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1982-09-16 第96回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年九月十六日(木曜日)    午前十時五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 井上  孝君                 亀井 久興君                 内藤  健君                 粕谷 照美君                 峯山 昭範君     委 員                大河原太一郎君                 河本嘉久蔵君                 降矢 敬雄君                 円山 雅也君                 森山 眞弓君                 小谷  守君                 本岡 昭次君                 山田  譲君                 黒柳  明君                 鶴岡  洋君                 安武 洋子君                 柄谷 道一君                 森田 重郎君                 中山 千夏君    国務大臣        大 蔵 大 臣  渡辺美智雄君        文 部 大 臣  小川 平二君        建 設 大 臣  始関 伊平君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       田邉 國男君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       中曽根康弘君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  松野 幸泰君    事務局側        常任委員会専門        員        丸山 利雄君    説明員        人事院総裁    藤井 貞夫君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        行政管理庁行政        監察局長     中  庄二君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        国土庁水資源局        長        高秀 秀信君        法務省刑事局長  前田  宏君        大蔵省関税局長  松尾 直良君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        文化庁次長    浦山 太郎君        通商産業省産業        政策局長     杉山 和男君        会計検査院事務        総局第一局長   佐藤 雅信君        会計検査院事務        総局第二局長   竹尾  勉君        会計検査院事務        総局第三局長   坂上 剛之君    参考人        首都高速道路公        団理事      中谷 善雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十四年度特別会計歳入歳出決算昭和五十四年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十四  年度政府関係機関決算書(第九十四回国会内閣  提出) ○昭和五十四年度国有財産増減及び現在領総計算  書(第九十四回国会内閣提出) ○昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書  (第九十四回国会内閣提出) ○昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十五年度特別会計歳入歳出決算昭和五十五年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十五  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出)     —————————————
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を開会します。  昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は前回に引き続き総括質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 黒柳明

    黒柳明君 まず初めに、三越のいわゆる古代ペルシャ秘宝展ですか、この問題を取り上げてみたいと思いますが、専門家初め各方面からにせものであると、こういう指摘があって、いまマスコミを騒がせ社会問題となっていることはこれはもう周知の事実であろうかと思います。さらに不祥事件が重なって、トップの進退問題にも発展していると、こういうこともあります。しかも、国の関係専門家の中でも、非常に問題が多い作品が並んでいると、こういう指摘マスコミを通じて発言されております。  そんなことを含めまして、まず冒頭関税局長にお伺いしたいのですが、この古代ペルシャ秘宝展出品物一般業務通関輸入された実績はあるのか。業務通関輸入された実績がほとんどないとすれば、携帯品として旅具通関されたのではなかろうか、この点いかがでございましょうか。
  4. 松尾直良

    説明員松尾直良君) この古代ペルシャ秘宝展出品物が、いつだれによって、どういう経路輸入されたか、ただいま鋭意調査をいたしているところでございます。  いま黒柳先生お尋ねの、どういう経路輸入されたか、業務通関輸入されたものがあるかというお尋ねでございますが、出品物四十七点のうち、ごくわずかなものにつきましては、一般業務通関輸入されたという実績を把握いたしております。残りにつきましては、ただいま解明中でございますが、これらのものが国内で製造または加工されたものでないとするならば、何らかの形で輸入をされた、輸入形態として考えられますものは、一つ一般貨物としての業務通関であります。第二には旅具携帯輸入——旅客携帯をして輸入をしたという形態。それから三番目には、この旅具一つの形でございますが、別送品として輸入され通関をされるという形。さらには郵便路線によりまして、郵便物として輸入をされるという形態も考えられるわけであります。  これらの輸入経路につきまして、ただいま鋭意調査を進めているところでございますが、御指摘のとおり、携帯品として輸入されたものが多いのではないか、かように判断をいたしております。
  5. 黒柳明

    黒柳明君 調査中であるとこういうことですが、いまの最後の部分で携帯品として輸入されたものが多いと判断されていると、こういう御発言ですが、一般業務通関というのは百年以上たったもの、いわゆる骨とう的価値があるものについて九九・〇六ですか、そういう手段にのっとって、それなりの証明をつけて通関する、こういう制度であると私認識しております。さらに、携帯品別送品——私も海外にたびたび行きますので、こういう税関を通るシステムというものについてはみずからいろいろ勉強をし、先般のKDDのときもいろいろ勉強さしていただきました。そうなりますと、これはにせものであるか、本物であるか、この真偽についてはいまのところ両者の言い分が一応対立している、善意に見てですよ。善意に見てそういう形になっているわけであります。  しかしながら、冒頭に申しましたように、専門家を含め、圧倒的ににせものと断定する、しかも、これは国内外の専門家を含め、そういう判定が強いし、ますます強くなりつつある、疑惑が持たれつつあるということもこれは事実であります。  そこで、もしこれがにせものではない、三越側はこう主張しているわけでありますが、にせものでないとすれば、当然業務通関手続をとってくれば無税通関できると、これはもうあたりまえのことでありまして、こういう手続輸入されているものが多々あることも私承知しております。ですから、もし三越が主張するように、真実、にせものじゃないと、やがてはこれを専門家にせものじゃないと、こういうふうに三越側として調査結果を出すと、海外専門家にそれを鑑定させると、こういろいろ三越当局からコメントが出ておりますが、もしそういう主張どおりだとすれば、業務通関手続をとって入れれば私は何の問題もないと、こう思うんですが、この点はどうなんでしょうか。
  6. 松尾直良

    説明員松尾直良君) 御指摘のとおり、骨とう品、これは関税定率法上百年を経たものということになっておりますので、百年を経たものにつきましては関税無税である。いま先生発言のとおり、非常に大きなものであるとか、大事なものであれば、業務通関と申しますか、通常の商業貨物として輸入される形態が多いということであろうかと思うのでございますが、旅具通関におきましても、こういう骨とう品通関がないわけではございませんで、この場合にはやはり税関旅具検査に当たります職員が、百年を経たものであるかどうかを確認の上、それが確認されたときにはやはり骨とう品として無税通関をするという実績はございますので、必ずしも骨とう品、すなわち業務通関でなければならないというものではございませんが、ただいまそうした、先ほど申しましたように、旅具通関あるいは別送品を含めまして、鋭意入手経路検討調査を進めておる段階でございますので、ただいまのところは調査中であるということで御勘弁をいただきたいと思うのでございます。
  7. 黒柳明

    黒柳明君 携帯品として入ったものが多いと判断されると、こういうことですが、携帯品一品一品が高価なものじゃない場合、あるいは数量等の制限がない場合、香水とか、たばことか、お酒とか、そういうような場合は、まとめて十万円以下だと無税であると、以上だと税金がかかる。ですから、これ価で言ったとしても、携帯品として持ち込んだものが多いと思われるといま局長がおっしゃったその範疇で、価で言って一品十万円としても、十万円以下ですから一品十万円としても、四十七の出品物、四十七掛ける十ですから四百七十万ですか、これは国外と国内いろんな運賃やなんかかかるでしょう。さらに価で言ったとして、その十倍、手数料あるいは運賃等をかけたとして、四百七十万がさらに十倍になったとして四千七百万。ところが、今度の三越のこの四十七点の総額、もう周知のとおり二十一億という値段がついている。これは非常に値段的にも、価で言った場合、いま携帯品として入ったものが多いと判断されると、こういう中で、価で言って最高の値段がついたとしても四千七百万、二十倍として八千万。二十一億もになっているわけですね。これについて、私はどうもおかしい。これは私がおかしいじゃなくて、専門家内外ともおかしいと言っているんですから、こういう点からもこれは非常ににせものを、三越というそのしにせの看板、これをバックに、それでこういうあくどい商法をやっているんではなかろうかと、こういう感じします。必ずしも三越は知っていたか知らないか、これはさておきまして、いわゆる国際美術渡辺社長という人が、このテナント持ってやっていたらしゅうございますね、三越はこう断定していますから。三越は百歩譲ったとして、善意としても、あるいはそのテナントの方でそういう悪意があったのか、あるいはそのテナントの方がだれに持ってこさしたのか、だれから受けたのか、いつどういう手続でこれを入れたのか、ここらあたり調査中の中に入ると思いますけれども警察も含めてですね。こういうことが解明されないうちは何とも言えない、調査中という網がかかることは前提でございますが、ただ携帯品で持ち込まれたものが多いと判断されるという答弁の中には、その平行線上には、これは関税法違反という可能性がその延長線では強いんじゃなかろうか、こう私は判断せざるを得ないんですが、関税というのは守秘義務というのが当然ありまして、税金については守秘義務というのが当然あります。そういうものについて当然私も知らないわけではありませんが、いま局長さんが相当社会問題になり、さらに私は長い間海外関係があるので、一番問題なのは教科書問題みたいに、国際問題に発展しなきゃいいがと思っているんですよ、大蔵大臣教科書問題だって、七月二十六日総理大臣が一言ぱっと言えば、あんなに発展する可能性は少なかったと私はその時点いろいろ情報を集めていると感知しております。  ところが、いまの問題、三越の問題だ、あるいは税関あるいは警察情報入手段階だと。ところが、まあ当事者のイランは、失礼ですが、まだちょっと国情が不安定だからいいようなものですけれども、また隣の国じゃないから幸いしているんですけれどもイランの博物館に一つしかない国宝的なものが、三越に出品されているなんということはどう考えても理屈に合わないわけです、こんなことは。そうすると、これについてただ単に三越が、あるいは国際美術渡辺社長がと、こう言っていられるのか、ということは、税関というものは当然日本政府責任行政範囲にありますから、ここがやっぱり国際的には問題点接点になるわけですよ。三越だ、国際美術だなんということはもう接点にはなりません。これは二カ国のシビアな問題になる可能性があるんですね。そんなことも私は皆さん方も当然憂慮はしていると思いますけれども、私の責任範囲が国際的な問題を守備範囲にしておりますので、発展する可能性も非常に濃いという自分なりに憂慮心配もしているんですが、それはともかくとしまして、ともかく関税法違反という可能性が高くなっているんじゃなかろうかと私は推測しますが、この点いかがでございましょうか。
  8. 松尾直良

    説明員松尾直良君) この問題が新聞に報道されました八月末以来、私どもといたしましては、関税の修正、あるいは更正の必要性、あるいは場合によっては関税犯則可能性もあるということから、重大な関心を持って調査を進めてき、また現に調査中であるということでございます。
  9. 黒柳明

    黒柳明君 重大な関心を持ち、違反可能性もと、こういうことでありますが、行政としてできる範囲が当然あるかと思いますね。しかし、いまやられている関税法の百五条では、これはなかなか私はこの調べの中では当然らちが明かない。これはマスコミ皆さん方も同様な考えだと思うんですが、いま申しましたように、三越側ではやがて本物であるということを外の専門家まで引っ張ってきて説明する、証明すると、こう豪語しているわけですね。そのテナントである、実行者の中心である渡辺社長事情聴取されているみたいですけれども、それだって任意じゃなかなからちが明かないんじゃないでしょうか。発言してくれないですよ。自分犯罪をみずから発言するなんという善意者は世の中にいやしません。しかも、相当悪意を持ってやるならばやっているはずですからね。そうなりますと、やっぱり百十条、強制的にこれは品物を集めて、真偽のほどをはっきりさせて、それで対処しませんと、いまの問題というのはなかなからちが明かない、こういうふうに私思います。そうすると、いつの時点までこの調べ調べ調べというのは続くのか。そのうちに私は国際問題にでも発展したらこれは大変だ。失礼ですけれども、実際にまだマスコミ段階ですからあれですけれども国会でこれが問題になった、こういうふうになりますと、在日イラン大使館イラン当局も黙っちゃいません。まして、私もさらにこのイラン側をあおり立てるわけですよ。私は善意であおり立てるんですよ、悪意であおり立てるんじゃないですよ、大変なんだよと。どんどんどんどんこうやります。いまも手紙を往復しております、しかるべきところと。そういう非常に強い関心も持ちつつあります。ですから、果たしてこれが任意調査で、失礼ですが、犯罪的な方向にこれを持っていけるのか。非常に携行品として、携帯品として持ち込まれた可能性が強い、関税法違反という可能性も強いから、重大関心を持って調査しているんだ、その延長線で、情報収集という延長線でもう当たっていますな、月日も。これでめどがつくときが来るのか。私はいままでのいろいろロッキードから何から含めまして、そういう調査で結論が出るなんていう可能性はまずないと思います。まず調査中ということで、それが果たしてその調査続行するのか。そのままで大丈夫なのか。もしそれが国際的な、あるいはほかの方に火種が行ったときに、いま私が言った発言、この責任をどうとるのか。やっぱりそうだったと言ったんじゃ困るんですよ。これはいま数点と、こうおっしゃいましたですね。しかも、それ業務通関で入った可能性が数点ある。これはやっぱりいま申しますように、品物を突き合わせたわけじゃないから、これであるということははっきりわからないと思いますが、いろいろ残っている、九九・〇六の書類で残っているそれを見て、それから三越のこの秘宝展なり、カタログやなんかを見て、あるいは事情聴取して、数点業務通関で持ち込まれた可能性がある。その数点というのもこれはどんなものであるかお教えいただけますか。
  10. 松尾直良

    説明員松尾直良君) 業務通関実績を把握しているものにつきましては、申告の内容に直接かかわる問題でございますので、その中身については発言を差し控えさしていただきたいと存ずるんでございます。  先生の、任意調査では手ぬるいではないかという御指摘でございますが、この犯則調査、特に強制調査につきましては、そのような十分な心証なり、疎明が得られませんと、私ども強制捜査を行うことができませんわけでございまして、そんな任意調査ではいつまでたっても実態が解明できないではないかという御指摘でございますが、ただいまあらゆる方面から実態究明を手がけておるところでございますので、もちろん私ども必要が出、またそのような強制調査を行うに足る資料ないし事実が解明されました場合には、犯則調査強制調査に移行するということでございますが、ただいまあらゆる方法、あらゆる手段を通じて、鋭意実態究明中であるということを申し述べさせていただきまして、現在まで判明しております事実につきましては御勘弁をいただきたいと存ずるのでございます。
  11. 黒柳明

    黒柳明君 前提につきましてまた同じことを繰り返して申しわけありません。  あるいは皆さん方が、従来ならば、私の感触では、初めての国会質疑でありますので、調査中ですということですべて葬られるという、私の十七年の経験では可能性が強かったんですが、その中で、調査中ですがという前提ながらも、携帯品として持ち込まれたものが多いと判断しているという、非常に私は前向きの答弁いただいて、それ自体いままでの姿勢と違うなと、こう評価します。しているつもりであります。しているからこそ、なお続いて質問が出てくるわけなんです。  そこまで調査されている、あるいは相当もう調査したからこそ、いままでの国会質疑の中では相当の段階に来なければそんなことおっしゃったことないのに、初めてのこの質疑——これから続くかどうかわかりませんよ、多いと判断されると、そこまで明確におっしゃっている。しかも、これが違反が多いということも重大関心持っているということまでおっしゃる。というからには、その後に来るのはおのずからこれはもうわかっているわけですね。そうなると、これは密輸、関税法違反強制捜査、そして犯罪、こういうふうに結びつくことはこれは必然なわけなんです。ですけれども、鋭意いろんな角度から調査していると、この言葉私も善意に受けとめます、一生懸命やっているだろうと。やっているだろうという中で、非常に私も心配な点が多々あるんですが、まず警察の方、いままでそれじゃこの問題どう取り組んできたかお教えいただけますか、警察庁
  12. 金澤昭雄

    説明員金澤昭雄君) お答えをいたします。  この問題につきましては、警視庁の方におきまして現在関係者等事情聴取を含めまして、幅広く情報収集の最中でございます。
  13. 黒柳明

    黒柳明君 法務省刑事局長さんいらっしゃいますか。いまの質疑お聞きになって、どういうふうにごらんいただきますか、この問題。
  14. 前田宏

    説明員前田宏君) 御指摘の問題につきましては、いろいろと報道もされ、また論議もされていることは承知しているところでございます。ただ、いま大蔵当局、あるいは警察当局からお答えもございましたように、調査中あるいは情報収集中ということでございまして、事実関係は必ずしもまだ明らかになっていない段階のように承知しております。したがいまして、現段階では、いわば一般論的なお答えしかできないわけでございますが、いまのようなことで、仮に関税法違反ということで告発がある、あるいはその他一般犯罪ということで捜査が行われて犯罪の疑いがあるというような事態に仮になりました場合には、私どもといたしましても、税関当局あるいは警察当局とも十分連絡をとりまして、適切に対処いたしたい、かように考えております。
  15. 黒柳明

    黒柳明君 警察の方、これはマスコミでどんどん先行されておりまして、いろんな状態というものを適切に私は書かれている、こういうふうに判断しているんですけれども、当然国際美術渡辺社長、あるいは三越事情聴取されたと思うんですが、これは何回ぐらい、どのぐらいかけてやられたのか、それから、それ以外に事情聴取された方は複数か、あるいは単数でいらっしゃるのか、そこらあたりいかがですか。
  16. 金澤昭雄

    説明員金澤昭雄君) 先ほどもお答えしましたとおり、現在調査中でございますので、詳しい態様につきましては差し控えさせていただきたいと存じます。
  17. 黒柳明

    黒柳明君 ですから前提があるんですよ、刑事局長さんも警察庁の方も。要するに、調査中ということでも、すべて何もわからない、調査中という、いままでの審議とは相当違いますね。要するに、携行品として持ち込まれたものが多数あると判断するという税関当局の現在の答弁なんです。そうすると、それが今度はどこに行くかというと、どうなんでしょうか、あのKDDと若干状態は違うと思いますけれども、大体KDDと同じような様相だと思うんですな。こういう可能性が非常に強いことをいま関税局長さんは示唆したんじゃないんですか。それを踏まえてやっぱり警察当局調査しているんですか。
  18. 金澤昭雄

    説明員金澤昭雄君) いまお話しございました大蔵当局の話も含めまして、その辺を踏まえまして調査中でございます。
  19. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、その延長線にあるのは、私先ほど申しましたように、もしにせものだとすると価格はこんなに離れている、まあこれは大蔵国税から関税の方に行きますな、物品税の方は。これを徴収しなければならないという問題が起きてくる。国内でつくったという可能性、これはゼロじゃないと思いますけれども、いま大蔵当局は、携帯品として持ち込まれた、この可能性が多いと判断されると言うんですから、これはもうちょっとやっぱり幅広くやってます、鋭意やってますという答弁よりも、関税の方が前提を認知しているんですから、警察当局ももうちょっと調査中という中身を公表してもいい段階じゃないんでしょうか。ということは、渡辺社長三越側聴取、これはもうしているということは活字になっていますね。これはもうそのとおりですか、それじゃ。
  20. 金澤昭雄

    説明員金澤昭雄君) 三越関係者を含めまして幅広く現在調査中でございます。
  21. 黒柳明

    黒柳明君 当然、国際美術関係者も含めてですね。そのほかもやっているんですか。
  22. 金澤昭雄

    説明員金澤昭雄君) 幅広くやっております。
  23. 黒柳明

    黒柳明君 幅広く。いま二つですよ、三越国際美術。それ以上もやっているんですか。三つ目四つ目もやっているんですか。幅広くの中にそれは入るということですか。
  24. 金澤昭雄

    説明員金澤昭雄君) 繰り返すようでございますけれども、幅広くということで御理解をいただきたいと存じます。
  25. 黒柳明

    黒柳明君 結構です。では法務省当局、要するに警察は幅広くと。関税の方は一生懸命、告発があれば。こういうことですが、売られているという事実もマスコミの活字になっておりますけれども、これも事実ですね。四十七点の一部が売られていた、これも事実ですね。
  26. 金澤昭雄

    説明員金澤昭雄君) その辺につきまして、現在いろいろと調査中でございますが、ここで詳しい答弁を申し上げるのを差し控えさせていただきたいと思います。
  27. 黒柳明

    黒柳明君 簡単でいいですよ。詳しくなくていいですよ。
  28. 金澤昭雄

    説明員金澤昭雄君) いろいろと含めまして、実態を、その一部をつかんでおる、こういうことでございます。
  29. 黒柳明

    黒柳明君 その中には売却されたものもあるという事実も含んでですね。
  30. 金澤昭雄

    説明員金澤昭雄君) そういった関係を広く含めまして、いろいろと把握しておるところでございます。
  31. 黒柳明

    黒柳明君 またこの次二つ問題やらなきゃならないんで、時間の制限がありますので、幅広くとか云々というだけじゃ、なかなか具体的な、マスコミ皆さん方はもう核心に触れるようなところをどんどん活字にしてますからね、そんなことで私の質問があれしたんじゃ笑われちゃいますんで、大蔵大臣、まずここら辺でお聞きしますけれども、いま財政問題でこれから三時に総理大臣が決意を発表するわけですね。閣僚からもいろんなクレームがついている。非常に担当大臣として頭が痛い問題だと思うんです。この問題は、何もそれと直接関係がある、こういうことじゃないにしても、二十一億という、これは巨額ですよ、一応額にしてみますと。しかも、これが関税を、美術品ならば、骨とう品ならば無税ですけれども、もしそうじゃないと、これはやっぱりそれじゃいけない。ここらあたり調査中、当然財政当局の責任者としましても、いまはこの財政破綻と直接結びつくということじゃない、別にしても、やっぱり財政問題としてこれは大きな関心を持ってきたし、持たなきゃならない問題だと思うんですが、ひとつ大臣もいろんな関係関心持って承知していると思いますし、いまこの質疑を聞かれまして、どういうふうにこれを御判断されますか。まず、御所見をお伺いさせていただきます。
  32. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 私も、やりとり聞いておってよくわからないのですが、問題は、にせものなのか本物なのか、買った人があって、にせものだと思えば被害者になるわけだけれども、その被害届けも出てこない、そこらのところどうなのか。非常にこれは私はむずかしい問題だと。いまおっしゃったように、業務通関を受けていない。がらくたの類なのか、そうすればたいしたものじゃない。いずれにしても、だれがこれを運び込んできたのか、そこらのところがはっきりしないと、なかなか核心はつかめないんじゃないか。いずれにせよ、事務当局が専門技術的な立場から目下事態の究明を図っておるので、その結果をもう少し見たい。そうでないと、私も軽々に所見を申し上げることはむずかしいと思います。
  33. 黒柳明

    黒柳明君 ですから、調査中という前提については、これはもうそのとおりなんです。私も言ったように、だれが持ち込んだのか、どういう手続で持ち込んだのか。さらに、にせか本物かわからなきゃ概算もできない。ただ、はっきりしていることは、お隣の局長がおっしゃいましたように、まず携帯品として持ち込まれたものが多いと判断していると。調査は相当進んでいるわけです、鋭意みんな調査しているわけですから。それを踏まえての発言です。にせもの本物、これはわかりません。あるいはどこまで詰めてもにせもの本物の論議がはっきりするかわかりませんよ。一人でも本物だと言う専門家がいれば、絶対これはもうにせものなんだということを断定できるかどうかも疑問だと思いますね。そんなことを私ここで論じているんじゃないんです。これは専門家に任せればいいことでしょう。ある時期が来るのを待つよりほかないでしょう。だれが持ち込んだか、どういう手続か、これも捜査当局にまつよりほかないでしょう。  そうじゃなくて、私がいま言っているのは、業務通関として持ち込まれたものは四十七点のうちほんの数点である、後のほとんどは携行品として、いま大臣がおっしゃったように、価値がないものとして持ち込まれたらしい。ところが、二十一億の値段がついている。だから私、たとえばと言ったわけですね。無税範囲の十万として四百七十万、四千七百万、八千万。それが二十一億ですよ。これは重大関心持たなきゃならないことじゃないでしょうか、財政当局の責任者として、もうここらあたりにきますと。ですから、その点については、私は軽々なんというようなことは、ちょっと無責任答弁じゃないんでしょうか。その一点を踏まえてです。後のことは私も提起しているわけじゃないんです。その一点を踏まえて、財政当局の責任者として大臣はどう思われますか、こういうことだけなんです。
  34. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 質問の論旨は、二十一億もするものが入った、だから、かなりの税金が取れそうなものだという、そういうところに興味があってしかるべきだということなのかどうかわかりませんが、そういう値段はつけたかもしらんけれども、それで売られていない。売られれば三越の利益になるから、それは法人税で。どこかの利益になるから、安く買って高く売れば。それは申告で税収はうんと入るでしょう。しかし、いま売られてもいない、大部分がですよ。関税というのは、正札がついたから、その価格で関税取るというわけでもない。現実に幾らで買ったかということが通関するときの基準になるわけです。だから、国内の販売価格と、関税の査定価格といいますか、それは必ずしも同じではございません。そういう点もございますので、もちろん関心は持っておりますが、なかなか決め手がいまのところないということであります。決して関心を持ってないわけではありません。
  35. 黒柳明

    黒柳明君 いまの大臣の答弁の中で、売られている。これは数点売られている。数点にしても何点にしても、額が大きいんですよ。一点億という金ですよ。しかも物品税。これは値段はどれだけで入ってということはわかりませんけれども、全然値段がないものがそうなったのか、あるいはどのぐらいの値段のものが一億なり二億なりついたのか、これはわかりません。ですけれども、数は少なくても売られていることは事実なんです。それは警察当局もつかんでいるんです。売られているとすれば、当然それに対しては物品税がかからなきゃならない。そういう問題から重大関心持たざるを得ないということを私は言っているんですけれども、そういうことなんですよ。数点だからいいというわけにはいかないんじゃないでしょうかね。一点でも二点でも売られていれば、全体的にやっぱりそういう事実があるんですから、もし、がらくた——いまのところはがらくたという可能性が強いわけですよ、携行品として入ってきたわけですからね。それが売ろうとした、売られている事実がある。ゼロじゃないんですよ。売られている事実もあるんですよ。それについてやっぱり物品税を当然かけなきやならない。こういうことについて、たとえ一つでも二つでも、売られているものがあれば、高価なものですから、ほかのものだって売ろうという意図でやっぱり出品したわけですから、そういうことについての関心はどうかと、こういうことなんです。
  36. 松尾直良

    説明員松尾直良君) 古代ペルシャ秘宝展の四十七点につきましては、売られたという実績は私ども把握いたしておりません。  それから、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、関税の課税標準というのは、実際の取引価格でございますので、旅具で持ち込まれて、現実に十万円以下のものとして取引をされ、買ってきたものであれば、十万円以下ということで免税になりましょうし、それが実は十万円以下でない、仮に、にせものである、がらくた同然のものであっても、五十万円なり、六十万円という価格で取引をされたものであるならば、これは課税対象になる。それらの点を含めて、いま実態究明中であるということでございます。
  37. 黒柳明

    黒柳明君 文部大臣にお伺いいたしますけれども教科書問題で頭を悩ましている最中で恐縮でございますけれども、これは文化担当の大臣なものですから、これだけ世の中を騒がしていますですね。それから、大臣いらっしゃる前、冒頭にも言ったんですけれども国内外の、しかもレベルの高い専門家が、これはにせものであると、しかも、この実証、証拠というものをいろんな角度から挙げてこれを指摘している、こういう事実、これは大臣も多忙な中ですけれども、御存じのことだと思うんです。まだ確かに実態究明というものはなされてないことは間違いありません。私はここで、これはにせものであるというものを出せば、これに越したことはありません。私、そこまでやる力ありません。もうこれだけ警察関税や法務当局がいろいろ関心持って調査しているわけで、それを越えて私が調査能力があるはずはありません。しかしながら、数を重ねて不祥事件、トップの問題にもなっている、その原因はこの秘宝展が直接の起因であることも、これまた間違いありませんですね。しかも、これが文化庁担当の、もしかすると、ときには文部省後援とか、文化庁主催とか、こういうふうになる可能性すらある、内容的にはそういう内容のものですよ。往々にしてやっぱりこういうものについては可能性あるわけです。文化行政責任者として、大蔵大臣の方は、いま言った、関税、実際のお金のことなんですが、幅広く、こういう文化的行事で、たとえ一民間企業といえども、日本最大の信頼がある大手のデパートです。これは、ただ単に、民間のと言うわけにいかない。だからこそ大きな社会問題として取り上げられているし、トップの人事までも揺るがしていると、こういうことになる。こういうものをいま惹起しているこういう文化的な行事が、残念ながら東京の一角で催された。調査中である、あるいは真偽のほどは、本物にせものか別にしまして、非常に各方面から、しかも国立博物館の考古室長の杉山さんまでも、これはにせものであると断定的におっしゃっているわけでありまして、そんなことも御存じかと思うんですが、そうなるとまた別の角度で、文化担当の大臣としてもこれは関心を持たざるを得ないと思うんですが、御所見お伺いさしていただけますか。
  38. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) 今日の時点でまだ事実そのものが十分究明されておらないようでございますが、仮に、贋作が展示即売されたといたしますると、これが事実であるといたしますれば、申すまでもなく非常に遺憾なことだと存じます。一般的に申しまして、文化振興という観点から、すぐれた芸術作品を鑑賞する機会を提供する、そういう意味で、これがデパート等で展示されるということは、一概に否定するわけにはまいらないと思いますが、基本的にはやはり博物館、美術館等、十分の専門的知識を持つ職員、あるいはそのための施設が整備された場所で行われるのが適当だ、このように考えておるわけであります。
  39. 黒柳明

    黒柳明君 関税局長冒頭に何回も言いますように、前向きの答弁をいただいて、それで満足するものじゃありません。ありませんけれども、やっぱり行政当局の立場もあると思いますので、ひとつ、鋭意続行調査してもらいたいし、池袋のある画商というのは私のすぐ隣の人なので、この人の行動についてもいろいろ疑惑がある。ただ、残念ながらここの場で指摘できる材料がまだないということだけでありまして、私が指摘するまでもなく、皆さん方の方が相当突っ込んで調査をしていることは間違いない、こう思いますんですが、願わくは、これが海の向こうとの国際関係のトラブルに絶対発展させない、国内問題のうちには、まだ三越の社長が首を切る切らないなんということは、国家的なこととは何も関係ありませんから、そんなことは関係ないんであって、万が一そういうことになったら大変なものですから、ひとつこれは可及的速やかに調査を続行する、幅広くやっている、こういう中でもぜひ私はやっていただかないと、果たして皆さんの目がそこまであるかどうかということは私も若干疑問なものですから、老婆心ながら言っておきます。ひとつ大蔵大臣、直接の指揮者なんですから、先ほどの質問とまたずれます。大蔵大臣はそういうことは国際的な感覚の鋭い方ですから、あるいはお感じになったかと思うんですけれども、ひとつ直接聞く暇もあるいはなかったかと思うんですよ。ひとつ詳しくお聞きいただきまして、この問題、この事件につきましてきょう三井のトップが集まって退陣要求をする、あるいは二十二日の総会でどうなる、こんな小っぽけな問題であるうちに、この全貌を解明をして、そして強制捜査なり、しかるべく手を打って、そうしてきちっと真偽をはっきりさせて、遠慮なく、きちっと取り締まるべきは取り締まる、法に照らして罰は罰にしないとこれはうまくないと、こういうことを私は大蔵大臣に要望する、それについての御決意を聞かしていただきたいと思うんです。  私も、いまのところはまだそこに至るまでの発言の的確な材料がないから、私は発言しないだけのものでありまして、また、しかるべきときにもしそういうものがあれば、私はさらに発言していきたいと思います。本当はイランの手紙でも見せればいいんですけれども、これは見したところで別に私対の問題であって政府対の問題じゃありません。ですけれども、そんなものを見ますと非常に憂慮するという心配が私はありますので、ひとつ大蔵大臣が適切な指揮をしていただいて、国内問題のうちに速やかにこれを解決するように、関税当局にひとつ厳しい指導をしていただけますか。
  40. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 厳しい指導をいたします。
  41. 黒柳明

    黒柳明君 それから、警察当局もそこまで考えていると思いますね、捜査当局ですから。ひとつ、それを踏まえて、トップの方にもよくきょうのことを報告してくださいよ。広く云々なんというような抽象的な答弁をしているうちに、この次の決算がまたいつですか、九月の二十九日か、何かありますから、あと十三日後ですから、そのときこちらから資料をつけられて、何をやっているんだと言われないように、ひとつさらにがんばっていただきたいと思います。答弁いただく必要はないと思います。  次に、問題を変えまして水資源公団の宿舎の問題。これ、中曽根長官、ここに「特殊法人に関する調査結果報告書」。五十七年七月。行政管理庁行政監察局。これは、言うまでもありません、いまの一連の行政改革の中で特殊法人に関する土地の管理処分等を中心として、一年かかってまとめて報告したものなんです。ところが、これが私の調査によりますと、ずさんなところがある。全部ずさんとは言いません。しかも、私の調査というのは、もうごく短時間のごく一部なんです。それも摘出した調査だけなんです。その中でそういうものがあるということは、非常に行革の姿勢について、私は、来月開かれる行革国会、国鉄中心でしょうけれども、それに付随した問題で基本的な姿勢がちょっと問題かなと、こんな認識があるんです。そういう認識を踏まえて、私は具体的にこれからやりたいと、こう思いますんで、ひとつ最後に、あるいは間にもお聞きするかもわかりませんけれども、お聞きしますんで、これは直接行管と関係ないと、行政改革の問題じゃないということじゃありません。私は、基本的にこれからの鈴木内閣の命運をかけた、しかも実行段階にあるその行革のごくごく端っこの目くそ鼻くそみたいなところですけれども、そこにすら手落ちがある。私はこの手落ちは何かお役人とお役人の間のなあなあの結果じゃなかろうかという感触を持っているんですが、そういうことですので、ひとつお聞きいただきたい。大蔵大臣は当然担当の大臣なもんでお聞きいただきたいと思います。  まず、水資源開発公団は国土庁の守備範囲でございますんで、私は水資源公団の宿舎、それから寮のうち、豊川用水総合管理所、愛知県ですね、その宿舎七つと寮一つ、これだけを調査したわけです。水資源公団の中のこの管理所というのはまだまだあるわけでありますが、そのうちの豊川だけ一つ、七つの宿舎、一つの寮、その中で六カ所がやってはならないことをやっている。すなわち、絶対職員、役員に限るという宿舎規程の第一条違反で又貸ししている、こういう事実を調査したわけですが、ひとつ私これ読み上げてもいいんですけれども、国土庁の方から簡単に読み上げていただけますか、宿舎名、場所、それから何戸おのおの又貸ししているか、これだけでいいですから。
  42. 高秀秀信

    説明員(高秀秀信君) いま御指摘の豊川用水総合管理所の宿舎の使用状況について、第三者に貸している分を申し上げます。  東郷宿舎につきましては一戸でありまして、それを第三者に貸し付けております。それから大森宿舎、二戸ございまして、これを二戸貸し付けております。それから田原町宿舎、戸数五戸でございますが、現在二戸を第三者に貸し付けております。それから伊良湖宿舎、これは戸数二戸のうち一戸を第三者に貸し付けております。それから楽園宿舎、これはアパート集合形式でございますが、四十戸のうち九戸を貸し付けております。それから瑞穂寮、これは七室のうち三室を第三者に貸し付けております。  以上でございます。
  43. 黒柳明

    黒柳明君 これは当然宿舎規程第一条違反である、これは間違いございませんですね。
  44. 高秀秀信

    説明員(高秀秀信君) 私どもは御承知のように水公団は宿舎規程というのがございまして、これを職員宿舎に提供する場合は適用しておりますが、第三者に貸し付ける場合は、先生指摘のように宿舎規程上予定しておりません。したがいまして、不動産管理規程というのがございまして、これを使って第三者に貸し付けを行っているということでございます。
  45. 黒柳明

    黒柳明君 要するにこの宿舎規程第一条、「この規程は、水資源開発公団(以下「公団」という。)がその役員及び職員の居住に供する宿舎の設置並びに」云々、役員及び職員の居住に関する宿舎、こういうように限定されていると、ですから公団の役員、職員が使うためのものであると、これはもうはっきりしてますですね。
  46. 高秀秀信

    説明員(高秀秀信君) 宿舎管理規定上はそうなります。
  47. 黒柳明

    黒柳明君 宿舎管理規程上を私言っているので、第一条違反であると、はっきりしておりますですね。  それで、今度はこの貸している内容、どこに、どういう人に貸してあるのかちょっと言っていただけますか。
  48. 高秀秀信

    説明員(高秀秀信君) 豊川用水の関係で申し上げますと、町役場であるとか、その他官公署関係、それから民間会社、それから大学生というものに貸し付けております。  具体的には官公署関係が五戸、三室、民間会社が七戸、大学生が三戸でございます。
  49. 黒柳明

    黒柳明君 要するに宿舎規程では又貸しはならない、公団の役員、職員に限ると、これはもう当然でありまして、それが第三者に貸与されている。しかも、これが、まあ私の方から当然局長も御存じなことであるんですけれども指摘した方がいいでしょう。だれが入っているか。  たとえば、楽園宿舎には宇部興産名古屋支店長を契約名として、宇部興産の職員が入っている。それから同じく楽園宿舎、日本起業株式会社、同じく名古屋支店長を相手方として職員が入っている。さらに東郷宿舎、大森宿舎等には町長を契約相手として町の職員が入っている。警察が入っているところもありましたですね。さらに東郷宿舎は日本不動産研究所の豊橋支所長が入っている。  こういうことでして、これ必要がないんだったらこれは売却もしなきゃならない。国庫にそれを納入しなきゃならない。あるいは、あるところによると転任する、そのためにキープしておくんだと、こういうところも中にはありますね、公社公団によりまして。これを転売したり自分の手から放すと、今度は転勤なんかしたときにもう場所がなくなっちゃうからと、こういうある意味での理屈を申し開きをするところがあるんですけれども、これはちょっとそういう申し開きの範疇には当たらないんじゃなかろうかと、こんな感じがするんですが、この点はどうですか。
  50. 高秀秀信

    説明員(高秀秀信君) いま先生指摘のとおり、水公団宿舎の空き家率が高くなる、特に豊川周辺は高いわけでございますが、公団に事情をただしたところ、水公団宿舎の設置が業務の性格上山間僻地に多いため、職員の配置に先行して宿舎を設置することが多い。あるいはいま先生お話しのように、建設工事から管理業務への移行であるとか、あるいは具体的にはたとえば愛知用水の二期工事とか、新たな建設工事の開始などと宿舎の転用、処分などにタイムラグがある。それから一般に持ち家志向に伴う宿舎需要の減少、宿舎の老朽化、狭隘化等によって空き家が多いという実態でございます。
  51. 黒柳明

    黒柳明君 たとえば、ダム工事する山の中で空き家がある、何らかの修理や何かする場合にそれを確保しなきゃと。ところがこれは楽園宿舎なんて、名古屋の中区、熱田区なんてもう一等地ですからな。そうでしょう。こういうところを万が一使わなければ——しかも民間会社でしょう。しかもこの日本起業というのは、余りそこまで詳しく私調べなかったんですけれども、何かこう相当水資源公団との仕事関係、受注・発注の関係にもある、こんなことでもある。ですから、一つ一つこれは歩きましたわけですけれども、さらに全国ではこれにプラスアルファ十一、二十六又貸ししているところがあるわけですね。そういうところを見ると、確かにここはというようなところも中にはあります。二十六カ所全部又貸しはおかしいと私ども言いたいんですよ。言いたいけれども、これは中には行政の立場に立った場合には、これはというようなところは一、二カ所あるんですけれども、いま私が指摘したこの十五につきましては、これは全く又貸しなんかするようなところでもないし、これはだれだって入りたい、スペースもあるし、家賃も安い。いまくしくも国会議員の宿舎が問題になっているけれども、国家公務員宿舎の問題というのは絶えず問題になっている。それと全く同ケースですね。場所はいいし家賃は安いし、それなりのスペースはあるし、それに宿舎法違反の第三者を入れるという事実は、全くどう客観的に善意に見ても考えられないという私の判断は間違いでしょうか。
  52. 高秀秀信

    説明員(高秀秀信君) 理由はいろいろございますけれども先生指摘のように、私どもも第三者貸し付けが相当長期間にわたっているものもございますし、いま御指摘のように貸し付けの相手方が必ずしも適当でないというものもございます。  経緯といたしましては、近隣から空家にしておくことについて苦情等もございまして、官公署等にお願いをした、それで足りなくていろいろ民間の方にもお貸ししたという事情はございますけれども、貸し付けの相手方として適当でないものもございますので、私どもも御指摘のように問題があるというふうに考えております。
  53. 黒柳明

    黒柳明君 そう言われるが、私がそう言うならいいの、ところが局長の方から適当じゃないものもあると言うと、適当なものはどこかと、こう言いたくなっちゃうんだよ。それはやっぱりだめよ。よくだから話し合ったように答弁しなきゃうまくないですよ。私は善意で適当じゃないものもと、それは局長の立場を考えて言ったの。二十六カ所私は不適当だ、とんでもない、それを一歩譲って中にはと。ないんですそんなものは、全部不適当なんです。一歩譲って言ったの。それを私のあれに乗っかっちゃって言っちゃだめです。適当じゃないとこう判断します、おっしゃるとおりですと、こう言わなきゃだめだ。そうでしょう。
  54. 高秀秀信

    説明員(高秀秀信君) 御指摘のとおりでございます。
  55. 黒柳明

    黒柳明君 何も局長とけんかするためにここに出てきたわけじゃありません、事実関係が不正であり、不備であれば、それを是正をする、これが目的なものですから。ということです。  長官、長官は当然こういう細かいことまでお知りじゃなかったと思うんです。その次は中曽根長官の方にバトンタッチしますからね。こういう実態局長の方が非常にうまくないということなんですが、長官これどういうふうに判断されますか。
  56. 松野幸泰

    ○国務大臣(松野幸泰君) 御指摘のように、空家が多く、また、その中で第三者への貸し付けを行っているのは、事情はいろいろあるにせよ遺憾である。水資源開発公団に対しては、早急に不要なものは処分するよう指導をいたします。
  57. 黒柳明

    黒柳明君 そこで、今度は中曽根長官の方、行政管理庁の方に移りたいと思いますけれども、それでこれをあわせて見たわけですよ。あわせて見ますとね、確かに例として引かれているわけですけれども、水資源公団、二十九ページ、十四特殊法人、これは書いてありますね。水資源公団だけでも、豊川だけじゃなくて、全国を調査しなくたって、調査させればいいわけですからね、行政管理庁の方では。それでその数字をここに載っけてもらった方が、より私たちとして実態を知ることができる、こういうふうに思うんですよ。これは本当の水資源公団だけでも豊川だけの一部なんです。特殊法人でもごく一部なんです。そういうところに私がこの次指摘するような不備が出てこざるを得ないと思うんですけれどもね、まあこれは事例と凡例、こんなの全部やったらこんな厚いものになっちゃう、こんなもの全部調査なんかできないよと、こういう面もあると思いますけれども行政管理庁の方が要するに行革を実行する、その推進力になる方がよっぽどやっぱり不備というものを指摘しても、なかなかそれが一概に改まるかどうかわからない問題もあります、長い間の習慣というものがありますからね。あいているからあしたすぐ転売しろと、これはできない、やっぱり一定の時期がありますね。しかし、この結果報告という中が非常にやっぱり抽出的なものなんです。水資源だけに限って言ったって、私が言ったってすぐ出てくるんですから、それをどうしてこういうところでやらないのかなと、こういうふうに思うんですが、これはどういうことなんでしょうか、そういう点につきましては。
  58. 中庄二

    説明員(中庄二君) ただいまの国土庁の水資源公団の事例を踏まえまして、もっと大幅にできないのかということでございますが、この報告書をごらんいただきましたように、特殊法人の資産全体というのをまず第一の柱にいたしまして、それから特殊法人全体の持っております未利用地というものを第二の柱にいたしまして、第三として宿舎の問題をやったわけでございます。調査を効率的にやりますために、抽出調査という方法もとりました。特に宿舎の方につきましては用地関係がございますので、これは個別に入っている方の第三者の部外者もこれは調べました。いまちょっと御指摘ございましたが、寮の方については中身調べてないんじゃないかということでございますが、寮等につきましては管理人を置いているところが非常に多うございますので、むしろその管理人の効率化という面からどのくらいの人が入っているのかという率の方を主体にいたしまして、中身まで及ばなかったのは事実でございます。この辺も調査の面から、先生指摘のようにすぐわかるじゃないかということでございますが、私ども本庁の出します結論の方向で調査の効率化ということを主眼といたしましたので、そういう御指摘のような面の手落ちがあったのは事実でございます。
  59. 黒柳明

    黒柳明君 まだそこまで私話してないんです。それはきのう会館で話したことなんです。まだ宿舎だけの問題だから、そこまで言っちゃうと私の質問がなくなっちゃうじゃない。それはきのう会館で話したことで、いまここの質問はそうじゃない、そこまでいっていませんですよ。まだ宿舎の問題です。  それで、この二十九ページの表につきまして、要するに水資源開発公団、こう出ていますでしょう。これは豊川なりの抽出なんです。ですから、私は未利用地なり、もっと大きいものをやって、効率的にやったんだと、こういう観点わかりますよ、そこから物事始まるんですから。総括的にやらなかったら細かいことやったってだめですからね。ところが、総括的にやりまして、未利用地がこれだけある、すぐ売却せよ、すぐ何とかせよ、こんなことはさんざんやられているんですね。どうにも動きません、各省庁縄張りがありましてね、なかなか大蔵省に総合庁舎建てろと言ったって、いや大蔵になっちゃうとうちはその間借りになっちゃうからとか言って、私もやりましたけれどうまくいかない。今度はそんな問題じゃなくて、全体的な政府がやるんだからこれはいままでとは違う、こういうことだとは思いますけれども、それをやりつつ、やっぱり細部も指摘していきますと、上と下から各省庁も実行段階に踏み切らざるを得ない、総括的なことをぱあぱあとやりましても、もうおれのことじゃない、みんな同等じゃないか、みんな同じことしているじゃないかと、自分のこととして受けとめない、こういう悪い性格があるんですよ、お役人の中には。そうすると今度は具体的に指摘されますと、これはもう当然指摘されたことについては、これは改むるにはばかることないということになるんです。ですから、大きい問題、小さい問題ということじゃなくて、行政改革は大きいことはやって小さいことはやらなくていいんだと、大きいこと小さいこと一貫のものですよ、続いているものです。しかも、そういう個々の具体的問題も指摘しないと、大きいところまでいきません、実行段階には。そういう中で、こういう表一つつくるのでも、豊川の管理所だけじゃなくて、ちょっと指示すればいいんですから、全部に寄こせと。私があれしたらいま言ったように二十六又貸しと、こう出てくるわけでしょう。ここじゃそのうちのわずかに一つの事例しか出てないわけでしょう。不正は二件、事例は三十ページですね、事例として、これもちょっとこの事例は大きいから出したんでしょう、四百九十四平米ですよね、物すごい広大の敷地のところに一万円かなんかで住んでいらっしゃるわけです。こういう事例出すと同時に、要するにもっと全国的に、水資源なら水資源の調査をさせて、そうして全貌をはっきりさせて、そうして改めなさいと、おかしいぞと、こう指摘した方がよりいいんじゃないでしょうか。例だけ挙げて、ここにおかしいのが一つあったから、あとおまえたちに任せるから、調査して悪いところあったら改めよと、こういうやり方が果たしてこういう特殊法人、公社公団が、具体的に悪を改めていく突破口になるかというと、私は非常にいままでの経験ではむずかしい、こういう感じがするんです。できないことじゃない、簡単なことですからね。どうしてそういうことをやらなかったのかなと、その点をいまお聞きしているわけなんです。効率的にという中に、抽出だけする、それでぱっとやる、それが誤りなきゃいいですよ。それが全貌を的確にあらわしていりゃいいですよ。それが各省庁、各公社公団に対して実行させる。空き家を確保する必要がないところは転売するとか、国庫納付するとか。そういう段階には至らないと、こういうふうに思うんで、一部抽出や、中途半端な表づくりしないで、もっと全貌の調査をさせて、表なら表をつくって、私たちに提示いただければよかったんじゃないか、問題点の全貌をはっきりさして、各省庁に特殊公団に直せと、それをしかも皆さん方が個々に調査するというのは別ですよ。しなきゃわかんないというのはこれ別ですよ。これは公明党がやりますから任してください。そうじゃなくて、本当に又貸しが全国で幾らあるのか、こんなことは出しなさいと言えばできることじゃないですか。それも一部しかやらない、そこの点を言っている。それも効率的な中に入ってできない、やらなかったということなんですか。
  60. 中庄二

    説明員(中庄二君) ただいま報告書を見て御指摘いただきましたが、弁解のようになりますが、その次のページには相当多い量のものも出ております。特に三大都市圏の方の問題は、三十三ページ以降のところで、地価も高うございますので、詳細に実態全部を洗うような方式をとった次第でございます。ただ御指摘ございましたように、全部が抽出に当たらなくても、書面調査でも相当できるではないかという御指摘ございます。今後やります場合、そういう方策を加味してやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  61. 黒柳明

    黒柳明君 だから、実態が、要するに百九ある中で、出して文句ないところはどんどん出てくるわけですよ。出しちゃうまくないところは出さないんですよ。ですから、じゃ三十三ページ以下がそうなっているんなら、全部そうすりゃよかったじゃないですか。それを一部だけなぜそういうふうにしないのか、効率的だと言って抽出や部分的な数字じゃこれはうまくない、今後といったって、今後いつかあるんですか、来月始まっちゃいますよ、本当はこれはもう予算委員会かなんかで、総理、全閣僚の前でやらなきゃならない問題だと私思っているんです。ですから、私はきょうこれ端緒にしまして調べますよ。本当はもう中曽根長官あたりから公明党に予算でもいただければ、こっちは徹底的に調査するんです。そこまで要求しても無理なんで、これは独自で調査しなきゃならないと思いますので、本当にこれは個々に個々に歩いて調べたらでたらめな、一言で言いますとね。その中に失礼な意味も含んでいたら謝りますけれども、でたらめです、実態というものは。それをただ単に摘出して、それで摘出したものが全貌をあらわしているんならいいけど、それがまた誤りがあるといういい例が、局長が待望の質問に入るわけですよ、四十三ページです。  水資源公団の独身寮と称するところに、入居定員が七名、入居者が五名、実態は二名なんです。あと三名は又貸しです。そこにしかも管理人の問題だけなんだと。管理人の問題を意識した、ところが意識もっとしなきゃなんないのは、管理人が必要かどうかと、これも問題あるでしょうね、独身寮ですから全部入居したって七名、ところが、局長実態はそうじゃないんですよ。ここの独身寮に入ると非常に便利がいいと、実際入っている人は、管理人が出ちゃ大変だと。こういう問題もあるんですよ。そこらあたりは調査の中に入ってこないんですよ。ただ単に七人だから一人の管理人だめだ。実態論じゃない。ただ数字の上からそろばんはじいただけ。実態論というのは、ここに管理人がいなくなると、入る人いなくなっちゃうという実態がある。それはさておきまして、そこまで調べ切れるものじゃない。数字が定員七に対して実際は二なんです。それはいま先行しておっしゃったとおりで、うまくない。それに対して、いやいや、私たちは管理人一人は必要ないだろうということを意識して調査したんだからと、ほかのことはちょっとミスでしたと、知りませんでしたと、そうはいかないですな。そういうことをここで指摘して改めさせることが、これからの行政改革の一環です。そうでしょう、どうですか。
  62. 中庄二

    説明員(中庄二君) ただいまも御指摘ございましたように、確かに宿舎の面につきましての数字の挙げ方と、それから独身寮の方の数字の挙げ方が、私ども調査の不備のために適正ではなかうたということは、御指摘のとおりだと思っておりますので、今後十分注意してやってまいりたいと思っております。
  63. 黒柳明

    黒柳明君 今後今後と言うけど、これを資料にして、もう実行段階に移っているんだから、今後今後というと、今度は中曽根長官が総理大臣になったときを意味するのか、ちょっと今後という意味がわかりませんけどさ、これを踏まえて、今後というのはどういうことを意味するのかわかんない。これは長官、時間がないんで、私は、これは専売からやりゃよかったの。一番専売。二番水資源。三番が鉄道建設公団。専売からやりゃいいんだけど、私たばこ吸わないんでね、専売からやるのちょっと煙ったいんで、二番目の水資源からやった。特別意図ないんです。なぜ水資源だけそんなにやるのか、全然意図ないんです。専売の方は私たばこ吸わないんでお近づきないんです。それで二番目の水資源やっただけですよ。短期間とは言いません。愛知全部これ歩いたんですから、実態調査に。それだけでもこういう表——これは不備とは言いません。中途半端。四十三ページはでたらめ。こういう問題が出てきている。そうなりますと、この報告全体に対して、それじゃ、ほかをどんどんどんどんこれやっていった場合になのか、こういう私は疑惑、心配が起こってくる。そうすると、唯一の信頼に足る行管がつくった基礎資料、報告書というものに間違いがあるとすると、何を頼りにして私たちは来月からの行管国会の審議を進めていけばいいのか、非常に戸惑う。こういうことなんですが、まあとりあえずいまのところまでお聞きになって、どう感じられますか、長官。
  64. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) まず、公明党の皆さんの詳細な実態調査につきましては、非常に恐れ入った次第であります。  それから、行政管理庁といたしましても、極力実態把握に努めた模様でございますが、やはり調査能力に相当のまだ差があるように思いました。  大体、空き家あるいは不動産の使用状況等を中心にやったようでございまして、その貸借関係、転貸であるとか、その使用状況の実態調査に関してまでは余り踏み込んでやっていなかったおそれがございます。  いろいろ御指摘いただきました点を考慮いたしまして、改めさして実態調査に踏み込んで、的確な調査をするようにいたしたいと思っております。
  65. 黒柳明

    黒柳明君 この独身寮三人、これは三十年から入っているのですね。こういうようないろんな実態がありまして、ひとつくどいようではありますけれども行政管理庁が、行革推進の中心が片手落ちであるということは、やっぱりそれなりに全体の気構えがあっても、結果が出ないということに通じますんで、ぜひわずかのことでございますけれども、これからがやっぱり正念場であるし、これからが実行段階であるから、より重要なときでありますし、ひとつ私たちも微力ですけれども、これ全部やっぱり調査しませんと、いまおっしゃったように、その実態の中まで踏み込んでやってないんだと、そうなりますと、実態指摘してないということはこれはもうしようがないと、これはもう当然そうなりますですね。ですから、それすぐやっていただくと、これは当然です。ですけれども、それと同時に、私たちもこの委員会を緒にしまして、実態というものについて、どういう実態であるかということはまた皆さん方もやられるでしょうけれども、こちらもやるだけやってみたいと、こう思って、行革国会にはひとつ長官に楽しみに、そういう質疑もお待ちいただきたいという感じするんで、いまこれを緒にしまして、私たち精力的に本当の実態を明らかにしなければ、結果が非常に期待薄だと、こういうふうに思いますので、ひとつぜひお願いしたいと思います。  それから大蔵大臣、時間があればもっとやるんですけれども、道路公団の方をこうやりましたら、道路公団の方はほんのちょこっとなんですよ、やりましたら、道路公団いろんな指摘があります。空き家五とあったからそこだけ見てみたんです。どんなところだと思いましたら、これまたみごとなほど都心にありまして、一等地にありまして、スペースもゆったりしておりまして、それがみごとなほど空いてて、お構いなしにぼろぼろになっているんです。一つが世田谷区の三軒茶屋一丁目、これはいいところですよ。それから杉並、下高井戸の四丁目、中野区南台二丁目、杉並区和泉の一丁目、世田谷の北沢の五丁目、もう都心の一等地もいいところです。取得値段、土地の面積、建物面積、取得年月日、いろいろありますけれども、やっぱり問題なのは、三年も四年も空きっ放しになっているんです。一つこのうちで売る構えがあるなんて言ってますけれども一つだけ売る構えがあるなんて、そんなことはもう言いわけにも何もなりませんですね。空いているものだったら何とか処分しなさいよ。これについて、いやだれか来る可能性があるからそれを待って空かしておくんだなんていうようなことは、これは言いわけにもならないケースだと、こういうふうに私認識しているんですけれども、わずか、道路公団の五つ調べただけでもそういう問題、これは道路公団、まずこれはどういうことになりますかね。一つだけ売る構えですよと言うんですけれども、これは確かにうまくないケースですと、これはもう何とかしなけりゃなりません、申しわけありませんとさらっと言った方がいいと、私はこういう感触がするんですけれども、これはどうですか。
  66. 中谷善雄

    参考人(中谷善雄君) いま御指摘の五戸でございますが、約三年ぐらい空いているのは事実でございます。これにつきましても、そのうちの大半につきましては、処分する方向で検討いたしておりますが、中には借地のものもございまして、価格等でなかなか当方から売りますと言いますと、安い価格でしかお引き取りいただけませんし、それでは借地権を買い取りまして売ろうといたしますと、今度はなかなか高いことをおっしゃるというような事情もございまして、実は少し時間かかっております。  先生指摘のとおり、できるだけ早くこれはそのうちの大部分については処分をいたしたいと思っております。ただ、住宅の事情につきましては、多少その時期によりまして、非常に需要が多い場合と、現在のように需要が少な目の場合とございますので、多少の空き家というのはやはり確保しなきゃならないということで、それにつきましても、御案内のとおり三十四、五年に購入したものばかりで、かなり年数がたっておりますので、物につきましては若干の補修もいたしまして、供与をいたしたいと、このように考えている次第でございます。
  67. 黒柳明

    黒柳明君 何かわかったようなわからない。弁解しない方がいいケースだと、私はこう思いましてね。四年のもあるじゃないですか。その間要するに確保する、あるいは売るのに手間どっていると言ったって、実行には一つも移されてないわけでしょう、三年、四年の間ね。実際にこうなりましたというものはないわけですよ。こうやってこうなりました、ですからあとの一つは、あとの二つはいまというのはわかるんですよ。この場に出てきて、いや借地の問題がありまして、いやキープしなけりゃならん問題がありまして、そんなことはもう全部私どもは知っているわけでありまして、ですから、こういうものについてやっぱり大蔵大臣は相当厳しい発言もしている、考えも持っているわけです。ですからもう時はまたいままでと若干時期も違いますね。財政的にも、あるいは政府のこういうものに取り組む姿勢も全然違っているときですから。いままではそういう姿勢があるいはあったのか、なかったのか別にしまして、非常にこの問題は典型的なやっぱり横着なあれじゃなかろうかなと、こういうふうに思いますよ。いまのことが一つ一つそれじゃどこがどうなっているのか。三年間も四年間もそれをどこでどうやっているのか、こういうふうに言えばいいんですが、時間も制限がありますから、非常に都心にあって、スペースが広い。しかもこの上物なんかぼろぼろでしょう。だれも入りゃしませんよ、こんなものは。不動産屋へ行ったって、あんなものはもう上物はゼロですよと。これはもう当然そうでしょう。土地の価額だって相当評価しますね。こんなものはもし売れなかったら私に買わしてくださいよ。国有地でしょう、転売しますと相当もうかりますな。もし買い手がなかったら私のところへ一報ください、私処分しますから、幾らも処分してあげますよ。どうもそうじゃないんですよ。横着ということがある意味では全面的に前提になっていて、やっぱり指摘されるまで、指摘されたって言い逃れする、こういうようなことがいままで続いてきたやに私思うんです。大蔵大臣どうですかね、これは水かけ論争しませんが、三年、四年こういうものについて、いま言ったことが実行に移されていればいいんです、一件でも二件でも。だけれどもそうじゃない。こういうことなものですから、総括的に私は質問しただけで、一件一件どうだこうだなんて論議する時間もないし、気力もありませんが、どうですか、これについては。
  68. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 大変いい話を聞かしていただいて、非常に勉強になりました。私は、恐らくこういうことが、われわれが気がつかないようなことが全国各地で私はあり得る、そう思っております。こういうことを決算委員会で取り上げていただくことは、今後の予算の査定上これは非常に重要な参考になる。したがって、行管の調査結果、あるいは決算委員会の御論議、こういうようなものを特に留意して、各主計官は細かい点についても十分配慮して、査定に当たるように私からも指示をしておきたいと、そう考えております。  特に、日本人というのは、お金の面は潔癖なんですがね、これは全体的な傾向かもしれません。特にお役所などはお金の面は非常に潔癖でございますが、物の管理ということになりますと、非常にずさんになりがちである。しかし、結局は物に化けるわけですから、予算のお金というのは。物の管理がずさんになっておったんでは、結局お金をむだにしていると同じことになるわけなので、今後十分に物の管理については目を光らしていきたいと思っております。
  69. 黒柳明

    黒柳明君 これは首都高速道路公団だけがそうじゃなくして、いま行管の方でおっしゃったように、その実態、その対応までは調べなかったんだと、こういうことなんであれですけれども、先ほど言った豊川の管理所の方でも、スペースの広いこと広いこと、ここに指摘しているのは一戸建ての四百九十四平方米ですけれどもね。ほかのところだって、伊良湖のそばにあるところだって、二戸で九百二十一平米ですから、一戸が四百六十平米ですしね。非常に面積一つ一つが広い。広いところが空き家となって、しかもそれを第三者に又貸ししている。こういうことなんで、こういう実態というものは、別の角度でやっぱり調べて、行管が指摘しないと実行段階に移るかどうか非常に疑問なケースであると、私はこのようにつけ加えますが、ひとつ中曽根長官、まだいま大蔵の方の守備範囲ですけれども、行管の方ではこれを空き家と指摘している。その中身指摘してませんですね。それじゃ一つ一つ空き家を指摘するのかと。これはもう不可能なことです。ここまで要望しません。要望しませんけれども、具体的に来月臨時国会が始まります。国鉄中心でしょう。中心ですけれども、いわゆる財政再建等もありますけれども、行革国会のはしりが始まるわけです。そうなりますと、こういう資料に基づいてまた私たちも審議をしていくわけであります。実態というものがどこまで皆さん方の手で調べられるのか、どこまで資料として提示できるのか、これは別ですけれども皆さん方が現場に行かなくて、各省庁、各公社公団に指示して実態がわかることは幾らもあるんです。隠そうと意図的に思ったってだめですよ。そんなところこそ徹底的にやってやりゃいいんですからね。そうじゃなくて、一つに並べて、こういう実態出しなさい。いまの転売でも、又貸しでもいいですよ、空き家の年数でもいいです。そのぐらいは簡単にできるわけですね。それをこちらが一々一々行って調べたんじゃ、これはもう非常に時間がないです。労力が足りません。ですから、座っていて、行管が一並べにできるようなことだけぐらいは、少なくとも完璧にひとつ臨時国会まで、特殊法人に関する限りはきちっとやって報告していただけませんか。第三者に貸している実態もそうでしょう。空き家になっている年数、これは一年と書いてある。一年じゃだめですね。年数等につきましてひとつ項目をそちらで挙げていただきまして、可及的速やかにそれをもう一回調査していただいて、それで、できれば行管の監察官も現場に行って調べてもらうにこしたことないですけれども、そこまで手が及ばないにしても、行管が指示してできる範囲、その範囲はもっと詳しくひとつ資料にして提示していただくと、こういうことをお願いしたいんですが、いかがでしょうか。
  70. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 全特殊法人では非常にむずかしいと思います、百三ばかりあるわけでございますから。しかし、大体いま御指摘いただきました諸般の点につきましては、よく検討いたしまして、できるだけ御期待に沿うように努力さしてみたいと思っております。時間が余りございませんので、動員いたしましてもどの程度できるかまだ見当がつきませんが、どういう方法で、どういうふうにやったらいいか、よく検討さしていただきたいと思います。
  71. 黒柳明

    黒柳明君 文化庁の芸術祭関係のことをちょっと質問したいんですけれども
  72. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ちょっと速記をとめてください。    〔午前十一時三十五分速記中止〕    〔午前十一時四十八分速記開始〕
  73. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 速記を起こして。
  74. 黒柳明

    黒柳明君 芸術祭の参加のことですけれどもね。東宝が要請した日劇ミュージックホールの件、これは再度申請してそれが参加却下された。私もいろいろ陳情を受けまして、事情いろいろ聞いたんで、きょう委員会がありますんで、ぜひもっとはっきり当局の見解聞きたいと、こういうことなんです。  私も、そういう音楽や映画や芸術広く全般というわけにはいかないですけれども関心、興味がありますので、芸術祭の参加作品等よく見たりなんかするんですけれども、いわゆる日劇ミュージックホールの参加、これはマスコミの活字で知る範囲は、何か裸はいいんだけれども、いわゆる九月、十月のエロスの祭典というミュージックホールのそれがいけないんだと。ちょっと理解できない点があるんですよ。ですから、また当事者から聞いたんですけれども、やっぱり向こうは参加したいという反発している方ですから、そっちの意見だけ聞いてもこれがもう正当じゃない。なぜそれが、参加を二回にわたって申請したのが却下されたか、その理由はどういうことなんでしょうか。
  75. 浦山太郎

    説明員(浦山太郎君) お答えを申し上げます。  先生御承知のように、芸術祭はできるだけ広く芸術の各界からの参加を期待をしているという趣旨で行っているものでございまして、本件のこの日劇ミュージックホールにおきますいわゆるヌードショーが、歴史のある公演であるということは私ども十分承知をしておるわけでございます。ただ、芸術祭の参加公演は、青少年を含めまして広く国民に鑑賞をすすめる性質のものであるといったようなことでございまして、私ども関係の審査委員会での慎重な検討を経まして、参加の受理を見合わせるという形にさしていただいたわけでございます。
  76. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、あくまでも青少年も含むからヌードはいけないと、こういうことが最大唯一の参加申請を却下した理由だと、こういうことでいいんですか。
  77. 浦山太郎

    説明員(浦山太郎君) 芸術祭への参加は、ことさらに私どもももちろん制限をしようとか、そういう気持ちはないわけでございまして、もちろん個々の公演が芸術かどうかとか、そういったことまでを問題にしているわけではございませんけれども、私どもとして、芸術祭の趣旨としては、広く芸術祭に参加をしてもらって、その際に、国民一般にこういった参加作品を推奨すると、こういう形で従来から行ってきているわけでございますので、そういった全般の状況を判断をいたしまして、なお審査委員会での慎重な検討を経て今日の結論に達したと、こういうことでございます。
  78. 黒柳明

    黒柳明君 その結論はわかっているわけですけれども、その結論を出した理由については、青少年を含めて国民一般に広く参加を求める。それから、参加について拒否するものじゃない。幅広く参加はさせることはこれはもうやぶさかじゃない。だけれども、国民一般広く、そして特に青少年、そういうことについて配慮されたと、こういうふうに却下の理由を判断していいかと、こういうことなんですけれどもね。
  79. 浦山太郎

    説明員(浦山太郎君) おおむねそのとおりで結構でございます。
  80. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、ヌードはいいんだけれどもと、こういう注釈があったんですけれどもね、それから、九月、十月のミュージックホールのエロスの祭典がいけないんだと、何かちょっと、そこのところが私も的確にわからなかったんです、話を聞いただけじゃ。そのところあたりどうなんですかね。裸自体は芸術じゃないとは言えない。裸自体を否定するわけじゃない。けれども、ミュージックホールの企画なり、演出なりがいけないと、こういうことなんでしょうか。ちょっとその点はっきり教えていただけますか。
  81. 浦山太郎

    説明員(浦山太郎君) 先生がいみじくもただいまおっしゃいましたように、やはり青少年を含めて、国民一般に文化庁の行事として推奨できるかどうかといったような点から、個々の公演内容についても判断をして、これを承認するかどうかを決めるわけでございます。したがいまして、そういった趣旨で私どもは今回の結論に達したと、このように御理解をいただきたいわけでございます。
  82. 黒柳明

    黒柳明君 裸自体は芸術だけれども、ミュージックホールのそのもの自体は芸術じゃないと、参加する資格はないと。あれですか、パリのリドとか、ムーランルージュだって、あれはもう世界各国の人が鑑賞しています。青少年までもということは別ですけれども、あれは家族ぐるみ見ておかしくないようなショーだと、私はそういうふうに感じますし、見た範囲では家族ぐるみという中に子供も、これは政府がやったとか、文化庁がやったとかいうものじゃありませんけれども、入っている。あれとミュージックホールとそんなにヌードという面では、演出そのもの、ショーそのものはほとんど変わりない、こういうふうに思うんですね。ですから、さらに裸というと、これは何か言いわけみたいになりますけれども、裸の芸術品だって幾らも彫刻品にせよ、絵画にせよ、あるわけですからね。あるいはある国家においては裸踊りなんというのが、中近東の方ではこれはもう国の踊りみたいなところもありますしね。ですから、青少年ということについての参加、それにはという判断。そうなると、今度は逆に芸術祭に参加するもの全部青少年が参加できるものかというと、そうじゃないものもあるんじゃないでしょうか。しちゃならないものもあるんじゃないでしょうか。したくてもできないものもあるんじゃないでしょうか。それはどうでしょうか。青少年が参加しちゃいけないとは言いませんけれども、参加するような性格じゃないもの、参加するとちょっとうまくないようなものも含まれているという可能性はあるんじゃないでしょうか。その点はどうですか。
  83. 浦山太郎

    説明員(浦山太郎君) この芸後祭の趣旨でございますけれども、やはりすぐれた作品を広く一般に公開をいたしまして、芸術鑑賞の機会を醸成をいたします。また芸術家に意欲的な公開発表を促しまして、芸術の創造と振興に寄与すると、こういう趣旨になっているわけでございます。したがいまして、大体芸術祭の参加作品と申しますのは、青少年一般を含めまして、そういった国民一般の鑑賞に資するに足るような作品というような形で行っているわけでございます。
  84. 黒柳明

    黒柳明君 ただ、何も作品名一つ一つ挙げるのは弊害がありますからね、作品の映画の中のシーンは青少年に必ずしも見せたくないようなシーンも出てくるのがあるんじゃないでしょうか。そうなると、青少年の参加も含めてということについて、それじゃそれだけ青少年は見ちゃいけないと打ち出すのか、あるいは青少年の参加といっても、もう青少年がおのずから参加なんか全然する可能性がゼロなもの、それも当然あるわけですよね、範疇によって。だから、青少年の参加も含めて広くということの範疇になると、また排除されるのが出てくるんじゃないですか。そうすると、裸というものについて排除する、青少年が見るから、青少年にも参加呼びかけるから。そうすると、青少年じゃなくて、ほかの面についてまた排除される要素が出てくるんじゃないかと、こういうふうな感じがするんですけれどもね。だから、ただ単に青少年含めて広く国民一般にという考えだけを、裸を排除すると、こういうことだけが果たしてこれから芸術祭に広く国民の参加もさらに呼びかける、そういうようなところで、理論的に筋が通るかどうかというのは非常に疑問なものもあるんですけれども、どうですかね。たとえば映画なら映画、青少年に見せたくないような場面がありますね、一つ一つ挙げるとこれ弊害ですから。それを通して芸術なんだと、だからいいんだと、こういうことになるんですか。それはもうみんな一般に公開されて、青少年も見てもいいんだから構わないんだと、こういうことなんですかね。そうすると、ヌードだけ青少年ということを取ってつけたようなことになるんじゃないか。青少年行けたって行かない芸術祭参加作品いっぱいあるんですよ。あるいは行っちゃいけないと言ったって見て、それでどうもマイナスの影響を与える場面だってあるものもあるわけですよ。ヌードだけに全部青少年という枠をかけると、こういうことについての考え方が終始一貫してこれからもいけるか、どうかというちょっと疑問があるんですけれども、その点どうでしょうか。
  85. 浦山太郎

    説明員(浦山太郎君) 先生指摘のように、私どももヌードだからいけないというようなことは申しておらないわけでございます。御承知のようにこういった芸術、いま御指摘のございました映画等を含めまして、いろいろ国民の意識には非常な多様性があるというように私ども考えておるわけでございます。したがいまして、これはたとえば各県でございますと、青少年の保護育成条例というようなものも制定をいたしまして、青少年について特に有害な環境を排除するというような、そういった制度も多くの県でとられているという現実がございます。したがいまして、私どもといたしましては、やはり芸術祭に参加をする作品につきましては、ただいま御指摘のありましたいろいろな論点を含めまして、審査会の上で作品ごとに慎重に判断をさしていただきまして、その上で結論を得る、このような体制をとっておるわけでございます。
  86. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。  そうすると、冒頭に私が言ったヌードそのものを否定するわけじゃないんだ、その九月、十月のエロスの祭典という日劇ミュージックホールの全体の演出なり、全体の構成なり、あるいはそのシーンシーンの状態なり、そういうものについてはやっぱり芸術祭参加作品としては不適格である、こういうことであって、また来年もあるわけですけれども、将来ともにそういうものが排除されれば、ヌードそのものは芸術祭作品としては結構である。ですけれども、いまの九月、十月の公演の中に、あるいはそれ全体というんですかな、そうなるとヌード全体となるんですかな、参加作品として好ましくないものがある。そうすると、ああいう舞台でやるこれからのヌードというものも、形を変えていけば参加できる可能性は残されている、こういうことでいいんですかね。
  87. 浦山太郎

    説明員(浦山太郎君) 私どもといたしましては、毎年、先生の御指摘のようないろいろな論点を含めまして、各作品ごとに判断をしてまいっておるということでございますので、先ほど申し上げましたように、ヌードだからどうこうというようなことを考えているわけではないということでございます。
  88. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。そうすると、もう九月ですからね、いまやっているものをごらんになって、これはうまくない、こういう判断であって、この次、また来年、日劇ミュージックホールがやるのか、あるいはどこかがやるのか、ヌード、それを見て、それで、これならいい、早い話が、ヌードショーでも構成、内容によって、これならいいという可能性は十分に余地があるんだ、こういうことで理解すればいいわけですね。
  89. 浦山太郎

    説明員(浦山太郎君) おおむね先生のただいまの御指摘の点も踏まえて、今後さらに検討をさしていただきたいというように思います。
  90. 黒柳明

    黒柳明君 検討じゃなくて、もう排除したわけですから、だから、また来年も申請があって、今度は構成、内容を変えて、どう変えるかどうかは別にして、だから、ヌードそのものは芸術的なものとして否定しない、だけれども作品作品によってよくチェックする、こういうことですから、そうすると、いまの作品はチェックして好ましくないということですから、その作品自体を今度は変えて、審査に当たる皆さん方の御意に召すような、文化庁の皆さん方の御意に召すような方向に行けば、ヌードそのものも、大衆ショー、芸術というものも、芸術祭参加できる可能性、余地は十分残されている、こういうふうな判断でよろしゅうございますか。
  91. 浦山太郎

    説明員(浦山太郎君) 今日の先生の御質問等も十分私ども理解しておりますので、来年度さらにその時点でよく判断をさしていただきたい、このように思います。
  92. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時零分まで休憩いたします。    午後零時四分休憩      —————・—————    午後一時三分開会
  93. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  94. 柄谷道一

    柄谷道一君 大蔵大臣にお伺いいたしますが、大蔵省が最近まとめました「日本経済の現状をどう見るか」、この内容を見てみますと、   日本経済は一部にやや足踏み気味の状況もみられるが、基本的にはオイル・ショック後の調整から内需中心の安定成長へと回復軌道をたどりつつあるとみるのが妥当である。   日本は、内需中心の安定した成長によって、経済運営を考えるべきであり、世界経済に占める日本の割合が大きくなった現在、世界が苦しい中で、日本のみが高度成長を図ることは不可能と考えるべきではないか。   日本経済の成長力は、オイル・ショックにより、需要・供給両面から低下しているとの見方が強くなっている。又、経済のソフト化・サービス化の進展、住宅投資の基調的水準の変化など、経済を安定的なものとする構造的変化も見られる。このような情勢を踏まえ、成長率が、二ないし三%程度であっても、雇用など、経済の基本が安定していれば問題はないのではないかとの意見も多くなっている。  こう記述いたしております。総じてこの分析は、きわめて楽観的であると、私は受けとめるわけでございます。  そこでお伺いいたしますが、ここで言う「安定成長」とは「二ないし三%程度」と考えているのか、また、「二ないし三%程度」を維持すれば「安定成長」であり、それでよいと考えておられるのか、大臣の見解をまず明らかにしていただきたいと思います。
  95. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) この「日本経済の現状をどう見るか」というのは、大蔵省の中の専門家の勉強の素材としてつくられたものでありまして、これは別に大蔵省の統一見解でも何でもないわけであります。したがって、このことから出してきた数字について私が責任を持って回答するというわけにはまいりません。  安定成長というのは五%がいいのか、三%台がいいのか、二%台がいいのか、これは比較の問題でありまして、ただ高度経済成長時代、平均七、八%から一〇%というような時代を高度経済成長と言うことになれば、少なくともそれよりもずっと下であることは、まあ常識的に考えられるでしょう。しかし、世界全体が安定成長というよりもむしろ低成長時代、しかも安定してない、日本は安定成長しようというわけでありますから、幾らがいいのかといっても、それは時代によって数字の幅は固定的なものではないだろうと、そう思っております。政府の経済見通しとしては、五%の成長ということを一応年当初において、この程度がいいじゃないかというような見通しを立てた。しかし、すべての見通しというものはそれ以前の経済状態というものを土台にしてつくっておるわけですから、もともと経済学自体がそれは過去の実験、経過、経験、そういうものの上に組み立てられておるものだ、と思います。したがって、そういうような過去の土台の上で考えられるものが、この程度ということであって、大蔵省が二%が安定成長だということを言っているわけではありません。
  96. 柄谷道一

    柄谷道一君 大蔵省としての統一見解ではないということでございますけれども、有力な専門家の間において、二ないし三%でもそれが安定すればいいというニュアンスが読み取れるわけでございます。  そこで、もしその考え方を是とするならば、本年度の政府成長率目標五・二%というものは、当然まず下方修正するところから始まるというのが常道ではないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  97. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) これは経済見通しの問題は私の所管ではございませんので、経済企画庁の方からお答えいただけると存じます。ただ経済というものは、これは生きておるわけですから、経済は生き物でございますし、日本だけが閉鎖経済をやっておるわけじゃないので、自由開放体制下においては、世界の経済は、時期的なずれというものは多少あっても、必ず連動しているということが実情でございます。したがって、経済というものは固定的にだけ考えられない、自分の力でできるものもあるし、自分だけの力ではとうていできないものもあるし、それはやはりどういうふうにして同調をしながら自分を守っていくかということを考えなけりゃならないときもあるし、いろいろ動いておりますから、それに臨機応変に、一番効率的のやり方で対応していくということではないかと思います。
  98. 柄谷道一

    柄谷道一君 大蔵大臣は五十七年度概算五ないし六兆円程度の歳入不足が生ずるのではないかという見通しを示唆されております。その税収不足は一体どの程度の本年度経済成長があると見越されて発言をしていらっしゃいますか。
  99. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) これは経済成長の見直しによって出した数字ではございません。これは五十六年度の決算をやった結果、税収が当初に対して約一〇・三%狂いがあった。途中で修正はしましたが、法人税それから所得税というものの実態が、九月決算ではつかめないということから、そこだけで二兆円の違いが出たわけであります、ここは手を全然入れておりませんから。その五十六年度の実績をベースにして、仮に五十六年度程度しか伸びない、三・五%ぐらいしか税収が伸びないとすれば、六兆円ぐらい不足になるだろうし、それから過去五年間の実績で八%台の税収の伸びがあるとすれば、五兆円ぐらいの不足になるだろうというような、どこまでも今後の経済成長を修正するとかそういうような土台の上に立ってつくったものではなくて、単なる過去の実績の上に一つの想定を立てて、機械的に算出した数字だと、こういうことであります。したがって、経済成長はこれぐらいに落ち込むからこうだとか、そういうことでやったわけじゃないんです。去年ぐらいの税収しか伸びないということになれば、六兆円ぐらい土台がへっこんでおりますから少なくなるだろうということを言ったわけであります。
  100. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、その大蔵省のこれは専門家ではございますが、見解の中に、「内需中心の安定成長へと回復軌道をたどりつつある」、税収の基本をなすのは経済の動向というのが非常に大きいわけです、それが回復軌道に順調に乗っているというその分析と、税収が五ないし六兆円予定より少なくなる、この関連はどう説明されるわけですか。
  101. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) ですから、先ほど言ったように、この現状をどう見るかという研究データは、大蔵省として省議決定をして、大臣の責任で発表したものじゃないわけでございます。一方、税収の方の見積もりについても、ともかく早目に、そういうような不安がある場合には、国民の前にお知らせをして、土壇場になってからこれだけ足りませんなんて言われたんでは非常にみんなが迷惑千万である、だからある程度の予想がつくとすれば、そういうようなものについて、あらかじめ、こういうようなこと、——経済の先行きはわかりませんよ、わかりませんけれども、一応こういうような論点に立てば、こういうことも心配があるということを言った方がいいじゃないかという意見が多いものですから、私は五十七年度の状況というものは、世界の景気の停滞というものが思ったよりも長引いているというような現状や、ごく最近の輸出とか、あるいは消費、そういうようなものから見まして、やはり税の伸び率もそう大きく伸びるというようには考えられない、したがって、去年程度の伸び率というもの、あるいは過去の平均程度の伸び率というものから予想すればということで、あらかじめ機械的なこれは計算でありますよということを断って、しかしながら、全く根拠がないというものでもないわけでありますから、そういうような心配をすればそういう心配もありますということを言ったわけでございます。
  102. 柄谷道一

    柄谷道一君 四−六の経済成長が五・一%成長した、これは現実の数字ですね。そのことをめぐりまして、大蔵大臣は各所で経済運営に対する見方ですね、私からとれば、やや楽観的立場に立つ見方を発表されていると思うんですが、そのとおりでございますか。
  103. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 決して楽観はいたしておりませんよ、いたしておりませんが、要するに、日本の経済の構造というものは、過去十年ぐらい前から見ると非常に中身が変わっている。たとえば、就労、就職というようなものを見ても、第一次産業の就職というのは非常に減っている。農業、あるいは製造業のようなものも減っておる。しかしながら、一方サービス業というようなものは、就職口がふえておるというようなことで、失業者数は三十五万人ということで、余りそれよりも大きくもならないし、それよりも小っちゃくもならないということで推移をしておるわけであります。したがって、そういうような、この論文の中でも言っているように、経済構造は変わってきている。だから日本の経済に影響を及ぼすものは、たとえば、昔ならば第一次産業というものはうんと大きな影響を及ぼしたんだけれども、現在は、もちろん影響はあるにせよ、国民全体の消費とか、そういうようなものが大きな影響力を持つようになっております、非常に変わってきております。たとえば、ことしの二百七十七兆という想定した経済の規模、GNPの規模の中でも、民間の最終消費支出というものは百六十兆、五七%とか、非常に大きなシェアを持っておる。かつてはそんなことはなかったが、だんだんそういうシェアが大きくなってきている。公共事業というのはかつては一五%以上も大きなシェアを持っておったものが、現在では八・七%ぐらいのシェアに変わっておる。そういうことで、日本の経済を動かすものは、何といっても個人消費の伸びというものが非常に大きな影響力がある。  そこで、四−六のQEというものがよく出たというようなことも、これは経済企画庁を初めとして、物価の安定ということを最重要課題として内閣は取り組んできた。そのことが予想外の物価の安定——それはやはり景気の停滞というものとの裏表だと言えば、そういうことももちろんありましょう、消費節約という問題もありましょう、いろんな原因がございますが、いずれにせよ、物価の安定鎮静化というものが、個人消費の実質消費を伸ばしているというのも事実でございますし、そういうものが長期間にわたって続くということになれば、やはり日本の経済の景気を回復するという点においては、大きな原動力になることは間違いない、そう思っておるわけであります。私は別に楽観的に言っているんじゃありませんが、消費支出というものがわずかではあるけれども、安定的にそれが伸びるという傾向にあることは大変いいことである、そう思っております。
  104. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは具体的にお伺いしますが、この同じ資料の中で、これは統一見解でないとまた逃げられるかもしれませんが、「今後、景気動向を注視する必要はあるものの、現在直ちに、総需要追加を図る必要があるとは考えられない。」、こういう見方を明らかにしておるわけですね。  そこで、政府は昭和五十六年度も公共投資の七〇・五%を前倒しされました。しかし下期にはその追加を行われなかったわけであります。そのためもありまして、十−十二月期は前期比マイナス一%、一−三月期はマイナス四・二%、こう落ち込みを続けまして、結局五十六年度総じて二・八%という低成長になったということは大臣も御承知のとおりでございます。  そこで、私は少なくとも本年再びその轍を踏んではならないと思います。確かに四−六は、これは九月十四日の経企庁長官の御説明では、季節的要因が大きく作用しているという御答弁もございましたし、そのことはまた引き続いて経企庁長官にお伺いしたいと思いますが、もちろん私は公共事業の追加だけで、成長率を大きく持ち上げることはできないと思いますけれども、少なくとも公共部門が景気の足を引っ張るということだけは避けなければならないと、こう思うわけでございます。これは私の考えは間違っておりますか。
  105. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 一つも間違っておるとは思いません。
  106. 柄谷道一

    柄谷道一君 ということは、昨年の轍を踏まず、公共事業の追加は必要なりと考えていると理解していいんですか。
  107. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) そう短絡的に結論が出るとは私は思いません。
  108. 柄谷道一

    柄谷道一君 私の考えと同じであるということで、私の考えと短絞的に結びつかないと。そこをもっと説明してください。
  109. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) それは、公共事業を追加すべきだと、それによって景気の回復が図られるという意見があることも事実でございますし、それはそれなりに論拠があっての話であると、私はそう思っております。ただ問題は、じゃ幾らを追加すればいいのか、日本の経済は二百七十兆という大きな経済でございますから、その経済全体を持ち上げていくというためには、かなりのことをしなければ経済全体を持ち上げるということは非常にむずかしい。どこの国でも、何か政府が少しぐらいのことをやって経済の景気が自由になるんだったら、どこの国も、アメリカにもイギリスにも、ドイツにも、学者はいっぱいわんさといるわけですから、そしてともかく国債依存度などはイギリスが日本の半分以下、ドイツ、アメリカその他は三分の一ぐらいの、非常に財政的には恵まれた、日本からすれば恵まれた状態にあるわけですから、それは国債を発行してでも何ででも、そういう決め手があれば、何もともかくたくさんの、日本の数倍に及ぶ失業者を出して悩んでいる必要は一つもないわけであって、てきぱきと皆さんおやりになることだと私は思っております。しかし、なかなか景気というものは、そう簡単に、政府の意思によって自由に上げたり下げたり自由主義国家においてはそう簡単にいかない。まして世界の景気は連動しておって、経済も連動しておると。一国だけでうまくやろうとしても、閉鎖経済やっているわけじゃありませんから、一国だけでなかなかうまくもいかない。全体のつながりというものもある。これも事実でございます。そういうような中にあって、私は公共事業を投資をすれば、それが投資した時点において、それはそれなりの波及効果があって景気に影響があるということは当然私も認めます。しかし、問題はかつての、仮に昭和四十八、九年当時のように、要するに政府が国債を発行するにしても、他の金利に大きな影響を与えることのないような形で、しかも資金の調達ができて無理なくこれが行われる。それから一方、それが経済の景気の回復に役立つという形でできる場合もございます。しかしながら、現在の状況というのはすでに九十兆からの国債が出ておって、八十数兆の国債が出ておって、年度末には九十三兆になる。そして、現にことしの十兆円という国債を毎月発行消化をしていくわけですが、どうもだぶつきぎみというような点から、またアメリカ高金利というような問題との影響もなしといたしません。われわれは十年物七・五という国債を発行してきたんですが、七月はどうしてもその金利ではシンジケート団と話がつかぬというようなことで、長期物国債はもう休債せざるを得ないという状態になったわけであります。われわれは景気の問題も加味しておりますから、金利は上げたくない、しかし財源は調達したい、そこで、長期でなくて中期国債を入札によってある程度出したんですが、これにもおのずから限界がある。それも七%を大きく上回って、八%に近づくような、市場の実勢金利ということになるということになれば、やはり十年物ということになるとどうしても八%はやむを得ないということになって、まあ八月からは八%国債ということになったわけです。このことは直ちにこれはまあ長期信用銀行とか、やれ興業銀行とか、債券を発行しておる銀行のやはり発行価額にも影響してくるわけであって、それもそれなら政府が多額の利息を払って金を集めるんなら、われわれも利息は高くしてもらわなければならん、そうなってきたんです。そうなれば、当然に今度は利息は高く集めるんだから貸し出しも高くしてもらわなければならんと。九月からは長期プライムが八・四が八・九と。そうなると開発銀行も貸出価額を高くしなければならんと。そうすると中小公庫、国民公庫も、これはコストアップというような問題になってくれば、これも金利を上げなければならん。こういうようなことで、結局現況であっても金利を引き上げざるを得ないという、わずかではあるというかもしらんが、そういう状況になってきておる。そういうときに当たって、さらに国債の増発を幾らやるか、増発規模によっては、大きさによっては、それは金利に影響しないということは言えない。仮にその規模いかんによって、金利がうんと上がってくるという状態になると、それが個人消費や民間設備投資を促進するというようには考えられない。したがって、それらの兼ね合いという問題もあるし、一体そこでどれくらいのプラス・マイナスがあるのか、それからあとに残った借金は、当然国債残高としてそいつは乗っかっていって、さらに利子払いが必要になると。現に国債費は七兆八千億円、これが九兆円、十兆円というようにふえていくということに加速的なことになってくることは、日本の経済にとって必ずしもプラスとは言えない。したがってそれらの兼ね合いというものをどこで見ていくのか、相関関係ありますから一方的なことは言えない、掛け算も足し算もあるけれども、引き算も割り算もあるわけですから。両方を計算をしてみなければならんということを私は言っておるわけであります。だから、決して公共事業を投資するということは、そのこと自体が景気にプラスになりませんということを言っているわけじゃありません。問題はやり方、規模、それから将来に対する影響、そういうようなものも全部あわせて、この際冷静に謙虚に検討する必要があるということを申し上げておるだけでございます。
  110. 柄谷道一

    柄谷道一君 いまの大臣答弁を裏づけるように、さきに述べました資料の中では「今年度税収不足に加え、さらに国債を増発すれば、金利をさらに上昇させ、かえって、景気に対しマイナスとなる惧れがある。」と、こう指摘しております。これは大臣もいま言われたことを言ったわけですね、「惧れがある。」。ところが現実を見てみますと、私論理を言っているんじゃないですよ、論理は十分わかっておりますよ。ところが、十年物国債を中心に長期金利が一斉に引き上げられた。にもかかわらず、一部都市銀行の中には、長期プライムレートを大幅に下回る貸し付けが中小企業に対して最近ふえつつございます。また、貸出約定平均金利の下げ足というものもいまだとまっておりません。こうした状況から判断いたしますと、もちろん増発の規模にもよりますが、私はその国債の追加発行が直ちにクラウディングアウトにつながるほど、民間の資金需要は強いとは思われない。その需要、供給の関係が、いま私が申し上げたような実態になってはね返ってきておるんではないか、こう私は見るんです。  そこで、大蔵大臣は、これは新聞報道によりますと、アトランタで景気対策についてこう語っていらっしゃいます。「政治の世界は、経済や財政などの論理では割り切れない面もある。心理学的な側面も無視できない」、したがって、「おまじない程度のことはしてもよい」と、こう語ったと報ぜられているんですね。「おまじない程度」というのはどれぐらいのことを考えていらっしゃるんですか。
  111. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) おまじないという言葉は適当かどうかわかりませんが、やっぱり経済学というのは物理学と違う点もあるんです、それは確かに。自然科学とは違う点もあって、やはり心理学的な要素というものも大いにあることもこれも間違いございません。理屈どおりに動かない場合もございます。  私は、先ほど言ったように、公共事業をふやすといっても、それはどかんとふやせば、一時的にはそれは何らかの影響があることは事実だけれども、しかしながら、ちょっと長い——ちょっと長いといって、そんな五年も十年もじゃないですよ、二年とか三年とかというところで見ても、それがどういうような反動が出るかという問題も、それは金利、物価、そういうような関係でやっぱり相関関係、裏表になっていますから、それは影響がございますよということを言っておるわけです。しかし、あなたがおっしゃるのには、現実には長期プライム九%上がらないじゃないか、〇・五上がらないじゃないか、八・九にならんじゃないか、事実そのとおりです。しかし、これは全然上がらないかといったら、全然上がらないわけでもないわけでございまして、仮に、いままで調達した資金は安い金利なんですから、これから調達する資金が高い金利ということになれば、それは何もいますぐに上げなくたっていい話でもあるし、あるいは需要がないということになれば、短期と抱き合わせで貸すと、そしてそのために実質金利がそれよりも比較的下がるということもあり得るでしょう。それは兼ね合いの問題ですから、一概に断定的にはいま私は申しません。ただ、公共事業をわが党内からもふやせという声のあることは事実なんです、これは。しかし、それについては、それほど私は日本経済を左右するような基本的な力というようなものは、私は現在の日本経済の構造の変化というものを見た場合において、そんな力は持ってない。持ってないけれども、持っていると信じ込んでいる人もあるんですよ。したがって、これは心理学の問題もありますから、だから、私は公共事業は一切やらないなんていうことは言っておりません。ともかく台風だって災害復旧は公共事業ですよと。一兆円以上の災害がここで起きたと言われております。はっきりした数字はわかりませんが、去年より大きいことは間違いない。その執行という問題についても、物理的な問題もございましょうが、どういうふうにしてこれを取り入れていくか。これはいずれにしても災害復旧は、これはもう何が何でも政府の責任で、最優先で私はやらなければならん問題であると、そう思っております。したがって、ただ地域的な偏在というものがこれにはございますから、それらの関係をどう調整するかという問題もありますが、公共事業であることは間違いないわけであって、そういうものも活用していくことが私は必要であろう。だから、公共事業は全くやらないというふうな、追加はしないというふうなことは言っておらないわけでございます。
  112. 柄谷道一

    柄谷道一君 こういうふうに要約していいですか。是非は別ですよ、私はいまの大臣の答弁をこう受けとめるのですね。いま言ったけれども、現実に資金の需給関係はそれほどいまは行き詰まってはいないという側面はお認めになりますね、現実的に。そこで、大蔵大臣として、広範な立場で考えなければならないけれども、しかし、景気というものは心理的側面もあるんだから、公共事業の追加ということを全然考えないというわけではないんだと、災害復旧というのは地域的に偏重しておるわけですね、一定地域には災害復旧をもって潤うかもしれませんが、これは全日本的な問題でもないということで、建設国債の追加発行ということも、額は別として念頭にあると、こう理解していいですか。
  113. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 具体的にそこまでまだ考えておらないんです。できることならば建設国債といえども、利息をつけて返さなければならない国の借財で、税金の先取りみたいなものでありますから、だから私はできるだけ発行はしたくないんです。本当はコストのかからないお金が手に入れば、政府としてはそういうお金が一時借用できれば一番いいことでございまして、いろいろ検討を、財源の問題とか、検討しなきゃならない問題で、マイナス要素が出ないような方法をもう少し研究しなきゃならんと、したがって、そういうものも一切合財ないということなら話は別でございますが、いろいろそこはまだ時間のあることですから研究をしたい。いまのうちから私がそれはもう建設国債増発オーケーなんということを言ったら、それはまたのべつもなく要求でかくなっちゃって、収拾がつかないことになりかねませんので、そういうことはせっかくの御質問でございますが、ここで公言をするわけにはまいらないことを御了解願いたいと存じます。
  114. 柄谷道一

    柄谷道一君 公言はできないということですが、その言外に私はそうかたくなに建設国債の追加発行を一切認めないという姿勢ではないという、弾力のあるお気持ちであると、こう理解しておきます。いいですな。
  115. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 御想像にお任せいたします。
  116. 柄谷道一

    柄谷道一君 そこで、次に行管庁長官にお伺いします。  これは八月十一日付の日本経済新聞に報道されているところでございますが、長官も国債を売るためには金利を高くしなければならない、これくらい経済をマイナスにし、不況を呼ぶものはないと、こう述べられたと、真偽はわかりませんが、報道されております。いわば建設国債であっても、国債の追加発行にはきわめて否定的な見解を示されたと、この報道では受けとめられるわけです。しかし、私は現在の金融市場の実態はさきに申し上げました。そこでこの長官の御発言がそのとおりであったとするならば、それは一般論として述べられたのか、それとも経済の現状というものをしさいに分析した上で述べられたのか、この点をまずお伺いします。
  117. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) もちろん一般論として申したものであります。
  118. 柄谷道一

    柄谷道一君 一般論として長官のお考えが仮に正しいというのであれば、後ほどまたお伺いいたしますが、建設省が提出しておりますシミュレーションで、公共事業の追加が経済成長に大きく寄与するという見解と真っ向から対立するお考えをお持ちと受けとめていいんですか。
  119. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 結論から申し上げれば、政策は総合性をもって行われるべきであると、一つの手だけで物事が乗り切れるという段階ではないと、そういうふうに感じております。先ほど一般論と申し上げましたのは、四十年代の高度成長時代と、いま世界が同時不況に陥って湿っぽくなっている時代とでは、経済政策をやっても効果はおのずから別になってきておる。四十年代の高度経済成長時代、世界経済全体が上昇しつつあると、あるいはどこか悪くてもどこかいい国があると、そういうときにおいては、みんな将来性があるものですから、赤字公債あるいは建設公債で公共事業を興しても、それが引火性をもって、そして民間設備投資を誘発して、それがまた賃金の上昇、あるいは購買力を形成して、それがさらに景気を上昇させる原動力になってくると、そういうことがあり得た。しかし、今日のような段階になると、世界的同時不況という状態で、七%から五%、五%から三%、三%から二%というふうに、世界的に停滞の状態で来ておる。普通ならば円が二百六十三円というふうに弱くなれば、たちまちに輸出はぐっと増加してくるはずなのであります。ところが、もう七カ月にわたって輸出は対前年マイナスになってきておる。こういうことはいままでの経済現象ではそう考えられない。それはなぜかと言えば、一方においては、たとえ円が弱くなっても、買う金がない、あるいは買う力がない、あるいは買ってきてもそれが売れない、そういうような湿っぽさが世界的にあるわけであります。それは一国の理由だけでなくして、発展途上国の油のない国の債務の状況とか、全般的に見てその先行きの見通しが暗いから、経済の動意をつくる、そういうモーティベーションをつくるものが欠如しておると、そういう状況のもとに、過去の経済政策で成功したといって、今日成功するものではない。いまの円の二百六十三円が輸出を呼んでいないという、こういう状況がそれを物語っておる。そういう意味において、公共事業というものに過度に期待することは危険である。しかし、むしろ不況対策は必要であると私は前からも言っておるのです。それはむしろ個別業種の不況対策としてやるのが適当であろう。景気振興というと、経済発展時代の幻想を振りまく危険性が出てくる。むしろ景気振興という言葉より、今日大事なのは個別業種的不況対策であろうと、そういうことを私は言っておるのであります。
  120. 柄谷道一

    柄谷道一君 長官のいまの経済に関する基本的なお考えはお伺いいたしましたが、端的にもう一問だけ長官にお伺いしておきたいと思います。  それは、長官として行革の推進と、プラス若干の個別不況産業対策、この二つで、わが国経済の活性を維持し、雇用の安定を図り、かつ総理の述べておられます増税なき財政再建、五十九年度赤字国債依存からの脱却という公約が貫かれ、かつ現在破綻状況とも言うべき財政危機を乗り越えることができるという確信をお持ちでございますか。それは、十四日の総理答弁にも言われましたように、ぎりぎりまで努力してみようという決意なのか、それで貫かれるという確信なのか、端的にお答えをいただきたい。
  121. 中曽根康弘

    ○国務大臣(中曽根康弘君) 私は行革担当の大臣でございまして、そういう責任的立場からも臨調で議論された内容を消化して、それを政策に反映させるように努めておるものなのであります。そういう立場からも、いままでのような言動をしてまいりました。  しかし、事態は世界経済がこういう状態で、非常に深刻であると思っておるんです。それで、いまのような時代何が大事かと考えますと、やはり将来にわたって希望をつくるということは絶対必要であると思います。しかし、それと同時に、その現在を耐え抜いて、生き抜いていく力もまた培養する。こういう世界的に湿っぽい停滞の時代にあっては、どの国もどの国も、自分の体を健康体にすることをみんな心がけて、悪い材料を吐き出してしまう。悪い材料をできるだけ早く吐き出してしまえば、もう底をついて次の回復への健全化へのめどがつくわけであります。この悪い材料が隠されておったり、含まれているという状態では、いつも宙ぶらりんの状態が続いて、産業をやる人も、働く人もそういう見通しがつきかねる、そういうことではないかと思うのであります。そういう意味からも、苦しいけれども、いまできるだけ悪い材料を吐き出して、そして、底に一たん入って、みんなで健康体になると、日本の場合は減量をやるとか、あるいはいわゆる簡素にして効率的な政府にするとか、そういうことを思い切って耐えてやっていくと。いま政府の状況を見ると、これだけ公債が累積したというのは、一面においては雇用を安定させ、不況を呼ばないために政府が借金して、政府は台所は火の車になった。しかし、民間の方は雇用はそれほど落ち込まずに、失業問題も深刻にならずに助かってきておる。ある意味においては、政府が台所を火の車にして、民間の方のために汗をかいているということでもあると思うんです。しかし、もう政府の現状はこれ以上遷延を許さない事態に来ている。したがって、総理大臣もきょう三時には新聞記者の皆さん等を通じて、国民にお訴えになるというやに聞いておる事態なのであります。そういう認識と決意をはっきりして、国民の皆さんに御協力を求めるときに来たと、そう思っておるんです。したがいまして、いまのような考えに立って、そして必要なものは最小限でもやっていかなけりゃなりません。不況対策はその一つであると思っております。したがって、それをやり抜いていけば、それがベストとは言わないけれども、次善の策として、それは容認されるものであると、そう考えておったのであります。
  122. 柄谷道一

    柄谷道一君 高度経済成長で脂肪がたまり過ぎた体質を、行革によって体質改善を図らねばならん、それはもう当然のことでございます。そして長官の御発言は、これはそういう決意の表明である。しかし、そのために体力が衰弱してしまって、肝心の生命が絶たれたんではこれは問題だと。次善の策としての不況対策はこれに並行されて当然であろうと、こういう長官のお考えだと、こう受けとめておきます。  そこで、河本経企庁長官にお伺いいたしますが、私は、政府部内において公共事業の追加発行に対して比較的消極的であると思われます大蔵大臣と行管庁長官の御意見をただいままで伺ってまいりました。そこで長官にお伺いするわけでございますが、さきの通常国会の集中審議の際、私の質問に対して、行革と景気対策は両立する、また両立させなければならない。これは閣内の一致した意見である旨の答弁をされました。そして景気対策は機を失せず手を打たねばならんというお考えも示されたわけでございます。また、八月七日の札幌における講演で、河本長官は、これは新聞の発表でございますから、真偽はわかりませんが、それによりますと、世間には行革を進めている間は景気対策をやってはならないという大変な誤解がある。臨調の基本答申には、景気対策を進めてはならないということはどこにも書いていない。むしろ大いにやれということだと理解している。土光さんは、行革はもちろん必要だが、消極的なことばかりではだめで、積極的によくする必要もあると考えておられるようだと、このような長官が話をされたと聞くわけでございます。その御見解は今日もお変わりございませんか。
  123. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) 変わっておりません。
  124. 柄谷道一

    柄谷道一君 われわれ民社党は行革与党をもって任じております。この面は大いに断行すべしという立場に立つものでございますが、さりとて、景気対策が行革や財政再建に逆行するという短絡的な考えをとるものではございません。  そこで、土光会長が景気対策を要求することは行革をおくらせ、あるいは足を引っ張ることだという議論があるがという記者団の質問に対して、私はそんな発言はしていない、しかし、日本の現在においては、すべてのものに優先して何としても行政改革をやらねばならないという見解を示されたと報道されております。これは八月十一日付の日経でございます。このことは土光臨調会長もまた行革と景気対策が両立し得るという考えを示されたものだと受けとめるわけでございます。  そこで、ただいままでの大蔵、行管両大臣の答弁を聞いておりますと、その言外に景気対策が財政再建や行革の足を引っ張るのではないかという考えをお持ちだと考えるわけでございます。経企庁長官の持論は、景気をよくすることによってこそ財政再建も可能であり、また国民が行革を受け入れる余裕も生じてくるという基調に立っておられると私は理解いたしております。  そこで、九月八日に経企庁の調査局が発表した「地域経済の現況」これを読んでみますと、「地域経済は総じて停滞気味であり、先行き景気不透明感が強まりつつある。特に、素材型業種、中小企業のウエイトの高い地域では、停滞感が強い。加工型業種の多い大都市地域では、一部底堅さがうかがえるものの、景気回復の動きは依然鈍い。」こう分析され、これに対応する主要な要望として「総合的景気対策の実施 公共事業の下期追加措置中小企業の設備投資等に対する財政・金融措置宅地供給増加のための諸施策の推進など」が必要であると、こう指摘しておるわけでございます。長官のお考え、そしていま私が述べたような報告をまとめられた経企庁としては、大蔵省の出しておられます今後の景気動向を注視する必要はあるものの、現在直ちに総需要追加を図る必要があるとは考えられない。この見解に対してどうお考えでございますか。
  125. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) 先ほどのお話を伺っておりますと、大蔵省の文書というものは、大蔵省の経済を勉強する一つの資料である、それは結論ではない、このように私は聞いておりました。したがって、いまお示しの文書どおりの考えを大蔵大臣として正式に持っているわけではない、こういう御説明がございましたから、私もそれなりに理解をいたしております。  御承知のように紆余曲折はございましたが、二、三日前に、十月八日に正式の経済対策閣僚会議を開きまして、ことしの下半期の経済対策を決めていこう、ある程度の景気刺激策も必要であると、具体的にこれから関係各省の間で相談をしよう、こういうことに方向が決まりまして、目下その準備をしておるところでございます。
  126. 柄谷道一

    柄谷道一君 端的にお伺いいたしますが、ただいまの報告の中で示されておりますような総合景気対策の遂行等を仮に行わなかった、もしくはその内容が不十分であったという場合に、このまま推移いたしますと、五十七年度の成長率は何%ぐらいにとどまるとお考えでございますか。
  127. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) 五十六年度の経済成長が、当初四・一%と想定しておりましたが、最終的には二・八%になりました。GNPの規模で申しますと、二百五十五兆ぐらいの経済になると想定しておりましたが、二百五十一兆と、こういう数字になりまして、約四兆ばかり政府の見通しより経済の規模が縮小しております。したがって、それがスタート台になりますので、いわゆるげたというものも相当低くなっておりますので、そしてまた、経済の現状も年初経済見通しを立てました当時から比べますと、世界経済のおくれ等もございまして、相当厳しくなっております。したがいまして、相当当初見通しを大幅に落ち込むであろうと、こういう感じがいたしますが、さて一体どの見当落ち込むかということにつきましては、目下作業をしておるところでございまして、まだ正確な数字は出ておりません。
  128. 柄谷道一

    柄谷道一君 一般的にはこのまま推移すれば二%台、悪くすると二%を割るおそれすらあると経済の専門家で見る人が多いようでございます。  そこで、政府が当初の経済成長率五・二%を掲げたそのときは、もちろんおのずからそのパーセンテージに達するというのではなくて、積極的経済政策の展開というものを前提として、五・二%の経済成長は達成できるというのが政府の姿勢であったと思うんですね。スタートが落ちた、そのことによる影響は確かにございますけれども、経企庁長官としては総合的景気政策の展開等を通じまして、少なくても五十七年度の経済成長率をどの程度までは維持したいと、こうお考えの上で、いま景気対策をお考えになっていらっしゃるのですか。
  129. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) 予算委員会等でも何回か申し上げましたが、事務的にいろいろ見通しを、試算を当時させたのでありますが、つまりこのままずうっとほうっておいて、現状がずっと進んでいけばどうなるかということを計算させましたところ、相当低い見通しが出ました。ただし、その場合に、どういう問題が起こってくるかと言いますと、失業がふえる、税収が落ち込む、それから国際的な貿易摩擦が拡大をする、そういう日本にとっては大変好ましくない幾つかの悪い影響が出てくる、こういうことも明らかになりましたので、今後の経済の推移を見て、必要な追加政策をある程度考えると、こういうことを前提といたしまして、そして五・二%成長というものを達成をしたのでございます。その中にはことしだけの経済の状態で成長する分もございますし、そこで、先ほど申し上げましたげたという問題もございます。そこで、これから関係各省との間で意見調整をしなければならないわけでございますが、私といたしましては、でき得ればことし当初——ことしのげたを抜きにいたしまして、ことし当初考えておりました見当の、そういう経済成長ができればと、このようにいま考えておるところでございますが、しかし、まだこれは単なる私の一私見でございまして、関係各省の意見をよく聞き、また事務的にもその前提としての経済の細かい具体的な現時点における見通しを試算をしてもらいませんと、何とも結論が出ませんので、ただいまのところはこの数字を申し上げる段階ではございません。
  130. 柄谷道一

    柄谷道一君 政府としての数字はこれから調整しなければならん、それは当然であろうと思いますが、いま述べられました私見としてお考えになっているのはどの程度でございますか。
  131. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) いま原則論を私見として申し上げたわけでございますが、これ以上具体的な数字を申し上げますと、まだ庁内でいろいろ数字の作業をしておるところでございますので、それに対して予見を与えても困りますので、具体的な数字を申し上げるのはもう少し時間がかかろうかと思います。
  132. 柄谷道一

    柄谷道一君 少なくても二%ないしは二%を割るというようなことでは困るとお考えだと私は思うんですね。少なくとも三%台、しかもその数字はできるだけ高くというのが長官の胸を去来するお考えではないかと、こう推断をいたしておきます。  そこで、通産省にお伺いいたしますが、八月五日通産省産業政策局が発表いたしました産業との景気懇談会報告。これを見ますと、個人消費の動向は六月後半以降急速に悪化する。住宅建設の動向は年間百十万戸割れの可能性もある。設備投資の動向は今後計画の下方修正も必要ではないか。公共事業の動向は下期息切れが懸念される。輸出の動向は輸出環境が悪化し、先行きは悲観的である。雇用の動向は五十八年度新規採用はかなり手控えがあり、楽観を許さない。中小企業の動向は下請零細企業の状況が深刻化しつつある。長い報告ですが、要約しますとそのような考え方に貫かれていると思うんですね。そこで、こうした分析を受けて、もはや総論ではなく、具体的各論をはっきりさせるタイミングであり、政府の姿勢転換を示し、心理的な明るさを出すべしとの注文が出された、こう結ばれているわけです。  なお、通産大臣はしばしば報道によれば、このままでは本年度の成長率はよくいって三%、下手をすると二%を下回る心配すらあり、経済は失速するおそれがあると、こう各所で述べられていらっしゃいます。  通産省としての経済の現状に対する認識と、今後いかなる対策が必要とお考えになっているのか。時間の関係もありますので、要点的に御説明願います。
  133. 杉山和男

    説明員(杉山和男君) 私どもは、わが国経済の現状につきまして、内需の低迷に加えまして、輸出が急速に落ち込んでおる、そういうふうな内需、外需の動きというのが生産活動、収益、そしてさらには雇用に大きな影響を及ぼしつつあるものというふうに考えております。  御指摘ございましたヒヤリングに引き続きまして、九月の上旬、最近の経済の景気の現況、あるいは今後の見通しにつきまして、実情を把握するために、大臣が業界代表者との景気懇談会を行ってまいりましたが、その結論をごく簡単に申し上げます。  第一に、コンピューター等の好調業種もないわけではございませんが、基礎素材産業はもちろんのことでございますが、工作機械あるいは家電などの、いままで好調であった加工組み立て分野も含めまして、景気が現在悪化局面にあるというふうに言っている業種が非常に多うございました。それから第二に、素材産業を中心にいたしまして、収益が相当悪化してきているという報告がございます。第三に、雇用面でこのままでは雇用調整助成金に頼らざるを得なくなるというふうな業種も増加しておりますほか、特に来年度の新規採用を削減する動きというのが広がっているというふうなこと等、以上のような事実が明らかになったと思います。  さらに、当省では、現在景気の地方の実情を事細かく把握するために、ただいま現在詳細な現地調査を行っておるところでございますが、こういった一連の調査の結果も勘案しながら、十月初旬に予定されておりますところの経済対策閣僚会議に向けまして、具体的な施策、何をなすべきか、何ができるかということを十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  134. 柄谷道一

    柄谷道一君 建設大臣にお伺いいたしますが、八月十日建設省は地方建設局長会議を招集されまして、公共事業の執行状況と各地域の経済状況について報告を徴されたと承知しております。  それによりますと、いずれの地域においても今後発注業務、用地買収等に一層努力を傾注することによって、公共事業の上期契約目標は十分達成が可能であるとの判断をされたようでございます。本年度の公共事業上期七七・三%の前倒しの効果についてどのように評価されているのか。また、下期の息切れが懸念されておりますが、これについてどうお考えなのかお伺いいたします。
  135. 始関伊平

    ○国務大臣(始関伊平君) まず、前倒しの状況でございますが、ここに具体的な数字を持っておりますけれども、八月分はあと一週間、来週中にわかるようでございますが、ただいままでに明確になっておりますのは、大体七月までの分でございます。  これで見ますと、建設省のいわゆる直轄補助、公団の累計でございますが、七月末で三兆六千七百三十三億、達成率は五八・三%でございまして、五十六年の七月末現在に比べますと、五四・三%でございますから約四%の増になっております。それから国全体でございますが、これも七月末で七兆七千九百二十一億、達成率は五六・六%。五十六年の七月末の五三・五彩に比べまして、これを上回っておるわけでございます。あと差し引きでございますが、ただいま追い込みというとおかしいのでございますけれども、一生懸命に発注を進めておりますので、大体前倒しの執行率と申しますか、達成率におきましては、ほぼ予期どおりまいるだろうと、このように考えておる次第でございます。  それから、またそれがどのような効果をあらわしたかということでございますけれども、これは先ほど来お話しのように、世間の景気が全体として冷えておりますから、なかなか思うとおりにはまいりませんが、しかし発注からそういういろんな意味での効果があらわれますのに一月か一月半のタイムラグが要りますですが、そういうふうに見ますと、本年の五月ごろから生産出荷につきましてはこのカーブが大分上向いてまいっております。それから、さらにそれと対応いたしまして、在庫率につきましては、やはり五月ごろが一番高くて、これは九七・一%でございますが、六月は九〇・六%というふうに在庫は下がっておる、生産出荷は上がっておるということでございまして、これは下期のいわゆる補正ですね、予算の補正をしていただきませんと、せっかく建設関係の資材におきましても、生産出荷は上向きになっておりますのがまた下がる、さらに在庫はふえてくるというようなことになると思うのでございまして、私どもは先ほど経企庁長官からもお話ございましたが、近いうちに下期の経済見通しとあわせまして、公共事業量の追加等の問題についても結論が出されると思っておりますので、その際にぜひ善処していただきたい。私どもの方の考えからいいますと、七七%の前倒しを決めたときから、下期には何とかしなきゃいかん、これは当然の前提でございまして、政策的にはこれはワンパッケージである。もし下期に来て態度を変えるようなら、政策的には一貫性を欠いておると、こんなふうに考えております。と申しますのは、GNPの伸び率等の関係もございますが、建設産業というのは非常に大きな産業でございまして、年間の事業の達成率は五十兆円ですね、労働者の数などを入れますと五百何十億もある。今日では農林業より大きいくらいの大きな世帯でございますが、上期にあれだけの前倒しをして、下期に何にもやらんでもいいという結論になるためには、民間の設備投資等が急速にふえまして、それで公共事業の減を補うということならいいですけれども、それ以外のはるかに遠くの方で、個人消費が少しふえたとかなんとかというようなことは、公共事業、建設産業を扱うわれわれの立場としてはとても納得いかない、こういう数字であるというふうに、これはもうばかの一つ覚えのように、あの閣議決定をいたしました四月九日以来、私どもは繰り返してそういうことを要求をいたし、またお願いしておる、こういうわけでございます。
  136. 柄谷道一

    柄谷道一君 上期前倒しの効果はあらわれつつある、こういう分析でございますが、大蔵省は、建設関連の倒産が最近続発しているんではないかという指摘に対して、全体として見れば倒産件数は千四百件弱と落ち着いた動きになっている、こう述べておられまして、いわば大したことではないよと言わんばかりでございます。いまの建設大臣のお考えを聞いておりますと、下期の追加措置というのは前倒しと一連のものであって、当然のことである。それを行わなければ、景気はもちろんであるけれども、建設関連業種において、深刻な倒産及び雇用不安が生ずるおそれがあると、こう思っておられると、こう受けとめていいですね。
  137. 始関伊平

    ○国務大臣(始関伊平君) そのとおりでございます。  倒産の問題でございますが、本年度になりましてからは、公共事業の前倒し等によりましてやや落ち着きを見せておる、よくはなりませんが、特に悪くもならない。建設関連業種の倒産がどの程度かという表もここに準備してございますが、いまのところは一応落ち着きを見せているというふうに考えております。しかし、そうは申しましても、全倒産量の中の約三分の一が建設業でありまして、かなり高い水準にある。それから、倒産の中に二色ございまして、たとえば経営者の経営が大変うまくいかなかった、株に手を出すとか、不動産に手を出して失敗したというような場合と、不況の影響を受けて、いわゆる不況型の倒産と二色に分けるといたしますと、最近では建設業の倒産につきましては、いわゆる不況型の倒産の方が増加が目立っておると、こういうふうに考えておるわけでございまして、こういう点から見ましても、先ほど申し上げましたとおり、下期におきましてもしかるべき措置をとっていただく必要があると、こんなふうに考えております。
  138. 柄谷道一

    柄谷道一君 質問の通告では、OECDが八月十日に発表しました対日審査報告、この中でOECD事務局は、公共事業前倒しの効果が後半に息切れすると見ており、かつ財政の現状からして当局がとり得る政策変更の余地は限られてはいるものの、公共投資を落とすということは適切でないという提言をされておりますので、    〔委員長退席、理事粕谷照美君着席〕 この提言に対する経企庁長官、大蔵大臣、さらには建設大臣の評価等もお伺いしたいと思っておりましたが、時間の関係でこれは省略をいたします。  また、投資減税の問題につきましても、いろいろ関係大臣にお伺いしたいと思っておりましたが、これもただいままでの答弁の現状からいたしますと、来月上旬の閣僚会議の結論を待ってと、いま明確に言えないという答弁に終始するんではないか、こう思いますので、これも一応省略をさしていただきます。  そこで、大蔵大臣にお伺いいたしたいわけでございますが、率直に聞いておりまして、これが一つの鈴木内閣の経済閣僚かなと思われるほどまだ意見ばらばらなんですね。その問題は後ほど最後に触れましょう。  そこで、景気対策の実施に当たっての足かせは、国債の消化問題というのが一つあろうと思うのです。ところが、日銀の五十六年金融取引表によりますと、五十六年の個人資産増加約三十八兆八千億円のうち、国債は約二兆円にしかすぎません。なお努力すれば国債の個人消化は進み、国債発行の適度な拡大の余地があることをこの数字は物語っていると思うのです。  そこで、これを促進していくためには、たとえば金利は普通の国債より、低いかわりに利子に税金をかけないという貯蓄国債、償還期限一年程度の短期国債、市場で流通させることを条件に、金利を普通の国債より高く設定する超長期国債、変動利付債といったことが大蔵省で検討されているとも聞くわけでございます。  そこで、国債発行条件の多様化、弾力化について、大臣、基本的にどうお考えでございますか。    〔理事粕谷照美君退席、委員長着席〕
  139. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) やはりこの国債もいろいろな国民の欲しがるようなものをつくらなければ売れませんから、そういうようなことも、いま言ったようなことも考えなければならぬと、そう思っております。  しかしながら、一年物といったら定期とぶつかっちゃいますし、なかなかもう銀行の方が承知しない。そう簡単にいかない。  それから非課税貯蓄国債、これもグリーンカードだめだというので、グリーンカードを認めてくれるならこれは効果があるんですけれども、グリーンカード認めてくれないということになると、これはなかなかそう言ったって、現実に非課税のものいっぱいあるわけですから、何か別なことを考えて、非課税貯蓄全部廃止とか、そういうことをやれば効果がございます。しかし、そうでない限りなかなかむずかしい。  長期国債の話は、これはございます。ございますが、これもどういうふうな形にするかという問題もありまして、金利ばかり上げちゃっても困る。何かここはもう八方ふさがりみたいな話でも仕方がないので、どこかで一遍壁をひとつぶっ壊していかなければ、私は新しい進展が見られないんじゃないか。何かもう少し知恵を皆さんからひとつおかりをしたい、むしろこちらから陳情を申し上げます。
  140. 柄谷道一

    柄谷道一君 具体的内容は別にして、国債発行条件の多様化、弾力化は必要であると、こういうお考えをお持ちのようでございます。  それから、これから詰めていくわけでございますが、それは来年度国債からですか、本年度、年度中にもいい知恵があれば実施しようというお考えなのか、どうですか。
  141. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) すぐに飛びつくようないい知恵があるかどうか、私は、別に来年を待たなくたってそれはいいんですよ。できるものがあって、いい知恵があれば、決してそれは排撃するものではありません。
  142. 柄谷道一

    柄谷道一君 排撃するものではないという消極的な、いわゆる受け身の姿勢なんですか。そういう知恵を働かして、本年度から考えていこうという姿勢なんですか。
  143. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) いい知恵があれば、ひとつ考えてまいりたいと思います。
  144. 柄谷道一

    柄谷道一君 大蔵大臣、引き続いてお伺いしますが、大臣は八月二十三日に総理に、五十六年度に約二兆五千億円の歳入欠陥が生じたことに対する政治責任をとりたい、口頭で進退伺いを出された。総理は、歳入欠陥は大蔵大臣だけの責任でないと慰留された。大臣はこれを受け入れられた。そこで、歳入欠陥の政治責任問題は、これで決着したという姿勢が九月十四日のやりとりを聞いておって、私は感じたわけでございます。しかも、大臣は経済は生き物で、なかなか明確に予測することは困難だ。これは渡辺節の基調をなす節ですね。  ところが、五十六年の税収の伸び悩みですね、これは昨年九月の段階で、すでにほぼ明らかになり、その額はおおむね約二兆五千億前後ではないか、これはどの新聞も書いておったですね。急にわかったことではない。ところが、五十六年度補正予算では、そのような世情にもかかわらず、約四千億円の減額修正しかしなかったわけですね。もう補正予算が編成される時期には、相当大幅な歳入欠陥が生ずるという事実がほぼ明らかなわけですから、これは私は、年当初の予想に対して云々ではなくて、この補正予算の大きな見込み違い、これは衆議院通過したのは二月でしょう。もう年度末に近いんですよ。このときに至るもなお見通しを誤ったというその責任はどうお感じなんですか。
  145. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) そのことを私は申し上げたのであって、当初のやつはむしろあれでも税収は不足である、もっと見込みなさいと言う人の方がむしろ国会の議論の中でもかなりありました。年度中途で補正をしたときに、なぜもっと補正をしなかったか。問題はそこなんです。  これは御承知のとおり、十一月ごろ的確に幾ら幾ら足りないというようなことをわかった人はありません。ぼやっとした話はあります。しかし、補正をするということになりますと、これは税収ひっくるめて何ぼということはできないんです、それでは国会が通りません。やはり税目ごとに全部、どの税はどういう理由で幾ら足りなくなるかということを出さないと、なかなか国会では認めてくれません。税収全体としての落ち込みはこの程度と。今回の国会開く開かないの騒ぎもその一つの問題もございますよ。これも、五、六兆円といっても、どの税目で五、六兆円足りないのか内訳を書いてみろと言われますとはたと困るんです、実際は。  そこで、われわれとしては、毎月報告のあるもの、源泉税とか、それから物品税とか、それから酒税とか、二カ月おくれぐらいに大体ある程度の趨勢値がわかります。したがって、わかるものについては補正をいたしました。  問題は、補正をしなかった大きなものは何か。法人税と所得税です。ここで二兆円ぽんと違ったわけですから、この二つなんです。これは九月決算というのが十一月末に申告があります。したがって、十二月のころになると、ある程度サンプル調査、全部の統計はとれませんが、ある程度趨勢値がわかります。ところが、そのときは法人税は二〇%増という数字が出たんです、二〇%増。これは大蔵省の統計を見ればすぐわかります。  それはどうしてかというと、十二月決算法人というのは非常に少なくなっちゃって、年一回決算になっても、三月決算になっちゃった、ほとんどが。大部分の上場会社が九月決算で十一月に出してくれれば、昭和五十三年ごろまで、非常につかみやすいんです。ところが、年一回決算ということになって、たまたま九月決算のものが十一月申告、その申告のものだけですよ、それがよかったというような点があったりいたしまして、それでこれは全体としては心配はあるけれども、この程度ならばあるいはいけるかと。しかし、少なくなるという根拠がない。心配はないわけでありませんが、幾ら少なくなるという根拠がない、こういうような点から法人税と申告所得税に手をつけなかった。これは事実でございます。それがこの結果が二兆円。それだけで、二つで二兆円になるわけです。そういう違いがあったわけでありまして、物品税ども十二月から一月ごろは案外盛り返して、自動車なんかよい数字が出てきたんです。だから、最後までわからなかったというのは事実なんですよ。そういうことで事務当局は、私が別にそれは計算するわけじゃありませんけれども専門家がみんな何十人も集まってこういろいろはじいた結果、税目ごとに言うとそういうことだというようなことであって、それはまことに申しわけないけれども、三月の末にならないというと、はっきりした数字が出てこなかったというのが実情でございます。問題は法人税なんです。
  146. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間が参りましたので、多く予定しておりましたが、最後に一問お伺いいたします。  私は、九月十四日、当委員会で同僚委員の質問に対しまして、鈴木総理大臣お答えは、増税なき財政再建、五十九年度赤字国債の脱却という公約は、行財政改革の足を引っ張るので、いまはその旗をおろすべきときではない、ぎりぎりまで努力して、後は後で考えるという趣旨の答弁をされました。いわばこの二つの公約は、努力目標ではあっても、確信に裏づけられたものではない、私はそう答弁を受けとめたわけでございます。  そこで、その財政収入の根幹をなすべき経済の見通しについても、比較的楽観論あり、きわめて警戒すべしとする見方あり、閣内の意見は一致いたしておりません。しかも大蔵大臣は、歳出削減に努力するということは当然ではございますけれども、しかし、総理公約はすでに破綻しておるということを賢明な大蔵大臣は見越されたのか、国債整理基金の五十八年返済はストップするとか、定率繰り入れも五十八年は行わないとか、これは実質、赤字国債と一緒でございます、さらに、五十七年度歳入欠陥は赤字国債を追加発行せざるを得ないとか、臨調の答申には、必ずしも一切の増税を認めないものではないという解釈をして、各種の増税案が検討されている、これが実態なんですね。  私は、これは国民の立場からしますと、日本の南方海上に大型台風が発生した。いま北上しておる。それで、ある大臣は、これは本土を直撃するぞと、いままで長雨が降り続いてきて、もう水量が危険水位を超えておる、したがって、この台風直撃に備えて早急に対策をとれと、こう言われますと、片や、東から高気圧が張り出してきておるから、台風は日本を避けるであろう、台風の行方はよく注意して見なきゃならないけれども、いまあわてる必要はない。予報官が二人も三人も二様、三様の予報をされるわけですから、国民が戸惑うのはこれ当然でございます。そして大方の見方は、どこに上陸するかは別にして、日本本土を直撃するであろう。結局、その被害者となるのは国民だと。これに対して政府はなぜ明確な進路を示さないのか。財政非常事態の宣言も、大変です、協力してほしいと言うだけですね、まだ見ておりませんが。政府はこうするからついてきてくれという具体論は、非常宣言ともいうべきものの中には何も含まれないと私は思うんですね。そういう政治の姿勢が、鈴木内閣の支持率が戦後空前の低さというものを示した根底にあると、私はこう受けとめざるを得ません。  そこで、経企庁長官と大蔵大臣は、その政治責任をかけて、国民が信を託するに足る経済財政の具体的政策を、十月八日には国民の前に明示する、そのことの確約を求めて質問を終わりたいと思います。
  147. 河本敏夫

    ○国務大臣(河本敏夫君) いまの世界経済は、五十年ぶりの最悪の状態であると、このように言われております。そうして、いろんな権威ある国際機関の見通し、あるいはアメリカ政府等の最近の見通しによりますと、いまが最悪期であって、ことしの年末ぐらいから来年にかけてだんだん回復する、そういう見通しを立てております。あるいはまた中には、そう簡単にはいかんよと、こう言っておる議論もございまして、肝心の世界経済の見通しにつきましても二説あると、こういうことでございます。  わが国は、いま世界のGNPの一〇%を占めるという世界国家、経済の面では世界国家だと思いますが、それだけ世界経済と表裏一体の関係にある、そういうことでございますので、なかなか判断がむずかしい時期でございますが、しかし、調査をいたしましたところ、現状は決して楽観できませんので、先ほど来繰り返して申し上げますように、政府部内の意見を至急に調整をいたしまして、適当な対策をまとめ上げたいと、このように考えております。
  148. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 私も企画庁長官と同様でございます。  台風と経済は違うわけでございますから、何か、台風が来るといったって、じゃ途中で台風をとめちまうというのはいまの科学技術ではなかなかむずかしいんです、これも。問題は、経済の問題も、政府が自由に、景気をうんと上げたり下げたりということはどこの国もできない。これができるんならばどこの国も困っておりません。どこの国もできないわけであります。しかしながら、限られた政策範囲の中で、どういうことが有効な手であるかを、それはもう掛け算と足し算もあれば、割り算と引き算もあるわけですから、両方を加味しまして、与えられた条件のもとで最大限の努力をしたいと考えております。
  149. 安武洋子

    ○安武洋子君 まず最初に、人事院勧告の問題についてお伺いをいたします。  官房長官にお伺いをいたしますが、人事院勧告は、私が申し上げるまでもなく、公務員からスト権を剥奪したと、その代償措置として人事院勧告が設けられているわけです。政府はこの人事院勧告を勧告どおり早期に実施するというのが当然だろうというふうに思います。ところが、昨年でございますが、財政事情、こういうことを理由にいたしまして、人勧史上最悪の値切りを行いました。その際に、総理は、異例の措置である、これが毎年繰り返えされれば人勧制度の根幹に触れると、こういうふうなことを国会で弁明なさっていらっしゃいます。もしことし仮に給与の凍結なり、抑制なりというふうなことになれば、人勧制度は有名無実というふうなことになりかねない。スト権を剥奪したこの政府の口実さえなくなってしまうわけです。  私は、そこで改めてお伺いいたしますけれども、官房長官は、この人事院制度について一体どのようにお考えでございましょうか、お伺いいたします。
  150. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 人事院制度が設けられました基本的な趣旨は、ただいま、安武委員がお述べになったことでございますけれども、今年度の人事院勧告をどうすべきかということにつきましては、先般来関係閣僚会議を開きまして、ただいま検討中でございます。
  151. 安武洋子

    ○安武洋子君 総理はまもなく記者会見を行われるというふうに聞いております。この中で、いわゆる財政危機宣言というふうなことで、公務員給与の凍結を示唆して、そしてこれを受けて、総理が訪中をなさるわけですけれども、その前の二十一日か二十四日の閣議で、給与の凍結を決定しようとなさっているというふうに聞いております。これは、公務員の給与凍結などというふうなことをてこにいたしまして、国民に対して、国民を犠牲にする、そして軍備を拡大していくと、こういう臨調路線を押しつけるものだとして私どもは容赦がならない、許すことができないというふうに思っておりますけれども、官房長官は給与関係の閣僚会議の主宰者でもあるわけでございますね。私、官房長官に、いま検討中とおっしゃいましたけれども、今後どういうふうな日程を考えていらっしゃるのか。また、人勧もこれは仲裁もスト権の代償措置でございます。ですからどちらも勧告どおり、あるいは裁定どおりに実施をするのが当然だというふうに思いますが、そういうところをお答えくださいませ。
  152. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先般来給与関係閣僚会議を二度開催をいたしたわけでございますが、その会議におきまして、臨調の答申等々の思想、考え方も踏まえまして、こういう財政の困難な時代に、いわゆる凍結をすべきではないかという議論がかなり強く出されましたことは事実でございます。しかしながら、会議といたしましては、まだ結論に至っておりません。本日総理大臣が記者会見をいたす予定でございますが、その会見におきましても、このような有力な意見があるということは指摘いたしますけれども、しかし、取り扱いの最終決定は給与関係閣僚会議においていたしたいと、こう申し述べるつもりでございます。  そこで、給与関係閣僚会議を今後どういう日程にするかというお尋ねになるわけでございますが、第三回目の会議をできるだけ早くいたしたいと考えておりますものの、会議における合意の見通しがもう少しはっきりできないものかというふうにも思っておりまして、ただいま第三回目の会議をいつ開くかということをまだ決定をいたしておりません。  なお、何かこれによって、軍備の支出を増大するつもりかというようなことをおっしゃったように聞こえましたが、そういうつもりはございません。
  153. 安武洋子

    ○安武洋子君 公務員の給与を凍結していこうなどという意見が閣内に強力にあるというふうなことは、私は全くけしからんと思います。これは総理御自身が国会の中でも弁明なさったように、こういうことでは公務員制度の根幹に触れる問題ですし、公務員の労働基本権の問題でもあるわけです。ですから私は、これは政府が人事院勧告というのが勧告されれば、それを早期に実施していくのが当然であろうと、あたりまえのことなのです。  人事院にここでお伺いをいたしとうございますが、昨年政府は人勧を値切りました。そのときに総裁は遺憾であるという旨を表明なさいました。そして、そこから起こるであろう人事行政上の問題点についても指摘をなさっておられます。たとえ、仮にことし給与は凍結をされる、あるいは抑制をされる、こういう事態になりますと、人事行政上の問題ももちろんございますが、人事院の存在そのものが問われてしまうというふうなことに私はなると思います。総裁の御見解を伺います。
  154. 藤井貞夫

    説明員(藤井貞夫君) 人勧の制度のたてまえ論というのは、これは安武委員もお話しになりました。まさしくそのとおりでございまして、われわれは制度の根幹というものから出てまいりまするその趣旨というものを大変重視をいたしておりまして、基本的には公務員については労働基本権の制約がございますので、これの代償措置として人勧制度というものがあるという事実を厳粛に受けとめております。したがいまして、その勧告というものは、この事柄のたてまえから言って、完全に実施をしていただかなければならないということでございます。  しかも、この趣旨は従来だんだんといい方向になってまいりまして、去る四十五年以来、勧告の実施時期とあわせて完全実施ということできておったわけでありますが、遺憾ながら、一昨年あるいは昨年——特に昨年の場合におきましては、いろいろな面でかなりの制約、抑制措置が講ぜられたということにつきましては、そのとおりでありまして、私は国会でも再三申し上げておりますように、制度のたてまえから言って大変遺憾であり、残念至極であるということを申し上げておりまして、その基本的な態度は毫も変わっておりません。これからも変えるつもりはございません。
  155. 安武洋子

    ○安武洋子君 私はいまの人事院総裁の御意見のように、政府自身が制度のたてまえ、この筋の通らないようなことをするというふうなことは許されないと思います。  そこで、総務長官にお伺いをいたしますが、人勧問題で長官は閣内でも完全に実施をせよというふうに御主張になって、大変努力をなさっていらっしゃるというふうに思います。私はその御努力を多といたしますけれども、大変凍結せよという意見が強いというふうなけしからん状態であるというふうなことで、給与担当大臣として、ここで大臣に絶対に妥協していただいては困る。政府の筋が通るか、制度をきちっと守っていくかどうかという、そういう問題であるわけです。そのために総務長官はこれからどのようになさろうとしておられるか、御決意のほどを承りとうございます。
  156. 田邉國男

    ○国務大臣(田邉國男君) 私は、いま人事院の総裁がお話をされました人事院勧告、これはこれまで維持されました良好な労使関係、さらには現下の厳しい経済事情というものを勘案をいたしまして、いま御指摘がございましたように凍結論というものが非常に強い、これは私十分承知をいたしております。それだけに、私どもは給与関係閣僚会議で真剣に討議をしておるところでございます。私自身としては、やはりこの問題については慎重に、なお強力に対応をしてまいる、こういう考えであります。
  157. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、いまの総務長官の御決意を伺わせていただいて、ここで人勧問題を終わらせていただきたいと思います。  私は、次にハワイ会談とそれに伴うシーレーンの問題についてお伺いをいたします。  新聞報道を見てみますと、アメリカ側は、一千海里のシーレーン防衛は日本自身の防衛のためだけでなく、中東、韓国など西側にとってきわめて重要な、戦略地域に紛争が発生した際に、米本土からの大規模な軍事力投入と、その長い補給路確保のために不可欠の要素だと、こういうシーレーン防衛構想についての根拠を初めて日本側に示したというふうに報道されております。  そこでお伺いいたしますけれども、中東、韓国有事の際の補給路の確保について、アメリカからこのような話があったのでしょうか、お伺いいたします。
  158. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 今回のハワイ協議におきまして、アメリカ側からシーレーンについての話があったのは、まず日本の置かれた地理的な環境というものを考えると、海上交通の安全を確保することは、日本の防衛にとってきわめてバイタルなものであるということ、そうして、そういった面から見た場合に、現在の海上自衛隊の防衛能力等は不十分であるというふうな指摘がありました。そうして、アメリカ側でいろいろな勉強をした結果によると、現在の防衛力、あるいは五六中業における防衛力でも不十分であるというふうな指摘があったわけでございまして、それ以上の問題というのは、中東云々ということは一切聞いておりません。
  159. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、中東、韓国有事の際の補給路の確保については、アメリカからそういう話はなかったということですね。では、今後そういうことは研究対象にはいたしませんね。
  160. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) あくまでもわが国はわが国の憲法の枠内で、個別的自衛権の範囲内で日本の防衛のために必要なシーレーンの防衛、海上交通の安全を確保することについての防衛力を整備をするということでございまして、それ以上のことは考えておりません。
  161. 安武洋子

    ○安武洋子君 五十七年の二月の二十四日でございますが、安保特におきまして伊藤長官は大臣所信を述べておられます。この中で、「米第七艦隊は、中東情勢に対処するため、インド洋にその一部の勢力の派遣を余儀なくされており、その結果、同艦隊の西太平洋におけるプレゼンスが低下しておりますが、このような状況もわが国周辺の安全保障を考えるに当たって留意すべき要素となっております。」と、こういうふうに述べておられます。  お伺いいたしますが、この中の「留意すべき要素」というのは軍事的にどういうことを指すのでしょうか。
  162. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) まずアメリカが今回のハワイ協議において言及したことの中に、アメリカは現在の厳しい国際情勢の中で、グローバルに兵力を展開しておる、したがって、広く薄くというふうな兵力展開になっているということ、そういうふうな現状というものを認識して、それぞれの同盟国は自分の国の防衛のために必要な範囲で努力をしてほしいということを言っていたわけです。  今回のシーレーンの防衛につきましても、私どもはあくまでもわが国の防衛のために必要な範囲でということでございますが、この海上交通の安全を確保するということは、わが国一国だけでできるものではございません。当然のことながら日米が一緒になってやらなければならない分野というものがあるわけでございます。そういった意味合いで、わが国が自分の国の防衛のために必要な範囲で、アメリカの薄くなったということも念頭に置きながら、自分の国の防衛のために必要な範囲で努めなければならないということで申し上げた趣旨だというふうに理解しております。
  163. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、この留意するという言葉の軍事的な意味というのは、この海上交通は日本だけでは防衛はできない、だから防衛に必要な問題についてアメリカと話し合うというふうな中身になるわけですか。  そして、私はいま留意ということを聞きましたけれども、留意はそれだけで、これについてそのほかに何かあるのか、そしてあれば何かの措置をなさっていらっしゃるのか、また今後に何かをなさろうとしているのか、そういう点をお伺いいたします。
  164. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) あくまでも留意というのは、そうした客観情勢、国際情勢の環境というものを念頭に置きながら、わが国の防衛のために必要な限度で努力をすべきであるという趣旨でございます。
  165. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、アメリカが中東有事でスイングした後の事態に対応するための体制、これは研究対象になさるんでしょうか。
  166. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 何回も同じ答えになりますが、アメリカが中東にスイングした云々ということではなくて、あくまでも日本の防衛のためにわが国として必要な限度内において防衛努力をするということでございまして、それ以上のものでも以下のものでもございません。
  167. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、そういうふうなときの空の警戒監視というのは、これはどういうふうになるんでしょうか。
  168. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 現在のわが国におきましての、いわゆる防空上の警戒監視というのは、御承知のように全国に二十八カ所のレーダーサイトを持ち、それをいわゆるバッジ組織というものを使いながら、情報の監視、識別に努めていることは御承知のとおりでございます。そういった中でできることをやるというのが第一点でございます。  それから、海上自衛隊が当然のことながら有事行動をする場合に、そういった空からの脅威というものを念頭に置かなければならないこともまたこれ事実でございます。  そういった意味合いで、艦艇が装備したレーダーその他による対空監視というものは当然必要でございましょうし、また必要があれば対潜哨戒機等の哨戒によってそういった情報のキャッチに努めることもまた当然であろうというふうに思っております。
  169. 安武洋子

    ○安武洋子君 対潜哨戒機で警戒監視。この空の警戒監視ですね、これはどのようにして行われるわけですか。
  170. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 対潜哨戒機は、おっしゃるとおり対潜哨戒が主でございますから、航空機を哨戒、あるいは監視するというのはもともとの任務ではないと思いますが、そういうふうな機能もできるということを申し上げたわけでございまして、御承知のように全般的なわが国の本土防空という見地からするならば、いま導入を逐次進めておりますところのE2Cという早期警戒機がこの任務を持った飛行機であろうというふうに理解しております。
  171. 安武洋子

    ○安武洋子君 空の警戒監視の範囲というのはどうなるわけですか。
  172. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 本土防空の空の警戒監視といえば、先ほど申し上げたような二十八カ所のレーダーサイトで、装備したレーダーの探知の及ぶ範囲でということに相なろうかと思っております。
  173. 安武洋子

    ○安武洋子君 防衛大綱を説明しております、五十二年の防衛白書。これでは空の警戒監視というのは太平洋三百海里、日本海、これは百海里から二百海里までと、こういうふうになっておりますけれども、これはどうなんですか。
  174. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) レーダーサイトのレーダーのカバレージについての細部は公表ははばかる問題でございますので、御容赦をいただきたいと思いますが、いま先生がお述べになった数字に大体近いものであるというふうな御認識をいただいてほぼ間違いないんではないかというふうに思っております。
  175. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは航空機によって空の警戒監視をする、その範囲内、これは太平洋三百海里、日本海百海里から二百海里と、こういうことではないわけですか。
  176. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) ちょっと私いま質問を取り違えておりましたが、レーダーサイトのレーダーカバレージというのは、数百マイルということで御容赦を願いたいわけでございますが、多分いま先生がお挙げになっている太平洋側三百マイル云々というのは、対潜哨戒機の哨戒によっての監視の範囲であろうというふうに思っております。現在私どもはそういった考えで哨戒監視をやっております。
  177. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、それを今度シーレーン防衛というふうなことで一千海里、これまで延ばされるという予定はないわけですか。
  178. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) この周辺数百マイル、航路帯を設定する場合には干マイルという考え方につきましては、三次防あるいは四次防当時、すなわち昭和四十年代の前半からそういう考え方をとっているわけでございまして、ことさらいまこれを変えるというふうな考え方は持っておりません。
  179. 安武洋子

    ○安武洋子君 もう一度聞きます。  初めから、四次防ぐらいから一千海里までは哨戒するということになっているということですか。
  180. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) そういうものを念頭に置いて防衛力の整備の計画をつくってきたということでございます。
  181. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、念頭に置いて整備計画をつくってきたということは、いまの哨戒機がそれだけの能力を持って一千海里までカバーできるというふうになっていると、こう承ってよろしいんですか。
  182. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 一千海里のことについて指摘されていましたが、一千海里というのは何も哨戒をするのがそれだけだということを言っているわけではないんでありまして、海上交通の保護をするに当たっての一つのオペレーションの形態として、航路帯というものを設けた場合には、千海里ぐらいまでは何とかできるようにしたいということで、防衛力の整備をしているということでございまして、航空機のみならず艦艇についてもそういうことを念頭に置いてつくっているということでございます。
  183. 安武洋子

    ○安武洋子君 だから、私はその中の航空機についてお伺いをいたしておりまして、航空機はどうなんですか、一千海里まで哨戒をやるんですか、そういう能力を持っているんですかと、いま現在というふうに聞いております。
  184. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 哨戒の能力はあろうかと思っています。
  185. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、いま一千海里までの哨戒能力をもう備えているというふうなことで、硫黄島を基地にして、それからさらに継ぎ足しをする——継ぎ足しというのは変ですけれども、警戒監視を広げるというふうなことではなくて、もういま現在できるというふうに承ってよろしゅうございますね。
  186. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 航空機の航続性能というものを念頭に置いた考え方からすれば、現在でもその航空機はそういう能力を持っております。
  187. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、この防衛大綱を説明している五十二年の防衛白書、これは太平洋三百海里、日本海百から二百海里、こういうふうになっております。ということは、五十二年のこの白書をエスカレートさせている、軍事力を質的に強化させている、こういうことになるではありませんか。いかがですか。
  188. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 航空機のいわゆる性能として、一千海里を飛ぶ能力を持っているということと、周辺数百マイルの哨戒なりというものを常時したいということとは意味合いが別でございまして、私どもとして考えているのは、周辺数百マイルの海上交通の安全を確保するために、周辺数百マイルと言っているのは、そういった海域を哨戒できる程度の兵力規模というものはある程度持っていたいということを考えて申し上げているわけでございまして、飛行機の性能が数百マイルから外へは出る能力があるかないかという議論とは別個のものであるということでございます。
  189. 安武洋子

    ○安武洋子君 私が聞き違えたのかもしれませんけれども、私が質問したのは、いま現在も一千海里まで哨戒をやっているんですかと、そういう能力を持ったんですねと、そう確認していいですねというふうに私は質問いたしました。
  190. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 飛行機としての性能としてはそういう性能を持っておりますが、いまそういった哨戒を常時しているということではありません。
  191. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、一千海里までそういう哨戒の区域を延ばすという、そういうことはやりませんね。
  192. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) それはやらないということでなくて、現在平時においてそういう必要性があるかということと、有事の際にどういうことをやるかということとは別問題だと思います。私どもが申し上げているのは、有事の際に周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には、一千海里程度のものの海上交通の安全を確保するためのいろいろな行動をできるような防衛力を整備したいということを申し上げているわけでございまして、いま今日時点でやっているかやっていないかということと、有事の際必要なときにやるかやらないかということとは別問題だろうというふうに思います。
  193. 安武洋子

    ○安武洋子君 平時でもエスカレートさせてそこまでやるということを考えているかどうかということを聞いているわけです。
  194. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 必要があればやることもあろうかと思いますが、いまはそういうことはしておりません。
  195. 安武洋子

    ○安武洋子君 だから、日本が平時でもそういうことをやることもあるというふうなことは、私はやはりこの五十二年の防衛大綱、ここで表明している太平洋三百海里、日本海百から二百海里ということを踏み出してしまっている、エスカレートさせている。そして、哨戒という形で、アメリカが中東有事だということでスイングしている。日本は有事でないと、それなのにやはりこれは西太平洋における自衛隊がアメリカの補完、こういうことをしているということになっているということを指摘したいわけです。  そこで、さらに質問を進めてまいりますけれども、シーレーン防衛の中の継戦能力の保持、これは戦略物資、弾薬その他の補給にも重要だ、こういうふうな御答弁があるわけですけれども、これは日本が有事の際米軍の戦略物資、弾薬などの輸送、たとえば米本土から日本へ、ハワイから日本へ、あるいはフィリピンから日本、グアムから日本へと運んでくるのを日本が守るということを研究されますか。
  196. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 有事の際にわが国が生存していくために必要な海上交通を守るための防衛作戦でございますから、いろいろなことを研究するわけですが、それはあくまでもわが国の防衛のために必要な限度において行うというふうな前提があるわけでございまして、決して集団的自衛権に踏み込んでまでもやるということの意図ではございません。
  197. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、日本有事、極東有事で、米軍用の物資を韓国などへ輸送する艦船の護衛をする、こういう研究はなさいますか。
  198. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 日本がまだ武力攻撃を受けてない状態で、いま御指摘のようなことが、やるかやらないかということになれば当然できないというふうに思っています。    〔委員長退席、理事粕谷照美君着席〕
  199. 安武洋子

    ○安武洋子君 日本有事と申し上げました。日本有事の際に、日本有事、極東有事で、米軍用の物資を韓国などへ輸送する艦船の護衛をする研究をするのかという質問でございます。
  200. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 日本有事というか、わが国に対する武力攻撃が行われた段階でということであれば、わが国の防衛のために必要な限度でいろいろなことをやる。そのときにどういうことをやるかという具体的な問題については、そのときの作戦、いわゆる戦闘の態様、そういうこと等もいろいろございますので、一概にいまここで一つ一つ仮定のケースをとらえて御答弁申し上げるのは適当でございませんが、あくまでもわが国の防衛のために必要な限度でやるということで御理解をいただきたいというふうに思います。
  201. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、いま私が申し上げたようなことは、これはハワイ協議のときにアメリカの方からは一切出なかったんでしょうか。
  202. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) そういう具体的な話し合いは一切ございませんでした。
  203. 安武洋子

    ○安武洋子君 夏目防衛局長は、アメリカの分析では五六中業でもシーレーン防衛には不十分という分析だと。そして、不十分の前提という脅威の内容についても、アメリカの言い分、認識と隔たりがある、こういう旨の発言をなさっておられます。  そこでお伺いいたしますけれども、五六中業で、なおシーレーン防衛に不十分だというのは何を一体指しているんでしょうか。
  204. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 私が五六中業で不十分だと言ったんではなくて、アメリカが現有防衛力をもってしても、あるいは五六中業をもってしても不十分であろうということを申したわけでございまして、私の方は、そういったアメリカの分析した前提になる脅威の分析、あるいはシナリオの設定等について、わからない部分があるわけですから、そういうものをただしてみたい、そういうために研究を一緒にしてみたいということを提案したわけでございます。    〔理事粕谷照美君退席、委員長着席〕
  205. 安武洋子

    ○安武洋子君 防衛大綱についても不十分だというふうにアメリカは指摘をしております。それは、日本側としては、武器の数量なのか、あるいは基盤的防衛力の構想と言われている考え方についてアメリカがそう言うているのか、どのように受けとめておられるんでしょうか。
  206. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 特段その点についての説明があったわけではございませんが、五六中業によってもシーレーン防衛能力が不足しているということは、多分兵力水準のことを指しているんではなかろうかというふうに推察はされます。
  207. 安武洋子

    ○安武洋子君 兵力水準の不足というふうに推測をなさるというふうなことであれば、共同研究の成果でございますね。これは、五九中業の作成の参考にしていこうというふうなおつもりはございますんですか。
  208. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 今回の共同研究は、あくまでもガイドラインに基づく共同作戦計画の研究の枠内でということでございまして、そういう枠内ということは、つまり現在の防衛力をもってするオペレーションプランの研究ということから研究するわけでございまして、これが防衛力整備に直結するような問題でないことははっきりしているということでございます。
  209. 安武洋子

    ○安武洋子君 ちょっといま聞き損ねたんですけれども、武器の数量だというふうに思うというふうに先ほどおっしゃいましたですね、御答弁があって。そしたら、基盤的防衛力の構想というふうなものについては、アメリカ側はこれは不十分であるというふうな指摘はなかったわけなんですか。
  210. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 特段基盤的防衛力に対する云々ということはございません。
  211. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、脅威の中身についてお伺いをいたしますけれども、この脅威の中身について、アメリカからどのような説明をお受けになったんでしょうか。説明を受けない限り、向こうと脅威の中身が違うんだというふうにはならないと思いますが。
  212. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) したがって、私は違うと申し上げたんではなくて、わからないと。向こうはそういう説明を省略してますのでわからないと。したがって、お互いに共同研究をしてみようということを申し上げたんで、私は彼らの言っている前提をどうのこうのというんではなくて、そういう説明がなかったわけでございます。知りたいということでございます。
  213. 安武洋子

    ○安武洋子君 子供の使いみたいに、全く脅威の中身を説明しない。盛んに報道されているのは、アメリカはソ連の脅威というのを物すごく強調したというふうなことが報道されているわけです。  私は、全く脅威をどういうふうにアメリカが言っているかというふうなことを抜きには、このハワイ協議の話し合いは成り立たないというふうに思います。どういうふうに一体受けとめられて、こういうふうに共同研究しようということになったんですか。
  214. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 一般的に、最近の国際情勢が厳しさを加えている。その背景として、ソ連の一貫した軍事力の増強という事実があるというのは国際情勢の話でございまして、いま具体的にシーレーン防衛について、わが方の防衛力に対して不足云々ということの前提として、脅威の話が出たわけではございません。会議というのは午前中四時間ぐらいを費やしてやっておりますが、その間非常に時間の制約もあると思いますので、そういった具体的な説明がないまま、結論部分の話があった。そこで、私どもとしては、その前提となる諸条件についていろいろと勉強をしたい、共同研究をしてみようということを提案したということでございます。
  215. 安武洋子

    ○安武洋子君 ソ連の一貫した兵力の増強、こういうことを世界的に情勢判断しているというふうなことでございましたが、日本はそれを脅威というふうに評価をなさっていらっしゃるわけですか。
  216. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 極東方面におけるソ連軍の一般的な軍事力の増強、そして、その活動の実態というものは、潜在的脅威の増大であるということは、しばしばこの国会においても答弁申し上げているところでございます。
  217. 安武洋子

    ○安武洋子君 潜在的脅威の増強というふうにおっしゃいますが、きょうの新聞報道によりましても、極東ソ連軍の航空力は前年より九十機ほど減というふうになっております。こういうふうになっているのに、極東のソ連軍の兵力は増強しているというふうに御判断でございますか。
  218. 新井弘一

    説明員(新井弘一君) 結論から言えばそのとおりでございます。ということは、ソ連の極東における軍事力の増強、質、量ともに判断いたしまして、そういう結論になるということでございます。  特に先生がいま航空機についておっしゃいましたけれども、航空機なるほど数において、ことしの防衛白書では去年に比べてわれわれの見積もり減っておりますが、他面、実態的にはそれぞれの航空機の質がはなはだ強化されている、そういう事実がございます。
  219. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、ここで一つ申し上げておきたい。  脅威の中身について説明がなかった。脅威の中身を聞いて、そしてその研究をするんだというふうなことですけれども、脅威のシナリオを。私は脅威に対する評価の違いというのが、これはもう本当に日米両国間の最大の相違点であろうかと思うんです。ですから私は、アメリカはこの脅威に見合って日本は防衛力をもっと増強せよと言っているわけですから、こういうことについて、アメリカの要求どおりにやっていくと、これは、いままでの日本の考え方というものを大きく踏み出して、脅威に対抗して軍事力を増大させていくというふうになるわけなんです。  シーレーンについても申し上げておきとうございますが、やっぱりシーレーン防衛、国民向けには何か国民の食糧とか、石油とか、そういうものの輸送を最優先しているというふうに見えますけれども、しかし、先ほどからの論議の中でも、やはり私は継戦能力の保持というふうなことでもわかるように、戦略物資の輸送を確保するというのが第一義的であろうというふうに思います。そういうふうにやはり私は国民を欺いているんではなかろうか。  それで、私はさらに申し上げとうございますが、新井参事官は安保特で、シーレーンの共同研究に関連して、ソ連を仮想敵国としていないが、ソ連の軍事力の増強は念頭に置かざるを得ないと、こういうふうに答弁をなさっておられます。これは先ほど私が申し上げたように、アメリカの脅威の考え方、ソ連の軍事力の増強というものを念頭に置くと言うなら、ソ連の軍事力に見合った軍事力を増強していくと、こういう防衛力を持とうということに踏み出すということになるではありませんか。
  220. 新井弘一

    説明員(新井弘一君) 私が安保特で述べたのは、先生確かにいま引用されましたように、質問に答えまして、ソ連をわれわれとしては仮想敵とするものではないけれども、しかしながら極東、わが国の周辺におけるソ連の軍事力の増強という客観的な事実、これは念頭に置かざるを得ない、当然のことを述べたわけでございます。他方、わが国の防衛力整備については、あくまでも大綱の範囲でやるということが政府の基本的な政策でございます。
  221. 安武洋子

    ○安武洋子君 ソ連の軍事力の脅威を念頭に置きながら、整備は大綱の範囲内で、そういうつじつまの合わないことをおっしゃってもだめです。私は、あなたたちはそう言いながら、本当に国民の目をごまかしながら、軍事力を徐々に徐々に増大させていかれる。やはりこれはソ連の軍事力の増強を念頭に置くということは、大綱の考え方から踏み出すという、そういうことの言明にほかならないわけでしょう。  お伺いいたしますけれども、ソ連のバックファイアに対する対処、これは研究対象にはなされないんですか。
  222. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 具体的には先ほど申し上げましたように、アメリカが考えている脅威の内容、あるいはシナリオの設定等、いろいろとただすべき点があろうかということで、共同研究をするわけでございます。ただ、具体的にいかなることを研究するかについては、今後のことでございまして、いま直ちにこの時点で具体的なスケジュールなり、研究内容というものの詰まったものを持っているわけではございません。今後の研究というか、今後のあれにまちたいというふうに思っております。
  223. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、全部まとめてちょっとお伺いいたしますが、バックファイアの研究はやらないというふうに言明できますか。  それから、前田海幕長は、シーレーン防衛は、共同研究では、現在空からの脅威に対しては弱点があるから防衛能力に重点を置くというふうにおっしゃっておりますけれども、これ間違いありませんか、二つちょっとお答えください。
  224. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) バックファイアの脅威というものをどういうふうに見るかということも、あるいは経空脅威というものが比較的最近における重要な脅威でございますので、こういった点も当然一般的には空からの脅威として研究の内容になると思います。ただ、具体的にどういう機種を対象にするかということについては、今後いろいろと詰め合っていくということに相なろうかというふうに思っています。
  225. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 安武君、時間来ております。
  226. 安武洋子

    ○安武洋子君 もう一つ抜けています。  さっき空からの防衛能力に重点を置くということを言っておられるけれども、間違いないかというのにお答えがない。  そして、最後に聞きますけれども、概算要求についてです。F15が一機当たり昨年に比べまして、百八億から百二十五億、一五・九%もアップしているわけです。なぜこのような値上がりをしているのかということ。そして、F15の初年度の支払いは昨年の十分の一近くになっているわけです。なぜこのように少ない頭金にしたのか。というのは、私はこれは故意に防衛費を少なく見せるためだというふうに思っているわけです。もうこの論戦をする時間がありませんので、大蔵大臣にお伺いをいたしますけれども大蔵大臣はIMFで軍事費に触れた発言もなさっていらっしゃいます。私は、F15、P3C、いま申し上げたようないろんな問題があるわけですけれども、こういうものも含めて、軍事費を削減対象にしてほしい、軍事費を私は突出させるべきでないと、このことをお伺いいたしまして、残念ながら時間が参りましたので、質問を終わります。
  227. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) シーレーンの防衛に当たって、空からの脅威というのはきわめて重要でございますし、またわが方の防衛力もその点に関して必ずしも十分でないということから、今後とも重点的な整備をしていかなければならないというふうに思っております。
  228. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 防衛費の問題についても、何分厳しい財政事情でございますから、聖域というわけにはまいりません。したがって、私は、先般の国防会議、九月十三日におきましても二つのことを申し上げたわけです。一つは、財政全体の枠組みの中で、施策の優先順位を厳しくチェックしてもらいたい。効率化、合理化を図って防衛費全体も極力圧縮をいたします。後年度負担についても、防衛関係予算の硬直化をもたらすことのないように、厳に慎重に対処し、圧縮を図ってまいりたいと存じますということを申し上げました。
  229. 森田重郎

    ○森田重郎君 大蔵大臣に何問か質問を予定いたしておりましたけれども、すでに同僚委員の柄谷委員の方からほとんど私の質問事項は出尽くしたようでございますので、一、二の点につきましてちょっとお伺いを申し上げたい、かように思います。  きょうもうすでに総理の記者会見が行われておるか、その辺定かに承知はいたしておりませんが、まさに財政非常事態と申しましょうか、緊急事態と申しましょうか、昭和五十六年度が二兆五千億、五十七年度が先ほど来いろいろお話にありましたように、五兆円ともまた六兆円とも言われておりますし、同時にまた、五十八年度も相当額の歳入欠陥が予想される。五十八年度が五兆になりますか、六兆になりますかわかりませんが、考えてみますと、その辺、五十六、五十七、五十八年度、合計しますと十数兆ぐらいの歳入欠陥が予想されるかと思うんですが、そうしますと、国の予算が五十兆ということに仮に押さえますと、三分の一ないし四分の一、そういう膨大な歳入欠陥が三カ年間で出る。本当に緊急非常事態かと思います。そこで、きょう総理の緊急事態宣言があるというふうに伺っておりますが、事財政一般でございますので、恐らくは、大蔵大臣とされましても、その辺の状況については相当詳細に総理とお打ち合わせをなさった、その結果実はきょうの緊急事態宣言、こういうことになろうかと思います。その辺につきまして、別に総理にかわってというわけではございませんけれども大蔵大臣としての緊急事態宣言をお伺いしたい、かように思います。
  230. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) まさしく御指摘のとおりでございまして、きょうの総理の記者会見の冒頭あいさつの中でも言われますが、すでに九十兆を超える国債の累積があり、その利払いがすでに七兆八千億円、これは防衛費の三倍、それからおおよその話でありますが、公共事業費をはるかにオーバーをする。こんな調子でふえてまいりますと、ただいま先生が言ったような事態になりかねない。これは国の根幹に触れる大問題になるわけであります。したがいまして、ともかく、どんなことがあっても極力国債の発行というものを避けるようにしなきゃならん。避けるようにしなければならんと言っても、それですぐ増税かと、こう言われるわけでありますから、われわれはその前にやるべきことをやらなければならない。それは歳出の徹底した削減、合理化というものをやっていく必要がある。そういうようなことによって、高度経済成長下にできた施策、制度であっても、現在の段階においてそれを見直していこう。それがどうしても国民の要望が強過ぎて見直しできないという場合には、それに相応した応分の負担がなければ、政府は借金するほかないわけでございますから、それはもう負担はしない、金は出せ、借金はするなと言われたって、だれがやったってこれはできない相談でございます。したがって、われわれはまず臨調の答申の精神を受けて徹底した歳出の見直し、合理化を図っていく。いままでも手ぬるいとかどうとか、いろいろなことを言われてきたわけでありますが、御承知のとおり年々歳出の削減ということについては、一〇%ずつも伸びておった一般歳出が、それは五十六年度では四・三、五十七年度が一・八、来年はできることなら一・四か一・五ぐらいに抑え込みたいということで、歳出の削減ということはある程度功を奏してまいりました。歳入という面については、世界経済全体との問題もございまして、歳出の方は順調に削減できているんだが、歳入の方が思うに任せなかった。そのために赤字国債の追加発行をせざるを得ないという現状にあることも御承知のとおりでございます。しかしながら、われわれとしては一方、景気の持続という点については、先ほども申し上げたように、物価の安定というものをまず基本的な問題として、その中で景気の持続というものを図っていくということにしたいと考えております。  長話になりますから簡潔に申し上げますが、いずれにいたしましても、国が存在する以上、ある一定の歳出は必要なわけでありますから、それをどういうような形で調達をしていくかということは全体として考えていかなければならない問題だと。われわれはここでインフレにしてしまうことを非常に恐れるわけでございますから、何がこわいといったって、それは私は庶民大衆、持たざる人にとっては、インフレーションが一番こわいわけであります。安易な道をねらってはいけません。私はそういう点で、インフレにしないで、みんながこれを乗り切るのは、お互いが痛み分けをしていかなければできないことでありますから、そういう面で制度、施策を見直しながら、国民ひとしく痛み分けをして、この際乗り切っていこうというのが基本的考え方であります。ヨーロッパなどでも、それはまだ景気停滞とかなんとか言っても、国債の依存度というものは一五%が多い方で、大体一〇%前後です。日本はすでに数年間、実質上三〇%を超える国債依存度だということでございますから、私は本当に危機的な状態にあると言っても差し支えない。この認識をまず国民に抱いてもらうということが、私は一番最初にこれは徹底をしなければならない問題であると、かように考えております。
  231. 森田重郎

    ○森田重郎君 大臣の御答弁はよくわかりましたけれども、考えてみますと、国の財政というより、むしろ予算と申し上げた方がよろしいでしょうか、これは税収の範囲行政経費を賄うというのが原則であろうかと思います。税収で不足するということになれば、行政経費を削減をする、なおかつ均衡がとれんというような場合には公債政策に依存する、大体そういうことになるんじゃなかろうかと思いますが、いまの大臣の御答弁の中で、国債増発の問題もちょっと出ましたし、臨調答申を踏まえて、行財政改革を徹底するというようなお話も出ました。  まあ自然増収の伸びがこれは非常に悪い。それが直接的には歳入欠陥につながる問題でございましょうが、今後税収の伸びもなかなか思うように期待できない。これは景気問題と非常に絡むわけでございますが、税収の伸びも期待できない。それから国債の増発等につきましても、大臣はどちらかと言えば、私どもの承知し得る限りにおいては、むしろ行政経費の削減、カット、こちらの方に重点を志向されておるように承知しておるわけでございますが、そういうことを考えますと、税収の伸びが期待できない、国債は余り増発できない。これは五十九年度に赤字国債脱却というようなことになりますので、今後も引き続いて二兆円程度の減額をしていかなくちゃならん、そういう立場にあるわけですね。  それから歳出カットの問題でございますが、仮に補助金のこれは一割になるかどうかは別としまして、一律一割カットというわけにもいかんかもしれませんが、これをやってみましても、十五、六兆ぐらいの補助金では、せいぜい一割カットしましても一兆四、五千億、その程度になるわけです。しかし、これとても五十六年度あたりを見ると、なかなか思うような数字が必ずしも出ていないというような感じがするわけです。  そうしますと、何かもう四面楚歌のような形になっていて、この状況でずうっと推移するということになりますと、何か抜本的に大きな手を打たなくちゃならんというような感じが非常にするんですが、その辺につきまして、大臣のひとつ率直な御意見をちょうだいできればありがたいと、かように思います。
  232. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 確かにそのとおりなんです。しかし、補助金といってもそれはもうほとんど社会保障費、あるいは文教費というようなものの補助金、あるいは公共事業の補助金でも、補助率というようなものは、みんな法律で一本一本、何十本という法律によって決められておるわけでございます。大蔵大臣言うべくして法律を無視してカットするというわけにはいかない。これは法律を国会に出して国会で許可をしてもらわなきゃならん。去年は御承知のとおり地方のかさ上げ補助金、一般の補助金の上にさらにおまけの補助金があったんだが、そのおまけの補助金のおまけを四分の一数年間切るというだけで、あれ二カ月間かかってあの騒ぎですから、まして今度はおまけでないところの補助金ですね、元来の。その補助金を切るということは、ある意味において、これはもう月給もらっている人だったら月給の値下げぐらいに匹敵するような厳しい話なんです。受けておる人にとってはやっぱりそれは補助金ですから、それを切るわけですから。  ともかくこの際は、私は補助金を切るということに当たっては、これはほとんどがまた人件費に類するようなものが多いわけです。たとえば文教予算というのはざっと五兆円弱ございますが、そのうちの六割ぐらいのものは実は人件費。小・中学校の先生の二分の一負担——交付金ですか、補助金、交付金の中へ入ってくるわけです。あるいは医療費の問題にしても、医療費というものの中身と言えば、薬代もあるでしょうが、医者の人件費。あるいは改良普及員にしても、あるいはその他のいろんな農業団体の補助金というものも大体人件費なんです、中身は。したがって、この人件費の抑制というものがまずできなければ、補助金カットどころの騒ぎではないということに私はなるんじゃないか。したがって、極力人件費については、幸い物価も二%というように安定した時代でございますので、これを切り下げるということは言うべくしてこれもできない相談でございます。したがって、全体の枠を抑えて人数を減らすということも一つの方法でございますが、これが一挙にアメリカのようにレイオフみたいなことをやれる、首切りができるという筋のものでもございませんし、膨大な退職金を伴うというような問題でもございますから、なかなかこれは時間のかかる話、したがって極力人件費の膨張をまず抑え、補助金のカットを行い、あるいはその他の膨張するものを抑え込んでいくということがまず最優先されなければならんと私は実は思っておるわけです。それと同時に、もう極力なくてもいい、なくてもやっていけるというものは受益者負担にしていただく。もう何でも国に依存するということになれば、国はその金は何かで調達をしなきやならんわけですから、そうでなくて、極力それぞれ受益者が自分でできるものは自主独立によって自分でできるだけやってもらうようにこれから直していかなければならない、そういうふうに考えております。  しかしながら、非常に困っている方とか、非常に国が見なければならないというような部門があるわけでございますから、そういう部門にはやはりそれなりのことを私はしていかなけりゃならんと思うわけでございます。ややもすれば、いままでは何か国に要求して、国からもらわなければ損するみたいな気持ちが国民の中にもありまして、団体とか、陳情団とか、ともかく国から分捕り合戦、結局国からとったようなつもりでいるけれども自分たちが結局払うわけであって、それが国に財源がないということになれば、それは借金で残って、しかも利息がついて、税金の先取りということと実態は同じということでございますので、そういうような、国民全体にやっぱり認識をしていただかなければ、これは民主政治ですから、なかなか前には進みません。十数年来やってきたことなので、一挙に変えるということも困難でございましょうけれども、これはもう待てないというところまで来たので、本当にこれは命がけでやらなければならない問題だということで取り組んでおるわけであります。まずそういうことをやって、さらにどうしても国の安全保障、あるいは国の非常に政治の根本という点でどうしてもこれだけはみんながお金を出し合ってもやらなければならないんだと、しかも足らないということになれば、それは何らかの御負担をいただくのは私は当然のことではないか。私は外国の会議なんかへ行って、実は日本の国情について説明をいたします。そうすると日本いいじゃないかと、失業率はうんといいし、物価は安定しているし、国際収支は黒字なんだし、どこが悪いんですかと。財政がこうこうだと。日本ではしかし軍備費は使ってないんだし、戦争はしてないんだし、地震があったわけじゃないし、何に金使ったんですかと一遍にそれ言われてしまうわけです。結局は日本の国民所得に対する社会保障負担率及び租税負担率というものは、三二、三%と非常に低位、スウェーデンの六〇%とか、ヨーロッパの大体五〇%前後ということから見ると非常に低いじゃないか、そんな低い負担で大きな支出をすれば赤字になるのはあたりまえじゃないですか。だれも同情してくれません、これ実際は。ですから、われわれは別に同情してもらう必要はないんだけれども、やはりそういう点で歳出カットというものから、財政健全化というものを進めていかないというと、あんまりここで迎合主義でやると、結局はもう最後はインフレという形で国民に降りかかってくるという危険性が十分にあるわけですから、このことが一番私はこわい。だから、そういうことになれば、どっちがそれじゃ公平かということになれば、厳しくとも、やはりこの際はいま言ったようなものを中心に切り開いていくということが大事じゃないか。したがって、高度経済成長時代にこれも免税だ、あれも免税だというようなものがあったら、そういうものは私はがらっと取り払ったらどうなんだ、この際は。そういうようなことで、やはり一遍原点に返ってやるぐらいの決意がないと、この難局は乗り切れないだろうと、そう思います。
  233. 森田重郎

    ○森田重郎君 いまの大臣の御答弁を伺っておりまして、御答弁の中に、何かちょっとさわりの部分があったような感じがするんですね。国民の方々に苦しい財政事情というものを訴えて、歳出カットにも大いに協力をしていただくと。しかし、やるだけやって、それでどうしても不可能な場合には、応分の御負担をあえてお願いする、まあ一つの増税をにおわすようなニュアンスがちょっと感じられたわけでございますが、先ほど来、私冒頭、とにかくこのまま推移すれば、国の予算の三分の一ぐらいの赤字が現にもう予想されておるというような、まさに緊急事態においては、どうなんですか、その辺いま大臣ちょっとお触れになりましたけれども、増税の問題はどんなふうにお考えになっておられますか。
  234. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) それはまだ私が言うべき段階じゃないんですよ、これはまずやるだけのことをもう一遍やってみないことには。しかし財界が言うように、何だ、五十兆円あるんじゃないか、国の予算は。五十兆円だから、一割節約すれば五兆円出るだろうとよく言われるんです、私どもは。だけれども、それは余りにも財政の中身を少し知らないんじゃないですかと私が言うとまた総攻撃を受けるわけですが、五十兆円といいましても、すでにそのうちの七兆八千億、それから地方交付税の九兆からのものでもうすでに十七兆というものは、少なくともいまの段階では借金の利息を後からまけろと言うわけにいかんですね。これ切れないわけです。地方交付税三十二のやつを下げると言っても、下げなくてさえもことしは地方交付税が不足するんだから金よこせ、こう言われておるわけです。これはいますぐ切るのはむずかしい。残り三十三兆の中に年金と恩給と社会保障費でざっと十一兆ですね。その内訳は、年金が四兆、医療費が四兆、それから社会保障費が一兆数千億、その他と、こうなってくるわけですが、ここだってばっさり切れるといっても、恩給とか年金とかいうものは、抑えることが精いっぱいであって、老人の数はどんどんふえていくわけですから。これはもう長生きはありがたい話なんですから、これは減らしてしまうというわけにいかないわけです。老人のふえただけ単価をへずるということもなかなかできない。ということになれば、社会保障の中で切れるのは何だということになると医療の問題ですね。医療の問題においては、もっと受益者負担を徹底するとか、あるいは医師の、医療機関の不正、それから水増し請求、これは私はやりようだと思っているんです。この点はもっと力を入れてやらなきゃならん。しかし大蔵省がやるわけじゃありませんしね。府県知事なんですね、いまの制度では。府県知事が監督してやる。そこで何千億のものが稼ぎ出せるか。これはもう制度の問題、全くりっぱな人もいるわけですから、いっぱい。でたらめもあるし、非常に差が多い。ここらはやらなきゃならん。その次は公共事業六兆六千億円、これはばさっと切れれば一番簡単なんですよ。しかし、逆に公共事業はつけろと、景気対策じゃないか、足りないじゃないか、見通し悪いじゃないか、もう景気悪くなるのになぜもっとつけないんだと逆に言われていますから、切れるといったって切ることは現実的でないですね、これは。抑えることが精いっぱい。そうなってきますと、その次は今度は文教費の五兆円、何を切るんだと、人件費ですね。まあその中で切れそうなのは教科書と一つ言ったって、これまた教科書はどうだこうだとなかなかむずかしい、与野党とも。自民党の中も同じですよ。ですから、これも抑え込んでいくことで精いっぱいということになると、あと何をということになれば、防衛費の二兆六千億円。これはまあばっさりみんななくしてしまえなんて言う方もありますがね。これもしかし防衛費をなくしてしまうといったって、これは国家の存立に関するような話であって、とてもそんなことは言うべくしてできるものではない、そうなりますと、その次は農業関係費三兆円になりますが、そのうちの一兆円は、これは公共事業の中に入っているわけですね。あと残りの二兆円の中の一兆円というのは食管赤字ですね。これはできます。これは米を引き下げるということはなかなかこれも言うべくしてむずかしい話ですが、それでも数年間大体抑え込んでまいりました。ことしも一・一%ですから、実際名目だけの話でありまして、補助金を切ってそいつで裏打ちしたわけですから、大蔵省よけい出したわけじゃない。あとの一兆円は結局食管赤字のうち、六千五百億というのはコスト逆ざやなんですよ。高く買って安く売るという制度ですね。だから高く買ったものを一食当たりにすれば十一、二円安売りしているわけですから、それがなくなれば六千五百億だけは消えるんです。それには三五%消費者米価を引き上げればできます、これは。現実にはそうすると一挙に三五%も上げるのか、一食にすれば十一円でも、これは大きな差はとても一挙にできるものでありません。せめて数%、かなり年数がかかる。だけれどもこれはできます。農業補助金その他の補助金は一体何なんだということになりますと、人件費ですね、団体の人件費とか、そういうようなものです。これは極力われわれは抑え込んでいくようにしたい、そう考えておりますが、そこからも大きな金目というものはなかなか考えられない。国鉄七千億円ということになりますと、これはそのうち三千五百億——半分は要するに国の貸したお金の棚上げ部分の利息でございますから、これを切ればこっちへ入らなくなる、結局同じ。新幹線の建設とか、安全施設の補助金、これ全部切っちまうわけにいかない。新幹線はもう抑えるけども、これも切り方によっても何千億なんという金は実際は出てこない。そうすると、あとは外務省とか、あるいは経済協力、エネルギー、これはふやせという話はありますが、エネルギー対策費を減らせという話はない。それから、防衛費は出さないわ、経済協力も出さないわ、これではとても世界じゅうを相手に総スカン食ってしまう。これはなかなかもう抑え込むのも非常にむずかしいのが現実なんですね。したがって、切るのは切りますけれども、数兆円、五兆円の金なんというのはどこからもいますぐに出せと言われたって、どこから出るんですかとお尋ねをしたいぐらい。それは私の方は財界の人にも言っているんです。だから現実はやはり時間がかかる問題である。だから、その中でも極力制度を改めて、受益者負担にするものは受益者負担にして、そうして予算も伸びるものはある程度伸びざるを得ないものがあるわけですから、人件費なんというのはもう物価が上がれば、これは何年も何年も抑え込むと言ったって、これも言うべくして不可能な話。年金などはどんどんふえる一方。ですから、どこかでその分減らさなきゃならんということになれば、まずやるだけのことをやって、あとはもう御相談しか私はないんじゃないか、ざっくばらんな話が。世界全体の水準のことをやっておりながら、租税負担率と、社会保障費の負担率だけは安くて日本だけができるんだ、そんなことはあり得ないことでございますから、私はざっくばらんに全部を国民の前にさらけ出して、そして選択を求めるという形で一遍選挙でもしなきゃいかんのかもしれませんよ。私はしかしそれぐらいの決意がないと、このままずらずらいくと、本当に今度はインフレというような羽目に陥って、国民全体の生活や経済をだめにしてしまうと、そういうことを非常に恐れております。したがって、事前にそれを防ぐ最大限の努力を払っていきたいと考えております。
  235. 森田重郎

    ○森田重郎君 大臣のお話伺っておりますと、私は決して増税推進論者ではございませんし、そんなこと言いますと、党の方から大分おしかりを受ける、党の方では一兆円減税というようなことを言っているわけですが、減税に対する大臣の所感いかがでございますか。
  236. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 私も、特に勤労者、所得税については、ここ数年間、五年間課税最低限が抑えられているというようなことについて、重税感があると私は率直に認めたいと思っております。  課税最低限は、世界の中でも日本は一番高いんじゃないかと私が言っても、いやそんなことを言ったって、食う物が外国の方が安いとか、それはごもっともな御指摘がいろいろございます。しかし、サラリーマン控除とか、そういうようなものをやって、税率比較すれば、日本の方が税金が安いですから、所得税は。そういう点で私はバランスがとれていると思います。日本で住民税と所得税で、三百万円の人が十一万六千円しか払いませんが、アメリカだったらその倍払うとか、ドイツなら三十万だとか、イギリスは六十万とかという点になりますから、だから、そういう点はまだ私は、所得税それ自体は国際比較においてはそう重いとは思っておりません。バランスのとれた以上に私は日本の方がまだ負担が低いと、そう思っております。しかしながら、五年間も抑え込まれているというための重税感があるということは現実なんですね。特に中堅以上の、部・課長といいますかね、それら以上の方になりますと、一千万円を超すというのは、いま高額所得者一千万と一口で言いますが、私は一千万円というのは高額所得者で世間に公表するような数字じゃないと思っているんですよね、いまの価額から見て。そうなりますと、やっぱり四四%の税率が適用になりますから、かなり大学に子供やるとか、結婚だとかというぐらいの年になって、非常に重税感が強い。これも私は率直に認めております。したがって、何かそれに相応するような財源をみんなが考え出せれば、私は決して所得税の見直しということについてはやぶさかではありません。もっぱら財源の問題だと。日本はしかしながら、ほかから比べればうんと高くはないんですよ。これだけは知ってもらわなきゃならん。そういう点から言っても、ともかく免税制度というのがいろいろあるけれども、そういうようなものについて、あれはみんなそれぞれ理由があって免税制度があるんですが、これらはみんなでもう少し見直す必要があるんじゃないか。世界どこに行ったって、二百兆円近く非課税貯蓄があるなんていう国は、私は寡聞にして知りません、こういうものは。それはみんな零細な貯金だと、みんな零細かもしらんけども、だれかが割り込んでいるかもわからんのでありまして、ですから、何か発想の転換をみんなで考えていくということができれば、私は、所得税減税ということは、これは景気対策上も決して悪い結果にならん。ただ、日本の場合は、それは貯蓄率が高いから、ほかの国のように効果はないと思いますが、私は決して忘れてはいないということをこの際申し上げたいと思います。
  237. 森田重郎

    ○森田重郎君 ちょっと話題を変えまして、これ簡潔で結構でございます。言うなれば、第二の予算である財政投融資計画につきまして、臨調でも大変きつい注文をつけておりますですね。この財投計画に対する大臣の今後の資金運用と申しましょうか、その辺をひとつ簡潔に御説明いただければと思います。  同時に、大蔵省サイドから見た場合の、その資金の今後の動向、郵貯がどうであるとか、あるいは簡易保険ございましょうが、その辺を大蔵省サイドからごらんになった大臣の所見をちょっと簡単で結構でございます。
  238. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 簡潔に申し上げますが、財投については、過去において郵貯の非常な伸び率がよかったという時代等もあり、財政不如意という点から、何でも、つけないものは財投回し、財投回しと安易に財投で皆やってくれというようなことで、財投の方は、野方図というか、枠も決めずに、出たとこ勝負みたいなことが私あったと思うんですよ。しかし、今回はそうはいかない。したがって、財投の方も、やはり安易に財投でというほどの余裕がございません。したがって、これも洗い直して、財投に余裕があれば国債を引き受けなきゃならんというようなむしろ状態ですから、財投資金といえども、いままでのように財投ならばいいですよというわけにはまいりません。その見通し等については理財局長から御説明をさせます。
  239. 加藤隆司

    説明員(加藤隆司君) 財源の問題と歳出の問題等がございますが、財源の方は主として御承知のように郵貯でございます。昨今の計数でございますが、八月末、七月末あたりで現金ベースですと四、五%、全体としての郵便貯金の増加で大体六、七%というような伸びでございます。当初五十六年度が七兆六千でございましたが、ことし七兆九千と、その程度のものは出るだろうと思いますが、なかなか見通しがよくない。それから政保債とか、そういう民間の資金の導入もございますが、これもいま大臣が言いましたように、公債の方の、国債の消化との関連もある。財源事情非常に厳しい。  それから運用面でございますが、運用面は、これも大臣のお言葉の中にございましたが、国債が一体来年度どうなるのか。本年運用部から三兆五千国債を引き受けておりますが、来年度の国債の金額いかんによっては、こういうものを運用部がどのぐらい持つのかどうか。それから交付税等の地方財政の問題もございます。それから、予算編成の過程で、特別会計のいろいろ財源稔出がございますと、大部分のものは運用部に預託されておりまして、これが引っぱがされる等々でございまして、本来の財投諸機関にどの程度のものが回るか。そこいらいろいろ考え合わせまして、臨調で申しておりますように、歳出面あるいは融資対象、この優先度をよく見直すと、なおかつ必要なものはめんどうを見なきゃならない。民間資金等の政保債なり、民間借り入れの活用をいかに図っていくかというような問題にいま直面しております。  以上でございます。
  240. 森田重郎

    ○森田重郎君 時間がございませんので、簡単に文部大臣にお伺い申し上げます。一括御答弁ちょうだいできれば結構でございます。  一昨日の大臣の諮問でございますね。これは委員会のことでございますから、文部御当局から御説明をいただけるかどうかちょっと判断にも迷ったんでございますけれども、大臣の御説明いただける範囲で結構でございますので、一部に反対意見もあったようでございますし、特に私ども新聞紙上で承知する限りにおきましては、大石教授あたりも若干異論があったように承知をいたしておりますが、その辺の事情をお聞かせいただきたいということが一点。  それから二番目といたしまして、沖繩の県議会で、超党派でいろいろ要求しております例の日本軍の住民殺害の問題ですか。この辺も国内問題であるので国内的な解決処置ということについて、前向きの姿勢で検討されるというような御答弁を承知いたしておるわけでございますが、この沖繩問題についての今後の文部省としての対策と申しましょうか、それに対する対応と申しましょうか。具体的にいつごろどうするかというようなことまでお聞かせいただければ大変ありがたいと、かように思います。
  241. 小川平二

    ○国務大臣(小川平二君) 教科用図書検定調査審議会に対しましては、アジアの近隣諸国との善隣友好、相互信頼の精神を教科書によりよく反映させるための検定基準のあり方いかんということについて御審議を煩わすわけでございます、諮問を申し上げたわけでございますが、審議会といたしましては、第三者機関として独自のお立場から、当然のことでございますが、ずいぶんいろいろな御意見が出たわけでございます。大石部会長御自身におかれましても、官房長官談話の枠にとらわれずに審議をしようというような御発言もあった。非常に大ぜいの方からさまざまの御意見がございまして、中にはきわめて率直な御意見もございました。この際、それらの御意見のことごとくが外間に漏れて、あるいは不測の誤解を生むというようなことがあってはいけないという御配慮からと存じますが、新聞に対する取材は大石部会長が代表なさって当たられたところでございます。その内容は新聞が報道いたしておる、おおよそあのような内容でございます。  私は、諮問を申し上げた立場でございまして、私の口からしかじかの御意見があったと詳細にお耳に入れるということにはいささかはばかりがございますので、これはひとつ御容赦をいただきたいと存じております。  文部省といたしましては、この問題を余すところなく解決したいという文部省の気持ちを最終的には御理解いただいて、妥当な結論を出していただけるに違いないと強く御期待を申し上げておる次第でございます。  沖繩の問題でございますが、沖繩は改めて申すまでもなく、日本の中でただ一つの戦場になった場所でございまして、沖繩県民の方々は筆舌に尽くしがたい苦しみを味わわれた、そういう沖繩県民の方々の心の痛手ということに対しましては、当然十分な配慮がなされなければならないと存じます。非常に強い御不満の表明がございます。また、即刻改定せよという御要求もあるわけでございますが、これをたとえば正誤訂正という制度によって即刻改定するということにはなかなかまいりかねるわけでございます。この点につきましては、昨日本岡先生の御質疑に対しまして答弁を申し上げたところでございますが、正誤訂正と申します制度は、審議会の議を経ず、文部大臣限りで訂正が行える仕組みになっておるわけでございます。事ほどさように軽微な問題の記述の改定のための制度でございます。沖繩の問題は審議会の議を経て検定意見を出した結果の記述でございますので、これを審議会の議を経ずに改定をするということは、なかなかこれはできる話でございませんので、次の検定の機会に県民の方々のお気持ちに十分配慮して検定を行うつもりでございます。  以上、意を尽くしませんが、概略を申し上げました。
  242. 中山千夏

    ○中山千夏君 最近ちょっと戦史——戦争の歴史を詳しく勉強してみたいと思いまして、いろいろな人の意見を聞いておりました。そうしたら、こういう本を勧められました。「戦史叢書」という、御存じだと思うのですが、こういう本です。これ各巻定価が五千三百円、全巻セットで五十四万六百円という大変豪華な本なんですけれども、これをちょっと借りまして少し目を通しましたところ、いろいろ不安に思う点ですとか、疑問に思う点ですとかが出てまいりましたので、ちょっとこのことについて防衛庁にお伺いしたいと思います。  これは発行は株式会社朝雲新聞社というところになっておりますけれども、編著ですね、これは防衛庁の防衛研修所戦史部になってます。これは防衛庁の仕事というふうに見なしてよろしいんでしょうね。
  243. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) お尋ねの「戦史叢書」でございますけれども、これの編さんそのものは防衛庁の仕事として、防衛研修所の戦史部が編さんしたものであります。なお、発行は、わが方といたしましては朝雲さんの方でつくられたものを五百部購入はいたしておりますけれども、それ以外は朝雲の事業としてすべてやっておられるというように私どもは理解をいたしております。
  244. 中山千夏

    ○中山千夏君 この朝雲新聞社というところが出しているこの本の百二巻に関するパンフレットがあるんですが、そこに防衛研修所戦史部の森松俊夫さんという方が「戦史叢書が世に出るまで」という文章を寄せていらっしゃいます。それを拝見しますと、一九五六年から大変たくさんの重要な資料をもとに、返還史料が二万三千三百十三件、合同研究会は三千四十七回行われた。大変な長い年月をかけた労作だと思うんですけれども、この編さんに要した費用というようなものはざっとどのくらいになるんでしょうか。
  245. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 編さんに要した費用というのは、私どもいま手元にございませんけれども、戦史部の職員というものは、研修所に戦史部を設置して以来、この太平洋戦史をまず最初に手がけたという、現在は大体終わっておりまして、別の戦史の研究をいたしておりますが、費用そのものについてはつぶさに私どもいまのところ手持ちございません。
  246. 中山千夏

    ○中山千夏君 こういう費用は具体的に出すのはむずかしいと思うんですけれども、労力とか、費用とか、莫大なものだったろうと思います。こうやって防衛庁が編さんをした日中戦史及び第二次世界大戦史というのはこれだけですか。というのは、別の言い方をすると、国が編さんして出した戦史というのはこれだけかという質問とあわせてお答えいただきたいんですが。
  247. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 防衛庁といたしまして編さんをいたした第二次大戦の太平洋戦史としてはこれだけでございます。
  248. 中山千夏

    ○中山千夏君 大体ほかではこういうものをつくっているということはないんでしょうね、政府の機関で。
  249. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 調べたわけではございませんけれども、寡聞にして私どもとしては承知いたしておりません。
  250. 中山千夏

    ○中山千夏君 そうすると、いまのところでは日本が出した戦史のきわめつきだというふうに考えていいんじゃないかと思います。  先ほど購入した数は教えていただいたんですけれども、現在どの程度の部数発行されているんでしょうか。
  251. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) これは私企業がやっておりますので、私どもよく存じておりませんけれども、実はこれはもともとが戦史部でつくったものでございますから印税が入ってまいります。印税が三%ということで入ってまいりまして、いままでに約三千数百万円印税が来ておりますので、それから見て一万部弱ぐらいではなかろうかというように考えております。
  252. 中山千夏

    ○中山千夏君 これは「序」の中で書いてあったことなんですけれども、「自衛隊の教育、または研究の資とすることを主目的とし、かねて、一般の利用についても配慮した」と書いてありました。これは自衛隊の関係ではどの程度、どのように配付されておりますか。
  253. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 先ほど申し上げましたように、防衛庁といたしましては五百部を購入いたしまして、そのうち九十五部を内局、附属機関、統合幕僚会議、防衛施設庁及び図書館で使用をいたしております。なお、陸上自衛隊について二百二十一部、海上自衛隊が八十部、航空自衛隊が百部、予備として四部、合計五百部という配分の仕方をいたしております。
  254. 中山千夏

    ○中山千夏君 その際備品扱いということになっているんでしょうか。そしてその額、それを教えてください。
  255. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) この叢書を購入いたしました予算科目としましては、購入項目は庁費の備品費で購入いたしておりますので、国有の物品として扱いをいたしております。  なお、購入経費は、昭和四十一年から五十四年までの十二年間のうち、二カ年間を除きまして十二年の間に総額で六千六百九十八万円の支出をいたしております。
  256. 中山千夏

    ○中山千夏君 この発行なんですけれども、どうしてこれ防衛庁で発行ということはできなかったんでしょうか。
  257. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 私の方、詳しく存じておるわけじゃありませんけれども、防衛庁、先ほど申し上げたような研究用、教育用その他で必要とするのは五百部でございます。五百部のためにこれを印刷するのは非常に単価が高いものにつきます。またあわせてこういった客観的な資料というものはほかに日本にございませんので、これを御利用なさりたい研究者なり、学生とか、あるいは図書館等、所要もあろうかと思いますが、そういったことも含めて、当時余りそういう希望者がなかったわけでございますけれども、朝雲がその発行を引き受けるということで、朝雲に発行さしたように伺っております。
  258. 中山千夏

    ○中山千夏君 いわゆる省庁でつくった出版物を、ある一つの私企業が発行する、こういう例はほかの省庁では多いんでしょうか。
  259. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 他省庁のことは私はよくは存じ上げませんが、防衛庁関係の資料としましても、たとえば防衛白書、これは最近は国の刊行物センターといいますか、印刷局の方でやってもらっておりますけれども、一時は外部発注して、多数印刷をして発行したというような事例はございます。
  260. 中山千夏

    ○中山千夏君 ほかの省庁については余りよくわからないんですか。
  261. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) ちょっと詳しく承知しておりません。
  262. 中山千夏

    ○中山千夏君 先ほど印税が三%というふうに伝えていただいたんですけれども、その他の出版契約といいますか、そういうようなものはどういう形になっているんですか。
  263. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) ちょっと私所掌でございませんので、あるいは後ほど訂正さしていただくことになるかもしれませんけれども、三千部ほど刷って、そのうちの五百部を防衛庁としては購入するということで単価を計算をして、実費と申しますか、そういったものを計算をして、わが方の購入価格等を決めたと、要するに三千部発行するという前提で原価計算をしたということのようでございます。
  264. 中山千夏

    ○中山千夏君 それから再版されているわけですね、当然。何といいますか、発行の権利の年度とか、そういうことがわかりましたら後でちょっとお知らせいただきたいと思います。  それから、朝雲新聞社というところは、さっきもおっしゃいましたけれども、防衛年鑑なんかも前に発行しておりましたね。ほかにも防衛庁の発行をやっていたわけなんですけれども、朝雲新聞社のほかにどっかに発行を委託しているというようなことありますか。
  265. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 現在のところ朝雲新聞社には、たとえば「月刊国防」であるとか「装備年鑑」とか「アジアの安全保障」「ミリタリー・バランス」「防衛ハンドブック」等々、ただいまの戦史叢書以外にもお願いをいたしておりますが、私の承知しております限りでは、朝雲が主たる出版会社であるということでございます。
  266. 中山千夏

    ○中山千夏君 これも後で、もしほかにもそういう会社がありましたら教えていただきたいと思います。よろしゅうございますか。  また、こういうほかの私企業に、主として一つの私企業に発行を依頼して任せるというようなこと、これはほかの省庁では余り聞かないような気がするんですけれども、それはどうなんでしょう。
  267. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) これもちょっと調査をいたしておりませんので、間違っておりましたら後ほど訂正さしていただきますが、たとえば私の承知しております限りでは、東京法令という会社が、たとえば法務省であるとか、関係省庁の法規集等を出版しておる例がございます。また、日刊労働通信という出版社がございまして、これが労働省関係関係法令であるとか、解説書を出しておるというのがいまのところ思い当たるような実例でございます。
  268. 中山千夏

    ○中山千夏君 この朝雲新聞社というところは、防衛庁関係以外の出版というものはやってるんですか。
  269. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 正確に申しますと、先ほど私が列挙いたしましたような諸出版物も、この朝雲新聞社が独自で計画をしておやりになって、それをわが方が購入をしておると、こういうことでございまして、このほかにも「国防用語辞典」であるとか、「新防衛論集」、その他出版事業は行っておると承知しております。
  270. 中山千夏

    ○中山千夏君 そうですね、「防衛ハンドブック」というのを拝見しましたら、防衛庁ではなくて、この朝雲新聞社の編というふうになってましたね。そういうのも私は防衛庁関係というふうに思ってるわけなんですけれども、防衛庁の方から配っていただくものですから、それでそう思ってるんですけれども、その辺のことも詳しくわかりましたらまたお伺いしますんで、後ほど教えていただきたいと思います。  それから、この会社なんですけれども、これどういう資本になってるんでしょうか、この会社の資本は。
  271. 上野隆史

    説明員(上野隆史君) 資本金は六百万円でございます。
  272. 中山千夏

    ○中山千夏君 内容をちょっと教えていただきたいんですが、どういう資本でやっているのかということ、額だけではなくて。
  273. 上野隆史

    説明員(上野隆史君) これは株式会社でございまして、その株主がどういう人であるかということをつまびらかにはいたしておりませんが、会長、社長、取締役、監査役といったようなことで、社長は中島義雅、会長は増原恵吉さん、取締役が六名でございます。
  274. 中山千夏

    ○中山千夏君 この会社に防衛庁の関係者の方はおいでになるんでしょうか。過去三年天下りはないというふうに御返事を事前にいただいたんですけれども、その三年以前にいらしたり、それから元隊員の方がいらっしゃるとか、そういうことを含めてちょっと知りたいんですけれども
  275. 上野隆史

    説明員(上野隆史君) 先生からのあらかじめのお問い合わせで、過去二、三年の間に局長クラスのいわゆる天下りと申しますか、そういうものがあるかというお問い合わせに対しまして、そういうような局長以上の経験者がそこに勤務しておるという事実はございませんというお答えは申し上げました。  なお、一般の隊員でどうかというただいまの御質問でございますが、取締役の中に、これは元副師団長でありますが、昭和四十年に入社をいたしまして、もちろん退職してからですが入社をいたしまして、昭和四十五年に退社をしております者が一人おります。それは現在無給の役員、取締役ということで一人おります。なお、一般の社員におきましては元准尉あるいは陸士長、それがそれぞれ一名現在一般の職員として勤務をしております。それ以外の防衛庁関係者と申しますと、取締役会長であります増原恵吉さんでございますが、この方は御承知のとおり元参議院議員でございます。
  276. 中山千夏

    ○中山千夏君 どういう生い立ちの会社かというようなことは御存じですか。
  277. 上野隆史

    説明員(上野隆史君) 昭和二十五年警察予備隊発足当時にさかのぼるわけでございますが、当時共済組合がこれは警察予備隊におきましても他の官庁と同じようにできました。共済組合は、御存じのごとく、それぞれ隊員が拠出金をいたしまして、福祉等につきまして運営するわけでございますが、隊員の間から何か自分たちの間で一般の商業紙以外に、自分たち隊員の消息を伝えるとか、あるいは共済組合の福祉関係、どういうものがあるかとか、あるいは娯楽とか、教養とか、そういう面でもってのいわゆる機関紙的なものが欲しいなという要望が強くございました。やはり隊員から集めましたお金を有効に使うという面で考えますと、そういうものにこれを出費をして、そして隊員相互の親睦を図り、また士気も高揚しということは大変いいことであろうということで、共済組合がそういう機関紙をつくろうという決意をしたわけでございますが、その際、その編集、あるいは紙面の作成等につきましては、やはり専門家の力をかりたがよかろうということで、その当時日本保安時報社というものがございまして、その保安時報社にその編集印刷を委託をして、それを共済組合が買い取って発行するという形を当初とったわけでございます。ただ、その後昭和三十七年に至りまして、その発行権、つまり当時は防衛庁共済組合が発行という形で、印刷や何かはこの朝雲新聞社、先ほどの日本保安時報社というのは、たしか昭和三十二年であったと思いますが、朝雲新聞社に名前を変えたわけでございますけれども、その朝雲新聞社に共済組合が朝雲という名前で新聞を出す権利、発行権と言うようでございますが、その発行権をその朝雲新聞社に移譲したと。その後はもちはもち屋でやるがよかろうと、その方がいろいろ斬新な記事、活動も活発になるだろうということで、その発行権は朝雲新聞社に移譲して、その後同社が発行しておる、それを防衛庁が必要部数買い取っておるという形で現在まで来ておるわけでございます。
  278. 中山千夏

    ○中山千夏君 ちょっとこういう形で出版されているというのが不思議でもありましたし、国が仕事をして、そして私企業が何らかの部分依頼を受けますと、私企業は私企業で利潤が当然上がるわけですね。やっぱり会社ですから利潤を上げなきゃならない。ある私企業にそれが偏ってしまうというようなことについて、非常に疑問があるものですから、それでいろいろお伺いしたわけなんですけれども、ちょっとはっきりしない部分もありましたので、後ほどまた詳しくいただいた資料で今度の機会にまたちょっといろいろお伺いしたいと思います。  そこで、この叢書自身の話にちょっと移りたいと思うんですけれども防衛庁長官、私これ全部もちろん百二巻読んでないんです。ちょっと目を通しましたところで、これは太平洋戦争に対する反省を基調にしていないという感じがするわけなんです。むしろ侵略を肯定している、軍国主義を賛美していると、そういう傾向があると私は思うんですけれども、どうお考えになりますか。
  279. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 私も正直言いまして、一度も目を通したことがございませんので、私からのあれとして申し上げるのは差し控えたいと思いますけれども、事務当局からの報告では、史実を分析、検討をいたしまして、将来の戦略、戦術のあり方等を考察するということを目的として編さんしたものである。そしてまた、これをもって防衛学の一環として戦史を教育しているということでございます。したがいまして、史実につきましては、可能な限り客観的に把握するよう努めたものであるというふうに報告を受けております。
  280. 中山千夏

    ○中山千夏君 どうも私の感じ方とは違っているようなんですけれども。それはそうと、ここにその朝雲新聞社が出しているパンフレットがあるんですよ。この叢書のパンフレットなんですけれども、正式な百二巻の名称というのは、皆さんの方ではどういうふうに理解していらっしゃるんですか、この百二巻の通しの名称といいますかね。——それじゃ、ちょっと時間がないので申し上げますと、この背表紙は通しで戦史叢書と書いてあるんです。それから、防衛研修所の方からいただきました資料を見ますと、これの編さんの歴史など書いてありまして、そこには太平洋戦争戦史の刊行決定とか、そんなふうに書いてあります。太平洋戦争戦史ですね。ところが、このパンフレットを見ますと、大東亜戦争公刊戦史と書いてあるんですよ。これ大東亜戦争というのはちょっと適切じゃないんじゃないでしょうか。たしか文部省の方でも教科書などに、大東亜戦争という名称を用いるのは適切じゃないということで、特に何か注がある場合以外は用いていないというふうに私は思いますけれども、これどうですか。もちろんこれは朝雲新聞社がやったことですけれども、これもし皆さん御承知だったらばちょっと変なんじゃないかと私思うんですよ。
  281. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 全体の表題の件については私ども十分理解していないんで、御答弁にならない点お許しいただきたいと思いますが、わが方といたしましては、この発刊といいますか、刊行に際しましては、大東亜戦争ということではなく戦史叢書ということで刊行させていただいたということであります。  なお、内容的な個々の言葉の使い方ということになりますと、それぞれの巻がございまして、それぞれその当時政府としてどういう呼び名をしたかという言葉をそのまま忠実に使っておるということで、まとめてどうこうという、戦後大東亜戦争と言うか、あるいは太平洋戦争と言うかというような評価を加えた名前をつけているということではなくて、そのときその作戦が当時何という名前で呼ばれたか、あるいはどういう戦争の呼び名を、当時日支事変を含めまして大東亜戦争と言うとかいう閣議決定があったり、いろいろありまして、その当時の言葉をそのまま引用しておるのが、これが事実に即してつくられているという意味ではそういう形になっておると思います。
  282. 中山千夏

    ○中山千夏君 こういう形で宣伝されますと、ごらんになるとわかるように、防衛庁防衛研修所戦史部著 大東亜戦争公刊戦史となっているんですよ。こんなふうに名前を勝手に、しかも非常に望ましくない名前をつけられてしまって、これまずいと思いませんか。全然平気ですか。
  283. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 確かにいろいろそういう点で宣伝等については私ども目の行き届かない点もあったと思いますが、先ほど来長官から御答弁申し上げましたように、この戦史叢書そのものが、特に特別の主張をするとか、あるいは意見を述べる、評価をするといったことではなくて、それぞれの作戦なり、当時の戦争指導というものを、彼我両方のあった事実というものを、経過を淡々と叙述すると、あるいは当時出されたものをそのまま引用するといったような、いわゆる史実の叙述という構えでつくってありますので、内容的にはこれについて特段の、当時の太平洋戦争をどう評価するかとか、そういったものではございませんで、あくまで今後そういった太平洋戦争を通じてどう評価するかといったような勉強したい方々の基礎資料として参考になるようにということでつくられておるというものであることを御理解いただきたいと思います。
  284. 中山千夏

    ○中山千夏君 本当にこんなことを申しちゃ失礼なんですけれども、もしかしたらお読みになってないんじゃないかというように、いまの御答弁聞きますと私は思うんです。先回りしてちょっとおっしゃってくださいましたが、この会社が大東亜戦争史という題をつけるのは無理ないわけですよ。というのは、この一つ一つの本の題の中には、六十五巻大本営陸軍部大東亜戦争開戦経緯とか、その他にもあと四つぐらい大東亜戦争という副題をつけたのがございます。だけれども、それ見ますと、その当時はこういう呼び名だったんですよという感じには全然なってなくて、いまだにこういう呼び方をわれわれはしておりますという受け取り方しかできないんですね。そうして、その中身にしましても、たとえば項目といいますか、目次一つ見ても、さっきおっしゃったように、その当時の作戦なり、何なりの呼び名をそのまま使っているわけです。そして、それに何の注意書きもないわけです。ですから、治安戦なんというのが盛んに出てきますし、それから反乱工作とか、治安粛正計画とかというのが盛んにこの巻に関していえば出てきます。それから、中で評価をしたり、論評したりは全然していないといまおっしゃいました。これから私読みますから、ここにいらっしゃる委員の方にもこれが評価や何かではないかということをぜひ考えていただきたいと私は思うんです。  たとえば、これは「マレー進攻作戦」というものの中のある部分なんですけれども、「近衛歩兵第五連隊その他がようやくマレー作戦に参加できることになり、勇躍南進を始めた。」、こう言っているんですね。「勇躍南進を始めた。」というのが非常に客観的な書き方かどうかということについては私は疑問があります。それから「両討伐隊は四月一日以降、蠢動する敵を求めて、急襲し、」と、こういう表現があるんですね。蠢動というのは虫などがうごめくこと、取るに足りないものが動き回ることと、こういう意味なんだと私は思います。そういう書き方が果たして客観的かどうかということですね。それから、「中共軍第六旅に合流した姜立川部隊が蠢動して、重慶系遊撃匪との相剋が激化し、」云々「大小匪団の活動も活発化した。」。この「匪」というのは匪賊とかいう悪者、賊徒のことですね。時間がないんで少し省きますけれども、「政治は廉潔直載を旨として従来の腐敗政治を一掃し、共産党の残酷政治を批判し、これに勝る清新な政治経済施策の強行に努力した。」、こういう文章があるわけです。これ地の文章ですよ、資料の引用じゃないんですよ。それから、これ字がむずかしいんですが、「「剿共指針」によれば「剿共戦ノ要諦ハ断乎タル必滅ノ信念ノ下」」云々云々と、これは「剿共指針」の内容を書いてあります。「「不断ニ敵ノ追随ヲ許ササル討伐ヲ実施シ速ニ之ヲ撃滅スルヲ要ス」と述べている。」、その後に、「まことに至言である。」こう書いてあります。  それから、また、「反共の立場にあるが、反日的でもあるもの、すなわち日本の思想や政策の本質は侵略であると考えている知識人を説得する力にも欠けていた。」この部分はこの本全体の「むすび」でして、この治安戦に対する論評を加えている部分なんです。だから、論評とか、評価とか全然ないとおっしゃいましたけれども、各本に「むすび」という部分がありまして、そこではいろいろと論評を加えているわけなんですね。その論評の中に、いろいろとうまくいかなかったことの反省ですとか、ここの戦で負けちゃったことの原因だとか、こうやればもっとうまくいったのにというようなことが書いてあるわけですね。その中に、反共の立場にあるが反日的でもあるもの、すなわち日本の思想や政策の本質は侵略であると考えている知識人を説得する力にも欠けていた。これは読みようによっては侵略ではなかったというふうにこの本は言っているということになると私は思います。こういう反省の色が全然ないと思われるような部分が——あと読んでませんから、もしかしたら一番最後に大反省しているのかもしれませんけれども、少なくともこの一冊があったらどんなに反省してても、もしこれを中国の人や韓国の人が読んだらどう思うだろうかと私は心配になります。こういうものが防衛庁の手で公刊されたということが、教科書検定にも影響を与えているんじゃないかという気が私はすごくするんですね。自衛官、特にこれは自衛官を教育する、自衛隊を教育するということが主目的に入っています。この主目的に入っている自衛官にこういう戦史を教育されたら、これはちょっと問題なんじゃないかと私は思うんですね。全然いま読んで私は客観的でもないし、冷静に史実だけをつづったものでもない、それこそ表題どおり大東亜戦史と言った方がふさわしいようなものだという気が私はするんです。どうですか。長官はお読みになってないでしょうけれども、いまお聞きになってどうですか。
  285. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 大変申しわけないんですが、私自身も全巻通読したわけではございませんで、必ずしもすべてということにはまいりませんけれども、先ほど申し上げたように、本叢書そのものは、あくまで客観的な立場から資料を収集整理をする。そして、それをできれば後世にも残したいということでありまして、先ほど申したように、史実の経過に従ってできるだけ客観的に叙述をしていくということでありまして、意見なり、あるいは評価といったようなものは極力抑えるということになっております。ただ強いて申し上げれば、そういった評価のような部分があるとすれば、「あとがき」というのが各巻にときどきあると思うんですけれども、たとえば大本営陸軍部といったような、これは六十八巻だと思いますが、「あとがき」といいまして、編者のある程度感想じみたことをちょっとやや主観的な意見みたいなのが出ている部分があります。そこなんかでは、たとえば、これは当時のシナ事変の部分でございますが、いろいろ日本のやり方というものを反省をしているといったような部分もありますし、必ずしも戦争を謳歌しているとか、そういったようなことは私はないというふうに理解をいたしております。  なお、いろいろ先生指摘になりましたけれども、いろいろ当時の言葉等を引用してございますので、これはわが方が編さんいたしましたから日本関係が多うございますけれども、中には中国関係、あるいはソ連その他の文献等も引用いたしておりまして、その中には、たとえば蒋介石総統の秘録というようなところからとってあって、日本の侵略時代云々というような言葉も出てまいりますし、一方だけから拾い上げてどうこうということではないということを御理解をいただきたいと思います。
  286. 中山千夏

    ○中山千夏君 そうおっしゃると思ったから私は地の文だけを拾い上げたんですよ。それは私は、資料の中で、たとえば匪賊と書いてあったって、これは当時の人たちがそういうものを書いたんですから、それは事実ですよ。事実ですからそれは別に文句言ってないわけです。当時の人たちが大東亜戦争ということだって、大東亜戦争と書き残したことだって、それこそ史実ですから、それがそのまま載っていることについては、これはどなたも異論がないだろうと思います。それも全部燃やしてしまえ、消してしまえというのでは、ちゃんと反省すべきところもできなくなりますから、むしろそういうものがあることは、今後日本人が生きていく上で非常にプラスになることかもしれません。だけど、その当時使われていた、ほかの国から見れば非常に怒るに違いないというような言葉を、そのまんま地の文章でこの著者が——これ一冊ずつ著者が違うようですけれども、その著者が自分の言葉として書いているわけです。私は思いますのに、もし匪賊なら匪賊と書く場合には、これは、当時そういうふうに言われていたというふうに注釈をつけておかなかったらおかしいでしょう。注釈がついてるならわかるんですよ。注釈ついてないですよ、全然。この人の言葉でそう書いてある。書いている人の言葉で書いてある。防衛研修所の人です。防衛庁の人です。これ、だれが読んだって、あっ、防衛庁はこういう考え方なんだなと、その部分に関しては思いますよ。防衛庁は匪というふうにたとえば中国を思っているのか、いまでもそう思っているのか、そうとしかとれないんですよね。それで私いろんなところを指摘したんです。決して資料の部分を取り上げて云々しているわけじゃありません。さっき、たとえば中国の資料など、蒋介石の資料など引用した場合には、その中に侵略という文字が書かれてあると非常に得意そうにおっしゃいましたけれども、それは向こう側からの見方ですから、そういうものがあるのは、別に、こっちに匪賊という言葉があるのと同じ重さであるわけですね。そうじゃなくて、地の文章、いまの防衛庁の人が書いている地の文章の中でどう言っているかということが私はとても大切なんだと思うんです。その部分に非常に問題があるから、私はきょうこうやって時間を拝借しているわけなんです。それは、そこのところはわかっていただきたいと私は思います。いかがですか。
  287. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) お答えいたしますが、この戦史叢書の中身——地の文というように申されておりますけれども、これは編さん官そのものの意見というものは入っておらないんです。資料によるものは資料をそのままに、はっきり文書の資料が残っておるものは引用として書かれておりますし、それ以外、非常に多くの方から聞き取り、当時の、この戦時中のいろいろな作戦に当時参加された方の口述その他をとって、そういったものを整理し、真実と思われるものを叙述するということでありまして、編さん官自身が頭の中で想像して書くとか、そういった創作をするといったものではない性格のものであるということは御理解いただきたいと思うわけであります。
  288. 中山千夏

    ○中山千夏君 本当にわからない方ですね。そうじゃないですよ、これ読みますと。編さん官自身の言葉もあるわけです。それで、引用されるところは引用されたところで、こうこうだというふうに書いてあるわけです。たとえばほかの戦史をごらんになれば、きっとその違いが歴然とすると思うんですけど、きょう時間なくなってしまいましたけど、ほかのところで、防衛大学の教育についてちょっと伺いたいと思っておたくからいただいた資料なんですけれども、防衛大学で使っていらっしゃるものだそうです。これは海戦の、日清も日露も含めてのものですけれども、これなんか、目次見ましても、非常に客観的なんですよ。ちゃんと中に、当時の言葉を使ってあるところはそれとわかるように書いてあるわけです。それから、もちろん、考察なんかのところでも、私などは、私から見ますと、ちょっと偏ってないかなと思うところはありますけれども、それでも、中で匪賊とか、わが軍というような言い方はしてありますよ、だけど、決して、この人の叙述の中で、どんなに資料を引用したことに基づいて書いていても、そういう言葉遣いはしてらっしゃらないわけです。これは「日清日露大東亜海戦史」という本ですけれどね。  それと比べてみますときに、どんなに当時の資料を引用していても、第一、もしそういうお気持ちがないんだったら、誤解を招きますから、きちんと、ここのところは、この言葉は当時の人がこう言ってるんですよ、匪賊というのは僕らが言ってるんじゃない、当時の人がこう言ってるんですよということがわかるようにしてなかったら、これは問題になりますよ、当然。それから、一番最初は意見は全然入れてないとおっしゃった。それから、その次には極力入れないようにしている。そして、結びのところにちょこっと入っているというふうにおっしゃいましたけれども、先ほどから私がちょっと申し上げた部分は、多くの部分その最後の「むすび」というところではないところです。  それから戦史を学ぶことの意味というものを考えますと、これは戦史を学んで、それを将来に生かしていくということなんだろうと思うんです。ですから、評価がないとおっしゃるけれども、人間が書くものにはどうしても評価とか意見とか出てきますから、その評価や意見というものがどういうものか分析して、評価してある、それがどういうものかということが、とても将来それを生かすときにかかわりが出てくるわけですよ。  それで、私が大変心配に思いましたのは、たとえば「むすび」、これはそちらでも認めていらっしゃる、書いた方の意見が出ているというところですね。ちょっとだか多くだか、私は大変たくさん出ていると思いますけれども、特にこの巻は多いですね。「北支の治安戦」というのは大変結びが長いです。読みます。   治安戦では戦闘行動に随伴して治安工作を実  施しなければならない。政治戦を戦い抜かねば  ならない。しかも、治安戦は地味であり、苦難  の連続である。   従って将兵各個人のすべてが、強靱な神経を  持ち、政治性を身につけた精鋭な戦士でなけれ  ばならない。そして上級指揮官としては、たと  えば論功行賞にあたっても、この地味な苦しい  努力を正しく評価しなければならないと思う。   以上のような反省が加えられるとしても、北  支那方面軍の厳然たる存在が、昭和二十年の終  戦まで中共軍の総反攻を抑止した事実を忘れる  ことはできない。中共軍の「強きを避けて弱き  を撃つ」原則からみて、日本軍は真に強い軍隊  であったのである。こういばっているわけですよね。
  289. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 中山君、時間が来ておりますから簡単にお願いします。
  290. 中山千夏

    ○中山千夏君 はい。もう一つだけ読みます。   最後にフランスの軍事史研究家ホガールの論  文「革命戦争の戦術と戦略」から要点を摘録し  よう。これはホガールが主にアルジェリア革命  史を研究して書いたもので、反革命戦争の一四  原則を掲げ、特に妥協的解決を非とするととも  に軍、官、民各施策の総合的戦略戦術を強調し  ている。これらは北支の治安戦と相通ずるもの  があり、要はそれを実行し完遂すること、また  実施できる諸条件を整えることであると思う。  こういうものを参考にして、自衛隊が将来やっていく、こういうものを戦史から学んでやっていく、そうして一方で、この戦争に対する反省というものが全然この中には盛り込まれていない。これが唯一の——唯一というか、一番大きな防衛庁がつくった自衛隊の教育のための戦史だとしたら、私こんなに危険なことはないと考えているんです。これ一度頭から読んで考えていただきたいと思うのですけれども、長官いかがでしょう。
  291. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 私どもの不勉強を理由にしては意味もありませんけれども、きょう正直言いまして先生から初めて伺ったことでございますので、われわれも現物に直接接触をし、また対処をして、先生の御高見なり御批判にお答えするようなことができますならば、そういう方向に進まなきゃならないと思っております。
  292. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 以上で、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件の総括質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十四分散会