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1982-04-22 第96回国会 衆議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十二日(木曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 羽田野忠文君    理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君    理事 高鳥  修君 理事 中川 秀直君    理事 稲葉 誠一君 理事 沖本 泰幸君       井出一太郎君    上村千一郎君       木村武千代君    高村 正彦君       白川 勝彦君    広瀬 秀吉君       鍛冶  清君    三浦  隆君       安藤  巖君    林  百郎君  出席政府委員         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務省入国管理         局長      大鷹  弘君  委員外出席者         参  考  人         (駒沢大学教         授)      川原 謙一君         参  考  人         (愛知県立大学         教授)     田中  宏君         参  考  人         (大阪生野区         長)      山崎 仙松君         参  考  人         (弁護士)   尾崎  陞君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ————————————— 委員の異動 四月二十一日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     毛利 松平君   上村千一郎君     柳沢 伯夫君   亀井 静香君     平泉  渉君   佐野 嘉吉君     森田  一君   白川 勝彦君     相沢 英之君 同日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     白川 勝彦君   平泉  渉君     亀井 静香君   毛利 松平君     今枝 敬雄君   森田  一君     佐野 嘉吉君   柳沢 伯夫君     上村千一郎君 同月二十二日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     三浦  隆君 同日  辞任         補欠選任   三浦  隆君     塚本 三郎君     ————————————— 四月二十一日  国籍法の一部改正に関する請願土井たか子君  紹介)(第二四三七号)  外国人登録法の是正及び運用改善等に関する請  願(関晴正紹介)(第二四七六号)  同外一件(戸田菊雄紹介)(第二四七七号)  同(野口幸一紹介)(第二四七八号)  同(山本政弘紹介)(第二四七九号)  同(枝村要作紹介)(第二五七〇号)  同(田口一男紹介)(第二五七一号)  同(山田耻目君紹介)(第二五七二号)  同(渡辺三郎紹介)(第二五七三号)  法務局、更生保護官署及び入国管理官署職員の  増員に関する請願山原健二郎紹介)(第二  四八〇号)  刑法改正反対に関する請願(阿部未喜男君紹  介)(第二四八一号)  同(井岡大治紹介)(第二四八二号)  同(小川国彦紹介)(第二四八三号)  同(勝間田清一紹介)(第二四八四号)  同(長谷川正三紹介)(第二四八五号)  同(山田耻目君紹介)(第二四八六号)  同(矢山有作紹介)(第二四八七号)  同(吉原米治紹介)(第二四八八号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第二五二二号)  同(伊藤茂紹介)(第二五二三号)  同(井上一成紹介)(第二五二四号)  同(金子みつ紹介)(第二五二五号)  同(木島喜兵衞紹介)(第二五二六号)  同(久保等紹介)(第二五二七号)  同(細谷治嘉紹介)(第二五二八号)  同(渡部行雄紹介)(第二五二九号)  同(稲葉誠一紹介)(第二五六二号)  同(大島弘紹介)(第二五六三号)  同(小野信一紹介)(第二五六四号)  同(加藤万吉紹介)(第二五六五号)  同(角屋堅次郎紹介)(第二五六六号)  同(川本敏美紹介)(第二五六七号)  同(木間章紹介)(第二五六八号)  同(松本幸男紹介)(第二五六九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出第六八号)      ————◇—————
  2. 羽田野忠文

    羽田野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出外国人登録法の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として駒沢大学教授川原謙一君、愛知県立大学教授田中宏君、大阪生野区長山崎仙松君、弁護士尾崎陞君、以上四名の方々に御出席いただいております。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案について、参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  御意見の開陳は、川原参考人田中参考人山崎参考人尾崎参考人順序でお一人十五分以内に取りまとめてお述べいただき、次に委員からの質疑に対しお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず川原参考人にお願いいたします。
  3. 川原謙一

    川原参考人 いま御紹介いただきました川原でございます。  本日は、御招待ありがとうございました。外国人登録法改正法案に関して簡単に意見を述べさせていただきます。  まず第一です。外国人入国滞在の許否、許可または否、及び在留管理をどのように行うかの決定は、それぞれの国の主権の作用として各国が自由に定め得るものであることは、改めて申し述べるまでもないことでございます。わが国におきましても憲法及び諸条約違反しない限り、外国人入国滞在に必要な制限を課し、所要規制を行うことができることは申すまでもないところでございます。  次に第二として、右の基本的な認識のもとにおきまして外国人管理を考えてみますと、外国人入国滞在について可能な限り基本的人権を尊重し、排他的な不必要な制限を課することは避けねばなりませんが、国の利益及び公安を擁護し維持するため、具体的には国防、治安上の観点から、また経済、社会労働などの諸事情を踏まえまして外国人に対する管理のあり方を検討すべきであり、その結果により外国人に対しまして一定の制限義務を課する政策が決定されるのであって、諸外国におきましても、その国の事情政策によって外国人に対する管理の仕方は区々であります。どの国においても、自国民外国人とを全く同一に処遇してはおりません。合理的理由に基づきまして、内外人に対して異なった処遇規制が行われていることは御承知のとおりでございます。  次に第三番目に、ところで、わが国における外国人登録の歴史を振り返ってみますと、終戦後のあの混乱した時代に、在日外国人朝鮮半島及び台湾出身者数十万人の身分関係及び居住関係を明確にするため、市町村において登録を行い、登録証明書携帯させることによって在留外国人の実態の掌握とその管理に着手したのでありますが、社会的混乱のさなかにあって、虚偽申請不正登録等が続出し、一人で二重、三重の登録を行い、極端なケースとしては一人で何百もの登録を行ったような事例も発生し、また、他人の登録証明書を譲り受けて写真を張りかえて本人に成り済ます等、外国人登録制度を悪用する者が後を絶たず、このため外国人登録関係の法令は、昭和二十年代から三十年代の前半にかけ、不正登録を防止し登録制度を維持するため再三にわたり改正が行われ、管理の強化が図られるという経過をたどっております。  次に四番目として、わが国の現状を見ますと、一時期に比べ不法入国者は減少の傾向にあるようではありますが、依然として不法入国する者は後を絶たず、また、不法入国後潜在していて摘発される者も、合法的に入国してから潜在して摘発される者も多いようでございます。  さらに、近年の著しい傾向でありますが、観光査証入国して単純労働に従事したり、また、バーやクラブでホステスとして働くなどのいわゆる資格外活動を行い、あるいはそのまま不法残留して稼働を続ける事例も多いようでありまして、この種ケース摘発が再三報道されていることは御承知のことと思います。  わが国におきましては、外国人登録制度が整備されておりますので、このような不法入国者不法残留者摘発に当たり、外国人登録が果たしている役割りは大きいものと考えられます。特に、写真を貼付し指紋押捺した登録証明書携帯制度指紋押捺制度は、単に適法な在留者違反者を識別するのに役立つのみならず、この制度が果たしている抑止力、すなわち登録制度があることによって違反を思いとどまらせる効果は大変に大きいものと考えられます。  第五に、また、外国人登録制度は、外国人身分関係居住関係を明らかにし、在留する外国人の公正な管理に資するため国家の側から必要とされるものであるのみならず、外国人にとっても外国人登録をすることによってみずからの身分証明するのに役立ち、これが基本となって印鑑証明児童手当等を受けることができる等の利益を享受することができるのであって、わが国外国人として在留する上で大いに役立つものであり、外国人登録制度が発足して以来三十五年をすでに経過し、この制度わが国社会に定着し、きわめて有益な制度となっていると考えます。  第六番目に、しかし、いかなる制度といえども万古不易のものではなく、時代変化に応じ、社会情勢に対応した制度に改めるべきことは言うまでもなく、外国人登録制度もその例外ではあり得ません。この意味からも、現行法施行後三十年をすでに経過し、社会情勢変化も著しい今日において登録制度全体の見直しを行い、所要改正を行おうとすることはまことに時宜を得たものと考えられます。  また、改正案の内容も、各種申請等に際しての本人出頭新規登録等に際しての写真提出及び指紋押捺並びに登録証明書携帯等の各義務を課す年齢を十四歳から十六歳に引き上げること、現行確認申請の期間三年を五年に伸長し、かつ、十六歳に満たない者については十六歳に達するまで確認申請を要しないこととすること、さらに、登録証明書携帯しなかった者に対する法定刑を、現在、「一年以下の懲役若しくは禁錮又は三万円以下の罰金」とされているものから自由刑を廃止することなどは、在日外国人の負担を軽減するため思い切った緩和措置を講じようとするもので、年少者に対する配慮も行われている点にもかんがみ、適切な改正案であると評価いたしております。  以上でございます。御清聴ありがとうございました。
  4. 羽田野忠文

    羽田野委員長 ありがとうございました。  次に、田中参考人にお願いいたします。
  5. 田中宏

    田中参考人 御紹介いただきました田中でございます。  手書きのもので大変読みにくいかと思うのですけれども、レジュメのようなものをちょっと用意させていただきましたので、時間も限られておりますので、それで申し上げていきたいと思います。  私は、いまは大学の教師をしておりますけれども、以前長い間、日本に勉強に来ている留学生世話団体仕事をしたものですから、わりあい外国人の身近なところで外国人の置かれている問題に大変関心を持って、いまでは大学でもそれに関連したような授業もやっているという、そういう立場で御意見を申し上げたいと思います。  私の感じますところでは、ここ数年、日本における外国人地位処遇をめぐってかなり大きな変化が見られるようになってきた。今度の法改正もそういう変化の中で私は理解をしたいと思っております。  変化の第一点は、ことしの一月から、当委員会でも恐らく審議をされたと思いますけれども、出入国管理令のかなり大幅な改正が施行されて、いわゆる特例永住制度というのが発足したことによって、日本在留する外国人が、大きく分けて永住者とそうではない非永住者に二分されるということが非常に明確になってきた。これはアメリカにおけるイミグラントとノギンイミグラントとやや似た区分けが成立したというふうに私は考えております。したがって、今回の法改正もそういう在留のカテゴリーの分化をどういうように反映させるかということをやはり考える必要があるだろう。統計的に見ましても、戦前からいる朝鮮人韓国人あるいは台湾出身のいわゆる旧植民地人たちを中心にして、今度の法改正永住者に数えられる範囲というのは恐らく八十数%、場合によっては九〇%近い部分は日本永住者、すなわち期限の定めのない在留を認めるということを正式に認めた外国人になったわけで、こういう状態になったことを念頭に置いて今後考えていかなければいけないだろうというのが第一点です。  それから二つ目変化は、これもことしの一月から変わったわけですけれども、難民条約に加入することになったために、社会保障関係でいわゆる国籍要件というのが撤廃された。若干問題が残っているようですけれども、その基本精神は、日本住所を有する日本国民だけを相手に社会保障をやるのではなくて、国籍がどこであろうとも、日本住所を有する人全体を対象に社会保障行政をやるという大変重要な原則の変更がことしの一月から行われたわけで、別の観点から考えれば、内外人平等に一歩前進したという年でもあるわけで、外国人登録法についてもそういう観点から考える必要がありはしないか。  それから三番目は、日本人権状況に対して国際的な関心が非常に高い、こういう国際的な関心にこたえるものを日本の国内でどう実現するかということがやはり問われているだろう。これはつとに御承知と思いますけれども、人権規約に加盟したことに伴って、日本政府国連人権専門委員会日本人権状況に関する報告をいたしました。一九八〇年の十月でございます。それが昨年の秋に国連人権専門委員会で検討されたようであります。  その討議録を最近私は拝見したのですが、その中に、今日の議題である日本における外国人人権状況について、各国委員から非常に強い関心が寄せられている。ちょっとそこに引用しておきましたけれども、たとえば日本には朝鮮とか中国の民族のグループがあっていろいろな問題を持っているということを聞いているけれどもどういうようになっているだろうか、あるいは委員会在日朝鮮人中国人地位に関する情報を持っているけれども、日本政府報告はこれらについて非常に不十分である、もっと詳しい実情を当委員会報告をしてほしい、そういう指摘がなされていて、国際的に日本人権状況に非常に重大な関心が集まっている。  この三つを私は、この問題を考える上での前提に考えたわけです。  次に、今回の改正案について申し上げたいと思いますけれども、私はこちらの本院から送っていただきました関係資料を拝読して、率直な感想を申し上げますと、ああこれは行政簡素化をやるということだねというのが私の第一印象であります。要するに、幾つかの行政上の手続が免除されるようになります。その限りにおいて外国人手続が軽減される。たとえば、十六歳未満の子供については外国人登録の切りかえが不要になる。これは外国人の方で便利であると同時に、お役所の方で仕事が減る、大体そういう感想を持ったわけです。  行政簡素化と若干性質が違う改正点とすれば、登録証明書の常時携帯義務、これに違反した者の罰則を、現在は自由刑一年以下がついているのですが、これを外して罰金だけにするというところがやや行政簡素化とは性質を異にする改正点だろうと理解いたします。  常時携帯の問題については、私も現場にいる一人の者として、率直に申しまして大変評判の悪い条項でございまして、日本人は街を歩くときに身分証明書を持って歩くという必要性を全く感じないで、そういうことがない形で私たち生活をしているわけですね。そういう中にまじって生活をしている外国人だけは証明書を持たなければいけない。私は、証明書を持つこと自身を廃止するべきだというようには必ずしも考えませんけれども、不注意で、過失で忘れるということもあるわけですから、不携帯について非常に重い罰を科すということはいかがなものかということをかねがね感じていて、実は昨年の九月ですけれども、直接私が知った事例で、関西で勉強していた中国政府派遣留学生東京にいる友達のところに遊びに来て、大変不注意ではあるわけですが、登録証明書を持たずに東京に来たんですね。たまたま夜、自転車に乗っていて警察官職務質問というのでしょうか、どこへ帰るのだというようなことを聞かれて、北京から来て一年半ぐらいの学生ですから、言葉は明らかに日本人でないということがわかったらしくて、登録証を出せ、いやちょっときょう忘れてきました。そのまま警察に連行されて、それで一晩泊められたわけです。  実は、東京に仮泊していた友人のところに翌朝、警察にいる本人から電話がかかってきて、実はきのうの夜、警察につかまっているんだ。友だちもびっくりして警察を訪ねたのですけれども、本人は手錠をかけられて出てきたのです。それで、全く私の不注意で登録証を持っていなくて申しわけないということを本人友人もともにわびたようですけれども、頑として聞き入れなくて、警察の方で出した条件は、とにかく登録証明書をこの場に持ってくるまでは釈放はしない。やむを得ず東京にいるその友人中国人留学生は、新幹線に乗って大阪まで出向いて、本人留学生会館の部屋から外国人登録証明書を持って東京までトンボ返りをして、それを提示して辛うじて釈放された。  北京から希望に燃えてやってきた青年がどういう感想を持ったかということは私は申し上げる立場にありませんけれども、こういうことが起こる一つの原因は、不携帯罪に非常に重い刑罰を科している。捜査の必要上、重い刑罰についてはそれなりの対応をするというのも恐らく警察立場でしょうから、もしこれが非常に軽微なものであればそれほどにする必要を警察も感じないのではないか。私は、どんなことがあってもこういうことだけはもう二度と起こしてほしくない。私は、捜査のために一生懸命努力された警察官を非難する気は毛頭ありませんで、こういう法条がつくられている限りあるいはやむを得ないのかなと思うわけです。  素人ですけれども、運転免許のことをちょっと考えてみたのです。免許証を持たずに、いわゆる無免許で車を運転されると、こちらはたまったものではない。その人が免許証を持っているかどうかというのは非常に簡単にわかるようにしておきたい、それで自動車の免許については携帯義務、車を運転するときには必ず持てというように法律が定めている。免許の方を見てみますと、無免許運転は六月以下の懲役というようにかなり自由刑も伴ったものになっているようですけれども、しかし、免許の不携帯については一万円以下の罰金または科料ということで、私も、たまたま同乗した友人免許を持っていなくて、その場を見たことがありますけれども、反則切符を切って、それで別に問題はない。あと三千円か幾らかのお金は払う。免許はないけれども反則切符を持っていれば、この人は無免許ではないということの逆証明になるので、このまま車は運転していただいて結構ですというように私の友人は言われたことがありますけれども、その程度扱いをして一向に差し支えないのではないか。  何分、証明書を持ち歩くという制度になっていない国なのです。欧米ですとIDカードというのを自国民も含めて持っている場合が非常に多いわけですけれども、私なんかも身分証明書はただ一つ大学から、おまえはこの大学の教員であるという証明書を持っているだけで、いわゆる身分証明書なるものはないわけですね。大体職場の証明書しか持たないのが日本社会の慣例になっている。その点で、今次改正案については不携帯罪刑罰罰金二十万というかなり重い罰にまだなっていることについては、私は先ほど御紹介したようなケースが再び起きかねない。したがって、現行犯逮補ができない程度の軽微な刑罰に少なくとも押しとどめるべきではないかというように思います。  実は私は、今度の法改正案を拝見してやや失望したというような感想を持ったのですが、それはいろいろな懸案が従来からあって、今度はかなり大きな改正案かと思って、当然その幾つかは十分検討されて改正されているかなと思ったのですが、さっき申し上げたように、私にとっては非常に懸案の多くが積み残されたままである、懸案幾つか、全部申し上げる時間的な余裕がありませんので、二点だけ申し上げます。  一つ指紋押捺の問題。これはもちろん日本人にそういうものはないわけです。前段で申し上げたように、内外人平等ということを日本社会がこれからいろいろ考えていかなければいけないときに、通常指紋というのは犯罪を連想するわけですから、外国人はただいるだけで指紋をとられる、別に何ら犯罪嫌疑がなくても日本にいることだけで指紋を提供する義務があるということは大変何かアンバランスで、指紋をどうしても押したくないといって拒否している人が最近何人か報道されていますけれども、その中のコメントで、自分は当然日本人も中学の二年生になれば指紋を出しているものとばかり思っていたけれども、日本人友達に聞いたら私たちは全くそういうことがないと言うので、どうしても腑に落ちないという、この声はやはり真剣に日本社会として考える必要はないだろうか。人権規約の中にも品位を傷つけない取り扱いを受けるということがちゃんとうたわれていて、何人も受けないわけですから、特別な人だけ、犯罪嫌疑がかかった人は別としても、そういう人にやるというのは非常に問題ではないか。  私は留学生から、日本が本当に国際交流なり国際的に仲よくしていこうというようなことを真剣に考えるのであれば、日本にいる外国人が人間であるということをまず考えてほしいということをずいぶん言われて、日本では外国人というのは国を害する人と書く、ただそれでは非常に角が立つので外の国の人というように通常は漢字で書くのですかということを私が言われたこともあるので、外国人の側から見ると何か特別扱いをされているという印象が非常に強いようでして、指紋の問題というのはやはり真剣に考える必要があるだろう。  登録改ざんその他の問題もあり得ると思います。今日ではいろいろな技術が登録制度発足のときとは変わっているわけで、私も毎年共通一次試験の実施に携わりますけれども、たとえば受験生の受験票写真というのは実施本部の側から配布したシールでちゃんと密封しまして、絶対写真が後からはがせないようにしてあるわけです。ところが、いまの外国人登録証はなぜか写真はまる裸で張ってあって、ある意味では改ざんしようと思えば一番簡単なようにつくってあるわけで、免許証もいまああいう形で全部かぶせてあるわけです。したがって、もし改ざんの問題があるとすれば、指紋に頼らなくとも写真をパスポートの上に張るようなあのシールで張りとめれば、まずはがすことは不可能に近いと思うのです。  それからもう一点、大変時間が過ぎて申しわけないのですが、きょうは生野区長さんがお見えになっていますので、主としてはそちらにお任せしたいと思いますけれども、住民管理ということで、これはある外国人が、自分住所なり名前は当然住民票の中に入っていると思って調べたら住民票の中に入ってない、私はこの自治体の本当の住民なんですかということを聞いた人がいますけれども、実は住民基本台帳外国人が全く載らない。そのかわり外国人登録法があるということなんですが、住民基本台帳は御存じのように世帯別につくられております。そして地区番別にとじられているわけですが、外国人登録は全く個人別になっているので、私も一、二事情聴取をいたしましたけれども、区役所の窓口では外国人登録原票というのがあるのですが、それは住民サービスをするときには全く無用の長物である。  住民基本台帳のように世帯別にしておきませんと、先ほど川原先生のお話にもありましたけれども、児童手当を出す、さて三番目の子供はどうやって探すかということになると、これは三番目の子供は外国人登録には全く記載がないのです。したがって、外国人登録原票というのは住民サービスにはほとんど機能しない。したがって、区役所の方ではわざわざ世帯名簿というものを、自費を投じて別のものをつくって、外国人登録原票から一々転写をして、それでもって具体的な住民サービスをせざるを得ない。これは財政的にも非常に自治体がお困りのようですけれども、外国人が自治体の一人前のメンバーとして入っていないという、全然別帳簿で別に管理されていて、いろいろサービスをするときにはかえってマイナスになる。  これは、秘密を守らなければいけないものですから、住民票の台帳の中に一緒にとじられないのです。住民票は閲覧式になっているものですから、見たときに外国人が出てくると困るので、お父さんが日本人でお母さんが外国人とかそういう国際結婚の場合には、一つの世帯の人が片方は住民票の方に入っている、片方は外国人登録の方にあって全く別々に管理されている。これを一つにすることができないのですね。外国人登録原票は秘密を守らなければいけないことになっているというそういう点で、自治体の側で、外国人登録原票というのは国との間での情報の管理ということでは重要な役割りを果たしていると思いますけれども、住民サービスということで大変片手落ちなものになっている。この点からも、抜本的な改正をせざるを得ない状況に来ているのではないか。  私は議会のようなところで意見を申し上げる機会をいただいたものですから、かねがね思っていることを最後に一言申し上げて終わりたいと思います。  昨年、御存じのように米国議会では、戦時中の迫害に関する公聴会を日系人についておやりになって、私はいつ日本の国会が戦時中のさまざまな植民地に伴う問題について公聴会をおやりになるかなということを、実は大変僣越ながら、関心を持って見守っておりましたので、こういう機会が与えられたので、そういうことを感じている人間がいるということを申し上げて、ちょっと時間をオーバーしましたけれども、終えさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  6. 羽田野忠文

    羽田野委員長 ありがとうございました。  次に、山崎参考人にお願いいたします。
  7. 山崎仙松

    山崎参考人 私は、大阪生野区長山崎仙松でございます。  衆議院法務委員会の諸先生には、外国人登録につきまして日ごろから格別のお力添えと御高配を賜っておりまして、厚くお礼申し上げる次第でございます。  さて、本日審議されています外国人登録法の一部を改正する法律案につきましては、私どもこの事務を担当させていただいている者といたしましては、大変関心を寄せているところでございます。私に発言の機会を与えていただきましたことに対しまして、深くお礼申し上げる次第でございます。  それではまず最初に、大阪生野区の概況について申し上げます。  当区は、大阪市の東部のやや南寄りに位置し、区のほぼ中央部を南から北に平野川が貫流し、寝屋川に注いでいます。面積は八・二四平方キロメートルと狭く、人口は約十七万三千人で、人口密度は一平方キロメートル当たり約二万一千人と、大阪市では最も過密地となっています。  また、当区は一部戦災を受けましたが、大阪市の中では比較的昔ながらの町並みが多く、住宅、商業、工業が混在しています。そして、小規模の工場、商店の多いのが特色となっています。  当区におきます外国人登録人員でございますが、約三万九千人で、全国の市区町村中では最も多く、生野区人口の約二二%、これは四・五人に一人となっているわけでございます。なぜ外国人の方が生野区に多く住んでおられるかということでございますが、大正年間に、いま申しました平野川の改修工事が行われ、韓国、朝鮮人の多くの人たちがこの工事に従事され、改修後もこの町に住まわれることになったということが大きな理由の一つであると聞いております。  現在では、それらの一世の方々よりも、日本に生まれ、日本で育ち、日本の学校を出て、日本語を話し、われわれ日本人生活様式も変わらない二世、三世の方々が大部分になっております。  次に第二点目といたしまして、外国人登録事務にかかわります窓口事務の実情について申し上げます。  御承知のように外国人登録は、いわば日本人の戸籍及び住民基本台帳への記載または登録に相当するものでございまして、外国人居住関係及び身分関係を明確にし、もって外国人の公正な管理に資することを目的としているものであります。そして、この事務は国の機関委任事務でありまして、私どもとしましては、常に法の趣旨に沿い、関係機関の御指導を仰ぎながら、適正かつ円滑に処理すべく努めておるところであります。  以下、この主な事務について申し述べます。  まず一つとしまして、新規登録に関する事務がございます。二つ目としまして、登録証明書の交付事務があります。三つ目としましては、変更登録に関する事務がございます。これは居住地やその他の記載事項に変更のあったとき、申請によりまして変更の登録をする事務でございます。四番目に、登録証明書の切りかえ交付に関する事務があります。これは三年ごとに申請により登録原票の記載事実を確認し、新たな登録証明書を交付する事務でございます。  さらに、指紋押捺を要する場合といたしましては、一つは新規登録の場合、二つ目は引きかえ交付、これは登録証明書を著しく棄損または汚損した場合でございます。三つ目には再交付、これは登録証明書をなくした場合です。四番目には切りかえ交付、これは先ほど申し述べました確認申請の場合でございます。さらに五番目として変更登録の場合となっております。  以上、概要申し述べましたように、この事務は大変複雑多岐にわたっておりまして、機械化になじまないものですべて手作業で行っております。加えますに、申請される方が外国人であるため、ときには言葉、文字などの面で意思の通じにくい場合もあり、事務処理面で難渋する場合もあります。  次に第三点目といたしまして、この制度、特に指紋押捺につきまして、窓口での実務について、経験や常々感じていることを含めて概要を申し述べます。  生野区の昭和五十六年度中におきます外国人登録関係の取り扱い件数は、一日平均約三百件ございます。このうち、指紋押捺を要するものは約十七件であります。参考までに申し上げますと、三年ごとの切りかえが大量となる年は、この場合指紋押捺が一日最高六百件以上にもなることもあります。  この手続に当たり、まず当該申請者に指紋押捺が必要である旨説明し、押捺場所に案内して実施しているわけでございます。この場合、私どもが窓口で事務的に接して見ている限りでは、大部分の方は外面的には事務的といいますか、機械的といいますか、一応スムーズに押捺されているように見受けられます。しかし、よく見てみますと、内面的に複雑な反応、これはうまく表現できないわけでございますが、そういったことがうかがわれ、一部の方からは、明らかに不快感といった様子が感じとれる場合もあります。また、十四歳に達し初めての押捺やお年寄りの場合には、親その他の付添人を通じての説明を要する場合も少なくありません。  次に第四点目といたしまして、外国人登録法及び関連の制度につきましての関係団体からの要望の概要について申し述べます。  これは毎年繰り返し法改正等の要望がございますが、逐年改正されてまいっておりますので、現在ではおおむね次のものがあります。  まず、在日本大韓民国居留民団の関係支部からは五つございまして、一つ登録証明書の常時携帯提示義務の免除、二つ目指紋押捺義務の廃止または軽減、三つ目は登録証明書の切りかえ確認制度改正、四番目は登録事項の簡素化、五番目に登録法の刑罰規定の廃止となっています。  また、在日本朝鮮人総連合会の関係支部からは、まず登録証明書携帯義務の是正、罰則の除外や指紋押捺制度の廃止、また登録証明書確認申請制度の廃止、そして年少者への各種義務の適用除外、さらに罰則については、日本人の戸籍法、住民基本台帳法等の違反と同じ扱いにすることとなっております。  次に、事務担当者からの要望の概要について申し述べます。  まず、私どもで組織しております外国人登録事務協議会全国連合会といたしまして、事務の簡素化、合理化、高齢者の確認申請義務の緩和、登録証明書の常時携帯指紋押捺義務を十八歳または二十歳への引き上げなど、関係当局へ要望してきております。  また、大阪市の区長会といたしましても、登録証明書の切りかえ期間の延長、指紋押捺制度の廃止または緩和や登録事項の簡素化など関係当局あてに要望してきました。  そのほか、外国人登録事務七大府県連絡協議会や都道府県の主管課長会議などを通じまして、機会あるごとに同趣旨の要望をしてきているところであります。  最後に、この事務を実施する者といたしまして一言つけ加えさせていただきます。  申すまでもなく、私どもは関係法令にのっとりまして、常にこの事務を正確、適正かつ円滑に執行してまいる立場にございます。ところで、大阪市の生野区につきまして外国人のほとんど大部分を占める韓国、朝鮮人の方について見ますと、これらの人たちの多くは、二世代あるいは三世代にわたりまして生野区に住まわれています。いわば日本に生まれ、日本人と同じ言葉で話し、日本の子供と同じ学校で学び、遊んで育っています。また、社会保障に関する諸制度も適用されることになり、納税の義務も負っています。そして日本の、また大阪市の、あるいは生野区の生活慣習に溶け込んでいる面もございます。日常生活はもとより、青少年やPTAの活動を初め、各種のコミュニティー活動にも参画、参加されている方も少なくありません。こうして約三万九千人の人たちを含めまして十七万三千人の生野区を形成しているわけでございます。  こうした当区におきます長年にわたって培われてきております生活実態並びに歴史的な経緯を考えますと、大阪生野区として、窓口事務を担当する者として、外国人登録に係る諸手続、特に現行指紋押捺制度につきましては、関係団体からの要望や区民感情も含めあわせ考えてみますと、やはり実情にそぐわない点もあるのではないかと思うわけでございます。  以上、大阪生野区の概況並びに外国人登録に係る事務に関し、担当者としてその実情などにつき申し述べましたので、よろしくお願い申し上げます。  どうもありがとうございました。
  8. 羽田野忠文

    羽田野委員長 ありがとうございました。  次に、尾崎参考人にお願いいたします。
  9. 尾崎陞

    尾崎参考人 私は、最初に、私が述べる立場について一言申し上げます。  御存じのように私たち弁護士は、弁護士法の規定によりまして、基本的人権の擁護と社会正義の実現を期することを使命とするようになっております。ところで、その基本的人権ということにつきましては、日本国憲法に二つの規定があります。第十一条と第九十七条です。特に私は、九十七条について皆さんに御注意いただきたいと思います。  この九十七条には、「この憲法が日本國民に保障する基本的人權は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの權利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び將來の國民に對し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」こう規定しておるのでございます。すなわち、基本的人権というのは、日本国民にかかるだけではなくて、人類そのものにかかわっている権利であるということがはっきりしているわけでございます。そこで、これは後でも触れますが、日本国民と同時に、日本国以外の世界の人民にも共通の権利である、このように理解しなければならぬ。そういう基本的人権を守る使命を持つ者としての立場からこれから申し述べたいと思います。  まずその場合に申し述べたいことは、現在の外国人登録法が果たしてどのような形になっておるかということでございます。それについて一番わかりやすいのは、本来外国人登録法は、日本に在住されておる外国人居住関係身分関係を明らかにして、その管理に資するのを目的とするということになっております。ところで、それと見合う日本国民についての法律、これは戸籍法とか住民基本台帳法でございますが、その住民基本台帳法もまた日本国民居住関係身分関係等を明らかにする制度であるのでございます。その意味においては、法律の条文における字句には若干の相違があります。基本台帳法の方には、むしろ行政上の理由が書いてあります。外国人登録法には、外国人管理、「管理」という言葉が使ってあるということはありますが、両者ともその本来の性質は変わっておらないのであります。ところが、その内容を比較してみますと、大きな食い違いが出ておる。まずわれわれは、一体こういうふうな食い違いがどうして出てきているのか、またそれがいいのか悪いのかということを考えなければならぬと存じます。  それで、その幾つかの点について私はまず述べたいと思います。  一つは、基本台帳法と登録法では、規定に違反した場合の罰則に大きな食い違いがあるということです。基本台帳法によりますと、届け出義務違反には二千円以下の過料が科せられることになっております。過料は行政上の秩序罰ということでありまして、刑罰ではございません。ところで、登録法の方には、義務違反については従来「一年以下の懲役若しくは禁錮又は三万円以下の罰金」ということになっております。これは明らかに刑事罰でございます。このような刑事罰で臨む必要があるかどうかということが問題なのでございますが、こういうような大きな食い違いがある。したがって、登録法は行政的な措置のための法律ではなくて、刑罰法規であるということになるわけでございます。  第二に、基本台帳法によりますと、先ほどからも問題になっておりましたが、登録証明書携帯提示が義務づけられておりません。登録法には義務づけられておる。こういう大きな食い違いがある。登録原票によりまして、居住、身分関係は明らかになっておるのであります。したがって、外国人だけにこの携帯提示義務を認める合理性は何ら認められないと考えます。このことが、外国人登録法外国人管理といいますけれども、外国人を取り締まる刑罰法規であるということは明らかで、それがいろいろな形で乱用されておるのでございます。これは後で具体的に若干触れます。  第三に、今度の改正法では変わりますけれども、台帳法では現在未成年者には届け出義務はございません。住民登録等は世帯別になっておるという観点から、世帯員が未成年であるのが多いわけで、未成年者に届け出義務はない。ところが登録法は、現在十四歳までの少年、今度の改正法においても十六歳までの少年に義務を負わせている。このような食い違いがある。  その次に、先ほども問題にされましたが、外国人については指紋登録する。これは住民基本台帳法にはない制度でございますが、外国人を被疑者、犯罪扱いにするということが登録法の規定から出てくるわけでございます。現在、国際的に見ましても、外務省がお調べになった主な十九カ国の調査結果によりますと、指紋登録制度を採用しているのは、アメリカ、インドネシア、フィリピン、韓国と日本だけです。このようなことがあってよろしいかどうかということが問題になるわけでございますが、このように、本来内外人平等でなければならぬのに、内国人と外国人との間に著しい差別がなされておる。  しかも、その次に注意しなければならぬのは、こういう法規の上での食い違いがあるだけじゃなしに、外国人登録法は運用上非常に乱用されているという事実です。私はここにたくさんの事例を挙げることができますけれども、時間の関係もございますので、一、二にとどめたいと思います。  御存じのように、現在日本に在住されている外国人の圧倒的多数は、今度の改正法の関係で添付された資料によりましても、八〇%を超えるものは朝鮮人でございます。在日朝鮮人が八〇%を超えている。ところが、在日朝鮮人というのは、御存じのように、長い日本植民地支配の中で、いろいろな形で日本に来られた方、強制連行された方々とその子孫でございまして、本来はその多くの人はかつて日本人であった。それが第二次世界大戦の終わった結果として外国人になったという方々でございまして、そうした歴史的な事実を踏まえるならば、とりわけ日本国民として差別をすべき理由は全然ございません。ところが、登録法の運用によって最も被害をこうむっているのはその在日朝鮮人でございます。  たくさんの事例がありますが、住所変更届けが若干おくれたということで二十名を超える警察官に襲われて逮捕されたという事例が尼崎市で昭和三十八年に起こっております。さらに、密入国者を調べるという理由で学校の教室を初めほとんどのところを捜査して、学生一人を監禁する、そういうようなことも起こっております。さらに、はなはだしい例としましては、これは非常に最低の例ですが、授業中の女教師を教室から不携帯罪で連行し、いろいろな調べをするというようなこともある。また、不携帯罪によるそのようなことは、その他本年に至るまで枚挙にいとまがないほどございます。このような事態は、全く現在の外国人登録法が治安立法的な性格を持っている。治安立法というのは、基本的人権に対する直接の弾圧立法であるというふうに考えられるわけでございます。  このようなことを考え合わせますと、私たちはこの外国人登録法を見直すということは当然考えてよろしいと思うのですが、その見直しの立場はどうあるべきかということにつきまして一言申しますと、御存じのように、現在、市民的及び政治的権利に関する国際規約、特にそのB規約、これは一九七九年九月二十一日に効力を発生していますが、その十二条及び二条、この規約を批准することについて、国会で七九年五月八日になされた附帯決議があります。その附帯決議は、皆さん御存じのように「すべての者は法の前に平等であり、人種、言語、宗教等によるいかなる差別もしてはならないとの原則にのつとり、在留外国人基本的人権の保障をさらに充実するよう必要な措置を講ずること。」ということになっておるわけでございます。こういう国際人権規約日本の国内で効力を生じて、それに基づく措置がなされなければならぬ時代に、それにふさわしい登録法の見直しがなされるのは当然であると考えるわけでございます。したがいまして、過去、それ以前に比較して、さらにその国際人権規約発効以後については特に抜本的な措置がとられなければならぬと考えます。  ところで、今回の改正について一言申し上げます。  今回の改正案によりますと、定期切りかえの時期を三年から五年にされるということ、いろいろな帯用者の年齢を十四歳から十六歳に引き上げられる、不携帯罪等についての罰則の法定刑を、体刑を外して罰金刑だけにされるというようなことが盛られておりますが、この点については、私もまた一歩前進したものとして評価してよろしいかと存じます。  ただ残念なことに、先ほどの参考人の方も申されましたが、多くの問題がまだ積み残されている。しかも、従来三万円の罰金であったのが二十万円に引き上げられているということについてはやはり問題である。私は、むしろ、先ほど私が申し上げた趣旨に従った抜本的な改正がこの際行われるべきである。罰則も、つけるとしても行政罰的なものにすべきであるし、年齢の引き上げも、むしろ、全般的に市民として全生活に対して責任を負うような立場になる成年、二十歳まで引き上げられてしかるべきである。少なくとも高校を終わって、教育を受けているような人であれば大学へ行ったりあるいはそれにふさわしい職業につくような状態にある十八歳以上くらいにすべきである。それから指紋制度の廃止とか、登録事項についても職業、勤務先の名称、所在地などは登録から削除すべきである。その他いろいろな点について抜本的な改善がなされることを期待するわけでございます。  以上で私の意見を終わります。
  10. 羽田野忠文

    羽田野委員長 ありがとう。ございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 羽田野忠文

    羽田野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高鳥修君。
  12. 高鳥修

    ○高鳥委員 私は、ただいま御陳述をいただきました各参考人に対して若干お尋ねをさせていただきたいと存じます。  まずもって、大変御多用の中御出席をいただきまして、いろいろ貴重な御意見をお聞かせいただきましたことを心から御礼申し上げます。  まず川原参考人にお伺いいたしたいと存じますが、私ども自由民主党の立場で、今回の政府が提案されました法律案についてはかなりの前進だというふうに評価をいたしておるわけであります。そういう点について川原参考人からもやはり評価できるという御趣旨の御発言があったように承ったわけでありますが、なおかつ、いま他の参考人からもお話がございましたように、指紋制度の問題でありますとか、あるいは年齢の問題でありますとか、それから携帯義務違反の問題、罰則の問題等々、当委員会においてもいまいろいろと論議を重ねておるところでございます。  そこで、いま一番大きな問題になっておりますことの一つは、指紋制度の問題でございます。先ほど川原参考人からこれが制定された当時のいきさつについて若干お触れがございまして、二重、三重の登録どころか、多いのは百件以上というような幽霊登録と申しますか、そういうふうなものまであったというふうなお話がございました。恐らくそうした事情から、当初になかった指紋制度が取り入れられることになったのだろうと思うのでございます。私ども、その当時の事情についてつまびらかにいたしておらないわけでありますが、先ほど来他の参考人からもお話のございました内外人平等の原則でありますとか、いろいろな国際的な問題を考えてみました場合に、指紋制度というものが制定された当時のいきさつにかんがみて、今日どうしても存続すべきであるとするならば、それは一体どのような考え方から存続すべきである、積極的に存続をすべき理由といいますか、それは那辺にあるのだろうかというようなことについてお考えがございましたら、先ほど来抑止力とかいろいろなことについてお触れがございましたが、お考えをお述べいただけたら、このように思うのであります。  また先ほど、写真技術なども最近はIDカードなどのつくり方についても非常に進歩しておるので写真で足りるではないか、あるいは当委員会ではまたサインでもいいではないかというような御意見も他の政党からも出ておるところでございます。これらについてどのようにお考えになっておられるかということについてお話しいただけたら、このように思います。  二番目に、同じく川原参考人にお伺いしたいのですが、朝鮮半島出身者や台湾出身者で、本人の意ならずして日本に来られて、そして国籍選択の自由がないままにいま外国人という扱いを受けておる。その御本人はともかくとしまして、その二世、三世について、日本人と全く同じく生活をしておる、そういう人について外国人登録の適用を除外するとかあるいは別途の法律で何か規制する方法を考えるとか、そういうことが何とかできないものかという議論がしばしばあるわけであります。これは時代の推移によって、恐らく時が次第に解決をしていくものだろうと私は思いますし、あるいは別個の法律をつくることが時が解決するののかえって妨げになるのではないかというような感じもするのですけれども、何か全く日本人に同化をして同一地区で、先ほど生野区長山崎参考人からもお話がございましたが、全く日本人と同じに生活をしておる、しかも言葉ももちろん日本語しかできない、そういう人を、その親なり祖父なりからすれば自分たちはその国の国民なんだという意識が非常に強いものですから、そういうことであくまでも国籍日本に帰化するということではなくて、国籍を保持していたいという強い希望を恐らく持っておられるのだろうと思うのであります。そういうことについて、別途の扱いをすることが適当かどうかというようなことについて先生のお考えをお聞かせいただけたら、このように思います。  もう一つ、年齢の問題でありますが、今回十四歳から十六歳未満ということにするわけでありますけれども、これを十八歳未満なり二十歳未満にしたらどうかというような御意見もありますが、この年齢という問題についてどのようにお考えでありましょうか。  以上、お聞かせをいただきたい、このように思います。  なお、質問時間が限られておりますので、あわせて山崎参考人にお伺いをいたしたいと存じますが、先ほどのお話によりますと、何か切りかえの期間が集中するときには六百件も来て大変だというようなお話がございました。そういう中で、いま二重三重登録防止という意味合いからその指紋制度というものがかなり大きな役割りを現実には果たしている。これは、同一指紋というものは一人一つしかないということの考えから、またそれがかなり一般的に知られているということから、二重三重登録防止ということのためにかなり役立っているというふうに考えられておるわけでありますが、現実にそのように大ぜい押しかけられた場合に、これは同一人が申告をしに来たんだ、登録の切りかえに来たんだということをどの程度事務的に確認できるのか、その辺の実務上の問題について若干お聞かせいただけたら、このように思います。  それから田中参考人一つお伺いをいたしたいと存じますが、田中先生からいただいた資料を拝見しますと、これは法務省の「出入国管理の回顧と展望」などから引いておられるようでありますが、「国籍外国人登録数」というのが二の二にございまして、「韓国・朝鮮」が圧倒的に多くて八四・一%、それから「中国」が七%、これを合わせると九一%以上、こういうことになるわけであります。したがいまして、わが国外国人登録のこの法律というのは、やはり韓国と朝鮮民主主義人民共和国、要するに朝鮮半島の出身者というものを圧倒的に対象に置いて立法的には考えざるを得ないという状況になっていると思うのです。そういう中で、韓国では指紋をとり、そして携帯義務を課する。もっとも韓国では自国民にも同じことを課しておるようでありますけれども、そういうふうな制度になっておるようであります。中国朝鮮民主主義人民共和国の方は、恐らく外国人登録をするという人は非常に少ないのではないか。非常に限られた技術者なりあるいは政府要人だけで、それ以外に外国人がそんなに入っていると思えませんが、それらの国でどんな扱いになっているか、もし御存じならばお話しいただきたいと存じますし、基本的にそれらの国と韓国なり何なりがそのようなことをしているとすれば、それに対しては日本としても同じような扱いをしてもさほど不平等なことではないのではないだろうか、そんなことを考えておるわけでありますが、その辺の事情がお話しいただけたら、こう思います。  なおまた、先生は非常に失望しておられるということでありますが、私どもは今回の状況としてはそれなりの前進だと思っております。その点について先生はどのようにお考えか、以上お聞かせいただきたいと思います。
  13. 川原謙一

    川原参考人 ただいまの高鳥先生からの御質問に対して、私、的確に御答弁できるかどうか非常に危惧するものでございますが、私はこのように考えます。  現在日本にいますいわゆる朝鮮人韓国人、それから中国本土の人及びその台湾人に対して、何しろ三十七年前までは私たちと同じ日本人であったわけなんですから、その日本人であったそれらのお方たちに対して登録制度を施行するとか指紋を押せとかいうようなことは、私個人としては日ごろ非常に満腔の遺憾な気持ちでいる者でございます。そうした問題があるたびに、実はちょっと言葉があれですが胸が痛むという感じです。何しろ、日本人にそんなことをやっていいのかしらという感じがするのでございますね。ということは、国際法上のオプション、国籍選択権というものは、サンフランシスコ条約で彼らは認められなかった。その意味においてなおさら、国籍選択権を認めていたならば、おれは従来どおり日本人になりたいのだ、いやおれはやはり朝鮮人に帰ろうというように、本人の意思に即してそういうようになったならば、これはまだ私個人として慰める点もございますけれども、本人の意思に反してまで——最近よく行政訴訟を起こしていらっしゃいます。おれはもう日本人だから朝鮮人や台湾人などと言うのはけしからぬということを言っていらっしゃいますが、私は当然だと思うのでございます。その意味において、そのお方たち登録義務を課したり指紋を押せとかということは、非常に私としては実に遺憾のきわみという意味において、まずそれらの方たちに対して済まないという気持ちをここで表明したいと思います。  その次に、人類学士世界に二つの人類の種類がある。一つは御承知のとおり蒙古族で、他の一つはコーカシアンであります。コーカシアンというのは別にして、蒙古族に属するものは私たち日本人韓国人を含めまして通常朝鮮人、それから台湾人と中国本土の人、シナ人、それからアメリカインディアン、この四種類はいわゆる蒙古に起源を置く種族でございます。その意味において、アメリカインディアンはここで一応論外といたしまして、朝鮮人や台湾人や韓国人、それから中国本土のお方たちと私たちは顔が全然同じ。失礼ですけれども、このそばを歩いていらっしゃる韓国人の人がいたら、あの男は朝鮮人なのか日本人なのか、どちらだろうかというふうに考えるぐらい同じでございます。それは蒙古に起源を置く同一の種族だからでございます。また、これらの方たちの言葉はどうかと申しますと、言葉も日本人とちっとも変わらないお方がいらっしゃる。日本人よりもっとうまい。失礼ですけれども、日本人で相当田舎の方が東京に出てこられて、言葉がむしろ台湾人や朝鮮人で長年東京におられるお方よりも余りうまくないのがいる。その意味において、言葉でもこれを区別することができない。そうすると、顔でも区別することができない、言葉でも区別することができないとすると、何で区別するかというと、やはり万人不同で一生不変という特質を利用したところの登録制度及び指紋制度だ、こう私は思うのでございます。  それに、やはり最近では非常に不法入国者、それから合法的に入国しましたけれども、恋人ができたり何かしてこのままずらかろうといってそのままずらかって日本にいるいわゆる不法残留者、そういう人たちが非常に後を絶たず多いのでございます。毎年七百人から八百人の退去強制手続がとられているということから考えまして、どうしても私は登録制度指紋制度というものは必要だと思うのでございます。  それからその次に先生がおっしゃいました、今度十四歳を十六歳に引き上げた。これは十八歳ということも二十歳ということもおっしゃいましたけれども、私も同じような意見でございますが、私からすれば、アメリカが十八歳をもって携帯義務を課していますけれども、二歳の違いでどちらでもいいじゃないかといえばそれまでですけれども、日本のこの外国人登録法改正法案に盛られた十六歳というのが最も適当ではないかと思うのでございます。  それは国際民間航空機関、通常たちICAOと称するインターナショナル・シビル・エービエーション・オーガニゼーションの諸国に対する推薦のプラクティスの中には十六歳というものをめどにしています。モントリオールの国際民間航空機構は、親のパスポートに併記するのは十六歳までで、十六歳以上になったら今度は別個のパスポートをその人に要求しています。その意味において、国際的なそういう申し合わせを推薦しているところのICAOの規定に沿うような規定、これは偶然かあるいは十六歳というのはICAOの規定がそうだからということで立法者がなさったのか、そこまでは私は存じませんけれども、十六歳をめどにしたということは世界の趨勢であるICAOの規定に非常に合うものではないか。私は、アメリカの十八歳よりも十六歳、中学を終えたときに親を離れる、親のすねを離れるという意味においても十六歳というのは一番適当ではないかという気がいたします。  果たしてこれが先生の御質問に合ったかどうか存じませんが、一応これまでといたします。
  14. 山崎仙松

    山崎参考人 ただいま先生から、大量の切りかえの申請時に際しまして実務上、本人かどうかをどう確認しているかというお尋ねでございますが、写真提出がございまして、すでに発行済みの写真と照合いたしまして本人であるかどうか確認して実務を行っております。
  15. 田中宏

    田中参考人 お答えいたします。  まず最初の、韓国との相互主義の問題ですけれども、先ほど冒頭に年配の川原先生が御発言されたことにある意味では代表されておりますが、私はやや世代が下なものですから、かつて朝鮮でどういうことをやったのかということは文書、活字でしか知らない世代ですけれども、川原先生のお話を伺いながら非常に考えさせられるものがあったわけで、確かに相互主義という考え方はいろいろなところでとられますけれども、在日韓国人朝鮮人と私たちとの関係を考えた場合に、歴史的な経緯を捨象してしまって単純に相互主義で考えるということは間違いではないか。むしろそういう相互主義の問題ではなくて、川原先生がおっしゃられたような意味日本がどうするかということを考えるべきだ。それから、高鳥先生もおっしゃいましたように、韓国では自国民についてもやっている。これは私も申し上げたように、自国民については全く日本にはそういうものはないわけで、そこで内外人の角度から考えるということになると、私は相互主義の発想で指紋の問題についてアプローチするということには賛成できない立場でございます。  それから、朝鮮民主主義人民共和国における状況については、申しわけないのですけれども、私は全く資料を持ち合わせておりませんのでお答えすることができない点はお許しをいただきたいと思います。  それから三番目に、私のメモに失望という言葉が使ってあるのですけれども、それはこういう意味で私は書いたわけです。実は今度の改正案におまえは賛成か反対かと問われれば、条件つきで賛成をしたい。その理由はやや立ち入って申し上げたのですが、不携帯の罰則についてはさらに軽減をして、先ほど私が紹介したようなケースを未然に防ぐために、現行犯逮捕ができないレベルに少なくとも下げるべきである。さっき私は申し落としましたけれども、その留学生は国立大学の学生証、ちゃんと写真を帳ったものを所持していたのですが、それでは警察当局が満足しないということがあったものですから、どうしてもそういう事件は当の外国人から見ると全く理解に苦しむ事実だと思うのです。手錠をはめられて出てきた友人留学生を見た学生の話を聞きましたけれども、私は何とも返す言葉がなかったわけで、その点で不携帯の罰則について見直すということをおやりいただければ、おっしゃるように一歩前進ではあるわけですから私は賛成をしたい。  それから、失望というように申し上げましたのは、実は昨年の行革国会で外録法も一部手直しがなされたわけですが、一連の行政簡素化のための法改正であれば今度のことで趣旨一貫していると思ったのですが、わざわざ外国人登録法改正と銘打って政府が出されたということで、当然行革とは違った立場で、私の関心から言えば在日外国人基本的人権の擁護という観点から手直しがなされているに違いない、私もレジュメに書きましたけれども、すでに法務省御自身が一九七一年の「出入国管理」という入管白書の中で、「長期在留外国人処遇の問題をも念頭におきつつ、外国人登録制度のあり方について種々の角度から検討を加えている。」という記述があるものですから、十年たったわけで、必ずやその制度の結果が今度の改正法に盛り込まれているだろうという期待を持って実はお送りいただいた資料を拝見したところ、私の見た限りではほとんどそういうものが見受けられなくて、簡単に言えばお役所の仕事が減る、その限りで外国人に便宜を与えるというものにすぎないという点で、もう十年もたったのになという感想が非常に強かったものですから、率直に失望したという言葉をあえて使わせていただいた、そういう趣旨でございます。
  16. 高鳥修

    ○高鳥委員 どうもありがとうございました。
  17. 羽田野忠文

  18. 稲葉誠一

    稲葉委員 川原先生のお話を聞いておりまして、先生の鹿島研究所から出された「アメリカの退去強制法の研究」や「司法研究」でしたか、資料なども拝見しておるわけですが、実際の実務の経験等も先生非常に御豊富なわけですが、いまお話をしておりました中で、アメリカでは何か十八歳からというお話があったわけです。ちょっとよくわからなかったのですが、十八歳から何をアメリカではやっておるのか。私が質問した範囲では、政府当局はアメリカは十四歳からだというふうなことを答弁しているのです。そこら辺のところ何か食い違っているように思うものですから、大変失礼ですけれども、それはどういうふうなことなんでしょうか。
  19. 川原謙一

    川原参考人 ただいまの稲葉先生の、実は私の最も崇拝するお方なんですが、稲葉先生の御質問にお答えいたします。  これは両方とも本当です。と申しますと、実はアメリカのことを申しますと、アメリカは登録制度に関する最初の連邦法というのは一七八七年の外国人治安法でございまして、これは当時の第二代大統領ジョン・アダムスがイギリスが好きでフランスが嫌いだったものですから、フランス人を抑圧しようとして制定したのがこの法律であったわけです。これがすなわちアメリカの連邦法として最初の登録制度、自由な人はすべて区の裁判所に登録しなくてはならぬという規定がございます。しかるに、一八〇〇年の革命と言われる第三代大統領トーマス・ジェファーソンがかつて初代の駐仏アメリカ公使だった関係で非常な親仏的な人でございましたので、フランス人をやっつけるこの外国人登録法というものに対しては非常に毛嫌いして、それで一八〇二年にはもう失効してしまいました。それ以来外国人登録制度というものはなかったのですけれども、フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領が、いよいよ戦争になったのでどうしてもこの際外国人登録制度を復活したいというので、一九四〇年の外国人登録法通常いわゆるスミス法と称せられるこの法律外国人登録指紋制度を復活したわけです。この制度は一九五二年のいわゆるマッカラン・ウォーター法と称する現行の移民国籍法によってこれが定例的なものとされ、しかも外国人登録制度及び指紋制度というのは連邦の権限に属する。これは最高裁判所も確認しています。  そうしてまた、これは日本と非常に違ってアメリカ独特の言葉だと思うことは、外国人登録制度及び指紋制度というものはアメリカ合衆国の国防政策の一環としてあるんだということを、確たる責任者、大統領かどうかは知りませんが、とまれ確たる責任者、連邦の政府の責任者がそういうことを申しています。というのは、失礼ですけれども、日本では入国管理局長さんが登録制度日本の国防政策の一環だということをおっしゃったことは私は一度も聞いたことがございませんが、アメリカではそういうふうに登録制度指紋制度はアメリカの国防政策の一環として存在しているというのが責任者の言葉でございます。  そういうわけで、いま稲葉先生のおっしゃいましたことは、十四歳というもの、たとえば外国人日本入国しようとするときに、日本法律は、出入国管理及び難民認定法というものは、指紋登録制度を要求していません。ところがアメリカでは、アメリカ合衆国に入国しようとする外国人は、十四歳以上の人であれば必ず登録指紋しなくちゃならぬという規定があるのです。そしてそれは、一九五七年の修正移民法によって、ナンイミグラントの人については免除する、しかし移民はもう必ず十四歳以上の人は指紋押捺しなくちゃならぬという規定がございます。  それからいま十八歳の問題ですが、これはアメリカ合衆国にいる外国人で結局十四歳以上の人は、もし外国人でアメリカに入国しようとするときに指紋登録しなかった人がアメリカ合衆国に入国した場合は、十四歳になれば登録及びその指紋押捺しなくちゃならないけれども、携帯義務は十八歳以上だというふうに書いてございます。そういうわけでございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまのお話、初めてお聞きしました。私も不勉強だったのですが、政府入管当局はそういう説明を全然しないですね、いまの十八歳以上のあれだということについては。これはこの次に質問しましょう。そういう自分に不利益なことは言わなくていいことになっていますからしようがないかもわかりませんけれども、言わぬですね。  そこで、田中さんにお尋ねをいたしたいことは、一つはここに書いてあります懸案事項の中で、時間の関係で説明がなかったのですが、アメリカには指紋押捺制度がある。わかりました。「但し、国籍法が出生地主義であることに留意」というふうに括孤して書いてあるのですが、これがどういう意味かちょっとよくわからないのですが、これを御説明を願いたい。  それから、一つは西ドイツですね。西ドイツはなるほど指紋制度はない。ないけれども、それを補充するような意味のものがあるというのが入管当局の説明なんです。補充するとはっきりは言わぬけれども、そういう意味のようなことを、かわるべきものがあるようなことを言われておるわけですね。だから、この点についておわかりの範囲内で、失礼ですけれども説明を願いたいということが一つ。  それから、これは田中さんと山崎さんですか、大阪生野区長さんにもお尋ねしたいのですが、いまありました中で、住民基本台帳や戸籍法との関係、ことに児童手当の関係ですね。この関係で外国人登録原票というのは住民サービスができないので、別途世帯名簿を自主製作をしているという話が田中さんからあったわけですが、これは大阪の場合は具体的にどういうふうにやっておられるのでしょうか。これは三番目の子供から児童手当が出るわけですから、この辺はどういうふうにされておられるのでしょうか。  それから、これは田中さんにお尋ねをしたいのは、これも御説明が時間の関係でなかったのですが、「法内在規制力も拡大」しているということで、「罰則の見直し」ということがレジュメに書いてあるわけです。その事務委任の関係のところですね。これの御説明がなかったものですから、その点はどういうふうに理解をしたらよろしいのか説明を願いたい、こういうふうに考えております。
  21. 田中宏

    田中参考人 それでは御質問の点、申し上げたいと思います。ちょっと欲張り過ぎていろいろ書いたものですから、申しわけないと思います。  まず一つ、アメリカとの関係の問題ですけれども、御存じのように、アメリカは国籍法が出生地主義をとっているものですから、アメリカで生まれた子供は、親が何人であろうとも、すべてアメリカ市民になるわけです。ところが日本は逆に血統主義ですから、何世代交代しても、外国人が再生産される、こういう構造になっている。これはあらゆる外国人問題を考えるときに非常に大事なことだと思うのです。  したがって、日本では、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、母国語はできないけれども日本語は全く日本人と変わらないようにしゃべるというような外国人が大変多いわけですね。その理由は、国籍法が血統主義になっているものですから、日本で生まれ育っても、法律的には純粋の外国人として扱われる。ですから、やや乱暴な議論ですが、万一日本がアメリカと同じ国籍法をとるとすれば、恐らく在日韓国、朝鮮人の人口は二割を割ると思うのですね。最近法務省は、私は非常に残念だと思うのですが、在留外国人統計というものを公表しなくなってきて、この節情報公開が叫ばれているときに非常に残念だと思うのですが、非常に古い統計しか私たち見ることができないのですが、一九七四年に公表されて、それ以降われわれは見ることができない年齢構成、出生地別の統計を見ても、大体八割近い人が日本生まれですから、それがさらに比率が高まっているので、そうしますと、指紋の問題にしても、外国人登録法の適用全部の在日韓国、朝鮮人の約一割五分ぐらいの人だけが外国人になるということなので、その点、アメリカがあるから日本もというように単純に考えることは間違いだろうということを申し上げたかったわけです。  それから、これも私の時間の配分の誤りなんですが、「法内在規制力も拡大」というように書いたのは、こういう意味なんです。先ほど来お話がありますように、難民条約に加入したために幾つかの法律改正されて、従来外国人は排除されていたものが、外国人にも開放される。社会保障関係が非常に際立って法改正が行われたわけですが、そうしますと、外国人の側から考えると、いろんな社会保障サービスというのか行政サービスを受けるときに、外国人登録をきちっとしてないと、無登録はもちろんのことですけれども、住居もきちっと移しておかないと、たとえば児童手当がもらえない、国民年金に入れない、あるいは国民年金が受給できない、児童扶養手当がもらえないというような問題が次々に出てきたわけですね。そうしますと、外国人の方は、従来の外国人登録法というのは、やや極端な表現をあえてとれば、ひたすら罰則だけで守らせる法律、不携帯だとつかまるから持っている、そういう性格が非常に強かったわけですね。ところが、昨今の法改正によって、登録について、いろいろ登録に定められたことを守らないと本人が不利益をこうむる、さっき申し上げたようなことが次第にふえてきつつあるわけです。そうしますと、法律の執行のことを考えた場合には、法律の内部に、要するに外国人登録をしておかないといろいろ不利益をこうむることがだんだんふえてきたので、そうなれば、いままでのように罰則だけで法律を守らせるという基本的な姿勢を変える必要がある。したがって、従来は罰則だけがおもしだったけれども、今後は罰則に頼らなくても、本人の側が自発的にそういうことをやることができるようになってきた。というのは、そういうことをいままで認めなかったわけですから、そのことを申し上げたくて、当然そういうことも法務省ではお考えになっているのではなかろうかということを私は推測をしたということ。  それから、もう一つお尋ねの西ドイツの件ですけれども、ちょっと私いますぐわかりませんので、若干持ってきている資料の中で、委員会が終わるまでにわかればお答えいたしますけれども、いまの段階ではちょっと留保いたしたいと思います。  以上でございます。
  22. 山崎仙松

    山崎参考人 ただいま先生お尋ねの、児童手当など世帯別把握を要する事務につきましては、大阪市といたしましては、国民健康保険の対象で別途世帯別に把握し、本人の申告とあわせ確認して実施しております。
  23. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、だから別途つくらなきやならないわけで、結局、三番目の子供以下を出すわけですね。抽出という言葉は悪いのですが、それをするためには、原票ではわからぬということになりますね。大変な努力といいますか、それが要るんだというふうに思うのです。  そこで、生野区長さんにお尋ねをいたしたいのは、まず登録の基準年齢を十八歳から二十歳に引き上げてほしいというような要求が出ていますね。これは居留民団ばかりじゃなくて、総連からも、いろいろな各団体から出ているわけですが、これはどういうふうな理由からこういうふうな要求が出るようになったんでしょうか。ただこういうふうになれば手間が省ける、それから費用も少なくて済むというふうなことからという意味なんでしょうか、どうでしょうか、そこが一つです。  それからもう一つのことは、指紋の場合に、区民感情云々で実情にそぐわない点もあるというふうなお話がいま区長さんからあったわけです。その点は実際どうなのかという点をお尋ねをしたいわけです。これは恐らく大阪出身の沖本委員からあなたの方の実情を、今度カウンターのところから後ろに移すようにしましたね、これは五十三年の六月からですか、こういうふうなことについては質問があると思いますので、私はその点はそちらへお譲りしたいと思うのですが、いま言ったような点はどういうことなんでしょうかね。
  24. 山崎仙松

    山崎参考人 先ほど冒頭の陳述のときに申し上げました年齢十八歳または二十歳という件でございますけれども、これは私ども事務担当者が相寄りまして持っております研究会がございまして、その中でいろいろ研究してまいって、たとえば義務教育の年齢だとか他の法との関係でもって、十八歳あるいは成年に達する二十歳が適当ではないか、そういった判断によっておるわけです。
  25. 稲葉誠一

    稲葉委員 それから後の質問、区民感情からして実情にそぐわない点もあるというようなことをちょっと言われましたね。これはどういうふうなことを言われており、実際に窓口の人たちなりあるいはそこに来ておる住民の人、それから何かいろんな話があったり何かしたのでしょうか。居留民団の方から、指紋押捺のことに関連をしていろいろ申し入れがあったようですね。詳しいお話は沖本さんの質問のときで結構ですけれども、概略お話し願えませんか。
  26. 山崎仙松

    山崎参考人 私ども大阪生野区としましては、先ほど申し上げましたように四・五人に一人の割合で生野区民のうちそういった外国人の方がおられるわけでございまして、日常の区民のいろいろな生活活動を通じまして、日本人とそういった外国人の方々と子供のときから、小さいときから一緒に遊んで、学んでおる関係上、そういった意識としては私ども持っていないということもございまして、ある一定年齢に達しまして、同じように机を並べていながら、片一方の日本人にはない義務が課せられるといったそういった素朴な感情を申し上げたまでのことでございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉委員 区長さん四月一日におかわりになったばかりで、大変恐縮ですけれども、そういう話も聞いているのですが、法務省が、国の機関委任事務ですから、それがここにいますからなかなか言いづらいのかもわかりませんが、十八歳や二十歳に引き上げたいということは、どうも意味がはっきりしないのです。法務省の説明だと、こういうことになれば事務が簡素化するのだということからこういうふうにしたいのだという意味のことを、だからこういう要望が出たんだろうということを言うんですよ。だから、そこはどうなんでしょうかね。義務教育は中学ですね。実際には高等教育のような形になっておるし、そこら辺のところを、十八歳から二十歳にしたいというのは、単なる事務の簡素化ということだけではなくて、何か具体的な妥当性というものがなければこういうふうな要望なり——これ、皆さん方の要望でしょう。登録事務の連絡協議会の要望、私のところにもあります。そういうようなところから出てくるので、それから区長会でもそれに関連する要望がいろいろ出ているので、そこら辺のところある程度合理的な理由というか、具体的妥当性というか、こういうものがあるのじゃないかというふうに思ってお聞きをしているわけなんです。
  28. 山崎仙松

    山崎参考人 先ほども申し上げましたように、私ども生野区が全国レベルでの意識かどうかということについて、私自身非常に戸惑うわけでございますけれども、少なくとも指紋押捺そのものにつきます一つの感じ方というものがあるわけで、この場合に伴う不快感、嫌悪感、あるいは場合によっては犯罪扱いされているといった感じさえあるわけなんです。そういったこの指紋押捺そのものに対する感覚が、区民の中で多数を占める、二五%にもなる外国人を擁しておる生野区としましては、区民全体の一つの意識ではないだろうかといった考え方も含まれておるわけでございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉委員 田中さんが中国留学生の例を挙げられましたね。これは実は私も、その話が出たものですから、警察を呼んでいろいろ事情を聞いてみたわけです。確かに大阪に住んでおられて、そして東京へ出てきて、アジア人の留学生会館ですか、アジア文化会館というのですか、穗積先生がやっておられたところだと思いますが、あそこへ泊まっておられて、そして真夜中に自転車に乗ってサンダル履きで、夏ですから上着も何も着てなかった。たしか後楽園だと思いましたが、後楽園のところでつかまった、こういうことでありますね。そういう事情だったんで一晩泊めたのだというのですが、いまのお話を聞くと、大阪までとりに行かせたという話は私も聞いてないのですね。そこまで向こうも言わないし、国立大学の学生証を見せたという話も警察では私にはしなかったわけですね、そこまで聞かなかったわけですけれども、そういう点を非常に隠しておるのですが……。  それから、手錠をはめて出てきたという点はちょっとよくわからないのですが、連れていくときに手錠をはめたのか、暴れたのか何かちょっとよくわからないのですが、その間の具体的な事情をおわかりの範囲でひとつ御説明を願いたいと思うわけですね。それはどういうふうな影響、どういうふうなショックを中国留学生たちに、それからアジア文化会館にいる人たち、在日の外国人留学生たちに与えたか、こういうことを含めて。
  30. 田中宏

    田中参考人 学生証を本人が持っていたということ、それから友人が新幹線に乗って大阪までとりに行って、それを持ってくるまでは身柄が出なかったということは間違いありません。  それから手錠の問題は、翌日の朝、本人から友人中国留学生に電話がかかってきて、いま実はこういうことで警察につかまっているという連絡を受けて、友人とその留学生会館の職員とが警察へ行ったときに、本人が留置場から出てくるときに手錠をはめられたまま出てきて、その友達なり職員と会話をしたというときの光景でございます。したがって、連行されるときかどうかということではありません。次の日の朝、訪ねて行った同国の学生に会うときに、はめられたまま出てきて会話をした、そういうことでございます。  それから学生全体に対する影響ですけれども、実はこういうことというのはときどきあるものですから、たまたま一つあったケースを、近い時期なので、最近外国人についての政策が大分変わってきたというように考えているにもかかわらず去年の秋にあったものですから、私はその例を申し上げたのですが、私は長くそういう仕事をしていたものですから、実はときどきあるんですね。それで一様に彼らが感ずるのが、確かに持っていないのは悪かったけれども、決して自分身分がわからないわけではないし、名前も住所大学も全部しゃべっても、とにかく物がなきゃだめだということで、何か意図的にいじめられているというような感じを非常に持つみたいですね。  私が関係している留学生仕事は、ほとんどアジア、アフリカ、ラテンアメリカ、第三世界の人たちなものですから、欧米の学生のケースというのはほとんど知りませんけれども、どうしても彼らの受け取り方は、結局、日本人というのはアジア人をばかにしているようだ、白人にはこういうことはしないでしょうねという感想を何度も耳にしました。  ただ私は、それは法律に書かれていることだから、とにかく持ってさえいればいいんだから、忘れないようにしなさいということは再々言いますけれども、やはりちょっと気軽に軽装で出ていくとか、あるいは夏の暑いときなんかに、登録証というのはある意味では非常に大事なものだという感覚があるので、不用意になくしたら大変だというので、どうしても大事にしまうというのが一方であるんですね。大変矛盾しているんですけれども、うっかり持ち出して、財布をなくしても、これは金が幾らかなくなって事が済むのですが、外録をなくすると、また区役所に行ってしかられるんじゃないかとか、非常にびりびりしているものですから、常時携帯義務というのは現場で学生たちに話をするときには非常にやりにくいところもあるんですね。  そういうことで、何か不必要に日本に対する誤解を生んでいるということは、私の経験からはかなりはっきり言えると思いますね。とりあえずそれだけ。
  31. 稲葉誠一

    稲葉委員 尾崎先生にお伺いをしたいのですが、先生がもうさっき挙げられた例は尼崎の例ですね。これは私もよく存じておりますが、これは住所と勤務場所が間違って、二つ住所があるじゃないか。勤務先というか店舗に実際住んでいたのに、それを報告しなかったということでやられた例ですね。警察官がたくさん行ってですね。それから竜ケ崎は女の先生ですね。学校へ行ってやられた例ですね。  そういうような例はあるのですが、これは率直に言えばちょっと古い例なんですが、新しい例として私どもが聞いておりますのは、朝鮮大学朝鮮人学校の帰りがけを待っていて、そうして警察官が一々つかまえて、つかまえてというか何というか、外国人登録証を見せろ。小平ですか、あそこでやったような例などを聞いておるわけです。そういうふうなことで、結局これが在日朝鮮人を中心としたそういう人たち、いま田中さんが言われたようなアジア人に対する不携帯罪が適用されておるというふうに当然考えられてくるわけなんで、そのいま言った朝鮮大学やなんかの例などを御説明願えればと思いますし、それから実際にはこれがアジア人といいますか、そうした人を対象にしてこの不携帯罪などが適用されているという点について御説明願えれば、こういうふうに思うわけです。
  32. 尾崎陞

    尾崎参考人 ごく最近の例としましては、ことしの四月八日に東京都下の東村山市と昭島市で、これは東京三多摩朝鮮第一初中級学校中学三年生の金君というのと李君という二人について、やはり東村山警察署が——四月八日というのは、これは報道された日でして、起こったのは三月二十一日。正午に駅前派出所で、登録証を持っているかということで、たまたま金君が携帯していなかったところが、パトカーを呼んで警察署に連れていかれて、そして始末書を書かされて、一時間半にわたっていろいろ取り調べられたことがありますし、それから、そういうやり方について御両親等が不当を警察に抗議したというような事実が四月八日に報道されております。  それから、去年の三月一日にも不携帯の事件が発生しておる。そのときの取り調べの内容は家族関係、学校関係、授業内容などであって、かなり詳しく調べているようです。  それから、これは東京ではないのですが、去年の五月十四日に山梨県塩山警察署で起こった事件ですけれども、自動車運転手がスピード違反で取り調べられた。そのときたまたまその車に乗っておった金という四十歳の女性の方が、塩山警察署に不携帯で取り調べられた。そのときには単に不携帯をなじられただけでなしに、両手の指の指紋をとり、顔写真を撮り、さらには足型までとった。そうして取り調べの内容も、財産関係から貯金、結婚など、不携帯と何も関係ないようなことについて調べられております。たまたまこの金さん、この方は金美代子さんというのですが、その方は、自宅を出るときに貴重品を入れておったバッグをうっかり冷蔵庫の上に置いてきた、そういう事案でして、決して特別な意図があったわけではない、そういうようなこどもございます。  さらに、ちょっと古くなりますけれども、昭和四十九年には、川崎で集会に民族衣装を着て出たということで、その帰りをねらわれて不携帯罪として摘発されている。それで、その日は十時ごろから翌日の午前一時ごろまでしつこく取り調べを受けているというようなことで、単に不携帯という事実に関する取り調べ以外に、いろいろな情報を収集するというような形があらわれております。  まだ幾らでもありますが、そういうようなことです。
  33. 稲葉誠一

    稲葉委員 いずれ諸般の具体的な事例については、別な機会にゆっくりまたお伺いをできるというふうに考えておるわけですが、一つ一つ警察を呼んで、本委員会でも事実関係を確かめてみたいと思っております。  川原先生にお聞きをいたしたいのは、アメリカの外国人登録制度確認期間、俗に切りかえと言っていますが、これは十年だというふうに聞いておるのですけれども、そこのところはどういうふうになっておるのでしょうか。また、中でもいろいろな区別があるのかどうかという点が一つ。  それから日本でも、協定永住なり何なりで永住権を持っているということは、日本に終生いていいということですね、そういう人に対してまで切りかえ、確認ということは必要ないのじゃないかという意見が相当多いのですが、これに対してはどういうふうなのでしょうか。アメリカの事情はもちろん日本とは違いますけれども、そこら辺のところはどういうふうになっているのか、教えていただきたいと思うのです。
  34. 川原謙一

    川原参考人 先ほど申しました十四歳以上の合衆国に入国しようとする人は、登録し、かつ指紋押捺しなくちゃならない。ただし、携帯義務は十八歳以上だということでございます。  次に、いま一つの規定は、合衆国にある外国人は、毎年一月一日から三十一日まで一カ月の間に最寄りの郵便局か最寄りの移民局へ登録申請しなくちゃならぬという規定なんです。それからまた、住所を変更した場合は十日以内に住所を変更した地の移民局または郵便局に登録する。日本は市町村になっていますけれども、アメリカでは郵便局ということなんです。だから毎年一月一日から一カ月というふうでございますので、十年間といいますのは規定がございません。いまの毎年一月一日から一カ月の間に必ず自分の現住地を管轄する移民局または郵便局に登録するのだ、切りかえするのだということです。  それから、先生がおっしゃるように協定永住の人にまで云々ということは確かに酷なようですけれども、これは先刻申し上げました一般的な私の論理として、私自身たびたび申し上げましたように、協定永住の人は三十七年前は日本人でしたから、そうした日本人のお方に登録制度指紋押捺を要求するということは非常に酷であるし、彼らに私は満腔の同情を表するにやぶさかでないのでございますが、日本人外国人との相違となったら、いま申しましたように、同じ蒙古種族で顔も同じ、言葉で話すぐあいもむしろ日本人よりも朝鮮人や台湾人の方がうまい人もいるということからしますと、具体的な、客観的な区別の標準は何かといったら登録制度じゃないかと思うものですから、その意味においてたびたび申し上げましたように、協定永住の人たちは特にかつての同胞ですから非常に同情はいたしますけれども、一たび外国人となられて、特に先ほど申し上げましたように国籍選択権、オプションの制度、国際法上の権利があるにもかかわらず、彼らはばっさりと首を切られるように日本人から離れてしまって外国人になったというような同情すべき点もございますが、現在内外人を区別するとなったら、客観的な標準としては登録制度じゃないかと思うのでございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまの一番大きな問題は、基本的に国籍選択の自由が日本にいた外国人に与えられなかったわけですね。ドイツ、オーストリアの場合には国籍選択権が与えられておるわけです。日本の場合には与えられなかった。それはそれなりの、いわゆるGHQのあれによってできたものらしいのですね。だから、現在はそういうふうになっていますから、ここで論議してもあれなんですが、そういうふうな事情で、自分の意思によらないで日本人になり、自分の意思によらないで外国人になってしまった人の処遇というものは、おのずから日本はアメリカの移民法なり何なりとは違ったものが当然あっていいのではないかというのが私の考え方なわけなんです。これは政府当局とずいぶん議論するのですが、その点については議論がかみ合いません、一致しません。それは、やはりその当時国籍選択の自由を与えなかった理由の一つに、いわゆる在日外国人というものが治安の対象という形で非常に強くとらえられたというところに問題がまだまだ残っておるのではないかというふうに思うわけなんです。これは歴史的ないろいろな事情というか、そういうようなものをまた研究する機会を私どもも持ちたいというふうに思っておるわけなんです。  田中さんにお尋ねをしたいのは、田中さんの本、「アジア人の留学生」ですか、読んでみますと、国籍選択の関係ですね、最初は国籍選択の権利を与えるように国会の中でも議論があったようですね。ところが、それが急にくるっと変わって選択の自由を与えなくなったわけですね。その間の経過をおわかりの範囲で、と言うと失礼ですけれども、御説明願いたいのと、それからもう一つ、いま言われたように外国人登録原票は市役所にあるのですか、それは一体どういうふうな役割りを現実にいま果たしているのでしょうか。何か特別な市町村に置く必要があるのでしょうか。それから法務省が全国的にそれを全体として管理をしなければ——管理という言葉を使うのですが、規制管理とどう違うかわかりませんが、管理という言葉を使っているわけですが、外務省でなくて法務省がなぜ統一的に管理をしなければならない必要性が一体どこにあるのだろうか、こういう疑問があるわけなんですが、そういう点について御説明願いたいと思います。
  36. 田中宏

    田中参考人 国籍選択の点は私も、川原先生のお話にもちょっとありましたように、ある日突然外国人として宣告されたというような状況が今日にどういう尾を引いているかというのは関心を持っていたものですから、若干衆議院の議事録なんかも丹念に読んで、とりわけ平和条約の審議が最後のところになるわけですけれども、それに至るいろいろな過程で、ちょっと私いま手元に資料がないので正確に記憶しておりませんけれども、朝鮮戦争の起こる前の段階までは外務省の、たしか外務次官の方の答弁なんかにも、いずれ日本国籍にするかあるいは朝鮮国籍にするか選ぶような措置をとることになるだろう。非常に早い時期は、戦争が終わって間もないころやはり国会で、衆議院議員選挙法が改正されて、一般には婦人参政権が付与されるための法改正として有名なんですけれども、昭和二十年の暮れの法改正のときに、戸籍法の適用を受けない者の参政権を停止するという附則がつけられた改正がありますけれども、その改正審議のときには、当時まだ内務大臣という職制があったころだと思いますが、内務大臣が、とりあえず選挙権はとめるけれども、最終的な国籍問題については平和条約の段階でどちらかの国籍を選ぶことになるだろう。私が調べた一番古いのは、戦争が終わった年の十一月か十二月ごろの内務大臣答弁、それから新しいのはたしか朝鮮戦争の前だったと思いますけれども、いずれそういうことになるというように踏んでいるというような外務次官答弁を何か記憶しています。  その理由については、私も定かにはわからないのですけれども、やはり朝鮮戦争という東アジアにとって非常な激変が生じて、それに伴う日本政府の全体的な政策決定、その中で国籍の選択をさせないという方針を出したのだと思います。私の記憶に間違いなければたしか吉田総理大臣の答弁か何かに、選択ということもあるけれども、自由に選ばせると日本にとって好ましくない人間が日本国籍を取るようなことが起こりかねないというような趣旨の答弁をたしか平和条約の審議の段階でしていたと思いますので、その辺から私はある種の政策判断があったと思う。残念ながら人権という角度からその問題をアプローチしていないということだけは非常に鮮明になって、国家の論理で切った、植民地化したのも国家の論理なんですけれども、人権ということで、世界人権宣言にも国籍を奪われない権利があるというような趣旨がありますけれども、結局日本の国の都合で処理したというように思わざるを得ないと、私が多少調べた結果ではそういう感想を持っています。  それから外国人登録原票の問題ですけれども、これは御存じのように、市区町村役場に原票があって、それの写票が、従来は甲票という写票が都道府県にあったのですけれども、これは行政簡素化で廃止されて、乙票だけが法務省に保管されているはずで、現在は乙票と市区町村役場の原票で、それは常に一致させるように連絡をとっているというように私は聞いています。  それで、国の側で原票を管理する必要があるかどうかというのは、私はどうも適切に答えられないと思いますけれども、ただ一つ不思議に思いますのは、一方入国管理局は在留管理の点でいわゆる出入国管理令に基づく一連の行政というのを所轄しているわけで、協定移住を許可した人については協定移住を許可するに当たって審査した書類が全部保存されているはずですし、それから日本で生まれた人は当然出生届を出して在留資格を取得するわけですから、その手続は入管局が入管令に基づいてやっているわけで、どうも外国人登録と、それからことしから出入国管理法ですか、入管法に基づく在留管理と二重になっているのではないかという気はいつもしているのですね。  留学生なんかの例をとりますと、入管の方には毎年留学生が延長するときに成績証明書だとかあるいは保証人の保証書というのを提出して、それは各人ごとにファイルされて、毎年の期間更新のときに従来の記録を見ながらチェックするわけですね。当然そこでは住所というのは書かれるわけです。ところが、その同じ留学生について、たとえば東京の文京区なら文京区に居住していれば文京区に登録原票というのがあって、写票の乙というのが法務省の登録課に多分保存されている。したがって、一人の人についてずいぶんいろいろな記録がつくられている。  特に居住に関することというのは、これは自治体の方で自分のところにどういう住民が住んでいるかということを把握する必要があるわけですから、原票を市区町村が保管するということは必要ですし、恐らくないと困るだろう。ただ、その様式がおよそ行政サービスをするのには不適切であるという問題は先ほど申し上げました。  したがって、乙票を国の側で管理する必要があるかないかというのは、私はどうも余分な仕事ではないかというように思ってはいます。というのは、原票が市区町村にあるわけですから、必要であればその原票との照合をやることは可能ですし、先ほど生野区長さんからいただいた資料でも公の機関からの原票に対する照会というのは相当の件数に達しているようで、文書による照会、電話等による照会というのが一番新しい昭和五十六年でも七千件ぐらいいろいろあるようですから、必要であれば法務省の方から市区町村に対して照会をするということはできるはずですから、必ずしも必要でないのかと思います。  ただ、私は法務省の内部で仕事をしている者ではないので、余りそこの点については適切な御意見を申し上げられませんけれども、一つだけさっきから申し上げていることは、私も名古屋で区役所の窓口に行って感想を聞いたんです。余りこういうことを言うと法務省は嫌がるけれども、大変無用の長物である、実際の仕事をするときには全部別のものに写さないと使えないと言う。  それから、もう一つ区役所で非常に困っていらっしゃるのは、日本人の場合には転出届というのが必ずあるんですね。引っ越すときには前の居住地に行って、今度どこそこへ引っ越しますという転出をやって、それから新しいところへ転入手続をやるというように義務づけられているのですが、外国人の場合には行き先に対して、今度ここへ転居してきましたからというので、登録証明書住所を変更するということだけやればいいようになっている。そうしますと、区役所の方ではいつどの外国人が他の区に移ったかというのがわからないのです。それで、新しく移った先の区から原票をこっちに回してほしい、この外国人が今度こちらの区に転居してきたのでそちらが保存している原票を回してほしいという事務連絡が来て、それから、じゃこの人は今度隣の区に引っ越したんだなというのがわかる。そうすると、それについて国民年金の台帳があればそれもいじらなければいけない……。
  37. 羽田野忠文

    羽田野委員長 ちょっと答弁者にお願いいたします。  予定の時間がありますので、答弁はなるべく要領よく時間を短くお願いいたします。
  38. 田中宏

    田中参考人 そういうことで、区役所の住民管理の点では非常にやりにくい制度であるという、その点は非常に重大な問題ではないかと思います。
  39. 羽田野忠文

    羽田野委員長 沖本泰幸君。
  40. 沖本泰幸

    ○沖本委員 生野の区長さんは私がお願いしてお忙しいところをお越しいただいたわけで、区長さんに主にいろいろとお伺いしたいわけです。  いろいろ話が飛んだりしますけれども御了承いただきたいと思うのですが、先ほどの話で、平野川の改修でその工事に当たった韓国人あるいは朝鮮人の方がそのままそこに住みついたことが生野区に韓国人朝鮮人の数が多いと言われる沿革ではないかというお話があったわけです。それからずっと生まれ変わり生まれ変わり子供や孫が生まれてきて、先ほどもお話がありましたけれども、それがパーセントからお話しになれば八〇%から九〇%近い人たちがもう日本人である、もうほとんど変わらないということが言えるわけですけれども、その辺の日本人的な意識ですね、窓口でどういうやりとりになっておるわけなんですか。これは区長さん新しくてもわかると思うのです。
  41. 山崎仙松

    山崎参考人 ただいま先生御指摘のとおりでございまして、私どもの生野区では日本人と在来からの二世、三世、ただいま四世の方もおられるかどうかというところでございますけれども、こういった方との間に対する意識の違いは私どもないわけでございまして、窓口では通常のこととして応対させていただいております。
  42. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これはここでのお話ではないのですけれども、生野区の係長さん、課長さんと話し合いをした中で出た話ですが、たとえば表札はほとんどが日本名の表札ですね。それから文通は日本名で文通している。それから銀行の口座も日本名である。生活のほとんどの内容は、日本人の名前として日本名でそれぞれが言っている。いわゆる通称でほとんど生活は成り立っているということになると、登録のときであるとか切りかえのときだけが自分のもとの国籍名が出てくるわけですね。  それで最近になってまいりますと、たとえば成田へ韓国人が用事でお越しになったときとか、あるいは朝鮮民主主義人民共和国の方がお見えになったときとか、こういう場合は最近は全部音で、その国の正式な名前で、かたかなで出てきますね。私たち非常にわかりにくい面があるわけです。最近コンピューターを盛んに使うようになってきているわけです。そうすると、そのコンピューターから出てくる音の名前が、たとえば朴正煕という日本式の呼び方がパク・チョンヒという名前に本当はなるということになるわけです。それがコンピューターなんかでかたかなでばっぱっぱっと出てきてそういう内容のものが飛び出してくるとか、あるいはお話がありましたけれども、区役所の方へ行くと、日常の生活日本人だから、カウンターのところで日本名でお話しになる。そうすると、住民票を一生懸命繰ってみるとないということで、繁雑さがいろいろあるというお話があったわけですけれども、そういう事態はこれからだんだんふえていくはずなんですね。そういうことに対する煩わしさ、繁雑さというものはいまどうなんですか、これからどういうふうに予測していらっしゃるのですか。
  43. 山崎仙松

    山崎参考人 この事務を行います根拠法規あるいは関連の制度につきまして逐年改善と申しますか改正されてまいっておりますので、その事務につきましても従来に比して繁雑さ等につきましては緩和された向きもありますけれども、やはり何と申しましてもいま先生おっしゃいましたように、そういったコンピューターとか機械化になじまない性格の事務であると認識しております。
  44. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それで、きょうちょうだいした資料の中で一応お伺いいたしますが、この四番目の「確認(切替)」という中で、十四歳以上が五十一年は二千九百十一、五十二年が二万一千二百七十九、五十三年が三千八百六十六、五十四年が三千五百二十六、五十五年が二万五百七十六、五十六年が四千百十九。そうすると、五十二年と五十五年の切りかえがかたまって来たということで、先ほどの指紋の照合も六百幾らあるというのは、この切りかえ時期にどかっと来るわけですね。  そうすると、その指紋の切りかえについてですけれども、大体住民のいわゆる外国人登録の窓口も、それからその他の住民票の窓口も、戸籍の窓口も、印鑑証明なんかの窓口も、広いお役所の中のカウンターがずっと続いていて、その中にここは何課、何課というふうに表札をかけて、その下で事務をとっていらっしゃるわけでしょう。そうすると、先ほどのお話があった指紋をとるのに囲いをつくった、別のところでやるようになったということがありますが、それは別にして、大阪全区に渡したということになるわけですが、そういうものがなかったら、結局は中へ入れて指紋をとるのですか、カウンターの上でやるわけですか、その辺どうなんですか。
  45. 山崎仙松

    山崎参考人 指紋押捺の取り扱い方法でございますけれども、日常の場合、通常と申しますか、切りかえ年でない通常の場合につきましては、待合ホールから事務室の中、すなわちカウンターの中に入った、遮蔽をした押捺台でやっていただいております。  それから、先生おっしゃいました切りかえ年で一日最高六百件にも達するような場合は、会議室あるいは講堂等に特別の場所を設けまして実施するようにしております。
  46. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、いまお答えにならなかったのですが、ほかの大阪の区役所は全部押すところをつくったということですけれども、そうでなかったとき、区長さんも区長でない時期もあったし、ほかの区役所におられたこともあると思うのです。そうすると、何もなかったときは指紋はどういう形でとっておられたわけですか。カウンターのところで出してやらせていたのかどうかということですね。
  47. 山崎仙松

    山崎参考人 押捺台に遮蔽を設けましてすでに十数年になろうかと思うわけです。それ以前は、やはりカウンターの上で職員が、一般の市民の方からは見えないように、体で囲いをするといった方法によってやっておったわけでございます。
  48. 沖本泰幸

    ○沖本委員 居留民団の大阪府本部と大阪市との話し合いの中で、指紋事項ほか六項目について大阪市と交渉する中で、指紋押捺については一般市民から見られないように配慮してほしいというので、全区に渡したということになるわけでしょう。だから結局は、その台を渡すまでは、一般から見られるという点が非常にあったというふうに理解していいわけですね。  それから、指紋事項ほか六項目というのは何だったわけですか。——いや、いいです。時間がないから、ほかの方へかかっていきますから。  そうしますと、あなたもこの外国人登録事務協議会の一員として改善をいろいろお願いしたという点があるわけですが、この中にあります「在監者の動静通報事項を原票に記載することを廃止されたい。」それで、これの二十というところを見ますと、「動静記入」というのが百十五というふうに五十六年度はなっていますけれども、この動静というのはどういう内容になっているわけですか。
  49. 山崎仙松

    山崎参考人 これは、法務省入管局の御指導によりまして、市区町村長は、矯正施設の長から入監の通知を受けた場合、その外国人にかかわります原票に、これは備考欄になるわけでございますけれども、入監年月日とその入監した施設名を記入することになっておるわけでございます。
  50. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それから、この十一のところに、「最近外国人登録証明書の発行が増加し、今後ともその傾向は続くものと思われる。現在この証明書は、必要事項を原票から転記して作成する以外に方法はなく、ときには長時間を必要として窓口事務の円滑な処理を著しく阻害している。」ということで、「複写機による登録証明書の作成をはじめ、事務能率の向上に大きく寄与できるよう原票の様式の改正を早急に検討されたい。」こういうふうになっておりますが、どういうふうな形にした方がいいとお考えなんですか。どういう点が複雑になっていて、複写機なんかが使えるとどの辺が利点が出てきますか。
  51. 山崎仙松

    山崎参考人 先生いまおっしゃいました考え方、全国事務協議会で出したのは、もちろん単に事務処理の観点から出したと思うわけでございまして、そういった観点からのみでは必要度が低いと思われる項目もあるわけでございますけれども、この法の趣旨、目的といった観点もございますので、私ども単に事務担当者としての観点からはすべて判断しにくいわけでございますけれども、そういった点、先ほど先生おっしゃいましたように、すべてコンピューター化もできませんし、機械化になじまないものだと思っております。
  52. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それからまた話をもとに戻しますが、一度に切りかえ時期が来ますね。別のところに場所をつくって、そこで臨機応変にやっていくのだ。それは前に伺った、課長さん以下外人登録の担当の方が十四人ですか、その方だけでやっているのでしょうか。もっと臨時に人を入れて、そこで臨機応変にやっているのでしょうか。  それから、そうなりますと、いわゆる切りかえの書き込み、書類を切りかえるけれども、いわゆる写真とか指紋の照合はどういう形でやるわけですか。
  53. 山崎仙松

    山崎参考人 通常の場合は所定の職員、先生おっしゃいました十四人で実施しております。そして大量切りかえ時等の場合につきましては、一時的に臨時職員を導入いたしまして実施しております。
  54. 沖本泰幸

    ○沖本委員 たとえば指紋がありますね。指紋もやりかえるわけでしょう。その指紋のやりかえのときの指紋の照合とかその他のときに、指紋をとってあるけれども、指紋のいわゆる照合ですね、どんなときに照合があるのですか、あるいは指紋をとったきりで照合なんかないのですか。
  55. 山崎仙松

    山崎参考人 先ほど申し上げましたとおり、写真によって確認ができております。私どもの事務処理の上で指紋を照合することはできませんし、やっておりません。
  56. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、結局指紋はとってあるけれども、指紋の照合とか、指紋等を窓口あるいは県と置いてあるわけですが、そういうことの関係で指紋自体が必要ということはないわけですね。あるいは政府の方から何々の指紋を照合するというようなことはあるわけですか。
  57. 山崎仙松

    山崎参考人 法務省の方からそういった御指導は受けておりません。
  58. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、区役所の方としては、窓口としては、経験の上から、写真であれば事足りるのじゃないか。写真は、さっきからお話がありましたとおり、外れないような方法とか、めくって取りかえられないような方法になるのじゃないかと思うのですがね。  それからもう一つは、必要事項を手書きでやらなければならぬということをおっしゃっていましたが、具体的に手書きで、どうしてもほかの方法ではできないのだというような内容はどういうものなんですか。
  59. 山崎仙松

    山崎参考人 私どもも本人であるかどうか特定する場合に従来の経験からしまして写真でできると判断しておるわけでございまして、また、関係事務のほとんどすべてにつきましては手書きでしか実施できない分野と思っております。
  60. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この中で十八の違反した分ですね。登録違反で告発したというのは、五十一年から数字がずっと出ているのですが、五十六年は百八十七告発した。それから告発の中で通知保留伺いによる保留が百四十二。これは内容はどういうものなんですか。その告発とは主にどういうものを告発していらっしゃるわけですか。
  61. 山崎仙松

    山崎参考人 告発でございますけれども、法違反の容疑があると思われるケースのほとんど大部分は切りかえ交付、これは三年ごとの確認申請でございますけれども、これの遅延によるものでございます。  以上です。
  62. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その確認申請手続の遅延というのは、区長さんではむずかしいかもわからぬですけれども、実際に事務をやっていた人の方がわかると思うのですが、たとえば勤務地が飯場であるとか絶えず自分の職業の関係で変わっていくわけでしょう。変わっていったら届けをしなければならぬわけでしょう。そういうもの等のやむを得ないような内容で違反を起こさざるを得なくなったというものでしょうか。そうであれば、そういう点どういうふうに改正してあげたらその辺が十分に行き渡るのでしょうか。
  63. 山崎仙松

    山崎参考人 申請の遅延でございますけれども、ただいま先生がおっしゃいました以外に、体の疾病の都合による場合だとか失念の場合があるわけでございます。そういったものが主なケースでございます。
  64. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、体のぐあいが悪いときは診断書を出して届けておけばいいのですけれども、病気しっ放しだったから連絡できなかった、一人だからかわりがいないからというようなことが当たるわけですか。それから、失念というのは忘れておったということになるのですか。そういうことで違反した。  それは悪質なのはやむを得ないと思いますけれども、仮にそういうことになった人たちを告発して——違反だからというので告発するわけでしょう。この間当委員会の横山先生等が言われた、軽いものについては窓口の方で目をつぶる方が多いということもあるわけですけれども、そういうふうな具体的なことの内容はどういうふうでしょうか。
  65. 山崎仙松

    山崎参考人 私ども警察に告発する場合には、単に事務的と申しますか、機械的に処理するということではなく、関係当局の御指導も仰ぎながら、先ほど申しましたようなやむを得ない事情の場合につきましては告発を留保しているのが実情でございます。
  66. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それではもう一つ、今度は田中先生の方にお伺いしたいのですが、先ほどのお話の中で、この法律は、行政の簡素化のために法律改正するというねらいだけであって、新しい対応で外国人に合ったような、あるいは国際人権規約に加盟したような形からこの法律改正に当たっているとは考えられないというふうにお考えなんですか。  それからもう一つは、内外人平等の原則で、いわゆる押捺拒否者の発言として、「当初は日本人もてっきり押していると思っていたが、外国人だけが指紋を採られることを知り驚いた」ということも記載されておりますが、この辺はどういうふうにお聞きになってお受け取りになったわけですか。  それから、内外人平等の原則というのは、人権規約の中から推しはかって、こういう形におっしゃっているわけですか。
  67. 田中宏

    田中参考人 今回の改正案についての私の感想は、さっき先生もおっしゃられたように、去年の行革法案の中に入っておかしくないようなものがほとんどだなというのが率直な感想です。  内外人平等の問題というのは、外国人登録法に限らず日本のあらゆる私人から公の機関に至るまで枚挙にいとまがないわけで、非常に卑近な例で一つ思い出したことを申し上げますれば、たとえば国民体育大会という、およそそんなこと意識しなくて済みそうなものでさえ外国人は出場資格がないということで、かのホームラン王になった王選手がベンチで観戦せざるを得なかったという有名な話がありますけれども、それも昨年の琵琶湖国体で高校生だけに限ってやっと参加できるようになったという現状で、内外人国籍だけを理由にする差別というのがたくさん残っているわけであります。  私も、ことしの春送り出した卒業生の一人が日本生まれの韓国人ですが、教員免許を持ちながら愛知県では国籍を理由に教員採用試験を受けさせないというのもその一つで、教師として非常に心が痛むわけですけれども、そういう点で、国際人権規約は御存じのようにほとんどの条項について、すべての人という言葉が使われていて、日本政府国連人権専門委員会提出した報告書の中でも、人権規約の中に使われておりますナショナルオリジンという言葉は国籍というものを含むというようにわが国は解釈しているというように、外務省ははっきり国連報告をしているようですから、趣旨としては国籍による差別は可能な限り撤廃するという精神で臨んでいるということを国際社会には発言をしているわけで、それを国内で具体化していただきたい。  外録法に関しては細かいことは省略して指紋のことだけを申し上げたわけですが、指紋の問題については、日本人は出さなくていいのになぜ外国人だけ出さなければいけないのかという素朴な疑問に対して、私たち社会がどういう説明ができるのだろうか。さりとて、いや外国人犯罪を犯しやすいので未然にとっておきたいということを果たして正面切って言えるだろうか。もし社会安全のために犯罪をできるだけ少なくしていきたいということが日本の国是であるのであれば、大変逆説的な言い方ですけれども、私たち日本人指紋を出すべきだろう、住民サービスの窓口で指を押さえられて、義務教育の子供たち指紋をとられる体験を日本人も同じようにすべきだろうと私は思います。そのときに、いやあなたは外国人だから日本にいるなら指紋を押さなければいけないというのを一体どうやって説明できるだろうかというように、私はそういう人たちと話をしながら思いました。ですから、いま本裁判を請求している拒否者もいるようですけれども、日本の最高裁から外国人は何ゆえに指紋を押す義務があるのかということをわかりやすく説明してもらいたいということをその青年は語っていましたけれども、残念ながら私も、日本社会を構成する一員として、真っすぐ彼の目を見ながらそのことについて彼に言うことはできない。こういう気持ちは正常ではないというふうに私は思っているわけです。
  68. 沖本泰幸

    ○沖本委員 終わります。
  69. 羽田野忠文

    羽田野委員長 安藤巖君。
  70. 安藤巖

    ○安藤委員 どうも参考人の先生方、御苦労さまでございます。  最初に、田中先生にお伺いをしたいと思うのです。  先ほど冒頭の意見陳述をお伺いしておりまして、外国人地位処遇をめぐる日本政府の態度に対して最近変化が生じたというふうに田中先生はおっしゃって、その一つの根拠づけとして、出入国管理及び難民認定法への改正が行われた、そこで永住者と非永住者への区分けができたのだ、こういうふうにおっしゃってみえたのですが、失望したというふうな御意見もありますし、懸案事項の指摘もございます。こういうような変化に対応した外登法の改正というものがなさるべきであったじゃないのか、こういうことをおっしゃってみえておるような気がするのですが、そうかどうかということと、その変化に対応した改正というようなことになりますと、全部じゃなくてもいいのですが、具体的にポイントのところは何と何だ、そしてその簡単なコメントもしていただければありがたいと思います。
  71. 田中宏

    田中参考人 先生がいまおっしゃられたように私は理解をしていまして、ここには特に書きませんでしたけれども、やはりインドシナ難民の受け入れという現実に日本の政府が直面したときに、非常に重要な変化を生ぜざるを得なかったというように理解をしております。したがって、国内から強い要求のあった国際人権規約も、かなり長い間放置されていたのに難民問題が具体的に起きたところで加入に踏み切ったし、それからすでに八十カ国近く加盟国があった難民条約にもおくればせながら入った、そして国内法の国籍要件を撤廃するということも議会でおやりいただいたという点で、非常に大きな変化だというように思います。  強いて一言感想を申し上げれば、インドシナ難民の問題が起きる前に、戦前からいる在日朝鮮人中国人の人権擁護の立場から自発的に内外人平等へ歩んでほしかったと私は思いましたけれども、それは結果がいい方向に動いているわけですから、私は率直に歓迎したいと思います。  そういう流れを受けて外国人登録法をどういうふうに考えていくかということで、余り細かいことは実務を担当しているわけでもないものですから申し上げられませんけれども、一つ基本的な考え方は、先ほど安藤先生が御指摘になった、永住者と非永住者に入管法の上で非常にはっきりした区分けが成立したことを受けて、前に引用しましたように、法務省御自身も七一年の白書で、長期在留外国人処遇問題を念頭に置いて外国人登録制度のあり方を検討しているというようにお書きになっているわけですから、決して私は政府の意向に反することでもないと思いますけれども、長期在留外国人という言葉で表現される期限の定めのない永住者については、可能な限り日本人住民台帳に登載をする方向で検討をすべきではないか。  それ以外の、一定の期限を限られて日本在留が許されている一般外国人、これは在日韓国人朝鮮人に関して申し上げれば、私の表で三万七千人ぐらいしかいない。この中で一二八の子供を除くと恐らく三方四、五千人が一般外国人に属する韓国人なり朝鮮人になるわけですから、そういう点で長期在留外国人については、先ほど来生野区長さんのお話にもありますように、具体的な住民のサービスのところでも大変なそごを来しているので、私は基本的には住民基本台帳に登載をする、そして一般外国人は従来の外国人登録法のような制度に合わせるというような抜本的な再検討をすべきではないか。その精神にある考え方は内外人平等ということに尽きるわけで、住民票にも国籍を書く欄を設ければ何でもないわけで、どこに住んでいてどういう名前で生年月日がいつであるということがわかればそれでいいわけですから、そういう点で、技術的には多々問題があろうということは私も感じないわけではないですけれども、基本的な方向としては、長期在留外国人については住民基本台帳に登載をして外国人登録法の対象から外すという方向をこの際考えるべきではないか。  そういうことによって、ずいぶん区役所の方でもすっきりする。私が名古屋で事情聴取をした区役所の方は、本当にそうしていただければ私たちは何も言うことはありませんということを言っていらっしゃいましたけれども、具体的な事務をなさっている立場からはまさにそうだろうと思うのです。法務省は国の立場で若干違った問題もあるかと思いますけれども、基本的にはそういう方向を追求すべきではないかというように考えております。
  72. 安藤巖

    ○安藤委員 山崎区長さんにお尋ねをしたいと思いますが、まず最初に、いま田中先生の方からお話がありまして、こういうふうに改正すべきだ、永住をちゃんと認めた人は住民台帳にきちっと載せるべきだ、そういうようなことになっていけば非常にありがたいというのが愛知、特に名古屋の方でのそういう業務を担当しておられる人たちの意向だというお話をいまお伺いしたのですが、区長さんもそういうようなお考えになるのかどうか、まず最初にお伺いをします。  それから、先ほどもちょっとお話があったのですが、原票が区役所にありますね。その原票の指紋があるわけですが、この指紋を何かの機会に照会するとかあるいは照合して確認するとかというようなことがあるのかもしれませんが、そのときに、指紋というのは私どもが見たって、よう似ているな、しかし似てもいるようだし、違ってもいるようでもあるということで、なかなか素人ではむずかしいのですが、そういう鑑定をできる人がその場に担当者としておられるのかどうかということです。それから、原票の指紋本人に間違いがないかどうかというような照会が相当件数があるのかどうかということです。  それから、先ほどもお話がありましたが、第二十項目の動静記入なんですが、この動静記入というのは、先ほどお話がありましたからわかっておりますけれども、記入はするのだけれどもそういうふうに記入されているかどうか、間違いありませんかという照会、そういうようなことがあるのかどうかということもあわせてお尋ねしたいと思います。
  73. 山崎仙松

    山崎参考人 まず一点、事務処理の面でございますけれども、私ども区の行政をつかさどる立場で、単に事務処理の観点から考えますと、先生のお話のとおりになろうかと思います。ただ、こういった外人登録そのものにかかわります基本的な考え方と、法の趣旨、目的といった観点の場合については、私承知しない分野もあるわけなんで、そういった観点を除きまして事務処理の簡素化といった観点に立てば、そういうことを申せるかと存じます。  二点目の原票の指紋の照会は、これはございません、そうして、区の行政にこの指紋を鑑定する職員は必要ございませんので、これは配置しておりません。  三点目の動静記入の照会もございません。
  74. 安藤巖

    ○安藤委員 尾崎先生に次にお尋ねしたいと思うのです。  先生は弁護士ということでおいでをいただいているんですが、在日朝鮮人の人権を守る活動にいろいろ参加しておられるという話も聞いておりますけれども、その関係の経歴ですね。  それから、弁護士会の中での何か人権を擁護する、これは人権擁護委員会とかそういう委員会があることも承知しておりますけれども、そういうような役職におつきになったことがあるかどうかということをまず最初にお尋ねしたいと思います。
  75. 尾崎陞

    尾崎参考人 在日朝鮮人の関係につきましては、現在、在日朝鮮人の人権を守る会というのが法律家を中心にして組織されております。この代表委員の一人でございます。  それから、在日朝鮮人問題との具体的な取り組みにつきましては、十年前、一九七二年に沖縄が日本に復帰した年に、沖縄を初めて第二次世界大戦中に日本に強制連行された朝鮮人の実態調査をいたしまして、私が団長でやりました。その後、北海道、東北、九州等についてそれぞれやっております。  それから、弁護士会内における人権関係につきましては、日本弁護士連合会の人権擁護委員として従来活動しておりまして、それも一九七二年には委員長をやり、その後もいろいろ人権擁護委員として国際的な人権関係についても関心を持ってやっております。  以上です。
  76. 安藤巖

    ○安藤委員 先ほど、最初の意見陳述の中でいろいろ具体例をお挙げになって、運用上の乱用があるという御指摘があったんですが、たとえばそのうちの尼崎市で、居住地変更登録が若干おくれたというようなことで二十人の警察官が出動したというお話があったんですが、これは何かほかの犯罪の容疑があって、ほかの犯罪捜査というようなことも入っておったんですか。それとも、この居住地変更登録がおくれたということだけでこういうようなことになったのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  77. 尾崎陞

    尾崎参考人 具体的な尼崎事件について申し述べる前に、一言だけ先ほどの私の話を補足しておきたいと思うのですが、私どもが現在までに調べあるいは取り扱った事件の多くのものが、在日朝鮮人の関係でございます。同時に、その中で相当の部分がいわゆる朝鮮総連関係の方々を対象としたもので、これが非常に多いということが一つ。もう一つは、朝鮮人高校生特に総連系統の高校生に対するいろいろなトラブルがありまして、その中で、やはりこの外国人登録法関係が相当幅をきかして運用をされている、そういうようなことがあるということを申し上げておきたいわけです。  そして具体的に言いますと、尼崎事件というのは、一九六三年に尼崎市で起こった事件でございますが、警察官二十余名が尼崎市内の鄭さんというお宅を襲いまして、居住地の変更申請がしてないという理由で捜査をしたのでございますが、その二十数名にも及ぶ大家宅捜索をして、さらにそれと関係のない、そのお宅と関係のない在日本朝鮮人総連合会、私先ほど朝鮮総連と言ったんですが、その組織関係の名簿、学習帳、信書など五十数点にわたるものを押収し、同時に、その奥さんが在日本朝鮮民主女性同盟尼崎支部委員長であったことを理由にして、その支部の事務所をも家宅捜索し、そして同盟の財政帳簿やその他証拠品を押収しておるのでございます。  そうして、その他の事件につきましても、在日朝鮮人についての登録違反の場合は、その背景、その政治関係等についても詳細に取り調べているのがいろいろな事件に共通した点でございます。  以上です。
  78. 安藤巖

    ○安藤委員 そういう乱用の問題との関連で先ほど先生は、この外国人登録法が治安立法的な性格を持っているんだというようなお話があったのですが、もう一つぐらい事例を挙げていただいて、余り時間がありませんが、時間の範囲で、そういう治安立法的性格がこういうふうに浮き彫りにされているんだというような御指摘があればいただきたいと思います。
  79. 尾崎陞

    尾崎参考人 治安立法的な性格特に在日朝鮮人に対する取り締まり法規的な性格を多分に持っているという最も典型的な例は、東京の小平警察による朝鮮大学生に対する事件でございます。  これは一昨年、一九八〇年ですが、四月十八日に日比谷公会堂で四・一九人民蜂起二十周年記念在日朝鮮青年学生中央大会が開かれて、それの後デモがなされました。それに参加した多数の朝鮮大学の学生が学内の寮へ帰る途中で、同大学の玄関に通ずる通路で小平警察警察官から職務質問及び外国人登録証の提示を求められた。そしてそういうようなことになったについては、先ほど申しましたような集会にすでに警察官六、七名が入って、あらかじめそういうことのための用意をしておったのではないか、こういうことが言われております。この事件あたりが最も取り締まり法規、治安立法的な性格を明らかにした事件だと考えております。  以上です。
  80. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が来ましたので最後に一点だけ。  先生は先ほど、今度の改正案は一歩前進だというふうにおっしゃったのですが、多くの問題を積み残しておる、抜本的な改正が行われなくてはならぬというふうにおっしゃってみえたのですが、その抜本的な改正というのは幾つかおありだろうと思うのですが、これとこれとこれとと、三つくらいにしぼって話していただければありがたいと思います。
  81. 尾崎陞

    尾崎参考人 具体的な改正点もありますが、まずその前提として、抜本的な改正であるためには、先ほども田中先生が取り締まり法規的なものから性質を変えなければいかぬと言われたようですが、まさにそれが基本的には大事なことであると私も思います。  戦前におきましては、御存じのように国民支配のためにいろいろな登録その他が利用されました。警察による戸口調査等いろいろされておった。支配のための戸籍法であったり登録であったりしたわけです。戦後においてもそういう名残が、基本に底流としてあるのじゃないか。それが最近の国民総背番号問題となってあらわれ、さらにこの外国人登録法の基礎にもそういう点があるのではないか。  そういう意味では、登録法は取り締まりのためじゃなくて、むしろ日本社会になじまない外国人日本の中で安定的に生活をしてもらうように指導するようなためにあるのではないか、こういうような考えを持ちますので、それについては刑罰法規的な性格を抜きにして、行政法的な性格にしなければならぬと考えます。  したがいまして、具体的には先ほどから問題になっております指紋制度、これは現在日本国民には犯罪関係以外、犯罪捜査以外では使われていないわけでございますし、日本国民に課せられておらない登録証明書携帯提示なども不必要であると考えております。  それから、一定の期間日本外国人としてでも生活し、職業についている人たちについては、それなりの処遇、保護が必要です。しかし、それは取り締まり関係でやるのではなくて、それぞれの関係で処遇方法を考えるべきである。したがって、職業とかその他の登録も取り締まり的な関係、管理という関係では要らない、そう考えます。  したがって、今回の改正が一歩前進であると申し上げたのは、切りかえ期間の延長とか年齢引き上げでございますが、しかし、罰則に罰金刑を残し、その罰金の上限を引き上げられたというようなことはむしろ改悪とも言える。これはむしろ、罰金ではなくて過料にするのが相当である、そういうふうに考えておるわけです。  それで、なお一言つけ加えますと、先ほどから申しますように、日本社会において日本人と同じような生活ができるような環境をつくってやるということが一番大切である。それを政治的な目的等に利用することは厳に慎まなければならぬと考えます。
  82. 安藤巖

    ○安藤委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  83. 羽田野忠文

    羽田野委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  次回は、明二十三日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十七分散会