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1982-08-19 第96回国会 参議院 地方行政委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年八月十九日(木曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員異動  七月三十日     辞任         補欠選任      岡部 三郎君     初村滝一郎君      村上 正邦君     玉置 和郎君      福間 知之君     佐藤 三吾君  八月二日     辞任         補欠選任      初村滝一郎君     山本 富雄君      神谷信之助君     下田 京子君  八月三日     辞任         補欠選任      塩出 啓典君     和泉 照雄君      下田 京子君     神谷信之助君  八月五日     辞任         補欠選任      山本 富雄君     初村滝一郎君      伊藤 郁男君     小西 博行君  八月六日     辞任         補欠選任      小西 博行君     伊藤 郁男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         上條 勝久君     理 事                 亀長 友義君                 名尾 良孝君                 山田  譲君                 伊藤 郁男君     委 員                 岩上 二郎君                 加藤 武徳君                 金井 元彦君                 小林 国司君                 後藤 正夫君                 福田 宏一君                 小山 一平君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 和泉 照雄君                 大川 清幸君                 神谷信之助君                 美濃部亮吉君    衆議院議員        地方行政委員長  中山 利生君        地方行政委員長        代理       工藤  巖君    国務大臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    世耕 政隆君    政府委員        警察庁長官官房        長        金澤 昭雄君        警察庁刑事局長  中平 和水君        警察庁警備局長  山田 英雄君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治大臣官房審        議官       田中  暁君        自治大臣官房審        議官       吉住 俊彦君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     坂  弘二君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    説明員        総理府青少年対        策本部参事官   阿南 一成君        大蔵省主税局税        制第一課長    滝島 義光君        国税庁直税部資        料管理企画官   佐々木秀夫君        文部省初等中等        教育局中学校教        育課長      遠山 敦子君        資源エネルギー        庁公益事業部ガ        ス保安課長    石田  寛君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○地方行政改革に関する調査  (地方行財政に関する件)  (警察に関する件) ○行政書士法の一部を改正する法律案衆議院提  出) ○高校増設等のため地方税財政制度改善に関する  請願(第一号外一件) ○都市農業確立市街化区域農地宅地並み課税  撤廃に関する請願(第五号外五件) ○地方財政確立を図るための交付税率引上げ等  に関する請願(第一五号外一件) ○地方事務官身分移管等に関する請願(第八二  号外一件) ○土地価格評価替えによる固定資産税の増税中  止に関する請願(第二一六号外三件) ○農地固定資産税に関する請願(第二一七号) ○地方交付税所要額の確保に関する請願(第七  八七号) ○金融犯罪防止体制強化に関する請願(第七八  八号) ○特別区の自治権財政権拡充に関する請願(第  九〇四号外三件) ○身体障害者に対する地方行政改善に関する請願  (第九五六号外三一件) ○身体障害者自動車運転免許証に付される重量  制限廃止等に関する請願(第九五七号外三一  件) ○地方交付税交付金等増額に関する請願(第一六  七四号外一件) ○離島振興法延長に関する請願(第一七〇六号外  一七件) ○国庫負担の削減に伴う地方自治体への肩代わり  反対等に関する請願(第二四七〇号外二件) ○離島振興法延長に関する請願(第二六〇七  号) ○地方事務官制度廃止に関する請願(第二六九  七号) ○ホテル・旅館等防火用設備等改善融資に関  する請願(第二八三九号) ○離島振興法期間延長に関する請願(第二八五  九号) ○バスレーンへのタクシー乗入れ等に関する請願  (第三一四四号外一件) ○覚せい剤事犯取締り強化に関する請願(第三  四〇二号) ○社会保険関係行政事務県移譲職員身分の  地方移管に関する請願(第五三六七号) ○地方事務官制度廃止に関する請願(第五五六七  号) ○地方行財政制度確立に関する請願(第五五六  八号) ○地方財政確立に関する請願(第五七一〇号) ○留置施設法案反対に関する請願(第五七九一  号) ○畜産施設に対する不動産取得税について課税標  準の特例適用に関する請願(第五八二五号) ○継続審査要求に関する件 ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件     —————————————
  2. 上條勝久

    委員長上條勝久君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る七月三十日、岡部三郎君、村上正邦君及び福間知之君が委員辞任され、その補欠として初村滝一郎君、玉置和郎君及び佐藤三吾君が選任されました。  また、去る三日、塩出啓典君が委員辞任され、その補欠として和泉照雄君が選任されました。     —————————————
  3. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事伊藤郁男君を指名いたします。     —————————————
  5. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 次に、地方行政改革に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 山田譲

    山田譲君 私は、もうすでに御承知だと思いますけれども、去る六月に出されましたいわゆる固定資産税違憲訴訟ということについての判決があったわけであります。その内容を詳しくここで一一申し上げる余裕はないわけでありますけれども、このことについて自治省のお考えを聞かしていただきたいという立場から御質問をしたいと思います。  これは、もう六年もかかった判決でありますけれども内容は、千葉の県内の柏それから流山ですか、これに住むそれぞれサラリーマンでありますけれども、その人たちが、自分の家にかけられた固定資産税違憲であるというふうな立場から訴えを起こされた。そして、かなり長い間かかってやっと六月に判決が出たわけでありますけれども、その内容は、概略申し上げますと、この土地家屋に対してかけられたその税金が、固定資産税がどうも不当である、こういうことを言ったわけです。  なぜ不当かと言いますと、一介のサラリーマンが本当に苦労して借金をしながら土地を買って家を建てた、その固定資産税が当然土地家屋にかかってきたわけですけれども、それが隣の方にある、何と言いますか、全く資本として持っておるような土地、あるいは投機的に買って、そのうち値上がりするだろうから買っておこうというふうな気持ちで買われた土地、こういう土地と全く同じに税金が決められてきた、こういうことに対して、これはおかしいじゃないか。たとえばそのサラリーマンの場合は、家屋土地があるとは言うものの、そう簡単に売ったり買ったりするしろものじゃないんでして、大体半永久的にそこへ住むような家であって、土地は百坪なら百坪あるかもしれませんけれども、そういう投機的な、あるいは資本として持っている土地とは全然内容が違うんだと。そういう内容考えずに一律に固定資産税をかけてきた、こういうことはけしからぬ。しかもその土地なるものは、あの辺ですからどんどんどんどん値上がりしているわけですけれども、その値上がりと同時に、全くそういう土地と同じように税金もどんどん上がっていってしまっている。こういうことで、これはおかしいじゃないかという立場訴えを起こされた。そしてまた手続的にも、必ずしも地方税法が決めているような所定の、たとえばきちっと調査をするというふうなこともろくにしないで一律べたにかけてきている。そしてまた、これは当然税の不服の問題ですから審査委員会ですか、審査委員会にかけるわけでしょうけれども、かけたところがその審査委員会構成メンバーである一人の人が、これが市役所の顧問をしている弁護士であったと、こういうふうなことで、これは当然完全に独立であるべき委員会構成メンバーがそういう市役所と非常に密接な関係がある人がやったと、こういうふうないろんな問題があるわけで、それについて訴えたわけです。  それに対する結論がこの間の六月に示されたわけで、結論だけから申しますと、これは憲法違反ではないというふうなことで、結論だけから言いますとその二人が負けた形でありますけれども、しかし、分厚いこんな判決がありますけれども、この中でかなり注目すべきいろんな考え裁判所として示しております。それについてこれからいろいろ聞いていきたいわけでありますけれども、この判決について自治省としてどういうふうに考えておられるか、それをまずお伺いしたいと思うんです。
  7. 関根則之

    政府委員関根則之君) お話しのございました判決は、千葉県の柏市と流山市の住民が提起をいたしました固定資産税評価に関しまして、それぞれ柏市及び流山市の固定資産評価審査委員会審査決定を取り消す旨を請求した事件に対する、六月の四日に出されました千葉地方裁判所判決であろうと考えます。  結論的に申し上げまして、判決内容はそれぞれ原告の請求を棄却する趣旨のものでございまして、その中で特に、自治大臣が告示をいたしておりますところの固定資産評価基準内容でありますとか立法形式等につきましては違憲ではない、違憲とするには当たらないという趣旨判断が示されたわけでございまして、結論といたしまして私どもとしては妥当な判決であるというふうに考えておるところでございます。
  8. 山田譲

    山田譲君 結論的には、確かにその二人の請求が退けられた形ではありますけれども、中でいろいろ言っているわけですね。物事は憲法違反じゃなければすべていいというものじゃないんで、さらに立法政策の問題とか、そういうことになってきますと、それに対してかなりの具体的な示唆を判決というものは与えている。そうしますと、裁判所判決ではありますけれどもそれなりにそういう考え方自治省としても当然考慮して今後いろいろ対処していかれるべきじゃないかというふうに思うわけです。  それで、この請求した人の話、どちらも同じような内容ですから、とりわけ流山に住んでいる人の具体的な例を申し上げておきたいと思うんですが、この人の場合は、流山住宅団地で、これは県が三十年に一坪三百円で買い上げた、それを造成後に坪平均三千円で一般に分譲されたわけですね。そして団地ができたものですから、その周辺地価がどんどんどんどん上がっていった。そして坪平均三千円で分譲されたものが大体現在では坪四十万円から五十万円になっていると、こういうことなんです。それで、この流山に住んでいる人は、お友達におまえは非常にいい買い物をした、大もうけしたじゃないかと、こういうことで言われているそうですけれども、それはとんでもない話で、そうだからといって簡単に自分の手に入れた土地や家を売り払うことができるような状態ではないわけです。それで三十八年に固定資産税が千二百四十五円であった、それが五十五年には、十数年たったわけですけれども、この間に驚くなかれ二万六千八百八十円に固定資産税がはね上がってきた。そういうことで、とにかく三千円で買ったものが四十万円、五十万円になったのはそれはそれとして、実際に売れないような家であるけれども税金だけは非常に高くなってきた、こういう話なんですね。  それで、要するにただ家を持っているというだけのことなんで、それで周辺土地が値上がりしたからそこに住んでいる人の家の税も当然のように値上がりしていく。それはまさしく庶民の住まいに対して不当な税金をかけていくというふうに考えざるを得ないんじゃないか。  しかも、現在日本の住宅所有状況というものを見ますと、公共賃貸住宅というのはわずか七%くらいしかない。あとは退職金を前借りしたり、共済の金を借りたりしながらかろうじてマイホームを買ったり建てたりしておる、そういう人たちが六〇%以上もいるわけですね。ですから、これらの人たちは、財産とはいうもののほとんど借金で買っているものですから、マイナスの財産というふうなものであります。そういう財産に対して、なぜ、遊んでいる、あるいは将来売ろうと思って投機的に買っている家と同じような、土地と同じような税金をかけなければならないか。こういう点が非常にこれはだれが考えたっておかしいんじゃないかというふうに思うわけですが、その点どうですか。
  9. 関根則之

    政府委員関根則之君) たびたび固定資産税の本質につきましては御答弁を申し上げているところでございますけれども固定資産税というのが地方税体系の中の一角で重要な税になっておりますけれども固定資産税だけで税のあるべき姿のすべての要件を満たすという性格のものでは私はないだろうと思います。税というのは一つのタックスミックスというものを構成をすることによりまして、全体として本来税のあるべき姿というものが実現されておるということであろうと思います。そういう意味において、固定資産税というのはあくまでも地方税体系一角を成しているにすぎない。それ自身の弱点もありますれば欠点もある、また非常に長所もある税であると思います。固定資産税の基本的な性格は物税でございまして、外形的にその所有する財産に対しまして、その財産価格に応じまして一定の税率で税を負担していただく、こういう性格の税であろうと思うわけでございます。その財産がどういう主観的な目的所有をされ、どういう程度に利用されているかということを一応捨象をいたしまして、その財産の持っている価格に応じて比例的な税負担所有者にお願いをしていく、こういう性格の税なものでございますから、もともとそこで利用形態なり利用目的というものを捨象してしまっておりますので、具体的に、持っている人たち借金で買ったのか、あるいは居住のために住んでいるのか、あるいはまた利殖の目的で持っておるのか、そういうことを考えないというのを原則とした税でございますから、その辺からそのこと自身がおかしいではないかと言われましても、そういう性格のものとして設定されてある税である以上やむを得ないものということではなかろうかと思います。  ただ、基本的な性格はそういうものではございましても、実際問題として担税力との兼ね合いあるいは民生安定等との政治上の要請というものの配慮から、現在小規模住宅用地につきましては課税標準を四分の一にするというような特例措置も設けられておりまして、実際に一般庶民が生活の用に供する土地等についての負担軽減措置が講じられているところでございます。
  10. 山田譲

    山田譲君 いま捨象とか、いろいろなことを言われたわけですけれども、そのもとになっている価格そのもの決め方がおかしいんじゃないかということをこの人も指摘していますし、私も考えているわけです。ですから、やっぱり価格決め方がちょっと精神がおかしくはないか。そういういわば文字どおり生存権的に住んでいる土地と、本当に投機的な土地を一緒にしてしまう価格決め方そのものがおかしい。ですから、一々借金で建てたか自分の金で建てたか、それはなかなかむずかしい。そこまで調べるのはむずかしいにしても、とにかく大体家というものはわかるわけであって、投機的なものか、あるいは資本的なものか、あるいは文字どおり生存権的な土地であるかということになりますと、そこを同じ価格にすること自体がおかしくはないか。だから、あなたのように最初から価格が同じであるというふうに言ってしまえば、そこがおかしいと私は言っているわけで、それはどうですかね。
  11. 関根則之

    政府委員関根則之君) 価格がおかしいというお話でございますけれども、私どもの方の評価というのは、できるだけ社会実態における価格に合わせるといいますか、そういう方向で評価基準を定めているわけでございます。現実に住宅用地になりまして、だんだん周りの地価が上がってくる、本人はずっと永続的に住むつもりであるから売ることは考えていないといたしましても、経済的な価値といたしましては、もし仮に売るとすればそれだけの価格では売れるわけでございますので、そういった潜在的な価格の上昇というものはやはりないと言ったらおかしくなる。やっぱり価格は幾らなんだということになりますると、近隣の土地価格とのバランス等考え評価せざるを得ないということでございます。  したがって、この地裁判決におきましても、そういう住宅地等につきまして当該土地価格も当然客観的、潜在的に増大していることも否定できないと、こういった趣旨判断も示しているところでございまして、私どもはいまの価格を決める際の評価基準でございます適正な地価、しかもその際、正常な状況下での通常行われる売買価格と、こういうものを想定をいたしまして評価する方式、これはもちろんほかにもいろいろな方式考えられるとは思いますけれども、現時点においてそれはそれで、それなり合理性を持った一つ制度である、評価制度であるというふうに考えておる次第でございます。
  12. 山田譲

    山田譲君 押し問答になってしまうわけでありますけれども、もう恐らく普通の常識的に考えまして、私がいま申し上げたようなことはそう無理な話じゃないと思うんです。いま、売るとか買うとかいう話があったけれども、それは売るときに当然そこから税金は取るわけでして、ですからその段階で取られるわけだから、少なくとも固定資産としての評価というものはやっぱりそういう差をつける方が妥当というか、そちらの方がむしろ公正ではないかというふうに考えます。その点もう一遍聞いておきたいと思うんです。
  13. 関根則之

    政府委員関根則之君) 現に固定資産税というものが、先ほどから申し上げておりますように外形的な税であるわけでございます。その土地所有意図がどういう目的所有されておるのかといった主観的な要素によって評価を変えていかない、こういう仕組みをとっているわけでございます。しかし、そうは言っても主観的な要素を入れて評価してもいいじゃないかという立場からのお話だと思いますけれども、それをやり出しますと実は切りがなくなるという面があるわけでございまして、自分の当然利用できるようなものをその土地本来の効用に即した利用をしていない、粗放的な利用しかなされていないという場合もあるでしょうし、あるいは利用の仕方によっては大変収益の上がるような方法利用がなされるということがあるでしょう。そういうときに一々収益実態なりあるいは利用形態なりに応じてきめ細かく評価額を変えていくということは、実際問題として逆にその土地土地との間に不公平が生じてしまう心配もあるわけでございます。したがって、そういう個々の土地についての利用形態なり、所有者利用意図によって評価額を変えることはしないと、こういう考え方に基づいて行われておるわけです。  ただしかし、すべての土地を一律一括して一本で評価しているのではございません。御承知のように、いま議論にはなっておりませんけれども農地と山林と宅地というものは一応分けて、大分けに分けてそれぞれの基本的な利用形態に応じて評価額決め方は分けております。しかし、宅地の中におきましては一応一律に評価をしていく。ただし、先ほど申し上げましたような住宅用地については特別な課税標準特例措置を設けておると、こういうことでございまして、私どもとしては、たびたびお尋ねではございますけれども、そういうやり方によって一応の合理性は保たれておるというふうに考えているわけでございます。
  14. 山田譲

    山田譲君 そういう実態があって、それがおかしいという、私が言っているような考え方のもとに裁判を起こして、その裁判所判決についてはまた改めて申し上げますけれども憲法違反であるというふうな言い方をすれば、やっぱりそれは裁判所としては憲法違反とまではいかないと、こういう結論が出るのはある程度当然だと思うわけですけれども、ひとつその点はまた改めて後で裁判所判決に即してお聞きしていきたいと思います。  それからもう一つ問題になりましたのは、地方税法の四百三条の二項ですか、ここに、「固定資産評価に関する事務に従事する市町村の職員は、」「納税者とともにする実地調査納税者に対する質問納税者申告書調査等のあらゆる方法によって、公正な評価をするよう努めなければならない。」、こういうふうに決まっているわけですね。ところが、この流山の人の話は、そういった実地調査も何もしないで決めちゃった、そういうことはやっぱり法律違反しているんじゃないか。地方税法違反固定資産税が決められたということじゃないかと。ですから、やっぱりちゃんと市の職員がその人の家へ行って、そして、その人と十分相談しながらその土地状況を調べる、こういう必要があるんじゃないか。それを全然しないでやったというふうなこういう税の決め方について、自治省としてはどういうふうにお考えですか。
  15. 関根則之

    政府委員関根則之君) 毎年評価されております土地につきまして実地調査をしなければいけないということは、法律に定められているところでございます。判決の中におきましてもその点が言及をされておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、その法律に要請されておりますところの調査につきましては、法律の四百八条に基づきまして、固定資産状況を少なくとも一回実地調査させなければならない、こういう規定でございまして、一筆ごとに毎年再評価をやるほどの詳しい調査をしなさいというところまで法律が要請しておるというふうには理解をしていないわけでございます。その課税されております土地現況がたとえば宅地となっておる。それが荒廃して宅地としての用をなしていないような現況の変更があるのかどうか。あるいは農地として登記をされ、農地としての評価をされている土地がすでにもう宅地化しておって、実態農地ではなくなってしまっておる。宅地になっているにもかかわらず、帳簿上農地のまま存置しておる。そういう現況の変化というものがもしあった場合にそれを確認すると、こういった程度の調査法律の要請いたしますところの調査は充足しておると、そういうふうに理解をするわけでございまして、その程度の調査というものは流山市の場合あるいは柏市の場合においても少なくも年に一遍程度は行われているものというふうに理解をいたしておりますし、私どもも実際問題としてそういう指導をしているところでございます。
  16. 山田譲

    山田譲君 地方税法の四百八条には、「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該」「固定資産状況を毎年少くとも一回実地調査させなければならない。」、こういうふうに書いてあるわけで、そうするとやっぱりいま局長が言われたようなことじゃなくて、きっちり一年に一回は現地へ行きましてそこの調査をすると、その住んでいる人とも相談をすると、こういうのが当然の法律のたてまえじゃないかと思うのですが、その辺はどうですかね。
  17. 関根則之

    政府委員関根則之君) この調査を具体的にどの程度までやれば法律の要請を満たしているかという問題につきましては、まあいろいろな解釈の仕方はあろうかと思いますけれども、具体的な、三年に一遍行います例の評価がえのときの評価でございますが、そのときには相当厳密な調査もいたします。その程度の、そんなに細かい手間のかかる調査までを四百八条で要求しているものというふうには考えておりません。先ほど申し上げましたように、現在のその土地現況等について実際に見る必要はございますけれども、最近におけるその土地現況が大きく変化をしているのかいないのか、その程度の調査法律の要請は満たしておるというふうに考えます。いずれにしろ、しかし、調査をしなければいけないということは、法律が要請しているところでございます。
  18. 山田譲

    山田譲君 その辺もどうももっときちんと調査をすべきじゃなかったかという感じがいたしますけれども、まあ局長のいまのお話ですが、ひとつ法律の精神に沿うように、今後固定資産税を決めるときには十分実際の調査をやらせるように指導をしていただきたいというふうに思います。  それから、もう一つの矛盾点と思われるのは、いわゆる地目というのが山林になっているというところがある。しかし実際には林じゃなくてもう平地になっちゃっているというふうなところと、それからこっちはたまたま宅地であるというときに、固定資産税のかけ方がまるきり違うわけですね。二百倍というふうに言っているんですが、これは本当かどうか私はよくわかりませんが、とにかく相当の差がある。だけれども、こっちは地目がたまたま山林というだけのことで木も切っているのにかかわらず、全く同じような、同じというか、宅地の二百分の一でもって税金がかかってくる。これもちょっとおかしいんじゃないかというふうに思うんです。その辺はどうですか。
  19. 関根則之

    政府委員関根則之君) 土地評価に当たりまして、先ほども申し上げましたとおり、大きく分けまして三つに分けているわけです。宅地農地と山林というふうに分けて評価をやっておりますし、それぞれの区分に応じて評価のやり方というものを変えているわけです。それは基本的に、価格を出しますときに外形的に価格が決まるとは申しましても、やはり基本的な収益力との兼ね合いというものをそこで遮断をするということができないという基本的な性格があるからであろうと思います。そういうことで、山林は山林として使用収益した場合の収益力に応じた価格というものの設定がなされるわけでございまして、宅地に対しましては相当価格が低い。場所によっては宅地に比べて二百分の一というような場合というのは大いにあり得ることだというふうに考えております。ただこれは、そういう使用目的といいますか、それによりまして大きく区分けした種目が違うということによるものでございます。  しかし、いまお示しのような住宅に囲まれてしまってたまたま山林がちょこっと残っておる、もう宅地と全く変わらないではないかといったようなものについて山林として評価するのはおかしい、そこだけが二百分の一になるのはおかしいというお話でございますが、私どもも、そういった性格の山林につきましてはいわゆる宅地介在山林という分類をいたしまして、宅地に比準した評価をすべきである、こういう考え方を持っております。いわば宅地並みに評価すべきである、こういった指導をしているわけでございます。ただ、そういうものはいわゆるもうほとんど宅地に取り囲まれてしまっているような現況山林というものの場合でございまして、本来、本当に山林経営の一環として維持され、きちんといわゆる山林として材木の生産地として使用収益されている場所につきましては山林としての評価をせざるを得ないというふうに取り扱っており、指導をしているところでございます。
  20. 山田譲

    山田譲君 地目が山林となっていて実際にはもう木も何もないという状態のところに家を建てたらどうなんですか。やっぱりその地目はずっと山林でいくのかどうか。
  21. 関根則之

    政府委員関根則之君) 大体土地というのは、登記簿上の地目と現況というのは一致するというのが原則でございますけれども、いまお話しありましたような例がなきにしもあらずでございます。登記簿上は地目山林のまま宅地に転換してしまうという場合があるわけです。固定資産税評価なり課税の取り扱いにおきましてはあくまでも現況によって評価をし、課税をすると、こういう考え方を持っておりますので、その場合には当然宅地としての評価がなされ、宅地としての課税がなされるというふうに考えます。そういう指導をいたしております。
  22. 山田譲

    山田譲君 それは当然のことだと思うんですけれども、私の場合、たまたま埼玉の上福岡のそばに家を建てたことがあったんだけれども、あの辺は御承知のとおりずっと山林が多かったわけでね。それをある会社が開発して、そして私はその一角に家を建てたわけですが、登記簿上はずうっと山林になっているんですよ。だからむしろこの人とは逆で、山林になっていたおかげで二百分の一の固定資産税でよかったわけだけれども、それはいつまでたっても変わらないんですね。登記簿上は山林になっていればいつまでも山林でいくんじゃないか。それを一体だれがどういうことでこれはおかしいと言うのかですよ。つまり、登記簿上の山林と固定資産税というものは合わせるのか、合わせないのか、どっちなんですか。
  23. 関根則之

    政府委員関根則之君) 固定資産税は、国定資産税の認定に基づきまして、現況宅地であれば宅地としての評価をし、宅地としての課税をいたします。地目が仮に山林のまま残っておりましても、住宅がちゃんと建っておれば住宅地としての評価をするというのが原則でございます。
  24. 山田譲

    山田譲君 どうもこの人の場合は、近所に山林があって、いわゆる地目が山林だけれども、実際には全く宅地と同じような状態になっておる。それを持っている人の固定資産税がさっき言ったように二百分の一であるというふうな、そういう非常に不公平な状態にあった。これも一つ大きな問題じゃないかというふうに訴えたわけですよね。だから、現実にそういうことが結構あるんじゃないかと思うんですけれども、どんなものですか。
  25. 関根則之

    政府委員関根則之君) 現実には、地目といいますか、何せ土地の筆数というのは全国で一億七千万筆と一口に言われておりますので、大変な数でございますから、中には必ずしも私どもが指導をいたしております評価方式どおりの評価がなされておらない、あるいは実態の把握が必ずしも十分でないというものもあろうかと思います。しかし、いまお示しのような、周りが全部宅地になっちゃってたまたま山林が真ん中に残っておる、実態はもう宅地と変わらないような名目上の山林があるという場合には、これは名目が山林でありましても宅地比準という形で、宅地に比準して評価をしなさい、宅地介在山林としてそういうものは宅地並みに評価をしなさい、こういう指導をしておるわけでございますので、例外が全然ないかと言われれば必ずしもないと断言できるだけの自信はございませんけれども、できるだけそういうものがないように実態に即して評価をし課税をしていくように今後とも指導に万全を期してまいりたいと考えております。
  26. 山田譲

    山田譲君 それからもう一つの問題は、固定資産税の台帳みたいなものがありますわね。この台帳は、当然本人のは見せるものだと思いますけれども、ほかの人の台帳は見せないということになっているんですか。
  27. 関根則之

    政府委員関根則之君) 固定資産税につきましては、縦覧の規定が法律にございまして、一定の期間に縦覧に供さなければならないわけでございます。ただ、この縦覧に当たりましては、当然もう一つ法律の要請でございます個人のプライバシーの保護というような観点から守秘義務というものが徴税吏員には課せられておりまして、自分たちの税務行政上知り得た情報をやたら漏らしてはならないという規定があるわけでございます。そういう要請との兼ね合いでどの程度の人たちに見せるべきであるか、縦覧を認めるべきであるかという問題が起こってくるわけでございます。  私どもといたしましては、実際の運用上といたしまして、原則としてその所有者に限るという取り扱いの指導をしているわけでございまして、関係のないといいますか、一般の方々に他人の土地評価額ないしは地積、場所の所在等についてこれを公開的に見せていくということについてはやはり守秘義務との関係で問題が生ずる、こういうふうに考えておるところでございます。
  28. 山田譲

    山田譲君 確かに人の財産をやたらに見せるというふうなことはよくないとは思いますけれども、しかし実際問題として、隣の人は百坪持っている、自分も百坪持っているというふうな場合に、隣の人は固定資産税は五万円しか出さない、こっちは十万円だということは、そうであるかないかわからないわけですね。ですけれども税金を払う人にとっては、大体税金が高過ぎるというふうにだれも思うわけで、じゃ隣の百坪も税金は同じだろうかという疑問を持って、そしてその人の税金を——なかなかそんなことは普通じゃ教えてくれませんから、台帳を見ておかしいじゃないかと、同じ百坪で隣はうちの半分だというふうなことを知るのは、当然税の公平を期する上からも必要じゃないか。やたらに見せることはともかくとして、やっぱりそういうような必要性というものはあるのじゃないかと思うんですけれども、どうですか。
  29. 関根則之

    政府委員関根則之君) 確かに自分土地だけを見せられてもなかなかその評価が適正であるかどうかを判断することがむずかしいという問題あると思います。したがって、私どもとしては、標準地、規準地というのが各市町村ごとにあるわけでございますので、そういったものの所在が大体どの辺の路線にありますよ、その辺の単位当たりの評価額が幾らであるというようなことについてはできるだけ住民によく周知、お知らせをして、理解をし、そういうものとの比較において自分のところがどの程度に評価されておるのか、それが適当であるのか、不当と考えるのか、そういう判断をしていただきたい、こういう考え方をとっているところでございます。  隣のうちとの比較云々という話になってまいりますと、これは確かにその方が比較は端的にしやすいかもしれませんけれども、また、隣のうちの財産内容がわかってしまうというような問題も起こってくるわけでございますので、そういう隣との比較というようなことまではちょっと無理ではなかろうかと考えておるところでございます。
  30. 山田譲

    山田譲君 情報公開というふうなことが問題になっておりますし、情報公開がすべて守秘義務との関係でなかなか、特にこの種の問題はむずかしいとは思うんですけれども、何かやっぱり税というのは公平感というものが一番大事なことだと思うんです。何となく人のうちの税金は安いようだというふうな感じを持つ。私の知っているある人も、最近東京でマンションを買ったわけですけれども、全く同じマンションでありながらもう一人の人の方が税が安いということを非常に気にしているわけですね。それで、固定資産税、ちゃんと相手の人のもわかって言っているのかどうか知らぬけれども、確かに向こうの方が安い、その場合にやっぱりちょっとおかしくはないかということで税務署へ行ったところが、税務署は教えてくれないというふうな、そういう例が実際あるわけです。  ですから、やたらに人の財産を知るというんじゃなくて、自分税金が果たして公平に取られているか取られていないかということを知る上には、全く同じマンションでありながら税金が違うということになればやはりそれは当然おかしいという感じを持たざるを得ないと思うんですけれども、どうですか。
  31. 関根則之

    政府委員関根則之君) その辺は人間の感情の機微に属する分野もございますのでなかなかむずかしい問題だとは思いますけれども自分のところの財産評価額が適正であるかどうかを判断するために他人のうちの土地評価額まで知り得る権利があるというところまではなかなか踏み切れないんじゃないかというふうに私どもとしては考えておるわけです。もちろん、自分自身土地評価額の適不適というものについては自分判断をする権利はある。それを判断するための必要な情報というものはとり得るようにしていかなければいかぬとは思いますけれども、かといって、具体的な他人の土地評価額についてまで知り得るようにしなければならないかということになりますと、やはり問題が出てくるというふうに考えておるわけでございます。
  32. 山田譲

    山田譲君 人情として、やはりそういうことは当然あり得ると思うんです。それで、税務署に行った場合に、あの人の家と私の家とは全く同じなんだと、特にマンションの場合にははっきりそれがわかるわけです。その場合に、どうもあの人の話を聞いてみたら、うちの固定資産税よりもずっと安いというふうなことを言っているが、それは本当ですかどうですかということを言った場合に、税務署としてそれを教えないというのもおかしい。やっぱりせめてそのくらいのことだったら教えてやってもいいんじゃないか、台帳まで見せる見せないは別としまして。そんなふうに思うんだけれども、どうですか、そこら辺は。
  33. 関根則之

    政府委員関根則之君) やはりその税金の金額が幾らであるということを言うことは、そのもとになっております資産価格が幾らであるということを言うのと、これは電卓があって率ではじきますとすぐわかってしまうわけでございますから、現在の法律の立て方から申しますと、やはり守秘義務の範囲内になってくる。それを言うということは守秘義務違反ということにもなりかねないわけでございまして、いまお示しのような例で申し上げますといかにもかた苦しいではないか、しゃくし定規ではないかという感じがするかもしれませんけれども、やはりそこの線が崩れてまいりますとどこまででも行ってしまうというような性格を持っているものでもございますので、私どもとしてはなかなか他人の財産評価額ないしはそれをもとにした税額というものをお話しをしていくということは無理であるというふうに考えます。
  34. 山田譲

    山田譲君 何回も言いますように、税というものは公平感みたいなものが非常に大事なことだし、税の公平ということが必要なんで、そういうことでやっぱり何らかの、自分税金があの人よりも高いというふうな気持ちを持たせること自体問題だろうと思うけれども、そこら辺をよく今後何かいい方法考えていっていただきたいというふうに思うんです。  大体いまお話ししたような内容のことで訴えが起こされたわけですけれども、それに対する裁判所判決内容ですね。結論はさっき言ったとおりでありますけれども、その判決文の中で、価格についてはこういう言い方をしているんですね。つまり、「将来の著しい地価高騰いかんによっては、基準適用による弊害が放置しえない事態にならないともいえない。その場合、固定資産税制にとどまらず、持ち家政策を基準とする今日の住宅政策、都市政策の根本的見直しを迫られることが予想される。その意味では、原告の投じた一石は何らかの適切な是正措置を求める誘因として、大きな警鐘となるだろう。」ということをこの判決で言っているわけです。ですから、どんどん地価が上がっていくと自動的に固定資産税もべたに上がっていってしまう、そういうことについてはやはり問題があるということをこの判決でも指摘しているわけですね。もちろんこれは固定資産税制だけじゃ解決できない問題であるということも言いながら、原告の投じた一石は大きな警鐘となるだろうということを言っているんですけれども、この辺についての自治省考え方はどうですか。
  35. 関根則之

    政府委員関根則之君) いま御指摘をいただきました点は、あくまでも、基準を適用することに違法はないと言い切った後で、附帯的に言及されている判決の中の一文であろうと思います。これは読むと長くなりますからやめておきますけれども、仮定を幾つも置きまして、基準適用によって惹起される弊害についてはさらに続くかもしれないという一つの仮定法を持っております。「将来の著しい地価高騰いかんによっては」というような一つの仮定的な前提を置きまして、いまお話しのございましたような是正措置を求める誘因として大きな警鐘とは言い得るであろうと、しかもそれが将来予想され得るところでありというような前提で結ばれております。こういう物の言い方をしておりますので、私どもとしては必ずしもこの言っている判決の中で、現在の評価基準に対して大きな警鐘が打ち鳴らされたというふうには実は理解をしていないところでございます。  ただ、もちろん私ども固定資産評価につきましてできるだけいいものにしたいというふうに努めているところでありますし、また、各方面からの御意見等については謙虚に耳を傾けながら、是正すべき点があれば是正していくべき筋合いのものでございますので、そういう意味で参考にはさせていただきたいと思っておるところでございます。
  36. 山田譲

    山田譲君 せっかく判決でもそこまで言っているわけで、それはもちろん結論としては、さっきあなたおっしゃったとおり、一応現在の価格は適当で、違法ではないという前提のもとに、いまのような今後のこととしてやっぱり考えるべきであろうという言い方をしているわけですけれども、さっき言ったように、どう見てもおかしい、財産的な——財産といいますか、本当に生存権的に持っている土地とそうでない土地とを区別するというふうなことも今後の検討課題の一つとして、せっかく判決も言っていることですから、考えていっていただきたいというふうに思うんです。  その次に、審査手続の問題ですけれども固定資産評価審査委員会というんですか、これの委員というのは、さっきもちょっと言いましたけれども、市長とは全く独立した中立的な判断機関である、これは当然な話だと思うんです。ですから、その手続の公正を確保するためにわざわざ法は委員が市と特定の関係に立つことを禁じているということなんですけれども、ところが流山の場合は市の顧問弁護士が委員長を務めていたという問題で、これについて判決は、「直ちに違反とはいえないが、必ずしも望ましいとはいえず、市の自戒と自粛が期待される。」、こういう言い方をしているんですけれども、この辺はどうですか。
  37. 関根則之

    政府委員関根則之君) 御指摘をいただきました固定資産評価審査委員会委員選任につきましては、その委員会性格からして、中立性を守り、公平に職務執行が行われるような担保措置がとられているところでございます。ただ、その担保措置は、法律では兼職禁止の規定がございまして、ごくごく典型的な場合についてはこれは兼職はできませんよということを言っておるわけです。あらゆるケースについて法律で書いて、こういう場合にはだめよというふうに書いていないわけでございます。基本的なことだけが法律に書かれておる。それを具体的に実施をする、判断をするために、固定資産評価審査委員会委員は市町村長が選任をするわけでございますが、その前提といたしまして、「当該市町村の議会の同意を得て、」「選任をする。」と、こういうことになっているわけです。したがって、私ども法律の体系といたしましては、法律で書いてある具体の兼職禁止規定というのは、これはもう絶対的に守ってもらわなければならぬ。その後どの程度の人を選任するのがいいか、どういう人は選任しない方がいいのかということは、住民から選ばれました市町村長なり、あるいは市町村の議会というものに判断を任しているんじゃないか、そこで判断をしていただければいいということではなかろうかと思います。  具体のお示しの場合の顧問弁護士につきましては、判決でも言っておりますように、これは法律で禁止をいたしております請負をする者ではない。あくまでも委任契約に基づいて委任を受けて仕事をしている人であるから、法律の規定には違反をしない、こういう判断を示しております。私どもといたしましては、まあ判決が自戒自粛という言葉を使っておりますけれども、やはり住民から選ばれました議会なり、市町村長というものが正当な判断をしていくべきもの、またこの選任についてはそういう判断が当然議会においてなされたものというふうに考える次第でございます。  しかし、さらに法律趣旨の徹底等につきましては——この選任についてですが、今後とも市町村長なり議会なり、法律趣旨を十分理解をして慎重にやっていただきたいと、こういう指導は続けていきたいというふうに考えます。
  38. 山田譲

    山田譲君 そこら辺、すれすれのところで非常にむずかしいとは思いますけれども、少なくとも判決では、やはり「自戒と自粛が期待される。」というふうな言い方をしているわけで、なるべくなら全然関係のない人が審査委員会委員になるということが望ましいわけで、そういう点でひとつよく注意をしていただきたいと思うんです。  それから、先ほどの台帳の縦覧の問題ですけれども、これは判決では明らかに、「柏市長が他人の台帳縦覧を拒絶したことは、法の趣旨に反した違法行為といわざるを得ない。」という言い方をはっきり言っているわけです。つまり、そういうことをしなければ税が公平であるかどうかということはわからない、ですから、当然市長はきちんと縦覧させるべきであったという言い方をして、「法の趣旨に反した違法行為」というふうにはっきりと言っているわけですけれども、この点はさっき聞きましたけれども、もう一遍、この判決についてどういうふうに考えておられるかお聞きしたいと思います。
  39. 関根則之

    政府委員関根則之君) 判決のこの部分がどの程度の拘束力を持つものであるのかという問題につきましては、正直なところ、私自身もいま確信を持ってお答えできるだけの判断力がございません。もちろん、判決でございますので尊重さるべき筋合いのものではございますが、私どもはこの点については判決とは考え方が異なると言わざるを得ないわけでございまして、一方で守秘義務が課されております実定法があるわけでございますし、それにわれわれは拘束をされておるわけですから、そういう中で市町村長なり徴税吏員が他人の土地評価額を見せなければならぬということには直ちに承服しがたいという面があるわけでございます。そういうことで、確かに判決が言っているということは私ども承知はいたしておりますけれども、すぐその判決どおりわれわれの方の考え方を改め、実際の運用を変えていくということはちょっとむずかしい問題ではなかろうかと思います。
  40. 山田譲

    山田譲君 まあこれは、地裁の判決が出たからといって、直ちに行政府がそれに拘束されるものじゃないと思いますけれども、少なくとも一つ判断として、これほどはっきりと法の趣旨に反した違法行為であるというような言い方で決めつけているわけですね。ですからこの辺はそう簡単に、わが方はそういう考え方はとらないと言っても、やっぱり裁判所判決というものもそれなりに重みのあるものなんですから、この点についてはもう一遍その考え方を、絶対に自分の守秘義務との関係でだめだと言い切るのかどうか。今後ともですね。
  41. 関根則之

    政府委員関根則之君) この判決のここの部分が判決のもちろん主文ではございません。事実関係をずうっと論述しているところで出てきている一つ判断であろうと思います。したがって、それはそれなりに無視していいというふうに私ども決して考えているわけではございません。やはり傾聴しなければならない一つ判決であろうと、こう思いますけれども、しかし、それじゃそれがいまわれわれに対して拘束力を持った判決としての力を持っているのかといいますと、必ずしもそうではないんじゃないかというふうに考えます。  また一方で、現実の行政をやっております市町村長なり、あるいは都道府県、市町村の徴税の職員の具体的な対処の仕方にも関係してくるわけでございますので、その指導をいたしておりますわれわれとしては、他人の土地評価額について、具体的な事例についてそれを見せなければいけない、見せなければ直ちに違法になるというふうには、考え方を変えるというわけには実際問題としていかないという問題があるわけです。もちろん、先ほどから繰り返しておりますように、一つ判決がなされたということについては、十分慎重にわれわれとしても考えてはまいりますけれども、だからといって、いま直ちにわれわれの守秘義務との兼ね合いの問題を捨てて、判決の言っているような趣旨のとおりに、他人にも見せるというような取り扱いにするということはむずかしいというふうに考えております。
  42. 山田譲

    山田譲君 時間も来ましたので、この裁判の話はこの程度でやめたいと思いますけれども、せっかく裁判所も苦労してこれだけの判断を示しているわけですから、今後ともひとつ参考にして、いろいろ税の公平を期するような観点から検討をしていっていただきたいというふうに思います。  最後になりましたけれども、人事委員会の問題でありますけれども、これはひとつ行政局長にお伺いしたいんだけれども、この前、春でしたかね、たしか地方の人事委員会の勧告についていろいろ聞きました。そのときに当時の砂子田行政局長が、話し合いの過程の中で、どうも都道府県の人事委員会というものは余り信用できないということを言われたわけですね。それで、私はそれは非常に大事な問題である、しかし本音を言ったから許してやると、こう言ったんだけれども、いまの行政局長も同じように、地方の人事委員会なんというものは大したものじゃない、ですから自治省がきちっとやっていかなければいけないんだというふうな考え方でおられるかどうか。ひとつ新しい局長にそのお考えを聞いておきたいと思います。
  43. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 前局長が地方の人事委員会信用できないなどと言ったということは全然聞いておりません。人事委員会というものは、法律に基づきまして、それぞれにりっぱな方が選任をされております。同時に、人事委員会には独立的な勧告権あるいは義務というものもございます。要は、そういった勧告なり、勧告に基づく措置を自主的主体性を持って適正に行っていただくかどうかに問題がかかっておるわけでありまして、人事委員会における勧告というものが尊重さるべきことは当然でありますし、問題は最近の特に厳しい財政状況の中、あるいは住民のいろんな多様化した要望なり不満がうっせきする中で、地方公共団体が責任を持って住民の信頼の得られるような措置をとるかどうかというところにかかってきておる問題であろうと思います。
  44. 山田譲

    山田譲君 言ったか言わないかは議事録を見ていただけばわかるから、見ていただきたいと思うんだけれども、いまあなたの言ったことの中でちょっと気になった点は、言葉じりをつかまえるようで悪いけれども、適正な勧告をするかどうかが一つの問題であるというふうなことを言われたけれども、人事委員会の勧告というものは当然適正なものだという前提がなければおかしいと思うのですよ。勧告を出したものを、自治省判断でこの勧告は適正でないとか、適当でないとかいうことを言うのがそもそもおかしい。ですから、皆それなりに県がりっぱな人事委員選任して、その人たち調査検討した結果勧告したものを、自治省が、その勧告はおかしいとか言うこと自体がおかしいんじゃないかと思うのですけれども、どうですか。
  45. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) もちろん、人事委員会においては適正な勧告をされるべき努力をされ続けてきておるとは思います。ただ、一方におきまして、勧告をしていただくに当たりましても、御案内のように、国の給与なりあるいはその地域の民間の給与なり、こういうものを具体的に参酌していただきまして的確にその根拠を示した勧告というものが人事委員会勧告の前提になっておるわけでありまして、そういった適正な措置というものを常々お願いをしてきておるわけであります。
  46. 山田譲

    山田譲君 それは当然の話ですけれども、これは大臣にぜひ聞いておきたいんですが、人事院勧告が出ましたよね。これをどうするかということはまだ全然結論が出ていない。これは早く決めるべきだと私は思うんですけれども、これからも当然各都道府県ごとに都道府県の公務員の給与について人事委員会の勧告が出されるはずでありますけれども、それに対して、都道府県ごとに人事委員会が勧告したものをきちっと守らせるということを考えておられるか。それとも、場合によっては値切れというふうな指導を自治省としてするのかしないのか。最後に大臣のお返事を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  47. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 地方の人事委員会の勧告について、これは尊重すべきものと考えております。しかしながら一方においてこの地方公務員の給与が、二十四条三項の規定で、国家公務員の給与に準ずるという項目がありますので、私どもの方はこの点も十分参酌して勧告は尊重いたしますが、尊重という概念の半面には、必ずしもそれをそのまま受け取るということではございませんので、そこでわれわれの方もそれなりに、法律に基礎を置いた考え方に基づいてそれを十分尊重しながらいろいろ考えるわけでございます。
  48. 山田譲

    山田譲君 尊重するんだかしないんだかよくわからない。結論としては尊重しないような言い方になってはなはだ残念であります。国に準ずると言うけれども、それは何も、地方公務員の給与は国に準ずるということしか書いてないわけじゃないんですよ。もしそうだとすると、都道府県単位に人事委員会なんか置くことはない、こんなものは。完全に国のとおりにやれというのならば、人事委員会を都道府県ごとに置いて都道府県のそれぞれの事業所の賃金を調べてその平均値と公務員との差を見て勧告すると、こういう制度は必要がなくなっちゃうんですよね。それは都道府県ごとにそこの実情に応じたような勧告をするわけだから、当然都道府県ごとに人事委員会の勧告も差があるわけですよ。それを一律に全部国と同じにやれというふうな言い方はちょっとおかしいんじゃないか。それはやっぱり先ほど来問題になっておりますように、人事委員会というものは要らないという議論につながっていくんじゃないかと思うんですが、どうですか。最後にこれだけ伺って終わります。
  49. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) もちろん、地方公務員の給与問題を処理する場合に、県の、あるいは市における人事委員会というものが要らないとは一言も申しておりませんし、考えたこともございません。問題は、その人事委員会における勧告、これはもちろん人事委員会において非常な御努力を願っていろんな問題を調査して勧告を出されていただいておるわけでありますけれども、同時に、いわゆる給与原則というものがございます。国なり、御案内のような地域における民間の状況、そういったものを正確に的確に反映した勧告であることがまた望ましいわけであります。そういったことを私どもは常々人事委員会の方にもお願いをし、それに基づいて適正な給与水準を維持していただくように地方団体にお願いをしておるわけでありまして、人事委員会の存在価値というものを私どもが否定しておるわけではございません。
  50. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 きょうは時間がございませんから一々突っ込んだ議論はしないつもりでおったんですが、ちょっと行政局長、私はあなたに質問の予定をしていなかったんだけれども、いまの議論を聞いてそれで聞くんだけれども、きのうですかおとといですか、全国の人事委員会事務局長ですか、を集めてどういう指示を行ったんですか。
  51. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) ことしも人事院の勧告が先般出されました。これに関する措置につきましては、今後政府が諸般の事情を考慮しながら措置されるであろうと思います。引き続きまして人事院勧告を参考にしながら今後地方の人事委員会においていろいろ勧告の取りまとめ作業というものが行われる段階になってまいります。そういった段階におきましてことし出されました人事院勧告の内容の具体的な御説明、あるいは先般出されました臨調の答申におきます地方公務員の給与に関する取り扱いの考え方、こういったものを人事委員会事務局長の皆様方に御紹介を申し上げて、適正な運用をお願いするための会議であったわけであります。
  52. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 後段の、臨調の答申が人事委員会の諸君に何の関係があるのか。人事院すら、いろいろな要請があったけれども、それは人事院の機能として藤井さんは毅然として原則に基づいて勧告をやったんだ。だからむしろあなたの方から言うのは、臨調の答申がいろいろあるけれども、それにこだわらず人事委員会の使命に基づいてやれと、こういう姿勢でなきゃならぬのじゃないですか。どうなんですか。
  53. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 最近、非常に行財政上の問題として大きな問題となっております困難な問題を解決するための臨調というものの活動が非常に世間の注目するところとなっておりまして、こういった事柄の内容を御紹介するのもやはり私ども一つの御報告の務めであろうと、こういうふうに考えます。
  54. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 御報告にとどまっていないんじゃないですか。この際、高いところは、そこら辺を配慮してひとつ抑えるべきであるとか、いろいろ具体的な話をしていないですか、抑える方向で。どうなんですか。
  55. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 臨調の答申の内容を御紹介しながら、人事委員会の勧告のあり方、そういったものについては人事委員会の方で先般御承知のことでございます。私どもの方からああしろこうしろというようなことを申した覚えはございません。
  56. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣聞きますが、あなたはこの人事院勧告を——新聞によりますと内閣の方からことしは見合わすべきだとかいうことを人事院の方に勧告作業の中で申し入れをしたという経緯が出されておりますし、しかし藤井さんは、それは人事院の死活に関することであるということで、人事院は科学的なデータに基づいて出された結論については勧告をすべきものはする、しないものはしない、こういう態度で勧告をなされたんですからね。この態度のあり方についてあなたはどう思いますか。
  57. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 今回の人事院の国家公務員に関する勧告については、これは本来私どももそれを尊重すべき性質のものでありまして、何ら、とやかく言うべき筋合いではないわけでございます。ただ、若干閣議などでいろいろ発言がありましたことは、日本の現況社会的な現状におきましてこれが果たしてどうであるかということに関していろいろな御議論があったことは事実でございます。
  58. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたの答弁はいつもしり切れトンボで、途中で何を言うたかわからぬような切り方をするんだがね。私がいま聞いておるのは、人事院が内閣の、まあ圧力というんじゃないけれども、申し入れがあったけれども、それをけ飛ばして、人事院本来の機能に基づいて勧告をした、この態度は是とするのか。可とするのかと、こう聞いておるわけです。
  59. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 人事院に対して内閣の方からこうしろああしろというふうに申し入れをしたことはないと思います。したがって、私は、今回の人事院の勧告については尊重をすべきものと考えております。
  60. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 だとすれば局長、あなたは就任早早から少しくだらぬことをし過ぎるんじゃないの。やっぱり人事委員会事務局というのは、ある意味では知事部局とは独立しておるわけだね。そして公正、厳正に勧告を行っておる。その勧告の基礎は、国の基準もあるでしょう。地域の基準もあるでしょう。だから、それをあなたの方がいろいろ言うことはないんじゃないですか、その勧告の姿勢なり作業について。むしろ自主的に、この保障をしていくのがあなたの立場じゃないの。どうなんですか。それが一つ。  それから、まあ新聞ですから私も正確は期せられぬけれども、新聞によりますと、かなり個々にわたっての露骨な干渉を言っておるというふうに書いておる、内容をね。そういうことは、やっぱり自治権という以前に、人事委員会という機能からいって、あなたのところがそういうことをすべきじゃない、そう私は思うんですがね。そういう点についてあなたはどういう見解を持っているんですか。
  61. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 先ほど申し上げましたように、人事委員会が勧告作業をされます前にいろんな情報を人事委員会に対しても伝達申し上げるということは毎年のようにやってまいったわけでありまして、昨日の人事委員会における会議の内容もそれ以上のものではございませんし、また、後段の個々の団体についてどうのこうのというようなことを申したこともございません。
  62. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすれば、新聞は誤報であると、こう言っていいんですね。従来の観点からいくならば、そう受けとめていいですね。それから今後もそういうことをしない。いいですね。
  63. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 人事委員会の方に対して、私どもの方でどうこうと言うたことはいままでもございませんし、今後もございません。
  64. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 局長、いいですよ、どうぞ。  そこで、ちょっとさっきのひっかかりを私も質問したんですが、大臣、会期末で、もうあしたごろで事実上終わりなんですが、仲裁裁定の方はこれは継続審議として次期臨時国会で誠意をもって努力すると、こういう確認がなされたということを聞いておるんですが、今度の人事院勧告については全然そういう話は聞いていない。八月の六日に出されて、まあ期間的な問題もあるでしょうが、率直に言って内容は、民間の春闘相場から見るとかなり低いですね、今度は。四・五八ですから。そういう内容でありますし、人事院は内閣と国会に提出するに当たって、早急に閣議決定をして実施をされたいと、こういう要請も、これは毎年のことでございますが、ことしの場合でも一つ強調されておる。地方公務員を専任する大臣として、この処理についてどういう態度をもって閣議に臨み、そしていつごろをめどにこの問題の処理を終わると、こういう考え方を持っておるのか、大臣の見解だけ聞いておきたいと思うんです。
  65. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 私どもの方は、やはりこれは人事院の勧告をどういうふうに尊重しながら政府がそれを受けとめていかなる実施の方向をたどるか、これはいま協議中でございまして、結論はいま申し上げる段階ではございませんが、それに準じまして、私どもの方も慎重に地方公務員に関する給与の指導についてはそれに準じて行っていく所存でございます。
  66. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、私はあなたが、人事院勧告の処理の閣僚協がありますね、そのメンバーの一員でしょう。ですから、そこでまず第一に、いつ、どういう内容で決めるかということを決めなければ閣議決定に上がっていかないわけですね。しかも、あなたは地方公務員の責任を持つ大臣だから私は聞いておるんです。  さっき人勧については尊重をするという姿勢は聞きました。問題は、尊重するだけじゃなくて、慎重な審査と言いますけれども、これは率直に言って、人事院の方で科学的に約五カ月近くにわたって調査をして慎重に審査した結果、民間準拠という方針に基づいて出されておるわけですから、中身そのものを慎重という議論にはならぬと思うんです、尊重するという前提ですから。問題は、それを受けて立つ財源の問題を含めてそこら辺の精査の問題があるでしょう、率直に言って。いまの財政状態から見れば。しかし、だからといって、そう暮れまで延ばしていくとか、政治的にこれを利用するとか、そういうしろものではないと私は思うんです。やっぱりこれは純粋に科学的に民間の賃金に準拠して人事院が権威を持って出した内容ですから、速やかに実施するという、こういう考え方を持っておられると私は思うんですけれども、そうじゃないんですか。そして、そのたてまえに立ってあなたは閣僚協の中で主張をし、そして早急に閣議決定に持っていくという考えじゃないのかどうなのか、そこを聞きたいんです。どうなんですか。
  67. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) おっしゃるとおりでございまして、私どもの方ではいろいろ腹案も協議中でございます。もちろん人事院勧告を中心にいたしまして。それから政府の方でも、政府と与党との間の連絡機関、協議いろいろございまして、その点でも何回か会合を重ねておりまして、人事院勧告を基調にして、これを尊重しながら政府、行政機関の態度、これを決定していくという方向にいま過程を積んでいるところでございます。われわれとしましては当然、原則上、地方公務員の給与に関しては、それらの国家公務員の給与の方向に、新しい給与の方向にのっとって協議しながらこれに対応してまいりたい、また発言もしてまいりたい、こういう姿勢でおるところでございます。
  68. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすると、あなたの姿勢としては、これは人勧は尊重して、いろいろあるけれども早急に、いろいろな、たとえば政治的な取引に使ったり、そういうことをすべきじゃなくて、純粋な意味で早急にひとつ決めるべきだ、こういう基本認識に基づいて、あなたは閣僚協の中に臨み、推進していくと、こういうふうに受け取っていいですね。
  69. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 私どもも、そういう御指摘のことを原則としながら、諸般の情勢を十分勘案いたしまして決定に臨みたいと思っております。
  70. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 何ですか、その諸般というのは。——あなたの言う諸般というのは何ですか。
  71. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 現在置かれております財政状況あるいはそのほかの物価の問題、物価の上昇とかいろんなそれに伴ってくる全般的な状況をつかみながらと、こういうことでございます。
  72. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなた、冗談も休み休み言いなさいよ。物価の問題とか生活の問題とか、民間対比の問題は、人事院が精査をしてね、機関が。きちっとしておるわけだから、あと問題は財政の問題が主になるでしょう、大臣。そうでしょう。これは大蔵大臣が主管のことですよね、国家公務員の場合には。あなたは、地方財政の問題ですか。地方財政の問題、それなら聞きますが、この問題で、財政措置はどういうふうになっているんですか。
  73. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十七年度の地方財政計画におきましては、公務員の給与改定に必要な額として一%相当、一般財源にして一千億円をあらかじめ計上いたしております。
  74. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、だからどのくらい不足するのですか。それをどういうふうにするのか。具体的に言いなさいよ、木で鼻をくくったような答弁をせぬで。
  75. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 今回の人事院勧告による給与改定率、これを地方公務員に当てはめた場合必要な一般財源所要額は四千七百十億円になります。これに対しまして、ただいま申し上げましたように、あらかじめ給与改定財源として計上しておりますものが一千億円でありますので、差し引き三千七百十億円がさらに必要となるということでございます。
  76. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 その問題が諸般の事情の一つと、こういうことですか、大臣。
  77. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) これは当然、われわれの方の考えの基準というのは、人事院勧告に基づいて国家公務員の方の給与がどういうふうになっていくか、どういう決定になるか、これに準ずるのが原則でございます。したがって、それに伴う財政の諸般の事情ということでございます。
  78. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 どうもあなたの答弁は、もう何というかね、もっとずばずばっと議論をし合ったらどうですかね。いつの場合でもそうだけれども、何かわけのわからぬようなかっこうに最後は持っていこう、持っていこうという努力をしておるんですね。まあいいでしょう。きょうは細かいことまでいくつもりはなかったんですがね。  この問題、約三千七百十億が不足するということになれば、この問題をどうしようと思っておるんですか。たとえば閣議で人勧が決定になりますね。その場合に、三千七百十億については全額国で補てんすべきだと、こういう立場で臨んでおるのか。それともこれについては、よくあなたたちがやるように、自治体の中でどのくらい節減して生み出しなさい、このくらいしか国は措置できませんと、こういうことをやろうとしておるのか。具体的にもう計算しておるはずだと思うんだが、どうなんですか。
  79. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 御案内のように、従来は国として給与改定の実施方針が決まりますと、これに準じて地方公務員についても給与改定を実施し得るような財源的な手だてを講ずるということでございます。ですから、ただいま申し上げました金額というのは、人事院勧告に従いまして四月一日から完全実施した場合の所要額として総額四千七百十億円である。それに対して現在地方財政計画上計上しております財源が一千億円で、差し引き三千七百十億円が不足するということを申し上げたわけでありますが、政府として公務員の給与改定についての最終的な方針が決まりますれば、その方針に沿って必要な財源計算をし、それに対して財源の不足があればその不足を補てんすると、こういう努力をこれまでしてきておりますし、今年度も当然そういった努力をしていかなきゃならないと、こう考えております。それからその場合、従来もそうでありましたが、給与改定問題だけでなくて、こういった問題は当然補正予算で処理されますので、補正の段階でそれ以外の歳出の増加要因あるいは収入の減少要因、こういったものが総合勘案されるわけであります。そしてその中で、たとえば他の経費をできるだけ節約して捻出するというような方針が国の予算においてとられる場合には、地方財政におきましてもこれに均衡を失しない形で自己努力はしていかなければいけない。いずれにしても、まだこの辺の細かい詰めは行われておりません。
  80. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 時間がございませんから、この問題はこの程度にとどめますが、大臣、そうなりますと、後でまた申し上げますが、地方財政も今度は国の減収に伴う措置と地方税の減収、いろいろ大変な問題が起こってきておるし、人事院勧告の問題がある。臨調の問題もあるわけですがね。早急に臨時国会を開いてそして対処しなきゃいけない、こういうのがいま一つの世論ともなっておるのですが、あなたは、臨時国会の早急な開会についてどういう考え方をお持ちですか、大臣として。
  81. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 開かれるべき必要があれば当然開かれるべきではないかと考えております。
  82. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたの答弁、もう率直に言うて禅問答を聞いておるみたいでね。それは意識的なんだろうね、そういうことで……。  あなたとしては、開かれるべき条件だと思っていますか。
  83. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 私は、個人であれば、もう選挙の法案でいままで夏休み返上になりましたので、できるだけ休ませていただきたいのですが、どうしても必要とあらばあえて開会を辞さないわけでございます。
  84. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それは、人情としてはわからぬことはないけれども、しかし、これだけいま財政欠陥の問題なり人勧の問題なり、それから地方財政にとってもそうですよ。いろいろな、緊急に措置しなければ、公共事業の前倒しだけではもうどうにもならぬところまで来ておるわけでしょう。これは大臣としてやっぱりもう少し国民的な立場に立った意見があってしかるべきじゃないですか、どうですか。もうそれだけ聞いておきたいんですがね。
  85. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) これは個人的な見解でございますが、私はいろいろな問題が山積しておりますので、臨時国会の必要性を感じているものでございます。
  86. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひ早急に臨時国会を開いて、そしていま言った懸案処理も含めて対応をしていくという、こういうひとつ立場を堅持して閣議に臨んでいただきたいと思います。  きょうは、次の問題で聞いておきたいと思いますのは、山田さん見えていますが、警察庁にお聞きしたいのは、最近国会周辺をめぐる暴力団ですか右翼ですか、あれはもうちょっと異常なような感じを私は持っておるんです。大体ほとんど毎日来ますよ。そうして大体一時間単位で来るんです。これは国会だけかと思って、私も、今度は延長国会後に審議が中断するとかいうこともございましたから各地を回りましたが、どこに行っても、主要な県都だけではありませんよ、小さな都市、町村まで、右翼の看板なり車が回ってないところはないですね、もう日本国じゅう。こういう実態というのは私は非常に異常な状態であるとしか思われぬのですが、警察庁としてはこれをどういうふうにとらまえておるのか。  先日、ちょっと日にちは覚えておりませんが、テレビを見ておったところが、三浦海岸ですか、あそこで何会か知りませんが右翼の皆さんが集まって、早朝六時に、わら人形をつくってそれに短刀で突撃訓練をやっておる。瞬間に私は淺沼稻次郎のあの山口少年を思い出したんですが、こういったような現状に対して警察庁としてはどういう態勢というんですかね、把握をして対処しておるのか、それが一つ。それから、実態はどうなっておるのか。それから三つ目に、資金源は一体どこにあるのか。それを警察庁としてどうとらえているのか。  この三つをちょっとお答えいただきたいと思うんです。
  87. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) お尋ねの、右翼の行動の問題でございますが、右翼に限りませんで、いろいろな社会運動、政治運動に伴います違法行為、これにつきましては、常に厳正な取り締まりを行うという方針で対処しているわけでございます。  まず第一点の右翼の騒音の問題でございますが、これは、われわれ現行法令を駆使して取り締まりに当たっておるわけですが、法律の運用上大変苦労しておる点がございます。と申しますのは、もともとわが国における騒音規制の法令の、その規制の問題があろうかと思うんです。それは具体的に申し上げますと、騒音規制法あるいは各県の公害防止条例、軽犯罪法というものが音の取り締まりについて規制しておるわけですが、騒音規制法と申しますのは御承知のように工場騒音とか自動車騒音だけを対象にしておりまして、目下右翼が大変やかましいという原因をなしております拡声機の使用については国の段階では規制しておりません。騒音規制法の二十八条で条例にゆだねておる。条例ではどうかと申しますと、多くはその適用地域を限定しましたり、あるいは夜間だけの規制であったり、あるいは商業宣伝目的のための使用であったりしているのが多いわけでございます。その条例の大半は県知事等の措置命令、それに違反した場合に初めて違法になる。警察官が現場で直接街頭宣伝行動を措置命令で規制するということは、右翼の現在の行動についてできる条例はないわけでございます。そうなりますと残るのは軽犯罪法、これはその一条の十四号に、異常な高音を発して近隣に迷惑をかけた者、それは拘留、科料の刑に該当するわけですが、これも段取りで申し上げますと、警察官が警告しなければいかぬ、そして制止を聞かないで近隣に迷惑をかけた者ということでございまして、警告が前提になる。それから同時に、その立証上、いかなる迷惑が及んだかという、これはもう迷惑が及んでおるということは明らかなんでございますが、起訴し、有罪にするためには、何ホンであったか、その何ホンの騒音を発した拡声機がどの拡声機であったか、その音によってどの人々が迷惑をこうむったかということを立証せざるを得ない。これは当然のこととしてわれわれ立証して、国会周辺の騒音についても検挙した事例がございますが、東京地検においてはいまだ一件も起訴に至っておりません。立証上の技術も十分に研究して努めておるわけでございますが、特に軽犯罪法については、拘留、科料ですから、住所氏名が明らかならば逮捕できない。任意、書類送検という問題になるわけでございます。  やや細かい点を申し上げましたが、騒音規制についてのわが国の法令の現状を申し上げたわけでして、そうした現状の中でどうやってその迷惑というものを防止していくかということをわれわれ常に腐心しておるわけですが、会期中におきましては、国会周辺における右翼の騒音を、少しでも国会の御審議に迷惑を及ぼさないように、取り締まり上の問題点がございますので、まず近づけないという、機動隊によって阻止車両を設けまして、一定の場所から国会の周辺近くには近づけないという措置でやっております。これについては、現場で右翼ともいろいろなトラブルを起こしておるわけですが、強力な説得で抑止するという措置をとっておりまして、昨年じゅうで見ますと千三百件ぐらい警告規制を行っておるわけでございます。そういう現場における苦労も御理解いただきたいと思うのでございますが、この騒音の問題については今後とも立証上、立件上の技術というものを研究してまいりまして努力してまいりたいと思っております。  それから、御指摘の、右翼団体におけるいわゆる訓練の問題でございますが、マスコミ等にも報道されて多分に刺激的であると、われわれも大変残念に思っております。違法な行為があればこれは厳重に取り締まる、事前にも警告をしております。しかし、ある団体がそのグループに必要な教育訓練をやるということ自体は当然自由でございますし、その教育訓練の中身において違法な事態がなければ、これはまた、警察としてはやむを得ないことであろうと思っております。違法なことにわたらないような警告と、わたった場合の厳重な検挙ということには努めておるつもりでございます。  それから、資金源でございますが、これは結論的に申し上げますと、必ずしも右翼団体の資金源をすべて詳細にわれわれ把握しているということではございません。おおむねは会費とか事業収入、寄附、その他の収入ということで賄っておるわけでございます。その寄附の大部分は企業等からの寄附金、賛助金に頼っておることが多いとわれわれ推定しておりますけれども、その一々についてつまびらかに掌握しているということではないわけでございます。
  88. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、資金源が一番やっぱり問題だと思うんですね。そこら辺はもう少し警察の方でも、いろんなむずかしい問題あると思うんですが、断ち切っていく体制をつくっていかなければいかぬのじゃないかと私は思います。これは今度商法の改正に基づいて総会屋その他の締め出し等の問題もありましょうが、しかし、どうもやっぱりそれだけではない。いまあなたがおっしゃったように、企業からの支出がやられているということが一番大きいような感じもしますが、一説によるとある法人、しかも政府系法人から出ておるといううわさもある。だから、そういう点はやっぱり警察の方で精査してみる必要があるのじゃないかと思うんです。それはひとつこの次でも結構ですから回答いただきたいと思っておるんです。  そこで、長崎の島原で行った日教組大会で、右翼の皆さんが百八十四台の車で長崎に繰り込んで、そして結果的には憲法で保障された結社の自由、それから言論の自由も封殺する、こういう挙に出ました。この問題は、緊急質問も衆参両院でやられておりますから、私はそのことを後追いするつもりはございませんが、その結果長崎県が屈服し、そして島原市が屈服して、会場を貸さないという事態を招いたことも事実。それから住民の皆さんから見ると、特に旅館業の場合には営業妨害やいろいろな妨害をやられたことも、これも事実。こういう点が出されております。  私は、六月の四日、五日に現地に入ってみましたが、その異常な状態というのを目の当たりに見ました。まあ警察の方にも連絡をしたけれども、なかなか取り締まれる——恐らく私服の皆さんは来ておったと思うんですが、直ちにこれは違法だと断定できないということでおびえた状態にあったことも事実なんです。まあ警察の方にも言い分がいろいろあると思います。  しかし、こういうことが再三やられるということになりますと、これは長崎の右翼だけじゃないんですよね。西日本全体から行っているわけです。この連中が、二、三日して私が島根に行っておったら、どんどん帰ってきよるんです。こういう状態から見ると西日本全体から動員しておるわけですが、そうしますと、右翼の気に食わぬいろんな集会というものについて、全国動員でこういうことを全国各地でやることになりましたらこれは大変なことになる、そういう私は危機感を持ったんですが、これに対して警察庁として、長崎の警備態勢というものの問題点、同時に、今後の対応というものについてどういう考えを持っておるのか、それを聞いておきたいと思うんです。
  89. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 日教組大会につきましては、ただいま御指摘のように、年々右翼の反対行動が全国的な動員で大会開催地に向けて行われておるわけでございます。そこにわれわれの警備、取り締まりの必要性も出てくるわけでございますが、今回の島原におきます日教組大会につきましても、島原市で開催されるということが報道されました三月二十四日以降、ほとんど連日のように一、二台から五、六台の車両でございますが、島原という遠隔の地に、反対行動で右翼が出だしたわけでございます。  警察庁としましても、これは例年の大会ごとに反対行動が行われるわけでございますので、三月以降に全国の都道府県警察に対しまして、右翼団体の情報、あるいは現地に出動する動向を持っておる右翼については説得をする、現地に出動を取りやめさせる、そういうような措置を指示したわけでございます。  長崎現地では、いま申し上げましたように、三月二十四日以降右翼の反対行動の動向が見受けられましたので、警察署で、一番多い日は二百二十六人も警察官を出しておりますが、大会開催前日の六月二十六日まで連日制私服警察官を動員して、右翼の検問あるいはその行動についての警戒、規制措置をとったわけでございます。大会が近づきました六月二十五日以降は、県本部段階で警察本部長を長にします警備本部をつくりまして、県外からの応援部隊千人の応援派遣を行いまして、長崎県警の警察官二千人と合わせて三千人の警備体制を島原市周辺でとったわけでございます。  そこで、厳重な規制、検挙を行いまして、検問、検索で、こん棒等の危険物を十一件八十七点一時預かりしておりますし、検挙も二十二件二十七人の検挙を行って、右翼団体の違法行為に厳正に対処したわけでございます。  そこで、旅館その他の御迷惑につきましても、あらかじめ御連絡しまして、右翼団体というものが反対行動に出てくる、その抗議というものがあったときの警察への連絡方法とか、いやがらせの電話のあった場合の措置というものを十分にお打ち合わせして、旅館側でどういう態度をおとりになったらよろしいか、違法行為の規制、検挙のために警察に御協力いただく点も一々打ち合わせまして、結果的にはホテル関係に計八回の右翼の抗議がございました。市当局に九回、県当局に六回、右翼団体の抗議行動が行われましたけれども、その都度制私服を配置して違法行為にわたることのないように厳重な規制を行ったわけでございます。  大会期間中におきましては、島原市周辺、会場周辺に相当広い範囲の規制線をつくりまして、会場周辺に近づけない、そういう措置をとったわけでございます。したがいまして、日教組大会自体は平穏無事のうちに開催されたと承知しております。
  90. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 三月の二十四日に島原市議会が日教組大会の開催反対決議を行った。警察としては、警備に当たりまして、右翼はその前から動いておったんですか。決議後から動き始めたんですか。それはどういうふうにとらまえていますか。日教組が島原でやるということを決めたのは四月の十二日ですね。
  91. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 先ほどお答えいたしましたとおり、現地に右翼の動向があらわれましたのが三月二十四日以降でございます。いま御指摘の三月二十四日には、日教組から島原市長に会場貸与方の正式申し入れがあり、同時に、その日に市議会が、「平穏な市民生活保持に関する決議」を採択されたという日でございますが、そのときには二団体二車両が三月二十四日には現地に出ております。
  92. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 警察結構です。  そこで、大臣にお聞きしますが、あなたの六月二十五日衆議院、二十八日参議院の答弁がございますね。これは中で総理が主として強調しておりますが、こういうことはあってならぬことだ、ここら辺については断固毅然たる態度で言論の自由、結社の自由を守っていかなきゃならぬ、こう強調なさったんですがね。いま警察の話を聞きますと、右翼が動き始めたのはどうも市議会の決議から動き始めた、それまではない、こう言っているんですね。また、知事が会場を貸さない、市議会が会場貸さないと言う。市長は初めは貸すと言っておって、議会がそうなったら貸さないということになったのですが、こういう姿勢が右翼の跳梁を引き起こしていると見られないこともないんです。もっと言えば、行政に携わる者がそこら辺をきちっと毅然として守っておれば右翼の跳梁を抑えたかもしれない。この問題はこういうような感じがしてならぬのですがね。大臣として一体、指導助言ができるんですが、自治体に対してその後こういった問題の措置についてどういう指導をやられようとしているのか。やられておるのかを含めて、ひとつお答え願いたいと思います。あなたの姿勢も含めて。
  93. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) この島原の日教組大会に関しても、私ども事情を市長その他の方々に聞いたわけでございますが、今回の問題は、これはいろいろ事情が錯綜しておりまして、最初、日教組に会場を島原へ持ってこないかというようなことを、旅館業者ですから、誘い水をしたような点もあるわけでございます。それに対して日教組の方も、はっきり最初のうちは返事がなかった。そうこうしているうちに、今度は日教組の方からやらせてくれないかというような申し入れがあった。その間にかなり時間がたっておりまして、その中で右翼の方がだんだんいろいろ活動を始めてきた。いろんな事情が前後してこんがらがっておりまして、大体そういう問題が煮詰まってきたころには住民その他の反対運動があって、私どももこれはいろいろ御相談を受けたりしたわけでございます。それで、市の方へも県を通じて説得その他の努力はしたわけでございますが、そのときにはもうすでに自治体の方ではどうしようもなくなって、判断できなくなったというのが実情でございます、今回の場合。  今後のことでございますが、これを契機にして、やはり総理もおっしゃっておられましたように、集会の自由、結社の自由、それから自由なる意見の発言、言論の表現の自由、これは憲法に保障されるところでありまして、これを妨害するようなことは厳に慎まなければならないと同時に、今後とも強い姿勢で排除してまいる所存でございます。  今回のいろんな問題がかなり教訓になりまして、警察当局としても、今後の対応策を十分に考えて案を練っていくと存じておる次第でございます。
  94. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、警察の対応もいろいろ問題がさっき出されておりましたが、しかし、山田さんの話にあるように、三月二十四日の日に市議会が決議をして、それから右翼が動き始めた。そうすると、旅館業界の皆さんが日教組にいわゆる大会を誘致をした、それは二月ですよ。そうして三月に入って、今度は市長の方から、会場を貸しますからぜひ来てくださいと、こういう要請があった。三月に入って。そうしたら、住民というよりも商工会議所の代表の皆さんが、住民に相談せぬまま、これは日教組大会が来るとぶっそうだと市議会の方に要請したところが、市議会が二十四日に突然決めちゃった。そこで市長はメンツまるつぶれ、議会からやられたと、うろうろしておる間に、右翼がどんどんどんどん入り出したと、こういう現象が起こっているわけですね。  それともう一つは、日教組が正式に決めたのはその後の四月の十二日に決めておる。その後に今度は県に五月に申し入れたんですね、代替地を。市が貸さぬと言うものですから。ところが県の方がまたぐずぐず言うて、結果的にしようがないので、全国労働者共済生活協同組合連合会が所有しておる長崎県の建設学院というんですか、そこを改造して使おうとしかけたところが、その改造中止命令を県が裁判所に仮処分の申請をやってここを使えなくなった。  どうも私は、警察にもいま事情を聞きましたが、この問題を誘発したのはやっぱり自治体の側にある。これは自治体がもっと毅然として、憲法に保障された結社の自由、言論の自由については断固としてやっぱり守るという、どんな圧力があっても守るという、こういう保障するという基本があったなら、こうまで右翼が跳梁しなかったと、私はこの経緯を見ると察せざるを得ない。そこら辺の具体的な、さっきあなたの言った、総理もそういう発言をしていますがね、答弁の中で。それをやっぱり具体的に生かすのは、警察の方で毅然としていくのも大切ですが、もっと自治体の長に対しても、そこら辺は自治省の、あなたのところのいつも言う指導助言というんですか、そういうものを含めて毅然とした姿勢を確立する、そういう指導があってしかるべきじゃないかと思うんですが、ここら辺についてはそういう所要の措置をとられましたか。とるつもりですか。
  95. 田中暁

    政府委員(田中暁君) いまの件でございますが、御承知のように、二十四日に議会が、「平穏な市民生活保持に関する決議」というものを行ったわけでございますが、これは先生も御指摘のように、前日に、商工会議所とかあるいは連合PTAだとか老人クラブとか、相当多数の団体から市と市議会に反対の陳情があった、これを受けてやったということでございます。もちろんこの公の施設を貸すかどうか、使用させるかどうかというのは市長の権限でございますが、ただ、市民の代表でございます議会が反対の決議をしたということになりますと、事実上市長もある程度それに拘束されざるを得ないということはおわかりいただけるだろうと思うわけでございまして、県も市も、なるべく円満に解決するよう相応の努力をいたしたものとわれわれは見ておるわけでございます。  今後の方針といたしましては、御承知のように、公の施設管理に関しましては地方自治法に規定がございまして、利用の開始につきましては、地方公共団体は正当な理由がない限り住民の利用を拒んではならないということになっております。また、利用の開始後も、不当な差別取り扱いを禁止しておるわけでございます。これは直接にはその団体の住民に対するものでございますが、憲法の平等取り扱いの原則から言いましても、他の団体の住民に対しても事情が許す限り同じような取り扱いをすべきものである、これが公の施設の管理の基本であるというように考えておる次第でございます。この方針は今後とも堅持してまいるつもりでございます。
  96. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 時間があればもっとその問題で——私はやっぱりこういったことについてはまさに遺憾なことでね、結果的には暴力に屈したということになるから、そういう意味では毅然とした指導体制を整えて再びこういうことの起こらぬようにやっていただかなきゃいかぬと思いますが、これは要請しておきます。  時間がございませんから、大蔵省の皆さんに来ていただいておるんですが、一つだけお聞きして私の質問を終わりたいと思います。  グリーンカード五年間延長、そして実際は、八月三日の自民党の総務会では廃止をねらって議員立法で出したと、こういうふうに聞いておるんですが、これは四月の二十三日、二十六日の決算の総括の際に、総理大臣、官房長官、大蔵大臣を呼びまして私がただしたときには、そういうことは自民党の正式機関で決めたことはない、決めるとすれば私どもに相談なしに決めるはずはない、相談があればこれはそういうことはさせないと。言いかえれば、現行法律を守って八四年一月から実施できるように万全な体制をつくっていきたいと、こういう答弁が私にはあったんですね。ところが、これはどうも新聞等によりますと目白のやみ将軍が号令かけて起こったらしいんですが、それの方がちょっと勢いが総理大臣より強いんじゃないかと思うんだけれども、結果的に自民党さんは会期末ぎりぎりにこれを出したということを聞いておるんです。これは当然臨時国会の課題になりますからそこでまたひとつやらしていただきたいと思いますが。  そこで大蔵省に聞きますが、もう八四年一月実施ということならかなり準備が進んでおると私は思うんです。朝霞のコンピューターセンターもそうでしょうし、いろんな所要の措置がやられてきておると思うんですが、どのくらいの準備がいま整っておるのか。そして、そのための所要経費はどのくらい入っておるのか。この実態をひとつ報告いただきたいということが一つ。  それと問題は、あれほど大蔵大臣は私との約束の中では断固断固ということを言っておって、分離課税というのは日本だけで、先進国では総合課税で、恥ずかしいような状態だ、これは完全に実施しますということを言い切ったんですが、自民党が七月の三十日に政調会で決めて、八月の三日に総務会で決めた途端にぐらぐらっと何か腰が砕けたようなことを発言しておりますが、発言するぐらいならともかくとして、まだ議員立法として出しただけだというのに山中政調会長の指示でその進行しておる業務をストップをかけたということがまた新聞に出ておるわけですが、それが事実かどうなのか。この二つの点をひとつお聞きして私の質問を終わっておきたいと思います。
  97. 佐々木秀夫

    説明員佐々木秀夫君) カード制度の執行を担当しておりますので、国税庁の方からまずお答えをさせていただきます。  御指摘のように、カード制度の本格的な実施というのは五十九年一月からでございますが、その前にカードの交付申請の開始が五十八年の一月から開始になります。私どももこれに焦点を合わせまして所要の準備を進めてまいっておるわけでございまして、ただいま御指摘の朝霞のコンピューターセンターにつきましても、これは現在建設省の所管で工事を進めていただいておりますが、昨年の五月に着工いたしまして、ことしの十一月には完成ということで現在内装工事に入っております。私どもはこれを十二月には引き渡しを受けるという予定になっております。  それから、このセンターに入れてコンピューターを使って処理をする予定でございますが、その場合のシステムの開発も、昨年の九月以降開発を進めておりまして、これもことしの秋、具体的には九月の末を一応めどといたしまして現在開発を進めているということでございます。  これに関する所要経費は、予算額で申しますと、五十六年度には一億八千八百万円でございます。それから本年度、五十七年度は百九億六千六百万円、これは国税庁予算でございまして、それ以外に先ほどの官庁営繕の建物経費は別に建設省の方になっておりますというのが現在までの事情でございます。
  98. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それは幾らですか。
  99. 佐々木秀夫

    説明員佐々木秀夫君) これは両年度総工費額五十六億一千万円を予定して現在着工しているということでございます。
  100. 滝島義光

    説明員(滝島義光君) お答えいたします。  グリーンカード制度は、御承知のように、政府提案の法案といたしまして五十五年に提出されまして、国会の御承認を得て成立したものであります。その後、カードの交付に関する政省令あるいはカードの利用に関する政省令が五十五年の十月あるいは五十六年の十一月に出されまして、準備を着々と進めてまいってきたわけでありますが、ことしの二月の予算委員会で民社党の塚本先生から、あれは廃止したらどうかというお尋ねが出てまいりました。相前後しまして春日先生の方から、百害一利のグリーンカード制度の即時廃止訴えるというパンフレットが配られまして、これを契機にしまして、自由民主党の中でもグリーンカード制度廃止あるいは凍結といった動きが出てまいってきたわけであります。  これに対して政府といたしましては、あくまでも法律としてお決めいただいているものでございますから、これは予定どおり五十八年一月一日から実施をさしていただきたいということで関係各方面に、これはいま思い出してもくたびれるほどお願いしてまいったわけであります。総理大臣も大蔵大臣も、いま私が申し上げたと同じように、法律で決まっている制度であるから予定どおり実施をしたいということを国会でお述べになっておられますし、それから総理あるいは大臣の御指示でそういった政府の意見を自由民主党の税制調査会の先生方を初め関係の先生方にるるお願いをしてまいったわけであります。  こういったことをすべて踏まえながらも七月三十日、グリーンカード制度を五年間延期するという決定をなされましたのは、まあ一つの政治的な判断としてなさったのだろうと思いますが、私どもとしては大変残念なことに考えております。このグリーンカード制度の延期法案が提案されましたけれども、これが政府提案ではなくて、あくまでも議員提案として出されているというところに私どもの姿勢といいましょうか、気持ちというものがあらわれているとお考えいただきたいと思います。  先ほど、大蔵大臣から直ちに準備をやめろという指示があったというようなお話がございましたけれども、まだこれは議員提案として提案された段階にすぎません。あくまでもこれは国会で過半数をお占めになる自民党の先生方の議員提案でありますから、それなりに重大な意味を持つものとは思いますけれども、あくまでも制度としてはまだ成立していないわけでございますから、大蔵大臣の方から私どもに準備を直ちにやめろという御指示はおりてきておりません。
  101. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 最後に一つ。  いまお聞きのとおりだが、閣僚の一員として大臣、この問題に対するあなたの所見があればいただきたい。
  102. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) これは、あるいはきわめて個人的にわたることかもしれないんですが、実は私、このグリーンカードの法案が参議院大蔵委員会を通過しますときに大蔵委員長をやっておりまして、この法案を、いろいろ私自身は意見のあったところでもありますが、これを実際に通過させた責任者でございますので、この点に関しては何ら私は意見を差し挟む余地がございませんで、したがって、議員のいろんな連盟をつくっておられたりしますが、これにも一切参加しないことになっております。その点でどうぞ御了解をいただきたいと思います。
  103. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時九分休憩      —————・—————    午後一時七分開会
  104. 上條勝久

    委員長上條勝久君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  休憩前に引き続き地方行政改革に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  105. 大川清幸

    ○大川清幸君 いま、地方財政についてお伺いするのは時期が中途はんぱでございまして、五十八年度の予算のちょうど作業に入ったとば口だろうと思いますし、五十七年度の補正についてもどうするか、政府の方の基本方針もまだ決まっていないところですから、なかなかお答えいただくのにもむずかしい時期ではないかと思いますが、大変財政状況としては悪いものですから心配されますので、念のため何点かについてお伺いをしておきたいと思います。  数字が明らかになっておりますのは、交付税分で八千五百億余ですね、これが落ち込んでいるわけですが、当然五十八年度で精算するということに事務的にはなるんでしょうが、近く五十七年度の補正予算も政府の方では出されることは決定的でございますので、この八千五百余億円の精算の仕方についてはどのようにされるおつもりなのか。もし答えられればお願いしたいと思います。
  106. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 御案内のように、昭和五十六年度の国税の決算におきまして、総額で二兆八千八百億円余りの歳入欠陥が生じたわけでありますが、そういたしますと、現行交付税法第六条第二項の規定によりまして、五十六年度の地方交付税につきましては、減収額のうち二兆六千五百六十九億円が国税三税となっておりますので、その三二%に相当する八千五百二億円弱のものが過大交付ということに相なったわけであります。  この点につきましては、交付税法第六条第二項の規定によりますと、その年度の翌々年度までに精算しなければならないということになっておりますので、具体的には昭和五十八年度までに精算を必要とするということに相なります。
  107. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、五十八年度精算ということにはなるんでしょうけれども、従来の慣例で言いますと、過大交付分というか、この分については、率直に言って政府の景気見通しその他の方にむしろ重大な責任があるのでありますから、この分についての穴埋めの方法は、それは運用部資金から借り入れる、あるいは臨時特例交付金で措置をする、こういうようなことで、この分についての後の返済の方法、これ等についても政府の方では従来対応を十分してくれたわけなんです。配慮してくれたわけですよ、半分見るとかいろいろ。あるいは利子分についてどうするとか、そういう措置が従来あったんですが、御承知のとおり、財政事情がきわめて国の方は悪い、こういうことで、報道なんかでもこの分についてはもうぶち切りだというようなことも出ておりまして、その辺の地方の財政に対する影響というのは大変心配されるわけです。確かに形の上では過大交付なんですよ。けれども、張りつけて、地方公共団体の方ではそのつもりで使っちゃったところもあるでしょうしね。そういう点から考えて、しかも、後で時間があれば触れたいと思いますが、地方公共団体の起債累積残高もかなり大きくなっておりますから、こういうようなものをそのままおっかぶせられたんでは地方公共団体は将来にわたって大変負担が大きくなるし、それをしょっていかなきゃならないという深刻な問題になろうかとも思いますので、大蔵省をきょう呼んでおりませんので大蔵省さんの御意見は聞けないんですが、せいぜいがんばってもらう意味でもこの辺の措置の仕方についてお考えがあれば一応聞かしておいてもらいたいと思います。
  108. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 国税三税について、予算の見込み額に対して欠陥が生じたということに関連いたしまして地方交付税の減額精算を行った例は、過去何回もあります。従来の扱いを見ますというと、いわゆる政策減税などによって減収が生じた場合は、ほとんど例外なくそれによる交付税の精算減額については臨時特例交付金で補てんするとか、あるいは元利償還金の、その償還額の全額を将来国の一般会計が責任を持つという形で処理されてきております。  問題は、経済情勢の変化等によりましていわゆる自然減が生じた場合、見積もりが狂ってきてその結果として減収を生じた場合の扱いであります。これまでは、金額が比較的小さい場合は、法律の規定に従って減額精算が行われて何らの特別の措置を講じておらないというケースもあります。それから、金額が大きいものについては、たとえば昭和四十九年度の交付税について五百五十九億円の減額精算を昭和五十一年度で行っておりますが、この際は、法律上の規定に従って減額精算を行うと同時に、その年度の財政状況全体を勘案して同額の臨時特例交付金を交付する、特例交付金を交付税特会に繰り入れる、こういう措置が講じられております。それから、五十二年度の場合には、自然減の分については交付税全体の処理の中で特別会計が借り入れまして、それでその償還額の二分の一を国の方で将来措置をするというような扱いがなされております。  したがいまして、今回の五十六年度分の減額精算についてこれをどう扱うか、その性格をどのように理解するかということについてはいろいろ議論もあろうかと思いますが、私どもといたしましては、いずれにしてもその減額精算分を含めて、これが五十七年度になるか五十八年度になるか、減額精算が行われる年度の地方財政全体の状況を踏まえて地方財政運営に支障のないような措置を講じていきたい、このように考えております。
  109. 大川清幸

    ○大川清幸君 その方向で努力していただくのは当然だと思うんですが、とにかくやっぱり交付税分で八千億円を超えるということは大変金額が大きいんで、これは措置を間違うとやはり後々地方公共団体の財政への影響が大変大きいということで心配をいたしておるわけでございます。天引きなんということで血も涙もないやり方でやられないように、ひとつ十分の努力をしてもらいたいというふうに思います。  ところで、五十六年度が大変状況が悪かったんですが、どうも世界の経済状況も、国連の見通しでも大変よくない材料ばかり。したがって、河本さんのおっしゃっておったように、国際景気でもよくなったら日本の経済は後半よくなるだろうなんて大変楽観的な見通しも予算委員会でお述べになっておったんですが、実際には、五十七年度の一年間の経済見通しというものも国際経済の状況に関連して考えると決してよくない。しかも国内では、住宅等でもはかばかしい実績が上がっておらない。内需は拡大しない。  こういう状況考えますと、五十七年度の税収も引き続きこれは大変心配な材料ばかりだということになるわけで、この六月末の租税及び印紙収入額を見てみますと八・四%で、五十六年度のちょうど同月比で見ると、これ五十六年度が九・七ですから、昨年の実績に対しても一・三ポイント五十七年度の方が落ちているという状況で、税収の実績も余り足取りがよくない。ですから、かねてうわさされておりましたように、五十七年度の税収不足といいますか、歳入欠陥も大体四兆円前後だろうという私個人は試算をしておるんですけれども、こういう点から考えると、二カ年間引き続きのこうした歳入の落ち込みが出るということで深刻な状況が明らかなんですが、この五十七年度、大蔵省なり政府がまだはっきり補正予算のフレームなり方針を決めていない中では御答弁はしにくいだろうと思うんですけれども、これ、五十七年度分についても税収落ち込みは明らかで、実績を調べれば地方交付税関連の国税三税も落ち込むことが明らかでございまして、この辺の対応については、数字が出たら対応しますということになるんだろうと思うんですけれども、先ほどの五十六年度は八千五百億円。今度は税収不足四兆円だと。これは試算すれば一年間分は出てきますけれども、これの扱いもいまからかなり考えておかないと重大問題になると思うんですが、この辺の対応も補正予算が出たときにはっきりやっておかぬと、今度は年度末にまたえらいことになりますから、その辺の対応はどうされますか。
  110. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十七年度の国税収入、地方税収入も後でまた税務局長からお話があると思いますが、国税収入の進捗状況から見ますというと大変悪い。先生御指摘のとおりであります。したがいまして、五十七年度の税収見通しを立てたときのその基礎の数字でありますところの五十六年度の補正後の国税収入に大幅な減収が生じたというふうなことと、それから今年度に入ってからの税収の進捗状況、こういったものを勘案いたしますと、五十七年度においても相当大きな減収が生ずる危険性が高いと、このように考えざるを得ないと思うんです。もちろん、本件については大蔵省当局まだこの時点でははっきりわからないと言っておりますから、私どもも数字的にどうということは申し上げられないわけですけれども、そういう可能性と言いましょうか、危険性が非常に強くなっているということは否定できないと思います。そして、もし不幸にしてそういう事態になった場合にどうするんだということ、当然私どももそれは非常に気になることでありますから、過去の例なども調べながら考えております。  最近の例で申しますと、第一次石油ショックの後の税収の落ち込みが年度途中で出ましたのは御案内のように昭和五十年度であります。五十年度におきましては交付税につきましても、一兆円を超す減収が出まして、これが補正予算の段階で具体的に交付税の減額となったわけであります。五十年度の場合には、そのときはすでに普通交付税の決定が済んでおりまして、九月までの概算交付も済んでおりましたから、言うなれば各団体ごとに普通交付税の額はふところに入れたような状態になっておったわけです。その時点で減額、返還ということは、法律上の規定はありますけれども、実際問題としてはとてもそれはできない。地方財政運営が大混乱に陥るということで、五十年度の場合は全額交付税特別会計の借り入れによって補てんいたしました。そしてその返還につきましては、その二分の一を国の一般会計が臨時特例交付金として交付税会計に繰り入れるという形で処理が行われました。  五十七年度の場合はどうするんだということでありますけれども、数字なしに財政の議論をするということはなかなかむずかしいわけでありますが、私ども、基本的には現在の予算に組まれております九兆三千三百億円という交付税総額を前提に、五十七年度の普通交付税も今月末には決定する方向で現在作業を進めておりますので、一たん各団体ごとに決定した交付税を年度途中で減額し、返還させるということはとてもできませんので、これはどうしてもこの額は確保しなきゃいけない、補正予算でどういう形になろうとその額は確保しなきゃならない、こういう気持ちでおります。  ただ、五十年度の場合と違いまして今回非常に私ども心配しておりますのは、その交渉相手になります国の方の財政状況がきわめて深刻であります。特に、交付税会計で借り入れをするということになれば当然それは財投を当てにするわけでありますけれども、財投原資が極度に枯渇しているという状況であるようでありまして、これらを勘案いたしますと大変心配なのでありますけれども、私どもといたしましては、現実の地方財政運営に混乱の生じないように最大限の努力をしていかなきゃならない、こんなふうに現時点では考えております。
  111. 大川清幸

    ○大川清幸君 ところで、先ほどの五十六年度分の精算は五十八年度、これが慣例、常識ということだろうと思うんですが、五十七年度の十月に予定されておる補正予算の段階で、五十八年度があんまりきつ過ぎるから、前送りみたいなことで一部分を精算するとか措置するというふうなことはあり得ますか、あり得ませんか。
  112. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 法律上は、翌々年度までに精算するということになっておりますから、翌年度に精算ということも可能なわけであります。現にこれまで、減額精算じゃなくて増額精算については翌年度に行った例があります。ですから、五十六年度分の減額精算について必ず五十八年度と現在決まったわけではございません。その可能性はもちろんあるということになります。
  113. 大川清幸

    ○大川清幸君 まあ五十七年度分の地方交付税の落ち込み分については五十九年度に精算するということに、段取りから言えばなるんだろうと思うんですがね。本年に予定されている十月の補正では入ってこないだろう。張りつけておいてそのままだろうと私も予想はするんですけれども、いまの五十七年度分については五十九年度でしょう、どうせ精算は。交付税の。そうなりませんか。どうですか、その辺。
  114. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) もし、五十七年度について補正予算で一切手を触れないということにいたしますと、仮に現実に減収が生じましても、その精算は翌々年度までですから、五十九年度までということになります。
  115. 大川清幸

    ○大川清幸君 ですから、確認しておきますけれども、五十七年度の分についてはどうなるかについてはまだ話し合ってみなきゃわからぬということですね、扱いは。  そこで、念を押しておきたいのは、要するに、五十六年度分についてもいきなり天引きみたいな措置をされて、五十七年度分についても引き続き同じような措置では、これは後々返済するのに地方公共団体の方はもうしんどくてしようがないから、いまからその辺を配慮して大蔵省に物を言う腹だけは決めておいてもらいたいというのが私の気持ちなんですよ。いろいろ折衝する段階で言うべきことは物を言っておいてもらいたい。  ところで、次に移りますが、五十八年度の予算編成に関連して、地方交付税その他地方公共団体に必要な財政需要を満たす分の措置ですね。このことについては、地方財政計画も策定しなきゃなりませんね、この策定は手続上実際には現実にはどうなっているんですかな。あれは大蔵省の大枠が決まってから策定するんですか。こちらの方でいろんな積み上げたものを吸い上げて、地方公共団体の基準財政需要額だのあるいは基準財政収入額だのを積み上げて、実績の上から一応のフレームみたいなものを先に出しておいて大蔵省と交渉するんですか。その辺は、実務的にはどうなんですか。
  116. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 毎年度予算編成に当たりましては、各省庁の予算に先んじまして地方財政対策は決めるならわしになっております。それといいますのも、地方財政関係費の規模はきわめて大きいものですから、その扱いを決めないと国の予算の枠が決まらない、こういう事情がありまして、国の一般の予算編成の大方針を決める直前に地方財政対策を決めております。  その際は、来るべき新年度の歳入歳出につきまして概算的な計算をいたします。その時点では経済見通しも政府の見通しも決まりますし、それから税制改正の方向も決まりますので、それを踏まえて新年度の税収を初めとする歳入全体の見通しと、それから一方歳出につきましても、国の予算編成の基本的な考え方をも念頭に置いて地方財政の歳出面の概算をいたしまして、そしてその結果出てまいります財源不足の状況、これを基礎に地方財政対策を決めているわけであります。ですから、予算編成の段階で行われます地方財政対策は、現在の地方財政計画の積算の手法を用いながらも、概算的に財源の過不足の状況を明らかにして、それに基づいて交付税あるいはその他の地方財政措置というものを決めてまいります。しかる後国の予算編成が行われるわけでありますが、予算編成が行われますと、この確定した政府の予算原案に基づいて各省庁ごとに地方関係のある事業の積算を行います。そうして税制改正その他についても政府の法案など詳細が決まりますから、それらをも整理した上で二月の初旬のころ、通常御検討いただいております地方財政計画、細かい数字まで入った地方財政計画を提出しているわけであります。  したがいまして、地方財政計画を予算編成の前に決めるということは実際上できないわけです。まあ大筋というか、大枠だけは予算編成の段階で決めているというのが従来のやり方でございます。
  117. 大川清幸

    ○大川清幸君 そうすると、五十八年度の地方財政計画そのものについての具体的な報告はいまの時点では受けられないというふうに私も理解をいたしますが、五十八年度の見通しについても大変深刻な状況にある上に、ここ一、二年地方税そのものもずっと落ち込んでいますので、そういう点から考えると、地方財政計画をどのように五十八年度なさって臨むのか、その辺の考え方がいま報告できれば伺いたいと思いますが、どうでしょう。
  118. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 現時点で五十八年度の地方財政収支について申し上げるには余りにもデータが不足しておりますから何とも申し上げられないのでありますが、ただ、先ほど来御答弁申し上げておりますように、五十六年度についてはすでに決算が確定して交付税の減額精算すべき額も決まっております。それから、それをベースにして想定される五十七年度の税収見通し、これもかなり厳しい状況になりそうだ。さらに五十八年度、これ、五十八年度のわが国の経済がどういう状況になるのか、これらがはっきりしませんと何とも申し上げられないのですけれども、現時点でのいろんな諸材料をベースにして五十八年度を展望いたしますと、歳出の内容いかんによってもかなり幅はあり得るんですけれども、五十七年度の当初では地方財政収支は八年ぶりですかに均衡したんですが、どうもそういうことにはならない、かなりの財源不足になる可能性が強いのではないかという現時点での展望を持っております。
  119. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、自治省としては、五十八年度の地方財政措置についての次官通達、五十八年度について次官通達をお出しになっていますね。この中身について。
  120. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十八年度につきましては、次官名及び私の名前で各省庁に対して、五十八年度予算編成に当たりましていろいろ御留意いただきたい、御配慮いただきたい事柄を、いわゆる申し入れという形で行っております。地方への通達というのは別に行っておりません。
  121. 大川清幸

    ○大川清幸君 これ、各省庁への協力願いみたいな形でしょう。ですから、これの効果については、どうですか、期待できますか。
  122. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) この各省庁に対する申し入れ、予算編成を前にして各省庁が御案内のように八月末までに大蔵省に概算要求を提出しますので、できればその前に要求原案の段階でいろいろ問題のある点については改善いただこうという趣旨で、昭和三十年代の末ごろから各省庁に対して協力要請をいたしてきております。これまでのところ、非常にむずかしい問題についてはなかなか実現しない面もありますけれども、あの申し入れに基づいてかなり改善されたものもあります。私どもは、単に言いっ放しではなくて、申し入れをしたことについてはそれぞれ担当者が関係の省庁あるいは大蔵省に行きましてわれわれの考え方実態を詳しく説明して協力をお願いしております。それから、さらに十一月末か十二月ごろだと思いましたけれども各省内示がありますが、内示の段階でも、申し入れがどのように推移しているかをチェックいたしまして、そうして予算編成の最終段階の直前にまた再び申し入れをするというようなことでこれまで努力してきております。  したがいまして、私は、申し入れというのはそれなりに効果は上がっているんではないかと、このように考えております。
  123. 大川清幸

    ○大川清幸君 この各省庁への申し入れですが、ねらいはやはり、財政事情が非常に厳しい中で、いわゆる事務事業の需要なんかも地方公共団体は抱えておるというようなこともありますから、国側で当然持たなきゃならないものについてのいろいろな問題で、これを、項目を挙げると幾つかありますが、いわゆるツケ回しと、余りそういう結果にならないようにというようなことがねらいであるというふうに理解していいですかな。
  124. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 各省への協力要請はそのときどきの情勢を反映しておりまして、以前は補助対象を広げてほしいとか、補助率を上げてほしいとか、単価をもっと実態に合わしてほしいというような申し入れが中心でございましたが、昨年度あるいは今年度の申し入れに当たりましては、今日の厳しい財政状況の中で、昨年の場合はゼロシーリング、今年度の場合にはマイナスシーリングというような非常に厳しい枠の中で予算編成が行われますから、どうも勢い、国費は削ったけれども仕事は残してほしいというようなたぐいの、言うところの負担転嫁というんでしょうか、そういう危険性があるんじゃないか、このように考えまして、五十八年度予算編成についての協力要請の中では特に地方への負担転嫁ということが行われないように御留意いただきたいという点に力点を置いて申し入れを行っております。
  125. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは次に、五十七年度の数字をいまここで、税収の落ち込みに関連して地方レベルにおける減収分をどのぐらいに想定するかというのは大変むずかしいと思うんですけれども、税収面では現段階での想定は粗々のところつきますか、つきませんか。
  126. 関根則之

    政府委員関根則之君) 私どもが入手しております資料は五十七年の六月末現在におきます都道府県の税収の実績でございますが、それによりますと、国税の場合と同じように、収入状況は芳しくございません。昨年の実績に対しまして、五十七年度の地方財政計画に計上されました収入見込み額を確保いたしますためには、一四・八%の伸びがなければいかぬわけでございますけれども、六月末では五・五%の伸びしかないということでございます。国税を同じような数字で、国税の方の数字では、予算どおり入りますためには二六・五%必要だけれども、実際には八・七%しか入っていない、こういう数字が出ておりますので、国税よりは比較的地方の方が状況はいい。しかし、両方とももちろん大変悪いという状況になっております。  これをもとにして、年度全般でどの程度の歳入不足、税収不足が生ずるのかということでございますけれども、何せまだ年度が始まりましてから三カ月しかたっていない状況でございますので、このまま推移いたしますと私どもは計画額を確保することは相当困難が予想されるということは申し上げられますけれども、計数的にどの程度落ち込むということをいま申し上げることはちょっとむずかしいんではなかろうかと考えております。
  127. 大川清幸

    ○大川清幸君 まあ数字は大変困難だろうと思います。五十六年度の実績等から勘案いたしましても、五十七年度が同様な困難な状況になることが想定されるわけで、そういたしますと、五十七年度当初で地方財政計画の中で予定されておる地方債の発行高、これが約三兆八千億円ですか、そのほかにただいま論議になっております財政措置を考えると、減収補てん債等の措置は当然考えざるを得ないだろうということになりますね。そこで、これもなまやさしい金額ではないだろうというふうに予想してみますと、全国の地方銀行などの金融機関の間で引き受けがなかなか困難だろう、国債も追っかけてくるし。そういう中で対応するのにきわめて困難ではないか。大きな心配があるように思うんですが、この辺の状況についてはどう見ておりますか。
  128. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 御指摘のとおりでございまして、今年度補正予算がどういう形でいつごろ編成されるのかまだわかりませんけれども、伝えられるように、仮に国税について減額補正が行われ、その差額について特例公債の発行があるとか、あるいは景気浮揚のために建設公債の増発が行われる、こういうような状況が仮に出てまいりますと、それと競合する形で地方についても地方税の減収については減収補てん債というような問題が出てまいりますし、また、公共事業等について補正があれば当然その裏負担に対する救済措置ということが必要になってまいります。そういうようなことで、数字がまだ明らかでないのでありますけれども、五十七年度の途中において地方債の追加発行が必要になってくるという場合に、それが果たして円滑に消化できるかどうかということは非常な心配の種であることは間違いありません。従来の例でありますと、補正予算の段階で地方債の追加発行が行われるというような場合には、その完全消化について大蔵省とも協力について十分確認し合ってやってきておる。過去の例では、少なくとも予定した地方債が消化できなかったという例はありませんけれども、五十七年度の場合はこの点がかなり厳しい状況にあるということは否定できません。私どもといたしましては、補正措置がどうなるか、それとの関連において当然その段階で地方債の追加発行ということが必要になってまいりますれば、その完全な消化についても大蔵省を初め関係省庁ともよく相談して、地方に不安が残らないようにしていかなければならぬと、このように思っております。
  129. 大川清幸

    ○大川清幸君 そこで、先ほど御答弁があったんですが、都道府県税、五十七年度分六月末累計での数字を挙げていただきましたが、前年同期比で五・五%増ですね。そうすると、これが一四・八%の予想を大変下回っておるわけで、こういう中で例の地方の景気浮揚策なんかも配慮した上で、地方の単独事業というのもかなり前向きで政府としては措置をしたし、地方にもそういう指導をしてきたんだろうと思うんですけれども、片や地方財政を脅かす地方税そのものの減収もあったりして、大変財政的には厳しい状況にあるものですから、やりたくても単独事業なんかもなかなか実施するのに困難な状況も出てきていると思います。  従来は、とんでもない乖離がある実績は歴年ずっと出てきておりまして、五十七年度当初のときにこの委員会でも地方の市長さんに出てきていただいたときに、十分そのつもりで対応するから大丈夫だとおっしゃっておって、そういう市町村、都道府県もあるかもしれませんけれども、そうはいかないところもある。まあさぼると言っちゃおかしいけれども、やりたくてもできないという事情も出てくるんだろうと思うんですよね。こうしたものに対する対処の仕方をどうするかということと、それから、伺うところによると、普通交付税の傾斜配分等を配慮した上で何か奨励するような方向をとりたいというような考え方ですか、そういう措置をしようというようなことが出ておったようですが、これとあわせて見込みはどういうことになるか。単独事業は予想どおりいくのかどうかというようなことですね。私、状況としては心配しているんですが、どうでしょう、状況は。
  130. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 過去におきまして、決算と地方財政計画との間に単独事業につきましてはかなりの乖離が存在したということは事実であります。その乖離の原因としては、一部は本来単独事業に挙げるべきものを地方の決算統計で補助事業の方に挙げてしまっているというようなものがありまして、それが乖離を大きくしている原因にもなっておりますから、それらを控えるにしても、いずれにしても過去に若干の乖離があったことは事実であります。現在、五十五年度までは決算が出ておるわけですが、五十六年度についてもどうなっているか私ども気にしておりまして、フォローしてみましたが、五十六年度の場合には、少なくとも府県について言いますと、単独事業は地方財政計画上は八%増を予定したのでありますが、府県では一〇%を超える増額を行っております。ですから、五十六年度の場合にはかなり乖離は縮小するのではないかと期待はしております。  それから五十七年度でありますけれども、まだ現段階では正確な状況を把握しておりません。五十七年度の財政運営通達などでは計画的な執行をお願いしているわけでありまして、地方財政計画で予定しております八・五%の単独事業の増が最終的にどうなるか、これは確かに努力を要することであろうと思うんです。当初予算の状況を調べてみますと、都道府県段階では、全体として言いますると増加率が六%程度であります。ですから、計画の率まで行っておりません。しかし、相当数の団体が九月補正を予定していると聞いておりますから、それを含めて見ませんと最終的にどうなるかわかりません。ただ、先生が御指摘になったように、今年度の税収の進捗状況は非常に悪い、そういう不安から、今後予定しておりました単独事業の追加を手控えるんじゃないか、あるいは手控えざるを得ないんじゃないかという動きがあることは事実です。それは主として税収が確保できないということの不安から出ている面が強いということもあります。  そこで私どもは、相談がありましたならば、税収入が特に現在調子が悪いのが法人関係税なものですから、法人関係税等につきましては、年度末に行って、年度末の段階で、交付税の計算等で予定したものに対して相当程度の落ち込みがあるということが明らかになれば減収補てん債を発行することについて十分協力するからというようなことを言いまして、とにかく、単独事業の追加計上については、少なくとも税収面から来る不安材料が原因であるならば、それについてはいろいろな面で協力できると思うからという話をして、計画で期待したような形での消化をお願いしているというのが現状でございます。  それからもう一点、地方交付税の計算上、地方の単独事業の実施状況を反映させる仕組みを導入するという点でございますが、本件については、交付税法の審議の際も御答弁申し上げてきたところでありまして、今月中に最終的な結論を出すつもりであります。  現在進めております考え方というのは、過去の一定の年度、具体的には、現在は昭和五十三年度から昭和五十五年度までの三カ年間の単独事業の実施状況を決算統計でつかまえまして、その単独事業の実施額がその団体の標準財政規模に比べて全国平均を上回る団体については、その上回る部分の、全部じゃありませんけれども、一定部分を投資補正に反映させるという方向で現在作業を進めております。この考え方は、結果として単独事業の実施にインセンティブを与えるということになることは間違いありませんけれども考え方としては、現在単独事業は、人口でありますとか面積でありますとか、あるいは道路の延長などいろいろな客観的な数値でもって計算をしておるんですけれども、こういった一律的な機械的な計算だけではどうも完全には捕捉できない要因があるという悩みを市町村からよく聞くわけであります。そこで、それらについてはいろいろ御議論はあろうかと思いますけれども、過去の一定の期間における決算統計上、標準財政規模に比べて平均を上回る単独事業を実施せざるを得なかったという要因をある程度反映をさせるということが投資的経費の算定の適正化という意味で前進になるのではないかという考え方のもとに、本年度から、投資補正の一つとして単独事業の要素を導入することにいたしたわけであります。  なお、この補正は都道府県には適用いたしませんで、市町村についてのみ適用するということで現在最終的な作業を行っているところでございます。
  131. 大川清幸

    ○大川清幸君 これは、いまの市町村に関連した単独事業、いわゆる単独建設事業比率みたいなものは、いま御答弁のあった五十三年から五十五年度の実績の加重平均ということで、これは何か新しい材料を取り入れるという考え方ではなくて、従来のその実績の取り方でやはり決めますか。
  132. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 補正係数の積算に用いますところの数値は、五十三年度から五十五年度までの決算統計の数字でございます。
  133. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは次に、マイナスシーリング、まあ政府がそういう基本ベースですから、いろいろな問題が地方公共団体の事業に関連して出てくるわけですが、自治省関係の予算の中で、今回のゼロシーリングの対象となるものが幾つかあるわけですが、それで枠外になったものもありますけれども、それをプラス・マイナスでやってみると、マイナス五%のシーリングの実績対象として約千八百八十億円。この千八百八十億円の主なものは、交通安全対策特別交付金だとか基地調整交付金あるいは公営地下高速鉄道事業助成費ですかあるいは消防施設整備、こういうことになっているんですけれども、これらについては大蔵省との折衝の中で、これは先々の問題になるんですけれども、先々といっても予算の折衝が始まれば早速課題になるんでしょうけれども、これらについてはどうなりますかね。
  134. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十八年度の自治省予算の概算要求原案の内容については、現在最終的な詰めを行っているわけでありますが、その中で、いわゆる別枠と申しましょうか、人件費でありますとか年金関係とか、大蔵省から指示があったものはあります。それは大した額じゃありませんが、それ以外では私どもの役所では地方財政関係費はこれは全く別枠でございます。それ以外の経費は一応すべて対象になる。いわゆるマイナス五%シーリング、あるいは補助金について言いますというと、前年対比一〇%削減という一般原則が適用になります。その適用になるものとしては、いま例示されたようないわゆる基地交付金でありますとかあるいは交通安全対策特別交付金、それから地下鉄助成交付金その他であります。それから消防関係の補助金、いずれもこれは対象になっています。それらの対象について大蔵省の示された原則、それから若干これを自治省予算のように、地方財政費を除きまして補助金のウエートの比較的高い役所の場合には、その原則を適用した結果、前年の対比の要求額がマイナスになる場合にはマイナスの二分の一までは復元しようと、こういう緩和措置がありますので、その緩和措置をフルに援用いたしまして現在最終的な予算の整理作業を行っている状況でございます。
  135. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは次に移りまして、外形課税のことでちょっと御意見を伺っておきたいと思うんです。  新聞でも報道されましたけれども、五十六年度の法人住民税収入の中で、たとえば大阪の高石市ですとか千葉県の市原市、これはいろいろな産業があるところで急激に発展した市でございますが、高石市の方は前年比で五八%減ですか、それから千葉県の市原市の方は三八%税収が落ち込んでおるわけで、全体の規模が幾らかちょっと確認しませんでしたが、大きくてもたかだか二、三百億かその程度の予算規模だろうと思うのですが、予算全体でその程度の規模だろうと思うのですが、こういうところでこういう大きな税収の落ち込みがあるとどうなるかといいますと、細かいことをちょっと聞いてみましたところ、昨年は四億円の納税があったところが、四億ないし五億の法人住民税を納入していた企業が赤字決算になったために八十万円の法人均等割だけだというようなことがありまして、これ小さな市なんかの財政では大変こたえるわけですよね。まあ幸いに——幸いかどうかわかりませんが、市原市なんかは不交付団体だそうですから交付税には余り関係はないんですけれどもね。しかし、市の一年間の行政需要を満たして市民サービスをしていく市としては大変深刻な問題らしいのです。単年度で赤字が出た、決算上は赤字が出たから課税の方法ではそういうことになるのでしょうけれども、知事会その他市町村長会でも法人事業税の外形課税の導入についてはかなり要望が強いようですね。これは国の方の側としては対応の仕方についてはどう考えておるんでしょうかね。これそろそろ考える時期ではなかろうかと思うのです。
  136. 関根則之

    政府委員関根則之君) 事業税の外形標準課税の導入問題につきましては、地方公共団体からもう非常に強い要望が前々から出されているところでございます。御指摘をいただいたとおりでございますが、いまお話しのございましたように、地方の税源の安定的な確保を図る上からいって外形標準課税を導入することが望ましいという考え方を私ども持っておりまして、自治省といたしましても、そういう方向へ一日も早く実現を図るための努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。  しかし、これは非常に重大な税制上の変更になるわけでございまして、特に赤字企業からも事業税をいただくということになるわけでございますので、赤字企業の多くを占める中小企業対策等との観点から本当にそういう制度をとっていいのかどうかという大きな問題があるわけでございます。したがって、政府の税制調査会等におきましても長い間議論がなされてきたわけでございますが、最近の税制調査会の一応の結論といたしましては、昭和五十五年の十一月に中期答申がなされておりまして、今後検討される課税ベースの広い間接税の導入の問題とあわせてそのときに一緒にこの問題を片をつけたらいいではないか、こういう一応の結論になっているわけでございます。  私ども考え方としてはできるだけ早く導入したいというふうに考えておりますけれども、いま申し上げました重大な問題でもあり国の税制との兼ね合いあるいは他の地方税の税目との兼ね合い等もありますものですから、全体の税体系の中でこの問題をまあまあいろいろ各方面との折衝も円滑に済まして導入をしていきたいというふうに考えておりますので、いまの時点では税調の考え方に沿って準備その他検討をせざるを得ないというふうに考えておるところでございます。  この事業税の外形標準課税の導入問題と並行といいますか、やや性格を同じうする問題といたしまして、先生御指摘をいただきました法人住民税の均等割の問題があります。この均等割を少し上げてもいいじゃないかというような話も起こってきておりますし、地方団体からの要望も出ておるところでございます。これは均等割でございますから余り金額を一挙に二倍にするとか三倍にするとかいうことはなかなかむずかしい。現在でも大きな企業につきましてはすでに百万円と、府県税と市町村税合わせまして百万円という額になってきておりますので、なかなかこれ以上上げることがそう簡単ではないとは思いますけれども、これも税制調査会におきまして物価水準等の推移なりあるいは地域社会との受益関係等を勘案しながら随時その見直しを行うべきであるというふうに言われておりますので、この点につきましては可能な範囲内で見直しを行ってまいりたいというふうに考えております。
  137. 大川清幸

    ○大川清幸君 それでは次に、午前中もちょっと論議になっておったんですが、地方公務員の給与改定、人事院勧告の四・五八%引き上げ分ですが、これに必要な金額が四千七百十億円、答弁でありましたね。これ、五十七年度の地方財政計画の中の追加財政需要額四千五百億ですね。ですからこの数字で見ますと、この間の長崎等を中心にした九州等の集中豪雨によるあのお気の毒な災害等が発生して、これも措置しなきゃならないことは当然ですが、台風シーズンというのはこれからやってくるので大変頭の痛い話なんですが、この追加財政需要額では幾らも残らないんですな、人事院勧告分を実施してしまいますと。これは補正のときに配慮なさいますか、どうしますか。配慮せざるを得ないと思うんですが、どうですか。
  138. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 御指摘のように、五十七年度の地方財政計画におきましては、いわゆる追加財政需要として四千五百億円を計上しております。これは災害その他年度途中の予測すべからざる財政需要にこれを充てるということで利用しているわけであります。ですから、最終的に給与改定等の扱いが決まった場合に、当然それとの対応関係というものは問題になるわけでありますけれども、これは給与改定財源として利用しておりますのは別途一千億円というのを、それはその分として計上しておるわけですから、性格は違うわけであります。  そこで、これから災害がどの程度発生するか、これは全くわかりません。ただ、本年度は例年よりも非常に災害の規模が大きいというようなことからいたしますと大変心配であることも間違いありません。したがいまして、いろいろまだ不確定要素がたくさんあるわけですけれども、それらを全部見きわめて、最終的にこの給与改定の扱いその他が決まった段階で地方財政として支障が生じないような措置を考えていかなきゃいけないというふうに考えております。ですから、金額でどうこう、あるいは手段、方法としてどういうことをということは、この段階ではまだ検討をしていないと申し上げるしかないのでございます。
  139. 大川清幸

    ○大川清幸君 それで、ただいまの問題に関連をしてもう一点伺っておきたいのは、これは土屋次官の談話ですかね、地方公共団体の中の高給与団体、これに対しては財政上の措置を考えたいということを明言なさっているんですよ。午前中もさんざん論議になったんだけれども、これは、高給与団体に対する財政上の措置というのはなかなかむずかしい問題だと思うんですけれども、行政局長おられないんですが、大臣、これ先ほども御答弁あったんですが、どうも余りはっきり理解できる答弁のように私受け取れなかったんで、ひとつ再答弁願います。
  140. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 地方公務員の給与のあり方については大変議論があるところでありまして、特に、国家公務員あるいは他の団体に比べて著しく高い給与を支給しておる団体については、住民からの批判も大変強いわけであります。それについて私どもも、住民の負託にこたえられるように給与の適正化を図っていただきたいということをかねがねから御指導を申し上げて、現在もまたそういった方向で御指導を申し上げているわけであります。  そういったことと関連して財政措置をどうするかということでありますが、具体的にどういう形でどうするということは決めておりません。御承知のように、従来から特別交付税の配分などに当たりましては、たとえば期末・勤勉手当等について、国の基準を上回る支出を行っている団体については、それはその額が財政的にゆとりを示す額であるというような考え方で、配分に当たってこれをカウントしているわけでありますけれども、そういったことも含めて、今後どういう措置を講ずるかは決めておりません。私どもは、財政措置云々ということでなくて、やはり住民の立場に立って給与の適正化に御努力をいただきたいと、このように考えております。
  141. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間が来たのであれですが、大臣の御所見がありましたら伺いたいと思います。
  142. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) ただいまの件に関しましては、やはり私どもは、基準を国家公務員の給与等に置きまして、それで地方公務員の給与その他の適正化を図っていくという方向で今後とも指導助言を重ねていく所存でございます。  先ほどはっきりしたことを申し上げなかったというふうに御指摘でございますが、今回のこの地方公務員に対する人事委員会やなんかの勧告があったときどうするか、それを尊重するかしないかと、こういうことでございまして、これはもちろん尊重するのにやぶさかではございませんが、われわれの方としては、地方公務員に対してもやはり今回の人事院勧告をもとにして、政府見解がどういうふうになるか、それはわれわれも一緒に協議した上でのことになると思いますが、それに準拠しまして対処してまいりたいと思っておるところでございます。  それから、先ほどからいろいろ御質問のありました点、まだ当方としてはお答えしにくい面ももちろんあるわけでございますが、この五十七年度の財政状況は大変厳しいものがありまして、御指摘のような結果になりがちな点は十分考えております。そしてまた、できるだけ地方自治体の負担にならないように財政的な措置を図りながら、しかも一方では行財政の簡素合理化を図って、この難局を切り抜けてまいりたいと考えております。
  143. 大川清幸

    ○大川清幸君 時間が参りましたので、老人保健法案等に関連した質問を用意しておったんですが、以上で終わります。
  144. 神谷信之助

    神谷信之助君 午前中にも同僚議員が取り上げておりますが、最近の右翼の跳梁というのは本当に私ども目に余るものがあるというふうに思います。そこで、国家公安委員長である世耕大臣にまずお伺いしたいと思うんですが、世界で最も治安がよいと言われているわが国で、同じような政治的、組織的背景を持つ団体による暴力と破壊の犯罪事件が続発しているんですね。ことしの五月一カ月間でも、主な事件を拾ってみますとこうなるんですよ。  五月の一日、これはメーデーの日ですが、北海道で、メーデー終了後共産党の小笠原参議院議員が宣伝カーに乗っておりますと、それが右翼に襲撃をされ投石によって窓ガラスが割られるという事件がありました。  それから二日から五日にかけましては東京の練馬で、わが党の赤旗祭りを四日間やりましたが、この期間中合計十八団体の右翼が連日押しかけてきて、そして早朝から住宅地である会場付近で騒ぎ立てる、あるいは会場突入を企てるという事件が起こっております。  それから五月の三日には宮崎で、宣伝行動を準備をしておったところのわが党の松浦市会議員が、宣伝カー四台を連ねた右翼に襲われまして全治三日間のけがをさせられているんですね。  それから八日には、これは埼玉ですが、民主青年同盟の埼玉県委員会事務所が右翼の数人に襲われて、窓ガラスが壊されたりあるいは宣伝カーや乗用車が壊される、そういう事件が起こった。  それから九日には石川県、共産党の事務所が宣伝カー二台に分乗した右翼に襲われて、そしてガラス二枚が割られるという事件が起こっています。  単に共産党だけじゃなしに、この十五日には、今度は沖繩で、「復帰十年、平和の島をつくる5・15県民大会」、これは共産党だけの集会ではありません。そういう集会に対しても、本土の方から右翼が二十三団体押しかけて妨害をして、そして集会参加者のバスを襲撃をして、宣伝カーで取り囲む。それからドアをこじあけて催涙ガスのようなものを噴射をしたり、消火器とか鉄パイプ、それから歩道の石、発煙筒などを投げつけて七人にけがをさせているんですね。  それから二十三日は、今度は東京です。これも共産党だけじゃない一般のいわゆる草の根運動と言われた四十万人以上集まった東京の反核集会「平和のための東京行動」、これに約七十団体の右翼が妨害に動きまして会場突入を図るとか、旗ざおで参加者の顔を突くとか、爆竹を鳴らすとか、ごみ用のポリバケツを投げつけるというのをあっちこっちでやっているわけですね。  それから二十七日、これは東京ですが、大井町の駅頭で榊衆議院議員が演説をしておりましたら、そこに右翼の宣伝カーですね、装甲車です、こちらのより高い。その車の上に乗っておって、それでこちらの宣伝カーに飛びおりてきてマイクを引きちぎる、そしてけがをさせる、演説妨害やる。これはすぐ現行犯逮捕されていま法廷で係争中ですが、そういう事件も起こっている。  それから三十日には鹿児島で、石油基地の計画に反対する志布志湾の自然保護集会が開かれた。これに対して西日本各地から集まったところの右翼約三十団体、これが妨害をする。そして看板とか取材中の新聞記者のカメラが壊されるという事件が起こった。  五月一カ月間の主な事件だけ拾い上げましてもこれだけあっちこっちで右翼の暴力行為が繰り返される、破壊活動が展開される、こういう事態になっているんですね。こういう事態について国家公安委員長である大臣の見解をまずお聞きしたいと思うんです。後で警察庁も聞きますけれども、まず国家公安委員長に。
  145. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 大変遺憾なことでございまして、私、国家公安委員長としては、これは総理も同じ御見解をおっしっておられるかと思いますが、言論それから集会の自由、その他憲法に保障されているあらゆる諸般のことを妨害する向きに対しては、断固としてこれを取り締まり、排除していく所存でございます。
  146. 神谷信之助

    神谷信之助君 警察庁の方は、こういう事態に対してどういう方針で対処されているのか。
  147. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 最近の右翼団体は、いま御指摘の事件にうかがえますように、自主憲法制定とか北方領土返還、いろいろなテーマもございます。またローカルなテーマもございますが、街頭活動に大変積極的に取り組んでおる状況でして、その過程で御指摘の事案に見受けられるような暴力事案を敢行している例が多いわけでございます。  こうした右翼の違法行動に限りませんが、およそ違法事案にはそれを看過せず厳正な取り締まりを行うというのが警察の方針でございまして、こうした右翼の違法行為に対しましても厳正な取り締まりを実施しておりまして、件数で申し上げますと、昨年一年間で三百四十九件、五百二十八人を検挙しております。本年に入りましてからも二百六十五件、三百四十五人を違法行為で右翼の関係者を検挙しておりまして、いま五月において発生した事件を言われましたけれども、ことしの五月中だけを見ましても、六十一件、八十人を検挙して厳正な取り締まりを行っておるところでございます。  また、平生からこうした暴力事案に出る右翼団体につきましては厳しい警告を発しておりますし、行動に出る際には制私服部隊を動員して、現場においても適確な検挙を行うなど、厳重な監視体制をとっておるところでございます。
  148. 神谷信之助

    神谷信之助君 いま警察庁長官になっておられる三井さんが警備局長時代に、私どもはいわゆるにせ左翼といいますか、暴力集団ですね、その暴力行為に対する警察の対処についてもっと手厳しくやる必要があるという指摘をしてまいりました。このような暴力を許すということは、私は民主主義社会においては許されないと思うんですね。したがって、この点は非常に重要な問題だと思いますので、以下若干質問しようと思うんです。  まず、そういう意味で右翼のこの暴力集団といいますか、これらの実態についてお尋ねをしたいと思うんです。現在、いわゆる右翼と言われている団体の総数、それから構成員数、それから保有宣伝車の数、これはどのぐらいになっておりますか。
  149. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) いわゆる右翼と呼ばれているものをどの範囲に限るか非常にむずかしいわけでございますが、特に、その団体結成の目的性格、運動方法、いろいろ多岐にわたっております。しかし、われわれの方で右翼というカテゴリーで把握しております団体数は、全国でおおむね八百四十団体、構成メンバー十二万人と見ておるわけです。ただ、実際に街頭で活動しておる者ということになりますと、表立って活動している者はこの十二万人のうちの約二万二千人程度と見ております。  それから、宣伝カーでございますが、街頭宣伝用の体裁を整えておるいわゆる宣伝カーというものは、全国で右翼団体がいま約五百台ぐらい使用しているのではないかと、こう見ておるわけでございます。
  150. 神谷信之助

    神谷信之助君 いま、五十六年で八百四十団体、十二万人ということですね。五十五年は、警察白書によりますと七百団体、十二万人でしょう。五十五年に比べて五十六年は、団体数はふえているんだけれども人員の方は約十二万人ということで動かないというのは、これはどういう事情ですか。
  151. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) われわれの方で把握しておる概数を申し上げたわけでございますが、団体について言いますと、一人一党的な団体が新しく結成されるという傾向もあると思います。そういう意味でふえておるわけでございますが、メンバーとしては、おおむね十二万人という構成員の数としてはその辺を横ばいで動いておるというふうに把握しております。
  152. 神谷信之助

    神谷信之助君 それでは、いわゆる暴力団が政治団体の看板を使うというのか、擬装するというんですか、そういう団体というのは大体この中で何団体で何名ぐらいというように見ておられますか。
  153. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 右翼団体を結成しております以上、その団体結成の趣旨目的、活動実態に照らして右翼的活動を行っている場合には、これは右翼というカテゴリーで把握しておるわけでして、ただ私ども、暴力団構成員がメンバーに加わったり、あるいは従来暴力団であったものが右翼団体を新たに結成するという状況もございますので、暴力団壊滅という警察の大きな一大方針にのっとりまして、右翼の中にもそういう実態が持ち込まれている場合には厳重な取り締まりを暴力団壊滅の線からも行う必要があるということで、内部的に、暴力団的なといいますか、右翼を標榜している実態というものを内部的に把握する必要があるということで把握しておるわけでございますが、その概数を申し上げれば、これは分類が、非常にいろいろな捜査資料の積み上げによって分類するわけでむずかしいわけですが、概数を申し上げれば、約百四十団体、二千九百人という勢力が暴力団の影響なりその残滓というような実態を持っているというふうに把握しております。
  154. 神谷信之助

    神谷信之助君 事前にお尋ねしたらそういう御返事で、それは去年に比べて五十団体、九百人くらいふえているというお話を聞いているんですが、これふえている原因というのはどういうようにとらえておられますか。
  155. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 最近とみにふえているということの一つの大きな原因は、やはりことし十月に施行されます商法の一部改正、いわゆる総会屋に対する規制強化という時期を迎えております。そういう意味で、封じ込まれた結果新たな資金獲得を目的とする、そういうねらいからふえてきているのではないかと見ております。
  156. 神谷信之助

    神谷信之助君 先ほどの御答弁で、街頭行動に乗り出している団体数、人員というのが二万二千人くらいだろうというお話、いわゆる行動右翼と言われているものがこの部隊ということですか。そして、この中にはいまの暴力団系右翼というのも含まれていることになるんでしょうか。その辺はどうですか。
  157. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 表立って活動しているという意味では行動右翼という言い方で総称できると思います。暴力団の何らかの影響を受けておるその残滓であるというグループももちろんこの中に含まれております。
  158. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、行動右翼というのは街頭行動をやる右翼団体と、概括的に言いますと大体そういうように言える。それから暴力団系政治団体といいますか、暴力団的右翼といいますか、先ほどの局長のお話の暴力団的右翼というんですか、これは構成員の中に暴力団が加わっていたり、あるいは暴力団が政治団体に変わるというようなもの、これを大体——そう細かくはぴしゃっと決めにくいと思いますが、大体そういう概念で分類といいますか、そういう概念で使っておるというようにお聞きしていいんですか。
  159. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 概して申し上げればそういうことでございますが、重ねて申し上げますが、われわれ内部的な取り締まりの必要性から、暴力団の影響を受けている、暴力団の残滓であるということでつかんでおるわけでして、だからといってそれが実際に暴力団の、暴力団的な活動をしておるということの結論に至るわけではございません。構成実態なり活動の実態なりで内部的な取り締まり上そういう区分で見ておるわけでして、現象的にはもちろん思想右翼といいますか、行動右翼、いろいろなカテゴリーがありますが、思想右翼的な活動に終始しているものもございます。思想右翼の中でもときに応じ街頭宣伝で自己主張を訴える宣伝活動を行うものもあるし、非常にその範囲は流動的でございますので、あくまでもおおむねの分類ということでお受け取りいただきたいと思います。
  160. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう少しなにしておきたいと思いますが、暴力団的右翼といいますか、これ、なかなかカテゴリーむずかしいということですが、五十七年の警察白書の百二十ページに、大規模の広域暴力団として七団体が指定をされていますね。山口組系とか住吉連合系とか稲川会系ですか、というようにありますが、これらはほとんど片一方でまた政治団体の看板も持っているというような話も聞いているんですが、この辺はどうですか。
  161. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) いま御指摘の広域暴力団自体、組自体が政治団体、右翼的な政治団体を結成しているということはないと思います。見受けられますのは、その一部のメンバーがリーダーシップをとって右翼結社を行うという例は見受けられますけれども、広域暴力団自体が結成している右翼団体というものはないわけでございます。
  162. 神谷信之助

    神谷信之助君 こういう七団体と右翼団体との関係というのはどういうことになっているんでしょうね。そういう、たとえば住吉連合系なら住吉連合系の中に入っているたくさんの組がありますね。その幾つかの組がそれぞれ政治結社、政治団体の届け出をしているというような状況になっているわけですか。——これは暴力団壊滅の方をやっている刑事局長の方が知っているのと違うかな。
  163. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 広域暴力団にも暴力団なりの組織があると思います。それで、いま御指摘の点は、そのたとえば下部団体が右翼団体を結成しているのではないかというお尋ねだと思いますが、そういうことも現実にはございません。われわれ観察しておりますと、その広域暴力団のメンバーが単独に個人的にリーダーシップを持って影響のある者を集めて新しい右翼団体を結成する、そういう形が見受けられるわけです。
  164. 神谷信之助

    神谷信之助君 それではその次の問題ですが、同じこの白書に、右翼事件の検挙状況というのが載っていますね。先ほどおっしゃいました五十六年度の検挙件数は三百四十九件、人員で五百二十八名、そういうふうに載っています。大体違法事犯というのは一体何件で、たとえばそれに対して検挙したのが三百四十九件、五百二十八人。そのうち立件して送検したのは一体どれぐらいなのか。あるいはこのうち凶悪犯罪というのは一体どのくらいあるのか。あるいはまた、犯罪種類別の状況は一体どうなっているのかというような点はおわかりでしょうか。
  165. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) われわれとしては、われわれが知り得ました右翼の違法事犯、これにつきましては全員検挙を期するということで厳正な取り締まりを行っております。捜査の過程で送致まで至らないものも若干あると思いますが、先ほど申し上げました昨年の検挙件数はほぼわれわれ警察が認知しました発生事件のすべてを覆うものだと考えております。  それで、警察としては立件いたしましたものは全件送致しております。送致後の処分状況についてはいま手元に資料を持ち合わせておりません。  それから罪種でございますが、ことしの、先ほど御答弁申し上げました二百六十五件、三百四十五名につきましては手元に資料がございますが、殺人未遂、傷害、暴行、恐喝、公妨、そういった刑法犯はその中で六十二件、八十六人でございます。それから、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、銃刀法等特別法犯がその他二百一件、二百五十四人。条例の違反が二件、五人という類別になっております。
  166. 神谷信之助

    神谷信之助君 年々検挙件数、それから人員もふえてきている、減っている年もありますけれども、依然としてふえてきているという状況ですね、最近ずっと見てみますと。  そこで、次の問題に入るんですが、雑誌「太陽」の去年の十二月号に、「フォト・ルポルタージュ 少年右翼=一九八一年夏」というのがあります。私はこれを見て非常にびっくりしたんですが、実はこれと同じようなことがまたことしも三浦海岸でやられて、そしてそれがテレビで放映されまして、たまたまちょうど私も見ておりました。  これ、国会図書館で借りてきたこういうやつです。(資料を示す)警察の方はごらんになっていると思いますが。模擬刀を腰にためて刺殺訓練といいますか、砂袋に対してやっている。これはこの間テレビでも映っていましたけれども、こういう訓練をやっています。こういうことが起こっているんですが、これに十代の少年たちが参加しているんです。この記事によりますと、   五本の日本刀が配られた。人を殺す訓練が始まろうとしている。刃を上に向け、腰の高さで水平に構え、声をあげながら、次々と麻袋に向かって突進してゆく。その頭上を「われわれは、無報酬の、国民軍で、ある。人を、殺す時は、自分も死ぬ時だ。死ぬ気で、行け」幹部たちの声が飛ぶ。少年の中には、「コノヤロー」と叫びながら突進した子もいた。  この武闘訓練の参加総数が二百四十五名で、うち十代の少年少女が百九十名、その三分の一が中学生だと、こういうように報道しています。これは去年の夏、八月。  ことしもこの同じ訓練が——これをやったのは右翼団体の菊守青年同盟ですが、同じ三浦海岸でことしもやって、それがテレビで放映されている。その状況が、いま読み上げましたと同じような状況で少年少女が参加しているし、中学生もおるということをテレビでやっていました。  そこで、文部省に来てもらったんですが、こういう人殺しの訓練をやるというようなこと、それに中学生が参加をしているという問題について、教育上の観点から、文部省としてはどういうようにお考えなのかということをまずお聞きしたいと思います。
  167. 遠山敦子

    説明員(遠山敦子君) お尋ねの件でございますけれども、中学生や高校生の学校外での活動につきまして、文部省として調査をしたことはないわけでございますので、適確な御返事にならないわけでございますけれども一般的に申しまして、学校外の活動でございましても、生徒にとりましてはまだ心身の発達の過程にございますので、十分な判断力や社会的な経験を持たないというようなことにかんがみまして、今後とも適切な指導が必要だと考えております。
  168. 神谷信之助

    神谷信之助君 少なくともこういう何といいますか、人殺しの訓練といいますか、そういう訓練を行うということ自身は、今日の憲法なり教育基本法の見地から言ってもこれは許されないことではないかというように思うんですが、その辺はいかがですか。
  169. 遠山敦子

    説明員(遠山敦子君) 暴力を用いることにつきまして、これは望ましくないということは普遍の原理でございます。私ども文部省といたしましては、児童生徒の心身ともに健全な発達を目標といたしまして、平素の学習活動を初めといたしまして、生徒指導の充実ということに積極的に取り組んでいる次第でございます。
  170. 神谷信之助

    神谷信之助君 続いて、総理府の青少年対策本部の方、見えていますか。——いま文部省にお伺いしましたけれども、青少年対策本部としても、同じような見地からお考えを聞いておきたいと思います。
  171. 阿南一成

    説明員(阿南一成君) お答えいたします。  先生御案内のように、総理府は青少年の健全育成と非行防止を図るために、青少年行政の基本的、長期的な施策の充実に関すること、それから関係行政機関の調整に関すること等についてその事務を行っているところであります。したがいまして、個々の事柄につきましてその情報を得る立場にございませんので、どの団体が暴力団系の政治団体であるかどうかとか、あるいは具体的な事柄というのはなかなかお答えがしかねるわけでございます。  ただ、一般論といたしまして、その団体への加入それ自体は違法なものではないと思いますけれども、個人であると団体であるとを問わず、暴力を肯定する、あるいは暴力を容認するというようなことは社会的にきわめて危険なことでもあります。まして発達段階の過程にあります未成年者が暴力を肯定する団体に加入する、いわんやそこで武闘訓練をするというようなことであると仮にするならば、それは健全育成の問題以前の問題であろうかというふうに考えております。
  172. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあ青少年対策全体の各省庁間の連絡調整が中心ですね、総理府は。しかし、こういう実態がテレビでも放送されたり、あるいは雑誌でも報道されている。しかもそういう少年が——青年もいますが、青少年がそういう人殺しの訓練に参加をする、団体に加入するとかどうとかという問題を言っているわけではなくて、そういう行為自身が容認されていいのかどうか。それに対する対策を考えなきゃならぬのではないかというように思うんですがね。これは関係する省庁としては文部省もあるでしょうし、それから警察の方も少年課なんかが恐らく担当しているんじゃないかと思いますが、そういったところとの連絡もとって、私はこの点については考えてもらう必要があるというふうに思うんですね。  それで、関連してちょっとついでに警察庁の少年課というんですか、担当のところ、御意見があればお聞きしたいと思います。
  173. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 少年担当の政府委員が見えていないので、私からかわってお答えいたします。  右翼団体の構成員に未成年者が入っておるということは事実でございます。非常に流動的でございますので、われわれ現在何人ぐらいメンバーにいるかということは確定しにくいわけですが、おおむね二、三百人は未成年者がいるのではないかというふうに見ております。ただ、右翼団体の角度からしますと、青少年の心身の健全な育成ということを掲げておる団体もあるわけでございまして、座禅とか体力づくりの訓練とかという夏季練成を行っている団体もあるわけでございます。御指摘のようないわゆる武闘訓練と銘打たれるような訓練、これはわれわれも、テレビを通じて報道され、きわめて刺激的で好ましいものではないと思っております。少年補導という観点からは、やはりお尋ねの三浦海岸での訓練は、その当該主催の右翼団体のメンバーだけでなくて、広く一般に呼びかけて、暴走族まがいの者も参加しておるようです。そうした暴力団加盟の青少年あるいは暴走族の青少年、そういうことを含めて警察としては広く少年の健全育成を目指して少年補導ということに取り組んでおりまして、御承知のように、戦後第三のピークということで全犯罪の五割を超えて五二%が未成年者であるという状態でございますので、青少年補導の面で広くとらえる必要があると考えておりますし、同時に、右翼団体に参加しておる者についても、われわれこの武闘訓練というものについては違法行為にわたることがないよう厳重に常に警告しておるところでございまして、そういう角度を含めて十分な対策をとってまいりたいと思っております。
  174. 神谷信之助

    神谷信之助君 こういう武闘訓練をやった一つの例ですが、この中心になってやった菊守青年同盟ですね、これはどういう団体なんでしょうか。
  175. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 菊守青年同盟といいますのは、昭和四十六年六月に結成された右翼団体でございます。ただいま北方領土問題とかいろいろな時局の政治課題をとらえて街頭宣伝活動を活発に行っている団体でございまして、構成員は約二百人と見ております。暴走族に関係していた者もメンバーの中には見受けられるわけでございますが、暴力団の影響を受けておる、あるいはそういう残滓があるという団体ではないと見ております。
  176. 神谷信之助

    神谷信之助君 こういうのもあるんですよね。(資料を示す)これは参加者ですがね、入れ墨した連中もいますわね。これ写っています。それから子供に入れ墨をしている写真も載っているんですがね。それから指を詰めているのが塾長というか世話係ですね。そういうのをやっている写真もこれに載っています。それと、先ほど局長がおっしゃった、暴力団だった者が参加をしておる、あるいは暴力団員が加わっているという点が、どの程度加わっていたらどうかというのが、いろいろありますけれども、そういう意味で暴力団的政治団体と言えるんではないかというような感じもするんですがね。この辺はどうなんでしょうか。
  177. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 菊守青年同盟の性格については先ほど答弁申し上げたとおりなんですが、この夏季練成につきましては、会員以外に広く希望者を募って合宿訓練をしたわけでございます。この訓練についてはその参加者が菊守青年同盟の構成員であるというわけではない行事でございますので、私ども、一々の参加者についてどういうメンバーが参加したかを正確に掌握しておりませんので、いまのお尋ねについては正確な答弁は申し上げられないわけでございます。
  178. 神谷信之助

    神谷信之助君 情報活動についてはすぐれた能力を持っておられる警察にしては案外つかんでおられぬということにちょっと驚いておるんですが、ああいう三浦海岸で白昼、まあ白昼じゃありません、あのときは五時からか六時からか早朝やったわけですけれどもね。それで観光客、海水浴に来ている人も見ているんですよ。  それで、ことしの場合のテレビを僕もちょうど見ていましたが、来ている人たちに記者がインタビューしていました。一人だけこのごろの若い者は気合いが入っておらぬからやっぱりああいうことをやらないかぬという勇ましい人もいましたけれどもね、大体は、ほとんどの人は、もう本当に恐ろしい、ぞっとすると、人殺しの訓練を公然とやっているという印象を語っておるんですね。私もそう思っていますよ。そして、今度は参加している少年少女に記者がインタビューをしています。十七歳の少年にインタビユーしたとき、その十七歳の少年は、気分がいいと。こんなことをやることが起こったらやるのかと聞くと、それはそういうことが起こったらやるかもしれぬと、こういう答弁。記者が、山口二矢を知っているかと言うたら、それは知らぬと言っていました。ところが、同じ二十歳前後じゃなかったかと思いますが、参加している少女に今度インタビューしていますね。これに山口二矢というのを知っているかと。そうしたら、知っている、あの人は神さんみたいに私ども尊敬していると、こう言うんですよ。山口二矢というのは何をやったんだと、こう聞いたら、社会党の委員長を刺し殺したと、それによって社会党が変わったと、こう言うんですよ。あなたもやる気があるのかと言うと、その男を殺せば変えることができるということであればやりますというように答えています。まさにテロを訓練しているんですよ。  だから、一般的に募集して参加をして、暴走族からあるいはチンピラも参加しているかもしれぬ。私は全部が全部そうなるとは言わない。あの日二百数十人参加していますよね、そこから一割歩どまっても二十四、五人でしょう。こういう者が育っていくわけでしょう。それが公衆の面前で行われているということについて、これはどうにもこうにもならぬということになるんでしょうか。現実に人を殺すまでは、殺す訓練をやっている段階でそれをしたらいかぬと、そういう武闘訓練をやるべきではないという指導はできないものなのか。この辺はどうなんでしょうか。
  179. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 三浦海岸におけるいわゆる夏季練成の一環としてお尋ねのような訓練の形があったわけでございますが、体力練成の基礎的な訓練からいろいろな訓練項目がありまして、その一つだったろうと思うわけです。  御指摘のように、確かに決して好ましいことではないわけでございますが、しかし、それが警察取り締まりの観点から見ていかなる犯罪を構成するかという議論になりますと、直ちに取り締まりの対象になるということにはならないと思うわけでございます。われわれとしては、そうした訓練自体に違法事態があってはならない、銃刀法違反の物件を所持するとかそういうことは絶対許されないという意味で、そういう観点から警告をし厳重な監視もしておりますが、そのこと自体についてというお尋ねでございますれば、やはり検挙するというわけにはまいらない。  ただ、そういうことによって醸し出される風潮というものはわれわれまさに憂慮しているわけでございまして、かつてそういったテロもあったわけでございます。現在もそういうテロ、一人一殺というものがいかに大事かという誤った考えを持って行動している者もございます。われわれとしては、そうしたことが現実の行動に出ないように事前に封圧検挙できるように、現在も日夜懸命の努力を重ねておるわけでございまして、そうした風潮自体をどう抑えていくか、これはわれわれ警察の予防検挙の努力も尽くさなければなりませんけれども、警察の分野だけでそうした風潮を抑えていくわけにもまいらない。関係機関の方々あるいは社会のいろいろな層の方々のコンセンサスをそうした風潮を抑圧するという方向に持っていっていただく必要があるんじゃないか。  ああいった三浦海岸における訓練をどの程度広く人に見せるか、それは価値観の相違にもよりましょうが、危険な傾向を伝えるために見せるという観点もあろうかと思いますが、そうしたことによってもたらされるまた一つの悪影響もあるわけでして、そうしたことを含めて、われわれの立場からいろいろに感ずることも多いわけでございますが、警察の分野でできる限りの努力はしてまいりたいと思っております。
  180. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう一つ局長に聞いておきますが、一九七〇年以降ですが、いろいろあちこちでこういう武闘訓練をやっているわけですが、全国的に武闘訓練をやっている団体が何団体で、そして何名ぐらいそれに参加をしているというのはつかんでおられるのでしょうか。わかれば、最近のでいいですが……。
  181. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 数まで詳細に把握はしておりません。先ほど申し上げましたように、右翼団体は、いろいろな夏季練成訓錬というものに取り組んでおりまして、座学、座禅、そういった精神面の練成とか、あるいは体力づくりの訓練、非常に小さいサークルで行う場合、あるいは御指摘の三浦海岸の菊守青年同盟なり、一般にまで参加を呼びかけて多人数でデモンストレーション的に行うもの、多種多様でございますが、全体でどのくらいかという詳細な把握はいたしておりません。  ただ、非常に多くあると申し上げた趣旨は、各団体とも大体年に一回ぐらいはメンバーを集めて夏季練成をやるという行事化している例が多いわけでございます。
  182. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは「公安情報」の五十六年十二月の三百三十九集ですけれども、これを見ますと、   武闘訓練では、青思会、国粋青年隊など延べ約百四十団体千七百四十名が参加して、銃剣術、格闘技訓練など実施をして組織行動の強化を図った。特に、青思会は、長野県・菅平高原に過去最高の二十数団体、約二百名を結集して四日間にわたる攻撃的な武闘訓練を行った。また、菊守青年同盟が、夏期、三浦海岸に約二百五十名の中・高校生を含む未成年者らの若手隊員を動員し、模造刀、木銃などを使用しての刺殺訓練まがいの先鋭的な訓練を行った。  というように報告しています。これは十二月号です。毎年これを見ますと、その年々の武闘訓練の状況を報道しておりますけれども、こういう状況が起こっている。  それに対して先ほど局長は、警察としては、これは犯罪にならない限りなかなか取り締まるということはできないだろう、したがって行政指導といいますか、そういうことしかできないだろうと。問題は、やっぱり全体として暴力を許さないという世論といいますか、それで包囲をするということが必要だということをおっしゃっていると思うのですね。  そうなりますとこれは大臣の責任が大きい。われわれ政治家も大きいですけれども、政府としてこういう暴力に対してそれを許さないという国民的世論をどう組織をするか、呼びかけていくかということなしに、警察力だけでこれを抑え込もうということはなかなかむずかしいわけですね。だから、犯罪行為が起これば、それは警察は逮捕もできる。やれます。あるいは、もうそのことが顕著というか、その直前ならば未遂で押さえることができる。しかし一般的に、そういう人殺し訓練をやっていることをけしからぬということでやるわけにはなかなかむずかしいですわね。これ、下手すると警察力の乱用になりますから。だから、そういう点では非常に警察当局も矛盾がある。だから私は、これを解決するのは政治的な方向しかない。そういう意味で、特に国家公安委員長でもある大臣の、閣僚の一員としての責任というのは私は重大だというふうに思うのですけれども、この点についての御見解を聞いておきたいと思います。
  183. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 私は、先ほどから御指摘になっておりました「太陽」という雑誌に載っているその事実を、大変不勉強で申しわけないんですが、全然知らなかったわけでございまして、もしその報道が事実であるとすれば、これはいろんな意味での影響力の強い問題であろうと思います。  警察の方がこれを取り締まるということは一つの限界がありますことは先ほどから局長の答弁のとおりでございますが、これは政治といたしましても、結局、暴力というものは法律で取り締まるべき性質のものというふうに一つの限定がございまして、この点に沿って私はやはり将来の青少年の教育の上でどういうのか、まだその本を読んでおりませんので、何ともお答えのしようがないんですが、結局、一つの職業——仮に自衛隊のような組織の中での、それからあるいは警察の中でのいろんな警備上の訓練、防衛上の訓練、そういうことで、仮に仮想敵のような人形をつくって銃剣術のような訓練をするというのはあり得るわけなんですが、民間の青少年の教育の中で、つまり銃剣術のようなけいこであったかどうか、私もまだお話を聞いただけでそこまではっきりつかんでおらないわけでございますが、そういったことからかなり逸脱した面での、単なる殺人のための訓練となるとこれは容易ならざることでございますので、この点はあらゆる点から指導を強化していかなければならないと思います。  政治的な判断のもとでございますが、これはまあ先ほどお答えいたしましたが、内閣の中に青少年の非行防止に関する協議会がございまして、こういうところも中心にならざるを得ないだろう。それからあらゆる情報機関を通じまして、そういった点に対する指導あるいは啓蒙、そういった総合的な、あらゆる面からこれを取り上げていくべき必要があると、こういうふうに考える次第でございます。
  184. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは先ほど局長が、そういう暴力を是認する風潮が広がるということの危険を述べておられましたけれども、私はそこのところが非常に大事なところだと思う。やっぱりそういう意味で、言うならば政治の問題というのは——最大の暴力というのは戦争ですよ。最大の人殺しは戦争ですわね。だから、その方向に進むいまの政治路線、そのことにも重大な私は問題があるということも申し上げておきたいというように思うんですよ。  まあいまの訓練そのものを直接的にいまの刑法体系の中で取り締まるというのはきわめて困難だということは理解できます。しかし局長、私は日教組大会の妨害問題というのは、そういうことでは済まないのではないかという気がするので若干お尋ねしますが、この日教組の島原大会に右翼の団体が何団体、何人が集まって何をしたのかという点について、まず概括的に御報告を願いたいと思います。
  185. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 今回の島原市で開催された日教組大会、これに限りませんで、毎年日教組大会が行われます場合には右翼が全国的にその開催地に集まりまして、日教組批判の街頭宣伝活動を行う、これが例となっております。今回も事前段階から会場問題をめぐって日教組批判とあわせて相当遠隔の地から右翼団体が現地に街頭宣伝、抗議に活動を展開したわけでございます。大会期間中に島原市に入りました右翼団体は百三十九団体、九百七十七人、二百車両に及んでおります。警察としてはこうした街頭宣伝活動自体が平穏に行われる限りは格別、それが違法行為を伴う場合には厳正に処理する、同時に、大会が平穏に行われますように、大会会場周辺における騒音あるいはいやがらせ、妨害活動を排除する、そういう見地から厳重な取り締まり体制をとったわけでございます。そこで、公務執行妨害とか道交法違反あるいは屋外広告物条例違反という各罪種を含みまして、大会の前段階あるいは大会期間中通じまして二十二件、二十七名の右翼を検挙いたしております。総じて、今回の島原市大会における右翼の活動を見ますと、遠隔の地で行われましたために、千人を切りましたのは従来にない例でございまして、動員された人数が少な目であったということと、それから土地柄もございますが、そう広い地帯でもございませんでしたので、警戒措置によって従来の大会における反対活動よりも違法事犯は少なかったという結果に終わったと思っております。
  186. 神谷信之助

    神谷信之助君 島原の市議会が開催反対の決議をやりましたね。これなぜそうなったんですか。
  187. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 地方自治体の市議会の意思表示につきまして、私どもとしては詳細に知る立場にはございません。
  188. 神谷信之助

    神谷信之助君 これはおかしいんですよね。結局、別に何もなければ市議会は反対の決議などするはずがない。私ももと自治労におりましたけれども、全国大会は逆に誘致運動が起こるぐらいなんですよ。夏季、客の少ないときにぜひうちの地でやってくれということで誘致運動が起こるぐらいなんだ。ところが、これ、わざわざ開催反対の決議をするというその背景があるわけでしょう。まさにそれは右翼のおどかし、妨害、これが原因じゃないですか。そういうものが原因で、本来ならばそういう妨害、おどかし、これにひるまずにそれと闘うということで初めて暴力をなくすことができるんだけれども、残念ながら、それは市民の迷惑その他を考えたのかもしれませんが、反対の決議をする、市の方も文化会館の使用を断るというような事態になってくるわけでしょう。あるいは空き地の使用も断ってくるという事態も起こってくる。それはなぜかというと、右翼が来てわんわんわんわんやると困るじゃないかと、こうなるでしょう。そして、そういう中で大会を引き受けた、宿泊を引き受けた旅館側で分散をして大会をやりましょうという異常な大会になってしまう。  こうなりますと、そこの大会開催までの間にそういう脅迫とかあるいは強要に類するそういう疑いのある行為が重ねられていたのではないかという疑惑を持ち、疑いを持ち、調査の端緒をつかむというのは当然警察としてやらないかぬことじゃないかと思うんですが、この点はどうですか。
  189. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 市議会の議決の経緯なり、その市議会当局の正式の意思表示についてどういう経緯があったかということは、私ども警察当局としては承知していないことは前に申し上げたとおりでございます。  ただ、経緯をわれわれ警察当局から見ておりますと、三月に入りまして、日教組が島原市で開催するという意向が報道されたわけでございます。それで、報道されまして、右翼の反対行動に対して全国的に警戒する必要があるということで、私ども全国都道府県警察に、右翼の島原における日教組大会への反対行動の情報収集並びに島原に出かけないように強力に説得するという方針を出したわけでございます。  そこで、情勢を眺めておりますと、実際に現地に右翼の反対行動が出だしましたのが三月二十四日でございます。これは最初は一、二台程度が毎日島原入りする程度でございました。そこで、いまお尋ねの市議会の決議は、三月十日に日教組が島原市長に、文化会館で開催したいという申し入れをされて、二十四日にこれを正式申し入れにして、その二十四日に市議会が、いわゆる「平穏な市民生活保持に関する決議」、会場貸与反対決議をされておるわけでございます。  その事情からいたしますると、私どもとしては、右翼の行動が、現実の島原市内における実態が原因したというふうには現実の問題としてとれない。そういう実態が島原市内において展開されていた状況下ではないと判断しております。
  190. 神谷信之助

    神谷信之助君 だけれども、結局島原市議会は、例年の日教組大会がそういう右翼の妨害でその開催地の住民が大変な迷惑を受けている。そういうトラブルが起こっては困る。それは毎年毎年エスカレートしてきている。これが全国から動員された、特に西日本中心に動員された右翼がやってきてやられたのではたまったものじゃないというように考えられ、そういう事態になってくることを恐れるわけでしょう。  そうすると、これどういうことなんですか。とうとうことしは大会が持てない状況になって、泊っておるお客さんが集まってショーをやらはるのと同じ扱いで、一たんは断ったけれどもそれでも大会ができるように、分科会ですか、分散会でやるという異常の状態になりました。そうすると来年はどうなるんですか。来年はもうそれさえもできなくなってくるということが起こってきたらどういうことになりますか。これは憲法で保障する結社の自由やあるいは集会の自由、これ自身が侵害をされておる事実、これが例年繰り返されてエスカレートしてきているという状況になるんじゃないでしょうか。これに対して一体どうすればいいというように思うんですか。
  191. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 警察の立場から申し上げますと、日教組の幹部の方と話したこともございますが、会場がなければ開けないわけでございます。しかし、われわれといたしましては、右翼の妨害につきましてはこれは警察の警備措置によって排除して、確保された会場で大会を開催されることには万全の措置をとるということはかねてから日教組の御当局にも申し上げておるわけであります。今度の島原市の大会につきましてもその措置はとりましたし、日教組大会は平穏無事に開会、終了したわけでございます。したがいまして、民事問題であります会場の契約ができるかどうか、これは日教組御当局の努力にまたなければならないわけですが、われわれとしては、会場が確保される限り集会の自由を守るという以前に右翼の妨害を排除するという角度で大会の警備の万全を期する、これは来年においても再来年においても変わらない方針と考えておるところでございます。
  192. 神谷信之助

    神谷信之助君 だからね、大会さえ開かれれば、会場が確保され大会さえ開かれれば、それで終わればそれで事足れりということでは済まないということを私は問題にしているんですよ。その周辺の住民、これが一体どういう状況になるのかということですね。そのことを抜きには会場自身も借りられなくなってしまいますよ。それは単に民事契約の問題というだけでは済まない。形式論から言えばそういうことかもしれませんけれども、そういうことでは済まない問題になると私は思うんですよ。実際には、市内の中心部にある二つの小学校は、トラブルを恐れて約二千人の全児童が三十日も父母付き添いで集団下校するというような状況が起こるというんですね。市役所に特設された日教組大会対策室の調べでは、市内十八の病院、診療所のうち十カ所以上から、宣伝カーの音が大きくて聴診器の音信が聞き取れない、あるいは患者が昼間眠れないとか、患者が減ったという苦情が出ている。商店街では、初日はシャッターを半分までおろすという店が出ているというようになっているわけですね。  そこで、こういう妨害活動が、直接的には広告物条例違反とか道交法違反とか、若干の行為はあったにしても、それによって検挙した件数、先ほど二十二件、二十七人ですかというようにおっしゃっていますが、それだけでは済まない問題があるのじゃないのかということを私は思うんですね。これはもう明らかにこの妨害活動というのは行き過ぎだ。それに対して警察が強い態度で臨んでいないという批判が事件を報道する中で出てきていますね。左翼団体が同じことをしたら一体どうなるのかという意見も出ています。大会を正常に、平静に、そして満足に開かせない、そういう行為にはもっと厳しく威力業務妨害罪の適用を考えるべきだという意見も、これは九州大学の井上先生がおっしゃっていますね。それから、会場に入る際にもバリケードのすき間を恐る恐る抜けて入っていかなければいかぬというような状態は、まさに威力による妨害の結果だということが言えるし、表現の自由が侵されているわけですからね。  こういったことで、こういう自分の意見に反対をする、そういう団体の活動、行為、これを暴力的に抑え込んでしまう、そういうことが犯罪にならないとすれば、威力業務妨害罪として排除すると。全体としてやっぱりそういうことでね。一つはありますよ、事前にどうやるか。そういう市議会に直接的にどんな脅迫なりおどしがあったのか、それはわれわれはわかりません。それは警察の方が、捜査権を持っておられる方が調べぬと、われわれにはわからない。しかし、遠景としてはあります。毎年そういうことがエスカレートしてきている。だから、あれが島原でやられたらたまったものじゃないという、そういう条件はあるだろうと思うんです。そこへ直接的に何かあったかもしれない、これはわかりません。そこのところで脅迫あるいは強要といいますか、そういうことで、事前にそのことをやられる。それから今度は大会自身が正常の状態じゃない。バリケードの中を入らなければならぬような、そういう状態。あるいは満足に開けないような状況。こういうものが行われたとすれば、これはまさに威力によって妨害している行為ですから、ここで厳然と対処するということをやらなきゃ、また来年はもっとさらにできなくなってくる。いまは日教組の大会自身はそうなっていますがね。そういう状況が起こるわけでしょう。  わが党の大会の場合でも大変な状況が出てきているわけですね。だから、都内の中心部でいまやらないようになっていますからなんですけれども、それでも伊豆のわが党の大会をやる会場の下の町の人たちは大変な迷惑をなさっていますね。もうまさにそういう状況が野放しにされていけば、日教組大会もできなくなる、その次にはどの組合にも反対をする、どの組合の大会もできなくなる、あるいは政党の政治集会もできなくなってくるというようにエスカレートしていくわけですね。  この辺について私は、そういうことで、もっと厳しく対処するということをやらなければ大変なことになっていくぞというように思うんですが、この辺はいかがですか。
  193. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) 右翼に対する取り締まりがきつくないという御意見であろうと思うんですが、われわれとしては、右翼についてはきつ過ぎるほどきつくやっておると思います。騒音問題で午前中も佐藤委員にお答えいたしましたが、現行法令を活用して規制、検挙すると同時に、一定の地域にもう通行を認めないという強力な説得という手段でやっております。これは並み大抵なことではございませんで、権利意識の高い右翼ももちろんございますから、トラブルはあります。ありますが、とにかく通らないで戻れということで規制している。これほどきつい規制はないと思います。  それで、島原市内周辺における取り締まりにつきましても厳重な規制をしまして、その結果法に触れる二十二件、二十七名は検挙しておるわけでして、私どもとしては、警察の立場としては現行法令上最大限の規制を加えておると考えておるわけです。  御指摘の威力業務妨害につきましても、業務妨害の結果が出たケースについては、この種の大会、会議について立件した例もございます。しかし、警察力をもって平穏無事な運営が確保されている大会について業務妨害というのはないわけでございまして、その事態があれば立件するにやぶさかではございません。  それから基本的には、日教組大会に対する右翼の反対意見があると、これは間違いのないところでございます。それが具体的な行動で違法事態になることはわれわれ未然に防止し、現に起きたときは検挙するという姿勢で臨んでおるわけですが、右翼グループの反対がある、それがいわば適法な形で行われる限度ではわれわれとしてはそれをしも押しとどめるというわけにはまいらない。しかし、総じて違法行為に発展するおそれのある行為が多い。そういう意味において、遠隔規制で、時間が切迫いたしますれば、大会会場近くには一切近づけないという最大限のきつい措置までとって大会の運営を確保しておるわけでございます。  したがいまして、今後とも十分に工夫しまして、右翼に対する規制、検挙、技術的検討を要すべき点もあるわけでございます。十分に研究、検討をして万全を期してまいりたいと思いますが、最大限の規制、検挙を行っているということで御理解を賜りたいと思います。
  194. 神谷信之助

    神谷信之助君 言論の自由は保障されなければなりません。だから、反対意見を否定するものじゃないし、反対意見があるのは当然ですね。多様な社会ですから、いろんな意見がある。多様な意見もあるでしょう。だから、それは当然保障さるべきです。しかし、問題は、それを徒党を組んで、そして威圧を加えて妨害をする。いわば妨害を目的にやるわけでしょう。大会を開かせない、あるいは大会が仮に開かれても妨害をすることによって市民に迷惑を、あるいは恐怖感を与え、あるいは商売が成り立たないように追い込んでいく。こういう行為をやって、そして集会自身が持てない状況をつくっていく、そういう条件をつくっていく。非常に巧妙なんです。直接的に自分がやらない。したがって、検挙する件数というのは二十二件、二十七人にしかすぎない。しかし、二百台の車をもって、全体として島原市民を恐怖の中に追い込んでいくわけです。  あるいは、旅館組合の村中さんですか、これはインタビューも出ておりました。「しんどかった日教組大会」というインタビューも出ています。それで旅館ですから、そこのロビーに来て、コーヒー一杯で粘られたり、戦闘服着た者がですよ。それじゃ客商売ではたまったものじゃないですよ。そんなことあちこちでやられたらそれはもうお断わりやというのが出てくるのはあたりまえです。大会というのは会場さえ確保されたらいいんじゃない。それに参加する人々の宿泊条件も整えなければならぬ。そっちの方はなかなかはっきりしてくれぬじゃないかと村中さんはおっしゃっている。「警察は腰が重かった」と、こう言っています。そういう話も出てくる。だから、とにかく三日間なり四日間の大会が保障されたらそれで警察の仕事は終わりということじゃないということを私は申し上げておきます。  同時に、彼らはそのことをねらっているんじゃなくて、市民全体を恐怖に追い込んでいるんです。大会の開催を許さない状況をつくろうというんですよ。そういう世論をつくり出そうとしているんですよ。そこに憲法に保障する集会の自由が現実に侵害されている危険なことを私は指摘しているんですよ。本来、集会の自由というのは権力者側が侵害をするのを保障するということですよね。しかし、私人間の問題であっても、これはそういう徒党を組んで威力によって妨害をするという行為に対して厳然として対処するという立場がなかったらこれはどうにもならぬのじゃないかということを思うんですが、いかがですか。
  195. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) われわれとしては、いま御指摘の右翼の妨害によって大会が開けないという、法治国家にとってゆゆしき事態にならないようにそれを防止するのが警察の責務でございますから、そこを主眼にして平生から右翼対策、右翼に対する厳重な取り締まりを行っておるわけでございます。  ただ、その右翼の反対行動が現地で展開されるということ自体を一切抑止するというわけにはまいらないわけでして、今回の島原市の大会につきましても、右翼の反対、街頭宣伝活動がある、それによって迷惑を感ぜられるだろう、いろいろな嫌がらせもあるかもしれない。しかし、そうしたものに屈してはならないわけですから、そうした右翼の行動があったときには警察は万全の体制をとるからということを旅館組合、市当局にも十分にあらかじめ御説明いたしまして、午前中も答弁申し上げましたが、現に旅館等に右翼が抗議に来た八件の場合も、警察官を配置しまして直ちに手当てして、違法行為にわたることのないよう監視、規制しておるわけでございます。決して腰が重かったということはないわけでございまして、新聞に報ぜられる旅館業者の一部そうした談話については、島原警察においては大変残念であったと感じておる次第でございます。
  196. 神谷信之助

    神谷信之助君 反対意見を宣伝する、そういう行動をやること自身を抑えることはできない。確かに整然とやられておるならいいですよ。彼らの場合は、その言っていることを聞いてもらおうと思って、あるいは理解をしてもらおうと思ってやるんじゃないでしょう。ただわあわあ言うことによって、聞こうが聞くまいがそれで迷惑を与え、そのことによって集会の開催自身に反対をする空気を醸成する。片一方では、南風楼の村中さんも言っているように、車やスピーカーで「南風楼の社長殺せ」というようなこともやるわけでしょう。こんなものは政治活動でも何でもないわけです。だから、旅館を提供し、そして大会の開催に協力した一般市民に対しても、それを殺せという宣伝をやる。    〔委員長退席、理事名尾良孝君着席〕 ここまできても警察は、それは政治的行為の宣伝活動だから何も取り締まれないと言うのか。いかがですか。
  197. 山田英雄

    政府委員山田英雄君) いま御指摘のような発言が拡声機を通じて行われたということは、私ども警察当局は確認していないわけでございます。  いずれにしても、右翼のスピーカーによる宣伝行為というのは、音響によって、また内容によって、大変迷惑に感ぜられる方が多いことは事実であろうと思います。そういう意味で、騒音規制法規というものをフルに活用して取り締まろうとしておるわけでございますが、これは午前中も答弁申し上げましたように、わが国における拡声機による騒音規制というのは、警察として決定的な現場における鎮圧の武器にはなっていないわけでございます。端的な言葉で申し上げて恐縮でございますが。効果的な取り締まり法規は、騒音規制法でもなく、各県の公害防止条例でもなく、軽犯罪法だけでございますから。しかし、軽犯罪法による警察官の警告、制止、検挙ということは適確に行っております。現に地方では、百十ホン程度出した右翼の宣伝カーについて軽犯罪法によります拘留、科料に処した例もございます。しかし、これを拘留、科料に持っていくための努力もなかなかむずかしいわけでございます。  そこで、現実に音の迷惑が少ない時間帯で済むように、現場の警察官としては懸命の努力を重ねてその規制、誘導に努めておるわけでございます。その点は御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  198. 神谷信之助

    神谷信之助君 軽犯罪法、それは午前中も聞きました。だから、軽犯罪法違反では科料ぐらいですから、そうもいかぬ。そういう点で、全体としてそういう徒党を組んで妨害を行う行為に対する犯罪行為として対処する方向を研究してもらわないと、私はこの問題はなかなか解決しないというように思うんです。  それで、大臣、いま申し上げましたが、これ、年々エスカレートしてきているわけでしょう、御承知のように。それで、法治国家とか民主国家と言われるわが国で、どんどんエスカレートして、そういう大会自身がもうことしはきわめて異様なそういう状況で開催されざるを得なかったということ。これは、国家公安委員長としても私は責任の大きい問題、重大な問題だというように思うんですね。この辺どうすればいいのかということも、警察当局も当然担当ですから御研究をなさっているわけだけれども国家公安委員長としても、やっぱりこの事態をそのまま放置をすると重大な、ゆゆしい事態を引き起こすということになると思うんで、この辺についてひとつ御見解を承っておきたいというように思うんです。
  199. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 大変これ、実際にいろいろ被害その他のあったところでございますが、警察としましては、これは法規を使いながら最大限の努力をして、そういったことの取り締まりをして万全を期していたと思うのでございますが、今回の島原での大会のいきさつ、私ども聴取してはおりますが、どうも警察が、妨害その他いろいろなことがあったならばぜひ連絡をしてくれと、その都度連絡をしてくれというふうに何回も旅館その他に忠告をしているんですが、余り連絡がなかった。若干あったけれども、連絡が少ない。    〔理事名尾良孝君退席、委員長着席〕 これはどういうわけで連絡をしてこなかったかという理由はよくわからないのでございますが、そういうことで、警察としては全然連絡のないものに対して対応する方法というのはなかなかむずかしいわけでございまして、それがいろいろな結果を引き起こしてきたのだろうと思います。  しかしながら、その中で最大限の警備を行って、何とかつつがなく大会を終了させることができたのでございますが、今後は、これは今回は聴取したところによりますと、旅館側がやるかやらないかという問い合わせを日教組の方にしたんですが、御返事の方がなかなかはっきりしなくて、かなりの日にちがたってしまった、その間にいろいろ話が漏れたりしまして、正式に態度が決まった段階では、すでにかなりいろいろのうわさがうわさを呼んでおったということでございます。  それから市議会の方も、最初は革新系の人も何か決議案を出そうと言っていたところが、これも翻して、結局市議会の方は一致して別な結論が出てしまったという、そういういろんないきさつがありまして、一番最初に会場の決定に時間をとったということが一つには騒ぎが大きくなったもとだというふうに市の方からも伺っているわけでございます。  今後、こうした大会を行うに当たりましては、われわれとしてはあくまで大会が行われる方向に協力をしていくのにやぶさかではございません。よくその間のいろんな情報収集をしながら、また、いろんな情報の提供を受けながら、できる限りの姿勢で対処していくのが本来のことであろうと私ども考えておる次第でございます。
  200. 神谷信之助

    神谷信之助君 次に、資金源の問題をやろうと思ったんですが、もう時間がありませんので、問題点だけを指摘をして、それに対して見解を聞こうと思うんです。  警察白書の五十七年版の中にも、「総会屋は、株主総会での活動に加えて、政治団体を結成して政治献金を受けたり、新聞、雑誌を発行して購読料、広告料等の名目で企業から利益供与を受けようとするなど、多様化の傾向を強めている。」と、そういう記述があります。この点は局長の方も、最近いわゆる右翼団体がふえてきている、その理由の一つとしてこの問題をお挙げになっています。こういう形で暴力団が暴力団自身の資金源を確保するという面と、また、右翼団体が政治団体になれば、そういう形で資金を集めやすいという条件があるということも同時にこのことは物語っているというふうに思うんですね。  これは詳しく聞こうと思ったんですが、自治省に届けられている八〇年度分の右翼団体の政治資金を私どもでそれぞれずっと調べてみて合計しますと、一年間で三十一億九千万円、前年度に比べて三一・五%もふえています。昨年度を見ましても、それは一昨年に比べて三一・四%というように急速に右翼団体の資金というのがふえているという状況があります。主な収入源は、寄附金、事業収入、借入金ということになっていますが、寄附金を見ますとほとんどが企業からのもの。これは先ほど局長も御答弁になっていたと思うんですが。それから事業収入も、企業を対象にした広告料とか購読料名義の寄附金ですね、実際上は。こういう状況で、結局収入源の八割以上が企業からの寄附という状況になっているんではないかと思うんです。  先ほども申し上げました、五月二十七日の、わが党の榊議員の演説を妨害したあの優政会、これはもとは稲川会系の大行社におった連中ですがね、それが中心になってつくっている団体だということですが、その機関誌の「大吼」というのを見ますと、創刊号の八一年八月号から八二年三月号まで月一回発行されている機関誌ですが、企業広告が合計四百三十五社、それが延べ八百回以上出てきています。八号のうち四号、半分の四号以上に登場するいわゆる常連企業というのが六十一社ありますが、その六十一社のうち五十九社までが大企業とか大手銀行で占められているんですね。こういうことを見ましても右翼のスポンサーがだれだというのもはっきりしてくる。  それから、これは衆議院の決算委員会でうちの三浦議員が指摘をしましたけれども、総理府の北方領土の広告ですね。総理府はあれは無断掲載だと言うんだけれども、仮に無断だとすれば、こういうこともやって、言うたら企業に対して信用度をつけ箔をつけるという、そういう行為までやる。これは商標問題もあったりして、犯罪行為に該当するのではないかというふうに私は思っているんですが、きょうは時間がありませんからもう触れませんが、その点だけ指摘をしておきます。あのシンボルマークが登録されていますからね。それが無断使用されているとすればこれは犯罪行為になるのではないかという点は指摘をしておきます。しかも大臣、これ、総理府がもう二回そういうものを無断掲載されて、二回分はもうそのままほっておく、注意するだけだと。これから使えば告発するというんですね。これじゃ事実上認めるわけだね。これはまた私はけしからぬことだというふうに思うんですが、これも指摘申し上げておきます。これは、そういう広告をずっと見ていきますと大体どういう企業と結びついているかというのがわかってきます。  それだけじゃなしに、先ほどにもありましたが、あれだけの重装備の宣伝カー、装甲車みたいなやつ、あれをそろえて、それから人間を動員して乗せてやっていますね。あの行動に参加した者の日当というのは、前回の東京都知事選挙で太田薫さんが襲撃された新宿事件のあの公判で、行動費は一日一万円といいますわね、そういう証言をしていますから。だから、そういう点からいっても、相当の資金、財源を持って彼らがやっている。しかし、たとえば防共挺身隊の届け出の収入を見ますと、八〇年度ですが、約四千五百五十万です。大日本朱光会、これは約七百四十三万円、そういうふうになるんです。この大日本朱光会は、一千万円以上と言われるような大型宣伝カーを、最近短期間に数台ふやしていますよね。それだけでも届け出の収入とはもうかけ離れているわけですね。こういう状況もあります。  私は大臣、問題だと思うのは、こういう右翼団体、しかも暴力行為も行うような右翼団体、朱光会なんかもわが党本部にも何回か来ていますがね。こういう連中に、自民党の先生方が名前を連ねておられますよね。たとえばこの間火災を起こしましたホテル・ニュージャパン、この労働組合の幹部が解雇される、それで争議が起こりました。そのときに動員されて、防衛といいますか、ニュージャパン側の防衛に立ったのが、戦闘服を着て入ってきたのが亜細亜民族同盟ですね。これは最近あちこちで結成して、京都でもこの間、七月の二十八日ですか、京都府本部の結成をやっていますけれども、これには元総理の福田さんも名前を連ねている。現科技庁長官の中川一郎さんも賛同者として名を連ねて、その他自民党の議員さんが三十数名も名前を連ねておられます。そういう暴力行為を働くような右翼団体に政権党の議員が名前を連ねられる、庇護をする、これは世界の近代的な資本主義国家では例のないことですよ。だから、私はその面では日本の政治の後進性をあらわしているものの一つだというふうに思うんですけれども、そこに本当の意味でそういう暴力行為を行うような右翼団体を実際にはなくすことができない一つの大きな要因があるということを私は指摘をせざるを得ぬと思うんです。  時間がないので一括して申し上げましたので、私のいま申し上げた問題について、公安委員長としての、あるいは大臣としての見解を最後に聞いておきたいと思います。
  201. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) 右翼に対するわれわれの姿勢でございますが、右翼にもきわめて思想的な右翼の団体、これは国粋とか日本の神ながらの道とか、そういうきわめて思想的なものだけに準拠している団体、それからもう一つは、先ほどから御指摘があったような暴力行為に近いものを伴ってくる団体、こういうふうにわれわれの方は区別しておりまして、これは、思想的なものは、われわれは憲法の立場から決してそれを否定するものではございませんが、それをもとにして暴力、それから他人の集会、思想の自由、それから結社の自由、そういうものを妨害する行為に対しては、断固として今後も取り締まりの線を緩めない方針でまいる所存でございます。
  202. 神谷信之助

    神谷信之助君 終わります。
  203. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 最初に、死者十五名、重軽傷者二百二十三人を出しました、地下街の爆発事故としては最大と言われる静岡瓦斯の爆発事故の問題についてお伺いをしていきたいと思います。  もう大方の国民の皆さんは、この事故のあの悲しいことについては忘れかけておるわけでありますけれども、しかし、静岡の現地は、あの爆発の起こった第一ビルの惨状がそのまま残っている。あのゴールデン街はにぎわってはおるけれども、当時の惨状がそのままに残されている。悲しいことだと思うんですが、そういう現状であります。  そこで、二年前の八月十六日に起こったわけですが、それから二年と三日たっているわけですが、私もこの委員会でしばしばこの問題の原因究明について質問をしてきたところでありますけれども、事故原因の調査、これは済んだのかどうか、そこからお伺いします。    〔委員長退席、理事亀長友義君着席〕
  204. 中平和水

    政府委員(中平和水君) 本件の事故は、ただいま御指摘のありましたように昭和五十五年八月十六日に発生をしたわけでございますが、静岡県警におきましては、自後鋭意捜査を遂げた結果、去る八月十二日、静岡瓦斯株式会社静岡営業所の職員二名に業務上過失致死傷の刑事責任がある、こういうふうに認定をいたしまして、静岡地方検察庁に書類送致をいたしまして、警察段階の捜査は一応終結をいたしております。
  205. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 その原因調査で二年間ですね、私はかなり異例の長期の捜査だと思っているんですけれども、二年間もかかったというのはどこに原因があったのか。
  206. 中平和水

    政府委員(中平和水君) この事故は二回にわたって爆発が起こっておりまして、それぞれの爆発について何が原因であったか、いかなる状態において起こったか、そうしたことの鑑定がきわめて複雑多岐であり、困難をきわめたわけでございます。  第一次の爆発の原因につきましては、綿密な鑑定を遂げた結果、一応地下の湧水槽にたまっておったメタンガスが何らかの着火原因に結びついて爆発をした、これはきわめて例のないケースでございまして、それをまず確定するのに大変時間がかかった。それから、第一次の爆発が起こってから二十九分後に第二の爆発が起こっております。第二次の爆発の状況、これは比較的早期に一応の結論は得たわけでございますが、これにつきましても、その短い期間にだれにどのような形で刑事責任を問うべきかという点についての詳細な捜査をやった、そうしたことで二年間の日子を費やした、こういう次第でございます。  なお、この間に投入した捜査員の数は延べで四千二百名に上っております。
  207. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 第一次爆発の原因がメタンガスであった、こういう確定をしたわけですね。そのメタンガスというのは一体どうしてあそこに——あれは「キャット」という飲食店の床下ですね。どういう形でそのメタンガスがたまったのか。その点の原因はどういうように結論づけられましたか。
  208. 中平和水

    政府委員(中平和水君) 初めに、ちょっと御了解を得ておきたいと思いますが、事件は、警察の段階が終わりましても、後、検察の段階で補充捜査もございますし、検察の段階でこれを起訴するか起訴しないかという問題が一つございますし、将来、公判廷になった場合にまだいろんな問題が出てまいるわけでございますから、実は、事柄の詳細を申し上げるわけにいまはいかぬわけでございますが、ただいまの御質問の点についてお答えを申し上げますと、飲食店の「キャット」におきまして、これは相当多数の従業員を調べておるわけでございますが、相当長期間にわたって食事の残廃物といいますか、そうしたものが湧水槽に投棄されておった。それが長年にわたって行われた結果、今回メタンガスが発生し、それが爆発に結びついた、こういう結論になっているわけでございます。  したがいまして、この問題はまず第一次の爆発がなければ第二次の爆発はあり得ないわけでございますから、まず第一次の爆発の原因が何か、これについて刑事責任を問い得る余地があるかどうか、これがきわめて基本的な問題でございます。したがって、その点につきましては、ただいま申し上げましたように、関係者相当数にわたって調べたわけでございますが、長年にわたって行われておって、したがってだれが今回の爆発に結びつくような残廃物の投棄行為をしたのかということの行為者の特定がきわめて困難であるわけでございます。  それからもう一つの問題は、行為者の特定の問題と、御案内のように過失責任を問うためには、予見可能性と結果回避義務、これが注意義務違反内容でございますが、したがってメタンガスが発生しておったという予見は、大体いま何人かを調べておりますとあるわけでございますが、しかしこれが爆発に結びつくということについてまでの予見可能性、これになりますと、これは先ほど申し上げましたように、きわめてレアなケースであっただけに、その辺について刑事責任を問うことは困難であろう、そういう結論に達したわけでございまして、したがって、この事柄を起こした第一次爆発の原因についてそうした形で刑事責任の追及が困難であった、こういうことでございます。
  209. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 長年にわたって数多くの人たちがそこへたれ流しておった、それが長年たまったいその予見はできたんだ、こういうことですが、マッチ一本で爆発が起こるというような状況というのは相当やっぱりたまっていると思うんですね。そうすると、もう日常から、特にあの事件の直前あたりはかなり異様なにおいが立ち込めておったのではないかと、こういうように想定をするわけですがね。そうすると、その段階でこれは爆発するかもしれないという一つの危険を察知することができれば、あの事故を私は防げたと思うんですがね。一体直前にはそういう状況にはなかったのかどうか、その点はどうなんでしょうか。
  210. 中平和水

    政府委員(中平和水君) 鑑定の詳細を申し上げるわけにはまいりませんが、関係者の供述の中には、大変臭いにおいがしたと、そういうふうな関係者からの証言はあるわけでございます。  それから、私どもの方では、そこにたまったヘドロをとりましてこれは実験もいたしておるわけでございます。そこでもメタンが発生し、それについての爆発の可能性があると、そういうことも実験の結果からも出てまいっておりまして、これは爆発に至るためには、いろいろな気象条件等いろいろとあるわけでございまして、そうした諸般の条件からメタンの爆発が考えられるということと、爆発現場の状況、これを一応科学的に解明した結果、やはりこれは地下の湧水槽から発生したメタンによるものであると、こういうふうに判断を下しておると、こういうことであります。
  211. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 この種のメタンガスなどがたまっている、異常なにおいが出る、危険だということ、それを日常チェックする機関、これはあるんですか。
  212. 中平和水

    政府委員(中平和水君) それを日常チェックする機関があれば、まさにその者に刑事責任を問い得るわけでございまして、したがいまして本件の場合には、一応形式上はビルの管理者が地下の湧水槽の管理をしている。もともと湧水槽にはそんなものが入るわけのない仕掛けでございます、本来の雑排水というのは、別のルートで流れていくわけでございますから。したがいまして、そういうものをチェックするシステムは、当該ビルあるいは当該の個々の管理の責任等を追及してまいりますとぼやけてまいるといいますか、刑事責任を問うに足りるだけの特定主が得られないと、こういうことでございます。
  213. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そうすると、日常はビルの管理者とかそういうものがチェックをする以外に方法はないということですね。
  214. 中平和水

    政府委員(中平和水君) したがいまして、こういうものにつきましては、やはりこれはビルの管理責任の中にきちっとそういうものをして、そういうものを管理監督する体制なり、そういうものがやっぱり本来私はあるべきものであろうと、こういうふうに考えております。
  215. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 そこで、私は、ガス爆発で被害を受けた人たちの被災者の会というのがありますね。この会は警察とはまた別に、独自の原因調査をやっておられること、これも御承知だと思うんです。  そこで、被災者の会の結論を出したのはことしの四月の段階で、メタンガスによる爆発はあり得ないと、こういう結論を出しているんですね。それを見ますと、かなりこれも専門家に依頼をしまして、調査委員会までつくりまして調査をやっておるわけですが、その報告書の中には、一つとしては、「湧水槽内には五%を超えるメタンガスは滞留しえない」、それから、「万一、滞留しても店舗内に吸い上げられたメタンガスは爆発下限界濃度以下になって引火しない」と。「もし、店内で引火したとしても火は湧水槽内に伝わらない」などというように言っているわけですね。  そうすると、今回の県警が出されました結論とこれはもう全然違うんですね。ここの被災者の会は、第一爆発も都市ガスによるものであると、それから第二爆発も、もちろんそれによってガス管が何カ所か破壊されて、そこから漏れたガスによって大爆発が起こったという、第一爆発も第二爆発も都市ガスによるものだという結論を出しておるわけですね。しかもそれは四月の三日の段階でそういう発表をしている。両者はまるっきり違うのですね。  この辺のところが、私、どうもこれだけ見解が違うのが不思議でしようがないですね。この被災者の会の明らかにした原因というものについて、警察としてはどういうようにいま御見解を持っておられますか。
  216. 中平和水

    政府委員(中平和水君) 被災者の会の方がどのような結論を出したか、あるいはその詳細については私存じ上げないわけでございますが、私どもも、少なくとも私どもの科学警察研究所の総力を挙げ、地元の静岡薬科大学でございますか、地元の大学の協力も得、事件の当初から事件の現場に入り、あるいは現場から相当多数の資料あるいは証拠写真、そういうものを押収し、あらゆる可能性を除去した後残ったのはメタンの問題でございます。  そのプロセスを簡単に申し上げますと、都市ガスの導管というのは、湧水槽及びその周辺等には配管をされていない。それから、地中に配管されている都市ガス導管の気密試験を実施しましたところ、腐食した導管の一部から若干の漏洩は認められるが、地階への流入はない。それから、地下水と共存する天然ガスは存在しない。つまり、湧水槽内の地下水と共存する天然ガスは存在をしない。それから、湧水槽内から採取したヘドロからメタンが発生をする。それで、ヘドロ量とメタンガス発生量を計算すれば爆発限界に達する。それから、同じビルの中においてプロパンは当時使用されていない。つまり、ほかの要素があるわけでございます。それから、店員等の供述によれば、どぶのにおい、下水臭がしておったという事実がある。それから食物の残滓を継続投棄していることになれば、メタンの原因をつくっているという事実もあるという、こういう理由等を中心にしつつ、その他諸般の実験、鑑定を遂げた結果、第一爆発はメタンの爆発、こういうふうに認定したというのが私ども立場でございます。
  217. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 私は、この事故が起きたたしか一カ月ぐらい後ですか、この委員会ではないのですけれども、疑問を呈したことがあるのです。あの爆発が起きた直後から、どこからともなくメタンガス説が流されているわけですね。原因の余り捜査も進まない段階でそういうのが流されていたことを覚えているわけです。だから、警察当局としては最初からこうメタンガスだときめつけてやってきたのではないかという私疑問すら感じているわけなんですね。そして、先ほど申し上げましたように、被災者の会とは見解が全く違っている。  第一、第一爆発が起きたときに、九時三十分に通報を受けて、警察から今度はガス会社に連絡が行って、ガス会社の職員が行っていますね、十何分後に。そのときはもう爆発が起こっておるわけですね。そして、ガス検知器も持っていって調べたけれども、それらしきものがわからない。ガス検知器というのはメタンガスは検知できない仕組みになっているのでしょうかね。しかし、その場合にはもう第一爆発によってガス管が五カ所くらい切れて、そこからしゅっしゅっと都市ガスは流れていたはずですね。それもわからないというような状況であった。どうなんですか、この辺は。私は警察じゃないからよくわかりませんが、その辺のところがどうしても納得がいかないのですが。
  218. 中平和水

    政府委員(中平和水君) 私どもの捜査した結果では、当初、消防等も言っておりますが、やはりその段階ではガスはすでに、これは第一次の爆発によりましてガス管が破断しているわけでございますから、したがってガスは出ておったと、こういう状況で当然あったはずでございます。
  219. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それを検知できなかった、恐らく検知能力のない検知器を持っていったんじゃないかと推測せざるを得ない。  そこで、話は変わるわけですが、結局今度刑事責任を問われたのは、現場に駆けつけて働いた二人のガス会社の職員、これはこれで私は、いま申し上げましたような状況下の中においては責任は当然あると思うんですね。しかし、これらの二人の職員というのは、結局そのガス会社が立てている防災システムの中の末端の一機関として働いているわけですね。これだけが刑事責任を問われて、結局その会社の企業責任というんですか、上層部の責任は一切問われていない。この点は非常に問題だと思うんですが、どうしてそうなったのか。
  220. 中平和水

    政府委員(中平和水君) 御案内のように、刑事責任というのはきわめて個別かつ具体的なものでございます。    〔理事亀長友義君退席、委員長着席〕 したがいまして、この問題につきましても、当然末端で具体的なそうしたアクシデントを起こした行為者の刑事責任をまずこれは追及をしてまいるわけでございます。そうして、その過失に踏まえて上部の管理者の責任がなかったかどうか、こういうプロセスを経てこの種の事件の刑事責任の追及というのは行われてまいる、こういうことでございます。  この事件は、当初に申し上げましたように、まず第一次の爆発があって、それから引き続いて第二の爆発が生じておる、こういうことでございまして、これは第一の爆発が起こってすぐにまた第二の爆発が起こったというような、きわめてこれはレアなケースでございます。それで、第一次の爆発がなければ当然これは第二の爆発もなかったわけで、したがって、この問題についての対応の問題というのは、要するに平素の保守管理、要するに供給施設の保守管理の問題、これは管理責任が一つあるわけです。それから、具体的な問題が起こったときのこれは保安体制、二つ問題があるわけでございます。前者の問題については、第二次爆発が続いて起こったわけでございますから、平素の保守管理の問題、まずこれは落ちがあるわけでございます。当該の保安体制というような問題がこれは適切であったかどうかということがこれは管理者の責任を問い得る大きなモメントになってまいると、こういうことになるわけでございます。したがって、そういうことになってまいりますと、やはりまずこうした現場へ駆けつけたにもかかわらず適切な措置をとらなかったガスの社員、それから今度は当日の当直の責任者として直接指揮監督しておった管理者の手落ちの問題、こういうことになるわけでございます。それで、あとは平素管理者としてとっさの事故が起こったときにどういうふうなシステムで組織を動かすようにしておったか、あるいはそれに伴う教育訓練は平素どのようにしておったか。そうしたことについて、これは瑕疵があれば管理者の責任の問題、これに及んでまいるわけでございます。  その点につきまして私どもも、静岡瓦斯の保安要員が他のガス会社に比べて一体どういうふうな体制になっておったか。あるいはガス事業法に基づく保守規程に基づいてどのような平素の訓練がとられ、それから、とっさの事故が起こったときのいろんなシステムが主管庁である通産省等の指導に従って行われておったかどうか。他の会社と比べてどうか。そうしたことを詳細に検討したわけでございますが、特に静岡瓦斯会社には他のガス会社に比べて保安体制において非常に劣悪である、そういう事実は認められない。それから教育訓練、これも一〇〇%とは申しませんが、特にこの相次いで起こった第二次の爆発事件について刑事責任を問うだけの、やはりこれは管理上の責任というものは刑事責任を問うことは無理ではないかと、こういう結論に達して、したがいまして、私ども立場としても、これは当然この種の問題につきましては管理責任を追及するということは、この種の捜査の一つの大事なポイントでございますから、そういう立場で各種の検討をしたわけでございますが、やはりこれはあくまでも刑事責任というのは具体的な証拠に基づいて追及すべき筋合いのものでございますから、刑事責任という角度からは業過責任を問うことは無理であろう、そのような結論に達して、当日の現場へ行ったガス会社の職員と、それを指揮監督した当日の責任者を一応今回の業務上過失致死傷の責任ありと、こういうことで送致をしようと、こういうことでございます。
  221. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 会社側の保安体制はそう劣悪ではなかったと、こう言われるんですけれども、しかし、ガス事業法の三十条で保安規程の作成、あるいはガス管の破裂等の事故の際には、導管事故緊急対策要領、これに基づいて処理しなければならぬ、こういうようになっているわけですね。この要領は持っていたと思うんですよ。そして、この要領では初動措置として、ガスが漏れていたら、その漏れた場所を速やかにとにかく検知しろと、あるいは事故がどういうような状況になっているか、それも速やかに把握しろと、そして場合によったら関係個所へ連絡しろと、あるいはバルブをすぐ閉めるなら閉める、そういうことをやる。付近住民の安全確保をするために避難などの措置をとる。こういうように記されているわけですね。これらの措置が実際に適確に行われなかったということは、これは事実ですね。バルブでも、バルブが閉められたのはもう何時間もたった後でしょう。十一時何分ごろにバルブがやっと閉められているわけですから。しかも、こういう要領を一人や二人で現場へ行ってやれるような状況じゃないですね。不可能に近いですよ。したがって、そういう意味でこれはやっぱり会社の責任というものが問われていかなければならぬのではないか、こういうように私は考えているわけです。それが第一点ですね。  それから、メタンガス説ということに、もしそれに確定をするにしても、メタンガスを長年にわたって流してきた人はだれかというのは、もう無数の人を調べなければならぬ。メタンガス説ならば、原因者はそれをためた者が原因者ですから、それが追及されなければいかぬけれども、これもうやむやになる。こういうように事件が落着をしたというように思うわけですが、もう一回御見解を伺いたい。
  222. 中平和水

    政府委員(中平和水君) 御質問いただくお気持ち、私も大変よくわかるわけでございます。しかし、刑事責任というものはこれはあくまでも具体的な証拠に基づいて問うべき筋合いのものでございますので、したがいまして、そういう立場から申し上げますと、確かに現場に行った職員の措置はこれは適切ではなかった。したがって、これは今回の刑事責任を問われるわけでございますが、しかし、ガス会社がそれぞれやっぱり保安体制を組んでおるわけでございまして、それは要するにガス事業法あるいはそれに基づく保安規程、その保安規程については平素やはりこれは主管の行政庁である通産省等が一応指導しているわけでございます。したがって、静岡瓦斯の体制がよその会社に比べてその辺が非常に劣悪である、こういうことであれば私はその辺についての責任を問い得る余地はあったとは思います。思いますが、しかし、これも先ほど申し上げましたように、要するに第一次の爆発が起こって第二次の爆発が相次いで起こったというふうな、非常に現場での機敏な措置が必要とされるケースでございまして、やはりそういう観点から問題をとらえてまいりますと、ガス会社の管理責任という形において社の上層幹部の第二次爆発に対する措置が悪かったから今回の大惨事になったという形で刑事責任を問うことは、これは証拠上困難ではないか。いろいろと検討をいたしましたが、そういう結論に達しておるわけでございます。  それから、後段のメタンガス説の場合に、調べますと、これは昭和四十年ごろからもう多くの人が次々次々従業員もたくさん変わっておりますから、そうした人たちがもう習慣的にそこに残滓物を捨てているわけでございます。それが、時には掃除もしておりますが、だんだんだんだんにたまっていってしまって、今回の爆発に結びつくような廃棄物の投棄をした人間、これがある程度証拠上特定されないと個人の刑事責任は問えないわけで、たくさんの者が十何年間にやったからたくさんの者みんなこれは個々の刑事責任があるかというと、なかなかそういうわけにはまいりません。いつごろから捨てたやつが今回のメタンの爆発に結びついたかということを証拠上特定する、これはきわめて特定がまず不可能でございます。不可能に近い状況でございます。  それから今度は、メタンガスの発生を、何かくさいと、メタンらしきものが発生しておったということについての予見があっても、そのメタンが爆発に結びつくという点についての予見可能性、こういうものがないとこれは刑事責任を問い得ないわけでございます。したがいまして、その点についてもやはり、このメタンガスが当該爆発に結びついたということについての予見可能性ありと、こういう判断をすることは、これまた刑法の理屈から言うとかなりむずかしい、こういうことでございまして、したがって、第一次の爆発の原因はメタンであると、そこに長年にわたって投棄された食べ物の残滓物であると、そういうことまではわかったわけでございますが、行為者の特定並びに予見可能性の認識の有無について明らかにすることができなかったと、そういうわけでございます。
  223. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 この問題は、どうも私まだすっきりしないんですが、ただ損害賠償訴訟も行われておりますし、法廷の場でまたこれも争われていく。したがって、これは決着もついていない問題だと私は認識しております。  そこで、今度は通産省にお伺いをするんですが、静岡県警がこれ十二日に発表して、そして同じ十二日付で通産省に対しましてガスの保安強化を求める意見書を出したと、こういうように報じられているわけですが、その内容はどんなものでしょうか。
  224. 石田寛

    説明員(石田寛君) 今回、八月十二日付でございますが、捜査を担当されました静岡県警察本部長から東京通産局長あてに、「都市ガス漏洩によるガス爆発事故の防止に関する要望について」という題がつけられました御要望が届けられております。  その内容でございますが、次の二点に要約されようかと思います。  第一番目は、資源エネルギー庁公益事業部長名で通達によりまして改正されました保安規程について、その内容を厳正に履行させるようにガス事業者の指導を強化してほしいということと、でき得ればその保安規程の法令上の根拠を明確にするように検討してほしいということが第一点でございます。  第二点目は、ガス事業者に対して、ガス漏れの検査、導管の損傷、腐食などの防止措置等を早期かつ的確に実施させて事故防止の徹底を図られたいというのが第二点目のいただきました御要望でございます。
  225. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 その要望を通産省はどのように受けとめて、どういうようにされようと考えておられますか。
  226. 石田寛

    説明員(石田寛君) 御要望につきまして、まだ詳細なお話、あるいはお考えになっておられるところをお聞きしておりませんので、ここで具体的なコメントは慎むべきかと存じますが、御要望の内容は、いま申し上げましたように、ガス保安の基本的な項目でございますし、重要な事項であるというふうに認識しております。したがいまして、これまでにも重々力を入れていろんな角度からの行政措置をとってきておるところでございます。  まず、第一点目の保安規程につきましてですが、悲しい事故が発生いたしましてから以後でございますけれども、緊急時の保安体制の強化でございますとか、教育訓練の強化などを内容といたしました改正を行ったわけでございますが、そうしてその改正通達に従って全部のガス事業者から保安規程の変更の届け出を提出いたさせております。  御要望の趣旨は、その改正した保安規程の部分を厳正に実施指導せよと、こういうことでございますから、それらの保安規程の遵守につきましても、各通産局を通じまして、立入検査でありますとか、あるいは各ガス事業者に対する監査でございますとかいうような際に、個別に指導を行ってその徹底を図ってきているつもりでございます。  二点目のガス導管の漏洩の検査につきましても、技術基準の改正をいたしまして、漏洩時の危険が大きい特定の地下街あるいは地下室については検査の頻度も従前の三倍に引き上げましたし、それからガス漏れの早期発見のためのガスににおいをつけます付臭レベルを従来の五倍程度に高めるというようなこと、かつまた、ガス漏れの点検の徹底実施を行うようにというような指導をその後もいたしてきております。  さらにまた、供給管及び内管につきましては腐食の防止というものを徹底して行うように指導をいたしましたし、既存のものでも腐食の危険性のある場所などにつきましては点検修理を徹底して行うようにというような指導も行ってきているところでございます。  なおもう一点、保安規程の法令上の根拠についてでございますが、私ども、ガス事業法の体系上はきちっと法令上の根拠が明確になっていると考えておるわけでございますが、さらに東京通産局を通じるなどいたしまして、静岡県警察本部からの御意見もよく伺った上で、検討すべきことがあればそのようにいたしたいというふうに思っております。  いずれにいたしましても、御要望はガス保安行政上の重要な事項でございますので、この際、なお一層これらの点に留意して進めるようにいたしたい、こう思っております。
  227. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 ガス爆発の問題はこの程度にとどめておきたいと思います。警察と通産の方は結構でございます。  それでは次の問題で、これはもう先ほど来から質疑が行われてきておるわけですが、五十六年度の地方交付税、例の国税の決算額が明らかになりまして、二兆八千何億か、二兆九千億近くですね、これが税収不足になっている。これが交付税に影響をすることは明らかで、受けるのが八千億円程度、との減収分について、これは五十八年度で処理するということになっているわけですが、一部新聞の報道を見ますと、大蔵省は来年度予算においてはこの地方交付税の減額精算分に見合う財源補てんというのはやらないんだと、こういう方向でいま五十八年の予算を組もうとしているんだと、こういうことですが、これに対しまして自治省の御見解をお聞きいたします。
  228. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十六年度の決算の数字が確定いたしまして、国税三税につきまして、二兆六千億余りの予算に対する減収が確定いたしました。その結果として八千五百二億円弱の減額精算を行わなければならないことになったわけでありますが、これは先ほども御答弁申し上げましたように、法律上は五十八年度までに減額精算をしなきゃならないということになっておりますので、恐らく五十八年度の当初予算の段階で処理しなきゃならないことになるのではないかと考えております。したがいまして、今月中に取りまとめるべく作業をしております五十八年度の概算要求では、現行制度を前提として交付税の要求をする関係上この八千五百億円余りのものを差し引いた形で要求いたしております。  この概算要求につきまして具体的にどのような査定が行われ、どのような対応策を講ずるかということは、例年でありますれば年末の当初予算の編成の中で答えが出されるわけであります。新聞等で先生御指摘のような報道がなされたことを承知しておりますけれども、大蔵省当局の方からその件について具体的な考え方は何らまだ示されておりません。この論議は、恐らく概算要求が出されればいろいろヒヤリング等がありますから、その過程でいろいろ考え方も出てくるのだろうと思います。私どもといたしましては、法律上減額精算は義務づけられておりますから、これは当然行わなければならないと思っておりますが、その結果、五十八年度の交付税総額というものがその分だけ少なくなることは間違いありませんし、それ以外の要素、すなわち本来の国税三税の一定割合としての交付税、あるいは地方税等を含めた五十八年度の一般財源総量というのは相当厳しいことになるであろうと思いますので、五十八年度の地方財政の運営が支障なくできますように総体としての一般財源を確保しなければいけない、その中で当然八千五百億円の精算減額というものを含めて所要の措置を講じなければならないと、このように考えております。
  229. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 大臣、結局八千五百億不足というんですか、税収の見込みが狂って地方交付税に、はね返りがそこに来るわけですね。結局そうなったのは国の税収の見込み違いというわけですね。したがって、これはもう国に責任がある、当然ですね。したがって、五十八年度の予算の折衝に当たって、これはやっぱり自治大臣にがんばっていただいて、いま言われましたように地方財政に支障のないように御奮闘を願わなきゃならぬわけですが、この辺の御見解をお伺いします。
  230. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) この精算は、基本的には、地方交付税法第六条第二項によって措置すべきものであります。これはつまり国と地方とがよく協議し合って処理していくと。私どもの方は、地方自治体の立場に立って考え方を進めていくわけでございますが、国の方の財政的な事情もいろいろありまして、国と地方はこれは表裏一体の形でございまして、この点、いろいろ諸般の情勢を勘案しながら国と、政府の内部でよく相談し合って、地方財政に万々支障のないように、私どもは対処してまいりたいと存じている次第でございます。
  231. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それで税務局長、地方税もこれはもう見込みが大分違いまして相当な減収ということになっているわけですが、七月八日の衆議院の減税小委員会での局長の発言では、道府県税が三千二百七億円の減収になると、こう発言をされているようですが、これは事実ですか。  それと同時に、つけ加えて、道府県税の減収はこれでわかったとする、市町村税は一体どのくらいのマイナスになるのか、おわかりになりましたらお答えをいただきたい。
  232. 関根則之

    政府委員関根則之君) 昭和五十六年度の地方税収の入りぐあいでございますが、一応法律的にはすでに収入額は確定しているところであるわけですけれども、私どもへの最終的な正確な報告はまだ集計が完全には終わっておりません。そういう意味で、決算見込みという形で数字を申し上げますけれども、都道府県の税収につきましては、財政計画で見込みました額が七兆九千九百二十五億円でございますが、五月末日までに入りました金額が七兆六千七百十八億四千万円でございますので、差し引き三千二百六億六千万円の対計画不足ということになるわけでございます。御指摘いただきましたように、この数字を大蔵委員会の減税問題の小委員会におきまして申し上げたわけでございます。  したがって、都道府県税につきましては三千二百六億ほどの減収が生じたということでございますが、市町村税につきましては、まだ正確な数字の集計が終わっておりませんが、電話等で主立った市町村に照会をいたしましたり、あるいは速報値を試算的にとっておりますけれども、それらの数値によりますと、おおむね地方財政計画に計上しただけの税収が入ったものというふうに考えております。税目によりましてはもちろん増減がございますけれども、全体といたしましてはほとんど減収額は生じていないというふうに考えております。
  233. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 次に、五十七年度の地方財政の減収見込みですね、五十六年度を基礎にして考えておるわけですけれども、この五十七年度——五十六年度はこれだけのものを生じて、五十八年度もちろん相当の影響があると思うんですね。一体この五十七年度の見込みというのはつかめるものかどうか。わが党の試算によりますと、地方交付税だけで見ても政府の言うような見込みに対して大体五十七年度でも一兆二千億程度の減収になるのではないか、こういうように私どもは独自で計算しているわけですが、この問題について、今日当然予想されるそういう事態に対して、自治省としてはどういうようにこれから対応されていこうとしているのか、その点をお伺いします。
  234. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十七年度の国税収入が最終的にどういう形になるのか、大蔵省当局もまだ明らかにしておりません。したがって、私どももこの段階で計数的なことを申し上げることはできないわけでありますけれども、ただ五十七年度の税収の見積もりの基礎というか、前提になった五十六年度の補正後の国税収入の予算上の見込みに対してすでに二兆八千八百億円ほどの減収が生じたわけでありますから、その後の経済情勢が大きく変わらないとすれば、五十七年度もかなりの減収になる危険性、可能性が否定できないんじゃないかと、まあこのような感じは持っております。  こちらの方の処理でありますが、もし補正予算等で国税の予算上の見込み額が減額されますと、予算上の見込み額、そのうちの国税三税でありますけれども、国税三税の歳入上の見込み額が減額されますと、いわば自動的にその三二%相当額の地方交付税も歳出の方で落とさなきゃならないということになりますから、言うなれば年度内に減収が出てくると、こういう問題があります。その場合には、五十七年度の地方交付税については、すでに予算上予定されております九兆三千三百億円という金額を前提にして、今月末までにその九四%に相当する普通交付税の各団体別の額を決定してしまいます。そうして九月には四分の三、それから十一月にはすべての普通交付税が各団体に配分交付されてしまうわけですから、その後で交付税の減額が起こるということになりますと大変な混乱が起こるわけです。過去にもそういう例がありまして、いずれも年度途中における交付税の減額補正につきましてはそれを補てんする手だてが講じられてきております。  私どもといたしましては、もし五十七年度中に補正予算等で過去におけると同様な事態が起これば、それについては過去にとられた措置と同じように地方団体の財政運営に支障がないようにこれを補てんしていかなきゃいけない、年度内に補てんする措置を講じなきゃならないと、このように考えております。
  235. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 地方公務員の給与改定に対する問題と人事委員会のあり方、これは先ほども議論がありましたので、質問の予定をしておりましたがもう省きます。  次に、臨調の基本答申に関連をいたしましてお伺いをしたいと思うんですが、まず大臣、先月末に臨調の基本答申が出されまして、第三部会の地方と国のあり方、これの答申も出されているわけですが、自治大臣としてはこれをどのように受けとめられておるのか、その点をまずお伺いします。
  236. 世耕政隆

    ○国務大臣(世耕政隆君) これは、臨調の答申はいろいろな角度から調査、審議された結果でございまして、その努力に対して敬意を表するものでございます。  臨調の答申についてわれわれがいろいろ協議しましたところでは、大体臨調とわれわれの地方行政に対する考え方というのは、基本的な概念において一致するものでございます。大体二つに項目を分けますと、国と地方を通ずる行政の簡素効率化をうたっております。さらに地方分権の推進をうたっております。ところが、一つ一つ個々の具体的な提言の中には、詳しい具体的な事柄に対する内容、それからどういうふうな手順で物事を進めていくかという具体的な点がやや不明瞭なものがあります。今後、これをさらに私どももよく検討いたしまして、それを十分尊重する姿勢のもとに答申の基本的な理念に沿うように対応して行政改革を進めてまいる所存でございます。
  237. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 もう時間がありませんので、まとめて三点ばかり具体的にお伺いをしておきますが、一つは、機関委任事務について臨調の答申では、二年に少なくとも一割整理合理化する、こういうように答申では述べているわけですが、自治省としてこれの問題についてどのように対応していくのか。  それからさらに答申の中に、この問題については新たな審議会を設けてやると、こういうことになっているわけですが、これはどこが所管をしていくのか、これが第二点ですね。  さらに答申の中で、人件費補助の問題について、「地方公務員に対する人件費補助は、補助対象職員が担当する事務・事業の円滑な実施を確保するための必要な措置について検討を加え、二年以内に、原則として一般財源措置に移行するとともに、」と、こういうようになっているわけですが、この一般財源化するという意味ですね。人件費補助はもう一般財源化するという意味はどういうものなのか、その点をお伺いをしたいと思います。  それから最大の問題は、補助金の整理統合と同時に、補助金の交付申請に伴うさまざまな問題点があるわけですね。これは六団体の提言の中にもさまざまな問題が提起をされているわけですが、手続の簡略化、簡素化、その他さまざまな提言が行われているわけですが、これらに対して自治省としてどのように対応をしようと考えておられますか、この点をお伺いして終わりたいと思います。
  238. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 機関委任事務の、今後二年間で少なくとも一割の整理合理化を図るよう提言された問題についての御質問でありますけれども、私どもとしましては、期待いたしておりましたのは機関委任事務制度そのものの問題、つまりそのものの存廃であるとかあるいは改善の問題を含めて明確にしていただきたかったなという感じは持っておりますけれども、整理縮小の方向を出していただいたことは大変評価をさしていただいているわけであります。  そこで、事務の簡素化の問題等も含めまして、今後この答申を実現をいたします手順でありますけれども、機関委任事務の整理合理化の具体的な方法内容をそれぞれ個別に検討をしてまいります。その個別的に検討してまいりますのは、結局へ各省がそれぞれ持っております機関委任事務を各省においてまず整理合理化の方針を考えていただきまして、自治省にも御相談をいただく、あるいは行政管理庁とも御相談をする。そういった方向で、当面緊急なものもございましょうし、あるいは中期的なものもございますかもしれませんけれども、一応二年間に一割ということを頭に置きまして適切な整理合理化の方向を目指して各省折衝をするよう努力をしてまいる所存でございます。  それから、機関委任事務の問題についてまた新たな審議会を設置して検討するというような答申が出ております。これは現在の臨調と別個の審議会というふうに私どもは受け取っておりますが、どういう所管ということにするかにつきましては現在のところははっきりうたわれておりません。従来の行政管理庁を中心として、また各省でいろいろ相談をしながら決めていかれるのであろうというふうに考えております。
  239. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 国庫補助金の整理合理化の問題に関連いたしまして、今回、臨調の基本答申の中で、特に人件費補助につきまして二年以内にこれを原則として一般財源措置に移行すべきである、こういう答申をいただいております。地方公務員の設置に要する経費について国から補助金を交付するという問題については、これは地方自治の大原則からいっても好ましくない。地方公務員の人件費は地方団体の財源、すなわち一般財源でこれを賄い得るようにするのが筋じゃないか、こういう意見はかねてから強かったわけであります。たとえば神戸委員会の勧告でありますとか地方制度調査会の答申の中に何回もこれは取り上げられてきておりまして、私どもも基本的にはそうあるべきものと考えております。今回、基本答申では二年以内に原則一般財源移行と、こういう方向が打ち出されたわけでありますから、これが今後具体的には予算編成等を通じて実現されていくことを期待しているところであります。  なお、一般財源措置への移行というのは具体的にはどういうことかと申しますと、人件費補助の廃止には二つの方向があると思うのであります。一つ職員の設置そのものをやめてしまう、仕事そのものをやめてしまう、それに関連して補助金をやめるという行き方と、それから、仕事そのものは残る、必要である、ただ補助金だけをやめるという二つの方向が考えられるわけですが、後者の方がやはり一般財源措置への移行ということになると思います。補助金をやめましても職員の設置に要する経費が必要であるならば、当然それに関連する財源は別途地方一般財源として確保されなければならない。すなわち地方税でありますとか地方交付税によってその総量が確保されるよう必要な措置が講じられる、これが一般財源措置への移行というふうに理解をしております。  それから、いわゆる人件費補助の廃止のほか、今回の基本答申では補助金の交付申請事務の簡素化等について触れております。この点については、補助金を交付する側の各省庁の立場と補助金を受ける側の地方公共団体の立場とではいろいろ微妙な違いがあるわけでありますけれども、基本的には国民の負担した税金がより効率的に執行されるために、事務手続等で経費が費やされるということはなるべく避けなければいけないわけでありまして、私どもは、一般論としてはこれだれも異論がないのでありますけれどもしかしなかなか進まないということは、個々具体の話になりますと、補助金の交付官庁の方ではいろんな書類が必要であるとか、あるいは報告が必要であるとかいうことを言っておりますので、これは一般論ではなくて、個々具体の問題として今後地方六団体の意見等をも踏まえて、共同して補助金の所管省庁に改善合理化を要請してまいりたい、このように考えております。
  240. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  速記をとめてください。    〔午後四時四十二分速記中止〕    〔午後四時五十三分速記開始〕
  241. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 速記を起こしてください。     —————————————
  242. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 次に、行政書士法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、提出者から趣旨説明を聴取いたします。衆議院地方行政委員長中山利生君。
  243. 中山利生

    衆議院議員(中山利生君) ただいま議題となりました行政書士法の一部を改正する法律案の提案理由及び内容につきまして御説明申し上げます。  御承知のように、昭和二十六年第十回国会における行政書士法の制定により、行政書士の地位は確立しましたが、その後、国民に直接関連する行政分野の多様化、高度化等に伴い、行政書士の果たすべき役割りは、量的にも質的にも著しく拡大されてきております。  これに対応して行政書士法の改正も幾たびか行われ、最近においては、昭和五十五年第九十一回国会において、行政書士の業務の実態にかんがみ、行政書士の業務に書類提出手続の代行業務及び書類の作成について相談に応ずる業務を加えるとともに、行政書士の業務と社会保険労務士の業務との調整を図る等の改正が行われたところであります。  その後の行政書士法の施行状況を見ますと、行政書士の業務のより適正な運営に資するためには、行政書士となる資格の引き上げ、行政書士試験制度の改善、行政書士会登録即入会制への移行等について、速やかに法改正を行う必要があると考えられるのであります。  これが、この法律案を提案いたしました理由であります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  第一は、行政書士となる資格が付与されることとなる公務員としての行政事務担当期間を二十年以上とすることといたしております。ただし、高等学校を卒業した者等にあっては、その期間を十七年以上とすることといたしております。  第二は、行政書士試験を国家試験とするとともに、自治大臣は、行政書士試験に関する事務を都道府県知事に委任するものとするほか、行政書士試験に合格した者は、いずれの都道府県においても行政書士となる資格を有するものとすることといたしております。  第三は、行政書士は、行政書士会に登録された時に、当然当該行政書士会の会員となるものとするとともに、行政書士が、他の都道府県の区域内に事務所を移転しようとするときは、登録を移転するものとすることといたしております。  第四は、経過措置として、この法律の施行の際現に行政書士である者及び旧行政書士試験に合格した者は、改正後の行政書士法の規定による行政書士となる資格を有するものとみなすとともに、行政書士でこの法律の施行の日において行政書士会の会員でない者は、この法律施行後六月を経過する日までに行政書士会の会員とならなかったときは、その登録を抹消されるものとすることといたしております。  以上が行政書士法の一部を改正する法律案の提案理由及び内容であります。  なお、この法律案は、衆議院地方行政委員会におきまして、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合の六党の合意に基づき、委員会提出の法律案とすることに決定され、衆議院で可決されたものであります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  244. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 以上で本案の趣旨説明聴取を終わります。     —————————————
  245. 上條勝久

    委員長上條勝久君) これより請願の審査を行います。  第一号高校増設等のため地方税財政制度改善に関する請願外百二十二件を議題といたします。  まず、理事会において協議いたしました結果につきまして、専門員から簡単に報告いたさせます。高池専門員。
  246. 高池忠和

    ○専門員(高池忠和君) 付託請願に対する理事会での御協議の結果を報告いたします。  当委員会に付託されております請願百二十三件の内容は、お手元に配付してあります資料のとおりであります。  理事会におきましては、これらの請願の取り扱いについて協議いたしました結果、第七八七号地方交付税所要額の確保に関する請願、第五五六八号地方行財政制度確立に関する請願、第五七一〇号地方財政確立に関する請願、第三四〇二号覚せい剤事犯取締り強化に関する請願、第二八三九号ホテル・旅館等防火用設備等改善融資に関する請願は採択すべきもの、これらの請願を除くその他の請願は保留すべきものとの協議結果でございました。  以上、御報告いたします。
  247. 上條勝久

    委員長上條勝久君) それでは、理事会で協議いたしましたとおり、第七八七号地方交付税所要額の確保に関する請願外四件は議院の会議に付するを要するものにして内閣に送付するを要するものとし、第一号高校増設等のため地方税財政制度改善に関する請願外百十七件は保留とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  248. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  250. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 次に、継続審査要求に関する件についてお諮りいたします。  行政書士法の一部を改正する法律案につきましては、閉会中もなお審査を継続することとし、本案の継続審査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  251. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  252. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  253. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  地方行政改革に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  255. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  256. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  地方行財政等の実情調査のため、閉会中に委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員、派遣地、派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 上條勝久

    委員長上條勝久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時一分散会      —————・—————