。大筋において誤りはなかったと思います。検察とも十分な協議を遂げて極刑を求刑するという公訴審理の過程を経てきているわけでございます。  そこで、問題は、ピース缶爆弾につきましては、すでに同一証拠に基づいて、石井ひろみ被告と内藤貴夫被告について、石井ひろみ被告については昭和四十九年四月三日、懲役三年執行猶予四年、内藤被告については最高裁まで争いましたが、五十三年十二月十二日に懲役三年六カ月の判決が出て、内藤被告についてはすでに刑の執行を受けておるわけです。同一証拠に基づいて、このように裁判官の心証が分かれているケースでございます。  したがいまして、昨日の無罪判決につきましては、内容が、犯人であるとの疑いは強く残るものの、これに断ずるまでに至らずという理由でございます。そういう意味で、控訴ということについては検察庁の所管でございますが、われわれとしては上級審の判断を仰ぎたい、かように思っております。治安の責めに任ずる警察としては、懸命の捜査を続けて送検、起訴に至った事件でございます。さらに上級審の判断を仰ぎたいという気持ちでございます。
  52. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大変な御苦労をお続けいただいていることは、十分敬意を表したいというふうに思うところであります。しかし、どうも僕は、いまのお話なんかを聞きましても、爆弾事件捜査の困難性というものは、これはもうわが国だけでない、国際的にも大変にむずかしい状況であるということもよくわかるのでありますが、しかし、そうだからといって、余りに自白にのみ偏重するという捜査方法というものを、どうもいまのお答えでは少しも御反省がないような感じがするのですね。いままで一生懸命みんなで努力してきたのだから、そういう気持ちもわからぬものではないというふうには思いますけれども、しかし、ここはやはり僕は謙虚に一つの反省を持つべき折ではないかというふうに実は感ずるのであります。  今回の場合も自白調書だけがほとんど検察主張の支えということになっていたようで、中村被告のアリバイが成立するや、たちまち自白による組み立ての全体の構図というものが崩れたというふうに感ぜられるわけであります。結局、検察側にしてみると、そういうほころびをつくろうことに追われるというようなことになったとも伝えられているわけでありますが、そういう中で連日深夜に及ぶ自白の強要、誘導が行われたのではないかというようなことがかなり伝えられているわけであります。しかもそれがアリバイが出ますと、今度はそういう自白について実はうそを申していましたというような、二度三度と調書がつくり直されたというようなことも報ぜられているわけであります。  いまお話がございましたけれども、もしこういうような経過があるとすれば、僕は国民にとりましてはやはり恐ろしいことだと思うのです。ゆうべの夕刊あるいはけさの朝刊等を見て、国民はやはり相当な衝撃を受けているに違いない。捜査に非常に熱心に一生懸命なされる、ことにこういう特殊な凶悪な事件でありますから、懸命な努力をなされるということはよくわかりますし、そのことは結構なのでありますが、しかし、そうとはいえ、捜査には捜査のルールというものがあるものだろうというふうに思うのでありますが、どうもわれわれが伝え聞いているところによりますと、これは一体こういうことでいいのか、いまの裁判を受けての捜査に当たった側としてのお話としては、少しく反省に欠けるところがあるのではないかなという感じもするのでありますが、いかがですか。
  53. 山田英雄

    山田(英)政府委員 ただいま第一審の判決が出たという段階でございますので、われわれの立場としては上級審の判断を仰ぎたいということを申し上げたわけでございます。  そこで、自白偏重ではないかというお話がございましたが、爆弾事件の特質からして、もちろん物的証拠は皆無ではありません。皆無ではありませんが、自白によって起訴するということは、事件の性格上やむを得ないわけでして、偏重ではなくて、自白を得なければ起訴できないという事件の特質があろうかと思います。その場合に、いま御指摘の利害誘導があった、長時間取り調べた、だから違法だという判断を下した裁判官もございます。昨日の裁判官も、そういうことで調書の証拠能力を却下、認めてこなかったわけでございます。しかし同時に、同じ無罪判決でありますが、土田邸の分離公判の松本被告、三月の東京地裁の判決の内容では、その同じ調書の証拠能力は認めておるわけです。信用性の問題で無罪にはなりましたが、長時間の取り調べ、あるいは今度の裁判官が利害誘導と指摘している点は、任意性ありということで証拠能力を認めておるわけです。したがいまして、個々の裁判官によって判断が異なっておる。なればこそ、われわれは上級審の判断を求めたいという気持ちでいっぱいであるわけなのでございます。
  54. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 お気持ちはわかりますが、自白だけでは支えていけぬということが、今度の判決でずいぶん明らかになったことでないかと思うのであります。やはりそれはこの特殊な爆弾事件というような性格からして、確信犯による計画的な犯行で、物証はほとんど残らぬということでありますから、非常に困難なことであるに違いないというふうに思うのでありますが、それだけに自白だけではなくて、やはり最善の証拠の収集であるとか、そういうさまざまな研究等御努力なさっているとは思いますけれども、やはり犯罪証明が可能なような方策を最大限に考えていかなければ、これからやはりこういう凶悪な犯罪だってこれはもう出てこないことはないわけでありますから、やはりこれからのこの種の事件の再発防止のためにがんばってもらわなければいかぬわけですから、そういう意味では、重ねて恐縮ですが、僕はやはりここで一つの警察側の決意といいますか、そういうものも一つ欲しいなという気がします。
  55. 山田英雄

    山田(英)政府委員 もちろん私ども、自白のみに頼るということは考えておりません。その事件事件において全力を尽くして証拠を収集するわけでございまして、たとえば先ほど死刑判決が出ました北海道庁爆破事件につきましては、逆に自白は得られてなかったわけでございます。情況証拠のみで裁判官が、細いガラスの糸のようなものも集まれば太い鎖になるということで、死刑判決を出したというケースもございます。その場合には、われわれは細い一本一本の情況証拠を固めていって有罪をかち得ておるわけでございます。  今回の事件についても、自白が得られたからいいということではございません。判決の隅に隠されてはおりますが、われわれなりに物証を求めて固めてもおりますし、利害誘導をした、長時間調べたということが大きく伝えられておりますけれども、それについても適正な取り調べをするように配慮しているところでございまして、その任意性は別の裁判官では認められておるということを重ねて申し上げたいわけでございます。  十分に適正な捜査運営をすることは、爆弾事件捜査に限らず、平生から第一線の指導に当たっておるわけでして、無罪判決が確定しているケースが爆弾事件でもございますが、確定したものについてはやはり確定した重みというものをわれわれは受けとめておるわけでして、今後の捜査指導上、資すべき点というものは十分に研究して資していくという気持ちは持っているということでございます。
  56. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これは新聞に出ていた記事で、ここのところは実は僕は非常に感銘を受けて見たんですよ。それは、最愛の御夫人をこの爆弾テロで失った現防衛大学校長の土田さんの言葉で、判決のニュースを聞いて報道陣の質問に答えて言っている言葉の中で、「警察捜査の誤りをどう思うか、という質問には「申し上げにくい。かんべんしてほしい」と述べながらも「犯人は必ずいる。犯人がいなければ事件は起きていない」」、こう無念そうな表情でお話しになったというのであります。全くそのとおりであって、土田さんの無念のほどがよくわかる言葉だと思うのであります。  裁判は無罪判決が出たけれども、事件は決着したわけでないわけですね。土田さんが言うとおり、犯人は必ずいるに違いない。そうでなければ事件が起こるわけはない。しかしながら、やはりこの判決が出たのですから、ここで警察当局は、一生懸命やったのはわかるが、僕は、その捜査の経過というものを深く反省すべきところはして、そして真相究明の責めというものを深く痛感をしてほしいという気がするのであります。まさに、この捜査の歴史の上でも非常に残念なことであったといま思うわけであります。公安委員長、何かお言葉があればいただきたいと思いますが、いかがですか。
  57. 山本幸雄

    山本国務大臣 こういう犯罪は人道上許すことのできない反社会性の強い犯罪だけに、私は警察は懸命になってやったと思うのです。こんなことが次から次へ起きたのでは、大きな社会不安を巻き起こす。そこで、できるだけ証拠に基づいて、自白もその裏づけとしてやったものであろうと思います。  判決は一応一審で出ましたけれども、まだ、いま局長も申すように、さらに上級審の判断を得たいというような気持ちでおりますから、私がここでこれについてかれこれ言うことは差し控えた方がよかろう、こう思います。
  58. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 先ほど申しましたが、この事件の中で国民としていろんな報道を見ながら感じましたのは、僕が強く印象を受けたのは、拘置された中での密室内の自白の強要と誘導というもののこわさの印象というものが強いのではないかと思うのであります。特に中村被告が起訴後も自白を維持し続けた。これは検察側にしてみれば逆な見方ができるのかもしれませんが、結審間際になってようやく否認したということなんでありますが、この間、中村被告はずっと三田署に拘置されたままであったようでありますね。言えば、警察の手のうちにあったということになるのでしょうが。  いま、ちょうど刑事施設法、それから留置施設法が国会に出されてきておる。私ども、これの審議に当たっていくことになるわけでありますが、どうも今回の経過などを見ますと、きわめてこれが、いわゆる代用監獄の状況につきましては慎重でなくちゃいけないな、こういう印象を強めていることを申し添えておきたいと思います。  あと少し時間がありますから、もう一、二お伺いしたいと思いますが、サラ金の問題であります。  このごろ、サラ金があらゆる社会的な事件を引き起こして、また犯罪に至る事件も多いようであります。私も手元に最近の新聞の切り抜きの一部を持っておりますが、四月十八日の記事ですと、「サラ金禍犠牲者急増」、これはある新聞社がまとめたところを書いておりますが、「自殺・心中が百八十五人 地方にも悲劇広がる」、これは今年の一月以降であります。同じ日の別な紙面、「サラ金禍 厳しい督促犯罪へ走らす 殺人・強盗も激増 無縁の人を巻きぞえ」、「サラ金怖さ刑務所志願 ホテル殺人 大森が自供 ギャンブルのツケ二百三十万」、いま言っているのは見出しばかりであります。それから別なところには、同じ紙面でありますが、「母、小三の娘殺す サラ金苦の旧夫と口論」。  二十四日には、「倒産した工場主宅に 居座り十八日間 無法サラ金 手先の男に命じ 差し押さえ狙って」。社説なんかももう出ていますね。五月の三日、ある社は、これも警察庁が当時おまとめになられたものを報道していますが、「サラ金苦 殺人十一件 強盗二十一件 心中九件 惨劇も雪だるま 凶悪事件、半分に絡む」、さらに五月十日には、「香典まで取り立て サラ金、通夜の席脅す 親族涙の抗議、未遂に」、五月十二日、「サラ金、公正証書も悪用 白紙委任とり作成 静岡で多発 競売で脅し返済迫る 無知につけ込む 規制法に禁止規定」、同じ紙面の横のところに、「年金一千万円を横領 秋田 サラ金苦の前施設職員」、同じ十二日の日の別な紙面、「サラ金二十カ条 通夜の取り立て朝めし前 金を貸したらトコトンまで 「非情の心得」個条書き」、これはそのサラ金の事務所のところへ張ってあったものを書いているのですね。その紙に二十の心得が書いてあるというので見てみますと、「紳士にもやくざにもなれるテクニシャンである事」「やられる前にやる事」「出すべき時には大いに出し、引き上げる時は一気に引き上げる事」などが二十項書いてあるようであります。五月十五日、「サラ金、今度は暴力 二人逮捕 返済迫り殴るける」等々枚挙にいとまないのであります。  これらの事件についての実態でおまとめのものがございましたならば、御報告をいただきたいと思います。
  59. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 ただいま警察庁で持っておりますのは、警察庁の方へ各都道府県警察の方から報告がありましたものを、とりあえず一月一日から四月十五日までの分で取りまとめたものでございます。したがいまして、これ以外にいろいろとサラ金が原因で起きた事件等についてはあると思いますので、現在期間を区切りまして調査中でございます。  とりあえず、いま持っておりますものを簡単に御紹介いたしますと、一月一日から四月十五日までで四十五件、凶悪犯罪に関するものを把握しております。この四十五件を原因別に見てまいりますと、まず、サラ金の返済資金欲しさに犯しました強盗殺人が八件、強盗が二十一件、それから、サラ金の借金をめぐるトラブルによりまして起きました殺人が二件、それから、サラ金苦によって前途を悲観して起こしました放火ですが、これは殺人放火を含めまして五件、それから心中事案が九件という状況でございます。
  60. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いまの取りまとめはこの前報道されておるものですね。しかし、あのときは必ずしも十分な報告がまとまっていなかったというのですか、急におやりになったためだろうと思いますね。ですから、たとえば千葉県の現職警官によるサラ金強盗等大分抜けていたのがあったということで、ぜひ一遍改めてまとめておいてほしい、こういうぐあいに思います。  どうですか、暴力団の資金源が覚せい剤だとか賭博だとかのみ行為等に加えて、最近倒産整理だとか債権取り立てというようなところまで領域を広げてきているというふうに聞いているのでありますが、サラ金も暴力団の資金源となっているというような点はありませんか。
  61. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 サラ金自体が暴力団の資金源になっておるというのは、いまのところ報告を受けておりません。
  62. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 サラ金自体といいますか、サラ金が取り立て等について暴力団を利用する、こう絡み合ってさまざまな事件を生んでいるというようなところはありませんか。
  63. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 サラ金の取り立てに暴力団を使う、こういったケースについては、いまのところ把握をしておりません。
  64. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 把握をしてないというのは、つまり、ないとおっしゃっていると考えていいのですか。
  65. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 暴力団の資金源の一つとしまして、先ほどお話のありましたような債権の取り立てに暴力団を使う、こういったケースは数多く把握しておるわけですが、最近問題になっておりますようなサラ金の取り立てに暴力団が絡んでおる、こういったケースはいまのところ把握をしていない、しかし、これがないということはちょっと断定できないんじゃないかと思います。
  66. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 とにかく、通夜の席まで来てしゃにむに取り立てていくとか、本当に暴力団まがいのことなどはもうずいぶん多いようであります。  先般、サラ金規制法が成立した。この法案によりますと、業者の取り立て行為につきましては、威迫したり、私生活、業務の平穏を害するような言動で困惑させてはならない、こうなっておるわけでありますが、しかし、かなり抽象的な表現であります。これらに基づいて過剰融資だとか暴力団の取り立て禁止などについていろいろ検討をなされているのだろうというふうに思うのでありますが、法施行に当たって、大蔵省は政令や省令、通達などで具体的な取り締まり基準というようなものを示して実効を上げていこうということになろうと思うのでありますが、大蔵省ではこれらについてどんな御検討をいただいていますか。
  67. 日吉章

    ○日吉説明員 貸金業規制法が成立いたしましたことに伴いまして、大蔵省としましては、現在その施行に必要な政令なり省令あるいは通達などの準備を鋭意進めているところでございます。その内容につきましては、先生もただいま御指摘ございましたように、法律制定に至るまでの間の国会におきます御議論や世論の動向も踏まえまして、行政としましても一歩前進したと世の中の人たちから認識されるようなものにしたい、かように考えております。  それで、ただいま先生具体的にお尋ねのありました取り立てに関する規制でございますが、法律の条文そのものは、ただいま御指摘のようにかなり抽象的なものになってございます。これは議員立法をしていただきまして、議員提案に基づく議員立法でございましたので、法律の立法者の趣旨そのものは私ども明確に承知をしておりませんけれども、抽象的にいたしておりますのは、実はこの条項違反が刑事罰の対象になるものでございますから、もしある程度個別限定的に具体的に書くとしますと、逆に、この例示がすべての事象を網羅することができないとすれば、反対解釈の余地が生ずるというふうなこともあるいはあったのではないか、したがって、場合によりますと、判例の積み重ねのようなもので明確にしていくことが望ましいというふうなお考えがあったのではないかというふうに想像いたしております。  ただ、先生ただいま御指摘のように、規定が抽象的で実効性が担保できるのかという御批判も十分わからないでもございませんので、私どもがこれから通達等で指定いたしますことが刑事罰の対象になるとかならないとかということとは直接的な関係はない話といたしまして、社会生活を行います私人といたしまして社会通念上一般的にこういうふうな不当な取り立てをすることは好ましくない、こういう観点から、私どもはその内容によりまして通達あるいは事務連絡、場合によりますと業界におきます自主規制というふうないろいろな対応を考えまして、いろいろな指導をできるだけ具体的に行っていきたい、かように考えております。
  68. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 余り時間がございませんので重ねての御質問はいたしませんけれども、最近の社会の中で実は一番大きながんのような状況になっているわけですから、ぜひひとつこの悲惨な実態を一日も早く直していける努力をしてほしいと思うし、また警察当局におかれましても十分に御連絡をおとりいただきながら、これらの問題を未然に解決できるように御努力をいただきたい、こういうぐあいに思います。  もう少しありましたけれども、もうほとんど時間がないようでありますから、きょうはこれで……。いろいろ申し上げましたが、世界に冠たるわが国警察でありますから、どうかそういう国民の信頼にしっかりこたえてりっぱにがんばってほしい、こういうぐあいに思います。しかし、反省すべき点は十分にひとつ反省して努力をしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  69. 田村良平

    田村委員長 午後一時に再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  70. 田村良平

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、警察に関する件について、本日、参考人として住宅・都市整備公団理事久保田誠三君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 田村良平

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  72. 田村良平

    田村委員長 質疑を続行いたします。石田幸四郎君。
  73. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 午前中ちょっと他出をしておりましたもので、昨年来問題になっております大阪府警の警察犯罪の問題、いろいろ重複するところもあるかもしれませんけれども、あらかじめ御了解をちょうだいいたしたい。午前中の質疑を聞いておりませんので、そういうようなことがあるいは起こるかもしれませんが、よろしくお願いをいたしたい、こんなふうに思います。  まず最初に、国家公安委員長であります山本大臣にお伺いをするわけでございますが、この事件は大変な衝撃を社会全般に与えたわけでございまして、前大阪府警本部長の引責自殺などの問題もありまして、非常に治安当局に対する信頼を傷つけた大変大きな事件であったと思うわけでございます。それで、国家公安委員長としましてこれらの事件について当時どのようなことをお感じになったのか、また、今後の御決意としてどんなことをお考えになっておられるのか。当初御存じのとおり、当委員会ではこの警察問題を本年当初に議題にしようという動きがあったわけですが、いろいろその他法案の都合もありまして今日まで延び延びになってしまっておるわけでございます。そういうわけで、若干証文の出しおくれみたいな感じでこの委員会でいま取り上げようとしておるわけでございますけれども、大臣のこれに関する所信も十分伺っておりませんので、まず最初に大臣よりこれに対する所信を承りたい、こう思います。
  74. 山本幸雄

    山本国務大臣 この種事件が関西方面で引き続き起こったのでありますが、ことに保安・防犯部門の警察官からそういう事件が起きたということであります。保安・防犯というのは、やはり業者と接触するという面がありますだけに、そういうところでなれなじむという傾向がある警察の部門、それだけに警察官は自重、自戒しなければならないところだと思うのですけれども、残念ながらこういう事案が発生をしまして、国民警察に対する信頼を著しく傷つけた、また同時に、二十数万に上る警察官にも非常に肩身の狭い思いをさせた、いわば同僚を裏切ったと言ってもいいような事態であったと思い、まことに遺憾であります。したがって、警察としましては、これに対する反省のもとに、今後こういう事件が起こらないように、そして国民警察に対する信頼を回復するようにという措置をとらなければならない、こういうことでございます。  そのために、警察といたしましては、何といっても規律が非常に大事な職場でありますから、規律を一層ふるい起こすということ。それから、やはり職場が職場だけに、職場倫理というものがありますから、こういう職場倫理を確立する。一方において、人事管理の面でも十分考える、あるいは監督を十分にする、指導を十分にやれる体制をとるということなど、今後の対策として警察はいま真剣に取り組んでおるというのが現状でございます。
  75. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 さらにお伺いをしたいのでございますが、私はこういうような問題の本質というものを考えますと、元来人間の本性ともいうべきものにぶつかる問題であろうというふうに思います。人間の本性は、本来善悪ともに精神的な作用が出てくるものであると私は思っております。いわゆる環境によって左右される場合もありますし、またその環境を抑制していく自制心というものもあるわけでございますけれども、特に警察官という立場を考えますと、そういった面の教育というものは、まさに人間の本性に向かって呼びかけていくような教育がなされなければならない、このように思うわけでございます。  一例を挙げますと、たとえばいま井戸に落ちようとしている子供を見れば、たとえそれが泥棒をしているような人間であっても、本能的に人間はそういった子供を助けようとする、いわば泥棒にも善性というものがある、私はそういうふうに思います。逆に本当に善意の人と言われている人でありましても、特殊な生活環境、精神環境に陥れば、そこにやはり悪の作用も働いてくるものであろう、こういうふうに思うのでございます。きのうですか、きょうですか、新聞を見ておりますと、ある方が看病疲れで奥さんを殺してしまった。そういう人たちの例を見ますと、人間の本性にはそういった善悪二つの心というものがともに共存している、こういうふうに思うのであります。  しかし、社会秩序という問題を考えていけば、集団生活をしているわけでございますから、より善意のあるそういう社会環境というものを育てていかなければいけない。特にこういう立場にある人たちにとっては、そういう面の教育というものがきわめて大切であろうと私は思うわけでございます。もちろん人事管理の問題あるいは監督の問題、いろいろありましょうけれども、基本的に人間というものについては教育がなされていかなければならない。われわれ政治家であっても、いろいろなそういった社会に起こってくる人間の善性というものを体験をしながら、そしてみずからの姿勢を正していくべきものであろう、こういうふうに思いますし、私自身もそういう体験をいろんな角度からしてきているわけでございます。  これを詳しく申し上げますと切りがないことでございますから以上にしておきますが、そういう角度からの教育というものをどのように国家公安委員長としてお考えになっているのか、所信を再度承りたいと存ずるわけであります。
  76. 山本幸雄

    山本国務大臣 警察官も人間であることには変わりない、人間の弱さもやっぱり持っていると思うのです。しかし、私はいつも、警察官という一つの職業を持った職業人ではあるが、しかし同時に、やはり警察官である前にりっぱな人間でありたい。りっぱな人間であればりっぱな警察官になってくる。特に警察というところは一つの権力を持った組織でありますから、少し違った社会のように見られる。また、その中で長年おりますと、少し型にはまった人間ができてくるというようなことを言われることもございます。  しかし、何せそういう一つの社会正義を実現をする、そして国民のために生命、財産を守る、そういういわば崇高な使命感に燃えていなければならないということであります。そういう社会正義を実現し、社会秩序を守っていく、そういうきわめてとうとい使命を持っているんだという、そういう使命感を持って、ひとつりっぱな人間としてりっぱな警察官になっていく、私は警察教養というものはそういうふうにありたい、こう思っておるのでございますが、これはやや個人的な見解になるかもしれませんから、あるいは警察庁の方から、いま警察教養の目標というのはどんなことをやっているのかということを、御答弁をひとつしてもらいます。
  77. 太田壽郎

    太田政府委員 警察におきます教育、教養の問題、職業倫理を仕込む問題、これはいま大臣から申し上げましたように一番の基本でございまして、警察において、まず学校に入りまして、その段階で徹底的にそういう職業倫理といいますか、使命感というか、そういうものを教え込む。それから、第一線に出ましてからも、警察署あるいは警察本部、そういう職場においていろいろな形で、いま申し上げましたような問題を事あるごとに教えていく、そういう問題を思い出させるという工夫をやっているところでございます。
  78. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 倫理教育の問題についてどういう形でというのは非常にむずかしいわけですね。もちろん、警察という職場でありますから、上司の方がしばしばそういう教育をなされていると思うのでございますけれども、これはほかの職場でも同じことでございまして、いわゆるこういった公的な立場で仕事をする人たちの様子をいろいろ見たり聞いたりいたしておりますと、一定の訓練期間を過ぎれば、しばしばそういう教育的な問題については個々の問題として扱われていく、こういうふうに私どもは見たり聞いたりいたしておるわけでございます。  今回のこういうような問題が起こって、実際には警察庁からいろいろ通達は出ておるようでございますけれども、大阪府警なり兵庫県警なり、ここら辺の対応というものは一体どのような形で行われ、具体的な成果というのはきわめて判定がむずかしいわけでございますけれども、それに対する十分な認識というものができ上がっているというふうに御判断をされているのかどうか、対応とその反応についてもう少しお聞かせをいただきたい、こう思います。
  79. 太田壽郎

    太田政府委員 ただいまの問題につきましては、ことしの一月二十四日でございますが、警察庁の次長通達を出しまして、その中で、これは「警察職員の規律の振粛について」というものでございますが、大きな柱の一つとして、ただいま御指摘のございました「教養の徹底」ということを取り上げたわけでございます。その一つが「職業倫理の確立と連帯意識の高揚」、もう一つが「幹部の指導監督能力の向上」というのを柱にいたしております。  これを受けまして、大阪府警察及び兵庫県警察におきましては、特にこういう問題をいろいろ出した当該警察でございますので、非常に真剣にこれを受けとめまして、特に今度の一連事件というものが、いわゆるベテラン警察官というか中高年の警察官によって引き起こされている。巡査部長あるいは警部補という本来幹部としての仕事をやっていかなければならない、そういう立場の者が引き起こしているというところに非常に問題を深刻に受けとめまして、そういう中高年のベテランの警察官、そういう者に対する各種の講習会とか研修会あるいはそういうグループでの検討会等もやって、お互いに問題点といいますか、そういうのを反省し、さらに上司がそういうところでまた適切な指導をするというふうなことで具体的に進めているところでございます。  今回の問題は、職業倫理とはいいましても、イロハのイみたいな、泥棒してはいけないという、これは人間にとってあたりまえの基本的なことでございまして、だれでも本来はわかっているはずのことでございますが、それが実際上そういう具体的な場におきましてああいう事件を引き起こすまでに至ってしまった。そういう点を非常に深刻に反省して、それぞれ真剣に対応しているというところでございます。
  80. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この問題は、一にかかって、それぞれの責任のある人たちが、本当に自分の職業、社会的な使命、その上に立っての新たなる自覚ということで今後の前進を期待する以外にないわけでございますけれども、もう一点の問題といたしまして、私はいまも申し上げましたように、人間の本性というのはしばしば環境によって支配をされるという一面がある、そのように思っておるわけでございます。そして今回の事件をいろいろと考えてみまするに、退職者がいて、その当時から一緒に仕事をしていた人たちがそういうものに巻き込まれてしまったというようなことであろうと思うのです。しかも、実際にいわゆる防犯等の仕事をしていく上におきましては、業者とのいろいろな対応も必然的に出てくる、そこら辺を一切没交渉にしてやっていける問題でもない、今後ともそうであろうというふうに思うわけなんです。  そのように考えてみますと、警察官、特にそういった対外的な折衝をする人たちの環境を十分に検討し、また、そういった環境についての注意もしていかなければならない。これは警察当局ですでに通達を出されて、そこら辺の緊張はもちろんできたと思うのでございますけれども、実際にどうなんですか、こういった仕事に携わっている、特にこういういろいろな業者とのつながりが必然的に出てくる人たちというのは、現在の警察官の中で何%ぐらいの人がこれに対応しているのですか。細かい数字は結構ですけれども、目の子計算で大体何人ぐらいがそういう外部との、特に業者関係ですね、起こった犯罪をどうこうするのじゃなくて、業者を指導していかなければならぬというような立場に立つ人たちは大体どのくらいお見えになるものなんですか、どうぞごく大ざっぱなことで結構です。
  81. 太田壽郎

    太田政府委員 業者との関係が非常に深い部門といたしましては、今回問題になっておりますような防犯・保安の部門、業者もありますが一般の方と非常に関係が深いのが交通部門、そのほか一般の外勤警察官はいろいろな形で一般の方とは接触がございますが、先生御指摘のような、いわゆる業者的な人との接触が比較的多いと認められますのが、いま防犯、交通というような部門じゃないかと思いますが、この窓口におります人数は、数としてはかなり少のうございます。一つの警察署で、尼崎の例なんかをとりましても、保安の関係は係長以下全体で五人程度でございまして、この辺の人たちが実際上のそういう仕事を行っている。交通なんかも、署に参りましてかなり具体的なそういう窓口的な仕事をやっている人たちも多くはなりましたけれども、警察官全体の中で申しますと非常に少ない数になろうかというふうに思います。
  82. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは引き続いてお伺いをいたしますが、そういうお話を聞きますと、監督というものは量的にはそう困難な問題ではないと思われますが、これまでにもいろいろと機能はしてきたと思いますが、言われているところの組織の監察体制という問題、こういう問題は今回の事件を通して体制的にもう少し検討しなければならぬというふうにお考えになったのか、そこら辺の分析、あるいは改善されたとすればどういう形があったのか。  特に大阪府警では、五十一年の交通汚職の後に府下を五ブロックに分けて監察体制を強化し、各署にも目が届くようにした、こういうことがかつて言われてきたわけでございまして、しかも今回の事件で、発覚する前に再三にわたって疑惑の警察官から事情聴取をしてきた、しかし、結局犯行は見抜けなかったというようなことが言われておるわけでございます。あるいは当時の新聞の社説等を読んでおりますと、見抜けなかったというよりは、見抜こうとしなかったのではないか。組織内論理というのはどこの組織にもあるのですね。これはどうしようもない。  私は、組織というのは人間と同じで、一つの生命体であろうと思っております。そういった意味で、組織内の論理というものが存在をいたしまして、組織が生き延びていくためには多少の誤謬も許されるのである、こういうようなことが、たとえば前回のロッキード事件の丸紅というああいう商社の行動の中にもそういうものが社内的にあったし、またいまもあるであろう、残念ながらこういうふうに思わざるを得ないわけなんですけれども、どうも警察の威信が落ちては困る、あるいは威信にかかわる問題に発展したんでは困るという身内的な考え方、そういうものがあって監察機構が十分に機能しなかったのじゃないか、私もそう思うし、社説にもそういった話も出てきておると思いますが、そこら辺に対するお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  83. 太田壽郎

    太田政府委員 監察の問題につきましては、ただいまお話もございましたように、大阪、兵庫両県警察におきましても、それぞれかなりの監察体制を持ってこれまでも監察業務を行ってきたところでございます。たとえば大阪府警察におきましては、総勢六十名の体制で府下を五方面に分けまして、それぞれ監察官、それから監察官付というもので構成して、所要の監察業務を行ってきたところでございますが、非常に残念なことでございますが、お話がございましたように、今回の事案は、最終的に刑事部の手によって捜査が進められるまで、監察の手では解明ができなかったというのが事実でございます。  そういうことを非常に反省をいたしまして、先ほど申し上げました次長通達におきましては「監察機能強化」ということを特に重要な柱として立てまして、「監察体制の充実」と「監察対象事案の早期把握」、それから「監察方法の改善」というような点を各都道府県警察警察庁として指示をいたしたわけでございます。体制の整備は必ずしも人員増を伴う必要はないと思いますけれども、適任者を選んで監察の実効を上げることに重点を置くべきであるということでございますが、この通達を受けまして、大阪府警察におきましては三名の増員をいたしまして、新たに調査担当の係を新設をしたというような状況でございます。  組織の中におきますいわゆる組織内論理といま先生がお話しになりましたが、そういうことでとかく監察では甘さが残るのではないかというお話でございますが、警察の場合は、先ほどから申し上げておりますように、規律が厳正に行われるということがすべての仕事がうまくいく根底になっておりますので、こういう問題にいささかでも疑惑を持つというような問題に対しましては、身内のことであっても厳正に対処するということでこれまでもやってきておりますけれども、今後ともその点についてはさらに徹底をしてまいりたいと考えております。
  84. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この大阪等で起こりました事件のことをいろいろ考えてみますと、いろいろな悪いうわさもかなり流れておったようでございます。そういうものを的確に把握するのはかなり困難だとは思いますけれども、中央におきましては、いろいろな有識者との懇談の機会ももちろんあろうかと思うのですけれども、各県警という地方の単位を考えたときに、外部の方々とのそういった意味警察行政の全般についての意見交換の場といいますか、有識者から意見を聴取するとか、そういうような体制というものはどんなふうになっておりましょう。
  85. 太田壽郎

    太田政府委員 警察庁におきましては、いろいろな形で各界の有識者の方から御意見を承るという機会を設けて行っておりますが、地方の各府県警察におきましても、それぞれそういう工夫をしているところもあろうかと思いますが、必ずしも組織的に全部でそういうふうに行われているというわけではございませんが、府県議会等におきます議論を通じましても、非常に身近な問題というようなことで御指摘をいただき、警察の方もそういう御意見をちょうだいして、それをさらに内部の運営に反映させていくというようなことで、かなりいろいろな御意見を伺うということには努めているという状況でございます。
  86. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 各都道府県会で警察問題がいろいろな形で取り上げられているのは私もよく知っておりますけれども、別にそういった有識者との懇談をしたからこういう問題がその角度から吸い上がってくるという問題ではないでございましょうけれども、やはり中央だけでなくて、地方の単位におきましてもそういった面が御配慮されてしかるべきではないか、こういう感じがするわけでございます。これは御要望として申し上げておく次第でございます。  それから、地検と県警との関連でございますけれども、この事件の経過の中に出てきたのは、五十七年十月末に大阪地検、府警の最高幹部の間で協議が行われ、その後にいわゆる地検の特捜部から大阪府警の手に捜査の中心が移った、こういうことも言われておるわけでございまして、一般的に見まして、この関係はどのようになるのでございましょうか。
  87. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 今回の大阪の事件について申し上げますと、いまお話がありましたように、大阪地検と大阪府警の方で協議をいたしました結果、府警の方で捜査を行う、こういうふうに決めたわけでございます。と申しますのは、今回の一連の問題についての情報でございますが、これは地検の方と警察の方と両方で情報を入手しておったということでございますので、これを協議したということでございます。  一般的に申し上げますと、警察内部のこういった不祥事案、これについての捜査につきましては、警察が法律の執行機関であるというたてまえから、やはり組織内のいろいろな問題を自分で解決できないようでは国民の信頼をかち得るわけにはいかないということで、警察捜査を行うというのが大体通例でございます。今回もそういった原則に従いまして、地検と協議の上、警察が行うということにしたわけでございます。
  88. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 伺っておりますと、別にそこに問題があったというような感じでもないわけでございますけれども、御要望申し上げれば、そこら辺のところはきちんとした形で今後も行ってほしいなというような感じがいたすわけでございます。  それから、処分の問題についても若干批判があるようでございますが、警察当局としては、甘過ぎたという批判に対しては、そんなことはない、これで十分という確信がおありでございますか。
  89. 太田壽郎

    太田政府委員 今回の処分につきましては、監督責任を含めまして、厳正に処分をいたしたという自信を持っておるところでございます。  それから、先ほどのお話でちょっと申し落としたので、つけ加えさしていただきたいと思います。  府県会は当然でございますが、公安委員会がございまして、この先生方からもいろいろ御意見を伺っておりますし、また、それぞれの主要な都市に出かけていって、一日警察本部的なことをやったりしてまた御意見を伺うとか、いろいろそれなりに工夫をしているので、ちょっと補足をさしていただきます。
  90. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう一つ具体的な問題としてお伺いをいたしたいのは、兵庫の方で起こった事件の中でおとり捜査という問題が、架空調書ができ上がってしまったというような事件が報道されたわけなんでございますけれども、まさにこれは人権問題との絡みもあるわけでございまして、大変大きな問題というか、きわめてむずかしい問題をはらんでいると思うのでございます。  そこで一つお伺いしたいのは、おとり捜査という問題について、これは風俗犯については一般的に行われているのかどうかという問題それからもう一点は、このおとり捜査を行うについては、いわゆる上部の責任者への報告体制というものが普通完璧に行われているのかどうか、あるいはその捜査を進めるに当たって、警察官の単独性といいますか、ある程度核心をつかまなければ上司に報告をしても無意味である、こういう問題もあろうかと思うのですけれども、そこら辺の問題についてひとつ御答弁をいただきたい、こう思います。
  91. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 お答えいたします。  兵庫県警におきまして参考人供述調書に偽りの氏名、職業、住所等を書いたといういわゆる偽造調書事件が起きましたことは、まことに遺憾に思っておるところでございます。  いまお尋ねのおとり捜査という概念は、おっしゃる方によってとり方がまちまちでございますが、私どもがいわば排除すべきものと考えておるおとり捜査といいますものは、犯意のない者に犯意を生じさせる、そういう行為をおとり捜査というふうに言っております。したがいまして、今回の兵庫県警の事案にかんがみてみますと、単に犯罪に関する事実を参考人が体験をする、経験をする、その見聞をした事実を調書にするというその行為自体は、おとり捜査というふうには考えておらないわけでございます。したがいまして、先ほどの意味で、言わば犯意のない者に犯意を生じさせるものという意味でおとり捜査ということを概念づけようとすれば、私どもはそのような捜査方法というものを指導しているわけではございません。  風俗関係事案につきましては、一般の方々の協力を得て、風俗営業店等で違法な行為が行われているかどうかというようなことの見聞を当方に知らしていただく、それを参考人の供述調書にしていただくという意味において、協力を求める協力者といいましょうか、参考人の方々の協力を得るということは当然必要な捜査でございます。したがいまして、そういった協力者の運用ということにつきましては、当然個人的な運用ということではなしに、組織としてやはり協力者を運用する、そういった形でやるように指導をしているところでございます。
  92. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 余り時間がないので先へ論議を進めさせてもらいますが、どうも今回のいろいろな事件が起こった背景をいろいろな角度から検討をしてみますと、やはり警察官も当然老後の生活の問題を考えなければなりませんので、そこら辺で何らかの可能性のあるコンタクトを求めたいという気持ちが出てくるのであろうというふうに私は思うのでございますけれども、退職者の問題をどうお考えになっているか。  二つ問題がありまして、一つは退職者の再就職についての配慮というものがどんな形で指導されているのか、対処されているのか。それからもう一点は、いわゆる六十歳定年制というものが間もなく施行されるわけでございますけれども、希望者はそのまま残っていてもいいわけですけれども、しかし、いまの社会情勢あるいは平均寿命の延びというようなことを考えますと、かえって六十歳まで勤めるよりは適当なところで退職して再就職をしたい、こういう希望もあろうかと思うんですね。  それからまた、外勤の人たちの年齢的な問題をいろいろ考えますと、どうしてもある程度の年齢になりますれば、もう少し事務的な仕事といいますか、内勤みたいな仕事にかわりたいというようなこともありましょうし、そこら辺の対応というものが、これからの時代を考えていきますと、六十歳定年説というのは、これは今後の老齢化社会という問題を考えてまいりますと、当然六十五歳定年の方向へこの数年の間に進んでいくことは間違いない。そうしてみると、やはり六十歳を超えて外勤をやるというのはかなり困難な状況が生まれてくるのではないか、そういう問題に対して警察当局としてどんなふうな対処の仕方を一つの方向性としてお考えになっているのか、そこら辺をちょっとお伺いをいたしておきたい、こう思います。
  93. 太田壽郎

    太田政府委員 まず、第一点の再就職に対する配慮の問題でございますが、御指摘のように、再就職の問題は、単に退職後におきます生活上の問題にとどまらずに、安んじて現在の仕事に精励をするということを確保する問題にもつながっておるわけでございます。そういう意味におきまして、各都道府県警察におきましては、警務課とかあるいは職員相談室というようなものを窓口にいたしまして、職員の退職後の生活設計について、種々指導助言を行っているという状況でございます。  この問題につきましては、今後ともさらに力を入れて対応してまいらなければならないということで、先ほどから再々申し上げております次長通達の中におきましても、再就職相談を一層充実させる、それから職員の再就職に関する状況を把握して、それについての適正な指導を行うというような点を強調しているところでございます。この問題については、警察庁といたしましても各都道府県警察に対し、今後ともさらに体制を整備して力を入れていくように指導してまいりたいというふうに考えているところでございます。  それから、第二点の六十歳定年等の問題でございますけれども、現在警察におきます勧奨退職年齢というのはおおむね六十歳未満、県によって違いますけれども、所属長クラスで五十六から五十七程度、それ以下の職員では五十七、八というようなことで、最近一、二歳延びているような状況も見受けられますが、いずれにいたしましても六十歳未満ということできております。したがいまして、いわゆる六十歳定年が導入されるということになりますと、退職年齢が引き上げられるということになるわけでございます。  こうした高年齢の職員に対します教養あるいは健康管理方策、ただいま御指摘のありましたような勤務すべき場所の選択の問題等につきまして、いま鋭意検討を進めているところでございます。そして、当面は六十歳定年という制度を円滑に導入、実施できるよう、各府県警察において、現在それぞれ工夫を加えているというところでございます。
  94. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 将来の問題でございますからそう一概に言えないかと思うのでございますけれども、これはどこの職場でも大変大きな問題として上がってくる問題でございますので、今後の十分な御研究を要望をいたしたい、こう思います。  だんだん時間がなくなってまいりましたので、いままでの事件問題についての御質問はこれで終わりたいと思います。  次に、どうしても御質問をしておきたいのは、例の五十CCカーの問題でございますけれども、昨年来いろいろ新聞報道にも行われましたように、たとえば鈴木自動車では「三十万円弱で年内発売へ」というようなことで発表になっておりますし、すでにもうたしか数千台が海外から輸入されておるというようなことを聞いております。当初は、もちろん限定された、たとえば大学構内とかそういうところ、あるいは工場内というようなところで使うという話であったのでございますけれども、新聞、テレビを見ておりますと、どうも普及しそうな感じが出てまいりますね。  それで、これが普及をされるということになりますれば、いわゆる四輪であるわけでございまして、軽自動車の免許になるのか、あるいは五十CCというような状況を見た場合に、いわゆる原付自転車ですか、この基準を適用するのか。もう早急に検討し、結論を出さなければならない、そういうところへ来ているのではないか、こういうふうに思うのでございますが、これに対するお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  95. 久本禮一

    ○久本政府委員 先生御指摘のいわゆる五十CCカーというものが現在町に徐々に出回りつつあるということは事実でございます。この点につきまして私どもの考え方を申し上げますと、現行の道路交通法令では、エンジンの総排気量が五十CC以下のものについては、車輪が二輪であると三輪、四輪であるとを問わず、すべて原動機つき自転車ということになっております。したがいまして、これらの車両がいずれも原付免許で運転できること、現行法令上可能であることは御指摘のとおりでございます。  このように、原動機つき自転車というものを排気量だけで定義をして、車輪の数等を制限していないというゆえんのものは、いろいろな考え方がございますが、私どもとしては、この原付自転車は、法令上、御承知のとおり最高速度が毎時三十キロメートル以下であるということ、それから、乗車定員が一名であって人を乗せないというのが一つの構造の制約になっておるということ、それから、物を載せますにつきましても、結局三十キログラム以下ということであるならば、これはそういった運行上の諸要因が、ほかの自動車に比べて道路交通上の危険性が低いということに一応判断がされておるというふうに思っておるところでございます。  しかし、最近、先生御指摘のとおり、輸入あるいは国内で開発されようとしていますところの特に四輪の原動機つき自転車につきましては、原動機の排気量が五十CC以下だという点を除きますと、実は御指摘のとおり、四輪に似ているという点の方が大きいのではなかろうかという危惧を持っております。これはアクセル、ブレーキ、クラッチの操作等もまず他の四輪自動車と同じと言ってよろしいというふうに思います。したがいまして、通行方法につきましても、二輪というよりは他の四輪自動車と同様になるというふうに思うべきではないかなというのが私どもの現在の感触でございますが、この辺の扱いにつきましては、大変影響も大きゅうございますので、そういった機能の問題と合わせまして、こういうものが車の現在の交通量の多い、しかも混合交通の中に入り込んできた場合にどういった影響を自他に起こすかという点につきまして、これは先生御指摘のとおり至急に慎重に検討いたしまして、あるいは普及の方向に踏み出すのではないかという時期にひとつ間に合うように検討してまいりたいというふうに考えております。
  96. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう一点だけお願いしたいのですけれども、時期的な問題、申し述べることがむずかしいのかもしれませんけれども、もしめどがつきますれば、いつごろかという問題と、それから、この車がもし一般の街路上に出てくるということになりますれば、いまでも大型トラックと小型車との問題あるいは原付自転車との問題等で大変危険性をはらんでいるように言われておるわけですね。片一方は非常に小さい、片一方は大きい、そうすると運転者の死角等の問題がまた新たに起こってくるわけでありまして、そこら辺もぜひ大至急御検討願いたい問題だと思うのですけれども、問題は、もう年内発売へと言うておるわけでございますので、いつごろから街路上へ出てくるように想定をしていらっしゃるのか、あるいはとめておくのか、そこら辺もいろいろ問題があるわけですけれども、もうちょっと御報告するわけにはまいりませんか。
  97. 久本禮一

    ○久本政府委員 これはせっかくの先生のお尋ねでございますが、大変いろいろ兼ね合いがむずかしゅうございまして、私どもも、現在できるだけ早急にということ以外には、具体的な日にちをいま御報告申し上げかねる状況でございます。ただ、これは私どもだけで決めるわけでございませんで、たとえば業界ももちろんでございますが、特に運輸行政あるいは警察の方でも、私どものいわば政策的な視点と合わせて、一線の警察官、交通警察の感覚というものとのすり合わせも十分にいたしながらでないと、観念的にこの話が滑り出してもいかがかと思いますので、その辺はいろいろ兼ね合い、すり合わせをいたしながら、現在できるだけ早く結論を出したいという努力をいたしているということしか御報告申し上げかねるところでございますが、ひとつ御了解をいただきたいと思います。
  98. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、その点はそのくらいにいたしまして、例の暴走族の問題、もう少し時間をとってやりたかったのですが、もう数分しか残っておりませんが、これは私もそういう場面に遭遇したことがあるのですけれども、さるドライバーに聞きますと、私は名古屋なんですけれども、大変遅い時間になりますれば、いわば日常茶飯的にオートバイなりあるいは普通の自動車なりを駆使してやっておる。私も夜中の一時ごろ通って本当にびっくりしたのですけれども、赤信号のところへびゅっと真ん中へ出ていってぐるっと自動車を方向転換させまして、びゅっと反対道路へ入っていく、恐ろしい感じなんですね。  いろいろ警察が御苦労していることもわかるのですけれども、なかなか現場を確認することができないというのが一つの問題点のようなんです。これは最近いろいろ赤外線カメラ等もあるわけでございまして、もう少しいろいろな科学技術を駆使すれば、それに近い状況というのは把握できるんじゃないかなという気がしているのが一つ。  それから、罰則関係で、これは単に交通違反事項というのではなくして、社会不安を非常に増大させる、心理的な影響が非常に大きいと私は思うのです。それから、そういう暴力行為に対する民衆の不安、そういうものが醸成されるような状況にありますれば、これはいま学校暴力の問題等も起こっておりますけれども、そういうものをも助長する気配もあるわけでございまして、もう少し特例を設けて罰則強化をするというような方向性はないのかどうか、この辺についてはいかがでしよう。
  99. 久本禮一

    ○久本政府委員 暴走族の現勢は、ただいま先生御指摘になりましたように、特に最近数の上できわめて目立って多いというわけではございませんが、動き方が大変複雑、ある意味では悪質と言ってもよろしいと思いますし、特に御指摘のとおり、最近は週末に限らず平日でも、またかなり住宅地の奥等に小人数でゲリラ的に出回ることが多いといったようなケースが多うございます。したがいまして、私どもも、通常のこういった死亡事故の多い状況の中で、交通死亡事故の防止対策等の実施にも支障の起きかねないような手数をとられる存在になっているというのが状況でございまして、私どもとしましても、何とかこれを有効に駆逐したいという気持ちで、いろいろ努力なり知恵もしぼっているところでございます。  ただ、罰則の関係につきましては、これはいろいろ絶えず検討はいたさねばならないと思っておりますけれども、いまの道路交通の体系の中ではかなり目いっぱいその辺の対応をしておりますので、率直に言って、これで直ちに実効のある対応の仕方を見つけ出すということにはかなりむずかしい点がございますのと、いろいろ機材その他等も活用して十分有効に捕捉すべきであるという点はまさに御指摘のとおりだと思いますが、こういった厳しい財政状況等の中でなかなかそれに必要な余裕を見出しかねておるというような悪条件もそろって、必ずしも思うような対応に進んでいないというのが現実でございます。  ただ、先生の御指摘方向はまさにもっともであろうというふうに感じておりますので、少なくともそういうような方向が一歩でも二歩でも進むような形の努力はいたしたいと思っておりますのと、もう一つは、この辺になりますと、警察だけの取り締まりあるいは対応という形にいろいろ落ちこぼれが出てまいりますので、これはどうしても学校あるいは地域、市町村等を含めまして、いわば根源的と申しますか、取り締まりと並行した具体的な暴走族覆滅のための対応をしていただくということにかなり実質的な意味があるのではないかと思っておりますので、これは各県の交通警察にも督励をいたしまして、そういうような申し向けをひとつ学校なり自治体の方にも十分働きかけて、その辺の協力をしていただくようなことを指示いたしているという状況でございまして、なかなかすぐに目に見えるような結果が出てこないのが大変残念でございますけれども、しかし、問題点は十分に承知しておるつもりでございますので、一歩でも二歩でもこれをできるだけ着実に進めていきたいという考え方で対応しているところでございます。
  100. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 こういう問題を口で言うのは簡単ですけれども、お互いに困ったものだなと思っているわけですよね。しかし、要するにそういった交通法規の問題等があるにいたしましても、われわれ自身も感じている、一般庶民の人も見ていて、これは直接手を出しかねているわけですね。もちろん直接手を出す権限も与えられていないわけですし、はらはらして見ているというようなことで、私、一番心配するのは、そういう大衆に与える心理状態といいますか、警察が見てないところでは何でもできるんだというようなことではだめなんであって、そうかといって見てないものまで検挙するわけにはいかぬわけで、本当に苦慮されているところだと思いますが、そういうようなことが社会のかなり広範囲に起こっているという問題についての考え方、ここら辺はもう一歩研究をしていただいて、教育とそれからそういった罰則を含めた取り締まりですか、両方強化していかなければならないということでありますけれども、警察当局としてはもう一歩これを突っ込んでやらないといかぬのじゃないかな。  私の言い方もきわめて抽象的であろうかと存じます。たとえば免許の取り消しの問題についても、こういう問題は、早く言えば半永久的にとはいかぬでも、これはもう少しそこら辺の配慮があってしかるべきではないかなという気もしますけれども、これはいわゆる基本的人権等の絡みもありましょうから一概に言えないと思いますが、そんなことで御要望にとどめておきたい、こういうふうに思う次第でございます。  じゃ、私の持ち時間は終わりでございますから、以上で終わります。
  101. 田村良平

    田村委員長 部谷孝之君。
  102. 部谷孝之

    部谷委員 アメリカの経済学者のガルブレイスは、八〇年代は不透明の時代であり、不確実の時代である、こういうふうに申したということは有名でありますけれども、これは世界の経済現象について述べておるのですが、最近、社会現象の中でもこんな言葉が非常にぴったりくるような、あすは何が起こるかわからないという、あるいはわれわれが常識的に考えられないような、そんなことが次々と起こっております。日本航空の片桐機長のあの逆噴射墜落事件、あるいは中学校の先生が果物ナイフで子供を刺すという、何かどこかひっくり返って間違えておる、そういう事態がいろいろとわれわれの目の前にあらわれておるわけであります。こうした現象を見ておりますと、どんな社会にもこうした異常な人間が幾らかまじり込んでおるものでありますが、しかし、それがだんだんと顕在化してきておるという状態にあると思います。  ところで、きょうは、最近、警察関係者によります不祥事件が頻発をいたしておりまして、特に大阪府警、兵庫県警の賭博機汚職事件、あるいはまた現職警官の、しかも高級警官のかけマージャン事件だとか、あるいは車上ねらいの事件、レッカー業者との癒着事件、癒着疑獄といいますか、そうしたわれわれが本当に救いのないような気持ちさえするような事件が続いておるわけです。しかし、これは一部の異常分子による異常な事件であると片づけるには、あるいは看過するには問題が大き過ぎると思うわけであります。  日本警察と治安のよさということにつきましては、これは海外の論評でも例外なく世界一だ、こういうふうな折り紙をつけておるわけであります。治安がよいということは、やはり警察官の質がよろしい、それから職務に献身的である、そういうことであると思いますが、同時に、国民警察官を信頼し、警察官に対して協力的である、このこともやはり大きな要素の一つである、こういうふうに思うわけであります。お巡りさんが信頼に足る人でなくなれば、当然警察に対して協力的な人が減ってくる、そして犯罪捜査や防犯活動はやりにくくなりまして、結果として治安に乱れが生ずるということは目に見えておると思います。そういう観点から、私は、ゲーム機汚職事件について、以下お尋ねをしてまいりたいと思うわけであります。  去年十一月に、大阪府警の警察官の多数が、その取り締まり情報をゲーム業者に流しまして、賄賂を受け取っておった事件が発覚いたしまして、また、ことしに入りまして二月には、兵庫県警の警察官が、同様にゲーム業者から賄賂を受け取り、取り締まりに手心を加えておったという事件が発覚いたしました。現職の警察官あるいは退職した警察官のこのような腐敗に接しますと、本当に慄然たるものを感ずるわけであります。  そこで、まずお尋ねしたいのでありますが、今回の大阪府警と兵庫県警の事件のそれぞれの捜査の端緒というものは何であったのか、最初にお尋ねをいたしたいと思います。
  103. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 今回の二つの事件の端緒でございますが、民間からの申告、それからうわさ、こういったものがございまして、これに基づきまして情報収集、視察という活動を行いました結果、容疑事案を把握した、こういうことでございます。
  104. 部谷孝之

    部谷委員 府警の事件におきましては、大阪の地方検察庁の特捜部、これから事件の通報があってから府警の捜査が行われた、こういうふうに聞いておるわけでありますが、この辺の事情をもう少し詳しく述べていただきたいと思います。
  105. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 今回の事件の情報収集の端緒でありますが、検察庁の方と警察と大体両方ともに情報を得まして捜査をやっておったわけでございますが、どちらがもっぱら捜査を行うかということにつきましては、地検と警察の方とが協議をいたしました結果、警察捜査を行うということに決定をいたしたわけでございますが、そのいきさつといたしましては、警察は法律の執行機関でございますし、ただいまお話がありましたように、警察国民から信頼を失うということになりますと重大な問題でございますので、警察の組織内のいまお話のありましたような不祥事案につきましては警察みずからが不正を正していく、こういうことで、これは重大な問題だというふうに考えまして、その結果、地検との協議の上で警察が行うということにしたわけでございます。
  106. 部谷孝之

    部谷委員 新聞報道というのはいろいろされるわけですから、あるいはその取材の人によってとり方が違うことが出てくる場合もあり得るわけですが、マスコミの論調を大体総合いたしますと、地検の特捜の方へ告発が行われ、そして地検が動き出して、そこで、そんなことじゃ困るということで、もらい下げという言葉を使って、警察の方が地検に頼んで事件をもらってきたというふうな書き方をされている新聞が非常に多いのですね。その辺、どうなんですか。
  107. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 重ねて御説明申し上げますが、端緒を得ました時期は大体同じごろだと思います。その結果、両方で協議をしたということでございますし、警察が特に頼んで検察庁から事件をもらってきた、こういうことでは現実にございません。
  108. 部谷孝之

    部谷委員 それを裏づけられるのが私は監察だと思います。大阪府警といたしましては、事件の犯人らにつきまして前々からとかく風評があった。けれども、監察室による監察ではこれを摘発することができなかったというような状態であるようであります。そこで、一般論といたしまして、警察の監察というのはどのような事項をどのような方法でやるのか、御説明願いたいと思います。
  109. 太田壽郎

    太田政府委員 一般論で申し上げますが、警察におきますいわゆる監察部門は、警察職員の規律の保持と適正な執行務の確保を目的といたしまして、警察業務の運営、職員の勤務状況等について随時に監察を行うという機能が一つございます。それとともに、警察職員によります規律違反その他事故が発生いたしました場合に、事案の内容、原因動機、背景、こういうようなものにつきまして詳しく調査し、その結果を警察本部長等に報告することなども任務にいたしております。いずれにいたしましても、警察におきます適正な執行務の確保に大きな機能を果たしているということでございます。
  110. 部谷孝之

    部谷委員 それでは、このたびのこの事件ではどのような監察を実施し、また、この監察によって摘発できなかったのは一体どういうわけなのか、いかがですか。
  111. 太田壽郎

    太田政府委員 このたびの事件につきまして清田高弘を逮捕する以前におきましても、清田を初め本事件で検挙されました警察関係者らにつきまして、風評とかあるいは上申書等事案解明の端緒となるべき情報あるいは徴候があったわけでございまして、これについて監察室等におきまして事案の解明に努めましたけれども、結果的には残念ながら事実関係を把握するに至らなかったということでございます。  より詳しく申し上げますと、元南警察署の巡査長柏本というのがおりますが、これにつきまして、昨年の四月、女性問題等についてとかく風評があるということで、所轄警察署の警務の関係を含めまして事情聴取等を行った結果女性問題が明らかになりまして、これにつきましては昨年の五月に諭旨免職処分ということで処分をいたしております。また、曽根崎警察署の巡査長清田につきましては、昨年の六月、大阪府警察本部に上申書が寄せられまして、所轄警察署において事情聴取等も行いましたけれども、結局、調査方法の拙劣さによりまして、結果的に今回明らかになった一連の不祥事案というものが解明できなかったわけでございます。
  112. 部谷孝之

    部谷委員 いまお話がありました柏本と清田ですか、それ以前に東がいろいろと監察で調査されておるんですね。それで、東久が監察室で調べられたときに泣きながら訴えたということで、業者から事情も聞かずに、監察室の方は涙を信じてシロと判定して五十七年に警部補に昇進され、そして東についての調査は完璧であったというふうに述べられてきた。ところが、再捜査をいたした結果、野仲や業者との飲食が明らかになり、そして柏本や清田の調べでも同じようなミスが出てきた、こういうふうに言われておるのです。ですから、非常に監察が甘かったのではないかという批判は国民の目で見て強く映るんですが、その辺に対して反省か何かないのですか。
  113. 太田壽郎

    太田政府委員 ただいま御指摘がいろいろございましたけれども、そういう事実がそのとおり判明いたしておりまして、監察制度のあり方、監察の能力の問題等を含めまして非常に深く反省をいたしているところでございます。  それに関連いたしまして、本年の一月二十四日でございますが、「警察職員の規律の振粛について」という警察庁の次長通達を発出いたしておりますが、この中で特に一項目を挙げまして、「監察機能強化」ということを打ち出しているわけでございます。その中に「監察体制の充実」、これは単に人数をふやすというだけではございませんで、適任者、そういう者を入れるというような点に重点を置いておりますが、体制の充実、それから「監察対象事案の早期把握」、いろいろいまお話もございましたけれども、投書とか申告等もあるわけでございますが、そういう場合に、署だけにとどめずに警察本部の担当監察官に必ず上げる、それで警察本部の方で責任を持って早期にしかも総合的にその事案の解明に当たる。さらに監察の方法につきまして、単に事情を聴取するだけではなくて、より一歩掘り下げたといいますか、やや捜査的な手法を取り入れる工夫なども必要ではないか。そういうことを次長通達で各都道府県警察に対して通達をいたし、現在その方向に従って各府県警察でそれぞれ対応策を講じているところでございます。
  114. 部谷孝之

    部谷委員 そこで、犯人である現職警察官の一人清田は、逮捕される前に、押収したゲーム機から現金を抜き取って窃取しておる警察官がいるという事実を記したいわゆる清田メモ、これを残しておるわけでありますが、これは事実でしょうか。
  115. 太田壽郎

    太田政府委員 いわゆる清田メモというものは、清田高弘が逮捕される直前に作成したものでございます。
  116. 部谷孝之

    部谷委員 このメモの内容が事実であるといたしますならば、これはきわめて重大な問題だと思います。押収したゲーム機から現金を窃取しておるという記述についての捜査状況並びに警察庁としての見解、これをひとつお尋ねしてみたいと思うのです。
  117. 太田壽郎

    太田政府委員 メモの内容につきましては、大阪府警察におきましても、事の重要性にかんがみ逐一詳細に調査をいたしましたけれども、一部の事項を除きまして、他は事実を歪曲したりあるいは憶測、誤解等によるものであったということが判明しているところでございます。ただいま御指摘のありましたゲーム機の中から現金を抜き取って窃取した云々というくだりにつきましても、大阪府警察におきまして特に詳細に調査をいたしました結果、事実無根であるとの報告を受けております。警察庁といたしましては、大阪府警察のこの結果を信用して、そのとおりであろうというふうに確信しているところでございます。
  118. 部谷孝之

    部谷委員 これが事実無根であるということは、そのような結論に達したのですか、重ねて聞きます。
  119. 太田壽郎

    太田政府委員 いまの件については、事実無根という大阪府警察からの調査結果の報告を受けておりまして、警察庁としても事実無根であるというふうに確信しておるところでございます。
  120. 部谷孝之

    部谷委員 事実無根であるということであれば、さらにその見解を求めるわけにはまいらないわけでありますが、そういう意味で、そうした事実があったのではないかということで、実は私はきょうは法務省の方に来ていただきまして、もしこのような警察官による押収物からの現金の窃取、こういうものが行われたとするならば、押収物を管理する立場から見てどのように考えるかというお尋ねをするつもりでおったわけです。仮定の質問になりますが、せっかくお越しでありますので、そうした御見解をひとつ、もしそういうことであるとするならばどういうことになるかということを、法務省の方からの答弁をお願いいたします。
  121. 飛田清弘

    ○飛田説明員 仮定の質問でございますからちょっとお答えしにくいわけでございますが、一般論といたしますと、押収された証拠物というのは、一番最初は、警察で押収したものは警察で保管し、それを事件送致とともに検察庁に引き継ぐということになるわけでございまして、検察庁といたしましては引き継いだ後のことについて責任を持つわけでございます。それ以前のものについては警察の御当局で責任を持つことになりますが、いずれにせよ、押収された証拠物の中に仮に現金が入っているといたしますと、その現金とそれから押収された先ほどのゲーム機であればそのゲーム機とは、ゲーム機の中に現金を入れたまま保管するというようなことは通常はないと思います。  現金は現金、それからゲーム機はゲーム機と分けて保管することになるのだろうと思います。取り扱いが、現金の場合は立ち会い封金という取り扱いになりまして、特別な保管の仕方をするというのが検察庁の取り扱いでございますけれども、いずれにいたしましても、そういうふうな証拠品が横領されるようなことというのはあり得るべきことではございませんし、あってはならないことでございます。そういうことはないであろう、こういうふうに思っているわけでございます。
  122. 部谷孝之

    部谷委員 いまの御答弁が、実はいみじくも事の重大性を語っておると私は思うのです。押収物の窃取ということに相なりますと、これは業者から持ちかけられた贈収賄などと事は違いまして、きわめて積極的な犯罪だということになるわけであります。まさに同情の余地の全くないそうした問題である。ですが、こういうものが事実であるとすれば、私はこれは先ほど申しましたようなきわめて重大な問題であるというふうに思うわけであります。いろいろマスコミがそのことを指摘しながら、なおこれが事実無根であるという結果を出されたことと、いまの事の重大性との中に何か因果関係がないのかどうか、私はいささかまだ疑念を持っておりますが、しかし、せっかくそういう御答弁でありますので、ひとつこの問題をそこで置いておきたい、こういうふうに思います。  次に、事件の原因と対策についてであります。  今回の事件の原因の一つに、防犯警察の性格というもの、これが関連しておると思います。防犯警察は、取り締まりの側面のみならず、風俗営業等の許認可の側面も持っておるわけでありまして、業者と直接接触する機会が多いわけであります。その際、業者は取り締まりの手かげんあるいは情報等を期待いたしまして、いわば攻勢を加え、そこに癒着が生じる、そういう原因が発生してくる、こういうことも少なくないと思うわけであります。この点につきまして、何か今後対処される方針、こういうものはありませんか。
  123. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 防犯・保安警察におきましては、対象となる営業者が適法に営業を行うように平素行政指導をする、あるいはその出発点として許認可業務がある、あるいはまた悪質な違反に対して取り締まりを行うといった側面を持っておる。さらには、通常たとえば防犯運動などを推進する場合においては、営業者の方々にも協力を求めるといったような面もございまして、確かに御指摘のように業者との接触の機会の多いということは事実です。しかし、またそれが防犯・保安警察の特質でもあろうかと考えておるので、したがって、御指摘のように、業者が取り締まりを免れようとして接触を求めてくるというようなことも十分予想されるわけであります。  私ども、今回の大阪あるいは兵庫の事案を通じまして反省し、今後の対策として考えておりますことは、要は、そういった防犯・保安係には、これらの誘惑に負けない強靱な資質を持った適任者を配置をするということが肝要でありますし、また、その業務自体からそういった誘惑に負けるような仕組みのないようないろいろなチェック、監督機能というものも十分果たし得るような仕組みをしなければいけないというようなことで、防犯・保安係への任用に当たっての問題、あるいはそれぞれの指導、教養の問題、あるいは監督機能強化といったような点について今後とも努力をしてまいりたい、かように考えております。
  124. 部谷孝之

    部谷委員 今回の事件では、警察のOBが暗躍しておるということが一つの特徴として挙げられると思います。一般警察官の再就職先といたしまして風俗営業も少なくないと思うのですが、取り締まりに手心を加えて恩を売って、そして就職の際の便宜を期待する、あるいは風俗営業に再就職したOBが現役との間の連絡役となって不公正な取り締まりをさせる、こういうことも常識的に容易に想像されるところであります。その点につきましてどのようにお考えでしょうか、そしてどのように対処していかれるおつもりでしょうか、その点、御答弁を願います。
  125. 太田壽郎

    太田政府委員 再就職の問題は、単に退職後におきます生活上の問題だけでございませんで、現職で仕事をしていく場合に、安んじてその職務に精励する、そういう条件を確保する問題にもつながるわけでございます。そういう意味におきまして、各都道府県警察におきましては、再就職の開拓といいますか、そういうことを中心に、警務課あるいは職員相談室等を窓口にいたしまして、職員の退職後の生活設計について種々指導助言を行っているところでございます。  特に一般論で申し上げますと、退職者の再就職の問題というのは、職業選択の自由というような問題と関連する一面もございまして、必ずしも割り切れない面もないではないのでございますが、取り締まり対象業者等に再就職するということによりまして適正な警察活動が阻害される事態が生ずる、あるいはそういう疑惑を持たれるということは、公正な警察活動を進めていく上できわめて好ましくないことと考えておるわけでございます。警察庁といたしましても、先ほど申し上げました次長通達の中で再就職問題、これをさらに充実するというのを重点の一つにいたしておりまして、この問題について適正な対応が行われるよう各都道府県警察を現在指導しておるところでございます。
  126. 部谷孝之

    部谷委員 この事件がマスコミに取り上げられましたときに、再就職問題ということもいろいろな意味で事実が挙げられ、そしていろいろな指摘がされたところでありますが、そうした疑惑の起こらないような措置をひとつ推進していただきたいと思います。  それから、警察におきましては階級による厳格な上下関係あるいは服務規律が存在しておりまして、同時にまた、一般警察官は厳しい昇進試験があります。昇進の道はきわめて狭いというのが実情だと思います。このことが将来の昇進に対する期待を失わせて、そして一部の警察官を非行に誘い込むその要因になっておるのではないか、こういうふうにも実は思われるわけであります。そこで、一般論といたしまして警察における昇進管理はどのような考え方に基づいてどのように実施されておるのか、御答弁願います。
  127. 太田壽郎

    太田政府委員 警察におきます昇進管理ということの基本的な考え方は、公正な昇任試験を実施して、これに合格した者を昇任させるということを基本にいたしております。昇任の方法といたしましては大別して三種ございますけれども、主として管理的な業務を行う者の選考を重点とするいわゆる一般選抜昇任制度というものが一つございます。それから二番目に、主として専門的な業務を行う者の選考を重点とする方式といたしまして特別選抜昇任制度、三番目に、実務経験が豊富で勤務成績の優良な職員の選考を重点とする選考昇任制度などというものがございます。  それから、昇任試験の受験資格等につきましても、試験によりましていろいろ差があるわけでございますけれども、高校卒の例をとりますと、採用後四年たった段階で一応巡査部長の試験を受ける資格ができるわけでございます。巡査部長になった後三年を経て警部補の受験資格ができるというようなことで、さらにさっき申し上げましたような専務的な仕事をずっとやっているという者につきましては、試験科目等につきましても、実務とかそういう仕事を一生懸命やっておれば比較的合格しやすいというような科目を昇任試験の科目として出すというようなことでいろいろ工夫をいたしておりまして、昇任試験の倍率は一般的には非常に高いわけでございますけれども、そういうことで長期間実務に携わっている、そういう人たちにつきましてはまたそれなりのいろいろな昇任制度というものを設けて、決していまお話しのようないわゆる落ちこぼれ的な感じを持ってむちゃくちゃをするというようなことにならないように、いろいろな形で配慮をしているつもりでございます。
  128. 部谷孝之

    部谷委員 巡査から巡査部長へ、あるいはさらに警部補、警部というふうに昇進していくのに、そうした昇任試験制度をとっておられるわけですね。  巡査から巡査長への昇任というのは、どういう方法で昇任させるのですか。
  129. 太田壽郎

    太田政府委員 この巡査長の問題につきましては、選考が中心になってきておりますけれども、これは昭和四十二年に、職員の士気を高揚する、あるいは第一線におきます指導体制の強化を図るというために設けられた制度でございます。したがいまして、まじめに巡査としての仕事を長期間行った者につきまして、そういう要素を考慮いたしまして巡査長に昇任をする。試験的なことをやっている例もないではございませんけれども、現在では大体そういうことで実績を見た上で昇任をさせていくという取り扱いになっております。
  130. 部谷孝之

    部谷委員 実は私もそのように理解しておったわけです。俗な言い方で申しますと、第一線の刑事さんは日夜を分かたず実務について、そうした職務上、実務上の時間的な拘束が非常に強い。そうすると、いわゆるペーパーテストをやるときにどうもうまくその辺に乗っていかない。だから、本当に第一線で苦労して、実力的にはいろいろテレビで出てくるようなすばらしい刑事諸君がおるけれども、それがなかなか巡査部長なり警部補なりに昇進していかない。そういう実情の中から巡査長の制度というものが考えられ、制度がつくられたというふうに実は私は理解しておったわけなんです。  いまのお話ですと、選考試験そのものにも、実務といいますか経験といいますか、そういうものをある程度重点的に考えた選考方法を含めて三つの選考方法をとっておるのだ、こういうふうな御説明でありました。したがって、そうした優秀な警察官が昇進していくことについて特に支障はないというふうなお話でありましたけれども、あなたのようなエリートが考えられるより、現場の警察官はもっともっと厳しい競争に耐えているのじゃないかという気が私はするのです。その辺、巡査長制度をつくられたときに、これは警察のヒットだと私は思ったのですよ。ですから、この制度そのものずばりじゃありませんけれども、やはり何かこうした制度を考えていくということが、現場で下積みでがんばっておる、しかもきわめて経験豊かな人たちに希望を持たせる道だと私は思う。そのことがやはり警察の士気を大きく上げていく原因だ、こういうふうに私は思うわけでありまして、何かそんな制度をひとつ考え出していただけないかなと思うのですが、どうですか。
  131. 太田壽郎

    太田政府委員 巡査長の制度というものは、昭和四十二年にさっき申し上げましたような理由のもとにつくられたものでございます。しかしその後、やはり巡査長というものはあくまでも巡査であることには変わらないというところで、いろいろ指導とは申しましてもやはり監督上の問題、監督権は持たないとか、いろいろ問題点も多うございましたので、昭和四十七年から選考によりまして巡査部長あるいは警部補に昇任させるという制度をかなり大幅に取り入れたわけでございます。それで現在、警察官の階級構成というものは一応所定の基準がございますけれども、全体で約二十一万の警察官の中で巡査は約九万五千、それから巡査部長、警部補合わせまして十万三千というような割合になっております。約半数の者が巡査部長、警部補ということになってきたわけでございます。  したがいまして、いわゆる巡査長の制度というものが実質的に非常に後退をして、さっき申し上げましたような形で、形としては残っておりますけれども、最初できましたときのような意味はいま非常に減退してきておる。むしろ本来の階級でございます巡査部長、警部補という方に、さっきお話がございましたように非常に苦労して実務経験の豊かな刑事とかそういう専務係なんかは選考で入れていくという道が開けて、そちらの方を現在活用しているという状況でございまして、いわゆる枠の拡大と申しておりますけれども、階級構成、階級の基準の是正を行った結果、第一線で監督上の問題等で実はいろいろ問題点も出てきております。  今度の一連の不祥事案を起こしました警察官を見ましても、巡査部長、警部補という者が実は非常に多うございまして、この辺はかつての巡査部長、警部補では考えられなかったことではないかとも思われるわけでございます。そういうことで、この枠拡大自体もいろいろな意味の反省事項というか、内部の監督制度のあり方ということについては大きな問題点を投げかけたということもございますので、先生のお話のようなそういう第一線で実際苦労している人たちをどういうふうに処遇していくかということについては、さらに長期的にじっくり検討させていただきたいと考えております。
  132. 部谷孝之

    部谷委員 先ほどお話もありましたが、警察庁はことしの一月二十四日付で「警察職員の規律の振粛について」という通達を出しておられます。その中で「人事管理の徹底」という項目を挙げられまして、一番目に「厳正な規律の保持」、二番目に「身上監督の徹底」、三番目に「勤務意欲にあふれた明るい職場づくりの推進」、四番目に「再就職相談の充実」、このことは先ほどいささか触れられたわけでありますが、そういうものが必要である、こういうふうに述べられておりますが、まず、これらを具体的にどのように推進していこうとしておられるのでしょうか。
  133. 太田壽郎

    太田政府委員 これを具体的に推進するものは、結局各都道府県警察警察署あるいは警察署の中の課とか係という段階の分野もかなりあるわけでございます。そういうことで、警察庁といたしましてはただいまお話がございました次長通達を発し、そこに盛られている細かい事項について、いろいろ具体的な方策をこれまで各種の会議を開きまして徹底をさせております。これによりまして、各都道府県警察におきましては、それぞれの段階におきましてそれぞれの諸状に応じてそれを生かしていくという形で、現在作業を進めておるところでございます。
  134. 部谷孝之

    部谷委員 次に、「厳正な規律の保持」に関連してでありますが、今回の事件をながめますと、幹部職員の部下に対する掌握、これが不十分であると思われます。そこで、外勤警察官の職務の掌握が大変大事な問題であると思うわけでありますが、この点についてはどのような改善策をとっていかれるのでしょうか。
  135. 太田壽郎

    太田政府委員 外勤警察官は数も非常に多うございますし、第一線でいろいろ重要な仕事をやっているわけでございますが、外勤警察官についての把握の問題、身上指導の問題につきましては、個々面接の充実だとか身上把握用の個人記録の活用とかそういう身上監督と、それからもう一つは各級幹部によります細かい指導、それから困り事等仕事の上あるいは個人的な生活上の悩みというものについてそれを解決していく各種の制度を各署、本部の段階に設けまして、外勤警察官の諸君が間違いを犯すことにならないように対策を講じているところでございます。
  136. 部谷孝之

    部谷委員 それから、「厳正な規律の保持」、これが必要な警察におきましては、「勤務意欲にあふれた明るい職場づくりの推進」が特に重要な意味を持ってくると思います。したがって、そうした「厳正な規律の保持」と「勤務意欲にあふれた明るい職場づくり」というこの両者がうまく調和しなければならぬと思うのですが、その方法につきまして、たとえば外部の専門家の意見を聞いてみる、そんな試みもあるいは必要ではないか、こういうふうに思うのですが、その点、いかがですか。
  137. 太田壽郎

    太田政府委員 まさにそういうことだろうと思いますが、警察庁におきましても、警察教養のあり方の問題あるいは警察制度をめぐる重要な問題等につきまして、部外の有識者の御意見も大いに聞きながらこれまでも進めてきたところでございますが、今後ともそういう方策をさらに進めてまいりたいと考えております。
  138. 部谷孝之

    部谷委員 それから「再就職相談の充実」でありますが、このことは先ほど少しお触れになりましたが、この問題は警察だけの問題としてでなく、広く知事部局あたりともいろいろと相談し、協力してやっていくべきではないか、こういうふうに思うのですが、警察庁としてはどのようなお考えですか。
  139. 太田壽郎

    太田政府委員 現在、各都道府県におきましても、いまお話しのような配意を持って、それぞれ関係の知事部局とも連絡をとりながら、再就職先の開拓というようなことに当たっているところでございます。
  140. 部谷孝之

    部谷委員 自治省は、そうした警察庁の期待に大体こたえるようにやっておられますか、いかがですか。
  141. 坂弘二

    ○坂政府委員 御質問の点につきましては、各都道府県におきましてその実情に応じ、知事部局と警察本部とが協力しているものと思いますが、今後も実情に即して協力が進められることが望ましいと考えております。
  142. 部谷孝之

    部谷委員 次に、警察官に対するせんべつの問題であります。  三月十八日の朝日新聞によりますと、社団法人宮城県指定自動車教習所協会が、宮城県の県警の幹部へのせんべつにつきまして贈呈要領というのをつくりましてこれを制度化し、八年前からせんべつを贈り続けてきておる、こういう記事が実は出ておるわけであります。このような報道に接しますと、本部長とか署長とかその他幹部が退職、転任される場合に、同時にまたほかの地元の企業とかあるいは関連企業、そうした部外の人からせんべつを受ける、そういう慣行があるのではないかと想像されるわけであります。このようなせんべつが刑法上の賄賂性を帯びるかどうかは別といたしましても、このような慣行それ自体、私は好ましいものではないと思います。  一般に公務員が転任したり退職する場合には、その部内でお互いにせんべつを贈ったりすることは、社会通念上別段問題になることではないと思うけれども、その職務に関連した企業あるいは業界、そういうところがらもらうのはやはり問題だ、こういうふうに思うわけであります。まして、本来その職務執行に当たって公正中立かつ清廉でなければならない警察官がそのようなせんべつを受けるということは、職務の公正さに疑問を持たれることになると思うわけであります。  そこでお尋ねですが、警察部門で警察官の転任や退職に際しまして地元企業や関連業界等からせんべつを受ける、そういう慣行はあるのですか、ないのですか。(「あるからそういう新聞記事が出るんだ」と呼ぶ者あり)
  143. 太田壽郎

    太田政府委員 そういうようなことが広く行われているというふうには承知いたしておりません。
  144. 部谷孝之

    部谷委員 こちらからお話しのとおり、そういう事実があるから宮城県のあの記事というものが出てきたわけでありますが、この報道については警察庁はどのようにお考えですか。
  145. 太田壽郎

    太田政府委員 本来せんべつにつきましては、全く善意による儀礼的なものであれば、本人の良識によって判断すべきものであるというふうに考えるところでありますが、疑惑を持たれるということのないように配意すべきは当然でございます。なお、全く善意なものでありましても、ただいまお話がございましたような許認可あるいは取り締まりの対象業者等からの場合には厳に避けるべきであり、そのように指導しているところでございますが、今後ともこの指導を厳しく徹底してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  146. 部谷孝之

    部谷委員 次に、調書偽造事件に移ります。  兵庫県警の事件におきましては、まさに驚くべきことに、主犯の警察官が部下四人に命じまして架空名義の参考人調書を四十五通も作成し、これに基づきまして被疑者を送検し、またこのような調書に基づいて裁判が行われたということであります。この報道は、いみじくも十年前の京都府警の事件を思い出させるわけであります。すなわち、京都府警の峰山警察署の防犯少年係長と係員の二人が被疑者供述書、被害届等を偽造し、無実の少年六人を窃盗犯人に仕立て上げたという事件でありました。このたびの事件が必ずしもそのときと同じようなケース、つまり、でっち上げのところでは必ずしも一致はしないけれども、しかし、調書偽造という全く言語道断のことが行われたわけでありまして、このような裁判の基礎となる資料を偽造するという行為、これはきわめて悪質な職務犯罪でありまして、極言するならば司法制度に対する挑戦である、こういうふうに言えると私は思うわけであります。  そこで、この事件内容というのを簡単に述べていただけますか。
  147. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 お尋ねの兵庫県警で発生いたしましたにせ調書事件は、先ほど来話題になっております贈収賄事件捜査の過程で判明したものでございまして、その後広範に捜査を進めた結果尼崎中央署関係では松葉警部補外五名、また尼崎北警察署関係では橋口警部補外四名が、風俗営業等取締法違反事件、売春防止法違反事件、わいせつ写真誌の販売目的所持及び販売事件など十二の事件捜査に際しまして、五十一通の参考人供述調書につきまして、いずれも架空の事件をつくり上げたものではございませんでしたが、参考人の住所、氏名、職業などにつきまして偽りのものを記載したという事実が明らかになりました。調書の偽造というようなことはあり得べからざることでありまして、私どももまことに遺憾に思っておるところでありますが、兵庫県警で捜査をいたしまして、四月十四日、虚偽有印公文書作成、同行使の被疑者として神戸地方検察庁に送致をしたところでございます。
  148. 部谷孝之

    部谷委員 この調書偽造事件に対する法務省の見解も、ひとつ聞かせていただきたいと思います。
  149. 飛田清弘

    ○飛田説明員 神戸地方検察庁におきましては、ただいま警察御当局の方から御答弁がありましたように、四月十四日に警察官十一名について事件送致を受けまして、そのうち六名につきまして起訴し、残りの五名につきましては不起訴処分にしておりますけれども、法務省としての考えというか意見ということでございますが、こういうことはあり得べきことではございませんし、今後ともあってはならないことだというふうに感じております。
  150. 部谷孝之

    部谷委員 このような事件が二度と起こってならないことは当然でありますが、警察庁はこの再発防止対策としてはどのようなことを考えておられますか。
  151. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 今回の調書偽造事件の原因を考えてみますと、一つには、やはり松葉保安係長の個人的な資質の問題があったろうと思いますが、もう一つは、監督機能というものが十分機能しておらなかったという点が十分反省をされるわけでございます。そういったことから、警察庁といたしましては、一つには、警察本部警察署に対する事件捜査についての指導強化、それから幹部による指揮掌握、特に協力者の運用といったような面についてのチェックの徹底、あるいはこれはイロハのイでありますけれども、捜査員に対する基本的な教養の徹底といったようなことについて今後施策を講じる、こういった所存でございます。
  152. 部谷孝之

    部谷委員 今後の対策につきましてまだお尋ねしたいことがあったのですが、時間が来たようでありますので、最後に国家公安委員長、自治大臣にお尋ねをいたします。  わが国が世界の先進国の中でも、国民が安全に生活できるという治安のよさの点ではトップレベルにあり、これは一人一人の警察官の努力国民協力にあるということは、冒頭に私が申し上げたところであります。しかるに、今回のような一部の不良警察官の犯罪が、日夜黙々と職務に従事しております他の善良な警察官の士気を低下させ、また国民警察に対する信頼を著しく失墜させたことは、まことに遺憾だと言わなければなりません。今後、全国警察官の士気を高揚し、国民警察に対する信頼を回復するために、国家公安委員長はどのように対処されるのか、御見解を伺いたいと思います。
  153. 山本幸雄

    山本国務大臣 先ほど来、去年来起きました数々の事件についていろいろお尋ねをいただきました。警察としては厳しく反省をしていかなければならないと思います。警察に対する国民の信頼というものを一日も早く回復するように、二十万の警察官はその気持ちでいまやっていてくれる、こう私は思っております。  この事案は、主として業者に接触する防犯あるいは保安の部門で多く起きた。業者との狎昵、なれなじむということは深く戒めなければならないことであります。したがって、警察の体制としましても、やはり保安部門については同じところに余り長く置かない。先ほどの話にもにせ調書ということですが、調書の内容、実態はつくりごとではない、ただ住所、氏名を違った人の名前、架空の名前であったかわかりませんが、そういうものにしたということでありまして、しかし、それはやはりにせ調書には間違いないわけでありまして、これなども非常に熟達のベテランになっていた、個性の強い人、それがそういう指導をしたということ、それなどもやはり今後の保安部門を運営していく上の大きな参考になったと私は思います。  全体としまして、今後ともそういう人事管理のことあるいは警察教養の問題など、ひとつ一層規律を引き締めて国民の期待にこたえられ、また懸命にやっている同僚を裏切ることのないように、組織として、先ほど来いろいろ事件をお挙げになりましたが、それを反省の資として私が今後ともいろいろ指導をしてまいりたい、かように思っております。
  154. 部谷孝之

    部谷委員 終わります。
  155. 田村良平

    田村委員長 三浦久君。
  156. 三浦久

    三浦(久)委員 質問に先立ちまして、質問のために必要な資料を各委員並びに政府委員に配付をいたしたいと思いますので、お許しをいただきたいと思います。
  157. 田村良平

    田村委員長 承知しました。
  158. 三浦久

    三浦(久)委員 私は、まず最初に、大洋漁業グループ、いわゆるマルはグループと言われている会社の一つであります林兼商会というのがあります。この林兼商会の土地売買や宅地造成をめぐる疑惑についてお尋ねを申し上げたいと思います。  この問題は、わが党がすでに参議院の建設委員会また予算委員会で三回にわたって質問をいたしておりますので、住宅・都市整備公団も警察庁もその概要は御承知だと思います。しかし、その後われわれのところに続々と資料が集まりまして、新しい事実が判明をいたしております。こういう事実関係を踏まえてまた新しく質問をさせていただきたいと思うのです。  公団、お見えになっておられますね。まず最初に公団にお尋ねいたしますが、疑惑の一つは、福岡県筑紫野市塔原地区にある林兼商会所有の約十三万坪の土地、この広大な土地を公団に売却をする、売却の日にちは五十七年四月二十二日になっておりますが、総額三十七億円、こういう売買契約がなされたことは間違いございませんね。
  159. 久保田誠三

    ○久保田参考人 公団は、昭和五十七年四月以降約六十一ヘクタールの土地を取得しております。そのうち、いま先生からお話のありましたように、林兼取得分が同年の四月と五月にわたりまして約四十二・四ヘクタール、約三十七億円になっております。その他公社、個人を含めまして六十一・二ヘクタール、約五十億三千五百万円になっております。
  160. 三浦久

    三浦(久)委員 疑惑が持たれておりますのは、この土地の値段が近隣の土地に比べて不当に高いということ、また、市街化調整区域であるからこれを市街化区域にする、そのための政治工作資金が大量に流れたのではないかという点であります。  公団は、この土地の売り込みや価格決定に当たってフィクサーが暗躍したことは否定いたしております。しかし、林兼商会は、この土地を公団に売り込むために、平川芳延という者にその売り込みを依頼いたしております。そういう証拠があるのであります。平川芳延は、北九州市戸畑区明治町に住んでおりますが、元林兼商会の顧問であります。  この林兼商会は、この平川と昭和五十五年九月十五日にその売買のための契約を結んでおります。その契約書自身は私どもの手元にございませんけれども、その五日前の九月十日に小山専務、これは林兼商会の代表取締役専務でありますけれども、この小山専務が自筆でもって書いた契約書の原案があるのです。  資料をお持ちですね。そのNo.1を見てください。これを全部説明しているととても時間がありませんから、説明を省略いたしますけれども、ほぼこの内容で決まっておるのですね。ところが、第五条にこれは金額が書いてある。この金額は三十四億五千万円林兼商会が受け取れば、後は幾ら高く売ってもその差額分は手数料として全部平川に入る、そういう契約であります。しかし、この部分が改正になりまして、十五日の契約では、売買総額の一〇%を支払いましょう、それに一億円プラスする。この一億円の趣旨は説明いたしませんけれども、そういう契約。ですから、当時約四十億円ぐらいで売り込めるだろうというふうに思っておったので、約五億円の報酬契約を結んでおるわけなのであります。そのことは、この資料のNo.6に平川覚書というのがありますが、これも後で読んでいただきたいと思いますけれども、それに詳細に経過、内容が出されております。  平川芳延氏は、自分の不動産業の仲間であります大関剛夫をこの仕事の協力者として一緒に仕事をするようになります。また小松康彦、これは志村公団総裁が認めておりますように、志村総裁と大変親しい間柄だそうですけれども、この小松康彦という人物を情報入手のための協力者として、二千万円を謝礼として支払う、こういうことを約束をして仲間として使うわけであります。  公団は、こういうフィクサー役をした平川、大関小松、こういう人物を知っておられますか。
  161. 久保田誠三

    ○久保田参考人 存じておりません。
  162. 三浦久

    三浦(久)委員 平川氏らは政治家や有力者にいろいろと働きかけていることが判明をいたしております。資料No.7、この平川メモによりますと、この土地の売り込みに当たって、昭和五十五年の十月ごろであります、まず最初に自民党の田原隆代議士が公団の福岡支社に行ったというふうに書かれてあります。福岡支社というのは九州支社の間違いだろうと思うのですけれども、九州支社に行った。それで滝井部長、これは当時の支社の開発部長だと思われます。これと面談をしたということが書かれてあります。こういう事実はありませんでしたか。
  163. 久保田誠三

    ○久保田参考人 お答えいたします。  そのような事実はございませんでした。
  164. 三浦久

    三浦(久)委員 その後、古賀雷四郎という参議院議員、この方がまた公団の九州支社を訪れてやはり滝井部長と面談をして、そしてこの売り込みを打診をしているということが記載されておりますけれども、そういう事実は御存じございませんか。
  165. 久保田誠三

    ○久保田参考人 その点も、事実はございません。
  166. 三浦久

    三浦(久)委員 同じ平川メモには、ちょうど同じころ、まだ正式に林兼商会から売却の申し入れがある前に、県庁の係長、私、名前を知っておりますし、あなたたちも知っておると思いますけれども、特に名前は言いませんが、県庁の係長が公団の九州支社を訪れている、そして売り込みを打診している、そういう記事が載っていますけれども、こういう事実はあるのでしょう。
  167. 久保田誠三

    ○久保田参考人 先生のお話の福岡県のA係長が、昭和五十五年十月六日に、林兼商会からの依頼を受けたと言いまして、九州支社の担当係長に話を持ち込んだ事実はございます。その後を申しますと、同年十一月に市から公団に対し開発要請があり、また、同年十二月に林兼商会から直接土地譲渡の申し込みがありましたので、その後A係長との接触はありません。  以上でございます。
  168. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、公団としては、この売り込みや価格の決定に当たって政治家その他社会的な有力者の働きかけは全くなかった、こういうように考えておられるのですか。
  169. 久保田誠三

    ○久保田参考人 先生のおっしゃるとおりでございます。
  170. 三浦久

    三浦(久)委員 これは、厚くなるので裏と表と印刷していますのでちょっと読みにくいと思いますけれども、資料のNo.8、註文書というのがありますね。おわかりですか。註文書の裏に仮領収書というのがあります。第二議員会館四三〇号室田原事務所山元廸夫さんという方が六千五百万円受け取った、こういう仮の領収書があるわけであります。これは、同時に進行している観音浦、林兼商会が自分の土地を宅地造成いたしておりまして、やはり十三万坪ですが、この宅地造成に絡んでの話なのです。  これでは六千五百万円の工作資金が流れたと言われておりますけれども、その六千五百万円のお金を捻出するために、結局架空の工事をでっち上げる、それがこのマルは印のついた註文書であります。そして、一時田原事務所にその金を振り込む、そのときの仮領収書。そして、この仮領収書には、「当該仮領収書は昭和五十六年三月十五日迄に施工業者に差替え」る、施工業者のものに差しかえる、こういうようになっておりますね。そして、その差しかえられた部分が、その次に覚書があります。これはオートン商事株式会社と林兼商会との覚書ですが、ここでこういう契約を結ぶ。そして、お金を受け取ったことにして、もう一つその裏にありますが、これは正式な六千五百万円のオートン商事から林兼商会あての領収証が切られているわけであります。  こういうように、観音浦の宅地造成に関しては、田原事務所に六千五百万円のお金がほうり込まれているわけです。ということは、結局観音浦の宅地造成では田原隆代議士が関与しているということは明白だ。そうすると、同じ時期に林兼がやはり土地の売り込みをやっているわけですが、それに田原代議士も関与していないはずはない。特に当事者である平川のメモにそのことが詳細に書かれてありますので、私はよけいそういう感を深くしているわけであります。こういう事実関係について公団は知りませんか。
  171. 久保田誠三

    ○久保田参考人 お答えします。  存じません。
  172. 三浦久

    三浦(久)委員 この二つの事件は同時に進行しておって、同じ人物が双方に関係してくるわけであります。私ども一から十まで全部証拠を握るわけにいきませんけれども、これだけの証拠をわれわれは収集して質問をしているわけであります。したがって、われわれはそういう疑いが非常に濃いということをまず公団に指摘しておきたい。それからまた、警察庁の関係の方もお聞きになっていただいておると思いますけれども、そういう金が流れた、その金がどういうふうに流れていったのかということ、このことはしっかりと御調査いただきたいと思います。  それで、先に話を進めますけれども、この前三月二十三日の参議院の建設委員会でわが党の上田耕一郎議員が指摘しましたピストル事件です。これは、いまの筑紫野市の塔原地区の土地を公団に売り込んだその後の話であります。大関剛夫という人物が小松康彦、これは一緒に仕事をしておったのですが、仲たがいしまして、小松康彦にピストルでおどかされたという事件でありますが、これは事案の性質上きわめて悪質だ、特にその背後関係を見れば看過することのできない事件だと思っておりますけれども、どういう捜査をされたのか、お尋ねいたしたいと思います。
  173. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 ただいまお尋ねのピストルの関係につきましては、警視庁と福岡県警の方で関係者から事情聴取を行っております。現在までのところ具体的事実の確認に至っていない、こういう報告を受けております。
  174. 三浦久

    三浦(久)委員 それはちょっとおかしいのじゃないですか。われわれも平川と大関からずっと事情を聞いているのですよ。資料をいっぱい持っています。いまこれからお話ししますけれども、具体的事実の確認に至らないというのは、確認しようとしないから確認できないということではないかと私は思うのです。  この事件の発端、それは五十七年七月三日なのです。上田議員は、赤坂の東急ホテルでと言われましたが、その当時はそういう情報だったのですね。しかし、その後関係者の証言をいろいろ聞いてみますと、赤坂のプリンスホテルの一階のティールームに大関が、住吉連合会池田会武尾組の最高幹部であります武尾将治と鈴木龍次、この二人から呼び出しを受けます。そして行くわけです。このときに大関というのはおどされるわけです。このときにはまだピストルは出しておりませんけれども、おどされるわけです。そして、おれは林兼商会から頼まれてきたのだ、筑紫野の土地の報酬の件、五億円、これはあきらめてくれ、そしていままで林兼商会が平川に渡したいろいろな資料も全部返せ、こういうことを言われるわけです。  それで、そのときは何とか断って別れたわけですが、その数日後、全く同じ場所に呼び出されます。そのときには、この武尾と鈴木、そのほかに小松が加わります。そしてそのときに同じように、おまえもうやめろ、あきらめろ、そして一切清算済みです、そういう文書に判こを押せ、こういうことを強要されるわけですね。資料も返せ。そのときに小松がピストルをアタッシュケースから出して、そして差し向けたというのですね。これは大関の証言ですから間違いないと私は思うのです。そして、おどかされたけれども、大関は、報酬はちゃんと代表取締役専務の小山とやっているんだ、五億円もらうという約束でわれわれずっとやっているんだ、関係者も二十人ぐらいおる、その人たちにもいろいろお礼をしなければならないので、だから一銭ももらってないで清算済みだなんという書類に判こを押すわけにはいきません、こう言って断り続け、とうとう断ることができたのですね。  こういうふうにわれわれは関係者の証言等々、また証拠書類等から判断しておりますけれども、警察庁捜査の結果、こういう事実関係、把握されていないのですか。
  175. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 事情聴取の結果、いろいろと状況は把握しております。いまのお話の関係人からも詳しく事情聴取を行っておりますが、いろいろと供述その他変わりまして、いまのところ、先ほど言いましたように確認するに至ってない、こういう状況でございます。
  176. 三浦久

    三浦(久)委員 これはしかし、私の言ったことが事実であるとすれば犯罪でしょう。どんな犯罪ですか。
  177. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 銃刀法違反、脅迫、いろいろと犯罪が成立する可能性があると思います。
  178. 三浦久

    三浦(久)委員 それでは警察庁、この武尾、鈴木、小松、暴力団、小松もいまは暴力団の準構成員になっているようですが、なぜこの三人が大関を呼び出してピストルでおどかしてまで資料の返還を求めたり、またいわゆる報酬請求権の放棄を求めたりしたのかということです。これは林兼商会、それとその代理人である福岡市に住んでいる荒木弁護士、この弁護士が、林兼商会、そしてそれは代理人の荒木が実務を担当しましたが、小松、武尾、鈴木との間に約束を交わしている。はっきり言えば、殺し屋を雇って刺客を差し向けたというようなことをやっているわけです。  覚書がございます。No.3ですね。タイプで印刷したりっぱなものです。これは、小松がいろいろ土地の売買で動いたので、一見その仲介手数料のような形式をとっております。しかし、この三の部分、ここをごらんになっていただければおわかりになりますように、おまえに四千五百万円上げましょう、そのかわり、おまえは平川と大関、これから請求権放棄の書類を取ってこい、その書類の内容はこの三の(2)の内容だ、そういうことなんです。これは裏にもありますね。そして弁護士、名前は消しておりますが、荒木弁護士であります。われわれは荒木氏と会っておりますから、はっきり断言いたします。ですから、小松と荒木、林兼商会の代理人である荒木との間にこういう契約書を結んでいるのですよ。これは殺し屋の契約じゃないですか。  そして、念が入っていることに、その二枚目をごらんになっていただきたいと思いますが、保証約定書というのがありますね。そして、それは暴力団の武尾と鈴木の署名入りであります。林兼商会あてです。そして、そういう書類を小松が取ってくること、資料を取り戻してくること、そのことについてはおれたちも一緒にやって、それが成功するように保証すると言っているのですね。暴力団三人と林兼商会はこういう契約を結んでいる。そして四千五百万というような報酬を与える、こういう契約をしているのです。警察はこういう事実を知りませんか。
  179. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 警察といたしましても、この前委員会でいろいろお話がございまして以来、各方面、各般にわたっての情報収集をやっております。いろいろと情報を収集いたしておりますけれども、その具体的な内容については、情報収集中でございますので答弁は今回は差し控えさせていただきたいと思います。
  180. 三浦久

    三浦(久)委員 これは私、大変なことだと思うのですよ。大洋漁業というと百五十億円の資本金を持っている会社ですよ。林兼産業というのは四十四億円の資本金を持っていますね。そしてその子会社である林兼商会は一億八千万円の資本金です。そして中部一族の中部一次郎というのが林兼産業の社長でもあり、この林兼商会の社長でもあるわけですね。そしてまた、彼は安倍外務大臣の後援会の会長でもあるわけです。いわゆる社会的に地位のある会社といいますか、そういうものが殺し屋まで雇って、契約をして四千五百万出して刺客を差し向けるような、そういうことを平然とやるなんということは、私は絶対に見逃してはならないというふうに思います。小松はこう言っているんです。荒木弁護士がどんなことをしてでもいいから書類を取ってこい、こう言ったというのですね。荒木弁護士に聞きますと、いやピストルを持っていけとまでは言っていない、こう言っているんです。大変な弁護士がおりますね。  こういう事実関係、ある程度お知りになっていらっしゃるようですけれども、私は共犯だと思うのですよ。林兼商会のこういうことを計画した人間と暴力団員が、ぐると言いますけれども、法律上は共謀共同正犯というのですか、共犯関係にあると思うのです。そういうことはお調べになっていらっしゃいますか。
  181. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 先ほども御答弁申し上げましたとおり、各般にわたって幅広く現在情報収集中でございます。
  182. 三浦久

    三浦(久)委員 ところが、これが成功しなかったわけですよ。そうすると、それからまた数日たってからです。今度は平川に役者をかえて別の刺客が送られるのですよ。それはだれかといいますと、井村陽一であります。これは暴力団山口組系伊豆組の元構成員であります。もう一人、進藤貢、これは現在暴力団工藤会の構成員であります。この二人を今度は七月八日に平川の戸畑区の自宅に差し向けます。そして、そこで井村と進藤はピストルをちらつかせながら同じようなことを言うわけですね。資料を返せ、この書類に判こをつけ。そのことは、これはちょっと資料に入れるのを忘れてしまったのですが、五十七年十二月十五日付の平川発林兼商会の中部一次郎社長あての内容証明に詳しく書かれております。  それによりますと、「貴社差し向けの暴力団が拳銃をちらつかせた上での強引なる此の暴力団の強迫強要の為、不本意にも私の意志を曲げざるを得ない状況下で」この署名は「為されたものです。」こう言っているのですね。そして、その署名というのが、資料のNo.4にあります念書、これは平川が林兼商会あてに書いたものであります。ここで彼は七月八日に心ならずも屈服するわけですね、ピストルをちらつかせるから。そうしてこういう念書を書いたわけです。  余り長くしゃべるといけませんから、その辺でちょっと区切りますが、こういう事実関係はお調べになっていらっしゃいますか。
  183. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 いろいろ調査をいたしております。
  184. 三浦久

    三浦(久)委員 もう調査という段階じゃないと思うのですよ。調査というのは、捜査に至る前のことをあなたたちは使い分けて言っておられますね。もう調査の段階じゃないでしょう。これだけの資料をあなたたち握っているというのなら、もう捜査をしなければいけない時期に来ているのじゃないでしょうか。  そして、ちょっと経過を言いますと、平川は向こうの持ってきた念書を見てびっくりしたわけです。なぜびっくりしたかというと、「仲介」という文字が入っているからですね。「売買契約に関連する調査仲介その他一切の役務にかかる費用、報酬は全部清算支払をうけました。」こうなっておる。すると、「仲介」というようなことが書いてあると、自分は不動産取引業の資格を持っていない、だから林兼商会がこれを書かせた上で、後でさあ業法違反であるとか、さあ脅迫であるとか、恐喝であるとかいうようなことでおれを陥れようとしているのではなかろうかと、そう察知した。それで彼は強引にこの「仲介」という文字を消さしているのです。これを見てください。消しております。そういう経過があるわけであります。  そしてその後、お尋ねしますが、こういう念書をとったので、一件落着と思ったのでしょう。林兼商会、これは井村陽一に五百万、小松に二千万円、武尾と鈴木に二人に二千万円、合計二千万円ですね、こういうように支払いをしているわけでありますけれども、こういう事実関係はつかんでおられますか。
  185. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 最初にお断りしておきますが、先ほど捜査調査お話がございましたが、われわれは事実関係をまず把握をするということで、事実関係の把握の段階においては調査という言葉を通常使っておるわけでございます。したがって、現在事実関係を把握しておる最中でございますので、調査中ということで申し上げたわけでございますが、ただいま御質問になりました点につきましても、いろいろと調査中のものでございます。
  186. 三浦久

    三浦(久)委員 答えは同じ答えしか出てこないわけでありますけれども、私の方で事実を指摘しましょう。  ちょっと先ほど落としましたけれども、七月八日の井村、それから進藤と平川とのやりとりの問題、おどかされた問題ですけれども、このときには井村陽一は、三千万円を支払う、そういうことも約束した一人です。それで八日にそういう合意ができるのですね。そして、書面が七月十二日になっているのは、そういう合意に基づいて十二日に書面をつくり、その日に三千万円の授受が行われた、そういうことであります。そして、いま言いましたように、井村、小松、武尾、鈴木には林兼商会から多額の金が支払われる。林兼商会にすれば、五億円支払うよりも、この程度の金を支払っておった方が得だという、そういう考え方だろうと私は思うのですけれども、私はこれは全く反社会的なやり方だというので憤りを感ぜざるを得ないわけでありますから、早急に厳正に捜査をしていただくようにお願いを申し上げたいと思います。  なお、付言をいたしておきますけれども、この平川にやった三千万円、それから井村に渡した五百万円、計三千五百万円ですけれども、これはどういうふうにお金を捻出したのかということですが、その資料がNo.4にあります覚書と題する書面ですね。そして、これは甲と乙の契約になっておりますが、甲は株式会社林兼商会、そして乙は平川の代理人井村陽一、それともう一人進藤貢、こういう作成名義になっておるわけであります。しかし、これはもうこの文書の体裁からおわかりのように、平川自身は全く関与をしていないものであり、七月十二日というと、平川が覚書、いわゆる請求権放棄の書面に署名をした日ですね。これと同じ日にこういう書面がつくられているわけです。そして、ここで三千五百万円を平川に支払う、体裁上は平川の代理人である井村に支払う、こういうような、覚書というよりも契約書でしょう、こういうものをつくって、そして部内処理をして会社から金を引き出した、こういうことになっているのですね。  ですから、井村陽一とか進藤貢というのも、ただ単なる証言というだけではなくて、この書面上もはっきり名前が掲載され、そして判こまで押されております。ですから、井村や進藤貢がこういう関与をしたということははっきりした事実だと私どもは思うわけであります。  こういう事実関係については、調査中というふうに言われるのかもしれませんけれども、もう少し言えたら——私はいままでずっと一連の経過を述べましたから、その点について、まあこの点なら言うても差し支えないじゃないか、おまえがそのくらい知っているのなら、まあ言うてもしようがないだろうという程度のこと、あるでしょう。どの辺までと私は言いませんけれども、ちょっとおっしゃっていただけませんか。調査中、調査中だけでは、これだけ具体的に事実を指摘しているわけですから、余りにそっけない答弁だとあなたも思われているだろうと思いますので、お願いいたします。
  187. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 先ほどの繰り返しになるかもしれませんが、元来、警察のこの種の活動というものは、これは隠密でやるのが一番大切なことでございます。したがって、警察の知っておる状況、現在とっておる活動の状況がどの程度に行われておるかというようなことが公の席で表に出ますと、これからの活動なり何なりが非常にしづらくなる、こういうことで、従来からも中途でのお話は差し控えさせていただいておるという状況でございます。ひとつ御了解いただきます。
  188. 三浦久

    三浦(久)委員 私は、これは非常に反社会的な事件だと思います。暴力団を雇って、そして五億円の報酬を支払わないためにこういう暗躍をするというようなことは、私は許せないだろうと思うのですね。特に、先ほど言いましたように、中部一次郎というのは安倍外務大臣の後援会の会長なんですよ。そしてまた、いろいろ政界とつながりがあります、この会社は。そういうことで捜査の手を差し控える、そういうようなことは絶対にあってはならぬというふうに私は思いますけれども、その点の御決意を承りたいと思います。
  189. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 そういうことはございません。
  190. 三浦久

    三浦(久)委員 では、ちょっと個別な案件に入りますが、五十六年四月八日、この日に福岡市の料亭満佐で、筑紫野市の松田市長、公団の九州支社の開発部長である滝井さん、それから林兼商会の小山専務、彼らが会合を開いております。そして、そこで土地の売買の問題について話がなされておって、議事録が作成されております。この議事録は公団自身も認められております。私、それを拝見いたしましたら、松田市長などは、市街化調整区域を市街化区域に編入する、そのための議会の了承を取りつけます、滝井部長は、買収するかどうか今後検討したい、こう言っている。そのこと自体は何ともないことだと私は思います。そのこと自体は正規の職務を行っておることだと思います。  しかし、この料亭というのは一流料亭であり、大変高いのであります。私が調べましたら、三十四万円の支払いがその日にあったというのですね。一日ですよ。これは昼だったかな。林兼商会は三十四万円を払った。公団に言わせると、どこでやったっていいじゃないか、何も公団の庁舎の中でだけでこういう会合を開く必要はないんだ、どこでやっても構わないんだ。そのとおりでしょう。しかし、あなたたち自身が金を出すんならいいのだけれども、料亭での遊興費として林兼商会に三十四万円という金を出させるというようなことは、職務に関するいわゆる賄賂だと私は思うのです。それはもう判例もちゃんとあります。  警察に承りたいのですが、この五十六年四月八日の料亭満佐での三者の会合、この問題についてはお調べになっていらっしゃいますか。
  191. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 会合の事実については承知しております。ただしかし、裏づけその他いろいろなことにつきましてはまだでございます。
  192. 三浦久

    三浦(久)委員 これは、満佐にだれが払ったかと聞けばわかることじゃないですか。そして、社会通念上儀礼に及ぶような問題ならいいけれども、一回に三人で三十四万円という遊びの金まで林兼商会に出させたとすれば、それは職務に関する賄賂ですね。正当なことをやっておったっていかぬわけですよ。ですから、その点の事実関係もまだ把握していないというのは、職務の怠慢だというふうに私は思います。  時間がありませんから先に進ませていただきますが、諫山弁護士、小泉弁護士外全部で五名の弁護士が、昭和五十八年四月五日に、亀井知事の選挙確認団体である福岡県を明るく豊かにする会、略称明豊会と言っておりますが、この明豊会に三千万円の政治献金が林兼商会から行われた、全然届けられていないということで、政治資金規正法違反であるということでもって告発をいたしております。御存じのとおりですね。この捜査はどういうふうになっておりましょうか。われわれのその後の調査によりますと、三千万円じゃなくて、もう三千万円プラスされまして六千万円という事実がいま判明しつつあるわけであります。どういうふうに捜査をされておるのか、承りたいと思います。
  193. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 ただいまの件につきましては、福岡県警で四月五日に告発を受けております。その後関係情報の収集ということで、所要の捜査を行っております。
  194. 三浦久

    三浦(久)委員 それでは、もう一点だけその問題についてお尋ねしますが、筑紫野市の松田市長に林兼商会から、二千万円と当初言われておりましたが、われわれの調べによりますと五千万円にふくれ上がっておりますが、五千万円の賄賂が贈られたという複数の証言をわれわれは得ているわけであります。この点についてどういう捜査または調査が行われておるのか、お尋ねいたしたいと思います。
  195. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 お尋ねの件につきましては、現在情報収集の段階でございます。まだ犯罪となるべき事実の把握に現在の段階では至っておりません。もちろん、これは先ほどから重ねて申し上げておるわけでありますが、私どもとしましては、刑事責任を問うべき事実の把握ができますれば、当然のことながら厳正に対処してまいるつもりでございます。
  196. 三浦久

    三浦(久)委員 それでは、また別の機会に、いまの松田市長の点についてはもう少し具体的に質問をさしていただきたいと思います。  次に、奥田知事に対する暴力団の暴行問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  ことしの五月十日十二時四十五分ごろ、奥田知事が県議会の一階ロビーで右翼の石橋民雄に襲撃されるという事件が発生をいたしております。これは県庁舎内で執務中に右翼に襲われたという点で、議会制民主主義上全く許しがたい犯罪だというふうに私どもは考えております。幸い石橋が刃物を持っていなかったがゆえに大事には至りませんでしたけれども、奥田知事自身もその直後に、刃物を持っていたらやられておったな、そういうふうに述懐されておるわけですね。ですから、腹をがんと殴られているわけであります。全治三日という軽傷で済んだのは不幸中の幸いだというふうに私は思っておりますけれども、しかし、いろいろ考えてみますと、警備のあり方という問題について検討しなければならない問題があると思います。  もう時間がありませんから詳しくは聞きませんが、奥田知事が議会の一階のロビーでもって石橋民雄に暴行を受けた、その暴行の事実を、当時ロビー内に十名公安ないし警備警察官がいたわけでしょう、その人が一人も現認してないという、こういう事態は本当なんですか。本当だとすれば、どうしてそういう事態が発生したのでしょうか。
  197. 山田英雄

    山田(英)政府委員 私どもの把握しております奥田知事に対する傷害事件の概要から申し上げたいと思うのですが、五月十日の午後零時四十五分ごろに、福岡県庁内の議会棟一階ロビーのエレベーター前で、臨時県議会を終了して行政棟に戻るために奥田知事はエレベーターに向っておられたわけですが、そこのところに、いまお尋ねにもありました右翼団体のメンバーである石橋民雄、三十四歳の男が、やにわに右腕で腹部をこづくなどして全治三日間の傷害を負わせたというわけでございます。  この事実に至るまでに、当日は大日本愛国党の福岡支部の者が、支部長以下四人、車両一台で県庁周辺で奥田知事批判の街頭宣伝を行っておりました。そこで福岡県警察におきましては、十四人の警察官で愛国党の視察及び議会棟の警戒に当たっておったわけでございます。この四人の者は、街頭宣伝車一台で十時五分ごろから博多駅周辺で街頭宣伝を行っておりまして、そこで県議会の傍聴に参りました。入場券がないために議会棟の三階の傍聴人待合室に入って、議会終了とともに、奥田知事と議員の記念撮影が一階ロビーで行われまして、一階ロビーは二百人ぐらいの人がおられて大変混雑しておりましたが、そこへエレベーターでおりてまいりました。警戒に当たっておった警察官、十分注意しておったわけですが、大声を発したりしておりました。これが零時三十七分。この四人を行政棟方向に排除しまして、街頭宣伝車に乗車させて議会棟周辺から立ち去らせたわけでございます。  その間に、さらに行政棟方向にその愛国党福岡支部員を排除した後に、午後零時四十三分ごろに、青論社に属する次賀という右翼と玄洋青年同盟員である橋本という右翼が、さらにロビーに所在しておりまして大きな声を上げるという動向がございましたので、地下通路へ向かう方向に排除したわけでございます。  そうした二つの排除が相次いで行われたときに、知事周辺の十二、三人の集団がエレベーターの方に行かれたわけで、そこで知事周辺の集団のところでやや騒がしくなった、警察官はいま四人の排除、二人の排除をしておりまして、騒がしくなったので警察官がその場に直行したというのが経緯でございます。そうすると、氏名不詳の白っぽい上着の男が集団の中でわめいておる、知事の近くである、これはいけないということで一人の警察官が飛び込んでその男を羽交い締めにして集団から引き離し、そこで知事の身辺を警戒しながらエレベーターに同乗しまして知事室の方に行ったわけでございます。  そこで、右腕で腹部をこづいた暴行事実はそういうプロセスの中で現認は確かにしておらなかった、騒がしくなったので排除したというわけでございます。後刻知事からそういうネクタイを締められてこづかれたのだというお話を伺って、あのときの排除した男が被疑者であろうということで急遽速捜査に移りまして、その日の夜十時二十分、この石橋民雄という男の被疑事実を固めまして、傷害容疑で逮捕したという経緯でございます。したがって、お尋ねのように、十四人の警察官で警戒しておりましたが、いま申し上げた経過の中で、腹部を突いたという暴行事実自体は警察官として現認できておらなかったという経緯でございます。
  198. 三浦久

    三浦(久)委員 そこに問題があると私は思うのですよ。当時の警備、右翼が当時押し寄せてくるというのは十分わかっておったからこそ、警察も知事の身辺警護ということで警備警察を派遣しておったのだろうと思います。これは博多署とまた県警本部両方から派遣されておったようでありますけれども、そうすると、知事の身辺警護だということであれば、お互いに分担を決めて、こっちの排除はだれ、こっちの排除はだれ、そして知事の身辺を絶えず見守るのはだれというふうに任務分担を決めてやっておれば、こういうようなことは未然に防げたはずだと私は思うのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  199. 山田英雄

    山田(英)政府委員 石橋を含む青論社のグループ三名は、当日朝から県議会傍聴を行っておりまして、警官も視線内に入れておったわけでございますが、この石橋だけが駐車券を取りに一階ロビーのわきにある警備員室に入っていったということが後刻判明しております。三人の行動はそこで分かれまして、愛国党の四人と残った二人が視野に入っておって、一人の者はそのときには視線内に入っていなかった。その後六人の者の排除に努めている過程においてこの犯行が行われたわけでございまして、その一人の者の行動というものがその間見失われていたということは事実でございまして、今後の警備、警護上の教訓にいたしたいと思っております。
  200. 三浦久

    三浦(久)委員 その見失ったということが問題なんですよ。知事の身辺警護なんだから、それを任務分担してぴしっと決めておけば、こういうことは全く起こらなかったことだ。ですから、いま局長さんのお話を聞いていると、おれたちは右翼の陽動作戦にやられちゃった、そういう発言でしょう。それは全くお恥ずかしい、お粗末な話じゃございませんか。ですからその点を、身辺警護をやはりぴしっと任務分担をしてやるべきではなかったかということを私は指摘しているわけですが、お答えがありませんね。そうすべきじゃなかったのですか。
  201. 山田英雄

    山田(英)政府委員 奥田知事の初登庁から犯行が行われました五月十日までの間に、確かに右翼のいろいろな行動がございまして、延べ二十二回、三百六十三人、九十七台というような反対動向がございました。警察官はその都度警備のために出動して、延べ九百四十四人が出動して警戒したわけでございますが、身辺の警戒については同知事からの要請はなかったわけでございまして、五月十日以降警戒の要請も出されたという経緯がございます。  そういう意味で、ただいまは身辺に四人、あるいは県庁周辺、知事私邸に相当数の警察官を出して警戒しておりますが、もちろん警戒要請が出るまでの間にも、いま申し上げたような警察官を動員して万全を期しておったわけでございますが、たまたま、冒頭に経緯を申し上げましたように、一階ロビーの混雑の中にそういう事態が起きたということでございまして、直ちに排除しており、その後知事に随従してエレベーター内に警戒員が入って、知事室まで同行したということもございます。私ども見ておりまして、なし得る努力というものは福岡県警において当日しておったと思います。ただ結果的に、先ほど申し上げましたように、一人の行動というものが視線内から外れておって結果が発生した、このことについての教訓は今後受けとめてまいりたいと思っております。
  202. 三浦久

    三浦(久)委員 福岡県警は、万全の体制でやっておった、何の手抜かりもなかったなんて言ってないのですよ。やはりそういう手落ちはあったということを認めているのです。ですから、そう強弁なさらない方がいいんじゃないですか。それにまた、あなたたち、県警の三時の新聞記者会見で、そういう事実を否定されているのですよ、新聞記者から言われて。五時になって、十二時の事件を五時になってやっと記者会見で、はなはだ遺憾でありますがそういう事実がありましたなんて言って認めているという、これはやはり右翼に甘い体質というものが出ているんじゃなかろうかというふうに私は大変心配をするわけです。  特に、いまあなたがおっしゃった羽交い締めにした巡査部長さん、この方が羽交い締めにした後、そのまま放して、そして知事と一緒にエレベーターに乗って地下に行ってしまったのです。その後、しかしちゃんと、どういう連絡があったのか知らぬけれども、取り押さえているのですよ。ここに新聞にありますけれども、二人の警察官が石橋民雄を取り押さえていますよ。この後これを釈放してしまうのですよ。ですから、一たん取り押さえたものを釈放してしまう。あなた、二重の過ちを犯しているわけです。陽動作戦に引っかかって、犯人を視野から見失ってしまった、そしてやられた。やられた後取っつかまえたけれども、すぐ釈放してしまう。そしてまた夜の十時過ぎにやっと逮捕するというような、そういう不手際を起こしているわけであります。  ですから、こういうことは私は、もう時間がありませんから余り長く言いませんけれども、しかし、やはり警察官の教育というような問題とか、さらにまた右翼に甘い体質であるとか、また奥田さんが革新知事だから余りしっかり守らなくてもいいんだろうみたいな、そういうような警察官の心のたるみ、そういうようなものも私は原因になっているのじゃないかと危惧いたしております。ですから、今後そういうことのないように厳重な警護をしていただきたいと思います。  それで、国家公安委員長にお尋ねいたしますが、先ほど私は、林兼商会の暴力団を雇ってのああいう反社会的な行動について、事実を具体的に挙げ、証拠も挙げながら指摘いたしたわけでありますけれども、こういう問題の調査捜査そういうものを厳正、公平にやる意思があるのかどうか、国家公安委員長としてのお考えをお伺いしたいと思います。
  203. 山本幸雄

    山本国務大臣 お話を承ったのですが、大変複雑なようですが、先ほど来刑事局長が、警察側の調査をしている、こういうお答えをしておりますので、それで御承知おきを願います。
  204. 三浦久

    三浦(久)委員 終わります。
  205. 田村良平

    田村委員長 中山利生君。
  206. 中山利生

    ○中山(利)委員 お疲れでしょうけれども、あと十分か十五分、簡単にやりますので、ごしんぼうを願いたいと思います。  先ほどからお話がございましたように、私も日本警察というものに対して高い評価を持っておるわけであります。治安状況、検挙率ともに世界一でありますし、民主警察のかがみと言われておりますようなフランスの警察などに比べても、日本警察の方がはるかに民主的だという評価を持っております。そういう高い評価を前提にして、なおかつ日本警察に、国民の信頼を得られるようなりっぱな警察になってほしいということで、以下のことを申し上げることを御了承いただきたいと思います。  実は、非常に残念なことですが、去年の秋ですか、偶然の機会から二百人近い若い人たちに警察についての印象を伺ったことがありました。私は、警察を好きだという人は恐らくないだろうと思っておりましたが、いろいろ聞いておりますと、もう嫌いというのを通り越して、何か恐怖感みたいなものをさえ感じさせられるような反応があったわけで、私は非常に高い評価を持っていただけに、大変残念な思いを持ったわけでございます。  これは、最近「西部警察」だとかテレビの警察ドラマですか、番組が、取り調べ等に相当な暴力を使ったり、ピストルをむやみに撃ち回したり、そういうことから来る影響もあるでしょうし、昔のいわゆるおかっぴき的な警察あるいは戦前の警察といったようなイメージがいまでも強く国民の中に根差しているのではないかなという感じがしたわけでありますけれども、いままでのように法はきちっと守るべきであるし、重罪犯人、凶悪犯人はもう厳罰に処せられるべきであるし、自分の意思でなくてもルールを犯した者はペナルティーを科せられるべきものである、そういうものは国民の一つの義務でもあるというふうに私は理想的な考え方をしていたのですが、そうでなくて、その逆の見方をするようになりますと、いろいろな事例があるわけであります。  この間も、実は偶然、朝出かける支度をしながらテレビを見ておりましたら、ある少女が、自分のお母さんからいろいろ日ごろの行状を責められて、実は何人かの男の人に麻薬を注射されて暴行されたということを話したために、その人の親戚の人が警察に訴えたということだったのですが、それが全くのでたらめであることがわかって釈放されたわけですが、その間、おまえ何をやったんだ、本当のことを話してみろ、正直に話せば気が楽になるぞとかいうことをしつこくしつこく質問をされて、最後には何か自分がそういう悪いことをしたような気になってしまったというようなことを、女のアナウンサーのインタビューに答えて話しておりました。  そういうことが、いろいろ聞いてみますと、全然皆無だというわけにはいかないようであります。昔とは違いますけれども、拷問といいますか肉体的な圧迫を加える、いすをけ飛ばす、それから大きな声を出す、拷問に近いような取り調べ方法が現実に行われるということを聞いておりますし、そういう拷問を加えなくても、警察の取り調べ室だとか留置場だとかそういう特殊な雰囲気の中では、身に覚えのないようなことでも認めてしまうという事例がたくさんある、そういうことも聞いているわけであります。それから、大多数の捜査官はりっぱな取り調べをしているわけですが、中に、ときどき何かサディストではないかな、被疑者をことさらにいじめて楽しんでいるのではないかなと思われるような異常な精神状態を持った捜査官がいるような感じがいたします。  また、こういうことに対して、一般の市民、庶民というのは、自分の権利を本当に主張をする、弁護士を頼んだり裁判にかけたりして最後まで身の潔白をみずから証明するということが必要であろうと思うわけですけれども、中にはその証明をすることが、逆に、いろいろな証人を警察に呼び出されて同じような質問を受ける、また、検察庁や裁判所へも出頭しなくてはならない、そういうことで迷惑をかけるよりも、自分は身に覚えがないんだけれども、警察から疑われているものを認めて、そしてそのことによって自分の社会生活を守っていこうというような、何といいますか、庶民の知恵といいますか、権力に対する庶民のささやかな抵抗というものがあるんではないかな、そういう事実があるということを、私は幾つもの事例を見ているわけであります。こういうことで、当局はこのことを十分に配慮して、これからもいろいろな捜査にかかっていただきたいと思うわけであります。  それから、わが国制度は、警察の取り調べ、検察がまたそれを検察の別な立場から、角度から取り調べをする、裁判も三審制ということで、国民の権利を守るということに順次チェックを重ねていって誤りなきを期しているわけでありますが、これも何か十分に機能をしていない。先ほど私が申し上げましたようなことがそのまますんなり裁判の判決となって決着をしてしまうというような事例が余りにも多いんではないだろうか、そういうことを検察も裁判官も、その取り調べの調書にある言葉の外にあるもの、本当の庶民の人柄とか性格とか、その置かれた立場というものをもっともっと考えていかなければいけないんではないかと思うわけであります。きのうの日石・土田邸事件などの判決の中にも、「予断のもとに被告たちを犯人と断定し、客観的な証拠への配慮を欠いたまま自白獲得に固執し、それが真相解明を妨げた」というふうに言われるようなことが今後ないように、ひとつ十分配慮をしていただきたいと思います。  こういうことでは、本来国民基本的ないろいろな権利や生命、財産を守ってくれるはずの、国民の味方であるはずの警察が、いつの間にか国民の敵としてきばをむいてくるようなおそれ、こういうものが先ほど申し上げた二百人の人たちの感触になってきているんではないかという感じで、非常に残念な思いがしたわけでございますが、こういうことがないように、本当に国民の信頼が得られるような警察になるためには、やはりもっともっと、優秀ではありますけれども、なお一層警察官、捜査官の資質の向上が望まれるわけでありまして、いま申し上げたような趣旨で、警察官の教養訓練、あるいは精神鑑定などの適性検査を含めてどのような対策を考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  207. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 お答えをいたします。  まず、取り調べについてでございますが、現在捜査をやっておりまして、この取り調べというのは捜査の一つの重要な手段、方法であるということは、もう間違いのないところだと思います。また、刑事訴訟法でもこの取り調べというのが警察官に認められておりまして、それに従って取り調べをやっておるわけでございますが、この取り調べに当たりまして一番気を使っております点、重要だと思っております点は、供述の任意性と信用性の確保という点だと思います。そういうようなことで、供述のほかにいろいろな資料、証拠の総合的な分析、判断であるとか、客観的資料による裏づけの徹底であるとか、そういった面を含めましてこの取り調べが実のあるように持っていきたいということで、常々捜査員に対して指導を行っておるわけでございます。  また、捜査員の資質、教養という点でお話がございましたが、全く私どもも同様の考えでございます。できるだけいい素質を持った者を捜査員に迎え、またこれは警察官採用のときからの問題でございますが、前のいろいろな事件がございましたので、警察官採用のときから適性についていろいろと検査をするということをやっておりまして、警察官採用のときから、まず素質の問題、資質の問題を重要視しておりますし、また特に捜査を担当する者を任用する場合におきましては、たとえば刑事につきましては刑事警察官の任用に当たっての教養ということを、これは警察学校でまず第一義的に行いますし、それから初級、中級幹部につきましては管区警察学校において刑事の教養を行っておりますし、また警察大学校では上級幹部としての刑事関係の幹部を養成するということをやっております。最終的には特別捜査幹部研修所というところで、またこれも最終的な教育をやっておるというようなことで、できるだけ教育、教養の一体化ということを行いまして、捜査官の素質の向上、資質の向上ということに努めてまいっておるところでございますが、今後もより一層配慮をして努力をしていきたいと思います。
  208. 中山利生

    ○中山(利)委員 いまいろいろな事件が起きまして警察の威信が非常に低下をしている、そういう中で威信を回復するには、一人一人の警察官の方々のなお一層の自覚が必要であろうと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  先ほど申し上げましたような国民の権利の不当な侵害というのは、九九%正しいからといってそれで許されるものではなくて、一件でもそういう事態が起きては困るわけでございます。第一線の警察捜査官は、いま私、申し上げましたけれども、非常な困難な状況の中で次から次へ出てくる新しい特異な犯罪に対処して職務を遂行されているわけでありますから、中には熱心の余り行き過ぎがあったり、熟練の余りの手抜きや独断があったりするかもしれませんが、これはある程度許されるといたしましても、少なくとも警察庁や県警本部の幹部の方々は、そういう強い権力を持つ者の恐れ、人が人を裁くという厳しさ、あるいはそういう権力を持っている者の謙虚さというものを常に要望されるわけであります。先ほどから同僚の委員の方々の質問でも再三反省を求められておるわけでありますが、過ちを改むるにはばかることなかれと申しますが、物によりますけれども、もしそういう過ちがあった場合には、謙虚な反省を示されることが警察への信頼を深め、本当の意味での警察権威というものを確立することになると思うわけでございます。  本院に提出されております警察留置施設法案、これはもう三つの国会を経てもいまだに質疑にさえ入れないでおるわけでありますが、これには、法案の内容ばかりではなくて、現実の留置施設の運用や、また先ほどちょっと申し上げましたように、幹部の方々のその運用についての反省、もちろんそういう厳しい謙虚さは持っておられると思いますが、その反省のあらわし方のまずさといいますか、そういうものにも原因があるように、いろいろ反対運動や何かの中で私どもも感じるわけでございますが、先ほど申し上げた権力を持つ者の心構え、と同時に留置施設法案が現在どのような状況にあるのか、また、刑事施設法案とあわせてどういう状況にあるのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  209. 太田壽郎

    太田政府委員 わが国におきましては、諸外国と異なりまして、捜査機関は、非常に短い勾留期間の中に、故意とか目的等の主観的な要素とかあるいは被疑者の情状面をも含めました広範囲にわたっての事案の解明を行うということを要請されておりまして、こういった刑事法制のもとで適正迅速な捜査を行うためには、やはり捜査機関と近接した場所に留置施設が置かれていることとか、あるいは全国各地に随時多発いたします犯罪に対処するために、全国あまねく留置施設が置かれるというようなことが必要になってくるわけでございます。都道府県警察の留置場を勾留場所として用いるいわゆる代用監獄制度は、適正迅速な捜査を実施する上できわめて合理的でありまして、被勾留者、その弁護人または家族等の交通上の利便にも役立つ、そういう点からも合理性と必要性が認められるというふうに確信しているところでございます。  これらの施設の改善の現状でございますけれども、警察といたしましては、被収容者の人権の保障に欠けるところのない制度としてこれを育てていくというところから、数点にわたってすでに改善の措置を講じております。  管理機構といたしましては、従来刑事部門が所掌いたしておりました留置業務を総務あるいは警務の部門に移管し、これによりまして、現在では留置人の取り扱いは、差し入れ等の業務もすべて取り調べ等捜査に全く関与しない留置主任官たる警務課長等の指揮のもとに行うということになっているわけでございます。留置施設法案では、この点について法律上明確な規定を置いてさらに改善を図ろうというふうにいたしております。  次に、留置場の構造設備等についてでありますけれども、拘置所のそれと斉一を図るように留置場の設計基準を全面的に改正いたしまして、昭和五十五年から実施いたしまして、留置室のいわゆる扇形の原則というようなものも廃止し、その面積とかそういうことにつきましても拘置所並みにいたしました。それから、留置室の前面の下半分を不透明な合成樹脂の板で遮蔽する等の改善措置も講じつつあるところであります。  それから、看守の警察官に対する教育訓練につきましても、警察大学校におきます幹部教養の内容を一層充実させたほか、府県学校におきます任用教養等を新設するなど、教育訓練の充実にも努めているところでございます。  それから、留置人の食糧費等につきましても非常な改善の努力を重ねてきておりまして、五十八年度では、食糧費は一日一人当たり七百八円ということで、これは昭和五十年には三百五十三円という程度でありましたけれども、二倍程度になっている。  それから、寝具とか光熱水料等のいわゆる管理費と言っておりますが、これも、昭和五十年には五円でありましたものを、五十八年度では百五十七円に改善をいたしております。  こういうような改善をすることにつきまして、代用監獄制度の存続を決めました法制審議会の要望事項に盛られているところでございますが、これにのっとっていま申し上げましたような改善をしているわけでございます。警察といたしましては、今後ともさらに改善を図って、国民からより信頼されるようなものになるよう一層努力を続けてまいりたいと考えているところでございます。  留置施設法案の現状につきましては、御案内のように本会議における趣旨説明等の縛りがかかっておりまして、本委員会で御審議いただくには至っておりませんけれども、これは刑事施設法につきましても同様の地位になっているわけでございます。法務省といたしましては日弁連の方ともその後も会合を持ちまして、警察の方も、法務省を通じまして日弁連の方に対しても所要の要望等についての意見を聞いておりますけれども、ただいま申し上げましたような警察の留置施設のいわゆる代用監獄制度についての基本の問題については、これはなかなか日弁連の言うようなふうにはまいらないと考えているところでございます。
  210. 中山利生

    ○中山(利)委員 先ほど申し上げましたように、この法案は、代用監獄の持っている特殊な事情、国と地方の関係あるいは警察と裁判、検察の方の関係いろいろありまして、なかなか反対の方々の言うとおりにはいかないと思いますが、その前提には、やはり留置施設の中での担当官の運用あるいは取り調べの状況、そういうものが人権を無視するところがあるのではないか、侵すところがあるのではないかというようなおそれ、またその間の取引、いろいろな折衝の中での警察に対する不信感というようなものが私は大きいのではないかというふうな感じを持っているわけで、そういうことのないように、当局の皆さんがそういう不信感を抱かれるような行為がなくなるような努力をこれからしていただいて、刑事施設法案の方も大法案でありますから、ぜひとも一日も早く合意が成立をして、この法案がこの国会を通過できますように努力をすることをお願い申し上げまして、心構えについて答弁がありませんでしたが、ちょっといまストップがかかっておりますので、これをもって終わらせていただきます。どうも御苦労さんでした。
  211. 山本幸雄

    山本国務大臣 中山先生、警察に対する大変好意的な立場でいろいろおっしゃっていただきまして、頂門の一針のようなつもりで承ったわけでございます。私どもは、やはりいまの刑事訴訟法のもとで証拠第一主義でありますから、人権を尊重しながら捜査をしなければならないということであります。そういう趣旨で、いまいろいろお尋ねもいただきましたが、今後とも本当に国民のための警察である、また国民警察の味方であってほしい、こういう願望を込めて今後の運用に当たっていきたい、こう思います。  なお、いま留置施設法案についてもお尋ねいただきましたが、私どもも、どうぞこの留置施設法案につきましても一日も早く御審議をいただけるように、こう願っておることでございます。
  212. 中山利生

    ○中山(利)委員 終わります。
  213. 田村良平

    田村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十四分散会